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健康(その26)(ロコモの名医が提唱する最強「スクワット」の方法 あなたの歩き方は将来「寝たきり」危険大かも、「睡眠負債」を返済しよう!秋の夜長によく眠るコツ) [生活]

健康については、本年6月14日に取上げた。今日は、(その26)(ロコモの名医が提唱する最強「スクワット」の方法 あなたの歩き方は将来「寝たきり」危険大かも、「睡眠負債」を返済しよう!秋の夜長によく眠るコツ)である。

先ずは、7月14日付け東洋経済オンラインが掲載したスポーツ整形外科医の渡會 公治氏による「ロコモの名医が提唱する最強「スクワット」の方法 あなたの歩き方は将来「寝たきり」危険大かも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/683976
・『歳を取ると、骨、関節、筋肉などの「運動器」の能力が低下し、それが原因で寝たきりになったりする危険性がある状態を「ロコモティブシンドローム」(略称「ロコモ」)といいます。ロコモアドバイスドクターの渡會公治先生が提唱する「長生きストレッチ」は、支えがないと歩けなかった女性がひとりでトイレに行けるようになったなどと評判の、ロコモ対策トレーニングです。渡會先生の近著『長生き足腰のつくり方』から一部引用・再編集して紹介します』、興味深そうだ。
・『バッグは左右均等に持つ  愛用しているバッグの持ち方を、ふだん意識したことはありますか。通勤時、ビジネスバッグを左右で持ち替えたりせず、つねに同じ側の手で持っていませんか。トートバッグをどちらか片方の肩にずっとかけ続けたりしていませんか。せっかくリュックサックなどの背負うタイプのカバンを持っているのに、両肩で背負わず片方の肩にひっかけたまま歩いていませんか。 「体に悪い歩き方」にならないように気をつけるポイントは3つ。もっとも大切なポイントは体の左右のバランスをとることです。どちらかに偏ると体全体が歪んで、ひざや腰に負担をかけることになります。バッグを持って歩くときは、左右均等に持ちましょう。ショルダーバッグやトートバッグは、意識して交互の肩にかけ替えるようにしましょう。 私の専門はスポーツ医学です。よく街なかで、スポーツ医学的に間違った歩き方、つまり、「体に悪い歩き方」をしている人を見かけて内心はらはらしてしまいます。というのも、バッグの持ち方を変えるだけでも、体の負担を減らして将来ロコモになるリスクを減らすことができるからです。) 「体に悪い歩き方」にならないように気をつける2つ目のポイントは、股関節を意識して歩くことです。 「脚はどこからですか?」という質問をすると、ほとんどの人が股関節の付け根のあたりを指します。しかし、股関節は骨盤と筋肉で結ばれています。そして股関節を曲げる大腰筋は胸椎12番、みぞおちの奥から始まります。人間が歩くとき、このような骨や筋肉が関わってくるのです。 だから、正しい脚の出し方は、胸のあたりから背骨と骨盤を意識して、太もも・つま先までまっすぐに出すこと。そうすると、背骨と足の真ん中で股関節が動きます。股関節を意識して歩くというのは、こんなイメージの歩き方です。 「体に悪い歩き方」にならないようにする3つ目のポイントは、ひざとつま先の方向が同じになるようにすることです。ひざが内を向いていても、外を向いていても、つま先が同じ方向なら、ひざに負担はかかりません。逆に、ひざは内を向いているのに、つま先は外を向いているとひざに負担がかかる歩き方になります。 ひざに負担のかかる歩き方をしていても、ある程度までは人間の体は適応してしまいます。しかし、そのまま長い年月が経過すると、限界を超えて痛みを感じるようになります』、「もっとも大切なポイントは体の左右のバランスをとることです。どちらかに偏ると体全体が歪んで、ひざや腰に負担をかけることになります。バッグを持って歩くときは、左右均等に持ちましょう」、「2つ目のポイントは、股関節を意識して歩くことです。 「脚はどこからですか?」という質問をすると、ほとんどの人が股関節の付け根のあたりを指します・・・だから、正しい脚の出し方は、胸のあたりから背骨と骨盤を意識して、太もも・つま先までまっすぐに出すこと。そうすると、背骨と足の真ん中で股関節が動きます」、「3つ目のポイントは、ひざとつま先の方向が同じになるようにすることです。ひざが内を向いていても、外を向いていても、つま先が同じ方向なら、ひざに負担はかかりません。逆に、ひざは内を向いているのに、つま先は外を向いているとひざに負担がかかる歩き方になります」、なるほど。
・『立つこと、歩くことは、人間の動作の基本  授業の中で学生に協力してもらって、軽くスクワットをしたときに曲げたひざが足に対してどこを向いているかというデータを取ったことがあります。その結果、およそ6割の学生のひざがよくない方向に向いていることがわかりました。具体的には、母趾(親指)より内側が14%、母趾が45%、足の中央とされる第2趾(足の人差し指)が34%、第2趾より外側が7%でした。 つまり、約6割の人は「体に悪い歩き方」をしている可能性があるということです。立つこと、歩くことは、人間の動作の基本中の基本。日常生活の動作のかなりの部分を占めています。街中で歩いている人を見ると、股関節を使わずに歩いている人がいます。高齢者によく見られますが、背中が動かずにひざ下だけを使って、ちょこちょこと歩いている人もいます。 歩き方を改善すると、それだけでも腰やひざに余計な負担がかからなくなり、腰やひざの痛みも軽減します。) 私はスポーツ医学を専門としていますが、一方で、スポーツ選手でもない高齢の患者さんにロコモ対策を指導しています。なぜなら、スポーツ選手を悩ますスポーツ障害と、一般の方々を悩ます運動器障害は、基本的には同じ理由で起きるものだからです。 スポーツ選手が障害を抱えてしまうのは、トレーニングの原則に反する練習をしたり、体の構造に合わない動きをしたりすることが原因です。これは、一般の方が間違った体の使い方を続けたことで運動器に障害が起きるのと同じように考えられます』、「約6割の人は「体に悪い歩き方」をしている可能性があるということです。立つこと、歩くことは、人間の動作の基本中の基本。日常生活の動作のかなりの部分を占めています。街中で歩いている人を見ると、股関節を使わずに歩いている人がいます。高齢者によく見られますが、背中が動かずにひざ下だけを使って、ちょこちょこと歩いている人もいます。 歩き方を改善すると、それだけでも腰やひざに余計な負担がかからなくなり、腰やひざの痛みも軽減します」、なるほど。
・痛みの原因は、かならずしも老化ではない?  私のもとに来院してくるのは若くて元気なスポーツ選手、そして高齢者の皆さんです。どちらも「腰が痛い」「ひざが痛い」といって相談に来ます。高齢の方の痛みの原因は、かならずしも老化ではありません。若いスポーツ選手と同じように、「痛くなることをしたから痛い」のです。 つまり、多くの場合、スポーツ選手も高齢者も「上手に体を使えていない」から痛くなっているのです。ということは、対処法もやはり同じになります。まずは、体を上手に使えるようにすること。このシンプルな考え方にもとづいて考案したのが「長生きストレッチ」です。 人間の体は、若者だろうと高齢者だろうと痛む場所は共通しています。人間の体の構造は同じですから当たり前です。私がおすすめする「長生きストレッチ」は、スポーツ選手で実践してきたスポーツ障害対策がベースになっています。 「長生きストレッチ」の主な運動メニューとして、「長生きスクワット」があります。今回は「長生きスクワット」の具体的なやり方を紹介しましょう。 「長生きスクワット」には、体の感度を高める効果があります。どの筋肉を使っているか、どれくらい続けると気持ちいいか、どれくらい続けると筋肉が張ってくるかなどを意識しながら続けていると、体のわずかな変化を感じ取ることができるようになります。 体の声が聞こえるようになると、その日の体調に合わせてマイペースでトレーニングができるようになります。無理をしないわけですから、続けることが容易になります。 では、さっそく「長生きスクワット」をやってみましょう。) 直角になっている部屋のコーナーに立って「長生きスクワット」を行います。コーナーを使うことで、内側に入りがちなひざの向きを確認しながら、正しいフォームでスクワットが行えます。最初は1セット5回、1日10セットを目標にしてください』、「私のもとに来院してくるのは若くて元気なスポーツ選手、そして高齢者の皆さんです。どちらも「腰が痛い」「ひざが痛い」といって相談に来ます。高齢の方の痛みの原因は、かならずしも老化ではありません。若いスポーツ選手と同じように、「痛くなることをしたから痛い」のです。 つまり、多くの場合、スポーツ選手も高齢者も「上手に体を使えていない」から痛くなっているのです。ということは、対処法もやはり同じになります。まずは、体を上手に使えるようにすること。このシンプルな考え方にもとづいて考案したのが「長生きストレッチ」です」、なるほど。
・『「長生きスクワット」をやってみよう  ①コーナーを背にして立ち、両脚をかべに沿って広げていきます。このとき、おしりとひざはかべにつけたままで行います。 (画像:『長生き足腰のつくり方』より) ②背すじを伸ばし、上体をやや前傾させ、両手は太ももに置きます。 ③太ももに置いた両手をひざに移動し、おしりとひざをかべにつけたまま、太ももとふくらはぎの角度が90度になるまで腰をおろします。 このとき、イスに座るようにお尻からおろしてください。太ももの裏側の筋肉に力が入っていればOK。また、ひざがかべから離れてしまうときは、手でひざをかべに押しつけるようにしながら腰をおろしましょう。 ④腰をおろしたら、ゆっくり②の状態に戻します。 (画像:『長生き足腰のつくり方』より) 確認しよう①肩が脚全体の上にくる (画像:『長生き足腰のつくり方』より) ひざがつま先を越えないように腰をおろすと、横から見ると、肩が脚全体の上にきます。これが正しいスクワット。ひざがつま先を越えると、ひざだけを使ったスクワットになって、ひざに負担をかけることになります。 確認しよう②ひざがかべから離れない (画像:『長生き足腰のつくり方』より) 間違ったスクワットで多いのが、ひざが内側に入ってしまうパターン。足を広げることに抵抗がある女性はとくにその傾向があります。ひざがかべから離れないように、手で押さえながらスクワットを行いましょう。ひざや足にねじる力が加わると、ひざを痛める原因になってしまいます。 確認しよう③ひざと足を同じ方向に曲げる (画像:『長生き足腰のつくり方』より) スクワットに限らず、ひざを曲げるという動作のときは、ひざとつま先を同じ方向に曲げるのがよいフォームです。よい体の使い方を身につけるためにも、意識しながら丁寧にスクワットを行いましょう』、「「長生きスクワット」をやってみよう」は説明に沿ってやってみて下さい。

次に、9月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医学ライターの井手ゆきえ氏による「「睡眠負債」を返済しよう!秋の夜長によく眠るコツ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329043
・『毎年9月3日は、睡眠健康推進機構と日本睡眠学会が制定した「秋の睡眠の日」だ。3月の世界睡眠デーと一対になる。 眠りは、疲労が蓄積されることで次第に増大する「睡眠欲求」と、体内の「覚醒システム」との綱引きのなかで生じる。 覚醒は交感神経系の活性化や深部体温(脳の温度)の上昇によって保たれており、就寝時刻の1~2時間前に分泌される睡眠ホルモンの「メラトニン」の作用で、心身がリラックスモードに切り替わると、眠りが訪れる。 その際、昼間の活動で熱のこもった脳を冷却するために、体表から熱を放散する必要がある。寝る直前ではなく、就寝の90~120分前に入浴して体温を上げ、その反動で熱を放散させるとよいとされるのはこのためだ。 寝る直前の入浴になる場合は、身体を温め過ぎないシャワー浴がお勧め。さっぱり、リラックスしてから寝室へ向かおう。 布団に入ったら、枕元の灯りはできるだけ絞ること。強い光は天然の睡眠導入剤ともいえるメラトニンの分泌を止めてしまう。 9月とはいえ、まだ残暑がきつい夜は、躊躇わずにエアコンを利用しよう。一般に夏~秋にかけての快適な寝室の温度は28~26℃、湿度は50%前後といわれている。寝具との兼ね合いもあるので快適な温度と湿度を探してみるといい。 余裕がある方は、この際、寝具を見直してみよう。 枕は好みもあるが、首の角度が仰向けで寝たときに敷布団から10~15度の範囲で保たれる高さが理想的。肩口までしっかり枕を引き寄せて、後頭部から首まで枕に支えてもらおう。特にいびきがひどく、睡眠時無呼吸症候群が疑われる人は、頭と敷布団の間に余計な隙間がない姿勢が望ましい。 敷布団は寝返りを打ちやすい適度な硬さがあり、掛け布団も身動きを妨げない軽くて放湿性のある素材がお薦め。寝返りには、血液循環の滞りを防ぎ、寝床のなかに熱や湿度がこもらないように調節する役割があるからだ。 それなりの環境を整えて酷暑の間に積もりに積もった「睡眠負債」を返済していこう』、「眠りは、疲労が蓄積されることで次第に増大する「睡眠欲求」と、体内の「覚醒システム」との綱引きのなかで生じる。 覚醒は交感神経系の活性化や深部体温(脳の温度)の上昇によって保たれており、就寝時刻の1~2時間前に分泌される睡眠ホルモンの「メラトニン」の作用で、心身がリラックスモードに切り替わると、眠りが訪れる。その際、昼間の活動で熱のこもった脳を冷却するために、体表から熱を放散する必要がある。寝る直前ではなく、就寝の90~120分前に入浴して体温を上げ、その反動で熱を放散させるとよいとされるのはこのためだ。 寝る直前の入浴になる場合は、身体を温め過ぎないシャワー浴がお勧め。さっぱり、リラックスしてから寝室へ向かおう。 布団に入ったら、枕元の灯りはできるだけ絞ること。強い光は天然の睡眠導入剤ともいえるメラトニンの分泌を止めてしまう。 9月とはいえ、まだ残暑がきつい夜は、躊躇わずにエアコンを利用しよう』、私は練る際には、「エアコン」は使わず、2階なので、窓を開け、扇風機をかけている。
タグ:健康 (その26)(ロコモの名医が提唱する最強「スクワット」の方法 あなたの歩き方は将来「寝たきり」危険大かも、「睡眠負債」を返済しよう!秋の夜長によく眠るコツ) 東洋経済オンライン 渡會 公治氏による「ロコモの名医が提唱する最強「スクワット」の方法 あなたの歩き方は将来「寝たきり」危険大かも」 渡會先生の近著『長生き足腰のつくり方』 「もっとも大切なポイントは体の左右のバランスをとることです。どちらかに偏ると体全体が歪んで、ひざや腰に負担をかけることになります。バッグを持って歩くときは、左右均等に持ちましょう」、「2つ目のポイントは、股関節を意識して歩くことです。 「脚はどこからですか?」という質問をすると、ほとんどの人が股関節の付け根のあたりを指します・・・だから、正しい脚の出し方は、胸のあたりから背骨と骨盤を意識して、太もも・つま先までまっすぐに出すこと。そうすると、背骨と足の真ん中で股関節が動きます」、 「3つ目のポイントは、ひざとつま先の方向が同じになるようにすることです。ひざが内を向いていても、外を向いていても、つま先が同じ方向なら、ひざに負担はかかりません。逆に、ひざは内を向いているのに、つま先は外を向いているとひざに負担がかかる歩き方になります」、なるほど。 「約6割の人は「体に悪い歩き方」をしている可能性があるということです。立つこと、歩くことは、人間の動作の基本中の基本。日常生活の動作のかなりの部分を占めています。街中で歩いている人を見ると、股関節を使わずに歩いている人がいます。高齢者によく見られますが、背中が動かずにひざ下だけを使って、ちょこちょこと歩いている人もいます。 歩き方を改善すると、それだけでも腰やひざに余計な負担がかからなくなり、腰やひざの痛みも軽減します」、なるほど。 「私のもとに来院してくるのは若くて元気なスポーツ選手、そして高齢者の皆さんです。どちらも「腰が痛い」「ひざが痛い」といって相談に来ます。高齢の方の痛みの原因は、かならずしも老化ではありません。若いスポーツ選手と同じように、「痛くなることをしたから痛い」のです。 つまり、多くの場合、スポーツ選手も高齢者も「上手に体を使えていない」から痛くなっているのです。 ということは、対処法もやはり同じになります。まずは、体を上手に使えるようにすること。このシンプルな考え方にもとづいて考案したのが「長生きストレッチ」です」、なるほど。 「「長生きスクワット」をやってみよう」は説明に沿ってやってみて下さい。 ダイヤモンド・オンライン 井手ゆきえ 「「睡眠負債」を返済しよう!秋の夜長によく眠るコツ」
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シェアリングエコノミー(その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ) [経済政治動向]

シェアリングエコノミーについては、2021年7月30日に取上げた。今日は、(その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ)である。

先ずは、2022年1月31日付け弁護士ドットコムが掲載した弁護士ドットコムニュース編集長の新志 有裕氏による「世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」、破壊的モデルの行く末」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/topics/author/1/
・『タクシーではなく、一般のドライバーが自家用車で乗客を運ぶ「ライドシェア」や、空いた時間に自転車で手軽にできるフードデリバリーなど、米ウーバー・テクノロジーズが始めたプラットフォームビジネスは、世界中に大きな広がりを見せている。 ウーバーは、従来型の消費者向けビジネス(B2C)ではなく、余ったリソースを需要とつなぐピア・ツー・ピア(P2P)の考え方を打ち出し、ネット上ではなく、現実世界でサービスを積極展開することにより、各国のタクシー業界などに破壊的インパクトをもたらしてきた。 破壊的インパクトは、既存の業界に対してだけではなく、労働法制に対しても同様だ。各国で、ウーバーのプラットフォーム上で単発で働く「ギグワーカー」たちが「労働者」なのか、「個人事業主」なのか、という紛争が起きている。 ウーバー発祥の国であるアメリカのプラットフォーム労働に詳しい労働法研究者の藤木貴史氏(帝京大学法学部助教)は、「ギグワーカーが組織に雇われている『被用者』と完全に同等に扱われるかどうかの議論こそあるものの、労働法を拡張して、何らかの保護をしようというのが世界の潮流になっている」と語る。詳しく聞いた。(Qは聞き手の質問、Aは回答者の回答)』、興味深そうだ。
・『アメリカやEUで何が起きているのか  Q:アメリカでは、ギグワーカーの法的位置付けをめぐって、紛争がたくさん起きていますが、どのように捉えればいいのでしょうか。 A:完全に係争中で、結論らしい結論は出ていません。連邦レベルの最高裁判決が出ると、国として大きく動きますが、高裁レベルの判断すらはっきりとは示されていません。また、各州の裁判所でも判断が揺れています。 Q:アメリカは州単位で法律が異なり、ウーバーが本社を置くカリフォルニア州では、2020年1月に、ギグワーカーも原則被用者として、失業保険や最低賃金などで保護する州法「AB5」(Assembly bill5)が施行される一方、同年11月の住民投票で、ウーバーの運転手や料理宅配などを保護の対象から除外する住民投票が成立し、さらに、2021年8月に、カリフォルニア州の裁判所がこの住民投票が州憲法に違反すると判断するなど、混乱が続いていますが、何が起きているのでしょうか。 この「AB5」というのは、簡単に言えば、役務を提供する個人を被用者と推定する法律です。それを否定するためには、以下の点について、事業者側が立証する必要があります。 (A)個人が管理監督から自由であること (B)個人の提供する役務が、使用者の通常の事業の外にあること (C)個人が、独立性の確立した仕事に従事していること このABCを満たしていることが求められるため、ABCテストと呼ばれています。つまり、このテストのもとでは、被用者と認められやすくなるのですね。 プラットフォーマーの側はこれを嫌がり、多くの資金を投入して、AB5を否定する住民投票の実施を働きかけた、という構図です。住民投票を否定した判決も、法政策的な観点からの判断というより、形式に不備があるという技術的な理由からの判断のようですので、今後の司法の動向は不透明ですね。 司法では判断が揺れていますが、立法レベルでは、ABCテストが他の州でも広がる傾向にあります。もちろん例外もあり、テネシー州やテキサス州など共和党優勢の州では、逆に自営業者と推定しよう、という法律が成立してもいます。 また、アメリカ全体で(連邦レベルで)考えると、共和党のトランプ政権の時には、独立契約者を広く認めようという動きでしたが、民主党のバイデン政権になってから、方向転換をしています。民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう。 UberのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=M_wN2dLoE3Q)より Q:EUでも、欧州委員会が2021年12月、ギグワーカーを雇用関係にあると法的に推定するプラットフォーム労働指令案を提案しました。アメリカと似た傾向だということでしょうか。 A:そうですね。方向性としては似ています。EUの指令については、直接に国内法となるものではありませんが、実現すれば、国内法化する義務が加盟国に課されます』、「民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう・・・EUでも、欧州委員会が2021年12月、ギグワーカーを雇用関係にあると法的に推定するプラットフォーム労働指令案を提案しました。アメリカと似た傾向だということでしょうか。 A:そうですね。方向性としては似ています」、なるほど。
・『日本のウーバーイーツ配達員はどう位置付けられるか  Q:日本でも、ウーバーイーツの配達員でつくるウーバーイーツユニオンが、運営会社に団体交渉を不当に拒否されたとして、東京都労働委員会に救済を申し立てています。ユニオンが、労働組合法上の労働者であるかどうかが注目されていますが、どう考えますか。 日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています。ただ、学説では、指揮監督にこだわる必要はないという主張もあります。 一方で、労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加味されます。 Q:労働組合法上の労働者と認められる可能性はあるのでしょうか。 A:当然、個別の証拠によって判断は変わるのでしょうが、今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう。 労働組合法上の労働者性を認めないという結論はナンセンスではないでしょうか。学術的な議論の場でも、そのように考える人が多いように思います。 ウーバーイーツユニオン(2021年5月の記者会見) Q:ウーバー側は、飲食店と配達員と注文者を単にマッチングするだけのプラットフォームだと言っていますが、そういう言い分は通らないのでしょうか。 A:アメリカでもそういう反論はありますが、そうであれば、プラットフォームの使い方について、コントロールを及ぼしていることについて、説明がつかないと思います。 Q:確かに、配達員はウーバーから提示された仕事を受けるか受けないかの選択はできますが、どんな注文を提示するのか、料金がいくらなのかはウーバー側が決めていますね。 A:仕事の中身や条件に一切タッチしないのであれば話は別ですが、プラットフォーム側がコントロールを及ぼしている限りは、組織の中に組み入れられているということになります。 配達員がWoltなど、他のサービスと併用していたとしても同じことです。別の組織にも組み入れられているということになるだけです。 Q:ただ、ギグワーカーの皆が保護を求めているわけではないのではないでしょうか。 A:「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向き合う必要があるんでしょうね』、「日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています・・・労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加味されます。 Q:労働組合法上の労働者と認められる可能性はあるのでしょうか。 A:当然、個別の証拠によって判断は変わるのでしょうが、今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう」、「プラットフォーム側がコントロールを及ぼしている限りは、組織の中に組み入れられているということになります。 配達員がWoltなど、他のサービスと併用していたとしても同じことです。別の組織にも組み入れられているということになるだけです・・・「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向き合う必要があるんでしょうね」、なるほど。
・『被用者でも個人事業主でもない「第3カテゴリー」は必要か  Q:イギリスでは、雇用関係にある「被用者」と、個人事業主の「自営業者」の中間的な存在として、被用者よりも保護の範囲が限定された「労働者」というカテゴリーがあり、最高裁の判断として、ウーバーの運転手が「労働者」と認められました。日本でも、このような中間的カテゴリーを作るべきでしょうか。 A:アメリカも日本と同様に、被用者か自営業者か、という判断しかありません。一方で、イギリスやドイツのように、被用者類似の第三カテゴリーをもうけている国もあります。 ただ、被用者か自営業者であれば、その線引きは1つですが、第三カテゴリーを作った場合、線引きが2つに増えてしまいます。その基準がはっきりしない限り、どれにあたるかわかりにくいですし、これまで被用者として保護されていた人たちが、第三カテゴリーに分類されてしまうリスクもあります。 私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます。自営業者にも労災保険の必要性が検討されているように、被用者だけでなく、働く人全員に与えられるべき保護もあるからです。労働法の条項を整理して、目的ごとに、どこまで適用するのかを考えた方が生産的です』、「イギリスやドイツのように、被用者類似の第三カテゴリーをもうけている国もあります。 ただ、被用者か自営業者であれば、その線引きは1つですが、第三カテゴリーを作った場合、線引きが2つに増えてしまいます。その基準がはっきりしない限り、どれにあたるかわかりにくいですし、これまで被用者として保護されていた人たちが、第三カテゴリーに分類されてしまうリスクもあります。 私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます」、なるほど。
・『ウーバー紛争の先にある、新たな法的問題  Q:今はウーバーのようなプラットフォームが目立っていますが、今後、どのようなプラットフォームに注目していますか。 A:プラットフォーム労働については、ウーバー型とは異なるクラウドソーシング型というものが存在します。ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません。 一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね』、「プラットフォーム労働」は、「ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません。 一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、なるほど。

