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日韓関係(その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を) [外交]

日韓関係については、9月20日に取上げた。韓国がギリギリになってGSOMIA破棄を延期したことを踏まえた今日は、(その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を)である。

先ずは、中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏が11月25日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く 国内向けのメンツに腐心する韓国」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00023/?P=1
・『今回の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を巡る騒動は韓国の“独り相撲”だった。自ら墓穴を掘っただけで、「日本の完勝」と喜ぶのも適当とは言えないほどだ。 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権はここまでの米国の本気の圧力を想定しておらず、そして日本はそのうち折れてくるだろうと、日本の姿勢も読み違えた。当初、韓国は日本の輸出管理厳格化の措置への対抗措置としてGSOMIA破棄のカードを出してきた。そうすれば、米国はGSOMIA破棄を回避するために韓国だけでなく日本に対しても働きかけ、日本が輸出管理厳格化の措置を撤回するように追い込めると期待していたようだ。そのためには、GSOMIAと輸出管理厳格化という2つの問題を何としてでもリンクさせることが必要だった。 日本側もそこがポイントであることは百も承知で、両問題が別次元で全く無関係であることを徹底的に説明し続けた。結局、米国は韓国が期待する「喧嘩(けんか)両成敗」で調停する動きをせず、韓国のもくろみは外れた。 それどころか、米国はGSOMIAの失効が米国の安全保障を直接的に脅かすものだと受け止めて、米国の韓国への圧力は失効期限が迫るにつれて日に日に激しさを増していった。背景にあったのは対北朝鮮というよりは、対中国である。米議会の対中脅威論も拍車がかかり、GSOMIA継続について米議会上院が全会一致で可決する事態にまで発展した。さらにそこに、米国は在韓米軍の駐留経費の韓国負担を約5倍に増額するという圧力もかけた。 文政権は追い込まれ、GSOMIAを続けざるを得なくなった。あとは国内からの「無能な外交」との批判を避けるために、国内向けにどうメンツを保つかに腐心した。ポイントは韓国がGSOMIAの失効を回避するという方針転換と同時に、日本にも輸出管理で譲歩させたと国内向けに強弁できる状況をつくることだ。 そこで韓国はGSOMIAの方針転換決定の直前のタイミングになって、輸出管理に関して「世界貿易機関(WTO)提訴の手続きを中断する」と外交ルートを通じて日本側に伝えてきた。これをきっかけに局長級の会合の開催を日本側と合意できれば、局長級の会合開催を“日本から引き出した”ということにして、それを大義名分にできる。そして、しかもタイミングをGSOMIAと合わせることによって、両問題がリンクしているかのように見せられるとの思惑だ』、韓国側はメンツ確保に必死だったようだ。
・『「対話」を「協議」にすり替えて強弁する  さらに国内向けのメンツのために、輸出管理での局長級の会合を「協議」と位置付けて説明し、日本が譲歩したように見せかけた。 しかし、これは「協議」ではなく「対話」である。 一般には分かりにくいが、国同士の「協議」と「対話」は、その意味が大きく異なる。きちっと使い分けるのが国際的にも常識になっている。つまり「協議」とは国同士の交渉の場であるのに対して、「対話」は交渉の場ではなく、単に意見交換して理解を深め合うものだ。 韓国は日本の輸出管理厳格化の措置の撤回に向けて交渉する場だと国内的に言えるように、故意に「協議」と言い換えているのだ。 ところが事実は、正確には「輸出管理政策対話」と言われるもので、お互いの輸出管理についての理解を深め合うものだ。しかもこれは、以前から日韓政府間の意見交換の場として局長級で行われてきたもので、特に新しい動きではない。ところが文政権になって以降の過去2年半、韓国が会合の開催に応じてこなかった。これを従前通りに再開したものだ。つまり、日本の措置の撤回に向けた協議ではない』、「「対話」を「協議」にすり替えて強弁する」、苦しい対応だが、韓国マスコミはどう伝えたのだろう。
・『「WTO提訴の中断」のカードで「政策対話の再開」を買った  日本側は何もこれまでの方針を変えていないし、何も譲歩していない。「対話」は輸出管理厳格化についての決定の見直しに何らコミットしていない。これまでも日本政府は「一定の条件が整えば対話を再開する」と言ってきた。その「一定の条件」が満たされたと判断したのだ。それが「WTO手続きの中断」という通報だ。 7月に課長級の「事務的説明会」が開催された。あの冷え冷えとした雰囲気の中で行われた会合の後、韓国側のゆがんだコメント発表に日本政府はあぜんとした。“言った言わない”で相当ギクシャクして、実に後味の悪いものだった。 その後、非公式に役人同士でコミュニケーションを繰り返し、WTOでは長時間の二国間協議も経て、次第に事務レベルでは韓国側の理解も進んだのは間違いない。韓国側が自分たちの輸出管理の問題点も認識し、この間、輸出管理当局同士の意思疎通がある程度進んだのも事実だ。 それでもWTO提訴というけんかを売られているうちは、真摯な「対話」などできるはずがない。今回のWTOプロセスの中断通知があったからこそ、日本側も「韓国が問題点改善の意欲を示した」と認めて、「対話」再開を決めたのだ』、なるほど。
・『ところが韓国は国内へのメンツから、こうした事実を認めたくない。GSOMIAの失効回避と輸出管理厳格化の対話の再開を意図的にリンクさせることで何とかメンツを保とうとしている。それは韓国の報道を見ても明らかだ。 韓国側はGSOMIAと関連付けるために、そう見えるようにタイミングを見計らって「WTO提訴プロセスの中断」というカードを切ってきた。日本はそのカードに対して輸出管理当局として上記のような当然の判断をしただけで、何らGSOMIAとは無関係だ。タイミングも含めて必死に関連付けようとしているのはあくまでも韓国なのだ』、私も初めのうちは「GSOMIA」と「輸出管理」をセットで考えていたが、それが別物というのを改めて理解できた。
・『韓国のメンツ作戦に乗せられた日本の報道  「GSOMIAはいつでも失効可能との前提付き」「条件付きのGSOMIA延長」「日本の輸出管理厳格化の措置の撤回に向けた協議の開始」 韓国側の発表は、国内的にメンツを保つための強弁の文言のオンパレードだ。 韓国は国際的な交渉事の後、自分に都合のいいように事実を歪曲(わいきょく)して発表する常習犯である。どこの国も多少はそういう要素はあるが、韓国の場合、臆面もなく大胆で、米韓自由貿易協定(FTA)交渉時に交渉相手の米国もあぜんとしたのは有名な話だ。日本は7月に行われた「事務的説明会」の後でも韓国側発表で苦い経験をしている。 今回もそうした韓国側の意図的発表を予想して、日本政府も記者会見で明確に2つのポイントを説明している。1つは、GSOMIAの失効回避と輸出管理についての政策対話の再開は無関係であること。そしてもう1つは、あくまでも「対話」であり「協議」ではないことだ。 すると、韓国は「日本政府の発表は合意内容を意図的に歪曲した」と外交ルートで抗議する念の入れようだ。国内向けにメンツを保てなくなることへの焦りだろう。 それにもかかわらず、日本の一部のメディアは意図的にGSOMIAの失効と結びつけ、しかも「協議」と報道しているのだ。まるで日本政府の記者会見よりも韓国政府の記者会見を信じているかのようだ。これでは韓国の思うつぼだ。我々は厳しい目で報道を見極める必要がある。 今後、輸出管理についての対話はどうなるのか。日本の輸出管理厳格化の措置は見直し、撤回されるのだろうか。 韓国側は案の定、「日本の措置の撤回に向けた協議」と国内向けに宣伝している。そして日本のメディアの一部もそういう印象を与える報道をしている。もちろんこの場で措置撤回の要請をするのは韓国の勝手だ。しかしあくまでボールは韓国にあることを忘れてはならない。 韓国の輸出管理を審査する人数が極端に少なく審査体制が脆弱であることは申請をする民間企業の間でも衆目の一致するところだとささやかれている。法制度についても他国と比べて不備も指摘されている。輸出管理をきちっと審査する体制を整え、法制度も不備を直すことを確認して、大丈夫だと日本政府が判断できなければ何も事態は動かない。 そうしたことを見極め、確認する場が「対話」だ。あくまで交渉するわけではない。 それらを判断材料にして日本が自国の輸出管理の運用の意思決定をする。その結果、韓国の扱いが変わる可能性ももちろんないわけではないのは、他国に対してと同様だ。 こうした当たり前のことを日本政府も記者会見で繰り返し説明している。メディアもきちっと報道して欲しいものだ』、韓国寄りの報道をした「日本の一部のメディア」があったようだが、この問題の広報では、GSOMIAと輸出管理をタイミングを合わせることでセットだと巧みに思わせた韓国側に軍配が上がりそうだ。
・『かつての“空騒ぎ”も反省を  半導体製造関連の3品目の個別許可については、これまで通り淡々と継続する方針だ。この点でも日本は何も譲歩していない。 7月に日本の韓国への輸出管理の厳格化措置が発表されると、「韓国の半導体産業に大打撃」「世界の半導体関連の供給網に懸念」と報じられた。そういう不安をあおる論者のコメントをメディアもしきりに取り上げた。 韓国は日本のそうした報道を真に受けて、むしろ利用して日本への反発を強め、韓国産業界も対応に奔走した。 しかし私は当初からそれが「空騒ぎ」で、半導体生産に支障が生じることは杞憂(きゆう)だと指摘してきた(拙稿「なぜ韓国の『ホワイト国除外』で“空騒ぎ”するのか」 )。 ふたを開けてみると、やはり影響はほとんどなく、先日、韓国政府自身も影響は限定的であることを認める発表をしている。今後も問題ない通常の取り引きについては個別許可が積み上がっていくだろう。このため、韓国はWTO提訴という拳を振り上げたことも正直、調子が悪くなったのだ。 「WTO提訴のプロセスの中断」で、メンツを保ちながら拳を下ろしたのも当然の結果だ。当時不安をあおった日本の論者、メディアには検証と反省が必要ではないだろうか。 いずれにしても今回のGSOMIA騒動は、いったんは収まったが、いわゆる元徴用工を巡る本質的な問題に韓国側は依然として向き合っていない。来年早々、訴訟の原告が日本企業の資産売却に動く恐れがある中で、日本には今回のような「軸がぶれない対応」が必要だ』、「徴用工問題」ででは米国の後押しが期待できないだけに、日本政府には頑張って欲しいところだ。

次に、前駐韓大使の武藤 正敏氏が11月27日付けJBPressに掲載した「GSOMIAで方針転換、動揺する文在寅の支持層 革新系支持層へのアピールのため「徴用工問題」を持ち出す可能性も」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58376
・『文在寅氏の支持率は概ね40%台を維持している。政権3年目としては表面上好調な数字ではあるが、革新と保守の対立は激化し、文在寅大統領に反発する人々の抗議活動は勢いづいている。これまで文在寅政権は、自分たちが推進したい政策のために支持者層を煽って、反対派潰しを図ってきたが、文政権の政策失敗は直ちに世論全体が反文在寅に向かう危険性をはらんでいる。 来年4月には国会議員選挙が実施される。これに敗北すれば反対派の勢いは増し、レームダック化が加速する。それを防ぐため、文在寅大統領は現在、ますます革新系の支持を意識した政治を行っているが、そうした政治は最近ことごとく失敗している。GSOMIA破棄から急転直下、破棄撤回に至ったのは失敗の典型例だろう。 今回の破棄撤回は韓国メディアも予測していなかったようであるが、世論調査ではおよそ70%が、延期はよかったと回答している。ただ、文在寅政権の支持層には失望感が漂っている。韓国政府は失敗を隠そうと躍起となっているが、今後行われる輸出管理に関する対話は最初から日韓で認識が異なっており、韓国政府の期待通りには進まないだろう。その場合、韓国政府はそれを反省するばかりか、日本に対して新たな強硬策に出てくる可能性がある。 その時、文在寅政権は何をするのか。それが元朝鮮半島出身労働者(以下「元徴用工」)に関するものとなることが懸念される』、「元徴用工」問題で「強硬策に出てくる可能性」、とは穏やかではない。
・『文在寅政権の政策は国内革新系の支持獲得が目当て  文在寅大統領は、当初から保守層には受け入れがたい政策を打ち出していた。 文在寅大統領は就任時の演説で、「わたくしを選ばなかった人も含め、すべての人のための大統領になる」と述べたが、実際にやったことは「積弊の清算」を旗印とする「保守政権の業績否定」と「親日の清算」だった。 最大の「積弊の清算」は「漢江の奇跡」を教科書から抹殺したことである。「漢江の奇跡」は当時の朴正熙大統領が日本との国交正常化資金を活用し、60年代前半には100ドル未満だった1人あたりGDPを、現在の3万ドル水準まで引き上げた成長の原点である。しかし、これを成し遂げたのが、朴槿恵前大統領の父であり、軍出身の朴正熙氏であったため認めたくなかったのだろう。文在寅氏は「歴史の真実を曲げた」のである。 保守の業績の否定は、国内の分断につながる。さらに国内政策の失敗で、中間層の離脱も始まった。そこで、文在寅政権は、国民全体の支持を集めることは諦め、支持基盤である革新層の支持獲得に集中しているわけだ。 文在寅大統領が重視してきた国内政策は、所得主導成長政策、検察改革と曺国氏の法相任命、GSOMIA破棄であり、いずれも革新系支持層の主張に寄り添ったものだった。しかし、革新系が重視する分野での文在寅政権の政策はことごとく失敗している。というのも、それらが国益を無視し、強引に自己の主張を通そうとする政策だからである』、「「漢江の奇跡」を教科書から抹殺」、とは驚いた。「漢江の奇跡」を可能にした日韓基本条約締結と請求権資金・援助金の存在を無視したいのだろう。「歴史認識」の問題は日本にも増して酷いようだ。
・『所得主導政策で韓国経済は崩壊の危機に  このような文在寅大統領の経済政策は、故朴正熙元大統領時代から築き上げてきた韓国経済を崩壊させつつある。 文大統領の経済政策の柱は、所得主導成長政策であり、そのため最低賃金を2020年までに1万ウォンに引き上げることを目指している。ところが韓国経済の命綱である輸出が、文在寅政権がその関係を過剰に重視してきた中国で経済が減速しはじめたことで、苦境に陥り、企業経営に深刻な影を落としているのだ。 韓国経済が過度に財閥に依存している影響で、経済格差がますます拡大している。そこで文在寅大統領はその解消を目指している。その考え方は悪くない。 しかし、文在寅政権が進める所得主導成長政策は、経済学の主流から外れ、経済合理性にも疑問符がつけられている。生産性引き上げ、経済の効率化など最低賃金引き上げ成功の条件を整えないままでの強引な引き上げである。しかも、最初の2年間で実に29%もの引き上げを実施したのだが、企業経営にその弊害が如実に現れ、2020年は2.9%の引き上げに留まることが決定され、政策の非を認めない文在寅氏が初めて謝罪する場面もあった。 生活が苦しくなったと指摘されているのだ。 全体経済を見れば、雇用の悪化に加え、経済成長率は急激に鈍化、投資意欲の減退、生産者、消費者物価の下落となっており、デフレに向かいつつある兆候が表れている。加えて、韓国のGDPの40%を占める輸出が11カ月連続で減少している。) こうした状況から、来年の国会議員選挙の最大の争点は経済になろう。文在寅政権に対しては、すでに20代の人々の支持が離れていると言われる。これらの人々は、現在の生活状況に不満を抱く人々である。若者は保守政権と財閥との密着に不満を抱いていたが、今はむしろ革新系に不満の矛先を向け始めているのだ。 逆に現在、文政権を支持しているのは、30代、40代であるが、この世代の人々も正規職として働く人が減り、非正規職が増えているという。さらに退職した人が自営業で収入の補てんをしようとしているが、次々に倒産している。 こうした経済状態を考えれば、文在寅政権が進める経済政策には期待できない。生活苦は保守、中間層ばかりでなく、革新層にまで広がっている。彼らの政権選択はどうなるのだろうか』、経済悪化にも拘らず、「文在寅氏の支持率は概ね40%台を維持」、とは不思議だ。
・『検察改革の方向性は支持しても、曺国法務部長官には反対  韓国では、警察も検察の指揮下に入っており、検察の権力は絶大である。検察の強い権力と強引な捜査手法に対する批判は国民の間でも共有されており、検察改革に対する支持は幅広い。しかし、これを遂行する司令塔にスキャンダルだらけの「たまねぎ男」曺国氏を任命する非常識。曺国法務部長官は9月9日に任命されてから、35日後の10月14日辞任した。 曺国氏の進めようとした検察改革の内容は詳述しないが、同氏任命が引き起こした国民の葛藤は、文在寅降ろしの出発点となるかも知れない。もちろん朴槿恵前大統領のような弾劾はないと思うが、文在寅氏降ろしの動きは次期大統領選挙で革新系に不利となろう。 文在寅大統領は、腹心とする曺国氏に何としても自身の看板政策である検察改革をやらせたかった。できれば、その功績で曺国氏を次期大統領候補に押し上げたかったのだろう。そのため、曺国氏に対するスキャンダルが深まっていたにも関わらず、任命を強行した。曺氏に検察改革を進めさせることで、曺氏に対する捜査の動きを封じ込めさせようとしたのかも知れない。 しかし、その結果、曺氏に対する検察の捜査はいっそう速度を増し、その動きに呼応するように曺氏辞任、文政権に対する反対の街頭デモが激しさを増した。9月28日に曺氏を守ろうとする検察庁前のデモは、地下鉄乗降客の増減、マスコミによる画像を使った推計では、せいぜい10万くらいのようである。これに対し、曺国氏辞任、文在寅氏の責任を問うデモは同様の推計で30~50万といわれている。この数字は朴槿恵氏弾劾を求めるデモに匹敵するか、あるいはそれを上回るほどの人数であり、文政権には多大なショックを与えた。 文在寅氏の支持層は、「曺国氏に対する検察の捜査は政治的であり、やりすぎだ」として、検察改革の必要性を説いている。しかし、曺氏辞任の声が強まったのは、子弟に対する不正入学や私的ファンドなどで中間層が離反した結果であろう。ただ、この問題は保革対立を反映したものとの見方が強く、核心的な支持層が離反したとまでは言えない。ただ、文在寅氏の支持母体が急激に縮小していることは否定できない。また、曺国氏を辞任させ、かばいきれなかった文在寅氏に対しては、革新層から失望の声が上がろう。 今後の捜査で曺国氏が逮捕されることになれば、文在寅氏に対する批判は高まって来ようし、中間に近い革新の支持は離れていくかもしれない』、「今後の捜査で曺国氏が逮捕されることになれば」、確かに「文在寅氏」にとっては致命傷かも知れない。
・『革新層の期待を裏切るGSOMIA破棄撤回  韓国では、日本との間でGSOMIAを締結することへの抵抗は大きかった。GSOMIAは国会の承認を必要としない行政取り決めではあるが、革新系国会議員の議論を尽くさない合意は認めないとの反対で、1時間前に署名が延期された。文大統領はそもそもGSOMIAには反対だっただろう。 19日にMBCの番組で「国民との対話」に臨んだ文在寅大統領は、何故破棄が必要なのか力説していた。しかし、22日急転直下、破棄が撤回された。それには米国の行政府ばかりでなく、議会を巻き込んだ圧力があったからである。 文氏以前の韓国であれば、米国が反対すれば主張を曲げていたであろう。しかし、文在寅政権は最後まで破棄に固執した。それは、日米韓の連携よりも、国民の「破棄すべきだ」との声を尊重したからである。直前の世論調査でも破棄賛成51%、反対29%であった。 文大統領にとって国民、特に革新系支持層の声を無視したくなかったのであろう。反面、「国民との対話」で「日米韓連携の見地から慎重に検討している」と言えば、これだけの世論調査結果の差は開かなかったのではないか。結果として、国民に寄り添ったつもりが、自身の立場を苦しめる結果となってしまった。 突然撤回を言われれば国民はいっそう反発する。破棄したくない気持ちがあっても、破棄撤回する可能性も考慮するのが政治ではないか。あらかじめ破棄撤回の可能性を指摘しておけば、破棄撤回しなくても支持は減らない。しかし、破棄を強行する姿勢を示したことで最悪の事態を招いたと言えよう。こうした、状況が撤回会見後の発表をめぐる混乱を招いた。 22日、日韓両政府が時刻を合わせて記者会見し、破棄撤回を発表した。その際、発表ぶりについても合意があったと韓国側は主張する。しかし、その内容は日韓の間で局長級の対話をするという簡潔な内容であったのだろう。韓国側は簡潔に説明し、会見を終了している。しかし、日本側は対話は行うが輸出管理の見直しの協議に合意したのではなく、あくまでも韓国側から説明を聞くという点を説明した。これは韓国側からすれば、余計なことを言ってくれたということなのであろうし、韓国側の立場を苦しくしてくれたということであろう』、「日韓両政府が時刻を合わせて記者会見」、通常であれば、互いの発表を擦り合わせるが、今回はそれぞれが言いたい放題となった異例の形だ。
・『大統領府の鄭義溶国家安保室長は24日、記者会見し、GSOMIA破棄撤廃をめぐる合意内容に関し、日本が意図的に歪曲して発表したのは遺憾である、と表明した。鄭氏は、経済産業省が22日、韓国が輸出管理の問題点を改善する意欲を示したとしたのは「完全に事実と異なる」と述べ、日本側が謝罪したと主張した。さらに、日本の輸出規制強化の撤回を協議するというのが合意内容だったと説明した。日本側は韓国の主張の内容にいちいちコメントしないかったものの、謝罪したという事実は否定した。これで十分事態は説明できると言えよう。 破棄撤回を巡って、日本側は泰然自若としていたが、韓国側は右往左往していた。それだけ、韓国側に困難があったということであり、日本側に理解して欲しいという甘えがあったのであろう。しかしこれまでの韓国の対応に鑑み、日本側には韓国に配慮する気持ちはなく、事実を事実として伝えただけである。 発表の当初、韓国の「共に民主党」は「文大統領が展開した原則ある外交の勝利」と礼賛し、外交当局も「強制徴用問題が解決できなければ輸出規制も解除できないという日本の連携戦略を我々は輸出規制とGSOMIAを連携させる戦略で対抗し闘い破った」と成果を持ち上げた。 しかし、韓国のマスコミは違った。中央日報は23日の社説で、文政権の「強硬一辺倒の未熟な対応策が示した限界だ」と指摘し、朝鮮日報も「無能外交が恥ずかしい」と批判している。保守系新聞ばかりか、これまで文在寅政権を擁護してきた革新系のハンギョレも23日の社説で、「政府の発表内容が、日本の輸出規制撤廃を要求してきた私たち国民の目の高さには達し得ないとの指摘は避けがたい」と述べ、革新系もこの合意を支持しないことを明らかにした。 対話の内容に認識の差があれば対話の過程で必ず露見する。韓国側が国内的にどのように説明しようとも、事実は明らかになる。日本側には韓国の輸出管理の強化を変える気持ちはないということである。 韓国側としては、日本からの譲歩がない場合どう出てくるか。今回の流れの中での教訓は、「日本は原則的な問題では降りない」ということである。しかし、韓国政府として全く何も取れずに妥協したとなれば、反日姿勢を有する革新系支持層は納得しないであろう。他方、再度GSOMIA破棄の愚に出ることは米国との関係で難しい。そうなった場合、韓国はどう出るか。元徴用工問題で日本に対抗しようとするかもしれない。韓国の動きには目を離せない』、「韓国のマスコミ」が「革新系もこの合意を支持しないことを明らかにした」、文在寅政権にとっては大打撃だろう。「来年4月には国会議員選挙」はどうなるのだろう。

第三に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が11月27日付け東洋経済オンラインに掲載した「GSOMIA破棄延期、日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/316472
・『協定失効のわずか6時間前に韓国政府が「破棄通告の効力を停止する」と発表して事なきを得たかに見えた「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)騒動」だが、日韓の間では早くも、日本側の説明に韓国政府が抗議し、「謝罪した」「謝罪していない」というレベルでもめている。 安倍晋三首相が「日本は一切、譲歩していない」と発言したなどという報道に、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長が予定外の記者会見で「良心の呵責を感じずに言える発言なのか」と批判したのだ。輸出管理問題で局長級の協議が始まり、日韓の関係悪化が一息つくのではと期待されたが、内実はそんな生易しいものではなさそうだ』、「内実」を知りたいところだ。
・『撤回求め、アメリカが韓国に強い圧力  日韓の政府関係者に聞いてみると、今回はアメリカの韓国に対する圧力がそうとう強烈だったようだ。しかも、ホワイトハウスと国務省、国防省、議会が珍しく足並みをそろえ、次々と韓国に撤回を求めてきた。ここぞというときは腕力を振りかざし、有無を言わせず相手を従わせるアメリカらしい手法だ。これでは韓国はひとたまりもなかっただろう。 エスパー国防長官をはじめ、国務、国防両省の幹部が相次いで訪韓し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はじめ韓国政府要人に激しい言葉で撤回を求めた。表には出ていないが、日本批判の急先鋒で今回のGSOMIA破棄の旗振り役だった金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長に対しては、ホワイトハウスのポッティンジャー大統領副補佐官らが繰り返し撤回を要求したという。 国防省は同時に、在韓米軍経費の韓国の負担を一気に5倍の50億ドルに増やせと要求した。韓国が硬い姿勢を見せると、3回目の協議で開始わずか80分で席を立つというパフォーマンスも見せた。 また、軍人出身のハリス駐韓米大使は韓国議会幹部とのお茶の席で「5billion」という言葉を20回以上も繰り返し、韓国側を「こんな無礼な大使は初めてだ」とあきれさせた。11月21日にはアメリカ議会上院が「域内の安全保障協力を阻害しかねない」と、韓国を一方的に批判する決議を採択した。 普段はトランプ大統領の暴走への反発から足並みのそろわないアメリカ政府や議会だが、今回は珍しく歩調を合わせて韓国に対応した。大統領選を控え、対中貿易摩擦や米朝協議などで成果を上げたいトランプ大統領は、中国や北朝鮮を利するような韓国の行動を受け入れられなかった。 一方、国務省や国防省は、安全保障政策の観点から中国やロシア、北朝鮮を勢いづけ、アメリカ軍の負担が増えるような韓国の対応を容認できなかった。つまり主要プレーヤーの利害が一致したということだ』、「アメリカ議会上院が・・・韓国を一方的に批判する決議を採択」、韓国系のロビイストは慰安婦問題などで強力といわれるが、今回ばかりは神通力は及ばなかったようだ。「在韓米軍経費の韓国の負担を一気に5倍の50億ドルに増やせと要求」、日本に対しても同様の要求をしているが、トランプ政権としては、同盟関係よりもアメリカ・ファーストなのだろう。
・『行き詰まる韓国の外交  一方の韓国だが、外交面ではこのところ、やることなすことすべてがうまくいかず、完全に行き詰まっている。文在寅政権は「起承転北」と揶揄されるほど北朝鮮との関係改善を最優先し、さまざまなアプローチを続けているが、まったく相手にされていない。 日韓がGSOMIAでもめている最中の10月下旬には、金正恩委員長が金剛山観光地区を視察し、韓国側が建設し、南北協力の象徴的存在でもある観光施設の撤去を命じた。文在寅大統領の母親の葬儀の日には、ミサイル発射実験をぶつけてきた。 そして、GSOMIA撤回期限ギリギリの11月21日には、文大統領が金委員長に呼びかけていた釜山で開催される予定の「韓国ーASEAN特別徴用首脳会談」への招待に対し、金委員長は「釜山に行くしかるべき理由を見つけられなかった」と拒否してきた。 韓国に対する嫌がらせの連続だが、金委員長にしてみれば、トランプ大統領との交渉を最重視しているときに、韓国にあれこれ余計なことをされたくないということなのだろう。 中国との間もTHAADミサイル配備以後、関係は悪化したままだ。7月には中国とロシアの戦闘機などが韓国の防空識別圏(KADIZ)に無断侵入する軍事演習を行い、韓国政府関係者を驚かせた。 日本は、韓国が自由や民主主義を共有する仲間であり、経済のみならず安全保障の分野でも日米韓3カ国が緊密な連携を取るのは当たり前だと考えている。しかし、韓国の外交的立ち位置は複雑だ』、「行き詰まる韓国の外交」、は確かに明らかだ。
・『韓国の置かれた特殊な外交環境  アメリカ、中国、ロシア、そして日本という大国に囲まれた韓国は、どこか1つの国とだけ緊密な関係を構築する外交路線を選びにくい。アメリカは韓国に対し、GSOMIA継続以外にも、ファーウェイ製品の使用禁止やホルムズ海峡への軍隊の派遣、さらに中国を意識したインド太平洋戦略への参加や中距離ミサイル配備などを公式、非公式に求めている。しかし、文在寅政権はいずれの要求に対しても躊躇している。 もし韓国が日本と同じようにアメリカとの同盟関係に完全に依拠する政策を打ち出せば、中国との関係は決定的に悪化する。中国が最大の貿易相手国でもある韓国にとって韓中関係の悪化は、軍事的緊張が高まるだけでなく、経済的に深刻なダメージを被ることになる。それとは逆に中国依存度を高めれば、さらに大変なことになるだろう。 文在寅政権は米中いずれか一方に偏った対外政策は、結果的に韓国の国益を害すると考えているのだ。それだけに今回、アメリカの圧力に屈するような形でGSOMIA撤回を延期することは、文政権にとっては屈辱的なことであろう。 日本政府の中には「今回は韓国の自作自演に終わった」「日本政府は完全に筋を通しており、何も譲歩していない」と、まるで交渉に勝ったような声が出ている。しかし、事はそれほど単純ではない。そもそもGSOMIA破棄を当面、回避したからと言って、日韓両国間に横たわる深刻な問題の解決の糸口が見いだせたわけではない。 最大の問題である大法院の徴用工判決と日韓合意に基づく「和解・癒し財団」の一方的解散などの問題について、安倍政権は韓国の対応を見守るだけで日本からは動かないというのが基本姿勢だ。12月の日中韓首脳会談の機会を捉え、日韓首脳会談も検討されているが、あくまでもボールは韓国側にあるとして静観の構えだ。 今回はアメリカが積極的に動いたことで最悪の事態は免れた。しかし、すでに紹介したようにアメリカは日韓両国のために動いたわけではなく、あくまでも自国の利益のためであり、それがたまたま日本の要求と合致しただけのことだ』、確かにアメリカにとっては、「徴用工」問題はどうでもいいことで、日韓いずれかに肩入れする理由はないだろう。
・『展望の見えない日韓関係  過去にもアメリカは、日韓関係が悪くなると調整役を果たしている。1965年の日韓国交正常化もアメリカの働きかけが背後にあった。アメリカが動いたのは、冷戦を背景にソ連に対峙するために日韓両国との連携を重視するという国益追求が理由だった。 安倍首相とトランプ大統領が緊密な関係にあるから、アメリカはいつでも日本の求めに応じて動いてくれると考えるのは間違いである。とくに徴用工や慰安婦問題などの歴史問題について、アメリカが積極的に関与することはないだろう。むしろ安倍首相が靖国神社参拝をしたとき、アメリカの国務省が「失望した」という厳しいコメントを出すなど、日本に対して批判的だったことを忘れてはならない。 日韓間の懸案がこのまま何の進展もなければ、2020年に入ると徴用工判決に基づいて差し押さえられた日本企業の資産の現金化が現実のものになる。そうなると日韓対立はさらに激しくなるだろう。直後の4月に韓国の総選挙が予定されていることから、文大統領はこのタイミングで妥協することはできまい。そうなると、いよいよ展望の描けない深刻な状況に陥ってしまう。 今、韓国内では文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が中心になって、「韓日両国企業と国民の自発的な寄付で作った基金を通した賠償案」が検討されている。また日本企業側もいつまでもこの問題を抱えていたくないと、早期決着を望んでいるとも聞く。お互いに疑心暗鬼の中で合意を形成することは困難極まりないことであろうが、そろそろ両国関係者が知恵を絞って、包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている。 日韓両国間の局長級協議や首脳会談は、そうした道を描くための生産的なものにするべきであろう』、「包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている」、正論だが、当面、韓国国会議員選挙の結果や、文在寅政権の出方を見極めるのが先決だろう。
タグ:日韓関係 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン JBPRESS 細川昌彦 薬師寺 克行 (その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を) 「韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く 国内向けのメンツに腐心する韓国」 (GSOMIA)破棄を巡る騒動は韓国の“独り相撲”だった 「対話」を「協議」にすり替えて強弁する 「WTO提訴の中断」のカードで「政策対話の再開」を買った 韓国のメンツ作戦に乗せられた日本の報道 かつての“空騒ぎ”も反省を 韓国の半導体産業に大打撃」「世界の半導体関連の供給網に懸念」と報じられた。そういう不安をあおる論者のコメントをメディアもしきりに取り上げた 武藤 正敏 「GSOMIAで方針転換、動揺する文在寅の支持層 革新系支持層へのアピールのため「徴用工問題」を持ち出す可能性も」 文在寅政権の政策は国内革新系の支持獲得が目当て 所得主導政策で韓国経済は崩壊の危機に 検察改革の方向性は支持しても、曺国法務部長官には反対 革新層の期待を裏切るGSOMIA破棄撤回 「GSOMIA破棄延期、日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を」 撤回求め、アメリカが韓国に強い圧力 行き詰まる韓国の外交 韓国の置かれた特殊な外交環境 展望の見えない日韓関係 そろそろ両国関係者が知恵を絞って、包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている
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M&A(コクヨVSぺんてる)(その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは) [企業経営]

