生物(その2)(「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路、数億年後 地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実、【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー) [科学]
生物については、昨年7月13日に取上げた。今日は、(その2)(「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路、数億年後 地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実、【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー)である。
先ずは、昨年9月19日付け東洋経済オンラインが掲載したサイエンスライターの大谷 智通氏による「「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/454913
・『頑丈な糸を使って多くの虫を捕食する自然界のハンター・クモ。だが、彼らにも天敵がいて、しかも一度捕まれば薬漬けにし死ぬまで働かせるという。いったい、それはどんな相手なのか? サイエンスライターの大谷智通氏による新刊『眠れなくなるほどキモい生き物』(イラスト:猫将軍)より一部抜粋・再構成してお届けする。 人を殺したり家に火をつけたり、いろいろな悪事を働いて死後に地獄へ落ちた男は、しかし、生前に一度だけクモを殺さず助けてやったことで、地獄の底から脱出するチャンスを与えられた――。 芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』で、御釈迦様が大泥棒・犍陀多(かんだた)の前に御下ろしなさったのが、極楽に生息するクモの糸である。この糸をつかんで、極楽まで登ってきなさい、というのである』、おかげで『蜘蛛の糸』を思い出した。
・『想像を超えるほど頑丈な「クモの糸」 「クモの糸などで人が吊れるものか」と思うかもしれない。しかし、実際にクモがつくる糸は現代のわれわれが化学的に合成した高強度繊維に匹敵する強靱さをもっている。 防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされているが、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5ミリあれば体重60キロの人間を吊り下げることができるのだ。 血の池で浮かんだり沈んだりしていた犍陀多に見つけられた糸なら0.5ミリといわずそれなりの太さだったろうから、御釈迦様は決して考えなしにクモの糸をお使いになったというわけでもないのだろう。 クモは用途に合わせて複数の糸をつくり出す。強靱な糸、粘着性のある糸、弾力性のある糸等々、さまざまな性質や太さの糸をたくみに使い分けるのだ。 たとえば、ジョロウグモなどがつくる車輪のような形をした網を「円網(えんもう)」というが、放射状に張られた縦糸には巣を支える働きがあり、粘着性がなく非常に強靱だ。 一方、渦巻状に張られている横糸は、弾力がありベタベタする粘着球が無数についていて、獲物をキャッチすることができる。不運にも網にかかった獲物は、糸でぐるぐる巻きにされる。このときの糸は直径1000分の1ミリにも満たない極細糸で、ジョロウグモは一度に100本あまりを出して素早く獲物を包み込む。) 巣をつくるだけではない。種によっては、軽くて長い糸を気流に巻きとらせて空を飛ぶ「バルーニング」を行うクモすらいる。繭をつくるチョウ目の昆虫など、一時的に糸を使う生き物はいるが、クモほどその生涯にわたって糸を使いこなすものはいない。 現在、クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である。糸と網をもったことが、クモを地球上のさまざまな環境に適応させ、しかも強力な捕食者としての地位を確立させたといえるだろう』、「防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされているが、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5ミリあれば体重60キロの人間を吊り下げることができる」、見かけによらず「鋼鉄の5倍も強い」とは驚かされた。「クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である」、そんなに「多様」だとは初めて知った。
・『天敵「クモヒメバチ」 そんな糸の使い手を出し抜いて利用し、ただ死ぬよりもひどい運命にたたき落とす生物がいる。それが、クモヒメバチの仲間だ。 クモヒメバチはクモに寄生するハチである。寄生といっても、たいてい最後には宿主を殺してしまうので、その性質は捕食に近く、「捕食寄生」と呼ばれる。 クモヒメバチの雌は、宿主となるクモを発見すると産卵管を刺して一時的に麻酔をし、動かなくなったクモの体表に卵を産みつける。数日後に卵からふ化した幼虫は、クモの腹部に開けた穴から体液を吸い上げて成長していくが、すぐには宿主を殺さない。クモは幼虫を背負った状態で普段どおりに網を張り、餌を捕まえて食べている。 クモは自然界における強力なハンターであり、また、網という堅牢な要塞を構えているため、襲ってくる生き物はそう多くない。 クモヒメバチの幼虫は、そんなクモをボディガードとして利用し、また、自らもその恩恵を受ける要塞のメンテナンスをさせるために生かしておくのだ。 (クモの天敵・クモヒメバチ(イラスト:猫将軍)はリンク先参照) このように、宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう。 クモヒメバチの場合、幼虫がいよいよ繭をつくって蛹になろうというタイミングで宿主の体液を吸い尽くして殺す。しかも、命を奪う直前に「最期のひと働き」までさせるものもいる。殺す直前のクモを操って、安全に蛹となって羽化をするための〝特製ベッド〞をつくらせるのである。) クモが普段張る網は飛翔昆虫などを見事に捕らえるが、そのぶん繊細で壊れやすいという欠点もある。だからクモは常に網のメンテナンスをしているのだが、この管理人が死んでしまった網ではハチは羽化するまでのあいだ繭の安全を維持できない。 そこで、クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網をしつらえさせるのだ。 この寄生虫が宿主を操作してつくらせる網のことを「操作網」という。クモヒメバチが宿主につくらせる操作網の構造や機能は、種によってさまざまだ。たとえばニールセンクモヒメバチという体長7ミリほどのハチが宿主のギンメッキゴミグモを操ってつくらせる網は、クモが通常脱皮する際に張る「休息網」という網と形状がよく似ている。そして、クモ本来の休息網よりもずっと頑丈なのだという。 ちなみに、休息網にも操作網にも粘着糸はなく、本数の少ない縦糸に繊維状の装飾糸がついている。この装飾糸には紫外線を反射する性質があり、紫外線を見ることができる鳥や昆虫などが、不用意に網に衝突しないようにする働きが期待できる。 この操作網という特製ベッドのおかげで、クモヒメバチの幼虫は宿主が死んだ後も空中にとどまり続け、アリなどの外敵を避けながら羽化までの時間を安全に過ごせるのだ』、「宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう」、「クモは常に網のメンテナンスをしている」、「クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網をしつらえさせるのだ」、「飼い殺し寄生バチ」とは言い得て妙だが、実に悪どい。
