SSブログ

日本の政治情勢(その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機) [国内政治]

日本の政治情勢については、2月26日に取上げた。今日は、(その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機)である。

先ずは、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853600.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。元ネオヒルズ族から元赤軍派まで、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の前編】』、興味深そうだ。
・『「一生帰国しない」  国会議員から一転して容疑者に──。国会欠席を理由に参議院議員の資格を剥奪されたばかりのガーシーこと東谷義和に対し、警視庁はYouTubeチャンネル「ガーシーCH」で人気俳優らに対する常習的脅迫などの疑いがあるとして逮捕状を取った。 「一生帰国しない覚悟ができた」 SNSでの配信で宣言した東谷は今後もドバイがあるアラブ首長国連邦(UAE)にとどまり続けるのか、それとも第三国に移動するのかが一つの焦点になっている。 あくまで密着を続けてきた私の予想で言えば、東谷はUAEにとどまる可能性が高いと考えている。逮捕状が出たことで日本外務省は旅券返納命令を出したが、東谷が4月13日までに応じなければ、日本のパスポートは失効する。今後はカネを積めば買える他国のパスポートを取得するとの憶測も一部で報じられているが、たとえ取得したとしても、当面の拠点はUAEになるだろう。 当然だが、これまでUAEに長期滞在してきた東谷はUAEで居住ビザを取得している。昨年1月から東谷はドバイに呼び寄せた人物の近親者がオーナーである和食レストランでアルバイトしていたため、その就労目的でビザ発給を受けたが、その後、アルバイトを辞めてYouTube活動を本格化させたため、ビザを切り替える必要が出てきた。 UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功したのだ。 そして、UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる。パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低いのだ。TBSが、警視庁の捜査幹部が「何年かかっても必ず逮捕する」とコメントしたと報じていたが、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン被告と同じく、警察も東谷の逮捕のハードルは非常に高いことはすでに覚悟しているだろう』、「UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功した」、「UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる」、「パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低い」、なるほど。
・『秒速で1億円稼ぐ男  ドバイでの東谷を1年近く追った拙著『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』では、東谷の周囲に集まっていた者たちにも取材した。動画配信サイト「FC2」創業者の高橋理洋、元赤軍派の経営コンサルタント・大谷行雄、元バンドマンで秘書の墨谷俊、年商30億円の経営者・辻敬太、そして東谷に著名人暴露を提案した黒幕A……。 それぞれが日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱えながら、ガーシーCHに対して暴露ネタの提供から、動画制作の助言、地元王族の紹介など陰に陽に手を貸していることに気づき、その様子を描いた。脛に傷を持ちながらもギラギラとした野心を見せつける彼らに、戦前に中国や東南アジアなどに渡った大陸浪人に近しいものを私は感じたのだった。 彼らに限らず、近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ。ドバイの金満なイメージを広めたのはなんと言っても、「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない。UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった。(後編に続く)』、「近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ」、「「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない」、「UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった」、なるほど。

次に、3月27日付けNEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230327_1853601.html?DETAIL
・『国会の欠席を続け参議院から除名処分となったガーシーこと東谷義和氏(51)は、名誉毀損などの疑いで逮捕状を出されながら、いまだ拘束されていない。遠く、中東のアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにいるからだ。 ドバイに集うヤバい日本人は、彼だけではない。「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼氏などの元ネオヒルズ族や元赤軍派など、ガーシー一味を中心に、ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていたのだ。富める者はますます富み、税負担の重い日本を脱出して自由を満喫する──ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える。朝日新聞ドバイ支局長としてガーシーに密着し始め、退職して『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)を上梓した伊藤喜之氏が現地からレポートする(文中敬称略)。【前後編の後編。前編から読む】 ドバイ在住歴が長い日本人コンサルタントの男性が言う。 「UAEは諸経費込みで1人当たり日本円100万円ほどあれば法人設立と3年有効のビザも取れてしまう。そして、コロナ禍でも国境を開放し続け、PCR検査だけで入国できた。同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった。 その中には資金調達だけを目的とした未上場の暗号通貨で、最後まで上場することなく、調達できた資金だけを持ち逃げするような詐欺コインの事業者も流入していると指摘されているのもまた事実だった』、「ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていた」、「ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える」、「同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バイナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった」、なるほど。
・『暗号資産でトラブル  拙著でも、そんな詐欺コインを販売したなどと指摘されている人物を取り上げた。かつて与沢に師事する形で情報商材を売るネオヒルズ族として名を上げ、「SNSで年収2億」をキャッチフレーズに知名度を上げた久積篤史だ。彼はその後、情報商材の世界から転身し、2015年ごろから暗号資産ビジネスを手がけるようになっていた。 「PATRON」「CHIP」「BADGE」といった暗号資産トークンを発行するプロジェクトを主導したが、その後、コイン価格は暴落し、損失を出す人が続出し、一部で被害者の会が立ち上げられていた。日本警察や関東財務局からマークされていると感じた久積は2021年12月にドバイにやってきた。 そこで出会ったのが自らの詐欺疑惑が発覚して、どん底の状況にあった東谷だった。2人とも共通の人物、黒幕Aによってドバイに呼び寄せられていた。 ちなみに与沢と久積はかつてネオヒルズ族として同じ釜の飯を食った仲だが、今は関係が悪化し疎遠になっている。同じドバイに滞在していても、私が知る限り、直接的に接触した形跡はない。昨年7月、久積は与沢を糾弾する動画をYouTubeにあげ、一部で話題になった。暗号資産NXDやツイッターでのお金配り企画などで知られる投資家の瀧澤龍哉もドバイ在住だが、SNS上などで久積が「BADGEコインの上場を邪魔された」などと指摘し、トラブルになっている。ドバイを舞台にして、こうした暗号資産関連の日本人同士のいさかいも起きているのが現実だった。 そうした状況はUAEアブダビにある日本大使館やドバイにある日本総領事館も憂慮しているようだ。3月20日付の総領事館からの注意喚起メールには、こんな一文があった。 「不動産や仮想通貨等の投資案件に起因する日本人同士のトラブルも散見されていますのでご注意ください」 外務省関係者によると、UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増しているという』、「UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増」、「要注意の日本人」がそんなに多いとは驚かされた。
・『官邸を攻撃対象に  一方で、UAEに引きつけられるグレーゾーンの人々は日本人に限らない。とりわけ有名なのは世界中からの政治亡命者の多さだ。 最近では、アフガニスタンのガニ前大統領、スペイン国王だったフアン・カルロス1世、タイのタクシン元首相、インラック元首相の兄妹もアブダビやドバイで事実上の亡命生活を続けているとされる。みな母国に戻れば、過去の汚職などで刑事訴追を受ける可能性があると取り沙汰されている。こうした亡命者は、小国の元首脳や国会議員レベルも含めれば数えきれないほどいる。 経済人も多い。ロシア発のメッセージアプリ・テレグラム創業者で「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」の異名を持つパベル・ドゥロフ氏もプーチン政権と距離を置いたとされ、拠点をドバイに移している。ロシアのウクライナ侵攻後には経済規制逃れで欧州に持っていたスーパーヨットなどの資産をUAEに移動させたり、ドバイの高級レジデンスを購入したりしているロシア人富豪(オリガルヒ)も複数いると報道されている。 UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい。2020年夏にはトランプ米政権の仲介で長らく敵対していたイスラエルと電撃的に国交を開くなど、経済実利を優先するお国柄でもある。) 「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ。 東谷は最近、警察捜査を「国策捜査」などと指摘し、その不当性を主張し始めている。常習的脅迫や名誉毀損の疑いがあるとされている人気俳優らへの暴露行為はあくまでも事実に基づいた告発であり、そうした容疑には当たらないと訴える一方で、東谷は岸田内閣のキーマンである木原誠二官房副長官を攻撃対象とするなど、政権中枢にも刃を向けてきたため、東谷への捜査は「官邸了解案件」であると囁かれている。 すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている。 (了。前編から読む)』、「UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい」、「「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ」、「すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている」、そんな「ウルトラCのシナリオ」は実現してほしくない。

第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321431
・『昨今は「世襲政治家」への批判が再燃している。自身のホームページに「家系図」を掲載した岸信千代氏、「公用車で観光」疑惑が浮上した岸田翔太郎氏などの言動が目立つからだ。かつては世襲体質を変えようと、各政党が「候補者の公募」に力を入れていた時期もあったが、結果的に「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」などと呼ばれた新人は失言や問題行動を繰り返した。なぜ、ビジネス界で活躍する優秀な人材は、あまり政界に入ってこないのだろうか。その根本的要因を考察する』、興味深そうだ。
・『岸信千代氏に岸田翔太郎氏…「政治家の世襲」が批判の的に  議員の辞職・死去などに伴って、欠員を補充するための「補欠選挙」が4月23日に実施される。衆議院で補欠選挙を行う選挙区は、千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区の4つである。 このうち衆議院山口2区の補欠選挙は、岸信夫・前防衛相の辞職に伴うものだ。自民党は公認候補として岸氏の長男・信千代氏を擁立している。 ところが今年2月、信千代氏には思わぬ「逆風」が吹いた。 信千代氏は公式ホームページを開設した際、自身のプロフィールとともに、政界の“重鎮”である親族の名前を列挙した家系図を掲載した。それが、堂々と「世襲」をアピールしていると厳しく批判されたのだ。 家系図に名前が記された親族は、父の信夫氏、伯父の安倍晋三氏、祖父の晋太郎氏、曽祖父の安倍寛氏、岸信介氏、曽祖叔父の佐藤栄作氏の6人である。 補欠選挙の話題からは離れるが、世襲といえば、岸田文雄首相による息子・翔太郎氏の“優遇”も記憶に新しい。 岸田首相は翔太郎氏を首相秘書官に起用し、欧米5カ国訪問時に帯同させたのだが、翔太郎氏には公用車で観光していた疑惑が浮上。首相の息子という「特権」を利用したと批判された(本連載第324回)。「政治家の世襲」に対する批判は昔からあるが、ここに来て再燃している。 「政治家の世襲」とは、親は祖父母など親族が作った「三バン」(地盤、かばん、看板)と呼ばれるものを継承して政治活動を行うことをいう。また、三バンを引き継いでいない場合でも、親子などの親族関係があれば、世襲とみなされる場合もある。 自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員である。選挙のたびにその割合は上下する。自民党が選挙に敗れたときに、世襲議員の割合が約4割に上がることもある。世襲議員は選挙において「逆風」に左右されない強さがあるとされる。) 世襲議員は、政界でキャリアを重ね、閣僚・党幹部になるのに有利である。第二次岸田改造内閣が2022年8月に発足した際、親族から直接地盤を継承した「純粋な世襲議員」は閣僚20人中9人だった(その後、閣僚辞任によって7人に減少)。また、平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員である。 だが、世界の中では、世襲議員は当たり前の存在というわけではない。米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない。ブッシュ家、ケネディ家などは少数派である。 英国では世襲議員はほぼいない。下院議員の約7割が、生まれ故郷でも職場でもない選挙区から立候補する「落下傘候補」である。保守党、労働党など各政党では、「公募」を実施して候補者を決定する「実力主義」が貫かれている。 世襲議員の全員がダメだというつもりはないが、その能力や言動に批判があるのも事実だ。そこで今回は、日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい』、「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員」、「平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員」、他方、「米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない」、「英国では世襲議員はほぼいない」、「日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい」、興味深そうだ。
・『実力者が成り上がる昭和の「閨閥」システムとは?  平成以降、世襲議員が首相になることが多くなったが、それ以前は違っていた(本連載の前身『政局LIVEアナリティクス』の第23回)。 昭和の時代に活躍した首相の初当選年齢とキャリアは、以下のようなものだった。 ・池田勇人氏:49歳(1期目に蔵相就任) ・佐藤栄作氏:47歳(当選前に官房長官、1期目に自由党幹事長、郵政相) ・岸信介氏:45歳(戦前に商工相などを歴任、戦後に公職追放解除後4年で初代自民党幹事長) ・福田赳夫氏:47歳(4期目に政調会長、幹事長) ・大平正芳氏:42歳(5期目に官房長官) こうした経歴を見ると、当時の日本では、財界・官界で出世した人物が40代以降に初当選し、即幹部に抜擢(ばってき)される実力主義だったことがうかがえる。 ただし、この実力主義は「条件付き」であり、必ずしも世襲と無縁というわけではなかった。 というのも、当時の総理には、ビジネス界や皇族などのそうそうたるメンバーと血縁・婚姻関係を結び、「閨閥(けいばつ)」と呼ばれる親族関係を形成している人物が多かった。 歴代総理の縁戚関係をたどると、日本を代表する財閥である三井家や住友家、ブリヂストン創業者の石橋一族、森コンツェルンの森一族、昭和電工の安西一族、住友銀行元会長の堀田一族、日本郵船元社長の浅尾一族、そして天皇家などに行きつく。 当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握ったのだ』、「当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握った」、なるほど。
・『外部参入組よりも世襲議員が力を持つ理由とは  かつて、官僚となり「閨閥」入りすることは政界への最短コースであり、庶民階級から政界入りする一つの道として確立されていた。 今考えると「閨閥」というシステムは前時代的であり、世襲の一種であることに変わりはないのだが、筆者はこの仕組みに一定の評価を与えている。 あくまで実力でのし上がってきた“強者”たちが、縁戚関係の力を借りて出世の道を切り開くという意味で、「純粋な世襲」とは異なるからだ。実力のない者は、そもそも「閨閥」入りすることは難しく、無条件で既得権益を享受できるわけではない。 だが現在は、閨閥のシステムは終焉を迎え、「純粋な世襲」が当たり前の時代になった。もちろん、外部から政界に参入してくる人材も存在するが、世襲議員のほうが政界でより指導的立場になりやすいのは事実だ。 その一因には、自民党の年功序列システム(当選回数至上主義)の完成がある(前連載第24回)。当選回数至上主義とは、国会議員の当選回数に応じて、閣僚、副大臣、国会の委員会、党の役員といった、さまざまなポストを割り振っていく人事システムである。 自民党議員は当選5~6回で初入閣までは横並びで出世し、その後は能力や実績に応じて閣僚・党役員を歴任していく。 約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い。 例えば、小泉純一郎氏は30歳、橋本龍太郎氏は26歳、羽田孜氏は34歳、小渕恵三氏は26歳である。ちなみに、史上最年少で自民党幹事長を務めた小沢一郎氏は27歳で初当選した』、「約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い」、なるほど。
・『「世襲体質」を変えようとした結果 大物政治家の「チルドレン」が暴走の皮肉  一方、この人事システムでは、官界・ビジネス界で成功した後や、知事などを経験した後に40~50代で政界入りした人物の実績はほとんど考慮されない。「ただの1年生議員」として扱われ、そこから政界でのキャリアをスタートさせねばならない。 そして、40~50代で政界入りすると、初入閣するのは 50代後半か60代前半となる。そのとき、彼らと同年代の世襲議員は、既に主要閣僚・党幹部を歴任したリーダーとなっている。 世襲議員を要職に抜擢する人事としては、小泉純一郎内閣の安倍晋三自民党幹事長や石原伸晃国土交通相、麻生太郎内閣の小渕優子少子化担当相、菅義偉内閣の小泉進次郎環境相などが代表例である。 一方、確かに自民党など各政党は、「世襲批判」を受けて「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面もある。 実際に、2000年代に入ると「小泉チルドレン」(自民党、2005年総選挙)、「小沢ガールズ」(民主党、2009年総選挙)、「安倍チルドレン」(自民党、2012年総選挙)など、三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった。 世襲ありきのシステムを改革しようとした結果、外から政界入りした人材が不祥事を連発させたのだから皮肉なものである。 ビジネス界で活躍する優秀な人材は、なぜあまり政界に入ってこないのだろうか。 筆者は、その理由は二つあると考える。 一つ目は、「1年生議員」として扱われる状況下で出世へのモチベーションを描けないこと。二つ目は、終身雇用・年功序列の「日本型雇用システム」から逸脱するのが難しいことだ(第156回)。 今回は、後者を掘り下げて解説する。現在の雇用慣行では、企業で「正社員」のステータスを得た若者が、年功序列・終身雇用のレールから一度外れると、その恩恵を再び享受することが難しくなる。 そのため転職する場合も、似たような雇用慣行の他社に移る程度であり、政界入りなどの挑戦に踏み切る人は珍しい。) もし政界挑戦などによって会社員としての“空白期間”ができると、中途採用で低評価され、ビジネス界には戻りづらくなるからだ。 すなわち、一般企業の社員が日本で政治家になるということは、大学4年生時の「新卒一括採用」で得た「正社員」の座を捨てることである。生まれながらに三バンを持つ「世襲」の候補者を除けば、大きなリスクのある挑戦となる。 そうなると、年功序列・終身雇用のレールに乗って順調に出世している優秀な人が、わざわざ退職して政治家になる理由がない。会社を辞めるのは、社内で満足な評価を得られず、不満を募らせている人だろう』、「「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面も」、「小泉チルドレン」・・・「小沢ガールズ」・・・、「安倍チルドレン」、「三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった」、思い出した。
・『世襲議員を高学歴の官僚が支える「逆・学歴社会」が誕生  なお、会社員だけでなく公務員(官僚)でも、「くすぶっている人が外に出たがる」傾向があるという。 あるエリート官僚によると、彼と同じ省から国会議員に転身する人は少なくないものの、政界入りした人物の中で「尊敬できるのは1人しかいない」という。 すなわち、省内で出世コースに乗り、仕事が充実している官僚は政治家に転身しない。転身するのは、省内で評価されず、不満を持っていた官僚なのだ。 ちなみに、英国など欧州では、政治家への道は日本ほどリスキーではない。早期に主要閣僚の業務をこなせる能力を持つ優秀な若者が政界入りしている。40代で首相に就任する政治家も少なくなく、閣僚も若手が起用されることが多い(第131回)。 また、首相や閣僚を辞任後、政界からビジネス界に転じることも多い。米国のIT企業でCEOを務める者もいる。このようなキャリア形成が可能なのは、年功序列・終身雇用がないからに尽きる。 要するに、優秀な人材が政界を目指せる風土を生むには、政界の中だけでなく、日本社会全体の改革が必要だといえるだろう。 あえて皮肉な言い方をすれば、現在の日本の政界は、成蹊大学、成城大学、学習院大学や、幼稚舎から慶応に入った「世襲のお坊ちゃま・お嬢さま」が牛耳っている。 それ以外の外部参入組は、会社や省庁で出世できずに、政界に転じた人たちで占められている。 そうした人々を、東京大学や京都大学を卒業した官僚が支えているのだ。この構図は「逆・学歴社会」だといえる(第233回)。 これでは、優秀な人材はバカバカしくなって政界に興味を持たなくなる。これが「政治家の世襲問題」の本質なのではないだろうか』、「これが「政治家の世襲問題」の本質」、興味深い仮設だ。

第四に、4月19日付け日刊ゲンダイ「岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機」を紹介しよう。
・『何が凶行に駆り立てたのか──。岸田首相襲撃犯の木村隆二容疑者(24)が黙秘を続ける中、少しずつ犯行に至った背景が浮かび上がってきた。動機解明の手掛かりとなりそうなのが、「民主主義への挑戦」を続ける「アベ政治」への憤りだ』、興味深そうだ。
・『「民主主義への挑戦」に憤り  木村容疑者は昨年6月、参院選(同年7月実施)に立候補できないのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。その訴訟で安倍元首相の国葬実施や、安倍元首相と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係を批判していたことが判明した。 木村容疑者は昨年10月、地裁に提出した準備書面で、「岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数の中、閣議決定のみで強行した」と指摘。「民主主義への挑戦は許されるべきではない」と強い言葉で非難していた。 安倍国葬を「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す場」と位置づけていた岸田首相が、民主的プロセスをないがしろにして国葬を断行したことは批判されて当然である。だからといって、爆弾を自作して襲撃していい理由には決してならないが、木村容疑者が「民主主義への挑戦」に怒りを覚えていたであろうことは想像に難くない。 「国葬は世論の反対が6割以上に上る中、強行されました。木村容疑者も6割を超えた人々のひとりです。彼のものとみられるツイッターを読む限り、統一教会などの宗教組織票を含む『地盤』と『看板』『カバン』を持った世襲への怨嗟や、そうした『持てる者』が階級支配を再生産することへのイラ立ちが透けて見えます。一方で、自民党保守派のような排外主義的な主張も散見される。もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)』、「もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」、面白い仮設だ。
・『透ける格差や世襲へのイラ立ち  振り返れば、安倍政権は「民主主義への挑戦」の連続だった。選挙で勝利するたび「民意」を錦の御旗に、多くの重要法案も数の力に任せて強行採決。集団的自衛権の行使容認も閣議決定の解釈改憲で片づけてしまった。 民主的な手続きを骨抜きにする政治スタイルを岸田首相も踏襲。防衛予算倍増や原発政策の転換など、自民1強をいいことに、やりたい放題である。 「持てる者」が「強者の論理」に寄りかかり、対話と熟議に基づく民主主義をないがしろにする──。10年以上に及ぶ「アベ政治」が、木村容疑者を蛮行に駆り立てた背景にあるのではないか。 自民党内からは「テロを起こした人間の主張や背景を一顧だにしない」(細野豪志衆院議員)との意見も出ているが、「木村予備軍」は確実にいる。だからこそ、再発防止のために動機や背景を探る必要があるはずだ。 「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」(五野井郁夫氏) 政治への怨嗟を放置していては、また同じことが繰り返されるだけだ。再び襲撃犯を生みださない責任は、権力を持つ政治側にもある』、「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」、同感である。
タグ:日本の政治情勢 (その63)(【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯、【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々、日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由、岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機) NEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】ガーシーが最長10年居住できる「ゴールデンビザ」を取得した経緯」 『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書) 「UAEでは近年、多額の投資をする投資家や博士号取得者、医師、研究者、芸術家など各分野で優れた能力を持つ人に対して最長10年の居住ビザを取得できる「ゴールデンビザ」の制度が始まった。東谷も自ら明かしているが、約120万人のチャンネル登録者数を誇った人気ユーチューバーということで、「クリエーター」の枠で申請したところ、昨年夏ごろにゴールデンビザ取得に成功した」、「UAEの場合、ビザ所持者の母国のパスポートがたとえ失効していたとしてもビザ期限が有効である限りは滞在し続けられるとされる」、 「パスポート失効=不法滞在とはならず、すぐさま強制送還となる可能性は限りなく低い」、なるほど。 「近年、後ろ暗さを抱えながらドバイやアブダビなどUAEに移住する日本人は増えている。邦人人口は在留届が出ている限りでUAE全体で4000人ほどと言われているが、届け出をしていない人も含めれば、その倍、あるいは1万人近くいる可能性があるとも言われる。 とりわけ多いのは暗号資産界隈で生息する人々だ」、 「「秒速で1億円稼ぐ男」と言われた与沢翼だろう。情報商材ビジネスで知られネオヒルズ族として注目を浴びたが、2014年に資金ショートで会社が倒産。深手を負いながら海外に向かい、個人商売に切り替え暗号資産投機で復活を遂げた。いったんはシンガポールなどに居住した後にドバイに移ってきた。 暗号資産で財をなした与沢がドバイでロールスロイスを乗り回す光景はテレビ映像などで拡散し、多くの日本人に影響を与えたのは間違いない」、 「UAE全体が所得税や法人税の負担がないタックスヘイブン(租税回避地)であること(今年6月からは法人税9%を導入予定)もあり、日本の重い租税負担を逃れる目的もあり、暗号資産を主な収入源とする人々の移住が相次ぐようになった」、なるほど。 NEWSポストセブン「【ドバイに集うクセモノ日本人】UAEに引きつけられる世界中のグレーゾーンの人々」 「ドバイは日本の裏人脈の“梁山泊”となっていた」、「ドバイには、日本の格差社会、拝金主義の一端が現われていると言える」、「同じくタックスヘイブンで人気があったシンガポールも2020年から外国人へのビザ発給を厳しくして高額の所得制限などをかけたり、コロナ禍の行動を厳しく制限したこともあり、UAEでは2021年初頭ごろから急激に暗号資産界隈の日本人が増えました」 UAEが積極的に受け入れ策をつくり、暗号資産関連のスタートアップのために複数のフリーゾーン(経済特区)が整備され、バイビットやCrypt.com、バ イナンス、FTXなどの大手暗号資産取引所も相次いで事業拠点をドバイに設けるようになった」、なるほど。 「UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増」、「要注意の日本人」がそんなに多いとは驚かされた。 「UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい」、 「「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ」、「すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている」、そんな 「ウルトラCのシナリオ」は実現してほしくない。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由」 「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員」、「平成元(1989)年以降の歴代首相の7割が世襲議員」、他方、「米国議会における世襲議員の比率は約5%にすぎない」、「英国では世襲議員はほぼいない」、「日本で世襲議員が多い理由と、その背景にある問題を考えたい」、興味深そうだ。 「当時の首相の多くは、本人が名門家系の令嬢と結婚するか、自身の子供を名門家系と結婚させることで縁戚関係を築き、「閨閥議員」として権力を握った」、なるほど。 「約300人もいる自民党の国会議員の全員が納得できるように党の役職を割り振るのは簡単ではないため、「当選回数」というわかりやすい基準を設けたのだ。このシステムは自民党政権の長期化に伴って固定化し、「当選回数」が国会議員を評価する絶対的な基準となった。 このシステムでは、若くして国会議員に当選すると、それだけ党内での出世に有利となる。そして、強固な選挙区(地盤)、政治資金(かばん)、知名度(看板)を引き継ぐ世襲議員の初当選年齢は若い」、なるほど。 「「候補者の公募」を行うなど、参入障壁の緩和を図ってきた側面も」、「小泉チルドレン」・・・「小沢ガールズ」・・・、「安倍チルドレン」、「三バンを持たない新人の大量当選現象が起こった。 しかし、その結果は惨憺(さんたん)たるものだった。チルドレンのさまざまな失言や不適切な行動によって、「政治家の資質」の低下がより厳しく批判されるようになった」、思い出した。 「これが「政治家の世襲問題」の本質」、興味深い仮設だ。 日刊ゲンダイ「岸田首相襲撃の根源に「アベ政治」への激しい怨嗟…見えてきた木村隆二容疑者の犯行動機」 「もともとは自民党支持者ながらも、投票などの正当な手続きでは格差や階級支配をどうにもできない、と絶望した末の犯行ではなかったのか」、面白い仮設だ。 「木村容疑者の犯行が民主主義の破壊行為であることは言うまでもありませんが、ゆえに動機も背景も捨て置くというのは、あまりにも雑です。政治家なら、この国の格差や世襲といった本質的な問題を問うていかないといけないと思います」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

宗教(その9)(エホバや統一教会2世ら「宗教虐待許さない」「法改正で組織に罰則を」 新たな支援団体設立も、「カルト権力」とは何か…青木理が安倍銃撃「以前」「以後」に書いたこの時評は日本人必読である、「エホバの証人」2世らが答えたアンケートの衝撃的な中身 「下着を脱がされて尻にむち打ち」「泣き叫ぶと回数が増える」、韓国系キリスト教団体が日本のホームレスに現金をばら撒く理由…その恐るべき資金力の秘密) [社会]

宗教については、本年3月5日に取上げた。今日は、(その9)(エホバや統一教会2世ら「宗教虐待許さない」「法改正で組織に罰則を」 新たな支援団体設立も、「カルト権力」とは何か…青木理が安倍銃撃「以前」「以後」に書いたこの時評は日本人必読である、「エホバの証人」2世らが答えたアンケートの衝撃的な中身 「下着を脱がされて尻にむち打ち」「泣き叫ぶと回数が増える」、韓国系キリスト教団体が日本のホームレスに現金をばら撒く理由…その恐るべき資金力の秘密)である。

先ずは、3月18日付け弁護士ドットコムニュース「エホバや統一教会2世ら「宗教虐待許さない」「法改正で組織に罰則を」 新たな支援団体設立も」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_18/n_15782/
・『全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の集会が3月18日、東京都内で開かれた。エホバの証人や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の2世らが体験談を紹介し、宗教虐待は許されないとのメッセージを発信した。 宗教信仰に関する虐待については、2022年末に厚生労働省がQ&Aを全国に通知し、判断基準を示した。 統一教会2世の小川さゆりさん(仮名)は講演で「Q&Aだけでは不十分で、今国会中に児童虐待防止法と児童福祉法の改正をしてほしい」と要請。エホバや旧統一教会に変化の兆しは見えず「罰則がないと組織に対して効果は限定的だ」とした。 一方、エホバ3世の夏野ななさん(仮名)らは自身が代表を務める支援団体として一般社団法人「スノードロップ」を設立する方針と発表した』、「Q&Aだけでは不十分で、今国会中に児童虐待防止法と児童福祉法の改正をしてほしい」と要請。エホバや旧統一教会に変化の兆しは見えず「罰則がないと組織に対して効果は限定的だ」、確かにその通りだ。
・『「あの頃の自分たちに寄り添いたい」  団体メンバーの当事者はエホバ2世の阿部真広さん、統一2世のもるすこちゃんさん。幅広くロビー活動をする「宗教2世ネットワーク」の役割とは違い、宗教虐待に特化した。教育現場や児童相談所とも連携することを想定している。 社会学の猪瀬優理・龍谷大教授も加わり、監事には全国弁連の山口広弁護士、サポートに同・木村壮弁護士が付く。有識者と2世問題を研究するほか、独自に漫画などをつくって、子どもに伝わりやすい形で厚労省のQ&Aを広く周知していくという。 理念は「あの頃の私たちに寄り添いたい」。夏野さんは教団内で性被害を受けた経験があることから「女性視点での支援」も掲げる。団体名は花言葉「希望」「慰め」にちなんだ。 「幼少期には助けを求めるすべがありませんでしたし、この苦しみは長い間捨て置かれてきました。救いの手を差し伸べられる社会に変えていきたいと強く思っております」 自身の子どもの卒園式に行ったばかりだというもるすこちゃんさんは「この子どもたちの中に宗教2世はいると思った。でも見た目では分かりません。宗教による児童虐待から守る仕組みづくりに貢献したい」と決意を語った』、「スノードロップ」は、「宗教虐待に特化した。教育現場や児童相談所とも連携することを想定」、「有識者と2世問題を研究するほか、独自に漫画などをつくって、子どもに伝わりやすい形で厚労省のQ&Aを広く周知していく」、「宗教による児童虐待から守る仕組みづくりに貢献したい」、今後の活動に期待したい。

次に、3月27日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの青木 理氏による「「カルト権力」とは何か…青木理が安倍銃撃「以前」「以後」に書いたこの時評は日本人必読である」を紹介しよう。
・『「闘うジャーナリスト」青木理氏が注目すべき新著『カルト権力』(河出書房新社)を刊行した。「公安、軍事、宗教侵蝕の果てに」というサブタイトルが付けられたこの一冊、青木氏によれば、《カルト宗教に深々と侵蝕されていた為政者の長期執権下、この国の政治が治安機関や軍事偏重へと異様に傾斜し、それを推し進めた政権自体が一種のカルト臭さえ帯びた危険な復古性、反動性に蝕まれていたことが浮かび上がってくるはずである》。 安倍元首相銃撃事件「以前」と「以後」に書かれた、日付のある論考で構成される本書から、いまの権力のカルト性を読み解くためのキモとなる2篇を特別にお届けする』、「カルト宗教に深々と侵蝕されていた為政者の長期執権下、この国の政治が治安機関や軍事偏重へと異様に傾斜し、それを推し進めた政権自体が一種のカルト臭さえ帯びた危険な復古性、反動性に蝕まれていたことが浮かび上がってくるはずである」、腹立たしいことだ。
・『統一教会「空白の30年」の教訓  空白の30年──そんな言い回しを最近よく聞く。現在は世界平和統一家庭連合と名称を変えた旧統一教会を長年追及してきた前参院議員でジャーナリストの有田芳生氏が発した言葉らしい。教団の反社会性など以前も今もさほど変わらないのに、30年の長きにわたって社会やメディアが関心を失い──もっと正確に言えば、払うべき関心を払わずに被害が継続し、元首相が白昼銃殺される事件まで引き起こされたのではないか、と。 なるほど、事件を機に政治問題化した旧統一教会については、ある世代から上の者なら強烈な警戒心を抱くが、同じメディア界で禄を食む者でも若年層は知識さえほとんど持っていないだろう。80年代に学生生活を送り、90年に通信社の記者としてメディアの仕事に関わりはじめた私は明らかに前者の、しかしその末端の世代に連なる。大学時代には教団の学生組織・原理研が学内で怪しげに活動し、その危険性が各所で警告されていた。霊感商法や合同結婚式といった教団の異様な活動も盛んに報じられていた。 教団との関係で私がいまもピンと反応してしまうのは警察庁指定116号事件、いわゆる赤報隊事件である。1987年に朝日新聞阪神支局で記者2人が殺傷された事件はジャーナリズム界を志す者にとって凄まじい衝撃であり、記者としての初任地が大阪社会部だった私も取材の片隅にほんの少しだけ関わった。 この事件自体、最終的には未解明のまま時効を迎え、軽々に推測を語るべきではないが、しかし当初から教団の影が囁かれていた。霊感商法の糾弾キャンペーンを1986年からいち早く展開したのが『朝日ジャーナル』だったし、同じころ、故・岸信介氏ら自民党右派が展開したスパイ防止法制定運動を背後で支えているのが教団の政治団体・国際勝共連合だと朝日が報じ、教団は朝日本社周辺で激しい街宣活動を繰り広げていた。 このあたりについては、朝日で赤報隊事件の取材に長年携わった樋田毅氏の『記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実』(岩波書店)に詳しい。同書は教団を匿名にしているが、教団は内部に「秘密組織」を抱えていたらしく、兵庫県警も「重要な捜査対象」と捉えて詳細な捜査報告書を作成していた。) 私自身は、90年代半ばに公安警察を担当していた際の記憶が忘れられない。警視庁公安部が旧統一教会を組織的に調べ始めた──そんな情報を耳にした私は動向を注視したが、間もなくその動きはピタリと止まった。理由を尋ねると、公安部の幹部はこう漏らした。「政治の意向だ」と。 この件はほかの所でも記したが、有田氏もほぼ同じ時期、同じような情報を耳にしていたという。公安警察が当時、どのような角度で斬り込もうとしたかは判然としないものの、もしあの時に大々的な捜査のメスが入っていれば果たしてどうだったか。 少なくとも悪質な活動に歯止めはかかり、被害の拡大や継続は抑えられた。ならば、教団への恨みを募らせる者は消え、元首相の銃殺事件は起きなかったかもしれない。さらに想像をめぐらせれば、戦後史の闇になった事件の蓋も開けられたのではないか――これは二重、三重の「もし」を積み重ねた妄想に近いものではあるが。 いずれにせよ、以後の30年、私たちはたしかに「空白」の時を過ごしてしまった。ならばせめてこれ以上の被害を生じさせぬよう、政治と教団の怪しい蜜月は断固として断ち切らせねばならない。それが「空白」の教訓であろう。(2022.8)』、「警視庁公安部が旧統一教会を組織的に調べ始めた──そんな情報を耳にした私は動向を注視したが、間もなくその動きはピタリと止まった。理由を尋ねると、公安部の幹部はこう漏らした。「政治の意向だ」と」、「以後の30年、私たちはたしかに「空白」の時を過ごしてしまった。ならばせめてこれ以上の被害を生じさせぬよう、政治と教団の怪しい蜜月は断固として断ち切らせねばならない。それが「空白」の教訓であろう」、その通りだ。
・『自称愛国者の薄っぺらな仮面  私が書けば皮肉に受け取られるかもしれないが、しかし、決して皮肉ではなく、どうにも解せないでいる。いや、解せないというより、物事の本質が見事に露になってしまったと書けば、やはりこれは皮肉と受けとられてしまうだろうか。 憲政史上最長の政権を率いた元首相が白昼銃殺されて間もなく3ヶ月。その政治スタイルや所作振る舞いからアンチが相当数いるのは当然にせよ、彼を熱心に持ちあげていた人びと、熱烈に支持していた人びとは、いったいいま何を考えているのか。なぜ事件の原因を徹底解明しようとせず、解明せよと叫び声を上げることさえせず、嵐が通り過ぎるのを待つかのようにただ首をすくめているのか。 すでに報じられている通り、元首相を銃殺した男は、カルト教団に人生を破壊された遺恨が犯行の動機だと供述し、メディアの関心は政治と教団の関係に集中している。 なるほど、たしかにこの国の戦後政界の一部はそのカルト教団と怪しい蜜月を築き、まるで共依存のような関係を続け、それが教団の活動に一種のお墨つきを与え、近年は元首相がその中心的存在の1人だったのは間違いないらしい。だが、だからといって元首相が銃殺されて構わないはずはない。殺害を容認することなど断じてできはしない。 だから、真摯に考える。元首相はいったいなぜ、殺害されてしまったのかを。この国の憲政史上最長の政権を率いた元首相が白昼銃殺されるという重大事は、いったいなぜ起きてしまったのかを。 もちろん、警察の警備の手抜かりといった直接的な瑕疵も見逃すことはできない。それはそれとして徹底検証が必要な課題であり、すでに警察庁長官らが事実上の引責辞任に追い込まれてもいる。 しかし、根本的な要因にまで眼を凝らせば、元首相を殺そうと思い詰めるまでに1人の男を追い込んだカルト教団の反社会性に行き当たる。しかもカルト教団によって苦悶の底に突き落とされたのは決して彼1人でなく、現実には何百、何千、何万もの被害者が存在することも私たちはあらためて知らされた。さらにいえば、そのカルト教団の実態が極度に反社会的なだけでなく、相当に“反日的”な教義を内部に抱えていたことも──。 ならば、反省すべきは反省し、同時に腹の底から憤らなければならない。野放しにされたカルト教団によって夥しい数の被害者が生み出され続け、ついには元首相が銃殺される重大事件まで引き起こされてしまったことを』、「彼を熱心に持ちあげていた人びと、熱烈に支持していた人びとは、いったいいま何を考えているのか。なぜ事件の原因を徹底解明しようとせず、解明せよと叫び声を上げることさえせず、嵐が通り過ぎるのを待つかのようにただ首をすくめているのか」、「元首相を殺そうと思い詰めるまでに1人の男を追い込んだカルト教団の反社会性に行き当たる。しかもカルト教団によって苦悶の底に突き落とされたのは決して彼1人でなく、現実には何百、何千、何万もの被害者が存在することも私たちはあらためて知らされた。さらにいえば、そのカルト教団の実態が極度に反社会的なだけでなく、相当に“反日的”な教義を内部に抱えていたことも──。 ならば、反省すべきは反省し、同時に腹の底から憤らなければならない。野放しにされたカルト教団によって夥しい数の被害者が生み出され続け、ついには元首相が銃殺される重大事件まで引き起こされてしまったことを」、その通りだ。
・『嵐が過ぎるのを待つ者たちへ  元首相の政治思想や政治姿勢には微塵も賛意を覚えなかった私ですら憤りを抱くのだから、元首相の姿勢や各種政策を高く評価し、再登板すら望んでいた者たちは、その元首相が理不尽に殺されてしまったことを心底嘆き、強く憤り、猛り、その原因となったカルト教団に満身の怒りをぶつけて当然ではないのか。 なのに、現実はどうか。元首相をひたすら称揚して追随していた者たち――特に政界の追随者たちは、教団との関係を追及されて自らに火の粉がかかるのを恐れ、まさに嵐が過ぎ去るのを待つかのように首をすくめているのみ。一部の追従者は教団との関係をメディアに追及され、「知らなかった」「指摘されて初めて知った」などとトボけるだけ。 バカを言ってはいけない。票集めのために動員されたポッと出のタレント議員の類ならともかく、当選回数を積み重ねたベテラン議員があのカルト教団とその本質を知らなかったはずがない。 いや、もし本当に知らなかったというなら、自らの不明を心から恥じ、自らが称揚した元首相の死を嘆き悲しみ、その命を奪う原因となった教団に全力の怒りをぶつけて事態の解明に全霊を傾けるべきではないのか。 だが、自らの過ちも含めてすべてを明らかにし、身を投げ打って教団を追及しようと声を上げる者は1人たりとも出てこない。結局のところ、彼ら彼女らの本性はその程度だということなのだろう。 自らが称揚し続けた政権の主が銃殺されるという決定的重大事を前にしても、悔い改めることもなく、憤りを露にすることもなく、政治生命を賭けて真相の解明と教団の追及に全力を傾けることもなく、カマトトぶって嵐の過ぎ去るのを待つ。国の誇りとか、国を愛せとか、国民の生命を守るのが政治の使命などと常日ごろは勇ましいことを口にしていても、いざとなれば我が身の保身と政治的打算が第一。今回の歴史的重大事件は、そういう自称愛国者たちの薄っぺらな仮面も無惨に引き剥がして見せた。(2022.10)』、「自らが称揚し続けた政権の主が銃殺されるという決定的重大事を前にしても、悔い改めることもなく、憤りを露にすることもなく、政治生命を賭けて真相の解明と教団の追及に全力を傾けることもなく、カマトトぶって嵐の過ぎ去るのを待つ。国の誇りとか、国を愛せとか、国民の生命を守るのが政治の使命などと常日ごろは勇ましいことを口にしていても、いざとなれば我が身の保身と政治的打算が第一。今回の歴史的重大事件は、そういう自称愛国者たちの薄っぺらな仮面も無惨に引き剥がして見せた」、確かにその通りだ。

