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格差問題(その10)(女子大生の夢は世帯年収3000万 生きづらさ増す国と若者たちの苦悩。低学歴・低収入ほどたばこで病気に?喫煙が「格差問題」と化した理由) [社会]

格差問題については、本年3月22日に取上げた。今日は、(その10)(女子大生の夢は世帯年収3000万 生きづらさ増す国と若者たちの苦悩。低学歴・低収入ほどたばこで病気に?喫煙が「格差問題」と化した理由)である。

先ずは、3月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「女子大生の夢は世帯年収3000万 生きづらさ増す国と若者たちの苦悩」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00237/
・『「夢は35歳で、世帯年収3000万円になることなんです! だから、大企業にしか就活してません」 目をキラキラさせて“夢”を語るのは、現在、就活中の女子大学生だ。 世帯年収3000万円って? 共働きで稼いでも1人当たり1500万円の年収が必要になる。30代そこそこでそんな給料をくれるなんて、大企業の中でも限られていると思うのだが……』、「河合 薫氏」の記事の殆どは有料なので、紹介出来なかったが、これは数少ない無料記事だ。
・『リソース格差が世代を超えてつながっていく(学生「結構ありますよ~。IT(情報技術)系とか外資系とか」←断言! 河合「でも、倍率高いでしょ?」 学生「どうですかね~。でもやっぱり、人並みの生活したいですし~」←楽観 河合「ひ、人並みねぇ……。もし、大企業入れなかったら? 給料高い中小企業とか?」 学生「中小企業……(笑)。入れなかったら好きなことやります!」←自信たっぷり 河合「す、好きなこと。つまり、フリーランスとか、起業とか?」 学生「ですかね~。はい、好きなことやって、楽しく生活しま~す」←将来不安ゼロ ……すごい、というか、極端というべきか。 私も若い時には、かなりの夢見る夢子ちゃんではあったが、昭和おばさんは、久しぶりに面食らいました。 そこで、就活生と日常的に接している「ザ・昭和」の同世代に、このびっくり会話を話したところ、「結構いる、というか決して珍しくないよ」と。「若い世代の間の格差は想像以上に深刻で、気の毒なほど格差の固定化が進んでる」と教えてくれた。 私はこれまで繰り返し、格差問題や二極化に関して発信してきたし、中間層没落のリアルも取り上げてきた。だが、私の想像をはるかに超える局面に、日本社会は到達している“らしい”。 「中間層の没落」ではなく「中間層の消滅」。ハイソな生活をする若者と、野草で食をつなぐ学生である。 むろんここでの格差は、経済格差だけではない。 これもコラムでも繰り返し書いてきたけど、出自家庭格差、機会格差、学歴格差、希望格差などの様々な格差を意味し、「持てる者」は生きる上で必要なリソースを豊富に持つ一方、「持てない者」はリソースを獲得する機会すらない。両者の間には、チョモランマよりも高い壁が立ちはだかる。 ゆえにどんな家庭に生まれるか? で、子供が獲得できるリソースが決まり、リソース格差が経済格差へと世代を超えてつながっていくのである。 というわけで、今回は「格差の現在地」という、ちょっとばかり大きなテーマであれこれ考えてみようと思う。 まずは、冒頭の女子大生の「大企業がダメなら、好きなことをやる」という選択の心理から読み解いていきます』、「まずは、冒頭の女子大生の「大企業がダメなら、好きなことをやる」という選択の心理から読み解いていきます」、なるほど。
・『どうせ働くなら、好きなことやらなきゃね~  一体なぜ、彼女は「世帯年収3000万円が夢→3000万円稼げる大企業を目指す→内定もらえない」となったときに、少しランクを下げて、例えば「世帯年収1500万円なら実現しそうな会社」を目指そうと思わないのだろうか? 一体なぜ、「世帯年収3000万円のハイソな生活無理」となったときに、「好きな仕事に就く」と進路変更できるのだろうか? ……たぶん、何がなんでも「勝ち組」でいたいのだと思う。 彼女の「人並み」という言葉は「勝ち組の中の勝ち組」を意味し、その背後にあるのは「絶対に仲間や友人から見下されたくない」だ。 同じ大学で、同じような学生生活を送ってきた仲間の「下」になるのは、彼女にとっては「負け」。「世帯年収3000万円!」が「世帯年収1500万円」だと負け組になる。 しかし、「好きなことをやってる自分」になれば、「私はお金じゃないのよ。どうせ働くなら、好きなことやらなきゃね~」と豪語できる。これも彼女には「勝ち組」なのだ。 「勝つ見込みがなくなったら、同じ土俵に乗らない」が鉄則なのだろう。 ちなみに、30代の平均年収は435万円。男性474万円、女性377万円で、「300万~400万円未満」が最も多く、28.7%を占める。30代で「年収800万円以上」はわずか3.8%だ(資料:https://doda.jp/guide/heikin/age/#anc_age_02)。 30代男性・女性の平均年収(年収分布) 出所:doda「20歳~65歳の平均年収は? 平均年収ランキング」(年齢・年代別の年収情報)【最新版】(※2022年12月19日更新)) このように考えていくと、「30代前半で年収700万円ももらっている超エリート集団」の働く意欲が壊滅的に低くなっているのも、腑(ふ)に落ちる。自分が思い描いていた「成功のルート」から外れると、モチベーションが急落する(「目指せ窓際族! “働きたくない30代年収700万円エリート”増殖中」、https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00184/)。 頑張るエンジンを稼働するには、「仲間から羨望のまなざしを注がれる自分」じゃなきゃダメってこと。 「すごいよね~、世帯年収3000万円だって! 〇〇に住んでるんでしょ? いいなぁ~」 「いいよね~、好きなことを仕事にするって。かっこいいなぁ~」 といった具合に』、何やら恰好だけつけている感じだ。
・『「試験で失敗でもしたら」と、「推薦入学」  社会全体で見れば数%であっても、自分の周りにその数%に該当する人がいれば、「数%に入ってないと勝ち組」にはならない。 「勝ち組のギリギリのところでいいから勝ち組でいたい」が、昭和世代の思考とするなら、「超勝ち組じゃなきゃ意味がない」が、令和世代の思考だ。 「通知表をなくそう」「運動会で勝ち負けを争うのをやめよう」という教育を受けてきた世代が、「top of the top」という限られたパイを奪おうと競って、走り続けている。「競争させない教育の目的」は……果たしてなんだったのだろう。 これまでも日本の教育は「競争させないために取った施策が、逆に競争を加速させた」というあべこべを演じてきた。 「受験戦争」という言葉が使われ始めたのは1960年代だが、それを鎮火する目的で取り入れたのが偏差値だった。 ところが、偏差値に基づき大学を序列化したことで、「ちょっと頑張ればもう少し上に届くかも」と競争に参戦する人が増え、競争は激化。偏差値が競争を一層過熱させてしまったのだ。 「運良く競争に勝つ人」が出ると、もっと上にいきたい、もっといけるという感情がかき立てられる。これは「欲望の学校化」と呼ばれる現象で、競争社会を激化させる、人の心理状態を表すものだ。 昭和の時代は中学校が「欲望の学校化」の装置だった。その装置が「中高一貫校」により、小学校になり、幼稚園へと低年齢化している。 一方、少子化で定員割れを恐れる大学は、早い段階から学生を囲い込むようになった。近年急増している推薦入学制度も早期囲い込みが最大の目的だ。 「子供に苦労をさせたくない親たち」は、「幼稚園受験からだったらなんとかなるかもしれない」と“お受験”に躍起となり、「試験で失敗でもしたら」と、「推薦入学」を好む。) 「人生それぞれだよね~」だの、「色々な生き方をすればいいよね~」と言ってる大人たちが、大人側の勝手な都合で、「成功の(ように見える)ルート」を画一化させたのだ。 「子供に競争させたくない」と言ってる大人たちが、子供が競争せざるをえない状況に追い込んでいる。それが若者の格差を深刻にする、最大の原因といえよう』、「「人生それぞれだよね~」だの、「色々な生き方をすればいいよね~」と言ってる大人たちが、大人側の勝手な都合で、「成功の(ように見える)ルート」を画一化させたのだ。 「子供に競争させたくない」と言ってる大人たちが、子供が競争せざるをえない状況に追い込んでいる。それが若者の格差を深刻にする、最大の原因といえよう」、「大人側の勝手な都合で、「成功の(ように見える)ルート」を画一化させたのだ」、罪つくりなことだ。
・『心よりカネ、とにかくカネ  競争に勝った人は、価値ある人。 競争に負けた人は、価値なき人。 競争に参加しなかった人も、価値なき人。 競争社会ではただ単にお金を稼ぐ能力の違いだけで、人間の価値まで選別される。競争に勝てなかったというだけで、人間的にもダメなように扱われてしまうのだ。 そこにあるのは「カネ」。年収である。いい大学に入って、お金を他人よりたくさん稼げる能力がなきゃダメ。いくら稼ぐかじゃなくて、どれだけ人よりも多く稼ぐかが幸せへの道という、価値観を大人がつくってしまった。 おまけに人間には、自己の利益を最大限守りたいという欲求もあるため、ひとたび負け組の集団に属することになった人が、二度と自分たちの集団にはい上がってこられないような行動を無意識に取ることがある。自分が生き残るためには、他者を蹴落とすこともいとわない人間の心の奥に潜む、闇の感情が理性を凌駕(りょうが)するのだ。 「私」たち大人は、カネさえあれば常に人生が豊かになる、というほど人の心は簡単じゃないことを知っているはずなのに。心よりカネ、とにかくカネ、とカネの万能感を追い求めている。その末路が、若者の生きづらさ、だ。 内閣府が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年度)には、大人都合の競争社会で傷つく若者の心情が垣間見られる結果がある(資料、https:///www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf/s2-1.pdf)。 「自分自身に対して満足しているか?」という問いに、日本では「そう思う」と回答する若者が圧倒的に少なく、たったの10.4%。7カ国中、ビリだ。日本の次に低かったスウェーデンでも30.8%。ちなみにトップは米国で57.9%だった。 また、「今が楽しければよいと思う」との項目で、「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」が合計60.4%と6割を超え、5年前の調査からは微増だった。 「今が楽しければよいと思う」 出所:内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年度) 「自分は役に立たないと強く感じる」は、半数以上の51.8%が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」とし、こちらも前調査より増えた。 「自分は役に立たないと強く感じる」 出所:内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年度) 「子供の世界は大人社会の縮図」と言い続けてきたけど、「今」を生きる若者は、「今」の大人たちが若い頃には経験しなかった生きづらい社会を生きることを余儀なくされている。 繰り返しになるが、それをつくったのは「大人」だ』、「「今」を生きる若者は、「今」の大人たちが若い頃には経験しなかった生きづらい社会を生きることを余儀なくされている。 繰り返しになるが、それをつくったのは「大人」だ」、その通りだ。
・『「私」たちは、カネの万能感を信じ続けるのか?  私は大人が多様な社会、多様な生き方を表向きは礼賛しながらも、それを拒否したことが、子供たちの未来をなくしたと考えている。 むろん、これだけ賃金が上がらない、四六時中働いても「普通の生活すらできない」社会で生きる大人が、カネに絶対的価値を置くのも、ある意味においては理解できる。 しかし、本来、何に価値を置くかは人によって異なるものだ。 大人が人間の価値について、それぞれ自分なりの考えを持ち、他者には他者の価値観があることを受け入れて、他者を評価すれば、「格差社会」などというものは存在しなくなるのではないか。 例えば、うつ病になる人も、自殺をする人もいない、パプアニューギニアのカルリ族では、互いの価値観を認め合う文化が根付いているそうだ。 例えば「ブタ」がその人にとって、価値あるものだとしよう。すると、そのブタを失ったとき、その喪失感を部族全体で埋めるための儀式が行われる。 「あなたは大切なものを失ったのですね。そのことを私たちは分かっていますよ。物足りないかもしれないけれど、何とかあなたに開いた心の穴を埋める手伝いをさせてください」と、その人の価値観を受け入れるそうだ。 「Death of Despair=絶望死」という衝撃的な言葉で、中年の米国白人男性の自殺率と罹患(りかん)率の増加を説明した、ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートン博士と夫人のアン・ケース氏が行った調査で明かされたのは、賃金の低さ、すなわち貧困だけが「絶望死」の原因ではないという事実だった。 大学を出ている人と出てない人の間には、賃金のみならず、仕事、家庭、コミュニティーなど「生活世界」を分断する壁がいくつもあった。かつて非大卒の中年白人男性たちの「生活世界」に当たり前にあったものがなくなり、仕事の誇りや人生の意義を失い、生きる光が奪われていった。 そんな痛みのある人生から逃れるために、薬物やアルコールに溺れ、死に急ぐ人が量産されていったのだ。 この先も「私」たちは、カネの万能感を信じ続けるのか? 女子大生の「夢」は、そんな問いを突きつけている』、「この先も「私」たちは、カネの万能感を信じ続けるのか?」、「カネ」を尺度の基準にするのではなく、失われた自己肯定感を取り戻すようにすべきだ。

次に、3月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「低学歴・低収入ほどたばこで病気に?喫煙が「格差問題」と化した理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/319106
・『アメリカで盛り上がる「たばこ排除」、背景に貧困の連鎖(2月、「愛煙家」の皆さんの心をかき乱すような海外ニュースがまた飛び込んできた。 米疾病対策センター(CDC)の最新世論調査によれば、米国の成人の半数以上が全たばこ製品の販売禁止に賛成しているというのだ。 新型コロナウィルスの感染拡大でバタバタと人が亡くなっていた時も、「マスクをするもしないも個人の問題だろ」とオレ流を貫く人も多かった「自由と自己責任の国」で、なぜここまで明確なタバコ排除の声が盛り上がっているのか。 「体に悪い」という医学的根拠もさることながら、多くのアメリカ人が問題視しているのが、「貧しい人の健康を損わせて、さらに貧しくさせてしまう」という「格差拡大」の恐れがあるからだ。 実はアメリカのタバコ市場の約3分の1を占めている「メンソールたばこ」は、アフリカ系アメリカ人や低所得者層の喫煙率が非常に高い。これは「たまたまこの層にハマった」からではない。あえてターゲットにされているのだ。 「たばこ製品、特にメンソールたばこについては、若者や人種的・民族的少数者、低所得層、性的少数者に向けて偏った宣伝が行われていることが、研究で示されている」(CNN.co.jp 23年2月3日) また、この「メンソールたばこ」は多くの国で禁止されていることからもわかるように、一度吸ってしまうと、なかなかやめられないという高い中毒性がある。そこに加えて、未成年者が手を出しやすい。タバコは幼い頃から吸えば吸うほどヘビースモーカーになりやすいことがわかっているので、当然、健康を損なう人が増える。 ご存じのように、かの国は日本のように国民皆保険制度がないので、低所得者層が体を壊せば治療費でより貧しくなる。そして、そのような貧しい家庭の子どもが「かっこいい」とメンソールたばこに手を出して再び貧困へ…という感じで「貧困の連鎖」も指摘されている。つまり、アメリカでたばこ排除の動きが盛り上がっているのは、健康うんぬんもさることながら「格差問題」なのだ』、「アメリカでたばこ排除の動きが盛り上がっているのは、健康うんぬんもさることながら「格差問題」なのだ」、なるほど。
・『日本でも「格差」を理由にたばこ規制が進むおそれ  このような話を聞くと、「ま、日本はアメリカほどひどい格差はないから、今のところそんな“反たばこ”の世論にはならないだろ」とホッと胸をなで下ろす喫煙者も多いだろうが、これは対岸の火事ではない。 我が国でも遅かれ早かれ「貧しい人ほどたばこで健康を損ねる傾向があるので、格差をなくすためにたばこを規制せよ」という世論が盛り上がっていく可能性が高いのだ。 それがうかがえるのが、東北大学大学院歯学研究科の竹内研時准教授らのグループによる研究だ。竹内准教授らは20~69歳の男女約5000人を2017年~2020年にかけて追跡して、加熱式たばこによる受動喫煙への曝露状況が17年に4.5%だったものが、20年には10.8%となんと2.5倍になっていたことを明らかにした。これまで一般市民における、加熱式たばこの受動喫煙曝露の実態はわからなかったが、それを世界で初めて明らかにした研究だ。 実はこの研究には注目すべき点がもうひとつある。それは加熱式たばこの受動喫煙にさらされるリスクに「学歴」が関係しているということを明らかにした点だ。竹内准教授が言う。 「対象者を、中学・高校卒業者と、専門学校・短大・高専卒と、大学・大学院卒という3つのタイプの教育歴に分けて集計したところ、教育歴が短いグループ(中学/高校卒)は、教育歴の長いグループ(大学/大学院卒)に比べて、加熱式たばこによる受動喫煙への曝露リスクが約60%高いことが明らかになりました」 そもそも、なぜこのようなことを調べたのかというと、かねてから「紙巻きたばこ」ではこのような傾向があるということが指摘されていたからだ。 「以前から国内外のさまざまな研究で、教育歴が短い人ほど、紙巻きたばこの受動喫煙にさらされる割合が高いということがわかっています。そこで、加熱式たばこにも同じ傾向があるのか調べてみようと思ったんですが、そこである興味深いことがわかりました」(竹内准教授) 実は調査を開始した17年時点では、低学歴の受動喫煙曝露割合は5.4%で、高学歴は3.8%とそこまで大きな開きはない。しかし、翌年になると急に差が大きく開いた(18年時点で低学歴は10.2%、高学歴は5.5%)。 「加熱式たばこは全国のたばこ取扱店での販売が16年に始まったため、17年の段階ではまだ目新しかったとことに加え、従来の紙巻きたばこと比べ、吸うためのデバイスを購入する費用が余分にかかることから、教育歴が長く比較的金銭的に余裕のある人も先んじて購入し、いろんな場所で吸っていた可能性があります。その後、デバイスも求めやすい価格になって認知も広がったことで、徐々に教育歴の短い人のユーザーも増え、紙巻きたばこと同じ傾向におさまっていったと考えられます。つまり、これが喫煙というものに共通する特徴ではないでしょうか」(前出・竹内准教授)』、「受動喫煙曝露割合」は「18年時点で低学歴は10.2%、高学歴は5.5%」、「差が大きく開いた」、なるほど。
・『なぜ低学歴の人ほど受動喫煙にさらされるのか  なぜ低学歴の人ほど受動喫煙にさらされるリスクが高いのか。 「考えられる理由のひとつは労働環境の問題です。例えば、中学・高校卒の方は体力仕事や作業系の仕事に就くことが多く、そういう職場では受動喫煙防止対策がまだ定着していないケースも多いと考えられます。そのような職場で周囲が紙巻きたばこや加熱式たばこを吸っていた場合、学校を出たばかりの新社会人がたばこの煙を理由にその場を離れたり、自分の近くで吸わないようお願いすることは困難ではないでしょうか」(前出・竹内准教授) このような構造的な問題を示唆するデータもある。厚生労働省が習慣的に喫煙している人の割合を調べたのだが、19年度に喫煙している男性の割合を世帯年収別に見てみると、年収600万円以上が27.3%、年収400万円以上、600万円未満で29.4%、年収200万円未満では34.3%だった。年収が低くなるにつれて喫煙率が高くなっており、ワーキングプア男性の3人に1人はスモーカーなのだ。 低学歴の場合、どうしても低年収の職場で働くケースが多いことは否めない。低年収となると肉体労働や作業系の職場も多く、上司・先輩・同僚は喫煙者が多いという傾向があるので当然、受動喫煙リスクも高まりがちになってしまうというわけだ。 このような話を聞くと、愛煙家の皆さんは不快になるだろう。 「さっきから黙って聞いてりゃ、たばこを吸うと貧乏になるみたいな言い方じゃないか!オレの知っているヘビースモーカーは年収3000万だぞ」みたいに反論をしたくなる人もいるだろう。ただ、金持ちが他人に迷惑をかけず1日に1カートン吸おうが、そんな個別の話はどうでもいい。 筆者が懸念しているのは、貧しい人がたばこをスパスパ吸うことや、たばこを吸わない貧しい人が受動喫煙にさらされる傾向があるという事実によって、日本の格差がさらに広がってしまうことだ』、「貧しい人がたばこをスパスパ吸うことや、たばこを吸わない貧しい人が受動喫煙にさらされる傾向があるという事実によって、日本の格差がさらに広がってしまうことだ」、その通りだ。
・『喫煙すると健康にもキャリアにも悪影響、貧困に拍車  まず、喫煙はがんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など病気を引き起こすことがわかっている。貧しい人がこれらの病気になれば当然、これまでのように働くことができなくなるので、収入はさらに少なくなってしまう。 また、このように病気にならずとも貧しさに拍車がかかってしまう恐れがある。キャリアアップが難しいからだ。 『喫煙後45分は「職場出禁」の有名企業も、たばこ臭さが会社に与える大損失』の中で詳しく解説をしたが、今、上場企業では喫煙がビジネスシーンでマイナスに働くということで続々と、社員に業務時間中の禁煙だけではなく、喫煙後45分間は職場に戻らないことまで推奨している。 愛煙家の皆さんには酷な話だが、自由の国アメリカでさえ排除論が高まっているように、これは世界的な潮流なので、もはやこの包囲網が緩くなるということはない。厳しくなっていく一方だ。 それはつまり、1時間おきに喫煙所に行ってスパスパやりながら仕事をするというワーキングスタイルに慣れている人は、これからかなり働ける場所が限定されていくということだ。当然、高収入を得られるような仕事へ転職をするハードルも上がっていく。 このような問題が深刻になっていけば、アメリカのような「貧困の連鎖」も増えていくだろう。低収入の喫煙者の家庭の子どもは幼い頃から受動喫煙にさらされているので健康を損ねやすい。また、家族の影響で自身も早い年齢から喫煙を開始する可能性も高い。つまり、「喫煙と貧困の連鎖」が続いていくのである。 このように喫煙がもたらす「格差拡大」が社会的に注目されるように、日本でも今のアメリカのように「たばこ製品販売禁止」に賛成する世論が盛り上がっていくかもしれない。 そこまでいかなくとも、低収入・低学歴の人ほど受動喫煙の被害にあうのを防ぐため、いっそのことあらゆる職場でたばこ禁止にしてしまえというような意見は出るだろう』、「喫煙がもたらす「格差拡大」が社会的に注目されるように、日本でも今のアメリカのように「たばこ製品販売禁止」に賛成する世論が盛り上がっていくかもしれない。 そこまでいかなくとも、低収入・低学歴の人ほど受動喫煙の被害にあうのを防ぐため、いっそのことあらゆる職場でたばこ禁止にしてしまえというような意見は出るだろう」、なるほど。
・『貧しくなればなるほど、喫煙にさらされ追い詰められる現代社会  今の受動喫煙防止対策は「ザル」なので、小さな会社では職場でまだスパスパ喫煙している人もいるし、飲食店も個人経営などでは、まだ普通に吸える。こういう会社や店は「そんなにタバコの煙が嫌なら来なきゃいい」みたいなことを言うが、低学歴・低収入の人や若者、女性などの弱い立場の人は「嫌なら断る」なんてできない。 やっとありつけた仕事という場合や、非正規雇用など雇用主に強く言えない立場なので、心の底では「タバコの煙なんて吸いたくねえよ」と思いながらも「たばこ?全然平気ですよ」なんて調子を合わせている。貧しくなればなるほど、生きていくために、自分の心を殺して誰かが吐いた煙を平気な顔をして吸い続けて、心身が不調になっているのだ。 「このような格差問題の対策をしていこうと考えた時にまず必要なのが“見える化”です。教育歴が短い人ほど受動喫煙リスクが高いという実態がわかれば、どういった人たちを守るための環境整備や注意喚起が必要なのかが見えてきます。今回の研究は、喫煙率を下げていく施策を考える上でも参考になると思います」(前出・竹内准教授) 今、多くの大企業では職場の禁煙は常識になりつつある。「健康経営」の観点から、社員の禁煙をサポートするような取り組みも進んでいる。 しかし、日本の全企業数の中で大企業が占める割合はわずか0.3%に過ぎない。ワーキングプアの3人に1人は喫煙者で、低学歴の人ほど受動喫煙にさらされている。日本人の「健康格差」は静かに、だが確実に進行しているのだ。 たばこの問題は「国民の健康」として語られることが多いが、そろそろアメリカのように「格差」の問題として考える時がきているのかもしれない』、「日本人の「健康格差」は静かに、だが確実に進行しているのだ。 たばこの問題は「国民の健康」として語られることが多いが、そろそろアメリカのように「格差」の問題として考える時がきているのかもしれない」、同感である。
タグ:(その10)(女子大生の夢は世帯年収3000万 生きづらさ増す国と若者たちの苦悩。低学歴・低収入ほどたばこで病気に?喫煙が「格差問題」と化した理由) 格差問題 日経ビジネスオンライン 河合 薫氏による「女子大生の夢は世帯年収3000万 生きづらさ増す国と若者たちの苦悩」 「河合 薫氏」の記事の殆どは有料なので、紹介出来なかったが、これは数少ない無料記事だ。 「まずは、冒頭の女子大生の「大企業がダメなら、好きなことをやる」という選択の心理から読み解いていきます」、なるほど。 何やら恰好だけつけている感じだ。 「「人生それぞれだよね~」だの、「色々な生き方をすればいいよね~」と言ってる大人たちが、大人側の勝手な都合で、「成功の(ように見える)ルート」を画一化させたのだ。 「子供に競争させたくない」と言ってる大人たちが、子供が競争せざるをえない状況に追い込んでいる。それが若者の格差を深刻にする、最大の原因といえよう」、「大人側の勝手な都合で、「成功の(ように見える)ルート」を画一化させたのだ」、罪つくりなことだ。 「「今」を生きる若者は、「今」の大人たちが若い頃には経験しなかった生きづらい社会を生きることを余儀なくされている。 繰り返しになるが、それをつくったのは「大人」だ」、その通りだ。 「この先も「私」たちは、カネの万能感を信じ続けるのか?」、「カネ」を尺度の基準にするのではなく、失われた自己肯定感を取り戻すようにすべきだ。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「低学歴・低収入ほどたばこで病気に?喫煙が「格差問題」と化した理由」 「アメリカでたばこ排除の動きが盛り上がっているのは、健康うんぬんもさることながら「格差問題」なのだ」、なるほど。 「受動喫煙曝露割合」は「18年時点で低学歴は10.2%、高学歴は5.5%」、「差が大きく開いた」、なるほど。 「貧しい人がたばこをスパスパ吸うことや、たばこを吸わない貧しい人が受動喫煙にさらされる傾向があるという事実によって、日本の格差がさらに広がってしまうことだ」、その通りだ。 「喫煙がもたらす「格差拡大」が社会的に注目されるように、日本でも今のアメリカのように「たばこ製品販売禁止」に賛成する世論が盛り上がっていくかもしれない。 そこまでいかなくとも、低収入・低学歴の人ほど受動喫煙の被害にあうのを防ぐため、いっそのことあらゆる職場でたばこ禁止にしてしまえというような意見は出るだろう」、なるほど。 「日本人の「健康格差」は静かに、だが確実に進行しているのだ。 たばこの問題は「国民の健康」として語られることが多いが、そろそろアメリカのように「格差」の問題として考える時がきているのかもしれない」、同感である。
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インフラ輸出(その15)(新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗、中国との共同事業のインドネシア高速鉄道 ソフト開業を延期 安全性確保のため) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、本年6月11日に取上げた。今日は、(その15)(新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗、中国との共同事業のインドネシア高速鉄道 ソフト開業を延期 安全性確保のため)である。

