SSブログ

大学(その13)(国立大学法人法改正案に教職員 学生らから怒りの声 「学問の自由」を殺すな、「林真理子さんを助けてやってくれ」就任1年以上経っても林理事長が日大改革を進められない"根本原因" カギを握るのは「ド派手なスーツの強力な助っ人弁護士」、林真理子氏が気づかない「日大にやらされていること」と「本当にやるべきこと」の違い) [社会]

大学については、本年8月13日に取上げた。今日は、(その13)(国立大学法人法改正案に教職員 学生らから怒りの声 「学問の自由」を殺すな、「林真理子さんを助けてやってくれ」就任1年以上経っても林理事長が日大改革を進められない"根本原因" カギを握るのは「ド派手なスーツの強力な助っ人弁護士」、林真理子氏が気づかない「日大にやらされていること」と「本当にやるべきこと」の違い)である。

先ずは、本年11月30日付けAERA「国立大学法人法改正案に教職員、学生らから怒りの声 「学問の自由」を殺すな」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/207625?page=1
・『国立大学をめぐる「第二の学術会議問題」と呼ばれる、法改正案が国会で審議中だ。「学問の自由の危機」「大学自治への死刑宣告」と教員や学生らから怒りの声が上がる。 「心からのお願いです。皆様、憲法第23条の『学問の自由』の守護者になってください」 隠岐さや香・東京大教授(科学史)は衆議院の参考人質疑でそう訴えた。 現在、「第二の日本学術会議問題」「大学の自治への死刑宣告」と呼ばれる、国立大学法人法の改正案が国会で審議中だ。衆議院を通過し、参議院での本格的な討議に入る』、「国立大学法人法の改正案」については、マスコミが余り伝えないので、初めて知った。
・『文科相が委員を承認  改正案は、東京大や京都大など、一定以上の規模の国立大学5法人に、強い権限を持つ合議体「運営方針会議」の設置を義務づけるもの。 合議体は学長と学外の有識者も想定した3人以上の委員で構成され、文部科学相が承認し学長が任命する。大学の中期目標や計画、予算や決算の決定を行い、それに基づいた運営でない場合、学長に改善を要求できる。さらに学長選考に関して意見を述べることも可能だ。 前出の隠岐教授は「非常に危険な法改正」と話す。 特に危険なのが『強力なトップダウン+委員は文科相の承認が必要』の部分です。国が大学運営に介入することを可能にし、『学問の自由』が危ぶまれます。盛山正仁文科相は委員の承認について、政府と主義主張が異なる人物だったとしても、明らかに不適切な場合などを除き『拒否できない』と国会で答弁しましたが、学術会議の前例があります。日本は国際的な『学問の自由度指数』で下位30%台と現状でもけっして良くありません」 2004年の国立大学法人化以降、国はトップダウン型のガバナンス改革を一貫して大学に要求してきた。 「スタンフォード大など米大学をまねようとしているのだと思います。しかし、米大学はトップダウン型である一方、ボトムアップの仕組みもきちんと確立されています。これに対し、日本は一連の大学改革でボトムアップの仕組みを無効化させてきました。改正案が通ったら、大学は『ブレーキを欠いた車』になってしまいます」(隠岐教授)』、「日本は国際的な『学問の自由度指数』で下位30%台と現状でもけっして良くありません」 2004年の国立大学法人化以降、国はトップダウン型のガバナンス改革を一貫して大学に要求してきた。 「スタンフォード大など米大学をまねようとしているのだと思います。しかし、米大学はトップダウン型である一方、ボトムアップの仕組みもきちんと確立されています。これに対し、日本は一連の大学改革でボトムアップの仕組みを無効化させてきました。改正案が通ったら、大学は『ブレーキを欠いた車』になってしまいます」、大変だ。
・『軍事研究の狙いも  国は大学に「選択と集中」によるイノベーションを求め、「稼げる大学」になるよう促してきたことも、法改正の背景にある。本田由紀・東京大教授(教育社会学)はこう憤る。 「政界では与党の支持率はダダ下がり。経済界も30年間低迷を続けている。そんなグダグダな人たちが法改正で大学に介入し、『この研究は稼げる』『あれは稼げない』と選別することになったら取り返しのつかないことになります」 大学には非常に多様な研究があり、一見「稼げない」ように見える基礎研究や地域研究なども重要な役割を担っている。 「学外の委員の中には、所属する組織の利益を近視眼的に追い求める人が出てくる可能性もある。そうしたら、大学が営々と築いてきた、公共財である『知の土台』は壊され、取り戻すのは容易なことではありません」 合議体の設置はもともと、東北大が候補として決定した、10兆円規模の大学ファンドの支援を受ける「国際卓越研究大学」が対象とされていた。それが一方的に拡大された形で、将来的には私大にも及ぶと見られている。 京都大の駒込武教授(教育史)は「法改正の根拠に整合性がない」と批判する。「突然閣議決定され、国会でスピード可決を図ろうとした点も不審。これほど強引に推し進めるのは、軍事研究に消極的な旧帝大を法改正で組み込ませたい狙いがあるのではと思わざるをえません」 学生も声を上げ始めた。東北大4年の山下森人さんは言う。 「僕は文学部で、学びたい研究があったのですが、指導者のポストがなくなり学べなかった。こうしたことは複数起きていて、さらに悪化しないか心配です」 改正案には、大学の土地の貸し付けの緩和も盛り込まれている。「稼ぐ」ことが優先され、学生のサークルスペースや福利厚生施設がつぶされていくことも懸念されている。 山下さんは訴える。 「学生にこれほど影響を与える法改正なのに、学生は置き去りにされています。国は大学を道具のように扱わないでほしい。私物化するな、と言いたい」(フリー記者 石田かおる)』、「経済界も30年間低迷を続けている。そんなグダグダな人たちが法改正で大学に介入し、『この研究は稼げる』『あれは稼げない』と選別することになったら取り返しのつかないことになります」 大学には非常に多様な研究があり、一見「稼げない」ように見える基礎研究や地域研究なども重要な役割を担っている・・・大学の土地の貸し付けの緩和も盛り込まれている。「稼ぐ」ことが優先され、学生のサークルスペースや福利厚生施設がつぶされていくことも懸念されている・・・学生にこれほど影響を与える法改正なのに、学生は置き去りにされています。国は大学を道具のように扱わないでほしい。私物化するな、と言いたい」、極めて危険な法案のようだ。

次に、12月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「林真理子さんを助けてやってくれ」就任1年以上経っても林理事長が日大改革を進められない"根本原因" カギを握るのは「ド派手なスーツの強力な助っ人弁護士」」を紹介しよう。
・『記者会見に現れた「ド派手なスーツの強力な助っ人」  「何合目と言うより富士吉田の駅に着いたくらい。まだバスにも乗っていない」  12月4日に開いた記者会見で、日本大学の改革の進行状況を「いま何合目か」と問われた林真理子理事長は、富士山に例えてまだ麓の駅だと答えた。就任から1年以上過ぎたにもかかわらず、改革は進むどころか、再び発覚した不祥事への対応に追われている。不祥事の淵に沈んだ日本大学は再生・復活できるのだろうか。 記者会見にはこれまで登場しなかった強力な「助っ人」が登場した。久保利英明弁護士。ド派手なスーツと真っ黒に日焼けした風貌で知られるガバナンス問題の第一人者である。黒に幅広の白いストライプが入ったこの日のスーツは、長年、久保利氏を取材してきた筆者から見ると、極めて地味な出で立ちだったが、それでも、ネット界隈やテレビのワイドショーの人々は度肝を抜かれたようで、一気に話題をさらっていた。 派手な出で立ちは自らを奮い立たせる「戦闘服だ」と言い続けてきた久保利氏は、常に「不正」に立ち向かってきた。防弾チョッキを備えての総会屋と対峙たいじするなど、その「正義感」は正真正銘、筋金入りだ。そんな闘う弁護士に「林真理子さんを助けてやってくれ」といくつものルートで依頼が飛び込んだという。林氏の著書を刊行する出版社の幹部や、久保利氏が顧問を務める企業の創業者、芸能人、そして日本大学の監事を務める弁護士からも連絡がきた。それほどに林理事長が改革に苦戦して追い詰められている様子を周囲が心配していたのだろう』、「「林真理子さんを助けてやってくれ」といくつものルートで依頼が飛び込んだ」、やはり「久保利氏」の名声は轟き亘っているのだろう。
・『「久保利弁護士の議長就任を文科省が了解したのは意外」  今年8月、アメリカンフットボール部員が寮で大麻を所持していた容疑で逮捕されたのを受けて、日大は「第三者委員会」を設置した。その第三者委員会が10月30日に報告書を日大に提出。管理運営体制の再構築など改善計画を策定する「第三者委員会答申検討会議」を設置した。その会議の議長に久保利氏を迎えたのだ。 アメフト部は2018年の危険タックル問題に次ぐ不祥事で、その後の田中英寿前理事長による乱脈経営から脱却を図ろうとしていたまさにその最中に起きた。ガバナンスの不全が再び明らかになったわけだ。 相次ぐ不祥事で、日大は文科省の厳しい監督下に置かれている。第三者委員会の設置は文科省の行政指導を受けたものだった。当然、その後の検討会議の設置も日大は文科省にお伺いを立てている。「正直、久保利弁護士の議長就任を文科省が了解したのは意外でした」と関係者は語る。というのも、久保利氏と文科省には因縁があったからだ』、「「第三者委員会答申検討会議」を設置した。その会議の議長に久保利氏を迎えたのだ」、「久保利氏と文科省には因縁があった」、どんな「因縁」なのだろう。
・『文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物  2021年7月、文科省は「学校法人ガバナンス改革会議」(座長・増田宏一元日本公認会計士協会会長)を設置した。久保利氏はその会議の中心メンバーだったのだ。ちょうど田中理事長が逮捕されるなど日大の不祥事が噴出しているタイミングと重なったため、大学のガバナンスのあり方が大きく関心を呼んだ。そんな流れの中で、12月8日にはその会議が報告書をまとめる。その内容は、公益財団や社会福祉法人など公益法人の仕組みに沿った厳格なガバナンス体制を求めるものだった。 これに私学経営者らが猛烈に反発。自民党の文教族政治家らに働きかけて、改革案を骨抜きにしたのだ。文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物が久保利氏だった。それにもかかわらず久保利氏に日大改革を委ねることに文科省が踏み切ったことを、経緯を知る大学関係者は驚きを持って見ているのだ。 しかも、会議の設置を仕掛けた塩崎恭久元厚生労働相の強い意向で、報告書の作成には文科省の役人は一切関わっていないとされる。一説には久保利氏の事務所の弁護士がボランティアで作成したとも言われているのだ。文科省からすれば、久保利氏は敬して遠ざけたい人物に違いないとみられていたのだ。それが、久保利氏の議長就任を渋々認めるどころか、むしろ歓迎したというのだ』、「文科省は「学校法人ガバナンス改革会議」(座長・増田宏一元日本公認会計士協会会長)を設置した。久保利氏はその会議の中心メンバーだったのだ・・・報告書をまとめる。その内容は、公益財団や社会福祉法人など公益法人の仕組みに沿った厳格なガバナンス体制を求めるものだった。 これに私学経営者らが猛烈に反発。自民党の文教族政治家らに働きかけて、改革案を骨抜きにしたのだ。文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物が久保利氏だった・・・会議の設置を仕掛けた塩崎恭久元厚生労働相の強い意向で、報告書の作成には文科省の役人は一切関わっていないとされる。一説には久保利氏の事務所の弁護士がボランティアで作成したとも言われているのだ」、なるほど。
・『私学法改正で注目されている日大の行方  私学法の改正で2025年から学校法人のガバナンスが大きく変わる。全国の大学はいま、定款に当たる「寄付行為」をどう変え、どんなガバナンス体制にするかを検討している真っ最中だ。改正私学法では、各学校法人が寄付行為で定めれば、多くでほぼ現行通りの体制を維持できるように「骨抜き」になった。学校法人自身の改革姿勢によって寄付行為はいかようにでも書ける形になったのだ。例えば、理事の選出方法などは法律では明確に示されず、各大学に自由度がある。 そんな中で、注目されているのが日大の寄付行為の行方だ。日大は田中元理事長の不祥事を受けてガバナンス体制を見直したが、第三者委員会の調査報告書では、一定の改革が行われたものの、今回の不祥事で理事会への報告がなされなかったり、遅れたりしたことなどガバナンスが機能しなかったことが問題視されている。つまり、経営を行い教学を監督する理事会の機能が十分に働く仕組みになっていなかったとした上で、経営層によるガバナンスを機能させるためには独立性のある理事、監事が必要だと結論付けている』、「改正私学法では、各学校法人が寄付行為で定めれば、多くでほぼ現行通りの体制を維持できるように「骨抜き」になった。学校法人自身の改革姿勢によって寄付行為はいかようにでも書ける形になったのだ。例えば、理事の選出方法などは法律では明確に示されず、各大学に自由度がある・・・日大は田中元理事長の不祥事を受けてガバナンス体制を見直したが、第三者委員会の調査報告書では、一定の改革が行われたものの、今回の不祥事で理事会への報告がなされなかったり、遅れたりしたことなどガバナンスが機能しなかったことが問題視されている」、なるほど。
・『見直された「寄付行為」でも理事長の権限は大きい  記者会見で久保利氏が読み上げた「今後の対応及び方針」では、ウチのことはウチで収めるという「ムラ社会」の組織や、「秘密主義」、学外者を含む組織に対して必要な情報を全く提供しようとしない「排外主義」などがあったとしている。そのうえで、「方針」では理事長のあり方としてこう書いている。 「理事長の権限及び責任を明確にし、業務執行理事へのガバナンスを強化させる仕組みを設け、理事長がガバナンスをより強化させる仕組みを設けます。また、理事長就任後の業績評価制度の見直しや理事長選考委員会の在り方の再確認も含め、法人ガバナンスを強化します」 田中前理事長の不祥事をきっかけに見直した「寄付行為」でも理事長の権限は大きい。選任方法や任期などは変わったが、「理事長は、この法人を代表し、法人の業務を総理する」「理事長以外の理事は、この法人の業務について、この法人を代表しない」といった唯一絶対の権限規定は田中時代と同じだ。また、理事の中から「理事長の推薦により理事会の議を経て常務理事となる」という、事実上理事長が常務理事を選ぶ権限などは、規定上は変わっていない』、「見直された「寄付行為」でも理事長の権限は大きい」、なるほど。
・『学長と3人の副学長の発言力が大きくなっていた  ところが、「林理事長はどうも学長らの教学部門に遠慮があるようだ」と日大関係者は言う。理事会の構成人数は「27人以上36人以内」だったものを「14人以上24人以内」に減らされ、日大以外の学外者が増えた一方で、「副学長」を新設したため、学長と3人の副学長の発言力が大きくなり、理事長や理事会による「教学」への監督が弱くなった大きな要因だろう。田中前理事長による不祥事への反省で、理事長の暴走を防ぐことを最優先し、結果的に学長と副学長の力が増すことになったのだろう。今回の不祥事を受けて、副学長のあり方など寄付行為が再度見直されることになるのだろう。 「もはや一刻の猶予もできません。今、改善・改革を行わなければ本法人は、再生・復活の機会を失い、先人が永年にわたり築きあげた価値などを致命的に喪失することとなります」 田中前理事長の不祥事を機にガバナンスを見直した日本大学で、繰り返される不祥事は、ガバナンスがまだまだ脆弱ぜいじゃくなことの証明でもある。2年前に久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう。多くの学校法人が、今後の日大の再改革の行方を固唾かたずを飲んで見守っている』、「日大以外の学外者が増えた一方で、「副学長」を新設したため、学長と3人の副学長の発言力が大きくなり、理事長や理事会による「教学」への監督が弱くなった大きな要因だろう・・・日本大学で、繰り返される不祥事は、ガバナンスがまだまだ脆弱ぜいじゃくなことの証明でもある。2年前に久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう』、「久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう」、林理事長の謝罪を見なくて済む体制に早くしてもらいたいものだ。

第三に、12月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「林真理子氏が気づかない「日大にやらされていること」と「本当にやるべきこと」の違い」を紹介しよう。
・『元文春編集長があえて批評する日大理事長としての林真理子氏  林真理子理事長による日大改革が厳しい批判に晒されています。林さんは『週刊文春』で長い間連載をしているため、「文春は林さんの批判はしないのでは?」という質問も記者会見で出てきました。 もちろん、連載中の作家の悪口を雑誌で書くことは、編集部の掲載判断が間違っていたことを自ら認めることになりかねないので、慎重に考えなくてはいけないと思います。ただ、書き手が公人として、公の仕事をしている場合は話が別です。元文集編集長の私が、彼女を公人として、第三者的な立場から批評してみたいと思います。 林さんに対する「お飾りにすぎない」「目立つ地位がほしかっただけ」といった批判は、この時期に日大理事長をやるということの大変さをあまりにも理解していないと私は思っています。 大学の経営は私も少し経験したので、民間から見るといかに不思議なものか、少しはわかっているつもりです。しかし、現在の林真理子批判は、(1)「作家」林真理子さんにできること、(2)林さんに求められていること、(3)林さんが求められてもできないことについて、彼女の作品の愛読者だけでなく、記者や日大関係者、そして林さん自身も誤った認識を持っているからこそ、起きているものだと思います。 まず、ボタンの掛け違いがありました。8月8日、澤田康広副学長が「大麻を12日間保管した」と説明した記者会見では、あの場に林さんが出る必要などまったくなかったのです。多くの読者は理事長と学長は同格だと考えています。しかし、理事長は会社でいうなら社長。学長は教育とそれに伴う部活やイベントだけを統括する工場長のようなものです。 当日の記者会見は、学生数7万人のマンモス大学の一部でしかない生徒が犯した大麻所持問題が議題でした。7万人の企業といえば、林さんの立場は三菱商事の社長クラスです。社員の1人が大麻を所持した程度で、社長が記者会見に出る必要があるでしょうか。昨今、組織のコンプライアンスが厳格化しているとはいえ、第一段階では、監督責任もその後の報告も学長と副学長で十分なのです。 たぶん、林さんは真面目で、記者会見には出なければいけないと考えたのでしょうが、最終決定権のある理事長があの段階で出席すると、物事の是非を断言したり、重要な決定をしたりする必要に迫られます。案の定、記者の質問に対して「スポーツのほうにはまだ手を付けていなかったことを反省する」といった趣旨の、絶対にしてはならない失言をしてしまいました。 日大改革の発端は、アメフト部の危険タックル問題でした。理事長就任から1年経ってそこに手を付けていないという発言は、誰もが失望するものでした。 ボタンの掛け違いはその後も続きます。本来は、1回目の記者会見を受けて状況を精査し、第三者委員会の意見を取り入れて、澤田氏や学長の処分という話になれば、林さんが裏できちんと事件をグリップしていると見られたに違いありません。しかしそうはならず、12月に入っても要領を得ない会見が開かれました。 林さんが理事長という役割を生真面目に考えすぎた結果、「林さんのカリスマで記者会見をなんとかしたい」という周囲の目論見に嵌められたのではないかと思います』、「第一段階では、監督責任もその後の報告も学長と副学長で十分なのです。 たぶん、林さんは真面目で、記者会見には出なければいけないと考えたのでしょうが、最終決定権のある理事長があの段階で出席すると、物事の是非を断言したり、重要な決定をしたりする必要に迫られます。案の定、記者の質問に対して「スポーツのほうにはまだ手を付けていなかったことを反省する」といった趣旨の、絶対にしてはならない失言をしてしまいました・・・本来は、1回目の記者会見を受けて状況を精査し、第三者委員会の意見を取り入れて、澤田氏や学長の処分という話になれば、林さんが裏できちんと事件をグリップしていると見られたに違いありません。しかしそうはならず、12月に入っても要領を得ない会見が開かれました。 林さんが理事長という役割を生真面目に考えすぎた結果、「林さんのカリスマで記者会見をなんとかしたい」という周囲の目論見に嵌められたのではないかと思います」、なるほど。
・『林氏が周囲に求められてもできないことはある  次に、林さんに求められてもできないことがあるということを、大学もご本人もわかっていない例についてお話します。 アメフト部の問題に端を発し、田中前理事長の逮捕・退陣に至った日大の独裁体質、パワハラ経営、そしてあまり表には出てきませんが前理事長の反社会勢力との繋がりを全部きれいにするというのが、日大改革の大きな目標でした。そのためには、彼の息がかかった人間の更迭と、田中的パワハラ体質の改善、つまりは人事の大刷新が絶対の目標であったはずです。 田中氏は長期間にわたり大学を支配してきたため、隅々にまで情実関係にある部下が配置されていました。その人々はまだ大学に残っています。彼らをリストラするか、パワハラ的運営を改めさせるのが、改革の具体策です。 しかし、これは林さん一人では絶対にできません。確かに、第三者委員会に久保利英明弁護士を起用するなど、反社会勢力との対決をも意識した意欲は感じられます。しかし、久保利氏は総会屋対策で名を売った人。総会屋が壊滅された現在では一昔前の人と言わざるを得ません。反社会性力と絶縁するには、相当な豪腕が必要です。)  たとえば、カナダに亡命中の香港のアグネス・チョウ氏(周庭氏)を、教授に招聘できないでしょうか。香港の自由を守るために戦い、投獄されても屈しなかった彼女から学生が学ぶことは多いはずです。日本企業の最大の問題の一つが男女の不平等なのだから、彼女の起用自体が林日大からの象徴的なメッセージとなります。 台湾のオードリー・タン氏、北欧の女性首相経験者、日本が大好きな経営者・ビル・ゲイツ氏など、日本の良さや改革の方向性についての知見が深い海外の著名人の講座を設けるのもいいでしょう。 ChatGPTをはじめとするAIを教育の中心に置く文科系学科など、教育者にICT教育を徹底させるのも今後の道です。 こういう新鮮な大学づくりを目指す一方で、廃部が決まったアメフト部に対しては、アメフトを続けたい学生の他大学への移籍をサポートするなど、細かい気配りも必要です。先日の説明会を見ている限り、学生からの質問を禁じるという体育会系体質は少しも改まっていません。ここにこそ、林理事長の新発想が必要ではないかと思います。 たとえば、戦火に包まれたウクライナでは、アメリカンフットボールが人気スポーツになりました。ただ廃部にするのではなく、ウクライナチームを招待し合宿所で一緒に練習するなどの施策を講じれば、学生にとっては国際交流の面でも大変良い人生勉強ができるはずです。 日大には多くの部活が存在します。その財力を活かし、母国でスポーツができないパレスチナやシリアの人々を招き、国際的なスポーツ人を養うのも「日大が変わった」というアピールになり、日本の国際的評価の向上に貢献するはずです』、「田中氏は長期間にわたり大学を支配してきたため、隅々にまで情実関係にある部下が配置されていました。その人々はまだ大学に残っています。彼らをリストラするか、パワハラ的運営を改めさせるのが、改革の具体策です。 しかし、これは林さん一人では絶対にできません。確かに、第三者委員会に久保利英明弁護士を起用するなど、反社会勢力との対決をも意識した意欲は感じられます。しかし、久保利氏は総会屋対策で名を売った人。総会屋が壊滅された現在では一昔前の人と言わざるを得ません。反社会性力と絶縁するには、相当な豪腕が必要です・・・戦火に包まれたウクライナでは、アメリカンフットボールが人気スポーツになりました。ただ廃部にするのではなく、ウクライナチームを招待し合宿所で一緒に練習するなどの施策を講じれば、学生にとっては国際交流の面でも大変良い人生勉強ができるはずです。 日大には多くの部活が存在します。その財力を活かし、母国でスポーツができないパレスチナやシリアの人々を招き、国際的なスポーツ人を養うのも「日大が変わった」というアピールになり、日本の国際的評価の向上に貢献するはずです」、なるほど。
・本当は今までになかった大学をつくれるはず  部外者が勝手なことを言いましたが、大学経営は文部科学省の厳しいチェックの下で行わねばなりません。なにしろ私学といえども、経営の4割は助成金に頼るっているのが現状だからです。しかし、林さんの声望と人望があれば、こうしたチェックを沈黙させ、今までの日本になかったような大学がつくれるはずです。 どうか日大の過去の負債の清算にばかり力を注ぐのではなく、そこには適任者を探して配置し、ご自身は林さんらしい大学つくりをしていただきたいと思っています』、「日大の過去の負債の清算にばかり力を注ぐのではなく、そこには適任者を探して配置し、ご自身は林さんらしい大学つくりをしていただきたいと思っています」、強く同意する。 
タグ:大学 (その13)(国立大学法人法改正案に教職員 学生らから怒りの声 「学問の自由」を殺すな、「林真理子さんを助けてやってくれ」就任1年以上経っても林理事長が日大改革を進められない"根本原因" カギを握るのは「ド派手なスーツの強力な助っ人弁護士」、林真理子氏が気づかない「日大にやらされていること」と「本当にやるべきこと」の違い) AERA「国立大学法人法改正案に教職員、学生らから怒りの声 「学問の自由」を殺すな」 「国立大学法人法の改正案」については、マスコミが余り伝えないので、初めて知った。 「日本は国際的な『学問の自由度指数』で下位30%台と現状でもけっして良くありません」 2004年の国立大学法人化以降、国はトップダウン型のガバナンス改革を一貫して大学に要求してきた。 「スタンフォード大など米大学をまねようとしているのだと思います。しかし、米大学はトップダウン型である一方、ボトムアップの仕組みもきちんと確立されています。これに対し、日本は一連の大学改革でボトムアップの仕組みを無効化させてきました。改正案が通ったら、大学は『ブレーキを欠いた車』になってしまいます」、大変だ。 「経済界も30年間低迷を続けている。そんなグダグダな人たちが法改正で大学に介入し、『この研究は稼げる』『あれは稼げない』と選別することになったら取り返しのつかないことになります」 大学には非常に多様な研究があり、一見「稼げない」ように見える基礎研究や地域研究なども重要な役割を担っている・・・大学の土地の貸し付けの緩和も盛り込まれている。「稼ぐ」ことが優先され、学生のサークルスペースや福利厚生施設がつぶされていくことも懸念されている ・・・学生にこれほど影響を与える法改正なのに、学生は置き去りにされています。国は大学を道具のように扱わないでほしい。私物化するな、と言いたい」、極めて危険な法案のようだ。 PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「「林真理子さんを助けてやってくれ」就任1年以上経っても林理事長が日大改革を進められない"根本原因" カギを握るのは「ド派手なスーツの強力な助っ人弁護士」」 「「林真理子さんを助けてやってくれ」といくつものルートで依頼が飛び込んだ」、やはり「久保利氏」の名声は轟き亘っているのだろう。 「「第三者委員会答申検討会議」を設置した。その会議の議長に久保利氏を迎えたのだ」、「久保利氏と文科省には因縁があった」、どんな「因縁」なのだろう。 「文科省は「学校法人ガバナンス改革会議」(座長・増田宏一元日本公認会計士協会会長)を設置した。久保利氏はその会議の中心メンバーだったのだ・・・報告書をまとめる。その内容は、公益財団や社会福祉法人など公益法人の仕組みに沿った厳格なガバナンス体制を求めるものだった。 これに私学経営者らが猛烈に反発。自民党の文教族政治家らに働きかけて、改革案を骨抜きにしたのだ。文科省からすれば「過激な」ガバナンス体制を求める危険人物が久保利氏だった ・・・会議の設置を仕掛けた塩崎恭久元厚生労働相の強い意向で、報告書の作成には文科省の役人は一切関わっていないとされる。一説には久保利氏の事務所の弁護士がボランティアで作成したとも言われているのだ」、なるほど。 「改正私学法では、各学校法人が寄付行為で定めれば、多くでほぼ現行通りの体制を維持できるように「骨抜き」になった。学校法人自身の改革姿勢によって寄付行為はいかようにでも書ける形になったのだ。例えば、理事の選出方法などは法律では明確に示されず、各大学に自由度がある・・・日大は田中元理事長の不祥事を受けてガバナンス体制を見直したが、第三者委員会の調査報告書では、一定の改革が行われたものの、今回の不祥事で理事会への報告がなされなかったり、遅れたりしたことなどガバナンスが機能しなかったことが問題視されている」、なる ほど。 「見直された「寄付行為」でも理事長の権限は大きい」、なるほど。 「日大以外の学外者が増えた一方で、「副学長」を新設したため、学長と3人の副学長の発言力が大きくなり、理事長や理事会による「教学」への監督が弱くなった大きな要因だろう・・・日本大学で、繰り返される不祥事は、ガバナンスがまだまだ脆弱ぜいじゃくなことの証明でもある。2年前に久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう』、 「久保利氏らのガバナンス改革会議が示した強力なガバナンス体制を、少しでも自主的に導入していこうという動きが広がっていくことになるのだろう」、林理事長の謝罪を見なくて済む体制に早くしてもらいたいものだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「林真理子氏が気づかない「日大にやらされていること」と「本当にやるべきこと」の違い」 「第一段階では、監督責任もその後の報告も学長と副学長で十分なのです。 たぶん、林さんは真面目で、記者会見には出なければいけないと考えたのでしょうが、最終決定権のある理事長があの段階で出席すると、物事の是非を断言したり、重要な決定をしたりする必要に迫られます。案の定、記者の質問に対して「スポーツのほうにはまだ手を付けていなかったことを反省する」といった趣旨の、絶対にしてはならない失言をしてしまいました・・・ 本来は、1回目の記者会見を受けて状況を精査し、第三者委員会の意見を取り入れて、澤田氏や学長の処分という話になれば、林さんが裏できちんと事件をグリップしていると見られたに違いありません。しかしそうはならず、12月に入っても要領を得ない会見が開かれました。 林さんが理事長という役割を生真面目に考えすぎた結果、「林さんのカリスマで記者会見をなんとかしたい」という周囲の目論見に嵌められたのではないかと思います」、なるほど。 「田中氏は長期間にわたり大学を支配してきたため、隅々にまで情実関係にある部下が配置されていました。その人々はまだ大学に残っています。彼らをリストラするか、パワハラ的運営を改めさせるのが、改革の具体策です。 しかし、これは林さん一人では絶対にできません。確かに、第三者委員会に久保利英明弁護士を起用するなど、反社会勢力との対決をも意識した意欲は感じられます。しかし、久保利氏は総会屋対策で名を売った人。総会屋が壊滅された現在では一昔前の人と言わざるを得ません。反社会性力と絶縁するには、相当な豪腕が必要です・・・ 戦火に包まれたウクライナでは、アメリカンフットボールが人気スポーツになりました。ただ廃部にするのではなく、ウクライナチームを招待し合宿所で一緒に練習するなどの施策を講じれば、学生にとっては国際交流の面でも大変良い人生勉強ができるはずです。 日大には多くの部活が存在します。その財力を活かし、母国でスポーツができないパレスチナやシリアの人々を招き、国際的なスポーツ人を養うのも「日大が変わった」というアピールになり、日本の国際的評価の向上に貢献するはずです」、なるほど。 「日大の過去の負債の清算にばかり力を注ぐのではなく、そこには適任者を探して配置し、ご自身は林さんらしい大学つくりをしていただきたいと思っています」、強く同意する。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

