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携帯・スマホ(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年7月24日に取上げた。今日は、(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる)である。

先ずは、8月12日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/693960
・『予想以上によい決算だったというのが、私の印象です。楽天グループは8月10日、2023年12月期中間決算(1~6月)を発表しました。営業赤字は1250億円(前年同期は1987億円の営業赤字)、最終赤字は1399億円(同1778億円の最終赤字)です。莫大な赤字なのに「よい決算」という理由は、赤字幅が大きく縮小し始めたからです。 楽天グループは、連続赤字に陥って4期目になります。理由は新規参入した携帯電話事業が莫大な赤字を産んでいるからです。ある程度の赤字は計画で織り込み済みだったにせよ、楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした』、「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。
・『足元の「営業赤字」を評価できる理由  ところが総務省の指導でNTTドコモのahamoが20GBで2970円(税込、以下同じ)になるといった具合に、大手携帯会社が格安スマホの料金でサービスを提供する新しい流れができてしまいました。 こうなると20GBで2178円、データ無制限で3280円という楽天モバイルのプランは安いとはいえ劇的にというほどの価格差ではなく、低コストを武器に急拡大を狙うことが難しくなったのです。 本業の2本柱であるインターネット通販とファイナンス事業が好調であるにもかかわらず、こうしてモバイルが足を引っ張る形の赤字決算が続いてきました。 その赤字幅がいよいよ縮小したというのが、大きなニュースです。過去6四半期で営業赤字を並べていくと、2022年の第1四半期(1~3月)が1131億円で、そこから855億円(4~6月)、942億円(7~9月)、786億円(10~12月)、761億円(2023年1~3月)と続いてきたのが、今回の2023年第2四半期(4~6月)では488億円まで縮小しました。 数字としては赤字ではありますが、前年同期比で367億円の利益増です。何より赤字幅を縮小させるといってきたことを、有言実行できたということが評価できると思います。) 決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう。 かなりおどろおどろしい表現をしてしまい恐縮なのですが、実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています。 【2023年8月17日15時追記】有利子負債額を金融事業を除いた数字に修正しました。 これは日本の資本主義の悪い側面といっていいと思いますが、大企業グループの経営がいったん傾き始めると、投資家と金融機関が群がるようにグループの解体を始めます。最近の例でいえば東芝解体がその典型です』、「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。
・『楽天と東芝の危うい共通点  東芝の場合、経営陣による不正会計とアメリカの原子力関連の買収会社の巨額損失で経営が傾いた結果、グループ解体が始まります。 東芝メディカルシステムズはキヤノンに、テレビのレグザは中国ハイセンスに、パソコンのダイナブックはシャープにといった具合に売却されました。稼ぎ頭でもあるフラッシュメモリは、キオクシアとして分社化され外部の資本が注入されます。 その後、資金調達の必要性から本体にいわゆる物言う株主であるファンドを受け入れたことで、東芝はファンドの思惑に沿ってさらに分社化される寸前まで事態が悪化します。そこで登場した政府系ファンドの力を借りて経営を巡る状況が一転し、このたびTOBが成立する見込みになりました。 これ以上の東芝解体の動きは止まると思われますが、歴史のある大企業ですら、いともたやすく解体されていくというのが日本式の資本主義です。 銀行管理下で企業の解体が行われる場合、おいしい事業から順に手放すのが定石です。わかりやすい例を出しますと、ダイエーや西武グループが傾いた際にはスーパー事業ではなくコンビニ事業を売却しています。そして楽天グループでも、同じことが起き始めているのが懸念点です。 具体的にはまず楽天銀行が上場し、次いで楽天証券が上場準備を開始しています。上場というと一見ポジティブなイベントに見えますが、グループの中枢会社が上場するということは、実際には資金繰りの一環で外部資本を受け取ることと引き換えに子会社を切り売りする財務戦略です。) ここまでは既定路線と言える動きなのですが、今回の決算発表で衝撃を与えたのが、楽天ペイ(オンライン決済)事業と楽天ポイント(オンライン)事業を、楽天カード株式会社へ集約するという機構改革です。並列の子会社だった楽天ペイメントを楽天カードの子会社にするとともに、楽天経済圏の中枢を担うポイントの権限を楽天カードに移管するのです。 楽天グループによれば、これはファイナンス事業の相乗効果の向上策だといいます。カード事業とQR決済事業とポイント事業をひとつの組織に一体化すれば、確かに事業戦略には一貫性が生まれるでしょう。 一方で一部メディアはこの再編を巡って「楽天カード株式会社の上場を検討している」と報道しています。私は経済評論家として長年楽天グループについて注目してきた外部の立場ですが、プレスリリースから感じたことは同じです。 ▽傾きかけた大企業の内部で起こること(嫌な話でもありますので私がこれまで経験してきたことを、あくまで一般論として説明させていただきます。大企業が傾きかけたときに関係者は、3つの勢力に分かれます。必死に経営を立て直そうと尽力する人々、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々、そしてこの機に一儲けしてやろうと画策する人々です。 最初に動くのはこの機に一儲けしてやろうと画策する人々で、その典型例はハゲタカファンドだったり、晴れた日にしか傘を貸さないと揶揄される銀行だったりします。あくまで一般論です。こういった人たちにとっては企業が傾くことは好機です。通常よりもずっと安いお金で、経営がうまく行っているグループ会社を手に入れることができるからです。 この人たちは目的を達成するために2番目の、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々を段階的に篭絡していきます。 「このままだといくら儲けても赤字部門に資金を吸い取られるだけだ」 「全体が赤字なら給料も上がらないだろう。気の毒に思うよ」 「健全な部門なのだから、切り出してしまえば君ならもっとずっと成長させられるだろう」 繰り返しこのような言葉を聞かされるうちに、自分のいる組織はグループから独立したほうがいいと心から信じるようになります。実際、この甘言は真実でもあったりします。ダイエーに残って経営破たんを経験することになった従業員よりも、分離されたローソンの従業員のほうがビジネスパーソン人生としてはよかったかもしれません。) こうして子会社を分離させようという一派が動き始めます。親会社にとって、それが最善だと働きかけるようになります。タフな交渉を続けてもなかなか資金を出してくれない金融機関に比べれば、有力な子会社を上場させればずっとイージーに事業継続のための資金が手に入るでしょう。「そのほうがいいですよね」と経営陣にも囁き続けるわけです。 さて、ここまでが一般論なのですが、楽天グループの場合はどうなのでしょうか? 楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう。 たとえて言えば、仮にセブン&アイからセブン銀行が完全に資本離れするようなことが起きたとしても、セブン-イレブンの戦略に大きな影響はないというのと同じです』、「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。
・『「虎の子」の分離はありえない  一方で楽天カードは違います。楽天市場で買い物をした人が楽天カードで決済する。これがビジネスモデルの両輪で、楽天はひとりの顧客から二度稼ぐことができます。 そしてここに今回、楽天ポイントと楽天ペイが再編の形で加わりました。そうなると4000万ユーザーを擁する楽天ポイント経済圏の未来も楽天カードに委ねられることになりますし、今後の市場拡大が期待されるキャッシュレスも楽天カードの一部門となります。 当然のことながら楽天カード株式会社は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません。 しかし仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します。 ここで楽天ポイントを握っていることが、ハゲタカに有利に働きます。ポイント還元率を絞れば絞るほど楽天市場は弱体化していくでしょうし、足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう』、「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。
・『悪魔シナリオから楽天を守れ  最終的に楽天グループが何らかの形で経営破たんすることをハゲタカは待ちます。最終目的があるのです。それは経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です。 これはあくまで私個人が考える「もし私がハゲタカだったら」という悪魔シナリオです。日本経済では過去にはこんなことも履いて捨てるほど起きてきたのですが、当然ながらこんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう。 この楽天の資本問題は関係者以外にとっての対岸の火事ではなく、日本経済の重要な分岐点だと思うべき大事です。そしてメディアもこの先、変なことが起きないように注視すべき事柄なのです』、「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。

次に、8月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72584
・『赤字を垂れ流し続ける三木谷楽天の末路とは  楽天グループが崩壊過程に入っている。2023年第1四半期(1~3月期)の最終損益は、マイナス825億円。第1四半期としては、4期連続の赤字になった。グループ全体の足を引っ張っているのは、三木谷浩史会長兼社長肝いりのモバイル事業である。インターネットサービスやフィンテック事業は黒字だが、モバイル事業は1027億円の営業損失を計上した。 モバイル事業への巨額投資が響いて、財務も厳しい。楽天グループが今後5年で償還を迎える社債の額は、1兆2000億円。それに対して、23年3月末の手元資金は1175億円と心細い。 投資家の目もシビアである。21年3月、日本郵政が楽天グループに1500億円の出資を行ったときの株価は1245円だった。それが、23年6月末には499円まで下落。株価が半値以下になり、日本郵政は850億円の特別損失を計上せざるをえなくなった。 もっとも、三木谷楽天王国の崩壊はモバイル事業に手を出すずいぶん前から始まっていた。 10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘した。すると、三木谷会長兼社長本人が抗議にやってきた。私は根拠を示しつつ指摘についての説明を述べたが、結局彼は納得いかない表情で帰っていった』、「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いかない表情で帰っていった」、そんなことがあったとは初めて知った。
・『楽天市場とアマゾンの違い  当時指摘したのは、楽天市場とアマゾンの違い。楽天はECの黎明れいめい期である1997年に、当時アメリカで流行していた「ジオシティ」というコンセプトをモデルに、仮想のショッピングモール「楽天市場」をインターネット上につくった。ユーザーが出店している店舗から商品を買い、楽天は手数料で利益を得るビジネスモデルである。 このビジネスモデルの問題点は2つある。1つは物流を握っていないこと。商品を届けるのは第三者依存で、自社ではコントロールができない。 もう1つは、売り上げが立たないこと。商品が売れて取扱高が膨らんでも、楽天市場自身は場所貸しにすぎないので、計上できる売り上げが小さい。 それに対して、00年に日本でEC事業を開始したアマゾンは、自身が企業から商品を買って倉庫に在庫を持つ。このモデルだと物流を管理できて、売り上げも立つ。アマゾンがウォルマートと競い合う世界最大規模の小売業者になったのは、単なるサイバー上の場所貸しにならなかったからである。 三木谷会長兼社長には、ビジネスモデルを見つける才能はある。時代を先取りして、楽天市場というECをつくった嗅覚はさすがだ。しかし、その後アマゾンが出てきたときに、両者のビジネスモデルの違いを理解できなかったのだ。アマゾンの進出時から対抗手段を打っていれば、今ほどEC事業で差をつけられることはなかった。 12年に買収した電子書籍事業Koboも、アマゾンのKindleに大きく後れを取っており、散々だ。 14年にメッセージアプリのViberを買収したが、この狙いは悪くなかった。 流行っているメッセージアプリは、国によって違う。日本ではLINE、イギリスやインドではWhatsApp、アメリカやフランスではFacebook Messenger、中国ではWeChat。そしてヨーロッパ、とくにギリシャやウクライナではViberの人気が高い。 世界で最も利用されているメッセージアプリであるWhatsAppの月間利用者数は20億人。Viberの月間利用者数は2.6億人だが、LINEの月間利用者数が2億人弱ということを考えると、ヨーロッパで健闘しているのがわかる。 メッセージアプリのシェアをイギリスやフランスを含めたヨーロッパ全体で掌握し、勢いそのままに日本へ輸入してLINEを打倒しようと、Viberに目をつけたところまでは良かった。しかし、その後がよろしくなかった。 Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある。買収後にミンスクのオフィスを2度ほど訪問したことがあるが、現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ』、「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがある」、困った性格だ。
・『すぐに結果が出ないと投げ出してしまう  楽天グループの海外展開にも、その傾向がよくあらわれている。楽天グループは、社内公用語を英語にすると発表した10年くらい前から、海外展開を加速させた。当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている。 10年に中国大手IT企業のバイドゥと手を組んで開設した中国版楽天市場「楽酷天らくてん」は、2年後の12年に閉鎖。08年にはECの欧州市場でアマゾンに対抗すべく、欧州拠点としてルクセンブルクに楽天ヨーロッパを置いた。しかし、16年を境に欧州各国からの撤退と縮小が相次ぎ、現在ではフランスでわずかにEC事業を展開しているのみだ。楽天グループの現地法人で今も頑張っているのは台湾くらいで、あとはもう積極的な海外投資をしていない。海外事業の勢いは、最初だけだった。 たとえリーダーが偏ったタイプでも、その下の人たちの足腰が強ければ、事業を回していける。しかし、楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ。 日用品や弁当などの宅配システムを九州で展開している、エブリデイ・ドット・コムという会社がある。私が同社のオーナーをしていた十数年前、楽天から業務提携の打診があり、流通や販売など3つの組織の長が来社して打ち合わせをすることになった。朝9時に私がオフィスで出迎えると、3人はその場でお互いに名刺交換を始めた。同じグループでも交流がないのだ。 さらに驚いたのはその後だ。打ち合わせはそれなりに盛り上がり、3人は意気いき軒昂けんこうとして帰っていった。しかしその後、連絡はなかった。実務をフォローする人が誰もいないし、もともと起案した人は既に辞めてしまっていた。 別件で楽天グループ本社に行ったときも、興味深い体験をした。打ち合わせをしていると、突然モニターに三木谷会長兼社長が映り、「今週の進捗は」と英語で語り始めた。社員は最初の1~2分こそ聞いていたが、そのうち自分の仕事に戻り始めた。英語ではわからない、という人を置きざりにしており、トップとしては求心力が低すぎる。 楽天グループには、創業期から三木谷会長兼社長と苦楽を共にしてきた社員がほとんど残っていない。幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい』、「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。
・『楽天存続の唯一の術はモバイル事業との決別  モバイル事業での躓つまづきも、グループ全体としての足腰の弱さが原因だ。「楽天であれば、NTTドコモなど大手キャリア3社が寡占している国内携帯市場に風穴を開けられる」。三木谷会長兼社長やそのまわりは、そんな思いでモバイル事業を始めたに違いない。 しかし、これこそ現実が見えていない、頭でっかちな人の考えだ。 まず、ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった。 もう1つはカバレッジの問題だ。楽天モバイルは人口カバー率99%とアピールしている。ただ、ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない。 では、楽天グループは今後どうするべきなのか。私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう』、「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
タグ:「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、 「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。 それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。 「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。 「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。 鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」 東洋経済オンライン (その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) 携帯・スマホ そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。 「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」 「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いかない表情で帰っていった」、そんなことがあったとは初めて知った。 「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を 「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、 「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。 「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。 本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
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女性活躍(その28)(「男女平等は反道徳の妄想である」自民党の女性議員がそんな“女性を貶める暴言”を繰り返す根本原因 ナチス・ドイツの女性加害者との共通点、女性数学者38歳が東大数理科学研究科にもたらした変化 「数学の魅力をたくさんの女子へ 第17回 数学者 佐々田槙子さん(38) 科学に魅せられて~女性研究者に聞く仕事と人生) [社会]

女性活躍については、本年5月9日に取上げた。今日は、(その28)(「男女平等は反道徳の妄想である」自民党の女性議員がそんな“女性を貶める暴言”を繰り返す根本原因 ナチス・ドイツの女性加害者との共通点、女性数学者38歳が東大数理科学研究科にもたらした変化 「数学の魅力をたくさんの女子へ 第17回 数学者 佐々田槙子さん(38) 科学に魅せられて~女性研究者に聞く仕事と人生)である。

先ずは、8月1日付けPRESIDENT Onlineが掲載した戦史・紛争史研究家の山崎 雅弘氏による「「男女平等は反道徳の妄想である」自民党の女性議員がそんな“女性を貶める暴言”を繰り返す根本原因 ナチス・ドイツの女性加害者との共通点」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72169
・『自民党には「男女平等は反道徳の妄想である」など、女性を貶める暴言を繰り返す女性の国会議員がいる。なぜそんな不可解な発言をするのか。戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんは「これはホロコーストに加担したナチス・ドイツの女性加害者と同じだろう」という――。 ※本稿は、山崎雅弘『この国の同調圧力』(SB新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ユダヤ人迫害に加担したドイツ人女性の話  二〇一三年、アメリカで一冊の歴史書が刊行され、大きな反響を呼びました。 著者はアメリカ人の女性歴史家ウェンディ・ロワーで、二〇一六年に日本で出版された邦 訳版のタイトルは『ヒトラーの娘たち─ホロコーストに加担したドイツ女性』(武田彩佳監訳、石川ミカ訳、明石書店)でした。 この本は、第二次世界大戦中に起きたナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(いわゆるホロコースト)において、さまざまな形でユダヤ人の迫害や虐殺に加担したドイツ人女性に光を当て、一般的にレイプ被害や爆撃の被災などの「戦争の犠牲者」として語られることの多い女性の中にも冷酷な「加害者」が存在した事実と、なぜ当該の女性たちはそのような行動をとったのかという構造について考察する内容でした。 ドイツやウクライナ、アメリカなどに残る厖大な記録文書(一次史料)に基づいて記された同書を読むと、ホロコーストに加担したドイツ人女性のタイプは多様で、ユダヤ人を「ゴミ」と呼ぶ粗暴な人間もいれば、国家のために自分にできることをするという使命感を持って任務に従事した人間もいました』、「一般的にレイプ被害や爆撃の被災などの「戦争の犠牲者」として語られることの多い女性の中にも冷酷な「加害者」が存在した事実と、なぜ当該の女性たちはそのような行動をとったのかという構造について考察する内容でした」、興味はますます深まった。
・『「男性に対して自分が有能だと証明したかった」  著者のロワーは、そんなドイツ人の女性の一人について、こう書いています。 エルナ・ペトリは、彼女が拳銃を取り出したときにすすり泣いた半裸のユダヤ人少年たちについて、〔戦後の裁判の尋問で〕当人しか知り得ないような描写をしている。尋問官から母親でもある彼女がなぜこれらの子どもたちを殺せたのかと詰問されると、ペトリは政府の反ユダヤ主義と、男性に対して自分が有能だと証明したかったということを理由に挙げた。ペトリの行為は社会に対する反逆ではなかった。私にはペトリがナチ体制の具現化であるように思えた。(pp.16-17) この最後の一文が示す通り、エルナ・ペトリという女性がナチス親衛隊員の夫と共に、ナチ占領下のポーランドにあった自宅の庭で少年を含む複数のユダヤ人を射殺した行為の動機は、私的な領域に留まるものではなく、当時のドイツ国民が共有した「ユダヤ人は社会にとって害悪であり、それを『駆除』することはドイツ国民の務めだ」というナチスの非人道的な世界観に突き動かされたものでした。 いやいや同調圧力に従ったのではないにせよ、自らの手でユダヤ人を殺すことによって「〔自分は女性だが〕男性と同じくらいに有能だと証明したかった」という彼女の行動は、当時のドイツ社会を支配した心理的圧力に、自らの意思で同調したのだと言えるでしょう』、「自らの手でユダヤ人を殺すことによって「〔自分は女性だが〕男性と同じくらいに有能だと証明したかった」という彼女の行動は、当時のドイツ社会を支配した心理的圧力に、自らの意思で同調したのだと言える」、なるほど。
・『「みんながそうしているから自分もそうした」  エルナ・ペトリは、自分の行為について、裁判で次のように弁明しました。 当時、〔ユダヤ人を〕射殺したとき、私はたったの二三歳で、まだ若くて経験もありませんでした。ユダヤ人を射殺していた親衛隊員たちの間で暮らしていたのです。ほかの女性と会うことはほとんどなかったので、だんだんと性格が強くなり、鈍感になっていきました。親衛隊の男たちの後ろに立つなんて嫌でした。女でも男のように振る舞えることを見せたかった。だから、ユダヤ人四人とユダヤ人の子ども六人を撃ちました。男たちに、自分が有能なことを証明してやりたかったからです。それに、当時この地域では、子どもも含めユダヤ人が射殺されているという話を、ありとあらゆるところで耳にしていました。それもあって、殺したのです。(p.196) この証言の最後で述べられたのは、「みんなもそうしているから自分もそうした」という、集団内で「みんな」が行っている行動への同調という弁明です。そう言えば、自分の責任を軽くできると、彼女は考えたのかもしれません』、「みんなもそうしているから自分もそうした」という、集団内で「みんな」が行っている行動への同調という弁明です」、なるほど。
・『「集団内での立場」が倫理観よりも優先された  集団全体がホロコーストのような残虐行為に手を染めている時、自分が集団内で異端視されたり排除されることを恐れて、自らの意思でそれに加担するという「同調」行為は、女性だけでなく男性の場合にも多く見られた現象でした。 ドイツの第101警察予備大隊(ホロコーストで中心的な役割を担った親衛隊とは別組織で、ナチ占領下のポーランドで四万人近いユダヤ人を殺害)について、厖大な文書記録で詳細に研究した、アメリカ人の歴史家クリストファー・R・ブラウニングの著書『増補 普通の人びと:ホロコーストと第101警察予備大隊』(谷喬夫訳、ちくま学芸文庫)に、以下のような記述があります。 大量虐殺について考察する上で、〔受けた命令の意味を熟考する〕時間の欠如と同じくらい重要なことは、順応への圧力であった。─それは軍服を着た兵士と僚友との根本的な一体感であり、〔命令に従わない意思表示として〕一歩前に出ることによって集団から自分が切り離されたくないという強い衝動である。(p.126) この本では「順応への圧力」という言い方がなされていますが、実質は同調圧力と同義だと考えて間違いはないでしょう。倫理的あるいは道徳的に考えて、その命令への服従や行動の是非を考えるのでなく、集団内での自分の「立ち位置」という観点でいちばん最適な行動をとる。そうすることで、集団の中で自分の立場は保たれる。 ナチスのホロコーストが、あれほど大規模かつ組織的に実行された背景には、同調圧力という我々の身近な問題とも繋がる、心理的な動機も存在していたのです』、「ナチスのホロコーストが、あれほど大規模かつ組織的に実行された背景には、同調圧力という我々の身近な問題とも繋がる、心理的な動機も存在していたのです」、その通りだ。
・『「エルナ・ペトリ」はナチスだけの話ではない  所属する集団内で、自分の地位を向上させたり、周りの「みんな」に自分の有能さを認めてもらうために、内部で共有される価値観や行動原理に沿った行動をとる。 このような「集団内の同調圧力への積極的な対応」の事例をいくつか見てきましたが、それは時として、論理的に説明がつかない「矛盾」や「自己否定」へと実行者を導くことがあります。 例えば、前出のエルナ・ペトリのような女性が「男たちに自分の有能さを証明してやりたい」と考えた時、ナチスの迫害対象が「ユダヤ人」ではなく「女性」であったならどうでしょう。女性であるペトリは、「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせるため」に、男たちによる女性差別や女性迫害に自らの意思で加担することになります。 これは決して、言葉の遊びや絵空ごとではありません。 二〇二〇年九月二十五日に自由民主党の党本部で行われた党の内閣第一部会などの合同会議において、同党の杉田水脈衆議院議員が、女性への暴力や性犯罪に関して「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言したとして、大きな批判が湧き起こりました』、「エルナ・ペトリ」氏を「杉田水脈衆議院議員」に重ね合わせるとはさすがだ。
・『杉田水脈議員「女性はいくらでもうそをつけますから」  同年九月二十五日一三時三四分に公開された共同通信記事(ネット版)によれば、「杉田氏は、会議で来年度予算の概算要求を受け、女性への性暴力に対する相談事業について、民間委託ではなく、警察が積極的に関与するよう主張」し、「〔性犯罪〕被害の虚偽申告があるように受け取れる発言をした」とされています。 杉田水脈議員は、自民党に入党する前には、日本維新の会や次世代の党などに在籍していましたが、次世代の党時代の二〇一四年十月三十一日には、衆議院本会議で「伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等」や「男女平等は、絶対に実現し得ない、反道徳の妄想」などと発言し、物議を醸しました。 その半月前の十月十五日には、衆議院内閣委員会で「私は、女性差別というのは〔日本に〕存在していないと思うんです」と述べ、やはり批判の的となっていました』、「杉田氏」は「衆議院本会議で「伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等」や「男女平等は、絶対に実現し得ない、反道徳の妄想」などと発言」、その意味は「男尊女卑な政党で評価されるための“迎合”」のようだ。
・『男尊女卑な政党で評価されるための“迎合”  自らも女性である杉田水脈議員が、どうしてこんな「女性差別」や「女性蔑視」の暴言を繰り返すのか? 表面的な言葉だけで考えても、答えは出ないと思います。 しかし、先に紹介した「順応への圧力」という視点で読み解けば、どうでしょうか。 杉田議員が所属する自民党は、昔から女性蔑視の発言が目立つ政党です。 第一次安倍政権時代の二〇〇七年一月二十七日、柳沢伯夫厚生労働相は松江市で開かれた自民党県議員の決起集会において、人口減少と少子化問題に関する話で「女性は一五歳から五〇歳までが出産をしてくださる年齢。『産む機械、装置の数』が決まっちゃった」と、女性を出産のための機械や装置と表現する発言をして、激しい批判を浴びました。 ところが、当時の安倍晋三首相は、柳沢大臣を罷免せず、厳重注意に留めました。 このような、古い時代の男女観(社会的・文化的な性自認を表すジェンダーという言葉が日本に入ってくる以前の思考)、つまり男性の方が女性より優位だという前提の男尊女卑が支配する政党の中で、女性の国会議員が「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせる」にはどうするのが一番効果的なのか、杉田議員は考えたのかもしれません』、「男性の方が女性より優位だという前提の男尊女卑が支配する政党の中で、女性の国会議員が「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせる」にはどうするのが一番効果的なのか、杉田議員は考えたのかもしれません」、なかなかの悪女のようだ。
・『集団内での地位向上の引き換えに捨てたもの  その結果として導き出された結論が、内部で共有される男尊女卑の価値観や行動原理に沿った行動をとり、それを目立つ形でアピールすることなら、杉田水脈議員の「女性なのに女性を貶める」という不可解な行動にも一応の説明がつきます。 女性差別に加えて、LGBTの人には「生産性がない」という暴論(月刊誌「新潮 45」二〇一八年八月号への寄稿、同誌はこの記事が原因で同年十月号を最後に休刊)など、杉田議員は数々の問題発言で社会的な批判を浴びましたが、にもかかわらず、彼女は二〇二二年八月十日に発足した第二次岸田改造内閣で、総務大臣政務官という政府の役職に任命されました(国民の批判と国会での追及を受けたのち、十二月二十七日に辞任)。 この抜擢人事は、杉田議員の自民党内での「アピール」が成功した結果だと見ることも可能です。けれども、自民党の議員として自らの「女性差別」の暴言を撤回せず、謝罪もせずに居直り続けた杉田水脈議員は、男尊女卑の価値観を共有する集団内での地位向上と引き換えに、人間として大事な何かを自ら捨ててしまったのではないか。 私には、そんな風に思えます』、「自民党の議員として自らの「女性差別」の暴言を撤回せず、謝罪もせずに居直り続けた杉田水脈議員は、男尊女卑の価値観を共有する集団内での地位向上と引き換えに、人間として大事な何かを自ら捨ててしまったのではないか」、同感である。

