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ソーシャルメディア(その4)(狙われる有権者たち デジタル洗脳の恐怖 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)、ターゲット広告全盛 日本の国民投票は大丈夫か 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(後編)、「フェイスブック」から抜け出す具体的方法 デジタル・ミニマリストになるには) [メディア]

ソーシャルメディアについては、昨年10月4日に取り上げた。今日は、(その4)(狙われる有権者たち デジタル洗脳の恐怖 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)、ターゲット広告全盛 日本の国民投票は大丈夫か 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(後編)、「フェイスブック」から抜け出す具体的方法 デジタル・ミニマリストになるには)である。

先ずは、伏見 香名子氏が昨年10月1日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖 「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/092500022/?P=1
・『2016年、世界は米大統領選挙と、英国の「EU離脱を問う国民投票」の結果に驚愕した。人々が民主的に下したはずの政治決定が、社会や経済に大きく影響し、混乱を生じ続けている。今年に入り英国では、あるデジタル分析会社のスキャンダルをきっかけに、民主主義の根幹である選挙や国民投票において、膨大な量の個人情報を基にした、いわゆる「ビッグ・データ」を使用したデジタル操作が行われたのではないか、との論争が巻き起こっている・・・フェイスブック利用者8700万人分の個人情報が、不正にこの会社に流用されたと言う情報は日本でも報じられたが、その事実がどう自分に影響するのか、ピンとこない人が大半ではないだろうか。確かに、好きなアーティストやレストランのページに「いいね!」をつけることの一体何が問題なのか、すぐには想像しづらい。だがこうした情報は、マーケティングの手法として、広告企業などが喉から手が出るほど欲しいものだ。人々の傾向を解析し、ある商品を売り込むために、データを利用する。実際、このこと自体に違法性はなく、従来も使われてきた手法だ。 しかし、もしもこの膨大な個人情報が、民主主義の根幹を成し、国政に影響する選挙や国民投票の行方を左右させるために、明確な意思を持った何者かに利用されていたとしたら、どうだろうか。 筆者はEU離脱を問う国民投票で英国各地を取材して回った際、特に離脱支持者の口から出てくる支持の理由が、奇妙なほど同じ言葉で語られたことに違和感を覚えた。どんな地域でも、どんな層の人に聞いても、同じようなフレーズが繰り返し、あたかも真実のごとく語られていた。当時は、テレビや新聞などから政治家が同じ主張を繰り返したことの反映だろうと思ったが、違和感はどうしても拭い切れなかった。 もしも、人々が当時、SNSを通じて毎日少しづつ、離脱派に都合の良い情報だけを、その人が最も感情的に反応するであろう傾向を把握した上で、カスタマイズされた広告を流し続けられていたとしたらーー。これはある種、民主プロセスにおける「デジタル洗脳」とも言えるのではないか。 民主主義とデジタルの最前線で、今何が起きているのか。私たちは、何に着目すべきなのか。そして「アラブの春」で民主化運動を牽引したと賞賛されたSNSは、今や民主主義を破壊しつつあるのか。こんな疑問をもとに、この問題に取り組む専門家たちに話を聞き始めた。 今月、日本でも出版される「操られる民主主義:デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか」を執筆した、ジャーナリストで、シンクタンク「デモス」代表のジェイミー・バートレット氏に聞く(Qは聞き手の質問)』、深刻な問題を如何に解説するかは、興味深い。
・『Q:なぜ今、新著「操られる民主主義」を書こうと思ったのですか? ジェイミー・バートレット氏(以下バートレット氏):変化の速さやテクノロジーの進化、AIの台頭などを考えた時、この問題を早急に解決する必要があると感じました。今後20年以内にこの緊張関係を緩和する策を講じなければ、民主主義が絶滅しかねないと思います。 この数年(問題となった)ロシアの選挙介入、荒らし、仮想通貨など。私はこれらが全て、同じ事象の一部であることに気づきました。つまり、現在とは全く異なる時代に構築された、古いスタイルの民主主義と、新しいデジタル技術とが、相容れないということです』、確かにその通りだろう。
・『既存のシステムは時代遅れで機能不全  Q:どんな問題が起きているのでしょうか? バートレット氏:最も分かりやすい例は選挙です。選挙には、自由と公正さを保つための制度があり、選挙戦に使用される広告にも、正直かつ真実であるようにと規制がかけられます。しかし、これらの規制はテレビの時代や、誰でも見られる広告板に即したものでした。 ところが突如として、世界の誰にでも、個人をターゲットにし、その人以外の目には触れない広告が打てるようになりました。選挙そのものの正当性が問われることになったのです。「誰か」とは、悪意のある外国の勢力かもしれませんし、人々に嘘やデタラメを流す、国内の選挙キャンペーン担当者かもしれません。これは、より大きな問題を象徴しています。すなわち、私たちが民主主義を運営し続けるために構築したシステムそのものが既に時代遅れであり、機能不全であると言うことです。 政治、特に選挙はもはや考えを交わし、大きな公開討論を行うことではなく、今やデータサイエンスの時代なのです。幾千にも及ぶデータポイントを基盤とする、個々の有権者のプロファイルが構築されています。貴方や友人が大切にしていることを把握し、その点について、感情的なメッセージを送るのです。 「考えを議論する」政治とは全く異なり、誰が最も有効なデータを持っているか、最も有効に標的を射止めることができるのか。