先ずは、8月7日付け東洋経済オンライン「新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/691992
・『故・安倍晋三元首相とインドのモディ首相がそろって出席し、ムンバイとアーメダバードを結ぶ高速鉄道の起工式が華々しく開催されたのは2017年9月14日だった。それから6年が経とうとしている。 ムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道は日本の新幹線方式で建設され、2023年中に全線開業することになっている。だが、2023年も半分が過ぎたというのに、開業に関する声はまったく聞こえてこない。現在の工事の状況はどうなっているのか。関係者に話を聞いてみた』、興味深そうだ。
・『全長約500km、2017年に起工  インドには世界の高速鉄道先進国の技術を用いてデリー、ムンバイ、チェンナイ、ハイデラバードなどの主要都市を高速鉄道で結ぶ構想がある。複数の路線が計画されているが、中でも先行しているのがこのムンバイ―アーメダバード間だ。車両は東北新幹線用のE5系をインド向けにカスタマイズすることが決まっており、まず10両1編成の列車が24編成導入される。 在来線に乗り入れることもあるヨーロッパ式の高速鉄道とは違い、ムンバイ―アーメダバード間は新幹線と同じ専用線方式が採用される。路線延長は東京―新大阪間よりやや短い508kmで、12駅が設置される。そのうち、アーメダバード、サバルマティ、バドーダラの3駅は在来線の駅に併設し、高速鉄道と在来線の乗り継ぎを容易にする。 一方、ムンバイ側の始発・終着駅は在来線のターミナル駅であるチャトラパティ・シヴァージー駅に併設するのではなく、同駅から約10km北に離れたビジネス街のバーンドラ・クルラ・コンプレックスに地下駅を新設する。多くの国際企業がオフィスを構えるエリアであり、高速鉄道の駅を設置することで将来の発展性が期待できるほか、チャトラパティ・シヴァージー駅が世界遺産に登録されており再開発が容易ではない、新線を建設するには立地条件が良くないといった理由も考慮された。 なお、アーメダバード駅は始発・終着駅ではなく、アーメダバードから6km程度北に離れたサバルマティ駅が始発・終着駅となる。にもかかわらず「ムンバイ―アーメダバード間」と呼ばれているのは、サバルマティがアーメダバード都市圏に属しているからだ。つまり、「ムンバイ―アーメダバード間」とは、駅名ではなく都市名を指していることがわかる。 ムンバイ―アーメダバード間の高速鉄道計画は2015年12月の日印首脳会談で新幹線方式の導入に関する覚書が交わされ、2016年11月の首脳会議では年内に高速鉄道の設計業務を開始し、2023年の開業を目指すことが決まった。日本のJICA(国際協力機構)による詳細設計調査も始まった。JICAはJR東日本系の日本コンサルタンツ(JIC)などから構成される共同企業体とコンサルタント契約を12月に発注、建設に向けての動きが本格化した。そして、両国トップが出席した2017年9月の起工式に至る』、「2023年の開業を目指すことが決まった」、その割には完成度に関する報道は少ない。
・『計画変更とコロナ禍で一時停滞  しかし、高速鉄道建設のための土地収用が進まず、起工式直前の土地収用率は、地主である農民たちの反対により全体の4割程度にとどまっていた。さらに、インド側から線路や駅の仕様について変更の要望が次々と出された。 当初は東海道新幹線のような盛り土を想定していた地域もあったが、用地買収が進まない、斜面を動物が通過するリスクがあるといった理由から、盛り土ではなくより狭いスペースで建設が可能な高架を走る区間が増えた。また、一部の駅では当初計画が白紙撤回され、練り直しになったほか、ホームドアも全駅に設置されることになった。そこへ2020年にはコロナ禍が拍車をかけた。インドに駐在していた日本人スタッフは帰国を余儀なくされ、事業は暗礁に乗り上げたかに見えた。 ただ、コロナ禍においてもオンライン会議などを活用して日印スタッフの協議は続いていた。関係者の話を総合すると、コロナ禍が収束に向かい始めた頃から事業が進展し始めたようだ。土地収用も動き出し、路線全体の7割を占めるクジャラート州における土地取得率は2021年に約95%に達した。同3割を占めるマハーラーシュトラ州内の土地取得率は2~3割程度にとどまっていたが、こちらも2022年以降急速に伸び、全体の土地取得率も100%に向かい始めた。) 今年2月9日、マハーラーシュトラ州にあるボンベイ高等裁判所が重要な判断を下した。土地収用を拒んでいた地主の訴えを退けたのである。裁判所によれば、「今回の高速鉄道計画は国家的な重要案件であり、土地取得が進んだ段階でこのような訴えを行うことは公共の利益に反する」という。この判断が残る土地取得に大きなプラス材料となった。4月時点の土地取得率はマハーラーシュトラ州で99.75%、クジャラート州で98.91%に達したとインドのメディアは報じている。 取得に続き、工事面でも大きな前進があった。7月20日、インド高速鉄道公社は、高架、トンネル、橋梁、軌道、駅、研修施設などの建設について請負業者への発注が100%完了したと発表した。もちろん、あくまで契約締結にすぎない。電気関係の工事の契約はまだ終わったわけではなく、車両についてもまだ気候や埃といったインド特有の条件をどこまで仕様に反映させるかを協議している段階だ。とはいえ、工事が始まった区間やすでに工事を終えた区間もあり、「電気や車両を除けば、全体の8割で施工段階に入っている」と、ある関係者は話す。沿線の各所で建設の槌音が聞こえているわけだ。 また508kmの区間のうち、ほぼ中間に当たるビリモラ―スーラット間(約60km)は集中施工区間として早期完成を目指している。本来の計画ではムンバイの隣駅ターネ付近とサバルマティ駅付近に車両基地が建設される予定だったが、ビリモラ―スーラット間を全線開業に先駆けて開業するとなれば、この区間にも車両基地が必要となる。そこで、急遽車両基地を設置して先行開業に備えることになっている。インド側は2026年中の完成を目標に掲げている。2023年開業という計画が事実上困難になり、一部区間だけでもできるだけ早く開業したいというわけだ。はたして間に合うか』、「ビリモラ―スーラット間(約60km)は集中施工区間として早期完成を目指している」、「インド側は2026年中の完成を目標に掲げている」、なるほど。
・『「遅々として進んでいる」計画  以上が、インド高速鉄道計画の現在の状況である。当初の計画と比べれば、現在の状況は明らかに遅れている。一方で、土地取得率が100%に近づいていることからもわかるとおり、コロナ前の状況と比較すれば状況は前進しているといえる。関係者の1人はこうした状況を「遅々として進んでいる」と表現する。遅々として進まないのではなく、ゆっくりではあるが着実に前進しているという意味だ。 心配があるとすれば、安全面と開業後の運営面だ。8月1日には、マハーラーシュトラ州で建設中の高速道路の現場で橋桁が倒壊し、多数の作業員が死傷する事故が起きた。高速鉄道でも完成を急ぐあまり、安全がおろそかになることがあってはならない。 運営面については、もともとの総事業費は約1兆ルピー(約1.8兆円)だが、数々の設計変更により事業費増は避けられそうもない。事業費の大半は円借款で賄われるとしても、当初予想よりも多額の負債を背負っての開業となれば、収益が思うように上がらない場合の経営リスクは大きく膨らむことに留意する必要があるだろう』、「数々の設計変更により事業費増は避けられそうもない。事業費の大半は円借款で賄われるとしても、当初予想よりも多額の負債を背負っての開業となれば、収益が思うように上がらない場合の経営リスクは大きく膨らむことに留意する必要があるだろう」、「「数々の設計変更により事業費増は避けられそうもない」、「収益が思うように上がらない場合の経営リスクは大きく膨らむことに留意する必要」、その通りだ。

次に、8月10日付けNewsweek日本版「中国との共同事業のインドネシア高速鉄道、ソフト開業を延期 安全性確保のため」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/08/post-102398_1.php
・『<日本の入札を反故にしたツケが出ている?> インドネシアが首都ジャカルタから西ジャワ州州都バンドンまでの143.2キロを結ぶ高速鉄道の完工を期し、8月17日の独立記念日の翌18日に予定されしていた招待客を乗せたソフト開業の試験走行が延期された。 高速鉄道は中国が受注して中国の技術、資金協力で進められてきた計画で、インドネシアと中国との合弁事業体である「インドネシア中国高速鉄道(KCIC)」がソフト開業の試験走行を9月まで延期すると8月8日に発表した。 KCICは延期の理由を「乗客の安全性と快適性を確実にするためにさらに時間が必要と判断した」と説明しているが、「安全性と快適性」の具体的な内容には一切言及しなかったことから関係者の間には不安が広がる事態となっているという。 インドネシア政府は先に8月17日の独立記念日の翌18日にジョコ・ウィドド大統領や閣僚、国会議員や政財界の要人、駐インドネシア中国大使、さらに一般の招待客を乗せて行う最終的な試運転によるソフト開業を挙行し、10月から運賃を徴収した乗客を対象として本格的な営業運転開始を予定していた。 KCICによるとソフト開業は9月に延期するものの、10月1日の営業運転開始はこれまで通りに実施する方針であることを明らかにしている』、「インドネシア政府は先に8月17日の独立記念日の翌18日にジョコ・ウィドド大統領や閣僚、国会議員や政財界の要人、駐インドネシア中国大使、さらに一般の招待客を乗せて行う最終的な試運転によるソフト開業を挙行し、10月から運賃を徴収した乗客を対象として本格的な営業運転開始を予定していた。 KCICによるとソフト開業は9月に延期するものの、10月1日の営業運転開始はこれまで通りに実施する方針であることを明らかに」、「インドネシア政府」は政治的な催しが好きのようだ。
・『中国が受注したいわくつきのプロジェクト  インドネシア初の高速鉄道を建設するという構想は2015年に入札が行われ、安全性を前面に出した日本と、低価格・早期完工・インドネシア政府に財政負担を求めないなどを打ち出した中国との実質的競争となった。 しかし紆余曲折、不可解なプロセスを経て最終的に中国が受注した経緯がある。中国としては習近平主席が進める独自の経済圏「一帯一路」構想の一環としてなんとしてもインドネシア高速鉄道に関与したいとの強い意向があったとされている。 ところが、実際に建設工事が始まると建設用地買収の遅れやコロナ渦による中断などから当初の2019年の完工予定は度々延期された。 さらに工期の遅れや資材高騰などから建設費用が膨大に膨れ上がり、当初予算を約12億ドル上回る結果となった。最終的にはインドネシア政府は国庫からの支出を余儀なくされ、「中国に裏切られた」との批判も出ていた。 中国の車両、中国の労働者、中国の技術、そしてインドネシアも巻き込んでしまった資金でなんとか完工に漕ぎつけつつある、というのがインドネシアの高速鉄道の現状だろう』、「中国の車両、中国の労働者、中国の技術、そしてインドネシアも巻き込んでしまった資金でなんとか完工に漕ぎつけつつある、というのがインドネシアの高速鉄道の現状だろう」、その通りだ。
・『残る安全性への不安  KCICは6月22日に速度356キロを記録する最高速度試験走行に成功し、走行時の安定性、静粛性が確認されたとしていた。これを契機に独立記念日翌日のソフト開業、10月の営業運転開始という工程が具体的に動き始めた。 このとき、ブディカルヤ・スマディ運輸相は「10月の営業運転開始も8月に前倒しになるかもしれない」と計画が順調に進んでいることを強調、楽観的な見通しを示していた。 ただ一方で通常、営業運転開始前の試験走行には安全性を100%確実とするために繰り返し各種試験を数カ月から1年かけて実施するケースが多い中、6月22日から約2か月でのソフト開業には安全面で不安が払しょくできないとの声も出ていた。 今回、独立記念日に関連したいわば国を挙げてのイベントが、実施約10日前に延期されるという事態に、そうした不安が現実のものになったと見方もある』、「通常、営業運転開始前の試験走行には安全性を100%確実とするために繰り返し各種試験を数カ月から1年かけて実施するケースが多い中、6月22日から約2か月でのソフト開業には安全面で不安が払しょくできないとの声も出ていた」、「延期」は当然のようだ。
・『KCICは問題点を明らかにする義務  6月22日の最高速度試験走行の「成功」を受けてソフト開業への期待を表明していた閣僚や関係者はこれまでのところ今回の延期に対して反応しておらず、期待を裏切られたとの思いを抱いている可能性もある。 その際に「今後日本製の中古車両の輸入は認めない」との趣旨の発言をして、高速鉄道計画の中国発注に煮え湯を飲まされた形の日本に「当てつける」ような姿勢を示したルフット・パンジャイタン調整相もさぞ「臍を噛んでいる」こととみられる。 ジョコ・ウィドド大統領が実際に試乗してのソフト開業の試験走行で「万が一の不確実性の存在や不具合の発生も許されない」状況の中での延期は、今後の「早急なスケジュール」にも影響を与える可能性がある。 なによりもKCICは今回の延期の理由がどこにあるのか、技術的な問題なのか運行上の問題なのか、それともそれ以外の問題なのかを明らかにする義務があるだろう。 そうした問題点を明らかにすることで安全性に対する不安を払拭することがなにより求められているといえる』、「KCICは今回の延期の理由がどこにあるのか、技術的な問題なのか運行上の問題なのか、それともそれ以外の問題なのかを明らかにする義務があるだろう」、その通りだ。
・『【動画】昨年末には脱線事故も起きていた  インドネシア政府が鳴り物入りで建設中の高速鉄道の工事現場で昨年末に事故が発生。工事を行う中国側は車両にカバーをかけ、証拠隠滅との声も出ていた......実際の「動画」はインドネシア語で6分程度の長さなので、お勧めできない。  
タグ:インフラ輸出 (その15)(新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗、中国との共同事業のインドネシア高速鉄道 ソフト開業を延期 安全性確保のため) 東洋経済オンライン「新幹線方式「インド高速鉄道」はどこまで進んだ? 新たな目標決まり土地買収や土木工事が進捗」 「2023年の開業を目指すことが決まった」、その割には完成度に関する報道は少ない。 「ビリモラ―スーラット間(約60km)は集中施工区間として早期完成を目指している」、「インド側は2026年中の完成を目標に掲げている」、なるほど。 ・『「遅々として進んでいる」計画  以上が、インド高速鉄道計画の現在の状況である。当初の計画と比べれば、現在の状況は明らかに遅れている。一方で、土地取得率が100%に近づいていることからもわかるとおり、コロナ前の状況と比較すれば状況は前進しているといえる。関係者の1人はこうした状況を「遅々として進んでいる」と表現する。遅々として進まないのではなく、ゆっくりでは 「数々の設計変更により事業費増は避けられそうもない。事業費の大半は円借款で賄われるとしても、当初予想よりも多額の負債を背負っての開業となれば、収益が思うように上がらない場合の経営リスクは大きく膨らむことに留意する必要があるだろう」、「「数々の設計変更により事業費増は避けられそうもない」、「収益が思うように上がらない場合の経営リスクは大きく膨らむことに留意する必要」、その通りだ。 Newsweek日本版「中国との共同事業のインドネシア高速鉄道、ソフト開業を延期 安全性確保のため」 「インドネシア政府は先に8月17日の独立記念日の翌18日にジョコ・ウィドド大統領や閣僚、国会議員や政財界の要人、駐インドネシア中国大使、さらに一般の招待客を乗せて行う最終的な試運転によるソフト開業を挙行し、10月から運賃を徴収した乗客を対象として本格的な営業運転開始を予定していた。 KCICによるとソフト開業は9月に延期するものの、10月1日の営業運転開始はこれまで通りに実施する方針であることを明らかに」、「インドネシア政府」は政治的な催しが好きのようだ。 「中国の車両、中国の労働者、中国の技術、そしてインドネシアも巻き込んでしまった資金でなんとか完工に漕ぎつけつつある、というのがインドネシアの高速鉄道の現状だろう」、その通りだ。 「通常、営業運転開始前の試験走行には安全性を100%確実とするために繰り返し各種試験を数カ月から1年かけて実施するケースが多い中、6月22日から約2か月でのソフト開業には安全面で不安が払しょくできないとの声も出ていた」、「延期」は当然のようだ。 「KCICは今回の延期の理由がどこにあるのか、技術的な問題なのか運行上の問題なのか、それともそれ以外の問題なのかを明らかにする義務があるだろう」、その通りだ。 実際の「動画」はインドネシア語で6分程度の長さなので、お勧めできない。
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日本の政治情勢(その67)(「前倒しできないのか」が口癖の河野太郎・デジタル相 役人たちは「“ちょっと前倒ししました”と言えば大丈夫」が操縦マニュアルに、今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間 セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物、「エッフェル姉さん」ご一行様は何を間違えたのか?) [国内政治]

日本の政治情勢については、本年7月15日に取上げた。今日は、(その67)(「前倒しできないのか」が口癖の河野太郎・デジタル相 役人たちは「“ちょっと前倒ししました”と言えば大丈夫」が操縦マニュアルに、今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間 セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物、「エッフェル姉さん」ご一行様は何を間違えたのか?)である。

先ずは、7月22日付けNEWSポストセブン「「前倒しできないのか」が口癖の河野太郎・デジタル相 役人たちは「“ちょっと前倒ししました”と言えば大丈夫」が操縦マニュアルに」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230722_1889409.html?DETAIL
・『マイナンバーカードをめぐるトラブル続発で、最大の戦犯として河野太郎・デジタル担当相の責任を問う声が日に日に強まっている。だが、当の本人は“どこ吹く風”。なぜこうも空気が読めないのか。 役人たちも、河野大臣の対応に手を焼いているようだ。デジタル庁関係者が言う。 「河野大臣はパワハラ問題には非常に気をつけていて、大臣の言うことを理解できる職員とは楽しそうにやっている。その半面、それ以外の職員が言い訳すると瞬間沸騰してしまう。とくにトラブルの説明に来た厚労省の職員はガミガミやられているようです。ベテランの職員の中には、特定の職員だけと仕事を進めるのはいかがなものかと大臣に忠告した人もいるが、全く響かないようです」 役所での河野氏の口癖は「もっと前倒しできないのか」なのだという。そのため、河野シンパとされる役人の間では、「大臣には『ちょっと前倒ししました』と言っておけば大丈夫」というのが“河野操縦マニュアル”になっている。河野氏がマイナンバーへの誤登録を防ぐシステム改修を「前倒しする」と繰り返し強調しているのは、シンパの役人が怒られないためにマニュアルに沿って使った言葉をそのまま口にしているだけのようだ。 河野氏の「人に頭を下げない」「忠告を聞かない」という面は自民党内でもよく知られている。麻生派のベテラン議員が語る。 河野さんは前回の自民党総裁選で頭を下げて応援を頼もうとはしなかった。他派閥の幹部に挨拶に行っても、『麻生(太郎)会長のご理解をいただき出ることになりました。よろしくお願いいたします』と紋切り型のことしか言わない。見かねた父親の洋平さんが代わりに参院のドンだった青木幹雄さんに頭を下げに行ったほど。 若手議員には本人が電話で応援を頼んでいたようだが、電話を受けた議員は『河野さんが一方的に話して、“では”と切られる』と言う。それじゃ支持は広がらない。総裁選に負けてからは麻生さんに仲間をつくれと忠告されて本人も少し反省し、周囲のお膳立てで若手との交流会をしているが、1次会で帰ってしまう。麻生さんはあの年齢で1日に2軒、3軒とハシゴするのにね」』、「大臣の言うことを理解できる職員とは楽しそうにやっている。その半面、それ以外の職員が言い訳すると瞬間沸騰してしまう。とくにトラブルの説明に来た厚労省の職員はガミガミやられているようです。ベテランの職員の中には、特定の職員だけと仕事を進めるのはいかがなものかと大臣に忠告した人もいるが、全く響かないようです」、「若手との交流会をしているが、1次会で帰ってしまう」、これでは総裁への道は遠そうだ。

次に、8月6日付けFLASH「今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物」を紹介しよう。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/247016/1/1/
・『自民党女性局長の松川るい参院議員(52)、局長代理の今井絵理子参院議員(39)が、7月下旬のフランス視察中にSNSに投稿した写真が、まるで観光旅行ではないかと批判され、炎上している。 松川議員は8月1日、党本部で謝罪したが、視察に次女を同行させていたことが本誌報道で明らかになった。自民党中堅議員が、こうぼやく。 「松川さんの謝罪が、いかにも歯切れが悪かったうえに、直後に次女の件が明らかになった。世間が納得しないのは当たり前で、松川さんも後ろめたいことがないなら、自分から説明をするべきだった」 批判を浴びた議員たちはSNSで反論している。今井議員は、「無駄な外遊ではありません」と強弁。さらに、視察に参加した長崎県議のごうまなみ氏は、《地方の視察より過酷でほぼ自由時間もなく》と投稿し、エッフェル塔の滞在時間は、わずか10分程度であると主張した。松川議員自身も、SNSに《非常に真面目な内容ある研修であった》と記している。 だが、本誌が今回入手した旅程表によれば、事実はまったく異なる。 「令和5年女性局フランス研修 研修ノート」と題された冊子には、出発(7月24日)から帰国(28日)まで3泊5日の日程が記載されているのだが、純粋な研修に充てられていたのは、たったの6時間。 ガイドツアーや、在仏日本大使らとの食事会を含めても、10時間にしかならないのだ。ここからは詳細にスケジュールを見ていこう。 初日は、入国手続を終えてホテルでの結団式となっているが、食事にうるさいセンセイ方のためだろうか、そこにはわざわざ「肉料理」と記されている。 2日めは朝食の後、10時からは国民教育・青少年省の担当者からブリーフィング(簡潔な説明)を1時間。なんと、午前中の予定はこれで終了だった。昼食として一行は、「魚料理」を堪能している。 「1949年創業の老舗レストランです。ランチは30ユーロ(約4700円)からコースが食べられます」(現地駐在員) 午後にはフランスの国会議員2組と1時間ずつ面会が設定されているが、“お仕事” はここまで。リュクサンブール宮殿(国会議事堂)をガイドツアーで見学し、「10分程度」とされるエッフェル塔での観光には、旅程表では30分が割かれていた。 そして夜こそが、この日の目玉だったのかもしれない。2時間の自由行動の後、20時半からセーヌ川で、2時間半の優雅なディナークルーズが組まれていた。 3日めは、さらに観光色が強い。国会議員らには午前中に1時間の保育園視察があるものの、他の参加者は14時40分まで研修はない。国会議員らも早々に合流し、シャンゼリゼ通りでの自由行動が2時間以上。旅程表には「ショッピング等をお楽しみください」とわざわざ書かれ、はしゃぎっぷりが伝わってくる。 元自民党職員で政治アナリストの伊藤惇夫氏は、この「実働6時間」の旅程表を見て、「“観光旅行” と受け止められても仕方がない」と思ったという。伊藤氏が続ける。 「これだけ自由時間がある視察を見たことがありません。この日程を決めた人物は、視察の目的がこれで果たせると、なぜ考えたのか。団長の松川さんは、党費を使ったことは認めているので、党員に説明する責任があります」 そして、この「研修ノート」には、さらなる問題が隠されていた。視察の参加メンバーが掲載された「団員名簿」では、同行していた松川議員の次女が、38人の派遣団員に含まれているのである。 松川議員は、SNSに投稿した釈明文にこう記している。 《38名の参加者は、全国の女性局所属の地方議員及び民間人で女性局幹部となっている方々》 自民党に入党できるのは、満18歳以上だ。松川議員の次女は小学4年生で、当然その資格はないはずだが――。 自民党関係者によれば、今回のフランス視察で、国会議員以外の派遣団員の自己負担額は20万円だったという。もちろんこの金額で渡仏できるわけもなく、つまり次女の渡航費にも、党費が使われた可能性があるのだ。 「党本部は、報道で初めて松川氏の次女が視察に同行していることを把握したようです。松川氏は次女の渡航費について帰国後、党に実費を追加で支払うことになったといいます」(自民党関係者) さらに松川議員は、初日の結団式で乾杯の音頭を取って以降、旅程表にその名前が登場していない。 「自分が知る限り、視察中の食事会で乾杯の音頭を取るのは、常に責任者である団長でした。松川さんが別行動を取り、研修を欠席していた可能性があります」(伊藤氏) 地方行脚で支持率回復を目指す岸田文雄首相は、この “物見遊山” への批判が拡大していることに、激怒しているという』、「松川るい参院議員」はレッキとした外交官上がりで、外務省に新設された女性参画推進室の初代室長に起用」、2016に退官。参院大阪選挙区で当選(Wikipedia)。外交官上がりなので、「パリ」も珍しくないだろうが、全く海外素人と同じことをしたようだ。息子を参加させ、参加費も公になるまでは知らんふりをしようとしたとは情けない。


