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中国国内政治(その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相)

中国国内政治については、9月14日に取上げた。党大会終了を踏まえた今日は、(その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相)である。

先ずは、10月25日付け現代ビジネスが掲載した『週刊現代』特別編集委員・『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101391?imp=0
・『先週一週間の第20回中国共産党大会を見ていて思った。中国は、まったくもって「ふしぎな国」であると。 このたび、34個の中国の新語・流行語・隠語を駆使して、この「ふしぎの国」を解き明かそうと試みた新著を出した。題して、『ふしぎな中国』(講談社現代新書)。共産党大会で中国の「ふしぎさ」をたっぷりお感じになった方の中国理解の助力になれば幸いである』、興味深そうだ。
・『習近平「超一強体制」の確立  10月16日から22日まで開かれた第20回中国共産党大会と、23日に開かれた「1中全会」(中国共産党第20期中央委員会第1回全体会議)を、一言で表すなら、「『団派』の排除」と、それによる「習近平『超一強体制』の確立」だった。 団派とは、共産党の下部エリート青年組織(2018年時点で団員数8124万人)の中国共産主義青年団出身者たちのことだ。長く胡錦濤前総書記を頂点としてきた。 習近平総書記が誕生した10年前の第18回中国共産党大会は、私は北京の人民大会堂で取材したので、よく覚えている。江沢民元総書記が率いる「上海閥」(江沢民派)と、胡錦濤前総書記が率いる「団派」(胡錦濤派)との、長く激しい権力闘争の結果として、習近平新総書記が誕生した。 習仲勲元副首相という中国共産党史に名を残す魁偉な政治家の息子である習近平氏は、「太子党」(革命元老の子息)と呼ばれてきた。と言っても、こう呼ばれる政治家たちは、「我こそは中国共産党」という自負心が強いので、まとまりに欠ける一匹狼が多い。 習近平氏も同様だが、他の「太子党」と異なっていたのは、「強烈な自負心」をのんべんだらりとした風貌の奥に隠すことができた点だ。それで江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ。 当時、中国政界を長年取材してきた中国大手メディアのベテラン記者は、私に次のように解説した。 「革命第一世代の毛沢東は、『9割皇帝』(物事の9割を一人で決めるリーダー)だった。革命第二世代の鄧小平は、『7割皇帝』。革命第三世代の江沢民は、『5割皇帝』。革命第四世代の胡錦濤は、『3割皇帝』だった。 今回総書記に就いた革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」 こうした見方が、10年前の北京では主流だったのだ。そのため習近平新総書記は、1期目の5年を、「反腐敗闘争」の名のもとで、主に多くの党内の利権を牛耳っていた「上海閥」を排除することに費やした。彼らは、いわば「反習近平派」だった』、「江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ」、「胡錦濤」は思惑が外れてホゾを噛んでいることだろう。「革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」、この見方も大外れだ。
・『全ては「半永久政権」を築くため  5年が過ぎた2017年10月の第19回共産党大会で、党中央紀律検査委員会は、「153万7000人を立件した」と誇った。「トラ(大幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」というスローガンを掲げた反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにしたのだった。 そこで習近平総書記は、次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争に打って出た。彼らは「反習近平派」ではないが、「非習近平派」だった。「2期10年で後身に道を譲る」という前例を覆して半永久政権を築くには、「親習近平派」で周囲を固める必要があった。 今回、党中央規律検査委員会は「この10年で464万8000人を立件した」と発表した。そして習近平総書記は、その総仕上げとして、第20回共産党大会を「『団派』排除の大会」に定めたのだ。 主な標的は、胡錦濤前総書記、その弟分の李克強首相(党内序列2位)と汪洋中国政治協商会議主席(党内序列4位)、それに「革命第六世代」を背負う逸材と言われてきた「胡錦濤の息子」こと胡春華副首相(党内序列22位)の4幹部である。 このことを広く党幹部たちに印象づけるため、習近平総書記は10月22日の党大会閉幕日に、一つの「仕掛け」を実行した。それは「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させることだった。 前任の総書記が現職の総書記の隣に座るのは、共産党大会の慣例である。10年前の18回大会で、胡錦濤前総書記の横には、常に江沢民元総書記が座っていたのを、私は現場で目撃している。 その理由を共産党関係者に訊ねたら、「平和的で順調な総書記のバトンタッチを内外に印象づけるため」と言われた。