M&A(コクヨVSぺんてる)については、6月1日に取上げた。今日は、(その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは)である。

先ずは、6月17日付け日経ビジネスオンライン「ぺんてる、望まぬコクヨとの“縁談”、仲介役の言い分とは」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00050/061200001/?P=1
・『筆記具大手のぺんてるが、望まぬ相手との“縁談”に反発している。その相手とはコクヨ。両社を結び付けたのは、ぺんてるの筆頭株主である投資会社だ。株主としてガバナンスを利かせる狙いがあったというが、とても一緒になれる状況にはない。株主ガバナンスの難しさが浮かび上がる。 5月半ば。筆記具大手、ぺんてるの和田優社長は急きょ、従業員を集めて、こう宣言した。「(今回の)一方的な行いは極めて遺憾。青天の霹靂(へきれき)だ。会社としての独立性を今後も維持する」 一方的な行い、とは何なのか。 ぺんてるの筆頭株主は東証1部に上場している投資会社のマーキュリアインベストメントが運営するファンド(37%を出資)だ。そのマーキュリアは2018年、ぺんてるの創業一族から保有株を譲り受け筆頭株主になった。 このファンドに同業のコクヨが5月10日に101億円を出資、間接的とはいえ事実上、ぺんてるの筆頭株主になった。これが和田社長の言う「一方的な行い」だ。 ぺんてるが反発するのは、未上場の同社の株式には、売買時に取締役会の承認が必要な譲渡制限がついているためだ。ファンド側は「ファンドへの出資者が変わっただけで、ファンドがぺんてる株を持っている状態に変わりはなく違法ではない。大手弁護士事務所のお墨付きももらっている」とするが、ぺんてる側は「当社取締役会の承認が必要な株式譲渡につながるような、当社株式を保有する組合出資持ち分の譲渡を決定、しかも公表直前に当社に連絡があった事実は大変遺憾」とし、脱法行為だと反論する。 和田社長が怒る理由はほかにもあった。実は水面下で文具大手のプラスとの資本提携協議を進めていたからだ。「プラスとの交渉をつぶされ、突如、コクヨと組まされるなんて」。これが和田社長の思いだろう。 マーキュリアは社外取締役をぺんてるに送り込んでいるため、プラスとの提携協議の中身も把握していたという。だがマーキュリアは「プラスとの提携内容はぺんてるにとって不利な内容が多かった。一緒に立ち上げるとされた共同出資会社も株のマジョリティーはプラス側だったし、ぺんてるが利益を上げるには相当な売り上げ増を必要とする無理な計画に見えた」と判断した』、ファンドをを通じた株式取得で、「譲渡制限」をかいくぐるとは巧妙なやり方だが、後日、コクヨはこれを何故か承諾したようだ。
・『「プラスと組むと企業価値が毀損する」  マーキュリアがコクヨを引き込んだのは「今の計画でプラスと組むとぺんてるの企業価値が毀損する」と感じたからだ。そしてコクヨはぺんてるが今後も成長が期待できる中国事業に強みを持つため「一緒に成長できる」と判断した。 投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明する。 経営陣が画策した提携話に筆頭株主がノーを突き付け、代わりの提携先をあてがった。今回の話を一言で言うとこうなるだろう。仮にプラスとの提携が本当にぺんてるにとって利益を生まないのであれば、今回の動きは筆頭株主によるガバナンスが利いた事例となる。 もちろん、コクヨと組めばぺんてるの企業価値が上がるという保証もない。現経営陣がコクヨに反発している現状ではなおさら、そのハードルは高い。 ぺんてるは「コクヨと業務提携について協議を行っている事実はない。本件取引が当社との一切の協議なく実行された背景・真意等について確認をさせていただいている状況。いかなる場合においても企業間の関係構築は相互の信頼感が基盤となるべきだ」とコメントしており、現状ではなかなか実のある議論に入ること自体が難しそうな状況だ。 ぺんてるは2018年3月期の連結売上高が409億円。一方でコクヨは18年12月の連結売上高が3151億円と企業規模では大きな開きがある。独立性を盾に態度を硬化させている和田社長の心の中には、このままだと将来、コクヨに飲み込まれてしまうのではないか、という思いがあるのかもしれない。 いずれにしろこの事例は、非公開企業も今や株主ガバナンスとは無縁ではいられない、という教訓と同時に、株主ガバナンスを行使した結果、経営陣とのあつれきで企業価値向上どころではない泥沼に陥るリスクもある、という副作用にも気づかせてくれる。ガバナンスは使い道を一歩間違えると、劇薬にもなりかねない、極めてさじ加減の難しい処方箋なのだ』、「投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」、本当にこうした判断したのであれば、当否は別として。投資ファンドがガバナンスに強く影響した初の事例になる。

次に、経済ジャーナリストの重道武司氏が10月3日付け日刊ゲンダイに掲載した「コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/262685
・『因果は巡る――といったところか。7年前のクーデターで創業家出身社長を追い出した老舗筆記具メーカー、ぺんてる(東京・中央区)の経営陣が今度は、回り回って創業家保有株を手に入れた業界最大手、コクヨによってその軍門に下る形となった。 ぺんてる経営陣が取締役会で古参役員らの退任を求めた堀江圭馬社長(当時)に解任動議を突き付け、返り討ちにしたのは2012年5月のこと。後任に納まったのが現社長の和田優氏だ。 堀江氏は返り咲きを策したものの、他の創業家一族らの反対で失敗。18年3月、やむなく、保有していた発行済み株37・45%を日本政策投資銀行系の上場投資会社、マーキュリアインベストメントの設立した受け皿ファンドに約70億円で売り払った。 ところが今年5月、マーキュリアが、そのファンドを101億円でコクヨに転売。コクヨが実質的な筆頭株主に躍り出たのだ。水面下で業界2位、プラス(東京・港区)との資本業務提携を模索していたぺんてる経営陣はこれに強く反発。「間接出資の経緯が不透明で、信頼関係が築けていない」などとして、コクヨが求める業務提携協議にも応じない姿勢を示してきた』、「ぺんてる」に「7年前のクーデター」があったとは初めて知った。「因果は巡る」はまさに言い得て妙だ。
・『とはいえ収益環境が厳しさを増す中、対立の長期化は企業統治の混乱を招くだけ。取引先などから早期の事態収拾を促す声も上がり、先週になって一転、コクヨの直接出資受け入れに踏み切ったのだ。コクヨはファンドから保有ぺんてる株を譲り受け、ぺんてるを持分法適用会社とする。 ぺんてるは1911年東京・浅草で創業の卸問屋「堀江文海堂」が母体。世界21カ国に販売拠点を持つなどグローバル展開で先行し、グループの海外売上比率は6割を超える。ただ最近はヒット商品不在で国内が苦戦。19年3月期の単体売上高は235億円と前期比2・2%の減収となり、営業利益は0・72億円と同86・8%の大幅減益に陥った。コクヨとの協業を進めることで生き残りを目指す。 もっとも、コクヨも国内文具事業は低迷気味。当面は調達や物流機能の一本化など、経費面での相乗効果をどこまで引き出せるかが焦点になりそうだ』、「コクヨの直接出資受け入れ」後に、次の記事にあるように、泥沼化したようだ。

第三に、11月20日付け東洋経済オンライン「コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/315366
・『文具業界最大手のコクヨは11月15日、筆記具4位・ぺんてるの株の過半数を取得し子会社化すると発表した。コクヨはぺんてる株の約38%を保有しているが、1カ月後の12月15日までに、ぺんてるの既存株主から1株3500円で買い取り、議決権比率を50%超にまで引き上げる方針だ。費用は約38億円を見込む。 ぺんてるは即日、「コクヨの一方的かつ強圧的な当社の子会社化方針に対し強く抗議します」というリリースを出し、コクヨによる買収に徹底抗戦する構えを見せた』、事態が急変した背景はどんなものなのだろう。
・『食い違う両社の主張  ことが複雑なため、時計の針を半年ほど巻き戻す。 コクヨは5月、ぺんてるの筆頭株主だった投資会社が運営するファンドに出資することで、ぺんてる株を間接保有した。ぺんてるの和田優社長は当時、社員に「青天の霹靂だ」と述べ、投資会社とコクヨに反発する意思を見せた。 だがその後、業務提携に向けた協議や互いの工場視察などを重ね、9月にはコクヨが株を直接保有することを容認。コクヨは投資会社からぺんてる株を取得し、直接保有に切り替えた。コクヨが名実ともに、ぺんてるの筆頭株主になったのだ。 両社は12月上旬にも業務提携を発表することを目指していた。それがここにきて、コクヨが「一方的かつ強圧的」にぺんてるを子会社化すると発表したのは、なぜなのか。 ぺんてるは先のリリースで「(コクヨの発表は)当社に対し一切の相談や協議なく行われた」と抗弁したが、コクヨが明らかにしたこれまでの経緯、事実関係は、ぺんてるの説明とは大きく食い違う。 コクヨが会見やリリースで明らかにしたところによれば、ぺんてるは海外事業の提携については継続して協議していたものの、国内事業の提携協議については一転、消極的になった。コクヨは会計監査上、ぺんてるに出資したことを裏付ける資料が必要となったため、ぺんてる経営陣に株主名簿の開示を求めたが、これにもぺんてるは応諾しなかった。 両社にギクシャクした空気が流れ始めていた10月16日、コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた。「K社」による「PE社」の株式過半数取得を阻止するためとして、「PL社」が「PE社」の株式を取得すること、すなわち「PL社」と「PE社」が資本提携するのが望ましい旨が記されていた。ぺんてるの「内部文書」だった。 10月29日には2通目の封書が届く。やはり差出人不明で、そこには「PE社」と「PL社」の資本提携の具体的なスケジュールが記されていた。 K社をコクヨ、PE社をぺんてるとするとPL社は、コクヨに次ぐ総合文具2位のプラス社だ。ただ、コクヨの売上高は3151億円(2018年度)、プラスのそれは1772億円(同)と、両社の企業規模には開きがある。この文書に記されていることが事実であれば、ぺんてるは、筆頭株主コクヨの知らぬところで、コクヨをライバルとするプラス社と資本提携の協議を進めていたことになる』、「コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた」、「ぺんてるは、筆頭株主コクヨの知らぬところで、コクヨをライバルとするプラス社と資本提携の協議を進めていた」、とは驚かされた。
・『「密告書」に書かれていたこと  穏やかならぬ「通知」に驚いたコクヨ経営陣は11月11日、2通の文書を持参してぺんてる本社に乗りこみ、和田社長と小林健次取締役に、文書の真偽をただした。和田社長は否定しなかったという。コクヨはその場で、第三者との間では資本業務提携に関する協議を行っていないことを誓約する「誓約書」案を渡し、翌12日17時までにぺんてる経営陣で決議、押印してコクヨに提出するよう求めた。 だが、ぺんてるは回答しなかった。そのかわり翌13日、コクヨが誓約書の提出を求めたことを「遺憾」とする書面を提出。しびれをきらしたコクヨは15日、緊急記者会見を開き、ぺんてる買収を決断するに至った経緯をマスコミに公表した。黒田英邦代表取締役社長は、ぺんてるがコクヨの知らぬところで第三者と資本提携の協議を進めていたことについて「青天の霹靂だ」と、和田社長に意趣返しをしてみせた。 ぺんてるには「密告書」が誤算だった。上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされたからだ。 社内の極秘文書をコクヨに送ったのは誰なのか。文書には具体的に何が書かれてあったのか。ぺんてるはもちろん、コクヨもその中身については伏せたままだが、東洋経済は業界関係者への取材を通じて、その文書を入手した。 文書に記されてあるのは、コクヨの支配力を弱めるにはどうすればよいか、の策だ。「K社による子会社化を防ぐ」ためとして、プラス社が、コクヨの持分割合を上回る「40%」を保有する案が挙がっている。40%という数字は、コクヨが持つ約38%よりは多く、かつ、ぺんてるを子会社化する過半数には満たない、そのような数字だ』、「上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされた」、ぺんてる上層部にも反和田社長派がいるのだろう。
・『文書にはまた、ぺんてる経営陣に近い与党株主が株主全体の3分の1いることを前提に、「K社による過半数取得を阻止するという観点からは当該対象株式のうち約18%を取得することにより、仮に残株式(の議決権行使委任状)をK社が取得したとしてもその議決権行使割合は50%を超えないことから、下限を18%とすることも考えられます」と、コクヨに過半数を握られないための取得率の下限まで提言している。 文書には作成者のクレジットとして、ASPASIO(東京都中央区、田中康之社長)という会社名が記されている。ASPASIOはファイナンシャルアドバイザリー業務を主とする会社で、長年、ぺんてるの財務コンサルを担ってきた。 上層部しか知りえない極秘文書を外部にリークするだけでなく、ぺんてるの意思決定に携わるコンサル会社、顧問契約する法律事務所、マスコミ対応を担うPR会社名まで記載された文書を、当のコクヨに送付しているところから推測するに、この文書はぺんてる上層部の何者かによる「密告書」であり「内部告発の書」といえそうだ』、コクヨが怒り心頭に発して、完全支配に切り替えたのも頷ける。
・『コクヨは現経営陣の退陣を要求  その人物は、なぜそこまでのリスクを冒したのか。 コクヨの発表後、ぺんてるの和田社長が一部の幹部社員に向けて出したメッセージが出回っている。そのメッセージで和田社長は、プラス社との資本業務提携の協議を進めてきたことは事実であることを明らかにしている。社長みずから「密告書」の中身とコクヨの主張を認めた格好だ。 ぺんてるはもはや、プラス社との資本提携協議を隠さなくなりつつある。だが、ぺんてるが15日に発表したリリースや、その後、幹部向けに出したメッセージには、プラスとの提携を進めることによってどのようなメリットがあるのか、言及はない。 ぺんてるは非上場企業のため、株式には取締役会の承認がなければ売買ができない譲渡制限がついている。その壁を打開するため、コクヨは既存株主から株を買い取る際に株主総会の委任状もセットで取り付ける考えだ。ぺんてるが取締役会で譲渡を却下すれば、臨時株主総会を招集し、現経営陣を退陣させたうえで、新しい経営陣に譲渡を認めさせる。 コクヨのやり方を「強引すぎる」と見る向きもある。それでも、ぺんてるの上層部から「密告書」あるいは「内部告発の書」がコクヨに寄せられてしまうのは、現経営陣に確たるビジョンが見当たらないからではないか。 コクヨとぺんてる&プラス連合は、これから約1カ月間、株の争奪戦、プロキシーファイトを繰り広げる。そこでは買い取り価格だけでなく、市場低迷する文房具業界をこれからどうしていくのか、ビジョンこそが競い合われるべきだろう』、「ビジョンこそが競い合われるべき」、その通りだ。

第四に、11月26日付け東洋経済オンライン「激化する「ぺんてる株争奪戦」、揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/316349
・『総合文具業界トップのコクヨ(2018年度売上高3151億円)と、業界2位のプラス(同1772億円)が、筆記具4位ぺんてる(同235億円)の株の争奪戦で激しい攻防を繰り広げている。 11月15日、コクヨがぺんてる株を1株3500円で買い受ける方針を示すと、プラスは11月20日、単独出資で立ち上げたジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(JSC)がコクヨと同額の3500円で買い受ける方針をリリースした。 これにコクヨは即座に反応し、買い付け価格を3750円に引き上げると発表。一歩も引かない姿勢だ』、買収合戦とは面白くなってきた。
・『狭間で揺れ動くOB・OGたち  コクヨの強みは厚い資本に裏打ちされた事業構想、そしてぺんてる株の38%をすでに保有する筆頭株主である点にある。対するプラスは、ぺんてるの現経営陣に請われた「ホワイトナイト」という役回りだ。11月23日付の日本経済新聞でプラスの新宅栄治常務取締役は、「(ぺんてるとは)経営において非常に共感できる関係」とし、ぺんてるの和田優社長も「プラスとは6年の付き合いであうんの呼吸」と相思相愛ぶりをアピールした。 プラス&ぺんてる連合vs.コクヨ。両陣営の狭間で今、揺れ動いているのが、ぺんてるのOBやOGたちだろう。未上場会社であるぺんてるにはOB・OGの株主が多いとみられる。OBやOGたちは、「ぺんてるの未来」をどちらに託すのがいいのか、考えあぐねている。 「コクヨ株式会社が、突然、ぺんてるに対して敵対的な買収を始めています」「経営陣も、コクヨの、突然かつ一方的な動きに大変困惑しているとのことです」ぺんてるの株主に宛てられた、11月20日付けの手紙。差出人は、ぺんてる元社長の水谷壽夫氏だ。 「株主の皆様へ」と題する手紙は、次のように続く。「ぺんてるの経営陣は、ぺんてるのために、株主の皆様のために、プラス社からの提案であるジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(JSC)による当社株式の買受け提案を承諾しました。是非、コクヨへの敵対的な買収の提案に応じることなく、ぺんてるの経営陣が最善と考えるJSCからの買受けにご応募いただきますよう、そして、将来にわたりぺんてるの価値を守っていただきますよう、ひたすらにお願い申し上げる次第です」 水谷氏は今年6月に開かれたぺんてる株主総会の前にも、経営陣に自社株買いを求める株主提案がなされたことに、「(この提案が通れば)会社の存続そのものを危うくしかねない」と、提案に賛成しないよう株主やOBたちに呼びかける役を買って出た。ぺんてる経営陣にとっては、どこまでも自分たちの味方をしてくれる後ろ盾のような存在だ』、「水谷氏」が社長だったのは、解任された「堀江圭馬」氏よりも前で、だいぶ昔のようだ。
・『暗証に乗り上げたプラットフォーム構想  一方、11月24日付で「ぺんてるを愛する皆様へ」というメッセージを出したのが、ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏だ。 池野氏は「今回のコクヨとプラスの一連の騒動に多くのOBの方々がご心配され、株主の皆さんも頭を悩ませていらっしゃることでしょう。私にもOBの方々から相談が寄せられています」とOBらの苦悩を推し量る。そのうえで、「私は、現在のぺんてる経営陣の考え方には大反対です」とプラス&ぺんてる連合に反対する意向を示した。 その趣旨は、JSCが買い取った株は実質的にプラスのものになるが、それでいいのかというもの。「プラスの昨今のM&Aは、その結果をみても乗っ取りに近いようなブランド軽視の事例もあります。そしてぺんてるの有力卸チャネルの皆様もプラスの強引なやり方(メーカー販社連合)には強く反発しています」。 メーカー販社連合とは、プラスとぺんてるの2社が軸となって国内営業窓口を一本化し、新たなプラットフォームを築く構想のことだ。これまで文具メーカーはそれぞれ独自の卸・販売店網を築き上げてきた。それを両社で統一して、国内販売の強化を図ろうとした。 販社連合にはもう一つの狙いがある。「対コクヨ」政策だ。連合にはプラスとぺんてるのほか、ラベルプリンタ「テプラ」をヒットさせたキングジムや、「セロテープ」で有名なニチバンなども合流する構想があった。そうした連合を作ることで、規模に勝るコクヨに対抗しようとしたのだ。販売連合はプラス経営陣が主導する形で進められ、昨年5月には新社名案を「コーラス」と発表、社長にぺんてるの和田氏が就く案までできあがっていた。 ところが、足下から反旗が上がる。ぺんてる社員、とりわけ販売畑の従業員たちが、「これまで協力してくれた卸売会社を裏切ることになる」「雇用が維持されるのか不安が残る」といった理由で反対したのだ。全国の文具流通業企業の大手複数社からも反対声明が出され、販社連合は暗礁に乗り上げた』、プラスとの間に「暗証に乗り上げたプラットフォーム構想」があったとは初めて知った。
・『ぺんてるの経営陣も、そのトラウマは癒えていない。コクヨがぺんてるを子会社化すると発表した翌週の11月18日、ぺんてるの和田社長は一部の幹部社員向けにメッセージを送っているが、そこで販社連合についても触れている。 和田社長は、「プラットフォーム会社について、その実施については一切検討を行っておりません。皆様に以前お話させていただいた通り、プラットフォームは社内でのコンセンサスが得られない限り、プラス社との協議は行いません」と念を押すように説明している。 それに対して池野氏は、「ぺんてるというブランドや社員たちを守るという意味でも、まずは状況を冷静に見極められたうえで、今の経営陣の判断に異を唱え、安易に現経営メンバーやプラスの誘いに乗られないようにお願い申し上げます」と、メッセージを締めくくっている。 池野氏は長年、ぺんてるの営業のリーダーを務め、OB会の「ご意見番」的な存在でもある。それだけに池野氏の言葉には一定の重みがある。そして今回の混乱の遠因には、国内の営業戦略を巡るぺんてる社内の対立があるのだ』、「国内の営業戦略を巡るぺんてる社内の対立」、とは一朝一夕で解決できる問題ではなく、深刻だ。しかも、「ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏」が「今の経営陣の判断に異を唱え」ているとは、コクヨには有利な材料のようだ。 
・『プラスは他社にも出資を呼びかけ  水谷氏の必死の訴えと、冷静な判断を求める池野氏の呼びかけ。ぺんてるOB・OGは揺れている。 過半の株式取得を目指すコクヨに対し、プラスはぺんてるの資本的な独立を維持する方針。さらにプラスは「(JSCに)他のメーカーの参画を期待しております」と、他社にも出資を呼びかけている。一部報道では、新販売連合への合流も検討されたキングジムやニチバンがJSCに参画する意思があるとされた。 キングジムもニチバンも今後のJSC参画には含みを持たせているが、現在までのところ、両社は報道内容を否定している。12月中旬にも決着がつくコクヨとの株争奪戦には、プラス1社だけで臨むことになりそうだ。 総合文具業界1位と2位によるぺんてるの争奪戦は、今後の業界再編にも影響を及ぼす。キャスチングボードを握るぺんてるのOB・OGたちは、「ぺんてるを愛する」がゆえに、しばらくは苦悶の日々を過ごすことになる』、さて最終的にどうなるか、大いに注目したい。
タグ:プラス 東洋経済オンライン M&A 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン (コクヨVSぺんてる) (その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは) 「ぺんてる、望まぬコクヨとの“縁談”、仲介役の言い分とは」 投資会社のマーキュリアインベストメントが運営するファンド マーキュリアは2018年、ぺんてるの創業一族から保有株を譲り受け筆頭株主になった このファンドに同業のコクヨが5月10日に101億円を出資、間接的とはいえ事実上、ぺんてるの筆頭株主になった ファンド側は「ファンドへの出資者が変わっただけで、ファンドがぺんてる株を持っている状態に変わりはなく違法ではない 水面下で文具大手のプラスとの資本提携協議を進めていた プラスと組むと企業価値が毀損する マーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明 重道武司 「コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報」 7年前のクーデターで創業家出身社長を追い出した 今度は、回り回って創業家保有株を手に入れた業界最大手、コクヨによってその軍門に下る形となった 対立の長期化は企業統治の混乱を招くだけ。取引先などから早期の事態収拾を促す声も上がり 一転、コクヨの直接出資受け入れに踏み切った グループの海外売上比率は6割を超える 最近はヒット商品不在で国内が苦戦 「コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展」 食い違う両社の主張 コクヨは投資会社からぺんてる株を取得し、直接保有に切り替えた 両社は12月上旬にも業務提携を発表することを目指していた コクヨが「一方的かつ強圧的」にぺんてるを子会社化すると発表 ぺんてるは海外事業の提携については継続して協議していたものの、国内事業の提携協議については一転、消極的になった コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた K社」による「PE社」の株式過半数取得を阻止するためとして、「PL社」が「PE社」の株式を取得すること、すなわち「PL社」と「PE社」が資本提携するのが望ましい旨が記されていた 2通目の封書 「PE社」と「PL社」の資本提携の具体的なスケジュールが記されていた 「密告書」に書かれていたこと 黒田英邦代表取締役社長は、ぺんてるがコクヨの知らぬところで第三者と資本提携の協議を進めていたことについて「青天の霹靂だ」と、和田社長に意趣返しをしてみせた 上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされた この文書はぺんてる上層部の何者かによる「密告書」であり「内部告発の書」といえそうだ コクヨは現経営陣の退陣を要求 市場低迷する文房具業界をこれからどうしていくのか、ビジョンこそが競い合われるべきだろう 「激化する「ぺんてる株争奪戦」、揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは」 コクヨと同額の3500円で買い受ける方針をリリース コクヨは即座に反応し、買い付け価格を3750円に引き上げると発表 狭間で揺れ動くOB・OGたち ぺんてる元社長の水谷壽夫氏 ぺんてる経営陣にとっては、どこまでも自分たちの味方をしてくれる後ろ盾のような存在だ 暗証に乗り上げたプラットフォーム構想 ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏 ぺんてる経営陣の考え方には大反対 メーカー販社連合とは、プラスとぺんてるの2社が軸となって国内営業窓口を一本化し、新たなプラットフォームを築く構想 ぺんてる社員、とりわけ販売畑の従業員たちが、「これまで協力してくれた卸売会社を裏切ることになる」「雇用が維持されるのか不安が残る」といった理由で反対 プラスは他社にも出資を呼びかけ キングジムもニチバンも今後のJSC参画には含みを持たせているが、現在までのところ、両社は報道内容を否定 総合文具業界1位と2位によるぺんてるの争奪戦は、今後の業界再編にも影響を及ぼす
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ソフトバンクの経営(その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?) [企業経営]

昨日に続いて、ソフトバンクの経営(その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?)を取上げよう。

先ずは、11月16日付けダイヤモンド・オンライン「ヤフーとLINE統合の裏に、ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220849
・『ヤフーとLINEが経営統合に向けて協議を進めている。8000万人を超える顧客基盤を持ちながら赤字が続くLINEと、メッセージアプリが欲しいソフトバンクグループ。統合が実現すれば、ソフトバンクの野望である、日常のあらゆるサービスをスマートフォンのアプリ1つで解決する「スーパーアプリ」の実現に一歩近づく』、かつてインターネットの世界で、ポータルサイトを目指すブームがあったが、そのスマホ版なのだろうか。ちょっと乱暴過ぎる比喩なのかも知れない。
・『あらゆるサービスをワンストップで ペイペイが目指す「スーパーアプリ」構想  「スーパーアプリ」実現の野望とLINEの“救済”がマッチしたか――。 ソフトバンクグループでZホールディングス(HD)傘下のヤフーとメッセージアプリ運営大手LINEが経営統合に向けて協議していることが明らかになった。 ZHDは「協議を行っていることは事実」、LINEは「企業価値向上のための施策の一つとして検討を進めていることは事実」と14日にそれぞれコメントを発表し、経営統合の交渉について認めた。 関係者によれば、交渉はZHD側から持ち掛け、親会社のソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーを交えて協議を進めているという。ソフトバンクとネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立してその傘下にZHDを置き、ヤフーとLINEを子会社にする案が検討されている。来週中にも正式発表する。 ヤフーとLINEの統合で実現するものは何か。そのヒントとなるのが「スーパーアプリ」だ』、統合は18日に発表された。
・『「スマートフォン上であらゆる暮らしを便利にする“スーパーアプリ”を目指して、進化を続けていく」 11月5日、ソフトバンクの2020年3月期第2四半期の決算会見。宮内謙CEO(最高経営責任者)はこう宣言した。宮内CEOが期待を寄せるのは、ソフトバンクグループが全力で普及を目論むキャッシュレス決済サービス「PayPay(ペイペイ)」である。昨年10月のサービス開始から13カ月で利用者は1900万人を突破した。 ペイペイが目指すのは、単なる決済アプリに留まらず、ショッピングはもとより、ホテルやタクシーの予約から公共料金の支払い、さらには保険や投資まで、あらゆるサービスをワンストップで手掛けることができる存在だ。この構想の一環としてショッピング分野を強化するため、ZHDはアパレルECサイト大手ZOZOの買収に踏み切った スーパーアプリ構想を具現化した例として宮内CEOが挙げたのは、ソフトバンクグループの中国アリババが手掛ける決済サービス「アリペイ」である。実際にアリペイは決済だけでなく、レストランやチケットの予約、資産管理や保険、小口融資などサービスの幅を広げ、利用者数は6月に全世界で12億人を突破している。 ただ、宮内CEOはあえて言及しなかったのだろうが、中国にはアリペイと並ぶスーパーアプリがある。それがテンセントの手掛ける「ウィーチャットペイ」だ。 アリペイがリリースされたのは04年。一方、後発組のウィーチャットペイが登場したのは13年で、既に地盤を固めていたアリペイの牙城を崩すのは困難とみられていた。ところがウィーチャットペイは怒涛の勢いで成長し、中国のキャッシュレス決済市場におけるシェアはアリペイが約50%、ウィーチャットペイは約40%と一気に追い上げた。 ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたからだ。ウィーチャットは中国版LINEのような存在だが、規模はけた違いで、月間アクティブユーザ数は10.8億人に達している。 メッセージアプリはコミュニケーションツールとして1日に何度も使う。買い物のときだけ立ち上げる決済アプリと比べ、ユーザーとの距離は圧倒的に近い。頻繁に起動するアプリを“窓口”にすれば、周辺サービスをユーザーが目にする回数は必然的に増える。 8200万人というLINEの顧客基盤もさることながら、スーパーアプリの実現に向けて、毎日必ず起動してくれる顧客との接点が欲しかった。これこそZHDがLINEに手を伸ばした要因だろう』、「ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたからだ」、なるほど。
・『キャッシュレス決済は消耗戦 LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億  一方、メッセージアプリで一発当てたLINEもまた、サービスの幅を広げ、スーパーアプリを目指していた。ショッピングのほかにも、金融関係では昨年10月に損保ジャパン日本興亜と組んで「LINEほけん」のサービスを開始し、今年8月には野村HDとLINE証券を始めた。また、みずほフィナンシャルグループとLINE銀行の発足準備を進めている。 LINEニュースやゲームなど、一定のユーザーを獲得して成功している領域もあるが、多くはまだまだ発展途上だ。16年にはLINEモバイルを設立してMVNO事業に参入したが、最終的にソフトバンクに身売りする形となった。 現状のLINEの収益を支えるのは広告やゲーム、漫画などのコンテンツであり、LINEが抱える膨大な顧客基盤の活用を目論むものの、投資先行で苦戦が続いている。 とりわけ先行きが不透明なのが決済分野だ。キャッシュレス決済サービス「LINEペイ」は14年にサービス開始以降、着実に育ててきたのだが、ここにきて熾烈な競争に巻き込まれている。昨秋デビューしたペイペイが、支払額の一部を還元する「100億円キャンペーン」を連発して急成長したことに煽られたのか、LINEペイも今年5月に「300億円祭り」で対抗。体力勝負の消耗戦に突入した。 LINEの19年12月期第3四半期までの9カ月間で、売上高1667億円に対して営業赤字は275億円。広告などのコア事業は249億円の営業黒字だったにもかかわらず、LINEペイを含む戦略事業が524億円の営業赤字で、LINEペイの出血が大きな痛手になっている。 ペイペイもまた、20年3月期第2四半期までの6カ月間で売上高15.9億円に対して345億円の営業赤字を計上。とはいえ、年間の売上高が9兆円を超えるソフトバンクグループにしてみれば、ペイペイの出費の痛みはLINEほど大きくない。 スーパーアプリを目指すソフトバンクにとって、LINEは喉から手が出るほど欲しい存在だ。8200万人の顧客基盤に対してフルサービスを提供する余力に乏しいLINEの思惑とマッチしたことが、今回の経営統合を後押ししているのだろう』、これだけみれば、ソフトバンク、LINE双方にウィン・ウィンのように見えるが・・・。

