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ウクライナ(その5)(プーチン氏「ドイツ戦車の脅威が再来 しかも十字の印を付けている」(有料記事だが、今月あと2本までは無料)、ウクライナは「核攻撃を受けても戦い続ける」が 欧米の「及び腰」にプーチンの勝機、「プーチンは負け 核のボタンを押す」…識者による鼎談が明かす「ウクライナ戦争の結末」のヤバすぎる姿) [世界情勢]

ウクライナについては、2月2日に取上げた。今日は、(その5)(プーチン氏「ドイツ戦車の脅威が再来 しかも十字の印を付けている」(有料記事だが、今月あと2本までは無料)、ウクライナは「核攻撃を受けても戦い続ける」が 欧米の「及び腰」にプーチンの勝機、「プーチンは負け 核のボタンを押す」…識者による鼎談が明かす「ウクライナ戦争の結末」のヤバすぎる姿)である。

先ずは、本年2月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した在独ジャーナリストの熊谷 徹氏による「プーチン氏「ドイツ戦車の脅威が再来。しかも十字の印を付けている」」を紹介しよう。これは、有料記事だが、月3本までは無料で読める。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/021300365/
・『ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2023年2月に行った演説で、ロシアは単にウクライナと戦っているだけではなく、ドイツをはじめとする西側陣営と戦争しているという点を強調した。戦争の長期化を示唆するものであり、停戦・平和交渉への道のりは遠い。 プーチン大統領は2月2日、ロシア南部の都市ボルゴグラードで、意味深長な演説を行った。 この日、ボルゴグラードでは、独ソ戦の最中の1943年に、同市をめぐる攻防戦で、当時のソ連軍がナチス・ドイツ軍を破ったことを記念する式典が行われた。 当時スターリングラードと呼ばれたこの町をめぐる戦いは、第2次世界大戦で最も激しい戦闘の1つだった。アドルフ・ヒトラーがこの工業都市の攻略にこだわった理由の1つは、「スターリンの町」という名前がついていたからだ。 だがヒトラーの第6軍は、冬将軍の訪れとともにソ連軍の大反攻に遭い、逆に包囲された。ドイツ兵たちは、廃虚と化した町で袋のネズミとなった。約15万人のドイツ軍将兵が戦死、または飢餓や病気、寒さで死亡。約11万人が捕虜とされシベリアの収容所へ送られた(そのうち、戦後ドイツに帰ることができたのは約6000人にすぎない)。 これはヒトラーにとって、独ソ戦を開始してから最初の敗北だった。ドイツ軍が得意とした戦車の密集陣による破竹の進撃は、ここスターリングラードで潰(つい)えた。ソ連軍も約50万人の戦死者を出した。スターリングラードの戦いは、第2次世界大戦でソ連が反攻作戦を始め、45年にベルリンを陥落させるきっかけを作った重要な転換点だった。 戦後にソビエト共産党の書記長になるニキータ・フルシチョフもスターリングラードで政治委員として戦った。同氏がソ連の最高指導者の座に上り詰めることができた背景には、この激戦地で兵士たちを鼓舞し、戦いを勝利に導いた功績がある。 つまりスターリングラードという地名は、ソ連がドイツを打ち破った場所として、ロシア人にとって極めて重要な意味を持つ。このためロシア政府は毎年2月2日に限って、この町の名前をスターリングラードに改称し、記念式典を開いて町の大通りで軍事パレードを挙行する。 プーチン大統領は、この激戦地で死亡した兵士、市民を追悼する式典で「我々はいま再び、新しい顔を持つナチズムのイデオロギーによって脅かされている。我々はまたもや、ウクライナでヒトラーの後継者たちの攻撃を受けている」と発言した。同大統領は、ウクライナ侵攻を「ナチスとの戦い」として正当化した』、「スターリングラード」で「約15万人のドイツ軍将兵が戦死、または飢餓や病気、寒さで死亡。約11万人が捕虜とされシベリアの収容所へ送られた(そのうち、戦後ドイツに帰ることができたのは約6000人にすぎない)」、「ドイツに帰国できたのは約6000人にすぎない」、シベリアに抑留され日本人は57.5千人、死亡者5.8千人(Wikipedia)よりも酷い結果だ。
・『「我々は再びドイツ戦車に脅かされている」  プーチン大統領はこの場で初めて、レオパルド2A6型戦闘戦車14両をウクライナに供与するドイツの決定を公式に批判した。オラフ・ショルツ独首相は1月25日、ドイツによる供与だけでなく,レオパルド2を保有する欧州諸国がこの戦闘戦車をウクライナに送ることも承認した。プーチン大統領は「信じがたいことだが、我々は再びドイツ戦車の脅威を受けている。しかもその戦車は、側面に十字のマークを付けている」と述べ、ロシアが再びドイツに脅かされていると強調した。 第2次世界大戦中にナチス・ドイツ軍が使った戦車には、黒の十字に白の縁(ふち)を付けたマーク(バルケンクロイツ=棒十字)が描かれていた。一方、今日のドイツ連邦軍もレオパルドやゲパルト対空戦車、マルダー装甲歩兵戦闘車などの側面に黒十字を描いている。 ドイツ連邦軍が現在、国章として使っている黒十字(タッツェンクロイツと呼ばれる)は先端が末広がりになっており、ナチス・ドイツの戦車に付けられた国章と同一ではない。しかしプーチン大統領が言うように、「十字のマーク」であることには変わりない。またウクライナ軍の一部の戦車部隊は、ロシア軍の戦車と区別できるように、自軍の戦車の側面に白い十字章を描いている。第2次世界大戦のごく初期にナチス・ドイツ軍は、白の十字を戦車に描いていた時期がある』、「プーチン大統領は「信じがたいことだが、我々は再びドイツ戦車の脅威を受けている。しかもその戦車は、側面に十字のマークを付けている」と述べ、ロシアが再びドイツに脅かされていると強調」、政治的宣伝としては効果抜群だ。
・『ウクライナ戦争を独ソ戦と重ね合わせる  なぜプーチン大統領は、この演説でドイツ戦車に言及したのだろうか。ロシア人にとって、ソ連が約2700万人という多大な犠牲者を出しながらもナチス・ドイツを打ち破った事実は、市民たちを結びつける社会的つながりとなっている。ロシア人のアイデンティティーの源の1つと言ってもおかしくない。この国ではいまも独ソ戦のことを大祖国戦争と呼ぶ。 当時、ソ連の独裁者だったヨシフ・スターリンに対して一部のロシア市民が好意的な感情を抱くのはそのためだ。ボルゴグラードでは今年、ナチス・ドイツ軍壊滅80周年を記念してスターリンの胸像を設置し、除幕式を執り行った。つまりプーチン大統領は、ウクライナでの戦争を第2次世界大戦でのナチスとの戦争に重ね合わせることによって、ウクライナ侵攻に対するロシア国民の支持を強固にしようとしているのだ。 プーチン大統領は2022年2月24日に侵攻を開始して以来、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権をネオナチと呼び、同国を非ナチ化して武装解除することが戦争の目的だと説明していた。最近は、「ウクライナは悪魔に支配されている。同国を非悪魔化することが必要だ」という表現も使っている。) つまりプーチン大統領は「ウクライナ侵攻はネオナチとの戦いだ」という庶民にも分かりやすいレトリックを使用する。同大統領はボルゴグラードでの演説で「ドイツの戦車」に言及することで、この戦争が単にウクライナ・ロシア間の戦争ではなく、西側陣営とロシアとの戦争でもあるという点を一段と強調した。 さらにプーチン大統領は「ドイツのような欧州諸国がロシアとの新たな戦争に突入し、戦場で勝てると考えているとしたら、それは誤りだ。彼らは、ロシアに対する今日の戦争が過去の戦争とは全く異なることを分かっていない。我々は、ロシア軍の戦車を彼らの国境に向けて送ることはないが、別の手段を持っている。我々がこの戦争に勝つことに、疑いの余地はない」と発言。欧米諸国がウクライナに戦闘戦車を供与すれば、対抗措置を取る可能性を示唆した。 ドイツのメディアの中には、「別の手段」という表現について、プーチン大統領が戦術核兵器などを使用する可能性を示唆したものと見る向きもある』、「プーチン大統領は、ウクライナでの戦争を第2次世界大戦でのナチスとの戦争に重ね合わせることによって、ウクライナ侵攻に対するロシア国民の支持を強固にしようとしているのだ」、「プーチン大統領は「ウクライナ侵攻はネオナチとの戦いだ」という庶民にも分かりやすいレトリックを使用する。同大統領はボルゴグラードでの演説で「ドイツの戦車」に言及することで、この戦争が単にウクライナ・ロシア間の戦争ではなく、西側陣営とロシアとの戦争でもあるという点を一段と強調した」、「我々は、ロシア軍の戦車を彼らの国境に向けて送ることはないが、別の手段を持っている。我々がこの戦争に勝つことに、疑いの余地はない」、「「別の手段」という表現について、プーチン大統領が戦術核兵器などを使用する可能性を示唆したものと見る向きも」、なるほど。
・『近づくロシア軍の大攻勢  ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからまもなく1年になるが、収束の見通しは立っていない。ゼレンスキー大統領は「ロシア軍が2月中にも大攻勢を開始するかもしれない」という見方を繰り返し打ち出している。 ウクライナ政府が数カ月前から、ドイツや米国などに対し戦闘戦車や装甲歩兵戦闘車、長距離ミサイルなどの供与を強く求めてきたのは、そのためだ。これを受けて欧米諸国は、ロシア軍の反攻作戦が始まったときにウクライナ軍が対抗できるよう、ドイツ製のレオパルド2型戦闘戦車やマルダー装甲歩兵戦闘車だけではなく、米国製のM1エイブラムス戦闘戦車、M2ブラッドレー歩兵戦闘車、英国製のチャレンジャー2型戦闘戦車、フランス製のAMX-10RC型偵察戦闘車など、重火器の供与を拡充すると決めた。 ウクライナ軍は現在約1500両の戦闘戦車を保有するが、全てロシアか旧ソ連製だ。敵国ロシアからの補給は受けられないので、砲弾や交換部品が急速に不足している。このためウクライナ軍のヴァレリー・ザルジニー総司令官は「レオパルド2など西側の戦闘戦車が300両、西側の装甲歩兵戦闘車が600~700両、榴(りゅう)弾砲が500門必要だ」と語っている。 ウクライナ軍が戦闘戦車と装甲歩兵戦闘車を希望したもう1つの理由は、同国がロシアに占領された地域を奪還する上で、これらの兵器が不可欠だからだ。ゼレンスキー大統領は「クリミア半島とドンバス地方など、ロシア軍が不法に占拠した地域からロシア兵を完全に撤退させるまで、停戦や和平交渉の席には着かない」という姿勢を取っている。 在欧米国陸軍の司令官を14~17年に務めたベン・ホッジス将軍(ドイツのフランクフルト在住)は、22年11月25日のリモート講演会で、筆者に対して「ウクライナ軍は、23年4月に大攻勢を開始してクリミア半島を奪回するだろう」という予測を示した。筆者が「欧米は『戦闘戦車』の供与に踏み切るか? ウクライナ戦争決める鍵」の回で指摘したように、大量の戦闘戦車を投入しなければ、ウクライナ軍がロシア軍を駆逐することは不可能だ。ウクライナが侵略戦争を終わらせるための前提を作る上で、戦闘戦車は重要な鍵を握っている』、「大量の戦闘戦車を投入しなければ、ウクライナ軍がロシア軍を駆逐することは不可能だ。ウクライナが侵略戦争を終わらせるための前提を作る上で、戦闘戦車は重要な鍵を握っている」、なるほど。
・『ウクライナの抵抗精神を過小評価したロシア  ウクライナ戦争はある意味で、これまでの戦争の常識を覆す戦いである。ウクライナの人口は約4200万人。ロシアの人口は約1億4500万人。つまりロシアはウクライナの約3.5倍の人口を持つ。ウクライナ軍兵士の数は約20万人。これに対しロシア軍の総勢は、予備役も加えると約120万人と、ウクライナの約6倍だ。さらにロシアは多数の核兵器を保有している上、戦闘戦車や戦闘機を製造するための強大な軍事産業のインフラを抱えている。いわばウクライナは、巨人ゴリアテと戦うダビデのような存在だ。 過去における大半の戦争では、人口や兵士の数が多い国(あるいは陣営)が、少ない国(同)に勝っている。特に長期間続く消耗戦では、人口や兵士の多い国が有利だ。 だがロシアはウクライナ侵攻の緒戦で、重大な誤算を犯した。14年のクリミア半島制圧・併合のときのように、短期間でウクライナを制圧し、ゼレンスキー政権を転覆できると考えたのだ。さらにプーチン大統領は、クリミア半島併合のときと同様に、ウクライナ軍が頑強に抵抗することなく、欧米諸国もウクライナを強力に支援することはないと予想した。このため、ロシア軍が昨年2月にウクライナ戦線に投入した兵士の数は、約20万人にすぎなかった。 プーチン大統領の予想は完全に外れた。22年のウクライナ軍は、豊富な実戦経験を積み、14年とは異なる軍隊に成長していた。ウクライナ軍の兵士たちは、ウクライナ東部ドンバス地方における親ロ派武装勢力との内戦で、実戦経験を積み重ねてきた。同国はすでに9年前からロシアとの戦争を続けていたのだ。 ロシアは制空権を確保しないまま、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港に空挺(くうてい)部隊を送り込もうと試みた。輸送機はウクライナ軍に撃墜され、乗っていた兵士たちは全員死亡した。 さらにプーチン大統領は、ウクライナ人の激しい抵抗精神を過小評価した。ウクライナでは学生、会社員、オペラ歌手、弁護士、IT(情報技術)エンジニアらが進んで軍事教練を受け、命を賭けて前線で戦っている。仮にロシア軍が昨年2月にキーウを陥落させて、ゼレンスキー政権を崩壊させていたとしも、ウクライナ人たちは地下に潜ってロシア軍に対する激しい抵抗運動を続けたはずだ。ロシア軍に対してウクライナ人が抱く憎しみと怒りは、それほどまでに根深い』、「ロシアはウクライナ侵攻の緒戦で、重大な誤算を犯した。14年のクリミア半島制圧・併合のときのように、短期間でウクライナを制圧し、ゼレンスキー政権を転覆できると考えたのだ。さらにプーチン大統領は、クリミア半島併合のときと同様に、ウクライナ軍が頑強に抵抗することなく、欧米諸国もウクライナを強力に支援することはないと予想した。このため、ロシア軍が昨年2月にウクライナ戦線に投入した兵士の数は、約20万人にすぎなかった。 プーチン大統領の予想は完全に外れた。22年のウクライナ軍は、豊富な実戦経験を積み、14年とは異なる軍隊に成長していた。ウクライナ軍の兵士たちは、ウクライナ東部ドンバス地方における親ロ派武装勢力との内戦で、実戦経験を積み重ねてきた。同国はすでに9年前からロシアとの戦争を続けていたのだ」、「ロシアは制空権を確保しないまま、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港に空挺(くうてい)部隊を送り込もうと試みた。輸送機はウクライナ軍に撃墜され、乗っていた兵士たちは全員死亡した。 さらにプーチン大統領は、ウクライナ人の激しい抵抗精神を過小評価した。ウクライナでは学生、会社員、オペラ歌手、弁護士、IT(情報技術)エンジニアらが進んで軍事教練を受け、命を賭けて前線で戦っている」、虎の子の「空挺部隊」が「全員死亡」とは情けない限りだ。
・『欧米の強力な軍事支援が戦場での勢力を拮抗させた  ダビデが、巨人ゴリアテに屈しないもう1つの理由は、欧米諸国から流れ込む大量の兵器と弾薬だ。欧米諸国は、プーチン大統領が予想しなかったほどの勢いで、ウクライナに兵器や弾薬などを供与している。特に米国や英国が大量に供与した歩兵携帯用の対戦車ミサイル、ジャベリンは、キーウに向けて進撃するロシアの戦闘戦車を次々に破壊した。 ロシアと欧米どちらの戦闘戦車にとっても、建物や灌木(かんぼく)の陰など、見通しがきかない場所から飛んでくる携帯式対戦車ミサイルは頭痛の種だ。第2次世界大戦後期に、ドイツ軍の歩兵が使う携帯式対戦車ロケット弾「パンツァーファウスト」にソ連の戦車兵が悩まされたのと同様である。 このため近年の戦闘戦車は、リアクティブ・アーマー(爆発反応式装甲)という補助装甲を付けている。ロシアのT80型戦闘戦車などが車体にびっしりと取り付けている大量の四角い箱が、それだ。リアクティブ・アーマーの内部には、少量の爆薬が入っている。リアクティブ・アーマーは、敵のミサイルやロケットが表面に当たると、内部の爆薬を爆発させることで、ミサイルやロケット弾の貫通力を減殺する。 だが、ジャベリンは、ロシア軍のリアクティブ・アーマーを無効化する力を持っている。ジャベリンは地表に平行して水平に飛ぶのではなく、放物線を描いて飛び、リアクティブ・アーマーが比較的少ない砲塔の屋根や機関室など車体上部を狙う。さらに、ジャベリンのミサイルの爆発は2段階に分かれる。アクティブ・アーマーの減殺反応が終わった後に、2回目の爆発が起き、火流と破片が戦闘戦車の装甲板を突き破って内部を破壊する。 ウクライナ軍兵士たちは、ジャベリンが持つ威力に感銘を受け、この兵器に「サンクト・ジャベリン(聖ジャベリン)」という、聖者のようなあだ名を付けた。ネット上には、ジャベリンの発射筒を抱えた聖女のイラストがアップされている。 ジャベリンは、欧米が大量に供与する軍事支援の氷山の一角にすぎない。ドイツのキール国際経済研究所のウクライナ・サポート・トラッカーによると、昨年1月24日~11月20日に米独仏など27カ国がウクライナに送った兵器、弾薬、装備などの軍事援助の総額は約380億ユーロ(約5兆円)にのぼる。そのうち米国、英国とドイツの3カ国が77.4%を負担している。 特に米国は昨年5月9日、ウクライナへの武器供与に関する22年レンドリース法を施行させ、約230億ユーロ(約3兆円)分の武器をウクライナに送った。米国政府が今回もレンドリース法という名前を付けたことに、バイデン政権がウクライナ戦争に大きな歴史的意義を見いだしていることが感じられる。 米国が前回レンドリース法を施行したのは第2次世界大戦中の1941年のこと。米国政府はナチス・ドイツ軍と戦っていたソ連、フランス、英国などに武器や食料など、約500億ドル(2021年の貨幣価値に換算すると約7190億ドル=約93兆円)を供与した。米国製のM4シャーマン戦車やM3リー戦車、ジープ、トラックなどはロシアやウクライナの戦場において、ソ連の戦車と肩を並べてナチス・ドイツ軍と戦った。 1940年代に米国は欧州諸国とソ連を強く支援し、ナチス・ドイツ軍が抱く欧州征服の野望を打ち砕いた。現在バイデン政権は、当時と同じように、独裁者の侵略戦争を潰えさせる必要があると考えている。もちろん、プーチン大統領とヒトラーを同列に並べることはできない。しかし武力によって隣国支配を試み、欧州全体の秩序を揺るがしている点は、共通である。第2次世界大戦、東西冷戦の終結により、欧州で死滅したと思われていた、帝国主義が息を吹き返しつつある。 30年代に英仏はナチス・ドイツに対する宥和政策を取った結果、第2次世界大戦という惨事を招いた。欧州諸国はいまなお、独力で欧州の紛争を解決する力を持っていない。したがって米国は、帝国主義の芽を早いうちに摘み取り、欧州の秩序を回復する必要があると考えている。バイデン政権が大西洋のかなたで戦うウクライナに対し、巨額の支援を行っているのは、そのためだ。ウクライナ戦争の行方は、今後数十年間の欧州の行方を左右する。つまりこの戦争は、世界史の中で特筆すべき意味を持っている。 つまり人口や兵士の数でロシアに大きく劣るウクライナは、欧米諸国からの軍事支援、特に米国からの強力な支援があるからこそ、人口や兵士の数がはるかに多いロシアに対抗することができる。いわば、ダビデとゴリアテの間で、力の均衡状態が生まれている。ロシアがウクライナ侵攻を始めたときの米国大統領がジョー・バイデン氏であったことは、ウクライナにとって大きな僥倖(ぎょうこう)である。同氏は欧州との関係を重視する。前任者のドナルド・トランプ氏は、NATO(北大西洋条約機構)に懐疑的な姿勢を取っていた』、「ロシアがウクライナ侵攻を始めたときの米国大統領がジョー・バイデン氏であったことは、ウクライナにとって大きな僥倖・・・である。同氏は欧州との関係を重視する。前任者のドナルド・トランプ氏は、NATO・・・に懐疑的な姿勢を取っていた」、その通りだ。
・『「第2次世界大戦後、最も困難な10年」  プーチン大統領もゼレンスキー大統領も、後に引くことはできない。プーチン大統領は、ウクライナの非ナチ化と非武装化を達成するまで「特殊軍事作戦」を続けると言明している。同大統領は2022年10月27日の演説で「欧米が世界を支配する時代は終わった。現在我々が経験しているのは、世界に新しい秩序を生む革命の時代だ。支配階層は限界に突き当たり、被支配階層は抑圧をもはや受け入れない」と語った。 プーチン大統領が発した「欧米に抑圧されるロシア」という言葉には強い被害者意識が表れている。同大統領が「ソ連の崩壊は20世紀最大の破局だ」と述べたことが思い出される。ソ連の国家保安委員会(KGB)出身のプーチン大統領は、失われた帝国に強いノスタルジーを抱いている。「被支配階層は、抑圧をもはや受け入れない」という言葉は、ロシア革命の指導者ウラジーミル・イリイチ・レーニンの言葉だ。つまりプーチン大統領は、この戦争がロシア・ウクライナ間の戦争であるだけでなく、西側陣営とロシアの戦いであると強調した。 さらに同大統領は「第2次世界大戦後、最も危険で不透明、かつ困難な10年間が訪れる」と述べ、戦争が長期化するとの見方を示した。この言葉から、同大統領が長い戦いを覚悟していることが感じられる。 筆者が住んでいるドイツをはじめとする欧州諸国も後には引けない。ロシアの侵略行為がウクライナで終わる保証がないからだ。仮にプーチン大統領が引退または失脚しても、同大統領以上に国粋主義的な政治家が大統領になる可能性がある。ロシアの政治家の中には、ポーランドやバルト3国への侵攻を露骨に提案する者がいる。 これまで長年にわたって中立を維持してきたフィンランドとスウェーデンが、伝統と決別し、NATOへの加盟を申請したことは、ロシアが持つ攻撃性に対する懸念が強まっていることを示している。 ドイツでは、11年に廃止した兵役義務の復活について議論が始まっている。フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は昨年6月、「若者に対し、1年間にわたり社会奉仕に携わる義務を導入すべきだ。兵役か社会福祉業務(介護業務など)に就かせる」と提唱した。欧州の安全保障をめぐる状況がさらに悪化した場合、ドイツが社会奉仕義務を導入する可能性が高い』、「ドイツでは、11年に廃止した兵役義務の復活について議論が始まっている。フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は昨年6月、「若者に対し、1年間にわたり社会奉仕に携わる義務を導入すべきだ。兵役か社会福祉業務(介護業務など)に就かせる」と提唱」、「ドイツ」もそこまできているとは初めて知った。
・『欧州でポーランドの地位が上昇  ドイツのメディア報道で最近「ドイツの安全は、ウクライナによって防衛されている」という表現が目立つ。万一ウクライナがロシアに征服された場合、侵略行為が他の国へ飛び火する危険があるという意味だ。NATO加盟国がロシアに攻撃された場合、ドイツも同盟国を守るために戦わなくてはならない。 いま欧州で、ウクライナを最も強力に支援している国はポーランドだ。昨年、約220両のロシア製戦闘戦車T72をウクライナに供与したほか、レオパルド2戦闘戦車をウクライナに供与する許可をドイツ政府に申請した。これは、ウクライナへのレオパルド2供与をためらうドイツのショルツ首相に圧力をかけるためだった。ショルツ首相は結局ポーランドなどの圧力に屈して、自国および他の欧州諸国が保有するレオパルド2のウクライナへの供与に青信号を出した。つまりポーランドは、ショルツ首相が清水の舞台から飛び降りる上で、重要な役割を果たした。 ポーランドがウクライナを積極的に支援する理由の1つは、ウクライナがロシアに占領された場合、ポーランドの東国境がロシアの勢力圏と接することになるからだ。東西冷戦の時代には、ソ連の勢力圏に接する「最前線国家」は西ドイツだった。NATOとワルシャワ条約機構との間で戦端が開かれたならば、東西ドイツが戦場となった。ポーランドは、かつての西ドイツのような最前線国家になるのを防ぐため、ウクライナを強力に支援している。 米軍が今年、欧州に駐留する第5軍団の総司令部をドイツからポーランドに移す。このことは、ポーランドが持つ戦略的な重要性を浮き彫りにする。ドイツの論壇では、ロシアのウクライナ侵攻がきっかけとなって、欧州の安全保障の「重心」が、ドイツやフランス、英国からポーランドなど東欧諸国に移動していくとの見方が浮上している』、「ロシアのウクライナ侵攻がきっかけとなって、欧州の安全保障の「重心」が、ドイツやフランス、英国からポーランドなど東欧諸国に移動していくとの見方が浮上」、「ポーランドが持つ戦略的な重要性を浮き彫りに」、その通りだ。
・『ウクライナの意向を無視した和平交渉はあり得ない  したがって欧州諸国の首脳の間では、「ロシアと停戦・和平交渉を行う場合には、ウクライナの頭ごなしに行ってはならない。ウクライナ軍がロシア軍を領土から駆逐した後に、ウクライナが受け入れられる条件に基づいて停戦・和平交渉を進める以外に道はないと考えている。さもないとロシアによる不法な領土の占領を、欧米が追認する形になる」という意見が強い。 日本で時折聞かれる「ウクライナは譲歩して、ロシアとの和平交渉のテーブルに着くべきだ」という意見を言うのは、ドイツでは極右勢力か親ロシア派などの少数派である。 停戦・和平交渉においてウクライナは、ロシアに再び攻撃または侵略された場合に備えて、安全保障措置(セキュリティー・ギャランティー)を欧米諸国に求めるだろう。NATOに正式加盟する道を事実上閉ざされているウクライナとしては、NATO加盟に準ずる何らかの「保険」を要求するに違いない。欧米諸国は、ロシアの攻撃が再開されたときに、再びウクライナに多額の軍事援助を行うことを、条約の形で義務付けられるだろう。 日本のビジネスパーソンから「ビジネスへの影響を減らすために、一刻も早く戦争が終わってほしい」という声をよく聞く。しかし欧州の現実を見ると、戦争が短期間で収束する可能性は低いと言わざるを得ない』、「NATOに正式加盟する道を事実上閉ざされているウクライナとしては、NATO加盟に準ずる何らかの「保険」を要求するに違いない。欧米諸国は、ロシアの攻撃が再開されたときに、再びウクライナに多額の軍事援助を行うことを、条約の形で義務付けられるだろう」、なるほど。

