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中国経済 [世界経済]

今日も日経平均株価は3日連続の下げとなったが、株安の主因とされる中国経済を取上げよう。なお、人民元切り下げ騒動については、8月19日に取上げたので、参照されたい。

先ずは、8月27日付けJBPress(FinancalTimes)「中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること」のポイントを紹介したい。
・中国の株式市場の下落は心配する価値がある。それは、単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていないように見える中国政府当局が直面している難問の大きさだ
・中国主導で調整局面に入った株式市場:株式市場は確かに、中国がリードする形で調整局面に入っている。上海総合指数は6月につけた高値から今週火曜日(8月25日)にかけて43%下落。だが、それでも2014年初めの水準に比べれば50%高い。ここ10年で2度目となる中国株バブルの崩壊はまだ終わっていないと思われる
・中国の株式市場は普通の市場ではない。「自分よりも愚かなプレーヤー」に割高なチップを手遅れになる前に渡してしまおうと全員が願っているカジノのような面が、この世界のほとんどの市場よりも強い。そういう市場はボラティリティー(変動性)が極端に高くなるのが常だ。だが、この気まぐれな動きは、中国経済全体についてほとんど何も物語らない
・それでも、中国市場でいま起こっていることは、関連し合う2つの点で非常に重要な意味を持っている
・第1の点は、中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み(意外なことではないが、成功していない)にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと
・第2の点は、当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いないということだ。成功する望みのない行動に出るほど当局が心配しているのであれば、我々も心配すべきだろう
・中国当局の行動が懸念される理由はこれだけではない。8月11日に行われた人民元切り下げの決断も懸念すべき材料だ。米ドルに対する切り下げ率は今のところ2.8%に過ぎず、切り下げ自体はさして重要ではない
・しかし、この行動には重要な意味が隠されている。第1に、中国当局は、25日に行ったような金利引き下げの余地を欲しがっている。そのこと自体、当局が経済の状態を懸念していることを表している
・もう1つ考えられる意味合いは、中国当局が輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性がある、ということだ。もしそんなことになれば世界経済に破滅的な影響が及ぶため、筆者自身は信じがたいことだと考えているが、少なくとも、不安定性をもたらすそのような可能性について心配すること自体は妥当だろう
・考えられる最後の意味合いは、中国当局は資本逃避の容認に備えているということだ。もしその通りなら、米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる。米国政府は以前から、中国に資本勘定の自由化を求めてきた。それゆえ、人民元の下落という短期的な不安定要因を容認せざるを得ないかもしれない
・最近の出来事は、より深刻な懸念という文脈で見ていかねばならない。問題は、中国を投資主導の経済から消費主体の経済にシフトするという仕事を、総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志が中国政府当局にあるか否か、である
・もしその能力があるのなら、中国経済は6~7%の経済成長も維持するだろう。その能力がないのであれば、経済と政治が不安定化することになる
・中国の景気はすでに減速している。「新常態(ニューノーマル)」の話はこの現実を認識。しかし、アナリストらが独自に予想した経済成長率を調査会社コンセンサス・エコノミクスが集計したところ、2015年第4四半期の予想成長率(前年比)の平均はわずか5.3%になった
・このような数字が正しいと仮定してみよう。 政府の公式統計によれば、2014年の総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44%を占めていた。 しかし、GDPの44%を投資に回していながら5%しか成長しないというのは、経済にとって理にかなった行動なのだろうか。 答えはノーだ。このデータは、投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆している。もしその通りであれば、投資は急減する恐れがある
・総需要の不足への懸念は今に始まったことではないが・・・:ムダな投資が真っ先にカットされるのであれば、投資が急減しても中国の潜在成長率は低下しないかもしれない。しかし、需要は急減するだろう。中国当局がこれまでやってきていることはすべて、需要の急減こそが当局の心配の種であることを示唆
・総需要が不足するという心配は目新しいものではない。西側諸国で金融危機が起こり、中国の輸出への需要が大幅に落ち込んだ時からずっと強く懸念されていることだ。この輸出の急減を受けて、中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出したのだ
・目覚ましいことに(そして心配なことに)、GDPに占める投資の割合は高まり、それにつれて潜在的産出量の伸び率は低下した。長期的に見れば、これは持続可能な組み合わせではなかった
・中国政府当局は経済の面で頭の痛い課題を3つ抱えた。 第1の課題は、金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること。
・第2の課題は、官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すことだ
・そして第3の問題は、総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成することである
・昨今の出来事が重要なのは、中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていないことを示唆しているからだ。さらに悪いことに、当局がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化してしまっている
・ひょっとしたら、今後の情勢が厳しいこと、そして当局が実際に選ぶかもしれない方策の中には不安定さを高めるものも混じっていることを、株式市場はすでに把握しているのかもしれない。具体的には、人民元の切り下げ、超低金利、さらには金融の量的緩和などだ
・もしこの見方が正しいのであれば、市場の心配はばかげたものではないかもしれないことになる。世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れがある。もし本当にひどくなったら、全員が影響を受けることになるだろう
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44641

次に、8月31日付け東洋経済オンライン「中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」」のポイントを紹介しよう。
・年明けからバブル的に上昇してきた中国の株価は完全に振り出しに戻った。上海総合指数は8月24日、25日と2日連続で大幅に下落し、2014年12月以来の3000ポイント割れとなった
・中国メディアは8月25日、証券大手である、中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べを受けていると報じた。違法取引がらみとされているが、具体的な内容は明らかではない
・有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行された。この記者が7月20日に報じた「当局が株価下支え策の縮小を検討中」という趣旨の記事が問題視されたもよう。とにかくスケープゴートを作ろうとしている印象だ
・同日夜に中国人民銀行(中央銀行)は、追加金融緩和策を発表。政策金利は26日から0.25ポイント引き下げられて4.6%とされた。銀行に義務づけられている預金準備率についても、9月6日から0.5ポイント引き下げられることになった
・メディアに強権をちらつかせて服従を迫りながら、切り札である金融緩和を素早く実行。が、翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない
・6月以降の大幅な株価下落局面で、当局は買い支えのために大手証券会社を動員し、警察が「悪意あるカラ売り」を取り締まるなど、さまざまな手立てを講じて大台とされる4000ポイント台に回復させた。 結果、中国の株式市場は当局が極端な手段で介入する市場であることが、世界中に知られるようになった。ところが今回、テコ入れがまるで効かないことは、「よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか」という疑念を抱かせる
・実際、景気の低迷は明らかだ。中国製造業PMI(購買担当者景気指数)の8月速報値は47.1と、7月の47.8を下回り6年半ぶりの低水準。同指数は50を切ると景気後退を示唆するといわれており、8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる
・デフレ圧力も高まっている。7月の卸売物価指数は前年同月比5.4%と大きく落ち込み、41カ月連続のマイナス。ここに企業活動の停滞ぶりがはっきり表れている
・中国は8月11日に人民元の基準値設定のあり方を見直し、対ドルレートは元安の方向に振れた。介入で元安を止めるという従来の政策を転換した背景には、元買いが金融引き締め効果をもたらし、デフレ阻止のための金融緩和と矛盾するという、構造問題がある。その交通整理を行うことで、さらなる緩和の地ならしができていた
・預金準備率の引き下げと利下げを同時に発表した8月25日、人民銀行の発表文には、「企業の資金調達コストを下げるため」と記された
・中国の非金融企業(地方政府の資金調達機関である、地方融資プラットフォームを含む)の債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円)だ。GDPに対する比率は156.7%にも達する。これは日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準である
・日本総合研究所の関辰一・副主任研究員は「金利を6%、返済期間を10年と仮定すれば、毎年の元利支払い負担は16兆元(約320兆円)に及ぶ。金融緩和があっても、企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い」と見る。実際、人民銀行が発表している企業の資金需要を表す指数は、金融緩和が始まった14年冬以降も、低下の一途をたどっている
・日本ではポストバブル期の91年に金融緩和に転じたものの、企業の設備投資の回復にはつながらず、「バランスシート不況」が長期化した。現在の中国も、そのとば口に立っている可能性がある
・行き場のない資金が不動産へ?:潜在成長力が落ちている中で金融緩和を継続すれば、資産バブルをいっそう膨らませるおそれがある
・2014年半ばからすでに総崩れの様相を呈していた不動産市況は、今年の春から回復傾向だ。内陸部の都市で低迷が続く一方、深センなど沿海部では突出した上昇が見られる。株式市場の低迷を受けて、行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている、という懸念はぬぐえない
・こうした状況で景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大だろう。9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米が控えている。世界経済の中での存在感を示すという意味合いからも、中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている
・だがそれは、08年のリーマンショック後に中国が総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない。財政頼みで景気刺激を繰り返すようになれば、日本がたどった道に重なる
・結局のところ、国有企業改革など生産性向上のための地道な取り組みしか、活路はない。そのために残された時間は決して多くない
http://toyokeizai.net/articles/-/82220

リーマンショック後の総額4兆元もの景気対策は、世界経済にも大きな救いになったことは事実だが、その裏で地方政府の財政や、企業の債務大幅増加があった。これを繰り返して、現在の苦境を凌ごうとすれば、目先は何とかなっても、必要な調整を先送りするだけでなく、必要な調整をますます大きくしているに過ぎず、長期的には調整が深く、長くなるようだ。中国経済の軟着陸させるには、神業が必要らしい。
タグ:JBPress(FinancalTimes) 株安の主因 中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること 単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていない 中国経済 上海総合指数 中国政府当局が直面している難問の大きさ 43%下落 2014年初めの水準に比べれば50%高い 中国株バブルの崩壊はまだ終わっていない 中国の株式市場 カジノのような面 中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと 当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いない 人民元切り下げの決断 金利引き下げの余地を欲しがっている 当局が経済の状態を懸念 輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性 世界経済に破滅的な影響 資本逃避の容認に備えている 米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる 投資主導の経済から消費主体の経済にシフト 総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志 新常態(ニューノーマル) 総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44% 投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆 投資は急減する恐れ 需要は急減するだろう 金融危機 中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出した GDPに占める投資の割合は高まり 潜在的産出量の伸び率は低下 持続可能な組み合わせではなかった 頭の痛い課題を3つ抱えた 金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること 官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すこと 総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成すること 中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていない がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化 人民元の切り下げ 超低金利 金融の量的緩和 世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れ 東洋経済オンライン 中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」 中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べ 有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行 中国人民銀行 追加金融緩和策 翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない 買い支えのために大手証券会社を動員 察が「悪意あるカラ売り」を取り締まる 大台とされる4000ポイント台に回復させた 当局が極端な手段で介入する市場 今回、テコ入れがまるで効かない よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか 景気の低迷は明らかだ 製造業PMI(購買担当者景気指数) 8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる ・デフレ圧力も高まっている 卸売物価指数 41カ月連続のマイナス 人民元の基準値設定のあり方を見直し 中国の非金融企業 債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円) GDPに対する比率は156.7% 日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準 企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い 日本では 、「バランスシート不況」が長期化 現在の中国も、そのとば口に立っている可能性 資産バブルをいっそう膨らませるおそれ 不動産市況は、今年の春から回復傾向 行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている 景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大 9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米 中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている 総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない 国有企業改革 地道な取り組みしか、活路はない
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世界同時株安 [世界経済]