・『美しくも、恐ろしくもあるクモの網 ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。 科学者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したという。おそらく体内の薬物濃度が下がったからだろう。薬漬けの悪夢から醒めたクモにとって、この科学者は御釈迦様に見えたにちがいない。 目の前にあるクモの網というものは、その幾何学模様がいかに芸術的であったとしても無性に払いのけたくなるものだ。クモそのものを不快に思い、網を破壊することに躍起になる人もいるだろう。 しかし、クモヒメバチに栄養を吸われながら薬漬けにされ、寄生虫のための網づくりを強いられた後に、体液を吸い尽くされて死ぬクモの哀れを想うとき、クモヒメバチならぬ人であれば、慈悲の気持ちも湧いてきて見逃してあげたくなるというものだ。そうしたら相応の報いがあるかもしれない。気まぐれによって、クモを踏み殺さずに助けてやった犍陀多のように。 そういえば、芥川の創造した極楽にはクモがいたが、そこにはクモヒメバチも生息しているのだろうか。もしいるとすれば、そのクモヒメバチは極楽でもクモを薬漬けにして働かせ、用済みになれば殺すのだろうか』、「ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。 科学者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したという」、「化学物質」で「網づくりが誘発」とは、本当に悪どい。
次に、本年10月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した科学雑誌「ネイチャー」の生物学シニアエディターのヘンリー・ジー氏と理学博士、サイエンス作家の竹内薫氏よる「数億年後、地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/312069
・『地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『2億5000万年後の超大陸 いまから二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束し、これまでにない巨大な大陸が誕生する。 それは、超大陸パンゲアと同じように、赤道をまたいで横たわる。 内陸の大部分はもっとも乾燥した砂漠となり、巨大な高さと広がりを持つ山脈に取り囲まれる。 もはや、生命の痕跡はほとんど見られない。海では、生命はより単純になり、その多くが深海に集中することになる』、「二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束」、「生命はより単純になり、その多くが深海に集中」、なるほど。
・『地中深くに生息する生命体 陸地は全く生命がいないように見える。だが、それは錯覚だ。生命はまだ存在するだろうが、見つけるにはとても深くまで掘らなければならない。 現在でも、膨大な数の生命体が地中深く、植物の根よりも深く、菌根菌やナラタケなどの菌類よりもさらに深く、人知れず生きている。 地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている』、「地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている」、何やら寂しい限りだ。
・『小さな生き物たち そして、地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ(訳注:原書では回虫[roundworms]だが、ここではより広い意味の線虫とした)。 線虫は、動物のなかでもっとも軽視され、無視されている生き物だ。 ある科学者は、地球上のすべての生き物が、線虫を除いて透明になったとしても、木々、動物、人間、地面などの輪郭が、うっすらとした幽霊のような姿で見えるだろうという。 そう、線虫は、それほど動物や植物の体内にはびこっているのだ』、「地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ」、なるほど。
・『何千年も生き続ける 地中深い生物圏の生命はのんびりと活動している。 それと比べれば、氷河の動きは、飛び跳ねる春の子羊に見えるほどだ。 実際、地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている。 バクテリアは時間をかけて成長し、滅多に分裂せず、何千年も生きつづける。 だが、世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう』、「地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている」、「世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう」、「地中の生命活動」は「速さを増」しても、やはり「ゆっくりしている」ようだ。
・『生命体の最後の生き残り 熱そのものが原動力となるからだ。そして、上空から新しい種類の生き物が侵入してくる。 遠いむかし、菌類、植物、動物と呼ばれた、かろうじて出自が想像できる複合体であり、地球表面付近の生命体の最後の生き残りだ。 この超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。 光合成はもはや過去のものとなった。 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ。 (本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)『超圧縮 地球生物全史』には、「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」までの全歴史が紹介されています。ぜひチェックしてみてください。) (ヘンリー・ジー氏の略歴などはリンク先参照) (訳者:竹内 薫氏の略歴などはリンク先参照)』、「超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。 光合成はもはや過去のものとなった。 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、「光合成はもはや過去のものとなった」、「超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、多様化してきた「生命」が「一つの生命体になるのだ」、なるほど。
