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ミャンマー(その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く)  [世界情勢]

ミャンマーについては、2018年6月9日に取り上げた。今日は、(その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く)である。

先ずは、本年 2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストで元毎日新聞編集委員の春日 孝之氏による「スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/410827
・『ミャンマーで起きたクーデターは、この国のウォッチャーを「まさか」と絶句させる出来事だった。なぜ、あのミン・アウン・フライン国軍最高司令官が……。そんな反応である。 彼は民主化プロセスに前向きで、穏健派と目されていたからだ。「総選挙での不正」が、クーデター正当化の理由となりえるのか。民主政権を転覆させるという暴力的手段が、これまでの改革を後退させ、国民の猛反発を招いて、取り戻しかけた国軍の権威を失墜させかねないとは考えなかったのだろうか』、「国軍」の発砲によるデモ参加者の死亡事件も相次ぎ、様相は緊迫の度を高めている。
・『クーデターの大義とは対極にありそうな私的事情  ともかく、ミン・アウン・フラインはルビコン川を渡ると心を決め、実行に移した。ここでは「クーデターの大義」とは対極にありそうな彼の「個人的な理由(都合)」に絞り、その心中を推し量ってみた。 私は2015年6月にミン・アウン・フラインにインタビューをした際、生年月日を聞いた。「1956年」としか公表されていなかったからだ。返ってきたのは「59歳です。60歳に向かっているところです」との曖昧な言葉だった。この国では、政権幹部や高級軍人の誕生日は国家の「最高機密」である。占星術や呪術が盛んなお国柄で、「黒魔術で呪詛される」と本気で信じているからだ。 ミャンマーの政治と占星術、呪術の深いつながりについては拙著『黒魔術がひそむ国ミャンマー政治の舞台裏』で紹介しているので、ここでは詳細を省くが、ミン・アウン・フラインは当時、翌年に定年を迎えて退役するはずだった。 しかし、インタビューから半年後に実施された2015年総選挙でアウン・サン・スー・チー率いる当時の最大野党「国民民主連盟」(NLD)が大勝。NLD政権の誕生が確実となり、ミン・アウン・フラインは定年を延長して最高司令官の地位にとどまる。政権交代で軍出身のテイン・セイン大統領が退くことになり、スー・チー新政権の「目付」を自らが担うという判断もあったと思う。 今回のクーデターの個人的理由として、ミン・アウン・フラインの「大統領への野心」が指摘される。可能性はあった。スー・チー政権の行政、政治能力、つまり政権運営能力は客観的に見てもレベルは低い。「自分がタクトを振るえば……」という自負心があったとしても不思議ではない。 同時に、今度は避けて通れそうにない「65歳の定年」を前に、どうしても「最高権力者でなければまずい」と考えたであろう事情を斟酌したい。 今回SNS上では、2020年総選挙に際して、ミン・アウン・フラインがあるシナリオを描いていたとのうわさが飛び交った。軍系政党が一定議席を獲得して自らが大統領になる「プランA」。大敗した場合はクーデターを敢行するという「プランB」。やむなく「プランB」を実行に移した、というものだ。 プランの真偽は別にして、選挙結果次第で大統領になるチャンスはあった。大統領選出の仕組みはこうだ。選挙を受けて国会の上院と下院の民選議員からそれぞれ1人、両院の4分の1を占める最高司令官指名の軍人議員団から1人の計3人を副大統領に選ぶ。この中から全員投票で大統領を選ぶのだ。 つまり、ミン・アウン・フラインはまず軍人議員団の推挙で副大統領となる。軍系政党とその友党が改選議席の4分の1を獲得していれば、国会議席の過半数を占めて大統領に選出される。ハードルはそんなに高くなかったが、軍系政党は惨敗した。 冒頭で「選挙不正」がクーデター正当化の理由になりえるのか、と提起したが、スー・チー政権を誕生させた2015年総選挙でもスー・チー側が「不正」を訴えて大騒ぎになった。軍系政党の票の買収疑惑に加え、今回と同様に有権者名簿の不備に起因するものもだ。名簿に欠落や重複があまりにも多く、NLDは、選挙前に修正版を発表した選挙管理委員会に「依然3~8割が誤りだ」と猛反発した。結局はNLDが大勝。当時のテイン・セイン政権の選管は異議申し立てを受け付け、まがりなりにも調査を行って騒ぎは収束した。 今回はスー・チー政権の選管だ。「不備」は予測できる。調査要求を一切拒否したというなら民主主義のプロセスを無視したことになり、ミン・アウン・フラインの主張にも「一理」はある(とは言えクーデター正当化の理由にはならないと思うが)』、なるほど。
・『見逃せないロヒンギャ問題  ミン・アウン・フラインが最高権力者の地位にこだわった個人的理由の1つとして、ロヒンギャ問題は見逃せない。国軍は、ロヒンギャ武装組織への掃討作戦に対し、国連や米欧から「民族浄化だ」と厳しい非難を浴びてきた。作戦は、武装組織による治安部隊への同時多発テロが引き金となったが、国際司法の場でミン・アウン・フラインら国軍幹部は訴追の対象だ。権力を手放せば、2期目に入ったスー・チー政権が国際的な圧力に屈し、拘束などのリスクにさらされる可能性が生じる。 スー・チーは、オランダでの国際司法裁判所の審理に出廷し、国軍の作戦に「行きすぎ」を認めたが「ジェノサイド(集団虐殺)の意図」は否定した。スー・チーも国際的な非難を浴びて「堕ちた偶像」とまでこき下ろされた。 これに対しSNS上では当時、こんなうわさが駆け巡った。スー・チーはミン・アウン・フラインにこう告げる。「次の審理にはあなたが出廷しなさい。あなたの指揮した作戦ですから」。これがクーデターの伏線になったというわけだ。スー・チーはロヒンギャ問題で自国の立場を主張せず、沈黙してきた。彼はそんなスー・チーへの苛立ちを募らせていたと。 2人の確執の深さは、スー・チーが最高権力を手中にした経緯を知ることで容易に想像できる。 スー・チーのNLDは2015年総選挙で大勝、国会議席の過半数を占めた。NLDが出す副大統領が大統領に選出されることになった。大統領は憲法上、国家元首である。スー・チーは自分がなりたかったが、憲法の国籍条項が阻んでいた。息子が外国籍だからだ。 そこで彼女は「大統領の上に立つ」と宣言し、ミン・アウン・フラインと水面下で攻防を繰り広げた。私は当時ヤンゴンで、NLD法律顧問で最高裁の法廷弁護士だった人物からその推移をフォローしていた。スー・チーは国籍条項の一時凍結案を国会で通して「正式な大統領」になるウルトラC案を突き付ける。しかし「憲法の守護者」を任じるミン・アウン・フラインの抵抗は強く、最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった。 ミン・アウン・フラインが地団駄を踏んで悔しがったことは、その後の彼の発言からも明らかだ。こうした妙案をひねり出したとみられる先の弁護士はその後、何者かに暗殺される』、「最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった」、「スー・チー」氏もなかなかしたたかなようだ。
・『最後の交渉は「メンツとメンツのぶつかり合い」  今回のクーデターを前に前日、国軍とスー・チーの両サイドで「最後の交渉」が行われたことが明らかになっている。選挙不正への対応をめぐるもので、交渉内容を知りうる筋は「メンツとメンツのぶつかり合いだった」と明かす。 この国の憲法は、国家非常時には最高司令官が全権を掌握できるシステムになっている。「クーデター容認条項」があるのだ。そうした憲法上の実質的な最高権力者ミン・アウン・フラインと、憲法を超越した最高権力者スー・チー。2人は互いに妥協を拒み、従来からのスー・チーへの不満に加え、義憤にかられたミン・アウン・フラインは最後の一線を越える決意をした……。 もちろんクーデターの理由が1つ、というのは考えにくい。ロヒンギャ問題で国際的非難を浴びる中での国軍内の守旧派の巻き返し、ミャンマーでの「失地回復」を試みる中国の利害や利権、米中対立といった国際情勢などさまざまな要素が思い浮かぶ。 それらは別の機会に触れるとして、クーデターはミャンマー民主化の流れにも国際的な政治潮流にも逆行する大それた行動である。ミン・アウン・フラインに、クーデターという挙に駆り立てた、いや「支え」となった何かが存在したのではないか。表向きには出てこない、占いや呪術的な要素の介在だ。クーデター決行の決断や実行の日時、新軍政発足の日時についても、この国では必ず「お抱え占星術師」が重要な役割を担う。私は、クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている』、「「お抱え占星術師」など「クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている」、とは我々の想像を超えた世界のようだ。

次に、2月19日付けダイヤモンド・オンライン「ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263
・『国軍、NLDの勢いに危機感 だが「軍政回帰」は疑問  Q:今回の国軍のクーデターをどう受け止ますか。 A:2011年に民政移管後、15年と昨年11月の2回の選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝し、国軍側に影響力がどんどん弱まる危機感が強かった。 国軍側は憲法で国会に議員数の4分の1の「軍人枠」を設け、民政移管後も影響力を維持する仕掛けを施してきたが、それでもNLDが勢い増す一方のなかで焦りがあったことは確かだろう。 ただ歴史的に見ても、独立した当初からミャンマー(当時はビルマ)は民主主義体制を志向してきた。国軍が権力を掌握した時もあったが、派閥争いや汚職で民政が機能しなくなったときに暫定的に統治するというものだ。その意識は国軍自身も今も持っているはずだ。それが他国の軍事政権とは違う点で、国民もそういうことで軍事政権を認めてきた。 だから今回も軍政回帰に一直線に向かうとは思えない』、「ミャンマー・中国元大使」、とはまさに最適任者だ。
・『民主化ロードマップ」は転換点 もはや後戻りできない  Q:しかし過去2回のクーデターの際も、軍事政権は長期化し独裁的な体制が続きました。 A:最初の62年のクーデターで政権を作ったネウィン将軍は、日本軍に訓練された「ビルマ独立軍」の創設メンバーだった。当時、全体の統括をスーチー氏の父親のアンサウン将軍がやり、軍事面の統括をネウィン氏がやって、ビルマの独立を達成したが、独立運動の目的はビルマに民主的な政府を作ることにあった。 だからクーデター後もネウィン氏は民主的な政府に(権力を)返す必要があると常に思っていた。 ただもともと軍人だし、軍は社会を安定化させることができるが経済を発展させる能力がない。以前はタイより豊かな国だったが、ネウィン政権の最後の頃、87年には国連の最貧国に指定されて、援助をもらうだけの国になってしまった。 誇り高いミャンマーの人には屈辱的なことだった。そこで学生らを中心に大規模な民主化運動が起き、結局、その混乱を88年に軍が無血クーデターで収束することになる。 Q:その時もソウマウン将軍を議長に新政府が作られ、90年には選挙が行われましたが、NLDが圧勝したのに政権移譲は行われませんでした。 A:国軍が政権について得たさまざまな既得権益を守ろうとしたことにあったと思う。私が大使でいた時、現地の華僑の人から、ミャンマーには、表のミャンマー経済と同じサイズで裏のミャンマー経済があるといわれた。 軍事政権がいろんなものを輸入禁止にするのだが、その裏で密輸でもうける。そういう闇の経済の利益の半分は華僑が、半分は軍事政権が手にしているということだった。 だがスーチー氏の登場以降、国際社会は軍事政権に厳しくなり、制裁を受けたこともあって経済は一向によくならない。97年にASEANに入ったが、ASEANからは経済自由化など、欧米とはまた違う圧力を受けることになった。 それで軍事政権も耳を傾けざるを得なくなって、2003年に「11年に民政移管を完了する」という「民主化への7段階のロードマップ」を発表した。 行き当たりばったりで何をやってもうまくいかず、袋小路に追い込まれて考え出されたのが民主化ロードマップだった。民主化をすれば国際社会が認めてくれるし、外資も入ってくる。そうすることでミャンマーの次の一歩を踏み出せると、当時のキンニュン首相が打ち出したわけだ。 軍事政権もそれを守り、11年3月にテインセイン大統領の下での民政移管が実現した。軍政には後戻りできないという意味で民主化ロードマップでというのは、ミャンマーの歴史的な転換点だった』、歴史的にみると、「軍政」の期間が長かったことに改めて驚かされる。
・『スーチー氏にも責任がある 民政を守る努力、双方が不十分  Q:そうした歴史があるにもかかわらず軍はなぜ今回、実力行使に出たのですか。 A:ミャンマーでは国をまとめて一つの方向にもっていける政治指導者がなかなか出てこない。アウンサン将軍は別格の政治指導者でもあったが、ネウィン将軍以降は、基本的に軍人だ。将来の民主化に戻すことを見据えた統治を実現するためには新たな政治指導者が必要だ。 その点ではテインセイン大統領は軍人出身だったが、スーチー氏の立場に配慮して意識的にスーチー氏やNLDとの関係もうまく作り、経済改革も進めて外国企業の進出も増えた。それで2015年に選挙をしてNLDが勝った。ここまではテインセイン氏にとっても予定通りだったと思う。 だが16年に、NLD政権ができてスーチー氏は国家顧問兼外相という形で実権を握るのだが、スーチー氏も本当の政治家ではないから国をまとめるということではうまくやれていなかった。 実質的な大統領なのだから、今度はスーチー氏が軍のメンツを立てながらやらないといけなかった。軍との関係をうまくやって進めていけば、民主主義の体制は徐々にだが、本当に根付いていくと思う。 もちろん軍部にも責任があったが、スーチー氏も責任を負わないといけない。NLDと国軍の間で常に対立があった状況を克服し、民政を守っていく努力が双方ともに不十分だった。今回のクーデターの根源的な原因はそれだと思う。 Q:具体的には何が問題だったのでしょうか。 A:国軍からすれば、スーチー氏が国軍の力を弱めようとする動きをずっとするわけだ。国軍枠の議席を保障した憲法の修正提案をずっとやって、選挙で選ばれた政府が名実ともに統治できるようにする方向で動くから、NLD政権は軍の既得権益を脅かそうとしているというふうに軍は考える。 一方でスーチー氏から見れば国軍との関係が大事ということで、ロヒンギャ弾圧で国際社会から非難されながら国軍を擁護してきた。これほど犠牲を払っているのに、という思いがある。 だが国軍にはスーチー氏は我々に敬意を示さないという思いがあるし、昨年の選挙で不正があったと言っているのに一顧だにしない。メンツが著しく損なわれたと受け止めたのだろう。メンツは彼らにとってはべらぼうに大事な価値観だ。 ただ、国民にクーデターが支持されているかといえばそうではない』、今回は公務員もクーデターへの抗議デモに参加しているようだ。
・『軍は「一枚岩」ではない可能性 クーデターの正当性は弱い  Q:それはどうしてですか。 A:一つは国軍クーデターの正当性が著しく弱いことがある。 これまでは、軍事政権は国が混乱したときの暫定だということでクーデターの正当性は国民も理解したし、軍人もそう思っていたと思う。 だが、民主化ロードマップも軍事政権の時に作られ、軍自身がそれを実現してきたことを考えると、選挙に不正があったという名目だけでクーデターをするのに値するのか、という疑問が軍の中にもあると思う。 現地の関係者に聞いた話だが、テインセイン氏は16年に退任したが、昨秋の選挙結果を受け入れるように軍幹部には言っていたようだ。軍幹部の中にもそう思っている人がいて一定の勢力があるということだと思う。軍が一枚岩ではない可能性がある。 それに国民の意識も違っている。 民政移管後のこの10年でミャンマーの人々が経済発展の果実を得て豊かな生活を体験した。軍政に戻るということはこれを放棄して、経済もうまくいかず、前と同じ貧しい生活に戻るということになる。それを納得するのかどうかだ。 今の抗議デモはNLDの支持者が中心だと思われるが、今後、経済がうまくいかなくなると、一般大衆が立ち上がる。そうなると、おそらく軍も相当に手を焼くと思う』、既に「一般大衆が立ち上がる」段階に入ったような気がする。
・『インド洋へのルート確保や「一帯一路」 中国には軍事、経済で死活的利益  Q:米国は軍事政権に対して制裁で動いていますが、中国はいまのところ静観の構えです。中国はどう動くのでしょうか。 A:中国にとってミャンマーは、軍事安全保障の面でも経済の面でも重要な国であることは間違いない。 ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイントだ。台湾有事などの際に米国第7艦隊がマラッカ海峡を封鎖すれば、エネルギー資源の入手経路が直ちに遮断され、死活問題となる。 南シナ海での基地建設に邁進しているのも同じ理由だ。ミャンマーやパキスタン経由でインド洋に出るルートを確保して米国の勢力圏にない拠点をインド洋に沿岸に設けることは安全保障上、必須のことだ。 この地政学的な要因に加え、ミャンマーは日本の1.8倍の国土に5000万人を超える人口を持っている。市場としてもASEANの最後のフロンティアだ。「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる。 今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある』、「ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイント」、「「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる」、となれば、「今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある」、難しいところだ。
・『西側の経済制裁実施の陰で最大の援助国として影響力  Q:西側諸国が経済制裁を強めれば、逆に中国は軍事政権を支えるということですか。 A:88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった。 私がミャンマー大使でいた2000年代初めには、中国は圧倒的な援助のドナーで、ミャンマー政権も非常に気を使っていた。我々はミャンマーの要人となかなか会う機会がなかったが、中国大使はよく会っていて非常に気軽に口を利いていた。 なんとか接触をしようと、キンニュン首相が学校などを視察するときには必ず同行するようにして、チャンスを見ては立ち話をした。ただ政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた。 それが当時の実情だが、ただそんなに心配しなくてもいいと思ったのは、ミャンマーの国民感情は日本に対してのほうが圧倒的に良くて中国には悪かったからだ。 当時、ミャンマーとタイ、ラオスの国境はゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)といわれて、麻薬栽培やカジノで稼いだ中国系ミャンマー人がミャンマー国内に下りてきてたくさんの中国人が生活するようになったが、高飛車な振る舞いで一般のミャンマー人に悪い印象を与えていた。 当時は日本政府は援助額としては大したことはできていなかったが、第二次大戦中、ミャンマーの人たちに命を助けられた旧日本兵やその家族が、慰霊団とか、感謝のための訪問を続け、学校を作り、井戸掘りをやっていた。政府も赤ちゃん用のワクチンを援助していて、現地の人はそれを知っている。 中国の援助は発電所などの大がかりなもので、政府は感謝するが、国民のほうは、金額は少ないけれど日本のほうが自分たちの生活のために支援してくれているということで心情的には日本支持だった』、「88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった」、「政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた」、「日本」と「中国」への対応の差はこんなにも大きいとは・・・。
・『ラオスやカンボジアにはならない? 支配の歴史に対する抵抗感強い  Q:援助を武器にした「南進政策」でラオスやカンボジアは事実上、中国に支配されているかのような状況です。ミャンマーはそうなりませんか。 A:ミャンマー人をずっと見ていて一番強く感じるのは、誇り高い人たちであり、抑えつけられることに対して強く反発することだ。 英国に植民地支配され、その後は日本軍の統治に抑えつけられた歴史がある。戦後、日本はミャンマーを支援してきたから、そのことには感謝してくれてはいるが、ミャンマーの独立を支援した点を除き、戦争中の日本に対しては感謝はない。 その国民性を考えると、中国に簡単に抑えられるとはまったく思わない。 ラオス、カンボジアは内心はまた別だと思うが、現状では中国の言うことを聞くという選択肢しかないが、ミャンマーはラオスやカンボジアのようにはならないと思う。 軍事政権も同じだ。国軍が一番、血を流した相手はビルマ共産党軍だ。国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した。ビルマ共産党は、中国共産党、人民解放軍に直接支援されていたわけで、ビルマ共産党軍との戦いの歴史は国軍の中で間違いなく教育され、受け継がれている。 軍事政権は便宜的に中国と仲良くしていろんな支援を得ようとすることはあったとしても、心を許すことは本当にあり得ない。 そういう意味で中国にとってもかじ取りは非常に難しい。いわゆるゲーム理論に従えば千載一遇のチャンスで、西側諸国がミャンマーに対して厳しい態度を取れば取るほど自分たちが近づいていこうということになるが、ミャンマーはそもそも中国が抑えつけるには大き過ぎる。 日本なども全面的に協力しているし、タイなどの資本もどんどん入っているから、簡単に中国の言う通りにはいかない。) ただ今後、米中対立、とりわけ経済関係の成り行きいかんで、いわゆるセクターごとのデカップリング(中国分離)は起こり得るし、今回のコロナショックで起きたサプライチェーンの断絶の教訓から、そういった事態に備えなければいけないと、中国の共産党や政府の幹部の一部の人は考え始めていると思う。 それが現実になればなるほど、中国のアジアシフトは明確にならざるを得ない。昨年署名されたRCEP(ASEAN加盟10カ国と日中韓豪ニュージーランドの地域的な包括経済連携協定)はその基盤になり得るわけだ。 一方でミャンマーの軍事政権も中国に近づくことが利益だと考えたら接近するだろう。中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある』、「国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した」、こんな歴史があったとは初めて知った。確かに「中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある」、のかも知れない。
・『国際的な孤立深まれば対中接近も 「選挙やり直し」で軍のメンツも立つ?  Q:ミャンマーの今後ですが、軍が一枚岩でないという状況でどういう展開を予想しますか。 A:一番心配しているのは、軍事政権はきちんとした情勢分析をせずにその時の雰囲気や流れでやってしまうことが多いことだ。だから、国際社会はあまり性急に追い詰めるようなことはしないほうがいい。 国軍のミンアウンフライン最高司令官が中国にどこまで近づくかというのは、軍事政権が国際社会でどれだけ孤立するか、による。またミンアウンフライン氏自身にとっても、軍が曲がりなりにも一体化している限りは中国にすり寄る必要はないが、軍の中の対立が相当、厳しいものになってくれば、中国にすり寄って助けてもらうという選択肢を取る可能性は出てくる。 国際社会、とりわけ西側諸国はこれらの要素を十分に考慮しながら軍事政権にはこれまでの民主化の軌道に戻るように働きかけることだ。 Q:国軍は「1年以内に選挙をやる」と言っていますが、そうなるのでしょうか。 A:選挙はやると思う。軍事政権にとってそれ以外に混乱を収拾する方法がない。国軍が主張するように選挙違反があったのかどうかはわからないが、ミャンマーではこれまで軍事政権の下でも選挙はきちんと行われてきた。 軍人だから、票をどう増やすかという選挙戦術などは知らないし、もともと軍は選挙には干渉しない。それで軍人やその家族が多数を占める地域でもNLDが勝つということが起きる。現地の関係者に聞いたら、昨年の選挙でも軍は本当に選挙に勝つと信じていたという。 もちろん、その前に前回選挙で不正があったという物語は作り上げると思う。勝つと思ってやって負けてしまい、選挙をやろうと主導した人の責任問題を回避するために不正があったと言うしかないということかもしれない。だが、選挙自体はきちんとやる。やり直し選挙をしてやはり負けたということになっても、一応、軍内部でも説明がつくわけだ。 そしてやり直し選挙ではNLDがまた勝つと思うし、軍はその結果を受け入れると思う』、「やり直し選挙ではNLDがまた勝つと思うし、軍はその結果を受け入れると思う」、分かり難い国だ。
・『性急に追い込むのはリスク 日本は米国へのブレーキ役に  Q:経済制裁などは性急にはしないほうがいいということですか。 A:まずはスーチー氏を釈放させ、選挙をやるというのなら実施させて、その代わりに結果には絶対に従うのだぞということを軍事政権に約束させ、徐々にクーデター前の状況に戻していくことが一案としては考えられる。 振り返ってみると、ミャンマーが民政移管を進めた際には、国連の安保理でミャンマー問題が議論され、それが軍事政権には相当のプレッシャーになっていた。 だから今回も安保理で議論することは圧力をかけるいい方法だが、このカードをあまり早く使い切らないほうがいい。すぐに結論を出して何かをやるというよりも、軍事政権を揺さぶる材料として、状況に応じて安保理で議論をする。それで揺さぶって、それでも動かなかったら、そのときには厳しい措置を取ればいい。 成り行きいかんでは、安保理で拒否権を持つ中国の重要性がさらに増す結果にもなり得るが、安保理カードが使えるというのは前回の経験で学んでいる。大事に取っておく必要がある。 Q:日本は伝統的にミャンマーとは良好な関係を維持してきましたが、ミャンマー問題で米中が対立するようなことになれば、米国からは連携強化を求められる可能性があり、政府も約400社の日本の進出企業も対応が難しくなります。 A:軍事政権とNLD双方に話ができるのが、日本が現在置かれた立場だ。そのためにこれまで外交努力を続けてきた。しがたって日本としては双方と話をし、さらに米国と相談しながら、どういうところに落とし込んでいけば各方面の打撃が少ないのか、妥協点を探る役割を担う必要がある。 軍事政権には一番大きな代償を払ってもらうことにならざるを得ないが、ただすべて軍事政権の責任というのでは、彼らを追い込んでしまう。反発して内にこもってしまうことにならないようにこちら側に引っ張ってきて、みんなである程度の出口を作るようにしないといけない。 米国が制裁でどう動くか、それから米国の人権団体の動向も注意する必要がある。米国が性急な措置を取ることへのブレーキ役になることも大事だ。 私が大使をしていた時もそうだったが、人権団体が日本は非人道的な軍事政権と付き合っていると難癖をつけて、進出している日本企業の不買運動を呼びかけたりした。他の日本企業も米国市場でのビジネスに影響が及ぶのを恐れてミャンマーに投資をしなくなった。 また米国政府がミャンマーで生産して米国に輸出をする企業を制裁対象にする可能性もある。今はミャンマーやアジア自体の市場が大きくなってきているので、ミャンマーへの進出企業の多くはミャンマー国内やASEANで利益を得るために出ている。米国市場以外を市場としているような企業であれば、そう心配することはないと思うが、メイド・イン・ミャンマーで米国に輸出をしている企業はリスクを抱える。 米国がそういう状況にならないように、日本政府もミャンマーの軍事政権に民主主義体制を全面的に否定しているのではないことを示させないといけないが、米国世論が人権を否定したという結論を持ったときには、人権団体が騒ぎ出すという構図があることは注意しておかないといけない』、確かに「ミャンマー」への対応は、一筋縄ではいかないようだ。
タグ:ミャンマー (その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く) 東洋経済オンライン 春日 孝之 「スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか」 クーデターの大義とは対極にありそうな私的事情 見逃せないロヒンギャ問題 「最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった」、「スー・チー」氏もなかなかしたたかなようだ 最後の交渉は「メンツとメンツのぶつかり合い」 「「お抱え占星術師」など「クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている」、とは我々の想像を超えた世界のようだ ダイヤモンド・オンライン 「ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く」 国軍、NLDの勢いに危機感 だが「軍政回帰」は疑問 「ミャンマー・中国元大使」、とはまさに最適任者だ。 民主化ロードマップ」は転換点 もはや後戻りできない スーチー氏にも責任がある 民政を守る努力、双方が不十分 今回は公務員もクーデターへの抗議デモに参加しているようだ 軍は「一枚岩」ではない可能性 クーデターの正当性は弱い 既に「一般大衆が立ち上がる」段階に入ったような気がする インド洋へのルート確保や「一帯一路」 中国には軍事、経済で死活的利益 「ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイント」、「「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる」、となれば、「今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある」、難しいところだ 西側の経済制裁実施の陰で最大の援助国として影響力 88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった」 「政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた」、「日本」と「中国」への対応の差はこんなにも大きいとは・・・ ラオスやカンボジアにはならない? 支配の歴史に対する抵抗感強い 「国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した」、こんな歴史があったとは初めて知った。確かに「中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある」、のかも知れない 国際的な孤立深まれば対中接近も 「選挙やり直し」で軍のメンツも立つ? 確かに「ミャンマー」への対応は、一筋縄ではいかないようだ
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スガノミクス(その5)(菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫、菅首相の長男が接待した古賀茂明「菅総理長男の接待官僚の行く末」、政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」、総務省「旧郵政省系官僚」違法接待の背景~不祥事防止のための「コンプライアンス顧問」の重要性〉 [国内政治]

スガノミクスについては、本年2月3日に取上げた。今日は、(その5)(菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫、菅首相の長男が接待した古賀茂明「菅総理長男の接待官僚の行く末」、政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」、総務省「旧郵政省系官僚」違法接待の背景~不祥事防止のための「コンプライアンス顧問」の重要性〉である。

先ずは、2月23日付けAERAdot「菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021022300013.html?page=1
・『義偉首相の長男、菅正剛氏が務める放送関連会社「東北新社」から総務省幹部が接待を受けていた問題が、底なし沼のようになってきた。 発覚した接待は計38件、接待された幹部、職員らは13人に上った。 菅首相は連日、国会で追及を受け、「長男は別人格」と防戦一方だが、総務省は接待を受けた職員、元職員13人のうち、11人が国家公務員倫理規程に違反する可能性があると認めている。 中でも「本当に驚いた」とされるのが、首相の懐刀とされる山田真貴子内閣広報官も接待を受けていたことだ。 総務省が公表した資料では山田氏が接待を受けたのは2019年11月、一人74203円で超豪華な会食だったことがわかっている。その席には東北新社社長らとともに、首相の長男、正剛氏が参加していた。 山田氏は早大法学部卒業後、1984年に旧郵政省に入省。安倍政権時代の2013年まで、女性初の首相秘書官に起用され、広報などを2年間、担当した。17年には、総務省で放送行政を所管する情報流通行政局長に就任。19年まで務めた後、省内で次官に次ぐポストである総務審議官を務めた。正剛氏らと会食した当時は総務審議官在任中だ。 山田氏は昨年7月に総務省を退官。国会や議員会館で挨拶に回っていた姿を目撃したこともある。官房長官時代から菅首相の信頼は厚く、菅政権発足後、女性初の内閣広報官に抜擢された。山田氏は官邸で行われる首相会見の司会、仕切り役を務め、菅首相へ厳しい質問が飛ぶと「次の日程」などを理由に、会見を強引に打ち切っていた。 山田氏と仕事をしたこともある総務省OBはこう話す。 「山田氏はさばけた感じで仕事は的確で抜群にできますよ。表の顔はとても好感がもてます。一方、政治家のいうことも忠実に聞きますね。だから、NHKなどテレビ局に電話をかけたりして、圧力めいた話もするんでしょう。今回のように7万円の接待も受ける裏の顔がある。表裏をうまく使いわける、ザ・官僚という人」』、「ザ・官僚という人」とは言い得て妙なようだ。
・『今回の疑惑で、更迭された秋本芳徳情報流通行政局長の後任となった吉田博史総括審議官は、皮肉にも山田氏の夫だという。 「秋本氏も将来は次官候補と嘱望されていた。突然の文春砲での疑惑に涙を浮かべ釈明、謝罪に追われていました」(総務省関係者) 当初、総務省は東北新社、菅正剛氏から接待を受けた職員は4人と発表していた。だが、22日になって山田氏ら9人を追加して認めた。 2018年に総務省が認可した囲碁将棋チャンネルは東北新社のグループ会社で菅正剛氏が取締役も兼ねている。利害関係者であることはわかっているはず。しかし、山田氏のような高額の会食や手土産、タクシー券など、接待の金額や範囲は無分別に広がっていた。 その理由について現役の総務省の官僚はこう語る。 「菅首相は政治家として、人事権を使って官僚を意のままに動かすと公言しています。要するに、官僚人生で最も大事な人事。菅首相はそれを握り、自在に使いこなすと言っている、最強の人ですよ。その長男、菅正剛氏が参加するという会合があれば、そりゃ、断れません。問題になっている13人のうちの1人と話したが、『総理の長男が来るのに、断るなんてできるわけない』と明確に言っていた。それが本音です」 第1次安倍政権時代は総務相だった菅首相。就任早々に、総務省の所管となる携帯電話業界に対して値下げをぶち上げた。 「菅首相は総務省の族議員ですよ。だから、首相になってすぐに携帯電話の料金を下げろとか、恫喝のようなことが言えた。総務省も従わざるを得なかった。そんな中、長男の総務省接待疑惑が浮上。接待を受けた官僚が増え、金額も大きくなり、贈収賄事件にも発展しかねない。長男は別人格だと国会で言い続ける限り、支持率はより低下していく。非常に厳しい政権運営を迫られる」(自民党幹部)』、泥沼の様相を呈してきたようだ。

