企業不祥事(その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】) [企業経営]
企業不祥事については、5が6日に取上げた。今日は、(その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】)である。
先ずは、昨年11月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済東京支社情報部の井出豪彦氏による「有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254875
・『大掛かりな架空・循環取引疑惑が浮上している。対象となったのはコンクリート二次製品などの建設資材で、北は北海道から南は九州まで全国の有力メーカーや商社の合計15社程度が関与した模様だ』、ずいぶん大規模なようだ。
・『大掛かりな循環取引 議員がらみの可能性も 関係者の話を総合すると、循環取引は今年5月から8月頃にかけて行われ、同月下旬から9月初めに発覚したという。 中心的な役割を担ったとされる会社の営業担当社員A氏は10月末で解雇されたが、A氏の後ろ盾には某市の現職市議会議員X氏がおり、X氏が経営する会社も循環の輪に加わっていたとの情報もある。 9月以降、関係者が何度か会合を重ねて実態解明に乗り出してはいる。X氏も一度は会合に参加したが「A氏に名前を貸しただけ」などと発言し、終始いら立ちを隠せないでいたという。A氏とX氏は同じコンクリート製品メーカーでの勤務歴があり、親しい間柄だったという。A氏は周囲からトップセールスの優秀な社員と認識されていた。 問題の取引はいくつかの商流に分かれているほか、関与した業者も多い。工事案件そのものが架空のケースがあるとされる。いずれにせよ問題究明への各社の協力姿勢に温度差があるなどでなかなか全貌の把握には至っていないようだ。 すでに一部の会社は「不正に巻き込まれた」として弁護士に相談しているほか、刑事告訴の意向を示す業者もあるという。今後事件に発展する可能性もある。 いまのところ一連の循環取引で各社が計上した売り上げは2億~3億円程度とされるが、X氏が経営する会社については、今回の循環が発覚する前の今年5月頃、ある会社が振り出した高額手形を割引業者(ノンバンク)に持ち込んだものの、手形成因が怪しいとして否決され、いわゆる「割止め」情報が出た経緯もある。X氏周辺の資金難が今回の不正の動機になった可能性がある。循環メンバーに名を連ねる某社幹部は「議員がらみの案件と認識している」とコメントした』、「工事案件そのものが架空のケースがあるとされる」、とは本当に悪質だ。
・『上場会社で相次ぎ循環取引が発覚 ほかにも今年は上場企業などで循環取引の発覚が相次いだ。 IT業界では、東証1部の「ネットワンシステムズ」を中心として「東芝ITサービス」「富士電機ITソリューション」「日鉄ソリューションズ」などそうそうたる企業が加わった大規模な循環取引事件が表面化したことは記憶に新しい。 このケースでは営業マンのノルマ達成が不正に手を染める動機とされた。特に個人の報酬が売り上げノルマの達成率と連動している場合、架空・循環取引が起きるのは構造的な宿命といえるだろう。 7月には大手タイヤメーカー「住友ゴム工業」の子会社「住ゴム産業」(大阪市中央区)で元社員が土木資材の架空取引で数億円の損害を会社に与えたとして背任容疑で警視庁捜査2課に逮捕される事件もあった。この場合、元社員は取引先からのキックバックを遊興費に充てていたとされる。 一般的に、いわゆる「飲む、打つ、買う」で私生活に問題がある社員には不正の動機があるとされる。テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ。 さらに2月にはアミューズメント施設の運営や機器販売を手掛ける東証2部の「共和コーポレーション」(長野市)でも多数の循環取引への関与が発覚した。 昨年12月に大阪のゲーム機卸業者「アーネスト」が倒産して1億円を超える不良債権が発生したことをきっかけに、共和コーポレーション東京支店の元副支店長が中心的に不正に関与していたことが明らかになった。 循環取引には、売り(代金回収)と買い(支払い)のサイト差を利用した金融取引という側面があるため、資金難の会社が加わっていることが多い。資金繰りが厳しい会社は取引先の協力を得て、仕入れの支払いを延ばし、売り上げの入金を早めてもらえば、資金を調達したのと同様の効果が得られるのだ。さらに循環取引で見かけの売上高が増えれば銀行も業績がいいと誤認して新規融資に応じるという副産物が得られる可能性もある。 ところが不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ。 大阪市中央区の「FEP」は債権者から破産を申し立てられ、8月に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債35億円)。病院や介護施設に置く液晶テレビなどの架空取引の商流に入っていたが、昨年末に横浜にある、もう1社の中心的企業が事実上行き詰まり、循環の輪が切れたもの。 この商流に巻き込まれた形で飲食店の什器などを扱っていた「AIKジャパンコーポレーション」(東京都中央区)も8月に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債47億円)。また、AIKのグループ会社で個性的な飲食チェーンを展開していた「虎杖東京」(同)は新型コロナの影響もあり、一足早く6月に民事再生法の適用を申請したが、母体のAIKの循環取引問題がなければ起きなかった倒産だったかもしれない。このように循環取引は連鎖倒産も引き起こす』、「テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ」、大いに気を付けるべきだ。ただ、「不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ」、少し安心した。
・『循環取引を回避するための3つの原則とは 最後に、現在進行中の案件としては、大手IT商社「ダイワボウホールディングス」(東証1部)の繊維部門子会社「大和紡績」(旧・ダイワボウノイ)で循環取引が行われてきた疑いが浮上し注目されている。 この影響でダイワボウHDは4-9月期の決算発表が遅れている。9月上旬に売掛金の回収遅延をきっかけに営業担当の元社員にヒアリングしたところ「2014年1月から循環取引等を行い、不適切な売り上げおよび利益を計上していた」旨の説明があったという。 これまでの社内調査の結果、ダイワボウHDの損失見込み額は19億円に上るとのことだが、9月30日に公認不正検査士の資格を持つ弁護士や会計士らからなる「特別調査委員会」を立ち上げ、本格的な調査に入っている。ダイワボウノイといえば、不織布マスクのメーカーとして知られており、今年4月にグループの繊維事業の合理化に伴い大和紡績に吸収合併された経緯がある。 また、ダイワボウHDの大株主には、あの「3Dインベストメント・パートナーズ」のファンドが入っており、経営陣は神経をとがらせているはずだ。3Dといえば今年の東芝の株主総会で社長解任を要求し、結果的に三井住友信託銀行の不適切な議決権集計というパンドラの箱を開けたすご腕のファンド。今後ダイワボウHDのガバナンス不全について具体的になんらかの改善提案を行う可能性もあるだろう。 いずれにしても、ここまでみただけでも循環取引を根絶するのは難しいことが分かっていただけただろう。 三菱商事の伝説の審査マンで、現在、与信管理協会の専務理事をつとめる大宮有史氏は「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」として以下の確認を怠るなと強調する。 (1)取引に関わっている取引先の「顔ぶれ」と取引が「実需」に基づくものか (2)取引の入り口(起点)と出口(終点)がはっきりしているか (3)三現主義(現場、現物、現実)が徹底されているか 商流がグローバルに広がり、しかもコロナで対面商談が減る昨今だからこそ、この原則を肝に銘じる必要があるだろう』、「すご腕のファンド」までが登場してきたとは、ますます面白くなってきた。「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」は取引チェックの基本だ。