第三に、8月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「「エッフェル姉さん」ご一行様は何を間違えたのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327373
・『自民党女性局のフランス研修が炎上中だ。エッフェル塔を背景にポーズを取った写真が問題視された松川るい女性局長らは、「エッフェル姉さん」とやゆされている。彼女たちは何を間違えたのだろうか?』、興味深そうだ。
・『松川るい、今井絵理子両議員らがフランス視察で「炎上」  自由民主党の女性局長・松川るい参議院議員、同局長代理の今井絵理子参院議員らが、7月下旬のフランス視察旅行中にSNSへ投稿したエッフェル塔の前でポーズを取った記念写真がきっかけで批判され、いわゆる「炎上」に陥った。 「これは党費を使った観光旅行ではないか」「党費には政党助成金を通じて税金も含まれているはずだ。税金の無駄遣いだ」等の批判であり、エッフェル塔を背景にした写真でポーズを取る団長格の松川氏は、ネット界隈では「エッフェル姉さん」などと揶揄(やゆ)されている。 その後、3泊5日の旅程中に研修的な時間が合計6時間しかなく、ほとんど観光旅行のプログラムであったことや、まだ未成年である松川議員の次女まで参加者に含まれていたことが「週刊FLASH」で報じられるなど、見苦しい展開になった。言い訳のきかないぐずぐずの旅行であったし、言い訳自体も歯切れが悪くて失敗だった。特に松川氏にとっては大きな政治的失点となった。 振り返って、この旅行および彼女らの情報発信にはどのような問題点があったのか。問題点は複数あるが、多くのビジネスパーソンにとって反面教師的に参考となる事例だったように思う。順に見ていこう』、「多くのビジネスパーソンにとって反面教師的に参考となる事例」、山崎氏らしいまとめ方だ。
・『情報発信の勘違い((1)SNSでの幸せのシェアは好かれない  まず、楽しそうな旅行の写真自体がSNSの情報発信として好かれないことを指摘したい。これは強力な一般論である。 フェイスブックやX(旧ツイッター)のようなSNSで、旅行の風景やグルメ体験など「幸せな経験」を「シェア」することが広く行われているが、これは投稿する本人が思うほどフォロワー・読者に好かれていない。むしろ嫌われている。 フェイスブックなどでは、「いいね」ボタンがたくさん押され、好意的なコメントが入るが、これは投稿者と親しい人からのものであり、一般人から見ると「どうでもいい」し、潜在意識まで降りると投稿者の幸せな状況のアピールは少々うっとうしい。 筆者は、SNSの中でフェイスブックが今一つ好きになれないが、一つの理由は、本人的には幸せをシェアする投稿が、しばしば同窓会での自慢話的なニュアンスを帯びていて「年寄りくさいにおい」が鼻につくことがあるからだ(ちなみにもう一つの理由は、利用者の情報を商品として売り飛ばすフェイスブックのビジネスがあまりにえげつないから)。 ごく親しい間柄のシェアならいいのではないか、という意見はあるが、親しい間柄だと我慢ができるというのが、実は実態に近いのではないか。「ああ、あいつは元気なのだな」という以上の情報価値はない。 レアで価値のあるグルメ情報が提供されているような場合は別だが、「××で、○○をいただいた。大変おいしかった」というような自分話をせっせと投稿する行為は「ほほ笑ましい」を通り越して、「もの悲しい」と思うことがしばしばだ。メシや旅以外に伝える価値のあることがない人生なのか。 筆者にも経験があるが、SNSの使い始めには、自分の発信に「いいね」などの好意的な反応が付くと、ある種の手応えを感じて気分が舞い上がる一時期がある。) 議員さんたちは、選挙区の支持者を意識して投稿しているのだろう。しかし、投稿が広く読まれるものである場合、そもそも、楽しそうで幸せそうな自分の状況を投稿することが一般には好かれていないことを自覚しておく方がいいのではないか。 ビジネスパーソンにとっても状況は一緒だ』、「「××で、○○をいただいた。大変おいしかった」というような自分話をせっせと投稿する行為は「ほほ笑ましい」を通り越して、「もの悲しい」と思うことがしばしばだ。メシや旅以外に伝える価値のあることがない人生なのか」、「投稿が広く読まれるものである場合、そもそも、楽しそうで幸せそうな自分の状況を投稿することが一般には好かれていないことを自覚しておく方がいいのではないか」、なるほど。
・『(2)情報発信は内と外を区別せよ  筆者が自分でフェイスブックを使いにくいと思う理由の一つに、多くのリクエストを承認しすぎて「友達」の範囲が広がりすぎたことがあると自己反省している。内輪の本音話ができる人数ではなくなった。 フェイスブックに限らず、何らかの情報を発信する際には、少なくとも自分に対して悪意のない人の「内」のグループと、さまざまな感情を持つ人が混じる「外」のグループとを厳しく区別して、発信内容の適否を考えるべきだ。 ビジネスパーソンの場合、「社内」と「社外」の区別が典型的で、訓練ができている場合もあるだろう。ただ、この区別の感覚を、日常的にSNSを使う際にも働かせる必要がある。 今回問題になった自民党の議員さんたちは不用意に過ぎた』、「情報発信は内と外を区別せよ」、確かにこれは鉄則だ。
・『「誰の金なのか」を考えろ  (3)懇親にもコストあり  フランスを訪れた自民党女性局を中心とするご一行様の目的の中には、メンバー間の懇親を深めることもあったに違いない。 豪華な食事、観光などを中心にゆったり組んだスケジュールを見ると、旅行全体が「大懇親会」であったことが容易に想像できる。) 確かに、旅行は参加者間の懇親を深めるかもしれないが、大規模な旅行以外にも懇親を深めるイベントはたくさん考えることができよう。また職業的に、政治家は懇親のプロであることが期待される。 そうであれば、費用、時間共に考慮すべきだが、懇親に掛ける「コスト」をもう少し意識すべきだったろう。 多額の議員報酬を受け取り、党からもお金が出る。こうした恵まれている状況に甘えて浮かれている議員がいるから、某政党の「身を切る改革」などという国民生活には大して関係のない陳腐なキャッチフレーズに一時的な説得力が生まれるのだ』、「「誰の金なのか」を考えろ」も当然だ。
・『(4)「公費」に敏感になれ  今回、言い訳を行った後から、松川議員の次女(未成年)が旅行メンバーに入っていて、党からの費用助成の恩恵を受けていた可能性があると報じられたのは、後味が悪かった。その後、松川議員は、次女のコスト分は支払う意向を表明したというが、この問題が表面化しなければそのまま党費が使われたのではないかと想像すると、盗みが露見したコソ泥が盗品を返却すると言っているような感じに聞こえる。 仮に自分が、この種の公費へのたかりが世間にばれた当事者だと想像すると、身悶えするくらい恥ずかしいが、政治家は精神がタフだから平気なのだろうか。 「党のお金だから」「会社のお金だから」「国のお金だから」という理由でいわば「公費」を私的に使ってどの程度恥じないかは、持って生まれた個人の品性の問題である。だが、仮に卑しい品性に生まれたとしても、政治家や会社員のような社会人は、無理に意識的にでも自分に厳しくあるべきだ。そうでないと、仕事が全うできないし、社会人として生活が成り立たない。 小さなごまかしをしないことは、個人の信用のために必要なコストなのだとわきまえるべきだろう。 松川氏は、大きな信用を失ったのではないか』、「松川氏は、大きな信用を失ったのではないか」、「松川氏」の推薦母体の自民党大阪でも推薦継続に消極的になっているようだ。
・『「研修」「視察」を考え直せ  (5)それは、オンラインでいいのではないか?  エッフェル姉さんご一行様の本来の目的は「研修」なのであった。仮に、女性の活躍や少子化対策などについて海外事例の確認や、当事者との意見交換を行うに当たって、果たして旅行を仕立てて直接会うことがどうしても必要なのだろうか。 今回の旅行の「6時間」という研修的なイベントの時間を知ると、オンラインでのミーティング等を効率良くアレンジすると、実質的な内容は旅程の片道以下の時間で、日本に居ながらにして可能だったのではないかと想像できる。 現地を見るリアリティーや、当事者と同じ場所で直接語り合うことの有効性は認めるのだが、「政策を考えるための知識を得る」という彼女たちの本来あるべき主目的は、オンラインでも十分達成できたのではないか。 先のコロナ禍で、オンラインでのコミュニケーションが大いに普及した。ベテランの商社マンからは「これまでなら現地に行って話し合うような出資先や子会社の問題も、オンラインのやりとりで済むようになったので、飛行機に乗って出張する機会が減ってしまい、実は気分転換ができなくて少々困っている」などという話を聞くようになった。 今回の自民党女性局の皆さん方における旅行の主目的が研修だったのだと仮定しての話だが、研修すべき内容を整理してオンラインの手段を大いに使って目的を達することができたのではないか。同じ時間を本気で使ったなら、相当に盛りだくさんな研修になったことだろう。 ビジネスパーソンも、仕事での出張を考えたときに「それは、オンラインでいいのではないか?」と自問する習慣を持つべきだ』、確かにオンライン研修の普及により、通常の検収会はオンラインで十分になった。
・『(6)単なる「視察」は嫌われる  ところで、政治家も、あるいは経営者などもよく行う「視察」であるが、視察する側の目的やコストはそれでいいとして、視察を受け入れる側の都合を十分考えているのだろうか。 例えば、齋藤アレックス剛太氏が執筆したダイヤモンド・オンラインの記事『エストニアで「日本人お断り」のスタートアップが増えた理由』が参考になる。同記事によると、デジタル先進国でスタートアップにとって経営環境がいい欧州の小国エストニアでは、そのスタートアップ企業の関係者が、視察で訪れる日本人に対して悪印象を持っているという。 その理由として、(1)漠然と訪問するだけでビジネスにつながる話がない、(2)その場で意思決定できない、(3)英語ができないので通訳を介するとコミュニケーションの効率が悪い、などが挙げられている。 エストニアへの訪問者たちはそれなりに勉強熱心なのだろうが、どのように「視察」しているのか目に見えるようで、同国人として少し心が痛い。 視察は相手に時間を使わせる。時間を使う相手にとっては、せめて時間を使うに足るだけの「期待」が持てるのでなければなるまい。 ビジネスにつながったり、将来の当方側からの有益な情報提供につながったりするようなメリットを相手先にも提供できるのでなければ、単なる視察は、本来なら対価を払わなければならない迷惑行為であると知るべきだ。 一般論的大原則として、訪問には、相手側のメリットも考えた上での目的が必要だ。政治家もビジネスパーソンも当たり前のこととして確認しておきたい。 会った相手が少ないとはいえ、国会議員を複数含む、エッフェル姉さんたちのご一行様が現地でどのように思われていたのかは、一日本人として少々心配だ』、「ビジネスにつながったり、将来の当方側からの有益な情報提供につながったりするようなメリットを相手先にも提供できるのでなければ、単なる視察は、本来なら対価を払わなければならない迷惑行為であると知るべきだ」、その通りだ。
タグ:日本の政治情勢 (その67)(「前倒しできないのか」が口癖の河野太郎・デジタル相 役人たちは「“ちょっと前倒ししました”と言えば大丈夫」が操縦マニュアルに、今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間 セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物、「エッフェル姉さん」ご一行様は何を間違えたのか?) Newsポストセブン 「「前倒しできないのか」が口癖の河野太郎・デジタル相 役人たちは「“ちょっと前倒ししました”と言えば大丈夫」が操縦マニュアルに」 「大臣の言うことを理解できる職員とは楽しそうにやっている。その半面、それ以外の職員が言い訳すると瞬間沸騰してしまう。とくにトラブルの説明に来た厚労省の職員はガミガミやられているようです。ベテランの職員の中には、特定の職員だけと仕事を進めるのはいかがなものかと大臣に忠告した人もいるが、全く響かないようです」、「若手との交流会をしているが、1次会で帰ってしまう」、これでは総裁への道は遠そうだ。 FLASH「今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物」 「松川るい参院議員」はレッキとした外交官上がりで、外務省に新設された女性参画推進室の初代室長に起用」、2016に退官。参院大阪選挙区で当選(Wikipedia)。外交官上がりなので、「パリ」も珍しくないだろうが、全く海外素人と同じことをしたようだ。息子を参加させ、参加費も公になるまでは知らんふりをしようとしたとは情けない。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「「エッフェル姉さん」ご一行様は何を間違えたのか?」 「多くのビジネスパーソンにとって反面教師的に参考となる事例」、山崎氏らしいまとめ方だ。 「「××で、○○をいただいた。大変おいしかった」というような自分話をせっせと投稿する行為は「ほほ笑ましい」を通り越して、「もの悲しい」と思うことがしばしばだ。メシや旅以外に伝える価値のあることがない人生なのか」、「投稿が広く読まれるものである場合、そもそも、楽しそうで幸せそうな自分の状況を投稿することが一般には好かれていないことを自覚しておく方がいいのではないか」、なるほど。 「情報発信は内と外を区別せよ」、確かにこれは鉄則だ。 「「誰の金なのか」を考えろ」も当然だ。 「松川氏」の推薦母体の自民党大阪でも推薦継続に消極的になっているようだ。 確かにオンライン研修の普及により、通常の検収会はオンラインで十分になった。 「ビジネスにつながったり、将来の当方側からの有益な情報提供につながったりするようなメリットを相手先にも提供できるのでなければ、単なる視察は、本来なら対価を払わなければならない迷惑行為であると知るべきだ」、その通りだ。
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本日は予告通り、更新を休むので、明日にご期待を!

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資本市場(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?) [金融]

資本市場については、本年2月6日に取上げた。今日は、(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?)である。

先ずは、本年5月8日付け東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670115
・『「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」。2023年3月、スマホゲーム開発企業のマイネットがリリースを公表した。同社は東証プライム市場に上場しているが、近くスタンダード市場に移行すると表明したのだ。 プライム市場を捨て、自らスタンダード市場に「降格」する――。マイネットを皮切りに、こうした宣言をする企業が相次いでいる。4月末時点で、スタンダードへの移行を宣言したプライム上場企業は9社にのぼる。突如訪れた「降格ラッシュ」の背景に何があるのか』、興味深そうだ。
・『プライム市場「背伸び組」  発端は、2022年4月の市場区分見直しにさかのぼる。プライム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンスが求められる市場として発足した。 ところが、旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった。経過措置の期間は「当分の間」とされており、いつまでプライム市場に残れるのかはわからなかった。改善計画を達成できなかった場合にスタンダード市場へ自動的に移れるのか、改めてスタンダード市場の上場審査が必要なのかも不明確だった。「後者の場合、一斉に移行されると審査の人手が足りなくなる」。証券業界からはこんな悲鳴も上がった。 そこで東証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫った。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となる。スタンダード市場に移る場合には、一度上場廃止してから再度審査を受ける必要がある。 その代わりの選択肢として、早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ。では、どんな企業が特例を利用したのか。以下は、4月末時点でスタンダード市場への移行を表明した企業の一覧だ。いずれの企業もプライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていない。 各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東証の指示によって流通株式時価総額を引き上げる計画を策定していた。ところが、業績や株価の低迷によって達成の見込みが立たず、およそ1年で撤回したことになる。 土壌汚染調査や産業廃棄物処理を手がけるダイセキ環境ソリューションは2021年末、3年間で純利益を3倍にする中期経営計画を策定した。ところが、首都圏での大型案件受注が想定を下回り、翌2022年に業績予想を2度下方修正。このまま流通株式時価総額が伸び悩めば上場廃止となるリスクを考慮し、スタンダード市場への移行を決めたという。 東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する(ランキングはこちら)。背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない』、「東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する・・・背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない」、203社とはかなり多い。
・『「6月」が分水嶺?  降格ラッシュは今後も続くのか。みずほ信託銀行の八木啓至・企業戦略開発部次長は、「6月までにスタンダード市場への移行表明が増えるのではないか」と推測する。 スタンダード市場に無条件で移行できるのは、前述のとおり2023年9月末が期限だ。一方、3月期決算企業の場合、流通株式時価総額などの上場維持基準は3月末時点の数値を基に審査され、未達の場合は6月末までに改善計画を提出ないし更新する必要がある。 スタンダード市場への移行表明が7月以降にずれこむと、それまでにプライム市場への上場を維持するための計画を公表する必要があり、矛盾が生じる。そのため、スタンダード市場を選ぶ企業は改善計画の期限までに移行方針を発表し、定時株主総会で株主に説明するという見立てだ。 ほとんどの企業が旧東証1部から横滑りしたことから「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている』、「2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、踏みとどまれる企業はどの程度あるのだろうか。

次に、6月19日付け東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679779
・『優雅に達観した生活を送っているように見える富裕層。ただ陰では投資や税金対策に頭を抱え、時にもがき苦しむ様子が垣間見える。6月19日発売『週刊東洋経済』の特集「富裕層のリアル国内150万世帯、受難の時代」では、富裕層の偽らざる実像に迫った。 「こちらがドル建て債券に関する資料です。足元で金利が軒並み上昇している状況なので、円債に比べて高い利回りを確保できます」 今年初め、ある国内証券会社の営業マンは富裕層の顧客にそう言って1枚のリストを見せていた。提示したリストに載っているのは、海外の銀行などが発行するドル建ての「永久劣後債」だ。 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて後回しになる(劣後する)債券のことだ。 中でも永久劣後債は、5年後や10年後といった満期の定めがない。そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品だ』、発行体は「クレディ・スイス」と信用力はあっても、「劣後」条件に応じて「高」「利回り」という「ハイリターン」になる。
・『投資リスクが高いAT1債  先ほどのリストには6?7%台の商品がずらりと並んでいるが、その中で10%超というひときわ高い利回りを示していた債券がある。スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債だ。別名「AT1(その他ティアワン)債」とも呼ばれる。 クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループだ。その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入していった。 それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。 スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ』、「約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、リスクをきちんと説明した上で販売していたことを祈りたい。
・『仕組み債でも損失の悲劇  急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。 ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。 足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。 訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。 実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。 同書面を見ると、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてある。今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)がトリガーを引いたことになり、書面上は問題がないように見える。 一方で、大手証券会社の幹部は「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める。 つまり、販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれるということだ』、「販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれる」、苦しいところだ。
・『仕組み債でも大きな損失  金融庁の幹部は、AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」と明かす。 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のこと。デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しい。 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売。富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯がある。 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債だった。そこで大きな悲劇が発生するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない』、「規制の抜け穴」までなくなってしまった。今後はリスクを粛々と説明して販売していかざるを得ないだろう。

第三に、6月19日付け現代ビジネス「仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111927
・『証券取引等監視委員会が、リスクの高いデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組債を "素人” に売りつけたとして、千葉銀行と傘下のちばぎん証券などを行政処分するよう金融庁に勧告した』、興味深そうだ。
・『金融機関になめられている金融庁監督局  仕組債の危険性はかねて指摘されており、対応が不十分だったとして金融庁監督局の伊藤豊局長への批判も高まっている。金融庁の締めつけで販売自粛する金融機関がある一方、無視して継続するメガバンク系証券もあり「局長はなめられている」(金融庁関係者)という声も上がる。 伊藤氏は出世コースの財務省大臣官房秘書課長を経たエリートで、自他共に認める金融庁長官候補となった。 仕組債問題は汚点だが、伊藤氏には別のスキャンダルもある。 医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反事件の法廷で、竹森郁被告が「高額接待をしたうえ1本5万円の高級ワインを贈った」と爆弾発言したのだ。竹森被告は有罪判決を受けたが、当時、「永田町のフィクサー」として知られる矢島義也氏の側近として政官要人の接待係を務め、資金も負担していた。 それだけに証言には真実味がある。加えて「国家公務員倫理規程違反の告発も考えています」(竹森被告)と、まだ終わった話ではない。仕組債問題と接待疑惑―。金融庁のエリート官僚に荒波が押し寄せている』、「金融庁長官候補」に2つも問題が出てきたとは大変だ。

第四に、7月18日付け東洋経済オンライン「業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/686508
・『東京証券取引所のスタンダード・グロース市場に上場する企業のうち少なくとも68社が今年1月から6月末までに新たに上場維持基準に抵触し、計画書を提出したことが東洋経済の集計でわかった。 2022年4月に新市場区分に移行して約1年が経過。移行当初は基準を満たせたものの、業績悪化や不正会計の発覚などで株価が下落し基準を満たせなくなる例が続出している。プライム市場では57社が基準未達になった(東証プライムから新規50社超の「脱落危機」リスト)。 スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない。 例えば3月末決算企業の場合、2026年3月までに基準を満たせない場合は上場廃止基準に該当する可能性があるとして監理銘柄に指定される。その後も基準を満たせない場合は最終的に上場廃止となる。 そもそも、スタンダード市場の上場維持基準は流通株式時価総額が10億円とプライム市場が要求する100億円より格段に低い。流通株式比率も同様で、プライム市場が35%以上を求めるのに対し、スタンダードでは25%以上でいい。グロース市場の基準はさらに低く、流通株式時価総額は5億円以上を求めている』、「スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない」、もともとは「逃げ道がない」のが普通だ。真剣勝負で臨んでもらいたいものだ。
・『安定株主への対応に苦慮  各社が開示した計画書には、担当者の苦悩が滲む。 「安定株主の皆様に対し、これまでの保有に感謝申し上げるとともに、今後、当社株式の市場への放出にご協力いただけるよう要請してまいります」 消防・防災関連など各種ゴム製品の専業メーカー、櫻護謨は6月29日に東京証券取引所スタンダード市場の基準に適合していないことを適時開示した。流通株式時価総額と流通株式比率の2つで基準未達となった。大株主に売却を依頼する企業は多いが、感謝のコメントを添えた開示はめずらしい。) 「役員及び役員の2親等以内の親族」に対して保有株の売却を促すとしたのはヒューマンホールディングス(スタンダード市場上場)だ。開示によれば流通株式比率が20.85%となり、新たに基準に抵触した。 同社の大株主欄には佐藤耕一会長をはじめ、社長の佐藤朋也氏など佐藤姓の株主が並ぶ。3月には新たに佐藤姓の個人が「安定株主として保有」目的で9.1%の大量保有を報告している。はたして2025年3月末までに売却は進むのだろうか。 ほかにも「特定の元従業員の不正行為」に言及し「かかる事案の及ぼす影響も考慮すべきである」とした会社や、「普通銀行に売却を打診」すると記載した企業など、各社各様の工夫で上場維持基準の適合に向けた計画を公表している』、「普通銀行に売却を打診」がどのように「上場維持基準の適合に向けた計画」に相当するのかは不明だが、各社とも知恵を絞っているようだ。
・『基準未達企業がすがる意外な逃げ道  こうした基準未達企業は今後も増え続ける可能性がある。ただ、東証が市場区分の移行に際して用意した経過措置の適用を受けられるのは2025年2月まで。それ以降は上場維持基準に抵触した場合、監理銘柄となり、それでも基準を満たせない場合は上場廃止となる。 プライム市場の上場企業であれば、経過措置終了後も再度上場審査を受けることで、スタンダード市場へ鞍替えすることができる。ではスタンダードやグロースの上場企業は座して上場廃止を待つほかないのか。 市場関係者の間で上場廃止を回避する秘策として噂されているのが、地方市場への上場だ。札幌、名古屋、福岡などの証券取引所が想定されている。 上記の3市場では、東証などほかの証券取引所で上場している企業が新規に上場する場合、証券会社による上場審査を実質的に免除する仕組みがある。元々は東証や旧大阪証券取引所などとの重複上場を促すための制度だが、上場維持基準もスタンダードやグロースよりさらに低く、東証からの移行がしやすくなっている。 ある地方市場関係者は「東証がダメならうちで、という営業はしていないが、市場なので品物は多いほうがいい。上場してくれる企業が増えること自体は歓迎」と話す。 ただ、現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ。(▽基準未達なら「上場廃止」の可能性もー新たに上場維持基準不適合となった東証スタンダード・グロース市場上場企業ーの表はリンク先参照)』、「現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ」、その通りだ。

第五に、8月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「米国債「格下げ」は想定内でも、警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327512
・『信用格付けサービス3位のフィッチによる米国債格下げは、想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ。むしろ、フィッチの判断は、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった』、興味深そうだ。
・『「米国債格下げ」のタイミングで長期金利が上昇の波紋  8月1日、大手信用格付け会社のフィッチ・レーティングスは、米国債の格付けを最上位のAAA(トリプルエー)からAA+(ダブルエープラス)に引き下げた。見通しは「安定的」だ。 既に、同じく有力格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、2011年に米国債をAA+に格下げしている。大手格付け会社のうち、AAA(Aaa)格はMoody’s(ムーディーズ)を残すのみだ。 フィッチは格下げ要因として、主に三つを指摘した。(1)今後3年間での米財政の悪化懸念、(2)高水準かつ増加する公的債務、(3)債務上限を巡る政治対立の激化など債務管理体制の不安――だ。コロナ禍をきっかけに米国で財政支出圧力は強まった。フィッチの指摘は周知の事実ではある。 注目すべきは、格下げとほぼ同じタイミングで、金利とリスク資産の関係に変化の兆しが表れたことだ。米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない』、「米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない」、既に「S&P」が「格下げ」をしているとはいえ、かつて最上格の「米国債」の「格下げ」はやはり影響が大きい。
・『フィッチが格下げに踏み切った経緯と背景  振り返れば5月、フィッチは米国の信用格付けの見通しを「ネガティブ」(信用力は下向き)に修正していた。背景として、政府債務上限を巡る民主党と共和党の対立激化は大きかった。長期的な財政運営の不透明感は増し、米財務省は一部の公的年金基金の新規の投資をストップするなど臨時措置を取ったが、それは長く続けられる措置ではない。 期日までに、与野党が債務上限の引き上げなどに合意できないリスクもあった。長期的な財政運営の安定性、予見性、財政再建に向けた政治的リーダーシップへの不安などを背景に、フィッチは米国債の信用格付けを最上位のAAAから引き下げる可能性を示唆していた。 6月初旬、米上院は債務上限の効力を2025年1月まで停止する法案を可決した。前回のピンチ(11年)に比べれば幾分か時間はあったが、今回も米連邦政府は資金の枯渇を土壇場で回避した。 こうした背景もあり、フィッチが米国債の格付けを引き下げたことは、5月の見通し修正に沿ったものだった。大手の信用格付け業者が米国債を格下げするのは、今回が初めてではない。11年の債務上限問題では与野党が合意した後に、S&Pが米国の格付けをAA+へ1段階引き下げた。 S&Pは世界の信用格付けサービスの最大手である。米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった。3社の中でフィッチの規模は小さく、格下げのインパクトも限られる。残るは、ムーディーズが米国の格付けをどうするかだ。8月10日時点で、ムーディーズは米国債をAaa格(S&PなどのAAAと同じ)で維持している。 5月の見通し修正、その後の米債務上限問題の推移を踏まえると、フィッチによる格下げは想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ』、「米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった」、S&Pのシェアが想像以上に大きいことに驚かされた。
・『徐々に進む金利上昇リスクの再確認  むしろ、フィッチが米国債の格下げを発表したことは、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった。その点を冷静に考えることが重要だ。 11年にS&Pが米国債を格下げした時と今回を比べると、世界経済の環境は異なる。リーマン・ショック後、日米欧の中央銀行は金融緩和を強化した。世界経済の回復ペースは緩慢であり、物価も上昇しづらかった。「中央銀行が景気減速に配慮して金融緩和を強化する」と予想する投資家は増えた。こうした認識が、世界中の投資家の記憶に強く刷り込まれた。 ユーロ圏やわが国ではマイナス金利政策も実施され、金融緩和は強化された。「低金利環境は続くはず」といった主要投資家の思い込みは強まった。主要国の財政悪化に対する投資家の警戒感、関心は薄れた。 しかし、20年以降の世界はコロナ禍をきっかけに一変した。各国で財政支出は増大し、物価は上昇。短中期を中心に金利も上昇した。 世界的に現金の給付や、失業保険の特例措置が実施された。現在、米国では家計が過剰な貯蓄を抱え消費は減少していない。旺盛な需要を背景に、インフレ率は2%を上回っている。22年3月以降は急速に利上げが進み、短中期を中心に金利は上昇した。それでも株価は高い。大規模な財政支出により、経済はゆがんだ。 ウクライナ紛争も、財政支出圧力を高めた。1970年代半ばにベトナム戦争が終結して以来、約50年ぶりに、かつての東西陣営を巻き込んだ戦争が長期化している。 ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている』、「ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている」、なるほど。
・『金利と株式などリスク資産の関係に変化の兆し  理屈で考えると、財政支出の増加によって、長期、超長期の金利は上昇する。今回の格下げは、主要投資家がそうしたリスクを冷静に考える機会になった。 格下げとほぼ同じタイミングで、世界的に金利と株価の関係は徐々に変化し始めている。7月26日まで、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は13連騰を記録していた。生成AIの登場が大きなインパクトとなり、IT産業への成長への期待が膨らんでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)が、景気の減速に配慮して秋口にも利下げに転じるとの見方も高まった。米国の2年金利は低下し、株価上昇は勢いづいた。 他方、7月28日、日本銀行はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を修正し、10年金利の上限を1.0%に引き上げた。「米財務省が国債の発行を増やす」との見方も増えた。フィッチの米国債格付け判断を、見極めようとする警戒感も高まっただろう。一般的に信用格付け業者は見通しを修正した後、2カ月程度で新たな格付けを付与することが多い。 米国経済が過熱気味であることも、金利上昇の警戒感を高める要因になった。4~6月期、実質GDPの成長率は予想を上回った。物価安定のためにもFRBは金融引き締めを続けなければならない。8月に入ってからの世界的な株価下落は、金利上昇リスクに身構える投資家の増加に影響された部分が大きい。 8月10日時点で、ムーディーズは米国の信用格付け見通しを修正していない。ごく短期間で米国が最高位の格付けを失うことは考えづらい。また、世界の金融環境は緩和的な部分を残している。短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ』、「短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ」、なるほど。