次に、慶應義塾大学総合政策学部 特別招聘教授の下山 進氏が11月19日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ヤフトピよ、なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか」を紹介しよう。
・『「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそを載せる」。読売新聞からヤフーに移りヤフトピを創設した奥村倫弘(現東京都市大学教授)が当時のニュース部門の責任者・宮坂学(現東京都副知事)に言った言葉だ。このヤフー・ニュースの「公共性」は、ラインとの統合によってどうなるか。『2050年のメディア』(文藝春秋)でヤフー・読売・日経のこの20年の攻防史を初めて明らかにした下山進が分析する——』、興味深そうだ。
・『96年の誕生時から「ヤフー」の海外展開はできなかった  私は『2050年のメディア』を次のように終えている。 デジタル化とグローバル化の潮流に抗して企業は生き残れない。 ヤフー・ジャパンが、創業時の進取の気性をもって、ソフトバンクグループとともにグローバル化に挑むとすれば、それはそれで、また新たな心躍る物語の誕生ということになるだろう。 11月18日、ヤフーとラインの統合が正式発表され、川邊健太郎ヤフー社長と、出澤剛ライン社長の記者会見が行われた。ヤフーとラインの統合については、13日夜からニュースが流れ始め、14日の各紙朝刊はこぞってこれを書いた。多くの記事は、ペイペイとラインペイの統合シナジーなどに目を向けていた。が、私は、このニュースを最初に聞いた時に、ああ、いよいよ、日本のヤフーがグローバル化に挑もうとしているのだな、と思ったのだった。 というのは、ネットというボーダーレスの空間で興隆してきた企業でありながら、ヤフー・ジャパンは、96年の誕生時から米国ヤフーとの契約によって、ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかったからだ』、「ヤフー・ジャパン」が「ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかった」、これまでは我慢せざるを得なかったのが、制約がなくなったので、思い切った展開も可能になったようだ。
・『「コンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えてきた  米国のヤフーは、記者やプロデューサーを雇い、自らコンテンツをつくってメディア企業になろうとした。一方、日本のヤフーは、月間224億PV(2004年当時)というガリバーになっても、「自分たちでコンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えて、あくまでもプラットフォーマーに徹した。 その結果、米国ヤフーは、さまざまな経営者に変わったあと、事業体としてその寿命を終え、通信会社のベライゾンに売却された。ヤフー・ジャパンの株をもっていた後継会社のアルタバが、ヤフー・ジャパンの全ての株を売却したのは2018年の9月。 このとき、ソフトバンクの孫正義は、初めて米国からの縛りから逃れ、ヤフーを完全に自由にできることになったのだった。そして、最初の一手として、ヤフーの株を買収、ソフトバンクが45パーセントの株を持つ親会社になった。これが、2019年6月27日。 その次の手が、子会社となったヤフーと日本のラインの経営統合だった』、「ソフトバンク」と「ヤフー・ジャパン」の関係がよく理解できた。
・『目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること  今年6月の株主総会でヤフーの会長を退任し、完全にヤフーから離れた宮坂学と飲んでいた時、ヤフーの国際化の話になったことがある。 宮坂は「今、世界の人々は、GAFA陣営かBATH陣営のどちらの経済圏に入るかということになりつつある。しかし、その中でアジアの国々でそれなりのプレゼンスをもって出ていっているのがラインだ」と語っていた。 そのことがあったので、私はすぐに、この統合の本当の狙いは、ヤフーのグローバル化にある、と踏んだのだった。 実際、11月18日の記者会見で、川邊健太郎ヤフー社長と出澤剛ライン社長の二人は、はっきりと今回の統合の目的を、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」になることとした。ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かりに、米国勢のGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)、中国勢のBATH(バイドゥー、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に対抗する第三極としてのグローバル展開が目的と言明したのだった』、「目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること」、「ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かり」にしていくとしても、その道は容易なものではなさそうだ。
・『学生全員は「ニュースはラインで見ている」と答えた  川邊社長は、今回の統合は弱いところをお互いに補う、シナジーの効果が高いとも言った。 確かに、SNSを出発点にコマースや決済サービスに広がってきたラインは若年層に強く、パソコン時代からのヤフーは中高齢層に強い。 だが、その中で気になるのは、両社のシナジーが効かず、ほぼ同じ事業を行っている分野だ。 そのひとつにニュースがある。 ヤフー・ニュースは後発のライン・ニュースを常に気にかけていた。私は、慶應SFCで調査型の講座「2050年のメディア」を持っているが、その中でヤフー・ニュースの幹部の取材に立ち会ったことがあった。そのとき、幹部は学生たちに、「ニュースはどのアプリで得ているのか?」と聞いたが、全員が「ライン」と答えた。 「まずラインでメッセージをチェックしてそのまま画面の下にいって、右に指を動かしニュースをタップ、ニュースをチェックする。そう手がもう覚えてしまっている」 こう学生が答えたとき、その幹部は明らかにショックをうけていたように見えた』、若い学生であれば当然だろう。
・『ヤフーからラインに経験ある編集者が次々と移籍  そして、ヤフー・ニュースから次々に経験のある編集者がラインに移籍していっていた。東奥日報からヤフーに転職し、ヤフトピの見出し2万本をつくった編集者の葛西耕は2018年10月末で退社、ラインへ。同じく北国新聞からヤフーに転職した杉本良博も、2019年5月にラインへ移籍した。 彼らは、ヤフーが川邊健太郎体制のもと、メディア企業からデータ企業にはっきりと舵をきったことを見越して移籍していっていた。 そのラインがヤフーと統合する。記者会見の同日開かれた投資家への説明の中で、川邊健太郎は、補完する分野として、フィンテックやコマースを挙げていたが、現在競合している分野についてはとくに分野を示さず「合理化する」と答えていたから、ニュース部門はまさにその対象になるだろう』、「ラインへ移籍した」「編集者」たちは、結果オーライになったようだ。
・『「公共性」のないニュースサイトは長期的な価値をつくれない  ヤフー・ニュースがここまで大きくなった理由のひとつに、「公共性」という創設以来のDNAがある。ヤフー・ニュース・トピックス(ヤフトピ)は今知るべき8本のニュースを表示するキラーコンテンツだが、このヤフトピは、誰が世界のどこでアクセスしようと、同じ8本が並んでいる。 競合する「スマートニュース」や「グノシー」の場合は、ユーザーのログをAIが分析して、そのユーザーが好むニュースが表示されるようになっている。だから私が見ているスマートニュースはあなたが見ているスマートニュースとは違うのだ。 しかも、ヤフトピの場合、8本のうち上に表示される4本は、どんなときでも、政治、経済、国際の硬いニュースが並び、エンタメや芸能はかならず下の4本に配置される。 その理由を、宮坂学は「知らせるべきニュースを知らせる。自分は人々に間違いのない選択をしてほしいと考えていた」と答えていた。スマートニュースやグノシーのようなやりかただと短期のPVはあがるかもしれないが、長期的な価値には結びつかないとヤフーはよくわかっていたのだった』、「ヤフトピ」が「公共性」を売り物にしていたとは初めて知った。統合後はどうなるのだろう。
・『ヤフトピに「ライン・ヤフー統合」のニュースが1本もない  映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でメリル・ストリープ演じるワシントン・ポスト社主のキャサリン・グラハムの言葉を借りれば、「質(クオリティ)が利益(プロフィッタビリティ)をつれてくる」ことをよく知っていたということになる。 統合後のヤフー・ニュースは、川邊健太郎構想の要、「さまざまなシナジーを効かしていく」という方針の中では、難しい局面を迎えることになる。たとえば、位置情報とペイペイがあわさって店に誘導する、そこまではいい。しかし、これにニュースが連動することになれば当然、ニュースの信頼性や倫理の問題に触れてくる。 何よりもヤフーが創業以来、大切にしてきた「ヤフー・ニュース」の公共性が揺らぐことにならないように、経営陣がしっかりとしたグリップを効かせることが必要だ。 たとえば、現在までのところ、ヤフトピに、ライン・ヤフーの統合のニュースが1本もあげられていないのはどうしたことだろう。 ヤフトピの創設者である奥村倫弘は、かつてニュース部門を率いていた宮坂学に、「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそをむしろとりあげる。それが最終的には両者の利益になる」と言い、宮坂は感動していた。 そうした創業のDNAを忘れてはならない』、「創業のDNA」は立派でも、現実に「ライン・ヤフーの統合のニュース」を取上げるのは困難だろう。
・『ヤフーから抜けられるのは「電子有料版」だけ  新聞社や出版社などのコンテンツを提供している側は、これまでも広告料の7割から9割をヤフーにとられてきたが、ヤフーとラインの統合でこのプラットフォームが大きくなることで、情報提供料などの価格交渉でさらに劣勢に立たされることになるだろう。 多くの新聞社や出版社は、経営者がプラットフォーマーの意味を理解せず、ヤフーに記事を出し続けてきたことで抜けられなくなっている。組織が年功序列であり、和をもって貴しとなすので、デジタル部門の収益が一気に下がるような、ヤフーからの引き上げはこれまでできなかった。 読売グループ現社長の山口寿一も、社長室長時代の2000年代後半に、日経、朝日との共同のポータル「あらたにす」の開設に挑んだが、結局、読売をヤフーから抜けさせることは、全社的な理解が得られずできなかった。 こうした中、抜けでていくメディアは、ニューヨーク・タイムズやエコノミスト、そして日本経済新聞のように、そこだけでしか読めない調査型の記事を電子有料版でだすメディアだけだろう。日本の出版社では東洋経済新報社、ダイヤモンド社は早い段階でそのことに気がついて2011年ころから社の組織自体を変えてきている』、「読売グループ現社長の山口寿一も、社長室長時代・・・読売をヤフーから抜けさせることは、全社的な理解が得られずできなかった」、大手新聞にとっては、ヤフーなどへの出稿は麻薬のようなものらしい。
・『川邊ヤフー社長にとって「新たな心踊る物語の誕生」  川邊健太郎は『2050年のメディア』が見本が送られてくるとすぐに読んでいる。 その感想は、「懐かしい」というものだった。川邊健太郎は2000年代半ば以降、新聞社に包囲網をしかれたヤフー・ニュースの舵取りをしたが、そのすさまじい駆け引きも、どこか遠景の過去のフィルムを見ているようだったのだ。 すでにヤフー・ニュースを中心としたメディア企業としての段階は終わり、データ企業として世界にうってでようとする川邊にとっては、今起こっていることが、まさに「新たな心踊る物語の誕生」なのだった。(文中敬称略)』、「新たな心踊る物語」がどのように展開されるか、注視したい。

第三に、11月24日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/191124/ecn1911240001-n1.html
・『ネット検索などのポータルサイト「ヤフー」などを展開するZホールディングス(HD)とメッセージアプリのLINEの経営統合は、来月に最終契約を締結し、来年10月までに完了させる。それぞれの親会社であるソフトバンクと韓国・ネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立し、その傘下にZHDを置いてヤフーやLINEを子会社化する。 利用者はLINEが約8000万人、ZHDのサービスは約5000万人。これにより、通販や金融、SNSを一手に担うトップのIT企業が誕生し、米国の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や、中国の「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる巨大IT企業に対抗するというのが狙いだ。 LINEの出沢剛社長は「ネット業界は優秀な人材やデータなどすべてが強いところに集約する構造。2社が一緒になっても米国の大手企業とはケタ違いの差がある」と危機感を述べ、ZHDの川辺健太郎社長は「最強のワンチームを目指していきたい」と抱負を述べた。ただ、2つの違う魂を持つ人たちが、対等の形で折半出費して、うまくいくのだろうか。 ZHDには、eコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほか、電子決済サービスの「PayPay」、無料動画配信サイト「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブ」、事務用品の通信販売をする「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、そして「ジャパンネット銀行」などがある。 ZHDにカネがあったので、どんどん広げてしまっているのだが、これで一体経営をするのは非常に難しいと思う。すでにアスクルの創業社長を電撃解任するなど、人間性、ソフトスキルには疑問符がついている。下手をすると、急速なM&A(企業の合併・買収)で子会社を抱えすぎて、収拾がつかなくなったRIZAPグループのようになるかもれない』、確かに「アスクルの創業社長を電撃解任」は、私も首を傾げざるを得なかった。
・『例えば、アスクルを利用してくれる顧客企業の社員に対して旅行サービスを考えたとき、そこに一休を組み込もうとしても、高級なホテルばかりでは紹介しづらい。LINEのユーザーもどちらかというと富裕層ではない。いずれの場合も楽天トラベルみたいなところがいいわけ。したがって一つずつ吟味してみるとシナジー(相乗)効果も出しにくいと思われる。 そういう中に、LINEはSNSでは日本一で一本筋が通っているが、マネタイズ(お金に換えるワザ)ではかなり問題を抱えている。しかも、顔は親会社のある韓国の方を今までは向いていた。そういう意味では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と日本の安倍晋三首相ほど水と油とは言わないが、日本の寄り合い所帯であるヤフー(ZHD)と一体化するのは難しいかもしれない。 ZHDの共同CEOには川辺氏と出沢氏が就き、それぞれ代表権を持つ。やはり経営マインドというのは、台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)企業「鴻海精密工業」の郭台銘氏のように、1人の創業者的な人間が構想し、指揮、命令ができるようでないといけない。目標としているアリババやテンセントも創業者とその取り巻きが骨格を作った。ソフトバンクも日本のヤフーも創業社長に恵まれた。 強いものと強いものを足しても、1+1が2にならずに、1・6ぐらいで終わってしまうのもよくあること。今回のケースを見ている限り、ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた。そんな感じで、うまくパズルがハマるようなことにはならないのではないかと思われる』、「ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた」、とは上手い比喩だ。さすが経営コンサルタントの草分けの大前氏らしい冷静な判断だ。統合が上手くいくのか、注視したい。
タグ:ZAKZAK ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE テンセント ソフトバンクの経営 下山 進 (その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?) 「ヤフーとLINE統合の裏に、ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望」 日常のあらゆるサービスをスマートフォンのアプリ1つで解決する「スーパーアプリ」 あらゆるサービスをワンストップで ペイペイが目指す「スーパーアプリ」構想 ペイペイが目指すのは、単なる決済アプリに留まらず、ショッピングはもとより、ホテルやタクシーの予約から公共料金の支払い、さらには保険や投資まで、あらゆるサービスをワンストップで手掛けることができる存在だ ウィーチャットペイ シェアはアリペイが約50%、ウィーチャットペイは約40%と一気に追い上げた ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたから キャッシュレス決済は消耗戦 LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億 「ヤフトピよ、なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか」 「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそを載せる」 96年の誕生時から「ヤフー」の海外展開はできなかった ヤフー・ジャパンは、96年の誕生時から米国ヤフーとの契約によって、ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかった 「コンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えてきた あくまでもプラットフォーマーに徹した ヤフーの株を買収、ソフトバンクが45パーセントの株を持つ親会社に 次の手が、子会社となったヤフーと日本のラインの経営統合 目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かりに 学生全員は「ニュースはラインで見ている」と答えた ヤフーからラインに経験ある編集者が次々と移籍 「公共性」のないニュースサイトは長期的な価値をつくれない ヤフー・ニュースがここまで大きくなった理由のひとつに、「公共性」という創設以来のDNAがある 8本のうち上に表示される4本は、どんなときでも、政治、経済、国際の硬いニュースが並び、エンタメや芸能はかならず下の4本に配置される スマートニュースやグノシーのようなやりかただと短期のPVはあがるかもしれないが、長期的な価値には結びつかないとヤフーはよくわかっていた ヤフトピに「ライン・ヤフー統合」のニュースが1本もない ヤフーから抜けられるのは「電子有料版」だけ 川邊ヤフー社長にとって「新たな心踊る物語の誕生」 「【大前研一のニュース時評】「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?」 2つの違う魂を持つ人たちが、対等の形で折半出費して、うまくいくのだろうか ZHDにカネがあったので、どんどん広げてしまっているのだが、これで一体経営をするのは非常に難しいと思う アスクルの創業社長を電撃解任するなど、人間性、ソフトスキルには疑問符 一つずつ吟味してみるとシナジー(相乗)効果も出しにくい LINEはSNSでは日本一で一本筋が通っているが、マネタイズ(お金に換えるワザ)ではかなり問題を抱えている ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた。そんな感じで、うまくパズルがハマるようなことにはならないのではないかと思われる
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ソフトバンクの経営(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、10月2日に取上げた。今日は、(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか)である。なお、ヤフーとLINEの統合については、明日取上げる予定だ。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が11月1日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」のうち、無料部分の2頁目までを紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30535
・『狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」  孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)の先行きに不透明感が強まっている。海外では米シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」を運営するウィーカンパニーに約1兆円の追加支援を余儀なくされ、国内では子会社のヤフーがショッピング・サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営するアスクルの社長と社外取締役を解任、ほぼ同時に前澤友作氏の持ち株を買い取ってファッション・サイトのZOZO(ゾゾ)を傘下に収めた。 ここ半年の出来事は一言で説明できる。「成長神話の限界」だ。 SBGの成長神話の源泉は、何と言っても孫正義氏の「眼力」である。1994年にソフトバンクの株式上場でキャピタル・ゲインを得た孫氏は、その金で米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収する。2社の買収総額は3100億円で当時のソフトバンクの株式時価総額2700億円を超えていた。 金額的に狂気の投資であり、そもそもなぜ展示会会社と出版社なのか。インタビューで尋ねると、孫氏は不敵に笑ってこう言った。 「コムデックスとジフデービスはアメリカにおける僕の目であり耳なんですよ」 私がこの言葉の意味を理解したのは10年近く後だった』、「狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」」に陰りが出てきたとすれば、大変だ。
・『社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資  孫氏はスタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤン氏とデビッド・ファイロ氏が設立した米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資している。ヤン氏は「今資金は潤沢だから金はいらない」と孫氏の出資を断ったが「あって困るものではない」と金を置いて帰ったという。 2000年には中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」は中国のインターネット・ショッピング市場を席巻し、SBGは8兆円の含み益を手に入れた。 孫氏は業界通の間に情報網を持つコムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた。それらの会社が大化けすることで、SBGは10兆円を超える含み益を手に入れ、その信用力で米携帯大手のスプリントや英半導体のARMを買収した。 投資家の脳裏には今もこの神話が焼き付いている。この1年半のSBGの株価を見れば、投資家の迷いがよく分かる。 SBGが2018年3月期決算を発表した同年5月から9月にかけて、同社の株価は3800円から5700円に上昇した。だがその後、同社が計上した巨額利益の多くが、国際会計基準に基づく未公開企業の評価益であることが嫌気され、再び3500円まで下降する』、今日の株価は4250円と多少戻したようだ。米Yahoo!に「「あって困るものではない」と金(100億円相当)を置いて帰った」、とは剛毅なものだ。「コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた」、彼らが探す窓口だったとは初めて知ったが、上手いやり方だ。
・『UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう  ところが投資先の配車アプリ大手、ウーバー・テクノロジーズがニューヨーク証券取引所の上場が目前に迫り、ウィーワークの上場日程も決まった2018年12月から19年4月にかけて再び6000円まで上昇する。ウーバーやウィーが第2、第3のYahoo!、アリババになる可能性が出てきたからだ。 しかし公開価格が45ドルだったウーバー株は20ドル台まで下落、ウィーは自分が所有する不動産をウィーにリースしていた自己取引などの疑惑で創業者のアダム・ニューマン氏が辞任。2019年9月としていた新規株式公開(IPO)も延期となり、その後IPOの目論見書に誤りや抜けがあったことも明らかになった。ウーバーとウィーの変調でSBG株は10月末時点で4000円近辺まで落ち込んでいる。 分かってきたのは、ウーバーやウィーが「Yahoo!やアリババのように大化けすることはなさそうだ」ということだ。 ウーバーの創業者、トラヴィス・カラニック氏は2017年、社内でのパワハラ、セクハラや会社がグーグルの自動運転技術を盗用していた問題など、さまざまなトラブルを起こして辞任した。ウィーのニューマン氏は自己取引のほか、自社株の売却や自社株を担保にした借入で7億ドルを調達し、その金でプライベート・ジェットを乗り回していたことなどが投資家の不興を買った。(3頁目以降は有料なので紹介できず)』、「UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう」、というのは確かだろう。これからが、正念場だ。

次に、Liam Proud and Karen Kwok両氏が11月11日付けロイターに掲載した「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」を紹介しよう(記事中の会社コードは省略)。
https://jp.reuters.com/article/sofbank-breakingviews-idJPKBN1XG0EM
・『孫正義氏が会長兼社長として率いるソフトバンクグループは、ハイテク分野の巨大投資マシーンであり、気前よく重ねた借金が潤滑油の役割を果たしている。同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した。しかし、今後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない。 孫氏が好んで用いる指標に基づくと、ソフトバンクグループの債務負担は、やり繰りが可能に思われる。同氏は、借入金を総資産価値の25%未満にとどめたい考えだ。この総資産には、中国電子商取引最大手アリババの株式や、携帯電話2社、半導体メーカーのArm(アーム)、1000億ドル規模の巨額ファンド「ビジョン・ファンド」が含まれる。 これらの資産価値は、上場株の時価やソフトバンクによる未上場資産の評価を踏まえると2600億ドルに上る。6月末の純債務は450億ドルで、この17%に収まる。手元の現金は少なくとも2年間の社債返済資金をカバーしており、キャッシュフローは6月までの1年間の利払い額の2倍を超える』、表面上は問題なさそうに見えるが・・・。
・『だが、こうした指標で全ての状況が説明されたわけではない。まず初めに、傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている。 法的に考えると、両社の債務は返済原資が限定されるノンリコース型なので、ソフトバンクグループは万が一の場合、債権者の追及を免れることができる。とはいえ、孫氏がスプリントとすっぱり手を切るとは想像しがたい。そんなことをすれば、ソフトバンクグループの資産価値の10%強が一気に消滅し、他の子会社による将来の借り入れがより難しくなる。 実際に孫氏は最近、ソフトバンクグループの資産価値を利用して、経営難に陥っている共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーの支援策を打ち出した。債権者は、資金繰りに窮している出資先企業への救済措置は、いわゆる「偶発債務(将来何らかの形で返済義務が生じる債務)」ではないかとみなす傾向にある。 ビジョン・ファンドは、配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズなど赤字企業の株式を保有しているという面で、別の重荷も背負っている。 同ファンドの資本のうち約400億ドルは優先株の形になっており、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドといった出資者に年間7%の配当を支払っている。優先株は厳密には債務ではないが、孫氏はソフトバンクグループの株主への利益還元よりも、優先株の配当をきっちりと行わなければならない。 また、ビジョン・ファンドは、一部投資案件について最大41億ドルを銀行から借り入れることができる契約に調印し、優先株の配当にも活用されている。その点でも資産価値が急落すれば、事態悪化に拍車が掛かる』、「サウジアラビア」の出資「のうち約400億ドルは優先株の形」、これは債務に近い性格だ。こうしてみると、実態的には債務負担は重そうだ。
・『最後に、孫氏自身の問題がある。ブルームバーグの報道によると、同氏は個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている。ビジョン・ファンドへの投資資金としてソフトバンクの幹部・社員に提供された総額50億ドルの融資のほとんども、孫氏向けだ。つまり孫氏とソフトバンクグループはともに、ビジョン・ファンドのパフォーマンスに命運が左右される側面が強まっている。 孫氏が定義する狭義の純債務で判断しても、ソフトバンクグループの借り入れ負担は、見た目よりも重い。公式に発表している総資産有利子負債比率(LTV)は、かさ上げされた資産が前提になっているのだ。 例えば、アリババの持ち分26%について、処分すれば最大で30%の税率が課せられてもおかしくないにもかかわらず、時価の1200億ドルのままで評価している、とバーンスタインのアナリストチームはみている。 株式市場の投資家は適切に、より懐疑的な見方をしており、ソフトバンクグループの時価総額は、債務を差し引いた後の総資産価値の38%程度に過ぎない。 ソフトバンクグループの今後の利払い能力も、見かけほど堅固ではない。6月までの1年間に傘下企業から受け取った現金は45億ドル前後で、約21億ドルの債務返済費用を十分に賄えた。 ただ、現金の出所は2つだけだ。1つ目はビジョン・ファンドからの資産管理手数料と半導体企業・エヌビディアなどの株式売却益の20億ドル。2つ目は携帯電話子会社・ソフトバンクが配当金として支払った25億ドルだ。 ウィーワークの上場中止でハイテク企業の新規株式公開(IPO)に対する需要が冷え込んだことから、ビジョン・ファンドからの現金納付はもはやほとんど当てにできない。 そこで孫氏が携帯電話子会社からの配当金だけに依存するようになれば、余裕は乏しくなる。6月までの1年間のソフトバンクグループの利払い費は、携帯電話子会社から受け取った配当金の82%に達するからだ。リフィニティブのデータに基づくと、ソフトバンクグループは、向こう3年間で債務返済予定額が140億ドルに急増するという逆風にも見舞われる。 では、孫氏は現金が必要になった場合、何ができるのか。良いニュースは、流動性のある資産に不自由はしないことだ。保有するアリババ株の4%を現在の価格で売れば、税率30%と仮定しても、来年から2022年までに満期が到来するソフトバンクグループの全社債の返済資金が確保できる。2016年に320億ドルで買ったアームなどの未上場資産を手放す方法もある。 悪いニュースは、やむを得ない形の資産売却が、売り手にとって満足のいく価格になるケースがほとんどないことだろう。ソフトバンクグループはアリババの圧倒的な大株主なので、売却に動けばアリババ株の需給自体を崩してしまう。 一方、資産価値が下落するのに伴って、借り入れによって投資を拡大するという孫氏の戦略が裏目に出てくるだろう。ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める』、「逆回転」すれば大変なことになるので、要注意のようだ。

第三に、11月14日付けダイヤモンド・オンライン「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220491
・『ソフトバンクグループが、10兆円規模の投資ファンド事業で損失を出し、7000億円規模の四半期赤字を計上した。世界中のユニコーン企業を買いあさるという巨大ファンドの投資手法は岐路に立たされている。 「私自身の投資の判断がまずかった」。6日にソフトバンクグループ(SBG)の決算説明会に登壇した孫正義会長兼社長の「反省」の弁で示されたのは、武器としてきた自身の「目利き」への懸念だ。 10兆円の投資枠を持つ「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の損失で、SBGの2019年4~9月期決算の営業損益は156億円の赤字となった。前年同期から1兆4000億円を超える記録的な落ち込みだ。 この要因は、シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資にある。 10年に創業したウィーは、ビルのワンフロアや1棟を丸ごと借りて、それを不特定多数の利用者に転貸する不動産業が基本的なビジネスモデルだ。世界29ヵ国に528拠点を構え、会員数は52万人以上だ。事業は年々拡大を続けてきたが、創業から9年の間に利益は出していない。 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業で、会員同士の交流を深める仕掛けを施して、一種のコミュニティーをつくり出すのが売り。そうした交流が新しい価値を生み出すといううたい文句で普通の不動産会社とは異なるビジネスモデルとされ、高い企業価値が付けられてきた。 この企業価値を演出したのがSBGとビジョン・ファンドの巨額資金に他ならない。赤字のベンチャー企業にすぎないウィーに資金を注ぎ続け、9月末時点の累計投資額は103億ドル(約1.1兆円)に上っている。今年1月にはウィーの企業価値は470億ドル(約5兆円)に達したが、その後の上場準備で転機を迎える』、「ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業」、であれば、ブームが去れば一気に業績が悪化するリスクがあり、通常の不動産賃貸業よりはるかにリスクが大きいようだ。
・『目論見書などでビジネスモデルの将来性に疑念が深まったほか、ウィー創業者のアダム・ニューマン氏の公私混同の経営や薬物疑惑などの問題が明るみに出た。さらに、ニューマン氏に普通株の20倍の議決権を割り当てるという計画も明らかとなり、9月末に予定していた上場が撤回に追い込まれた。 ウィーの9月末の企業価値は78億ドル(約8400億円)まで急落。SBGは9月末までにニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上することになった。 結果、7~9月期(19年度第2四半期)の投資ファンド事業の営業損失は9703億円に達し、SBGの営業損失は7044億円、純損失は7002億円に上った。いずれも1981年の創業以来、最大の四半期赤字だ。 孫社長は、今回の損失計上の最大の反省として「ウィーの価値を高く見過ぎた」と振り返ると同時に、ニューマン氏の暴走を食い止めることができなかったガバナンスの問題を指摘した。 だが、そのニューマン氏の奇抜さに入れ込み、持ち上げてきたのは孫社長自身に他ならない。 もともとソフトバンクは、孫社長自身の目利きによるベンチャー投資で成長してきた。96年には、米ヤフー創業者のジェリー・ヤン氏とデビット・ファイロ氏の2人に惚れ込み、社員が5~6人だった同社に100億円を出資する決断を下した。また、2000年には、創業間もない中国のアリババのジャック・マー氏と面談し、会って10分もたたずして20億円の出資を即断即決したことが、現在の13兆円に上るアリババの保有価値につながっている。 だが、ウィーについてはニューマン氏が経営に失敗したのは明らかだ。この経営者に賭けた孫社長の投資判断には疑問符が付く。今後のビジョン・ファンドの投資については、フリーキャッシュフローを重視して、創業経営者のガバナンスを評価する基準を設ける方針だ。孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙いがある。 一方でSBGは、これだけの損失を計上したウィーについて損切りすることなく、全面支援に乗り出す』、「孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する」、とはいうものの、そんなに簡単に出来る訳はなさそうだ。
・『「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角  その理由として、かつてウィーと締結した株式買い増しの契約の存在がある。来年4月に15億ドルのワラント(株式買取権)を購入する契約で、ウィーが経営危機に陥った後もこの義務を解消する交渉は受け入れられず、株式転換価格の交渉に切り替えざるを得なかったのが実態だ。 こうしてSBGはワラントの購入義務を前倒しで履行する代わりに株式の転換価格を引き下げ、保有する株数を増やして経営の関与を高める判断にかじを切った。 金融支援のパッケージは、15億ドルのワラントの購入に加え、最大30億ドルの発行済み株式の公開買い付けとともに、新規に債券や信用保証で50億ドルの資金供給も実施する予定で、最大95億ドル(約1兆円)となる。 ベンチャー企業の支援に巨額の資金を投じる異例の判断について孫社長は「今回は例外」と弁明したが、今後も「第2、第3のウィー」が出てくる懸念は拭えない。 7~9月期は、未上場のウィーだけでなく、ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズ、ビジネスチャットアプリの米スラック・テクノロジーズなど上場企業の株価下落により、計25銘柄で1兆1276億円の評価損を計上した。今後、他の投資先の企業価値も急落するリスクはくすぶるが、孫社長自身も「投資に10勝0敗はあり得ない。同じような懸念はある」と認める。 9月末時点で、ビジョン・ファンドの投資先は88社で、累計投資額は8.2兆円。すでに1号ファンドは投資枠10億円に達して新規投資は終了。予定通りに2号ファンドを立ち上げる計画で、SBGは自己資金で一部の運用を開始した。だが、他の資金の出し手は慎重にならざるを得ない。すでに複数の投資家が資金拠出の見直しに踏み切ったもようだ。 ウィーは、ウーバー(5月10日に上場)や同じくライドシェア大手の中国・滴滴出行(DiDi)、民泊大手のエアービーアンドビーと並ぶユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の代表だった。今回の損失計上により、世界中のユニコーン企業に巨額の資金をつぎ込んで企業価値を引き上げるというビジョン・ファンドの投資手法は曲がり角を迎えている』、ソフトバンクGはもともとベンチャーファンド的な性格があったのが、ビジョン・ファンド創設でますますその性格を大きく強めた。「曲がり角を迎えている」のは「ビジョン・ファンドの投資手法」だけでなく、ソフトバンクGの基本戦略そのものの筈だ。