なるほど、革命やクーデターなど、血なまぐさい党史を顧みれば、それは重要な儀式かもしれなかった。 だが今回の習近平総書記は、そもそも「平和的で順調なバトンタッチ」など一顧だにしていないのだから、胡錦濤総書記が横に座り続けることは、迷惑千万な話なのだ。開幕の時は仕方ないにしても、閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ。 これは憶測だが、用意周到な習近平総書記がこうしたことをアドリブで行うはずはないので、少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか』、初めの「5年間」で「反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにした」、「次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争」に打って出た」、「広く党幹部たちに印象づけるため・・・「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させること」、「閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ」、「少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか」、「退席」については、諸説が入り乱れているが、この解釈が自然な感じがする。なお、次のパラグラフでも「退席」をより詳細に説明している。
・『北朝鮮の「張成沢粛清」にソックリ  10月22日午前9時(北京時間)から、最終日を迎えた第20回共産党大会が、人民大会堂で始まった。この日は、共産党規約を改正し、205名の中央委員を選出した。決議の模様は非公開である。 すべての議案が無事、採択されたところで、内外の報道陣が、人民大会堂2階の記者席に通された。あとは、壇上の習近平総書記が総括スピーチを行い、閉会を宣言しておしまいである。 「事件」は、報道陣が入ってきた時に起こった。壇上には、「主席団」の42人が座っていた。「主席団」は、現役が党中央政治局委員の25人プラス王岐山副主席、長老が20人の計46人で構成されていた。だが健康のすぐれない人もいて、長老の出席者は胡錦濤前総書記以下、16人だった。最長老は、105歳になる宋平元常務委員だ。 その中で、習近平総書記の向かって右手に座っていた胡錦濤前総書記の後ろに、係員の男性が突然やって来て、退席を促した。「なぜだ?」という表情で拒絶するそぶりを見せる胡氏。ごねているうちに、胡氏の向かって右手に座る栗戦書全国人民代表大会常務委員長(党内序列3位で約40年にわたる習近平氏の忠臣)も、胡氏の退席をサポートしようとする。 ようやく立ち上がった胡氏は、前を向いている習近平総書記に何か話しかけるが、習氏は無視。肩を叩いたりしていると、ようやく習氏が軽く頷く仕草をした。胡氏は、その左隣で唇を横に真一文字に結び、無念さを表している「弟分」の李克強首相の肩をポンと叩いて、そそくさと壇上から去っていった。 私は30年前の第14回党大会から見てきたが、こんな光景は前代未聞だった。同じく30年見てきている同世代の中国ウォッチャー・武田一顕氏が、息せき切って電話をかけてきた。武田氏は「国会王子」のニックネームを持つTBSの名物記者だ。 「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」 張成沢朝鮮労働党行政部長は、北朝鮮の先代の指導者・金正日(キム・ジョンイル)総書記の妹婿で、長年にわたって「不動のナンバー2」として君臨した。だが金正恩(キム・ジョンウン)新時代になって丸2年を経た2013年12月8日、金正恩氏か招集した朝鮮労働党政治局拡大会議で、突然糾弾され、警備員に引っ立てられて議場から追い出されてしまった。そしてその4日後に、火炎放射器で燃やされてしまったのである。 北朝鮮当局は、処刑した翌13日に、張成沢氏が議場から追い出されるシーンを写した写真を公開した。武田氏曰く、10月22日の胡錦濤前総書記の「強制退席」の様子が、それとソックリだというのである』、「「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」、その通りなのかも知れない。
・『「団派」一掃の仕上げとして  そもそも、中国共産党の規則に照らすなら、胡前総書記は「主席団」のメンバー46人に選ばれているのだから、退席させられる理由はない。もし習総書記がどうしてもそうしたいなら、「退席のための決議」が必要なはずである。だが、そんな決議は行っていない。 また、「ここからの議事進行は現役だけで行う」というのなら、宋平元常務委員以下、他の長老たち16人に一斉にご退席願うはずである。だが「強制退席」を言い渡されたのは、胡錦濤前総書記一人だけなのだ。 この模様を世界のメディアが大々的に報じたため、新華社通信は「健康がすぐれなかったため退席した」と釈明の記事を出した。だが映像が示しているように、胡氏は男に退出を促されたのであり、かつ拒絶しているのである。最後は仕方なく立ち上がったが、その後、スタスタと速足で舞台左手に向かっている。「健康問題で退出」というのは甚だ無理がある。 おそらく習近平総書記は、この「胡錦濤退席」を、あくまでも「非公開の演出」と見立てていたはずだ。なぜならこの光景を、CCTV(中国中央広播電視総台)など中国メディアは放映していないからだ。だが図らずも、かつて10年間にわたって共産党総書記と国家主席を務めた79歳の男が「さらし者」にされる場面が、「世界の目」に留まってしまったのである。 