次に、2月21日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「ウクライナは「核攻撃を受けても戦い続ける」が、欧米の「及び腰」にプーチンの勝機」を紹介しよう。
・『<ウクライナ侵攻1年。同国出身の専門家は「ウクライナは生き残り、ずっと強くなる」と、国内に満ちる希望と戦いの意思を語った> [ロンドン]ロシアがウクライナに侵攻して24日で1年――。有力シンクタンク、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の研究員4人がそれぞれの見解を示した。ウクライナフォーラムのオリシア・ルツェビッチ代表=同国西部リビウ出身=は「祖国があれほど激しく戦い、実際に戦場で成功を収めるというのはこれまで考えられなかったことだ」と振り返る。 「ウクライナの統治システムは腐敗した旧ソ連の遺産で、ロシアに比して腐敗は少ないものの効率的ではないとみなされてきた。しかし何とか生き残ることができた。ウクライナの経済界は中小企業も大企業も団結した。ウクライナがなくなれば市場もなくなると考えたからだ。領土防衛のため民間部門から多くの資源を投入した」(ルツェビッチ氏) 「ウクライナ国内ではウクライナは勝てる、ロシアは負けるという空気が優勢だ。ロシアがどれだけ失うか、ウクライナが勝利のためにどれだけ代償を払うかが問題だ」とルツェビッチ氏は言う。「ウクライナは生き残り、ずっと強くなる。国民を支配する感情は将来への希望だ。この戦争は支払う価値のある代償であることを理解し、恐怖心を克服している」 「クリミア半島を取り戻すまでは、たとえ核攻撃を受けても戦うという人が圧倒的に多い。西側が支援を停止してもウクライナは戦うだろう。合意なしに紛争を凍結することを支持する世論は15%。戦争を終わらせるためにロシアに譲歩するような交渉をしても良いと思っている人はわずか11%に過ぎない」とルツェビッチ氏は強調した』、「クリミア半島を取り戻すまでは、たとえ核攻撃を受けても戦うという人が圧倒的に多い。西側が支援を停止してもウクライナは戦うだろう。合意なしに紛争を凍結することを支持する世論は15%。戦争を終わらせるためにロシアに譲歩するような交渉をしても良いと思っている人はわずか11%に過ぎない」、「たとえ核攻撃を受けても戦う」、抵抗の意志の強固さには驚かされた。
・『「ロシアが支配していたすべての国の奪還」を目指すプーチン  『モスクワ・ルール ロシアを西側と対立させる原動力』の著者で、上級コンサルティング研究員のキーア・ジャイルズ氏は、ウラジーミル・プーチン露大統領のゴールについて「ロシアの利益を代弁している可能性がある中国のサジェスチョンは興味深い」と指摘する。中国のスパイ気球で米中間の緊迫が一段と高まる中、中国はロシアとの結束を強める。 中国の外交トップ、王毅・共産党政治局員はウクライナ戦争の政治的解決に関する中国の立場を発表する考えを示した。核戦争は決して戦ってはならず、勝つこともできないとも強調した。原子力発電所への攻撃に反対するなど、民間の核施設の安全を確保する努力を促し、生物化学兵器の使用に反対する共同努力を提唱するとも付け加えた。 プーチンがこの戦争に勝てないことを理解しているなら、中国が和平交渉をテーブルの上にのせ、ロシアは現在の占領地域をそのまま保持するというのがプーチンにとって勝利の方程式になる。「しかし長期的なゴールはウクライナを国でなくし、ウクライナ人を国民でなくすること、それをかつてロシアが支配していたすべての国を取り戻す第一歩にすることだ」 天然ガスや石油などエネルギーに支えられたロシア経済について、ジャイルズ氏は「経済制裁の効果は過小評価されている。短期的に見ると、確かにロシアのエネルギー販売によって制裁の効果は緩和されている。しかし長期的なインパクトを考えると、ロシアに大きなダメージを与えることになる」と解説する』、「短期的に見ると、確かにロシアのエネルギー販売によって制裁の効果は緩和されている。しかし長期的なインパクトを考えると、ロシアに大きなダメージを与えることになる」、なるほど。
・『武器供与「西側にはもっとできることがある」  「問題はロシア経済が著しく劣化しても弾力性を保っていることだ。国民が政治プロセスに影響を与える手段を持つ西側諸国にとっては破滅的でも、生活水準が急落するような圧力に対してロシアは弾力性を持っている。ロシアは歴史的に国民が政府を転覆させることなく、大きな苦難にさらされてきたことを考える必要がある」(ジャイルズ氏) 西側の武器供与について、ロシア・ユーラシアプログラムのジェームズ・ニクシー部長は「一般論としてウクライナは生き残るための十分な武器を供給されているが、勝つための十分な武器は供給されていない。これはかなり意識的な決定だ。西側諸国にもっとできることがあるのは明らかだ」と指摘する。 パトリシア・ルイス国際安全保障プログラム部長は「ウクライナはロシアを撃退するのに十分な武器を与えられているが、エスカレートさせると思われるほどではない。1年前にエスカレートさせるとみなされていたものが、今日そうみなされるとは限らない。時が変われば、計算も変わる。戦争は非常にダイナミックだ」と語る。 「戦争が不可避でない限り、民主主義政府は国民を戦争に連れて行きたくない。プーチンは全くそれを気にかけず、ロシア国民をリスクにさらしている。西側の政治指導者は慎重かつ注意深く、可能な限り最善の結果を得るために調整する必要がある。欧州をさらに大きな戦争に巻き込むことは、他に選択肢がない場合にのみ行うことだ」(ルイス氏)』、「「戦争が不可避でない限り、民主主義政府は国民を戦争に連れて行きたくない。プーチンは全くそれを気にかけず、ロシア国民をリスクにさらしている。西側の政治指導者は慎重かつ注意深く、可能な限り最善の結果を得るために調整する必要がある」、その通りだ。
・『「戦闘機供与もいずれは実現する。しかし長い苦痛を伴う」  これに対し、ジャイルズ氏は「少し前までは危険すぎるという理由で排除されていたことが今では完全に許容されている。このプロセスは今後も続く。ウクライナに提供すべき新しい能力について議論されるたびに同じプロセスをたどるのはロシアの抑止作戦が成功しているからだ。戦闘機供与もいずれは実現するだろう。しかし長い苦痛を伴う」と予測する。 「ロシアを怒らせたり邪魔したりしてはいけない、そんなことをすると核エスカレーションの危険が避けられないと国民や政策決定者に思い込ませる。ロシアにとって見事な成功だ。プーチンが核兵器を口にする時、100%情報操作だ。人々はいつも核兵器がいつ使われるのか心配している。ロシアの国家メッセージの本質的な部分だ」(ジャイルズ氏) 「ロシアが非常に効果的な抑止キャンペーンを行っている時、誰もが情報に気を取られ、実際にロシアの核兵器がどんな状態に置かれているのかを注視していない。プーチンの演説やソーシャルメディアを通じてレトリックや脅迫が撒き散らされる。10年前からロシアの邪魔をすれば核戦争に発展するというメッセージは根強いものがある」(同) 「西側がロシアを分析する際に抱えている根本的な問題はロシアが変わって、脅威ではなくなるという数十年来の思い込みだ。その楽観主義が破滅的な判断ミスにつながっている」とジャイルズ氏は懸念を深める。 戦争の行方はジョー・バイデン米大統領らがロシア軍を的確に叩ける武器をウクライナに渡すかどうかにかかっている。核兵器を威嚇に使うプーチンの顔色をうかがいながら、西側の小出しの武器供与が続く。西側の備蓄や生産力に問題があるのは確かだが、その間にウクライナの兵士や市民の命がすり潰されていく。消耗戦になればプーチンの勝機が膨らむ』、「核兵器を威嚇に使うプーチンの顔色をうかがいながら、西側の小出しの武器供与が続く。西側の備蓄や生産力に問題があるのは確かだが、その間にウクライナの兵士や市民の命がすり潰されていく。消耗戦になればプーチンの勝機が膨らむ」、「核兵器を威嚇」はいつもの手だとして度外視して、「西側」は思い切った「武器供与」をする必要があるのではなかろうか。
タグ:日経ビジネスオンライン ウクライナ (その5)(プーチン氏「ドイツ戦車の脅威が再来 しかも十字の印を付けている」(有料記事だが、今月あと2本までは無料)、ウクライナは「核攻撃を受けても戦い続ける」が 欧米の「及び腰」にプーチンの勝機、「プーチンは負け 核のボタンを押す」…識者による鼎談が明かす「ウクライナ戦争の結末」のヤバすぎる姿) 熊谷 徹氏による「プーチン氏「ドイツ戦車の脅威が再来。しかも十字の印を付けている」」 「スターリングラード」で「約15万人のドイツ軍将兵が戦死、または飢餓や病気、寒さで死亡。約11万人が捕虜とされシベリアの収容所へ送られた(そのうち、戦後ドイツに帰ることができたのは約6000人にすぎない)」、「ドイツに帰国できたのは約6000人にすぎない」、シベリアに抑留され日本人は57.5千人、死亡者5.8千人(Wikipedia)よりも酷い結果だ。 「プーチン大統領は「信じがたいことだが、我々は再びドイツ戦車の脅威を受けている。しかもその戦車は、側面に十字のマークを付けている」と述べ、ロシアが再びドイツに脅かされていると強調」、政治的宣伝としては効果抜群だ。 「プーチン大統領は、ウクライナでの戦争を第2次世界大戦でのナチスとの戦争に重ね合わせることによって、ウクライナ侵攻に対するロシア国民の支持を強固にしようとしているのだ」、「プーチン大統領は「ウクライナ侵攻はネオナチとの戦いだ」という庶民にも分かりやすいレトリックを使用する。同大統領はボルゴグラードでの演説で「ドイツの戦車」に言及することで、この戦争が単にウクライナ・ロシア間の戦争ではなく、西側陣営とロシアとの戦争でもあるという点を一段と強調した」、 「我々は、ロシア軍の戦車を彼らの国境に向けて送ることはないが、別の手段を持っている。我々がこの戦争に勝つことに、疑いの余地はない」、「「別の手段」という表現について、プーチン大統領が戦術核兵器などを使用する可能性を示唆したものと見る向きも」、なるほど。 「大量の戦闘戦車を投入しなければ、ウクライナ軍がロシア軍を駆逐することは不可能だ。ウクライナが侵略戦争を終わらせるための前提を作る上で、戦闘戦車は重要な鍵を握っている」、なるほど。 「ロシアはウクライナ侵攻の緒戦で、重大な誤算を犯した。14年のクリミア半島制圧・併合のときのように、短期間でウクライナを制圧し、ゼレンスキー政権を転覆できると考えたのだ。さらにプーチン大統領は、クリミア半島併合のときと同様に、ウクライナ軍が頑強に抵抗することなく、欧米諸国もウクライナを強力に支援することはないと予想した。このため、ロシア軍が昨年2月にウクライナ戦線に投入した兵士の数は、約20万人にすぎなかった。 プーチン大統領の予想は完全に外れた。22年のウクライナ軍は、豊富な実戦経験を積み、14年とは異なる軍隊に成長していた。ウクライナ軍の兵士たちは、ウクライナ東部ドンバス地方における親ロ派武装勢力との内戦で、実戦経験を積み重ねてきた。同国はすでに9年前からロシアとの戦争を続けていたのだ」、 「ロシアは制空権を確保しないまま、ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港に空挺(くうてい)部隊を送り込もうと試みた。輸送機はウクライナ軍に撃墜され、乗っていた兵士たちは全員死亡した。 さらにプーチン大統領は、ウクライナ人の激しい抵抗精神を過小評価した。ウクライナでは学生、会社員、オペラ歌手、弁護士、IT(情報技術)エンジニアらが進んで軍事教練を受け、命を賭けて前線で戦っている」、虎の子の「空挺部隊」が「全員死亡」とは情けない限りだ。 「ロシアがウクライナ侵攻を始めたときの米国大統領がジョー・バイデン氏であったことは、ウクライナにとって大きな僥倖・・・である。同氏は欧州との関係を重視する。前任者のドナルド・トランプ氏は、NATO・・・に懐疑的な姿勢を取っていた」、その通りだ。 「ドイツでは、11年に廃止した兵役義務の復活について議論が始まっている。フランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領は昨年6月、「若者に対し、1年間にわたり社会奉仕に携わる義務を導入すべきだ。兵役か社会福祉業務(介護業務など)に就かせる」と提唱」、「ドイツ」もそこまできているとは初めて知った。 「ロシアのウクライナ侵攻がきっかけとなって、欧州の安全保障の「重心」が、ドイツやフランス、英国からポーランドなど東欧諸国に移動していくとの見方が浮上」、「ポーランドが持つ戦略的な重要性を浮き彫りに」、その通りだ。 「NATOに正式加盟する道を事実上閉ざされているウクライナとしては、NATO加盟に準ずる何らかの「保険」を要求するに違いない。欧米諸国は、ロシアの攻撃が再開されたときに、再びウクライナに多額の軍事援助を行うことを、条約の形で義務付けられるだろう」、なるほど。 Newsweek日本版 木村正人氏による「ウクライナは「核攻撃を受けても戦い続ける」が、欧米の「及び腰」にプーチンの勝機」 「クリミア半島を取り戻すまでは、たとえ核攻撃を受けても戦うという人が圧倒的に多い。西側が支援を停止してもウクライナは戦うだろう。合意なしに紛争を凍結することを支持する世論は15%。戦争を終わらせるためにロシアに譲歩するような交渉をしても良いと思っている人はわずか11%に過ぎない」、「たとえ核攻撃を受けても戦う」、抵抗の意志の強固さには驚かされた。 「短期的に見ると、確かにロシアのエネルギー販売によって制裁の効果は緩和されている。しかし長期的なインパクトを考えると、ロシアに大きなダメージを与えることになる」、なるほど。 「「戦争が不可避でない限り、民主主義政府は国民を戦争に連れて行きたくない。プーチンは全くそれを気にかけず、ロシア国民をリスクにさらしている。西側の政治指導者は慎重かつ注意深く、可能な限り最善の結果を得るために調整する必要がある」、その通りだ。 「核兵器を威嚇に使うプーチンの顔色をうかがいながら、西側の小出しの武器供与が続く。西側の備蓄や生産力に問題があるのは確かだが、その間にウクライナの兵士や市民の命がすり潰されていく。消耗戦になればプーチンの勝機が膨らむ」、「核兵器を威嚇」はいつもの手だとして度外視して、「西側」は思い切った「武器供与」をする必要があるのではなかろうか。
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中国情勢(軍事・外交)(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年6月6日に取上げた。今日は、(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば)である。