そして、誰が最も説得力のあるメッセージを提供し、候補者につなぐことができるのか。こうしたことに尽きるのです。 今このことが危機だと感じるのなら、20年後にどうなっているか、想像してください。私たちはさらに多くの、センサーやインターネットを使用したデバイスに囲まれて暮らしているでしょう。スマート冷蔵庫やテレビ、ヘルス・トラッカーなどが発する、私たちの行動や思考に関するデータが、広告業者、そして、政治家によって、私たちを標的にするために利用されるのです。 つまり将来的に、私たちの食事の傾向、健康状態や、テレビをつける時間など。こうした情報が、貴方を特定の候補者に投票するよう利用されます。貴方の論理的思考に訴えるのではなく、故意に神経を逆なでするのです。これは、私の考える選挙の「あるべき姿」ではありません。 Q:従来の広告と「ターゲット広告」の違いを教えてください。 バートレット氏:通常の広告は、テレビや広告板、新聞などに掲載する場合、内容について厳しい規制が存在します。正確であり、誤解を招いてはいけない、真実を示し、他者を中傷してはならない、などです。 これがインターネット上、個人に向けたターゲット広告の場合は、ほぼ何でも伝えることができます。しかも、他者には見えないため、信ぴょう性をチェックすることができません。嘘やでまかせなどを流された貴方がそれを信じてしまっても、誰もその広告を確認できない。ここが、根本的な違いです。 この流れは悪化するでしょう。次世代の広告は、AIを使い自動化されるからです。貴方が何を大切にしているか。購買に有効な傾向を、すでに機械が把握し、制作したものです。貴方の内にある最悪の偏見や個人的偏向に、機械が働きかける。感情的で、誤解を生じるものや、非常に差別的で、人種問題を誘発しかねないコンテンツは、最も有効なのです。機械にとって問題はありませんから、こうした広告をたれ流し続けるでしょう。 私たちの政治の行き着く先は、人間の手が加えられない、全く規制当局が目にすることのできない、非常に扇動的かつ自動化された広告が流されることかもしれません。これが私たちの選挙の未来であれば、すでに「政治」と呼べるものではないでしょう。政治とは、異なる意見を交わし、その違いを乗り越えるため誠実に議論を行うことです。人種差別的な広告を、誰も見えないところで自動的に流すことではありません』、「私たちの政治の行き着く先は、人間の手が加えられない、全く規制当局が目にすることのできない、非常に扇動的かつ自動化された広告が流されることかもしれません」、恐ろしい時代が来つつあるようだ。
・『“インターネットが民主主義を殺している”  Q:この「自動広告制作マシン」の一つが、フェイスブックだと言うお話を以前伺いました。 バートレット氏:フェイスブックは同じ広告を自動的に、わずかに変えたバージョンをいくつも流しています。多少、人の手も加えられ、ちょっと色を変えるなど、どの広告が最も効果的かを試します。それをまた、より多くの人たちに流すのです。 Q:2016年、こうしたデジタル戦略により、米英で民主主義が大きく揺らいだと言われています。 バートレット氏:おそらく、インターネットが私たちの選挙と、選挙制度そのものを破壊するツールだと、多くの人が初めて気づいた年だったでしょう。突如として、複雑な技術を用いて有権者を狙ったケンブリッジ・アナリティカのような、データ分析企業が登場しました。 実際、近年多くの選挙戦で、こうした技術が用いられてきました。(ロシアは)インターネットを使い、米国の選挙介入にも成功したのです。これは特筆すべき事象でしょう。様々な問題が明るみになり、ハイテク企業に対する疑問の目が徐々に向けられ始めていましたが、(2016年に)これは大問題だ、と認識されるようになりました。 Q:今回の著書の原題は「市民対テクノロジー」(The People vs Tech)ですが、その「戦い」とはどんなものですか? また、副題は「インターネットが民主主義を殺す」ですが、本当にそうなのでしょうか。 バートレット氏:言葉を介さない静かな戦争が、デジタル技術と民主政体との間に起きていると思います。インターネットを制し、究極的に社会を動かしているのは、一体誰なのか。(シリコンバレーの)デジタル企業や民間企業なのか、それとも、民主的に選ばれた政府なのか。 民主的に選ばれた政府は、この戦いに勝たねばなりません。しかし、政府の動きは非常に遅く、政治家の顔ぶれも数年で変わります。民主主義が苦戦している相手は、資金もあり、動きの早いテクノロジー企業です。ただ、この一年で反撃は始まっているとも感じます。 意図せずに、インターネットは民主主義を殺していると思います。ネットは民主主義にとって非常に良い側面もあります。表現の自由や、新しい思想、情報へのアクセスなど、これも民主主義には大切なことで、疑問の余地はないでしょう。 問題は私たちが「ネットは情報を提供する、市民のためのプラットフォームだ」と、その恩恵にのみ目を奪われていることです。民主主義はそれ以上に、健全に機能している政府や、法が保たれ、政府が決めた事が実行されていると、人々が自信を持てるものでなくてはなりません。 強く健全なメディアや、人々が、きちんと情報を得た上で、互いを罵ることなく議論ができること。政治家から得たものは、規制に基づき信頼できると思えること。これらは全て、民主主義を形作るものですが、インターネットがそれを破壊しています。これが見えないのは、ゆっくり(としたプロセス)であり、つまらないことだからです。私たちは表現の自由に目隠しをされ、結果として、人々が信頼できる民主主義がゆっくりと壊されている、より大きな事態が見えていません』、「強く健全なメディアや、人々が、きちんと情報を得た上で、互いを罵ることなく議論ができること。政治家から得たものは、規制に基づき信頼できると思えること。これらは全て、民主主義を形作るものですが、インターネットがそれを破壊しています」、確かに「インターネット」の負の側面がより明確になってきたようだ。