介護(その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない) [社会]

介護については、2021年11月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない)である。

先ずは、昨年4月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「母、グループホームで2度目の“独り立ち”」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00444/042000002/
・『2017年3月、「『事実を認めない』から始まった私の介護敗戦」から連載を開始した、松浦晋也さんの「介護生活敗戦記」は、科学ジャーナリストとして自らを見る冷徹な視点から、介護を通した母親との壮絶な体験を、ペーソスあふれる文章で描き、絶大な支持をいただきました。コメント欄に胸を打つ投稿が相次いだのも記憶に残るところです。 この連載は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本・電子書籍となり、介護関連の本としては異例の支持を集めました。22年1月には集英社文庫に収録されております(こちら。文庫版にはジェーン・スーさんとの対談が追加されています)。 そして5年後。前回の最後は、松浦さんのお母様がグループホームに入ったところでしたが、今回はそこから今日まで起こったさまざまな出来事が語られます。 介護施設に入居したことで、母親の介護は終わったのでしょうか。 入居後にお母様、そして松浦さんを待っていたのはどんなことなのか。 ぜひじっくりとお読みください』、興味深そうだ。
・『グループホームというところ  母が暮らすことになったグループホームという老人施設――これがどのようなところなのか、おそらく介護を経験したことのない方は、ほぼ間違いなく知らないだろう。そもそも身近に要介護の老人がいなければ、「老人ホーム」という曖昧な言葉が持つ一般的なイメージ以上の知識は、生活の中に入ってこない。なんとなく老人がまとめて集められて、一斉に並んで食事しているぐらいのことしか思い浮かばないのではなかろうか。 今、日本の介護制度では、法的な裏付けを持つ、それぞれに特化した役割を持つ複数種類の施設が、機能を補完し合いながら、老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム」である。 グループホームの法的な正式名称は「認知症対応型共同生活介護」だが、一般的には「認知症高齢者グループホーム」となるだろうか(この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある)。 その名の通り、加齢で認知症を発症した人が共同生活を営む施設だ。2000年4月に介護保険法が施行されて、現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態である。 その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ。 地域密着型というのは、「その地域に居住する人のみを受け入れる」ということだ。施設の立地する市区町村に住民票がある者のみが入居資格を持つ。その他、医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件が付く。基本的に、「認知症以外は健康な高齢者」のための施設というわけだ。 もう一つ、入居に当たっては「集団生活を営むのに支障がない」という条件があり、これは入居審査時にホーム側が判断することになっている。 小規模、というのは文字通り規模が小さいということだ。入居者がなるべくアットホームな環境で過ごせるようにするためである。グループホームの規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある。 前の連載を終えてから、私は介護関係者との対談の仕事が増えたのだが、その中で会った一人が「グループホームへの入居というのは、成人して独り立ちした時に似ています」と説明していた。確かに、形としては「親元を離れて、賄い付き四畳半の下宿に入居する」というのと似ている。 ※「介護生活敗戦記」、単行本、文庫本として『母さん、ごめん。』が刊行中 スタッフの配置については、昼間は入居者3人につき1人、夜間は夜勤が1ユニットにつき1人という基準がある。が、実際問題として国は度々基準を変更しており、また人手不足ということもあって、どのグループホームも基準を満たす介護体制を組むのにかなりの苦労をしているようだ』、「老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム・・・この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある・・・現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態・・・その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ・・・医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件・・・規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある」、なるほど。
・『ここからは、母の入居したグループホームの話となる。 私の母が入居したグループホームは、設置基準の上限である2ユニット18人が入居する規模だった。最初から18人規模のグループホームとして使用する前提で建築された建屋を使用している。入居に当たって見学したグループホームの中には、既存の建物を改装したところもあった。そういうところは、ユニット数や1ユニットの人数が少ないこともあるようだ。 建物は入り口を中心に東と西のユニットに分かれている。母は西ユニットの入居だ。それぞれのユニットは共有スペースのダイニング兼用リビングが中心にあり、それを取り囲むようにして各居住者の個室が配置されている。床は段差のないバリアフリーで、汚した場合に備えて全面防水。これだけでも一般家庭とは段違いだ。もちろん風呂とトイレは介護に対応した設備を備えている。 スタッフ数は時によって1人増えたり減ったりはあったが、基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である。 その他に看護師が1人いて、入居者の体調管理を行っている。また、毎週1回かかりつけ医が回診して、投薬や専門医に掛かるべきかなどの指示をする』、「母の入居したグループホーム」は「基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である」。
・『どう考えても重労働  入居者1人にスタッフ1人という体制は、家庭で自分が母を介護していたときと同じリソース配分だ。が、1人に1人と、9人に9人では、全く状況が異なる。9人に9人なら、負荷が増えた時に分担することができる。1人に1人なら、何かあれば破綻するしかないが、9人に9人なら協力して乗り切ることができる。しかもその9人は、素人ではなく、きちんと介護の教育を受けたプロだ。 最初は「なるほど、手厚いものだ」と感心した。 が、せっせと通って、スタッフの方とも話をするうちに、これは「大変な仕事だ」と考えを改めざるを得なかった。 まず、9人が常時9人に張り付いているわけではない。スタッフもそれぞれに家庭の事情があって「この曜日なら働ける」というような条件付きで働いていたりもする。実際問題として昼間は早出と遅出の2シフト、さらに夜勤が入るとなると、これは「昼間は3人につき1人、夜勤は1ユニット1人」という基準を満たしてシフトを組むのには、かなりの苦労があるだろう。 特に1人で9人の介護を担当しなくてはならない夜勤は、はっきりと重労働であろう。入居者は寝ているとはいえ、必要に応じてトイレを手伝い、時には体の利かない入居者のリハビリパンツの交換を行い、粗相があれば掃除もしなくてはならないのだ。) 入居前に複数のグループホームを見学したことで、グループホームという施設の運営にはかなりホーム長の個性が強く出るものだと気が付いた。母の入居にあたっては、ホーム長を務めていたKさんの個性が、束縛を嫌う母に合いそうだという判断がかなり大きく影響した。 Kホーム長は、だいぶ私よりも若く、丸顔で癖のあるもじゃもじゃの髪を伸ばして後ろでポニーテールに縛っていた。私の第一印象はといえば「50年前に新宿駅前でフォークゲリラとかいってギター弾いて歌っていそうだ」という、思えば大変失礼なものだった。 彼の運営方針は、「あまり束縛しない」だった。それぞれの入居者はそれぞれの事情を抱えているのだから、なるべく寄り添うようにする。「あれをしろ、これをしろ」と言わないし、やりたいということはなるべく手伝う。 例えば、新しい入居者が放浪癖のある人だったことがある。 ホームはドアにカギが掛かる構造になっているので、物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる――体力があってどこまでも歩いてしまうような入居者ではなかったからできたのだろうが、このような柔らかい態度で接するということを基本としていた』、「物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる」、なかなかよく出来た「ホーム長」だ。
・『靴を持っていってしまう入居者  あるいは、すぐに靴を自分の部屋に持っていってしまう入居者の方がいた。私のような訪問者も玄関に置いていた自分の靴を、何度も持っていかれてしまったのだが、それも決して止めない。靴を自室に持ち帰り、そのまま本人が忘れてしまったタイミングでそっと元に戻しておく。その上で、私のような“被害者”に、そっと事情を説明するのだ。 「すみませんね、あの方は、若い時は市民ランナーとしてかなりのところまで走り込んでいて、いくつものマラソンを走ってきたんだそうですよ。だから靴にはものすごくこだわりがあるんです。靴、元に戻しておきましたから」というように。 ホームには、かなり広い庭がある。Kホーム長はそこに家庭菜園を作って野菜を栽培していた。「できる入居者の方には、声をかけて手伝ってもらうんですよ。そうすることで体を動かすことにもなりますし、いくらかでも“自分が他の人にとって役立っている”という実感を持ってもらえればと思っているんですけどね」ということだった。 同じ庭には時々近所の保育園の保育士さんと子どもたちがやってきて、遊んでいく。きちんと話を聞いたわけではないが、そのように取り計らったのもKホーム長らしかった。 それだけではなかった。ホーム長の居室は、建物の玄関のすぐ横にあるのだが、そこにはいつも10円駄菓子が常備されているのである。Kホーム長と話をしていると、時折、小学生ぐらいの子どもがやってきて、「くださーい」と声を張り上げる。するとKホーム長は出て行って、駄菓子と10円玉を交換するのだ。) 「近所の子たちに“いつ来てもいいよ、お菓子あるよ”って言ってあるんです。もちろん入居の方にすれば、子どもがちょろちょろ来るとうれしいというのはあると思うんですよね。ひょっとしたら『うるさい来るな』なのかもしれませんけれど」とKホーム長は言った。「それとは別にね、子どもの側にしても、こういうおじいさん、おばあさんが同じ社会にいるんだ、ということを少しでも知っておくことは、決して悪いことじゃないと思うんですよ」 この話を聞いた時に、私は「これは母のために、良いグループホームを選ぶことができたのかもしれない」と思ったのだった。 Kホーム長、そしてスタッフの皆さんに大変申し訳ないことではあるが、母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ。 私は、このことがグループホームのスタッフにも言えるのではないかと恐れていた。いかに仕事として入居者と関わるとしても、そこには強いストレスがあるのではないか。時には耐え難い感情に襲われるのではないか、と考えたのだ。 同時に、この考えには、母が入居する半年前、2016年7月に起きた相模原障害者施設殺傷事件も影を落としていた。知的障害者福祉施設のスタッフが入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた衝撃的な事件は社会に大きな衝撃を与え、母が入居した2017年1月時点もメディアに続報が出る状態だった。 全くもって「自分がやったことを棚に上げて、何を心配しているのか」なのだが、私は真剣に対策を考えた』、「母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ」、なるほど。
・スタッフとの信頼関係からすべては始まる  たどり着いた結論は、「とにかくスタッフに話しかける。スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである。 幸い、話の種はある。母そのものだ。グループホームでの母の状態を知りたければ、スタッフと話をするしかない。母自身から聞くこともできる。が、意地やら遠慮が働くし、何より認知症で記憶が続かない母の話は、要領を得ないことも多い。 というわけで、私はホームに赴くごとに、スタッフと積極的に話をするように努めた。母との面会と同じぐらいの時間を、スタッフとの会話に使うようにした。 話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働くというのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ。 そしてこの後、私は母の住む西ユニットで働く9人のスタッフの中でも、ケアマネジャーのYさんと、スタッフリーダーであるOさんの2人に、ずいぶんとお世話になることになるのである。(つづく)』、「スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである・・・話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働くというのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ」、なるほど。

次に、この続きを5月26日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」を紹介しよう。
・『2017年3月、「『事実を認めない』から始まった私の介護敗戦」から連載を開始した、松浦晋也さんの「介護生活敗戦記」は、科学ジャーナリストとして自らを見る冷徹な視点から、介護を通した母親との壮絶な体験を、ペーソスあふれる文章で描き、絶大な支持をいただきました。コメント欄に胸を打つ投稿が相次いだのも記憶に残るところです。 この連載は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本・電子書籍となり、介護関連の本としては異例の支持を集めました。22年1月には集英社文庫に収録されております(こちら。文庫版にはジェーン・スーさんとの対談が追加されています)。 そして5年後。前回の最後は、松浦さんのお母様がグループホームに入ったところでしたが、今回はそこから今日まで起こったさまざまな出来事が語られます。 介護施設に入居したことで、母親の介護は終わったのでしょうか。 入居後にお母様、そして松浦さんを待っていたのはどんなことなのか。 ぜひじっくりとお読みください』、興味深そうだ。
・『母のいるグループホームは「看取り(みとり)」に対応している。つまり、入居者がグループホームで最期を迎えることを想定して体制を組んでいる。 グループホームは「健康に問題がない認知症の人」の入る施設だ。このため看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる。 看取りに対する対応は、グループホームによって色々違うのだそうだ。看取りに対応していないグループホームもあって、その場合は、看取り対応の施設や、病院あるいはホスピスなどに送り出す。 老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する。 老人ばかりが入居するグループホームは、けっこうな頻度で入居者が入れ替わる。病気で退居する人との入れ替わりや、老衰死で空いた部屋に新たな入居者が入る。前回の訪問ではリビングで介助を受けながら健啖な食欲を発揮していた人が、次の訪問ではもういない、というようなことが起きる。事情を聞くと「急に食べなくなって、3日で亡くなられました」ということだったりする』、「看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる・・・老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する」、「老衰による最期」は理想的な「最期」だ。
・『不安がもたらす症状が突然顔を出す  ホームのリビングは天井が高く、内装は明るく、日差しもきれいに入ってくる。それでも、入居者が入れ替わることで、否応なしに「ここは人が死に至るまでの最後の時間を過ごす場所だ」ということを意識させられる。 新しく入居した方の認知症の症状は、前の方とはまったく異なるのが普通だ。母の見舞いと共に、それらの入居している人々と話し、観察していくことで、自分は、認知症という病気が非常に多様であることを実感した。認知症にはいくつもの原因があり、症状の現れ方は多様であると頭では知っていたが、実地に体験すると、その多様さは予想以上だった。 と同時に、その根底には共通して「不安と安心」があることが見えてきた。 母の入居当初、最初に話をするようになったのは、主に症状が軽い方だった。ご存じの通り、介護保険制度では、介護を受ける人を7段階に区分し、段階に応じた手当を行う仕組みになっている。家事や身支度などの日常生活に他者の支援が必要になり、助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる。 こういう方たちは、ちょっと見たところでは普通の人と変わらない。日常的な会話はできるし、私が家の老犬「ロンロン」を連れていくと、「かわいい!」と歓声を上げて集まってきて、代わる代わるだっこしたりする。 ところが、まったくの健常ではないことが、ふとした拍子に分かるのだ。) 犬を連れて帰ろうとすると、おばあさんの一人が「あー、楽しかった。じゃあ私も帰ろうかしら」といって立ち上がったりするのである。自分がグループホームに入居しているということの自覚がないのだ。 それまで普通に話をしていた人が、急におかしなことを言うのにはぎくりとする。日常に突如として裂け目が発生して、なにか見てはならない荒涼とした風景が垣間見える気分になる。 そんなときスタッフは決して、「いいえ、あなたは今ここに住んでいるんですよ」といった、諫めるようなことは言わない。「そうですか。もう少ししたらお茶とお菓子を出すつもりだったんですよ」とか、「今日は晩ご飯も食べていきませんか」というように、相手の意識を「帰る」というところから引き離すようにして注意をそらす。すると「あら、悪いわ」とか言いながら、おばあさんは再度腰を下ろし、話をしているうちに帰ろうとしていたことを忘れるのである。 「帰る」ということは、認知症の方には、わりと一般的な観念なのだと、私は知った。では、なぜ帰ろうとするのか?』、「助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる」、なるほど。
・『「泊まっていってください」  入居者の中に、大変活発にお話をするおばあさんがいた。歩行や座る、立つといった動作は一般人と変わりなく、スタッフに呼ばれればさっさと食事の支度に参加し、そつなく会話を交わす。はて、この方はどこが認知症なのだろうと思っていたある日、たまたま事情があってホームを就寝時刻になってから訪問することになった。 就寝時にケアすべきことは多い。入居者に歯を磨かせ、寝間着に着替えさせ、夜中に何回も起きてこなくても済むようにトイレに行かせる。もちろん一人では着替えができない人はいるし、トイレもままならない人もいるから、ケアはけっこうな重労働だ。そんな仕事をこなすスタッフの方と、合間を縫うようにして母の状態について情報を交換する。一段落ついたな、と思った頃、その活発なおばあさんが起きてきた。おや、さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う。 えっ、と驚く私。まったく驚く様子もないスタッフリーダーのOさん。Oさんは、「大丈夫ですよ。今日は遅いのでちゃんとベッドを用意しました。泊まっていってくださいな。ご家族にも連絡しておきましたから」と柔らかく話しかける。「でも悪いわ。泊まるんならお金払わなくちゃ」とおばあさんが言うと、「もう頂戴してますから払わなくてもいいんですよ」と返す。「……そう、そうなんだ。じゃあお世話になるわ。おやすみなさい」と自室に戻っていくおばあさん』、「大変活発にお話をするおばあさん」でも、「さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う」ような人がいるとは驚いた。「スタッフリーダー」の対応がさすがだ。
・『「帰りたい」のは「不安」だから  が、それで終わりではなかった。少しするとまたひょこひょことリビングに出てきて「なぜ私ここにいるのかしら」と同じことを言う。Oさんも同じ話を繰り返し、おばあさんは納得して部屋に戻り、そしてまた出てきて「ねえ、なぜここにいるのかしら」……。 これを何回繰り返したか。おばあさんが出てこなくなると、Oさんは少しほっとした表情を見せた。「あの方は、夜になると不安になるんですよ。それで毎晩就寝前になると、なぜここにいるんだろう、と起きてくるんです」 このとき、私は理解した。「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と。2年半、母を介護していて気が付かなかったのか、と言われれば、「すいません、気が付きませんでした」と言うしかない。 ともかく私は、グループホームで母以外の認知症の方と接することで、やっとこさ認知症の根底に「不安」があることに気が付いた。 不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる。 認知症の方の症状は多様だ。それぞれ固有の認知症の現れ方を抱えている。と、同時にその奥底には共通して、「不安」と、不安からの脱出手段としての「帰る」が渦巻いているのである。 もう少し認知症が進行したか、と思える人になると、異常行動が現れるようになる。それは以前も書いた徘徊だったり、靴を自室に持っていったりしてしまうといったものだ。 が、徘徊ひとつとっても、「入居前に住んでいた家に帰ろうとしての徘徊」「もうなくなってしまっている故郷に帰ろうとしての徘徊」「若い頃からの生活習慣として身に付いた散歩の表れとしての徘徊」と、本人の内面における位置付けは様々だ。しかもどこかに帰ろうとしての徘徊には、一緒に住んでいた今は亡き配偶者とか両親や兄弟に会いたいという、切ない心の動きがあったりする』、「「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と・・・不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる」、なるほど。
・『他人の部屋のものをすっと持っていく人  グループホームのスタッフは、そういうひとつひとつの事情に対応して、接し方を工夫し、異常行動が出ないようにもっていこうとする。それは、「入居者が安心して過ごせるようにする」ということでもある。Kホーム長は、私との会話の中で「僕らからどんなに変に思える行動にも、本人の内面ではきちんと筋の通った理由があるんです」とよく言っていた。どんなに不可解な行動でも、理由を理解した上で不安を無くす方向で接していけば、徐々にでも収まっていくというわけだ。 それは本当にプロの対人技術を必要とする、大変な仕事だと思う。いちど、母の居室で母と話をしていると、突然知らないおばあさんが部屋に入ってきたことがあった。何も言わずにそのまま母の化粧品のひとつをすっと手に取って出ていってしまった。こっちはびっくりして、何もすることはできなかった。 すぐにケアマネのYさんが来て、「ごめんなさい!」と言う。「入居したばかりの方なんですが、他の人の部屋に入ってものを持ってっちゃうんです。多分しばらく続くと思いますけれど、持っていったものは私たちが責任を持って戻しておきますから、許してください」 ホームの介護を受けているこちらとしては、許すも許さないもなく、とにかくこの状況を受け止めるしかない。) その後しばらくして、このおばあさんはものを持ち去ることをしなくなった。おそらくご本人の内面では、なにか理由があってものを持っていっていたのだろう。ものを持っていくという行為が何らかの機序で不安を解消していたのだろう。スタッフが理由を探り、理解し、寄り添うことで、異常行動は止まったのだろう。 さらに認知症が進み、脳の別の部位の萎縮が進行すると、今度は妄想が出てきたりする。表れとしては精神の病に近い。私が遭遇した例では、なぜかテレビに映るアナウンサーの女性に対して、執拗に「このバカ女! バカ女!」と罵声を投げかけるおばあさんがいた。 こうなると、かかりつけの医師の判断で精神科の投薬を受けることになる。時折、老人施設について「精神科の薬でおとなしくさせて、結果一日中ぼおっとなってしまって、認知症が進行する」というような批判を聞くことがある。が、私がグループホームで体験した限りにおいては、精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから。後述するが、母もまた症状の進行とともに妄想が出て、スタッフにけがをさせてしまうということが起きた』、「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、その通りだ。
・『スタッフの助けとなる「家族が書く書類」  精神的な問題が出ている場合にも、スタッフの側は「この人の内面では何が起きているのか、なにが不安なのか。なにか本人としては合理的な道筋をたどった結果、このような症状が出ているのではないか。とするなら、どのように接すれば、穏やかに過ごせるようになるか」と考え、実際にそのように接する。繰り返すが、プロの仕事という他ない。 スタッフと入居者との会話の基本となっているのが、入居時に家族が書く書類だ。母がこのグループホームに入居するにあたって書いた書類の中には、母の性格、生育歴に履歴、趣味などを書く欄があった。「なるべく詳細に記入してください。それをとっかかりにして私たちはお母様と会話しますから」と言われたのだが、実際にホームにお世話になって、会話のきっかけが大変重要であることを痛感した。 ひとこと話をすれば、次のひとことにつなげることができる。つなげることができれば、さらに会話を重ねて、相互の信頼関係を構築することができる。信頼関係ができれば、対話の中で入居者の内側に渦巻く不安を解消していくことが可能になる。 ただ、それも時代につれて、色々難しい要素が入ってくるようだ。ある日、私はKホーム長が難しい顔をして、考え込んでいるところに行き合わせた。 「どうしたんですか」という質問に、ホーム長曰く「今度入居する方の書類を読んでいるのですが、この方、スキューバ・ダイビングが趣味だったんだそうですよ」。 それの何が問題なのか分からない私に向かって、Kさんは続けた。 「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいないんです。一体どうやって話を合わせていけばいいんでしょうか』、「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいない」のは当然で、話を合わせる工夫を別途考えていくほかなさそうだ。