先ずは、本年2月15日付けJBPressが転載したThe Economist「中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中、敵対的な関係を管理する術を学べ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73963
・◆特別公開中◆(*)本記事は、プレミアム会員向けの特別記事ですが、期間限定で特別公開しています。(この機会に、JBpressのすべての記事をお読みいただける「JBpressプレミアム会員」のご登録をぜひお願いいたします。) 米中の相互不信が新冷戦に変容しつつある。 中国と米国が冷戦に向かっている。相互不信がはるかに破壊的なものへと変わりつつある。 互いに折り合うことができず、相手は自国の中核的な野心と利益を阻止する決意だと信じて疑わない2大国間の争いだ。 米サウスカロライナ州沖における中国の気球の撃墜は、対立が手に負えなくなるのを食い止める知恵と意思を米中両国が持ち合わせているか否かを占う試金石だ。 今のところ、その結果はまだら模様だ』、この記事は、「特別公開中」に読んで頂きたい。「中国の偵察気球」は日本への分も含め、打ち上げた主体、意図などが不明のままだ。
・『気球撃墜で傷ついたのは中国のプライド  楽観的な見方をするなら、今回の気球撃墜は予期せぬ幸運だった。 もっとひどい事態に発展しかねなかった危機でありながら、失うものが少なく教訓が得られるタイプだったからだ。 中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた。 大抵は、西側の軍隊が中国の沿岸に近い国際空域や国際海域で旗幟(きし)を鮮明にしたり情報収集を行ったりするときに行っている。 また、中国の司令官たちは台湾の近くに派遣する飛行機の数を増やし、衝突の危険性を一段と高めている。 米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたことだった。 両国軍の装備の衝突のうち、分かっている限りで最新のもの――米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突し、中国機のパイロットが死亡した一方、米軍機は中国に緊急着陸し、乗員24人が拘束された2001年の事件――とはまさに好対照だ』、「中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた」、実に横暴だ。「米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突」した事件はうろ覚えな記憶がある程度だ。「米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたこと」、その程度で済んだとは幸運なことだ。
・『中国側の落ち着いた反応に楽観論  事態を楽観する観測筋は、飛行船を破裂させたことについて中国の宣伝機関は中国国民の怒りをさほどあおらなかったと指摘するかもしれない。 なるほど、主要なニュースメディアはこの件を控えめにしか報じていない。 準国営メディアは笑いのネタにし、中国側が航路を外れた気象観測用の気球と呼ぶものに米国が過剰反応したと茶化している。 本稿を執筆していた時点で、中国側は補償を要求しておらず、少なくとも当初は遺憾の意を表明していた。 楽観論者なら、中国軍が米国の国民と政治家が怒る様子を見て、衝突すればただではすまないことを学ぶだろうと期待するかもしれない。 中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる。 よそ者は近づくな、近づかなければ安全だと怒鳴るばかりだ』、「中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる」、緊急時のホットラインがないのは極めて不安定だ。
・『2001年当時とは違う米国政治  しかし、今回の一件は悲観的に見ることもできる。 2001年の衝突で、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領がEP3の乗組員を解放させるために中国軍パイロットの死去について遺憾の意を表明した際には、連邦議会は不満を漏らすだけだった。 今日のワシントンでは、党派的な怒りはそれほど抑制されないだろう。 共和党が気球をすぐに破壊するようジョー・バイデン大統領に求めるなか、中国政府は2月上旬に出した独善的な声明文で、大統領に加わる政治的な圧力を考慮していなかった。 それどころか、最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した。 あたかも、戸建て住宅ほどの大きさで地上からでも見ることのできる敵国の風船を自由社会が隠蔽できるだろうと言わんばかりだった』、「最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した」、恥も外聞もなく、大国にあるまじき行動だ。
・『鼻持ちならないメッセージの代償  中国のメッセージ発信の鈍感な不快さには代償が伴う。 気球が米国本土を横断している最中に、アントニー・ブリンケン米国務長官が2月5~6日に予定していた中国訪問を延期した。 バイデン氏とその側近が、ブリンケン氏が習近平国家主席やそのほかの政府幹部と行いたいと思っていた率直な話し合いに集中できる政治状況ではないと判断したと言われている。 対話の狙いは、二国間の緊張を緩和したいとしている中国の本気度を試すことと、米中関係にささった最も鋭いトゲに対するバイデン氏の見方を習氏の耳に直接入れることにあった。 ここで言うトゲとは、米国の台湾支援、軍事利用できる先端技術への中国のアクセスを制限しようとするバイデン政権の取り組み、ウクライナで戦うロシアへの中国からの支援などを指す』、「ブリンケン米国務長官」の「中国訪問を延期」は中国も織り込んでいた筈だ。
・『米国務長官の訪中の意図  かつてオバマ政権で国務次官補とアジア問題のアドバイザーを務め、現在はアジア協会政策研究所に籍を置くダニエル・ラッセル氏は、ブリンケン氏の訪中は両陣営が「行儀よくプレー」できる政策分野を提案する「ボーイスカウト」的な訪問を意図したわけではなかったと語る。 本当の目的は、緊張をじわじわと高めがちな中国の振る舞いが何であるかを詳細に説明し、緊張を逆に低下させるような行動を提案することだったという。 ラッセル氏によれば、米中は「海図のない」領域に入っており、かみ合わないことが多い両国の目標や世界観と深い経済統合とのバランスを取りつつ、新たな均衡を求めて手探りで進んでいる。 ブリンケン氏の訪中は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった。自分の部下から歪んだ解釈が上がってきているかもしれないからだ」。 この訪中の日程が近いうちに再調整されることをラッセル氏は望んでいる』、「ブリンケン氏の訪中」は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった」、のであれば、「日程が近いうちに再調整される」方が望ましい。
・『中国側の真意は?  米中対話の機会を再度設けてほしいという声は、中国の学者からも上がっている。 清華大学戦略安全研究センターの達巍主任は、中国は中米関係の安定化を望んでおり、紛争回避にとどまらず正常な通商関係と人材交流を求めている主張している。 そして、中国は以前の強硬姿勢を後悔しているからチャームオフェンシブ(魅力攻勢)を仕掛けていると考える西側のアナリストに異議を唱えている。 実態はそうではなく、バイデン政権が国内基盤を強化して同盟国への信頼感も高めたうえで中国に関与する準備を整えるのを中国側は待っているのだという。 達氏はさらに、米大統領選挙の前年に当たる今年が対話のチャンスだと見ており、今でも米中の協力を望んでいる両サイドの「分別のある」官僚や企業経営者、学者に慎重な期待をかけている。 だが、今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られないと言う。 「中国にも米国にも安定した二国間関係のためにまだ骨を折っている人はいるが、少数派だ」と懸念している』、「今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られない」、困ったことだ。
・『危機管理の必要性  新たな冷戦は最初のそれとは異なるものになるだろう。 米国と旧ソビエト連邦の間には、ビジネスの関係がほとんどなかった。対照的に、米中間では1日当たりで約20億ドルもの輸出入が行われている。 ところが今日では、たとえ商業関係を深めても、以前のように相互理解につながる道にならない。 一つには、ハイテク産業から農地に至る中国の米国投資に対して、米国の政治家たちが慎重な見方をますます強めていることがある。 2020年には、中国人所有の企業が米国で雇用する従業員の数がわずか12万人に急減した。 また中国共産党の幹部たちは、米国人が抱いている不信感を「反中ヒステリー」と呼んでいる。 もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべきだ』、「もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべき」、同感である。

