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ツイッター(その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと) [メディア]

今日は、ツイッター(その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと)を取上げよう。

先ずは、10月31日付けForbes「ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/51540
・『調査会社Equilarによると、イーロン・マスクが解雇したツイッターのCEOを含む幹部4人は、総額1億4110万ドル(約208億円)の退職金パッケージを受け取る可能性があるという。 ツイッターの前CEOのパラグ・アグラワル5740万ドル、CFOのネッド・シーガルは4450万ドル、ポリシーチーフのビジャヤ・ガッデは2000万ドル、最高顧客責任者のサラ・パーソネットは1920万ドルを受け取ると予想されるとEquilarのディレクターのAmit Batishは10月28日のフォーブス宛ての声明で述べている。 この金額には1年分の給与と医療補助が含まれており、MarketWatchによると2021年の基本給は、アグラワルが62万3000ドルで、シーガルとガッテはそれぞれ60万ドルだったという。 MarketWatchが入手したツイッターの米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、アグラワル、ガッテ、シーガルの3人は、退職金の一部として、合計1億1960万ドル相当の権利確定済み株式も付与されるという。 アグラワルはツイッターに11年近く勤務した後、昨年11月に同社のCEOに就任し、ガッテは11年間同社の法務主任を務め、パーソネットは5年間の在籍期間中に1年間、CCOを務めていた。また、シーガルは2017年からCFOを務めていた。 ワシントンポストは、マスクが先週、投資家らに同社の従業員の75%を削減し、7500人から約2000人にする計画だと伝えたと報じていた。しかし、マスクは26日、ツイッターの社員らに対して、75%という数字は不正確だと述べ、この報道を否定したとされている。 現時点で、マスクがツイッターをどのように変えるのかは不明だ。世界一の富豪である彼は、ツイッターのポリシーを繰り返し批判したが、その一方でこのプラットフォームが「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている。 また、マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており、先週は、カニエ・ウェストのインスタグラムのアカウントが反ユダヤ的な発言で制限された後、ツイッターに彼を歓迎するとツイートしたが、その後ツイッターは、ウェストのアカウントを凍結した』、「同社の従業員の75%を削減」はその後、「50%」に圧縮された。「マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており」、他方で、「ツイッター」は「「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている」。新政策の詳細は未定なのかも知れない。

次に、11月6日付け東洋経済オンラインが掲載した調達・購買業務コンサルタント・講演家の坂口 孝則氏による「イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/630935
・『Twitterを個人で440億ドル(約6兆5000億円)を投じて買収した起業家のイーロン・マスク氏が前代未聞ともいえるリストラを進めている。10月31日付でTwitterの最高経営責任者(CEO)に就任すると同時に取締役を全員解任。11月4日には全世界の従業員7500人の半分に当たる約3700人に解雇を通告したと、主要メディアが報じている。 テスラをはじめ、これまでさまざまな企業の創設にかかわってきた起業家のイーロン・マスク氏はリベラルというよりもリバタリアン=完全自由主義者である。 本稿執筆時点では、部門や正確な人数が発表されておらず、さらに非上場企業になったために情報の完全な把握は難しい。ただ報道されている人員削減数を示すように、Twitter上で解雇されたとみられる元従業員らが自身や周囲の雇用状況について積極的に“つぶやい”ている』、「個人で440億ドル・・・を投じて買収」、これは銀行団から借入金で調達。
・『Twitterのコスト体質  2021年にTwitterが発表した財務データを見てみよう。ここからの記事中の数字はいずれも概算だ。2021年12月期の連結最終損益は、2億2140万ドルの赤字だったと知られる。これは円換算で332億円ほどになる。売上高は50億ドル=7500億円ほどを得ている。 しかし、その後に差し引かれるコストとして下記がある。  売上原価:18億ドル=2700億円  研究開発費:12億ドル=1800億円  販売費:12億ドル=1800億円   一般管理費:6億ドル=900億円  上記がそれぞれかかっている。これらに訴訟関連費用を減じると営業損失が出る計算だ。 (Twitterの2021年業績はリンク先参照) (外部配信先ではTwitterの収益状況を示した図表など画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) Twitterの財務レポートによれば、下記の通りの説明があり、それらは人件費の塊であるとわかる。つまり収益に対して人件費の重みが最終損益を赤字にしていたのだ』、これは、フェイクニュース防止のための事実関係のチェックなどに多くのスタッフを当てていることを反映したものだ。 
・『人件費がひたすら重い   売上原価:インフラ、ソフトウェア、ネットワーク機器の減価償却費を含むが、一部がオペレーションチームへの報酬  研究開発費:研究開発に関わるエンジニアの報酬が大半  販売費:セールスやマーケティングにかかわる人材への報酬が大半  一般管理費:役員、財務、法務、人事等にかかわる人材への報酬が大半 赤字にいたる費用の多くは人件費であり、さらにコストへかなりの比率を占めるとわかる。 なお公平に付け加えておけば、この純損失と実際の現金の減少はイコールではない。Twitterが経営危機に陥っているわけではない。現金及び現金同等物は22億ドル(3200億円)ほどを有している。 ただしこれも付け加えておけば、営業活動(=本業によって稼いだキャッシュ)は2019年度に13億ドル(1900億円)だったところ、2020年度は9.9億ドル(1450億円)、2021年度は6億ドル(880億円)と減少していた。これは研究開発費等の増加による。 このような試算は机上の空論だが、もし半分の従業員を解雇しても同等の収益を上げられれば当然ながら利益もキャッシュフローも劇的に改善することになる。 買収したTwitterの人員整理の対象となるのは、検閲部門などではないか」という憶測が流れていた。しかし、実際はその憶測の範囲にとどまらないようだ。日本法人の従業員も含まれ、その数も相当数に上るとみられる。 本稿執筆時点では、部門や正確な人数が発表されておらず、さらに非上場企業になったために情報の完全な把握は難しい。ただ報道されている人員削減数を示すように、Twitter上で解雇されたとみられる元従業員らが自身や周囲の雇用状況について積極的に“つぶやい”ている。 イーロン・マスク氏は、なぜここまで一気に大量解雇へと打って出たのか。アメリカならばまだしも、解雇要件の厳しい日本でいきなりこうしたリストラを進めることについての疑義は労働問題に詳しい論者が論じてくれるだろう。また法律問題を越え、プライベートカンパニーにおける労働慣行についても誰かが語ってくれるだろう。ここでは、財務面からTwitterの解雇問題を見ていきたい』、なるほど。
・『Twitterのコスト体質  2021年にTwitterが発表した財務データを見てみよう。ここからの記事中の数字はいずれも概算だ。2021年12月期の連結最終損益は、2億2140万ドルの赤字だったと知られる。これは円換算で332億円ほどになる。売上高は50億ドル=7500億円ほどを得ている。) クールに語るのであれば、次のようになるだろう。 これまでのコスト構造が続けば、人件費が大半を占めるため、このままでは黒字化もキャッシュフローの向上も難しい。そこで企業価値アップのために人件費にメスを入れるのは必然だった、と。 もしTwitterの業績が改善すれば、今回解雇した人材の再雇用も考えられる。それは、これまでTwitter社に尽力してきた従業員の努力を無視してきた言い方に聞こえるかもしれない。実際には、突如解雇されたことによって、生活が不安定になってしまう従業員の方々もたくさんいるだろう。そこは前述のように法律問題に発展するケースもあるはずだ。また退職の条件交渉なども水面下で行われているに違いない』、「人件費」が削減できても、チェック部門が機能しなくなって、「ツイッター」が荒れるようになれば、広告主が逃げてゆくから、限界がある。
・『解雇されたTwitter従業員の反応  それにしてもなんということだろうか。確かに日本企業の中にも、人件費が重荷になっている企業があるとして、その人件費を削減すれば改革できると思っている日本の経営者はたくさんいる。とはいえ、退職割増金を加算したとしてもリストラを進めるということには、さまざまな困難が伴う。倫理的にも躊躇がある。 非上場企業であれば、解雇は日常茶飯事であり、かつ訴訟があっても、ほとんどの場合に解雇は問題にならない。ただ、Twitterほどの有名な企業であれば通常は、なかなかここまで大規模で大胆な解雇に踏み切れないはずだ。 ところで、今回の解雇についてざっとSNSを見る限り、声をあげているTwitter従業員の方の中には、不当だと怒りをぶつけるものがあるいっぽうで、私の知り合いは奇妙なほどさっぱりとした明るさに満ちていた。ワインを飲みながら自身や所属するチームの激務をねぎらう投稿もあった。これはアメリカ企業で働く方々の覚悟の表れだろうか。 イーロン・マスク氏の意図はわかる。だが、これ以降の業績はどうなるか。Twitterユーザーのわれわれも気になる問題だ』、むしろ、問題は「ツイッター」が現在の品質を維持できるか否かにあると思われる。

第三に、11月7日付けDIGIDAY「イーロン・マスク氏の発言に、首を傾げる Twitter 広告主たち」を紹介しよう。
https://digiday.jp/platforms/elon-musks-appeal-to-twitter-advertisers-leaves-many-with-questions/
・『イーロン・マスク氏は自称「チーフ・ツイット(Chief Twit、Twitterのトップの意)」として、Twitterをどう変えてしまうのか。そんな広告主らの懸念を、氏は早くもツイートを介して鎮めにかかっている。 10月第4木曜の午前中、マスク氏はTwitter広告主に向けたツイートにおいて、氏が同社のコンテンツモデレーション(注)ポリシーを緩和するのでは、との懸念に言及した。 「私がTwitterを獲得した理由は、街にある公共広場のデジタル版を持つことが、未来の文明にとって極めて重要だからだ」と、マスク氏は書いた。「多種多様な信念について、健全な形で、暴力に訴えることなく、討論できる場のことだ。世界には今、ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」』、
「マスク氏」の「ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」、というのは同意できる。 (注)コンテンツモデレーション:ネット上の書き込みをモニタリングする投稿監視(インターネットモニタリング)。
・『自身の言動と矛盾する発言  かの億万長者――ちなみに、氏はこの何カ月も、Twitter買収を取り止めようとしていた――はさらに、同プラットフォームは引き続き広告を受け入れる旨の発言をしており、これを氏が同ビジネスモデルを受け入れた証だと見る向きもある(Twitterは収益の約90%を依然、広告から得ている)。とはいえ、広告に関する具体的な展開について、マスク氏は自身の見解はいまだ発信しておらず、氏が治める街の広場が、広告の有無にかかわらず、どんな様相を呈するのか、不安視する者も少なくない。 あるエージェンシー幹部によれば、Twitterの社員らは同プラットフォームの広告機能をマスク氏に説いているという。ただその一方、同じ情報筋によれば、Twitterの上級幹部らは古株社員らの退社を懸念しており、一応は残った者たちも社の将来を不安視しているという。 マスク氏のツイートに、一部のマーケターは呆れ返った。マスク氏は一体、広告主がTwitterに求めるものを本当にわかっているのだろうかと、首を傾げるマーケターもいる。クリエイティブエージェンシー、R/GAのグローバルチーフストラテジーオフィサー、トム・モートン氏いわく、ビジネスリーダーや政治家からセレブやスポーツファンに至るまで、幅広いユーザーにリーチできる、という強みを活かしたプロダクトを開発できれば、Twitterには依然、高い潜在能力があるという。 「マスク氏はTwitterをひっくり返す前に、自分の手の中にあるものの隠れた強みを自覚するべきだ」と、モートン氏は話す。「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」』、「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」、「マスク氏」に対する手厳しい批判だ。
・『マーケターにとって優先度の低いプラットフィーム  ブランド向けNFTプラットフォーム、ミント(Mint)のチーフマーケティングオフィサー/共同創業者マット・ワースト氏によれば、リーダーシップ、プロダクト、ポリシーに関する不安という「黄色信号」が出ているかぎり、広告主がTwitterに駆け寄ることはないだろうという。ただし、安定性を維持できれば、懸念は減るだろう、とも氏は言い添える。 ワースト氏いわく、「Twitterを広く牽引するリーダーシップチームは、同社の最大の強みだ。個人的には、現在の不安定が収まり、彼らリーダーたちが残り、以前どおりのフォーカスを保ってくれることを期待している」。 Twitterへの2022年度の広告費は、11%増と予想されている――調査グループWARCによれば、これは2021年の予想値42.5%を大きく下回るものであり、2023年度の成長はわずか2.7%とされている。ちなみに、WARCによれば、その成長率を下回る米プラットフォームはFacebookだけであり、2022年度は8.2%減、2023年度は8.6%減と予想されている。 Twitterは実際、マスク氏が買収を申し出る前からすでに、マーケターのなかでの優先順位が低かったと、WARCメディア(WARC Media)のトップ、アレックス・ブラウンゼル氏は話す。氏によれば、Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という。同プラットフォームの効率改善や広告依存の解消に繋がる新収入源の開拓に努める、という話もあるが、Twitterについてはそもそも、未解決の商談やそれに伴う訴訟のせいで、多くは不安感を抱いていると、ブラウンゼル氏は話す。 ブラウンゼル氏いわく、「Twitterはしばらく宙ぶらり状態にあり、その間に他のメディア企業勢が遂げた巨大な革新を我々は目にしてきた。たとえば、TikTokが他を一気に追い抜いたように」』、「Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という」、なるほど。
・『プランドセーフティの懸念が新たに生じるリスク  広告プラットフォームを改善し、収益の新形態を導入できたとしても、Twitterを「何でもありの地獄のような場」にはしない、というマスク氏の宣言は、この何カ月にもわたって氏が示唆してきたことに矛盾している、と見る向きもある。ソーシャルエンゲージメントプラットフォーム、オープンウェブ(OpenWeb)のCMOティファニー・シンウー・ワン氏は、モデレーションが緩くなれば、Twitterは「最も声高な、最も耳障りな物言いが支配する、無法地帯になりかねない」と話し、「言論の自由は、リーチの自由とは違う」、だからこそ「最も有害な声を最も声高にさせてはならない」と言い添える。 「それは実際、ブランドセーフティの構築に必要な行動の対極にある」と氏は続ける。「我々はモデレーションに、より健全な会話に、ユーザー間の、そしてコミュニティ、パブリッシャー、広告主間のなおいっそうの信頼にフォーカスする必要がある」。 また、Twitterの上場企業化に伴い、いわゆる抑制と均衡がなくなることで、広告主は同プラットフォームに関する説明責任を負うという、さらなるプレッシャーに直面させられる、と見る向きもある。 左派の監視グループ、メディア・マターズ(Media Matters)の長、アンジェロ・カーソソーニ氏いわく、Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。 「リスナーとのやり取りを中心とするトークラジオ番組はAppleのCMを流さないし、コカ・コーラ(Coca-Cola)のCMも流さない。いずれも極めて有害だと見なされているからだ」と、カーソソーニ氏は話す』、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。」、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念」は深刻にならざるを得ないようだ。

第四に、11月8日付けFNNプライムオンライン「「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中、波紋広がる」を紹介しよう。
https://www.fnn.jp/articles/-/441857
・『ツイッター社のイーロン・マスクCEOは、アメリカの中間選挙で、無党派層の人に向けて共和党に投票するよう呼び掛ける投稿を行い、波紋を広げています。 7日、ツイッター社のマスクCEOは中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿しました。 マスク氏は今年4月、「ツイッターが社会の信頼に値するためには、政治的に中立でなければならない」などと表明していたため、今回の投稿には矛盾を指摘するコメントが相次ぎました。 その後、マスク氏は「はっきりさせておくが、私はこれまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」と投稿しています』、「マスクCEOは」、「これまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」が、「中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿」、「大統領」と「議員」を分けるのは筋が通ている。

第五に、11月15日付けNewsweek日本版が掲載した米プリンストン大学生命倫理学教授のピーター・シンガー氏による「「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/11/post-100108_1.php
・『<「絶対的な言論の自由」を自称するマスクは、全従業員の約半数を解雇した。掲げる目標は立派だが、このままでは「健全な」議論を促進することはできない> 8500万の国民にはツイッターの使用を禁じておきながら、自分は好き勝手にツイートして女性を侮蔑するメッセージを発信し、小説『悪魔の詩』の著者サルマン・ラシュディに対する残虐な襲撃を美化している男がいる。 公共の場で自分の美しい髪を見せたいと願う若い女性たちを平然と殺している国、イスラム共和国イランの最高指導者アリ・ハメネイだ。 許せない、こんな男はツイッターから永久追放しろ。イラン系アメリカ人の活動家マシ・アリネジャドは何年も前から、そう要求してきた。実に頼もしい女性だ。 実際、イランの最高指導者に反旗を翻すには勇気が要る。この8月にはラシュディが、ニューヨーク州で襲撃されて重傷を負った。 ラシュディは1989年に、『悪魔の詩』をイスラムの教えに対する冒瀆と認定され、ハメネイの前任者であるホメイニから死刑宣告のファトワ(宗教令)を出されていた。 さて、そのツイッターをイーロン・マスクが買収した。ハメネイをツイッターから締め出したい人々は、当然のことながらマスクの出方を注視している。 マスクはツイッターの広告主に宛てた公開書簡に、自分がツイッターを買収したのは「文明社会の未来にとって、多様な信念を健全な態度で、暴力に頼らず議論できる共通のデジタル広場の存在は重要」と思うからだと書いた。 それを守れなければソーシャルメディア上の対話は「極右と極左の意見に分かれ、それぞれが増幅されて憎悪を生み出し、社会を分裂させる」ことになると警告してもいる。 そういう懸念は理解できる。自分の気に入らない主張を掲げる人を片っ端から攻撃するような議論は好ましくない。必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない』、「必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない」、やはり人手でやる他ないようだが、従業員を半減させては無理だろう。
・『「絶対的な言論の自由」を掲げるマスクは、ツイッターの買収後、同社の青い鳥のロゴにちなんで、「この鳥は今や自由だ」とツイートした。 だが投稿内容についての規制を全て廃止することは、大きく異なる信念を持つ人々の間での「健全な」議論を促進する方法にはならない。マスクのツイッター買収完了後に人種差別的なツイートが急増したことからも、それは明らかだ。 マスクの掲げる目標は立派だ。しかしそれを実現するためには、論拠と証拠に基づき人々の共感や理解を求める言説と、他人を非難して憎悪をあおろうとする言説を区別する必要がある。 おそらくマスクも、このことに気付いているのだろう。ツイッター買収後、彼は幅広い視点を持つ人々で構成する「コンテンツ監視評議会」を立ち上げるとツイートした。 女性の社会的地位をおとしめ、自分の信ずる宗教に対する冒瀆と見なされた文芸作品の著者に対する死刑宣告を擁護するような男にもツイッターの使用を認めるべきかどうか。この点こそ、新設される評議会には真っ先に検討してほしい。 ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか』、「ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか」、大いに注目したい。 

明日は、イーロン・マスク氏を取上げる予定である。
タグ:むしろ、問題は「ツイッター」が現在の品質を維持できるか否かにあると思われる。 「人件費」が削減できても、チェック部門が機能しなくなって、「ツイッター」が荒れるようになれば、広告主が逃げてゆくから、限界がある。 これは、フェイクニュース防止のための事実関係のチェックなどに多くのスタッフを当てていることを反映したものだ。 「個人で440億ドル・・・を投じて買収」、これは銀行団から借入金で調達。 坂口 孝則氏による「イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由」 東洋経済オンライン 「同社の従業員の75%を削減」はその後、「50%」に圧縮された。「マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており」、他方で、「ツイッター」は「「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている」。新政策の詳細は未定なのかも知れない。 Forbes「ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金」 (その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと) ツイッター DIGIDAY「イーロン・マスク氏の発言に、首を傾げる Twitter 広告主たち」 「マスク氏」の「ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」、というのは同意できる。 (注)コンテンツモデレーション:ネット上の書き込みをモニタリングする投稿監視(インターネットモニタリング)。 「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」、「マスク氏」に対する手厳しい批判だ。 「Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という」、なるほど。 「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。」、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念」は深刻にならざるを得ないようだ。 FNNプライムオンライン「「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中、波紋広がる」 「マスクCEOは」、「これまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」が、「中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿」、「大統領」と「議員」を分けるのは筋が通ている。 Newsweek日本版 ピーター・シンガー氏による「「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと」 「必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない」、やはり人手でやる他ないようだが、従業員を半減させては無理だろう。 「ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか」、大いに注目したい。
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SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター)(その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター)につては、6月15日に取上げた。今日は、(その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機)である。

先ずは、7月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306902
・『140文字の文章の中では、どうしても分かりやすさが優先される。単純な二元論で示される分かりやすさに、私たちは長らく逃避していたのではないか』、SNSを文化論的にみるとは興味深そうだ。
・『安倍政権の時代と重なるSNS興隆期  安倍晋三元首相を狙った銃撃事件が、列島を激震させた。あってはならない最悪の暴力によって命を奪われた故人の冥福を祈るのは当然のことであるのは前提として、この原稿では、事件以降とそれ以前では変わらざるを得ないように見えるネット上の世相について言及したい。 2010年代以降の日本において、良くも悪くも圧倒的な存在感を持っていたのが安倍元首相だろう。数年ごとに首相が代わるのが当たり前だった日本において、歴代最長の在任期間だった。そして熱烈に支持される一方で、安倍元首相自身が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応戦したように、激しい反感を持つ人も少なくなかった。 コロナ禍でその座を退いてからも、現職の首相よりも支持されているように見えたし、同時に怒りの矛先を向けられてもいた。 安倍元首相の在任期間である2012年12月から2020年9月は、ネット上でSNSが盛り上がり、ハッシュタグ文化が生まれた時期と重なる。特にツイッターで、有名無名の個人が発信することが当たり前となった。 近年、政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない。そのことに、今回の銃撃をきっかけに、多くの人が徐々に気づき始めているのではないか』、「政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない」、その通りだ。
・『2010年代におけるツイッター文化の功罪  東日本大震災をきっかけに日本のツイッターユーザーは増えたといわれるが、当時はまだそれぞれが思い思いの独り言を投稿し、たまにそれに反応があるといった、文字通り「つぶやき」文化だった。 しかし、次第に同じ趣味や思考を持った人とつながるためや、フォロワー数を増やすため、あるいはビジネスにつなげるためといった「目的」を持って使い始めるユーザーが目立つようになった。そして、RT(リツイート)での「拡散」行為を狙ったツイートが目立ち始める。 ある程度ツイッターを使っていると、どんなツイートをすれば拡散されやすいかや、どのような層に響くか、反発を受けるか分かってくる。次第に自分のフォロワーにウケるようなツイートをする誘惑からは、多くの人が逃れられない。 そのためにツイートがより過激に、排他的になっていくさまが見られるようになった。 また、世代間格差、男女論、学歴、教育……といった特定のトピックは一つのエピソードに多くの人が引用RTでツッコミを入れるかたちでシェアされ、さながらオンライン上バトルの様相を呈していく。 さらに政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすく、例えば「選択的夫婦別姓に賛成」とツイートした途端に「リベラル」というレッテルを貼られてしまう。 この傾向は近年、拍車がかかり続けていたと感じる。 「選択的夫婦別姓」に強く反対しているのは実際に自民党であるから、これに賛成している人にリベラルが多い傾向は実際にあるだろう。しかし、ツイッター上では「リベラル」に付随して「左翼」「パヨク」「反日」「護憲派」「増税反対」「反原発」「アベガー」「朝日新聞」などなどのレッテルが自動的に貼られてしまう傾向がある。 逆に「ネトウヨ」であれば、「嫌韓」「改憲派」「軍備拡大」「原発容認」「愛国」「朝日新聞嫌い」といった具合で、本来、党派性抜きに検討されるべき個々の課題まで一緒くたに関連づけられる状況になっている。 ひどい場合だと、例えば、入管問題に声を上げれば「日本から出ていけ」、議員の女性蔑視発言に抗議すれば「日本が嫌いな韓国人なのだろう」と言われるほどの飛躍が一部では見られる』、確かに機械的な「レッテル」貼りにはうんざりさせられる。
・『銃撃犯は「アベガー」ではなかった  しかし、今回の銃撃事件をきっかけに、世の中はそれほど単純な二元論では分けられないという空気が次第に広がりつつあるように感じる。 もちろん、「そんなことは前から分かっている」という層もいるだろうが、近年のSNSでは何かにつけて対立構造が目立ち、それをあおるようなインフルエンサーもいた。 空気が変わりつつある理由は、二つある。 一つは、銃撃犯のものとされるツイッターアカウントが発見されたことだろう(現在は削除済みのそのアカウントは2019年10月に開設され、事件の9日前の投稿が最後だ)。 事件直後、犯行におよんだのは安倍元首相に批判的な人物であるとか、日本人ではないだろうといった臆測がSNSでは飛び交った。これは程なくして報道された「政治的な意味合いで狙ったのではない」という本人の供述や、元自衛隊という経歴によって否定された(自衛隊に入隊できるのは日本国籍を有する者のみ)。 しかし、それ以上のことが分からなかった中で、犯人のものとされたツイッターアカウントが発掘され、多くの人によって読み解かれた。 残されたツイートを読むと、供述通り、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みをつづった文章が多く、また韓国への嫌悪感情があることが分かる。旧統一教会が韓国で始まった宗教であり、「韓国はアダムで日本がイブ。日本は韓国に従属する国」といった教義を掲げていたことからの反発だと考えられる。 また、今年に入ってからも安倍元首相に批判的なツイートを引用して「下らないねえ」「安倍の味方する気もないが(以下略)」といった「安倍批判」に対する批判的なツイートをしている。 安倍元首相や自民党を全面的に支持しているようには見えないが、野党支持というわけでもなく、むしろ野党嫌いの「冷笑系」といった風に見える。日刊SPA!の「山上容疑者の全ツイートに衝撃。ネトウヨで“安倍シンパ”、41歳の絶望」では、タイトルにもある通り、「ネトウヨ」かのようなツイートも多いと分析されている。 ただし本人は、「ネトウヨとお前らが嘲る中にオレがいる事を後悔するといい。」(2019年12月7日)ともツイートしており、犯人自身が、ネトウヨだとみなされることもあると自覚しつつ、しかしそれほど単純な存在ではないと示したかったようにも見える。 銃撃犯のこのような自己認識は、単純二元論につかりきっていた層を混乱させるだろう。混乱のあまり、目を背けたくなる人もいるかもしれない。 これまでのネットの一部の論調では、安倍元首相を襲うほど憎む人は、「反日、野党支持、韓国には友好的」といった人物でなければならなかった』、「単純二元論」は現実の複雑性を度外視した空論に近いのだろう。
・『「日本はサタンの国」、旧統一教会と安倍氏の複雑な関係  単純な二項対立の世論から変わりつつあるもう一つの理由は、安倍元首相が旧統一教会にビデオメッセージを送るなど友好的に見える姿勢を示していたことだろう。祖父である岸信介元首相は「反共」で統一教会と思惑が一致し、近い関係にあったとも報道されている。 前述した通り、旧統一教会は韓国に始まる。その教えは、日本は「サタンの国」であり、贖罪(しょくざい)しなければならないと説く。 「ネトウヨ」の特徴の一つが「嫌韓」であることを考えると、これは彼らにとって大きな矛盾だろう。支持していた安倍元首相が、「反日」感情が強い韓国の宗教とつながっていたのだから。 ネット上でとうとうと語られてきた対立構造がいかに表面的で、実のないものだったか。その一端が、今回の事件以後に明らかになったのである』、「ネトウヨ」の論理破綻を見るのは心地よい。
・『「敵」「味方」の単純二元論に注意を  安倍元首相は、今年4月26日に第三者のツイートを引用する形で「相変わらずの朝日新聞。珊瑚は大切に。」とツイートした。 これは言うまでもなく1989年の朝日新聞サンゴ記事捏造事件を当てこすったもので、フォロワーからは絶賛を持って迎えられている。6月4日にも同じく「珊瑚を大切に」とツイートしたのは、この反応が良かったからだろう。 このように、フォロワーに対して分かりやすく「敵」を指し示す行為は、ツイッター上ではウケる。フォロワーにとっては「敵」に向かって団結することで忠誠心を示せるからだろう。 けれど本来、分かりやすく単純化して「敵」と「味方」に分けられることばかりではない。国葬に賛成か反対かにしても、賛成する人が全て「右寄り」というわけでも、反対する人が全て「左寄り」というわけでもない。 単純二元論の落とし穴にはまらずに、それぞれの個人が目の当たりにする複雑な現実をそのまま受け取り、どのように対話につなげていくか。どのように共通項を見いだせるか。これからの時代では、失われた対話を取り戻さなければならないと感じる。 ネット上では、安倍元首相と統一教会の関係を追及することに懐疑的な人に向かって「旧統一教会か」といった言葉が投げられているのも見かける。疑惑は追及されなければならないが、レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい』、「レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい」、同感である。

次に、8月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「大阪王将、舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻」を紹介しよう。
・『自衛隊のセクハラ、京都・舞妓の未成年飲酒や性的接待、大阪王将ナメクジ騒動など、SNS上での「告発」が相次いでいる。少し前まで、一般人の告発といえば週刊誌への持ち込みがメインだったが、告発の手段が変わってきた。これから考えられる展開とは』、興味深そうだ。
・『SNSで告発、3人の共通点とは  ナメクジが大量にいる――。 写真付きツイートが瞬く間に拡散されたのは、7月24日。大阪王将の仙台市内にある店舗の元従業員の男性が、勤務当時の不衛生さを訴えたのだ。ナメクジやゴキブリが大量発生していたことや、ネコを2年半にわたって飼育していた実態が明かされ、同社は7月27日にプレスリリースで謝罪した。 この元従業員男性は28日には顔出しで会見を行い、新聞社などの取材を受けている。また、7月末までに仙台保健所が、該当店舗に立ち入り検査を行ったことが報じられた。 飲食業にとって致命的とも言える衛生面についての告発とはいえ、これほどのスピードで企業側がある程度の事実を認め、対応が取られたのは驚きではないだろうか。 これがもしも内部告発であれば、根本的な対策は取られなかった可能性もある。実際、元従業員男性は、過去にあった保健所の衛生検査のあとも、環境改善には至らなかったと発言している。 告発が多くの人の目に止まり、企業が説明をしなければならない状況になったからこその対応であり、男性もそれを狙っていたはずだ。 これ以外にも、SNS発で世間を騒がす告発が相次いでいる。 元女性自衛官の五ノ井里奈さんが自衛隊在籍時代の壮絶なセクシュアルハラスメント被害を語った動画がアップされたのは6月末。この動画はツイッターなどで拡散され、五ノ井さんはその後もツイッターで自ら発信を続けている。 また、同じく6月末にツイッターで、京都・祇園で舞妓をしていた桐貴清羽さんが、宴席での未成年飲酒や「お風呂入り」と呼ばれる混浴など性的サービスが黙認されている状況があったと告発した。 五ノ井さんや桐貴さんの告発については、性的な被害が絡むためか主要紙は報道しておらず、週刊誌やウェブメディアが本人の告発を「後追い」をしている状況だ』、「五ノ井さん」の事件に関しては、9月29日に陸上自衛隊トップの陸上幕僚長が陳謝する形になった。
・『デジタルネイティブたちが選んだ告発手法  3人の「告発」には、共通点がいくつかある。 まず、3人とも20代前半と若いこと。いわゆるデジタルネイティブ世代であり、思春期の頃にはすでにSNSやウェブメディアに親しんでいたはずだ。 また、3人とも顔出しで会見や取材に臨んでおり、匿名の存在ではない。 これまでもツイッター上で告発やリークに近い投稿は見られたが、その多くは匿名であったり、あるいは拡散されるとアカウントごと消してしまうといったこともあった。 3人の場合は、最初から大きな問題に発展することを望んだ、覚悟の告発であることがうかがえる。SNSの使い方が身になじんでいるデジタルネイティブ世代が、共感も反発も受けることを覚悟した上で、なるべく大きなインパクトを与える手段を選んだように見える。 少し前まで、リークや告発、不祥事のスクープといえば週刊誌、それも週刊文春の独り勝ちという状況だった。ここへ来て、事件の当事者が自ら発信し、それをメディアが追いかける状況になりつつある。 ちなみに、世間を大きく騒がせた「センテンススプリング」騒動(人気女性タレントと人気バンドメンバーの不倫騒動)は2016年1月。すでに6年前であり、今回の告発者たち3人は10代後半だった時期である。30代〜40代以降にとっては当時のLINE漏洩はいまだに記憶に新しいが、当時10代だった若者たちの視点では、文春よりもSNSなのかもしれない』、確かにいまや「告発」の手段は「文春よりもSNSなのかもしれない」。
・『告発系インフルエンサーの「信頼感」  さらに、YouTuberら、ネット上のインフルエンサーの存在も見逃せない。 8月1日には、山口県阿武町の4630万円誤送金問題で起訴・保釈された田口翔被告の独占インタビューを人気ユーチューバーのヒカルが配信した。 田口被告は誤送金された給付金を使い込んでしまったものの、ことの経緯やその後明らかになった境遇などから同情も買い、注目度は高かった。一時はテレビ局もこぞって取り上げていた誤送金問題の被告を、「独占」でインタビューしたのがユーチューバーだったというのは、アラフォー以上の世代からすると時代の移り変わりを感じる出来事なのではないか。 あるいは、NHK党から出馬して当選し、あれよあれよという間に国会議員となったガーシーこと東谷義和氏は、自身のYouTubeで有名人の裏話を暴露し続けて大きな注目を集めた。多くは芸能人やYouTuberのうわさ話だったが、参院選前には楽天の三木谷浩史会長について連続で配信。動画が相次いで強制停止されたこともあって余計に話題となった。 このほかにも、ツイッターをメインとしてネット上では複数の告発系インフルエンサーが台頭し、それぞれのキャラクターによってファンを集めている。 特筆したいのは、彼らに対するタレ込みの多さである。 週刊誌などマスコミに情報をリーク、あるいは告発する人はこれまでもいたが、もともとマスコミにつながりがなければ心理的ハードルはやや高い。しかし毎日ネット上で個人発信を目にしているインフルエンサーならばその人柄がわかるし、ダイレクトメールですぐにコンタクトを取ることもたやすい。 インフルエンサー側でもそれがわかっているから、一見コワモテでありながら親近感を持たれやすく気さくな印象のキャラクターに見えるよう調整していくのだろう』、「ガーシーこと東谷義和氏」は、アラブ首長国(UAE)に滞在中で、国会からの帰国要請も無視して、詐欺容疑などでの逮捕を恐れて滞在を続ける意向だが、国会議員としての出席の義務を果たさない姿勢には、批判が高まっている。
・『個人、メディア、インフルエンサー…手段による長所短所  ここからは、個人によるネット上の告発、週刊誌などのメディアを通しての告発、あるいはインフルエンサーに情報をリークする形での告発、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみたい。 個人が直接的にネット上で情報発信をし、なんらかの告発を行う場合のメリットは、まずはそのインパクトだろう。 メディアを通した場合、字数制限や媒体のフォーマットが踏まえられることから、良くも悪くも体裁が整えられ、情報が精査される半面、告発した当事者のリアルな語りがどうしても薄まりがちだ。 しかし、当事者の語りの細部に宿る生々しさを、受け手は見逃さない。本人がYouTube動画で語ったり、ツイートを投稿したり、あるいはブログに自らつづったりする行為により、それを見る人は当事者が差し出す情報をありのままに受け取る。 一方で、媒体を通さない告発は、発信者がその反応をダイレクトに受け取ってしまうデメリットもある。前述したように、それを最初から理解しての告発であればいいが、反響の大きさに恐れをなしてアカウントを消してしまうケースも過去にはあった。 また、個人での発信の場合、その責任を個人がそのまま引き受けることになる。媒体が取材をして記事にする場合、「これをそのまま書いたら名誉毀損で訴えられかねない」という箇所はあらかじめぼかしたり、その内容に触れなかったりすることがある。告発者が「それでも書いてほしい」という場合でも、媒体の都合でそれがかなわないことがある。 個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある。 「あのインフルエンサーが取り上げているのだから、ちょっと話を聞いてみよう」という気持ちになりやすく、親近感も湧きやすい。テレビで芸能人が一般人をインタビューするような企画のネットバージョンと言えるだろう』、「個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある」、その通りだ。
・『既存メディアはどう変わるべきなのか  スクープはこれまで、週刊誌や新聞などメディアの専売特許だった。それが今やネット上のインフルエンサーに取って代わられつつあり、さらに当事者自らが声を上げ、それが当たり前のように受け取られるようになった。 この時代におけるメディアの役割として求められているのは、当事者が望む社会の変化をどう促していけるかだろう。これまではスクープそのものに価値が置かれていたが、スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ。 世論感情に訴えるすべであれば、インフルエンサーの方がたけているようにも見える。スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない。 過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか』、「スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ」、「スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない」、「過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか」、同感である。