次に、2月23日付けAERAdot「菅首相の長男が接待した古賀茂明「菅総理長男の接待官僚の行く末」〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021022300013.html?page=1
・『国会では菅義偉総理の長男菅正剛氏による総務省幹部接待疑惑の追及が続いている。長男が勤める東北新社の関連会社が放送法の許認可事業を行っているにもかかわらず、その所管省である総務省の幹部が何回も長男の接待を受けていたというのだから、疑われて当然。霞が関の官僚たちも「これは相当ヤバい」と見ているだろう。私がこの話を聞いた時の感想も、「まるで昭和の接待」だ。 当時は、盆暮れの付け届けやゴルフ接待、さらには視察と称した温泉旅行まであった。平成に入ってもノーパンしゃぶしゃぶ事件などの官僚の接待不祥事が続いたが、それががらりと変わったのが、2000年頃。国家公務員倫理法施行もあり、企業訪問の際に出されたお茶を飲んでいいのかと議論されるほど、一時は官僚たちも襟を正した。 ところが、徐々に官僚や企業の意識も緩み、とりわけ、安倍晋三政権になると官僚の倫理観は極端に劣化した。国家戦略特区の規制緩和で獣医学部を新設しようとする加計学園のトップと直接の責任大臣である安倍総理自身が一緒にゴルフや宴会を繰り返し、官邸官僚のトップである総理秘書官までお相伴にあずかっていたのに、安倍総理が「問題なし」と言い張ったのである。官僚たちは、「へえ、そうなんだ」と思ったのだろう。 今回の接待ではお互いに贈収賄の意図があったと見るのが自然だが、一方で、この程度のことで贈収賄の立件をするのは極めて難しい。世論の手前、無罪放免とはいかないので、新事実が出てこない限り、立件のハードルが低く罰則もはるかに軽い国家公務員倫理規程違反で処分して終わりという可能性が高い。 それにしても、彼らがこんなに危ないとわかり切った接待を受けたのはなぜだろう。菅氏は、意に沿わない官僚を左遷すると公言した。その怖さを一番よくわかっているのが総務官僚だ。菅氏が何の実績もない長男を大臣秘書官にするほど溺愛していることも知っている。菅氏の長男の機嫌を損ねると大変だし、逆に覚えめでたくなれば引き立ててもらえるという心理が働いた可能性は高い』、「安倍晋三政権になると官僚の倫理観は極端に劣化した」、その通りだ。「菅氏」の強烈な官僚操縦術の犠牲者とも言えるのかも知れない。「菅氏」の古巣「総務省」が舞台になったのも因縁めく。
・『彼ら忖度官僚は菅派だということも知られている。彼らの背後に菅氏の影を感じる総務省は厳しい処分を下せないとの懸念もあるが、私はむしろ、菅氏は厳正な処分を望むと見ている。支持率が大きく下がり、菅降ろしの声も聞かれる中、官僚たちのことを考えるゆとりはないはずだ。次官級の総務審議官などは、夏の人事で次官になれず退官という可能性もある。 しかしそこで終わりというわけではない。ちょうど、安倍総理元秘書官だった柳瀬唯夫氏が加計学園問題で事実上嘘をついて大きな問題となった後、経産省で次官目前だったのに退官させられたケースがある。柳瀬氏は、退官後複数企業の社外取締役などを務め、ほとぼりが冷めてからNTT本社執行役員とNTT直下のグローバル持株会社副社長に就任した。社会的地位も高く高額の報酬を得て悠々自適の生活を楽しんでいるわけだ。 今回問題となった総務官僚たちも、この夏の人事で退官したり、出世が遅れるという不利益を受ける可能性が高いが、時間が経てば、必ずそれを補うに余りある破格の処遇が用意されるだろう。我々はしっかり監視していかなければならない。 ※週刊朝日  2021年3月5日号 (古賀氏の略歴は省略)』、「今回問題となった総務官僚たちも、この夏の人事で退官したり、出世が遅れるという不利益を受ける可能性が高いが、時間が経てば、必ずそれを補うに余りある破格の処遇が用意されるだろう。我々はしっかり監視していかなければならない」、その通りだ。

第三に、2月26日付け日刊ゲンダイが掲載した元外交官で外交評論家の孫崎享氏による「政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/2856
・『安部政権下では、森友学園や加計学園の問題で、公的資産の不当廉売や、恣意的に基準を歪め、悪用された事例が相次いだ。当然、世論は怒ったが、一連の経過で安倍前首相側に資金が流れていたという話は聞かない。 しかし現在、明らかになっている菅首相の長男をめぐる「東北新社疑惑」は、菅氏側が金銭的利益を得ている。その意味では日本の政治史の中でも悪質な事件だろう。 総務省の高級幹部が東北新社側から複数回に上る接待を受け、この席にはほぼ常に菅首相の長男がいた。 この事件の本質については、毎日新聞社説がこう報じている。 <見過ごせないのは、昨年12月の会食時期だ。東北新社の別の子会社が手がける衛星放送の認定を、同省が更新する直前だった。また、長男が役員を務める子会社の「囲碁・将棋チャンネル」は約3年前にCS放送業務の認定を受けている。この時認定された12社16番組のうち、ハイビジョンでない放送はほかになかった。審査基準はハイビジョン化を進めるために改正されたばかりだった。しかし、ハイビジョンであるにもかかわらず認められなかった番組もあった>) つまり、総務省から東北新社が得た認可は、通常の基準では認可されない類いの性格を持っていたのである。別の報道によれば、<東北新社はグループの650億円の売り上げの内、衛星放送事業の売り上げは150億円、総務省の認定を受ける事業である>とある。だからこそ、社長自らが接待に出向き、対総務省工作を行ったのである。 こうした事業認可が特段の配慮によって実施されることは、これまでもあろう。しかし、菅首相は東北新社から特別の金銭的利益を得ている。長男の正剛氏の入社後、東北新社の植村伴次郎氏らは6年間で、菅氏が代表を務める自民党神奈川県第2支部に計500万円の寄付をしていると報じられている。 認可を与えたのは総務省である。しかし菅首相はここにも「クモの網」を張っている。昨年9月13日のフジテレビ系番組でも、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と強調していた。 今回の問題で、総務省官僚の判断としては、①菅首相の意向を忖度して規制を曲げる②閑職に異動し退職する――のいずれかだったろう。 日本の官僚機構は今、こういう選択を突き付けられている』、「森友学園や加計学園の問題」と違って
「菅首相」側に「500万円の寄付」など利益が流れており、「日本の政治史の中でも悪質な事件」、というのは確かだ。

第四に、2月19日付けYahooニュースが掲載した元東京地検特捜部検事で郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原信郎氏による「総務省「旧郵政省系官僚」違法接待の背景~不祥事防止のための「コンプライアンス顧問」の重要性」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210219-00223398/
・『放送事業会社に勤める菅首相の長男の菅正剛氏が、許認可権を握る総務省の幹部4人に違法な接待を重ねていた疑惑が週刊文春で報じられ、国会で厳しく追及されている。中央省庁の中核を担う存在であるはずの総務省の局長級の幹部が、利害関係者から度重なる高額接待を受け、贈答品、タクシーチケットまで受領していたという「モラルの崩壊」に、多くの国民は呆れ果てている。 私は、民主党政権時代の2009年12月~2012年11月、原口一博氏、片山善博氏ら4人の大臣の下で総務省顧問・コンプライアンス室長を務めた。この時、関わったコンプライアンス案件の多くが、今回違法接待が問題となっている「旧郵政省系」の部署の問題であった。今回、違法接待の疑惑で出てくる総務省幹部の中には、コンプライアンス室の調査対象の案件の担当課長も含まれている。 総務省でこのような問題が発生した背景について、コンプライアンスを徹底するための効果的な対策を、総務省顧問時代の経験も踏まえて考えてみたい。そして、この問題が、贈収賄等の刑事事件に発展する可能性についても考えてみたい』、「郷原氏」が「民主党政権時代」「総務省顧問・コンプライアンス室長を務めた」とは初めて知った。
・『菅首相長男らとの接待に関する秋本局長の「虚偽答弁」  週刊文春の記事で違法接待が報じられた後、秋本芳徳情報流通行政局長は、衆議院予算委員会で、菅義偉首相の長男との昨年12月10日の会食の際、同局が所管する放送業界の話題が出たかどうかを質問され、「記憶はない」と答弁した。ところが、昨日(2月18日)発売の週刊文春で、会食時のやりとりとされる音声が報じられ、所管業務が話題になっていたことが否定できない状況に追い込まれた。秋本氏は、その音声が自分だと認めていながら、現在も「記憶にない」と述べているようだ。 文春記事で報じられている会食の会話内容からすれば、BS放送の新規参入は、その会食のメインの話題であり、まだ2か月も経っていないのに、会食時のことについて全く記憶がなくなることはあり得ない。それを総務省局長としての国会答弁で、「記憶にない」などと堂々と虚偽答弁することは、中央省庁の局長としてあり得ないと言わざるを得ない。 どうして、このような官僚のモラルの崩壊が起こるのか。 そこには、安倍政権が長期化しそれを継承する菅政権が続く中で、行政の長たる総理大臣として安倍首相が行った答弁の姿勢が影響していると考えざるを得ない。安倍首相は、「桜を見る会」前夜祭問題に関して、「虚偽答弁」を繰り返し、検察捜査で虚偽が明らかになるや、国会で、「説明にもならない説明」をしただけであり、いまだに合理的な説明をしていない(【「桜・前夜祭問題」一層巧妙化する安倍前首相のウソ】)。 行政の長たる総理大臣が、まず「自分に都合の良いこと」を答弁し、後日、それが虚偽答弁であることが判明したら、その時点で辻褄合わせの説明をするという姿勢なのである。その配下にある官僚に、「自己に都合の悪いことでも真実を答弁しろ」と言っても無理であろう。日本政府は、丸ごと「ウソ答弁」に汚染されているということだ』、「日本政府は、丸ごと「ウソ答弁」に汚染されているということだ」、困ったことだが、そのツケを払わされているのだろう。
・『総務省でのICT補助金事業をめぐる不適切予算執行の問題  私が、総務省顧問・コンプライアンス室長として対応した案件の中に、ICT関係補助金等事業の不適切な予算執行の問題があった。「ICTふるさと元気事業」に関するコンプライアンス室への通報をきっかけにコンプライアンス室で調査を開始し、弁護士、ICTシステム専門家、公認会計士等の外部有識者で構成する「ICT補助金等調査・検討プロジェクトチーム」を組織して不適切な予算執行の実態・問題を解明し、概算払いされていた補助金についても大幅減額を行った。そして、調査結果に基づいて、制度・運営に係る改善及び職員の意識改革を提言した(総務省HP https://www.soumu.go.jp/main_content/000169927.pdf )。 この時の補助金の不適切予算執行を行った担当部局が「旧郵政省系」であり、所管課が総務省情報流通行政局地域通信振興課、その課長だったのが、今回の接待疑惑の当事者の秋本氏、現在の情報流通行政局長だ。 そして、調査の途中、人事異動で担当課長が交代し、後任となったのが、現在、内閣広報官として、総理大臣記者会見を仕切っている山田真貴子氏だった。 上記の「ICT補助金等調査・検討プロジェクトチーム」で調査したのが、民主党政権発足直後、急遽、第2次補正予算で実施した「ICTふるさと元気事業」だった。年度末までの僅かな期間に、組織の実態を把握することすら容易ではないNPO法人に、60億円もの補助金交付を適正に行うことなど土台無理だったはずだ。 しかし、当時、「官から民へ」というスローガンを掲げた民主党が、総選挙で圧勝し民主党中心の連立政権が発足したばかりだった。その最初の総務大臣の肝いりで予算化された補助金事業ということで、大臣の意向を過剰に忖度し、年度内の補正予算執行に異を唱えることなく、形だけの審査で、杜撰極まりない補助金の採択をした。 政治権力に脆弱な「旧郵政省系官僚」は、当時は、民主党連立政権の政治権力に対しておもねっていたが、その後、再び自民党政権に戻り、安倍政権が長期化し、総務省内での菅義偉官房長官の存在が一層大きなものとなっていく中で、「政治権力への脆弱さ」がさらに極端化していったということであろう』、「ICTふるさと元気事業」については、「民主党連立政権」に一端の責任があるとしても、責任の大半は「大臣の意向を過剰に忖度し、年度内の補正予算執行に異を唱えることなく、形だけの審査で、杜撰極まりない補助金の採択をした」官僚にある。「秋本氏」や「山田真貴子氏」の名前が出てくるのは偶然とは思えない。
・『旧郵政省系官僚の「政治権力への脆弱さ」  このような「旧郵政省系官僚」と政治権力との関係には、歴史的背景がある。 総務省は、2001年の省庁再編で、「自治省」「郵政省」「総務庁」の3省庁が統合されてできた。そのうちの郵政省は、もともとは、三公社五現業のひとつである郵政三事業を取扱う「現業官庁」であった。設置当初の本庁舎は、現在の港区麻布台に所在し、他の省庁が集まる霞が関へ行くのにバスを使わなければならなかったこともあって、「三流(もしくは四流)官庁」と揶揄され、中央省庁の中でも格下に見られていた。 その郵政省を、本庁舎を霞が関に移転させるなど、郵政省の地位向上に大きな役割を果たしたのが1964年に郵政大臣となった田中角栄氏であった。その後、1984年7月、通信政策局・電気通信局・放送行政局のテレコム三局に拡充され、電気通信・電波放送行政を担う省庁として、「現業官庁」から「政策官庁」へ脱皮してきたのも、「政治の後ろ盾」によるものだった。 そして、総務省に統合された後も、「旧郵政省系官僚」は、小泉純一郎内閣で一気に進められた郵政民営化がその後政治情勢の変化によって紆余曲折を繰り返すという、激しい環境変化にさらされた。 私は、総務省顧問就任の直後、「かんぽの宿」問題等の日本郵政をめぐる不祥事に関して設置された「日本郵政ガバナンス検証委員会」の委員長を務めた。その【報告書】でも、「西川社長時代の日本郵政は、政治情勢の激変の中、「郵政民営化を後戻りさせないように」との意図が背景あるいは誘因となって、拙速に業務執行が行われたこと」を問題発生の原因として指摘した。政治の影響をとりわけ強く受けるのは、日本郵政だけではなく、それを監督する「旧郵政省系」の部局も同様である。 このように政治情勢の変化に翻弄されてきた郵政省の歴史の中で、電波、通信、ICTなどの旧郵政省の担当分野は急拡大し、社会的重要性が増大し、所管業務に関する巨大な利権も生じるようになった。それらを適正に、公正に行っていくためには、相応の能力と、官僚としての倫理観が必要とされる。しかし、かつて「三流・四流官庁」と言われた郵政省を起源とする組織には、それらは十分ではなかった。その能力と権限のアンバランスが、「旧郵政省系官僚」が政治権力に依存し、脆弱化する傾向を一層強めることにつながり、「旧郵政省系官僚」は、政治の流れの中で「波乗り」をするような存在となっていった。 そして、安倍長期政権の下では、総務省にとっての最大の実力者の菅義偉官房長官の意向を強く意識するようになり、それが、かつて菅総務大臣秘書官を務めていた菅氏の長男との「癒着」につながっていったのであろう』、「かつて「三流・四流官庁」と言われた郵政省を起源とする組織には、それらは十分ではなかった。その能力と権限のアンバランスが、「旧郵政省系官僚」が政治権力に依存し、脆弱化する傾向を一層強めることにつながり、「旧郵政省系官僚」は、政治の流れの中で「波乗り」をするような存在となっていった」、背景の説明がさすがに深いことに驚かされる。
・『刑事事件に発展する可能性  では、今回の違法接待疑惑が、刑事事件に発展する可能性があるのか否か。 日本の刑法の贈収賄は、請託・便宜供与のない「単純収賄」も処罰の対象としているので、接待が「職務との関連性」があり、「社交的な儀礼の範囲内」と言えない限り、「賄賂」と認められ、贈収賄罪が成立することになる。 週刊文春の記事によると、菅首相の長男正剛氏が勤める東北新社は、総務省の許認可を受けて衛星放送を運営する会社であり、正剛氏と秋本局長の会話の中には、 「BSの。スター(チャンネル)がスロット(を)返して」 というようなやり取りがある。 2019年9月、総務省はBS放送の新規参入に関し、電波監理審議会へ諮問し、その結果、吉本興業等3事業者の認定を適当とする旨の答申が下り、同年11月に認定された3つのチャンネルは今年末にBSで放送開始予定となっている。それに伴いBS帯域の再編が急ピッチで進められ、昨年11月30日以降、東北新社子会社が運営する『スターチャンネル』など既存のチャンネルは『スロットを返す』、すなわちスロットの縮減が順次実施されている。 上記発言の趣旨が総務省の電波行政に関連していることは明らかであり、会食の場での会話が、総務省の所管業務に関連する話題に及んでいることは否定できないように思える。 接待の賄賂性が否定されるのは「社交的な儀礼の範囲内」のものである場合だが、その範囲内と言えるかどうかは、公務員倫理法上の報告対象の「5000円」というのが、一つの基準となるであろう。 もちろん、贈収賄罪の成立が否定できないとしても、検察が、実際に起訴するレベルの犯罪かどうかは話が別である。週刊文春の取材で詳細が明らかになっているのは12月10日の接待だけであり、他の接待の「賄賂性」は不明だ。これまで、数万円程度の1回の接待で、贈収賄罪に問われた事例は聞いたことがない。しかし、この記事に基づいて告発が行われた場合、検察捜査では、それまでも繰り返されていた接待も問題にされるであろうし、接待による賄賂の金額が増える可能性がある。また、検察実務で従来起訴の対象とならないような事例であっても、不起訴処分となれば、検察審査会に申し立てが行われ、黒川元検事長の賭け麻雀賭博事件のように、起訴猶予処分に対して「起訴相当」の議決が出ることも考えられる。 「旧郵政省系官僚」が引き起こした今回の事件では、検察の対応も、注目されることになるであろう』、「検察」がどのように「対応」するかは、確かに注目点だ。
・『中央省庁における「コンプライアンス顧問」の重要性  「政治権力への脆弱さ」が、今回のような官僚や公務員のコンプライアンス問題を生じさせる構図は、「旧郵政省系官僚」だけに限ったことではない。安倍政権の長期化、官僚人事の内閣人事局への一元化によって、官僚の世界全体が、政治に対して無力化しつつある中で、もともと政治に対して脆弱であった「旧郵政省系官僚」のところに極端な形でコンプライアンス問題が表面化したとみるべきであろう。 総務省顧問時代のことを振り返ってみると、そのような「官僚が政治に追従・迎合していく構図」の中で、コンプライアンスを守っていくためには、相応の位置づけを持つ中立的な立場の「コンプラアインス顧問」の存在が重要であったと思う。 当時の総務省での「顧問・コンプライアンス室長」という地位は、大臣から直接任命され、省内で相応の位置づけが与えられ(会議スペース付の個室も与えられていた)、大臣に対しても物が言える立場だった。コンプライアンス室には、もともと、行政監察、行政評価等の「中央省庁のコンプライアンス」を担ってきた「旧総務庁系」の職員が配置され、コンプライアンス問題への対応業務を支えてくれていた。だからこそ、当時の「顧問・コンプライアンス室長」が、コンプライアンス違反に対する中立的・客観的な監視機能を果たす「重し」としての役割を担うことができたのである。 もとより、原口総務大臣も、不適切な予算執行をしてまで年度内に「ICTふるさと元気事業」を行うことなど考えていなかった。しかし、政治権力に極めて脆弱な役人気質が、過剰に忖度して、補助金事業を拙速に執行しようとしたことが不適切執行につながった。政治に「波乗り」をする秋本氏ら「旧郵政系官僚」にとっては、原口大臣に任命された総務省顧問・コンプライアンス室長の私が、その大臣の肝いりで実施された事業に水を差すような徹底調査を行うことは想定外だったのかもしれない。しかし、組織のコンプライアンス対応というのは、組織のトップのためのものではない。あくまで中立的・客観的な立場から「コンプライアンスに忠実に」対応するのが当然である』、主要企業に「コンプライアンス」部署が広がったように、中央官庁にも設置すべきなのだろう。
・『地方自治体における「コンプライアンス顧問」  私は、2017年から、横浜市の「コンプライアンス顧問」を務めている。それも、総務省での顧問・コンプライアンス室長と同様に、市長から直接任命され、「コンプライアンスの重し」としての役割を果たす立場である。 横浜市は、2007年、市職員が起こした重大な不祥事の発生を契機に、「コンプライアンス委員会」を設置し、私は外部評価委員として関わってきた。その活動は、設置当初は活発だったが、その後、次第に形骸化し、外部評価委員が参加する委員会の開催も、具体的な事案への関与も、ほとんどないという状態になっていた。 2017年7月、横浜市は資源循環局で発生した「産業廃棄物処理に係る通報に対する不適切な取扱い」について公表したが、この件についての横浜市の対応には、「通報者の保護」という視点が欠落しており、「法令規則上正しい対応をすること」に偏り、「社会の要請」に目を向けないコンプライアンスの典型だった。 林文子市長に、この「不祥事」への対応について問題点を指摘し、コンプライアンス委員会の活動を抜本的に改善するよう求めたところ、市長は、コンプライアンスへの取組みを抜本的に改め、強化する方針を打ち出した。私と、共に外部委員を務めていた公認会計士の大久保和孝氏の2人がコンプライアンス顧問を委嘱され、具体的なコンプライアンス問題にも直接関わることになった。 それ以降、毎年度、特定の部局ごとに、管理職に対する講義やディスカッション形式の研修を行う一方、時折発生するコンプライアンス問題についても、直接相談を受け、対応について助言している。「コンプライアンス室」も、年々、体制が強化され、コンプライアンス顧問とともに、その役割を果たしており、もともと、意識も能力も高い職員が揃っている日本最大の政令指定都市の横浜市におけるコンプライアンスへの取組みは、着実に効果を上げつつある。 ▽政治権力と「コンプライアンス顧問」の重要性(今回の「旧郵政省系官僚」の問題がまさにそうであるように、中央省庁においては、「政治権力への脆弱さ」がコンプライアンス問題に発展する重大リスクとなる。それと同様に、地方自治体においては、首長の政治的な方針・指示が、コンプライアンスからの逸脱を生じさせることがある。それは、首長が大統領的な強大な権限を持つ日本の地方自治制度において、コンプライアンス意識の高い自治体職員にとっても不可避のコンプライアンス・リスクだと言える。 そういう面から、市長から委嘱を受けた「コンプライアンス顧問」が、コンプライアンスの「重し」になり、時には「盾」となることが、自治体をめぐる重大なコンプライアンス問題の発生や深刻化を防止する上で重要だと言えよう。 中央省庁の多くに、「コンプライアンス室」が設置され、外部弁護士が室長に委嘱されているところもある。しかし、ほとんどが、単なる内部通報窓口であって、顧問がコンプライアンスを担当している省庁というのは、聞いたことがない。 地方自治体でも、公益通報者保護法との関係で、内部通報窓口が設置されているが、首長から直接委嘱を受ける「コンプライアンス顧問」を置いている自治体というのは、あまり聞かない。 中央省庁、地方自治体における「コンプライアンス顧問」の存在に着目する必要があるのではなかろうか』、「郷原氏」が「横浜市の「コンプライアンス顧問」を務めている」、のは初めて知った。私は「林文子市長」は嫌いだが、郷原氏をそうしたポストに就けているのはいいことだ。「コンプライアンス顧問」が「中央省庁、地方自治体」で広がってほしいものだ。
タグ:スガノミクス (その5)(菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫、菅首相の長男が接待した古賀茂明「菅総理長男の接待官僚の行く末」、政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」、総務省「旧郵政省系官僚」違法接待の背景~不祥事防止のための「コンプライアンス顧問」の重要性〉 AERAdot 「菅首相の長男が接待した美人内閣広報官の裏の顔 更迭された総務省幹部の後任は夫〈週刊朝日〉」 「ザ・官僚という人」とは言い得て妙なようだ。 泥沼の様相を呈してきたようだ 「菅首相の長男が接待した古賀茂明「菅総理長男の接待官僚の行く末」〈週刊朝日〉」 「安倍晋三政権になると官僚の倫理観は極端に劣化した」、その通りだ。「菅氏」の強烈な官僚操縦術の犠牲者とも言えるのかも知れない。「菅氏」の古巣「総務省」が舞台になったのも因縁めく 「今回問題となった総務官僚たちも、この夏の人事で退官したり、出世が遅れるという不利益を受ける可能性が高いが、時間が経てば、必ずそれを補うに余りある破格の処遇が用意されるだろう。我々はしっかり監視していかなければならない」、その通りだ 日刊ゲンダイ 孫崎享 「政治史の中でも悪質 菅首相長男をめぐる「東北新社疑惑」」 「森友学園や加計学園の問題」と違って 「菅首相」側に「500万円の寄付」など利益が流れており、「日本の政治史の中でも悪質な事件」、というのは確かだ yahooニュース 郷原信郎 「総務省「旧郵政省系官僚」違法接待の背景~不祥事防止のための「コンプライアンス顧問」の重要性」 「郷原氏」が「民主党政権時代」「総務省顧問・コンプライアンス室長を務めた」とは初めて知った 菅首相長男らとの接待に関する秋本局長の「虚偽答弁」 「日本政府は、丸ごと「ウソ答弁」に汚染されているということだ」、困ったことだが、そのツケを払わされているのだろう 総務省でのICT補助金事業をめぐる不適切予算執行の問題 「ICTふるさと元気事業」については、「民主党連立政権」に一端の責任があるとしても、責任の大半は「大臣の意向を過剰に忖度し、年度内の補正予算執行に異を唱えることなく、形だけの審査で、杜撰極まりない補助金の採択をした」官僚にある 「秋本氏」や「山田真貴子氏」の名前が出てくるのは偶然とは思えない 旧郵政省系官僚の「政治権力への脆弱さ」 「かつて「三流・四流官庁」と言われた郵政省を起源とする組織には、それらは十分ではなかった。その能力と権限のアンバランスが、「旧郵政省系官僚」が政治権力に依存し、脆弱化する傾向を一層強めることにつながり、「旧郵政省系官僚」は、政治の流れの中で「波乗り」をするような存在となっていった」、背景の説明がさすがに深いことに驚かされる 刑事事件に発展する可能性 「検察」がどのように「対応」するかは、確かに注目点だ 中央省庁における「コンプライアンス顧問」の重要性 主要企業に「コンプライアンス」部署が広がったように、中央官庁にも設置すべきなのだろう 地方自治体における「コンプライアンス顧問」 「郷原氏」が「横浜市の「コンプライアンス顧問」を務めている」、のは初めて知った。私は「林文子市長」は嫌いだが、郷原氏をそうしたポストに就けているのはいいことだ 「コンプライアンス顧問」が「中央省庁、地方自治体」で広がってほしいものだ
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暗号資産(仮想通貨)(その17)(ビットコイン暴落 投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)、ビットコイン爆騰 それはバブルの再来なのか イーロン・マスクの「支持表明」から再上昇、JPモルガン ビットコインでのヘッジを提案-ポートフォリオの1%、ビットコインはやはりバブルか?怪しい高騰の背景に「従来とは異なる事情」) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、昨年12月1日に取上げた。今日は、(その17)(ビットコイン暴落 投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)、ビットコイン爆騰 それはバブルの再来なのか イーロン・マスクの「支持表明」から再上昇、JPモルガン ビットコインでのヘッジを提案-ポートフォリオの1%、ビットコインはやはりバブルか?怪しい高騰の背景に「従来とは異なる事情」)である。

先ずは、本年1月12日付けNewsweek日本版が掲載した「ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/01/post-95378_1.php
・『一部の事業者がリスクを軽視し、巨額の利益を謳って小口投資家をカモにしている、とも警告> ビットコインなどの暗号通貨(仮想通貨)に投資している人は、全てを失う覚悟をしておくべきだ――イギリスの金融規制当局は1月11日、こう警告した。 英金融行動監督機構(FCA)は、過去数カ月にわたって急騰していた暗号通貨の価格が、週末にかけて急落したことを受けて、11日に警告を発信。「暗号資産への投資、ないし暗号通貨関連の投資や融資は一般に、きわめて高いリスクを伴う」と声明で指摘。「消費者がこの種の金融商品に投資を行う場合には、全てを失う覚悟をしておくべきだ」と述べた。 しかしロンドン在住のアナリストは、ビットコインのファンダメンタルズ(基礎的条件)は依然として強く、機関投資家は今後も暗号通貨を保有し続けるだろうと考えている。 ロンドンにある外国為替・暗号資産調査会社「クオンタム・エコノミクス」のビットコイン・アナリスト、ジェイソン・ディーンは本誌に宛てたコメントで、「強気相場における調整局面は一般に健全なものと考えられている。トレーダーはここでポートフォリオのリバランスを行い、次の段階に備えることができる」と説明。「登山家が次のポイントを目指す前にひと休みするようなものだ」と述べた』、「調整局面」を「「登山家が次のポイントを目指す前にひと休みするようなものだ」、とは強気筋らしい見方だ。
・『FCA「換金できる保証なし」  さらに彼は、週末の価格急落は、小口投資家と機関投資家の相場観の違いによるものだと指摘した。 「手持ち資金の少ない個人投資家や、暗号資産について十分に理解していない投資家は、こういう状況になると売る傾向がある」と彼は説明。「だがこの価格下落を利用して、ビットコインの買い増しをする投資家もかなりの数にのぼるだろう」 英FCAは、暗号通貨には投資の原則が通用しない可能性があると指摘。「換金できるかどうかは市場の動向次第」であり、個人投資家が「暗号通貨を換金できる保証はない」と警告した。 JPモルガンは1月4日のリポートで、ビットコイン価格が14万6000ドルまで高騰する可能性があると予想していた。だが8日に4万1962.36ドルをつけて過去最高値を更新したビットコイン価格は、週末の取引では3万1045.70ドルへと約26%急落した。 バンク・オブ・アメリカは、ビットコインは「全てのバブルの母」の可能性があると警告。1990年代後半に始まったドットコム・バブルとその崩壊、約12年前の米住宅バブル崩壊やそれに続くサブプライムローン危機を引き合いに出し、警戒を呼び掛けた。) 英FCAは暗号通貨への規制や監督を強化しており、6日から暗号通貨を基に組成されるデリバティブ(金融派生商品)の個人向け販売を禁止。暗号通貨を扱う事業者はFCAへの登録を必須とし、登録していない事業者が投資を勧めれば「犯罪行為」になると警告している。 またFCAは、一部の事業者がリスクを軽視し、巨額の利益を謳って小口投資家をカモにしているとも警告した。 「高リスクで投機的な投資を行うにあたって、消費者は自分が何に投資をするのか、どのようなリスクがあるのか、規制当局によるどのような保護が適用されるのかをきちんと理解しておかなければならない」とFCAは述べ、「すぐに投資をとプレッシャーをかけられたり、話がうますぎたりする場合には用心すべきだ」と呼びかけた。 しかしクオンタム・エコノミクスのディーンは、市場の調整は健全なものだと主張。抜け目ない投資家がここで買い増しを行うことで、ビットコイン市場はさらに堅調になるだろうとの考えを示した。価格は下落したもののビットコインのファンダメンタルズは強いままで、「主に機関投資家からの需要があり、個人投資家もその後に続きつつある」と彼は指摘した』、「バンク・オブ・アメリカ」による「ビットコインは「全てのバブルの母」の可能性がある」との警告は出色だ。
・『供給量の約8割が流動性なし  ディーンはさらに、ビットコインは今や機関投資家の運用資産の一部になっているとも述べた。「聞くところによれば、多くの機関投資家はビットコインを恒久的に保有し続けるつもりだと言っている。暗号資産データ提供企業のグラスノードは最近の報告書で、ビットコイン資産全体の78%が『非流動的』だと指摘した。つまり価格にかかわらず、すぐに売買される可能性は低いということだ」 「テクニカル分析と投資家心理の両方に照らして、市場の調整局面入りはしばらく前から想定の範囲内だった」とディーンは述べ、「だが我々としては、調整局面はこれまでに比べて価格の下落幅が小さく、短期間で済む可能性が高いと考えている」とつけ加えた。 ディーンはまた、今回の価格下落を受けて、ビットコインを「単なる投機対象」で「通貨ではない」と結論づけるのは誤りだとも述べた。「ビットコインは支払い方法と支払いメカニズムがひとつになったものだ」と彼は指摘。「従来の通貨の定義には当てはまらない」前例のないものだから「規則もないし、評価する上での比較対象もない」と述べた』、「供給量の約8割が流動性なし」とは、まるで持ち合い株式のようだ。「ディーンの見方はやはり強気一辺倒なようだ。