次に、9月5日付けAERAdot「女性数学者38歳が東大数理科学研究科にもたらした変化 「数学の魅力をたくさんの女子へ 第17回 数学者 佐々田槙子さん(38) 科学に魅せられて~女性研究者に聞く仕事と人生」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/200383?page=1
・『「数理女子」というウェブページ(http://www.suri-joshi.jp/)がある。副題は「数学の魅力をたくさんの女子へ」。その生みの親・育ての親の一人が東京大学大学院数理科学研究科准教授の佐々田槙子さん(38)だ。数学界にいる人たちがジェンダーや社会の問題について気軽に語れるオンライン談話会の世話人もしている。「日本のほとんどの数学者って、数学の話以外、誰がどこの大学に移ったっていうような話しかしない」と以前感じ、できるところから働きかけを始めた。東大数学科卒、既婚、2児あり。日本を変えるチャレンジを果敢に続ける佐々田さんに聞いた。(聞き手・構成/科学ジャーナリスト・高橋真理子、Qは聞き手の質問、Aは佐々田氏の回答)』、興味深そうだ。
・『Q:「おいでMath談話会」という名前のオンライン談話会を月に1度開催しているそうですね。 A:研究者だけでなく、大学院生や学部生も大歓迎の会です。前半は、数学者が自分の専門分野の面白さを他分野の院生にもわかるように話します。後半は同じ講演者に広い意味でのダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂、すべての人が個性を尊重され能力を発揮できること)に関連する個人的な経験を話してもらい、そのあと少人数に分かれてディスカッションしてもらう。2年ぐらい前から月1回やっています。 Q:ご自身が発案されたんですか? A:沖縄科学技術大学院大学(OIST)のある女性数学者の方が、米国で経験した談話会は話が専門外の人にもわかりやすく、学生たちもいっぱい集まってすごく盛り上がっていたのに、日本に来たらそうした場があまりないと感じられたことがきっかけでした。ちょうどコロナの時期だったので、全国規模で談話会をオンライン開催しようということになり、私は企画の途中で誘ってもらって5人の世話人のうちの1人になりました。) 実はそのちょっと前に、仲間と一緒に企画した研究集会の中で、1時間だけ「数学分野のジェンダーギャップ解消のために何ができるか」とか「子育てと研究のバランス」とか「インクルージョンを実現するために研究集会運営において何ができるか」など5つのテーマを立てて、好きなところに入って議論するというのをはさんだら、すごく評判が良かったんです。「男女共同参画のイベント」だったら来なかった人たちが研究集会の中の1時間だったので出てくれて、「お互いにどう考えているかが聞けて良かった」「初めて同じ分野の研究者とこうした話ができた」「またこのような機会がほしい」といった感想をもらいました。それで、数学の話とダイバーシティーなどの話を一緒にやる談話会を提案したら、ほかの世話人もいいねと言ってくれて、「おいでMath談話会」が始まりました。 世話人のミーティングは毎回すごく中身が濃くて、刺激を受けます。数学とはまた違う面白さというか、勉強になる。でも、世話人が固定してしまうと、講演者や話題も限られてしまいがちなので、どんどんバトンタッチしていくことにしています。私もそろそろ交代の時期だと思っているところです。 Q:「数理女子」はおしゃれなデザインがとても印象的なウェブページですが、これはどのように始まったのですか? A:私は博士課程を2年で出て、慶応大学の助教になりました。 A:え、2年で博士論文が書けちゃったということですか? A:そうです。 Q:すごいですねえ。 A:いや、私の知る限り、数学ではそれほど珍しくない。東大では毎年1人か2人は博士課程を2年で修了していると思います。数学って、実験とかと違って、できるときはパッとできちゃうし、逆に何年かけても何の進展もないこともよくあります。 慶応にすぐ就職できたのはびっくりしましたけど。) Q:公募があったんですか? A: はい。指導教員だった舟木直久(ふなき・ただひさ)先生から「出してみませんか」と言われました。就職直後は、さっきまで学生だったのに、いきなり教室の前に立つことになって「何をすればいいんでしょう」みたいな感じだったんですけど、前任の先生がすごく親切で、いろいろ教えてくださったので何とかなりました』、「「男女共同参画のイベント」だったら来なかった人たちが研究集会の中の1時間だったので出てくれて、「お互いにどう考えているかが聞けて良かった」「初めて同じ分野の研究者とこうした話ができた」「またこのような機会がほしい」といった感想をもらいました。それで、数学の話とダイバーシティーなどの話を一緒にやる談話会を提案したら、ほかの世話人もいいねと言ってくれて、「おいでMath談話会」が始まりました」、なるほど。
・『女子生徒に情報が届くように発信したら  Q:それで、「数理女子」は? A:ああ、そうそう、慶応で出会った坂内健一(ばんない・けんいち)さんと2013年ぐらいにおしゃべりをしていて、坂内さんも数学分野の女性が少ないと感じていて、私に「どういうことができると思いますか」と聞いてくれた。私は女子学院というキリスト教系の女子校出身なのですが、数学好きはあまりいなかった。数楽班っていう、ほかの学校でいえば数学研究会みたいな部活に入ったんですけど、ほとんどおしゃべりしている集まりでした。大学に入って男の子たちを見ていたら、中学高校時代から数学好きの仲間がいて、こういう本が面白いとか、数学科ってこんなところ、といった情報がいっぱい入ってきていたんだろうなという感じがして、女子生徒にもそういう情報が届くように発信したらいいんじゃないかなと伝えました。親御さんが数学科への進学を心配するということも聞いていたので、親御さんへの情報発信という意図もありました。 そうしたら、次の日に坂内さんが「作りました」って。 Q:え! A:後から聞いたら、どんな案がきてもいいようにいろいろと準備をしてくださっていたそうです。三角と丸だけでできた、こびとさんみたいな愛らしいキャラクターはいたのですが、ウェブページとしては簡易的な、本当にリンク集みたいな感じでした。名前は全然深く考えずに「数理女子」とつけました。 だいぶ長いことその姿のままだったんですけれど、高校時代の友達に見せたら「これのどこが女子向けなの?」って(笑)。でも、こっちもデザインのプロでもないし、時間もないしと思っていた。それで東大に移った最初の年に、自由に使わせてもらえる資金があったんです。正直、数学って物はそんなに買わない。それでふと、「数理女子」のページをちゃんとプロに作ってもらったらいいと思いついた。当時の研究科長に相談したらOKが出たので、プロのデザイナーにお願いして、コンセプトなど時間をかけて話し合って、今のウェブページができました。) ただ、「数理女子」という名前はその後もいろいろ議論がありました。「リケジョ」という言葉が流行りだしてから、自分たちのことを「数理女子」って呼ばれたくないよねっていう声も多くて、実際私もそう思っていて、名前を変えようかという話し合いも何度もしました。結局、これはお店の名前みたいな扱いとして使い、人をカテゴライズする言葉としては使わないようにしよう、ということで落ち着いています。「数理女子の皆さん!」みたいな呼びかけはダメということです。 Q:新しい情報をどんどん入れていくのは大変でしょう? A:責任者は私と坂内さんの2人ですが、今は奈良女子大学の嶽村智子(たけむら・ともこ)さんと琉球大学の加藤本子(かとう・もとこ)さんにも編集者に加わってもらっています。数学の魅力を体験してもらうワークショップも開いていて、その企画・実施にはまた別の人たちにも入ってもらって。事務局を担当してくださる方がとても頼りになるので、続いています。 Q:佐々田さんが教員として来てから、東大数理科学研究科がずいぶん変わったと聞きました。 A:たまたまタイミングかなと思います。私、東大の公募に出している途中で妊娠がわかったんです。「このままだと育休中に異動になるんですけど、大丈夫ですか」と聞いたら「全然大丈夫」って言われてびっくりしたんですよね。 慶応の最後の年は6月前半まで授業をして、産休・育休に入ってそのまま異動になりました。東大には、最初は学生もいないから、ゆっくりのペースでやってくださいと言われて。保育園に入れるには仕事をしていたほうがいいので、育休は3月までで終えました。) 研究科の定例会議は、着任した年は午後4時50分開始で、7時とか8時までかかることもあった。保育園のお迎えに間に合わないと途中で抜けていたのですが、次の年から3時開始になった。たぶん、私が来る前から開始時刻を早めようと議論があったんだと思います。さらに今年から1時半開始になりました』、「「数理女子」のページをちゃんとプロに作ってもらったらいいと思いついた。当時の研究科長に相談したらOKが出たので、プロのデザイナーにお願いして、コンセプトなど時間をかけて話し合って、今のウェブページができました」、なかなか巧みな上司操縦法だ。
・『「数理なんでも相談コーナー」を始めたきっかけ  Q:それは素晴らしい。 A:私が数学科に進学したとき、同級生45人のうち女子は私1人で、上下の学年は女子ゼロでした。やっぱり超少数派の女性として居心地が悪いと思うことはありましたし、教員になったあと女子学生から気になる話を聞くことも何度もあった。それで、問題があると思うことはその時々の研究科長に話してきました。 例えば院生室は男女一緒なんですけれど、男子はそこで平気で着替えをする。私自身、院生のときに困って、トイレで着替えたりしていた。女性特有の体調不良とかもありますし、当時の研究科長に言ったら鍵がかかる女性の部屋をすぐに作ってくれました。 教員公募の書類に「有期雇用のポストでも産休・育休がとれる」「産休・育休の期間があることは評価の際に考慮される」などを明記することを提案したら、それはすぐに書いてもらえました。 あとは、私個人としてということではなく、研究科全体でいろいろな議論があって、2020年に「ハラスメントのない数理、数学科を」という宣言文ができました。どのセミナー室にも貼ってあります。「属性にかかわらず、個人として尊重されることは基本的価値」とし、ハラスメントは「この基本的価値を損なうもの」と位置付け、それを防ぐための対策を講じます、と宣言するものです。 それで、具体的に何ができるか、ということを皆さんで話し合って、「数理なんでも相談コーナー」というのも始めました。大学全体の学生相談所はもちろんあるんですけれど、学生としては数理科学研究科の先生に聞いてほしいという思いもあると思うので、ウェブ上で匿名でも相談を申し込めるフォームを作りました。教員5人が担当しています。 (佐々田槙子氏の略歴はリンク先参照)』、「数学科」は女性が理系で最も選び易いと思っていたが、想像以上に壁が厚いことを初めて知った。今後の活躍を期待したい。

なお、「エッフェル姉さん」については8月19日、国内政治情勢で取上げた。
タグ:PRESIDENT ONLINE 山崎 雅弘氏による「「男女平等は反道徳の妄想である」自民党の女性議員がそんな“女性を貶める暴言”を繰り返す根本原因 ナチス・ドイツの女性加害者との共通点」 山崎雅弘『この国の同調圧力』(SB新書) 「一般的にレイプ被害や爆撃の被災などの「戦争の犠牲者」として語られることの多い女性の中にも冷酷な「加害者」が存在した事実と、なぜ当該の女性たちはそのような行動をとったのかという構造について考察する内容でした」、興味はますます深まった。 「自らの手でユダヤ人を殺すことによって「〔自分は女性だが〕男性と同じくらいに有能だと証明したかった」という彼女の行動は、当時のドイツ社会を支配した心理的圧力に、自らの意思で同調したのだと言える」、なるほど。 「みんなもそうしているから自分もそうした」という、集団内で「みんな」が行っている行動への同調という弁明です」、なるほど。 「ナチスのホロコーストが、あれほど大規模かつ組織的に実行された背景には、同調圧力という我々の身近な問題とも繋がる、心理的な動機も存在していたのです」、その通りだ。 「エルナ・ペトリ」氏を「杉田水脈衆議院議員」に重ね合わせるとはさすがだ。 「杉田氏」は「衆議院本会議で「伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等」や「男女平等は、絶対に実現し得ない、反道徳の妄想」などと発言」、その意味は「男尊女卑な政党で評価されるための“迎合”」のようだ。 「男性の方が女性より優位だという前提の男尊女卑が支配する政党の中で、女性の国会議員が「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせる」にはどうするのが一番効果的なのか、杉田議員は考えたのかもしれません」、なかなかの悪女のようだ。 「自民党の議員として自らの「女性差別」の暴言を撤回せず、謝罪もせずに居直り続けた杉田水脈議員は、男尊女卑の価値観を共有する集団内での地位向上と引き換えに、人間として大事な何かを自ら捨ててしまったのではないか」、同感である。 AERAdot「女性数学者38歳が東大数理科学研究科にもたらした変化 「数学の魅力をたくさんの女子へ 第17回 数学者 佐々田槙子さん(38) 科学に魅せられて~女性研究者に聞く仕事と人生」 興味深そうだ。 「「男女共同参画のイベント」だったら来なかった人たちが研究集会の中の1時間だったので出てくれて、「お互いにどう考えているかが聞けて良かった」「初めて同じ分野の研究者とこうした話ができた」「またこのような機会がほしい」といった感想をもらいました。それで、数学の話とダイバーシティーなどの話を一緒にやる談話会を提案したら、ほかの世話人もいいねと言ってくれて、「おいでMath談話会」が始まりました」、なるほど。 「「数理女子」のページをちゃんとプロに作ってもらったらいいと思いついた。当時の研究科長に相談したらOKが出たので、プロのデザイナーにお願いして、コンセプトなど時間をかけて話し合って、今のウェブページができました」、なかなか巧みな上司操縦法だ。 「数学科」は女性が理系で最も選び易いと思っていたが、想像以上に壁が厚いことを初めて知った。今後の活躍を期待したい。
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カジノ解禁(その13)(大阪カジノ オリックスが市議会で公費の追加負担要望?リターンは根拠不明、大阪カジノ 日本初の大阪カジノで「維新」が犯した「疑惑の鑑定」…ここまでして何故カジノにこだわるのか、米カジノ設計者が「大阪IRは間違い」と断言! 「行政が中毒になって収拾がつかなくなる」) [国内政治]

カジノ解禁については、昨年3月17日に取上げた。今日は、(その13)(大阪カジノ オリックスが市議会で公費の追加負担要望?リターンは根拠不明、大阪カジノ 日本初の大阪カジノで「維新」が犯した「疑惑の鑑定」…ここまでして何故カジノにこだわるのか、米カジノ設計者が「大阪IRは間違い」と断言! 「行政が中毒になって収拾がつかなくなる」)である。

先ずは、本年3月18日付けダイヤモンド・オンライン「大阪カジノ、オリックスが市議会で公費の追加負担要望?リターンは根拠不明」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299488
・『3月16日に大阪市議会で開かれた、大阪のカジノを含むIR(統合型リゾート)事業者の参考人からの意見聴取で、事業者側は、土壌汚染、液状化現象に続く「地盤沈下」のリスクに言及。オリックス幹部は、対策ができなければ、撤退について「見極める時期が来るかもしれない」と述べた。市はこれまで、事業者側の同様の発言に応じて公費支出を決めた経緯があり、さらなる公費負担を求められるのか』、維新側は「カジノ」を人質に捕られ追加負担をむしり取られているようだ。
・『大阪IRで事業者に意見聴取 参考人にオリックスとMGMの幹部  新しい事実や課題は明らかにならず、事業者が大阪府市の鼻面を取って引き回す構図が、よりはっきりとしただけだった。 大阪市議会都市経済委員会は3月16日、大阪湾内の埋め立て地「夢洲」で2020年代後半に開業予定のカジノを含むIR(統合型リゾート)事業者の企業連合を構成する、米国のカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスの双方の責任者を参考人として呼び、意見聴取した。 IR予定地の夢洲では、20年12月から21年1月にかけて土壌汚染や液状化現象のリスクが明らかになり、MGMオリックス連合は市の負担で対策を行うことを要請。市はこれまでの「公費負担はない」との説明に反して21年12月、790億円の対策費用を負担すると表明した。 港湾を所管する市の大阪港湾局は、過去に市が土地を売却または賃貸する際にこれらの対策費用を負担しないことを原則としてきたことから、土地所有者として対策を実施する責任はないと主張。これに対し、カジノを看板政策としている大阪維新の会の最高実力者である松井一郎大阪市長は21年6月、政治判断で市が負担する方針を決めた。 3月16日に開かれた市議会では、オリックスグループの関西代表で、IRの運営会社である大阪IR代表取締役の高橋豊典氏が参考人として出席。自民党の森山禎久市議会議員から、これまで市側に土壌対策の公費負担を要望し、それがなければ撤退する可能性を伝えたことがあるのかどうかを聞かれた』、「大阪港湾局は、過去に市が土地を売却または賃貸する際にこれらの対策費用を負担しないことを原則としてきたことから、土地所有者として対策を実施する責任はないと主張。これに対し、カジノを看板政策としている大阪維新の会の最高実力者である松井一郎大阪市長は21年6月、政治判断で市が負担する方針を決めた」、事務方が負担しないとの結論を、「政治判断で市が負担する方針」でひっくり返すとはやれやれだ。
・『「事業の進捗が困難になるとは申し上げた」  「今まで撤退の意向をお伝えしたことはないが、事業の進捗(しんちょく)が困難になるとは申し上げた」――。高橋氏はこう答えた。 大阪のIR計画については当初、カジノ運営大手のゲンティン・シンガポール(シンガポール)とギャラクシー・エンターテインメント・グループ(香港)も応募するとみられていたが、20年2月に応募したのはMGMオリックス連合の1者のみだ。 その後、790億円という巨額の土壌対策費を市が負担すると表明したことで、どうしてもIRを実現したい大阪府・市や維新側が足元を見られたとの見方が強かったが、オリックスの担当幹部自らその生々しい経緯を認めたのである』、「790億円という巨額の土壌対策費を市が負担すると表明したことで、どうしてもIRを実現したい大阪府・市や維新側が足元を見られたとの見方が強かったが、オリックスの担当幹部自らその生々しい経緯を認めたのである」、なるほど。
・『地盤沈下について調査中 「見極めをする時期が来るかも」  また市の資料によると、MGMオリックス連合はこれまで市に対し、夢洲の予定地は軟弱地盤であるため、地盤沈下のリスクがあるとも訴えてきた。 もう一人の参考人であるMGM日本法人のエドワード・バウワーズCEOは16日、改めてこのリスクに触れた。森山市議が今後の方針を問うと、高橋氏は「今も(地盤は)沈下しており、追加でボーリング調査をしている。データと専門家の知見をもって判断する」と言及。さらに「(IRから)撤退する気は毛頭ないが、見極めをする時期が来るかもしれないということだ」と述べた。 MGMオリックス連合はこれまで、府・市側の土壌対策がなければ、撤退とは言わないまでも「事業の進捗が困難になる」と表明して公費負担を求めてきた。 高橋氏の発言は、追加のボーリング調査などによって新たに地盤沈下の対策が必要となった場合、市による対応が不十分ならば、撤退の「見極めをする時期が来ることがあるかもしれない」として、市側のさらなる公費負担を公の場で迫ったともとれるものだ。 実はMGMオリックス連合と市の間では、あらゆる埋め立て地と同様に夢洲で今後生じる通常の地盤沈下への対策の費用については、事業者側が負担することで合意している。 ただ、市の過去の夢洲での埋め立て工事に瑕疵(かし)があり、本来以上に沈下が生じる恐れがあると判明すれば、市との協議の対象となる。 バウワーズ氏はこの日、「夢洲は将来の開発が想定されておらず、過去の(埋め立ての)データも不足している」と不満をにじませており、2社が改めて市側にくぎを刺したといえる。 なお、大阪市がそれだけの公費負担をしてIRを実現すれば、府・市や地元経済に十分なリターンがもたらされるという見通しの根拠が、事業者側から示されることはなかった。 一般的にカジノを含むIR施設のうち、カジノが占める面積は極めて小さいが、収益の大半はカジノが占める。大阪府・市はカジノの粗利の15%と入場料収入で、年間1060億円の収入を得るとしている。 バウワーズ氏は、大阪やその周辺の観光需要により夢洲のIRは十分な需要が見込めることや、地元経済に貢献できるとの話を繰り返した。しかし、年間の粗利を4900億円(国内客からは2700億円、外国人客2200億円)と試算した十分な根拠は示されなかった。 バウワーズ氏によると、大阪と比較されるシンガポールのIR施設への入場者数はセンサーで計測している。同じ人間が何度もセンサーの前を通りかかるとその都度カウントしており、実際の入場者数は分からない。IRへの入場者のうち、どれだけの人数がカジノを利用したかも把握できていないという』、「シンガポールのIR施設への入場者数はセンサーで計測している。同じ人間が何度もセンサーの前を通りかかるとその都度カウントしており、実際の入場者数は分からない」、ずいぶんいい加減な数字のようだ。
・『関空コンセッションでオリックスは台風被害の対応で批判を受けた  もっとも、あるオリックス関係者は「市にひたすら公費負担を求めていると批判されるが、軟弱地盤に巨大施設を建設するため、事業者側の持ち出しもある」と嘆く。 オリックスは、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の運営権の政府による売却(コンセッション)の条件が悪く、並み居る関西企業がそっぽを向く中、15年にフランスのバンシ・エアポートと組んで契約を結んだ。関西で、誰も引き受け手がない案件を手掛けてきたとの自負があるのかもしれない。 ただ、18年の関空の台風被害におけるずさんな対応が批判され、オリックスとバンシ双方出身の幹部の仲たがいまで報じられた。引き受ける以上はまともな運営が必須であることは言うまでもないが、IRは始まる前から、土壌の問題に加え新型コロナウイルスの感染拡大、そしてロシアのウクライナ侵攻による将来の旅行需要の減少と、すでにリスクにまみれている。 高橋氏が「毛頭ない」と言いつつも、「見極めをする時期が来るかもしれない」と話す撤退は、夢洲の地盤沈下以外の要因で起きるかもしれない』、「オリックスは、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の運営権の政府による売却(コンセッション)の条件が悪く、並み居る関西企業がそっぽを向く中、15年にフランスのバンシ・エアポートと組んで契約を結んだ。関西で、誰も引き受け手がない案件を手掛けてきたとの自負があるのかもしれない。 ただ、18年の関空の台風被害におけるずさんな対応が批判され、オリックスとバンシ双方出身の幹部の仲たがいまで報じられた」、「関空の台風被害におけるずさんな対応」は今、思い出しても酷いものだった。「IRは始まる前から、土壌の問題に加え新型コロナウイルスの感染拡大、そしてロシアのウクライナ侵攻による将来の旅行需要の減少と、すでにリスクにまみれている。 高橋氏が「毛頭ない」と言いつつも、「見極めをする時期が来るかもしれない」と話す撤退は、夢洲の地盤沈下以外の要因で起きるかもしれない」、「夢洲の地盤沈下以外の要因で起きるかもしれない」とはどういうことなのだろう。いずれにしろ、一旦、引き受けたからには、最後まで責任を果たしてもらいたいものだ。