今日は昨日のソニーの続きをやるたもりだったが、株価の暴落が続いたこともあり、急遽、世界同時株安を取上げよう。

先ずは、25日付け闇株新聞「宴(うたげ)は終了したのか?」のポイントを紹介したい(内容は24日付け)
・本日(8月24日)の日経平均は895円安の18540円となり、半年前の2月23日の水準まで後退。わずか1週間前の8月17日は20620円だったため、そこから2080円(10.1%)も急落
・ところが本当の嵐はNY市場が開いた直後の(日本時間)午後10時半過ぎで、NYダウは一気に1089ドル安の15370ドルまで売り込まれました。さすがにそこから急速に買い戻されていますが、やはり1週間前の8月17日は17545ドルだったため、そこから本日の安値まで2175ドル(12.4%)も下落
・同じころのDAX(ドイツ)も786ポイント安の9338まで売り込まれました
・本日の上海総合指数は297ポイント安の3209と、前回の急落で「なりふり構わぬ」株価対策を動員させた7月9日の瞬間安値・3373ポイントを下回ってしまいました
・また為替もNYダウが急落していた(日本時間)午後10時過ぎに一時1ドル=116.17円と急激な円高。同じ頃に一時1ユーロ=1.17ドル台のユーロ高となっていたため、これは円高・ユーロ高というより「ドル安」
・このままでは明日(8月25日)の日経平均も上海総合指数も、またかなり下落することになりそうです。 株価急落の理由としては、中国経済の状況が想定されていたよりも深刻であることや、FRBの利上げが近いことが挙げられますが、どちらもここ1週間で突然に出てきた「悪材料」ではありません
・とくに中国経済については8月11日~13日に人民元の「基準値」が合計で約4.6%引き下げられたのですが、日経平均をはじめ世界の株式市場はそれほど影響を受けていませんでした
・世界の株式市場は、FRBが量的緩和を終了させ原油価格が急落していた昨年10月中旬にボトムをつけています。各国株式市場のその頃の安値は、日経平均が14532円、NYダウが16117ドル、DAXが8571ポイント、上海総合指数が2290ポイントでした。これらの「安値」は今後を占うときに大変重要となります
・そして昨年10月31日に日銀が意外にも追加量的緩和に踏み切り、それをきっかけに中国人民銀行やECBを含む世界中ほとんどの中央銀行が新たな金融緩和・量的緩和のサイクルに突入し、そこから世界の株価が急上昇となり「つい最近」まで続いていました。つまり、つい最近まで宴が続いていたことになります
・それでは最近の世界的な株価急落を受け、宴をもう少し続けるにはどうすればよいのでしょう?
・それは世界の中央銀行が「新たな金融緩和・量的緩和のサイクルに突入すること」です。具体的には利上げが近いと考えられていたFRBが利上げを取りやめ、中国経済低迷の影響が最も大きいため中国人民銀行が追加金融緩和(基準金利の引き下げよりも預金準備率の引き下げの方が有効と思われます)に踏みきることです
・金融緩和・量的緩和が実際に経済を回復させる効果があるわけではありませんが、少なくとも金融緩和・量的緩和が各国の株式市場を上昇させたことは事実です。 もう1度だけ、その効果に期待することになります
・それでは日銀も追加量的緩和に踏み切るべきなのでしょうか? 特にFRBが利上げを見送れば、さらなる円高圧力がかかるため、2017年4月の消費増税までは株価を維持させたい財務省と官邸の意向のためにも、追加量的緩和は大変に安直で有効そうなカードとなります
・たぶん日銀は追加量的緩和に踏み切ってしまうはずですが、ここからのさらなる量的緩和は「弊害」の方が大きいはずです。 宴か弊害の「究極の選択」となりそうです
http://yamikabu.blog136.fc2.com/

次に、22日付け東洋経済オンラインに、元財務官僚で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏が寄稿した「日本の株価暴落が、世界一深刻になる理由 世界的な株価の下落はまだ終わっていない」のポイントを紹介しよう。
・なぜ株価はこれからもっと下落するのか:個人的な予測は、世界も日本も下がる。日本がもっとも大きく下がる、というものだ
・なぜか。世界の株式はずっと上昇を続けてきた。欧州は紆余曲折あったが、結局、上昇トレンドで来た。米国は、暴落の反動で、また異常な金融緩和により、相場上昇は加速しただけでなく、長期化し、約6年間上昇が続いてきた。景気も同様で、米国実体経済は6年間、好況が続いてきたのである。これが反転しない、というわけにはいかない
・景気とは景気循環であり、その言葉の定義からも構造からも、循環するものであり、上昇すれば下落する。好況が続けば、過熱して、停滞から不況へと向かう。山高ければ谷深し。これは、日本のバブル崩壊だけでなく、バブルも景気循環も同じであり、今後は、好況が終わり、その調整は大きく、長期にわたるだろう
・これは米国経済よりは中国経済について深刻である。それは、中国の景気上昇が、高度成長期という中期的な構造要因もあって、長期に高い実体経済の成長を続けてきたからだ。そして、不動産バブルは長期にわたり、また全土に広がり、そして水準も高く、崩壊すれば、長く深い崩壊となるだろう
・個人の「バランスシート調整」が長引く可能性:中国不動産バブルには、さらに2つ致命的な問題がある。第一に、個人が投資の主体であるにもかかわらず、自己使用のための住宅ではなく、純粋な投資物件で、売りやすいように未入居のままにして売却を狙ってきたことだ。 これは完全にバブルだ。だがバブルが崩壊したときに、商業用不動産を企業やファンドが投機の対象とした場合には、崩壊は激しくなるが、短期で調整も終わる。しかし、個人では、損切りや倒産が難しいから、調整が長引くと言うことだ。だから1回暴落して、回復してきたように見えても、それは見せかけであり、さらに深い底が待っている
・二つ目の致命傷とは、まさにこのことだ。中国不動産市場は回復を見せている。特に深センが一見勢いよく回復しているが、これは勢いがありすぎて、今後の調整が深くなるだろう
・なぜ、中国について長く語る必要があるかというと、中国の資産市場、不動産市場と株式市場は、他の市場から独立しているからだ。 あれ?それなら、世界市場には影響ないのでは?というのが普通の印象だろう。その通りだ。世界的な暴落の伝染は、投資家が同じ投資家であること、機関投資家が大規模に世界的に投資しているから起きる。そして、彼らはプロ中のプロだから、極めて論理的に行動するから、彼らは同じタイミングで売るときは売るし、買うときは買う。リスクオフになれば、世界同時にリスクオフとして売るから、同時に下落するのだ
・しかし、中国の投資家とは中国の個人と事業会社だとすると、世界のリスク資産市場から隔絶されており、暴落の伝播はない、というのが理屈である。それなのに、なぜ今回の世界暴落の時に中国が一番重要なのか。 それは、今回の株式市場の暴落が、中国の金融政策によるものではなく、米国の利上げという金融政策によるものでもなく、純粋に、中国経済の後退を中心とする世界的な新興国の実体経済の低迷が理由だからだ。この暴落は、ある意味静かで怖い
・なぜ静かで怖いかというと、パニックで非合理的に投資家が投げ売っているからではないからだ。金融的理由による売りなら、売りが出尽くせば、それで止まる。また、パニックになればなるほど、すべての膿は吐き出され、冷静に戻った後では、買いが入りやすい展開になる。 要は、気分の乱高下に市場がつきあわされる、あるいは市場が投資家を錯乱させ、それがブーメランのように市場に返ってくるだけだ。ところが、実体経済の停滞という理由で世界的に売られると、回復には実体経済が戻らないといけない。それには時間がかかる。だから、今回の下落は深刻なのである
・日本のバブルが崩壊するのも早い:なぜ日本の株価がなぜ世界の主要国で一番下がるかを述べよう。それは、日本が一番上がってきたからである。日銀が買う、GPIFが買う、という理由で海外の投資家が買い、GPIFが買うから海外の投資家が買うから、と言う理由で国内の投資家も買い、個人の投資経験の浅い人々も、最後にその流れに乗ってきた
・だから、下がり始めれば、日本だけは、金融的なセンチメントでも下がるのである。しかも、下手に公的に近い組織が買い支えるように見える展開が続くと、落ちたときにそのショックは大きくなる。他人が買うから自分も買う、というのは、まさにバブルであり、崩壊するのも早いからだ
・今後、株価は乱高下と言うよりは、次第にいったん戻したり、また下がったり、という一進一退を繰り返すようになるだろう。そのときに、明示的な、大きなネガティブショックが来たときが、大きく崩壊するときだ。それは日本発ではなく、中国か米国発だろうが、そのときに一番下がるのは日本であろう
http://toyokeizai.net/articles/-/81432