第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンライン「「浅草の人力車」の意外な救世主、「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311547
・『東京・浅草といえば、浅草寺、仲見世、人力車のある風景を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、コロナ禍で観光業界は大打撃を受け、人力車業者も窮地に追いやられた。乗せる観光客の姿が消え、辞める車夫たちも相次いだのだ。そんな浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、これまで人力車に乗ろうとしなかった東京近郊で暮らす人たちと若い女性たち、そしてインターネット通販最大手の米Amazon.comだった』、「車夫たちを救ったのが」「若い女性たち」はともかく、「米Amazon.com」とはどういうことなのだろう。
・『浅草に戻りつつある活気、人力車が再び走り出した  新型コロナ感染拡大で打撃を受けた東京・浅草の街に、この夏、観光客が戻ってきた。雷門前の広場では、人力車の車夫たちが通りかかる人に声をかけたり、記念撮影を手伝ったりしている。 浅草には人力車で観光案内をする事業者が20社ある。観光客が激減した浅草の街で再び人力車が走るまで、車夫たちは試行錯誤を続けてきた。 「去年、おととしはですね…本当に浅草も大変でした。われわれの業態だけじゃないですけど、いつも人が並んでいた浅草の人気飲食店でも、客が入らない。われわれもコロナ前は人力車を何十台も稼働していたのが、2台だけ稼働させる状況でした。それでも1日営業してお客は1組いるか…という状況でした」 こう語るのは、全国の観光地で200台以上の人力車を所有し観光案内などを行うえびす屋浅草の梶原浩介所長(40)。今年は浅草にも人出が徐々に戻り、8月中旬の36度を超える真夏日でも、車夫一人につき一日5~10組ほどの客を乗せて走った。 新型コロナウイルスが感染拡大するまではえびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減ったという。 「飲食店や宿泊施設などと違って、うちは季節やイベントごとに従業員の数も変わるんですが、大体従業員のうち3割ほどは、学生アルバイトでした。アルバイトが大学を卒業すると同時に、毎年入れ替えが起こるんですね。それが、コロナ禍でアルバイトは出ていく一方になりました」 辞める車夫たちが相次ぎ、観光客が来ない浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、インターネット通販最大手の米Amazon.comと、東京近郊で暮らす人たちだった』、「えびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減った」、かなり大きな影響だったようだ。
・『行き場を失った地元民と「映え」を求める若い女性たちのニーズ  えびす屋浅草に所属する車夫歴17年のベテラン・平恒信さん(39)は、コロナ禍で観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ。やっぱり遠くへ行けないっていうのもあると思うんですけれど、近場だけど今まで来たことがない場所に行く。そこで新しい発見があり、旅行気分に浸れて満足するという人が多いです。今までになかった流れです」 この流れは今も続いていて、地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた。これまで20~30代の女性がメインだったのが、最近は10代から20代前半が増えてきている感覚があるという。実際、雷門の前や商店が並ぶ仲見世では、おそろいの浴衣や現代風にアレンジを加えた着物などを着て、スマホで撮影しながら歩く若い女性2人組が多くみられた。 「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」(平さん) ちなみに、人力車の値段はコースによって異なるが、雷門から浅草寺付近を巡る一区間コース(12分)を2人で乗って4000円。高校生や大学生ら若い世代にとって決して安くはない金額だが、旅行やイベントに行きづらくなった今、近場で非日常的体験ができて、かつSNS映えするという魅力がある』、「コロナ禍で(外国人)観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ」、「地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた」、「「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」」、なるほど。
・『米Amazonと進めたオンラインツアー、市場はグローバルに  さらに、えびす屋は、観光客が少なくなったことで、人力車以外のサービスに力を入れ始めている。 「2020年からオンラインツアーを始めました。オンライン観光の需要がコロナ禍で高まったんです」(平さん) オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い。 「例えば、ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」 「浅草寺周辺のお買い物ツアー以外にも、歴史的なスポットを巡るツアーや、人力車に乗るツアーなど10種類ほどのツアーを用意し、車夫たちが1日何件か回っていたという感じです」(平さん) 今でもオンラインツアーは海外から人気が高いという。これまでの街で声をかけてお客さんを乗せるというアナログの営業スタイルから、一気にオンライン化が進み、グローバルに市場が広がった形だ。 実は、これはインターネット通販最大手の米Amazon.comのプラットフォームに参入したことで生まれたサービスだ。 「元々口コミサイトで弊社の人力車は海外の観光客にも高く評価されていました。そういう背景もあり、コロナ禍前からオンラインツアーの計画を進めていましたが、本格的にサービスをスタートできたのがちょうど2020年だったんです」(梶原所長) それから、オンライン事業部という部署も新設して、新たに人を雇用することもできたという』、「オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い」、「ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」、案内の「車夫」には語学力が求められる筈だが、以下にみるように、「車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった」、と問題なさそうだ。
・『車夫たちの一番の強みは「おもてなし精神」  新たな事業かつ英語を必ず使わなくてはいけないという状況に急転したわけだが、車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった。 「もともと海外で身に付けた英語スキルを落としたくないという理由で、人力車で働きたいという人が多くいました。飲食店や宿泊施設ではマニュアル的な英語しか使わないこともあるようですが、車夫は会話が多様で、コミュニケーション力が必要とされます。自分のことを信用してもらう必要があるし、お客さんの心にスッと入っていくような語学力やスキルが大事なんです」(梶原所長) 平さんも元々オーストラリアの語学学校に通った後、カフェで働いていた経験もあり英語は堪能。しかし、語学力以上に大事なのは「おもてなし精神」だという。 「どこからどこまで行けたから良かったというのではなく、お客さまを楽しませるっていうのが、僕たちの根底にある。自分自身が商品とも言える部分があるので、毎日地域の勉強をしたり、お客さまのためにどんなことができるか、“おもてなし”を研究したりしています」(平さん) コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ。 (コロナ禍になってからは)雷門の近くをみんなで掃除したり、オンラインで集まって、『僕はこういうルートが好きです』っていう発表会をしたり。どうやったらお客さんを楽しませることができるのかなっていう勉強会とかを(緊急事態宣言下の頃に)始めたんですよ。今の機会だからできることっていうのをみんなで模索してきたんですね。いつかまた観光ができる日に向けて、この2年間準備してきたわけです」 今、浅草観光のビジネス業態はコロナ禍前よりも広がったように見える。思えば、東京オリンピック・パラリンピックで最大限に発揮されるはずだった日本の「おもてなし」だが、コロナ禍をきっかけに想定外の進化を遂げ、発展していきそうだ。 ※この記事はダイヤモンド・オンラインとYahoo!ニュースによる共同連携企画です』、「コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ」、インバウンドが本格化を受けて、「人力車」等のサービスも急速に「発展」しているのだろう。
タグ:SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター) (その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機) ダイヤモンド・オンライン 鎌田和歌氏による「「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱」 「政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない」、その通りだ。 確かに機械的な「レッテル」貼りにはうんざりさせられる。 「単純二元論」は現実の複雑性を度外視した空論に近いのだろう。 「ネトウヨ」の論理破綻を見るのは心地よい。 「レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい」、同感である。 鎌田和歌氏による「大阪王将、舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻」 「五ノ井さん」の事件に関しては、9月29日に陸上自衛隊トップの陸上幕僚長が陳謝する形になった。 確かにいまや「告発」の手段は「文春よりもSNSなのかもしれない」。 「ガーシーこと東谷義和氏」は、アラブ首長国(UAE)に滞在中で、国会からの帰国要請も無視して、詐欺容疑などでの逮捕を恐れて滞在を続ける意向だが、国会議員としての出席の義務を果たさない姿勢には、批判が高まっている。 「個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある」、その通りだ。 「スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ」、「スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない」、「過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン「「浅草の人力車」の意外な救世主、「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機」 「車夫たちを救ったのが」「若い女性たち」はともかく、「米Amazon.com」とはどういうことなのだろう。 「えびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減った」、かなり大きな影響だったようだ。 「コロナ禍で(外国人)観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ」、「地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた」、 「「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」」、なるほど。 「オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い」、 「ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」、案内の「車夫」には語学力が求められる筈だが、以下にみるように、「車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった」、と問題なさそうだ。 「コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ」、インバウンドが本格化を受けて、「人力車」等のサービスも急速に「発展」しているのだろう。
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メディア(その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー) [メディア]

メディアについては、7月13日に取上げた。今日は、(その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー)である。

先ずは、6月24日付け文春オンライン「日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55249
・『ジャーナリスト・小松東悟氏による「日経新聞で何が起きているのか」(「文藝春秋」2022年7月号)を一部転載します。 最大の焦点は「天下りの禁止」  これからピークを迎える大手企業の株主総会シーズン。そのなかで、財界が密かに注目しているのが6月16日に予定されているテレビ東京ホールディングス(HD)の株主総会だ。民放大手、いわゆるキー局のなかで格下の扱いであるテレビ東京の総会がそこまで関心を集めるのは、今回の総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係だからだ。そして、それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣でもある。 テレビ東京HD(以下テレ東)は日経が32.6%を出資する持分法適用関連会社だが、同社の社長は1973年就任の佐藤良邦氏以来、半世紀にわたって日経からの「天下り」ばかり。実質的には植民地だ。 それがテレ東の経営効率を下げている、とかみついたのが、香港を拠点とする米国系投資会社、リム・アドバイザーズだ。アクティビスト・ファンド(いわゆる「物言う株主」)として著名な同社は4月14日、テレ東の定時株主総会に合わせて株主提案書を送りつけた。そこには、普段は日経からの指弾を恐れている財界人が溜飲を下げるような批判が並んでいた。 リムの提案は以下の7項目だ。 1 日経からの天下りの禁止 2 顧問等の廃止 3 社外取締役の選任 4 取締役報酬の個別開示 5 資本コストの開示 6 政策保有株式の売却 7 剰余金の処分 これらの論点はいずれも相互に関連しているが、最大の焦点は「天下りの禁止」である。 テレ東の取締役トップ3である小孫茂会長、石川一郎社長、新実傑専務はいずれも日経で取締役を経験した人物だ。さらに、この6月からは同じく日経出身の吉次弘志・常務執行役員が常務取締役に就任する。そうなれば社内取締役7人のうち4人が日経、プロパーは3人のみになる。) ほかの民放大手にも全国紙の資本が入っており、新聞社から経営者を迎える慣行はある。しかし、テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様といっていい。 こうした要求を突き付けられ、テレ東はもちろん日経もパニック状態となった。翌日には、東洋経済オンラインのスクープにより株主提案の内容は市場の知るところとなった』、「テレビ東京の」「総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係・・・それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣」、「テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様」、興味深そうだ。
・『日経に牙をむいた元記者たち  パンドラの箱を開けたのはリムの日本投資担当者である松浦肇氏。実は日経新聞出身だ。1995年に入社し、主に証券部で数々のスクープを放ったが、ニューヨーク特派員を最後に退職。現地で産経新聞の編集委員を務めた後、金融界に転じた。 実父の松浦晃一郎氏は駐仏大使やユネスコ事務局長を務めた大物外交官。「日英仏のトリリンガルで、米コロンビア大学で複数の修士号を取得するなど経歴的にはピカピカ。だが、本人は坊主頭で筋骨隆々、むしろ野武士を思わせる人物だ。これまでの投資先を見る限り、本気で『世直し』のためにアクティビストをやっているふしがある」(元同僚)。 その野武士が、テレ東の新たな社外取締役候補として連れてきたのはこれまた日経OB。自らが師と仰ぐ阿部重夫氏だ。在職中に日本新聞協会賞を2回受賞した古豪である。 阿部氏は退社後に複数の媒体で編集長を務めた。月刊誌『選択』編集長時代には、2003年に当時の鶴田卓彦社長が退陣に追い込まれた際に日経の内情を徹底的に暴いた。 この事件は、当時日経新聞ベンチャー市場部長だった大塚将司氏が、社員株主として鶴田卓彦社長解任動議を提出した騒動に端を発する。子会社ティー・シー・ワークスでの融通手形操作によって巨額の損失が発生したことと、不適切に会社経費を使用した疑惑によるものだ。鶴田氏はスキャンダルにまみれて退場したが、大塚氏も1度は懲戒解雇された後味の悪い展開だった。『選択』2003年3月号は、日経の企業風土を端的に描いた。 〈組合は御用組合、融資銀行は日経に気兼ねしてモノ申せない。株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮である。だから企業から『企業統治のお説教だけは日経から聞きたくない』と言われるのだ〉』、普段は「企業統治のお説教」を垂れている「日経」が、「株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮」、「コーポレートガバナンスの北朝鮮」とは言い得て妙だ。
・『鶴田元側近の「OK戦争」  鶴田事件当時の経営風土が今も変わらぬことを象徴するのが、日経とテレ東それぞれの最高実力者だ。 日経のトップである岡田直敏会長、テレ東の小孫茂会長は、鶴田事件の前後に秘書室長を務めていた。ともに鶴田氏の毎夜のクラブ通いに付き添い、ゆがんだ統治構造にどっぷりつかり、それに順応してきた。 2人はともに1976年に日経に入社した。20人ほどしか採用されなかったという少ない同期のなかで、早くからお互いを意識していた。小孫氏は日経の多数派だった早稲田大学出身で、岡田氏はこのころは珍しかった東大法学部卒。記者としての力量に自負が強い小孫氏は、事務処理能力がとりえで入社当初から経営者になりたがっていた岡田氏のことを軽んじていたという。 性格は対照的だ。寡黙な岡田氏に比して小孫氏は気性が激しく、ゴルフ場でもキャディーを怒鳴りつける悪癖で知られる。大企業トップには珍しいキャラクターの持ち主というほかない。「最近は怒鳴るのは我慢し静かな口調でおどすので、よけいに怖い」(テレ東関係者)。 一方の岡田氏は「そもそも人づきあいが苦手で、記者時代も取材対象への食い込みを競うスクープ合戦とは無縁。さしたる功績もなかったが、企画づくりの手際はよかった。日経新聞の仕事はニュースの解説だと思っているようだ」(日経のベテラン記者A氏)。これでは水と油だろう。 日経の本流である経済部のエリートコースを歩んだ2人は社長レースでもデッドヒートを繰り広げた。社内で「OK戦争」と言われる全社を巻き込んだ争いの結果は岡田氏に軍配が上がり、小孫氏は涙をのんでテレ東に転出した。それまでテレ東社長の座は、歴代の日経トップが論功行賞のために側近を「天下り」させるポストだった。そこに岡田氏に敗れた小孫氏が派遣されたことは、日経の人事抗争に上場会社であるテレ東を巻き込む結果となった。岡田氏が意に添わぬ人材をテレ東に放逐する一方で、小孫氏は同社の独立王国化を図ってきた。 たとえば2020年度にはテレ東本社ビルの貸し主である住友不動産の株を政策保有株(いわゆる持ち合い株)として大幅に買い増した。これは、政策保有株の存在は企業経営を歪めると紙面で繰り返し論じてきた日経の方針と相容れないはずだが、テレ東が押し切ったかたちだ。 日経に遺恨を抱える「天下り」に勝手なことをされるテレ東こそいい面の皮だ。「ニュース番組に、テレ東側は望んでいない日経記者の出演を押し付けられることも増えた」とテレ東関係者は語る。 今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した』、「今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、「読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、とは手厳しい。
・『外資が問題視する「天下り」  テレ東が無傷だったのは、アクティビストも日経を恐れていたからだ。それが証拠に、TBSHD、テレビ朝日HD、フジ・メディアHDなどほかのキー局はすでにアクティビストからリストラや増配などを厳しく求められてきた。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るのが共通点で、現預金や不動産を豊富に持っているわりに利益水準は低い。要は資産を有効に使えていないのだ。 2022年3月末時点でテレ東HDの純資産は898億円に及ぶが、足元の時価総額は約540億円。PBRは0.6倍にすぎない。同業他社と同じメタボ体質ということになる。テレ東だけが無事だったのは、日経を敵に回して記事で報復されるのは、一般企業はもちろんアクティビストにとってもリスクだからだ。 テレ東は5月12日にリムによる株主提案に対する「取締役会意見」を公表したが、事前に予想された通り一切要求に応じない「ゼロ回答」だった。株式市場関係者をあきれさせたのは、資本コストの開示を拒否したことだ。資本コストとは企業の資金調達に伴うコストのこと。資本コストを超えた事業収益率をあげていないビジネスは投資家の期待に応えているとはいえない。 テレ東は「競争に影響を与える情報である資本コストを広く一般に開示すると、当社が今後実施する成長投資へ向けた交渉等において、不利益が生じる恐れがある」として開示を拒絶した。同時に「当社グループは放送事業の免許を受け、災害報道等では国民に広く早く、かつ切れ目なく情報をお届けする義務があり(中略)相応の余裕資金や自己資本が必要です」と正当化した。 災害報道うんぬんの事情はどこのテレビ局でも同じ。他局と比べてテレ東の情報開示に関する姿勢はひときわ消極的で、経済報道を看板とする企業とは思えない。) 政策保有株については「段階的かつ可及的に速やかに売却していくことが適当」としながらも「様々な経緯を踏まえて現在の状態になっている」と開き直った。 日本の株式市場で大株主や主要取引先からの「天下り」禁止は大きなテーマになっている。リムは2021年には平和不動産、2022年には鳥居薬品に、取引先や親会社からの天下りの禁止を求める株主提案を行った。 コーポレートガバナンスに詳しいギブンズ外国法事弁護士事務所のスティーブン・ギブンズ氏は、一般論としつつ、「大株主の企業で出世できなかった人間を『天下り』させるのは、子会社の経営効率を悪化させる。これはまさに、大株主には利益となる一方、子会社の一般株主には不利益をもたらす『利益相反』に当たる」と話す。 こうした議論は外国人を中心に機関投資家の賛同を得やすくなっており、松浦氏はそこに勝機を見出しているのだろう。 5月20日にテレ東はオンライン形式で2022年3月期の決算説明会を開催した。その場では投資家、アナリストから「日経との提携による売り上げ、営業利益の比率はどれだけあるのか」「6月からの人事案では社内取締役の過半数が日経出身となるが、狙いは何か」といった質問が飛んだ。リムの株主提案を受け、日経との関係に投資家からも厳しい目が向けられている。 リムのテレ東株の所有比率は1%台と見られる。今後の焦点は6月16日のテレビ東京HDの定時株主総会でリムの提案がどれだけの賛成票を集めるかだ。日経が3割強の株を押さえていることを考えれば、いずれかの議案で10%以上の賛成票を集められればリムとしては満足だろう。その場合は来年以降も繰り返し株主提案をつきつけ、テレ東のガバナンス改善を求めるとみられる』、6月16日付けの「テレビ東京HDの定時株主総会」の決議通知によれば、会社側提案が可決、株主側提案は否決されたようだ。
・『現場を殺す「デジタルシフト」  アクティビスト襲来という「外患」の前に、日経は「内憂」も抱えていた。岡田氏が進めてきたデジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱だ。 ジャーナリスト・小松東悟氏による「日経新聞で何が起きているのか」は、「文藝春秋」2022年7月号と「文藝春秋digital」に掲載されています』、「デジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱」、とは穏やかではないが、ここではこれ以上は分からないので、今後、分かれば改めてお知らせしたい。

次に、9月16日付け文春オンライン「日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/57331
・『「編集長が二代連続で処分され、『うちの会社のコンプライアンスは大丈夫なのか?』と疑問の声が挙がっています」 こう嘆息するのは、日本経済新聞社の現役社員・A氏である。
・『けん責処分の理由は?  社内に波紋が広がったのは、8月23日のこと。 「社内のイントラ(社員間の情報共有ツール)で、『日経フィナンシャル』編集長と論説委員を兼務するX氏の同日付のけん責処分が発表されたのです。会社からはX氏の処分理由について具体的な説明はなく、『部下へのパワハラではないか』などの憶測を呼びました」(同前) 日経フィナンシャルは、紙の新聞の部数減に歯止めがかからない中、デジタル化を推し進める日経の渾身の一手だった。 「一昨年、社運を賭けて始まった新媒体で、“金融の未来を読むデジタルメディア”として華々しく売り出しました」(同前) その価格設定もなかなかの強気だ。 「金融業界でバリバリ働くビジネスマンをターゲットにしたコンテンツが満載で、月額6000円の購読料は日経本紙よりも高額。ですが、会員数はすでに1万6000人を超えました。岡田直敏会長が社長時代に始めた肝煎りの事業。創刊1年目で黒字に転換したことで長谷部剛現社長から社長賞も授与されています」(同前)』、「月額6000円の購読料」で「会員数はすでに1万6000人を超えました」、とは大したものだ。
・『X氏は将来の社長候補  花形メディアを率いるX氏は有名私大を卒業後の1993年に入社。経済部で金融や財界を担当した後、ロンドンやシンガポール、ニューヨークへの駐在を経て、20年11月に編集長に就任した。 「帰国子女で英語がペラペラ。国際金融に明るく、大手メガバンク幹部らにも深く食い込んでいる。社内では王道の経済部出身で海外経験も豊富。同世代にライバルも少なく、将来の社長候補の1人と目されている」(日経社員B氏) そんなX氏に一体何があったのか。小誌が入手した「処罰辞令」のイントラ画面の写しには、X氏の名前とともにこう記されている。〈就業規則第七十七条一項十一号により、けん責とする〉』、「将来の社長候補の1人と目されている」人物が、「けん責」とは大変だ。
・『店の店主と揉めて…  就業規則を読むと、同条文には「他人に暴行、脅迫を加え、または迷惑をかけたとき」とある。 「X氏は取材熱心で毎晩のように取材先と会食を重ねているのですが、そこで店の店主と揉めてトラブルとなってしまったのです。後日、その店から日経本社にクレームが入って事態が露見。今回の処分となりました」(同前) 実は日経フィナンシャルの編集長が処分されるのはこれが初めてではない。 「2年前に初代編集長が後輩記者に悪質なセクハラをしたとして、就任後わずか半年で突然解任され、退社した。その後を託されたのがX氏でした。編集長が二代連続で処分され、社内では“異常事態”といわれています」(同前)』、「編集長が二代連続で処分され」、いくら「編集長」のプレッシャーが強いとはいえ、「“異常事態”」だ。
・『日経広報室の回答は  X氏の周辺を取材するとこんな声も聞こえてくる。 「Xさんは仕事面ではいわゆる“できる男”で経歴もピカピカなのですが、普段から部下に対して歯に衣着せずにものを言うタイプで緊張感が漂っている。その矛先が今回はお店の人に向いてしまったのでは。お酒はなんでもよく飲みますし、飲むととにかく長いんです」(日経社員C氏) 日経広報室に問い合わせると、こう回答した。 「ご質問の社員は、社内規定に基づき処分しました。事実関係は公表していません」 酒席での失態に、反省しきりだというⅩ氏。金融の未来は読めても、自身の未来は読めなかった……』、日経でのけん責処分の重さは分からないが、一般的にはそれほど重い処分ではなく、リカバリー可能なのではなかろうか。

第三に、8月18日付けダイヤモンド・オンライン「【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306523
・『日本で生活していると「日本の報道」に触れることはあっても「世界の報道」に触れる機会はなかなかない。しかし、じつは世界では大きく報道されているニュースでも、日本ではほとんど報道されていないものもある。今回は『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』の著者で元外交官、世界96カ国を訪れた経験を持つ山中俊之さんに「日本人に理解してもらいたい世界の時事問題ベスト3」を聞いてみた。さらに、山中さんがおすすめする「日本目線」だけでなく「世界の目線」に触れられるメディアも必見(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『知っておくべき「世界の時事問題」  Q:山中さんは外交官として活躍され、その後も含めると世界96カ国を訪問されているのですが、日本と世界を比べた場合、報道されているテーマや内容に違いを感じることはありますか? 山中俊之(以下、山中):ものすごくあります。もちろん、どの国も「自分たちの国の目線」はありますし、それぞれに関心があるテーマは違うのですが、日本のメディアは「特にここが弱い」と感じることがあります。 Q:たとえば「いま、日本人にもっと知ってもらいたい時事問題」を挙げるとしたら、どんなものがあるでしょうか。 山中:一番は移民・難民問題です。ロシア・ウクライナの戦争が起こり、避難民のことはけっこう報じられましたが、世界的に見て、日本の人口あたりの難民の受け入れ率や申請して受け入れられる人数は非常に低いです。 移民・難民は世界では大問題で、アメリカ大統領選挙でも主要な論点になります。イギリスがEUから離脱する問題、いわゆるブレグジットも移民・難民の問題が根底にあります。 しかし、日本ではあまり話題になりません。避難民の話が多少あったとしても、総選挙で「難民の受け入れをどうするか」「移民についてこうしていこう」なんて話はまず論点に上がらないですね。それだけ国民の関心が低いということです』、「移民・難民は世界では大問題」だが、「日本ではあまり話題になりません」、その通りだ。
・『なぜ、日本の報道はズレるのか?  Q:世界では大きな論点になるのに、日本ではならないのはどうしてなのでしょうか? 山中:島国で、移民や難民が陸路で来ることがないのは1つの理由でしょうね。物理的に国境を越えて、やってくるのが難しいという点です。 そうした地理的環境も手伝って、日本人のマインドというか、問題意識が非常に低いというのはあるでしょう。かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです。 「難民を受け入れる、受け入れない」以前の話として、もう少し世界の大問題に関心を持つことは必要だと感じます。 以前、ある海外メディアの日本語版をつくっている編集者が「(海外版では載っていても)日本語版にするときに扱わないテーマがあって、それが移民・難民の問題だ」と言っていました。 このテーマを扱っても売れないんだそうです。こういったことが積み重なって、「日本の報道」と「世界の報道」との間に大きなギャップが生じていくのだと思います』、「かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです」、その通りだ。
・『「再生可能エネルギー」への関心が低い日本  Q:移民・難民問題とは別に、世界と比べて特に日本のメディアが報じないテーマはありますか? 山中:再生可能エネルギーに関する話題ですね。もちろん日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます。 脱炭素を実現する動きは世界では活発に議論されていますし、EUのなかでも特にドイツは熱心に再生可能エネルギーに関して主張していますね。 といっても、社会のなかで、なんでもかんでも賛成、賛同されているわけではありません。 「自然を破壊してソーラーパネルを設置しているなんておかしいじゃないか!」「壊れたらどう対処するのか!」などの反対意見もありますし、「風力発電の騒音の問題」など賛否両論いろんな意見が出て、活発に議論されています。 日本もそうですが、世界の国々だって、旧来の電力系の会社から多くの献金を受けている政党や政治家はいますから、どの国も、ものすごく再生可能エネルギーへの移行が進んでいるわけではありません。 そこは一筋縄ではいかないんですよ。ただ、再生可能エネルギーの問題が日本に比べて盛んに報道され、活発に議論されていることは間違いありません』、「日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます」、残念なことだ。
・『日本は「個人の影響力」を軽視している  Q:地球環境を考えれば、再生可能エネルギーの問題を考えることの大切さは日本人も理解していると思うのですが、そこへの関心が低かったり、活発な議論にならないのはどうしてなんでしょうか。 山中:アメリカやヨーロッパでも関心のある人とそうでない人の差はあるので、そこは日本も同じだと思います。ただし、報道のされ方というか、討論番組のつくりにはちょっと違いを感じます。 Q:「番組のつくり」が違うとはどういうことですか? 山中:日本のテレビでも討論番組はそれなりにあるんですが、あそこに出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかりのように感じるんですよ。 政治家や弁護士はもちろん、さまざまな活動をしている人が出演する場合でも、NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多いですよね。 Q:確かにそうですね。 山中:一方、アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論しているんです。 個人的な印象ですが、日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます。 その辺りからも「個人の影響力が軽視されている」と感じますね。 でも、日本でも少しずつ、そうした影響力を無視できないようになっていくと思います。株式総会のシェアホルダーとしてやってきて「環境問題に詳しい人が取締役に1人も入っていないじゃないか!」「そんな決議は賛成できない」と言い出す人は出てくるでしょう。 もちろん、そうした人がたくさんの株を持っていることは稀でしょうから、最終的に提案は通らないでしょうけど、でも、少しずつ議論は活発にはなっていくと思います』、「討論番組のつくり」、「日本のテレビでも討論番組・・・に出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかり」、「政治家や弁護士・・・NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多い」、「アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論」、「日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です」、「海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます」、彼我の違いは大きいようだ。
・『日本のメディアは政治関連のウェイトが高すぎる  山中:最後にもう1つ挙げるとしたら、やはり「新冷戦」というか「世界の安全保障」についてでしょうね。ロシア・ウクライナの戦争が起こったことで世界は再び分断に向かっているとは思うんです。 これからロシアが中国とさらに結びついていく可能性はありますし、少なくとも、軍事力によるバーゲニングパワー(国際間の交渉・折衝における対抗力)は強まったと思います。 実際に軍事行動を起こさないまでも、軍事行動を起こすギリギリのところまでいってから妥協点をみいだす。そんな外交手段、外交圧力がもっともっと起こってくるかもしれません。 2008年にロシアがジョージアに侵攻しましたが、それ以前の国際政治の専門家が現代の状況を見たら、この現状に驚嘆すると思います。それくらい軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います。 Q:日本で生活していると、どうしても「日本目線の報道」にしかなかなか触れることができないのですが、少しでもグローバルな情報、視点をキャッチするために「これはチェックしておいた方がいい」というメディアはありますか。 山中:できれば、英語メディアを取り入れたいです。「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです。 私はよく新聞記者の方ともディスカッションさせていただくのですが、日本の報道は政治に寄りすぎているように感じます。もっと世界情勢や経済、ビジネスの最先端などの報道がされてもいいのにと常々思っています。 首相が何を言ったとか、何をしたとか、選挙がどうなっている、などもいいのですが、政治家の失言やスキャンダルも含めて、政治の話題が多すぎますよね。 そういう意味でも、ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います。)(著者紹介はリンク先参)』、「軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います」、「「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです」、「ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います」、このブログでもこうした「世界のメディア」の注目記事は出来るだけ紹介するようにしている。
タグ:6月16日付けの「テレビ東京HDの定時株主総会」の決議通知によれば、会社側提案が可決、株主側提案は否決されたようだ。 「今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、「読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、とは手厳しい。 「軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います」、 (その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー) メディア 「日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます」、残念なことだ。 「かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです」、その通りだ。 ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門 ダイヤモンド・オンライン「【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー」 日経でのけん責処分の重さは分からないが、一般的にはそれほど重い処分ではなく、リカバリー可能なのではなかろうか。 「編集長が二代連続で処分され」、いくら「編集長」のプレッシャーが強いとはいえ、「“異常事態”」だ。 「将来の社長候補の1人と目されている」人物が、「けん責」とは大変だ。 「月額6000円の購読料」で「会員数はすでに1万6000人を超えました」、とは大したものだ。 文春オンライン「日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”」 「デジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱」、とは穏やかではないが、ここではこれ以上は分からないので、今後、分かれば改めてお知らせしたい。 「ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います」、このブログでもこうした「世界のメディア」の注目記事は出来るだけ紹介するようにしている。 「「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです」、 普段は「企業統治のお説教」を垂れている「日経」が、「株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮」、「コーポレートガバナンスの北朝鮮」とは言い得て妙だ。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます」、彼我の違いは大きいようだ。 「テレビ東京の」「総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係・・・それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣」、「テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様」、興味深そうだ。 「日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です」、「海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 「討論番組のつくり」、「日本のテレビでも討論番組・・・に出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかり」、「政治家や弁護士・・・NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多い」、「アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論」、 文春オンライン「日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は」
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メディア(その33)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(4)内閣官房長官の絶大な権力、「朝日はこうして死んだ」、泉房穂明石市長との対談:このままでは自滅して沈んでいくだけ 大マスコミと政治家・官僚はしょせん「同じ穴のムジナ」なんです) [メディア]