次に、4月20日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「大阪カジノ、日本初の大阪カジノで「維新」が犯した「疑惑の鑑定」…ここまでして何故カジノにこだわるのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109258?imp=0
・『契約差し止め訴訟の弁護士が告発  「大阪IR(カジノを含む統合型リゾート)の『安過ぎる賃料』は数々の疑惑に包まれており、決して看過できません。そもそも自治体が市有地を貸し出す際には賃料を『適正な対価』とすることが法律(地方自治法237条2項)で定められています。そこで用地賃貸借契約の差し止めを求めて、大阪地裁に提訴(4月3日)しました」 こう語るのは「カジノ用地契約差し止め訴訟」の長野真一郎・訴訟弁護団長だ。 斎藤鉄夫・国土交通相は14日、大阪府・市が申請した大阪IR整備計画を認定した。第2次安倍晋三政権下に観光戦略の目玉として法整備が進んだIRは、今後、カジノ免許付与などの手続きを進めて2029年、大阪湾の人工島「夢洲」で開業する。 折しも統一地方選前半戦ではIR推進役となった大阪維新の会が勝利、吉村洋文府知事と横山英幸市長のコンビで日本初のIRに取り組むことになった。初期投資が1兆800億円で年間売上高が5200億円、9万3000人の雇用を創出、府や市への納付金が年間1100億円に達すると、大阪府・市は経済効果をアピールするが、その積極的過ぎる姿勢が禍根を残した。 最たるものが「安過ぎる賃料」だろう。「疑惑レベルを超えた違法領域」といって差し支えない。 まず、弁護団が指摘するのは2019年11月に行われた鑑定評価の杜撰さである。4社中3社が賃料を1平方メートル当たり月428円と鑑定していた。「業者が数字を合わせた『鑑定談合』か、行政が価格を主導した『官製談合』か、のいずれかの疑いがある」という長野氏の指摘はもっともだ。 次に、IR用地の賃料を算定しなければならないのに、鑑定業者は低層や中層のショッピングモールなどの大規模商業施設用地として算定していた。この「IR事業を考慮外」とするのは市の指示によるもの。IRの認可後は賃料改定するよう市に提言した鑑定業者もいたが、見直されてはいない』、「最たるものが「安過ぎる賃料」だろう。「疑惑レベルを超えた違法領域」といって差し支えない。 まず、弁護団が指摘するのは2019年11月に行われた鑑定評価の杜撰さである。4社中3社が賃料を1平方メートル当たり月428円と鑑定していた。「業者が数字を合わせた『鑑定談合』か、行政が価格を主導した『官製談合』か、のいずれかの疑いがある」という長野氏の指摘はもっともだ」、「次に、IR用地の賃料を算定しなければならないのに、鑑定業者は低層や中層のショッピングモールなどの大規模商業施設用地として算定していた。この「IR事業を考慮外」とするのは市の指示によるもの。IRの認可後は賃料改定するよう市に提言した鑑定業者もいたが、見直されてはいない」、なるほど。
・『安値誘導と怪しい「官製談合」  「その結果、土地価格は(1平方メートル当たり)12万円と鑑定されていますが、昨年3月に売却された南港東の埋め立て地は約46万円と4倍近かった」(長野氏)と、安値誘導は明らかだ。そうした事実関係を押さえたうえで提訴している。 夢洲には先行する「夢洲IR差し止め訴訟」がある。人工島の夢洲には地盤問題があり、大阪府と市は土地改良工事費で約790億円の支出を決めている。内訳は、土壌汚染対策(360億円)、液状化対策(410億円)、地中埋設物撤去(20億円)などだが、地盤沈下対策を含んでおらず、費用の上限が見えないのが実情。そこで昨年7月、市民らが「軟弱な地盤の埋め立て地にIRを建設し大阪市が底なしの財政負担をすることの違法性を問う」として、用地契約の差し止めを求めて提訴した。 今回の安過ぎる賃料問題は、地盤沈下問題での用地契約差し止めと重なるため、先行訴訟に参加する形となった。 大阪維新の会が10年以上前の橋下徹元市長の時代から前のめりでIRに取り組んできた結果、行政が「地盤沈下」をもろともせずにIR誘致に取り組み、地方自治法を無視して安値誘導、怪しい「官製談合」に踏み込んだ。それが法廷で争われる。 それにしても、なぜ維新はここまで大阪カジノにこだわるのか。 IRはこれまで挫折の連続だった。 実現へ向けた動きが本格化したのは2010年、超党派の国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)が発足、各種の法整備が進んでからである。 ギャンブル依存症への不安、治安の乱れなどを心配する住民が反対の意思表示をするなか、安倍政権は「一強」を背景に国会での議論が不十分なまま、16年12月のカジノ推進法案、18年7月のカジノ実施法案と、いずれも強行採決で乗り切った。 その流れに乗って多くの自治体が名乗りを上げた。最も熱心だったのが東京都で、石原慎太郎元知事はカジノ議連発足の前から「お台場カジノ構想」をぶち上げ、それを猪瀬直樹元知事が受け継いだものの、金銭スキャンダルで失脚した。次の舛添要一前知事が興味を失うなか、「横浜で推進したい」と、東京に仁義を切ったうえで誘致活動を始めたのが横浜市だった』、「最も熱心だったのが東京都で、石原慎太郎元知事はカジノ議連発足の前から「お台場カジノ構想」をぶち上げ、それを猪瀬直樹元知事が受け継いだものの、金銭スキャンダルで失脚した。次の舛添要一前知事が興味を失うなか、「横浜で推進したい」と、東京に仁義を切ったうえで誘致活動を始めたのが横浜市だった」、ようやく思い出した。
・『前途多難なカジノの進捗が維新の今後を決める  林文子前市長が先頭に立ってはいたが、各界に根回しをした上で推進していたのは官房長官として「安倍成長戦略」を支えた菅義偉氏である。菅氏の首相就任で「直轄プロジェクト」として推進されるものと思われたが、「ハマのドン」こと藤木幸夫氏が「博打は絶対にダメだ」と反対運動を展開。21年8月、横浜市長選でカジノ反対派の山中竹春氏が当選し、白紙に戻った。 それまでにも北海道、沖縄、宮崎などで具体化する動きはあったものの、予算、反対運動、スキャンダルなどで頓挫し、積極派の二階俊博氏のお膝元である和歌山は、22年4月に県議会が国への整備計画の申請を否決した。結局、整備計画を申請したのは大阪府・市と長崎県である。その長崎IRも資金調達面の不安が指摘され継続審議となった。残ったのは大阪だけである。 カジノ推進法案が国会を通過する前の16年9月、吉村洋文市長(当時)はカジノ誘致に慎重な大阪商工会議所、関西経済連合会などを誘ってシンガポールIR施設の視察に出かけている。橋下氏からの引き継ぎ事項で松井一郎大阪府知事(同)もそこは同じ。大阪維新はカジノ推進で一本化していた。 だが、大阪以外の自治体が迷走するなか、IR業者もコロナによる業績不振から「日本進出」の機運が萎んだ。大阪府・市は20年2月中旬までにIR事業者の公募選定を行ったのだが、事業者選定に応じたのは米MGMとオリックス連合だけ。競うことなく両社を中心に構成される大阪IR株式会社が運営を担うことになった。 官製談合を疑わせる「安過ぎる賃料」や底の見えない「地盤対策」は、IR業者を引き留めるための措置でもあった。 一方、大阪カジノが抱える運営面の課題は少なくない。大阪府・市はカジノ施設への来場者数を年1610万人と想定しているが、1日約4万4000人が訪れる計算で、実現可能性には疑問符がつく。 コロナ流行前ならともかく、今はインターネットカジノが人気を集めてカジノ施設はむしろ退潮気味だ。開業時にコロナは終息しているだろうが、年間売り上げ見込み5200億円の8割をカジノが占めるという収益構造が今後も成り立つものだろうか。 大阪府議会と市会で単独与党会派の大阪維新の会は、その勢いを国政に移して国政政党・日本維新の会は所属議員数を増やし、国政への影響力を強めている。 その最もわかりやすい経済政策が大阪カジノの推進だっただけに、差し止め訴訟を含めて前途多難を予想させるカジノの進捗状況が、今後の維新人気にも響いてきそうだ』、「林文子前市長が先頭に立ってはいたが、各界に根回しをした上で推進していたのは官房長官として「安倍成長戦略」を支えた菅義偉氏である。菅氏の首相就任で「直轄プロジェクト」として推進されるものと思われたが、「ハマのドン」こと藤木幸夫氏が「博打は絶対にダメだ」と反対運動を展開。21年8月、横浜市長選でカジノ反対派の山中竹春氏が当選し、白紙に戻った」、「大阪カジノが抱える運営面の課題は少なくない。大阪府・市はカジノ施設への来場者数を年1610万人と想定しているが、1日約4万4000人が訪れる計算で、実現可能性には疑問符がつく。 コロナ流行前ならともかく、今はインターネットカジノが人気を集めてカジノ施設はむしろ退潮気味だ。開業時にコロナは終息しているだろうが、年間売り上げ見込み5200億円の8割をカジノが占めるという収益構造が今後も成り立つものだろうか。 大阪府議会と市会で単独与党会派の大阪維新の会は、その勢いを国政に移して国政政党・日本維新の会は所属議員数を増やし、国政への影響力を強めている。 その最もわかりやすい経済政策が大阪カジノの推進だっただけに、差し止め訴訟を含めて前途多難を予想させるカジノの進捗状況が、今後の維新人気にも響いてきそうだ」、「差し止め訴訟を含めて前途多難を予想させるカジノの進捗状況が、今後の維新人気にも響いてきそうだ」、その通りだ。

第三に、6月19日付け日刊ゲンダイ「米カジノ設計者が「大阪IRは間違い」と断言! 「行政が中毒になって収拾がつかなくなる」」を紹介しょう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/324733
・『「カジノを大都市に置くのは間違い」 2029年開業で政府の認定を受けた「大阪IR」に対し、米国のカジノ設計者が強烈パンチを食らわせた。 米ニューヨーク在住の建築デザイナー・村尾武洋氏は、米国全土の名だたるカジノの設計を30件近く行ってきた。横浜のカジノ阻止をめぐる闘いを描いたドキュメンタリー映画「ハマのドン」の登場人物でもあり、17日に大阪市で開かれた同映画の特別イベントにオンラインで参加。大阪IRについてのさまざまな質問に答えた。 大阪IRの主要事業者は米MGMリゾーツとオリックス。地元は、外国人観光客が増えることを期待しているが、村尾氏によれば「カジノ事業者の狙いは日本人」だ。 冒頭の「大都市に置くのは間違い」なのは、「ラスベガスのように、カジノは宿泊して旅行に行く場所。距離のある場所に目的を持って行くのな問題ないが、都心につくると、給料をもらったらすぐに行ってしまう」からだという」、「「大都市に置くのは間違い」なのは、「ラスベガスのように、カジノは宿泊して旅行に行く場所。距離のある場所に目的を持って行くのな問題ないが、都心につくると、給料をもらったらすぐに行ってしまう」からだという』、確かにそうした面もある。ただ、ロンドンやシンガポールのように「大都市」で成功した例もある。
・『米国ではカジノに行政はお金を入れない  デトロイト(ミシガン州)は「街がボロボロ」、フィラデルフィア(ペンシルベニア州)は「カジノの近くには危なくて行けない」と言い、「都市にできたカジノが10年、20年経てどうなっているか。『失敗例』を見に行くべき」とアドバイス。 予定地の土壌汚染対策に大阪市が788億円を負担するが、こうした税金投入についても、村尾氏は疑問を呈する。 「米国ではカジノに行政は一切お金を入れない。周辺の道路工事も事業者が行う。行政が出すのは『許可証』だけです。日本のシステムは事業者側にとってすごくおいしい」 大阪府市は、IR計画の初期投資を1兆800億円、年間の来場者2000万人、IR全体の売り上げを5200億円と見込み、売り上げの8割をカジノが占める。府市に入る年間収入は1060億円だ。 「大阪IRが成功するということは、一方で誰かが損をするということ。行政側が『もっと、もっと』と中毒になれば、収拾がつかなくなってしまう」 カジノの実態をよく知る事業者側の人物にここまでズバリ言われて、吉村知事は本当にIR計画を進めるのか。大阪府市民はそれでいいのか』、「米国ではカジノに行政はお金を入れない」、「日本のシステムは事業者側にとってすごくおいしい」、維新の会は意地になってIRを成功させようと、「土壌汚染対策に大阪市が788億円を負担」するなど無理を重ねている。これ以上の公的資金の投入は避けるべきだろう。
タグ:カジノ解禁 (その13)(大阪カジノ オリックスが市議会で公費の追加負担要望?リターンは根拠不明、大阪カジノ 日本初の大阪カジノで「維新」が犯した「疑惑の鑑定」…ここまでして何故カジノにこだわるのか、米カジノ設計者が「大阪IRは間違い」と断言! 「行政が中毒になって収拾がつかなくなる」) ダイヤモンド・オンライン「大阪カジノ、オリックスが市議会で公費の追加負担要望?リターンは根拠不明」 維新側は「カジノ」を人質に捕られ追加負担をむしり取られている。 ようだ 「大阪港湾局は、過去に市が土地を売却または賃貸する際にこれらの対策費用を負担しないことを原則としてきたことから、土地所有者として対策を実施する責任はないと主張。これに対し、カジノを看板政策としている大阪維新の会の最高実力者である松井一郎大阪市長は21年6月、政治判断で市が負担する方針を決めた」、事務方が負担しないとの結論を、「政治判断で市が負担する方針」でひっくり返すとはやれやれだ。 「790億円という巨額の土壌対策費を市が負担すると表明したことで、どうしてもIRを実現したい大阪府・市や維新側が足元を見られたとの見方が強かったが、オリックスの担当幹部自らその生々しい経緯を認めたのである」、なるほど。 「シンガポールのIR施設への入場者数はセンサーで計測している。同じ人間が何度もセンサーの前を通りかかるとその都度カウントしており、実際の入場者数は分からない」、ずいぶんいい加減な数字のようだ。 「オリックスは、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)の運営権の政府による売却(コンセッション)の条件が悪く、並み居る関西企業がそっぽを向く中、15年にフランスのバンシ・エアポートと組んで契約を結んだ。関西で、誰も引き受け手がない案件を手掛けてきたとの自負があるのかもしれない。 ただ、18年の関空の台風被害におけるずさんな対応が批判され、オリックスとバンシ双方出身の幹部の仲たがいまで報じられた」、 「関空の台風被害におけるずさんな対応」は今、思い出しても酷いものだった。「IRは始まる前から、土壌の問題に加え新型コロナウイルスの感染拡大、そしてロシアのウクライナ侵攻による将来の旅行需要の減少と、すでにリスクにまみれている。 高橋氏が「毛頭ない」と言いつつも、「見極めをする時期が来るかもしれない」と話す撤退は、夢洲の地盤沈下以外の要因で起きるかもしれない」、 「夢洲の地盤沈下以外の要因で起きるかもしれない」とはどういうことなのだろう。いずれにしろ、一旦、引き受けたからには、最後まで責任を果たしてもらいたいものだ。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「大阪カジノ、日本初の大阪カジノで「維新」が犯した「疑惑の鑑定」…ここまでして何故カジノにこだわるのか」 「最たるものが「安過ぎる賃料」だろう。「疑惑レベルを超えた違法領域」といって差し支えない。 まず、弁護団が指摘するのは2019年11月に行われた鑑定評価の杜撰さである。4社中3社が賃料を1平方メートル当たり月428円と鑑定していた。「業者が数字を合わせた『鑑定談合』か、行政が価格を主導した『官製談合』か、のいずれかの疑いがある」という長野氏の指摘はもっともだ」、 「次に、IR用地の賃料を算定しなければならないのに、鑑定業者は低層や中層のショッピングモールなどの大規模商業施設用地として算定していた。この「IR事業を考慮外」とするのは市の指示によるもの。IRの認可後は賃料改定するよう市に提言した鑑定業者もいたが、見直されてはいない」、なるほど。 「最も熱心だったのが東京都で、石原慎太郎元知事はカジノ議連発足の前から「お台場カジノ構想」をぶち上げ、それを猪瀬直樹元知事が受け継いだものの、金銭スキャンダルで失脚した。次の舛添要一前知事が興味を失うなか、「横浜で推進したい」と、東京に仁義を切ったうえで誘致活動を始めたのが横浜市だった」、ようやく思い出した。 「林文子前市長が先頭に立ってはいたが、各界に根回しをした上で推進していたのは官房長官として「安倍成長戦略」を支えた菅義偉氏である。菅氏の首相就任で「直轄プロジェクト」として推進されるものと思われたが、「ハマのドン」こと藤木幸夫氏が「博打は絶対にダメだ」と反対運動を展開。21年8月、横浜市長選でカジノ反対派の山中竹春氏が当選し、白紙に戻った」、 「大阪カジノが抱える運営面の課題は少なくない。大阪府・市はカジノ施設への来場者数を年1610万人と想定しているが、1日約4万4000人が訪れる計算で、実現可能性には疑問符がつく。 コロナ流行前ならともかく、今はインターネットカジノが人気を集めてカジノ施設はむしろ退潮気味だ。開業時にコロナは終息しているだろうが、年間売り上げ見込み5200億円の8割をカジノが占めるという収益構造が今後も成り立つものだろうか。 大阪府議会と市会で単独与党会派の大阪維新の会は、その勢いを国政に移して国政政党・日本維新の会は所属議員数を増やし、国政への影響力を強めている。 その最もわかりやすい経済政策が大阪カジノの推進だっただけに、差し止め訴訟を含めて前途多難を予想させるカジノの進捗状況が、今後の維新人気にも響いてきそうだ」、「差し止め訴訟を含めて前途多難を予想させるカジノの進捗状況が、今後の維新人気にも響いてきそうだ」、その通りだ。 日刊ゲンダイ「米カジノ設計者が「大阪IRは間違い」と断言! 「行政が中毒になって収拾がつかなくなる」」 確かにそうした面もある。ただ、ロンドンやシンガポールのように「大都市」で成功した例もある。 「米国ではカジノに行政はお金を入れない」、「日本のシステムは事業者側にとってすごくおいしい」、 維新の会は意地になってIRを成功させようと、「土壌汚染対策に大阪市が788億円を負担」するなど無理を重ねている。これ以上の公的資金の投入は避けるべきだろう。
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沖縄問題(その12)(沖縄集中を危険視…米軍再編とともに合理性を増す基地移転、沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか、沖縄・玉城デニー県知事の訪中と 習近平の「琉球」発言が放つ強烈な政治的メッセージ) [政治]

沖縄問題については、2020年9月17日に取上げた。久しぶりの今日は、(その12)(沖縄集中を危険視…米軍再編とともに合理性を増す基地移転、沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか、沖縄・玉城デニー県知事の訪中と 習近平の「琉球」発言が放つ強烈な政治的メッセージ)である。

先ずは、2021年4月7日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの立岩陽一郎氏による「沖縄集中を危険視…米軍再編とともに合理性を増す基地移転」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/287540
・『日米首脳会談は4月16日(米国時間)に行われることが決まった。気候変動への対応の他、「中国の覇権的な動きへの懸念も共有する」(日経新聞)という。当然、日米同盟の強化という話になる。しかし、その同盟を支えている沖縄の基地負担について触れる大手メディアの報道はない。だから書く。 3月31日、沖縄県の玉城知事にある提言が出された。「新たな安全保障環境下における沖縄の基地負担軽減に向けて」と書かれた文書。まとめたのは、元防衛官僚の柳澤協二氏を委員長とする有識者でつくる「米軍基地問題に関する万国津梁会議」。埋め立て工事に9300億円かかる普天間基地の辺野古移設を中止するよう求める内容が報じられているが、通り一遍の分析結果ではない。最も注目したのは米中の対立の激化と、それに伴う米軍再編の動きだ。 「米軍は依然として沖縄を軍事拠点として重視する一方、中国のミサイル射程内にある沖縄の脆弱性に対応して、アジア太平洋地域への分散を進めることになる」として、沖縄に集中する米軍の現状を再考する時期にきているとしている』、確かに、「中国のミサイル射程内にある沖縄の脆弱性に対応して」、「アジア太平洋地域への分散を進める」ことは急務だ。
・『沖縄に集中させる危険性  とりまとめのメンバーの一人、沖縄国際大学の野添文彬准教授は、「沖縄に米軍基地を集中させる危険性を米軍も考えている」と話した。理由は、中国軍のミサイル能力の飛躍的な向上にある。野添氏は、米政府の公文書などから在沖米軍の状況を研究してきた外交史の専門家だ。朝鮮戦争が終わった後、在日米軍の縮小が議論された。しかし中台関係が不穏な状況になったことから、中国へのにらみを利かすためにアメリカ政府は米軍を沖縄に集中させたという。加えて、本土の反基地運動の高まりもあって、米軍も統治下の沖縄を自由に使えるメリットがあった。本土に米軍基地を置きたくない日本政府にもメリットがあった。在日米軍施設の70%以上が沖縄に集中する状況は、以前の日米両政府にとっては都合がよかったということだ。 しかし中国軍の近代化によって、少なくとも米軍は基地が集中する状況を危険視し始めている。集中の象徴が嘉手納と普天間という巨大基地だ。普天間基地を辺野古に移設しても、その状況は変わらない。では、どうするべきか? 提言では日本本土にある自衛隊基地への分散配置を求めている。これは、政府が常に口にする「日米同盟の確認」をする上でも、合理性のある選択だ。提言書によると、米海兵隊は小規模で分散された規模での作戦任務に従事する「遠征前方基地作戦(EABO)」への再編が進められている。大部隊を沖縄に駐留させる軍事的な必然性は既に薄れている。故翁長知事の「日米安保が重要だと言うなら、日本全国で負担を分け合うべき」を思い返す。 「万国津梁」とは、交易によって栄えた琉球王国のモットーである世界の懸け橋という意味だ。提言では沖縄を再びこの地域の懸け橋として機能させるべきとも指摘している。米軍の再編を考えると同時に、沖縄を緊張状態の緩和の地にする。沖縄の訴えがあらゆる観点でその合理性を増している』、「提言では日本本土にある自衛隊基地への分散配置を求めている。これは、政府が常に口にする「日米同盟の確認」をする上でも、合理性のある選択だ」、「提言では沖縄を再びこの地域の懸け橋として機能させるべきとも指摘している。米軍の再編を考えると同時に、沖縄を緊張状態の緩和の地にする。沖縄の訴えがあらゆる観点でその合理性を増している」、その通りだ。考えてみれば、「鳩山由紀夫元首相が移転先を沖縄以外の場所に求めるとした構想が、遅ればせながら復活した形だ」。