第三に、本年12月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「介護人材「離職超過」で初の減少、サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335076
・『賃上げしても介護人材が減少 離職者が新規就業者を6.3万人上回る  厚生労働省は高所得者の介護保険料を引き上げる案をまとめた。2024年度から実施する予定だ。この背景には、介護人材を確保できないという深刻な事情がある。 厚生労働省の分析によると、22年には介護分野からの離職者が入職者を約6万3000人上回り、就労者が前年より1.6%減少した。離職超過は初めての現象だ。 岸田文雄政権は21年に介護職員の月収を平均9000円上げたが、他の業種で賃上げが行なわれたために、転職者が増えたと見られる。 高齢者数の増加で要介護者数は40年には今より45%増えて、1000万人に迫ると予測されている。厚生労働省は、40年度には280万人の介護職員の確保が必要と試算するが、これでは足りなくなる可能性が高そうだ。 介護サービスや介護人材確保のため介護職員の賃金を引き上げる必要があり、介護保険料引き上げはやむを得ないだろう。だが負担増を国民に納得してもらうにはやるべきことがある』、興味深そうだ。
・『介護従事者の有効求人倍率3.96 訪問介護のヘルパーは15.53倍  介護サービスの人手不足は深刻だ。有効求人倍率を業種別に見ると、一般事務従事者が0.35なのに対して、介護サービス従事者は3.96と極めて高い値になっている(注1)。 訪問介護に関してはさらに深刻だ。厚労省の資料によれば、訪問介護を提供するヘルパーの有効求人倍率は2022年度で15.53だ(注2)。ヘルパー不足がいかに深刻な状況かがよく分かる。 それだけでなく、ヘルパーの年齢も問題だ。平均年齢は54.4歳。しかも65歳以上のヘルパーの割合が24.4%になる。腰痛等によってリタイアする可能性は極めて高い。 ヘルパーが不足し、デイサービスなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなっている地域もある』、「ヘルパーの年齢も問題だ。平均年齢は54.4歳。しかも65歳以上のヘルパーの割合が24.4%になる。腰痛等によってリタイアする可能性は極めて高い。 ヘルパーが不足し、デイサービスなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなっている地域もある」、「ヘルパー」まで高齢化しているのでは困ったことだ。
・『2040年には要介護者数1000万人に 現在より45%増加の予測  要介護・要支援認定者数は介護保険制度が発足した2000年には218万人だった。それが03年に336万人、13年に564万人と増加し、15年度には600万人を突破した。そして22年3月には690万人になった。 第1号被保険者(65歳以上)もこの間に増加したので、当然のことだ言えよう。 今後も高齢者数は増えるので、要介護者数は40年には1000万人に迫ると予測されている(注3)。つまり、現在よりも約45%も増加する』、コメントは次の次の段落で。
・『280万人の介護職員確保見込むが それでも不足する可能性  介護職員の数も要介護者の増加とともに増えるだろう。2019年度で介護職員は全国に約211万人いた。厚生労働省の試算では、40年度には、約280万人の介護職員を確保する必要があると推計されている。これは19年度から32.7%の増加だ(注4)。 だが前述のように要介護者数は、668万人から1000万人へと45%も増えるのだから、ずいぶん控えめな見積もりのように思える。実際にはこれでは足りなくなる可能性の方が大きいのではないだろうか? なお、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」では、介護分野の従業者数(これは介護職員より範囲が広い)は、20年度の334万人から40年度の505万人へと51.5%増加すると推計されている(注5)』、コメントは次の段落で。
・『介護人材増やすには賃金引き上げ必要 介護保険料、40年には月額9000円  こうした人手不足が懸念される状況でロボットの導入などによるサービスのやり方の効率化は必要だ。しかし基本的には、この分野の職員が増えることしか対処の方法はありえない。そして、そのための基本的な方策は賃金を引き上げることだ。 現在、利用者負担は原則1割(一部の高所得者は2割、3割負担)だ。それ以外は介護保険から支払われる。保険給付は税と介護保険料で賄われている。したがって職員の給与を引き上げるには、介護保険料を引き上げる必要がある。 自己負担を除いた介護給付費の総額も2020年度に10兆円を超えた。21年度には10.4兆円と、制度がスタートした2000年度比で3倍超に増えた。介護費用の総額も13.3兆円(22年度予算ベース)で約3.7倍になった。この費用をまかなうために保険料も大幅に増えてきた。 65歳以上の保険料(基準額の全国平均)は、2000年度には月額2911円だったが、いまは月額6014円だ。40年には月額約9000円になる見通しだ。 こうした背景で厚生労働省は、65歳以上の介護保険料に関して24年度からの引き上げを検討しており、所得が多い高齢者の負担は増加する。対象は1300万人で高齢者人口の35%を占める。一方、世帯全員が住民税非課税である低所得者の保険料を引き下げる方針だという』、「介護人材増やすには賃金引き上げ必要」だが、介護も機械をもっと大胆に取り入れて省力化していく必要もある。
・『保険料引き上げだけでなく 金融所得総合課税で負担公平化が必要  これは将来のサービス確保のために必要な引き上げなのだから、多くの人の理解を得られるだろう。 少子化対策のために健康保険料に上乗せするとか、リスキリングのために雇用保険料の一部を使うというようなことも提案されているが、そのような目的外の負担増ではなく、将来の介護を確実にするための負担だからだ。 ただ、単に負担を増加させるだけでなく、利用者負担率も見直す必要があるだろう。さらに効率化による介護費用の抑制も必要だ。 そして重要なのは、介護保険制度以外の例えば税制などの改革を関連させることだ。) その一つは介護保険料の算定のもととなる「所得」の範囲の適正化だ。 現状では、「所得」という場合に、金融資産からの所得は(分離課税を選択した場合には)除外されてしまう。だから所得の種類によって不公平が生じる。こうした不公平をなくすために金融資産所得の総合課税化が不可欠の課題だ。 これは、介護保険料に限った問題ではないが、今後、高齢化の進展に伴ってさまざまな公的負担の引き上げが不可欠となるので重要なことだ』、「金融資産所得の総合課税化」も必要だ。
・『労働力の移動を促進すべき 雇用調整助成金拡充は“逆行”  分野間の労働力移動を促進させる取り組みも重要だ。現状では、そうした労働移動が十分にできていない。 それだけでなく、労働者の企業間、産業間移動を妨げる政策が行われる。その典型がコロナ禍での営業自粛や休業の増加に対応するために、雇用調整助成金の特例措置が拡充されたことだ。このため、雇用調整助成金の支給金額は5兆円を突破するという巨額なものになった。 産業構造が変わるとは、古くなった産業が縮小し成長する産業がそれに変わるということだ。だから、いつまでも同じ会社で働き続けるのは不可能だ。就業者は、古くなった企業から新しい企業に移動しなければならない。それを円滑に実現できるような制度が必要だ。ところが、雇用調整助成金は企業から企業への移動を妨げるように作用した。まるで逆の政策をしたとしか思えない。 大きな経済ショックが生じたときに、1年未満程度の短期間でこの助成金制度が活用される分にはショックに伴う摩擦を軽減する働きがあるだろう。しかし、2年も3年も続くというのでは弊害のほうがずっと大きくなる。 雇用調整助成金が雇用を支え、社会不安が高まるのを抑えた効果があるのは間違いない。しかし、以上のような弊害があることもまた間違いないことだ。介護人材を確保するにはこうした労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある。 (注1)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」 (注2)社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回)資料1(令和5年7月24日) (注3)経済産業省 商務・サービスグループ「新しい健康社会の実現」、「4. 介護における課題と対応」(2023年3月) (注4)厚生労働省「8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 (注5)内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)-概要-」(平成30年5月21日)』、「雇用調整助成金」はあくまで緊急時のセーフティネットで、恒常化することは弊害が大きい。これらを含めて「労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある」。
タグ:介護 (その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない) 日経ビジネスオンライン 松浦 晋也氏による「母、グループホームで2度目の“独り立ち”」 「介護生活敗戦記」 「老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム・・・この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある・・・現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態・・・その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ・・・医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件・・・ 規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある」、なるほど。 「母の入居したグループホーム」は「基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である」 「物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる」、な かなかよく出来た「ホーム長」だ。 「母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ」、なるほど。 「スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである・・・話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働く というのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ」、なるほど。 松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」 「看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる・・・老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。 母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する」、「老衰による最期」は理想的な「最期」だ。 「助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる」、なるほど。 「大変活発にお話をするおばあさん」でも、「さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う」ような人がいるとは驚いた。「スタッフリーダー」の対応がさすがだ。 「「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と・・・不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる」、なるほど。 「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、その通りだ。 「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいない」のは当然で、話を合わせる工夫を別途考えていくほかなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「介護人材「離職超過」で初の減少、サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない」 「ヘルパー」まで高齢化しているのでは困ったことだ。 「介護人材増やすには賃金引き上げ必要」だが、介護も機械をもっと大胆に取り入れて省力化していく必要もある。 「雇用調整助成金」はあくまで緊急時のセーフティネットで、恒常化することは弊害が大きい。これらを含めて「労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある」。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

喫煙問題(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ) [社会]

喫煙問題については、2017年11月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ)である。なお、タイトルから「受動」は外した。
 
先ずは、2018年5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した北青山Dクリニック院長の阿保義久氏による「たばこが原因の「3大疾患」、平均余命10年短縮や手足切断も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/171299
・『5月31日は「世界禁煙デー」。日本では、5月31日から6月6日までが禁煙週間となっている。近年、喫煙による健康への被害が立証されるとともに喫煙者は減少しつつあるが、それでも喫煙をやめられない人は少なくない。では、喫煙を止めないことは、体にどれほど重大な疾患をもたらす可能性があるのか。今回はたばこが原因になっている「3大疾患」に着目して、北青山Dクリニック院長・阿保義久医師が解説する』、興味深そうだ。
・『外科医はヘビースモーカー?  皆さんの健康管理をつかさどるべき医師が「ヘビースモーカー」というのは、けしからん話だと思われる方が多いかもしれません。私は大学卒業後、自身の専門科として外科を専攻しましたが、多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました。 ご存じのように外科は手術を担当する科です。私が所属した外科の医局は、当時、胃がん、食道がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなど、主たるがんの手術と、血管の手術を担当していました。 早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました。各臓器チームのリーダー格の医師たちは決まってヘビースモーカーでした。 また、大学の医局を一時離れて都市部の機能病院で連日手術を担当することになった時も、手術の合間の休憩室では先輩外科医のほとんどがたばこを吸っていました。がんや大血管の手術という大きなプレッシャーを日々受けながら診療を担当する外科医は、そのストレス解消のためにたばこは手放せないのだろう、と当時は妙に納得していたものです。 言うまでもなく、たばこが、がんや血管病の発症リスクを大きくすることはどの医師も重々承知しており、日常診療で患者さんには禁煙を説いているのに自らは日常的に喫煙しているという、矛盾に満ちた状況でした』、「多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました・・・早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました」、かつて「外科医はヘビースモーカー」だったという事実には驚かされた。
・『ヘビースモーカーの医師たちが一斉に禁煙をはじめた理由は?  ところが、いつの間にか、大学病院はもちろん、市中病院においても、カンファレンスルームはおろか公共の場で喫煙ができるスペースはあっという間になくなってしまいました。あのヘビースモーカーだった医師たちも、右にならうように皆一切たばこを吸わなくなっていました。その理由として、国際的に禁煙が求められる風潮にあったことも挙げられるでしょうが、何よりも、喫煙があらゆる医学的観点において、重大な健康被害を生むことを示す科学的論拠が日に日に耳に入ってくるようになったことが大きいと言えます。) 喫煙が健康上、プラスになる点を無理に探しても一つも見つかりません。脳を活性化させる、イライラを止める、という側面がたばこにはあると言われますが、そのためにたばこを続けていると、認知症や精神疾患の発症が大幅に増えてしまうという客観的事実が次々と示されるようになりました。 そして、何よりも、喫煙者の周囲の人が吸うはめになる副流煙が健康を著しく害することが示されるようになったことも、医師の喫煙を止める大きな理由であったでしょう。喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示されたのです。 喫煙により自分だけが体調を崩すのであれば、医者の不養生で片付けられるかもしれませんが、人の病を治し健康を管理する医師が、自ら周囲の方の健康被害を作り出しているとしたら、それは職業上の背信行為でもあります。受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだと考えられます』、「喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示された・・・受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだ」、なるほど。
・『たばこの毒性、受動喫煙による病気は深刻 副流煙の方が主流煙よりも毒性物質の量が多い  たばこの煙には200種類上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にも及びます。有害物質として有名なのは、ニコチン、タール、一酸化炭素で、それぞれ、血圧を上げ、発がん性があり、血液中の酸素の運搬能を低下させます。その他にも、アセトン、ヒ素、トルエン、カドミウムなどの有害物質が含まれます。ニコチンはご存じのように依存症が強く、禁断症状の強さや離脱の難しさは麻薬以上とも考えられています。 先に述べた受動喫煙の被害は、本来はたばこを吸いたくない、吸う必要のない人が、自分勝手に吸っている人の何倍もの有害物質を取ってしまうことで引き起こされます。妊婦さんや乳幼児などたばこの害に対して脆弱な人たちが犠牲になりやすいことも問題視されます。 受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります。 さて、ここからは、そんなたばこが発症に強く関与する代表的な疾患を見ていきましょう』、「受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります」、なるほど。
・『平均余命が5~10年も縮む喫煙者の2割が発症の「慢性閉塞性肺疾患」  口から吸いこまれた有害物質だらけのたばこの煙は、気道を通ってまず肺に到達します。なので、たばこの害が肺で多く発生することは容易に想像できます。たばこにより気道や肺の防御機能が弱まるので、細菌やウイルスの侵入を防ぐことができず、肺炎が発生しやすくなります。気管・気管支への炎症も誘発することから、気管支喘息の発症も増えます。 たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたいと思います。これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります。そうなると四六時中呼吸苦を感じるようになります。 生きるために人は呼吸を止めることはできません。呼吸が止まるということは死を意味します。溺れたときのように息ができなくなる苦しさがどんなに辛いか想像に難くないでしょう。COPDは、少し歩いただけで息切れや溺れた時のような呼吸苦を感じ、重症化すると安静にしていても酸素吸入しないと苦しくて我慢できない状態に陥ります。吐くのも吸うのもつらくなり、窒息しているような状態が常に続くことになります。 どんなに激しい痛みよりも、窒息するほどの呼吸苦は、人にとっては拷問です。たばこをずっと吸い続けているとCOPDに陥る可能性は高まるばかりです。COPDは発症すると治りません。重症化すると、まさに生き地獄の日々を過ごすことになるのです』、「たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたい・・・これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります」、私もCOPDを発症し、禁煙に踏み切った。
・『手足の冷えから始まり、痛みから壊死へ 血管の病気「バージャー病」では手足の切断も  たばこは動脈硬化の危険因子であることはよく知られています。「動脈硬化」が進むと心筋梗塞や脳卒中の発症に繋がることも皆さんご存じでしょう。心筋梗塞や脳卒中の発症リスクに関して喫煙者と非喫煙者を比べると、圧倒的に喫煙者の方が発症リスクの高いことが疫学的に示されています。 例えば、非喫煙者に対して喫煙者は、心筋梗塞の発症リスクが男性は約4倍、女性は約3倍になります。毎日20本以上たばこを吸うと、脳卒中による死亡リスクは、男性では2.2倍、女性は約4倍にもなります。しかし、喫煙者であっても10年以上禁煙すれば、これらのリスクはほぼ非喫煙者と同等になることもわかっています。 さて、血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります。バージャー病という疾患名は皆さんあまり聞き慣れないと思いますが、最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります。動脈だけでなく手足の静脈にも痛みを発症することもある難治性の疾患です。 治療の基本は、禁煙です。治療として高圧酸素療法や交感神経節切除手術の他に、昨今は遺伝子治療なども行われるようになってきましたが、コントロールが困難なことが多く、壊死が進行すると手足の指の切断やさらには四肢の切断が必要になることがあります。 禁煙ができずにだらだらしているうちに徐々に病状が進展して、手足を失うことになる怖い病気です。ただし、早期に禁煙を厳守して適切な治療を施せば重症化を防ぐことができ、発症前の仕事や日常生活への復帰が可能です』、「血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります・・・最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります」、恐ろしい症状だ。
・『「がん」の発症リスクも喫煙でアップ 難治がんの「膵臓がん」対策は禁煙こそ近道に  非喫煙者に比べて喫煙者は、全ての「がん」の発症率が大きいという報告をしばしば目にします。たばこを吸っている人がなりやすいがんとして、科学的に明らかなものだと、厚労省が発表したものは以下のがんです。  鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています。 がんは早期発見により根治が可能なものが増えてきました。しかし、早期発見が難しく、一旦発症すると進行が速いがんは「難治がん」と呼ばれ、現代医療においてもコントロールすることが困難です。その難治がんの代表的なものが「膵臓がん」です。 早期発見できたとしても5年生存率は40%程度、多くは進行がんで発見されるため、平均5年生存率は20%以下という非常に悩ましい疾患です。予防こそが膵臓がんの発症をコントロールする極めて大切な方法と言えます。極めて厄介ながんの代表格である膵臓がんを予防するための方法として、「禁煙すること」は大いに意味があるでしょう』、「たばこを吸っている人がなりやすいがんとして・・・鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています」、なるほど。
・『現代医療をもってしてもたばこによる病気は治せない  以上、たばこによって引き起こされる代表的な病気を見てきました。取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう。 愛煙家が注目しているという、電子たばこや加熱式たばこは、従来のたばこに比べて健康被害が小さいと期待の声が上がっていますが、それも喫煙ありきの立場からのもので、科学的な論拠は乏しいものです。また、その発生する微粒子が健康被害を生むリスクも危ぶまれています。 たばこが医学的に体に悪いと知っていながら、ヘビースモーカーだった医師たちがきっぱりと禁煙した理由を改めて思い起こしましょう。たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います』、「取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう・・・たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います」、なるほど。

