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トランプ大統領(その38)(内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)「トランプという怪物」を作った会社、(中)「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器、(下)改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義) [世界情勢]

トランプ大統領については、昨年11月18日に取上げた。今日は、(その38)(内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)「トランプという怪物」を作った会社、(中)「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器、(下)改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義)である。これは民主主義の根幹を揺るがす大問題なので、大いに考えさせられる必読である。なお、この問題は、トランプ大統領で整理するよりも、より一般的に「ソーシャルメディア」(昨年10月3日)とした方が適切かも知れないが、今回はそのままトランプ大統領に入れた。

先ずは、フリーテレビディレクター(ロンドン在住)の伏見 香名子氏が昨年11月16日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「トランプという怪物」を作った会社 内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/111300028/
・『国の行方を左右する選挙や国民投票で、カウンター・テロの技術が、投票を左右するために、有権者を標的に応用されていたーー。まるでスパイ映画のようなシナリオが、米英で「実演」されていた。「私はスティーブ・バノンの心理兵器を作った」。英国の大手紙・オブザーバーに、こんな衝撃的な見出しが躍ったのは、今年3月のことだ。 トランプ米大統領の選出や、英国のEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票において、有権者を標的にしたデジタル戦略が繰り広げられた。主戦場はSNS(交流サイト)で、背後にロシアの関与があるのではないか。このように囁かれてきた数々の疑惑を現実のものとして告発したのは、1人のデータ・サイエンティストだ。 フェイスブック(以下FB)から8700万人分もの個人情報を不正に取得し、有権者の意識を誘導するデジタル戦略を繰り広げていたケンブリッジ・アナリティカ(以下CA社・後に破産)。告発者はこの会社のリサーチ・ディレクターだった、カナダ出身のクリストファー・ワイリー氏(29)だ。 事件の概要は前稿(フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」)をご参照頂きたいが、ワイリー氏が英議会・下院特別委員会に提出した122ページに渡る証拠文書や、同委員会での実に3時間半に及んだ証言などによって初めて、問題の詳細や深刻さが浮き彫りになったと言われている。 告発によれば、CA社の前身の会社は元々、過激派の弱体化を目的とした研究を行なっていた。しかし、超保守派でトランプ大統領最大の献金者とも言われた富豪、ロバート・マーサー氏からの資金提供を受けてCA社として生まれ変わり、かのスティーブ・バノン氏が責任者として指揮を取り始めてから、会社が激変したという。 2016年の米大統領選において、人々が移民などに対する、耳を疑うような攻撃的なスローガンを掲げたのも、実はこの会社で行われた研究が発端だったと、ワイリー氏は告発した。 同氏が告発したのは所属していた会社だけでなく、米大統領上級顧問だったバノン氏や、背景での関与を疑われた大国ロシアである。告発を準備していた段階から何度もCA社による法的措置を取られた上、FBからは追放された。この事だけでも、ワイリー氏の告発による影響力の大きさを物語っている。 世界各地での講演などで多忙を極めるワイリー氏に、今回単独ロング・インタビューを敢行した。まず、CA社は何を目的とし、何をしたのか。告発に至るまでの経緯を聞いた。(ーーは聞き手の質問・意見)
・『CA社は偏執的なメッセージに弱い人を標的にした  ーー2016年の米大統領選でのご自身の役割について、教えてください。 クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):私は当初、防衛研究、サイバー戦・情報戦、また、国家安全保障研究プロジェクトを専⾨とする、CA社の前⾝の会社に就職しました。 この会社はその後、米国の富豪、ロバート・マーサー氏によって資金提供を受けました。そして、スティーブ・バノン(元トランプ大統領首席戦略官・上級顧問)が、後にCA社として知られることになった、その会社の責任者(の1人)に任命されました。CA社は、トランプ陣営の主要アドバイザー、そしてオーガナイザーの一つとなったのです。 彼らはFBから違法に取得したデータを基に、統計学的モデルを構築しました。これを用い、陰謀論や偏執(パラノイア)的なメッセージに弱い人々や、神経過敏な人々を標的に、ドナルド・トランプを支持するムーブメントを作り出すことが目的でした』、バノンは政権から一応離れた形になったが、トランプ当選に向けての工作は、以下で詳説されるように飛んでもなく悪どい。
・『過激派組織の影響力を下げるのは、やり甲斐があった  ーー最初に勤めたのは、どんな会社だったのでしょうか。 ワイリー氏:私は当初、SCLグループという会社のリサーチ・ディレクターに就任しました。SCLグループは英国の防衛請負業者で、米英の軍事部門の研究などを、心理・情報オペレーションを用いて行っていました。 多くの場合、過激派に対峙し、テロ組織の活動に潜入したり、また、あるテロ組織が、なぜ世界の特定の地域で効果的なのか、どのように新兵の勧誘を行うのか。そうしたことを特定していました。 私が雇用されたのは、例えばIS(自称イスラム国)などの組織の場合、オペレーションの多くがオンライン上で組織されているからです。皮肉なことに、米英軍は、フォーラムやチャットグループ、携帯アプリなどを用いた、とてもお粗末なテロ集団に遅れを取っていました。 私がSCLで始めた研究は、国内外を問わず、ある特定の人口集団の中で、どんな人たちが最も過激派集団の勧誘に弱く、操作されやすいのかを知ることでした。そうすることで、介入も可能になり、参加を阻止することができます。 更に、すでに過激派に所属している人たちを標的にし、組織を辞めさせるか、組織の団結力を弱め、運営を弱体化させることに効果的なメッセージを特定することもしていました。 ーーSCL社に就職した当初は、どんな仕事をしたかったのですか? ワイリー氏:CA社の前身だったSCLに雇用された際は、まず研究内容が興味深いと感じました。様々な文化について学ぶ機会があり、データ・サイエンティストとして日々関わることのない問題についても触れることができました。 過激思想や、その前段として、過激派に最も取り込まれやすい人たちのプロファイルを、数学やデータを用いて作ることができるのか。データ・サイエンティストとして、とても興味深い問題だと思いました。軍の仕事というのは、外的、また、時には内的脅威からも、市民を守ることです。データ、インターネット、そしてSNSを使うことで、その脅威を即座に特定し、問題が起こる前に介入する事が可能です。 参加してしまう前に、どんな人が最もテロ組織に加入してしまいやすいのか、また、もし既に参加してしまっている人なら、誰が最も早く爆弾を作るのか、ということなどを特定するのです。 軍(の目的)は介入し、過激派組織の影響力を受動的に、必ずしも暴力を使わずに下げることです。軍の視点からは2つの選択肢が存在します。ISのような組織の場合、ドローンなどを使って爆撃し殺害すること。あるいは、勧誘やコミュニケーション、また、組織内の文化的・社会的団結力に介入し、効果を下げることです。 後者のアプローチであれば、テロとの戦いにおいて、少なくとも私たちの考えではドローン攻撃に比べ、巻き添え被害を極力、起こさずに済むと思いました。しかし皮肉なことに、この研究に関する「巻き添え被害」は大きく、米英国民に使用され、トランプ大統領の選出、そして、英国のEU離脱という結果を招いてしまったと考えています』、SCLは当初は意義深い情報工作をしていたようだ。