第三に、4月1日付けAERAdot「「エホバの証人」2世らが答えたアンケートの衝撃的な中身 「下着を脱がされて尻にむち打ち」「泣き叫ぶと回数が増える」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023033100018.html?page=1
・『宗教団体「エホバの証人」の元2世信者らに対するアンケート結果が衝撃を与えている。国会の委員会質問で立憲民主党の山井和則衆院議員が取り上げたそのアンケート結果には、幼少期に人目がある中で下着を脱がされて親にむち打ちをされたことや「周りの人たちに体を押さえつけられた」「泣き叫ぶとむち打ちの回数が増えた」などという、信じがたい行為が記されていた。より痛みが強くなるように加工した道具が使われたり、親同士でどの道具が効果的か情報交換も行われたりしていたという。「私たちが何をされてきて、今どう生きているかを知ってほしい」(元2世信者)。調査から垣間見える虐待の実態と、大人になった当事者たちの心の声とは。 調査を行ったのは「エホバの証人」の元2世信者らでつくるグループ「JW児童虐待被害アーカイブ」。2021年9月に、SNSを通じて実施した。同グループ代表の綿和孝さん(44=仮名)も元2世信者である。 アンケート対象者はエホバの証人の親からむち打ちをされた(または「した」)経験がある、1970~2000年代生まれの元信者205人と、現役信者20人の計225人。うち217人がむち打ちを「された」経験があり、8人が「した」経験があったという。 エホバの証人といえば、かつて裁判にもなった「輸血禁止」が知られているが、その他にも、子どもでは、自由な恋愛や誕生日会、クリスマスパーティーなどのお祝い事は禁止、など独自のルールがある。布教活動に励むため、学校の友人と遊ぶことや部活動を制限されたり、大学進学を諦めさせられたりするケースもあるとされる。 さらに今、「虐待」として問題視されているのが、日常的に子どもをむちで打つという行為。教団のホームページには「懲らしめは愛の表れ」として、「むちを控える人は子供を憎んでいる。子供を愛する人は懲らしめを怠らない」との聖書の言葉が紹介されている。) 綿和さんは実態をこう話す。 「教団は子どもへのむち打ちを推奨していました。『巡回監督』や『長老』という幹部が、集会の場などでむち打ちを勧める発言をしていたんです。私も何度もされましたし、他の子どもたちがされている場面も数えきれないほど見ました。ところが、教団はそうした虐待を認めないばかりか、むち打ちはなかった、などと歴史を消し去ろうとまでしている。私たちが子ども時代に何をされてきたか、事実を知っていただきたいと強く願っています」 実際、綿和さんらが行った調査結果には、驚くべき回答がならぶ。以下、主な質問項目と回答をピックアップしてみる』、「アンケート対象者はエホバの証人の親からむち打ちをされた(または「した」)経験がある、1970~2000年代生まれの元信者205人と、現役信者20人の計225人。うち217人がむち打ちを「された」経験があり、8人が「した」経験があったという」、「教団は子どもへのむち打ちを推奨していました。『巡回監督』や『長老』という幹部が、集会の場などでむち打ちを勧める発言をしていたんです。私も何度もされましたし、他の子どもたちがされている場面も数えきれないほど見ました。ところが、教団はそうした虐待を認めないばかりか、むち打ちはなかった、などと歴史を消し去ろうとまでしている」、今になって否定するとは悪質だ。
・『▼むち打ちが始まった年齢と、終わった年齢  「された」217人のほぼ全員が小学校低学年までに始まったと回答した。そのうち約75%に当たる162人は、就学前からむち打ちを受けていた。 むち打ちがいつまで続いたかについては、「小学校高学年まで」と「中学生まで」との回答がそれぞれ全体の30%を超えた。高校生まで続いた人も14人、高校卒業以降も続いたとの回答が3人いた。 ▼むち打ちをした人  「した」人も含む225人のほぼ全員が「母親」と回答。父親は全体の約24%に当たる54人だった。幹部など、両親や親族以外からむち打ちを受けた人も19人いた(複数回答)。 ▼むち打ちの道具  さまざまな道具を使い分けていたようで、「革ベルト」「ホース」「物差し」との回答がそれぞれ約50%いた(「した」人も含む、以下同)。「電気コード」や「野球バット」という回答もあった(同)。 さらに、たたきやすく、より痛みが強くなるように道具を加工していたケースも多かったようだ。 「束ねた電気コードや折りたたんだ革ベルトをビニールテープで巻いたもの」 「ガスホースに金属製のパイプを入れたもの」 「竹の根をむち用に細くしたもの」 など30もの加工事例があり、集会で「長老」が自作したむちを親たちに配ったり、もうけが目的ではないものの、わざわざ売っていたりしたこともあったという』、「たたきやすく、より痛みが強くなるように道具を加工していたケースも多かったようだ」、「「束ねた電気コードや折りたたんだ革ベルトをビニールテープで巻いたもの」 「ガスホースに金属製のパイプを入れたもの」 「竹の根をむち用に細くしたもの」 など30もの加工事例があり、集会で「長老」が自作したむちを親たちに配ったり、もうけが目的ではないものの、わざわざ売っていたりしたこともあったという」、そこまでするのかと驚かされた。
・『▼一度の平均で何回ぶたれたか。また、一度にぶたれた最大の回数は何回か  一度の平均の中央値は10.4回。ただ、20回以上は36人いて、うち100回も5人いた。 最大で見ると、中央値は27.3回。50回以上が32人いて、うち100回が20人。300回以上も2人いた。 ▼むち打ちに併せて行われたことはあったか  「自分で下着を下ろしてお尻を出す」が約81%の182人。 「泣き叫ぶと回数が増える」が約62%の140人。 「むち打ち前にあいさつを言う」「むち打ち後にお礼を言う」は約28%の約60人。 「終わると抱きしめられる」は約21%の47人いた。(同) ▼むち打ちをされた理由  これについては、宿題を忘れた、ウソをついた、友達のものを盗んだなど、子どもの教育上、叱られること自体は仕方ない理由も目立つ一方で、理不尽な内容もあった。 「幼稚園で誕生日の歌を歌ったのがバレた」 「祭りにこっそり参加したのがバレた」 「世の子(エホバの証人ではない家の子ども)と遊んだ」 「友達からマンガを借りた」 「異性と連絡を取った」 「奉仕中(住居を訪問しての勧誘活動)に(日射病で)歩けなくなって迷惑をかけたから」 一般的に考えて、子どもが学校の友達と遊んだり、友達の誕生日を祝ったりしても親にぶたれることはない。ましてや、加工した“凶器”を使われることはない。 ただ、回答者の多くが幼少期を過ごした時代は、体罰が教育の手段として半ば容認されていた。エホバの証人の信者ではなくとも、親や教師から平手打ちやげんこつをくらった人は多いだろう。マンガやテレビドラマでも体罰のシーンが美談として描かれている作品があった。 そうした時代背景もあってか、2世の子どもが勇気を出して誰かに相談しても「虐待」とは認めてくれなかったという。 元2世信者の手塚麻子さん(41=仮名)も、その一人だ。 小学生のころ、集会で落ち着きがない態度を取るなどの“粗相”をすると、親に下着を脱がされて、革のベルトで尻にむち打ちをされた。 「大人の信者が、時には親しい信者や2世の子どもたちにも手伝わせて粗相した子を押さえつけ、下着を脱がせてたたいていましたし、私もされました」) 痛くて恥ずかしくて、泣き叫びながらたたかれ続け、終わると親が「これは愛なんだ」と抱きしめてくる。そんな日常だった。 高校時代、教師に勇気を出して打ち明けたところ、教師はこう答えた。 「いいご両親じゃないか」 親に対する思春期のよくある悩みとして、片付けられてしまった。手塚さんの孤独感は、より深まったという。 だが、回答からは教育とも愛情とも受け取れない虐待の状況が伝わってくる。 「集会中に子どもたちが次々と引きずってトイレに連れていかれ、泣き叫ぶ声が聞こえてきていた」 「(集会で)子どもがむちを打たれる音と、口を押さえられてくぐもる泣き声うめき声が響き渡っていたが、『親子ともに頑張っている』と称賛されていた」 「王国会館にむち打ち専用の『懲らしめ室』があった」 「親同士でどのむちが一番効き目があるかを相談していた」 個々人の特別なケースでは決してなく、調査には、上記と同じような経験をした回答が多数寄せられている。そして、これらの行為を幹部らが正しい行為だと推奨し、親たちに勧めていたとの回答が目立った。 綿和さんもこう証言する。 「幹部が虐待を推奨するだけではなく、親同士も、より痛みを感じる道具について、あれがいいこれがいいなどと情報を交換していました。なかなか想像できないと思いますが、むち打ちは本当に痛いんですよ。私も片方のお尻がみみず腫れになって痛くて、授業中は体を傾けていすに座っていました」 もっとも問題なのは、幼少期の虐待によって元2世信者らが大人になった今も精神面で深刻な問題を抱えているという現実である。 調査に対し、むち打ちを「された」人の「人格形成にネガティブな影響があった」という回答は約74%。半数以上が「精神的な後遺症がある」と答えている。 その詳細を見ると、 「親が高齢になり助けを求めてきたら復讐(ふくしゅう)したい」「そのうち親を殺してしまいそうだ」という怒りに支配されるケース。 「自分が何者なのかわからない」「愛されているということの意味が理解できない」などの虚無感。 「ふとしたときに死にたくなる」などの自殺願望を抱く人。「うつ病で精神科に通院している」など、うつ症状の回答も約40あった。むち打ちのシーンがフラッシュバックしたり、不眠に苦しんでいたりする人も多かった。) また、子どもに対する暴力を正当な行為だととらえてしまったり、自分の子どもをたたきたい衝動にかられてしまったりする「虐待の連鎖」に苦しんでいるという回答も複数あった。 手塚さんも幼少期を振り返り、思いを話す。 「私の場合は、たたかれ続けているうちに、いつの間にかむちが快楽のようなものに変わっていきました。私は親に愛されているんだ、これが愛なんだ。もっとたたかれたい、もっと愛されたいって。抵抗できない子どもがゆえ、認知が大きくゆがんで育ってしまうんです。さらに、他人や社会と接することもずっと制限されてきましたから、脱会してもどうしていいかがわからず、生きづらさに直面します。私と同じように、元2世信者の多くが苦しんでいます。『昔よくあった体罰を受けた』のではなく、幼少期に大変な思いをして、今も後遺症を抱えながら生きているということを知っていただきたいです」 淡々と話す手塚さんだが、時折うつむき、表情が苦しそうになった。 これらの行為について、教団はどう答えるのか。 AERA dot.がエホバの証人に対して「むち打ちを組織的に奨励してきたのか」「子どもへの輸血を拒否しているのはなぜか」と質問したところ、「具体的な事例が事実認定されているわけではない」として、エホバの証人の考え方を記したという「メディア用ステートメント(声明)」を送ってきた。 その中では、 「エホバの証人は児童虐待を容認していません。エホバの証人の出版物は一貫して、子どもを愛情深く教え導くよう親に勧めてきました。(中略)しつけには、子どもが悪いことをしたときに矯正することも含まれます。とはいえ、しつけは子どもに対する愛に基づいて行われるべきであり、決して虐待したり、冷酷に接したりすべきではありません」 「聖書に出てくる『懲らしめ』という語は、教え諭すことや正すことに関連しており、虐待や残酷さとは全く関係がありません。エホバの証人の出版物は『懲らしめ』を(1)愛情をもって(2)適度に(3)一貫して与えるように勧めています」) また、子どもへの輸血拒否については、 「エホバの証人が輸血を受け入れないのは、医学的な理由ではなく、宗教上の理由です。『血……を避けて』いるようにという聖書の言葉に従いたいと願っているからです」 「エホバの証人は、輸血やその他の治療法を受け入れるかどうかは、各人の個人的な決定であると教えており、強制されたり、圧力を受けたりして決めることではないと考えています。個々のエホバの証人は、聖書の原則に基づいて、どんな治療を選ぶかを個人的に決定します」などと記されていた。 綿和さんは、強く憤る。 「教団は、虐待を認めて謝罪すべきです。間違っていたことを公に認めなければ、これからも子どもたちがたたかれ続ける可能性があります。実際、このアンケート結果を公表してから、今でもまだ信者の家庭内でむち打ちが続いていることや、子どもが教団から離れないようにするためにむち打ちは必要だと話す信者が多くいる、という証言が集まっています。ただ、おそらく教団は(批判の)嵐が過ぎるのを待っているだけで、変わるつもりはないでしょうね」 学校の友達と遊ぶ。マンガを読む。誰かの誕生日を祝う。集会でちょっとはしゃぐ。思春期に自由に異性に興味を持って仲良くなったり、好きになって交際したりする。 話を聞いた2人によると、そんなたわいのない経験すら許されず、人生の楽しみや、夢や希望を持つことができないまま大人になっていくのが2世信者たちの姿だという。 親に頼るしかなく抵抗もできない子どもたちに深い傷を残していることについて、教団は正面から向き合った方がいいのではないか』、「「幹部が虐待を推奨するだけではなく、親同士も、より痛みを感じる道具について、あれがいいこれがいいなどと情報を交換していました」、「むち打ちを「された」人の「人格形成にネガティブな影響があった」という回答は約74%。半数以上が「精神的な後遺症がある」と答えている。 その詳細を見ると、 「親が高齢になり助けを求めてきたら復讐(ふくしゅう)したい」「そのうち親を殺してしまいそうだ」という怒りに支配されるケース。 「自分が何者なのかわからない」「愛されているということの意味が理解できない」などの虚無感。 「ふとしたときに死にたくなる」などの自殺願望を抱く人。「うつ病で精神科に通院している」など、うつ症状の回答も約40あった。むち打ちのシーンがフラッシュバックしたり、不眠に苦しんでいたりする人も多かった」、「半数以上が「精神的な後遺症がある」」とは深刻だ。「「聖書に出てくる『懲らしめ』という語は、教え諭すことや正すことに関連しており、虐待や残酷さとは全く関係がありません。エホバの証人の出版物は『懲らしめ』を(1)愛情をもって(2)適度に(3)一貫して与えるように勧めています」、「虐待や残酷さとは全く関係がありません」は苦しい言い訳だ。

第四に、4月3日付け日本!ニュース「韓国系キリスト教団体が日本のホームレスに現金をばら撒く理由…その恐るべき資金力の秘密」を紹介しよう。
https://incident-wo.com/post-75489/
・『ー前略ー ホームレスの命を支える公園炊き出しの意外な担い手  東京という場所では、ホームレスであっても飢えを感じずに生活ができるくらい連日のように各地で炊き出しが行われている。とくに多くのホームレスがアテにしていたのが、台東区にある上野公園で週に4日行われる炊き出しだった。この炊き出しは4つの韓国系キリスト教団が週に1回ずつ、食料を配給している。 ー中略ー 「上野公園でやっている炊き出しは昔からずっと韓国系キリスト教会がメインなんだよね。新宿でも韓国系キリスト教会が炊き出しをやっている。なぜかというとね、こういう慈善活動を写真や動画に収めて母国で発表すると、国の富裕層から寄付金がものすごい額集まるんだ。それで儲かっちゃうんだから。バブル崩壊時の90年代前半、上野公園には600人を超すホームレスが生活していんだけど、そのとき、ホームレスたちの食事を支えていたのもやっぱり韓国系キリスト教会が中心だったよ」』、「上野公園」や「新宿」「でやっている炊き出しは昔からずっと韓国系キリスト教会がメインなんだよね」初めて知った。
・『炊き出しの現場にベンツで乗り付ける協(注:正しくは「教」)会関係者  この炊き出しを受けるには、まず韓国人の牧師または神父の説教を聞かなければならない。炎天下の中、立ちながら30分もわけのわからない話を聞き続けるのは非常に苦痛だ。代表と思われる韓国人の男が、舞台俳優のような演技で叫ぶ。 「一人一人がこの暑さの中で神様の御言葉を聞こうと来ました。誰一人として熱中症にかかることなく、主がその健康を守ってくださることを切に願います。そして今日、神様の御言葉を聞いて――」 話の途切れ目のたびに「まだ続くのか」と周囲から溜め息が漏れ、「もうわかったから勘弁してくれ」といった雰囲気で「アーメン!」、「ハレルヤ!」という野次が飛び交う。暑さでフラフラになっている老人などお構いなしで演説は永遠と続くのだが、たしかにその様子をスタッフたちはきちんと写真や動画に収めているのだ。 そのスタッフたちはというと、炊き出しの現場にベンツやBMWに乗ってくることもある(前出のホームレス談)。そういった姿を日常的に見ているため、教会に対して感謝というよりもむしろ、「自分たちのおかげで教会は儲かっている」とすら考えているホームレスもいるくらいだ』、「炊き出しを受けるには、まず韓国人の牧師または神父の説教を聞かなければならない」、当然だろう。「韓国」の「教会」は財政的に豊かなようだ。
・『かつてはひとり1万円の無償配布も  新宿区大久保にある韓国系キリスト教会では、週に1回行われる炊き出しのうち、月に1回は参加者全員に現金を配ってくれる。筆者も一度参加したことがあるが、参拝堂に実に300人以上の人たちが集結していた。行列に並び、自分の番が来ると現金が入った封筒と弁当をひとつもらえる。その際は一人3000円の配布だったので、単純計算で90万円の現金をばら撒いていることになる。同じくこの教会に来ていたホームレスの男性に聞くと、過去には一人につき1万円を配っていた時期もあるそうだ。 「今は人が増えすぎて3000円に下がったけど、つい最近まで1万円くれたんだよ。並べるのはひとり1回までって決まっているけど、そんなものは誰も守らない。みんな服を替えたり、帽子をかぶったり、眼鏡をかけたりして変装して、何回も並ぶんだ。俺なんか最高で5万円もらったことがある」 現在は廃止されたというが、この教会では「皆勤賞」制度も導入されていた。月に4回、すべての炊き出しに参加すると皆勤賞として1000円がもらえる。次の月も皆勤賞だと2000円、その次は3000円というようにステップアップしていく。 筆者もホームレス生活中は韓国系キリスト教会の炊き出しに何度もお世話になった。慈善事業であり、生活困窮者を救っていることは事実である。金儲けのためにやっているわけでもないだろう。その活動の資金源についてとやかく言うつもりは一切ないが、2カ月間のホームレス生活は、彼らの資金力を目の当たりにした経験でもあった』、「月に1回は参加者全員に現金を配ってくれる」、「今は人が増えすぎて3000円に下がったけど、つい最近まで1万円くれたんだよ」、「「皆勤賞」制度も導入されていた。月に4回、すべての炊き出しに参加すると皆勤賞として1000円がもらえる。次の月も皆勤賞だと2000円、その次は3000円というようにステップアップしていく」、なかなかいい工夫をしているようだ。統一教会では、日本で集めたカネが韓国に流れたようだが、「炊き出し」では「韓国」から「日本」に流れるようだ。もっとも、金額的には前者の方が圧倒的に大きいようだ。
タグ:宗教 (その9)(エホバや統一教会2世ら「宗教虐待許さない」「法改正で組織に罰則を」 新たな支援団体設立も、「カルト権力」とは何か…青木理が安倍銃撃「以前」「以後」に書いたこの時評は日本人必読である、「エホバの証人」2世らが答えたアンケートの衝撃的な中身 「下着を脱がされて尻にむち打ち」「泣き叫ぶと回数が増える」、韓国系キリスト教団体が日本のホームレスに現金をばら撒く理由…その恐るべき資金力の秘密) 弁護士ドットコムニュース「エホバや統一教会2世ら「宗教虐待許さない」「法改正で組織に罰則を」 新たな支援団体設立も」 「Q&Aだけでは不十分で、今国会中に児童虐待防止法と児童福祉法の改正をしてほしい」と要請。エホバや旧統一教会に変化の兆しは見えず「罰則がないと組織に対して効果は限定的だ」、確かにその通りだ。 「スノードロップ」は、「宗教虐待に特化した。教育現場や児童相談所とも連携することを想定」、「有識者と2世問題を研究するほか、独自に漫画などをつくって、子どもに伝わりやすい形で厚労省のQ&Aを広く周知していく」、「宗教による児童虐待から守る仕組みづくりに貢献したい」、今後の活動に期待したい。 現代ビジネス 青木 理氏による「「カルト権力」とは何か…青木理が安倍銃撃「以前」「以後」に書いたこの時評は日本人必読である」 「カルト宗教に深々と侵蝕されていた為政者の長期執権下、この国の政治が治安機関や軍事偏重へと異様に傾斜し、それを推し進めた政権自体が一種のカルト臭さえ帯びた危険な復古性、反動性に蝕まれていたことが浮かび上がってくるはずである」、腹立たしいことだ。 「警視庁公安部が旧統一教会を組織的に調べ始めた──そんな情報を耳にした私は動向を注視したが、間もなくその動きはピタリと止まった。理由を尋ねると、公安部の幹部はこう漏らした。「政治の意向だ」と」、「以後の30年、私たちはたしかに「空白」の時を過ごしてしまった。ならばせめてこれ以上の被害を生じさせぬよう、政治と教団の怪しい蜜月は断固として断ち切らせねばならない。それが「空白」の教訓であろう」、その通りだ。 「彼を熱心に持ちあげていた人びと、熱烈に支持していた人びとは、いったいいま何を考えているのか。なぜ事件の原因を徹底解明しようとせず、解明せよと叫び声を上げることさえせず、嵐が通り過ぎるのを待つかのようにただ首をすくめているのか」、「元首相を殺そうと思い詰めるまでに1人の男を追い込んだカルト教団の反社会性に行き当たる。しかもカルト教団によって苦悶の底に突き落とされたのは決して彼1人でなく、現実には何百、何千、何万もの被害者が存在することも私たちはあらためて知らされた。 さらにいえば、そのカルト教団の実態が極度に反社会的なだけでなく、相当に“反日的”な教義を内部に抱えていたことも──。 ならば、反省すべきは反省し、同時に腹の底から憤らなければならない。野放しにされたカルト教団によって夥しい数の被害者が生み出され続け、ついには元首相が銃殺される重大事件まで引き起こされてしまったことを」、その通りだ。 「自らが称揚し続けた政権の主が銃殺されるという決定的重大事を前にしても、悔い改めることもなく、憤りを露にすることもなく、政治生命を賭けて真相の解明と教団の追及に全力を傾けることもなく、カマトトぶって嵐の過ぎ去るのを待つ。国の誇りとか、国を愛せとか、国民の生命を守るのが政治の使命などと常日ごろは勇ましいことを口にしていても、いざとなれば我が身の保身と政治的打算が第一。今回の歴史的重大事件は、そういう自称愛国者たちの薄っぺらな仮面も無惨に引き剥がして見せた」、確かにその通りだ。 AERAdot「「エホバの証人」2世らが答えたアンケートの衝撃的な中身 「下着を脱がされて尻にむち打ち」「泣き叫ぶと回数が増える」」 「アンケート対象者はエホバの証人の親からむち打ちをされた(または「した」)経験がある、1970~2000年代生まれの元信者205人と、現役信者20人の計225人。うち217人がむち打ちを「された」経験があり、8人が「した」経験があったという」、「教団は子どもへのむち打ちを推奨していました。『巡回監督』や『長老』という幹部が、集会の場などでむち打ちを勧める発言をしていたんです。私も何度もされましたし、他の子どもたちがされている場面も数えきれないほど見ました。ところが、教団はそうした虐待を認めないばかりか、む ち打ちはなかった、などと歴史を消し去ろうとまでしている」、今になって否定するとは悪質だ。 「たたきやすく、より痛みが強くなるように道具を加工していたケースも多かったようだ」、「「束ねた電気コードや折りたたんだ革ベルトをビニールテープで巻いたもの」 「ガスホースに金属製のパイプを入れたもの」 「竹の根をむち用に細くしたもの」 など30もの加工事例があり、集会で「長老」が自作したむちを親たちに配ったり、もうけが目的ではないものの、わざわざ売っていたりしたこともあったという」、そこまでするのかと驚かされた。 「「幹部が虐待を推奨するだけではなく、親同士も、より痛みを感じる道具について、あれがいいこれがいいなどと情報を交換していました」、「むち打ちを「された」人の「人格形成にネガティブな影響があった」という回答は約74%。半数以上が「精神的な後遺症がある」と答えている。 その詳細を見ると、 「親が高齢になり助けを求めてきたら復讐(ふくしゅう)したい」「そのうち親を殺してしまいそうだ」という怒りに支配されるケース。 「自分が何者なのかわからない」「愛されているということの意味が理解できない」などの虚無感。 「ふとしたときに死にたくなる」などの自殺願望を抱く人。「うつ病で精神科に通院している」など、うつ症状の回答も約40あった。むち打ちのシーンがフラッシュバックしたり、不眠に苦しんでいたりする人も多かった」、「半数以上が「精神的な後遺症がある」」とは深刻だ。「「聖書に出てくる『懲らしめ』という語は、教え諭すことや正すことに関連しており、虐待や残酷さとは全く関係がありません。エホバの証人の出版物は『懲らしめ』を(1)愛情をもって(2)適度に(3)一貫して与えるように勧めています」、「虐待や残酷さとは全く関係があ りません」は苦しい言い訳だ。 日本!ニュース「韓国系キリスト教団体が日本のホームレスに現金をばら撒く理由…その恐るべき資金力の秘密」 「上野公園」や「新宿」「でやっている炊き出しは昔からずっと韓国系キリスト教会がメインなんだよね」初めて知った。 「炊き出しを受けるには、まず韓国人の牧師または神父の説教を聞かなければならない」、当然だろう。「韓国」の「教会」は財政的に豊かなようだ。 「月に1回は参加者全員に現金を配ってくれる」、「今は人が増えすぎて3000円に下がったけど、つい最近まで1万円くれたんだよ」、「「皆勤賞」制度も導入されていた。月に4回、すべての炊き出しに参加すると皆勤賞として1000円がもらえる。次の月も皆勤賞だと2000円、その次は3000円というようにステップアップしていく」、なかなかいい工夫をしているようだ。 統一教会では、日本で集めたカネが韓国に流れたようだが、「炊き出し」では「韓国」から「日本」に流れるようだ。もっとも、金額的には前者の方が圧倒的に大きいようだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

エンターテインメント(その1)(「これはガウディ級だ」建築のド素人57歳が沖縄の深い森の中に8年かけてツリーハウスホテルを作ったワケ 「世界一ではなく世界初を」本業の傍ら泣きそうになりながら作り上げたもの、入場者1人あたり3000円の赤字…サンリオが大赤字事業「ピューロランド」を32年間も続けている理由 5000円の支払いに8000円分のサービスをしている) [文化]

今日は、エンターテインメント(その1)(「これはガウディ級だ」建築のド素人57歳が沖縄の深い森の中に8年かけてツリーハウスホテルを作ったワケ 「世界一ではなく世界初を」本業の傍ら泣きそうになりながら作り上げたもの、入場者1人あたり3000円の赤字…サンリオが大赤字事業「ピューロランド」を32年間も続けている理由 5000円の支払いに8000円分のサービスをしている)を取上げよう。