・『地球生命史がわかると、世界の見え方が変わる――訳者より 世界的に権威のある科学雑誌ネイチャーの生物学編集者ヘンリー・ジー(もともと科学者で専門は古生物学と進化生物学)による、その名のとおり『超圧縮 地球生物全史』である。最初、原書を手にしたとき、「ずいぶんと無謀な試みだなぁ」と驚いた覚えがある。 なにしろ、約三八億年にわたる地球生命の誕生から絶滅(?)までをわずか二〇〇ページ(原書)で書くことなど、誰が考えても不可能な所業に思われたからだ。 悠久の時をめぐる歴史書ということで、ずいぶんと読み終えるのに時間がかかるにちがいないとも思った。だが、世界的ノンフィクション作家であり、進化生物学者のジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』倉骨彰訳、草思社文庫)が推薦していることもあり、つらつらとページをめくりはじめたのである。 実際に読みはじめると、不思議なことに、目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。 まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った。 文学に感銘を受けると人生が変わるものだが、本書も同じだ。地球生命の誕生と絶滅の物語を知ると、石油や地球温暖化や絶滅危惧種や顎や耳や更年期などについて深く考えるようになり、世界の見え方が違ってくる。それは人生が変わるということだ』、「目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。 まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った」、「わずか数時間で読み終えていた」とはよほど内容が豊かなのだろう。
第三に、11月21日付けダイヤモンド・オンライン「【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/312595
・『地球を30億年以上も支配している微細な生物。宇宙でもっとも危険な物質だった酸素。カンブリア紀に開花した生命の神秘。1度でも途切れたら人類は存在しなかったしぶとい生命の連鎖。地球が丸ごと凍結した絶滅から何度も繰り返されてきた大量絶滅。そして、確実に絶滅する我々人類の行方……。 その奇跡の物語をダイナミックに描きだした『超圧縮 地球生物全史』(ヘンリー・ジー著、竹内薫訳)を読むと世界の見方が変わる。読んでいて興奮が止まらないこの画期的な生物史を翻訳したのは、サイエンス作家の竹内薫さんだ。 そこで、「まるでタイムマシンで46億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った」とあとがきにも書いている竹内さんに、本書の魅力について語ってもらった。今回は、地球上の生物を支配している3つの要因についてお伝えする(Qは聞き手の質問)』、「地球上の生物を支配している3つの要因」とは何なのだろう。
・『生物の大量絶滅と人類 Q:もともと酸素がなかった地球でバクテリアが光合成をはじめて酸素が豊富になり、それまでいた生物が酸化して大量絶滅した話は本書ではじめて知りました。 一方、大量の岩石の風化で二酸化炭素が吸収されて地球が凍った絶滅もあります。生物にとって酸素と二酸化炭素のバランスは本当に大事ですね。 竹内薫(以下、竹内):人類は18世紀後半の産業革命以降、石炭や石油を利用し続けて大量の二酸化炭素や汚染物質を発生させてきました。 けれども著者は、マントル・プルーム噴出によってペルム紀に地球上の生物がほぼ死滅した史上最大の大絶滅に比べれば、人類が地球に与えた影響は針ほどで気にも止まらないほどだと述べています。 加えて、人口増加によって人類が大量に存在したことも非常に短い期間で終わるだろうと』、「マントル・プルーム噴出によってペルム紀に地球上の生物がほぼ死滅した史上最大の大絶滅に比べれば、人類が地球に与えた影響は針ほどで気にも止まらないほどだ」、なるほど。「人口増加によって人類が大量に存在したことも非常に短い期間で終わるだろう」、「終わる」要因は以下にあるようだ。
・『人類が絶滅する要因 Q:本書では、「人口は今世紀中にピークを迎え、その後減少へと転じる」と書かれています。そしてやがて絶滅する、と。 竹内:そうなる要因をいくつかあげていますよね。 まず遺伝的な多様性が足りないこと。そして地球の気温上昇と自然災害の急増による生息地の喪失。 人間の行動や環境変化による少子化。その他さまざまな問題が組み合わさって人類は絶滅する。 それも、地球の生物史38億年の歴史で考えるとわずか一瞬のことです。 我々の祖先のヒト属が出現した約50万年前から考えても、人為的な生態系の変化が急激すぎる。 数万年かけて地球環境が変わっていくなら、これほど問題は深刻にならなかったと思います。 でも、100年足らずで環境が急変すると生態系がついていけません。 この100年で4倍以上に増えて、さらに2050年には97億人になると予想されている人口爆発。地球温暖化による自然災害や環境変化の影響で少なくなっていく生息地の問題。 当然、農業の対策や、次々に発生する感染症対策なども、それらの急激な変化に追いつかなくなるでしょう』、「でも、100年足らずで環境が急変すると生態系がついていけません。 この100年で4倍以上に増えて、さらに2050年には97億人になると予想されている人口爆発。地球温暖化による自然災害や環境変化の影響で少なくなっていく生息地の問題。 当然、農業の対策や、次々に発生する感染症対策なども、それらの急激な変化に追いつかなくなるでしょう」、これでは「人類が絶滅する」のも当然なのだろう。
・『EVの問題点 Q:すでに世界的な水不足は問題視されるようになっています。 竹内:今ようやく世界の人々が危機感を覚えはじめて、地球の変化を食い止めようとする動きが出てきています。 カリフォルニアで大規模な山火事が起きたときは、ハリウッドスターも被害に遭いましたし、自然災害で経済的ダメージを受ける大企業やお金持ちもいるでしょう。 地球環境の変化は、格差に関係なく人類すべてに影響を与える問題ですから、世界中が脱炭素に取り組む方向に向かいはじめました。 テスラの電気自動車(EV)も、最初は「誰が買うんだろう?」と思っていましたけど、またたくまに広がりましたからね。 Q:ヨーロッパや中国の各メーカーも積極的に販売するようになって、今では世界の新車発売の10%がEVになっているそうです。 竹内:ただ、EVの電気を石炭、石油、天然ガスを使う火力発電に頼っていたら意味がありません。 EVは環境にやさしいと思われがちですが、電気エネルギーの問題を解決しなければ二酸化炭素は大幅には減らせないんですね。 本気で脱酸素を目指すなら原子力発電を使ったほうがいいということで、中国やインドなど新たに原子力発電所を建設している国もあります。 しかし、日本は福島で原発事故が起きたので、国民のコンセンサスを得るという難問が立ちはだかります』、「本気で脱酸素を目指すなら原子力発電を使ったほうがいいということで、中国やインドなど新たに原子力発電所を建設している国もあります」、「日本は福島で原発事故が起きたので、国民のコンセンサスを得るという難問」、さらには放射性廃棄物の処分の問題もある。