次に、12月31日付けロイター「焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/dentsu-group-contracts-insight-idJPKBN295096
・『不透明性が指摘されている政府から民間企業への行政事業委託について、大手広告代理店の電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていたことがロイターの調べで分かった。契約の多くは競争相手がいない「一者入札」で決められていたほか、両法人は受注した事業の大半を電通に再委託しており、野党議員などから事業経費の中抜きや税金の無駄遣いなどの可能性を懸念する声が上がっている』、飛んでもない話だ。
・『<持続化給付金事業など多岐に> 政府の行政事業を積極的に受託してきた電通関連の社団法人は「環境共創イニシアチブ(SII)」と「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」の2法人。両法人が委託された行政事業は観光振興プロジェクトの運営や代替エネルギー補助金給付など多岐にわたり、経済産業省からの委託案件が多い。 ロイターの調べによると、2法人による過去10年の受注規模は少なくとも103件あり、総額は約1710億円に達している。しかし、そのうち、およそ1242億円分が電通に再委託されていた。 とりわけ問題視されているのは、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業などを支援する持続化給付金事業だ。約2.3兆円を投じた同事業では、給付金を配る業務が経産省から769億円でサ推協に委託された。しかし、サ推協は同業務の大半を電通に再委託しており、行政事業の丸投げだとして日本国内メディアの報道も相次いだ。 持続化給付金事業の運営に対する批判の高まりを受け、経産省は是正策を講じるための有識者検討会を設け、12月25日に新しいルールを公表した。 新ルールでは、入札の透明性向上のほか、再委託についてはその比率が50%を超える場合は受託先の実施体制の確認を求めるなどの規制強化を打ち出した。 また、電通は28日、ロイターの取材に対し、経産省の検討会の議論を受けて設けられた新たな規定に従う、と表明した。 しかし、経産省など政府各省や電通は、持続化給付金事業を始めとする問題案件に関する個別の契約や業務遂行の実態などについて詳細を明らかにしていない』、「日本国内メディア」は電通が大株主であることもあり、報道姿勢は極めて甘い。
・『<なぜ社団法人か> 政府による業務委託は、民間企業の活力や組織力を生かして公益事業を円滑に遂行する重要施策だ。しかし、なぜ電通は直接に受託しなかったのか。 電通が行政事業受託への動きを強化したのは世界経済にリーマンショックの後遺症が続いていた約10年前だ。当時、日本政府は「官から民へ」の掛け声のもと、行政事業の民間委託を進めていた。ある元電通社員によると、同社はこうした「官から民へ」の流れを大きなビジネスチャンスととらえ、公的セクターへの業務拡大に動き始めた。 関連の社団法人から政府事業を再委託する手法の背景には、日本が2006年に実施した公益法人改革がある。この規制緩和により、一般社団法人の設立が最低社員2人の登録、かつ最小限の情報開示だけで可能になり、そうした法人が行政事業を受託できるようになった。 サ推協が政府から最初に受託したのは、レストランや旅館・ホテルなどにフランスのミシュランのようなホスピタリティのランクを与える「おもてなし規格認証」事業。東京オリンピック・パラリンピック開催をにらんだ企画だった。 ロイターが取材した5人の関係者によると、電通本社で会議が行われ、出向した電通社員が業務にあたるなど、実際の運営はサ推協ではなく電通が行っていたという。 サ推協と電通はロイターの問い合わせに対し、電通は社団法人の会員企業として同事業に協力しており、サ推協がプロジェクトを主導している、と述べた。 これまでにサ推協が受託した行政事業14件のうち、8件が1者入札だった。 一方、SIIは元電通社員の田中哲史氏によって設立された。同法人は電通子会社1社と同じ東京都内のビルに事務所を構えている。ロイターが検証した資料によると、SIIは2011年から現在までに、少なくとも89件の行政事業、約868億円を受託している。 経産省が国会議員に提出した資料によると、2015年以降に受託した事業のうち、約4分の3が再委託され、その大半が電通に任されていた。 SIIの田中氏は過去の事業委託の規模と電通への再委託の詳細について、現時点ではコメントできないとしている。 こうした行政事業の委託構造について、経産省・中小企業庁の中小企業政策統括調整官、高倉秀和氏は「ルール違反ではない」と指摘する。 同氏はロイターの取材に対し、行政事業を受託するために一般社団法人を作るというのは、出資も不要で財務諸表に子会社として記載する必要もなく、株主から批判を受けることもないため、「ある種、合理的な判断」だと述べた。 電通は給付金事業を政府から直接受託しなかったことについて、バランスシートへの影響と通常業務が滞る可能性も含め、社内の経理局から「(直接受託は)適切ではないとの意見があった」と説明した。 経産省は「適切な入札などの手続きが行われている場合、法人格が一般社団法人であること自体に問題があるとは考えていない」とコメントした』、「一般社団法人」といったトンネルを通じた「受注」は、正体を隠す隠蔽的色彩もありそうだ。
・『<会計検査の回避も可能か> 政府や電通側の説明について、有川博・日本大学客員教授(公共政策担当)・会計検査院元局長は、行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性がある、と指摘する。また、社団法人を使う受託にすれば、電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができるとしている。 「問題になっているのは(中間利益を取るための)トンネル会社のような再委託。国から直接委託を受けた会社がそのまま自分は何もしないで丸投げするような再委託は、何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」と再委託の問題点を指摘する。 立憲民主党の蓮舫代表代行は11月の参院予算委員会で、給付金事業を受託したサ推協やSIIが電通などに再委託した問題を取り上げ、梶山弘志経産相に委託先について調査するよう要請。さらに税金の使途が適切かどうか、会計検査院による検査を求めた。 会計検査院では、この要請を取り上げるかどうか来年度に決定するとしている。検査は1年以上かかる場合もあり、その結果については政府に報告書が提出される。 電通が設立した一般社団法人が経産省から受託した事業の一部について、野党議員や専門家から、公的資金を使った事業に対する会計検査から逃れる手段になったとの指摘がでていることについて、電通はロイターの問い合わせに直接回答していない。 同社は「一般社団法人は、多くの専門性を有する団体・企業で構成されており、当社も会員企業の一つしてコンソーシアムに参加している。当該社団法人が受託した業務はコンソーシアム内で連携して実施しており、当社もこれに参画している」とコメントした』、「一般社団法人」を通じることの問題点として、①「行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性」、②「電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができる」、③「トンネル会社のような再委託」することは、「何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」、どういても問題が多いようだ。政府には明確に説明する義務がある。