この日、胡錦濤前総書記ばかりが注目されたが、「一掃」された「団派」は、他にもいた。李克強首相(序列2位)と、汪洋政協主席(序列4位)を、次の20期中央委員会のメンバーに選ばなかったのである。このことは、ともに現在67歳の両者が、来年3月の任期満了をもって、政界を完全引退することを意味する。 こうした一連の過程を経て、中央に一人デンと鎮座した習近平総書記は、満足そうな表情を浮かべて、「勝利のうちに閉幕する!」と言い放ったのだった。 こうして第20回共産党大会は閉幕したが、習近平総書記は翌23日午前中に「1中全会」を招集。「『団派』一掃の仕上げ」を行った。 何と、自分より10歳若く、「革命第六世代のホープ」「21世紀の鄧小平」などと称される胡春華副首相を、パージしてしまったのである。「パージ」という意味は、それまで党中央政治局委員(党内序列22位)だった胡春華副首相を、常務委員(トップ7)に引き上げないどころか、党中央政治局委員(トップ25)からも排除してしまったのだ。 ちなみに、これまで伝統的に「25人」が定員だった党中央政治局だが、今回は「24人」と一人減った。中国共産党は「多数決による表決」を標榜しているので、基本的に定員は奇数である。そのため、24人というのはいかにも不自然だ。 これは、党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ。 胡春華副首相は、党中央委員(トップ205)には選ばれているから、「政界引退」とはならない。だが来年3月に副首相の任期を終えると、かなり「格落ち」の左遷ポストが用意され、政界から忘れ去られるのは必至の情勢だ』、「党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ」、「党中央政治局」、「今回は「24人」と一人減った」理由としては説得的だ。
・『新たな党常務委員(トップ7)の面々  この胡春華副首相の「パージ」は、これまで30年以上にわたって中国政界を見続けてきた私にとっても、大変な衝撃だった。 だが同様に、10月23日昼の12時5分(北京時間)に、習近平総書記が人民大会堂3階の金色大庁に引き連れてきた、新たな党常務委員(トップ7)の面々にも、驚きを隠せなかった。 1位 習近平 総書記(69歳) 再任 2位 李強 上海市党委書記(63歳) 新任→首相へ 3位 趙楽際 中央紀律検査委員会書記(65歳) 再任→全国人民代表大会常務委員長(国会議長)へ 4位 王滬寧 中央書記処書記(67歳) 再任→中国人民政治協商会議主席へ 5位 蔡奇 北京市党委書記(66歳) 新任 6位 丁薛祥 党中央弁公庁主任(60歳) 新任 7位 李希 広東省党委書記(66歳) 新任→中央紀律検査委員会書記へ  2位の李強氏は、習近平総書記の浙江省時代の「大番頭」で、来年3月に首相になることが確実だ。今年4月と5月にロックダウンを喰らった2500万上海人たちが、「ミスター・ゼロコロナ」と呼んで怒りを爆発させた指導者だ。 3位の趙楽際氏は、青海省の地味な政治家だったが、2007年に陝西省党委書記になった時、2005年に故郷の陝西省富平県に移した習仲勲元副首相の墓を、大々的に改装。息子の習近平常務委員(当時)が感謝し、目を留めた。 4位の王滬寧氏は、江沢民、胡錦濤、習近平と3代にわたって仕えたブレーン。現夫人は習近平夫人(国民的歌手の彭麗媛氏)が紹介したという説がある。 5位の蔡奇氏は、習総書記の福建省及び浙江省時代の部下。5年前に「景観が悪い」と言って北京市の計1万7000本もの広告看板を撤去させ、2300万北京市民から「北京をハゲにするハゲ」と揶揄された。 今年2月の北京冬季五輪の大組織委員長を務めたが、大会会期中もオリンピックそっちのけで、習近平総書記を礼賛するイベントや会議を連日開き、顰蹙を買った。 6位の丁薛祥氏は、2007年に習氏が上海市党委書記を務めた際、見初めた。この5年、習総書記の「秘書長」を務め、すべての公務に同行してきた。 7位の李希氏も、甘粛省の地味な政治家だったが、2004年から陝西省に移り、習近平氏が青年時代に7年近く「下放」された陝西省梁家河を「聖地」にして、習氏に喜ばれた。習氏はトップに立った2015年の春節前に、梁家河に凱旋している。 現在は広東省党委書記だが、広東人から「広東省経済を史上最も停滞させた男」と言われている。ちなみに「広東省経済黄金の10年」は、汪洋書記(2007年~2012年)と胡春華書記(2012年~2017年)によってもたらされた。 ちなみに、この7人以外の党中央政治局メンバーの17人は、以下の通りだ(順番は漢字の筆画順で、共産党の序列順ではない)。 馬興瑞 新疆ウイグル自治区党委書記(63歳) 王毅 国務委員兼外交部長(69歳) 尹力 福建省党委書記(60歳) 石泰峰 中国社会科学院長(66歳) 劉国中 陝西省党委書記(60歳) 李幹傑 山東省党委書記(57歳) 李書磊 党中央宣伝部分管日常工作的副部長(58歳) 李鴻忠 天津市党委書記(66歳) 再任 何衛東 中央軍事委員会副主席(65歳) 何立峰 国家発展改革委員会主任(67歳) 張又侠 中央軍事委員会副主席(72歳) 再任 張国清 遼寧省党委書記(58歳) 陳文清 国家安全部長(62歳) 陳吉寧 北京市長(58歳) 陳敏爾 重慶市党委書記(62歳) 再任 袁家軍 浙江省党委書記(60歳) 黄坤明 党中央宣伝部長(66歳) 再任 これまで胡春華副首相(59歳)が「独走」していた感があった「革命第六世代」(習近平総書記の次の世代)の主力候補として、馬興瑞、尹力、劉国中、李幹傑、張国清、陳吉寧、袁家軍の7幹部が追いついた、というより抜き去った格好だ。これまで胡春華氏と「同等」だった陳敏爾氏も追い越した。いずれも「習近平総書記に絶対忠誠を尽くしている」点は変わらない。 記者団の前で「トップ7」を発表した習近平総書記は、さすがにお疲れの様子で、短いスピーチを行ったが、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため邁進していく」と強調した』、「新たな党常務委員(トップ7)の面々」が全て「習近平総書記」の「お追従軍団」で固められたのは、まさに異様だ。