・『エネルギー源にまつわるリスク Q:東京都は、新築建物への太陽光パネル設置を2025年から義務化するようです。 竹内:太陽光パネルの問題は発電量が少ない点です。原子力一基分(100万KW級)の電気供給を代替するためには、山手線の内側の広さ(58平方キロメートル)の太陽光パネルが必要なんですね。 山を削って太陽光パネルを設置した地域では、大雨で土砂崩れが起きてパネルの大量破棄の問題が浮上しました。 要するに、どんなエネルギー源もリスクがつきものなので、どれを活用するにしても国民の意見は一致しないと思います』、「太陽光パネルの問題は発電量が少ない点です。原子力一基分(100万KW級)の電気供給を代替するためには、山手線の内側の広さ・・・の太陽光パネルが必要」、やはり余りに効率が悪いようだ。
・『二酸化炭素を深海に? Q:回収した二酸化炭素を凝縮して深海の海底に貯留する研究も進んでいます。そのうち宇宙に二酸化炭素を排出する技術も開発されるのでは? と突拍子もないことまで想像してしまいました。 竹内:ロケットは大量の二酸化炭素を排出しますし、打ち上げるだけで相当なお金がかかりますからね。 たとえば1キログラムの物をロケットで運ぶだけで100万円かかったりするわけです。 そういった問題を考えると、やはり海底に埋め込むほうが効率的でしょう。 ただ、先進国のなかには1人当たりのエネルギー消費量が減少している国もあるとこの本に書かれています。 イギリスとアメリカでは、1人当たりのエネルギー消費量は1970年代にピークを迎えて、2000年代まではほぼ横ばい、それ以降は急激に減少しています。 特にイギリスでは、過去20年間で1人当たりのエネルギー消費量が4分の1近く減少しているので、他の国が後に続けば脱炭素化はもっと加速するかもしれません』、「イギリスでは、過去20年間で1人当たりのエネルギー消費量が4分の1近く減少しているので、他の国が後に続けば脱炭素化はもっと加速するかもしれません」、英米で減少しているとは初めて知った。日本のマスコミもこうした事情をもっと報道してほしいものだ。
・『酸素は人類の味方であり敵でもある Q: 一方で、酸素も地球最初の絶滅の原因でした。生物の呼吸には酸素が必要ですが、確かに「酸化」は人体に悪影響を及ぼします。 酸素は人類の味方でもあり敵でもあるわけですね。 竹内:人間が死んでいく主な原因も酸素です。私たちの生命を維持するためには酸素が不可欠ですが、活性酸素は細胞を傷つけてさまざまな疾患をもたらします。 僕は自転車が好きなので、いつも思いっきり酸素を吸いながら走らせていますけど、大量に吸い込んだ酸素によって細胞を傷つける可能性も高まるはずです。 つまり、楽しく自転車に乗れるのは酸素のおかげである反面、酸素のせいで寿命を縮めるリスクも負っているわけです』、「楽しく自転車に乗れるのは酸素のおかげである反面、酸素のせいで寿命を縮めるリスクも負っているわけです」、その通りだ。
・『人類を待ち受ける運命 Q:もうひとつ、生命の維持に欠かせないのは太陽の光です。これも多すぎても少なすぎても困りますが、太陽の明るさは着実に増していくと本書にありました。 竹内:約100億年と言われている太陽の寿命はあと半分残っていて、これから50億年は輝き続けます。 人類やほ乳類はそのずっと前に絶滅しますが、本書で詳しく説明しているように、植物や菌類はずっと生き残るでしょうね。 それでも、太陽の熱で焼かれる可能性が増せば、ほとんどの生命は地中や深海に生息してさらに生き続けるだろう、と著者は述べています。 Q:地球でもっとも長く生き続けてきたバクテリアが、結局、最後まで生き残るとは。バクテリアの生命力ってどれほど強いんだ!と思いました。ところで著者は、人類が生き残りをかけて宇宙へ永住する可能性にも触れていますが、どう思われましたか。 竹内:アメリカは、2024年までに月面着陸の有人宇宙旅行を目指すアルテミス計画を進めています。 月に基地を作る目的は、火星に行くためです。なぜなら、重力が強い地球から行くより月から行くほうがはるかに楽だから。 火星に行くのは、将来的に移住するためでもあるでしょうし、地球と同じような資源が火星にもあると期待されるからです。 しかし、人類がいつの日か別の星に移住できたとしても、絶滅する運命であることに変わりはありません。 だからこそ、今あるものを守りながら快適に生きることが大切だ、という著者の最後のメッセージに共感する人は多いと思いますね。 (訳者略歴:竹内薫市の略歴はリンク先参照) (著者略歴:ヘンリー・ジーはリンク先参照)』、「地球でもっとも長く生き続けてきたバクテリアが、結局、最後まで生き残るとは。バクテリアの生命力ってどれほど強いんだ!と思いました」、「人類がいつの日か別の星に移住できたとしても、絶滅する運命であることに変わりはありません。 だからこそ、今あるものを守りながら快適に生きることが大切だ、という著者の最後のメッセージに共感する人は多いと思いますね」、同感である。
先ずは、昨年9月19日付け東洋経済オンラインが掲載したサイエンスライターの大谷 智通氏による「「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/454913
・『頑丈な糸を使って多くの虫を捕食する自然界のハンター・クモ。だが、彼らにも天敵がいて、しかも一度捕まれば薬漬けにし死ぬまで働かせるという。いったい、それはどんな相手なのか? サイエンスライターの大谷智通氏による新刊『眠れなくなるほどキモい生き物』(イラスト:猫将軍)より一部抜粋・再構成してお届けする。 人を殺したり家に火をつけたり、いろいろな悪事を働いて死後に地獄へ落ちた男は、しかし、生前に一度だけクモを殺さず助けてやったことで、地獄の底から脱出するチャンスを与えられた――。 芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』で、御釈迦様が大泥棒・犍陀多(かんだた)の前に御下ろしなさったのが、極楽に生息するクモの糸である。この糸をつかんで、極楽まで登ってきなさい、というのである』、おかげで『蜘蛛の糸』を思い出した。
・『想像を超えるほど頑丈な「クモの糸」 「クモの糸などで人が吊れるものか」と思うかもしれない。しかし、実際にクモがつくる糸は現代のわれわれが化学的に合成した高強度繊維に匹敵する強靱さをもっている。 防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされているが、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5ミリあれば体重60キロの人間を吊り下げることができるのだ。 血の池で浮かんだり沈んだりしていた犍陀多に見つけられた糸なら0.5ミリといわずそれなりの太さだったろうから、御釈迦様は決して考えなしにクモの糸をお使いになったというわけでもないのだろう。 クモは用途に合わせて複数の糸をつくり出す。強靱な糸、粘着性のある糸、弾力性のある糸等々、さまざまな性質や太さの糸をたくみに使い分けるのだ。 たとえば、ジョロウグモなどがつくる車輪のような形をした網を「円網(えんもう)」というが、放射状に張られた縦糸には巣を支える働きがあり、粘着性がなく非常に強靱だ。 一方、渦巻状に張られている横糸は、弾力がありベタベタする粘着球が無数についていて、獲物をキャッチすることができる。不運にも網にかかった獲物は、糸でぐるぐる巻きにされる。このときの糸は直径1000分の1ミリにも満たない極細糸で、ジョロウグモは一度に100本あまりを出して素早く獲物を包み込む。) 巣をつくるだけではない。種によっては、軽くて長い糸を気流に巻きとらせて空を飛ぶ「バルーニング」を行うクモすらいる。繭をつくるチョウ目の昆虫など、一時的に糸を使う生き物はいるが、クモほどその生涯にわたって糸を使いこなすものはいない。 現在、クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である。糸と網をもったことが、クモを地球上のさまざまな環境に適応させ、しかも強力な捕食者としての地位を確立させたといえるだろう』、「防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされているが、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5ミリあれば体重60キロの人間を吊り下げることができる」、見かけによらず「鋼鉄の5倍も強い」とは驚かされた。「クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である」、そんなに「多様」だとは初めて知った。