・『歴史的に既得権益がテクノロジーを乗っ取ってきた  Q:「アラブの春」が始まった2010年ごろ、インターネットは政治資金を持たない民衆にも民主革命を起こすことのできる「素晴らしいツール」だともてはやされました。 バートレット氏:その通りです。2010-11年頃は皆が、インターネットは人々に声を与え一つにする、民主化のツールだと楽観視していました。それはとても単純な見識だったのです。プラットフォームを作るだけで人々が動くーー表面的には素晴らしいことですが、全く誤った認識です。いずれ政府や軍、ハッカーなどが、自分たちの権力を強化する、あるいは他者を陥れ、介入・干渉するツールとして利用することは、明白でした。 不運にも、シリコンバレーの人々は、テクノロジーの力を盲信するあまり、こうした可能性に、全く無頓着だったのです。歴史を多少なりとも学べば、こんなことは火を見るより明らかでした。強大な国やグループ、既得権益がこうしたテクノロジーを乗っ取ることは、既に繰り返されてきました。2011年から2016年にかけ、こうしたテクノロジーに対して世論は「自由をもたらす、素晴らしいもの」から、「民主主義を脅かすもの」に変わりました。 Q:大胆な言い方をすると、こうしたテクノロジーは「デジタル洗脳」を可能にした、ということなのでしょうか。 バートレット氏:1990年代の大いなる仮説では、人々がより多くの情報、そして、他者と繋がる機会を得れば、民衆はより賢くなり、また政治家自身も、民衆との繋がりや、新しい知識を得ることで、より洞察力が深まると思われていました。これは、短絡思考の最たるものだったでしょう。 人々に、ブログやチャート、意見やニュース記事など、しばしば全く矛盾した情報を流し続け、情報過多にすることは、感情的な反応を呼び起こすだけです。思考をきちんと処理し慎重に考察する時間や、意見の異なる人と、きちんとコミュニケーションをとる時間すらありません。全て「相手が間違っている」と一蹴する、あるいは「自分と相手のテリトリー」を区分けし、他者と戦い続けるのです。 これはある意味「洗脳」であるかもしれませんが、意図されたものではなく「デジタル雪崩」の産物であると言えるでしょう。人々は、これだけ多くの情報に対処しきれないのです。だからこそ、昨今の政治は不運にも知識を欠き、より感情的で二極化されています。約束された世界とは、真逆の事態に陥っています。 Q:現状の民主主義は「アップグレード」が必要な時期だと言うことなのでしょうか。 バートレット氏:消費者としての私たちの生活は、「インスタグラム化」しているのに、市民としての民主主義は、未だに写真屋に金を払い、ゆっくりと写真を現像しているようなものです。市民がますますポピュリズムに傾倒している理由の一つは「問題がすぐ解決され、欲しいものは即座に手に入り、妥協の必要など一切ない」といったことが約束されるからです。現在の私たちの生活に合致しているのです。 ポピュリストや独裁主義者らは文化的に、世界の現状に即しています。民主主義国家や主流政党は、これまでと全く異なる時代に、どうやって民主主義自体を再生し、機能させるかを考えるべきでしょう。民主主義以外の全てのことが、変化しているからです。私たちを囲むテクノロジーから完全に立ち遅れている政府形態が存続し続けるために、残された時間はほとんどないでしょう。 簡単な解決法もあります。まず、選挙法を時代に即したものに改定すること。デジタル広告は、テレビ広告と同様の規制をかけ、同時にデジタル以外の広告同様に、資金投入の上限を設定するのです。こんな単純なことでさえ、まだ実行されてはいません。(後編に続く)』、「市民がますますポピュリズムに傾倒している理由の一つは「問題がすぐ解決され、欲しいものは即座に手に入り、妥協の必要など一切ない」といったことが約束されるからです」、というのは、ネット右翼の隆盛にも通じるようだ。

次に、この続きを、昨年10月9日付け日経ビジネスオンライン「ターゲット広告全盛、日本の国民投票は大丈夫か 「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(後編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/100500021/100100023/?P=1
・『デジタルが民主主義を壊す――。米国のトランプ大統領選出や、英国のEU離脱を決定づけた民主的プロセスは、有権者を狙い撃ちにしたデジタルキャンペーンにより歪められた。そんな論争が、英国で巻き起こっている。日本の有権者は、大丈夫か。私たちが日々何気なく利用しているデジタル機器やSNSに流す情報が不正に収集され、社会を壊していたとしたら。前編ではこの問題に取り組む英国人ジャーナリストのジェイミー・バートレット氏に、これまでの経緯などを聞いた。引き続き、個人情報の流出の怖さや、民主主義崩壊を防ぐため、市民レベルで何ができるのかを聞く』、興味深そうだ。
・『Q:デジタル技術の有効性は、実証が非常に難しいとも言われています。 バートレット氏: 無論、有効性を実証するのは困難です。しかし、広告業者は数十億ドル規模の資金を投じています。フェイスブックやグーグルなどの収益のほとんどは、ターゲット広告による収入です。つまり、これが有効であることを知り、信じてもいるということの証です。 同じ広告を数百万人に流すテレビ広告よりも、一人ひとりに数百万の異なる広告を流すことの方が、一般的に有効になっていきます。人々が不安を感じている時など、最適なタイミングで働きかければ、当然より良い結果が出るでしょう。もちろん、常に万人の思考を変えるということではありませんが、政治家は、格好のターゲット・有権者を、最適な状態とタイミングで捉えるチャンスを得られるようになる、ということです。 数千人、あるいは数万人の有権者を取り込むことができれば、僅差の選挙の場合、それは大きな意味を持ちます。政治家による市民との対話の形も変わり、全く新しい形の政治になるでしょう。長期的には、とても不健全だと考えます。政治家が人々の声に耳を傾け語りかけるのではなく、データを使って、人々の弱点を見極め、そこをつくという方式です。 Q:こうした広告企業と、統治する側、つまり政権が手を携えてしまった場合、どんなことが起こりますか? バートレット氏:企業がデータ収集するだけでも問題ですが、政府が企業と共同で行ってしまっては、一体誰が止められるというのでしょう。政府はより洗練された個々人のデータを取得することになります。 政府の批判を許さない政権が、こうした詳細なデータを基に先手を打って、政権へのトラブルを起こす人物をはじき出したとしたら、どうなると思いますか。当局や警察が、常に全ての人を追跡、行動を把握し、何も悪いことをしていないのに、アルゴリズムが「彼らはトラブルを起こす」と判定したと言う理由で、事前に逮捕してしまったとしたら』、「政治家による市民との対話の形も変わり、全く新しい形の政治になるでしょう。長期的には、とても不健全だと考えます。政治家が人々の声に耳を傾け語りかけるのではなく、データを使って、人々の弱点を見極め、そこをつくという方式です」、本当に恐ろしい時代がそこまでやって来ているようだ。