先ずは、本年3月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載した女の欲望ラボ代表・女性生活アナリストの山本 貴代氏による「「これはガウディ級だ」建築のド素人57歳が沖縄の深い森の中に8年かけてツリーハウスホテルを作ったワケ 「世界一ではなく世界初を」本業の傍ら泣きそうになりながら作り上げたもの」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67004
・『沖縄本島の北東部に位置する“やんばるの森”にあるツリーハウスで作られたホテルが話題だ。美しいフォルムの螺旋階段を上った先、地上10mに居住空間がある。周囲は360度ジャングルだ。全くの建築の素人ながら、適切な大木を探し出し、ゼロから約8年かけて作った菊川曉さん(57)は「日本初の森を活用したツリーハウスリゾートを全国展開し、このビジネスモデルを海外に輸出したい」という――』、「ツリーハウス」は多くの男の子の夢だ。
・『沖縄の山深くに世界注目のツリーハウスホテル誕生  「この感動はサグラダ・ファミリア以来だ」「たいへんな感銘」「映画のような光景」「(大自然の中で滞在すると)素晴らしい孤独を見つけることができる」……。 那覇空港から車で2時間ほど。沖縄本島の北東部にある“やんばるの森”。ここに今、世界が注目する建築物がある。「建築主」は菊川曉さん(57)。といっても建築家ではない。東京都渋谷区に本社のある「ガーラ」の創業者でCEOだ。慶應義塾大学経済学部を卒業して広告代理店に5年勤務した後、1993年にベンチャー企業として同社を設立し、成長させた。現在は、メタバースやブロックチェーンなどWeb3.0を中心とするビジネスを展開している。 菊川さんが沖縄の手つかずの森の中に約8年の歳月をかけて作り上げた建築物とは、超本格的な“ツリーハウス”だ。これが国内外から称賛されている。 冒頭で紹介したのは、『ヴォーグ』『ナショナルジオグラフィック』といった海外メディアの菊川さんの“作品”に対する評価である。『フォーブス』は「ひとりの起業家の情熱的なプログラム」とその制作にかける熱量の高さや姿勢にスポットライトを当てた。 現在、3つの形の違うツリーハウスと地上の宿泊コテージ、そしてオープンテラスのレストランもあり、最大6人まで宿泊できる。2021年8月のオープン以来、多くの国内外の旅行者がやってくる。 2023年2月半ばには、国土交通省の和田浩一観光庁長官も「海事・観光立国フォーラム in 沖縄2023」で現地を訪れた際、菊川さんのツリーハウスも視察にやってきた。国のお墨付きももらい、その認知度は確実に高まっている。 基本的に1年のほとんどを、このやんばるの森で過ごすという菊川さんはこう熱く語る。 「私は、日本初の森を活用したツリーハウスリゾートを全国展開したいと考えています。森を守ることを絶対ルールとしながら、人々が宿泊でき、ダイナミックな自然体験もできるリゾート施設を完成させ、その森を運営して儲かる仕組みもつくりたい。ゆくゆくは、このビジネスモデルを東南アジアなど世界へ輸出したいと思っています」 「自分の信条は、『この世に生まれた以上、世界一ではなく、世界初を目指す』ということ。そうしないと自分の生まれた意味がないと思っています。今、この夢を実現するために全力で走っています」 スケールの大きいビジョンだが、なぜ、建築のド素人がこんな壮大なプロジェクトを実現できたのか』、「沖縄の山深くに世界注目のツリーハウスホテル誕生」、「私は、日本初の森を活用したツリーハウスリゾートを全国展開したいと考えています。森を守ることを絶対ルールとしながら、人々が宿泊でき、ダイナミックな自然体験もできるリゾート施設を完成させ、その森を運営して儲かる仕組みもつくりたい。ゆくゆくは、このビジネスモデルを東南アジアなど世界へ輸出したいと思っています」、素晴らしい心構えだ。
・『建築のド素人がなぜツリーハウスをゼロから作れたのか  聞けば、幼少時に読んだ絵本に登場したツリーハウスへの憧れがそもそもの始まりだという。秘密基地のような存在にワクワクする経験は多くの子どもたちがしているが、たいていはそれで話は終わる。だが、菊川さんは見事に「形」にした。幼い頃の思いを、プランを立て、完成させるまでにはどんなプロセスがあったのだろうか。 「ベンチャーを立ち上げてからは仕事仕事の毎日。少し余裕ができた40代の終わりに、自分の中のウィッシュリストに、いつかツリーハウスホテルをやりたいという項目を入れたんです。 ちょうどその頃(16年前の2006年の年末)に、東南アジア・ボルネオ島のコタキナバルへ野生のオラウータンを見に家族で旅行したとき、原生林をパームヤシ畑に変えてビジネスする姿をみて強い衝撃を受けました。 『これではいずれ熱帯雨林がなくなり、地球の温暖化促進され、生態系も崩れてしまう』と感じたんです。それを防ぐためにも、森を利用したツリーハウスリゾートをつくろう。森も守ることができるし、雇用も生むことができる。これで世界は救われるのではないか。森のまま生かしたビジネスをして、自然と共存したい。そんなことをぼんやりと考えていました」 それから6年、ツリーハウスをゼロから作る思いが固まってきた頃(2013年)に、長女の万葉さんが学んでいたアメリカ・マイアミ大学の卒業式に参列したついでに中米コスタリカにあると聞いたツリーハウスホテルを訪ねた。 当時は、まだ日本にちゃんと人が寝泊まりできる本格的なツリーハウスはなかった。ましてやツリーハウスを洗練されたホテル仕様にしているところは世界でも珍しい、だから、自分が日本で初めてのツリーハウスホテルを作ろうと決心したという。 日本に戻って最初にしたこと、それはホストツリーとなる大木探しだ。建物を支えるような大木は、山奥にしかない。東京と沖縄を行き来しながら不動産業者とやりとりし、大木と土地を足を棒にして探し歩いた。何度も原生林を歩き回った結果、ようやくすばらしい大アカギの木が見つかり、1万坪の土地も手に入れた。 舞台は整った。だが、ここからが試練の連続だった』、「東南アジア・ボルネオ島のコタキナバルへ野生のオラウータンを見に家族で旅行したとき、原生林をパームヤシ畑に変えてビジネスする姿をみて強い衝撃を受けました。 『これではいずれ熱帯雨林がなくなり、地球の温暖化促進され、生態系も崩れてしまう』と感じたんです。それを防ぐためにも、森を利用したツリーハウスリゾートをつくろう。森も守ることができるし、雇用も生むことができる。これで世界は救われるのではないか」、「中米コスタリカにあると聞いたツリーハウスホテルを訪ねた」、「日本に戻って最初にしたこと、それはホストツリーとなる大木探しだ。建物を支えるような大木は、山奥にしかない。東京と沖縄を行き来しながら・・・大木と土地を足を棒にして探し歩いた。何度も原生林を歩き回った結果、ようやくすばらしい大アカギの木が見つかり、1万坪の土地も手に入れた」、凄い執念だ。
・『大工道具を使ったことなし、大きな毛虫の襲撃も  菊川さんは理系出身ではないが美術と数学が得意で、昔からアートとしての建物に興味があった。だから、「建築の構造計算は独学で修得し、今回のツリーハウスも自分で設計した」という。 ただ、机上で図面は引けるが、作るのは初めてだ。 大工道具の丸ノコも使ったことないし、水平・垂直・45度などを測定するツールである水平機という道具があることすら知らなかった。丸ノコでまっすぐな直線を引く際には欠かせない「丸ノコガイド90度」の存在も知らなかったので、原始的なL字定規で、鉛筆で印をして切ったそうだ。取説片手に四苦八苦して、工具とその使い方を手探りで学び、失敗を繰り返しながら、一歩ずつ前進していった。 「何度も絶望的な気持ちになりました。でも、いくら失敗しても、自分が諦めない限り、これは成功の途中であると言い聞かせました」 それでも作業中に泣きたいことは数えきれないほどあった。 「ツリーハウスの床張りをしていて、下を向いて作業していたとき、首筋にぽとっと見たこともないでかい毛虫が落ちてきて、泣きたくなりました。すごくただれちゃって。ぶよにも刺されパンパンに大きく膨れ上がりました」 作業がなかなか前に進まず、しょんぼりして東京に戻ったとき、「ここではお金を出せばなんでも買えるし、手に入る。なんて優しい街なんだ」とつくづく思ったという。エネルギッシュに日々進化する都会の姿を目の当たりにして「俺、沖縄の森で何やっているんだ」と惨めな気持ちになることが何度もあった。それでも諦めなかった。 今は森の中にいることが多いせいか、視力が劇的に改善され、毎日が森林浴のおかげか、至って健康体なのだと笑う』、「「建築の構造計算は独学で修得し、今回のツリーハウスも自分で設計した」、「丸ノコでまっすぐな直線を引く際には欠かせない「丸ノコガイド90度」の存在も知らなかったので、原始的なL字定規で、鉛筆で印をして切ったそうだ。取説片手に四苦八苦して、工具とその使い方を手探りで学び、失敗を繰り返しながら、一歩ずつ前進していった」、「エネルギッシュに日々進化する都会の姿を目の当たりにして「俺、沖縄の森で何やっているんだ」と惨めな気持ちになることが何度もあった。それでも諦めなかった」、執念には脱帽だ。
・『「設計も建築も自分でやった。コストは150万円だけ」  こうして道具の使い方も知らなかったズブの素人の手によって、最初のツリーハウスが完成した。名称は「スパイラルツリーハウス」。美しいフォルムのスパイラルツリーハウスの階段は、「伝説の螺旋階段」と呼ばれている。 通常のツリーハウスは樹上にあるものの、建築物は地面から支える構造になっている。しかし、このスパイラルツリーハウスは木の上からワイヤーで吊るす形状で、これまでは必須だった斜めの幹からのつっかえ棒も不要に。おかげでホストツリーに巻きつく螺旋階段で人が上がれるようになった。こうした仕組みも菊川さんが独自に考案した。 大アカギのグネグネとした有機的なフォルムと、幾何学的なツリーハウスが融合して、自然の力強さを強調している姿は、まさに、お互いがお互いを高め合っている。「デザイン力×技術的革新」「世界一かっこいいツリーハウス」と賞賛されるゆえんだ。 「設計も建築も自分でやったので、かかるのは材料費や道具代だけでした。スパイラルツリーハウスにかかった費用は150万円いくかどうかですね」 水の調達にも苦労した。最も近いコンビニでも車で30分はかかる山の中だ。水道が通っているはずがない。最初は、向こう岸の山から引いていたが、大雨が降ると水が茶色く濁るので、井戸を掘る決断をした。「川の近くだから、掘っていけばきっと水が出るだろう」。そう考え、矢倉を組み、手掘りで掘っていったら3.5メートルの地点で水が出た。紫外線を通す機械でUV殺菌をしていて、筆者も飲んだが、とてもおいしい水だった。 作り始めてから、約8年。ツリーハウスはできたけれど、旅館業の許可が下りなかった。ツリーハウスとホテルとしてのインフラはできたが、難題はまだ残っていたのだ。 ツリーハウスをホテルにするためには旅館業の許可が必要だが、生きている木を建築物の一部に使っているので、これが違法建築だと申請が下りなかったのだ。クリアするためには、「ツリーハウスは、建築物ではない」と証明する必要があったが、いろいろと調べていくと、「立木りゅうぼく法」という1909年にできた古い法律にたどり着いた。 生きている木と土地は別の物と考え「生きている木は不動産として登記できる」というものだ。そこで大アカギの木を不動産として登記し、その木の上の工作物だから「建築物にはならない」ということが、理論的なバックアップとなりようやく認められた。 宿泊物としての基準もクリアできたので、これで旅館業スタートの見込みが立った。旅館業の許可が出るまで2年。それを含め、全制作期間は、2014~2021年の足かけ7年8カ月。2021年夏にようやく開業にこぎつけた』、「設計も建築も自分でやった。コストは150万円だけ」、「井戸を掘る決断をした。「川の近くだから、掘っていけばきっと水が出るだろう」。そう考え、矢倉を組み、手掘りで掘っていったら3.5メートルの地点で水が出た。紫外線を通す機械でUV殺菌をしていて、筆者も飲んだが、とてもおいしい水だった」、「ツリーハウスをホテルにするためには旅館業の許可が必要だが、生きている木を建築物の一部に使っているので、これが違法建築だと申請が下りなかったのだ。クリアするためには、「ツリーハウスは、建築物ではない」と証明する必要があったが、いろいろと調べていくと、「立木りゅうぼく法」という1909年にできた古い法律にたどり着いた。 生きている木と土地は別の物と考え「生きている木は不動産として登記できる」というものだ。そこで大アカギの木を不動産として登記し、その木の上の工作物だから「建築物にはならない」ということが、理論的なバックアップとなりようやく認められた」、法律面のクリアもさぞ大変だったろうと同情する。
・『大手企業社員がアポなしで「働かせてほしい」と直訴  ツリーハウスホテルの運営を視野に入れつつプロジェクトをさらに進めるため、仲間を募った菊川さんは2020年に「ツリーフル」という会社も立ち上げた。社員は現在全13人、求人広告を出さない時も、その存在をインスタなどで知り、働かせてほしいと全国から優秀な人材が集まってきた。大手企業社員がアポなしでやってきたケースもある。ビルダーチーム、運営チーム、地上チームに分かれていて、今も新卒社員を募集中だ。ちなみに、草刈り係の正社員として、ヤギ(ドナちゃん)もいる。 菊川さんはどんな人かと聞くと、琉球大学で言語学と英語を学び、スイスのホテルやフロリダディズニーワールドでの勤務経験もある24歳のヒカリさん(運営チーム)はこう語った。 「常に新しいアイデアを生みだします。それを模索して実現させる力はすごい。本に載っていたらダメ。木を見ながら、みんなで考える。世界初ユニークなものをいつも求めています。私たち若い社員をがんばらせる力もあります」 テーマは、自然と人間との境界線をなくすこと。それは菊川さんとスタッフが共有するおきてだ。 現在、他のスタッフとともにホテル運営にたずさわっている菊川さん。もちろん本業の仕事もテレワークでしっかりこなしている。ツリーハウスを見上げながら現地を訪問した筆者にこう抱負を語った。 「ひとつ自慢があるんです。ここまで整備するのに、木をたったの1本しか切ってないんです。邪魔なものだと安易に排除せず、どうしたら森と仲良くできるか。それを常に考えています。自然と人間との境界線をなくすこと。太陽光を人間が独占しないこと。カーボンニュートラルよりもさらに環境にいいカーボンネガティブ(常にCO2吸収し、排出する二酸化炭素より吸収する二酸化炭素の方が多い状態)にすることを目指しています」 ビジネスであるからには儲けなければならない。しかし、自らに課したルールは守る。「野生動物が地面を歩けるように、そして植物も生えるようにしなければいけない」という決め事を厳守するために、建築物は全て地上から1.2メートル離して作った。要は、土地を建物で塞がない。階段も建物をつなぐ通路もどこからも太陽光が入る仕組みになっている。したがって、雨水もたまらず地面に自然に染み入るようになっている』、「カーボンニュートラルよりもさらに環境にいいカーボンネガティブ・・・にすることを目指しています」、「「野生動物が地面を歩けるように、そして植物も生えるようにしなければいけない」という決め事を厳守するために、建築物は全て地上から1.2メートル離して作った」、なるほど。「自らに課したルールは守る」、なかなか出来ないことだ。
・『リバートレッキングやバギーツアーも  「滞在してくださった方などを対象に環境教育もしています。日本はサスティナブルに対する取り組みが遅れています」 宿泊者はチェックイン後に、リバートレッキングに無料で連れて行ってもらえる。森について説明を聞き、ウェダー(レンタル)を着て川の中を歩き、滝を見る。1時間ほどの冒険体験ができる。 所有する別の敷地内(10万坪)では、8輪車の水陸両用バギーで絶景ツアー(有料)のアクティビティも用意されている。赤土の岬を駆け登り、海を見下ろす絶景を見たかと思えば、今度は海辺へトレッキング。バギーで川へもずぶずぶ入り、本格的なジャングルクルーズのようだ。童心に帰るとともに、かなりのアドベンチャーが楽しめる。 昨夏できたばかりのツリーハウスサウナでは、その名の通り、サウナを楽しめる。崖の斜面に生えている木から吊られ、崖の下にある川の上の空間に浮いている。地上を0メートルとした時、サウナツリーハウスの一番下の部分はマイナス3.6mのため、世界で最も低いツリーハウスと公式にギネス世界記録に認められた。 少年時代のツリーハウスを作るという夢は、いつの間にか、地球の森を守るという壮大な夢へ切り替わった。今後、どんな仕掛けをするのか、その展開からは目が離せない。 最後になったが、筆者が実際にツリーハウスに宿泊した感想を少し。 宿泊可能な2つの施設のうち、エアロハウスはアジアのゴージャスなホテルのようで捨てがたがったが、迷った末に菊川さんが最初につくったスパイラルツリーハウスに2泊した。木の上に泊まるのは人生初だった。 これまでの人生でそれなりにゴージャスなホテルや、自然の中にあるホテルに宿泊体験があったが、ここまで360度、自然と一体になって眠りについたことはなかった。夜は雨がザーザー降っていたが、不思議とぐっすりと眠ることができた。森の中にすっぽりと自分が溶け込んだような体験は後にも先にもない。あの光景と空気を思い出すたびに癒やされている』、「8輪車の水陸両用バギーで絶景ツアー(有料)のアクティビティも用意」、楽しそうだ。宿泊料金は1人1泊で12万円と安くはないようだ(同社ホームページ)https://treeful.net/ja/ 今後の展開が注目される。

次に、3月31日付けPRESIDENT Onlineが掲載したエンタメ社会学者・Re entertainment社長の中山 淳雄氏による「入場者1人あたり3000円の赤字…サンリオが大赤字事業「ピューロランド」を32年間も続けている理由 5000円の支払いに8000円分のサービスをしている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67879
・『サンリオは東京都多摩市と大分県日出町の2カ所でテーマパーク事業を行っている。だが、開業以来、構造的な赤字が続いている。単純計算で来場者1人あたり3000円の赤字となっている事業を、なぜやめないのか。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「そこにはサンリオの長期的な戦略がある」という――』、私は創業間もない頃、家族連れで行ったが、室内だったこともあり暗い印象だったことしか覚えていない。
・『サンリオピューロランドは成功といえるのか  サンリオピューロランド(SPL)といえば、東京都多摩市に位置する、サンリオキャラクターのテーマパークである。 1990年12月にオープンした当時、日本初の「屋内型」で(世界では韓国ロッテワールドに次ぐ2番目の事例)、1960年設立のサンリオにとっては創立30周年記念事業でもあり、総工費650億円を賭けた一大事業であった。続く91年4月には大分県にハーモニーランド(HL)をオープンした。 折しも日本は1983年東京ディズニーランド(TDL)の大成功や1987年のリゾート法制定により、日本全国レベルでホテル・リゾート・ゴルフ場などとともに、テーマパークが乱立する時期である。 だがこの1980~90年代前半に建設された36ものパークのうち、事業継続しているのは17と生存率は半分以下。それも東武ワールドスクウェアや肥前夢街道など比較的小規模なものが多く、長崎オランダ村、ナムコ・ワンダーエッグ、新潟ロシア村など事業規模が大きければ大きいほど失敗事例も多い。 ハウステンボスのように3度所有者が替わり、経営再建をされ続けた事例もあり、かなり大型投資だったSPLは30年間以上維持継続ができているだけでも、「成功例」といえるレベルなのかもしれない』、「1980~90年代前半に建設された36ものパークのうち、事業継続しているのは17と生存率は半分以下。それも東武ワールドスクウェアや肥前夢街道など比較的小規模なものが多く、長崎オランダ村、ナムコ・ワンダーエッグ、新潟ロシア村など事業規模が大きければ大きいほど失敗事例も多い」、「かなり大型投資だったSPLは30年間以上維持継続ができているだけでも、「成功例」といえるレベルなのかもしれない」、なるほど。
・『30年でかかった費用は1320億円  だがよくよくその実績をみると、そんな生易しいものではなかった。赤字がとめどなく垂れ続けながらも、なんとか意地と本業の利益で持ちこたえてきた、といったほうが正しいかもしれない。 SPLは初年度195万人(入場者数は決算IR資料を基にしている。以下同)、これは順調な滑り出しだったといえるが、5年後には半減。 その後10年以上にもわたって売上・来客は減少を続け、コストカットで赤字幅こそ減らしていったが2008年にはSPL・HL合わせて101万人、売上62億、赤字14億円。 「ミラクルギフトパレード」をきっかけに123万人→152万人と集客が大きくあがったのが2015年。小巻亜矢社長の改革の下、「ぐでたま」「アグレッシブ烈子」など新規のライブキャラクターも登場し、ぐんぐん改善するなかで2017年度に悲願の黒字化達成。 2018年には来場者193万人と創業以来の数字にまで到達。こうして振り返ってみると、1990年からの32年間の運営において、黒字だったのは17~19年の3年間しかないのだ』、「1990年からの32年間の運営において、黒字だったのは17~19年の3年間しかない」、寂しい限りだ。
・『入場するごとに3000円の赤字  サンリオはこの32年間、2つのテーマパークを合わせて、延べ約4000万人の来場者を迎えてきた。 初期建設費770億円(SPL:700億円、HL:140億円の51%負担分)に加え、32年間で積みあがった累積営業赤字は550億円。 つまりサンリオは本業で稼いだ利益を費やして、単純計算で1320億円(※資金調達手段の違いや利子率、償却費は計測できないので含めず)もの赤字をかけて、この2つのテーマパークを守り続けてきた。 これは単純に計算すれば、ファン1人あたり平均2000円の入場券とグッズや飲食費3000円で合計5000円を使っているが、実際そのサービスには8000円のコストがかかっている、ということになる。 このファン1人ずつに「サンリオが支払っている余分な3000円」は未来への投資である。 SPLが赤字で運営されていようと、その場に足を運んだ数千万人はよりサンリオを好きになり、サンリオのグッズを将来買ってくれるに違いない。そういった期待もあって、テーマパーク事業自体の赤字は受容されてきた。 特に初期の1992~94年あたりは売上80億円前後に対して毎年営業利益が50億円~60億円もマイナス、撤退という判断があってもおかしくはなかった数字だろう。 実はこれはサンリオに限った話ではない。 この時代、長崎オランダ村(1983年設立、2001年閉鎖)、スペースワールド(1990年設立、2017年閉鎖)、ナムコ・ワンダーエッグ(1992年設立、2000年閉鎖)、東京セサミプレイス(1990年設立、2006年閉鎖)、松竹の鎌倉シネマワールド(1995年設立、1998年閉鎖)、ウルトラマンランド(1996年設立、2013年閉鎖)と、多くのパークが初期の大型投資と、その後の周辺人口の来客数・顧客単価が合わず、最初の3~5年で大赤字、10年後には再建・撤退検討となっている事例が珍しくなかった。 それでもサンリオが継続できたのは、テーマパークが専業ではなく、あくまで本業を支援する事業としての位置づけがあったからだろう』、「初期建設費770億円」、「累積営業赤字は550億円」、合わせて「1320億円」の赤字、「ファン1人あたり平均2000円の入場券とグッズや飲食費3000円で合計5000円を使っているが、実際そのサービスには8000円のコストがかかっている、ということになる。 このファン1人ずつに「サンリオが支払っている余分な3000円」は未来への投資である」、「未来への投資」とは苦しい印象も受ける。
・『なぜ世界中で店舗を運営したのか  サンリオは「空間演出」に重きを置いてきた企業だ。単にモノを置いて売る場所ではなく、ユーザーが心の充足感を味わえる空間を演出するため「ギフトゲート」(1971年~)、顧客層をより大人に向けた「vivitix」(1996年~)という直営店舗そのものにもコンセプト別に店舗にブランドをもたせた展開をしてきた。 提携店舗であっても同様で、伊勢丹の「ギフトイン」や高島屋「いちごプラザ」など、百貨店ごとにすらブランドを付け替え、20世紀にいち早く“身近なテーマパーク的空間”を先駆けてきた企業でもあった。 これはディズニー社が初めて直販事業を手掛けた「ディズニーストア」(1987年~)の10年以上前から手掛けてきた話だ。 2003年には国内で直営でも160店舗、百貨店・量販店・専門店も合わせると1470店舗(現在のゲオやTSUTAYAと同じくらいの国内店舗規模)。 北米を中心に海外にすら直営21店舗含む400店舗、取扱店にいたっては2万店舗という広大な流通・小売のネットワークを敷いていたことは20年経つ現在でも信じられない数字だ。 自社だけで1万2000種類の商品群に、毎月600種類ずつの新商品が出され、ライセンスでも2万1000種類の商品が展開された。果たして日本のキャラクターでこのレベルにまで海外の隅々に商品を届けられた事例は過去歴史上あったのだろうか。 1990年代のサンリオ破竹の勢いをみると、逆に前述のSPL・HLを赤字でも維持できた「王者の余裕」も垣間見える』、「サンリオは「空間演出」に重きを置いてきた企業だ。単にモノを置いて売る場所ではなく、ユーザーが心の充足感を味わえる空間を演出」、「直営店舗そのものにもコンセプト別に店舗にブランドをもたせた展開をしてきた。 提携店舗であっても同様で、伊勢丹の「ギフトイン」や高島屋「いちごプラザ」など、百貨店ごとにすらブランドを付け替え、20世紀にいち早く“身近なテーマパーク的空間”を先駆けてきた」、なるほど。
・『世界にいち早く進出したキャラクター  テーマパーク事業はアジアにも派生する。1992年にSPLの中国輸出のプロジェクトが始まった。 投資規模200億円(当時為替。出資内訳:中国政府50%、タイのフォーチュングループ45%、サンリオ5%)で、上海・浦東地区にテーマパーク開設が企画された。 それは中国にとどまらず1993年には中国・深圳でもテーマパーク設立の打診を受けつつ、タイ・バンコク、フィリピン・マニラでもそれぞれで20億円規模のミニテーマパークが建設されている。 現在残っているものは多くはないが、ポケモンやガンダム、少年ジャンプ作品などと比べても、ハローキティほど海外でテーマパークになったキャラクターは他に存在しない。 こうした外資からの投資呼び込みとともに、積極的な海外展開の基軸を担ったのが「サンリオショー」である。 1992年からシンガポール、インドネシア、フィリピンでショーを展開、1993年にはこれがマレーシア、韓国、台湾に展開された。 それに従いSPLの専属ダンサー、キャラクター、スタッフが5~20名規模で各地に派遣され、1994年に海外4カ所、1995年に8カ所と公演数を増やし、これだけでも数億円の公演事業売上が計画されていった』、「テーマパーク事業はアジアにも派生する・・・中国では投資規模200億円(当時為替。出資内訳:中国政府50%、タイのフォーチュングループ45%、サンリオ5%)で、上海・浦東地区にテーマパーク開設が企画・・・タイ・バンコク、フィリピン・マニラでもそれぞれで20億円規模のミニテーマパークが建設」、「積極的な海外展開の基軸を担ったのが「サンリオショー」である。 1992年からシンガポール、インドネシア、フィリピンで・・・1993年にはこれがマレーシア、韓国、台湾に展開・・・SPLの専属ダンサー、キャラクター、スタッフが5~20名規模で各地に派遣され、1994年に海外4カ所、1995年に8カ所と公演数を増やし、これだけでも数億円の公演事業売上が計画」、進出形態は様々なようだ。
・『あきらめの悪い会社  90年代後半に花開くが、実は1980年代から90年代初期に至る長い間、サンリオの海外展開は「冬眠状態」でもあった。 1976年とかなり早い時期に米国進出を果たし、流通もないなかでキティ人形を片手にセールスマンが個人宅を訪問して売り歩くようなドブ板から始め、ある程度人気は出た。 ハリウッド映画づくりからニューヨーク進出までさまざまな取り組みを行ってきた80年代、米国事業はずっと赤字のままだった。 そのくせ1990年になってもサンリオの海外売上高は全体の5%にも満たなかった。だがこのあきらめの悪い悪戦苦闘の中にこそ、その10年後に輝く種が眠っていたともいえる。 「子供時代にキティに触れたアーティスト」がスターになってから、パブリシティに多大な影響を与えるのだ。 モデル・テレビ司会者のタイラ・バンクスが2001年MTVアワードにキティのハンドバッグをもって姿を現すと、同じように歌手・女優のマンディ・ムーアもビルボードアワードの授賞式でキティの刺繍バッグをもち、ニューヨークではマライア・キャリーがキティのラジカセを持参してカラオケ熱唱。 シンガーソングライターのリサ・ローブを代表に、キティ好きアーティストは米国で多く登場し、遂にはレディー・ガガともタイアップも実現させている。 当時米国でキティは「おしゃれ」の代表となり、同時にマイノリティ人種やLGBTが反体制のシンボルとして使いだした。政治メッセージすら象徴する一大キャラクターとなった』、「「子供時代にキティに触れたアーティスト」がスターになってから、パブリシティに多大な影響を与えるのだ。 モデル・テレビ司会者のタイラ・バンクスが2001年MTVアワードにキティのハンドバッグをもって姿を現すと、同じように歌手・女優のマンディ・ムーアもビルボードアワードの授賞式でキティの刺繍バッグをもち、ニューヨークではマライア・キャリーがキティのラジカセを持参してカラオケ熱唱・・・」、極めて効果的かつ効率的だ。
・『世界中で起きたキティブームの仕掛け  SPLも1996年ごろから外国人観光客が増加、ディズニーランドの5%と比べると倍となる全体の10%が外国人観光客といった数字もたたき出しており、そこから20年後に起こる日本のインバウンドブームの先駆けともいえる。 もちろん日本でも1997年ごろから華原朋美が身に着け、女子高生の間で「キティラー」が多く誕生していたこの時期、実はサンリオも意識的にブランドPRを活用していた。 四半期ごとに50~70人の有名芸能人に自社商品を送り、間接的なPRは戦略的に行われていた。 日本ファンシーグッズ市場の8割をサンリオ1社が独占するような状態で、それが北米やアジアにも一大キティブームを巻き起こしていたのだ。 2002年アジア全体の中で、ソニー、キャセイパシフィック航空に次いでキティは「3番目に有名なアジアブランド」にも輝いている』、「日本ファンシーグッズ市場の8割をサンリオ1社が独占するような状態で、それが北米やアジアにも一大キティブームを巻き起こしていたのだ。 2002年アジア全体の中で、ソニー、キャセイパシフィック航空に次いでキティは「3番目に有名なアジアブランド」にも輝いている」、大したものだ。
・『ビジネスモデルの限界でやったこと  「日本国内」の売上は1998年の1400億円をピークに、現在の450億円までほとんど回復の機会がなかった。 これは新聞、出版、百貨店、アパレルなどの産業と同じくし、「モノを売る」というビジネスモデルの限界を示している。 対して、その後の20年間サンリオを支えたのは「海外」である。1990年代は70億円~80億円だった海外売上は、00年代に150億円前後、ピークの2013年300億円まで上がり続けていた。 米国は1976年から、欧州は82年から、アジア(上海)は92年からと、日本のソフトコンテンツ企業としては黎明れいめい期から海外に張り続けてきたサンリオは、00年代に入ってようやくその受益を糧にできるようになっていた。 だが本テーマのテーマパーク事業について言えば、実はこの海外が売上・営利ともにピークアウトし、いよいよ凋落が止まらなくなる2014年になって初めて変化が現れる。 皮肉なことに本業自体が危うくなってからしか、独立独歩で採算を目指すテーマパークは誕生しなかったとも言える』、「米国は1976年から、欧州は82年から、アジア(上海)は92年からと、日本のソフトコンテンツ企業としては黎明れいめい期から海外に張り続けてきたサンリオは、00年代に入ってようやくその受益を糧にできるようになっていた。 だが本テーマのテーマパーク事業について言えば、実はこの海外が売上・営利ともにピークアウトし、いよいよ凋落が止まらなくなる2014年になって初めて変化が現れる。 皮肉なことに本業自体が危うくなってからしか、独立独歩で採算を目指すテーマパークは誕生しなかったとも言える」、なるほど。
・『たった4年で黒字になったワケ  SPLのV字回復の立役者は小巻亜矢氏、1983年にサンリオに入社し、結婚退職した後50歳を過ぎてから東大教育学の修士に入り卒業。2014年に子会社の顧問に就任し、2016年SPL館長となった。 2014年赴任時に役員会で出た次のセリフに衝撃を受ける。「この会社は黒字にならない。無理、無理」。そして冒頭で述べたように、黒字化はその後の2017年度に実現することになる。 小巻氏の施策は、コミュニケーション&モチベーション(朝礼でのナレッジ共有、女性トイレの整備、スタッフ感謝デー導入)とターゲット拡大(大人も楽しめるイケメン俳優2.5次元ミュージカル導入、松竹と歌舞伎ショーを共同開発、シナモン男祭りなどの男性限定イベント)の2つの面が功を奏し、2010年代のテーマパーク市場全体の好景気の波に乗ることに成功する。 黒字になると自然と施策の打ち手にも幅が広がり、イベントを増やしたり、新規でキャラクターフードを開発したり、イルミネーションショーを導入したり、コロナ前の2017~19年、SPLやHLはどんどん活気づいていた』、「SPLのV字回復の立役者は小巻亜矢氏」、「小巻氏の施策は、コミュニケーション&モチベーション(朝礼でのナレッジ共有、女性トイレの整備、スタッフ感謝デー導入)とターゲット拡大(大人も楽しめるイケメン俳優2.5次元ミュージカル導入、松竹と歌舞伎ショーを共同開発、シナモン男祭りなどの男性限定イベント)の2つの面が功を奏し、2010年代のテーマパーク市場全体の好景気の波に乗ることに成功」、大したものだ。
・『投資の真価が問われるのはこれから  コロナ禍での2020年は当然テーマパーク事業も赤字転落、そしてサンリオ本体も含めて1994年以来の26年ぶりの赤字に陥る。 「底」を見た後、創業者・辻信太郎氏の孫である辻朋邦氏の社長就任に伴い、直営店の整理や商品数の削減など過去手が付けられなかった案件にもさまざまな構造改革の成果が見え、テーマパーク事業も再度黒字化のめどが立ちつつある。 今年でサンリオは創業63年、キティが誕生49年、もはや「ショップ体験によるサンリオ商品コレクション」が中心のビジネスモデルではなくなっているが、「体験」をユーザーに訴求する“原点”としているところは今後も変わることはないだろう。 その意味ではショップやテーマパークのもつ可能性は、いまだ大きいといえる。東京都心30分という地理のアドバンテージをまだ生かし切れているとはいえない。 果たしてこの1000億円以上をかけ続けた壮大な事業の「真の成果」がどう表れてくるか。2023年以降の動きに注目したい』、「もはや「ショップ体験によるサンリオ商品コレクション」が中心のビジネスモデルではなくなっているが、「体験」をユーザーに訴求する“原点”としているところは今後も変わることはないだろう。 その意味ではショップやテーマパークのもつ可能性は、いまだ大きいといえる。」、「1000億円以上をかけ続けた壮大な事業の「真の成果」がどう表れてくるか。2023年以降の動きに注目したい」、やはり「サンリオ」の今後は要注目だ。
タグ:「「子供時代にキティに触れたアーティスト」がスターになってから、パブリシティに多大な影響を与えるのだ。 モデル・テレビ司会者のタイラ・バンクスが2001年MTVアワードにキティのハンドバッグをもって姿を現すと、同じように歌手・女優のマンディ・ムーアもビルボードアワードの授賞式でキティの刺繍バッグをもち、ニューヨークではマライア・キャリーがキティのラジカセを持参してカラオケ熱唱・・・」、極めて効果的かつ効率的だ。 1992年からシンガポール、インドネシア、フィリピンで・・・1993年にはこれがマレーシア、韓国、台湾に展開・・・SPLの専属ダンサー、キャラクター、スタッフが5~20名規模で各地に派遣され、1994年に海外4カ所、1995年に8カ所と公演数を増やし、これだけでも数億円の公演事業売上が計画」、進出形態は様々なようだ。 PRESIDENT ONLINE そこで大アカギの木を不動産として登記し、その木の上の工作物だから「建築物にはならない」ということが、理論的なバックアップとなりようやく認められた」、法律面のクリアもさぞ大変だったろうと同情する。 「8輪車の水陸両用バギーで絶景ツアー(有料)のアクティビティも用意」、楽しそうだ。宿泊料金は1人1泊で12万円と安くはないようだ(同社ホームページ)https://treeful.net/ja/ 今後の展開が注目される。 「テーマパーク事業はアジアにも派生する・・・中国では投資規模200億円(当時為替。出資内訳:中国政府50%、タイのフォーチュングループ45%、サンリオ5%)で、上海・浦東地区にテーマパーク開設が企画・・・タイ・バンコク、フィリピン・マニラでもそれぞれで20億円規模のミニテーマパークが建設」、「積極的な海外展開の基軸を担ったのが「サンリオショー」である。 「1990年からの32年間の運営において、黒字だったのは17~19年の3年間しかない」、寂しい限りだ。 山本 貴代氏による「「これはガウディ級だ」建築のド素人57歳が沖縄の深い森の中に8年かけてツリーハウスホテルを作ったワケ 「世界一ではなく世界初を」本業の傍ら泣きそうになりながら作り上げたもの」 「「建築の構造計算は独学で修得し、今回のツリーハウスも自分で設計した」、「丸ノコでまっすぐな直線を引く際には欠かせない「丸ノコガイド90度」の存在も知らなかったので、原始的なL字定規で、鉛筆で印をして切ったそうだ。取説片手に四苦八苦して、工具とその使い方を手探りで学び、失敗を繰り返しながら、一歩ずつ前進していった」、「エネルギッシュに日々進化する都会の姿を目の当たりにして「俺、沖縄の森で何やっているんだ」と惨めな気持ちになることが何度もあった。それでも諦めなかった」、執念には脱帽だ。 「設計も建築も自分でやった。コストは150万円だけ」、「井戸を掘る決断をした。「川の近くだから、掘っていけばきっと水が出るだろう」。そう考え、矢倉を組み、手掘りで掘っていったら3.5メートルの地点で水が出た。紫外線を通す機械でUV殺菌をしていて、筆者も飲んだが、とてもおいしい水だった」、 中山 淳雄氏による「入場者1人あたり3000円の赤字…サンリオが大赤字事業「ピューロランド」を32年間も続けている理由 5000円の支払いに8000円分のサービスをしている」 「カーボンニュートラルよりもさらに環境にいいカーボンネガティブ・・・にすることを目指しています」、「「野生動物が地面を歩けるように、そして植物も生えるようにしなければいけない」という決め事を厳守するために、建築物は全て地上から1.2メートル離して作った」、なるほど。「自らに課したルールは守る」、なかなか出来ないことだ。 「ツリーハウスをホテルにするためには旅館業の許可が必要だが、生きている木を建築物の一部に使っているので、これが違法建築だと申請が下りなかったのだ。クリアするためには、「ツリーハウスは、建築物ではない」と証明する必要があったが、いろいろと調べていくと、「立木りゅうぼく法」という1909年にできた古い法律にたどり着いた。 生きている木と土地は別の物と考え「生きている木は不動産として登記できる」というものだ。 エンターテインメント 「サンリオは「空間演出」に重きを置いてきた企業だ。単にモノを置いて売る場所ではなく、ユーザーが心の充足感を味わえる空間を演出」、「直営店舗そのものにもコンセプト別に店舗にブランドをもたせた展開をしてきた。 提携店舗であっても同様で、伊勢丹の「ギフトイン」や高島屋「いちごプラザ」など、百貨店ごとにすらブランドを付け替え、20世紀にいち早く“身近なテーマパーク的空間”を先駆けてきた」、なるほど。 私は創業間もない頃、家族連れで行ったが、室内だったこともあり暗い印象だったことしか覚えていない。 「1980~90年代前半に建設された36ものパークのうち、事業継続しているのは17と生存率は半分以下。それも東武ワールドスクウェアや肥前夢街道など比較的小規模なものが多く、長崎オランダ村、ナムコ・ワンダーエッグ、新潟ロシア村など事業規模が大きければ大きいほど失敗事例も多い」、「かなり大型投資だったSPLは30年間以上維持継続ができているだけでも、「成功例」といえるレベルなのかもしれない」、なるほど 「ツリーハウス」は多くの男の子の夢だ。 「沖縄の山深くに世界注目のツリーハウスホテル誕生」、「私は、日本初の森を活用したツリーハウスリゾートを全国展開したいと考えています。森を守ることを絶対ルールとしながら、人々が宿泊でき、ダイナミックな自然体験もできるリゾート施設を完成させ、その森を運営して儲かる仕組みもつくりたい。ゆくゆくは、このビジネスモデルを東南アジアなど世界へ輸出したいと思っています」、素晴らしい心構えだ。 「中米コスタリカにあると聞いたツリーハウスホテルを訪ねた」、「日本に戻って最初にしたこと、それはホストツリーとなる大木探しだ。建物を支えるような大木は、山奥にしかない。東京と沖縄を行き来しながら・・・大木と土地を足を棒にして探し歩いた。何度も原生林を歩き回った結果、ようやくすばらしい大アカギの木が見つかり、1万坪の土地も手に入れた」、凄い執念だ。 (その1)(「これはガウディ級だ」建築のド素人57歳が沖縄の深い森の中に8年かけてツリーハウスホテルを作ったワケ 「世界一ではなく世界初を」本業の傍ら泣きそうになりながら作り上げたもの、入場者1人あたり3000円の赤字…サンリオが大赤字事業「ピューロランド」を32年間も続けている理由 5000円の支払いに8000円分のサービスをしている) 「初期建設費770億円」、「累積営業赤字は550億円」、合わせて「1320億円」の赤字、「ファン1人あたり平均2000円の入場券とグッズや飲食費3000円で合計5000円を使っているが、実際そのサービスには8000円のコストがかかっている、ということになる。 このファン1人ずつに「サンリオが支払っている余分な3000円」は未来への投資である」、「未来への投資」とは苦しい印象も受ける。 「東南アジア・ボルネオ島のコタキナバルへ野生のオラウータンを見に家族で旅行したとき、原生林をパームヤシ畑に変えてビジネスする姿をみて強い衝撃を受けました。 『これではいずれ熱帯雨林がなくなり、地球の温暖化促進され、生態系も崩れてしまう』と感じたんです。それを防ぐためにも、森を利用したツリーハウスリゾートをつくろう。森も守ることができるし、雇用も生むことができる。これで世界は救われるのではないか」、 「日本ファンシーグッズ市場の8割をサンリオ1社が独占するような状態で、それが北米やアジアにも一大キティブームを巻き起こしていたのだ。 2002年アジア全体の中で、ソニー、キャセイパシフィック航空に次いでキティは「3番目に有名なアジアブランド」にも輝いている」、大したものだ。 「米国は1976年から、欧州は82年から、アジア(上海)は92年からと、日本のソフトコンテンツ企業としては黎明れいめい期から海外に張り続けてきたサンリオは、00年代に入ってようやくその受益を糧にできるようになっていた。 だが本テーマのテーマパーク事業について言えば、実はこの海外が売上・営利ともにピークアウトし、いよいよ凋落が止まらなくなる2014年になって初めて変化が現れる。 皮肉なことに本業自体が危うくなってからしか、独立独歩で採算を目指すテーマパークは誕生しなかったとも言える」、なるほど。 「SPLのV字回復の立役者は小巻亜矢氏」、「小巻氏の施策は、コミュニケーション&モチベーション(朝礼でのナレッジ共有、女性トイレの整備、スタッフ感謝デー導入)とターゲット拡大(大人も楽しめるイケメン俳優2.5次元ミュージカル導入、松竹と歌舞伎ショーを共同開発、シナモン男祭りなどの男性限定イベント)の2つの面が功を奏し、2010年代のテーマパーク市場全体の好景気の波に乗ることに成功」、大したものだ。 「もはや「ショップ体験によるサンリオ商品コレクション」が中心のビジネスモデルではなくなっているが、「体験」をユーザーに訴求する“原点”としているところは今後も変わることはないだろう。 その意味ではショップやテーマパークのもつ可能性は、いまだ大きいといえる。」、「1000億円以上をかけ続けた壮大な事業の「真の成果」がどう表れてくるか。2023年以降の動きに注目したい」、やはり「サンリオ」の今後は要注目だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

人工知能(AI)(その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声) [イノベーション]

人工知能(AI)については、3月20日に取上げた。今日は、(その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声)である。