小幡 績氏の指摘は、いつもながら鋭い。執筆時点後の現在の暴落が、「大きく崩壊するとき」であって、これ以上の崩壊はないことを祈るばかりだ。
これまでの日本の株式相場の好調や円安は、アベノミクスの数少ない成功例とされてきた。安保法案などで安部政権の支持率が大きく低下したなかでの株価暴落は、政権にとって致命傷となりかねない大問題である。闇株新聞の見方のように、追加金融緩和も大いにありそうだ。短期的に戻すことはあっても、やはり株価バブルは終わったとみるべきなのだろう。
タグ:どちらもここ1週間で突然に出てきた「悪材料」ではありません FRBの利上げが近い 中国経済の状況が想定されていたよりも深刻 急激な円高 上海総合指数 2175ドル(12.4%)も下落 NYダウ 2080円(10.1%)も急落 1週間 日経平均 世界同時株安 昨年10月31日に日銀が意外にも追加量的緩和 中国人民銀行やECBを含む世界中ほとんどの中央銀行が新たな金融緩和・量的緩和のサイクルに突入 世界の株価が急上昇 つい最近まで宴が続いていた 宴をもう少し続けるにはどうすればよいのでしょう 世界の中央銀行が「新たな金融緩和・量的緩和のサイクルに突入すること」 もう1度だけ、その効果に期待 日銀は追加量的緩和に踏み切ってしまうはず ここからのさらなる量的緩和は「弊害」の方が大きいはずです 東洋経済オンライン 小幡 績 日本の株価暴落が、世界一深刻になる理由 世界的な株価の下落はまだ終わっていない 世界も日本も下がる。日本がもっとも大きく下がる 米国実体経済は6年間、好況が続いてきたのである。これが反転しない、というわけにはいかない 景気とは景気循環 上昇すれば下落する バブルも景気循環も同じであり、今後は、好況が終わり、その調整は大きく、長期にわたるだろう 中国経済について深刻 不動産バブル 自己使用のための住宅ではなく、純粋な投資物件で、売りやすいように未入居のままにして売却を狙ってきた 個人では、損切りや倒産が難しいから、調整が長引く 二つ目の致命傷 中国不動産市場 さらに深い底が待っている 今後の調整が深くなるだろう 中国の資産市場、不動産市場と株式市場は、他の市場から独立 今回の株式市場の暴落が 中国経済の後退を中心とする世界的な新興国の実体経済の低迷が理由だからだ この暴落は、ある意味静かで怖い 回復には実体経済が戻らないといけない。それには時間がかかる 日本のバブルが崩壊するのも早い 日本だけは、金融的なセンチメントでも下がるのである 一進一退を繰り返す 明示的な、大きなネガティブショックが来たときが、大きく崩壊するときだ 一番下がるのは日本
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天津爆発事故問題 [世界経済]

今日は天津爆発事故問題を取上げよう。

先ずは、19日付け日経ビジネスオンライン「プロの消防士がいない中国 天津化学薬品倉庫爆発事故、悲劇の必然」のポイントを紹介したい。
・100人単位の死者を出す人災事故・事件は中国では非常にまれなことではなく、例えば今年、長江クルーズ船の沈没事故も430人以上の死者・不明者を出している
・ただ、今回の件で特徴的だったのは犠牲者・不明者の約半数が消防士であったことだ。建国以来、一度にこれほど多くの消防士が殉職する火災は初めてである。そして、この爆発自体、消火にあたった消防士の放水が引き起こしたという
・8月12日午後10時55分ごろ、保税区の瑞海国際物流有限公司の危険薬品倉庫前のコンテナヤードに集積されていた化学薬品コンテナで火災が起きた。港湾警察の連絡を受けて、まず23の消防中隊および93輛の消防車両、総勢600人が出動し消火作業にあたったという。10分ぐらいの放水のあと、ぱちぱちと音がして、燃えていたコンテナが発光し、危険を感じた消防隊は撤退を指示。だがその直後に大爆発が起き、逃げ遅れた消防士たちが多数巻き込まれた
・爆発の原因は、おそらく消火用放水の水が、コンテナ内の化学物質に反応したことだといわれている。爆発後の現場には水をかけると発火する白い粉があちこちに散らばっていることが確認
・最初の爆発はトリニトロトルエン(TNT)換算で3トン分の爆発に相当し、その30秒後に起きた爆発はTNT21トン分に相当するほどの威力。爆発は2分の間に4回起きたという。日本の気象衛星ひまわりからも確認できるほどの威力
・最悪なことに、倉庫内に保管されていた危険薬品の中には水に反応すると青酸ガスが発生するシアン化ナトリウム700トンが含まれ、それらが大気や地下水に流出。 爆発後も天津消防総隊から1000人以上の消防士が投入されたが、彼らの多くが、その毒ガスの存在を知らされていなかった。爆発現場の倉庫に保管されていた7種の化学薬品にシアン化ナトリウムなどが含まれている可能性が正式に発表されたのは爆発後59時間経ってから
・実は中国の消防士は素人同然。 中国には独立した消防署が存在しない。中国で一般に消防隊と呼ばれるのは、公安(警察)所属する消防隊、石油化学企業などが独自に雇用する臨時消防員、そして居民や企業職員が自主的に組織する消防組織の三つくらいだ。一部省では地元政府が公務員として消防官を募集し公安消防隊と協力する「合同制」が導入されているが、主力の公安消防隊は、解放軍傘下の武警消防隊を通じて徴用される「消防新兵」と呼ばれる兵士たちである
・彼らは2年の任期でほとんど義務兵役のような形で配属。このため、ベテラン消防士というのはほとんど存在せず、その多くが20~28歳で、その経験不足から死傷率が高い。例えば2011年、米国の消防士は10万回の出動の中での殉職率は2.51人。同じ年の中国公安当局の資料では、消防隊の殉職率は4.8人でおよそ倍だという
・2006年から2012年までの中国の殉職消防隊員の平均年齢は24歳で、最年少は18歳という。 学歴も低く、たとえば2010年、上海市で消防新兵になった1213人のうち高卒水準が32.31%、高専水準が40.49%、中卒水準が15.41%(香港フェニックステレビ調べ)という。専門の消防技術を教える教育機関は南京士官学院など中国に三つしかない
・彼らはわずか3か月の研修の後、現場に入る。2015年、消防新兵の月給は1700元(研修期間中は1500元)、危険手当300元。広東省の工場労働者よりも待遇が悪い。危険できつく、待遇も悪いために誰もなりたがらない。一般に先進国では人口1万人に対し消防士10人が水準だと言われているが、中国は1万人に対して2人に満たず、慢性的な消防士不足
・もともとは、非戦時下の兵士訓練の一環として民間の消防活動に従事させられる解放軍の伝統から始まった。しかし、現代の火災の現場は高層ビルや石油化学コンビナート、はては原発火災なども想定しなければならず、もはや3か月研修を受けた消防新兵たちの手に負えるようなものではない。未熟な消防活動が被害を拡大したり、二次災害を引き起こすことはこれまでもあった
・今年1月2日の黒竜江省ハルビン市で起きた倉庫火災で18歳から22歳までの5人の若い消防兵士が焼け崩れる建物に巻き込まれ殉職。この事件後、メディアが消防隊の実態をこぞって取材したが、消防新兵たちは、バックドラフトなど基本的な火災動力学も知らずに無知な勇気だけで現場に突っ込み、同僚を危険に陥れることも多々あることを紹介
・無知な勇気と無茶な命令。この倉庫火災では、出火後9時間も経って、消火活動が意味をなさない状況であったにもかかわらず、市当局幹部たちが、建物の中からの消火活動を望んだために、突入させられたという背景もあった。つまり官僚たちは末端の新兵の命などよりも、倉庫や中身の損害を少しでも食い止める方が大事だったのだ。そして公安消防隊は、毎年補充できる新兵の命よりも、市政府から予算を得て最新装備をそろえることの方が重要であり、市政府の無茶な命令にも従う。もし、彼らが消防新兵でなく、十分に研修費用をかけて育てあげた一騎当千のプロフェッショナルな消防士であれば、市政府もいたずらに彼らを危険な現場に突入させるような「浪費」はしないはずである
・こうした中国の消防隊が抱える問題が、今回の天津の最悪の大爆発をもたらしたといえる
・天津の事件後、メディアや世論は再び、中国の消防士のプロ化を求める声を上げている。だが、一言で消防士のプロ化といっても、簡単ではないようだ。天津の倉庫で初期消火にあたっていた消防士の中には、天津港が雇用している「専業消防士」も含まれていたが、彼らがプロかというと、そうではなく、公安消防隊よりもさらに技術の低い「バイト消防士」である。この場合、プロと呼ばれるべきは、それなりの専門知識と技術、経験の蓄積をもつ人材であり、なおかつプロ組織として機能する体制が必要なのだ。つまり目下、最低賃金に近い徴兵式で集めている全国16万人の消防士に関して、公務員並みの給与と職位、育成機関などをともなう一つの独立したシステムを構築しなければならなくなる
・消防士のプロ化は、深?市でテストケースとして1984年から取り組まれてきた。そして25年後の2009年、この試みは失敗であったと宣言された。深?では地方財政から年間1億元の予算をつけ、消防士を公務員として採用。これは財政的に大きな負担に。また、徴兵式の消防士と違って、彼らは公務員の地位に安住してしまい、時間が経つにつれ消防士の老齢化・官僚化問題が深刻に。その矛盾がはっきりしたのが、2008年2月の南山区の大火の時で、現場に派遣された消防隊はわずか6人、隊長1人、班長3人、実際に消防活動にあたる消防士は2人。この年、深?市消防局が出した報告書によれば、現役消防官および公安消防士はあわせて1123人だが、実際に消防救援活動に従事できるのは600人あまりで、消防士プロ化計画は断念せざるを得ないという結論に達した
・プロ化の最大のネックはまず経費。そして、何よりも、年齢が上がり給与が上がっても、第一線の現場に立ちたいというプロ意識を本人が持てるか、という問題があるのだ。 これには職業に対する矜持、あるいは社会全体のその職業に対する尊敬の念が重要なのだが、中国においては権力と金にまさる名誉も矜持も存在しない。ましてや命を危険にさらしてまで現場で働く人間となるより、そういう現場に他人を赴かせる権力を持つことの方が、中国人にとっては出世であり、魅力なのである
・これは別に消防士に限ったことではなく様々な職業について私が日々感じていることだが、例えば日本人の新聞記者は40歳になっても50歳になっても最前線の現場に出たがる人が多いが、中国人記者は30歳になれば、デスク業務やコラムニスト、解説員になりたがる。日本の中小企業や工場では社長になってもラインに降りてきて、製品の出来不出来を一目で見分ける人が少なくない。中国で企業や工場の管理職は、経営管理を専門に学んだエリートが多く、いわゆる生産現場にはほとんど関心がない。現場で技術や知識をもって働く人間に対する敬意というのが日本人は比較的強い。それは職人気質、プロフェッショナルという言葉に賞賛の意味が含まれることが示している
・消防士プロ化論争の中には、「消防局が、公安などから独立して一つの省庁となれば、汚職と利権の温床が一つ増えるだけ」と皮肉る声もあった。今の体制の中国には、プロ意識そのものが育つ土壌・環境がないのだ。末端の現場で働く人間は、権力を持つ官僚に利用され搾取され、使い捨てられ、死んだ後で「烈士」「英雄」と祭られるだけ。中国では権力を持たない人間の命はあまりに軽いのだ。命を軽視するから、金と時間をかけて人材を育成することができない。プロやプロ意識を育てる手間暇費用をかけるよりも、安い命を使い捨てるのだ
・命の軽視、悲劇は止められない。天津の爆発事故の背景には、消防隊の問題のほか、大物政治家・官僚の庇護を受けた企業(爆発を起こした倉庫の企業・瑞海国際は李瑞環の甥が株主という噂も)が、公共インフラ施設や居民区の1キロ以内に危険物倉庫などを設置してはいけないという法規を無視できることや、シアン化ナトリウムなどの猛毒をコンテナヤードに放置する危険物管理のずさんさなどが指摘
・すべての問題が、法が権力を持つ者を平等に裁くことができず、民衆・メディアが権力を監視する機能を持たない共産党独裁体制下での、権力を持たぬ者の命の軽視という一言に集約される気がする。このままでは、こうした大惨事はまた繰り返されるはずである
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/081700010/?P=1