・『前例のない権力を政府に渡すことになる  SFの世界のことのように聞こえるかもしれませんが、このままの状態で進めば、そう先の未来のことでもないでしょう。中国などでは、すでに民間企業と政府が共同で、得られる限りの市民のデータを取得しています。それはある種、犯罪を減らし、サービスをより早く提供できる、効率的な社会を作るかもしれませんし、人々はこれを歓迎するかもしれません。しかし同時に、前例のない権力を政府の手に渡すことに繋がります。 Q:広告業界は、この事態をどう捉えていると感じますか。 バートレット氏:まず、大手プラットフォーム(SNSなど)の資金源は広告収入です。それはSNSではなく、広告企業だと捉えた方が良いでしょう。そう捉えると、彼らの使命は最初から「あなたが自分を知っているよりも、より深くあなたを理解すること」だと言うことがわかります。 何があなたの気分を害し、怒らせたりするのかを知ることで、頭の片隅にあるスイッチを入れ、特定の商品を選ばせる。これが彼らの運営の、最優先の原則です。彼らは主に「あなた」を知ることに興味があります。こうしたプラットフォームでスキャンダルが起きて、相当数の人たちが倫理性を問いボイコットをすれば、企業は対処もするでしょう。しかし、彼らの至上命題は「あなたをどう動かすか」ということですから、大規模なデータ収集作業は、今のビジネスモデルでは止めることはできませんし、止まりません。だからこそ、規制が必要なのです。 Q:ビジネスモデルは変えられるものでしょうか。 バートレット氏:難しい問題です。皆が広告をクリックするのをやめたり、広告ブロッカーを使い始めれば、ビジネスモデルを変えざるを得なくなるでしょう。プラットフォームに月額2ドル支払うなど、何らかの購読形態に移行したり、グーグルを利用するならば、1セント以下のほんのわずかな金額を支払う、などということです。長期的な未来には実現するかもしれず、それは社会にとって、より良いことかもしれません。 1990年代、こうしたプラットフォームの資金をどう獲得するかという点について、熟慮の末、情報が無料で全ての人に提供されることが、最も民主的であると判断されたのです。不運なことは、この判断が広告に頼ることにつながってしまったことです。不思議なことに、誰もこんな事態を招くとは想像もしていなかった。私は、オンライン上で人々が、より多く金を払って(情報を得る)モデルに逆戻りするのではないかと予測します。 あるいは現在、多くのスタートアップ企業が「フェイスブックやグーグルは、毎年巨額を稼いでいる。ユーザーが少額、支払いを受けるようなサービス形態に移行したらどうか」と言う動きを見せてもいます。すでに、ユーザーが使用するごとに、お金が支払われるサーチエンジンも存在します。一定数の人たちがこれを利用し始めれば、現在のビジネスモデルを破壊することが可能でしょう。 Q:今後、例えば5年間で何も対策を講じなければ、どんな事が起こると思いますか? バートレット氏:政治は急速に変化し、人々が5年前に不可能だと思って来たことが、既に実現し始めています。誰も、現在の政治状況を予測してはいませんでした。公開討論が、こんな悲惨な状態になり、選挙戦に関する人々の怒りや、(外国からの)介入も起きています。次の5年間には、更なる問題が巻き起こるでしょう。 労働市場に顕著な崩壊が起きていますし、それによる憤りや怒りの高まりに、私たちは備えきれていません。より多くのデータが作られ、政治家がそれを利用し、個人を狙った広告戦略を展開するでしょうし、外国勢力からの介入は、改善するどころか悪化するでしょう。 突然民主主義が崩壊し、無政府状態になるということではなく、独裁者が現れ「全てのことが崩壊しつつあるようだ。全てを保つために、強いリーダー、強い政府が必要だ」と発信し、「この状態を打開するために、デジタル技術が必要だ」と主張する土壌を作るでしょう。新しい権威主義の波が起こります。 私が恐ろしいと思うのは、5年後、もしかすると人々自身がそれを望み、その主張に票を投じるかもしれない、と言う事です。安定と利便性を、崩壊と困難よりも望むかもしれません。民主主義は人々の積極的な意思によって、消滅するかもしれません。これは1930年代、民主主義が破壊的な、わかりやすい状況で壊れたこととは違います。混乱ではなく安定を約束する強固な権威主義者たちを、人々が民主的に選ぶプロセスで起こるのです』、「独裁者が現れ「全てのことが崩壊しつつあるようだ。全てを保つために、強いリーダー、強い政府が必要だ」と発信し、「この状態を打開するために、デジタル技術が必要だ」と主張する土壌を作るでしょう。新しい権威主義の波が起こります。 私が恐ろしいと思うのは、5年後、もしかすると人々自身がそれを望み、その主張に票を投じるかもしれない・・・民主主義は人々の積極的な意思によって、消滅するかもしれません」、恐ろしい未来シナリオだ。