・『バノンが仕掛けた「文化戦争」  --働き始めた当初は、良い動機しかなかったということですね。 ワイリー氏:はい。当初CA社の前身に入社した多くの人たちが、尊敬に値する理由で、研究を行っていました。問題は、富豪であるマーサー氏が社に資金を投じ、バノン氏を責任者にしてから起きるようになりました。 バノン氏にはこの会社をどの様に利用するか、明確な目的がありました。「文化戦争」を起こすことです。文化戦争、あるいはどんな戦争でも、戦うには武器庫が必要です。「戦争」が文化面で起きる場合、開発の必要があるのは、情報面の武器です。彼がこの社で働きたかった理由は、開発されたものがオンライン上で使用された武器だったからです。 目的は人々を欺き、操り、抑圧・支配すること。そのため、ある事柄をより信じてしまう人々を特定して標的にし、操作された情報を「武器」として流す。これこそが、バノン氏が「文化戦争」のために使用を望んだ技術です。会社は元々、この技術や研究を用いて国を守ろうとしていたのであり、市民を攻撃することが目的だったのではありません』、優れた情報技術やデータを「文化戦争」に使おうとしたバノン氏はさしずめ「ハイド氏」のようだ。
・『--バノン氏はなぜ「文化戦争」を起こしたかったのでしょうか。 ワイリー氏:バノン氏には、歪んだ「世界のあるべき姿」についての思想があるのです。彼は「人種」について、また「強い男性が支配すべき」という独自の見方、そして「権威主義」について、すなわち「国が統治されるべき姿」についても、見解を持っています。 当時は「非主流派」だった彼の考えが主流となるには、このような思想を独創的にプレゼンし、社会に注入しなければなりません。彼には富豪の資金を有するという利点がありました。つまり、何百万ドルもの資金を投じてSCLの様な企業を発掘・買収し、キャンペーンを始めるために利用することができたのです』、悪知恵に富豪という大スポンサーが付いたのであれば、「鬼に金棒」だ。
・『オンライン上のナイフを作ってしまった  --あなたが会社にいた2年間、どの時点で「何かがおかしい」と感じ、なぜその様に感じる様になったのですか? ワイリー氏:バノン氏が入ってきて、研究の目的が変えられ始めた時です。社の指示や、優先事項が変化し始めました。研究は米国で始まり、研究チームが米国で何をし始めたのかを目の当たりにした時、その目的に疑問を抱きました。 すなわち、なぜ米国民に「人種差別思考」を、しかも攻撃的に浸透する必然性があるのか、などということです。過激思想や人種差別思想から脱却させるのではなく、逆の方向、つまり、人々を過激化し、差別的に思考を誘導することです。 米国で設立されていた研究プログラムを見て、私たちが当初しようとしていたことから逆行していることを知りました。ナイフを例にしますが、料理人はナイフを使って、ミシュランレベルの食事を作ることができる反面、殺人の武器として使用することもできます。私たちは、オンライン上のナイフ(=武器)を作ってしまったのです。 バノン氏は、これを防御ではなく、攻撃目的の武器として使用しました。私はこのことが非常に問題だと感じました。特に、研究室で行われた実験用の動画を見ると、実験の初めには普通だった人たちが、終わる頃には人種差別的なスローガンを、あたかも普通のこととしてわめき散らしていました。 この有様を見て私は社の新しい幹部に対し、この会社の目的が、当初の目的に即しているのなら、こんな実験には意味がないと問題提起しました。しかし、研究は継続されることになり、私は社を辞めました。私が辞めた直後、このことを問題視したチームの第一世代の社員の多くも、退社しました。自分たちが作り始めたものが、全く別のものに変容してしまったからです』、「実験用の動画を見ると、実験の初めには普通だった人たちが、終わる頃には人種差別的なスローガンを、あたかも普通のこととしてわめき散らしていました」、信じられないような身の毛がよだつ話だ。
・『ーー具体的な時期を教えてください。 ワイリー氏:「入社」の意味にもよりますが、社に所属していたのは2013年と2014年です。(米大統領選の)予備選が始まりかかっていた2014年の終わりごろから2015年、テッド・クルーズ候補やドナルド・トランプ氏が出現した頃、退社しました。 社が悪い方向へ転げ落ちた例をお話ししますが、米国ではなくアフリカのある国のことです。市民に選挙で投票させない目的で、人々が生きたまま縛られ、焼かれる姿や、喉を切り裂かれる場面などを撮影した動画を流していました。投票に向かうなら、あなたがこうなる、というメッセージです。 テロ組織の勧誘や、教会やショッピング・モールでの自爆テロを阻止する目的で、こうした動画を流すことはまかり通るかもしれませんが、先程の例では、人々の投票する権利を、脅迫することで奪っているのです。米国のみならず、他の国々で行なっていることに非常な嫌悪を感じ、私の良心に照らし、あの会社に留まることはできませんでした。私以外の多くの人たちも、同様に感じていました』、アフリカのある国の例はきっと実験なのだろうが、酷い話だ。
・『人々を人種差別主義者に変える研究  米国で起きたことは、当然大統領選の結果もあり、地政学的にも大きく注目されています。しかし、私が酷いと感じた、人生で見た中でも最も吐き気を催したものは、あの会社が流した動画です。人々が溝で、血を流しながら死にゆく様を映していました。陰湿で、悪魔の様な語り口を使い、見ている人を脅したのです。こうした動画をオンラインで流し、有権者が投票に行かない様に仕向けました。 もう一つ、侮辱的だと感じたのは「これはアフリカだ。自分たちは何をしても構わない」という、人を人とも思わない、社の態度です。米国で行なっていたこと、つまり、いかにして人々を人種差別主義者にするか、また、人々に偽の事象を信じさせるというという研究まで目の当たりにしては、そこで働き続けることを、正当化はできませんでした。 私はこうしたプロセスを経ましたが、私だけではなく多くの人たちが、私が辞めた後、すぐに退社しました。皮肉にもこのことが会社にもたらしたのは、社が行なっていたことを容認できた、新しい社員を集めるチャンスでした。結局、奇妙な形で会社は存続し続けたのです』、確かに会社にとっては、既にノウハウの蓄積があるので、反対派を整理できて、バノンらは喜んだのだろう。
・『CA社にいたら米社会を破壊していた  ーー良心の呵責にもかかわらず、社に留まっていたとしたら、どんなことをしていたと思いますか? ワイリー氏:SCLに入った当初そして、CA社に変わった時、私は研究部門のディレクターでした。私の仕事は、社で行われていた数々の研究プロジェクトの優先順位を定め、体系化することでした。スタッフを選び、どんな知識を得るか、目的を定めました。また、データ・サイエンスの側面から、集めたデータを用いて、クライアントのプロジェクト目的に即した、統計的な型を作る事にも携わりました。 私が辞めた理由の一つは、米予備選が始まった頃、社が人々をいかに「人種差別化」するか、という研究を行う事のみならず、「受動的に学ぶ」段階から、人々を騙し、欺き、操作する目的のコミュニケーションを通じ、「受動的に学ぶ」段階から、文明社会に適合しない考え方をまき散らすという「攻勢」に転じたからです。 CA社に留まっていれば、私はバノン氏の「人種差別主義を基盤としたムーブメント」に、加担していたでしょう。(ロシア疑惑を捜査している)ムラー米特別検察官によって、ロシアのエージェントとして起訴された人たちにも、加担してしまったでしょう。攻撃的な外国組織と共に、米社会を破壊したでしょう。 この全てのことに、私の良心は耐えきれませんでした。あのまま継続して勤務することは、米英やCA社が関わっていた国々における民主主義を攻撃することであり、良心に照らし、そんな事はできませんでした』、「「受動的に学ぶ」段階から、文明社会に適合しない考え方をまき散らすという「攻勢」に転じた」というのは、恐ろしいような転換だ。