次に、作家・ジャーナリストの莫 邦富氏が21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応」のポイントを紹介しよう。
・天津はかつて上海に次ぐ屈指の商工業都市だった。重慶が直轄市になる1997年まで、中国には直轄市が3つしかなかった。北京、天津と上海だ。天津は中国北部を代表する最大の港湾都市として、近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地となった。 天津の推し進めた、鉄道、電信、電話、郵便、採鉱、近代教育、司法などの近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり、北方最大の金融・商業・貿易の中心にまで上り詰めた。たとえば、往時は100を超える国内外の銀行が参入し、全国総資本の15%を占めるほど、北方最大の金融都市としてその存在を誇った
・天津は今や中国で最も地盤沈下の激しい都市に。1978年から始まった改革・開放は中国の都市勢力図を大きく塗りかえた。80年代の後半から、天津はだんだん改革・開放の波に乗れなくなり、いつの間にか「つかみどころのない都市」となってしまった
・1990年代に入ってから、中国で地盤沈下がもっとも激しい大都市といえば、多くの中国人がまず天津を思い浮かべる。 改革・開放が始まって間もなかった1980年代初期、珠江デルタの経済的実力は京津唐地域(北京、天津、唐山)のそれに遥かに及ばなかったが、90年に入ると、両者は互角となった。京津唐地域はいまや話にならないほど後れをとってしまった。なかでも、天津の地位低下には目を覆いたくなるほどのものがあった
・いまの中国では、北京、天津、上海という3つの直轄市の実力を誇示する「京津滬」という熟語はもう聞かれなくなって久しい。変わって登場したのは「京上広」だ。つまり北京、上海、広州という3つの都市を指す。広州はただの省都だ。直轄市のランクまでは行っていない
・都市間の競争は、南の都市が勝ち、保守的な北方が大きく後れを取っている。天津市がその代表として消えて久しい。 「京上広」という新しい順位もいまやまた変わろうとしている。これからは「京上深」つまり北京、上海、深センになるかもしれない。深センの成長と飛躍に比べて、天津はすでに取り返しがつかないほどの後れをとってしまった。今度の爆発事故から見れば、天津の後れは端的に幹部の人材、意識に集中していると言えよう
・事故対応での市政府関係者の堕落した態度は象徴的。今回の事故でもすでに数回も記者会見を行ったあとでも、事故現場で指揮を取っている市政府の責任トップが誰なのかという簡単な事実も説明できないでいた。事故に直接責任を負う倉庫の運営会社についての情報も開示しようとしなかったその傲慢な態度に、天津に対する絶望感を覚えた
・2001年に、中国のネットにアップされた「絶望的な天津」と題する文章が当時、広く読まれた。再読すると、14年前に書かれたものとは思えないほどの鮮度が保たれている。 後れを取り戻そうとやけになった天津側は、天津を発展させるには北京との合併以外に道がないと思うほどに追いつめられた。しかし、天津が持ち出した合併案に対して、北京側は、「北京の火葬場を天津に移す程度なら考えてもいい」と一蹴
・ここまで侮辱されていいのか、私は判官贔屓で天津の肩を持っていたが、今度の爆発事故後の天津市政府関係者の対応を見ると、意外と核心を突いた発言だったかもしれない、という心境になってきた。 新生天津のために、腐りきった天津市政府関係者をしっかりと抉り出す外科的手術が必要だ
http://diamond.jp/articles/-/77032

第三には、橘玲氏の[橘玲の日々刻々]の20日付け「中国・天津の爆発事故。少ない死傷者、鬼城化した街…。報道では伝わらない実態とは?」のポイントを紹介したい(この記事は写真も多いので、ご一読をお勧めしたい)。
・爆発があった天津の浜海新区は、浜海新区は渤海湾に面した天津港を中心とした総面積2270平方キロの広大な開発区で、敷地面積は東京23区より大きい。今回の事故が起きたのは天津港に近い中心部。天津市の中心部から浜海新区は40キロほど離れており、東京と横浜の位置関係だから、これを「天津」爆発というのは若干の語弊がある。天津市と浜海新区は高架鉄道・津浜軽軌で結ばれている
・天津新都心の開発は1986年から〓小平が領導し国家と共産党の威信をかけた一大事業だ。2006年、天津市は600億元(約1兆円)を投じ、「東洋のマンハッタン」を生み出すべくビジネス特区の建設に着手
・しかし、驚くべきことに現在ではその全体がほぼ“鬼城(ゴーストタウン)”化。そのなかの数少ない例外が、事故現場となった東海路駅のひとつ手前の会展中心駅だ。ここには国際会展中心(コンベンションセンター)があり、私が訪れたときはアニメのイベントが行なわれていて、平日にもかかわらず若者たちですごい熱気だった
・会展中心駅の周辺にはイオンのショッピングセンターのほか、サッカー場や体育館、シネコン(複合映画館)などがつくられ、伊勢丹のある泰達(テダ)駅周辺と並んで、ビジネス新区のなかではもっとも開発が進んでいる。爆発現場から南西2キロほどのこの地区の高層アパートが被災し、住民たちが避難を余儀なくされた。報道でこの地区だけが取り上げられるのは、ここにしかひとが住んでいないからだ
・天津市の直接負債は同市の年間財政収入(2013年)の1.28倍に上る2246億元(約4兆3572億円)に上り、融資平台などを使って調達した資金を加えるとその総額は5兆元(約97兆円)を超えるという。中国国務院の会議で、汪洋副首相が「天津市は実質上破産している」と発言したとも報じられた
・上海市場の株価暴落や人民元の切り下げなどで中国経済の減速が明らかになったが、この国の経済の“時限爆弾”は地方政府が抱える膨大な債務だ。 中華人民共和国審計署(日本の会計検査院に相当)の発表では、2013年6月末時点の政府債務残高の合計は国内総生産(GDP)の50%程度に相当する約30兆2700億元に達し、そのうち地方政府の債務残高が17兆9000億元(GDP比約30%)で全体の約6割を占めた。10年末の10兆8000億元(同27%)に比べて約7兆元も増えており、その資金の多くは「地方政府融資平台」を通じて借りられている。こうした債務は償還時期が迫っており、15年末までに債務残高の約半分、16年末には約65%が期限を迎える。(内藤二郎「中国経済の行方地方債務問題解決程遠く」(2015年8月19日「日経新聞」朝刊「経済教室」)
・今回の事故をきっかけに天津市政府の破綻状態が表面化することになれば、中国経済に与える影響は甚大なものになるだろう
http://diamond.jp/articles/-/77149?page=1