・『政府自体が市民に対する保護もなく、情報収集できることになる  Q:難しいのは、規制と表現の自由のバランスかとも思います。 バートレット氏:唯一の正しい答えはありません。今大きな議論となっているのは、(SNSなどの)プラットフォームを、法的な責任を持つ、新聞社のような出版業者とみなすのか、現状のまま、ユーザーが責任を有し、プラットフォーム自体はコンテンツに法的な責任を持たず、中立な存在とし続けるのかというものです。 90年代にまだ比較的存在が小さかった頃に機能していたとしても、現在はこれで公正なのでしょうか。今は、プラットフォームをそのままにしておいても大丈夫だと思いますが、当局から「コンテンツを削除せよ」と、法的な令状と共に命じられた場合、それを即座に、効率的かつ透明性を持って行わせる法律が必要です。法的に、公的な場で発言される内容について、当局がなんらかのコントロールをしなければなりません。 このことは、問題も引き起こします。英国では表現の自由が固く信じられています。英国内での法について、私は安心していますが、その他の国の状況には不安を感じます。他国が決めることですが、難しい問題であることに変わりはありません。 Q:日本では、政府の要望に応え得る広告企業も存在しますし、また、国民投票において、英国での選挙法のような、広告に関する資金投入の上限が存在しません。 バートレット氏:非常に危険なことだと思います。普通は、政府に市民の情報を常に収集させない、つまり、政府の力から市民を守る法律が存在します。できるとしても制限が存在するはずですし、令状など、裁判所からの法的な書類が必要です。 このことは、専制政治から人々を守るため、民主主義国家においての基本であるはずです。しかし、民間企業は令状や、市民を守る法的根拠など必要としません。こうした企業が個人情報を収集した挙げ句、それを政府に渡してしまっているとすれば、政府自体が市民に対する保護もなく、情報収集できることになります。 私は、人々がどれほど無防備に自分たちの情報をさらけ出して、またその情報が、どれほど政府にとって重要なのかに気づいてもいないと感じます。政府は常に、市民の情報を欲しています。初めは「人々を犯罪行為から守りたい」などという良い理由で始まり、徐々に、スピード違反をさせないとか、ゴミの分別を徹底するためだとか、政府が市民のことを知らなければならない理由が、どんどん増えていくのです。 やがて、政府がより中央集権的、革新的、独裁主義的になった場合、旧東ドイツのシュタージ(秘密警察)が大喜びしたであろう個人情報の山を手にすることになります。私たちは、そのことに気づきもせず、いつの間にか情報を提供してしまっているのです。 Q:情報を安易に提供しないために、日本の市民にもできることはどんなことですか? バートレット氏:まずお伝えしますが、それはとても困難です。私たちが常にデータを提供しているサービスは、非常に便利だということがまず一つ。私たちが好み、利用を楽しむからこそ、これらのサービスは成功しているのです。ある商品の利便性に慣れ、日々生活が楽になってしまえば、それらの利用をやめるのは、困難です。 しかし、結果として市民は、部分的にこの状況に加担していることを認識すべきです。私たち自身が、私たちに関するより精巧な型を作る「データ・マシーン」に情報を提供しているということなのです。何にクリックし、シェアし、どのサービスを利用するのか、どのデータを教えてしまうか。これらは、私たち自身が答えなければならない、道義的な質問です。市民自身が、自分のプライバシーについて責任を持つ。何の疑問もなく個人情報をさらけ出すことの意味を考え、利用規約を読む。 また、ある特定のサービスにのみ情報を独占させないために、いくつか異なるサーチエンジンを利用することです。利便性には欠けるかもしれませんが、これが私たちの民主主義を健全に保つための代償かもしれません』、「市民自身が、自分のプライバシーについて責任を持つ。何の疑問もなく個人情報をさらけ出すことの意味を考え、利用規約を読む。 また、ある特定のサービスにのみ情報を独占させないために、いくつか異なるサーチエンジンを利用することです」、正論ではあるが、面倒そうだ。
・『故意にプラットフォームを混乱させることも有効  Q:プラットフォームを故意に混乱させることも、有効だとおっしゃっていましたね。 バートレット氏:そうです。私たちについて作られた精巧な「型」は、私たちが最も大切にする思いや不安、希望などをシェアした結果作られたものです。ですから、時にシステムを混乱させてみることです。本当は好きじゃないものに「いいね!」をつける。信じていないことを投稿してみる。自分の年齢を偽ってみる、と言った具合に、「型」を困らせるのです。 Q:日本では個人データの流出がここまでの弊害をもたらすとはまだ広く知られていませんし、直接政治的な影響も受けていないため、危機感が高いとは言えません。 バートレット氏:世界情勢がどんなに変わり、いかに危険な状況にあるかは明白でしょう。どんな民主主義国家であっても、自分たちには関係ないと思う人たちは、自分たちを騙しているに過ぎません。まさかこんなことが米英や欧州各国で起こるとは思われていませんでしたし、皆、自分に火の粉が降りかかるまで「自分たちは大丈夫だ」と思っているのです。 自分たちの膨大な情報を通じ、ほんの一握りの企業、そして、究極的には政府に、力と支配を譲り渡してしまっているのかもしれません。物事は次第に、気づかないうちに悪化するでしょう。だからこそ、危険の存在や変化の度合いを知ることは重要です。民主主義とは、当たり前に存在するものではないのです。人間がどう共存するかという「短期的な実験」なのですから。 簡単に、消え去ってしまうかもしれないものだからこそ、慎重に守られねばなりません。この5~10年、それ以前に比べ、世界は民主的ではなくなってきています。これが、私たちが現在たどっている道筋なのです。これに気づき、何かをしなければ、20年後には民主国家がいくつ生き残っているでしょうか。恐ろしいことに、そうなってしまったが最後、もう元へは戻れないのです。 Q:日本はこれから、改憲に向けた国民投票が予想されています。現存の国民投票法で、ターゲット広告などに対応できるとは言えません。 バートレット氏:日本で国民投票が実施されれば、米英やその他の国で有効だったテクニックが恐らく使用され、問題にもなるでしょう。こうしたテクニックは、データ・アナリストのチームによって、世界的に提供され、共有されています。有効だと証明されれば、政治家はこれを利用するでしょう。 同じような技術が日本の国民投票で使われ、これまでと同様の現象や論争が起きたとしても、不思議はありません。その時になって、ようやく対岸の火事ではないことに気づくかもしれませんね。 業者から「クリック率を25%あげましょう」「広告ターゲットをより効果的に行います」「この国民投票で勝つために55歳以上のターゲットをお望みですか。データをもらえれば、有効なメッセージで彼らを狙う方法を教えましょう」と働きかけられながら、その技術を使わない政党は、時代遅れです。 Q:現状、人々は無防備ですね。 バートレット氏:今はそうですが、段々とやらなければならないことがわかってきています。まず、いくつか痛い思いをして、それから規制の必要性がわかるのかもしれません』、「民主主義とは、当たり前に存在するものではないのです。人間がどう共存するかという「短期的な実験」なのですから。 簡単に、消え去ってしまうかもしれないものだからこそ、慎重に守られねばなりません」、確かにその通りだろう。「国民投票」にもきちんとした規制が必要なようだ。