・『毛沢東時代への先祖返り  かくして習近平総書記の「超お友達内閣」が発足した。内政においては李克強首相、王岐山副主席、劉鶴副首相、外交においては楊潔篪党中央政治局委員といった、時に耳の痛いことも伝える側近が、全員引退。代わって入ってきたのは、「お追従軍団」だった。 こんな最高幹部メンバーで、果たして世界最大14億の人口大国、世界第2位の経済大国(アメリカの8割規模)、同じく世界第2位の軍事大国(軍事費はアメリカの3分の1規模)を率いていけるのだろうか。 また今大会を通じて、「習近平総書記がすべてを決める」体制を整えたが、習総書記は神様ではなく、来年には古稀を迎える「高齢者」である。内政から外交まで、万事適切に一人で差配していけるのだろうか? 「アジアの貧国」だった毛沢東時代とは違うのだ。 私はこの10年、習近平総書記の公の席でのスピーチなどを、ほぼすべて注視してきたが、習総書記がこれまでやってきたこと、及びこれからやろうとしていることは、ほとんどが崇拝する毛沢東元主席の「マネゴト」である。 二つ例を挙げよう。第一に、10月16日に習近平総書記が行った「第19期中央委員会報告」の1時間44分のスピーチで、頻出語は以下の通りだ。 「社会主義」78回/「安全」44回/「新時代」25回/「偉大」22回/「強国」「闘争 」15回ずつ 毛沢東時代の個人崇拝と経済崩壊を反省した鄧小平氏は、1978年に「改革開放」に舵を切り、1992年にはそれをさらに発展させて「社会主義市場経済」に舵を切った。そころが習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ。 「新時代」というのも、本来ならすでに「2期10年」総書記を務めて後身に道を譲るべき時なのだから、「旧時代」のはずである。それをあえて「新時代」と自称するのは、昨年7月の中国共産党創建100周年を区切りとして、「最初の100年は毛沢東時代で、次の新たな100年は習近平時代」という発想に立っているためだろう。 「偉大」「強国」「闘争」も、毛沢東元主席が好んで使った用語だ。 第二に、この初日の「報告」では、昨年8月から唱えている「共同富裕」に加えて、「百花斉放、百家争鳴」まで飛び出した。毛沢東時代との比較を簡単な表にすると、以下の通りだ。 毛沢東主席は、「自由」よりも「平等」を重視する「共同富裕」を、建国4年後の1953年に唱え、その3年後に自由な発言を容認する「百花斉放、百家争鳴」を唱えた。それによって誰が「敵」かを炙り出し、翌年に「反右派闘争」を展開して100万人以上をパージした。 さらにその翌年、「大躍進」を唱えて大失敗し、4000万人もの餓死者を出した。それでも懲りずに「文化大革命」を起こし、丸10年にわたって中国経済を破綻に追い込んだ。 「21世紀の毛沢東」にならんとしている習近平総書記は、すでに第2段階まで来ている。そして今回、周囲を完全に「イエスマン」で固めた。これから少なくとも一定期間は、中国で「21世紀の毛沢東時代」が始まると見るべきではなかろうか。 だが、毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない。周囲はペコペコヘラヘラする「お追従軍団」だ』、「習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ」、「毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない」、1人で全てをやるつもりなのだろうか。
・『中国は分断と自壊の道を歩むのか  ちなみに、習近平総書記が中央党校(共産党の幹部学校)の校長を務めていた2007年から2012年まで、同校の教授として部下を務めた蔡霞氏(現在亡命中)は、アメリカで最も権威ある外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(9・10月号)に、「習近平の弱点-狂妄と偏執がいかに中国の未来を脅かすか」と題した中国で1万4000字にも上る寄稿文を掲載した。 第20回共産党大会で3選を目指す習近平総書記を、痛烈に批判した内容で、米欧を中心に大反響を巻き起こした。その要旨は、先月号の本コラムで紹介した通りだ。 その蔡霞女史が下した「結論部分」を再掲する。 〈 そして、その後(第20回共産党大会後)はどうなるのか? 間違いなく習近平は勝利し、ある種の特権を得るだろう。すなわち、中国共産党が中国を振興させるという既定の目標を実現するため、もう何でもありになる。習近平の野心は、新たな高みにまで上がるだろう。民営企業にプレッシャーがかかり、経済を振興させる努力も失敗に帰す。 その後、習近平は自己の中央集権経済政策を倍加させるだろう。権力維持のため、いかなる潜在的なライバルに対しても、引き続き先制攻撃して消滅させる。社会のコントロールを強化し、中国はますます北朝鮮と化していく。 習近平は、3期目の任期が過ぎた後も、引き続き権力を掌握し続けようとするのではないか。