・『ーー2016年米大統領選の結果を見て、どう感じましたか。 ワイリー氏:とても非現実的な光景でした。両者の関わりが公になる以前から、CA社はトランプ陣営と共に動いていたのです。当時、人々が「奇妙な語り口だ」としていた「壁を作れ!」や「(米政府の)どぶさらいをする!」また「闇の国家が人々から全てを取り上げており、みんなを監視している」などというスローガンは全て、CA社が初期の頃行なっていた研究から生まれたもので、鮮明に記憶しています。 こうした報告はバノン氏に上げられ、彼からトランプ氏に渡されました。米国のニュースを見るのは、私には奇妙なことでした。なぜなら、世間はトランプ氏が言うことを笑ったり、「気が触れている」と評していました。こんな埒もないことを言って、勝つ道理がないと思われてもいました。 私はそれを見ながら「いや、そうではない。もし、適切に標的とされれば、どれだけの人たちがトランプ支持に傾くかを、わかっていない」と思いました。(メディアなどが)トランプ氏や聴衆を馬鹿にすればするほど、(トランプ氏の発言を)好ましいと感じ、聴衆は(メディアから)自分も馬鹿にされていると感じ、トランプ攻撃が起こる度、彼の基盤がどんどん固まって行きました。攻撃は、トランプ氏を助けたのです。 この事はとてももどかしく、私は民主党陣営に警告を試みました。しかし、ヒラリー陣営はあまりに自信に満ち、誰もトランプ氏の勝利を見抜く事は出来ませんでした。「違法で恐ろしく非道徳的なことをしているかもしれないが、どうせ勝たないのだから、問題はない」と言う態度でした。案の定、彼は当選しました。そこで初めて人々は驚愕したのです。 私にとってあの事は「トラウマ」と言う言葉がふさわしいと思います。何も、なす術はありませんでした。ちょうどその頃、英国の大手紙がトランプ陣営とCA社がしていたことについて、情報を共有しないかと持ちかけてきました。トランプ氏選出の数ヶ月後、当初は匿名の内部告発者として、そして後に実名の情報提供者としての活動を始めました』、「壁を作れ!」などのスローガンは全て、CA社が初期の頃行なっていた研究から生まれたもの」、そこまで指導していたのかと驚かされた。「私は民主党陣営に警告を試みました。しかし、ヒラリー陣営はあまりに自信に満ち、誰もトランプ氏の勝利を見抜く事は出来ませんでした」、というのは大いにあり得る話だ。
・『フランケンシュタインを作ってしまった  --自分が「何を」作ってしまった、と感じましたか? ワイリー氏:陳腐な言い草ですが、私は「フランケンシュタイン」を作ってしまったと感じました。興味のあることを研究しているうちに、想像もしていなかった方向に物事が進み、怪物を作ってしまった、と言う意味です。 しかし、その時点で既に会社は乗っ取られ、バノン氏が責任者であり、社は米国で運営され、トランプ陣営に設置されていました。私には、どうすることもできませんでした。 問題はトランプ氏が勝利する前に、人々があの会社が何をしていたか、真剣に捉えていなかったことにあります。なぜなら、トランプ氏が勝利するなど、誰も想像だにしていなかったからです。ブラック・スワン(注:マーケティング用語・事前に予測不可能な事態が起きてしまい、衝撃が大きい事象のこと)とも呼べるかもしれませんが、前例のないことが起きてしまいました。 人々に警鐘を鳴らそうとしても、無駄でした。「それは奇妙なことだけど、どうと言うことはない。どうせ、彼は勝たない」という反応ばかりで、苛立ちを感じました。彼が勝っただけでなく、実際大統領になったことには「非現実的」という言葉しか思い浮かびませんでした。 多くの人も同様に感じたでしょうが、私にとっては特にそうでした。自分の働いていた会社の研究報告書に出ていた言葉を(トランプ氏が)発していたのですから。この研究こそがトランプ氏を、彼の信条を象徴する「ドナルド・トランプ」に仕立て上げたのです。 「ドナルド・トランプ」は粘土のごとく、バノン氏によって、理想の候補に形作られました。そしてそのことの多くは、CA社が収集した研究とデータを基に、可能になりました。見るのが辛いことでした。作られたものの一部は自分の責任であるのに、何もできないと感じました』、トランプの考え方は生来のものと思っていたが、「「ドナルド・トランプ」は粘土のごとく、バノン氏によって、理想の候補に形作られました」には心底驚いた。
・『--恐怖を感じましたか? ワイリー氏:恐怖を感じたとは言いませんが、CA社からは既に何度も脅されました。複数回訴えられもしました。彼らが恐れていたのは、社が何をしようとしているか、私が口を開くことを最も懸念していました。 トランプ氏が選出された後、そして英国のEU離脱が決定した後、CA社がただのロンドンの片隅で運営されている、何の影響力もない、非道徳的で奇妙なことをしている会社であるという認識から、世界にとてつもない影響を及ぼす会社であることがわかりました。 私の倫理観の真逆の存在だと理解した時、彼らから脅され続けている中でも、誰かに告白しなければと感じました。トランプ氏が選出された際、CA社は自分たちの事業が注目されてしまうことを懸念していたと思います。しかし(告発の)全てが真実であり、証拠文書が存在した以上、彼らが防衛策を講じることは、不可能でした。私の立場はこうしたもので、ガーディアン紙やニューヨーク・タイムズ紙が、何が起きたかを伝えてくれました』、英米の一流紙は頼りになるようだ。

次に、上記の続きとして、12月4日付け日経ビジネスオンライン「「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器 内部告発者クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(中)」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/112600029/?P=1
・『英国におけるデータと民主主義をめぐる攻防では、今年3月、ケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社、後に破産)について暴露された大スキャンダルに端を発して以来、現在も刻々と事態が動き続けている。 個人情報大量流出問題などで揺れるフェイスブック(以下FB)のマーク・ザッカーバーグCEOに対し、フェイクニュースなどに取り組む英下院・特別委員会が行った度重なる招致・証言要請にもかかわらず、氏は結局11月27日のヒアリングを今回も拒否。自身の出席はおろか、委員会の求めたビデオ・リンクを通じた証言さえも拒んだ。 11月24日には、この問題を当初から詳報してきた英オブザーバー紙が、ザッカーバーグ氏を含むFB幹部が交わした、データとプライバシーに関する社内極秘eメールなどの資料を、特別委が入手したと報道。ザッカーバーグ氏ら幹部がCA社事件が起こる何年も前から、FB上の個人情報の取り扱いについて、どのような方針でいたのかを示す重大な資料と見られている。 この資料はFBとの法廷闘争に及んでいる第3者の米ソフトウェア会社のオーナーが所有しているものだ。オブザーバー紙によれば特別委は、この人物のロンドン出張の際、滞在先で資料の提出を迫った。しかし、裁判への影響を理由に拒否したため、議会権限で彼をホテルから議会へ「エスコート」の上、提出しなければ罰金または禁固刑の可能性があることを提示し、資料を入手したと報じている』、英国議会がここまでするとは驚きだ。日本の国会に爪の垢でも煎じて飲ませたい。
・『米CNNなどは、訴えが起こされているカリフォルニアの裁判所が、FBの要請によりこの文書を非公開にすることを認め、今年10月、報道機関数社による開示要求を却下したと報じている。これに対し特別委側は、資料は英国内で入手されたものであり、米国の法は及ばないという立場でいる。本稿執筆現在(11月27日)、特別委は文書の内容を近日公開する姿勢を崩していない。 特別委がここまでの強硬な手段を取ったのは、元CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏に対しても取られた、この問題に関するFB側の不誠実な対応が背景にあることは否めない。 「銀河英雄伝説」と言う、同名のSF小説を原作として、1980年代に制作されたアニメがある。作品中、情報戦のエキスパートが、「情報」の何たるかを若い兵士に諭すシーンがある。 いわく、世の中に流布する情報には必ずある種のベクトルがかかっている。世論を誘導するため、あるいは、願望を全うし、自らを利するために情報を流している「発信者」の存在がある、と言う趣旨の話だ。 その情報発信者が誰かわからないときは?との問いにこの中佐は、「犯罪が行われた時、最も利益を得た者が真犯人」だと返す。 トランプ米大統領の選出や英国のEU離脱、さらに、この事によって生じた米英社会の分断と混乱が、CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏の告発通り、苛烈な情報戦の産物であるならば、この結果により「利益を得た真犯人」は、誰か。 ロシアによる情報戦関与の疑いや、CA社を徹底的に追い詰めるべく、1年以上も周到な準備を行った経緯。さらに、関係者が思いもよらなかった、FBによる過剰な反発や、SNSを主戦場として繰り広げられている「情報戦争」について、引き続きワイリー氏に聞く』、引き続き面白そうだ。