第三に、ジョージタウン大学准教授のカル・ニューポート 氏が本年10月21日付け東洋経済オンラインに掲載した「「フェイスブック」から抜け出す具体的方法 デジタル・ミニマリストになるには」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/309070
・『「やらなきゃいけないこともやりたいこともたくさんあるのに、SNSがとまらない……」。そんな中毒から今度こそ抜け出し、本当に大切なことに集中する「デジタル・ミニマリスト」になるには。NYタイムズ・ベストセラー『デジタル・ミニマリスト』の著者であり、テック界の「こんまり」として全米メディアで話題のコンピューター科学者が指南する』、「デジタル・ミニマリスト」とは興味深い。
・『もしもフェイスブックが課金制だったら?  あなたはフェイスブックを利用しているだろうか。そのサービスにどんな価値を見いだしているのか、主立ったものを箇条書きで挙げてみてほしい。どうしてもフェイスブックを退会しなくてはならなくなったとして、手放すのが惜しいと思うのはどの機能だろうか。 そのリストができたら次に、フェイスブックが1分ごとの課金制になったと想像してみよう。ごく普通の1週間に、リストに挙げたフェイスブックに欠かせないと思う機能のそれぞれについて、実際にどの程度の時間を費やしたいだろうか。 大半の人の答えは意外なほど少ない。平均すると20分から30分といったところだ。 ところが、フェイスブックの平均的なユーザーは、フェイスブック関連サービスに週350分を費やしている。つまり、計算を働かせながら利用すれば、フェイスブック関連のサービスに費やす時間はユーザー平均の11分の1から17分の1で済むということになる。 誰もが同じようにフェイスブックの利用について功利主義的に考えるようになれば、広告会社に販売できる“凝視時間(アイボール・ミニッツ)”は1ケタ減り、フェイスブックの最終利益は大打撃をこうむる。投資家はそっぽを向き(ここ何年か、フェイスブックの四半期売り上げが数%減少しただけでもウォール街の不安を煽っている)、フェイスブックは現在のような業態ではとても生き残っていけなくなるだろう。 だからこそ、ソーシャルメディアの大企業は、サービス内をあてどなく動き回るような利用へとユーザーを向かわせるために、莫大な資金を投じているわけだ。 逆に言えば、フェイスブックなどの企業がもっとも恐れている“利用法”は、多種多様な無料サービスを入念に吟味し、最大のメリットを受け取れるような方法ということになる。そしてこれこそ、私の提案する「デジタル・ミニマリズム」の神髄である。 デジタル・ミニマリストは、自分が心から大事にしていることを基準に利用すべきテクノロジーを選び、注意散漫の元凶たる新しいテクノロジーを充実した人生を支えるツールへと変貌させる。多くの人がますますスクリーンにコントロールを奪われていると感じ始めている中、デジタル・ミニマリストはその呪縛から解放されている。 ここで注目したいのは、デジタル・ミニマリストの哲学は、世の中の大多数の人がとくに何も考えずに採用しているマキシマリスト的な哲学、すなわち、新しいテクノロジーが目にとまったとき、それにほんのわずかでもメリットがありそうなら取りあえず使ってみようという姿勢とは好対照をなしていることだ。 マキシマリストは、どれほど些細な事柄であろうと、面白そうなこと、価値のありそうなことを自分や周囲が見逃すかもしれないと考えただけで不安になる』、「デジタル・ミニマリストは、自分が心から大事にしていることを基準に利用すべきテクノロジーを選び、注意散漫の元凶たる新しいテクノロジーを充実した人生を支えるツールへと変貌させる。多くの人がますますスクリーンにコントロールを奪われていると感じ始めている中、デジタル・ミニマリストはその呪縛から解放されている」、素晴らしい生き方のようだ。
・『チャンスを見逃しても気にしない  実際に、私がフェイスブックを一度も利用したことがないという事実を公言し始めたとき、仕事で付き合いのある人たちは、まさにそのマキシマリスト的な理由から驚愕した。 そして驚かれるたびに私は「どうしてフェイスブックを使うべきだと思います?」と尋ねる。「どうしてと言われても困るけれど」と彼らは答える。「でも、何か役に立ちそうな情報があるのに、それを見逃しているかもしれないでしょう?」。 この意見は、デジタル・ミニマリストの耳にはばかげたものとして届く。なぜなら、理想的なデジタル・ライフとは、具体的なメリットを最大限に享受できるよう、自分が使うツールを意識的に取捨選択することで作るものと考えているからだ。 彼らは、自分の時間と注意を無意味に削り取ったあげく、役立つどころか損失をよこしてくるような価値の低い活動を極度に警戒する。要するに、小さなチャンスを見逃しても気にしない。それよりも、人生を充実させると確実にわかっている大きな事柄をないがしろにすることのほうを恐れるのだ』、私もフェイスブックに登録はしてあるが、殆ど利用してない。しかし、ここではフェイスブックをインターネットを包括する概念として使っているようだ。私もその他のネットは大いに活用している。
