大学(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) [社会]
大学については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回)である。
先ずは、本年1月30日付け日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/012400005/
・『国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。 30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい』、「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。
・『東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入 高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。 高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。 ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。 300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。 それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。 編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。 大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。 国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか』、「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか」、なるほど。
・『高専の役割の変化と社会からの要請 なぜ高専からの進学が増えたのか。東京都八王子市にある国立高等専門学校機構本部に進学の現状について聞いた。教育総括参事で教授の下田貞幸氏によると、高専の役割が変化してきた面があると指摘する。 「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています。起業する学生も増えていますね」 かつては高専を卒業すると、就職する学生が7割から8割を占め、進学は2割に満たないくらいだった。それが、約30年前から20年前にかけて、各高専に専攻科ができたことで、進学する学生の割合が増えた。 併せて、高専生を編入で受け入れる大学が増えて、その人数も多くなってきた。大学側も高専の卒業生への期待が大きくなっているという。 「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」』、「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。
・『半数以上が大学に編入する高専も 高専全体では編入する学生の割合は約4割だが、それを超える高専もある。最も割合が高いのは、6割を超えている群馬県の群馬工業高専と新潟県の長岡工業高専だ。次いで、6割に近い兵庫県の明石工業高専が続く。千葉県の木更津工業高専と奈良県の奈良工業高専は5割を超え、九州では久留米工業高専が4割以上となっている。下田氏が次のように解説する。 「大都市圏の高専は大学に進む割合が高いですね。おそらく、大学の数が多いからではないでしょうか。長岡工業高専については、長岡技術科学大学が近くにあることも要因の一つだと思います」 さらに、高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している。次の表は、21年4月の大学院への入学者数だ。 多い順に見ていくと、奈良先端科学技術大学院大学、東北大学、筑波大学、九州大学など、国立大学の大学院に多数進学していることが分かる。修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ』、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。
・『あまり知られていない進学率の高さ 以上のように、高専からの大学編入や、その先の大学院への進学を選ぶ学生の割合は高い。にもかかわらず、学生の親世代も含め、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。 高専のパンフレットを見ると、「卒業後の多彩なキャリアパス」として、学生の約4割が進学していることが書かれている。ただ、その記述はあっさりしている。下田氏によると、中学生に説明する際に、進学率のことはそれほど打ち出していないという。 「そういう道もありますよ、というくらいの説明しかしていないと思います。どこまで伝わっているのかは分かりません。そもそも高専自体がマイナーな存在です。中学3年生が全国で約100万人いる中で、高専に進むのは1%弱です。高校の普通科に比べると、まだまだ認識されているとは言えないですね。 高専は各都道府県の第2、第3の都市に設置されているケースが多いので、寮に入って親元を離れる学生が多いです。それも一つの要因なのか、新型コロナウイルス禍では志願者数が減りました。各高専では、それまで寮では2人部屋や3人部屋が主流だったところを、コロナ対応のために個室に変えるといった対応を取った場合もあります」 高専では現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある。「高専について理解してもらうために、教員が中学校に出向いて説明に回っています。他にも、小・中学校への出前授業や、科学技術フェアなどを開催して、高専の教育内容を知ってもらう機会をつくっています。教育内容と合わせて、高専の卒業生には多彩なキャリアパスがあることも、もっと知っていただきたいですね」 全国の高専生の4割を占める進学率は、今後も下がることはなさそうだ。15歳から専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか』、「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。
次に、2月5日付けAERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023020200071.html
・『2024年度中をめどに統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医歯大)の統合計画案(統合案)は、1月19日に新しい統合大学名「東京科学大学」(仮称)が公表され、いよいよ現実味を帯びてきた。ネット上では「薄っぺらな軽すぎる大学名」「Fラン大学」などと揶揄され、両大学の統合を歓迎しないコメントが散見されるなど、大学の統合話にしては話題になっている。そこで、この統合案の妥当性を長い間、高等教育現場にいた者として考えてみることにした』、興味深そうだ。