新聞報道の表明的な事実からだけでは、何故このような「お粗末」な事故が起きるのかが理解できなかったが、これらを読んで漸く納得できたので、今回、紹介した次第。
地方政府の債務問題に火がつけば、すでに減速傾向の経済に大きなダメージを与えざるを得ないだろう。
今回の事故が単に、消防だけの問題ではなく、天津市、さらには中国社会全体の問題から生じた歪みであるとすれば、解決は容易ではない。これからも、トンデモナイことが起こり得ることを前提に、商売やおつきあいをしていく他なさそうだ。
タグ:天津爆発事故 日経ビジネスオンライン プロの消防士がいない中国 天津化学薬品倉庫爆発事故、悲劇の必然 100人単位の死者を出す人災事故・事件は中国では非常にまれなことではなく 特徴的だったのは犠牲者・不明者の約半数が消防士であったこと 消防士の放水が引き起こした 爆発の原因は、おそらく消火用放水の水が、コンテナ内の化学物質に反応 爆発は2分の間に4回起きたという 水に反応すると青酸ガスが発生するシアン化ナトリウム700トンが含まれ、それらが大気や地下水に流出 中国の消防士は素人同然 公安(警察)所属する消防隊 石油化学企業などが独自に雇用する臨時消防員 居民や企業職員が自主的に組織する消防組織 2年の任期 ほとんど義務兵役のような形で配属 ベテラン消防士というのはほとんど存在せず 経験不足から死傷率が高い らはわずか3か月の研修 広東省の工場労働者よりも待遇が悪い 待遇も悪いために誰もなりたがらない 慢性的な消防士不足 兵士訓練の一環として民間の消防活動に従事させられる解放軍の伝統から始まった 未熟な消防活動が被害を拡大したり、二次災害を引き起こすことはこれまでもあった 黒竜江省ハルビン市で起きた倉庫火災 5人の若い消防兵士が焼け崩れる建物に巻き込まれ殉職 無知な勇気と無茶な命令 出火後9時間も経って、消火活動が意味をなさない状況 市当局幹部たちが、建物の中からの消火活動を望んだために、突入させられた 倉庫や中身の損害を少しでも食い止める方が大事 毎年補充できる新兵の命よりも、市政府から予算を得て最新装備をそろえることの方が重要 中国の消防隊が抱える問題が、今回の天津の最悪の大爆発をもたらした 消防士のプロ化を求める声 天津港が雇用している「専業消防士」 公安消防隊よりもさらに技術の低い「バイト消防士」 消防士のプロ化は、深圳市でテストケースとして1984年から取り組まれてきた 2009年、この試みは失敗であったと宣言 財政的に大きな負担 公務員の地位に安住 南山区の大火の時で、現場に派遣された消防隊はわずか6人、隊長1人、班長3人、実際に消防活動にあたる消防士は2人 最大のネックはまず経費 年齢が上がり給与が上がっても、第一線の現場に立ちたいというプロ意識を本人が持てるか、という問題 現場に他人を赴かせる権力を持つことの方が、中国人にとっては出世であり、魅力 中国で企業や工場の管理職は、経営管理を専門に学んだエリートが多く、いわゆる生産現場にはほとんど関心がない 消防士プロ化論争 汚職と利権の温床が一つ増えるだけ 今の体制の中国には、プロ意識そのものが育つ土壌・環境がない 大物政治家・官僚の庇護を受けた企業(爆発を起こした倉庫の企業・瑞海国際は李瑞環の甥が株主という噂も) 公共インフラ施設や居民区の1キロ以内に危険物倉庫などを設置してはいけないという法規を無視できることや 猛毒をコンテナヤードに放置する危険物管理のずさんさ 民衆・メディアが権力を監視する機能を持たない共産党独裁体制下での、権力を持たぬ者の命の軽視 莫 邦富 ダイヤモンド・オンライン 天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応 天津はかつて上海に次ぐ屈指の商工業都市 直轄市 近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地 近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり 今や中国で最も地盤沈下の激しい都市 だんだん改革・開放の波に乗れなくなり、いつの間にか「つかみどころのない都市」 京津滬 京上広 事故対応での市政府関係者の堕落した態度は象徴的 市政府の責任トップが誰なのかという簡単な事実も説明できない 事故に直接責任を負う倉庫の運営会社についての情報も開示しようとしなかったその傲慢な態度 2001年 絶望的な天津 再読すると、14年前に書かれたものとは思えないほどの鮮度が保たれている 天津が持ち出した合併案に対して、北京側は、「北京の火葬場を天津に移す程度なら考えてもいい」と一蹴 腐りきった天津市政府関係者をしっかりと抉り出す外科的手術が必要 橘玲の日々刻々 中国・天津の爆発事故。少ない死傷者、鬼城化した街…。報道では伝わらない実態とは? 浜海新区 広大な開発区で、敷地面積は東京23区より大 40キロほど離れており 天津新都心の開発 東洋のマンハッタン 現在ではその全体がほぼ“鬼城(ゴーストタウン)”化 数少ない例外が、事故現場となった東海路駅のひとつ手前の会展中心駅 ビジネス新区のなかではもっとも開発が進んでいる 天津市 直接負債は同市の年間財政収入(2013年)の1.28倍に上る2246億元(約4兆3572億円) 融資平台などを使って調達した資金を加えるとその総額は5兆元(約97兆円)を超える 汪洋副首相が「天津市は実質上破産している」と発言 経済の“時限爆弾”は地方政府が抱える膨大な債務 地方政府の債務残高が17兆9000億元(GDP比約30%)で全体の約6割 資金の多くは「地方政府融資平台」を通じて借りられている 償還時期が迫っており 天津市政府の破綻状態が表面化 中国経済に与える影響は甚大なものになるだろう
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人民元切り下げ騒動 [世界経済]

今日は、8月12日以降、3日間にわたって日経新聞を賑わせた「人民元切り下げ騒動」を取上げよう。

これは、中国人民銀行(中央銀行)が、人民元の対ドルの基準値を11日から13日の3日間にわたって合計で4.5%切り下げ、これが、通貨切り下げに踏み切らなければならないほど、経済の実態が悪いのではとの観測から、日本の株安要因にまでなった。
しかし、13日に中国人民銀行が、基準値と市場実勢の乖離が「3%前後だった」としたうえで「乖離の是正は基本的に終えた」と明言。基準値の大幅な切り下げは、もはや必要ないとの考えを示し、「元相場を10%切り下げて輸出を刺激するといった見方は事実無根だ」と発言したことで、騒ぎは収束。その後、基準値は多少元高に戻した水準で推移。

そこで、三菱UFJ国際投信の17日付け「投資環境ウィークリー」の6頁のポイントを紹介しよう。
・中国では人民銀行が毎朝同基準相場を公表し、市場相場は同相場±2%の範囲で変動する管理変動相場制を採用。しかし、市中銀行からの聞取りに基づくはずの基準相場は前日の市場相場終値ではなく、前日の基準相場に近い水準に設定されてきました
・この結果、国際収支赤字局面では、市場相場が基準相場を2%程度下回る水準で動かない事態が恒常化(図1右)。人民銀行は管理変動相場制の看板を掲げつつ、基準相場を動かさず事実上の固定相場制を運営していると言われてきました
・11日、人民銀行は、今後の基準相場は前日の市場相場終値等を反映すると公表。名前ばかりの変動相場から本当の変動相場への一歩を踏み出した模様です
・特別引出権(SDR)の見直し中の国際通貨基金(IMF)が、今月3日の報告書で同基準相場が市場実勢を反映していないことを指摘したことも背景にあるとみられます。また、ドル独歩高で上昇した人民元の実質実効相場(図2左)を押下げ低迷する輸出を支えたいとの意図も働いたと思われます
・11日の市場相場終値は基準相場を1.5%下回る水準まで下落し、12日の基準相場は前日比1.6%安の水準に。二日連続基準相場引下げは、景気低迷に悩む同国が通貨切下げを始めたとの印象を広め、米上院議員等はこの動きを非難、持続的相場下落を恐れる国内投資家は元売りを急ぎ始めた模様です。事態を懸念した人民銀行は、12日午後に市場介入で市場相場の下落を抑え、翌13日には会見で基準相場と市場相場の調整は終了と表明
・同日の市場相場終値は基準相場とほぼ同水準となり、混乱はひとまず終息しました。 今回の基準相場設定方法の見直しで同国は管理変動相場制へと一歩前進。今後は相場の変動が増すでしょう。人民銀行は市場介入等で市場相場終値が連日で2%近く下落することを防ぐとみられるものの、今後、米利上げ開始を意識したドル高が進む局面では緩やかな対ドルの元安が進むと予想されます
http://www.kokusai-am.co.jp/report/weekly/2015/150817.pdf

今回の騒動は、人民銀行の当初の説明不足、米国や市場の反応についての読み違い、日本の記者の勉強不足、などが相まったもので、中国が管理変動相場制へと一歩前進するのであれば、誠に結構なことだ。
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ギリシャ問題(その3) [世界経済]

ギリシャ問題については、7月14日、16日と取上げてきたが、今日は(その3)として最近の動向と、より本質的な問題を取上げよう。

最近の動向については、24日付けの日経新聞が「ギリシャ 経済再生へ一歩 第2弾の改革法案可決 銀行の破綻処理/民事訴訟手続き EU並みの基準に」と題して、EUとの支援交渉が本格化するだけでなく、経済再生に向けた環境づくりが進むと伝えた。

次に、18日付け週刊東洋経済に:三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員の土田陽介氏が寄稿した「EUの戦略ミス 緊縮政策ではギリシャ危機は終息しない」のポイントを紹介しよう。
・ギリシャだけがなぜ卒業できないのか。キプロスも予定通り16年中には支援終了の予定。アイルランド、キプロス、スペインの危機の根底には金融・不動産バブル崩壊による銀行の不良債権問題があり、07の公的債務残高は健全。ポルトガルでは公的債務残高/GDPが68%と高目だったが、金融・不動産バブル発生せず。これら諸国は流動性問題による債務危機
・EUとIMFはギリシャでは処方箋を間違えた。ギリシャの07の公的債務残高/GDPは103%と突出、その対外依存度も74%と脆弱性も高かった。緊縮財政がGDP縮小、債務の自己増殖
・941億€の債務削減も民間投資家分に限定され、GDP縮小のなかで有効に働かず。銀行への資本注入が482億€と巨額を要したこともこの効果を弱めた
・債務支払いを長期的に猶予することで、債務負担を軽減すべき。構造改革は危機収束後に中長期的観点から行うべき