次に、2月7日付け東洋経済プラス「ビットコイン爆騰、それはバブルの再来なのか イーロン・マスクの「支持表明」から再上昇」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26126
・『「デレマスの輿水幸子」の次に“推した”のはビットコインだった――。電気自動車メーカーのテスラCEOで世界的大富豪でもあるイーロン・マスク氏の発言がSNS上をざわつかせている。 アイドル育成ゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」(デレマス)のキャラクター画像をマスク氏がツイートしたのは1月中旬のこと。ツイートをめぐってはその真意を探ろうと臆測が飛び交い、ゲームを制作しているバンダイナムコホールディングスの株価を上げた、との見方まで出た。 そのマスク氏が2月1日、音声版ツイッターといわれる「クラブハウス」でビットコインについて言及。「私はビットコインのサポーターだ」「ビットコインは金融界の人々からも受け入れられる直前にある」と述べた。この発言を受けて、ビットコイン価格は一時跳ね上がった』、日経新聞によればこの他にも「販売代金をビットコインで受け入れる」と言明したようだ。
・『金融界の投資マネーが主役に  暗号資産情報サイトの「コインマーケットキャップ」によると、ビットコイン価格は2021年1月8日に440万円台の史上最高値をつけた。その後は調整が入り300万台に下がったが、足元では再び400万円に迫っている。ビットコイン価格が初めて200万円を突破した2017年の相場は「仮想通貨バブル」と呼ばれる(2020年の資金決済法の改正で、法令上の呼称が「仮想通貨」から「暗号資産」になった)。価格上昇を牽引したのは日本や韓国の個人投資家だった。 暗号資産を簡単に言うと、ネット上でやりとりできる「財産的価値」。ドルや円などの法定通貨と交換できるが、暗号資産そのものに価値が保証されているわけではない。従って、需給で価格が上下に大きく動く。 急騰を呼んだ2017年当時との大きな違いは、マスク氏の発言にあるようにアメリカを中心とした金融界からの投資マネーが相場の主役になりつつあることだ。暗号資産情報サイトによると、直近のビットコインの取引に占めるドルの割合は全体の約7割を占める。 投資マネーの代表例が「グレイスケール」というアメリカのファンドだ。同ファンドを通じて機関投資家の資金が暗号資産に流入している。その額は2020年の1年間で57億ドル(6000億円)に上り、ビットコインで運用するファンドの運用資産残高は直近で230億ドル(2.4兆円)に達した。 また、海外の報道によれば、生命保険のマスミューチュアルなど伝統的な機関投資家もビットコインの保有に乗り出している。これらの機関投資家は、中長期のスパンで資金を投じていると考えられるため、容易には売りに回らず相場を下支えする保有者とみられている。 事業会社も動きつつある。データ分析を手がけるナスダック上場企業のマイクロストラテジーは、2020年に入ってからビットコインに2000万ドル(21億円)を投じた。過去に投資した分も合わせて2800億円分を所有している。同社CEOのマイケル・セイラー氏は、「株主に1000億ドルの利益を提供したければ、テスラのバランスシートをドルからビットコインに転換してみて」とツイッターでマスク氏に呼びかけた人物だ。 クジラと名付けられた大口投資家たち(これら大口投資家の動向は、ビットコインアドレス(口座番号のようなもの)からもわかる。顧客口座数でアメリカでトップクラスの暗号資産交換所「クラーケン」は、100ビットコイン(約4億円)以上を持つアドレスをその存在感の大きさから「クジラ」と定義。グループ内の調査組織でアドレス数とそのアドレスが保有しているビットコインの量を調べている。 データによると、2017年相場と比べてクジラの数は約1割少ない反面、そのビットコイン保有量は当時を上回っている。保有量は現在のビットコインの発行量の約6割を占める。2020年の1年間での保有量の増加幅は2%。わずか2%増とはいえ、「ビットコイン価格がこの間上がっているので投下している資金額は相当な額になるはず」と、クラーケン・ジャパンの代表である千野剛司氏は話す。 機関投資家を中心にビットコイン投資に動くのは、インフレ懸念の高まりが背景にある。新型コロナ感染拡大を受けてアメリカでも景気対策として巨額の金融緩和と財政出動を行った。その結果、ドル安が進み、金(ゴールド)などとともにインフレ回避に有効な資産としてビットコインに注目が集まった』、「ビットコインで運用するファンドの運用資産残高は直近で230億ドル(2.4兆円)に達した」、「ビットコイン」価格が金融資産価格とは無関係に動くため、代替投資(オールタナティブ投資)として、資産の一定量を投資することになったようだ。
・『一方、日本では以前のような過熱感がない。暗号資産の国内交換業大手・コインチェック社長の蓮尾聡氏によると、「取引量は2倍、3倍と増えているが、そこまでの盛り上がりはない」という。仮想通貨バブル崩壊後、200万円を超えたビットコイン価格が30万円台まで下がったことで憂き目をみた人も多かったため、慎重姿勢のようだ。だが、裏返すと「個人の買い余力はまだまだある」(蓮尾氏)。 では、今回は「かつてのバブル相場と違う」と言えるのか。蓮尾氏は、「ビットコインは根源的価値がはっきりせず、主に市場での需給で価格が決まるために(今がバブルかどうかは)わからない」と話す。ただ、440万円まで上がった後に調整に入ったので「まだ安心できる」と、市場が冷静さを保っていることに期待する。 国内交換業大手・ビットバンク社長の廣末紀之氏はさらなる価格上昇を見込む。着目するのがビットコインの「半減期」だ。これはビットコイン特有の仕組みで、一定期間(半減期)ごとにネット上で新規に供給されるビットコインの量が減っていくことを意味する。半減期を経るたびに希少性が高まり、市場価格は上がるという理屈が成り立つ。 「過去の半減期では17~18カ月、強気相場が続いた」(廣末氏)。2012年11月の半減期では暗号資産マニアが買いの主体となり、その後の17カ月でビットコイン価格が50倍になった。2016年7月の半減期ではその後の18カ月で価格が30倍になった。時期は仮想通貨バブルと重なる』、なるほど。
・『「上昇相場」はいつまで続くか  直近の半減期は2020年5月。廣末氏は過去よりも上昇率は下がるものの、「強気相場」は18カ月程度続くとみる。強気予想は既存の金融界の中にもある。報道によると、アメリカのシティバンクの幹部はビットコイン相場のチャート分析に基づき、2021年末までに価格が30万ドル(3150万円)を超える可能性があるとした。 ただ、金融当局は警鐘を鳴らす。イギリスの金融規制当局(金融行動監督機構)は、「暗号資産の価格の大幅な変動は、暗号資産の価値を評価する難しさと相まって、消費者を高いリスクにさらす」と指摘。「消費者が投資を行う場合にはすべてを失う覚悟をしておくべきだ」と警告している。暗号資産はその価値を信じる人たちの取引から価格が成立しているため、極論するならば、「気づいたら無価値になっていた」というリスクがあることには注意すべきだろう。 他方、情報に限らず金銭的な価値までネット上でやり取りする「価値のインターネット化」が進んでいくことを見越すと、ビットバンクの廣末氏は、アメリカにビットコインが集まりつつあることを懸念している。こうして集まったビットコインを基に新たな金融サービスも出てくるからだ。対する日本では暗号資産の交換業以外の事業がほぼ育っていない。それだけに、ドルベースのビットコイン取引拡大が今後も続くのかが、暗号資産価格や市場としての将来性を占う大きなカギとなりそうだ』、「ビットバンクの廣末氏は、アメリカにビットコインが集まりつつあることを懸念している」、どこに集まろうが、交換通貨が何になろうが、投資家にとってはどうでもいい筈である。投資の世界で国粋的になるのは間違っている。

第三に、2月26日付けBloomberg「JPモルガン、ビットコインでのヘッジを提案-ポートフォリオの1%」を紹介しよう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-25/QP3BJ1DWLU6Z01
・『ポートフォリオ多様化の手段としてビットコインの活用を提案するウォール街の企業に、JPモルガン・チェースが加わった。 ジョイス・チャン氏、エイミー・ホー氏らJPモルガンのストラテジストは24日付けのリポートで、「マルチアセットのポートフォリオでは全体的なリスク調整後リターンを効率的に上昇させるために、最大1%を仮想通貨に配分することは可能だろう」とした。 仮想通貨は比較的新しく値動きも激しいが、他資産との相関性があまりなく、良好なヘッジになり得る。元米連邦準備制度のスタッフで、現在はコーナーストーン・マクロで政策分析を率いるロベルト・ペルリ、ベンソン・ダラムの両氏はデジタル資産を一部加えることで株式ポートフォリオのボラティリティーは大抵抑えることができるとの結論に至った。 一方で、仮想通貨の有用性には限界もあるとJPモルガンのストラテジストは指摘した。 「仮想通貨は投資対象であり、調達通貨ではない」とし、「従って通貨でマクロイベントをヘッジしようと考えるなら、仮想通貨でなく円やドルなどの調達通貨を通じたヘッジを推奨する」と論じた』、あの「JPモルガン・チェース」が「ビットコインの活用を提案」したとは驚いた。やはり代替資産としての運用を推奨しているようだ。 

第四に、2月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ビットコインはやはりバブルか?怪しい高騰の背景に「従来とは異なる事情」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263884
・『いつの間にか再び高騰 ビットコインはバブルなのか  ビットコインの価格がいつのまにか高騰していることが、話題になっています。 2017年12月にビットコイン価格が1ビットコイン=200万円を超え、いわゆる「億り人」がたくさん誕生し、「ビットコインバブルだ」と話題になったことがありました。その後の相場はわずか3カ月で100万円を割り込み、1年後の2018年12月には40万円近辺まで暴落しました。 仮想通貨には、政府の発行する通貨のような裏付けがありません。その経済的実体がない仮想通貨が、投資先として人気になる状況自体を「バブルだ」と人々は感じ、高騰した価格があっという間に5分の1に暴落すると、「それは当然のことだ」と口にしたものです。 ただ興味深いことに、ビットコインの暴落はそれが底であり、その後相場は100万円近辺に戻り、安定の様子を見せていました。仮想通貨があくまで仮想的な存在であれば、暴落の時点で無価値になってしまってもおかしくはないはずですが、実際にはそうはならなかった。つまりビットコインには、一定の価値があったようです。 その価値が何なのかは後述するとして、先に最近のビットコイン相場の話をしておきます。日本のビットコイン大手取り扱い業者であるビットフライヤーのチャートを見ると、その後ビットコイン価格は反転して、2019年6月には一時100万円を超えます。そこからまた上下して、新型コロナ禍が始まる直前の2020年1月には、ちょうど100万円の水準に戻っています。 さて、コロナではビットコインは株価と同じような動きを見せます。パンデミック当初はビットコイン価格も一時急落しますが、その後価格は安定します。4月から10月までのチャートを見ると、ビットコイン価格は95万円から120万円の間でゆっくりと上昇していました。 そしてその後、2020年11月からビットコインは急騰を始めます。12月頭に200万円に到達したかと思ったら、2021年1月頭に390万円台まで上がります。そこから緩やかに価格が下がっていったので、「ああ、ここが頂点だったみたいだな」と感じていたところ、2月に再び急上昇を始めます。 2月22日には、614万円の市場最高値に到達したところで調整が入り、本稿を執筆している2月24日時点では、540万円前後で取引が行われている最中です。 なぜ、ビットコインは再びバブルのように高騰しているのでしょうか。 実は2017年の価格高騰の際、私はダイヤモンド・オンラインに「ビットコインバブルが『危険』とは言い切れない3つの根拠」という記事を寄稿しました。実体のない仮想通貨といわれるビットコインには、実はその価格が幻ではない理由があると主張したのです。 そして興味深いことに、今回の価格高騰はそれらの理由とはまた事情が違うのです。その一連のポイントをまとめてみたいと思います』、興味深そうだ。
・『実態のない仮想通貨に価値がないとはいえない3つの理由  政府の裏付けのない仮想通貨に、なぜ実体価値があるのか。以前私が指摘した1つ目の理由は、実需があることでした。日本で暮らしているとイメージがわきづらいかもしれませんが、世界には「政府が発行する紙幣は信用できない」と考える人が多いのです。実際多くの国で、自国通貨よりも米ドルの価値が高かったりします。 そのような国では、海外に隠し口座が持てるような一部の特権階級を除いて、一般の国民は米ドルのタンス預金で資産を貯め込みます。しかし、高額の米ドル紙幣を大量に隠し持つことには盗難リスクがある。そこで、ビットコインが資産として実需を持つことになったのです。つまり、新興国や途上国でビットコイン投資をしていた人たちには、実需が存在していたわけです。これが1つ目の理由です。 2つ目の理由は、そのような場合に数多ある他の仮想通貨よりも、より多くの人が売り買いするビットコインに信用が一極集中するということでした。この状況はいまだに変わっておらず、毎年新しい暗号通貨が登場しても、依然として世の中で圧倒的に売買されているのはビットコインなのです。 ちょうどこの本稿執筆の途中で、ビットコインの時価総額がほぼ100兆円になっていますが、世界の仮想通貨全体の時価総額が163兆円なので、ビットコインは全体の6割を超えています。ちなみに仮想通貨ランキングを見ると、2位のイーサリアムまでは人気があって時価総額がほぼ20兆円なのですが、3位以下の仮想通貨は取引規模がぱっとしないというのが実情です。つまり世の中の信用としては、ビットコインは別格なのです。 そして3番目の理由は、2017年当時のバブル価格でもまだ、ビットコインの時価総額は現実通貨と比べて1桁以上少なかったという根拠でした。仮に世界の中央銀行が発行量を決めるこれまでの通貨に対して、そのような恣意性が存在せず、市場の「神の手」で価値が決まる仮想通貨が未来の通貨の座を奪い取る日がやってくるとしたら、現在のビットコイン価格ですらまだそこに至る通過点かもしれない。これが私が3番目に指摘したことでした。 この3つの理由から、「必ずしもビットコインの価格高騰には経済的な裏付けがないわけではない」という話をしたのです。少なくとも、企業の株価が数十兆円から100兆円を超えているのと同じくらいには、ビットコインの価値を信用している一定数の人たちがいて、そのことでビットコインには高い流通価値があるのだ、という話をしたのです』、「ビットコインには高い流通価値がある」、その通りだ。
・『足もとのビットコイン急騰はこれまでとは事情が異なる  さて、この説明と比較すると、2020年の終盤から2021年初頭にかけてビットコインが急騰した理由は、少し背景が異なるようです。 今回の価格高騰の1つ目の特徴として、北米市場でビットコインが活発に買われているという事実があります。 それまでビットコインの中心だったアジア市場では、自国通貨への不信感が投資の根拠であったと述べましたが、なぜ北米大陸の投資家がビットコインに目を向けたのでしょうか。その理由として、コロナ禍での資産逃避が挙げられます。これが2つ目の特徴につながります。 コロナ禍で世界経済が停滞しているにもかかわらず、2020年4月以降、株価が堅調に上昇する現象が起きています。その理由は、主要国政府がコロナ危機と経済危機が重ならないように、金融緩和政策をとっているからです。そして投資家は、この金融緩和を「通貨の価値を下げている」と捉えます。) FRBがコロナ禍を受けてゼロ金利まで政策金利を下げたことは、市中にドル紙幣がばらまかれたことと同じだと投資家は考えます。一方でビットコインは、マイニングでその量が若干は増えていきますが、基本的には総量はルールで決まっています。ですから投資家から見れば、ドルと比較してビットコインは価値が棄損しない通貨だといえるのです。 そして3番目に、新規参入組が増えているという事実です。それも、これまでのビットコイン相場を支えた個人投資家ではなく、機関投資家が動き出している。そしてその参入規模が、この先増えていきそうな気配があるのです。 アメリカでビットコインに大口の投資をするといえば、これまでヘッジファンドが巨額の運用資産の中で少しだけ投資をしているくらいのイメージでした。ところが最近、それらのファンドの顧客でもある機関投資家が、ビットコインへの投資を代替的な投資先の1つとして容認し始めたといいます。 同様に、カナダの株式市場でビットコインの上場投資信託(ETF)の売買が始まりました。これまでよりもビットコインが金融商品として認知されることになり、ビットコインに投資する人の顔触れも大きく広がったのです。そして、直近のビットコイン高騰の最大要因として挙げられるのが、イーロン・マスク氏率いるテスラモータースが1500億円をビットコインに投資したと報じられたことでした。 このように、新しい事情で北米でのビットコインの需要が増えた一方で、ビットコインの供給、つまりもともとの総量は増えないという状況になっています。当然ながら価格が上がることになるというのが、現状に関する説明です』、明快な説明だ。
・『ビットコイン急落の兆候を見極めるポイントはあるのか  さて、私は先週「日経平均3万円超え、『攻め時』と『引き時』を真剣に考える」という記事を寄稿した際にも、「相場については未来予測が難しい」という話をしました。状況的にビットコインがなぜ高騰しているのかは、その記事で説明した状況と同じ要素が関係しているわけです。しかしこの先、ビットコイン価格がさらに上昇するのかというと、それは「わからない」としか言いようがありません。 ただ、今回の価格急騰のメカニズムを考えると、今後注目すべきポイントは「本当に機関投資家がこの先、次々とビットコイン投資に参入するのかどうか」が、相場の大きな鍵であることだけは間違いないようです。 【著者からのお知らせ】新型コロナが日本経済に与える影響についての最新の未来予測を、noteで公開しました。緊急事態宣言下の社会の先行きについて、不安な方も多いと思います。未来予測の専門家として、皆様の今後を考える参考にしていただきたいと思っています。ぜひご覧くださいhttps://note.com/suzukhei/n/n23c0679e03d2 』、「この先、ビットコイン価格がさらに上昇するのかというと、それは「わからない」としか言いようがありません」、正直で信頼に値する見方で、同感である。
タグ:暗号資産 (仮想通貨) (その17)(ビットコイン暴落 投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)、ビットコイン爆騰 それはバブルの再来なのか イーロン・マスクの「支持表明」から再上昇、JPモルガン ビットコインでのヘッジを提案-ポートフォリオの1%、ビットコインはやはりバブルか?怪しい高騰の背景に「従来とは異なる事情」) Newsweek日本版 「ビットコイン暴落、投資家は「全てを失う覚悟を」(英規制当局)」 イギリスの金融規制当局 「暗号資産への投資、ないし暗号通貨関連の投資や融資は一般に、きわめて高いリスクを伴う」と声明で指摘。「消費者がこの種の金融商品に投資を行う場合には、全てを失う覚悟をしておくべきだ」と述べた 外国為替・暗号資産調査会社「クオンタム・エコノミクス」のビットコイン・アナリスト 「登山家が次のポイントを目指す前にひと休みするようなものだ」 FCA「換金できる保証なし」 バンク・オブ・アメリカは、ビットコインは「全てのバブルの母」の可能性があると警告 給量の約8割が流動性なし 供給量の約8割が流動性なし 「供給量の約8割が流動性なし」とは、まるで持ち合い株式のようだ。「ディーンの見方はやはり強気一辺倒なようだ 東洋経済プラス 「ビットコイン爆騰、それはバブルの再来なのか イーロン・マスクの「支持表明」から再上昇」 日経新聞によればこの他にも「販売代金をビットコインで受け入れる」と言明したようだ 金融界の投資マネーが主役に ビットコインで運用するファンドの運用資産残高は直近で230億ドル(2.4兆円)に達した」 「ビットコイン」価格が金融資産価格とは無関係に動くため、代替投資(オールタナティブ投資)として、資産の一定量を投資することになったようだ 「上昇相場」はいつまで続くか 「ビットバンクの廣末氏は、アメリカにビットコインが集まりつつあることを懸念している」、どこに集まろうが、交換通貨が何になろうが、投資家にとってはどうでもいい筈である。投資の世界で国粋的になるのは間違っている bloomberg 「JPモルガン、ビットコインでのヘッジを提案-ポートフォリオの1%」 あの「JPモルガン・チェース」が「ビットコインの活用を提案」したとは驚いた。やはり代替資産としての運用を推奨しているようだ ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博 「ビットコインはやはりバブルか?怪しい高騰の背景に「従来とは異なる事情」」 いつの間にか再び高騰 ビットコインはバブルなのか 実態のない仮想通貨に価値がないとはいえない3つの理由 「ビットコインには高い流通価値がある」、その通りだ 足もとのビットコイン急騰はこれまでとは事情が異なる ビットコイン急落の兆候を見極めるポイントはあるのか 「この先、ビットコイン価格がさらに上昇するのかというと、それは「わからない」としか言いようがありません」、正直で信頼に値する見方で、同感である
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バブル(最近)(その6)(コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる、今はバブル?暴落のリスク要因は?山崎元が株価を巡る「6つの質問」に回答、「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク 日経平均3万円に喜んではいけない) [金融]

昨日の株式・為替相場’その10)に続いて、今日は、バブル(最近)(その6)(コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる、今はバブル?暴落のリスク要因は?山崎元が株価を巡る「6つの質問」に回答、「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク 日経平均3万円に喜んではいけない)を取上げよう。なお、このテーマを前回取上げたのは、2月7日である。

先ずは、2月12日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2021/02/2021_1.php
・『<投資家の期待値によって膨れ上がり、コロナ危機の現実と乖離したバブルは、各国政府の財政出動が尽きれば崩壊する> (本誌「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より) 株価が上がっている。日経平均はバブル崩壊後の最高値を更新し、30年ぶりの高値となった。 2000年4月の日経平均構成銘柄の大幅な入れ替えにより、ずれが生じているから(概算では日経平均は2000円程度、2000年以前よりも低くなっていると言われている)、20世紀の基準では日経平均3万円を実質的には突破している。そして、まだその勢いが止まる気配はない。 この株価はバブルなのか、という問いの答えは、明らかにイエスで、問題は、いつ、どのように弾(はじ)けるか、という点に移っている。これは意外に難しく、バブルと分かっていてもすぐに弾けるのではなく、ある程度はバブルに乗っておかないと、ほかの投資家に利益を持っていかれてしまうから、バブルが続く限りは、プロの投資家ほどバブルに乗り続けるものなのだ。 リーマン・ショックが弾けた後、シティグループCEOのチャールズ・プリンス(当時)は、「音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならない」とその状況を描写した。 しかし、いま人々が不思議に思っているのは、経済は新型コロナウイルスの影響で大変なことになっているのに、なぜ株価が上がるのか。しかも、21世紀最高値を更新するのか、ということである。 これは、経済と株価が異なる動きをするのがおかしい、と思うのが間違っている。経済と株価は関係ない。経済がどうであろうと、株価は株価で勝手に上がるのである。 そんなばかな、と思うかもしれない。実際、エコノミストは、株価は経済を映す鏡とよく言う。株価は経済のファンダメンタルズで決まると、経済学やファイナンス理論の教科書に書いてある。そんなばかなことをいうおまえがばかだ、と言われそうだが、それは、その教科書が間違っているのである。 あるいは、現実の経済とは無関係な経済理論の世界の仮定について説明しているだけだ。あるいは、一昔前の遅れているファイナンス理論に基づき、行動ファイナンス理論を知らない人が書いた本なのだろう。 株価以上にバブルになっているものがある。それはビットコインだ。仮想通貨とか暗号資産などと呼ばれ、通貨であるかどうかは議論が分かれているが、資産であることは間違いがなく、異常な暴騰をしている。 しかし、人々は、ビットコインはバブルだと言うが、経済が悪いのにビットコインがバブルになっているのはおかしい、とは言わない。なぜなら、もちろんビットコインの値動きと経済の良し悪しは無関係だと誰もが分かっているからである。 そして、ビットコインと株は同類で、ビットコインと同様に株は経済とは無関係に動くのである。 株式とビットコインは、共に資産であり、投資対象である。一方、経済は日々の生活で、日々の稼ぎ、所得の世界である。だから、ビットコインと経済が別物なのと全く同様に、株式市場と経済は別物だ』、「この株価はバブルなのか、という問いの答えは、明らかにイエスで、問題は、いつ、どのように弾(はじ)けるか、という点に移っている」、その通りなのだろう。「株価は経済のファンダメンタルズで決まると、経済学やファイナンス理論の教科書に書いてある。そんなばかなことをいうおまえがばかだ、と言われそうだが、それは、その教科書が間違っているのである。 あるいは、現実の経済とは無関係な経済理論の世界の仮定について説明しているだけだ。あるいは、一昔前の遅れているファイナンス理論に基づき、行動ファイナンス理論を知らない人が書いた本なのだろう」、ここまで断言するとは、さすが「行動経済学」者らしい。
・『人間の欲望が市場を動かす  では、ビットコインや株が経済に連動しないのであれば、ビットコインや株を動かすのは何か。人間の欲望である。投資家の期待である。もっと上がるかも、という期待で投資家はビットコインや株を買う。買うから上がる。株価の上昇とは投資家たちの期待の実現、期待の自己実現なのである。 従って、株価が上がっているということは、投資家たちの欲望、奇麗に言えば、期待値が上昇していることを示している。株がもっと上がるかも、という投資家の期待はどこから来るのか。その期待を動かすものが、株価を動かすのである。 経済が良くなるから株価も上がるだろう、だから株を買っておこう、と大多数の投資家が思い、そして買えば、株価は上がる。このときは、確かに、経済の見通しと株価の動きは連動する。 しかし逆に言えば、経済が良くなるから、という以外の理由で、投資家の多数派が株価が上がると思えば、彼らは株を買い、そして株価は上がるのである。経済が良くなることが株価上昇の原因になることは、投資家の期待を動かす無数の要因の中の1つにすぎないのである。 では、今、なぜ株が上がっているのか。なぜ投資家たちは、株価が上がるのではないか、と期待しているのか。 その理由は金融緩和であり、財政出動である。そして、コロナがひどくなればなるほど、金融はさらに緩和され、財政はさらに大盤振る舞いをするから、むしろコロナが悪くなればなるほど、投資家の欲望は膨らみ、株を買いに殺到する。 アメリカでは、投資アプリ「ロビンフッド」を利用して、コロナ危機で初めて株を買い始めた個人投資家たちがいる。彼らは、ジョー・バイデン大統領が新たに配る1人2000ドルの給付金で株を買うだろうといわれている。 さらにコロナ危機は、格差を直撃する。アメリカで医療をきちんと受けられるのは富裕層で、彼らは、コロナショックでも資産は増えているし、コロナによる死も切実ではない。だから、株価が上がることで浮かれ、さらに投資を増やす。 実際、ロビンフッド投資家や、バブルに乗っている投資家たちが買っている株は、コロナで恩恵を受けている企業の株である。アップルであり、マイクロソフトであり、これらの企業は、利益が急増し、史上最高益を大幅に更新している』、「経済が良くなることが株価上昇の原因になることは、投資家の期待を動かす無数の要因の中の1つにすぎないのである。 では、今、なぜ株が上がっているのか・・・その理由は金融緩和であり、財政出動である。そして、コロナがひどくなればなるほど、金融はさらに緩和され、財政はさらに大盤振る舞いをするから、むしろコロナが悪くなればなるほど、投資家の欲望は膨らみ、株を買いに殺到する」、明快な説明だ。
・『間もなく尽きる財政出動  だから、株価が上がるという期待は自己実現し、さらに期待は膨らみ、資産も膨らんでいるから、欲望が膨らみ、さらに株へ買いが集まり、さらにバブルは膨らんでいるのである。 従って、問題は今がバブルかどうか、ということではなく、このコロナバブルがいつ弾けるのか、という点である。これは、2021年に弾ける。21年1月にバブルがさらに勢いを増して膨らんだからだ。 バブルが弾ける理由はただ一つで、膨らみ過ぎることによって弾けるのである。バブルが弾けるのを回避するには、バブルをしぼませるか、さらに膨らませるしかない。バブルの本質とは定常状態にないことなのだ。 前述したように、買うから上がる。上がるから買う。上がるという期待が、実際に買うことで実現し、それによりさらに期待が膨らむ。そして、これを羨む新しい買い手が参入し、さらに上がる。これがバブルである。 バブルが起こる原因は存在しない。あるいは、特に論理的な意味はないから、考える意味はない。しかし、バブルが膨らみ継続する理由は、論理的なので考察する価値がある。 では、今回のコロナバブルが膨らんでいる要因は何だろうか。前述したように、金融緩和による大量の流動性であり、財政出動である。現在の金融緩和と財政出動は、既に限界を超えている。限界を超えて出動し続ければ、財政は破綻する。金融緩和は効果がなくなるどころか、副作用しかなくなる。 従って、今後の金融緩和による流動性の追加はない。財政出動も間もなく尽きる。アメリカは、バイデン就任のハネムーン期間に出せるだけ出して、その後はない。日本は既にない。 バブルは安定した状態であり続けることはできない。膨らみ続けられなければ急激にしぼむか、あるいは破裂するだけだ。そして、昨年末から株価は異常な動きをし、テスラ株が暴騰し、その後は乱高下。ビットコインも全く同じだ。最後、急速に膨らむのは、まともな投資家が逃げ始め、バブルに狂った投資家しか残っていないから。売りも出ず、少数の買いで暴騰する。それが今だ』、「現在の金融緩和と財政出動は、既に限界を超えている。限界を超えて出動し続ければ、財政は破綻する。金融緩和は効果がなくなるどころか、副作用しかなくなる。 従って、今後の金融緩和による流動性の追加はない。財政出動も間もなく尽きる」、「最後、急速に膨らむのは、まともな投資家が逃げ始め、バブルに狂った投資家しか残っていないから。売りも出ず、少数の買いで暴騰する。それが今だ」、不吉だが、現実的な予想だ。
・『引き延ばされてきたバブル  実は、コロナバブルの前に既にバブルは崩壊寸前だった。2019年末は、上場前の新興企業のスキャンダルが続出してソフトバンクの株価が暴落し、米株価も乱高下をしていた。そこへコロナ危機が襲った。一時、バブル完全崩壊の様相を呈したが、なりふり構わぬ金融・財政のばらまきが行われ、コロナで傷んでいない人々にも金が配られた。ネット関連、ゲーム関連などの巨大企業は空前の利益を上げ、そこに資金が殺到し、コロナ危機前以上のバブルになった。 そして、実はこれもいつもの繰り返しだった。リーマン・ショックで世界の金融市場が崩壊寸前になったが、それを救うために、世界中の中央銀行が量的緩和を行い、金が世界にあふれ、バブルになった。この国債バブルは欧州危機で崩壊しかかったが、さらなる金融緩和が行われ、バブルは復活し、さらに蔓延した。それが株式にも回り、壮大なるバブルが2019年末に崩壊しかかっていた。 では、今度も金融財政の救済により、バブルはさらに膨らむのではないか、と思われるだろうが、今回は違う。なぜなら、金融は使い尽くしていたために、今回は財政出動、実弾の出動になったのだが、これで弾は尽きる。そうなると、次はもうどこにも弾は残っていない。ロビンフッド投資家まで巻き込んでしまえば、さらに株を買う人はもう残っていない。政府も個人投資家も尽きてしまえば、もう破綻しかないのだ。 だから2021年、バブルはついに崩壊する。そしてリーマン・ショックから先送りされ、何重もの雪だるまのように膨らみ続けたバブルのツケを、世界中で払うことになるのだ。(筆者の近著は『アフターバブル近代資本主義は延命できるか』〔東洋経済新報社刊〕』、「金融は使い尽くしていたために、今回は財政出動、実弾の出動になったのだが、これで弾は尽きる。そうなると、次はもうどこにも弾は残っていない・・・2021年、バブルはついに崩壊する。そしてリーマン・ショックから先送りされ、何重もの雪だるまのように膨らみ続けたバブルのツケを、世界中で払うことになるのだ」、今度こそ覚悟しなければならないようだ。