・『Big Ten同士の統合は果たして実現するのか 統合案は1月中に、大学や学部の新設、大学内の教育的組織改革(改組)などの認可を判断する大学設置・学校法人審議会(設置審)に提出することも発表された。一般的に、設置審にかけるまでには文部科学省(文科省)との事前協議で計画案が了承されなければならないので、統合案は文科省からゴーサインが出されたものと考えられる。したがって今後、特別に問題がなければ両大学の統合は認可される公算が大きい。しかし、以前、勤務先の大学の学部と大学院の改組(博士課程設置など)で設置審の認可を受けた経験からすれば、両大学の統合には、いくつか問題があるように思う。詳しい統合案を読んでいないことを前提に以下、検証を試みたい。 この統合は、優れた大学として文科省から認められた指定国立大学法人同士なので、いやが上にも注目される。指定国立大学法人は、東北大学、筑波大学、東京大学、医歯大、東工大、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の10校で、北海道大学を除く旧帝国大学6校に筑波大学、医歯大、東工大、一橋大学の4校が加わって、まさにBig Ten Conference(米国カレッジスポーツ)状態となっているといえば揶揄に聞こえるかもしれない。 このなかで、名古屋大学は、正確には国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学で、岐阜大学はこの法人機構に所属し1法人機構2大学(傘下という意味でアンブレラ方式)となっている。そのほかの指定国立大学法人は1法人1大学方式である。ちなみに、国立大学法人は大学数でいえば86校あり、その組織形態のなかには上記の東海国立大学機構以外にも、北海道国立大学機構(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)、奈良国立大学機構(奈良教育大学、奈良女子大学)がある。なお、大学の再編・統合はそのほかでも進んでいる。) 今回の東工大と医歯大の統合は、前述のように指定国立大学法人同士であり、しかも1法人1大学を目指すという点で注目に値するが、以下に述べるように統合には疑問を感じる』、どういう「疑問」なのだろう。
『言い尽くされた理念目標に目新しさは感じられない ここで2022年10月14日に両大学で締結された4項目からなる基本合意のうち2項目目と3項目目の概要について言及したい。 2項目目には「多様な社会課題に立ち向かうために、理工学、医歯学、さらには情報学、リベラルアーツ・人文社会科学などを収斂させて獲得できる総合知に基づく『コンバージェンス・サイエンス』を展開します」と書かれている。また、3項目目には「教養教育と専門教育を有機的に関連させ、現代社会が直面する諸課題に対峙して、真に解決すべき 課題を設定し、解決へと導く役割を担う高度専門人材を輩出します」と謳っている。しかし、これらのことは他大学の改組の際にも言い尽くされてきた理念目標であり目新しさはどこにも感じられない。ちなみに俯瞰的・総合的教育研究を目指して、1974年に初めて広島大学に総合科学部が誕生し、その後にも他大学に同じような理念目標を掲げた学部が誕生している。 今回の東工大と医歯大の統合で、この2項目目と3項目目をどう達成するのか、特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる』、「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。
・『専門バカをつくらない、は何を意味するのか 2022年11月1日、両大学の学長の話をテレビで長時間、聴いた。両大学とも、単科大学としての危機意識を持ち、理工学と医歯学を連携させて、新領域分野を創生、地球環境問題、感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の問題解決を目指すという。このことは、前述の基本合意の2項目目、3項目目を易しく言い換えているのだが、この目標も、以前から言い尽くされてきた大きなテーマで、まったくもって新しさを感じない。しかも、理工学と医歯学の連携は以前から、他大学内及び他大学間でも行われてきた。だから、両大学長の説明からは統合する確固たる理由が残念ながら伝わってこず、統合の理由としては説得力に欠ける。 地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない。東工大学長も、“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である。言い過ぎかもしれないが、東工大学長の公言は、単科大学の危機意識、「職業大学からの脱皮」「職工教育の反省」とも受け取れる。 しかし、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない。さらにいえば、政府が創設した国際卓越研究大学制度(2024年度から年間数百億円(1校あたり)を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する』、「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。
・『日本は高校からすぐに医歯学部に入学する テレビ番組での、医歯大学長の「日本は高校からすぐに医歯学部に入学する」という発言にも私は注目。この発言は直接統合の議論に関係しないのだが、統合理由として掲げた俯瞰的教育研究がなぜ日本ではなかなか進まないのかの理由として述べられた言葉だ。あまりにも人ごとの発言ともいえるが、日本の教育を考えるうえで極めて重要な指摘である。この発言は「米国流の日本版メディカルスクール化(4年制大学卒業後に医歯学部に入学)」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められるのだが』、「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。
・『統合案の先、将来は4大学統合の議論を 今回の東工大と医歯大の統合は、基本合意1項目目「両大学の尖った研究をさらに推進」を優先する、研究を主眼とした統合といえるのではないか。確かに、両大学の研究レベルは高く、統合することにより医療機器、医療材料、医療生命学、医療化学などの分野において格段の進歩が期待できるだろう。この統合は、世界的競争に打ち勝つ新たな挑戦ともいえる。文科省もそれを今回の統合に期待しているのかもしれない。 しかし、大学の役割はむしろ教育にあるといっても過言ではない。そのことを上で述べたつもりだ。公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う。 和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している』、「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。
第三に、1月25日付けAERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023012400057.html?page=1