次に、 2月16日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「中国人女性が「買った」沖縄の無人島、中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」、世界で警戒される地域のチャイナ化」、を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73988
・『中国人女性企業家の張さん(34歳)が沖縄の無人島を買ったという。沖縄本島・那覇北部の無人島、屋那覇島(やなはじま)である。 その島に上陸した張さんの動画が、1月30~31日にTikTokにアップされた。 うしろにある70万平方メートルの小島、私が2020年に買った小島よ」 「徒歩4時間で一周できるの」 そう説明しながら波と戯れたり砂浜を走る様子に、中国のネットユーザーは
「うらやましい!」「仰天した!」「30代で島を買ったのか、私は30代でダブルワークだよ」「どこからそんな金を得たんだ」「あなたの島民になりたい」 とうらやましがったり、驚いたりするコメントが殺到した。 同時に、「国家に譲渡して軍事基地にすればいい」「五星紅旗(中国の国旗)を立てよう!」「(中国人が買った島なら)中国のものだな!」 といった物騒な「愛国コメント」も多くついた。 さらには、日本でもこのニュースはネット上で話題となり、国家安全上問題があるのではないか、中国人に無人島が乗っ取られるのではないか、という懸念で一部から注目を集めるニュースとなった。 2月13日、松野官房長官がこの話題の屋那覇島について、2021年6月に成立された「重要土地利用規制法」の対象外だとの認識を示した。重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律だ。特に基地周辺や国境に近い無人島などの「特別注視区域」で一定の面積の土地を売買する場合は、事前の届け出が必要で、その区域で電波妨害など問題行為が確認されれば、国が土地や建物の利用中止を命じることができる。) 屋那覇島は、国境の島でもないし、基地の周辺でもないので、「注視区域」に該当しない、ということだ。 だが、これで一件落着、一安心、ということにはならないようで、私も先日からこの問題についてコメントを求められることが多い。確かに世界各地で今、中国人・中国企業による土地購入に対する懸念が深まっており、日本としても今後どう向き合うかを考える必要があるだろう』、「重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律」、「重要インフラ施設から1キロの範囲」と狭いのに驚いた。私権制限になるので、緩めにしたのだろう。
・『購入は「リゾート開発のため」  この動画の女性が紅星新聞という中国のネットメディアのインタビューに答えたところによれば、彼女は中国・青島出身で、2014年に飲食業を創業。家族が不動産と金融の会社を営んでおり、その会社名義で、競売にかけられていた屋那覇島の土地を購入したという。 屋那覇島は917の土地所有権に分かれており、そのうち720の権利譲渡が2021年2月1日までに完了しているという。日本のネットメディア、SAKISIRUが売り手側の元の土地所有企業代表にインタビューしていたが、それによると譲渡額は3億5000万円で、登記簿上の面積は島のおよそ50%に当たるという。ちなみに島は沖縄県・伊是名村(いぜなそん)に所属するが、村議会はこの売買契約を事前に知らされていなかった模様。 この島の約半分の土地を実際に購入したのは、義昌商事という東京のコンサルティング会社である。それは公式サイトでも公表している。サイトによれば、リゾート開発目的で購入したそうだ。義昌商事は、これまでも地方創生事業や中国人観光客インバウンド事業に関するコンサルティングの実績があるという。 名前からすれば中国系企業のようだが、1968(昭和43)年に東京・南麻布で創業と歴史は古く、2005年に社長に就いた馬和克社長も、日本生まれで日本国籍、日本語ネイティブ、野村証券に在籍したこともあるとプロフィールに記されている。) 義昌商事は、馬社長が代表を務めるMAラボラトリーグループ傘下にあり、そのグループ企業には中国・青島の飲食チェーン企業も含まれているので、「張さん」はその関係の人かもしれない。 馬社長は野村証券時代にグローバルM&Aアドバイザリー業務や法人・国家機関向け債券発行業務等に従事していたといい、その頃の経験や人脈を使って家業を拡大したのかもしれない。義昌商事に取材申し込みのメールを送ったが、今のところコンタクトは取れていない。 この屋那覇島は沖縄県名護市の北にある離島で、伊是那島に属する。伊是名島は人口1200人、伊是名村の唯一の有人島で、その周辺の屋那覇島、具志川島、降神島の三島は無人島だ。 屋那覇島から50キロのところには伊江島があり、1945年に米軍に占領されたのち、米軍の補助飛行場がつくられ、軍事演習期間は米軍の空対地ミサイル演習の重要基地となっていた。ベトナム戦争中は、この基地がベトナム戦争に向かう兵士たちが最後の訓練を受ける場所の一つだった。そういう意味では地政学的にも要衝地と言えるかもしれない。 今回売買された土地は、20年前は水産関連企業組合のもので、養殖産業を興すつもりが伊是名村の村民の反対運動で挫折。その後、所有者が変わるもいろいろトラブルに見舞われ、競売にかけられたという。 張さんは、60万元(1200万円)からスタートした競売に参加したというが、譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない。リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない』、「譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない」、「リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない」、その通りだ。
・『世界で発生している「地域のチャイナ化」問題  おそらく、日本人の懸念は、中国の国有企業などがインフラ建設などで大量に中国人を送り込み、気が付けばチャイナタウンならぬチャイナアイランドと化してしまうことではないか。あるいはプライベートジェット用の飛行場や港が勝手につくられる懸念。あるいは建設に伴う深刻な環境破壊が起きるという懸念。) 実はこういう懸念は日本のものだけではない。習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ。 例えば2019年にフィジーを訪問したとき、私は中国系企業によるリゾート開発によって、大量のマングローブ林が破壊された状況を目の当たりにした。開発契約上は問題がなく、政府がGOサインを出したのだが、その後、勝手に計画規模を拡大し、広範囲のマングローブ林を伐採したのだ。 結局、開発は中止となったが、失われたマングローブは還らず、生態および地元の漁民たちの暮しが破壊されることとなった。工事のために大量にやってきた中国人従業員らは暇になり、地元の習慣、文化を尊重せずに我が物顔で振る舞い、地元民との軋轢を生み、治安も悪化した。 またカンボジアのシアヌークビルは、今や中国人専用リゾートエリアといっても過言ではなく、中国人向けカジノが林立し、そこで働く人間も客も中国人、中国語が公用語化し人民元が普通に流通している。中国人エリアになったことで、地元の警察司法権力よりも中国人用心棒(マフィア)の力の方が強くなり、マネーロンダリング、人身売買、詐欺など犯罪拠点化する問題が起きている。 中国企業によるリゾート開発やインフラ建設は、必ずしも地元経済や地元の人々の暮らしを潤すものとはならない。むしろ地元民から自然資源を奪い、その土地に住む人々を排除することで反中感情を増幅させる。それが地元の政治家の汚職とつながっている場合は、政権不安、社会の分断などを引き起こす。 地域のチャイナ化が起きた場合、最大の懸念は現地警察による治安維持が及ばず、むしろ北京の権力やルールが適用される状況が常態化することだ。実際、東南アジアや南太平洋島嶼国では、地元警察よりも先に、中国から派遣された公安組織が現地の中国人犯罪を取り締まり、現地当局も知らない間に容疑者の身柄を移送したりしている。それが、政治犯である場合は、当然人道上の問題となる。さらに言えば、外国籍者の地方参政権が認められる場合は、地域のチャイナ化はすなわち地域政治のチャイナ化になる。 昨今は、米国やカナダ、オーストラリアなどの先進国でもこうした懸念は共有されており、中国企業による土地購入、開発に対する規制強化の動きが出ている。) たとえばテキサス州で中国富豪がラーフリン空軍基地から70マイル離れた土地を風力発電所建設のために購入したことが話題となった。土地購入自体は、対米外国投資委員会(CFIUS)から問題なしとされているが、州議会では大騒ぎとなり、中国、イラン、北朝鮮、ロシアの政府、企業、個人も含めてテキサス州の不動産を購入できないように求める議案が2022年11月に提出されている。 昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている。 カナダでも外国人による投機的不動産購入が問題になり、2023年より2年間、外国人による不動産購入は禁止されている』、「習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ」、「昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている」、確かに「中国」による「土地」取得は多くの問題を孕んでいるようだ。
・『日本の不動産にも触手を伸ばす中国資本  さて、日本に目を向けると、この屋那覇村だけでなく、北海道ニセコ町や沖縄県宮古島などでのリゾート開発、京都の町屋など不動産の爆買い、あるいは太陽光発電などのインフラ投資の問題など、中国系資本による様々な懸念を呼ぶ事象が起きている。 こうした問題は重要土地利用規制法で解決するものではないし、たとえより厳格な法律をつくっても、私たちの懸念が晴れるものではない。 自由経済市場の原則と個人の財産権保護の観点でみれば、こうした経済活動を法律で阻むことは難しいし、そもそも、阻んでよいかどうかというのも、世論を二分も三分もする難しいテーマだろう。それに、安易に中国人・企業の経済活動や所有権を制限すれば、それは日本経済にとってマイナスになるかもしれないし、ヘイトクライム、差別の問題にもつながりかねない。 だから、なぜ今世界が、中国企業や中国人個人による土地購入やリゾート、インフラ開発に敏感にならざるを得ないのか、というところをまずしっかり洗い出すことだろう。 最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思うのだ』、「最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思う」、同感である。

第三に、2月21日付け東洋経済オンラインが掲載した 政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653558
・『2月15日、自民党が開いた国防部会などの合同部会。席上、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相は、このところ安全保障上の大きな問題となっている気球への対応について政府に矛先を向けた。 「中国のものと把握できていなかったなら大問題。把握していたのに抗議していなかったのなら、さらに大きな問題だ」 これまで何度か取材してきたが、小野寺元防衛相は温厚な政治家だ。その彼が語気を強めた背景には、2020年6月、仙台市などで目撃された気球について、当時の河野太郎防衛相(現・デジタル相)が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えたことがある。政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘したのだ。 無防備といえば、34歳の中国人女性が沖縄県伊是名村(いぜなそん)の所管する無人島、屋那覇島の約半分を購入したことも、安全保障上の大きな懸念といえるだろう』、「2020年6月」、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、全く誠意を欠いた答弁だ。厳しく追及すべきだ。
・『無人島「屋那覇島」はどんな島か  屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯である。 同社に電話を入れると留守電が流れるだけ。ホームページ経由で問い合わせをして数日経つが、まだ返事は得られていない。そのホームページには、「創業以来行ってきた不動産売買・賃貸業を礎に、優良物件への積極的な投資を行っております。またリゾート開発事業へも進出し、直近では沖縄県の屋那覇島取得して現在リゾート開発計画を進めております」(原文ママ)とあり、屋那覇島については「島の周りはラグーンで囲まれていて、波が穏やか」とも記されている。 伊是名村役場に聞けば、屋那覇島は、沖縄本島からのキャンプ客や釣り客、潮干狩り客が多い島だという。SNSに投稿された女性の動画でも、「ビジネス目的で購入した」とあるため、購入の目的は本当にリゾート開発なのかもしれない。 とはいえ、沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島を、外国人が購入できてしまうのは、安全保障上、「大きな穴」というほかない。「へえ、買われちゃったの?」で済まされる話ではない。) 今回の問題について、伊是名村の奥間守村長は「戸惑っている」と述べる。 2月17日、伊是名村では別の案件を審議するため臨時の村議会が開かれたが、取材をすると担当者からは次のような声が聞かれた。 「ネットニュースで報道されてから、役場には問い合わせや苦情が殺到しています。前にも外資系企業が他の無人島、具志川島を視察したことがあったのですが、今回の件は驚きです」 「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」(以上、伊是名村総務課・諸見直也さん)』、「屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯」、「「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」、なるほど。
・『「法律で規制できない」と政府も困惑   今回の屋那覇島購入問題に関し、2月13日、松野博一官房長官は定例の記者会見で、「国境離島または有人国境離島、地域離島に該当するものではない」と述べて、土地取引が、国境離島やアメリカ軍、自衛隊基地周辺などの土地取引を規制する「重要土地等調査法」の対象にはならないと明言した。翌14日、高市早苗経済安保担当相も同様の見解を示している。 「重要土地等調査法」は、2022年9月に施行された法律で、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査したり、一定の面積の土地を売買する場合、事前の届け出を必要としたりするためのものだ。 その区域で問題行為が確認されれば、国は土地や建物の利用を中止させることができるが、屋那覇島の場合、これに該当しないという。 日本では、「注視区域」や「特別注視区域」を除けば、日本人でなくても自由に土地を購入し所有できる。アメリカでは、フロリダ州やテキサス州で一部の外国人の土地購入を規制する法整備が検討されているが、日本ではそんな動きはない。 しかし、中国には「国家情報法」が存在する。この中の第7条がなかなか厄介なのだ。 いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。(第7条)つまり、土地の購入者が民間企業や個人であっても、中国政府が情報提供を求めた場合、応じる義務があるということだ。 いずれにせよ、外国人の土地購入に関し、規制する法律がない以上、政府は黙認するしかない。ただ、手をこまねいている間に、「注視区域」などを除く拠点の近くに、日本人以外が土地を購入するケースが増えたらどうするのか、検討はしておかなければならない。 もちろん、冒頭で述べた気球問題も、安全保障上、「大きな穴」になり得る。前述した自民党の合同部会は、2月16日、領空に許可なく侵入した気球や無人機を自衛隊が撃墜できるようにするため、武器の使用基準の見直しを了承した。 現在の自衛隊法84条では、このように定められている。 防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる この条文は、あくまで戦闘機のような有人機を想定したもので、撃墜は正当防衛と緊急避難の場合に限られている。 その範囲を拡大すれば、アメリカが領空を侵犯した気球などを相次いで撃墜したように、自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる。その反面、政府・防衛省には3つの課題がのしかかってくる』、「中国には「国家情報法」が存在」、このため「中国人」による「土地購入」には注意を要する。
・『日本が抱える3つの大きな問題  (1)中国の猛反発をどうするか 中国は日本の姿勢を、「アメリカの大げさな騒ぎに追随するな」「根拠もなく誹謗中傷するな」と非難している。実際に撃墜すれば、政治だけでなく、経済面での関係が急速に冷え込む。特に人的交流や貿易面で影響が出る可能性がある。 (2)自衛隊の戦闘機で撃ち落とせるのか アメリカは2月12日、ミシガン州のヒューロン湖上空で、F22戦闘機が「AIM-9Xサイドワインダー」ミサイルを発射して物体を撃ち落としたが、最初の1発は失敗した。気球は旅客機などよりも高い1万8000キロ程度まで上昇するため、レーダーで捕捉しにくい。エンジンを2つ搭載し出力が高いF22戦闘機でも目標を外すくらい、気球を撃ち落とすのは難しい。そもそも、日本はF15やF35戦闘機を保有しているもののF22戦闘機は持っていない。 (3)たくさん飛んでいる気球を見分られるのか 2月13~14日、在京メディアの報道部長クラスを招いて行われた那覇および与那国駐屯地視察研修で、航空幕僚監部の担当者(一等空佐)は、このように説明した。 「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」 これらのうち、(2)と(3)について、筆者が渡部悦和元陸将に聞いたところ、「命令があれば十分に撃墜できます」という答えが返ってきた。ただ、航空自衛隊トップの井筒俊司航空幕僚長が2月16日の定例記者会見で、「高い高度で飛行体が小さい場合、撃墜の難易度は高くなる」と語った点も無視できない。 こうして見ると、これまでの安全保障と防衛費を大きく見直すために防衛3文書を改定し、防衛費増額に踏み込んだだけでは、日本の安全保障は万全とは言えない。防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務となりそうだ』、「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」、「「大きな穴」を埋める対策」は不断の努力が必要なようだ。  
タグ:(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば) 中国情勢(軍事・外交) この記事は、「特別公開中」に読んで頂きたい。「中国の偵察気球」は日本への分も含め、打ち上げた主体、意図などが不明のままだ。 The Economist「中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中、敵対的な関係を管理する術を学べ」 JBPRESS 「中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた」、実に横暴だ。「米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突」した事件はうろ覚えな記憶がある程度だ。 「米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたこと」、その程度で済んだとは幸運なことだ。 「中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる」、緊急時のホットラインがないのは極めて不安定だ。 「最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した」、恥も外聞もなく、大国にあるまじき行動だ。 「ブリンケン米国務長官」の「中国訪問を延期」は中国も織り込んでいた筈だ。 「ブリンケン氏の訪中」は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった」、のであれば、「日程が近いうちに再調整される」方が望ましい。 「今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られない」、困ったことだ。 「もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべき」、同感である。 福島 香織氏による「中国人女性が「買った」沖縄の無人島、中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」、世界で警戒される地域のチャイナ化」 「重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律」、「重要インフラ施設から1キロの範囲」と狭いのに驚いた。私権制限になるので、緩めにしたのだろう。 「譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない」、「リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない」、その通りだ。 「習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ」、 「昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている」、確かに「中国」による「土地」取得は多くの問題を孕んでいるようだ。 「最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思う」、同感である。 東洋経済オンライン 清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」 「2020年6月」、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、全く誠意を欠いた答弁だ。厳しく追及すべきだ。 「屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯」、 「「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」、なるほど。 「中国には「国家情報法」が存在」、このため「中国人」による「土地購入」には注意を要する。 「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」、「「大きな穴」を埋める対策」は不断の努力が必要なようだ。
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台湾(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意 日本として対応を平時から議論しておくべき) [世界情勢]

台湾については、2021年11月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意 日本として対応を平時から議論しておくべき)である。