第三に、本年1月3日付け時事通信が掲載した元銀行員で作家の江上 剛氏による「日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】」を紹介しよう。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=20210102lin0001
・『第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取したという事件が起きた。彼女は89歳という高齢だ。事件が発覚して以来、認知症だと主張しているらしい。 高齢の人には申し訳ないが、89歳というのは日本人の平均寿命を超えており、亡くなっている人の方が多いということだ。生きている人でも大方は現役を去り、静かな余生を送っていることだろう。 ところが彼女は、第一生命でただ一人という「特別調査役」の肩書を与えられ、それを材料に使い、自分に任せれば10~30%の利回りを保証すると客を信用させていたというから、すごいという一言に尽きる。 事件の全体像は、これから解明されるだろうが、人生100年時代とはいえ、こんな高齢の女性を営業の現場に立たせ続け、不正のうわさもあったらしいが、そのことには耳を傾けなかった第一生命の責任は重いと言わざるを得ない』、常軌を逸した不祥事中の不祥事だ。「第一生命」の経営陣の責任も問われるべきだ。
・『◆不正の予兆 報道によると、同社は被害額の30%を弁済すると言っているようだが、根拠が分からない。19億円は巨額だが、事件を長引かせることで失う同社の信用、信頼の損失の大きさを考えれば、さっさと全額を弁済し、被害者との訴訟問題を収め、事件解明に努めた方がプラスではないか。 第一生命は、不正の予兆を感知することはできなかったと説明しているようだが、本当にそうだろうか。3年も前に外部から問題を指摘する情報が上げられていたという報道もある。怪しい、おかしいなどという声が現場から上がってきていたにもかかわらず、上層部は、それを深く追及しなかったのだろう。 イエス・キリストは「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」(新約聖書フランシスコ会聖書研究所訳注)と語ったが、現場からの声に経営者が耳を傾けなかっただけではないのか。 実は、彼女をモデルにしたと思われる小説がある。小説なので事実とは異なるだろうが、小説の主人公の生保レディーは、ある地方銀行の実力頭取の庇護(ひご)を受けているという設定だ。 その銀行では、頭取に認めてもらうため、彼女の保険契約に関し行員が競い合っていたという。その結果、彼女は所属する保険会社でナンバーワンの実績を挙げることが可能となったというストーリーだ。 下世話な表現を許してもらえれば、女の武器を使い頭取を籠絡し、威光を背に抜群の成績を挙げたのだ。 小説内の保険会社では、頭取の威光もあり、また成績を挙げた彼女の機嫌を悪くしないように、いつの間にか腫れ物扱いになっていたのだ』、この「小説」も一概にウソと決めつけられない部分もありそうだ。
・『◆触らぬ神に 本事件の報道では、この小説に描かれたような背景の問題は出てこないので、これを事実として扱うことはできない。しかし、第一生命においては、当該の89歳のセールスレディーが何らかの事由で「アンタッチャブル」、すなわち「タブー」、すなわち「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたことは事実だろう。 第一生命と同様に「触らぬ神にたたりなし」的人物のせいで経営が揺らいだのが、関西電力だ。関電の幹部たちが、福井県高浜町の元助役から数億円に上る多額の現金やスーツ仕立券を受け取っていた事件だ。 当該元助役は、すでに鬼籍に入っているが、原発立地に貢献した人物らしく、もし金品などの受け取りを拒否すれば、「ワシを軽く見るなよ」と脅迫されたため、受け取らざるを得なかったという。 関電側は「死人に口なし」とばかりに被害者として振る舞い、当時のトップは「不適切だが、違法ではなかった」と発言し、ひんしゅくを買った。 この資金が、原発立地に関わる資金であれば、結果として電力料金に跳ね返る。ならば「真の被害者は消費者だ」と強く言いたい。結果、関電側は、事件の責任を取って辞任した旧経営陣たちに善管注意義務違反があったとして約19億円の損害賠償請求訴訟を行うようだ。 余談だが、関電ともなれば、経営陣を監視する社外取締役には、重厚な人物が就任していたと思うが、彼らの責任追及はどうなったのか。 現在は、社外取締役などの重要性がいわれているが、彼らに活躍してもらうためには、事件が発覚した際に責任を負う覚悟が必要だ。 そうでなければ、現役引退後の良い稼ぎ場所として、幾つもの企業の社外取締役を掛け持ちする「なんちゃって社外取締役」ばかりになってしまう。 後で触れるが、第一勧業銀行(現みずほ銀行)総会屋事件の際には、社外監査役が責任を取らされてはたまらないと、さっさと辞任し、後任を見付けるのに苦労した記憶がある』、確かに「不祥事」の背後には、「「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたこと」がある場合が、ありそうだ。
・『◆総会屋事件 なぜ企業に「触らぬ神にたたりなし」的存在が大きくなり、それが原因で不祥事に発展するのか、私が経験した総会屋事件で考えてみたい。 私が勤務していた第一勧銀は、1997年5月に総会屋との癒着を問われ、東京地検の家宅捜索を受けることになった。第一勧銀総会屋事件である。結果として11人の幹部が逮捕され、宮崎邦次相談役が自殺するという大きな経済事件となった。 企業に寄生し、不当な利益を上げる総会屋は、82年10月の商法改正以降も、たびたび事件化していた。イトーヨーカ堂、高島屋、キリンビール、味の素、野村証券などだ。事件が発生するたびにトップは辞任していた。 そんな事態を第一勧銀の幹部は見ていながら、自分の銀行にも総会屋が巣くっている事実から目をふさいでいた。まさに「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」状態だった。 私は、当該事件の処理を直接担当したが、出てくる事実に驚愕(きょうがく)、当惑、困惑するばかりだった。 大物総会屋は事件発覚当時、すでに亡くなっていた。にもかかわらず、彼との関係は、後任の総会屋に引き継がれていたのだ。 第一勧銀は、第一銀行と日本勧業銀行が71年に合併して発足したが、大物総会屋はその際に暗躍したらしい。それ以来、26年にも及ぶ総会屋との関係が、彼らをいつの間にか「触らぬ神にたたりなし」的存在に祭り上げてしまったのだ』、かつての日本企業、特に銀行では、「総会屋」対策が経営上の大きな課題で、それに振り回されていたのも事実だ。