・『2024年度の統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学の新大学の名称が「東京科学大学」となると発表された。東工大は、同年に女性のみが出願できる「女子枠」を創設することも決まっており、大学改革を進めている。国立理系トップの東工大は女子学生が13%しかおらず、「男女差」が課題となっていた。その一方で、女子枠創設には、入試の平等性が損なわれるのでは、など疑問も上がっている。大学統合や女子枠創設について、卒業生はどう感じているのか。東工大環境・社会理工学院を卒業後、女優として活躍する山崎丹奈さんに大学への思いを聞いた。 「統合や女子枠の一報を聞いたときには、本当に驚きました。大学側が課題を感じた上で、新たな一歩を踏み出そう、改革しようという意識を感じました。東京科学大学、という名称については、シンプルで覚えやすいと思います。自分が両大学を知っている歴史以上にこれからの大学の未来は長いと思うので、新名称がなじむように、これからも変わりなくその専門性を磨いていってほしいです」 こう話すのは、2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した、女優の山崎丹奈さん(31)。学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色と言える。そんな山崎さんからみて、母校の改革はどう映っているのだろうか。 「確かに、入り口の入学者数を増やせば、出口も増えるわけで、女性の研究者や技術者も増えるでしょう。ただ、その仕事をするにあたって女性が働きやすい環境が整っているかといえば、受け入れ先の組織や企業で変わってくると思います。もちろん女性枠は大学ができる対応の一つだと思いますが、女性の人生をどう考えるか、という意味でソフト面でもっとやれることはあるのではないでしょうか。女子学生が増えても、たとえば、大学内の研究環境が改善しなければ、状況が良くなったとは言えないと思います」』、「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。
・『実際、山崎さんは過酷な研究環境に直面したことが、将来を考えるきっかけになった。山崎さんによると、当時の東工大では学部生の“ほぼ全員”が大学院に進学していたという。土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという。さらに、女子学生は山崎さん1人だった時期もある。研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います。社会に出てからは、よく『もったいない』という言われ方をされました。専門分野に進まないなんてもったいない、芸能界に入るなんてもったいない、という意味なんだろうと理解しています。ただ、この挫折があったから、自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」 東工大が「女子枠」の創設を発表したのは、昨年11月のこと。25年度までに学校推薦型選抜と総合型選抜(AO入試)で計143人の「女子枠」を創設する。これにより、現在は学士課程(学部)に約13%しかいない女子学生の比率を20%以上に高めるという。女子枠は24年度入試から物質理工など4学院(学部)で先行的に開始する。総募集人数は変更せず、女子を増員した分は、一般選抜枠の人数を縮小することで調整するという』、「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。
・『大学側は公式HPで「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン(編集部注・多様性と受容)の取り組みの一環」「理工系分野における女性研究者・技術者を増やすこと」などとしている。日本の大学学部の女子学生の理工系分野の入学者は7%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国(同15%)に比べて、極端に低い。こうした状況を是正しようと、名古屋大学など他の国立大学でも「女子枠」を設ける動きはある。 だが、これに対してSNS上では「女性の方が受験で有利になるのは逆差別だ」「女性の社会進出とは別の問題」など疑問視する声も上がっている。 大学側の意図や世間の反応について、山崎さんはどう思っているのだろうか。 「入試は受験生にとって、命がけといっても過言ではありません。推薦枠とはいえ女子限定で入試を行うことで、男子の一般受験生がないがしろにされていると感じないかは心配です。また、女子枠で入った生徒たちに対して、『男なら落ちていたのに女子だから受かった』など心無い言葉を投げかられないかという不安も残ります。大学側が強調する“多様性”というのも、すごく難しい言葉で、どのようにも使えてしまう。多様性は性差だけではありません。性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」 山崎さんは大学院を1年で中退し、芸能事務所に所属しながら旅行系の一般企業に就職。会社員を1年経験した後、俳優に専念して活動してきた。最近では、東京理科大卒の三浦透子さんなども活躍し、「リケジョ女優」という言葉も生まれた。山崎さんが東工大で学んだことで、俳優として生かされている部分はあるのだろうか。 「正直言って、研究内容という点ではないですね(笑)。ただ、勉強に対する姿勢だったり、課題に直面したときの精神面だったりは、大学で鍛えられたことは大きいと感じています。ムチャぶりのスケジュールになっても、何とかなるとか(笑)。あと会社員を経験したことは、組織や社会の仕組みを知ることができ、社会で生きる一人の人間として成長させてもらいました。これは演技をする上で役に立っています。女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう。 ◎山崎丹奈(やまざき・にな) 1991年生まれ。幼少期は米ペンシルベニア州で育つ。桐蔭学園を卒業後、東工大土木・環境工学科(当時)に入学。2009年に「ミス東工大グランプリ」に輝く。2012年に女優デビュー。17年に映画「トリノコシティ」で主演。その他、「母になる」(日本テレビ系)、「マザー・ゲーム」(TBS系)など多くのドラマに出演。一児の母として育児にも奮闘中』、「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。
第四に、4月19日付け日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/041200007/
・『恵泉女学園大(東京都多摩市)は2023年度の入試終了後の3月22日、今年の入学生を最後に学生の募集を停止すると発表した。入学者数の定員割れが続いたことが理由だが、他の多くの女子大も志願者を大幅に減らしている。23年度入試の結果から、女子大における志願者数の減少や、女子受験生の学部選びの変化について現状を見ていく』、興味深そうだ。
・『定員割れが続いていた恵泉女学園大 恵泉女学園大のホームページに掲載されている学生募集停止のお知らせ 「このたび、学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定いたしました。(中略)18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」 これは3月22日に学校法人恵泉女学園と恵泉女学園大がホームページで発表した、学生の募集停止のお知らせだ。 恵泉女学園大は1988年に開学。東京都多摩市にキャンパスがあり、人文学部と人間社会学部、それに大学院を擁している。2022年5月1日現在のデータを見ると、2つの学部を合わせた定員1188人に対し、在籍する学生数は1028人で、定員率は86.5%となっている。前年同時期の定員率94.0%から7.5ポイントも下げていた。 入学者数の推移を見ると、13年度は2学部で466人だったが、翌14年度には346人に減少し定員割れする。そこから減少傾向は続き、17年度からは入学定員を減らしたものの、22年度は定員290人に対し入学者数は162人で、入学定員充足率は55.8%となった。 東京都内の女子大では、町田市の東京女学館大が17年に閉学した。大学入試に関する研究や情報提供を行う大学通信(東京・千代田)の井沢秀情報調査・編集部長は、恵泉女学園大の募集停止の背景を次のように分析する。 「私立大学は地方も厳しい状況ですが、東京都内でも郊外にある大学は学生を集めるのに苦慮しています。特に女子の場合、都内であればできるだけ都心の方がいいと考える受験生も多いでしょう。また、恵泉女学園大はとても素晴らしい教育を行っている大学ですが、人文系の学部しかない点も、入学者数が減少していた要因ではないでしょうか」』、「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。