昨日に続いて、メディア(その33)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(4)内閣官房長官の絶大な権力、「朝日はこうして死んだ」、泉房穂明石市長との対談:このままでは自滅して沈んでいくだけ 大マスコミと政治家・官僚はしょせん「同じ穴のムジナ」なんです)を取上げよう。

先ずは、5月26日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「話題の書『朝日新聞政治部』先行公開第4回〜内閣官房長官の絶大な権力 朝日新聞政治部(4)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95522?imp=0
・『「鮫島が暴露本を出版するらしい」「俺のことも書いてあるのか?」――いま朝日新聞社内各所で、こんな会話が交わされているという。元政治部記者の鮫島浩氏が上梓する『朝日新聞政治部』(5月27日発売、現在予約受付中)​は、登場する朝日新聞幹部は全員実名、衝撃の内部告発ノンフィクションだ。 戦後、日本の左派世論をリードし続けてきた、朝日新聞政治部。そこに身を置いた鮫島氏が明かす政治取材の裏側も興味深いが、本書がもっとも衝撃的なのは、2014年に朝日新聞を揺るがした「吉田調書事件」の内幕をすべて暴露していることだ。 7日連続先行公開の第4回は、内閣官房長官が持つ権力の正体を暴き、それに迎合する番記者たちの姿を浮き彫りにする』、「内閣官房長官が持つ権力の正体」とは興味深そうだ。
・『官房長官には総理より多くの情報が集まる  小泉総理は郵政選挙に圧勝した1年後の2006年秋、安倍晋三氏を後継指名して勇退した。安倍総理は塩崎恭久官房長官ら親密な仲間で主要ポストを固め「お友達内閣」と呼ばれたが、スキャンダルが相次いで失速。2007年夏の参院選で惨敗し、過半数を失う。衆参で与野党が逆転する「ねじれ国会」に突入した。 安倍総理は政権を立て直すため、官房長官にベテランの与謝野馨氏を起用した。政治部に復帰した私は官邸クラブに配属され、与謝野氏の担当を命じられた。官房長官番だ。 官房長官は「内閣の要」と言われる。すべての政策や人事に深くかかわる。総理に上がる情報は、その前に官房長官の手で取捨選択される。官房長官には総理より早く多くの情報が集まる。 領収書不要の官房機密費を管理するのも官房長官の権限。長官室の金庫には常に数千万円の現金が保管され、政界対策や世論対策に投入されていく。官房長官が札束を持ち出した翌日には金庫に現金がすぐに補充される。 もうひとつの武器は、毎日午前と午後に官邸で開く官房長官会見だ。この場の発言が政府の公式見解となる。何をどこまで公にするのか、どういう言い回しにするかが、政局や政策の流れを決める。官房長官は記者会見で政治の主導権を握ることができるのだ。 官房長官の権限は絶大だ。ある意味で総理を上回る。霞が関のエリート官僚たちは総理よりも官房長官の顔色をうかがうことが多い。総理としては最も信頼を寄せる政治家、決して裏切らない政治家を起用したい。安倍総理が塩崎氏を起用したのは同世代で親密な仲間だからだった。しかし「お友達内閣」は参院選で惨敗し、政権立て直しのためベテランの与謝野氏を受け入れざるを得なくなったのだ。 与謝野氏は与謝野鉄幹・晶子夫妻の孫としても有名である。東大を卒業した後、日本原子力発電を経て中曽根康弘元総理の秘書となり、政界入りしたサラブレッド。財務省や経済産業省に大きな影響力を持つ経済政策通として評価される一方、ハト派・リベラル派の顔を持ち、マスコミ界との交流も深かった。 官僚でもとりわけ与謝野氏を敬愛していたのが、のちに経産事務次官になる島田隆氏である(岸田政権で事務次官経験者としては異例の首相秘書官に就任した)。島田氏は与謝野氏が通産大臣の時に信頼を獲得。与謝野氏が小泉内閣で竹中平蔵氏の後継の経済財政担当大臣になり、総務大臣に転じた竹中氏と激しい政策論争を繰り広げた時も、側近として仕えた。どんな職務にあろうとも東京・六本木の与謝野邸に早朝から通い、英字新聞を含め与謝野氏が読むべき記事を用意してから職場へ向かうスーパー官僚だった。衆目が一致する与謝野氏の右腕である。与謝野氏の官房長官就任にあわせて秘書官に就任したのは自然の流れだった』、「総理に上がる情報は、その前に官房長官の手で取捨選択される。官房長官には総理より早く多くの情報が集まる。 領収書不要の官房機密費を管理するのも官房長官の権限。長官室の金庫には常に数千万円の現金が保管され、政界対策や世論対策に投入されていく。官房長官が札束を持ち出した翌日には金庫に現金がすぐに補充される。 もうひとつの武器は、毎日午前と午後に官邸で開く官房長官会見だ。この場の発言が政府の公式見解となる」、「総理より早く多くの情報が集まる」、「官房機密費を管理」、「官房長官会見」で「政府の公式見解」、いずれも重要な役割だ。
・『「俺と竹中とどっちが魅力的か、見せてやろう」  私は官房長官番に就任するにあたり、東京・四谷にある与謝野事務所に挨拶に訪ねた。そこへ現れたのが島田氏だった。彼は「あなたのことはよく知っています」と静かに語り、立ちはだかった。与謝野氏が竹中氏と闘っている時、あなたが竹中番として寄り添っていたことを忘れていない、何をしにここへ来たのか、という含意がそこに読み取れた。私は島田氏に気圧され、しばし立ちすくんでいた。 その時である。事務所の奥から、ややしわがれた声が聞こえてきた。 「島田ちゃん、いいじゃないか。通してやれよ。俺と竹中とどっちが魅力的か、見せてやろうじゃないか」 それが与謝野氏だった。大物政治家とはこういうものだ。度量の広さを見せつけ、周囲の者を取り込んでいく。それは「お友達内閣」に最も欠けていた資質かもしれなかった。私は初対面で与謝野氏に惹かれた。きっと島田氏もそうして惹かれていったのだろう。 与謝野官房長官の記者会見の受け答えは味わいがあった。私は政治家を厳しく追及するのが好きだったが、与謝野氏は答えるべきことは答え、かわすべきことは見事にかわした。文学的、芸術的な表現を交えて受け流していく。それでも食い下がる私とのやりとりをまるで楽しんでいるようであった。自らの識見、理解力、答弁力に対する圧倒的な自信の裏返しであったのだろう。 安倍内閣の菅義偉官房長官の対応は対照的だった。何を聞いても「問題ない」「批判は当たらない」の一言ではぐらかす。各社政治部の番記者もそれを許容し、二の矢三の矢を放たない。そこへ乗り込んだ東京新聞社会部の望月衣塑子記者の厳しい追及に対し、菅氏は不快な表情をみせ、司会役の官邸広報室長は質問を妨害し、質問回数に制限を加えた。醜悪だったのは、各社政治部の官房長官番が望月記者の質問を妨害することに抗議せず、それを黙殺し、官邸側に歩調を合わせたことだった』、「与謝野事務所」の「島田氏」は来客を事前にチェックするという意味で秘書としては有能だ。そのやり取りを聞いて、「通してやれよ。俺と竹中とどっちが魅力的か、見せてやろうじゃないか」と言った「与謝野氏」はさすが「大物政治家」らしい。「与謝野氏は答えるべきことは答え、かわすべきことは見事にかわした。文学的、芸術的な表現を交えて受け流していく。それでも食い下がる私とのやりとりをまるで楽しんでいるようであった。自らの識見、理解力、答弁力に対する圧倒的な自信の裏返しであったのだろう」、これに対し、「菅義偉官房長官の対応は対照的だった。何を聞いても「問題ない」「批判は当たらない」の一言ではぐらかす」、「東京新聞社会部の望月衣塑子記者の厳しい追及に対し、・・・司会役の官邸広報室長は質問を妨害し、質問回数に制限を加えた。醜悪だったのは、各社政治部の官房長官番が望月記者の質問を妨害することに抗議せず、それを黙殺し、官邸側に歩調を合わせたことだった」、「各社政治部」の体質を如実に示している。
・『官房長官番という仕事  官房長官番はなぜこうした行動に出るのか。彼らは自民党幹事長番と並んで政治取材の中核である。官房長官と幹事長には政権の重要情報が集約される。番記者がどれだけ情報を取れるかは、各社の政治報道の「勝ち負け」に直結する。 特に官房長官番は激務だ。毎日2回の記者会見は業務の一部でしかない。官房長官には常に15~20社の番記者が張り付く。朝から晩まで政治家や官僚の面会が相次ぐタイトな日程をかいくぐり、他社を出し抜いて情報を得なければならない。官房長官に食い込んだ番記者は深夜や週末にサシで取材する機会を得る。そこで「特ダネ」をもらうこともあるが、そうした番記者はごく一握り。大半の番記者は「特ダネ」を取れなくても最低限こなさなければならない役割がある。「ウラ取り」だ。 官房長官には外交から内政まで政策全般、選挙から国会まで政局全般、さらに公安情報まで、ありとあらゆる情報が集まる。官房長官が総理の意向を踏まえつつ「OK」したものだけが「政府の意思決定」となる。新聞記事で「政府が~という方針を固めた」と表現されているものの多くは、官房長官の裏付け取材を経たものだ。官房長官が「OK」する前の情報を「政府」の主語で報じるのは禁じ手である。「財務省は~」「外務省は~」という主語にするか、「政府内で~の案が浮上した」「政府内で~の検討が進んでいる」という表現にとどめなければミスリードといっていい。 官房長官番は連日、官房長官から「裏付け」を取るようデスクやキャップからプレッシャーを受けている。「○○省の次官に○○氏が内定したと○○省担当記者が言っているから裏を取れ」「○○省が○○法改正案をまとめたというので裏を取れ」「ワシントンから日米首脳会談の日程情報が入ったので裏を取れ」といった具合だ。これを官房長官会見で聞くわけにはいかない。他社にバレてしまう。 激務の官房長官をサシでつかまえるのは難しい。朝晩に電話するしかない。携帯番号を教えてもらい、電話に出てもらえる信頼関係をつくらなければ仕事にならない。官房長官は忙しい。その合間に着信記録をみて折り返してくれる関係をつくらなければ官房長官番は「失格」の烙印を押されてしまう』、「官房長官番は連日、官房長官から「裏付け」を取るようデスクやキャップからプレッシャーを受けている」、「携帯番号を教えてもらい、電話に出てもらえる信頼関係をつくらなければ仕事にならない」、これは大変そうだ。
・『「特オチ」しても譲れなかった信念  与謝野氏のように厳しい質問を楽しむような官房長官ならよい。しかし菅氏のように厳しい質問をする記者を遠ざける官房長官なら、番記者はどうしてもたじろぐ。嫌われて電話に出てもらえなくなれば日常業務を果たせなくなり、「無能な政治記者」として飛ばされてしまう。 菅氏は政治部や番記者の事情を熟知し、「都合の良い記者」と「不都合な記者」への対応を露骨に変えることで自らへの批判を封じ、番記者全体を「防御壁」に仕立てるのが巧妙だった。番記者たちが望月記者の追及から菅氏を守った真相はそこにある。 与謝野氏は就任1ヵ月で、安倍氏が体調不良を理由に入院したまま退陣したため官房長官を退いた。現職総理が入院するという緊急事態で、与謝野氏の裁きぶりはフェアだった。連日記者会見で丁寧に病状を説明した。その間、安倍後継を決める政局とは一線を画し、次の福田康夫内閣では要職から身を引いた。小渕恵三総理が病に倒れた時に青木幹雄官房長官ら「五人組」が情報をひた隠しにして密室で森喜朗氏を後継総理に決めたことや、安倍総理が入院した際に菅官房長官が総裁選に出馬して勝利したことと比べると、与謝野氏の振る舞いは清廉だった。 私は官房長官番になるにあたり、上司にひとつお願いをした。番記者として官房長官と対等な関係をつくるには、電話で頭を下げて裏付け取材をするわけにはいかない日があることを認めてほしい、ということだった。官房長官会見で厳しく追及した夜に電話して「これを確認させてください」とお願いするようでは、対等な関係はつくれない。「特オチ」してもやせ我慢し、緊張関係を保つことが重要だ。だが、政治取材の要である官房長官番がそうした態度を貫けば、朝日新聞は「特オチ」を繰り返し、番記者だけの問題ではなくなる。政治部としてそれを許容する覚悟が必要であった。 当時の上司は私の願いを受け入れた。私は与謝野氏の後を受け継いだ町村信孝氏まで2代にわたって官房長官番を務めたが、決してへりくだらなかった。与謝野氏も町村氏もそんな私を拒まなかった。記者との緊張関係をギリギリ保っていた時代の政治家だった』、「菅氏は政治部や番記者の事情を熟知し、「都合の良い記者」と「不都合な記者」への対応を露骨に変えることで自らへの批判を封じ、番記者全体を「防御壁」に仕立てるのが巧妙だった。番記者たちが望月記者の追及から菅氏を守った真相はそこにある」、「番記者全体を「防御壁」に仕立てる」とは高度な技だ。「官房長官会見で厳しく追及した夜に電話して「これを確認させてください」とお願いするようでは、対等な関係はつくれない。「特オチ」してもやせ我慢し、緊張関係を保つことが重要だ。だが、政治取材の要である官房長官番がそうした態度を貫けば、朝日新聞は「特オチ」を繰り返し、番記者だけの問題ではなくなる。政治部としてそれを許容する覚悟が必要であった。 当時の上司は私の願いを受け入れた。私は与謝野氏の後を受け継いだ町村信孝氏まで2代にわたって官房長官番を務めたが、決してへりくだらなかった。与謝野氏も町村氏もそんな私を拒まなかった。記者との緊張関係をギリギリ保っていた時代の政治家だった」、「特オチ」を覚悟した「朝日新聞政治部」も大したものだ。「与謝野氏も町村氏もそんな私を拒まなかった。記者との緊張関係をギリギリ保っていた時代の政治家だった」、そんな政治家が少なくなっているのだろうが、寂しいことだ。

次に、6月11日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「元朝日新聞エース記者が衝撃の暴露「朝日はこうして死んだ」 『朝日新聞政治部』著者が明かす」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95754?imp=0
・『巨大組織が現場社員に全責任を押し付ける。メディアが一斉に非難を浴びせるような出来事が、あの朝日新聞で行われた。大企業が陥った「危機管理の失敗」を、エース記者が精緻な目線で内部告発する』、興味深そうだ。
・『社長も大喜びだったのに  隠蔽、忖度、追従、保身、捏造、裏切り。 メディアが政権を責め立てるとき、頻繁に使われる言葉だ。だが、権力批判の急先鋒たる朝日新聞にこそ、向けられるべき指摘だという。元朝日新聞記者の鮫島浩氏(50歳)はこう振り返る。 「'14年9月11日、木村(伊量)社長(当時)が『吉田調書』報道を取り消したことで、朝日新聞は死んだと思っています。同時に、私の会社員人生は一瞬にして奈落の底へ転落してしまいました」 5月27日に刊行された『朝日新聞政治部』が大きな話題になっている。大新聞が凋落する様子が登場人物の実名とともに生々しく描かれたノンフィクションだ。 著者で政治部出身の鮫島氏は、与謝野馨元財務相や古賀誠元自民党幹事長などの大物政治家に食い込み、数々のスクープを放ったエース記者だった。なぜ大手新聞社の中枢に身を置いた彼が「内部告発」をするのか。そして、なぜ朝日新聞は「死んだ」と言えるのか』、どういうことなのだろう。
・『原発事故報道でスクープを連発  時計の針を'12年に巻き戻そう。当時、政治部デスクだった鮫島氏は、先輩に誘われて特別報道部に異動した。 特別報道部は、'05年に朝日新聞の記者が田中康夫元長野県知事の発言を捏造した「虚偽メモ事件」をきっかけに創設されたチームだ。政治部や経済部などから記者を集めて調査報道に専従させる。'11年に起きた東日本大震災と原発事故で、調査報道の重要性が見直されていた頃だった。鮫島氏が加わった特別報道部は、原発事故の報道で輝かしい結果を残していく。 福島第一原発周辺で行われている国の除染作業をめぐり、一部の請負業者が除染で集めた土や洗浄で使った水などを、回収せずに山や川に捨てている様子を取り上げた「手抜き除染」は'13年の新聞協会賞を受賞した。 もっとも世間の注目を集めたのは、「吉田調書」報道だ。福島第一原発元所長の吉田昌郎氏が政府事故調査委員会の聴取に応じた記録を独自入手し、事故対応の問題点を報じたのだ。記事を手がけたのは、特別報道部の記者3人と担当デスクを務めた鮫島氏のチームだった』、「福島第一原発元所長の吉田昌郎氏が政府事故調査委員会の聴取に応じた記録を独自入手し、事故対応の問題点を報じた」のであれば、極めて重要性の高いものだ。
・『木村社長も大興奮、しかし……  このスクープは、'14年5月20日の朝刊1面と2面で大展開された。第一報では、「朝日新聞が吉田調書を独自入手したこと」、「吉田所長は第一原発での待機を命じていたのに、所員の9割が命令に違反し、第二原発に撤退していたこと」が主に報じられた。 報道直後から社内外では大反響が広がった。当時の朝日新聞社内の様子を著書から抜粋しよう。 〈朝日新聞社内は称賛の声に包まれた。市川誠一特別報道部長は「木村社長が大喜びしているぞ。社長賞を出す、今年の新聞協会賞も間違いないと興奮している」と声を弾ませていた〉 吉田調書報道を主導していた鮫島氏は、絶頂の真っ只中にいた。社内では多くの社員から取り囲まれて握手攻めにあい、同僚たちから祝福のメールが届いた。 特別報道部と鮫島氏が、わずか4ヵ月後に転落するとは誰も思わなかっただろう。 絶頂にあった特別報道部に対して、木村伊量社長らはまるで「手のひら返し」をするように冷淡になってゆく。そして事態は、特集記事「慰安婦問題を考える」の掲載をきっかけに急展開するのだった。特別報道部と鮫島氏を待ち受ける過酷な運命を、後編記事「なぜ朝日新聞は『読者に見捨てられる』のか? 元朝日スクープ記者が明かす」でお伝えする』、「後編記事」は見当たらないので推測する他ないが、「所員の9割が命令に違反し、第二原発に撤退していた」、となると、公式見解と矛盾するので、撤回すべきとの圧力がかかり、「木村伊量社長」が撤回させたのだろうか。

第三に、7月9日付け現代ビジネスが掲載した泉房穂明石市長と鮫島浩氏との記念対談「泉房穂×鮫島浩(2)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/97116?imp=0
・『このままでは自滅して沈んでいくだけ 大マスコミと政治家・官僚はしょせん「同じ穴のムジナ」なんです:新刊『朝日新聞政治部』が話題の政治記者・鮫島浩氏と、市長にして全国区の人気を誇る泉房穂明石市長の対談第2回をお届けする。 テーマはズバリ、「なぜ大手マスコミはダメになってしまったのか」。 泉市長もNHK出身だけに、お互いの古巣への苦言も交えてトークがヒートアップ! すべて本音の辛口対談をお楽しみください。(この対談の動画を鮫島タイムスYouTubeで公開しています)』、「泉房穂明石市長」の存在は初めて知ったが、興味深そうだ。
・『なんでテレビは思い込みのデタラメを報じるの!?  鮫島 泉さんは毎日何度もツイッターで発信していますが、メディアの報道姿勢に対しては、かなり辛辣ですよね。つい先日(6月23日)も、独自の施策により出生率を上げた明石市を紹介した『ひるおび』(TBS系)に対して、随分お怒りでした。 泉 はい。昼のワイドショーは基本的に取材に来ないんです。適当にパネルを作って放送してしまう。それで、毎度のことなのですが、勝手に番組内で明石市が扱われて、間違った事実を流されてしまう。そんなケースばかり。 あの時も「18歳以下の医療費無料」、「1歳誕生月までおむつ無料」、「中学校の給食無料」など、明石市が進めている施策を紹介しつつ、それができているのは市の職員の給与をカットしているから、などと事実誤認だらけの内容を放送していたので、ツイッターで反論しました。 泉 我々明石市は、誰かに犠牲やしわ寄せが行かない形で、こども施策を進めようとしているのです。でもそれをマスコミは認めようとしない。 「そんなにうまくいくはずない」「どっかにしわ寄せがいってるはずだ」との想定のもと、何か問題が起きているかのように、ろくに取材もせずに進めていく。 それ、思い込みだから! 鮫島 放送の翌朝には、明石市職員の平均給与が、兵庫県内の他の市町に比べて低くないことをデータで示し、反撃されてましたね。 私は昨年、27年間勤めた朝日新聞を辞め、新たに立ち上げた自分自身のメディア「鮫島タイムス」を中心に活動しているのですが、今回の参院選で一種のチャレンジングな試みをしています。れいわ新選組に思いっきり肩入れしているんです。 大手メディアでは、まずありえませんよね。「ジャーナリストが、特定の政党に肩入れしていいのか」という抗議ももちろん来ます。 でも、欧米では大手メディアやジャーナリストが、支持政党を明確に打ち出すことは、まったく珍しいことではない。 もともとNHKにいらした泉さんは、その辺りどうお考えですか? 泉 日本がどうかしてるだけです。日本では、宗教と政治の話はタブーだとよく言われますけど、タブーとして遠ざけるだけでは、良くなるはずがない。 海外なら、CNNにしてもニューヨークタイムズにしても、メディアが自分の立場を鮮明にしますよね。スタンスをきちんと説明して、視聴者や読者に判断してもらえば、それでいいと思います』、「我々明石市は、誰かに犠牲やしわ寄せが行かない形で、こども施策を進めようとしているのです。でもそれをマスコミは認めようとしない。 「そんなにうまくいくはずない」「どっかにしわ寄せがいってるはずだ」との想定のもと、何か問題が起きているかのように、ろくに取材もせずに進めていく」、マスコミの姿勢は余りに酷い。「明石市」が反論するのは当然だ。
・『政治家も官僚も朝日新聞も「同じ穴のムジナ」  鮫島 私は新聞社にいた時から、「客観中立報道」というものに、ずっと疑問を感じていました。 泉 「中立」なんてないです、ウソですよ! 客観中立なんて、今をヌクヌクと生きている人たちの言い分です。「自分たちは現状維持を望む」と宣言してるのと同じですから。 明石市に取材に来たマスコミに「泉さんは、参院選で誰も応援しませんよね?」と聞かれました。「泉さんが、誰かを応援したら放送できません」だって。 何なの、それ。市長だって政治家の端くれですよ? 選挙で誰も応援するなって、どういうことなんですかね。 鮫島 実際、今回の選挙で泉さんは思いっきり応援してますよね。ツイッターを見ていて驚きました。「特定の政党は支持しない」と前置きしながら、応援したい議員として自見はなこさん(自民党)と矢田わか子さん(国民民主党)の名前を上げておられた。 鮫島 一緒に子供問題に取り組んでいる、この二人だけは当選してほしいと。 〈全国比例区に「国民民主党」と書こうと思っておられる方は、政党名ではなく、『矢田わか子』と個人名を書いていただきたい〉というメッセージを見て、「こんな市長いるのか」と衝撃を受けるとともに、非常に共感しました。 私がれいわ新選組に応援メッセージの動画を送ったことも、泉市長の考えと重なります。立場はそれぞれ違っても、何か実現したいことのために、リスクを背負ってでも特定の政治家を応援する。 でも、大手メディアは選挙なんて対岸の火事で、安全なところから見ているだけ。このように既存のジャーナリズムが当事者性を失ったから、多くの人から見放されているんじゃないかと。泉さんはどう思いますか? 泉 私は、誰かれ構わず噛み付くのではなく、政治家・官僚・マスコミに、特に辛口なんです。なぜかというと、彼らに期待しているからです。 彼らには力があるじゃないですか。権力がある。その力を使って、本来やるべきことが山ほどあるのに、全然やらないから、つい辛口になってしまう。 マスコミの中でも特に手厳しくなるのは、NHKと朝日新聞に対してです。 NHKは古巣ですし、朝日新聞には友達が多い。結局ね、東大とか京大とか、その辺りの出身者が多いんですよ。 政治家も官僚もNHKも朝日新聞も「同じ穴のムジナ」というのが私の持論です。ちょっと行き先が分かれただけ。「みんな裏で飲み会やってるんちゃうか」みたいな話ですよ。 朝日新聞なんて、政権にチクリとやってる風の見世物をやり続けてるでしょ。それを見ていると、「あなたたち、本気で社会をよくしたいんですか?」「社会を変える気あるんですか?」「変える気があるフリだけしてるんとちゃいますか?」と思ってしまう。 それで、「やるなら本気でやれよ」と、ついカッカしてしまうんです。 鮫島 今日、初めてお会いしましたが、ほとんど意見が同じです(笑)。 泉 フリをしてるだけだから、バレないうちはいいけど、本当に危うい局面になったら保身に走るわけです。 そしてその時に「フリをしていただけ」という正体がバレてしまう』、「泉 私は、誰かれ構わず噛み付くのではなく、政治家・官僚・マスコミに、特に辛口なんです。なぜかというと、彼らに期待しているからです。 彼らには力があるじゃないですか。権力がある。その力を使って、本来やるべきことが山ほどあるのに、全然やらないから、つい辛口になってしまう。 マスコミの中でも特に手厳しくなるのは、NHKと朝日新聞に対してです。 NHKは古巣ですし、朝日新聞には友達が多い。結局ね、東大とか京大とか、その辺りの出身者が多いんですよ。 政治家も官僚もNHKも朝日新聞も「同じ穴のムジナ」というのが私の持論です。ちょっと行き先が分かれただけ。「みんな裏で飲み会やってるんちゃうか」みたいな話ですよ。 朝日新聞なんて、政権にチクリとやってる風の見世物をやり続けてるでしょ。それを見ていると、「あなたたち、本気で社会をよくしたいんですか?」「社会を変える気あるんですか?」「変える気があるフリだけしてるんとちゃいますか?」と思ってしまう。 それで、「やるなら本気でやれよ」と、ついカッカしてしまうんです」、なるほど。
・『新聞・テレビは時代に取り残されている  鮫島 『朝日新聞政治部』に詳しく書きましたが、本当に泉さんのおっしゃる通りです。しょせんはエリートの社員たちが、安全地帯にいながら「権力批判をしているフリ」をしているだけ。いざとなったら腰砕けになって保身に走る。そういう醜い姿をたくさん見てきました。 SNSやインターネットメディアの台頭が、マスコミの「やってるフリ」を完全にバラしたと言えます。 インターネットを通じて誰もが情報を発信できるようになり、茶番が可視化されてしまった。政治家も官僚もマスコミも、完全に“あちら側”の人たちで、自分たちのことしか考えずに、既得権益を守っている。それが、明るみに出てしまった。 泉 私も実感してます。みんなが平等に発信できる、ツイッターとかフェイスブックは、本当にすごいですね。これまでは、一部の特権階級だけが情報を握っていて、民衆はそれを待っているしかなかった。 でも、皆がお互いに発信し合うと、「あ、実はそういうことだったのね」と、すぐに物事の本質にたどり着ける。 鮫島 ネット社会のスピード感は、完全に既存のマスコミを置き去りにしています。 朝日新聞のオピニオン編集部にいたことがありますが、オピニオンっていうからには、本来は最先端を行かなきゃいけない。 でも尖ってたり、批判が出るような意見は叩かれる危険性があるので、まずネット世論を見るんです。そしたら、案の定、ツイッター上ですでに殴り合いのような議論が起きていて、もう勝者が決まってたりする。 新聞やテレビは、その勝者を呼んでくるわけです。つまり、新聞・テレビに出てきた時点で、実は論争はもう終わってる。新聞・テレビは時代についていけてないんです。 泉 たしかに最近の新聞は、ネットでひと昔前に話題になったことを、堂々と報じているように見えます。 あと、新聞は社説が特に恥ずかしいね。あらゆる方面に気を使いすぎて、もはや、何も言っていない。バランスを取ろうとして、とりあえず両論併記してみたり。あれなら書かないほうがマシ。 大マスコミの建前にみんなが気付き、飽き飽きしてる。いまやメディアにも本音が求められていると思います』、「SNSやインターネットメディアの台頭が、マスコミの「やってるフリ」を完全にバラしたと言えます。 インターネットを通じて誰もが情報を発信できるようになり、茶番が可視化されてしまった。政治家も官僚もマスコミも、完全に“あちら側”の人たちで、自分たちのことしか考えずに、既得権益を守っている。それが、明るみに出てしまった」、「新聞は社説が特に恥ずかしいね。あらゆる方面に気を使いすぎて、もはや、何も言っていない。バランスを取ろうとして、とりあえず両論併記してみたり。あれなら書かないほうがマシ。 大マスコミの建前にみんなが気付き、飽き飽きしてる。いまやメディアにも本音が求められていると思います」、手厳しい批判である。
・『マスコミは自ら変わらないと沈んでいくだけ  鮫島 本当におっしゃるとおりです。結局のところ、マスコミの中に、本気で怒ったり、本気で「これはやるべきだ」と思っている人が、ほとんどいなくなってるんだと思います。 残念ながら、朝日新聞の記者の8割以上は、そもそもやりたいことがないというか、保身しか考えていなかった。 「自分が出世したい」とか、「社内の立場を守りたい」と考える人たちにとっては、抗議がくるような原稿はリスクでしかないんです。それで、リスクを回避するために、無難に「やってる感」を出すだけの記事をつくるから、両論併記だらけになるんです。 本当に訴えたいことがあればリスクを背負っても攻めるはずですが、そもそも伝えたいことがないから、リスクを負う勇気も持てない。 社会に対する不条理とか不公平に対して、怒りを感じない人は、ジャーナリストに向いていないと思います。 泉 先ほど、政治家・官僚・マスコミの人たちは「同じ穴のムジナ」と言いました。彼らの多くは、そこそこの家庭に生まれ、進学校に行って、有名大学を出ている。実は、極端に狭い世界の中で生きてきてるので、自分たち以外の世界に生きている他者を知らないんです。 そして、その他者を想像する能力もなくなってきてるように感じます。 鮫島 それはあるでしょうね。私も京都大学ですが、相当貧しい母子家庭に育ったので、「生き延びるために相手の真意を読む」という習性が子供の頃からついていた。それが政治記者として役に立ったと思います。 今の記者は、すぐに騙されるんですよ。森友事件みたいなことがあっても政府や役所の発表が事実だと信じる記者もいる。 相手は権力なのに、疑ってみるということもない。「裏を取る」というのは「役所に聞く」ことだと思っている記者すらいます。 泉 そうですよね! 私も体験しました。デタラメを書いた記者に「裏を取ったのか」と聞くと、「取りました」と言うんです。そんなバカなと思っていたけど、あれは「厚労省に確認しました」という意味だったのですね。 鮫島 当局に聞くことが裏取りだと思ってるんです。それぐらいひどい状況です。政府が言ってることを信じてしまう。 政治記者は政治家が口を開いたら「ウソじゃないか」と疑うのが基本なんです。だけどウソを見抜く力は教科書読んでも身につかないんですよね。 泉 マスコミが自問自答して、変わらなきゃいけない時代が来ている。昔の感覚でやっていけるわけがない。変わらないと沈む一方だと思います。ちょっと手厳しい言い方になりましたが、私からのエールのつもりです。 政治家と官僚とマスコミが、いい意味で緊張感のある関係でないと、この国の未来もありませんから。 次回は『いよいよ参院選投票当日!緊迫の最終回』。明日更新です』、「残念ながら、朝日新聞の記者の8割以上は、そもそもやりたいことがないというか、保身しか考えていなかった。 「自分が出世したい」とか、「社内の立場を守りたい」と考える人たちにとっては、抗議がくるような原稿はリスクでしかないんです。それで、リスクを回避するために、無難に「やってる感」を出すだけの記事をつくるから、両論併記だらけになるんです。 本当に訴えたいことがあればリスクを背負っても攻めるはずですが、そもそも伝えたいことがないから、リスクを負う勇気も持てない。 社会に対する不条理とか不公平に対して、怒りを感じない人は、ジャーナリストに向いていないと思います」、「マスコミが自問自答して、変わらなきゃいけない時代が来ている。昔の感覚でやっていけるわけがない。変わらないと沈む一方だと思います。ちょっと手厳しい言い方になりましたが、私からのエールのつもりです。 政治家と官僚とマスコミが、いい意味で緊張感のある関係でないと、この国の未来もありませんから」、全く同感である。 
タグ:現代ビジネス メディア (その33)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(4)内閣官房長官の絶大な権力、「朝日はこうして死んだ」、泉房穂明石市長との対談:このままでは自滅して沈んでいくだけ 大マスコミと政治家・官僚はしょせん「同じ穴のムジナ」なんです) 鮫島 浩氏による「話題の書『朝日新聞政治部』先行公開第4回〜内閣官房長官の絶大な権力 朝日新聞政治部(4)」 「内閣官房長官が持つ権力の正体」とは興味深そうだ。 「総理に上がる情報は、その前に官房長官の手で取捨選択される。官房長官には総理より早く多くの情報が集まる。 領収書不要の官房機密費を管理するのも官房長官の権限。長官室の金庫には常に数千万円の現金が保管され、政界対策や世論対策に投入されていく。官房長官が札束を持ち出した翌日には金庫に現金がすぐに補充される。 もうひとつの武器は、毎日午前と午後に官邸で開く官房長官会見だ。この場の発言が政府の公式見解となる」、「総理より早く多くの情報が集まる」、「官房機密費を管理」、「官房長官会見」で「政府の公式見解」、いずれも 「与謝野事務所」の「島田氏」は来客を事前にチェックするという意味で秘書としては有能だ。 そのやり取りを聞いて、「通してやれよ。俺と竹中とどっちが魅力的か、見せてやろうじゃないか」と言った「与謝野氏」はさすが「大物政治家」らしい。「与謝野氏は答えるべきことは答え、かわすべきことは見事にかわした。文学的、芸術的な表現を交えて受け流していく。それでも食い下がる私とのやりとりをまるで楽しんでいるようであった。自らの識見、理解力、答弁力に対する圧倒的な自信の裏返しであったのだろう」、 これに対し、「菅義偉官房長官の対応は対照的だった。何を聞いても「問題ない」「批判は当たらない」の一言ではぐらかす」、「東京新聞社会部の望月衣塑子記者の厳しい追及に対し、・・・司会役の官邸広報室長は質問を妨害し、質問回数に制限を加えた。醜悪だったのは、各社政治部の官房長官番が望月記者の質問を妨害することに抗議せず、それを黙殺し、官邸側に歩調を合わせたことだった」、「各社政治部」の体質を如実に示している。 「官房長官番は連日、官房長官から「裏付け」を取るようデスクやキャップからプレッシャーを受けている」、「携帯番号を教えてもらい、電話に出てもらえる信頼関係をつくらなければ仕事にならない」、これは大変そうだ。 「菅氏は政治部や番記者の事情を熟知し、「都合の良い記者」と「不都合な記者」への対応を露骨に変えることで自らへの批判を封じ、番記者全体を「防御壁」に仕立てるのが巧妙だった。番記者たちが望月記者の追及から菅氏を守った真相はそこにある」、「番記者全体を「防御壁」に仕立てる」とは高度な技だ。 「官房長官会見で厳しく追及した夜に電話して「これを確認させてください」とお願いするようでは、対等な関係はつくれない。「特オチ」してもやせ我慢し、緊張関係を保つことが重要だ。だが、政治取材の要である官房長官番がそうした態度を貫けば、朝日新聞は「特オチ」を繰り返し、番記者だけの問題ではなくなる。政治部としてそれを許容する覚悟が必要であった。 当時の上司は私の願いを受け入れた。私は与謝野氏の後を受け継いだ町村信孝氏まで2代にわたって官房長官番を務めたが、決してへりくだらなかった。与謝野氏も町村氏もそんな私を拒ま 鮫島 浩氏による「元朝日新聞エース記者が衝撃の暴露「朝日はこうして死んだ」 『朝日新聞政治部』著者が明かす」 どういうことなのだろう。 「福島第一原発元所長の吉田昌郎氏が政府事故調査委員会の聴取に応じた記録を独自入手し、事故対応の問題点を報じた」のであれば、極めて重要性の高いものだ。 「後編記事」は見当たらないので推測する他ないが、「所員の9割が命令に違反し、第二原発に撤退していた」、となると、公式見解と矛盾するので、撤回すべきとの圧力がかかり、「木村伊量社長」が撤回させたのだろうか。 泉房穂明石市長と鮫島浩氏との記念対談「泉房穂×鮫島浩(2)」 「泉房穂明石市長」の存在は初めて知ったが、興味深そうだ。 「我々明石市は、誰かに犠牲やしわ寄せが行かない形で、こども施策を進めようとしているのです。でもそれをマスコミは認めようとしない。 「そんなにうまくいくはずない」「どっかにしわ寄せがいってるはずだ」との想定のもと、何か問題が起きているかのように、ろくに取材もせずに進めていく」、マスコミの姿勢は余りに酷い。「明石市」が反論するのは当然だ。 「泉 私は、誰かれ構わず噛み付くのではなく、政治家・官僚・マスコミに、特に辛口なんです。なぜかというと、彼らに期待しているからです。 彼らには力があるじゃないですか。権力がある。その力を使って、本来やるべきことが山ほどあるのに、全然やらないから、つい辛口になってしまう。 マスコミの中でも特に手厳しくなるのは、NHKと朝日新聞に対してです。 NHKは古巣ですし、朝日新聞には友達が多い。結局ね、東大とか京大とか、その辺りの出身者が多いんですよ。 政治家も官僚もNHKも朝日新聞も「同じ穴のムジナ」というのが私の 朝日新聞なんて、政権にチクリとやってる風の見世物をやり続けてるでしょ。それを見ていると、「あなたたち、本気で社会をよくしたいんですか?」「社会を変える気あるんですか?」「変える気があるフリだけしてるんとちゃいますか?」と思ってしまう。 それで、「やるなら本気でやれよ」と、ついカッカしてしまうんです」、なるほど。 「SNSやインターネットメディアの台頭が、マスコミの「やってるフリ」を完全にバラしたと言えます。 インターネットを通じて誰もが情報を発信できるようになり、茶番が可視化されてしまった。政治家も官僚もマスコミも、完全に“あちら側”の人たちで、自分たちのことしか考えずに、既得権益を守っている。それが、明るみに出てしまった」、「新聞は社説が特に恥ずかしいね。あらゆる方面に気を使いすぎて、もはや、何も言っていない。バランスを取ろうとして、とりあえず両論併記してみたり。あれなら書かないほうがマシ。 大マスコミの建前に 「残念ながら、朝日新聞の記者の8割以上は、そもそもやりたいことがないというか、保身しか考えていなかった。 「自分が出世したい」とか、「社内の立場を守りたい」と考える人たちにとっては、抗議がくるような原稿はリスクでしかないんです。それで、リスクを回避するために、無難に「やってる感」を出すだけの記事をつくるから、両論併記だらけになるんです。 本当に訴えたいことがあればリスクを背負っても攻めるはずですが、そもそも伝えたいことがないから、リスクを負う勇気も持てない。 社会に対する不条理とか不公平に対して、怒りを感 社会に対する不条理とか不公平に対して、怒りを感じない人は、ジャーナリストに向いていないと思います」、「マスコミが自問自答して、変わらなきゃいけない時代が来ている。昔の感覚でやっていけるわけがない。変わらないと沈む一方だと思います。ちょっと手厳しい言い方になりましたが、私からのエールのつもりです。 政治家と官僚とマスコミが、いい意味で緊張感のある関係でないと、この国の未来もありませんから」、全く同感である。
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メディア(その32)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(1)「吉田調書事件」とは何だったのか、(2)「吉田調書事件」とは何だったのか、(3)小渕恵三首相「沈黙の10秒」) [メディア]