先ずは、昨年3月24日付けダイヤモンド・オンラインが財訊を転載した「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」を紹介しよう。
・『台湾と韓国の間には共通点が多い。かつて「アジア四小龍」にそれぞれ数えられ、いずれも電子産業を柱とする。似ているが故にお互いライバルと意識してきた両国だ。経済という点では長く韓国が優勢だったが、ここにきて台湾が逆転しそうだという。『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#4では、台湾人が快哉を叫ぶ「逆転レース」について伝える』、「台湾のGDP」が「韓国」を間もなく逆転しそうとは初めて知った。
・『1人当たりGDPで韓国を上回る日が近い  台湾の1人当たりGDP(国内総生産、名目)は2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、台湾の1人当たりGDPは3年後の25年に4万2801ドルに達し、韓国の4万2719ドルを小幅で上回る見通しだ。 このIMFの推計は非常に保守的な数値である。台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)所管のシンクタンク、中華経済研究院は、台湾が21年にすでに僅差で韓国を上回っているという試算を出している。その差は数百ドルにすぎないが、台湾人にとっては奮い立たせられる数字だ。 (台湾韓国一人当たりGDP推移のグラフはリンク先参照) 21年は株式市場においても、台湾の上場企業の時価総額が年初から23.7%伸びたのに対し、韓国は3.6%の小幅成長にとどまっている。台湾と韓国の競争におけるスター選手というべき企業の時価総額を比べると、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が5305億ドルであるのに対し、韓国のサムスン電子は3879億ドル(3月22日の終値ベース)となっている。 長期にわたり台韓間には、国際政治における恩讐があったと同時に、産業競争においても度々角突き合わせてきた経緯があった』、「台湾韓国一人当たりGDP推移のグラフ」を見ると、2003年に「韓国」の方が大きかったが、差は急速に縮小している。
・『韓国は対中輸出が大幅減速 台湾は米中対立が追い風に  (経済の活力を奪い合う台湾vs韓国の図はリンク先参照) 両国がアジア四小龍と呼ばれた時代、台湾は経済と貿易の自由化を進め、国営事業を民営化し、電子産業を発展させることに全力を挙げた。中小企業が急速に成長した時期でもある。韓国はこの時期、鉄鋼や自動車といった重工業を重視し、財閥を支援した。しかし1997年のアジア通貨危機により、過剰債務を抱えていた財閥は大きな痛手を被り、韓国経済は失速した。 ところが2000年代になると、台湾では90年ごろから起きていた中小企業の中国への流出で産業の空洞化が進んだ一方、韓国では金融経済システムの国際化が進み、財閥企業による規模のメリットを生かした経営が成功した。 そして現在の状況は、台韓経済の3回戦目に突入したといえるわけだ。ここで台湾が逆転しようとしている背景にあるのは、韓国経済が壁に突き当たっていることだ。 中華経済研究院の王健副院長は、「韓国経済を支える財閥企業はスケールメリットという点で秀でているが、景気悪化の局面では対応に遅れる面がある」と指摘している。 また経営規模の大きさという点では、韓国の財閥よりも中国企業の方が大きい。そのため、中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている。 新型コロナウイルスの感染拡大があっても、台湾では都市封鎖が行われず、企業活動が継続でき、輸出の伸びは韓国よりも高かった。この間、台湾ドルの上昇が進んでおり、本来なら輸出には不利な為替環境だ。しかし台湾ドル高のマイナス要素に企業の競争力が勝っており、通貨高は1人当たりGDPを膨らませる結果となっている。 台湾経済は目下繁栄の局面にあるが、王副院長は「台湾が有利なうちに、産業の転換を図り、医療や宇宙産業のような次世代の重要産業を育成しなければならない。またさまざまな金融的手段で企業が資金調達し、十分な研究開発資金を獲得することを妨げてはいけない」と指摘する。 韓国では大手100社の研究開発費がコロナ禍のさなかの20年に前年比3.3%伸びている。その投資分野は半導体やITだけでなく、次世代自動車や水素エネルギー、航空宇宙産業など幅広い。財閥企業はこの転換期に巨額の投資を断行しており、台湾に多い中小企業を圧倒する資本力を見せつけている。 韓国の次期大統領である尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏は親米派のため、これまで米国の支援を得てきた台湾のアジアにおける立ち位置が変わる可能性もある。 台湾と韓国の競争はこれからもまだ続く。これまでの歴史を振り返り、世界経済の変化を理解することで、台湾経済の進むべき道はおのずと見えてくる』、「台湾」と「韓国」とも各々の主要マーケットの状況の違いなどに応じて、伸びたり、伸び悩んだりすることだろう。いずれにしても、「台湾」が「韓国」より有利な状況がしばらく続きそうだ。

次に、5月24日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」を紹介しよう。
・『<バイデン米大統領は日本で、「台湾を守るため軍事的に関与する気はあるのか」という質問に「そうだ」と明確に回答。この発言の意図とは?> [ロンドン発]来日中のジョー・バイデン米大統領と岸田文雄首相は23日、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。中国の軍事力が急拡大する中、共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。もし同じ状況になったら、台湾を守るために軍事的に関与する気はあるのか」と記者に問われたバイデン氏は「そうだ」と明確に答えた。 「それがわれわれの約束だ。われわれは『一つの中国』政策に合意している。しかし軍事力で(台湾を)奪うことを許すわけにはいかない。それを容認すれば(東アジア)地域を混乱させることになる。ウクライナと同じような事態を誘発しかねない。アメリカの責任はさらに重くなった」とバイデン氏は説明した。 米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めた。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中だ。 ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った。 一方、岸田氏は「中国人民解放軍海軍の活動や、中露の合同軍事演習を注視している。東シナ海や南シナ海での武力行使による現状変更には断固として反対する」と表明した。しかし日米両国の台湾問題に対する基本的な立場は変わらず、「台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全保障と繁栄に欠かせない要素だ」とこれまでの方針を繰り返すにとどめた』、「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「ウクライナ」での過ちを繰り返さなかったのはまずまずだ。
・『昨年10月にもバイデン氏は「台湾防衛」発言  バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言した。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこにアメリカが安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もあった。 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由でアメリカが台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及している。) 1979年に米中関係が正常化された際、台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」(クラーク氏)。 歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ。2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は台湾への50億ドル武器売却を承認し、台湾防衛のため「必要なことは何でもする」と発言したが、その後、中国との関係を強化するため、この立場を和らげている』、「台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」、「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ」、なるほど。
・『「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を助長するだけ?  経済的な米中逆転が目前に迫る中、「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を促すだけだという反省が米国内でも強まってきた。ドナルド・トランプ米大統領時代、台湾との防衛・安全保障協力を強化する国防権限法が可決されるなど、アメリカは台湾への支援を強化している。しかしアメリカの安全保障パートナー国の立場は微妙だ。 台湾問題を巡って米中が敵対し、アメリカか中国かの二者択一を迫られるのを避けるため「戦略的曖昧さ」を望む東アジアの国々も少なくない。昨年3月、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は少なくとも27年までに台湾への脅威が顕在化すると証言している。 中国は今のところ24年の台湾総統選を注視している。アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない。 ウクライナの場合、「戦略的曖昧さ」というより、核戦争を回避するため直接軍事介入はしないという「戦略的明確さ」が侵攻を思いとどまらせるという抑止力を帳消しにしたとの見方もある。しかしロシア軍のウクライナ侵攻は、ポスト冷戦の国防・安全保障環境を一変させた。これまでの常識が通用しなくなったのだ。 道徳的な正義に重きを置くバイデン氏はウラジーミル・プーチン露大統領を「人殺しの独裁者」「悪党」「戦争犯罪人」「虐殺者」と呼んできた。バイデン氏は3月のワルシャワ演説で「責められるべきはプーチン氏だ」「この男は権力の座にとどまらせてはいけない」と体制転換を目指すとみなすことができる発言をした。 体制転換にゴールを引き上げると戦争の終わりが見えなくなる。このためホワイトハウスは火消しに追われた。しかし今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ』、「今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ」、その通りだ。
・『台湾有事は日本有事  5月5日、英首相官邸で行われた日英首脳会談で、岸田氏とボリス・ジョンソン英首相は昨年10月に交渉を始めた日英円滑化協定が大枠合意に至ったことを歓迎し、この協定が自衛隊と英軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させ、日英両国が世界の平和と安定に一層寄与することを確認している。 英政府は「共同作業・演習・運用を可能にする」協定と位置付け、「イギリスは欧州で初めて日本とこのような協定を結ぶ国となる。インド太平洋地域へのコミットメントを強化し、世界の平和と安全の守りをさらに強化する。訓練、共同演習、災害救援活動を実施するためにともに派遣される」と表明した。 これについて、英首相報道官は「日英両国が原則合意した円滑化協定はこれまでわれわれが一緒にやっていて、これからも継続していきたいすべての活動を反映している。日本の自衛隊と英軍の共同訓練や共同運用を可能にすることや、来るべき数年の間に著しく重要になるインド太平洋地域で拡大していくイギリスの活動も含まれている」と説明した。 「現在、原則合意の段階だ。円滑化協定が最終的に決定された時点で、もっと多くのことが語られるだろう」。台湾有事の際にどう機能するのかという質問には「どんな仮想的な状況が含まれるかについてはコメントしたくないが、自衛隊と英軍の部隊が一緒に作戦行動することは含まれている」とだけ語った。 台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか』、「台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか」、現在、その「備え」を準備しつつある段階だ。

第三に、5月25日付け東洋経済オンライン「バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意 日本として対応を平時から議論しておくべき」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/591896
・『台湾をめぐる政策について、アメリカはそのスタンスを変えたのか。今後、日本が適切に対応するためには、アメリカの真意を知っておくことが不可欠だ。 「あいまい戦略」を踏み越えたのか――。 来日したアメリカのバイデン大統領の発言が波紋を広げている。5月23日、日米首脳会談後の記者会見でウクライナに軍事的に関わらなかったと指摘されたうえで、台湾有事が起きた場合にアメリカが軍事的に関与するかと問われ、「する。それがわれわれの約束だ」と発言。あわせて「われわれの台湾政策はまったく変わっていない」とも述べた。 直後にホワイトハウスは「台湾政策に変更はない。バイデン氏は一つの中国政策と台湾海峡の安定と平和への関与を再確認した」と説明した。これを受けて、一部にはバイデン氏が失言したと捉える向きもあるなど、日米双方の当局者の間で混乱が生じている。 しかし今後、日本が適切な対応を行うためには、アメリカの真意を知っておくことは不可欠だ。本当にアメリカは台湾を守るために軍事的関与を行うのか。アメリカは、これまで台湾を防衛する意思があるかどうかを明らかにしない「あいまい戦略」を取ってきたが、こうした台湾をめぐる政策についてアメリカは姿勢を変えたのだろうか』、興味深そうだ。
・『本当にバイデン氏の失言なのか?  バイデン氏の発言に中国外交部の汪文斌副報道局長は「中国側に妥協や譲歩の余地は一切ない」と述べ、強烈な不満と断固とした反対の意思を表明した。 一方の台湾外交部は歓迎と謝意を述べたうえで、「台湾が自由と民主主義、安全を守る意思は不変だ。引き続き防衛能力の強化に努め、日米などと協力してアジア太平洋地域の平和と安定を守っていく」と自国の防衛力向上の姿勢を改めて示した。 バイデン氏は2021年8月にアメリカが日本や韓国の防衛義務があるとしたうえで、「台湾も同じだ」と発言。同年10月にも台湾が中国から攻撃を受けた場合に台湾を防衛するかを問われて「もちろんだ。責任がある」と言及した。 いずれも発言後に米政府高官や報道担当者が「政策に変更はない」との趣旨を表明し、これを受けて多くのメディアはバイデン氏の「発言撤回」や「訂正」だと伝えた。 今回はバイデン氏自身も「我々の台湾政策はまったく変わっていない」と言及。これを後から「釈明した」と捉える見方も存在するほか、ホワイトハウスが改めて「政策は変わっていない」と強調したことから、再びバイデン氏が「失言」したとの見方が出ている。 ただ、バイデン氏の台湾防衛関与への発言をほかの高官やホワイトハウスなどは「修正する」とも「撤回する」とも言っておらず、あくまでアメリカの台湾政策に変更はないと改めて示しただけ。一般的な受け止め方としてバイデン氏の発言の軌道修正を図っているとも捉えられる一方で、バイデン氏の発言を否定しないことを暗に示しているとみることもでき、受け手側に解釈が委ねられている』、「一般的な受け止め方としてバイデン氏の発言の軌道修正を図っているとも捉えられる一方で、バイデン氏の発言を否定しないことを暗に示しているとみることもでき、受け手側に解釈が委ねられている」、なるほど。
・『「一つの中国」政策を掲げつつも実態には変化も?  アメリカの台湾政策は「一つの中国政策」(One China Policy)と称されている。これは過去に米中間で交わされた3つのコミュニケや、1979年に制定された「台湾関係法」、1982年にレーガン大統領が表明した「6大保証(6つの保証)」で構成されている。 この「一つの中国政策」の大まかなポイントは2つある。 1つは1978年の米中コミュニケでアメリカが「中国は一つであり、台湾は中国の一部であるとの中国の立場を『認知(acknowledge)』する」という限定的な立場を表明していること。もう1つは台湾関係法と6大保証によって台湾の安全へのコミットメントを確認していることだ。 そのため、「一つの中国政策」は、「中国と台湾は不可分」という中国の立場に異を唱えない一方、「台湾の安全保障に関与する」姿勢を示すものであると説明されることが多い。 とはいえ、従来、アメリカは中国が侵攻した際に台湾を防衛する意思を明確にしない戦略的あいまいさを継続してきた。実際、1979年に制定された台湾関係法でもアメリカは台湾の防衛義務自体は負っていない。 台湾の安全への関与の範囲は、防衛兵器の提供などに限られてきた。「あいまい戦略」は台湾の独立への動きと中国の台湾侵攻の双方を牽制し、中国と台湾は不可分とする「一つの中国原則」(One China Principle)を掲げる中国にも配慮するシグナルともなっていた。) 今回、バイデン氏は「あいまい戦略」を踏み越えたかのように見える。彼自身は「政策はまったく変わっていない」と発言しており、台湾の安全に関与する範囲に台湾防衛も含まれると解釈して、これまで掲げてきた「一つの中国政策」の枠内で、台湾の安全保障への関わり方の限界がどこにあるかを模索しているとみられる。 台湾政治が専門の小笠原欣幸・東京外国語大学教授は、バイデン政権が「一つの中国政策」の看板を継承していると指摘しつつ、「バイデン大統領が『一つの中国政策』は変わらないと念押ししながら、『あいまい戦略』のぎりぎりのところをついて中国の台湾侵攻の抑止を図っているのではないか」と分析する』、「バイデン政権が「一つの中国政策」の看板を継承していると指摘しつつ、「バイデン大統領が『一つの中国政策』は変わらないと念押ししながら、『あいまい戦略』のぎりぎりのところをついて中国の台湾侵攻の抑止を図っているのではないか」と分析する」、微妙な立場だ。
・『アメリカの台湾関与強化は間違いない  アメリカ軍のアフガニスタン撤退やウクライナ戦争への未派兵によって、台湾に対する防衛意思も消極的なのではとの疑念が高まっていた。アメリカ国内では議会などを中心に「戦略的明確さ」に転換するよう求める声が出ている。 それらに応えているかは明らかでないが、過去2回の「台湾防衛」発言も含めて少なくともバイデン氏の中では台湾防衛への意思が明確なようだ。ホワイトハウスや国務省などは「アメリカの政策は変わっていない」と強調することで、中国にも対応し、連携プレーを展開している。結果として最高司令官である大統領の意思を明確に浮かびあがらせることで中国への抑止を高めているようにもみえる。 発足が宣言された新たな経済連携「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」では創設メンバーに台湾が入らず、中国に配慮している点はなおみられる。 一方で、将来の参加余地は大いに残されたうえ、政権内で対中国・台湾政策の要とみられるサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「ハイテク分野で台湾とのパートナーシップを深めることを検討している」と語っており、アメリカ政府が防衛だけでなくあらゆる方面で台湾への関与を強化する姿勢が鮮明となっている。 一部の記事では、4月7日にアメリカ上院の公聴会で証言したアメリカ軍制服トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長の「最善の台湾防衛は、台湾人自身が行うことだ」の発言を切り取り、台湾有事が発生してもアメリカは台湾に冷淡な対応をするだろうといった主張も展開されている。ただ、ミリー氏の発言において、アメリカの姿勢が最もよく表れ、日本などアジア太平洋の同盟・友好国が注目すべきなのは次の箇所だ。) 「中国に対する最善の方法は、接近拒否抑止力を通じて、台湾攻撃が『非常に達成困難な目標』であることを、彼ら(中国側)に思い知らせることだ」 台湾有事を起こさせないようにする抑止の考えが必要だとの訴えである。バイデン氏も5月23日の会見で「ロシアのプーチン大統領はウクライナへの非道な行為で大きな代償を払うことが重要」であるとし、「ロシアが制裁を受け続けなければ中国はどう思うか」とウクライナ戦争での対応が中国への抑止につながると示唆した。 さらに「一つの中国政策には同意しているが、武力で台湾を奪うのは適切ではない」とも牽制した。アメリカの台湾への関与強化は明らかな方向性をもって進んでいると言えるだろう』、「「中国に対する最善の方法は、接近拒否抑止力を通じて、台湾攻撃が『非常に達成困難な目標』であることを、彼ら(中国側)に思い知らせることだ」 台湾有事を起こさせないようにする抑止の考えが必要だとの訴え」、もっともな考え方だ。
・『政策再考のためにも正確な理解を  バイデン氏が明確に台湾防衛への意思を示したことなど、台湾関与への強化が鮮明であることで中国の姿勢が強硬になる恐れもある。今後、米中関係や東アジアの安全保障が新たな局面を迎える可能性があり、日本もアメリカの姿勢を理解し、これまでの台湾をめぐる国際関係の経緯を踏まえて外交・安保政策を考える必要がある。 よくある議論に「日本は台湾を国として認めていないので台湾を中国の一部と認めている。内政問題である台湾有事に巻き込まれないようにすべきだ」というものがある。 ただ、日本は中国が掲げる「一つの中国原則」のうち、「中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府である」ことのみを「承認」している。一方で「台湾は中国の不可分の一部である」ことについては、中国の立場を「十分理解し尊重する」とするにとどまっており、日本政府は「一つの中国原則」を完全に承認しているわけではない。 台湾有事が現実のものとなれば、日本も大きな影響を受ける。中国による台湾への攻撃で、東アジアのサプライチェーンは機能しなくなり、経済の混乱は避けられない。 また日本はアメリカと安全保障条約を締結し、アメリカ軍基地も受け入れている。中国が台湾侵攻作戦を発動すれば台湾だけでなく、在日アメリカ軍基地への攻撃など日本有事に発展する可能性は高い。日本が台湾有事にどう関わることになるかを議論する前提として、日本の台湾への立場を理解することも重要だ。 日本では、アメリカが「一つの中国」を認めていると誤解していることも多い。日本のメディアでは、提携先の海外英字紙の翻訳記事でacknowledgeを「認める」と誤訳して、あたかもアメリカが中国の「一つの原則」を認めているかのように表現するケースがある。加えて、中国が掲げる「一つの中国原則」とアメリカが掲げる「一つの中国政策」が同じものであるかのように混同した表記や説明もみられる。 「日本が、台湾への情緒的共感に傾斜した対中政策を続けると、アメリカにはしごを外される」と主張する言説もある。そうした主張者は、現在の日本の台湾への関わり方が中国を刺激することを強調し、台湾有事の抑止に貢献することを否定している』、「日本のメディアでは、提携先の海外英字紙の翻訳記事でacknowledgeを「認める」と誤訳して、あたかもアメリカが中国の「一つの原則」を認めているかのように表現するケースがある。加えて、中国が掲げる「一つの中国原則」とアメリカが掲げる「一つの中国政策」が同じものであるかのように混同した表記や説明もみられる」、確かに正しい理解が不可欠だ。
・『誤った解釈での言説では外交政策の議論が困難に  しかし、現状を変更しようと軍事力を増強しているのは中国側であり、アメリカの台湾関与姿勢は明確だ。誤った表記や解釈の下で繰り返される言説は、日本の外交・安保政策の議論を困難にする。 日本でも中国の武力行使を絶対に許さない世論の形成や、実際的な台湾有事での対応を平時から議論しておくことが中国への抑止力の貢献につながる。平和を維持するために日本ができることは何か、改めてこれまでの正確な経緯を振り返り、社会全体で議論することが求められる』、「現状を変更しようと軍事力を増強しているのは中国側であり、アメリカの台湾関与姿勢は明確だ。誤った表記や解釈の下で繰り返される言説は、日本の外交・安保政策の議論を困難にする」、「平和を維持するために日本ができることは何か、改めてこれまでの正確な経緯を振り返り、社会全体で議論することが求められる」、同感である。
タグ:台湾 (その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意 日本として対応を平時から議論しておくべき) ダイヤモンド・オンラインが財訊を転載 「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」 「台湾のGDP」が「韓国」を間もなく逆転しそうとは初めて知った。 「台湾韓国一人当たりGDP推移のグラフ」を見ると、2003年に「韓国」の方が大きかったが、差は急速に縮小している。 「台湾」と「韓国」とも各々の主要マーケットの状況の違いなどに応じて、伸びたり、伸び悩んだりすることだろう。いずれにしても、「台湾」が「韓国」より有利な状況がしばらく続きそうだ。 Newsweek日本版 木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」 「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「ウクライナ」での過ちを繰り返さなかったのはまずまずだ。 「台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」、「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ」、なるほど。 「今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ」、その通りだ。 「台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか」、現在、その「備え」を準備しつつある段階だ 東洋経済オンライン「バイデン大統領の「台湾防衛」発言に透ける真意 日本として対応を平時から議論しておくべき」 「一般的な受け止め方としてバイデン氏の発言の軌道修正を図っているとも捉えられる一方で、バイデン氏の発言を否定しないことを暗に示しているとみることもでき、受け手側に解釈が委ねられている」、なるほど。 「バイデン政権が「一つの中国政策」の看板を継承していると指摘しつつ、「バイデン大統領が『一つの中国政策』は変わらないと念押ししながら、『あいまい戦略』のぎりぎりのところをついて中国の台湾侵攻の抑止を図っているのではないか」と分析する」、微妙な立場だ。 「「中国に対する最善の方法は、接近拒否抑止力を通じて、台湾攻撃が『非常に達成困難な目標』であることを、彼ら(中国側)に思い知らせることだ」 台湾有事を起こさせないようにする抑止の考えが必要だとの訴え」、もっともな考え方だ。 「日本のメディアでは、提携先の海外英字紙の翻訳記事でacknowledgeを「認める」と誤訳して、あたかもアメリカが中国の「一つの原則」を認めているかのように表現するケースがある。加えて、中国が掲げる「一つの中国原則」とアメリカが掲げる「一つの中国政策」が同じものであるかのように混同した表記や説明もみられる」、確かに正しい理解が不可欠だ。 「現状を変更しようと軍事力を増強しているのは中国側であり、アメリカの台湾関与姿勢は明確だ。誤った表記や解釈の下で繰り返される言説は、日本の外交・安保政策の議論を困難にする」、「平和を維持するために日本ができることは何か、改めてこれまでの正確な経緯を振り返り、社会全体で議論することが求められる」、同感である。
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韓国(尹錫悦大統領)(その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)(その12)については、昨年3月25日に取上げた。今日は、(尹錫悦大統領)(その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…)である。