第四に、元銀行系エコノミストで、法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏が11月18日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30809
・『大赤字で本当に反省しているのか  11月6日、ソフトバンクグループ(ソフトバンク)が2019年7~9月期の連結決算を発表した。それによると、最終損益は約7002億円の赤字だった。これは、四半期ベースで過去最大の赤字だ。グループを率いる孫氏は「大赤字で反省している」と述べた。 巨額の損失が発生した背景の一つには、ソフトバンクがかなり急いで成長を追求してきたことがある。同社は、世界有数のIT先端企業を糾合することを目指している。ただ、成長にこだわるあまり、やや高値での株式取得が重なったことに加えて管理体制が甘くなってしまった。そうした事態は、いってみれば“急成長に対するコスト”といえなくもない。 また、ここへきて世界経済に関する不確定要素が増えていることもマイナスの要因として働いた。世界全体で非製造業は安定を保っているものの、米国の保護主義的な政策の影響もあり、サプライチェーンの分断などで製造業の景況感が不安定化している。 米中貿易摩擦の影響などを考えると、当面、短期間で投資家のリスク許容度が大きく高まる展開は期待しづらい。そうした状況下、ソフトバンクが成長エンジンのパワーを維持できるか注目される』、政治経済面も踏まえて分析するとはさすがだ。
・『経営は「ボロボロ」  足許、ソフトバンクの経営は厳しい状況に直面している。7~9月期の業績は、孫氏自ら『ボロボロ』と評するほどだ。とくに、ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない。 ソフトバンクは、未上場のスタートアップ企業に積極的に投資を行い、新規の株式公開(IPO)を実現して株を売却し、利得を手に入れることで成長(企業価値の増大)を目指してきた。具体的に、ソフトバンクは、創業者である孫正義氏の企業家(創業者)の「資質を見極める力=眼力」によって買収や新興企業への出資を重ね、業績拡大を実現した。 さらなる成長を目指し、ソフトバンクは10兆円規模の“ビジョン・ファンド”を設定し、IT先端企業やスタートアップ企業への出資などを積極的に進めてきた』、「ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない」、その通りだ。
・『積極的な投資より大切なこと  やや気になることは、ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分があると考えられることだ。ソフトバンクは米オフィスシェア大手ウィーワークを運営するウィーカンパニーのコーポレート・ガバナンス上の問題点を十分に把握できなかった。 ウィーカンパニーのIPOが延期され、資金繰り懸念が高まり、企業価値が毀損された。この結果、7~9月期、ソフトバンクはウィーカンパニーへの投資から約82億ドル(約8900億円)の損失(評価引き下げ)を被った。 ソフトバンクの投資戦略は、利害関係者の不安も高めている。当初、ソフトバンクはサウジアラビア政府などから出資を募り、第2号のビジョン・ファンドの運営を開始しようとしたが、ウィーカンパニーのIPO延期などを受け、サウジアラビアは第2号ファンドへの出資を決められていないとみられる。 第2号ファンドはソフトバンクの資金を用いて投資を進めている。足許、ウィーカンパニーがリストラを進めていることなどを考えると、ソフトバンクの積極的な投資スタンスは冷静に見直されるべき時を迎えているといえるだろう』、「第2号ファンドへの出資」がソフトバンクG以外には期待できなくなれば、「積極的な投資スタンス」は自ずから見直さざるを得なくなるだろう。。
・『ソフトバンクと世界経済の相関関係  ソフトバンクの業績悪化につながった背景の一つとして、「世界経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズ」が大きく変化してきたことは見逃せない。 2017年5月にソフトバンクが第1号のビジョン・ファンドを設定した時、世界経済は比較的堅調に推移していた。とくに、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)をはじめ、世界のIT先端企業の成長期待は高かった。 半導体業界の一部では、人工知能(AI)の開発と実用化に向けて、高性能のICチップやDRAMなどのメモリー需要が飛躍的に高まるという強い期待もあったほど、先行きへの楽観が多かった。 その中で、ソフトバンクはAIが人間の知性を超越する時代を見据え、先端テクノロジーなどに強みを持つ企業への投資を急速に拡大した。その考えは、ITを駆使して石油依存度を低下させようとしたサウジアラビア政府などの共感を得ることもできた。 同年12月に米トランプ政権が1.5兆ドル規模の減税を実施し、世界経済への楽観が追加的に高まったことも、ソフトバンクへの期待を高めただろう』、孫社長がトランプ大統領と面談したのも記憶に新しいところだ。
・『熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた  しかし、2018年に入ると、中国経済の減速が鮮明化した。共産党政権による景気刺激策にもかかわらず中国経済が持ち直す兆しは見られない。中国経済は成長の限界を迎えたと見られる。 また、米国は中国に制裁関税を賦課し、米中貿易摩擦が世界経済を下押ししはじめた。世界的にサプライチェーンが寸断され、製造業の景況感が急速に悪化した。世界的なデータセンター向けの投資減少なども重なり、世界の半導体市況も悪化した。 7~9月期の業績を見る限り、ソフトバンクには、一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる。そのため、冷静に投資先企業のビジネスモデルや創業者の資質を冷静に見極めるよりも、積極的な投資拡大を優先してしまったようだ。 それは、決算会見にて孫氏がウィーカンパニーへの出資が「高すぎた」と反省の弁を述べたことから確認できる』、「一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる」、孫社長を「忖度」して多少遠慮気味な表現だが、その通りだ。
・『景気が一段と減速する可能性も  当面、ソフトバンクの業績がどうなるかは不透明の部分が残る。現在、個人消費を中心とする米国経済の落ち着きが、世界経済を支えている。今すぐに世界経済が大きく落ち込む可能性は低い。世界的に株価も高値圏を維持している。アリババをはじめとするソフトバンク保有株式の評価額は約28兆円にまで上昇している。 ただ、世界経済の先行きは楽観できない。米中の貿易摩擦にはIT先端分野での覇権争いや中国の産業補助金など、短期間での解決が難しい分野も含まれる。米国政府内には、米国企業などによる対中投資を制限すべきとの意見もあるようだ。米中間の制裁・報復関税がどうなるかも見通しづらい。 景気循環の観点から見ても、米国では企業の設備投資が鈍化している。景気が一段と減速する可能性は軽視すべきではない。中国では生産・投資・消費が低迷し、さらに景気が落ち込む恐れもある。当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい。 一方、長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう。世界全体でAIが活用される分野は増えるだろう。企業や家庭など様々な経済活動の場において、スマートスピーカーやAIを搭載した機器が使われ、“IoT(モノのインターネット化)”に関する取り組みも加速すると期待されている』、「長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう」、確かにその可能性は否定できないが、「当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい」、この当面の嵐を乗り切れるかが、最大の注目点の筈だ。
・『不透明要素が残る今後の業績見通し  このように考えると、ソフトバンクが傘下および投資先企業の成長を取り込むには相応の時間がかかるだろう。それまで、ソフトバンクは安定的に収益を獲得し、事業や経済環境の変化といったリスクへの抵抗力をつけなければならない。 そのために、ソフトバンクは収益基盤の整った企業との経営統合を重視しはじめたようだ。ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合に関して協議しているのはその表れといえる。 現時点で、そうした取り組みの実現を含め、ソフトバンクの収益にどのような変化があるかを予想することは容易ではない。同時に、ソフトバンクはスタートアップ企業などへの投資を重視する姿勢を崩していない。ソフトバンクの業績がどうなるか、不透明な部分は多いと考えられる』、「ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合」、については明日取上げる予定である。ご期待を!
タグ:ロイター ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE ソフトバンクグループ 真壁 昭夫 ソフトバンクの経営 大西 康之 (その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) 「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」 狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」 ウィーカンパニーに約1兆円の追加支援 「成長神話の限界」 米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収 社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資 米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資 中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」 コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた スプリントや英半導体のARMを買収 UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう Liam Proud and Karen Kwok 「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」 同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した 後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない 傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている ノンリコース型 ビジョン・ファンド 資本のうち約400億ドルは優先株の形 実態的には債務負担は重そうだ 孫氏自身 個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める 「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」 7000億円規模の四半期赤字を計上 シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業 上場が撤回に追い込まれた。 ニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上 孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙い 「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角 「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」 大赤字で本当に反省しているのか 経営は「ボロボロ」 ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない 積極的な投資より大切なこと ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分がある ソフトバンクと世界経済の相関関係 熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた 景気が一段と減速する可能性も 長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう 当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい 不透明要素が残る今後の業績見通し
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原発問題(その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”) [国内政治]

原発問題については、3月27日に取上げた。今日は、(その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”)である。

先ずは、選択2019年3月号が掲載した東大名誉教授で失敗学の提唱者である畑村洋太郎氏への巻頭インタビュー「原発事故から変われない日本人」のポイントを紹介しよう。
・『事故後も、「原発にどんな危険があるか」という本質的なことを何も議論しないし、考えてもいない。日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ。「誰の責任か」ということばかりに目を向ける。 そもそも、福島原発事故の本当のコストを誰も議論しない。一番大きな数字で「22兆円」というのを見たが、国がひっくり返るような大事故だったのだから、100-500兆円ぐらいはかかるだろう。これは国民みんなが負担することだ。 企業の不正会計、政府の統計不正は、タガが緩んでいるためではなく、その検査や基準は本当に意味があるのか、必要なのかを考えず、「基準を守れば大丈夫」と安心し切っていることが問題。日本では事故が起きると、その時から基準を作る。だが、その時に、過去に起きた経験値を参考にするが、経験したことのないことは考えない。重要なのは、形の上で基準を守るか否かではなく、本当に安心か否かなのだ』、「日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ」、日本の弱味を鋭く指摘している。「「誰の責任か」ということばかりに目を向ける」というが、企業が絡む大事故になると、福知山線脱線事故でのJR西日本、原発事故での東京電力、いずれも責任追及はうやむやになってしまうようだ。「福島原発事故の本当のコスト・・・100-500兆円ぐらいはかかるだろう」、その通りなのかも知れない。
・『政府統計の問題も、どうしたら最善の統計が得られるのかという本質的なことをもっと議論すべき。 チャレンジや創造をすれば、殆どいつも結果は失敗になる。失敗を織り込んで戦略を考えるものだ。今日は失敗を恐れてチャレンジしないことが問題。日本がほどほど豊かになったからだろう。しかし、それが許されない大きな壁がやってくる。財政赤字がGDPの2倍を超えた。さらに気候変動がすごく大きな変化を描いている。石炭火力発電が全く使えない時代がくる。再生エネルギーをどうするのか。国の債務も、エネルギー問題も真剣に考えているようには思えない。 イノベーションが停滞、前に上手くいったやり方に安住していたら、GAFAに全て持っていかれた。そうすると、その尻馬に乗って、AIだ、自動運転だと騒いでいる。誰かが考えて上手くいったことについていくのが一番得だ、というのが日本のやり方だ。それでは、どんどん競争力が失われる。日本社会は根本的に考え方を変える必要。まず小学校から「自分で考える」訓練をしていかないと』、二番手戦略が通用できない時代になったとすれば、やはり「「日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ」、を変えていくしかなさそうだ。

次に、選択2019年11月号が掲載した原子力規制委員会前委員長の田中俊一氏への巻頭インタビュー「日本の原発はこのまま「消滅」へ」のポイントを紹介しよう。
・『福島第一原発事故を踏まえると、原子力業界が姿勢を徹底的に正さなければ、日本の原子力に先はない。残念ながら原子力政策も見直しされないままなので、この国の原発はフェードアウトする道を歩んでいると眺めている。日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた。結果論も含め本当に嘘が多い。最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること。使用済み燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして千年、二千年の資源を確保するという罠に囚われたまま。千年後の世界がどうなっているかなんて誰にも分からない。技術的にもサイクルが商用レベルで実用化できる可能性はなく、現に米国、英国、フランスが断念。 いままで「数千年のエネルギー資源が確保できる」という嘘を言い続けてきた。日本の原発はそうした嘘で世論を誤魔化しながらやるという風土があった。そこにつけ込まれて、今回のように、原発マネーを狙う汚い人間が集まってくる原因にもなった。今のままでは、今後もまた似たようなことが起こる可能性』、原子力規制委員会委員長を退いたから思い切ったことが言えるのかも知れないが、それにしても衝撃的な発言だ。
・『使用済み燃料処分のための再処理をやろうとしているのは、日本だけ。米国をはじめ多くの国は当面、使用済み燃料を乾式容器に入れて原発敷地内に蓄積し、いずれ直接処分する道を目指している。放射性物質の半減期を短縮してから、地下に処分するなどという実現不可能な技術の開発に無駄なコストと時間をかけている国はない。乾式容器で200年程度は安全に保管できるのだから、その間に国民の理解が得られるような丁寧な議論をして処分方法を決めるべき。そのための前提として、原子力利用が国民から信頼を得なければならない。今回の不祥事は、福島事故後から取り組んできた信頼回復のための努力の積み重ねを無に帰するもの。 政治・行政は本質的な議論から背を背け、センセーショナルな部分ばかりを取上げるマスコミの責任も重い。今回の関電の問題は犯罪にも近い行為だとは思うが、これを表面的に批判しても意味がない。 先ずは、再稼働した原発の安全運転に専念することが基本。その上で、実用化できない核燃料サイクル政策を転換し、無駄なコストを削減し、原発を継続して利用するために欠かせない人材の育成や安全性向上のための技術基盤の開発に投資すべき。これまでの嘘を認めたくないため、問題をうやむやにしたままで何も変わらないかもしれない。そうしたことを考えると、残念ながら日本の原発は1回なくなるんじゃないかとみている』、「これまでの嘘」を清算するのは、原子力ムラにとっては耐え難いことだろうが、そこにしか再出発の足がかりはないだろう。

第三に、9月20日付けNHK NEWS WEB「東電裁判 “見えた新事実”」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190920/k10012091781000.html
・『9月19日。未曾有の被害をもたらした福島第一原発の事故について東京電力の旧経営陣の責任を問う刑事裁判の判決の日。被告は勝俣恒久 元会長(79)、武黒一郎 元副社長(73)、武藤栄 元副社長(69)の3人。 東京地方裁判所は「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして全員に無罪を言い渡した。一般の市民で構成する検察審査会が2度、「起訴すべき」と議決し強制的に起訴されて始まった注目の裁判も、個人の刑事責任までは問えないとして無罪判決で幕を閉じた。 しかし、37回におよんだ公判からは、これまで知られていなかった“新事実”が次々に明らかになった。例えば、その1つ。首都圏唯一の原発、茨城県にある東海第二原発では、運営する日本原子力発電が東日本大震災が起きる3年前からすでに巨大津波への対策を進めていたことが初めてわかったのだ。さらには東京電力の現場の担当者たちは、巨大津波への対策を進める考えだったことも明らかになった。「本当に津波による原発事故を防ぐ手立てはなかったのだろうか」。 公判を見続けてきたNHK取材班は、この疑問を胸に、公判の証言と資料を分析、関係者への接触も試み真実に迫るため、取材を展開した。(東京電力刑事裁判 取材班)』、「東海第二原発」で「巨大津波への対策を進めていた」のに、放置した「福島第一原発」の責任を裁判所はどう判断したのか、或はスルーしたのだろうか。
・『第23回の公判  2011年3月11日に起きた東日本大震災。およそ15メートルの津波に襲われた福島第一原発は、原子炉を冷やすための非常用電源などが水没し、3つの原子炉がメルトダウンをおこした。事故の深刻さを示す国際的な基準による評価では、チェルノブイリ原発事故と並びもっとも深刻な「レベル7」とされ、文字どおり史上最悪レベルの原発事故となった。 今回の裁判。原発事故の原因だけでなく、背景につながる証言や資料が明らかにされた。中でも2018年7月27日の第23回公判で示された、ある事実に衝撃が走った。法廷に立ったのは日本原子力発電の元社員。会社として震災前に巨大な津波に備えた対策に着手していたことを初めて明らかにしたのだ。「津波対策工の検討については、推本津波(長期評価)を考慮した対策工事について引き続き検討を進めると」』、なるほど。
・『“長期評価”分かれる見解  日本原電が巨大津波への対策を始めたきっかけは2006年、当時の国の原子力安全・保安院が指示をした安全性の再評価、通称「バックチェック」だった。大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけたのだ。この「適切な津波」とはどんな津波なのか。これを巡って電力各社の間で対応が違っていくことになる。 津波の高さの予測をする際に焦点となった評価がある。2002年に政府の地震調査研究推進本部が示した、いわゆる「長期評価」だった。岩手県沖で発生した「明治三陸地震」と同程度の津波地震が、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いのどこでも発生しうると初めて指摘。この評価に基づくと多くの原発で従来の想定を上回る津波が襲来することになる。電力会社にとっては追加の対策が必要になる厳しい評価だ。 ただし、この「長期評価」、過去に地震の発生が確認されていないエリアも対象にしたことから、一部の専門家からは異論も出されていた。この「長期評価」を取り入れるか、入れないか。2007年12月、太平洋岸に原子力施設をもつ東京電力と日本原電、東北電力と日本原子力研究開発機構の4社が集まった。 われわれはそのときの資料を入手した。そこには、「考慮しないと言えれば助かる」「否定する材料がない」などと意見が分かれたことが記されていた。なんとこの時、東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだったのだ。現場の土木グループは積極的に対策を進めようとしていた事実が明らかになったのだ』、「4社」の会合では、「東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだった」、というのは初めて知った。
・『“御前会議”  では、なぜ東京電力は東日本大震災の際に福島第一原発で巨大津波に対応する対策を施していなかったのだろうか。 この疑問も公判の証言と取材から徐々に明らかになってきた。現場の担当者たちは長期評価に基づいた対策の検討を開始。上の写真は2008年2月の東京電力の資料だ。長期評価にもとづいた津波を想定したポンプの対策案などのほか、福島第一原発に押し寄せる津波の高さが従来の想定を上回ることが示されていた。 さらに詳細に評価をすると、より大きな津波がくるおそれがあることもわかったのだ。現場の担当者は、この内容をある重要な会議に報告し、会社全体として話を進めていこうと考えていた。 「御前会議」。2007年の新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎刈羽原発への対応のために設置された会議だ。その後、地震や津波など他の原発の対策に関わることもこの会議にはかられていた。 当時経営トップだった勝俣社長が参加するため「御前会議」と呼ばれ、原子力部門をまとめる武黒本部長、武藤副本部長といった幹部など約40人が一堂に会していた。 津波対策の担当者たちは、この場で長期評価を取り入れるかどうか、経営幹部の意向を確認したいと考えていたのだ。 御前会議が会社の意思形成の場、大きな方向性を確認する場だと認識していたからだ。かつてこの会議に出ていた元社員が会議について取材に答えた。 「正式な決定の場は、もちろん取締役会。御前会議はその意思形成を担う場だった」「御前会議で諮られれば、その後、上司に反故(ほご)にされることはなかった」 そして2008年2月の御前会議。いよいよ津波の予測と対策案をまとめた資料が提出された。現場の担当者は会議後、出席していた上司から特に異論はなかったとの報告をうけたと振り返る。現場はこれで御前会議の幹部と方向性を共有できたと思ったのだ。ところが経営幹部の認識はそうではなかった』、「御前会議」に「出席していた上司」は一体、具体的にどのような報告をしたのかも知りたいところだ。
・『御前会議 認識のズレ  裁判の中で、この資料について経営幹部はこう証言した。 弁護人:「書かれている内容が報告されたのでしょうか?」 武藤:「いや報告されていません」。「そもそもこの会議は何かを決めるというような会議ではありません。情報共有する場でした」 経営幹部は、現場の担当者が提出した資料について報告されたとの記憶はなかった。 いったいどうしてなのか。私たちは、この会議のメンバーだった元幹部を取材した。するとこんな答えが返ってきた。 「大きな会議で資料も大量に提出されます。一つ一つの案件を覚えているかと言われると覚えていない。しっかりと何かを議論をするような感じの場ではなかった」 対策は進める方向で認められたと認識していた現場の担当者。そうではなかった経営幹部。双方の間で認識のずれが起きていたのだ』、当日の「御前会議」には、他にどのような議題がかかったのだろう。多くの案件がかかったのであれば、「認識のズレ」はあり得るが、少なくとも現場側の発表者は最後に確認すべきだったろう。
・『「予想外で力が抜けた」  このあと、認識のずれはさらに広がる。 方向性が認められたと思っていた現場は、分析を進め、最大で15.7メートルの巨大な津波が襲うとの想定も計算していた。被害を防ぐための防潮堤も検討。建設に数百億円、およそ4年の期間かかるとする試算もはじき出した。現場の担当者たちはこの結果を、原子力本部のトップに伝える。 ところが当時、武黒原子力・立地本部長は新潟県の柏崎刈羽原発の地震対応で忙しく不在が多かった。留守を預かっていたのが武藤副本部長だった。 武藤副本部長への説明がされたのは、資料を提出した御前会議から数か月あとの2008年6月と7月。 15メートルをこえる津波の予測も示された中、現場の担当者たちは対策を進めなければ国のバックチェックの審査を通過することは難しいと考えていた。 ところが、武藤副本部長の返答は意外なものだったと担当者は証言する。 「検討のそれまでの状況からするとちょっと予想していなかったような結論だったので。分かりやすいことばで言えば、力がぬけたというか。残りの数分の部分のやり取りは覚えておりません」 専門家の間から異論も出ていた長期評価。武藤副本部長は、信頼性に疑いがあるとして、土木学会に改めて検討を依頼する考えを示したのだった。 武藤氏の証言はこうだ。
「これまでは土木学会の規格でもって(津波に対する)安全性を確認してきた。ところが、政府の地震本部は、それとは違う評価をいったと。土木学会にいま一度検討をお願いして、その扱いについて答えを出してもらう」 これが一定の結論だと受け取った現場の担当者たち。会議の直後、社内や他の電力会社の担当者に送ったメールを入手した。「長期評価の即採用は時期尚早」「経営層を交えた現時点での一定の当社の結論」と伝えていたのだ。 ところが、ここでも認識のずれが明らかになる。裁判で武藤元副本部長は次のように証言し反論したのだ。 「私は決定権限がない副本部長だったわけでありまして、それが大きなことを決められるわけもない」 だれがどの場で意志決定をするのか、社内で現場と幹部の間の認識がずれたまま、東京電力の津波対策は具体的には進まなかったのだ』、「武藤元副本部長」の発言は責任回避の典型だ。本部長が都合が悪いので、代りに報告を受けた以上は、本部長になり替わって意思決定するのが筋の筈だ。
・『「まずはできる対策を」  福島第一原発から南に約110キロ、茨城県にある東海第二原発。日本で初の100万キロワットを超える発電量をもつ原発だ。運営するのは日本原子力発電、通称日本原電。日本原電は、電力各社が出資してつくられた会社で新しい原子力技術の導入や開発などを期待されていた。 裁判から日本原電が「長期評価」に基づいた巨大津波への対策を震災前から進めてきたことが明らかになったのだ。 去年7月の第23回公判。日本原電の元社員が証言した。 「津波対策工事の検討については、地震推進本部(長期評価)を考慮した対策工事について引き続き検討を進める」 私たちが取材で入手した日本原電の資料には、長期評価に基づいた対策を「平成22年度完了目途に実施」と記されていた。東京電力が信頼性に疑いがあると考え、土木学会に検討を依頼した長期評価を日本原電は、取り入れ対策を進めていたことが初めて公になったのだ。 なぜ、費用も手間もかかることになる長期評価を取り入れる判断ができたのか。私たちは日本原電の関係者に取材を試みた。すると日本原電の社風ともいうべき背景があることがわかってきた。 「日本原電は、保有する原発は福井と茨城に4つと少なく、東電に比べれば全然小さな会社。それだけに収入源となる原発の運転をできるだけ止めないようにしたいという意識が強い。だから、もし津波のリスクがあるなら、事前に対応しておいて万一津波が来ても、大丈夫なようにしておきたいと」「長期評価などをもとに、津波がいつかくるというリスクは社内で共有されていたと思う。まずはできる対策をとっていき、大規模な工事は今後順次やっていけばいいという考えだった」 長期評価に基づく対策を進めることに大きな反対はなかった日本原電社内。対策の検討は「耐震タスク」という組織横断的なチームで行われたことが分かった。 長期評価に基づく東海第二原発の津波の予想は最大12.2メートル。建屋まで遡上(そじょう)する高さだ。横断的に土木、機械、建築などのさまざまなグループが参加した耐震タスクは、それぞれが専門的な知見から津波が襲ったときの影響やあるべき対策について議論を重ねたと言う。 そしてまとめた対策は、比較的時間をかけずに費用も抑えられる方法を複合的に実施する対策だった。海に沿って大規模な防潮堤をつくる代わりに津波の威力を弱める盛り土を実施。また、建屋の扉に防水を施し、建物の中に水が入らないようにもした。このほか、非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策も』、福島第一でも「非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策」が採られていれば、メルトダウンは避けられた筈だ。
・『動き出した東電、しかし…  一方、土木学会に検討を依頼した東京電力。あれから2年後の2010年8月。土木学会の結論がでる前に、なぜか動き始めることになる。日本原電で長期評価に基づく対策が進んでいることを知ったのがきっかけだった。関係者が振り返る。 「上司がかなり危機感を持ったというか、東電の検討がだいぶん、遅れているなという風に感じて、対策の検討を進めなきゃと」 ここで東電も各部が参加した横断的なワーキンググループを立ち上げる。そして巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めたのだ。 ところがその途中。あの日を迎えることになる。3月11日。福島第一原発をおよそ15メートルの津波が襲い、原子炉が次々とメルトダウンしていったのだ。 事故が起きたときの心境について対策を進めようとしてきた現場の担当者は裁判で次のように証言した。 「とても残念な気持ちだったといいますか、ショックを受けたということを覚えています」「何かできたんじゃないかなというのは、当然思いましたかね。個人か、集団か、何か、規制か、東電か、一体どこで間違ったのかなということは、一生、気にはなるという点です」 ワーキンググループが予定していた4月の打ち合わせは開催されなかった』、東電でも「巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めた」、初めて知ったが、時すでの遅しだったようだ。
・『対策を進めた日本原電。しかし、新事実が  一方で、この裁判では、電力業界全体が抱える構造的な課題も浮かび上がってきた。 「長期評価」に基づいて先進的に対策を進めていた日本原電。しかしなぜか、こうした取り組みを一切、社外には公表をしていなかったのだ。理由を探ろうと取材をすると、業界の「横並びの意識」が妨げになっていることがわかってきた。 NHKが入手した2008年に4社が集まった会合での資料。土木学会に検討を依頼した東京電力の方針に問題はないと、日本原電も含めた4社が合意した旨の内容が記されていたのだ。 さらに日本原電は、国に対して、「長期評価」に基づいた対策を取っていることを気づかれないようにしていたことも裁判の中で判明した。 公判で示された社外秘の想定問答集の資料。建屋まで津波が遡上する試算が出ていたにもかかわらず、資料には「遡上しない」と記されていた。 さらに対策工事については「万が一」のための「自主的」なものにすぎないと答えるようにしていたのだった。 いったい、どうしてここまでして隠さないといけなかったのか。私たちの取材に匿名を条件に日本原電の元幹部がインタビューに答えてくれた。 「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、物事をすすめるという習慣が身についている。対策をやってしまえば、他の電力会社も住民や自治体の手前、安全性を高めるため対策をとらないといけなくなる、波及するわけです。だから気をつけている」 生活や経済活動を支える重要なインフラである電気。電気は全国一律で同じサービスを提供することが求められ、電力会社は電気事業連合会という組織のもと、さまざまな対策や対応で足並みをそろえてきた。 そして業界の中でも最も規模が大きく、リーダー的な存在である東京電力。各社、その意向は無視できないという。 しかし、こうした体制や考え方が先進的な取り組みを公にすることを阻んでしまったのではないか。 公表されていれば、国や自治体も知るところとなり、原発で津波の追加対策を行う機運が高まり、環境がもっと整ったかもしれない。いつ起こるかわからない自然災害に向き合うには業界の構造的な問題も解決していく必要があると強く感じる取材となった』、「日本原電」がここまで東電に遠慮しているとは、改めて驚かされた。
・『安全性を高めるには文化、習慣を変える  37回におよんだ公判から見えてきた、これまで知られていなかった事実の数々。 シンクタンクの代表も務め内閣官房参与として福島での原発事故の対応にも関わった多摩大学大学院・名誉教授の田坂広志さんに日本の原発の安全性を高めるには何が必要か聞いた。 「原発が事故を起こすとその影響は甚大です。それだけに電力会社にはほかの業界以上の安全への意識と取り組みが求められています。そのうえで安全を技術的な安全と文化的な安全の2つで見てみると、世界で起きている原発事故のほとんどはヒューマンエラーや組織の判断の失敗など文化的な安全の欠如です。例えば東京電力は民間会社です。利益を出さないといけない。そうなると起きるかわからない不確実なリスクに対して巨額な出費ができるかというと株主などに説明できない、それは難しい訳です。また東京電力はトップ企業で、業界全体のスタンダードをつくる役回りがあり、どうしても全社が納得、または準備ができるまで待つ姿勢があります。本当に民間企業が原発の安全を守れるのか、ということを検討する必要が出てきます。そこには国や規制機関がしっかりと電力会社の安全を監視することも必要になります。一方、その規制も日本では電力業界と近いことが原子力安全・保安院の時は課題になりました。規制と電力会社は完全に切り離す、アメリカでは当然のことを日本でも徹底する必要があります。さらに業界の横並び。合理的な面もありますが、原発の安全という点では最高水準のものにあわさず、低い水準のものにあわす形になってしまいます。こうしたことを国民が見たとき果たして安心と思えるか、信頼できるかということです。日本の技術的な安全はかなり上がってきています。しかし構造的、文化的な安全はまだまだだと思います。再稼働が進む中、この点を真剣に考えないと再び大きな原発事故が起きると私は心配しています」 東京地裁での刑事裁判は終わった。しかし、公判で示された新たな証言や資料は膨大にある。安心・安全に一歩でも近づくために必要なことは何か。私たちは今後も取材を続けていく覚悟だ』、「起きるかわからない不確実なリスクに対して巨額な出費ができるか」、いわゆるテールリスクへの考え方は確かに難しい問題ではあるが、「原子力安全・保安院が・・・大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけた」のも事実で、やはり東電はケチり過ぎたのだろう。原発を国営にしろとの主張もあるが、いいかげんな官僚に出来る筈もない。原子力規制委員会も「電力会社」と「完全に切り離」せたのかも心もとないところだ。「業界の横並び・・・低い水準のものにあわす形になってしまいます」、先の日本原電と東電の対応もその典型だろう。NHKの「私たちは今後も取材を続けていく覚悟だ」に期待したい。
タグ:畑村洋太郎 原発問題 田中俊一 NHK News web (その12)(原発事故から変われない日本人、日本の原発はこのまま「消滅」へ、東電裁判 “見えた新事実”) 選択2019年3月号 巻頭インタビュー「原発事故から変われない日本人」 日本では想像力を働かせて、皆と違うことを言うと、異端扱いされて排除される。見たくないことを見ない社会なのだ 福島原発事故の本当のコストを誰も議論しない 「誰の責任か」ということばかりに目を向ける 福島原発事故の本当のコスト 100-500兆円ぐらいはかかるだろう 誰かが考えて上手くいったことについていくのが一番得だ、というのが日本のやり方だ。それでは、どんどん競争力が失われる。日本社会は根本的に考え方を変える必要。まず小学校から「自分で考える」訓練をしていかないと 選択2019年11月号 巻頭インタビュー「日本の原発はこのまま「消滅」へ」 原子力業界が姿勢を徹底的に正さなければ、日本の原子力に先はない 残念ながら原子力政策も見直しされないままなので、この国の原発はフェードアウトする道を歩んでいると眺めている 日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた 最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること 日本の原発はそうした嘘で世論を誤魔化しながらやるという風土があった そこにつけ込まれて、今回のように、原発マネーを狙う汚い人間が集まってくる原因にもなった 使用済み燃料処分のための再処理をやろうとしているのは、日本だけ 今回の不祥事は、福島事故後から取り組んできた信頼回復のための努力の積み重ねを無に帰するもの 今回の関電の問題は犯罪にも近い行為だとは思うが、これを表面的に批判しても意味がない 「東電裁判 “見えた新事実”」 東京地方裁判所は「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして全員に無罪を言い渡した 東海第二原発では、運営する日本原子力発電が東日本大震災が起きる3年前からすでに巨大津波への対策を進めていた 東京電力の現場の担当者たちは、巨大津波への対策を進める考えだった チェルノブイリ原発事故と並びもっとも深刻な「レベル7」とされ、文字どおり史上最悪レベルの原発事故 “長期評価”分かれる見解 原子力安全・保安院が指示をした安全性の再評価 大きな地震に加えて「極めてまれではあるが発生する可能性がある」「適切な津波」への対策を電力事業者に義務づけた 政府の地震調査研究推進本部が示した、いわゆる「長期評価」 「明治三陸地震」と同程度の津波地震が、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いのどこでも発生しうると初めて指摘 東京電力と日本原電、東北電力と日本原子力研究開発機構の4社が集まった 東京電力の担当者の発言は、「取り込まざるをえない」と前向きなものだった “御前会議” 御前会議が会社の意思形成の場、大きな方向性を確認する場だと認識 津波の予測と対策案をまとめた資料が提出された。現場の担当者は会議後、出席していた上司から特に異論はなかったとの報告をうけた 御前会議 認識のズレ 経営幹部は、現場の担当者が提出した資料について報告されたとの記憶はなかった 予想外で力が抜けた 被害を防ぐための防潮堤も検討。建設に数百億円、およそ4年の期間かかるとする試算も 武藤副本部長への説明 長期評価。武藤副本部長は、信頼性に疑いがあるとして、土木学会に改めて検討を依頼する考えを示した 武藤元副本部長 「私は決定権限がない副本部長だったわけでありまして、それが大きなことを決められるわけもない」 まずはできる対策を 日本原電の資料には、長期評価に基づいた対策を「平成22年度完了目途に実施」と記されていた 大規模な防潮堤をつくる代わりに津波の威力を弱める盛り土を実施 建屋の扉に防水を施し、建物の中に水が入らないようにもした。このほか、非常用の発電機も水没を防ぐため高い場所に設置しなおす対策も 動き出した東電、しかし… 横断的なワーキンググループを立ち上げる。そして巨大津波の対策を検討、建屋の防水対策など具体的な検討が進み始めたのだ その途中。あの日を迎える 対策を進めた日本原電。しかし、新事実が 日本原電は、国に対して、「長期評価」に基づいた対策を取っていることを気づかれないようにしていたことも裁判の中で判明 「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、物事をすすめるという習慣が身についている 安全性を高めるには文化、習慣を変える 世界で起きている原発事故のほとんどはヒューマンエラーや組織の判断の失敗など文化的な安全の欠如です
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ハラスメント(その13)(時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然、佐野SA ふたたびストライキ決行へ「前回のストを正当な争議行為として認めて!」、モラハラ提訴した織田信成氏が「悪者」になる謎 メディアの報道ぶりに「女帝」への忖度は働いていないか?) [社会]