メディアについては、5月29日に取上げた。今日は、(その32)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(1)「吉田調書事件」とは何だったのか、(2)「吉田調書事件」とは何だったのか、(3)小渕恵三首相「沈黙の10秒」)である。

先ずは、5月23日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1)朝日新聞政治部(1)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95386?imp=0
・『「鮫島が暴露本を出版するらしい」「俺のことも書いてあるのか?」――いま朝日新聞社内各所で、こんな会話が交わされているという。元政治部記者の鮫島浩氏が上梓した​『朝日新聞政治部』は、登場する朝日新聞幹部は全員実名、衝撃の内部告発ノンフィクションだ。 戦後、日本の左派世論をリードし続けてきた、朝日新聞政治部。そこに身を置いた鮫島氏が明かす政治取材の裏側も興味深いが、本書がもっとも衝撃的なのは、2014年に朝日新聞を揺るがした「吉田調書事件」の内幕をすべて暴露していることだ。 今日から7回連続で、本書の内容を抜粋して紹介していく』、興味深そうだ。
・『夕刊紙に踊る「朝日エリート誤報記者」の見出し  2014年秋、私は久しぶりに横浜の中華街へ妻と向かった。息苦しい都心からとにかく逃れたかった。 朝日新聞の特別報道部デスクを解任され、編集局付という如何にも何かをやらかしたような肩書を付与され、事情聴取に呼び出される時だけ東京・築地の本社へ出向き、会社が下す沙汰を待つ日々だった。蟄居謹慎(ちっきょきんしん)とはこういう暮らしを言うのだろう。駅売りの夕刊紙には「朝日エリート誤報記者」の見出しが躍っていた。私のことだった。 ランチタイムを過ぎ、ディナーにはまだ早い。ふらりと入った中華料理店はがらんとしていた。私たちは円卓に案内された。注文を終えると、二胡を抱えたチャイナドレスの女性が私たちの前に腰掛け、演奏を始めた。私は紹興酒を片手に何気なく聴き入っていたが、ふと気づくと涙が溢れている。 「なぜ泣いているの?」 二胡の音色をさえぎる妻の声で私はふと我に返った。人前で涙を流したことなんていつ以来だろう。ちょっと思い出せないな。これからの私の人生はどうなるのだろう。 朝日新聞社は危機に瀕していた。私が特別報道部デスクとして出稿した福島原発事故を巡る「吉田調書」のスクープは、安倍政権やその支持勢力から「誤報」「捏造」と攻撃されていた。政治部出身の木村伊量社長は、過去の慰安婦報道を誤報と認めたことや、その対応が遅すぎたと批判する池上彰氏のコラム掲載を社長自ら拒否した問題で、社内外から激しい批判を浴びていた。 「吉田調書」「慰安婦」「池上コラム」の三点セットで朝日新聞社は創業以来最大の危機に直面していたのである。特にインターネット上で朝日バッシングは燃え盛っていた。 木村社長は驚くべき対応に出た。2014年9月11日に緊急記者会見し、自らが矢面に立つ「慰安婦」「池上コラム」ではなく、自らは直接関与していない「吉田調書」を理由にいきなり辞任を表明したのである。さらにその場で「吉田調書」のスクープを誤報と断定して取り消し、関係者を処罰すると宣告したのだ。 寝耳に水だった。 その後の社内の事情聴取は苛烈を極めた。会社上層部はデスクの私と記者2人の取材チームに全責任を転嫁しようとしていた。5月に「吉田調書」のスクープを報じた後、木村社長は「社長賞だ、今年の新聞協会賞だ」と絶賛し、7月には新聞協会賞に申請した。ところが9月に入って自らが「慰安婦」「池上コラム」で窮地に追い込まれると、手のひらを返したように態度を一変させたのである』、「木村社長は「社長賞だ、今年の新聞協会賞だ」と絶賛し、7月には新聞協会賞に申請」、それを手の平を返して「辞任を表明」とは、全く節操がない人物だ。
・『私がどんな「罪」に問われていたか  巨大組織が社員個人に全責任を押し付けようと上から襲いかかってくる恐怖は、体験した者でないとわからないかもしれない。それまで笑みを浮かべて私に近づいていた数多くの社員は蜘蛛の子を散らすように遠ざかっていった。 私は27歳で政治部に着任し、菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家の番記者を務めた。39歳で政治部デスクになった時は「異例の抜擢」と社内で見られた。その後、調査報道に専従する特別報道部のデスクに転じ、2013年には現場記者たちの努力で福島原発事故後の除染作業の不正を暴いた。この「手抜き除染」キャンペーンの取材班代表として新聞協会賞を受賞した。 朝日新聞の実権を握ってきたのは政治部だ。特別報道部は政治部出身の経営陣が主導して立ち上げた金看板だった。私は政治部の威光を後ろ盾に特別報道部デスクとして編集局内で遠慮なく意見を言える立場となり、紙面だけではなく人事にまで影響力を持っていた。それが一瞬にして奈落の底へ転落したのである。 ああ、会社員とはこういうものか――。そんな思いにふけっているところへ、妻の声が再び切り込んできた。二胡の妖艶な演奏は続いている。 「なぜ泣いているの?」 「なんでだろう……。たぶん厳しい処分が降りるだろう。懲戒解雇になると言ってくる人もいる。すべてを失うなあ……。いろんな人に世話になったなあと思うと、つい……」 妻はしばらく黙っていたが、「それ、ウソ」と言った。続く言葉は強烈だった。 「あなたはこれから自分が何の罪に問われるか、わかってる? 私は吉田調書報道が正しいのか間違っているのか、そんなことはわからない。でも、それはおそらく本質的なことじゃないのよ。あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」 紹興酒の酔いは一気に覚めた。妻はたたみかけてくる。 「あなたは過去の自分の栄光に浸っているだけでしょ。中国の皇帝は王国が崩壊した後、どうなるか、わかる? 紹興酒を手に、妖艶な演奏に身を浸して、我が身をあわれんで涙を流すのよ。そこへ宦官がやってきて『あなたのおこなってきたことは決して間違っておりません。後世必ずや評価されることでしょう』と言いつつ、料理に毒を盛るのよ!」 中国の皇帝とは、仰々しいたとえである。だが、妻の目に私はそのくらい尊大に映っていたのだろう。そして会社の同僚たちも社内を大手を振って歩く私を快く思っていなかったに違いない。私はそれにまったく気づかなかった。 「裸の王様」がついに転落し、我が身をあわれんで涙を流す姿ほど惨めなものはない。そのような者に誰が同情を寄せるだろうか。 私は、自分がこれから問われる「傲慢罪」やその後に盛られる「毒」を想像して背筋が凍る思いがした。泣いているどころではなかった。独裁国家でこのような立場に追い込まれれば、理屈抜きに生命そのものを絶たれるに違いない。今日の日本社会で私の生命が奪われることはなかろう。奈落の底にどんな人生が待ち受けているかわからないが、生きているだけで幸運かもしれない。 そんな思いがよぎった後、改めて「傲慢罪」という言葉を噛み締めた。「吉田調書」報道に向けられた数々の批判のなかで私の胸にストンと落ちるものはなかった。しかし「傲慢罪」という判決は実にしっくりくる。そうか、私は「傲慢」だったのだ! 政治記者として多くの政治家に食い込んできた。ペコペコすり寄ったつもりはない。権力者の内実を熟知することが権力監視に不可欠だと信じ、朝日新聞政治部がその先頭に立つことを目指してきた。調査報道記者として権力の不正を暴くことにも力を尽くした。朝日新聞に強力な調査報道チームをつくることを夢見て、特別報道部の活躍でそれが現実となりつつあった。それらを成し遂げるには、会社内における「権力」が必要だった――。 しかし、である。自分の発言力や影響力が大きくなるにつれ、知らず知らずのうちに私たちの原点である「一人一人の読者と向き合うこと」から遠ざかり、朝日新聞という組織を守ること、さらには自分自身の社内での栄達を優先するようになっていたのではないか。 私はいまからその罪を問われようとしている。そう思うと奈落の底に落ちた自分の境遇をはじめて受け入れることができた。 そして「傲慢罪」に問われるのは、私だけではないと思った。新聞界のリーダーを気取ってきた朝日新聞もまた「傲慢罪」に問われているのだ』、奥さんに指摘された「あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」は、実に本質を突いた至言だ。
・『日本社会がオールドメディアに下した判決  誰もが自由に発信できるデジタル時代が到来して情報発信を独占するマスコミの優位が崩れ、既存メディアへの不満が一気に噴き出した。2014年秋に朝日新聞を襲ったインターネット上の強烈なバッシングは、日本社会がオールドメディアに下した「傲慢罪」の判決だったといえる。木村社長はそれに追われる形で社長から引きずり下ろされたのだ。 「吉田調書」報道の取り消し後、朝日新聞社内には一転して、安倍政権の追及に萎縮する空気が充満する。他のメディアにも飛び火し、報道界全体が国家権力からの反撃に怯え、権力批判を手控える風潮がはびこった。安倍政権は数々の権力私物化疑惑をものともせず、憲政史上最長の7年8ヵ月続く。 マスコミの権力監視機能の劣化は隠しようがなかった。民主党政権下の2010年に11位だった日本の世界報道自由度ランキングは急落し、2022年には71位まで転げ落ちた。新聞が国家権力に同調する姿はコロナ禍でより顕著になった。 木村社長が「吉田調書」報道を取り消した2014年9月11日は「新聞が死んだ日」である。日本の新聞界が権力に屈服した日としてメディア史に刻まれるに違いない。 私は2014年末、朝日新聞から停職2週間の処分を受け、記者職を解かれた。6年半の歳月を経て2021年2月に退職届を提出し、たった一人でウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊した。 私と朝日新聞に突きつけられた「傲慢罪」を反省し、読者一人一人と向き合うことを大切にしようと決意した小さなメディアである。自らの新聞記者人生を見つめ直し、どこで道を踏み外したのかをじっくり考えた。本書はいわば「失敗談」の集大成である。 世の中には新聞批判が溢れている。その多くに私は同意する。新聞がデジタル化に対応できず時代に取り残されたのも事実だ。一方で、取材現場の肌感覚とかけ離れた新聞批判もある。新聞の歩みのすべてを否定する必要はない。そこから価値のあるものを抽出して新しいジャーナリズムを構築する材料とするのは、凋落する新聞界に身を置いた者の責務ではないかと思い、筆を執った。 この記事は大手新聞社の中枢に身を置き、その内情を知り尽くした立場からの「内部告発」でもある。 次回は「新人時代のサツ回りが新聞記者をダメにする」​です』、「木村社長が「吉田調書」報道を取り消した」、どんな事情があったのだろう。

次に、この続きを、5月24日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(2) 朝日新聞政治部(2)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95464?imp=0
・『「鮫島が暴露本を出版するらしい」「俺のことも書いてあるのか?」――いま朝日新聞社内各所で、こんな会話が交わされているという。元政治部記者の鮫島浩氏が上梓する『朝日新聞政治部』(5月27日発売、現在予約受付中)​は、登場する朝日新聞幹部は全員実名、衝撃の内部告発ノンフィクションだ。 戦後、日本の左派世論をリードし続けてきた、朝日新聞政治部。そこに身を置いた鮫島氏が明かす政治取材の裏側も興味深いが、本書がもっとも衝撃的なのは、2014年に朝日新聞を揺るがした「吉田調書事件」の内幕をすべて暴露していることだ。 同書の内容を抜粋して紹介する。7日連続公開の第2回は、新聞記者が新人時代に必ず通る「地方支局でのサツ(警察)回り」の実態だ』、興味深そうだ。
・『キャリア官僚の話に興味が持てない  私は1994年に京都大学法学部を卒業し、朝日新聞に入社した。バブル経済は崩壊していたものの、その余韻が残る時代だった。数年後にやってくる就職氷河期の「失われた世代」や現在の「コロナ禍世代」と比べれば、気楽な就職活動の時代であった。 当時の京大生のご多分に漏れず、学業に熱心とは言い難い生活だった。就活中の1993年は自民党が衆院選に敗北して下野し、細川連立内閣が発足した戦後政治史の重要な年である。京大キャンパスのある衆院京都1区(当時は中選挙区制)からは、のちに民主党代表となる前原誠司氏が日本新党から出馬して初当選した。だが、私にはこの衆院選の投票に行った記憶がない。 新聞も購読していなかった。母子家庭で仕送りがなく、奨学金とアルバイト代で辛うじて学生生活を送っていたというのは言い訳である。 トイレも風呂も洗面所もない「離れ」に下宿した入学当初はたしかに厳しい暮らしだったが、3~4年生になると塾講師のアルバイトで稼いで自分の車まで所有していた。単に「学び」に不熱心だったというほかない。国立大学なら奨学金とアルバイトで何とか下宿し、通学し、それなりに遊び、卒業して就職できる幸運な時代だった。 朝日新聞の採用試験を受けたのも、当時交際していた同じ年の女性が新聞社志望で、募集要項をもらってきたのがきっかけだった。今となってはそこに何を書き込んだのかも覚えていない。朝日新聞といえばリベラルというくらいの印象しかなかった。ただ、これを境にそろそろ就職活動をしないといけないとにわかに焦り始めたことを覚えている。 親しい友人たちが国家公務員一種試験(法律職)を目指して勉強していたので、遅ればせながらその輪に入れてもらった。2~3ヵ月、過去問をひたすら解いて挑んだ筆記試験に合格し、友人たちに驚かれた。要領は良かったのだろう。その後、キャリア官僚と「面接」を重ねたが、自慢話を聞かされるばかりで興味を持てなかった。そこで、様々な業種から名前を知っている大企業をひとつずつ選んで訪問することにした。銀行、生保、メーカー……。朝日新聞はそのひとつに過ぎなかった。世間知らずの学生だった。 面接は得意だった。当意即妙の受け答えには割と自信があった(政治記者になった後も記者会見やインタビューで二の矢三の矢を放つのが好きだった)。それが功を奏したのか、朝日新聞を含め、いくつか内定をいただいた。 朝日新聞の東京本社や京都支局にうかがって現役の新聞記者にも会ったが、興味のわく人はいなかった。キャリア官僚と同じ匂いがした。 私は朝日新聞の内定を断った。代わりに選んだのが新日鉄(現・日本製鉄)である。この会社は会う人会う人が魅力的だった。私は新日鉄にのめり込んでいった。各地の製鉄所も見学させてもらった。「鉄は国家なり」と熱く語る人、ヒッタイト以来の鉄の歴史を研究して披露する人、鉄鋼労働者が暮らす四畳半の宿舎を案内し「君がこの会社で最初にする仕事はこの部屋が煙草の不始末で火事にならないようにすることだ」と説く人。みんな思いが詰まっていて、キャリア官僚や新聞記者より輝いて見えた。 なかでも私を気に入ってくれたのが、Sさんだった。私は京都から大阪・梅田の高層ビルに入る高級店に何度となく呼び出され、「君と一緒に仕事をしたい」と口説かれた。Sさんはパリッとしたスーツに身を固め、紳士的で、格好良かった。キャリア官僚や新聞記者とはまるで違った。私は新日鉄へ入社する決意をSさんに告げた』、「梅田の高層ビルに入る高級店に何度となく呼び出され」、「新日鉄」も優秀な大学生にはかなり手をかけたようだ。
・『「新聞記者は主役になれない」  迷走はここから始まる。私は世の中をあまりに知らなかった。自分がいざ「鉄鋼マン」になると思うと、「鉄は国家なり」と熱く語る人やヒッタイトの歴史を熟知する人のように鉄に人生を捧げる覚悟が湧いてこなかった。「鉄」に限らずビジネスの世界で生きる将来の自画像がまったく浮かんでこなかったのだ。 一度決断しないと本心に気づかないのは困ったものである。就活の季節はとっくに過ぎ去っていた。内定を断った会社に今一度問い合わせてみた。 そのなかで唯一「今からでも来ていいよ」と答えてくれたのが朝日新聞社だった。当時の採用担当者から「君は新聞のことを知らなすぎる。新聞記者としてうまくいくかわからないけれど、来たいのなら来てもいいよ」と言われ、負けん気に火がついたのである。 私は大阪・梅田で新日鉄のSさんに会い、内定をお断りした。「どこにいくのか」と聞かれ、「新聞記者になります」と答えた。Sさんは引かなかった。「なぜ新聞記者なのか」と繰り返し迫った。私はとっさに「いろんな人の人生を書きたいからです」と魅力を欠く返答をした。彼は決して譲らず、熱く語った。 「新聞記者は人の人生を書く。所詮は人の人生だ。主役にはなれない。我々は自分自身が人生の主役になる。新日鉄に入って一緒に主役になろう」 熱かった。心が揺れた。私はこののち多くの政治家や官僚を取材することになるが、このときのSさんほど誠実で心に迫る言葉に出会ったことがない。いわんや、朝日新聞の上司からこれほど心を揺さぶられる説得を受けたことはない。 しかし、Sさんの熱い言葉は、彼の思いを超えて、私に新たな「気づき」を与えたのだった。ビジネスの世界に身を投じることへの抵抗感が自らの心の奥底に強く横たわっていることを、私はこのときSさんの熱い言葉に追い詰められて初めて自覚したのである。 「なぜ新聞記者なのか」と繰り返すSさんに、私がとっさに吐いた言葉は「ビジネスではなく、政治に関心があるからです」だった。政治家になろうと考えたことはなかった。政治に詳しくもなかった。なぜ「政治に関心がある」という言葉が出てきたのか、自分でもわからない。 いま振り返ると、一介の学生が働き盛りの鉄鋼マンに「なぜ新聞記者なのか」と迫られ、「ビジネス」への対抗軸として絞り出した答えが「政治」だったのだろう。多くの書物を読んで勉学を重ねた学生なら「学問」「文化」「芸術」などという、もう少し気の利いた言葉が浮かんだのかもしれないが、当時の私はあまりにも無知で無学で野暮だった。「政治」という言葉しか持ち合わせていなかったのだ。 ところが、「政治」という言葉を耳にして、Sさんはついに黙った。ほどなくして「残念だ」とだけ言った。Sさんとの別れだった。彼にとって「政治」とは、どんな意味を持つ言葉だったのか。当時の私には想像すらできなかった。 Sさんに投げかけられた「なぜ新聞記者なのか」という問いを、私はその後の新聞記者人生で絶えず自問自答してきた。客観中立を口実に政治家の言い分を垂れ流す政治記事を見るたびに、「新聞記者は主役になれない」と言い切ったSさんの姿を思い出した。いつしかSさんに胸を張って「主役になりましたよ」と言える日が来ることを志し、27年間、新聞記者を続けてきた。山あり谷あり波乱万丈の記者人生だったが、Sさんと再会して「君は主役になったな」と認めてもらえる自信はない。「所詮は新聞という小さな世界の内輪の話だよ」と言われてしまう気もする。 鉄も新聞も斜陽と呼ばれて久しい業界だ。学生時代の私が進路を決めるにあたり鉄と新聞で揺れたのは、果たして偶然だったのだろうか。私がSさんにとっさに吐いた言葉の後を追うように「政治記者」となり、多くの政治家とかかわるようになったのは運命だったのだろうか。 いずれにせよ、私は「新聞記者は主役になれない」という言葉を背負って朝日新聞に入社した。そこには新聞記者を志し、とりわけ朝日新聞に憧れて難関を突破してきた大勢の同期がいた。朝日新聞記者の初任給は当時、日本企業でトップクラスだった。日本の新聞の発行部数はまだ伸びていた。1994年春である。 太平洋の向こう側、アメリカ西海岸ではIT革命が幕を開けようとしていた』、当初は新日鉄入社を考えていたが、「鉄に人生を捧げる覚悟が湧いてこなかった」、「「新聞記者は主役になれない」という言葉を背負って朝日新聞に入社した」、なるほど。
・『記者人生を決める「サツ回り」  新聞記者人生は大概、地方の県庁所在地から始まる。新人記者は県警本部の記者クラブに配属され、警察官を取材する「サツ回り」で同僚や他社の記者と競わされる。支局には入社1~5年目の記者がひしめく。同世代はみんなライバルだ。 私は違った。初任地は茨城県のつくば支局。大学と科学の街である。県庁所在地ではなく県警本部はない。他社に新人記者は一人もいなかった。大半は科学記者だ。朝日新聞つくば支局は科学部出身の支局長、科学部兼務の記者、新人の私の3人。畑が点在する住宅街にある赤煉瓦の一軒家に支局長が居住し、その一角が私たちのオフィスになっていた。 同期たちからは「まあ、気を落とすなよ」と言われた。彼らには私が会社員人生の初っぱなから「コースを外れた」と映ったようだ。すでに出世競争は始まっていた。サツ回りで評価された記者が政治部や社会部に進む新聞社の常識を、私は知らなかった。 1994年4月、私は水戸支局に赴任する同期のY記者と特急スーパーひたちに乗り込んだ。茨城県全域を統括する水戸支局長に着任の挨拶をするためだ。支局長は社会部の警視庁記者クラブで活躍した特ダネ記者という評判だった。 水戸支局は水戸城跡のお堀に面した通りにある。いちばん奥のソファに、彼は仰向けに寝そべっていた。黒いサングラスをかけ、白いエナメルの靴を履いた足を投げ出している。その姿勢を維持したまま、彼は少し頬を緩めボソボソと口を開いた。 「世の中の幸せの量は決まっている。Yの幸せはサメの不幸、サメの幸せはYの不幸」 訓示はそれで終わった。何が言いたいんだ、競争心を煽っているのか、とんでもないところに来てしまった、これが新聞社なのか……。 この水戸支局長、野秋碩志(のあきひろし)さんが私の最初の上司である。 Y記者は早速、3人チームのサツ回りに投入された。入社3年目の県警キャップと2年目のサブキャップのもとで徹底的にこき使われるのだ。昼間は県警記者クラブで交通事故や火災などの発表を短行記事にする。殺人事件や災害が起きれば現場へ向かい、関係者の話を聞いたり写真を撮ったりする。朝と夜は警察官の自宅を訪問して捜査情報を聞き出す。いわゆる「夜討ち朝駆け」だ。 当時携行させられていたのはポケベルだった。休日深夜を問わず鳴り続ける。警察官宅で酔いつぶれたキャップから車で迎えに来るように呼びつけられることもある。 県警発表を記事にするだけでは評価されない。未発表の捜査情報――「明日逮捕へ」とか「容疑者が~と供述」とか――を、他社を出し抜いて書く。これら特ダネは、警察官と仲良くなって正式発表前に特別に教えてもらうリーク型がほとんどだ。不都合な事実を暴く正真正銘の特ダネとは違う。 新聞というムラ社会の中だけで評価される特ダネを積み重ねることが「優秀な新聞記者」への第一歩となる。逆に他社に特ダネを書かれることを「抜かれ」といい、他の全社が報じているのに一社だけ記事にできずに取り残されることを「特オチ」という。それらが続くと「記者失格」の烙印を押される。サツ回りで特ダネを重ねた記者が支局長やデスクに昇進し、自らの「成功体験」を若手に吹聴して歪んだ記者文化が踏襲されていく。 駆け出し記者は特ダネをもらうのに必死だ。あの手この手で警察官にすり寄る。会食を重ねゴルフや麻雀に興じる。風俗店に一緒に行って秘密を共有する。警察官が不在時に手土産を持って自宅を訪れ、奥さんや子どもの相談相手となる。無償で家庭教師を買って出る……。休日も費やす。とにかく一体化する。こうして警察官と「癒着」を極めた記者が特ダネにありつける。 警察は記者同士の競争意識につけ込み、警察に批判的な記者には特ダネを与えない。他の記者全員にリークし、批判的な記者だけ「特オチ」させることもある。記者たちはそれに怯え、従順になる。こうした環境で警察の不祥事や不作為を追及する記事が出ることは奇跡に近い』、「警察官と「癒着」を極めた記者が特ダネにありつける。 警察は記者同士の競争意識につけ込み、警察に批判的な記者には特ダネを与えない。他の記者全員にリークし、批判的な記者だけ「特オチ」させることもある。記者たちはそれに怯え、従順になる。こうした環境で警察の不祥事や不作為を追及する記事が出ることは奇跡に近い」、「警察」のマスコミ・コントロールは容易なようだ。
・『競わされる相手がいなかった  日本の新聞記者の大多数はこうしたサツ回りの洗礼を受け、そこで勝ち上がった記者が本社の政治部や社会部へ栄転していく。敗れた記者たちもサツ回り時代に埋め込まれた「特ダネへの欲求」や「抜かれの恐怖」のDNAをいつまでも抱え続ける。 純朴で真面目なY記者は日々、明らかに憔悴していった。 私は違った。つくばには他社を含め新人記者は私しかいない。警察本部もない。つくば中央警察署(現・つくば警察署)に取材に訪れる記者は私だけだった。競わされる相手がいなかったのだ。末端の警察官まで私を歓迎してくれた。 しかもメインの取材先は警察ではなかった。私は科学以外のすべてを一人で担う立場にあった。つくば市など茨城県南部の読者に向けて地域に密着した話題(いわゆる「街ダネ」)を県版に毎日写真入りで伝えることを期待された。カメラをぶら下げ、市井の人々と会い、日常のこぼれ話を来る日も来る日も記事にした。 27年間の新聞記者人生でこの時ほど原稿を書いた日々はない。当時はフィルム時代だった。つくば支局にはカラー現像機がなかった。私は毎日、白黒フィルムで撮影し、暗室にこもって写真を焼いた。 この記者生活は楽しかった。私は新人にして野放しだった。夜討ち朝駆けはほとんどしなかった。毎朝目覚めると「今日はどこへ行こうか」「誰と会おうか」「何を書こうか」と考えた。私は自由だった。毎日が新鮮だった。 この野放図な新人時代は、私の新聞記者像に絶大な影響を与えることになる。 次回は「政治取材の裏側〜小渕恵三首相の沈黙の10秒」​​。「野放図な新人時代は、私の新聞記者像に絶大な影響を与えることになる」、幸運だったようだ。