次に、本年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医学博士・解剖学者の養老孟司氏と、東京大学大学院医学系研究科特任教授の中川恵一氏による「「タバコが健康に悪いなんて、誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330511
・『2020年6月に無痛性の心筋梗塞が見つかり、2週間の入院生活を送った養老氏。教え子であり心筋梗塞を見つけた中川恵一医師とタッグを組み、病院や医療と絶妙な距離感を取りながら、老いや病気、死生観、地震や災害、健康法について縦横無尽に綴る。本稿は養老孟司、中川恵一『養老先生、再び病院へ行く』(エクスナレッジ)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『寝耳に水だった心筋梗塞での入院生活  「がんになったらどうしますか?」と聞かれることがありますが、なったらなったでしょうがないと思っています。85歳ですから、今からがんが見つかったとしても、何も治療をする気はありません。 調べればがんが見つかるのかしれません。でも今まで一度もがん検診を受けたことがないので、あるかないかもわかりません。 2020年に東大病院に行ったのは、具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました。 僕は小学校1年生のときにも東大病院に入院しています。 東大病院の小児科に入院していたのは、おそらく昭和20(1945)年ではないかと思います。山の手大空襲(1945年5月25日)があって、病室のガラスがビリビリ揺れたり、患者さんがみんな地下に避難したのを覚えています。 なぜ東大病院に入院することになったのかというと、2歳のときの鼠径ヘルニアがきっかけです。鼠径ヘルニアは腸が本来の位置から下腹部にはみ出す症状です。はみ出した部位がゆるければいいのですが、狭くなっていると腸が戻らなくなります。するとはみ出た腸が血行不良を起こして壊死します。そこで、外来で緊急手術をしてもらいました。 そのときの手術の傷を縫う糸に、ばい菌がついていたのでしょう。5~6年かけて大きく膿んでしまったので、また東大病院で手術することになりました。大きな階段教室の真ん中に手術台があって、まわりを医学生さんが見学している中での手術です。子どもですから、ギャーギャー叫んでいたみたいです。 当時は、エーテル麻酔が主流でしたが、エーテルでは軽すぎたのか、執刀医が「クロロホルム」と叫んだのを覚えています。 クロロホルムも麻酔薬です。後に医学部に入って勉強してわかったことですが、クロロホルム麻酔は1000人に1人くらいの確率で死ぬそうです。幸い死なずに、その手術も終わりました。) それで終わったと思ったら、まだ終わりではありませんでした。細菌性のアレルギーを起こして、朝起きると目やにが出るようになったのです。眼科の先生に診てもらったら、このまま放っておくと、いずれまつげも全部なくなると言われ、母が心配していたのを覚えています。 そのときに行われた治療が、今でいうところの脱感作療法で、アレルギーの原因菌の抗原を注射して、それを少しずつ増やしていくことで、過敏な反応を減らしていきます。その注射薬をつくっていたのが、当時の伝染病研究所(現在の東京大学医科学研究所)でした。 注射薬は1日しかもたないので、看護師さんが毎日、伝染病研究所まで取りに行って注射してくれました。そんなこともありましたので、東大病院には昔も今もずいぶんお世話になっているんです。 だから東大には足を向けて寝られないはずですが、できれば行きたくない場所でもあります。ありがたいというのと同時に、嫌だという気持ちが同居しているのです。 僕もいちおう医者の修行をしましたが、お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。最初のうち、どこが問題なのかわからずに手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです』、「具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました」、養老先生でも自己診断は当てにならないようだ。「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。最初のうち、どこが問題なのかわからずに手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです」、「「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました・・・手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました」、「6時間」もの大手術に耐えられなかったのかも知れない。確かに「患者さんが勝手に死んでしまう」ケースだ。
・『年寄りががんの予防をする意味がわからない  2022年4月12日の診察では、大腸ポリープを取るか取らないかについて尋ねられました。2年前に「取らない」と言っていたのに、また尋ねるんです。東大病院の先生方は取る気満々だと、中川さん(編集部注/東大病院の中川恵一教授)から聞きました。 この大腸ポリープを放置していると、がん化するから取るべきだと言っているのですが、もちろん取る気はありません。 大腸ポリープがあることになったのは、心筋梗塞で入院して半ば強制的に大腸まで調べられたからです。入院患者に拒否権はありません。俎板の鯉、「さあ、殺せ!」という心境になっていますから、やるより他に手がないのです。) そもそも大腸ポリープなんて、内視鏡で調べなければ存在しません。調べた人が取ると言っているだけだから、僕はそんなの知りませんよと答えるだけです。 胃にも胃がんのリスクを高めるピロリ菌というやつがいて、除菌治療を勧められましたが、これも「除菌しない」と言っています。 大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね』、「大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね」、さすがにすごい覚悟なので、主治医も手を焼いたことだろう。
・『タバコは健康に悪いがメリットもたくさんある  東大病院の先生たちからは、タバコについても聞かれました。入院していたときは、もちろん吸っていません。病院内で吸ったら強制退院させられると聞いていましたし、病院では言われたとおりにしていたので、キッパリと禁煙しました。 退院してからも、しばらく禁煙していましたが、ときどき吸うようになって、今に至っています。 2月8日の再診では、少し吸っているけど家では吸っていないとか、テキトーに答えていましたが、基本的に吸いたいときは一服しています。 僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした。 健康のため禁煙したほうがよいと言われます。しかし、これは『愛煙家通信』に以前書いたことでもありますが、タバコが健康に悪いことなど、昔から誰でも知っています。僕が大学に入学した60年以上も前の話ですが、通学途中でばったり出会った同級生から「昨日タバコを吸って朝起きたら、口の中に嫌な味がまだ残っている。こんなもの健康にいいわけがない。俺はやめるから、お前もやめろ」と言われたことがあります。 つまり、タバコは60年以上も前から「健康に悪い」「お前もやめろ」と言われ続けているのです。にもかかわらず、多くの人が吸い続けているのは、タバコに何らかのメリットがあるからでしょう。) タバコは健康に悪いかもしれないけれど、メリットもたくさんあると思っています。例えば、人間は1日の3分の1は眠らないと生きていけませんが、眠っているときに脳に溜まった無秩序を清算してスッキリさせていると考えられています。タバコを一服するのは睡眠と同じで、無秩序を少しだけ清算しているのかもしれません。 意識は秩序活動なので、意識活動にともなってエントロピーが増大し、その分、無秩序が生み出されます。だから、タバコをやめても別の方法で無秩序を清算しなければならないのです。つまり、今までタバコを吸って無秩序を清算していた人は、タバコをやめるだけではスッキリできないということです。 ちなみに中川さんによると、タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです。今からやめて20年としても、僕は105歳ですから、今から禁煙する意味はほとんどないでしょう』、「僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「ブータンの空港・・・空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「70代」の時とはいえ大したものだ。「タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです」、私の場合でも禁煙する意味は余りなかったことになる。
・『確実に来るであろう南海トラフ大地震  僕は病院に行って、最後に会計をするときにいつも思います。いったい自分以外の人にどれだけ医療費の負担をかけているのかということを。 里見清一(ペンネーム、本名は國頭英夫で日本赤十字社医療センター化学療法科部長)さんが、SATOMI臨床研究プロジェクトというのをやっていて、臨床研究を後押しする活動を行っています。医療にムダなお金をかけないよう合理化するための研究です。計算上、医療費がこのまま増え続けると、国民皆保険制度は続かないことが明らかになったわけです。 こういう問題をどう解決するか、この国ではあまり考えていません。国家の大きなプランとして考えていかないといずれ立ちゆかなくなってしまうでしょう。 エネルギー問題も同じです。持続可能性を考えたら、一番の問題がエネルギーであることは間違いありません。 日本人は予定調和で、それにはよいところもあるのですが、次の大きな自然災害が来てから、医療費やエネルギーについて考えるのではもう間に合いません。 2038年に来るといわれている南海トラフ大地震は、僕は確実に来ると思っています。地震学者で京都大学元総長の尾池和夫さんが『2038年南海トラフの巨大地震』という本を書いているから、かなり信憑性が高いと思っています。 それまでにもう20年ありません。そのときに自力で復旧できる経済力が日本にあるのか疑問に思います。) 地震で広い国土がボコボコになって、それを復旧させるときに誰がお金を出すのか。もっと具体的に言うと、家が潰れたら誰がお金を出して家を建て直してくれるのか。それを国全体で考えると、インフラが壊れたら、まずそれを整備することから始めないといけないのです。 それに復旧するまでは食料を輸入しなければならなくなるかもしれません。とにかく、とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません。そのときは否が応でも来ると僕は思っています』、「南海トラフ大地震」が起これば、「とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません」、「国土を身売りする」とは所有権付きで譲渡する、或いは「その国土から生み出されるキャッシュフローを譲渡することになるが、いずれにしろ、法律面の手当を含め、大変な事態だ。
・『情報化社会だからこそ読むべきは鴨長明『方丈記』  最近、『方丈記』がよく読まれているそうです。今のような時代には作者の鴨長明の生き方が、しっくりくるような気がします。 僕も多くの人に読んでもらいたいと思って、『漫画方丈記 日本最古の災害文学』の解説も書きました。 僕が若い頃『方丈記』に興味をもったきっかけは、堀田善衛の『方丈記私記』でした。都の大火の描写が東京大空襲と重なるという趣旨でしたが、数百年前の話と自分の知る時代がピッタリくるものかと思って原典を読んでみると、文献の乏しい鎌倉時代なのに記述がとても具体的です。 よく覚えているのが、飢饉の際、隆暁法印という偉いお坊さんが供養のために死体の額に「阿」の字を書いて数えていったら、都の東半分だけで4万2300あまりもあったと言うのです。 僕は解剖をやっていたから、死体には慣れていますが、そこまで都が死屍累々なのを見たら、人生ってなんだろうと考えざるを得ないだろうなと感じました。 『方丈記』の書き出しの「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は、多くの人に知られていると思います。これに近い時代に書かれたと言われている『平家物語』の始まりは「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で、同じ感慨を記しています。どちらの文章もすべてのものは移り変わり、とどまることはないと述べています。 一方で、現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。だからこそ、改めて読んでほしいと思います』、「現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。同感である。
タグ:(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ) 喫煙問題 ダイヤモンド・オンライン 阿保義久氏による「たばこが原因の「3大疾患」、平均余命10年短縮や手足切断も」 「多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました・・・早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました」、かつて「外科医はヘビースモーカー」だったという事実には驚かされた。 「喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示された・・・受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだ」、なるほど。 「受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります」、なるほど。 「たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたい・・・これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症 すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります」、私もCOPDを発症し、禁煙に踏み切った。 「血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります・・・最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります」、恐ろしい症状だ。 「たばこを吸っている人がなりやすいがんとして・・・鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています」、なるほど。 「取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう・・・ たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います」、なるほど。 養老孟司氏 中川恵一氏による「「タバコが健康に悪いなんて、誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ」 養老孟司、中川恵一『養老先生、再び病院へ行く』(エクスナレッジ) 「具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました」、 養老先生でも自己診断は当てにならないようだ。「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。 最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです」、「「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました・・・手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました」、「6時間」もの大手術に耐えられなかったのかも知れない。確かに「患者さんが勝手に死んでしまう」ケースだ。 「大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね」、さすがにすごい覚悟なので、主治医も手を焼いたことだろう。 「僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、 「ブータンの空港・・・空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「70代」の時とはいえ大したものだ。「タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです」、私の場合でも禁煙する意味は余りなかったことになる。 「南海トラフ大地震」が起これば、「とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません」、「国土を身売りする」とは所有権付きで譲渡する、或いは「その国土から生み出されるキャッシュフローを譲渡することになるが、いずれにしろ、法律面の手当を含め、大変な事態だ。 「現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ハラスメント(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) [社会]

ハラスメントについては、本年8月16日に取上げた。今日は、(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり)である。

先ずは、本年9月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328852
・『ジャニーズ事務所の性加害問題について「外部専門家による再発防止特別チーム」が「調査報告書」を発表したのは2023年8月末。この中で、故・ジャニー喜多川氏による長年にわたる性虐待の実態が、被害者からの証言の形で記されていた。しかし、いわゆる「男性も性被害者」として認める法改正がなされたのは17年になってからのことだ。法改正が遅れたことによる影響を改めて振り返ってみたい』、興味深そうだ。
・『衝撃的な「ヒアリング結果」  「調査報告書」では、ジャニー氏による性加害は1950年代から2010年代半ばまで続いていたものであり、被害に遭った少年が多数いることが認定された。 また、その原因は4つ「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」と指摘されている。 ジャニー氏の個人による問題と、隠蔽した組織の問題の両方があり、さらにその背景には「マスメディアの沈黙」「業界の問題」があったという指摘を、マスコミや業界関係者は重く受け止めなければならないだろう。被害の一端を知りながら、あるいは薄々勘づいていながら、ほぼ全ての人が何も行動を起こさなかったのだ。 調査報告書の中で、特に読む人に衝撃を与えたのが、性加害についての「ヒアリング結果」だろう。この中では具体的にどのような被害があったのかについて、匿名の証言が列挙されている。 「ジャニー氏は1万円を渡してきたので、これは売春のようだと思った」「私が被害を受けている間、周囲のジャニーズJr.たちは見て見ぬふりをしていた」といった証言が悲痛である。 性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい』、「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。
・『「強姦罪」から名称変更された意味  男性の性被害に関して言えば、6年前の17年の時点で大きな改正があった。 それは、従来の「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更されたという点だ。ネット上で「罪名を変更しても厳罰化しなければ意味がない」というコメントを見かけたことがあるが、これは単なる名称変更ではない。 それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交(女性器への男性器の挿入)を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである。また、「強姦」は「女性を姦淫する」という意味であるため、名称が変更され、やや違和感のある罪名となったのである(23年の改正で、不同意性交等罪に改められた)。 2017年以前は、口腔性交や肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」であり、懲役6月~10年の罪だったため、男性に対する性犯罪は女性に対する性犯罪よりも「軽く」捉えられていたと言える。 そんな状況だったのが、17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだのである』、「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。
・『男児複数人への性加害、懲役20年のケースも  「調査報告書」を見ると、口腔性交をされたという証言は多く、中には肛門性交をされたという証言もある。これらは、現在の基準であれば懲役5年以上の「不同意性交等罪(17年7月~23年7月12日までは強制性交等罪)」となる。 22年の裁判で、男児に対する性的暴行で逮捕された元ベビーシッターの男に対して懲役20年が言い渡された。この事件の被害児童は20人、強制性交等罪での立件が22件、強制わいせつ罪が14件と報道されている。 仮定の話に意味はないが、現在の基準で故・ジャニー喜多川氏が裁かれていたとすれば、相当重い懲役となったはずである。 しかし、ジャニー氏の存命中にこの問題が発覚していてもどうであったか……。故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない』、「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。
・『13~15歳の被害が多いのはなぜか  また、もう一つのポイントは性交同意年齢だろう。 調査報告書を見ると、被害に遭った年齢は10代前半に集中している。「13~14歳時」「14~15歳時」「中学1年頃」「中学2年頃」といった証言が多い。 23年の刑法改正まで、日本の性交同意年齢は男女関係なく13歳だった(法改正後は16歳に引き上げ)。 13歳未満の者に対しては、性的行為をした時点でアウトだが、13歳に達していた場合、「暴行・脅迫」が用いられたどうかが問われていた(23年の改正前刑法)。 「調査報告書」の中では、ジャニー氏が性的行為に及んだ際に明確な暴行や脅迫があったとは記されていない。だからといって、彼の行為が「同意のある性行為」だったと考える人は、今やほぼいないだろうが、これらについて「被害」を立証することは、当時の法律や認識では難易度が高かっただろう。「嫌ならなぜ抵抗しなかったのか」「男の子なのだから逃げようと思えば逃げられたはずだ」と言われてしまったであろうことは容易に想像できる。 23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ』、「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。
・『時効の問題  23年の改正では、性犯罪の時効についても変更があった。 不同意性交等罪(改正前は強制性交等罪・凖強制性交等罪)は10年から15年、不同意わいせつ罪(改正前は強制わいせつ罪)は7年から12年に時効が引き上げられた。ただし改正以前に行われた行為については、時効はそれぞれ10年、7年のままである。※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される。 口腔性交と肛門性交の強要が強制性交にあたるようになったのが2017年だが、強制性交等罪にあたる被害については、そもそも2017年の法改正以降しか問うことができないということだ(それ以前の口腔性交、肛門性交の強要は強制わいせつ罪なので、さかのぼれるのは2016年までだ)。 ジャニー喜多川氏は19年に亡くなっているが、死去の直前まで加害行為があったとすれば、被疑者死亡ながら時効を迎えていない被害もあるのだろう。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は9月4日の会見で刑事告発を行う考えを明らかにしているが、告発を行う人がいるのであれば、この期間(時効が過ぎていない期間)での被害なのではないか。 性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる。 今回、被害を打ち明けた当事者の人々の中には、40~50代以上も多い。これをどう考えるかは、今後社会に向けても問われることとなりそうだ。 【追記】27段落目:※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される (2023年9月27日9:50 ダイヤモンド編集部)』、「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。

次に、9月9日付け東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/700654
・『9月7日に開かれたジャニーズ事務所の劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。 ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた。何十台ものカメラやビデオカメラが彼らを見守った。どんな質問もタブーではなかった。報道陣が望めば、何日でも続いただろう』、「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。
・『「家族会議」のような奇妙な会見  しかし、長引けば長引くほど、私たちが知ることは少なくなっていった。すべての瞬間が妙に空虚だった。まるで家族会議が開かれ、そこにいる人が皆で一緒に癒やされようとしているようにさえ感じられた。 ジャニー喜多川の何十年にも及ぶ少年への性的加害が認められたにもかかわらず、会場全体がジャニーズ事務所の存続を望んでいるような雰囲気さえあった。 おそらく会見会場にいる誰もが、自ら調査をしなかったことを恥ずかしく思っていただろう。ジャニーズ事務所はそのトップであったジャニー喜多川が、何百人もの少年に性的加害をしながらジャーナリストからファンまでをその巨大な軌道に取り込み、劣化させ、見て見ぬ振りをさせることに見事に成功してきた。) 会見では、ジャニー喜多川は、その旧態依然とした振る舞いが長い時を経てようやく露呈した、孤独で卑劣な「おじいちゃん」として描かれたが、はたしてそうだろうか? 会見直前、私は日刊ゲンダイデジタルに掲載された記事に目を引かれた。そこには、2005年に発売された元ジャニーズJr.の山崎正人氏が、木山将吾のペンネームで書いた『Smapへーそして、すべてのジャニーズタレントへ』が紹介され、ジャニーズの東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという。 もし木山の主張が事実でないなら、東山は木山を名誉毀損で訴えるべきだ。記者会見で筆者を含めて複数の記者がこの点について尋ねると、東山の答えはどんどんと変わっていった。 筆者が最初に尋ねたときは「中身は読んでいないが、事実ではないと思う」としていたが、別の記者が同様の質問をすると、「したかもしれないし、していないかもしれない。よく思い出せない」という趣旨の発言をした。だが、こんなシーンを忘れることができるだろうか』、「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加害者の1人だったとは驚いた。
・『アルコール依存症の治療をバーテンダーに任せるよう  私は彼自身に個人的な不満はないが、ジャニー喜多川の「お気に入りの息子」である彼にジャニーズ事務所の更生を担当させるのは、バーテンダーにアルコール依存症対策プログラムを担当させるようなものだ。 東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない。) 日本の刑法では、酒気帯び運転をした場合、助手席の同乗者にも運転させた責任がある。バーテンダーには酒を提供した責任がある。 同じ理屈が、ジャニー喜多川の捕食行為を何十年も野放しにしてきた東山や藤島ジュリー景子前社長、その他の側近メンバーにも当てはまらないだろうか?真実は、ジャニー喜多川1人で罪を犯すことはできなかった、ということだ。彼が捕食することを可能にしていた環境があり、彼の悪癖を“助ける”者たちがいた可能性もある。 ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ』、「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。
・『外圧がなければ放置されたままだった  秘密によって集団が引き裂かれる物語では、しばしば部外者がその秘密を暴露する。今回はBBCのジャーナリストだ。 モンスターになる前のジャニー喜多川は、たんに心に問題を抱えた人間だったのかもしれない。 彼のそうした問題が早い段階で見抜かれ、有罪判決や治療によって、キャリアの早い段階から正しい方向に戻っていたなら、その素晴らしい才能を善のためだけの力として発揮できたかもしれない。 だが結局、彼は何十年も自分の好きに振る舞うことが許されていた。日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ。) ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか。経済的、社会的衰退のために、海外への日本に関する報道が減少し、日本にポジティブな影響を与えてきた「外圧」が減っている今、日本のメディアはこのことを自ら真剣に考えるべきだ』、「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。
・『「ジャニーズ問題」はすべての日本人の問題だ  ジャニーズの物語はすべての人に影響を与えるものであり、それは今やすべての人の責任である。社会にとってこれほど悪質な実績を持つ企業と関係を続けるかどうかは、スポンサー企業の判断に委ねられている。スポンサー企業は、ジャニーズ事務所や、同事務所を支援した企業との関係を完全に断ち切るべきである。 より責任が重いのはテレビ局だ。テレビ局の中には、早々にジャニーズ事務所所属タレントの番組出演について変更する予定がない旨を表明した局もあるが、開いた口が塞がらない。 テレビ局は、ジャニーズと組むことで社会的責任を回避するのをやめるべきだ。テレビ朝日はこれからも『#裸の少年』を放送するつもりなのだろうか。大手テレビ局が、こんなタイトルの番組を放送するのは普通なのだろうか?テレビ朝日のウェブサイトにある「ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み」が何と空々しいことか。 テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう。 ジャニー喜多川は、残念ながらこの世で最後の異常性癖者ではない。何の検証もしないで、また彼のような人物が現れたとき、メディアはいったいどうやって再発防止を図るつもりなのだろうか』、「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。

第三に、11月27日付け日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/332546
・『救いようがないとはこのことだ。楽天の安楽智大(27)が複数の同僚選手から暴力行為などのパワハラ被害を訴えられた件である。 関係者によると、安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた。すでに楽天を退団した選手は、2021年の春季キャンプ中に平手で頭部付近を殴られ、むち打ち症状に。試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に。仙台の地元マスコミ関係者は、「先輩選手からは礼儀正しいと評判だった。かねて派手な夜遊びは懸念されていましたが……」と、こう続ける』、「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。それも「パワハラ」であることは間違いないが・・・。
・『後輩足蹴動画が拡散  「ネット上では、選手同士の記念撮影の際、安楽らしき人物が後列から前例にいた選手を足蹴にする画像、動画が拡散している。後輩を小突いたり蹴とばしたりするのは日常茶飯事。強引に食事に誘ったり、合コンのセッティングを強要するなどコキ使うことも。一部報道では10人程度の同僚選手がパワハラを告発したとありますが、ある選手に言わせると、安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」』、「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。
・『中田翔や山川穂高よりタチが悪い  スポニチによると、ある選手は「罰金」と称してお金を要求されることがあったと告白。そのメールのやりとりを保存しているという。 「このままいけば11月末が締め切りの保留者名簿から外れ、“クビ”になる可能性もある」とは、前出のマスコミ関係者。 「世間がコンプライアンスに厳しい目を向ける時代に、暴力と日常的なパワハラも明らかになった。21年は中田翔が同僚選手への暴行で無期限謹慎(後に巨人へ無償トレード)、今年は西武の山川穂高が女性問題でこちらも無期限の公式戦出場停止処分を受けた。安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う。 「昔は酒の一気飲みを強要されるのは序の口。かつてパのある投手は納会の余興として人前で先輩投手に素っ裸にさせられ、体中がアザだらけになるほどベルトでムチ打たれた。警察沙汰になるようなことも球団が内々でもみ消してきたから大した問題にはならなかっただけのことです。暴力、パワハラの類いは減りつつあるものの、そもそもプロ野球界は不祥事に対して甘い。女性問題に絡み、ヤクザに1億円を支払うような人物が監督を務めるくらいですから」』、「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。
・『高校時代の「カメムシ事件」  不祥事が多いのはアマ球界も同じ。高校野球では部員の飲酒、喫煙に加え、指導者による体罰や部員同士の暴力沙汰は枚挙にいとまがない。日本学生野球協会はこの2カ月だけでも16件の処分を決定。10月には部内のイジメが発覚した宮崎・小林西に3カ月の対外試合禁止を言い渡している。 「西日本のある私立高では、監督が試合で守備のミスをした選手に至近距離から強烈なノックを打って前歯を折ったそうです。アマ球界はいまだ勝利至上主義が根強く、小学生のリトルリーグからパワハラ気質の指導者が跋扈している。そういう環境で育った選手が勝てば何をやっても許されると勘違いするのも当然です。アマ時代の過度な上下関係をそのまま持ち込む安楽のような人間がいても不思議ではありません」(スポーツライター) そういえば安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた。 安楽本人はこの件に関わっていないとされたが、1位指名を検討していた一部球団は「プロ入り後にその問題が蒸し返されて、加害者のひとりとして名前が出るようなことになったら困る」などとして、指名回避をしたとされる。 仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……』、「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
タグ:「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。 「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。 「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。 「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。 鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」 ダイヤモンド・オンライン ハラスメント (その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) 「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。 東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」 「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。 「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加 害者の1人だったとは驚いた。 「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。 「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。 「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。 日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」 「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。 「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。 「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。 「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

保育園(待機児童)問題(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) [社会]

保育園(待機児童)問題については、2021年5月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?)である。

先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『幼稚園や保育園で「園児の置き去り事故」が相次いでいる。労働ジャーナリストの小林美希さんは「諸悪の根源は安倍政権の下で進んだ待機児童対策だ。園の数はここ10年で急増したが、保育士の労働環境は悪化しており、保育の質が低下している」という――』、興味深そうだ。
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」  「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」、なるほど。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに…  それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった・・・大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた」、「転園」とは賢明な判断だ。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した  福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した・・・保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、なるほど。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった  かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ」、なるほど。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか  その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか」、「差」が「最大で年間200万円近く」とは無視出来ない額だ。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが…  ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「保育士の最低配置基準」では不十分として、「ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している」、他方で、「最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」・・・という考え方」をとるところも多い。
・『都内30カ所で違反が常態化している  ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、なるほど。
・『6年間で保育事故は3.5倍に  保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると・・・2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている・・・2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だ」、大変だ。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく  政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ・・・「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ」、同感である。

次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、なるほど。
・『保育園から「突然の通告」  はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、「保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない」、なるほど。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと  日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされた・・・そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定・・・一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」・・・が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した」、これまでの流れが要領良く整理されている。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害  新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、重大な指摘だ。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか  待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7)』、 「慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、これほど「公営」と「私営」の割合が「逆転」したとは、衝撃的だ。
・『保育の質が低下することへの懸念  誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 ※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、「質の低下」は今後、問題化必至の由々しい問題だ。

第三に、 5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防  2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた』、大西議員の質問はポイントを突いており、私も知りたいものだ。
・『ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた』、初めの質問への答弁は完全にポイントをズラした官僚答弁だ。これに対し、「現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか」を「アンケート調査」をもとに質問するとはさすがだ。「加藤大臣」の不誠実な官僚答弁には僕でも頭にくる。
・ これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 片山議員(画像:衆議院インターネット審議中継より) 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) この答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 井上議員(画像:参議院インターネット審議中継より) そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 多くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ・・・複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす・・・たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか」、「国を動かす議論」を期待したい。
タグ:(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) 保育園(待機児童)問題 PRESIDENT ONLINE 小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」、なるほど。 「人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった・・・大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた」、「転園」とは賢明な判断だ。 「公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した・・・保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。 保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、なるほど。 「人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ」、なるほど。 「計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか」、「差」が「最大で年間200万円近く」とは無視出来ない額だ。 「保育士の最低配置基準」では不十分として、「ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している」、他方で、「最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」・・・という考え方」をとるところも多い。 「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、なるほど。 「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると・・・2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている・・・2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だ」、大変だ。 「問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ・・・「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ」、同感である。 東洋経済オンライン 関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」 「ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、なるほど。 「保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない」、なるほど。 「公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされた・・・そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定・・・ 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」・・・が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した」、これまでの流れが要領良く整理されている。 「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、重大な指摘だ。 「慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、これほど「公営」と「私営」の割合が「逆転」したとは、衝撃的だ。 「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、「質の低下」は今後、問題化必至の由々しい問題だ。 小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」 大西議員の質問はポイントを突いており、私も知りたいものだ。 初めの質問への答弁は完全にポイントをズラした官僚答弁だ。これに対し、「現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか」を「アンケート調査」をもとに質問するとはさすがだ。「加藤大臣」の不誠実な官僚答弁には僕でも頭にくる。 「2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ・・・ 複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす・・・たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか」、「国を動かす議論」を期待したい。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