・『◆「呪縛」という言葉 私は、東京地検が家宅捜索に入った後の記者会見の原稿を作っていた。その際、トップの責任回避を考えて、総会屋との癒着関係は、総務部や審査部などが、いわば勝手にやっており、頭取などは関係していないという文章を作った。そして、それを頭取たちが居並ぶ会議で発表した。 するとM副頭取が、「それは違う。責任は自分たち経営陣にある。総務部や審査部の責任ではない。長年にわたる総会屋との関係を断ち切れなかった経営陣である自分たちの責任だ。そういうことをはっきりさせる会見文に直してほしい」と発言した。 この発言で、その場がシンと静まり返ったのをよく覚えている。経営陣は、この事件は自分たちの責任で、現場はそれに従った、忖度(そんたく)しただけで、責任はないと言い切ったのだ。 私は少なからず、感動を覚えた。それで、会見文を書き直すため、N法人企画部長と2人で、どういう内容に直すべきか、呻吟(しんぎん)した。 N部長は漢字に強かったのだろう。「呪縛という言葉はどうだろうか」と言った。私は即座に、その言葉に飛びついた。大物総会屋という存在の呪いに縛られ、身動きが取れなくなった状態を表していたからだ。 それに経営陣の責任も、何となく曖昧な感じ、やむを得ない感じがするではないか。当時は、今のようにコンプライアンス(法令順守)意識が強くなかったせいもあるが、長い歴史の中で、経営陣が思うに任せないほど巨大化してしまった「悪」の存在に、責任を負わせるのにふさわしい言葉だと思った。 案の定、その「呪縛」という言葉を記者会見でK頭取が発言すると、会見場に集まった記者たちは目の色を変え、その言葉を原稿に打ち込んだ。「呪縛」という、それ以前はあまり使われなかった言葉が、世間に広まった瞬間だった』、「呪縛」はその後、定着したが、「第一勧銀」事件が発端だったとは初めて知った。
・『◆なぜ失敗するのか 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」(シドニー・フィンケルシュタイン著)という本がある。この本は、著者が多くの企業経営者の失敗を分析した内容で、失敗の原因を次の7項目に集約している。 傲慢(ごうまん)=自分と会社が市場や環境を支配していると思い込む 私物化=自分と会社の境を見失い、公器であることを忘れ、公私混同する 過信=自分を全知全能だと勘違いする 排斥=自分を100%支持する人間以外を排斥する 空虚化=会社の理想像にとらわれ、現実を見なくなる。現場を忘れる 鈍感=ビジネス上の大きな障害を過小評価して見くびる 執着=かつての成功体験にしがみつく この7項目を活用して第一生命や関電、そして第一勧銀の「触らぬ神にたたりなし」的存在による不祥事の説明を試みてみよう。 カッコ内は私の見た第一勧銀のそれぞれの項目に関連する実態である。 3社とも社会的に尊敬される大企業であり、自分たちは不祥事と縁はないと「傲慢」になっていた。 〔銀行に東京地検が家宅捜索に入るはずはない。そんなことになれば金融システムが揺らぐ、と裁判官出身の大物顧問弁護士が発言した〕 本来の顧客のことを考えず、経営を「私物化」していたからこそ、「触らぬ神にたたりなし」的存在と癒着してしまった。 〔総会屋の言うなりに不良債権になることが分かっているのに、無担保、無審査で巨額融資を繰り返した〕 自分たちの不祥事は発覚しない、あるいは問題にならないと「過信」していた。 〔他社での総会屋事件を他山の石ではなく、対岸の火事と考えていた。総会屋と関係するのも仕事だと思っていた浅はかな経営者がいた。また大蔵省(当時)検査のごまかし、検査官を接待し籠絡することが常態化しており、他行も同じようにしているから、問題ないとうそぶく役員がいた〕 経営陣に「触らぬ神にたたりなし」的存在について警告、諫言(かんげん)する人を「排斥」していた。 〔総会屋との関係を続けてはならないと経営陣に諫言した総務部長は左遷されてしまった〕 自分たちが在籍するのは立派な会社である、その評判を落としてはならない、と不祥事を隠蔽(いんぺい)することが常態化し、経営が外見のみにとらわれ、「空虚化」していた。 〔大物総会屋が亡くなったにもかかわらず、後任総会屋やその他の総会屋との関係を断とうとしなかったのは、銀行の評判が落ちることを懸念したからだ。銀行=無謬(むびゅう)との空虚な神話にとらわれていた〕 長い間の「触らぬ神にたたりなし」的存在に「鈍感」になっていた。 〔総会屋事件発覚後の株主総会においてさえ、ある経営者は現場に「うまくやってくれよ」と言った。言われた総務部長は逮捕されたため、私が株主総会を仕切ることになった。事態の深刻さを自覚せず、うまくやってくれよと発言した経営者の名前を総務部長は明かさなかった。彼は「トップに忠誠を誓うのが男のロマンだ」と悲しくつぶやいた〕 生保も、電力も、銀行も、かつての成功体験に「執着」し、ビジネスモデルの変換に苦労している業界だ。だから過去の経営者たちの「触らぬ神にたたりなし」的存在との関係をそのまま引き継いでしまう。 〔株主総会は、行員株主ばかりでシャンシャン総会。総会屋関係の会社から物品などを購入し、彼らに資金提供を続けていた。それらを断ち切ったら「行員の命が危ないから」とある役員は恐怖におののきながら語った。しかし、自己保身でしかないだろう。昔の経営者が彼らとうまく付き合ったのに、自分が関係を悪化させたくないと思っただけだ。過去もうまくやってきたのだから、先々もうまくやらねばならないと思っていた』、「失敗の原因を次の7項目に集約」はいずれも頷ける。
・『◆傲慢こそ最悪 この本が指摘する7項目の失敗の原因に、第一生命も関電も第一勧銀も見事に符合するではないか。 私は7項目の中でも「傲慢」が最悪だと考えている。企業は、傲慢になれば、その時が失敗のわなに落ちる時である。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の 欠けたることも なしと思へば」(藤原道長)の古歌にあるように、望月になれば次は欠けるだけなのである。 今や、世の中の価値観は大きく変わった。また変わらねばならない。特に感染症拡大で、私たちは生き方そのものの変革を迫られている。 しかし、いまだに会社の中に「触らぬ神にたたりなし」的存在がいる企業は多いのではないだろうか。 それは「悪」というべき存在ばかりではないだろう。過去の成功体験、偉大な先輩経営者の遺訓、失敗を恐れる気持ちなどなど。「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか』、「「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか」、強く同意する。
先ずは、昨年11月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済東京支社情報部の井出豪彦氏による「有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254875
・『大掛かりな架空・循環取引疑惑が浮上している。対象となったのはコンクリート二次製品などの建設資材で、北は北海道から南は九州まで全国の有力メーカーや商社の合計15社程度が関与した模様だ』、ずいぶん大規模なようだ。