なお、明日は、更新を休む予定である。
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ハラスメント(その22)(歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に、国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ 電通に尋ねた、ジャニーズ性加害問題 「国連が動いたからには…」と期待しても失望が待つ理由) [社会]

ハラスメントにつては、本年5月20日に取上げた。今日は、(その22)(歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に、国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ 電通に尋ねた、ジャニーズ性加害問題 「国連が動いたからには…」と期待しても失望が待つ理由)である。

先ずは、本年6月4日付け東洋経済オンラインが掲載した日本女子大学教授の細川 幸一氏による「歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/676163
・『創業150周年と銘打った記念公演で賑わう日本橋浜町の明治座に突然の災難が降りかかった。4月、5月の記念公演は歌舞伎で、5月は「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」。役者名をタイトルに冠した公演で、さながら、歌舞伎版「ワンマンショー」といった感じだ。その市川猿之助が突然の休演となり、明治座は大混乱に陥った。 昼の部、夜の部の2部構成で、双方とも猿之助が主役を務める。昼の部は1979年に3代目猿之助(現・市川猿翁)初演で宝塚のスタイルを取り入れた歌舞伎レビュー「不死鳥よ 波濤を越えて―平家物語異聞―」、夜の部はやはり3代目猿之助が1984年に明治座で初演し、6役早替わり、宙乗りで知られる「御贔屓繫馬」(ごひいきつなぎうま)。歌舞伎界で集客力ナンバーワンとも言われる猿之助(澤瀉屋・おもだかや)ならではの公演だ。 事件が起きたのは5月18日。猿之助自身が体調不良で休みたいと劇場側に連絡したのが、18日朝。同日の昼の部は休演になったものの、夜の部は中村隼人(29歳、萬屋)の代役で公演を続けた。昼の部は翌19日も休演となるものの、20日からは市川團子(19歳、澤瀉屋)が代役を務めて公演を続行した』、「代役」で穴を開けなかったとはさすがだ。
・『堂々と代役を務めきった  結局28日の千秋楽まで、昼の部は團子、夜の部は隼人が猿之助の代役を務めきった。緊急事態にも動じず、主役不在の舞台で堂々と主役を務めた2人の演技が注目されることとなり、連日大入り状態となった。 実は、夜の部の「御贔屓繫馬」は千秋楽の28日には猿之助の役を隼人が演じることが予め決まっていた。猿之助の、若手に主役の機会を与えて実力をつけさせたいという思いからだ。したがって、急遽の猿之助休演でも隼人は演じる準備ができていたと思われる。 しかし、昼の部の「不死鳥よ 波濤を越えて」はそうした予定はなく、しかも團子は夜の部には出演していたが、昼の部は出演していなかった。にもかかわらず、緊急事態が起きた18日の翌々日の20日には47歳のベテラン猿之助の代役を若干19歳でみごとに務めたのだ。その雄姿が話題となり、チケットの人気が沸騰し、昼の部は完売となった。 隼人が代役を勤める夜の部も宙乗りに6役早替わりという澤瀉屋が得意とする観客サービスたっぷりの演目で、こちらもほぼ完売の状況となった。「顔よし、声よし、姿よし」と注目の隼人の宙乗りに観客は魅了された。) 歌舞伎界は、江戸時代の役者の身分制の影響が残る体質の古さが指摘され、それゆえの不祥事がたびたび報じられてきた。「名跡」を持つ役者の嫡男が「御曹司」として「お家芸」を継承し、経験(芸道精進)を経てその名跡も継承していく。そして、その名跡を柱として、門下の役者によって集団が形成され、市川團十郎家の「成田屋」や尾上菊五郎家の「音羽屋」などの屋号で呼ばれる。猿之助率いる「澤瀉屋」もそのひとつで、猿之助の名跡は大名跡とされている。 昭和の時代から、歌舞伎界では不倫や隠し子程度のことは問題視されることではなく、特段に珍しいことでもないとされた。ただ世間一般の感覚とはずれがあり、メディアで騒がれることも多い。現在の歌舞伎界を支える名跡の役者も親世代の破天荒な行いを見てきたからであろうか、不倫等に加えて、セクハラやパワハラ等のスキャンダルが報じられることがある。 團子の父は俳優香川照之(歌舞伎俳優名:市川中車。猿之助の従兄弟)だが、香川自身も不祥事でテレビ界から排除され続けているなかで、市川中車として歌舞伎の舞台には復帰し、今月の舞台にも息子の團子とともに出演している。これも歌舞伎界の不祥事に対する甘さだとする指摘が多い。 そうした中での「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」。人気の猿之助の公演ということもあり、チケットの販売状況は悪くはなかったが、完売というほどの状況ではなかった。そこに突然の事件で、公演中の主役が不在になった。だれもが公演継続は不可能と思うところだが、急遽代役を立てて公演が続けられた』、「歌舞伎界は、江戸時代の役者の身分制の影響が残る体質の古さが指摘され、それゆえの不祥事がたびたび報じられてきた。「名跡」を持つ役者の嫡男が「御曹司」として「お家芸」を継承し、経験(芸道精進)を経てその名跡も継承していく。そして、その名跡を柱として、門下の役者によって集団が形成され、市川團十郎家の「成田屋」や尾上菊五郎家の「音羽屋」などの屋号で呼ばれる。猿之助率いる「澤瀉屋」もそのひとつで、猿之助の名跡は大名跡とされている。 昭和の時代から、歌舞伎界では不倫や隠し子程度のことは問題視されることではなく、特段に珍しいことでもないとされた。ただ世間一般の感覚とはずれがあり、メディアで騒がれることも多い。現在の歌舞伎界を支える名跡の役者も親世代の破天荒な行いを見てきたからであろうか、不倫等に加えて、セクハラやパワハラ等のスキャンダルが報じられることがある」、なるほど。
・『代役を観たい客が殺到  一方で、こうした歌舞伎界の影の部分を引きずる慣習が魅力となっている面もある。チケットの規約には「公演中止以外は払い戻しは一切しない」とあるが、さすがに「猿之助奮闘公演」と銘打っていながら猿之助休演では、そうはいかないと考えたのであろう。明治座はチケットのキャンセルに応じる決定をした。キャンセルが相次いでも不思議ではないと思われたが、代役を見事に演じる團子と隼人が話題となり、その姿を観たい客が殺到し、客席は大盛り上がりとなった。 特に團子は、前述したように昼の部には出演していなかった。しかし、事態が起きた2日後には代役を演じ切った。香川照之の長男・政明で、澤瀉屋の名跡のひとつである市川團子を8歳で襲名し以降、猿之助のもとで歌舞伎俳優として経験を積んできた。 澤瀉屋の名跡・團子を名乗ること自体が、のちに猿之助を継承する可能性を自覚し、また世間にもそう思わせることとなり、それゆえに芸道精進してきたということであろう。父・照之も異例の46歳になって歌舞伎俳優となり市川中車を襲名したが、息子・團子の代役成功は、團子が猿之助を継ぐとの印象を世間に改めて認識させた。) 役者が休演しても代役がすぐに立てられ、興行は休演にならないということが歌舞伎ではよくある。歌舞伎界の役者全体が歌舞伎の継承という理想の下では家族のように芸の継承に協力し、御曹司たちは子どもの頃から歌舞伎座などの劇場で多くの時間を過ごし、所作やセリフ、長唄、義太夫などの音楽にどっぷり浸かった「英才教育」を受けているので、やり遂げてしまうのだ。 御曹司が家を継承するということは、出生で役者の道が決まり、逆に歌舞伎の名家に生まれてこなかった役者を排除するシステムのように映る。一方で御曹司にはそれが役者として小さいころから経験を積む機会を与え、幼心にもその責任と運命を自覚させる効果を持っている。 昨年11月、12月の2カ月間、歌舞伎座で市川團十郎白猿の襲名披露興行があったが、息子の市川新之助襲名も同時に行われた。わずか9歳の男の子が「外郎売(ういろううり)」、「毛抜」の舞台で主役を務めて話題となった。 また今年5月の歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」では、尾上菊五郎の孫で、フランス人の父と菊五郎の娘・寺島しのぶを母に持つ10歳の寺嶋眞秀の尾上眞秀襲名初舞台の演目「音菊眞秀若武者」で、眞秀は男役、娘役の2役を演じ切り、こちらも拍手喝采の舞台となった』、「役者が休演しても代役がすぐに立てられ、興行は休演にならないということが歌舞伎ではよくある。歌舞伎界の役者全体が歌舞伎の継承という理想の下では家族のように芸の継承に協力し、御曹司たちは子どもの頃から歌舞伎座などの劇場で多くの時間を過ごし、所作やセリフ、長唄、義太夫などの音楽にどっぷり浸かった「英才教育」を受けているので、やり遂げてしまうのだ」、「御曹司にはそれが役者として小さいころから経験を積む機会を与え、幼心にもその責任と運命を自覚させる効果を持っている」、なるほど。
・『現代的なシステムの導入も  歌舞伎は世界的に見てかなり異質の舞台芸術だ。歌舞伎の演目のひとつに「口上」がある。襲名披露興行等の記念興行で見られる演目で、要は役者たちの「ご挨拶」それだけである。役を演じるのではなく、役者が襲名等にあたっての抱負を語り、歌舞伎界の幹部たちがそれに応援等の挨拶をするだけのものだが、その様式美と出演者の豪華さが魅力であり、「役者の成長を楽しむ」という歌舞伎ならではの演目で、人気が高い。 家の芸を中心とする演劇が歌舞伎であり、したがって、世襲を基本としているが、江戸時代の役者の身分制をそのまま引きずっている訳ではない。そこには工夫や現代的なシステムの導入も見られる。 嫡男ができない名跡役者はいるし、また、いたとしても役者に向かなかったり、嫌がる場合もある。そのままではお家芸が途絶えてしまうので、養子や部屋子という形で、継承することがある。部屋子とは、部屋に預けられた子どもの役者だ。) 当代一の女形と言われる坂東玉三郎は14代目守田勘弥の部屋子となり、その後、養子となって5代目坂東玉三郎を襲名した。ラブリンの愛称までついている片岡愛之助は一般家庭に生まれ、子役として活躍するなかで13代目片岡仁左衛門に見いだされて片岡一門の部屋子となり、のちに2代目片岡秀太郎の養子となって、6代目片岡愛之助を襲名した。若い世代では、中村莟玉(かんぎょく)が4代目中村梅玉の養子、中村鶴松が18代目中村勘三郎の部屋子となり、歌舞伎俳優となっている。 これらは歌舞伎を生業とする家に生まれなかった子どもがその才を見いだされるケースだが、戦後は、一般家庭の子として生まれても歌舞伎俳優になれる制度も作られた。国立劇場などを運営する独立行政法人日本芸術文化振興会の国立劇場伝統芸能伝承者養成所だ。歌舞伎俳優養成コースがあり、1970年に始まった。応募資格は中学校卒業以上23歳までの男子で、研修期間は2年間だ。受講料無料、宿舎の貸与や補助もある。現在、約300人の歌舞伎俳優がいるが、約3分の1をここの卒業生で占める。 ただし、歌舞伎俳優として活躍するためにはそれだけでは不十分だ。いずれかの幹部俳優(旦那)に弟子入りして、芸名をもらう必要がある。また入門後、歌舞伎の世界の礼儀作法やしきたりなどに慣れ、セリフの無い役や立ち廻り、後見や付き人などとして役者修業をする。 このあたりが、歌舞伎以外の俳優の道と違うところだ。俳優や歌手、芸人も師匠の世話人や運転手を務めながら芸を磨いていくこともあるが、歌舞伎はそれが制度、慣習として徹底している。そこに上下関係、絆が生まれ、家族のような運命共同が築かれるが、信頼関係が崩れたときに「破門」となったり、ハラスメントが起こる可能性がある』、「戦後は、一般家庭の子として生まれても歌舞伎俳優になれる制度も作られた。国立劇場などを運営する独立行政法人日本芸術文化振興会の国立劇場伝統芸能伝承者養成所だ。歌舞伎俳優養成コースがあり、1970年に始まった。応募資格は中学校卒業以上23歳までの男子で、研修期間は2年間だ。受講料無料、宿舎の貸与や補助もある。現在、約300人の歌舞伎俳優がいるが、約3分の1をここの卒業生で占める。 ただし、歌舞伎俳優として活躍するためにはそれだけでは不十分だ。いずれかの幹部俳優(旦那)に弟子入りして、芸名をもらう必要がある。また入門後、歌舞伎の世界の礼儀作法やしきたりなどに慣れ、セリフの無い役や立ち廻り、後見や付き人などとして役者修業をする」、「上下関係、絆が生まれ、家族のような運命共同が築かれるが、信頼関係が崩れたときに「破門」となったり、ハラスメントが起こる可能性がある」、なるほど。
・『筆記・作文・実技の審査も  歌舞伎俳優が組織する日本俳優協会が名題資格審査(名題試験)を実施している。歌舞伎俳優の身分制は時代によって変遷してきているが、現在は「名題役者」と「名題下」に大別されている。名題役者という呼称は、江戸時代に、芝居小屋の正面に掲げられた名題看板(演目の題名を記した看板)の上部に、主要な役者の芸名と紋を載せたところから来たといわれている。 歌舞伎界に入門して10年以上で幹部俳優の推薦を受けた役者が、日本俳優協会の名題試験を受験することができる。筆記・作文・実技の審査に合格して「名題適任証」を取得する。) 興味深いのは、受験に旦那の推薦が必要とされ、また合格した場合も、あくまで適任であることの証に過ぎないということだ。実際に名題役者になるのには、「諸先輩やご贔屓、興行主など、関係方面の賛同を得て、名題昇進披露を行う必要があります」(Kabuki on the web)ということだ。幹部俳優を頂点とした家制度を骨格として現代的な制度を導入したシステムが現在の歌舞伎界なのだ。 しかしながら、前述のように世間の常識とは違う歌舞伎界の慣習がいまだに残っている。最近、ネット上では「歌舞伎界は『治外法権』」といった文言も見られる。テレビ業界だと、NHKは受信契約者の意向に敏感だし、民放はスポンサーの意向を気にする。不祥事を起こした役者をテレビ番組や広告で起用し続ければ、スポンサー企業のイメージダウンや不買運動の懸念があるからだ。 その点、演劇はお金を払って観たい人だけが観に来るので、ハードルは低いとされ、歌舞伎はさらに低い。それはそれで構わないと言えるが、猿之助の件では歌舞伎界以上に映画界が頭を抱えている。映画もお金を払って観るものだが、テレビ局やスポンサーとのつながりが深かったり、観衆の数が演劇とは圧倒的に違うので、世間の批判には演劇以上に敏感だ』、「映画もお金を払って観るものだが、テレビ局やスポンサーとのつながりが深かったり、観衆の数が演劇とは圧倒的に違うので、世間の批判には演劇以上に敏感だ」、なるほど。
・『歌舞伎俳優の起用に慎重になる?  猿之助は今月6月の歌舞伎座公演昼の部の「傾城反魂香」に出演予定であったが、中村壱太郎が代役に立てられ公演は行われている。代役さえ決まれば、興行は続けられるのが演劇の特徴だ。といっても主役級の役に急遽代役を立てることは容易ではないが、前述のとおり、歌舞伎俳優は世襲制の修業の中でそれができてしまうのだ。 一方、映画はたいへんだ。撮影途中や撮影後に主役級の役者に不祥事があれば、最悪、公開中止に追い込まれたり、撮り直しという事態になる。撮り直しも複数の役者が絡むシーンが多数あれば簡単ではない。猿之助は6月16日に公開予定だった映画『緊急取調室 THE FINAL』に内閣総理大臣役で出演していたが、東宝は公開延期を発表した。 近年、歌舞伎俳優が映画やテレビに起用される機会は多く、人気を博してきた役者も多い。それがまた歌舞伎への注目を集めることを期待する関係者も多いだろう。しかし、その流れが大きく変わることを予想する向きもある。 歌舞伎俳優のスキャンダルが「治外法権」で片づけられる時代ではなくなり、週刊誌も歌舞伎俳優を狙っているなかで、それがいつ表に出るか分からないとなると、テレビ局や映画会社は怖くて歌舞伎俳優の起用には慎重にならざるをえないということのようだ。 歌舞伎界の伝統が世界的にみて特異な演劇スタイルを形成し、家の芸を継承するなかで突然の事態でも代役を務め、観客を魅了する若手スターが登場しているが、一方で世間離れした振る舞いを続けていると、「コンプライアンス」が叫ばれる今日、歌舞伎界が世間からそっぽを向かれる可能性もある。歌舞伎界の大転換期かもしれない』、「歌舞伎界の伝統が世界的にみて特異な演劇スタイルを形成し、家の芸を継承するなかで突然の事態でも代役を務め、観客を魅了する若手スターが登場しているが、一方で世間離れした振る舞いを続けていると、「コンプライアンス」が叫ばれる今日、歌舞伎界が世間からそっぽを向かれる可能性もある。歌舞伎界の大転換期かもしれない」、同感である。

次に、8月5日付け東洋経済オンライン「国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ、電通に尋ねた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/692491
・『「いち芸能事務所とわれわれだけの問題ではない。芸能業界に携わるすべての企業に救済措置を構築する責任があると言ってくれた」。かつてジャニーズ事務所に所属していた石丸志門氏は、そう言葉を絞りだした。 8月4日、石丸氏が副代表を務める「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は、都内の日本記者クラブで会見を開いた。彼らが直前まで見入っていたのは、同じ場所で開かれた国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家による記者会見だった。 専門家は7月24日から訪日調査を実施。調査は技能実習生やジェンダーに関わる問題など広範囲に及んだ。ジャニーズ元社長の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題も対象となった。被害者や事務所代表者に面談するなど、積極的に調査した』、「国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家」が「7月24日から訪日調査を実施。調査は技能実習生やジェンダーに関わる問題など広範囲に及んだ。ジャニーズ元社長の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題も対象となった。被害者や事務所代表者に面談するなど、積極的に調査した」、「国連」がわざわざ乗り出したというのは、みっともない限りだが、日本社会が自浄能力を喪失しているのではやむを得ない。
・『「全企業で虐待に対応を」  「タレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」。作業部会のピチャモン・イェオパントン氏は、会見でそう指摘した。 そのうえで、「私たちはエンターテインメント業界の企業をはじめとして、日本の全企業に対し積極的に人権デューデリジェンスを実施し、虐待に対処するよう強く促す」と述べた。 イェオパントン氏は全企業が総点検し、対応する必要があると日本に突きつけたのだ。) 人権デューデリジェンスは、自社の活動が人権に負の影響を与えていないか、リスクを特定して対応する取り組みのことだ。自社事業だけでなく、取引先が抱える人権リスクについても丁寧に調べることが求められている。 このことは国連が2011年に採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」に明記。日本政府も指導原則に則って2022年にガイドラインを策定した。 では、ジャニーズ問題において、企業はどう対応しているのか。ジャニーズタレントをCMに起用するスポンサー企業や広告代理店の電通、「24時間テレビ」でもジャニーズタレントを起用する日本テレビなどの8社に見解を尋ねた。 書面回答してもらう形でヒアリングした。「取引先企業で児童への性加害問題が起きたとした場合、自社が対応する必要のある人権問題として捉えるか」「性加害の問題についてジャニーズ事務所に問い合わせや確認を行ったか」などを質問した』、どんな「回答」だったのだろう。
・『対応の有無を明かした企業は少数  各社の見解は「性加害・性暴力を容認しない」という点ではそろっていた。だが、対応の有無まで明らかにしてくれたのは4社にとどまった(8社の回答詳細は4ページ目に掲載)。 そのうち、事務所に問い合わせや確認を行ったと答えたのは、損害保険大手の東京海上日動火災保険、日本テレビ、P&Gジャパン。次のようにコメントした。 「各種問い合わせを対面含めて実施している」(東京海上日動) 「弊社はジャニーズ事務所と双方のコンプライアンス担当者も含め、数回にわたり対話を行っている。同様の問題が二度と起きないよう強く求めている」(日本テレビ) 「弊社がビジネスパートナーに期待する基準への再認識を求めるべく、弊社よりジャニーズ事務所に本件の問い合わせを行うとともに、(遵守事項をまとめた)ガイドラインを再度共有している」(P&Gジャパン) 問い合わせ等は行っていないと答えたのは、飲料大手のアサヒグループホールディングスだ。「事務所の発表内容のとおり、ジャニー喜多川氏が故人であることからすべての事実を確認することが難しい状況のため。一方で、報道内容が事実であれば、誠に遺憾」とコメントした。 国連の指導原則にのっとれば、広告にジャニーズタレントを起用している企業は、「事務所に対して徹底的な事実調査等の要請を行い、合理的な範囲で外部への説明を行う責任を負っている」(オリック東京法律事務所の蔵元左近弁護士)。 ジャニー喜多川氏がすでに死去しているので事実確認が難しいというのも免罪符にならない。 「人権侵害があったという告発があった場合には、どのようなものであれ、それを真剣にとらえ、指導原則にのっとった形で適切な調査を行うことが重要」。作業部会のダミロラ・オラウィ議長は会見でそう述べた。 アサヒグループの対応は、指導原則の目指す姿と隔たりがあると言える。だが、対応の有無を明らかにしなかった企業と比べると、まだいい。それらの企業は、ステークホルダーへの説明責任を果たしていないばかりか、きちんとした人権対応をとる意思があるのかと問われかねない。 「黙殺は人権侵害に加担しているという認識が大きく欠如している。そこを抜本的に転換する必要がある」。人権問題に取り組むNGO「ヒューマンライツ・ナウ」で副理事長を務める伊藤和子弁護士は、そう指摘する』、「ジャニー喜多川氏がすでに死去しているので事実確認が難しいというのも免罪符にならない。 「人権侵害があったという告発があった場合には、どのようなものであれ、それを真剣にとらえ、指導原則にのっとった形で適切な調査を行うことが重要」。作業部会のダミロラ・オラウィ議長は会見でそう述べた」、「「黙殺は人権侵害に加担しているという認識が大きく欠如している。そこを抜本的に転換する必要がある」。人権問題に取り組むNGO「ヒューマンライツ・ナウ」で副理事長を務める伊藤和子弁護士は、そう指摘する」、その通りだ。
・『取引を止めればいいわけでもない  取引先企業は今後どうしていくべきなのか。タレントを自社広告に起用している企業であれば、契約満了を待って取引を停止するのがいいのか。ところが話はそう単純ではない。 取引停止は、問題が発生した企業を孤立させ、人権侵害の被害をかえって深刻化させる可能性があるからだ。あくまでも取引関係をテコにして問題解決へ影響力を行使することが、現在、企業の人権対応では求められている。 企業のサステナビリティ戦略を支援するオウルズコンサルティンググループの若林理紗氏は、一例として次のように提案する。 「人権状況の改善要請の例としては、独立性が担保された第三者による徹底的な調査や経営陣の刷新を含めたガバナンスの改善を要求するといったことが考えられる。それを契約更新の条件とし、1年後に改善が見られない場合には契約を終了するなど、段階的に取り組むことが望ましい」 今回のジャニーズ問題をもはや看過することは許されない。この問題に頬被りしてフェードアウトしたことが先例となれば、その企業にとっても大きな禍根を残しかねない。 国連の作業部会はさらなる情報収集を今後行う。日本政府や企業などに対する人権保護の提言を盛り込んだ最終報告書を2024年6月の人権理事会に提出するという。 日本政府は国際的な競争力強化に資すると「ビジネスと人権」を巡る政策を推進してきた。この問題をおろそかにすれば、「日本企業の人権対応に問題あり」との評価を海外から下されかねない。 「スポンサーの企業も、勇気や正義をもってよりよいクリーンな日本をつくってもらえれば」。当事者の会のメンバーの一人は、会見でそう訴えた。この声をどう受け止めるのか。取引関係にある企業も重大な岐路にあることを自覚すべきだ』、「取引停止は、問題が発生した企業を孤立させ、人権侵害の被害をかえって深刻化させる可能性があるからだ。あくまでも取引関係をテコにして問題解決へ影響力を行使することが、現在、企業の人権対応では求められている」、「人権状況の改善要請の例としては、独立性が担保された第三者による徹底的な調査や経営陣の刷新を含めたガバナンスの改善を要求するといったことが考えられる。それを契約更新の条件とし、1年後に改善が見られない場合には契約を終了するなど、段階的に取り組むことが望ましい」、なるほど。
・『東京海上日動は対面を含めて問い合わせを実施 これ以降は紹介を省略