不登校(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) [社会]

不登校については、2021年6月14日に取上げた。今日は、(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法)である。

先ずは、本年10月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した清談社の吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329381
・『小中学生の不登校が24万5000人と過去最多を更新した。コロナ禍の影響なのか、それとも何か別の要因があるのか。自身の教師経験を元に描いた『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版)(以下『不登校日誌』)の著者、観世あみ氏に不登校急増の理由について話を聞いた』、興味深そうだ。
・『小中学生の不登校が初めて20万人超に  昨年発表された文部科学省の調査によると、小・中学生の不登校が全国で約24万5000人と過去最多を記録した。小学生が約8万人、中学生が約16万人にも上り、「不登校」が20万人を超えるのは初めてだという。この場合の「不登校」とは、1年間で学校を30日以上欠席した児童の数だが、ここに不登校傾向のある「隠れ不登校」の子どもも含めると、その総数はさらに多くなるだろう。 2010年の不登校児童数は約12万2000人。約10年間で不登校は倍以上に増えており、なかでも過去最多を記録した21年度は、前年度から約5万人増と急激な増加を見せている。 この急増の背景について、コロナ禍による臨時休校やさまざまな制約によって「生活リズムが乱れやすく、交友関係を築くことが難しくなり、登校意欲が湧きにくい状況だった」と文科省は推測している。急増の背景には、やはりコロナが大きく関係しているのだろうか。 「影響は少なからずあると思いますが、統計を見ると2020年以前から不登校は年々増え続けており、必ずしもコロナのせい、とも言い切れません。不登校になる動機も多様化、複雑化しています。それぞれの事例を見ると『勉強意欲の低下』や『部活や友人関係の悩み』『将来への不安』『倦怠(けんたい)感』など、いくつかの要因が重なっている場合が多いんです」 そう話すのは、不登校児童の実態を描いたコミックエッセイ『不登校日誌』の著者で、元教師の観世あみ氏だ。観世氏は自身の教師時代の経験を基に、子どもたちの間で広がっている「不登校問題」に向き合ってきた。 「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」』、「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。
・『不登校で最多の要因は本人の無気力  そんななか、不登校に至った理由を生徒本人ですらわかっていない場合も増えているという。 「不登校、となると、まず『いじめ』が原因と考える人もいると思うのですが、実は統計上、いじめが原因の不登校というのは意外と少ないんです。文科省の令和3年度不登校児童の実態調査によると、一番多い要因は『本人の無気力』。これは小学生、中学生どちらにも共通していて、無気力の背景にもいろいろな要素が絡み合い、複合的なストレスが不登校につながっていると考えられます」 生徒自身、明確な理由がわからないという「無気力不登校」。理由のハッキリしない不登校に子どもが陥ったとき、親はどのように対処すべきなのか。 「家庭内の空気、親御さんのメンタルを明るく穏やかに保つことは重要です。一番身近な大人の心をまず安定させて、過剰に焦ったり不安を感じたりしないようにしましょう。生活の基盤である家庭環境は子のメンタルにも大きく影響し、家庭が安心できる場所になっている場合、子のストレス耐性は強くなる傾向にあると感じます。教師時代の経験を振り返っても、環境の変化や家庭内のストレスが子どもの漠然とした不安・無気力感につながっているのでは、と考えられるケースがいくつかありました」 とはいえ、不登校=家庭に問題がある、と誤解してほしくないと観世氏は続ける。 「子どもが不登校になると、保護者の方も不安を抱えることになると思います。自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」』、「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。
・『「学校に行きなさい!」が子どもをさらに追い詰める  とはいえ、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは思い詰めず穏やかに…といっても限界がある。親として、子どもとどのような向き合い方をするのがベストなのか? 「まずは『話を聞いて、寄り添う』こと。不登校は本人がさほど気にしていないように見えても、実際すごくつらくストレスもかかるものです。休みを重ねれば気持ちは焦り、落ち込み、さらに不安感も強くなって動けなくなるという負のループに陥ります。そういう状態の子どもに『学校に行きなさい!』と頭ごなしに強制してもさらに追い詰めてしまうだけなので、まずは『不登校=子どもの心身のSOS』と捉え、共感的態度を意識してみましょう」 無理に家庭内のみで解決しようとせず、学校側や不登校児童のための適応指導教室、民間団体が運営するフリースクールなどの外部機関も頼り、風通しをよくすることも重要だ。 「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという。 「不登校生徒の保護者の方に話を聞くと『教育委員会に紹介されたスクールソーシャルワーカーを頼ったらお子さんと相性が良く、家でも明るく過ごせることが増えた』ということもあったようです。保護者と子どもと学校という三者だけでなく、子どもに合った支援方法を提示できるように、選択肢を増やしておくことは大切です」 具体的な解決策を模索するとともに、不登校のメリット・デメリットを知っておいた方がいいだろう。 「明確なデメリットとして学校の授業に相当する学習時間を自宅で確保するのは非常に難しく、多感な時期に不登校による心理的ストレスがかかることは見逃せません。とはいえ、多様な生き方が今は肯定されている時代であり、不登校になっても人生が終わるわけではない。不登校を乗り越えて活躍している方も多いです。不登校が悪いことだと考え込みすぎることが一番良くないことなのではないでしょうか」 昨今、SNS上では「学校に行かないこと」を肯定するインフルエンサーや著名人のエピソードも増えている。「不登校=悪」という前提自体が、変化のときを迎えているのかもしれない。 「これは『不登校日誌』にも書いたのですが、不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう』、「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。

次に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した同時通訳者でArt of Communication代表の田中慶子氏とノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」を紹介しよう。
・『同時通訳者として、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなど世界のトップリーダーと至近距離で仕事をしてきた田中慶子さん。「多様性とコミュニケーション」や「生きた英語」をテーマに、現代のコミュニケーションのあり方を考えていきます。今回は、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン氏に関する書籍を多数出版している、台湾在住のノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏と対談。「学校に行かない」という選択をしたオードリー氏の事例を発端に、学校へ行かずに勉強する「自主学習」というありかた、「不登校」という表現への違和感、従来の学校システムと多様性のバランス、自分でカリキュラムを組み立てて学習するオルタナティブスクールについて、日本と台湾の教育や文化の違いや親和性などを語り合った』、興味深そうだ。
・『台湾のオルタナティブ教育「自主学習」とは?  (田中慶子氏の略歴はリンク先参照) 田中慶子(以下、田中) 近藤さんは、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン(以下、オードリー)さんに関する本を多数出されていますね。来年には台湾の教育に関する本が出版される予定と聞きました。 近藤弥生子(以下、近藤) オードリーさんの母、リー・ヤーチン(以下、リー)さんが書いた、「自主学習」をするための、心得や経験をまとめた本の翻訳書です。 田中 「自主学習」とは何ですか? 近藤 日本語に合う言葉がないんです。オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立します。その一連の物語や課題、ノウハウなどを記した本で、同じ状況にある人や保護者の指南書でもあります。 ※現:「種の親子実験小学校」 田中 自主学習は、例えばどのようなことをするのでしょうか? 近藤 「1週間で何をどういうふうに勉強するか」をプランニングして実施するのですが、勉強の中には、哲学クラブへ通ったり、大学の授業を単発で受講したり、自由研究をしたり、ということも含まれます。 ですので、家にずっとこもって学習するわけではなく、外にも出ていきますし、誰かと一緒にWebサイトをつくってみるなど、他人とコラボレーションすることもあります。それが自主学習なんです。 田中 それはいいですね。リサーチ能力やプロジェクトマネジメントなどの技能が向上しますね。 近藤 オードリーさんはいわゆる「ギフテッド(※天才的な能力を持つ人)」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね。 最近、日本である学校の校長先生とお話したのですが、その校長先生は昔、ある生徒に「私が学校に適応できないのではなく、学校が私たちに適応していないだけでしょう」と言われて、ハッとしたと言っていました。 日本は、よほどのことがないと転校するのが難しいですよね。逃げ場が与えられていない、限られた場所だけでやっていかなければならないというのは、すごいプレッシャーだと思うんです。) 「学校に行かない子」は「勉強をやめた子」ではない  (近藤弥生子の略歴はリンク先参照) 田中 その通りだと思います。私も元不登校生でしたが、日本では「学校に行っていない」=「勉強をやめた子」という固定観念がものすごく強いんです。 今、日本は、不登校の生徒が24万人いて(※)、過去最多です。 ※2022年10月27日公表の文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度における小中学生の不登校数は24万4940人。毎年増加の傾向にある それだけいると、もはや珍しいケースとは言えませんよね。学校に行かなくても学んでいる子はたくさんいます。それなのにその規模の子どもたちを包括するようなオルタナティブとなる教育がありません。 ですから、台湾の自主学習のように、「既存のカリキュラムを学校で受けなくても、学ぶことは可能なんだ」という発想は、今の日本にこそ必要かもしれません。 日本の「不登校」という表現は、非常によくないですよね。学校に行かずに家で学ぶことを「ホームスクーリング(homeschooling)」と言うこともありますが、リーさんの言う自主学習ともやっぱり違う気がします。 日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか。 田中 なるほど。独学の機運の高まりは、これまでの日本の教育カリキュラムに限界がきていることの表れだと思うんです。そういう意味でも、やはり、自主学習という観点は、これからの日本の教育の参考になりそうです。 近藤さんが以前に書かれた『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」 自分、そして世界との和解』(KADOKAWA)内で、学校へ行かないという選択をしたオードリーさんに対し、「何で君だけが行かなくていいの? 僕だって本当は行きたくないのに」と周囲から責められるエピソードが紹介されていました。 おふたり 私も「みんな我慢して学校へ行っているのに、あなただけ行かなくていいなんて、ずるい」とよく言われました。その時に思ったのは、そして、今も思うのは、「みんなが我慢して通わなければならない学校は、なくてもいいのではないか」ということです。 現在の一般的な学校は、明治以後、日本が発展していく段階にあって、西洋から多くを学び、必死につくってきた学校システムの流れを汲んでいるのだと思います。みんなががんばり、そして日本を強くしたいという気持ちが、いつしか、「こうあらねばならぬ」と、それに従わない他人を許せない場になってしまった。 もちろん大多数の子どもたちはそこにフィットしているので、既存の学校は必要なものです。他方で、24万人の子どもたちが不登校という現実があり、我慢しながら学校へ行っている子たちも含めると、「今の学校が合わない」と感じている子どもは、もっといるはずです。社会で「ダイバーシティ」がうたわれているのに、教育業界ではなかなかダイバーシティが進んでいない印象です。 近藤 リーさんが、オードリーさんに合うような学校を探していた時に、ある児童哲学クラブで子どもたちと話していると、このような意見が出たんです』、「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。
・『転校を繰り返しても「教育に前向きだ」と思える社会の寛大さ  近藤 「自分たちで勉強の内容を決めさせてくれたら、僕はもっと上手に勉強できるのに。大人が全部決めてしまうからできないんだよ」と。 それをヒントに、リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです。 田中 「カリキュラムを自分で組み立てる」というのは、「自分たちで勉強の内容を決める」ということですものね。 近藤 日本のように平均的なカリキュラムを一斉に施すのではなく、選択肢を用意するんです。実験学校に通い始めたけれど合わなかったという場合は、ほかの実験学校へ容易に転校も可能ですし、公立の学校や私立の学校とも、比較的スムーズに行き来することができます。 学校の選択を誤って転校したとしても、後ろ指をさされることがない。むしろ、その子の良いところを伸ばすためにその子に合った学校を積極的に探している、教育に前向きだ、とさえ思われる。台湾社会もそのあたりに非常に寛大になってきています。 田中 日本でも少しずつ変わってきてはいますが、以前は、学校に行かなければそのまま「社会からドロップアウトした」というネガティブなイメージが付きまとい、本人の中にもそれがコンプレックスとして残っていた。そう考えると、台湾のその事例は、子どもたちにはもちろんのこと、会社や家庭以外のサードプレイスや、学ぶ場所、人とつながれる場所を求めている大人にも、参考になりますよね。 近藤 たとえオードリーさんのようなギフテッドでなくても、子どもにはひとりひとり、素敵な個性が備わっているはずで、その部分を伸ばしていきたい、と、現在、翻訳中のリーさんの本に書かれています。「お隣の台湾ではこうした教育方法が伸びてきている」ということを、日本の読者に伝えたいんです。原著は、20年近く前に出版されたものです。 今回、翻訳本を出すことになったのは、「今の日本にこそ、この本が必要だ」という、担当編集者さんの並々ならぬ熱意がありました。私は翻訳という立場で携わらせていただき、慶子さんの同時通訳もそうだと思いますが、こうした、異なる文化の価値観を伝えるという点に、「翻訳」の意味や醍醐味がある気がしています』、「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。
・『フォロワーとしては優秀かもしれないがリーダーシップを取ることができない  田中「日本人はリーダーシップを取れない」とよく言われますが、仕方がない面もあると思うんです。 日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。
・『ようやく手に入れた民主主義を守るため今の台湾は「人任せにしない」  近藤 そして、最近、日本と台湾との関係で思うのは、これまで、日本にとっての台湾の位置づけは、「日本の近くに台湾があるよね」「台湾って親日だよね」ぐらいな感じで、そこまで台湾の存在を強く意識していたわけではなく、大国・日本を慕ってくれている隣人、という、少し「上から目線」の雰囲気があったと思うんです。 以前、あるメディアで台湾について書いた原稿で、「日本が台湾から学ぶ点があるかもしれない」と記したところ、「それは読者に受け入れられないと思う」と、担当編集者さんに指摘されて、修正したことがありました。 でも、ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています。 田中 以前、仕事でオードリーさんの通訳をしたときに、台湾は、日本の統治下だったり、独裁政権下だったりしたので、ようやく手に入れた現在の民主主義をとても大事にしている、とおっしゃっていたことが印象的でした。 藤 そうなんです。今の台湾は、社会全体で「人任せにしない」という雰囲気があります。少しでも油断すると、今の民主主義が奪われて、独裁者の時代に逆戻りするのではという恐れの気持ちが強いんです。だからこそ、権力を持つ者から目を離さないですし、ブラックボックスを絶対に許さないんです。 田中 なるほど。オードリーさんは、人々から何か声が上がったときには、すぐに反応して、経緯や事情をきちんと開示し、透明性を持って対応するということが、いかに大事かを話されていました。 オードリーさんの活躍も含め、透明性の重要性を認識している社会、ダイバーシティを大切にする学校教育、半導体製造のTSMCといった企業の躍進など、日本側の台湾を見る目も変わらざるを得ない状況になってきているんですね』、「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。
・『年長者や専門家による定義から始めるな 社会を変える時こそ対話と多様性が重要  藤 台湾出身のジル・チャンさんのビジネス書『「静かな人」の戦略書』がヒットしたりもしていますね。これまで、台湾人が書いたビジネス書や自己啓発書が、日本で出版されたことはほとんどありませんでした。今回の自主学習の本の内容も、おそらく読者にとって新鮮だと思います。 田中 「人任せにしない社会」は重要ですね。そのような中、日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね。従来のシステムになじまない、あのようなすごい人がいるんだと、多様性を受け入れやすくなる。 近藤 おっしゃるとおりで、社会を変える時こそ、対話と多様性は重要だと思います。 日本では何かを始めるとき、「不登校とはこういうもので」とか「自主学習とはこういうもので」と、年長者や専門家による定義からスタートします。そうではなくて、「不登校ってそもそもどういうことだろう」とか「自主学習って何だろう」とかを、みんなで話し合って、粗々のオリジナルでいいから、どう定義できるかを、まずはその場で考えてみることに大きな意味があるのではないでしょうか。 田中 あくまでざっくりとした表現ですが、欧米では、意見が分かれるとロジカルに白黒はっきりさせようとする傾向が比較的強いように思えます。もちろん、ロジカルに話したり、ロジカルに決めたりすることも重要です。 一方で、日本を含めた東洋は、良くも悪くもあいまいにしたがります。それは、ネガティブ・ケイパビリティとでも言うべき、曖昧なものを曖昧なままで受け入れる能力で、それも必要だと思うんです。その意味では、日本は本来、多様性を受け入れることは得意なのではないかと思うんです。 近藤 そうですね。変化のきっかけさえあれば、その特性を良い方向へ一気に発揮することができるかもしれません。もちろん違うところもたくさんありますが、東アジア同士、共通する文化や歴史も多く、親和性が高いので、お互いに学び合うことができる。台湾の成功事例はとても参考になるのではないかと思います。 台湾人はもともと日本のことを好きな人が多いですが、日本でも「日本の近くに位置している国」というだけでなく、「日本の身近な国」として知ろうとする人が増えてきていて、とてもうれしいです。私ももっともっと台湾のことを勉強したいと思います』、「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。 
タグ:不登校 (その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) ダイヤモンド・オンライン 吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」 『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版) 「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。 「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。 「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。 不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。 それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。 田中慶子氏 近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」 「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」 ・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか 」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。 「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。 AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。 「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。 特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。 「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。 「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。 表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

女性活躍(その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?) [社会]

女性活躍については、本年9月9日に取上げた。今日は、(その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?)である。

先ずは、10月11日付けFRaUが掲載した信州大学特任教授の山口 真由氏による「東大卒・山口真由が、松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題」を紹介しよう。
・『信州大学特任教授で、法学博士・ニューヨーク州弁護士の山口真由さん。東大卒の才女として様々なメディアで活躍するが、Twitterでのつぶやきはコミカルで飾らないものが多い。FRaUwebの連載では、そんな意外な「素顔」を率直に綴っていただいている。 今回は、今年8月におこなわれた自民党の松川るい氏らによるフランス・パリ視察において、彼女たちがエッフェル塔前で撮った写真をSNSにアップし、非難が殺到した件について。松川氏は8月下旬に女性局長を辞任し、9月29日付で副幹事長に就いている。パリ視察の炎上、そして辞任、副幹事長就任にいたるまでの流れについて、山口さんが感じたことを綴っていただいた』、興味深そうだ。
・『なぜパリ視察がここまで炎上したのか  研修でフランスを訪れた松川るいさんが2人の地方議員と一緒にエッフェル塔の前でポーズを決めた写真をSNSに投稿して炎上したのは2ヵ月ほど前のことだった。費用に税金が投入されていないか、子どもを連れての研究が不適切ではないか――瞬く間に火の海と化したSNSに恐れをなして、当時の私は何も言えなかった。 責任を取る形で女性局長を辞任した彼女が、党の副幹事長に任命された先月末、またしても若干の波紋が広がっている。非難のひとつひとつには確かに理由がある。だが多少は冷静に語れるいま、本音を言えば、糾弾の激しさと罪の重さとが不釣り合いにも見えていた。同時期に受託収賄という刑事の疑惑をかけられた秋本真利議員の方がよほどひっそりとしているではないか。 それだけ潜在的に彼女のアンチが多かったのだろうか。外務省のキャリア、トレードマークはロングに伸ばした黒髪と胸元で結ばれた長い真珠のネックレス、さらに能弁な彼女は多くの討論番組の常連となり、次世代の女性政治家として頭角を現す。一方で、こうしたキラキラした要素の1つ1つが反感の源にもなる。 そして、円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない。 だが、ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ』、「円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない・・・ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ」、なるほど。
・『男社会に存在する「独自の教育システム」  例えば、2016年の大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が多くの労働者に「自分たちみたいな人」と思わせるのに成功した一方で、ヒラリー・クリントン氏はどこまでも「エリート」にしか見えず、共感を得るのに失敗した。父の不動産事業を引き継いだトランプ氏の方が、衣料品店を営む両親のもとから巣立ったクリントン氏よりも、見方によっては恵まれているにもかかわらず、である。 政治家という“大衆を相手にする職業”において、「自分たちみたいな人」と親近感を得るのがなによりも票への近道のはずだ。例えば、菅義偉さんは秋田の田舎出身、身ひとつで上京した叩き上げの苦労人というイメージを意図的に作り上げていた。その実、菅さんのお父様はイチゴ農家としてかなり成功した地元の名士で、お母様はあの時代の女性で教師という地域のエリート層である。菅さんの生い立ちの描き方は、自らをあえてダウングレードして庶民の目線を演出しているようにも見える。 安藤優子さんの『自民党の女性認識 「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店、2022年)を読むと、自民党の国会議員の最大の輩出源は「地方議員」と「議員秘書」である。衆議院議員小此木彦三郎さんの秘書として家族同然の扱いを受けながら、横浜市議に当選し、国会議員へとステップアップしていった菅さんはまさにその典型だ。 安藤さんの本によれば、自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう。だから、地元に密着した親しみやすさという、あえての「下から目線」を強調できるのだという気もする。 ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である。 安藤さんの本によれば「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく』、「自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう・・・ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である・・・「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく」、なるほど。
・『構造の歪みを個人の肩に載せすぎている  でも他にどうすればよいのだろう。永田町を夢見る男たちの頭上を一足飛びに駆け上がるエクスキューズとして、「エリート」性を押し出すしかないのだ。ここに構造的な悪循環がある。 松川さんだけじゃなくて今井絵理子さんだって批判されたじゃないか。「エリート」性を強調するから嫌われるという道理はないといわれるかもしれない。確かにその通り。でも「エリート」性を「タレント」性に言い換えれば、真逆のようで極めてよく似た構造が見えてくる。 地元の人脈や地縁を「オヤジ」から徐々に引き継ぐという過程を経ずに、「オヤジ」から一本釣りされた女性政治家にとっては知名度が唯一の武器なのだ。だから、「エリート」性なり「タレント」性なりを売りにメディアへの露出を増やすしかないだろう。 思うに、「女性活躍」の旗を振られ、女性の「登用」をわかりやすく数字で顕在化させたいいまの日本社会には、女性を「育成」するシステムがない。伝統的に根付いてきた年長者を「オヤジ」と慕う男社会の疑似家族から、女性は排除されてきたからだ。 「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ。 批判するなというつもりは毛頭ない。税金の使い道は厳しい目でチェックされるべきだし、研修の成果を知りたいというのは当然だと思う。 だが、構造の歪みを個人の肩に乗っけすぎてやしないか。エッフェル塔の前でポーズを決めた政治家に辞任を迫るような言論すらある。だが、それではいつまで経っても女性議員なんて増えないだろう。子育てしながら地元と往復する葛藤みたいな、「自分たちみたいな人」の素顔を彼女たちが素直にさらせる日が来るといいのにな』、「「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ」、なるほど。