第三に、歴史的視点からギリシャ問題を考察したものとして、作曲家=指揮者でベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督の伊東乾氏が、24日付けのJBPressに寄稿した「ドイツ、フランスにはギリシャを助ける義理がある 王様はドイツ人~北に"支配"されてきた国の悲鳴を聞け」のポイントを紹介しよう。
・「ギリシャの王様はドイツ人」だった。ギリシャがオスマン・トルコ帝国から独立するに当たって、最初に即位したのがバイエルン国王ルートヴィヒⅠ世の息子オットー、即位してオソンⅠ世に。あまりの不人気にオソンⅠ世はギリシャを追放。「西欧としてのギリシャ」という特異な問題を考えるに当って、常識の源流を探訪
・ポーランドよりはるかに東の「西欧」。そもそもギリシャが「西欧」というのが、地政学的に言って相当無理がある話。冷戦時代、鉄のカーテンが降りていた「東西」の境目はドイツ国内。それより東にあるポーランドも、チェコも、ハンガリーも、ユーゴスラビアも、ブルガリアもルーマニアも「東欧」そのものであることを誰も否定はしないでしょう。ブルガリアの真南、つまり地中海に面したバルカン半島の南端が「ギリシャ共和国」。ギリシャはポーランドよりもハンガリーよりも東、トルコ共和国と国境を接した、まぎれもない「東の国家」であること。疑いようもない客観的な事実から、物事を考え始めるべき
・何となく錯覚しやすい1つの理由は「イタリア半島の角度」にも理由がある。長靴のような形をしたイタリアは、真南に向いているのではなく、大きく東に傾いている
・「ギリシャは飛び抜けて東のユーロ圏か?」と問われるなら、欧州地図上ギリシャから真北に視線を転じたフィンランドがある。スカンジナビア半島の東北端は北極海に面し、ポーランド、ギリシャはおろかロシアのかつての首都サンクト・ぺテルスブルクよりも東ですが「豊かな北」フィンランドは、ノキアを始め多くのグローバル企業を擁し、ユーロ経済を牽引する側に立っている
・1990年代、マーストリヒト体制を構築するうえで「欧州」の再定義が幾度も問われ、言ってみればフィンランドは「ロシアに直面するユーロの壁」、ギリシャは「イスラムに直面する「ユーロの壁」として西側経済の東限にデザインされた
・社会経済の成立には非常に深く長い歴史的、構造的な背景がある。「住民無視」、列強の都合で「西側に定義されてしまった」ギリシャという国家の源流を見据えなければ「グレグジット」(Grexit=ギリシャのユーロ圏からの退場)の問題は議論できない
・最も如実に示す現代に至る原点が、ナポレオン戦争後の欧州の都合で、まぎれもない生粋のドイツ人「オットー・フリードリヒ・ルートヴィヒ・フォン・ヴィッテルスバッハ」(1815-67)のギリシャ国王即位(1833-62)
・19~20世紀の歴史は「帝国解体」のプロセスだった。「清朝」「ムガール帝国」「オスマン・トルコ」「ロマノフ朝ロシア」そして「神聖ローマ帝国」・・・。現在まで続いている「中世以来の帝国」は産業革命そのものを牽引した英国ただ1か国だけ。産業革命が本格化した18世紀末以来、どのように新しい「世界」を作っていくか、多くの対立する考えがぶつかり合って多くの戦乱を生んできた
・ナポレオンは「自由・平等・博愛」というフランス革命の思想を各国の被支配者層に広め、農奴制の廃止や独裁的な行政の改革などが進んだ。しかし、同時に諸国民にナショナリズムを鼓舞することとなり、皮肉なことだがナショナリズムの自覚によって各国が反乱、彼自身の帝国も崩壊
・そんな「民族自決」の理想主義に、「遅れたイスラム」のオスマン帝国支配からの解放という粉をかけ、「ギリシャ=ローマ由来の西欧の原点」として美化されたのがギリシャ。ナポレオンが亡くなったのと同じ1821年、ギリシャ独立戦争が勃発、翌22年には「独立宣言」を出したが、混乱は10年にわたって続く。詩人のバイロンやプーシキンまでこの戦争に義勇軍として参加するあたり、やや過剰な理想主義を見ないわけにはいかない
・イオニア貴族出身でのちにはロシア帝国の外務大臣にも就任するイオアニス・カポディストリアスを大統領とする第1共和政(1827-32)が短期間だけ成立。カポディストリアスという人は真に傑出した能力。ロシアの外交官としてナポレオン戦争で混乱していたスイスの建て直しに尽力、ウイーン会議ではフランスのブルボン王朝を復活させ、スイスの現在の「永世中立国」体制を諸国に承認させるなど、メッテルニヒやタレイランの上を行く凄まじい手腕。カポディストリアスという才能がなければ、19世紀初頭にギリシャの「西側的」独立など、絶対に不可能だった。現在でも「国父」として尊敬を集め、硬貨に顔が刻まれてる。1831年カポディストリアス大統領はよく分からない経緯で暗殺されてしまい、真相は闇の中
・弟のアウグスティノス・カポディストリアスが半年だけ大統領を継ぐが、ギリシャを「保護国」として後見していた英国、フランス、ロシアの3か国の思惑によってギリシャに「王制」が導入。ここでの条件は、「英仏露のどの王室とも血縁のない、旧東ローマ皇帝の血を引く西ヨーロッパ王族」だけ。はっきり言えば、その条件さえ満たせば誰でも良かった。そして、バイエルン王国の第2王子、16歳の少年オットーが、血筋の良い座敷犬のような形でギリシャに送り込まれた。当初は大いに歓迎された。つまるところ東ローマ帝国再興という欧州のシナリオそのもの
・分かりやすい南北問題。こうした列強間の妥協による思惑は「保護国」である英国+フランス+ロシアとバイエルン王国そしてオスマントルコ帝国との間で調停され、当のギリシャは全く蚊帳の外。ギリシャ王はカトリックのままでギリシャ文化にもギリシャ正教ににも興味を持たず現実離れした「東ローマ帝国復興」を念仏のように唱えて失政を繰り返し、1862年ギリシャ軍のクーデターで退位・国外逃亡
・ギリシャ王国では、「ギリシャ議会」の選出という形を取ったものの、またしても17歳の少年、デンマーク王クリスチャンⅨ世の王子ヴィルヘルム(1845-1913)がギリシャ正教に改宗してゲオルギスⅠ世として即位。その50年に及ぶ長い治世の間には第1回近代オリンピック(1896)なども開かれ、ギリシャは西側という印象だけが一人歩きするが、彼もまた最期は、またしてもよく分からない暗殺によって命を落とす
・この外来王制は「バルカン状況」の中で幾度も廃位と復古を繰り返し、最終的に1973年、まず軍事政権が君主制を廃止、翌74年の国民投票で正式にコンスタンティノスⅡ世(1940-)が廃位されて、ようやく「ギリシャ人による民主制」が実現、第3共和政下の現在に至っている
・「北が支配する南」の典型として、近代ギリシャ王国の150年ほどがあり、第3共和政が確立した1974年以降も東西冷戦の緊張下、東側に直に接する立地なども災いしてバランスの取れた経済成長を遂げることができなかった
・自分にはギリシャ経済の専門的な分析能力など全くないが、原因の少なからざる部分が西側欧州に責任がある可能性が高いと言って、まず外れないだろう
・もともとEUに加盟できるだけの財政条件を整えていなかったギリシャだが、西側投資銀行の財政手法コンサルテーションで無理やりユーロ圏入りさせたのも「北側」の都合。さらにEUが統一通貨を導入して以降、21世紀最初の五輪をギリシャでというシナリオもギリシャ国民の内側から湧き出てきたものとは言い難く、結果的に発生した巨額の財政赤字が隠蔽、粉飾決算され続けてきたのは、本当にギリシャ政府だけの責任と言えるのか?
・2009年、毛並みも良く(祖父と父が首相)それなのに能力も高く倫理観も強い(ロンドン大学で発達社会学修士、ハーバード大学で外交研究のフェローなども歴任)ゲオルギオス・パパンドレウが首相に就任。翌年、こんな粉飾決算を続けていてもどうしようもない、と財政赤字が対GDP比3.7%などではなく実際は13%である事実が明らかにされて現在に至るギリシャ財政危機状況に
・ギリシャにとって本当に必要なのは「育てる牧歌的な金融」による健全な経済発展であるはず。そうした長期的な議論も、農業などでは決してなかったわけではなく、21世紀に入ってからのギリシャも第1次産業では大きな成果を上げている
・翻って「貸し主」たちは、どれほど「借り手」のことを考えて、ギリシャに融資してきたと言えるか?きれいな白黒のつく結論は決して出ない問題だが、EUは決断して、明らかに経済体力に劣るギリシャをユーロ圏に招き入れた。そこには200年来の「欧州のシナリオ」も明らかに関係
・個人的な観測を記すなら、ユーロ圏がギリシャを「手放す」ことはほとんど考えられないと思う。そこで失われる信用は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が幾度も口にする「私たちの欧州の計画」の根幹を揺るがすものになりかねない。しかし逆に「南」が「北」に叛旗を翻す可能性は以前からあった。現在の急進左派連合政権は若いアレクシス・ツィプラス首相の発言を見る限り、そのような色合いも見える
・むしろ私たちは、国民投票後に辞任した(~更迭された)財務相、元来は数学者である優秀な頭脳ヤニス・ヴァルファキスをして 「EU緊縮案はギリシャ国民に対するテロ行為」とまで言わせている背景を、しっかり考えるべきなのではないか
・「ユーロ立て」のギリシャで開かれた「アテネ・オリンピック」は、莫大な負債をギリシャの国家と国民に遺したが、逆に言えば、そこでは「ユーロ 立て」で利ザヤが抜かれて言ったということもできるわけで、「後はどうなれ、ハイさようなら」と濡れ手に粟を手にした者はどこにいるのか?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44348