第三に、この続きを、5月25日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「話題の書『朝日新聞政治部』先行公開第3回〜小渕恵三首相「沈黙の10秒」 朝日新聞政治部(3)」を紹介しよう。
・『・・・戦後、日本の左派世論をリードし続けてきた、朝日新聞政治部。そこに身を置いた鮫島氏が明かす政治取材の裏側も興味深いが、本書がもっとも衝撃的なのは、2014年に朝日新聞を揺るがした「吉田調書事件」の内幕をすべて暴露していることだ。 7日連続先行公開の第3回は、初めて政治部に着任した鮫島氏が小渕恵三総理と向き合う緊迫の場面を紹介する』、興味深そうだ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95521?imp=0
・『政治記者は「権力と付き合え」  1999年春、私は政治部へ着任した。時は小渕恵三政権である。自民、自由、公明の連立政権が動き始めていた。小泉純一郎政権から安倍晋三政権へ至る清和会支配が幕を開ける前夜、竹下登元首相が最大派閥・平成研究会(小渕派)を通じて隠然たる影響力を残していた時代である。 私は新聞記者6年目の27歳。政治や経済は無知であった。そればかりか初めての東京暮らしで右も左もわからなかった。政治部の恒例で着任初日は政治部長に挨拶し昼食をともにする。駆け出し政治記者が政治部長と直接話をすることなどこの時くらいである。 政治部長は若宮啓文さんだった。朝日新聞を代表するハト派・リベラル派論客で、のちに社説の責任者である論説主幹や主筆となる。韓国紙に連載するなど国際派でもあった。父親は朝日新聞政治部記者から鳩山一郎内閣の総理秘書官に転じた若宮小太郎氏。その子息の若宮さんは「政治記者として血統の良いサラブレット」という印象が強かった。朝日新聞をライバル視する読売新聞の渡辺恒雄氏とも昵懇で、政治家では河野洋平氏と密接な関係を築いていた。 その若宮さんが私たち駆け出し政治記者に投げかけた訓示が衝撃的だった。私はつくば、水戸、浦和で過ごした新聞記者5年間とは別世界に来たと思った。若宮さんは眼光鋭い目を見開きながら、静かにこう語ったのだった。 「君たちね、せっかく政治部に来たのだから、権力としっかり付き合いなさい」 新聞の役割は権力を監視することだと思ってきた。「権力としっかり付き合いなさい」という言葉は意外だった。私は当時、世間知らずで怖いもの知らずだった。日本の新聞界を代表する政治記者であり、朝日新聞を代表する論客であり、初対面である自分の上司に、やや挑発めいた口調でとっさに質問したのである』、「新聞の役割は権力を監視することだと思ってきた。「権力としっかり付き合いなさい」という言葉は意外だった」、確かにドサ回りとは全く違う環境のようだ。
・『日本という国家の「権力」  「権力って、誰ですか?」 若宮さんはしばし黙っていた。ほどなく、静かに簡潔に語った。 「経世会、宏池会、大蔵省、外務省、そして、アメリカと中国だよ」 経世会とは、田中角栄や竹下登の流れを汲み、当時は小渕首相が受け継いでいた自民党最大派閥・平成研究会のことである。永田町ではかつての名称「経世会」の名で呼ばれることも多い。数の力で長く日本政界に君臨し、たたき上げの党人派が多く「武闘派」と恐れられた。小沢一郎氏が竹下氏の後継争いで小渕氏に敗れ自民党を飛び出した「経世会の分裂」が、1990年代の政治改革(小選挙区制導入による二大政党政治への転換)の発端だ。 宏池会は、池田勇人、大平正芳、宮澤喜一ら大蔵省(現・財務省)出身の首相を輩出し、戦後日本の保守本流を自任してきた。経済・平和重視のハト派・リベラル派で、政策通の官僚出身が多い一方、権力闘争は不得手で「お公家集団」と揶揄される。経世会の威を借りて戦後の政策立案を担ってきた。 大蔵省と外務省は、言わずと知れた「官庁中の官庁」。自民党が選挙対策や国会対策に奔走する一方、内政は大蔵省、外交は外務省が主導するのが戦後日本の統治システムだった。とくに大蔵省は予算編成権を武器に政財界に強い影響力を行使し、通産省(現・経済産業省)や警察庁など霞が関の他官庁は頭が上がらなかった。この大蔵省・財務省支配は2012年末の第二次安倍内閣発足まで続く。 そしてアメリカと中国。日米同盟を基軸としつつ対中関係も重視するのが経世会や宏池会が牛耳る戦後日本外交の根幹だった。政治家やキャリア官僚は日頃から在京のアメリカ大使館や中国大使館の要人と接触し独自ルートを築く。政治記者を煙に巻いても米中の外交官には情報を明かすことがある。政治記者ならアメリカや中国にも人脈を築いてそこから情報を得るという「離れ業」も必要だ。国際情勢に対する識見を身につけたうえで、米中の外交官が欲する国内政局に精通し、明快に解説できないようでは見向きもされない。 若宮さんの訓示は、この6者(経世会、宏池会、大蔵省、外務省、アメリカ、中国)こそが日本という国家の「権力」であり、政治記者はこの6者としっかり付き合わなければならないということだった。戦後日本政治史の実態を端的に表現したといえるだろう。 私は当時、その意味を理解する知識も経験も持ち合わせていなかったが、政治記者として20年以上、日本の政治を眺めてきた今となっては、若輩記者の直撃に対して明快な答えを即座に返した若宮さんの慧眼と瞬発力に感動すら覚える』、確かに「若輩記者の直撃に対して明快な答えを即座に返した若宮さんの慧眼と瞬発力に感動すら覚える」、その通りだ。
・『小渕恵三首相の「沈黙の10秒」  小渕恵三という総理は、口下手だった。途中で言葉が詰まり上手に話せないこともしばしばあった。しかし、総理番の取材に丁寧に応じようとしていることはよく伝わってきた。短い時間に、歩きながら、必死に言葉を絞り出していた。 私も何度もぶらさがって小渕総理に厳しい質問をしたが、どんなに慌ただしい政局の中でも何とか言葉を探して一言は答えてくれたものだ。無視されることはなかった。 小渕総理は風貌は地味で、流暢に話せず、「冷めたピザ」と揶揄されたが、若手記者の取材に真摯に応じる姿勢に惹かれた総理番は少なくなかった。「人柄の小渕」がマスコミを通して世間にじわじわ浸透したのか、当初低迷していた内閣支持率は徐々に上向いた。時間がたつにつれ支持率が下がることの多い日本の政権にしては珍しいパターンだった。 私は2000年春に総理番を卒業することになった。最終日、4月1日は日本政治史に残る重大な日となる。当時の関係者が何年もたった後に私に打ち明けた話によると、自自公連立を組む自由党の小沢一郎氏はこの時、連立離脱をちらつかせながら小渕総理と水面下で接触し、自民党と自由党をともに解党して合流するという大胆な政界再編を秘密裏に迫っていたというのだ。この日は夕刻に官邸を訪れ、小渕総理と最後の直談判に及んだのだった。私たち総理番は執務室の前で待った。小沢氏が硬い表情で退出した後、ほどなくして小渕総理が現れ、総理番に取り囲まれた。 私は小渕総理の目の前にいた。小渕総理は何か語ろうとしたが、うまく声を発することができずに10秒ほど押し黙った。ようやく口を開いて「信頼関係を維持することは困難と判断した」と述べ、会談が決裂したことを告げた。 小渕総理はそのまま総理番たちに背中を向け、総理公邸へ向かう廊下を進んだ。最後にちらっと私たちのほうを振り向いた。 これが小渕総理との別れだった。小渕総理は公邸に戻り、大好きな司馬遼太郎の「街道をゆく」のビデオを観ながら倒れたという。あとで先輩から「お前はあの時、小渕さんの目の前にいながら、10秒も押し黙ったのに、体調に異変が生じていることに気づかなかったのか」と叱られた。まったくその通りである。 しかし当時の政局は緊迫していた。小沢氏と決裂して連立解消が決まった直後、小渕総理の口調がこわばっていても不思議ではない。しかも小渕総理は日頃から能弁ではなく、言葉に詰まることが珍しくなかった。とはいえ体調の異変に気づかなかったのは、毎日密着している総理番としては観察力に欠けていたと言われても仕方がない。 その夜、政治記者たちは連立解消の取材に遅くまで追われた。朝刊の締め切りが過ぎた4月2日未明、私は他社の総理番らに国会近くの飲み屋で「総理番卒業」の送別会を開いてもらった(4月2日は日曜だった)。私は外務省担当になることが決まっていた。「小渕政権の最後まで総理番として見届けたかった」と他社の総理番たちにほろ酔いで話していたまさにその頃、小渕総理は病魔に襲われ、密かに順天堂大学附属順天堂医院へ運び出されていたのである』、「小渕恵三首相の「沈黙の10秒」」に立ち会ったが、「体調の異変に気づかなかった」、とは「小渕」氏であれば、やむを得ないだろう。
・『権力は重大な事を隠す  当時の青木幹雄官房長官や野中広務幹事長代理ら「五人組」は小渕総理が倒れた事実を伏せ、後継総理――それは森喜朗氏だった――を密室協議で決めた。 権力は重大な事を隠す。小渕総理の入院が公表された時にはすでに森政権へ移行する流れは出来上がっていた。小渕総理が身をもって教えてくれた政治の冷徹な現実である。 小渕官邸の「総理番」で学んだことは多かった。もちろん、官邸と官邸記者クラブの「癒着」は当時からあった。いちばん驚いたのは官房機密費の使い方だ。さすがに「餞別」などの理由で現金が政治記者に配られることはなかったと思う。しかし政務担当の総理秘書官は連夜、総理番を集め高級店で会食していた。その多くの費用は官房機密費から出ていると政治部記者はみんな察していた。 当時、地方支局ではオンブズマンが情報公開制度を利用して官官接待を追及しており、行政と記者の癒着にも厳しい目が向けられていた。「取材相手との会食は割り勘」は常識だったし、記者懇談会で提供される弁当にも手を付けるなという指示が出るほどだった。それなのに永田町の政治取材の現場では官房機密費がばらまかれていた。官房機密費の使用には領収書が不要で、情報公開で決して表に出ることはないと政治家も官僚も記者も確信しているからだった。 私は政務の総理秘書官を担当しておらず会食に出席したことはなかったが、上司に「あれはおかしいのではないか」と言ったことがある。上司は「それはそうだが、あの会食に出ないと、総理日程などの情報が取れない」と説明した。それに抗って異論を唱え続ける胆力は新米政治記者の私にはなかった。 当時に比べると、今の取材現場では「割り勘」が浸透し、悪弊は解消されつつある。ただし、そのスピードは極めて遅い。そればかりか、安倍晋三、菅義偉、岸田文雄各総理の記者会見をみると、官邸と官邸記者クラブの緊張関係はまったく伝わってこない。 小渕総理と政治記者のぶらさがり取材には緊張関係があった。小渕総理が政治記者という職業に敬意を払っていたからだろう。当時は新聞の影響力が大きく無視できないという政治家としての現実的な判断もあっただろう。 政治取材は長らく、権力者側の「善意」や「誠意」に支えられる側面が大きかった。新聞の影響力低下に伴って政治記者が軽んじられるようになり、一方的に権力者にこびへつらうようになったのが今の官邸取材の実態である。権力者側の「善意」や「誠意」には期待できないことを前提に、新たな政治取材のあり方を構築しなければ、政治報道への信頼はますます失われていくだろう。 次回は「内閣官房長官の絶大な権力」​​。明日更新です』、「新聞の影響力低下に伴って政治記者が軽んじられるようになり、一方的に権力者にこびへつらうようになったのが今の官邸取材の実態である。権力者側の「善意」や「誠意」には期待できないことを前提に、新たな政治取材のあり方を構築しなければ、政治報道への信頼はますます失われていくだろう」、その通りだ。 「吉田調書事件」については、何も触れられてないのは、残念だ。
タグ:(その32)(朝日新聞元エース記者が暴露する朝日新聞政治部シリーズ:(1)「吉田調書事件」とは何だったのか、(2)「吉田調書事件」とは何だったのか、(3)小渕恵三首相「沈黙の10秒」) メディア 現代ビジネス 鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(1)朝日新聞政治部(1)」 「木村社長は「社長賞だ、今年の新聞協会賞だ」と絶賛し、7月には新聞協会賞に申請」、それを手の平を返して「辞任を表明」とは、全く節操がない人物だ。 奥さんに指摘された「あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。誰もあなたに文句を言わなかったけど、内心は面白くなかったの。あなたはそれに気づかずに威張っていた。あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ!」は、実に本質を突いた至言だ。 「木村社長が「吉田調書」報道を取り消した」、どんな事情があったのだろう。 鮫島 浩氏による「元エース記者が暴露する「朝日新聞の内部崩壊」〜「吉田調書事件」とは何だったのか(2) 朝日新聞政治部(2)」 「梅田の高層ビルに入る高級店に何度となく呼び出され」、「新日鉄」も優秀な大学生にはかなり手をかけたようだ。 当初は新日鉄入社を考えていたが、「鉄に人生を捧げる覚悟が湧いてこなかった」、「「新聞記者は主役になれない」という言葉を背負って朝日新聞に入社した」、なるほど。 「警察官と「癒着」を極めた記者が特ダネにありつける。 警察は記者同士の競争意識につけ込み、警察に批判的な記者には特ダネを与えない。他の記者全員にリークし、批判的な記者だけ「特オチ」させることもある。記者たちはそれに怯え、従順になる。こうした環境で警察の不祥事や不作為を追及する記事が出ることは奇跡に近い」、「警察」のマスコミ・コントロールは容易なようだ。 「野放図な新人時代は、私の新聞記者像に絶大な影響を与えることになる」、幸運だったようだ。 鮫島 浩氏による「話題の書『朝日新聞政治部』先行公開第3回〜小渕恵三首相「沈黙の10秒」 朝日新聞政治部(3)」 「新聞の役割は権力を監視することだと思ってきた。「権力としっかり付き合いなさい」という言葉は意外だった」、確かにドサ回りとは全く違う環境のようだ。 確かに「若輩記者の直撃に対して明快な答えを即座に返した若宮さんの慧眼と瞬発力に感動すら覚える」、その通りだ。 「小渕恵三首相の「沈黙の10秒」」に立ち会ったが、「体調の異変に気づかなかった」、とは「小渕」氏であれば、やむを得ないだろう。 「新聞の影響力低下に伴って政治記者が軽んじられるようになり、一方的に権力者にこびへつらうようになったのが今の官邸取材の実態である。権力者側の「善意」や「誠意」には期待できないことを前提に、新たな政治取材のあり方を構築しなければ、政治報道への信頼はますます失われていくだろう」、その通りだ。 「吉田調書事件」については、何も触れられてないのは、残念だ。
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SNS(ソーシャルメディア)(その11)(承認欲求のお葬式、SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている、「なぜデマ情報が急増?」米SNS研究が明らかにした衝撃の事実) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、昨年10月21日に取上げた。今日は、(その11)(承認欲求のお葬式、SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている、「なぜデマ情報が急増?」米SNS研究が明らかにした衝撃の事実)である。

先ずは、本年3月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターの川代紗生氏による「承認欲求のお葬式」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299791
・『SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それ故、この世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。「承認欲求」とは果たして何なのか? 現代社会に蠢く新たな病について考察する』、「承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた」とは興味深そうだ。
・『感情の「お葬式」  「さようなら。今までありがとう」 私は人生の節目節目で、「感情のお葬式」というものをすることがある。なんてことはない。別に実際に参列するわけではない。一種の妄想だ。頭の中で、今までお世話になってきた感情に対してお辞儀をする。ありがとう、とお礼を言う。そして目を開ける。そうすると、なんだか過去の自分から解放されて、新しい自分になれるような気がする。思い込みかもしれないけれど。 頻繁にあるわけではない。ふと思い立ったとき、私はお葬式をする。さようなら、恋。さようなら、親への執着。さようなら、学生としての甘え。本当にその感情が自分の中からいなくなるとは限らないけれど、それでも、ひとつ自分の中で線を引いたような気分になるのだ。 これまでの人生の中で、「あ、今が転機かもしれない」と思う瞬間があって、そのときどきで必要に応じてお葬式をやってきた。いろいろな感情を弔ってきたし、その分、新しい感情が生まれてくることもあった。けれども私の中で、どうしてもさようならを言えない感情があった。 承認欲求。 他人から認められたいと思う気持ち。 周りと自分を比べてしまう気持ち。 社会からの評価に振り回されてしまう。とにかく、「世間の目」が気になって仕方がない、気持ち。 承認欲求に悩んでいる、いなくなっちゃえばいいのに、という声は頻繁に耳にする。とくに同世代で。就活生の頃からだったろうか。SNSが発達し、他人から「評価される」という機会が多い現代の社会で、私たちゆとり世代は日々、他人からの評価・期待と、自分本来の限界値との間でゆれ、劣等感に悩み続けている。 私は大学生の頃からブログを書いているが、「承認欲求」について考えることが、とても多かった。メインテーマは「女子と承認欲求」だった。 男子ももちろん大変だろうが、女子の中ではとくに、承認欲求について悩みを持つ人が多いように思う。女子は、ロールモデルが多く、多すぎるあまりに、「こんな人生が幸せ」というサンプルを得にくいからだ。仕事を頑張ってトップになったら絶対に幸せになれるというわけではない。数多くの男たちから告白されたら幸せになれるというわけでもない。結婚して子どもを産めば終わりというわけでもない。 ナイトプールに行っている子だってバリバリ海外で働いているキャリアウーマンを見ると焦りを感じるし、東京でクリエイティブな活動をしているエディターだって、地方の田舎でパン屋さんをやっている主婦の丁寧な暮らしぶりに嫉妬するのだ。女の人生は、なかなか難しい。 そんなことをあれこれ書いていた。書いていると、気がつくことがあった。私が悩んでいるのと同じようなことで、みんなも悩んでいるということだった。 たとえば、私は周りからこれほど「認められたい」と強く思っているのは私だけかと思っていた。承認欲求がこんなに強い人間は珍しいほうだと。 そう思いながらも、恥をさらすつもりで自分の感情をブログに曝け出したら、思わぬ反響があった。みんな同じだというのだ。私と同じように、承認欲求に、嫉妬に、劣等感に苦しんでいる。なかなか口には出せないけれど。 「ありがとう」と、感謝されることが多くなった。文章を書くことによって。 勇気を出して書いてよかった、と思うと同時にむくむくと、別の感情が湧き上がってくるのがわかった。不思議な恍惚というか、何かに興奮しているような、そんな感じ。けれども、その感情を何と定義するべきなのか、すぐにはわからなかった。 それからというもの、私はどんどん書くことにのめりこんでいった。書けば書くほど、共感してくれる仲間が増えていくのが面白くて仕方なかった。 「どうして、書くことを仕事にしたいと思うの? 」 将来書いて食べていけるようになりたい、と私が言うと、こんな風に聞かれることがあった。何がきっかけだったの? 転機みたいなものはあった? 決定打は?  「わからないけど、ただ、文章を書くようになって、最初にいろんな人に読んでもらって、『共感した』って言ってもらえたときの、あの感動が忘れられなくて」 私はとっさにそう答えた。事実だった。やりたいことなんて、合理的に決めるものじゃないんだなと思った。ビビッとくる、というのか、「これがやりたい!」という直感に突き動かされて、決まるものなのだな、と』、「これまでの人生の中で、「あ、今が転機かもしれない」と思う瞬間があって、そのときどきで必要に応じてお葬式をやってきた。いろいろな感情を弔ってきたし、その分、新しい感情が生まれてくることもあった。けれども私の中で、どうしてもさようならを言えない感情があった。 承認欲求」、「感情の「お葬式」」とはユニークで面白い。
・『私は承認欲求の奴隷だった  けれども、そこまで考えたとき、私はあることに気がついた。 もしかして、私がこうして文章を書き続けているその原動力こそ、承認欲求そのものなのでは? 私は、認めてもらうために、承認欲求を満たすために、文章を書いているのでは? もっと別の言い方をすると、私にとっては、承認欲求を満たす最も簡単な方法が、書くことだった。それだけだったのでは?  一見、矛盾しているようだが、事実だった。私は、「認めてもらう」という大目的を達成するために、「承認欲求から解放されたい」というネタをコンテンツにし続けていたのだ。 承認欲求をなくしたい。他人からの評価軸で生きるのをやめたいと思っているのは事実で、その苦しみから逃れるために記事を書いていた。けれども、周りが共感してくれるのは、「承認欲求から解放された私」ではなく「承認欲求に苦しんでいる私」という内容。 つまり、私が承認欲求から本当に解放されてしまったら、誰も私の文章を読んでくれなくなるんじゃないか? ものすごい恐怖を覚えた。 今、周りから必要とされているのは、「ポジティブに生きる、幸せな私」ではなく、「承認欲求に苦しんでいる私」なのだ。 ドロドロとしたマイナスの感情から逃れたいのは事実なのに、解放されない方が結果的にはおいしいという、とんでもない矛盾を抱えていたのだ。 私の中から承認欲求が消えたら、必要とされなくなるという、恐怖。 「共感してもらえる」という強烈な満足感を知ってしまったばかりに、「認められたい」の負のスパイラルに陥っていた。 いなく、ならないでくれ。 自分が嫌いだと思っていた感情に対して、そんな風に思ったのは、そのときがはじめてだった。 もはや私にとって、承認欲求はただの感情ではなくなっていた。 ひとつの、武器とすら言ってもいい。 承認欲求というツールを使って、私は不特定多数の、同じ苦しみを抱き、同じ痛みを抱えている人たちと繋がることができた。他者の持つ、「欠損」というものは、どうしてこうも魅力的に見えるのだろうか。そして、「欠損」によって繋がった人間関係というのは、どうしてポジティブな理由で繋がった人間関係よりもずっと、奥深くでしっかりと絆を紡いでいられるような気がしてしまうのだろう。 恐ろしかった。自分のことが。 このままでいいのだろうか、と思うことさえあった。 「書く」という作業をしていると、色々なことをネタにしようという視点が身についてくる。 辛いことがあったり、苦しいことがあっても、「書くネタができた」と思えば、プラスに転換できる。世の中を見る目が、前向きになってくる。 けれども私の場合は、それが歪んだ方向に進んでしまっていたのかもしれなかった。 書くために、辛いことがありますようにと願った。 書くために、承認欲求が消えませんようにと願った。 どんどんと、負のスパイラルは進んでいく。ぐるぐると下に向かう。 あ、これはもうだめだな、と思ったのは、知人が亡くなったときだった。 よく知る、自分と年の近い人間が死ぬというのは、思いのほか衝撃的で、私はしばらくその事実についてぐるぐると頭を巡らせていた。 そしてしばらくボーッと考えたすえに、ふと浮かんだのは。 「これ、ネタになるな」 その瞬間、ハッとした。 今、私、なんて思った? 何を考えた?  こともあろうに、私は、人の死をネタにしようとしてしまっていたのだ。よく知る人間の死。辛い。その感情を描けば、きっと。 きっと、みんなから認めてもらえる?  どこまでも、私は承認欲求の奴隷だった。 人から認めてもらいたい、その感情と向き合うために文章を書き始めたのに、結果的に、承認欲求がないと困る人間になってしまっていた。 こんなやつで居続けて、いいのだろうか。 そんな疑問が、ここしばらくずっと、いや、もしかしたらここ数年ずっとかもしれないが、私の頭の中にあった。結論が出ないまま、時は過ぎた』、「辛いことがあったり、苦しいことがあっても、「書くネタができた」と思えば、プラスに転換できる。世の中を見る目が、前向きになってくる。 けれども私の場合は、それが歪んだ方向に進んでしまっていたのかもしれなかった。 書くために、辛いことがありますようにと願った。 書くために、承認欲求が消えませんようにと願った。 どんどんと、負のスパイラルは進んでいく。ぐるぐると下に向かう」、「私は承認欲求の奴隷だった。 人から認めてもらいたい、その感情と向き合うために文章を書き始めたのに、結果的に、承認欲求がないと困る人間になってしまっていた。 こんなやつで居続けて、いいのだろうか」、確かに深刻なジレンマだ。
・『私は居場所が欲しかっただけなのかもしれない  そうして、大学生の頃とは違い、働くようになった。この数年がむしゃらに働き、苦しいことばかりだったが、最近になってようやく、働くことの面白さみたいなものが、わかりかけているように思う。 ありがたいことに、店長や書く仕事、編集作業やイベントの企画など、幅広い仕事を任せてもらえるようになった。失敗することもまだまだあるが、これからも続けていきたいという、熱中できる仕事に出会えたことで、私の人生は変わりつつある。 結論から言えば、今の私は、承認欲求に頼って生きる必要がなくなってしまった。 きっかけとなったのは、福岡店のリニューアルを担当したことだった。2018年の5月のことだ。 私は子どもの頃からチームで動くということがとても苦手で、一人でいる方が好きなタイプだった。リーダーとして周りをひっぱっていく才能もないし、部活の先輩後輩の上下関係の中で要領よく立ち回るのも苦手だった。 けれども、福岡店のリニューアルをするためには、チームで動かざるをえなかった。目標を達成するためには私一人の力ではどうにもできない。店舗というのはスタッフ一人一人が動き、そして、お客様に感動を与えられるようにみんなで工夫していかなければならない。 どうしたらお客様に「来てよかった」と言ってもらえるのかと、そればかりをずっと考えていた。 そして思いつく限りのことはやった。スタッフからあげられたアイデアはすぐに取り入れ、実行した。うまくいくこともうまくいかないこともあった。けれども失敗と成功を繰り返して、リニューアルは徐々に進んでいった。お客様に「ありがとう」と言っていただけることが増えた。 ふと、顔を上げると、私は「認められたい」という衝動によって動いていることが圧倒的に少なくなっていることに気がついた。 たしかに、「みんなにこう思ってほしい」という感情はあった。けれどもそれは、認められたいという承認欲求とはまた別の感情のような気がした。私がこうなりたいとかじゃなくて、みんなに、楽しんでほしいとか、笑っていてほしいとか、居心地がいいと感じてほしい、とか。 口にするのは照れ臭いけれど、それは、承認欲求ではなくて、愛情なんじゃないかと、私は思う。そう思いたい。 自分ではない誰かのために動く面白さは、周りから認めてもらえたときの興奮とは、また違った震え方をした。優しく穏やかに、じんわりと広がっていくような。 今、冷静になって思う。 あるいは私は、居場所がほしかっただけなのかもしれない。 「認められたい」という感情は、言い換えれば「あなたはここに居ていい」と許してもらいたいという欲求なのだ。自分にはどこにも居場所がない。そんな不安を掻き立てられると、必要とされたいと思う。認めてほしいと思う。「あなたは価値のある人間だよ」と言ってほしいと、願う。 だから、「承認欲求」というネタも、ある種私の居場所づくりのために必要だったのだ。承認欲求について語っているときは、私は「ここに居ていい人間」になれる。そんな風に。 仕事をして、仕事が好きになって、人のために動く面白さみたいなものが、徐々にわかりかけている今、私は自分の居場所を「承認欲求」コンテンツ以外のところに、もう見つけてしまったような気がする』、「熱中できる仕事に出会えたことで、私の人生は変わりつつある・・・承認欲求に頼って生きる必要がなくなってしまった」、「仕事をして、仕事が好きになって、人のために動く面白さみたいなものが、徐々にわかりかけている今、私は自分の居場所を「承認欲求」コンテンツ以外のところに、もう見つけてしまったような気がする」、「自分の居場所を「承認欲求」コンテンツ以外のところに、もう見つけてしまった」、おめでとう。
・『承認欲求にさようならをする日  だから、ようやく。 ずいぶん時間はかかったけれど、承認欲求にさようならをする日が、来たのかもしれない。 感情のお葬式。 これまで、様々な感情を弔ってきた。お別れしてきた。 執着心。 焦り。 嫉妬。 劣等感。 これらは私の中で抹消されたわけではないけれど、ぴっと一本、線を引いたことで、ずっと遠くの物に感じられる。 けれどもずっと、離れられない感情があった。 承認欲求。認められたいと思う気持ち。 なぜなら、私は承認欲求に依存し、承認欲求というコンテンツによって、甘い汁を吸い続けてきたからだ。 いなくなってほしい相手であり、いなくなったら困る相手でもあった。 けれどもうそろそろ、お別れしてもいいのかもしれない。 認められたいと思わなくなるわけじゃない。 世間の目が気にならなくなるわけじゃない。 だけどでも、「さようなら」と一言、言ってもいいような気がする。 もう、あなたの役目は終わりと、お辞儀をして、お別れをしてもいいように思うのだ。 だって私は、幸せになるために生きてるんだから。 不幸の数を数えて、不幸自慢をして、辛いことや悲しいことをネタに共感してもらって、それで仲間を増やすために生きているわけじゃ、ない。 面白いことや楽しいことをやって、「居心地がいいな」と思う人と一緒にいて、そして、幸せになるためにここにいる。生きている。 欠損を分かち合うことで繋がり合えることもたしかにある。 けれども、最高に面白い瞬間を共にすることで繋がり合える絆の強さも、私は知ることができた。 子どもの頃からずっと、心のどこかで居場所を探していた。 家族といても、学校にいても、恋人といても、どこか、ぽっかり穴が空いたような気がすることがあった。 私には居場所がないような気がした。 求められていないような気がした。 社会に必要とされていない気がした。 でも私には今、居るべき場所がある。 必要としてくれる人がいて、大切にしてくれる人がいる。大切にしたい場所もある。大切にしたい人も、たくさんいる。 あるいは、そんな風に思う今の私は、必要とされないかもしれないけれど、それでも、いい。承認欲求はもはや、朽ちかけているコンテンツに過ぎないのだ。 ありがとう。 私は今まで、あなたのおかげで色々と楽しむことができた。味方が増えた。仲間ができた。居場所ができた。 おそらく承認欲求と気がすむまで向き合い続けた期間があったから、私は今前を向けているんだろうと思う。 そろそろ、さようならを言おう。 ずっとずっとお別れを言えなかったけど、あなたを弔うことにする。 次のステージに、私は進む。 不幸集めをして満足する人生は、もう終わりにしよう。 心が、震える。 静かに震える。 何かが変わりゆくときの、振動だ。 ほんの少しの寂しさと、不安と。 未来への期待で、震えているのだ。 さようなら。 承認欲求のお葬式 川代紗生(かわしろ・さき)1992年、東京都生まれ。早稲田大学国際教養学部卒。2014年からWEB天狼院書店で書き始めたブログ「川代ノート」が人気を得る。 「福岡天狼院」店長時代にレシピを考案したカフェメニュー「元彼が好きだったバターチキンカレー」がヒットし、天狼院書店の看板メニューに。 メニュー告知用に書いた記事がバズを起こし、2021年2月、テレビ朝日系『激レアさんを連れてきた。』に取り上げられた。 現在はフリーランスライターとしても活動中。 『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)がデビュー作。(5頁目の本のPRはリンク先参照)』、「承認欲求と気がすむまで向き合い続けた期間があったから、私は今前を向けているんだろうと思う。 そろそろ、さようならを言おう。 ずっとずっとお別れを言えなかったけど、あなたを弔うことにする。 次のステージに、私は進む。 不幸集めをして満足する人生は、もう終わりにしよう・・・さようなら。 承認欲求のお葬式」、歯切れのいい文章で、SNSでの「承認欲求」を取上げた出色のコラムである。通常は、略歴は紹介しないが、今回は例外的に紹介した。『私の居場所が見つからない。』も時間が出来たら読んでみたい。