第三に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「ジャニーズ性加害問題、「国連が動いたからには…」と期待しても失望が待つ理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327467
・『国連「メディアが加担」と指摘、スルーするマスコミ  「数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになったほか、日本のメディア企業は数十年にわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」 8月4日、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家2人は、日本のメディア企業の前でそのようにぶちまけた。 「人類史上最悪の性虐待事件」(元ジャニーズJr. 石丸志門氏の言葉)と呼ばれる、ジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性加害が、ここまで表沙汰にならなかったのは、テレビ局、新聞社、レコード会社、芸能事務所、広告代理店など、あらゆるメディア企業が「共犯」だったと指摘したのである。 ついに国連まで動いたとなると、「これでマスコミとジャニーズ事務所の腐敗した構造が明らかになるぞ。ジュリー氏も“知らなかった”で逃げきれない」と淡い期待を抱く方も多いだろう。 だが、残念ながら、そういう核心的な話になる可能性は低い。 確かにここまで大事になれば、「ジャニーズ」という屋号を変えざるを得ないだろう。また、被害者に対して慰謝料など具体的な条件を提示していかなければいけないはずだ。 ただ、被害者たちが主張している、ジャニーズ事務所の組織的隠蔽やジャニー氏の犯罪の容認、アシストしていたエンターテイメント業界の悪習、メディア企業との癒着関係という深い話はスルーされ、トーンダウンしていくはずだ。 「国連が問題視して世界が注目しているのにそんなワケないだろ」とあきれる方も多いだろうが、実は日本では“国連が問題視したことは国民的議論が盛り上がらない”と相場が決まっているのだ。 なぜかというと、メディア企業が積極的に取り上げないからだ。今回のように会見を開けばその日くらいはトップニュースで扱う。しかし、それだけだ。 国連などから指摘を受けて、マスコミがキャンペーンを始めたとか、調査報道をするということはほとんどない。ひどい場合、「こんなもんは被害者ヅラする連中が国連に働きかけて騒いでいるだけで、報道する価値などない」という感じで、完全無視をする。 その代表が、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の拉致監禁問題だ』、「「こんなもんは被害者ヅラする連中が国連に働きかけて騒いでいるだけで、報道する価値などない」という感じで、完全無視をする」、やはり「共犯」のマスコミには多くを期待できないようだ。
・『信者を拉致監禁、国連の問題視もスルー  「何?旧統一教会は高額献金や霊感商法だけではなく、拉致監禁までしていたのか!こんな危険なカルトはさっさとつぶして日本から追い出せ!」と早とちりしてしまう人も多いだろうが、まったく逆で、旧統一教会の信者が拉致監禁の「被害」にあったという話だ。 旧統一教会から脱会させたいという家族が、キリスト教関係者や被害者救済を掲げる弁護士などからアドバイスを受けて信者を拉致して、マンションの一室などに閉じ込めて「もうあんな宗教やめます」と宣言をするまで監禁するというものだ。「被害者」は43年間で4300人と言われる。中には、12年5カ月もの間、監禁された後藤徹さんという人もいれば、監禁中に改宗を迫られて絶望のあまり自殺をしてしまう人までいた。 そんな拉致監禁問題を国連の自由権規約人権委員会というところが問題視し、2014年7月24日、最終報告書を公表して、日本政府に対して以下のように改善を勧告した。以下に引用しよう。 <21.委員会は,新興宗教への改宗者に対して,その家族の構成員が改宗離脱のために本人を拉致・監禁しているという報告について懸念を有する(2条,9条,18条,26条)。締約国は,すべての人に対し,自らの宗教若しくは信条を保持し,又はこれを選択する自由を強制的に侵害されない権利を保障するため,効果的な措置をとるべきである> これを受けて、大統領が聖書を手にして宣誓するほど「信仰」を重要視するアメリカも動いた。米国務省が「国際宗教の自由報告書」で拉致問題に言及したのだ。ちなみに、現在も米国大使館のホームページには以下のようなスタンスが表明されている。 <米国大使館は、統一教会に関する諸問題に注視し、国会議員、政府規制当局、同教会の活動により影響を受ける者、そして同教会代表者との連絡を維持し、あらゆる事案において信仰の自由の重要性を強調した>(信仰の自由に関する国際報告書(2022年版)-日本に関する部分) 冷静に考えれば当然だ。旧統一教会の信者には「人権」がある。しかも、その人たちが信じていることを「異端」「社会秩序を乱す」として、信仰心を捨てるまで拉致監禁で追いつめるというのは、遠藤周作の「沈黙」で描かれた隠れキリシタンへの拷問を彷彿とさせる。 しかし、日本の多くの人が拉致監禁問題を知らないことからもわかるように、日本のマスコミが、国連やアメリカの動きを大きく取り上げることはなかった。「完全無視」をしたメディア企業も多い。 平時は「人権を守れ!」「弱者を救え!」とお祭り騒ぎをする正義のマスコミとジャーナリストの皆さんは、なぜイデオロギー的に相性バツグンに見える国連からの「改善要求」をスルーしたのか』、何故なのだろう。
・『国連の「改善要求」、日本のマスコミにとってどうでもいいワケ  いろいろなご意見があるだろうが、実際にマスコミで働いていた経験のある立場で言わせていただくと、そのような話がマスコミにとって「どうでもいい」ということが大きい。 日本のジャーナリズム業界は「自分たちが設定したストーリーと矛盾のある話は報道する価値がない」という感じで目をそらして、「報道しない自由」を行使するクセが強いのだ。 一体どういうことかわかっていただくのに、うってつけのケースがある。2023年7月30日に開かれた「信者の人権を守る二世の会」主催の第3回公開シンポジウムだ。 これは旧統一教会の二世信者たちが集まってできたものだ。安倍晋三元首相殺害事件後に一部の脱会した二世や山上徹也被告ばかりが「二世のすべて」として報道され、深刻な人権侵害に陥っている問題について話し合うというものだ。 そのシンポジウムの中で、拉致監禁問題を取材しているノンフィクションライターの福田ますみ氏が、取材に訪れていたジャーナリストの鈴木エイト氏に対して、こんな質問をした。 「後藤徹さんも来ていますが、後藤さんは12年5カ月監禁されてました。それについて鈴木エイトさんは『ひきこもり』と言った。これはどうしてなんでしょうか」 すると、鈴木エイト氏は「どうでもいいです。ご自由に受け取ってください」と回答。さらに、その後SNSで「教団側からメディアへの質問の前提がおかしい」と言及した上で、ご自身の発言をこう補足した。(以下、一部引用) 「そんな反社会的団体からの脱会を望む家族と当該信者の話し合いを教団側が『拉致監禁だ!強制棄教だ!』と被害者面でアピールしているだけ。」 「そんな反社会的団体による『被害者アピール』は取り上げる価値もなく『どうでもいい』こと。」 「さすが、鈴木エイトさん!拉致監禁なんてマインドコントロールされている連中が被害者ヅラした自作自演だろ!」という声が多く聞こえてきそうだ。そう、日本のマスコミもまさしく同じ考えだ。 マスコミで働く人の多くは、拉致監禁問題というのは、教団が霊感商法など世間の批判をかわすため、洗脳をした信者たちに被害者ヅラでアピールをさせている、という「ストーリー」が骨の髄まで染みついている。だから、その「正しいストーリー」から逸脱する、信者が人権侵害にあったとか、信者がこんなにひどい目にあったなんて話は、報道する価値もない「どうでもいい」ことなのだ。 どうでもいいことなので、国連が騒ごうが、アメリカ政府が苦言を呈そうがスルーをするというわけだ』、私はこうした「鈴木エイト」氏の考え方に近い。
・『「どうでもいいことに頑張りますね」マスコミ関係者の嘲笑  なぜそんなことが断言できるのかというと、筆者も最近よくマスコミの知人から「どうでもいい」ということをよく言われるからだ。 実は筆者は「旧統一教会のフロント団体」と呼ばれる国際勝共連合を題材にしたドキュメンタリー「反日と愛国」を制作しており、最近その後編「愛国を信じる人々」を公開した。 「旧統一教会御用達ライター」とか「教団にいくらもらったんだ」とかボロカスに叩かれながらも、なぜこんなことをやっているのかというと、『旧統一教会フロント組織の「潜入ドキュメンタリー」を私が作った理由』の中でも説明したように、「報道がフェアではない」からだ。 あらゆるマスコミ、ジャーナリストの皆さんが「反日カルト」と批判しているわりに、当事者たちの「肉声」はほとんど紹介されていない。被害者救済にあたる弁護士や教団に強い恨みを抱く元信者などがほとんどで、現役信者たちの主張はほぼない。 ネットやSNSで教団を叩いている人たちも、実際に信者の皆さんと会って、討論をした結果、そういう憎しみを抱いているわけではない。鈴木エイト氏など一部のジャーナリストや弁護士の皆さんの「主張」をベースにした報道で憎悪を抱いている。これは、あまりにも一方的だ。 社会全体で叩いて教団を解散に追い込むにしても、当事者たちが今何を思い、何を考えて信仰や政治活動を続けているのかくらい耳を傾ける寛容さがあってもいいはずだ。 ただ、そんな話をすると多くの人から「どうでもいい」と笑われる。意外に思うかもしれないが、特にマスコミ関係者ほどその傾向は顕著だ。 例えば、ある全国紙記者には、筆者が信者たちの声を取材していると言うと「どうでもいいことに頑張りますね」とあきれられた。教団の不正やマインドコントロールを暴くのがジャーナリズムであって、頭のおかしい人たちの話など報道する価値もないというワケだ。 また、ある情報番組ディレクターからは、「信者の主張を報じたらカルトの被害者を増やすのかと敵を増やすので、教団の悪い話や内部のゴタゴタを報じた方がいいですよ」とアドバイスされた。  要するに、「旧統一教会=悪の組織」を叩く方が社会的なニーズもあるし、読者や視聴者の溜飲が下がるので、ビジネス的にそっちの方が美味しいですよ、とおっしゃっているのだ』、「「信者の主張を報じたらカルトの被害者を増やすのかと敵を増やすので、教団の悪い話や内部のゴタゴタを報じた方がいいですよ」とアドバイス」、はもっともだ。
・『都合のいい「ストーリー」以外を黙殺する記者クラブ  そういうマスコミ関係者の話を聞いているうちに、実は彼らが世間一般の人々よりも「ストーリー」に固執していることに気づいた。 「中立公平」とか「客観報道」とか言うわりに、「旧統一教会は反日カルト」「信者はマインドコントロールされているので話を聞いても無駄」という固定概念がビタッと定着していて、そこから1ミリでもズレた話は「どうでもいい」「ボツ!」と報道しない傾向がある。 「そんなのは貴様の勝手な妄想だ」というお叱りをマスコミ関係者から頂戴しそうだが、マスコミの皆さんが都合のいい「ストーリー」以外の話を黙殺するという問題を、わかりやすく示した実例がある。 記者クラブだ。 ご存じない人も多いだろうが、記者クラブとは世界でも珍しい日本独特のシステムで、政治や行政の取材を、特定のメディア企業の記者だけに限定できるというものだ。海外からは「癒着と不正の温床」と批判されてきた。たまに報じられる官僚のセクハラや、記者の過労死はこの閉鎖的な「ムラ社会」が影響している。 なので、ご多分に漏れず、記者クラブを国連も問題視していた。2016年、日本のマスコミを調査した国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏が外国特派員協会で会見を行って、このような苦言を呈して「記者クラブ廃止」の必要性を訴えた。 <もし日本のジャーナリストが独立、団結、自主規制のためのプロフェッショナルなメディア横断組織をもっていたなら、政府の影響力行使に容易に抵抗することができたであろう。しかし、彼らはそうしない。いわゆる「記者クラブ」制度はアクセスと排除を重んじ、フリーランスやオンラインジャーナリズムに害を与えている>  だが、テレビや新聞で「記者クラブ」問題が扱われないことからもわかるように、マスコミはこの問題をスルーしている。なぜかというと「記者クラブは権力の不正を監視する素晴らしい制度」という自分たちの「ストーリー」と矛盾するからだ。 ジャニー氏の性加害も、もともとマスコミが望んでいた「ストーリー」ではない。だから、何十年もみんなで協力をして闇に葬ってきた。BBCという海外メディアが騒いだから渋々やっているだけで、できれば触れてほしくなかった。 ジャニーズという巨大なエンタメで稼ぐマスコミにとっては、この問題は本音を言えば今でも「報道する価値がない」「どうでもいい」ことなのではないか。 【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。 13段落目:旧統一教会から脱会させたいという家族の依頼を受けたキリスト教関係者、被害者救済を掲げる弁護士などが、信者を拉致して、→旧統一教会から脱会させたいという家族が、キリスト教関係者や被害者救済を掲げる弁護士などからアドバイスを受けて信者を拉致して、(2023年8月11日21:35 ダイヤモンド編集部)』、「記者クラブ」批判には同意するが、「ジャニーズという巨大なエンタメで稼ぐマスコミにとっては、この問題は本音を言えば今でも「報道する価値がない」「どうでもいい」ことなのではないか」、これでは「共犯」を認めるようなもので、同意できない。「ジャニーズという巨大なエンタメで稼「いでいたことは事実だが、そのために不都合な事実を無視したのは許されることではない。是々非々で報道すべきことは報道すべきだろう。
タグ:「国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家」が「7月24日から訪日調査を実施。調査は技能実習生やジェンダーに関わる問題など広範囲に及んだ。ジャニーズ元社長の故・ジャニー喜多川氏による性加害問題も対象となった。被害者や事務所代表者に面談するなど、積極的に調査した」、「国連」がわざわざ乗り出したというのは、みっともない限りだが、日本社会が自浄能力を喪失しているのではやむを得ない。 「役者が休演しても代役がすぐに立てられ、興行は休演にならないということが歌舞伎ではよくある。歌舞伎界の役者全体が歌舞伎の継承という理想の下では家族のように芸の継承に協力し、御曹司たちは子どもの頃から歌舞伎座などの劇場で多くの時間を過ごし、所作やセリフ、長唄、義太夫などの音楽にどっぷり浸かった「英才教育」を受けているので、やり遂げてしまうのだ」、 現在、約300人の歌舞伎俳優がいるが、約3分の1をここの卒業生で占める。 ただし、歌舞伎俳優として活躍するためにはそれだけでは不十分だ。いずれかの幹部俳優(旦那)に弟子入りして、芸名をもらう必要がある。また入門後、歌舞伎の世界の礼儀作法やしきたりなどに慣れ、セリフの無い役や立ち廻り、後見や付き人などとして役者修業をする」、「上下関係、絆が生まれ、家族のような運命共同が築かれるが、信頼関係が崩れたときに「破門」となったり、ハラスメントが起こる可能性がある」、なるほど。 どんな「回答」だったのだろう。 私はこうした「鈴木エイト」氏の考え方に近い。 旧統一教会から脱会させたいという家族が、キリスト教関係者や被害者救済を掲げる弁護士などからアドバイスを受けて信者を拉致して、マンションの一室などに閉じ込めて「もうあんな宗教やめます」と宣言をするまで監禁 「「黙殺は人権侵害に加担しているという認識が大きく欠如している。そこを抜本的に転換する必要がある」。人権問題に取り組むNGO「ヒューマンライツ・ナウ」で副理事長を務める伊藤和子弁護士は、そう指摘する」、その通りだ。 「ジャニーズという巨大なエンタメで稼「いでいたことは事実だが、そのために不都合な事実を無視したのは許されることではない。是々非々で報道すべきことは報道すべきだろう。 「「信者の主張を報じたらカルトの被害者を増やすのかと敵を増やすので、教団の悪い話や内部のゴタゴタを報じた方がいいですよ」とアドバイス」、はもっともだ。 「人権状況の改善要請の例としては、独立性が担保された第三者による徹底的な調査や経営陣の刷新を含めたガバナンスの改善を要求するといったことが考えられる。それを契約更新の条件とし、1年後に改善が見られない場合には契約を終了するなど、段階的に取り組むことが望ましい」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 「「こんなもんは被害者ヅラする連中が国連に働きかけて騒いでいるだけで、報道する価値などない」という感じで、完全無視をする」、やはり「共犯」のマスコミには多くを期待できないようだ。 「ジャニー喜多川氏がすでに死去しているので事実確認が難しいというのも免罪符にならない。 「人権侵害があったという告発があった場合には、どのようなものであれ、それを真剣にとらえ、指導原則にのっとった形で適切な調査を行うことが重要」。作業部会のダミロラ・オラウィ議長は会見でそう述べた」、 対応の有無まで明らかにしてくれたのは4社にとどまった(8社の回答詳細は4ページ目に掲載) 東洋経済オンライン「国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ、電通に尋ねた」 「歌舞伎界は、江戸時代の役者の身分制の影響が残る体質の古さが指摘され、それゆえの不祥事がたびたび報じられてきた。「名跡」を持つ役者の嫡男が「御曹司」として「お家芸」を継承し、経験(芸道精進)を経てその名跡も継承していく。そして、その名跡を柱として、門下の役者によって集団が形成され、市川團十郎家の「成田屋」や尾上菊五郎家の「音羽屋」などの屋号で呼ばれる。 「御曹司にはそれが役者として小さいころから経験を積む機会を与え、幼心にもその責任と運命を自覚させる効果を持っている」、なるほど。 「映画もお金を払って観るものだが、テレビ局やスポンサーとのつながりが深かったり、観衆の数が演劇とは圧倒的に違うので、世間の批判には演劇以上に敏感だ」、なるほど。 「記者クラブ」批判には同意するが、「ジャニーズという巨大なエンタメで稼ぐマスコミにとっては、この問題は本音を言えば今でも「報道する価値がない」「どうでもいい」ことなのではないか」、これでは「共犯」を認めるようなもので、同意できない。 「代役」で穴を開けなかったとはさすがだ。 細川 幸一氏による「歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に」 東洋経済オンライン 「歌舞伎界の伝統が世界的にみて特異な演劇スタイルを形成し、家の芸を継承するなかで突然の事態でも代役を務め、観客を魅了する若手スターが登場しているが、一方で世間離れした振る舞いを続けていると、「コンプライアンス」が叫ばれる今日、歌舞伎界が世間からそっぽを向かれる可能性もある。歌舞伎界の大転換期かもしれない」、同感である。 窪田順生氏による「ジャニーズ性加害問題、「国連が動いたからには…」と期待しても失望が待つ理由」 「戦後は、一般家庭の子として生まれても歌舞伎俳優になれる制度も作られた。国立劇場などを運営する独立行政法人日本芸術文化振興会の国立劇場伝統芸能伝承者養成所だ。歌舞伎俳優養成コースがあり、1970年に始まった。応募資格は中学校卒業以上23歳までの男子で、研修期間は2年間だ。受講料無料、宿舎の貸与や補助もある。 「取引停止は、問題が発生した企業を孤立させ、人権侵害の被害をかえって深刻化させる可能性があるからだ。あくまでも取引関係をテコにして問題解決へ影響力を行使することが、現在、企業の人権対応では求められている」、 猿之助率いる「澤瀉屋」もそのひとつで、猿之助の名跡は大名跡とされている。 昭和の時代から、歌舞伎界では不倫や隠し子程度のことは問題視されることではなく、特段に珍しいことでもないとされた。ただ世間一般の感覚とはずれがあり、メディアで騒がれることも多い。現在の歌舞伎界を支える名跡の役者も親世代の破天荒な行いを見てきたからであろうか、不倫等に加えて、セクハラやパワハラ等のスキャンダルが報じられることがある」、なるほど。 (その22)(歌舞伎界「世間離れした慣習」でエンタメ界に激震 「猿之助騒動」でスター誕生も映画は公開延期に、国連も調査「ジャニーズ問題」に企業はどう対応? CMスポンサー企業や日テレ 電通に尋ねた、ジャニーズ性加害問題 「国連が動いたからには…」と期待しても失望が待つ理由) ハラスメント
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台湾(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) [世界情勢]

台湾については、本年2月13日に取上げた。今日は、(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか)である。

先ずは、本年2月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究院(SAIS)特別教授 ハル・ブランズ氏とタフツ大学政治学部准教授のマイケル・ベックリー氏による「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66598?page=1
・『中国の台湾進攻はあり得るのか。起きるのであればいつなのか。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授とタフツ大学マイケル・ベックリー准教授による共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)より、一部を紹介しよう――』、「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。
・『中国の台湾への軍事攻撃は成功するのか  2020年9月、人民解放軍は台湾海峡で、この25年間で最も攻撃的な軍事力の誇示を開始した。台湾の防空識別圏への侵入は急増している。中国軍の任務部隊の中には、30機以上の戦闘機と6隻の艦艇を従えて、ほぼ一日おきに海峡を徘徊しているものもある。その多くは、台湾と中国の双方が何十年間にもわたって尊重してきた境界線である「中間線」を突破している。 これらの部隊の中には、パトロール中にフィリピンと台湾の間を航行するアメリカの空母や駆逐艦への攻撃をシミュレートする動きをしたものもある。また、中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆したのだ』、「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。
・『アメリカ・台湾と中国の圧倒的な差  軍事攻撃は成功するだろうか? その答えは、つい最近まで「ノー」であった。 1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている。東海岸は険しい断崖絶壁、西海岸は沖合数キロに広がる干潟で、激しい潮流もある。台湾には侵略してくる軍隊が上陸できるような砂浜さえ十数カ所しかない。アメリカと台湾の戦闘機と海軍の艦隊は、中国軍を決して近寄らせない状態を維持できていたのだ。 ところがそれ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた』、「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。
・『「グアムキラー」の恐るべき実力  一方のアメリカは、この期間を通じて中東のテロリストとの戦いに明け暮れていた。最近ではNATOの東側の陣地を強化するために、ヨーロッパに部隊と武器を投入している。オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内(無給油の戦闘機がガス欠になる前に帰還できる最大飛行距離)にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる。 さらに悪いことに、中国は現在、グアムを攻撃できる爆撃機と弾道ミサイルを保有しており、本土から1000マイル以上離れて移動中の空母を攻撃できる可能性もある。これらの「グアムキラー」と「空母キラー」のミサイルが宣伝通り機能すれば、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事力に損害を与えることができる』、「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる」、なるほど。
・『台湾の圧倒的に不利な状況  台湾には、その遅れを取り戻す準備ができていない。徴兵制からプロフェッショナルによる志願制への移行の一環として、台湾は現役兵力を27万5000人から17万5000人に削減し、徴兵期間を1年間から4カ月へと短縮した。新兵は数週間の基礎訓練しか受けず、予備役の訓練は頻度が少なく内容も不十分だ。 また、台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる。 要するに、中国は1914年のドイツや、1941年の日本のように、軍事面では有利だが有限のチャンスの窓を持っているということだ。台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ』、「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強では到底追いつけないだろう。
・『2030年初頭までが中国のチャンスといえるワケ  台湾とアメリカはこの脅威を本格的に自覚しており、解決しなければならない重要な問題を特定し、それに応じた軍備の再編を始めている。だがアメリカと台湾の国防改革が大きな影響を与え始める現在から2030年代初頭までの間には、中国にもまだチャンスは残されている。 実際のところ、アメリカの巡洋艦、誘導弾を装備した潜水艦、長距離爆撃機の多くが退役する2020年代半ばには、両岸の軍事バランスは一時的に中国にかなり有利になると思われる。 アメリカ軍は実に多くの点で、まだロナルド・レーガンが築いた軍隊なのだ。とりわけアメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない。 だがそれらが退役すれば、アメリカ軍は東アジアに配備される、近代的な海軍火力の基本である垂直発射型ミサイルの発射管の数を数百本も減らすことになる。 一方で、中国はさらに数百の対艦・対地攻撃ミサイル、数十機の長距離爆撃機と水陸両用艦、そして中国本土から台湾の大半または全域を攻撃できるロケット発射システムを稼働させるだろう。 これはいわば「地政学的な時限爆弾」である。2020年代半ばから後半にかけての時期は、敵を倒して修正主義的な欲望を満たす上で、中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる』、「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。
・『台湾進攻は2027年までのどこか   このような動きを見て、中国の退役軍人や国営放送の報道機関では中国共産党に直ちに台湾に侵攻するよう促す声が上がっている。中国国民もそれに同意しているようだ。 国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている。 おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性(レジティマシー)を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した』、「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。
・『「真珠湾攻撃」が中国の手本になる  中国は、台湾を圧迫して降伏させる選択肢をいくつか持っている。たとえば台北が支配しているが中国本土の海岸からわずか数キロしか離れていない沖合の露出した島の一つを奪取することや、海・空の封鎖を行う、あるいは単に誘導ミサイルで台湾を爆撃することなどだ。 だが、これらのオプションはアメリカと台湾に対処するための時間的余裕を与えることになるし、中国側もわざわざそれを与えるつもりはない。 彼らは1990年から91年のペルシャ湾戦争で、サダム・フセインの軍隊がいかに虐殺されたかを目の当たりにした。しかもこの時はペンタゴンが周辺に膨大な数の兵器を数週間で集め、しかも巨大な国際的な同盟を結集させている。 彼らは早い段階、つまり台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ。そのためわれわれは本当に悲惨なシナリオを心配しなければならない』、「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。
・『沖縄に数千発のミサイルが降り注ぐ  最も可能性の高い戦争開始の形は、台湾、沖縄やグアムのアメリカ軍基地、日本を母港とするアメリカの空母打撃群の上に、陸上・空中から発射された中国のミサイル数千発が降り注いで始まる、というものだ。 台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう。 人民解放軍のサイバー部隊は、それと並行してアメリカ本国でもトラブルを起こし、混乱を招いてアメリカ国内の政治紛争を悪化させるために、偽情報キャンペーンを展開することになるだろう。 その一方で、台湾海峡で軍事演習を行っていた中国艦艇の船団が、台湾の浜辺に向かって猛進し、その合間にも大陸にいる数十万の中国軍が、本格攻撃に備えて艦船やヘリコプターに乗り込み始めるだろう。小型の強襲揚陸艦が台湾海峡の民間フェリーの間から現れ、台湾軍が対応する前に重要な港や海岸を奪取しようとする可能性もある』、「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。
・『勝利のためには核の可能性も  中国の奇襲攻撃で前方展開部隊の多くを失ったアメリカ軍が再び台湾に近づくには、数千マイル離れた場所から航空機と軍艦を投入し、ミサイル、スマート機雷、電磁波妨害などをかき分けながら戦わなければならないだろう。 さらにそのような兵力を集結させるには、攻撃的なロシアからNATOの東方側面を守るために配備されているような、他の重要な地域のアセットを引き離してくる必要があるかもしれない。そしてアメリカは一つの大国にしか対処できない軍備だけで二つの核武装した大国に対処するという、実に厳しい安全保障上の課題に直面するかもしれないのだ。 アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない。 「恐ろしい2020年代」は厄介な10年間となりそうだ。なぜなら中国が厄介な地政学的な分岐点――衰退を避けるために大胆に行動することが可能であり、またそうすべき時点――に差しかかっているからだ』、「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。