先ずは、3月20日付けエコノミストOnlineが掲載した立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏による「米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20230328/se1/00m/020/055000c
・『あらゆる問いに対して人間が書くような文章で回答する「対話型AI」が出現した。この技術のいったい何が革命的なのかを解き明かす。 対話型AI(人工知能)の「チャットGPT」の出現は、世の中に革命的な変化をもたらした。2022年11月にリリースされて以降、その驚くべき性能に利用者が急増している。 チャットGPTを世に送り出したオープンAIは、当初はAIの発展を目指してイーロン・マスク氏などが出資して15年に設立された非営利組織だった。しかし19年、AI技術を社会で実用化する営利目的の会社として、マイクロソフトなどが10億ドルを出資してオープンAI LP(リミテッド・パートナーシップ)を設立した。 マイクロソフトの参加により、オープンAIはマイクロソフトが持つさまざまなデータやリソース(経営資源)を使えるようになり、開発のスピードが一気に上がったとされる。 GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、事前学習済み(Pre-trained)の文章生成型(Generative)トランスフォーマー(深層学習モデルの名称)を意味する、オープンAI開発の「巨大言語モデル」だ。チャットGPTを動かしている「GPT-3」(現在は改良版のGPT-3.5)のシステムは1750億のパラメーター(変数)を読み込んでおり、前バージョンに比べて性能が格段にアップした』、興味深そうだ。
・『高水準の文章で回答  チャットGPTが対話型で返してくる回答は、現時点においてかなりの水準に達している。 一つ例を挙げると、筆者が主宰するワークショップで研究している企業に、カインズやワークマンを傘下に持つベイシアグループがあるが、「ベイシアグループではどのようなDX(デジタルトランスフォーメーション)をしていますか」と聞いてみると、たちどころに「ベイシアグループでは、DXを推進するために、いくつかの取り組みをしています。例えば……」として複数の項目を答えてくる。 もちろん、正確性に問題はあるかもしれないが、このように文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える。 さらに、マイクロソフトの検索システム「Bing(ビング)」とチャットGPTを組み合わせて使うことで、利便性が飛躍的に高まった。 例えば、ベイシアグループについてBingで検索すると、最上部にチャットGPTの回答、その下側にはグーグルと同じような検索結果が出て、これらを同時に見ることができる。チャットGPTの回答をもっと知りたいと思えば、そこをクリックすると、チャットGPT専用の画面に切り替わる。このような仕組みは非常に有用だ』、「文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える」、すごい進歩だ。「マイクロソフト」と、「チャットGPT」を扱う「オープンAI」の提携はさすが本格的だ。
・『グーグルは「非常事態宣言」  これまでは、検索欄に「ベイシアグループ」と入れると、それに関連する記事などが出てきただけだが、決定的に違うのは、ベイシアグループとは何であるかを「ベイシアグループとは日本の流通企業です……」などといった文章で回答してくることだ。 また、画面の下には、どこから引用してきたかの情報が出ている。そこをクリックすると引用元のサイトに飛べるようになっている。この便利さに圧倒されて、筆者は最近、Bingばかりを使い、グーグルで検索することがなくなった。 チャットGPTの能力の奥深さは計り知れない。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は「チャットGPTで実現したかったことの一つは、プログラミング言語を知らない人でもプログラムが組めて問題解決できるようになること」とまで語っている。恐るべき可能性を秘めていることは間違いない。 このようなチャットGPTに対して、検索で大きなシェアを持つグーグルはどのように対抗していくのか。グーグルの幹部は大きな危機感を抱き、今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した。共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ。 もちろんグーグルも生成AI、対話型AIの研究はこれまでも行っている。ただ、グーグルのビジネスモデルは、検索によって得られる情報から広告を提示する「検索広告」が事業の主力。収入の9割以上を広告に依存しているため、下手に新しいサービスを立ち上げることで広告に影響するようなことがあってはならないと、一歩を踏み出せずにいた。 しかし、マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている』、「グーグル」は、「今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した」、「共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ」、「マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている」、「グーグル」の反攻は上手くいくのだろうか。
・『準備を進める中国・百度  一方、中国はどうなっているのか。中国のグーグルと呼ばれる「百度(バイドゥ)」がその先頭を走る。同社は検索はもちろん、クルマの自動運転なども事業展開してきた会社だ。 今年1月上旬に米ラスベガスで開かれた世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で生成AIやチャットGPTが話題になった。驚いたのはグーグルなどに先行して、1月下旬に百度はチャットGPTと似た対話型AIサービスを提供すると発表したことだ。当然ながら、生成AIについてずっと研究・開発を行ってきたからこそ、すぐに追随することが可能になる。 中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる。 いずれにしても今後、生成AIの分野は、マイクロソフトによるオープンAIとグーグルの米2社、それに中国・百度を加えた3社が、それぞれの世界をプラットフォーマーとして覇権を獲得していく可能性が高い。残念ながら、現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ』、「中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる」、「現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ」、寂しい限りだ。
・『危険性認識すべき  ただ、イアン・ブレマー氏が率いる米国の政治リスクの専門コンサルティング「ユーラシアグループ」が23年の10大リスクで「生成AI」を3位にランキングしているように、社会を混乱させる危険性があることは常に意識していなければならない。 ユーラシアグループは「大混乱生成兵器」と題し、AIの技術的な進歩が、デマゴーグを生んだり権威主義者に力を与えたりして、ビジネスや市場を混乱させる危険性があることを示した。 チャットGPTなどの利用によって、コンテンツの作成に参入障壁がなくなると、コンテンツの量は指数関数的に増加していき、市民の多くが事実とフィクションを区別できなくなる。偽情報が横行し、社会的な連帯、商業や民主主義の基盤である信頼が損なわれる可能性があると指摘していることは、十分認識しておくべきだろう』、参考にすべき警鐘だ。

次に、4月9日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「イーロン・マスクですらこの危機感、世界でAI開発停止要求、なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108584?imp=0
・『生成系AIの技術開発を一時停止すべきだとの提言が、アメリカでなされました。この技術が持つ潜在的な影響力の大きさを考えれば、当然の懸念です。一方日本では、国会答弁の下書きに利用するというのですが……』、「日本」は他国に先んじて利用したいというスケベ心が見え見えだ。
・『AIを開発しながら慎重な国と無批判に使おうとする国  ChatGPTやBingなど、生成系AIと呼ばれる技術について、その技術開発を半年間ストップさせるべきだとの提言が、アメリカでなされました。 これが 報道された日に、日本では、これと正反対の提言がなされました 。 国会答弁の下書きなどに生成系AIを活用するという提言案を、自民党がまとめたのです。 この2つは、AIに対する基本的な態度の際立った違いを示すものです。 一方は、極めて高度な技術を開発しながら、それを無条件に受け入れるのではなく、その社会的な影響について真剣に検討しようとしています。 もう一方は、外国で開発された技術を、その見かけに幻惑されて、無条件に受け入れようとしています。 この2つの差は極めて深刻なものだと、私は考えます』、「日本」の「提言案」は「自民党がまとめた」ので、本質が理解できないまま「利用」に重点をおいたようだ。
・『生成系AIの技術開発をストップさせる提言  まず、アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています。彼は、ChatGPTを開発した企業OpenAIの創業者の1人でした。 現在のAIに、それだけの能力があるとは思えないのですが、将来様々な問題が起こり得ることは否定できないでしょう。この提言が指摘するように、AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです』、「アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています」、「AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです」、確かにその通りだ。
・『AIはでたらめな答えを出す  上記の提言は、生成系AIの今後の技術開発に関わるものです。それ以前の問題として、生成系AIが、現在すでに様々な問題を抱えていることも間違いありません。 最大の問題は、誤った答えを出すことです。したがって、 結果を信用することができません。 Bing は、ホームページで、「誤った答えを出すことがあるから、依存しないように」と注意を喚起しています。Googleの対話型AIであるBardは、「自信満々に間違うことがある」とされています。 出力をそのまま信じて利用しようとすれば、深刻な混乱が生じるでしょう。 OpenAIのChatGPTにしても、MicrosoftのBingにしても、またGoogleのBardにしても、未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません』、「自信満々に間違うことがある」、とは言い得て妙だ。「未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません」、その通りだ。
・『悪貨が良貨を駆逐する危険  もう一つの問題として私が危惧するのは、優勝劣敗の法則が働かず、逆に、悪貨が良貨を駆逐してしまうことです。 生成系AIは 文章を作るコストを激減させます。内容を指定して、「何字程度の文章を書け」と言えば、数秒のうちに文章を出力します。 その内容は信頼できないものなのですが、読者が受け入れれば、世の中に流通するでしょう。 つまり、内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねないのです。 現在のウェブは、すでにそのような状況になってしまっています。それが加速することが懸念されます』、「内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねない」、恐ろしい事態だ。
・『どうやって規制するのか?  仮に規制が必要であるとしても、その実効確保は難しいでしょう。インターネット上の情報に関して、プロファイリング規制の必要性がいわれています。しかし、その実効性はいまだに確保できていません。生成系AIについても同じことが言えるでしょう。 しかも、Microsoftは、生成系AIにすでに巨額の投資をしています。したがって、上記提言に従って生成系AIの開発をストップさせることは、半年間といえども、現実には不可能ではないでしょうか? 他方で、この技術をうまく使えば、新たな価値が生み出されることも間違いありません。問題は、そのような可能性をいかにして実現していくかでしょう。 したがって、利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです』、「利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです」、その通りなのだろう。
・『いま行政に取り入れても、混乱が広がるだけ?  本稿の最初に述べたように、日本では、アメリカの提言と正反対の 提言がなされました。自民党が 国会答弁の下書きなどにこれを活用するという提言案をまとめたのです。 しかし、この考えには、首を傾げざるをえません。国会答弁作成にAIを活用しようとしても、能率が上がることはなく、かえって混乱が生じる危険が大きいでしょう。 官僚が国会答弁作成のため、深夜までの勤務を強いられています。私自身も(だいぶ昔のことですが)、この仕事にさんざん苦労させられました。 役人がなぜ夜遅くまで役所に残っているのかといえば、それは、資料の収集や分析などに手間がかかるからではありません。 時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです。この状態が改善されない限り、深夜勤務問題は解決しません。 国会答弁作成に時間がかかる第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません。 AIを使えば答弁に必要な資料やデータなどが簡単に得られると考えられているのかもしれませんが、先に述べたように、AIの出力には誤りが含まれています。この状態が改善されずにAIを使えば、大変な混乱が生じるでしょう。 対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません』、「国会答弁作成」に、「時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです」、「第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません」、「対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません」、「自民党の提言は、第1段階に止まっている」とは手厳しい批判だ。同感である。

第三に、4月12日付け読売新聞「チャットGPTの回答「官僚が結局精査」、非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声」を紹介しよう。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230412-OYT1T50033/
・『西村経済産業相が11日の閣議後の記者会見で対話型AI(人工知能)「チャットGPT」で国会答弁を作成する可能性に言及したことについて、専門家からは情報管理の安全性を懸念する声や、導入の効果を疑問視する指摘が出ている。 「結局、チャットGPTの回答を官僚が精査しなければならない」。西村氏が検討理由に掲げる「国家公務員の業務負担軽減」について、元官僚の小峰隆夫・大正大客員教授はそんな見方を示した。 小峰氏は、諸外国の制度の調査など、官僚の業務でチャットGPTを使うメリットは多いとしつつ、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いでいる。チャットGPTは論文やリポート、読書感想文なども瞬時に生成するためで、名古屋大の杉山直学長は先月27日の卒業式祝辞で「大学の教育の危機といえる状況」と述べた。 東京大など、学生リポートなどでの利用制限方針を示す大学が相次ぐ。上智大は、リポート作成などに無許可でのチャットGPT利用を認めないと学生に通知。同大の担当者は取材に「教育の質の保証や公平性の観点から、生成AIで作成することは、ひょう窃や他人に依頼して作成させる行為と同様に認めることはできない」とした。 文部科学省も今後、教育現場での取り扱いを示す資料を作成する方針だ』、「「小峰氏は」、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いる」、同感である。先に取上げた「自民党の提言」は、余りにも能天気で勉強不足が見え見えだ。
タグ:田中道昭氏による「米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本」 エコノミストOnline 人工知能(AI) (その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声) 「文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える」、すごい進歩だ。「マイクロソフト」と、「チャットGPT」を扱う「オープンAI」の提携はさすが本格的だ。 「グーグル」は、「今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した」、「共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ」、「マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている」、「グーグル」の反攻は上手くいくのだろうか。 「中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる」、「現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ」、寂しい限りだ。 参考にすべき警鐘だ。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「イーロン・マスクですらこの危機感、世界でAI開発停止要求、なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!」 「日本」は他国に先んじて利用したいというスケベ心が見え見えだ。 「日本」の「提言案」は「自民党がまとめた」ので、本質が理解できないまま「利用」に重点をおいたようだ。 「アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています」、 「AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです」、確かにその通りだ。 「自信満々に間違うことがある」、とは言い得て妙だ。「未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません」、その通りだ。 「内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねない」、恐ろしい事態だ。 「利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです」、その通りなのだろう。 「国会答弁作成」に、「時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです」、「第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません」、「対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません」、「自民党の提言は、第1段階に止まっている」とは手厳しい批判だ。同感である。 読売新聞「チャットGPTの回答「官僚が結局精査」、非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声」 「「小峰氏は」、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽 情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いる」、同感である。先に取上げた「自民党の提言」は、余りにも能天気で勉強不足が見え見えだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

決済(その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由) [金融]

決済については、昨年1月4日に取上げた。今日は、(その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由)である。

先ずは、昨年1月22日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300262
・『今年前半にも市場規模が1兆円に乗ると予想される新興ビジネスがある。クレジットカードを使わずに、オンラインで買い物ができる「後払い決済サービス」だ。 同サービスは、インターネット通販(EC)で商品を購入し、商品が届いた後、2週間から1カ月程度の間に紙の請求書やスマホアプリに届くバーコードを使ってコンビニや銀行などで代金を支払う仕組みだ。 「衣料品や食品などの物販のほか、旅行代金やオンラインゲームの課金サービスも対象で、クレジットカードを持たない若者層を中心に急速に利用額を伸ばしています」(メガバンク幹部)という。 昨年10月に米ペイパルが3000億円で買収したペイディや、同12月15日に東証1部に上場したネットプロテクションズホールディングスは最大手の事業者として知られる。 だが、代金の精算を翌月1回払い(マンスリークリア)のみとしている業者が大半で、割賦販売法の適用除外となっていることもあり、市場規模の拡大とともに消費者トラブルも増えている。「国民生活センターには利用者の支払い能力を超えて決済が行われているケースや事業者が問い合わせに十分な対応をとってくれないといった苦情が多く寄せられているようです」(前出のメガバンク幹部)という』、「国民生活センター」が2020年1月23日:に公表した「(特別調査)消費者トラブルからみる立替払い型の後払い決済サービスをめぐる課題」によれば、2019年度の相談件数は2018年度の同時期と比較すると、約3倍に増加」、なお、その後の調査はみつからなかった。
・『業界団体を設立して自主ルールを策定予定  また、後払い決済サービス事業者はEC事業者(加盟店)の売り上げを立て替え、請求書の発行や代金回収を行うことで、加盟店から2~5%程度の手数料を得ているが、「収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見される」(前出のメガバンク幹部)という。このため大手後払い決済サービス事業者は昨年5月に、「日本後払い決済サービス協会」なる業界団体を設立し、今年早々にも加盟店審査に関する自主ルールを策定する予定だ。 急速に市場規模を拡大する後払い決済サービスだが、割賦販売法の網のかからない新興ビジネスだけに事業者は玉石混交だ。過度に規制を強化すれば伸び盛りの市場に水を差す。しかし、消費者トラブルが大きく社会問題化したのでは後の祭りとなるジレンマを抱えている』、「日本後払い決済サービス協会」の正会員は僅か8社に留まっている。

次に、昨年3月11日付けダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298716
・『先日、スマートフォンに知らない番号からSMSが届きました。「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください」。しかし認証コードを届くようなことはしていないし、ログイン画面のURLも書かれていないのです。いったいどうしろと……?』、怪しげだ。
・『見知らぬ名前のサービスからSMSで認証コードが届いた  先日、スマートフォンに見慣れない電話番号からSMS(テキストメッセージ)が届いた。文面は「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください。」というものだ(xxxxは4桁の数字)。 二段階認証の確認のような文面だが、そもそもこの【Paidy】というサービスを使ったことがない。ログイン画面に入力というが、入力するURLもない。 何だろうと思って調べたところ、Paidy(ペイディ)とは「メールアドレスと携帯電話番号だけでお買い物ができる」という触れ込みのキャッシュレス決済サービスだった。AmazonやQoo10など複数のECサイトで使うことができ、使った分は翌月にまとめてコンビニ払いなどで支払う。iPhoneを分割手数料0%で購入できるというプランもあるという。どうやら、クレジットカードを持っていなくても、クレジットカード的な使い勝手を手軽に実現するというコンセプトのサービスのようだ。 Paidyの利用方法  似た名前で「ペイジー」という決済サービスもあるので一瞬それかと思ったのだが、まったくの別物。決済系のサービスは「ペイなんとか」という名前が多いので、探せば他にも似た名前のサービスがありそうな気がする。実に紛らわしい……』、「Paidy」は、ソーシャルレンディングサービス「AQUSH」を主な事業としていた。2014年7月にオンライン決済サービス「ペイディ」を開始してからは事業の軸足を「ペイディ」に移し、2021年9月にPayPalホールディングスが27億USドル(約3000億円)で買収、その子会社となった。ホームページには、私が探した限りでは不正勧誘についての記載はない。
・『SMSの文面はさまざまなパターンがある PaidyをかたるSMS  「誰かが何かをオンラインで買おうとして、間違えて私の電話番号を入力したのだろうか」とも思ったが、それなら認証番号が届かないから気が付いてやりなおすはずだ。念のためと思ってTwitterで検索してみると、「Paidyを使っていないのにSMSで認証コードが届いた」と気味悪がっている人がたくさんいた。怪しい。 私が受け取ったSMSはやはり不審なものだったようだ。調べてみると、文面は私が受け取ったもののほかにも数種類あり、 Paidy 決済認証番号: xxxx を Paidy(ペイディー)の画面に入力すると、こちらの電話番号で決済手続きがおこなわれます。 ・【Paidy】ペイディのお支払い方法に問題があります、更新してください https://~ ・【Paidy】お使いのアカウントを一時的に停止しました, ご確認が必要ですhttps://~  といった、特定のURLに誘導するものもある。 SMSではなく、メールが届いている人も多数いるようだ。こちらはSMSと同様の文面のものに加えて、 ・「Paidyご利用確認のお願い」と称して、カード利用の一時制限を行いカードの利用確認をさせる ・「利用制限解除の手続き」と称してアカウントの再設定を行うことを誘導する など、さらにバリエーションが豊か(?)だった。 Paidyも認識はしているようで、公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている。 対処法としては、原則「無視」。気持ち悪いが、せいぜい届いたSMSやメールを削除する、送信元の電話番号をブロックするくらいしかできない。間違っても、SMSやメールに書かれたリンクに飛び、誘導された通りに個人情報を入力したり、支払いをしたりといったことがないようにしてほしい』、「公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている」とあるが、私が探した限りでは前述の通り、見つからなかった。
・『典型的なフィッシング詐欺  PaidyをかたるSMSやメールは、2021年12月ごろに急増したがいったん減少、そして今年に入ってまた増えている。フィッシング対策協議会が21年12月27日に「緊急情報」を出していた。 https://www.antiphishing.jp/news/alert/paidy_20211227.html 手口を見ると典型的なフィッシング詐欺で、SMSやメールに書かれているURLは偽物。Paidyのログイン画面を装った偽のWebサイトに誘導し、メールアドレスや携帯電話番号を入力させて個人情報を抜くのが目的のようだ。 実行者は日本人ではないのか、メールの文面で「カード」が「カド」になっていたり、送信元が「ペンディ」「パイディ」などとなっていたりと、ずさんなメールも多くある。URLが【http://paily~】や【http://paidyi~】となっているなど、よく見ると見破れるものもある。 基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする』、「基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする」、その通りだろう。
・『手軽さがウリのサービスには危険もある  「メールアドレスと携帯電話番号だけで買い物ができる」という手軽さがウリのサービスだが、手軽さはまた、抜け穴の多さにもつながりやすい。実際、19~20年には、メルカリに架空出品した上でPaidyを悪用し、売上金を詐取するという事件が起きている。 私はつい最近まで知らなかったが、Paidyをかたる迷惑メールや迷惑SMSは相当な数が飛び交っているようだ。今回の記事を書くにあたって、直接Paidyの人に話を聞こうと思ったのだが、問い合わせフォームに記入して送信するとエラーになり、本社に電話をして担当者のPHSに電話をするも応答しないか留守番電話で、コールバックはなかった。フィッシング詐欺の実害は起きていないのか、またPaidyとしてFAQで注意喚起する以外に何らかの対応をしているのか聞きたかったのだが、残念だ』、「手軽さがウリのサービスには危険もある」、その通りだ。同社の問い合わせ対応は、ホームページを見る限り良くなさそうだ。

第三に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り、解禁されても誰も知らない残念な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321027
・『4月1日、給与の「デジタル払い」が解禁された。が、その認知度は、国民の間で高まっていない。金融庁によると、3月15日時点で「PayPay」(ソフトバンク系)、「楽天ペイ」(楽天系)、「d払い」(NTT系)など84業者が登録されている。わが国の一般庶民や企業は、世界的に進むデジタル化に対する関心が低いといえるかもしれない』、興味深そうだ。
・『給与の「デジタル払い」解禁の認知度が低い  2023年4月1日、給与の「デジタル払い」が解禁された。デジタル払いとは、給与をスマホの決済アプリや、電子マネーの口座に支払う仕組みをいう。 これまで厚生労働省は、1975年に銀行口座への給与振り込みを、そして98年には証券総合口座への振り込みを解禁した。今回、社会のデジタル化に対応するため、「資金移動業者」の口座が給与支払いの対象に含められた。 世界の主要な中央銀行は、法定通貨のデジタル化に関する実証実験などを進めている。その中、デジタル払い解禁は人々の生活の利便性、経済運営の効率性向上に寄与することが期待できる。 ただ、デジタル払い解禁の認知度が、国民の間で高まっていない。デジタル払いのアンケート調査の結果を見ると、デジタル払いに関する理解はあまり高くないことが分かる。素直に考えるとかなり便利になるはずなのだが、給料を受け取る側も、払う側の企業もあまり関心がないように見える。 わが国の一般庶民や企業は、世界的に進むデジタル化に対する関心が低いといえるかもしれない。それは、世界的なデジタル化の波に乗り遅れることにもなりかねない。そうした状況が続くと、わが国の「デジタル後進国」ぶりは一段と鮮明になる。それは、世界経済における存在感の低下につながることも考えられる』、日本では「給料」の「銀行振込」が既に普及していることが、「関心」の低さにつながっているのではなかろうか。
・『デジタル給与支払いに84事業者が登録  リーマンショック後、わが国でもデジタル化の加速を背景に、非金融分野の企業による銀行分野への新規参入が増えた。一例が、資金移動業を行う企業の増加だ。デジタル払いはこの仕組みを利用し、企業が就業者に銀行を介さずに給料を支払う。資金移動業とは、銀行以外の事業者が行う送金サービスをいう。 事業者は送金の上限金額(5万円以下、100万円以下、100万円超)によって3つに分類される。100万円以下であれば監督当局への登録を経て事業を開始する。登録とは、行政機関に申請を行い事業者として名簿に記載されることで、正式にビジネスを開始できる制度を指す。金融庁によると、2023年3月15日時点で「PayPay」(ソフトバンク系)、「楽天ペイ」(楽天系)、「d払い」(NTT系)など84業者が登録されている。 資金移動サービスの利用者は、銀行口座とひも付けたスマホのアプリに入金し、買い物や送金に使う。デジタル払いでは、この仕組みを利用し、銀行口座を介する手間を省いて企業(雇用者)から就業者へ、給与は支払われる。 デジタル払いは、資金決済システムがネット空間に取り込まれた結果として、口座振替決済などの銀行ビジネスが他の業界に染み出していることを象徴する変化の一つだ。そのメリットを生かすため、20年夏以降、厚生労働省は賃金支払いの新しい選択肢として資金移動業者の口座活用を目指し、法令の改正に取り組んだ。 なお、デジタル払いの利用に当たって、雇用主は就業者の個別の同意を得る必要がある。不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない。振込金額が100万円を超える場合には、あらかじめ就業者が指定した銀行口座などに自動的に出金される。ATMなどによって1円単位での現金化も可能だ(最低月1回は就業者の手数料負担なし)』、「不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない」、当然のことだ。
・『解禁の背景はある地方企業の提言  デジタル払い解禁のきっかけの一つが、福岡県に拠点を置くフィンテック企業、ドレミングホールディングの提言だった。18年6月14日に開催された国家戦略特区諮問会議で、同社の高崎義一CEOがデジタル支払いを進めるための規制緩和を求めた。高崎氏は、外国人の受け入れ強化のために、銀行口座開設の困難さを解消し、リアルタイムでのデジタル給与支払いを可能にする必要性が高まっていると主張した。 それに加えて、同社にはデジタル払いの活用によって、新興国の需要をより多く獲得できるとの思惑もあっただろう。例えば、アフリカ大陸などの途上国では、無線通信基地局の設置によって携帯電話の利用者数が増えている。これまで銀行口座を持たなかったが、スマホアプリなどで口座を開設し働いた分の給料を受け取る人は増えている(生活に必要な金融サービスにアクセスする人が増えることを「金融包摂」と呼ぶ)。 アプリを通して銀行、ネット通販、さらには医療などのサービスを利用することも可能になった。こうして、加速度的に経済活動はデジタル化している。それは社会の厚生、人々の「ウェルビーイング」を高める。既存の銀行システムが未整備な分、新興国における給与デジタル払いなどのスピードはわが国より早い。 ドレミングの提言をきっかけに、政府はデジタル払いの実現に取り組んだ。企業は銀行口座振込手数料を削減し、就業者もATMなどからお金を引き出す手間が省かれると期待された。世界的に主要中央銀行による、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)の利用を目指す動きも強まった。 加えてコロナ禍の発生は、民間、政府、両分野でのデジタル化を加速させた。効率性を高め成長を目指そうとする民間企業の考えに触発されるようにして、わが国はデジタル払いの準備を進めたといえる。 一方、銀行ではない資金移動業者に関しては、破綻時に預かっていた財産の価値をどう保全するかなどの懸念がある。ITセキュリティーの強化も欠かせない。利用者の保護体制の整備など、より安心したデジタル払いの実現に向け、解禁は当初予定されていた21年度ではなく、23年度にずれ込んだ』、なるほど。
・『日本のデジタル化の遅れは経済的地位を揺るがす  デジタル払い解禁は、わが国が世界的なデジタル化に対応するために欠かせない要素の一つと考えられる。一時、政府の内部では、デジタル払いの解禁を足掛かりにしてフィンテック企業の成長を加速し、海外の需要取り込みにつなげる考えもあったようだ。それは、規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ。 ただ、現在のわが国では、デジタル払いの意義が社会全体で共有されているとは言いづらい。変化が起きていることは重要だが、そのペースはかなり緩慢といってもよいだろう。 デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない。その状況が深刻化すると、わが国が現在の経済的な地位を維持することも難しくなるだろう。そうした点を踏まえても、デジタル払いの普及ペースは注目に値する』、「規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ」、「デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない」、「わが国の「デジタル・ディバイド」ぶり」については、筆者の「危機感」が上滑りしているきらいがある。「アンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない」、のは「制度やルールを改変することの難しさ」のためであって、無理やりに旗を振るべきものでもないのではなかろうか。
タグ:決済 (その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由) 「国民生活センター」が2020年1月23日:に公表した「(特別調査)消費者トラブルからみる立替払い型の後払い決済サービスをめぐる課題」によれば、2019年度の相談件数は2018年度の同時期と比較すると、約3倍に増加」、なお、その後の調査はみつからなかった。 小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」 日刊ゲンダイ 「日本後払い決済サービス協会」の正会員は僅か8社に留まっている。 ダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」 怪しげだ。 「Paidy」は、ソーシャルレンディングサービス「AQUSH」を主な事業としていた。2014年7月にオンライン決済サービス「ペイディ」を開始してからは事業の軸足を「ペイディ」に移し、2021年9月にPayPalホールディングスが27億USドル(約3000億円)で買収、その子会社となった。ホームページには、私が探した限りでは不正勧誘についての記載はない。 「公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている」とあるが、私が探した限りでは前述の通り、見つからなかった。 「基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする」、その通りだろう。 「手軽さがウリのサービスには危険もある」、その通りだ。同社の問い合わせ対応は、ホームページを見る限り良くなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り、解禁されても誰も知らない残念な理由」 日本では「給料」の「銀行振込」が既に普及していることが、「関心」の低さにつながっているのではなかろうか。 「不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない」、当然のことだ。 「規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ」、「デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。 理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済 におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない」、「わが国の「デジタル・ディバイド」ぶり」については、筆者の「危機感」が上滑りしているきらいがある。「アンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない」、のは「制度やルールを改変することの難しさ」のためであって、無理やりに旗を振るべきものでもないのではなかろうか。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

歴史問題(17)(「日本が勝てるとは思えない…」敗戦前に予想していた「世界一のシンクタンク」の正体、ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの 70年後の告白 満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える、あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き~開拓団「乙女の碑」は訴える【後編】) [社会]

歴史問題については、昨年2月25日に取上げた。今日は、(17)(「日本が勝てるとは思えない…」敗戦前に予想していた「世界一のシンクタンク」の正体、ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの 70年後の告白 満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える、あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き~開拓団「乙女の碑」は訴える【後編】)である。

先ずは、本年4月1日付け現代ビジネス「「日本が勝てるとは思えない…」敗戦前に予想していた「世界一のシンクタンク」の正体」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106857?imp=0
・『昭和初期の満州を舞台に、アヘンの密売を描いたクライムサスペンス『満州アヘンスクワッド』(原作/門馬司、漫画/鹿子)。1931年9月18日の満州事変を契機に現在の中国東北部に成立した満州国は、アヘンで栄えアヘンとともに滅びたと言えるだろう。 そんな約100年前の東アジアでは、いったい何が起こっていたのか……? 『昔々アヘンでできたクレイジィな国がありました』より、当時の満州で活躍した満鉄調査部について紹介しよう』、興味深そうだ。
・『世界一と謳われたシンクタンク  TTCSP(Think Tanks and Civil Societies Program)という毎年発表されている世界のシンクタンクのランキングで、日本のシンクタンク、日本国際問題研究所(注)は、世界のトップシンクタンクのひとつに選出されています(2020年)。実は戦前から、世界一優秀と言っても過言ではないシンクタンクを、日本は持っていたのです。満鉄の付属機関だった満鉄調査部です。 満鉄調査部は満鉄の設立の翌年、1907年の発足。初期のスタッフは100人前後で、経済調査と旧慣調査、ロシア調査の3班構成。これとは別に監査班と統計班がありました。 当初の調査内容は、歴史や地理など学術的色彩が濃厚でしたが、ロシア革命とソ連の成立により状況が一変します。満鉄調査部はソ連に関する情報収集の最前線と化したのです。 躍進する組織にはおのずと人材が集まるもので、満鉄の幹部が「使える人間に右も左もあるものか」という姿勢でいたこともあって、本土では生計の道を閉ざされた左翼活動家が続々と日本海を渡ってきました。 人材も豊富なら資金も潤沢。大連の本社に加え、奉天、哈爾濱、天津、上海、南京、ニューヨーク、パリに事務所・出張所を構え、社命が下されればどの国、どの地域にも飛んで、情報収集に務める。明らかなスパイ行為や調略工作を働くこともありました』、「ロシア革命とソ連の成立により状況が一変します。満鉄調査部はソ連に関する情報収集の最前線と化した」、「満鉄の幹部が「使える人間に右も左もあるものか」という姿勢でいたこともあって、本土では生計の道を閉ざされた左翼活動家が続々と日本海を渡ってきました。 人材も豊富なら資金も潤沢。大連の本社に加え、奉天、哈爾濱、天津、上海、南京、ニューヨーク、パリに事務所・出張所を構え、社命が下されればどの国、どの地域にも飛んで、情報収集に務める。明らかなスパイ行為や調略工作を働くこともありました」、「本土では生計の道を閉ざされた左翼活動家が続々と日本海を渡ってきました」、珍しいことだ。
(注)日本国際問題研究所:吉田茂が外務省中心に設立(研究所ホームページ)。
・『敗戦を予期していた  調査結果は必ずレポートにまとめられ、その数は40年間で6200件にも及びます。毎月発刊された『満鉄調査月報』にも目を見張る論文が少なくありませんが、なかでも最高傑作とされるのが、1939年から1年がかりでまとめあげられた「支那抗戦力調査報告」です。 調査の対象を中国大陸の内陸部にまで延ばし、欧米諸国の思惑なども考慮に入れてまとめられたレポートは、400字詰め原稿用紙で2400枚余りにも及びます。 日本は日中戦争で負けることはないにしても、圧倒的な勝利を収めることもできない、米英ソの支援を受けた中国側の抗戦力は侮りがたく、軍事力だけに頼っていたのでは解決できないという内容で、現状分析、将来予測ともに卓越した出来でしたが、関東軍首脳の顔ぶれがすっかり入れ替えられ、蛮勇をよしとする空気が支配的な状況では有効活用されることはありませんでした。 唯一の例外と言えるエピソードが残っています。連合艦隊が上海に寄港した折、現地状況確認のため、満鉄調査部にお呼びがかかったことがありました。求められるまま、調査部員の具島兼三郎が「支那抗戦力調査報告」について述べ、質疑応答に移ったところ、しばしの沈黙ののち、ひとり挙手をして意見を述べる者がいました。 「自分は具島さんの意見に賛成だ。アメリカとの戦いなどとは、アメリカの実力を知らないから言えるのだ。彼らの生産力は底知れぬものがあり、海軍の将兵の動作もキビキビしている。自分は軍人だから陛下の命とあらばアメリカと戦うが、しかし、せいぜい暴れてみせても半年だろうね」 満鉄調査部渾身の力作に全面的同意を示したこの海軍軍人は、具島の目には「百姓のおやじに軍服を着せたような」士官だったといいます。気になった具島は散会後、別の士官に聞いてみたところ、そこで初めて、その人物が連合艦隊司令長官・山本五十六その人であることを知ったのでした。 そんな満鉄調査部がもっとも活躍したのが、ソ連に関する情報収集だった。後編記事『1年で32万人を銃殺し20万人を監獄送りに…スターリン「大粛清」の恐ろしすぎる実態』では、銃殺・収容所送りが横行していた当時のソ連について紹介する』、「支那抗戦力調査報告」では、「日本は日中戦争で負けることはないにしても、圧倒的な勝利を収めることもできない、米英ソの支援を受けた中国側の抗戦力は侮りがたく、軍事力だけに頼っていたのでは解決できないという内容」、極めて的確な分析だ。「山本五十六」の発言も的確だ。こうした分析を無視した軍部や政府の傲慢さには返す返すも腹が立つ。