次に、本年9月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328850
・『ライドシェア解禁を巡る議論をよく目にします。私は、長期的な視野で解禁の方向に動いた方が良いと考えます。「ある視点」で考えれば、皆が得する未来を描くことができるからです』、興味深そうだ。
・『ライドシェアを巡る議論は平行線をたどっている  菅義偉前首相が講演で「ライドシェア」の解禁に向け議論すべきだと発言して以降、日本でもにわかにライドシェア導入議論が始まっています。同じ神奈川県の小泉進次郎氏や河野太郎氏もライドシェアに積極的な発言をしている一方で、自民党のタクシー・ハイヤー議員連盟は導入論に慎重な意見を表明しています。 テレビの報道番組でも何度かこの問題は取り上げられました。私もふたつの番組で業界の代表者と消費者が激しく討論する様子を拝見しましたが、議論は常に平行線になるようです。 消費者の側から見ればそもそもタクシーが捕まらないエリアや時間帯が存在することや、道順がうまく伝わらないことや、近距離だと露骨に嫌な顔をされるなど、タクシーに対する一定の不満が存在します。そういった消費者の中で、アメリカに出かけてライドシェアを体験して、ライドシェアの方がサービスがいいと感じているわけです。 急増するインバウンド客はタクシー不足の原因でもありますが、彼らも言葉が伝わりにくい日本のタクシーよりもライドシェアがいいという意見は根強くあります。 一方で、業界の側は素人が運転手をするライドシェアの危険性を主張します。タクシー会社は法律や国の指導に沿って、2種免許を取得した従業員にさらに研修や管理を行うことで乗客の安全を確保してきました。コストをかけ投資をしているのに、その投資をしなくてもいいライドシェアとの競争は安全性が保たれず不公平だというわけです。 平行線をたどるこの議論がかみ合うためには、+αで新しい視点が必要だと私は考えているのですが、その話の前に両者の議論を確認しておきましょう』、確かに論点を再確認する必要はありそうだ。
・『「ドライバーの安全性」は議論の争点にはならない  タクシー業界の主張する安全性の問題は、実はライドシェア大国のアメリカでは解決されています。タクシー会社が採用や教育、管理で安全を確保する一方で、ライドシェアはユーザーの評価によってドライバーを淘汰させます。 「そんなことを言っても、淘汰される前の運転の荒いドライバーに当たった人はどうなるんだ」 と反論されるかもしれません。 これを言うと野暮かもしれませんが、タクシーの運転も結構荒いと私は思います。 よく交差点で手を挙げた乗客を乗り降りさせているタクシーがいて、急停車したタクシーに後続車が追突しそうになりヒヤリとしたり、交差点が詰まってしまったりしています。ああいった乗り降りに関する違反運転が多いのは、目視した限りで一般のドライバーよりも圧倒的に教育を受けたタクシーの方が多いようです』、乗客の急な停車要求に応えるため「乗り降りに関する違反運転が多い」のは当然だ。
・『タクシー業界の既得権益も尊重する必要がある  一方で、ライドシェア解禁を願う消費者の側の論調にも問題があります。 ライドシェア解禁に反対するタクシー業界の既得権益をもう少し尊重すべきです。あまり認識されていないかもしれませんが、経済学では既得権益をとても重要なことだと教えます。なぜなら既得権益が守られない社会では誰も投資をしなくなるからです。 タクシー業界は本当はそれを主張したいのです。これまで国のルールで莫大な投資をしてきたのに、ライドシェアを解禁したらその投資が回収できない。これは実は正当な主張なのですが、それが世論に通りにくいから安全性の問題に議論をすり替えざるをえないのです。 とはいえ訪日外国人の増加、タクシー運転手の人手不足、過疎化地域などで移動難民の増加など、国内の状況的にはライドシェア解禁の必要性は高まっています。 2010年代にアメリカでウーバーがサービスを提供して以降、わが国でも何度も議論が行われてきたわけですが、アメリカ型のライドシェアは日本では極めて限定的な条件下以外では解禁されていません。 業界ではタクシーが不足するたびにタクシーの供給量を増やして消費者の不満を解消してきたわけですが、この計画経済的な仕組みには根本的な欠陥があって、タクシー会社にとっての経済的なラインを想定すれば台数は必ずピーク需要よりも少なめになりますし、採算に乗らないエリアは切り捨てられます。  ではこのライドシェア解禁議論はどうすれば前に進むのでしょうか。私は今の議論に加えるべきは「時間軸」だと捉えています』、「時間軸」を加えたら整理できるのだろうか。
・『もしも「5年後にライドシェアを解禁する」なら? 皆が得をするために必要なのは「時間軸」(あくまで仮の想定ではありますが、たとえば、 「5年後の2028年に東京都ではライドシェアを解禁する」 と決めたとしたらどうでしょうか。 競争を公平にするために、「その場合、人を乗せて運転する営業車のドライバーに対しては、2年後の2025年からタクシー会社の研修があれば2種免許を不要とする」 そしてさらに、「タクシー会社は2025年からライドシェア営業も実験的に先行して行うことができる」 といった形の時間軸を加えた解決案が出現したらどうなるのかを考えてみましょう。 仮案とはいえ、このような時間軸のロードマップがあるとタクシー会社側は新しい投資戦略を作ることができます。人材の採用については2年後以降、今よりも難易度がひとつ下がります。ちなみに2種免許を廃止できないのであればライドシェア解禁は無理だと私は思っていますが、ここは異論がある方もいらっしゃるかもしれません。話を続けさせていただきます。 時間軸を設けることによる一番の優位性は、タクシー会社のアプリがウーバーなどの海外アプリに対抗する時間ができることです。仮に今使われているタクシーアプリにアメリカのライドシェアサービスと同じ機能が実装されたとします。 その上で2025年から3年間は、消費者はライドシェアにはタクシーアプリが使えるようになるわけです。たとえばクリスマスの深夜、六本木でどうしてもタクシーが捕まらない場合、タクシーアプリのライドシェア機能で価格を見て「六本木―新宿8000円で」と通常よりも価格を高めにすることでタクシーを捕まえられるかもしれません。 逆にタクシーが空いている時間帯には普段より安くライドシェアタクシーを呼ぶこともできるようにします。この実験期間が3年間あれば、タクシー業界も将来ライドシェアに移行した場合の価格戦略を立てやすくなります。何より日本のライドシェアでは日本のタクシー会社のアプリがデファクトとして先に登録ユーザーを集めることができるのは、競争優位になるでしょう。 私はライドシェア推進派の皆様には、反対派のタクシー業界と対話をするために、こういった既得権益を含めた移行計画を提示すべきだと思います。 あとここは議論が分かれるところだと思いますが、私はライドシェアの本格解禁後(この仮の時間軸では2028年以降)にはライドシェアのドライバーに免許のようなものを新たに与える制度を作る必要はないと考えています。それは最近解禁された電動キックボードの免許議論にも通じる考え方です。 電動キックボードが法改正で無免許でも運転できるようになった結果、交通ルールを守らないユーザーが社会問題になっています。日本人の発想だと講習をきちんと受けさせるべきだと言いますが、それでは警察の外郭団体のブルシットジョブ(余計な仕事)を増やします。 アメリカ人の発想なら違反で捕まった人は次からキックボードを借りられなくすればいい。こういった自然に悪い運転をする人が淘汰されていく仕組みをアメリカのライドシェアは持っています。加えて、万が一事故が起きた時に無保険でも救済されるよう、ライドシェアのプラットフォーム側が保険制度を完備することも必要です。 こういった施策によって、研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切だと私は考えます』、「研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切」、同感である。
・『アメリカでは「無人タクシー」が解禁 このままでは世界に置いていかれる可能性も  さて私はライドシェア解禁に向けて実はタクシー業界も行政も早めに動いた方がいいと考えています。というのもこの問題、5年後には新たな問題が加わるからです。 実は昨年、アメリカのサンフランシスコでは無人タクシーが解禁されました。アルファベットの子会社のウェイモと、GMが出資するクルーズがそれぞれサンフランシスコで営業を始めています。日本ではあまり報道されていないこのニュースですが、その意味することは極めて画期的です。 というのもアメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです。 そうやって世界中でモビリティビジネスが先進的に進化し、そのことによって私たちの移動がもっと自由になり、結果として経済が発展する流れが始まります。 世界がそう変わって、日本だけがまだライドシェア解禁するかどうかで議論が膠着(こうちゃく)している未来は少し問題がありますよね。 そういった意味からも、私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア、反論もあろうかと思いますが、日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください』、「アメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・世界がそう変わって、日本だけがまだライドシェア解禁するかどうかで議論が膠着している未来は少し問題がありますよね。 そういった意味からも、私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア・・・日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください」、「時間軸で考えよう」が漸く理解できた。同感である。
タグ:シェアリングエコノミー (その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ) 弁護士ドットコム 新志 有裕氏による「世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」、破壊的モデルの行く末」 「民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう・・・EUでも、欧州委員会が2021年12月、ギグワーカーを雇用関係にあると法的に推定するプラットフォーム労働指令案を提案しました。アメリカと似た傾向だということでしょうか。 A:そうですね。方向性としては似ています」、なるほど。 「日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています・・・労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加味されます。 Q:労働組合法上の労働者と認められる可能性はあるのでしょうか。 A:当然、個別の証拠によって判断は変わるのでしょうが、今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう」、「プラットフォーム側がコントロールを及ぼしている限りは、組織の中に組み入れられているということになります。 配達員がWoltなど、他のサービスと併用していたとしても同じことです。別の組織にも組み入れられているということになるだけです・・・「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向 き合う必要があるんでしょうね」、なるほど。 「イギリスやドイツのように、被用者類似の第三カテゴリーをもうけている国もあります。 ただ、被用者か自営業者であれば、その線引きは1つですが、第三カテゴリーを作った場合、線引きが2つに増えてしまいます。その基準がはっきりしない限り、どれにあたるかわかりにくいですし、これまで被用者として保護されていた人たちが、第三カテゴリーに分類されてしまうリスクもあります。 私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます」、なるほど。 「プラットフォーム労働」は、「ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません。 一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ」 確かに論点を再確認する必要はありそうだ。 乗客の急な停車要求に応えるため「乗り降りに関する違反運転が多い」のは当然だ。 既得権益が守られない社会では誰も投資をしなくなるからです 「時間軸」を加えたら整理できるのだろうか。 「研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切」、同感である。 「アメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・世界がそう変わって、日本だけがまだライドシェア解禁するかどうかで議論が膠着している未来は少し問題がありますよね。 そういった意味からも、私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア・・・日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください」、「時間軸で考えよう」が漸く理解できた。同感である。
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教育(その31)(平安女学院の「クーデター事件」が恐ろしすぎる…辞任に追い込まれた名物理事長の告白《女性校長は 中高生までストライキに巻き込んだ》、港区の公立中学「修学旅行はシンガポール」は“格差”の象徴か ネットは炎上も専門家は「評価すべき」、人生に絶望したIQ130超「ギフテッド」女性が救われた「インド」と「ラジオ」 やっと気づいた「生きる喜び」 ギフテッドの光と影) [社会]

教育については、本年7月11日に取上げた。今日は、(その31)(平安女学院の「クーデター事件」が恐ろしすぎる…辞任に追い込まれた名物理事長の告白《女性校長は 中高生までストライキに巻き込んだ》、港区の公立中学「修学旅行はシンガポール」は“格差”の象徴か ネットは炎上も専門家は「評価すべき」、人生に絶望したIQ130超「ギフテッド」女性が救われた「インド」と「ラジオ」 やっと気づいた「生きる喜び」 ギフテッドの光と影)である。

先ずは、8月23日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの井上 久男氏によう「名門・平安女学院の「クーデター事件」が恐ろしすぎる…辞任に追い込まれた名物理事長の告白《女性校長は、中高生までストライキに巻き込んだ》を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115198?imp=0
・『80億円近い累積債務  1875(明治8)年に設立され、日本で最初にセーラー服を制服に導入したと言われる老舗の女子中高を抱え、法人本部が京都御所の向かいにある名門の学校法人・平安女学院(京都市)で、理事長や学院長を長年務めていた山岡景一郎氏(92歳)が今年4月2日付で突如、辞任に追い込まれた。氏は経営破たん寸前の同学院を救済した功労者で、高齢ながらも、頭脳明晰で教育への熱意は衰えることがなく、政財界に太いパイプがある「名物理事長」として知られていた。 辞任の背景には「クーデターがあった」と指摘する声も出ている。なぜなら辞任に至る半年ほど前から一部の幹部らが週刊誌に対し、山岡氏にパワハラがあるかのような情報を流し、氏を追い出そうとしていると見られても仕方ない動きが起こっていたからだ。 学校法人内で起こったクーデターと見られる動きや辞任の経緯などについて山岡氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは山岡氏の回答)。 Q:今年4月2日付で辞任した理由を教えてください。 A:「そのことを説明するためには、私が2003年に平安女学院の理事長に就任した経緯からお話しする必要があるでしょう。21年前の2002年当時、私の仕事は経営コンサルタントで、法人を運営していたキリスト教の聖公会の主教と当時の理事長から法人の再建のために理事長就任を要請されましたが、あまりに杜撰な経営体制と負債の多さに驚き、断りました。 しかし、亡妻が聖公会の熱心な信者であったため、見捨てるわけにもいかず、顧問・改革委員長として法人の再建を引き受けたわけですが、実際に法人の経営を目の当たりにすると、80億円近い累積債務があり、事実上、経営は破たんしていました。その債務のうち15億円は理事会の承認を得ていない、ノンバンクからの隠れ債務でした。 杜撰な経営体制だった理由は、教職員組合が学校経営を支配していたからでした。経営破たん寸前なのに教職員の賃金水準は京都府下でトップクラス。その賃金を支払うために、規律のない借り入れを行い、挙句には主要キャンパスまで売却するようなことをしていました。当時の経営陣も教職員の選挙で選ばれるなど、労組が背後から経営を操りやすい状況にありました。 
私が自ら交渉し、わずか1年近くで債務整理に目途をつけました。教職員に対しては、いったん退職金を支払ってやめてもらい、新人事制度の下、賃金を30%カットして再雇用しました。同時に経営に対する労組の関与も排除しました。 こうした改革を踏まえて2003年に私は理事長に就任しました。その後、経営上負担となっていた滋賀県・守山キャンパスの廃止なども行い、法人存続のために、リストラを続けましたが、同時に、大学は実学重視で就職率を高め、中・高は教育の質を高めることなどで入学者を増やし、経営を再建しました。私が理事長就任以来、赤字になったことはありません」』、「名門の学校法人・平安女学院(京都市)で、理事長や学院長を長年務めていた山岡景一郎氏(92歳)が今年4月2日付で突如、辞任に追い込まれた。氏は経営破たん寸前の同学院を救済した功労者で、高齢ながらも、頭脳明晰で教育への熱意は衰えることがなく、政財界に太いパイプがある「名物理事長」として知られていた。 辞任の背景には「クーデターがあった」と指摘」、「80億円近い累積債務があり、事実上、経営は破たんしていました。その債務のうち15億円は理事会の承認を得ていない、ノンバンクからの隠れ債務でした。 杜撰な経営体制だった理由は、教職員組合が学校経営を支配していたからでした。経営破たん寸前なのに教職員の賃金水準は京都府下でトップクラス」、「私が自ら交渉し、わずか1年近くで債務整理に目途をつけました。教職員に対しては、いったん退職金を支払ってやめてもらい、新人事制度の下、賃金を30%カットして再雇用しました。同時に経営に対する労組の関与も排除しました。 こうした改革を踏まえて2003年に私は理事長に就任しましt・・・大学は実学重視で就職率を高め、中・高は教育の質を高めることなどで入学者を増やし、経営を再建しました」、本当に「実力があり、実績も上げてきたのに、「クーデターで追われたとは難しいものだ。
・『元労組委員長の女性校長  「理事長辞任までの間に、私財で現金約1200万円、私が経営していた旅館の備品類約1500万円相当を法人に寄付しています。 また、傘下の平安女学院大学は小規模私学であり、定員が多い大規模私学に学生を奪われる傾向がありましたので、それを是正するために、下村博文・文科相(当時)に事情を詳しく話し、小規模校のハンディキャップを取り除く対策の実現に繋げることができました。 自ら功労者というのは憚られますが、法人を再建した功績は棚の上に上げ、今回のクーデターは20年前の意趣返しと言っても過言ではないでしょう。はっきりと申し上げますが、その首謀者は、平安女学院中・高校の校長を務める今井千和世氏(70歳)です。今井氏は労組委員長を務めていた関係で今でも労組への影響力があります。彼女が中心となって私の追い出し工作を進めました。今井氏の動きに協力したメンバーはほとんどが20年前に労組幹部だった面々です。 私を追い出した後、彼女は法人の理事に就き、理事会を実質支配しているようです。私の後任の理事長に就いた毛利憲一氏はほとんど影響力を持っていないようです。今井氏らは早速、理事の定年を80歳に延長しました。自らが居座るつもりでしょう。さらに、一時金15万円の支給や幹部に対する手当の増額を決め、少子化の影響で23年には経常赤字に転落する可能性がある中で、教職員に大盤振る舞いしている。20年前の悪夢の再来です」 Q:追い出し工作とは、どのようなことがあったのですか。 A:「2021年3月1日に行われた高校の卒業式での私の挨拶の言葉尻をとらえて今井氏が一部の保護者らを巻き込んで私を辞めさせる運動を展開しました。 私は式辞で、「世の中には、どうしてもいて欲しい人、どちらかと言えばいて欲しい人、いてもいなくてもいい人、いたらあまりよくない人、いたら害になる人の5種類のタイプがいる」と語りました。卒業生に世の中で必要とされる人材になってくださいという激励の意味がありました。 私は、拙著『平安女学院の奇跡』(2017年、PHP研究所)でも同じことを言っていますし、文科省が後援するマナー講座の教科書にも同様のことが紹介されています。卒業式の2ヵ月前にあった教職員の研修会でも同じ話をしていますが、何も問題は起こりませんでした」』、「平安女学院大学は小規模私学であり、定員が多い大規模私学に学生を奪われる傾向がありましたので、それを是正するために、下村博文・文科相(当時)に事情を詳しく話し、小規模校のハンディキャップを取り除く対策の実現に繋げることができました」、政治力もあったようだ。
・『中高生まで参加したストライキ  「ただ、私の発言が多くの人に誤解や不快感を与えるなら、反省しないといけませんが、常識に照らしてもまっとうなことを言ったつもりです。 しかし、この発言が学院の掲げるキリスト教の教えに反するとして、今井氏らが中心となって私の排斥運動を始めました。私には単なる言いがかりのようにしか見えません。 今井氏は校長という立場を利用して、教職員会議を二度にわたって理事長糾弾の決起集会の場に使ったり、配下の教員を使って勤務時間中に理事長排斥の賛同集めを繰り返したり就業規則などに著しく反する行動を行ったため、2021年6月に法人の懲戒委員会にかけられた結果、懲戒解雇が相当との判断が下されました。 これに対し、今井氏は京都地裁に懲戒処分をしないことを求める仮処分申請を行い、一連の動きをメディアに流しました。私は学校のイメージが悪化することを憂慮して、今井氏と話し合って、懲戒解雇処分の撤回を決めました。 もともと今井氏は、65歳の定年を延長して中高の校長を務めていたので、これを機会に退任し、後任含みで有力な提携校である学校法人立命館から羽田澄氏を副校長で迎え入れる人事が2022年1月に決まりました。約1年かけて今井氏から羽田氏に校長業務が引き継がれるはずでしたが、パソコン内の管理職フォルダが削除され、教職員会議をはじめとする各種の会議での執拗な嫌がらせが続きました。それらの行為について、私は今井氏や組合幹部が行ったものと見ています。その影響で、羽田氏は身心に不調をきたして23年3月に退任しました。羽田氏は文書で、詳細にどのような嫌がらせが行われたのか提出しています。 かつて今井氏は手下の教職員と一緒に「庭を掃除したい」と言って、私の自宅に来たことがあります。彼女は私に対する「二つの顔」を巧みに使い分け、定年後も校長として居座って何とか自分の生き残りを図り、その間に私を引きずり下ろすことを狙っていたのだと思います」 Q:辞任の決定打となるような動きは他にもあったのですか。 A:「2023年1月に教職員組合が私の退任を求めてストライキを断行し、理事長退任を求める約5000人の署名が提出されました。ストライキには、中高生まで参加するという異常事態です。今井氏は参加した生徒らに向けて拍手していました。 その署名活動などを調べると、どうも教職員の力だけでできるような規模ではなく、外部と結んだ政治活動の様相を帯びていました。生徒を政治活動に参加させても良いものかと私は疑問を感じています」』、「今井氏は、65歳の定年を延長して中高の校長を務めていたので、これを機会に退任し、後任含みで有力な提携校である学校法人立命館から羽田澄氏を副校長で迎え入れる人事が2022年1月に決まりました。約1年かけて今井氏から羽田氏に校長業務が引き継がれるはずでしたが、パソコン内の管理職フォルダが削除され、教職員会議をはじめとする各種の会議での執拗な嫌がらせが続きました。それらの行為について、私は今井氏や組合幹部が行ったものと見ています。その影響で、羽田氏は身心に不調をきたして23年3月に退任しました」、「「2023年1月に教職員組合が私の退任を求めてストライキを断行し、理事長退任を求める約5000人の署名が提出されました。ストライキには、中高生まで参加するという異常事態です」、なるほど。
・『率直に言えば、裏切られた  「ただ、今井氏は校長として、進学に関しての推薦や授業料減免で権限を持っているため、生徒や保護者が今井氏の方を向いてしまう現実は仕方ないので、ストライキに参加した学生や署名した保護者を恨む気持ちは全くなく、自分の権力を利用して、法人内の争いに生徒や保護者を巻き込んだ今井氏の手法が許せません。 このストライキと前後して、一部の週刊誌やネットメディアで、今井氏が、私が独裁やパワハラを行っているような発言をする記事が掲載されて世間を騒がし始め、私も心労が重なって体調が崩れかけたため、これ以上、法人に迷惑をかけたくないと思いから辞任を決めました。 自分の名誉のために敢えて申し上げますが、私にパワハラがあった否か法人の監事である弁護士が調査して、2023年3月29日付で報告書が提出されていますが、その中では、パワハラ行為は認められなかったと報告されています。 独裁か否かについては、私はかねてより私の経営手法は「衆議独裁」と法人内でも言ってきました。厳しい経営判断は、経営トップが責任をもって一人で行うが、判断に至るまでのプロセスにおいては意見を吸い上げるという意味です。 また、私が就任当初、影響力を排除した労組の幹部でも活用できる人材は活用してきました。その典型が今井氏でしょう。率直に言えば、裏切られたとの思いもあります。 また、法人監事による調査はそもそも保護者や教員からの要望で行われたものですが、私を追い出した連中にとっては都合の悪い調査結果になったため、非公開の扱いにしてくれと言いました。私は、それはおかしいと思いますので、中高のすべての保護者にそれを送ったところ、その行為に対して、法人の現理事長である毛利憲一氏から内容証明の郵便が届き、名誉理事長職や名誉学院長職をはく奪する可能性があると通告してきました。そもそもこうした報告書を非公開とすることがおかしいし、メディアを使って私にパワハラ行為があることをでっち上げておきながら、よくそんなことが言えるなと思います。私の行為にパワハラがあると吹聴した今井氏に対しては法的措置も検討したいと思っています」 Q:現在も名誉理事長であり、20年近く法人の経営を担ってきた立場として、今後の平安女学院に対して何かメッセージはありますか。 A:「私が理事長に就いた当初、平安女学院高校と言えば、制服の着こなしが乱れ、茶髪もOKで、地元でも評判が悪い学校でした。私はこうした校風の立て直しにも注力しましたが、今井氏は茶髪もOK、スマートフォンの利用も自由というふうに生徒心得を教職員の合意がないまま変えました。以前の平安女学院に戻ってしまうことを危惧しています。 023年度には、大学の入学者が定員の半分程度になっており、これでは経常赤字に陥る可能性が高く、この少子高齢化で回復させるのは至難の業です。 経営状況の悪化を受けて、理事会は、私が苦心して購入し、法人の迎賓館として、あるいは教養のために茶道を学ぶ場として活用してきた旧有栖川宮邸を売却する方向で動いているようです。売却すれば20億円程度の利益が出るので、その売却益で退職金などを捻出し、一息つく算段であることが透けて見えます。 また、最近発売された『宗教問題』という雑誌で、宗教系学校の経営問題が取り上げられ、そこで今井氏が、2024年に平安女学院大学の募集を停止する可能性に言及し、中高にも大胆な改革が必要になるとか、人員整理が必要だと述べていますが、私から見れば元労組の委員長で雇用を守る立場にあった者が理事になって立場が変わると豹変し、随分勝手なことを言っていると思います」』、「今井氏が、2024年に平安女学院大学の募集を停止する可能性に言及し、中高にも大胆な改革が必要になるとか、人員整理が必要だと述べていますが、私から見れば元労組の委員長で雇用を守る立場にあった者が理事になって立場が変わると豹変し、随分勝手なことを言っていると思います」、なるほど。
・『当の校長本人を直撃すると  山岡氏へのインタビューを受け、筆者は平安女学院の関係者に見解を聞いた。対応したのは、常務理事法人事務局長である栗田康文氏と、理事で中高学校長を務める今井千和世氏。 Q:山岡氏は、自身の辞任はクーデターであり、その首謀者が今井氏であると言っているが、それは事実か。 栗田氏「今井先生は今年5月24日付で理事に就きました。山岡前理事長体制下では理事ではなく、理事長人事を決めることにタッチできる立場ではなかったので、扇動して理事長を降ろしたということはありません」 今井氏「山岡前理事長の辞任は、2021年3月1日の卒業式における式辞の問題が原因です。その発言を聞いた保護者らから抗議があり、校長としてそれに対応せざるを得なかった。山岡前理事長は自らお辞めになったので、私が引きずり下ろしたのではありません」 Q:教職員会議を山岡氏排斥のための決起集会の場などに使ったことはあるか。懲戒解雇処分を受けたことは事実か。 今井氏「卒業式の式辞の問題に関して卒業生・保護者から電話が殺到し、教職員会議で対策を協議したことはありますが、排斥の場にしたことは全くありません。懲戒解雇処分を受けたことは事実ですが、山岡前理事長は騒ぎの拡大を心配したのか処分は撤回されました」 栗田氏「これまでの就業規則では、『上司に逆らえば厳重に処罰する』といった文言が細かく盛り込まれていましたが、それを今年4月3日付で改定しました。これまでも懲戒解雇処分を受けた職員がいますが、過去の労働裁判で法人側が敗訴していたこともあって改定しました。山岡前理事長の法人再建の実績は素晴らしいが、在任期間の晩年は法人が「個人商店化」した面は否めないと思います」 Q:立命館から校長含みで来た羽田澄氏に対して今井氏や組合幹部による嫌がらせが行われたなどと、羽田氏本人が文書で提出しています。 今井氏「校長でありながら私を外して会議が行われるなど、いじめられたのは私の方だと思っています。むしろ私は羽田先生にアドバイスを送り、助けたつもりです。羽田氏より管理職フォルダが消されたと聞きましたが、紙では残っているので、これを見てくださいとお示ししました」』、「管理職フォルダが消された」のは、「今井氏」を中心とした「羽田氏」に対する明白ないやがらせだ。それにしても、「今井氏」のやり方は陰湿だ。