・『女子大「御三家」でも志願者数が大幅減 募集停止を決めたことで恵泉女学園大が注目されたが、女子大を取り巻く環境は大きく変わってきている。特に23年度入試では、難関女子大が志願者数を減らした。次の表は、大学通信が調査した、東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数だ。 東の御三家は津田塾大、東京女子大、日本女子大。いずれも志願者数は減少していて、特に東京女子大は前年より1486人減、前年比で83.2%と大幅に志願者数を減らした。学習院女子大、共立女子大、実践女子大、昭和女子大、清泉女子大などが前年よりも志願者数を増やしている中で、3大学の減少が目立っている。 一方、西の御三家である京都女子大、同志社女子大、神戸女学院大も志願者数が減少している。特に同志社女子大は1137人の減少、神戸女学院大は前年比61.8%と減少率が目立っている。 23年度入試では、私立大学全体で志願者数を減らした。前年比で数%の減少になる見込みで、4年連続の減少となる。その状況下で女子大の志願者数が減少するのも不思議ではないが、御三家クラスの減少幅が大きくなったのには、さまざまな要因が考えられる』、「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。
・『女子受験生の法学部人気が上昇 難関女子大が大きく志願者数を減らしたことについて、井沢部長は次のように指摘する。 「女子大は人文系の学部が中心ですが、以前のような人気がなくなったと言えます。人文系の学部を選ぶにしても、総合大学に進む傾向が強まりました。また、人文系以外の学部を選ぶ女子受験生が増えたという変化も出てきています」 大学通信の調査によると、23年度入試では難関大学における女子の合格者数に、これまでにない変化が見られるという。その1つが、法学部への進学だ。文系最難関であり、主に法学部に進学する東京大の文Iでは、女子の占有率が30.5%に上昇した。 「東京大では主に文学部に進学する文Ⅲで、女子の占有率は毎年40%程度と高い数字を出していました。文Ⅲが例年通りの占有率を見せている一方で、文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました。この数字はおそらく史上最高です。首都圏の女子校に話を聞いても法学部志向の生徒が増えているのは間違いなく、優秀な女子の進学先が変わってきたと言えます」 私立難関大学の法学部合格者数を高校別に見ても、トップは女子校が占めている。早稲田大では桜蔭、慶応義塾大では頌栄女子学院がトップ。さらに明治大では埼玉県立浦和第一女子、中央大では豊島岡女子学園が最も合格者を多く出した。女子校の法学部人気の高まりは顕著だ。 「法学部に進学した場合、想定される就職先の1つが公務員です。国家公務員の上級職に当たる総合職だけでなく、都道府県庁や政令指定都市、東京23区などの上級職もいろいろな仕事ができますので、就職先として魅力を感じているのではないでしょうか」と井沢部長は話す。 また、最難関でもある医学部の人気も根強い。東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇したことになる。医学部は国立・私立ともに女子の人気は高く、将来を考えた結果として、医学部や法学部への進学が増えているのではないかと考えられる。 「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケースと言えるのではないでしょうか」(井沢部長)』、「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。
・『女子大の理系学部新設は生き残りにつながるのか 国立や私立に限らず、女子大では新たな動きも起きている。それは理系学部の新設だ。背景には国の要請もあり、実際に動き始めている。 国立では奈良女子大が、22年4月に工学部を女子大で初めて開設した。24年4月にはお茶の水女子大が共創工学部(仮称)を新設する予定だ。その名称には、「工学と人文学・社会科学の知が協働し、共に未来の環境、社会、文化を創る」という意味が込められているという。また、私立では日本女子大が建築デザイン学部(仮称)を24年4月に開設を予定している。 理系人材の育成強化を掲げる文部科学省は22年度、既存学部を再編して理系学部の新設や拡充をする大学を財政支援しようと、3000億円の基金を創設した。このため、女子大でもさらに理系学部を新設する動きが出てくることも予想される。 ただ、23年度入試で2年目を迎えた奈良女子大工学部の前期の志願倍率は、前年度の6.3倍から2.7倍へと大幅に下がった。「理系学部を新設することが、女子大が生き残る道になるのかどうかは不透明」と井沢部長は指摘する。 「工学部など、これまでの女子大にない学部をつくる動きもありますが、工学を学ぶにしても、ある程度の規模感が必要になります。奈良女子大の場合は奈良先端科学技術大学院大学と共同で取り組んでいるので、理系の教員の充実は図れるとは思います。ただ、設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう。 女子大には就職率の良さや、面倒見の良さがあります。そういう面に引かれる受験生や、女子教育を望む受験生や保護者も一定数います。東京の郊外にある女子大や、関西の女子大が苦戦しているのは事実ですが、女子大の役割はまだまだあると思っています」(井沢部長) 女子大離れがこのまま進んでいくのかどうか、来年度以降の動向に注視したい』、「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
先ずは、本年1月30日付け日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/012400005/
・『国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。 30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい』、「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。
・『東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入 高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。 高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。 ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。 300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。 それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。 編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。 大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。 国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか』、「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか」、なるほど。