次に、10月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家/コンサルタントの佐藤智恵氏による「女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330725
・『『ガラスの天井を破る戦略人事』の著者、ハーバードビジネススクールのコリーン・アマーマン氏は、日本の育休制度を「世界の中でも最も手厚い」と評価する。一方で、制度利用者が増えない現状には疑問を呈する。今の日本が抱える、ジェンダー平等実現への根深い課題とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵) >>前編から読む』、興味深そうだ。
・『ジェンダー平等には「男性の意識改革」が不可欠だ  佐藤智恵(以下、佐藤) 『ガラスの天井を破る戦略人事』では、ジェンダー平等を実現するためには男性側の当事者意識を高めて、協力してもらうことが不可欠だと繰り返し述べています。なぜ、男性の意識や行動が実現への鍵となってくるのでしょうか。 コリーン・アマーマン(以下、アマーマン) なぜなら権力を持っている人の大半は、男性だからです。変革を起こすには、何よりも権力が必要です。この問題に本気で取り組んでくれる男性リーダーがいなければ、ジェンダー不平等は永遠に解消されないままです。 例えば、米食品メーカー、キャンベルスープカンパニーの元CEOのダグ・コナント氏は、CEO就任早々、女性の活用を経営戦略の核として掲げ、女性リーダーの登用や育成に尽力し、企業再生に成功しました。また、英BBCのジャーナリスト、ロス・アトキンス氏は、自分のニュース番組の出演者の男女比を50:50にするプロジェクトを始め、その後、この取り組みはBBC全体へ広がっていきました。結局のところ、影響力のある地位に就いている男性が動いてくれなければ、扉は開かないのです。 佐藤 どういう男性リーダーが、女性の味方になってくれやすいのでしょうか。) アマーマン 私たちの調査では、「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります。つまり、男性が実際に行動してくれるかどうかは、個人的な動機によるところが大きいのです。 日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです』、「「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります・・・日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです」、なるほど。
・『育休を取らない男性社員が象徴する 「男女平等後進国日本」の姿  佐藤 本書では、組織の上に行けば行くほど女性の数が減ってくるのは、人事評価において男性よりも厳しい基準で評価されるからだ、と述べていますが、男性のどのような「アンコンシャス・バイアス」(無意識の思い込み)が女性の昇進を妨げていると思いますか。 アマーマン 一般的に、女性は、男性の上司からも同僚からも部下からも実際の地位よりも低く見られがちです。その主因となっているのが、男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です。 また、「子どもを持つ女性は、子どもに気を取られて、仕事をおろそかにする傾向がある」という偏見を持っている男性もいます。子どもがいる女性の生涯年収や、子どもがいる女性が採用される確率は、子どものいない女性に比べても低いですが、このような「母親ペナルティー」(母親が採用・賃金において不利益を被ること)の背景にあるのも、男性のアンコンシャス・バイアスです。 こうした偏見を解消していくことは、会社の成長にとってもプラスとなりますから、「アンコンシャス・バイアス」の解消を男女共有の目標として掲げ、さまざまな研修などを行っていくことが大切です。 ただし、重要なのは、女性側が、男性を厳しく追及したり、非難したりしないこと。「もしかしたら気付いていないかもしれないけれど、それは『アンコンシャス・バイアス』かもしれないよ」といった感じで、さりげなく指摘するのがいいでしょう。) 佐藤 世界経済フォーラム(WEF)の2023年版「世界ジェンダーギャップ報告書」によれば、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、一向に改善の兆しが見られません。日本政府も日本企業も「ジェンダー平等に取り組んでいる」と言ってはいるものの、なぜ大きく改善しないのでしょうか。 アマーマン この問題を解決するには、政府の政策と個人の意識改革の両方が必要です。政策で特に重要なのが、税制です。女性が高収入を得たり、社会で活躍するのを阻んだりするような税制になっていないでしょうか。男性が働き、女性が子育てをすることが前提の税制になっていないでしょうか。まずはそこから変えていくことが必要でしょう。 また個人、特に男性の意識改革については、先ほど申し上げた通り、アンコンシャス・バイアスを取り除くことが何よりも大切です。会社では社内研修を実施するとともに、女性の登用が組織にとってもプラスになると考えるような組織風土を醸成していくことが大切です。 日本には世界の中でも最も手厚い育児休業制度があるのに、男性がこの制度を利用したがらないのは、興味深い現象です。正しい制度はあるのに、利用すれば自分のキャリアにとってマイナスになると考えてしまうのは、なぜでしょうか。そこに、ジェンダー平等が進まない根本的な要因があるように思います。 多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です』、「男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です・・・多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です」、なるほど。
・『タレント社外取の起用は是か非か 女性役員に求められること  佐藤 ジェンダークオータ制(議会の議席や取締役会の人数などの一定割合を女性に割り当てる制度)の導入は有効だと思いますか。) アマーマン クオータ制導入の是非については、賛否両論があります。ただ、私は数値目標の設定やクオータ制の導入は、ジェンダー平等を推進する上で有効だと思います。 なぜなら、具体的な数値を掲げれば、「これは真剣に達成しなくてはならないものだ」という認識を持ってもらえるからです。「女性を増やさなければいけません」というような曖昧な目標では人は動かない。「何%がわが社の目標です」と伝えなければ、前には進まないのです。 ここで重要なのは、単に数値目標を掲げるだけではなく、なぜ多様性を実現することが不可欠なのかを理解してもらう教育を並行して行うことです。また、経営者自らが率先して、なぜ重要なのかを説明しなくてはなりません。「何のために行うのか」について社員が納得しなければ、自ら率先して実現しようとは思わないからです。 佐藤 本書では、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが、2010年、取締役会へのクオータ制の導入に伴い、「ファッションショーの常連だから」という理由でベルナデット・シラク氏(元フランス大統領夫人)を取締役に起用したことを指摘しています。 同じように、日本でも俳優・タレント・元スポーツ選手などの著名人を社外取締役に任命する事例が散見されますが、こうした現象は、女性取締役を増やす上で通らなくてはならない道なのでしょうか。 アマーマン 一般的には、専門知識、経営経験のあるなしにかかわらず、女性ゼロよりも女性がいるほうが、企業価値向上につながるのは確かです。 しかし、私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです。女性役員は、若い女子学生や女性社員にとってもロールモデルとなりますから、長期的には、経済界の中でいかに女性役員候補のパイプラインを構築していけるかが、重要になってきます。 もちろん、会社は取締役候補を外部から探してくるだけでなく、内部でも育成していかなければなりません。女性管理職がリーダーシップを学ぶ機会やスキルを身につける機会を提供することも必要です』、「私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです」、なるほど。
・『日本の女性リーダーに活用してほしい「WCD」  佐藤 アメリカでは、ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」の修了生や、世界的な女性役員ネットワーク「ウィメン・コーポレート・ディレクターズ(WCD)」が、女性の取締役を増やすのに大きな役割を果たしていると聞いています。日本にもWCDの支部がありますが、日本の女性リーダーはこうしたネットワークをどのように活用していったらよいでしょうか。 アマーマン ハーバードビジネススクールの「ウィメン・オン・ボード」の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです。日本企業では、役員レベルにほとんど女性がいないため、日本の女性役員は、他の女性役員と意見交換する機会も少ないでしょう。こうした女性役員同士が助け合う場は、今後、さらに女性役員を増やしていく上で大きな役割を果たしていくと思います。 佐藤 最後に『ガラスの天井を破る戦略人事』を通じて、日本の読者に最も伝えたいことは何ですか。 アマーマン この本が日本で出版されたことをとてもうれしく思っています。私が日本の皆さんに最も伝えたいのは、ジェンダー平等の実現は全ての人が取り組むべき世界共通の課題であることです。ですから、女性だけではなく、男性にもぜひ読んでいただきたいですし、役員だけではなく、中間管理職の方々にも読んでいただきたい。そして、この本が日本のジェンダー平等に向けた取り組みの一助となることを願っています。(コリーン・アマーマン氏、’佐藤智恵氏の略歴はリンク先参照)』、「ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」「の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです」、なるほど。

第三に、10月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社羽生プロ代表取締役社長、著作家・メディアプロデューサーの羽生祥子氏による「女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」、1位は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328049
・『先日発表された世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果になった。「多様性」が叫ばれる時代でも、なぜ日本の男女格差は埋まらないのか。「男女平等」と言いつつも、女性の活躍が一向にすすまない企業にありがちな言い訳を紐解く。本稿は羽生祥子著『SDGs、ESG経営に必須! 多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです』、「世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果」、いつものことながら恥ずかしい結果だ。
・『女性だけ特別視する必要あるの?  中長期の視点がなく、「女性活躍がなかなか進まない」と悩んでいる企業が世の中にはたくさんあります。ダイバーシティ推進担当者は頑張って取り組んでいるのに、現場や上層部の反対の声にあって困っているという声も、本当によく聞きます。そこで、毎月多数の記事を発信している『日経xwoman』の取材を経てわかった多様性がない企業によくある言い訳を挙げたいと思います』、興味深そうだ。
・『【言い訳トップ1】「女性だけ特別視する必要あるの?」  このセリフ、読者の皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?または、自分で言ったことがあるという方も少なくないと思います。さらにこのトップ1の言い訳は、実は女性自身が発言することが多いのも特徴です。具体的には、こういった内容です。 ・仕事の場では、男性も女性も関係ない ・実力主義でやっているので、性別で区別する必要はない ・自分は実力で認められたのであって、女性だから認められたのではない ・女性にだけ「ゲタ」を履かせて持ち上げるのはずるい ・LGBTQと自認している人もいるのに、今どき男女比率で測るのは古い  うーん、どれもすべて正しくて、間違ったことを言ってないような気がしますね。こんな言葉をかけられて反論や説得できずに困っている人事部の方々が目に浮かびます。しかし、この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです』、「この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです」、なるほど。
・『【言い訳トップ2】「D&Iやって、経営が上向くのか?」  この発言は、上層部がダイバーシティ推進の意義を理解しておらず、取り組みそのものがない会社でよく聞きます。または、社長など経営トップ本人はよく理解しているけれども、中間管理職など、現場に下ろしたときにささやかれる言葉です。具体的にはこんな意味の発言です。 ・ダイバーシティは人権問題であって、経営戦略とは関係がない ・女性を大事にすることは重要。だが業績がよくなることはない ・コロナ禍で業績が落ちて大変なので、悪いけれどD&Iをやっている余裕はない ・社長はカッコイイ顔をしたいだけで、現場は売り上げ確保で苦労する ・利益が出て、余ったおカネがあったらD&I室を立ち上げよう』、まったくやる気がなさそうな言い訳だ。
・『女性がみんなバリバリ働きたいとは限らない  【言い訳トップ3】「管理職に該当するような女性がいない」  女性登用がキーワードになってきた最近、急浮上してきた言い訳です。 ・女性管理職比率を上げたい。でも社内に適当な女性がいない ・取締役は、営業や社外交渉、新規事業など厳しいので女性には荷が重い ・ちょうど50代くらいの役員適齢期に、女性の絶対数が少ない ・今はいないが、最近は出産しても働くので、10年待てば女性管理職も出てくるだろう  この発言は悪気がないので、つい同調してしまいがちです、しかし、こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます』、「こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます」、その通りだろう。
・『【言い訳トップ4】「D&IはOKだけど、女性活躍はNGなんです」  この発言は、ダイバーシティやインクルージョンといった、カタカナ人事用語が浸透してきた数年前からよく聞くようになりました。私が社外研修セミナーなどに呼ばれ、女性活躍やジェンダー平等について講演をするときに、演目に「男女平等」と入れないでほしいと頼まれた経験は何度かあります。このような主旨の発言です。 ・ダイバーシティなら弊社は推進したい。しかし、女性だけに限ると不公平感が出る ・若手からも、女性活躍という言葉は不人気。別の角度から多様化を進めたい ・ジェンダーという言葉を使うと男性が怖がるので、性別の話はしない ・男女平等はもう古いので、LGBTQや人種のテーマを扱いたい 「総論賛成、各論反対」の典型とも言える事例ですね。これに似たような発言に、「SDGsは、環境問題を中心に取り組んでいます。ジェンダー平等はちょっとウチでは…」というものもあります。日本の組織や個人は、「男女平等」や「女性活躍」という言葉が、本当に苦手なんだなぁと感じます。しかし、言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険があるのです』、「言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険がある」、その通りで危険だ。
・『【言い訳トップ5】「女性がみんな、バリバリ働きたいとは限らない」  これは人事の担当者から、「女性管理職研修を社内に導入しようとしたときに、周囲から反対意見として上がる声なんです」と、半ば嘆きのようなかたちで相談されます。実際、管理職登用のために女性社員の育成に向き合っていると、否応なくぶち当たる“育成の壁”です。 ・全員が全員、管理職や取締役になるような企業なんてない ・子育てや介護がある時期は、ペースダウンして働きたい女性もいるだろう ・多様性というなら、管理職を目指さない女性を認めることも大事 組織作りの話と、個人の性格やライフステージの話が混同されがちなことも特徴です。 シンプルなことですが、男性だって皆がみな、バリバリ働きたいとは考えていません。家庭や趣味の時間の方が大切だという考えの男性もいらっしゃいます。特に若い世代では、自分時間を仕事と同じように大切にする生き方が、性別を問わずに求められています。育児休業を取りたい男性が増えているように、労働以外の時間を豊かに過ごすことへの熱は高まりつつあります。バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます』、「バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます」、その通りだ。こういった「言い訳」に騙されないようにしたいものだ。

なお、明日、明後日は更新を休むので、30日にご期待を!
タグ:「この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです」、なるほど。 ・・・ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ」、なるほど。 「円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない 山口 真由氏による「東大卒・山口真由が、松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題」 FRaU 「男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です・・・多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く 【言い訳トップ2】「D&Iやって、経営が上向くのか?」 (その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?) なお、明日、明後日は更新を休むので、30日にご期待を! 「こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます」、その通りだろう。 佐藤智恵氏による「女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)」 ほど。 ダイヤモンド・オンライン 女性活躍 羽生祥子氏による「女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」、1位は?」 「「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります・・・日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです」、なるほど。 「自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう こういった「言い訳」に騙されないようにしたいものだ。 「バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます」、その通りだ。 取り組みを続けることが大切です」、なるほど。 ・・・ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である・・・「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく」、なる 【言い訳トップ4】「D&IはOKだけど、女性活躍はNGなんです」 女性がみんなバリバリ働きたいとは限らない  【言い訳トップ3】「管理職に該当するような女性がいない」 まったくやる気がなさそうな言い訳だ。 「「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ」、なるほど。 WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです」、なるほど。 「ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」「の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。 「私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです」、なるほど。 【言い訳トップ1】「女性だけ特別視する必要あるの?」 「世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果」、いつものことながら恥ずかしい結果だ。 【言い訳トップ5】「女性がみんな、バリバリ働きたいとは限らない」 「言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険がある」、その通りで危険だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

宗教(その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?) [社会]

宗教については、本年9月24日に取上げた。今日は、(その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?)である。

先ずは、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由」を紹介しよう。
・『旧統一教会の次に「解散」させられるものとは  10月13日にも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令請求がいよいよ出される見込みだという。 「霊感商法の被害者が救われる第一歩だ」と喜んでいる人も多いだろうが、残念ながら今回の動きは「自民党は旧統一教会とスパッと決別しました」という選挙前のパフォーマンス的な意味合いが強く、被害者救済につながるものではない。 これから始まる長い裁判の間、教団側は「任意団体」に格下げされることに備えて、当然ながら、財産を韓国本部に移したり、組織もスリム化していく。これまで礼拝や集会に使ってきた建物などもすべて処分されてしまう可能性もある。そしてカネもなくなり、人もいなくなった「宗教サークル」に被害者救済が十分にできるわけがない。 例えば、ジャニーズ事務所が今このタイミングで解散して市民団体になって、300人以上の被害を訴える人々に満足のいく補償ができるのかを想像してみたらいいだろう。 つまり、今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがあるのだ』、「今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがある」、なるほど。
・『ホストクラブと客の関係に似ている  「はあ?そんな飛躍した無茶苦茶な話がまかり通るわけがないだろ、しかもホストの営業手腕をカルト宗教の洗脳と一緒にするなんて職業差別だ!」と怒りに震えるホストの皆さんもいるだろう。しかし、残念ながら「旧統一教会問題」が注目を集めてから、「ホスト被害者」を「カルト被害者」と同一視する人が増えている。 わかりやすいのは、旧統一教会の解散命令請求がでる見込みだという情報が流れたタイミングで、「弁護士ドットコム」が報じた以下のニュースだ。 《「結婚しよう」ホストにニセ住所の婚姻届を渡され、大金つぎこむ…玄秀盛さんが語る「相談急増」の背景》(弁護士ドットコム10月7日) 記事によれば、今年7月に設立された「青少年を守る父母の連絡協議会」にこんな「相談」が多数寄せられたという。 「娘がホストにハマり、900万円の借金があると言われています」 「ホストに貢ぐために、風俗で働くという娘を止めたい」 「弁護士がいきなり、『お嬢さんがつくったホストクラブへの借金600万円を払ってほしい』と乗り込んできた」 このような親たちの悲痛な叫びを聞いて、「ん?最近こんな話をよく見たな」と思うだろう。そう、マスコミに登場をする旧統一教会の「元信者」「信者の家族」の皆さんが訴えていることとテイストが非常によく似ている。信仰にのめりこむ人も、ホストにのめりこむ女性も、家族からすれば「洗脳されてカネをだまし取られている被害者」なのだ。 実際、このニュースに対して「Yahoo!ニュースエキスパート」の碓井真史・新潟青陵大学大学院教授はこのようにコメントをされている。 =========================
<娘がホストにハマったら→カルト宗教から脱会させるような覚悟をせよ> 悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました』、「悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました」、恐ろしいものだ。
・『「ツケ」でアリ地獄…抜け出せない仕組みを社会が容認  そして、もうひとつホストと新興宗教が重なる部分があるのは、「高額献金」がもたらす悲劇が長年野放しにされ、最近になって「規制」の必要性を訴えられている点だ。 先ほどの記事の中で、「青少年を守る父母の連絡協議会」が入る公益社団法人「日本駆け込み寺」の理事である玄秀盛氏も下記の通り、提言されているが、実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない。もう東京都に対しては働きかけている》(同上) 「売掛」とは「ツケ」のことだ。ホストクラブの上客は1本何十万円のシャンパンやらを入れる。しかし、若い女性などは当然そんな大金をキャッシュでポーンと払えない。じゃあどうするのかというと、「ツケ」で飲む。その代金はホストクラブやホスト側が肩代わりをして後で女性へ請求する。そこでもし女性が返済できない場合、キャバクラや風俗にあっせんされる。そして細々と返済しながらまた「ツケ飲み」をして、アリ地獄のようにハマっていく。 しかも、近年この「アリ地獄」が犯罪の引き金にもなっている。先日、マッチングアプリで知り合った男性から、恋愛感情を利用し現金約2700万円をだまし取ったとして「頂き女子りりちゃん」と名乗る女が詐欺容疑で逮捕されたことも記憶に新しいだろう。実はこの女性、SNSでこんなことを「告白」している。 ========================= 「20~22歳では300万ホストに使うと褒められて23歳からは1000万が当たり前になって24歳では1000万じゃ足りないって世界になって、もうだれか止めてって思っててはやく抜け出したくて、誰かにおかしいから辞めなって言って欲しかった」 「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」 ========================= いかがだろう』、「実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない・・・「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」、なるほど。
・『マスコミが報じている、「カルトにハマって抜け出せない被害者」のイメージとまるっきり重ならないか。 実はこのような「ホストがもたらす悲劇」は筆者が事件記者をやっていた25年前から「ありふれた話」だった。繁華街を舞台にしいた凄惨な殺人事件などを取材すると、若い母親がホストに狂って子どもをネグレクトしたとか、ホストに風俗へ売られてメンタルをやられた女性などが、かなりの確率で登場した。2010年、大阪市内で母親が自宅アパートに幼児2人を放置して餓死させるという痛ましい事件があったが、これも原因は母親がホスト遊びにハマッていたからだ。 しかし、こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない。ホストの業界団体が政界工作をして自民党とズブズブだったから……なんてわけではなく、過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている。 アイドルや若手俳優がホストを演じているうちに、ホストは若い男が一獲千金をつかむ憧れの職業となった。「ホストで借金まみれになる女性もいるにはいるけれど、それは自分の意志で貢いだのものだから自己責任じゃん」という感じで、「恋愛商法」を社会が受け入れるようになっていたのだ』、「こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない・・・過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている」、「ホストを題材にしたドラマ」がそれほど多く「放映」されているとは初めて知った。
・『「自分の意志で貢いでいる」という考え方を否定  ところが、山上徹也被告が事件を起こして、「旧統一教会問題」が注目を集めて、「高額献金を払う=マインドコントロール」という話が連日のようにマスコミで騒がれるようになると、風向きが急に変わった。先ほど述べたように「家族」が徐々に声を上げて、被害者支援団体に相談が増えてきたからだ。この流れが、今回の旧統一教会への解散命令請求で一気に加速する恐れがある。 なぜかというと、これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張だ。 これに教団や現役信者たちは真っ向から反論をしている。自分たちはマインドコントロールなど受けていなくて、あくまで「信仰心」に基づいて、自分の意志で献金をしていると主張している。誰かに強要をされたものでもだまされたものではなく、納得して自分が稼いだお金を貢いでいるというのだ。 しかし、今回、文化庁が教団の解散請求を認めるという話だ。それはつまり、指摘される「霊感商法」について「悪質性・継続性・組織性」が認められたということなので、教団側の「自分の意志で貢いでいる」という主張を全否定したということだ。 これは旧統一教会以外の新興宗教にとっても「死刑宣告」をされたようなものだ。 本連載の《旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に》の中でも触れたように、理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない。 こういうカオスなことになることに加えて、ホスト業界も致命的なダメージだ。 神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ』、「これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張」、「神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ」、確かにその通りだ。
・『わかりやすい「被害」があれば「少数派」は無視?  「そんな無茶苦茶な話があるわけがない」と笑うかもしれない。しかし、他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない。 旧統一教会の被害者は「人生を狂わされた」というが、旧統一教会があるので人生が救われたという人もいる。マスコミが取材しないだけで、たくさんいる。 ホストも同じだ。これまで述べたようにホストで人生が狂った女性や、幼い子どもはたくさんいる。しかし、ホストで救われた、ホストクラブが生きがいだという女性もたくさんいる。 今の日本社会ではそういう多角的な見方を、マスコミもしないし、政府もしないし、大衆もしない。わかりやすい「被害」が確認されれば、そういう「少数派」の声は無視していいのだ。それを政府が認めたというのが、実は今回の政府の解散命令請求の本当の「意味」だ。 今はバカな妄想だと笑っているだろう。しかし、今から20年前くらいに、「サラ金に払いすぎた利息が返ってくる時代が来る」なんて言ったら「お前はバカか」と笑われだはずだ。では、今はどうなっている……?  「霊感商法」の次に「恋愛商法」がボロカスに叩かれる日も、そう遠くないのではないか』、「他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない」、ただ、宗教でもカルトとなると、西欧諸国でも規制する国はある。日本だけが「無茶」をしている訳ではない。

次に、10月16日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/705815
・『「大事なことは、過去の歴史の事象が、いまにどのようにつながってくるのかということを理解することです」という池上彰さん。大学での集中講義を基にまとめられた『池上彰の日本現代史集中講義』は、旧統一教会と自民党の関わり、政治とメディアの関係など、戦後、現代の日本をつくってきたさまざまな事象を池上さんが現代史の観点から解説しています。今回は、旧統一教会と自民党、特に安倍派との長く深い関係について、本書から一部抜粋・編集して取り上げます』、興味深そうだ。
・『1960年代から続く自民党と旧統一教会の蜜月  第2次大戦後、世界はアメリカを中心とする西側諸国とソ連・東欧を中心とする東側諸国に分裂しました。日本の政治も東西冷戦を反映し、アメリカと仲良くやっていこうという自由民主党と、ソ連・中国との関係を重視する社会党・共産党が対峙するようになりました。 1960年代から1970年代にかけて、日本でも社会党や共産党が勢力を伸ばし、社会主義・共産主義をうたう学生運動が激しさを増していました。いまとなっては信じられないという方も多いでしょうが、やがて日本でも社会主義や共産主義による革命が起きるのではないかという危機意識が、保守派や財界を中心に広まっていたのです。 東西冷戦の最前線である韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設しました。 日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが、安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相です。) 国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました。1970年代から1990年代にかけて日本船舶振興会のテレビCMに出演し、「一日一善」「人類みな兄弟」と訴えていた姿を覚えている方も多いでしょう。終戦直後、岸信介元首相、児玉誉士夫(よしお)氏とともに「A級戦犯」容疑者として東京巣鴨拘置所に収監され、後にマスコミから「右翼のドン」と称された人物です。 こうして自由民主党の中でも保守派にあたる勢力と旧統一教会は、反共産主義という共通の政治意識で結びつきを強めるようになったのです。 旧統一教会はアメリカにも影響力を広めようとしました。たとえば「ワシントンタイムズ」という新聞の発刊です。 聞いたことがあるような、ないような名前ですね。「ニューヨークタイムズ」「ワシントンポスト」という権威のある有力紙に似せたネーミングです』、「韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設」、歴史は古いようだ。「日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが・・・岸信介元首相・・・国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました」、なるほど。
・『旧統一教会は選挙を通じて自民党との関わりを強めた  ソ連や中国、そして中国との関係を重視する民主党を非難する論調を展開し、共和党への浸透を図りました。のちにドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れたとされています。 一方、日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります。 一般市民のボランティアを集めるのは本当に大変です。 アメリカなどでは、候補者の政策に賛同した学生や市民が自発的に協力することも珍しくありませんが、日本ではあまり聞いたことがありませんよね。 そこで重宝されるのが組織の力です。共産党や公明党には熱心な支持者がいるため、大勢のスタッフが動員できますし、投票も見込めます。農業や建設業といった政治の影響を受けやすい業界の関連団体にも一定の動員力があります。しかし、こうした基盤を持たない多くの候補者はボランティア集めに苦労しています。) 旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になったのです』、「ドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れた・・・日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります・・・旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になった」、なるほど。
・『名前を変更できたのは安倍派のおかげ?  岸信介元首相の時代に始まった旧統一教会と自民党の関わりは、安倍晋太郎元外相を経て、安倍晋三元首相へと引き継がれました。 自民党はもともと自由党と日本民主党という2つの政党が一緒になってできた経緯もあり、実にさまざまな思想を持つ政治家が集まっている組織です。安倍派に代表される保守派もいれば、岸田首相につながるリベラルな政治家もいます。旧統一教会や国際勝共連合が接近したのは、自民党の中でも保守的な勢力である清和会(安倍派)でした。 2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った。そう勘ぐられるのも無理はありません。 旧統一教会との関わりを指摘された際、「名前が変わっていたからわからなかった」と主張した政治家もいます。 本当に別の団体だと考えた人もいるかもしれませんが、少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません。 宗教団体や信者が政治に関わることに何も問題はありません。ただし、国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか。 そもそも、政策で政治家を選び、選挙を積極的に手伝おうという人が大勢いれば、疑惑を招くような団体の動員力が当てにされることも減るでしょう。政治家のモラルだけでなく、国民の政治への関わり方も、この問題の根幹にありそうです』、「2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った・・・少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません・・・国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか」、その通りだ。