・『天敵「クモヒメバチ」 そんな糸の使い手を出し抜いて利用し、ただ死ぬよりもひどい運命にたたき落とす生物がいる。それが、クモヒメバチの仲間だ。 クモヒメバチはクモに寄生するハチである。寄生といっても、たいてい最後には宿主を殺してしまうので、その性質は捕食に近く、「捕食寄生」と呼ばれる。 クモヒメバチの雌は、宿主となるクモを発見すると産卵管を刺して一時的に麻酔をし、動かなくなったクモの体表に卵を産みつける。数日後に卵からふ化した幼虫は、クモの腹部に開けた穴から体液を吸い上げて成長していくが、すぐには宿主を殺さない。クモは幼虫を背負った状態で普段どおりに網を張り、餌を捕まえて食べている。 クモは自然界における強力なハンターであり、また、網という堅牢な要塞を構えているため、襲ってくる生き物はそう多くない。 クモヒメバチの幼虫は、そんなクモをボディガードとして利用し、また、自らもその恩恵を受ける要塞のメンテナンスをさせるために生かしておくのだ。 (クモの天敵・クモヒメバチ(イラスト:猫将軍)はリンク先参照) このように、宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう。 クモヒメバチの場合、幼虫がいよいよ繭をつくって蛹になろうというタイミングで宿主の体液を吸い尽くして殺す。しかも、命を奪う直前に「最期のひと働き」までさせるものもいる。殺す直前のクモを操って、安全に蛹となって羽化をするための〝特製ベッド〞をつくらせるのである。) クモが普段張る網は飛翔昆虫などを見事に捕らえるが、そのぶん繊細で壊れやすいという欠点もある。だからクモは常に網のメンテナンスをしているのだが、この管理人が死んでしまった網ではハチは羽化するまでのあいだ繭の安全を維持できない。 そこで、クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網をしつらえさせるのだ。 この寄生虫が宿主を操作してつくらせる網のことを「操作網」という。クモヒメバチが宿主につくらせる操作網の構造や機能は、種によってさまざまだ。たとえばニールセンクモヒメバチという体長7ミリほどのハチが宿主のギンメッキゴミグモを操ってつくらせる網は、クモが通常脱皮する際に張る「休息網」という網と形状がよく似ている。そして、クモ本来の休息網よりもずっと頑丈なのだという。 ちなみに、休息網にも操作網にも粘着糸はなく、本数の少ない縦糸に繊維状の装飾糸がついている。この装飾糸には紫外線を反射する性質があり、紫外線を見ることができる鳥や昆虫などが、不用意に網に衝突しないようにする働きが期待できる。 この操作網という特製ベッドのおかげで、クモヒメバチの幼虫は宿主が死んだ後も空中にとどまり続け、アリなどの外敵を避けながら羽化までの時間を安全に過ごせるのだ』、「宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう」、「クモは常に網のメンテナンスをしている」、「クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網をしつらえさせるのだ」、「飼い殺し寄生バチ」とは言い得て妙だが、実に悪どい。
・『美しくも、恐ろしくもあるクモの網 ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。 科学者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したという。おそらく体内の薬物濃度が下がったからだろう。薬漬けの悪夢から醒めたクモにとって、この科学者は御釈迦様に見えたにちがいない。 目の前にあるクモの網というものは、その幾何学模様がいかに芸術的であったとしても無性に払いのけたくなるものだ。クモそのものを不快に思い、網を破壊することに躍起になる人もいるだろう。 しかし、クモヒメバチに栄養を吸われながら薬漬けにされ、寄生虫のための網づくりを強いられた後に、体液を吸い尽くされて死ぬクモの哀れを想うとき、クモヒメバチならぬ人であれば、慈悲の気持ちも湧いてきて見逃してあげたくなるというものだ。そうしたら相応の報いがあるかもしれない。気まぐれによって、クモを踏み殺さずに助けてやった犍陀多のように。 そういえば、芥川の創造した極楽にはクモがいたが、そこにはクモヒメバチも生息しているのだろうか。もしいるとすれば、そのクモヒメバチは極楽でもクモを薬漬けにして働かせ、用済みになれば殺すのだろうか』、「ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。 科学者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したという」、「化学物質」で「網づくりが誘発」とは、本当に悪どい。
次に、本年10月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した科学雑誌「ネイチャー」の生物学シニアエディターのヘンリー・ジー氏と理学博士、サイエンス作家の竹内薫氏よる「数億年後、地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/312069
・『地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『2億5000万年後の超大陸 いまから二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束し、これまでにない巨大な大陸が誕生する。 それは、超大陸パンゲアと同じように、赤道をまたいで横たわる。 内陸の大部分はもっとも乾燥した砂漠となり、巨大な高さと広がりを持つ山脈に取り囲まれる。 もはや、生命の痕跡はほとんど見られない。海では、生命はより単純になり、その多くが深海に集中することになる』、「二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束」、「生命はより単純になり、その多くが深海に集中」、なるほど。
・『地中深くに生息する生命体 陸地は全く生命がいないように見える。だが、それは錯覚だ。生命はまだ存在するだろうが、見つけるにはとても深くまで掘らなければならない。 現在でも、膨大な数の生命体が地中深く、植物の根よりも深く、菌根菌やナラタケなどの菌類よりもさらに深く、人知れず生きている。 地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている』、「地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている」、何やら寂しい限りだ。