・『高専の役割の変化と社会からの要請 なぜ高専からの進学が増えたのか。東京都八王子市にある国立高等専門学校機構本部に進学の現状について聞いた。教育総括参事で教授の下田貞幸氏によると、高専の役割が変化してきた面があると指摘する。 「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています。起業する学生も増えていますね」 かつては高専を卒業すると、就職する学生が7割から8割を占め、進学は2割に満たないくらいだった。それが、約30年前から20年前にかけて、各高専に専攻科ができたことで、進学する学生の割合が増えた。 併せて、高専生を編入で受け入れる大学が増えて、その人数も多くなってきた。大学側も高専の卒業生への期待が大きくなっているという。 「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」』、「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。
・『半数以上が大学に編入する高専も 高専全体では編入する学生の割合は約4割だが、それを超える高専もある。最も割合が高いのは、6割を超えている群馬県の群馬工業高専と新潟県の長岡工業高専だ。次いで、6割に近い兵庫県の明石工業高専が続く。千葉県の木更津工業高専と奈良県の奈良工業高専は5割を超え、九州では久留米工業高専が4割以上となっている。下田氏が次のように解説する。 「大都市圏の高専は大学に進む割合が高いですね。おそらく、大学の数が多いからではないでしょうか。長岡工業高専については、長岡技術科学大学が近くにあることも要因の一つだと思います」 さらに、高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している。次の表は、21年4月の大学院への入学者数だ。 多い順に見ていくと、奈良先端科学技術大学院大学、東北大学、筑波大学、九州大学など、国立大学の大学院に多数進学していることが分かる。修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ』、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。
・『あまり知られていない進学率の高さ 以上のように、高専からの大学編入や、その先の大学院への進学を選ぶ学生の割合は高い。にもかかわらず、学生の親世代も含め、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。 高専のパンフレットを見ると、「卒業後の多彩なキャリアパス」として、学生の約4割が進学していることが書かれている。ただ、その記述はあっさりしている。下田氏によると、中学生に説明する際に、進学率のことはそれほど打ち出していないという。 「そういう道もありますよ、というくらいの説明しかしていないと思います。どこまで伝わっているのかは分かりません。そもそも高専自体がマイナーな存在です。中学3年生が全国で約100万人いる中で、高専に進むのは1%弱です。高校の普通科に比べると、まだまだ認識されているとは言えないですね。 高専は各都道府県の第2、第3の都市に設置されているケースが多いので、寮に入って親元を離れる学生が多いです。それも一つの要因なのか、新型コロナウイルス禍では志願者数が減りました。各高専では、それまで寮では2人部屋や3人部屋が主流だったところを、コロナ対応のために個室に変えるといった対応を取った場合もあります」 高専では現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある。「高専について理解してもらうために、教員が中学校に出向いて説明に回っています。他にも、小・中学校への出前授業や、科学技術フェアなどを開催して、高専の教育内容を知ってもらう機会をつくっています。教育内容と合わせて、高専の卒業生には多彩なキャリアパスがあることも、もっと知っていただきたいですね」 全国の高専生の4割を占める進学率は、今後も下がることはなさそうだ。15歳から専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか』、「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。
次に、2月5日付けAERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023020200071.html
・『2024年度中をめどに統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医歯大)の統合計画案(統合案)は、1月19日に新しい統合大学名「東京科学大学」(仮称)が公表され、いよいよ現実味を帯びてきた。ネット上では「薄っぺらな軽すぎる大学名」「Fラン大学」などと揶揄され、両大学の統合を歓迎しないコメントが散見されるなど、大学の統合話にしては話題になっている。そこで、この統合案の妥当性を長い間、高等教育現場にいた者として考えてみることにした』、興味深そうだ。
・『Big Ten同士の統合は果たして実現するのか 統合案は1月中に、大学や学部の新設、大学内の教育的組織改革(改組)などの認可を判断する大学設置・学校法人審議会(設置審)に提出することも発表された。一般的に、設置審にかけるまでには文部科学省(文科省)との事前協議で計画案が了承されなければならないので、統合案は文科省からゴーサインが出されたものと考えられる。したがって今後、特別に問題がなければ両大学の統合は認可される公算が大きい。しかし、以前、勤務先の大学の学部と大学院の改組(博士課程設置など)で設置審の認可を受けた経験からすれば、両大学の統合には、いくつか問題があるように思う。詳しい統合案を読んでいないことを前提に以下、検証を試みたい。 この統合は、優れた大学として文科省から認められた指定国立大学法人同士なので、いやが上にも注目される。指定国立大学法人は、東北大学、筑波大学、東京大学、医歯大、東工大、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の10校で、北海道大学を除く旧帝国大学6校に筑波大学、医歯大、東工大、一橋大学の4校が加わって、まさにBig Ten Conference(米国カレッジスポーツ)状態となっているといえば揶揄に聞こえるかもしれない。 このなかで、名古屋大学は、正確には国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学で、岐阜大学はこの法人機構に所属し1法人機構2大学(傘下という意味でアンブレラ方式)となっている。そのほかの指定国立大学法人は1法人1大学方式である。ちなみに、国立大学法人は大学数でいえば86校あり、その組織形態のなかには上記の東海国立大学機構以外にも、北海道国立大学機構(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)、奈良国立大学機構(奈良教育大学、奈良女子大学)がある。なお、大学の再編・統合はそのほかでも進んでいる。) 今回の東工大と医歯大の統合は、前述のように指定国立大学法人同士であり、しかも1法人1大学を目指すという点で注目に値するが、以下に述べるように統合には疑問を感じる』、どういう「疑問」なのだろう。