次に、2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「今はバブル?暴落のリスク要因は?山崎元が株価を巡る「6つの質問」に回答」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263581
・『日経平均株価が3万円を超えた。現在の株価をバブルではないかと疑って、バブルをテーマにした取材や座談会のような企画も増えている。そこで本稿では、Q&A形式で現在の株価がバブルであるか否かについて整理してみたい。  今はバブルか否か? 株価を巡る6つの質問に回答  日経平均株価が3万円を超えて、株価が話題になる場面が増えてきた。テレビの街頭インタビューなどでは「この株高は、生活の実感に合わない」という声が紹介されることが多いが、あれはテレビ番組を作る側の人々(必ずしもテレビ局の社員とは限らない)がそう思っているからなのだろう。 現在の株価をバブルではないかと疑って、バブルをテーマにした取材や座談会のような企画も増えている。 そこで本稿では、座談会の「質問項目」と「答え」を想定するQ&A形式で現在の株価がバブルであるか否かについて整理してみたい。 質問の項目と、筆者ならこう答えるという内容を列挙する。筆者の答えが正解だと言いたいわけではない。読者ならどう答えるか、順を追って考えてみてほしい」、なるほど。
・【Q1】現在の株価  日経平均3万円台、ダウ工業株30種平均3万1000ドル台)を「バブル」と判断するか否か。結論と理由をお答えください。 【A】株価のバブルとは、「高過ぎて長期的に維持できない株価が形成された状態」のことでしょうが、日経平均3万円突破はその形成の域に入ったと考えています。 バブルは、信用(借金)の拡大が投資に回って、資産価格(株価)が上がることによって起こります。そして、現在は信用の供給主体が新型コロナウイルス対策に注力する政府と中央銀行であり、金融緩和を財政が後押しすることによって出回った資金が株式市場に集中して株価が上がっている。加えて、「コロナ対策で金融政策の転換が遅れるだろう」「市場や経済が不調に陥ったら政府・中銀が手を打つだろう」という期待がリスクを過小評価させています。 金融緩和と信用の拡大、そしてリスクの過小評価といった具合に、バブル形成の条件が定性的に満たされています。 加えて、益利回り(株価収益率〈PER〉の逆数)から判断して、絶対水準としての株価も「高過ぎ」のゾーンに入ってきたように思われます』、「金融緩和と信用の拡大、そしてリスクの過小評価といった具合に、バブル形成の条件が定性的に満たされています」、やはりそうか。
・【Q2】株価の「バブル」を判断する基準があれば、ご開示ください。 【A】将来、金融環境が正常化して、名目成長率と長期金利がほぼ均衡する状態を想定すると、益利回りが投資家のリスクプレミアムであると考えることができます。以下のような基準を目処として考えています。 +益利回り6%(PER16.7倍)=株価は高くも低くもない +益利回り5%(PER20倍)=株価は高値圏に入った +益利回り4%(PER25倍)=株価はバブルの域に入った。黄信号 +益利回り3%(PER33.3倍)=株価はバブルでそれ自体が危険な高値にある。赤信号 現在の東京証券取引所第1部の益利回りは概ね4%なので、「株価はバブルの域に入り始めた」と考えています』、「利回り4%」だと「株価はバブルの域に入った。黄信号」、程度とは意外だ。
・【Q3】今後(今年、来年)に想定される、株価と経済の展開について、「最もありそうだ」と思われる推移をお答えください。 【A】コロナ対策のポリシーミックスは内外共に当面変化しないと考えられ、加えて、世界の景気は回復傾向にあります。加えて「バブル」は、原理的にも経験的にも、発生したからといって直ちに崩壊するものではありません。 年内いっぱいくらい株価は上昇しやすく、来年になって経済の回復がはっきりして、政策的な潮目が変わる局面が見えてきた段階で株価が大幅に下落する局面を迎える、というくらいの展開が「ありそう」なものの一つとして思い浮かびます』、「「バブル」は、原理的にも経験的にも、発生したからといって直ちに崩壊するものではありません。 年内いっぱいくらい株価は上昇しやすく、来年になって経済の回復がはっきりして、政策的な潮目が変わる局面が見えてきた段階で株価が大幅に下落する局面を迎える」、なるほど。
・【Q4】今後、株価が大幅に下落する局面が発生するとしたら、どのような理由によるものでしょうか。株価にとっての「リスクファクター」があればご指摘ください。 【A】現在、政府による信用拡大に加えて、米国で低格付けの社債発行による信用拡大が目立っていることが少々心配です。当面好景気ですが、社債市場でデフォルトが起こって起債環境が冷え込むことになると、株式市場にもショックが及びそうです。これが、短期的なリスクファクターでしょう。 そして中期的なリスクファクターとして、米国の雇用が回復して金融政策が正常化に向かう段階で起こる金融政策の転換が株価に及ぼすショックが挙げられます。最後に、物価が上昇して金融引き締め政策を取らざるを得なくなる状況が将来やって来る可能性が長期的なリスクファクターでしょうか』、「リスクファクター」は「短期的」、「中期的」、「長期的」にもあり、要警戒だ。
・【Q5】現在の状況を踏まえて、日米それぞれの経済政策はどのようなものであるべきだとお考えでしょうか。 【A】当面の政策は、大まかには現在の金融緩和プラス財政支出でいいでしょう。財政赤字は当面拡大が適切であり、緊縮に向かわない方がいい。ただし、支出は公平かつ迅速であるべきでしょう。業界や利用者のメリットが偏る「Go Toキャンペーン」のようなものは筋が悪く、一律の給付金(将来の負担は高額納税者・富裕層が大きい)に賛成します。 株式市場については今後、「赤信号」に近付く局面があれば、信用取引の条件を厳しくするなど、市場内部要因での過熱防止策を行うべきでしょう。金融を引き締めて、デフレに逆戻りするような事態があってはいけません』、「「Go Toキャンペーン」のようなものは筋が悪く」、同感だ。
・【Q6】一般投資家に対するアドバイスを頂けたら有りがたく存じます(「株は全て売って現金化せよ」「米国株を買え」「内外のインデックスファンドを買え」、「出遅れ株がいい」…等々)。 大まかに言うと、株価が上がっても下がっても気にしない。そして、自分にとって適切なリスク資産の金額を、内外の株式のインデックスファンドのような広く分散投資が行われていて手数料コストが低い運用商品で、じっと持っているといい。 ただ、株価が赤信号水準に近付いてくることがあれば、「持ち株の1〜2割」くらいまで売却することを考えてもいいでしょう。投資家にできる調節は、その程度が限界です』、「投資家にできる調節は」「「持ち株の1〜2割」くらいまで売却することを考えてもいい」、かなり限界があるようだ。

第三に、2月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフジマキ・ジャパン代表取締役の藤巻 健史氏による「「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク 日経平均3万円に喜んではいけない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/43459
・『日経平均株価が3万円の大台に乗った。このまま株価は上がり続けるのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史氏は「ワクチン接種が開始され景気が良くなれば長期金利は上昇する。それは株価バブル崩壊の前触れだ」という――』、「長期金利は上昇」シナリオは大いにありそうだ。
・『「株を買いたいのなら、こわごわと買ってくださいね」  2月15日、日経平均が30年半ぶりに3万円台に乗せた。株価だけを見ると1985年から90年にかけて発生したバブル期の動きと似ている。今後に関して言えば日経平均は、今後もそれなりに上昇すると私は思っている。 ただ、私自身は今、日本株を保有していないし、今後とも買おうとも思わない。買いたい方には「いつでも飛び降りる体制で、こわごわと買ってくださいね」と忠告をしておきたい。 このコラムでは、なぜそういうコメントになるのか? を詳しく解説し、それでは私が今、どういうポートフォーリオを推奨しているのかも開陳したい』、興味深そうだ。
・『バブル期との相違  もし日本の財政がここまで悪くなく、また日銀がこれほどまでもメタボになっていなかったら私は「日銀の引き締めが近い。早く株式市場から撤退すべきだ」との忠告を、今、発していただろう。 今の相場はバブル期の末期の様相だ。当時は「日経平均は8万円まで行く」「10万円まで行く」とほぼ全員が強気だった。84年末に比べて89年末の株は約3.4倍、統計には表れなかったが、不動産価格の実態は、10倍程度にまで上昇していた。 その後、明確なる理由なく相場は突然崩れた。あえて契機を探し出そうとするならば、政府が「不動産から生じる損失(=減価償却の計上等による)を他の所得の利益と相殺することを禁止した(=損益通算の禁止)ことくらいしか見当たらない。しかし、それとて相場をあれほど崩すのには弱すぎる理由だ。「相場が上昇しすぎたから破裂した」と結論づけざるを得ない。 バブル期、消費者物価指数が低いままなのに、株価が上昇したのは今と同じだ。1986年から88年までの消費者物価指数の上昇率は全国総合(除く生鮮食品)で毎年0.5%に過ぎない。今の日銀の目標2%よりはるかに低かったのだ。それにもかかわらず、景気が過熱し狂乱経済と名付けられたほどの景気を生みだした』、「今の相場はバブル期の末期の様相だ」、なるほど。
・『不動産の代わりにビットコインが急騰  東京中をダンプカーが走り回り、タクシーは取り合いでつかまらない。ジュリアナ東京等のディスコのお立ち台ではミニスカートの女性たちが踊りまくり、バブル景気の象徴といわれた。 余談だが、私の部下の米国人男性が、男性は決して登らないお立ち台の上で踊りながら名刺をばらまいたせいで、翌日、銀行に、若い女性たちからひっきりなしに電話がかかり、彼が逃げ回っていたのを思い出す。彼の名誉のために付け加えると、今、彼は米国ナパ・バレーのワイン農園のオーナーで、慈善活動として、アフリカにいくつもの小学校を作る活動に精を出している。今や初老の紳士だ。 これらの狂乱振りは資産効果(土地や株の保有者が、含み益の増加でお金持ちになった気になり、消費を増やす。それを見て株価がさらに上昇するという好循環が働く)のせいだ。 今が当時と違うのは、不動産はそれほど上昇していない点、そして資産効果を相殺するコロナ禍による景気下押しがある点だろう。実需が過熱していないので、咄嗟に撤退できない不動産価格が上昇しないのは理解できるが、その代わりに当時はなかったビットコインの価格急騰が著しい。 またワクチン接種とともに、コロナ禍による景気下押し圧力が薄れてくるだろう。そうなるとますますバブル相場に似てくると思われる』、「ワクチン接種とともに、コロナ禍による景気下押し圧力が薄れてくる」、確かに警戒を要するリスク要因だ。
・『バブル後の日銀の反省  このバブル、そしてその崩壊の後、澄田智元日銀総裁は懺悔をしている。 「確かに87年ごろから東京の地価は2ケタの上昇率を示し、株価もかなり速いペースで上昇していました。それなのに金利引き上げを実行しなかったのは、後から考えると、認識が不十分だったと答えるしかありません。(中略)ただ、土地や株、それに書画や骨董といった資産の価格だけが急激に上昇している意味を早く見抜けなかったことについては、私がその責めを負わなければならないと思っています」(『<真説>バブル』日経BP社) この反省は、なにも澄田日銀総裁だけのものではなく、日銀内で共有され、2度と同じ間違いを犯してはならないとの教訓として残っているはずだ。 だからこそ、株価が、実体経済とかけ離れて急上昇している現在、普通なら「日銀の引き締めが近い。早く株式市場から撤退すべきだ」と忠告するところなのだ。特に私は、バブルの最中、日銀に「CPIのみに目を囚われて資産価格の急騰を見過ごすと取り返しのつかないことになる」と強く警告し、国内、海外にも「危ない」とさかんに発信をしていた。 その警戒心があったからこそ、JPモルガンは日本のバブル崩壊で全くダメージを受けず、(逆に利益を上げられた)日本で唯一の金融機関だったと思われるのだ。その成功体験からしても、普通なら私は再度、強い警告を発していたはずだ』、「藤巻」氏が「国内、海外にも「危ない」とさかんに発信をしていた」、とは大したものだ。
・『日銀は引き締めを行えない  「べき論」としては、以上述べてきたように、日銀は早急に引き締めを行うべきだろう。バブルの際に引き締めが遅れた失敗を2度と繰り返してはいけないのだ。再度同じ間違いを犯せば、バブル後の「失われた30年」が、今度は「失われた50年」となってしまう。そうなれば日本は間違いなく、世界の4流国への仲間入りだ。 そう考えると、日銀は「金融引きしめ」を行わないまでも、この歴史的な超金融緩和状況を中立程度に戻そうとするのは当然だろう。それは株価の暴落、もしくはかなりの大幅下落を意味することになる。 しかしながら、日銀が、今、引き締めが出来るかとなると、極めて疑問である。引き締めの手段としては、保有株ETFの売却、保有国債の売却(=過剰流動性の吸収)、政策金利の引き上げが考えられる。 しかしながら、株と国債のマーケットにおいて、日銀は、今やモンスターになってしまっている。どんな市場でもそうだが、モンスターだった買い手が、売りに回れば、間違いなく大暴落だ。中央銀行自身が大量保有しているものの値が下落すれば、彼らは債務超過になり、その発行する通貨は暴落、紙幣は紙くず同然となってしまう。当然、日本売りだ。 だからこそ、私が金融マンだった頃は、「中央銀行たるもの価格変動の激しいものに手を出してはいけない」が鉄則であり、それを世界中の中央銀行は守っていた。通貨の安定が中央銀行の基本のキだったからだ。 しかし異次元緩和で、日銀は株や国債を買いまくり、世界段トツのメタボになってしまった。もはや金融引き締めなど出来ない。私が、いつも「日銀にはもう出口がない」と言っている理由だ。 以上の理由から、日銀は、バブルの反省がありながら、引き締めを行いたくても出来ず、株価の上昇を、口を開けて傍観せざるを得ないのだ。 それが、私が当面は株価の上昇が続くだろうという理由である』、先行きの暴落が分かっているのに、なす術がないとは恐ろしいシナリオだ。
・『「株購入はこわごわとすべき」理由  ビジネススクールでも習ったし、また金融界でも常識だったことは「短期金利は中央銀行が、長期金利は市場が決める」だった。私の長きにわたるマーケットでの経験からしてもそうだ。世界の中央銀行も、いまだその認識のはずだ。 だから世界中で日銀以外に長期金利を「政策目標」として掲げている中央銀行はない。日銀自身も2016年11月まで「教えて!にちぎん」という一般国民向けのホームページに「中央銀行は長期金利を思いのままに動かせない」と書いてあった。なのに、長期国債の爆買いを始めたせいか、辻褄を合わせるために、突然「長期金利はコントロール出来る」と書き換えた。 確かに日銀のように爆買いを続ければ一時的には長期金利を低位に抑えることは出来るだろうが、それはのちにハイパーインフレを起こすと歴史が証明している。だから他の中央銀行は日銀のように市場のモンスターになるほどには長期債の爆買いをしていない。したがって、長期金利は相変わらず「市場が決める」のだ。 ならば、お金が、じゃぶじゃぶに出回っていう上に、ワクチン接種が開始され景気が良くなれば長期金利の上昇は、当然の理だ。さらに株価の上昇が継続しているのなら、世界の長期金利上昇はほぼ確実だろう。なにせ1980年に20%を超えた米国10年物金利が、今たったの1.2%でしかないのだ』、同感である。
・『わずかな長期金利の上昇が命取りになる  私自身はこの状態ならば、長期金利が史上最高まで上昇しても(=価格は暴落)驚かない。1980年の米国10年金利は20%を超え、日本国債は11%である。例え、そこまで上昇しないにしても、インフレ率が2%まで上昇するならば、最低でも長期金利は2%に上昇しなければ、おかしい。 その時、日銀は危機となる。日銀は保有国債の保有平均利回りが0.247%(2019年4月~2020年3月)と、他の中央銀行に比べても異常に低い。かつ異常な規模で保有している。少しでも長期金利が上昇すると莫大な評価損を抱えることになる。 債務超過の危機に直面するわけにはいかないと、長期債の爆買いで必死に長期金利の上昇を抑えこめば、他国との長期金利差拡大で円安が大きく進む。その結果、景気過熱で、腕力では長期金利が抑えられなくなる。国債市場は現物債市場だけではない、先物市場もあるからだ、 長期金利が上昇し、日銀が莫大な損失を抱えれば、円という通貨が終焉を迎える。日本売りの発生が予想される。すさまじいエネルギーだろう。こういう時に円資産を持っていればすべてを失う。だから「日本株を購入するなら、いつでも逃げるだけの用意をしながら、こわごわと買った方がいい」とアドバイスしている。 私には、ピークで逃げ切る自信がない。だから日本株には手を出さないのだ』、「長期金利が上昇」、「円という通貨が終焉」、「日本売りの発生」、という破局は瞬時に発生するだろう。私が異次元緩和導入時から警告していた破局が現実味を増してきたようだ。
・『それでは、今、何するべきか?  これだけ日本が世界最悪の財政赤字となり、日銀が中央銀行としての体ていをなさなくなったのだから、今は必死で資産を守るべきで、利益を考える時ではない。だからこそ、私は長年にわたって、ドル資産の購入と、いざとなると避難通貨となる暗号資産の購入をお勧めしてきたのだ。 ドルの購入にしても、これから長期金利の上昇(=価格の下落)が予想されるので、今は早めにドル建てで運用する投資信託である「ドル建てMMF」(マネー・マーケット・ファンド)など短期モノに切り替えることをお勧めする。それでも、まだ何か少しでも利益を上げたいと思われるなら、価格の下落で儲かる金融商品の購入が望ましい。 日本人や特に、日本の機関投資家は金融商品の価格が上昇しなければ儲からないと思っているが、それは違う。値段が動きさえすれば上昇しようと下落しようと、利益は上がるのだ。 生保などの機関投資家も「預かった資金すべてを、何かに投資しなくてはいけない」と思うから価格の下落相場に弱い。たとえば集まった資金の90%は現金等に置き、10%を証拠金として使い、国債先物を売ったり、プットオプションを買えばいいのだ。または金利スワップの固定金利の払いでもよい。それらの利益で、預かった資産全体に十分な配当が出来る。 為替も金利もこの数年間、ほとんど動かなかったがゆえに、ボラティティーが低く、プレミアム(オプション料)は安い。だからこそお買い得だともいえる。 そこまでのデリバテイブの知識がない方は、米国の債券ベアファンド(長期金利が上昇する=長期債の値段が下落する、と利益が上がる投信)、例えばDirexion Daily 20+ Year Treasury Bear 3X等を買えばいい。日本の証券会社で買える。その基礎は『藤巻健史の資産運用大全』(幻冬舎新書)をお読み学習していただければ幸いだ。原理がわかっていない商品を購入するのは考えモノだからだ』、私もこれを機に、なけなしの資産のヘッジを検討することにしよう。
・『最後にお願い  ちなみに以上のアドバイスに沿って行動するか否かは、くれぐれも自己責任でお願いいします。プレジデントオンラインの原稿料ぽっちで(プレジデント社さん、すみません)皆さんの損の責任はとれません。「儲かっても、お歳暮の一つもくれず、損したら大声で非難」に私は慣らされていますので。 あくまでも「損すれば自己責任、儲かれば藤巻の貢献」の原則をお忘れになりませんよう。「信じれば救われるのか」、はたまた「信じれば足を掬われるのか」は、将来、判明するのです』、「損すれば自己責任、儲かれば藤巻の貢献」とは言い得て妙だ。
タグ:バブル (最近) (その6)(コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる、今はバブル?暴落のリスク要因は?山崎元が株価を巡る「6つの質問」に回答、「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク 日経平均3万円に喜んではいけない) Newsweek日本版 小幡 績 「コロナ危機が招いた株価バブルは2021年に終わる」 投資家の期待値によって膨れ上がり、コロナ危機の現実と乖離したバブルは、各国政府の財政出動が尽きれば崩壊する 「この株価はバブルなのか、という問いの答えは、明らかにイエスで、問題は、いつ、どのように弾(はじ)けるか、という点に移っている」、その通りなのだろう 「株価は経済のファンダメンタルズで決まると、経済学やファイナンス理論の教科書に書いてある。そんなばかなことをいうおまえがばかだ、と言われそうだが、それは、その教科書が間違っているのである。 あるいは、現実の経済とは無関係な経済理論の世界の仮定について説明しているだけだ。あるいは、一昔前の遅れているファイナンス理論に基づき、行動ファイナンス理論を知らない人が書いた本なのだろう」、ここまで断言するとは、さすが「行動経済学」者らしい。 人間の欲望が市場を動かす 「経済が良くなることが株価上昇の原因になることは、投資家の期待を動かす無数の要因の中の1つにすぎないのである。 では、今、なぜ株が上がっているのか・・・その理由は金融緩和であり、財政出動である。そして、コロナがひどくなればなるほど、金融はさらに緩和され、財政はさらに大盤振る舞いをするから、むしろコロナが悪くなればなるほど、投資家の欲望は膨らみ、株を買いに殺到する」、明快な説明だ 間もなく尽きる財政出動 「現在の金融緩和と財政出動は、既に限界を超えている。限界を超えて出動し続ければ、財政は破綻する。金融緩和は効果がなくなるどころか、副作用しかなくなる。 従って、今後の金融緩和による流動性の追加はない。財政出動も間もなく尽きる」 「最後、急速に膨らむのは、まともな投資家が逃げ始め、バブルに狂った投資家しか残っていないから。売りも出ず、少数の買いで暴騰する。それが今だ」、不吉だが、現実的な予想だ 引き延ばされてきたバブル 「金融は使い尽くしていたために、今回は財政出動、実弾の出動になったのだが、これで弾は尽きる。そうなると、次はもうどこにも弾は残っていない・・・2021年、バブルはついに崩壊する。そしてリーマン・ショックから先送りされ、何重もの雪だるまのように膨らみ続けたバブルのツケを、世界中で払うことになるのだ」、今度こそ覚悟しなければならないようだ ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「今はバブル?暴落のリスク要因は?山崎元が株価を巡る「6つの質問」に回答」 PRESIDENT ONLINE 藤巻 健史 「「バブル崩壊に今すぐ備えよ」ワクチン接種開始で高まる日本株リスク 日経平均3万円に喜んではいけない」 長期金利は上昇」シナリオは大いにありそうだ 「株を買いたいのなら、こわごわと買ってくださいね」 バブル期との相違 「今の相場はバブル期の末期の様相だ」 不動産の代わりにビットコインが急騰 「ワクチン接種とともに、コロナ禍による景気下押し圧力が薄れてくる」、確かに警戒を要するリスク要因だ バブル後の日銀の反省 「藤巻」氏が「国内、海外にも「危ない」とさかんに発信をしていた」、とは大したものだ 日銀は引き締めを行えない 先行きの暴落が分かっているのに、なす術がないとは恐ろしいシナリオだ 「株購入はこわごわとすべき」理由 わずかな長期金利の上昇が命取りになる 「長期金利が上昇」、「円という通貨が終焉」、「日本売りの発生」、という破局は瞬時に発生するだろう。私が異次元緩和導入時から警告していた破局が現実味を増してきたようだ それでは、今、何するべきか? 私もこれを機に、なけなしの資産のヘッジを検討することにしよう 最後にお願い 「損すれば自己責任、儲かれば藤巻の貢献」とは言い得て妙だ
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株式・為替相場(その10)(「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い 「コロナで不景気でも株価上昇」の正しい考え方、日経平均3万円超え、「攻め時」と「引き時」を真剣に、日本人が「株価3万円突破」を手放しで喜んではいけない 重大な理由) [金融]

株式・為替相場については、昨年11月21日に取上げた。今日は、(その10)(「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い 「コロナで不景気でも株価上昇」の正しい考え方、日経平均3万円超え、「攻め時」と「引き時」を真剣に、日本人が「株価3万円突破」を手放しで喜んではいけない 重大な理由)である。

先ずは、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い 「コロナで不景気でも株価上昇」の正しい考え方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/400979
・『新型コロナウイルスの感染が止まらない。日本はいまや迷走して惨憺たるありさまである。だが世界でもそれは同様で、経済活動への制約が生じている。GDPも四半期ベースで見れば確かに回復しているものの、当初よりも回復ペースの遅い地域や分野もあり、バラ色ではない。 それにもかかわらず、株式市場は世界的に上昇を続けている。2020年の日経平均株価の終値もついに1989年以来の高値となったが、とりわけアメリカの株式市場は歴史的な急騰が続き、連日史上最高値を更新。ナスダックなどは2020年1年間で約43%も上昇した』、「小幡 績氏」の見解とは興味深そうだ。
・『株式市場と実体経済は「ほぼ無関係」である  この株式市場と実体経済の異常なギャップに、エコノミストの多くは警鐘を鳴らしており「明らかに株式市場はおかしい!バブルだ!」と指摘する。株式投資が好きな人は喜び勇んで「まだこれから間に合う銘柄は何か」と狂ったように物色する。 一方、株式投資をする余力のない人々はもうウンザリしている。さらに、株式市場に利害も関心もない多くの人々も「何かがおかしいよな」と思いつつも、実際に「何がおかしいのか」は、まったく見当もつかない。 しかし、私はすべての有識者や皆さんに、逆に問いたい。なぜ「なぜ株式市場と実体経済の間にギャップがあるのか」と問うのか?また、なぜギャップがあることを不思議に思うのか? ハッキリ言おう。有識者も皆さんも、根本から間違っている。なぜなら、株式市場と実体経済はほぼ無関係で、連動する理由はないからだ。 そもそもこの2つが連動すると考えている大前提が誤りなのであり、世の中のほとんどのエコノミスト、政策関係の有識者などは、これをわかっていない。なぜならいまだに1960年代の世界を引きずっているか、教科書の世界の中に閉じこもっているからだ。時間が止まっているか、死んでいるのである。 もはや、株式と実体経済が連動していたのは過去の話である。1980年代以降の日本、あるいは1990年代以降の欧米ではもはや連動しなくなり、21世紀においては地球上のどこでも連動しなくなったのだ。 なぜ株価と実体経済は連動しなくなったのか?理由は単純だ。財市場と資産市場は別の世界のものだからだ。 では別の世界とは何か?要はおのおの生き物が違うのである。地球人と火星人ぐらい違う。 実体経済の市場においては、消費者と生産者がいる。資産市場には投資家とトレーダーがいる。前者の人々と後者の人々は別の生物であり、行動が一致する理由がない。それだけのことだ』、「株式と実体経済が連動していたのは過去の話である。1980年代以降の日本、あるいは1990年代以降の欧米ではもはや連動しなくなり、21世紀においては地球上のどこでも連動しなくなったのだ。 なぜ株価と実体経済は連動しなくなったのか?理由は単純だ。財市場と資産市場は別の世界のものだからだ」、ここまで言い切るとはさすが「小幡 績氏」だ。
・『株式市場と実体経済が連動しない「小さな3つの理由」  この根本的な話をする前に、株式市場と実体経済が連動しない、他のいくつかの理由も説明しておこう。 第一に、現在株式市場で盛り上がっているのは、いわゆるGAFAMやそのほかのいわゆるネット関連、テクノロジー関連の新しい巨大企業と新興企業である。重厚長大産業の企業は、自動車以外はほとんど停滞しているといっても良い。伝統的なサービス業や小売・流通はコロナで沈んでいるし、航空、交通関連は言うまでもないだろう。 あくまで一部企業のバブルにより株式市場が膨張しており、これらの企業は将来の成長を期待した株価になっている。だから、足元の経済の動きとは連動しない。これが第一点目だ。いわゆる有識者が、今の乖離現象を説明するときに行う、最も一般的な説明である。 もうひとつ、より影響が大きいのは以下の話だ。すなわち、株式市場に上場しているのは大企業だけで、実体経済の景気を左右する大多数の中小企業が含まれていないからだ。大企業が儲かり、中小企業がそれに押されて潰れていけば、大企業の増益により盛り上がる株式市場と、中小企業の縮小、廃業で沈滞する実体経済の動きは乖離する。これが第二の理由だ。 さらに第三の理由は以下だ。21世紀に入って言われ続けてきた、資本と労働の間の分配率の変化である。 株式会社が利益を増大させ、それが資本家に配分され、労働者に配分されなければ、株式市場は盛り上がるが、実体経済の消費は縮小し、両者は乖離する。21世紀の特徴は、人的資本を蓄積した一部の著名経営者およびいわゆる勝ち組が、人的資本投資へのリターンとして多額の収益を得た。一方で、単純労働者の賃金はまったくと言っていいほど上がらず、配分が偏っているということである。 これが21世紀の格差社会であり、いわゆる資本家ではなく、起業家、経営者が富を独占している、という問題である。これが第三の理由で、資本家であれ、経営者であれ、株式市場関係者は富を蓄積し、それに無関係な人々は相対的に非常に貧しくなるということだ。よって株式市場が盛り上がろうと、実体経済はそれほど拡大しない。 しかし、これらの3つの説明は、論理的には正しいが、株式市場と実体経済の乖離をもたらす影響力としては、実は非常に小さい。もっと根本的で、すべてを押し流してしまうほどの強力な理由があるのだ。 それは、前述のとおり、株式市場と実体経済には別の生き物が住んでいて、それぞれの生き物はそれぞれの論理と思惑で行動するから、その結果としてのマクロ的な実体経済市場、株式市場全体はまったく異なった様相を呈するのである』、さすが行動経済学者らしい解釈だ。
・『景気が良くなることと経済成長は「別物」  どういうことか、説明しよう。実体経済市場は何によって動かされるか。支出である。人々や企業、そして政府などが支出をする。その支出の合計がGDPでありマクロ経済活動である。実際に支出された額の合計である。 したがって、人々の日々の経済活動の結果が集約されているのである。これについては、多くの人が理解している通りだが、2つ注意点がある。 第一に、短期的に消費が増えれば景気は良くなるが、景気は良くなれば必ず悪くなる。経済成長とは別物である。 第二に、好循環という言葉が多用されすぎている。経済はいったん回り始めれば自然と回り続けてそれが経済成長となると誤解されている。だが、それはまったくの誤りで、好循環と経済成長とは無関係で、消費を増やしお金をぐるぐる回せば、景気が良くなり、成長するのではない。短期的には景気は良くなるが、逆に投資にまわすお金はなくなり、長期的な成長性は失われ、むしろ経済成長率は低くなる。 高度成長期の「投資が投資を呼ぶ」という好循環と、消費刺激により経済をまわす、と人々(特に政治家)が考えていることはまったくの別物だ。もともと資本が不足しており、実物へ投資したくても金がなくて投資ができないときは、資金が供給されて設備投資が増えれば、生産が増えて、利益も増える。それにより、さらなる設備投資が可能になり、さらに生産力が上がる、という循環である。 これは、もともと需要はあるのに、資本不足で投資不足になっている場合のことである。現在のように、資本が余りまくっていて、よい実物投資機会があれば、いくらでも資金を融資したいと銀行が思っているような状況ではまったく当てはまらない。 無駄な投資を行って生産しても、それは売れず赤字が膨らむばかりだろう。あるいは、どこかの企業のように、社運をかけた投資をしても、世界的な競争には勝てる保証は全くなく、危機に陥るだけである。 一方、株式市場においては、この「お金をぐるぐる回すと好循環になる」という実物市場においては誤解でしかない論理が見事に成立しているのである。 つまり、株式を誰かが買う。買うから上がる。上がったからさらに上がると思う投資家が出てくる。彼らも買う。さらに上がる。上がったから売ると儲かる。儲かった金でさらに別の株を買う。すると、この別の株も上がる。このように、株は買いが続けば、上がり続けるのである。 そうすると、上がったところで売って儲けた人が出てくるだけでなく、売っていないのに「儲かる人」が出てくるのである。いや、むしろこちらのほうが大半である。 つまり、市場で成立する株価が以前より上がっている。前に買った人は買い値よりも市場価格のほうが高い。つまり、簿価よりも時価のほうが高い。含み益が生じているのである。 そして、時価が常に正しいと思い込めば、投資の教科書には(ファイナンス理論においても)、ついている市場価格は常に正しいと書いてあるから、この含み益は、実現利益と違いはなく、利益である。資産総額が増えるのである。よって、強気になってさらに投資をする。つまり株を買う。だから、株がさらに上がる。こういうメカニズムである。 なんとも不思議な世界だが、もしも「おかしい」と思った方がいれば、そう、あなたは正しい。このロジックにはトリックがある。それも2つある』、どんな「トリック」なのだろう。
・『「2つのトリック」とは?  ひとつは「市場価格は常に正しい」というものである。この前提は単純に間違いだ。 市場価格とは、理論的に正しい価格でも、現在の需給を反映した現実の市場ニーズの集計結果でもない。「たまたまついた値段」に過ぎないのである。誰かが間違って過大評価し、買いだ、と思って買いまくれば、価格は急騰する。一方、もし過大評価しても、実際に買わなければ株価は上がらない。ヤフーオークションの結果と同じなのである。 もうひとつは、株価が上がったから、さらに上がると思う投資家が出て来る、というところである。まるでねずみ講のようだが、実際、私はリーマンショック前に出版した著作「すべての経済はバブルに通じる」では、株式市場とはねずみ講であると冒頭で断言し、「この前書きだけがすばらしい」と当時アマゾンの読者レビューに書かれたものだ。 買えば上がり、上がれば買う、という連鎖が起きれば、ここで書いたような、株価上昇の循環が起こるが、これが起こることは保証されたわけではない。上がったら買うような、株価上昇に追随する投資家がいなければ、これは実現しないからである。これが実現するパターンはただひとつ。バブルである。バブルの時には、これが実現する。) そして、今は、まさにこの状況である。「コロナのワクチンがついに開発された!買いだ!ワクチンが出れば、小売流通などこれまでの負け組も回復する!」などと言って株が上がる。だが次の日には、経済指標が発表され、予想よりも悪く、失業者が高止まりだったりする。 その次の日には、新型コロナ感染者が急増し「ニューヨークやロンドンではロックダウン(都市封鎖)の可能性がある」などと報道される。すると、デジタル関連銘柄が上昇し、また経済対策期待が膨らみ、結局はオールドセクターも上昇する。そして、この上昇の流れに多くのトレーダーが追随する。 ここからわかることは、まず、今は明らかにバブルであるということだ。モーメンタムトレード、つまり「流れに乗る投資」が有効であり、多くの人が行っていることがバブルの証左であり、またバブルを実際に作っている。バブルをさらに膨らましている』、「今は明らかにバブルであるということだ。モーメンタムトレード、つまり「流れに乗る投資」が有効であり、多くの人が行っていることがバブルの証左であり、またバブルを実際に作っている。バブルをさらに膨らましている」、との診断には同感である。
・『株式市場とは「期待だけが重要」な世界  ここに、最重要な事実が現れる。「バブルは作られている」のである。それを作っているのは、追随買い、という投資行動であるが、この投資行動を生み出しているのは、「株価はまだ上がるはずだ」という期待である。つまり、期待が買いを生み、買いが上昇となり、この上昇が期待をさらに膨らませ、それがさらなる買いを膨らませる。すなわち、期待が株価を動かしているのであり、期待が自己実現しているのである。 株式市場とは、期待が自己実現する世界であり、真実はどうでもよい。期待だけが重要であり、実体経済においては、事実を変えることはできないから、期待と現実が乖離していることこそが、株価と実体経済が乖離している現象を生み出しているのである。 そして、最後は、期待は裏切られ現実に引き戻される。それゆえ、期待によって生まれた株価は持続せず、結局は現実、すなわち、実体経済に引き戻されるから、「株式市場と実体経済は、一致するはずだ」「連動するはずだ」と主張する人が出てくるだろう。実際、教科書の議論はそういうことだ。 では、教科書と現実(あるいは現実の側を主張する私)は何が違うのか。教科書は必ずしも間違っていない。しかし、それは10年に一度のバブル崩壊のときにだけ実現する、ということであり、10年に1度だけ、正しくなる、というだけのことだ。 そして、その連動は、悲劇的でドラスティックなものであり、日々連動するわけではないのだ。ただ、それだけのことである。その10年に一度が今やってきていない、というだけのことなのだ』、「最後は、期待は裏切られ現実に引き戻される。それゆえ、期待によって生まれた株価は持続せず、結局は現実、すなわち、実体経済に引き戻される」、「しかし、それは10年に一度のバブル崩壊のときにだけ実現する」、今回はどうなのだろうか。