次に、9月6日付けAERAdot「港区の公立中学「修学旅行はシンガポール」は“格差”の象徴か ネットは炎上も専門家は「評価すべき」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/200630?page=1
・『9月4日、高級住宅街が多いことで知られる東京・港区が、来年度から全ての区立中学校で修学旅行を海外で実施することを発表した。だが、これに対してネット上では異論や反論が噴出し、なかば炎上に近い状態となっている。 港区の公式サイトによると、最初の対象となるのは、2024年度の区立中3年生の生徒約760人。実施時期は24年6月から9月ごろで3泊5日を予定しており、行き先はシンガポール。事業費として約5億1200万円を計上するという。 教育問題に詳しいライターが言う。 「港区は全国でも屈指の“金持ち自治体”として知られています。修学旅行でシンガポールを訪れる意義として、『異文化を体験して国際理解を深めてもらう』『区立中の魅力向上』などを挙げています。これまで港区立中に通う生徒は修学旅行で京都や奈良を訪れ、約7万円を負担していました。一部報道によると、訪問先をシンガポールに変更しても、1人あたり約68万円を区が支払い、7万円の自己負担分は変わらないとのことです。いずれにしても中学生の修学旅行に5億円を超える予算を計上できる自治体は、そうはないでしょう」) だがこれに対して、X(旧Twitter)では批判の声が圧倒的に多い。「義務教育でわざわざ行く必要があるのか疑問」「地域格差、港区内格差、まぁ〜言えばキリがない。上級国民の子供だけが行けるんやろなー」「今井絵理子や松川るいと発想が同じ」などの声で埋め尽くされている。その理由を前出の教育ライターはこう分析する。 「これが高校や私立中学校の修学旅行なら、全く批判は起きなかったでしょう。しかし公立中学校は義務教育ですし、公教育は全国一律が基本です。財政破綻した北海道夕張市であっても東京都港区であっても、教育の質に違いがあってはいけない。港区の取り組みに対する反対意見を『嫉妬』と一蹴する人も多いですが、『裕福な港区に住む中学生は最高レベルの修学旅行を体験し、貧乏な自治体の中学生は内容に乏しい修学旅行しかできないということを看過していいのか』という本質的な問題提起があることも事実です」(同) 専門家はどう見るのか。教育評論家の親野智可等氏は「ネット上で批判が投稿されるのはとてもよく理解できます」と言う。 「Xを利用する年齢層を考えれば、当事者である中学生が批判の投稿を行っているとは考えにくい。似た年齢層のお子さんをお持ちの保護者が『私たちも一生懸命に働いて税金を納めているのに、港区の修学旅行だけシンガポールというのは不平等で納得できない』と考えて投稿したケースも多いと思います。しかしながら、やはり港区の取り組みは評価すべきですし、むしろ積極的に全国の自治体が参考にする必要があるではないでしょうか」)  その理由は何か。親野氏は「中学生が海外を訪れるメリットは極めて大きい」と述べたうえで、こう語る。 「特にシンガポールは多民族国家であり、世界中から観光客が訪れる人気スポットでもあります。文化資本も充実しており、シンガポールに旅行することは世界を見ることと同義です。教育的な価値は計り知れません。また普通の中学生は英語を『授業だからやる』『受験に必須だからやる』といった受け身の姿勢で学んでいることが多いと思いますが、シンガポールでは実際に英語を使うことができます。英語学習のモチベーションにつながることも期待できます」 Xでは「中学生の修学旅行なのだから、海外の文化に触れるより、伝統的な日本文化を体験するほうが価値がある」という意見も多くみられた。シンガポールより京都、奈良のほうが修学旅行先にはいいという指摘に対してはどうか』、「1人あたり約68万円を区が支払い、7万円の自己負担分は変わらない」、「事業費として約5億1200万円を計上」、義務教育で豊かな自治体と、通常の自治体でこんな格差が出ることは、望ましくないと私は考える。
・『「『日本文化が重要だ』という指摘は正論だと思います。とはいえ、『海外に行ったことで日本文化について何も知らないことを痛感し、帰国してから学ぶようになった』といった経験をした留学生も珍しくはありません。世界を見ることで自国文化の重要性を再認識することもあります」(親野氏) 港区の修学旅行で、自治体間の格差が浮き彫りになったのは事実だろう。とはいえ、その責任は中学生には全くないことは言うまでもない。) 「本来なら、全国の中学生が修学旅行で海外に行くぐらいが理想的なのです。とはいえ、実際問題として全国一律を目指していると物事は何も動きません。一種の“悪平等”になってしまうより、財政に余裕がある自治体は独自施策として見切り発車し、修学旅行で海外に向かう公立中学生を増やしていくのが現実的ではないでしょうか。行ける余裕がある自治体なら、どんどん行ったほうがいいのです」(親野氏) 22年10月、経済協力開発機構(OECD)は教育機関における公的支出の割合(2019年時点)を発表した。OECDの加盟国でデータある37カ国のなかで、日本はわずか2・8パーセント(平均4・1%)。順位は36位という低水準だった。 「ノミとガラスの蓋の寓話(ぐうわ)があります。本来ノミは高い跳躍ができるのですが、コップに入れてガラスの蓋をすると跳躍力が下がってしまう。蓋を取っても跳躍力は低いまま。そこに本来の跳躍力のあるノミを新たに入れて高く跳躍する姿を見せる。すると跳躍力が下がっていたノミもまた本来の跳躍ができるようになるという話。つまり、修学旅行で海外に行ける自治体が出れば、それを見た他の自治体も『うちもできるはず』となり、それが広がっていく可能性があるということです。そもそも予算というものは、『あるようでなかったり、ないようであったり』するものです。教育のために公的支出を増やすという意思を強く持てば国レベルでも自治体レベルでもなんとかなるものです」(同・親野氏) 港区の“炎上事例”として終わらせずに、公教育全体の底上げという議論につながることを期待したい』、「一種の“悪平等”になってしまうより、財政に余裕がある自治体は独自施策として見切り発車し、修学旅行で海外に向かう公立中学生を増やしていくのが現実的ではないでしょうか」、義務教育期間は「悪平等」で構わないと思う。その後は、いやでも格差を受け入れざるを得ない。

第三に、9月18日付けAERAdot「人生に絶望したIQ130超「ギフテッド」女性が救われた「インド」と「ラジオ」 やっと気づいた「生きる喜び」 ギフテッドの光と影」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/201416?page=1
・『高い知性や能力のために、周囲とのなじめなさなどさまざまな悩みを抱えることも多い「ギフテッド」。好評発売中の書籍『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)では、そんな彼らが困難を乗り越えるまでの半生を紹介している。モデル・ラジオパーソナリティーのMIOさんも、ギフテッドならではの「うつヌケ」を経験した一人だ。「人間の感情がわからない」といい、「考え方のパターン」を学ぶために映画をひたすらインプットし続けた日々を「前編」で紹介した。だが、それでも「本当の自分がわからない」状態は続いたという。「後編」では、そこからどのように精神的な行き詰まりを乗り越えたのかを追った。 ※【前編】<IQ130超「ギフテッド」女性が小学校の担任に嫌われた切ない理由 「人の感情を“データ”で理解しようと…」>より続く  両親から「一番をめざしなさい」「偉い人になりなさい」と育てられたMIOさん。幼少期は他者の気持ちがなかなか理解できなかったが、映画を通じて人の感情を学び、映画のなかの「良い人」の行動を演じるという、持ち前の知能の高さを生かした方法で、なんとか周囲と合わせて生きてきた。 15歳からモデルの仕事を始めたものの、親の期待を超える大成功には至らない。「壁」にぶつかったことで、精神的な“バーンアウト”を経験した。 ただ、モデルの世界に足を踏み入れたことは、すっかりわからなくなってしまった「本当の自分」を探す第一歩になったのも事実だった。) 「仕事を通じて出会った芸術家の人たちが、私の考え方の変な部分を全部認めてくれたんです。自分の内なるものに耳を澄ませて爆発させる、彼らの創作活動を間近で見るなかで、『私も、自分の心を育てたい』と思うようになりました」 感情よりも合理性を重視するあまり、他者の間違いを指摘したり(正しいことを伝えるほうが、相手にとっても有益だと思っていた)、ときには論破してしまっていたMIOさんの心に変化が生じた日々だった。 そして、思い出したのが、小学生のころからしていたボランティアの活動だった。 「とにかく寂しい子ども時代だったので、愛情を求めて児童福祉施設や老人福祉施設に行っていたのですが、そこですごく喜んでもらえていたことを思い出したんです。『私がお金をもらわなくてもやっていたことってなんだろう』と考えた結果、『福祉の施設を作りたい』という夢を持ちました」 そうして、24歳で慶應義塾大学の看護医療学部に入学。ただ、悩んだ末に入った看護の世界は、彼女にとって、想像以上に過酷なものだった』、「幼少期は他者の気持ちがなかなか理解できなかったが、映画を通じて人の感情を学び、映画のなかの「良い人」の行動を演じるという、持ち前の知能の高さを生かした方法で、なんとか周囲と合わせて生きてきた。 15歳からモデルの仕事を始めたものの、親の期待を超える大成功には至らない。「壁」にぶつかったことで、精神的な“バーンアウト”を経験した」、「小学生のころからしていたボランティアの活動だった。 「とにかく寂しい子ども時代だったので、愛情を求めて児童福祉施設や老人福祉施設に行っていたのですが、そこですごく喜んでもらえていたことを思い出したんです。『私がお金をもらわなくてもやっていたことってなんだろう』と考えた結果、『福祉の施設を作りたい』という夢を持ちました」 そうして、24歳で慶應義塾大学の看護医療学部に入学。ただ、悩んだ末に入った看護の世界は、彼女にとって、想像以上に過酷なものだった」、なるほど。
・『「患者さん一人一人に向き合って、その人生を追体験して……ということを繰り返すうちに、相手に感情移入しすぎるようになってしまったんです。ずっと泣いているものだから、先生から『あなたが病室に入ると患者さんは自分が死ぬのかと思っちゃうから、入らないでね』と言われるまでになってしまいました。医療の現場は悲しいことの連続です。心が動じないようにしないと、自分が壊れてしまう。だから慣れるようになっていく……と先輩の看護師さんには言われていたのですが、私は違いました。子どものころは『人間がわからない』だったのに、人生経験を重ねるなかで、逆に『わかりすぎるようになってしまっていた』んです。当時は、世の中で起きるすべてのことに感情移入している状態でした」) 看護医療学部に入って3年後の27歳、思い悩んだMIOさんは「人生を終わらせよう」と考えて、インドに行くことにした。 「ネットで『死にたい』と調べたら、『とりあえずインドに行け』と書いてあったんです。“自分探し”というより“自分を終わらせる”つもりでした。身辺整理もして、バックパックを背負って旅立ちました」 インドでは、身寄りがない高齢者や、貧しくて病院に行くことができない患者が暮らすホスピス「マザーテレサハウス」で過ごしていた。 「そこで彼らがとても澄んだ目をして、喜んで亡くなっていくことに衝撃を受けたんです。しかも、自分が最期をみとった人に『ここでご飯をもらえて、あなたの腕の中にいられてうれしい』と言われて……。『あとは帰って、少しでも人の役に立つだけだ』と思えるようになりました。この旅を通じて、少しだけ感情移入の度合いを調整できるようになったんです」 人間はいつか必ず死ぬ。しかし、それは悲しいこととは限らない。当人の生き方、考え方で大きく変わるもの……日本から遠く離れた異国の地で、多くの死に触れるなかで、少しずつだが自他の境界が形成されていったようだ』、「「患者さん一人一人に向き合って、その人生を追体験して……ということを繰り返すうちに、相手に感情移入しすぎるようになってしまったんです。ずっと泣いているものだから、先生から『あなたが病室に入ると患者さんは自分が死ぬのかと思っちゃうから、入らないでね』と言われるまでになってしまいました。医療の現場は悲しいことの連続です。心が動じないようにしないと、自分が壊れてしまう。だから慣れるようになっていく……と先輩の看護師さんには言われていたのですが、私は違いました」、「インドでは、身寄りがない高齢者や、貧しくて病院に行くことができない患者が暮らすホスピス「マザーテレサハウス」で過ごしていた。 「そこで彼らがとても澄んだ目をして、喜んで亡くなっていくことに衝撃を受けたんです。しかも、自分が最期をみとった人に『ここでご飯をもらえて、あなたの腕の中にいられてうれしい』と言われて……・・・この旅を通じて、少しだけ感情移入の度合いを調整できるようになったんです」 人間はいつか必ず死ぬ。しかし、それは悲しいこととは限らない。当人の生き方、考え方で大きく変わるもの……日本から遠く離れた異国の地で、多くの死に触れるなかで、少しずつだが自他の境界が形成されていったようだ」、なるほど。
・『帰国後、看護師資格を取得したMIOさん。IQ130以上が入会条件となる「MENSA」の会員となったのもこのころだ。「ほかに何か取れる資格はあったっけ」という気持ちで受けた入会試験だった。もっともMIOさんは、高校時代に受けた知能検査ですでに自分が「知能検査が得意」であることは知っていたという。 さらにラジオ番組「シンクロのシティ」(TOKYO FM)に抜擢される機会にも恵まれた。この仕事が結果的に彼女にとって人生の“リハビリ”となった。 「ゲストのタレントさんや作家さんに話を聞くことも多かったのですが、最初は失敗続きでした。幼少期からなんでも調べすぎる性質なので、ゲストのブログを10年分読んだり、著作を全部読んだりして、当日にはその人への疑問がなにもない状態になっているんです。『こういうことですよね?』と聞いて『はい、その通りです』と言われて会話が終わる……。話を引き出せないし、毎日朝まで予習に追われるという状況でした。そこで言われたのが『何で何で坊やになりなさい』という言葉。調べなくていいから、素直に疑問に思ったことを聞くようにしなさいと。私としては驚きでしたが、仕事をするなかで『ラジオの仕事は、正解や答えを伝えることではない。人間同士のやりとりの中で、感情を伝え合い、分かち合うことなんだ。その結果、リスナーさんにも何かを感じてもらうことなんだ』とだんだんわかっていきました。パーソナリティーの堀内貴之さんをはじめ、スタッフのみんなが愛だけで生きてる、リスナーさんたちまで本当に温かい現場でした」) 5歳まで両親と離れて祖父母と暮らし、それ以降も「他者の気持ちがわからない」「本音を話せない」ことから寂しさを抱き続けてきたMIOさん。しかし、20代以降に出会った「インド」と「ラジオ」の2つが、人間が生きることにおける“本質的な喜び”を教えてくれた。 また、子どもが生まれたことも、MIOさんにとって大きな出来事となった。 「私は子どもを無条件に愛しているし、子どもも私のことを無条件に愛してくれています。幼少期を父母と離れて過ごしたり、その後もなかなか本音を言えずに生きてきた私の人生になかったものが、やっと埋まった感覚がありました。これまで30年間くらい、楽しい“ふり”をしてきたことに気づきました。でも今は、子どもたちとふざけてるだけで本当に楽しいんです」 つらい出来事も多くあったものの、大人になってからのさまざまな出会いと自らの工夫のおかげで、今、幸せに過ごしているMIOさん。 ただ、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはならず、当時抱いた痛みや寂しさは今も記憶している。だからこそ、今、生きづらさや悩みを抱えている子どもたちに向ける視線も優しい。「生きづらさを感じてる、子どもたちに伝えたいことは?」と筆者が尋ねると、「この質問が、一番悩んだんです……」と前置きしつつ、慎重な口調で、次のように語った。) 「自分が何と言ってもらえればうれしかったか、救われたかといえば、それは『人と違うことは才能なんだよ』ということだと思います。私は嫌われないようにするために、周囲に合わせることに何十年も力を使ってきてしまい、自分のいいところに目を向けることはありませんでした。『無駄な時間を過ごしたな……』『もっと能力を伸ばしてあげられたのかもな……』という後悔の気持ちも、正直なところ私にはあるんです。私は30歳近くまで自分の生きづらさの原因がわからなかったので、対処法に追われる日々でした。今生きづらいと感じていて、自分の個性や特性をもう理解できている方なら、きっと自分らしく生きていく方法を編み出していけると思います」 そして、最後にこう続けた。 「今はいろんな選択肢がある時代ですよね。私の場合は高校でインターナショナルスクールに進むことを選びましたが、今はオンラインでたくさんの人ともつながれる。そうした選択に後ろめたさを感じる必要もまったくないですしね。もうそろそろ、古い価値観も変えていっていいんじゃないかなと思います」』、「子どもが生まれたことも、MIOさんにとって大きな出来事となった。 「私は子どもを無条件に愛しているし、子どもも私のことを無条件に愛してくれています。幼少期を父母と離れて過ごしたり、その後もなかなか本音を言えずに生きてきた私の人生になかったものが、やっと埋まった感覚がありました。これまで30年間くらい、楽しい“ふり”をしてきたことに気づきました。でも今は、子どもたちとふざけてるだけで本当に楽しいんです」、「私は30歳近くまで自分の生きづらさの原因がわからなかったので、対処法に追われる日々でした。今生きづらいと感じていて、自分の個性や特性をもう理解できている方なら、きっと自分らしく生きていく方法を編み出していけると思います」、ようやく見つけた「自分らしく生きていく方法」で人生を楽しんでほしいものだ。 
タグ:教育 (その31)(平安女学院の「クーデター事件」が恐ろしすぎる…辞任に追い込まれた名物理事長の告白《女性校長は 中高生までストライキに巻き込んだ》、港区の公立中学「修学旅行はシンガポール」は“格差”の象徴か ネットは炎上も専門家は「評価すべき」、人生に絶望したIQ130超「ギフテッド」女性が救われた「インド」と「ラジオ」 やっと気づいた「生きる喜び」 ギフテッドの光と影) 現代ビジネス 井上 久男氏によう「名門・平安女学院の「クーデター事件」が恐ろしすぎる…辞任に追い込まれた名物理事長の告白《女性校長は、中高生までストライキに巻き込んだ》 「名門の学校法人・平安女学院(京都市)で、理事長や学院長を長年務めていた山岡景一郎氏(92歳)が今年4月2日付で突如、辞任に追い込まれた。氏は経営破たん寸前の同学院を救済した功労者で、高齢ながらも、頭脳明晰で教育への熱意は衰えることがなく、政財界に太いパイプがある「名物理事長」として知られていた。 辞任の背景には「クーデターがあった」と指摘」、 「80億円近い累積債務があり、事実上、経営は破たんしていました。その債務のうち15億円は理事会の承認を得ていない、ノンバンクからの隠れ債務でした。 杜撰な経営体制だった理由は、教職員組合が学校経営を支配していたからでした。経営破たん寸前なのに教職員の賃金水準は京都府下でトップクラス」、「私が自ら交渉し、わずか1年近くで債務整理に目途をつけました。教職員に対しては、いったん退職金を支払ってやめてもらい、新人事制度の下、賃金を30%カットして再雇用しました。 同時に経営に対する労組の関与も排除しました。 こうした改革を踏まえて2003年に私は理事長に就任しましt・・・大学は実学重視で就職率を高め、中・高は教育の質を高めることなどで入学者を増やし、経営を再建しました」、本当に「実力があり、実績も上げてきたのに、「クーデターで追われたとは難しいものだ。 「平安女学院大学は小規模私学であり、定員が多い大規模私学に学生を奪われる傾向がありましたので、それを是正するために、下村博文・文科相(当時)に事情を詳しく話し、小規模校のハンディキャップを取り除く対策の実現に繋げることができました」、政治力もあったようだ。 「今井氏は、65歳の定年を延長して中高の校長を務めていたので、これを機会に退任し、後任含みで有力な提携校である学校法人立命館から羽田澄氏を副校長で迎え入れる人事が2022年1月に決まりました。約1年かけて今井氏から羽田氏に校長業務が引き継がれるはずでしたが、パソコン内の管理職フォルダが削除され、教職員会議をはじめとする各種の会議での執拗な嫌がらせが続きました。それらの行為について、私は今井氏や組合幹部が行ったものと見ています。その影響で、羽田氏は身心に不調をきたして23年3月に退任しました」、 「「2023年1月に教職員組合が私の退任を求めてストライキを断行し、理事長退任を求める約5000人の署名が提出されました。ストライキには、中高生まで参加するという異常事態です」、なるほど。 「今井氏が、2024年に平安女学院大学の募集を停止する可能性に言及し、中高にも大胆な改革が必要になるとか、人員整理が必要だと述べていますが、私から見れば元労組の委員長で雇用を守る立場にあった者が理事になって立場が変わると豹変し、随分勝手なことを言っていると思います」、なるほど。 「管理職フォルダが消された」のは、「今井氏」を中心とした「羽田氏」に対する明白ないやがらせだ。それにしても、「今井氏」のやり方は陰湿だ。 AERAdot「港区の公立中学「修学旅行はシンガポール」は“格差”の象徴か ネットは炎上も専門家は「評価すべき」」 「1人あたり約68万円を区が支払い、7万円の自己負担分は変わらない」、「事業費として約5億1200万円を計上」、義務教育で豊かな自治体と、通常の自治体でこんな格差が出ることは、望ましくないと私は考える。 「一種の“悪平等”になってしまうより、財政に余裕がある自治体は独自施策として見切り発車し、修学旅行で海外に向かう公立中学生を増やしていくのが現実的ではないでしょうか」、義務教育期間は「悪平等」で構わないと思う。その後は、いやでも格差を受け入れざるを得ない。 AERAdot「人生に絶望したIQ130超「ギフテッド」女性が救われた「インド」と「ラジオ」 やっと気づいた「生きる喜び」 ギフテッドの光と影」 「幼少期は他者の気持ちがなかなか理解できなかったが、映画を通じて人の感情を学び、映画のなかの「良い人」の行動を演じるという、持ち前の知能の高さを生かした方法で、なんとか周囲と合わせて生きてきた。 15歳からモデルの仕事を始めたものの、親の期待を超える大成功には至らない。「壁」にぶつかったことで、精神的な“バーンアウト”を経験した」、 「小学生のころからしていたボランティアの活動だった。 「とにかく寂しい子ども時代だったので、愛情を求めて児童福祉施設や老人福祉施設に行っていたのですが、そこですごく喜んでもらえていたことを思い出したんです。『私がお金をもらわなくてもやっていたことってなんだろう』と考えた結果、『福祉の施設を作りたい』という夢を持ちました」 そうして、24歳で慶應義塾大学の看護医療学部に入学。ただ、悩んだ末に入った看護の世界は、彼女にとって、想像以上に過酷なものだった」、なるほど。 「「患者さん一人一人に向き合って、その人生を追体験して……ということを繰り返すうちに、相手に感情移入しすぎるようになってしまったんです。ずっと泣いているものだから、先生から『あなたが病室に入ると患者さんは自分が死ぬのかと思っちゃうから、入らないでね』と言われるまでになってしまいました。医療の現場は悲しいことの連続です。心が動じないようにしないと、自分が壊れてしまう。だから慣れるようになっていく……と先輩の看護師さんには言われていたのですが、私は違いました」、 「インドでは、身寄りがない高齢者や、貧しくて病院に行くことができない患者が暮らすホスピス「マザーテレサハウス」で過ごしていた。 「そこで彼らがとても澄んだ目をして、喜んで亡くなっていくことに衝撃を受けたんです。しかも、自分が最期をみとった人に『ここでご飯をもらえて、あなたの腕の中にいられてうれしい』と言われて……・・・この旅を通じて、少しだけ感情移入の度合いを調整できるようになったんです」 人間はいつか必ず死ぬ。しかし、それは悲しいこととは限らない。当人の生き方、考え方で大きく変わるもの……日本から遠く離 れた異国の地で、多くの死に触れるなかで、少しずつだが自他の境界が形成されていったようだ」、なるほど。 「子どもが生まれたことも、MIOさんにとって大きな出来事となった。 「私は子どもを無条件に愛しているし、子どもも私のことを無条件に愛してくれています。幼少期を父母と離れて過ごしたり、その後もなかなか本音を言えずに生きてきた私の人生になかったものが、やっと埋まった感覚がありました。これまで30年間くらい、楽しい“ふり”をしてきたことに気づきました。でも今は、子どもたちとふざけてるだけで本当に楽しいんです」、 「私は30歳近くまで自分の生きづらさの原因がわからなかったので、対処法に追われる日々でした。今生きづらいと感じていて、自分の個性や特性をもう理解できている方なら、きっと自分らしく生きていく方法を編み出していけると思います」、ようやく見つけた「自分らしく生きていく方法」で人生を楽しんでほしいものだ。
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マイナンバー制度(その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!) [経済政策]