次に、6月3日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループFrontline Pressによる「SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/593828
・『閉鎖的なコミュニティ内で偏った意見や情報が増幅され、ほかの異なる意見や情報がかき消される「エコーチェンバー現象」。自分の関心に近い領域の情報に囲まれている状況下で起きるこの現象は、SNSの普及で加速度的に広がってきたとされる。 SNSは閲覧履歴などから利用者個人の好みの情報を推測し、自動表示していく。SNSの隆盛に比例してその危険性は指摘されてきたが、利用者はどう対応すればいいのか。エコーチェンバーの専門家である東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授(計算社会科学)に尋ねた。 鳥海教授は2021年9月、自らが開発したアプリ「エコーチェンバー可視化システムβ版」を公開した。 あるアカウントのTwitter(ツイッター)タイムラインに表示される内容がどの程度偏っているかを客観的にチェックできるシステムだ。タイムラインの内容やフォローなどを分析し、ツイッター全体に流れる情報と比較することで、偏りの度合いを「エコーチェンバー度」として表示する。 このシステムでは、自分のツイッターアカウントと連携させると、まずは本人のタイムラインがどの程度特定のコミュニティに占められているかを「タイムラインのエコーチェンバー度」として表示する。 さらに、フォロー先のユーザーは「こんなことに関心がある人たち」として、「フォロー関係のエコーチェンバー度」が表示され、フォロー先の関心領域も文字の大小などで表現される。ほかにも、リツイートがどの程度特定のコミュニティーに偏っているかの「リツイートのエコーチェンバー度」などを表示し、アカウント所有者の党派性もデータで示してくれる。 このシステムの公開当初は予想を上回るアクセスがあり、サイトがパンクしたという。 「エコーチェンバー可視化システムβ版」。筆者(板垣)のツイッターアカウントを使って、エコーチェンバー度を出してみた(Qは聞き手の質問、Aは鳥海教授の回答』、「エコーチェンバー可視化システムβ版」はなかなかよく出来ているようだ。
・『「自分の考え=世界の考え」という図式に陥りやすい  Q:システムを作った背景をお聞かせください。 A:エコーチェンバーという言葉は昔からあります。選挙を想像してみてください。よく、負けた側の人が「なんで負けたのか」という顔をしていますよね。「みんな自分に投票してくれるって言った」のに、蓋を開けると、負けてしまったと。よくある話です。 当人は「自分に投票してくれると言った人が大多数」と思っているんですが、実は自分の見えている範囲は、そんな広くないのです。自分の周りで起きている100%な事実は、世の中全体の0.1%の意見にしかすぎなかったりする。こんなことはつねにあるわけですよね。 そうした現実はSNSによって加速しています。SNSでは、個人の趣味や嗜好に合わせた関係性を構築していくため自分と似た感性の投稿・広告が表示されやすく、「自分の考え=世界の考え」という図式に陥りやすくなっているのです。 これは仕方ないことです。そもそもSNSなんて、みんな楽しいもののために使っているわけですから、自分があまり見たくない情報を遮断する仕組みはその点で理にかなっており、必然です。 だからこそ、SNSの利用に際しては、極端な意見しか増幅されない可能性があること、そして自分と異なる意見が必ずあるという気づきが必要となります。その発見のために「エコーチェンバー度」を開発しました。 誤解されると困るのですが、SNS上の言論が危険な状態だからその警鐘を鳴らすために作ったわけではありません。 一般には、あまり受け入れられていない意見も、世の中には当然存在しています。その意見自体が悪いわけではないですが、そういった意見に関連して自分で何か意見を言い、周りからも「そうだね」という答えが返ってきてしまうと、自分が間違っているということに気づけないんですよね。井の中の蛙、大海を知らず、というところでしょうか。(鳥海 氏の略歴はリンク先参照)』、「SNSでは、個人の趣味や嗜好に合わせた関係性を構築していくため自分と似た感性の投稿・広告が表示されやすく、「自分の考え=世界の考え」という図式に陥りやすくなっているのです。 これは仕方ないことです」、「SNSの利用に際しては、極端な意見しか増幅されない可能性があること、そして自分と異なる意見が必ずあるという気づきが必要」、その通りだ。
・『間違った情報に接していることを見抜くのは困難  Q:「見たい情報だけを見る」というSNSの選択的接触は、大きな問題として認知され始めています。2020年のアメリカ大統領選挙では、SNS上で「陰謀論」が流布され、トランプ氏の敗北を事実として受け入れない人々が大勢出現しました。1000人を超えるトランプ氏の過激な支持者たちが2021年1月6日、大統領選の不正を訴え、首都ワシントンで連邦議会議事堂を襲撃しました。今も記憶に新しい、衝撃的な出来事でした。 A:陰謀論による政治活動「Qアノン」や連邦議会への襲撃を見て、「もしかしたら自分は当事者になっていたかもしれない」と思う人は、そうそういないでしょう。しかし、ある側面ではすでに彼らと同じような状況になっていてもわれわれは自分では気づけないんですよね。エコーチェンバーの問題はそこにあります。 そもそも、人間がまんべんなくすべての情報を仕入れてくることは事実上できないのですから、自分が少数派なのか間違った情報に接しているのかを見抜くことは極めて困難です。 むしろ偏った情報を信じている人たちのほうが「自分は情報をきちんと調べて精査して結論に至っている」と考えていることが多いようです。そのときに精査した情報がすでに偏っている可能性になかなか気づけません。 Q:先生はどんな研究を経て、エコーチェンバーの研究にたどり着いたのでしょうか。 A:普段は、ソーシャルメディアやニュース閲覧行動の分析、AI(人工知能)の社会応用などの研究をしています。直近ですと、2021年10月に豊橋技術科学大学と香港城市大学と共同で「保守の声はリベラルの声よりも中間層に届きやすい」という研究結果を公表しました。これは、安倍政権時代の安倍元首相に関する1億2000万件以上のツイートを解析した結果です。 この研究では、2019年2月10日から10月7日までにツイッターへ投稿された「安倍」または「アベ」を含むツイート(約1億2000万件)を収集しました。そこから、好意的または批判的なツイート群を抽出し、それぞれのツイート群を計10回以上ツイートしたアカウントを保守かリベラルに分けました。 その結果、保守派のツイートは23.23%が中間層に拡散されているのに対して、リベラル派のツイートは6.46%しか中間層に拡散されていませんでした。保守派のツイートを中間層が拡散する割合は、リベラル派より約3.6倍多かったのです。 政治に強い関心を持つ人でツイッターなどのSNSで政治について話をする人は諸外国と比べると、日本では少ないです。それもあって、リベラルの声はリベラル界隈内でとどまり、数の多い中間層に届かない実態が生まれているわけです。これは、いまの政治環境でリベラル派が苦境に立たされている要因の1つと考えてよいのではないでしょうか。 このような研究から、実は多くの人たち、とくに主義主張のある人たちは自分たちの周りに同じような主義主張の人たちが多いことから、多数派であると思っているようなケースがデータ分析をしているうちに多く見つかりました。エコーチェンバーはその分析の中で見られる普遍的な社会現象でしたので、これを分析することは社会を理解するうえで重要なことかと思い、研究を行っています』、「保守派のツイートは23.23%が中間層に拡散されているのに対して、リベラル派のツイートは6.46%しか中間層に拡散されていませんでした。保守派のツイートを中間層が拡散する割合は、リベラル派より約3.6倍多かったのです」、「リベラルの声はリベラル界隈内でとどまり、数の多い中間層に届かない実態が生まれているわけです。これは、いまの政治環境でリベラル派が苦境に立たされている要因の1つと考えてよいのではないでしょうか」、こんなことまで分析できるとは、「エコーチェンバー」は有力なツールのようだ。
・『デマや誤情報は「勘違い」で流されることがほとんど  Q:研究対象にSNSを選んだのはなぜでしょうか。 A:SNSは社会現象を分析するうえでデータを取りやすいツールだったからです。その転換期は、2011年の東日本大震災でした。当時、SNSでは「給油タンクの火災で酸性雨が降る」「うがい薬を飲むと放射線に効く」といったデマが広がりました。 デマや誤情報なんて、最初から「人をだましてやろう」といったものはほぼ存在していません。比率で言えば、勘違いで流されることがほとんどです。ほかにも「面白いから」で誤った情報が拡散されることがあります。 一方では、「正しい情報を発信しなければ」と、社会正義感にかられて熱心に情報を拡散する人もいます。社会貢献をしたつもりになった人たちの暴走ですね。2020年のコロナ禍初期にあったトイレットペーパーの買い占め運動も、社会貢献をしたつもりになっている熱心な人による拡散が原因と考えられます。 Q:フェイクニュースが発生し、社会の分断がSNS上で起きるなかで、プラットフォーム側が負うべき責任はあるのではないでしょうか。 A:プラットフォームに限らず、責任は各所にあります。ユーザーがSNSで必要な十分な情報を得るには個々人の努力では限界があります。 情報環境の体質改善に向けて、デジタル・プラットフォーム(DPF)事業者、ユーザー、マスメディア、政府などさまざまなステークホルダーが取り組むべき施策を2022年1月に、憲法学者の山本龍彦・慶應義塾大学大学院教授と共同で提言しました。 「健全な言論プラットフォームに向けて――デジタル・ダイエット宣言」というもので、ポイントは5つです。 ①幅広い情報にユーザーが触れることができる情報的健康(インフォメーション・ヘルス)を実現すること ②食品の成分表示のように、コンテンツの種目やどんなバランスで表示と配信をしているのかを「情報のカロリー表示」として明らかにし、ユーザーの判断材料とすること ③ユーザーが情報的健康を確認するための健康診断「情報ドック」の機会を定期的に提供すること ④「情報ドック」により、ユーザーが情報的健康に問題があるとなった場合には、希望する者にはバランスのとれた情報摂取ができるよう調整できるデジタル・ダイエット機能を備えること ⑤ユーザーの興味関心で成り立っている経済構造を変えること』、「健全な言論プラットフォームに向けて――デジタル・ダイエット宣言」初めて知ったが、なかなかいいポイントを突いているようだ。
・『情報的健康の達成は、社会的に大きな意義がある  このうち、⑤で提言した新しい経済構造の姿は現時点では明らかではありません。 ただ、ユーザーの趣味嗜好に合わせて広告を打ち出すネット広告の配信事業者のほか、その広告主やマスメディアも「アテンション・エコノミー」の渦に巻き込まれ、PV数といった単純な指標で動き、情報的な健康を阻害しています。そうではなく、その質などによってコンテンツを評価していくシステムの構築が急がれるでしょう。 このような情報的健康の達成は、社会的に大きな意義があります。まず、「エコーチェンバーの内部にいる方が快適な情報空間である」という現状認識を変えていくことは、ユーザー個人から始められる第一歩といえるのではないでしょうか』、「情報的健康の達成は、社会的に大きな意義があります」、その通りだ。「エコーチェンバー」にもっと関心を持ってみてゆきたい。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した科学者・起業家・投資家のシナン・アラル氏による「「なぜデマ情報が急増?」米SNS研究が明らかにした衝撃の事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304311
・『「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』がついに日本に上陸した。ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンス・スリラーのようでもある」、マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する』、「デマは真実よりも速く、広く、力強く伝わる」、初耳だが、興味深そうだ。
・『フェイクニュース拡散についての大規模調査を実施  ではここで、少し回り道にはなるが、私自身が具体的にどのようにしてクリミア、ウクライナでの出来事を理解していったのか、という話をしてみよう。これはいわば、小説のなかで登場人物がもう一つの小説を書くようなものかもしれない。 クリミア併合から2年後の2016年、私はマサチューセッツ州ケンブリッジのMITの自分の研究室にいた。私はそこで同僚のソルーシュ・ヴォソウギ、デブ・ロイとともに、ある重要な研究プロジェクトに取り組んでいた。 ツイッター社と直接連携し、オンラインでのフェイク・ニュースの拡散に関して[1]、これまでで最大の長期的研究をしていたのである。 サービスの始まった2006年から2017年までの10年以上のあいだに、ツイッター上で広まった事実確認済みのすべての噂の真偽を確認し、それぞれの拡散の仕方を調べた』、「10年以上のあいだに、ツイッター上で広まった事実確認済みのすべての噂の真偽を確認し、それぞれの拡散の仕方を調べた」、膨大な作業のようだ。
・『嘘が地球を半周する頃、真実はまだ靴も履き終わっていない  研究の結果は、2018年3月、『サイエンス』誌のカバーストーリーとして発表された。オンラインでのフェイク・ニュース拡散についての初めての大規模調査の結果がこの時に明らかにされたわけだ。 この調査の過程で、私は科学者として、それまで知ったことのなかでも最も恐ろしい事実を知ることになった。今にいたるまでこれほど恐ろしい事実に出合ったことはない。 それは、フェイク・ニュースが、種類を問わず、真実のニュースよりもはるかに速く、遠くまで広がり、多くの人の心に深く浸透するという事実だ。場合によっては、拡散の速さ、範囲の広さは、10倍以上にもなる。 「嘘が地球を半周する頃、真実はまだ靴も履き終わっていない」と言った人がいるが、この言葉は正しい。 ソーシャル・メディアでは、嘘は光の速さで広がっていくが、真実は糖蜜が流れるくらいの速度でしか広がらない。しかも、ソーシャル・メディアを流れるあいだに情報は歪曲されていくことになる』、「ソーシャル・メディアでは、嘘は光の速さで広がっていくが、真実は糖蜜が流れるくらいの速度でしか広がらない。しかも、ソーシャル・メディアを流れるあいだに情報は歪曲されていく」、恐ろしいことだ。
・『大統領選挙に呼応してフェイクニュースが増加  しかし、調査で明らかになったのは、こうした明白な事実ばかりではない。一見したところではすぐにはわからない事実も明らかになった。その一つは、クリミア危機に直接関係する事実だ。 ツイッターでの真実と嘘の拡散に関してまだ精緻なモデルが構築できていなかった頃、私たちは、分析の一環として簡単なグラフを作ったことがあった。 このグラフには、政治、ビジネス、テロ、戦争など様々な分野の真実のニュース、嘘のニュースのカスケード(あるニュースについてのツイート、リツイートの連なりのことをこう呼んでいる)の数が時間の経過とともにどう変化していったかが示されている[図1─1]。 [図1-1] 2009年から2017年までのあいだにツイッター上に流れたニュースに関するカスケード数の推移。 [図1-1] 2009年から2017年までのあいだにツイッター上に流れたニュースに関するカスケード数の推移。ファクトチェックされた真実(明るいグレー)、嘘(ダーク・グレー)、真偽混合の情報(部分的には真実で、部分的には嘘/黒)。「ファクトチェックされた真実」とは、私たちの調査の過程で、6つのそれぞれに独立した組織によってファクトチェックされた情報を指す。ツイッターのユーザーによりツイート、リツイートされて広まっていった様子を示している。 このグラフを見ると、嘘のニュースについてのカスケードの数は、2013年末、2015年、2016年末などにピークに達していることがわかる。 2016年末のピークは、前回のアメリカ大統領選挙に呼応したものだろう。2012年、2016年と、アメリカ大統領選挙のあった年には、明らかに嘘のニュースが他の年より多く拡散されている。 政治とフェイク・ニュースの関わりがいかに深いかがこれでよくわかる』、「嘘のニュースについてのカスケードの数」を見ると、「アメリカ大統領選挙のあった年には、明らかに嘘のニュースが他の年より多く拡散されている」、なるほど。
・『クリミア併合で「部分的には真実で、部分的には嘘」が急増  だが、私たちの興味を引いたのはそれだけではなかった。わかりにくいが、データにはもっと興味深い傾向が見られたのだ。 2006年から2017年までの10年あまりのあいだに、「部分的には真実で、部分的には嘘」というニュースの数が急増したのはたった一回だけだ。私たちはこの種の噂を「混合ニュース」と呼んだ。 [図1─1]のグラフを見ても、そのピークの存在はわかりにくい。ところが[図1─2]の、政治関連のニュースだけについてのグラフを見ると、黒で示された「混合ニュース」の拡散が急増しているタイミングがあることが明確にわかる。 [図1-2] 2009年から2017年までのあいだにツイッター上に流れた政治ニュースに関するカスケード数の推移。 [図1-2] 2009年から2017年までのあいだにツイッター上に流れた政治ニュースに関するカスケード数の推移。ニュースには、ファクトチェックされた真実(明るいグレー)、嘘(ダーク・グレー)、真偽混合の情報(部分的には真実で、部分的には嘘/黒)がある。 それは、2014年の2月から3月にかけての2ヵ月間だ。ちょうどクリミア併合が起きたタイミングということになる。クリミアでの出来事に直接、呼応して混合ニュースが増えたわけだ。 これは驚くべきことだった。私たちの調べたかぎり、歴史上、ツイッター上にこれほど混合ニュースが急増したケースは一度もなかったからだ(カスケード数が、2番目に急増したケースの実に4倍になっていた)。 しかも、急増したあと、すぐに急減している。クリミアの併合が完了すると、ほぼなくなってしまったのだ。 さらに詳しく調べると、この急増は、親ロシア勢力が組織的にソーシャル・メディアを活用した結果であることがわかった。この時、親ロシア勢力は、ハイプ・マシンを積極的に活用して、クリミアの出来事についてのウクライナの世論、国際世論を操作しようとしたのである。 クリミアの併合は、クリミア市民自身の意思に沿うものであるという認識が広まるよう仕向けたわけだ。 【参考文献】 (省略)(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています』、「クリミアでの出来事に直接、呼応して混合ニュースが増えたわけだ」、「急増したあと、すぐに急減している。クリミアの併合が完了すると、ほぼなくなってしまったのだ」、「この急増は、親ロシア勢力が組織的にソーシャル・メディアを活用した結果であることがわかった。この時、親ロシア勢力は、ハイプ・マシンを積極的に活用して、クリミアの出来事についてのウクライナの世論、国際世論を操作しようとしたのである。 クリミアの併合は、クリミア市民自身の意思に沿うものであるという認識が広まるよう仕向けたわけだ」、「クリミアの併合」時に「ウクライナの世論、国際世論を操作しようとした」、今回の「ウクライナ」侵攻でも悪用されたのだろうか。
・『全米震撼のベストセラーが日本上陸!  本書では、私が過去20年のあいだに、実際にソーシャル・メディアを立ち上げ、また研究対象、投資対象、ビジネス・パートナーとしてソーシャル・メディアと関わることで知り得たことを述べていきたいと思う。 20年の道のりは決して楽ではなかった。信じがたい発見も多くしたし、ソーシャル・メディアが民主主義を蝕む酷いスキャンダルに直面もした。 有用な情報も多く伝えてくれるが、明らかな嘘が瞬時に拡散されていくのを何度も見た。抑圧と闘う道具にも使えるが、同時に抑圧を促進する道具としても使えることを知った。 言論の自由を守ることの重要性と、それがヘイト・スピーチの蔓延につながりやすいこともよくわかった。 そして何よりも重要なのは、ソーシャル・メディアのなかの仕組みがわかったことだ。私たち人間の脳がソーシャル・メディアに引きつけられやすい性質を持っていることや、感情、社会、経済、様々な要因が私たちをソーシャル・メディアに結びつけていることも知った。 本書を読めば、ソーシャル・メディアの背後にあるビジネス戦略がわかるだけでなく、ソーシャル・メディアのデザインを変えれば社会がどれほど大きく変わり得るか、ということもわかるはずだ』、「私たち人間の脳がソーシャル・メディアに引きつけられやすい性質を持っていることや、感情、社会、経済、様々な要因が私たちをソーシャル・メディアに結びつけている」、我々もこうした危険性を踏まえた上で、利用してゆく必要がある。
タグ:Frontline Pressによる「SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている」 東洋経済オンライン SNS(ソーシャルメディア) (その11)(承認欲求のお葬式、SNSで自分の意見は多数派と思う人が陥る怖い罠 精査したと思っている情報がすでに偏っている、「なぜデマ情報が急増?」米SNS研究が明らかにした衝撃の事実) ダイヤモンド・オンライン 川代紗生氏による「承認欲求のお葬式」 「承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた」とは興味深そうだ。 「これまでの人生の中で、「あ、今が転機かもしれない」と思う瞬間があって、そのときどきで必要に応じてお葬式をやってきた。いろいろな感情を弔ってきたし、その分、新しい感情が生まれてくることもあった。けれども私の中で、どうしてもさようならを言えない感情があった。 承認欲求」、「感情の「お葬式」」とはユニークで面白い。 「辛いことがあったり、苦しいことがあっても、「書くネタができた」と思えば、プラスに転換できる。世の中を見る目が、前向きになってくる。 けれども私の場合は、それが歪んだ方向に進んでしまっていたのかもしれなかった。 書くために、辛いことがありますようにと願った。 書くために、承認欲求が消えませんようにと願った。 どんどんと、負のスパイラルは進んでいく。ぐるぐると下に向かう」、「私は承認欲求の奴隷だった。 人から認めてもらいたい、その感情と向き合うために文章を書き始めたのに、結果的に、承認欲求がないと困る人間に 「熱中できる仕事に出会えたことで、私の人生は変わりつつある・・・承認欲求に頼って生きる必要がなくなってしまった」、「仕事をして、仕事が好きになって、人のために動く面白さみたいなものが、徐々にわかりかけている今、私は自分の居場所を「承認欲求」コンテンツ以外のところに、もう見つけてしまったような気がする」、「自分の居場所を「承認欲求」コンテンツ以外のところに、もう見つけてしまった」、おめでとう。 「承認欲求と気がすむまで向き合い続けた期間があったから、私は今前を向けているんだろうと思う。 そろそろ、さようならを言おう。 ずっとずっとお別れを言えなかったけど、あなたを弔うことにする。 次のステージに、私は進む。 不幸集めをして満足する人生は、もう終わりにしよう・・・さようなら。 承認欲求のお葬式」、歯切れのいい文章で、SNSでの「承認欲求」を取上げた出色のコラムである。通常は、略歴は紹介しないが、今回は例外的に紹介した。『私の居場所が見つからない。』も時間が出来たら読んでみたい。 「エコーチェンバー可視化システムβ版」はなかなかよく出来ているようだ。 「SNSでは、個人の趣味や嗜好に合わせた関係性を構築していくため自分と似た感性の投稿・広告が表示されやすく、「自分の考え=世界の考え」という図式に陥りやすくなっているのです。 これは仕方ないことです」、「SNSの利用に際しては、極端な意見しか増幅されない可能性があること、そして自分と異なる意見が必ずあるという気づきが必要」、その通りだ。 「保守派のツイートは23.23%が中間層に拡散されているのに対して、リベラル派のツイートは6.46%しか中間層に拡散されていませんでした。保守派のツイートを中間層が拡散する割合は、リベラル派より約3.6倍多かったのです」、「リベラルの声はリベラル界隈内でとどまり、数の多い中間層に届かない実態が生まれているわけです。これは、いまの政治環境でリベラル派が苦境に立たされている要因の1つと考えてよいのではないでしょうか」、こんなことまで分析できるとは、「エコーチェンバー」は有力なツールのようだ。 「健全な言論プラットフォームに向けて――デジタル・ダイエット宣言」初めて知ったが、なかなかいいポイントを突いているようだ。 「情報的健康の達成は、社会的に大きな意義があります」、その通りだ。「エコーチェンバー」にもっと関心を持ってみてゆきたい。 シナン・アラル氏による「「なぜデマ情報が急増?」米SNS研究が明らかにした衝撃の事実」 「デマは真実よりも速く、広く、力強く伝わる」、初耳だが、興味深そうだ。 「10年以上のあいだに、ツイッター上で広まった事実確認済みのすべての噂の真偽を確認し、それぞれの拡散の仕方を調べた」、膨大な作業のようだ。 「ソーシャル・メディアでは、嘘は光の速さで広がっていくが、真実は糖蜜が流れるくらいの速度でしか広がらない。しかも、ソーシャル・メディアを流れるあいだに情報は歪曲されていく」、恐ろしいことだ。 「嘘のニュースについてのカスケードの数」を見ると、「アメリカ大統領選挙のあった年には、明らかに嘘のニュースが他の年より多く拡散されている」、なるほど。 「クリミアでの出来事に直接、呼応して混合ニュースが増えたわけだ」、「急増したあと、すぐに急減している。クリミアの併合が完了すると、ほぼなくなってしまったのだ」、「この急増は、親ロシア勢力が組織的にソーシャル・メディアを活用した結果であることがわかった。この時、親ロシア勢力は、ハイプ・マシンを積極的に活用して、クリミアの出来事についてのウクライナの世論、国際世論を操作しようとしたのである。 クリミアの併合は、クリミア市民自身の意思に沿うものであるという認識が広まるよう仕向けたわけだ」、「クリミアの併合」時に 「私たち人間の脳がソーシャル・メディアに引きつけられやすい性質を持っていることや、感情、社会、経済、様々な要因が私たちをソーシャル・メディアに結びつけている」、我々もこうした危険性を踏まえた上で、利用してゆく必要がある。
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メディア(その31)(新聞社をダメにした「外を知らない経営者」の過ち 「個人が輝く職場」に戻さなければ復権は難しい、朝日新聞編集委員が安倍晋三氏インタビュー記事介入で処分 OBたちの嘆き、スクープ!日経「テレ東天下り」に物言う株主がNO 株主提案には「日経が最も恐れる男」の名前も) [メディア]

メディアについては、3月20日に取上げた。今日は、(その31)(新聞社をダメにした「外を知らない経営者」の過ち 「個人が輝く職場」に戻さなければ復権は難しい、朝日新聞編集委員が安倍晋三氏インタビュー記事介入で処分 OBたちの嘆き、スクープ!日経「テレ東天下り」に物言う株主がNO 株主提案には「日経が最も恐れる男」の名前も)である。

先ずは、4月14日付け東洋経済オンライン「新聞社をダメにした「外を知らない経営者」の過ち 「個人が輝く職場」に戻さなければ復権は難しい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/581186
・『人材流出が加速する新聞業界。元日経の論客・磯山友幸氏は、管理強化で「きちんとした会社」になった新聞社の問題点を指摘する。 朝日新聞社は4月6日、他社媒体の編集権に”介入”したとして、峯村健司記者に懲戒処分を下した。他方、日本経済新聞に関しては若手記者の退職が相次いでいるという厳しい内情が報道されるなど、目下、新聞業界が何かと騒がしい。 個々の事件にはそれぞれの経緯や原因があるものの、底流には新聞社という組織ジャーナリズムの担い手の構造問題も存在していそうだ。新聞社は今、どんな課題を抱えているのか。部数減が止まらない中、どうすれば報道機関として復権できるのか。 業界内外の論客に聞くインタビューシリーズの第一回は、フリージャーナリストの磯山友幸氏。2011年に日本経済新聞社を辞め、現在はネットメディアやテレビのコメンテーターとして活躍している。新聞社を辞めた理由について「個人で仕事ができる時代になったから」と語る磯山氏の目に、今の新聞社はどう映るのか(Qは聞き手の質問、Aは磯山氏の回答)』、「朝日新聞社」の問題は、第二の記事で取上げる。「日本経済新聞に関しては若手記者の退職が相次いでいる」、とは困ったことだ。
・『「他流試合」で成長していたのに  Q:日本経済新聞社では記者の退職が相次いでいるようです。 A:退職理由として編集局長のパワハラなんかが報道されているが、それは「最後の一押し」的な要素であって、本質的なものではないと思う。新聞記者をとりまく環境の変化が背景にあるのではないか。 この20年ほどで日経記者の自由度は著しく下がった。象徴的な例を挙げると、記者が雑誌など自社以外の媒体でアルバイト原稿を書くことが認められにくくなっている。 1990年代、日経の記者たちは自由にバイト原稿を書いていた。私がバイトを始めたきっかけも当時の部長が外でやっていたバイトを「代わりにやれ」と頼まれたことだった。その部長は、「おまえ、外の締め切りは絶対に守れよ。遅れたら信用を失うぞ」と。社内の原稿について言われないようなことまで言う(笑)。 Q:それくらい自由だったということですね。 A:上司は部下に「他流試合をしろ」と積極的にけしかけていた。稼ぐためというより、記者として成長するため。新聞は一本の原稿で書ける文字量がせいぜい1000字。雑誌なら1本3000~4000字になり、論理の組み立て方などを書き手が自分で考えなければならない。編集者からの注文も多い。 だから記者はおのずと鍛えられる。私自身、原稿が下手な後輩記者には「もっと外で書け」と、知り合いの雑誌編集者を紹介したりしていた。しばらく他流試合をやらせていると、原稿はみるみる上達した。 新聞社は記者個人の力量に大きく依存している。人脈も知識も、会社というよりは記者個人につながっているものだ。記者が輝かないと新聞社は輝かない。だから会社は記者のバイトを黙認してきたし、外で鍛えられた記者がいい仕事をすることが会社の利益につながっていた。記者と会社がウィンウィンの関係を築けていたわけだ。 Q:状況が変わってきたのは、なぜでしょうか。 A:新聞社が記者を遊ばせておけなくなったからだ。新聞の発行部数は1997年を境に減少し、2007年にアップルがiPhoneを発売すると、紙の新聞を読んでいた人々がスマートフォンで情報を得るようになった。このあたりから新聞の発行部数はつるべ落としとなり、業績は悪化の一途をたどる。 貧すれば鈍す。私が日経を退職した2011年の前後になるとすっかり文化が変わり、社内でそれまで黙認されてきた記者のバイトに対し「けしからん」という空気が充満するようになった。どの記者が外で書いているのかを調べようとする動きも出てきた。 そうこうしているうち外で活躍したことのない人が上に立つようになった。外の世界を知らない人が上に立つと、記者の「枠外」の行動を許さなくなる。組織の体質もコンプライアンス重視へと変わっていく。 この傾向は1990年代以降の日本企業全体にもいえる。外の営業などでバリバリ稼いでいた人がコンプラ違反で次々失脚した。外で勝負していた人はたいてい、スネに傷の1つや2つを持っているからだ。 結果的に傷のない、外の世界を知らない人が管理職に登りつめた。やれることはコストカットくらいで、成長に向けた勝負ができない。これこそ日本企業がハマったワナだ。時代の要請がある中で、仕方ない面はあるが、これによって失われたものも多いだろう』、「しばらく他流試合をやらせていると、原稿はみるみる上達した」、「記者が輝かないと新聞社は輝かない。だから会社は記者のバイトを黙認してきたし、外で鍛えられた記者がいい仕事をすることが会社の利益につながっていた」、「2011年の前後になるとすっかり文化が変わり、社内でそれまで黙認されてきた記者のバイトに対し「けしからん」という空気が充満するようになった」、「外で活躍したことのない人が上に立つようになった。外の世界を知らない人が上に立つと、記者の「枠外」の行動を許さなくなる。組織の体質もコンプライアンス重視へと変わっていく」、「これによって失われたものも多いだろう」、なるほど。
・『「きちんとした会社」になった功罪  Q:新聞社も例外ではなかったと。 A:僕が日経を辞める時、「日経の看板がなくなってどうやって仕事をするんだ」と忠告してくれる上司がいた。引き留めようとしてくれたのかもしれないが、迷いはなかった。インターネットやスマホの普及で、新聞社には500年ぶり大変革期がきていると確信していたから。 Q:どういう意味でしょう? A:現存する世界最古の新聞「レラツィオン」が発刊されたのは1605年。大量に印刷して短時間で読者に届けられる技術の確立が新聞発行を可能にしたわけだが、背景にはルネサンス以降の「個」の確立もあった。個々人が互いの情報に価値を見いだす社会に変わろうとしていた。 だから新聞という情報媒体の信頼の基礎も「個人」にあった。読み手が重視したのは会社組織ではなく、伝達者がどのような人物か、だった。 新聞がその性質を大きく変えたのは19世紀以降のこと。近代国家が成立する過程で電信が発達し近代郵便制度が整ったことで、情報の信頼の基盤は「個人」から「朝日新聞社」や「中外物価新報(日本経済新聞の前身)」といった「組織」に変わり始めた。 日本の新聞社が組織として隆盛したのは1970年代以降、高度経済成長期に入り、自宅で新聞を購読する人が急増してから。記者に対し、世間の相場より高い給料を払う、「きちんとした会社」になったのはこのころだ。 Q:「~新聞」の記者という職業が高いステータスになったと。 A:そうだ。ただ前述のとおり、記者個人の力量こそが本来的な価値であるこの業界に、そもそもそういった組織形態はなじまない。1970年代以降の高度経済成長期にはフィットしたのかもしれないが、あくまで一時的な姿だったと考えるのがいいのではないか。 今、ネットとSNSの普及で、情報の発信者は組織から個人へと戻り始めている。新聞の「原点回帰」と言っていい。私が日経を辞めたのも「個人」として活躍できる時代が来たと踏んだからだ。今はさらに、そのハードルは下がっているのではないか。 Q:新聞社は今後どうなるでしょう? A:個人が輝く職場へと戻さなければならないのに、管理強化の流れは変わっていない。輪転機が激しく回っていた時代の分業体制を引きずっていて、個々人をいかに生かすかより、いかに組織を回すかに重心が置かれている。記者の多様な働き方を認めていかないと、記者が新聞社を離れる流れは止められないだろう』、「日本の新聞社が組織として隆盛したのは1970年代以降、高度経済成長期に入り、自宅で新聞を購読する人が急増してから。記者に対し、世間の相場より高い給料を払う、「きちんとした会社」になったのはこのころだ」、「新聞社が組織として隆盛したのは1970年代以降」、そんな最近だったとは初めて知った。「個人が輝く職場へと戻さなければならないのに、管理強化の流れは変わっていない。輪転機が激しく回っていた時代の分業体制を引きずっていて、個々人をいかに生かすかより、いかに組織を回すかに重心が置かれている。記者の多様な働き方を認めていかないと、記者が新聞社を離れる流れは止められないだろう」、なるほど。
・『「権力監視」の機能をどう維持する?  Q:新聞社をはじめ、マスコミは中央官庁や自治体にネットワークを張りめぐらせ、行政や議会をチェックする機能も担っています。 (磯山氏の略歴はリンク先参照) その機能を今後どう維持していくか。これも非常に重要な問題だ。政府の発表を検証する記者がいなくなれば、国民は政府が発表する公式見解を鵜呑みにしてしまうかもしれない。新聞社が縮小していくことの最大のマイナスポイントはここだ。 人を張り付けて「面」で押さえるメディアは、社会的な機能として必要だ。1社だけで維持できないなら、各社が共同出資して1つか2つの会社に機能を集約するなど、何からの手は打たないといけない。 権力者にとって、いちばんやっかいな相手がメディアであるはずだ。もともと記者クラブができたのも強い権力者に対して結束して立ち向かうためだった。それが近年は権力者側にコントロールされる記者が増えている。組織ジャーナリズムの悪い側面が目立ちはじめている。 新聞社の経営問題とは別に、社会的な機能としてのメディアをどう維持していくか。真剣に考えなければならない局面に来ている』、「「権力監視」の機能を含めて、社会的な機能としてのメディアをどう維持していくか。真剣に考えなければならない局面に来ている」、全く同感である。