・『小さな生き物たち そして、地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ(訳注:原書では回虫[roundworms]だが、ここではより広い意味の線虫とした)。 線虫は、動物のなかでもっとも軽視され、無視されている生き物だ。 ある科学者は、地球上のすべての生き物が、線虫を除いて透明になったとしても、木々、動物、人間、地面などの輪郭が、うっすらとした幽霊のような姿で見えるだろうという。 そう、線虫は、それほど動物や植物の体内にはびこっているのだ』、「地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ」、なるほど。
・『何千年も生き続ける 地中深い生物圏の生命はのんびりと活動している。 それと比べれば、氷河の動きは、飛び跳ねる春の子羊に見えるほどだ。 実際、地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている。 バクテリアは時間をかけて成長し、滅多に分裂せず、何千年も生きつづける。 だが、世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう』、「地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている」、「世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう」、「地中の生命活動」は「速さを増」しても、やはり「ゆっくりしている」ようだ。
・『生命体の最後の生き残り 熱そのものが原動力となるからだ。そして、上空から新しい種類の生き物が侵入してくる。 遠いむかし、菌類、植物、動物と呼ばれた、かろうじて出自が想像できる複合体であり、地球表面付近の生命体の最後の生き残りだ。 この超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。 光合成はもはや過去のものとなった。 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ。 (本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)『超圧縮 地球生物全史』には、「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」までの全歴史が紹介されています。ぜひチェックしてみてください。) (ヘンリー・ジー氏の略歴などはリンク先参照) (訳者:竹内 薫氏の略歴などはリンク先参照)』、「超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。 光合成はもはや過去のものとなった。 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、「光合成はもはや過去のものとなった」、「超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、多様化してきた「生命」が「一つの生命体になるのだ」、なるほど。
・『地球生命史がわかると、世界の見え方が変わる――訳者より 世界的に権威のある科学雑誌ネイチャーの生物学編集者ヘンリー・ジー(もともと科学者で専門は古生物学と進化生物学)による、その名のとおり『超圧縮 地球生物全史』である。最初、原書を手にしたとき、「ずいぶんと無謀な試みだなぁ」と驚いた覚えがある。 なにしろ、約三八億年にわたる地球生命の誕生から絶滅(?)までをわずか二〇〇ページ(原書)で書くことなど、誰が考えても不可能な所業に思われたからだ。 悠久の時をめぐる歴史書ということで、ずいぶんと読み終えるのに時間がかかるにちがいないとも思った。だが、世界的ノンフィクション作家であり、進化生物学者のジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』倉骨彰訳、草思社文庫)が推薦していることもあり、つらつらとページをめくりはじめたのである。 実際に読みはじめると、不思議なことに、目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。 まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った。 文学に感銘を受けると人生が変わるものだが、本書も同じだ。地球生命の誕生と絶滅の物語を知ると、石油や地球温暖化や絶滅危惧種や顎や耳や更年期などについて深く考えるようになり、世界の見え方が違ってくる。それは人生が変わるということだ』、「目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。 まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った」、「わずか数時間で読み終えていた」とはよほど内容が豊かなのだろう。
第三に、11月21日付けダイヤモンド・オンライン「【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/312595
・『地球を30億年以上も支配している微細な生物。宇宙でもっとも危険な物質だった酸素。カンブリア紀に開花した生命の神秘。1度でも途切れたら人類は存在しなかったしぶとい生命の連鎖。地球が丸ごと凍結した絶滅から何度も繰り返されてきた大量絶滅。そして、確実に絶滅する我々人類の行方……。 その奇跡の物語をダイナミックに描きだした『超圧縮 地球生物全史』(ヘンリー・ジー著、竹内薫訳)を読むと世界の見方が変わる。読んでいて興奮が止まらないこの画期的な生物史を翻訳したのは、サイエンス作家の竹内薫さんだ。 そこで、「まるでタイムマシンで46億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った」とあとがきにも書いている竹内さんに、本書の魅力について語ってもらった。今回は、地球上の生物を支配している3つの要因についてお伝えする(Qは聞き手の質問)』、「地球上の生物を支配している3つの要因」とは何なのだろう。
・『生物の大量絶滅と人類 Q:もともと酸素がなかった地球でバクテリアが光合成をはじめて酸素が豊富になり、それまでいた生物が酸化して大量絶滅した話は本書ではじめて知りました。 一方、大量の岩石の風化で二酸化炭素が吸収されて地球が凍った絶滅もあります。生物にとって酸素と二酸化炭素のバランスは本当に大事ですね。 竹内薫(以下、竹内):人類は18世紀後半の産業革命以降、石炭や石油を利用し続けて大量の二酸化炭素や汚染物質を発生させてきました。 けれども著者は、マントル・プルーム噴出によってペルム紀に地球上の生物がほぼ死滅した史上最大の大絶滅に比べれば、人類が地球に与えた影響は針ほどで気にも止まらないほどだと述べています。 加えて、人口増加によって人類が大量に存在したことも非常に短い期間で終わるだろうと』、「マントル・プルーム噴出によってペルム紀に地球上の生物がほぼ死滅した史上最大の大絶滅に比べれば、人類が地球に与えた影響は針ほどで気にも止まらないほどだ」、なるほど。「人口増加によって人類が大量に存在したことも非常に短い期間で終わるだろう」、「終わる」要因は以下にあるようだ。