伊東乾氏の寄稿は、歴史を抜きにして最近の出来事だけで判断する誤りを正しく指摘している。財政手法コンサルテーションをしたのは、米最大の投資銀行ゴールドマン・サックスである。そうした助言に乗ったギリシャにも責任があるとはいえ、そうした粉飾決算はEUやIMF、さらにはドイツも暗黙の了解をしていた筈である。IMFは債務減免など債務負担軽減策の必要性を最近になって主張し出したが、EU、ドイツの姿勢は相変わらずギリシャに緊縮を押し付けるだけの強硬な姿勢を続けている。ただ、フランスがイタリアを巻き込んで、ドイツに姿勢緩和を働きかけ始めたようなので、今後に注目したい。
タグ:ギリシャ問題 日経新聞 ギリシャ 経済再生へ一歩 第2弾の改革法案可決 銀行の破綻処理/民事訴訟手続き EU並みの基準に EUとの支援交渉が本格化 経済再生に向けた環境づくりが進む 週刊東洋経済 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部研究員 土田陽介 EUの戦略ミス 緊縮政策ではギリシャ危機は終息しない アイルランド、キプロス、スペインの危機の根底 金融・不動産バブル崩壊による銀行の不良債権問題 07の公的債務残高は健全 ポルトガルでは公的債務残高/GDPが68%と高目 金融・不動産バブル発生せず 流動性問題による債務危機 ギリシャでは処方箋を間違えた 07の公的債務残高/GDPは103%と突出 対外依存度も74%と脆弱性も高かった 債務削減も民間投資家分に限定 GDP縮小のなかで有効に働かず 銀行への資本注入が482億€と巨額を要したこともこの効果を弱めた 債務支払いを長期的に猶予 債務負担を軽減すべき 構造改革 中長期的観点から行うべき 伊東乾 JBPRESS ドイツ、フランスにはギリシャを助ける義理がある 王様はドイツ人~北に"支配"されてきた国の悲鳴を聞け ギリシャの王様はドイツ人 バイエルン国王ルートヴィヒⅠ世の息子オットー、即位してオソンⅠ世 不人気にオソンⅠ世はギリシャを追放 西欧としてのギリシャ 常識の源流を探訪 ・ポーランドよりはるかに東の「西欧」 ギリシャが「西欧」というのが、地政学的に言って相当無理 「東西」の境目はドイツ国内 それより東 「東欧」そのもの バルカン半島の南端が「ギリシャ共和国」 まぎれもない「東の国家」 イタリア半島の角度 フィンランド サンクト・ぺテルスブルクよりも東 「豊かな北」フィンランド ユーロ経済を牽引する側 マーストリヒト体制を構築するうえで「欧州」の再定義 フィンランドは「ロシアに直面するユーロの壁」 ギリシャは「イスラムに直面する「ユーロの壁」 「住民無視」、列強の都合で「西側に定義されてしまった」ギリシャという国家の源流 グレグジット ナポレオン戦争後の欧州の都合 生粋のドイツ人 ギリシャ国王即位 19~20世紀の歴史は「帝国解体」のプロセス ナポレオンは「自由・平等・博愛」 というフランス革命の思想を各国の被支配者層に広め、農奴制の廃止や独裁的な行政の改革などが進んだ 諸国民にナショナリズムを鼓舞 各国が反乱、彼自身の帝国も崩壊 「民族自決」の理想主義 、「遅れたイスラム」のオスマン帝国支配からの解放 、「ギリシャ=ローマ由来の西欧の原点」として美化 ギリシャ独立戦争 バイロンやプーシキン 義勇軍として参加 過剰な理想主義 イオアニス・カポディストリアス 大統領とする第1共和政 メッテルニヒやタレイランの上を行く凄まじい手腕 現在でも「国父」として尊敬 硬貨に顔 暗殺 英国、フランス、ロシアの3か国の思惑によってギリシャに「王制」が導入 バイエルン王国の第2王子 東ローマ帝国再興という欧州のシナリオそのもの 列強間の妥協による思惑 「保護国」である英国+フランス+ロシアとバイエルン王国そしてオスマントルコ帝国との間で調停 当のギリシャは全く蚊帳の外 ギリシャ軍のクーデターで退位・国外逃亡 ギリシャ王国 ゲオルギスⅠ世 外来王制は「バルカン状況」の中で幾度も廃位と復古を繰り返し 軍事政権が君主制を廃止 「ギリシャ人による民主制」 「北が支配する南」の典型 近代ギリシャ王国の150年 第3共和政が確立した1974年以降も バランスの取れた経済成長を遂げることができなかった 原因の少なからざる部分が西側欧州に責任 EUに加盟できるだけの財政条件を整えていなかった 西側投資銀行 財政手法コンサルテーション 無理やりユーロ圏入りさせたのも「北側」の都合 21世紀最初の五輪をギリシャでというシナリオ 巨額の財政赤字が隠蔽、粉飾決算され続けてきたのは、本当にギリシャ政府だけの責任と言えるのか? ゲオルギオス・パパンドレウが首相に就任 粉飾決算を続けていてもどうしようもない、と財政赤字が対GDP比3.7%などではなく実際は13%である事実が明らかにされて現在に至るギリシャ財政危機状況 「育てる牧歌的な金融」による健全な経済発展 「貸し主」たちは、どれほど「借り手」のことを考えて、ギリシャに融資してきたと言えるか? 失われる信用は 「私たちの欧州の計画」の根幹を揺るがすものになりかねない 「南」が「北」に叛旗を翻す可能性は以前からあった アレクシス・ツィプラス首相の発言 ヤニス・ヴァルファキス 「EU緊縮案はギリシャ国民に対するテロ行為」 ゴールドマン・サックス
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ギリシャ問題(その2) [世界経済]

ギリシャ問題については一昨日、取上げたが、今日はギリシャ国会が財政改革法案を採決し、支援条件の1つがクリアされたことで、その2として取上げよう。

まずは、最近の動きを簡単に振り返っておこう。6月下旬に支援策が一旦まとまりかけながら、最後の土壇場になってギリシャのチプラス首相が財政再建策の是非を国民投票にかけると言い出し、ユーロ圏首脳をあきれさせた。投票結果は財政再建策に反対が多数となった。チプラス首相はこの結果をもとに再び交渉に臨んだが、EU側は支援には財政再建策が必要との立場を崩さず、かえってより厳しい条件が付けられた。

13日の合意に至った緊迫した舞台裏を14日付けJBPress(FT)「ギリシャがユーロから離脱しかけた瞬間 マラソン会議の舞台裏、「この部屋から出すわけにはいかない」」のポイントで見てみよう。
・ギリシャがユーロ圏離脱の瞬間に最も近づいたのは7月13日の午前6時前後。ギリシャのチプラス首相とドイツのメルケル首相は過酷な話し合いを14時間続けた末に、行き詰まったと考えた
・もう妥協の余地はなく、交渉を続ける理由も見当たらなかった。グレグジット(ギリシャがユーロ圏離脱)だけが唯一の現実的な選択肢。2人が部屋のドアに向かって歩き始めた時、動いたのはトゥスク欧州理事会議長(ポーランドの前首相)。ユーロ圏の歴史に残る分裂の引き金が、疲労と苛立ちによって引かれるのを阻止しようと、「悪いが、この部屋から出すわけにはいかないんだ」
・最後までもめたギリシャ民営化基金。差し押さえたギリシャの国有資産を裏付けに設立する民営化ファンドの規模と目的。メルケル氏は、500億ユーロの資産を売却して債務の返済原資にしたいと考えていた。一方のチプラス氏は、ギリシャの国民所得の3分の1近い価値のある資産の支配権を差し出せというのは国家に対する侮辱だと見なした。そこで、同氏はファンドの規模をもっと小さくする、そして売却代金はギリシャに再投資されるようにするという代案
・いろいろな仕組みを1ダース近く、1時間以上かけて検討した結果、ようやく妥協点を見いだすことができた
・この前々日に当たる土曜日にはユーロ圏財務相会合。9時間近くを議論しながら成果が得られなかったことから、財務相の半数以上は、残された選択肢の中ではギリシャのユーロ圏離脱こそが最も害が少ないかもしれない、という厳しい結論
・議論が最高潮に達したのは、一時的なグリグジットという案を提唱したドイツのショイブレ財務相が、ECBのドラギ総裁に怒った時。「私は馬鹿じゃない」と声を荒げたショイブレ財務相(ショイブレ氏はある時点で、自分の能力が過小評価されていると感じ、ECB総裁に向かって「(私は)馬鹿じゃないぞ」と声を荒げた
・これを聞いたユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のデイセルブルム議長は限界を超えたと判断し、会議を翌朝まで休会とした。土曜日には完全な合意に至らなかったため、ユーログループは日曜日、ユーロ圏の首脳会議にバトンを手渡した
・首脳たちの徹夜の会議の始まりだ。時間が経ち、日曜から月曜へと日付が変わるにつれてグリグジットの可能性が高まっていくように思え、概ね不毛な交渉が6カ月続く間に生まれた、睡眠不足の政治家や外交官たちの間の亀裂がますます大きくなったという
・オランド大統領は民営化基金に関する妥協をまとめるためにメルケル氏とチプラス氏をトゥスク氏のオフィスに招き入れた。最後には成功したものの、この交渉は、長年欧州プロジェクトの核となってきた仏独関係を緊張させたように見えた。「ドイツには、グレグジットを求めるかなり強い圧力があった。私はその解決策を拒んだ」(オランド氏)。特に民営化基金については、オランド氏はチプラス氏に後ろ盾を与え、これは「主権」の問題だと語った。「ギリシャに屈辱を与える以上にひどいことはなかった。ギリシャが求めていたのは施しではなく、ユーロ圏からの連帯だ」
・オランド氏はまた、ギリシャによる一時的なユーロ圏離脱――ショイブレ氏がユーログループの提案に盛り込ませた物議を醸す構想――の可能性を最終文書から削除するよう主張
・一番苦しんだのが誰かということについては、意見が一致。「彼らは中でチプラスを磔にした」(サミットに参加したあるユーロ圏政府高官)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44302

次に、ドイツの置かれた立場をよりユーロの根本的な仕組みから専門的に説明するものとして、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が、16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ドイツのギリシャ切り捨てを許さない巨額貸付の重荷」のポイントを紹介しよう。これはEUを通じた通常の支援とは別の仕組みである。
・ユーロには、中央銀行であるECBを通じたターゲット2(TARGET2)と呼ばれる決済システムがある
・ユーロ危機で膨れ上がった赤字国の債務と黒字国の債権
・ターゲット2を通じて、ドイツ連邦銀行が、ECBに対して、巨額の貸出を、言わば「自動的に」行なってしまっている。しかも、そうした貸出が行なわれたこと自体が、一般のドイツ国民に必ずしも正確に理解されていたわけではない。「気がついたら、とんでもない貸出をすでに行なっていた」というような状態
・仮にギリシャがユーロを離脱し、ギリシャ中央銀行が債務不履行に陥り、返済不能になると、ドイツなど黒字国には巨額の損失が発生するのではないかとの懸念がドイツ国内で浮上
・「いまになってギリシャを離脱させたくとも簡単にはできない」という状況になってしまっている。ギリシャはドイツのこのような弱みを知っているから、交渉も強腰になる
・ターゲット2バランスとは、ユーロ参加国中央銀行のECBに対する債権・債務なので、ギリシャ中央銀行が債務不履行しても、損失を被るのはECB
・ECBが被る損失はECBへの出資比率に応じて各国が負担。約27%の出資比率のドイツ連邦銀行は、巨額の損失を被ることになる
・政治同盟なしの通貨同盟が抱える基本的な問題。ユーロの基本的矛盾が いま再び露呈
http://diamond.jp/articles/-/75035