次に、本年2月28日付けYahooニュースが掲載した月刊『創』編集長の篠田博之氏による「沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c272868f18a0db51a207542f10a9ccad53dc1db7
・『沖縄県議会での県警本部長の答弁  2022年1月28日未明に沖縄県警沖縄署に400人余と言われる若者らが集まり、停めてあった車の破壊や投石などを行って暴動と化したことはニュースで大きく報じられた。 きっかけは27日未明に17歳の高校生が警官の暴行を受けて失明したという話がSNSで拡散したことだという。右目から大量出血している高校生の動画が流れたことで衝撃を受けた友人らを含む若者が警察署前に集まり、同じくSNSを見た人たちが加わってたちまち膨れ上がったらしい。暴動に発展するほどの事態に至った要因が、SNS動画の衝撃性にあったことは明らかだ。 不思議なのは、それから約1カ月たった2月末になっても、現場で高校生と警官の間に何があったのか、真相が明らかになっていないことだ。 報道によると、負傷した高校生は27日未明、友人たちとコンビニの駐車場に集まっていたところ、暴走族取り締まりを行っていたらしいパトカーが来たのでバイクでその場から離れた。しかし、誤って友人の荷物を持ってきてしまったことに気づき、コンビニに戻ったところ、待ち構えていた警察官と遭遇。高校生は「警察官に棒のようなもので右目を殴られた」と語っているが、警官の方は、バイクが来たため停止させようとしたら突っ込んできたので「警棒を持っている手がはじかれた」と話しているようだ。当初、現場ではその警官が「これは単独事故だ」と言い張っていたという。 沖縄県警は所轄署でなく県警本部に捜査本部を置き、捜査を進めている。少年にも事情聴取を行い、警官が所持していた警棒や着衣の鑑定も行ったようだ。捜査の結論発表はなされていないが、県警はその進捗状況については随時明らかにするとしている。2月22日の沖縄県議会で日下真一県警本部長は、これまでの経緯を説明し、捜査によって明らかになった事実関係を発信をしていくと答えた』、事件「から約1カ月たった2月末になっても、現場で高校生と警官の間に何があったのか、真相が明らかになっていない」、警察側に不都合な点が多いのではなかろうか。
・『誤った情報が流れて高校生バッシングも  事件をめぐってもうひとつ問題になったのは、高校生が暴走族だといった誤った情報がSNSに流れ、高校生を特定しバッシングしようとする動きがあったことだ。地元紙の沖縄タイムスはツイッター投稿のファクトチェックを行い、「暴走族の高校生」「ノーヘルでバイク」「盗難車・無免許」という、SNSで広がっている3点はいずれも誤りだと指摘している。 情報の混乱が、県警が迅速に捜査結果を発表していないせいであるのは明らかだ。現場での警官の行為が具体的にどうだったのか、その対応をどう見るかということと関わっているだけに、県警としても苦慮しているのかもしれない』、「高校生が暴走族だといった誤った情報がSNSに流れ、高校生を特定しバッシングしようとする動きがあったことだ。地元紙の沖縄タイムスはツイッター投稿のファクトチェックを行い、「暴走族の高校生」「ノーヘルでバイク」「盗難車・無免許」という、SNSで広がっている3点はいずれも誤りだと指摘している。 情報の混乱が、県警が迅速に捜査結果を発表していないせいであるのは明らかだ」、その通りだ。
・『写真週刊誌『フラッシュ』の報道  そんななかで写真週刊誌の存在意義を知らしめたのが『フラッシュ』2月22日号だ。見出しは〈被害者母親が涙で単独告白「罪なく失明させられた息子は『お母さん、ごめんね』と…」〉。高校生の母親にインタビューを行ったものだが、こういうまとまった形で母親のインタビューが報じられたのはこれが初めてという。また同誌は、高校生の右目から大量の出血がある現場写真も載せている。 同様の写真は既に文春オンラインを始めネットでも公開されていたが、高校生が特定されないようボカシが入るなどしており、いまひとつわかりにくかった。『フラッシュ』も目の部分にボカシを入れ、配慮ゆえかカラーでなくモノクロ写真なのだが、右目から大量の出血があったことがよくわかる写真だ。百聞は一見に如かずと言われるが、その大量の出血や、眼球破裂だけでなく頬骨の骨折といった状況を考えると、警棒がたまたま当たったという警官の証言には疑問が残る』、「警棒がたまたま当たったという警官の証言には疑問が残る」、その通りだ。
・『警察の対応に大きな疑問  母親は『フラッシュ』のインタビューの最後にこう語っている。 警察は当初、たんなる単独事故だと発表していました。その次は、警察官と接触はしたけど警棒は持っていなかったと発表するなど、二転三転しているんです。しかも、交通課の警察官が私の番号を聞いていきながら、今日まで一度も私に電話をかけてきていません。事実を明らかにするつもりがあるのでしょうか」 現場での警官の対応に問題があったとすれば警察の不祥事になるわけで、それゆえに県警の捜査が及び腰になるようなことがあってはいけない。それを監視しチェックするのはメディアの役割とも言える。 地元のメディア、特に沖縄タイムスや琉球新報はこれまでもジャーナリズム精神あふれる報道姿勢で知られてきた。ぜひ真相究明が早期になされてほしいと思う』、「現場での警官の対応に問題があったとすれば警察の不祥事になるわけで、それゆえに県警の捜査が及び腰になるようなことがあってはいけない。それを監視しチェックするのはメディアの役割とも言える」、その通りだ。警察側の公式見解を早急に開示すべきだ。

第三に、8月16日付けWEBアスティオン「沖縄・玉城デニー県知事の訪中と、習近平の「琉球」発言が放つ強烈な政治的メッセージ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/asteion/2023/08/post-123_1.php
・『<中華の歴史を編み直そうとしている、習近平率いる中国。中国が「周縁」や「外部」とみなす人々の歴史を深く知ることは、アジアに生きる日本にとって重要だ>  中国で歴史は生々しく今を生きている。 「中国の夢」を掲げて14億人を束ねようとする習近平政権のもと、歴史を背負う「中華」はどう拡散し、深化しているのか。 沖縄の玉城デニー県知事が7月初旬、訪中した。コロナの渡航制限が緩和されて以降、日本から初めての大型経済ミッションの一員として、李強首相など指導部とも面会した。 さらに、琉球王国時代に深い縁があった福建省福州市へと足を延ばした。中国メディアは連日、「玉城丹尼」の動向を報じた。 沖縄県知事の訪中は初めてではない。翁長雄志氏も何度か訪問している。今回いっそう注目されたのは、習近平国家主席が自らの言葉で、「琉球」と中国との深い縁に触れたばかりだったからだ。 習氏は6月初め、「中華文化の遺伝子バンク」(国営新華社通信)とも呼ばれる中国国家版本館の北京本館を訪れた。古代から近代までの出版物の版本1600万冊を収蔵、1万点以上を展示している。天安門広場から数十キロ離れた燕山の麓にある。 中国共産党機関紙人民日報1面(6月4日)によれば、足を止めた習氏に対して、案内係は「重要な政治的な役割を果たしている古書」として、明代16世紀に皇帝が琉球へ派遣した「册封使」が残した記録『使琉球録』を紹介した。 「釣魚島(尖閣諸島の中国名)とその付属諸島が中国の版図に属することを記録している」と説明した。中国は500年近く前の古文書も歴史の檻から出して、現在の外交に動員する。 習氏は島をめぐる問題には直接答えず、こう応じた。 「私は福州(福建省)で働いていたとき、琉球館と琉球墓園があり、琉球との往来の歴史がとても深いと知った。あのころ、『閩(びん)人三十六姓』が琉球へ渡った」 琉球館は、貢ぎ物を明の皇帝に届けるために琉球王国から海を渡ってきた人々が滞在した拠点だ。柔遠駅とも言われた。柔遠という中国語には、遠方からの訪問者を優遇し、朝廷の懐柔政策を示すという意味がある。 習氏の発言は、中国と琉球は「冊封関係」、つまり、中国側から見ると宗主国と従属国の関係にあったことを想起させる。) 玉城氏は琉球人墓地を訪ねて、那覇から持参した「平御香(ヒラウコー)」と呼ばれる線香とお盆などに祖先に持たせるための紙ウチカビを供えて手を合わせた。いずれも中国由来の沖縄独特の風習である。 中国メディアは琉球王国の時代から沖縄は「中国はじめアジア諸国との平和的な交流で繁栄した」(人民日報傘下の環球時報)という知事の言葉を伝えた。 「琉球回収、沖縄解放」 北京特派員時代に取材した2010年から12年にかけての「官製」反日デモで、そんなスローガンを書いた垂れ幕を見た記憶が甦る。 習氏は、沖縄の人々に親しみをアピールしたのか。それとも、台湾問題をめぐって関係がぎくしゃくする日本政府に対して、沖縄の帰属問題で揺さぶりをかけようとしているのか。 琉球と交流の歴史を持つ福建省は、習氏にとって1985年のアモイ市副市長から始まり、17年も駐在したゆかりの地だ。足を止めても不自然ではない。中国政府自身は沖縄返還後、日本の沖縄の主権に異議は唱えていない。 では、沖縄の人たちの対中意識をみるとどうであろうか。沖縄復帰50年にあたって朝日新聞社などが実施した世論調査(2022年3~4月)によれば、日本にとってより重要な関係として、アメリカをあげた人の比率が77%だったのに対して、中国は7%に過ぎない。 別の世論調査でも、対中感情は本土の日本人以上に悪いという結果もある。仮に、習氏の発言が、米軍基地問題で日本政府の政策に不満を持つ沖縄の人々を取り込もうとするプロパガンダ工作だったとしても、どこまで有効かは未知数だ。 それでも、人民日報1面で報じたこと自体、強い政治的メッセージを放つ。トップに対する忖度ともあいまって、中国の政策当局者、研究者や世論の方向性に大きな影響を与える。 中国は国力の増強につれて、自国民を束ねる道具として利用してきた「五千年」の歴史の効用を国外に対しても臆面なく用いるようになった。 今回の習氏の発言をめぐって日本にざわざわと波紋が広がったように、日本の世論の分断や混乱につながりかねない琉球をめぐる議論は今後、必ず増える。 中国側の意図を、日本社会はどこまで深く読み取れるだろうか。) 習氏のアーカイブ館の見学は、文化伝承発展座談会に出席し、演説することとセットだった。習氏は中華文明を「中断されたことのない唯一の文明」と位置づけ、次のように語っている。 中華文明には際だった統一性があり、中華民族は各民族の文化が一つに融合し、たとえ重大な挫折になっても固く結集することを決定づけ、国土は切り離せず、国家は乱れず、民族はばらばらにならず、文明は断たれないとういう共通の信念を決定づけ、国家統一が永遠に中国の核心的利益の核心であることを決定づけ、強固で統一された国家が各民族の運命にかかわることを決定づけている、と。 アステイオン98号の特集「中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望」で、責任編集を担った岡本隆司氏が「中国の夢」について、「長くとれば百年以上も以前から背負い、となえてきた課題であるとともに、現代・現状も解決をみておらず、なればこそ「夢」と表現せざるをえない」と指摘している。 習氏の中華文明に関する演説もさかさまに読めば、中国が抱え続ける課題が見える。 中国という国家や中華文明は、そのパワーの及ぶ範囲で広がったり縮んだりしてきた。習氏の中国は、中華を、その見果てぬ夢を拡散するベクトルにある。 その伸縮に応じて影響を受けてきた日本には、歴史という縦軸に地理的な横軸を加えた「中国と関係を有した国々・地域それぞれの「中華」観・「中国」論」(岡本氏)が必要だ。 この特集では、中華・中国に、ときにとりこまれ、ときに周縁となり、ときに外部として存在した朝鮮半島、琉球、台湾、香港、チベット、新疆、ベトナム、モンゴルを主語にして中国を論じていた。 それによって、「連続性」「統一性」「包摂性」を主張する習氏率いる、現代の中国・中華が語る歴史の欺瞞や矛盾を照射している。 岡本氏のこの問題意識は、西洋の視点で編まれた世界史をユーラシアから捉え直す『世界史序説──アジア史から一望する』(ちくま新書)や、現代中国が生まれる過程を日本、琉球、ベトナム、朝鮮半島、モンゴルなどの視座からとらえた『中国の誕生──東アジアの近代外交と国家形成』(名古屋大学出版会)から一貫する、主語を逆転させる試みだと感じた。 中国と直接のかかわりを持ってきた国や地域は中国をどう見ているのか。自らの歴史にどう位置づけているのか。) たとえば、中国が仕掛ける「琉球」をめぐる議論に対峙するにも、日本の本土に欠如する沖縄そのものに対する理解はもちろん、台湾や米国などさまざまなアクターの認識を知ることが欠かせない。 中国の見果てぬ「夢」に向き合わざるを得ない立場を共有する者どうし、地域の安定に向けて相互に理解を育みたい。 中国・中華の視点から見た「周縁」と「外部」が連帯することによって生まれる未来の可能性もまた、そこに潜んでいる』、「この特集では、中華・中国に、ときにとりこまれ、ときに周縁となり、ときに外部として存在した朝鮮半島、琉球、台湾、香港、チベット、新疆、ベトナム、モンゴルを主語にして中国を論じていた。 それによって、「連続性」「統一性」「包摂性」を主張する習氏率いる、現代の中国・中華が語る歴史の欺瞞や矛盾を照射している」、「中国が仕掛ける「琉球」をめぐる議論に対峙するにも、日本の本土に欠如する沖縄そのものに対する理解はもちろん、台湾や米国などさまざまなアクターの認識を知ることが欠かせない。 中国の見果てぬ「夢」に向き合わざるを得ない立場を共有する者どうし、地域の安定に向けて相互に理解を育みたい」、ただ、あくまでも「中国」に飲み込まれないよう「日本」としての立場は貫くべきだろう。

なお、最高裁判決で辺野古の工事での沖縄県の敗訴が確定したことで、工事再開の可能性が出てきたことについては、今回は取上げなかった。: 
タグ:沖縄問題 (その12)(沖縄集中を危険視…米軍再編とともに合理性を増す基地移転、沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか、沖縄・玉城デニー県知事の訪中と 習近平の「琉球」発言が放つ強烈な政治的メッセージ) 日刊ゲンダイ 立岩陽一郎氏による「沖縄集中を危険視…米軍再編とともに合理性を増す基地移転」 確かに、「中国のミサイル射程内にある沖縄の脆弱性に対応して」、「アジア太平洋地域への分散を進める」ことは急務だ。 中国軍の近代化によって、少なくとも米軍は基地が集中する状況を危険視し始めている。集中の象徴が嘉手納と普天間という巨大基地だ。普天間基地を辺野古に移設しても、その状況は変わらない 提言では日本本土にある自衛隊基地への分散配置を求めている。これは、政府が常に口にする「日米同盟の確認」をする上でも、合理性のある選択だ 「提言では沖縄を再びこの地域の懸け橋として機能させるべきとも指摘している。米軍の再編を考えると同時に、沖縄を緊張状態の緩和の地にする。沖縄の訴えがあらゆる観点でその合理性を増している」、その通りだ。 考えてみれば、「鳩山由紀夫元首相が移転先を沖縄以外の場所に求めるとした構想が、遅ればせながら復活した形だ」。 yahooニュース 篠田博之氏による「沖縄警察暴動のきっかけとなった高校生失明事件の真相が1カ月経ても明らかにならないのはどうしたことか」 事件「から約1カ月たった2月末になっても、現場で高校生と警官の間に何があったのか、真相が明らかになっていない」、警察側に不都合な点が多いのではなかろうか。 「高校生が暴走族だといった誤った情報がSNSに流れ、高校生を特定しバッシングしようとする動きがあったことだ。地元紙の沖縄タイムスはツイッター投稿のファクトチェックを行い、「暴走族の高校生」「ノーヘルでバイク」「盗難車・無免許」という、SNSで広がっている3点はいずれも誤りだと指摘している。 情報の混乱が、県警が迅速に捜査結果を発表していないせいであるのは明らかだ」、その通りだ。 「警棒がたまたま当たったという警官の証言には疑問が残る」、その通りだ。 「現場での警官の対応に問題があったとすれば警察の不祥事になるわけで、それゆえに県警の捜査が及び腰になるようなことがあってはいけない。それを監視しチェックするのはメディアの役割とも言える」、その通りだ。警察側の公式見解を早急に開示すべきだ。 WEBアスティオン「沖縄・玉城デニー県知事の訪中と、習近平の「琉球」発言が放つ強烈な政治的メッセージ」 「この特集では、中華・中国に、ときにとりこまれ、ときに周縁となり、ときに外部として存在した朝鮮半島、琉球、台湾、香港、チベット、新疆、ベトナム、モンゴルを主語にして中国を論じていた。 それによって、「連続性」「統一性」「包摂性」を主張する習氏率いる、現代の中国・中華が語る歴史の欺瞞や矛盾を照射している」、 「中国が仕掛ける「琉球」をめぐる議論に対峙するにも、日本の本土に欠如する沖縄そのものに対する理解はもちろん、台湾や米国などさまざまなアクターの認識を知ることが欠かせない。 中国の見果てぬ「夢」に向き合わざるを得ない立場を共有する者どうし、地域の安定に向けて相互に理解を育みたい」、ただ、あくまでも「中国」に飲み込まれないよう「日本」としての立場は貫くべきだろう。
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不動産(その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた) [産業動向]

不動産については、本年4月9日に取上げた。今日は、(その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた)である。

先ずは、本年6月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討、そして知った“驚きの事実”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324757
・『少し前に話題になったサブリース。サブリースとは本来、転貸借全般を指す用語ですが、一般には収益不動産の一括借り上げのことをいいます。マンションやアパートなどの賃貸不動産の所有者が、空室リスクなどを避けるため、いったんサブリース会社に不動産を貸して、サブリース会社に客付けやら管理やらの面倒なことをやってもらおうというもので、多くの不動産オーナーが利用している仕組みです。ところが2019年、大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています。あれから数年がたち、現在、全国のサブリース物件所有者の人たちには何が起きているのでしょうか』、「大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています」、これは大変だ。
・『ワンルームマンション購入後は赤字続き 売却もできず苦しむ横浜在住の医師  横浜在住のお医者さんである佐藤さんは言います。 「熱心なワンルームマンションの営業マンに勧められて、2020年に立て続けに神奈川県にあるワンルームマンションを3室買いました。全額銀行借り入れで購入し、サブリースをつけています。本業が忙しいのですが、煩わしい管理などはすべてやってくれるということだったので、サブリースがいいかなと。もちろん、所得税の節税になるという話だったので、税金対策も兼ねて投資しました。営業マンから『これはお医者様専用の投資物件で、医師が自身で住みたくなるようなプレミアムな物件です』と言われ、なんとなく自尊心をくすぐられたのを覚えています」 しかし、購入してから3年間、収支は赤字。借金返済のため、半年ごとに一回、銀行にお金を別の口座から60万円ほど入金して赤字補填をしています。そのため年間の赤字補填額は120万円に上ります。) 「コロナで医療収入も減ったので、結局節税になりましたが、マンション投資も含めたトータルで考えると損したなというのが感想です」 佐藤さんは、赤字の補填をし続けていることを不安に思い、我々の会社に相談に来ました。そして、もしこの物件を売却した場合の査定結果にがくぜんとします。 2020年に1室2500万円の物件を計3室、合計7500万円で購入。諸経費を含めた支払額は8000万円弱でした。佐藤さんはこれを全額ローンで購入しました。 しかし、現在の相場で売却した場合の値段は1室につき2000万円。つまり、1室につき700万円近くの赤字になります。もちろん、借り入れがほぼまるまる残っているので、売却金額が残債を下回る、いわゆる『オーバーローン』状態です。 佐藤さんは、昨今の不動産価格の上昇でこのマンションも上昇しているのかと思っていたのですが、さにあらず。詳細を調べると、たしかに土地の価格は上昇していますが、最近の不動産価格の上昇の恩恵にあずかれず、売却したくてもできない状況に陥っていることがわかったのです。 また、賃料相場を調べてみると、佐藤さんがサブリース会社から受け取る家賃は8万円でしたが、実際は借主からサブリース会社が10万円の賃料をとっていることが分かりました。2万円の収益減です。 サブリース会社に聞いたところ「そういうものなので仕方ないですよ」と言われてしまい、それ以来営業マンから電話はかかってきません。 現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました』、「現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました」、確かにこれでは売却できない。
・『相続したマンションの売却でサブリース契約解除めぐりトラブル  もう一人サブリースで苦しんでいる方をご紹介します。 ある地方都市にマンションを丸々5棟保有している原さん。彼は、2022年にお父さまが亡くなったことで、複数不動産を相続した方です。父が生前の2021年に、2棟売却する契約をしていました。売買契約書まで交わしたものの、収益不動産の2棟引き渡しの前に亡くなってしまいました。 そこで父の代わりに、長男の原さんが相続人として、新しい買い主やその契約を仲介した仲介会社と引き渡しまでのやり取りをすることになったのです。 そもそもこの2棟の売却話をまとめたのが、1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです。 しかし、相続したばかりの原さんは、不動産の仲介を担っていた高齢の社長から「君は素人だし、まだ若い。大丈夫、私に任せなさい」と言われたので、原さんもそれをうのみにしてしまったのです。 この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました。 驚いた原さんは、自ら複数の弁護士に相談をしましたが、いずれの弁護士からも「借地借家法の側面で解約は難しい」と説明されてしまいました。 以下が、そのサブリースの解除条項です。 <第○条 契約の解除> 甲乙(筆者注:所有者とサブリース会社のこと)いずれか一方に契約続行不可能な事由がある場合に限り、3カ月の予告期間をもって相手方に通告し本契約を終了させることができる。また、正当な解約事由がない場合や即時に解約の場合は前条の保証家賃の3カ月分を相手方に支払うものとする。上記条文によると、解除条項があるため、一見、サブリース契約は解除が可能のように見えます。実際、不動産仲介の高齢の社長だけではなく、原さんの父親も建築当初「サブリースにすれば、何もしなくてよい」と管理会社に言われ、かつ上記契約書に書かれている通り「解約できるもの」と認識して、サブリース契約をしました。しかし、相続した人間が望まなくても、サブリースは引き継ぎとなる「止められない契約」なのです。 この物件の買い手は、ある程度不動産投資をしている人だったため、サブリースの解除を求めました。前述のお医者さんの佐藤さんのお話でも触れた通り、本来の家賃は100だとしても、サブリース会社に20中抜きされるため、80ほどしか賃料収入が入りません。買い手としては20損するわけですので、投資家にとってサブリースの継続はメリットがありません。 原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました』、「1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです」、「この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました」、「原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました」、なるほど。
・『不動産所有者に不利益が多い サブリース契約を解約できない理由  売り手である原さんが驚いたのは、サブリース契約が法的によほどの正当事由がない限り解除できないという事実でした。裁判例を確認すると ・よほど切迫した理由がなければ不可 ・自己使用の必要性のみを理由としたサブリース解除は相当困難 ・契約書上の違約は、信頼関係の破壊に至るほどのひどいものでない限り解約不可 という事実が判明します。弁護士の見解も同様で、サブリース物件の売却後、新たな買い手が解除することもできないのです。 当然賃料も下がりますので、売却価格も下がります。売り手としては安い値段で売らざるを得ません。一方でサブリース契約を継続しても、築年数が古くなれば、家賃の下落、修繕費の増加で収支は悪化します。よって、経営の巧拙はもちろんありますが、それよりもサブリースがそもそもの不動産経営のボトルネックというケースが非常に多いのです。 サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。 一般に、消費者契約法などは個人と法人の関係で立場の弱い個人が守られるものですが、サブリース契約ではその逆で、法人が賃借人という立場に基づいて守られ、個人が賃貸人という立場に基づいて不利な立場になってしまっているのです。 面倒な手間をサブリース会社にやってもらうということ自体は、「お客様の手間を解決する商売」として成り立つと思いますが、サブリース契約を一度結んでしまうと更新時も含めて半永久的に解除できません。たとえ解除条項があったとしても、借地借家法と判例によって解除ができず、契約関係が続いてしまうという「沼」なのです。これからサブリース契約をされる方は、そのリスクを認識して契約されるべきだと思います』、「サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。「借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっている」、何故、こんな不当な解釈が横行しているのだろう。