・『人類が絶滅する要因 Q:本書では、「人口は今世紀中にピークを迎え、その後減少へと転じる」と書かれています。そしてやがて絶滅する、と。 竹内:そうなる要因をいくつかあげていますよね。 まず遺伝的な多様性が足りないこと。そして地球の気温上昇と自然災害の急増による生息地の喪失。 人間の行動や環境変化による少子化。その他さまざまな問題が組み合わさって人類は絶滅する。 それも、地球の生物史38億年の歴史で考えるとわずか一瞬のことです。 我々の祖先のヒト属が出現した約50万年前から考えても、人為的な生態系の変化が急激すぎる。 数万年かけて地球環境が変わっていくなら、これほど問題は深刻にならなかったと思います。 でも、100年足らずで環境が急変すると生態系がついていけません。 この100年で4倍以上に増えて、さらに2050年には97億人になると予想されている人口爆発。地球温暖化による自然災害や環境変化の影響で少なくなっていく生息地の問題。 当然、農業の対策や、次々に発生する感染症対策なども、それらの急激な変化に追いつかなくなるでしょう』、「でも、100年足らずで環境が急変すると生態系がついていけません。 この100年で4倍以上に増えて、さらに2050年には97億人になると予想されている人口爆発。地球温暖化による自然災害や環境変化の影響で少なくなっていく生息地の問題。 当然、農業の対策や、次々に発生する感染症対策なども、それらの急激な変化に追いつかなくなるでしょう」、これでは「人類が絶滅する」のも当然なのだろう。
・『EVの問題点 Q:すでに世界的な水不足は問題視されるようになっています。 竹内:今ようやく世界の人々が危機感を覚えはじめて、地球の変化を食い止めようとする動きが出てきています。 カリフォルニアで大規模な山火事が起きたときは、ハリウッドスターも被害に遭いましたし、自然災害で経済的ダメージを受ける大企業やお金持ちもいるでしょう。 地球環境の変化は、格差に関係なく人類すべてに影響を与える問題ですから、世界中が脱炭素に取り組む方向に向かいはじめました。 テスラの電気自動車(EV)も、最初は「誰が買うんだろう?」と思っていましたけど、またたくまに広がりましたからね。 Q:ヨーロッパや中国の各メーカーも積極的に販売するようになって、今では世界の新車発売の10%がEVになっているそうです。 竹内:ただ、EVの電気を石炭、石油、天然ガスを使う火力発電に頼っていたら意味がありません。 EVは環境にやさしいと思われがちですが、電気エネルギーの問題を解決しなければ二酸化炭素は大幅には減らせないんですね。 本気で脱酸素を目指すなら原子力発電を使ったほうがいいということで、中国やインドなど新たに原子力発電所を建設している国もあります。 しかし、日本は福島で原発事故が起きたので、国民のコンセンサスを得るという難問が立ちはだかります』、「本気で脱酸素を目指すなら原子力発電を使ったほうがいいということで、中国やインドなど新たに原子力発電所を建設している国もあります」、「日本は福島で原発事故が起きたので、国民のコンセンサスを得るという難問」、さらには放射性廃棄物の処分の問題もある。
・『エネルギー源にまつわるリスク Q:東京都は、新築建物への太陽光パネル設置を2025年から義務化するようです。 竹内:太陽光パネルの問題は発電量が少ない点です。原子力一基分(100万KW級)の電気供給を代替するためには、山手線の内側の広さ(58平方キロメートル)の太陽光パネルが必要なんですね。 山を削って太陽光パネルを設置した地域では、大雨で土砂崩れが起きてパネルの大量破棄の問題が浮上しました。 要するに、どんなエネルギー源もリスクがつきものなので、どれを活用するにしても国民の意見は一致しないと思います』、「太陽光パネルの問題は発電量が少ない点です。原子力一基分(100万KW級)の電気供給を代替するためには、山手線の内側の広さ・・・の太陽光パネルが必要」、やはり余りに効率が悪いようだ。
・『二酸化炭素を深海に? Q:回収した二酸化炭素を凝縮して深海の海底に貯留する研究も進んでいます。そのうち宇宙に二酸化炭素を排出する技術も開発されるのでは? と突拍子もないことまで想像してしまいました。 竹内:ロケットは大量の二酸化炭素を排出しますし、打ち上げるだけで相当なお金がかかりますからね。 たとえば1キログラムの物をロケットで運ぶだけで100万円かかったりするわけです。 そういった問題を考えると、やはり海底に埋め込むほうが効率的でしょう。 ただ、先進国のなかには1人当たりのエネルギー消費量が減少している国もあるとこの本に書かれています。 イギリスとアメリカでは、1人当たりのエネルギー消費量は1970年代にピークを迎えて、2000年代まではほぼ横ばい、それ以降は急激に減少しています。 特にイギリスでは、過去20年間で1人当たりのエネルギー消費量が4分の1近く減少しているので、他の国が後に続けば脱炭素化はもっと加速するかもしれません』、「イギリスでは、過去20年間で1人当たりのエネルギー消費量が4分の1近く減少しているので、他の国が後に続けば脱炭素化はもっと加速するかもしれません」、英米で減少しているとは初めて知った。日本のマスコミもこうした事情をもっと報道してほしいものだ。
・『酸素は人類の味方であり敵でもある Q: 一方で、酸素も地球最初の絶滅の原因でした。生物の呼吸には酸素が必要ですが、確かに「酸化」は人体に悪影響を及ぼします。 酸素は人類の味方でもあり敵でもあるわけですね。 竹内:人間が死んでいく主な原因も酸素です。私たちの生命を維持するためには酸素が不可欠ですが、活性酸素は細胞を傷つけてさまざまな疾患をもたらします。 僕は自転車が好きなので、いつも思いっきり酸素を吸いながら走らせていますけど、大量に吸い込んだ酸素によって細胞を傷つける可能性も高まるはずです。 つまり、楽しく自転車に乗れるのは酸素のおかげである反面、酸素のせいで寿命を縮めるリスクも負っているわけです』、「楽しく自転車に乗れるのは酸素のおかげである反面、酸素のせいで寿命を縮めるリスクも負っているわけです」、その通りだ。
・『人類を待ち受ける運命 Q:もうひとつ、生命の維持に欠かせないのは太陽の光です。これも多すぎても少なすぎても困りますが、太陽の明るさは着実に増していくと本書にありました。 竹内:約100億年と言われている太陽の寿命はあと半分残っていて、これから50億年は輝き続けます。 人類やほ乳類はそのずっと前に絶滅しますが、本書で詳しく説明しているように、植物や菌類はずっと生き残るでしょうね。 それでも、太陽の熱で焼かれる可能性が増せば、ほとんどの生命は地中や深海に生息してさらに生き続けるだろう、と著者は述べています。 Q:地球でもっとも長く生き続けてきたバクテリアが、結局、最後まで生き残るとは。バクテリアの生命力ってどれほど強いんだ!と思いました。ところで著者は、人類が生き残りをかけて宇宙へ永住する可能性にも触れていますが、どう思われましたか。 竹内:アメリカは、2024年までに月面着陸の有人宇宙旅行を目指すアルテミス計画を進めています。 月に基地を作る目的は、火星に行くためです。なぜなら、重力が強い地球から行くより月から行くほうがはるかに楽だから。 火星に行くのは、将来的に移住するためでもあるでしょうし、地球と同じような資源が火星にもあると期待されるからです。 しかし、人類がいつの日か別の星に移住できたとしても、絶滅する運命であることに変わりはありません。 だからこそ、今あるものを守りながら快適に生きることが大切だ、という著者の最後のメッセージに共感する人は多いと思いますね。 (訳者略歴:竹内薫市の略歴はリンク先参照) (著者略歴:ヘンリー・ジーはリンク先参照)』、「地球でもっとも長く生き続けてきたバクテリアが、結局、最後まで生き残るとは。バクテリアの生命力ってどれほど強いんだ!と思いました」、「人類がいつの日か別の星に移住できたとしても、絶滅する運命であることに変わりはありません。 だからこそ、今あるものを守りながら快適に生きることが大切だ、という著者の最後のメッセージに共感する人は多いと思いますね」、同感である。