次に、2月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「日経平均3万円超え、「攻め時」と「引き時」を真剣に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263286
・『日経平均3万円超えで中高年はなぜ「嫌な予感」がするのか  経済人って、理屈抜きで悪い予感を感じるときがあるものです。私だけでなく、50代以降の結構多くの経営者やビジネスパーソンが、理屈ではなく予感として、日経平均株価が3万円を超えたことについて「嫌な気配」を背筋に感じています。 先に、断言しておきます。私は経済予測の専門家ですが、「株価に限っては未来予測が難しい」ということは常識です。後でお話しするように、株価については例外的に1つだけ高い確度で予測できることがあるのですが、それ以外の予測は難しいです。 たとえば、「今年の年末の日経平均はいくらになっているのか?」「今年、爆上げする銘柄は何か?」といった予測は、どのプロのアナリストが行っても大概外れます。現実に、プロのファンドマネジャーが運用する投資信託の6~7割は、パフォーマンスで平均株価に負けているという分析データもあります。 つまり「3万円を超え、これから日経平均がどうなるのか?」という予測は、まず当たらないというのがアナリスト界隈の常識です。一方で予測とは別に、予感として「これからひどいことが起きそうだ」と私のような中高年のビジネスパーソンは感じてしまう。その理由は、過去によく似た「強烈な体験」をしているからです。 前回、日経平均株価が終値で3万円を超えたのは1988年12月7日のことでした。1988年はバブル経済の真っ只中で、4月から10月までの約半年間、日経平均は2万7000円から2万8000円の間のボックス相場で膠着していました。今思い起こすと、あたかもそこから上に上がるのが怖かったかのようでした。そのトレンドが崩れたのが11月で、そこから株価の上昇が始まり、1988年12月に初めて3万円台に到達します。 そして翌1989年は、株価はもみ合いながらも、年間を通じて一貫して上昇し、1989年12月29日の大納会で、運命の3万8915円87銭という、史上最高値を記録します。この年のクリスマスイブは、バブル熱狂のピークの日曜日でした。都内の高級フレンチレストランは、1人3万円の特別ディナーコースしか注文できないにもかかわらず、本当に予約がとれない状況でした。しかもそこでは、高級ワインをボトルで追加注文するのが、お客としてのマナーだったと記憶しています』、「予感として「これからひどいことが起きそうだ」と私のような中高年のビジネスパーソンは感じてしまう」、私も同感だ。
・『「日経平均は5万円を超えて上がる」 株価暴落を予測した専門家はゼロ  今でもよく覚えていますが、この年末において1990年の株価が下落すると予測した経済アナリストは、ほぼ皆無でした。平均的なアナリストは、1990年の日経平均は4万5000円くらいを予測していて、強気のアナリストが「日経平均は5万円台に突入する」「いや、6万円台も十分にあり得る」と言っていました。ほとんどのアナリストが、1990年のバブル崩壊を予見できなかったのです。 現実には、1990年3月に大蔵省が「土地関連融資の抑制について」という、いわゆる総量規制を打ち出します。1986年に公定歩合(当時)が大きく引き下げられたことからバブルが始まったのですが、日銀はここで公定歩合を急速に引き上げます。1989年5月まで2.5%だった公定歩合は小刻みに上がり、1990年3月に5.25%、8月に6.0%と金利が急上昇します。そして、土地と株のバブル崩壊が始まります。 日経平均は1990年の2月下旬に急落の兆候を見せ、3月22日に3万円台をいったん割ります。その後、わずかな期待をかけて株価は何度か踏みとどまろうとしましたが、1990年8月2日を最後に3万円台からさよならし、その後30年続く日経平均の低迷時代に突入するのです。 私たち50代以上のビジネスパーソンが、「日経平均が3万円を突破した」というニュースを聞いて、理屈ではなく感覚的に寒気を感じてしまうのは、30年前にそういう「嫌な体験」をしているからです。訓練された犬がベルの音を聴いてよだれを出すように、私たちの年代のビジネスパーソンは、パブロフの犬の条件反射のように、「日経平均3万円」と聞くと、これから長く寒い「冬の時代」がやってくるような気がして、心が縮こまってしまうのです。 歴史を検証してみれば、バブルが起きたのは当時の記録的な低金利が理由で、バブルが崩壊したのはそれを急速に是正しようとしたからでした。今、コロナ禍にもかかわらず日経平均が上昇しているのも、アベノミクス以降、日銀のマイナス金利政策が継続しているからです。理屈でいえば、国の金融を司るトップレベルの人が突然「出口戦略を実行する」などと言い出さない限り、この状況は続くでしょう。 よって足もとに関しては、論理的には日経平均が3万円を突破したからといって、「まずいことが起きそうだ」と考える根拠はありません。普通に考えれば、今年後半にはワクチンが普及し、新型コロナ禍も収まって、平均株価は過去最高値の突破を視野に上昇しても、おかしくないはずです。理屈では、そうなるという話です』、「訓練された犬がベルの音を聴いてよだれを出すように、私たちの年代のビジネスパーソンは、パブロフの犬の条件反射のように、「日経平均3万円」と聞くと、これから長く寒い「冬の時代」がやってくるような気がして、心が縮こまってしまうのです」、その通りだ。
・『株式相場の大調整を招く「2つのかく乱要因」とは  ここで、話は冒頭に戻ります。株価に関しては未来予測が難しいです。アナリストが予想した通りに動くことがないのです。 では、もし今回も日経平均が順調に上昇する未来が訪れないとしたら、この先、どのようなかく乱要因があるのでしょうか。あり得そうなシナリオを、2つ提示してみたいと思います。 1つは、単純な市場心理です。仮に市場の参加者の多くがバブル崩壊の経験者で、共通の思考として過去のバブルの経験から過度に「3万円」というラインを警戒しているとすれば、何かのきっかけでそれが株価崩壊に転じる可能性は、十分にあります。なにしろ株価というものは、実体経済よりも「美人投票」に近く、皆がそう思う方向へと動くのだから。 私の個人的な予測では、この市場心理による危険水準ラインは3万円ではなく、むしろ過去最高値に近づく3万8000円台に入ったときに、明確化しそうです。 「経済実態を伴わないにもかかわらず、日経平均が過去最高値を突破」といったニュースが私たちの耳に入ったときに、市場に参加している投資家たちがどう感じるかが問題です。 仮に「これが引き時の合図だ」と考える人が一定数いて、そこで売りが始まった場合に、市場心理による株価下落が始まるシナリオはあり得るのではないかと、私は警戒します。 もう1つのシナリオは、アメリカの金利政策の変更です。グローバルな金利を見ると、日本だけでなくEUや英国も、2010年代から直近まで継続して超低金利政策をとっています。ところがアメリカだけは、2016年から2019年にかけて金利を引き上げにかかっていました。その政策が変化したきっかけがコロナ禍であり、2020年に緊急利下げを発表します。 これが、コロナ禍で急落したアメリカの株価が持ち直した直接のきっかけです。そして現時点で、アメリカの金融当局であるFRBは、コロナ禍から経済が回復し、完全雇用に近づくまでは、このゼロ金利政策を維持すると表明しています。市場の予想では、2023年くらいまで続くのではないかという期待がありますが、問題はその期待が裏切られた場合です。 本来、FRBから見れば、最初は「数カ月間の緊急事態対策」だったはずのゼロ金利が長期化する状況は、「やむを得ないとしてもよいことではない」と、本音では考えているはずです。仮に、ワクチンの効果でコロナ禍から経済が脱する状況が見えてきたとしたら、FRBが早期に金利を元のあるべき水準に戻そうとする可能性はあると思います。 そうなると、市場が思っていたよりも早くアメリカの量的緩和が終わり、ダブついていたはずのマネーが反転することになります。これが、日経平均の下落が起こり得るもう1つのシナリオです。 歴史を振り返ると、仮に1989年と同じことが起きるとすれば、日経平均はこの先、1年かけて着々と3万8915円に近づいていくかもしれません。そして、2022年4月頃に最高値を更新するとすれば、その時期とFRBの政策変更時期が重なる危険性は、十分にあり得そうだということです』、「2022年4月頃に最高値を更新するとすれば、その時期とFRBの政策変更時期が重なる危険性は、十分にあり得そうだ」、確かにその可能性には警戒しておく必要がありそうだ。
・『日経平均続伸の例外シナリオも やはり株価予測は難しい  さて、最後にもう1つ、別の要素について話しておきたいと思います。株価について、この先1年でどうなるかという予測は非常に難しいというのが今回の話の前提ですが、冒頭で述べたように、その理論には1つだけ例外があります。 それは、超長期に限って言えば、平均株価は経済の発展する方向へ動くということです。その観点で比べると、失われた20年を経験した日本経済と違って、アメリカ経済は過去30年間、長期的な発展を経験してきました。より正確に言うと、アメリカの大企業は国内経済以上にグローバル経済の発展の恩恵を受け、継続的に業績を拡大させてきました。 以前、日経平均が3万円を超えていた1988年から1989年までの時代、アメリカのダウ平均株価は2000ドル台でした。それが30年後の2021年には、ダウは3万ドル台。いつの間にか、名目数字で日経平均を超えています。 数十年単位の超長期で見た株価は、そのような実体経済が進む方向に合致します。日本の場合、1989年頃のバブル時代は、実は日本企業がアメリカを超えるのではないかというくらい、絶好調の時代でした。しかし、トヨタ自動車も日産自動車も、ソニーも日立製作所も東芝も、そこで成長は一時停滞してしまいます。 東芝と日産はさておき、近年のトヨタやソニーの決算の回復ぶりを見ると、すでにバブル経済の頃のピークを超え、その次のステージへと近づいている感があります。その意味では、今後日本を牽引する企業の株価が本格的に上がっていくのは、これからなのかもしれません。 怖い、怖いと思いながらも日経平均が上がっている背景には、金融緩和ばかりでなく、コロナ禍で収益構造を変えて善戦する企業の努力があるのだとしたら、投資家にとってはまだ「攻め時」であって、「引き時」はもっと先だと考えるべきなのかもしれません。 ただ、最後に率直な気持ちを述べると、私はやっぱり「投資は難しい」と思っています』、最後の部分は正直な述懐のようだ。

第三に、2月23日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「日本人が「株価3万円突破」を手放しで喜んではいけない、重大な理由」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80470?imp=0
・『かつてのバブル相場での「モラルハザード」  先週月曜日(2月15日)。東京株式市場で日経平均株価が3万円の大台を回復した。これは、1990年8月以来、実に30年半ぶりという節目である。 新聞やテレビは、回復の原動力として様々な要因を報じた。曰く、去年の10~12月のGDP(国内総生産)が2期連続で大幅な伸びを記録した、企業収益が予想されたほど悪くなかった、米国を含めて海外株が堅調だといった具合だ。 中には、新型コロナワクチンの接種スタートを歓迎したと報じるところもあった。だが、これらはどれも決め手とは言えない。最大の要因が日銀を中心とした各国の金融緩和にあることは明らかだ。 少なくとも、現下の新型コロナウイルス感染症危機が完全に収束するまでは、日銀を始め各国・地域の金融緩和は続く見通しで、株価が上昇し易い環境も維持されるだろう。日経平均が1989年末に付けた史上最高値(3万8915円)を更新する日が来てもおかしくはない。 しかし、“日銀相場”を手放しで歓迎することはできない。銀行や企業のモラルハザード(倫理の欠如)など、深刻な副作用を伴うからである。 振り返れば、1986年頃にスタートして1989年末に終わったとされる株式のバブル相場も、凄まじいモラルハザードを生みだした。 当時、筆者は、株の街・兜町にある東京証券取引所の記者クラブ「兜クラブ」詰めの新聞記者で、そのモラル崩壊の現場を目の当たりにした。 中でも壮絶だったのは、日経平均が最高値に向かう過程の株価形成だ。後に「証券不祥事」とか「損失補てん事件」と呼ばれるスキャンダルに発展したが、その構図はこうだ』、「町田」氏がバブル期に「「兜クラブ」詰めの新聞記者」だったとは初めて知った。異常事態をインサイダーとして観ていたようだ。
・『リスク感覚がマヒしていた  多くの大企業が株式や転換社債を発行したり、銀行から借り入れたりして巨額の資金を調達。「財テク」と称し、この資金を株式市場で運用することで多額の利益を稼ぎ出そうとした。財務部は花形部署のひとつだった。 運用を受注したのは、大手や準大手の証券会社だ。証券会社は資金運用を引き受ける際、密かに、文書もしくは口頭で、違法行為の「利回り保証」や違法行為スレスレの「損失補てん」契約を結んだ。契約の中には、担当者が名刺に「利回り保証年7%」などと書き込んだだけのものもあった。 こうした契約は、事前に顧客企業の了解を得なくても、証券会社の裁量で株式を売買できるファンド(通称「営業特金」)に資金を組み込むことを意味し、猛烈な回転売買を可能にした。証券会社にとっては、株式の委託売買手数料を好きなだけ獲得できる仕組みだった。 証券会社は、個別銘柄の経営実態を無視して相場を吊り上げた。営業特金は膨らみ続け、企業業績のかさあげに貢献した。「利回り保証」や「損失補てん」契約もあり、企業はリスク感覚が麻痺、実態は無謀な投資に過ぎないのに、割りの良い収益源を確保したと勘違いしていた。 一方、当時の大蔵省は、複数の証券会社の検査を通じて懸念を募らせていた。ひとたび相場が下落に転じたら、証券会社には保証や補てんをする体力がなかったからだ。 増資・起債で融資の顧客を、資金運用で預金の顧客を奪われた銀行からの苦情も無視できなかった。そして、大蔵省が「さすがに、目に余る」「いつまでも続くわけがない」と、本格的な規制に乗り出す腹を固め、狂乱の株式バブル相場は終焉を迎えることになったのだ。 株式相場は1990年の年明けから一転、先の見えない長期下落局面に突入した。経済実態を離れて大きく吊り上げられていたうえ、大企業と証券会社の癒着が露呈し、市場への信頼が根底から崩れてしまった』、金融引き締めに転じる時期が遅れただけでなく、引き締めの度合いも強烈過ぎた。
・『原動力は一貫して日銀の金融緩和  ほぼ10年が経って2000年代に入ると、ITバブルや郵政相場で多少持ち直しかけた時期もあったが、いずれも長続きはしなかった。リーマンショックの影響が長引き、日経平均は2009年3月にバブル崩壊後の最安値(7054円)を記録した。 さらに12年近い歳月が経過した先週月曜日。日経平均は安値から4.2倍以上に上昇し、30年半ぶりに3万円台を回復した。 ほぼ一貫して原動力になったのは、日銀の金融緩和だ。その第1弾は、白川方明前総裁時代の2010年12月に放たれた。株価の底割れを防いで経済の好循環を作り出し、デフレ経済を脱却するという名目で、株式を組み込んだ上場投資信託(ETF)の購入が始まったのだ。当時の購入枠は4500億円だった。 ETF購入は、黒田東彦現総裁のもとで合計4回にわたって強化された。直近は昨年3月のことで、購入枠の上限が年間12兆円に膨れ上がった。背景には日経平均が1カ月あまりの間に3割以上も急落するコロナショックがあり、安倍前政権の過去最大級の経済対策に呼応する形で、黒田日銀も包括的な金融緩和策を打ち出したのだ。 日銀は、ETFの購入拡大に加え、積極的な国債買い入れ、ドル資金の潤沢な供給、新型コロナで苦境に陥った企業を支援するための特別オペなど様々な対応を講じている。 海外でも、トランプ前米政権が2兆ドル規模の経済対策を、FRB(米連邦準備理事会)が量的緩和を実行したほか、EU(欧州連合)やECB(欧州中央銀行)も続々とかつてない大規模な対策を実施した。 これらにより「世界的カネ余り現象」が起きた。経済の下支え期待が膨らみ、世界の市場が平静を取り戻す中、日経平均も半年足らずでコロナショック前の水準を回復した。 その後もほぼ一本調子の上昇を続けて、先週の大台回復が実現した。「資産バブル」と呼ばれ、株式に限らず、商品相場や暗号資産価格なども高値を付けている』、なるほど。
・『金融緩和は継続せざるをえない  数字を見ても、去年1年間の市中への資金供給の大きさは明白だ。資金供給の結果として、日銀の保有資産は昨年12月末に前年より23%増加、金額ベースで129兆円多い702兆円に膨張した。この増加額はデータが開示されている1998年以降で最大なのだ。なりふり構わぬコロナ対策の姿が伺える。 このうち、株式相場を押し上げる効果の高いETFは簿価ベースで1年前の25%増、金額ベースで7兆円増の35兆円(簿価ベース)となった。日銀に支えられて、東証1部の時価総額はコロナショックで急落した去年3月に比べて約130兆円も増加した。 こうした株式相場が上昇し易い環境は、今後も当分の間、維持される可能性が強い。というのは、コロナ危機が去り、経済が正常化するまで、日銀に限らず、各国は大規模な金融緩和を継続せざるを得ないからだ。 その一例が、米FRBだ。昨年9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で、コロナ対策に万全を期すため、少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持するという方針を表明した。 また先週木曜日(2月18日)。黒田日銀総裁は菅総理と会談、「金融緩和を相当長く続ける必要があることを伝えた」と明かしている。 これらは、昨年のコロナショックのような混乱が再発すれば、日銀やFRBが迷うことなく再び大胆な金融緩和策を講じるとの意思表明に他ならない。 こうした状況では、相場が大きく下がるとは考えにくい。投資はあくまでも自己責任で、安易な投資を推奨する気は毛頭ないが、上昇し易い世界的なカネ余り状態が続くとみるのが自然だろう』、FRBでハト派だったイエレン氏が財務長官になったことも、緩和継続の可能性が高まったようだ。
・『上下する市場の機能が損なわれている  急激に強いインフレ懸念が台頭するとか、相場が過熱し過ぎるといった想定外の事態が起きない限り、環境が大きく変わることはなさそうだ。 とはいえ、金融緩和は決して良いこと尽くめではなく、多くの副作用が生じている。本来、市場は上がったり下がったりして、経済を映す鏡となるものだが、その機能は損なわれたままだ。 銀行への資金供給や企業の救済オペが、コロナ危機以前から破綻しかねない状態にあった銀行や企業の経営実態を覆い隠し、ゾンビ銀行やゾンビ企業の闇雲な延命策となっていることも深刻である。 日銀のETF保有残高は時価換算すると、45兆円を超えた模様だ。これは、日銀が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜いて、日本株の最大の株主になったことを意味している。「モノ言わぬ株主」である日銀が、緊張感のない経営を助長し、モラルハザードを加速していることも、コーポレートガバンスの観点から看過できない問題である』、国債の大量購入により国債市場は国債発行額の影響を受けなくなり、財政拡大へのブレーキが鈍り、これが近年の財政規律喪失につながっていることも無視できない。また、中央銀行資産のGDP比は、日本が米国やECBに比べダントツに多く、それだけ不健全として円が信認を失う危険性も高い。緩和で浮かれている段階ではなく、超緩和からの出口も内密にでも検討しておくべきだろう。
タグ:(その10)(「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い 「コロナで不景気でも株価上昇」の正しい考え方、日経平均3万円超え、「攻め時」と「引き時」を真剣に、日本人が「株価3万円突破」を手放しで喜んではいけない 重大な理由) 「「今の株高は異常だ」と思う人の根本的な間違い 「コロナで不景気でも株価上昇」の正しい考え方」 小幡 績 東洋経済オンライン 株式・為替相場 株式市場と実体経済は「ほぼ無関係」である 「株式と実体経済が連動していたのは過去の話である。1980年代以降の日本、あるいは1990年代以降の欧米ではもはや連動しなくなり、21世紀においては地球上のどこでも連動しなくなったのだ。 なぜ株価と実体経済は連動しなくなったのか?理由は単純だ。財市場と資産市場は別の世界のものだからだ」、ここまで言い切るとはさすが「小幡 績氏」だ 株式市場と実体経済が連動しない「小さな3つの理由」 景気が良くなることと経済成長は「別物」 どんな「トリック」なのだろう 「2つのトリック」とは? 「今は明らかにバブルであるということだ。モーメンタムトレード、つまり「流れに乗る投資」が有効であり、多くの人が行っていることがバブルの証左であり、またバブルを実際に作っている。バブルをさらに膨らましている」、との診断には同感である 株式市場とは「期待だけが重要」な世界 「最後は、期待は裏切られ現実に引き戻される。それゆえ、期待によって生まれた株価は持続せず、結局は現実、すなわち、実体経済に引き戻される」、「しかし、それは10年に一度のバブル崩壊のときにだけ実現する」、今回はどうなのだろうか ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博 「日経平均3万円超え、「攻め時」と「引き時」を真剣に」 日経平均3万円超えで中高年はなぜ「嫌な予感」がするのか 「予感として「これからひどいことが起きそうだ」と私のような中高年のビジネスパーソンは感じてしまう」、私も同感だ 「日経平均は5万円を超えて上がる」 株価暴落を予測した専門家はゼロ 「訓練された犬がベルの音を聴いてよだれを出すように、私たちの年代のビジネスパーソンは、パブロフの犬の条件反射のように、「日経平均3万円」と聞くと、これから長く寒い「冬の時代」がやってくるような気がして、心が縮こまってしまうのです」、その通りだ 株式相場の大調整を招く「2つのかく乱要因」とは 「2022年4月頃に最高値を更新するとすれば、その時期とFRBの政策変更時期が重なる危険性は、十分にあり得そうだ」、確かにその可能性には警戒しておく必要がありそうだ 日経平均続伸の例外シナリオも やはり株価予測は難しい 私はやっぱり「投資は難しい」と思っています』、最後の部分は正直な述懐のようだ 現代ビジネス 町田 徹 「日本人が「株価3万円突破」を手放しで喜んではいけない、重大な理由」 かつてのバブル相場での「モラルハザード」 「町田」氏がバブル期に「「兜クラブ」詰めの新聞記者」だったとは初めて知った。異常事態をインサイダーとして観ていたようだ リスク感覚がマヒしていた 金融引き締めに転じる時期が遅れただけでなく、引き締めの度合いも強烈過ぎた。 原動力は一貫して日銀の金融緩和 金融緩和は継続せざるをえない FRBでハト派だったイエレン氏が財務長官になったことも、緩和継続の可能性が高まったようだ。 上下する市場の機能が損なわれている 国債の大量購入により国債市場は国債発行額の影響を受けなくなり、財政拡大へのブレーキが鈍り、これが近年の財政規律喪失につながっていることも無視できない。また、中央銀行資産のGDP比は、日本が米国やECBに比べダントツに多く、それだけ不健全として円が信認を失う危険性も高い。緩和で浮かれている段階ではなく、超緩和からの出口も内密にでも検討しておくべきだろう
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日本のスポーツ界(その31)(弟子・正代が優勝争いの最中 時津風親方の5夜連続「雀荘通い」、中学生の首を絞めて意識不明 暴力的な柔道指導を問題視しなかった「全柔連」は変われるのか、森辞任の陰で「不適切会計の理事」が生き延びたレスリング協会《スポーツ界お歴々の馴れ合いは終わらない?) [社会]

日本のスポーツ界については、昨年11月6日に取上げた。今日は、(その31)(弟子・正代が優勝争いの最中 時津風親方の5夜連続「雀荘通い」、中学生の首を絞めて意識不明 暴力的な柔道指導を問題視しなかった「全柔連」は変われるのか、森辞任の陰で「不適切会計の理事」が生き延びたレスリング協会《スポーツ界お歴々の馴れ合いは終わらない?)である。

先ずは、本年1月27日付け文春オンライン「弟子・正代が優勝争いの最中 時津風親方の5夜連続「雀荘通い」写真」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/43087
・『新型コロナの感染が広がり、力士65人が休場する厳戒態勢の中で開催された大相撲初場所。1月24日に千秋楽を迎えたが、優勝を争っていた大関・正代の師匠、時津風親方(元時津海・47)が場所中に連日、雀荘に通っていたことが「週刊文春」の取材で分かった。 1月18日、時津風親方は午後6時過ぎに両国国技館から車で帰宅すると、午後7時前に再び車で部屋を出発。港区赤坂の繁華街にあるコインパーキングに車を止めると、コンビニのATMで現金を下ろした後、雑居ビル内にある雀荘に入っていった。結局、親方はこの雀荘に1月18日から22日まで5夜連続で通い、部屋に帰るのは午後11時前後。そのうち3回はコンビニのATMで金を下ろしていた。 日本相撲協会はコロナ対策のガイドラインを策定しており、本場所中の不要不急の外出は、親方も含めた全協会員に対して禁止している。さらに協会が作成した感染予防を啓蒙するポスターにも、行ってはいけない場所として「雀荘」と明記されている。 時津風親方は昨年9月の秋場所前、不要不急の外出が禁止されている中で宮城県に旅行し、居酒屋で会食した上にゴルフコンペに参加。さらに福岡市にも滞在するなど、相撲協会のコロナ対策ガイドラインに違反し、10月1日に委員から年寄への2階級降格処分を受けていた。さらに2010年には野球賭博にも関与し、同じく2階級降格処分を下されている。 1月26日、相撲部屋から出てきた時津風親方を直撃。場所中に雀荘通いをしていたかと問うと、「行ってない、行ってない」と答え、車で走り去った。 小誌の直撃直後、時津風親方は複数の関係者に相談。同日夕方には相撲協会に呼び出され、事情聴取を受けた。協会関係者が明かす。「その晩、時津風は『はめられた』、『おれはもうクビよ』と周囲に話していたそうです」 だが、親方の「乱倫」はこれだけではなかった。弟子の正代が大栄翔と優勝争いを繰り広げる中、複数回、ある風俗店に通っていたのだ。 1月28日(木)発売の「週刊文春」では、時津風親方の評判、正代との師弟関係、通っていた風俗店、千秋楽翌日の“密会デート”など角界屈指の「名門」時津風部屋で何が起きていたのかを詳報する』、昨日のNHKニュースでは、 日本相撲協会は、時津風親方に「退職勧告」の懲戒処分したようだ 。「正代が大栄翔と優勝争いを繰り広げる中、複数回、ある風俗店に通っていた」とは開いた口が塞がらない。

次に、2月11日付け文春オンライン「中学生の首を絞めて意識不明 暴力的な柔道指導を問題視しなかった「全柔連」は変われるのか」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/43396
・『2月9日、不適切な柔道指導にともなう事故をめぐって、福岡市で柔道教室に通っていた男性・勇樹さん(20)とその父親の正雄さん(50)が、全日本柔道連盟(東京都文京区、山下泰裕会長)を訴えていた裁判(東京地裁)で和解が成立した。正雄さんと代理人が司法記者クラブで会見に臨んだ。正雄さんは和解内容に十分な満足感は得ておらず、「まだスタートラインに立っていない」としながらも、全柔連の今後の対応に期待する姿勢を示した。 原告側によると、勇樹さんは指導者の男性から暴力的な指導を受けたことについて、全柔連のコンプライアンスホットラインに通報。しかし、全柔連は「問題ない」と判断していた。コンプライアンスホットラインは、2013年に発覚した女子柔道の国際試合強化選手への暴力やハラスメント事件を受けてできたもの。代理人は「今回の裁判は、なんのための内部通報制度かを問うもの」と位置付けている』、せっかく作った「コンプライアンスホットライン」も有名無実のようだ。
・『「まいった」の意思表示も無視して絞め技をかけた  勇樹さんは中学2年生だった2014年10月20日、柔道場で乱取り稽古をしていた。そのとき、指導者による首を絞める「片羽絞め」を受け、一時的に意識を失った。絞め技は頚動脈を圧迫して、脳への血流を遮断、意識を失わせるものだった。中学生から使用可能な技だが、意識がなくなる前に、技をかけられた側がタップすれば一本負けとなる。しかし、一度受けるだけでも脳にダメージが残るリスクもある危険な技でもある。 このとき、指導者の男性は、稽古前の勇樹さんに「先週の金曜日に小学生を相手にお前は絞め技を使っただろう」と詰問した。それに対して、勇樹さんは「まったくやっていない」などと否定した。乱取り稽古が始まると、普段は稽古をしない指導者の男性が勇樹さんの相手となり、そのときに絞め落とされ、5秒ほど気を失った。「まいった」の意思表示でもあるタップを無視した。蘇生措置をした後、勇樹さんが意識を取り戻すと、指導者の男性は「これが絞め技ということだ」と言い放ち、再び絞め技をかけた。勇樹さんがタップすると、指導者の男性は「まだ決まっていない。タップが早すぎる」と言った。その後、勇樹さんは3、4秒、意識不明となった。 正雄さんは「一連の実力行使が制裁目的であることは明らか。全柔連倫理規定に抵触する行為である」と主張していた』、「小学生を相手にお前は絞め技を使っただろう」、というのはこれだけでは理解できない。
・『「救急車を呼んでください」と訴えたが...  このとき、勇樹さんが小学生に絞め技をしたと指導者が思ったのは、理由があった。小学生に絞め技をしたと言ってきたのは、女子小学生だった。勇樹さんは当時、初心者。柔道場には20人の子どもがいたが、中学生は3人だけ。女子小学生からすれば、いじめの格好のターゲットになっていた。無視され、バイキン扱いもされた。そのため、一時的に道場に行かなくなることがあった。ただし、この当時、勇樹さんも実力をつけて、いじめに対して、柔道の技で対抗をした。こうした背景について、指導者の男性は聞き取りもしなかった。 勇樹さんは全身がしびれ、頭痛がし、息ができず、話もできない。水筒の蓋も開けられない状態になった。練習が続けられず、休憩した。休んでいる姿を見つけた指導者の男性は「誰に断って休んでいるんだ」と言い、別の指導者も「こんなの大丈夫」「そんな演技をしているんだったら学校に言いつけてやる」と怒鳴りつけた。そんな状態で、その別の指導者は、ランニングを指導したが、勇樹さんはゆっくり歩いていた。勇樹さんは「救急車を呼んでください」と訴えたが、無視された。 勇樹さんは以前の筆者の取材に「指導で絞められた経験はありますが、落とされたのは初めて。直後は泣いていました。怖かったし、何が起きたのかわからないでいました。誰も助けにきてくれない。“なんで落とされたのか”など、いろんな思いが混ざっていました。怖かったと思いましたし、理不尽だとも思いました」と答えていた』、「勇樹さん」と「女子小学生」の間に何があったのか、肝心な部分の説明がないのは不親切だ。
・『「最高裁で、指導者の違法性が確定しても、全柔連は動かない」  帰宅後、正雄さんは異変に気がついた。そのため、市立急患診療センターに連れて行くと、脳神経外科の受診を勧められ、受診すると「血管迷走神経性失神および前頸部擦過傷」と診断された。さらに午後4時ごろ、別の脳神経外科クリニックへ行くと、手がコの字になっていたことをあげて、医師は「過度のストレスによるもの。すごく怖い体験をしたはずだ」と指摘した。 こうした指導者の行為に対して、勇樹さんと父親の正雄さんは、14年11月、福岡県柔道協会に相談。12月には全柔連のコンプライアンスホットラインに通報していた。また、同時並行で、翌15年2月、勇樹さんと正雄さんが原告となり、指導者の男性に対して損害賠償を求めて提訴した。福岡地裁、福岡高裁ともに原告が勝訴。被告が最高裁に上告したものの、18年6月、上告申立てを不受理。最高裁は「指導者の行為」について「行き過ぎ」であり、違法であると認めた。 「なかなか一中学生が裁判を起こせるものではない。それに、最高裁で、指導者の違法性が確定しても、全柔連は動かない」(代理人) この判決を受けて、勇樹さんと正雄さんは、全柔連のコンプライアンスホットラインに相談をしたが、全柔連は福岡県柔道協会に調査を依頼し、「問題はない」と判断していた。この調査方法をめぐって、二人は全柔連に対して、慰謝料として330万円の請求をしていた。「(通報は)福岡県柔道協会の対応をめぐるもの。にもかかわらず、全柔連が当の協会に丸投げをしたのがおかしい」(代理人)』、「全柔連は福岡県柔道協会に調査を依頼し、「問題はない」と判断していた」、当事者の「福岡県柔道協会」が「問題はない」というのは当然だが、そんな馬鹿な「調査を依頼」は全く無意味だ。
・『主な和解内容は4つ  今回の会見にて、正雄さんは「全柔連という巨大な敵に対して闘ってきた。これまで突き詰められるところまで突き詰めてきた。この和解内容の評価は、関係規則を改正する1年後に決まる。本当のスタートラインはその後。私たちは、まだスタートラインに立っていない」と話した。 主な和解内容は、以下の通り。 (1)全柔連のコンプライアンスホットラインについて、加盟団体に調査、処分を委ねる場合の具体的な基準を定め、関係規則を1年以内に改正する (2)意識を喪失させることを目的として絞め技をかけるなどの指導に名を借りた暴力を含め、暴力事件が起きないように、柔道指導者をはじめとするすべての柔道関係者に指針を示すなどして注意喚起し、暴力の根絶に努める (3)通報者と対象者の言い分が異なる場合、双方の言い分を十分に聴取し、通報者に対して適切な事情聴取、情報提供を行う (4)改正した関係規則はウェブサイトへ掲載するなど適切な方法で公開する  なお、原告が求めていた損害賠償を放棄した』、なるほど。
・『「柔道界には隠蔽体質があり、表になかなか出てこない。まずは証拠を集めること」  一方、全柔連への期待も寄せる。20年9月、兵庫県宝塚市の中学校で、冷凍庫に保管していたアイスクリームを無断で食べたとして、柔道部の顧問が生徒2人に校内の武道場で技をかけ、けがを負わせた。生徒が意識を失った後も顔を平手打ちし、目覚めさせ、さらに暴行を続けた。この事件で顧問は傷害罪で起訴された。県教委も懲戒免職処分とした。全柔連は、この元顧問を除名処分とした。正雄さんは「全柔連も変わり始めているのではないか。暴力の根絶には期待したい」と述べた。 暴力的な指導の被害者であった勇樹さん自身はどう思っているのか。正雄さんがLINEで和解を伝えると、「長い間、お疲れ様。十分満足している」との返信があった。正雄さんはこう話す。 「(LINEの返事は)短い文でした。この通りの気持ちかはわからない。基本的には、この裁判は私が仕切った。一度、和解か判決かを(息子に)聞いたことがある。その時は、判決まで闘って欲しいとの気持ちだった。息子は陳述書を書いたが、過去の嫌な記憶を思い出してしまったので、闘うのは限界だったと思う。ただ、息子の中にも過去のこと、終わったことという考えもあったかもしれない。ここで引き際という判断もあったのではないか」 事件から7年間の闘いが終わったことになる。父親として共に闘ってきた。 「息子には負けたまま、負け犬のまま終わってほしくなかった。そのことに意味があると思っている。彼がどう捉えたのかわからないが、メッセージとして伝わっていればいい。その意味では満足している」 また、同じように指導者による暴力的な指導やハラスメントを受けている当事者に対しては、「少なくとも柔道に関しては一つの道筋を作った。次に必要なものは証拠。柔道界には隠蔽体質があり、表になかなか出てこない。苦しんでいる人がいるならば、まずは証拠を集めること。そうすれば、次の闘いができる。苦しいかもしれないけれど、自らを奮い立たせてほしい」と助言した』、何やら甘い幕引きだが、スポーツ関係者の限界なのかも知れない。