次に、7月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326114
・『アパートなどを所有者から一括して借り上げて入居者に貸すサブリース会社をめぐるトラブルがいまだに絶えない。今回はトラブルに巻き込まれた2人の不動産所有者のケースをもとに、サブリース契約の3つのデメリットについて解説したい』、興味深そうだ。
・『サブリース会社によるさまざまな中抜きの「手口」  サブリースとは、転貸借全般を指す用語で、一般的に収益不動産の一括借り上げのことを指します。マンションやアパートなどの賃貸不動産の所有者が、空室リスクなどを避けるため、いったんサブリース会社に不動産を貸し、サブリース会社に客付けや管理などの面倒なことをやってもらうというものです。今では多くの不動産オーナーが利用している仕組みです。 ところがコロナ前、業界内に激震が走りました。大手サブリース会社が物件の一部で、当初約束した家賃を、約束からわずか数年で、強制的に「引き下げた」ためです。このような目に遭った不動産所有者の中には、銀行借り入れをして不動産を購入した人もいたため、家賃を引き下げで「借り入れと賃料収入との収支がマイナス」になってしまった方も続出しました。 前回の記事で、私がサブリースで苦境に陥った不動産所有者の事例を2つ取り上げたところ、多くの方からの反響をいただきました。そこで今回はもう少しサブリース全般の問題点を掘り下げてみたいと思います。 所有者がいったん、サブリース会社に貸して「後の面倒なことはサブリース会社にやってもらう」という、一見便利に見えるこの仕組み。もちろん商売ですから、サブリース会社(もしくはその関連会社である管理会社)がもうかるようになっています。当然、所有者はサブリース会社に手間賃を払うことになりますので収益は減少します。不動産所有者が払う手間賃とはいわゆる「中抜き」というものです。 そもそも当時話題となったのは「安普請の家(割高な建物)を建てさせられる」という点。コロナ前に話題となった某上場企業の欠陥建築問題はまさにこの話です。つまり高いお金を払って安普請の家を建てさせられる。そして建築後、中抜きが始まります。まずは賃料を業者によって15~20%程度中抜きされます。 サブリース会社は一般の賃借人から例えば10万円の家賃を取ったとします。そして不動産所有者には8万円を支払うことで2万円中抜きできるということです。そして賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。もちろん、サブリース業者に丸投げすることで、クーラーの購入や工事の手配といった手間は省けますので、「まあ、仕方ないよね」と思える人には便利な仕組みだとは思います。しかし、実際には、こうした中抜きの状況について気付いていない所有者が多いようサブリース会社は一般の賃借人から例えば10万円の家賃を取ったとします。そして不動産所有者には8万円を支払うことで2万円中抜きできるということです。そして賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください』、「賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください」、巧みなやり方だ。
・『借地借家法により多くのサブリース契約の解除は困難  このように中抜きされるポイントがいくつもあるというのが、サブリース会社と契約することの第一のデメリットなのですが、第二のデメリットが前回も申し上げた「借地借家法によりサブリース会社が守られている故、サブリース契約を解除できず、半永久的に継続せざるを得ない」というものです。 例えば私の前回の記事を読んだ、サブリース契約をしている賃貸アパートを所有している瀬戸さん(仮名)。彼は遅ればせながらサブリースのデメリットを理解したので、業者に解除を申し立てたところ「解除できない」と強硬に言われてしまい、弊社に相談に来ました。 彼は悲痛な面持ちで次のように説明してくれました。 「なんとなく割高だよな、というのは分かっていたんです。でもそれも手間賃かなと。しかし納得いかないのは、クーラーの取り換えや換気扇の取り換えなどについて、サブリース会社は毎回事後報告なのです。また、私に報告もなく勝手に取り換え代金が引き落とされることも常態化しています。この6月末にも月の締めをチェックしていたのですが、管理会社から送られてきた支払書に、報告された記憶のない『301号、403号 浴室換気扇交換 各々4万6200円』という代金が引かれていました。不審に思い、担当に連絡をしたところ、取り換えをするという連絡は4月に行っていたものの、その後見積書を提出することなく、勝手に発注・取り換えをし、代金を引き落としていたのです」 以下は瀬戸さんに送られたサブリース会社の担当者からのメールの引用です。 お世話になっております。○○(サブリース会社の管理社名)の和田(仮名)です。(中略)浴室換気扇につきましては、4月3日にメールでの不具合報告をさせていただき、交換工事の金額の文章での御見積提出を忘れておりました。大変申し訳ありません。今後このようなことが起こらない様、進捗状況を確認しながらご報告をいたします。「換気扇に関して4万6200円とあったのですが、私の持っている物件の換気扇は昔の換気扇で、よくあるプロペラファン型です。ネットで検索してみたら工事費込みでも1つ1.5万円で交換できるということが分かりました。ああ、ここでも3万円近く中抜きされていたんだなと。そこでサブリース契約の解除を申し出たところ、できませんの1点張りです。知り合いの弁護士に相談しても、サブリースの解除は無理ですよと言われてしまい…」と、瀬戸さんは途方に暮れています。 もちろんお客様の手間を解決するのがビジネスですので、双方納得の上で、サブリース会社が中抜きすること自体は悪ではないと思います。大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます』、「大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます」、なるほど。
・『サブリース付きの物件は売却価格でも不利に  埼玉でサブリース物件を所有する加藤さん(仮名)は、中抜きの実態について、瀬戸さんよりも突っ込んで調べた方です。 「サブリース会社から入ってくる家賃が少ないと思い、サブリース会社に『家賃の一覧を見せてくれ』って言ったんです。当初は『見せられない』と言ってきたのですが、激しいやりとりの末、レントロールというんですか、家賃の一覧表を出してくれました。ところが、どう見ても入居者の家賃が実際の家賃と違うんですよ。家賃の中抜きをしていることを言いたくなかったんでしょうね。そこで、たまたま入居者の1人が私の知り合いだったので、家賃を聞いてみたんですよ。するとサブリース会社が報告した家賃と実際の家賃がやっぱり違っていたんです。わざわざ虚偽のレントロールを作ってきたんですよ」 加藤さんが契約したサブリース会社もひどいですが、さらに問題のある業者も存在します。例えば、設備が壊れてから交換するのではなく、数年に1回、アパート全体の温水洗浄便座やエアコンを定期的に交換することで中抜きをしたりするのです。そして不動産の所有者がそれに気付いても、借地借家法に守られているのはサブリース業者なので、所有者個人はなかなか解除できないという、まさに「沼」に入り込んでいる状況なのです。 そしてサブリース会社と契約する第三のデメリットは、物件の売却に関することです。 不動産の所有者がサブリースの解除を諦め、でも赤字物件を持っていたくないので、物件の売却をしようとします。ところが売却のときも、契約したサブリース会社を仲介しないと当該物件を売却できないということも多々あるのです。不動産を手離したいのなら、仲介手数料を自分たちに払えということです。 なお、サブリースが付いた収益不動産を売却するとき、売却価格も下がるということにも注意が必要です。 売却価格は多くの場合、収益不動産は収益還元法をベースに算出します。 例えば都内23区内の築20年の木造アパート1棟で、駅徒歩10分強、利回りが約5%の物件があったとします。 家賃収入が年間1500万円だとすると、物件価格は一般的に、1500万円÷5%で3億円になります。 しかしサブリースを解除できれば、家賃収入は中抜きがなくなったことで2割ほど増えて1875万円になります。その結果、物件価格は1875万円÷5%で3億7500万円と、大幅に上昇することになるのです。 不動産所有者にとっては当然高値で売却したいでしょうし、サブリース解除は必須となります。 投資で負けるのは情報弱者です。 金融商品などの証券投資であれば、小口化されているので数万円から投資できます。したがって、投資家は少額から始めることで「慣れる」ことができます。しかし、不動産はそうではありません。収益不動産に関しては安くても数百万、普通で数千万、基本的には数億かかる買い物です。 投資家と業者では情報格差が大きいため、投資の初心者にとってサブリースは「面倒なことは全部丸投げ」できて始めやすいように思います。しかし、おいしい話にはそれ相応のデメリットもあります。 個人を守る消費者契約法と異なり、業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています』、「業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています」、その通りだ。

第三に、8月22日付け東洋経済オンライン「オープンハウス、「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/696158
・『「われわれも買収のアプローチをしていたのだが、先をこされた」。あるハウスビルダーの幹部は唇をかむ。 この幹部が言う、買収を狙っていた企業とは、東京や埼玉などで戸建て分譲を展開する三栄建築設計のことだ。「行こうぜ1兆!2023」のスローガンを掲げ、今期に売上高1兆円超えを確実視する、ハウスビルダーのオープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化を目指すことを発表した』、「オープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB・・・を実施し、完全子会社化を目指すことを発表」、なるほど。
・『元社長が暴力団員に金銭を供与  三栄建築については、元社長が暴力団員に金銭を供与していたとして、東京都公安委員会から暴力団排除条例に基づく勧告を受けていた。新たな体制で、経営の建て直しを図る。 オープンハウスは8月17日から9月28日まで、1株当たり2025円で三栄建設株に対してTOBを実施する。買い付け代金は429億円。三栄建築株の63%超を保有する元社長の小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する。 三栄建築の2022年8月期業績は売上高1390億円、営業利益128億円。買収が完了すれば2024年9月期から、オープンハウスの業績(2023年9月期売上高1兆1300億円、営業利益1410億円計画)に、三栄建築の業績が上乗せされる。 三栄建築の純資産額は611億円(2023年5月末時点)と買い付け代金とは差があることから、2024年9月期に負ののれん特別利益が計上される可能性も高い。) 三栄建築については、「安定していてよい会社」(ハウスビルダーの幹部)と評価する関係者が多い。「戸建て業界のさまざまなコンテストの受賞実績があるなど、デザイン力の高いことで有名」(別のハウスビルダーのベテラン社員)。 経営トップが暴力団員と関わりを持っていた同社は、2021年後半あたりから株価が低迷していたこともあり、複数の企業が三栄建築の買収に関心を持っていたと見られる。ハウスビルダー幹部は次のように語る。 「戸建て販売のシェアを上げるチャンスだったこともあり、当社も三栄建築側に『資本参加してもいい』という話をしていた。三栄建築は、ビッグモーターとは違う。創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」』、「買い付け代金は429億円」と「純資産額は611億円」を大きく下回るので、「負ののれん特別利益が計上される可能性も高い」、なるほど。「創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」、その分が「負ののれん」になっているようだ。
・『あの「モノ言う株主」もTOBを画策  今年7月には、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた。 ハウスビルダーやアクティビストの思惑が入り交じり、「買収争奪戦」の様相を呈していたが、混乱する事態にはならなかった。三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である三井住友銀行が、「橋渡し役になった」(ハウスビルダーのベテラン社員)ことで、オープンハウスの買収スキームがまとまったからだ。「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」(別の業界関係者)。 小池氏からオープンハウス側に株式譲渡の打診があったのは今年6月24日。オープンハウスは、三栄建築が設置した第三者委員会の調査報告書などを確認したうえで、8月16日に買収を決定した。) 三栄建築の小池氏とオープンハウスの荒井正昭社長は、個人的なつながりもあった。両者は業界団体である日本木造分譲住宅協会の理事を務める(小池氏は2022年11月辞任)。同じく理事であるケイアイスター不動産の塙圭二社長を含めて、「3人で食事をすることもあるなど仲が良い」(ハウスビルダーの幹部)と言われる。 こういった経営トップ同士の関係も、買収スキームがまとまる要因になったと考えられる』、「香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた」、「三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」、さすが三井住友銀行の動きは素早い。
・『解体工事代金の一部が住吉会系の暴力団員に  オープンハウスが8月16日に公表した「株式会社三栄建築設計株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」によると、小池氏と暴力団員との関係は「少なくとも20年以上の長期にわたるもの」とされる。 暴力団員の便宜を図ったり、トラブルの交渉を委ねたりしていていた。2021年3月には、解体工事を発注した業者に対する工事代金として、小切手を指定暴力団の住吉会系の暴力団員に対して交付し、利益を供与した。 そして2022年9月に警察当局により、小池氏と他3名が会社法違反(特別背任)容疑で捜索を受ける。この動きをうけて、小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」(債務者がこれ以上は返済を待てないと残金の一括返済を求める通知)を受けていた。 一方、オープンハウスはこれまで、「攻め」の経営で業容を拡大してきた。「M&A(企業の合併・買収)をまとめるのがうまい」(ハウスビルダーの幹部)とされ、2015年にはアサカワホーム(現オープンハウス・アーキテクト)、2018年にはホーク・ワンを完全子会社化、そして2021年1月にプレサンスコーポレーションを子会社化した。 足元の業績も好調だ。戸建て、マンション、不動産開発の全セグメントで業績が拡大。過去最高純利益を更新中で、財務基盤も厚い(2023年6月末自己資本比率33.7%)。 三栄建設が設置した第三者委員会による報告書では、小池氏と暴力団員とは複数の取引があったが、元社長とそのほか3人の元従業員を除き、「暴力団員と直接関わりを持った人はいなかった」とされる。 「小池さんと、ほかの3人が反社会的勢力との付き合いがあったが、4人ともすでに会社を辞めている。小池さんや、彼のファミリーが所有していた同社株式もすべて買い取るため、小池さんの影響力を排除することができる。これらにより(暴力団員との関係が)クリアになる」(オープンハウスのIR担当者)としている。 オープンハウスの戸建ては「地味なデザインが多い」(業界関係者)と指摘されることもあり、デザイン力の高い三栄建築の戸建てがラインナップとして加わる意味は大きい。また資材調達などの面で「スケールメリットが発現する」(IR担当者)。こういった相乗効果を期待して、オープンハウスは買収に踏み切った』、「小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」・・・を受けていた」、のであれば、三井住友銀行も尻に火がついた緊急事態だったようだ。さすがと褒めたのは取り消すこととする。
・『買収成立まで一波乱の可能性も  ただ、TOBがすんなりと成立する保証はない。三栄建築を1代で売上高1300億円をたたき出す企業に育てた小池氏だが、「おぼっちゃま気質で、Jリーグチームのスポンサーになるなどいろんなところに首をつっこみたがる」(ハウスビルダーの幹部)と言われる。 この小池氏については、「オープンハウスへの株式譲渡には、本音ではいまも納得していない」(別の業界関係者)との見方もある。買収成立まで、一波乱あるかもしれない』、「小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する」、予定ではあるが、「小池氏」は「本音ではいまも納得していない」、いまさら「小池氏」の打つ手は限られている筈だ。どう出てくるのか、要注目だ。
タグ:不動産 (その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた) ダイヤモンド・オンライン 江幡吉昭氏による「不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討、そして知った“驚きの事実”」 「大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています」、これは大変だ。 「現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました」、確かにこれでは売却できない。 「1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです」、 「この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました」、 「原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました」、なるほど。 「サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。 「借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっている」、何故、こんな不当な解釈が横行しているのだろう。 江幡吉昭氏による「情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態」 「賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください 「大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます」、なるほど。 「業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています」、その通りだ。 東洋経済オンライン「オープンハウス、「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた」 「オープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB・・・を実施し、完全子会社化を目指すことを発表」、なるほど。 「買い付け代金は429億円」と「純資産額は611億円」を大きく下回るので、「負ののれん特別利益が計上される可能性も高い」、なるほど。「創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」、その分が「負ののれん」になっているようだ。 「香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた」、「三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」、さすが三井住友銀行の動きは素早い。 「小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」・・・を受けていた」、のであれば、三井住友銀行も尻に火がついた緊急事態だったようだ。さすがと褒めたのは取り消すこととする。 「小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する」、予定ではあるが、「小池氏」は「本音ではいまも納得していない」、いまさら「小池氏」の打つ手は限られている筈だ。どう出てくるのか、要注目だ。
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働き方改革(その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』) [経済政策]

働き方改革については、本年4月5日に取上げた。今日は、(その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』)である。

先ずは、5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コラムニストの横山 信弘氏による「たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671389
・『たった1カ月で新入社員の半分が辞めてしまうとは……。 今回は、ある会社が「働きがい」のある職場を目指した結果、新入社員の半分が辞めてしまった事例を紹介する。 昨今、突如として「働きがい」という言葉を使って採用活動に励む会社が増えている。会社に興味を持ち応募する人が多くなるからだろう。しかし、気をつけたほうがいい。言葉を正しく理解していないと、採用の努力が無駄になることがある。 AI時代になり、ますます「働きがい」を誤解して使ってはならないと強く感じるようになった。特に採用活動の責任者、新入社員を引き受ける職場の責任者は、まだ働いていない若者を勘違いさせないためにも、この会社の失敗から学んでもらいたいと思う』、興味深そうだ。
・『新入社員の半分が1カ月で退職!大失敗の原因  新入社員8人のうち4人が、たった1カ月で辞めた会社がある。 なぜ、そんなことが起こったのか? 背後には、将来の幹部候補を求める社長の強い要望があった。 通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ。入社したあと、採用した新入社員8人と食事をしたとき、「8人みんな優秀だ。1年間がんばったかいがあった」と誇らしげに語っていた。 しかし、そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した。例年の5倍もの採用コストをかけてなぜ辞めてしまったのか。いったい何が原因でここまでの大失敗となったのだろうか? 採用責任者は、新入社員が辞めた理由を調査するために、配属された職場の上長やベテラン社員にヒアリングを行った。 すると、どの職場でも見解は同じだった。 「今年の新入社員は、ストレス耐性が低い」 「やるべきことをやる前から、働きがいとか、心理的安全性とか、イチイチ言ってくる」) どうやら現場で新入社員たちは、「弁が立つが、やることをやらない」とレッテルを貼られたようだった。 とりわけ採用責任者が着目したのは「働きがい」である。 辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない。 美味しいイチゴが使われたショートケーキだと言われたから買ったのに、肝心のイチゴがあまり美味しくなかった、ということなのだろう』、「通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ・・・そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した」、「辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない」、なるほど。
・『「働きがい」の誤解が新入社員の退職を招く  例年になく優秀だと謳われた新入社員たちは、なぜ1カ月もせずに半分も辞めてしまったのか。その原因は「働きがい」にあると考えた。 実は「働きがい」という言葉は、リスクが高い。 なぜなら言葉の意味を、多くの人が誤解しているからだ。これは昨今、同じように使われるようになった「心理的安全性」にも言えることだ。 本来の意味をわからずに使用すると、大きな認識のズレとなり、トラブルを招くことになる。 実際に、社長や採用責任者、新入社員の先輩や上司も含め、ヒアリングしてみたところ、「働きがい」の真の意味を理解しているとは言いがたい状況だった。 「働きがい」と似た言葉に「やりがい」という言葉がある。 「やりがい」とは、困難を乗り越えて成果を出し、同僚やお客様から感謝されてはじめて「やったかいがあった」と思えるものだ。 「今回のイベントの集客、大変だったけど、会場が満員になって大盛況だったな」「はい。最初はすごく苦労しましたが、やったかいがありました」 このように使うものだ。 一方、「働きがい」は「やりがい」よりも抽象度が高い。 先ほどの例文の受け答えで、「はい。最初はすごく苦労しましたが、働いたかいがありました」とは、通常使わない。「やる」と「働く」とでは、対象範囲が違いすぎるからだ。例文として書くとするなら、次のようになる。 「入社して5年経ったけど、どう?働きがいのある職場かな?」 「そうですね。入社して2年間は苦労の連続でしたが、どんなに大変なときも助けてくれる先輩がいますし、課長は厳しいですけど、おかげで随分と成長できましたし、働きがいのある職場だと思っています」 「働きがい」は、数年働いてからでないと味わえないものだと筆者は考えている。) 今後、働きがいを感じることがますます難しくなる時代が到来する。その要因の一つとしてAIの進化が挙げられる。 まず、近年のデジタルシフトにより、単純な知的労働は徐々に人から仕事を奪っている。筆者のクライアント企業にもRPAで人材不足の問題を解消した例はたくさんある。 イベント後のアンケート集計や、顧客の属性に合わせたフォローメール作成など、かつて新入社員に任せられていたような仕事は、このように高性能なシステムやロボットが担当するようになった。 ▽任せられる仕事は、お客様対応しか残っていない(AIは、さらに難易度の高い仕事もこなす。 例えば顧客データベースからお客様の行動分析をし、今後の売り上げ予測まで瞬時に立てられるようになる。 「とりあえず、分析しておいて」と、上司から頼まれる仕事まで減っていくのだ。 分析結果の検証には経験が必要であるし、その結果から判断するには実績とセンスが求められる。新入社員どころか、経験の浅い社員に頼む仕事も奪われていく。 この会社でも、新入社員に任せられる仕事といったら、お客様対応しか残っていなかった。 「とりあえず、200社の担当者に電話して、このリサーチをお願い」 「とりあえず、先日のイベントの来場者に連絡してアポイントをとって」 マーケティングオートメーションでお客様の動きをトレースして、当社商品に興味がありそうな動きをするお客様には、タイミングよく電話をかける。 お客様とのやり取りは音声認識機能で瞬時にテキスト化され、上長に報告される。自分で報告書を書く必要もないため、ひたすらお客様とのコミュニケーションに時間を費やす。 お客様の価値観は多様化しており、何が正解かはわからない時代だ。だからベテラン社員でさえつねに手探り。勝利の方程式などないものだから、試行錯誤の連続だ。 「新入社員は、何をやったらいいですか?と聞いてくるが、事務作業などないし、お客様対応といってもマニュアルなんかない」 これは、新入社員を受け入れた職場責任者の言葉だ。 「マニュアルを見せてくださいと言われたけど、マニュアルに書けるような作業は、だいたいRPAに任せている」 現場の責任者やベテラン社員は、口をそろえてこう言った。 「将来の幹部候補を雇うんだったら、もっとベテランを採用してほしい。私たちだって必死に勉強している。教えることなんてない」) 問題は、・社長をはじめとする採用責任者 ・新入社員をあずかる現場 ・新入社員 それぞれに「認識のズレ」があったことだ。 社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている。 これは前述した通り、イチゴの美味しいショートケーキの例えに通じる。広告でイチゴの美味しいショートケーキをアピールしておきながら、現場で働く人たちはそのイチゴがそれほど美味しいという認識を持っていないのだ。この場合、お客様の期待とズレが生じる。 近年、働きがいや心理的安全性、エンゲージメント、ワークライフバランス、クオリティーオブライフといった新語がよく報道で使われる。 しかしこれらのワードに関心が高いのは、就職や転職活動を行っている人たち、そして経営者や役員に限られる。いっぽう現場の人たちは、意識している余裕がない。 劇的な環境変化に伴い、成果の出し方が変わっている。デジタル対応やリスキリングなど、身につけるべき知識やスキルが多すぎて、部下育成している場合ではない。 そんな状況で、 「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう』、「社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている」、「そんな状況で、「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう」、なるほど。
・『ポイントは「Must」「Can」「Will」  それでは、どうしたらいいのか。 私は15年以上も前から、新入社員研修で一貫して言い続けているフレーズがある。それが、1.「Must」やるべきこと 2.「Can」 やれること 3.「Will」 やりたいこと である。この順番が大事だ。 やるべきこと(マスト)をやり続けることで、やれること(キャン)が増え、やりたいこと(ウィル)が見つかる可能性がある、という話だ。 自分の先輩や上司でさえ先が読めない時代が到来している。だからこそ、新入社員はまずは厳しい現実を受け入れる必要がある。 給料をもらうということはプロフェッショナルになるということだ。ストレスがかかっても、やるべきことをやっていれば、やれることが増えてくるものだ。 そうすることで成果が出て、多くの人から感謝され、働きがいを感じるもの。現場に行ったら、やりたくないこと、苦手なことも任されるかもしれない。だが、それは誰でも一緒である。 サポートしていくから、しっかりとやっていこうと、採用活動の最中から丁寧に伝えるべきだ。きれいごとばかり言っていると、こんなはずじゃなかったと言い、辞めてしまう新入社員が続出してしまう。 繰り返すが、ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから』、「ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから」、確かにその通りだ。