マイナンバー制度については、本年8月28日に取上げた。今日は、(その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!)である。

先ずは、8月29日付け日刊ゲンダイ「厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328194
・『「メリットが乏しい」──。来秋に予定されている現行の保険証の廃止について、厚労省が出したコスト削減試算に医療関係者から「物言い」がついている。 厚労省は保険証廃止に伴うコスト削減について、①マイナ保険証の利用登録率が現状より進む場合と、②利用登録率が現状のままの場合の2パターンに分けて試算。利用登録率が65~70%に達するとした①では削減額が100億~108億円、利用登録率が現状の52%のままとした②では同76億~82億円──とはじき出した。24日の社会保障審議会医療保険部会で示した。 一見すると、保険証廃止によるコスト削減のメリットが大きいように見えるが、実はそうでもない。全国保険医団体連合会(保団連)は25日、厚労省の試算について検証。次のように指摘している。 〈2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない〉 岸田首相は今月4日の総理会見で、マイナ保険証を普及させるメリットについて「従来の健康保険証に比べ、発行コストあるいは保険者の事務負担は減少する。これは当然のことだと思っています」と胸を張っていたが、医療費全体からしてみればコスト減は極めて小さいのだ。さらに保団連は、厚労省が推計している現行の保険証発行にかかるコスト235億円を引き合いに出し、〈医療給付全体だとわずか0.053%に過ぎない〉と指摘。〈健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である〉と喝破している』、「2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない」、「健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である」、その通りだ。
・『国民皆保険制度が揺らぐ事態  保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)がこう言う。 「極めて粗い試算とのことですが、それにしても、保険証廃止によるコスト減は微々たるものです。さらに言えば、マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」) 「せめて紙の保険証と併用するべき」 政府は保険証廃止の唯一のメリットを「コスト減」とうたってきたが、どう考えても削減効果は極めて乏しい。皆保険制度を危機にさらしてまで推し進めるべきではないことは明らかだ。 「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」(竹田智雄氏) 使いたい人だけがマイナ保険証を使えるようにすればいいだけの話である。スケジュールありきの保険証廃止が生む混乱は、ムダ以外の何ものでもない』、「マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、「「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」。「国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、その通りだ。

次に、8月30日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/08/post-248_1.php
・『<パビリオン建設が遅れる大阪・関西万博と、保険証との強引な統合に批判が集まるマイナカードには、共通する問題点が> パビリオン建設の大幅な遅れによって大阪万博の開催が危ぶまれている。一方、政府のマイナンバー制度は保険証との一体化をめぐって迷走を続けており着地点が見えない。一見すると無関係な大阪万博とマイナカードの問題に共通しているのは、ハコモノ行政という時代遅れの発想である。 大阪万博は2025年春の開催を目指して準備が進められているが、万博の華と呼ばれ、イベントの目玉となる海外パビリオンの建設が進んでいない。海外パビリオンのうち建設事業者が決定したのは6件しかなく、8月14日時点で建設申請が出されたのは2件のみである。 共同館方式など他のパビリオン建設は進んでいるものの、海外勢による独自パビリオンがなければ万博はもはや意味をなさず、一部からはスケジュールの延期を促す声すら上がっている状況だ。 これはプロジェクト管理という方法論の問題だが、大阪万博については当初から開催そのものの意義を問う声も上がっていた。近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう』、「近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、「開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだった」、というのは意味深だ。
・『昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴  つまり万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴ということになるわけだが、この話は、政治的に大問題となっているマイナンバー制度にも当てはまる。 マイナンバー制度については、政府が保険証との統合を強引に進めたことから批判が殺到している。十分な準備を行わないままシステムの連携を実施したこともあり、あちこちで深刻なトラブルが発生している。 一部からはスケジュールの見直しや制度の抜本的な見直しを求める声が出ているが、政府や推進論者はマイナカードをやめてしまうと「日本のデジタル化が遅れる」として強く反発している』、「万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴」、はいいとしても、「マイナンバー制度」にも当てはまるとはどういうことだろう。
・『実際には「カード」は必須ではない  しかしながら、カードがないと日本のデジタル化が遅れるというのは事実ではなく、むしろその逆である。全国民には既にマイナンバーが振られており、システム連携さえしっかりすれば制度はすぐにスタートできる。本人確認の方法はさまざまなので、カードがなくても何の問題もなくシステムの運用が可能だ。 実際、韓国は日本をはるかに上回るマイナンバー制度を整えているが、韓国人はカードというものは保有していない。自分の名前や住所など必要な情報を窓口で伝え、本人であると確認されれば病院でも区役所でも手続きが自動的に進む。 おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。 ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう』、「おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう」、「ハコモノ行政」と、「マイナンバー制度」のつながりがようやく理解できた。 

第三に、9月12日付け日刊ゲンダイ「マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前、今後どこまで下がるのか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328924
・『これほど嫌われるカードはいまだかつてあったのだろうか──。相次ぐトラブルで不信や不安が広がるマイナ保険証。医療機関や薬局でほとんど利用されていない実態が判明した。 マイナカード保有者がマイナ保険証の利用登録を申し込めば、7500円分のマイナポイントがもらえる。その付与期限が今月末に迫り、利用登録件数は直近1カ月で約120万件増えた。 ところが、マイナ保険証の利用率はジリ貧だ。厚労省の発表データによると、全国の利用率はオンライン資格確認が義務化された4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落している。 いったん、マイナ保険証での受け付けを始めてみたものの、あまりに使い勝手が悪く、利用を避ける医療機関が続出しているということだ』、「全国の利用率は・・・4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落」、ここまで低迷が続いているとは問題だ。
・『オンライン資格確認「業務が増えた」92%  埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った。 〈とにかく手間がかかる〉〈エラー時とてもたいへん。レセプト会社に電話がつながらない〉〈紙カルテに手書きで保険証情報をうつすようになり業務量が増えた〉など切実な声が寄せられた。 「健康保険証を存続すべき」と回答した開業医は、5月調査の85%から96%へと増え、100%に迫っている。埼玉県保険医協会の担当者が言う。 「6月以降、マイナ保険証を巡るトラブルが次々と発覚し、連日、報じられました。5月調査より、一気に医療機関のマイナ離れが進んだ印象です。利用率は支持率のようなもの。利用率5%割れが目前でも、来年秋の保険証廃止を見直さず、マイナ保険証を推進するつもりなのでしょうか」 この先、利用率はさらに下落する可能性もある。 「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」(医療関係者)』、「埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った」、「「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」」、なるほど。
・『厚労省も危機感  7日の立憲民主党のヒアリングで厚労省の担当者は、利用率の低下に危機感を示しつつも、来年秋までの利用率の目標は「設定していない」と答えた。 内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか』、「内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか」、どうするのでろう。

第四に、9月16ダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの早川幸子氏による「トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329181
・『度重なるトラブルが報道されているマイナンバーカードと、それを保険証として使う「マイナ保険証」。既存の保険証が来年廃止となることもあり、政治的な混乱も含み反発を招いているが、実は「それでも」マイナ保険証を使うべき理由がある。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第266回では、非難ごうごうのマイナ保険証を使うメリットと、万一トラブルになったときにも慌てない対処法を取り上げる』、興味深そうだ。
・『医療費を考えるとやはりマイナ保険証を使うほうがおトクになる理由  マイナ保険証に関する数々のトラブルが報告されている。 これまでに報告されているトラブル内容は、カードや読み取り機械の不具合で資格確認ができなかったり、自己負担割合が間違っていたりしたというものだ。また、別の人の情報がひも付けされていたというケースもあった。 トラブルに見舞われた人のなかには、その場では公的な医療保険(健康保険)が適用してもらえず、いったん医療費の全額(10割)を請求されたという人もいるようだ。 こうした話を見聞きすると、「使っても大丈夫なのだろうか?」とマイナ保険証に不信感を抱く人が出てくるのも当然だろう。とりあえず登録はしたものの、利用するのをちゅうちょしている人もいるのではないだろうか。 だが、少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている。 そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい。 +基準を満たした病院では、健康保険証を利用するよりも、初診時は40円、再診時は20円安くなる +マイナ保険証カードリーダーの画面で「薬剤情報・特定健診情報」についての質問に、「同意する」と答える必要がある +不具合で資格確認ができなかった場合は、「被保険者資格申立書」に記入して、医療機関の窓口に提出すればOK。スマホのマイナポータルサイトの資格情報画面や健康保険証での確認も可能)』、「少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている」、 「そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい」、なるほど。
・『マイナ保険証の利用登録増加ともに明らかになったトラブルの数々  マイナ保険証は、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、加入先の健康保険組合や自己負担割合などの資格情報を確認するというものだ。 コロナ禍では、病院や診療所などの医療機関と保健所をつなぐネットワークの混乱ぶりが露呈したが、その原因のひとつが医療分野のICT化の立ち遅れだ。そのため、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)によって業務効率を引き上げ、安心・安全で質の高い医療を提供していくために、2021年10月から本格的にマイナ保険証が導入されることになった。 ただし、当時はまだ、マイナンバーカードを持っている人は人口の半分以下で、マイナ保険証の登録率も低迷していた。 デジタル庁の「マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード」のデータテーブル(2023年9月8日更新)によると、2022年4月3日時点でのマイナンバーカードの累計交付枚数は約5489万枚で、人口に対する交付率は約43.3%。このうち、マイナ保険証の利用登録を行った人は約811万人で、カード取得者の14.8%しか登録を行っていなかった。 そのため、2022年4月にマイナ保険証で行われた健康保険の資格確認件数は、約19万件しかなかった(厚生労働省保険局「マイナンバーカードと健康保険証の一体化について」)。 だが、その後、マイナポイントの付与など、カード普及のための国を挙げたキャンペーンによって、マイナンバーカードの取得や健康保険証としての利用登録をする人が急増。2023年7月2日時点の累計交付枚数は約9309万枚(人口の約73.9%)で、6470万人(カード取得者の69.5%)がマイナ保険証を登録するに至っている。 カードの普及に伴い、マイナ保険証による健康保険の資格確認件数も781万件(2023年7月)まで増加したが、同時に報告されるようになったのが冒頭のようなトラブルだ。 マイナンバーカードを健康保険証として利用するための登録をしたときに、誤って他人の情報がひも付けされ、医療機関でマイナ保険証を使おうと思っても、資格情報の確認ができない事例が報告されるようになる。国の「マイナンバー情報総点検本部」の会議資料によると、マイナ保険証が本格導入された2021年10月から、2023年7月末までに判明した誤登録件数は8441件で、そのうち15件は他人に情報を閲覧された跡が残っていたという。 このほかに、全国保険医団体連合会(保団連)の「マイナ保険証による医療現場のトラブル調査・最終集計(6月16日集計)」によると、調査に回答した65%の医療機関が何らかのトラブルを経験している。 たとえば、カードを差し込んでも「無効・該当資格なし」とカードリーダーに表示されたり、マイナンバーカードやカードリーダーの不具合など、何らかの理由で情報を読み取ることができなかったりして、マイナ保険証で資格情報の確認ができないというトラブルだ。 資格確認ができないため、無保険扱いとなり、いったん医療費の全額(10割)を請求された人もいるようだ。70歳以上の人は、間違った自己負担割合が登録されていたケースもあったという。) 機械の操作方法が分からなかったり、本人確認のための顔認証ができなかったりする患者への対応で、事務の負担が増えている病院や診療所もある。国は、2024年秋をめどに、従来型の健康保険証を廃止することを予定しているが、医療現場からは存続を求める声も上がっている。 こうしたトラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる。だが、マイナ保険証を利用した人すべてがトラブルになっているわけではない。問題なく資格確認ができて、通常通りの自己負担で、必要な医療を受けられている人も多い。 なにより、健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない』、「トラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる」、「健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない」、なるほど。
・『マイナ保険証のほうが健康保険証より 初診時は40円、再診時は20円安くなる  医療分野のデジタル化を推進するために、現在、オンラインで資格情報の確認や医療費の請求ができる体制を整えた医療機関に対しては、通常よりも高い診療報酬が支払われる措置が取られている。 その報酬が、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」と呼ばれるもので、2023年4月~12月までは、患者が支払う医療費にも次のような影響が出る。 その病気で初めて医療機関を受診したときの初診料は、マイナ保険証の場合は20円(3割負担で6円)、健康保険証の場合は60円(3割負担で18円)。再診時は、マイナ保険証を利用すると上乗せの加算はないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされる(加算されるのは、いずれも月1回)。 つまり、マイナ保険証を利用したほうが、健康保険証を利用するよりも、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)安くなるというわけだ。 この加算が付くのは、次の3つの施設基準を満たしている医療機関だ。 (1)オンライン請求を行っている、または2023年12月31日までに、オンライン請求を開始することを国に届け出ている (2)マイナ保険証のカードリーダー設置などオンライン資格確認を行う体制を整えている (3)オンライン資格確認ができることを、院内の見やすい場所(受付など)やホームページ等に掲示している この施設基準を満たしておらず、マイナ保険証による資格確認をできる体制が整っていない医療機関は、そもそも加算が付かない。実のところ、そうした医療機関を利用するのが、医療費は一番安い。だが、厚生労働省の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、2023年9月3日現在、病院の93.6%、診療所の81.5%が運用を開始している。 ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。 ただし、注意しなければならないのは、単にマイナ保険証で資格確認をしただけでは医療費は安くならないという点だ』、「ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。、なるほど。
・『マイナ保険証で資格確認ができないときは「被保険者資格申立書」で対応できる  医療費が安くなるのは、マイナ保険証で資格確認した上で、他の医療機関の紹介状を持参するか、診療情報提供に同意した場合だ。 診療情報提供への同意は、マイナ保険証で資格確認をするときに、カードリーダーの画面に出てくる「薬剤情報・特定健診情報」についての質問に、「同意する」と答えることで完了する。医療費を安くしたい人は覚えておこう。 マイナンバーカードの保有や、マイナ保険証の登録は強制ではない。持つかどうかは、それぞれの人が自由に決めればいいことだ。 政府は、2024年秋をめどに、従来型の健康保険証を廃止する方針は変更しておらず、カードを保有していない人や、マイナ保険証の利用登録をしていない人に対しては、健康保険証に代わるものとして「資格確認書」が交付されることになっている。 当初、資格確認書は、本人の申請によって交付することになっていた。だが、マイナンバーカードの問題点を総点検するなかで、本人からの申請がなくても、マイナ保険証の未登録者には自動交付することになった。有効期間は5年以内で、それぞれの健康保険組合が発行する。 マイナ保険証の利用登録をしていなくても、健康保険の適用は受けられるし、医療機関の窓口では年齢や所得に応じて1~3割を負担すればよいというのは変わらない。 だが、前述のように、医療費の面ではマイナ保険証を使ったほうがお得になるのは間違いない。また、トラブルに遭った場合も、通常通りの自己負担額(年齢や所得に応じて1~3割)で、医療を受けられるようにする対応策も取られるようになってきている。 きちんと健康保険に加入し、マイナ保険証の利用登録をしているにもかかわらず、何らかの不具合で資格確認ができなかった場合は、「被保険者資格申立書」に、健康保険組合の名称、自己負担割合などを記入して、医療機関の窓口に提出すれば、通常通りに保険診療を受けることができる。 とはいえ、マイナ保険証のトラブルに遭ったときに、いちいち申立書を記入するのは少々面倒だ。申立書のほかに、(1)スマートフォンで、マイナポータルサイトの資格情報画面を確認する、(2)健康保険証で確認する、という2つの方法でも、資格確認はできる。 医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ』、「医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ」、なるほど。
・『健康保険も施行当初はトラブルだらけ 廃止を求めるストライキも勃発した  新しいシステムが始まるときは、思いもかけないトラブルが起こるものだ。今でこそ、日本の医療制度の根幹となっている健康保険も、順風満帆の船出だったわけではない。 1927(昭和2)年1月1日に、健康保険法が施行された約2カ月後。健康保険料の納付を巡り、想定外の出来事が起こっていた。健康保険料を納めるために、1000人近い健康保険の経理担当者が日本銀行に押し寄せ、銀行業務に支障をきたしたことを、『東京朝日新聞』(1927年3月5日付)が報じている。その様子は、「日銀前の広庭はまるで浅草仲見世の様な騒ぎ」だったそうだ。 健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ。 マイナ保険証による資格確認は、始まったばかりのシステムだ。医療分野でのデジタル化が進んで、診療情報を一元的に管理できるようになれば、服用する医薬品の重複や、無駄な検査をなくすことができて、患者の負担は、身体的にも、経済的にも抑えられるようになるだろう。 マイナ保険証は、膨張し続ける国民医療費を抑え、質の高い医療を提供するためのシステムに成長する可能性を秘めている。せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか』、「健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ」、現在の「健康保険法施行後」も「制度の廃止論まで出る始末だった」、というのは初めて知った。「せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか」、同感である。
タグ:マイナンバー制度 (その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!) 日刊ゲンダイ「厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ」 「2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない」、「健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である」、その通りだ。 「マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。 やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、「「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」 「国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、その通りだ。 Newsweek日本版 加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」 「近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、 「開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだった」、というのは意味深だ。 「万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴」、はいいとしても、「マイナンバー制度」にも当てはまるとはどういうことだろう。 「おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう」、 「ハコモノ行政」と、「マイナンバー制度」のつながりがようやく理解できた。 日刊ゲンダイ「マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前、今後どこまで下がるのか」 「全国の利用率は・・・4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落」、ここまで低迷が続いているとは問題だ。 「埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った」、「「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」」、なるほど。 「内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか」、どうするのでろう。 ダイヤモンド・オンライン 早川幸子氏による「トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!」 「少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている」、 「そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい」、なるほど。 「トラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる」、「健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない」、なるほど。 「ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。、なるほど。 「医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ」、なるほど。 「健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。 もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ」、現在の「健康保険法施行後」も「制度の廃止論まで出る始末だった」、というのは初めて知った。「せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか」、同感である。
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新自由主義(その4)(岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する、本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり、新自由主義の勃興と転換を促した9月の2つの事件 チリとアメリカ、同じ「9.11」に起きた史実の糸)