『言い尽くされた理念目標に目新しさは感じられない ここで2022年10月14日に両大学で締結された4項目からなる基本合意のうち2項目目と3項目目の概要について言及したい。 2項目目には「多様な社会課題に立ち向かうために、理工学、医歯学、さらには情報学、リベラルアーツ・人文社会科学などを収斂させて獲得できる総合知に基づく『コンバージェンス・サイエンス』を展開します」と書かれている。また、3項目目には「教養教育と専門教育を有機的に関連させ、現代社会が直面する諸課題に対峙して、真に解決すべき 課題を設定し、解決へと導く役割を担う高度専門人材を輩出します」と謳っている。しかし、これらのことは他大学の改組の際にも言い尽くされてきた理念目標であり目新しさはどこにも感じられない。ちなみに俯瞰的・総合的教育研究を目指して、1974年に初めて広島大学に総合科学部が誕生し、その後にも他大学に同じような理念目標を掲げた学部が誕生している。 今回の東工大と医歯大の統合で、この2項目目と3項目目をどう達成するのか、特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる』、「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。
・『専門バカをつくらない、は何を意味するのか 2022年11月1日、両大学の学長の話をテレビで長時間、聴いた。両大学とも、単科大学としての危機意識を持ち、理工学と医歯学を連携させて、新領域分野を創生、地球環境問題、感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の問題解決を目指すという。このことは、前述の基本合意の2項目目、3項目目を易しく言い換えているのだが、この目標も、以前から言い尽くされてきた大きなテーマで、まったくもって新しさを感じない。しかも、理工学と医歯学の連携は以前から、他大学内及び他大学間でも行われてきた。だから、両大学長の説明からは統合する確固たる理由が残念ながら伝わってこず、統合の理由としては説得力に欠ける。 地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない。東工大学長も、“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である。言い過ぎかもしれないが、東工大学長の公言は、単科大学の危機意識、「職業大学からの脱皮」「職工教育の反省」とも受け取れる。 しかし、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない。さらにいえば、政府が創設した国際卓越研究大学制度(2024年度から年間数百億円(1校あたり)を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する』、「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。
・『日本は高校からすぐに医歯学部に入学する テレビ番組での、医歯大学長の「日本は高校からすぐに医歯学部に入学する」という発言にも私は注目。この発言は直接統合の議論に関係しないのだが、統合理由として掲げた俯瞰的教育研究がなぜ日本ではなかなか進まないのかの理由として述べられた言葉だ。あまりにも人ごとの発言ともいえるが、日本の教育を考えるうえで極めて重要な指摘である。この発言は「米国流の日本版メディカルスクール化(4年制大学卒業後に医歯学部に入学)」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められるのだが』、「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。
・『統合案の先、将来は4大学統合の議論を 今回の東工大と医歯大の統合は、基本合意1項目目「両大学の尖った研究をさらに推進」を優先する、研究を主眼とした統合といえるのではないか。確かに、両大学の研究レベルは高く、統合することにより医療機器、医療材料、医療生命学、医療化学などの分野において格段の進歩が期待できるだろう。この統合は、世界的競争に打ち勝つ新たな挑戦ともいえる。文科省もそれを今回の統合に期待しているのかもしれない。 しかし、大学の役割はむしろ教育にあるといっても過言ではない。そのことを上で述べたつもりだ。公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う。 和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している』、「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。
第三に、1月25日付けAERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023012400057.html?page=1
・『2024年度の統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学の新大学の名称が「東京科学大学」となると発表された。東工大は、同年に女性のみが出願できる「女子枠」を創設することも決まっており、大学改革を進めている。国立理系トップの東工大は女子学生が13%しかおらず、「男女差」が課題となっていた。その一方で、女子枠創設には、入試の平等性が損なわれるのでは、など疑問も上がっている。大学統合や女子枠創設について、卒業生はどう感じているのか。東工大環境・社会理工学院を卒業後、女優として活躍する山崎丹奈さんに大学への思いを聞いた。 「統合や女子枠の一報を聞いたときには、本当に驚きました。大学側が課題を感じた上で、新たな一歩を踏み出そう、改革しようという意識を感じました。東京科学大学、という名称については、シンプルで覚えやすいと思います。自分が両大学を知っている歴史以上にこれからの大学の未来は長いと思うので、新名称がなじむように、これからも変わりなくその専門性を磨いていってほしいです」 こう話すのは、2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した、女優の山崎丹奈さん(31)。学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色と言える。そんな山崎さんからみて、母校の改革はどう映っているのだろうか。 「確かに、入り口の入学者数を増やせば、出口も増えるわけで、女性の研究者や技術者も増えるでしょう。ただ、その仕事をするにあたって女性が働きやすい環境が整っているかといえば、受け入れ先の組織や企業で変わってくると思います。もちろん女性枠は大学ができる対応の一つだと思いますが、女性の人生をどう考えるか、という意味でソフト面でもっとやれることはあるのではないでしょうか。女子学生が増えても、たとえば、大学内の研究環境が改善しなければ、状況が良くなったとは言えないと思います」』、「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。
・『実際、山崎さんは過酷な研究環境に直面したことが、将来を考えるきっかけになった。山崎さんによると、当時の東工大では学部生の“ほぼ全員”が大学院に進学していたという。土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという。さらに、女子学生は山崎さん1人だった時期もある。研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います。社会に出てからは、よく『もったいない』という言われ方をされました。専門分野に進まないなんてもったいない、芸能界に入るなんてもったいない、という意味なんだろうと理解しています。ただ、この挫折があったから、自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」 東工大が「女子枠」の創設を発表したのは、昨年11月のこと。25年度までに学校推薦型選抜と総合型選抜(AO入試)で計143人の「女子枠」を創設する。これにより、現在は学士課程(学部)に約13%しかいない女子学生の比率を20%以上に高めるという。女子枠は24年度入試から物質理工など4学院(学部)で先行的に開始する。総募集人数は変更せず、女子を増員した分は、一般選抜枠の人数を縮小することで調整するという』、「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。