・『大掛かりな循環取引 議員がらみの可能性も 関係者の話を総合すると、循環取引は今年5月から8月頃にかけて行われ、同月下旬から9月初めに発覚したという。 中心的な役割を担ったとされる会社の営業担当社員A氏は10月末で解雇されたが、A氏の後ろ盾には某市の現職市議会議員X氏がおり、X氏が経営する会社も循環の輪に加わっていたとの情報もある。 9月以降、関係者が何度か会合を重ねて実態解明に乗り出してはいる。X氏も一度は会合に参加したが「A氏に名前を貸しただけ」などと発言し、終始いら立ちを隠せないでいたという。A氏とX氏は同じコンクリート製品メーカーでの勤務歴があり、親しい間柄だったという。A氏は周囲からトップセールスの優秀な社員と認識されていた。 問題の取引はいくつかの商流に分かれているほか、関与した業者も多い。工事案件そのものが架空のケースがあるとされる。いずれにせよ問題究明への各社の協力姿勢に温度差があるなどでなかなか全貌の把握には至っていないようだ。 すでに一部の会社は「不正に巻き込まれた」として弁護士に相談しているほか、刑事告訴の意向を示す業者もあるという。今後事件に発展する可能性もある。 いまのところ一連の循環取引で各社が計上した売り上げは2億~3億円程度とされるが、X氏が経営する会社については、今回の循環が発覚する前の今年5月頃、ある会社が振り出した高額手形を割引業者(ノンバンク)に持ち込んだものの、手形成因が怪しいとして否決され、いわゆる「割止め」情報が出た経緯もある。X氏周辺の資金難が今回の不正の動機になった可能性がある。循環メンバーに名を連ねる某社幹部は「議員がらみの案件と認識している」とコメントした』、「工事案件そのものが架空のケースがあるとされる」、とは本当に悪質だ。
・『上場会社で相次ぎ循環取引が発覚 ほかにも今年は上場企業などで循環取引の発覚が相次いだ。 IT業界では、東証1部の「ネットワンシステムズ」を中心として「東芝ITサービス」「富士電機ITソリューション」「日鉄ソリューションズ」などそうそうたる企業が加わった大規模な循環取引事件が表面化したことは記憶に新しい。 このケースでは営業マンのノルマ達成が不正に手を染める動機とされた。特に個人の報酬が売り上げノルマの達成率と連動している場合、架空・循環取引が起きるのは構造的な宿命といえるだろう。 7月には大手タイヤメーカー「住友ゴム工業」の子会社「住ゴム産業」(大阪市中央区)で元社員が土木資材の架空取引で数億円の損害を会社に与えたとして背任容疑で警視庁捜査2課に逮捕される事件もあった。この場合、元社員は取引先からのキックバックを遊興費に充てていたとされる。 一般的に、いわゆる「飲む、打つ、買う」で私生活に問題がある社員には不正の動機があるとされる。テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ。 さらに2月にはアミューズメント施設の運営や機器販売を手掛ける東証2部の「共和コーポレーション」(長野市)でも多数の循環取引への関与が発覚した。 昨年12月に大阪のゲーム機卸業者「アーネスト」が倒産して1億円を超える不良債権が発生したことをきっかけに、共和コーポレーション東京支店の元副支店長が中心的に不正に関与していたことが明らかになった。 循環取引には、売り(代金回収)と買い(支払い)のサイト差を利用した金融取引という側面があるため、資金難の会社が加わっていることが多い。資金繰りが厳しい会社は取引先の協力を得て、仕入れの支払いを延ばし、売り上げの入金を早めてもらえば、資金を調達したのと同様の効果が得られるのだ。さらに循環取引で見かけの売上高が増えれば銀行も業績がいいと誤認して新規融資に応じるという副産物が得られる可能性もある。 ところが不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ。 大阪市中央区の「FEP」は債権者から破産を申し立てられ、8月に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債35億円)。病院や介護施設に置く液晶テレビなどの架空取引の商流に入っていたが、昨年末に横浜にある、もう1社の中心的企業が事実上行き詰まり、循環の輪が切れたもの。 この商流に巻き込まれた形で飲食店の什器などを扱っていた「AIKジャパンコーポレーション」(東京都中央区)も8月に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債47億円)。また、AIKのグループ会社で個性的な飲食チェーンを展開していた「虎杖東京」(同)は新型コロナの影響もあり、一足早く6月に民事再生法の適用を申請したが、母体のAIKの循環取引問題がなければ起きなかった倒産だったかもしれない。このように循環取引は連鎖倒産も引き起こす』、「テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ」、大いに気を付けるべきだ。ただ、「不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ」、少し安心した。
・『循環取引を回避するための3つの原則とは 最後に、現在進行中の案件としては、大手IT商社「ダイワボウホールディングス」(東証1部)の繊維部門子会社「大和紡績」(旧・ダイワボウノイ)で循環取引が行われてきた疑いが浮上し注目されている。 この影響でダイワボウHDは4-9月期の決算発表が遅れている。9月上旬に売掛金の回収遅延をきっかけに営業担当の元社員にヒアリングしたところ「2014年1月から循環取引等を行い、不適切な売り上げおよび利益を計上していた」旨の説明があったという。 これまでの社内調査の結果、ダイワボウHDの損失見込み額は19億円に上るとのことだが、9月30日に公認不正検査士の資格を持つ弁護士や会計士らからなる「特別調査委員会」を立ち上げ、本格的な調査に入っている。ダイワボウノイといえば、不織布マスクのメーカーとして知られており、今年4月にグループの繊維事業の合理化に伴い大和紡績に吸収合併された経緯がある。 また、ダイワボウHDの大株主には、あの「3Dインベストメント・パートナーズ」のファンドが入っており、経営陣は神経をとがらせているはずだ。3Dといえば今年の東芝の株主総会で社長解任を要求し、結果的に三井住友信託銀行の不適切な議決権集計というパンドラの箱を開けたすご腕のファンド。今後ダイワボウHDのガバナンス不全について具体的になんらかの改善提案を行う可能性もあるだろう。 いずれにしても、ここまでみただけでも循環取引を根絶するのは難しいことが分かっていただけただろう。 三菱商事の伝説の審査マンで、現在、与信管理協会の専務理事をつとめる大宮有史氏は「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」として以下の確認を怠るなと強調する。 (1)取引に関わっている取引先の「顔ぶれ」と取引が「実需」に基づくものか (2)取引の入り口(起点)と出口(終点)がはっきりしているか (3)三現主義(現場、現物、現実)が徹底されているか 商流がグローバルに広がり、しかもコロナで対面商談が減る昨今だからこそ、この原則を肝に銘じる必要があるだろう』、「すご腕のファンド」までが登場してきたとは、ますます面白くなってきた。「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」は取引チェックの基本だ。
次に、12月31日付けロイター「焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/dentsu-group-contracts-insight-idJPKBN295096
・『不透明性が指摘されている政府から民間企業への行政事業委託について、大手広告代理店の電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていたことがロイターの調べで分かった。契約の多くは競争相手がいない「一者入札」で決められていたほか、両法人は受注した事業の大半を電通に再委託しており、野党議員などから事業経費の中抜きや税金の無駄遣いなどの可能性を懸念する声が上がっている』、飛んでもない話だ。