次に、3月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67914?page=1
・『中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」  台湾有事をめぐる緊張が高まっている。中国の習近平国家主席は台湾統一への意欲を明言しており、武力攻撃の現実味は増している。 仮に有事に発展した場合、台湾は中国の人民解放軍に対抗し、主権を維持することが可能なのだろうか。また、近隣国である日本にどのような影響が及び得るのだろうか。 日本のシンクタンクである笹川平和財団が実施し、日経アジアが報じた戦闘シミュレーションによると、仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測が示された。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した机上戦闘シミュレーションも、同様の傾向を示した。 ただし、どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果が出た。 その内容は海外のニュースメディアにも報じられるところとなった。米軍事分析サイトのソフリプは、CSISの分析を報じ、中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」と述べている。 一方で同記事は、「言うまでもなく、中国は数十発の中距離および中距離・準中距離弾道ミサイルを保有しており、その気になれば日本を簡単に攻撃することができる」とも述べ、改めて中国の脅威を警告している』、「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。
・『日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊員2500人が死傷する  笹川平和財団は1月下旬、4日間を投じ、中国が台湾侵攻を行ったと仮定した机上の戦闘シミュレーションを実施した。元自衛官や日米の学者・研究者など、識者約30名が参加した。シナリオでは2026年、中国が水陸両軍を投じ、台湾に武力攻撃を仕掛けた状況を想定している。 日経アジアは2月下旬、この内容を詳しく報じた。台湾占領という中国の目論見もくろみを阻止することは可能であるとの結論だ。同時に、日米は「軍事的な人員と装備に大きな犠牲が伴う」とも報じられている。 財団によるシミュレーションでは、日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達するとの結果が得られたという。一方でアメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがあるとの結果が示された。 シミュレーションでは核兵器の使用は想定していない。また、米が軍事的関与を強めているフィリピンを含め、ASEAN諸国の対応は検証の対象外とした』、「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。
・『日本は米軍の行動に巻き込まれる  シミュレーションでは中国軍が侵略にあたり司令部を設置するとし、これにアメリカ軍が直ちに対応する状況を描いた。米軍は原子力空母を中核とする空母打撃群およびステルス戦闘機を直ちに出撃させ、台湾周辺に配備する展開が想定された。 これに伴い、軍事基地や民間空港の利用を米軍に認めている日本は、米軍の行動に巻き込まれる展開になるとシミュレーションは想定している。中国は日本の米軍基地に対してミサイル攻撃を実施し、これを受けて日本の首相は国家非常事態を宣言する流れとなる。 国家に存続の危機が生じたと判断されることで、日本はアメリカ軍に対し、沖縄や九州の自衛隊基地や民間空港の使用を許可する展開になるとの想定だ。 さらに日本側は、海上自衛隊の軍艦および航空自衛隊のF-35戦闘機を出撃させ、中国からの攻撃に対抗措置を講じる。シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている。 ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。
・『日米の応戦で、紛争は2週間で終結する  シミュレーションの結末について日経アジアは、「結局のところ中国は、日米の応戦に圧倒されるところとなり、紛争は2週間あまりで終結した」と報じている。 紛争の過程で中国は、相当な犠牲を被るようだ。空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上に及ぶ。 一方で台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷する計算となっている。日米軍も前述のように、合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果が示された。 米ソフリプはシミュレーションの結果に触れ、「台湾の主権維持と引き換えに、日米同盟は高い代償を払うおそれがある」と報じている。 日経アジアによると、笹川平和財団・安全保障研究グループの渡部恒雄上席研究員は「まだ可能なうちに、重大な損失に対する可能な限りの備えを実施すべきである」と警鐘を鳴らす。「中国は情報戦、宇宙開発、サイバー戦争や他の側面でも(シミュレーションの前提より)進歩している可能性がある」との指摘だ』、「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。
・『台湾の国防相「中国による初期の攻撃を撃退できる」  軍事ニュースメディアのユーラシアン・タイムズは「中国による台湾の併合を防ぐことに成功する」とのシミュレーション結果を報じたうえで、ソフリプと同様、「(日米)両国は、兵士と装備の面で高い代償を払うことになる」と指摘している。) 同記事はまた、台湾軍の機能について、「台湾軍の主な目的の一つは、アメリカなどの同盟国が台湾を支援できるよう、中国人民解放軍を2週間食い止めることである」と指摘し、台湾軍単独での防衛に疑問を示した。 一方で台湾の邱国正国防相は、台湾の軍隊の準備態勢が十分に高ければという条件の下、中国による初期の攻撃を撃退できるとの見解を示している。同氏は、中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている』、「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。
・『24のシナリオを分析した米シンクタンク  財団によるシミュレーションはあくまで机上の議論ではあるが、決して絵空事とも言っていられないようだ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した戦闘シミュレーション結果も、この結果とほぼ一致する内容になっている。 CSISはシミュレーションのモデルを構築するにあたり、過去の歴史的な軍事作戦の事例を参考にしたという。例えば中国が台湾上陸を仕掛ける際に用いるであろう上陸艇の立ち回りについては、ノルマンディー上陸作戦や沖縄での戦闘など、歴史上の実際の軍事衝突での事例をデータ化した。 こうしたデータの下、部隊同士が衝突した場合の双方の損失を予測するモデルをあらかじめ構築し、机上で摸擬戦闘ゲームを実施した。政府高官や軍経験者などの経歴を持つプレーヤーが各軍をプレーし、個々の戦闘結果は前述のモデルに基づき、一定のランダム性を交えながらコンピューターが算出した。 24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至ったという』、「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。
・『開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅  各シミュレーションの詳細を見ると、侵攻序盤の展開については、どのシナリオもほぼ同じ動きとなるようだ。台湾にとって悲報となるが、開戦直後のわずか数時間で、台湾の海軍と空軍はほぼ壊滅的な打撃を受けるという。 中国軍は強力なロケット部隊を展開して島国である台湾を包囲し、日米が軍艦やジェット機を島内に配備することを拒む作戦に出る。 こうして時間を稼いだうえで中国側は、数万人規模の中国兵を軍用および民間の上陸艇に乗せて海峡を渡り、海岸堡かいがんほと呼ばれる一時的な上陸拠点を海岸に設置する。安全を確保したこの拠点の後方に、空挺くうてい部隊が次々と舞い降りるという』、それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。
・『中国共産党を待ち受ける紛争後の余波  だがその後、最も起きうる可能性が高いと判断された「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている。 他方、防衛側の損害も計り知れない。台湾の経済は甚大な打撃を受けるほか、米軍の人的および物質的損失により、国際社会におけるアメリカの地位が揺らぐおそれがあるとリポートは指摘している』、「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。
・『日本は、台湾有事と無関係ではいられない  本稿では2つのシミュレーション結果を取り上げたが、互いに独立したシンクタンクが実施したこれらの解析結果は、同一の傾向を示すこととなった。台湾海峡の有事に日米が厳しい態度で臨むことにより、中国は2週間で撤退し、台湾の主権は守られることを示唆している。 同時に、これら2つのシミュレーションは共通して、中国軍の脅威が日米にも多大な損害をもたらすおそれがあることを物語っている。 また、例えば前者のシミュレーションはあくまで、各陣営の現在の兵力、および2026年時点で配備が予想される兵器に基づいている。しかし中国は、西太平洋地域における軍事プレゼンスの拡大を図っており、核戦力の増強も図っている。財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう』、「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう」、その通りだ。

第三に、7月31日付け東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/690050
・『台湾海峡の緊張が高まっている。中国が台湾統一(併合)に向けて武力侵攻する日がくるのか。7月31日発売『週刊東洋経済』の特集「台湾リスク」では、日本企業に迫り来る台湾有事の全シナリオを示した。 7月なかばの3連休。東京・市谷の防衛省近くにあるホテルの一室は、戦時さながらの緊張感に包まれた。「台湾有事」への対応シミュレーションが行われていたのだ。民間シンクタンク「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」が主催し2021年から毎年1回行われている取り組みで、3回目の今年は米国や台湾からも有識者が多数参加した。 今回のシミュレーションでは27年を想定して、中国と台湾の間で発生しうる軍事衝突のシナリオを3つ用意。刻々と変化する事態に、参加した国会議員が「大臣」として判断を下していく設定だ。事務次官クラスの元官僚や将官級の自衛隊OBが補佐役を務める』、興味深そうだ。
・『「事態認定」の難しさ  今年のシミュレーションの想定時期が27年とされたのは、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など防衛3文書に盛り込まれた防衛力整備が実現するタイミングだからだ。同時に中国人民解放軍の創立100年の節目、かつ中国の習近平国家主席が3期目を終える直前でもある。さらなる任期延長を目指す習主席が、レガシーづくりのために台湾統一を急ぐ、という予測は米軍関係者からしきりに発信されている。 シミュレーションで首相役を務めた小野寺五典・衆議院議員(元防衛相)が最も頭を悩ませたのが、「事態認定」の難しさだ。自衛隊が防衛出動するには、政府が「武力攻撃事態(日本への武力攻撃に対して個別的自衛権を行使)」「存立危機事態(密接な関係にある他国、つまり米国への武力攻撃に対して集団的自衛権を行使)」のいずれかに認定する必要がある。) 中国からのサイバー攻撃により日本国内に大規模停電と通信障害が発生し、沖縄県・先島諸島への海底ケーブルが切断されたという想定に際し、防衛省サイドは「武力攻撃予測事態」の認定を要請した。これは「武力攻撃事態」の一歩手前の準備期間で、認定されれば自衛隊による空港・港湾・道路の優先利用や住民避難が可能になる。日本側が有事に備えていることを中国側に示す抑止効果もある。 しかし小野寺「首相」は認定を見送った。 理由の1つは、日本が先に事態をエスカレートさせたと国際社会でみられるのを避けるため。もう1つは、中国にいる日本人に退避の時間をつくるためだ。小野寺氏は昨年も同様の判断を下している。 中国には約10万人の日本人が住んでいる。事態認定はいわば中国を敵国と見なす行為であり、そうなれば中国にいる日本人が危険にさらされるおそれがある。中国の外に脱出するための時間を確保する必要があるというのが小野寺氏の考えだった』、「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。
・『この判断には異議もある。事態が動く中で自衛隊の展開が遅れるからだ。また、多少時間ができたところで、実際に10万人もの在留邦人が逃げ切れる保証はない。 JFSSのシミュレーションに第1回から参加し続けている尾上定正・元空将は「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した。有事の際に、在外邦人保護のため政府のできる役割は限られているのが現実だ」と話す』、「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。
・『中国脱出は現実的に無理  台湾有事に備え台湾駐在員の退避計画を作成した企業はあっても、中国駐在員のそれを用意している日本企業はまずない。「退避計画を作成していることが中国人社員に知られた瞬間に組織が回らなくなるし、中国当局からのバッシングも必至だ」(中国ビジネスに詳しい商社関係者)。) 多くの企業では、いったんは検討してもすぐ「現実的に無理」という結論に至る。せいぜい「駐在員に1年間有効なオープン航空券を渡しておく」という程度のことでお茶を濁しているようだ。 「世界の工場」中国は日本企業にとって重要な生産基盤だ。現在も高水準の投資が続いているが、その位置づけは下がりつつある。国際協力銀行が製造業企業に「今後3年程度の有望な事業展開先国・地域」を聞くアンケート調査では、中国の得票率が長期低落傾向だ。 米中対立に続いて台湾有事という異次元のリスクが浮上した今、中国ビジネスの将来像を描くのは以前よりずっと難しくなってきた。 本当に武力衝突が始まれば、そのダメージは東アジアにとどまらない。半導体産業において、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾企業の存在は圧倒的で台湾勢のシェアは先端品では9割に及ぶ。米国のヘインズ国家情報長官は5月に上院軍事委員会で、「台湾の半導体供給が止まれば、世界経済は年間6000億〜1兆ドル以上の打撃を受ける可能性がある」と証言した。 日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ。中国を含む東アジア全域に張り巡らせてきたサプライチェーンが破壊されることの打撃は計り知れない』、「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。
・『米軍が緊張感を演出している面も  米国発の議論をそのまま受け取る必要はない。装備体系の更新を急ぎたい米軍が、「台湾有事が27年に迫っている」という緊張感を演出している面もあるからだ。 前防衛大学校長で6月まで米スタンフォード大学に滞在していた国分良成・慶応大学名誉教授は、最近の講演会で「米国で台湾有事の議論を主導しているのは、ワシントンにいる安全保障系の戦略家たちばかりだ。中国や台湾の内情を踏まえた分析はあまり見られない」と話した。 確率論や常識では考えにくいが、ひとたび実現すれば壊滅的な被害をもたらすリスクを「ブラックスワン」と呼ぶ。日本にとって台湾有事はまさにこれだ。最悪の事態を想定しておくのが安全保障の要諦だが、その論理だけでは社会は回らない。まして企業には個別の判断があって当然だ。自分のビジネスにとっての最適解を見つけるために、バランスよく情報を集め台湾をめぐるファクトを正確に理解しておきたい』、「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。 
タグ:台湾 (その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) PRESIDENT ONLINE ハル・ブランズ マイケル・ベックリー氏 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」 共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社) 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。 「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。 「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。 「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる 「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強 では到底追いつけないだろう。 「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。 「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、 「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。201 7年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。 「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。 「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。 「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、 「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。 青葉 やまと 「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」 「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。 「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。 「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。 「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。 「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。 「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。 それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。 「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。 「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦 略的な準備が求められよう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」 興味深そうだ。 「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。 「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。 「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。 「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。
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大学(その12)(10兆円大学ファンドの「素人丸出し運用」に呆れる、警察上層部カンカン! 日大アメフト部薬物問題を仕切る元検事・澤田康広副学長の嘘八百) [社会]

大学については、本年5月11日に取上げた。今日は、(その12)(10兆円大学ファンドの「素人丸出し運用」に呆れる、警察上層部カンカン! 日大アメフト部薬物問題を仕切る元検事・澤田康広副学長の嘘八百)である。

先ずは、7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「10兆円大学ファンドの「素人丸出し運用」に呆れる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325960
・『資産10兆円規模の「大学ファンド」が2022年度の運用実績で604億円の赤字を出したという。運用結果が時に赤字になるのは仕方ないが、大学ファンドの「素人丸出し」の運用方針には憤りを感じるとともに、呆れてしまった』、興味深そうだ。
・『10兆円の「大学ファンド」 運用実績が604億円の赤字に  科学技術振興機構(JST)は7月7日に資産規模10兆円の通称「大学ファンド」の2022年度の運用実績を発表した。604億円の赤字だという。率に直すとマイナス0.6%だ。損益計算書上の当期利益は742億円だが、23年3月末時点での含み損が1259億円に上った。 運用なので、結果が時にマイナスになる事態が生じるのは仕方がない。しかし、運用の中身を検討すると、「10兆円も抱え込んで、一体この人たちは何をするつもりなのか?」と憤りを感じた。 「素人丸出し」と言っては申し訳ないが、同ファンドは運用に対する根本的な考え方を変えた方がいい。 ちなみに、同日に発表された日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の22年度の運用成績は、約2.9兆円の黒字で、運用資産はざっと200兆円あるので率にして1.5%のプラスだった。) さて、昨年度の運用を振り返る以前に、大学ファンドという構想自体に幾つか論点がある。 まず、国として教育に全力で投資することは結構なことだろう。日本の教育に対する対国内総生産(GDP)比の公的支出は他の経済協力開発機構(OECD)加盟諸国と比較して下位であるし、特に高等教育レベルへの支出は極端に小さい(19年で0.5%だ。米国で0.9%、ドイツで1.0%である)。 思うに、日本の国力を維持・強化するためには、教育に極端に傾斜した投資を国として行う以外に方法がない。10兆円が、ファンドでなく毎年の支出になれば、長期的には、防衛費支出の倍増よりもはるかに効果的な国防にさえなるのではないかと想像するのだが、さすがにそうもいかない。 では、規模を縮小して10兆円のファンドからの運用益を、例えば年間に3000億円、4000億円(それぞれ、運用利回りを3%、4%と想定)と想定し、これを戦略的に使おうという話はぐっと現実的になる。そして、その主な対象が「国際卓越研究大学(認定校の審査中)」に絞られることに異存はない。今や、多くの分野で「世界トップレベルの学問は海外で学んでください」とばかりに、研究と研究者の養成が海外の大学院にアウトソーシングされつつある。これは、国家として危機的な状況だ。 こうした戦略的な教育投資を国として行おうとする場合に、毎年の予算審議から切り離した別の財源を確保しておきたいという「大人の事情」は分からなくもない』、「戦略的な教育投資を国として行おうとする場合に、毎年の予算審議から切り離した別の財源を確保しておきたいという「大人の事情」は分からなくもない」、その通りだ。
・『本来「基金」の必要はない 民間の方が「よくできる」のでは?  ただし、経済的な合理性を考えると、「10兆円」を国民から召し上げて国が抱え込んで投資するのが最適だとは言い難い。例えば、「毎年3000億円、トップレベルの大学に助成する」と決めておいて、民間経済一般からその財源を調達する方法と比較した場合に、この「10兆円」はどこにあるのが効率的か? 10兆円分の資産運用が、国の手の中にある状態と、民間によってなされる状態と、どちらが優れているか、と考えてみてほしい。小泉純一郎内閣時代に「民間でできることは、民間で」というキャッチフレーズがあったが、投資は間違いなく「民間でできること」の一つだろう。むしろ「民間の方がよくできること」ではないかとも思われる。 例えば、民間企業の株主として議決権行使するのは、国がいいか、民間がいいか、と考えてみるといい。) また、そこで飯を食っている当事者がいるので大きな声では言いにくいが、ファンドには組織が付随していて、偉い人のいわゆる天下りの受け皿になるとともに職員を抱えるコストが発生している。 が言いたいか。わざわざ「大学ファンド」を作った以上、民間ではできないような運用を行ってこそ、その意味があるということだ』、「ファンドには組織が付随していて、偉い人のいわゆる天下りの受け皿になるとともに職員を抱えるコストが発生している・・・わざわざ「大学ファンド」を作った以上、民間ではできないような運用を行ってこそ、その意味があるということだ」、現実にはそんな意味はない。
・『大学ファンドの「素人丸出し」の運用方針  さて、「日本経済新聞」(7月7日)によると、大学ファンドの運用資産比率は、「グローバル債券」が55%、「グローバル株式」が17%だという。また、記事には「初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた」とある。 筆者は、この記事を見て絶望的な気持ちになった。 グローバル債券、グローバル株式で配分を考えているのは、グローバルに資金を運用している海外の有力大学の資産運用を意識したものだろう。これは良かろう。 しかし、なぜ、(1)債券を55%も持つ必要があり、(2)初年度は財政基盤の安定性を優先する必要があったのか、が意味不明だ。 同ファンドの22年「業務概況書」には、「運用元本の約9割が財政融資資金からの借り入れであり、自己資本比率が低い財務構造であることから、財政融資資金の償還や国際卓越研究大学等への長期的・安定的な助成に影響が出ないよう、リスクを低めにコントロールしたためです」との説明がある。 時によって変化するが外国債券は株式の半分くらいのリスクがあり、どのくらい安全運転になっているのかとも思うが、リスクに対する期待リターンの効率が致命的に悪い。最初から無駄なく運用して、資本が足りなくなりそうなら政府と話を付けるのがファンドのトップの役割だ。それにしても、一定のリスクは取っているわけで、その中身の大半がグローバル債券という運用センスには泣ける。 株式への投資比率を小さく抑えたのは、株価は変動が大きく、かつ分かりやすいので、注目を集めるに違いない初回、2回目辺りの運用成績で大きなマイナスを作る可能性を排除したかったためだろう。「気持ち」は分からなくもないが、気持ちで運用方針を左右していいのは、素人の世界までだ。 意思決定として見たときに、数カ月といえども機会損失は問題だ。基本ポートフォリオを作っているはずだから、その状態を速やかに達成すべきだった。 債券の55%と株式の17%を足しても100%に大幅に足りず、その他の資産構成がオルタナティブ投資0.6%、短期資産(預金等)27.6%となっているのは、基本ポートフォリオに沿った資産構成割合を10年以内のなるべく早期に実現するという方針であり、その途中であるためだ。しかしこの状態にあって既に55%もグローバル債券(主に外国債券)を持っている状態が、相当におかしい。資産運用の主旨は、適切にリスクを取ってリスクプレミアムを効率良く獲得することにある。) 主なリスクが為替リスクと金利変動になる外国債券に大きく傾斜した資産配分を作ったのは、いかなる理由に基づくものか理解しにくい。素人並みの「インカムゲイン狙い」ではないのか。 上昇しつつあった先進国の債券の利回りが魅力的に見えたのかもしれない。ところが、利回りは不幸にも「上昇しつつあった」ので、円安の環境にもかかわらず含み損が発生したのが、おおよその経緯だろう。どこかの地方銀行の有価証券運用のようだ』、「主なリスクが為替リスクと金利変動になる外国債券に大きく傾斜した資産配分を作ったのは・・・素人並みの「インカムゲイン狙い」ではないのか」、「上昇しつつあった先進国の債券の利回りが魅力的に見えたのかもしれない。ところが、利回りは不幸にも「上昇しつつあった」ので、円安の環境にもかかわらず含み損が発生」、「どこかの地方銀行の有価証券運用のようだ」、恥ずかしい限りだ。
・『日本の金融界でインカムゲインは「カモを釣る餌」  近年の円安気味な為替レートの推移に慣れていると、金利の高い国の外国債券の利回りが円ベースでも獲得可能に思えるのかもしれない。しかし、金利と為替の市場は原理的にはセットで動いており、見かけ上高い外貨の名目金利を円ベースでも高めの期待リターンだと見ることは危険だ。外国債券は長期的に「為替リスクがあるのに、期待リターンが高いとはいえないアセットクラス」である可能性が大きい。 今後、先進各国の利上げが終了すると、債券利回りが低下する(債券価格が上昇する)時期を迎える楽しみがあるが、同時にその環境は為替レートが円高に振れやすい状況でもある。「グローバル債券」は、気苦労の割にもうからないのではないか。同情を交えつつ忠告しておく。 推察するに、グローバル債券のインカムゲインが助成と組織運営の費用を賄う上で魅力的に見えたのではないか。ファンドの会計ルール上は、債券のクーポン収入や株式の配当は実現益の一部として「運用益」にカウントされて、債券・株式の価格下落があった場合は「含み損」として繰り越されるのだろう。売却益が出るかどうかは不確実だから、確実なインカム収入がほしい。いかにも愚鈍な素人が考えそうな運用方針だ。 過去を振り返ると、かつての生命保険会社の運用における「直利志向」を代表として、インカムゲインに対する過剰評価はプロ、アマを問わず日本の資産運用をゆがめてきた。個人投資家は「毎月分配型投資信託」のばかばかしさを思い出すといいし、機関投資家が個人よりも立派かというと、そうでもなかった。はっきり言うと、日本の金融の世界では「インカムゲインは、カモを釣る餌」なのだ。 為替リスクなしで安定的に稼げる円の金利が低いことは、半ば素人同然と思える大学ファンドの運用にはまことに気の毒なことだ。しかし、せっかく新しい資金を運用するのだから、会計ルールも含めて検討する必要があるかもしれないが、せめてインカムゲインにこだわるようなことのない、合理的な運用方針で運営できないものか』、「せっかく新しい資金を運用するのだから、会計ルールも含めて検討する必要があるかもしれないが、せめてインカムゲインにこだわるようなことのない、合理的な運用方針で運営できないものか」、その通りだ。
・『大学ファンドが本来やるべきは「リスクは大きく、組織は小さく」  国によって運営される大学ファンドにできて、民間にはできない運用は何だろうか? 本来、そのような運用をするのでなければ公的ファンドの意味がないことは、前述の通りだ。 極的には、民間にできないような運用なるものは存在しないかもしれないのだが、あえて言うなら、「10兆円で目一杯リスクを取って、損が出ても平然としている」リスク負担能力を発揮するなら、公的なファンドとして存在する意義があるかもしれない。 再び推察するに、グローバル債券とグローバル株式で運用を始めた人たちは、おそらく「オルタナティブ投資」にそこそこの資産を振り向けるつもりなのではないか。たぶん、資産の10%くらいを振り向けることを企んでいるのではないだろうか。実際、前出の「業務概況書」に描かれた、大学ファンドの基本ポートフォリオのイメージ図には、円グラフに十数パーセントほどの大きさで「オルタナティブ」と記されている。あくまでイメージであり、「実際の割合とは異なります」とあるが、「近からずとも遠からず」といったところだろう。 一口にオルタナティブ投資と言っても、インフラ投資やプライベートエクイティ投資からヘッジファンド、商品ファンドまで範囲が広いが、「相場(主に株価)の変動にかかわらず利益が追求できるとの建前がある」「時価評価されにくいので気が楽」「実質手数料が高いので、運用業者が丁寧にアプローチして来て気分がいい」といった心理的(で下らない)メリットが運用部隊にはある。 また、オルタナティブ運用を仕事にすることによって、それなりの人数のスタッフを抱える理由にもなる。 実は「オルタナティブも、カモの元」なのだが、すぐには立ち上がらないだろうから今は大目に見よう。オルタナティブ投資やキャッシュポジションその他の部分の上限を10%と見積もって、それ以外の部分のポートフォリオの完成を急ぐべきだ。 例えば「90%をグローバル株式」に投資するのはどうか。手段はインデックス運用100%でいい。 「9兆円も株式を持つのは怖い。大きな損が出たときの責任が持てない」というなら、そもそも10兆円が分不相応なのだ。5兆円なり、3兆円なり、枕を高くして眠ることができる金額にファンドを減額してもらえばいい。投資として無駄な資産を抱えてインカムゲインの中から助成金を出しつつ諸経費を賄おうなどという、非効率的で卑しいお金の持ち方をする必要は全くない。) ついでに言うと、ファンドが10兆円だろうと20兆円だろうと、公的年金基金のような大がかりな組織を持つ必要はない。日銀の上場投資信託(ETF)保有はもっと巨額だが、その管理のためだけに数十人単位の専門の組織があるとは聞いていない。期待値としてうまくいかなくて確実に手数料が高いのだから、アクティブ運用は必要ない。他の機関投資家でもうまくいっていない。 研究する価値があるとすれば、インデックス運用自体の改善だろう(現時点で、決して絶対的にベストなものではない。相対的にマシなだけだ)。運用資産のリスクは大きくても、運用の組織は小さくていい』、「オルタナティブ投資やキャッシュポジションその他の部分の上限を10%と見積もって、それ以外の部分のポートフォリオの完成を急ぐべきだ。 例えば「90%をグローバル株式」に投資するのはどうか。手段はインデックス運用100%でいい」、「運用資産のリスクは大きくても、運用の組織は小さくていい」、なるほど。
・『堂々とリスクを取りダメなら補填せよ  大学への助成は早い方がいいし、金額が大きい方がいいし、金額は安定している方がいいだろう。毎年3000億円、4000億円、と言いたいところだが、例えば「毎年2000億円助成する」と決めたらいい。利益が出たらその中から助成するなどという中途半端な姿勢は、国益に沿わない。 例えば、資産の90%をグローバル株式に投じて運用すると、「長い目で見た平均としては」年率2%(10兆円に対して、毎年2000億円)よりも高い運用利回りが期待できよう(そう思っているからこその大学ファンドなのだろうし)。短期的な変動は気にせずに、毎年2000億円をファンドから助成したらいい。 そのうちに、ファンドの資産額は10兆円を超えて成長していくことが期待できる。これが一つの場合であり、最もありそうなケースだ。 しかし、そうならない場合もあるだろう。例えば、世界の株価が2~3割下落して、資産が10兆円を大きく割り込むような事態があるかもしれない。そうした場合は、国家財政から補填する仕組み(多年度に分割してもいい)を作っておくことだ。ファンドの幹部がなすべき最大の仕事は、この仕組み作りだといっていい。 不運にして何度かの補填があった場合も、ファンドの職員は恥じる必要がない。あなた方が動じないでリスクを取り続けて大学に助成を続けたことが、大いに日本のためになっているのだから胸を張ったらいい。ケチな財政から有効なお金を引っ張ってくれたことに対して、物の分かる国民は感謝するはずだ。 やがて、ファンドは10兆円を大きく超えて育ち、過去の補填は「あの時は、世間が騒いで大変だったのだよ」という思い出話になるはずだ。 このとき、大学ファンドを評価する際のベンチマークは「全世界株式のインデックス」一本にするのがいいかもしれない。つみたてNISA(少額投資非課税制度)で全世界株式のインデックスファンドを持っている個人投資家がたくさんいるから、世間に理解者が多い。さて、大学ファンドは、果たして個人投資家の運用成績に勝てるだろうか。 現実の大学ファンドには「55%グローバル債券」などというあほうな方針をさっさと放棄して、10兆円を「直ちに」フル活用してもらいたい。国民に無駄な機会費用を払わせるな。 付け加えるが、運用に無駄があることの理由(言い訳)を制度に求めないでほしい。作りたての組織なのだから、運用にとって非合理的な仕組みは(例えば助成の原資のルール)、仕組みの方を修正すべきだし、そうしないとすれば、初期のメンバーの責任であり、この責任は重い。 「目を覚ませ、大学ファンド!」』、「大学ファンドを評価する際のベンチマークは「全世界株式のインデックス」一本にするのがいいかもしれない」、「現実の大学ファンドには「55%グローバル債券」などというあほうな方針をさっさと放棄して、10兆円を「直ちに」フル活用してもらいたい。国民に無駄な機会費用を払わせるな」、「「目を覚ませ、大学ファンド!」、同感である。