次に、8月14日付けPRESIDENT Online「「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72519
・『「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実(高橋 弘樹,日経テレ東大学/Webオリジナル(外部転載)) 『なんで会社辞めたんですか?』 #3 「2年間で800万円貯まった」「新人記者は黒塗りのハイヤーでサツ回り」…それでも朝日新聞記者をやめて探検家に転職した角幡唯介(47)の超痛快人生〉から続く 「これもう100回ぐらい、そうじゃないって説明したんですけど、みんなもう面白おかしく言ってるだけです」 元パソナ会長の竹中平蔵氏が辟易する「ワイドショー的な議論」とはいったい? 100万人超え登録YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」(※2023年5月末で動画視聴終了)の人気トーク番組を書籍化した『なんで会社辞めたんですか?』(編著:高橋弘樹、日経テレ東大学/発行:東京ニュース通信社/発売:講談社)より一部抜粋してお届けする』、興味深そうだ。
・『竹中平蔵はなぜパソナ会長を退いたのか  高橋弘樹(以下、高橋) 竹中さんはパソナグループの会長を2022年8月にお辞めになられたということで、ささやかですが、ご卒業おめでとうございますの花束をどうぞ! 竹中平蔵(以下、竹中) ありがとうございます。 高橋 何年間勤められたんですか? 竹中 13年間ですね。 高橋 会長職としては、結構長いですね。今回、「なんで会社辞めたんですか?」というテーマでいろいろお聞きしていきたいんですけど、その前にまずはパソナでどういうことをなさっていたのかを教えてください。 竹中 最初、南部靖之代表から「パソナで会長をやっていただけませんか」と言われた時、「私は公共事業を減らしたり、郵政を民営化したり、一部の既得権益者にすごく恨まれています。そんな私が会長をやると、謂れのない批判が会社にいって、パソナにご迷惑がかかりますよ」と申し上げたんです。 南部さんは非常に立派な経営者ですから、「そんなの構わないから、一緒に労働市場を良くしていきましょう」とおっしゃいました。その言葉に感銘を受けてお受けしました。私はこれまでに政府や大学関係の仕事も経験しましたから、取締役会に出席して、経済や社会の動向について提案を行いました。 高橋 会社の具体的な事業というよりは、もう少しマクロな政府の方向性とかについて議論していったという感じですか? 竹中 いえ、会社自体の方向性もそうですし、今、社会はこんな方向に動いてるから、その方向に合わせて事業もこうしていったらどうかとか、そういうことですね。 高橋 具体的にはどんなことされていらしたんですか?) 竹中 私は、ビジネスの現場に詳しいわけではないですけれど、これからはより一層、デジタル化を進めなければいけません。今までは人と人とが対面してやっていたことをいかにデジタル化していくか。それが一番大きかったかもしれませんね。 それと、今後、労働市場はどんな風に変わっていくだろうかということで、労働市場の変化に合わせていろんなことをやらなければいけないと。基本的には「同一労働同一賃金」――これを実現できるかどうかですよね。日本の労働市場というのは明らかに二重構造になっているわけです。 はっきり言いますと、正社員は特権を持っていて、その特権は1979年の東洋酸素(現・日本酸素)事件における東京高等裁判所の判例によって守られていて、正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません。同一労働条件を目指す法律もできてきたわけで、そこが大きな変化の方向です』、「正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません」、なるほど。
・『「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」  高橋 竹中さんがされてきた派遣の拡大とかですね。 竹中 いえ、そこが間違ってるんですよ。厚生労働省がやったんです。私は1990年くらいからずっとやってるし、小泉(純一郎)内閣の10年以上前からやっているし、現実にそういう働き方をしたいという人が多い。ついでに言うと、派遣は全労働者のわずか2%です。 ワイドショー的な議論だと、「派遣は悪いことである、それをやったのが竹中である」みたいなことを平気で言いますけども。これもう100回ぐらい、そうじゃないって説明したんですけど、みんなもう面白おかしく言ってるだけです。 もう一つ、やはり地方創生はすごく重要なテーマになってきています。ご存じのように、パソナは2020年9月から本社機能の一部を淡路島に置いていますけれど、そうした地方創生の基本的な方向について意見を言っていました』、「派遣の拡大」は「厚生労働省がやったんです」、と否定する割に、根拠を示してない。やはり「厚生労働省がやったんです」いうのは、あり得ない話で、罪を「厚生労働省」になすりつけているようだ。
・『会長を辞めたのは企業の新陳代謝を促すため  高橋 そこで番組のテーマですけれど、どうしてパソナを辞められたんですか? 竹中 タイミング的に最初は5年だけと言ってたんです。でも、5年やったときに、もうちょっと頑張って10年やろうかと。それで10年やって68歳でしたから、じゃあキリのいいところで70歳まであと2年ということで12年になり、それが13年になって、ようやく区切りがつけられたということです。 理由としては、企業も新陳代謝が大事ですから、次の若い人が育ってきてほしいというのが一つあります。私のように外から入る人間は、やはり新陳代謝しなければいけないと思っています。たとえば社外取締役の場合、一定期間長くいると独立した社外取締役と認められなくなってきます。だから、新陳代謝することに意味があって、他の取締役と入れ替わって初めてその企業の活力が出てくると思うんです。 今回、コロナ禍の中でようやく業績も回復してきて、それなりに足腰も強くなった。だから若い人たちに引き継げると思って踏み切りました。 高橋 普通の人は、一度会長をやると辞めたくなくなるじゃないですか? なのにサクッと辞められたから、すごいなと思いました。 竹中 私はね、若い頃からたくさんの老害を見てきたんですよ。老害って本人は分かってないと思うんですけれどね。人間は年齢とともにいろいろと経験値が上がって、どんどん能力が備わってきます。でも、その一方で硬直性も出てきて、別の意味で能力が下がってくるところがありますよね。自分ではそれは気づきにくいんですよ』、「老害」を避けるため、会長職を辞めたというが、13年は十分に長く、「老害」そのものだ。
・『“老害”になりたくないから議員も早期辞職した  竹中 自分1人でできる仕事はいくつになっても続ければいいと思うんです。たとえば芸術家とか、音楽家とか、作家とか、そういう1人でやる仕事はいいんですけれど、組織をまとめてたくさんの人を巻き込むような仕事は、一定の年齢になったら退くべきだと思います。自分はまだやれると思っていても、周囲から見ると老害だということになる。それをね、やはり自分で早めに判断しなきゃいけないと考えていたんです。 もう70歳を超えましたから、早めに判断しようと。それが今回の機会になったわけです。ただし、その一方で成田悠輔(経済学者、イェール大学助教授)さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別ですから、“女性だからダメだ”というのと同じ論理です。人によってすごく差が出ますからね。) 高橋 元気か、元気じゃないかとか。 竹中 能力が落ちた分、よく勉強しているか、していないかでその差が出る。そこは組織のトップになった人ならば自分で判断しなきゃダメです。政治家も同じで、「出処進退は自分で決める」って小泉さんが言ってたでしょ。私も同感で、これまでたくさんの老害を見てきたから、早めに判断したいとずっと考えていました』、「成田悠輔・・・さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別」、その通りだ。唯一の同意点だ。
・『「政治の世界は老害が多い」  高橋 参議院議員も任期の途中でお辞めになりましたよね。あのときはどうして2年で辞められたんですか? 竹中 政治の世界というのはやはり怖いと思うんです、権力があるから。それともう一つはたくさん貸し借りがある。政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思ったんです。 もともと私は、職業政治家になりたいと思ってなったわけではありません。小泉さんという非常に異色の総理に「一緒に手伝ってくれ」と言われたので、サッカーのレンタル選手みたいな立場で政治の世界に行きました。だから、一つの目的が終わったら元の学者に戻るというだけのことです。 高橋 でもその決断はなかなか難しいですよね? まだやれると思ってしまうから。 竹中 だから老害が多いんだと思います。私は、若い人も育ってきているし、自分で老害は避けたいと思ってましたから、ハッピーなタイミングだったと思いますよ』、「参議院議員も任期の途中で2年で辞められた」のは、「政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思った」、これはいさぎ良いが、政治家でいることのリスクを避けるためだった のかも知れない。
タグ:東洋経済オンライン (その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』) 働き方改革 横山 信弘氏による「たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?」 興味深そうだ。 「通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ・・・そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した」、「辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない」、なるほど。 「社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている」、 「そんな状況で、「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう」、なるほど。 「ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから」、確かにその通りだ。 PRESIDENT ONLINE 「「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』」 興味深そうだ 「正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません」、なるほど。 「派遣の拡大」は「厚生労働省がやったんです」、と否定する割に、根拠を示してない。やはり「厚生労働省がやったんです」いうのは、あり得ない話で、罪を「厚生労働省」になすりつけているようだ。 「老害」を避けるため、会長職を辞めたというが、13年は十分に長く、「老害」そのものだ。 「成田悠輔・・・さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別」、その通りだ。唯一の同意点だ。 「参議院議員も任期の途中で2年で辞められた」のは、「政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思った」、これはいさぎ良いが、政治家でいることのリスクを避けるためだった のかも知れない。
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米中経済戦争(その18)(米当局 NYで中国「秘密警察」運営疑いの男2人逮捕 反体制派を弾圧する活動行う?、キッシンジャー訪中が示唆するのは アメリカ「世界覇権」終わりの始まりだ 50年前とは何もかも違う) [外交]

米中経済戦争については、昨年6月17日に取上げた。今日は、(その18)(米当局 NYで中国「秘密警察」運営疑いの男2人逮捕 反体制派を弾圧する活動行う?、キッシンジャー訪中が示唆するのは アメリカ「世界覇権」終わりの始まりだ 50年前とは何もかも違う)である。

先ずは、本年4月18日付けNewsweek日本版「米当局、NYで中国「秘密警察」運営疑いの男2人逮捕 反体制派を弾圧する活動行う?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/04/ny2.php
・『米当局は17日、ニューヨーク市マンハッタンのチャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営していた疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。 2人は米当局に知らせることなく中国政府の代わりに活動することを共謀した罪のほか、司法妨害の罪に問われている。17日にブルックリンの連邦裁判所に初出廷した後、保釈された。 スペインの人権団体は昨年、中国がニューヨークなどに在外拠点を設け、中国警察と違法に連携して亡命者に中国への帰国を迫っていたとする報告書をまとめた。 米司法省は、中国やイランなど敵対国が米在住の反体制派を脅迫するため「国境をまたぐ弾圧」を行っているとして調査を拡大している。 ブルックリンのブレオン・ピース連邦検事は「この国に逃れてきた民主化活動家に対する中国政府の迫害を容認することはできない」と記者団に述べた。 検察当局によると、男2人はともに米国籍で、中国の福建省出身者向けの懇親会開催などを手掛ける非営利団体を率いている。2018年には男1人が中国から亡命者とみられる人物を説得し帰国させようとしたほか、22年には秘密警察署の開設を手伝い、中国政府からカリフォルニア州に住む民主化運動活動家とされる個人の居場所を特定するよう依頼されたという。 また2人は米連邦捜査局(FBI)に対し、中国政府関係者との通信記録を削除したことを認めたという。秘密警察署は22年秋に閉鎖されたとしている。 検察当局はこの日、米テクノロジープラットフォームでの集会を妨害するなどインターネット上で反体制派に嫌がらせをした疑いで、中国の当局者34人を訴追したことも明らかにした。 さらに、天安門事件に関するビデオ集会を妨害したとして2020年に中国在住のズーム・ビデオ・コミュニケーションズ元幹部を起訴した事件を巡り、新たに中国政府当局者8人を被告に追加した。 在米中国大使館の劉鵬宇報道官は「『国境をまたぐ弾圧』を口実に中国の市民を起訴することで、米国側は捏造した罪状に基づくロングアーム(管轄外への)司法権を行使している。これは全くの政治的ごまかしであり、中国のイメージを傷つけることが目的だ」と非難した』、「チャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営していた疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。 2人は米当局に知らせることなく中国政府の代わりに活動することを共謀した罪のほか、司法妨害の罪に問われている」、「スペインの人権団体は昨年、中国がニューヨークなどに在外拠点を設け、中国警察と違法に連携して亡命者に中国への帰国を迫っていたとする報告書をまとめた」、「ブルックリンのブレオン・ピース連邦検事は「この国に逃れてきた民主化活動家に対する中国政府の迫害を容認することはできない」と記者団に述べた。 検察当局によると、男2人はともに米国籍で、中国の福建省出身者向けの懇親会開催などを手掛ける非営利団体を率いている。2018年には男1人が中国から亡命者とみられる人物を説得し帰国させようとしたほか、22年には秘密警察署の開設を手伝い、中国政府からカリフォルニア州に住む民主化運動活動家とされる個人の居場所を特定するよう依頼されたという。 また2人は米連邦捜査局(FBI)に対し、中国政府関係者との通信記録を削除したことを認めたという。秘密警察署は22年秋に閉鎖されたとしている」、「中国」が米国の司法権を犯して、独自に警察活動をするとはとんでもないことだ。さきほど観たNHKのニュース7で、あるNGOの調査によれば、中国が「秘密警察」活動をしている国は日本も含め100カ国以上になるようだ。

次に、7月26日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「キッシンジャー訪中が示唆するのは、アメリカ「世界覇権」終わりの始まりだ 50年前とは何もかも違う」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/113794?imp=0
・『米国きっての親中派とされ、米中国交正常化の立役者でもあったキッシンジャー元国務長官が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。バイデン政権は中国の封じ込め策を強化しているはずだったが、本格的な米中分断を恐れた経済界首脳が相次いで中国を訪問。 その後、ブリンケン国務長官やイエレン財務長官など主要閣僚も続々と訪中するなど、チグハグな対応となっている。挙げ句の果てに親中派の重鎮であるキッシンジャー氏まで訪中したことで、米国の焦りが顕在化してしまった格好だ』、「キッシンジャー氏まで訪中」とは初めて知ったが、まだ生きていたのも驚きだ。
・『デカップリングに焦る米国  年配の読者の方であればキッシンジャー氏について説明は不要だろうが、若い世代の読者にとっては、もはや教科書で名前を見る人物になっているかもしれない。 1971年7月、ニクソン大統領の補佐官であったキッシンジャー氏は極秘裏に中国を訪問し、米中国交正常化の道筋を付けた。以後、50年にわたって米国と中国は、利害の対立こそあれパートナーというのが基本的な関係だったが、こうした米中協調路線のきっかけを作ったのがキッシンジャー氏(と、その後に続くニクソン大統領の訪中)である。 当時の米国は、国民党関係者を中心とする親台湾の政治勢力(いわゆるチャイナロビー)が圧倒的な力を持っており、中国と国交を結ぶなど言語道断であった。通常の手法で中国を訪問することは不可能に近いと判断したキッシンジャー氏は、国務省(日本の外務省に相当)には一切知らせず、密かに中国に入国したとされる。 国交正常化から50年が経過し、トランプ政権が中国からの輸入に高関税をかけたことで、両国は事実上の貿易戦争に突入した。民主党のバイデン政権は対中強硬路線をさらに進め、人的交流の制限も含む、強力な輸出規制を発動。中国もこれに対抗したことから、両国の貿易は急激に停滞している。 米国の輸入における中国のシェアは2018年には20%を超えていたが、米中貿易戦争後は中国のシェアが急低下し、2022年には16%まで落ち込んでいる。この結果、多くの専門家が米国と中国の分断(デカップリング)が進むと考えるようになった。 こうした状況に焦りを感じたのが、中国市場を必要としている米国の産業界である。) 米国の産業界は政府に対して慎重な対応を求めるようになり、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「(米国政府は)米中のデカップリングを求めているわけではない」として、沈静化を図ったが、ほとんど効果はなく、それどころか、しびれを切らした産業界は続々と中国詣でを開始。 2023年5月にはテスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏が、6月にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が相次いで訪中。ゲイツ氏に至っては習氏との直接会談を行った。 その後、ブリンケン国務長官やイエレン財務長官など政府高官までもが訪中したことで、政財界がこぞって中国詣でを繰り返す状況となった。 バイデン政権は中国に対する譲歩ではなく、対話の継続が目的と苦しい弁明をしているが、米国を出し抜き、習氏と直接会談を行ったフランスの動きに焦りを感じ、中国にスリ寄ったのは明からだ』、「バイデン政権は中国に対する譲歩ではなく、対話の継続が目的と苦しい弁明をしているが、米国を出し抜き、習氏と直接会談を行ったフランスの動きに焦りを感じ、中国にスリ寄ったのは明からだ」、その通りだ。
・『キッシンジャー外交がもたらしたドル覇権  キッシンジャー氏は、「両国は対抗ではなく、対等な付き合いが必要」と、解釈次第ではバイデン政権の対中方針を否定する発言も行ったとされる。 氏はすでに民間人であり、高い知名度ほどには政界への影響力はないという冷めた見方もある。だが、米中関係のキーマンであり、米国きっての親中派として知られる人物がわざわざ中国を訪問し、習氏と直接会談したことの影響は大きい。 奇しくも今年はオイルショックからちょうど50年という節目の年であり、国際社会は再びオイルショックの危機に見舞われている。産油国の強引な原油価格引き上げに対して、外交手段の限りを尽くして交渉を行い、現在のドル覇権を確立したのもキッシンジャー氏である。 50年の時間を経て、米中協調路線が瓦解寸前となり、同じタイミングでオイルショックが発生し、キッシンジャー氏が再び訪中したことは単なる偶然ではない。背景には、弱体化しつつある米国のドル覇権という厳しい現実があると考えるべきだろう。ではオイルショックと米中国交正常化、そしてドル覇権にはどのような関係があるのだろうか。) 1973年、サウジアラビアをはじめとする中東の産油国は突如、原油価格を引き上げ、世界経済はパニックに陥った。ニクソン政権はその2年前に金とドルの兌換停止(いわゆるニクソンショック)を実施しており、ドルは大幅に値を下げていた。ここにオイルショックが加わったことで、米国は深厚なインフレという最悪の事態に対処せざるを得なくなった。 一連の状態からドルを守るためにニクソン政権が選択したのは、米ドルと石油取引のリンクを強化するとともに、垂れ流されたドルを米国内に還流させ、ドルの暴落を防ぐという戦略だった。 もともと中東の石油は米国の石油メジャーと呼ばれる企業が独占的に支配しており、石油取引は慣例的に米ドルで行われるとともに、産油国の主な資産もドル建てだった。産油国がいきなり原油価格を引き上げた背景には、第4次中東戦争への反発という面があるものの、一方でニクソンショックに伴うドル建て資産の目減りを防ぐという実利上の目的もあった。 キシジンジャー氏はニクソン氏の意を受け中東各国を歴訪。一定の石油価格上昇を米国が受け入れる代わりに、石油取引を引き続き米ドルで行うことを確約させるとともに、石油の販売で得たドルを米国の市場に投資させ、米国はバラ撒いたドルを回収するスキームを確立した。 これによって米国はドルを過剰に発行して輸入を拡大しても、最終的には自国に戻ってくるので、ドルの価値毀損を防げるようになった。米国が膨大な貿易赤字を抱えていてもドル不安が発生しないことの背景には、基軸通貨国としての一連の仕組みが関係している』、「米国が膨大な貿易赤字を抱えていてもドル不安が発生しないことの背景には、基軸通貨国としての一連の仕組みが関係している」、その通りだ。
・『米国の覇権は弱体化しつつある  キッシンジャー氏は、前後して米国の穀物輸出も外交戦略上の武器にするという戦略に打って出た。折しも旧ソ連が食糧危機に陥り、自給を原則としてきた小麦が不足するという前代未聞の事態が発生。米国の穀物商社カーギルは、旧ソ連に対して小麦を緊急輸出し、これによってカーギルは穀物市場において圧倒的な地位を確立したとされる。 米国の穀物輸出が外交上の武器になることがハッキリしたことから、ニクソン政権は'72年、米ソ穀物協定を締結。大量の穀物が旧ソ連や中国に輸出された。当然のことながら穀物の取引もドル建てで行われる。一連の出来事をきっかけに、石油と同様、食糧輸出も世界に溢れ返ったドルを米国内に還流させる役割を果たすようになる。) 一連の取り組みが功を奏し、米国は基軸通貨国としていくらでもドルを発行することが可能となり、ほぼ無尽蔵に製品を輸入できるようになった。そして米国の旺盛な輸入に世界の工場として応えたのが中国であり、中国の大国化と米国のドル覇権はセットで考えるべきだろう。 つまり、米国はニクソンショックによるドル暴落と、オイルショックという極めて危機的な状況に直面したにもかかわらず、キッシンジャー氏の巧みな外交戦略によってピンチを逆手に取り、強大なドル覇権を確立できたことになる。同時に米国は中国の大国化を手助けしたとも解釈できる。 オイルショックから50年が経過し、中国は米国と覇権を争うほどに成長し、米国と中国は再び対立に向けて動き出そうとしている。米国の産業界は中国市場を失うのではないかと焦りを感じており、米国政府は、今回もキッシンジャー氏のような巧みな外交で、事態を切り抜けたいと考えているのかもしれない。 100歳を超えてもキッシンジャーは元気な様子だったが、残念なことに当時と今とでは米国が置かれた状況はあまりにも違っている。当時の中国は新興国であり圧倒的に立場が弱かった。今後の成長に米国の支援が必要なことは明白であり、中国の側にも妥協の余地が大きかったといえるだろう。 だが今回は、米国が妥協しなければならない部分が多く、当時と比較すると米国は圧倒的に不利な状況にある。何より米国はドル覇権をさらに強化する新しい武器を持っていない。 キッシンジャー氏の訪中がバイデン政権の外交にどれほどの影響を及ぼすのか現時点では何とも言えない。だが、今回、米国が見せた外交上のドタバタに関して、米国が築いてきた世界覇権の終わりの始まりを示唆していると感じた関係者は多いのではないだろうか』、「米国はニクソンショックによるドル暴落と、オイルショックという極めて危機的な状況に直面したにもかかわらず、キッシンジャー氏の巧みな外交戦略によってピンチを逆手に取り、強大なドル覇権を確立できたことになる。同時に米国は中国の大国化を手助けしたとも解釈できる」、「キッシンジャー氏の訪中がバイデン政権の外交にどれほどの影響を及ぼすのか現時点では何とも言えない。だが、今回、米国が見せた外交上のドタバタに関して、米国が築いてきた世界覇権の終わりの始まりを示唆していると感じた関係者は多いのではないだろうか」、なるほど。
タグ:Newsweek日本版「米当局、NYで中国「秘密警察」運営疑いの男2人逮捕 反体制派を弾圧する活動行う?」 (その18)(米当局 NYで中国「秘密警察」運営疑いの男2人逮捕 反体制派を弾圧する活動行う?、キッシンジャー訪中が示唆するのは アメリカ「世界覇権」終わりの始まりだ 50年前とは何もかも違う) 米中経済戦争 「チャイナタウンで中国の「秘密警察署」を運営していた疑いで、同市在住の男2人を逮捕した。 2人は米当局に知らせることなく中国政府の代わりに活動することを共謀した罪のほか、司法妨害の罪に問われている」、「スペインの人権団体は昨年、中国がニューヨークなどに在外拠点を設け、中国警察と違法に連携して亡命者に中国への帰国を迫っていたとする報告書をまとめた」、 「ブルックリンのブレオン・ピース連邦検事は「この国に逃れてきた民主化活動家に対する中国政府の迫害を容認することはできない」と記者団に述べた。 検察当局によると、男2人はともに米国籍で、中国の福建省出身者向けの懇親会開催などを手掛ける非営利団体を率いている。2018年には男1人が中国から亡命者とみられる人物を説得し帰国させようとしたほか、22年には秘密警察署の開設を手伝い、中国政府からカリフォルニア州に住む民主化運動活動家とされる個人の居場所を特定するよう依頼されたという。 また2人は米連邦捜査局(FBI)に対し、中国政府関係者との通信記録を削除したことを認めたという。秘密警察署は22年秋に閉鎖されたとしている」、「中国」が米国の司法権を犯して、独自に警察活動をするとはとんでもないことだ。さきほど観たNHKの番組で、あるNGOの調査によれば、中国が「秘密警察」活動をしている国は日本も含め100カ国以上になるようだ。 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「キッシンジャー訪中が示唆するのは、アメリカ「世界覇権」終わりの始まりだ 50年前とは何もかも違う」 「キッシンジャー氏まで訪中」とは初めて知ったが、まだ生きていたのも驚きだ。 「バイデン政権は中国に対する譲歩ではなく、対話の継続が目的と苦しい弁明をしているが、米国を出し抜き、習氏と直接会談を行ったフランスの動きに焦りを感じ、中国にスリ寄ったのは明からだ」、その通りだ。 「米国が膨大な貿易赤字を抱えていてもドル不安が発生しないことの背景には、基軸通貨国としての一連の仕組みが関係している」、その通りだ。 「米国はニクソンショックによるドル暴落と、オイルショックという極めて危機的な状況に直面したにもかかわらず、キッシンジャー氏の巧みな外交戦略によってピンチを逆手に取り、強大なドル覇権を確立できたことになる。同時に米国は中国の大国化を手助けしたとも解釈できる」、 「キッシンジャー氏の訪中がバイデン政権の外交にどれほどの影響を及ぼすのか現時点では何とも言えない。だが、今回、米国が見せた外交上のドタバタに関して、米国が築いてきた世界覇権の終わりの始まりを示唆していると感じた関係者は多いのではないだろうか」、なるほど。
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金融業界(その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは) [金融]

金融業界については、本年6月12日に取上げた。今日は、(その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは)である。