・『<持続化給付金事業など多岐に> 政府の行政事業を積極的に受託してきた電通関連の社団法人は「環境共創イニシアチブ(SII)」と「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」の2法人。両法人が委託された行政事業は観光振興プロジェクトの運営や代替エネルギー補助金給付など多岐にわたり、経済産業省からの委託案件が多い。 ロイターの調べによると、2法人による過去10年の受注規模は少なくとも103件あり、総額は約1710億円に達している。しかし、そのうち、およそ1242億円分が電通に再委託されていた。 とりわけ問題視されているのは、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業などを支援する持続化給付金事業だ。約2.3兆円を投じた同事業では、給付金を配る業務が経産省から769億円でサ推協に委託された。しかし、サ推協は同業務の大半を電通に再委託しており、行政事業の丸投げだとして日本国内メディアの報道も相次いだ。 持続化給付金事業の運営に対する批判の高まりを受け、経産省は是正策を講じるための有識者検討会を設け、12月25日に新しいルールを公表した。 新ルールでは、入札の透明性向上のほか、再委託についてはその比率が50%を超える場合は受託先の実施体制の確認を求めるなどの規制強化を打ち出した。 また、電通は28日、ロイターの取材に対し、経産省の検討会の議論を受けて設けられた新たな規定に従う、と表明した。 しかし、経産省など政府各省や電通は、持続化給付金事業を始めとする問題案件に関する個別の契約や業務遂行の実態などについて詳細を明らかにしていない』、「日本国内メディア」は電通が大株主であることもあり、報道姿勢は極めて甘い。
・『<なぜ社団法人か> 政府による業務委託は、民間企業の活力や組織力を生かして公益事業を円滑に遂行する重要施策だ。しかし、なぜ電通は直接に受託しなかったのか。 電通が行政事業受託への動きを強化したのは世界経済にリーマンショックの後遺症が続いていた約10年前だ。当時、日本政府は「官から民へ」の掛け声のもと、行政事業の民間委託を進めていた。ある元電通社員によると、同社はこうした「官から民へ」の流れを大きなビジネスチャンスととらえ、公的セクターへの業務拡大に動き始めた。 関連の社団法人から政府事業を再委託する手法の背景には、日本が2006年に実施した公益法人改革がある。この規制緩和により、一般社団法人の設立が最低社員2人の登録、かつ最小限の情報開示だけで可能になり、そうした法人が行政事業を受託できるようになった。 サ推協が政府から最初に受託したのは、レストランや旅館・ホテルなどにフランスのミシュランのようなホスピタリティのランクを与える「おもてなし規格認証」事業。東京オリンピック・パラリンピック開催をにらんだ企画だった。 ロイターが取材した5人の関係者によると、電通本社で会議が行われ、出向した電通社員が業務にあたるなど、実際の運営はサ推協ではなく電通が行っていたという。 サ推協と電通はロイターの問い合わせに対し、電通は社団法人の会員企業として同事業に協力しており、サ推協がプロジェクトを主導している、と述べた。 これまでにサ推協が受託した行政事業14件のうち、8件が1者入札だった。 一方、SIIは元電通社員の田中哲史氏によって設立された。同法人は電通子会社1社と同じ東京都内のビルに事務所を構えている。ロイターが検証した資料によると、SIIは2011年から現在までに、少なくとも89件の行政事業、約868億円を受託している。 経産省が国会議員に提出した資料によると、2015年以降に受託した事業のうち、約4分の3が再委託され、その大半が電通に任されていた。 SIIの田中氏は過去の事業委託の規模と電通への再委託の詳細について、現時点ではコメントできないとしている。 こうした行政事業の委託構造について、経産省・中小企業庁の中小企業政策統括調整官、高倉秀和氏は「ルール違反ではない」と指摘する。 同氏はロイターの取材に対し、行政事業を受託するために一般社団法人を作るというのは、出資も不要で財務諸表に子会社として記載する必要もなく、株主から批判を受けることもないため、「ある種、合理的な判断」だと述べた。 電通は給付金事業を政府から直接受託しなかったことについて、バランスシートへの影響と通常業務が滞る可能性も含め、社内の経理局から「(直接受託は)適切ではないとの意見があった」と説明した。 経産省は「適切な入札などの手続きが行われている場合、法人格が一般社団法人であること自体に問題があるとは考えていない」とコメントした』、「一般社団法人」といったトンネルを通じた「受注」は、正体を隠す隠蔽的色彩もありそうだ。
・『<会計検査の回避も可能か> 政府や電通側の説明について、有川博・日本大学客員教授(公共政策担当)・会計検査院元局長は、行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性がある、と指摘する。また、社団法人を使う受託にすれば、電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができるとしている。 「問題になっているのは(中間利益を取るための)トンネル会社のような再委託。国から直接委託を受けた会社がそのまま自分は何もしないで丸投げするような再委託は、何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」と再委託の問題点を指摘する。 立憲民主党の蓮舫代表代行は11月の参院予算委員会で、給付金事業を受託したサ推協やSIIが電通などに再委託した問題を取り上げ、梶山弘志経産相に委託先について調査するよう要請。さらに税金の使途が適切かどうか、会計検査院による検査を求めた。 会計検査院では、この要請を取り上げるかどうか来年度に決定するとしている。検査は1年以上かかる場合もあり、その結果については政府に報告書が提出される。 電通が設立した一般社団法人が経産省から受託した事業の一部について、野党議員や専門家から、公的資金を使った事業に対する会計検査から逃れる手段になったとの指摘がでていることについて、電通はロイターの問い合わせに直接回答していない。 同社は「一般社団法人は、多くの専門性を有する団体・企業で構成されており、当社も会員企業の一つしてコンソーシアムに参加している。当該社団法人が受託した業務はコンソーシアム内で連携して実施しており、当社もこれに参画している」とコメントした』、「一般社団法人」を通じることの問題点として、①「行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性」、②「電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができる」、③「トンネル会社のような再委託」することは、「何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」、どういても問題が多いようだ。政府には明確に説明する義務がある。
第三に、本年1月3日付け時事通信が掲載した元銀行員で作家の江上 剛氏による「日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】」を紹介しよう。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=20210102lin0001