次に、8月10日付け日刊ゲンダイ「警察上層部カンカン! 日大アメフト部薬物問題を仕切る元検事・澤田康広副学長の嘘八百」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/327343
・『日大アメフト部の薬物汚染事件が思わぬ広がりを見せている。8日に林真理子理事長らと会見した競技スポーツ部担当の澤田康広副学長が横柄な態度で大炎上。世論の反発を買い、警察の虎の尾を踏み、内閣支持率下落に悶絶している岸田官邸にロックオンされたもようだ。この男、一体何者なのか。 135分に及んだ会見の主役は元検事の澤田氏だった。東京地検総務部副部長などを経て、宇都宮地検次席検事だった2018年3月末に退官。翌4月に日大法学部教授に転じ、20年4月から危機管理学部非常勤講師も務めている。 アメフト部の寮で見つかった乾燥大麻と覚醒剤成分を含む錠剤の説明で「パケ」「ブツ」「植物細片」などの専門用語を多用し、終始イラ立った口調でぬるい釈明を展開。日大側による所持品検査で薬物を発見してから警視庁に報告するまでの「空白の12日間」について、「警察から『大麻所持などの犯罪を認めた場合、自首をさせてほしい』と言われた」と強弁していた。 「当時の宇都宮地検は不祥事を抱えてはいましたが、地検の次席検事で退職するのは珍しい」(司法関係者)) 背任事件の流れで「日大のドン」と呼ばれた田中英寿前理事長らが去り、林体制となった昨年7月、澤田氏は副学長に就いた。 「各学部が提出した推薦者リストをもとに執行部が澤田氏を選定した。検事のノリが抜けないのか運動部に対して高圧的で、現場とずいぶん衝突していましたが、会見では矢面に立っていて感心した」(日大関係者) ところが、である。警視庁側は澤田氏らの主張を真っ向否定。時事通信によると、日大側が相談したのは薬物捜査に携わらない日大OBの警官で、警視庁幹部は「(自首させてほしいと)言うわけがない」と話したという』、「宇都宮地検次席検事だった2018年3月末に退官。翌4月に日大法学部教授に転じ、20年4月から危機管理学部非常勤講師も務めている」、卒業は日大法学部。記者会見では落ち着き払って取り仕切っていたが、後ろでみるように問題も多いようだ。
・『官邸も注視、木原疑惑の“犠牲”に  元東京地検公安部長の若狭勝弁護士はこう言う。 「副学長が会見で強調したように、逮捕された部員が所持していた乾燥大麻は0.019グラム。大麻所持の起訴の目安は0.5グラムです。覚醒剤については『おまけでもらった』との供述が報じられたのもポイント。白い粉末状であれば疑いを持ちやすいですが、錠剤はサプリメントに見えなくもなく、本人が認識せずに持っていた可能性は否定できない。いずれにせよ起訴は厳しい。日大側は部員や保護者からの訴訟リスクを恐れ、通報を躊躇したのではないか」) 澤田氏が薬物を保管した「空白の12日間」も波紋を広げている。薬物所持のほか、犯人隠避、証拠隠滅が疑われるからだ。 「警察に責任転嫁した発言に警視庁上層部はカンカン。官邸も飛びついて、徹底的にやれと檄を飛ばしたようです。澤田氏が告発されようものなら、身柄を取れる事案。澤田問題がはじければ、木原官房副長官をめぐる一連の問題が吹き飛びますから」(官邸事情通) 判断ミスの余波は計り知れない』、「澤田氏が薬物を保管した「空白の12日間」も波紋を広げている。薬物所持のほか、犯人隠避、証拠隠滅が疑われるからだ」、「「警察に責任転嫁した発言に警視庁上層部はカンカン」、「澤田氏が告発されようものなら、身柄を取れる事案・・・判断ミスの余波は計り知れない」、今後の展開が楽しみだ。
タグ:(その12)(10兆円大学ファンドの「素人丸出し運用」に呆れる、警察上層部カンカン! 日大アメフト部薬物問題を仕切る元検事・澤田康広副学長の嘘八百) 大学 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「10兆円大学ファンドの「素人丸出し運用」に呆れる」 「戦略的な教育投資を国として行おうとする場合に、毎年の予算審議から切り離した別の財源を確保しておきたいという「大人の事情」は分からなくもない」、その通りだ。 「ファンドには組織が付随していて、偉い人のいわゆる天下りの受け皿になるとともに職員を抱えるコストが発生している・・・わざわざ「大学ファンド」を作った以上、民間ではできないような運用を行ってこそ、その意味があるということだ」、現実にはそんな意味はない。 「主なリスクが為替リスクと金利変動になる外国債券に大きく傾斜した資産配分を作ったのは・・・素人並みの「インカムゲイン狙い」ではないのか」、「上昇しつつあった先進国の債券の利回りが魅力的に見えたのかもしれない。ところが、利回りは不幸にも「上昇しつつあった」ので、円安の環境にもかかわらず含み損が発生」、「どこかの地方銀行の有価証券運用のようだ」、恥ずかしい限りだ。 「せっかく新しい資金を運用するのだから、会計ルールも含めて検討する必要があるかもしれないが、せめてインカムゲインにこだわるようなことのない、合理的な運用方針で運営できないものか」、その通りだ。 「オルタナティブ投資やキャッシュポジションその他の部分の上限を10%と見積もって、それ以外の部分のポートフォリオの完成を急ぐべきだ。 例えば「90%をグローバル株式」に投資するのはどうか。手段はインデックス運用100%でいい」、「運用資産のリスクは大きくても、運用の組織は小さくていい」、なるほど。 「大学ファンドを評価する際のベンチマークは「全世界株式のインデックス」一本にするのがいいかもしれない」、「現実の大学ファンドには「55%グローバル債券」などというあほうな方針をさっさと放棄して、10兆円を「直ちに」フル活用してもらいたい。国民に無駄な機会費用を払わせるな」、「「目を覚ませ、大学ファンド!」、同感である。 日刊ゲンダイ「警察上層部カンカン! 日大アメフト部薬物問題を仕切る元検事・澤田康広副学長の嘘八百」 「宇都宮地検次席検事だった2018年3月末に退官。翌4月に日大法学部教授に転じ、20年4月から危機管理学部非常勤講師も務めている」、卒業は日大法学部。記者会見では落ち着き払って取り仕切っていたが、後ろでみるように問題も多いようだ。 「澤田氏が薬物を保管した「空白の12日間」も波紋を広げている。薬物所持のほか、犯人隠避、証拠隠滅が疑われるからだ」、「「警察に責任転嫁した発言に警視庁上層部はカンカン」、「澤田氏が告発されようものなら、身柄を取れる事案・・・判断ミスの余波は計り知れない」、今後の展開が楽しみだ。
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中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) [世界情勢]

中国国内政治については、昨年2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?)である。

先ずは、昨年3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。
・『集団指導体制を廃止したツケ  だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論  習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。) こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力  いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。) 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。

次に、7月16日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナリストの林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」を紹介しよう。
・『李強首相がビジネスチャーター便を利用した意味  6月18日、中国国務院総理の李強はドイツを訪問した。国務院総理になって、初めての公式な外国訪問だったが、李強が乗っていたのは政府専用機ではなく、ビジネスチャーター機だった。 新華社はわざわざ「国務院総理の李強はビジネスチャーター機を使って北京を離れた。ドイツ総理ショルツとフランス政府の招きを受けて、ドイツとフランスを公式訪問する(中略)」と報じた。 2013年5月27日、当時の総理の李克強がドイツ訪問を終え、大きな成果を挙げて政府専用機で帰国したと中央テレビ網が報じた。違いは鮮明だ。現任の李強国務院総理はビジネスチャーター機を使い、前の総理の李克強は政府専用機だった。中国においてこれは意味が大きく違う。 中国語で「専機」(ジュアンジー)は政府専用機を指し、「包機」(バオジー)はビジネスチャーター機を意味する。字面の通り、政府専用機とビジネスチャーター機の待遇の違いは鮮明だ。 2012年12月4日に「中共中央八項規定(中共中央の八項目の規約)」を審議し、決議された。「中共中央総書記、国務院総理が訪問をするとき、政府専用機を使用する。ほかの中央政治局常務委員が訪問する際は、必要に応じてビジネスチャーター機あるいは定期便を使うべき」と規定した。 これに従うと、李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた』、「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。
・『習近平の子分のようにしか見えない  香港のメディア「星島網」は「ビジネスチャーター機を使って外遊するのは李強が自ら選んだのであろう。その目的は(自分が中国のリーダーで二番目と言うより)、他の常務委員と同じであることを示して、習近平の突出した地位を浮かび上がらせようとしている」と指摘した。 李強のこの行動からもう一つの信号が読み取れる。彼と習近平の関係である。習氏に信頼されているが、恐れと遠慮もかなり強い。 李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう。初外遊にも関わらず、規約に定められた専用機の使用を辞退した。 中国のことわざに「伴君如伴虎(君主に仕えるのは虎に仕える如し)」というものがある。習近平に対する忠誠心だけで任用されたので、常に姿勢を低くしなければならないのだろう。 他の常務委員会メンバーも同じで、すべて、習氏の言う通りにしているように見える。 今年の5月10日に、習近平は、北京から130kmほどの雄安新区を視察した。北京の機能の移転先と位置づける、習肝いりの新区だ。習は訪問に李強を含む3名の政治局常務委員を同行させた。これは中国において極めてまれなことだ。 胡錦涛時代には、国家主席が国務院総理と同時に地方視察した例は、ほぼなかった。安全保障の視点からは、主席と国務院総理は同時に外出してはならない。しかし、習近平は慣例を破った。現場の写真からは、李強は子分のようにしか見えなかった』、「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。
・『「習近平思想を指導する」  李強は着任してまもなく、「国務院工作規則」を修正し、公表した。指導思想からマルクス主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(江沢民の)三つの代表、(胡錦涛の)科学的発展観を全部削除し、「国務院は習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とする」とした。 李強はこうして、習近平とともに国の行政を管理する国務院総理から、単なる習氏の追従者に成り下がった。李強が用心深くビジネスチャーター機を使う心理が理解できる。 7月6日から9日まで、イエレン米財務長官が訪中した際、李強のほかに前の副総理の劉鶴とも会談した。本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している』、「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。

第三に、この続きを、7月21日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナルストの林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/113504?imp=0
・『秦剛の行方  中国の国務委員兼外相の秦剛が、6月25日のロシア外務次官との会談の後、もう1ヵ月近くも動静が途絶えている。外国人記者たちはこれに注目し、7月7日以降、中国外務省の定例の記者会見でたびたび問いただしているが、誤魔化されている。 秦剛外相は、EUの外相にあたるジョセップ・ボレル氏と北京で会談する予定だったが、到着予定の7月5日のわずか2日前になって、中国外務省はEU側に、秦外相は欠席すると伝えた(米メディア『ポリティコ』)。 そのため外国人記者たちは、秦剛に健康問題が生じたのではないかと問いただした。香港のメディアも7月10日、「秦外相が新型コロナウイルスに感染した」と報じた。 誤魔化しきれないと判断したのか、中国外務省は7月11日になって、秦氏が健康上の理由で、インドネシアで行われるアジア地域フォーラム(ARF)などの会議を欠席すると公表した。中国では、国家指導者の健康問題は高度な国家秘密。このように認めたことは極めて例外的な対応だった。 一石が投じられると千層の波が広がる。秦外相にまつわる様々な不穏な話が、中国内外のSNSで取りざたされた。日本のマスコミも取り上げたが、秦外相は香港フェニックステレビの著名な女性ジャーナリストとの不倫関係で調査を受け、動静が途絶えたのではないかと言われたほどだ。 中国のネット上では、裏に政治闘争の匂いをちらつかせるものも、次々と出てきた。 7月13日には、秦剛が6月25日に中央紀律検査委員会の取り調べを受けたと、北京に住むフリーランスの記者、高瑜がツイートした。7月14日には、中国の公安が現れ、秦外相に関するツイッターを削除させられたと、彼女は再びツイートした。 秦外相と不倫関係にある女性のスパイ説や、秦外相自身がアメリカに対して、中国のロケット部隊の秘密を漏洩したことに関して調査されたなどという話も流れた。7月17日には、秦外相が北京の「301病院」(中央軍事委員会が管理する幹部用病院)で死亡したという情報まで飛び出した。 中国では、権力闘争が激しくなると、このような噂が飛び交うものだ。秦外相の失脚を望む人間もいるからだ』、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。
・『水面下で起こる政治闘争  かつて中国外務省の看板スポークスマンと言われた趙立堅。過激な民族主義的発言で「戦狼(せんろう)外交官」(オオカミのように吠える外交官)の代表格と言われた人物であった。しかし秦剛が外相になる直前に降格されて、国境海洋事務局に異動し、その副局長に就任した。 当時、彼の降格人事は、秦剛に嫌われたからだと言われた。趙立堅の妻、湯天如は中国版SNSの「微博」(ウェイボー)で不満をぶちまけ、しばらく微博が更新停止となっていた。しかし今年の7月5日、唐突に、湯天如は「パキスタンのシャリフ総理から花束を贈られた、ありがとう」と、写真とともに「微博」に公開した。 7月10日、つまり中国外務省が秦外相の病気を公にした前日には、彼女は再び、「今天是个好日子(今日はいい日だ)」と「微博」を更新し、夫がスポークスマンだった当時の姿を記録するVTRとともに公開した。 その1時間後には再度、外交官を讃える旗の写真とともに、「皆様の支持に感謝する」とのコメントを公表した。「微博」での「復権」への嬉しさは隠せなかったようだ。 中国外務省では、1年前まで親ロシア派が重視され、勢力が強かった。しかし、2022年6月14日、外務副大臣(外交部副部長)で次期外相とも目された楽玉成が突然、国家ラジオテレビ局の副局長に異動。事実上の降格だった。 それから半年後、趙立堅スポークスマンも更迭された。この一連の動きは、外務省の親米派が絡んでいると見られてきた。そして、その後にアメリカとの関係を重視する駐米大使の秦剛が外相になった。 しかも、彼は弱冠57歳で、駐米中国大使から中央委員、外相、さらには外相兼任でその上の国務委員にまで上りつめた。異例の抜擢だ。外務省内の親米派が完全に勝利したかのように見えた。 楽玉成を始めとした親ロシア派は、面白くなかったろう。秦外相に嫌われたとされる戦狼外交官の趙立堅一家も、今回の秦外相の状況を喜んでいるのではないか。 習近平政権も3期目となり、李克強をはじめとする、いわゆる共青団派は全員、政権外に排除された。代わりに社会主義を固く信じ、民族主義者に映る人たちが台頭している。そのため中国は、現在の国際秩序にむやみに挑戦し、ますます国際社会から乖離している。 秦剛外相にまつわる騒動も、このような中国の情勢と関係がないとは言いきれない。 それにしても、いまだに中国外務省が沈黙を保っているのは不自然だ。1ヵ月近い外相の不在は、政治闘争が起こっているとの憶測を生むだけの十分な空白期間と言えるだろう』、「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、

第四に、8月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際コラムニストの加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」を紹介しよう。
・『日本の政府と企業の間で高まる「反スパイ法」への警戒と懸念  習近平第3次政権が本格始動して5カ月がたとうとしている。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込めるために、3年以上続けてきた「ゼロコロナ」政策が解除された時期とも重なり、中国の“リオープニング”(再開放)に内外から期待がかけられた。 台湾海峡における潜在的衝突、半導体を巡る輸出規制、軍事交流メカニズムの遮断などに象徴される「米中対立」という地政学的構造問題に、日本の官民も必然的に巻き込まれている。そのたびに日中関係は緊張、不安定化し、中国に関わる事業を営む日本企業は、眠れない日々を過ごしているに違いない。 こうした中、日本政府および企業が、「中国との付き合い方」という意味で、足元最も警戒、懸念しているのが、いわゆる「反スパイ法」であろう。今年3月下旬、アステラス製薬現地法人の幹部が北京で拘束された事件(いまだ釈放されていない)は記憶に新しい。 中国政府は2014年11月に「反スパイ法」を公布、即日施行(同時に、1993年に採択された「国家安全法」は廃止)し、それ以来、計17人の邦人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けてきた。 「コロナ禍は終わり、中国に行けるようになったが、行っても大丈夫ですか?」 「国際会議に招待されたが、身の安全のほうが大事だから断ることにした」 「普通のビジネスマンですが、中国で拘束される可能性もあるんですよね?」 「拘束されるリスクに対応するためにどうしたらいいでしょうか?持参しないほうがいいものはありますか?仮に拘束されたらどうすればいいでしょうか?」 特にアステラス製薬幹部の拘束以降、このような質問が筆者の元にも頻繁に寄せられている。この拘束事件が、習近平3期目の本格始動、「ゼロコロナ」解除からのリオープンのタイミングとほぼ重なっており、これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きたこともあり、邦人拘束を巡る法的根拠の一つである「反スパイ法」にますます多くの警戒と懸念が集まっているというのが現状であろう』、「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。
・『「反スパイ法」で押さえるべき10のポイント  実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべきだろう。 中国共産党結党記念日に当たる7月1日に「反スパイ法」の改正版が施行されたのである。新旧両バージョンの原文を熟読、比較したが、今回の改正は、単なる文言の修正ではなく、3期目入りした習近平政権の国家戦略を反映したものだというのが筆者の基本的判断である。以下、今回の改正において、押さえておくべきポイントを端的に示す。その上で、我々はそこからどんな示唆をくみ取るべきかについて若干の分析を試みる』、「実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべき」、なるほど。
・『中国における邦人拘束リスクは高まるのが必至  上の図表で整理したように、旧版と比べて新版「反スパイ法」は明らかに“進化”している。筆者が特に着目するのが4、7、8である。 4に関して、例えば、ある日本人が北朝鮮に対するスパイ行為をしたとして、その行為が、本件における“第三国”である中国の国家安全に危害を与えると、中国の国家安全当局が主観的に解釈した場合には、当事者である日本人が中国の国家安全当局によって拘束・逮捕され、中国の法律によって裁かれ得るということである。) しかも、2で示したように、「解釈権」はますます拡大しており、中国が国益に反すると見なした「不適切な人物」に対しては、総じて「反スパイ法」が適用される可能性が高くなったといえる。 7に関して、中国の組織や個人とコミュニケーションを取っているほとんどの日本人はテンセントが運営するWeChatのアカウントを有し、使用していると察するが、そのやりとりはすべて中国国家安全当局に見られている。より正確に言えば、同当局は、それらのやりとりを把握できる手段を有している。 そして、文字・通話・写真・文書(特に写真と文書は要注意)を含め、それらのやりとりが中国の国家安全に危害を与えると当局に解釈されれば、その当事者は「反スパイ法」に基づいて拘束・逮捕され、実刑判決を受け得るということである。 8に関して、(特に空港における)出入国時に起こり得る事態というのは、「反スパイ法」および邦人拘束を巡る極めて重要な要素であるが、容疑者の出国を巡る規定が従来以上に、かつ具体的に明文化された事実は重い。 中国と事業を展開している企業であれば、中国から追放された当事者がその日から10年間、中国への入国が禁止されるというのは、会社の事業・収益・評判などあらゆる意味で痛手となるに違いない。ただ、筆者が話を聞いている日本を含む各国の関係者は、中国に入国できないよりも、むしろ中国から出国できないリスクを警戒しているようではあるが。 いずれにせよ、日本企業を取り巻く中国の「反スパイ法」関連の動向、事態は刻一刻と深刻化している。と同時に覚えておかなければならないのは、冒頭の米中対立を含め、日中関係が悪化し、中国政府の日本の対日外交に対する不満や不信が高まれば高まるほど、邦人が「反スパイ法」容疑で中国国家安全当局によって拘束・逮捕される可能性が高まるという不都合な真実である。 ある意味、米中対立下における日本の対中外交、およびそれに対する中国政府の“解釈”が鍵を握っているということだ。そして、いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている。 自分の身は自分で守るしかないのだ』、「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
タグ:中国国内政治 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) Newsweek日本版 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、 「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。 「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。 政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。 「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。 「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。 現代ビジネス 林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」 「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。 「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。 「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。 林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」 、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。 「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、 ダイヤモンド・オンライン 加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」 「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。 「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
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核武装・核兵器(その2)(核兵器禁止条約に加入すれば 日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を日本で今すぐ公開するべき理由、原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?) [安全保障]

核武装・核兵器については、昨年6月14日に取上げた。今日は、(その2)(核兵器禁止条約に加入すれば 日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を日本で今すぐ公開するべき理由、原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?)である。

先ずは、昨年6月13日付け東洋経済オンライン「核兵器禁止条約に加入すれば、日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/595600
・『唯一の戦争被爆国である日本にとって核廃絶は悲願だ。しかし2021年に発効し、61カ国が締約した核兵器禁止条約に日本は背を向けている。この6月に核兵器禁止条約の第1回締約国会議、8月には核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が予定され、核廃絶・禁止への関心が高まる中、日本はこのままでいいのか(Qは聞き手の質問、Aは佐野氏の回答)』、興味深そうだ。
・『核兵器禁止条約は日本を守れるか  Q:日本人の多くが、なぜ核兵器禁止条約に参加しないのかと思っているのではないでしょうか。 A:広島・長崎を経験し、核廃絶運動に共鳴してきた日本国民にとって同条約が人類の夢のように映り、加入しないことに義憤を感じる人も多いと思います。それゆえに同条約の正確な姿を伝え、日本がなぜ参加できないのかという疑問に答えようと筆を執りました。 Q:日本は中国とロシア、さらに北朝鮮と、核兵器を持つ国に囲まれています。 A:核武装国に囲まれた東アジアにおける日本の安全保障環境はとても厳しい。そのような状況に対処するのが防衛力であり、日米安全保障条約です。日米安保は米国の「核の傘」という核抑止力がコアになっています。ところが、核兵器禁止条約はその核抑止力を否定します。この条約に日本が入った途端、核の傘がなくなり、日本は「丸腰」の状態になってしまう。隣国の核の恫喝になすすべもなく、極めて危険な状況に陥るのです。日本を守れる代替策がない以上、核兵器禁止条約は、政策オプションにはなりえないのです』、「核兵器禁止条約はその核抑止力を否定します。この条約に日本が入った途端、核の傘がなくなり、日本は「丸腰」の状態になってしまう。隣国の核の恫喝になすすべもなく、極めて危険な状況に陥るのです。日本を守れる代替策がない以上、核兵器禁止条約は、政策オプションにはなりえない」、なるほど。
・『核兵器禁止条約は核抑止力を否定  Q:日本は核兵器国(米、ロ、英、仏、中)と核兵器禁止条約推進派との橋渡し役を果たし、6月の締約国会議にオブザーバーとして出席すべきだとの声があります。 A:「橋渡し」にはそれなりの実力と双方からの厚い信頼が必要です。「言うは易く行うは難し」で、日本にそれができると過信しないほうがよいと思います。核の傘の下にいる日本は、条約推進派とはすでにたもとを分かっており、決して「中間派」ではありません。 また、自国の安全を依存する核抑止を否定する同条約の締約国会議への参加は、基本的には自己矛盾であり、オブザーバーという形であれ慎重であるべきです。 Q:核兵器禁止条約が持つ欠点は何でしょうか。 A:前述のとおり日本が依存する核抑止を否定していること以外にも、何点かあります。 第1に、同条約は安全保障観の転換を求めます。条約推進派は核爆発の影響が国境を超えて地球規模に及ぶことから、「国家の安全保障より人類の安全保障を優先すべきだ」と主張します。しかし、国際社会は主権国家で成り立っており、核兵器から人類の安全を保障する統合的な機関はありません。結局、自国の安全は自らの手で守らざるをえない。ですから人類の安全保障を優先する安全保障観へ転換することは無理なのです。) 第2に、核兵器の禁止と廃絶は別物です。禁止しても核兵器国が乗ってこなければ核廃絶はありえません。実際、核兵器国は乗るどころか激しく反発しており、禁止条約はNPT加盟国間に亀裂をもたらしてしまいました。 第3に、核兵器廃棄の検証過程が中途半端です。核兵器国がこの条約に入っていないうえに、具体的な廃棄の検証に必要なノウハウを締約国は持っていません。米国とロシアは冷戦後、軍縮条約を結び、衛星情報や相互の現地査察などを通じて核解体を検証してきた歴史があります。そうしたノウハウを持たない条約締約国に、どこまで確実な廃棄の検証ができるでしょうか』、「核の傘の下にいる日本は、条約推進派とはすでにたもとを分かっており、決して「中間派」ではありません。 また、自国の安全を依存する核抑止を否定する同条約の締約国会議への参加は、基本的には自己矛盾であり、オブザーバーという形であれ慎重であるべきです」、「核兵器禁止条約が持つ欠点」としては、「第1に「核兵器から人類の安全を保障する統合的な機関はありません。結局、自国の安全は自らの手で守らざるをえない。ですから人類の安全保障を優先する安全保障観へ転換することは無理」、「第2に、核兵器の禁止と廃絶は別物です。禁止しても核兵器国が乗ってこなければ核廃絶はありえません」、「第3に、核兵器廃棄の検証過程が中途半端です。核兵器国がこの条約に入っていないうえに、具体的な廃棄の検証に必要なノウハウを締約国は持っていません」、なるほど。
・『核廃絶への王道はNPT  Q:現在の日本にとって、北朝鮮の核兵器が脅威となっています。 A:核兵器禁止条約の成立を推進し、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長は、北朝鮮の脅威に対し核抑止が必要ならば、北朝鮮にとっても核兵器国の米国の脅威があるから自国を守るために核が必要だということになり、核兵器国がやっていることを他人にさせないという主張は通らない、と述べています。しかし、これには無理があります。 まず、核抑止力を認めることは北朝鮮の核保有を承認することではありません。北朝鮮の核保有が認められないのは、北朝鮮が法的な核不拡散義務を負っているにもかかわらず、それに違反しているからです。 03年に北朝鮮がNPTからの脱退を宣言して以降、北朝鮮がNPT加盟国かどうかについて解釈が分かれています。脱退は認められないとする立場からは、北朝鮮はNPT上の非核兵器国であり核不拡散の義務を負っています。他方で北朝鮮は国連の加盟国であり、安全保障理事会での数回にわたる北朝鮮に対する決議がありました。それゆえ、もはやNPT加盟国ではないとする立場からも、法的拘束力を持つ安保理決議に北朝鮮が違反しているがゆえに核保有は認められないのです。 Q:「自分がやっていることを他人にさせないという主張は通らない」という部分については? A:その主張は「通る」のです。核が拡散しないように、あえて5カ国の「核クラブ」による独占を認め、核兵器国に特別の地位を与えたのがNPTだからです。 NPTが成立したのは、各国が主権平等の原則を犠牲にしてまで核の拡散を防ごうとした「知恵」だったのです。それゆえに、自分がやっている核の保有を他人にさせないという核兵器国の主張は「通る」のです。 Q:北朝鮮の核開発や、最近ではロシアのプーチン大統領によるウクライナに対する「核使用」の可能性発言に影響を受け、日本の一部では「核武装論」が出ています。 A:核武装は論外です。過去半世紀にわたり、曲がりなりにも核の拡散を最小限に抑え、核廃絶へのベクトルを失わず、核秩序の礎となってきたのがNPTです。わが国が核武装をすれば、核軍縮・核不拡散に率先して努力してきた日本が、隣国を含む、世界的な核武装のドミノ現象を誘発してしまうでしょう。それは、1962年のキューバ危機の際、ケネディ米大統領が恐れた「核のカオス(混沌)」への引き金を日本自らが引いてしまうことを意味するのです』、「NPTが成立したのは、各国が主権平等の原則を犠牲にしてまで核の拡散を防ごうとした「知恵」だったのです。それゆえに、自分がやっている核の保有を他人にさせないという核兵器国の主張は「通る」のです」、「わが国が核武装をすれば、核軍縮・核不拡散に率先して努力してきた日本が、隣国を含む、世界的な核武装のドミノ現象を誘発してしまうでしょう。それは、1962年のキューバ危機の際、ケネディ米大統領が恐れた「核のカオス(混沌)」への引き金を日本自らが引いてしまうことを意味する」、「核武装は論外です」、なるほど。