・『予想外だったFBからの反撃と嘘  --内部告発を行う事は、並大抵の決断ではなかったと思います。一方で、事業内容を外部に漏洩しないと言う社内規定や守秘義務があったとしても、それを越える法の存在に守られたと、以前うかがいました。 クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):その通りです。英米では、いかなる契約も、企業、あるいは政府の犯した犯罪行為を告発することから、守る事はできません。法的見解からすれば、違法行為が起きたのなら、守秘義務契約があったとしても、違法行為を告発する目的で、その契約を破ることは可能です。 基本的には、民間契約が法律より優先される事はあり得ません。ただし、それでも社員が提訴されないと言うことではありません。公益にかなわない、または、真実ではない、などという理由をつけて、訴訟を起こすことも可能でしょう。この件に関して敗訴するという懸念はなく、むしろ、ずっと継続して訴訟を起こされるのではないかという心配がありました。 覚えておいていただきたいのですが、この会社は富豪が資金源であり、彼らが「弁護士軍団」を送り込むことは容易です。このため、ガーディアン紙やニューヨーク・タイムズ紙、そして、英国のニュースチャンネル、チャンネル4と共同で動く事は必須でした。全ての事象を詳細に記し、事実を幾多の証拠で裏付けする事で、訴訟すら起こせず、訴えが即座に棄却される状況に追い込みました。 このために、多くの報道機関が参戦し、チャンネル4ニュースのおとり取材(今年3月のチャンネル4ニュース)によって、CA社CEO(最高経営責任者、当時)のアレクサンダー・ニックス氏が、多くのことを認める証言をカメラに収めました。脅威はありましたが、それを現実にさせないよう、事実が全て記録されるよう、あらゆる手を尽くしました。 ーー準備にはどの位時間をかけたのですか? ワイリー氏:1年以上です。まず、米英の2大紙が、共同執筆にあたり合意しなければなりませんでした。その上、数多くの証人から証言を得る必要があり、私が多くの人たちを紹介しました。その全ての人たちが、カメラの前の証言や、自分に関連のある証言を拒みました。 当然のことながら、全員がスティーブ・バノン氏を恐れていたからです。当時、バノン氏はホワイトハウスの米国家安全保障会議におり、大統領上級顧問でした。つまり、強大な権力者です。人々はバノン氏と富豪だけではなく、米政府の巨大な圧力による追求を恐れたのです。 このため、匿名で証言を得ることさえ、非常にゆっくりとしたプロセスでした。しかし、徐々にそれは集まっていきました。同時に潜入オペレーションを開始し、CA社のCEOに、彼らのとてつもなく非道徳的、かつ、違法な運営を認めさせました。(目的達成のために)売春婦を使うことや、贈賄の現場をでっち上げ、密かに撮影すること。このような違法行為や、更なるデマの拡散を行なったことを、(隠し)カメラの前で認めさせました。 彼らは偽情報を流し、政治的な議論に貢献することではなく、勝つ事だけを重視したことを認めました。ここにたどり着くには、膨大な証拠を集め、詳細を詰めるのに1年かかり、ガーディアンはファクトチェックを3回行うほどの徹底ぶりでした。その情報について、今度はニューヨーク・タイムズが同様のチェックを繰り返したのです。 このことによって、少なくとも私の告発に関しては、揺るぎない立場を作ることができたと思います。世界有数の新聞2紙が、3度、4度と、互いのファクトを、全てが事実であると確認しあったのですから。その上で、公の場にあの様に大きく出たことで、バノン氏やCA社がどれほど報復しようと試みてもあまりに露出が大きく、関与を疑われずに彼らが行動を起こす事は、不可能でした。表に出ることで、安全を確保したのです』、「準備に1年以上」、とは多くの証言や周到なファクトチェックを考えれば当然だ。これぞ真のジャーナリズムだろう。
・『私にとって興味深かったのは、むしろFBの反応でした。CA社よりも遥かに多く、FBが攻撃を試みました。これは、私たちが予想もしなかったことでした。私たちは報道が出るかなり前から、FB側が建設的、かつ生産的な回答を用意できるよう、連絡していたのです。記者や報道機関の誰にも、FBを攻撃する意図は全くありませんでした。なぜなら、FBにはプラットフォームとしての責任があったとしても、不正行為自体には加担していなかったからです。 しかし、彼らが背景の全て、そして、その全てが真実であると知っていたことで、彼ら自身も加担していたことになりました。FBはガーディアン紙に対し、名誉毀損で法的措置を取ると脅し、すべてを否定しました。同時に、彼らは私にも文書で「あなたは米国でハッカー行為など、連邦法違反行為を行なった」として、FBI(米連邦捜査局)に通報すると知らせてきました。 その手紙には、指摘された事実が全て真実だと明記されていたのです。つまり、FBという会社はガーディアン紙に対し「この内容は誤りであり、報道するな、すれば訴える」と脅す一方で、内部告発者である私には「この事を公表するな、するなら警察に通報する。なぜなら、内容は真実だからだ」と言ってきたのです。しかも、この二つのことを連絡してきたのは、全く同じ弁護士です。 このことで、問題の本質が明らかになったと思います。すなわち、(情報操作など)何が起きているかを完全に熟知しているプラットフォームが存在し、それが明るみに出そうになると、彼らはジャーナリストや内部告発者を脅し、情報を遮断しようと試みたのです』、FBの同じ弁護士が、ガーディアン紙とワイリー氏に全く逆の主張をするとは、いくら弁護士とはいえ、良心はないのだろうか。
・『全く予期しなかったことは、CA社よりも、FBと戦う時間に費やした時間の方が、長かったということです。とても奇妙な状況でした。私たちは、常識の範囲以上の時間を彼らに与え、報道が出る前に回答する機会を与えていたのですから。 私たちはFBから問題の解決策を提示されるものだと思っていました。それどころか、彼らは全てを否定し、脅しをかけまくりました。しかし、米英2大紙がこれを事実として報じ、FBの弁護士が、内部告発者に対して「これは事実だ」と認めてしまっては、報道された頃には否定はできませんでした。1週間後、FBは世界中の新聞に謝罪広告を掲載しました。ほんの1週間前には、ガーディアン紙を訴えると言っていたにもかかわらずです』、FBの不誠実さには改めて驚かされた。
・『FBからの執拗な脅し  --あなた自身のFBアカウントは、どうなりましたか? ワイリー氏:私は(FBから)追放され、世界で数少ない、FB追放者の1人となりました。FBはインスタグラムを有していますから、インスタもダメですし、WhatsAppも使えなくなりました。携帯やオンラインで使っていた、FB認証を必要とするアプリも使えなくなりました。 FBがしようとしたことは、問題を認識し、解決策を提示することではなく、当初は内部告発者である私や、私の信頼性への攻撃を試み「彼は悪い人間で、私たちのシステムをハッキングした、システム上の問題はない」と主張していました。しかし、彼らが、報道の何年も前からこうした問題を知っていたという十分な証拠はありました。CA社に所属していた人たちを雇用し、心理プロファイリングについて、特許を取ろうともしていました。プラットフォームで何が行われていたか、当然知っていたのです。 FBは私に責任を被せ、自分たちは被害者を装おうとしました。私を追放することで、報道の主語をFBとCA社ではなく「私」に転じようと試みたのです。しかし、誰もそんなたわ言は信じませんでした。私を追放した1週間後、(当時の)英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣が議会で「FBが内部告発者を追放することなど、言語道断だ」と発言しました。 FB社には過ちを正し、社会に貢献する機会が与えられていたのに、彼らはあらゆる場面で、関わり合いのある全ての人たちを脅し、英議会や政府が「言語道断だ」という見解を発表した後も、私を追求し続けました。私は継続して悪者であり、彼らは被害者という立場です。 FBは年間、数十億ドルを稼ぐ企業です。それなのに、何ら責任を取ろうとしていません。このことが、最も問題であると私は考えています。彼らには、過ちを止める力があります。幾多の社会的、政治的な交流が起こり、情報が飛び交う場を彼らは作り、私たちの文化や社会に対し、多大な影響力を持っています。 内部告発者を犯罪者扱いし、同時に自分たちのプラットフォームを改善することを拒否するなど、とても器が小さいと感じます。私個人も、英政府と同様の見解です。言語道断だ、と感じています』、FBの対応は、確かに「言語道断だ」。