・『第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取したという事件が起きた。彼女は89歳という高齢だ。事件が発覚して以来、認知症だと主張しているらしい。 高齢の人には申し訳ないが、89歳というのは日本人の平均寿命を超えており、亡くなっている人の方が多いということだ。生きている人でも大方は現役を去り、静かな余生を送っていることだろう。 ところが彼女は、第一生命でただ一人という「特別調査役」の肩書を与えられ、それを材料に使い、自分に任せれば10~30%の利回りを保証すると客を信用させていたというから、すごいという一言に尽きる。 事件の全体像は、これから解明されるだろうが、人生100年時代とはいえ、こんな高齢の女性を営業の現場に立たせ続け、不正のうわさもあったらしいが、そのことには耳を傾けなかった第一生命の責任は重いと言わざるを得ない』、常軌を逸した不祥事中の不祥事だ。「第一生命」の経営陣の責任も問われるべきだ。
・『◆不正の予兆 報道によると、同社は被害額の30%を弁済すると言っているようだが、根拠が分からない。19億円は巨額だが、事件を長引かせることで失う同社の信用、信頼の損失の大きさを考えれば、さっさと全額を弁済し、被害者との訴訟問題を収め、事件解明に努めた方がプラスではないか。 第一生命は、不正の予兆を感知することはできなかったと説明しているようだが、本当にそうだろうか。3年も前に外部から問題を指摘する情報が上げられていたという報道もある。怪しい、おかしいなどという声が現場から上がってきていたにもかかわらず、上層部は、それを深く追及しなかったのだろう。 イエス・キリストは「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」(新約聖書フランシスコ会聖書研究所訳注)と語ったが、現場からの声に経営者が耳を傾けなかっただけではないのか。 実は、彼女をモデルにしたと思われる小説がある。小説なので事実とは異なるだろうが、小説の主人公の生保レディーは、ある地方銀行の実力頭取の庇護(ひご)を受けているという設定だ。 その銀行では、頭取に認めてもらうため、彼女の保険契約に関し行員が競い合っていたという。その結果、彼女は所属する保険会社でナンバーワンの実績を挙げることが可能となったというストーリーだ。 下世話な表現を許してもらえれば、女の武器を使い頭取を籠絡し、威光を背に抜群の成績を挙げたのだ。 小説内の保険会社では、頭取の威光もあり、また成績を挙げた彼女の機嫌を悪くしないように、いつの間にか腫れ物扱いになっていたのだ』、この「小説」も一概にウソと決めつけられない部分もありそうだ。
・『◆触らぬ神に 本事件の報道では、この小説に描かれたような背景の問題は出てこないので、これを事実として扱うことはできない。しかし、第一生命においては、当該の89歳のセールスレディーが何らかの事由で「アンタッチャブル」、すなわち「タブー」、すなわち「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたことは事実だろう。 第一生命と同様に「触らぬ神にたたりなし」的人物のせいで経営が揺らいだのが、関西電力だ。関電の幹部たちが、福井県高浜町の元助役から数億円に上る多額の現金やスーツ仕立券を受け取っていた事件だ。 当該元助役は、すでに鬼籍に入っているが、原発立地に貢献した人物らしく、もし金品などの受け取りを拒否すれば、「ワシを軽く見るなよ」と脅迫されたため、受け取らざるを得なかったという。 関電側は「死人に口なし」とばかりに被害者として振る舞い、当時のトップは「不適切だが、違法ではなかった」と発言し、ひんしゅくを買った。 この資金が、原発立地に関わる資金であれば、結果として電力料金に跳ね返る。ならば「真の被害者は消費者だ」と強く言いたい。結果、関電側は、事件の責任を取って辞任した旧経営陣たちに善管注意義務違反があったとして約19億円の損害賠償請求訴訟を行うようだ。 余談だが、関電ともなれば、経営陣を監視する社外取締役には、重厚な人物が就任していたと思うが、彼らの責任追及はどうなったのか。 現在は、社外取締役などの重要性がいわれているが、彼らに活躍してもらうためには、事件が発覚した際に責任を負う覚悟が必要だ。 そうでなければ、現役引退後の良い稼ぎ場所として、幾つもの企業の社外取締役を掛け持ちする「なんちゃって社外取締役」ばかりになってしまう。 後で触れるが、第一勧業銀行(現みずほ銀行)総会屋事件の際には、社外監査役が責任を取らされてはたまらないと、さっさと辞任し、後任を見付けるのに苦労した記憶がある』、確かに「不祥事」の背後には、「「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたこと」がある場合が、ありそうだ。
・『◆総会屋事件 なぜ企業に「触らぬ神にたたりなし」的存在が大きくなり、それが原因で不祥事に発展するのか、私が経験した総会屋事件で考えてみたい。 私が勤務していた第一勧銀は、1997年5月に総会屋との癒着を問われ、東京地検の家宅捜索を受けることになった。第一勧銀総会屋事件である。結果として11人の幹部が逮捕され、宮崎邦次相談役が自殺するという大きな経済事件となった。 企業に寄生し、不当な利益を上げる総会屋は、82年10月の商法改正以降も、たびたび事件化していた。イトーヨーカ堂、高島屋、キリンビール、味の素、野村証券などだ。事件が発生するたびにトップは辞任していた。 そんな事態を第一勧銀の幹部は見ていながら、自分の銀行にも総会屋が巣くっている事実から目をふさいでいた。まさに「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」状態だった。 私は、当該事件の処理を直接担当したが、出てくる事実に驚愕(きょうがく)、当惑、困惑するばかりだった。 大物総会屋は事件発覚当時、すでに亡くなっていた。にもかかわらず、彼との関係は、後任の総会屋に引き継がれていたのだ。 第一勧銀は、第一銀行と日本勧業銀行が71年に合併して発足したが、大物総会屋はその際に暗躍したらしい。それ以来、26年にも及ぶ総会屋との関係が、彼らをいつの間にか「触らぬ神にたたりなし」的存在に祭り上げてしまったのだ』、かつての日本企業、特に銀行では、「総会屋」対策が経営上の大きな課題で、それに振り回されていたのも事実だ。
・『◆「呪縛」という言葉 私は、東京地検が家宅捜索に入った後の記者会見の原稿を作っていた。その際、トップの責任回避を考えて、総会屋との癒着関係は、総務部や審査部などが、いわば勝手にやっており、頭取などは関係していないという文章を作った。そして、それを頭取たちが居並ぶ会議で発表した。 するとM副頭取が、「それは違う。責任は自分たち経営陣にある。総務部や審査部の責任ではない。長年にわたる総会屋との関係を断ち切れなかった経営陣である自分たちの責任だ。そういうことをはっきりさせる会見文に直してほしい」と発言した。 この発言で、その場がシンと静まり返ったのをよく覚えている。経営陣は、この事件は自分たちの責任で、現場はそれに従った、忖度(そんたく)しただけで、責任はないと言い切ったのだ。 私は少なからず、感動を覚えた。それで、会見文を書き直すため、N法人企画部長と2人で、どういう内容に直すべきか、呻吟(しんぎん)した。 N部長は漢字に強かったのだろう。「呪縛という言葉はどうだろうか」と言った。私は即座に、その言葉に飛びついた。大物総会屋という存在の呪いに縛られ、身動きが取れなくなった状態を表していたからだ。 それに経営陣の責任も、何となく曖昧な感じ、やむを得ない感じがするではないか。当時は、今のようにコンプライアンス(法令順守)意識が強くなかったせいもあるが、長い歴史の中で、経営陣が思うに任せないほど巨大化してしまった「悪」の存在に、責任を負わせるのにふさわしい言葉だと思った。 案の定、その「呪縛」という言葉を記者会見でK頭取が発言すると、会見場に集まった記者たちは目の色を変え、その言葉を原稿に打ち込んだ。「呪縛」という、それ以前はあまり使われなかった言葉が、世間に広まった瞬間だった』、「呪縛」はその後、定着したが、「第一勧銀」事件が発端だったとは初めて知った。