第三に、2月13日付け文春オンライン「森辞任の陰で「不適切会計の理事」が生き延びたレスリング協会《スポーツ界お歴々の馴れ合いは終わらない?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/43432
・『東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が、“女性蔑視発言”の責任をとり、会長を辞任する方向で調整に入った。2月12日に緊急会合を開き、辞任を表明するという。 森氏の処遇について「スポーツマンシップに悖る行為をしたのですから、引責辞任は当然ですよ。それに比べて……」と嘆息する人物がいる。日本レスリング協会関係者のAさんだ』、「森氏」は辞任、後任は橋本聖子前担当大臣が就任した。
・『行為の悪質さに比べて軽すぎる処遇  「今年1月27日、2020年に不適切な会計処理を報じられたレスリング協会副会長兼専務理事(当時)の高田裕司氏(66)の処分がついに決まったんです。1月18日にオンラインで行われた臨時理事会では『辞任は免れない』との意見が大多数でしたし、高田氏も『こういうことを起こして申し訳ない』と責任を認め、自身の進退を協会に委ねていたので、てっきり辞任するものだと思っていました。 ですがフタを開けてみれば、単なるヒラ理事への降格。副会長兼専務理事の役職を解くにとどまったんです。高田氏の行為はアスリートたちを裏切る悪質な行為だった。それに比べてあまりに軽すぎる処遇で、協会内では不満が噴出しています」』、どんな「悪質な行為」があったのだろう。
・『国から支払われる専任コーチの報酬を強制的に「寄付金」として集金  高田氏の「悪質な行為」が白日の下にさらされたのは2020年8月12日。共同通信が《コーチ報酬、不適切に会計処理か 国庫補助金、日本レスリング協会》と報じたのだ。全国紙記者が解説する。 「報じられたのは2020年でしたが、不適切な会計処理があったのは2012年のロンドン五輪前後までの約3年間。高田氏はレスリング協会の専任コーチに国から支払われる報酬の一部を、『協会へ寄付するように』と半ば強制的に集金し、16人から計1400万円を集めていたのです。それを被害者でもあった元コーチが告発した。告発を受けて、JOCが日本レスリング協会に調査と報告を命じました」 調査で明らかになったのは、高田氏が集めた「寄付金」の不可解な使い途だった。別の協会関係者Bさんが語る。》』、なるほど。
・『贈り物は「二束三文」の代物だった  「高田氏は、専任コーチから寄付を募る際、『がんばってくれた役員や指導者に何か贈り物をする』と話していたんです。それで1400万円もの金額を集めたわけですから、協会内では『高級時計でもプレゼントするつもりじゃないのか』と噂が流れました。実際に役員らに高田氏から“贈り物”があったのですが、中身は五輪マークや英国の国旗が入った指輪。めちゃくちゃ軽くて、明らかな安物でした。受け取った1人が興味本位で質屋に持ち込んだのですが、『二束三文』と言われたそうです。 国から支払われる専任コーチの報酬を協会に寄付させる行為は、会計検査院が2012年にJOC加盟の12団体に対し『不適切』と指摘しています。指摘を受けて、コーチに寄付をさせていた全日本柔道連盟では、当時の会長が辞任に追い込まれる事態に発展しました。しかし高田氏は会計検査院の目をすり抜けながら寄付をさせていたのです」』、「全日本柔道連盟」と実質的には同様の行為をしたのに、「目をすり抜け」たから軽い処分で済ませるとは酷い話だ。しかも、差額を自分で使ってしまったのであれば、横領罪にも問われかけない極めて悪質だ。
・『大学の特待生から“奨学金のピンハネ”も  この他にも高田氏は、「週刊新潮」(2020年3月19日号)に、以前監督を務めていた山梨学院大学レスリング部(現在は総監督)においても、特待生に対し“奨学金のピンハネ”をしていたと報じられている。 記事によると、大学側から毎月10万円の奨学金を受ける選手に対し、高田氏は「全部持っていたら使ってしまうだろう。俺が管理する」と月4万円を“管理”していた。しかし口座を調べると、数十万円が複数回引き出され、残金がほとんどないことが判明したのだ。約130万円が闇に消えていたことになる。 「高田氏は当初『通帳はないし金もない』としらを切っていたのですが、被害選手とその父親が抗議するとやっと返金されました。しかしこの件が『週刊新潮』で報じられると高田氏が激怒。選手を呼び出し、『これ以上しゃべるな』と迫ったんです。しかし、この“脅迫”ともとれる行為についても『デイリー新潮』(2020年4月18日)が報じました。私たちもこの報道を見て本当に驚きましたよ。高田氏は選手としては著名な方ですが、今は憤りしかない」(同前)』、「高田氏」を刑事告発するような勇気ある人間はいないのだろうか。
・『日本レスリング協会は“馴れ合い”が横行する“お友達協会”  それでも今回、高田氏が辞任を免れたのはなぜなのか。冒頭の日本レスリング協会関係者Aさんは「日本レスリング協会は“お友達協会”ですから」と肩を落とす。 日本レスリング協会の上層部は2003年から変わっていません。福田富昭会長をはじめ、同じ面子がずっと幹部として居座り続けているんです。そのせいで“馴れ合い”が横行しているんですよ。 JOCから命じられた高田氏への調査でも、当初、協会は高田氏と関係の深い元コーチら一部にだけ聞き取り調査を行い、協会側に都合の良いような話を報告書にまとめたのです。もちろん、そんなものが通用するわけがなく、JOC側から突き返されたそうですが……」』、「日本レスリング協会の上層部は2003年から変わっていません」、新陳代謝がない組織は腐敗し易いようだ。ガバナンスが全く効いていないようだ。所轄官庁は文句を言うべきだ。
・『協会上層部が優先するのは、アスリートではなく自分たち  レスリングの名門・至学館大学の谷岡郁子学長から、高田氏を擁護する発言が飛び出したこともあったという。 「高田氏の処遇が話し合われた1月18日の臨時理事会で、多くの参加者が『辞任はやむなし』と見解を示すなか、『高田さんはレスリング協会の功労者だ』と谷岡氏が高田氏を援護したんです。というのも、高田氏と谷岡氏は子ども同士が結婚している親戚関係。身内擁護の発言に多くの参加者が驚きました。しかし結局、高田氏が辞任することはなかった。 谷岡学長は、2018年にもパワハラを告発したレスリングの伊調馨選手に対し『そもそも伊調馨さんは選手なんですか?』と発言し、加害者側である栄和人監督を擁護して炎上した過去があります。レスリング協会上層部が優先するのは、アスリートではなく自分たちなんですよ」(同前) 6月にはレスリング協会の理事改選が予定されている。高田氏や日本レスリング協会が、改選を待たずに自ら進退を決められるか。“五輪のドン”であった森喜朗氏が辞任を決めたいま、レスリング協会の“マットの外”での勝負に注目が集まっている』、「高田氏と谷岡氏は子ども同士が結婚している親戚関係」にあるのであれば、「高田氏」の処分を決める「臨時理事会」で「谷岡氏」は本来、出席すべきではない、少なくとも発言権はない筈だ。それにしても「レスリング協会」は公益法人としての体をなしてないので、解体的再編成が必要だ。
タグ:日本のスポーツ界 (その31)(弟子・正代が優勝争いの最中 時津風親方の5夜連続「雀荘通い」、中学生の首を絞めて意識不明 暴力的な柔道指導を問題視しなかった「全柔連」は変われるのか、森辞任の陰で「不適切会計の理事」が生き延びたレスリング協会《スポーツ界お歴々の馴れ合いは終わらない?) 文春オンライン 「弟子・正代が優勝争いの最中 時津風親方の5夜連続「雀荘通い」写真」 日本相撲協会はコロナ対策のガイドラインを策定しており、本場所中の不要不急の外出は、親方も含めた全協会員に対して禁止 行ってはいけない場所として「雀荘」と明記 時津風親方に「退職勧告」の懲戒処分 「正代が大栄翔と優勝争いを繰り広げる中、複数回、ある風俗店に通っていた」とは開いた口が塞がらない 「中学生の首を絞めて意識不明 暴力的な柔道指導を問題視しなかった「全柔連」は変われるのか」 せっかく作った「コンプライアンスホットライン」も有名無実のようだ。 「まいった」の意思表示も無視して絞め技をかけた 「小学生を相手にお前は絞め技を使っただろう」、というのはこれだけでは理解できない 「救急車を呼んでください」と訴えたが.. 「勇樹さん」と「女子小学生」の間に何があったのか、肝心な部分の説明がないのは不親切だ 「最高裁で、指導者の違法性が確定しても、全柔連は動かない」 「全柔連は福岡県柔道協会に調査を依頼し、「問題はない」と判断していた」、当事者の「福岡県柔道協会」が「問題はない」というのは当然だが、そんな馬鹿な「調査を依頼」は全く無意味だ 主な和解内容は4つ 「柔道界には隠蔽体質があり、表になかなか出てこない。まずは証拠を集めること」 何やら甘い幕引きだが、スポーツ関係者の限界なのかも知れない 「森辞任の陰で「不適切会計の理事」が生き延びたレスリング協会《スポーツ界お歴々の馴れ合いは終わらない?」 「森氏」は辞任、後任は橋本聖子前担当大臣が就任した 行為の悪質さに比べて軽すぎる処遇 国から支払われる専任コーチの報酬を強制的に「寄付金」として集金 贈り物は「二束三文」の代物だった 「全日本柔道連盟」と実質的には同様の行為をしたのに、「目をすり抜け」たから軽い処分で済ませるとは酷い話だ。しかも、差額を自分で使ってしまったのであれば、横領罪にも問われかけない極めて悪質だ 大学の特待生から“奨学金のピンハネ”も 「高田氏」を刑事告発するような勇気ある人間はいないのだろうか。 日本レスリング協会は“馴れ合い”が横行する“お友達協会” 「日本レスリング協会の上層部は2003年から変わっていません」、新陳代謝がない組織は腐敗し易いようだ。ガバナンスが全く効いていないようだ。所轄官庁は文句を言うべきだ 協会上層部が優先するのは、アスリートではなく自分たち 「高田氏と谷岡氏は子ども同士が結婚している親戚関係」にあるのであれば、「高田氏」の処分を決める「臨時理事会」で「谷岡氏」は本来、出席すべきではない、少なくとも発言権はない筈だ それにしても「レスリング協会」は公益法人としての体をなしてないので、解体的再編成が必要だ。
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東京オリンピック(五輪)(その14)(五輪中止を全否定したIOCが進める「開催シナリオ」驚きの中身 デッドラインは「3月中旬」か、山口香JOC理事「国民が五輪開催のリスクを負うことが問題」契約の不透明さに疑義、東京五輪強行開催なら損失は「中止の試算4.5兆円」超え…閉会後の日本を待つ最悪シナリオ) [社会]

昨日に続いて、東京オリンピック(五輪)(その14)(五輪中止を全否定したIOCが進める「開催シナリオ」驚きの中身 デッドラインは「3月中旬」か、山口香JOC理事「国民が五輪開催のリスクを負うことが問題」契約の不透明さに疑義、東京五輪強行開催なら損失は「中止の試算4.5兆円」超え…閉会後の日本を待つ最悪シナリオ)を取上げよう。

先ずは、2月3日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストのさかい もとみ氏による「五輪中止を全否定したIOCが進める「開催シナリオ」驚きの中身 デッドラインは「3月中旬」か」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/42955
・『大会中止か、それともしないのか?(7月23日の東京オリンピック開幕まであと半年を切った。新型コロナの感染拡大による経済の悪化に加え、患者対応で医療機関は崩壊の危機にある。 年明けに共同通信が行った世論調査によると「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%で、7月開催への反対意見は全体の80.1%に達した。「五輪などやるなら、その予算をコロナ対策に」と訴える声は日に日に増している、というのが現状だろう。 年が明けてから、五輪の中止、あるいは延期の方向を示す外国メディアの報道がちらほらと聞こえてくるようになった。そんな中、大きな衝撃を与えたのは1月21日、英国の老舗新聞タイムズによる「連立与党幹部の話として、大会を中止せざるを得ないと非公式に結論」という報道だった。与党内の誰かが喋ったとされたことから、東京都はもとより、政府高官が「誤報だ」と火消しに走る、という異例の事態となったのは記憶に新しい。 ところが、組織委員会の森喜朗会長は1月28日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とのテレビ電話会議の際、「誰一人として反対意見はなかった」とバッハ氏の発言を紹介。開催に向けて引き続き準備を進めると改めて意欲を示している。 IOCら五輪関係者はいったいどのようなシナリオを用意しているのか。五輪ロンドン大会の開催をきっかけに、各国の競技関係者に接触する機会を持つようになった筆者が現地での取材をもとに考察したい』、「森」辞任前の記事だが、そのまま通用する内容なので、紹介した次第。それにしても「タイムズ」は誰から聞いたのだろう。
・『開催に立ちはだかる「3つの大問題」  言うまでもなく、五輪開催にはいくつかの高いハードルがある。その中でも大きく3つの問題に分けられるだろう。 まず1つは、五輪前の最終予選が延期に追い込まれていることだ。例えば水泳アーティスティックスイミング(AS、旧名シンクロナイズドスイミング)の五輪本大会に向けた最終予選は3月初旬の東京開催を断念、5月に延期されることが決まった。一部の代表チームは最終予選に向けた事前キャンプのため、2月中旬の日本入国を目指していたが、大会延期に合わせてこちらもキャンセルとなった。 組織委の発表によると、海外から各国の代表選手が訪日し、五輪最終予選を戦うものとしては、4月中旬に水泳のダイビング(飛び込み)競技の大会が組まれている。ただ、変異株の市中感染が疑われる状況で、選手の日本入国は果たして許されるべきことなのだろうか。 日本の外国人入国にかかる水際対策は「水漏れ」と揶揄やゆされているが、入国にはそれなりの制限がかかっている。代表選手であろうとも日本へのビザなし渡航はできず、事前に各国にある日本大使館等でビザ取得が求められる。 その上、選手らの日本滞在中の行動は全てビザ取得時の事前申告通りにしか動けない格好となっており、観光や街歩きの禁止はもとより、宿泊施設から近所のコンビニに出かけることさえも不可、と厳しく規制されている。まるで見張り付きの行動が求められるほか、五輪本番では過去の大会のように開催都市での滞在を楽しんだり、自国の他の競技の選手を応援したりといった楽しみもないといわれている』、「選手らの日本滞在中の行動は全てビザ取得時の事前申告通りにしか動けない格好となっており、観光や街歩きの禁止はもとより、宿泊施設から近所のコンビニに出かけることさえも不可、と厳しく規制されている」、そんなに厳格だとは初めて知った。外国人選手も気の毒だ。
・『参加選手はまだ6割しか決まっていない  現在IOCが感染対策として提案しているプランでは、選手は自分の出場種目開催の5日前をメドに選手村に入り、出番が終わったら2~3日以内に退去が命じられるという。関係者はこうしたややこしいロジスティクスの問題への対策にも追われることになる。 選手の宿泊施設では警備員やバリケードを導入する構想もあり、計画上では「選手や関係者が日本の一般市民にウイルスをまき散らさない」という予防策が採られている。これでもなお、「最大のパフォーマンスを五輪の場で出せ」と言われるのはとても酷なことに違いない。 2つ目は、国内の厳しいコロナ感染状況である。4月以降、五輪最終予選やプレ大会がいくつか予定されているが、感染状況次第では、またも延期や中止が起こり得る。いくら日本側がプランしても、国際競技連盟や参加国が難色を示しては実施が難しい。 そしてもちろん、日本だけでなく、全世界のコロナウイルスの感染状況も気にしなくてはならない。IOCによると、現時点で、参加枠で選手が確定しているのは全体の61%ほどにすぎないという。全体の15%は競技ごとの世界ランキングで五輪参加枠が埋まるというが、残りの25%ほどはこれから選手選出が進められる。世界的に各競技で予選実施が止まっている中、向こう数カ月で決めるのは前途多難な課題と言える』、「現時点で、参加枠で選手が確定しているのは全体の61%ほどにすぎない」、これから決まる割合がかなりあるのは初めて知った。
・『ワクチン接種は予定通り進むのか  3つ目の問題は、五輪開催に欠かせないワクチン接種だ。欧米先進国を中心に、早いところでは昨年末からすでに接種が始まっている。ただ、英国製のワクチンが欧州連合(EU)諸国に事前の契約通り届かなかった例もあり、各国とも予定通り接種が進むとは思えない。 IOCは1月26日、「出場選手や関係者に訪日前のワクチン接種を推奨する」と述べた。しかし、そもそもワクチンの健康上への影響が完全に分かっていないという事情もあり、こうした方針に異を唱える選手らも出てきている。また、そもそも7月までにワクチンが届かない国も途上国を中心に出てくる可能性が高い。 一方で、日本ではここへきて「60代以上の高齢者等には6月いっぱいで接種を終える(1月25日、産経新聞)」という、いかにも五輪の開催日程を意識した接種スケジュールが浮上した。開催となれば、6月中旬には選手や関係者が各国から日本に上陸してくる。しかし、ワクチン接種が先行する国々でも予定通り進んでいるところはほぼないという状況で、日本だけ順調に進むと楽観的に考えるのは無理がある』、「ワクチン接種」は我が国がむしろ他の欧米主要国より遅れ気味だ。PCR検査は入国時やその他にも適宜行われるべきだ。
・『IOCの重鎮は「無観客開催」を示唆  こうした状況をくんだ悲観論が飛び出す中、五輪界の超大物とも言える人物がついに口を開いた。IOC委員で、ワールドアスレティックス(世界陸連、旧国際陸上競技連盟)のセバスチャン・コー会長は、先のタイムズ紙の報道が出るや否や、ロンドンの地元スポーツメディアに「開催するしないのうわさがあれこれ出てくることこそ、トレーニングを進める選手にとって不利益なこと」と発言。「タイムズ紙の記事を即刻、官邸が否定したことは重要」と述べた。 コー氏は2012年のロンドン五輪組織委の委員長だった。コー氏と面談したことがある東京都や五輪開催自治体の関係者も少なくない。 ちなみにコー氏は、旧ソ連のアフガニスタン侵攻を理由に米国や日本がボイコットした、あの1980年モスクワ五輪の陸上競技での金メダリストだ。自身と同年代の欧米各国の選手が五輪の舞台に立てなかった中、英国は出場を強行。コー氏の話が説得力を持つのは、「TOKYOの中止で、今の選手たちに、モスクワ大会に出られなかった選手らが受けたあの苦しみを味わせたくない」という意識が働いているのかもしれない。 コー氏は「(東京五輪が)仮に無観客で開催されることになっても、それに文句を言う人はいないだろう」と発言。バッハ会長もその後追認するような発言を行っている』、「無観客で開催」言及するとは、積極的なようだ。
・『「何としても開催したい」シナリオは  では今後、開催を前提に起こり得る筆者の想定をいくつか述べておこう。 まず、いくつかの国が「選手を東京に送ってこない」まま開催に踏み切る可能性だ。自国が鎖国またはそれに近い状況にあるからと、泣く泣くこうした判断に至る国もあるだろう。現在、東京への出場を予定している国と地域は206あるが、これが果たしてどのくらい残るのか。 その他、可能性は低いが、全くないとも言い切れない想定が2つある。 一つは、一部の競技・種目の開催地を分散し、他国での遠隔実施になるケース。コロナの規制上、渡航できないことで、やむなく別会場を設定するというもの。 もう一つは、最終選考ができないことなどを理由に「一部の競技が中止となる」というパターン。各競技によって複雑な選考形態があり、五輪本戦までに終わる見込みがなく、競技を辞退せざるを得ないというものだ。ただし、人気種目の陸上や水泳はここに当てはまらない可能性が高い』、そこまで無理をして「開催」した形にする必要はないのではなかろうか。
・『国連機関のお墨付きと保険金の存在  五輪関係者が開催に自信を見せる理由はまだある。IOCは、五輪中止を判断するには国際連合か国際保健機関(WHO)の意見を参考にする考えを明らかにしているが、逆に言えば国連機関からの正式な勧告などがない限り、開催する方針は変わらないとも読める。 フィナンシャルタイムズ(FT)は、東京駐在の五輪グローバルスポンサー2社のアドバイザーの話として「IOCがもし東京五輪を取りやめるなら、国連かWHOに正式な勧告を出すよう特別な要請を行うだろう」とした上で、「こうした勧告があれば、五輪がキャンセルになった際、IOCが取り損なう放送権収入は保険金で補塡ほてんされるほか、開催都市の東京都もIOCへのキャンセル料の支払いを逃れられるだろう」と報道。 このアドバイザー氏の意見として「こうした背景から、IOCも東京都もこうした機関からの正式勧告が出るまで中止を言い出すわけがない」と伝えている。 保険契約を取り巻く実態は1月28日、報道各社が保険ブローカーの見解として一斉に報じた。それによると「IOCは夏季五輪に約8億ドル(840億円)、東京五輪組織委は6億5000万ドル(680億円)の保険をかけていると推定」とあり、中止となっても保険金による補塡はあるようだ。しかし、昨年12月に発表された組織委の予算総額は1兆6440億円に達しており、保険金が出ても10%に満たない』、「五輪中止を判断するには国際連合か国際保健機関(WHO)の意見を参考にする考え」があるのであれば、「IOCも東京都もこうした機関からの正式勧告が出るまで中止を言い出すわけがない」のは確かだ。
・『3月中旬までに「最終決断」か  「そこまでしてでも五輪をやるのか?」といったような想定を述べたが、とはいえ、中止か開催かの決断はいずれ必要だ。 先のFT紙は、東京に駐在する外交官らの話として「自国の政府に、選手遠征のための予算請求を組める日程的限界は3月末まで」と伝えた。 大会前の大イベントと目される聖火リレーが開始されるのは3月25日だ。昨年は、聖火そのものが日本に到着したものの、リレーが動き出す直前で延期が決まった。ちなみに、今年の聖火リレー開始より前に、国内での五輪最終予選の実施予定は組まれていない。 こうした状況からみて、中止なのか、このまま開催なのかの決断時期は3月中旬ごろだろうか。 国内の新型コロナ感染は収束のメドが立っていない上、医療崩壊の懸念も目前の問題として解決が求められている。橋本聖子五輪相は大会期間中に「1万人の医療従事者に交代で従事してもらう」という案も示しているが、目下の状況では国民にも関係者にもこうした案に対するコンセンサスを得るのは難しい。 日本のみならず、世界各国の人々が目前の生活もままならない状況にある中、観客と選手両方が納得する結論をIOCは出せるのか。デッドラインはすぐそこまで迫っている』、「ワクチン接種」が遅れている状況からは、無理をせず、「国際連合か国際保健機関(WHO)」から「中止」の意見を出してもらうのが、最もよさそうだ。

次に、2月10日付けYahooニュース「山口香JOC理事「国民が五輪開催のリスクを負うことが問題」契約の不透明さに疑義」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takaokondo/20210210-00221417/
・『1年の延期を経て、東京オリンピック・パラリンピック  以下、東京五輪と表記)の開幕まであと5カ月。果たして開催できるのか? それとも中止にすべきなのか? 延期も考えられるのか? 1年前に「延期すべき」と声を上げたJOC(日本オリンピック委員会)理事・山口香氏は、いまの状況をどう見ているのだろうか。アスリートたちへの思いも含めて話をうかがった(Qは聞き手の質問、Aは山口氏の回答)』、「山口香氏」の略歴は記事の終わりにある。
・『開催でリスクを負うのは私たち日本国民  Q:東京五輪は今年開催できるのでしょうか。 A:「厳しい状況にはあると言わざるを得ません。国民は疲弊し、医療現場はひっ迫…去年よりも状況が悪くなっているという実感です。世論調査によると、国民の約8割が『五輪を開催すべきではない』と考えています。このことは重要視すべきです。 また、去年と今年ではコロナに対する認識も世界的に変わってきています。去年のいま頃は、未知のウイルスに世界中が怯えていました。コロナの全容が見えなかったからです。でもいまは、『若い人たちは、それほど重症化しない』ことなどが少しずつ分かってきています。各競技の大会も開かれるようになり、新生活様式も世界的に定着してきました。ただ、そのことが五輪を、ややこしくしていると感じます」 Q:といいますと。 A:「もし、今年の五輪の開催地が東京ではなくてパリだったらどうでしょう。私はスポーツ関係者として選手たちを送り出すと思います。リスクはゼロではないですよ、それでも4年間がんばってきたんだから、夢を叶えさせてあげたい。日本国民のほとんどが、そう思いますよね。『気を付けて行ってきてね。私たちはテレビで応援しているから』と。そして帰国した時は2週間の隔離生活をする。ならば、日本に大きな影響はないわけです。 今年開催した場合、他国から東京に選手が来ないんじゃないかとも言われていますけど、そんなことはないと思います。実際、IOC(国際オリンピック委員会)も、そのことは不安視していないでしょう。日本は世界から見れば、感染を辛うじて食い止めている国であり、多くの国が選手を派遣してくれると思います。つまり、選手を送り出す国にためらいはないけれど、受け入れる側は大変なわけです。問題は日本国民であり、五輪を開催することでリスクを負うのは私たち日本国民だということです」 Q:受け入れ側には感染対策の徹底が求められます。 A:「IOCのバッハ会長は『選手の安心・安全は担保します』と言っていますから、アスリートたちにはリスクが少ないかもしれない。でも、五輪後の日本は、どうなるのでしょうか。変異種を含めたウイルスが一気に持ち込まれて、冬に向かって感染が再拡大する可能性も十分に考えられます。そうした事態をみんなが恐れていて、そのことが世論調査『反対8割』として表れているんだと思います。現時点で『開催国・日本の立場に寄り添う』という発想がIOCは希薄です。だから日本も、そのことをしっかりと訴えていく必要があります」 Q:日本人のIOC委員は国内世論を伝えていないのでしょうか。 A:「もし伝わっていたらIOCから『大会中止は考えていない』とか『光明が差した』といったコメントは出されないと思います。それに五輪に関してオープンにされていないことが、あまりにも多いんです。 たとえば今回、『IOCが中止を発表するか、東京が返上するか、それによって違約金の問題が生じるからチキンレースだ』みたいに言われていますよね。でも本当のところは私も知りません。なぜならば、IOCと東京都が、どのような契約を結んでいるかがオープンにされていないからです。こんな状況下では開催できないと東京が返上した時に、どれだけの違約金を支払うのかは契約時に決まっているはずです。それを国民にオープンにするべきではないでしょうか。 それが開示されたならば国民の判断材料になります。コロナ対策費と比べてどうなのか、五輪を開催すべきかやめるべきなのかを、お金=税金の観点からも考えることができます。なのに、この部分が国民に知らされていないのはおかしいんですよ」 Q:五輪に関してはブラックボックス化されていることが多くあるように思います。今回を機に、もっとオープンにされるべきですね。 A:「ええ。私は今回の五輪に関しては、日本国民の思いが大事だと思っています。IOCから押し付けられるものではないでしょう。そのために、判断材料となる正確な情報が国や組織委員会から発信されるべきなんです」』、「IOCと東京都が、どのような契約を結んでいるかがオープンにされていないからです。こんな状況下では開催できないと東京が返上した時に、どれだけの違約金を支払うのかは契約時に決まっているはずです。それを国民にオープンにするべきではないでしょうか」、こんあ重要なことを隠しているとは初めて知った。当然、「オープンにするべき」だ。
・『アスリートは「恵まれている」自覚を  Q:山口さんもソウル五輪・女子柔道の銅メダリストです。選手たちの思いにも触れたいのですが、体操の内村航平選手は「できないではなく、どうやったら開催できるかを考えてほしい」と発言していました。一方で「こんな時期に開かなくても」と話す選手もいます。 「いま、開催するかしないかに関してのコメントをアスリートに求めるのは酷ですよね。『この状況下では無理だと思う』と言えば、スポーツ界から反感を買うし、『やらせてください』と言っても世間から、こんな時に何を言ってるんだと怒られてしまう。だから、アスリートを矢面に立たせてはいけません。言いにくいことを言って悪者になるのは、JOCやその関係者、私たちの役目だと思っています。こんな状況になってしまいかわいそうです」 Q:そうですね。 A:「でも、それとは別にアスリートたちに噛みしめてもらいたいこともあります。『自分たちは恵まれている』という認識ですね。たとえば、プロ野球選手、Jリーガー、大相撲の力士、あるいは柔道の強化選手にしても、彼らは合宿をする際にはPCR検査を受けることができ、安全な状態を担保された上で、練習や試合ができているんです。それは一般の人たちからしたら、まず得られない手厚い保護だということを自覚すべきでしょう。 私たちは、アスリートたちのパフォーマンスからエネルギーを与えられることが多々あります。最近でいえば、卓球(全日本選手権決勝)の石川佳純さんと伊藤美誠さんの試合や柔道(東京五輪代表決定戦)の阿部一二三と丸山城志郎の試合は私も心を動かされました。でも、だからといって、手厚い保護を受けることは、当たり前ではないんです」 Q:みんなにエネルギーを与えるのは、スポーツだけではなく、芸術、エンタテインメントなどもあります。 A:「そうですよね。だから、こんな状況だからこそ、アスリートたちには考えてもらいたいんです。自分にとって五輪とは何なのか、スポーツとは何なのかを。もともとは好きで自分のためにスポーツをやってきたわけですよね。その頂点を目指すのであれば、世界選手権もあります。では、自分にとって五輪とは何なのか。五輪に出られる出られないではなく、もう少し深い部分まで考えて、答えを持って欲しいと思います」 Q:最後に伝えたいことはありますか。 A:「物議を醸している森会長の発言については、森会長はJOCの名誉委員としてご出席され、発言の場がJOCの評議員会であったことを考えれば、JOC自体が責任を重く受け止めて謝罪し、今後の取り組みについての考えを示していくべきだと思います。コロナ以前の問題として五輪が理念を失くしてしまえば必要のないイベントになってしまいますから」 ■山口香(やまぐち・かおり)(1964年12月28日生まれ。東京都豊島区出身。6歳で柔道を始め、13歳の時に全日本体重別選手権で優勝して以来10連覇。1984年の世界選手権で日本女子として初制覇した。1988年ソウル五輪で銅メダル獲得。翌年現役引退。現在は筑波大学の体育系教授の傍ら、JOCの理事などを務める。)』、「いま、開催するかしないかに関してのコメントをアスリートに求めるのは酷ですよね」、その通りだ。「IOCと東京都」の「契約」を明らかにした上で、中止させる方向で、国際機関に働きかけるべきだろう。