ハラスメントについては、10月27日に取上げた。今日は、(その13)(時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然、佐野SA ふたたびストライキ決行へ「前回のストを正当な争議行為として認めて!」、モラハラ提訴した織田信成氏が「悪者」になる謎 メディアの報道ぶりに「女帝」への忖度は働いていないか?)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が11月5日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00047/?P=1
・『1.隣の課の社員が30分以上立たされて叱責を受けている  2.上司が部下に「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と問う  3.一歩間違えば命に関わる現場で、監督者が部下に厳しく接する  4.上司が大きな声で度々指導する  5.上司から業務の出来具合を否定された  さて、これらはパワハラなのか? それともパワハラには当たらないのだろうか? 実はこれ、独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施したハラスメントのヒアリング調査で、「パワハラと判断していいかどうか難しかった事例」として挙げられた一部だ。 おのおのについて会社側の見解は……、 1.叱責された本人から叱責は妥当と返答があり、適正な指導の範囲と判断  2.部下に考えさせる指導方法としてやっていることだが、部下を追い詰めてしまうことがある  3.被害者が加害者を処罰しないでほしいという場合があり、本人もパワハラかどうか分からなくなっている  4.受け手はパワハラととっていたが、第三者にはそうは思えないという意見が相次いだ  5.相談者には「私は頑張っている」「自分がやりたいのはそんなことじゃない」という思いがありパワハラととるようだが、上司は期待を込めてアドバイスしているだけだった ……といった具合に白黒つけるのが難しく、パワハラ認定することより社内での解決を優先したという。 6月7日に公表されたこの調査結果が今、注目を集めているのは、厚生労働省の指針が物議をかもしているためだ。10月21日、厚労省は「パワーハラスメントを防止するために企業に求める指針の素案」を示した。が、その内容に専門家から疑問の声が噴出したのである(「職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講すべき措置等に関する 指針の素案」)』、「指針」は余りにも企業寄りだ。
・『業務上必要ならなんでもアリか?  問題視されているのが、以下のアンダーラインの部分だ(河合が書き込みました)。 2 職場におけるパワーハラスメントの内容 職場におけるパワーハラスメント:職場において行われる 1.優越的な関係を背景とした言動であって、 2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、 3.労働者の就業環境が害されるものであり、1から3までの要素をすべて満たすもの。 なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。 つまり、「経営上の理由」と企業が主張すれば、いかなる行為も許されてしまう可能性が出て来てしまったのだ。 それだけではない。指針ではパワハラの定義である上記の(1)~(3)を具体的に説明しているのだが、(3)の「就業環境を害すること」の欄には、次の一文もある(アンダーラインは河合による)。 この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者の多くが、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当。 さらに……、 職場におけるパワーハラスメントは、上記の(1)~(3)までの要素をすべて満たすものをいうが、個別の事案について職場におけるパワーハラスメントの該当性を判断するに当たっては、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」 言動で総合的に考慮することとした事項のほか、当該言動により労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要。……とある。 平均的? 総合的? ふむ。実にお役所的な曖昧なお言葉である。 で、こうした内容に憤った日本労働弁護団が「上司の暴言やパワハラにお墨付きを与える」との緊急声明を発表。「パワハラの定義を矮小(わいしょう)化している」と抜本的修正を求めたのである。 この指針に関する個人的な感想は後から述べるが、その前に「なんでそんなに問題なわけ?」と首をかしげている人もいるかもしれないので、具体的なケースで説明する』、これでは、「日本労働弁護団」の「緊急声明」は、妥当だ。
・『今後の会社人生を考えるよう促す「追い出し部屋」  例えば、2017年に三越伊勢丹の「追い出し部屋」なるものがニュースで取り上げられ、問題になったことを覚えているだろうか?(参考記事「まさか俺が…追い出し部屋行きは“運”かもね?」) 報じられた内容はこうだ。 三越伊勢丹に「サポートチーム」という新しい部署ができ、部長クラスから30代まで、総勢50人以上の社員が異動になった。辞令のメールには「今後の会社人生について考えるよう促す」と個人面談に言及する内容が書かれており、異動とともにほとんどの人が降格。部長クラスは管理職を降ろされ、100万円近く年収が減る人もいた。 また、新部署の部屋には、50人以上のスタッフが異動になったにもかかわらず、20~30脚の椅子、PC4台、キャビネットが設置されているだけ。しかも、その部屋は私物置き場と連絡の場としてのみ使うことが許され、それ以外は旗艦店3店舗で販売応援することが義務付けられた(お客様の整列、棚の整理など)。 このような仕事は本来、新人が行う業務だ。ところが同期で数名しかなれない「部長職」の人も含むベテラン社員に課せられたことから、自主退職を促すための「追い出し部屋」と報道されたのである。 当時の三越伊勢丹は、様々な新しい施策を取り入れ、伊勢丹のイメージを変えた大西前社長が退陣した直後。大西派の幹部は“新政権”のもと一斉に粛清され、この異動も社内の“大西派”潰しではないかという憶測が、内部からも出ていたという(あくまでも報道された内容)。 ところが、このような報道に対し三越伊勢丹サイドは「追い出し部屋説」を完全否定。「各部署への適正な要員配置と生産性向上のため導入した。従業員の雇用確保を大原則としている」と、あくまでも経営上の理由だと主張したのである。 もっとも「追い出し部屋では?」と問われて、「はい、これは追い出し部屋です」なんてことを会社側が言うわけないし、伊勢丹三越が使った「適正な配置」という言葉は企業側が追い出し部屋を否定する際の決まり文句だ』、「追い出し部屋」が「“大西派”潰し」だったとしても、業務が「お客様の整列、棚の整理など」では、あんまりだ。さらに、“大西派”以外の中高年対策でも使われているのではなかろうか。
・『パワハラ議論の時計の針を戻した今回の指針  しかし、先の一文=「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」という明確な言葉がパワハラ指針に記された途端、社員側が「これはパワハラです!」と訴えても、会社が「経営上の理由」を主張し続ければパワハラにならない。 どんなに追い出し部屋に行かされた人たちに「退職に追い込むような簡単な仕事(=過小な要求)」をさせたり、「遂行不可能な行為の強制(=過大な要求)」を社員に課したりしても、「経営上の理由」「一時的な措置」「適正配置」と企業が繰り返せば、パワハラにならなくなってしまうのである。 ※「過小な要求」「過大な要求」はパワハラ6類型に含まれる。その他は「身体的攻撃」「精神的攻撃」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」。 いったいなんでこんな一文を厚労省は付けたんだ? 専門家たちと共に厚労省の人たちも、長い時間をかけて「パワハラをなくそう!」と議論してきたはずだ。 なのになんでこんなにも「官僚的」で、「雇用者」におもねるような文言を付け加えてしまったんだ? パワハラ問題は2012年に厚労省がワーキンググループを設置して以降、議論を重ね、やっと法制化にたどり着いたのに、これでは振り出しに戻りかねないじゃないか。 そもそも2012年に厚労省が初めてそれまで明確じゃなかったパワハラの定義を定め、6つに類型化し、報告書として発表した背景には、パワハラに悩み、傷つき、生きる力を失った人たちに関わってきた専門家たちの「パワハラをなくしたい」という強い思いが存在した。 パワハラ問題は企業とそのトップが「パワハラをなくそう!」と積極的に取り組むことが必要不可欠で、「パワハラをなくすには、あなたたち自身が努力するしかないんです」と訴えるための定義であり6類型だったと私は理解している。 ところがそんな専門家たちの思いとは裏腹に、当初から企業側は「指導とパワハラの境目が分からない」という主張を繰り返すばかりで、パワハラ対策は後手。どんなにパワハラ被害が増えています、パワハラ相談が過去最高、というニュースが報じられても、企業は「そんなこと言ってたら指導できない!」だの「できないやつを叱ることもできないのか?」だのと、「指導とパワハラの境界線」にこだわり続けた。 昨年、開かれた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で、職場のパワハラ対策として、企業に「防止措置を義務付ける法整備」が提案されたときもそうだった』、企業側が「「指導とパワハラの境界線」にこだわり続けた」、事情もそれなりに理解は出来るが、何でも「指導」に含めてしまうのは行き過ぎだ。
・『パワハラと業務の線引きにこだわる経営側  経営側はこれまで通り、「パワハラと業務上の指導の線引きが困難だ。いきなり法による措置義務を課すことは慎重であるべきだ」と繰り返し、「パワハラをなくす努力」より「パワハラかパワハラじゃないかの境界線を明確にせよ」と言い続けたのである。 そこでワーキンググループは、「これやっちゃ駄目」とダメダメだらけにするのではなく、「○○はパワハラにならない」という指標を示した。それが企業側が「指導とは何か?」を考えるきっかになると信じ、上司を悩ます「受け手に全て決定権がある」という暗黙の了解に楔を打ち込んだのだ。1年前に指針のたたき台として公表した報告書が、まさにそれだ(参考コラム「組織の病」を見過ごすトップと指導という詭弁)。 コラムにも書いたが、そのたたき台はワーキンググループのメンバーが様々な角度から労働者を守るために、それでいて経営側が一方的に加害者扱いされないように議論を尽くしたのが読み取れる内容だった。 なのに、厚労省は……、いったい何をやってるんだろう。 今回問題になっている「なお──」の文言は後付けだし、2012年に定義された、以下のパワハラの定義(以下)から、「精神的・身体的苦痛を与える」という文言を削除させたのも納得できない。 「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係なと゛の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」 今回公表された指針は、1年前にたたき台が示されたときに企業サイドなどから出された疑問点や懸念事項を、体よく「会社側」が有利になるような文言でまとめたものでしかない』、「たたき台はワーキンググループのメンバーが様々な角度から労働者を守るために、それでいて経営側が一方的に加害者扱いされないように議論を尽くしたのが読み取れる内容だった」、のにそれを無視して、「体よく「会社側」が有利になるような文言でまとめたものでしかない」、厚労省の罪は深い。
・『パワハラ問題の本質はどこにある  であるからして、私は今回の問題は厚労省が企業側の圧に屈した結果ではないかと疑っている。「木ばかり見て、森を見ない」企業側の姿勢が、問題の指針を生んだ。そう思えてならないのである。 森とは会社である。そして、パワハラの最大の問題は、継続的にパワハラを受けた人に心理的なダメージがもたらされることにある。 パワハラ自体は個人間=木で行われるものだが、そういった言動を引き起こす責任は企業=森にある。企業には従業員の健康と安全を保障する義務があることが大前提であり、企業経営がパワハラを助長しているという、パワハラ問題の本質を問わない限り、パワハラがなくなることはない。 上記の図(リンク先参照)に示した通り、過度なプレッシャー、時間的切迫度、人間関係の悪さ、過剰な要求、属性による差別などは、働く人の大きなストレス要因であり、そういったギスギスした窒息しそうな職場はパワハラ加害者を生む温床になる。) 一方、パワハラを継続的に受けた人は、精神的な苦痛、肉体的な苦痛、自己否定、自尊心の低下という心理的なダメージを受け、仕事で十分なパフォーマンスを発揮できない。 その結果、企業の生産性は低下する。こういった職場は「不健康な職場」であり、これは組織の病だ。 私は全国各地の1000社以上の企業を訪問したり、取材したりしてきたけど社員が元気に働いている会社にパワハラはなかった。そういった会社は人間関係の風通しがよく、コミュニケーションが取れている会社だった。トップと現場の距離が近く、メンバーが互いにリスペクトし、互いの尊厳を大切にしている会社だった。 冒頭で紹介した労研の調査でも、パワハラを積極的になくそうと努力している会社が大切にしているのは「社内のコミュニケーションの円滑化」だった。 つまるところ、パワハラ対策とは「労働者である前に人間である」という至極当たり前の価値観を共有すること。「労働者はその労働力を雇用者のために提供するが、その人格を与えるのではない」という至極当たり前の哲学を経営者が忘れないことだ』、「パワハラを継続的に受けた人は、精神的な苦痛、肉体的な苦痛、自己否定、自尊心の低下という心理的なダメージを受け、仕事で十分なパフォーマンスを発揮できない。 その結果、企業の生産性は低下する。こういった職場は「不健康な職場」であり、これは組織の病だ」、その通りだ。
・『パワハラのある職場は結局、生産性を下げている  その上で企業は ・能力が発揮できる機会のある会社 ・正当に評価してもらえる会社 ・遂行不能である過剰な仕事を要求しない会社 ・自由に発言できる会社 ・困ったときに相談できる上司や同僚がいる会社 といった、誰もが「人」として尊厳があり、やりがいをもって働ける、元気な組織を目指す。 もちろんこれは理想論であり、実際には「だって、ちょっと叱っただけで、パワハラと言って、翌日から来ない」「気に入らないことがあるとパワハラだ!と訴える」「上司が萎縮して部下に何も言えない」ということが起きていることも私は重々承知している。 それでも「パワハラのそもそも」をしっかりと認識し、考えることをしない限り、不幸な事態はなくなりはしない。家に帰れば自慢の息子であり、娘であり、尊敬されるお父さんであり、お母さんを、パラハラなんかでウツにして許されるわけないじゃないか』、説得力に溢れた主張で、全面的に同意できる。

次に、11月7日付け弁護士ドットコム ニュース「佐野SA、ふたたびストライキ決行へ「前回のストを正当な争議行為として認めて!」」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/c_1234/c_1723/n_10347/
・『東北自動車道上り線の佐野サービスエリア(SA/栃木県佐野市)で11月8日、またしてもストライキが決行される。 佐野SA上り線のレストランやフードコートを運営する「ケイセイ・フーズ」の労働組合(加藤正樹執行委員長)が11月7日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで、記者会見を開いて明らかにした。 佐野SA上り線では、ことし8月14日から1カ月以上にわたって、労働組合によるストライキがあったばかりだ。 労働組合によると、会社側は、前回のストライキを正当な争議行為として認めず、さらに加藤執行委員長らに莫大な損害賠償請求をにおわせているという。こうした状況を受けて、労働組合は11月3日、従業員が安心して働ける環境をもとめて、ストライキを通告していた。 今回のストライキは、佐野SA上り線のレストランエリアに限っており、フードコートは営業する。時間は、午前7時から1時間程度の予定という。加藤執行委員長はこの日の記者会見で「できるだけ、お客さんには迷惑をかけたくない」と話した。 また、ストライキを継続するかどうかは「1回やってから検討したい」(加藤執行委員長)としている』、ストについては、このブログの10月27日で伝えた。解決したと思っていたら、またストとは驚いた。ストを解除する際の条件の詰めが甘かったからなのだろうか。それにしても、今回のストは余りに手ぬるく、経営側へのダメージも殆ど期待できないのではなかろうか。
・『NEXCO東日本に申し入れ  ケイセイ・フーズは、東北自動車道を運営するNEXCO東日本のグループ子会社と出店契約をむすんで、佐野SA上りを運営している。ところが、ことし7月、銀行の融資が凍結されるなど、経営上の問題が起きていた。 同社が8月13日、加藤執行委員長(役職は総務部長)の解雇を通告したことを受けて、労働組合は翌14日、ストライキに突入した。その後、経営陣は刷新されたが、労使交渉は決裂している。 労働組合によると、旧経営陣は株主として、現在も影響力を持ち続けているという。こうした状況のため、労働組合側は11月7日、NEXCO東日本にも「企業としての社会的責任」があるとして、ケイセイ・フーズ側に働きかけるよう申し入れた』、「旧経営陣は株主として、現在も影響力を持ち続けている」、これでは初めのストの意義すら疑われる。「NEXCO東日本」も指導力を発揮してほしいものだ。

第三に、スポーツライターの臼北 信行氏が11月22日付けJBPressに掲載した「モラハラ提訴した織田信成氏が「悪者」になる謎 メディアの報道ぶりに「女帝」への忖度は働いていないか?」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58328
・『果たして事の真相はどうなっているのか。 9月まで関大のアイススケート部監督を務めていたプロスケーターの織田信成氏が同部・濱田美栄コーチからモラルハラスメントを受けたとして、1100万円の慰謝料などを求めて大阪地裁に提訴した。訴状によれば織田氏は同部監督に就任直前の一昨年3月ごろから指導方法などをめぐり、浜田氏からの無視、陰口といったハラスメント行為が始まったと主張。精神的苦痛を受け、今年3月には体調不良で1週間の入院を強いられ、アイスショーも欠場するようになったという。今年5月にはスケートリンクにも行けなくなってしまい、監督業の継続も実質不可能となってしまったとのことだった』、分かり難い事件で、一体、どうなっているのだろう。
・『織田氏の涙の告発にもメディアの大勢は濱田コーチ擁護へ  18日には弁護士同席のもと、会見に臨んだ織田氏は沈痛な面持ちで時折涙を浮かべ、ハンカチで拭う場面もあった。ただ、もともと織田氏と濱田コーチの確執は表面化していた。9月に自らの退任発表が公表された際、織田氏は多忙を理由とする一部報道に対して猛反論。ブログでモラハラ行為があったと指摘し、週刊誌の取材にはその主が濱田コーチであることをハッキリと明かすとともに陰湿な嫌がらせについても詳細に明かしていた。 とはいえ、このタイミングで提訴に踏み切るとは正直思わなかった。折しもフィギュアスケート界はシーズンの真っただ中。これまでの織田氏の怒りを考えれば法廷で争う流れも予想できたとはいえ、選手たちに大きな動揺を与える可能性は少なくないだろう。一部有識者の間から「どうしても拳を振り上げたいならば、シーズンオフまで待っても良かったのではないか」と指摘する声が出ているのも確かに無理はない。 しかし、それ以上に違和感を覚えるのは各メディアがこぞって濱田コーチを擁護している点だ。モラハラ提訴に踏み切った織田氏が逆にぶっ叩かれ、一方の濱田コーチには手腕や功績についての美辞麗句がこれ見よがしに並べ立てられるなど薄気味の悪い報道も多く散見される。 確かに濱田コーチの実績は申し分ない。女子フィギュア界の第一線で活躍中のトップアスリーターたちを次々と育成し「名コーチ」として、その名を轟かせている。教え子の紀平梨花、宮原知子、白岩優奈の3選手はフィギュア最高峰とされるGPシリーズに参戦中。しかも昨季の世界選手権で男子銅メダルを獲得した米国のビンセント・ゾウや、キム・ヨナの後継者として期待される韓国のユ・ヨンら有力外国人選手も指導。その手腕は海外からも高い評価を得て、まさに引っ張りだこである。 もしかするとフィギュア界で権力を握る〝女帝〟に忖度しているのではないだろうか。そう思いながら首をかしげている人も世の中には少なくないはずだ』、織田氏のブログでの下記の主張を見ても、「濱田コーチ」のモラハラの実態はあと1つ分かり難い。
https://ameblo.jp/oda-nobunari/
・『織田氏へ耳を疑う質問を浴びせるメディア  18日に行われた織田氏の会見では精神的にボロボロになりながらも意を決して公の場に出てきた当人に対し、耳を疑う質問をするメディアもあった。 「ハラスメントの内容が『無視した』とか『陰口を言われた』とあるんですけれども、普通の感覚でその資料を読むと〝それだけのこと?〟と感じてしまう人もいると思うんですけども・・・。具体的に例えば人格を否定されることを言われたとか決定的な何かがあったんでしょうか?」 これは、さすがに相手の傷口に塩を塗り込んでいるとしか思えない。ただ同様のトーンは会見当日の18日午後に生放送されていた民放局のワイドショーでも見られ、司会者が「提訴するのは、ちょっと曖昧で弱いのではないか」というニュアンスの言葉を口にするシーンもあった。 巨大権力に歯向かう織田氏の勝ち目は薄く、その肩を持って濱田コーチを批判すれば今後のフィギュア取材に悪影響が出てしまう。だから織田氏は「悪」で濱田氏が「善」の構図を作り出すしかない——。メディアの多くが超人気スポーツ・フィギュアの取材からつま弾きにされてしまう展開を恐れ、このように意図的な流れを作り出している可能性は残念ながら否定できない。 だが〝アスリートファースト〟を貫く織田氏が、それでも行動に踏み切らなければならなかった背景を鑑みると致し方ないところもありそうだ。その真意を織田氏とも親交のある事情通は、こう代弁する。 「自分に対する嫌がらせやモラハラ行為に及んだ濱田コーチのような旧態依然とした指導法や考え方を正さなければ、フィギュア界に未来はないと決死の覚悟を固めたのだろう。そして、それを解決しようと動いてくれなかった大学側にも警鐘を鳴らす意味で動いたのだと思う」 もちろん、この言葉は織田氏側に立った主張であり、そのすべてを額面通りに受け取るわけにはいかない。 ただ濱田コーチの指導法に関しては高く評価されている半面、一部から苦言を呈されているのも実情のようだ。その厳しい指導には周囲から「今の時代にはそぐわない」と苦言を呈されることも増えつつある。だが当の本人は「指導者に意見する選手は大成しない」との考えを隠すことなく公言するなど、自分の指導法に絶対の自信を持っている』、「巨大権力に歯向かう織田氏の勝ち目は薄く、その肩を持って濱田コーチを批判すれば今後のフィギュア取材に悪影響が出てしまう。だから織田氏は「悪」で濱田氏が「善」の構図を作り出すしかない」、ありそうな話だ。
・『「昭和スタイル」を貫く濱田コーチ  日本スケート連盟の関係者は「匿名」を条件とし、濱田コーチにささやかれる内情を詳細に打ち明けた。 「現代には珍しい『昭和スタイル』の指導法だが、そんな濱田先生の厳しい言葉責めを受けてでも上手くなりたいというアスリートはとにかく後を絶たない。 しかしながら近年の濱田先生は部外で数多くのアスリートたちのコーチを請け負い過ぎていて、その中には指導の目が行き届いていない選手もいるのではないかと言われている。 私は濱田先生の『昭和スタイル』を完全に否定はしませんし、今でも間違いなく素晴らしい指導者だと思っています。ただ、そういう独特な指導法においては教え子のアスリートと一緒に過ごす時間がより多く必要です。たとえば厳しい言葉で叱咤した後、何のフォローもなく距離を置いている時間が長ければ、叱られた選手は単に心を腐すだけだからです。過剰に気を遣うようなケアは不要ですが、指導する選手の数が多いことで一人ひとりのアスリートとのミゾが深まってしまう危険性はあると思います。 昨今の日本スケート界はいわゆる『リンク問題』(注)があるにもかかわらず多くの教え子を抱え込むばかりか、他国の選手にまで指導の幅を広げている今の濱田先生のやり方には、申し訳ないですが少々疑問を拭えません。 当たり前ですが、指導する時間は限られています。お眼鏡にかなって入れ込んだ指導を受けられるアスリートはそれなりの恩恵を授かれますが、そうでない選手たちはどうなってしまうか。容易に想像がつくでしょう。そういう空気を感じ取って『教え子』と言われた選手の中には今、濱田コーチとやや距離を置いている選手もいます」 果たして真実はどこにあるのだろうか。 いずれにせよ、関大アイススケート部で本来ならば序列的に下であるはずの濱田コーチと当時監督を務めていた織田氏とのパワーバランスが大きく崩れてしまっていたことだけは間違いない。 提訴された濱田コーチは今のところ反論せずに静観の構えを見せていることから、未だ真実が不透明なところも多くある。織田氏から不信感を露にされている関大側も当惑しているだけで具体的な対抗措置を取る姿勢を示してはおらず「?」のムードが漂う。 とにかく「華やかな舞台でありながら実はかなり闇も深い」とも言われるフィギュア界に一石が投じられた以上、織田氏の告発がうやむやに終わってしまってはいけない』、「本来ならば序列的に下であるはずの濱田コーチと当時監督を務めていた織田氏とのパワーバランスが大きく崩れてしまっていたことだけは間違いない」、全く不可解な世界だ。それにしても、「1100万円の慰謝料などを求めて大阪地裁に提訴」、したことから、今後、真相が徐々に明らかになるだろう。
タグ:ハラスメント 日経ビジネスオンライン JBPRESS 河合 薫 (その13)(時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然、佐野SA ふたたびストライキ決行へ「前回のストを正当な争議行為として認めて!」、モラハラ提訴した織田信成氏が「悪者」になる謎 メディアの報道ぶりに「女帝」への忖度は働いていないか?) 「時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然」 労働政策研究・研修機構が実施したハラスメントのヒアリング調査 厚労省は「パワーハラスメントを防止するために企業に求める指針の素案」 業務上必要ならなんでもアリか? 「経営上の理由」と企業が主張すれば、いかなる行為も許されてしまう可能性が出て来てしまった 日本労働弁護団が「上司の暴言やパワハラにお墨付きを与える」との緊急声明 「パワハラの定義を矮小(わいしょう)化している」と抜本的修正を求めた 今後の会社人生を考えるよう促す「追い出し部屋」 三越伊勢丹の「追い出し部屋」 販売応援することが義務付けられた(お客様の整列、棚の整理など) “大西派”潰し」だった パワハラ議論の時計の針を戻した今回の指針 パワハラと業務の線引きにこだわる経営側 「パワハラと業務上の指導の線引きが困難だ たたき台はワーキンググループのメンバーが様々な角度から労働者を守るために、それでいて経営側が一方的に加害者扱いされないように議論を尽くしたのが読み取れる内容だった 体よく「会社側」が有利になるような文言でまとめたものでしかない パワハラ問題の本質はどこにある パワハラのある職場は結局、生産性を下げている 弁護士ドットコム ニュース 「佐野SA、ふたたびストライキ決行へ「前回のストを正当な争議行為として認めて!」」 会社側は、前回のストライキを正当な争議行為として認めず、さらに加藤執行委員長らに莫大な損害賠償請求をにおわせている 今回のストライキは、佐野SA上り線のレストランエリアに限っており、フードコートは営業する。時間は、午前7時から1時間程度の予定 NEXCO東日本に申し入れ 旧経営陣は株主として、現在も影響力を持ち続けている 臼北 信行 「モラハラ提訴した織田信成氏が「悪者」になる謎 メディアの報道ぶりに「女帝」への忖度は働いていないか?」 織田信成氏が同部・濱田美栄コーチからモラルハラスメントを受けたとして、1100万円の慰謝料などを求めて大阪地裁に提訴 織田氏の涙の告発にもメディアの大勢は濱田コーチ擁護へ 各メディアがこぞって濱田コーチを擁護 織田氏へ耳を疑う質問を浴びせるメディア 巨大権力に歯向かう織田氏の勝ち目は薄く、その肩を持って濱田コーチを批判すれば今後のフィギュア取材に悪影響が出てしまう。だから織田氏は「悪」で濱田氏が「善」の構図を作り出すしかない—— 「昭和スタイル」を貫く濱田コーチ
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ネットビジネス(その7)(赤字のメルカリ 「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か、お布施の定額化で躍進 明瞭価格の葬儀スタートアップ・よりそうが20億円調達、「お坊さん便」がアマゾンでの提供終了 全日本仏教会に屈したのか?、“五つ星”はカネで買える 揺らぐアマゾンの信頼 消費者だます「やらせレビュー」蔓延、首謀者が全告白) [産業動向]

ネットビジネスについては、5月22日に取上げた。今日は、(その7)(赤字のメルカリ 「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か、お布施の定額化で躍進 明瞭価格の葬儀スタートアップ・よりそうが20億円調達、「お坊さん便」がアマゾンでの提供終了 全日本仏教会に屈したのか?、“五つ星”はカネで買える 揺らぐアマゾンの信頼 消費者だます「やらせレビュー」蔓延、首謀者が全告白)である。

先ずは、7月31日付けダイヤモンド・オンライン「赤字のメルカリ、「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/210411
・『フリーマーケットアプリ大手のメルカリがサッカーJ1の鹿島アントラーズを買収する。赤字続きのメルカリが、畑違いのサッカービジネス参入で狙うのは、競争が激化しているキャッシュレスサービス「メルペイ」の普及だ』、興味深そうだ。
・『「小泉社長の悲願」地元愛をアピール  「テクノロジーで変革を起こし、鹿島アントラーズをグローバルでナンバーワンのチームにしたい」———。 7月30日、東京都文京区の日本サッカー協会ビルで開催された記者会見。フリーマーケットアプリ大手メルカリの小泉文明社長は高らかに宣言した。 メルカリはサッカーJ1の「鹿島アントラーズ」を買収する。鹿島の運営会社、鹿島アントラーズ・エフ・シーの株式の61.6%を、約16億円で日本製鉄から取得し、子会社化する。公正取引委員会の承認を得た上で、8月30日に買収が完了する見通しだ。 メルカリは2017年から鹿島のスポンサー契約を締結。今回の買収の経緯について、「スポンサーとして意見交換する中で、どちらから(買収を持ちかけた)ということはなく、自然発生的に今回の話はまとまった」と小泉社長は説明している。 メルカリの関係者によれば、今回の鹿島の経営権参画は「小泉社長が数年前から語っていた悲願」だという。会見でも小泉社長は、鹿島の本拠地に近い茨城県麻生町(現行方市)出身であることを強調。「中学生時代に巨大なサッカースタジアムができ、ジーコのプレーを見てファンになった。サッカー中心に地域を活性化したい」と“地元愛”をアピールした。 ただ、メルカリが現在事業の3本柱として掲げるのは国内メルカリ事業、米国メルカリ事業、キャッシュレス決済「メルペイ」事業だ。そして、国内メルカリ事業は黒字であるものの、米国メルカリ事業とメルペイ事業での出費がかさみ、19年6月期の業績は137億円の赤字の見込みだ。なぜサッカーという畑違いのビジネスに踏み込むのか』、いくら「“地元愛”」があるとはいっても、上場企業が買収する以上、会社にとってのメリットが必要だ。
・『16億円で買った広告塔  鹿島買収でメルカリが目論むのは、キャッシュレス決済「メルペイ」の普及だ。急増する「〜ペイ」の名がつく決済サービスの中で、今年2月にサービスを開始したメルペイは後発組。登録数は200万を超えたが、競合の背中は遠い。 数多くある決済サービスで、自社のものを使ってもらう有効な手法の一つは、使わざるを得ない場を強制的に生み出すことだ。 例えば、「PayPay」を展開するソフトバンクは、ヤフオクドームで開催される福岡ソフトバンクホークスの試合で、PayPayで支払いをすると生ビールが半額になるなどのキャンペーンを展開。また、「楽天Pay」を展開する楽天は、ヴィッセル神戸や楽天イーグルスのスタジアムをキャッシュレス化するなど、自社決済に囲い込む場として活用している。 「グッズや飲食販売でのキャッシュレス決済の利用や、チケットのペーパーレス化でスタジアムが快適になる。決済は日々利用するローカル色が強いサービス。スタジアムをショーケースとして、新しいチャレンジの場として活用できる」と小泉社長は相乗効果を強調。メルペイ経済圏の本拠地としての期待を寄せる。 また、国内メルカリ事業についても、「メルカリの利用者は20~30台の女性が中心。40台以上の男性にアプローチできるサッカーの可能性は大きい」(小泉社長)と広告塔としての役割を狙っており、鹿島の選手にメルカリで出品してもらうことなども考えているという。 昨年6月に上場し、約600億円を調達したメルカリ。米国メルカリとメルペイを強化すべく人材獲得などを進める一方で、旅行などの新規事業開発を担っていた子会社ソウゾウを7月に解散。また、シェアリング自転車サービス「メルチャリ」事業も譲渡し、事業の選択と集中を進めていた。 決算で赤字が続いていることについて、小泉社長は「赤字というPL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)やキャッシュフローのバランスと事業の成長が重要だ」と訴える。メルペイ普及のために投じることになる、16億円という鹿島の買収額。ソフトバンクグループがPayPay普及のために投じた2度にわたる「100億円キャンペーン」と比べれば、メルカリにとって“お得な”買い物なのかもしれない』、「メルペイ」の決済サービスを伸ばす手段、広報効果が「16億円」で得られるなら、確かに「“お得な”買い物」のようだ。

次に、9月3日付けダイヤモンド・オンライン「お布施の定額化で躍進、明瞭価格の葬儀スタートアップ・よりそうが20億円調達」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/213303
・『不明瞭な料金体系やさまざまな慣習が残る葬儀業界に挑戦するスタートアップ・よりそう。もともと葬儀社の比較サービスから始まった同社は、明瞭価格をうたう葬儀サービスを軸に、ライフエンディング領域の事業を拡大している。そのよりそうが総額20億円の資金調達を実施したことを明らかにした。同社のこれまでの軌跡と、今後の展開について、よりそう代表取締役社長の芦沢雅治氏に聞いた』、同社の「お坊さん便」については、このブログの2016年4月19日、2018年9月8日に取上げた。
・『レビューサイト運営で気付いた「葬儀」の課題  葬儀サービス「よりそうのお葬式」、僧侶の手配サービス「お坊さん便」などを手がけるスタートアップ・よりそう。同社は9月2日、SBIインベストメント、ジャパン・コインベスト、新生企業投資、ナントCVC2号 ファンド、山口キャピタル、AGキャピタルの計6社より総額20億円の資金を調達したことを明らかにした。よりそうはこれまでグローバル・ブレイン、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Spiral Ventures Japan、みずほキャピタルからも資金を調達しており、累計調達額は約32.6億円に上る。 よりそう(当時の社名はみんれび)の設立は2009年3月。学生時代からウェブサイトを制作していた芦沢氏は、2009年にみんれびを設立。当初はさまざまなジャンルのレビューサイトを作り、アフィリエイトを軸に事業を行っていた。その中でもユーザーを集めていたのが葬儀のレビューサイト「葬儀レビ」。そこで芦沢氏は葬儀に関する情報のニーズについて知ることになった。 「いろいろなサイトを立ち上げる中で、当時は葬儀領域の競合が少なく反響もよかったんです。ただ、自分の身のまわりの人がいつ亡くなるかは分からないことがほとんど。急な相談のニーズも多いため、365日、24時間のコールセンターが必要だと感じたんです。当時は私も電話に出ていました」(芦沢氏) 芦沢氏も語るように、葬儀の多くは短い時間で大きな選択を迫られることがほとんど。また、経験する機会もそうそうないものだ。そんな中でいつでも相談できるコールセンターを作ったことが、ユーザーを集めたのだという。 「正直なところ、その頃は事業的には常に苦しい状況でした。レビューサイトやコンサル事業、他社サイトの集客支援などをやりながら、それをコールセンター業務につぎ込んでいる状況。ですが、レビューして、比較するだけではダメだったんだと思っています。コールセンターまで作ったことが、サイトの価値につながりました」(芦沢氏)』、「コールセンターまで作ったことが、サイトの価値につながりました」、目のつけどころは確かそうだ。さらに、ベンチャー・キャピタルから総額32.6億円も調達したとは、たいしたものだ。
・『「価格が明瞭な葬儀サービスが必要」  レビューサイトは事業として育ちつつあったという当時のよりそう。葬儀に関する相談を受ける中で、現状の葬儀ビジネスにまだまだ不明瞭な点があるということだと気付いた芦沢氏。2013年には明瞭な価格体系を打ち出した葬儀サービスの「よりそうのお葬式(開始当初の名称は「シンプルなお葬式」)」や、法事や法要に定額のお布施で僧侶を手配する「お坊さん便」といった葬儀関連サービスを自ら展開するに至った。 「たとえばお布施の金額を相談されても、これまでだと『お気持ちです』としか言えませんでした。それを定額化して示したことの反応がよかったんです。葬儀の業界を研究してきましたが、すればするほど、『分かりづらい』と感じました。たとえ複数社を並べて比較検討したところで、何が違うのかが見えにくい。お客さまのニーズ考えると、価格が明瞭で、パッケージとしてしっかりした葬儀が必要だと考えました」「老後は怖い。それはみんな怖いじゃないですか。年金をはじめとしたお金、親や自分自身の介護だってそうです。もちろん終活もそうです。だからまず、ここからやっていこうと決めました。最初の頃には『インターネットで葬儀社は探さない』とも言われました。今までは家族や知り合い経由、もしくは病院の提携先などのつながり、もしくは電話帳で探していた領域。それをパソコンやスマホで検索しないわけはないと思っていました」(芦沢氏) 2009年にはユニクエストの「小さなお葬式」、イオン子会社であるイオンライフの「イオンのお葬式」といった明瞭な価格設定をうたう葬儀サービスがスタート。業界団体との摩擦もあったが、その認知を広げつつあった。また、病院提携の葬儀社に葬儀を依頼する割合も減ってきている(芦沢氏によると現在では10%にも満たない状況だという)。さらに、都市圏を中心に核家族化が進んで葬儀自体の規模も小さくなってきた。こういった状況も葬儀サービスのニーズに拍車をかけた』、「明瞭な価格設定をうたう葬儀サービス」がライバルとして出現しているようだ。
・『問い合わせは4年で8倍以上に  同社の売上高は非開示だが、葬儀サービスを軸に、数十億円規模に成長しているという。また、葬儀サービスへの累積問い合わせ件数は2014年度末から2018年度末で比較して約8倍、お坊さん便では約13倍になった。また、2018年3月には社名変更に加えて、墓地、法事、相続といった葬儀周辺領域のサービスをワンストップで提供するブランドとして「よりそう」を打ち出している。よりそうでは生前に加入することで、葬儀や供養の特典が受けられる「よりそうメンバー制度」を展開しているが、その会員は数万人になっているという。 「喪主としてお葬式を上げて、お坊さんを手配します。そうすると今度は四十九日、一周忌法要と続きます。周忌法要だけでなく、位牌や仏壇、お墓も必要になりますし、相続についてもなくなってから10ヵ月以内に決めないといけません。そういったことを一元化していきます」(芦沢氏) よりそうでは、今回調達した資金をもとに採用やサービスの拡大を進める。来年度末までに社員数は現在の2倍にあたる200人にまで拡大する。葬儀の市場規模は2兆円。高齢化が進むため、2040年頃までさらに拡大するとの見方もある。 今後はテレビCMをはじめとしたマスプロモーションについても検討中だ。また、提携する葬儀社とも連携し、顧客満足度向上のための仕組みも作っていくという。ユニクエスト(2018年12月)、イオンライフ(2019年4月)同様、2019年1月には景表法の有利誤認にあたるとして措置命令も受けたが、表示を訂正し、再発防止のための体制作りも進めた。 「米国でも、ある葬儀社が価格を公開したら州知事に褒められたというニュースがありました。もちろんそのままの形式で持っていけるかは別ですが、グローバルに課題がある領域です。ですがまずは国内で、そして葬儀の前後までをサポートする事業をやっていきたいと思っています」(芦沢氏)』、「葬儀周辺領域のサービスをワンストップで提供するブランドとして「よりそう」を打ち出している」、広がりがあるビジネスに一挙に拡げてゆく戦略の行方が注目される。