・『--(大統領選などに関する)ロシアの介入には、どの時点で疑いを抱き始めましたか? ワイリー氏:私がSCL、後のCA社で働いていた頃、特にバノン氏が責任者の1人になってから、数多くのロシア人が会議に出席し始め、プロジェクトに参加し始めました。私たちのデータ・セットが、ロシアの国家プロジェクトとして、オンライン上の心理プロファイリングを担当していたチームによって、アクセスされるようになりました。 私たちの会社がトップ心理学者として雇用した人物は、同時にサンクトペテルブルクで、ロシア政府を資金源とする心理プロファイリング・プロジェクトにも携わっていました。この人物は(同時期)ロシアに渡航しています。(当時)プロファイリング用のアルゴリズムが、米国の有権者データを用いて作られていましたが、同じデータが、ロシアでもアクセスされていたのです』、こんなことにもロシアが関与しており、それをバノン氏も了解していたのだろう。闇は深そうだ。
・『プーチン大統領と旧知のCEOにもデータを送っていた  ロシアの大手企業の一部の幹部が私たちを訪れ、こちらの幹部と面会を始めました。こうした企業に対し、SCLやCA社の偽情報拡散や、選挙で「人々の信頼を失わせるプロジェクト」についてのプレゼンを行なったりもしました。 CA社が持っていた(有権者などの)データを、プーチン大統領と旧知のロシアの石油会社のCEOに送ってもいました。私たちの会社は、その後(ロシア疑惑を捜査している米国の)ムラー特別検察官によって、ロシアの諜報機関と関連する、あらゆる組織で情報収集を行ったことが判明し、起訴された人物も雇用していました。 会社が行なっていたことに興味を持っていたロシア人は、他にも大勢いました。情報を集め、データにアクセスしていました。情報・偽情報キャンペーンとは何か、ロシアは何をしていたのかを検証すると、多くのことはFB、ツイッターなどSNSのプラットフォーム上で起きていました。 CA社が作り、プロファイリングを行なったデータは、偽情報を使ったターゲティングに重大な役割を果たしていました。FBがこのことを問われた時、彼らはデータについて「その後どうなったのかわからない」としていましたが、ロシアの大規模なプロパガンダに流用されていたのかもしれません。このことは大きな問題で、私たちの選挙の安全性が、とてつもなく脆弱であることを浮き彫りにしています。 FBは自分たちが何をしていたか知っていましたし、プロジェクトに関わっていた人たちを、後に雇用もしています。FBはこのことを問題視していませんでしたし、プロファイリングについて、メディアに話してもいました。でも誰も、何も対策を講じませんでした。違法行為はおろか、非常に繊細な個人情報を、敵意を持った国家に渡してしまうことなど、とんでもなく非道徳的なことを行うことが、いかに容易だったかを示していると思います』、FBはどうも本当に悪辣で民主主義の敵ともいえる存在のようだ。
・『ーー選挙などのキャンペーンにおいて、人々を動かすために最も有効なメッセージはどんなものですか? ワイリー氏:人々の世の中の見方は多様で、様々なメッセージに対する反応も人によって異なりますから、ある一つの「特効薬」は存在しません。人々についてデータを集めることの究極の目的は、あなたが作ったアルゴリズムによって、例えばA、B、Cという特定のメッセージに反応する人たちを選別する事です。 どのメッセージが最も有効であるか、ということに関しては、ある一つのメッセージだけが様々なグループに有効である、ということではなく、答えは常に「状況による」のです。 例えば、陰謀論やパラノイア的思考に弱く「国境に秘密の軍隊が存在する」「オバマは銃を取り上げに来る」「市民は監視されている」などという馬鹿げた偽のメッセージを、他の人々に比べ、より信じてしまうある特定の集団が、CA社のターゲットでした。 一方で、極左思考の人たちを取り込むメッセージも存在します。こうしたメッセージは、極右の人たちには響きません。十分な情報さえあれば、人によって、様々なメッセージを送ることが可能となります』、民主党でも極左が台頭した背景には、CAの工作があるのかも知れない。
・『ーーこうしたことは「デジタル洗脳」と呼べるのでしょうか。 ワイリー氏:「洗脳」の定義によると思います。「洗脳」が、ある人の世界観を本人に気づかせないまま激変させ、行動までも変えさせてしまうことを意味するのなら、CA社が行なっていたのはまさしくそれです。 陰謀論や偽情報を、それを最も信じてしまう脆弱性を持った人たちの間で拡散し、その上で、その人たちが、真実でない事柄に関するイベントやグループに参加し、集団で抗議活動を行うよう仕向けました。こうしたイベントに参加してしまった人たちは、もし最初からCAのような会社や、ロシアによって資金を投じられたオペレーションの存在を知っていたら、どうだったでしょう。 その人が、こうした情報を信じやすいからと意図的に選ばれ、彼らが怒りを感じ、抗議活動を起こすため、ひいては、社会を分断する目的で情報を流されたと知っていたのなら、同じ行動を起こしたのか、疑問に思います。 こうした前提で、同じメッセージを受け取っていたとしたら、彼らは行動を起こしていないでしょう。その人たちは、騙されているのですから。誰かを騙すには、騙しているという事実を隠さなければなりません。「洗脳」が人々を本質的に欺き、長期に渡って、その人たちの思考や行動を激変させることを意味するのであれば、答えはイエスです』、「デジタル洗脳」が可能になったとは、本当に恐ろしい時代になったものだ。
・『ワシントンに核爆弾を投下する必要はない  ーージェイミー・バートレット氏(参考「狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖」)が指摘していたことですが、現在「デジタル戦争」が起きていると思いますか。 ワイリー氏:まさしくその通りです。米国の軍事ドクトリンには、「第5次元の戦場」(=サイバー)というものが存在します。陸・海・空・宇宙、そして情報です。軍事オペレーションにおいて、情報は第5次元の戦場と呼ばれています。 オペレーションで、陸や空を制すること同様、情報の流れそのものを制することは、目的達成をより容易にする環境を作ります。銃弾や爆弾を使わないからと言って、武器が使用されていない、とは言えないのです。軍事において情報は、非動的武器と呼ばれ、この武器はターゲットを攻撃しますが、敵の目的を阻止するため、あるいは、自己の目的を達成するために、運動エネルギー弾などは使いません。 情報の役割は、敵の思考や行動のパターンを変えることです。「敵」とは、反対勢力の司令官かもしれませんし、テロ組織の勧誘係かもしれません。ロシアの場合は、市民のことを指すかもしれません。敵の影響力を封じ込めたいのなら、この場合は米国ですが、人々の団結をまず破壊して社会を壊す。そして、理性のない行動を取り、気の触れた人たちをトップに選出させる。もしくは、あなたの政治的目的を支援する人物を選ばせる。成功すれば、勝者はあなたです。 ワシントンに核爆弾を投下する必要はありません。人々を取り込み、あなたの目的に合致する人物を選出させれば良いのです。どちらにしても、あなたは勝つことができます。敵の土台を壊し、目的を達成できるのですから。これが情報戦の基本であり、問題の核心ですが、SNSのプラットフォームはもはや、友達とチャットしたり、猫の写真をシェアできる場ではありません。新しい「戦場」なのです。 ハッキングなどそうした側面ではなく、今や戦闘はサイバー・スペースで起き、軍隊のみならず、一般市民を欺き、操るための情報が用いられることを理解しなければなりません。これは、戦争なのです。 「大量破壊兵器」の定義が、「広範囲に渡り世代を超えて長期間続く、破壊行為を行うこと」だとします。トランプ大統領のような人物を選出させること。あるいは、違法行為や操作を通じ、英国のEU離脱を成功させるという、国の政体を恒久的に激変させることは、ほぼ間違いなく「広範囲が長期間、破壊的な損害を被る」ことでしょう。 基本的な政体を変化させる。最も力のある国の大統領や、社会そのものを自滅させる。一国に、自らを攻撃させる。これらのことは、「大量破壊兵器」による被害であり、実際、起きている事です。爆発物や火ではなく「マインド」(思考・心)を利用する、認知的戦闘です。あなたのマインドが標的でもあり、同時に、他者に危険な情報を伝達する媒体ともなるのです。そして現状、そのことに、何の対策も講じられてはいません』、「SNSのプラットフォームは・・・新しい「戦場」なのです」、「「大量破壊兵器」による被害」、「現状、そのことに、何の対策も講じられてはいません」などの指摘には大いに考えさせられた。