先ずは、本年6月16日付けエコノミストOnline「ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20230704/se1/00m/020/060000c
・『新型コロナウイルス禍がようやく収束に向かい、経済活動に明るさが見え始めた矢先。銀行業界を大きなショックが襲っている。外国債券を中心とした保有債券に多額の含み損が生じているのだ。 「有価証券運用について、もう少し、うまくやる余地はあったと思うのですが……」。地銀などに資産運用を助言する和キャピタル(東京都)の伊藤彰一専務取締役は首をかしげる。 「外債ショック」。こうした表現が当てはまるほど、2023年3月期の銀行決算では、保有する外債の価格が下落し、含み損を抱えたり、損失処理をする内容が目立った。各社の決算資料(単体)を分析すると、外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円▽横浜銀行(神奈川県)671億円▽第四北越銀行(新潟県)551億円▽南都銀行(奈良県)450億円▽肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった。 背景には、23年3月期に米国など海外で進んだ急激な金利上昇の影響がある。金利が上昇すると債券価格は下落するため、外債を保有していた銀行は含み損を抱えることになる。多くの金融機関は、これまでの資産運用で米国債について、比較的安定した資産として保有額を増やしてきていたが、収益源を金利上昇が直撃した。 なぜ、国内の銀行はそれほど外債を持っていたのか。要因の一つには、本業の顧客向けサービスで利益が上げられなくなっている現状がある。顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ(図)』、「外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円、横浜銀行(神奈川県)671億円、第四北越銀行(新潟県)551億円、南都銀行(奈良県)450億円、肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった」、「顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ」、なるほど。
・『マイナス金利で投資加速  有価証券運用の内訳も徐々に変化した。銀行経営に詳しい杉山敏啓・江戸川大学教授は「外債の比率は日銀の黒田東彦・前総裁の下で始まった異次元緩和や、マイナス金利政策開始でさらに増えた」と指摘する。地銀が保有する有価証券残高のうち、外債を含む「その他の証券」の割合は、11年度には00年度以降で最少の11%だったが、徐々に増え、足元の23年3月期では全体の約3分の1近い32%まで膨張していた。 日本国債の利回りが低下する中、少しでも高いリターンを求めて、外債などのリスク証券に活路を求めていった結果だった。しかし、外債投資は、日本国債をはじめとする円建て債券のように、含み損を抱えていても満期まで保有すれば額面で償還される(全額が払い戻される)ような単純な性質の投資ではない。米国債に投資するなら、米ドルを市場から調達する必要があることが話をさらに複雑にする。 保有する円貨を米ドルに両替して米国債に投資するのでは、為替の変動リスクをもろに受けてしまう。そこで、特に地銀では為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ。 各行の23年3月期決算では「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ」、「「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行」にとって「悪循環」とは悲劇的だ。
・『ぜい弱すぎる運用体制  一方で、日銀総裁が黒田氏から植田和男氏に代わった後も、銀行収益の源泉となる国内の金利はなかなか上昇する気配を見せない。日銀が昨年12月、政策目標として誘導する10年物国債金利(長期金利)の変動幅の上限を従来の「0.25%程度」から「0.5%程度」に引き上げた際には、市場は今後も金利上昇が続くと予想し、銀行株の急騰につながった。 しかし、今年4月に就任した植田氏は大規模な金融緩和について「継続する」と明言し続け、関係者の期待をしぼませた。それでなくとも、大半の銀行が上場する東京証券取引所は、PBR(株価純資産倍率)で1倍割れの企業に対して経営の改善を求めており、PBR1倍割れが大半の銀行にとって風当たりは強まる一方。ある証券アナリストは「銀行収益の鍵を握る金利上昇がなければ、PBR1倍の実現も難しい」とも指摘する。 期待された国内の金利上昇もすぐには見込めない以上、今後の銀行にとって有価証券運用の巧拙が大きなカギを握る。運用人員が数百人に上るメガバンクに対し、小規模な地銀では10人にも満たない担当者で運用するところもある。和キャピタルの伊藤氏は「有価証券運用に携わる人員が少ない地銀は、特に運用力を磨く必要がある」と指摘する。 伊藤氏は一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない。ある投資ファンド幹部は「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する。 銀行が外債運用で体力をすり減らせば、地域に資金を融通する余力もなくなり、コロナ禍から明けた地域経済の回復に水を差しかねない。逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える』、「一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない・・・「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する」、「逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える」、その通りだろう。

次に、7月15日付け日刊ゲンダイ「預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326056
・『ドラマ「半沢直樹」さながらの銀行トップの不正が金融界の話題となっている。日本カストディ銀行は、昨年12月に退任した元取締役について、社内調査で不正があったと6月9日に公表した。リリースでは名前は伏せられているが、この元取締役とは前社長の田中嘉一氏であることが明らかになっている。 同銀行は、三井住友トラストHD、みずほFG、りそな銀行などが出資する資産管理信託銀行で、生保や運用会社などの機関投資家が運用する有価証券の決済や保管・データ管理等を担当しており、その預かり資産は652兆円にも及ぶ。生保などを介しているものの、実質的には国民の資産である。事態を重くみた金融庁は銀行法24条に基づいて報告徴求命令を出した。不正の詳細や原因分析、再発防止策、経営管理態勢などについて、8月末を期限に報告するよう求めている。 田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという。 「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者) また、「報告書には透かしが入り、外部に流出した場合、誰から漏れたか分かるようになっており、外部への流出をチェックする委員会も設置されている」(関係者)という念の入れようだ。 田中氏は、「不正は行っていない」と反論しており、調査委員会の聴取には応じず、資料の提出も拒んでいる。だが、日本カストディ銀行は田中氏について、「法律上の対応を適切に講じていく方針であり、刑事上の扱いにつきましても、現在、捜査機関に相談を実施している」として、刑事訴追も視野に入れている。 まさに身から出たサビと言わざるを得ない』、「田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという』、「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者)、「調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表」、同行のコーポレートスローガンは、The Reliable Bank、実に皮肉である。株主は、三井住友トラストHD33.3%、みずほFG27.0%、りそな銀行16.7%、第一生命8.0%、朝日生命5.0%、明治安田生命4.5%、かんぽ生命3.5%、富国生命2.0%となっているので、少なくとも第二位、第三位の株主には気を遣う必要がある筈だ。今回の不正がどのように他の株主の監視の目を逃れたのかは不明だ。いずれにしても三井住友トラストHDは、筆頭株主として責任をもって全貌を明らかにする必要があるだろう。
タグ:「為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。 金融業界 (その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは) エコノミストOnline「ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)」 「外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円、横浜銀行(神奈川県)671億円、第四北越銀行(新潟県)551億円、南都銀行(奈良県)450億円、肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった」、 「顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ」、なるほど。 すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ」、「「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行」にとって「 「一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない・・・「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する」、「逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える」、その通りだろう。 日刊ゲンダイ「預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは」 「田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという』、「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者)、 「調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表」、同行のコーポレートスローガンは、The Reliable Bank、実に皮肉である。株主は、三井住友トラストHD33.3%、みずほFG27.0%、りそな銀行16.7%、第一生命8.0%、朝日生命5.0%、明治安田生命4.5%、かんぽ生命3.5%、富国生命2.0%となっているので、少なくとも第二位、第三位の株主には気を遣う必要がある筈だ。 今回の不正がどのように他の株主の監視の目を逃れたのかは不明だ。いずれにしても三井住友トラストHDは、筆頭株主として責任をもって全貌を明らかにする必要があるだろう。
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スポーツ界(その36)(高校陸上の星 ドルーリー選手の無断撮影相次ぐ ネットで自宅特定の動きも 弁護士「抑止力がない」、夏の甲子園「丸刈りでない」慶應高校”103年ぶりの快挙”が伝える「大きな変化」 子育てアップデート102 丸刈りと高校球児、慶応高の“美白王子”丸田湊斗選手の活躍で「ニベア」の日焼け止めが話題 担当者は「まさか」と驚き) [社会]

スポーツ界については、本年7月19日に取上げた。今日は、(その36)(高校陸上の星 ドルーリー選手の無断撮影相次ぐ ネットで自宅特定の動きも 弁護士「抑止力がない」、夏の甲子園「丸刈りでない」慶應高校”103年ぶりの快挙”が伝える「大きな変化」 子育てアップデート102 丸刈りと高校球児、慶応高の“美白王子”丸田湊斗選手の活躍で「ニベア」の日焼け止めが話題 担当者は「まさか」と驚き)である。

先ずは、8月20日付け弁護士ドットコム「高校陸上の星、ドルーリー選手の無断撮影相次ぐ ネットで自宅特定の動きも、弁護士「抑止力がない」」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_18/n_16403/
・『陸上女子のドルーリー朱瑛里選手(岡山県立津山高1年)に注目が集まっている。今年1月におこなわれた都道府県対抗女子駅伝で17人抜きの走りをみせ、区間新記録を達成。初の全国高校総合体育大会(インターハイ)でも、女子1500メートルで3位に入り、「陸上界の新星」と取り上げられている。 一方で、プライバシーや肖像権に関する問題も起きている。過度な報道や無断撮影に不安を感じるとして、2月にはコメントを発表して大会を休場した。ドルーリー選手の代理人である作花知志弁護士は言う。 「1月の駅伝後に取材が殺到し、自宅付近の練習風景を無断で掲載されたり、友人の家にまで取材がいったりするようになりました。当時は中学生でしたし、怖かっただろうと思います。親権者の依頼を受け、2月の大会を欠場するとともに、プライバシーや肖像権を守ってほしいというコメントを私のほうから発表しました」(作花弁護士) 競技中のドルーリー選手を延々と撮ってネットにアップしている人もいた。また、ネットのまとめサイトや掲示板には、自宅の場所がわかるような情報や写真が掲載されて、作花弁護士が10件近く削除要請をおこなったという』、「ドルーリー選手」は確かにネットで大騒ぎされるに値するかわいさだが、「自宅の場所がわかるような情報や写真が掲載」というのは明らかに行き過ぎだ。
・『スポーツ紙が取材に殺到、オリンピックへの期待も  一体なぜ、ここまで注目が集まったのか。ドルーリーさんを複数回取材したという記者はこう話す。 「ドルーリーさんが17人抜きをした大会の前に、全国高校サッカー選手権で岡山学芸館高が初優勝したり、津山出身のお笑いコンビ『ウエストランド』がM-1グランプリで優勝したりして、『岡山旋風』の流れがありました。それもあって、より話題性が高まったんです。その後、普段なら来ないだろうスポーツ紙が、地元の大会の取材に来るようになりました」(記者) もちろん、実力も折り紙つきだ。今回のインターハイ(全国高校総体)も現場で見ていたという前述の記者はこう話す。 「女子1500メートル決勝は、高校1年生の歴代最高となる記録でしたし、伸び代しかありません。最後のスパートで加速したときには、観客からもどよめきと声援が出ていましたね。未来のオリンピック選手として期待されていますし、今後も大会の結果次第ではフィーバーが続くでしょう」(記者)』、「女子1500メートル決勝は、高校1年生の歴代最高となる記録でしたし、伸び代しかありません。最後のスパートで加速したときには、観客からもどよめきと声援が出ていましたね。未来のオリンピック選手として期待されていますし、今後も大会の結果次第ではフィーバーが続くでしょう」、これでは騒ぐなという方が無理が多い。
・『インターハイでも不審な撮影  一方で、アスリートをめぐっては、競技に取り組む選手たちを性的な意図を持って撮影する「アスリート盗撮」が問題となっている。今回のインターハイでも、警察に引き渡した事例があった。 全国高校総体・札幌市実行委員会の陸上担当によると、保護者でも関係者でもない人が不特定多数の女性選手を撮影していたという。 本部で事情を聞いたところ、他県の大会でも運営から指導を受けていることがわかり、警察に引き渡した。その後、インターハイに来る前にも、近隣のJR駅構内で盗撮をしていたことが警察で発覚したという。 インターハイでは、各審判員や本部役員がスタンドに目を配り、不審者と思われる人物がいれば声かけをしたり、スタンドに通報用本部直通QRコードを貼り、観客にも情報提供を呼びかけたりする対策をとったという。 このようなアスリート盗撮は、着衣の上からの撮影のため、7月に新設された「撮影罪」の対象にはならない。ただ、こうした撮影行為の規制についても検討するよう附帯決議で盛り込まれた。 作花弁護士は「都道府県の迷惑防止条例の適用はあるものの、刑が軽く抑止力にならない。もし今後も立法されない場合には、国会が法律を制定しないその立法不作為が、憲法に違反しているとして、何人かのアスリートが原告になって裁判を起こすことも手だ」と話している』、「アスリート盗撮は、着衣の上からの撮影のため、7月に新設された「撮影罪」の対象にはならない。ただ、こうした撮影行為の規制についても検討するよう附帯決議で盛り込まれた』、「アスリート盗撮」を実効性ある形で規制する法改正が必要なようだ。

次に、8月21日つけFRauが掲載したジャーナリストの島沢 優子氏による「夏の甲子園「丸刈りでない」慶應高校”103年ぶりの快挙”が伝える「大きな変化」 子育てアップデート102 丸刈りと高校球児」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115059?imp=0
・『災害級の猛暑の中で開催された2023年夏の甲子園「全国高等学校野球選手権大会」。 熱中症予防のために5回にクールダウンタイムを設けるなど、新たなルールも組み込まれた。その一方で、甲子園文化がアップデートされつつあるようだ。 スポーツや教育の現場を長く取材してきたジャーナリストの島沢優子さんが伝える。 島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」これまでの記事はこちら』、興味深そうだ。
・『「丸刈りでない高校」3校が準々決勝に  夏の甲子園  第105回全国高校野球選手権記念大会)で準々決勝進出を果たした8校のうち3校が「丸刈りでない」ことが話題になった。神奈川県代表の慶應義塾高等学校(慶応)と茨城の土浦日本大学高等学校(土浦日大)、そして大谷翔平を生んだ岩手の花巻学院花巻東高等学校(花巻東)である。調べてみると、昨夏のベスト8校に丸刈りではない学校はゼロ。報じた記事には4千件近いコメントが寄せられたが「丸刈りはやめて自由にすればいい」との意見が多かったと感じる。 テレビでも多くの人が視聴する夏の甲子園。長髪だからダメだなんて思わないのではないだろうか  そして慶応は8月19日の沖縄尚学高校戦、6回に打者10人の猛攻で7対2と逆転勝ち。実に103年ぶりの4強を決めた。土浦日大もこれに続いた』、「準々決勝進出を果たした8校のうち3校が「丸刈りでない」、「昨夏」は「ゼロ」からはずいぶん進歩したものだ。
・『「坊主にして出直せ!」  この状況、昨今注目されている「ブラック校則」と類似していないだろうか。下着の色指定や髪の黒染め強要など、今現在の社会通念に照らすと合理性を欠く内容なのに、規律を維持する方法として長年採用されてきた。それが世の中の注目を浴びたことで、昨年度は都立高校が5項目の全廃を決め男子生徒のツーブロックなどはOKになった。 実はこの理不尽な校則に最も多いのが、頭髪に関する規制だ。だからなのか、高校野球でも、これまで当然のように頭髪規制が敷かれ、いたるところに丸刈り信仰が散見できた。強豪校は丸刈り、髪を伸ばしている学校は弱小といった古いイメージが根強いうえ、丸刈りでない学校が負けると甲子園で「坊主にして出直せ!」とヤジが飛ぶという。 さらにいえば、試合に負けたら、罰として五厘にしろと監督から命じられると聞いた学校はひとつや二つではない。生徒たちは「髪を切れば気合が入って次は勝てる」という何の根拠もない理由付けを黙って受け入れていた。 果たして、丸刈りにどのくらい教育的メリットがあるのだろか。 大人たちは「髪型で野球をするわけではない」というけれど、教育的な視点や時代との適合性の面から思考する必要があるのではないか』、「強豪校は丸刈り、髪を伸ばしている学校は弱小といった古いイメージが根強いうえ、丸刈りでない学校が負けると甲子園で「坊主にして出直せ!」とヤジが飛ぶという。 さらにいえば、試合に負けたら、罰として五厘にしろと監督から命じられると聞いた学校はひとつや二つではない。生徒たちは「髪を切れば気合が入って次は勝てる」という何の根拠もない理由付けを黙って受け入れていた。 果たして、丸刈りにどのくらい教育的メリットがあるのだろか。 大人たちは「髪型で野球をするわけではない」というけれど、教育的な視点や時代との適合性の面から思考する必要があるのではないか」、その通りだ。
・『髪型ひとつ決められないのは「主体的学び」か  公益財団法人日本高等学校野球連盟(高野連)は「日本学生野球憲章」で、以下のようにうたっている。 「国民が等しく教育を受ける権利をもつことは憲法が保障するところであり、学生野球は、この権利を実現すべき学校教育の一環として位置づけられる。この意味で、学生野球は経済的な対価を求めず、心と身体を鍛える場である」 野球は学校教育の一環であるとするならば、その内容はその時代を生き抜く子どもに寄り添ったものである必要がある。思考停止を招く要素が少しでもあってはならないだろう。そのあたりをくみ取っているからこそ、文部科学省でも以前から「主体的な学び」を掲げているではないか。個人的には、髪型ひとつ決めさせないで主体的学びとは言えないだろうと思う。 よって球児の丸刈りに、上述した「坊主にして出直せ」「負けたら五厘にしろ」のように、誰かから何かを強制される受け身の文化を感じる。この文化という面で考えると、慶応、土浦日大、花巻東の3校に共通するのは「主体性を重視した指導」だ。自己決定力や自主自律を育てようとしている』、「思考停止を招く要素が少しでもあってはならないだろう。そのあたりをくみ取っているからこそ、文部科学省でも以前から「主体的な学び」を掲げているではないか。個人的には、髪型ひとつ決めさせないで主体的学びとは言えないだろうと思う」、その通りだ。
・『少子化だけで説明できないほどの「野球人口」の減少  少子化だけで説明できないほどの「野球人口」の減少  先ごろプロ野球の若手選手に対し研修を行う機会があったが、周囲の大人たちは彼らの主体性の無さを嘆いていた。もちろん全員ではないが主体性が育まれているかに関して、私から見ても疑問符が付いた。 このことは誰よりも指導者が気づいているようだ。 高野連は今年6月、全国の加盟校硬式野球部を対象に、5年ごとに行う「高校野球実態調査」の結果を発表した(99.2%に相当する3788校が回答)。「頭髪の取り決め」が丸刈りの学校は約26.4%。わずか5年前の約76.8%に比べると大幅に減り、髪型自由の学校が急増している。 背景には、今回ベスト8入りした3校のような「丸刈りにしなくても強い学校」の影響があるに違いない。今夏は宮城県予選で敗れたが、春のセンバツに出場した東北高校なども、昨年就任した佐藤洋監督が「髪型は自由」と生徒に任せている。 もうひとつ、競技人口減少への危機感も手伝って大人たちが部員集めのために「脱・丸刈り」へ舵を切ったとも考えられる。日本高野連によると、全国の高校の硬式野球部員は2022年度で13万1259人。17年度に比べ約3万人減で9年連続減った。少子化による自然現象では説明できないダウンだ』、「頭髪の取り決め」が丸刈りの学校は約26.4%。わずか5年前の約76.8%に比べると大幅に減り、髪型自由の学校が急増している」、なるほど。
・『「少年野球のところから変えたい」  一方で、この日本の野球危機を実感している指導者や、プロ野球の育成関係者やスカウトらはSNSで警鐘を鳴らしたり、不適切指導の改善のためにセミナーを開くなど力を尽くしている。そのひとりが、「一流のスポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得をのべ6万人超に伝えてきた、スポーツ原論の専門家である高橋正紀・岐阜協立大学経営学部教授(高橋の「高」は本来ははしご高)だ。 同大学でサッカー部総監督と野球部部長を兼任。ゼミの卒業生がコーチを務める少年軟式野球の強豪、北名古屋ドリームスで2016年から定期的にセミナーをしている。指導者に向けても行っている。 「高校球児を育成する少年野球のところから変えたいと思ってやっている。少年のカテゴリーはまだまだ少ないが、高校野球は随分変わってきた印象がある」と話す。日本スポーツマンシップ協会副会長を務める関係で、同協会の研修会で慶応の森林監督とも数年前から面識がある。 「エンジョイベースボールを掲げていたし、学ぼうという姿勢が見えた。今回の甲子園での選手の姿や顔つきを見ていても、腹の底から楽しんでいることがわかる。ピンチになっても目が輝いていて、どうやって跳ね返してやろうか?と考えているように見える。こういうチームがいくつも勝ち進み新しい風を入れてくれるのは、野球界にとって非常にいいことではないか」と話す。 どんなことでも、技術向上のためのトレーニングなど辛いことはある。「スポーツを楽しむ」ために「楽なこと」ばかりであるはずもない。しかし髪の毛は技術向上に影響するのだろうか』、「慶応」は「エンジョイベースボールを掲げていたし、学ぼうという姿勢が見えた。今回の甲子園での選手の姿や顔つきを見ていても、腹の底から楽しんでいることがわかる。ピンチになっても目が輝いていて、どうやって跳ね返してやろうか?と考えているように見える。こういうチームがいくつも勝ち進み新しい風を入れてくれるのは、野球界にとって非常にいいことではないか」、なるほど。
・『何のために野球をやるのか  慶応だけでなく、花巻東、土浦日大の指導スタイルとマネージメントは、時代に沿ったチーム文化の観点からみても「永久持続性のあるチーム作り」だと高橋教授は言う。なぜならば「新しい価値観を持った保護者が子どもを送り込むからです。早かれ遅かれ古いものは新しいものと入れ替えられますから」(高橋教授)。 そのような親に育てられた子どもたちなので、多くが主体性や自己決定力が養われている。チーム文化を醸成しやすいとも言えるだろう。 高校野球はいま、変わりつつある。新たな価値観を注入する人たちには「異業種」監督も目立つ。主軸を占めていた高校教員ではなく、小学校教員の森林監督、東北の佐藤監督は元読売ジャイアンツのプロ選手など、ある種の異星人たちがイノベーションを起こしている。 佐藤監督は「幸せになるために野球をやる」と話していた。「何のために野球をやるか?」と選手にも問うそうだ。そのようなスポーツのとらえ方を考えながら、甲子園を観ている』、「高校野球はいま、変わりつつある。新たな価値観を注入する人たちには「異業種」監督も目立つ。主軸を占めていた高校教員ではなく、小学校教員の森林監督、東北の佐藤監督は元読売ジャイアンツのプロ選手など、ある種の異星人たちがイノベーションを起こしている」、今後の変化が楽しみだ。