第三に、11月9日付けダイヤモンド・オンライン「「お坊さん便」がアマゾンでの提供終了、全日本仏教会に屈したのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/219904
・『僧侶を手軽に分かりやすい金額で手配できることで好評を博した「お坊さん便」が、アマゾンでの取り扱いを終了する。その背景には仏教界との対立があった。今後、僧侶派遣サービスはどうなるのか』、資金調達もしたのに、本当にどうなっているのだろうか。
・『昨年比150%超の成長 僧侶派遣サービスが普及した理由  「アマゾンでの『お坊さん便』の取り扱いを終了します」――10月24日、よりそう(旧みんれび)は、こうリリースした。 お坊さん便とは、葬儀供養など仏事の際にインターネット上で民間の僧侶を手配し、全国に一律定額で派遣できるサービスのことだ。 2013年に運営を開始し、15年から大手ECサイトのアマゾンで出品。年間累計問い合わせ件数の実績は、14年度に比べて18年度は約13倍になった。また、直近の19年第2四半期では、新規外部受注分で昨年比150%超と成長を続けている。 僧侶の登録者数も1300超に及んでおり、革新的なアイデアが消費者、僧侶の双方に受け入れられたことになる。 では、なぜお坊さん便が普及したのか。 その背景には、お墓参りに行く時間がない、お布施の金額が不明瞭で僧侶とはあまり付き合いたくない、などの理由で先祖供養をする「菩提寺」を必要としなくなった葬儀や供養といった法事をめぐる消費市場の変化がある。 その一方で、僧侶も収入源が減っており、少しでも法事に関わる機会を増やしたいというニーズがあった』、ここまで順調に伸びていたのに、「アマゾンでの取り扱いを終了」した理由は、何なんだろう。
・『「宗教行為を商品化するな」 新勢力と旧勢力の対立  同社の売上高に占めるお坊さん便の割合は「非開示」(同社広報)だが、同社の主力サービスであることは間違いない。 では、なぜ売上に貢献してきたアマゾンでの取り扱いを終了したのか。 その背景には、日本の伝統仏教界における唯一の連合組織「全日本仏教会」の存在がある。 「お坊さん便」がアマゾンで出品された際、同会は「お布施はサービスの対価ではない」「宗教行為を商品化してはいけない」といった反対声明を出した。 こうして、新勢力のお坊さん便VS旧勢力の全日本仏教会という構図が生まれた。 そんな中、よりそうは1年ほど前から「仏教関係者に対してお坊さん便の役割を説明する機会を増やしてきた」(同社広報)という。 そして今年春ごろ、両者が直接対話する場が設けられた。 その中でアマゾンでの出品が文化・宗教行事を商品化したように見えたり、不要なものだという誤解を広めてしまった側面があったこと。葬儀と弔いにおける仏事の重要な役割は、身近な人と死別した悲しみを癒す「グリーフケア」であり、その重要性を希薄化させてしまったことなどを、よりそう側が認めたという』、「アマゾンでの出品」が仏教的には問題があったことを認めざるを得なかったようだ。
・『僧侶の目から見た仏教界の生存競争  こうしてみると、新勢力が旧勢力との争いに屈したともみてとれるが、事はそう単純でもなさそうだ。 よりそうは、お坊さん便の窓口を自社サイトに一本化し、サービスを継続する。 なぜなら、消費者心理の変化によって寺院離れが進んでいるという現実があり、全日本仏教会としては民間企業の力を借りてでも消費者と寺院との接点を維持し、グリーフケアの意義を広めたいという思惑があるからだ。 よりそうとしても、消費者が寺院や仏事に価値を感じなくなれば、サービスそのものが成立しなくなる。そこで両者は対立ではなく、協業という選択をとったという訳だ。 最近では、お坊さん便のみならず、僧侶派遣サービスを手掛ける企業が増えた。 ある僧侶はこう話す。 「今の世の中、お寺を維持して僧侶たちの生活の面倒を見たいという人はほぼいない。今回の件は、よりそうにダメージはないだろう。むしろ自社サイトに一本化して勝負を賭けてくる。つまり各社とも一層、熾烈さが増していくだろう。今後、寺院と葬儀社の生き残りをかけた戦いがいよいよ始まる」 今や、葬儀はいらない、お墓はいらない、僧侶はいらないというのが時代の流れだ。 そんな中、お坊さん便のアマゾンからの撤退は僧侶派遣サービスの終えんではなく、むしろ仏教界とそれを取り巻くビジネスの生存を賭けた本格的な競争の号砲が鳴ったと捉えた方がいい。 この僧侶の言葉には、そんな意味が込められている』、「自社サイトに一本化して勝負を賭けてくる」、ある程度、有名にもなったので、「アマゾン」の軒先を借りなくても済むと判断した可能性もある。「僧侶派遣サービス」は各社の「自社サイト」を中心に激化していくのだろう。

第四に、11月22日付け日経ビジネスオンライン「“五つ星”はカネで買える 揺らぐアマゾンの信頼 消費者だます「やらせレビュー」蔓延、首謀者が全告白」を紹介しよう。2頁目後半以降は、有料会員限定になるので、無料部分だけの紹介である。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00082/
・『世界最大の通販サイト、アマゾンで商品を絶賛する「やらせレビュー」が横行している。大勢の消費者を惑わす者の正体を追って中国・深圳の雑居ビルにたどり着いた。不正対策に年間400億円超を投じるアマゾンをあざ笑う首謀者が、ついに全手口を明かした。 IT関連メーカーが集積する中国・深圳。その中心部から10kmほど北の坂田(バンティエン)地区に足を踏み入れた。牛肉や豚肉のおいしそうな匂いを漂わせる飲食店、零細の物流会社、家族経営の商店が混然と立ち並ぶ。 現地を案内してくれた深圳在住の王宇航氏(仮名)が流暢な日本語で切り出した。「坂田地区には、アマゾンにIT関連製品を出品する、私たちのようなネット販売業者が集結しています」 王氏とはフェイスブックを通じて知り合った。チャットで取材交渉を重ねること1カ月。現地で初対面した王氏は社交的な20代の若者だった。 「今から向かう勤務先の同僚たちにはあなたの来訪目的を伝えていません。のちほど真相をすべてお話ししますから、職場では決して余計な詮索をしないようお願いします」 そう念押しして、路地に建つ雑居ビル内のオフィスに招き入れてくれた。2フロアに分かれて50人ほどが働いている。多少雑然としてはいるが、いかがわしさは感じられない。 自社開発したワイヤレスイヤホンや携帯型スピーカーなどのIT関連製品を、日本、米国、英国、ドイツ、フランスに輸出し、アマゾンを通じて現地で販売している。各国のアマゾンに開設した「ストア」と呼ばれるオンライン店舗を、現地語を操る従業員が運営していた。日本語を勉強した王氏は、日本向けのストアを任されている。一見したところ何の変哲もない、一般的なネット販売業者である。 しかし一皮むけば、ここは秘密裏に遂行される捏造の中枢だ。ストア運営者せは全員「やら」に手を染めている。担当国の協力者を操って、アマゾンで自社商品を絶賛するレビューを量産している。王氏は、日本の消費者向けのやらせレビューを担う首謀者である。 「私たちだけではありませんよ。この辺りのネット販売業者はどこでもレビューを操作しています」 王氏はそうささやいた。坂田地区は世界最大の通販サイト、アマゾンに偽のレビューを蔓延させる“汚染源”だった』、“汚染源”が「深圳の北の坂田(バンティエン)地区」だったとは、改めて驚かされた。
・『ネットの評判は死活に直結  「商品が届きました。品質がよく、しかも安い。コスパ最高!」 「料理はどれもおいしく、接客も行き届いていました。大満足です」 通販サイトや口コミサイトにずらりと並ぶ高評価のレビューを信頼し、商品を購入したりサービスを選択したりする人は多い。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)が、SNS(交流サイト)の利用者を対象に実施したアンケート調査では、ほぼ全員が商品やサービスの購入時にレビューを参考にしていた。他人のレビューを「とても参考にしている」もしくは「ある程度参考にしている」と回答した比率は合わせて95%を占める。 「レビューを確認するのは、特にどのような商品やサービスを購入するときか」との問いに対して最も多かった答えが「白物家電、AV家電、カメラ」で、46%に達した(複数選択可)。2位は29%の「パソコン、携帯電話」だった。1位と2位の製品群は、日本のネット通販業界では、アマゾンが抜群の販売力を誇っている。 サービス業の中で「特にレビューを確認する」ことが最も多かったカテゴリーは「飲食サービス」で、22%に上った。飲食業ではカカクコムが運営する口コミサイト、食べログのレビューが最も権威があると見なされている。 圧倒的な影響力を持つ「レビュー界」の両雄といえるアマゾンと食べログ。アマゾンに出品するネット販売業者や、食べログに掲載された飲食店は、少しでも評価を高めようと必死だ。MURCの調査では、レビューがよくなかった場合に「購入を取りやめる」あるいは「購入を取りやめることの方が多い」とした者は、合計76%に達した。ネット販売業者や飲食店にとってレビューの良しあしは死活に直結する。 「これは戦争です」 職場から少し離れた喫茶店で、王氏はアマゾンのレビューが販売に与えるインパクトを口にした。 「同業者を上回る評価を獲得しなければ、販売競争に負けてしまいます」 飲食店もレビューに振り回されている。最近まで東京都内でレストランの店長を務めていた川崎理明氏は振り返る。 「食べログでは2年前にレビューの集計方法が突然変わったため、店の総合得点が一気に下がったことがありました。その影響でお客さんからの予約はぴたりと止まりました」 現在、川崎氏は飲食関連のコンサルタントとして活動している。 「クライアントの中には、食べログの点数が下がったせいで、月商700万円が600万円まで落ち込んだ飲食店があります。損益分岐点が月商600万円のお店だったので、店主は頭を抱えています」 わずかな点数の変化で売り上げが大きく増減するストレスから逃れようと、禁断のやらせに手を出そうと思う飲食店経営者が増えるのも無理はない。そうやってやらせレビューに頼る競合店が増えていけば、「正直者がバカを見る」傾向は強まっていく。 坂田地区は正直者がバカを見る段階を通り過ぎている。やらせレビューで攻勢をかける競合相手にやらせで対抗していった結果、もはや正直者は見当たらなくなった。 この記事は有料会員限定です』、「やらせ」がはびこり続ければ、「レビュー」の信頼性が低下する筈だ。現在はそれまでの過渡期なのかも知れない。
タグ:ネットビジネス 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン よりそう 「お坊さん便」 (その7)(赤字のメルカリ 「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か、お布施の定額化で躍進 明瞭価格の葬儀スタートアップ・よりそうが20億円調達、「お坊さん便」がアマゾンでの提供終了 全日本仏教会に屈したのか?、“五つ星”はカネで買える 揺らぐアマゾンの信頼 消費者だます「やらせレビュー」蔓延、首謀者が全告白) 「赤字のメルカリ、「メルペイ」普及のため鹿島アントラーズ買収は得か損か」 鹿島アントラーズを買収 「小泉社長の悲願」地元愛をアピール 約16億円で日本製鉄から取得し、子会社化する 2017年から鹿島のスポンサー契約を締結 自然発生的に今回の話はまとまった 小泉社長は、鹿島の本拠地に近い茨城県麻生町(現行方市)出身 国内メルカリ事業は黒字であるものの、米国メルカリ事業とメルペイ事業での出費がかさみ、19年6月期の業績は137億円の赤字の見込み 16億円で買った広告塔 数多くある決済サービスで、自社のものを使ってもらう有効な手法の一つは、使わざるを得ない場を強制的に生み出すことだ グッズや飲食販売でのキャッシュレス決済の利用や、チケットのペーパーレス化でスタジアムが快適になる。決済は日々利用するローカル色が強いサービス。スタジアムをショーケースとして、新しいチャレンジの場として活用できる 「お布施の定額化で躍進、明瞭価格の葬儀スタートアップ・よりそうが20億円調達」 レビューサイト運営で気付いた「葬儀」の課題 累計調達額は約32.6億円に上る よりそう(当時の社名はみんれび) 365日、24時間のコールセンターが必要だと感じた コールセンターまで作ったことが、サイトの価値につながりました 「価格が明瞭な葬儀サービスが必要」 問い合わせは4年で8倍以上に 墓地、法事、相続といった葬儀周辺領域のサービスをワンストップで提供するブランドとして「よりそう」を打ち出している 「「お坊さん便」がアマゾンでの提供終了、全日本仏教会に屈したのか?」 「お坊さん便」が、アマゾンでの取り扱いを終了する 昨年比150%超の成長 僧侶派遣サービスが普及した理由 「宗教行為を商品化するな」 新勢力と旧勢力の対立 「全日本仏教会」 「お坊さん便」がアマゾンで出品された際、同会は「お布施はサービスの対価ではない」「宗教行為を商品化してはいけない」といった反対声明 よりそうは1年ほど前から「仏教関係者に対してお坊さん便の役割を説明する機会を増やしてきた アマゾンでの出品が文化・宗教行事を商品化したように見えたり、不要なものだという誤解を広めてしまった側面があったこと。葬儀と弔いにおける仏事の重要な役割は、身近な人と死別した悲しみを癒す「グリーフケア」であり、その重要性を希薄化させてしまったことなどを、よりそう側が認めた 僧侶の目から見た仏教界の生存競争 自社サイトに一本化して勝負を賭けてくる 「“五つ星”はカネで買える 揺らぐアマゾンの信頼 消費者だます「やらせレビュー」蔓延、首謀者が全告白」 アマゾンで商品を絶賛する「やらせレビュー」が横行 中国・深圳 坂田(バンティエン)地区 ストア運営者は全員「やらせ」に手を染めている 担当国の協力者を操って、アマゾンで自社商品を絶賛するレビューを量産 アマゾンに偽のレビューを蔓延させる“汚染源”だった ネットの評判は死活に直結 やらせレビューで攻勢をかける競合相手にやらせで対抗していった結果、もはや正直者は見当たらなくなった
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ノーベル賞受賞(その7)(ノーベル賞・吉野氏のエール「私たちはハッピーな時代にいる」、「研究は苦しいことの連続だが あるラインを越えると楽しくなる」――ノーベル化学賞の吉野氏、大日本帝国憲法で独立守ったエチオピア 天皇制と縁の深い今年のノーベル平和賞) [イノベーション]

ノーベル賞受賞については、昨年10月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(ノーベル賞・吉野氏のエール「私たちはハッピーな時代にいる」、「研究は苦しいことの連続だが あるラインを越えると楽しくなる」――ノーベル化学賞の吉野氏、大日本帝国憲法で独立守ったエチオピア 天皇制と縁の深い今年のノーベル平和賞)である。

先ずは、本年10月10日付け日経ビジネスオンライン「ノーベル賞・吉野氏のエール「私たちはハッピーな時代にいる」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/101000208/
・『2019年10月9日、米国のJohn Goodenough氏、英国のStanley Whittingham氏とともに、旭化成名誉フェローの吉野彰氏の、ノーベル化学賞の受賞が決まりました。「日経ビジネス」2010年8月30日号に登場いただいた吉野氏の、読者や研究者へのエールを再掲載いたします。 私が1980年代半ばに発明したリチウムイオン電池は、今では人々の生活の様々な電気機器で使われるようになりました。携帯電話やパソコン、情報機器などへの搭載が進み、本格的な普及が始まったのが約15年前。研究者である私にしてみれば、研究が本格的に始まった約30年前がリチウムイオン電池の黎明期だったという認識です。 今、電池の研究はその時に匹敵する大きな節目を迎えています。携帯など小型の民生分野から、電気自動車やエネルギーインフラなど中型・大型と呼ばれる分野へ、市場の大転換が始まったからです。本格的な普及期に入るのが15年後の2025年頃。必要な電圧も、これまでの20ボルト程度から700ボルトに達すると見られています。 電池関連の研究に携わる人には、間違いなくハッピーな時代がやってきたと言えますね。市場は広がる一方なのに、技術が十分についていっていないのですから、やるべきことが山ほどある。研究者が思う存分に活躍できる時代だと言うこともできます。 ただし、私がリチウムイオン電池の研究を始めた約30年前と比べ、研究者を取り巻く環境は大きく変わりました。以前は、電池材料の研究など、モノ作りの「川上」に没頭していれば済んだようなところがありましたが、今後は充電システムや、それらをネットワーク化した社会インフラなど「川下」まで含めた構想力が求められます』、「以前は、電池材料の研究など、モノ作りの「川上」に没頭していれば済んだようなところがありましたが、今後は充電システムや、それらをネットワーク化した社会インフラなど「川下」まで含めた構想力が求められます」、今後求められるのは、どちらかといえば、日本人が不得手な分野のようだ。
・『技術が激動する時代は、日本の企業や研究者が大きな“宝物”をつかみ取るチャンスです。私は大いに期待していますが、心配な面もあります。 まず、パソコンのソフトウエアのように、「川下」分野ではデファクトスタンダード(事実上の標準)を握ることが重要だということです。その点、日本企業は自分たちの製品やシステムを世界にアピールすることが苦手です。もう技術力の優位性だけでは勝てない時代なのですから、電池を無償提供しながら充電インフラを売って利用実績を積み上げるようなアプローチが必要になるでしょう。相手にメリットを与えながら、自分たちも得できるような、したたかな戦い方が必要です。 もう1つは、若手の研究者に成功体験が少なくなってしまったことです。試行錯誤が続く研究では教科書的な解決策では済まない課題が次々と出てきます。ここでモノをいうのが経験です。 この15年間ほど、リチウムイオン電池は改良型の研究開発が多かったので、大きな壁にぶつかってそれを乗り越えた経験があまりない。私たちの世代が若手と一緒に活動しながら、自分の成功体験を伝えていくことが、非常に大切になってくると思います。 リチウムイオン電池は、最終製品こそ日本メーカーのシェアは5割程度ですが、原材料ベースのシェアは約85%にもなり、日本が圧倒的に強い分野です。たとえ電池の世代交代が起こっても、システム化で勝負する時代になっても、日本勢は踏ん張って存在感を示してほしい。そのためにも研究者には「今、ハッピーな時代にいる」ことを再認識して気持ちを奮い立たせてもらいたいのです。(談)』、「たとえ電池の世代交代が起こっても、システム化で勝負する時代になっても、日本勢は踏ん張って存在感を示してほしい。そのためにも研究者には「今、ハッピーな時代にいる」ことを再認識して気持ちを奮い立たせてもらいたいのです」、同感だ。

次に、10月10日付け日経XTECH「「研究は苦しいことの連続だが、あるラインを越えると楽しくなる」――ノーベル化学賞の吉野氏」を紹介しよう。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/01023/100900005/
・『本記事は日経ものづくりの過去記事を再掲載したものです。 持ち歩ける電子機器に、今やリチウムイオン2次電池は欠かせない。この電池は正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)、負極にカーボン(C)を使う。1985年にこの基本構成を発明し、基本特許を成立させたのが、吉野彰氏だ*1。同氏が研究者としてこの発明を成し遂げたのは、常に顧客に役立つための研究を意識し、貫いてきたからである。 *1 吉野氏はリチウムイオン2次電池の基本構成の特許第2668678以外にも、価値の高い特許を取得している。そのうちの一つが、正極の集電体にアルミニウムはくを使った特許第2128922号。 1972年に旭化成に入社した同氏は、機能性樹脂の研究にいそしむ。9年目の1981年、吉野氏は研究テーマにポリアセチレンを選び、3人の小規模な研究グループのリーダーとなった。ポリアセチレンは、後の2000年にノーベル化学賞を受賞することになる白川英樹氏が世界で初めて発見した導電性樹脂である。この樹脂には、電気を流すと電気化学的に酸化還元反応を示す特性があった。これをうまく利用すれば、2次電池として機能する。吉野氏はポリアセチレンに期待されていたさまざまな特性を丹念に調べ、2次電池の可能性を確信する。 試行錯誤で研究を進める中、吉野氏は偶然、ある海外論文に目を通し、LiCoO2が正極に使えることを知る。一方、負極にはポリアセチレンと同じ特性を持ち、より低コストなカーボンで代用できることを発見した*2。当初は有望と考え、研究のきっかけとなったポリアセチレンだが、実用化に向けた評価を進める過程で、熱に対する安定性に欠け、比重が小さく電池にした場合に小型化できないという弱点を突き止めた同氏は、すぐに他の材料に切り替えたのだ。そして、LiCoO2とカーボンを組み合わせた2次電池を試作し、実験して息をのむ。充電も放電もうまくいった。リチウムイオン2次電池が誕生した瞬間だった。 *2 吉野氏がリチウムイオン2次電池の負極に使ったカーボンは「気相成長法炭素繊維(VGCF、Vapor phase Grown Carbon Fiber)」。直径10nm、長さ1~2cmほどの繊維状のカーボンを、バインダで固めて負極に加工した。VGCFは宮崎県延岡市にある旭化成の繊維系の研究所が開発していた』、「弱点を突き止めた同氏は、すぐに他の材料に切り替えた」、とは吉野氏は非常に柔軟なようだ。
・『「研究は苦しいことの連続だ。だが、苦しさがあるラインを越えると、“ランナーズハイ”のように楽しくなってくる」と吉野氏は語る。だが、そのためには押さえるべきポイントがある。「研究の初期段階で市場性を徹底的に調べること」(同氏)だ。 企業は利益を追求する組織である。そのため、研究がある水準に達し、それ以上継続させるためには、市場があることや技術がものになることを企業側に証明する必要があるというのだ。「事業に結び付かない研究は、遅かれ早かれストップが掛かる。その際、研究者は継続したい一心で、市場や技術の優位性をでっち上げたい気持ちに駆られることもある。だが、そうしたところでうまくいくものではない。だからこそ、できる限り早い段階で対象となる研究の将来性を見極めることが大切だ」と吉野氏は力説するのだ。 吉野氏は2003年に旭化成のグループフェローに任命された*3。この成功の源をたどると、ポリアセチレンの研究に着手してすぐに2次電池の市場や技術を調査し、市場が大きいことや、そのために解決すべき技術的な課題を把握していたことが大きい。 *3 旭化成グループフェロー制度は、2003年に同社がグループ共通の制度として設けた。優れた業績を上げた研究者に「グループフェロー」の称号を与えて高く評価し、厚く処遇する。若い研究者や技術者のモチベーションを鼓舞する狙い。』、「研究は苦しいことの連続だ。だが、苦しさがあるラインを越えると、“ランナーズハイ”のように楽しくなってくる」、面白い比喩だ。「研究の初期段階で市場性を徹底的に調べること」、民間企業で研究者として生き残れた秘訣なのかも知れない。
・『化学メーカーである旭化成には電池の経験がなかった。そのため、吉野氏は電池メーカーの技術者に話を聞きに行く。だが、普通には会ってくれない。そこで同氏は両者(正しくは両社?)の幹部同士を通じて非公式な話し合いを設けてもらい、その電池メーカーの技術者から市場性や技術的な課題を聞いたのだ。その時、特に「安全性が開発のネックである」という貴重な情報を得た。これにより、「研究の初期の段階で最優先に解決すべき課題を知ったことで、商品化に有利になった」(同氏)。 旭化成のフェロー制度は、研究水準の高さに加え、事業を成功に導いて利益へ貢献したかも厳しく問う。研究と市場の二兎にとを追ったからこそ、吉野氏はフェローの称号を手にしたのだ。同氏は現在も若手研究者に市場に目配りすることの重要性を説いている。 出典:日経ものづくり、2005年5月号 特集「悩める技術者の幸福論 Part2 技術で生きる10人の幸福論、研究の目的を事業化の成功に置き 市場調査を徹底してフェローに昇格」を改題 記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります』、「普通には会ってくれない。そこで同氏は両者の幹部同士を通じて非公式な話し合いを設けてもらい、その電池メーカーの技術者から市場性や技術的な課題を聞いたのだ。その時、特に「安全性が開発のネックである」という貴重な情報を得た」、組織や上司の動かし方もなかなか上手いだけでなく、ヒアリング能力にも長けていたようだ。やはり非凡な人物のようだ。