第三に、この続きとして、1月4日付け日経ビジネスオンライン「改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義 内部告発者・クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(下)」を紹介しよう。ーーは聞き手の質問・意見。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/011000030/?P=1
・『オンライン上にある膨大な個人情報を不正に流用し、選挙や国民投票などの民主プロセスを歪めたとされる英データ分析会社・ケンブリッジ・アナリティカ社(以下CA社・後に破産)。 CA社に対し、ユーザーの同意も得ず情報を流したフェイスブック(以下FB)は12月に米政府から提訴されるなど、一連の騒動でまたも株価が急落した。CA社の元社員らによる内部告発が最初に報じられたのは18年3月だが(参考:フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」)、FBは未だ激震に見舞われ続けている。 その時から、私はターゲット広告によって民主プロセスが歪められた事象を追い続けた。取材を通じ、最も危険だと感じるのは、ターゲット広告の有効性を高めるため、それらが意図的に人々の感情に訴えかけるよう作成されていることであり、多くの場合、それが人々の怒りや不安の感情であることだ。 英国でEU離脱を問う国民投票が実施された2016年以来、英社会には間違いなく離脱派・残留派の間に、癒しがたい分断の爪痕が残っている。離脱の行方は全く見えず、政治も社会・経済も混迷し、さまよい続けている。しかし、私が更に深刻だと感じるのは、勝つために多額の資金を投じて行われた、デジタルを含む、なりふり構わぬ政治キャンペーンや、主流メディアの表層的な報道によって生じた、人々の互いに対する疑念や不信感である。 本来、政治的な意見は民主主義国家において個々人が自由に持てるはずだ。それが故意に他者を傷つけるものでないならば、ある一つの見方を糾弾したり、異なる価値観を持つ人々を迫害してはならない。しかし、現在離脱派は「無知な人種差別主義者」、残留派は「無責任な夢想主義者」とレッテルを貼られ、双方に歩み寄りの姿勢は見られない。 こうした怒りや不安の感情をあおり立てた先に何が待つのか。科学的な立証は困難だが、EU離脱を問う国民投票では、移民や難民へのヘイトを駆使した離脱派による苛烈なキャンペーンのさなか、投票の数日前、野党労働党の女性議員が白昼、白人至上主義の男に暴殺されている。(参考:「英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪」) 日本でも昨今、右派だ左派だと、不毛な対立の構図が拡大している。すでに亀裂の起きている社会において次なる分断の火種は、現政権が悲願とする、改憲に向けた国民投票ではないだろうか。 こうした心情に、更に互いに対するヘイトを駆使したターゲット広告や偽情報が拡散した場合、人によっては癒しがたい傷が、怒りや不安として残ってしまう可能性は否定できない。それは、英国においてのEU離脱、米国でのトランプ大統領の選出プロセスを見れば明らかだ。 CA社は人々にこうした感情を植え付け、民主プロセスを利益目的で操ることで、巨額の富を得た。社会に深刻な分断を招き、そのために排他的な暴言や、いわれのないヘイトによって人々が心に傷を負うだけでなく、命を落とした人が仮にいたとしても、彼らは血で染まった金を手にし、何ら責任を負うことはない。 私がこの取材を続けるのは、日本の国民投票が念頭にあることを告げると、一線でこの問題に取り組み続ける英国の専門家らは口々に「今ならまだ間に合う」「日本に米英と同じ轍を踏んでほしくない」と取材に対し、惜しみない協力をしてくれた。 ある感情を逆なでするような情報や広告が流れてきたならば、なぜその情報が自分の元に流されてきたのか、激情にのまれる前に立ち止まって考える自衛策が、まずは不可欠だろう。 一方、元CA社の内部告発者、クリストファー・ワイリー氏は、個人の力だけでは防ぎきれない膨大な量の情報操作に対峙するため、規制や国際的な枠組みが急務だと言う。FBをはじめとするプラットフォームの責任や、改憲に関する国民投票などについて、引き続き、ワイリー氏の見解を聞いた』、「規制や国際的な枠組みが急務だ」というワイリー氏の主張には大賛成だ。ただ、実効性をどう付けるかが問題だろう。
・『ロシアは米英、日本の規制を遵守する必要がない  ーー政治的なキャンペーンにおいて、現状デジタル広告を巡る環境は「無法地帯」とも言えます。だからこそ、規制が必要なのですね。 クリストファー・ワイリー氏(以下ワイリー氏):規制は不可欠です。交流サイト(SNS)のプラットフォームにはより透明性を持たせ、こうしたキャンペーンを止めることをより容易にする運営を行わせるべきでしょう。 しかし、法律は基本的に、非合法組織を止めることはできません。あなたを攻撃するのが、敵対する外国の国家であろうが、法を尊重しない、国内の犯罪組織であろうが、新しい規制が必ずしも助けになるとは限りません。 SNSのプラットフォームが、より責任を持ち、良い企業市民であるための規制には賛成です。彼らには、ビジネスを運営するためにも、民主主義を守り、果たすべき役割があるのですから。ビジネスを運営する基盤は社会であり、彼らは社会を尊重すべきです。そのための規制は必要です。しかし同時に、現在起きている情報攻撃を監督し、防止する機関や組織も必要だと思います。 規制を設けることはできますが、ロシアには米英、それに、日本の規制を遵守する義務はありません。軍隊も、規制の存在など気にもとめず、敵とみなせば攻撃を仕掛けるでしょう。ですから、機関としてより効果的に反撃・防衛し、同時に、自衛に効果的な計画も作らねばなりません。 これまで私が見てきた中で、一致団結してこの問題に取り組んでいるのは、最近選挙を実施したスウェーデンだけです。民間防衛機関が、自然災害やテロのみならず、敵対する外国勢力による広域の情報攻撃についても主導的役割を果たしました。多くの国が、こうしたことを検討すべきだと思います』、スウェーデンが初めて取り組んだとは初耳だ。今後、注目してみたい。
・『--人々はこの戦争に、勝てるのでしょうか。 ワイリー氏:勝敗が決まり、その後何も起こらない、という事象ではないと感じます。これは高度に人々が繋がり、デジタル化された現代社会の新しい現実なのでしょう。 インターネットが社会生活を営む上での基盤となった結果だと思います。他の技術革新と同じように、インターネットやSNSによる恩恵は多い反面、同時にリスクももたらしているということです。まずこのリスクから社会を守らないことには、恩恵を享受できません。 「情報戦争」は終わらないでしょう。プロパガンダは数世紀に渡り存在し、新しいことではありません。今はそれが、「サイバー空間」という新しい戦場で展開されています。政府や人々は、実社会とサイバー空間に「現実」という意味で、差異はないことを理解しなければなりません。 実社会だからといって「サイバー空間よりもリアルだ」ということではないのです。サイバー空間もリアルな空間です。実社会に影響を及ぼします。この事が人々の生活における、新しい次元であることを認識すべきです。人々にとっての安全性を確保し、攻撃から守る必要があります』、「サイバー空間もリアルな空間です。実社会に影響を及ぼします」、言われてみればその通りだ。
・『ーーシリコンバレーや巨大広告企業は、こうした危険を気にもとめていないということでしょうか。 ワイリー氏:これまでのところ、気にしているとは思えません。彼らが最も気にかけているのは、利益でしょう。それと、自分たちに対する評価です。CA社についての報道がなされてから、FBの株価は2回急落しました。(注:インタビュー当時の10月時点で)1回目はFB史上最大、2回目は時価総額で米企業史上最大の下落額と言われています。 人々が、社会や民主主義の公正性を大切にしていることは、明白です。人々は、他国の軍による偽の、または操作された情報の標的になりたいと思っていませんし、そんな事は常識です。 問題は、シリコンバレー企業の多くが、自分たちがビジネスを行うために必要とする社会において、良い企業市民としての役割を果たしていない事です。FBは道徳的な責任を負っていますが、同時に、米国とその民主主義が機能不全に陥ってしまえば、自分たちもビジネスを行えなくなってしまいます。 シリコンバレーはいくつかのことを学ぶ必要があります。まず、ジャーナリストや市民社会、内部告発者から批判を受けたのなら、安全面の欠陥を通報する「ホワイト・ハッカー」同様に扱うべきだと言うこと。その事に報酬を与え、感謝すべきです。 また、誰かが問題を指摘した場合、その事を、より良い商品開発のための、良い機会だと捉える事です。問題を長引かせて告発を否定し、脅迫するなどという、FBがこの問題を通じて行ったことをすべきではありません』、FBのザッカーバーグCEOは、目先の利益を長期的な利益よりも重視しているのだろう。