誇大妄想的な習近平は、南シナ海の係争地域の軍事化を加速させ、台湾を強行的にコントロール下に置こうと企図するに違いない。そして、習近平が不断に中国の支配的地位を追求するのに伴い、中国は一段と、世界から孤立していくことになる。 ただ、こうした上述の挙措は、党内の不満の雰囲気を消すことにはならない。たとえ3選できても、中国共産党内部で習近平の権限拡大や個人崇拝に対する反対の声が減ることはない。さらに習近平は、日々悪化していくように映る国民の合法的権益の問題を解決することはできない。 事実上、習近平が3期目の任期内に起こることは、おそらくは戦争のリスク、社会動乱と経済危機を増すことだろう。つまりさらに、国民の不満の雰囲気を増加させるということだ。 中国においては、たとえ武力と恐怖のみによって権力を掌握しようとしても、うまくいかない。業績は依然として重要だ。毛沢東と鄧小平は、ともに成果を挙げて権威を獲得した。毛沢東は国民党を敗走させ、中国を解放した。鄧小平は中国を開放し、経済的繁栄の道を開いた。それらに較べて、習近平には勝利と呼べるものがない。同時に過失を犯す余地もない。 私が見るに、中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう。歴史の先例を遡れば、19世紀の乾隆帝は帝国の版図を中央アジア、ミャンマー、ベトナムまで拡大することはできなかった。そして中国は、日清戦争で惨敗し、それは大清朝が滅亡する土台となった。さらに、長期的な政治的混乱を引き起こした。皇帝は必ずしも永遠のものではないのだ 〉 思えば、2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ候補が勝利した時、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)は祝杯を挙げた。これでアメリカが分断と自壊の道を歩んでくれると思ったのだ。 蔡霞女史の鋭い指摘を読むと、もしかしたら、今頃密かにホワイトハウスが祝杯を挙げているかもしれない』、「中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう」、恐ろしいシナリオで、日本も相当な悪影響を被るだろう。そんなことにならないよう祈るしかなさそうだ。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「習近平、3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101482?imp=0
・『「転落の始まり」になる可能性  中国の習近平総書記(国家主席)が、国の最高指導者として3選を果たした。「権力の座」は安泰なように見えるが、逆だ。むしろ、失脚への道を開いたのではないか。「台湾奪取」をはじめとする重要課題は、どれも自らの墓穴を掘る可能性が高いからだ。 習近平はいま、最高の気分だろう。自身の3選だけでなく、最大のライバルだった李克強首相を無役に追い落とし、大勢の子分たちも引き上げた。共産党大会では、胡錦濤前総書記まで会場から追い出した。「これで、当分は自分の権力が脅かされる心配はない。あとは課題の達成に邁進するだけだ」。そんな思いであるに違いない。 ところが、それこそが「転落の始まり」になる可能性が高い。日本の岸田文雄政権も7月の参院選に勝利した後「黄金の3年間」などと言われたが、あっという間に支持率が急落し、いま危機の渦中にある。頂点を極めれば、後は下っていくしかない。 私の手元に「チャイナ・デイリー」という中国共産党の英字日刊紙がある。中国共産党大会が最終日を迎えた10月22日、自宅の郵便ポストに投函されていた。これまでも何度かあったが、関係者が配っているのだろう。 中国の組織的な動きが、日本でも活発に展開されている証拠である。それはともかく、配られたタブロイド判の国際週刊版、10月21〜27日号は全32ページのうち、スポーツ欄などを除いて、実に23ページを共産党大会特集に割いていた。 見出しを紹介すれば「中国共産党は国家を再興の次の段階に招き入れた」「台湾統一は歴史的使命、揺るぎない公約」「より良き世界の安全保障を推進」「世界中の友好国と指導者が画期的な党大会を称賛」といった具合である。全編、自画自賛に満ちていた。 それは当然だ。だが、真の問題は、習氏が語らず、中国のメディアも報じなかった部分である。習氏が10月16日の党大会政治報告で多くを語らなかった部分にこそ、習氏自身と中国の運命がかかっている』、「習氏自身と中国の運命がかかっている」「部分」とはどんなことなのだろう。
・『不動産業がボロボロに…  中国が抱えている内政上の最大の難問は、不良債権問題だ。日本のメディアも大きく報じているように、コンクリートの骨組みだけで建設が中断しているマンションの無残な姿が、それを象徴している。 中国の不良債権問題は昨年7月、不動産開発大手の恒大集団の経営危機が表面化して、発覚した。この時点で、同社が抱えた債務は約33兆円とされ、同社は結局、12月に事実上倒産した。 経営危機はその後、不動産業界全体に拡大した。9月12日付の英エコノミスト誌は「少なくとも28社が投資家への支払いを中断し、香港証券取引所は上場している不動産開発会社30社の株式取引を停止している」と報じた。 建設が止まったマンションは、どれくらいあるのか。公式統計はないが、9月25日付の英ガーディアンは米格付会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社の推計を基に「約200万戸」と報じている。 中国のマンション購入も、日本と同じように住宅ローンを利用するのが一般的だ。