次に、本年7月26日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を日本で今すぐ公開するべき理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/07/post-1319_1.php
・『<原爆開発をテーマにしたこの作品を、被爆国日本は当事者として評価する権利がある> 現在、世界で最も注目されている映画監督の1人、クリストファー・ノーラン監督(『ダークナイト』『インターステラー』)の最新作『オッペンハイマー』がアメリカで公開されました。7月21~23日という、最初の週末の興行収入は8250万ドル(約117億円)と、科学者の伝記映画としては例外的なヒットとなっています。 内容は、アメリカ陸軍による原子爆弾開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーを務めた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描くものですが、単に原爆開発のストーリーだけでなく、非常に複雑な構成が取られています。主人公の半生に加えて、後に「赤狩り」の犠牲者として追及を受けた尋問の様子、さらに彼を陥れた黒幕に対する議会の審議という3つの時間軸がモザイクのように散りばめられ、それぞれが緊張感のある対話劇になっているのです。 ちなみに、主人公を演じたキリアン・マーフィー、その夫人を演じたエミリー・ブラント、さらには陸軍のグローブス中将を演じたマット・デイモン、主人公を陥れようとしたストラウス(後の商務長官)を演じたロバート・ダウニー・ジュニアの4名の演技は、おそらく彼らのキャリアの頂点とも言うべきクオリティです。 ですが、作品として「マンハッタン・プロジェクト」を中心に据え、特に試作された核弾頭「トリニティ」の臨界実験を映像的なクライマックスに据えているのは事実です。ですから、被爆国である日本の人々には、当事者として、この作品を評価する権利があると思います。具体的には次の3点、重要な論点があります』、「原子爆弾開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーを務めた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描くものですが、単に原爆開発のストーリーだけでなく、非常に複雑な構成が取られています。主人公の半生に加えて、後に「赤狩り」の犠牲者として追及を受けた尋問の様子、さらに彼を陥れた黒幕に対する議会の審議という3つの時間軸がモザイクのように散りばめられ、それぞれが緊張感のある対話劇になっているのです」、「被爆国である日本の人々には、当事者として、この作品を評価する権利があると思います」、当然だろう。
・『臨界実験の描写のインパクト  1つは、原爆開発の倫理的責任の描き方です。作品の中では「ナチスが原爆で先行することを防ぐ」というのが主要な動機だとされています。また、降伏寸前の日本に投下して非戦闘員の大量殺戮を行うべきではないという表現もあります。その一方で、軍部、特にスチムソン陸軍長官や、トルーマン大統領は投下に積極的だったという描写がされています。作品の全体としては高いレベルの歴史的考証がされているというのですが、被爆国の立場から見て十分に正確で誠実な描写であるかは、検証が必要と思います。 特に試作弾頭「トリニティ」の臨界実験の描写は、凝りに凝ったCGと音響で圧倒的なインパクトがあります。それが、原爆の恐怖の表現として成功しているのか、それとも「開発成功の勝利感」と取られかねない表現になっているのかも、厳しい検証が求められます。なお、アメリカの配給会社は、この「火球の映像」をマーケティングに使っていますが、少なくとも、このことには被爆国として抗議の声を挙げてもいいと思います。 2つ目は、広島、長崎の惨状に関する描写です。作品では「明らかに違うサイズの2つの木箱」で、広島の攻撃に使用された「リトルボーイ」と、長崎に落とされた「ファットマン」が表現され、ロスアラモス研究所の職員たちが「実際に使われてしまうのでは」という不安な表情で「2つの木箱」の搬出を見守るシーンがあります。私はこの木箱のシーンに鳥肌の立つような戦慄を覚えました。 また、戦後になって広島の惨状を記録したフィルムがロスアラモス研究所で上映され、主人公がその内容に衝撃を受けるシーンがあります。ですが、肝心の広島、長崎の惨状に関するビジュアルの描写はありません。これは、今回2023年5月の広島G7でバイデン大統領が原爆資料館を訪問した際に「悲惨な展示は見なかった」とされ、報道も限定されていたことと関係があります。) 現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています。それは、そうした行動自体が「アメリカにとっての謝罪行為」であり、国家への反逆だという言い方で批判される危険があるからです。バイデンはそれゆえに、資料館の一部しか見なかったし、この『オッペンハイマー』も同じ理由から惨状の描写を控えたと考えられます。この点に関しては、被爆国である日本として、改めて真剣な問題提起をするべきです。 3番目は、映画の構成です。ノーラン監督は、時間軸に沿って「原爆が開発され、使用され」た後に「オッペンハイマーが赤狩りで追及を受け」、その後に「その黒幕も追及を受ける」という順序で映画を構成しませんでした。先程申し上げたように、この3つの時間軸をバラバラにし、冒頭から「赤狩り疑惑」の要素を観客に突き付けます。要するに「オッペンハイマーはソ連のスパイで、だから水爆開発に反対するなど、反米的だったのか?」という疑問を映画の冒頭で提示しているのです。 これは、あくまで私の私見ですが、保守派もリベラルも含めた広範な観客を、一種のサスペンスに引き込むのが監督の作戦だったと思われます。最終的には「オッペンハイマーは広島・長崎で起きたことに衝撃を受けて、核兵器への疑問を強く持つようになった」という展開を観客に理解させて、「だから水爆開発に反対したのはアメリカへの裏切りではなかった」という「結論」に着地させるようにしています』、「現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています。それは、そうした行動自体が「アメリカにとっての謝罪行為」であり、国家への反逆だという言い方で批判される危険があるからです。バイデンはそれゆえに、資料館の一部しか見なかったし、この『オッペンハイマー』も同じ理由から惨状の描写を控えたと考えられます。この点に関しては、被爆国である日本として、改めて真剣な問題提起をするべきです」、「「現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています」、というのは初めて知った。
・『ノーマンが仕掛けるマジック  これは非常に高度な脚本、演出のチャレンジで、これによって「核兵器性悪説」を幅広い観客に「漠然と納得させる」というマジックを実現していると評価できます。保守系の映画評サイト「見る価値あり? それともポリコレ?("Worth it or Woke?")」が公開後、数日を経てから、「ポリコレでない」と断定して100点満点の79点をつけていますが、ノーラン監督のマジックに見事に騙されている(?)とも言えます。 ですが、ノーラン監督が巧妙に反核思想を仕込んだというのは、あくまで私個人の感想です。この映画が本当に反核メッセージを込めた作品なのか、この点こそ、被爆国日本、そして被爆者とその周囲の方々の厳しい評価に晒されるべきものと思います。 しかしながら現時点では、この『オッペンハイマー』の日本公開日は決まっていません。日本語字幕の付いた予告編も公になっていないのです。配給会社が政治的論争に巻き込まれるのを嫌っているとか、少なくとも原爆忌や終戦記念日をスルーした後で公開日を決めるのでは、などという憶測が流れています。もしかしたら、日本の観客が「原爆開発映画」を嫌って劇場に行かず、配給しても赤字ということをおそれているのかもしれません。 ですが、ここまで述べてきたように、この映画は明らかに被爆国日本の人々によって評価されるべき作品です。今すぐ公開して、しっかりと必要な論争を行うことが必要です。ノーラン監督も、おそらくはそれを望んでいると思いますし、日本で賛否両論を浴びることで初めて、本当の意味で完結する作品と言っても良いかもしれません。とにかく、現時点で公開が決まっていないというのは異例です。即時公開を強く望みます』、「日本で賛否両論を浴びることで初めて、本当の意味で完結する作品と言っても良いかもしれません」、「現時点で公開が決まっていないというのは異例です。即時公開を強く望みます」、その通りだ。 

第三に、8月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの武藤弘樹氏による「原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327249
・『アメリカで公開中の映画『オッペンハイマー』と『バービー』の上映開始日が同じだったことから「バーベンハイマー(Barbenheimer)」というネットミーム(※)が生まれた。これをめぐって、日本でひと騒動が巻き起こっている。  ※SNSなどで人々が模倣し拡散される、いわゆる「ネタ」要素の強い画像や文章のこと』、興味深そうだ。
・『「バーベンハイマー」誕生から映画『バービー』炎上 一連の流れおさらい  「バーベンハイマー」にまつわる騒動を、筆者は日本人として嫌な気分で見ていたが、ひょっとしたら必要以上に不快に感じられている部分があるかもしれないと気づいた。 バーベンハイマー」騒動に感じた嫌な気持ちを、わずかでも軽減させられるかもしれない可能性が本稿にはあるので、(風呂敷を広げておきながら、回収できなかったらとても申し訳ないが)心の健康を取り戻したい方には、ぜひご一読願いたい。筆者も必死に脳を稼働させて書き進めるつもりである。 まず、一連の出来事は次のとおりである。 「原爆の父」として知られるロバート・オッペンハイマーをモデルにした伝記映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』(日本公開は未定)と、おもちゃの人形で有名なバービーが主人公となった実写コメディ映画『バービー』(8月11日に日本公開予定)が、米国で7月21日に同時公開された。 ともに大ヒットしていて、その盛り上げといった意味合いで、バービーとオッペンハイマーをかけ合わせた「バーベンハイマー(Barbenheimer)」という造語が誕生した。 さらに、バービーときのこ雲をかけ合わせる類の画像が一般ユーザーらによっていくつも作成されてX(Twitter)に投稿された。これに映画『バービー』の米国公式アカウントが好意的なリプライをつけて反応した。 その様子を見ていた日本人ユーザーから批判が殺到して、映画『バービー』の日本公式アカウントが、配給元の子会社であるワーナー ブラザース ジャパン(以下、ワーナー日本法人)の声明として、7月31日に次のようなメッセージを発信した。 ・「バーベンハイマー」は公式の活動でない。 ・米国本社の公式アカウントの配慮にかけた反応は極めて遺憾。本社にしかるべき対応を求めている。 ・「不快な思いをされた方々には、お詫びを申し上げます」 その後、翌8月1日(現地時間では7月31日夜)、本社ワーナー・ブラザースは各メディアに寄せる形で遺憾と謝罪を表明する声明を発表した。炎上の発端となったTwitter上の一連の投稿は削除されたが、米国側の映画『バービー』Twitter公式アカウントでは発信はなく(8月3日時点)、やや見つかりにくい情報となっている。 8月2日、映画『バービー』のジャパンプレミアが開催され、監督とプロデューサーが来日、主演の吹き替えを担当した女優の高畑充希も出席した。高畑は出席前に、自身のInstagramでバーベンハイマーに関する複雑な思いを誠実な姿勢と言葉で語ったが、ジャパンプレミア本番において監督やプロデューサーがバーベンハイマーに触れることはなかった。これを受けて日本では、落胆や幻滅の声が広がっている。 ここまでが今である』、「バービーときのこ雲をかけ合わせる類の画像が一般ユーザーらによっていくつも作成されてX(Twitter)に投稿された。これに映画『バービー』の米国公式アカウントが好意的なリプライをつけて反応した。 その様子を見ていた日本人ユーザーから批判が殺到」、しかし、その後、「公式アカウント」は謝罪し、「画像」を削除したようだ。
・『<着眼点1>『オッペンハイマー』は原爆投下を肯定する映画なのか(不快感を軽減できるかもしれない着眼点その1は、映画『オッペンハイマー』に対する先入観の可能性である。 オッペンハイマーは原爆開発の中心的人物である。また日本人の多くは「米国は広島・長崎への原爆投下を正しいことだと考えている」という認識を共有している。だから「オッペンハイマーという人物も当然自国の正義を遂行するために原爆開発に携わっただろうし、映画『オッペンハイマー』は原爆投下を肯定するトーンを含んでいるだろう」と多くの日本人は捉えている(なお、近年は、米国内でも原爆投下の是非についての風向きはやや変わってきているようではある)。 また、ワーナー日本法人が「バーベンハイマー」の件で本社に異議を唱える姿勢を見せながら、まず謝罪を表明したのは非常に好ましかったと思う。しかし、それによって「謝罪したということは、映画『オッペンハイマー』はやっぱり日本人には到底受け入れられないような、原爆肯定映画なんだ」という印象が、意図せずして国内に広まってしまった部分があった。 ワーナー日本法人が謝罪をしたのは、「本社によるきのこ雲とバービーのかけ合わせ画像に対する好意的な反応が配慮を欠いていた」という点だ。しかし、ネットで出回る情報というのはトピックの表層だけで判断されていったりするものなので、正確な事実や意図が伝わらないことはままあり、この点でワーナー日本法人に過失や責任を求めるべきではない。 蛇足だが、一般ユーザーにも「原爆ファンアートは百歩譲って我慢するが、映画公式がそれに乗っかるのはありえない」という立ち位置を取る人は一定数いる。ギリギリのところまで相手国の文化を許容しようとする、理知的で寛容な姿勢である。 さて、「映画『オッペンハイマー』=原爆肯定映画なのだ」という着想があって、さらにその映画が米国で絶賛されているという事実は多くの日本人を暗たんたる気分にさせる。しかし、そもそも映画『オッペンハイマー』は、原爆肯定映画ではないかもしれないのだ。 というのも、すでにご存じの教養ある方々もおられようが、ロバート・オッペンハイマーは必ずしも原爆肯定派ではなかった。むしろ原爆の使用には当初から懐疑的で、戦後「科学者は罪を知った」と発言したり、一生涯FBIにマークされながら水爆に反対するなど、一貫して核兵器に対してブレーキをかけるスタンスを取ったという。 その人物がモデルの映画なのだから、単純に原爆肯定がされている内容ではないのではないか、と考えられるのである。 日本公開が未定の作品なので、米国で鑑賞し、がっつり内容を解説してくれている日本人の記事を、筆者は複数読んだ。そこから得た範囲での情報を極力ネタバレしないように、ここにシェアするが、これまで米国で想定されてきた「原爆投下は正義」といったイデオロギーが、同作品内においては反省や葛藤なく描かれているわけではなさそうである。つまり、どうやら映画『オッペンハイマー』は単純な原爆肯定映画ではないようなのである。 これは、オッペンハイマーの人物像を知らずに今回の「バーベンハイマー」で、胸を痛める日本人にとっては、いくらか救いのある情報ではあるまいか。 原爆全肯定でないのであれば、日本人には到底受け入れがたい死体蹴りのごとき、米国の“正義”を押し付けられることは、少なくとも本件(映画そのもの)に関しては心配する必要がなさそうである。 さらにいえば、映画『オッペンハイマー』を通して、原爆投下の罪深さが米国内で改めて意識されることもあろう。この映画によって、日本人が望む形での原爆への理解が、米国内で、わずかばかりでも進むことが期待されうる』、「どうやら映画『オッペンハイマー』は単純な原爆肯定映画ではないようなのである」、「映画『オッペンハイマー』を通して、原爆投下の罪深さが米国内で改めて意識されることもあろう。この映画によって、日本人が望む形での原爆への理解が、米国内で、わずかばかりでも進むことが期待されうる」、なるほど。
・『着眼点3 「作品に罪はない」という思考  不快感を軽減できるかもしれない着眼点その3は、「作品に罪はない」である。これに関しては捉え方がさまざまなので、必ずしもこの考え方をした方がいいというわけではない。ここでは、思考の選択肢の一つとして、紹介する。 そもそも、両作品そのものに罪はなかった。 原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は? 作品の内容とほぼ関係ない(特に『バービー』は原爆とは全く関係ない)ところで起きた炎上が、作品の方まで飛び火した。作品にとっては完全なとばっちりである。『バービー』の公開を心待ちにしていた知人は、作品がすっかりいわくつきになってしまった今のこの状況に、悲しそうにしている。 炎上が作品の方に飛び火していったさまを同情的に観察する人は、「作品だけにフォーカスして、作品を評価しよう」と心がけるようである。 一方で、「ここまで話題になっているのに沈黙を貫くのは宣伝に利用しているということ――つまり加担している」との考え方もある。 また、「話題になった以上、関係者サイドから一言あってしかるべきだ」という考え方もある。映画『バービー』日本公式Twitterアカウントがジャパンプレミアを取り上げた投稿には、バーベンハイマーについての説明がなかったことに失望するファンたちのリプライで埋め尽くされている。中には、主演の「マーゴット・ロビーが出演する映画は金輪際見ない」という人もいて、とばっちりがすさまじいが、一般観客の心情としてはわからないでもない。そう思わされるくらいのショックが、この一連の騒動にはあったわけである。 さて、心の健康を保ちうるかもしれないいくつかの着眼点を紹介したが、わざわざそんなことを考えて自衛する必要が生じてきている展開がもとより非常事態である。 先に書いた通り、米国本社のワーナーは謝罪声明を出しているが、それでは不十分と考える人も多数いるようで、日本国内では事態はいまだ沈静化の兆しが見えない。 原爆投下を巡る国家間の認識の違いは、時折表面化して問題となり、今に始まったことではない。2018年には、人気K-POPグループBTSのメンバーが原爆投下を描いたTシャツを着ていたことを受けて、日本の音楽番組が出演を見送りにしたことがあった。 他国の原爆投下に対する認識は、日本人のそれとは大きく異なるという現実を突きつけられたとき、日本人は尊厳を踏みにじられるかのような絶望に直面する。国という巨大な共同体同士だから彼我それぞれに立場や正義があるのは当然なのだが、越えてはならない一線がいともたやすく越えられるような悲しさがつきまとう。 しかし他国の原爆投下への認識に対して、日本が異を唱えるようになった――正確にいうなら「“異を唱える”ことが市民権を帯びてきた」のもSNSが浸透したごくごく最近ではあるまいか。つまり他国に理解を求めようという試みが自国内で多数の同意のもと、きちんと始められた段階であり、これは必ず成果となって未来にあらわれるはずである。 なお、「バーベンハイマー」は現在#NoBarbenheimerに対抗して、原爆投下肯定を含意する#YesBarbenheimerというハッシュタグが生まれている。個人的には気が狂いそうなくらい嫌な気分になるが、諸外国から日本を理解してもらうためのプロセスとしては痛みを伴うのも必要なのかもしれない。この騒動も、全体の流れの中ではポジティブに位置づけられるものと信じて、現況に向き合いたい次第である』、「他国の原爆投下への認識に対して、日本が異を唱えるようになった――正確にいうなら「“異を唱える”ことが市民権を帯びてきた」のもSNSが浸透したごくごく最近ではあるまいか。つまり他国に理解を求めようという試みが自国内で多数の同意のもと、きちんと始められた段階であり、これは必ず成果となって未来にあらわれるはずである」、「この騒動も、全体の流れの中ではポジティブに位置づけられるものと信じて、現況に向き合いたい次第である」、同感である。
タグ:核武装・核兵器 (その2)(核兵器禁止条約に加入すれば 日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を日本で今すぐ公開するべき理由、原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?) 東洋経済オンライン「核兵器禁止条約に加入すれば、日本は「丸腰」に 『核兵器禁止条約は日本を守れるか』著者・佐野利男氏」 「核兵器禁止条約はその核抑止力を否定します。この条約に日本が入った途端、核の傘がなくなり、日本は「丸腰」の状態になってしまう。隣国の核の恫喝になすすべもなく、極めて危険な状況に陥るのです。日本を守れる代替策がない以上、核兵器禁止条約は、政策オプションにはなりえない」、なるほど。 「核の傘の下にいる日本は、条約推進派とはすでにたもとを分かっており、決して「中間派」ではありません。 また、自国の安全を依存する核抑止を否定する同条約の締約国会議への参加は、基本的には自己矛盾であり、オブザーバーという形であれ慎重であるべきです」、「核兵器禁止条約が持つ欠点」としては、「第1に「核兵器から人類の安全を保障する統合的な機関はありません。結局、自国の安全は自らの手で守らざるをえない。ですから人類の安全保障を優先する安全保障観へ転換することは無理」、 「第2に、核兵器の禁止と廃絶は別物です。禁止しても核兵器国が乗ってこなければ核廃絶はありえません」、「第3に、核兵器廃棄の検証過程が中途半端です。核兵器国がこの条約に入っていないうえに、具体的な廃棄の検証に必要なノウハウを締約国は持っていません」、なるほど。 「NPTが成立したのは、各国が主権平等の原則を犠牲にしてまで核の拡散を防ごうとした「知恵」だったのです。それゆえに、自分がやっている核の保有を他人にさせないという核兵器国の主張は「通る」のです」、 「わが国が核武装をすれば、核軍縮・核不拡散に率先して努力してきた日本が、隣国を含む、世界的な核武装のドミノ現象を誘発してしまうでしょう。それは、1962年のキューバ危機の際、ケネディ米大統領が恐れた「核のカオス(混沌)」への引き金を日本自らが引いてしまうことを意味する」、「核武装は論外です」、なるほど。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』を日本で今すぐ公開するべき理由」 「原子爆弾開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーを務めた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描くものですが、単に原爆開発のストーリーだけでなく、非常に複雑な構成が取られています。主人公の半生に加えて、後に「赤狩り」の犠牲者として追及を受けた尋問の様子、さらに彼を陥れた黒幕に対する議会の審議という3つの時間軸がモザイクのように散りばめられ、それぞれが緊張感のある対話劇になっているのです」、 「被爆国である日本の人々には、当事者として、この作品を評価する権利があると思います」、当然だろう。 「現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています。それは、そうした行動自体が「アメリカにとっての謝罪行為」であり、国家への反逆だという言い方で批判される危険があるからです。バイデンはそれゆえに、資料館の一部しか見なかったし、この『オッペンハイマー』も同じ理由から惨状の描写を控えたと考えられます。 この点に関しては、被爆国である日本として、改めて真剣な問題提起をするべきです」、「「現在のアメリカでは、広島の悲惨な映像を公開すること、あるいは首脳が見ることは一種のタブーになっています」、というのは初めて知った。 「日本で賛否両論を浴びることで初めて、本当の意味で完結する作品と言っても良いかもしれません」、「現時点で公開が決まっていないというのは異例です。即時公開を強く望みます」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 武藤弘樹氏による「原爆投下のネタ画像に批判殺到→ハリウッド映画『バービー』が謝罪…大炎上の背景は?」 「バービーときのこ雲をかけ合わせる類の画像が一般ユーザーらによっていくつも作成されてX(Twitter)に投稿された。これに映画『バービー』の米国公式アカウントが好意的なリプライをつけて反応した。 その様子を見ていた日本人ユーザーから批判が殺到」、しかし、その後、「公式アカウント」は謝罪し、「画像」を削除したようだ。 「どうやら映画『オッペンハイマー』は単純な原爆肯定映画ではないようなのである」、「映画『オッペンハイマー』を通して、原爆投下の罪深さが米国内で改めて意識されることもあろう。この映画によって、日本人が望む形での原爆への理解が、米国内で、わずかばかりでも進むことが期待されうる」、なるほど。 「他国の原爆投下への認識に対して、日本が異を唱えるようになった――正確にいうなら「“異を唱える”ことが市民権を帯びてきた」のもSNSが浸透したごくごく最近ではあるまいか。つまり他国に理解を求めようという試みが自国内で多数の同意のもと、きちんと始められた段階であり、これは必ず成果となって未来にあらわれるはずである」、「この騒動も、全体の流れの中ではポジティブに位置づけられるものと信じて、現況に向き合いたい次第である」、同感である。
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