次に、やや古いが、2017年8月23日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の平井 美帆氏による「ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの、70年後の告白 満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/52608?imp=0
:敗戦とともに崩壊した「満州国」では、地獄絵図としか表現しようのないほど、飢えと暴力、そして絶望が蔓延した。孤立無援の満洲開拓団は次々と、集団自決に追い込まれていった。 そのとき、ある開拓団の男たちは、ひとつの決断を下した。現地の暴民による襲撃、ソ連兵による強姦や略奪から集団を守り、食料を分け与えてもらう代わりに、ソ連軍将校らに結婚前の乙女たちを「性接待役」として差し出したのだ。 犠牲となった「彼女たち」は、日本への引き揚げ後もこの忌まわしい記憶をずっと胸の内にとどめていたが、70年が経ち、その重い口を開いた――。ノンフィクション作家・平井美帆氏の特別寄稿』、興味深そうだ。
・『託された詩  忘れられない詩がある。後半のカタストロフィーと対比を成すかのように、詩は明るい朗らかな一節からはじまる。 ≪十六才の 春の日に  乙女の夢を 乗せた汽車  胸弾ませて 行く大地  陶頼昭に 花と咲く≫  「乙女の碑」と題された詩を書いたのは、黒川開拓団の一員だった文江さん(仮名、2016年1月没、享年92)である。1942年3月、文江さんは両親、妹、弟ふたりの一家6人で、夢と希望を胸に新天地・満州へと向かった。日本が戦争に負けるとは露ほども疑わずに……。 それからおよそ半世紀経ってから、彼女は「乙女の碑」を書き残すことになる。心の奥底に封印されていた記憶は時空を超えて、あの日あの場所へ飛んだにちがいない。再び苦悩を味わいながらも、書き遺さなければならなかった魂の執念が伝わってくる。 「これがすべてなの。話すより、これ読んでもらったほうがようわかるけども。自決を止めるために…って書いてるけど、もう泣けて、泣けてさ」 2016年5月6日、文江さんの親友、スミさん(仮名、当時88歳、以下年齢は取材時のもの)はそう言って、まだインタビューも始まっていないのにこの詩を私に見せてきた。 両面印刷のワープロ用紙2枚。全体がよれた紙には裏表に、計4ページ分の「詩」が縦書きで打ち出され、あとから手書きされた箇所が数カ所ある。題名のななめ左下、赤色のインクで書かれた文言が目を引く。 遺族会以外の人に見せてはいけない その横には黒インクの手書きで「平成二年 六十五才」とある。時代が平成に移ってもなお、そのことは深いタブーだった。 「それ、持っていってもらっていいよ」 遠慮がちな目を向ける私に、「いいよ、私。要らんもの」とスミさんは用紙をぐいと差しだした。約4カ月前にこの世を去った親友の遺書ともいえる詩を――。先ほどまでの穏やかな口調と異なり、声に硬さがにじみ出ていた。 長きにわたって、山麓に封じ込められていた書を手にして、私はスミさんの家をあとにした。弱い雨脚のなか、円を描くように山をくだると、川幅の広い水流が見えてくる。山間の道はどこを走っても、瑞々しい渓谷の景色に縁どられていた。 ここへたどり着いたのはひょんなことからだった。2015年秋、中国残留孤児の軌跡をまとめた本を上梓した私は、それからも継続して満州にかかわった人々を追い続けてきた。とりわけ女たちの満州体験に目を向けていたところ、「黒川開拓団」のことを知る人から話が伝わってきたのだ。 その夜、飛騨川沿いのひなびた旅館で考えた。どうして彼女はほぼ見ず知らずの自分に、亡き親友の詩をくれたのか。スミさんは友の思いを私に託したのだ。私はそう受けとめた。 文江さんの遺した詩は訴える。 ≪乙女の命と 引き替えに  団の自決を 止める為  若き娘の 人柱  捧げて守る 開拓団≫』、「遺族会以外の人に見せてはいけない その横には黒インクの手書きで「平成二年 六十五才」とある。時代が平成に移ってもなお、そのことは深いタブーだった」、よほどのことだ。
・『ソ連の侵攻、集団自決  今からさかのぼること80年余り、日本は中国の東北地帯に「満州国」の建国を宣言。大和民族を頂点とする五族協和をめざすとして、日本人を計画的に満州へ移住させた。「拓け満蒙! 行け満洲へ!」――。旧拓務省はしきりに、人々の愛国心や開拓精神に訴えながら、移民事業を推し進めていった。 だが、すでに戦況で不利な状況にあった国には、ソ連との国境付近に日本人を配置して、軍事的に備えておきたい目論見があった。また、満州移民計画の背景には、過剰人口、耕地の不足によって疲弊する国内の農村問題が横たわっていた。国や県は補助金を出して、農村部の自治体に村を分けて満州に移住させる分村・分郷運動を働きかけた。 村の面積の約9割を山林が占める岐阜県東部の黒川村(当時)。村の指導者らは、食料不足に悩む村の行く末を憂い、国策に従って満州への分村移民を決めた。 1941年4月、黒川開拓団は29名の先遣隊を満州に派遣した。そして、翌年4月から毎年、3回にわたって計129世帯、600人余りが海を渡った。入植地は、新京(現・長春)とハルビンの中間地点にあたる吉林省・陶頼昭(とうらいしょう)の鉄道駅から西一帯だった。開拓民らは複数の部落に分かれ、豆、高粱(コーリャン)、芋などを作付けして農作業に励んだ。 しかし、「満州国」はもろくも崩れ去る。1945年8月9日ソ連の満洲侵攻、6日後の日本の無条件降伏――。約27万人の開拓移民らは、突如、異国となった荒野に取り残された。 もともと、開拓民らが移り住んだ家や土地は、日本人を入植させるために、満拓(満州拓殖公社)が現地民から安く買い叩いたものだった。日本が戦争に負けると、現地民の一部は衣服や物品を狙って、日本人部落を襲ってまわった。  黒川開拓団は襲撃から身を守るために、それぞれの部落から、本部近くの二カ所に集結した。 そこへ、さらに人々を心理的に追いつめる一報がもたらされた。30キロ以上離れた隣の来民(くたみ)開拓団(熊本県)270人余りの、集団自決である。団の最期を知らせる役割をになった唯一の生存者・宮本貞喜さんが、命からがら黒川開拓団までたどり着いたのだった。 内地へ帰れるあてもなく、食料も尽きていくなか、暴民の襲撃に怯える集団避難生活がはじまった。さらに満洲侵攻後、陶頼昭駅付近に駐屯していたソ連兵らが、団の集団生活場所に毎夜のように「女狩り」にやってきては、若い女とみれば見境なく強姦をくり返した。 敗戦から数週間経った頃、幹部男性らはある交渉へとたどり着く。 大きな鉄道駅に近い黒川開拓団には、日本人がいることを聞きつけて、遠方から元軍属の日本人が入ってきて、さまざまな情報をもたらしていった。衛生兵、医者、通訳者――。 そこで数名の団幹部らは、ロシア語の話せる「辻」という男の手を借りて、ソ連軍将校側から救援を取りつけた。日本に帰れるまで、現地民の暴徒や下っ端のソ連兵から団を守ったり、食料を分け与えたりしてもらう約束である。そして、団幹部らが引き換えにしたのは……生身の人間だった。 まだ結婚しておらず、数え年の18歳以上。黒川開拓団のなかから「性接待役」として、ソ連軍側に差し出されることになった条件を満たす女性を探してみると、生存者らの証言どおり、12人から15人の少女が該当した。すでに亡くなった人が大半だが、3人の生存者が見つかった。 そのうちのひとりが、文江さんの遺した詩を手渡してくれたスミさんである。3カ月ほど前に大動脈解離に見舞われたという彼女は、「こんな歳になったら病気で死ぬのに、私は助かっちゃって。満州でも生き残ったから強い」とさらりと言った。 病院で2週間ほど意識不明だったとき、満州のことを口にしていたと息子から聞かされたそうだ。 脳裏に奥深く刻まれた記憶を、スミさんは気負わずに話してくれた。 団幹部から娘たちの「性接待」が命じられたとき、満州へ渡った黒川村の人々は衝撃に揺れた。 「○○さん(開拓団にいた男性)は『そんなつもりで娘を育てたわけじゃない』って泣いて、すごく怒られたけど……。出さざるをえなんだ。お母さんは行かされない、娘さんばっかり」 その日ソ連兵のところに行く女性はどうやって選んだのだろう。 「そりゃあ、具合の悪い人もあるし、もうとにかくめちゃくちゃよ。行ける人は行ってくれってね。義夫さん(仮名)、私のところにくるんよ。『頼む! 明日団に塩がない。塩がのうなってしまった。塩がなけりゃ、コーリャンご飯も食えへんで。その塩、もらわんなんで、頼む、行ってくれ』って。『私、昨日かおとつい行ったばかりだから、行かへんよ!』って」』、「すでに戦況で不利な状況にあった国には、ソ連との国境付近に日本人を配置して、軍事的に備えておきたい目論見があった。また、満州移民計画の背景には、過剰人口、耕地の不足によって疲弊する国内の農村問題が横たわっていた。国や県は補助金を出して、農村部の自治体に村を分けて満州に移住させる分村・分郷運動を働きかけた」、「ソ連との国境付近に日本人を配置して、軍事的に備えておきたい目論見」、無責任な人身御供を政府が推進したとは酷い話だ。「ソ連軍将校側から救援を取りつけた。日本に帰れるまで、現地民の暴徒や下っ端のソ連兵から団を守ったり、食料を分け与えたりしてもらう約束である。そして、団幹部らが引き換えにしたのは……生身の人間だった。 まだ結婚しておらず、数え年の18歳以上。黒川開拓団のなかから「性接待役」として、ソ連軍側に差し出されることになった条件を満たす女性を探してみると、生存者らの証言どおり、12人から15人の少女が該当した」、生き残るためとはいえ、「性接待役」を「開拓団」として差し出したとは悲劇だ。
・『ベニヤ板づくりの部屋で  娘らを前にしたソ連兵の将校らは喜んで、ハラショーッと声を上げた。スミさんは自死を試みたこともある。 「あのとき、私は死のうと思って、銃持って外に出たの。重たかったよ。二発、(試し撃ちで)空に向かって撃った。団の人らが裸足で飛んできて、私の指を掴んでとめたの。あくる日、(団幹部らは)こわかったよー」 このような人身取引は9月頃から数カ月間は続けられ、未婚の女性らは数名ずつ交代で、ソ連兵のもとへ送り出された。連れていかれた先は、陶頼昭の鉄道駅付近にあるソ連軍の駐屯地。また本部内の一角にも「接待所」が設けられていた。 そこは「接待」などとはほど遠い、強姦、重姦の場だった。どれほど残酷だったかは、「乙女の碑」の紙に赤でペン書きされた文江さんの文章から浮かび上がる……。 ≪ベニヤ板でかこまれた元本部の一部屋は悲しい部屋であった。泣いても叫んでも誰も助けてくれない。お母さん、お母さんの声が聞こえる≫ 交代制の接待は団内部の決まりごとだった。病弱だった一人の少女を除き、例外はいなかった。副団長にも年頃の娘がいたが、皆の手前、性接待に出さざるをえない。それでも、副団長の娘は出される回数が少なかったと、スミさんは言う。 食事などは出ず、「接待」のみの時間。そして戻ってくると、団内部に設けた医務室に連れていかれた。また、接待に出た娘たちだけは特別に風呂にも入れた。 「自分もあと数年生まれるのが遅ければ、(性接待に)出さされていた」 神妙な面持ちでそう語るのは、当時12歳だった元開拓団員のみつさん(仮名)。彼女は風呂焚き係を命じられていた。 幹部の男性、義夫が五右衛門風呂を作り、子どもたちが燃えるものを拾ってきた。自分も含め、何百人もいる他の人たちは風呂など入れない。頭髪にはシラミの卵がびっしりとつき、集団生活は不衛生極まりない状態だった。 みつさんは母親にこう訊いたことを覚えている。 「なんで、あの人らだけ風呂に入れるの?」 すると、みつさんの母は「あの人らは自決から守ってくれた人たちだよ」「ロシア人のところに接待に行かれたんだよ」と答えた。何かあったんだな……。みつさんは子どもながらに何かを察したという』、「ベニヤ板でかこまれた元本部の一部屋は悲しい部屋であった。泣いても叫んでも誰も助けてくれない。お母さん、お母さんの声が聞こえる」、「戻ってくると、団内部に設けた医務室に連れていかれた。また、接待に出た娘たちだけは特別に風呂にも入れた」、悲惨そのものだ。
・『「独身のあんたらだけ頼む」  豊子さん(91)は、岐阜県内の酪農地で暮らしていた。戦後、満州からの引揚者たちが再入植し、開拓した山麓である。豊子さんは開拓団のリーダーを「先生」と呼び、集団避難生活が始まってから数週間ほど経った頃をふり返った。 「副団長の先生がな、広場の真ん中に皆を集めて言われましてね。奥さんには頼めんけどな、あんたら独り者はどうかな、身体を張ってな、犠牲になってくれやって。旦那が兵隊にいってる奥さんに利用するのは申し訳ないで、独身のあんたらだけ頼むって」 そんな要求を突きつけられたとき、豊子さんはどう思ったのか。 「そりゃあ、嫌でしたし、もうこれで私の人生も終わりと思いましたけれど、日本へ帰りたい。どんな辛抱しても病気になっても苦しい思いをしても、日本へ帰りたい。その一念でした」 一方で、豊子さんは「団のためなら死んでもいいんだって思いました」「団のために仕方がない」とも語った。黒川開拓団に対しては恨む気持ちはないと言い切り、「あんな立派な開拓団はありません。よう、(自分のことを)仲間にして、連れて帰ってきてくれた」と評する。 満州の開拓女塾「興亜凌霜女塾(こうありょうそうじょじゅく)」の卒業生である彼女は、当時叩きこまれた自己犠牲の精神を今でものぞかせた。開拓女塾とは、未婚女性たちに開拓生活に必要な知識や理念を教える訓練校で、卒業生らは「大陸の花嫁」として各開拓地に送りだされた。 彼女の表情に生々しい感情が見えたのは、どのように接待に行かされたかと訊ねたときだ。 「義夫さん、こわかった」 それまで凛としていた豊子さんは顔をゆがめた。 接待係の男性は3、4人いて、「あんたら、今日は出てくれないか?」と娘たちに頼んで回った。豊子さんが名前を出した男性については、スミさんも「『義夫さん、嫌い』ってみんなが嫌がっとったから。みんな怯えとったよ」と語り、集団内の命令系統が浮かびあがる。 豊子さんによると、駅のほうへ馬車で連れていかれ、遅くとも翌朝には団へ返されたという。風呂や消毒の甲斐もむなしく、犯された少女らは次々と性病に感染していった。さらには発疹チフスも大流行し、開拓団では毎日のように人がばたばたと死んでいった。 「皆、性病を貰ったんです。性病と発疹チフスが一緒になっちゃったから。12人のうち、7人くらいは亡くなったんです。『(日本に)帰りたい。帰りたい』って言いながら、向こうで死んでいった」 豊子さんも発疹チフスに感染したが、九死に一生を得た。そのうち団では遺体を巻く菰(こも)も底をつき、旧本部の裏に野ざらしとなっていった。 敗戦の翌年、1946年5月。ようやく日本への引揚船がコロ島(遼寧省)から出港を開始した。同年8月以降、黒川開拓団は複数回にわたって引揚げを果たしたが、600人以上いた団員のうち、200人余りが満州や引揚げ途中で命を落とした』、「風呂や消毒の甲斐もむなしく、犯された少女らは次々と性病に感染していった。さらには発疹チフスも大流行し、開拓団では毎日のように人がばたばたと死んでいった。 「皆、性病を貰ったんです。性病と発疹チフスが一緒になっちゃったから。12人のうち、7人くらいは亡くなったんです」、「12人のうち、7人くらいは亡くなった」、当時はコンドームもなかったので、性病は避け難かったようだ。
・『引き揚げ後も続く苦しみ  懐かしいふるさとに戻ると、娘たちが性接待に出された話はタブーとなった。 「もう、みんなが表に出さんかったからね。あの当時はとっても、こんなことは話せんて」 しみじみとそう語るスミさんは、満蒙開拓青少年義勇軍(青少年を開拓事業に参加させる制度)の隊員だった男性と結婚した。結婚前に接待のことを伝えると「そりゃ、辛かったやろう」と言葉をかけてくれたという。だが、妻が元開拓団員らの集まりに参加するのは嫌がった。 スミさんには、わが娘にも打ち明けられないと思った出来事がある。10数年前、長女と居間でテレビを見ていたときだ。韓国の慰安婦問題のニュースが流れると、娘はとがめるような口調で言った。「慰安婦、慰安婦って自分から言うとったら、子どもや孫に迷惑がかかる。自分からよう言うわね」と――。 「あーだから、私は言うたらあかんって思って」 スミさんは押し殺すように声を潜めた。 「言いたいことはもう、皆で言うちゃっとるで。集まったときに」 胸の奥の苦しみは、同じ目に遭った女たちと集まったときにだけ、思う存分吐き出すことができた。帰国後、親分肌だった文江さんが仲間を誘い、「乙女会」と名づけて、外に連れ出してくれたのだ。 遺族会の集まりで、あの話を持ちだす者はいなかった。ところが少人数になると、彼女たちをからかってくる父親世代の男もいた。それはこともあろうに、性接待に行かせていた側の団幹部、義夫からのものもあった。 豊子さんも、元義勇軍の男性と結婚した。「嫁入り」前には、日本に帰ってきてからは梅毒が出てないことを医者に一筆書いてもらい、夫側に見せたのだという』、「少人数になると、彼女たちをからかってくる父親世代の男もいた。それはこともあろうに、性接待に行かせていた側の団幹部、義夫からのものもあった」、感謝するのでなく、「からかってくる」とは信じ難い。
・『ベルトを外す金属音がトラウマに  当時数え年で18歳。最年少で性接待に出さされた照子さん(仮名、88)は、東京郊外の街に暮らしていた。同居家族に聞かれると困るからと外で待ち合わせたが、喫茶店にも入ろうとしない。以降、照子さんとは交流を続けているが、いつも人目のつかない場所を彼女は選んだ。 照子さんは戦後、黒川開拓団の遺族会とは距離を置き、集まりに一度も顔を出したことはない。ただ、同じ開拓女塾で学んだ豊子さんとだけは、たまに手紙のやりとりをしていたそうだ。 彼女は豊子さんとは異なる思いを、黒川開拓団に対して抱いていた。 「開拓団にいい思い出、ひとつもありません。集団生活に入るでしょ。これが日本人か!って思った。言うことを聞く者はいいけど、よそ者扱いは見え見えでやるしね」 照子たち一家は、継母のつながりから開拓団に加わった。だが、満州にわたってから父母は離婚。叔父も開拓団にいたが、団幹部の男性らとは折り合いはよくなかった。 照子は辛い記憶をいくつも吐き出した。ソ連兵や中国人に殴られたとき、大人は誰も助けてくれなかったこと、同胞の裏切りによって中国人に売られて連れていかれそうになったこと――。 壮絶な満州体験を持つ彼女だが、これまでは過去をふり返る余裕などなく、生きるためにがむしゃらに働いてきた。 「私らなんて恥かしゅうて、ずっと口に出さんかったよ。だけど復興も見たし、あれからおいしいものも食べさせてもらったからよかった。それから、私、少し書き残す必要があるなって思って」 70代になってから少しずつ綴るようになったノートには、短歌風に思いが綴られていた。 ≪守り忘れたか 関東軍。婦女子残して 又今日も南下する≫  ≪日本に帰りたいと静かに眠る友の顔 一夜明ければ動かぬ人に≫  満州に進駐していたソ連兵らは黒川開拓団の避難場所へやってくると、少女らを見つけては引っ張り出していった。 「ソ連兵が来たーって聞いただけで、心臓がね、動いているか動いていないのか、わからなんようになっちゃう。ここら辺が冷とうなってきちゃうの」 照子さんは胸に手を置いた。ソ連兵は抵抗する未婚の娘たちを銃で殴り、何度失神しても連れ去ろうとした。 そうこうしているうちに、今度は上の者たちの間で「性接待」の話がまとまった。 ≪自決のがれて一息つく間もなし 接待に切りかえられる≫  極限状態とはいえ、どうしてそんなことを思いついたのか。思わずそうこぼした私に、照子さんは被せるように言った。 「楽よ、そうすれば楽じゃない。出しとけば、自分たちがわいわい騒ぐことない。出さないと『女出せ! 女出せ!』ってつつかれるから。大変じゃない。探しにいくの。皆、嫌で逃げてるから、どこに隠れてるかわからないし」 親に力がある人は(ソ連兵のところへ)行かされる回数が少なかったと、照子さんも語った。おばあさんたちの話からは幾重にも折り重なった差別構造が透けて見えてくる。「接待所」には仕切りもなかった。娘がずらりと並び、友人が犯されているのも見える。 「だから、隣にいる人とね、『お互いにがんばろう』って言って、こうやって手を握ってね」 強姦するときも、ソ連兵は銃の向きを変えただけで肌身外さない。恐怖で身体が硬直し、頭は真っ白である。やがて、ガチャッ、ガチャッと音がする……。兵士が太いベルトを外すときの金属音だ。帰国後もあの音が耳から離れず、フラッシュバックに苦しんだ。 「男はああいう目をさせておいてねえ、それで助かっておいてね。帰ってきたら、『いいじゃないか、減るものじゃないし』って、とんでもない話だよ」 団幹部だった男性から発せられた、性暴力を軽んじる言葉。そうした心ない言葉は再び女性たちを深く傷つけていた。 ≪傷つき帰る 小鳥たち  羽根を休める 場所もなく  冷たき眼 身に受けて  夜空に祈る 』、「「男はああいう目をさせておいてねえ、それで助かっておいてね。帰ってきたら、『いいじゃないか、減るものじゃないし』って、とんでもない話だよ」 団幹部だった男性から発せられた、性暴力を軽んじる言葉。そうした心ない言葉は再び女性たちを深く傷つけていた」、とんでもない話だ。

第三に、この続きを、2017年8月24日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の平井 美帆氏による「あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き~開拓団「乙女の碑」は訴える【後編】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/52609?imp=0
・『ソ連軍侵攻から敗戦へと「満州国」が崩壊した後、暴民の襲撃、ソ連兵の強姦などによって、日本人開拓団は追い詰められていった。そのとき、逃げ場を失った集団を守るために、ソ連軍上層部らの「性接待」役として差し出された乙女たちがいた――。 70年の歳月を経てその重い口を開いた彼女たちの告白を、ノンフィクション作家・平井美帆氏が綴る』、「【後編】」ではどんな事実が出てくるのだろう。
・『口を閉ざす人々  照子さんは八路軍(のちの中国人民解放軍)によって留用され、1953年に日本へ帰ることができた。看護婦として働かされた漢口の陸軍病院では、兵士の誤射によって被弾し、左足に傷跡がうっすらと残る。八路軍の幹部は、「日本人は女を出した」と黒川開拓団の性接待を知っていたという。なぜ、あんなことをしたのか……。八路軍兵士からそう言われたことが照子さんの胸に深く刻まれている。 遺族会は乙女の犠牲をどう受け止めてきたのだろう』、「八路軍」は軍紀が浸透しており紳士的だったようだ。「黒川開拓団の性接待を知っていた」のは当然なのでろう。
・『『ああ、陶頼昭 黒川開拓団の想い出』  戦後から約36年経過した1981年3月に黒川分村遺族会が発行した文集には、性接待に言及した箇所が散在する。 ある男性団員は自分たちが生き残ることができたのは、治安を維持してくれたソ連軍と八路軍のおかげだと書き記し、「しからばこの人達に対し、交渉に当たってくれた団幹部の方たちだけであの安全が得られたであろうか。十余人のうら若き女性の一辺の私利私欲もない、ただただ同胞の安全をねがう赤城の挺身があったからではないだろうか」と続けた。 他の男性もこうだ――「駅に常駐する司令部のソ連兵には豚の料理などで接待し、娘たちも協力してくれ誠に感謝の外ない」。 男性寄稿者たちは少女たちの犠牲を悼みつつも、本人が自発的に身を捧げた解釈をしている。その一方で、女性寄稿者は被害女性を含め、誰一人としてそのことには触れてはいない。 1981年11月、異郷で命を落とした少女らを悼み、「乙女の碑」が建てられた。碑には亡くなった女性たちの名前は刻まれず、事情を知る者たちの胸中だけにおさめられた。 当時の遺族会会長は、町の会報誌に「うら若い乙女たちの尊い、かつ痛ましい青春の犠牲があった」とだけ綴っている。地元に碑が建立されても、何があったのかは触れてはならないことだった。 あれからさらに長い月日が流れ、終戦時に大人だった人々はすでに亡くなった。 女性たちが何度も名をあげた団幹部男性・義夫には、戦後生まれの息子がいる。黒川開拓団の遺族会会長を務めている彼は、「接待」について口外してはならないという方針を採っていた前遺族会会長とは異なり、後世に歴史は残していかなくてはならないと考えている。 「こういうことがあったとは、親父は話したことがなかった。豊子さんなどと話すようになってから、自分の親父が深くかかわっていたと知った」 性接待を決め、娘たちを差しだした男たちは、引揚げ後も、同じ集団内のリーダーであり続けた。文江さんは「乙女の碑」に他言無用の文言をつけ加えたが、いまもむかしも岐阜県内で暮らすおばあさんたちから話を聞いていると、狭い人間関係に縛られてきたことがよくわかる。遺族会会長らをたどると、敗戦当時の団幹部らにつながり、さらにたどれば満州への分村移民を決めた村の男衆らにつながるのだ。 脈々と続いてきた男たちの決めごとのなかで、いかに女性の人権はないがしろにされてきたか。そして、いまなお、まわりの認識は本人たちとはずれがある。慰霊碑に対して、なんらかの思い入れを口にした被害女性などいない。 スミさんは乙女の碑など見たくないと話す。 「乙女の碑なんか、私のほう相談あれへんよ。○○さん(遺族会の男性)が乙女の碑に、口紅つけたって。何それ?」 屈強な兵士らに犯され、性病に感染して苦しみもがきながら死んでいった仲間たち……。あとから尊い存在に祭り上げられること自体、冗談じゃないとなる。「あんたらのおかげで私らは救われたんでさ」と感謝を口にされたときも、返す言葉などなかった。 本人にとってそれは紛れもない性暴力であり、どこにも逃げられない状況のなか、上から強要されたものだ。ところが今でも、当時を知る人は「接待」と言い、私が「レイプ」と呼ぶと拒否感を示した。 亡くなった娘たちはどういう存在なのだろうか。現遺族会会長に訊ねると、少しの間をおいて彼は答えた。黒川開拓団の「守り神」であると……』、「遺族会会長らをたどると、敗戦当時の団幹部らにつながり、さらにたどれば満州への分村移民を決めた村の男衆らにつながるのだ。 脈々と続いてきた男たちの決めごとのなかで、いかに女性の人権はないがしろにされてきたか。そして、いまなお、まわりの認識は本人たちとはずれがある。慰霊碑に対して、なんらかの思い入れを口にした被害女性などいない。 スミさんは乙女の碑など見たくないと話す」、「黒川開拓団の「守り神」」とは言い得て妙だ。
・『姉妹のきずな  文江さんとはあと一歩のところで会えなかったが、彼女の姿と肉声は満蒙開拓平和記念館で数年前に行われた講演会のビデオに残されていた。ありし日の文江さんは満州体験のなかで、「性接待」についても言及している。 彼女の証言によると、ソ連兵らによる「女狩り」を防ぐため、娘たちがソ連軍将校の「おもてなし」をすることになったとき、「それなら死ぬ」と娘たちは言い、まわりの者も大反対したという。だが、副団長が「兵隊さんに行っている家族を守るのも、おまえたちの仕事。団の存続は娘たちの力にかかっている」と力説した。そのとき、文江さんは副団長に同調し、泣いている年下の女の子たちを慰める側にまわったと打ち明ける。 「いまから思うと恥ずかしいんですけど、本当に、自分の命を捨てるか、開拓団の皆さんをお救いするかは、娘たちの肩にかかっていると自分で思ったんですね。それでなんとしででも日本へ帰りたいから、命を救いたいからということで」 スミさんら、ほかの被害女性によると、文江さんは「綾子の分も私が出る」と妹をかばい、妹は接待の任務をしなくて済んだという話だった。 妹の綾子さん(仮名、88)と会えたのは2016年8月のことだ。ハガキを送ったところ、耳の遠い祖母の代わりにと、30代の孫の女性から連絡が入った。 「ハガキをもらって、おばあちゃんは嬉しかった。わざわざ調べてくれてって、すごい喜んでいた」 綾子さんは満州体験をこれまで身内にしか話していなかったが、「亡くなった姉さんのためにも」という思いもあってか、インタビューを快諾してくれた。 旧黒川村のあった地域からいくつかの峠を越えた山間部――。自ら切り開いた土地のうえに、綾子さんは三世代で暮らしていた。前日に丸一日かけて綴ったというメモ書きの束を前に、彼女はその半生をとめどなく語り続けた。 「男みたいな気性やった」と、綾子さんは姉のことを評する。お姉さんが綾子さんの分まで、ソ連兵のもとへ行ったのは本当なのだろうか。 「最初は、娘は全部接待に出るって話やったけど、とにかく姉さんががんばって、私はね、17になっとったかね、数えの。とにかく、姉さんが数えの18以上って線を引いちゃったのよ。それで私を外してくれたんよね」 姉の機転で接待役をまぬがれた綾子さんには、接待に出た人の洗浄係が割りふられた。開拓団は医務室を作ってベッドをひとつ置き、接待に出た女性たちの洗浄を行っていた。洗浄の指導をしたのは、外から入ってきた北海道出身の衛生兵だったという。 「そんな技術は開拓団には医者もいないし、ないもんでね。夜……夜中でも接待に出た人がいると起きてね、冷たい水で洗浄した。冷たかったやろうねえ」 過マンガン酸カリウム、モルヒネ……。綾子さんはぶつぶつ呟くように、扱った薬品名を挙げていった。陶頼昭の南側の駅にいた日本軍の部隊が残していった薬品類を、開拓団の人たちが運んできたものだ。 「リンゲルの瓶いっぱいに、抹茶の小さい匙があるわね。それで、過マンガン酸カリウムを一杯ぽっと入れるとね、ばあーっと、真っ赤になるのよ。それを上から吊るして、ホースをずうっと通ってきて…。上からそれを、ホースの先をどうしたか覚えはないけれども、下からね、ホースを子宮まで入れてやって洗って……」』、「過マンガン酸カリウムを一杯ぽっと入れるとね、ばあーっと、真っ赤になるのよ。それを上から吊るして、ホースをずうっと通ってきて…。上からそれを、ホースの先をどうしたか覚えはないけれども、下からね、ホースを子宮まで入れてやって洗って……」、一応、消毒はしていたようだが、前編のように性病は防げなかったようだ。
・『「途中で死ねばよかった」  綾子さんは堰を切ったように、当時の様子をふり返った。途中、「接待」と聞いたときの気持ちを訊ねると、その問いには答えずに次のように告白した。 「最初にロシア兵がだーって入ってきたときはね、13、14歳くらいの子から上、みーんなロシア兵の犠牲になっちゃったのよ。ほんでねえ、私もそんな目に……。一番最初はねえ、体格がいいロシア兵が私をひっつかまえていってねえ、ほいでもう、あっとう間にやられちゃった」 驚いた私が再び訊ねると、綾子さんはうんと頷いた。手書きのメモには次のように記してある。 ≪敗戦国の惨めさ。支那事変のときの日本兵の女あさり。話は聞いていたが、直面するとは……夢にも思わなかった≫ 中国東北部の冬は零下30℃にもなる。極寒の季節が過ぎた4月はじめ、父が亡くなり、その月の終わりには母も亡くなった。父の死後、母になんとか食事を与えようとしたが、母は口をつぐんで何も食べなかった。「食べれば生きのびる。母は死ぬつもりだった」と綾子さんは母の覚悟を推測する。 それからは文江さんが親代わりとなって、身をなげうって、綾子さんと2人の弟を故郷まで連れて帰った。 しかし、引揚げ後の道のりもまた、険しいものだった。敗戦後の日本はどこも生活が苦しく、きょうだいはばらばらに引き取られ、綾子さんは母親の実家へ、上の弟は父親の姉の嫁ぎ先へ。そして文江さんと下の弟は、父の実家の裏にあったワラ小屋に移り住んだ。 親戚には冷たい目でみられ、まわりからは満州でけがれた女と偏見をぶつけられる。「途中で死ねばよかった」「帰ってこにゃ、よかった」――気丈な姉がそう漏らすこともあった。 「乙女の碑」の最終ページには文江さんの心情が追記されている。 ≪命からがら日本に帰って来ればロスケにやられた女とささやかれて、何時出るか解らない病気に怯えつつこっそり病院に通った。ある日弟が好きになった団の娘が途中で悲しいことがあったと聞いて一変に嫌になったと聞いた時、千丈の谷に落ちる感がした≫ まだ子どもだった弟らは、姉妹がどのような目に遭ったのかを知らない。そうとはいえ、弟は好きになった娘が、引揚げ時に性暴力被害に遭ったと知って嫌いになったというのだ。弟でさえこうなのだからと、文江さんは嘆いた。 ≪これが開拓団も含めて、一般の人の気持ちに違いない。あのまま自決すれば、こんな悲しい思いはないのに、涙も悲しすぎると出ないもの≫ 結婚は満州のいろいろな事情を知っている人とするのがいい――。姉妹はそれぞれ、元義勇軍の男性と結婚した。だが、文江さんには子どもができなかったことから、綾子さんの次男を養子にもらい、ひとり息子として大事に育てあげた。 姉妹はまさに互いに支え合い、二人三脚で厳しい人生を乗り越えてきた。 「姉さんが守ってくれた。姉さんがいなかったら中国で孤児になっていた。綾子、綾子って、姉さんの声がいつも耳に残っている。『男なら、こんなに頼りにならん』って言っていた」』、「命からがら日本に帰って来ればロスケにやられた女とささやかれて、何時出るか解らない病気に怯えつつこっそり病院に通った」、「弟は好きになった娘が、引揚げ時に性暴力被害に遭ったと知って嫌いになったというのだ。弟でさえこうなのだからと、文江さんは嘆いた」、これが男のさがなのだろう。
・『どうしても納得できないこと  物心ついたころ、綾子さんは次男から「なんで、僕を大垣(文江さんの嫁ぎ先)にやったんだ?」と訊ねられたことがある。 「姉さんのおかげで内地に帰ってこれたんで、その恩をおまえに返してもらおうと思ってやった」 綾子さんがそう言い聞かせると、次男はそれから何も言わなくなったという。 お姉さんの写真が見たいと言うと、綾子さんはアルバムのなかから探しだそうとしたが、それほど枚数はなかった。ようやく出てきたのは、1991年にふたりで四国に旅行したときの写真だった。 「姉さんの写真がこんなにないなんて、わからなんだ……。ずっと姉さんからふたりきりで旅行がしたい、連れてけって叱られてたけど、舅さんがあったでね、そんなに出れない。一緒に旅行には行けなかった。それが心残り。死んだら一緒に旅行に行ける」 映像のなかの文江さんとそっくりの声で、綾子さんは穏やかに言った。 文江さんの講演会の後半は、苦しい問いかけで埋められている。彼女は生涯にわたって、自分の人生がまったく思わぬ方向に行ってしまったことに苦しみ続けた。 わずか4年の満洲生活で味わった地獄は忘れることなどできず、夢にもたびたび現れた。陶頼昭駅の近くにうずくまっている自分、松花江に飛び込む自分――。父が私たちを満州に連れて行ったことが原因と、父を恨む気持ちも消えない。 どうしても納得できないものが心にあると、文江さんはとうとうと語る。 「一体、満州ってなんだったんだと。日本はなぜ満州なんかを作って、国民をたくさん送り出して、あんな悲しい思いをさせたのか。子どもたちは絶対、平和のなかで育ててほしい。平和のなかで、個人個人が行動するのはいいんです。それは運命ですからね。でも、その集団のなかで逃げられない、どうにもならないってことには、絶対になってはいけないと思うんです」 幻の満洲国が崩壊してから、70年以上の月日が過ぎた。孫娘らを見ていると、自分の若かりし頃とつい比較してしまうと文江さんは複雑な心境を吐露する。自分が通らなければならなかった娘時代というのは、避けては通れなかったかもしれないけれど、還らぬ青春が悔やまれる。そして、彼女はこう続けた。世界各地の紛争や難民のニュースを目にするたび、平和な国の幸を願わずにはいられないと――。 「戦争する人はいいですよ。好きでやってるんですから。だけど、その残された庶民、多くの子どもも死んでいくやろうと思うと、私は胸が痛い。ちょっと優しい心を持って、指導者が心を鎮めてくれたら、大きな戦争にはならんかったで。戦争の犠牲になっていく庶民がかわいそうでしかたがない」 文江さんの遺した詩「乙女の碑」は次の一節で終わる。 ≪異国に眠る あの娘らの  思いを胸に この歌を  口づさみつつ 老いて行く  諸天よ守れ 幸の日を  諸天よ守れ 幸の日を≫』、「「戦争する人はいいですよ。好きでやってるんですから。だけど、その残された庶民、多くの子どもも死んでいくやろうと思うと、私は胸が痛い。ちょっと優しい心を持って、指導者が心を鎮めてくれたら、大きな戦争にはならんかったで。戦争の犠牲になっていく庶民がかわいそうでしかたがない」、同感である。
タグ:(17)(「日本が勝てるとは思えない…」敗戦前に予想していた「世界一のシンクタンク」の正体、ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの 70年後の告白 満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える、あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き~開拓団「乙女の碑」は訴える【後編】) 歴史問題 現代ビジネス「「日本が勝てるとは思えない…」敗戦前に予想していた「世界一のシンクタンク」の正体」 『昔々アヘンでできたクレイジィな国がありました』 満鉄調査部は満鉄の設立の翌年、1907年の発足。初期のスタッフは100人前後で、経済調査と旧慣調査、ロシア調査の3班構成。これとは別に監査班と統計班がありました 「ロシア革命とソ連の成立により状況が一変します。満鉄調査部はソ連に関する情報収集の最前線と化した」 「満鉄の幹部が「使える人間に右も左もあるものか」という姿勢でいたこともあって、本土では生計の道を閉ざされた左翼活動家が続々と日本海を渡ってきました。 人材も豊富なら資金も潤沢。大連の本社に加え、奉天、哈爾濱、天津、上海、南京、ニューヨーク、パリに事務所・出張所を構え、社命が下されればどの国、どの地域にも飛んで、情報収集に務める。明らかなスパイ行為や調略工作を働くこともありました」、「本土では生計の道を閉ざされた左翼活動家が続々と日本海を渡ってきました」、珍しいことだ。 (注)日本国際問題研究所:吉田茂が外務省中心に設立(研究所ホームページ) 「支那抗戦力調査報告」では、「日本は日中戦争で負けることはないにしても、圧倒的な勝利を収めることもできない、米英ソの支援を受けた中国側の抗戦力は侮りがたく、軍事力だけに頼っていたのでは解決できないという内容」、極めて的確な分析だ。「山本五十六」の発言も的確だ。こうした分析を無視した軍部や政府の傲慢さには返す返すも腹が立つ。 現代ビジネス 平井 美帆氏による「ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの、70年後の告白 満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える」 「遺族会以外の人に見せてはいけない その横には黒インクの手書きで「平成二年 六十五才」とある。時代が平成に移ってもなお、そのことは深いタブーだった」、よほどのことだ。 「すでに戦況で不利な状況にあった国には、ソ連との国境付近に日本人を配置して、軍事的に備えておきたい目論見があった。また、満州移民計画の背景には、過剰人口、耕地の不足によって疲弊する国内の農村問題が横たわっていた。国や県は補助金を出して、農村部の自治体に村を分けて満州に移住させる分村・分郷運動を働きかけた」、「ソ連との国境付近に日本人を配置して、軍事的に備えておきたい目論見」、無責任な人身御供を政府が推進したとは酷い話だ。 「ソ連軍将校側から救援を取りつけた。日本に帰れるまで、現地民の暴徒や下っ端のソ連兵から団を守ったり、食料を分け与えたりしてもらう約束である。そして、団幹部らが引き換えにしたのは……生身の人間だった。 まだ結婚しておらず、数え年の18歳以上。黒川開拓団のなかから「性接待役」として、ソ連軍側に差し出されることになった条件を満たす女性を探してみると、生存者らの証言どおり、12人から15人の少女が該当した」、生き残るためとはいえ、「性接待役」を「開拓団」として差し出したとは悲劇だ。 「ベニヤ板でかこまれた元本部の一部屋は悲しい部屋であった。泣いても叫んでも誰も助けてくれない。お母さん、お母さんの声が聞こえる」、「戻ってくると、団内部に設けた医務室に連れていかれた。また、接待に出た娘たちだけは特別に風呂にも入れた」、悲惨そのものだ。 「風呂や消毒の甲斐もむなしく、犯された少女らは次々と性病に感染していった。さらには発疹チフスも大流行し、開拓団では毎日のように人がばたばたと死んでいった。 「皆、性病を貰ったんです。性病と発疹チフスが一緒になっちゃったから。12人のうち、7人くらいは亡くなったんです」、「12人のうち、7人くらいは亡くなった」、当時はコンドームもなかったので、性病は避け難かったようだ。 「少人数になると、彼女たちをからかってくる父親世代の男もいた。それはこともあろうに、性接待に行かせていた側の団幹部、義夫からのものもあった」、感謝するのでなく、「からかってくる」とは信じ難い。 「「男はああいう目をさせておいてねえ、それで助かっておいてね。帰ってきたら、『いいじゃないか、減るものじゃないし』って、とんでもない話だよ」 団幹部だった男性から発せられた、性暴力を軽んじる言葉。そうした心ない言葉は再び女性たちを深く傷つけていた」、とんでもない話だ。 平井 美帆氏による「あの地獄を忘れられない…満州で「性接待」を命じられた女たちの嘆き~開拓団「乙女の碑」は訴える【後編】」 「【後編】」ではどんな事実が出てくるのだろう。 「八路軍」は軍紀が浸透しており紳士的だったようだ。「黒川開拓団の性接待を知っていた」のは当然なのでろう。 「遺族会会長らをたどると、敗戦当時の団幹部らにつながり、さらにたどれば満州への分村移民を決めた村の男衆らにつながるのだ。 脈々と続いてきた男たちの決めごとのなかで、いかに女性の人権はないがしろにされてきたか。そして、いまなお、まわりの認識は本人たちとはずれがある。慰霊碑に対して、なんらかの思い入れを口にした被害女性などいない。 スミさんは乙女の碑など見たくないと話す」、「黒川開拓団の「守り神」」とは言い得て妙だ。 「過マンガン酸カリウムを一杯ぽっと入れるとね、ばあーっと、真っ赤になるのよ。それを上から吊るして、ホースをずうっと通ってきて…。上からそれを、ホースの先をどうしたか覚えはないけれども、下からね、ホースを子宮まで入れてやって洗って……」、一応、消毒はしていたようだが、前編のように性病は防げなかったようだ。 「命からがら日本に帰って来ればロスケにやられた女とささやかれて、何時出るか解らない病気に怯えつつこっそり病院に通った」、「弟は好きになった娘が、引揚げ時に性暴力被害に遭ったと知って嫌いになったというのだ。弟でさえこうなのだからと、文江さんは嘆いた」、これが男のさがなのだろう。 「「戦争する人はいいですよ。好きでやってるんですから。だけど、その残された庶民、多くの子どもも死んでいくやろうと思うと、私は胸が痛い。ちょっと優しい心を持って、指導者が心を鎮めてくれたら、大きな戦争にはならんかったで。戦争の犠牲になっていく庶民がかわいそうでしかたがない」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