新自由主義については、本年1月30日に取上げた。今日は、(その4)(岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する、本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり、新自由主義の勃興と転換を促した9月の2つの事件 チリとアメリカ、同じ「9.11」に起きた史実の糸)である。

先ずは、本年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66530
・『岸田政権の経済政策にいら立ちがつのっている  岸田文雄内閣の「改革後退」にいら立った経済学者らが集まり、「制度・規制改革学会」という新しい学会が立ち上がった。 2月7日に東京・六本木ヒルズで開かれた設立総会では、これまで政府の規制改革に携わってきた八田達夫・大阪大学名誉教授と八代尚宏・昭和女子大学特命教授、竹中平蔵・慶應義塾大学名誉教授が理事に就任、八代教授が初代会長に選ばれた。 来賓としてあいさつした宮内義彦・元オリックス会長は「改革が動かない中で、学会を作るというのは複雑な気分だ。なぜ物事が動かないかという研究をするのでは意味がない。動かすための研究をしてほしい」と注文を付け、改革提言などを積極的に行う「行動する学会」になるよう求めた。 宮内氏は政府の規制改革関連会議の議長などを長年務めた日本の規制改革を主導した経営者の重鎮で、ソフトな語り口ながら、現状の改革停滞へのいら立ちを見せていた』、「「制度・規制改革学会」という新しい学会が立ち上がった」、「来賓としてあいさつした宮内義彦・元オリックス会長は「改革が動かない中で、学会を作るというのは複雑な気分だ。なぜ物事が動かないかという研究をするのでは意味がない。動かすための研究をしてほしい」と注文を付け、改革提言などを積極的に行う「行動する学会」になるよう求めた」、なるほど。
・『「規制改革が経済格差を拡大」は的外れ  学会の設立にあたっては理事3氏のほか、岩田規久男、岸博幸、久保利英明、小林慶一郎、鈴木亘、高橋洋一、永久寿夫、夏野剛、野村修也、原英史、福井秀夫、藤原豊、矢嶋康次、柳川範之(敬称略)ら約40人が発起人に名前を連ねた。総会会場には川本裕子人事院総裁や国会議員も多数顔を見せた。また、河野太郎デジタル改革担当相、小倉将信・少子化対策担当相がビデオメッセージを寄せた。 シンポジウムでは八代会長と八田達夫教授が規制改革の現状についてプレゼンテーションを行い、その後、竹中教授と、政府の規制改革会議議長を務める大槻奈那氏がパネラーとして議論に参加。イェール大学の成田悠輔氏がオンラインでコメンテーターとして加わった。 八田氏らは市場主義に基づく改革が「新自由主義」のレッテルを貼られて批判されることを「的外れ」であると強調、「規制改革が経済格差を拡大した」というのも当たらない、とした。八代氏も岸田内閣が行っている「数々の社会主義的政策」では問題は解決しないとし、物価上昇などに対して補助金を出すことで価格を抑制しようとしていることなどを批判していた』、「岸田内閣が行っている「数々の社会主義的政策」では問題は解決しないとし、物価上昇などに対して補助金を出すことで価格を抑制しようとしていることなどを批判」、「補助金を出すことで価格を抑制」は確かに筋違いだが、「規制改革が経済格差を拡大した」のは事実なのではなかろうか。
・『なぜ日本は「魅力的な可能性」を眠らせているのか  「規制改革が格差を拡大させた」という批判について、八田氏は「競争と再分配は両立できる」強調。新古典派経済学の政策理念としての「現代市場主義」は既得権の保護よりも効率化を追求する点では立場が同じだが、より「平等」を求めるか「不平等」を容認するかは立場が分かれると解説。一般に「新自由主義」として批判されるのは米国のレーガン時代やトランプ時代のような「格差拡大容認主義」であるとした。 本来、「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」は同一ではないにもかかわらず、「新自由主義」のレッテルの下に同一視されたのが日本の現状だとした。まだまだ規制を改革することで経済を効率化し成長路線に乗せていくことは可能だというわけだ。 竹中氏からは1月に行われたダボス会議で「日本はスリーピング・ビューティー(眠れる森の美女)だと評された」という紹介があり、「ビューティーかどうかは分からないが、眠っているのは確かだ」と答えたと話していた』、「本来、「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」は同一ではないにもかかわらず、「新自由主義」のレッテルの下に同一視されたのが日本の現状だとした。まだまだ規制を改革することで経済を効率化し成長路線に乗せていくことは可能だというわけだ」、なるほど。
・『成田悠輔氏「規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んだ」  海外からは、日本には魅力的な可能性があるにもかかわらず、改革を行わずにいると見られているということだ。「日本は政策的失敗だ」という声も多く聞いたと話していた。 その上で、「ベーシック・インカム」的な制度の導入によって規制改革と弱者支援は両立できるとした。 大槻氏からは現在、規制改革会議で行っている改革の中身などについて説明があったが、会場からは「規制改革会議は役割を終えたのではないか、何も改革できていない」と言った厳しい声も出ていた。 成田氏からは「今回のメンバーを見て、規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んでしまった」というジョークが浴びせられたが、竹中氏は「(権益を持つ)マフィアではなく、(既得権と闘う)十字軍だ」と切り返して笑いを誘っていた』、「成田氏からは「今回のメンバーを見て、規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んでしまった」というジョークが浴びせられたが、竹中氏は「(権益を持つ)マフィアではなく、(既得権と闘う)十字軍だ」と切り返して笑いを誘っていた」、「竹中氏」の「切り返し」はさすがだ。
・『「新しい資本主義」は社会主義ではないのか  パネラーのほか、多くの参加者から挙がっていたのが、「世代交代」。日本の経済成長が止まった1990年代以降、経済構造改革や規制改革の動きが強まっていたが、それを担ってきた学者、経営者は高齢化し、一線を退こうとしている。八代氏は「長年、規制改革を主導してこられた宮内義彦さんのような人たちの規制改革に向けた思いや知見を次世代につないでいきたい。次の若い世代の人たちに、私たちの経験から得た知恵を伝えていく、それがこの学会の大きな役割だ」と語っていた。 岸田首相は就任時に分配政策を中心とする「新しい資本主義」を掲げ、「新自由主義的政策は取らない」と明言した。さらに、安倍晋三元首相が推し進めた「アベノミクス」によって格差が拡大したと主張している。一部の経営者からは「新しい資本主義は社会主義だ」といった批判を浴び修正する気配を見せたが、その後、打ち出されている数々の政策は、補助金などによって市場をコントロールしようとするものになっている』、「新しい資本主義・・・数々の政策は、補助金などによって市場をコントロールしようとするものになっている」、なるほど。
・『結局は「補助金支給」などの財政拡大が止まらない  市中でのガソリン価格の上昇を抑えるために、一定価格以上にならないよう石油元売会社に補助金を出す制度を2022年1月以来続けているが、これには巨額の財政支出を必要としている。さらに、小麦の小売り価格を抑えるための製粉会社への売り渡し価格の抑制や、電力・ガス料金を抑えるための電力会社などへの補助金の支給など財政拡大が止まらない。今年年頭に「最大の重要課題」として打ち出した少子化対策も、結局は児童手当の所得制限撤廃や拡充などが焦点になっている。 安倍首相(当時)は「規制改革がアベノミクスの一丁目一番地」だとし、農協改革や医療改革、労働規制改革といった「岩盤」に切り込む姿勢を強調していたが、岸田内閣では「規制改革」はほとんど姿を消した。ここへきて、八田氏や竹中氏らは長年務めていた政府の規制改革会議などから外れていて、政権が従来の規制改革路線を大きく転換した象徴だと捉えられている。 「岸田政権になって規制改革はむしろ逆行し、何でも国に頼る、社会主義的な政策になっている」と八代氏が言うように、今回の学会設立は、そうした「改革後退」への危機感が背景にある』、「「岸田政権になって規制改革はむしろ逆行し、何でも国に頼る、社会主義的な政策になっている」と八代氏が言うように、今回の学会設立は、そうした「改革後退」への危機感が背景にある」、なるほど。
・『必要なのはバラマキではなく旧制度の見直し 「学会」という形を取ったことについて会長の八代氏は、学者の役割に対する反省があるとしている。 日本では、立法は霞が関の省庁が事実上担ってきたことで、行政が強い権限を持って、裁量的に運用していける形になっている。学者は法解釈が主流で、立法論に重きが置かれてこなかった。八代氏は「経済学は、本来、現実の社会問題解決のための道具だ」と言う。にもかかわらず、新しい時代に合わせて経済合理的なルールに変えていく役割を学者が担ってこなかった、というわけだ。 新学会では、「具体的な生産性向上につながる規制改革の提案を最優先する」(八代氏)という。例えば、「少子化対策が今年の最重点課題だと岸田首相は言っているが、カネをばらまくだけでなく、古い制度の見直しが必要だ」(八代氏)として、制度面の改革の必要性などを早い段階で提言していく方針だという。 岸田内閣の「新しい資本主義」では、リスキリングを通じた労働移動の促進による賃上げの実現を掲げている。一方で、雇用調整助成金の特例を延長し続けて企業に余剰人員を抱えさせる政策を取り続けてきた。企業を守ることを通じて個人を守るという伝統的な日本の政策が、持続不可能になってきた今、企業ではなく個人を守るための制度や規制の改革が重要というわけだ。 新学会には、ジャーナリストや経営者、弁護士やエコノミストといった専門家などに幅広く会員として参加することを呼びかけている』、「新学会では、「具体的な生産性向上につながる規制改革の提案を最優先する」(八代氏)という。例えば、「少子化対策が今年の最重点課題だと岸田首相は言っているが、カネをばらまくだけでなく、古い制度の見直しが必要だ」(八代氏)として、制度面の改革の必要性などを早い段階で提言していく方針」、今後の展開を注視したい。

次に、7月25日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/688400
・『イギリスのサッチャー元首相やアメリカのレーガン元大統領が象徴的な存在となっている「新自由主義的経済政策」が風前の灯火となっている。 本家本元のアメリカで、バイデン大統領ら政権中枢が相次いで自由貿易を公然と批判し、国内産業の振興に重心を移す保護主義的主張を展開しているのだ。 英米両国政権によって強力に推進された新自由主義は、冷戦崩壊とグローバリズムも重なって1980年代以降、日本の中曽根内閣をはじめ多くの国でもてはやされた。発展途上国を含めて各国の経済成長を加速させるとともに、貧困層の減少など大きな成果を上げたと言われている』、「「新自由主義的経済政策」が風前の灯火となっている。 本家本元のアメリカで、バイデン大統領ら政権中枢が相次いで自由貿易を公然と批判し、国内産業の振興に重心を移す保護主義的主張を展開しているのだ」、なるほど。
・『新自由主義が招いた空洞化  しかし、国境を越えた自由競争主義は弊害も多かった。 新たに生み出された富が巨大企業など一部の富裕者に偏り、経済的格差が拡大した。企業がコスト削減のため賃金の低い途上国に工場を移した結果、先進国の製造業の衰退、空洞化を招いた。 その結果、新自由主義に対する批判の声が高まっていったが、アメリカの歴代政権はトランプ前大統領を除けば、自由貿易や市場経済という看板を掲げ続けた。 ところが現在のバイデン政権は大きく方針を変えている。) バイデン大統領は6月28日、シカゴでの演説で過去のアメリカ政府の政策について「富裕層と大企業のために減税すべきだというトリクルダウン経済学は結局うまくいかなかった」「中西部などの地域でコミュニティーから尊厳や誇り、希望が奪われた」などと述べた。 レーガン政権が掲げた「レーガノミクス」以降の新自由主義的経済政策の結果、製造業で栄えていたアメリカ国内の工業地域が空洞化し中間層が衰退し、民主主義の危機につながっているというのである。そして製造業の国内回帰、インフラ強化などを柱とする自らの政策を「バイデノミクス」と名付けて支持を訴えた』、「「レーガノミクス」以降の新自由主義的経済政策の結果、製造業で栄えていたアメリカ国内の工業地域が空洞化し中間層が衰退し、民主主義の危機につながっているというのである。そして製造業の国内回帰、インフラ強化などを柱とする自らの政策を「バイデノミクス」と名付けて支持を訴えた」、なるほど。
・『「トリクルダウン経済学」を批判  サリバン補佐官も4月下旬、自由貿易について「利益が働く人に届かず、中産階級は失速し、製造業コミュニティーは空洞化した。何十年にも及ぶトリクルダウン経済政策が経済的不平等の原因である」として、それまでアメリカが掲げてきた「ワシントン・コンセンサス」を否定し、「ニューワシントン・コンセンサス」を構築すると述べている。 2人が批判した「トリクルダウン経済学」とは、富裕者がより富かになると経済活動が活発になり、その結果、低所得や貧困者にも富が浸透していくという論理である。少しずつしたたり落ちるという意味の英語「トリクルダウン」という言葉が使われている。 安倍政権の経済政策を支持した一部の経済学者も、アベノミクスはトリクルダウンを目指しているとしていた。しかし、実際には期待したほどの効果はなく経済格差の拡大を招いただけとされている。) また「ワシントン・コンセンサス」は、1989年にアメリカの国際経済学者が打ち出した概念だ。 具体的には財政赤字の是正、補助金カットなど政府支出の削減、金利の自由化、貿易の自由化、公営企業の民営化、規制緩和など10項目の政策が掲げられていた。財政均衡や民営化、規制緩和などで小さな政府を目指すとともに、投資や貿易の自由化で市場経済を徹底し、アメリカ流資本主義を世界に広めるという考えだ』、「トリクルダウン」には日本も騙された。「ワシントン・コンセンサス」は。「財政赤字の是正、補助金カットなど政府支出の削減、金利の自由化、貿易の自由化、公営企業の民営化、規制緩和など10項目の政策が掲げられていた。財政均衡や民営化、規制緩和などで小さな政府を目指すとともに、投資や貿易の自由化で市場経済を徹底し、アメリカ流資本主義を世界に広めるという考えだ」、日本もずいぶん惑わされた。
・『日本にも迫った「市場開放」「規制緩和」を否定  アメリカと言えば市場主義や自由貿易の権化のようなイメージがある。1980年代には、日本に対して市場開放や規制緩和を再三求め、日本政府が対応に苦慮した歴史がある。 ところがバイデン大統領らはかつてアメリカが推し進めた政策を全面的に否定しているのである。 その代わりに打ち出したのが保護主義的な産業政策だ。具体的には「インフラ投資・雇用法」「インフレ抑制法」「チップス投資・科学法」の3つの法律だ。 これらの法律は、アメリカやカナダ、メキシコで最終組み立てをした電気自動車購入への実質的な補助金にあたる税控除、アメリカ国内の半導体産業を強化するための5年間で約7兆円の企業に対する補助金制度、国内雇用を創出するための1.2兆ドルに及ぶインフラ投資などが主な内容だ。 半導体をめぐってはアメリカの政策転換を受けて、すでに国内外の企業が相次いでアメリカ国内の工場建設計画を発表しており、効果は出ているようだ。) これらの内容から明らかなように、バイデン政権の政策は、莫大な財政出動による国内産業振興、企業誘致、保護主義政策であり、長くアメリカ自身が他国に対し否定、批判してきたものばかりである。 かつてアメリカは製造業でも世界に君臨していた。中西部などに巨大な工業地域が生まれ、経済的にも安定した中間層が形成され、安定的な民主主義を担っていた。  ところが製造業の海外移転と空洞化によって中間層は崩壊し、貧困層が増大したことでアメリカ社会に深刻な亀裂が生まれ、政治も極端に二極化し、民主党と共和党が対立を極めている』、「バイデン政権の政策は、莫大な財政出動による国内産業振興、企業誘致、保護主義政策であり、長くアメリカ自身が他国に対し否定、批判してきたものばかりである。 かつてアメリカは製造業でも世界に君臨していた。中西部などに巨大な工業地域が生まれ、経済的にも安定した中間層が形成され、安定的な民主主義を担っていた。  ところが製造業の海外移転と空洞化によって中間層は崩壊し、貧困層が増大したことでアメリカ社会に深刻な亀裂が生まれ、政治も極端に二極化し、民主党と共和党が対立を極めている」ようだ、こんなに貿易相手国への要求事項が180度も変わるようでは、説得力に欠けるようだ。
・『「良きアメリカ」の再現を図る  2024年に大統領選挙を控えたバイデン大統領が、今回も勝敗を左右しそうな中西部のラストベルト(さびついた工業地帯)を意識して「脱新自由主義」「脱レーガノミクス」を打ち出していることは明らかだが、同時に中間層を復活させることでアメリカ社会の分断を修復し、良き時代のアメリカの再現を意識しているのであろう。 しばらく前までバイデン大統領は、現在の国際情勢を「民主主義対権威主義の戦い」と言い、守るべきものは「戦後の国際秩序、それは民主主義と開かれた市場経済」と語っていた。 これに対し「バイデノミクス」はホワイトハウスに集うアメリカの「ベスト・アンド・ブライテスト」の面々が考え抜いて打ち出した政策だろうが、政権全体の政策に整合性がないばかりか、将来展望、国際社会へのアメリカの役割など不明な点ばかりが目立つ。 ここで注意しなければならないのは、バイデン大統領の主張が2020年の大統領選で争ったトランプ前大統領の主張と似通っている点である。) トランプ大統領は「MEGA」(アメリカ合衆国を再び偉大な国にするという意味)、「アメリカファースト」を掲げ、中国や日本、欧州に対し自動車や鉄鋼などの関税を一方的に引き上げるなど国内産業保護に突っ走った。 こうした共通点について英紙のThe Financial Timesは「バイデンの政策は人間の顔をしたトランピズムだ」と評している。 意外なことにバイデン大統領やサリバン補佐官の発言は欧米メディアで大きな騒ぎになっていない。すでに関連法が成立してはいるものの、一連の発言を、言葉は激しいが選挙向けの単なるキャンペーンであり、実際の政策がどうなるかは不透明とみているのかもしれない。 また長年、アメリカが主張し実践してきた新自由主義的政策に対し、日本や欧州の主要国の対応はアメリカほどモノトーンではなく、社会保障制度などセーフティーネットの構築も進めており、社会の格差や分断もアメリカほど深刻ではないという面もあるのだろう』、「「バイデノミクス」はホワイトハウスに集うアメリカの「ベスト・アンド・ブライテスト」の面々が考え抜いて打ち出した政策だろうが、政権全体の政策に整合性がないばかりか、将来展望、国際社会へのアメリカの役割など不明な点ばかりが目立つ。 ここで注意しなければならないのは、バイデン大統領の主張が2020年の大統領選で争ったトランプ前大統領の主張と似通っている点である」、「「ベスト・アンド・ブライテスト」の面々が考え抜いて打ち出した政策」にも拘らず、「政権全体の政策に整合性がないばかりか、将来展望、国際社会へのアメリカの役割など不明な点ばかりが目立つ」、これでは相手国に要求できるレベルにするには相当な時間がかかりそうだ。
・『大統領選はポピュリズム競演に陥りかねない  振り返れば、新自由主義的経済政策がさまざまな問題を生み出したことは事実であり、その修正はアメリカのみならず主要国の大きな課題にもなっている。「バイデノミクス」にもそうした面があることは間違いない。 とはいえ、「大きな政府」への回帰が単に国内産業の重視や自由貿易の否定などの一国中心主義、保護主義に走るようなことになると、世界の政治や経済に与える影響は少なくない。 最悪のケースは、次の大統領選がバイデン大統領とトランプ前大統領による人気取り目的のポピュリズム的な、自国中心主義的バラマキ政策の競演になることだ。そうした政治風潮が世界的に広がり、保護主義政策が蔓延すれば、世界経済が縮小するとともに各国の財政規律が失われ、累積債務が膨らんでいくことにもなりかねない。 アメリカの経済政策がどういう方向に向かっていくのかは、やはりひとごとではない』、「最悪のケースは、次の大統領選がバイデン大統領とトランプ前大統領による人気取り目的のポピュリズム的な、自国中心主義的バラマキ政策の競演になることだ。そうした政治風潮が世界的に広がり、保護主義政策が蔓延すれば、世界経済が縮小するとともに各国の財政規律が失われ、累積債務が膨らんでいくことにもなりかねない」、要注目だ。