・『◆なぜ失敗するのか 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」(シドニー・フィンケルシュタイン著)という本がある。この本は、著者が多くの企業経営者の失敗を分析した内容で、失敗の原因を次の7項目に集約している。 傲慢(ごうまん)=自分と会社が市場や環境を支配していると思い込む 私物化=自分と会社の境を見失い、公器であることを忘れ、公私混同する 過信=自分を全知全能だと勘違いする 排斥=自分を100%支持する人間以外を排斥する 空虚化=会社の理想像にとらわれ、現実を見なくなる。現場を忘れる 鈍感=ビジネス上の大きな障害を過小評価して見くびる 執着=かつての成功体験にしがみつく この7項目を活用して第一生命や関電、そして第一勧銀の「触らぬ神にたたりなし」的存在による不祥事の説明を試みてみよう。 カッコ内は私の見た第一勧銀のそれぞれの項目に関連する実態である。 3社とも社会的に尊敬される大企業であり、自分たちは不祥事と縁はないと「傲慢」になっていた。 〔銀行に東京地検が家宅捜索に入るはずはない。そんなことになれば金融システムが揺らぐ、と裁判官出身の大物顧問弁護士が発言した〕 本来の顧客のことを考えず、経営を「私物化」していたからこそ、「触らぬ神にたたりなし」的存在と癒着してしまった。 〔総会屋の言うなりに不良債権になることが分かっているのに、無担保、無審査で巨額融資を繰り返した〕 自分たちの不祥事は発覚しない、あるいは問題にならないと「過信」していた。 〔他社での総会屋事件を他山の石ではなく、対岸の火事と考えていた。総会屋と関係するのも仕事だと思っていた浅はかな経営者がいた。また大蔵省(当時)検査のごまかし、検査官を接待し籠絡することが常態化しており、他行も同じようにしているから、問題ないとうそぶく役員がいた〕 経営陣に「触らぬ神にたたりなし」的存在について警告、諫言(かんげん)する人を「排斥」していた。 〔総会屋との関係を続けてはならないと経営陣に諫言した総務部長は左遷されてしまった〕 自分たちが在籍するのは立派な会社である、その評判を落としてはならない、と不祥事を隠蔽(いんぺい)することが常態化し、経営が外見のみにとらわれ、「空虚化」していた。 〔大物総会屋が亡くなったにもかかわらず、後任総会屋やその他の総会屋との関係を断とうとしなかったのは、銀行の評判が落ちることを懸念したからだ。銀行=無謬(むびゅう)との空虚な神話にとらわれていた〕 長い間の「触らぬ神にたたりなし」的存在に「鈍感」になっていた。 〔総会屋事件発覚後の株主総会においてさえ、ある経営者は現場に「うまくやってくれよ」と言った。言われた総務部長は逮捕されたため、私が株主総会を仕切ることになった。事態の深刻さを自覚せず、うまくやってくれよと発言した経営者の名前を総務部長は明かさなかった。彼は「トップに忠誠を誓うのが男のロマンだ」と悲しくつぶやいた〕 生保も、電力も、銀行も、かつての成功体験に「執着」し、ビジネスモデルの変換に苦労している業界だ。だから過去の経営者たちの「触らぬ神にたたりなし」的存在との関係をそのまま引き継いでしまう。 〔株主総会は、行員株主ばかりでシャンシャン総会。総会屋関係の会社から物品などを購入し、彼らに資金提供を続けていた。それらを断ち切ったら「行員の命が危ないから」とある役員は恐怖におののきながら語った。しかし、自己保身でしかないだろう。昔の経営者が彼らとうまく付き合ったのに、自分が関係を悪化させたくないと思っただけだ。過去もうまくやってきたのだから、先々もうまくやらねばならないと思っていた』、「失敗の原因を次の7項目に集約」はいずれも頷ける。
・『◆傲慢こそ最悪 この本が指摘する7項目の失敗の原因に、第一生命も関電も第一勧銀も見事に符合するではないか。 私は7項目の中でも「傲慢」が最悪だと考えている。企業は、傲慢になれば、その時が失敗のわなに落ちる時である。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の 欠けたることも なしと思へば」(藤原道長)の古歌にあるように、望月になれば次は欠けるだけなのである。 今や、世の中の価値観は大きく変わった。また変わらねばならない。特に感染症拡大で、私たちは生き方そのものの変革を迫られている。 しかし、いまだに会社の中に「触らぬ神にたたりなし」的存在がいる企業は多いのではないだろうか。 それは「悪」というべき存在ばかりではないだろう。過去の成功体験、偉大な先輩経営者の遺訓、失敗を恐れる気持ちなどなど。「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか』、「「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか」、強く同意する。
タグ:企業不祥事 (その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】) ダイヤモンド・オンライン 井出豪彦 「有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!」 大掛かりな架空・循環取引疑惑が浮上 大掛かりな循環取引 議員がらみの可能性も 工事案件そのものが架空のケースがあるとされる 上場会社で相次ぎ循環取引が発覚 テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ 「不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ」、少し安心した 循環取引を回避するための3つの原則とは 「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」 (1)取引に関わっている取引先の「顔ぶれ」と取引が「実需」に基づくものか (2)取引の入り口(起点)と出口(終点)がはっきりしているか (3)三現主義(現場、現物、現実)が徹底されているか 「すご腕のファンド」までが登場してきたとは、ますます面白くなってきた ロイター 「焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も」 電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていた 持続化給付金事業など多岐に なぜ社団法人か 会計検査の回避も可能か 「一般社団法人」を通じることの問題点として、①「行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性」、②「電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができる」、③「トンネル会社のような再委託」することは、「何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」、どういても問題が多いようだ。政府には明確に説明する義務がある 時事通信 江上 剛 「日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】」 第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取 不正の予兆 触らぬ神に かつての日本企業、特に銀行では、「総会屋」対策が経営上の大きな課題で、それに振り回されていたのも事実だ 「呪縛」という言葉 「呪縛」はその後、定着したが、「第一勧銀」事件が発端だったとは初めて知った なぜ失敗するのか 「失敗の原因を次の7項目に集約」はいずれも頷ける 傲慢こそ最悪 「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか」、強く同意する