先ずは、昨年4月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301250
・『「三不」政策を巡り中韓で異なる主張  尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が大統領となり、最初に取り組む問題が、外交の健全化だろう。これまで文在寅(ムン・ジェイン)大統領の下で韓国は、中国・北朝鮮にすり寄り、ご機嫌伺いに勢力を注いできた。 その端的な例が、在韓米軍がTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備することに対する中国の反発を受け、文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明したことである。これは、韓国の安保に関する主権を制限しかねない内容である。 しかし、文在寅大統領にとっては、中国の機嫌を損なわないことが最優先であった。とはいえ、THAAD問題を中国側と交渉した文政権の複数の当事者は「三不」について、「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調してきた。文政権としても約束とするには躊躇(ちゅうちょ)があったのだろう。 ところが、中国国営の環球時報によれば、「三不は韓中相互尊重の結果」として、中国側では約束と受け止めているようである。 韓国メディアは最近、「中国が在韓米軍のTHAADに対し、『三不』に加えて『一限』まで要求していたが、文在寅政権はこれを隠していた」と報じた。ここでいう「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味である。 この報道が正しければ、「三不」政策は中韓の交渉の結果ということになる。しかも、「三不」に加え、「一限」も交渉の対象となっていたことがうかがえる。「一限」の存在は、環球時報が2017年11月、「三不と一限は韓国が取るべきマジノ線(最低条件)」と主張したことがきっかけで、外交関係者の間で取り上げられるようになった。中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか』、「三不と一限」、「文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明」、「「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味」、「中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか」、これほど「韓国」の国防に甚大な影響を与えるにも拘らず、「「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調」、「文在寅政権」の欺瞞ぶりには呆れ果てる。
・『尹錫悦氏側は文政権の説明に疑義  尹錫悦氏の大統領職引き継ぎ委員会は4日、元壱喜(ウォン・イルヒ)首席副報道官が「当事者たちが真実を国民に細かく明らかにすることが道理だ」とコメントした。 元壱喜副報道官は「記事の内容が事実であれば、今も韓国の軍事主権を侵害する深刻な事案という問題意識を持っている」「事実関係がどうなっているか私たちが確認できる内容は全くないが、現政府には合意に関与した当事者たちがいるので、その人たちが真実を明らかにすることが道理だ」とコメントした。 この当事者とは、当時の康京和(カン・ギョンファ)外相および鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長を指しているようだ。 しかし、韓国政府はこれまで一貫して、「約束」を否定してきた。韓国外交部による引き継ぎ委員からの業務報告でも「三不」や「一限」に関する内容は含まれていなかったという』、こんなことでは、外交の一貫性など期待すべきもない。
・『文在寅政権は次期政権に中韓交渉の真実を伝えるべきだ  尹錫悦氏は大統領選の時からTHAADの追加配備を公言しており、「三不」破棄は既定路線となっている。「三不」については、あくまで文在寅政権での考えとの前提で、追加配備を行う方針であり、これを実行すれば中国側との大きな軋轢(あつれき)を招来することになるだろう。 だが、「一限」についてはそもそも想定外のことである。さらに、「三不」と「一限」が「中韓相互尊重の結果」であれば、これを破棄することで中韓の摩擦は一層大きくなるだろう。 いずれにせよ、尹錫悦氏は中韓交渉の真実を知る必要がある。文在寅政権は、自分たちに不都合なことは外交に限らず、国内政治でも隠し続けてきた。しかし、外交ではこれは通用しない。韓国にとって極めて不適切な合意でも、合意は合意である。尹錫悦政権はその真実を知り、それでも合意を破棄すべき時は、中国との大きな摩擦を覚悟すべきである。 文在寅政権は、中国に外交の主導権を奪われ、中国の言いなりになってきた。しかもそれを国民に知られないように、ひたすら隠し続けてきた。そのツケを負うのは次期政権である。 文在寅政権は、中国の反発を招かない行動を取ることが平和への道だと思い込んでいるが、それは真の平和ではなく、中国に支配された平和である。韓国が主権を取り戻し、正常な外交を行おうとすれば、中国の反発を招く。その原因をもたらしたのは文在寅政権の外交政策である』、「文在寅政権の外交政策」がこんなにも酷いものだったとは改めて驚かされた。
・『中国追随外交を続ける二つの理由  韓国にとって、中国はどのような国なのか、韓国国民は真実を知るべきである。 文在寅大統領は昨年、習近平国家主席との電話会談で中国共産党100周年に対する祝賀を述べた。中国共産党は朝鮮戦争の折、人民解放軍を派遣し、米韓を中心とする国連軍を押し返して、朝鮮半島の分断を固定化した張本人である。その中国共産党に対して100周年の祝賀を述べることは、韓国国民の朝鮮統一に対する思いを踏みにじっているとしか思えない。 また、鄭義溶外相は王毅外相に招かれて台湾海峡の対岸・厦門に、はせ参じた。米韓首脳会談を前に、台湾問題が話題となるのをけん制しようとする中国の策略に乗ったわけである。 このように、韓国政府は中国の機嫌取りに熱心である。 文在寅大統領が中国追従外交を行うのには、二つの理由がある。 第一に、中国が北朝鮮に対して影響力を行使し、北朝鮮と韓国の関係改善に尽力してくれると思い込んでいることだ。しかし、これまでの北朝鮮との交渉の過程で、中国が韓国に協力する姿勢を示してきた事例を筆者は知らない。 第二に、輸出先としての重要性だ。韓国の輸出の4分の1以上が中国向けであり、中国との円満な関係が韓国の経済にとって不可欠と考えている。) しかし、韓国の中国経済専門家は「韓国と中国は経済分野ではここ30年で互恵的な関係からライバル関係に変わったため、韓国企業の対中戦略も見直さなければならない」と指摘する。特に、中国に過度に依存してきたサプライチェーンの多角化が急務だとの声が上がっている。 韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務である。 中国に対する過度な譲歩姿勢は終わらせるべき時が来ている。現在の中韓関係において、中国はあくまでも自国の利害を基本に韓国に対応してきている。韓国も自国の利益を優先して考えるべき時に来ているのではないか』、「韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務」、その通りだ。
・『安保リスクの高まりによりTHAADの追加配備は不可避  中国は、THAADのレーダーによって国内の軍の配置が米国に明らかになることを恐れている。しかし、北朝鮮は今年に入り、極超音速ミサイル、鉄道から発射のミサイル、ICBM(大陸間弾道ミサイル)など次々にミサイルの発射を行い、近く核実験も再開すると言われている。こうした北朝鮮の兵器は、いずれも中ロの支援の下に高度化されているのである。 これに対し、韓国は防衛体制を整備し、ミサイル迎撃能力を高める必要がある。それがTHAADの追加配備であり、それは中国の軍の配置を探るためではなく、韓国の防衛のためにすることである。 北朝鮮の核ミサイル能力の向上という新たな安保リスクに対応するためには、「三不」の廃棄はやむを得ない選択である。そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう』、「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう」、その通りだ。
・『韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明  米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカは5日、韓国船籍だったタンカー2隻がこのほど、北朝鮮所有になったことが分かり、国連の対北朝鮮制裁委員会が正式調査に着手した、と報じた。 2隻のタンカーのうちの1隻である「デホ・サンライズ号」は昨年、中国企業に売却された後、北朝鮮所有のシエラレオネ船籍「オーシャン・スカイ号」に変わったという。専門家パネルは船舶の位置を示す自動船舶識別装置を逆追跡、衛星写真資料を分析してこのような情報を得た。) さらに専門家パネルは、かつて韓国船籍だった別のタンカー「ウジョン号」が北朝鮮の旗をつけていることも確認し調査を進めている。同タンカーは昨年8月8、9、10日の3回にわたり違法な船舶間積み替え方式(瀬取り)により、パラオ船籍のタンカーから油類を受け取る様子が捉えられえている。 国連安保理は2016年に採択した制裁決議2321号に基づき、国連加盟国が北朝鮮に船舶を販売することは禁止している。 しかし、文在寅政権は逆に北朝鮮への制裁を緩和するよう欧米各国に働きかけており、国際社会が一致団結して北朝鮮の核ミサイル開発を阻止しようとする動きに反する行動を取っている。 また、文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した。 文在寅政権は20年に、朝鮮労働党の金正恩総書記の妹である金与正(ヨジョン)党第1副部長(当時)の要求で、「対北ビラ禁止法」を制定した。これにより、米国議会では「人権聴聞会」の対象国となった。 また、19年には韓国への帰順の意向を伝えた北朝鮮の漁船乗組員2人を凶悪犯との理由で北朝鮮に強制的に送り返し、国連人権報告者が「深く懸念する」という事態になった。 文在寅大統領は「平和が来れば北朝鮮の人権問題も改善する」という趣旨の発言を繰り返しているが、北朝鮮の人権状況に向き合う姿勢は一向に見えない。 文在寅政権は、米朝首脳会談のお膳立てをする際にも、米国と北朝鮮にそれぞれ聞こえのいいことを伝えた結果、ベトナムでの首脳会談が不調に終わると双方から激しい反発を受けた。文在寅大統領は特にそれ以来、北朝鮮の機嫌を取ることに終始している。 繰り返しになるが、尹錫悦政権は文在寅政権の外交の実態を掌握することが不可欠である(詳細は拙書「さまよえる韓国人」ご参照)。その上で、外交の正常化を図っていかなければならない』、「韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明」、国連決議違反を堂々と行う。「文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した」、「文在寅政権は」まるで「北朝鮮」の利益代表のようだ。