第三に、2月20日付けYahooニュースが転載した日刊ゲンダイ「東京五輪強行開催なら損失は「中止の試算4.5兆円」超え…閉会後の日本を待つ最悪シナリオ」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7fa0c543b1ba602de5fdadb630b0ba92e8e4f0f2
・『「東京大会を国民の皆さま方が安心し、やってよかったと思ってもらえる大会にすることが私にとっての務めと決意した」 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子新会長(56)が19日、組織委本部で職員を前に挨拶。「国民に信頼され、安心と安全の東京大会が開催できるように全力を尽くす」と言った。 とはいえ、現状は「安心」「安全」「信頼」とはかけ離れている。世界のコロナ禍は沈静化の気配が見えず、日本も緊急事態宣言の期間を1カ月延長した。森喜朗前組織委会長(83)の舌禍もあり、ネット上を中心に五輪中止論があふれている。橋本新会長は森氏を組織委の役職に就けない方針を固めたというが、新会長は同氏の「娘」を自任するだけに、これで影響力がなくなるとは思えない。あくまで事態の沈静化を図るのが目的だろう。 五輪中止ならば約4.5兆円の経済損失(関大名誉教授・宮本勝浩氏の試算)につながるともいわれており、五輪スポンサーの巨大メディアは連日のように、これを引き合いに出している。しかし、一連の報道に異を唱えるのは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏だ。 「都や、組織委は『アスリートファースト』と言っていますが、五輪は金稼ぎの道具になっている。金のために国民の命を危険にさらして開催するのは、国際社会において日本の立場をおとしめる行為ですよ。失う国際的な信用を修復させるのは、簡単なことではありません。これは数字に表れる経済損失よりもはるかに大きい損失です」 強行開催することでむしろ、4.5兆円を上回る損失を被るというのだが、具体的にどんな損失が考えられるのか。 「私も東京五輪に関わっているので、公式回答では『やった方が良い』としか答えられませんが……」と、五輪と経済効果に詳しい専門家は匿名を条件にこう言った。 「経済効果として、五輪開催後の外国人観光客の増加が挙げられます。しかし、そもそもの大前提として『開催がきっかけで観光客が激増する』というわけではありません。まず、大会前には外国人観光客を受け入れる土壌の整備が不可欠です。そして、開催を通じていかに国際交流が大事なのかということを人々が共有し、『大会後も継続していこう』と観光地や地域みんなで努力する姿勢があって初めて、観光業における五輪のレガシーになるのです」』、現在の感染状況を前提にすると、「外国人観光客」には残念ながら殆ど期待できないようだ。
・『「開催しないと日本崩壊」はまやかし  東京都は五輪招致が決定した翌2014年に「外国人旅行者の受入環境整備方針」を打ち立て、一気呵成に都の観光インフラを構築。政府も観光立国を目指して予算を割き、諸外国のビザ取得制限の緩和や、地方空港への国際チャーター便に対する支援などを推し進めた。 その結果、東京五輪開催が決まった13年は約1000万人だった訪日外国人数が、18年には3000万人を突破。これは政府が当初、30年に実現目標としていた数字だ。増加の要因には格安航空会社の普及も含まれるが、外国人観光客を受け入れる現場の努力に下支えされてこそのものだ。 「観光業における経済効果の面で安心安全な大会を成功できるなら、五輪はやるに越したことはない。感染者を出さず可能な限り大会を盛り上げて『コロナ禍でもできるメガイベントのモデルケース』となれば、世界に向けた大きな宣伝につながるからです」(前出の専門家) とはいえ、森前会長の言った「コロナがどういう形でも必ずやる」では、「安心安全」という大会運営の根幹が崩れかねない。五輪を強行開催し、選手たちから感染者が出たら、あるいは、開催後にコロナ感染者が増加したら国民感情はどうなるか。五輪が直接的な原因かは別として「やっぱり外国人が来たから」と思うはずだ。この専門家はそこから引き起こされる最悪のシナリオを憂慮している。 「インバウンド振興が潰れかねません。先ほど、『五輪後の努力も大事』と言いましたが、コロナ禍がひどくなった状況下で政府や都が観光事業を推し進めようとしても、骨組みである民意や現場の協力は得にくくなる。負のレガシーだけが残って観光立国の計画が停滞し、インバウンドの土壌が激減したら、本末転倒です。中長期的に見たら(五輪中止で試算される)4.5兆円よりもはるかに大きな経済損失を招く可能性があります。そもそも4.5兆円にしても、マクロ経済の視点で見ると、それほど大きな金額ではありません。『開催しないと日本崩壊』という論調も耳にしますが、まやかしです。損をする業界はごく限られています。コロナや経済などさまざまな側面がありますが、正直、今年は無理に開催しなくても……。どうしてもやるなら、無観客ですかね」 前出の谷口氏は「現状、外国では感染が拡大している地域もありますし、ワクチン確保の問題ひとつを取っても国同士の貧富の差が可視化されている。それなのに『自国だけ良ければ』と開催するのは身勝手すぎる考え方ではないでしょうか。五輪の存在意義ともかけ離れてしまう」と危惧する。 アスリートや目先の利益のためだけに大きなリスクを負う必要があるとは思えないのだ』、オリンピック競技はアスリートだけでなく、観客も熱狂ぶりをテレビで観戦するところにあるので、「無観客」での開催は白けるだけで、避けるべきだ。感染リスクを考慮すれば、無理に開催する必要は全くないと思われる。
タグ:(五輪) (その14)(五輪中止を全否定したIOCが進める「開催シナリオ」驚きの中身 デッドラインは「3月中旬」か、山口香JOC理事「国民が五輪開催のリスクを負うことが問題」契約の不透明さに疑義、東京五輪強行開催なら損失は「中止の試算4.5兆円」超え…閉会後の日本を待つ最悪シナリオ) 東京オリンピック PRESIDENT ONLINE さかい もとみ 「五輪中止を全否定したIOCが進める「開催シナリオ」驚きの中身 デッドラインは「3月中旬」か」 開催に立ちはだかる「3つの大問題」 「選手らの日本滞在中の行動は全てビザ取得時の事前申告通りにしか動けない格好となっており、観光や街歩きの禁止はもとより、宿泊施設から近所のコンビニに出かけることさえも不可、と厳しく規制されている」、そんなに厳格だとは初めて知った。外国人選手も気の毒だ 参加選手はまだ6割しか決まっていない 「現時点で、参加枠で選手が確定しているのは全体の61%ほどにすぎない」、これから決まる割合がかなりあるのは初めて知った ワクチン接種は予定通り進むのか 「ワクチン接種」は我が国がむしろ他の欧米主要国より遅れ気味だ。PCR検査は入国時やその他にも適宜行われるべきだ IOCの重鎮は「無観客開催」を示唆 「何としても開催したい」シナリオは そこまで無理をして「開催」した形にする必要はないのではなかろうか 国連機関のお墨付きと保険金の存在 「五輪中止を判断するには国際連合か国際保健機関(WHO)の意見を参考にする考え」があるのであれば、「IOCも東京都もこうした機関からの正式勧告が出るまで中止を言い出すわけがない」のは確かだ 3月中旬までに「最終決断」か 「ワクチン接種」が遅れている状況からは、無理をせず、「国際連合か国際保健機関(WHO)」から「中止」の意見を出してもらうのが、最もよさそうだ yahooニュース 「山口香JOC理事「国民が五輪開催のリスクを負うことが問題」契約の不透明さに疑義」 開催でリスクを負うのは私たち日本国民 「IOCと東京都が、どのような契約を結んでいるかがオープンにされていないからです。こんな状況下では開催できないと東京が返上した時に、どれだけの違約金を支払うのかは契約時に決まっているはずです。それを国民にオープンにするべきではないでしょうか」、こんあ重要なことを隠しているとは初めて知った。当然、「オープンにするべき」だ。 アスリートは「恵まれている」自覚を 「いま、開催するかしないかに関してのコメントをアスリートに求めるのは酷ですよね」、その通りだ。「IOCと東京都」の「契約」を明らかにした上で、中止させる方向で、国際機関に働きかけるべきだろう 日刊ゲンダイ 「東京五輪強行開催なら損失は「中止の試算4.5兆円」超え…閉会後の日本を待つ最悪シナリオ」 現在の感染状況を前提にすると、「外国人観光客」には残念ながら殆ど期待できないようだ。 「開催しないと日本崩壊」はまやかし オリンピック競技はアスリートだけでなく、観客も熱狂ぶりをテレビで観戦するところにあるので、「無観客」での開催は白けるだけで、避けるべきだ。感染リスクを考慮すれば、無理に開催する必要は全くないと思われる
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東京オリンピック(五輪)(その13)五輪組織委トップ交代問題(「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない 長老支配を一掃する根本議論とは、菅首相“推し”も処遇 文春砲で最後まで渋った橋本聖子”新会長”「議員辞職はしなくていい」と説得、女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み) [社会]

東京オリンピック(五輪)については、昨年7月13日に取上げた。今日は、(その13)五輪組織委トップ交代問題(「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない 長老支配を一掃する根本議論とは、菅首相“推し”も処遇 文春砲で最後まで渋った橋本聖子”新会長”「議員辞職はしなくていい」と説得、女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み)である。この他話題は明日、取上げる予定である。

先ずは、本年2月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない、長老支配を一掃する根本議論とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/262439
・『森喜朗会長が晒される批判の嵐 辞職したら何が変わるのか  最近、「傘寿」を超えたご長寿のおじいちゃんたちが、相次いで「やめろコール」の嵐に晒されている。もちろん筆頭は、女性蔑視発言で国内外から批判されている、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長、御歳83歳。 当初は「逆ギレ会見」でいつものようにウヤムヤにできるかと思われたが、五輪ボランティアの大量辞退や、IOCが手の平返しで厳しい批判を始めたことで、「このまま五輪の顔として居座り続けさせたら、日本が女性蔑視の国だと世界にアピールすることになる」と、辞任を求める声が日増しに高まっており、国会でも追及される事態になっているのだ。 また、そんな森氏をフォローした自民党の二階俊博幹事長、御歳81歳に対しても、ネットやSNSで「頼むから引退してくれ」という声が多く挙がっている。ボランティア大量辞退の動きを、「瞬間的」「おやめになりたいというのだったら、新たなボランディアを募集する」と一蹴したことで、「ボランィアを使い捨てのコマのように思っているのでは」と怒りを買ったのだ。 高齢者の暴言を別の高齢者が擁護をしようと、ご本人としては気の利いたことを言ったつもりが、これまた耳を疑うような暴言で両者揃って大炎上という、「老老介護」ならぬ「老老擁護」の難しさを、改めて世に知らしめた形となったのだ。 さらに、政界では二階氏と熾烈なパワーゲームを繰り広げていると言われる麻生太郎・財務相兼副総理、御歳80歳に対しても、少し前に「やめろコール」が起きている。「一律10万円」再給付を全否定したことで、「これだけ国民が苦しんでいることを理解できないなら、政治家なんてやめるべき」という庶民の怒りが爆発しているのだ。 ただ、個人的にはこういうムードはあまりよろしくないと感じている。「敬老」の観点で申し上げているのではない。やらかしてしまった人間をマスコミと世論で吊し上げることに一生懸命になり過ぎて、そういう個人を生み出している組織や社会の構造的な問題などの根本的な議論にまで至らない。「上を下への大騒ぎをするけれど何も変わらない」というパターンが、日本ではよくあるのだ。 今回の「3人の暴言ご長寿」へのバッシングからも、同じ匂いがプンプン漂ってくるのだ。 たとえば、高まる国内外からの批判を受けて、森氏が会長を辞任したとしよう。あるいは、国民の批判を受けて、二階氏や麻生氏が政界から身を引いたとしよう。では、そこで日本社会は何かが劇的に変わるのだろうか。 森氏が組織委員会から消えれば、世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダーギャップ指数2020」で153カ国中121位という日本の男女格差が、急に解消されるのだろうか。二階氏や麻生氏が権力の座を退けば、菅政権のコロナ対応が急激に改善するのだろうか』、「老老擁護」とは言い得て妙だ。「「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない」、その通りだ。
・『新たな長老を担ぎ出そうとする「政治ムラ」の恩恵に浴する人々  筆者は、それほど大きく事態は変わらないと思っている。 今回、森氏が引退しようとしたところ、周囲から引き止める声が多く挙がったことからもわかるように、「五輪ムラ」や「政治ムラ」の中には、森氏や二階氏や麻生氏という「長老支配」の恩恵にあずかる人たちがゴマンと存在している。 それはつまり、もし森氏や二階氏や麻生氏がいなくなっても、ムラの構成員たちは彼らとよく似た「長老」を選び出し、新たに担ぎ上げることにしかならないということだ。 「そんなの、やってみないとわからないだろ」と思う人もいるだろうが、閉鎖的な政治コミュニティの中で、こうした現状維持の力学が働くことは、世界中の研究機関で科学的に証明されている。 たとえば、米メリーランド大学の中には、米国政府が助成するテロ組織の研究拠点があり、国際社会の中でテロを仕掛ける指導者やメンバーなどの膨大なビックデータを集めて、テロネットワークを「見える化」している。 その中で、試しにあるテロ指導者を「排除」してみると、興味深い現象が起きた。テロネットワークの中で、その指導者の座にすぐ新たな後継者がついて、米国に対する脅威度が減るどころか、さらに高まったのだ。後継者は自分のカラーを出すため、前の指導者より過激な行動に走ることも多いからだ。 これこそ、米国がテロ指導者を次々と殺害・拘束しても、反米テロが根絶できない根本的な理由だ。テロを解決するには、個人を排除するよりも、テロを引き起こす構造的な問題に目を向けなくてはいけないのだ。 これは政治だけではなく、日本社会のあらゆるところで噴出している「老害」や「長老支配」という問題にも、そのまま当てはまる。森氏や二階氏や麻生氏という高齢リーダーを叩いて、権力の座から引きずり下ろしたところで、日本は世界一の高齢化社会なので、後継者は山ほどいる。次から次へと「第二の森喜朗」「第二の二階俊博」が現れてくるのだ。 それはつまり、テロ指導者を次々と排除しても、テロを撲滅できないのと同じで、問題を起こした高齢リーダーを次々と引退に追い込んでも、長老支配を撲滅できないということでもあるのだ』、この記事は後任に橋本氏が決まる前だが、橋本氏は「森氏」の「傀儡」ともいわれるだけに、全体の論旨には影響しないと思われる。
・『高齢者の「政治免許返納」を真剣に検討すべきでは  では、どうすればいいのか。いろいろなご意見があるだろうか、個人的には、高齢者の「政治免許返納」を真剣に検討すべきではないかと思っている。 70歳など、ある程度の年齢までいった高齢の方は、議員などの政治の表舞台から潔く引退していただく。さらに、五輪のような税金が投入されるような公共事業への関与も遠慮していただく。つまり、税金を費やす政治の「プレーヤー」になる資格(ライセンス)を自主的に返納してもらうような制度を、新たに設けるのだ。 「高齢者差別だ!」「高齢者の自由を奪う、重大な人権侵害だ」と不快になるシニアも多いかもしれない。しかし、選挙権を奪うといった話ではないし、どうしても政治をしたいというのであれば、ご自身のお金で政治団体を立ち上げるなどして、いくらでも活動をしていただければいい。もちろん、民間企業や団体で政治活動をすることもできるので、それまでの経験や調整力を活かせばいい。 ただ、議員や公共事業の要職は勘弁していただきたいというだけだ。森氏のように、無報酬であれだけ献身的に活動していても、結局は組織委員会を「長老」が支配する閉鎖的なムラ社会にしてしまったように、高齢政治家が長期間権力を握り続けても、国民にとっては「害」の方が大きいからだ』、「高齢政治家が長期間権力を握り続けても、国民にとっては「害」の方が大きいからだ」、その通りだ。「高齢者の「政治免許返納」」はなかなか面白いアイデアだ。
・『高齢者の自由は運転免許返納によりすでに制限され始めている  また、「高齢者の自由を奪うのか」と言われそうだが、すでに我々は社会にもたらす甚大な被害と天秤にかけて、高齢者の自由を制限し始めている。そう、「高齢者の運転免許返納」だ。 アクセルとブレーキの区別がつかなくなっているほどのご長寿ドライバーが、日本全国でさまざまな暴走事故を起こしていることを受けて、運転に自信がなくなった方や、公共交通機関で移動できる方たちには、自主的に「運転する資格」を放棄していただいているのは、ご存じの通りだ。 理屈としては、これとまったく同じだ。今の日本の政治は、権力の座に長く座り続けた結果、周囲から誰も諫める者がいなくなっている高齢政治家が「暴走」をして、日本全体に不利益を与えるような「事故」が続発している状況だ。この構造的な問題を解決するためには、高齢政治家の皆さんに自主的に「政治プレーヤーになる資格」を返納していただくほうがいい。 そもそも世界的には議員はボランティアで、自身が掲げる政策を実現すれば、さっさと引退して第二の人生を送るというスタイルの方が一般的だ。日本のように、何十年も高給をもらう「職業議員」が政治を続け、挙句の果てに息子や孫に世襲させたり、80歳を過ぎても政界に居座り続けたり、などというスタイルの方が「異常」なのだ。高齢者の「政治免許返納」は、そんな日本の悪しき慣習にメスを入れることができるかもしれない。 もちろん、それが並大抵のことではないということはよくわかる。実は日本では、戦前から「高齢政治家」をどうやって引退させるかということに、頭を悩ませてきた』、確かにその通りだ。
・『実は戦前からあった政界における「老害」問題  関東大震災が起き、まだその傷跡も癒えぬ1923年12月26日、後に「議会政治の父」と呼ばれる尾崎行雄は、こんな演説をしている。 「由来老人は決断力を欠くから老人に政治を任せるのは甚だ誤つている」「自分は老人でいながら老人排斥するのは可笑しいと思はれるかも知れぬが私は老人内部の裏切り者となっても飽くまで老人に政治を委ねるべきではないこと主張したい」(読売新聞 1923年12月26日) その後、海軍の山本権兵衛元帥は、陸海軍で武功のあった大将や中将を終身現役として扱う慣例が時代遅れだとして、「停年制」を提案する。閉鎖的なムラ社会の中で、長く居座る政治プレーヤーが「老害化」することは、高齢化社会が到来するはるか以前から、日本の課題だったのだ。 これは、戦後も変わらない。公職追放によって一時だけ政治家の若返りが進んだが、基本的に日本の政治は「長老支配」が延々と続いている。1980年代になると、あまりにも前近代的ということで、「70歳定年制」が唱えられたが、案の定形骸化した。70歳を超えても「余人をもって変え難い」などと言われて、次々と特例扱いで選挙の公認を与えてきたのだ。そしてズルズルと後ろ倒しされ、今では「73歳定年制」なのだが、これもグダグダになる可能性が高い。 先月19日、自民党青年局のトップ・牧島かれん衆議院議員が、二階幹事長に「73歳定年制の厳守」を申し入れたのだが、早くも党内の70代のベテラン議員たちが二階氏にこの「廃止」を要請している。 こういう歴史から我々が学ぶことは、権力の座についた高齢者は自分の意志でそれを手放すことはできない、という事実だ。「まだまだやり残したことがある」「高齢者の声を代弁したい」「自分はやめてもいいが、周囲から慰留された」などなど、いろいろな言い訳で「政治プレーヤー」をズルズルと続けてしまう。だからこそ、社会が高齢者の「政治免許返納」のような仕組みを考え、自主的に退けるような環境をつくることが必要なのだ。 また、このような制度をつくることは、回りまわって「高齢者のため」にもなる。 「高齢者運転免許返納」のきっかけにもなった、池袋暴走事故を起こした飯塚幸三被告、御歳89が、一昨日遺族の賠償請求に対して争う姿勢を見せたというニュースが報じられ、ネットやSNSでは再び「なぜマスコミはこいつをもっと糾弾しないのだ」などと、国民の怒りが爆発している。 なぜ争うのかというと、公判で本人が述べたように「自分が悪い」とは思っていないからだ。これは、森氏、二階氏、麻生氏なども共通するが、歳をとるとなかなか自分の非を認めて真摯に謝罪をすることが難しいのだ。 批判をしているわけではない。人間、80年も生きれば、そう簡単に考え方や生き方を変えることはできない、という現実を指摘したいだけだ』、「歳をとるとなかなか自分の非を認めて真摯に謝罪をすることが難しい」、その通りだ。
・『悪いのは「老い」ではない 長老支配というシステムである  このような「周囲の苦言に耳を貸さない高齢リーダー」が世に溢れれば、若い人たちの高齢者への憎悪はさらに強まる。社会保障の不平等さも取り沙汰される中で、個人攻撃だけではなく、高齢者全体への敵意にもつながってしまう恐れがある。こういう不毛な世代間闘争を避けるためにも、「高齢リーダー」にはある一定の時期に自主的に身を引いていただくシステムが必要だ。 我々が憎むべきは「老い」ではなく、高齢政治家をズルズルと権力の座に居座り続けさせ、「裸の王様」にして、終いには「暴走」までさせてしまう、「長老支配」というシステムである。この醜悪な現実を、今こそ国民全員で直視すべきではないか』、私も立派な高齢者だが、全く同感である。

次に、2月18日付けAERAdot「菅首相“推し”も処遇、文春砲で最後まで渋った橋本聖子”新会長”「議員辞職はしなくていい」と説得〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021021800032.html?page=1
・『女性蔑視発言で森喜朗元首相が辞任後、迷走していた東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長選びにようやく決着がついた。 菅義偉首相の“ご指名”だった橋本聖子五輪担当相が要請を受け入れる意向を固め、18日中にも橋本新会長が誕生する。 候補者検討委員会周辺から昨日朝は日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長の名前があがり、夜になると橋本氏と二転三転した会長人事。その裏側を官邸関係者が語る。 「菅首相は女性を会長にとの思いだった。当初から橋本氏を第一候補にしていた。橋本氏なら菅首相がコントロールできる。コロナ禍にあって、オリンピックが開催できる確約はない。開催できないことも想定した場合、泥をかぶらねばならず、政治家でなければ難しいという理由もあった」 だが、橋本氏はすぐには首を縦には振らなかった。参院議員5期を務める橋本氏は、森氏の要請で政界に転出した。橋本氏も森氏について「お父さんです」と公の場で語るほど、心酔していた。自民党幹部がこう語る。 「橋本氏が消極的だった理由は、森氏の存在です。会長辞任後、森氏は川淵三郎氏を後継指名したのに官邸に潰された。それなのに自分がすぐ引き受けるのはと迷っていた。さらに組織委員会の会長になれば、大臣だけではなく、議員辞職をも求められる可能性があるのも懸念していた。だが、そこを自民党が調整して、大臣は辞任、議員辞職はせずという方向で話をつけた。ただ、自民党に離党ついては今後の調整だ。それでもなかなか踏ん切りがつかなかった。橋本氏は文春砲に高橋大輔との“ハグ&キス”写真を派手に報じられていたので、火だるまになるのを恐れたんだろう」』、昨日の日経新聞によれば、「橋本氏」は「自民党」を離党するが、「議員辞職はせず」となったようだ。
・『それに黙っていなかったのが、菅首相だ。次期会長を巡っても、菅VS小池という構図が浮かび上がった。 「山下氏の会長案は、菅氏と小池氏が対立した際の妥協案で昨日の朝、飛び出した」(前出の官邸関係者) 今回の後継選びでプラスとなったのが、候補者検討委員会を非公開にしていたことだ。選考過程がオープンになっていないため、菅首相の意向を反映しやすく、最終的には橋本氏という流れとなった。 「菅首相は本音では小池さんが大嫌い。これを機に政治的立場を有利にしようという小池氏の魂胆に反撃したいとの思いがあった。菅首相は低迷する支持率を、アップさせるためにはなんとしてもオリンピックを実現したい。その勢いで解散総選挙に打って出る構想を描いている。小池氏がこれ以上、目立つと、自身の立場が危うい。今回は菅首相が小池氏に電話で根回しして橋本会長にこぎつけた」(前出の自民党幹部) だが、森氏に近い橋本氏には「森院政」との批判も少なくない。 選考過程の非公開を問題にする理事もいる。オリンピックまであと5か月、橋本氏の手腕が問われる。(本誌取材班)』、「今回の後継選びでプラスとなったのが、候補者検討委員会を非公開にしていたことだ。選考過程がオープンになっていないため、菅首相の意向を反映しやすく、最終的には橋本氏という流れとなった」、これでは密室政治との批判も当然だ。

第三に、2月20日付け東洋経済オンライン「女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/412803
・『東京五輪組織委員会会長だった森喜朗元首相の女性蔑視発言による会長交代騒動が2月18日、橋本聖子前五輪担当相の新会長就任で決着した。 森氏の後継指名が批判され、就任辞退に追い込まれた川淵三郎初代Jリーグチェアマンのほか、山下泰裕JOC(日本オリンピック委員会)会長らさまざまな後継候補が浮かんでは消えた。 半月にも及んだ混迷の末、女性で、若く、「五輪の申し子」と呼ばれる橋本氏に白羽の矢が立った。ただ、その結末には功罪が入り混じり、国民も期待と不安に揺れている』、なるほど。
・『開催の可否は聖火リレー開始までに  五輪憲章による「政治からの中立」とはかけ離れ、戦前・戦後の五輪史に絡み続けてきたのが政治だ。今回、「火中の栗」を拾わされた橋本氏がにじませた苦悩は、政治介入をめぐって建前と本音の交錯する五輪の実相も浮き彫りにしている。 2月18日に橋本新会長の就任が決まったことを受け、菅義偉首相は後任の五輪担当相に、女性で同相経験者の丸川珠代参院議員の再登板を決めた。これにより、森発言に端を発した五輪ホスト国の混乱は幕引きとなり、東京五輪開催実現に向けて心機一転での再出発となる。 しかし、新型コロナで1年延期された東京五輪まで、残りわずか5カ月余。国内でも中止・再延期論が圧倒的多数となる中、福島を起点とした聖火リレー開始前の3月下旬までに、国際オリンピック委員会(IOC)との協議で開催の可否や観客の有無などを決めなければならない。 政府や組織委はこれまで、困難な交渉を森前会長にすべて委ねてきた。今後も森氏の水面下での協力は不可欠なうえ、橋本新会長は森氏を父とも慕っている。森氏の影響力は残るとみられるが、表舞台から去った森氏による「院政批判」も免れない。 会長就任にあたり、橋本氏は「身の引き締まる思い。全力で東京大会の成功に向けて邁進する」と表明。丸川五輪相も就任会見で「主催都市あっての五輪。小池百合子都知事との連携は非常に重要だ」と述べ、女性トリオによる緊密な連携をアピールした。 IOCと組織委などの最終的な事務協議は進行中で、2月22日の週にもバッハ会長と小池、橋本、丸川3氏による4者協議が開催されるとみられる』、なるほど。
・『退任後も続く森氏の「院政」  国際的にも注目される4者協議の日本側代表がそろって女性となったことで、政府与党内には「日本の女性差別イメージが払拭される」との期待も広がる。その一方、組織委やJOC幹部が森前会長の手腕と業績を称えたことで、「今後も森さんの院政が続く」(自民幹部)との見方が支配的だ。 橋本氏は森氏の存在について、「森先生は政治の師匠で特別の存在」と強調。週明けにも引き継ぎを受ける考えを示した。安倍晋三前首相に近く、「安倍チルドレン」と呼ばれる丸川氏も、森氏が事実上のオーナーとされる細田派のメンバーだ。このため、「表紙を変えても中身は変わらない」とする批判は今後も付きまとう。 今回の大混乱の原因は、森氏の女性蔑視発言を、組織委と菅首相らが謝罪と撤回で乗り切れると読み、IOCの決着表明で一件落着するとみたことにある。 菅首相は、大先輩である森氏の首に鈴をつける度胸に欠け、森氏が謝罪会見で火に油を注いだ時も、橋本氏を通じて間接的に「あってはならない発言」などと伝えただけ。その結果、森氏は川淵氏後継に動き、川淵氏の就任宣言と森氏の相談役就任に踏み込んだことで、菅首相の政治介入で就任辞退に追い込まれた。 橋本氏は1964年の東京五輪開幕(10月10日)の5日前に北海道で生まれ、父親が聖火にちなんで聖子と名付けたのは有名な話だ。 スピードスケートと自転車で夏冬計7回の五輪出場を果たし、「五輪の申し子」と呼ばれる。現役選手時代の1995年に、当時自民党幹事長だった森氏の後押しで参院議員に初当選。JOC副会長など五輪関係団体幹部を歴任した後、2019年9月に五輪担当相として初入閣。2020年9月発足の菅内閣でも再任した』、今回の騒ぎは、「菅首相は、大先輩である森氏の首に鈴をつける度胸に欠け、森氏が謝罪会見で火に油を注いだ時も、橋本氏を通じて間接的に「あってはならない発言」などと伝えただけ」、結局 「菅首相」の手綱さばきの悪さが事態をこじらせたようだ。
・『7年前のセクハラ疑惑には淡々と  18日に行われた就任記者会見の冒頭、橋本氏は緊張した表情で、メモを見ながら決意と抱負を述べた。その後の質疑では、「五輪担当相を全うしたい気持ちが強く、直前まで(会長就任の打診を受けるか)非常に悩んだ」と明かした。 7年前の「セクハラ疑惑」について問われると、「私自身の軽率な行動について、7年前も今も深く反省している。厳しい声を受け止め、自ら身を正して(組織委会長としての)責務を果たしたい」と淡々とした口調で語った。 会長就任に伴う自民党離党や議員辞職の可能性については、「これまでスポーツは超党派で対応してきた」と、踏み込んだ発言は避けた。ただ、「(政治介入との)疑念は持たれないようにしたい」と状況次第で離党する意向もにじませた。 政府与党内では「橋本氏にとって、セクハラ疑惑より離党や議員辞職の方が深刻な問題」(自民幹部)との見方が多い。というのも、比例代表選出の橋本氏は公選法上、離党すれば議員辞職問題に直面するからだ。 議員辞職した場合、組織委会長として現在の多額な議員歳費に見合う報酬を受け取ることは難しい。森氏は無報酬をアピールしており、組織委も対応に苦慮しそうだ。 与党内には「辞職しても次の参院選で復活すればいい」(自民選対)との声も出るが、「身分保障に不安があれば職務遂行の支障になりかねない」(閣僚経験者)との不安もぬぐえない。) そうしたことも踏まえ、橋本氏はいったんは自民党を離党しない考えを示した。しかし、野党側が反発。小池都知事も19日の会見で「(離党など)分かりやすい形がインターナショナル(国際的)」と発言したことで、橋本氏も同日に自民党執行部に離党届を提出した。 橋本氏の会長就任について安倍前首相は18日、「火中の栗を拾っていただくことになったが、バッハ会長をはじめIOCとの信頼もある」と、その手腕への期待を示した。だが、野党は、橋本氏が議員と会長を兼務した場合、「政治的中立性の観点から疑問がある」(立憲民主幹部)と指摘している』、「離党」しても「議員辞職」しなくて済む便法でもあったのだろうか。
・『橋本氏の現職議員兼任を問題視も  そうした中、橋本氏と太いパイプを持つIOCのバッハ会長は「(橋本氏の会長就任は)最適な人選だ。IOCとオリンピックの改革のテーマの1つであるジェンダーの平等に重要なシグナルを送るものだ」などと高く評価する声明を出した。 IOCのマリソル・カサード委員も「政治家であり、五輪選手でもあるという、ほかに代わりはいない人」と歓迎してみせた。しかし、「IOCは各国組織委への政治的関与には極めて敏感」(関係者)とされ、今後のIOC内部の協議で、橋本氏が現職政治家であることについて疑問の声が出る可能性がある。 菅首相は18日、橋本氏の会長就任について、「国民の皆さんや世界から歓迎される安全安心の大会に向けて全力を尽くしていただきたい」と五輪成功へ強い期待を表明。丸川氏起用に関しても、「女性として若い発想で安全安心の大会をぜひ実現してほしい」と語った。 国内では橋本氏に期待する声が多く、森氏の院政や会長としての指導力などへの不安・疑問の声は少ない。テレビ各局の街頭インタビューでも、「女性で若い」ことを評価、歓迎する声が相次いだ。 ただ、女性蔑視発言をした森氏に絡め、国際社会での日本のジェンダー意識への批判や疑問はなお根強い。ジェンダーギャップ指数で153カ国中121位と、G7最下位に甘んじるのが日本の実態だ。 コロナ禍の収束がなお見通せない中、五輪開催への国民の機運を高められなければ、「最悪の場合、敗戦処理を強いられるのが会長職」(自民長老)。悲願である東京五輪開催と日本の汚名返上という「国家的重荷」を背負わされた橋本氏の前途は、「文字通りいばらの道」(有力閣僚)になりそうだ』、やはり「五輪」「中止」の「敗戦処理」をさせられるのだろうか。
タグ:東京オリンピック (五輪) (その13)五輪組織委トップ交代問題(「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない 長老支配を一掃する根本議論とは、菅首相“推し”も処遇 文春砲で最後まで渋った橋本聖子”新会長”「議員辞職はしなくていい」と説得、女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない、長老支配を一掃する根本議論とは」 森喜朗会長が晒される批判の嵐 辞職したら何が変わるのか 「老老擁護」とは言い得て妙だ。「「森喜朗会長辞任」を叫ぶだけでは何も変わらない」、その通りだ。 新たな長老を担ぎ出そうとする「政治ムラ」の恩恵に浴する人々 この記事は後任に橋本氏が決まる前だが、橋本氏は「森氏」の「傀儡」ともいわれるだけに、全体の論旨には影響しないと思われる 高齢者の「政治免許返納」を真剣に検討すべきでは 「高齢政治家が長期間権力を握り続けても、国民にとっては「害」の方が大きいからだ」、その通りだ。「高齢者の「政治免許返納」」はなかなか面白いアイデアだ 高齢者の自由は運転免許返納によりすでに制限され始めている 実は戦前からあった政界における「老害」問題 「歳をとるとなかなか自分の非を認めて真摯に謝罪をすることが難しい」、その通りだ。 悪いのは「老い」ではない 長老支配というシステムである 我々が憎むべきは「老い」ではなく、高齢政治家をズルズルと権力の座に居座り続けさせ、「裸の王様」にして、終いには「暴走」までさせてしまう、「長老支配」というシステムである。この醜悪な現実を、今こそ国民全員で直視すべきではないか』、私も立派な高齢者だが、全く同感である AERAdot 「菅首相“推し”も処遇、文春砲で最後まで渋った橋本聖子”新会長”「議員辞職はしなくていい」と説得〈週刊朝日〉」 昨日の日経新聞によれば、「橋本氏」は「自民党」を離党するが、「議員辞職はせず」となったようだ 「今回の後継選びでプラスとなったのが、候補者検討委員会を非公開にしていたことだ。選考過程がオープンになっていないため、菅首相の意向を反映しやすく、最終的には橋本氏という流れとなった」、これでは密室政治との批判も当然だ 東洋経済オンライン 「女性蔑視発言、「橋本新会長で決着」の光と影 セクハラ疑惑より深刻な橋本新会長のある悩み」 開催の可否は聖火リレー開始までに 退任後も続く森氏の「院政」 今回の騒ぎは、「菅首相は、大先輩である森氏の首に鈴をつける度胸に欠け、森氏が謝罪会見で火に油を注いだ時も、橋本氏を通じて間接的に「あってはならない発言」などと伝えただけ」、結局 「菅首相」の手綱さばきの悪さが事態をこじらせたようだ 7年前のセクハラ疑惑には淡々と 「離党」しても「議員辞職」しなくて済む便法でもあったのだろうか 橋本氏の現職議員兼任を問題視も やはり「五輪」「中止」の「敗戦処理」をさせられるのだろうか
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今日は更新を休むので、明日ご期待を!