・『大学側は公式HPで「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン(編集部注・多様性と受容)の取り組みの一環」「理工系分野における女性研究者・技術者を増やすこと」などとしている。日本の大学学部の女子学生の理工系分野の入学者は7%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国(同15%)に比べて、極端に低い。こうした状況を是正しようと、名古屋大学など他の国立大学でも「女子枠」を設ける動きはある。 だが、これに対してSNS上では「女性の方が受験で有利になるのは逆差別だ」「女性の社会進出とは別の問題」など疑問視する声も上がっている。 大学側の意図や世間の反応について、山崎さんはどう思っているのだろうか。 「入試は受験生にとって、命がけといっても過言ではありません。推薦枠とはいえ女子限定で入試を行うことで、男子の一般受験生がないがしろにされていると感じないかは心配です。また、女子枠で入った生徒たちに対して、『男なら落ちていたのに女子だから受かった』など心無い言葉を投げかられないかという不安も残ります。大学側が強調する“多様性”というのも、すごく難しい言葉で、どのようにも使えてしまう。多様性は性差だけではありません。性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」 山崎さんは大学院を1年で中退し、芸能事務所に所属しながら旅行系の一般企業に就職。会社員を1年経験した後、俳優に専念して活動してきた。最近では、東京理科大卒の三浦透子さんなども活躍し、「リケジョ女優」という言葉も生まれた。山崎さんが東工大で学んだことで、俳優として生かされている部分はあるのだろうか。 「正直言って、研究内容という点ではないですね(笑)。ただ、勉強に対する姿勢だったり、課題に直面したときの精神面だったりは、大学で鍛えられたことは大きいと感じています。ムチャぶりのスケジュールになっても、何とかなるとか(笑)。あと会社員を経験したことは、組織や社会の仕組みを知ることができ、社会で生きる一人の人間として成長させてもらいました。これは演技をする上で役に立っています。女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう。 ◎山崎丹奈(やまざき・にな) 1991年生まれ。幼少期は米ペンシルベニア州で育つ。桐蔭学園を卒業後、東工大土木・環境工学科(当時)に入学。2009年に「ミス東工大グランプリ」に輝く。2012年に女優デビュー。17年に映画「トリノコシティ」で主演。その他、「母になる」(日本テレビ系)、「マザー・ゲーム」(TBS系)など多くのドラマに出演。一児の母として育児にも奮闘中』、「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。
第四に、4月19日付け日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/041200007/
・『恵泉女学園大(東京都多摩市)は2023年度の入試終了後の3月22日、今年の入学生を最後に学生の募集を停止すると発表した。入学者数の定員割れが続いたことが理由だが、他の多くの女子大も志願者を大幅に減らしている。23年度入試の結果から、女子大における志願者数の減少や、女子受験生の学部選びの変化について現状を見ていく』、興味深そうだ。
・『定員割れが続いていた恵泉女学園大 恵泉女学園大のホームページに掲載されている学生募集停止のお知らせ 「このたび、学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定いたしました。(中略)18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」 これは3月22日に学校法人恵泉女学園と恵泉女学園大がホームページで発表した、学生の募集停止のお知らせだ。 恵泉女学園大は1988年に開学。東京都多摩市にキャンパスがあり、人文学部と人間社会学部、それに大学院を擁している。2022年5月1日現在のデータを見ると、2つの学部を合わせた定員1188人に対し、在籍する学生数は1028人で、定員率は86.5%となっている。前年同時期の定員率94.0%から7.5ポイントも下げていた。 入学者数の推移を見ると、13年度は2学部で466人だったが、翌14年度には346人に減少し定員割れする。そこから減少傾向は続き、17年度からは入学定員を減らしたものの、22年度は定員290人に対し入学者数は162人で、入学定員充足率は55.8%となった。 東京都内の女子大では、町田市の東京女学館大が17年に閉学した。大学入試に関する研究や情報提供を行う大学通信(東京・千代田)の井沢秀情報調査・編集部長は、恵泉女学園大の募集停止の背景を次のように分析する。 「私立大学は地方も厳しい状況ですが、東京都内でも郊外にある大学は学生を集めるのに苦慮しています。特に女子の場合、都内であればできるだけ都心の方がいいと考える受験生も多いでしょう。また、恵泉女学園大はとても素晴らしい教育を行っている大学ですが、人文系の学部しかない点も、入学者数が減少していた要因ではないでしょうか」』、「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。
・『女子大「御三家」でも志願者数が大幅減 募集停止を決めたことで恵泉女学園大が注目されたが、女子大を取り巻く環境は大きく変わってきている。特に23年度入試では、難関女子大が志願者数を減らした。次の表は、大学通信が調査した、東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数だ。 東の御三家は津田塾大、東京女子大、日本女子大。いずれも志願者数は減少していて、特に東京女子大は前年より1486人減、前年比で83.2%と大幅に志願者数を減らした。学習院女子大、共立女子大、実践女子大、昭和女子大、清泉女子大などが前年よりも志願者数を増やしている中で、3大学の減少が目立っている。 一方、西の御三家である京都女子大、同志社女子大、神戸女学院大も志願者数が減少している。特に同志社女子大は1137人の減少、神戸女学院大は前年比61.8%と減少率が目立っている。 23年度入試では、私立大学全体で志願者数を減らした。前年比で数%の減少になる見込みで、4年連続の減少となる。その状況下で女子大の志願者数が減少するのも不思議ではないが、御三家クラスの減少幅が大きくなったのには、さまざまな要因が考えられる』、「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。