広域強盗事件(その1)(「ルフィ」一味が逮捕されても詐欺被害は減らず…日中混合特殊詐欺グループは別動隊か、元公安捜査官も驚愕!強盗・特殊犯罪集団「巧妙な個人情報収集の手口」と対抗策、「ルフィ」に続き摘発された詐欺集団が“カンボジアのリゾート”を拠点にした理由、「タナボタ摘発」のカンボジア特殊詐欺犯 警視庁は国際手配もパスポート返納命令も出していなかった) [社会]

今日は、広域強盗事件を取上げよう。(その1)(「ルフィ」一味が逮捕されても詐欺被害は減らず…日中混合特殊詐欺グループは別動隊か、元公安捜査官も驚愕!強盗・特殊犯罪集団「巧妙な個人情報収集の手口」と対抗策、「ルフィ」に続き摘発された詐欺集団が“カンボジアのリゾート”を拠点にした理由、「タナボタ摘発」のカンボジア特殊詐欺犯 警視庁は国際手配もパスポート返納命令も出していなかった)である。

先ずは、本年3月9日付け日刊ゲンダイ「「ルフィ」一味が逮捕されても詐欺被害は減らず…日中混合特殊詐欺グループは別動隊か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/319743
・『国内で被害総額5億円以上に上る特殊詐欺事件に関与したとみられる日本人と中国人の混合特殊詐欺グループも、「ルフィグループ」同様、フィリピンを拠点にして犯行を繰り返していた』、興味深そうだ。
・『フィリピンを拠点に被害総額5億円以上  大阪府警特殊詐欺捜査課は6日、住所不定、無職の西辰也(33)と自営業、中山ほのか(29)両容疑者を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益授受)の疑いで逮捕した。2人は特殊詐欺グループの中心メンバーで、受け子や回収役が、高齢者からダマし取った現金を犯罪収益と知りながら、口座に振り込ませていた。 「当初、出し子や受け子、金庫番など約20人をパクったところ、ほとんどが東京在住の中国人やったから、背後にチャイニーズマフィアがおると思ったんや。ダマし取った現金は、日本に帰化した中国人の男が役員を務める東京の貴金属会社を通じて、中国に送金され、送金には暗号資産が使われとった。貴金属店から押収された現金だけでも4億8000万円やったから、他も合わせたら相当な被害額になるんちゃうかな。一連の犯行を指示しとったんが、グループの幹部で、昨年11月に窃盗の疑いでパクったコンサルタント会社役員の野間正記被告(53)。野間を逮捕した後、西容疑者がグループの主犯格らと連絡を取り合い、フィリピンと日本を何度も行き来しとったことが分かったんや」(捜査事情通) 今回、検挙されたグループの手口は、警察官を装って被害者のキャッシュカードをすり替えるというもの。「警察官かたり」と言われ、ルフィグループが得意とする手口と同じだ。 ルフィのリーダーの渡辺優樹容疑者(38)とナンバー2の小島智信容疑者(45)は独立する前は別のグループで受け子修業をし、ノウハウを学んだといわれている。 特殊詐欺に詳しい関係者がこう言う。 「両グループが同じフィリピンを拠点にして特殊詐欺をしていたとしたら、何らかの接点があってもおかしくありません。飲食店やキャバクラ、カジノなど、遊ぶところもかぶるし、裏社会に通じる共通の知り合いがいないわけがない。お互い情報交換をしていたことも十分考えられます。渡辺容疑者のグループは最盛期、かけ子だけで250人以上いて、拘束を免れた残党がまだフィリピンに大勢残っている。渡辺容疑者のバックにはさらに黒幕がいるといわれているから、同じ組織に金が流れている可能性も否定できない」 ルフィ一味が逮捕されても一向に詐欺被害が減らないのは、別動隊を操る犯罪組織があるからなのか。捜査員たちも“巨悪”の存在にザワついている』、「両グループが同じフィリピンを拠点にして特殊詐欺をしていたとしたら、何らかの接点があってもおかしくありません。飲食店やキャバクラ、カジノなど、遊ぶところもかぶるし、裏社会に通じる共通の知り合いがいないわけがない。お互い情報交換をしていたことも十分考えられます」、「渡辺容疑者のグループは最盛期、かけ子だけで250人以上いて、拘束を免れた残党がまだフィリピンに大勢残っている。渡辺容疑者のバックにはさらに黒幕がいるといわれているから、同じ組織に金が流れている可能性も否定できない」 ルフィ一味が逮捕されても一向に詐欺被害が減らないのは、別動隊を操る犯罪組織があるからなのか。捜査員たちも“巨悪”の存在にザワついている」、「渡辺容疑者のグループは最盛期、かけ子だけで250人以上いて、拘束を免れた残党がまだフィリピンに大勢残っている」、予想以上に大規模なようで、「残党がまだフィリピンに大勢残っている」、まだまだ一掃とはいかないようだ。

次に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「元公安捜査官も驚愕!強盗・特殊犯罪集団「巧妙な個人情報収集の手口」と対抗策」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/319537
・『強盗・特殊詐欺グループが情報収集に注力する背景  昨年から今年にかけて相次いだ、「ルフィ」らが関与したとみられる広域連続強盗事件は、東京狛江市での強盗殺人事件という凄惨(せいさん)な事件から急展開を見せ、フィリピンに滞在した被疑者らが相次いで検挙された。 この犯罪グループは、末端の実行者を闇バイトで募集し、自らはフィリピンから末端の人物に指示するという何とも「効率的」な手法をとっていた。 そもそも、この手法は特殊詐欺で確立されたものと思われ、特殊詐欺においても、掛け子、受け子などの実行者を闇バイトという形で募集し、自らは表に出ない形で指揮し、捜査の手が届きづらいプロセスを作り上げていた。 しかし、こうした組織作りや犯罪の手法よりも驚かされるのは、彼らの情報収集能力の高さである。 筆者は、現役時代に特殊詐欺グループのリーダー格の人物と接したことがあるが、彼は海外における資金運用方法や不動産投資などに関して、どうやれば“金”になるのかについていつも真剣に考え、常に関心高く勉強をしていた。 話ぶりもいわゆる“ヤカラ”のような口調ではなく、非常にスマートで、ある意味、「特殊詐欺というビジネス」に真剣に向き合っているように見えた。彼に言わせれば、起きている間はずっと“どうやれば特殊詐欺が成功するか”を考えているそうだ。 このように、彼らが犯罪ビジネスに真剣に向き合う中で、いかに効率的に実行できるかと試行錯誤し、そのために注力することになった一つが“情報収集”だ。 今回の広域強盗事件において、実行者は被害者宅に入った後に迷うことなく金庫に向かっていた。その際、フィリピン刑務所内にいる指示者が、被害者宅の図面を見ながら携帯電話で「右に行け」などと実行者に指示していたとも言われている。 では、どうやって被害者の情報を収集したのであろうか。 そこには、ただの情報(Information)を、示唆を含む情報に昇華させたインテリジェンス(Intelligence)にする恐るべきノウハウが隠されていた』、「この犯罪グループは、末端の実行者を闇バイトで募集し、自らはフィリピンから末端の人物に指示するという何とも「効率的」な手法をとっていた。 そもそも、この手法は特殊詐欺で確立されたものと思われ、特殊詐欺においても、掛け子、受け子などの実行者を闇バイトという形で募集し、自らは表に出ない形で指揮し、捜査の手が届きづらいプロセスを作り上げていた」、「注力することになった一つが“情報収集”だ。 今回の広域強盗事件において、実行者は被害者宅に入った後に迷うことなく金庫に向かっていた。その際、フィリピン刑務所内にいる指示者が、被害者宅の図面を見ながら携帯電話で「右に行け」などと実行者に指示していたとも言われている」、「ただの情報(Information)を、示唆を含む情報に昇華させたインテリジェンス(Intelligence)にする恐るべきノウハウが隠されていた」、すごい組織力と情報収集力だ。
・『犯罪集団が行っている電話を使った情報収集方法  犯罪集団の情報収集の一つとして、最も知られている手法が電話である。 例えば高齢者宅への次のような電話だ。 「警視庁XX署の生活安全課のものですが、最近特殊詐欺がはやっています。ご自宅にお一人住まいの場合は気を付けてください」 これに対し、高齢者が「大丈夫です。近くに息子夫婦が住んでいますので」などと答えようものなら、犯罪集団に独居であることが推察されてしまう。 注意すべきは、こうした直接的な質問だけではない。スパイ活動においては間接的な質問で情報収集することが多いが、犯罪集団も似ている面がある。 犯罪集団が行う情報収集には、例えば「広域アンケート」と称し、自動音声でガイダンスに従って番号を押すように促すような手法がある。 高齢者宅に、自動音声で「電気料金に関するアンケート」の電話がかかり、「1カ月の電気代が5000円未満の方は“1”を、5000円以上の方は“2”を押してください」などと言われて、高齢者が“1“を押下してしまえば、即座に一人暮らしと把握されてしまうだろう(総務省「2021年度家計調査―単身世帯―」によれば、一人暮らしの電気代の平均は一カ月5482円)。 こうした手法については、特殊詐欺が猛威を振るった1999年以降、「母さんオレだよ」のオレオレ詐欺からその手法を進化させていった。 オレオレ詐欺の頃は、だますという「実行行為」は電話のみで行われていたが、現在は、実行行為の効率性を上げるために、まずターゲットの情報を引き出す手段として電話を活用する手法に変化してきている(この情報を引き出す行為自体も含んで実行行為とするという点は割愛する)。 また、電話口での高齢者らの反応が犯罪集団にチェックされていることにも留意しなければならない。犯罪集団が作る「闇名簿」には、高齢者らの口調や性格、警戒心の高さなども備考として記され、犯罪を行う上での貴重な情報となっている』、「電話を使った情報収集方法」のなあでも、「高齢者宅に、自動音声で「電気料金に関するアンケート」の電話がかかり、「1カ月の電気代が5000円未満の方は“1”を、5000円以上の方は“2”を押してください」などと言われて、高齢者が“1“を押下してしまえば、即座に一人暮らしと把握されてしまうだろう」、には手口の鮮やかさに驚かされた。「ターゲットの情報を引き出す手段として電話を活用する手法に変化してきている」、「犯罪集団が作る「闇名簿」には、高齢者らの口調や性格、警戒心の高さなども備考として記され、犯罪を行う上での貴重な情報となっている」、極めて合理的なやり方だ。
・『犯罪集団はどのようにしてターゲットを絞り込むのか  広域連続強盗事件やこれまでの特殊詐欺において、活用されたのがこの闇名簿である。 そもそも公に提供されている名簿があるのをご存じだろうか。 インターネットで「名簿 業者」や「名簿 リスト」と検索してほしい。個人情報が含まれる名簿を取り扱う業者が散見されるだろう。彼らが所有するデータは、同窓会名簿から一戸建て居住者や通販購入者(高級衣類、アクセサリー)、投資家名簿や富裕層名簿など、さまざまである。 これは、大いに問題があると思わないだろうか。 一部、「2022年4月の改正個人情報保護法により、05年以降に入手した個人情報が提供できなくなった」と掲載している業者もいるが、にもかかわらず、こうした名簿情報が販売・提供されている。 名簿業者によれば、営業でのアプローチに使用することを想定しているのだそうだが、犯罪集団がフロントカンパニーを作り、新規営業先を得るためと偽って名簿を閲覧・購入するのは容易だろう。 こうした手法で、例えば、通販で高級アクセサリーやその他の高額商品を購入した人物の名簿、不動産投資した人物の名簿などを入手し、それらの名簿に共通する人物を見つけ出すことで、資金にかなりの余裕がある人物が特定できる。 そして、その人物に前述のように電話でアプローチして、独居か高齢者か、穏やかな性格かなどを確認し、現地を下見すれば、強盗の準備ができてしまう。 また、前述の通り、今回の広域連続強盗事件では家の図面まで作成していた事実があるが、配送業者や引っ越し業者から情報を買ったり、家のリフォームや納品を装った手口で自宅内を見たりする手法もある。 犯罪集団は、これらの手法を複合的に組み合わせ、収集した情報をしっかりと分析して犯罪を実行しているのだ。 加えて一点、極めて重要な事実がある。 闇名簿においては、前述の名簿業者では知り得ない公的機関によるものと思われる情報が含まれる点だ。 例えば、口座情報や納税状況、さらに家族構成を把握できる戸籍などが自治体から流出することで、その闇名簿はより恐ろしい内容になる。 恐らく、金銭の授受や“ゆすり”などを通じて、自治体の協力者から情報を収集しているのだろう。 このように、犯罪集団の手は広く深く社会に浸透しているのだ』、「家の図面まで作成していた事実があるが、配送業者や引っ越し業者から情報を買ったり、家のリフォームや納品を装った手口で自宅内を見たりする手法もある」、「口座情報や納税状況、さらに家族構成を把握できる戸籍などが自治体から流出することで、その闇名簿はより恐ろしい内容になる。 恐らく、金銭の授受や“ゆすり”などを通じて、自治体の協力者から情報を収集しているのだろう」、「口座情報や納税状況・・・戸籍」まで「自治体の協力者から情報を収集」、恐ろしいことだ。
・『スパイ捜査における2つの情報収集方法  私が国内におけるスパイ捜査を行っていた視点で、2つの手法を紹介したい。 一つ目は、情報収集手段の一つであるOSINT(Open source Intelligence)である。 OSINTはウェブや公文書、各メディアなどの公開情報から得られる情報を分析し、示唆を導出する手法である。 犯罪集団からの目線で言えば、先に挙げた名簿業者も立派な公開情報である。 さらに、例えばGoogleMapのストリートビューでターゲットの自宅を下見すれば、自宅の車種や駐輪している自転車などから家族構成を推察できる。その他、ターゲットが会社経営者であれば、法人登記や不動産登記を閲覧することで、資産状況のみならず、親族経営であれば親族の名前なども把握できる。 これらの手法は、犯罪集団がある程度、電話や名簿等でめどをつけたターゲットに対し行われるだろう(もちろん、実地の下見も行われる)。 ここですべて紹介してしまうと犯罪集団に悪用されるため、詳しくは割愛するが、OSINTのノウハウがあれば、特定の人物に関し、公開情報のみで相当深い情報が得られるだろう。 また、先ほどの名簿に加え、ぜひインターネットで「電話帳 個人」と検索してほしい。その中には、地番と氏名、電話番号が閲覧できるサイトがあるので、自身やご両親などの自宅が掲載されていないかぜひ確認してほしい。 これも、OSINTにおける公開情報である。世界の9割の情報はOSINTで得られるといわれている。 そして二つ目は、COLLINT(Collective Intelligence)である。 これは、一部利害関係を共通とする組織同士で情報を共有する手法である。 2017年シンガポールで暗殺された、北朝鮮の金正恩総書記の異母兄である金正男氏に関し、彼が2001年に日本に入国する際、事前に英国情報機関のMI6から公安調査庁に情報提供されており、彼が不法入国しようとしていた情報を事前に入国管理局に提供していた。MI6が公安調査庁を非常に信頼していたからなし得た連携だった。 なお、余談だが、この件では、警察側が金正男氏をしばらく国内で泳がせて、どのような人物と接触するか把握しようとしていた。だが、入国管理局が金正男氏をすぐに拘束してしまったことから、警察側が激怒したという逸話もある。 いずれにせよ、このように情報機関同士の情報共有においては互いの信頼性が問われるわけだが、犯罪集団同士の情報共有では、信頼関係よりも、いかに儲かるかという“利害関係”が前面に出てくる。 その結果、速やかに情報は共有・売買され、一度出た(犯罪集団にとって有益な)情報は、瞬く間に犯罪の世界に広まる。前述のMI6と公安調査庁の連携のような高尚な話にはならないだろう』、「インターネットで「電話帳 個人」と検索してほしい」、私の住んでいる区で検索したところ、医者、商店などのが多く、個人はそれほど多くなく、私の名前もなかったので、一安心だ。
・『ダークウェブでやりとりされる危険な情報  これまで解説してきた犯罪集団が収集し、作り上げてきた情報が、闇サイトで売買されているのは、報道などを通じてご存じだろう。 闇サイトには皆さんが想像するような一部掲示板などのアクセスしやすいサイトが多数存在する。だが、一般にアクセスが難しいといわれるダークウェブでは、その内容を見たことのない方からすれば、非常に恐ろしい危険な情報がやりとりされている。 例えば、筆者が目視できたものだけでも「日本人のパスポート情報(顔写真のページ見開き、氏名・生年月日等記載)」「日本企業の社員のメールアドレス」などに加え、日本政府が使用した膨大なメールアドレスも、現在使用されているものかは判別がつかなかったが、売買されていた。その他、闇名簿と思しき情報のサンプルを見せ売買するような集団も存在した。 これらの情報の収集や売買は、サイバー攻撃にも通じるものがある。サイバー攻撃では企業の脆弱(ぜいじゃく)性につながる情報を収集し、売る集団がいる。 それと同様に、特殊詐欺や強盗を行うために、情報をふんだんに含む闇名簿を作成し、売る集団が存在する。ここではっきりと分かるのは、犯罪集団にとって、情報は非常に価値があるものということだ』、「特殊詐欺や強盗を行うために、情報をふんだんに含む闇名簿を作成し、売る集団が存在する。ここではっきりと分かるのは、犯罪集団にとって、情報は非常に価値があるものということだ」、その通りなのだろう。
・『犯罪集団が通信手段として使った「テレグラム」とは  さて、広域連続強盗事件で脚光を浴びた通信手段として、通信アプリ「テレグラム」(写真)がある。 上記画面の赤い矢印の下に「氷(アイス)」と「ブロッコリー(野菜)」の絵文字がある。これらは薬物の隠語である。(場所の特定を避けるため、画面の一部を加工してあります) その情報通信の秘匿性もさることながら、恐ろしいのはコミュニティ(Group)機能である。 テレグラムにおいては、近くにテレグラムを使用する人物が表示されるほか、Groupという形で不法行為を想像させるコミュニティが複数存在し、自由に参加し、Group内メンバーにコンタクトが取れる。 このように、テレグラム開発元の意図にかかわらず、犯罪を助長してしまう機能が付いている。犯罪は、こんなにも身近に存在するのだ』、「テレグラム開発元の意図にかかわらず、犯罪を助長してしまう機能が付いている」、恐ろしい時代になったものだ。
・『自宅と電話対応で効果的な犯罪集団への対策とは  ここまで紹介してきた犯罪集団のさまざまな情報収集手段に対し、効果的な対処法は多くはない。 まず、意識として犯罪集団の“高い”実力を知った上で、「自身の情報は出さない」「自身の情報は既に出ていると思っておく」ことが肝要だ。 その上で、セキュリティ上の対応策をいくつかお伝えしたい。 <自宅におけるセキュリティー> ・防犯カメラの設置 ・インターホンでの対応 ・(窓ガラスを割れにくくする)防犯フィルムの貼り付け ・補助錠の設置 ・在宅時の施錠 ・置き配の使用 ・現金を自宅保管しない ・強盗侵入時に110番する時間を稼ぐため、立てこもれる場所を用意(地下室やトイレなど) <電話口におけるセキュリティー> ・電話口で自身の生活に関する情報を一切答えない、即座に切る ・公的機関であっても、電話は一度切り、掛け直す(その際、相手の所属部署を聞き、相手が言った番号に掛け直さず、ホームページなどで調べた番号に掛け直す) ・電話で何かを聞かれても、自身で判断せず、遠慮なく家族・警察に相談する  広域連続強盗事件後の報道では、近隣の住民から「あのとき、こんな変なことがあった」と、不審な下見や訪問の様子をうかがわせる情報が出てきた。強盗という極端で残忍な犯罪において、このような端緒がある場合も少なくない。 どうか、犯罪集団の高い実力を知った上で、あなたの家族、そして地域が一体となってコミュニティ内で情報を共有し、高い防犯意識を醸成していただきたい』、私は電話は普段から留守電モードにしてあり、必要な場合はこちらから架け直すようにしている。

第三に、4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「ルフィ」に続き摘発された詐欺集団が“カンボジアのリゾート”を拠点にした理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321035
・『カンボジアのリゾートホテルを拠点にした特殊詐欺グループの日本人19人が現地の警察に拘束され、警視庁は詐欺容疑で逮捕状を取った。いずれも20~50代の男で、有料サイトの未払い料金があると偽り電子マネーをだまし取っていた容疑だ。警視庁は週内にも捜査員50人前後を派遣して身柄を日本に移送し、逮捕する方針。警視庁など全国の警察はフィリピンの「ルフィ」など特殊詐欺グループが国内の取り締まりから逃れるため海外に拠点を移していたとみて、現地の警察当局と協力して摘発を強化しているもようだ』、「特殊詐欺グループの日本人19人が現地の警察に拘束」、日本への送還の途中で、「警視庁」職員に逮捕された。
・『特殊詐欺グループの拠点はカンボジア南部のリゾートホテル  19人の逮捕容疑は1月下旬、東京都内の60代女性から25万円相当の電子マネー「ビットキャッシュ」をだまし取ったとされる。全国紙社会部デスクによると、逮捕状の取得は今月6日付。外国人の容疑者は通常、送還をにらみ国際空港に近い入管施設に収容されるが、警備体制の整った首都プノンペンの施設にいる。聴取に対しては、いずれも黙秘しているという。 手口はNTTドコモからの通信を装って国内の携帯電話利用者に返信先を記載したショートメールを送り、電話してきた人に「有料サイトの未払い金がある」とうそをつき、ビットキャッシュを購入させていたとみられる。 拠点となっていたのは、カンボジア南部のタイランド湾に面した熱帯モンスーンの都市シアヌークビルにあるリゾートホテル。外観は白壁に黒い屋根の造りで、道路を挟んだ約7キロに及ぶ白い砂浜は旅行好きには知られる観光地だ。 前述のデスクによると、19人はホテルの5部屋を貸し切り、生活用と仕事用を使い分けていたという。仕事用の部屋には十数台の事務用机が2列に並び、その上にパソコンが配備されていた。ホワイトボードには日付や日本人とみられる漢字やカタカナの名前が記載され、見た感じはまるでオフィスだったらしい。 生活は意外に質素で、食事は1階のレストランを利用していたものの、酒類のオーダーはほとんどなし。現地の公用語であるクメール語や植民地時代に使われていたフランス語も話せないため、ホテル関係者との会話もなかったという。 いずれも観光ビザで入国していたが、時期は数カ月前から約2年前とバラバラ。現地の警察に対しても「観光目的だった」と説明しているというが、リゾートなのにもかかわらずホテルから外出することもなく、ほとんど部屋に閉じこもっていたようだ。 摘発の端緒は、現地の日本大使館に「ホテルに特殊詐欺グループの拠点がある」とタレコミがあったことだ。1月下旬に現地の警察が強制捜査し、19人の身柄を拘束するとともに、大量の携帯電話、犯行マニュアル、被害者名簿などを押収していた』、「19人はホテルの5部屋を貸し切り、生活用と仕事用を使い分けていたという。仕事用の部屋には十数台の事務用机が2列に並び、その上にパソコンが配備されていた。ホワイトボードには日付や日本人とみられる漢字やカタカナの名前が記載され、見た感じはまるでオフィスだったらしい。 生活は意外に質素で、食事は1階のレストランを利用していたものの、酒類のオーダーはほとんどなし。現地の公用語であるクメール語や植民地時代に使われていたフランス語も話せないため、ホテル関係者との会話もなかったという」、「リゾートなのにもかかわらずホテルから外出することもなく、ほとんど部屋に閉じこもっていたようだ」、「ホテル」に缶詰めだったとは気の毒だ。
・『「ルフィ」などの詐欺グループが東南アジアを拠点にする理由  特殊詐欺事件を巡ってはここ数年、日本の警察が取り締まりを強化したため、指示役が東南アジアに拠点を移しているとみられている。理由として時差が小さく、携帯電話の購入時に個人情報の登録が不要ということが背景にあるようだ。 これを裏付けるように、国内の拠点摘発は2017年の68件をピークに、22年は20件まで減少。一方で21年の被害額は282億円、20年は285億円と摘発件数が激減しているわりにさほど減っていない。 なぜかと言えば、単純な話だ。世界に誇る捜査能力を持つ日本の警察とはいえ、海外に法的な権限はないからだ。国内で末端は摘発できても、海外に滞在する本体には届かない。だが「許可」さえ出れば、すぐにも執行できる情報はつかんでいる。 言葉は悪いが、詐欺グループはそれなりの組織系統を作ったとはいえ、しょせんはやさぐれた「人間のクズ」(前述のデスク)の集まり。法的な知識を持ったプロ集団とは頭のレベルが違う。日本の警察は権限さえ与えられれば、いつでも動き出せるのだ』、「特殊詐欺事件を巡ってはここ数年、日本の警察が取り締まりを強化したため、指示役が東南アジアに拠点を移しているとみられている。理由として時差が小さく、携帯電話の購入時に個人情報の登録が不要ということが背景にある」、なるほど。「日本の警察は権限さえ与えられれば、いつでも動き出せる」、これはやや「警察」を買いかぶり過ぎているきらいもある。
・『タイ、中国、フィリピンで相次ぎ摘発 海外拠点はもはや「安全」ではない  2019年、日本人15人がタイ中部パタヤのリゾートで一軒家を借り、カンボジアの事件と同じ手口で特殊詐欺をしていたとして摘発された。安く国際電話をかけられるIP電話を使い、指示役が実行役を2つのグループに分け、成果を競わせていた。 同年には中国の吉林省にある複数のマンションで拠点を作って、全国銀行協会職員を名乗り「クレジットカードが不正利用されそうになっており、更新する必要がある。職員が出向くので渡してほしい」などとうそをついてカードをだまし取った事件も発覚した。 「ルフィ事件」は特殊詐欺ではなく、広域強盗殺人事件になってしまった。こうなるともう、警視庁捜査2課ではなく、全国の警察本部刑事部と組織犯罪対策部が総力を挙げて取り組む事態になるのは必然だ。 この事件では指示役とされる渡辺優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の各被告が、金融庁や警察の職員などを装ってクレジットカードを盗んで現金を引き出したとして窃盗罪で起訴された。4被告は起訴勾留されているが、警視庁の目的は言うまでもなく、強盗殺人罪の立件だ。 筆者が全国紙社会部時代のネタ元だった当時警部補(退官時は警視)の刑事はこう言っていた。 「アイツらは安全だと思っているんだろうが、海外で日本人は目立つんだ。俺らが現役の頃(約30年前)と違い、日本の警察から要請があれば面倒くさい連中はすぐに厄介払いされるさ」』、「海外で日本人は目立つんだ。俺らが現役の頃(約30年前)と違い、日本の警察から要請があれば面倒くさい連中はすぐに厄介払いされるさ」、そうであれば、いいのだが・・・。

第四に、4月13日付け日刊ゲンダイ「「タナボタ摘発」のカンボジア特殊詐欺犯 警視庁は国際手配もパスポート返納命令も出していなかった」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321497
・『警視庁の捜査員は、拘束者リストの中に「オカモトヒロキ」の名前を見つけ、驚いたという。 カンボジアのリゾートホテルを拠点とした特殊詐欺事件で、11日深夜、25~55歳の男19人が現地からチャーター便で日本に強制送還され、詐欺容疑で逮捕された。グループの指示役で、中心的役割を果たしていたのが、住所、職業不詳の岡本大樹容疑者(38)だ。岡本容疑者は2018年、別の特殊詐欺事件に関与したとして、21年、警視庁が逮捕状を取得し、行方を追っていた人物だ』、興味深そうだ。
・『日本大使館に「SOS」メール  カンボジアの現地当局が19人を拘束したきっかけは、ある「SOS」メールだった。 「ホテルで特殊詐欺をやらされていて外に出られない。助けて欲しい」 グループのメンバーとみられる人物から在カンボジア日本大使館にメールがあったのは、今年1月のこと。大使館から「ホテルに不審な日本人グループが滞在している」と連絡を受けた現地当局が1月24日、ホテルを捜索し、岡本容疑者ら19人の身柄を確保。スマートフォン64台、パソコン6台、被害者の名前が記載された名簿を押収した。日本に移送されたメンバーはいずれも「かけ子」で、NTTドコモを装って日本国内の携帯電話に連絡先を記載したショートメッセージを送り、電話をかけてきた人に「有料サイトの未払い料金がある」とうそをつき、電子マネーを購入させていた。 「岡本容疑者は2021年11月にカンボジアに高飛びし翌22年4月ごろからカンボジア国内を転々としながら特殊詐欺を繰り返していた。同様の手口による架空請求詐欺被害は、少なくとも75件確認されている。グループは昨年12月末から1カ月間、リゾートホテルを10部屋予約して、滞在。岡本容疑者は現地に到着したメンバーからパスポートや航空券、携帯電話を取り上げて外出を制限するなど、軟禁状態にして詐欺行為をさせていた。岡本容疑者は暴力団関係者とつながりがあることから、ダマし取った金の流れについて調べを進める」(捜査事情通) 警視庁はグループの実態を把握しておらず、中心的人物が「オカモト」だと聞き、2年前に逮捕状を取った岡本容疑者と同一人物だと分かったという。 「警視庁は岡本容疑者が海外に逃亡していることも知らなかったようで、国際手配どころか、パスポートの返納命令も出していなかった。カンボジアへの入国には、まず1カ月滞在可能なビザが必要ですが、その後、1年間滞在可能なビザを取得でき、さらに延長できることから、反社会勢力が合法的に長期滞在しています。現地当局が岡本容疑者の身柄を拘束しなければ、ルフィグループ同様、長期にわたって詐欺被害が拡大していたかもしれません」(現地情報に詳しいジャーナリスト) いつまで経っても特殊詐欺による被害が減らないわけだ』、「カンボジアの現地当局が19人を拘束したきっかけは、ある「SOS」メールだった。 「ホテルで特殊詐欺をやらされていて外に出られない。助けて欲しい」 グループのメンバーとみられる人物から在カンボジア日本大使館にメールがあったのは、今年1月のこと。大使館から「ホテルに不審な日本人グループが滞在している」と連絡を受けた現地当局が1月24日、ホテルを捜索し、岡本容疑者ら19人の身柄を確保。スマートフォン64台、パソコン6台、被害者の名前が記載された名簿を押収した」、「警視庁はグループの実態を把握しておらず、中心的人物が「オカモト」だと聞き、2年前に逮捕状を取った岡本容疑者と同一人物だと分かったという。「警視庁は岡本容疑者が海外に逃亡していることも知らなかったようで、国際手配どころか、パスポートの返納命令も出していなかった」、第三の記事では、筆者の戸田氏は「警察」が情報源なので、迎合的な記事になっているが、日刊ゲンダイは忖度せずに、「警察」の手落ちを厳しく指摘する。実態把握には、適しているようだ。
タグ:広域強盗事件 (その1)(「ルフィ」一味が逮捕されても詐欺被害は減らず…日中混合特殊詐欺グループは別動隊か、元公安捜査官も驚愕!強盗・特殊犯罪集団「巧妙な個人情報収集の手口」と対抗策、「ルフィ」に続き摘発された詐欺集団が“カンボジアのリゾート”を拠点にした理由、「タナボタ摘発」のカンボジア特殊詐欺犯 警視庁は国際手配もパスポート返納命令も出していなかった) 日刊ゲンダイ「「ルフィ」一味が逮捕されても詐欺被害は減らず…日中混合特殊詐欺グループは別動隊か」 「両グループが同じフィリピンを拠点にして特殊詐欺をしていたとしたら、何らかの接点があってもおかしくありません。飲食店やキャバクラ、カジノなど、遊ぶところもかぶるし、裏社会に通じる共通の知り合いがいないわけがない。お互い情報交換をしていたことも十分考えられます」、「渡辺容疑者のグループは最盛期、かけ子だけで250人以上いて、拘束を免れた残党がまだフィリピンに大勢残っている。 渡辺容疑者のバックにはさらに黒幕がいるといわれているから、同じ組織に金が流れている可能性も否定できない」 ルフィ一味が逮捕されても一向に詐欺被害が減らないのは、別動隊を操る犯罪組織があるからなのか。捜査員たちも“巨悪”の存在にザワついている」、「渡辺容疑者のグループは最盛期、かけ子だけで250人以上いて、拘束を免れた残党がまだフィリピンに大勢残っている」、予想以上に大規模なようで、「残党がまだフィリピンに大勢残っている」、まだまだ一掃とはいかないようだ。 ダイヤモンド・オンライン 稲村 悠氏による「元公安捜査官も驚愕!強盗・特殊犯罪集団「巧妙な個人情報収集の手口」と対抗策」 「この犯罪グループは、末端の実行者を闇バイトで募集し、自らはフィリピンから末端の人物に指示するという何とも「効率的」な手法をとっていた。 そもそも、この手法は特殊詐欺で確立されたものと思われ、特殊詐欺においても、掛け子、受け子などの実行者を闇バイトという形で募集し、自らは表に出ない形で指揮し、捜査の手が届きづらいプロセスを作り上げていた」、「注力することになった一つが“情報収集”だ。 今回の広域強盗事件において、実行者は被害者宅に入った後に迷うことなく金庫に向かっていた。 その際、フィリピン刑務所内にいる指示者が、被害者宅の図面を見ながら携帯電話で「右に行け」などと実行者に指示していたとも言われている」、「ただの情報(Information)を、示唆を含む情報に昇華させたインテリジェンス(Intelligence)にする恐るべきノウハウが隠されていた」、すごい組織力と情報収集力だ。 「電話を使った情報収集方法」のなあでも、「高齢者宅に、自動音声で「電気料金に関するアンケート」の電話がかかり、「1カ月の電気代が5000円未満の方は“1”を、5000円以上の方は“2”を押してください」などと言われて、高齢者が“1“を押下してしまえば、即座に一人暮らしと把握されてしまうだろう」、には手口の鮮やかさに驚かされた。 「ターゲットの情報を引き出す手段として電話を活用する手法に変化してきている」、「犯罪集団が作る「闇名簿」には、高齢者らの口調や性格、警戒心の高さなども備考として記され、犯罪を行う上での貴重な情報となっている」、極めて合理的なやり方だ。 「家の図面まで作成していた事実があるが、配送業者や引っ越し業者から情報を買ったり、家のリフォームや納品を装った手口で自宅内を見たりする手法もある」、「口座情報や納税状況、さらに家族構成を把握できる戸籍などが自治体から流出することで、その闇名簿はより恐ろしい内容になる。 恐らく、金銭の授受や“ゆすり”などを通じて、自治体の協力者から情報を収集しているのだろう」、「口座情報や納税状況・・・戸籍」まで「自治体の協力者から情報を収集」、恐ろしいことだ。 「インターネットで「電話帳 個人」と検索してほしい」、私の住んでいる区で検索したところ、医者、商店などのが多く、個人はそれほど多くなく、私の名前もなかったので、一安心だ。 「特殊詐欺や強盗を行うために、情報をふんだんに含む闇名簿を作成し、売る集団が存在する。ここではっきりと分かるのは、犯罪集団にとって、情報は非常に価値があるものということだ」、その通りなのだろう。 「テレグラム開発元の意図にかかわらず、犯罪を助長してしまう機能が付いている」、恐ろしい時代になったものだ。 ・『自宅と電話対応で効果的な犯罪集団への対策とは  ここまで紹介してきた犯罪集団のさまざまな情報収集手段に対し、効果的な対処法は多くはない。 まず、意識として犯罪集団の“高い”実力を知った上で、「自身の情報は出さない」「自身の情報は既に出ていると思っておく」ことが肝要だ。 、私は電話は普段から留守電モードにしてあり、必要な場合はこちらから架け直すようにしている。 戸田一法氏による「「ルフィ」に続き摘発された詐欺集団が“カンボジアのリゾート”を拠点にした理由」 「特殊詐欺グループの日本人19人が現地の警察に拘束」、日本への送還の途中で、「警視庁」職員に逮捕された。 「19人はホテルの5部屋を貸し切り、生活用と仕事用を使い分けていたという。仕事用の部屋には十数台の事務用机が2列に並び、その上にパソコンが配備されていた。ホワイトボードには日付や日本人とみられる漢字やカタカナの名前が記載され、見た感じはまるでオフィスだったらしい。 生活は意外に質素で、食事は1階のレストランを利用していたものの、酒類のオーダーはほとんどなし。現地の公用語であるクメール語や植民地時代に使われていたフランス語も話せないため、ホテル関係者との会話もなかったという」、 「リゾートなのにもかかわらずホテルから外出することもなく、ほとんど部屋に閉じこもっていたようだ」、「ホテル」に缶詰めだったとは気の毒だ。 「特殊詐欺事件を巡ってはここ数年、日本の警察が取り締まりを強化したため、指示役が東南アジアに拠点を移しているとみられている。理由として時差が小さく、携帯電話の購入時に個人情報の登録が不要ということが背景にある」、なるほど。「日本の警察は権限さえ与えられれば、いつでも動き出せる」、これはやや「警察」を買いかぶり過ぎているきらいもある。 「海外で日本人は目立つんだ。俺らが現役の頃(約30年前)と違い、日本の警察から要請があれば面倒くさい連中はすぐに厄介払いされるさ」、そうであれば、いいのだが・・・。 日刊ゲンダイ「「タナボタ摘発」のカンボジア特殊詐欺犯 警視庁は国際手配もパスポート返納命令も出していなかった」 「カンボジアの現地当局が19人を拘束したきっかけは、ある「SOS」メールだった。 「ホテルで特殊詐欺をやらされていて外に出られない。助けて欲しい」 グループのメンバーとみられる人物から在カンボジア日本大使館にメールがあったのは、今年1月のこと。大使館から「ホテルに不審な日本人グループが滞在している」と連絡を受けた現地当局が1月24日、ホテルを捜索し、岡本容疑者ら19人の身柄を確保。スマートフォン64台、パソコン6台、被害者の名前が記載された名簿を押収した」、 「警視庁はグループの実態を把握しておらず、中心的人物が「オカモト」だと聞き、2年前に逮捕状を取った岡本容疑者と同一人物だと分かったという。「警視庁は岡本容疑者が海外に逃亡していることも知らなかったようで、国際手配どころか、パスポートの返納命令も出していなかった」、第三の記事では、筆者の戸田氏は「警察」が情報源なので、迎合的な記事になっているが、日刊ゲンダイは忖度せずに、「警察」の手落ちを厳しく指摘する。実態把握には、適しているようだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ゴーン問題(その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方) [企業経営]