・『次に、デジタル・ミニマリストに移行するための最善のプランを示そう。私の経験からいうと、習慣をちまちまと変えていく方法は成功率が低い。注意経済(アテンション・エコノミー)が提供する製品は人の注意を引きつけることに特化しており、またその便利さも摩擦抵抗となって、それから逃れようとするあなたの力を弱めるからだ。気づくとあなたは、スタート地点に逆戻りしているだろう。 だから、一気に移行してしまうことを勧めたい。十分な決意を持って、短期間のうちにやり遂げてしまう方法だ。このほうが成果は長続きする。これから提案する短期決戦のプロセスを、私は“デジタル片付け”と呼んでいる』、「“デジタル片付け”」とは面白いネーミングだ。
・『ボランティアに1600人が参加  これは家の大掃除のようなものだ。長年ためこんできた注意をそらすツールや習慣性のある行為をまとめて処分し、その代わりに、より意識的な行為をミニマリストらしく最適化した状態で呼び戻し、それまで生活から締め出されがちだった大事なことを中心に据え直す。 2017年12月初旬、私は自分のメーリングリストの購読者に向け、デジタル片付けの基本的なアイデアを要約したメールを送った。「来年1月にデジタル片付けを試し、進捗を報告してくれるボランティアを募集しています」と。手を挙げてくれる勇敢な読者は40人から50人くらいだろうと思った。ところがその予想は大きくはずれた──1600人を超える読者が参加してくれたのだ。私たちの集団実験は、全国紙でも取り上げられた。 デジタル片付けの3つのステップを、実験参加者の体験例とともに示そう。 ステップ1:30日のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する。 必須ではないテクノロジーと切り離された生活は、初めはつらい。気晴らしや娯楽があるのが当たり前になっているのに、必須ではないテクノロジーを日常生活から取り除くと、その期待が満たされなくなってしまうからだ。人によってはこの状態を不快に感じるかもしれない。 しかし集団実験の参加者の多くは、そういった不快な感覚は1週間から2週間で消えたと報告した。 若い経営コンサルタントのダリアもやはり、実験開始から数日の間、無意識のうちに携帯電話を取り出してはSNSやニュースのアプリをすべて削除してしまったことを思い出すという行動を繰り返していたという。携帯電話に残っていた、最新情報を確認できる唯一のものは天気予報アプリだった。 「初めの1週間、3つから4つの都市の1時間ごとの天気予報をいつでも把握していました」。何かを閲覧したいという衝動は、無視できないほど強かった。それでも、2週間後の様子をダリアはこう報告している。「(ネットで何かをチェックしようと思うことは)ほとんどなくなりました」。 ステップ2:この30日間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする。 デジタル片付けを単なるデトックスと考えてはいけない。デジタル片付けの目的はテクノロジー利用を一時的に休むことではなく、あなたのデジタル・ライフを永続的に変えるきっかけを作ることだ。デトックス期間はその変化を助けるステップの1つにすぎない』、「何かを閲覧したいという衝動は、無視できないほど強かった。それでも、2週間後・・・「(ネットで何かをチェックしようと思うことは)ほとんどなくなりました」、習慣化したものを止めるには、確かに時間も必要なようだ。
・『デジタル“以外”の楽しみを見つける  そう考えると、期間中は自分が決めたテクノロジー利用のルールを守るだけではすまない。デジタル片付けを成功させるには、常時オンの光り輝くデジタル世界の外に、これは大事だと思えること、楽しいと思えることを再発見しなくてはならない。さらにいえば、リセット期間が終わってテクノロジーの再導入を始める前に、それを見つけておくことが極めて重要になる。 ここで明るいニュースを1つ。私の集団実験の参加者は、スクリーンのとりこになる以前に親しんでいた活動を意外なほどすぐにまた楽しめるようになったことだ。 大学院生のウネイザは、夜の時間を、いつもレディット(ニュースサイト)を眺めるのに費やしていた。リセット期間中は学校や近所の図書館から借りた本を読むことにした。「そのひと月で8冊を読み終え、9冊目に取りかかりました」。ウネイザはそう報告した。「そんなにたくさん本を読むなんて、実験前は考えたことさえありませんでした」。 クッシュブーはリセット期間中に5冊読み終えた。これは彼にとって大きな成果だった。自分の意思で本を選んで読むのは3年ぶりだったからだ。また、絵を描いたり、コンピュータープログラムを組んだりといった趣味も再開した。「絵もプログラミングも、前はあんなに好きだったのに、大学に入って以来、遠ざかってしまっていました。そんな時間はないと思いこんでいたんです」。 ケイレブは、主体的に取り組めそうなアナログな活動を探した結果、毎日就寝前に日記を書いたり読書をしたりするようになった。ほかにも、レコードプレーヤーでレコードを頭から終わりまで聴くようになった。イヤフォンは使わない。ちょっと退屈になってもその曲を飛ばすボタンもない。これまでは、音楽配信アプリのスポティファイを起動してそのときの気分にぴったりの曲を探していたが、レコード1枚をじっくり聴くほうがずっと豊かな経験であることに気づいたのだという。 ステップ3:休止期間が終わったら、まっさらな状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する。その1つひとつについて、自分の生活にどのようなメリットがあるか、そのメリットを最大化するにはどのように利用すべきかを検討する。 デジタル・ミニマリストは、生活の中のいつ、どのような場面でデジタル・ツールを使うかを定めたルールを守ることで企業の戦略に対抗する。ミニマリストは、「友達との距離が縮まるからフェイスブックを使う」とは言わない。 代わりにもっと具体的に言う。たとえば「親友や家族の様子を知るために、毎週土曜日、パソコンを使ってフェイスブックにアクセスする。携帯電話にはフェイスブック・アプリを入れない。友達リストには、意義ある関係を築いている人だけを残した」と言う』、「デジタル・ミニマリストは、生活の中のいつ、どのような場面でデジタル・ツールを使うかを定めたルールを守ることで企業の戦略に対抗する」、なるほど。