ユーロ圏首脳のタフな交渉ぶるには改めて驚かされた。
今回支援策の欧州安定メカニズム(ESM)を通じた資金援助には、ドイツやフィンランドなど6カ国で国会の事前承認が必要になるため、支援再開にはさらに時間がかかりそうで、6月末以降続いているギリシャ銀行休業はまだ続きそうだ。他方、今日付けの日経新聞は、「IMF報告書「大幅な債務減免必要」」と題して、財政を持続可能にするため、30年間の返済猶予や元本削減など、EUの想定を超える大きな債務減免が必要と強調とたと伝えた。合意された支援策には債務減免は含まれてないだけに、チプラス氏がまた勢いづく懸念もありそうだ。
明日は金曜日で更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:かえってより厳しい条件 JBPRESS ギリシャがユーロから離脱しかけた瞬間 マラソン会議の舞台裏、「この部屋から出すわけにはいかない」 国民投票 ユーロ圏離脱の瞬間に最も近づいたのは7月13日の午前6時前後 財政再建策の是非 財政改革法案を採決 ギリシャ国会 ギリシャ問題 過酷な話し合いを14時間続けた末に、行き詰まった ギリシャ民営化基金 悪いが、この部屋から出すわけにはいかないんだ 動いたのはトゥスク欧州理事会議長(ポーランドの前首相) 2人が部屋のドアに向かって歩き始めた時 差し押さえたギリシャの国有資産を裏付けに設立する民営化ファンド 国家に対する侮辱 ユーロ圏財務相会合 9時間近くを議論しながら成果が得られなかった 一時的なグリグジットという案を提唱 ドイツのショイブレ財務相 ECB総裁に向かって「(私は)馬鹿じゃないぞ」と声を荒げた オランド大統領 ドイツには、グレグジットを求めるかなり強い圧力があった。私はその解決策を拒んだ ギリシャによる一時的なユーロ圏離脱 の可能性を最終文書から削除 彼らは中でチプラスを磔にした 野口悠紀雄 ドイツのギリシャ切り捨てを許さない巨額貸付の重荷 ターゲット2 決済システム ユーロ危機で膨れ上がった赤字国の債務と黒字国の債権 ドイツ連邦銀行が、ECBに対して、巨額の貸出を、言わば「自動的に」行なってしまっている 一般のドイツ国民に必ずしも正確に理解されていたわけではない ギリシャ中央銀行が債務不履行に陥り、返済不能になると、ドイツなど黒字国には巨額の損失が発生 いまになってギリシャを離脱させたくとも簡単にはできない ギリシャはドイツのこのような弱みを知っているから、交渉も強腰 ECBが被る損失 ECBへの出資比率に応じて各国が負担 6カ国で国会の事前承認が必要 ESM)を通じた資金援助 IMF報告書「大幅な債務減免必要」
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ギリシャ問題(その1) [世界経済]

先月から綱渡り状態で一進一退を続けてきたギリシャ支援を巡る問題が、今日付けの日経新聞によれば、「ユーロ圏首脳、ギリシャ条件付き支援で合意 法制化15日期限、3年で11兆円超」と一応の決着をみたようなので、今日はこの問題の基本的な事項を(その1)として取上げよう。

・まずは、ギリシャ問題の基本的な事実関係を簡単に振り返っておこう。2009年10月に政権についた左派政権が、前政権が財政赤字を粉飾しており、2009年の財政赤字のGDP比が3.7%ではなく、実に13.2%(後に15.4%に膨らむ)に達していることを表明。統一通貨ユーロ参加国は、赤字幅を3%以内に収める義務への大幅逸脱であった。国債は格下げとなり、利回りも大幅に上昇、国債発行が困難となった。
・2010年5月にEUやIMFなどから3年間で総額1100億ユーロの金融支援を引き出した。2012年3月には、さらに1600億ユーロの金融支援、この時には銀行など民間投資家が保有する国債の元本の53.5%を削減、残額も新たな国債に交換させる形で、実質的に8割近い債務免除(ヘアカット)も行った。これは「無秩序なデフォルトを回避」 したとして市場からは評価
・他方で、金融支援時に課された財政赤字削減要求を満たすため、歳出削減、増税などの厳しい緊縮政策を採った結果、実質GDPの水準は、2013には2009比で74にまで落ち込んだ(EU18か国平均は102)。
2013の失業率は27.5%(同11.9%)、特に25歳未満の若年層では58.3%(同24.0%)と惨憺たる状況にある。
・本年1月、総選挙で反緊縮派の急進左派連合が圧勝、 財政再建・構造改革計画の全面的見直しや債務減免を要求。その後も紆余曲折を経て、冒頭の決着となった(債務減免は盛り込まれず)
・なお、IMFへの6月末までの15億ユーロは返済されず、デフォルトとなったが、IMFは即時の債務返済は求めないとした。7月14日付けで満期がきたギリシャのサムライ債116億円は、予定通り利息も含めて支払われ、民間向け債務はデフォルトさせない姿勢を示した
・今回の決着での支援は条件付きなので、ギリシャが15日の期限までに法制化出来なければ、いよいよ「無秩序なデフォルト」やユーロ離脱の可能性が高まる。

ギリシャ問題については、支援の中心となるドイツとギリシャを「アリとキリギリス」にたとえ、ギリシャが年金を払い過ぎている、公務員が多すぎると批判するドイツ流の見方が多かったが、最近は論調にも変化がみられる。

元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏が、7月2日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ギリシャ問題の解は「ユーロ離脱、EU残留」」のポイントを紹介しょう。やや古いが、いまだに通用する部分が多い。
・ドイツは「うまみ」を謳歌してきた  それが忘れられている。ドイツなどのユーロの中心国では、ギリシャなどの周辺国が増える「うまみ」もある。欧州中央銀行(ECB)の政策金利は、ユーロの物価指数に占めるドイツなどのウェイトが高いため、それらに合わせて過去低めに設定。このため、ギリシャなどの南欧の景気が過熱し、そのインフレ率はECBが域内の物価安定の目安とする「2%未満」を上回ってきた
・同じユーロ国でも、インフレ率が相対的に低いドイツの輸出製品価格は低く抑えられる一方、インフレ率の高いギリシャなどの輸出製品は価格競争力を失っていく。このため、ドイツなどの輸出は急増し、その果実を謳歌
・ギリシャ問題では、ドイツなどは援助国、ギリシャなどは非援助国という構図であるが、それまではドイツなどはユーロ拡大の最大の受益国であったことが忘れられている
・ユーロの問題点に言及しない解説は無意味。ギリシャ独自のドラクマ通貨時代では、危機のたびにドラクマが下落して、対外借金を棒引きにすることで、ギリシャ経済はなんとかやってこれた。しかし、ユーロに加入してから、この手が使えなくなった
・その一方、ギリシャがユーロに加入したことによって、ドイツは受益国になった。この観点から言えば、ドイツがギリシャ支援をするのは当たり前である。それにもかかわらず、緊縮財政を強要し、結果としてギリシャ経済の苦境からの脱出を妨げてきたのが問題
・地政学上の重要性から ユーロ離脱でもEU残留は可能。経済的な観点から見れば、ギリシャもドラクマという独自通貨を復活させて、EUに残留すればいい。このポジションは、EU域内では関税なし、人・資本移動が自由なので、かなりのメリットがある。その一方で、金融政策の自由度を持つので、ギリシャにとっては長期的には「いいとこ取り」のような合理的な選択
・ギリシャの地政学的な位置付けから、経済・政治統合のEU、ひいては安全保障の北大西洋条約機構(NATO)にギリシャは不可欠
http://diamond.jp/articles/-/74250

現在の窮状については、11日付け日経新聞「ギリシャ、銀行に三重苦 資金繰り難/不良債権膨張/国債損失リスク」が伝えている。そのポイントは以下の通り。
・資本規制の導入や預金流出による資金繰り難のほか、不良債権の膨張、保有するギリシャ国債の債務不履行懸念といった「三重苦」が金融機関の経営を苦しめる
・預金保護への懸念が高まり、年明け以降、ギリシャの銀行からはすでに約2割の預金が流出。6月末以降に導入した銀行休業など資本規制の下でも流出は続いており、ECBからの資金供給が途絶えれば、資金が枯渇し、破綻に追い込まれかねない
・13年に資金繰りに行き詰まったキプロスでは銀行が大口預金のカットに踏み切っており、ギリシャも二の舞いになるとの不安は大。ギリシャ中央銀行や財務省はEUとの協議を受けて、週明け月曜日に、銀行の営業再開の是非について話し合う予定
・ECBは支援額の引き上げなどの条件として、銀行の支払い能力の確保などを求めており、金融の正常化には時間がかかる恐れ
・四大銀行の3月末の債権残高に占める不良債権の割合は24~38%と、極めて高い水準で高止まり。チプラス政権の発足以降、特に中小企業と個人の延滞比率が高まっている。市場は四大銀行が抱えるギリシャ国債にも疑念の目。ギリシャ政府が発行する短期国債はギリシャの大手銀行が主な引き受け手。今後のEUとの協議で財政破綻懸念が再び高まれば、保有国債の償還も危うくなる。不良債権や保有国債の大幅な損失処理に踏み切れば、四大銀行は資本不足に陥る可能性
・12年の2度にわたる資本注入に続き、3度目の資本注入が不可欠な情勢だ

次回の(その2)では、今回の合意の背景、ギリシャのユーロ離脱などを取上げるつもりである。
タグ:ギリシャ問題 日経新聞 ユーロ圏首脳、ギリシャ条件付き支援で合意 法制化15日期限、3年で11兆円超 基本的な事項 2009年10月 前政権が財政赤字を粉飾 2009年の財政赤字のGDP比が3.7%ではなく、実に13.2%(後に15.4%に膨らむ) 赤字幅を3%以内 2010年5月 総額1100億ユーロの金融支援 2012年3月には、さらに1600億ユーロの金融支援 実質的に8割近い債務免除(ヘアカット) 無秩序なデフォルトを回避 財政赤字削減要求 、歳出削減、増税などの厳しい緊縮政策 実質GDPの水準 2013には2009比で74 2013の失業率は27.5% 若年層では58.3% 反緊縮派の急進左派連合が圧勝 財政再建・構造改革計画の全面的見直しや債務減免を要求 ドイツとギリシャ 「アリとキリギリス 高橋洋一 ダイヤモンド・オンライン ギリシャ問題の解は「ユーロ離脱、EU残留」 ドイツは「うまみ」を謳歌 ECB)の政策金利 低めに設定 南欧の景気が過熱 インフレ率はECBが域内の物価安定の目安とする「2%未満」を上回ってきた インフレ率が相対的に低いドイツの輸出製品価格は低く抑えられる インフレ率の高いギリシャなどの輸出製品は価格競争力を失っていく ドイツなどの輸出は急増し、その果実を謳歌 ドイツなどはユーロ拡大の最大の受益国 ドラクマ通貨時代 危機のたびにドラクマが下落して、対外借金を棒引きにすることで、ギリシャ経済はなんとかやってこれた ドイツは受益国 ドイツがギリシャ支援をするのは当たり前 緊縮財政を強要し、結果としてギリシャ経済の苦境からの脱出を妨げてきたのが問題 地政学上の重要性から ユーロ離脱でもEU残留は可能 経済・政治統合のEU 北大西洋条約機構(NATO)にギリシャは不可欠
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