ゴーン問題については、2021年11月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方)である。

先ずは、2021年11月14日付け東洋経済オンライン「終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/577356
・『一審判決に対し、日産の元役員であるグレッグ・ケリー氏の弁護団は即日控訴の意向を示した。 3月3日午前10時、東京地方裁判所104号法廷。そこには判決の言い渡しを受ける日産自動車元役員であるグレッグ・ケリー被告が座っていた。 金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)に対する判決は、懲役6カ月、執行猶予3年だった。 下津健司裁判長は「平成30年12月10日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2の1ないし4並びに平成31年1月11日付け追記訴状記載の公訴事実第1及び第2の各事実について、被告人グレゴリー・ルイス・ケリーは無罪」と述べ、少し間を置いてこう付け加えた。 「つまり2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪ということです」』、「2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪」、どういうことなのだろう。
・『日産が判決に対してコメント  裁判の争点は、有価証券報告書にカルロス・ゴーン元CEOの役員報酬を実際よりもかなり少なく、しかも故意に記載して関東財務局に提出したのかどうかだった。 罪が問われる対象期間は日産が2011年度~2017年度、ケリー氏が2010年度~2017年度まで。1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と報酬額を開示することが内閣府令で義務付けられたのは2010年度から。日産の対象期間が1年少ないのは時効が成立しているためだ(海外生活が長いケリー氏には時効が成立していない)。 容疑を認めていた日産には、検察の求刑どおり罰金2億円の判決が下った。無罪を主張し続けたケリー氏に検察は懲役2年を求刑したが、判決は懲役6カ月。しかも執行猶予がついた。 ケリー氏は判決の言い渡し後、「裁判所が(中略)1年分について(2017年度)だけ有罪としたことは理解できません」とのコメントを発表。弁護団も「最後の1年について有罪とした点は、明らかに誤っているため承服できない。控訴する」とし、完全な無罪判決の獲得を狙う。 日産は判決の翌日である3月4日にリリースを出し、罰金2億円の判決は「正当なご判断」とし、控訴はしないとした。 一方、ケリー氏の名前を挙げ「客観的な裏付け証拠がないと判断された年度があることについては予想外でした」と言及した。つまり、日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ。 東京地検は控訴していない。森本宏次席検事は3月9日の定例会見で、「無罪部分を有罪にできるかや、1審判決を承服できるかなどを高検と協議し、意見が一致したら控訴する」と述べるにとどまる。控訴期限は3月17日だ』、「日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ」、なるほど。
・『未払報酬は「存在した」  裁判での最大論点はゴーン氏への「未払報酬」が存在したかどうかだった。 実は、金融商品取引法や開示府令には、「いかなる決定がなされれば役員報酬として開示しなければならないかについて、具体的な規定があるわけではない」(下津裁判長)。 そこで下津裁判長はほかの裁判官と協議し、①報酬を決定する正当な権限を有する者が、②所定の手続きに従って報酬額を決定し、③所定の部署で報酬額を継続的に管理していれば、当然開示すべきとした。 これを本件に当てはめると、日産ではゴーン氏に他の取締役から役員報酬の決定が事実上一任されていたといえる。つまり、①の「正当な権限を有する者」はゴーン氏だ。 ②の「所定の手続き」はどうか。 手続き上は、ゴーン氏はほかのもう一人の代表取締役と協議して自身の報酬を決めることになっていた。だが、「本件当時のゴーン以外の代表取締役であった小枝(至元共同代表)、志賀(俊之元COO・副会長)、西川(廣人元社長兼CEO)は、協議を行わないことについて特段の異議を差し挟まず、ゴーン単独で決定することを容認していた」(判決)。 だから、「具体的な協議を行わなくても、協議を行ったとする慣行が確立していた」とした。このことから、②の所定の手続きも満たしていると裁判所は判断した。 ③の「継続的な管理」については、秘書室で、「報酬総額」、「実際に支払われた報酬額」「それらを差し引いた未払報酬額」を1円単位で管理。毎年、3月から4月にかけてゴーン氏へ報酬計算書を提示していた。 以上から①~③の条件を満たしていると判断し、裁判所は「ゴーンの開示すべき未払報酬が存在することが認められる」と結論づけ、主犯はゴーン氏だとした。 未払報酬は存在し、その主犯がゴーン氏だとなると、次の焦点は共犯者だ。 判決は、2010年度~2016年度まではゴーン氏と大沼敏明秘書室長との共謀が成立していたが、ケリー氏との共謀はなかったと認定した。未払い報酬を記した文書の作成をケリー氏に指示されたとする大沼氏の供述は客観的に裏付けられず、検察と日本版司法取引をした大沼氏の証言を「信用できない」と退けた。 ゴーン氏は「報酬総額」などの情報管理を大沼氏のみに指示。これらの情報はトップシークレット扱いで、ほかの取締役に知らされていなかった。報酬総額は、秘書室のスタッフ数名が知るのみでそれも断片的だった。経理部には有価証券報告書の提出直前に、それらの情報のうち「実際に支払われた報酬額」だけが一方的に伝えられただけだった。 ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している。2審ではこの点が最大の争点になりそうだ』、「ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している」、「2審ではこの点が最大の争点になりそうだ」、真相はどちらなのだろう。
・『最大焦点はゴーン裁判  執行猶予がついたことから自由の身となり、ケリー氏は早々に日本を発ちアメリカへ行った。2審では被告に出廷義務がなく、ケリー氏を法廷で見ることはないだろう。 日産とケリー氏の1審が終わったが、はたして、海外逃亡したゴーン被告の裁判はどうなるのか。 東京地検の森本次席検事は3月9日の定例会見で「公判を一番受けるべきはゴーン被告。引き続きゴーン被告に日本で裁判を受けさせたい気持ちに変わりはない」と語気を強めた。そして、ほかの国で裁判を受ける可能性については、「国籍のある国で裁判を受けるのは可能。ゴーン被告は『レバノンで受けたい』と言っているそうだが、ちゃんとした裁判が開かれるはずがない」と、いつになく饒舌だった。 これまで、日本での裁判を「あきらめていない」と繰り返してきた検察だが、逃亡したゴーンを日本に連れ戻すどんな奥の手を持っているのだろうか。 2018年11月の逮捕から3年余り。ゴーン事件は何も片づいていない』、「ゴーン事件は何も片づいていない」、このまま時間だけが無駄に経過していくのだろう。

次に、昨年4月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「ゴーン被告を「仏検察が国際手配」、フランスで出廷が避けられない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302353
・『日本からレバノンに逃亡した元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(68)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の罪で起訴=に対し、フランスの検察当局は21日、自動車大手ルノーの資金を不正に流用した疑惑を巡り国際逮捕状を発布した。ゴーン被告は日本の司法制度を「不公正」と批判する一方、フランスの司法制度は「信頼できる」と捜査を歓迎。訴追されても「自らの無罪を立証できる」と強弁していた。 ※ゴーン元会長は日本の司法的な立場は「被告」、フランス検察当局から見ると「容疑者」になりますが、本稿では被告と統一します※』、「フランスの検察当局」が「国際逮捕状を発布」、したことで事態は動き出すのだろうか。
・『「フランスに行くか」の質問に明言を避けたゴーン被告  米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版によると、国際逮捕状が発布されたのはゴーン被告とオマーンの自動車販売代理店スハイル・バハワン自動車(SBA)の現オーナーと元取締役ら計5人。 AFP通信によると、ルノーと日産の企業連合統括会社とSBAで交わされた計約1500万ユーロ(約21億円)の金銭授受を巡り、不正な流用や贈収賄、マネーロンダリングの疑いが持たれているという。) 容疑はヨットの購入やベルサイユ宮殿での結婚披露宴など、個人的な目的でルノーの資金を流用したとされる。ゴーン被告は容疑を否定しているようだと伝えている。 ゴーン被告は22日、フランスのニュース専門テレビBFMのインタビューに応じ「ルノーの資金を不法に得たり、流用したりしたことはない」と主張。その上で「判決が出たわけではなく、無罪を主張する準備ができている」と述べたが、フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた。 全国紙社会部デスクによると、フランス検察当局は2020年2月、検察よりも権限が強い予審判事に指揮を委ね、本格捜査に着手。予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取していた』、「予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取」、「ベイルート」は「フランス」の影響力が強いようだ。「ゴーン被告は」「フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた」、なるほど。
・『東京地裁の判決では「ゴーン被告が主犯」と認定  ゴーン被告の日本での起訴内容は、日産の元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)と共謀し、10~17年度の役員報酬総額が計約170億円だったのに、支払い済みの計約79億円だけを記載した有報を関東財務局に提出。退任後、相談役か顧問として受け取る未払いの報酬約91億円を除外したとされる(金融商品取引法違反)。 08年には私的な投資で生じた約18億5000万円の評価損を日産に付け替えたほか、09年にはこの投資に関する信用保証で協力してもらったサウジアラビア人実業家の会社に、日産子会社「中東日産」から計約12億8000万円余りを入金させたなどとしている(会社法違反)。 ゴーン被告の逃亡により“主役不在”で開かれた金融商品取引法違反事件を巡るケリー被告と法人としての日産の公判は60回を超え、東京地裁は3月3日、ケリー被告の起訴内容に「慎重に検討する必要」があるとして大半を無罪としながら、一部重要な点を重視し懲役6カ月、執行猶予3年(求刑懲役2年)、日産には求刑通り罰金2億円の判決を言い渡した。 判決によると、ゴーン被告の高額な報酬を開示せずに維持するため、支払い済みの報酬だけを有報に記載するよう元秘書室長に指示。未払い分を隠しながら報酬額の計算書なども作成させ、ゴーン被告は1円単位で把握していた。 その上で「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定されたわけだ。 ゴーン被告は共同通信のオンライン取材に応じ「日本の司法や協力した日産の体面を保つための判断だ」と批判。主犯とされたことには「不在の私に是が非でも罪を着せたいようだ。司法のごう慢さを示している」と主張した』、「判決で」「「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定」、なるほど。
・『ゴーン被告の裏切りでとばっちりを受けた人たち  前述のデスクによると、実は金融証券取引法違反事件では、検察側の完全勝利は厳しいかもしれないという予想はあったという。今回、ケリー被告が無罪となった部分は、司法取引した元秘書室長の証言に対する信用性を否定した結果だが、ほかにも過去に未払い報酬の不記載について違法かどうかの判例がなく、将来的に顧問や相談役として就任できないなど何らかの理由で報酬を受け取れなくなった場合はどうなるのか――など、予測不能な点があったという。 ただ、日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる。) ゴーン被告については、日産側から資料の提供を受けている会社法違反事件の方が有罪は堅いとみられていたが、公判が開かれる見通しはなく、もちろん判決が出る可能性もまずないだろう。 しかし、東京地裁判決が指摘した通り、ケリー被告には「直接的な利得」はなかったのだが、受けたとばっちりは軽くない。 日産は1月19日、ケリー被告が金融商品取引法違反事件に関与して損害を与えたとして、約14億円の賠償を求めて横浜地裁に提訴した。日産は金融庁から約24億円の課徴金納付を命じられ、既に納付した14億円について賠償を求めたのだ。 ケリー被告は二審で有罪になっても最高裁まで争うとみられるが、判決が確定すれば損害賠償が認められる可能性は高い。ケリー被告側は全面的に争うとみられ、第1回口頭弁論は5月12日に指定された。 ゴーン被告のとばっちりを受けたのはケリー被告だけではない。19年12月にレバノンへの逃亡を手助けしたとして、犯人隠避の罪に問われた米陸軍特殊部隊グリーンベレーの元隊員とその息子は昨年7月、実刑判決が確定し、塀の向こう側に落ちた。 事件を担当していた弘中惇一郎弁護士(ゴーン被告の逃亡後、辞任)も、裏切られた一人だ。数々の裁判で無罪判決を勝ち取るなど「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまったわけだ』、「日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる」、「弘中惇一郎弁護士」が「「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまった」、ついてなかったと諦めるしかなさそうだ。
・『フランスで出廷して戦うのかレバノンでさえずり続けるのか  ゴーン被告の両親はレバノン人で、同国では「ビジネスの成功者」「経営のカリスマ」として英雄だった。しかし、現在では威光は地に落ち、政府に匿(かくま)われた「国際的なお尋ね者」に成り下がってしまった。 日本の司法への不信感を理由に国外逃亡を企てたわけだが、感情的な発言ばかりが目立ち、主張する無罪の合理的な理由を明らかにしていない。 ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという。 日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう』、「ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという」、「日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう」、その通りだ。

第三に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「「日産元COOの志賀氏に直撃、「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方」を紹介しよう」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321011
・『日産元COOが語るゴーンの変節 「規模を追うことが野望に」  志賀俊之氏といえば、かつて日産自動車のCOO(最高執行責任者)を2005年4月から13年11月まで務め、10~12年には日本自動車工業会会長として東日本大震災を受けた困難な時期の日本自動車産業を引っ張った人物だ。 現在、官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の代表取締役会長・CEOとして日本のスタートアップ企業などの支援を手掛けている。日産COOや自工会会長を歴任した志賀氏と筆者は、筆者が現役のときから深い付き合いがある。今回、この100年に一度の大変革期に日本自動車産業が進むべき道というテーマで、インタビューを実施した。 だが、その前に志賀氏の古巣である日産と仏ルノーが今年2月初めに、両社が15%ずつを出資し合う対等の資本関係にすることで合意したという大きなニュースが飛び込んできたタイミングでもあるので、まずはインタビューの前編として、四半世紀にわたる日産・ルノー提携が「新連合」として再出発したことの背景や今後の行方について語ってもらった(Qは聞き手の質問)。 Q:今年(23年)に入り、トヨタ自動車の豊田章男社長の交代をはじめとして、スバル・マツダ・いすゞ自動車もトップ交代を発表するなど自動車業界の大変革期における新たな動きが活発化しています。中でも、自動車産業界として最大の出来事ともいうべきなのが、2月に入ってからの「日産・ルノーの対等出資合意」というニュースでした。ここは何としても志賀さんに聞かねば、ということで。 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) そう、確かにトヨタの豊田章男さんの社長交代発表から日本電産の関潤さん(日産出身)の台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)のEV責任者入りまで、ずいぶん多くのメディアからコメントを求められましたよ(笑)。日産とルノーの15%ずつ双方出資合意の件も、もちろんのことでした。ただ、多くが「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ』、「「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ」、どういうことなのだろう。
・『1999年3月に日産・ルノーが資本提携契約を結んだときに、私が交渉をやって締結に持ち込んだ役割をしただけに、不平等条約からの解放という“悲願達成”で喜んでいるだろうとのコメントを取りたかったのでしょうが、それは違う。 当時、倒産しかかっていた日産を、ルノーは助けてくれたのです。その後も、ルノーに搾取されてきたという見方もあるけど、それは大株主に還元してきただけのこと。「ルノーが日産をいじめてきた」みたいに見るのは、いかがなものかということなんです。 Q:確かに私も、石原俊さんが社長の頃から日産を長くウオッチしてきましたし、1990年代末に社長だった塙義一さんの苦悩もよく知っています。99年3月の塙さんとルイ・シュバイツァールノー会長(当時)の両トップの提携会見にも出席して取材しています。その後、資本提携で派遣されたカルロス・ゴーン元会長が業績をV字回復させたことで“日産の救世主”となりゴーン氏の長期政権が続いたわけですが、プロ経営者としての力量が誰しも認めた中で一転して“逮捕から逃亡”という結末となりました。いつからゴーン経営は“変節”したんですかね。 志賀氏 私は2005年にCOOに就任してから13年11月に日産の現役を降りたんですが、ゴーン“変節”は14年頃からなんですね。ルノーは4年ごとにCEOを交代するのですが、18年にゴーンはマクロン仏大統領から「(会長を)またやってくれ」と言われて、ルノー・日産を「世界最大のグループ」にする野心を明確に打ち出してきた。 それ以前からも、私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となったんですね。それから三菱自動車工業さんも傘下(16年10月)に収めたんです』、「私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となった」、なるほど。
・『筆者が現役記者として取材した中で、20世紀の日本自動車産業をリードしたのは、まさしくT(トヨタ)・N(日産)だった。さらに言えば、筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った。 時の塙義一日産社長は、自力再生の道は困難として外資との提携の道を探った。米フォードや独ダイムラーとも水面下で交渉したが、最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日、東京・経団連会館で資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというものだった(筆者はこの一連の動きをまとめた『トヨタの野望、日産の決断―日本車の存亡を賭けて―』を99年6月にダイヤモンド社から上梓)』、「筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った」、確かにかつては「日産」の方が「トヨタ」を上回っていた。「日産」が「最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日・・・資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというもの」、「ルノー」が「救世主」として登場したのを、思い出した。
・『ゴーン政権は日産のV字回復後も長く継続し、三菱自を傘下に収めて3社トップに君臨した。だが、ゴーンは18年11月に金融商品取引法違反で逮捕され被告の身となり、19年12月にはレバノンに逃亡した。 23年2月、ルノー・日産の資本関係はルノーが43%出資を15%に引き下げ双方15%ずつの対等となることで合意した。 Q:99年6月にルノーからゴーンCOO(当時)が派遣され、リストラ断行を含めた「日産リバイバルプラン(NRP)」が実行されました。ゴーン氏は「日産の救世主」と呼ばれ、05年にルノー社長CEOにも就任し日産社長CEOと兼ねたことで、志賀さんをCOOに抜てきしました。 以来、志賀さんはゴーンの右腕としてCOOを続けたわけですが、志賀さんが言うように、どうも志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。ゴーン長期政権が前半と後半で大きく変貌したことが、今回のルノー・日産の資本関係見直しにつながっているのでしょうね』、「志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。志賀氏 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントのすごさは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩(じくじ)たる思いもあります。すでに19年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むようなことは一切していないが、日産の将来、方向に期待するものは当然大きいですよね」、なるほど。
・『ルノーの事業再編の新戦略は「相当、的を射ている」  Q:2月6日にロンドンで日産とルノーの日産株出資引き下げの資本関係見直し合意の会見が行われました。99年に資本提携して以来続いてきた“親子”の関係が、双方15%ずつ出資の対等の関係となる。昨年来の交渉が長引いてきてようやく合意に達したわけですが、これはルノーの事業構造改革の一環であるルノーの電気自動車(EV)新会社に日産が最大15%出資し、グループの三菱自も参画を検討することが条件であり、会見は3社トップの合同によるものでした。志賀さんはこれをどう受け止めたのですか。 志賀氏 ルノーのルカ・デメオCEOの戦略を最初に聞いたときは、相当、的を射ているなと思ったんですよ。やはりトヨタとEV事業で先行する米テスラの時価総額を見ても大きな開きが出ている。私は現在、投資ファンドの世界に身を置いていますが、いまや伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました。 もう一つは、43年間の日産での経験から言うと、自動車産業は20年前に「国際化」から「グローバル化」へと進んで(生産や経営が)フラット化されたのですが、ルノーの新戦略は、世界中に工場を造って大量生産でばらまくようなグローバリゼーションのビジネスモデルは終焉を迎えたことを象徴しています。ゴーンは最後に“量”を求めたが、むしろ今は地域ごと、国ごとの戦略が求められています』、「伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました」、なるほど。
・『ルノー・日産というクローズな関係だけでなく、新たな提携関係が求められてきたということでしょう。「400万台クラブ」や「1000万台クラブ」なんてなくなり、ルノー・日産の資本関係の見直しも起こるべくして起こったといえます。 Q:ルノーもフランス、というより欧州における立ち位置や業績面の打開が求められて事業構造改革に踏み切ったということもあるのでしょう。これを受けて日産サイドはルノーEV新会社「アンペア」への出資を決める一方で、ルノーとの資本関係を15%ずつ出資する対等関係を認めさせました。今後、日産はどうなるのですかね。 志賀氏 先述したように私は19年に日産取締役を退任してから経営とコンタクトしていないし距離を置いているのですが、“感じ”としては、従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります。 もちろん、二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね。 Q:三菱自動車はどうなんですかね。私は三菱自も長らく取材してその変遷もしっかり見てきましたが、1970年に三菱重工業から独立して以降、三菱グループにおける“親の役”は同社でした。しかし、18年に三菱商事が三菱重工から株を買い取り保有比率を20%に引き上げてから、ここへ来て三菱商事が後見人の立場に代わってきた。いまは日産が三菱自を傘下に収めているけど、一時は三菱商事がルノー保有の日産株を半分買い取る構想も水面下であったと聞きます。それぞれの歴史の変化の中で、3社連合において三菱自はどうするのですかね』、「従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります」、「二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね」、なるほど。
・『志賀氏 三菱自動車さんは、この3社連合の新たな関係をうまく利用していけばいいと思いますよ。何と言っても東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない。私もかつて日産で東南アジアを経験(ジャカルタ事務所長などを経験)していますから。ここは、日産は弱いしルノーもほとんどやっていないけど、市場の成長性は高い。そうはいっても販売地域は東南アジアだけではないので、欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい。 三菱自動車の3社連合のポジションは、CASE投資が必要なところでいいとこ取りをすればいいと思いますよ。 Q:いずれにしても今回のルノー・日産・三菱自の3社連合は、新たな関係で再出発ということですが、いろいろな課題を抱えていますね。かつては「ルノー・日産統合論」から「日産・ホンダ合併案」、「三菱商事のルノー保有株半分買い取り案」などが水面下で揺れ動きましたが、今回実に23年ぶりに対等な形の日仏新連合になったということで、どうなるか注目されます。 志賀氏 自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています』、「東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない」、「欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい」、「自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています」、今後の「日産」の「変革」に期待したい。
タグ:ゴーン問題 (その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方) 東洋経済オンライン「終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉」 「2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪」、どういうことなのだろう。 「日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ」、なるほど。 「ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している」、「2審ではこの点が最大の争点になりそうだ」、真相はどちらなのだろう。 「ゴーン事件は何も片づいていない」、このまま時間だけが無駄に経過していくのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法氏による「ゴーン被告を「仏検察が国際手配」、フランスで出廷が避けられない理由」 「フランスの検察当局」が「国際逮捕状を発布」、したことで事態は動き出すのだろうか。 「予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取」、「ベイルート」は「フランス」の影響力が強いようだ。「ゴーン被告は」「フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた」、なるほど。 「判決で」「「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定」、なるほど。 「日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる」、「弘中惇一郎弁護士」が「「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまった」、ついてなかったと諦めるしかなさそうだ。 「ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという」、「日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう」、その通りだ。 佃 義夫氏による「「日産元COOの志賀氏に直撃、「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方」 「「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ」、どういうことなのだろう。 「私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となった」、なるほど。 「筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った」、確かにかつては「日産」の方が「トヨタ」を上回っていた。 「日産」が「最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日・・・資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというもの」、「ルノー」が「救世主」として登場したのを、思い出した。 「志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。志賀氏 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントのすごさは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩(じくじ)たる思いもあります。すでに19年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むようなことは一切していないが、日産の将来、方向に期待するものは当然大きいですよね」、なるほど。 「伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました」、なるほど。 「従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります」、 「二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね」、なるほど。 「東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない」、「欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい」、「自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています」、今後の「日産」の「変革」に期待したい。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

女性活躍(その26)(「ベテラン女性記者」が「夜のサシ取材」に気を使わなくてよくなった瞬間 感じた「少しの寂しさ」、管理職は自分が成長できるチャンス 健康社会学者・河合薫が説く「10のうち7」を割り切る考え方、日本の理系女子割合はOECDで最低…「理数好き」も文系を選ぶ残念な理由【おすすめ本紹介】 ~『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山 広美 著)を読む、安藤優子氏が説く 古すぎる自民党の女性認識や家族観はどこから来て なぜ頑迷なのか) [社会]

(はじめに)昨夜はSo-netのサーバートラブルできちんと更新が出来なかったので、まず、昨日分を更新する)

女性活躍については、本年3月18日に取上げた。今日は、(その26)(「ベテラン女性記者」が「夜のサシ取材」に気を使わなくてよくなった瞬間 感じた「少しの寂しさ」、管理職は自分が成長できるチャンス 健康社会学者・河合薫が説く「10のうち7」を割り切る考え方、日本の理系女子割合はOECDで最低…「理数好き」も文系を選ぶ残念な理由【おすすめ本紹介】 ~『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山 広美 著)を読む、安藤優子氏が説く 古すぎる自民党の女性認識や家族観はどこから来て なぜ頑迷なのか)である。

先ずは、本年3月26日付け現代ビジネスが掲載した毎日新聞論説委員の佐藤 千矢子氏による「「ベテラン女性記者」が「夜のサシ取材」に気を使わなくてよくなった瞬間、感じた「少しの寂しさ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104659?imp=0
・『日本一の「オッサン村」ーー永田町の非常識、政治メディア の実態。 全国紙初の女性政治部長が克明に記す「男社会」のリアル。 なぜ、永田町と政治メディアにオッサンが多いのか? 幾多の「壁」に直面してきた政治記者が男性優位主義の本丸で考えた、日本社会への処方箋。 *本記事は、佐藤千矢子『オッサンの壁』(講談社現代新書)を抜粋・再編集したものです』、「全国紙初の女性政治部長」とは大したものだ。
・『夜の「サシ」取材  1993年夏に自民党が野党に転落した後、私は厚生省(現在は厚生労働省)や外務省など官庁取材を経て、1996年に橋本政権ができるとまた梶山官房長官番になるのだが、そのあたりの詳しい話は、繰り返しになるので省こうと思う。 ただ、このころになると中堅・ベテラン記者になるため、違う問題が生じてくる。 女性の政治記者にとってのハードルの中に、政治家、政治家の秘書、官僚らとの「サシ」取材の問題がある。夜のサシ取材はなかなか気を遣う。 例えば、夜中に男女が2人で焼き肉を食べていたら、男女関係があると見られがちだが、記者の場合はそうではない。それが日常的な仕事だ。 こちらが気にしなくても、相手が写真誌などを警戒して嫌がることも多い。正当な取材なのに、あたかも男女関係があるように見せかけ、はめようと思えば、いくらでもできる。そういうことを警戒するのは、政治家よりも官僚に多かった。「誰かに見られると困るから、個室か半個室がいい」と言われることもよくある。 もちろん日中に取材できれば、それに越したことはないが、忙しい中で相手が早朝や深夜にしか時間を取れないという場合はどうしてもある。電話やメールですむ取材ならそれでいいが、重要な取材は昔も今も対面が基本だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、対面取材が制限され、オンライン取材や電話取材に軸足を移さざるを得なかった時期もあるが、オンラインや電話では政治の機微に触れる話はしにくいし、やはり重要なニュアンスが抜け落ちてしまう。) 若いころは、サシ取材には本当に気を遣った。男女という要素をほとんど気にせずにサシ取材ができるようになったのは、政治部でキャップ、デスクなど責任ある立場を任されるようになってからだ。こちらにも自信が出てくるし、相手も粗雑な扱いはしなくなる。 ほんの5年ぐらい前のことだが、政治家の秘書が、ある女性記者からサシで飲みに行こうと誘われ、悩んでいた。その秘書は政局の筋読みが正確で、重要な取材対象だった。 「どうしようかな、やっぱりまずいかな。○○ちゃんとサシはまずいよな」と言っている。 「もう1人、誰かを誘ったら」とアドバイスしたら、「そうだね。それじゃあ、あいつを誘おう」と、他社の男性記者に声をかけていた。その男性記者には気の毒なことだ。いや、女性記者を利用して楽に取材機会が得られるのだから、「儲けもの」と思う男性記者もいるかもしれない。このあたりは、記者の個人的な力量と感性によって差がある。 その後、数週間して、私もその秘書に聞きたいことがあり、一緒に飲みながら話をしようかということになった。しかし、先日の様子を見ていたので「誰か誘おうか。サシがまずければ」と言うと、「なんでまずいの。いいじゃん。2人で行こうよ」とあっさり言われた。 私は「○○ちゃん」のように、相手が取材を受ける時にウキウキするような女性記者ではなくなっていた。年齢と立場の違いが大きいだろう。「ああ、これで夜のサシ取材にピリピリと気を遣わなければならない、長い間の苦労がようやく終わったんだな」と感慨深く思うと同時に、少し寂しくもあった。 さらに連載記事<「女性がいると会議が長引く」森喜朗元首相の女性蔑視発言に共鳴して噴出した、オッサンたちの「とんちんかんな本音」>では、著者が実際に体験した「オッサンの壁」について詳しく語ります。 本記事の抜粋元『オッサンの壁』(講談社現代新書)では、永田町の「驚きのエピソード」や政治記者の「過酷な競争」について、著者の実体験をもとに詳しく語っています。ぜひ、お買い求めください』、「私は「○○ちゃん」のように、相手が取材を受ける時にウキウキするような女性記者ではなくなっていた。年齢と立場の違いが大きいだろう。「ああ、これで夜のサシ取材にピリピリと気を遣わなければならない、長い間の苦労がようやく終わったんだな」と感慨深く思うと同時に、少し寂しくもあった」、「女性」を卒業した筆者の悲哀がにじみ出ている。
・『永田町 「驚きのエピソード」 ・総理秘書官の抗議 「首相の重要な外遊に女性記者を同行させるとは何ごとだ!」 ・夜回り取材時、議員宿舎のリビングで、いきなり抱きついてきた大物議員 ・いつも優しい高齢議員が「少しは休みなさい」と布団を敷き始めた……さて、どうする? ▽政治記者の「過酷な競争」 ・事実無根の告げ口をされ、梶山静六に激怒される 「あんたが漏らしたのかっ!」 ・空恐ろしかった一言 「女性で声が一人だけ高いから、懇談の場の空気が乱れるんだよ」 ・毎朝の「ハコ乗り」競争、夜の「サシ」取材……入浴時間を削って働く激務の日々』、それぞれ説明が欲しいところだが、空想を膨らますほかないようだ。

次に、3月26日付けAERAdot「管理職は自分が成長できるチャンス 健康社会学者・河合薫が説く「10のうち7」を割り切る考え方」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2023032300079.html?page=1
・『負担の大きさから敬遠されがちな管理職だが、発想の転換でそのとらえ方も変わってくる。鍵を握るのは自分の成長だ。900人以上のビジネスパーソンに取材した健康社会学者・河合薫さんが解説する。AERA 2023年3月27日号の記事を紹介する。 私は900人以上の管理職を取材してきましたが、「世の中で最も大変な仕事じゃないか」と思うこともあります。管理職のポストは減っていく中で任される仕事は増え、年々過酷になっている。昔は他部署の上司との「斜めの関係」で助言を得たりもできたけど、いまは許されない。「課長にならなきゃよかった」「管理職にはなりたくない」という声も聞きます。 会社側にも責任があります。管理職とはプレーヤーとは明らかに別の、人をマネジメントしつつ経営的なところに関わっていく仕事。「管理職は何のためにあるのか」を明確に意味づけするメッセージを出しつつ、ヒューマンスキルの向上も含めた十分なトレーニング(研修)が必要なのですが、決定的に欠けている。学ぶ機会があれば「大変さ」の中でも、「管理職などできないと思っていたけど、できるな」などと実感でき、自分が変わり、成長するチャンスにできると思います。 「上と下にはさまれた苦労」もよく言われます。ただ、考えてみれば上司があなたに難しいことを言ってくるのは、「その上司の上司」に評価されないから。「上司の顔を立てる」ことも組織で生き残るためには大切です。10のうち7くらいは上司の出世に役立つことをやると割り切り、残りの3割で管理職のポジションと裁量権を「利用して」、自分が成長できそうなことを仕事人に徹して一生懸命やってみる。1か10かではなく、発想の転換で管理職のとらえ方も変わってくるはずです。 「部下が言うことを聞かない」も、「聞かせよう」がすでに驕りです。ここも「上司に7、自分に3」と同じで、部下がやりたいと思っていることを引き出しつつ、「だったらこれをやってみれば」と、部下の仕事の役に立つことを言ってあげるように心がける。心の距離が縮まったら、「ちょっと協力してもらえないかな」と持っていく。 部下を成長させるには、現場で熱くなった経験が一番大事。ただ、部下の世代の価値観に合ったやり方で熱くさせる工夫が必要です。そこも考えつつ学び、考え、挑戦してみる。他企業の管理職とも意見交換してみる。そんな過程で、「部下を動かす」ことが逆に面白くなってくるのではないかと思います』、「管理職とはプレーヤーとは明らかに別の、人をマネジメントしつつ経営的なところに関わっていく仕事」、課長クラスでは、プレイング・マネジャーの性格が強い場合も多い。「10のうち7くらいは上司の出世に役立つことをやると割り切り、残りの3割で管理職のポジションと裁量権を「利用して」、自分が成長できそうなことを仕事人に徹して一生懸命やってみる。1か10かではなく、発想の転換で管理職のとらえ方も変わってくるはずです」、「「部下が言うことを聞かない」も、「聞かせよう」がすでに驕りです。ここも「上司に7、自分に3」と同じで、部下がやりたいと思っていることを引き出しつつ、「だったらこれをやってみれば」と、部下の仕事の役に立つことを言ってあげるように心がける。心の距離が縮まったら、「ちょっと協力してもらえないかな」と持っていく」、なかなか巧みな処世術だ。