第三に、8月23日付けAERAdot「慶応高の“美白王子”丸田湊斗選手の活躍で「ニベア」の日焼け止めが話題 担当者は「まさか」と驚き」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/199423?page=1
・『甲子園に“ハンカチ”以来の「王子」が降臨した。慶応義塾高校(神奈川)の丸田湊斗選手が、「美白王子」「慶応のプリンス」と呼ばれ注目を集めている。SNS上では、彼の白い肌やイケメンぶりが絶賛され、「慶応の丸田くん野球やってんのに色白すぎ」「たしかにプリンス感満載。イケメンかつモデル体形」などのコメントが並ぶ。 外見だけでなく、選手としての能力も折り紙付きだ。地方大会から打ちまくり、甲子園でもこれまで4試合に出場し、打率は4割超え。長打力も兼ね備え、3つの盗塁を決めるなど、慶応高を103年ぶりの決勝まで導いた立役者と言っていいだろう。 快挙達成まであと一歩に迫った慶応高だが、丸田選手がインタビューで語った“白さの理由”も話題になっている。 「焼けたら赤くなるだけだし、ヒリヒリして痛くて…。母にもずっと日焼け止めを塗れって言われていた。日焼けはやけどなので、そこに疲労回復が使われるから、日焼け止めはしっかり塗るようにしている」(東スポWEBより) 昔の高校野球のイメージとは正反対の発言に時代の流れを感じるが、このインタビューでは、彼が「ニベア花王」のニベアの日焼け止めを使っていることも明かしており、それも注目を集めている』、「焼けたら赤くなるだけだし、ヒリヒリして痛くて…。母にもずっと日焼け止めを塗れって言われていた。日焼けはやけどなので、そこに疲労回復が使われるから、日焼け止めはしっかり塗るようにしている」、なるほど。
・『「試合を見ていて『お肌がキレイだな』と思っていたら、まさかニベアの日焼け止めを使ってくれていたとは……」 と喜びを語るのは同社ブランドマネージャーの中平美和子さん。 「近年、日焼け止めが若い世代に広まってきているのを実感しています。高校生の息子の周りでも、お母さんに勧められて日焼け止めを使う男の子も増えてきているようです」(中平さん) 同社の調査によると、2022年の男性の日焼け止め使用率は10代~60代で約15%だが、10代は21%と他の年代よりも高いという。10代の19年の使用率は約12%であったため、3年で倍近くに増加している。 また、使用頻度を比べると、2~3日に1回以上使用しているのが10代~60代の男性では平均46%で、20代でも45%なのに対し、10代では72%だったという。 同社研究所グループマネージャーの淵江悟さんは、日焼け止めの効果をこう話す。 「『皮膚は人間の最大の臓器』と言われているように、皮膚が日焼けで炎症を起こすと、炎症性の物質が血管やリンパ管を通して身体中に運ばれ、疲労やダメージが蓄積すると考えられています。そうするとリカバリーに時間とエネルギーが必要になるので、丸田選手が言っていたように、日焼け止めを塗ることはパフォーマンスを維持する上でも効果があると言えます」』、「『皮膚は人間の最大の臓器』と言われているように、皮膚が日焼けで炎症を起こすと、炎症性の物質が血管やリンパ管を通して身体中に運ばれ、疲労やダメージが蓄積すると考えられています。そうするとリカバリーに時間とエネルギーが必要になるので、丸田選手が言っていたように、日焼け止めを塗ることはパフォーマンスを維持する上でも効果があると言えます」、なるほど。
・『効果的な使用法について淵江さんは、「運動をやっている方は、運動前に塗って、こまめに塗り直すのが良いと思います」と言う。 日焼け止めを含む男性化粧品の市場も年々拡大しており、インテージの調査によると、「男性の化粧品購入」の市場規模は、17年~22年の5年間で、408億円から513億円と1.25倍に伸びている。 世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは「市場はこの10年、ほぼずっと右肩上がりで伸びています」と話す。 「私が草食系男子の取材をしていた08年頃から、進んだ男子は肌が日に焼けないようにとケアをしていましたが、近年、裾野が広がってきているのを実感します」 男性に日焼け止めが浸透してきた背景として、牛窪さんは「母親の影響がかなり大きい」と話す。確かに丸田選手もインタビューで母親の勧めで日焼け止めを塗るようになったと語っていた。 「いまの母親世代が、韓流ブームやジャニーズなどの影響で、いわゆる『きれいな男子』を日常的に目にしています。ですから、息子にもそうあってほしいと思い、スキンケアを勧めるケースが多いのです」 また、「女子の側の意識の変化も見逃せない」と牛窪さんは話す。) 牛窪さんが草食系男子の取材をしていた08年は、スキンケアなどをする男性に対して、女性はまだ否定的な見方をしていたという。それから10年以上がたった今は、変化が起きている。 「スキンケアに気を配る『きれいな男子』を好意的にとらえる女子が増え、こうした男子は将来設計がきちんとしているとプラスの評価をされるようになりました。『将来のシミやしわを気にして若いうちからケアする男子は、お金の使い方などもしっかりしているだろう』などと話すのです。また、丸田選手は都会的で洗練されたイメージがある『慶応ボーイ』なので、より前向きに評価されたと言えるかもしれません」 牛窪さんは、「これからは球児にも日焼け止めが必須の時代になる」と見る。 「日焼けはアレルギーのほか、皮膚がんのリスク、また体内に熱をこもらせると熱中症につながる可能性も指摘されているので、近い将来、水分補給と同じく、日焼け止めを塗ることも球児のデフォルトになっていくのではないでしょうか」 プレーでも、髪形でも、美肌でも(?)今年の甲子園の話題を牽引する慶応高。はたして、107年ぶりの栄冠に輝くことができるか』、「「スキンケアに気を配る『きれいな男子』を好意的にとらえる女子が増え、こうした男子は将来設計がきちんとしているとプラスの評価をされるようになりました。『将来のシミやしわを気にして若いうちからケアする男子は、お金の使い方などもしっかりしているだろう』などと話すのです」、「日焼けはアレルギーのほか、皮膚がんのリスク、また体内に熱をこもらせると熱中症につながる可能性も指摘されているので、近い将来、水分補給と同じく、日焼け止めを塗ることも球児のデフォルトになっていくのではないでしょうか」、かつては、夏は男は日焼けしたのが恰好いいとされていたのが、日焼けを回避するとは、時代も変わったものだ。
タグ:スポーツ界 (その36)(高校陸上の星 ドルーリー選手の無断撮影相次ぐ ネットで自宅特定の動きも 弁護士「抑止力がない」、夏の甲子園「丸刈りでない」慶應高校”103年ぶりの快挙”が伝える「大きな変化」 子育てアップデート102 丸刈りと高校球児、慶応高の“美白王子”丸田湊斗選手の活躍で「ニベア」の日焼け止めが話題 担当者は「まさか」と驚き) 弁護士ドットコム「高校陸上の星、ドルーリー選手の無断撮影相次ぐ ネットで自宅特定の動きも、弁護士「抑止力がない」」 「ドルーリー選手」は確かにネットで大騒ぎされるに値するかわいさだが、「自宅の場所がわかるような情報や写真が掲載」というのは明らかに行き過ぎだ。 「女子1500メートル決勝は、高校1年生の歴代最高となる記録でしたし、伸び代しかありません。最後のスパートで加速したときには、観客からもどよめきと声援が出ていましたね。未来のオリンピック選手として期待されていますし、今後も大会の結果次第ではフィーバーが続くでしょう」、これでは騒ぐなという方が無理が多い。 「アスリート盗撮は、着衣の上からの撮影のため、7月に新設された「撮影罪」の対象にはならない。ただ、こうした撮影行為の規制についても検討するよう附帯決議で盛り込まれた』、「アスリート盗撮」を実効性ある形で規制する法改正が必要なようだ。 FRaU 島沢 優子氏による「夏の甲子園「丸刈りでない」慶應高校”103年ぶりの快挙”が伝える「大きな変化」 子育てアップデート102 丸刈りと高校球児」 島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」 「準々決勝進出を果たした8校のうち3校が「丸刈りでない」、「昨夏」は「ゼロ」からはずいぶん進歩したものだ。 「強豪校は丸刈り、髪を伸ばしている学校は弱小といった古いイメージが根強いうえ、丸刈りでない学校が負けると甲子園で「坊主にして出直せ!」とヤジが飛ぶという。 さらにいえば、試合に負けたら、罰として五厘にしろと監督から命じられると聞いた学校はひとつや二つではない。生徒たちは「髪を切れば気合が入って次は勝てる」という何の根拠もない理由付けを黙って受け入れていた。 果たして、丸刈りにどのくらい教育的メリットがあるのだろか。 大人たちは「髪型で野球をするわけではない」というけれど、教育的な視点や時代との適合性の面から思考する必要があるのではないか」、その通りだ。 「思考停止を招く要素が少しでもあってはならないだろう。そのあたりをくみ取っているからこそ、文部科学省でも以前から「主体的な学び」を掲げているではないか。個人的には、髪型ひとつ決めさせないで主体的学びとは言えないだろうと思う」、その通りだ。 「頭髪の取り決め」が丸刈りの学校は約26.4%。わずか5年前の約76.8%に比べると大幅に減り、髪型自由の学校が急増している」、なるほど。 「慶応」は「エンジョイベースボールを掲げていたし、学ぼうという姿勢が見えた。今回の甲子園での選手の姿や顔つきを見ていても、腹の底から楽しんでいることがわかる。ピンチになっても目が輝いていて、どうやって跳ね返してやろうか?と考えているように見える。こういうチームがいくつも勝ち進み新しい風を入れてくれるのは、野球界にとって非常にいいことではないか」、なるほど。 「高校野球はいま、変わりつつある。新たな価値観を注入する人たちには「異業種」監督も目立つ。主軸を占めていた高校教員ではなく、小学校教員の森林監督、東北の佐藤監督は元読売ジャイアンツのプロ選手など、ある種の異星人たちがイノベーションを起こしている」、今後の変化が楽しみだ。 AERAdot「慶応高の“美白王子”丸田湊斗選手の活躍で「ニベア」の日焼け止めが話題 担当者は「まさか」と驚き」 「焼けたら赤くなるだけだし、ヒリヒリして痛くて…。母にもずっと日焼け止めを塗れって言われていた。日焼けはやけどなので、そこに疲労回復が使われるから、日焼け止めはしっかり塗るようにしている」、なるほど。 「『皮膚は人間の最大の臓器』と言われているように、皮膚が日焼けで炎症を起こすと、炎症性の物質が血管やリンパ管を通して身体中に運ばれ、疲労やダメージが蓄積すると考えられています。そうするとリカバリーに時間とエネルギーが必要になるので、丸田選手が言っていたように、日焼け止めを塗ることはパフォーマンスを維持する上でも効果があると言えます」、なるほど。 「「スキンケアに気を配る『きれいな男子』を好意的にとらえる女子が増え、こうした男子は将来設計がきちんとしているとプラスの評価をされるようになりました。『将来のシミやしわを気にして若いうちからケアする男子は、お金の使い方などもしっかりしているだろう』などと話すのです」、 「日焼けはアレルギーのほか、皮膚がんのリスク、また体内に熱をこもらせると熱中症につながる可能性も指摘されているので、近い将来、水分補給と同じく、日焼け止めを塗ることも球児のデフォルトになっていくのではないでしょうか」、かつては、夏は男は日焼けしたのが恰好いいとされていたのが、日焼けを回避するとは、時代も変わったものだ。
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鉄道(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も) [産業動向]

鉄道については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も)である。

先ずは、本年5月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322125
・『千葉県・東葉高速鉄道が、早くて2028年度にも資金ショートする可能性が取り沙汰されている。多額の長期債務残高があり、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているからだ。その原因を突き詰めると、建設前の「鉄建公団」の枠組みにある。最近の金利上昇も“泣きっ面に蜂”状態で、返済にはさらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ』、どうしてそんなことになったのだろう。
・『早くて2028年度にも「資金ショート」  「鉄道会社としての売り上げは年間130億円以上」「1日12万人以上が利用」「営業利益は年間33億」――。千葉県八千代市と船橋市を通る「東葉高速線」を運営する東葉高速鉄道は、これらの数値だけ見れば経営が順調そうに思える。 しかし同社は、早くて2028年度にも「資金ショート」する可能性がある。長期債務残高が2356億円あり、その返済はおろか、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているのだ。 その原因は、「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある。東京メトロ東西線と相互直通運転し、都心への通勤輸送を担う東葉高速線の利用状況は好調であるものの、コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.  5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている。 東葉高速鉄道は、なぜこうした経営状況に陥っているのか。また、利用者から「高い」と言われる運賃は、なぜ高いのか? まずはこれまでの経緯をたどってみよう』、「「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある・・・コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている」、「コロナ禍前に行われていた元本返済」が止まった理由は何なのだろ。
・『免許申請から開業まで22年かかり建設費用が3倍に  東葉高速鉄道が開業したのは1996年。しかし免許の申請が行われたのは74年で、工事の大幅な遅れが建設費用の増大につながった。 74年の免許申請は営団地下鉄(現在の東京メトロ)によって行われ、当時は955億円の事業費(建設費など)を見込んでいた。しかし並行する京成電鉄などの事情も絡み、営団は免許を取り下げ、中野駅~西船橋駅間を東西線として開業した。営団は東葉高速鉄道に出資した上、「乗り入れ」という形の関与となる。 その後80年には「日本鉄道建設公団(以下:鉄建公団、現在のJRTT)」が工事を行い、千葉県や船橋市、八千代市などが出資する第三セクターが設備を引き取って運営する、現在の東葉高速鉄道が成立した。そうしてようやく84年に着工を果たす。 しかし、用地買収の交渉は遅々として進まなかった。通常ならここで「土地収用法」に基づき、裁決手続きの上で行政代執行となるはずだが、この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す。 そしてこの期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」(建設中の資金調達にかかる利息)や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった』、こんなに遅れたものを取上げるには、経済性の見込みの変化などによほどの注意が必要だ。
・『無理があった「公団P線方式」での建設  鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う。 このスキームは経営体力のある大手私鉄の新線(東急田園都市線など)で頻繁に用いられた。一方、経営能力に乏しい第三セクター会社にも適用され、業績低迷とともに支払いに苦しむ事例が続出した。例えば、92年に開業した千葉急行電鉄(現在の京成千原線)はたった6年で経営破綻した。自治体のみならず、出資した京成電鉄も大きな損害を負うことになった。 当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ。 最近の金利上昇により、東葉高速鉄道の返済計画には、さらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ。21年度の約12億円の利払いは、リーマンショック後の超低金利が前提となっている。そうなる以前は、年間50億円以上の利払いを行っていた時期もある。返済内容として、金利が0.1%変動しただけで、返済金額が数億円も上振れする可能性があるという』、「当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とはとんでもない話だ。
・『鉄道建設と資金調達に変化、東急・相鉄直通線は?  東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている。どういったことか、各地の事例を見てみよう。 23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる。2社の営業利益を合計した8年分に相当する額だ。なお、東急・相鉄直通線の加算運賃も現行の範囲では済まなかっただろう。 05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している』、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる」、安易に「P線方式」で先送りしたことが、現在の窮状につながったようだ。
・『株主である自治体が国に支援を要請へ  東葉高速鉄道は、西船橋駅~東葉勝田台駅間(16.4Km)の運賃で640円、1カ月の通勤定期で2万6890円という、距離の割に高い運賃が問題視されている。 千葉県内では、北総鉄道が通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%も大幅値下げした(22年10月1日)。同社は「北総線・成田スカイアクセス」など成田空港への輸送で利用が上向いたことから、20年前には450億円もあった累積損失の解消を見込んでいる。片や、東葉高速鉄道の返済金額はその数倍とあって、なかなか値下げに踏み切れない。 3月20日、東葉高速鉄道に出資する千葉県・八千代市・船橋市は、国土交通省に対して、同社への「抜本的な支援策」を求める申し入れを行った。出資者による財政支出は500億円に上っているが、自治体のみによる支援には限界があるとして、踏み切ったもよう。これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」(裁判外紛争解決手続。私的整理の一つ)で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた。 東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ』、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、同感である。

次に、5月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675824
・『ETR252型「アルレッキーノ」――欧州の鉄道に関心のある人でも聞き慣れない名前かもしれない。 だが、昭和世代の乗り物好きなら乗り物図鑑の中で一度は目にしたことがあるであろう、前面展望車両の元祖とも言うべきETR300型「セッテベッロ」といえば、ご存知の人も多いのではないだろうか。 通常は車体前部に設ける運転台を屋根上へ置き、その代わりに前方を眺められる展望席を設けた画期的なデザインで、あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車、と言っても過言ではないだろう』、「あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」とは興味深そうだ。
・『錆びて朽ち果てた名車  ETR250型アルレッキーノは1960年、そのセッテベッロの増備車として同年に開催されたローマオリンピックの観客輸送のため、ETR251~254型の4両編成4本が製造された。オリンピック終了後は、イタリア国内の主要都市間を結ぶRapido(特急列車)で使用されていたが、1990年代に入ると徐々に定期運用から外され、主に臨時列車やチャーター用に使用された。 だが、その回数も徐々に減っていき、ついに保留車両として完全に運用から退くことになった。4本造られたうち、第2編成のETR252型を除いた3本は1999年までにすべて解体されてしまった。残ったETR252型も、海からの潮風が吹くアンコーナ駅構内に長期間野ざらしの状態で放置され、車体は錆びて朽ち果てた状態となった。 転機となったのは2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ。車両は同財団によって速やかに回収され、ひとまず盗難や落書きなどの被害から守るため建物の中へ収容した。資金のメドが立った2016年に、修復を請け負う民間企業の工場へ移送され、すぐに動態保存へ向けた修復工事が始まった。 ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した』、「長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した」、「海からの潮風が容赦なく吹き付けた」とは過酷な環境だ。
・『3年かけ修復完了、直後にコロナ禍が…  内装はオリジナルの状態を極力再現するため、シート生地は現代の基準を満たしつつ、当時の素材を忠実に再現。内壁に使う化粧板なども当時の色彩を保っている。その一方で、本線上を運行するにあたって現代の基準に適合させる改造も行われている。 例えば信号保安装置には、イタリアの主要幹線で採用されている安全性の高いSCMTシステムを搭載、空調装置は最新のものへ交換し、各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年だった。お披露目は同年6月27日、ローマで開催されたイタリア鉄道(FS)グループの観光計画発表の場で行われた。すぐに一般向けの公開運転がスタートすることが期待されたが、間もなく世界はコロナ禍によって大混乱へと陥り、運転再開は無期限休止の状態となった。 2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた。最初の運行は2021年10月3日、ボローニャ―ローマ間で実施され、チケットは発売開始と同時に完売した。その後、今年2023年に至るまで、年に数度の一般向け公開運転や、チャーター運用などに使用されている。) 鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる。こうした車両のメンテナンスには、熟練の技術者が必要不可欠となるが、若い技術者を育てなければ恒久的な維持管理は難しくなる。もちろん、ただ技術を教えるだけではなく、その技術者が一人前になった後、その技術だけで生活ができなければ、いずれなり手はいなくなってしまうし、その技術者が定年を迎えるときまでに後継者を育てなければ、その技術は潰えてしまうことになる』、「各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年」、「2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた」、「鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる」、「アルレッキーノ」を「動態保存」している「イタリア」も大したものだ。
・『相当な資金が必要な「動態保存」  部品の確保もまた、今後は重要な課題となってくるだろう。古い車両は、実は技術さえ継承できれば修理や整備は何とかなる可能性があるもので、昔の家電製品のように「叩けばなんとかなる」ではないが、ある意味で言えばスパナやハンマーなどがあれば直せるものが多い。 だが近年、特に半導体技術を使うようになった1970~1980年代以降の車両の場合、部品の交換以外に修理する手段がなくなるため、廃車となった車両から保守用部品を抜き取って保管する必要が生じる。そして、部品が枯渇した段階で修理不能となるため、装置そのものを最新の装置へ換装する以外に修理する手段がなくなる可能性もある。 つまり車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある。ファンがいくら声を上げたところで、ない袖は振れないのはやむをえないことだ。) では、一度はスクラップ寸前の状態となった1960年代の車両を通常の運行ができる状態にまで完全に復元した、イタリア鉄道財団の財源はどうなっているのだろうか。 イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある』、「車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある・・・「イタリア」では「イタリア鉄道財団」が担っているようだ。
・『政府が保存をバックアップ  民間からの寄付については、筆者も一度財団へ寄付を申し出たことがあるが、個人からの少額の寄付は受け付けていないようで、今のところは企業などからの大口の寄付で賄われているようだ。 なお、2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い。 FS財団では現在、冒頭で触れた世界的に有名なETR300型セッテベッロのほか、1957年に運行開始した国際特急TEE用のALn442-448型気動車、数々の超特急を牽引したE444型高速旅客用電気機関車などの完全復元を目指して修復工事が進められている。これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない』、「イタリア」は鉄道に限らず、歴史的遺産の保存・修復に膨大なエネルギーを費やしている。鉄道もこの一環のようだ。

第三に、7月12日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/685797
・『日本で初めて全線を新設するLRT(次世代型路面電車)、芳賀・宇都宮LRTは2023年8月26日の開業だ。新設の路面電車は75年ぶりとあって、鉄道ファンだけでなくその動静に関心を寄せる人々は少なくないだろう。宇都宮市と隣接する芳賀町という2つの自治体にまたがる路線という点も注目すべきポイントだ。また、JRや東武鉄道への乗り入れの可能性も考慮し、軌間はこれらの鉄道と同じ狭軌(1067mm)で敷設されている。 一方、トラム(路面電車)の先進地である欧州には、自治体どころか「国」をまたいで走り、かつ路面の軌道から在来線鉄道に乗り入れて線路上を爆走するトラムがある。そんなユニークなトラムを紹介したい』、「ユニークなトラム」とは興味深そうだ。なお、「宇都宮市」の「トラム」は軽微な事故を起こしたようだ。右折禁止を無視して右折しようとした乗用車がぶつかってきたようだ。
・『ドイツ南部を走る「国際トラム」  国をまたいで走るトラムがあるのは、ドイツ南部ザールラントの中心都市・ザールブリュッケン(Saarbrücken)だ。ここを走るトラム「ザールバーン(Saarbahn)」は1997年に開業。現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている。 もともとザールブリュッケンには路面電車が存在したが、モータリゼーションの影響などで1965年に全線廃止となり、その後の市内交通はバスが担っていたが、1990年代に入ってトラムの整備案が浮上。市内中心部は併用軌道、郊外は鉄道線に乗り入れて運行するという形態で整備することとなった。このようなスタイルは「トラムトレイン」と呼ばれる。 北側は、最初の開業が19世紀後半にまでさかのぼる「レーバッハ・フォルクリンゲン線(Bahnstrecke Lebach–Völklingen)」につながっている。同線は1985年をもって一旦旅客運行を終了し、その後は保存鉄道として不定期に列車が走っていた。2010年代に入って復活構想が持ち上がり、2014年にザールバーンと直結した。同区間は非電化区間のまま放置されていたため、ザールバーンとの接続に伴い、市街地区間と同じ直流750Vで電化された。 一方、ザールブリュッケンの市街地から南に向かう路線はやはり途中でドイツ鉄道(DB)の在来線ザールブリュッケン・サルグミーヌ線(Bahnstrecke Saarbrücken–Sarreguemines)へと乗り入れる。こちらは1997年の開業時から直通している。電化方式はザールバーンと在来線とで異なっており、在来線側は交流1万5000Vで電化されている。そのため、車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている』、「現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている」、「車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている」、なるほど。
・『終点はフランスの街  そして、ザールバーンの南端の終点であるサルグミーヌ駅は、国境を越えた先のフランス国内にある。そのため、ドイツのトラム車両がフランス国鉄(SNCF)の駅に入り込むという不思議な光景が見られる。 もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ。 車両はボンバルディア(現・アルストム)製の「フレキシティ・リンク」と呼ばれるタイプで、開業時に導入された。車内の約半分のスペースが低床構造となった部分低床車で、鉄道線と路面電車を直通する車両としては世界初の低床構造を採用した車両でもある。路面電車といっても3車体で全長は40m近い大型車両だ。) 欧州は一般の鉄道もプラットホームが低いが、市街地の併用軌道区間はそれよりも低いため、両方のプラットホームに対応すべく乗降扉の下側には併用軌道での乗降時に開く「収納式ステップ」が設置されている。 ザールバーンの車両は市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう。 多くの国境で出入国審査の必要ない欧州では、列車に乗っていて気づけば国境を越えていたということは珍しくないが、鉄道線に乗り入れているとはいえ、路面電車の終点が隣国というのは珍しい』、「もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ」、「市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう」、「途中から時速100kmで爆走」、知らなければ驚くだろう。
・『環境配慮の交通機関  近年、欧州ではトラム網の増強が盛んに行われてきた。温暖化対策としての二酸化炭素排出量削減や、公共交通中心の街づくりといった狙いで、かつて廃止した都市やもともとトラムがなかった街での整備も多い。日本では基本的に路面電車の編成超は最大30mまでに抑えられているが、欧州のトラムはザールバーンも3車体で40m近く、さらに他都市でも5車体や7車体、複数編成をつないで走るケースもある。1編成当たりの乗車定員も多い。 日本でも富山のLRTや福井のえちぜん鉄道・福井鉄道での路面電車タイプの車両による乗り入れなど最近は路面電車をめぐる動きが増えてきている。日本では「国際路面電車」は無理だが、環境意識が高まる中、芳賀・宇都宮LRTに次いで、日本でもLRTが積極的に導入される日は来るのだろうか』、前述の「宇都宮LRT」の事故は「LRT」には責任はない。日本でも地方都市に広がってほしいものだ。
タグ:鉄道 (その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も) ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」 どうしてそんなことになったのだろう。 「「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある・・・コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている」、「コロナ禍前に行われていた元本返済」が止まった理由は何なのだろ。 こんなに遅れたものを取上げるには、経済性の見込みの変化などによほどの注意が必要だ。 「当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とはとんでもない話だ。 「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる」、安易に「P線方式」で先送りしたことが、現在の窮状につながったようだ。 「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、同感である。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」 「あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」とは興味深そうだ。 「長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した」、「海からの潮風が容赦なく吹き付けた」とは過酷な環境だ。 「各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年」、 「2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた」、 「鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる」、「アルレッキーノ」を「動態保存」している「イタリア」も大したものだ。 「車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある・・・「イタリア」では「イタリア鉄道財団」が担っているようだ。 「イタリア」は鉄道に限らず、歴史的遺産の保存・修復に膨大なエネルギーを費やしている。鉄道もこの一環のようだ。 さかい もとみ氏による「大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も」 「ユニークなトラム」とは興味深そうだ。なお、「宇都宮市」の「トラム」は軽微な事故を起こしたようだ。右折禁止を無視して右折しようとした乗用車がぶつかってきたようだ。 「現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている」、「車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている」、なるほど。 「もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ」、 「市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう」、「途中から時速100kmで爆走」、知らなければ驚くだろう。 前述の「宇都宮LRT」の事故は「LRT」には責任はない。日本でも地方都市に広がってほしいものだ。
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