次に、4月18日付けNEWSポストセブン「朝日新聞編集委員が安倍晋三氏インタビュー記事介入で処分 OBたちの嘆き」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20220419_1745629.html?DETAIL
・『新聞・メディア業界に大きな衝撃を与えたのが朝日新聞の峯村健司・編集委員(外交、米国・中国担当)による、『週刊ダイヤモンド』の安倍晋三・元首相インタビュー記事への介入問題だ。 峯村氏は中国の安全保障政策に関する報道で「ボーン・上田記念国際記者賞」、昨年は無料通信アプリLINEが日本の利用者の個人情報に中国人技術者がアクセスできる状態にしていたことをスクープして新聞協会賞を受賞した朝日のエース記者。その峯村氏が今年3月、『週刊ダイヤモンド』が行なった安倍氏へのインタビューについて同誌の副編集長に電話を入れ、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言し、「とりあえず、ゲラ(*校正用の記事の試し刷り)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと要求した。 週刊ダイヤモンド編集部は要求を拒否し、朝日新聞に対して「編集権の侵害」と抗議。朝日は調査を経て、「政治家と一体化して他メディアの編集活動に介入したと受け取られ、記者の独立性や中立性に疑問を持たれる行動だった」とダイヤモンド側に謝罪。4月7日付朝刊社会面で峯村記者の行為は「報道倫理に反する」と編集委員を解任し、停職1か月の処分を下したことを大きく記事化した。 なぜ、朝日の編集委員が“安倍氏の代理人”を務めたのか。安倍氏は首相退陣後も新聞・テレビに積極的に登場し、ロシアのウクライナ侵攻後は、特に核共有についての議論提起に力を入れている。 首相を辞めてもなお、メディアにそれだけの発信力があるのは、連続在任7年8か月の長期政権下で大メディアを取り込んできたからだ。 安倍氏のメディア戦略は自ら新聞・テレビの最高幹部と会食を重ねて“懐柔”をはかる一方で、「中立・公平」を口実に報道内容に細かく注文をつけて“圧力”をかけるアメとムチの手法で行なわれた。 巧妙だったのはNHKの岩田明子氏、TBS時代の山口敬之氏、テレビコメンテーターでは政治評論家の田崎史郎氏など、主要なメディアに“安倍応援団”の記者をつくり、巧みに官邸寄りの情報を発信させたことだ。 2013年10月に放送されたNHKスペシャル『ドキュメント消費税増税 安倍政権 2か月の攻防』では、安倍氏がどんな覚悟と勇気をふるって消費税増税を決断したかが描かれ、岩田氏が総理執務室で安倍氏を独占インタビューする。まさにNHKが首相の宣伝番組の制作プロダクションになったかのようだった。) そうして大新聞・テレビが次第に権力に刃向かう牙を抜かれ、安倍政権の“宣伝機関”へと傾斜を強めていくなかで、批判的な姿勢を保ってきたのが朝日だった。「森友学園」の国有地売却問題や加計学園の獣医学部新設問題を追及し、財務省の公文書改竄をスクープして安倍氏を追い詰めた。 しかし、今回の報道介入問題で、朝日内部の“安倍応援団”の存在が浮かび上がった。元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司氏が語る。 「NHK政治部の岩田記者は安倍首相の懐刀なんて言われていたが、話すことは結局、安倍さんの宣伝と受け取られかねない面があった。峯村さんも“オレは安倍さんに安全保障についてレクしている、安倍さんに食い込んでいる”と社内にアピールしたかったのかもしれないが、記者が向き合う相手は読者以外いないはずだ」 朝日の峯村氏への処分もおかしいと続けた。 「朝日の綱領のひとつに『不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す』とあるが、朝日新聞の読者は中道から左派の人が多い。政府に批判的な読者が多く、安倍さんは保守の右派で再軍備を主張しているから朝日の立場とは違う。 朝日にはかつて社会党の土井たか子さんの事務所内に自分が主導する市民団体を設置するほどの記者もいたのに、処分などされなかった。なぜ峯村さんだけ処分するのか。安倍さんとつながっていたからなら、不偏不党の処分とは言えないのでは」 峯村氏の行為は「反安倍」という朝日の看板がすでに朽ちかけていることを示している。だからこそ、朝日は慌てて処分に踏み切ったのではないか。そんな内情を思わせる指摘だ』、「峯村さんも“オレは安倍さんに安全保障についてレクしている、安倍さんに食い込んでいる”と社内にアピールしたかったのかもしれないが、記者が向き合う相手は読者以外いないはずだ」、その通りなのだろう。それにしても、超一流の新聞記者、「峯村氏」がこんな罠にはまるとは解らないものだ。

第三に、4月16日付け東洋経済オンライン「スクープ!日経「テレ東天下り」に物言う株主がNO 株主提案には「日経が最も恐れる男」の名前も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/581882
・『日経グループを想定外の激震が襲っている。 4月14日、民放キー局のテレビ東京ホールディングス(HD、東証プライム市場上場)が、アクティビスト(物言う株主)から6月の定時株主総会に向けた株主提案を受けていたことが東洋経済の取材でわかった。仕掛けたのは、香港の投資会社であるリム・アドバイザーズだ。 リムが行った提案の中で最大のポイントは、筆頭株主である日本経済新聞社(日経)から経営陣がテレ東HDに「天下り」する慣行を廃止すること。その実行を担保するための社外取締役候補として「日経が最も恐れる男」の起用を提案している。リムは日経とテレ東という経済報道の巨人に挑戦状をたたきつけた格好だ』、「テレ東という経済報道の巨人に挑戦状をたたきつけた格好だ」、これは興味深そうだ。
・『歴代のテレ東社長は日経の出身者  まず、「天下り」の実態を見ておこう。日経はテレ東HDに32.0%を出資する筆頭株主。現在の同社経営陣のトップ3はいずれも日経本体の取締役経験者だ。1973年就任の佐藤良邦氏以来、テレ東HD(2010年から持株会社体制へ移行)社長は40年近く日経出身者が占め続けてきた。 また、テレ東HDで特別顧問の職にある高橋雄一氏は日経からテレ東社長に転じ、2020年にテレ東HD会長を退任した人物だ。今回、リムは報酬つきの顧問制度を撤廃することも求めている。 日本の放送法では民放キー局などを傘下に抱える持ち株会社に、特定株主が3分の1以上出資できないと定めている。日経はほぼその上限の株式を保有している。「日経幹部にとってテレ東は最も格の高い天下り先」(日経元記者)という。) 近年、TBSホールディングス、テレビ朝日ホールディングス、フジ・メディア・ホールディングスなどの民放大手は続々とアクティビストの標的になってきた。 これらの企業はいずれもPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る。一方で、現預金、持ち合い株、不動産といったノンコアの資産を豊富に抱えている。アクティビストから見れば、株主提案など経営陣への圧力により増配といった果実を得やすい、実においしい状態なのだろう。 (外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 石川一郎社長が就任(2020年6月)してからの株価推移をみると、テレ東HDは一人負け状態だ。 2021年12月末時点でテレ東HDの純資産は900億円に及ぶが、足元の時価総額は約550億円。PBRは0.6倍に過ぎず、345億円ものキャッシュを抱えるテレ東HDもアクティビストからすれば格好の獲物のはず。だが、長らく同社は太平無事だった。「日経は企業に圧倒的な影響力を持つ『ご意見番』。テレ東を突き上げて彼らを敵に回すのは、アクティビストにとっても怖いこと」(投資ファンド関係者)だからだともいえる』、「「日経は企業に圧倒的な影響力を持つ『ご意見番』。テレ東を突き上げて彼らを敵に回すのは、アクティビストにとっても怖いこと」、今回はこうした制約が弱くなったのかも知れない。
・『上場企業の「天下り」を問題視  そうした中、あえて株主提案を突きつけたリムは、日本企業の「天下り」体質を目の敵にしているファンドだ。 2021年には平和不動産、2022年には鳥居薬品に、取引先や親会社からの天下りの禁止を求める株主提案を行っている。両社への提案書では、利益相反や、トップに迎える人材の適格性を問うている。 リムはすでに1%余りのテレ東HD株を保有しているもようだ。その圧力が作用したのか、テレ東HDは2022年2月に増配と自社株買い、さらに人事諮問委員会、報酬諮問委員会の設置を五月雨で発表している。リムはそれでも不十分と見て、今回の株主提案を放ったのだろう。 関係者を驚かせたのは、リムが社外取締役の候補として思いも寄らない人物を挙げたことだ。 テレ東HDには現在、5人の社外取締役がいる。日経の岡田直敏会長のほかには、大橋洋治・ANAホールディングス相談役、岩沙弘道・三井不動産会長、澤部肇・TDK元会長、奥正之・三井住友フィナンシャルグループ名誉顧問と、財界の重鎮が並ぶ。 そうした人たちではガバナンス強化に不十分とみて、リムが社外取締役の候補として挙げたのは阿部重夫氏。1973年に日経記者となり、欧州総局ロンドン駐在編集委員や『日経ベンチャー』編集長などを務めて1998年に退社した。 彼の名前は日経グループのガバナンスを語るときには欠かせない。2003年に当時の鶴田卓彦社長による支配を崩壊させた立役者の一人だからだ。同年1月には、日経新聞のベンチャー市場部長(当時)だった大塚将司氏が社員株主として鶴田氏の解任動議を提出した。子会社での融通手形操作によって巨額の損失が出ていたことと、会社の接待費を不適切に使用した疑惑がその理由だった。 内外の批判を受けて、鶴田氏は会長、さらに相談役に退いたが、この過程で大きなインパクトを与えたのが、阿部氏が編集長を務めていた月刊誌『選択』での報道だ。鶴田体制の実態を暴露した連載では、赤坂のクラブの密室でのやりとりまで生々しく再現。日経社内を震撼させた』、「阿部氏が編集長を務めていた月刊誌『選択』での報道」、『選択』はスクープものを売り物にしており、「阿部氏」がその「編集長」になっていたとは、まさに本件の最適任者だ。
・『「リベンジではなく、リデンプション」  現在ウェブメディア「ストイカ・オンライン」の編集代表を務める阿部氏には、日経社内に今でも多くの“信奉者”がいる。現役のメディア人、かつグループの内部情報を豊富に持つ阿部氏は日経経営陣にとって最も恐ろしい人物のはずだ。 株主提案の取締役候補を引き受けた理由を阿部氏に質問すると、「これはリベンジではなく、リデンプションです」という短い回答があった。リデンプションとは「義務の履行」を意味する言葉。そこには、日経グループという“古巣”の改革に向けた静かな意気込みが見てとれる。 東洋経済の取材に対し、テレ東HDは「当社は、LIM JAPAN EVENT MASTER FUND(リム)から2022年6月に開催予定の第12回定時株主総会における株主提案書を受領しました。内容については精査中です」と回答した。一方のリムは「個別の投資先に関してはお答えできない」とする。 今後の注目点は、6月16日に予定されるテレ東HDの株主総会に向けてリムの提案にどれだけの支持が集まるかだ。 リムの平和不動産への株主提案は2021年6月の総会で否決されたものの、2022年に入って同社は指名委員会等設置会社への移行を決めた。鳥居薬品の2022年3月の総会に当たり、議決権行使助言会社のISS社は天下り廃止の議案への賛成を推奨していた。「天下り批判」は機関投資家の支持を得やすく、そこがリムの狙い目だろう。 【2022年4月16日9時35分追記】初出時の総会の記述を修正しました。 テレ東HDに対する株主提案には、企業が純粋な投資目的でなく、取引先との関係維持などのために持っている政策保有株の放出も盛り込まれている。同社は100億円を超える政策保有株を持っており、その中には、住友不動産株のように2020年度に新たに買い増した例もある。また、リムはテレ東HDに対し、過剰資本解消のため2021年度の純利益をすべて配当に回すよう求めている。 上場企業のガバナンスの透明性確保は、日経グループのメディアが繰り返し訴えてきたことだ。リムの株主提案はその言論の一貫性を問うたものだけに、真剣に対応せざるをえない。5月半ばまでになされるだろうテレ東HDの取締役会意見の表明が待たれる』、5月12日付けで「テレ東HDの取締役会」が出した声明、株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ では、株主提案にはいずれも反対している。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9413/tdnet/2119630/00.pdf
さて、6月16日に株主総会ではどうなるだろうか。
タグ:「朝日新聞社」の問題は、第二の記事で取上げる。「日本経済新聞に関しては若手記者の退職が相次いでいる」、とは困ったことだ。 東洋経済オンライン「新聞社をダメにした「外を知らない経営者」の過ち 「個人が輝く職場」に戻さなければ復権は難しい」 メディア (その31)(新聞社をダメにした「外を知らない経営者」の過ち 「個人が輝く職場」に戻さなければ復権は難しい、朝日新聞編集委員が安倍晋三氏インタビュー記事介入で処分 OBたちの嘆き、スクープ!日経「テレ東天下り」に物言う株主がNO 株主提案には「日経が最も恐れる男」の名前も) 「しばらく他流試合をやらせていると、原稿はみるみる上達した」、「記者が輝かないと新聞社は輝かない。だから会社は記者のバイトを黙認してきたし、外で鍛えられた記者がいい仕事をすることが会社の利益につながっていた」、「2011年の前後になるとすっかり文化が変わり、社内でそれまで黙認されてきた記者のバイトに対し「けしからん」という空気が充満するようになった」、「外で活躍したことのない人が上に立つようになった。外の世界を知らない人が上に立つと、記者の「枠外」の行動を許さなくなる。組織の体質もコンプライアンス重視へと 「日本の新聞社が組織として隆盛したのは1970年代以降、高度経済成長期に入り、自宅で新聞を購読する人が急増してから。記者に対し、世間の相場より高い給料を払う、「きちんとした会社」になったのはこのころだ」、「新聞社が組織として隆盛したのは1970年代以降」、そんな最近だったとは初めて知った。「個人が輝く職場へと戻さなければならないのに、管理強化の流れは変わっていない。輪転機が激しく回っていた時代の分業体制を引きずっていて、個々人をいかに生かすかより、いかに組織を回すかに重心が置かれている。記者の多様な働き方 「「権力監視」の機能を含めて、社会的な機能としてのメディアをどう維持していくか。真剣に考えなければならない局面に来ている」、全く同感である。 NEWSポストセブン「朝日新聞編集委員が安倍晋三氏インタビュー記事介入で処分 OBたちの嘆き」 日新聞の峯村健司・編集委員 「峯村さんも“オレは安倍さんに安全保障についてレクしている、安倍さんに食い込んでいる”と社内にアピールしたかったのかもしれないが、記者が向き合う相手は読者以外いないはずだ」、その通りなのだろう。それにしても、超一流の新聞記者、「峯村氏」がこんな罠にはまるとは解らないものだ。 東洋経済オンライン「スクープ!日経「テレ東天下り」に物言う株主がNO 株主提案には「日経が最も恐れる男」の名前も」 「テレ東という経済報道の巨人に挑戦状をたたきつけた格好だ」、これは興味深そうだ。 「「日経は企業に圧倒的な影響力を持つ『ご意見番』。テレ東を突き上げて彼らを敵に回すのは、アクティビストにとっても怖いこと」、今回はこうした制約が弱くなったのかも知れない。 「阿部氏が編集長を務めていた月刊誌『選択』での報道」、『選択』はスクープものを売り物にしており、「阿部氏」がその「編集長」になっていたとは、まさに本件の最適任者だ。 5月12日付けで「テレ東HDの取締役会」が出した声明、株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ では、株主提案にはいずれも反対している。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/9413/tdnet/2119630/00.pdf。 さて、6月16日に株主総会ではどうなるだろうか。
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政府のマスコミへのコントロール(その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず) [メディア]

政府のマスコミへのコントロールについては、昨年3月9日に取上げた。今日は、(その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず)である。

先ずは、昨年3月19日付けHUFFPOST「武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】」を紹介しよう。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/takeda_jp_6053fa57c5b66a80f4e6a07e
・『自民党の二階俊博幹事長へのインタビューで「菅政権の怒りを買った」のが原因と見る週刊誌報道も。NHK放送総局長は「誰かに何か言われたからということは一切ない」と圧力の影響を否定している。 2017年から4年間、NHKの報道番組『クローズアップ現代+ 』の司会を務めてきた武田真一(たけた・しんいち)アナウンサーが、3月18日の放送で降板した。同日、番組の公式Twitterに掲載されたメッセージ動画の中で武田アナは「やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います」と無念さをにじませた。 放送の最後でも武田アナは同様のあいさつをしたが、「やり残したことがある気もしますが」という台詞は入っていなかった。 武田アナの降板をめぐっては、自民党の二階俊博幹事長へのインタビューで不興を買ったのが原因とする週刊誌報道が出ていた』、「インタビューで不興を買った」、とは何があったのだろう。
・『二階幹事長が不快感をあらわにしたことも  指摘されている放送は1月19日の『クローズアップ現代+』。武田アナは二階氏に新型コロナ対策について聞いた。「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった。 武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日。『週刊文春』2月25日号では、二階幹事長へのインタビューが「菅政権の怒りを買った」のが理由とみる局内の声を報じている。 一方、NHKの正籬聡放送総局長は「公共メディアとして自主自律は生命線。誰かに何か言われたからということは一切ない」と圧力の影響を否定した。 武田アナは、4月2日からスタートする全国放送の新番組「ニュース きん5時」(金曜午後4時50分)でキャスターを務める予定だ』、「新型コロナ対策について・・・「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった」、「武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日」、これはどうみても自民党からの圧力があったとみるのが自然だ。
・『武田真一キャスターの動画メッセージ全文  4年間、本当に有り難うございました。この4年、私の心に刻み込まれたのは、社会の中で懸命に生きている皆さまの声です。それは決して希望に満ちた声ばかりではありませんでした。 大切な人を亡くした。明日の暮らしが見えない。災害や新型コロナで思いがけず人生を狂わされた。私たちの周りには多くの課題があることを思い知らされてきました。私に何ができるんだろうか?ずっと自問してきました。 せめて皆さまの声を私の心に深く浸して、分かろうと努力しよう。皆さんの声を私の心と共振させて、さらに大きな波紋にして社会に伝えよう。それが何かの糸口になるのではないか。 そう考えてきましたが、いかがだったでしたでしょうか。やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います。現代の断面をクローズアップし、よりよい未来の材料を見つけてプラス。「クローズアップ現代+」はこれからもひるまずに伝え続けていきます。新年度は3月30日からのスタートです。是非ご覧ください。 ■武田アナの直筆メッセージ(『クローズアップ現代+』の公式Twitterでは武田アナから番組視聴者に向けた直筆メッセージも掲載している(リンク先参照)』、それにしても、露骨な報道への介入だ。

次に、4月8日付けデイリー新潮「NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/04081100/?all=1
・『ウォッチ9のキャスターを4年(3月いっぱいでNHKニュースウオッチ9のキャスターを交代した有馬嘉男氏(55)。菅義偉首相へのインタビューがその神経を逆なでし、官邸からクレームがNHKに来て、その圧力に屈した結果の降板劇とも報じられたが、6月内示の人事では意外にも国際部長として処遇される見込みだという(注)。そして先日、有馬氏が報道局の幹部が集まる会議で退任の挨拶を求められた際に、「無言の抵抗」をしていたとの話も。 NHKのある幹部局員によると、 「1990年入局の有馬さんはウオッチ9のキャスターを4年務めました。注目度の高かった大越(健介)さんでも5年でしたから、かなり長い方だと思います。有馬さんはお茶の間の人気者というわけではなかったですが、安定感があって特段変える必要もなく、そうこうしているうちに番組の編集責任者の面々は年下ばかりになってしまった」 昨年春にも、交代の話が出ていたが、 「桑子(真帆)アナと和久田(麻由子)アナを朝と夜の間でシャッフルするというアクロバティックなことをやったせいで、有馬さんまで一気に変えられないと、ポジションにとどまることになりました」 余人をもって代えがたかったのかその辺りは判然としないが、その後もキャスター職にとどまり、菅義偉首相が就任直後には番組でインタビューも行った。 その内容に官邸がクレームを付けてきたと報じられ、NHKはその圧力に屈した結果、有馬氏を降板させた、というようなニュースも流れた』、私は偉ぶった「大越」よりも気さくな「有馬」の方が好きだった。(注)有馬氏はヨーロッパ副総局長(Wikipedia)になったようだ。
・『忖度したとは捉えられたくない  「基本的に、新年度以降のキャスターをどうするかについては、前年の秋以降に委員会が開かれ、そこで決まります。官邸からの圧力が報じられた時期とタイミングが多少重なってはいますが、それとは無関係に有馬さんの降板は事実上決まっていたと思います。報道局長が近く交代するので、有馬さんの異動の件もまだ流動的ではありますが……」 少し話はそれるが、新しく報道局長に就く予定の山下毅氏は籾井会長時代に政治部長を務めていたが、たった1年で熊本放送局長に異動させられており、左遷ではないかとみられていた。 「政治部長を1年だけというのは異例ですね。熊本に左遷されるきっかけになったのは、山下さんとあまり相性のよくなかった岩田明子さん(政治部記者兼解説委員)がなんらかの動きを見せたからだと指摘する声がありました。しかし、今回の復権で岩田さんの力もなくなったと言われています。安倍さん(前首相)や今井さん(前秘書官兼補佐官)との蜜月ぶりから、他を圧倒する独自報道を連発してきた岩田さんですが、菅さんとの関係はうまく行っていないんですよね。希望していたワシントン支局行きや日曜討論の司会は却下されたようです。ウチは去年1月に新会長を迎え、人事面で大きな変革が始まっているということも、岩田さんの件に関係していると思います」 話を有馬氏に戻そう。 「ウチとしてはそういう官邸圧力報道は気にしていて、官邸に忖度したとは捉えられたくないし、その結果、懲罰で降板という見方を打ち消したいということで、きちんと有馬さんを処遇する姿勢を見せたいということなのでしょう」 囁かれている国際部長のポジションは、それなりの処遇だ、というのが内部の見方ではある。が、それに有馬氏が満足しているかは不明だ。 4月1日、報道局幹部が集まる会議で、こんな事件が起こった』、実際には、栄転の「国際部長」ではなく、前述の通り、ヨーロッパ副総局長だ。
・『政治部出身の人間が  「通常なら有馬さんが呼ばれる席ではなく、編集主幹や編集責任者が出席して当日の放送の流れを確認する場です。今回は退任の挨拶のために呼ばれたようですが、順番が回ってきて口にしたのは、“ありがとうございました。これからもよろしくお願いします”のみ」と、別の幹部。 「有馬さんによる無言の抗議などと言われています。その後に同じ経済部出身の報道局長がねぎらいの言葉をかけなければ、ずいぶん気まずい感じになっていたことでしょう」 有馬さんの本音を斟酌してもらうと、 「そういう会議の場でそれなりの挨拶をしても無意味だという、諦めの気持ちがあったのかもしれません。また、可能ならもう少しキャスターをやりたかったというのもあったでしょうし、それ以上に、経済部出身の有馬さんとしては、政治部出身の人間が経営を仕切っていて、それがNHKを歪んだ方向にもっていっているという思いが強く、これまでも厳しい口調で批判することもあったようです」 かねて有馬氏は「安倍官邸」に批判的だったという。 「有馬さんのスタンスがリベラルなんで、安倍官邸のやり方にはフラストレーションが溜まっていたみたいですね。会社の近くの居酒屋でそういったことをよく話していたと言います。酒場での有馬発言を聞きつけた人たちが、今回の降板騒動に絡めて、経費がどうのとか女性関係がこうだとか、真偽のほどはよくわからない話が出回っていたことは事実です」 有馬氏自身が思いのたけをぶちまける日が来たら、それはそれで面白いが――』、新ポストは前述の通り、国際局長ではなく、ヨーロッパ副総局長だ。「有馬」氏のために新設したようで、到底、栄転とはほど遠いポストで、官邸の顔も立てたようだ。

第三に、3月16日付け日刊ゲンダイ「自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず」を紹介しよう。
・『ウクライナに侵攻したロシアの国内では、リベラル系メディアの解散や放送休止など、厳しい報道規制が敷かれている。報道の自由擁護を掲げる国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」などがプーチン大統領を非難する声明を発表したが、日本だって他人事ではない。自民党は、メディアへの介入を強めようと虎視眈々だ。 自民党の「情報通信戦略調査会」は9日、民放連とNHKの専務理事を呼んでBPO(放送倫理・番組向上機構)やテレビ各局の番組審議会の活動状況について質疑を行った。 日本テレビなどの報道によれば、出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出たという。それは不祥事を追及されて嫌な顔をする側の問題であって、放送倫理上の問題ではない。自分たちに不都合なことを報道するなというのは、プーチン大統領と変わらない発想だ。 しかも、佐藤勉調査会長は会議後、「BPO委員の人選に国会が関われないか提起したい」なんて言っていた。ただでさえ、大メディアがロクに政権批判をしない現状なのに、さらに統制を強めようというのか。第2次安倍政権で息のかかった人物をNHKの経営委員会に送り込み、支配下に置いただけでは飽き足らず、民放にも手を突っ込もうというのである』、「出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出た」、のには心底驚かされた。厚かましいにもほどがある。確かに「BPO」を通じて「民放にも手を突っ込」むことを狙っているのだろう。 
・『「不勉強」「稚拙」と猛抗議  これにはさすがに、普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ<放送法について、一から学びなおすべきでしょう> <民主主義社会の基盤となる言論・表現の自由を脅かすような論議が政権与党内で行われていることに対して、私たちは放送で働く者として、強く抗議します> 主張はごもっとも。だが、自民党をここまで増長させたのは、政権に忖度して口をつぐんできた大メディアの責任でもある。そこは忘れないで欲しい。た。14日、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)が声明を発表。情報通信戦略調査会の議論について、珍しく厳しい言葉で糾弾したのだ。 <今回明らかになった議論では、政治家の映像の使用に関わる意見など、自らの都合のいいように放送番組を左右しようという稚拙な発想もうかがえます>』、「普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ」たのは当然だ。「自民党の「情報通信戦略調査会」」のメンバーは「情報通信」のプロであるにも拘らず、このようなお粗末な認識で議論しているとは、恥ずかしい限りだ。一般のマスコミももっと批判的に紹介すべきだろう。   
タグ:政府のマスコミへのコントロール (その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず) HUFFPOST「武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】」 「インタビューで不興を買った」、とは何があったのだろう。 「新型コロナ対策について・・・「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった」、「武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日」、これはどうみても自民党からの圧力があったとみるのが自然だ。 それにしても、露骨な報道への介入だ。 デイリー新潮「NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か」 私は偉ぶった「大越」よりも気さくな「有馬」の方が好きだった。(注)有馬氏はヨーロッパ副総局長(Wikipedia)になったようだ。 実際には、栄転の「国際部長」ではなく、前述の通り、ヨーロッパ副総局長だ。 新ポストは前述の通り、国際局長ではなく、ヨーロッパ副総局長だ。「有馬」氏のために新設したようで、到底、栄転とはほど遠いポストで、官邸の顔も立てたようだ。 日刊ゲンダイ「自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず」 「出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出た」、のには心底驚かされた。厚かましいにもほどがある。確かに「BPO」を通じて「民放にも手を突っ込」むことを狙っているのだろう。 「普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ」たのは当然だ。「自民党の「情報通信戦略調査会」」のメンバーは「情報通信」のプロであるにも拘らず、このようなお粗末な認識で議論しているとは、恥ずかしい限りだ。一般のマスコミももっと批判的に紹介すべきだろう。
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テスラ(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか) [メディア]

テスラについては、2月22日に取上げた。今日は、(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか)である。なお、ツイッターの買収は、テスラは無関係で、マスク氏個人の行為だが、とりあえず、テスラで取上げた。