第三に、イノベーションのカテゴリーには入らないが、作曲家=指揮者で東大准教授の伊東 乾氏が11月20日付けJBPressに掲載した「大日本帝国憲法で独立守ったエチオピア 天皇制と縁の深い今年のノーベル平和賞」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58236
・『2019年のノーベル平和賞は、エチオピアのアビ・アハメド首相に授与されました。 ところが受賞の報の直後、これに抗議する人々のデモと治安部隊が衝突し、67人が亡くなるという報道がありました。 全く穏やかではありません。ノーベル平和賞を受賞したはずの治安部隊側の発砲で死者が出ており、決して「平和な平和賞」ではないことが知られます。 アフリカ大陸には国境がありますが、その多くは直線で仕切られています。例えばエジプト、リビア、スーダン、チャドなどの間の国境は、サハラ砂漠の上に引かれた真っ直ぐの線で、つまり架空の国境に過ぎません。 誰が引いたか、と言えば、アフリカを植民地として権利を主張し合った西欧列強による分割で、実際のアフリカ社会は別のルールでできています。 それは「部族社会」です。 ルワンダ・ジェノサイドで対立した「フトゥ」「トゥティ」の両者は<部族>ではなく社会階層の違いでしたが、実質的にはグループとして対立し、3か月間で120万とも180万ともいわれる数の犠牲者が出ました。 アフリカの対立は欧州の植民地化と部族の対立を考えねば、一般には何も分かりません』、「ノーベル平和賞を受賞したはずの治安部隊側の発砲で死者が出ており」、私もどうなっているのだろうと、疑問に思っていた。ただ、「ノーベル平和賞」は余りに政治的に決まるので、その1つかとも思った。
・『しかし、広いアフリカ大陸の中に、2つだけ、独立を保った国家があります。すなわち、ごく一時期の例外を除いて、アフリカ人の自治国家が継続した国があるのです。 一つは「リベリア」ですが、これは名前から分かるようにリベラル、リバティ、つまり自由の名を冠した、アメリカ合衆国で解放奴隷となった人々がアフリカに戻ってアメリカ合衆国憲法を範として建国した国家です。 リベリアの国旗は「星条旗」に星が1つだけというもので、建国の経緯もあって西欧列強の植民地化は避けられました。 では問題がなかったかと言われると・・・そんなことは全くありません。 米国で奴隷から解法された黒人支配階層は、元来このエリアの出身ではなく、様々な地域にルーツを持つ人々です。 そのような「アメリコ・ライべリアン」と、そもそもこのエリア(胡椒海岸)に住む原住民との間には、差別と対立が発生します。米国からの移民と違い、欧化されておらず貧困層を形成していたためです。 このアメリコ・ライべリアン支配は1980年にクーデタで終結しますが、以後、リベリア現地の部族間対立によって血で血を洗う凄惨な対立と内戦が断続しています。 やはり「部族対立」がアフリカを特徴づけていることは間違いありません。 このリベリアと似て非なる経緯を取ってきたのが、エチオピアの歴史にほかなりません』、リベリアがそんな歴史を抱えた国というのは初めて知った。
・『大日本帝国憲法とエチオピア独立  リベリアは1847年、つまり19世紀半ばに、先進国の支援もあって作られたアフリカの拠点という性格がありましたが、それと全く事情が違うのがエチオピアです。 エチオピアの歴史は古く、その国名はギリシャ語で「日に焼けた顔」を意味するアイティオプスに由来します。 紀元前から栄えた古代エチオピア帝国は、3~4世紀にかけてキリスト教が伝来し、コプト派キリスト教国として大いに栄えます。 このエチオピア・キリスト教徒たちはイスラム勢力と良好な友好関係を保ち、中世には独自のアフリカ・キリスト教大国として繁栄し、ローマ教皇などとも友好関係を取り結びました。 近世のエチオピアが独立の命脈を保つことができた一因には、このキリスト教の背景が存在すると考えられます。しかし19世紀の帝国主義はそこまで甘くありませんでした。 エチオピアも、とりわけ後発列強として植民地獲得を急いで、ソマリア、エリトリアを領有していたイタリアによって容赦なく植民地化の危機にさらされます。 しかし1896年「アドワの戦い」でイタリア軍を下し、独立を守りました。 この年号が、日清戦争の勃発した1894年と近接していることに注意する必要があります。 つまり東アジアにおいては、大国である清に対して新興国の日本が勝利し、10年後には列強の一つであるロシア帝国も打ち負かして領土を拡大、日本が列強の一角に台頭するわけです。 片やアフリカでは、イタリアを打ち負かして領土拡大とまでは行きませんでしたが、現地民が帝国主義の支配をはねのけて、独立を守ることができました。 この時期以降エチオピアは日本を手本として、民族自決を考えるようになります。 エチオピア帝国最後の皇帝であったハイレ・セラシエ1世(1892-1975)はエチオピア正教会に属するキリスト教徒でした。 1916年に摂政として国内の実権を握ると、第1次世界大戦後の1924年には国際連盟に加盟、イタリアやフランスなど近隣植民地からの帝国主義支配を強める列強に対抗すべく米国や日本との関係を強化します。 そして1930年に即位すると、翌31年に大日本帝国憲法を模範とするエチオピア初の成文憲法「1931年憲法」を発布して絶対主義的な支配体制を確立します。 ハイレ・セラシエは黒人民衆の「現人神」と位置づけられ、イキガミであるエチオピア皇帝を軸として、西欧列強の進出に対して対抗するアフリカ自決のイデオロギーとして機能します。 のちにジャマイカ出身のラスタファリ運動ではハイレ・セラシエがキリスト教の神と同一視されるような右派的傾向をも生み出しています。 ともあれ、ハイレ・セラシエ1世は、エチオピア国内の互いに対立する各部族の地主支配や搾取など、古くからの経済構造を基本的に温存し、地域共同体を守るとともに、西欧列強の植民地支配による社会の崩壊・改変を免れることに成功します。 ここから「大日本帝国憲法」のようなものの持つ意味や効果もよく分かると思います』、「エチオピア国内の互いに対立する各部族の地主支配や搾取など、古くからの経済構造を基本的に温存し、地域共同体を守るとともに、西欧列強の植民地支配による社会の崩壊・改変を免れることに成功します」、当時のアフリカでは確かに、「西欧列強の進出に対して対抗するアフリカ自決のイデオロギーとして機能します」、希望の星だったのだろう。
・『絶対主義憲法の功と罪  エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世は1935年からファシスト政権イタリアの攻撃を受けて翌36年、ナチス・ドイツのヒトラーがベルリン・オリンピックを開催した年にロンドンに脱出します。 しかし、5年の亡命生活を経て1941年、英国軍によってファシスト・イタリアは駆逐され、再び凱旋することになります。 そののち、1974年に帝国が崩壊するまで、ハイレ・セラシエ1世は30余年にわたってエチオピアに君臨し、外交面では独自の活躍を見せました。 その際、疑似「大日本帝国憲法」による国内統治は地方の有力者利権を温存し、政党を禁じ自由な経済発展を阻害するローカルな搾取構造に依存したままだったので、世界の波に乗り遅れ、第2次世界大戦後の高度成長からすっかり取り残されてしまいます。 その結果、戦後のブレトン・ウッズ体制で躓き、さらにそのレジームが崩壊する石油ショックの時期には、エチオピアは世界最貧国の地位にまで転落してしまいます。 82歳の高齢に達していたハイレ・セラシエ1世はクーデターによって逮捕・廃位され、射殺されて生涯を閉じました。 ここから、アラヒトガミを担ぐ「大日本帝国憲法」のような絶対主義体制の持つマイナス面が露骨に見て取れます。 地域ごとのローカルな搾取構造を温存し「身の丈」に合った代々の生活の踏襲を強要、優秀な人材があっても適切な教育を受けさせることなく、国内の自由な経済発展やイノベーションを阻害させてしまう。 無能な地主など地域のボスが利権を貪り続けることで、地域ないしは国家全体の成長が停滞し、GDP(国内総生産)は伸びず若者はロスジェネレーション化、将来に期待が持てず社会不安が広がる・・・。 まるでどこかの国のどこかの時期のような状況をエチオピアの歴史は露骨に垣間見せてくれています。 こんなところで「天皇陛下万歳」のような「ハイレ・セラシエ現人神」の万歳連呼や個人崇拝を続けても、しょせんは社会の矛盾が激化して、80歳を過ぎた現人神が廃位、銃殺されて帝国2000年の歴史が閉じるのが関の山ともなりかねません。 そのようになって以降のエチオピアはいったいどうなったのか?) そこにこそ今年のノーベル平和賞の光と影があります』、「世界最貧国の地位にまで転落」したのであれば、「クーデターによって逮捕・廃位され、射殺」、というのもやむを得ないだろう。
・日本がエチオピアに学ぶこと   1990年代。血で血を洗った旧ユーゴスラビアの内戦はいまだにその禍根を引きずっています。これはチトー(大統領)という圧倒的な求心力を失ってバラバラになったバルカン半島を襲った分裂の悲劇でした。 エチオピアも、列強の支配からアフリカ黒人の自決国家を守るという意味をもった「大日本帝国憲法」型の絶対主義独裁が、「開発独裁」の体裁を為さず、停滞的な部族封建社会を温存したために20世紀の高度成長トレンドに完全に乗り遅れた。 そこで、エチオピアは貧困と飢餓を乗り切るべく、別の求心力、冷戦期の一神教というべき社会主義に舵を切ります。 背後にはソ連の支援があり、エチオピアは臨時軍事行政評議会が支配するソビエトの衛星国として、スターリン粛清なみの恐怖政治が続きます。 ところが、雪解けの1987年に立憲制の人民民主共和国が宣言され、冷戦崩壊後の91年、まず併合していたエリトリアとの分離紛争が勃発、93年にエリトリアが独立、エチオピアも95年に連邦民主共和国に体制が変わり、現在に至っています。 ここからエチオピアの抱える病が透けて見えることになります。 日本同様、アラヒトガミを担いで西欧列強の植民地支配を免れたエチオピアでしたが、封建的な身分固定型の停滞憲法に固執したために、社会経済は成長のタイミングを逸し、国家経済は下流に転落します。 いま日本で「身の丈」などという言葉が去来したり、あろうことか教育勅語など、旧憲法体制への反動のようなものも見かけるわけですが、これらは「エチオピア状況」への転落に直結します。 おかしな憲法壊制は予防しなければならないでしょう。 入試制度を壊しかけていますが、身分の固定化は間違いなく社会を停滞させるとともに、階層化と貧困の固定、社会不安や若年層の不満の堆積などを招来し、ろくな未来をもたらさないのも、エチオピアの歴史が雄弁に教えるところです。 今回ノーベル平和賞を授与されたアビ・アハメドは1976年生まれでいまだ43歳の壮年軍人ですが、かつて併合し、1990年代の分離独立以来、武装対立が絶えなかったエリトリアとの和平を成立させたことで、ノーベル賞を授与されました。 かつて併合した地域と、ヘイトの何のといったゼノフォビア、対外嫌悪で右傾化することがいかに愚かしいか、どこかの国も参考にするとよいと思います』、「封建的な身分固定型の停滞憲法に固執したために、社会経済は成長のタイミングを逸し、国家経済は下流に転落します。 いま日本で「身の丈」などという言葉が去来したり、あろうことか教育勅語など、旧憲法体制への反動のようなものも見かけるわけですが、これらは「エチオピア状況」への転落に直結します」、その通りだ。
・『さて、しかし昨年2月に首相に選ばれたのが若いアビ・アハメドで、その名の示す通りイスラムの背景をもち、エチオピアの人口で最大数に相当する「オロモ人」出身の初の首相になります。 民衆人口の多数を占めるオモロ人は、リベリアやルワンダでの歴史と同様に、エチオピア内戦を通じて民族自決の分離独立を主張し、統一政府からテロリストとして弾圧されてきた歴史があります。 エチオピアの1995年憲法は、各部族に民族自決の権利を認める画期的な内容が記されており、自治を認めた「連邦民主共和国」の体制を取っているはずです。 ところが、その実は政権を取った人口第2位勢力の「アムハラ人」人口第3位の「ティグライ人」などの政権下で不満が鬱積し、オロモ人の土地「オロミア」の独立を求めて先鋭化します。 2018年の2月には非常事態宣言が出されるなか、オロモ人のアビが首相に選出されたという経緯がありました。 アビ首相は、周辺国との緊張を緩和し、自国内の民族間対立を融和に導く人道的な政策を相次いで打ち出し、永年の外交課題であったエリトリアとの和平を成立させます。 しかし、こうした融和政策に、そもそものアビの出身母体であるオロモ人急進派が反感を持ち、反旗を翻すようになったのです。 自分たちオロモ人の代表として全エチオピアの舵取りを任されたのに、むしろオモロ人に不利な融和政策ばかりやっている。 アビは独裁的だという急伸(正しくは:急進)右派の武力を含む抵抗が、今回報道された治安当局とデモ隊の衝突の実態と考えられています。 融和主義政策が弱腰だとして右派が台頭というと、第2次世界大戦前のネヴィル・チェンバレン英国首相を想起せずにおられません。 彼の異母兄にあたるオースティン・チェンバレン英外相は第1次世界大戦後、平和共存のロカルノ条約締結で1925年のノーベル平和賞を受賞しておりなおさらそれを感じます。 その反動の色彩ももってウインストン・チャーチル政権の第2次世界大戦参戦に至る経緯、チャーチルはのちにノーベル文学賞を受けますが、平和賞をもらうような人物では決してありませんでした。 金本位制に関するチャーチルの光栄ある大英帝国妄想という時代錯誤は、ボリス・ジョンソン現政権の迷妄の祖先の一つのようにも思います』、「アビは独裁的だという急進右派の武力を含む抵抗が、今回報道された治安当局とデモ隊の衝突の実態と考えられています」、どうやら「デモ隊」の方に非がありそうだ。「金本位制に関するチャーチルの光栄ある大英帝国妄想という時代錯誤は、ボリス・ジョンソン現政権の迷妄の祖先の一つのようにも思います」、面白い見方だ。
・『閑話休題  自分たちの部族をこそ優遇すべきだという地元利権で固まった行動右翼が、政府側治安当局と衝突して70人からの死者が出る現状に、部族支配と対立、もっと言うならその利権構造の根深さを見ないわけにはいきません。 ノーベル賞、ひいては先進国際社会は、アビ首相の融和政策を支持、評価して今回ノーベル平和賞を与えました。 間違ってもドナルド・トランプ米大統領や北朝鮮の金正恩委員長にノーベル平和賞が与えられることはありません。 バラク・オバマ前大統領にはノーベル賞が与えられましたが、トランプ氏には終生こうした賞は無縁です。 グローバル社会はブロック経済と自由な体制の維持を重視し、本質的にそれに反するトランプ大統領のような人物を危険視こそすれ、東アジアでのスタンドプレーなど評価することは決してありません。 エチオピアのケースも全く同様で、反動的な民族利権と分断を優先する右派の動きに対して、できるだけ平和的な方法で、アビ政権が対処することを各国は望んでいます。 67人の犠牲者が出たことは大変に残念で、繰り返されるべき事態ではありません。 状況は日本についても全く同様です。社会格差の助長やローカル利権の温存による反動、右傾化などは、厳しく国際社会から警戒視されていることを認識すべきと思います。 日本がエチオピアの失敗に学び、同じ轍を踏まぬようにすべきポイントは、まだまだ沢山あると考えておく方が無難、転ばぬ先の杖が大切と認識すべきでしょう』、説得力溢れた主張で、全面的に同意する。トランプ大統領にノーベル平和賞を与えるべきと推薦したのが、他ならぬ安倍首相で、恥ずかしい限りだ。
タグ:リベリア リチウムイオン電池 ノーベル賞受賞 日経ビジネスオンライン JBPRESS 吉野彰 伊東 乾 (その7)(ノーベル賞・吉野氏のエール「私たちはハッピーな時代にいる」、「研究は苦しいことの連続だが あるラインを越えると楽しくなる」――ノーベル化学賞の吉野氏、大日本帝国憲法で独立守ったエチオピア 天皇制と縁の深い今年のノーベル平和賞) 「ノーベル賞・吉野氏のエール「私たちはハッピーな時代にいる」」 ノーベル化学賞の受賞 研究が本格的に始まった約30年前がリチウムイオン電池の黎明期だった 格的な普及期に入るのが15年後の2025年頃。必要な電圧も、これまでの20ボルト程度から700ボルトに達すると見られています 以前は、電池材料の研究など、モノ作りの「川上」に没頭していれば済んだようなところがありましたが、今後は充電システムや、それらをネットワーク化した社会インフラなど「川下」まで含めた構想力が求められます 「川下」分野ではデファクトスタンダード(事実上の標準)を握ることが重要だということです。その点、日本企業は自分たちの製品やシステムを世界にアピールすることが苦手 若手の研究者に成功体験が少なくなってしまった たとえ電池の世代交代が起こっても、システム化で勝負する時代になっても、日本勢は踏ん張って存在感を示してほしい。そのためにも研究者には「今、ハッピーな時代にいる」ことを再認識して気持ちを奮い立たせてもらいたいのです 日経XTECH 「「研究は苦しいことの連続だが、あるラインを越えると楽しくなる」――ノーベル化学賞の吉野氏」 当初は有望と考え、研究のきっかけとなったポリアセチレンだが、実用化に向けた評価を進める過程で、熱に対する安定性に欠け、比重が小さく電池にした場合に小型化できないという弱点を突き止めた同氏は、すぐに他の材料に切り替えた 「研究は苦しいことの連続だ。だが、苦しさがあるラインを越えると、“ランナーズハイ”のように楽しくなってくる」 研究の初期段階で市場性を徹底的に調べること 両者(正しくは両社?)の幹部同士を通じて非公式な話し合いを設けてもらい、その電池メーカーの技術者から市場性や技術的な課題を聞いたのだ 「大日本帝国憲法で独立守ったエチオピア 天皇制と縁の深い今年のノーベル平和賞」 ノーベル平和賞は、エチオピアのアビ・アハメド首相に授与 ノーベル平和賞を受賞したはずの治安部隊側の発砲で死者が出ており、決して「平和な平和賞」ではない アフリカ大陸の中に、2つだけ、独立を保った国家 アメリカ合衆国で解放奴隷となった人々がアフリカに戻ってアメリカ合衆国憲法を範として建国した国家 米国で奴隷から解法された黒人支配階層は、元来このエリアの出身ではなく、様々な地域にルーツを持つ人々です。 そのような「アメリコ・ライべリアン」と、そもそもこのエリア(胡椒海岸)に住む原住民との間には、差別と対立が発生 アメリコ・ライべリアン支配は1980年にクーデタで終結しますが、以後、リベリア現地の部族間対立によって血で血を洗う凄惨な対立と内戦が断続 紀元前から栄えた古代エチオピア帝国は、3~4世紀にかけてキリスト教が伝来し、コプト派キリスト教国として大いに栄えます イタリアによって容赦なく植民地化 イタリアを打ち負かして領土拡大とまでは行きませんでしたが、現地民が帝国主義の支配をはねのけて、独立を守ることができました。 この時期以降エチオピアは日本を手本として、民族自決を考えるようになります エチオピア帝国最後の皇帝であったハイレ・セラシエ1世 大日本帝国憲法を模範とするエチオピア初の成文憲法「1931年憲法」を発布して絶対主義的な支配体制を確立 ハイレ・セラシエは黒人民衆の「現人神」と位置づけられ、イキガミであるエチオピア皇帝を軸として、西欧列強の進出に対して対抗するアフリカ自決のイデオロギーとして機能します エチオピア国内の互いに対立する各部族の地主支配や搾取など、古くからの経済構造を基本的に温存し、地域共同体を守るとともに、西欧列強の植民地支配による社会の崩壊・改変を免れることに成功します 絶対主義憲法の功と罪 1941年、英国軍によってファシスト・イタリアは駆逐され、再び凱旋 1974年に帝国が崩壊するまで、ハイレ・セラシエ1世は30余年にわたってエチオピアに君臨し、外交面では独自の活躍 国内統治は地方の有力者利権を温存し、政党を禁じ自由な経済発展を阻害するローカルな搾取構造に依存したままだったので、世界の波に乗り遅れ、第2次世界大戦後の高度成長からすっかり取り残されてしまいます 石油ショックの時期には、エチオピアは世界最貧国の地位にまで転落 クーデターによって逮捕・廃位され、射殺されて生涯を閉じました 地域ごとのローカルな搾取構造を温存し「身の丈」に合った代々の生活の踏襲を強要、優秀な人材があっても適切な教育を受けさせることなく、国内の自由な経済発展やイノベーションを阻害させてしまう。 無能な地主など地域のボスが利権を貪り続けることで、地域ないしは国家全体の成長が停滞し、GDP(国内総生産)は伸びず若者はロスジェネレーション化、将来に期待が持てず社会不安が広がる 日本がエチオピアに学ぶこと 封建的な身分固定型の停滞憲法に固執したために、社会経済は成長のタイミングを逸し、国家経済は下流に転落 日本で「身の丈」などという言葉が去来したり、あろうことか教育勅語など、旧憲法体制への反動のようなものも見かけるわけですが、これらは「エチオピア状況」への転落に直結します アビは独裁的だという急伸(正しくは:急進)右派の武力を含む抵抗が、今回報道された治安当局とデモ隊の衝突の実態 金本位制に関するチャーチルの光栄ある大英帝国妄想という時代錯誤は、ボリス・ジョンソン現政権の迷妄の祖先の一つのようにも思います 社会格差の助長やローカル利権の温存による反動、右傾化などは、厳しく国際社会から警戒視されていることを認識すべきと思います。 日本がエチオピアの失敗に学び、同じ轍を踏まぬようにすべきポイントは、まだまだ沢山あると考えておく方が無難、転ばぬ先の杖が大切と認識すべきでしょう
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日銀の異次元緩和政策(その31)(「手詰まり」だから「偽薬効果」に期待する中銀 日銀の異次元緩和が「テキストブック」になってきた、日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由、なぜ日銀は効果の薄い「マイナス金利の深掘り」をしたがるのか) [経済政策]

日銀の異次元緩和政策については、7月11日に取上げた。今日は、(その31)(「手詰まり」だから「偽薬効果」に期待する中銀 日銀の異次元緩和が「テキストブック」になってきた、日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由、なぜ日銀は効果の薄い「マイナス金利の深掘り」をしたがるのか)である。

先ずは、みずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏が9月10日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「手詰まり」だから「偽薬効果」に期待する中銀 日銀の異次元緩和が「テキストブック」になってきた」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00034/?P=1
・『欧米の中央銀行の金融政策は、日銀の後を追う形で、「全弾撃ち尽くし」「もはや手詰まり」になったことを遅かれ早かれ露呈し、確たる勝算がないまま粘り強く金融緩和を続ける「持久戦」的な状況に移行するだろう。その結果、市場金利は内外で非常に低い水準が常態化するだろう。このコラムでもたびたび触れてきた、筆者の見方である。今回は、最近あったいくつかの出来事を引き合いに出しつつ、説明を加えたい。 8月7日にニュージーランド、インド、タイの3か国がアグレッシブな利下げで世界の投資家を驚かせたことを報じた翌8日の米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事には、海外のエコノミストによる以下のコメントが含まれていた。 「多くの中央銀行では、かなり限られた弾薬しか手元に残されていないので、それを非常に賢く使おうとする」「中央銀行は選ぶことができる。緊急時に備えて火力を温存しておくのか。それとも、より大きな効果のために早めに行動するのか」 市場予想よりも大きな幅で(ニュージーランドおよびインド)、あるいは市場予想よりも早いタイミング(タイ)で、8月7日に利下げに動いた3つの中央銀行は、2つめの選択肢に沿って動いたのだと、このエコノミストは説明した。 その後、8月15日にはレーン・フィンランド中央銀行総裁の発言が伝わり、ドイツの10年物国債利回りが▲0.7%台に沈むなど、ユーロ圏の国債を買う動きに弾みをつける材料になった。ECB(欧州中央銀行)が動くのは恐らく9月だが、このケースも、上記に当てはめれば2つ目の選択肢を志向したものだと言える。 次期ECB総裁候補として市場で名前が挙がったこともあるレーン総裁はWSJのインタビューで、「インパクトのある重大な(impactful and significant)政策パッケージを9月に打ち出すことが重要だ」「金融市場と関わり合うときはしばしば、アンダーシュートするよりもオーバーシュートする方が望ましい。そして、非常に強い政策手段のパッケージの方が、いじくり回すよりも望ましい」と発言した』、一時は欧米では金融政策万能論が闊歩していたこととは隔世の感がある。
・『株式の購入を排除しなかったフィンランド中銀総裁  市場はこの発言があった時点で、9月のECB理事会における利下げ(マイナス金利幅拡大)を確実視していたわけだが、レーン総裁はそれよりも積極的な金融緩和を事実上提唱した形である。量的緩和(QE)の再開、マイナス金利による負担軽減のための階層構造の導入などがあり得るとした同総裁は、QEを再開する際に株式を購入の対象に新たに含めることさえ排除しなかった。 市場の予想よりも大胆に動くことによって、市場に大きなインパクトを与え、「小出し」に利下げする場合よりも市場金利の低下幅や株価の上昇幅を大きなものにして、金融市場を通じた緩和効果を最大限に発揮させようとする。政策運営の手法として一つの考え方であり、短期的には中銀の思惑通りに話がうまく運ぶ場合もあるだろう。 しかし、「黒田バズーカ」で弾薬を大量に使い過ぎて結果的に失敗した日銀の現在の苦境に鑑みると、市場にサプライズを与える作戦が最終的にうまくいくとは、筆者には思えない。以下の諸点に考えを及ばせておく必要がある。 (1)市場にサプライズを与えるため、中銀が早めに、より多く追加緩和の余地を使ってしまうわけであり、その結果、弾薬庫が空っぽになる時期は当然前倒しになる。結局は「短期決戦」に失敗した黒田日銀の轍(てつ)を踏むことにならないか。 (2)サプライズに持続性はなく、市場には「慣れてしまう」性質がある。上記のレーン総裁発言は、その意味でリスキーである。事前に大胆な緩和パッケージを市場が織り込んでしまえば、サプライズにならない。むしろ、言わなかった方がよかったのかもしれない。仮に、QE再開を含む大胆な緩和措置を実行するという点でECB理事会内の意見がまとまらず、9月の理事会の結果が「小粒」の緩和にとどまったとみなされると、失望感から市場が大きく崩れる恐れがある』、確かに「市場にサプライズを与える作戦」が上手くいく可能性は小さそうだ。
・『金融当局経験者も「手詰まり」感を指摘  途中経過で各中銀がどのようにマネージしようとも、結局は策が尽きて「手詰まり」に陥り、持久戦的な状況に移行するだろうというのが、筆者の大枠としての予想である。 次に、政策当事者経験のある米英の論客から出てきた発言を取り上げたい。金融政策はその限界を露呈しており、単独で行動する場合には中央銀行はもはや重要ではない、という主張である。 米通信社ブルームバーグは8月23日、「サマーズ氏、中銀当局者は『ブラックホール』的な政策課題に直面」と題した記事を配信した。ローレンス・サマーズ元米財務長官(米ハーバード大教授)は各国中銀首脳に対し、当局は、金利の小幅な変更あるいはもっと積極的な戦略ですらも、需要不足の問題をほとんど解決することができないような「ブラックホール的な金融経済」情勢に直面していると警告。「欧州や日本について現在市場が確信を持って予想しているのは、金利がゼロに張りつきそこを脱する現実的な見通しが立たず、本質的に利回りは数十年にわたってゼロまたはマイナスという状況だ」「米国はたった1回リセッション(景気後退)に陥るだけで、彼らの仲間入りをする」と、サマーズ氏はSNS(交流サイト)に書き込んだ。 利下げは金融バブルを発生させたり、貯蓄率を押し上げたり、ゾンビ企業を生きながらえさせるなどの結果をもたらし得るため、「たとえ実行可能であっても、総需要喚起にせいぜい弱い効果を発揮するだけで、最悪の場合には逆効果となる」のだという。 英経済紙フィナンシャル・タイムズは8月24・25日付に、アデア・ターナー元英FSA(金融サービス機構)長官による寄稿「中央銀行はその影響力の多くを失ってしまった(Central banks have lost much of their clout)」を掲載した。 ジャクソンホール会合開催もあって中央銀行の金融政策に注目が集まっているものの、「現実には中央銀行が単独で行えることは、もはやあまり重要ではない」。低金利が為替相場を下落させるなら景気刺激効果があるものの、それは「ゼロサムゲーム」で、どのような為替相場も両方の経済を刺激することはないと、ターナー氏は指摘する。 中央銀行は、「何らかの洗練された知恵が最終的に有効なのではないか」という希望にしがみついているものの、グローバルな経済成長の大きな原動力はすでに、大規模な財政赤字と何らかの形態の金融政策によるファイナンスになってしまっている現実に目を向けるよう促した。 サマーズ氏は「長期停滞論」を唱えており、上記の主張の大筋に違和感はない。とはいえ、グリーンスパン元米FRB(連邦準備理事会)議長に続いて、政策当局経験のある「大物」が、米国の金利が「ゼロかマイナス」に容易に陥るだろうと見通したことは、特筆すべきことだろう(当コラム8月20日配信「近づく『米国でさえプラス金利がない世界』」ご参照)』、「中銀当局者は『ブラックホール』的な政策課題に直面」、さすがサマーズ氏らしい鋭く的確な指摘だ。
・『ターナー氏は日本に対し、日銀による直接の財政ファイナンス(「ヘリコプターマネー」)を何度も提言してきたことで、よく知られている人物である。そのターナー氏の今回の寄稿では、最も大きな危険に現在直面しているのはユーロ圏だとはっきり指摘した点が特徴と言える。 金利の下げ余地が米国よりも乏しい状況下、グローバルな需要とユーロ圏からの輸出の停滞が続く。ハードライナー(財政強硬派)が、中央銀行による国債買い入れを伴う財政支出増加を今後も妨げるようだと、ECBの政策はユーロ圏の成長に対して、取るに足りない違いしか与えることができないだろうという。寄稿の最後にあらためて記された、ターナー氏の主張が集約された文章は、「単独で行動する場合、中央銀行家たちはもはやさほど重要ではない」という、非常に厳しいものである。 日銀だけでなく欧米中銀でも、金融政策は「手詰まり」に陥りつつある。財政とのコラボに存在意義を見いだすケースもあるだろうが、その場合、長期金利は中央銀行による国債大量購入などによって、低水準に抑え込まれざるを得ない(債券市場の機能は当然のことながら大きく低下する)。現在はそうした「ニューノーマル」に向かう途中段階だと、筆者は考えている。大規模で実験的な日銀の金融緩和は、「無謀で異端の政策行動」ではなく、最近では欧米にとっての「テキストブック」になりつつあるように見える。 先進国の中央銀行の金融政策で、短期金利が「ゼロ制約」に直面した後に考案されたブレイクスルー的な手法は、①長期金利の押し下げ(信用スプレッドの圧縮を含む)、②マイナス金利の導入、③フォワードガイダンスによる将来の緩和効果先取りなどである』、「大規模で実験的な日銀の金融緩和は、「無謀で異端の政策行動」ではなく、最近では欧米にとっての「テキストブック」になりつつあるように見える」、一時は日銀を批判していたが、結局、同じ道を歩みつつあるようだ。
・『国債直接引き受けは回避されているが……  伝統的な金融政策のテリトリーである「短期金利の世界」から外に踏み出して、さまざまな施策が試みられてきている。財政政策と金融政策の完全なコラボとでも言えそうな国債の直接引き受けは、日米欧いずれでも今のところ回避されている。 仮にそれが実行されるとしても、財政面からの景気刺激効果は、時間がたてば消えてしまう人為的で一過性のものであることを忘れてはならない。効果が消えてしまうと「断層」が生じて、景気は悪化してしまうだろう。「魔法の杖」のような政策手段は存在しない。 では、金融政策が「手詰まり」に陥った後、中銀は何ができるのか。あるいは何をしようとする可能性があるのか。粘り強く「持久戦」態勢を取るというのが基本線になるわけだが、それに加えて「もうないものをまだあるように見せようとする」「偽薬効果に期待する」といった辺りが、筆者には思い浮かぶ。 鹿児島で行われた8月1日の記者会見で、雨宮正佳日銀副総裁から以下の発言があった(日銀ホームページから引用)。「手段や回数を一つひとつ数え上げるということはなかなかできませんが、私どもの政策手段としては、先程ご質問のあったような短期金利の引き下げもありますが、それ以外に長期金利の誘導目標の引き下げもありますし、資産の買い入れの増加もあります。あるいはマネタリーベースの拡大テンポの再加速といった手段もあります。これらを単独で利用することもあれば、組み合わせることもあれば、応用することもありますので、その意味で金融政策の追加的な手段が尽きているとか、非常に乏しくなっているということではないと思っています」、苦しい弁明だ。
・『利下げ余地が2%ほどあるFRBや、マイナス金利深掘りや量的緩和再開を含む緩和パッケージを打ち出すことを検討しているECBに比べると、日銀が有する追加緩和カードの乏しさは明らかである。だが、「追加緩和カードはほぼ払底しました」と日銀が公に認めてしまうと、市場にサプライズになり、円高が急進行する恐れが大きい。 だから、雨宮副総裁を含む日銀幹部は、口が裂けても追加緩和カードが「尽きた」とは言わないだろう。「非常に乏しくなっているということではない」という雨宮副総裁の言い回しは、カードが「乏しい」こと自体は基本的に認めているわけで、ある意味正直ではある。 ほかにも何かないだろうかと考えていたところ、8月25日の産経新聞に、『僕は偽薬を売ることにした』というタイトルの本を書いた水口直樹氏のインタビューが掲載されていた。著者は京都大学大学院薬学研究科を修了、製薬会社で研究開発職として勤務した後、偽薬(プラセボ)を売る会社を設立した。ポイントになる部分は以下の通りである』、「雨宮副総裁の言い回しは、カードが「乏しい」こと自体は基本的に認めているわけで、ある意味正直ではある」、変な褒め言葉ではある。
・『「偽薬はあくまで食品」だが……  「売っている偽薬は、見た目は薬だが、有効成分が入っていない『食品』だ。この偽薬は、介護施設で薬を何度も求める認知症などの高齢者に本物の薬の代わりとして渡す、というようにして使われている。高齢者が精神的に落ち着くのと、有効成分が入っていないので飲んでも副作用の心配がないためだ」 「偽薬には、飲むことで症状に何らかの改善がみられる『プラセボ(偽薬)効果』があることが知られている。プラセボ効果を得るには偽薬を本物と思わせる必要があるとされ、患者へのインフォームドコンセント(説明と同意)が求められる医療の場で使うのは難しい。それが最近、過敏性大腸炎やうつなどで偽薬と知って飲んでも症状の改善がみられるとの研究結果が報告され、医療の場でも使える可能性が出てきた」「医薬品に比べ価格が安い偽薬を医療の場で使うことができれば医療費の抑制になる」 食品だから、服用することによる副作用や弊害はない。効能があると患者が思い込めば、病状が改善するかもしれない。 こうした「偽薬」のような、実態として「毒にも薬にもならない」金融政策手段を日米欧の中央銀行は編み出して、金融政策の「道具箱」に今後入れようとしていくのではないか。ややシニカルな見方だが、筆者はそのようにも考えている』、「プラセボ効果」は、医薬品では「副作用や弊害はない」が、金融政策では、マーケットが「偽薬」と気付けば、「副作用や弊害」が出てくるだけに要注意な筈なのではなかろうか。

次に、東短リサーチ代表取締役社長の加藤 出氏が10月17日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/217689
・『「欧州と日本はブラックホール的な金融政策を実施している」 米ハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、英紙「フィナンシャル・タイムズ」への最近の寄稿で、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行が実施しているマイナス金利政策の効果に対して、そう懐疑的な見解を示していた。 しかし、日銀幹部はマイナス金利の深掘りを含む追加の金融緩和の是非を、10月末の金融政策決定会合で検討すると強調している。黒田東彦総裁としては、次の一手を打ちたい心情なのではないか。 とはいえ、ここからの追加緩和はメリットよりも副作用が上回る可能性が高い。そのため「やるぞ、やるぞ」と言いながらも決定せずに引っ張り続ける戦術の方が効果的に思われるのだが、日銀は9月の決定会合を経て追加緩和に前のめりな姿勢を一段と強めてきた。 2016年1月にマイナス金利政策を決定したときは、あまりに唐突だったため、日銀は多方面から激しい批判を浴びた。同様のトラブルを避けようと日銀が早めに情報を発信してきた可能性はある。ただし、10月の決定会合での追加緩和が日銀内ですでに「ダン・ディール(取引成立)」になっているわけではなさそうだ。 日銀政策委員の最終的な判断は、米中貿易戦争やBrexit(英国の欧州連合〈EU〉離脱)が世界経済のダウンサイドリスクを高める恐れがあるか否かによるだろう。懸念が強ければ追加緩和となるが、10月中旬時点では米中交渉に明るい兆しが表れている。このまま進めば、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを見送る確率が高まる。 かつ、Brexitも最悪のケースがひとまず回避されるなら、日銀が10月31日に政策の現状維持を選択する可能性も出てくる。今回は会合当日まで市場参加者が気をもむ展開になるかもしれない』、結局、日銀は「現状維持」を選択した。
・『一方、仮に追加緩和を行うにしても打つ手は限られる。黒田総裁は超長期金利(20~30年などの国債の金利)の過度な低下は避ける必要があると最近何度も説明している。それは保険会社や年金基金に打撃を与え、家計部門に強い不安をもたらす恐れがあるからだ。 となると、マイナス金利の大幅な引き下げは難しい。投資家たちに「サーチ・フォー・イールド」(少しでも良い利回りを求める行動)を促し、超長期金利に強い低下圧力を加えてしまうからだ。マイナス金利を先行き何度も引き下げる印象を日銀が醸し出すことも、同様の影響をもたらす恐れがある。 世界に目を向けると、マイナス金利政策が行われている欧州の多くの国では、金融機関は同政策による収益悪化を和らげるために、顧客(主に法人)の口座預金へマイナス金利を適用している。デンマークでは最近の法人向け新規預金金利が平均マイナス0.57%だ。 日本は金融機関同士の競争が激しく、そうはなっていない。だが、もし日銀が大幅にマイナス金利を引き下げれば、口座維持手数料などによる事実上のマイナス金利適用を模索し始めるかもしれない。 それは預金者にとっては“増税”のようなものだ。10月に消費税率が引き上げられたばかりの国民がそれに直面したら、消費マインドは一段と悪化してしまう。 このように考えると、日銀が10月の決定会合でマイナス金利を深掘りすることは適切ではなく、それでも行う場合は、せめて引き下げを0.1ポイント程度の小幅にとどめるべきだろう』、「マイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める」とのタイトルに驚かされたが、漸くその意味が理解できた。確かに、預金者に転嫁するかどうかの水際にあるようだ。