・『フェイスブックは他の産業から学ぶべき  FBは他の産業から学ぶべきです。例えば、自動車業界はシートベルト設置について、コストがかかるため、「人々には選択の自由がある」「自動車事故が起こることを想起させ、売り上げに影響する」などと言って、長く拒み続けました。現在では標準装備されていますし、シートベルトなしに車に乗る人は誰もいません。 シートベルトは自動車産業を傷つけてはいませんし、人々は自動車購入をやめてはいません。自動車は、シートベルトやエアバッグの装備によって、以前に比べ多少価格が上がっているかもしれません。しかし、それによって事故死する人の数は減少しているはずですし、安全性に安心した購買者は、車を買い続けるでしょう。 つまり、シリコンバレーはまず第一に、安全性の確保は絶対に譲れないものであること、そして、その事は、彼らにとっての「問題」ではないことを認識すべきです。より安全な商品を作ることがより安全な産業に繋がり、長期的には、人々はその商品を使い続けます。 民主プロセスを破壊する、あるいは、人々を操作し、社会の団結を壊す目的の商品を作り続けるのならば、いつか人々は商品を見限り、利用を止めるでしょう。産業としての長期的な存続は、商品と、消費者の安全性の確保にかかっています。 また、ユーザーはユーザーとして尊重されるべきで、「企業側が利用する者」として、軽視されるべきではありません。私は、現在のシリコンバレーの対応は問題だと思います。さらに、米国外で暮らしている人たちとってより問題だと思うのは、私たちがオンライン上の「社会のクローン」を作ったことです。 そのクローン、つまり、デジタルのあなたやその友人が交流するサイバー空間に責任を負うべき企業が、あなたの国の司法権が及ばない国に存在していることです。私たちは「社会のクローン」を、私たちの法律を尊重しなくても良い、米国の企業に譲渡しているのです。 サイバー空間が民主主義だけでなく、私たちの法律とどう関わるのか、真剣に考えるべき時です。各国の空港には、それを3つのアルファベットで示す、国際基準が定められています。なぜインターネット上の公開に適したものと、そうでないものや、それをどう規制して行くのかという、(空港表記と)同じような国際的な枠組みが存在しないのでしょうか。 各国がインターネットを、何か真新しいものではなく、リアルなもの、経済や社会、民主主義を支え、人々の仕事の中心的・基本的なものとして認識し始めている昨今、最低でも空港表記と同様の国際条約が検討されるべきでしょう』、大賛成だが、壁は高そうだ。
・『ーー日本の現政権は、改憲に関する国民投票を検討していますが、国民投票法において、広告に関する資金投入の上限も、デジタル広告に関する規制もありません。このことは、危険だとお考えですか。 ワイリー氏:日本が学べる例は、いくつか存在すると思います。まず明確なのは、英国が行ったEU離脱に関する国民投票です。この国民投票に関する法的枠組みは、後に現実のものとなったあらゆる問題を全く想定していませんでした。 偽情報に関するプログラム、データの利用、サイバー広告、SNSプラットフォーム上における透明性などです。その全てにおいて、あらゆる脆弱性が、食い物にされました。 日本は特別な立場にあります。オンライン上の「インフルエンス・オペレーション」において、高度な能力を有する数多くの国々のすぐそばに位置しているからです。北にはロシアがあり(北方領土に関する)対立が起きています。中国、そして北朝鮮と韓国など、日本の政治に介入しようと試みる国々に囲まれてもいます。 また、他国だけではなく、例えば9条改正に関連し、国民投票によって利益をあげようと目論む軍事請負企業、武器システムなどがあるとします。こうした既得権益は、(規制など)彼らを止めるものが何もなければ、人々を(広告で)標的にし、有権者をあざむくために使えるだけの資金を投じるでしょう。 英国居住者としての見解ですが、少なくとも私は英国の民主主義が、今や立証された事実ですが「違法にだまし取られた」様を目の当たりにしました。違法行為を行ったキャンペーン団体が罰金を課されただけで、何の軌道修正もされず、国民投票の結果は有効で、英国のEU離脱は現実のものとなっています。 日本にとって、積極的、または受動的に軍事紛争に関わるのか否か、日本人であることの根本を問うような決断を行う場合、ある意思を持って行動する既得権益が存在するのなら、彼らの目論見は実現するでしょう。それが敵対する外国勢力であろうと、非道な企業であろうとも。既存の大手企業であったとしても、逃げ切れると判断すれば、実行するでしょう』、このまま何もしないで、憲法改正の国民投票に臨むとすれば、確かに危険だ。
・『選挙がハッキングに遭うとは誰も想像せず  日本は、世界で最も「つながって」いる社会です。一人当たりのソーシャル・プロファイリング、インターネット、電子メール、テキストメッセージや携帯電話など、全ての「つながり」が、最も高い国です。つまり、日本人は他国の人々よりも多くサイバー空間に暮らし、米国や欧州よりもデジタル・テクノロジーに繋がっています。 このことは、多くの「クールなテクノロジー」を生むという面で素晴らしいことですが、同時にリスクも生んでいます。テクノロジーによって最も繋がっているのに、全く無防備です。その上、国の根本を問うような課題があり、その答えから利益を得ようとしている人たちがいるのなら、ありとあらゆる危険な計画が実行される事でしょう。 これほど重大な事項に関して、日本がどう監視・監督、また防衛し、いかにして英国のEU離脱のような問題を防止するかを考えることは、賢明でしょう。 英国での経験から言えることはこうです。問題が起きたことは証明でき、英選挙管理委員会が私や、その他の人たちの申し立てを認めました。情報コミッショナーが、違法行為が起きたことを記す証拠を入手し、悪意を持った者らの存在を突き止めました。それにも関わらず、国の行方を恒久的に変えてしまった問題の核である「国民投票の結果」は変わらないのです。 当局には、結果を覆すだけの権限が与えられていません。英国のEU離脱を問う国民投票における最大の法的な欠陥は、組織的な不正行為が起きた場合や、詐欺的行為、意図的な操作行為、敵対する外国勢力からの介入に対応する術がなかったことです。 こんなことが起きるとは予想だにしていませんでしたし、可能だとも思われていませんでした。選挙や国民投票がハッキングに遭うことなど、誰も想像もしていませんでした。日本がその根本に関わる決断を行うのなら、国民投票の実施などより以前に、悪意を持った何者かが、結果に影響を及ぼすことのできない枠組みを作ることです』、「選挙や国民投票がハッキングに遭う」という英米で起きた事態が、日本でも起こるのは避けたいものだが、間に合うとは思えない。
・『ーー英国では、与党議員でありながら、民主主義を守ろうと、この問題に尽力しているコリンズ・デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会委員長(参考:「フェイスブックが『偽情報拡散』のツケを払う日」)のような政治家が存在します。一方で日本の現政権は改憲が目的であり、更にはそれを可能にできる巨大広告企業も存在します。 ワイリー氏:日本のメディアは大きな影響力を持つ、わずかなキー・プレイヤーによって独占されています。メディア市場に多様性が存在せず、その事だけでも危険です。この中の一つの組織だけでも堕落すれば、大きな問題が起きるでしょう。 ーー世界は少数者に権力が集中する独裁状態に向かっているのでしょうか。 ワイリー氏:そうとも言い切れませんが、既得権益を持つ何者か、または、敵対する国によって、票が絶対に影響されないよう対策を講じなければ、長期的な視点から見れば、選挙を実施すること事態の有効性が問われるでしょう。 民主主義が機能するためには、人々が自由に、そして、事実に基づいた情報を得た上で判断を下せることを尊重せねばなりません。敵対する外国が、あなたの国を助けるどころか、破壊する目的で歪めた現実を広めることがあってはなりません。このことを許してしまっては、選挙を実施する意味はなく、選挙は単に「意味のない、手の込んだパフォーマンス」に成り下がってしまいます』、安倍政権は既に最近の2回の総選挙を、別の形で「意味のない、手の込んだパフォーマンス」にしている前科があるだけに、心配だ。