第三に、9月14日付け東洋経済オンラインが掲載した哲学者・経済学者の的場 昭弘氏による「新自由主義の勃興と転換を促した9月の2つの事件 チリとアメリカ、同じ「9.11」に起きた史実の糸」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/701621
・『歴史的事件が2つ、同じ日と同じ曜日に重なることは、めったにあるものではない。1973年9月11日と2001年9月11日は、ともに火曜日であり、しかもこの2つの事件は1つの長い糸で結ばれているともいえる事件だ。 その糸とは、新自由主義とグローバリゼーションという糸であり、新自由主義の始まりが1973年ならば、2001年はそれに対する反動が起こった時だったのだ。 1973年の事件は、チリの大統領サルバドール・アジェンデ政権(1908~1973年、大統領在任1970~1973年)を崩壊させた陸軍総司令官アウグスト・ピノチェト(1915~2006年、同1974~1990年)によるクーデターであり、2001年はアメリカおよび西側世界を震撼させた国際テロ組織アルカイーダとされるテロ攻撃である』、「1973年の事件は、チリの」「クーデター」と、「2001年」の「アルカイーダとされるテロ攻撃」、を結び付けたとはさすがだ。
・『1973年・チリのクーデター  後者は、ニューヨークのワールド・トレード・センターのツインビルの崩壊と、テレビの実況中継というメディアによって、人々の心に印象的に刻まれている。 しかし前者に関しては2023年で半世紀たち、アジェンデもピノチェトも、そしてチリという国の存在すら、今では遠く忘れ去られてしまっているのかもしれない。 しかし2つの事件が20世紀、そして21世紀の現在の世界を知るために重要な歴史的転換を示す事件であったことは、けっして忘れてはなるまい。 ひとまず1970年代を振り返ってみよう。アメリカはベトナム戦争で苦戦し、経済的、政治的な危機に瀕していた。例えば1971年8月のニクソンショックや、1973年3月のアメリカ軍のベトナムからの撤退などだ。 1960年代には世界各地で植民地からの独立が達成され、それまで世界を支配していた植民地所有国である西側勢力が危機を感じていた時代である。 1954年から1962年にかけてアルジェリアが独立を目指したアルジェリア戦争、1959年に成功したキューバ革命、そしてベトナム戦争など、東西冷戦といわれた社会主義圏と資本主義圏との対立という構図があちこちで存在していた。これらの戦争と植民地の独立は、西側諸国にとって、たんに植民地を失うというだけでなく、社会主義圏の拡大という資本主義の危機もはらんでいた。 だからこそ、アメリカは西側資本主義世界の大国としての沽券(こけん)をかけて、この闘いに緩衝せざるをえなかったのである。) 1970年11月、親アメリカ国家チリで社会主義政権が誕生する。それも革命ではなく、選挙によって誕生したのだ。アジェンデ政権は社会党、共産党、社会党左派の支持を受けて大統領選に勝ち、社会主義的改革を行い始めた。 チリは鉱山業と農業が輸出を支え、海外の西側資本が大量に投資されている国であった。アジェンデはそこにメスを入れた。農地改革と鉱山の国有化を行ったのである。海外資本、とりわけダウやデュポン、ITTなどのアメリカ資本がそれを見逃すわけはなかった。 議会で選ばれた社会主義政権が国有化政策などの社会主義政策を実行できるのかどうか、これは当時大きな議論を巻き起こした問題だった。ゲリラ闘争や正規軍を味方につけた革命が一般的であった時代に、議会制民主主義の中で、政権を掌握し、社会主義を実現しようというのである。 当時、1968年のフランスの5月革命をはじめ世界を覆っていた市民運動の流れの中で、アジェンデ政権が新しい社会主義への選択肢として、世界中の左翼に熱狂をもって向かい入れられたことは当然であった。 後にフランスの大統領となるフランソワ・ミッテラン(1916~1996年、大統領在任1981~1995年)も1971年11月にチリを訪問しているが、議会の中で社会主義を模索していた世界の左翼政党のアジェンデ詣でが始まる』、「1970年11月、親アメリカ国家チリで社会主義政権が誕生する。それも革命ではなく、選挙によって誕生したのだ。アジェンデ政権は社会党、共産党、社会党左派の支持を受けて大統領選に勝ち、社会主義的改革を行い始めた。 チリは鉱山業と農業が輸出を支え、海外の西側資本が大量に投資されている国であった。アジェンデはそこにメスを入れた。農地改革と鉱山の国有化を行ったのである。海外資本、とりわけダウやデュポン、ITTなどのアメリカ資本がそれを見逃すわけはなかった・・・1968年のフランスの5月革命をはじめ世界を覆っていた市民運動の流れの中で、アジェンデ政権が新しい社会主義への選択肢として、世界中の左翼に熱狂をもって向かい入れられたことは当然であった。 後にフランスの大統領となるフランソワ・ミッテラン・・・も1971年11月にチリを訪問しているが、議会の中で社会主義を模索していた世界の左翼政党のアジェンデ詣でが始まる」、なるほど。
・『フィデル・カストロの予言  そのような中、1971年11月にキューバのフィデル・カストロ国家評議会議長(1926~2016年)がチリを訪問した。そしてカストロは、この政権は長く続かないのではないかという予言めいたことを述べた。 「すくなくとも、1人の訪問者にとっての問題は、搾取者の暴力と抵抗がチリにも当てはまるのかどうかを知ることである。事実、歴史上、反動者、搾取者、社会システムの特権者が、変化を平和的に受け入れたことなどいちどもないのだ」 この言葉は2年後の9月11日、まさに現実のものとなる。キューバもアルジェリアも、ベトナムも国軍のみならず民兵組織によって長い闘いの後に革命を実現した。それが選挙による政権交代だけで変わりうるのか、誰もが疑問に思ったことである。 チリは典型的なラテンアメリカの国である。つまり、モンロー宣言(1823年)以後のアメリカのパックス・アメリカーナの一環の中に深く組み込まれ、アメリカ合衆国に利するように利用される国である。 ナポレオン戦争の最中の1810年に独立を達成して以後(ラテンアメリカの解放者、シモン・ボリバールの活躍で多くの地域がこの頃独立する)、独立すれども外国資本に牛耳られ、工業発展を抑えられ、原料供出国として位置づけられてきた。それは、欧州資本は土地や鉱山を所有し、その利益を維持することに奔走したからである。 アメリカにとって、キューバ革命で起こった社会主義化のドミノ現象をこれ以上認めることはできない。そうなると、カストロの予言通り、早晩軍事クーデターが起こるに決まっていたともいえよう。) チリの首都サンチアゴには、リベルタドールというこの町を貫通する大通りがあり、そこに大統領官邸であるモデナ宮殿がある。9月11日、アジェンデはその大統領官邸で、他国に亡命することなく自殺を遂げる。そして多くの民衆も虐殺された。その多くは筆者と同じ世代の若者であった。そのときのアジェンデの言葉はこれだ。 「私は撤退しない!数千人のチリの人々の高貴ある意識の中に、われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う。人民よ、万歳!労働者よ!万歳!これが私の最後の言葉だ。きっと私の犠牲も無駄にはならないだろう」 ピノチェトはその後、17年もの間、大統領の座に座り続ける。ピノチェトの背後にアメリカがいたことは間違いない。 この混乱の中、ノーベル文学賞を受賞した詩人であり外交官、政治家だったパブロ・ネルーダ(1904~1973年)も亡くなる。彼は最後にこう書いている。 「われわれはこの血に飢えた大統領ニクソンを徹底して根こそぎに駆逐するつもりだ。ワシントンで彼がその鼻で息をしているかぎり、地球上で幸福な人間も、幸せに働ける人間もいないだろう」』、「モンロー宣言(1823年)以後のアメリカのパックス・アメリカーナの一環の中に深く組み込まれ、アメリカ合衆国に利するように利用される国である。 ナポレオン戦争の最中の1810年に独立を達成して以後(ラテンアメリカの解放者、シモン・ボリバールの活躍で多くの地域がこの頃独立する)、独立すれども外国資本に牛耳られ、工業発展を抑えられ、原料供出国として位置づけられてきた・・・アメリカにとって、キューバ革命で起こった社会主義化のドミノ現象をこれ以上認めることはできない。そうなると、カストロの予言通り、早晩軍事クーデターが起こるに決まっていたともいえよう」、「9月11日、アジェンデはその大統領官邸で、他国に亡命することなく自殺を遂げる。そして多くの民衆も虐殺された。その多くは筆者と同じ世代の若者であった。そのときのアジェンデの言葉はこれだ。 「私は撤退しない!数千人のチリの人々の高貴ある意識の中に、われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う。人民よ、万歳!労働者よ!万歳!これが私の最後の言葉だ。きっと私の犠牲も無駄にはならないだろう」 ピノチェトはその後、17年もの間、大統領の座に座り続ける」、なるほど
・『新自由主義とその反動の時代  皮肉にもこの祈りは思わぬ形で実現する。ニクソンはその翌年の1974年、ウォーターゲート事件で大統領を辞任する。 1973年は西側資本主義国にとって社会主義政権に対する反抗の狼煙となる。ベトナムからは撤退したが、石油ショック以後にG7を立ち上げ、チリにはじめてシカゴ・ボーイズの新自由主義モデルが導入され、社会主義体制を破滅に追いやる戦略が練られる。シカゴ・ボーイズとは、シカゴ大学のミルトン・フリードマン(1912~2006年)を中心とする「シカゴ学派」のマネタリストたちの総称だ。 そしてそれから10年以上経った1989年から1991年にかけてソ連・東欧社会主義体制、ひいては冷戦体制は崩壊し、世界は西側勢力を中心とした新自由主義のグローバリゼーションが席巻する。 まさにチリの9月11日は、新自由主義の勝利という歴史的転換を象徴するクーデターだったのである。 しかし、28年後の2001年9月11日は、行き過ぎた新自由主義への反動によって起きた事件だったといえる。アメリカと西欧が世界をグローバル化によって支配していく中で、それによって不利益を被っていたもう1つの声なき世界が異議申し立てを行ったのである。イタリアの哲学者であるアントニオ・ネグリ(1933年~)は、彼らのことをマルチチュードと名付けた。 2019年3月、私はチリ大学を訪問した。あちこちに立て看が並び、学生がマイクをもって声を張り上げていた。それは、私の学生時代1970年前後の日本を見るかのようであった。) そしてそれから数カ月後、チリでは学生たちが政府に対して立ち上がり、新憲法を要求した。そして2022年3月、36歳の左派連合・チリ連合の新大統領ガブリエル・ボリッチ(1986年~)が大統領になる。 アジェンデは、自殺した日「われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う」と述べていた』、「チリにはじめてシカゴ・ボーイズの新自由主義モデルが導入され、社会主義体制を破滅に追いやる戦略が練られる。シカゴ・ボーイズとは、シカゴ大学のミルトン・フリードマン(1912~2006年)を中心とする「シカゴ学派」のマネタリストたちの総称だ。 そしてそれから10年以上経った1989年から1991年にかけてソ連・東欧社会主義体制、ひいては冷戦体制は崩壊し、世界は西側勢力を中心とした新自由主義のグローバリゼーションが席巻する」、「2022年3月、36歳の左派連合・チリ連合の新大統領ガブリエル・ボリッチ(1986年~)が大統領になる。 アジェンデは、自殺した日「われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う」と述べていた」、それにしても、ずいぶん時間がかかったものだ。
・『アジェンデがまいた種  もちろん50年の時を経てアジェンデのまいた種が今後どう発展するかは、不明である。新大統領はアジェンデと同じく、議会の反対勢力と対立している。ただ、チリを含むラテンアメリカ諸国は今、アメリカに対してしっかりとものを言える状態になりつつある。 2023年8月に南アフリカで開催されたBRICS首脳会議では、加盟国の拡大が行われた。彼らの生産力や人口を見る限り、もはや1970年代のような弱小国の集まりではない。インドでG20が開催されたが、西側資本主義は、かつてのように圧倒的な政治力、軍事力、経済力で世界を牛耳ることが、今ではできなくなっている。 1973年9月11日は西側資本主義の挽回をもたらしたが、2001年9月11日は再度、非西側諸国の復活を生み出したのかもしれない。今後、世界は非西側諸国によって動いていくだろうことは、おそらく間違いないだろう。 それがどういった体制を生み出すかわからないが、アジェンデのまいた種は、しっかりと大地に根付いていたのかもしれない。カール・マルクスが著した『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』の言葉を使えばこうだ。 「掘り返したぞ、老いたモグラよ!」』、「2023年8月に南アフリカで開催されたBRICS首脳会議では、加盟国の拡大が行われた。彼らの生産力や人口を見る限り、もはや1970年代のような弱小国の集まりではない。インドでG20が開催されたが、西側資本主義は、かつてのように圧倒的な政治力、軍事力、経済力で世界を牛耳ることが、今ではできなくなっている。 1973年9月11日は西側資本主義の挽回をもたらしたが、2001年9月11日は再度、非西側諸国の復活を生み出したのかもしれない。今後、世界は非西側諸国によって動いていくだろうことは、おそらく間違いないだろう。 それがどういった体制を生み出すかわからないが、アジェンデのまいた種は、しっかりと大地に根付いていたのかもしれない』、それにしても、「アジェンデのまいた種」からずいぶん時間が経ったものだ。それは、「西側資本主義は、かつてのように圧倒的な政治力、軍事力、経済力で世界を牛耳ることが、今ではできなくなっている」との大きな時代変化があったためだろう、
タグ:「「岸田政権になって規制改革はむしろ逆行し、何でも国に頼る、社会主義的な政策になっている」と八代氏が言うように、今回の学会設立は、そうした「改革後退」への危機感が背景にある」、なるほど。 「新しい資本主義・・・数々の政策は、補助金などによって市場をコントロールしようとするものになっている」、なるほど。 「成田氏からは「今回のメンバーを見て、規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んでしまった」というジョークが浴びせられたが、竹中氏は「(権益を持つ)マフィアではなく、(既得権と闘う)十字軍だ」と切り返して笑いを誘っていた」、「竹中氏」の「切り返し」はさすがだ。 「本来、「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」は同一ではないにもかかわらず、「新自由主義」のレッテルの下に同一視されたのが日本の現状だとした。まだまだ規制を改革することで経済を効率化し成長路線に乗せていくことは可能だというわけだ」、なるほど。 「岸田内閣が行っている「数々の社会主義的政策」では問題は解決しないとし、物価上昇などに対して補助金を出すことで価格を抑制しようとしていることなどを批判」、「補助金を出すことで価格を抑制」は確かに筋違いだが、「規制改革が経済格差を拡大した」のは事実なのではなかろうか。 (その4)(岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する、本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり、新自由主義の勃興と転換を促した9月の2つの事件 チリとアメリカ、同じ「9.11」に起きた史実の糸) 新自由主義 「「制度・規制改革学会」という新しい学会が立ち上がった」、「来賓としてあいさつした宮内義彦・元オリックス会長は「改革が動かない中で、学会を作るというのは複雑な気分だ。なぜ物事が動かないかという研究をするのでは意味がない。動かすための研究をしてほしい」と注文を付け、改革提言などを積極的に行う「行動する学会」になるよう求めた」、なるほど。 磯山 友幸氏による「岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する」 PRESIDENT ONLINE 「新学会では、「具体的な生産性向上につながる規制改革の提案を最優先する」(八代氏)という。例えば、「少子化対策が今年の最重点課題だと岸田首相は言っているが、カネをばらまくだけでなく、古い制度の見直しが必要だ」(八代氏)として、制度面の改革の必要性などを早い段階で提言していく方針」、今後の展開を注視したい。 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「本家アメリカが「新自由主義」を捨てて目論む復活 「バイデノミクス」はトランプ政策にそっくり」 「「新自由主義的経済政策」が風前の灯火となっている。 本家本元のアメリカで、バイデン大統領ら政権中枢が相次いで自由貿易を公然と批判し、国内産業の振興に重心を移す保護主義的主張を展開しているのだ」、なるほど。 「「レーガノミクス」以降の新自由主義的経済政策の結果、製造業で栄えていたアメリカ国内の工業地域が空洞化し中間層が衰退し、民主主義の危機につながっているというのである。そして製造業の国内回帰、インフラ強化などを柱とする自らの政策を「バイデノミクス」と名付けて支持を訴えた」、なるほど。 「トリクルダウン」には日本も騙された。「ワシントン・コンセンサス」は。「財政赤字の是正、補助金カットなど政府支出の削減、金利の自由化、貿易の自由化、公営企業の民営化、規制緩和など10項目の政策が掲げられていた。財政均衡や民営化、規制緩和などで小さな政府を目指すとともに、投資や貿易の自由化で市場経済を徹底し、アメリカ流資本主義を世界に広めるという考えだ」、日本もずいぶん惑わされた。 「バイデン政権の政策は、莫大な財政出動による国内産業振興、企業誘致、保護主義政策であり、長くアメリカ自身が他国に対し否定、批判してきたものばかりである。 かつてアメリカは製造業でも世界に君臨していた。中西部などに巨大な工業地域が生まれ、経済的にも安定した中間層が形成され、安定的な民主主義を担っていた。  ところが製造業の海外移転と空洞化によって中間層は崩壊し、貧困層が増大したことでアメリカ社会に深刻な亀裂が生まれ、政治も極端に二極化し、民主党と共和党が対立を極めている」ようだ、こんなに貿易相手国への要求事 項が180度も変わるようでは、説得力に欠けるようだ。 「「バイデノミクス」はホワイトハウスに集うアメリカの「ベスト・アンド・ブライテスト」の面々が考え抜いて打ち出した政策だろうが、政権全体の政策に整合性がないばかりか、将来展望、国際社会へのアメリカの役割など不明な点ばかりが目立つ。 ここで注意しなければならないのは、バイデン大統領の主張が2020年の大統領選で争ったトランプ前大統領の主張と似通っている点である」、「「ベスト・アンド・ブライテスト」の面々が考え抜いて打ち出した政策」にも拘らず、「政権全体の政策に整合性がないばかりか、将来展望、国際社会へのアメリ カの役割など不明な点ばかりが目立つ」、これでは相手国に要求できるレベルにするには相当な時間がかかりそうだ。 「最悪のケースは、次の大統領選がバイデン大統領とトランプ前大統領による人気取り目的のポピュリズム的な、自国中心主義的バラマキ政策の競演になることだ。そうした政治風潮が世界的に広がり、保護主義政策が蔓延すれば、世界経済が縮小するとともに各国の財政規律が失われ、累積債務が膨らんでいくことにもなりかねない」、要注目だ。 的場 昭弘氏による「新自由主義の勃興と転換を促した9月の2つの事件 チリとアメリカ、同じ「9.11」に起きた史実の糸」 「1973年の事件は、チリの」「クーデター」と、「2001年」の「アルカイーダとされるテロ攻撃」、を結び付けたとはさすがだ。 「1970年11月、親アメリカ国家チリで社会主義政権が誕生する。それも革命ではなく、選挙によって誕生したのだ。アジェンデ政権は社会党、共産党、社会党左派の支持を受けて大統領選に勝ち、社会主義的改革を行い始めた。 チリは鉱山業と農業が輸出を支え、海外の西側資本が大量に投資されている国であった。 アジェンデはそこにメスを入れた。農地改革と鉱山の国有化を行ったのである。海外資本、とりわけダウやデュポン、ITTなどのアメリカ資本がそれを見逃すわけはなかった・・・1968年のフランスの5月革命をはじめ世界を覆っていた市民運動の流れの中で、アジェンデ政権が新しい社会主義への選択肢として、世界中の左翼に熱狂をもって向かい入れられたことは当然であった。 後にフランスの大統領となるフランソワ・ミッテラン・・・も1971年11月にチリを訪問しているが、議会の中で社会主義を模索していた世界の左翼政党のアジェンデ詣で が始まる」、なるほど。 「モンロー宣言(1823年)以後のアメリカのパックス・アメリカーナの一環の中に深く組み込まれ、アメリカ合衆国に利するように利用される国である。 ナポレオン戦争の最中の1810年に独立を達成して以後(ラテンアメリカの解放者、シモン・ボリバールの活躍で多くの地域がこの頃独立する)、独立すれども外国資本に牛耳られ、工業発展を抑えられ、原料供出国として位置づけられてきた・・・アメリカにとって、キューバ革命で起こった社会主義化のドミノ現象をこれ以上認めることはできない。そうなると、カストロの予言通り、早晩軍事クーデ ターが起こるに決まっていたともいえよう」、「9月11日、アジェンデはその大統領官邸で、他国に亡命することなく自殺を遂げる。そして多くの民衆も虐殺された。その多くは筆者と同じ世代の若者であった。そのときのアジェンデの言葉はこれだ。 「私は撤退しない!数千人のチリの人々の高貴ある意識の中に、われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う。人民よ、万歳!労働者よ!万歳!これが私の最後の言葉だ。きっと私の犠牲も無駄にはならないだろう」 ピノチェトはその後、17年もの間、大統領の座に座り続ける」、なる ほど 「チリにはじめてシカゴ・ボーイズの新自由主義モデルが導入され、社会主義体制を破滅に追いやる戦略が練られる。シカゴ・ボーイズとは、シカゴ大学のミルトン・フリードマン(1912~2006年)を中心とする「シカゴ学派」のマネタリストたちの総称だ。 そしてそれから10年以上経った1989年から1991年にかけてソ連・東欧社会主義体制、ひいては冷戦体制は崩壊し、世界は西側勢力を中心とした新自由主義のグローバリゼーションが席巻する」、 「2022年3月、36歳の左派連合・チリ連合の新大統領ガブリエル・ボリッチ(1986年~)が大統領になる。 アジェンデは、自殺した日「われわれがまいている種は、けっして埋もれることはないと、思う」と述べていた」、それにしても、ずいぶん時間がかかったものだ。 それにしても、「アジェンデのまいた種」からずいぶん時間が経ったものだ。それは、「西側資本主義は、かつてのように圧倒的な政治力、軍事力、経済力で世界を牛耳ることが、今ではできなくなっている」との大きな時代変化があったためだろう、
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保育園(待機児童)問題(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) [社会]

保育園(待機児童)問題については、2021年5/月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その13)「をを2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。

先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」 「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です」、でも未熟な「保育士」は時として忘れてしまうようだ。「園児の点呼」は習慣化しておうべきだ。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに…  それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった」、「20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」、「日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い」、狭いなかに大勢が閉じ込められるストレスはさぞや強いのだろう。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した  福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した」、「儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、これで「安倍政権の保育施策」の当然の帰結だ。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった  かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「委託費の流用」が「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費へ」とまで野放図に認められるようになったというのは驚きだ。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか  その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない・・・金額の差が、最大で年間200万円近くに」、この差はどういうことだろうか。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが…  ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している・・・。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある」、なるほど。
・『都内30カ所で違反が常態化している  ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、その通りだ。
・『6年間で保育事故は3.5倍に  保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている」、なるほど。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく  政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない」、同感である。

次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340#:~:text=%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E6%95%99%E8%82%B2%20%3E%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6-,%EF%BD%A2%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%9C%92%E3%81%AE%E9%87%8D%E5%A4%A7%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A3%E5%9C%92%E3%81%A0%E3%81%91%E3%82%92%E8%B2%AC%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84,%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E6%9C%AB%E8%BB%A2%E5%80%92%E3%81%AA%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AB&text=%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%93%E3%82%8D%E3%81%A7%E6%BF%AB%E7%94%A8,%E3%81%AE%E5%85%AC%E8%A1%A8%E3%81%8C%E7%BE%A9%E5%8B%99%E5%8C%96%E3%80%82%E2%80%A6
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、興味深そうだ。
・『保育園から「突然の通告」  はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか? 区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、確かに「保育園民営化」は、「慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?」、などクリアすべき問題も多い。。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと  日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判された」、「共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった」。 「そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率・・・は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した」、「一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱」、歴史的経緯がよく理解できた。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害  新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、なるほど。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか  待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7) 』、「2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、なるほど。
・『保育の質が低下することへの懸念  誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 (※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、その通りなのだろう。

第三に、5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防  2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。) 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた。 ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた。 これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) の答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「加藤大臣」は財務省出身で答弁は手慣れているだけに、平気で論点ずらしも行い、不誠実な大臣の筆頭格だ。大臣のこうした答弁姿勢を熟知している「大西議員」も、もっと突っ込んだ質問をしてほしかった。 
タグ:PRESIDENT ONLINE 小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です」、でも未熟な「保育士」は時として忘れてしまうようだ。「園児の点呼」は習慣化しておうべきだ。 「保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった」、「20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」、「日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い」、狭いなかに大勢が閉じ込められるストレスはさぞや強いのだろう。 「安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した」、「儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、これで「安倍政権の保育施策」の当然の帰結だ。 「規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている」、「委託費の流用」が「同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費へ」とまで野放図に認められるようになったというのは驚きだ。 「最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない・・・金額の差が、最大で年間200万円近くに」、この差はどういうことだろうか。 「人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している・・・。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある」、なるほど。 「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、その通りだ。 「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている」、なるほど。 「この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない」、同感である。 東洋経済オンライン 関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」 「少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、興味深そうだ。 確かに「保育園民営化」は、「慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?」、などクリアすべき問題も多い。。 「1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判された」、 「共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった」。 「そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率・・・は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した」、「一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱」、歴史的経緯がよく理解できた。 「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、なるほど。 「2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、なるほど。 「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、その通りなのだろう。 小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」 「加藤大臣」は財務省出身で答弁は手慣れているだけに、平気で論点ずらしも行い、不誠実な大臣の筆頭格だ。大臣のこうした答弁姿勢を熟知している「大西議員」も、もっと突っ込んだ質問をしてほしかった。
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ミャンマー(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) [世界情勢]

ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない)である。

先ずは、本年3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに(ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害  独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置  独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。
・『レイプして殺害される女性たち  3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。
・『激化する人権侵害事件  このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。

次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。
・『PDFによる軍への攻撃  軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜  軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺  一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き(8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない。・・・・・ さらに連載記事『少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃』では、“もうひとつの現実”について詳報しています』、「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。

第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」  軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。
・『過去4ヵ月で500人が離反  独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。
・『寝返った元国軍兵士の証言  「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。
・『公務員を民兵や予備軍に採用  軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 The Irrawaddy より 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に  国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
タグ:(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) ミャンマー 現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。 「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。 「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。 「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。 「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、 「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。 現代ビジネス 大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」 「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。 「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。 「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。 「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。 「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、 「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。 大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」 「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。 「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、 「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。 「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。 「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。 「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、 これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
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統計問題(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁) [経済政策]

統計問題については、2019年3月3日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁)である。なお、タイトルから「不正」は削除した。

先ずは、2021年12月29日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの黒崎 亜弓氏による「建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/479789
・『建設業の月々の受注状況を推計し、GDP(国内総生産)算出にも使われる「建設工事受注動態統計」で、国土交通省があきれるばかりの不正を行っていた。遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ。 まず気になるのはGDPへの影響だが、これはあまり大きくはなさそうだ。 建設受注統計の内訳は土木と建築がほぼ半々だが、土木の部分だけが、月々の出来高を推計する建設総合統計に使われ、それがGDPに反映される。土木のうち公共事業の部分は後から財政データで上書きされる。二重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ』、「遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ」、「重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ」、なるほど。
・『ユーザー軽視、何のための統計なのか  建設受注統計そのものの金額は二重計上でどのくらい増えていたのだろうか。 これはわからない。2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」(所管は厚生労働省)の問題よりも深刻といえる。 ただ、国交省が会計検査院の指摘を受けた後、自ら合算を行っていた2020年1月分?2021年3月分については、当月に入力した調査票データと、書き換え合算を行ったデータの2つがあり、他の条件をそろえて受注高を算出比較すれば、二重計上のインパクトがわかるはずだ。 2020年1月分?2021年3月分については、参考値との差額として「平均して1月あたり1.2兆円」という数字が国会答弁で出ているが、これは二重計上によって生じた数字ではない。二重計上のとりやめで生じたマイナスと同時に行われた推計方法の変更によるプラスとを合わせた数字だ。) 建設受注統計で国交省は、2021年4月分から二重計上をやめると同時に、調査先を選ぶ母集団となる「建設施工統計調査」で捕捉漏れをカバーする変更を行っている。2020年1月分?2021年3月分の参考値とは、この2つの変更を反映したものだ。金額は捕捉漏れカバーで増え、二重計上をやめたことで減る。これを差し引きすると1.2兆円のプラスというわけだ。 この母集団の捕捉漏れカバーは、カバレッジ(推計が網羅する範囲)を拡大して統計精度を上げるため、つまり、より実態を表す統計にするために行われたものと思われるが、国交省のホームページではきちんと説明がなされておらず、誤解を招いている。 「ユーザーには何が変わったのかわからない。統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」。こう指摘するのは、日本銀行で統計畑を歩んだ肥後雅博・東京大学大学院教授だ。総務省の統計委員会担当室に出向していた3年前には、厚労省の毎月勤労統計における不正を明らかにした。 国交省はどう改善すべきなのか、不正続きの公的統計を立て直すにはどうすればいいか、肥後教授に聞いた(Qは聞き手の質問)』、「2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」・・・の問題よりも深刻といえる」、確かに信じ難いような酷い話だ。「統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」、その通りだ。
・『回答してくれた大事なデータを生かせ  Q:国交省は、遅れて届く調査票をどう扱うべきだったのでしょうか。 肥後月次の作業に遅れて届いた前月分の数字は前月分として入力し、前月分の受注高を推計し直して改訂すべきだ。多くの統計は、締め切り時点で推計して速報を出し、1カ月ほど遅れて届いた分については確報段階で反映している。 Q:国交省は2021年4月分からは遅れて届いた調査票を合算せず、「年度報」のタイミングで反映させるとのことですが、それでは不十分なのですか。 肥後遅れて回答する人が多ければ、それでは統計精度が確保できない。建設受注統計はもともと回収率が60%台と低いのだから、遅れた数字を反映できるような公表体制を作るしかない。速報、確報、それに確々報と3段階で反映させ、あとは年度報で改訂するのが望ましいだろう。そのためにシステム改修を行い、作成・公表に必要な人員を確保する必要がある。 遅れても数字が届いたら、きちんと使うべきだ。遅れて出すのが悪いとよく言われるが、出さないよりは出してくれるほうがいい。未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる。) Q:公的統計は回答が義務であることから、未回答者に罰金を科すべきという声もあります。 肥後法的には正しいかもしれないが、現実的ではない。 Q:日銀が作成する統計は回答義務がないのに回収率が高い。日銀短観も企業物価指数(確報)も回収率は90%台です。 肥後それは企業に回答してもらえるまで電話をかけ続けるからだ。短観の締め切り直前は、未回答企業に毎朝かけてお願いする。それが日銀では当たり前で、それを部下に徹底させるのが上司としての私の仕事だった。 金融政策を適切に判断するには、経済情勢を見極めなければならず、そのためには統計がきちんと作成されていなければならない。その認識が総裁から全員に共有されている』、「未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる」、「未回答者に罰金を科すべきという声も」あるが、「法的には正しいかもしれないが、現実的ではない」、なるほど。
・『外部の有識者からの厳しい批判に応えた  Q:日銀の統計には定評がありますね。 肥後日銀が作成する企業物価指数や企業向けサービス価格指数だって、四半世紀前は問題が多かった。物価下落局面に差し掛かった1990年代、製品の品質向上による実質価格の低下や特売、リベートといった実勢を反映できていなかった。また、価格の捕捉が難しくカバーしていない品目もかなりの数に上っていた。 学者の先生方からは厳しい批判を受けた。物価指数の作成方法について説明したら、「こんな調査をやっているからダメなんだ」と言われ、私は恥ずかしかった。そこから必死に長い時間をかけて直してきた。 Q:日銀内部からも「政策判断が狂う」と非難されたのではないですか。 肥後問題があることを逆手にとって「改善が必要だ」と主張し、統計部署の人員と予算をなんとか確保した。それで今がある。 Q:いっそのこと、日銀が政府の統計作成を請け負えばいいのではと思ったりします。 肥後日銀に限らず、統計調査を担うリサーチ会社はいくつもあるが、統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう。) Q:会計検査院の報告書によると、現在は都道府県の経費をのぞいて年間600億円程度です。 肥後その値段では民間ではとても作れない。きちんとした統計を作るにはお金がかかることを理解してほしい。今は安上がりである分、問題が多い。統計部署に限らないが、行政では人事ローテーションが短いうえに任期制職員も多く、専門的知識を組織のなかで継承することが難しくなっている。民間のほうが人材は充実しているから品質が上がる。 Q:民間委託とすることにも問題点はありますか。 肥後公的統計を民間にどこまで任せていいのかという問題はある。個別の契約で守秘義務を遵守するように民間業者を縛っているとはいえ、調査対象者は、企業や個人の情報が漏れるのではないかと心配になるだろう。 それに、統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう』、「統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう」、「統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう」、その通りだ。
・『「不正」よりも「欠陥統計」が問題  Q:統計をめぐる体制の問題としては、3年前の毎月勤労統計問題を受けて、統計委員会が基幹統計を一斉点検していたのに、建設受注統計の不正は見過ごされていました。 肥後統計委員会にマンパワーが足りない。常勤の委員はおらず、事務局は委員会の運営で手一杯だ。点検対象とする統計を絞り、徹底的に調べるべきだと意見したのは私だけではなかったが、基幹統計を網羅することが優先された。56もの基幹統計を限られた期間で見るには、各省庁に統計ごとに調査票を記入させ、問題が見つかったと自己申告してきたものを取り上げるしかなかった。自己点検だった。 Q:どうすれば不正を見つけられるのでしょうか。 肥後チェック体制には3段階ある。現在の自己点検、相手の同意をもとにした点検、それに強制力を持った検査だ。自己点検では実効性がないことが今回わかった。 Q:今回、調査票の書き換えを発見したのは、検査権限を持つ会計検査院でした。 肥後強制力を持つ統計監督機関を設けるには、法体系を変えなければならない。不正があまりに多く、摘発が最優先であれば検討されるべきだろうが、強制力のある組織では統計精度の改善はできない。不正がそこまで多くなく、省庁と協力して統計精度を改善する必要があるのなら、統計委員会のようにフレンドリーな組織のほうがいい。) 私は、摘発を優先しなければならないほど不正が多いとは思っていない。むしろ、公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した』、「公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した」、なるほど。
・『3省合体「統計庁」で統計の専門人材育成を  Q:各省庁の専門人材不足に対しては、統計部署の一元化が必要と言われます。 肥後私が考えているのは、部分的な一元化だ。総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する。 他の省庁から統計を集めるわけではない。各省庁の所管業務に密着した統計は、その省庁でなければ作れない。たとえば医療施設についての統計であれば、厚労省しか分類方法などわからない。雇用統計は労働行政と結びついているし、建設関連の統計は、国交省の許認可権や公共工事の発注と関わっている。 ただし、所管官庁では統計の専門人材が不足する。それを統計庁がサポート・監督することで補い、統計全体の質を確保する。統計庁にノウハウが蓄積されれば、他省庁の統計がどのように作られているのかもわかる。 Q:現実味はあるのでしょうか。 肥後省庁再編が相当困難な作業であることは承知している。統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ』、「総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する」、「統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ」、その通りなのだろう。

次に、2021年12月29日付け日経新聞「政府統計、電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床、データ活用にも壁」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78873410Z21C21A2MM8000/
・『政府の基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいないことが分かった。アナログな紙の調査は非効率なだけでなく、書き換えなど統計不正・・・の温床にもなる。経済政策の基盤となるデータの収集・公開が不透明なままではデジタル社会の成長競争に取り残されかねない。 各省庁が2020年末時点で総務省に報告した内容を日本経済新聞が洗い出した。53の基幹統計のもとになる50調査を対象に調べた。 オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった。1.3%の農業経営統計など農林水産省所管分が目立った。「高齢化が進んでパソコン操作に不慣れな人が多い」という。 今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす。 役所ごとにシステムがバラバラで、入力の手順が煩雑なことも普及が進まない要因とみられる。中堅建設会社は「自社の受注管理システムのデータを国交省の様式にあわせて打ち替えるのは手間がかかる」と活用しない理由を説明する。 大和証券の岩下真理氏は「海外は企業側もデジタル化が進み、オンライン回答にも対応できる」と日本のデジタル化の遅れを指摘する。 公的統計をオープンデータとして国民が使いやすくする仕組みも整っていない。会計検査院は9月、政府のポータルサイトで検索やデータ抽出機能が使えない統計が8割に上ると指摘した。政府や企業がデータを知の源泉として駆使するデジタル社会の競争の土俵に日本は上がれていない。 米国や英国などの統計データは、第三者がコンピュータープログラムなどで自動収集しやすい様式で公開されているものが多い。日本の統計はファイル形式が不ぞろいだったり、人手の作業が必要だったり、使い勝手が悪い問題が残る。 一連の統計不正の背景として人的資源の不足も指摘される。基幹統計の3割にあたる16調査は集計・分析作業を担う職員が3人以下だった。建設受注統計は3人で、実質的には1人に都道府県経由の調査票回収から確認まで任せていた。省内では「慢性的な人手不足に陥っていた」との証言もある。 内閣官房によると国の本省の統計職員数は減少傾向が続いている。18年度は1470人で08年度比で1割弱減った。本来は様々な政策立案にかかわる重要な部門にもかかわらず適切な人員が確保されずに不正の温床になっていた可能性がある。 法政大の平田英明教授は「予算が減らされ、人手も足りずデジタル化は後回しになっているのが実情だ」と指摘する。各省の縦割りの弊害も踏まえ「デジタル庁が一元的に統計システムを整備すべきだ」と訴える。 デジタル化の遅れは統計に限らない。内閣府によると、行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった』、「基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいない」、「オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった」、「今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす」、主管官庁がこれでは。「設工事受注動態統計」に問題があるのも当然だ。「行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった」、保存体制もお粗末そのものだ。政府統計作成・活用について、抜本的な見直しが急務だ。
タグ:(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁) 統計問題 東洋経済オンライン 黒崎 亜弓氏による「建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く」 「遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ」、「重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ」、なるほど。 「2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」・・・の問題よりも深刻といえる」、確かに信じ難いような酷い話だ。 「統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」、その通りだ。 「未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる」、「未回答者に罰金を科すべきという声も」あるが、「法的には正しいかもしれないが、現実的ではない」、なるほど。 「統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう」、「統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう」、その通りだ。 「公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した」、なるほど。 「総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する」、 「統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ」、その通りなのだろう。 日経新聞「政府統計、電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床、データ活用にも壁」 「基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいない」、「オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった」、「今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす」、 主管官庁がこれでは。「設工事受注動態統計」に問題があるのも当然だ。「行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった」、保存体制もお粗末そのものだ。政府統計作成・活用について、抜本的な見直しが急務だ。
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防衛問題(その22)(【防衛大現役教授が実名告発】自殺未遂 脱走 不審火 新入生をカモにした賭博事件…改革急務の危機に瀕する防衛大学校の歪んだ教育、、非公然に存在する自衛隊「別班」 [国内政治]

防衛問題については、本年7月18日に取上げた。今日は、(その22)(【防衛大現役教授が実名告発】自殺未遂 脱走 不審火 新入生をカモにした賭博事件…改革急務の危機に瀕する防衛大学校の歪んだ教育、非公然に存在する自衛隊「別班」のスパイ活動は首相もコントロールできない…極秘組織の知られざる成立経緯 伝説の諜報機関・旧陸軍中野学校の遺伝子を継ぐ)である。

先ずは、6月30日付け集英社オンラインが掲載した防衛大学校 等松春夫教授による「【防衛大現役教授が実名告発】自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件…改革急務の危機に瀕する防衛大学校の歪んだ教育」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/142994?page=1
・『防衛大学校で教鞭をとる等松春夫教授が公開した衝撃的な論考『危機に瀕する防衛大学校の教育』について、インタビューをおこなった。なぜ、等松氏は職を賭してまで“告発”に踏み切ったのか。(前後編の前編)
・『危機に瀕する防衛大学校の教育#1 コロナ禍で防衛大学校に起きたこと(等松教授は日本の内外で活躍する政治外交史・戦争史の研究者であり、軍事史研究の泰斗、H・P・ウィルモットの著作の翻訳者としても知られる。そして14年にわたって防衛大学校と自衛隊の諸学校で教鞭をとってきた教育者でもある。 幹部自衛官育成の内情に危機感を持つ教授は「内側からの声だけで改革への道を拓くには限界がある」と痛感し、長年にわたる組織の歪みを指摘した論考を執筆したと語る。 編集部(以下、――) 論考を拝読しました。教授の論点は多岐にわたりますが、昨年3月に卒業した479人の学生のうち任官辞退者(部隊への着任を拒んで、自衛隊を退職した者)が、72人にも上ったという数字は、衝撃的でした。【1】 等松(以下、略):衝撃的なのは、任官辞退者の数だけではありません。卒業した者だけではなく、昨年4月に入学した488人の学生(1年)のうち、約2割にあたる100人近い学生が、入学から1年以内に退校しているのです【2】。また、2・3年生の間に自主的に退校した学生も相当な数に上っています【3】(Qは聞き手の質問、Aは等松氏の回答)。 Q:任官辞退者や中途退校者が急増した理由を、いまの若者の「精神的な打たれ弱さ」や「ウクライナ戦争の勃発」に見出すマスコミや識者の論調を、教授は強く否定しています。 A:現役の教官として申し上げますが、学生たちの多くは「打たれ弱い」から辞めるのではありません。むしろ、優秀で使命感の強い学生ほど防衛大学校(以下、防大)の教育の現状に失望して辞めていく傾向が強いと感じています。 Q:学生たちと同じように、教授も防大に失望して“告発”を決意なさった? A:学生を教育する立場の私が「失望した」と言っては、元も子もありません。防大には今なお、使命感と情熱にあふれた学生と教官がいます。失望したから見捨てる、逃げるのではなく、どうにか真っ当な教育環境を整えたいのです。 Q:そう決意せしめたのは、コロナ禍に対する防大執行部の対応だったとか。 A:コロナ禍以前から、自衛官教官として「病人・けが人・咎人」【4】を送り込んでくる、防衛省・自衛隊のやり方に対して、私は内外で批判の声を挙げてきました。そのことで、自衛隊・防衛省、防大に出向してくる防衛官僚の一部から恨みを買っていた自覚はあります。 Q:自衛官教官とは、防大で「防衛学」の講義を受け持つ現役自衛官のことですね。 A:はい。正確には「防衛学教育学群」といいます。他の大学にはない、安全保障に特化した科目を教える、防大の看板ともいえる学群です。ここには約40人の教官がいますが、そのうち30名が防衛省内のローテーション人事で補職されている人々です。【5】 「病人・けが人・咎人」は海上自衛隊の一部で使われている隠語で、教育部署に回される自衛官の類型を揶揄して使われているフレーズです。おそらく陸自・空自でも、実態は大同小異でしょう。病人とけが人は、本人だけの責任ではありませんが、咎人は論外です』、「学生たちの多くは「打たれ弱い」から辞めるのではありません。むしろ、優秀で使命感の強い学生ほど防衛大学校(以下、防大)の教育の現状に失望して辞めていく傾向が強いと感じています」、「優秀で使命感の強い学生ほど」「失望して辞めていく傾向が強い」、もたいないことだ。「「防衛学教育学群」は・・・安全保障に特化した科目を教える、防大の看板ともいえる学群です。ここには約40人の教官がいますが、そのうち30名が防衛省内のローテーション人事で補職・・・「病人・けが人」「自衛官の類型を揶揄して使われているフレーズ」、なるほど。
・『「商業右翼」【6】を講師として学外から招く悪習  Q:「咎人」とはどういう意味を指しているのでしょう? A:部隊や自衛隊内のさまざまな機関でパワハラや服務違反を起こしたり、職務上のミスを多く犯した者をさします。要するに部隊や諸機関で持て余された人々が、「手軽な左遷先」として防大の防衛学教育学群に送られてきているのです。【7】 Q:それは知りませんでした。教授や准教授といった肩書になっているので、てっきり大学院を出た自衛官が担当しているもの、と。 A:ごく稀に修士号や博士号を持ち、なおかつ学生教育への情熱を持つかたもいらっしゃいますが、30名のうちのわずか数名に留まります。 Q:なぜですか。 A:文官教官(自衛隊ではなく、民間の研究者から選抜された教官)と違って、自衛官教官には厳格な資格審査がありません。文官教官「講師/准教授/教授」の採用はこれまでの研究実績(と、ポストの空きがあるかどうか)によって決まりますが、自衛官教官の場合は、自衛隊で1佐以上の階級なら、防大補職で自動的に「教授」。2佐、3佐なら「准教授」の地位が与えられてしまうのです。けれど、大多数の自衛官教官は、とてもその任には堪えられない人々です。修士号や博士号を取得していない人も少なくありません。【8】 教授や准教授といった立場で防大に補職されても、いっこうに勉強も研究もせず、代々引き継がれているマニュアル本で紋切り型の教え方しかせず、さらには安直な陰謀論に染まることもある。自分が担当する授業の枠内で、学外から招いた怪しい右翼系論客に学生たちに対する講演をさせるケースまであり、防大内に不適切な人士が入り込むチャンネルになってしまっています。 怪しげな論客が教室で、政治的に偏向した低レベルの「講演」を学生たちに行い、彼らを招聘した「咎人」自衛官教官は良いことをしたと考え、怪しい論客は「防衛大学校で講演した」ことで自分に箔を付ける。そうした行為がまかり通っているのです。 困ったことに、この種の「商業右翼」を講師として学外から招く悪習は、防大のみならず陸海空の幹部学校(上中級幹部を養成する自衛隊の教育機関)にまで見られるのです。【9】 私はこれまでもさまざまな機会で警鐘を鳴らしてきましたが、無視されてきました』、「自衛隊で1佐以上の階級なら、防大補職で自動的に「教授」。2佐、3佐なら「准教授」の地位が与えられてしまうのです。けれど、大多数の自衛官教官は、とてもその任には堪えられない人々です。修士号や博士号を取得していない人も少なくありません」、「自分が担当する授業の枠内で、学外から招いた怪しい右翼系論客に学生たちに対する講演をさせるケースまであり、防大内に不適切な人士が入り込むチャンネルになってしまっています。 怪しげな論客が教室で、政治的に偏向した低レベルの「講演」を学生たちに行い、彼らを招聘した「咎人」自衛官教官は良いことをしたと考え、怪しい論客は「防衛大学校で講演した」ことで自分に箔を付ける。そうした行為がまかり通っているのです。 困ったことに、この種の「商業右翼」を講師として学外から招く悪習は、防大のみならず陸海空の幹部学校・・・にまで見られるのです」、困ったことだ。
・『コロナ禍での大学内の混乱  Q:コロナ禍中の2020年11月には、学校長であった國分良成氏(当時)や、陸上自衛隊・最高幹部の陸将から副校長に補職された原田智総氏などの不作為を指摘した申立書を、岸信夫・防衛大臣に送付したとうかがいました。【10】 A:学生たちを守るためです。2020年の春、防大の執行部はコロナ流行の拡大状況を見誤り、春期休暇で帰省していた約1500人の在校生を3月28日までに召集。4月1日から約500人の新入生を加えて、1部屋に8人を基本とする集団生活を強行しました。 この“軟禁” ともいえる状況によって、首吊りや飛び降りを含む5件の自殺未遂、多数の脱柵(脱走)、ストレスによる放火を疑われる不審火、そして新入生をカモにして数十万円もの金銭が動いた大規模な賭博事件まで起きました。この間まともな授業もできず、防大は2か月近く麻痺状態でした。【11】 にもかかわらず、防大の執行部は誰も、何の責任も取らなかったのです。一般大学では、早いところでは2月末から密を避けるためのリモート授業の検討が始まっていましたが、4月初めになっても防大では何ら方針が立っていませんでした。その後もまったくの泥縄で、防大の執行部には危機管理の意識がまるでありませんでした。 そこで、私は2020年10月、防大に対しておこなわれた特別防衛監察において執行部の責任を問い、教育機関としての正常化を求める申立書を提出しました。ところが、約5時間後、監察団の次席代表である陸自1佐(大佐)が私の研究室を訪れ、「受け取れません」と、申立書を返却してきたのです。封が開いていたので、中身に目は通したのでしょう。翌11月、私は岸大臣に申立書を送付しました。しかし、こちらも黙殺されました。 無責任な官僚や幹部自衛官たちは、日本の安全保障を担う重要な人材の育成をいったい何だと思っているのか。こうした経緯が積み重なったころから、最後の手段として論考の公表を決意しました』、「2020年の春、防大の執行部はコロナ流行の拡大状況を見誤り、春期休暇で帰省していた約1500人の在校生を3月28日までに召集。4月1日から約500人の新入生を加えて、1部屋に8人を基本とする集団生活を強行しました。 この“軟禁” ともいえる状況によって、首吊りや飛び降りを含む5件の自殺未遂、多数の脱柵(脱走)、ストレスによる放火を疑われる不審火、そして新入生をカモにして数十万円もの金銭が動いた大規模な賭博事件まで起きました。この間まともな授業もできず、防大は2か月近く麻痺状態でした。【11】 にもかかわらず、防大の執行部は誰も、何の責任も取らなかったのです。一般大学では、早いところでは2月末から密を避けるためのリモート授業の検討が始まっていましたが、4月初めになっても防大では何ら方針が立っていませんでした。その後もまったくの泥縄で、防大の執行部には危機管理の意識がまるでありませんでした」、組織としての形をなしてない。「監察団の次席代表である陸自1佐(大佐)が私の研究室を訪れ、「受け取れません」と、申立書を返却」、「岸大臣に申立書を送付しました。しかし、こちらも黙殺」、酷い組織だ。