次に、この続きを、6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304421
・『統一地方選挙で勝利した大統領の関心は経済危機へ  中央日報によれば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は6月3日、「経済危機をはじめとする台風圏にわれわれは入っている」と述べたという。 その際に記者が、1日の統一地方選挙で尹錫悦大統領が率いる保守系与党「国民の力」が勝利したことについて触れ、「(国民の力の)勝利で国政運営能力を確保したという評価が多いが」と質問したところ、「みなさんは今、家の窓、庭の木が揺れていることを感じないだろうか。政党の政治的勝利を口にする状況ではない」と述べ、「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説した。 尹錫悦大統領が「台風圏」と述べた理由の一つが、5月の韓国の消費者物価上昇率が5.4%と、13年9カ月ぶりの高水準になったことである。短期的に物価高・高金利・ウォン安の三つの波に襲われていることが韓国経済の展望を暗くしている。 経済的な困難に見舞われた背景には、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料価格の高騰、米国をはじめとする先進各国における物価高騰に対応した金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策に伴う上海市の封鎖で生じた、原材料や半導体などのサプライチェーンの混乱などがあげられる。 韓国の中央銀行は物価高騰を抑えるため金利を引き上げている。それは経済成長率の低下に跳ね返ってくるだろう。物価を安定させても、成長の原動力を見つけ、経済体質を改善するという課題がある。こうした中、韓国経済はスタグフレーション(不景気下での物価上昇)に入った、入ろうとしているとの指摘がなされている』、「尹錫悦大統領」が「「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説」、したとは堅実な姿勢だ。
・『新政権への期待は経済の立て直し  韓国の国民が尹錫悦政権に最も望むことは、経済を立て直し、民生を安定化させることである。 文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、国民生活の質は低下した。製造業は韓国での投資に見切りをつけ、良質な雇用は失われている。国民は一生働いても家を持つことが夢となった。こうした経済社会の現状に対する不満が革新政権を終わらせる結果となった。 文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すことであり、それができなければ、せっかく改善しだした支持率は低下していくであろう』、「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すこと」、その通りだ。
・『文在寅政権下で韓国経済は弱体化  グローバル統計サイト「NUMBEO」によると、韓国の「生活の質」指数は、文在寅政権が発足した2017年には67カ国中22位であった。しかし、21年になると82カ国中42位と中位圏に落ちた。その最大の原因は、ソウル市の不動産価格が2倍となるなど、文在寅政権の不動産政策の失敗である。韓国の21年の特殊出生率は0.81であるが、これは希望のない社会を反映している。 韓国の雇用状況の悪化は著しい。それは青年層ばかりでなく、韓国経済を支える40代の雇用率も最低水準に落ち込んでいる。特に、製造業などの良質な雇用が減少しているのは、「反企業的」な韓国政府の政策が原因だ。その代表例が、最低賃金の合理性のない大幅引き上げである。 30年間ソウルで勤務したあるグローバル金融機関のCEOは、「国際資本が韓国経済に興味を失っている」と話す。韓国経済の根本的問題は主要産業の国際競争力の低下である。 韓国経済のGDP成長率は、新型コロナ前の19年でさえ2%だった。それも大幅な財政支出で実現したものであり、それを除けば実質的には1%台であったといわれる。韓国で成長率1%台というのはアジア通貨危機やリーマンショックなど世界経済が困難な時にあったくらいである。19年の世界経済は好調であり、韓国だけがとり残されていた。 家計所得についても、格差が拡大し、低所得者の困難は増大しており、2020年の所得上位20%と下位20%の所得格差は5.26倍に達した。これは過去2番目に高い数字である。 急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えているからである。 こうして韓国の国民生活が困難を極める中、物価高・金利高・ウォン安が襲ってきたのである』、「急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えている」、「物価高・金利高・ウォン安が襲ってきた」、前政権の失政のツケは大きいようだ。
・『韓国が直面している長期低成長の危機  韓国経済にはインフレ、世界的な景気低迷、貿易収支悪化などの「警告灯」がともっている。 ロシアのウクライナ侵攻によって国際的な原油価格、食料価格が急騰している。これに加え、米国におけるインフレ加速を抑制するため、金利が急上昇している。さらに、上海封鎖などにより、中国経済が低迷している。これらの要因は海外発であり、韓国としての対応に限界がある。 韓国でも世界経済の不安でウォン安が進み、輸入物価が上昇、インフレを加速させている。 前述の通り、5月の消費者物価上昇率は5.4%であり、これはグローバル金融危機だった2008年8月(5.6%)以来の高水準である。何より軽油・ガソリンなどの石油類が34.8%と大幅上昇、生産・物流コストの上昇につながり韓国経済全般を冷え込ませている。4月の産業活動動向で全生産が-0.7%、小売り販売が-0.2%、企業の設備投資が-7.5%と、2カ月連続でトリプル減となった。 物価高は今後も続く見通しであり、6~7月には6%台に上昇するとの見通しもある。 貿易収支は、3月は1億1518万ドル(約150億円)の赤字だった。4月は1~20日までで51億9900万ドル(約6800億円)の赤字である。 主な大企業の最高責任者(CEO)は最悪の状況を前提にしたシミュレーションを作成し対応策づくりをしている。 韓国経済は中長期的には潜在成長率の基調的下落が懸念される。韓国は高齢化に直面しており、韓国経済を成長軌道に戻す原動力が見当たらない。韓国銀行の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁は「長期低成長」を懸念している。) 物価上昇を抑えるため、韓国銀行は政策金利を果敢に引き上げている。コロナ拡大以降、低金利政策を取ってきたため、借金をしてまで投資を行うことがブームとなり、家計債務が1900兆ウォン(約200兆円)に膨らんだ。政策金利の引き上げで貸出金利が上昇すれば、金利負担が増え、個人消費が落ち込むと同時に、債務不履行が増えるリスクがある。 尹錫悦政権は、大統領当選後に急上昇した物価高に起因する経済危機に取り組まなければならない。ただ、前述の通り、物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる』、「物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる」、その通りだ。
・『文在寅政権時代の悪弊を修正することが第一歩  文在寅政権時に積み上がった韓国経済の「負の遺産」が、韓国経済の物価高対応を一層困難なものにしている。それは文在寅政権が、民主労総(全国民主労働組合総連盟)という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである。 韓国経済を復活させ、国民に希望を与えるためには、こうした制度を抜本的に改革する必要がある。それは、韓国経済のあり方そのものに対する保革の論理の対立であり、文在寅政権に近かった過激な労働組合との闘争を意味するだろう。 尹錫悦政権がこれから行う経済政策は、文在寅政権および「共に民主党」(以下、民主党)の経済政策と正面から対立することになる。尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか。 いずれにせよ、民主党が韓国経済社会の国益と未来を考えて尹錫悦政権と建設的な話し合いができるかどうかが、韓国経済復活の分岐点になる』、「文在寅政権が、民主労総・・・という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである」、「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、なるほど。
・『文在寅前大統領と周辺への捜査は民主党の現政権への対応次第  文在寅前大統領は退任直前に非民主的手法で、検察から捜査権のほとんどを剥奪する検察捜査権完全剥奪法(検捜完剥法)を成立させた。それは、文在寅前大統領と李在明(イ・ジェミョン)前京畿(キョンギ)道知事を捜査から守るためといわれる。 同法は4カ月の猶予期間を経て、9月から施行される。検察に捜査権限のあった「6大犯罪」のうち、公職者、選挙、防衛産業、大規模な事故の四つは9月以降、警察だけが捜査を行えるようになる。また、1年6カ月後に重大犯罪捜査庁が発足すれば、検察に残された汚職、経済犯罪の捜査権も剥奪される。 文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ。尹錫悦政権は2日、警察庁長官に次ぐ7人の幹部のうち任期が特定されている1人を除く6人を交代させた。警察庁長官は7月で任期が終わるため、新たに任命された6人の中から後任の警察庁長官が選抜されるのであろう。これによって警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる。 また、検察は、9月までの残りの期間、文在寅政権に絡む不正の追及に本腰を入れ急いでいる。 まず、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業資源相の事務所を押収捜査した。狙いは経済性評価の捏造による月城(ウォルソン)原発の早期稼働停止疑惑だろう。この疑惑は文在寅政権幹部を捜査俎上に載せる可能性があり、文在寅政権と近かったハンギョレ新聞は「文在寅政権に対する捜査のシグナルか」と危機感を募らせている。) 検察はまた、李在明前京畿道知事のキム・ヘギョン夫人の公務用クレジットカードの私的使用で家宅捜索した。李在明氏は国会議員に当選したため、身柄拘束は困難であるが、まずは夫人に捜査のメスを入れたということであろう。 文在寅前大統領は政権から離れた今、検察の捜査権を剥奪する小手先の手法で自己防衛を図ることはできないことを思い知らされたことだろう。さらに今後、検捜完剥法を違憲で提訴する、もしくは国民投票にかけるということも検討されているかもしれない。 いずれにせよ、文在寅前大統領とその周辺が身を守るための最善の方法は、尹錫悦政権と国益を目指して協力することである。文在寅前大統領と民主党が現政権に協力すれば、尹錫悦政権も文在寅前大統領をたたく必要はない。半面、尹錫悦大統領との対決をあおるようなことがあれば、攻撃の矛先が文在寅前大統領に向かうこともあるだろう。 尹錫悦大統領にとっても経済危機に対応するためには民主党の協力を求めたいところだ。 政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか』、「文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ」、「警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる」、「政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、賢明なやり方だ。

第三に、6月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58714
・『韓国の苦境は日本にとってひとごとではない  韓国経済の先行き懸念が高まっている。その要因は複数ある。その中でも、中国での“ゼロコロナ政策”と“脱グローバル化”の加速によって世界のサプライチェーンが寸断され、韓国経済に大きな支障が出ている。 特に、韓国の貿易収支が赤字に転落する月が増えたことは見逃せない。中国のゼロコロナ政策によって韓国経済の成長を牽引してきた輸出の伸びが鈍化している。その一方で、米中対立によってサプライチェーンは混乱した。さらにウクライナ危機によって脱グローバル化が勢いづいた。世界の供給のボトルネックが深刻化し、韓国の輸入物価が急騰している。 その結果、昨年の12月、本年1月に続いて4月、5月と貿易収支は赤字に転落した。輸出は増勢を保っているが事態は深刻だ。今後、韓国の貿易収支は赤字傾向が鮮明化するだろう。それによって韓国ではGDP成長率が低下する。 脱グローバル化によって韓国の輸入物価は上昇し、国内の生産者物価と消費者物価も押し上げられる。経済成長率の低下と物価高騰が同時進行し、資金流出が加速する展開が懸念される。外需を取り込んで景気の持ち直しを実現してきたわが国にとって、韓国経済の現状はひとごとではない』、「貿易収支は赤字傾向が鮮明化」は日本でも同様だ。
・『ゼロコロナ政策の悪影響が直撃している  中国共産党政権がゼロコロナ政策を徹底した結果として、韓国の輸出の増加ペースが鈍化している。2022年5月と1年前の輸出の前年同月比変化率を比較すると一目瞭然だ。2021年5月、韓国の輸出は45.6%増加した。中国経済が急速に持ち直し、半導体や自動車、鉄鋼製品などの輸出が急増したことで、韓国の景気は緩やかに回復した。 しかし、その後、韓国の輸出の増加ペースは鈍化した。不動産バブルの崩壊によって中国は高度経済成長期から安定成長期へ曲がり角を曲がった。 その中で、共産党政権はゼロコロナ政策を徹底することによって感染再拡大を封じ込めようとしている。深圳、上海、北京など経済規模の大きな都市がロックダウンに追い込まれ、個人消費は急速に減少し、景況感は冷え込んでいる。それによって、連鎖反応のように不動産市況が一段と悪化し、都市部でさえ失業率が上昇している。 共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている』、「中国」「共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている」、なるほど。
・『党大会を前に手綱を緩める兆しは見えない  懸念されるのは、ゼロコロナ政策が中国の社会心理にかなりの痛手を与えたことだ。6月に入り上海のロックダウンは解除された。しかし、中旬に入ると上海で感染者が再増加し始め、検査が徹底されて一時封鎖に追い込まれる地区が出ている。秋に党大会を控える習近平政権がゼロコロナ政策の手綱を緩める兆しは見えない。 人々の自由は強く制限された状況が続くだろう。外出が制限され動線の寸断が続くことによって、飲食、宿泊、交通などのサービス業だけでなく生産活動も停滞する。企業も家計も先行きを懸念し、支出を抑え、食料品や在庫を買いだめする。中国経済の減速傾向は一段と鮮明化し、アジア新興国や欧州経済の減速懸念も高まるだろう。中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い』、「中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い」、相手国経済が「減速」すれば、「韓国の輸出」も影響を受けざるを得ない。
・『輸出主導型の経済運営構造がピンチを迎えている  また、世界経済は脱グローバル化し始めた。それによって、韓国の輸入物価が急騰している。グローバル化を追い風にして資材をより安く輸入し、国内で大量生産を行い、より高く販売できる市場に輸出して成長を遂げた韓国経済は大きな転換点を迎えた。1960年代以降の韓国は、基本的には財閥系の大企業を優遇することによって、輸出主導型の経済運営構造を築き上げた。 韓国企業はわが国から家電、自動車、半導体などの製造技術を習得しつつ、資材を輸入し、国内で完成品を大量生産して輸出することによって成長を遂げた。それを加速させたのが冷戦の終結だ。1990年代に入り冷戦が終結すると、世界経済は急速にグローバル化して国境の敷居が下がった。 米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた』、「世界経済は急速にグローバル化」、「米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた」、その通りだ。
・『「米中対立、ウクライナ侵攻、ゼロコロナ」の三重苦  しかし、2018年以降は米中の対立が激化し、半導体やスマートフォンなど世界のサプライチェーンが大きく混乱した。サプライチェーンの再編により企業のコストは上昇した。それに加えてウクライナ危機の発生を境にドイツなどの欧州各国がロシアへのエネルギー依存脱却を急がなければならない。金融、経済制裁によってロシアと西側諸国が分断され、世界経済がブロック化し始めた。その結果、世界的に原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格が高騰している。 特に、石油化学製品やガソリンの原料であり、あらゆる経済活動に欠かせない原油価格の上昇は、世界の企業の事業運営コストを急激に押し上げる。ウクライナからの供給が寸断されたため、小麦などの穀物価格も上昇が鮮明だ。さらに肥料の供給も寸断され、世界的に食糧危機の懸念が急速に高まっている。 それによって韓国の輸入物価は跳ね上がった。さらにはゼロコロナ政策によって中国の生産活動や物流が停滞したため韓国では現代自動車がブレーキシステムなどの部品を調達できないなど、モノの不足も深刻化している。その結果として、貿易収支が赤字に転落した。経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化しようとしている』、「経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化」、国家経済と個別企業業績が乖離し始めたようだ。
・『かつての“お得意様”が今は競争相手に  今後、韓国の貿易収支は赤字傾向をたどり、経済成長率の低下と物価の高騰がより鮮明となるだろう。米欧などで金融政策が大転換されることにより、資金流出の懸念も高まる。輸出面において中国の需要はさらに落ち込むだろう。 2022年の中国経済の成長率はゼロコロナ政策や不動産バブル崩壊、IT先端企業の締め付けなどによって3%程度に落ち込む恐れが高まっている。ゼロコロナ政策の長期化を恐れ、中国からインドやASEAN各国に流出する資本が増えている。米中対立の先鋭化、台湾海峡の緊迫化懸念も高まる。 他方で、半導体など成長期待の高い先端分野において中国企業は製造能力の向上に取り組む。メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう。物価高騰によって米国の個人消費が徐々に鈍化することも韓国の輸出にマイナスだ』、「メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう」、「中国は顧客から競合相手に変質」、これは大きな影響を及ぼさざるを得ない。
・『アジア通貨危機、リーマンショックの再来か  その一方で、韓国の輸入物価は今後も上昇するだろう。ウクライナ危機をきっかけにして、多くの国がロシア以外の国と地域からコストをかけてエネルギー資源などを買わなければならない。欧米の制裁によってその傾向は強まる。韓国はより高い価格で資材を輸入しなければならなくなる。 韓国では生活水準の切り下げを余儀なくされる家計が増える。内需の縮小均衡は加速し、海外に進出して成長を目指す経営体力のない中小企業はより強い逆風に直面する。雇用と所得環境が悪化し、労使の対立も激化するだろう。それは韓国経済にマイナスだ。例えば、6月14日に終了したトラック運転手のストライキによって物流は停滞し、生産活動や中国向け輸出に負の影響が出た。 連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)はインフレ退治のために急速に金融を引き締めなければならない。世界的な金利上昇と内需減少懸念によってウォンは売られ、韓国から流出する資金は増えそうだ。アジア通貨危機、リーマンショック、2020年3月のコロナショックなどの際には韓国から海外に資金が急速に流出しドル資金が枯渇した。それとよく似た状況が起こる恐れが増している』、「アジア通貨危機、リーマンショックの再来か」、韓国は日本との通貨スワップ協定を期限切れにしたままだが、改めて契約締結を検討すべきだろう。もっとも、「日本」も「貿易赤字」に苦しむ以上、「韓国」を助けるような余裕は失っているのかも知れない。
タグ:「韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務」、その通りだ。 「文在寅政権の外交政策」がこんなにも酷いものだったとは改めて驚かされた。 こんなことでは、外交の一貫性など期待すべきもない。 「中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか」、これほど「韓国」の国防に甚大な影響を与えるにも拘らず、「「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調」、「文在寅政権」の欺瞞ぶりには呆れ果てる。 「三不と一限」、「文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明」、「「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味」、 武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」 ダイヤモンド・オンライン 韓国(尹錫悦大統領) (その1)(韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」 元駐韓大使が解説、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説、「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…) 「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう」、その通りだ。 「韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明」、国連決議違反を堂々と行う。「文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した」、「文在寅政権は」まるで「北朝鮮」の利益代表のようだ。 武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」 「尹錫悦大統領」が「「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説」、したとは堅実な姿勢だ。 「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すこと」、その通りだ。 「急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えている」、「物価高・金利高・ウォン安が襲ってきた」、前政権の失政のツケは大きいようだ。 「物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる」、その通りだ。 「文在寅政権が、民主労総・・・という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである」、 「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、なるほど。 「文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ」、「警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる」、 「政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、賢明なやり方だ。 PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫氏による「「中国に依存してきたツケが直撃」輸出で稼げないのに物価上昇が止まらない韓国経済の大ピンチ 米中対立、ウクライナ侵攻、中国ゼロコロナ政策…」 「貿易収支は赤字傾向が鮮明化」は日本でも同様だ。 「中国」「共産党政権は公共事業や中小企業向けの融資支援策など景気刺激策を強化しているが景気の減速が止まらない。それが韓国経済に与える負の影響は大きい。世界的な半導体の不足が深刻であるため輸出は増えてはいるものの、2022年5月の輸出は同21.3%増と1年前に比べると勢いが弱まっている」、なるほど。 「中国を中心に韓国の輸出増加ペースはさらに鈍化する可能性が高い」、相手国経済が「減速」すれば、「韓国の輸出」も影響を受けざるを得ない。 「世界経済は急速にグローバル化」、「米国は自由貿易協定(FTA)を推進することなどによって経済運営の効率性を高め、韓国はその恩恵を受けた」、その通りだ。 「経営体力のある韓国企業は米国への直接投資を積み増すなどして、より多くの需要が期待できる市場で半導体や車載用バッテリーなどの供給体制を強化」、国家経済と個別企業業績が乖離し始めたようだ。 「メモリ半導体、バッテリーなど中国と真正面から競合する製品を輸出してきた韓国企業にとって中国は顧客から競合相手に変質している。産業補助金による工場建設や研究開発の支援、土地供与などによって韓国企業と中国企業の固定費負担の構造は決定的に異なる。韓国企業の輸出競争力は低下するだろう」、「中国は顧客から競合相手に変質」、これは大きな影響を及ぼさざるを得ない。 「アジア通貨危機、リーマンショックの再来か」、韓国は日本との通貨スワップ協定を期限切れにしたままだが、改めて契約締結を検討すべきだろう。もっとも、「日本」も「貿易赤字」に苦しむ以上、「韓国」を助けるような余裕は失っているのかも知れない。
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ウクライナ(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) [世界情勢]