買った人は代金を頭金とローンで支払ったはいいが、建物は完成する見通しがないので、ローン支払いをボイコットする動きが広がっている。前例のない事態だ。 日本と異なるのは、多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない。ネズミ講に似ているので「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」と呼ばれている。 先のエコノミスト誌によれば、不動産開発は7月、前年比45%も落ち込み、新規住宅販売は29%減少した。不動産関連業界は単に開発業者だけでなく、家具など消費財から鉄鋼、建設資材に至るまで幅広い。 統計自体がいい加減なので、信用できないが、中国の国内総生産(GDP)の約2割は不動産関連とされる。中国経済全体に悪影響を及ぼしているのは確実だ。中国は18日に予定していた7〜9月期のGDP統計の発表を延期した。「落ち込みが予想以上だったので、党大会への悪影響を懸念した」という見方が出ている』、「多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない」、文字通り「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」だ。
・『習近平政権が招いたバブル崩壊  習氏が不動産問題をどう認識しているのか、と言えば、党大会演説では、わずかに次のように触れただけだった。 〈我々は、都市に引っ越しして永住権を得た地方居住者の法的な権利と利益を守る。そして法に基づき、自発的で、購入された権利と利益の移転を促進する。我々は、農業と地方の金融サービス体制を支援し保護する。…「住宅は住むためのものであって、投機のためではない」という原則にしたがって、我々は賃貸と購入双方を支援する多様な供給者とさまざまチャンネルを投入して、住宅システムを構築するために速やかに行動する〉 習氏が「投機」と言ったのは、中国では住宅を1軒だけでなく、2軒、3軒と買う人々が多いからだ。まさに住むためだけでなく、投機の手段になっているのだ。エコノミスト誌によれば「家計は資産の7割を不動産に振り向けている」という。 評論家の石平氏は「中国の経済学者がよく引用する数字に、いまや中国には『全国に34億人が住める住宅が出来上がっている』というものがある」と指摘している(「高橋洋一氏との対談本「経済原理を無視する中国の大誤算」、ビジネス社)。人口の2.4倍だ。) 上海では、住宅価格が「サラリーマンの平均年収の59倍」というから、あきらかにバブルだ。バブルを生み出したのは、税収欲しさに大量の土地使用権を売りさばいた地方自治体とマンション・ブームを煽った開発業者、それを放置した中央政府の責任である。 だが、バブルを崩壊させたのは習近平政権だ。 習政権は「3つのレッドライン」と呼ばれる開発業者に対する規制(総資産に対する負債比率と自己資本に対する負債比率、短期負債に対する現金比率)を導入して、締め付けを強化した。さらに、新型コロナに対するゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない。習氏は党大会で新型コロナ対策について、短くこう述べた。 〈突然の新型コロナ勃発に対応して、我々は何よりも人々と彼らの暮らしを優先して、外国からの侵入と国内での再発を食い止めるために、ダイナミックなゼロ・コロナ政策を徹底的に追求した。…我々は責任ある大国としての中国の義務を世界に示した。…ウイルスの拡大を防ぐために、我々は全面的な人民戦争を発動して、人々の健康と安全を最大限に守った。そして、疫病対応と経済・社会発展の両面で、とてつもなく勇気づけられる偉業を成し遂げたのだ〉 そうだとすれば、不良債権問題の出口どころか、経済が通常軌道に戻るかどうか、も新型コロナ次第の面が強くなる。習氏を批判する横断幕の掲示に続いて、トイレの落書きも報じられたが、ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう』、「ゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない」、「ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう」、大変深刻だ。
・『ますます困難な道を歩むことに  それから、何と言っても、ロシアによるウクライナ侵略戦争の行方だ。ロシアとウラジーミル・プーチン大統領の運命は、習氏の求心力に直結する。9月23日公開コラムに書いたように、ロシアが敗北し、プーチン氏が失脚すれば、プーチン氏に肩入れしてきた習氏への批判が高まるのは避けられない。 ところが、習氏はロシアについて演説で、どう言及したかと言えば、ただの一言もなかった。ロシアのロの字も、プーチンの一言もない。自分の運命にネガティブに関わる可能性が高くなって、何かを語ろうにも語れなかったのである。 そのうえで、台湾問題である。習氏はこう語った。 〈台湾問題の解決は中国人の問題であり、中国人によって解決されなければならない問題だ。我々は最大限の誠意と努力によって、平和的統一への努力を続ける。だが、我々は武力(the use of force)の放棄を約束することは、けっしてない。我々は必要なあらゆる手段(all measures necessary)をとる選択肢を保持する〉 習氏は台湾を奪取する夢をあきらめないだろう。だが、足元の国内情勢は揺らぎ、盟友のプーチン氏も失脚する可能性が高まっている。言い換えれば、習氏はますます困難な道を歩むことを宣言したのである。 不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう』、「不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう」、厳しい見立てだが、同感である。