第三に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330715
・『文部科学省が、旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求した。命令が確定した場合は教団の宗教法人格が取り消される。ただし、安倍元首相の暗殺事件を機に問題視されてきた「政治と宗教」の関係が、これで解消されるかは疑問が残る。自民党をはじめとする政党と教団の関係は複雑に入り組んでいるからだ。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、興味深そうだ。
・『旧統一教会への「解散命令」で「政治と宗教」の問題は解決するのか?  文部科学省は10月13日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「教団」)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。 文科省はこれまで、教団を巡る高額な献金や霊感商法の問題について、宗教法人法に基づく「質問権」の行使によって実態の把握を目指してきた。また、被害を訴える元信者らへの聞き取り調査も進めてきた。 ここにきて解散命令を出したということは、教団に解散を請求するのに十分な証拠がそろったとみられる。そして今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある。 教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない。安倍晋三元首相を銃撃したとして殺人罪などで起訴されている山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている。 このような犯罪行為や人権侵害は厳しく罰せられるべきだ。また、教団の被害者救済は何よりも優先されるべきことだ(本連載第309回・p4)。教団への解散命令の請求は、そのための大きな一歩であろう。 ただし解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える』、「今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある・・・教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない・・・山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている・・・解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える」、その通りだ。
・『教団の信者が「政治家の秘書」に政治と宗教「ズブズブ」の実態  過去の関係を振り返ってみよう。政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。 要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ』、「政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた・・・地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ」、地方でも「教団」ががっちりと食い込んでいる様子は、想像以上で、根絶は容易ではなさそうだ。
・『「政治と宗教」のつながりは何らかの形で残るだろう  そして事件後、教団と政治の関係が世論の批判にさらされると、政党などは一斉に教団との関係解消に動いた。そして「教団との関係は一切ない」という旨の発表をし始めた。ただ繰り返しになるが、政党などが「自浄作用」を働かせ、これだけ深く政治に食い込んだ団体と関係を切ることは難しいと筆者は考える。 というのも、国会議員の選挙を実質的に仕切るのは、選挙区の首長、地方議員、スタッフらである(第314回・p4)。その中には、信者であることを隠して紛れ込んでいる人がいるかもしれない。 そうした末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ。実際に自民党では「各業界団体の票だけでは足りない議員について、教団が認めてくれれば、その票を割り振る」ことをしていたという(第309回・p4)。 そうした“ギリギリ当選”を続けてきた議員が、一度票をもらった団体との関係を簡単に断ち切れるのだろうか。「政治家は、選挙に落ちればタダの人」である。 さらに、教団が保守的な思想の団体であることも重要なポイントだ。仮に解散命令が確定しても、教団関係者が左派野党に投票する可能性は極めて低いといえる(第309回・p3)。信者が「勝手に」自民党の政治家を応援し、選挙で一票を投じるかもしれないのだ。そして、それを止めることは誰にもできない。 日本では「政教分離」の原則の下、宗教団体が政治活動を行うこと自体は違法ではない(第309回・p5)。また、自由民主主義社会における、有権者の権利は守られねばならない。そのため、信者の「投票先」まで制限することは現実的に難しい。これを実行しようとすると、プライバシーや人権の侵害になり、宗教弾圧につながる危険性もある。 そのため、今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、「末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ・・・今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか」、残念ながら「失われる」のは殆ど期待できない。
・『「政治と宗教」の問題を解決する唯一の方法とは?  その答えは極めてシンプルだ。国民が政治に関心を持ち、投票に積極的に参加し、「宗教団体による組織票」が選挙の勝敗を左右しない状況をつくることである。 何しろ、21年に行われた第49回衆議院議員総選挙における投票率は55.93%にとどまっている(総務省調べ)。そうした状況下では、政治家が有権者にさまざまな便宜を図り、その代わりに自身に投票してもらう「日本型どぶ板選挙」がいまだに有効な集票手段となる(第309回・p4)。 この「日本型どぶ板選挙」とは、政治家が選挙で票を得るために、どんな所へでも訪ねていき、どんなことでもする選挙を指す。勝つためなら何でもありだ。その結果、さまざまな集票団体に宗教団体が紛れ込み、政治との関係が深まってきた経緯がある。 そもそも多くの政党の議員は、初めて党公認の候補者となって選挙に出馬する前から宗教団体と関係があるわけではない。候補者として選挙区に入るとき、党や派閥の幹部、地元のベテランのスタッフから、支持団体など票を入れてくれる組織や人にあいさつをするように指示される。 候補者はわけもわからず、言われるがまま、選挙に勝つために多くの組織や人に頭を下げる。こうした支持団体に、教団をはじめとする宗教団体が紛れ込んでいる。そこから「ギブ・アンド・テイク」の付き合いが始まり、集票において便宜を図ってもらうようになる。 とはいえ、選挙において、政党の政策や政治家の人物像を見極めて投票するのは国民である。一人一人が有権者として責任ある投票行動ができるようになり、「集票マシーン」としての宗教団体が機能しなくなれば、どうなるだろうか。 政党・政治家と宗教団体の双方にとって、接点を持つ意味は薄れるはずだ。前述した「勝手に応援(投票)する信者」はいるかもしれないが、組織的なつながりは次第に解消していくだろう。他の支持団体との関係も含め、「日本型どぶ板選挙」は終わりに近づくことになる。 安倍元首相の暗殺事件以降、「政治と宗教」関連のニュースを見るたびに「まったく最近の政治家は…」と批判してきた人は多いかもしれない。だが、そうした人々がどれだけ投票に足を運んでいるだろうか。日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ』、「日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ」、筋論ではあるが、百年河清を待つようなものだ。
タグ:「ドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れた・・・日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた・・・地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 「政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える」、その通りだ。 入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない・・・山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている・・・解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。 (その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?) 宗教 「日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ」、筋論ではあるが、百年河清を待つようなものだ。 「こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない・・・過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。 「実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない・・・「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」、なるほど。 「悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました」、恐ろしいものだ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがある」、なるほど。 「今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 窪田順生氏による「旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由」 「韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設」、歴史は古いようだ。「日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが・・・岸信介元首相・・・国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました」、なるほど。 池上 彰氏による「自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア」 東洋経済オンライン 「他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない」、ただ、宗教でもカルトとなると、西欧諸国でも規制する国はある。日本だけが「無茶」をしている訳ではない。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張」、「神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ」、確かにそ 「これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている」、「ホストを題材にしたドラマ」がそれほど多く「放映」されているとは初めて知った。 ダイヤモンド・オンライン 「今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある・・・教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。 上久保誠人氏による「解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?」 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか」、その通りだ。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った・・・少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません・・・国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 「2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります・・・旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になった」、 は殆ど期待できない。 「末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ・・・今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか」、残念ながら「失われる」の 安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ」、地方でも「教団」ががっちりと食い込んでいる様子は、想像以上で、根絶は容易ではなさそうだ。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

幼児虐待(その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?) [社会]

幼児虐待については、本年4月25日に取上げた。今日は、(その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?)である。

先ずは、本年10月12日付け文春オンライン「《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66364
・『「週刊文春」が入手した4枚の写真。トレードマークの赤いネクタイを締めた男性が傍らの女性の首に手を回し、満面の笑みを浮かべながらピースサインで収まっている。テーブルの下では互いの手が重なり合い、仲睦まじい様子だ。そして、互いに頬を寄せ合うほどまでに密着すると――』、「虐待禁止条例」を期待していたのに、いきなり不倫の状況説明とは驚かされた。
・『埼玉の「虐待禁止条例」に批判が噴出  自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案が全国的に物議を醸した。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。想定する禁止事項として「短時間でも子どもに留守番をさせる」「子ども同士で公園で遊ばせる」「子どもだけ家に残し、ごみ捨てに行く」などを列挙。子どもを自宅や車に放置すると「虐待」とみなされ、罰則こそないものの県民にも通報を義務づけていた。 だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。その結果、13日に本会議で採決が行われ可決される見通しだったところから一転、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 今回の条例改正を主導していたのが、県議団の団長を務める田村琢実県議(51)だ。1971年生まれの田村氏は埼玉県内の高校を卒業後、放送大学に進学。故・中山太郎衆議院議員の秘書として政治の世界に飛び込んだ。2003年、埼玉県議会選に挑戦するも落選。再挑戦となった2007年の県議会選で20,702票を獲得し、初当選を果たす。2019年の選挙で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した』、育児の実態を無視した「虐待禁止条例」が、成立寸前まで行ったのは不思議だ。
・『若手を味方につけて委員会を押し切った  埼玉県議の1人がその人物像を語る。 「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています。現在、埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏。条例を数多く作ることが仕事だと考えている節があり、選挙の時のアピール材料に使っている。今回の『虐待禁止条例』の改正案には『これでは虐待者をたくさん生み出してしまう』という不満が党内からも出ていましたが、結局若手を味方につけて委員会を押し切りました」』』、「「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています」、そんなことしたら、政治資金がいくらあっても足りなくなりそうだ。「埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏」、どうせ粗製乱造なのだろうが、意欲だけは評価できそうだ。自民党の県議のなかには、子育て経験者も多いと思われるが、彼らが「虐待禁止条例」に反対しなかったのは何故だろう。
・『県議団の受付嬢と親密な関係に  ところが――。 「田村先生には奥様がいるのですが、かつて自民党県議団の受付嬢A子さんと親密な関係にありました。それを裏付ける写真があります」 田村氏の知人から、「週刊文春」編集部にそんな“通報”が入ったのは10月8日のことだった。入手した写真は全部で4枚。撮影日は2019年1月24日、場所は埼玉県内の飲食店だ。冒頭に触れたように、2人は体を密着させ、手を繋いでいる。そして、田村氏がA子さんの頬にキスまでしているのだ。 「県議団の受付は派遣会社から一日3~4人程派遣されてくるのですが、田村先生はA子さんのことをとても気に入っていました。彼女は県庁内でも北川景子似の美人で知られており、田村先生も『あの子可愛いよね』と周囲に話し、別の受付の人に『一緒に飲みたいから今度飲み会を設定してよ』と迫っていました。そうして実現したのが写真の飲み会です。ただ、2人でというわけにはいかないので、他の自民党の県議2人ともう1人受付の人が加わり、計5人の会になったのです」(同前)) 田村氏自身が改正案の“虐待”のような行動を取っていた この飲み会で2人の関係が急速に進展する。 「会が進むとお酒の力も手伝ってか、田村先生がA子さんに気に入っていることを伝えました。すると、彼女も田村先生のことがタイプだったようで意気投合。隣同士で座った2人は大胆にも手を繋ぎ、田村先生がA子さんの頬にキスをしたのです。彼女も嬉しそうにしていました。そのまま飲み会の途中で2人だけで店を出て行ってしまい……。この日から関係が始まったと聞きました。ただ、田村先生には奥様がいるし、A子さんには当時単身赴任中だった夫と子どもがいる。いわば、“ダブル不倫”のようなものです」(同前) 前出の県議が嘆息する。 「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」 「週刊文春」は事実関係を確認するべく、10月10日昼、田村氏の事務所に質問状を送付。さらに10日夕方、本人の携帯電話にもショートメッセージで質問状を送ったところ、「開封済み」にはなったものの、期限までに返答はなかった。この間、田村氏が率いる自民党県議団は「虐待禁止条例」の改正案の撤回を発表した。 その直後の10日夜、早速、インターネットTV「ABEMA」に出演し、撤回の経緯や自説を披露してみせた田村氏。だが、「不倫キス」写真は撤回――とはいかなかったようだ』、「“ダブル不倫”」は望ましくないが、大人である以上、目くじらを立てるほどでもない。しかし、「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」、ことは重大な問題だ。

次に、10月18日付け文春オンライン「《虐待禁止条例、「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66483
・『「虐待禁止条例」改正案の撤回を巡って物議を醸している自民党埼玉県議団の団長、田村琢実・埼玉県議(52)が、自身が過去に設立した個人企業に公金である政務活動費約1700万円を還流させている疑いがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。田村氏は代理人弁護士を通じて「不適切な点はない」としている。 自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。「短時間でも子どもに留守番をさせる」などが禁止事項に挙げられ、県民にも通報を義務づけていた。だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。結果、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 条例改正を主導していたのが、県議団団長の田村氏だった。2007年の県議選で初当選。2019年の県議選で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した。その田村氏を巡り、「週刊文春」は10月12日配信のスクープ速報で、“北川景子似”の受付嬢との「不倫キス」写真を報じている(田村氏からは期限までに回答はなかった)』、「「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた」、実際には「説明不足」というより、本質的な問題だ。
・『埼玉県議団から田村氏設立の会社への支出が次々と  今回、新たに発覚したのは、田村氏の政務活動費の使途に関する不透明な実態だ。埼玉県議には給与とは別に、1人当たり政務活動費が年間600万円分支給されている。田村氏の使途で、目立つのが「株式会社TMコーポレーション」への支出だ。例えば、昨年4月28日には、広報誌「チャレンジスピリッツ」の制作・印刷・封入代として、同社に20万5168円を支出し、このうち政務活動費から13万3884円を充当している。 加えて、埼玉県議団も今年2月28日、「県議団ニュース」の印刷費等として同社に113万9930円を支出し、このうち政務活動費から110万5732円を充当している。こうした「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた。 この「TMコーポレーション」は元々、田村氏が2003年に設立した会社で、当時は「有限会社タムラコーポレーション」という名称だった。以降、代表取締役を務める傍ら、2007年に県議選に初当選。その後、2013年に「有限会社TMコーポレーション」へと商号変更している。さらに2015年に現在の「株式会社TMコーポレーション」に再び商号変更し、2018年には知人のS氏が代表取締役に就いていた』、第一の記事で「若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る」、原資はこうした不正、「「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた」が当てられたいた可能性がある。
・『多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図  県議会関係者が指摘する。 「S氏は薬局関係の会社を経営しており、名義貸しのようなもの。県議会は政活費の運用指針で、親族や本人が代表を務める会社への支出には慎重な対応を求めており、表向き代表を降りたのでしょう。ただ、現在も田村氏が、毎年同じレイアウトに文章をはめ込んでいると聞きます。しかもTM社の印刷費はネット業者の2~3倍の価格。不当に多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図で、党内からも疑問の声が上がっています」 田村氏に事実関係の確認を求める質問状を送付したところ、代理人弁護士名で主に以下のような回答があった。 「有限会社TMコーポレーション(株式会社TMコーポレーションに商号変更。以下、「同社」といいます。)は、田村氏が埼玉県議会議員に就任する前の2003年に同氏が設立したものですが、2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています。妻(回答は実名)も同時に同社取締役から退任しております。それ以降、田村氏(及び妻)は同社の経営に一切関与しておらず、同社を実質的に支配しているとの事実もございません。 また、『チャレンジスピリッツ』の印刷は同社が信頼できる印刷業者である等の理由から同社に発注したものです。『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます。 埼玉県議会制定の『政務活動費の運用指針』において、『配偶者、被扶養者、同居者など生計を一にする者や自らが代表者・役員等の地位にある法人に対する支出は、実費の弁償ではないとみなされるおそれがあるため慎重な対応を要する。』とされていますが、事実関係は上記のとおりであり、同社に対する印刷発注の支払いに政務活動費が充てられたことは、上記『政務活動費の運用指針』に何ら抵触せず、不適切な点はないものと存じます」 政活費に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。 「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」 10月18日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および10月19日(木)発売の「週刊文春」では、田村氏と受付嬢の「不倫キス」写真の詳細のほか、TMコーポレーションの現代表取締役S氏との一問一答などについても報じている』、「上脇博之教授が指摘する。「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」、現実には、「2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています」と形式だけ整えたようだ。「『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます」、不利な事実は開示しない姿勢のようだ。やはり、「TMコーポレーション」は大いに問題があるようだ。

第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンライン「「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330606
・『先日、明らかになった子どもを車内や自宅などに放置することを禁じる埼玉県虐待禁止条例の改正案は、全国から批判が殺到。罰則はないが、子どもを置いて短時間のゴミ出しなども場合によっては「虐待」にあたるという内容に「現実的ではない」「親を追い詰める」などの声があがり、改正案を提出した自民党埼玉県議団は撤回を余儀なくされた。一方、3年半前に、同じく全国的に炎上したのが「ゲームは1日60分まで」という時間の目安を盛り込んだ「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」だ。『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)を上梓した瀬戸内海放送の山下洋平記者に改めて条例の問題点と現在地を聞いた』、興味深そうだ
・『大ざっぱな条例内容と水増しされたパブコメ  「埼玉県の条例改正案について報道で知ったとき、香川県のゲーム条例とよく似ているなとまず感じました。保護者に過度な責任を押し付けるような中身もそうですが、それまであまり注目されていなかったのに成立の直前になって全国から批判が集まったところもです。ただ、大きく違うのは、埼玉では案が取り下げられたのに対し、香川県議会は強行して条例を成立させてしまったところです」 こう話すのは瀬戸内海放送の山下洋平記者だ。2020年、香川県で施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例」について現在まで追及を続けている。ネットやゲームの利用時間などに言及した条例としては日本初。しかし、その条例の中身には問題点も多く、不透明な点が多くあった。 条例の問題点を山下氏はこう語る。) 「ネット・ゲームの依存防止という目的そのものは否定しませんが、内容や制定過程がとにかく雑です。まず、ゲーム依存症という定義自体が科学的・医学的に定まっていません。治療の現場を取材すると、長時間ゲームをしている人の中には、学校生活などでつまずきがあり、引きこもった結果としてゲームに逃げ込んでいる人がいるなど複合的な要因があり、ゲーム自体が依存の要因になっているとは必ずしもいえません。『うちの子、ゲームばかりして宿題もしないし大丈夫かしら』と親が心配するレベルの子どもたちはたくさんいると思いますが、彼らは学校に行き、社会生活もできている。条例はこの両者を一緒くたにして考えているから『ゲームは1日60分を目安に』などという対策が出てくるのだと思います」 山下氏はこうした疑問をもとに、香川県に対し、ゲームへの依存による通院、入院者の数や推移のデータを要求したこともあった。 「でも、そんなことは調べてないって言うんです。対象となる母数もわからないのに条例の効果をどうやって測定するのか。どこの誰に向けた条例なのかが、まったく判然としないのです」 実際、2020年1月に条例の素案が公表された直後には、県職員が「ネット・ゲームの規制という結論ありきで、当事者たる子どもを交えた議論のないまま県議会の委員会内で一方的に話が進められていることに強い危機感を覚え、私はこの条例の制定に反対します」という意見を実名で出した。 さらに、条例の制定過程には作為性が見られた。条例の素案にあった「ゲームは1日60分まで」という時間規制(のちに家庭でのルールづくりの目安に修正)にはネットを中心に「時代に逆行している」などという反対意見が噴出し、炎上状態となった。しかし、その後、寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった。 「私は8割が賛成ということに違和感を持ち、すぐにパブコメ原本を情報公開請求をしました。しかし、開示前に条例は可決。その後、開示された原本を見ると、賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あったのです」 実際、「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた』、「寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった・・・賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あった・・・「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた」、こんな不正な操作で「条例通過」を図ったとは、酷い話だ。
・『施行2年での見直し条項も その動きはまったくなし  このような不透明な制定過程に疑問を抱いた山下氏は、成立した後も取材を重ねた。条例が憲法違反にあたると県を訴えた高校生や、ゲームクリエーターらゲーム関係者、さらには知人に頼まれてパブコメで賛成意見を送ってしまったという住民などにも取材をした。 しかし、香川県議会は誠実な説明を行わないばかりか「なかったことにしよう」という姿勢すら見て取れるという。) 「ゲーム条例の付則に、施行2年を目途とした、いわゆる見直し条項があるにもかかわらず、今なおまったくその動きは見られません。国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました」 件のゲーム条例は「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)」などという文言があるが、あくまでそれは親の努力義務という立て付けだ。罰則もないため、住民にとっても今や過去の産物になりつつある。 「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」』、「国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました・・・「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」」、なるほど。
・『「県民が舐められている」香川県議会の高額視察費用  ちなみに、香川県議会によるこうした不透明な行いはゲーム条例以外にもある。今年11月に予定している知事と議員らの海外訪問において、議員1人当たりの費用が約263万円だという計画を発表。その高額さに市民団体や一部議員から批判の声が上がり、宿泊先ホテルのグレードを下げるなどして3割ほど減額することになった。議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人の派遣費用は1000万円を超える見込みだ』、「議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人」、「知事」、「議員」「4人」、「随行職員」は4人も行く必要があるのだろうか。
・『「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?  瀬戸内海放送の山下洋平記者の著者『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)
「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません。そして、これはなにも香川県だけの問題ではなく、全国、そして国会においても同様だと思います」 しかし、メディア側にも為政者の傲慢(ごうまん)さを招いた要因があると山下氏は語る。) 「私もゲーム条例の取材を始めたのは、制定直前でした。もっと早くからメディアとして議会の動向をチェックしていれば、と反省しています。また、報道機関の運営上、仕方ないのですが、大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね。そういう思いもあって、ほとんどの社が取り上げなくなった今でもゲーム条例の取材を続けています」 「そもそもが、しつこい性格なんです」と話す山下氏だが、現在はゲーム条例の他に目を光らせるテーマがある。 「旧香川県立体育館の問題についてです。世界的な建築家の丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明なんです。香川県に限らず、こうした貴重な建築物が老朽化とともに壊されています。それらを守る方法や意思決定のあり方について取材をしていきたいと考えています」 「ほとぼりを冷めさせない」と話す山下氏。それは、有権者にも必要な姿勢だろう』、「「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません」、「旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決」、上告したので、「返還」はまだしてないのだろうか。「大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね」、「丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明」、ローカルメディアにも頑張って欲しいものだ。
タグ:文春オンライン「《虐待禁止条例、「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張」 「“ダブル不倫”」は望ましくないが、大人である以上、目くじらを立てるほどでもない。しかし、「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」、ことは重大な問題だ。 「埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏」、どうせ粗製乱造なのだろうが、意欲だけは評価できそうだ。自民党の県議のなかには、子育て経験者も多いと思われるが、彼らが「虐待禁止条例」に反対しなかったのは何故だろう。 「「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています」、そんなことしたら、政治資金がいくらあっても足りなくなりそうだ。 (その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?) 育児の実態を無視した「虐待禁止条例」が、成立寸前まで行ったのは不思議だ。 幼児虐待 「虐待禁止条例」を期待していたのに、いきなり不倫の状況説明とは驚かされた。 文春オンライン「《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」 ダイヤモンド・オンライン「「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?」 議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」」、なるほど。 『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社) 「国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました・・・「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。 「寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった・・・賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あった・・・「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた」、こんな不正な操作で「条例通過」を図ったとは、酷い話だ。 「『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます」、不利な事実は開示しない姿勢のようだ。やはり、「TMコーポレーション」は大いに問題があるようだ。 「「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません」、 「「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた」、実際には「説明不足」というより、本質的な問題だ。 第一の記事で「若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る」、原資はこうした不正、「「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた」が当てられたいた可能性がある。 「上脇博之教授が指摘する。「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」、現実には、「2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています」と形式だけ整えたようだ。 「議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人」、「知事」、「議員」「4人」、「随行職員」は4人も行く必要があるのだろうか。 「旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決」、上告したので、「返還」はまだしてないのだろうか。「大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね」、「丹下健三が設計し、 和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明」、ローカルメディアにも頑張って欲しいものだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

高齢化社会(その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ) [社会]

高齢化社会については、本年9月29日に取上げた。今日は、(その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ)である。