タグ:(その2)(「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路、数億年後 地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実、【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー) 生物 東洋経済オンライン 大谷 智通氏による「「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路」 『眠れなくなるほどキモい生き物』 おかげで『蜘蛛の糸』を思い出した。 「防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされているが、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5ミリあれば体重60キロの人間を吊り下げることができる」、見かけによらず「鋼鉄の5倍も強い」とは驚かされた。「クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である」、そんなに「多様」だとは初めて知った。 「宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう」、「クモは常に網のメンテナンスをしている」、「クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網をしつらえさせるのだ」、「飼い殺し寄生バチ」とは言い得て妙だが、実に悪どい。 「ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。 科学者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したという」、「化学物質」で「網づくりが誘発」とは、本当に悪どい。 ダイヤモンド・オンライン ヘンリー・ジー 竹内薫氏 「数億年後、地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実」 ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者) 「二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束」、「生命はより単純になり、その多くが深海に集中」、なるほど。 「地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている」、何やら寂しい限りだ。 「地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ」、なるほど。 「地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている」、「世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう」、「地中の生命活動」は「速さを増」しても、やはり「ゆっくりしている」ようだ。 「超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。 光合成はもはや過去のものとなった。 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、「光合成はもはや過去のものとなった」、「超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ」、多様化してきた「生命」が「一つの生命体になるのだ」、なるほど。 「目の前で生命が誕生し、進化し、絶滅するダイナミックな映像が流れていくような錯覚に陥り、どんどん先が読みたくなり、ペルム紀の大量絶滅のあたりからはぐんぐんと読書のスピードが加速し、気がついたらわずか数時間で読み終えていた。 まるでタイムマシンで四六億年を一気に駆け抜けたような新鮮な驚きと感動が残った」、「わずか数時間で読み終えていた」とはよほど内容が豊かなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「【東大卒サイエンス作家が教える】地球上の生物を支配しているたった3つの要因 『超圧縮 地球生物全史』翻訳者・竹内薫インタビュー」 『超圧縮 地球生物全史』(ヘンリー・ジー著、竹内薫訳) 「地球上の生物を支配している3つの要因」とは何なのだろう。 「マントル・プルーム噴出によってペルム紀に地球上の生物がほぼ死滅した史上最大の大絶滅に比べれば、人類が地球に与えた影響は針ほどで気にも止まらないほどだ」、なるほど。「人口増加によって人類が大量に存在したことも非常に短い期間で終わるだろう」、「終わる」要因は以下にあるようだ。 「でも、100年足らずで環境が急変すると生態系がついていけません。 この100年で4倍以上に増えて、さらに2050年には97億人になると予想されている人口爆発。地球温暖化による自然災害や環境変化の影響で少なくなっていく生息地の問題。 当然、農業の対策や、次々に発生する感染症対策なども、それらの急激な変化に追いつかなくなるでしょう」、これでは「人類が絶滅する」のも当然なのだろう。 「本気で脱酸素を目指すなら原子力発電を使ったほうがいいということで、中国やインドなど新たに原子力発電所を建設している国もあります」、「日本は福島で原発事故が起きたので、国民のコンセンサスを得るという難問」、さらには放射性廃棄物の処分の問題もある。 「太陽光パネルの問題は発電量が少ない点です。原子力一基分(100万KW級)の電気供給を代替するためには、山手線の内側の広さ・・・の太陽光パネルが必要」、やはり余りに効率が悪いようだ。 「イギリスでは、過去20年間で1人当たりのエネルギー消費量が4分の1近く減少しているので、他の国が後に続けば脱炭素化はもっと加速するかもしれません」、英米で減少しているとは初めて知った。日本のマスコミもこうした事情をもっと報道してほしいものだ。 「楽しく自転車に乗れるのは酸素のおかげである反面、酸素のせいで寿命を縮めるリスクも負っているわけです」、その通りだ。 「地球でもっとも長く生き続けてきたバクテリアが、結局、最後まで生き残るとは。バクテリアの生命力ってどれほど強いんだ!と思いました」、「人類がいつの日か別の星に移住できたとしても、絶滅する運命であることに変わりはありません。 だからこそ、今あるものを守りながら快適に生きることが大切だ、という著者の最後のメッセージに共感する人は多いと思いますね」、同感である。