第三に、10月30日付けデイリー新潮「中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/10301103/?all=1
・『10月22日の中国共産党大会閉幕式で起きた胡錦涛・前総書記の“強制退場劇”——。その真相をめぐって様々な憶測が飛び交うなか、改めて映像を注意深く見てみると、いくつかの「新事実」に気付く。それは異例の3期目へと突入した習近平政権の権力が薄氷の上に立つことを物語っていた。 注目を集めているのがシンガポールのチャンネル・ニュース・アジアが撮影した3分弱の中継映像だ。そこには以下のような場面が映し出されている。 習近平総書記の隣に座る胡錦涛氏が目の前の机に置かれた書類を見ようとすると、左隣の栗戦書・全人代常務委員長が手を伸ばして書類を自分のもとに引き寄せる。まるで胡氏の目に触れないようにしたかに見えるが、この間、栗氏はずっと胡氏に何かを囁いていた。しかし胡氏は状況が理解できないのか、怪訝な表情を浮かべたままだ。 「その後、習総書記の護衛官とおぼしき男性が胡氏のもとに歩み寄って退席を促します。しかし胡氏がなかなか動こうとしないので、党中央委員会総局の副局長も駆け寄り、腕を取られる形で胡氏はようやく立ち上がりました」(全国紙外信部デスク) 退席する際、胡氏は習氏に何かを語りかけ、その隣に座る李克強首相の肩にソッと手を置いて、会場をあとにした――』、我々も日本のテレビで何度も見せられた。
・『苛立つ表情を見せる習総書記  中国共産党ナンバー2の要職にある李首相だが、今回の党大会で最高指導部から退くことが固まっている。 「かつて胡氏の“意中の後継候補”と見られていた李氏ですが、習氏との後継争いに敗れ、来春には完全引退する見通しです。胡氏の手元にあった書類は赤い表紙のもので、中国では重要書類によく用いられることから、新指導部の人事が記載された書類だったとの情報がある。そのため自分に近い李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測が流れています」(同) 一方で、映像をよく見ると意外な事実に気付くと話すのは、中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏である。 「私が注目したのは、胡氏の退席までの間、習総書記が終始、苛ついたような表情を見せていたことです。それはまるで、議事が予定通りに進行しないことに苛立っているように映ります。また胡氏の書類を取り上げたように見える栗氏の表情にも慌てたような狼狽の色が浮かんでいる。さらには退場したあとも胡氏の名札と茶碗はそのままにされ、閉幕式が終わるまで習氏の向かって右隣は空席のままという異様な光景が映し出されていた。これらが意味するところは、胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高いということです」』、「李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測」、或いは「胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高い」との見方も、
・『習近平と胡錦涛「本当の関係」  中国メディアは今回の件を「体調不良が原因」としているが、胡氏に健康不安説が浮上していたのは事実という。 「昨年7月に北京の天安門広場で行われた共産党結党100周年記念式典に胡氏も出席しましたが、付き添いを必要とし、手が激しく震える場面なども目撃されています。パーキンソン病やアルツハイマーを疑う声は以前からありました」(前出・外信部デスク) ただし“たとえ病気だったとしても、前総書記にあんな仕打ちをするはずはない”といった声も根強い。 「胡錦涛氏までの総書記はすべて鄧小平が指名することで正統性が担保されてきましたが、習総書記は各勢力の“妥協点”として総書記に選ばれた経緯があります。そんな習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」(田代氏) 田代氏が続ける。「一部で“胡氏を見せしめとして退席させた”との説が流布していますが、自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」』、「習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」、「自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」、確かにその通りだ。
・『ライバルが公然と“反旗”のポーズ  実は田代氏が胡氏の退席よりも驚いたのは、映像の最後に映る「次の首相候補」との呼び声が高かった胡春華・副首相の姿だったという。 「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった。どのメディアも指摘していませんが、胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」(田代氏) ライバルが公然と“反旗を翻す”様子が世界に流れ、「波乱の船出」の印象を強める結果となった今回の党大会。つねに権力闘争を繰り返してきた中国共産党の歴史において「絶対安定」が実現したことはなく、退席騒動もまた、習近平の前途が多難に満ちたものであることを示唆している』、「「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった」、「胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」、さぞや悔しかったのだろうが、「習氏」を恨む他なさそうだ。