第三に、元銀行員で久留米大学商学部教授の塚崎公義氏が11月22日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「なぜ日銀は効果の薄い「マイナス金利の深掘り」をしたがるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221296
・『日銀がマイナス金利の深掘りの可能性を示唆している。理論的には効果が薄い政策だが、これを行おうとするのは、偽薬効果を狙ったものといえそうだ』、第一の上野氏と同じく「偽薬効果を狙った」とみているようだ。
・『マイナス金利になって銀行が苦しむのは日銀への利払いが原因ではない  量的緩和政策の結果として、銀行は巨額の当座預金を日銀に預けている。そこで、「銀行が日銀に預けている預金の金利がマイナスだ」と聞くと、銀行が日銀に巨額のマイナス金利を支払っているように聞こえるが、そうではない。 10月時点で、銀行等全体で見ると、日銀に預けている当座預金は約389兆円あるが、そのうち208兆円にはプラス金利が適用されており、マイナス金利が適用されているのは22兆円にすぎない。 しかし、これが銀行の収益を大きく毀損している点には留意が必要である。銀行としては、「日銀に預けてマイナス金利を取られるくらいなら、低い金利で貸し出しをしてライバルから顧客を奪う方がマシだ」と考えるからである。ライバルも、同じことを考えて低い金利で貸そうとする。そこで、日銀への当座預金の金利が0%からマイナス0.1%に引き下げられたことを受けて、銀行の貸出金利は(厳密ではないが、考え方として)0.1%低下した。 問題は、貸出金利の0.1%低下が、景気の拡大にそれほど役立っていないことだ。企業は設備投資を決断するときに、様々な要因を総合的に判断するのであって、「借入金利が0.1%低下したから設備投資をしよう」と考える企業は決して多くないからである。 一方で、銀行への打撃は決して小さくない。そもそも貸出金利は平均1%弱しかないのに、それが根こそぎ0.1%低下するとすれば、コストをカバーするのは一層困難になるだろう。 貸出金利の引き下げによって貸出残高が増えるなら良いが、それも期待薄といっていい。企業の設備投資はそれほど増えず、他業態からの顧客のシフトもそれほど見込めないからだ。「牛丼チェーンの値下げ競争がラーメン業界から顧客を奪ってくる」ようなことは起きないのである。つまり、銀行による貸出金利の引き下げは、銀行相互の「不毛な安売り競争」を招くだけなのだ。 したがって、マイナス金利は「銀行から借り手への所得移転を促す制度」だといえよう。それによる銀行の収益悪化を補っているのが、日銀が銀行から208兆円を利子付きで預かっている分の利子である。 日銀がマイナス金利を深掘りするとすれば、プラス利子の部分についても利子率を高めるのか否かが注目されるが、「銀行への補助金」ということで世論の批判が予想され、世論の理解を得るのは容易ではないかもしれない』、「マイナス金利」の銀行への影響を、「貸出金利の」「「不毛な安売り競争」を招くだけ」と分かり易く説明したところは、さすが元銀行員だけある。
・『設備投資を誘発しないのになぜマイナス金利を深掘りするのか  マイナス金利の深掘りが設備投資を誘発せず、銀行の苦悩を深めるのであれば、なぜ日銀は深掘りを検討するのであろうか。それは、「偽薬(プラシーボ)効果」を狙ったものだと筆者は考えている。 そもそも黒田日銀総裁が大胆な金融緩和政策を打ち出したとき、株価やドルが値上がりした理由は、「偽薬効果」であったと筆者は推測している。医学の世界には、「薬だ」と言って、小麦粉のように本来は薬として効果のない粉や錠剤などを与えると患者の病気が治る場合があるようで、それを「偽薬効果」と呼ぶのだそうだ。それと同じことが日本経済で起きた、というわけだ。 「大胆な金融緩和政策を採ります」と日銀総裁が自信満々に宣言したことで、人々は「世の中にお金が出回って、株やドルが値上がりするだろう。それなら今のうちに買っておこう」と考えたようだ。そうした人々が株やドルを買ったので、株やドルが値上がりした。その結果、景気が回復した。 しかし実際には、世の中にお金は出回らなかった。設備投資等のために借金をする会社が少なかったからである。したがって、金融緩和は有効な政策ではない「小麦粉」だったのだが、それで日本経済の不況という病気が治ってしまったのだから、これは偽薬効果としか言いようがない。 今となってみれば、人々は「金融緩和をしても世の中にお金は出回らない」ことを知っているはずだから、「さらなる金融緩和にも効果はないはずだ」と考える可能性は高い。 しかし、「金融緩和をすれば株とドルが値上がりする」ことも人々は知ってしまったわけで、そちらを重視すれば「さらに金融緩和をすれば、人々は株とドルを買うだろうから、株とドルが値上がりするだろう」と考えることもできる。 そうであれば、筆者も他の投資家たちも「金融緩和自体は“小麦粉”であるが、株やドルを買えば儲かりそうだから、株とドルを買おう」と考えるだろう。 つまり、金融を緩和すれば筆者を含めた多くの投資家が株とドルを買うので株とドルが値上がりし、景気にプラスの効果が期待できるのである。 そうとわかっていれば、黒田日銀総裁としては、多少銀行に負担はかかっても、マイナス金利を深掘りするインセンティブは決して小さくなかろう』、「偽薬(プラシーボ)効果」はまだ効いていると「黒田総裁」は考えている、或は考えているフリをしているようだ。
・『日銀総裁は“名医”だから、頼りにしよう  以下は余談である。「黒田日銀総裁の緩和は偽薬効果で成功した」という話をある場所でしたら、「総裁は、金融緩和をしても世の中にお金が出回らないと知っていたのですか?」という質問を受けたことがある。 これは、まことに答えにくい質問である。「知らなかったはずだ」と答えれば「総裁は愚か者」ということになり、「知っていたはずだ」と答えれば「総裁は詐欺師」ということになりかねないからである。 そこで筆者は「どちらであるかは不明だが、総裁が名医であることは疑いないのだから、総裁を信じよう」と答えた。 皆が総裁を名医だと信じて小麦粉を飲まされつづけるのもつらいが、皆が総裁をヤブ医者だと考えて株価等が金融緩和前に戻ってしまうのはさらにつらい。そうであれば、総裁は名医であると信じて適切な政策を採用してくれると期待するのが日本経済のためではなかろうか』、短期的にはその通りだが、中長期的には「偽薬効果」はやがて剝れざるを得ないのだから、早目に実態に戻す方が「日本経済のため」になる筈だ。質問者への回答としても、その方が誠実なのではあるまいか。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 塚崎公義 上野 泰也 日銀の異次元緩和政策 加藤 出 (その31)(「手詰まり」だから「偽薬効果」に期待する中銀 日銀の異次元緩和が「テキストブック」になってきた、日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由、なぜ日銀は効果の薄い「マイナス金利の深掘り」をしたがるのか) 「「手詰まり」だから「偽薬効果」に期待する中銀 日銀の異次元緩和が「テキストブック」になってきた」 欧米の中央銀行の金融政策は、日銀の後を追う形で、「全弾撃ち尽くし」「もはや手詰まり」になったことを遅かれ早かれ露呈し、確たる勝算がないまま粘り強く金融緩和を続ける「持久戦」的な状況に移行するだろう ニュージーランド、インド、タイの3か国がアグレッシブな利下げ 株式の購入を排除しなかったフィンランド中銀総裁 「黒田バズーカ」で弾薬を大量に使い過ぎて結果的に失敗した日銀の現在の苦境 市場にサプライズを与える作戦が最終的にうまくいくとは、筆者には思えない 金融当局経験者も「手詰まり」感を指摘 「サマーズ氏、中銀当局者は『ブラックホール』的な政策課題に直面」 アデア・ターナー元英FSA(金融サービス機構)長官 「中央銀行はその影響力の多くを失ってしまった グローバルな経済成長の大きな原動力はすでに、大規模な財政赤字と何らかの形態の金融政策によるファイナンスになってしまっている現実に目を向けるよう促した 最も大きな危険に現在直面しているのはユーロ圏だとはっきり指摘 財政とのコラボに存在意義を見いだすケースもあるだろうが、その場合、長期金利は中央銀行による国債大量購入などによって、低水準に抑え込まれざるを得ない 大規模で実験的な日銀の金融緩和は、「無謀で異端の政策行動」ではなく、最近では欧米にとっての「テキストブック」になりつつあるように見える 国債直接引き受けは回避されているが…… 日銀が有する追加緩和カードの乏しさは明らか 「偽薬はあくまで食品」だが…… 金融政策では、マーケットが「偽薬」と気付けば、「副作用や弊害」が出てくるだけに要注意な筈 「日銀のマイナス金利深掘りが「再増税」リスクを高める理由」 マイナス金利政策が行われている欧州の多くの国では、金融機関は同政策による収益悪化を和らげるために、顧客(主に法人)の口座預金へマイナス金利を適用 もし日銀が大幅にマイナス金利を引き下げれば、口座維持手数料などによる事実上のマイナス金利適用を模索し始めるかもしれない。 それは預金者にとっては“増税”のようなもの 「なぜ日銀は効果の薄い「マイナス金利の深掘り」をしたがるのか」 マイナス金利になって銀行が苦しむのは日銀への利払いが原因ではない 銀行等全体で見ると、日銀に預けている当座預金は約389兆円あるが、そのうち208兆円にはプラス金利が適用されており、マイナス金利が適用されているのは22兆円にすぎない 日銀に預けてマイナス金利を取られるくらいなら、低い金利で貸し出しをしてライバルから顧客を奪う方がマシだ」と考える 銀行による貸出金利の引き下げは、銀行相互の「不毛な安売り競争」を招くだけ 設備投資を誘発しないのになぜマイナス金利を深掘りするのか 「偽薬(プラシーボ)効果」 日銀総裁は“名医”だから、頼りにしよう 短期的にはその通りだが、中長期的には「偽薬効果」はやがて剝れざるを得ないのだから、早目に実態に戻す方が「日本経済のため」になる筈
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教育(その18)(筆算の線 手書きなぜダメ? 小5が160問「書き直し」命じられる 指導の背景は、校則全廃校長 荒れた学校で「怒鳴る教員」をどう変えたか、9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケ) [社会]

教育については、9月2日に取上げた。今日は、(その18)(筆算の線 手書きなぜダメ? 小5が160問「書き直し」命じられる 指導の背景は、校則全廃校長 荒れた学校で「怒鳴る教員」をどう変えたか、9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケ)である。なお、英語民間試験については、「安倍政権の教育改革(その10)」として11月9日に取上げた。

先ずは、9月24日付け西日本新聞「筆算の線、手書きなぜダメ? 小5が160問「書き直し」命じられる 指導の背景は」を紹介しよう。
・『「なぜ筆算の横線を、全て定規で引く必要があるのでしょう」。福岡県内の小学校に通う小学5年男児の親族の女性(34)から、特命取材班に相談が寄せられた。夏休みの宿題を提出したところ、横線が手書きだったとして、担任に「書き直し」を命じられたという。指導の背景を探った。 女性によると、担任は日ごろから定規を使うように指導。男児は疑問を抱きつつも注意されるのが嫌で基本的に従ってきた。今回、筆算の一部は「別にいいだろう」と自分で判断し、手書きで線を引いたという。 すると、担任から保護者に書き直しを求める電話があった。対象は160問分。理由を尋ねると「計算ミスが減るし、みんなにやらせている」。女性は「計算のリズムが崩れるし、自分なりのノートの取り方を見つけるのも勉強ではないか」と不思議がる。 同様の指導を行っている県内のベテラン教諭に理由を聞いた。定規で線を引く動作は意外と難しく、「小学2年の習い始めは2割しかできない」という。筆算の線引きはこの練習になるというわけだ。高学年では「手書きより見直しやすいし、面倒くさがらずにやる子の方が学力が伸びる」と説明する。 このような理由を、男児の担任は保護者に説明していない。県内の別の学校では小学6年も定規の使用を指導しているが、疑問を抱いた父親(39)が理由を問うと、「学年で決めています」との返事だったいう。 いつ、どう広がったのかは不明だが、「30年前にはそう指導していた」という小学校教諭の声もあった』、「夏休みの宿題」で「160問分」の「書き直し」を命じ、「理由を尋ねると「計算ミスが減るし、みんなにやらせている」」とした担任は、どうにかしている。指導方針のなかには、必ず守らせるものだけでなく、望ましい程度の推奨項目もある筈で、今回の問題は後者だったのではなかろうか。
・『「教師自身が考えなくなっている」。定規の利用など、教員が十分に理由を説明できないルールが数多くある実態について、東京大大学院の村上祐介准教授(教育行政学)は警鐘を鳴らす。 村上氏は2015年度、自治体ごとに授業の受け方や生活態度を定めた「スタンダード」と呼ばれるルールの有無を全国調査した。回答を得た445自治体の約2割が導入していた。 スタンダードの内容は自治体ごとに異なるが、「足の裏を床につけて座る」「手を真っすぐ挙げる」などの規律や、「子どもが自分で課題を解決する時間を確保」といった授業の手法が記されている。 こうした画一的なルールの広がりについて、村上氏は若手教師の授業の質を一定水準に保つ役割はあるとしつつも、「守ることが目的化してしまう危険がある。教師自ら判断することを望んでいない傾向があるのではないか」と懸念する。 教師の間にも異論はある。勤務先の小学校で18年度にスタンダードが導入されたという福岡県の男性教師(60代)は「学校にとって理想の子ども像が書かれている」と話す。 机上に置くノートや筆箱の位置、発表や話を聞く態度、あいさつの仕方、廊下の歩き方に加え、靴や傘、トイレのスリッパの置き方、休み時間の遊び方の注意点まで書かれている。「子どもには、ルールを作っていく力こそが必要なのに…。スタンダードが浸透するほど枠組みになじめない子が排除される心配もある」。ベテラン教師のそんな疑問は、スタンダードを推し進める校長の前でかき消されがちだという』、「自治体ごとに授業の受け方や生活態度を定めた「スタンダード」」は、必ずしもレベル分けをしてないようだ。しかし、「机上に置くノートや筆箱の位置、発表や話を聞く態度、あいさつの仕方、廊下の歩き方に加え、靴や傘、トイレのスリッパの置き方、休み時間の遊び方」まで一律のルールで縛るのは、行き過ぎだと思う。子どもといえども、1人の個人として自主性を尊重すべきなのではなかろうか。

次に、11月18日付けNEWSポストセブン「校則全廃校長、荒れた学校で「怒鳴る教員」をどう変えたか」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20191118_1488219.html
・『東京都世田谷区立桜丘中学校では、校則の全廃による服装や髪形の自由化のほか、チャイムは鳴らず、何時に登校してもいい。今年度から定期テストも廃止され、代わりに10点ないし20点の小テストを積み重ねる形式に切り替えられた。スマートフォン(スマホ)やタブレットの持ち込みが許可され、授業中も教室外での自習が認められている──これら画期的な学校改革は大きな注目を集め、新聞や雑誌、テレビでも取り上げられてきた。 校長の西郷孝彦さん(65才)の初となる著書『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』には「子育ての参考になった」「こんな先生に教わっていたら、人生が変わっていたかもしれない」などと、大きな反響が寄せられている』、第一の記事の小学校と中学校の違いがあるにせよ、全く対極的なやり方だ。なお、この「桜丘中学校」の例は、このブログの9月2日でも紹介した。
・『生徒を怒号と力でねじ伏せる  西郷さんがいくつかの異動を経て、桜丘中学校に校長として赴任したのは、2010年のことだった。 「当時の桜丘中学校はどこにでもあるごく普通の学校でしたが、一方でよい評判を聞くこともなかった。引き継ぎの日に、前任者から“大変だろうけど、まあ、あとは自由にやりなさい”と言われたのですが、その理由がすぐにわかりました。朝礼を見れば一目瞭然です」(西郷さん・以下同) 「黙れー!」「そこ、早く並べ!」「後ろを向くな!」──西郷さんが朝礼台に立っても、教員たちの怒鳴り声はやまない。 「生徒を力で押さえつけて秩序を保とうとしていたのです」 修学旅行でも同じ光景が繰り広げられた。一般の旅行客であふれかえる京都駅の構内に「並べ!」「黙れ!」と教員の怒声が響く。驚いて振り返る人もいた。 「客観的に見れば、列を乱している生徒よりも、怒鳴っている教員たちの方が、よっぽど周囲の迷惑になっています。生徒を怒鳴り散らすことが当たり前になってしまい、それさえも気づかなくなっていた。 怒鳴っている方も、もちろん気持ちのいいものではありません。怒鳴る教員も怒鳴られている生徒も、どちらにもマイナスでしかありません」 怒鳴り声をあげないためには、一体どうしたらいいか。まず取り組んだのが、朝礼の見直しだった』、「京都駅の構内に「並べ!」「黙れ!」と教員の怒声が響く。驚いて振り返る人もいた」、「「客観的に見れば、列を乱している生徒よりも、怒鳴っている教員たちの方が、よっぽど周囲の迷惑になっています。生徒を怒鳴り散らすことが当たり前になってしまい、それさえも気づかなくなっていた」、習慣化すると、本来の目的を忘れてしまうのは、悲しい人間の性のようだ。
・『「そもそも教員も生徒も、ルール遵守が絶対と考えています。いずれ社会に出たら社会のルールを守らなければいけない。であれば、学校でもルールを守ることが大事だというのが、多くの日本の学校の理屈です」 朝礼も“一糸乱れず整列し、校長の話をありがたく聞かなければいけない”という暗黙のルールに縛られていた。 「そのルールを取り除いてしまったらどうだろう──発想の転換です。生徒が騒ぐとすれば校長の話がつまらないせいで、面白ければきっと耳を傾けるはずです。そこで私は、生徒が思わず聞き入るような、とっておきの面白い話を準備するように心がけました」 朝礼が騒がしくなるのなら、それは興味を持てない自分の話に責任がある。だから生徒が騒ぎ出しても絶対に怒鳴らないようにと、教員には根気強く説き続けた。もちろん、朝礼で騒いでいいと言っているわけではない』、「朝礼が騒がしくなるのなら、それは興味を持てない自分の話に責任がある。だから生徒が騒ぎ出しても絶対に怒鳴らないようにと、教員には根気強く説き続けた」、教員からの反発もきっと強かったと思われるが、それを説得してきたとはさすがだ。
・『「授業も同じです。教員には、“なぜ生徒が自分の授業を聞かないのか”、それは自分の教え方に問題があるのではないかと考えてほしい。同時に生徒には、叱られるから騒いではいけないのではなく、どうして騒いではいけないのか、自分で考えてほしいのです」 西郷さんが校長に就任した当時の新入生が卒業する頃には、学校を落ち着いた雰囲気が包むようになっていた。 この朝礼の見直しを契機に、理不尽で意味のない校則の一つひとつを見直し、2016年、ついには全廃した』、校則を全廃したとは画期的だ。これが他校にも広がって欲しいものだ。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が11月19日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00049/?P=1
・『先日、講演会後の懇親会で、管理職が20代の社員たちの日本語能力に悩まされているという話で盛り上がった。 「9時スタートの研修会なのに1分前にドサドサと入ってきて、5分、10分の遅刻は当たり前。なので『9時10分前には集合するように』と言ったら、キョトンとした顔をされてしまって。ま、まさかと思いつつ『8時50分に来るのよ』と念押ししたんです。そしたら、『あ、そういうこと』って。もう、わけが分かりません」 こんな“珍事件”に面食らった上司たちの嘆きが、「これでもか!」というくらい飛び出したのである。 確かに、私自身、店で領収書をもらおうとしたときに、「???」という事態に何度か出くわしたことがある。 【ケース1】河合「領収書をお願いします」 店員「宛名はどうしますか?」 河合「上、でいいです」 店員「うえで、ですね!」←自信満々感満載 河合「……は、はい」 するとなんとその店員は宛名の部分に「上出」と書いた。 【ケース2】河合「領収証お願いします」 店員「宛名はどうしたらいいですか?」←必死で丁寧に振る舞っている  河合「カタカナで、カワイ、でお願いします」 店員「カワイですね」←自信満々! 河合「(失笑)」 ……どちらも20代。ケース1は「上様」を知らず、ケース2は普通は「カワイ、様ですね」とか「カワイ、様でございますね」となるのに、いきなりの呼び捨て。笑ってしまった。 まぁ、これらは日本語の問題というより、常識の問題。つまり、こういう対応が気になるようになった私が年を食っただけのことだ』、「ケース1」、「ケース2」とも呆れるのは河合氏だけでないだろう。
・『若者の国語力が下がっている  一方、上司たちの「言葉が通じない」嘆きは日常の業務にかかわること。たとえ一つひとつはささいなことでも日々繰り返されるとストレスになる。 というわけで今回は「言葉が通じないワケ」についてあれこれ考えてみようと思う。 まずは冒頭の懇親会で聞いた“珍事件”から。 「部下に『そのタスクは結構、骨が折れるから覚悟しておけよ』って言ったら、『え? 肉体労働なんですか?』って返された。どうやら骨が折れるを骨折と間違えたようだ」 「社長に褒められた部下に、『現状に胡座(あぐら)をかいてると、後輩に追い越されるぞ!』って活を入れたらキョトンとされた。あぐらをかいて座ることだと思ったみたいです」 「送られてきたメールが一切改行されてないので『読みづらいから、項目ごとに改行しろ』と言ったら、『改行って何ですか?』と言われてあぜんとした」 「営業先で『お手やわらかにお願いしますよ』と言われ、会社に帰る途中で『あの人、やわらかいんですね。どうしたらやわらかくなるんですか?』と真顔で聞かれた」 「高齢のお客さんに取扱書の内容を説明するのに読み上げるだけだったので、分かりやすく自分の言葉で説明してあげてと伝えたが全く改善されず。理由を問いただしたら、取扱書の文章を理解できていなかった」「分からない語彙があったらその都度辞書で調べるようにと、辞書を渡したら、引き方が分からないみたいで、異常に時間がかかった」「英語で書かれた仕様書を翻訳させようとしたら、英和辞典に書かれている日本語の意味が分からないと突き返された」「業務報告書を手書きで書かせているのだが、漢字の間違いが多すぎる。混乱を困乱。特にを得に。性格を生格……」「消費税が2%上がるという、2%を理解させるのが大変だった」 ……ふむ。どれもこれも嘘のようなホントの話。もちろん20代でも、日本語を巧みに使い、理解度も高く、文章力がある社員もいる。だが、上司たちは「日本語の能力が低下してる」と日々感じているのだという。 もっとも、漢字が書けないとか間違った漢字を使うとか、慣用句を知らないというのは、その都度学べばいいだけの話だ。問題は語彙力の乏しさからもたらされる日本語の読解力の低下だ』、「漢字」が読めない大臣もいたのは事実だが、ここに上がった例は本当に酷い。
・『個人的な話で申し訳ないが、私自身、小学校4年から中1まで米国で暮らし、その間日本語の教育を受けていないので学生時代は壊滅的に語彙力が乏しかった。不思議なことに知ってる語彙が少なくとも日常的なおしゃべりに困ることはなかった。 ところが、高校生になって現代国語の校内実力テストで、長文問題を何度読んでも理解できなかったのである。 漢字が読めないとか、読めない字があるとか、そういったことじゃない。ちゃんと音読できるのに、意味が分からない。古文でもなければ漢文でもない。ただの現代文。なのに書いてあることが、ちっとも理解できなかった。生粋の日本人なのに、なぜか日本語が理解できない。漢字が読めないことを笑われても気にならなかったけど、日本語の文章が理解できないという現実はかなりショックだった。その結果私は文章を避けた。28歳でお天気の世界に入るまで、本を一切読まなくなってしまったのだ』、帰国子女の河合氏ならではの悩みで、長文の読解力で苦労したようだ。
・『会話はできても文章理解力は低かった自分  実は同様のことは米国でも経験していて、英語の本を読めても日本語に訳せない。俗っぽくいうと、フィーリングでなんとなーく理解するものの、物語が描いている世界観や言葉に込められた深層構造を理解することができなかったのである。 言語を習得するにはたくさん聞くだけじゃなく、たくさん読むことが必要不可欠で、言葉の運用力を高めるには語彙力が影響する。実際、 読書経験を重ねることで、語彙力が高まり、それが文章理解力の向上につながることは、国内外の調査から一貫して報告されている。 米国人大学生を対象にした様々な調査では、小さい頃から本をたくさん読んでいる学生ほど、スペルの間違いが少なく文章を理解する力が高いとされているし、日本人大学生を対象した調査では、新聞や雑誌ではなく小説の読書量が強く影響することもわかっている(「大学生の読書経験と文章理解力の関係」澤崎宏一)。 小説でつづられる母語の名文を繰り返し読んだ経験が、日常生活で身につく経験や情報と結びつくことで、文章を理解する力が高まっていくのである』、「読書経験を重ねることで、語彙力が高まり、それが文章理解力の向上につながることは、国内外の調査から一貫して報告されている」、私も学生時代の読書経験は乏しい方なので、職場で苦労した。
・『デジタル世代の若者たちは、日々携帯メールやラインの送受信を繰り返しているので、日常的な会話量は半端なく多い。だが、おしゃべりは所詮おしゃべりでしかない上に、親密になればなるほどメールでの言葉は省略され、絵文字だけでもやりとりが可能になる。いわばメール版「あうんの呼吸」だ。 フェースtoフェースなら、相手に伝わるまで言葉を脳内から振り絞ったりすることがあるが、デジタルの世界ではその必要もない。要するに、若い世代は圧倒的に語彙を増やす機会に乏しい社会に生きている。しかも、本を読む子供たちが激減しているという悲しい現実もある。 平成28年度委託調査「子供の読書活動の推進等に関する調査研究」(文部科学省)によると、不読率(1カ月で読んだ本の冊数が「0冊」と回答した生徒の割合)は、小学生が1割未満、中学生が約1~2割、高校生が約3~4割で、読書時間・読書冊数ともに、学年が上がるにつれて増加傾向にあることが分かった。 また、「第54回学生生活実態調査の概要報告(2018年)」(全国大学生活協同組合連合会)では1日の読書時間が「0」と答えた学生は48.0%。17年の53.1%より減少したものの、半数近くの学生に読書習慣が全くない』、「不読率」が「読書時間・読書冊数ともに、学年が上がるにつれて増加傾向にある」、勉強が忙しくなるためなのだろうか。
・『小学生で本を読まないとそのまま大人になる  この調査では、大学入学までの読書傾向も聞いているのだが、 小学校高学年では読書時間が30分以上だったと回答した人が54.1%いるが、高校になると33.0%に減少 小学校入学前から高校にかけて「全く読まなかった」人は、現在の読書時間も「0」が多く、特に高校時代に「全く読まなかった」人のうち現在も読書時間「0」の人が72.7%(全体平均48.0%)を占める。 小学校入学前と高校で120分と長時間読書している層は現在の読書時間も長い傾向がある といった関係性も認められている。https://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html) 「学校の成績は国語力が9割」ともいわれるように、日本語の読解力、記述力は国語だけでなくすべての教科で必要な基礎となる能力だ。日本語の読解・記述力が不十分だと、数学の文章問題は理解できない。理論構成が支離滅裂な解答しかできない。思考力も想像力も、母語の運用能力に支えられている。 そもそも言語は、単なるコミュニケーションのツールではない。言語と思考とは互いに結びついており、特に母語の役割は果てしなく大きい。 母語により私たちは目に見えないものを概念として把握し知覚する。精神的な世界は言葉がないと成立しない。また、目の前に何か見えたとしても、その何かを示す言葉がないと、それを理解できない』、「学校の成績は国語力が9割」とは誇張もありそうだ。私は国語こそ苦手だったが、他教科はそこそこだった。
・『語彙の豊かさが思考力や豊かな感情を育む  例えば、日々暮らす場所であるという意味を「家」という語彙で概念化することで、形や色が違っても「家」と知覚することができる。性的ないやがらせをする行為を「セクハラ」という語彙で概念化することで、そういった行為が明確に意識され、「ああ、そういったことはやってはいけないんだ」と規範を学んでいく。 つまるところ、言語で表せる範囲がその人の認識世界。語彙が豊富であればあるほど知識は広がり、感情の機微も、複雑な人間関係も理解でき、世界が広がり、創造力も高まっていくのである。 英語教育にすったもんだ続きの文科省は、2003年3月31日に「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を示し、そのなかの「英語教育改善のためのアクション」の6番目に「国語力の向上」を掲げている。 具体的には、「英語の習得は母語である国語の能力が大きくかかわるものであり、英語によるコミュニケーション能力の育成のためには、その基礎として、国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成するとともに、伝え合う力を高めることが必要である」 と。 ところが、これだけ日本語が理解できない大人が増えているのに、英語力の低さばかりに関心が集まり、揚げ句の果てに民間試験導入などどわけの分からない方向に進んでいる。 実際には母語である日本語力の低下、具体的には語彙力の低下が背後にあり、それが英語力の低下につながっているのだ。 大学関係者であれば学生に英和辞典を引かせる苦労を経験している人は少なくないはずだ。10年以上前に某新聞社が「日本人の日本語力の低下」について連載し、その中の珍事件が大学でちょっとした話題になった。 ある大学で英文の講義で学生に「often」の意味を調べさせたところ、英和辞典に書かれていた「しばしば」という意味が理解できなかったのだ。当然ながら「頻繁に」という訳語も理解できない。そこで教師が、「よく~する、ってことだ」と説明したところ、「よく、は『good』の意味」としてしか認識できない学生がいたというのである』、「often」の例はまるで笑い話だ。
・『興味あるテーマから次々と読む経験を増やす   さて、と。ここまで書いたところで今回の問題をどう締めようか、考えあぐねている。つまり、コミュニケーションで悩むのは常にアクションを起こしている側なのに、コミュニケーションではアクションを起こされている側に「決定権」がある。いかにも不条理でコミュニケーションが永遠のテーマになるわけだ。 ただ、日本語力の低い人でも、「誰が(主語)、何を(目的語)」をきちんと文章に加えた完全文にすると理解しやすくなるとされている。 会話では主語が省略されがちなので、そのあたりを気をつけるだけでも少しは変わるはずだ。と同時に、部下が主語や目的語を省略している場合も、「誰か?何を?」と尋ねるだけでもすれ違いは防げる。めんどくさいかもしれないけど、試してみる価値はあると思う。 そして、もし素直で殊勝な心を持ち合わせている部下なら、興味あることの本を読め!と勧めてください。 というのも、長文が理解できなかった私がコラムやら本やらを書けているのは、お天気の世界に入り小学生向けのお天気図鑑を徹底的に読んだからだ。 お天気図鑑を何度も何度も理解できるまで読んだら、次々といろんなお天気の本が読めるようになり、難しい物理式が書かれているものまで読めるようになった。健康社会学の世界に入ってからは、山のように論文を読みあさってきたし、それは今も続いている。 その結果、語彙が増え、並行してインタビューを続けているので、自分の無意識の認知世界が意識化され、内部に宿る価値観やら考えを表現できるようになったと個人的には理解している。 それでも……まだまだ日本語がおかしいという自覚がある。だからこそ「また書こう、書かなきゃ」というモチベーションにつながっている。日本語って……本当に難しい』、「長文が理解できなかった私がコラムやら本やらを書けているのは、お天気の世界に入り小学生向けのお天気図鑑を徹底的に読んだからだ。 お天気図鑑を何度も何度も理解できるまで読んだら、次々といろんなお天気の本が読めるようになり、難しい物理式が書かれているものまで読めるようになった」、私だと図鑑の図の方に目がいってしまうが、河合氏は本文をきちんと読んだようで、さすがだ。いずれにしろ、必要に迫られてやる勉強が、一番身につくようだ。 
タグ:教育 修学旅行 朝礼 日経ビジネスオンライン 西日本新聞 河合 薫 Newsポストセブン (その18)(筆算の線 手書きなぜダメ? 小5が160問「書き直し」命じられる 指導の背景は、校則全廃校長 荒れた学校で「怒鳴る教員」をどう変えたか、9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケ) 「筆算の線、手書きなぜダメ? 小5が160問「書き直し」命じられる 指導の背景は」 夏休みの宿題を提出したところ、横線が手書きだったとして、担任に「書き直し」を命じられたという 対象は160問分 理由を尋ねると「計算ミスが減るし、みんなにやらせている」 高学年では「手書きより見直しやすいし、面倒くさがらずにやる子の方が学力が伸びる」と説明 教師自身が考えなくなっている 規の利用など、教員が十分に理由を説明できないルールが数多くある実態について、東京大大学院の村上祐介准教授(教育行政学)は警鐘 自治体ごとに授業の受け方や生活態度を定めた「スタンダード」と呼ばれるルール 445自治体の約2割が導入 画一的なルールの広がり 「守ることが目的化してしまう危険がある。教師自ら判断することを望んでいない傾向があるのではないか」と懸念 机上に置くノートや筆箱の位置、発表や話を聞く態度、あいさつの仕方、廊下の歩き方に加え、靴や傘、トイレのスリッパの置き方、休み時間の遊び方の注意点まで書かれている 「校則全廃校長、荒れた学校で「怒鳴る教員」をどう変えたか」 世田谷区立桜丘中学校 校則の全廃による服装や髪形の自由化のほか、チャイムは鳴らず、何時に登校してもいい。今年度から定期テストも廃止され、代わりに10点ないし20点の小テストを積み重ねる形式に切り替えられた 校長の西郷孝彦 著書『校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール』 生徒を怒号と力でねじ伏せる 京都駅の構内に「並べ!」「黙れ!」と教員の怒声が響く。驚いて振り返る人もいた 「客観的に見れば、列を乱している生徒よりも、怒鳴っている教員たちの方が、よっぽど周囲の迷惑になっています。生徒を怒鳴り散らすことが当たり前になってしまい、それさえも気づかなくなっていた 教員も生徒も、ルール遵守が絶対と考えています 朝礼が騒がしくなるのなら、それは興味を持てない自分の話に責任がある。だから生徒が騒ぎ出しても絶対に怒鳴らないようにと、教員には根気強く説き続けた 「授業も同じです。教員には、“なぜ生徒が自分の授業を聞かないのか”、それは自分の教え方に問題があるのではないかと考えてほしい。同時に生徒には、叱られるから騒いではいけないのではなく、どうして騒いではいけないのか、自分で考えてほしいのです 理不尽で意味のない校則の一つひとつを見直し、2016年、ついには全廃 「9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケ」 管理職が20代の社員たちの日本語能力に悩まされている 若者の国語力が下がっている 私自身、小学校4年から中1まで米国で暮らし、その間日本語の教育を受けていないので学生時代は壊滅的に語彙力が乏しかった 長文問題を何度読んでも理解できなかった 28歳でお天気の世界に入るまで、本を一切読まなくなってしまった 会話はできても文章理解力は低かった自分 小学生で本を読まないとそのまま大人になる 「学校の成績は国語力が9割」 日本語の読解力、記述力は国語だけでなくすべての教科で必要な基礎となる能力 語彙の豊かさが思考力や豊かな感情を育む 興味あるテーマから次々と読む経験を増やす お天気図鑑を何度も何度も理解できるまで読んだら、次々といろんなお天気の本が読めるようになり、難しい物理式が書かれているものまで読めるようになった
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