先ずは、本年10月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した浜松医科大学名誉教授 医学博士の高田明和氏による「高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72574
・『うつや認知症を招く老化を遅らせるにはどうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「65歳以降、いわゆる老化に伴い多くなる孤立状態になると、うつの症状が出てくる。また、うつになると認知症を引き起こしやすくなる。これらの負の連鎖を避けるためには、生涯現役が理想という幻想を捨て、日々のちょっとした生きがいを持つといい」という――。 ※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『「不安」「孤独感」「うつ」の相関関係  肉体の衰えと孤独感には、非常に深い関係があります。 やはりちょうど肉体の耐用年数を超えた65歳くらいから、心を病む人が非常に増えてきます。 私の周りで多いのは、うつ病になるケースで、不眠の症状が出る人が増えています。社会的地位を失ったことや、人間関係を損なってしまっただとか、自分が陥った状況についてくよくよと思い悩んでいるうちに、寝つけなくなってしまうのでしょう。 それから、妻に先立たれて一人になった夫は、認知症になってしまうケースが多くあります。孤独感を忘れよう、亡くなった妻のことは考えないようにしようとするせいか、思考停止の状態が、だんだんと認知機能を衰えさせるのでしょう。 「不安」と「孤独感」と「うつ」は、いずれも脳の扁桃体と帯状回(注)という部分が関連しています。 人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます』、「人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます」、なるほど。 (注)帯状回:大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回(Wikipedia)
・『老化を遅らせる練習  ここから逆算して考えれば、年を取ったら、うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせることになります。 そのために重要なことの1つめが、本書で詳しく述べている「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました。 2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。 のんびりお茶でも飲もうかと思ったら、仕事の依頼の電話がくる――そんな忙しい人であれば、不安になっている暇なんてないでしょう。 こう書くと「仕事がない人はどうするんだ?」と思うでしょうが、たとえば、これまで専業主婦として会社勤めの経験がない女性でも、孤立からうつになる人は、男性よりもずっと少ないことが判明しています。 それは、たとえ誰とも会わなくても、食事を作ったり掃除をしたり、家事のさまざまな「やるべきこと」があるせいで、十分に生きがいのある忙しい毎日を過ごしているからです。 「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。 孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。 ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう』、「うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせる・・・そのために重要なことの1つめが・・・「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました」、「認知症」や「うつ」と関係なさそうな「腸内環境を整えること」、とは「腸」は重要な臓器のようだ。「2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。」、なるほど。
・『孤独な寝たきりになる高齢者の共通点  肉体が衰えて病気になると、ときには死へと誘導するような致命的な孤独感が生じます。だとすれば、私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます。 また、このくらいの軽い運動をすれば、自分の体力がまだまだ衰えていないことを確認できますし、何かのスポーツをするよりずっと簡単で、確たる自信にもなります。 この程度でまったく構わないのではないか、と思っているのです。 ウォーキングはおろか、少しの散歩すら、本当は必要ないのではないでしょうか。 足腰の関節などの耐用年数からいっても、世の中の筋トレブームにつられて無理に「運動しよう」なんて考える必要は、まったくないと思っています。 もちろん、苦もなく楽しく動けるならば、それに越したことはありません。山登りもいいし、マラソンだっていい。若いころにしていたスポーツを、年寄り仲間と楽しむことは否定しません。 ただ、私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです。 苦痛に顔をゆがめてまで健康になろうとする必要はないし、日々練習をして「大会で優勝しよう」なんて気張る必要もないでしょう』、「私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます」、「私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです」、やはり過ぎたるは及ばざるが如しのようだ。
・『運動不足以上に気をつけるべきリスク  こう書くと、ゴルフとかテニス、マラソンなど、あらゆるスポーツを生きがいとしている人たちから批判されるかもしれません。 楽しんでやっている分には構わないし、私はそういう方に対して「やめなさい」とまで言うつもりはありません。 しかし、高齢になっても続けている以上は、「それができなくなったとき」のことを想定しておいてほしいとは思います。 というのも、体力もあって積極的にスポーツを楽しんでいた方が、身体機能の衰えや足腰を痛めたことをきっかけに、思うように運動ができなくなり、孤独感を増してしまうケースがとても多いからです。 特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと。 ゴルフのスコアも、マラソンのタイムも、一日に歩く歩数も、年を取ったら下がるのが当たり前なのです。ただ、その下がり具合を誰かと競い合っても意味がありません。 運動をしてはいけないというのではなく、人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう』、「特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと」、「人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう」、なるほど。
・『「生涯現役」という幻想も、孤独感を招く  年を取ってから執着してはいけないのは、運動の強度だけでなく、仕事や社会的な役割についても同じかもしれません。 もちろん、経済的な事情から「仕事をして収入を得なくてはいけない」人はいるでしょう。でも、そうではないのに、何歳になっても「仕事をするべきだ」ということはないですし、いつまでも現役でいる人が偉いわけでも、幸せなわけでもありません。 医学の分野にはいつまでも現役の人が多いのですが、早期に引退したからといって悪いわけではないし、仕事を辞めたって人生を大いに楽しんでいる人は大勢います。 世の中は、「高齢でも、仕事をしている人が素晴らしい」と、むやみやたらに崇め奉るのですが、そんな幻想に惑わされてはいけません。 すでに述べたように、私たちの肉体は70歳や80歳を超えたら、正常に使えるようにはできていません。したがって仕事年齢だって、本来は70歳以上を想定してはいないわけです。だから一般的には65歳くらいで定年になっています。 しかし、人生が長くなった結果、私たちは想定外の努力をしなければならなくなりました。 たとえばあるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます。 それに、家でのんびりしている状態とくらべれば、やはり体に負担がかかるのは事実です。なんだかんだいって管理人さんの仕事は忙しいものですから、それなりに体をケアしながら、無理をせずに仕事をしていく必要があるでしょう。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です』、「あるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます」、「「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です」、なるほど。
・元部下との関係性の変化は当然  引退後も仕事を続けることは、生きがいにもなるし、人間関係を維持したり新しく築いたりするきっかけにもなりますから推奨すべきことです。私も執筆の仕事をしているおかげで、心身ともに健康な生活ができているのは確かです。 ただ、多くの場合、現役のころよりも権限は少なくなるし、言い分も通らなくなります。現役時代にそれなりの地位にいて部下たちから丁重に扱われていたのに、引退して顧問のような立場になったとたん、部下が持ち上げてくれなくなり、言うことを聞いてくれなくなることは、よくあります。 現役時代は上下関係が厳格だったので、部下もそれなりに気をつかわなければならなかったのが、そうした関係性がなくなれば、元部下も自分の仕事があるから、いちいちあなたに構ってばかりもいられません。 ときには元部下に、これみよがしに邪険にされることがあるかもしれませんが、それは現役時代にあなたが相手に辛く当たっていたからでしょう。多くの場合は親子関係と同じで、必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります』、「必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります」、なるほど。
・『90歳で元気な人が認知症になった理由  私の知人に、100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです。人間関係における判断を間違えたのです。 偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました。 90歳を超えてもあれほど頭の切れた人が、まさか認知症になるとは、私は考えもしませんでした。てっきり、仕事中にポックリ逝くのだろうと思っていたくらいです。 そのときは、年を取ることの怖さを感じたものです』、「100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです・・・偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました」、考えようによっては、「自分の過ち」で苦しめられるよりは、「認知症」になって幸せだったのかも知れない。
・『高齢になったら執着は捨てる  アルツハイマー病による認知症(アルツハイマー型認知症)は、一般的には加齢とともに脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積していき、それが脳細胞に影響を与えるために起こるとされていますが、若年でかかる人もおり、なぜ、アミロイドβが蓄積するのか正確な原因はわかっていません。 ちなみに、「認知症」というのは病名ではなく、表面に現れた症状のことを指します。そして、認知症を引き起こす原因は1つではありません。 頭部の外傷で起こることもあるし、糖尿病などの生活習慣病やアルツハイマー病が原因であることもあるし、レビー小体の蓄積や遺伝性の場合もあります。 すでに述べたように、アルツハイマー型認知症には、うつが大きくかかわっています。孤独感や自信喪失、挫折感などで、耐えられないほどの精神的な苦しみがある人は、アルツハイマー型認知症になりやすいわけです。 実際に、アルツハイマー型認知症になった人を見れば、「人生をかけて、自分が立ててきた学説がダメになった」とか、「今までの自分の功績が否定された」など、何か取り返しのつかない大きな失敗をしたと思い込んでいる場合が多くあります。もちろん、伴侶を失ったことに対する喪失感が、認知症の発症を促すこともあるでしょう。 だからアルツハイマー型認知症を避けるために大切なのは、高齢になったら、もう執着は捨てることです。 世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです。 それでも、どうしても執着が捨てられないのなら、いっそ自分が属していた世界から完全に離れることです。 いつまでも「尊敬されていたい」とか、「下の人間に優越感を持ちたい」と考えているかぎり、現実とのギャップに打ちのめされるだけ。 だから、そうした苦しい思いをしないですむように、その世界から離れるのです。引退者は引退者として、まったく違った人生を楽しむほうが、きっと心穏やかでいられ、楽しくもあるはずです』、「世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです」、確かにその通りだろう。
・『本当に「脳に効くトレーニング」の中身  最近は、認知症を予防するために、パズルや間違い探し、クイズや計算ドリルを解くといった、いわゆる「脳トレーニング(脳トレ)」が流行っています。ただ、これが実際に予防に効果あるかといえば、大いに疑問です。 というのも、脳の一部分を酷使したところで認知症対策にならないことは、すでに医学的に証明されているからです。それは、コンピューターのように優秀で明晰な頭脳を日々鍛えている囲碁や将棋の名人でさえも、認知症になることからも明らかです。 逆に、無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です。 ちなみに、認知症の原因の中でも上位を占めるアルツハイマー病は、脳神経が変性し、脳細胞が萎縮していく病です。 最近になり、アルツハイマー型認知症は薬で進行を遅くすることができるようになりました。でも高額なわりに、遅らせる程度は20~25%のみ。たとえば85歳くらいで始まる認知症が、88歳くらいで始まるようにする効果しか、今のところありません。 しかも、認知症を引き起こす病気は、ほかにいくつもあるわけです。ですから、「アルツハイマー型認知症だけの発症を延ばしたところでリスクは変わらない」とする考え方もあります。 でも、「3年も遅らせることができるなら、朗報だ」と考えることもできます。そのご家族にしてみれば、3年間の介護負担があるかないかの差は大きいからです。 ところで、今、世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)。 アルツハイマー病を発生させる要因が解明されれば、将来はかなりの割合で認知症を抑えることができるでしょう』、「無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です」、「世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)」、この分野の研究がもっと進むことを願うばかりだ。

次に、10月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した認知症専門医の朝田 隆氏による「これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症の改善にも役立つ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/74656?page=1
・『認知症には、健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーン(軽度認知障害)の段階がある。認知症専門医の朝田隆さんは「認知症の予防には筋肉を鍛えることが重要だ。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインが脳の神経細胞を増やす働きをする。歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」という――。 ※本稿は、朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)の一部を再編集したものです』、「歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」、とは有り難い話だ。
・『筋トレで頭の回転がよくなったQさん  脳の働きを高めるには、運動も欠かせません。広告代理店に勤務しているQさん(62歳・男性)は、持ち前のひらめきやアイディアを生かして、数多くのクライアントの広告を手掛け、高い評価を得てきました。 ところが、40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えたといいます。 運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしいと、Qさんは話します。 また、健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えたとおっしゃっていました』、「40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えた」、素晴らしい効果だ。「運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしい・・・健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えた」、これほど運動が効果あるとは、私も驚かされた。
・『筋肉が増えると、脳の神経細胞も増える  Qさんのように、「運動を始めてから頭の働きがよくなった」とおっしゃる人はたくさんいます。認知症に対しても運動の効果はバツグンで、日常的な活動量の多い高齢者ほど、認知症の発症率が低い傾向にあることが知られています。 運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます。もちろん、それは確かですが、それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在するという研究が報告されているのです。 以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです。 「脳の神経細胞って、大人になってからでも増えるの?」と、驚く人もいるでしょう。 おっしゃるように、少し前までは、脳の神経細胞は成人後に増えることはないと考えられていました。しかし現在は、脳の神経細胞は年をとっても増えることがわかっており、ハーバード大学医学部のレイティ博士は、「運動こそが、脳の神経細胞を増やすために最も効果が期待できる」と述べています』、「運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます・・・それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在する・・・以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです」、「脳」や「筋肉」についてのこれまでの知識が陳腐化してることに、改めて驚かされた。
・『筋肉が萎縮したマウスは記憶障害になった  さらに運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です。 逆に、運動不足によって筋肉(骨格筋)が萎縮すると、それだけでアルツハイマー型認知症の発症につながることが、富山大学の東田とうだ千尋教授らの動物実験で明らかにされています。マウス(若齢のアルツハイマー病モデルマウス)に筋肉の萎縮を誘発したところ、そうでないマウスにくらべて若年例でも記憶障害が発症していたというのです。 認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます』、「運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です・・・認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます」、「運動」の重要性を再認識した。 
・『認知機能が平均34%アップした「すごい歩き方」  中高年の方から「足腰を鍛えるために、毎日ウォーキングをしています」という声がよく聞かれます。ウォーキングは、呼吸で取り入れた酸素を使って脂肪を燃やす有酸素運動。健康増進やダイエットには最適です。 しかし、ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらないことが、中高年を対象とした調査で明らかにされています。せっかく歩くなら、しっかりと筋肉をつけて、認知症予防にも役立てましょう。 そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです(能勢先生が理事長を務めるNPO法人 熟年体育大学リサーチセンターの研究より)』、「ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらない・・・そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです」、「認知機能が平均34%も改善されていた」、とは効能あらたかだ。ただ、私の場合、散歩は後ろ向き歩きも組み合わせているので、「インターバル速歩」を採り入れる余地は残念ながら殆どない。
・『「ちょっとキツい」と感じる程度がいい  また、インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つことが明らかにされています』、「インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つ」、ここまで効果が大きいのであれば、前向きの過程で、「インターバル速歩」を採り入れてみたい。
・『インターバル速歩のやり方  ① 3分間「さっさか歩き」をしたあと、次の3分間は「ゆっくり歩き」をします。 ② ①を1日5セット以上行います(1セットずつ、時間を空けて行ってもOK)。 ③ 週4日以上を目標に行い、5カ月以上続けます。 さっさか歩きは「ちょっとキツい」と感じる程度が目安。ゆっくり歩くときは、呼吸を整えながら、自分にとって「ラクなペース」で。ただし、目線や姿勢、歩幅などは、図表1で示した正しいフォームを崩さないように意識しましょう。 【図表1】インターバル速歩のやり方出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 インターバル速歩によって太ももの筋力が向上すると、転倒予防にも役立ちます。最近は、インターバル速歩の歩く速さを切り替えるタイミング(3分)を教えてくれたり、歩行ペースを記録できるスマートフォン用の無料アプリもあります。 ストップウォッチや腕時計でもよいですが、歩くことに意識を集中するうえでは、スマホアプリを使ったほうが便利です。なお、持病があって通院している人は、主治医と相談してから行ってください』、私は携帯を持たない主義だが、「スマホ」がここまで便利になってくると、考え直さざるを得ない。
・『「フラダンス」がインナーマッスルをフル稼働させる  「時間を測りながら歩くなんてめんどう」 「もっとラクで楽しい筋トレ法はないの?」 「めんどうくさい脳」になっている方からは、そんな声が聞こえてきそうですね。 インターバル速歩は、決してめんどうなトレーニングではありません。とはいえ、まずは運動に興味をもっていただくことが大事なので、エモーショナルなときめきがプラスされた楽しい筋トレとして、フラダンスを紹介しましょう。 フラダンスは、「ハンドモーション」と呼ばれるしなやかで美しい手の動きが特徴的な、ハワイの伝統的な踊りです。ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです。 はだしの足裏と足指で地面をしっかりとらえながら、重心を低くした姿勢でひざを曲げて立ち、絶えず腰を左右に振ってステップを踏む。こうした姿勢で踊っていると、足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます。 【図表2】筋トレになるフラダンス出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 優雅な手の動きも見た目よりハードで、腕の筋トレになるほか、その繊細な動きを覚えるために脳も大いに刺激されます。また、長く続けるうちに体幹が鍛えられて体のバランスが安定し、転倒しにくい体づくりにもつながります。 活気を取り戻し、マイナス感情を低下させる効果も さらに、福岡大学スポーツ科学部の森口哲史教授が40~50代の女性を対象に行った調査では、フラダンスのレッスンを2時間受けた人は、「活気」が高まった一方で、「緊張」「抑うつ」「疲労」などのマイナスの感情は低下していたと報告されています。 フラダンスは、心理面にもよい影響を及ぼすということです。 フラダンスは、もともと文字をもたなかったハワイの人たちが、自分の気持ちを伝えるために踊ったものといわれています。華やかな衣装を身にまとって踊れば、よりエモーショナルなときめきが高まり、脳の活性化につながります。日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です。 実際に、最近はフラダンス教室へ通う男性も少しずつ増えているようです』、「ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです・・・足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます・・・日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です」、私も一度、試してみたい。

第三に、10月9日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの堀尾 大悟氏による「老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/706946
・『いくつになっても、旅行に出かけたり、好きなものを食べたりし続けたりしたいもの。そのためには、タンパク質を積極的にとりながら運動をすることで「筋力」を蓄えることが重要だと、諏訪中央病院の名誉院長、鎌田實氏は説く。 同氏と生島ヒロシ氏との共著書である『70歳からの「貯筋」習慣』では、高齢者が長く健康を保つために、体の筋肉を蓄える「貯筋」の大切さを提唱している。「がんばらない健康法」を提唱する鎌田さんに、その「貯筋」に長く取り組む食事や運動のポイントを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは鎌田氏の回答)』、「がんばらない健康法」とは興味深そうだ。
・『お金よりも「筋力」が減るほうが大変  Q:40~50代の世代にとって、両親は70~80代に差し掛かっていて、この先いつまで健康でいてくれるか気になります。 A:誰しも、80歳、90歳を超えても、自由に旅行したり、食事を楽しめるような老後を過ごしたいものだし、息子さん、娘さんもそれを望むのは当然ですよね。 そのためには遊ぶお金を貯めておく「貯金」ももちろん大事ですが、おいしいカツ丼を食べるのも、日帰り温泉に行くのも1000円札があればできること。実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果を発表しています。) Q:サルコペニアになると、どういった支障が生じるのでしょうか。 A:サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう。 Q:高齢者が人生を楽しむためにも「貯筋」が必要だということがわかりました。具体的にはどのように「貯筋」を実践すればよいですか? A:「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね』、「実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果」、「75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当」、かなり高い割合だ。「サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう」、「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね」、なるほど。
・『「たん活」のイチオシは高野豆腐  Q:「たん活」のためには何を食べればよいですか。 A:肉・魚の動物性タンパク質が基本となります。動物性の油は生きていくうえでの活力にもつながります。僕の周りを見ても、90歳を過ぎても元気な人にはお肉が好きな人が多いです。共著者の生島ヒロシさんは、毎日肉と魚を食べる「ダブルたん活」を実践しています。 でも、お肉には脂肪が含まれるので、食べ過ぎずに植物性タンパク質で補うことも大事です。特に、豆腐や納豆などの大豆製品がお勧めです。 僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます。 さらに、亜鉛、鉄、カルシウムといったミネラルも豊富。高野豆腐を 粉末状にした粉豆腐は小麦粉の代わりにもなり、僕はお好み焼きを作るときに使っています。間食が好きな人には大豆チップスもお勧めですよ。) Q:食べ過ぎて肥満を気にする人もいると思います。 A:確かに肥満は糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因の1つではありますが、僕は著書や講演で「ダイエットしましょう」と言ったことがありません。 なぜなら、日本人の多くは、メタボ健診の刷り込みが強く、肥満を過度に気にする「肥満パラドックス」に陥っているからです。 60歳、70歳を過ぎてから躍起になって体重を落とす必要はありません。食事制限で痩せようなんてもってのほか。気にすべきは「太っていないか」より「筋肉が落ちていないか」です。 Q:「たん活」と並ぶ、「貯筋」のもう1つの柱が「運動」です。 A:運動は、筋肉をつくるだけでなくさまざまな「いいこと」をもたらしてくれます。 運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです。 生島ヒロシさんは、多額の借金を抱えながらも仕事が減ってきてピンチだった時期に、空いた時間で筋トレをしていたそうです。結果、ぐっすり眠ることができ、その後の仕事でいい循環が生まれ、借金も完済できた。その頃の生島さんは、筋トレすることで「なにくそホルモン」が出ていたのでしょうね』、「僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます」、「運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです」、なるほど。
・『犬の散歩は「ウォーキング」ではない  Q:高齢者の運動といえば「ウォーキング」が代名詞ですね。 A:確かにウォーキングは気軽に取り組みやすいのですが、よく犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから。 東京都健康長寿医療センター研究所の発表によると、歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き」。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します』、「犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから・・・歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き 。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します」、「速遅歩き」は第二の記事での「インターバル速歩」と同じだ。
・『「貯筋」はウォーキングだけではできない  Q:この「速遅歩き」なら、運動習慣のない高齢者でも実践できそうですね。 A:「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません。 Q:高齢者でも取り組みやすい筋トレを教えていただきました。ただ、特に運動習慣のないの人にとってはよほど頑張って取り組まないと……。 A:いえいえ、頑張りすぎるとかえって長続きしませんよ。僕の健康法は「食べるな」とか「ダイエットしろ」なんて言ったことがありません。基本的にはおいしいものを食べるために僕たちは生きているのだから、「頑張って運動しなきゃ」と思わずに「体を動かしておけばこれからもおいしいお酒やごはんを楽しめるぞ」と思えたほうが、長続きすると思います。) 運動が苦手な人に僕が勧めているのは「ながら運動」。例えば歯磨きしながらスクワットをする。料理のとき、お鍋に火が回るのを待つ間にかかと落としをする。テレビの野球中継を観ていてチェンジになったらスクワットをする――と決めてしまうのです。 この「ながら運動」は高齢者だけでなく、忙しいビジネスパーソンの方にも有効です。通勤中に、電車の吊り革につかまった時にかかと落としをする。駅から会社に行くまでの間に「幅広ウォーキング」をする。お昼休憩のとき、少し遠回りをして「鎌田式ウォーキング」をして、レストランまで行く――。「ながら運動」を日常生活に上手に取り入れればだんだんと習慣化できて、今度はやっているうちに楽しくなってきます』、「「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません」、なるほど。
・『運動を続ける「コツ」  Q:運動が楽しくなってくるんですか? A:運動を続けると「ドーパミン」という快感ホルモンが分泌されます。子どもがテストでいい点数を取ったときにほめてあげると、子どもが「もっと頑張っていい点数を取ろう」とうれしくなってもっと勉強しますよね。それがドーパミンです。 僕はスポーツジムに通っていますが、50キロのバーベルを担いでスクワットができると、トレーナーから「50キロのバーベルを担げる70歳以上の人なんかいませんよ!」とほめられる。そうするとうれしくなって「50キロ以上の重さにチャレンジしよう」と思える。これもドーパミンの仕業です。 運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ』、「運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ」、確かにこれならヤル気が出そうだ。
タグ:朝田 隆氏による「これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症の改善にも役立つ」 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です」、「世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)」、この分野の研究がもっと進むことを願うばかりだ。 PRESIDENT ONLINE (その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ) 高齢化社会 「無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 ただ、私の場合、散歩は後ろ向き歩きも組み合わせているので、「インターバル速歩」を採り入れる余地は残念ながら殆どない。 「世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです」、確かにその通りだろう。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう」、なるほど。 「特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと」、「人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです」、やはり過ぎたるは及ばざるが如しのようだ。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます」、「私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 「私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 「2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。」、なるほど。 ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう』、「うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせる・・・そのために重要なことの1つめが・・・「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました」、「認知症」や「うつ」と関係なさそうな「腸内環境を整えること」、とは「腸」は重要な臓器のようだ。 「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。 孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。 (注)帯状回:大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回(Wikipedia) 「人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます」、なるほど。 高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房) 高田明和氏による「高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう」 「実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果」、 「がんばらない健康法」とは興味深そうだ。 堀尾 大悟氏による「老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ」 東洋経済オンライン すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました」、考えようによっては、「自分の過ち」で苦しめられるよりは、「認知症」になって幸せだったのかも知れない。 「100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです・・・偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 「必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります」、なるほど。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます」、「「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です」、なるほど。 「あるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです」、「認知機能が平均34%も改善されていた」、とは効能あらたかだ。 「ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらない・・・そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 「運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です・・・認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます」、「運動」の重要性を再認識した。 逆に、運動不足によって筋肉(骨格筋)が萎縮すると、それだけでアルツハイマー型認知症の発症につながることが、富山大学の東田とうだ千尋教授らの動物実験で明らかにされています。マウス(若齢のアルツハイマー病モデルマウス)に筋肉の萎縮を誘発したところ、そうでないマウスにくらべて若年例でも記憶障害が発症していたというのです。 認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます』、 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです」、「脳」や「筋肉」についてのこれまでの知識が陳腐化してることに、改めて驚かされた。 ・『筋肉が萎縮したマウスは記憶障害になった  さらに運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です。 「運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます・・・それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在する・・・以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 「運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしい・・・健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えた」、これほど運動が効果あるとは、私も驚かされた。 「40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えた」、素晴らしい効果だ。 「歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」、とは有り難い話だ。 筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます・・・日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です」、私も一度、試してみたい。 「ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです・・・足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。 、私は携帯を持たない主義だが、「スマホ」がここまで便利になってくると、考え直さざるを得ない。 「インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つ」、ここまで効果が大きいのであれば、前向きの過程で、「インターバル速歩」を採り入れてみたい。 「運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ」、確かにこれならヤル気が出そうだ。 「「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません」、なるほど。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き 。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します」、「速遅歩き」は第二の記事での「インターバル速歩」と同じだ。 「犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから・・・歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 「運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです」、なるほど。 「僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます」、 「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね」、なるほど。 「75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当」、かなり高い割合だ。「サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう」、「貯筋」には大きく2つの柱があります。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感