第三に、3月31日付けダイヤモンド・オンライン「日本の理系女子割合はOECDで最低…「理数好き」も文系を選ぶ残念な理由【おすすめ本紹介】~『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山 広美 著)を読む」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320362
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、OECD加盟国で最下位という、日本の理系学生における「女性比率の低さ」の原因を探り、ジェンダーバイアスの実態に迫る一冊です』、意欲的な本のようだ。
・『思考停止につながる「そういうものだ」という固定観念  今年3月24日に最終回を迎えたテレビ東京系列のドラマ『今夜すきやきだよ』は、主人公二人のウィットに富む会話や、シンプルながら魅力的な料理の映像が毎回楽しめる良作だった。 谷口菜津子作の同名漫画を実写化したこのドラマは、性格が正反対のアラサー女性2人の共同生活を通して、現代の結婚観や友情のあり方を描いていた。特にハッとさせられたのが、トリンドル玲奈演じる主人公の一人・浅野ともこが、語気を強めて「私、『そういうもの』という言い方が大っ嫌い!」と言い放つ場面だった。 ここで言う「そういうもの」とは、例えば「なぜ結婚したら妻が料理を作らなくてはならないのか」「なぜ結婚したら女性が姓を変えなくてはいけないのか」といった疑問に答えるときに使われるものだ。 「そういうものだからだよ」と。 他者に恋愛感情を抱きづらいアロマンティック(注)として描かれるともこは、作中一貫して「そういうもの」に抵抗し続けた。 「そういうもの」とは、たいてい根拠のない固定観念を表している。もっと強い言い方をするならば「思考停止」した言葉といえる。ジェンダー差別にもつながりかねない思考や行動を問題視し、悪習を改めないまま残すことになるからだ。 こうした思考停止が、学問やビジネスの場面でもイノベーションの妨げになるのは言うまでもない。 今回紹介する書籍『なぜ理系に女性が少ないのか』は、「女性は理系の学問に不向き」といった「そういうもの」、すなわち固定観念が染み付いた日本の社会風土の実態を、各種調査データや先行研究などから明らかにしている。 そしてそれを踏まえ、高等教育機関(大学・大学院など)の理系学生における女性割合が「OECD加盟国の中で最低」である日本の現状を改善するために何をするべきかを論じている。 著者の横山広美氏は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授などを務めており、科学技術社会論を専門とする女性研究者である』、「今回紹介する書籍『なぜ理系に女性が少ないのか』は、「女性は理系の学問に不向き」といった「そういうもの」、すなわち固定観念が染み付いた日本の社会風土の実態を、各種調査データや先行研究などから明らかにしている。 そしてそれを踏まえ、高等教育機関(大学・大学院など)の理系学生における女性割合が「OECD加盟国の中で最低」である日本の現状を改善するために何をするべきかを論じている」、興味深そうだ。
(注)アロマンティック:他人に恋愛感情を抱かないセクシュアリティ(JocRainbow)。
・『女子学生の選択肢を狭めかねない「ステレオタイプ脅威」とは?  横山教授は、日本は理系大学生の女性割合が低いだけでなく、そもそも大学進学においても男女格差が大きい国であるという事実を指摘。その背景には「(学問的な)優秀さは男性のものであり、女性には不要である」という、日本固有の社会風土があると考察している。 本書では、その社会風土の存在を裏付ける一つのエピソードが紹介されている。 OECD主催の「PISA」という15歳の生徒が受ける国際学力テストにおいて、2018年の数学の成績は、男女ともに日本がトップクラス。日本の生徒の中では男子の成績が女子を上回ったが、その差はわずかだった。 横山教授の共同研究者が、このデータを国内の某大学の学生に見せたところ、「日本はやはり、男子の方が成績の良い国なんですね」という反応が複数あったそうだ。 「日本は男女ともに他の国よりも成績が良い」ということではなく、わずかな差を捉えて「やっぱり男子の方が優秀」という感想を漏らすのは、前述の「優秀さは男性のもの」といった日本の社会風土が根強いことを示していると、横山教授は考えている。 だが実際はもちろん、数学が得意な人も苦手な人も、男女を問わず存在する。 そもそも数学の学力の男女差が「生まれながら」なのか、「育ちによる」のか、という論争は国内外で長年にわたり続いており、決定的な結論は出ていないという。 そして、昨今の生物学的要因に着目した研究では、数学の得意・不得意を左右する要因は「性差」よりも「個人差」が大きいとする結論に傾きつつあるようだ。 「生まれ」よりも「育ち」が重要であることが分かってきたにもかかわらず、日本で理系に進む女性が少ないのはなぜか。その要因として挙げられるのが「ステレオタイプ脅威(stereotype threat)」だ。 ステレオタイプ脅威とは、「男性は○○に向いていない」「女性は○○が苦手」といったネガティブな固定観念が人々の心に刷り込まれた結果、実際に当人のパフォーマンスが低下してしまうことだ。 本書の内容からは外れるが、広島大学大学院の森永康子教授も、このテーマの研究に力を入れている人物だ。 森永教授らの論文によると、数学の試験で好成績を収めた女子生徒に「女の子なのに算数ができてすごいね」と声をかけると、当人は「女の子なのに」という言葉に気持ちがそがれてやる気をなくす、といった事象があったそうだ。) 本書の著者である横山教授も、物理学や数学に「男性が得意とする科目」というイメージが強いことから、「思春期を迎えた女子生徒が男っぽく見られるのを嫌って、理系科目に苦手意識を持つこともある」と推測している。 ステレオタイプ脅威は、まさに冒頭で触れた「そういうもの」の弊害といえるだろう。 ちなみに、筆者の同僚の女性の娘さん(小学1年生)は「好きな教科は算数!」と言っているそうだ。「そのまま数学や理科が得意になって理系に進めば素敵なことだ」と同僚は考えているそうだが、ステレオタイプ脅威が将来の選択肢を狭めないことを祈りたい』、「ステレオタイプ脅威とは、「男性は○○に向いていない」「女性は○○が苦手」といったネガティブな固定観念が人々の心に刷り込まれた結果、実際に当人のパフォーマンスが低下してしまうことだ」、「物理学や数学に「男性が得意とする科目」というイメージが強いことから、「思春期を迎えた女子生徒が男っぽく見られるのを嫌って、理系科目に苦手意識を持つこともある」と推測」、確かにありそうな話だ。
・『日本にはもっと理系女子のロールモデルが必要  横山教授は本書で、日本と英国における自身の研究を踏まえ、日本には理系女性研究者のロールモデルが足りないと指摘。もっと若手の女性物理学者や女性数学者たちが注目されるべきだと主張している。 その研究では、日本と英国(イングランド)在住の、20歳から69歳までの男女約1000人(男女比はほぼ半々)を対象に「数学と物理学」にまつわる質問を行った。 質問内容は「当該分野の男性的カルチャー」「幼少時の経験」「自己効力感の男女差」「性差別についての社会風土」に関するものだ。 その結果、イングランドでは「物理学における女性のロールモデルが思いつかない」と答えた人ほど「物理学に対して男性のイメージが強い」という傾向が見られた。一方で、日本ではこの項目に有意な結果が出なかったという。 この文面だけを見ると、「日本では物理学に対するステレオタイプが希薄であり、意外とジェンダー差別がない」と思えるかもしれないが、実際はそうではない。 日本ではロールモデルそのものが現状ほとんどないために、物理学とジェンダーを結び付けて考える人のサンプル数も少なく、有意な結果として表れなかったのだ。 ここからは私見だが、理系女子学生や女性研究者を「リケジョ」と呼ぶのが一時期流行した。筆者も当時関わった媒体で、横山教授を含む何人かの「リケジョ」を取材したことがある。 「リケジョ」という呼称には、ジェンダー差別を助長するものとして批判の声もある。理系に女性が希少であるゆえの呼称ではあるが、女性が多い看護学部や文学部の男子学生を「カンダン」「ブンダン」と呼ぶことはない。「女性は理系科目が苦手」という意識の裏返しの揶揄(やゆ)的な呼称ともいえるのは確かだ。 しかしながら、横山教授が主張するように、当面めざすべきは「理系女性のロールモデル」の可視化だとすれば、そのためにプラスの意味で「リケジョ」という呼称を用いるのは有効な手段となるのではないだろうか。 女性が「理系を選んだ少数派」ではなく「憧れの存在」として「リケジョ」を見るようになるのが理想的だ。 「リケジョにならない」のが普通であり、世の中の大多数が「そういうもの」だと思っていたら、将来の貴重な人材の可能性をつぶすことにもなりかねない』、「横山教授が主張するように、当面めざすべきは「理系女性のロールモデル」の可視化だとすれば、そのためにプラスの意味で「リケジョ」という呼称を用いるのは有効な手段となるのではないだろうか。 女性が「理系を選んだ少数派」ではなく「憧れの存在」として「リケジョ」を見るようになるのが理想的だ」、その通りだ。
・『社会風土が変わり「リケジョは当たり前」になってもいい  そうした状況を変えるために、われわれにできることは、世の中に「そういうもの」があるという事実を受け止めた上で、そのどこが間違っていて、どこまでが正しいのかを知ること。そして、しっかりとした判断軸、いわば「自分の物差し」を持つことではないか。 「リケジョになること」も魅力的な選択肢であり、女性が理系に進むのも当たり前である――。そうした価値観を多くの人が共有できれば、社会風土も変わっていくはずだ。 本書は単に「理系に女性が少ない理由」を学べるだけでなく、人々の意識の根底に潜むステレオタイプとの向き合い方についても考えさせられる一冊だ。 ジェンダーに限らず、日本社会の「そういうもの」に一度でも疑問を持ったことがある方は、ぜひ手に取って見識を深めていただきたい』、「世の中に「そういうもの」があるという事実を受け止めた上で、そのどこが間違っていて、どこまでが正しいのかを知ること。そして、しっかりとした判断軸、いわば「自分の物差し」を持つことではないか。 「リケジョになること」も魅力的な選択肢であり、女性が理系に進むのも当たり前である――。そうした価値観を多くの人が共有できれば、社会風土も変わっていくはずだ」、同感である。

第四に、4月10日付け日刊ゲンダイが掲載したキャスター・ジャーナリストの安藤優子氏による「安藤優子氏が説く 古すぎる自民党の女性認識や家族観はどこから来て、なぜ頑迷なのか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321150
・『岸田首相の同性婚に対する認識や首相秘書官のLGBTQへの差別発言には、自民党の「伝統的家族観」が透けて見える。先月末、「たたき台」が出された少子化対策も、政権与党の家族や女性に対する意識が変わらなければ効果が出ないだろう。そんな中、注目されているのが「自民党の女性認識 『イエ中心主義』の政治指向」という一冊。著者は、長年のテレビキャスター業の中で抱いた疑問を大学院で研究、博士論文にまとめたという。古すぎる自民党の家族観は、どこから来て、なぜ頑迷なのか(Qは聞き手の質問、Aは安藤氏の回答)』、安藤優子は保守的過ぎて、好きではないが、自民党の考えを探るには適任だ。「博士論文にまとめた」というのも大したものだ。
・『Q:LGBTQや同性婚、少子化の問題がクローズアップされ、著書が注目されています。昨夏に刊行された際、自民党から反応があったそうですね。 A:最初は「えっ」って。でも、意外に興味を示してもらえて。自民党の中でも早期に夫婦別姓を実現する議員連盟などから、話を聞かせてほしいというリアクションがありました。決してアゲンストな反応ではなく、そういう考え方もあるのかと捉えていただけたのは良かったです。 Q:著書のタイトルに「イエ中心主義」とあります。自民党の女性認識や家族観について、どんなことが分かったのでしょう? A:研究の出発点は「なぜ日本はこんなに女性の国会議員が少ないのか」でした。そして、女性に注がれている「らしくあるべき」などの社会の目線がどこから来たのか、という疑問にたどり着いた。研究を進めていくと、それは、突然降って湧いたりとか、誰かが種をまいて芽を出し、ふんわりとしたところで植えつけられたものではなく、一定の意図を持って再生産されてきたということが分かった。 自民党は長らく政権与党としてこの国の政治を牽引し、同時に日本の政治文化をつくってきました。それには、役割分担論も含まれます。まず母親、良き妻として頑張れとか、子どもを産んで育てて一人前とか。そうした価値観は、自民党の経済政策として、1970年代に再評価されたものが戦略的に再生産され続けてきた、ということを本の中で解き明かしているんです』、「自民党は長らく政権与党としてこの国の政治を牽引し、同時に日本の政治文化をつくってきました。それには、役割分担論も含まれます。まず母親、良き妻として頑張れとか、子どもを産んで育てて一人前とか。そうした価値観は、自民党の経済政策として、1970年代に再評価されたものが戦略的に再生産され続けてきた」、その通りだ。
・『個の尊重が欠落した「枠の保守」  Q:伝統的な家族観は、そもそも経済政策だったんですか。 A:1970年代、女性に「家庭長」という奇妙な役割を与えて、家庭内安全保障を機能させたのです。女性が家庭長として、子どもをちゃんと育て、夫を元気で送り出し、おじいちゃんおばあちゃんの面倒をつつがなく見て、家庭の中の安全保障を担えば、ひいては国の福祉予算が減免されるという経済政策です。つまり、家庭長という形で女性に無償の労働負担を強いたわけで、女性は家庭長たる者が最も美徳とされる価値観が強調されるようになっていきました。女性は家の構成員としては認識されても、個人として認識されず、常に誰かに従属するものとされてきた。私はこれを「女性の個人としての認識の放置」と呼んでいます。 Q:今もその状態が続いている? A:女性に対する認識は一度たりとも変更や見直しが行われていません。政治の無作為の作為です。個人を尊重しないのは人権問題であり、LGBTQや夫婦別姓の問題の根源と、ものすごくリンクする。自分の性や指向に対しての自由は、人権そのものじゃないですか。常に家を中心とした価値観みたいなものが、個の尊重を阻んでいます。今の対立の構図そのものですよね。例えば、岸田さんは同性婚について「社会が変わってしまう」とおっしゃった。 パパとママがいて、2人の子どもがいてという、今やどこに行ってしまったか分からないような、税金計算する時のモデルケースみたいな家庭の形が、社会だとおっしゃりたいのかもしれない。しかし、「形が変わってしまう」のは枠組みであって、そこで圧倒的に欠落してるのが、パパもママもひとりの人間なんだよっていう個の尊重です。LGBTQの問題も夫婦別姓の問題も、別に全員にそうしろと言っているわけじゃない。選択の自由をくださいと言っているのであって、すべて禁止でなければならないという考え方は「枠の保守」なんだと私は考えています』、「家庭長という形で女性に無償の労働負担を強いたわけで、女性は家庭長たる者が最も美徳とされる価値観が強調されるようになっていきました。女性は家の構成員としては認識されても、個人として認識されず、常に誰かに従属するものとされてきた。私はこれを「女性の個人としての認識の放置」と呼んでいます」、「女性に対する認識は一度たりとも変更や見直しが行われていません。政治の無作為の作為です。個人を尊重しないのは人権問題であり、LGBTQや夫婦別姓の問題の根源と、ものすごくリンクする」、「岸田さんは同性婚について「社会が変わってしまう」とおっしゃった・・・今やどこに行ってしまったか分からないような、税金計算する時のモデルケースみたいな家庭の形が、社会だとおっしゃりたいのかもしれない。しかし、「形が変わってしまう」のは枠組みであって、そこで圧倒的に欠落してるのが、パパもママもひとりの人間なんだよっていう個の尊重です。LGBTQの問題も夫婦別姓の問題も、別に全員にそうしろと言っているわけじゃない。選択の自由をくださいと言っているのであって、すべて禁止でなければならないという考え方は「枠の保守」なんだと私は考えています」、その通りだ。
・『女性が輝く社会」は女性政策とは呼べない  Q:確かに、正社員の夫、専業主婦の妻、子ども2人のモデル家庭が、年金計算などでまだ使われています。非正規雇用は女性が多いですしね。 A:1970年代の文献に「家庭長としての役割をきちっと果たした上で働くのであればパートタイムが望ましい」と書いてあるんですよ。当時はそれをもって社会進出と呼んでいた。そこから今、どれだけ前に進んだのでしょうか。働く環境や同一労働同一賃金など、制度や政策を整えようとしていますが、根底にある女性に対する認識が本当に変わったのかどうか。女性がこうあるべきみたいな意識は、私たちが思うより根深いですよね。 Q:意識改革は政治の世界が最も遅れています。男女平等参画に関する内閣府の世論調査でも、そんな結果が出ました。 A:例えば女性政策でいうと、安倍政権の「女性が輝く社会」をまず頭に浮かべます。でも、あの「女性が輝く社会」って、ほとんどが女性を労働市場に戻すための経済政策、もしくは労働政策です。だったら「女性が働ける社会」と直訳した方がいい。女性が働ける社会のために、待機児童ゼロや育休の奨励などいろいろありました。最近は男性の育休も奨励していますが、あれは「子どもがいても女性が働ける社会の実現」であり、私は女性政策とは呼ばない。もっと人権に配慮したものを女性政策と呼んでほしい。 Q:人権に配慮した女性政策とは? A:人権というと、なにか小難しいことのように捉えられてしまいがちですが、相手と自分の違いをお互いに容認し、許容するのが人権を尊重すること。そんな大仰なものじゃない。人権に配慮した女性政策とは、例えば、病気の時に誰かに相談するシステムづくりとか、子育てに行き詰まった時に、その女性がたったひとりでも生きていけるように援助する政策。現状は、妻として生きる女性が子どもを育てながら仕事をすることを前提にしているじゃないですか。そうではなく、非正規雇用だろうが正規雇用だろうが、結婚していようが、結婚していまいが、女性がひとりで生きていく時にそれを支えるのが本来の女性政策だと思います』、「1970年代の文献に「家庭長としての役割をきちっと果たした上で働くのであればパートタイムが望ましい」と書いてあるんですよ。当時はそれをもって社会進出と呼んでいた。そこから今、どれだけ前に進んだのでしょうか。働く環境や同一労働同一賃金など、制度や政策を整えようとしていますが、根底にある女性に対する認識が本当に変わったのかどうか。女性がこうあるべきみたいな意識は、私たちが思うより根深いですよね」、「人権に配慮した女性政策とは、例えば、病気の時に誰かに相談するシステムづくりとか、子育てに行き詰まった時に、その女性がたったひとりでも生きていけるように援助する政策。現状は、妻として生きる女性が子どもを育てながら仕事をすることを前提にしているじゃないですか。そうではなく、非正規雇用だろうが正規雇用だろうが、結婚していようが、結婚していまいが、女性がひとりで生きていく時にそれを支えるのが本来の女性政策だと思います」、その通りだ。
・『男女共闘しないと厚い壁を乗り越えられない  Q:女性の生き方に直結するような? A:もっと言えば、例えば、子どもを託児所に預けて働いているお母さんがいるとします。でも、お母さんはお母さんじゃなくて、ひとりの女性に戻りたい時間もあるわけですよね。妻でもなく、母でもない、ただの自分に戻りたい。たぶん、今の日本でそういうことを言うと、ぜいたくだとか、わがままだとか言われるんです。男性にとっても同じことだと思うんですよね。先日、ある政党の女性議員たちとの会合で「男性が育児をする楽しさを奪ってはいけない」とおっしゃった方がいて、うまいこと言うなあ、と。男女共闘するくらいの気持ちじゃないと、厚い壁をなかなか乗り越えられないと思っています。 Q:自民党はLGBTQの理解増進法ですら前に進められない。どんなアプローチが必要でしょう? A:夫婦別姓の問題もそうなんですよ。日本政府は国連から「これは人権の問題だから、ちゃんと取り組んでね」と3回も勧告されている。ずっと棚上げしてきて、法案自体がもう30年間塩漬け。あるものを通せばいいだけなのに、なぜそこまでかたくなになるのか。(推進派の)自民党議員も「本当に人権としての意識が足りない」とおっしゃっていました。 LGBTQの理解増進担当の首相補佐官・森雅子さんは、こういう問題に積極的に取り組んでいらっしゃる方だと思っているので、具体的な一歩を示してほしい。岸田政権にとって存在感を見せられる絶好のチャンスですよ。女性問題に本気で具体的に取り組み、なおかつLGBTQに対してもこれだけ踏み込んだ解釈をするんだとなれば、今までの政権と差別化できるじゃないですか。やりがいのあるテーマだと思います。(安藤優子氏の略歴はリンク先参照)』、「夫婦別姓の問題もそうなんですよ。日本政府は国連から「これは人権の問題だから、ちゃんと取り組んでね」と3回も勧告されている。ずっと棚上げしてきて、法案自体がもう30年間塩漬け。あるものを通せばいいだけなのに、なぜそこまでかたくなになるのか。(推進派の)自民党議員も「本当に人権としての意識が足りない」とおっしゃっていました。 LGBTQの理解増進担当の首相補佐官・森雅子さんは、こういう問題に積極的に取り組んでいらっしゃる方だと思っているので、具体的な一歩を示してほしい。岸田政権にとって存在感を見せられる絶好のチャンスですよ。女性問題に本気で具体的に取り組み、なおかつLGBTQに対してもこれだけ踏み込んだ解釈をするんだとなれば、今までの政権と差別化できるじゃないですか。やりがいのあるテーマだと思います」、同感であるが、現実には、旧安倍派に気がねする「岸田政権」には難しそうだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

英国EU離脱問題(その18)(きっかけは自己申告で性別を変えられる法案──スコットランド首相辞任が示す「人気者の限界」、池上彰・増田ユリヤが見た「EU離脱後の英国」移民消失で混迷 国家分裂の危機?、スコットランド首相に初のイスラム系が就任へ 独立掲げる政党の党首) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、2021年2月13日に取上げた。今日は、(その18)(きっかけは自己申告で性別を変えられる法案──スコットランド首相辞任が示す「人気者の限界」、池上彰・増田ユリヤが見た「EU離脱後の英国」移民消失で混迷 国家分裂の危機?、スコットランド首相に初のイスラム系が就任へ 独立掲げる政党の党首)である。

先ずは、本年2月24日付けNewsweek日本版「きっかけは自己申告で性別を変えられる法案──スコットランド首相辞任が示す「人気者の限界」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100946_1.php
・『<思いがけずスコットランドで最も有名な政治家になったニコラ・スタージョン。1つの政策とスローガンで統治し続けるには8年は長すぎた> スコットランドで最も強い政治家ニコラ・スタージョンが、自治政府首相を辞任する意向を明らかにした。スコットランドの政界にとって、8年以上続いたスタージョン時代の終わりだ。 主要目標がイギリスからの独立だったことを考えれば、スタージョンは決定的に失敗した。2014年、独立を問う住民投票で手痛い敗北を喫した後にスコットランド民族党(SNP)の党首と自治政府首相に就任したが、ボールを前に進められなかった。 スタージョンは2度目の住民投票を目指したが、結局実現しなかった。SNPは地方や国政レベルの選挙を「事実上の住民投票」にしようとしたが、イギリス最高裁が昨年11月、英国政府の同意のない新たな住民投票は違憲と判断。この強引な試みも頓挫した。 スタージョンは最高レベルのアピール力を持ち、自治政府首相の広報チームは事実上、スコットランドの全ての反対勢力を圧倒していた。 さらにスタージョンは記者会見を巧みに利用し、英国政府の足を引っ張った。時には英国政府の発表内容を1時間ほど早く公表したり、公然と反対意見を述べたりしてメディアの関心をさらうことに成功した。 反対派はスタンドプレーだと批判したが、この作戦は成功し続け、スタージョンはSNP党首として一度も選挙に負けなかった。 だがスタージョン時代は、ナショナリストやポピュリストの政治家が権力を握った後に陥る欠点の多くが露呈した時期でもあった。彼らはもっぱら単一のスローガンと政策を選挙戦で訴えて当選するが、その後で苦悩と苦闘が始まる。 批判派によれば、スタージョンは自治政府首相として何をするかのプランをほとんど持たず、関心もほとんど示さなかった。むしろ自分は世界の舞台で活躍する国家元首や政府の長にふさわしい国際的人物だと考えていたようだ。 スタージョンは2度目の住民投票では解決できない長期的な「国内問題」に直面していた。スコットランドは経済の生産性がイングランドよりも低く、医療サービスも貧弱で、経済成長も概して低い。 薬物の過剰摂取による死亡率は、イギリスや欧州全体と比べてかなり高い。21年には1330人が死亡。死亡率はイギリス全体の約3.6倍だ。今回の辞任表明に直接つながった問題は、法的な性別変更を本人の自己申告で認める法案だった。) この問題でSNPは内部対立を起こし、一部はスタージョンの前任者でライバルのアレックス・サモンド率いる新党に参加。さらに分裂を招く恐れがあったが、スタージョンは考えを変えず、スコットランド議会はSNPとスコットランド緑の党の賛成多数で法案を可決した。 SNPは10年以上、自治政府を掌握してきたが、数カ月後にスコットランド議会の選挙を控えている。この問題で世論が割れるなか、スタージョンが現在の姿勢を貫けば、選挙の強力な武器だったはずの党首が今度は選挙の足かせになりかねないところだった。 スタージョンは自身が最も選挙に強いSNPのリーダーであることを証明してきた。当初は派手なサモンドの陰に隠れていたが、思いがけずスコットランドで最も有名な政治家になった。 だが8年間という在任期間は、1つの政策とスローガンで統治し続けるには長すぎる。特に、それがスコットランドの未来を永遠に変えるものである場合には。 From Foreign Policy Magazine』、「批判派によれば、スタージョンは自治政府首相として何をするかのプランをほとんど持たず、関心もほとんど示さなかった。むしろ自分は世界の舞台で活躍する国家元首や政府の長にふさわしい国際的人物だと考えていたようだ」、そのような勘違いをしたとはお粗末だ。「スタージョンは2度目の住民投票では解決できない長期的な「国内問題」に直面していた。スコットランドは経済の生産性がイングランドよりも低く、医療サービスも貧弱で、経済成長も概して低い。 薬物の過剰摂取による死亡率は、イギリスや欧州全体と比べてかなり高い。21年には1330人が死亡。死亡率はイギリス全体の約3.6倍だ。今回の辞任表明に直接つながった問題は、法的な性別変更を本人の自己申告で認める法案だった」、「当初は派手なサモンドの陰に隠れていたが、思いがけずスコットランドで最も有名な政治家になった。 だが8年間という在任期間は、1つの政策とスローガンで統治し続けるには長すぎる。特に、それがスコットランドの未来を永遠に変えるものである場合には」、やはり代わるべくして代えられたようだ。

次に、3月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏、増田ユリヤ氏による対談「池上彰・増田ユリヤが見た「EU離脱後の英国」移民消失で混迷、国家分裂の危機?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318253
・『2016年、国民投票でイギリスのブレグジットが決定し、2020年にEUを離脱しました。その間、イギリスでは首相の交代やエリザベス女王の死去など、世界に影響を与えるできごとがありました。ジャーナリストの池上彰と増田ユリヤが、今の世界情勢のカギとなる国を対談形式で紹介します。 ※本稿は、池上 彰,増田ユリヤ『歴史と宗教がわかる!世界の歩き方』(ポプラ新書)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『激動のイギリスを見つめ続けたエリザベス女王  増田 歴史と伝統のある国イギリス。はじめてロンドンに行き、バッキンガム宮殿で衛兵の交替式を見た時には、感激しました。王国なんて、おとぎ話の世界というイメージでしたから。 池上 イギリスは、英語の略称がUnited Kingdomです。訳すと連合王国なんですよね。その王国の君主であったエリザベス女王は、70年にわたって在位し、2022年9月8日に96歳で亡くなりました。 25歳で即位して、イギリスのEUへの加盟から離脱(ブレグジット)まで、激動の道を歩んだイギリスを見つめ続けてきました。 増田 歴代最長で、国民に愛された女王でしたよね。ユーモアもあり、お茶目な面もありました。 池上 ロンドンオリンピックの開会式で、ジェームズ・ボンドと共演した映像で沸かせたりもしましたね。 増田 女王は、オーストラリア、ニュージーランド、カナダをはじめ14カ国の英連邦王国の君主でもあったんですよね。 池上 日本の人には、イギリスの女王がほかの国の君主でもあるということがイメージしにくいかもしれないのですが、これらの国は、もともとイギリスの植民地で、平和裏に独立しました。いまでも英連邦王国の一員で、現在はチャールズ国王が君主になったわけです。ちなみにアメリカは、独立戦争を経て独立したので、英連邦王国には入っていません。 増田 イギリスは、アメリカを「特別な関係」と位置付けていますが、女王の葬儀では、バイデン大統領よりも前に、これらの英連邦王国の首脳たちが座っていましたね。 池上 ただこれらの国でも、チャールズ国王はエリザベス女王ほどの人気はありません。女王の死去をうけ、国王を君主とする君主制ではなく、選挙で元首、いわゆる大統領を選ぶ共和制支持が勢いを増すだろうと言われています。 実際に、ニュージーランドのアーダーン前首相は「すぐではないが、私が生きているうちに共和制になるだろう」と共和制に移行する可能性に言及しました』、「英連邦王国の首脳たち」は「女王の葬儀では、バイデン大統領よりも前に、」「座ってい」たが、「チャールズ国王はエリザベス女王ほどの人気はありません。女王の死去をうけ、国王を君主とする君主制ではなく、選挙で元首、いわゆる大統領を選ぶ共和制支持が勢いを増すだろうと言われています」、「ニュージーランドのアーダーン前首相は「すぐではないが、私が生きているうちに共和制になるだろう」と共和制に移行する可能性に言及」、「英連邦王国」が歯抜け状態になれば、「チャールズ国王」の面目丸潰れだ。
・『王様が離婚するためにつくったイギリス国教会  池上 女王の国葬は、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われました。ウェストミンスター寺院はイギリス国教会の教会であり、エリザベス女王はイギリス国教会の最高権威者でもあったんですよね。 増田 イギリス国教会というと、プロテスタントに分類されますが、教会を見るだけだと、カトリック教会とほとんど変わらないと思います。見分けがそんなにつくわけじゃないんです。 イギリス国教会は、ヘンリー8世というわがままな王様が、離婚したいがために始めた宗教とよくいいますよね。 池上 16世紀前半、各国のカトリック教会を統率するローマ教皇庁の権力は絶対で、イギリスもカトリックの国でした。教皇庁から離婚を強硬に反対されたヘンリー8世は、それに反発、それならと国教会をつくり、自分が最高権威者となるんですね。 さらにローマ教皇庁からの独立に反対するカトリック教会も自分のものにして、膨大な富を手にしました。現在のイギリス王室は、財政的に国家から独立しているのですが、それができるのも、このとき莫大な領地を獲得したからです。ロンドン中心部の土地の多くは王室が持っていて、イギリス王室は大金持ちの大地主なのです。 増田 イギリス国教会は、こうした歴史的背景があるため、戴冠式(たいかんしき)や結婚式、葬儀まで、いまでも英国王室の儀式にカトリックの影響があらわれています。英国王室の儀式は見ごたえがありますよね。儀式を重んじないプロテスタントとは違います。 英国王室のさまざまな儀式で舞台となるウェストミンスター寺院も荘厳で、教会内部も広くて天井が高く、立派なステンドグラスで彩られています。 池上 イギリス国教会はプロテスタントのはずなのに豪華なのはおかしいなと思ったら、教義の違いによる独立ではなかったので、カトリックの様式を保っているのですね』、「イギリス国教会はプロテスタントのはずなのに豪華なのはおかしいなと思ったら、教義の違いによる独立ではなかったので、カトリックの様式を保っている」、その通りだ。
・『弾圧されたプロテスタントがアメリカへ  増田 16世紀前半にイギリス国教会ができたことは、イギリスの社会に大きな影響を与えました。同じ時期に、カトリック教会の腐敗が批判され、ヨーロッパではルターやカルヴァンの宗教改革が行われていました。 池上 ルターは、金を出せば罪が赦されることはあり得ないと、カトリックの「贖宥状(しよくゆうじよう)」の販売を批判、信仰の拠り所を『聖書』に求め、カトリック教会の権威を否定しました。これまでギリシャ語またはラテン語しかなかった『新約聖書』をドイツ語に訳し、一般の信者が読めるようにしたんですね。 カルヴァンは、ルターの影響を受け、宗教改革を進めるのですが、人が神によって救われるかどうかは、あらかじめ神によって予定されているという「予定説」を打ち出しました。これは厳しい考え方ですよね。いくら悔い改めても、死後に救われるかどうかは生まれたときに定められているというのですから。 ルターの教えは「ルター派」として成立しますが、カルヴァンは新たな宗派をつくるつもりはなかったので、カルヴァン派という宗派は存在しません。カルヴァンの教えは「改革派」とされ、地域によって名称が異なりました。イギリスではピューリタン(清教徒)、スコットランドでは長老派などと呼ばれたのですね。 イギリス国教会もプロテスタントに分類されますが、ピューリタンの影響が強まってくると、イギリス国教会は実質カトリックのためピューリタンを徹底して弾圧します。ピューリタンの人たちは、イギリスにいられなくなり、理想の国家の建設を目指して、アメリカに渡ったのです』、「ピューリタンの影響が強まってくると、イギリス国教会は実質カトリックのためピューリタンを徹底して弾圧します。ピューリタンの人たちは、イギリスにいられなくなり、理想の国家の建設を目指して、アメリカに渡った」、これまで抱いてきた疑問が氷解した。
・『はじめてのインド系の首相  増田 エリザベス女王は、トラス前首相を任命してすぐに亡くなられましたが、トラス氏は在任期間最短の45日で辞任することになりました。そのあと首相になったのが、スナク氏です。 池上 スナク首相は資産が多いことでも注目されましたが、やはりなんといっても、白人ではなく、アジア系、それもインド系の人がはじめて首相になったという点ですよね。言わずもがな、かつてイギリスはインドを植民地支配していました。それがいまや、インド系の首相がイギリスを率いるわけです。劇的な変化を実感します』、「スナク首相」は「インド系」で保守党とは、時代も変わったものだ。
・『ブレグジット後のイギリス  増田 またイギリスでもうひとつ注目する点といえば、やはりブレグジットですよね。3度の延期を経て、2020年についにEUを離脱しました。 池上 みなさんご存じのように、2016年に、国民投票で離脱が決まりました。当時のキャメロン首相は、国民投票をしたらEU離脱が否決されるだろう、離脱派はうるさく言わなくなるだろうと思って、国民投票をしたら、僅差で離脱が決まってしまった。首相をはじめ、多くの人が驚いていましたよね。 増田 離脱を支持する人たちの理由のひとつが、新しくEUに加盟したポーランドなど東欧の人たちがイギリスにやってきて、安い賃金で仕事をしていることでした。 ブレグジット後、ロンドン在住のポーランド人が100万人から70万人に減ったと言われています。 新型コロナウイルスの感染拡大が少し落ち着いて、海外に行く人が増えたら、ヒースロー空港で荷物が山積みになり、混乱していると聞きました。空港で働いていた移民の人たちがロンドンからいなくなっていたからです。 池上 ガソリンはあるけど、ガソリンスタンドに運ぶトラックの運転手たちが移民だったので、ガソリンを運べないという話もありましたね。 増田 医療、介護や福祉の現場でも、多くの移民たちが働いていました。ジョンソン元首相も、離脱を推進していましたけど、新型コロナウイルス感染症にかかって入院したら、移民の看護師さんたちに助けられた、感謝している、と言っていましたよね。 池上 離脱してから、イギリスは移民たちによって支えられていた、ということを実感している人たちも多いでしょうね。 増田 スコットランドはEUに留まりたいといって、イギリスから独立しようなんて動きもあります。 池上 イギリスがEUを離脱したために、イギリスがばらばらになってしまう可能性もはらんでいます。いずれまたEUに戻ろうという動きが出てくる気が個人的にはしています。 増田 イギリスで残留と離脱、双方の立場の人たちを取材しました。難しいなと感じたのは、EUで決めたことを押し付けられると感じる人もいるということです。一方で、たとえばアメリカと対峙していくときには、ヨーロッパとしてお互いに協力していったほうがメリットがありますよね。ただ、自分の国らしさとか、自分たちで決めたいという気持ちもわかります。これを、これからどう選択していくのか、というところですね。 池上 自分の国も大事だけど、他国と協力していくことも大事。イギリスのEU離脱というのは、我々日本に住む者にとっても、現代の大きな問題を考えるきっかけになりました。 増田 イギリスの歴史が現在の世界情勢に与えた影響を考えると、決して肯定できることばかりではありません。しかし、シェイクスピアに代表される舞台劇やバレエなどをはじめ、すばらしい文化を育んできた国でもあります。イギリスに行くことがあれば、そんな芸術に触れる機会もあるといいですね』、「EUで決めたことを押し付けられると感じる人もいるということです。一方で、たとえばアメリカと対峙していくときには、ヨーロッパとしてお互いに協力していったほうがメリットがありますよね。ただ、自分の国らしさとか、自分たちで決めたいという気持ちもわかります。これを、これからどう選択していくのか、というところですね」、今後の展開を注目したい。

第三に、3月28日付け朝日新聞「スコットランド首相に初のイスラム系が就任へ 独立掲げる政党の党首」を紹介しよう。
・『英国のスコットランド国民党(SNP)は27日、党首でスコットランド自治政府首席大臣(首相に相当)のスタージョン氏の後任に、同政府のハムザ・ユーサフ保健相(37)を選出した。英メディアによると、スコットランド議会での投票を経て、29日にもイスラム系で初の首席大臣に就く見通し。 ユーサフ氏は党員投票で52%を獲得し、フォーブス財務相(48%)を破った。勝利後の演説で「私たちはスコットランドの(英国からの)独立を実現する世代になる」と述べ、まずは独立への支持を広げるための草の根の運動に力を入れると宣言した。 公共放送BBCによるとユーサフ氏の祖父母は1960年代にパキスタンからスコットランドに渡り、英語はほとんど話せなかったという。ユーサフ氏は27日の演説で、孫がスコットランド自治政府の首席大臣になるとは「夢にも思わなかっただろう」と語った。 そのうえで、肌の色や信仰は「私たちが故郷と呼ぶ、この国の指導者になる上で障壁にならない」と述べ、「私たちは、国に多大な貢献をする移民を祝福すべきだ」と訴えた。 スコットランド独立を掲げるSNPを2014年以来率いてきたスタージョン氏は2月、辞任する意向を表明していた。 英国では昨年10月、アジア系で初となるリシ・スナク首相(保守党)が就任している』、「ユーサフ氏」は「肌の色や信仰は「私たちが故郷と呼ぶ、この国の指導者になる上で障壁にならない」と述べ、「私たちは、国に多大な貢献をする移民を祝福すべきだ」と訴えた。「独立への支持を広げるための草の根の運動に力を入れると宣言」、「英国」でのインド系の「リシ・スナク首相(保守党)」、に次いで、「スコットランド」でも「パキスタン系」の「ユーサフ氏」が「自治政府の首席大臣」になるとは、偶然の一致だろうが、出来過ぎている印象だ。
タグ:英国EU離脱問題 (その18)(きっかけは自己申告で性別を変えられる法案──スコットランド首相辞任が示す「人気者の限界」、池上彰・増田ユリヤが見た「EU離脱後の英国」移民消失で混迷 国家分裂の危機?、スコットランド首相に初のイスラム系が就任へ 独立掲げる政党の党首) Newsweek日本版「きっかけは自己申告で性別を変えられる法案──スコットランド首相辞任が示す「人気者の限界」」 「批判派によれば、スタージョンは自治政府首相として何をするかのプランをほとんど持たず、関心もほとんど示さなかった。むしろ自分は世界の舞台で活躍する国家元首や政府の長にふさわしい国際的人物だと考えていたようだ」、そのような勘違いをしたとはお粗末だ。「スタージョンは2度目の住民投票では解決できない長期的な「国内問題」に直面していた。スコットランドは経済の生産性がイングランドよりも低く、医療サービスも貧弱で、経済成長も概して低い。 薬物の過剰摂取による死亡率は、イギリスや欧州全体と比べてかなり高い。21年には1330人が死亡。死亡率はイギリス全体の約3.6倍だ。今回の辞任表明に直接つながった問題は、法的な性別変更を本人の自己申告で認める法案だった」、「当初は派手なサモンドの陰に隠れていたが、思いがけずスコットランドで最も有名な政治家になった。 だが8年間という在任期間は、1つの政策とスローガンで統治し続けるには長すぎる。特に、それがスコットランドの未来を永遠に変えるものである場合には」、やはり代わるべくして代えられたようだ。 ダイヤモンド・オンライン 池上 彰氏、増田ユリヤ氏による対談「池上彰・増田ユリヤが見た「EU離脱後の英国」移民消失で混迷、国家分裂の危機?」 池上 彰,増田ユリヤ『歴史と宗教がわかる!世界の歩き方』(ポプラ新書) 「英連邦王国の首脳たち」は「女王の葬儀では、バイデン大統領よりも前に、」「座ってい」たが、「チャールズ国王はエリザベス女王ほどの人気はありません。女王の死去をうけ、国王を君主とする君主制ではなく、選挙で元首、いわゆる大統領を選ぶ共和制支持が勢いを増すだろうと言われています」、 「ニュージーランドのアーダーン前首相は「すぐではないが、私が生きているうちに共和制になるだろう」と共和制に移行する可能性に言及」、「英連邦王国」が歯抜け状態になれば、「チャールズ国王」の面目丸潰れだ。 「イギリス国教会はプロテスタントのはずなのに豪華なのはおかしいなと思ったら、教義の違いによる独立ではなかったので、カトリックの様式を保っている」、その通りだ。 「ピューリタンの影響が強まってくると、イギリス国教会は実質カトリックのためピューリタンを徹底して弾圧します。ピューリタンの人たちは、イギリスにいられなくなり、理想の国家の建設を目指して、アメリカに渡った」、これまで抱いてきた疑問が氷解した。 「スナク首相」は「インド系」で保守党とは、時代も変わったものだ。 「EUで決めたことを押し付けられると感じる人もいるということです。一方で、たとえばアメリカと対峙していくときには、ヨーロッパとしてお互いに協力していったほうがメリットがありますよね。ただ、自分の国らしさとか、自分たちで決めたいという気持ちもわかります。これを、これからどう選択していくのか、というところですね」、今後の展開を注目したい。 朝日新聞「スコットランド首相に初のイスラム系が就任へ 独立掲げる政党の党首」 「ユーサフ氏」は「肌の色や信仰は「私たちが故郷と呼ぶ、この国の指導者になる上で障壁にならない」と述べ、「私たちは、国に多大な貢献をする移民を祝福すべきだ」と訴えた。「独立への支持を広げるための草の根の運動に力を入れると宣言」、「英国」でのインド系の「リシ・スナク首相(保守党)」、に次いで、「スコットランド」でも「パキスタン系」の「ユーサフ氏」が「自治政府の首席大臣」になるとは、偶然の一致だろうが、出来過ぎている印象だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感