先ずは、4月26日付けBBC NEWS「マスク氏とツイッター、買収案で合意 総額約5・6兆円」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/61213605
・『米ツイッターの取締役会は25日、大富豪イーロン・マスク氏による買収提案を受け入れることで合意したと発表した。買収総額は440億ドル(約5.6兆円)となる見込み。 ツイッターは今後、買収案について株主の承認を求める。買収手続きは年内に完了する見通し。同社は上場廃止となり、非公開企業になる。 ツイッターのブレット・テイラー取締役会議長は、マスク氏の買収案が「ツイッターの株主にとって前へ進むための最善の道だ」と述べた。 電気自動車「テスラ」や宇宙開発「スペースX」などの創業者マスク氏は、買収合意の発表で、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と表明。「新しい機能でツイッターを強化し、かつてないほど改良するほか、信頼性を高めるためにアルゴリズムをオープンソースにして、スパム・ボットを駆逐し、すべての人間を認証したい」と意欲を示した。 「ツイッターにはとてつもない可能性がある。その可能性のカギを開けるため、私はツイッターや利用者のコミュニティーと協力するのを楽しみにしている」と、マスク氏は述べた。 マスク氏は4月初めにツイッターの筆頭株主となった後、14日に430億ドル(約5兆4000億円)の買収を提案。ツイッターの取締役会はこれに対して15日、「ポイズンピル(毒薬)」と呼ばれる防衛策を取ると発表していた。 しかし、マスク氏が買収のための資金調達にめどがついたことや、他の株主から株式を直接買い取る「株式公開買い付け」も検討しているなど、買収方法をより詳しく説明したことで、取締役会は姿勢を軟化。協議が急速に進み、スピード合意に至った。 発表資料によると、マスク氏は借り入れなどで255億ドルを確保しており、エクイティファイナンス210億ドルを提供する。 マスク氏はツイッターに投稿できる内容の制限緩和や、偽のアカウント対策など幅広い変更を求めている。長文投稿や投稿後の編集機能追加も提案している。 米誌フォーブスによると、マスク氏の総資産は推定2736億ドル(約35兆円)で世界一の富豪とされる。最高経営者を務めるテスラの保有株が資産の大部分を占める。 今回の買収に先立ち、ツイッターは利用者による投稿内容について政治家や規制当局から、プラットフォームとしての管理体制について圧力をかけられていた。掲載される偽情報に関する判断や対応については、政治的左派からも右派からも批判されている。 中でも特に話題になったのが、2021年1月の米議会襲撃事件の後、ドナルド・トランプ米大統領(当時)のアカウントを永久凍結したことだった。トランプ氏はそれまでツイッターを精力的に利用していたが、ツイッター社は「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてトランプ氏の個人アカウントを凍結した。 これについてマスク氏は当時、「西海岸のハイテク企業が、言論の自由の事実上の裁定者になったことを、ものすごく不満に思う人が大勢いるだろう」と反応していた。 マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した。 米政府はこの件についてコメントを控えているものの、ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は記者団に、「ツイッターを誰が所有し経営するにしても、大統領は以前から、大きいソーシャルメディア・プラットフォームが持つ力を気にしてきた」と述べた。 英下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会のジュリアン・ナイト委員長は、買収合意について「ソーシャルメディアの世界において、驚くべき展開だ」とツイート。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」とも書いた』、「マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した」、なるほど。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」、同感である。
・『マスク氏はこれまでツイッターで何を  ツイッターでは8000万人以上が、マスク氏のアカウントをフォローしている。そのマスク氏のツイートは時に、物議をかもしてきた。 2018年には米証券取引委員会(SEC)が、マスク氏は自分のツイートを通じてテスラに出資する投資家に誤解を与えたと指摘。総額400億ドルをSECに支払い決着したが、マスク氏はSECの指摘を否定し続けている。 2019年には、タイの洞窟(どうくつ)に閉じ込められた少年たちの救出に参加したイギリス人ダイバーを「小児性愛のやつ」とツイートしたことから、名誉棄損で訴えられたものの、米ロサンゼルスの連邦裁判所は原告の訴えを退けた。 マスク氏はこれまでツイッター上でたびたび、ジャーナリストと衝突したり、自分に批判的な相手をブロックしたりしてきた。25日には、ツイッターは議論の場所だと考えていると述べた。 合意成立発表の数時間前、マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイートしていた』、「マスク氏」の言動は振れが大きいだけに、要警戒だ。
・『マスク氏はツイッターを回復させられるのか  買収手続きの完了後、ツイッターは上場廃止となり、非公開企業になる。 マスク氏はこれによって、自分が考える事業改善を実施する自由が得られるとしている。 合意成立が明らかになると、ツイッター株は5.7%高の51.70ドルで25日の取引を終えた。しかし、マスク氏が提示した1株54.20ドルの買取価格よりは低く、米市場関係者が、マスク氏の提示額が実際の企業価値を上回っていると見ているのがうかがえる。 マスク氏は今回の買収について、「経済性はどうでもいい」と発言している。しかし、ツイッターはその影響力とは裏腹に、利益を出したことはほとんどなく、利用者数の伸びも特にアメリカでは鈍化するなど、財務的には不安定な状態が続いている。 2004年に創業した同社の2021年売上高は50億ドルで、デイリー・アクティブ・ユーザー(1日に1回以上活動する利用者)は2億1700万人。フェイスブックなど他のソーシャルメディア大手と比較すると、きわめて少ない。 買収後は誰がツイッターを率いていくのか、明らかになっていない。共同創業者のジャック・ドーシー氏は昨年12月に最高経営者を退任し、現在はその後任をパラグ・アグラワル氏が務めている。 しかし、マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた。 アグラワル氏は25日、社員に対してツイッターの未来は不透明だと発言。ロイター通信によると、「合意が成立すれば、このプラットフォームがどの方向へ向かうのかわからない」と、アグラワル氏は述べた』、「マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた」、「経営陣」を入れ替えるのだろう。
・『<解説> ツイッターの新しい王様――ジェイムズ・クレイトンBBC北米テクノロジー担当記者 あまりにあっという間の買収劇に、シリコンバレーでは大勢がくらくらしている。 イーロン・マスク氏はいきなりやってきて、ツイッターの絶対君主となった。 本人はこの買収で大事なのは経済的に見合うかどうかではなく、これは権力と影響力の問題なのだと認めている。 株式を非公開にすることで、マスク氏はツイッターに対する決定権を独占する。この会社を好きにできる権限を手にするわけで、具体的には、投稿内容のモデレーション(管理・監督)は今よりはるかに緩やかになるだろう。 より大勢がツイッターの仕組みを理解できるよう、アルゴリズムも公開すると言っている。 この買収によって、トランプ氏のツイッター復帰への扉が開かれる。しかし、本人は今のところは自分が持つプラットフォーム「トルース・ソーシャル」を使う方がいいと言っているそうだ。 保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている。 一方で、強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる。 陰謀論を展開するQアノン系のグループや、2020年米大統領選は不正だったと主張するグループを放置したとして、フェイスブックがどれだけ批判されているかを思えば、今後マスク氏がどれだけ批判されることになるか、想像に難くない。 ソーシャルメディア上の言論の自由は、あっという間に、実に醜いものになり得る。今やツイッターはそうした危険に直面している』、「保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている」、「強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる」、私も同感である。

次に、4月26日付けBBC NEWS「マスク氏に買収されツイッターは変わるのか」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61227037
・『大富豪イーロン・マスク氏は、買収総額440億ドル(約5.6兆円)で米ツイッターを買収することになった。投稿内容の制限を減らすと約束するマスク氏が、「デジタル版・町の広場」にどう影響するのか、疑問や懸念の声が上がっている。 買収合意成立が発表されると、「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏が手にする権限について、複数の人権団体が懸念を表明した。投稿内容へのモデレーション(監督・管理)がなくなれば、ヘイトスピーチ(憎悪表現)が増えるのではないかという心配も出ている。 マスク氏はかねて、ツイッターによる投稿内容の制限を声高に批判し、ツイッターは真の言論の自由を可能にするプラットフォームにならなくてはならないと主張してきた。買収合意の発表でも、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と表明した。 国際人権団体アムネスティー・インターナショナルは、「有害なツイッター(Toxic Twitter)」などとツイートを連投し、「利用者を守るために設計された利用規約や仕組みの徹底を損なう方向へ、ツイッターが進むのではないかと懸念している」と書いた。 「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー(性自認が男性だけでも女性だけでもない人)を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視した。 BBCはツイッターにこうした懸念について取材したが、まだ回答は得られていない』、「「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー・・・を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視」、妥当な懸念だ。
・『トランプ氏は戻るのか  マスク氏が所有するツイッターでは、たとえばドナルド・トランプ前米大統領をはじめ、これまでアカウントを凍結・削除された人たちの復帰が許されるのだろうかという疑問も、複数の利用者から出ている。 トランプ氏は長年ツイッターを精力的に利用していたが、2021年1月の米議会襲撃事件の後、ツイッターは「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてトランプ氏の個人アカウントを永久凍結した。 これについてマスク氏は当時、「西海岸のハイテク企業が、言論の自由の事実上の裁定者になったことを、ものすごく不満に思う人が大勢いるだろう」と反応していた。 しかし、たとえツイッターが凍結を解除したとしても、トランプ氏はツイッターに戻るつもりはない、自分が持つプラットフォーム「トルース・ソーシャル」を使うという姿勢だ。 「ツイッターにはいかない。トルースに残る」と、トランプ氏は米FOXニュースに話した。 トランプ氏はさらに、マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた。 香港天風国際証券のアナリスト、ミンチ・クオ氏はBBCに対して、もし2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれないと話した。 「ツイッターがアカウントを復活させるなら、トランプ氏にとっては依然として、より良い発言の場所だ。ツイッター以上に影響力のあるプラットフォームを次の大統領選の前までに作るのは、大変だ」』、「トランプ氏」は「マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた」、「「ツイッターにはいかない。トルースに残る」としているが、「2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれない」、確かに選挙ともなれば、集客力のある「ツイッター」の影響力は無視できない。
・『利用者は離れるのか  合意成立発表の数時間前、マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイートしていた。 しかし、ツイッターを使うのをやめると言う人もいるし、すでにアカウントを閉じた人たちもいる。 英俳優ジャミーラ・ジャミル氏は、100万人のフォロワーに対して、「これを自分の最後のツイートにしたい」として、ツイッターが「今まで以上に無法で、憎悪だらけの、人種差別と偏見にあふれた、女性嫌悪の空間」になるだろうと書いた。 一方で、45万人以上のフォロワーがいる米メリーランド大学の研究者キャロライン・オール・ブエノ博士は、まだしばらくは残るつもりだとしている。 「イーロン・マスク率いるツイッターがどういう場所になるのか、まだまったく分からないので」とブエノ氏は書き、さらに「分かっていることがある。まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」と指摘した。 米投資会社ウエドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイヴスさんはBBCに対して、ほとんどの利用者は「様子見」をするだろうと話した。 「ツイッターにとって今大事なのは、新規ユーザーを勧誘すると同時に、離脱者をくいとめることだ」』、「まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」、SNSの恐ろしさだ。「マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイート」、こうした恐ろしさをどこまで理解しているのだろうか。
・『ドーシー氏はツイート連投  ツイッター取締役会の11人は全会一致で、マスク氏の買収提案を受け入れた。 ツイッターの共同創設者で取締役のジャック・ドーシー前最高経営責任者(CEO)は、「原理原則的には、誰か1人がツイッターを所有するべきでも、経営すべきでもない」と書く一方で、ツイッターが引き続き「世間の会話のために機能する」のはうれしいことだと歓迎した。 ドーシー氏は「自分はツイッターを愛している。世界的意識のようなものに一番近いのがツイッターだ」とツイート。「自分にとって大事なのは、(ツイッターの)概念とサービスだけで、その両方を守るためなら何でもする。企業としてのツイッターは常に、自分にとって唯一の問題で最大の後悔だった。ウォール街と広告モデルに所有されてきた。ウォール街から取り戻すことが、正しい第一歩だ」と書いた。 ドーシー氏はさらに、ツイッターは「企業ではなく、プロトコルのレベルで公共財になろうとしてきたが、企業としての問題を解決するには、イーロンこそ僕が信用する解だ。意識の光を広げようとする彼のミッションを、僕は信用している」と書いた。また、「『最大限に信用され、幅広く包摂(ほうせつ)』するプラットフォームを作るというイーロンの目標は正しい」として、「どうにもならない状況からこの会社を脱出させてくれた」マスク氏と、現CEOのパラグ・アグラワル氏に感謝した上で、「これが正しい道だ……心の底からそう信じている」と期待を示した。 一方、アグラワルCEOは25日、社員に対してツイッターの未来は不透明だと発言。ロイター通信によると、「合意が成立すれば、このプラットフォームがどの方向へ向かうのかわからない」と述べていた』、「ドーシー前CEO」の発言は「株主」として悪く言わないようにしている可能性がある。「現CEO」の発言の方が正直だ。
・『政治家の反応  米政府はこの件についてコメントを控えているものの、ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は記者団に、「ツイッターを誰が所有し経営するにしても、大統領は以前から、大きいソーシャルメディア・プラットフォームが持つ力を気にしてきた」と述べた。 米与党・民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、この買収は「この国の民主主義にとって危険」だとして、「巨大テクノロジー企業の社会的責任を問うための強力なルール」や、IT企業などで巨万の富を得る大富豪たちへの富裕税の実現が必要だと強調した』、「ウォーレン上院議員」の発言には同意できる。
・『なぜアメリカの富豪が納める税金はあなたより少ないのか  他方、米野党・共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、「言論の自由にとって喜ばしい日」だと、マスク氏によるツイッター買収を歓迎した』、「共和党」「議員」らしい主張だ。「マスク氏」の影響で「ツイッター」がSNSとしての中立性を守れるのか、守れずに人気が離散するのか、大いに注目したい。
タグ:(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか) テスラ 「「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー・・・を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視」、妥当な懸念だ。 BBC NEWS「マスク氏に買収されツイッターは変わるのか」 「保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている」、「強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる」、私も同感である。 「マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた」、「経営陣」を入れ替えるのだろう。 「マスク氏」の言動は振れが大きいだけに、要警戒だ。 「マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した」、なるほど。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」、同感である。 BBC NEWS「マスク氏とツイッター、買収案で合意 総額約5・6兆円」 「トランプ氏」は「マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた」、「「ツイッターにはいかない。トルースに残る」としているが、「2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれない」、確かに選挙ともなれば、集客力のある「ツイッター」の影響力は無視できない。 「まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」、SNSの恐ろしさだ。「マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイート」、こうした恐ろしさをどこまで理解しているのだろうか。 「ドーシー前CEO」の発言は「株主」として悪く言わないようにしている可能性がある。「現CEO」の発言の方が正直だ。 「ウォーレン上院議員」の発言には同意できる。 「共和党」「議員」らしい主張だ。「マスク氏」の影響で「ツイッター」がSNSとしての中立性を守れるのか、守れずに人気が離散するのか、大いに注目したい。
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メディア(その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか) [メディア]

メディアについては、本年1月11日に取上げた。今日は、(その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか)である。

先ずは、1月31日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300611
・『大阪府と連携して、いよいよ新聞であることをやめた読売新聞が同じく権力べったりの産経新聞を買収するのではないかという噂が流れているらしい。読売に身売りするわけだが、すでに政権に身を売っているのだから、驚くには及ばないのだろう。身を売った者同士の”結婚”である。 「新聞は昭和26年の日刊新聞紙法や、独禁法の特例としての再販制度や、公選法その他いくつかの法規で、その特権が守られています。それは、この国の民主主義を支える原(注:正しくは「言」)論の自由と独立を守るために与えられた特権であって、新聞は特定の人物の私有物であってはなりません。公私混同は許されません。そのことは、現在経営陣にいるわれわれも、鉄則として守られねばならないことです」 これは、何と、読売のドンのナベツネこと渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論である。同年7月の『読売新聞社社報』に載っているが、あくまでも新聞であった場合の特権である。しかし、20年経った現在でも渡邉は読売が自分という「特定の人物の私有物」になっているとは考えられないだろう』、大阪府との連携協定については、下記の社告にあるように、「協定が読売新聞の取材活動や報道に影響を及ぼすことは一切なく」、としてはいるが、取材対象との連携協定締結には違和感がある。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20211228-OYO1T50000/
「渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論」は極めてまともな主張である。
・『内部から反乱を起こした清武英利と私の編著『メディアの破壊者 読売新聞』(七つ森書館)で清武はブラックジョークのようなこ渡邉発言を紹介しつつ、読売の現状を「情けない」と嘆いている。 一番おかしいのは、巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為だと言わなければならない。逆に『読売新聞』の記事について情報源を明らかにせよと言われたら、明らかにするということだからである。 大体、新聞は訴えられる側であっても、訴える側ではないだろう。言論で勝負できないから司法権力に助けを求める読売は、その時点で、もう新聞ではなかった。 読売は清武と関わりのあった社員を、清武叩きの尖兵に使って、彼の身辺を調査させた。 これでは定款に興信業とかを加えなければならない』、「巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為」、ここまで「読売」がやるとは心底驚かされた。
・『老害のナベツネの顔色をうかがっている意気地のない幹部や記者の背筋は、ドンが退場しても伸びることはない。ドンに抵抗できなかった者たちの背骨は曲がったままになってしまうからだ。 作家の志賀直哉が「老いらくの恋」と騒がれた川田順をモデルに書いた戯曲についての川田への手紙の中に痛烈な読売新聞評がある。 「私は半年程前から読売には一切書かぬといふ宣言をしてゐるので此度読売はあの作品で問題を作り上げようとするだろうと考へ、若しさういふ場合は読売或は読売の一部の記者に対し宣戦してもいいと考へてゐましたが、貴方のよく分った御返事で面倒な事もなく済み、ありがたく思ひました」 そして読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評している』、「志賀直哉」から「読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評」された体質は変わってないようだ。

次に、2月11日付けデイリー新潮「テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/02111131/?all=1&page=1
・『2月10日夕方に流れたテレビ朝日・亀山慶二社長(63)辞任の一報に、業界は騒然となった。同社は、亀山氏による「会社経費の私的流用」が社内調査で発覚したため、亀山氏自ら辞任を申し出たと文書で発表したが、背景には「亀山氏とスポーツ局との抜き差しならないない対立があった」とテレ朝関係者が明かす』、興味深そうだ。
・『側近中の側近  1週間くらい前から社員たちの間では、“社長がカネの私的流用で吊るし上げられている”と噂になっていたという。一方、「スポーツ局内で亀山社長に対する不満が沸点に達していた」(テレ朝関係者)。 いったい社内で何が起きていたのか。話の核心に入る前に、まずはテレビ朝日の権力構造について確認しておきたい。社員の多くが「うちは天皇制みたいなものです」と自虐的に語る。彼らが言う天皇とは、14年から会長の座にいる早河洋氏(78)のことだ。 「早河会長の権力は今なお絶大で、改編も人事もすべて牛耳っています。例えば、『報道ステーション』の大越健介キャスターの起用なども、早河会長が頷かない限り絶対に実現しません」(同) つまりは、今回の亀山社長更迭も、早河会長のご意向そのものなのである。一方、早河氏と亀山氏は「切っても切れない関係」と言われるくらいの間柄だった。 「営業・編成畑を歩んできた亀山さんは、うちがテレビ東京と同じくらい民放下位に沈んでいた頃、世界水泳やサッカーW杯などのスポーツ関係の独占放映権を次々と獲得して、視聴率向上に大きく貢献した功労者。その頃、役員として亀山さんの仕事をバックアップしていたのが早河さんです。それまで朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています」(同)』、「朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています、「亀山氏」の功績はよほど大きかったようだ。
・『泣いて馬謖を斬った  そんな信頼の置ける腹心を、なぜ早河氏は切らねばならなかったのだろうか。 「泣いて馬謖(ばしょく)を斬ったのでしょう。カネの問題というより、そのくらいスポーツ局の反乱が抑えきれなかったのです」(同) 亀山氏とスポーツ局の対立については、今回テレ朝が公表した文書の中でも触れられている。亀山氏は社長就任後もスポーツ局統括として、毎週、局内の幹部を招集して報告会を開いていたが、「合理的な理由もなくスポーツ局長をこの報告会に参加させないだけでなく、スポーツ局長との日常的な意思疎通も十分に行っていなかったため、スポーツ局内の指揮命令系統の混乱を招き、職場環境を悪化させた」とある。 「要は現場への介入が激しすぎたのです。スポーツ局が苛立っていたのは亀山さんだけでなく、亀山さん子飼いの編成部長。二人でスポーツ局長を飛ばして、キャスティングから演出までいちいち高圧的に口出ししてきたというのです。亀山さんたちからすれば、放映権は自分たちが広告代理店と組んで獲得してきたものという考えなんですが、現場からすれば、彼らは番組作りなど一切経験がないど素人。にもかかわらず細かい演出内容まで指示してきたので、現場側は“やっていられない”と不満が募るばかりでした」(同)』、どうみても「亀山」氏の分が悪そうだ。
・『ブーメラン  より両者の対立を深めたのが、昨年続いたスポーツ局員らによる不祥事だった。五輪閉会式後に、スポーツ局所属の社員らが、打ち上げパーティを行い、一人が大怪我を負った騒動から始まり、翌9月には、非売品の「ドラえもんピンバッジ」を同局所属の2人の社員が親族を通してメルカリで転売していたことも発覚。しまいに12月には、スポーツ局幹部と部下の不倫までもが文春砲によって暴かれた。 「局内の不倫までもが文春へ通報された背景には、局内ガバナンスがめちゃくちゃで、末端の不満が限界に達していたことがあるのです。にもかかわらず、一連の不祥事に亀山さんは、かなり強い姿勢でスポーツ局に徹底調査しろと迫った。それが、ブーメランのように自分の経費不正利用発覚につながってしまったのです。今回明かされた亀山さんの不正利用は、すべてスポーツイベント絡み。クーデターを目論むスポーツ局が、頑張って亀山さんの粗を探したのではないか。番組制作への介入についても、“パワハラ”だとスポーツ局員たく訴えかけたそうです」(同) 発表文によれば、亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円。 「営業をバリバリやってきた亀山さんからすれば、60万円の私的流用と指摘されても、受け入れ難かったとは思います。ただ、早河さんとしては、もはや亀山さんを切らなければ収拾がつかないと判断したのでしょう」(同) かくして失脚した“天皇”の側近中の側近。今回の人事は、テレ朝の権力構造にどのような影響を及ぼすのだろうか』、「亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円」、社長の不正支出という割には小粒で、本来は「業務」と見做されるものも混入している可能性もあるのではなかろうか。

第三に、2月16日付けnippon.com「創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか」を紹介しよう。
・『インターネットの普及で紙媒体の衰退が著しい。中でも新聞業界の苦境は深刻だ。業界の雄として長年君臨してきた朝日新聞社とて例外ではない。2020年度決算では創業以来最大となる大赤字を記録、早期退職者の応募には数多くの社員が応じるなど、かつてない激震が築地本社を襲っている。一体、朝日新聞社の中で何が起きているのか。同社OBがその内幕を明かす』、興味深そうだ。
・『デジタル化の波に乗り遅れた朝日  朝日新聞社に「エー・ダッシュ(A’)」という社内報がある。季刊で発行される60ページほどの冊子だ。新規事業の説明や職場の話題などが紹介されている。2021年の夏号は、新聞の電子版など同社が力を入れるデジタル事業の特集を組んでいるが、時代の波に翻弄(ほんろう)される大手プリントメディアの苦悩や窮状が紙背からじわりとにじみ出す内容になっている。 社内報の冒頭は、新社長が21年6月の株主総会に報告した20年度決算や個別の事業報告についての詳報。同決算は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字を出して業界の注目を浴びた。だが総会は議案をすべて可決し無事終了したとある。続いて、「紙の新聞発行だけに頼らない持続可能な会社」に生まれ変わるため、デジタル事業部門をどのように強化するのか、各セクションの担当者が詳しく解説する特集へとつながっていく。 デジタル化の波に乗り遅れた朝日新聞が巻き返しに躍起なのは、社員なら誰もが知っている。それよりも多くの社員の目を引いたのは、社内報の末尾に載っている退職者のひと言コーナーだろう。ふだんは2ページほどなのに、この号は8ページもある。退職した社員たちの顔写真と短いコメントがずらりと並ぶ。数えてみると79人もいた。各人が在職時の思い出や後輩へのメッセージなどを短く書き寄せているが、退職理由は全員「選択定年」。異様なほどのその人数の多さが、まさに社内で進行しつつある危機の大きさを如実に物語る。 社内報の発刊以来、志半ばで社を去る人たちがこれだけたくさん一度にあいさつ文を寄せることはなかった。「大赤字、デジタル化、大量退職」。同じ社内報に収容された3つの話題は、今の朝日新聞が直面する厳しい現実をくっきりと浮き彫りにしている。 実は筆者もこの79人のうちの1人に入っている。長期的な発行部数の低落と大赤字で苦境に陥った朝日新聞は、21年1月、選択定年という名目で希望退職者の募集を始めた。期限は2カ月後の同年3月半ばまで。45歳以上の社員が対象で、目標は「100人以上」と経営部門は説明していた。約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定という。経営部門の幹部は社内向けに何度かオンラインで説明会を開き、具体的な退職金の上積みや退職後の再就職先の斡旋(あっせん)などの条件を提示しつつ、繰り返し早期退職を促した』、「デジタル化の波に乗約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定り遅れ」、「20年度決算」「は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字」、というのであれば、「約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定」、というのもやむを得ないだろう。
・『早期退職を選択した社員は100人近い?  筆者が早期退職したのは21年5月末。記者を38年続けた末に、体を壊して激務に耐える自信がなくなったことが主な理由だ。第1回目となるこのたびの早期退職募集に、どのくらい社員が応募したのか。気になっていた矢先だったので、社内報で知った顔ぶれに軽いショックを受けた。79人の多くは編集部門。かつて一緒に仕事をした論説委員が何人かおり、紙面を署名記事で飾ってきたベテラン記者も大勢いた。社内報への寄稿を避けた社員も含めると、辞めたのは100人近いかもしれない。経営が傾かなければ、みんな定年まで勤め上げて円満退職したのではと考えるとやりきれない。 なぜ社員を減らさなければならないのか? 経営部門がオンライン説明会で強調していたのは、おおむね次のような理由だった。≪発行部数の低減とそれに連動する広告収入の落ち込みに歯止めがかからない。新聞社としての経営を維持できず、人事給与制度改革などの構造改革は一刻の猶予もない。何とか聞き入れてほしい≫  ボーナスの4割カット、給与の1割削減、各種手当の廃止、福利厚生の縮小……。経営トップが次々と繰り出す厳しい通告に労働組合は抵抗したものの、ストライキを打つこともなく押し切られた。職場では、特ダネ競争に欠かせない「夜討ち朝駆け」のためのハイヤー使用が一部例外を除いて禁じられ、編集作業を手伝ってくれた多数のアルバイト学生が社内から消えた。出張手当が大幅に削られ、文房具の使用にまで注文が付くようになった。そうした変化の末にやってきたのが、早期退職者の大量募集だ。 とりわけ緊縮経営の打撃が大きいのが、全国紙たるゆえんである、きめ細かい地方取材網が大幅に縮小されたことだ。朝日新聞は47都道府県に漏れなく総局をおき、それぞれ地方版と呼ぶ紙面を作っている。ところが、昨年春から総局の下にある各地の支局を廃止したり、地方記者を削減したりして、47あった総局機能を18のブロックへと集約した。たとえば東北地方であれば青森、岩手、秋田を同じブロックに統合するといった具合に。新人記者の採用数も減り、地方記者の高齢化が進み、1人あたりの業務や負担は格段に増したという。 日ごろからコンテンツ力やブランド力の高さを内外に誇ってきた新聞社だからこそ、本来なら、本体の新聞発行事業を立て直し、さらに読まれる新聞をめざすべきではないか。ところが、そんな理想論が通用しないほど事態は深刻だった。創刊142年目にして朝日は新聞社の屋台骨とも言える「ひと」のリストラに踏み切り、経営失敗の責任を取って前任の社長が退いた』、「「ひと」のリストラに踏み切り」、のが余りに遅すぎたようだ。
・『凋落著しい新聞業界  確かに数字で見る新聞業界の凋落(ちょうらく)ぶりは目を覆いたくなるほどだ。日本新聞協会によると、新聞(一般紙)全体の発行部数は1990年代半ばの約5300万部をピークに年々下がり、21年末には約3000万部にまで落ち込んだ。20年ちょっとで、およそ2000万部が減った計算になる。筆者が途中入社で朝日新聞に入った1990年、同社は公称800万部以上と喧伝していた。 潮流は大きく変わった。朝日新聞の部数は2015年に700万部近くに、18年には600万部を割り込んだ。下落ペースは対前年比で、中堅地方紙の総発行部数に匹敵する40万部前後にも及ぶ。その後もつるべ落としのように、21年9月には500万部を割って468万部となった。 こうした急速な読者離れに伴って、朝日の業績もすさまじい勢いで悪化した。ここ10年間の売上高の推移を有価証券報告書で見てみた。最も高かったのは12年3月期の4762億円(年度決算ベース、連結売上高)。ところが10年後の21年3月期は2938億円と、およそ4割も減っている。連結売上高が4000億円台を維持していたのは16年まで。20年3月期の3536億円から翌21年3月期には2938億円へと、1年で一気に600億円も売上高が激減した。この急激な落ち込みは、おそらく長期的な読者離れに加え、コロナ禍の拡大が災いしたのではと推測できるが、こうした数字の激変ぶりを見て、ようやく筆者は勤め先の深刻な困窮が理解できるようになった。 むろん、じり貧は朝日だけの問題ではない。他の全国紙も地方紙も等しく同じ問題を抱えて苦しんでいる。規模は違えども、どの新聞社でも賃下げや早期退職が横行している。電波媒体のテレビ各局も似たような試練にさらされている。なぜ既存メディアは時代の変化に適応できなかったのか。指摘されている要因は、スマホの普及と既存メディアのネット環境への乗り遅れだ』、「スマホの普及」は時代の流れだとしても、「既存メディアのネット環境への乗り遅れ」は大きな問題だ。
・『スマホの普及と軌を一にする部数減  筆者は2010年代に入ってスマホが若者を中心に普及し始めると、通勤電車内で新聞を読む乗客の姿がみるみると減っていったのを鮮明に覚えている。総務省の統計によると、16年には20代、30代の若者の90%がスマホを持っていたと報告されている。朝日新聞が「asahi.com(アサヒ・コム)《現・デジタル朝日》」を開設し、インターネットでニュース速報などを流し始めたのは1995年。以来、自前のウェブサイトを通じて無料でニュースを配信してきた。 ところが購読者数が減少するのと反対に、ウェブのページビューは急増することに。それを知ってようやくニュースの有料サービスを並行して始めたものの、ネット利用者の間にはすでに「ニュースはタダ」という先入観が根付いてしまっていた。かくしてスマホで「タダのニュース」を見る読者が爆発的に拡大し、新聞離れに拍車をかける要因になった。 加えて、新聞各社はそれぞれ自前のネットサイトだけでニュースを配信し、新聞業界が一体となって独自のポータルサイトを創設することができなかった。あるいは試みたものの失敗した。これも敗因の一つに挙げられよう。その結果、記事にひもづく広告を巨大ニュースプラットホームの「Yahoo!ニュース」などのニュースポータルに奪われてしまい、ネットニュースの配信からほとんど収益を得ることができなくなって現在に至る。このあたりの事情や経緯は、ノンフィクション作家下山進氏の著書『2050年のメディア』(文藝春秋)に詳しい。 日本の紙媒体がデジタルシフトを始めたのは1990年代後半。まず日経新聞が有料の電子新聞に取り組み始め、それを朝日新聞など他紙が追った。しかしダントツで成功しているニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘する。デジタル化を収益の向上につなげるためには、やはり読者がお金を払ってでも読みたいと思う優れたコンテンツを作る仕組みが必要になる。少なくとも日経電子版は収益化に成功しているが、他社は多くの資源を投資している割に成功していないのが実情だ』、「ニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘」、もう少し具体的な分析が欲しいところだ。
・『窮余の一策は購読料の値上げ  かくして朝日新聞は窮余の一策として21年7月、27年ぶりに購読料の値上げに踏み切った。1カ月前の同6月に紙面に載った社告では、インターネットの普及で新聞事業が圧迫を受けていること、製作コストが増していることなどを挙げ、「ネット上にフェイクニュースが飛び交う今、新聞の役割は増している」と理解を求めた。しかし景気低迷のさなかの唐突な値上げを読者がどうとらえたかは、いずれ購読者数の変化で明らかになるだろう。 値上げによって、収益の下落は一時的に収まった。21年11月末に発表した21年度9月中間連結決算は、売上高が前年同期比で下がったものの、営業利益は値上げのおかげもあって31億円の黒字に転じた(前年同期は約93億の赤字)。しかし、社内では「現在の減紙率でいけば黒字が続くのは長くて2、3年」とささやかれている。いずれにせよ大胆な経営改革を敢行することなしにこの難局を乗り切ることはできない。 ▽デジタルシフトの成否(朝日新聞は目下、デジタルシフトに起死回生の望みを託し業績回復に躍起になっている。モデルは、デジタル版の飛躍的な伸びで成功を収めたニューヨークタイムズ(NYT)など米国の先行組のメディアだ。実はリーマンショックのあおりで、10年前のNYTは事業継続が危ぶまれるほどの苦境にあった。最初に取った対応は社員のリストラだった。2009年から12年にかけて編集部門の100人以上が希望退職で職場を去った。人件費が占める割合の大きなメディア経営ではやむを得ない選択だったのかもしれない。 だが根本的に窮地を救ったのは、最高経営責任者(CEO)による大胆な変革だった。英国BBC放送会長から同紙CEOに転じたマーク・トンプソン氏は、徹底したデジタル化の陣頭指揮を取りデジタル部門に多額の経営資源を集中させた。トランプ政権やコロナ危機、セクハラ問題など社会の関心が高いテーマを、優秀な記者たちが次々と調査報道の手法で掘り下げ、読み応えのあるコンテンツに仕立てて発信。着実に購読者を増やし、有料版の読者数は昨年、1000万を突破し業績のV字回復へとつながった。 朝日は同じ道をたどれるか。今のところ、人減らしに加え、デジタル化も順調とは言えないようだ。社内にはバーティカルメディアと呼ばれる領域を絞った無料ニュースが乱立し、肝心の有料コンテンツが埋没しているように見える。 「質の高い報道」と「安定した経営」は互いに矛盾するものではない。米国でも日本でも、プリントメディアが生き残るカギが「有料デジタル版をどうしたらとってもらえるか」(下山進著『2050年のジャーナリスト』毎日新聞出版)にあるのは間違いない。有料であっても読者が飛び付きたくなるような報道とは何か。とことん考え抜いて結論を出せるかどうかに朝日新聞社の再生はかかっている』、デジタル化で成功したニューヨークタイムズなどの事例を徹底的に研究することから始めるべきだろう。
タグ:デイリー新潮「テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった」 「志賀直哉」から「読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評」された体質は変わってないようだ。 「巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為」、ここまで「読売」がやるとは心底驚かされた。 「渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論」は極めてまともな主張である。 大阪府との連携協定については、下記の社告にあるように、「協定が読売新聞の取材活動や報道に影響を及ぼすことは一切なく」、としてはいるが、取材対象との連携協定締結には違和感がある。 https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20211228-OYO1T50000/ 佐高信氏による「大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論」 日刊ゲンダイ メディア (その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか) 「朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています、「亀山氏」の功績はよほど大きかったようだ。 どうみても「亀山」氏の分が悪そうだ。 「亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円」、社長の不正支出という割には小粒で、本来は「業務」と見做されるものも混入している可能性もあるのではなかろうか。 nippon.com「創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか」 「デジタル化の波に乗約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定り遅れ」、「20年度決算」「は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字」、というのであれば、「約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定」、というのもやむを得ないだろう。 「「ひと」のリストラに踏み切り」、のが余りに遅すぎたようだ。 「スマホの普及」は時代の流れだとしても、「既存メディアのネット環境への乗り遅れ」は大きな問題だ 「ニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘」、もう少し具体的な分析が欲しいところだ。 デジタル化で成功したニューヨークタイムズなどの事例を徹底的に研究することから始めるべきだろう。
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