タグ:中国国内政治 (その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相) 現代ビジネス 近藤 大介氏による「「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する」 『ふしぎな中国』(講談社現代新書) 「江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ」、「胡錦濤」は思惑が外れてホゾを噛んでいることだろう。「革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」、この見方も大外れだ。 初めの「5年間」で「反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにした」、「次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争」に打って出た」、「広く党幹部たちに印象づけるため・・・「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させること」、 「閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ」、「少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか」、「退席」については、諸説が入り乱れているが、この解釈が自然な感じがする。なお、次のパラグラフでも「退席」をより詳細に説明している。 「「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」、その通りなのかも知れない。 「党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ」、「党中央政治局」、「今回は「24人」と一人減った」理由としては説得的だ。 「新たな党常務委員(トップ7)の面々」が全て「習近平総書記」の「お追従軍団」で固められたのは、まさに異様だ。 「習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ」、「毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない」、1人で全てをやるつもりなのだろうか。 「中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう」、恐ろしいシナリオで、日本も相当な悪影響を被るだろう。そんなことにならないよう祈るしかなさそうだ。 長谷川 幸洋氏による「習近平、3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!」 「習氏自身と中国の運命がかかっている」「部分」とはどんなことなのだろう。 「多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない」、文字通り「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」だ。 「ゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない」、「ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう」、大変深刻だ。 「不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう」、厳しい見立てだが、同感である。 デイリー新潮「中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相」 我々も日本のテレビで何度も見せられた。 「李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測」、或いは「胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高い」との見方も、 「習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」、「自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。 今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」、確かにその通りだ。 「「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった」、 「胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」、さぞや悔しかったのだろうが、「習氏」を恨む他なさそうだ。
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