・『女子受験生の法学部人気が上昇 難関女子大が大きく志願者数を減らしたことについて、井沢部長は次のように指摘する。 「女子大は人文系の学部が中心ですが、以前のような人気がなくなったと言えます。人文系の学部を選ぶにしても、総合大学に進む傾向が強まりました。また、人文系以外の学部を選ぶ女子受験生が増えたという変化も出てきています」 大学通信の調査によると、23年度入試では難関大学における女子の合格者数に、これまでにない変化が見られるという。その1つが、法学部への進学だ。文系最難関であり、主に法学部に進学する東京大の文Iでは、女子の占有率が30.5%に上昇した。 「東京大では主に文学部に進学する文Ⅲで、女子の占有率は毎年40%程度と高い数字を出していました。文Ⅲが例年通りの占有率を見せている一方で、文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました。この数字はおそらく史上最高です。首都圏の女子校に話を聞いても法学部志向の生徒が増えているのは間違いなく、優秀な女子の進学先が変わってきたと言えます」 私立難関大学の法学部合格者数を高校別に見ても、トップは女子校が占めている。早稲田大では桜蔭、慶応義塾大では頌栄女子学院がトップ。さらに明治大では埼玉県立浦和第一女子、中央大では豊島岡女子学園が最も合格者を多く出した。女子校の法学部人気の高まりは顕著だ。 「法学部に進学した場合、想定される就職先の1つが公務員です。国家公務員の上級職に当たる総合職だけでなく、都道府県庁や政令指定都市、東京23区などの上級職もいろいろな仕事ができますので、就職先として魅力を感じているのではないでしょうか」と井沢部長は話す。 また、最難関でもある医学部の人気も根強い。東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇したことになる。医学部は国立・私立ともに女子の人気は高く、将来を考えた結果として、医学部や法学部への進学が増えているのではないかと考えられる。 「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケースと言えるのではないでしょうか」(井沢部長)』、「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。
・『女子大の理系学部新設は生き残りにつながるのか 国立や私立に限らず、女子大では新たな動きも起きている。それは理系学部の新設だ。背景には国の要請もあり、実際に動き始めている。 国立では奈良女子大が、22年4月に工学部を女子大で初めて開設した。24年4月にはお茶の水女子大が共創工学部(仮称)を新設する予定だ。その名称には、「工学と人文学・社会科学の知が協働し、共に未来の環境、社会、文化を創る」という意味が込められているという。また、私立では日本女子大が建築デザイン学部(仮称)を24年4月に開設を予定している。 理系人材の育成強化を掲げる文部科学省は22年度、既存学部を再編して理系学部の新設や拡充をする大学を財政支援しようと、3000億円の基金を創設した。このため、女子大でもさらに理系学部を新設する動きが出てくることも予想される。 ただ、23年度入試で2年目を迎えた奈良女子大工学部の前期の志願倍率は、前年度の6.3倍から2.7倍へと大幅に下がった。「理系学部を新設することが、女子大が生き残る道になるのかどうかは不透明」と井沢部長は指摘する。 「工学部など、これまでの女子大にない学部をつくる動きもありますが、工学を学ぶにしても、ある程度の規模感が必要になります。奈良女子大の場合は奈良先端科学技術大学院大学と共同で取り組んでいるので、理系の教員の充実は図れるとは思います。ただ、設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう。 女子大には就職率の良さや、面倒見の良さがあります。そういう面に引かれる受験生や、女子教育を望む受験生や保護者も一定数います。東京の郊外にある女子大や、関西の女子大が苦戦しているのは事実ですが、女子大の役割はまだまだあると思っています」(井沢部長) 女子大離れがこのまま進んでいくのかどうか、来年度以降の動向に注視したい』、「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
タグ:「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教 大学 (その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) 日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」 「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。 「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、 「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出 てくるのではないだろうか」、なるほど。 「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、 「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、なるほど。 「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。 「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。 育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が 育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。 AERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」 どういう「疑問」なのだろう。 「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。 「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、 「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。 「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。 「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。 AERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」 「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。 「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。 夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足り ないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。 「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。 「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。 日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」 「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。 「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。 「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、 それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。 「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。