・『一日中ニュースを見ていた習慣を変えた  電気技師のディーは、自分がどれだけ頻繁にネットで最新ニュースをチェックしていたか、リセット期間中に実感して驚いたという。しかもそういったニュースは彼をひどく不安にさせていた──とくに政治色の強い記事を読んだ直後は。「(リセット期間中は)ニュースを見るのをいっさいやめました。すごくいい気分でした」とディーは話す。「“無知は幸い”とよく言いますが、場合によっては本当にそうですね」。 リセット期間を終えたところで、ニュースをこのままずっと遮断するのは現実的ではないが、かといってメールで数十種類のニュースレターを受け取ったり、強迫的に最新ニュースをチェックしたりするのは、世の中の動きに通じていたいという彼の希望を叶える「最善の」方法ではないと感じた。 そこでデジタル片付け後は、AllSides.com というウェブサイトを日に1度だけチェックすることにした。このサイトでは、重要なニュースを報じた記事を3本、公平に選んでリンクを張っている──それぞれ政治的左派、右派、中道の記事だ。この体裁であれば、最近の政治ニュースが発する感情的なオーラが薄まって、ディーは不安をかき立てられることなく世間の動向を知ることができる。 ロンドン在住で、旅行業界で働いているというアビーは、スマートフォンからウェブブラウザを削除した。これはかなり思い切った対策だ。「何でもかんでもすぐに答えがわからなくても構わないと思ったんです」。そして昔ながらの紙のノートを購入して、地下鉄で退屈したときなどにアイデアを書き留めるようにした。 コンピューター・エンジニアのロンは、日常的にチェックするウェブサイトを2つに限定した。以前は40を超えるサイトを毎日巡回していたというから、大きな前進だ。 レベッカは、腕時計を購入して日々の生活の質を向上させた。上の年代の人はそんなことでと疑問に思うかもしれないが、レベッカのような19歳の若い女性にとっては大きな意識改革だった。「非生産的なウサギ穴に吸いこまれてしまうきっかけの75%は、時刻を確かめたくて携帯電話を取り出すことだと気づいたんです」。 意識的な決断を心がけて慎重に再導入を行えば、あなたもデジタル・ミニマリストの仲間入りだ』、退職して時間を持て余している私にとっては、苦労して「デジタル・ミニマリスト」になる必要はなさそうだ。ただ、読者のなかには必要がある方々には、この記事が参考になってくれることを祈っている。
タグ:「考えを議論する」政治とは全く異なり、誰が最も有効なデータを持っているか、最も有効に標的を射止めることができるのか。そして、誰が最も説得力のあるメッセージを提供し、候補者につなぐことができるのか。こうしたことに尽きる 歴史的に既得権益がテクノロジーを乗っ取ってきた 米大統領選挙 一日中ニュースを見ていた習慣を変えた 日経ビジネスオンライン 副題は「インターネットが民主主義を殺す」 ステップ3:休止期間が終わったら、まっさらな状態の生活に、休止していたテクノロジーを再導入する 伏見 香名子 (その4)(狙われる有権者たち デジタル洗脳の恐怖 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)、ターゲット広告全盛 日本の国民投票は大丈夫か 「操られる民主主義」の著者 ジェイミー・バートレット氏に聞く(後編)、「フェイスブック」から抜け出す具体的方法 デジタル・ミニマリストになるには) デジタル“以外”の楽しみを見つける 「市民対テクノロジー」(The People vs Tech) (ロシアは)インターネットを使い、米国の選挙介入にも成功 ステップ2:この30日間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を新しく探したり再発見したりする ステップ1:30日のリセット期間を定め、かならずしも必要ではないテクノロジーの利用を休止する 世界の誰にでも、個人をターゲットにし、その人以外の目には触れない広告が打てるようになりました。選挙そのものの正当性が問われることになった ソーシャルメディア デジタル片付けの3つのステップ ケンブリッジ・アナリティカ “デジタル片付け” “インターネットが民主主義を殺している” 既存のシステムは時代遅れで機能不全 現在とは全く異なる時代に構築された、古いスタイルの民主主義と、新しいデジタル技術とが、相容れない ジェイミー・バートレット 民主プロセスにおける「デジタル洗脳」 「ビッグ・データ」を使用したデジタル操作が行われたのではないか、との論争 チャンスを見逃しても気にしない 私たちの政治の行き着く先は、人間の手が加えられない、全く規制当局が目にすることのできない、非常に扇動的かつ自動化された広告が流されることかもしれません インターネット上、個人に向けたターゲット広告の場合は、ほぼ何でも伝えることができます。しかも、他者には見えないため、信ぴょう性をチェックすることができません 英国の「EU離脱を問う国民投票」の結果に驚愕し もしもフェイスブックが課金制だったら? 通常の広告は、テレビや広告板、新聞などに掲載する場合、内容について厳しい規制が存在 「狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖 「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)」 『デジタル・ミニマリスト』 やらなきゃいけないこともやりたいこともたくさんあるのに、SNSがとまらない 「「フェイスブック」から抜け出す具体的方法 デジタル・ミニマリストになるには」 東洋経済オンライン カル・ニューポート 故意にプラットフォームを混乱させることも有効 政府自体が市民に対する保護もなく、情報収集できることになる 前例のない権力を政府に渡すことになる 「ターゲット広告全盛、日本の国民投票は大丈夫か 「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(後編)」 市民がますますポピュリズムに傾倒している理由の一つは「問題がすぐ解決され、欲しいものは即座に手に入り、妥協の必要など一切ない」といったことが約束されるからです
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