・『内部告発者を英雄視する西側諸国  世界が独裁状態に向かっているのではありませんが、選挙の公正性が保てなければ、政府の公正性も、ビジネスの公正性も保てません。社会は腐敗で充満し、機能不全に陥った国家が誕生する事でしょう。 選挙の重要性は、そこにあります。一定期間に一度、投票用紙に判断を記入し、時には行列に何時間も並ばされて、うんざりすることもありますが、このことこそが、私たちの社会運営の根本です。 選挙は、守るべき最も重要なものの一つであると私は考えています。投じられる限り全ての資源を投入するべきでしょう。民主プロセスを守るためには、一切の疑問も受け付けるべきではありません。民主主義が崩壊すれば、社会全体も崩壊します』、その通りだ。
・『ーー私は取材者として「内部告発者」の取材ほど、細心の注意が必要なものはないと考えている。西側諸国でWhistle Blowerと呼ばれる内部告発者の証言は、その告発内容が衝撃的であればあるほど、一時的であれ、社会は彼らを「英雄」として祭り上げ、惜しみない賞賛を送る。 しかし、幾人かの内部告発者が、その後不可解な行動に転じていることもまた、見過ごすことはできない。未だロンドンのエクアドル大使館に立て籠もり続けるウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ氏然り、ロシアに亡命した、エドワード・スノーデン氏然りである。 事象の全容がわからない早い時点で、むやみに内部告発者をもてはやす事はできないし、すべきでもないと私は考えている。 「内部告発者」への取材に二の足を踏む私が、ワイリー氏の取材を敢行したのは、彼がメディアに露出し始めた当初、画面を通して得た印象が大きい。 数カ月に渡るコンタクトの後、実際に対面したワイリー氏は、その印象と寸分違(たが)わなかった。前述の内部告発者らから感じた、情報開示の際の「影」の様なものを、彼からは微塵も感じなかった。 このことは、何ら根拠のない、単なる取材者としての勘のようなものでしかない。また実際は、ワイリー氏には彼なりの目論見があるのかもしれない。しかし、数度の取材を通じて話した彼から悲壮感は全く感じられず、常に、無法地帯と化したサイバー空間と、自分が作り出してしまった「怪物」と闘い続ける、前向きな意志がまっすぐに伝わってくる。隠し立てすること、やましさの無いことの証明でもあるかの様に、衝撃的な体験を屈託なく語り、明るい。 ワイリー氏が対峙してきたのはロシアという大国や、米政権の元幹部らや富豪、そして英国の資産家らでもある。しかし、未だ30歳にも満たないワイリー氏はひるむことなく巨大な権力と対峙し続け、各国政府のアドバイザーを務めたり、欧州委員会をはじめとする国際機関などで講演するなど、絶えず世界を駆け巡り、この問題に取り組み続けている。氏の行動力、志と勇気に敬意を評したい。 ワイリー氏は12月1日付で、アパレル大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)のリサーチ・ディレクターに就任した。データ・サイエンティストとしての手腕を買われ、今後は同社でAIを駆使した持続可能性を追求して行くのだという。内部告発者として政府機関などと敵対し、また、自らが働いていた企業に都合の悪い真実を暴露した過去のあるワイリー氏を、世界的な大手企業が堂々と迎え入れたことに、欧州の懐の深さを感じる。 ワイリー氏の取材を通じて幾度となく自問したことがある。一連のCA社事件に類似する事象が仮に日本で起きていたとしたら、ワイリー氏が行ったような内部告発は、可能だっただろうか。 権力者にとって都合の悪い真実を暴くという意味では、最近の日本では、森友・加計問題がCA社事件に相当するのではないだろうか。これまでに日本では、「都合の悪い真実」を伝えようとした人々がその後どの様な仕打ちを受けてきたか。ワイリー氏の内部告発後の状況とは、真逆である。 残念ながら日本は現在、政権にとって都合の悪い事実を伝えようとした告発者が、告発の数日前、大手新聞により人格をおとしめられるような記事を掲載され、その後も政治家から嫌がらせを受けることがまかり通る社会だ。 また、生命の危険を顧みず、社会に貢献するためリスクを冒し、取材を続けるジャーナリストを「自己責任」などという、稚拙で卑怯な言葉で切り捨てることがまかり通る「見て見ぬ振りを是とする社会」でもある。 この現状では、ワイリー氏のような内部告発や、米英のジャーナリストらが必死に行ってきた、権力者の横暴を食い止めるための攻防は、日本では期待できないだろう。 ワイリー氏に「あなたが公の場で告発を行った18年3月、日本では自らの命を絶ち、権力者の不正を伝えた『告発者』の存在があった」と話すと、真剣な眼差しを向けていた。 米英、そしてワイリー氏が生まれたカナダでは、民主主義を「自分たちの責任」として捉え、考え抜き、戦い続ける市民が多数存在し、それを支援する社会の声が時に大きなうねりとなることに、羨望の念を禁じ得ない。 日本は、自分たちの未来に責任を持てるのか』、欧米と比べた日本の遅れた現状に対する危機感は、私も同感である。

・今回はトランプ大統領から出発して、民主主義のあり方を問う内容となったが、明日はトランプ大統領そのものを取上げるつもりである。
タグ:日経ビジネスオンライン トランプ大統領 伏見 香名子 (その38)(内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)「トランプという怪物」を作った会社、(中)「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器、(下)改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義) 「「トランプという怪物」を作った会社 内部告発者クリストファー・ワイリー氏 ロングインタビュー(上)」 私はスティーブ・バノンの心理兵器を作った 告発者 ワイリー氏 富豪、ロバート・マーサー氏からの資金提供を受けてCA社として生まれ変わり、かのスティーブ・バノン氏が責任者として指揮を取り始めてから、会社が激変 CA社は偏執的なメッセージに弱い人を標的にした 過激派組織の影響力を下げるのは、やり甲斐があった バノンが仕掛けた「文化戦争」 オンライン上のナイフを作ってしまった 人々を人種差別主義者に変える研究 CA社にいたら米社会を破壊していた フランケンシュタインを作ってしまった 「「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器 内部告発者クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(中)」 予想外だったFBからの反撃と嘘 FBからの執拗な脅し 英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣が議会で「FBが内部告発者を追放することなど、言語道断だ」と発言 プーチン大統領と旧知のCEOにもデータを送っていた デジタル洗脳 ワシントンに核爆弾を投下する必要はない 軍事において情報は、非動的武器と呼ばれ、この武器はターゲットを攻撃しますが、敵の目的を阻止するため、あるいは、自己の目的を達成するために、運動エネルギー弾などは使いません 情報の役割は、敵の思考や行動のパターンを変えることです 「改憲議論で学ぶべき英国の歪められた民主主義 内部告発者・クリストファー・ワイリー氏ロングインタビュー(下)」 規制や国際的な枠組みが急務 ロシアは米英、日本の規制を遵守する必要がない 「サイバー空間」という新しい戦場で展開 サイバー空間もリアルな空間です。実社会に影響を及ぼします フェイスブックは他の産業から学ぶべき 最低でも空港表記と同様の国際条約が検討されるべきでしょう 日本は特別な立場にあります。オンライン上の「インフルエンス・オペレーション」において、高度な能力を有する数多くの国々のすぐそばに位置しているからです 国民投票によって利益をあげようと目論む軍事請負企業、武器システムなどがある 英国の民主主義が、今や立証された事実ですが「違法にだまし取られた」様を目の当たりにしました 選挙がハッキングに遭うとは誰も想像せず 内部告発者を英雄視する西側諸国
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