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司法の歪み(その15)(広島地検の若手検事はなぜ自ら命を絶ったのか 過去2年で4人が自殺、問われる検察組織の実態、【スクープ】第二の村木事件 元検察事務官が訴える検察の「証拠」改ざん〈週刊朝日〉、1年で20件以上も訴えられる編集長が証言台から見た「裁判官たちの素顔」) [社会]

司法の歪みについては、昨年7月1日に取上げた。今日は、(その15)(広島地検の若手検事はなぜ自ら命を絶ったのか 過去2年で4人が自殺、問われる検察組織の実態、【スクープ】第二の村木事件 元検察事務官が訴える検察の「証拠」改ざん〈週刊朝日〉、1年で20件以上も訴えられる編集長が証言台から見た「裁判官たちの素顔」)である。

先ずは、本年1月6日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの竹中 明洋氏による「広島地検の若手検事はなぜ自ら命を絶ったのか 過去2年で4人が自殺、問われる検察組織の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401223
・『2019年12月10日。広島地検で29歳の若手検事が自ら命を絶った。「河井案里氏陣営疑惑で、同地検が捜査着手」と報じられる約20日前のことだ。 この若手検事は検事に任官された後、東京地検で新任検事としての勤務を終え、広島地検に配属された「新任明け」の検事だった。当時、公判部に所属していて、河井事件には直接関わっていない』、「29歳」で「自殺」とは悲惨だ。
・『「司法修習生以下」と叱責  関係者によると、検事はその日、担当する事件の公判が午後に予定されていたが、出勤時間になっても地検に姿を見せなかった。不審に思った事務官が自宅に向かうと、すでにぐったりした状態で亡くなっていた。状況から自殺は明らかだったという。部屋には、「検察官にあるまじき行為をして申し訳ありません」とのメモも残されていた。 若手検事はなぜ、自ら命を絶ったのか。親しい友人とのLINEのやりとりの中に、それを示唆するメッセージが残されていた。 「久し振りに決裁で、(上司である次席検事から)色々言われたわ。『お前がそもそもこの事件を理解してなくて証拠構造整理できてねーじゃねーか。お前は今までどういうつもりで公判検事やってきてんだ』とか。机バンバンみたいな感じになったわ。『話にならない。』と」(2019年12月2日) この日、若手検事の様子を間近に見ていた同僚がいる。同じ公判部で机を並べていた橋詰悠佑氏だ。同氏は2020年7月に検事を退官し、現在は都内で弁護士として活動している。 「苦労して書き上げ、部長もOKを出した論告(検察官の意見陳述)を(広島地検のナンバー2である)次席検事に決裁を求めに行ったところ、激しい叱責を受けたそうです。彼は自席に戻るなり、司法修習生以下と言われたと、悔しそうに言っていました」 厳しい司法試験をパスし、誇りを持って仕事に臨んでいた若手検事。直属の上司である公判部長の決裁は通ったはずなのに、その上の次席検事から厳しい叱責を受けたことに、強いわだかまりと無力感を覚えたのだろうか。友人に送ったメッセージでは、心の内をこう吐露している。 「P(検事)なったの間違ったかな。ダメだ」(2019年12月4日) 「泣きすぎだな。」(同6日) 「明日からに、怖さを感じている俺は、もはや末期なんだろうか」(同8日)』、「直属の上司である公判部長の決裁は通ったはずなのに、その上の次席検事から厳しい叱責を受けた」、「次席検事」はよほど偏屈な人物のようだ。
・『調査結果に職員から不満の声  広島地検は若手検事の死を受けて内部調査に乗り出し、総務部長がヒアリングを始めた。しかし、身内による調査に疑問の声が上がったため、代わって上級庁にあたる広島高検が、公判部をはじめとして関係職員へヒアリングなどを行った。 自殺した広島地検の若手検事のLINEには、生々しいやりとりが残されていた(遺族提供、プライバシー保護のため一部をモザイク処理しています) 地検の職員らにその結果が伝えられたのは、2020年3月のことだった。地検の総務部長らが現場職員に口頭で「原因はよくわからない。体調不良を訴えていたので、それが原因かもしれない」と説明した。 橋詰氏によれば、この説明に対し、「誰がこんな結果に納得するのか」と不満の声を上げる地検の職員が少なくなかったという。 公判部に所属する検事は、刑事部で起訴された事件を引き継ぎ、被告が犯した罪に相応する判決を得るために裁判に立ち会い、事件の立証をするのが仕事だ。裁判所に起訴事実を認めてもらうため、十分な論理構成を整えた書類を作成しなくてはならない。とりわけ被告側が争う姿勢を見せた場合は、それを覆すだけの準備が必要で、業務量もおのずから増えていく。橋詰氏が言う。 「亡くなった検事は作業に手のかかる事案を数多く担当していました。勤務時間は公判部でも相当多かったはずです。それでも当時の公判部長は、『何とかしてね』という趣旨を言うだけで、業務を割り振るなどの配慮はありませんでした。私も、彼の様子がおかしかったことをもっと深刻に受け止めるべきでした」 元検察官で、広島地検の特別刑事部長、長崎地検の次席検事なども務めた郷原信郎弁護士が指摘する。 「広島地検くらいの規模で、公判部長がいったん決裁したものに次席が直接叱責を加えるというのは、私が長崎で次席をやっていた経験からすると、ありえないことです。まして亡くなった検事は新任明けの若手です。思うような仕事ができていないと感じたら、上司は叱責するより、サポートするべきではないか」』、「広島高検」が調査したとはいえ、結果は初めから決まり切っていたような紋切り型だ。「郷原信郎」氏のコメントは同感である。
・『勤務時間は「手書き」で申告  検察官は、1人ひとりの検事が検察権を行使できる「独任制官庁」であるとされている。郷原氏によると、そのため、検事は任官とともに管理職相当となり、勤務時間を自己管理することが求められる。とくに2009年に裁判員制度が始まってからは、裁判の期間中、連日証人尋問が続き、公判部の検事の負担も大きくなりがちだという。 一方、広島地検では勤務時間を手書きで申告していたため、「過小申告はざらで、深夜まで仕事をしたり、休日に職場に出たりしても正確に(勤務時間を)申告できる人は少なかったのではないか」(橋詰氏)という ビジネスパーソンらの自殺問題に取り組む神田東クリニックの公認心理師、佐倉健史氏はこう話す。 「上意下達と言われる職場では、若い人は自分の仕事のペースがつかめない。結局、睡眠時間を削ることになり、メンタルへの影響も大きくなります。最高裁の判例(2000年の電通事件判決)では、予見可能性があったのに、社員が自殺する危機回避努力を怠ったとして、会社の安全配慮義務違反が認められています。パワハラは論外ですが、判例に照らしても、本人の変化に上司は気づくべきです。検察のように、外からの目が入りにくく、中からも声を上げにくい職場では、幹部の評価制度に踏み込んでいかないと、職場文化は変わらないかもしれません」 実は検事の自殺は、今回ばかりではない。検察官の数は全国で2000人に満たないが、橋詰氏が調べたところ、2018年~2019年の2年間だけでも4人の検事が自ら命を絶ち、過去10年間にさかのぼればその数はさらに増える。 例えば、2012年4月に大阪地検堺支部、2018年1月には徳島地検、同年10月には福岡地検小倉支部で若い検事が自殺しており、2019年1月には高知地検中村支部で支部長を務める検事が自殺している。橋詰氏によれば、その中には異動希望を無視されたうえ、上司に意見すると、「検察官を辞めてしまえ」という趣旨の発言を受けた検事もいるという。 警察庁の統計によると、近年、勤務上の問題を理由とした自殺は減少傾向にある。2011年に全国で2689人にのぼったその数は、2019年には1949人にまで減っている。パワハラの問題が厳しく問い直され、各企業で労務管理の見直しが進んだ結果とされる。 佐倉氏は、「検察内部で複数の自殺者が出ている中で、それを組織としていかに受け止め、いかに改善しようとするのかを組織内外に示し、実行して検証していく姿勢が問われる」と指摘する』、「最高裁の判例(2000年の電通事件判決)では、予見可能性があったのに、社員が自殺する危機回避努力を怠ったとして、会社の安全配慮義務違反が認められています」、にも拘わらず、検察内ではこうした考え方とは無縁のようだ。「2018年~2019年の2年間だけでも4人の検事が自ら命を絶ち」、司法試験を優秀な成績で通った若手検事が、自殺に追い込まれているのは国家的損失である。
・『遺族は公務災害の申し立てへ  亡くなった若手検事の父親が取材に応じ、こう話す。 「息子が職場で使用していたパソコンや遺品の確認は私たちが立ち会うこともなく行われ、息子の同僚に当時の状況について話を聞きたいと申し出ましたが、認められませんでした。検察による調査にあたってLINEのやりとりを提出し、『叱責をする前に決裁した直属の上司を交えて議論すべきだったのではないか』と文書で指摘しましたが、広島高検の総務部長からは『自ら命を絶った原因はよくわからない』との説明を口頭で受けただけでした」 こうした対応に納得できない思いを持つ父親は、近く一般企業の労災にあたる「公務災害」の認定を求めて広島地検に申し立てを行う予定だという。 「上司から必要な指導を受けることは当然あると思いますが、息子は上司にいい加減な態度で臨む人間では決してありません。いったい何があったのか、事実をはっきりさせたい。検察にもしっかりとした対応を取ってもらいたいと考えています」(父親) 今回の件について、亡くなった検事の勤務実態がどうなっていたのか、パワハラはなかったのかなどについて広島地検に取材を申し入れたが、同地検の広報官は質問状の受け取りすら拒否し、「当庁からは一切、お答えいたしかねます」とするのみだった。 一方、法務省刑事局は取材に対して、「個人のプライバシーに関わる事例であり、お答えは差し控えさせていただいております。(労務管理については)各検察庁において、法令等に基づいて適切に行っているものと承知しています」と回答した』、「「公務災害」の認定を求めて広島地検に申し立てを行う予定」、「地検」は立場上もこれを否定するだろうが、その場合、どこが判断するのだろう。

次に、1月8日付けAERAdot「【スクープ】第二の村木事件 元検察事務官が訴える検察の「証拠」改ざん〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021010600066.html?page=1
・『「桜を見る会」疑惑で安倍前首相を不起訴にして批判された検察庁。その検察で違法捜査や証拠改ざん疑惑が浮上している。元検察事務官が訴える「第二の村木厚子(元厚生労働事務次官)事件」とは? 検察の不正義を暴く。 「長く仕えた検察がここまでひどいとは、思いもしませんでした」怒りに口元を震わすのは、元神戸地検の検察事務官、Aさん(58)。 Aさんは2012年3月、検察事務官を務めていた神戸地検を分限免職処分となった。わかりやすくいえば「クビ」だ。 Aさんはそれまで11回も検察庁から表彰を受けていた優秀な事務官だった。なぜ、こんな仕打ちを受けたのか? 「検察が法を無視して一般の検察事務官である私に違法なことをさせていたのです。それが分限免職処分の引き金になった。その後、検察は証拠改ざんまでして裁判に出してきました」 09年4月だった。神戸地検の刑事部に配属されたAさんは、当時の刑事部長から呼ばれて、「これから一任事件をやってもらいます」と声をかけられたという。一任事件とは何か? 検察事務官も検事、副検事と同様に、被疑者や参考人などの取り調べ、供述調書の作成などが可能だ。その場合、検察庁法などで定められた検察官事務取扱検察事務官(以下、検取)という資格を得て、検事や副検事の指導・監督のもとに捜査に加わることとなる。 だが、Aさんの場合は異なっていた。 「いきなり、副検事から警察で捜査した記録などを渡されて『これをやってください』と命じられました。本来、検事、副検事がやらねばならないものを、検取でもない検察事務官が、最後まで一任されたというものでした」 つまり、警察から検察庁に送致された事件の捜査、取り調べ、起訴か不起訴かの判断まで、すべて検察事務官が担当して判断しろと指示されたという。 Aさんが見せてくれた検察事務官当時のロッカーは大量の刑事記録の書類であふれていた。 10年1月の兵庫県警からの<送致書>には、手書きで<部長決裁まで任>と記されていた。同年2月にAさんが作成したのは、事件を捜査・検討して不起訴とした<不起訴裁定書>。そこには<主任検察官>としてAさんの印鑑が押印されている』、「本来、検事、副検事がやらねばならないものを、検取でもない検察事務官が、最後まで一任されたというもの」、全く不当極まる。
・『仕事量が急増したことと、重責を担わされたことで、Aさんは精神を病み、同年3月には、10日間ほど病気休暇をとった。 「検事や副検事からは、何の指示もサポートもありません。起訴か不起訴かを決する、本来、検察事務官に与えられていない責務を求められたことで精神状態もおかしくなってしまった。何度も一任事件をやめさせてほしいと訴えたが、無視された。それをきっかけに上司と対立、言い争うようになった」(Aさん) そして上司との対立からAさんの勤務評定は5段階の最低「E」まで落とされた。さらに職場対立で大声を出し、秩序を乱したという理由で、神戸地検はAさんを分限免職処分に踏み切った。 Aさんはこれを不服として12年5月、人事院に分限免職処分の取り消し審査請求を起こした。Aさんが神戸地検在籍時に刑事部長だった田辺信好弁護士(元岡山地検検事正)は、13年5月に人事院で証人となったときにこう証言している。 「(神戸地検が主張する)一般の検察事務官に包括的に事件処理をということは、権限を認めること。丸投げです。私の在籍時はなかったが、検察庁によっては忙しいというところは、違法だがルーズになっていたのが実態ではないか。主任検察官のところにAさんの印鑑があるというのは、ありえない」 地方の検察庁で部長経験もある、元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士もこう指摘する。 ある地検の交通部にいたとき、誰がやっても結論は同じという事案はある程度、検察事務官に任せました。もちろん、最後は私自身が報告を受け、処理内容をチェックしていました。今回のような検察事務官への一任は、ありえないことだ」 しかし、神戸地検は「一任事件」についてはAさんの検取の適格を見極めるために指導の一環でやらせていたなどと主張。人事院はAさんの訴えを却下して、分限免職処分を認めた。 そこで同年6月にAさんは民事訴訟を提訴。処分の取り消しを求めて現在、裁判中だ。 その裁判で神戸地検が請求した証拠に重大な問題があることがわかった。人事院での審査の際、前出の刑事部長ら神戸地検の5人が証言した。16年3月、神戸地検はその「反訳書」(録音文字起こし)を裁判で証拠請求した』、「郷原信郎弁護士もこう指摘する。 ある地検の交通部にいたとき、誰がやっても結論は同じという事案はある程度、検察事務官に任せました。もちろん、最後は私自身が報告を受け、処理内容をチェックしていました。今回のような検察事務官への一任は、ありえないことだ」、「Aさんは民事訴訟を提訴。処分の取り消しを求めて現在、裁判中だ」、なるほど。
・『「反訳書を見ていると明らかに内容が違っていることに気づいた。そこで反訳書と審査の録音を突き合わせたところ、4人の証言内容がおかしいことがわかった。多くの箇所で言葉を削除したり、話していない言葉が付け加えられたりしていた。検察が証拠を改ざんするなんて、信じられませんでした」(Aさん) 改めて本誌でも、入手した人事院での審査時の証言の録音と「反訳書」を照らし合わせてみた。Aさんの弁護士が「一任事件」の違法性について質問している回答が削除されていた。また、聞いていない架空の「質問」が記されていたり、検察の主張に正当性を与える意味合いの文言が加筆されていた。 Aさん側は裁判で神戸地検の「反訳書」について“改ざん”を主張し、録音に沿った書き起こし文書を裁判所に提出した。すると、神戸地検は1年以上も経過した17年7月に「要約書」として訂正してきたという。 検察の証拠の改ざんで記憶に新しいのは、無罪判決を受けた元厚労事務次官の村木厚子氏の事件だ。その捜査の際、大阪地検特捜部によって、証拠品のフロッピーディスクのデータが改ざんされていることがわかり、検察の信頼は地に堕ちた。特捜部長ら3人が逮捕され、有罪となった。 Aさんの弁護人はこう憤慨する。 「Aさんから反訳書の問題を指摘され、腰を抜かすほど驚きました。まさに証拠を“改ざん”して裁判に出してきた。中身はミスとは言い難いもので、A4サイズ1枚分ほども証言を削除している部分もあった。意図的に思えました」 検察裏金問題を告発した、元大阪高検公安部長の三井環氏もかつて神戸地検に在籍した。 「検取でない検察事務官に、一任事件として起訴か不起訴かまでやらせるなんて、神戸地検でも他の検察庁でも聞いたことがない。事実なら違法です。人事院証言の反訳を都合よく書き換えて裁判に出したのは、検察の証拠“改ざん”。村木事件と構造は同じではないのか。虚偽公文書作成罪に該当する」(三井氏) 神戸地検にAさんの件について質問状を送ったが、こう回答があった。 「裁判継続中ですので、回答は差し控えさせていただきます」 裁判の行方が注目される。(今西憲之)』、「民事訴訟」の方は、「神戸地検の「反訳書」について“改ざん”」があったのであれば、問題なく勝訴するだろうが、「神戸地検」の違法性について、検察審査会にかけるべきだろう。

第三に、2月17日付け東洋経済オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「1年で20件以上も訴えられる編集長が証言台から見た「裁判官たちの素顔」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/262991
・『文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。今では週刊誌が訴えられるのは珍しくはありませんが、私が初めて証言台に立った頃は名誉棄損で訴えられることは少なかった時代です。証言台から見た裁判官たちについて語ります』、「証言台から見た裁判官たち」とは興味深そうだ。
・『コクリコクリと居眠りする裁判官たち  裁判官というと、みなさん、とても温厚で公正で、紳士的な人物像を想像していると思います。また、権力欲などとはほど遠い聖人君子が「判決を下す」という風に考えがちでしょう。そういう裁判官も大勢います。しかし、私が法廷で見た裁判官の姿は少し違いました。 もちろん、私は週刊誌の編集長。人の不幸をネタにして儲けるろくでもない人種であり、ある時期など1年で20件以上の訴訟を抱えるなど、普通の人からは考えられない経歴を持っていたので、裁判官も違う目で私を見たのかもしれません。 初めて法廷で証言台にたったのは「被告人」としてでした。ある百貨店が主催する古美術品の展覧会に出品されていた茶道具が「贋作だ」という記事を書き、百貨店側に訴えられたのです。 私は30歳前半。まだ週刊誌をめぐる名誉毀損裁判も少なかったころの話です。 型通りに宣誓して、証言台に立ちました。びっくりしたのは、証言を始めると、3人いる裁判官のうち1人が明らかに寝ていたことです。コクリコクリと。もう1人も、ほとんど目をつぶっていて、寝ているようにしか見えません。) 「正しい記事を書いているのに、なぜ訴えるのか」と、まだ若い私は証言しました。訴える人間の会社内での立場や、こんなどうでもいい裁判に立ち会わされる裁判官の気持ちなど想像する余裕もなく、居眠りしている裁判官のことを顧問弁護士にグチりました。 弁護士いわく「そのために、速記をとっているんですから(笑い)」「あんまりカリカリしないで、裁判官の心証が大事です」「木俣さんは、アタマにくると早口になります。反対尋問(原告側、つまり百貨店側の弁護士から私に質問する時間)のときは、ゆっくりしゃべってください。時間は決まっていますから、ゆっくりしゃべれば、それだけ相手がイヤな質問を投げる時間が減ります」などなどを教えられました。しかし、やはり早口になってしまったらしく、顧問弁護士に後ろから、「ゆっくり、ゆっくり」といわれたことを思い出します。 この裁判、実は「贋作だ」と週刊文春に証言した古美術の専門家が、百貨店側の証人として出廷し、「本物だ」と証言する予想外の展開になりました』、嘘みたいな話だ。
・『記事のニュースソースが原告側の証人としてまさかの出廷  驚いたのは、裁判官たちが「専門家」という人たちが出廷したとたん、ものすごく信頼したことでした。「専門家」が出廷してから、明らかに法廷の空気が変わりました。専門家は文春にウソを言ったのか、法廷でウソをいっているのか――。彼がニュースソースとは明かせない文春側弁護人は、なんとか裁判官にそのことをわからせようと、いろいろな質問を浴びせます。 彼の週刊文春での証言を読み上げ、「この証言は、あなたもどこかで話したことがありませんか? 」と聞くと、「知らない」としらを切る専門家に、今度は「この発言をした人はこの法廷のどこかにいるはずなのですが、わかりませんか」と裁判官にも匂わせますが、裁判官はまったく気づきません。 結果的には、裁判には勝訴しました。ギリギリまで「専門家」に言いたい放題証言させて、贋作記事がウソだと言わせた後、文春の取材時に取材班が隠して録音していたテープを出したのです。本来隠し撮りテープは違法であり(当時はそれほど厳しくなかったのですが)法廷の証拠にはなりにくいのですが、本人が法廷でまったく違う証言をするなら話は別です。 「裁判官の驚いた顔、そして、騙されたと知って怒り狂っていた顔を木俣さんに見せたかった」と、顧問弁護士たちが教えてくれました』、この決定的場面に「木俣」氏は出席せず、「弁護士」任せにしていたので、伝聞情報になったようだ。
・『女性弁護士だから勝てた? 勘ぐりたくなるような裁判も  裁判も人間がやるものです。好き嫌いや心証が大事なんだなあ、と段々わかり始めたころ、ある人に出会いました。若い女性弁護士さんです。 「木俣さんが法廷で証言するのを司法修習生(司法試験に合格し、検事、弁護士、裁判官になる前に受ける研修)として、法廷の裁判官席の横で聞いていたことがあります。あのとき、木俣さんの顧問弁護士は女性弁護士でしたよね。すごく裁判官に人気があって、法廷の後、みんなべた褒めしているので、絶対、文春が勝つと思っていました」 女性だから勝てたのではなく、女性弁護士の弁護術がよかったのだと思います。しかし、そんな風に勘繰りたくなるほど、最初から判決が決まっているような雰囲気の裁判があるのは事実です。 百貨店相手の牧歌的裁判の時代は終わり、「悪徳週刊誌に厳罰を」という風潮の裁判が増える時代になりました。ある裁判では、一審で敗訴して控訴したところ、編集長の給料が裁判所から差し押さえられたことがあります。 確かに、マルチ商法の会社などで騙された消費者が訴えて勝訴しても、会社側は控訴したまま逃げ散って、賠償金が支払われないケースがあります。この例に倣っての「差し押さえ」ですが、現実に週刊誌の敗訴では(大体、会社と編集長が被告人です)、賠償金は全額会社が支払います。一応、文春はマルチなどとは違う会社のはずですが、原告がよほど文春のことを嫌いだったか、あるいは裁判官が嫌いだったのか――。 差し押さえ命令が下され、その編集長は生活にとって必要最低限の二十数万円を除いた給料を差し押さえられて、賠償金として積み立てすることになってしまいました(以降、控訴するときは、すぐに賠償金を供託金として納め、そんなことが起こらないようになっています)』、「差し押さえ命令が下され、その編集長は生活にとって必要最低限の二十数万円を除いた給料を差し押さえられて、賠償金として積み立てすることになってしまいました」、その当時は、訟をためらわせる要因になり得たようだ。
・『週刊誌編集長にとって3月の恒例? 東京地検からの「怖い電話」  給料を差し押さえされるのもイヤですが、先方は自宅を調べて、段々自宅あてに訴状が届くようになりました。これもなんだか犯罪者になったようで、気持ちのいいものではありません。 そして3月になると、週刊誌編集長には恒例となる1本の電話がある役所からきます。のんびり出社すると、机の上にメモが。「東京地検からお電話で、○○○までお電話ください」というものです。 エエッ!天下の東京地検です。ビクビクしながら電話をすると、検事さんが名前を名乗り、「人事異動の時期がきたので、あなた相手に提起された刑事訴訟の事務的処理をしなければなりません。そのため、あなたの戸籍上の正式な住所と生年月日を教えてください」という調査が始まります。親切な検事さんだと、誰から訴えられていたかも教えてくれました。 民事訴訟は公開されていますが、刑事は当然ながら秘密裏に捜査が行われるので、まったく事前にはわかりません。しかし、これも牧歌的な時代の話。すぐに「その程度では甘い」という指摘を受け、検察審査会にもう一度訴えがいくため、弁護士さんに話をして調書として検察に提出したり、編集長が直接検事に取り調べを受け調書をまかれたりする、という事態にもなりました。 週刊誌編集長はなかなかストレスがたまる仕事です。しかし、一番感謝すべきは文春の顧問弁護士の方々。本当に何度も助けていただきました』、確かに「文春砲」のように取材先が否定するような秘密などをスクープしたりする雑誌の「編集長」は、裁判になることを覚悟の上で、真剣勝負しているので、読者も興味をそそられるのだろう。
タグ:司法の歪み (その15)(広島地検の若手検事はなぜ自ら命を絶ったのか 過去2年で4人が自殺、問われる検察組織の実態、【スクープ】第二の村木事件 元検察事務官が訴える検察の「証拠」改ざん〈週刊朝日〉、1年で20件以上も訴えられる編集長が証言台から見た「裁判官たちの素顔」) 東洋経済オンライン 竹中 明洋 「広島地検の若手検事はなぜ自ら命を絶ったのか 過去2年で4人が自殺、問われる検察組織の実態」 広島地検で29歳の若手検事が自ら命を絶った 広島地検に配属された「新任明け」の検事 「司法修習生以下」と叱責 「直属の上司である公判部長の決裁は通ったはずなのに、その上の次席検事から厳しい叱責を受けた」、「次席検事」はよほど偏屈な人物のようだ。 調査結果に職員から不満の声 「広島高検」が調査したとはいえ、結果は初めから決まり切っていたような紋切り型だ。「郷原信郎」氏のコメントは同感である 勤務時間は「手書き」で申告 「最高裁の判例(2000年の電通事件判決)では、予見可能性があったのに、社員が自殺する危機回避努力を怠ったとして、会社の安全配慮義務違反が認められています」、にも拘わらず、検察内ではこうした考え方とは無縁のようだ 「2018年~2019年の2年間だけでも4人の検事が自ら命を絶ち」、司法試験を優秀な成績で通った若手検事が、自殺に追い込まれているのは国家的損失である 遺族は公務災害の申し立てへ 「「公務災害」の認定を求めて広島地検に申し立てを行う予定」、「地検」は立場上もこれを否定するだろうが、その場合、どこが判断するのだろう AERAdot 「【スクープ】第二の村木事件 元検察事務官が訴える検察の「証拠」改ざん〈週刊朝日〉」 「郷原信郎弁護士もこう指摘する。 ある地検の交通部にいたとき、誰がやっても結論は同じという事案はある程度、検察事務官に任せました。もちろん、最後は私自身が報告を受け、処理内容をチェックしていました。今回のような検察事務官への一任は、ありえないことだ」 「Aさんは民事訴訟を提訴。処分の取り消しを求めて現在、裁判中だ」 「民事訴訟」の方は、「神戸地検の「反訳書」について“改ざん”」があったのであれば、問題なく勝訴するだろうが、「神戸地検」の違法性について、検察審査会にかけるべきだろう。 木俣正剛 「1年で20件以上も訴えられる編集長が証言台から見た「裁判官たちの素顔」」 「証言台から見た裁判官たち」 コクリコクリと居眠りする裁判官たち 記事のニュースソースが原告側の証人としてまさかの出廷 この決定的場面に「木俣」氏は出席せず、「弁護士」任せにしていたので、伝聞情報になったようだ 女性弁護士だから勝てた? 勘ぐりたくなるような裁判も 差し押さえ命令が下され、その編集長は生活にとって必要最低限の二十数万円を除いた給料を差し押さえられて、賠償金として積み立てすることになってしまいました」、その当時は、訟をためらわせる要因になり得たようだ 週刊誌編集長にとって3月の恒例? 東京地検からの「怖い電話」 確かに「文春砲」のように取材先が否定するような秘密などをスクープしたりする雑誌の「編集長」は、裁判になることを覚悟の上で、真剣勝負しているので、読者も興味をそそられるのだろう。
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