次に、8月11日付け集英社オンラインが掲載した明治学院大学の石原俊教授による「大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考をどう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/152530?page=1
・『2023年6月30日に防衛大学校の等松春夫教授が衝撃的な論考を発表した。防大、防衛省の構造に警鐘を鳴らすこの論考を有識者たちはどのように読んだのだろうか。『硫黄島』(中公新書)、『シリーズ 戦争と社会』(岩波書店)などの著書で知られ、「大学の自治」に詳しい明治学院大学の石原俊教授が綴る』、興味深そうだ。
・『一般の大学等とは大きく異なる「防衛大学校」という存在  筆者は防衛大学校と深い交流を持つ者ではなく、自衛隊や外国の軍隊を専門的な研究対象とする者でもない。そのため、本稿で述べる内容は徹頭徹尾、一般論にとどまることを、あらかじめ承知いただきたい。 防衛大学校(以下、防大)は、国際的にみれば各国の士官学校に比肩する教育機関であり、学校教育法第1条が定める「1条校」ではない。 この点で防大は、一般の大学等とは大きく異なる。 等松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する。 特に、学生舎(寮)における共同生活や、上級生から下級生への「指導」の慣習が、公私混同の命令や悪質な威圧の温床となり、ハラスメント、いじめ、賭博、詐欺などが蔓延する要因になってきたと告発している。 これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう。 等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある』、「松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する」、「防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張」、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある」、なるほど。

第三に、 9月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した共同通信社編集局編集委員の石井 暁氏による「非公然に存在する自衛隊「別班」のスパイ活動は首相もコントロールできない…極秘組織の知られざる成立経緯 伝説の諜報機関・旧陸軍中野学校の遺伝子を継ぐ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73513
・『TVドラマの影響で注目を集めている自衛隊の非公然スパイ組織「別班」。その取材に5年以上をかけ2013年に「別班は現在も存在し活動している」というスクープ記事を出した共同通信の石井暁さんは「別班は陸上自衛隊の組織図に載っていない。幹部や防衛大臣はもちろん、自衛隊最高指揮官である総理大臣すらどんな活動をしているか把握しておらず、透明性がない。民主主義国家である日本にとっては危険な存在だ」という――。 ※本稿は、石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです』、「別班は陸上自衛隊の組織図に載っていない。幹部や防衛大臣はもちろん、自衛隊最高指揮官である総理大臣すらどんな活動をしているか把握しておらず、透明性がない。民主主義国家である日本にとっては危険な存在だ」、なるほど。
・『10年前「別班」のスクープ記事を出すまでの取材のきっかけ  「別班」の取材は、ある自衛隊幹部からもたらされた“すごい話”が端緒になった。 手元の取材メモによると、その幹部と会って話を聞いたのは、2008年の4月10日。彼とはその時点で10年以上の付き合いだった。場所は都内のレストラン。赤ワインを飲みながらの会話がふと途切れた直後、幹部は「すごい話を聞いた」と話し始めた。 「陸上自衛隊の中には、『ベッパン』とか『チョウベツ』とかいう、総理も防衛大臣も知らない秘密情報組織があり、勝手に海外に拠点を作って、情報収集活動をしているらしい。これまで一度も聞いた事がなかった」 事実ならば、政治が、軍事組織の自衛隊をまったく統制できていないことになる。シビリアンコントロールを大原則とする民主主義国家にとって、極めて重大な問題だ。直感でそう思い、執拗しつように質問を重ねたのだが、彼が把握していたのは伝聞で得た情報のみで詳しいことは知らず、会食後に取材メモをまとめてみると、幹部は「ベッパン」と「チョウベツ」という言葉を混同して使っていた』、「総理も防衛大臣も知らない秘密情報組織があり、勝手に海外に拠点を作って、情報収集活動をしているらしい。」、なるほど。
・『公式な諜報機関として「調別」の存在は知られていた  「調別」の正式名称は、陸上幕僚監部調査部別室。前身の陸上幕僚監部第2部別室時代は「2別」と呼ばれていた。現在の防衛省情報本部電波部の前身で、いわゆるシギント(SIGINT=SIGNALS INTELLIGENCEの短縮形で、通信、電波、信号などを傍受して情報を得る諜報ちょうほう活動のこと)を実施する、公表されている情報機関であって、自衛隊の組織図にも載っていない秘密情報部隊「別班」とは全く違う組織だ。 調別時代から室長は警察官僚が務め、電波部長も例外なく警察官僚がそのポストに就いている。警察庁にとって手放したくない重要対外情報の宝庫だからだ。特にロシア、中国、北朝鮮情報については、アメリカの情報機関でさえも一目置く存在だ。 自衛隊幹部から話を聞いたのが、2008年4月10日。 「陸自が暴走」「文民統制を逸脱」「自衛官が身分偽装」といった記事の見出しが脳裏に浮かび、半信半疑のまま翌11日から早速、資料収集や取材を開始した。そして記事として最初に新聞に掲載されたのが、2013年11月28日。まさか、5年半以上も「別班」取材に費やすことになるとは、当然のことながらその時はまったく考えなかった』、「調別時代から室長は警察官僚が務め、電波部長も例外なく警察官僚がそのポストに就いている。警察庁にとって手放したくない重要対外情報の宝庫だからだ。特にロシア、中国、北朝鮮情報については、アメリカの情報機関でさえも一目置く存在だ」、「ロシア、中国、北朝鮮情報については、アメリカの情報機関でさえも一目置く存在」、見直した。
・『別班本部は防衛省の市ヶ谷駐屯地内に堂々と存在する?  取材の端緒になったこの幹部は、いろいろと駆け回って情報収集に努めてくれた。当初、別班の姿形はまるで見えなかったが、数回会って話を聞いていくうち、やがて濃い霧のはるか向こう側に、ぼんやりとした輪郭のようなものが浮かんできた。 彼によれば、別班は陸上幕僚監部の「第2部別班」を振り出しに、組織改編による「調査部別班」を経て、「運用支援・情報部別班」が正式名称(2008年時点)だという(その後、さらなる組織改編によって2017年3月、「指揮通信システム・情報部別班」となっている)。通称「DIT」と呼ばれており、どうもこれは「DEFENSE INTELLIGENCE TEAM」の頭文字をとった略称だろうということだった。 トップの班長は1等陸佐で、旧日本軍や外国軍の大佐に相当する。歴代、陸上自衛隊の情報部門出身者が班長を務め、人事的なルートが確立している。ただし、全体像を把握する関係者が極めて限られているため、班員数など別班の詳細は不明という。表向き、別班は存在しないことになっている秘密組織でありながら、陸上幕僚監部運用支援・情報部長(当時)の直属で、本部は防衛省がある市ヶ谷駐屯地内に堂々と存在するともいう。 【図表1】陸軍中野学校から陸上自衛隊への組織変遷(一部)出典=『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』 主な任務は海外にダミーの拠点を置いてのスパイ活動 別班は、中国やヨーロッパなどにダミーの民間会社をつくって別班員を民間人として派遣し、ヒューミント(HUMINT=HUMAN INTELLIGENCEの短縮形で、人を媒介とした諜報活動、人的情報収集活動)をさせている。有り体に言えば、スパイ活動だ。 日本国内でも、在日朝鮮人を買収して抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせるいっぽう、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも情報提供者をつくり、内部で工作活動をさせているという。また、米軍の情報部隊や米中央情報局(CIA)とは、頻繁に情報交換するなど緊密な関係を築き、自ら収集、交換して得た情報は、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長と、防衛省の情報本部長(情報収集・分析分野の責任者)に上げている。 ではいったい、どのような人物が別班の仕事に従事しているのかというと――陸上自衛隊の調査部(現・指揮通信システム・情報部)や調査隊(現・情報保全隊)、中央地理隊(現・中央情報隊地理情報隊)、中央資料隊(現・中央情報隊基礎情報隊)など情報部門の関係者の中で、突然、連絡が取れなくなる者がいる――それが別班員だというのだ』、「主な任務は海外にダミーの拠点を置いてのスパイ活動 別班は、中国やヨーロッパなどにダミーの民間会社をつくって別班員を民間人として派遣し、ヒューミント(HUMINT=HUMAN INTELLIGENCEの短縮形で、人を媒介とした諜報活動、人的情報収集活動)をさせている。有り体に言えば、スパイ活動だ」。 日本国内でも、在日朝鮮人を買収して抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせるいっぽう、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも情報提供者をつくり、内部で工作活動をさせているという。また、米軍の情報部隊や米中央情報局(CIA)とは、頻繁に情報交換するなど緊密な関係を築き、自ら収集、交換して得た情報は、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長と、防衛省の情報本部長(情報収集・分析分野の責任者)に上げている」、なるほど、
・『別班は孤独な存在だが、決裁なしに300万円まで使えるとも  いくら自衛隊の情報部門の人間でも、普通は人事システムの端末をたたけば所属先ぐらい簡単にわかる。しかし、端末を叩いても何もわからない者がいる、との話だった(それでも、“同期”などごく近い人たちは感づくと思うが……)。 別班員になると、一切の公的な場には行かないように指示される。表の部分からすべて身を引く事が強制されるわけだ。さらには「年賀状を出すな」「防衛大学校の同期会に行くな」「自宅に表札を出すな」「通勤ルートは毎日変えろ」などと細かく指示される。 ただし、活動資金は豊富だ。陸上幕僚監部の運用支援・情報部長の指揮下の部隊だが、一切の支出には決裁が不必要。「領収書を要求されたことはない」という。情報提供料名目で1回300万円までは自由に使え、資金が不足した場合は、情報本部から提供してもらう。「カネが余ったら、自分たちで飲み食いもした。天国だった」という。 シビリアンコントロールとは無縁な存在ともいえる「別班」のメンバーは、全員が陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の修了者。同課程の同期生は、数人から十数人おり、その首席修了者だけが別班員になれるということを聞いて、すとんと胸に落ちるものがあった(後から、首席でも一定の基準に達していないと採用されないとも聞いた)。 同課程こそ、旧陸軍中野学校の流れをくむ、“スパイ養成所”だからである』、「シビリアンコントロールとは無縁な存在ともいえる「別班」のメンバーは、全員が陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の修了者。同課程の同期生は、数人から十数人おり、その首席修了者だけが別班員になれるということを聞いて、すとんと胸に落ちるものがあった(後から、首席でも一定の基準に達していないと採用されないとも聞いた)。 同課程こそ、旧陸軍中野学校の流れをくむ、“スパイ養成所”だからである」、なるほど。
・『ほぼ全員が陸自小平学校の心理戦防護課程の修了者  中野学校は1938年7月、旧陸軍の「後方勤務要員養成所」として、東京・九段の愛国婦人会別棟に開校した。謀略、諜報、防諜ぼうちょう、宣伝といった、いわゆる「秘密戦」の教育訓練機関として、日露戦争を勝利に導いたとされる伝説の情報将校・明石元二郎大佐の工作活動を目標に“秘密戦士”の養成が行われた。1940年8月に中野学校と正式に改称し、1945年の敗戦で閉校するまでに約2000人の卒業生を輩出したとされる。 卒業生の日下部一郎『決定版陸軍中野学校実録』や加藤正夫『陸軍中野学校 秘密戦士の実態』などによると、実際の教育内容は、郵便物の開緘かいかん盗読(封を開けたとわからないように読むこと)、特殊爆薬、秘密カメラ、偽造紙幣、盗聴、変装、潜行、候察、開錠、暗号解読。さらには武道、射撃、自動車運転や語学、心理学、政治、経済など、まさにスパイ養成そのものだったことがわかる。卒業生らは、特務機関員や情報将校となって、日本国内やアジア・太平洋をはじめとする海外で「秘密戦」に従事した』、「陸軍中野学校」の「卒業生らは、特務機関員や情報将校となって、日本国内やアジア・太平洋をはじめとする海外で「秘密戦」に従事」、なるほど。
・『旧陸軍中野学校の亡霊のような精神が引き継がれているのか  それでは、この旧陸軍の中野学校と、陸上自衛隊小平学校の関係はどうなっているのだろうか。 小平学校は2001年に調査学校(情報要員養成)と業務学校(会計、警務などの業務要員養成)が統合してできた陸自の教育機関で、情報、語学、警務、法務、会計、人事、システム・戦術の7部からなっている。 警務教育部では、各国軍の憲兵に近い存在の警務隊員養成を目的としている。情報教育部は第1教育課と第2教育課から構成されている。第1教育課では幹部上級、幹部特修、陸曹の各情報課程や地誌、航空写真判読などの教育コースがある。第2教育課は幹部、陸曹の調査課程(防諜部隊である情報保全隊員養成)と心理戦防護課程(別班員などの養成)の各コースからなる。つまり、第1教育課は“表”の教育コースであるのに対して、第2教育課は“裏”の教育コースということができる。 2018年の機構改革で、富士駐屯地に陸上自衛隊情報学校が新設された。情報教育部のうち、第2教育課を情報学校第2教育部として小平駐屯地に残し、ほかは情報学校第1教育部に再編、富士駐屯地に移転した。 そのような小平学校において、直接的に中野学校の流れをくむと言われているのが、情報教育部第2教育課の心理戦防護課程だ。かつては対心理情報課程と称していたが、1974年、現在の名称に改称された。 【図表2】陸上自衛隊小平学校の沿革出典=陸上自衛隊小平学校ウェブサイト』、「小平学校において、直接的に中野学校の流れをくむと言われているのが、情報教育部第2教育課の心理戦防護課程だ。かつては対心理情報課程と称していたが、1974年、現在の名称に改称された」、なるほど。
・『中野学校の教官が前身の調査学校で教えていた  中野学校と、小平学校情報教育部の第2教育課心理戦防護課程との連続性は明白だ。たとえば、元中野学校教官だった藤原岩市が、小平学校の前身である調査学校(1954年発足)の校長を務め、やはり元中野学校教官の山本舜勝が調査学校の副校長に就いていた。調査学校の初期の教官には、中野学校出身者が多かったとされる。 藤原岩市は太平洋戦争開始直前、タイのバンコクに特務機関「F(藤原)機関」を創設し、機関長として対インド侵攻などの工作活動に従事した“伝説の情報将校”だ。調査学校の校長時代には、対心理情報課程(小平学校情報教育部第2教育課心理戦防護課程の前身)を設置している。 山本舜勝は陸軍大学校卒業後、参謀本部参謀などを経て、中野学校教官として謀略論を担当した。陸上自衛隊入隊後は藤原の指示で米軍特殊戦学校に留学し、帰国後、対心理情報課程創設に直接関与している。 中野学校と小平学校の心理戦防護課程の教育内容は、恐ろしいほど似通っている。心理戦防護課程はまさに、歴史上、敗戦で完全消滅したことになっている“中野学校の亡霊”とも言える存在なのだ』、「中野学校と小平学校の心理戦防護課程の教育内容は、恐ろしいほど似通っている。心理戦防護課程はまさに、歴史上、敗戦で完全消滅したことになっている“中野学校の亡霊”とも言える存在なのだ」、なるほど。
・『告白本によれば非公式のスパイ組織を復活させたのは米軍  そもそも、旧帝国陸軍の“負の遺伝子”を引き継ぐ別班は戦後、なぜ“復活”したのか。1970年代から関係者による一連の告白本が刊行されるまで、その誕生の経緯は長い間、謎とされてきた。 しかし、元別班長の平城弘通(『日米秘密情報機関』の著者)によれば、1954年ごろ、在日米軍の大規模な撤退後の情報収集活動に危機感を抱いた米軍極東軍司令官のジョン・ハル大将が、自衛隊による秘密情報工作員養成の必要性を訴える書簡を、当時の吉田茂首相に送ったのが、別班設立の発端だという。 その後、日米間で軍事情報特別訓練(MIST=MILITARY INTELLIGENCE SPECIALIST TRAINING)の協定が締結され、1956年から朝霞の米軍キャンプ・ドレイクで訓練を開始。1961年、日米の合同工作に関する新協定が締結されると、「MIST」から日米合同機関「ムサシ機関」となり、秘密情報員養成訓練から、情報収集組織に生まれ変わった。「ムサシ機関」の日本側メンバーは、陸上幕僚監部2部付で、実体は2部別班。「別班」誕生の瞬間だ』、「非公式のスパイ組織を復活させたのは米軍」、なるほど。
・『1961年に「ムサシ機関」という名になり本格始動した  ムサシ機関の情報収集活動のターゲットは、おもに共産圏のソ連(当時)、中国、北朝鮮、ベトナムなどで、当時はタイ、インドネシアも対象となっていた。平城によると〈その後、初歩的活動から逐次、活動を深化させていったが、活動は内地に限定され、国外に直接活動を拡大することはできなかった〉という。 それでは、いつから海外に展開するようになったのだろうか。 平城は草創期の別班員の活動について、次のように記述している。 〈工作員は私服ではあるが、本来は自衛官であり、米軍と共同作業をしている。 そして工作員は、自身がいろいろと工作をやるのではなく、エージェントを使って情報収集をするのが建前である。身分を隠し、商社員、あるいは引揚者、旅行者などと接触し、彼らに対象国の情報を取らせるのだ) 現在の別班員の姿の原型と考えると、非常に興味深い証言といえる』、「工作員は、自身がいろいろと工作をやるのではなく、エージェントを使って情報収集をするのが建前である。身分を隠し、商社員、あるいは引揚者、旅行者などと接触し、彼らに対象国の情報を取らせるのだ」、活動には一定の極秘部分があるにしても、透明性、シビリアンコントロールもなんとか貫徹すべきだ。
タグ:防衛問題 (その22)(【防衛大現役教授が実名告発】自殺未遂 脱走 不審火 新入生をカモにした賭博事件…改革急務の危機に瀕する防衛大学校の歪んだ教育、大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考をどう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、非公然に存在する自衛隊「別班」) 集英社オンライン 等松春夫教授による「【防衛大現役教授が実名告発】自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件…改革急務の危機に瀕する防衛大学校の歪んだ教育」 「学生たちの多くは「打たれ弱い」から辞めるのではありません。むしろ、優秀で使命感の強い学生ほど防衛大学校(以下、防大)の教育の現状に失望して辞めていく傾向が強いと感じています」、「優秀で使命感の強い学生ほど」「失望して辞めていく傾向が強い」、もたいないことだ。 「「防衛学教育学群」は・・・安全保障に特化した科目を教える、防大の看板ともいえる学群です。ここには約40人の教官がいますが、そのうち30名が防衛省内のローテーション人事で補職・・・「病人・けが人」「自衛官の類型を揶揄して使われているフレーズ」、なるほど。 「自衛隊で1佐以上の階級なら、防大補職で自動的に「教授」。2佐、3佐なら「准教授」の地位が与えられてしまうのです。けれど、大多数の自衛官教官は、とてもその任には堪えられない人々です。修士号や博士号を取得していない人も少なくありません」、 「自分が担当する授業の枠内で、学外から招いた怪しい右翼系論客に学生たちに対する講演をさせるケースまであり、防大内に不適切な人士が入り込むチャンネルになってしまっています。 怪しげな論客が教室で、政治的に偏向した低レベルの「講演」を学生たちに行い、彼らを招聘した「咎人」自衛官教官は良いことをしたと考え、怪しい論客は「防衛大学校で講演した」ことで自分に箔を付ける。そうした行為がまかり通っているのです。 困ったことに、この種の「商業右翼」を講師として学外から招く悪習は、防大のみならず陸海空の幹部学校・・・にまで 見られるのです」、困ったことだ。 「2020年の春、防大の執行部はコロナ流行の拡大状況を見誤り、春期休暇で帰省していた約1500人の在校生を3月28日までに召集。4月1日から約500人の新入生を加えて、1部屋に8人を基本とする集団生活を強行しました。 この“軟禁” ともいえる状況によって、首吊りや飛び降りを含む5件の自殺未遂、多数の脱柵(脱走)、ストレスによる放火を疑われる不審火、そして新入生をカモにして数十万円もの金銭が動いた大規模な賭博事件まで起きました。この間まともな授業もできず、防大は2か月近く麻痺状態でした。【11】 にもかかわらず、防大の執行部は誰も、何の責任も取らなかったのです。一般大学では、早いところでは2月末から密を避けるためのリモート授業の検討が始まっていましたが、4月初めになっても防大では何ら方針が立っていませんでした。 その後もまったくの泥縄で、防大の執行部には危機管理の意識がまるでありませんでした」、組織としての形をなしてない。「監察団の次席代表である陸自1佐(大佐)が私の研究室を訪れ、「受け取れません」と、申立書を返却」、「岸大臣に申立書を送付しました。しかし、こちらも黙殺」、酷い組織だ。 石原俊教授による「大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考をどう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」」 「松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する」、「防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張」、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある」、なるほど。 PRESIDENT ONLINE 石井 暁氏による「非公然に存在する自衛隊「別班」のスパイ活動は首相もコントロールできない…極秘組織の知られざる成立経緯 伝説の諜報機関・旧陸軍中野学校の遺伝子を継ぐ」 石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書) 「別班は陸上自衛隊の組織図に載っていない。幹部や防衛大臣はもちろん、自衛隊最高指揮官である総理大臣すらどんな活動をしているか把握しておらず、透明性がない。民主主義国家である日本にとっては危険な存在だ」、なるほど。 「総理も防衛大臣も知らない秘密情報組織があり、勝手に海外に拠点を作って、情報収集活動をしているらしい。」、なるほど。 「調別時代から室長は警察官僚が務め、電波部長も例外なく警察官僚がそのポストに就いている。警察庁にとって手放したくない重要対外情報の宝庫だからだ。特にロシア、中国、北朝鮮情報については、アメリカの情報機関でさえも一目置く存在だ」、「ロシア、中国、北朝鮮情報については、アメリカの情報機関でさえも一目置く存在」、見直した。 「主な任務は海外にダミーの拠点を置いてのスパイ活動 別班は、中国やヨーロッパなどにダミーの民間会社をつくって別班員を民間人として派遣し、ヒューミント(HUMINT=HUMAN INTELLIGENCEの短縮形で、人を媒介とした諜報活動、人的情報収集活動)をさせている。有り体に言えば、スパイ活動だ」。 日本国内でも、在日朝鮮人を買収して抱き込み、北朝鮮に入国させて情報を送らせるいっぽう、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)にも情報提供者をつくり、内部で工作活動をさせているという。また、米軍の情報部隊や米中央情報局(CIA)とは、頻繁に情報交換するなど緊密な関係を築き、自ら収集、交換して得た情報は、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長と、防衛省の情報本部長(情報収集・分析分野の責任者)に上げている」、なるほど、 「シビリアンコントロールとは無縁な存在ともいえる「別班」のメンバーは、全員が陸上自衛隊小平学校の心理戦防護課程の修了者。同課程の同期生は、数人から十数人おり、その首席修了者だけが別班員になれるということを聞いて、すとんと胸に落ちるものがあった(後から、首席でも一定の基準に達していないと採用されないとも聞いた)。 同課程こそ、旧陸軍中野学校の流れをくむ、“スパイ養成所”だからである」、なるほど。 「陸軍中野学校」の「卒業生らは、特務機関員や情報将校となって、日本国内やアジア・太平洋をはじめとする海外で「秘密戦」に従事」、なるほど。 「小平学校において、直接的に中野学校の流れをくむと言われているのが、情報教育部第2教育課の心理戦防護課程だ。かつては対心理情報課程と称していたが、1974年、現在の名称に改称された」、なるほど。 「中野学校と小平学校の心理戦防護課程の教育内容は、恐ろしいほど似通っている。心理戦防護課程はまさに、歴史上、敗戦で完全消滅したことになっている“中野学校の亡霊”とも言える存在なのだ」、なるほど。 「非公式のスパイ組織を復活させたのは米軍」、なるほど 「工作員は、自身がいろいろと工作をやるのではなく、エージェントを使って情報収集をするのが建前である。身分を隠し、商社員、あるいは引揚者、旅行者などと接触し、彼らに対象国の情報を取らせるのだ」、活動には一定の極秘部分があるにしても、透明性、シビリアンコントロールもなんとか貫徹すべきだ。
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