ウクライナについては、昨年3月10日に取上げた。今日は、(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編)である。

先ずは、昨年3月30日付けデイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/03300559/?all=1
・『驚愕の侵攻開始から1カ月。投げられたさいは、誰もが予想しなかった方向へと転がっている。内外で孤立を深める一方の超大国独裁者と、世界の人々の心を味方に付けた、徒手空拳の元コメディアン……。かくして「最狂の皇帝」の前に、地獄の門が口を開けた。 ベトナム戦争ではナパーム弾から逃げ惑う裸の少女。スーダン内戦ではハゲワシに狙われる少女の姿が……。 戦争においては、一枚の写真が戦いの惨劇を知らしめ、時に勝敗を左右することがある。 この「ウクライナ戦争」においては、これが「その一枚」となるのか。猖獗(しょうけつ)を極めるロシア軍のマリウポリ爆撃。3月9日、半壊した産科病院から担架で運び出された妊婦の写真は、世界に衝撃を与えた。 「今すぐ私を死なせて!」 血まみれのお腹を撫でながら金切り声を上げたその女性は、30分後に息絶えた。お腹の中の赤ん坊と共に。 「有名なモスクやビーチがあり、多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」 ウクライナの新聞「キエフインディペンデント」でライターを務める寺島朝海さんは、マリウポリ出身のジャーナリストに取材し、そんな証言を得ている』、「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。
・『水もなく脱水症状に マリウポリの劇場  同国南東部に位置する人口約40万人のマリウポリは、ロシア軍に包囲され、電気、水道、ガスが遮断された。そこに約35万人の市民が籠城状態を強いられている。 彼女のレポートによれば、 〈人々は凍りそうに寒い地下室に避難を余儀なくされ、十分な食べ物も、水もなく、脱水状態に陥っている〉 生活に必要な物資も、 〈食料品店や薬局には、在庫がもう無いか、ロシア軍に略奪されていた〉 食料や水でさえも、 〈危険なほど不足しているため、氷点下の気温で調理し、暖を取るために木材を切り刻んでいる〉 〈最も被害が大きかった地域に住む人々は、家の中で今は動かなくなったラジエーターを叩いたり、雪を溶かして飲料水にしている。破壊された家の瓦礫の中を歩いて、何か食べられるものを見つける人もいる〉 こうして包囲し、孤立させた街を、ロシア軍が無差別に爆撃しているのは周知の通りだ。 前出の産科病院に続き、16日には避難場所となっていた劇場が爆撃され、数百人が未だ生き埋めになっているといわれている。さらには19日、やはり避難場所となっていた美術学校が爆撃を受けた。 「このマリウポリに外国メディアで唯一入り、状況を伝えているのは、アメリカのAP通信です」 と述べるのは、さる全国紙の外信部デスク。 「英語で書かれたその記事によれば、爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導しているそうです」』、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。
・『新生児の死体も  塹壕に折り重なる遺体には、頭部を榴散弾で飛ばされた1歳半の乳児や、爆風で足を吹き飛ばされた16歳のサッカー青年のものなどもあるという。 「しかし、そうしたケースはまだましかもしれません。病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている。中には臍の緒が付いたままの新生児の死体もあるそうです」 当局が発表する死者の数は2500人だが、本当のところは定かではない。 思い起こされるのは、第2次世界大戦時、ドイツ軍に900日近くも取り囲まれ、破壊された「レニングラード包囲戦」。100万人が死に、その97%が餓死だったというナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めているのである』、「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。
・『ロシア軍の死者は7千人  2月24日に始まった戦いから1カ月余り。隣国に攻め込んでいるはずのロシア軍は、逆に日に日に追い込まれている。 「アメリカの報道によれば、開戦以来、ロシア軍の死者は7千人に上っているといいます」 と解説するのは、元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授である。 「これはアフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまったのです。プーチンにとってこれは大誤算でしょう」 被害は一般兵に留まらず、 「20名いたロシア軍将官のうち、既に5人が戦死しています(取材当時)。セキュリティーで保護されていない携帯を使っていたことでウクライナ側に盗聴され、ピンポイントでスナイパーに撃たれたようです。ここにもロシア軍の慢心が表れていますよね」(同) 停戦交渉も断続的に開かれてはいるが、双方の主張に隔たりが大きく、進展を見せていない。 こうした苦境を感じてか、 「3月中旬以降、ロシアの世論にも大きな変化が読み取れます」 と述べるのは、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明・大和大学教授である』、「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。
・『カリスマ歌手が反戦歌を公開  流れを作ったのは、ロシア国営放送のスタッフ、マリーナ・オフシャンニコワ女史だ。14日、ニュース放映中にキャスターの後ろに映り込み、「NO WAR」と書いた紙を掲げた姿は世界中で流されたから、ご記憶の方も少なくないだろう。 これに続いて、16日には、世界的バレエ団「ボリショイ・バレエ」のプリマ、オルガ・スミルノワが侵攻に抗議して国を離れた。 17日には、人気女性歌手のゼムフィラが反戦歌を動画で公開。彼女もまたロシアを脱出している。 「とりわけゼムフィラは、日本で言えば、宇多田ヒカルや椎名林檎のような、30~40代に絶大な人気を誇るカリスマ的歌手です」 と佐々木教授が続ける。 「こうしたスターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性があるのです」 女性や文化人だけでなく、副首相を務めたこともあるクレムリンの元高官や、複数のオリガルヒ(新興財閥)も続々と反戦を表明し始めている』、「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。
・『学校での洗脳教育 Zダンス  この状況に危機感を覚えたのか、対するプーチンも“世論工作”に躍起だ。 18日にプーチンは、モスクワのスタジアムで開かれた式典に出席した。暗殺を警戒し、潜伏生活を続けているともいわれてきた大統領が大勢の国民の前に姿を現したのは、開戦以来初。演説では改めて戦争の正当性を強調したが、 「この時も、公務員や国営企業などに大量の動員がかかったといわれています」 と佐々木教授。 「恐ろしいのは、彼が子どもたちまでを『親プーチン運動』に駆り出していること。今、ロシアの学校では子どもたちが、勝利を表す『Z』のマークが描かれたシャツを着てダンスを踊らされたり、『Z』の人文字を作らされたりと、半ば洗脳のような教育が進められている。これは国内で高まる自らへの批判を恐れている証左といえるでしょう」 同時に、反対派への“締め付け”も強化している。 政府は3月、国内でのFacebookやTwitter、3800万人もの利用者がいるとされるInstagramの接続を相次いで遮断した。SNSはロシア当局が隠したい「不都合な真実」に溢れている。そこから目をそらせるためであろう。 更にはこの3月に法改正を行い、軍に関する虚偽情報の拡散や、信用失墜に繋がる行為をした者に対し、罰金や自由剥奪の刑を科すことができるようにした。 佐々木教授が続けるには、 「合わせて、最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言しています。これは、国内の反対派にレッテルを貼り、排除しようとするもので、完全に冷戦下のKGBの発想。まるでソ連時代のごとく国民をコントロール下に置こうとしているかのように見えます」』、「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。
・『国際的地位の失墜  「焦燥の皇帝」はもはや末期症状を迎えた感もある。 今後、ロシアの国際的地位が失墜し、大国の地位から引きずり降ろされることは間違いありません」 と述べるのは、同志社大学の浅田正彦教授。 国際法の権威である浅田教授に、プーチンの犯した罪がいかに重いかを解説してもらうと、 「まず国連憲章違反です。国連憲章の柱である2条4項は『武力による威嚇』及び『行使』を禁止している。それに明確に違反したことになります」 これに対してプーチンは、ドネツク、ルガンスクの二つの「国」から要請があり、集団的自衛権を行使した、それは2条4項の例外である、と主張しているが、 「これは通りません。まず二つの州はロシア以外の国からは独立国として承認されておらず、国際社会から国家として認められているとはいえません。国家でないものからの要請は集団的自衛権行使のベースとはなりえません」 実際に行われた戦闘行為についても、ロシアは数々の罪を犯している。 「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れがありますね」』、「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。
・『「プーチンを裁けない」は誤解  問題は、こうした「戦争犯罪人」プーチンを実際に裁くことができるのか、ということである。 責任の追及は、国家に対して行われるものと、個人に対して行われるものに分かれる。前者を扱うのは国際司法裁判所(ICJ)、後者を扱うのは国際刑事裁判所(ICC)だ。 既に両者で手続きが開始されているが、浅田教授がより実効性の高いものとして注目するのは後者である。報道では、「ロシアもウクライナもICCに加盟していないからプーチンを裁けない」と解説されることがあるが、 「正確ではありません。ウクライナは確かに締約国ではありませんが、7年前に無期限で戦争犯罪等について管轄を受け入れると宣言しているため、ICCは本件の手続きを開始することができるのです」 となればあとは、法廷にプーチンを引きずり出せるかどうか。彼に逮捕状が出た場合、どうなるのだろうか。 「その場合、プーチンがICCの締約国を訪れた際に、その国は彼を逮捕してICCに引き渡すことが締約国として義務付けられることになります。実際に逮捕することは、その国にとって、ロシアと決定的に敵対するというリスクを背負い込むことになりかねないだけに難しいかもしれませんが、逆に逮捕をしなければ、その国はICC規程に違反することになる」 つまり、仮にプーチンが来日することがあれば、日本政府は彼に手錠をかけてしまえばいいのである。まあ、岸田首相がそこまでの度胸の持ち主だとは到底思えないが……。 いずれにしても、 「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」』、「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。
・市民をこのまま押さえつけられるのか  国内外で孤立を深める現代の暴君。 前出・名越教授は、 「どれだけ孤立しても、プーチンが撤収、譲歩、妥協をすることはない」 と言う。 しかし、各国の経済制裁強化により、国民生活への打撃は強まる一方で、 「ここに来て、これまで世界の戦争で様子見をしていた永世中立国のスイスが重い腰を上げ、制裁に参加しましたが、これは大きい。スイスに資産をため込んでいる富豪も多いですから痛手となるでしょう。4月には国債もデフォルトするでしょうし、そうなれば打撃はさらに大きくなる」(同) 前出・佐々木教授も言う。 「プーチン体制が強固なことには違いありませんが、さりとてソ連崩壊後、まがりなりにも欧米流の自由と開かれた言論空間の風を30年も受けてきた市民を、このまま押さえつけることができるかどうか」 いかに最狂の独裁者といえども、歴史という時計の針を巻き戻すことは不可能だ』、「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。
・『プーチンを頂点とする“山分けシステム”  「ロシアの権力構造は、プーチンを頂点とする“山分けシステム”で成り立っているわけです」 とは、東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠・専任講師。 「プーチンに忠誠を誓っていれば、石油や天然資源から上がる莫大な利益の分配を得られる。逆に言えば、プーチンはこの山分けの利益を与えることによって、何百人のエリートを鼓舞し、従わせてきたのです。しかし、今回の経済制裁を受け、このシステムが他ならぬプーチン自身の暴走によって、崩壊の危機に瀕している。今後、政権内部から“もう彼を担ぐメリットはない”という動きが出てくるかどうか。そしてその場合、プーチンがかつてのスターリンのように、そうした動きを徹底的に粛清するかどうか。いずれにせよ、プーチンがこのまま安穏と権力の座を維持していられないことは間違いありません」 その先にあるのはクーデターか暗殺か。 冒頭のAP通信によるマリウポリレポートに戻れば、砲撃を受けた女児を治療していた医師が、取材のカメラを見据えてこう怒鳴る場面がある。 「プーチンにこの子の目を、泣いている医者たちを見せてやれ!」 地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか』、「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。

次に、4月21日付けエコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220421/se1/00m/020/001000d
・『ウクライナの悲劇が深刻になっている。1991年の旧ソ連崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)1色に塗りつぶされてきた東欧の政治地図を、プーチン大統領は力によって変更しようとしている。ロシア軍は首都キーウ攻略戦に敗れ、一転して、東部ドンバス地方のルハンスク、ドネツク2州や南東部マリウポリで総攻撃を開始した。何がこの悲劇を招いたのか。核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景をひもといてみよう』、「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。
・『悲劇の発端「ブダペスト覚書」  ウクライナの悲劇は1994年の「ブダペスト覚書」から始まった。91年のソ連崩壊と同時に独立を果たしウクライナは、自国の命運を左右する難題に直面した。領内に残された旧ソ連の核兵器約1900発の処理という難題である。ウクライナには二つの選択肢があった。一つは、この1900発の核兵器を接収、領有し、ウクライナが米ロに次ぐ第3の強大な核兵器保有国となることだった。二つ目は、それをすべてロシアに移送、返還して、非核保有国として独立国家ウクライナの安全と繁栄を探る道である。 米英仏ロ中の5大核保有国は、当然、ウクライナが核を持つことを拒否し、強烈な外交圧力をくわえた。ウクライナはやむなく2つ目の道を選択し、94年に、旧ソ連の核兵器をすべてロシアに移送するとともに、80年成立の「核拡散防止条約(NPR)」に加盟して、非核保有国となる道を選んだのである。 しかし、ウクライナには大きな不安材料があった。非核保有国となったウクライナに対して、ロシアが核攻撃の脅しや核攻撃をしかけてきたら、果たして5大核保有国のどの国が「核の傘」を提供して、ウクライナの安全を保証してくれるのか、という至極もっともな懸念である。 現在、NPR加盟国は191カ国。5大核保有国を除く非核保有の186カ国は、すべて、今でも、当時のウクライナとおなじ安全保障懸念をかかえている。核保有国のどれかが自国に核威嚇や核攻撃の牙を剥いたら、非核保有国は丸裸の無防備状態にあるからだ。 だから、非核保有国は、特権的な5大核保有国に、①非核保有国には核の脅しや核攻撃をしかけないという「消極的な安全の保証」、②特定の核保有国が核威嚇や、核攻撃の脅しのもとに侵略してきた場合、他の核保有国が非核保有国を防衛してくれるという「積極的な安全の保証」すなわち「核の傘」の、2つの安全の保証を迫ったのである。 だが、5大核保有国はこの要求に応じなかった。それでも78年の第1回国連軍縮特別総会で、それぞれ、核保有国との軍事同盟に加盟していない非核保有国は「核威嚇や核攻撃のターゲットにしない」という「消極的な安全の保証」を渋々言明した。けれども、一番大事な「積極的な安全の保証」(核の傘)の要求は、きっぱりと拒否して顧みることはなかった。 核兵器を持った5大国と非核保有186カ国の間に見られる、この力の落差。ウクライナは、核拡散防止条約体制下の冷酷な現実を熟知していた。けれども、ウクライナには、インド、パキスタン、イスラエルのように核拡散防止条約加盟を拒否して核武装に走ることも、北朝鮮のように一旦加盟後に脱退して核兵器保有にまい進することもなかった。 心細い「消極的な安全の保証」より、せめて、もう一段強力な「積極的な安全の保証」(核の傘)を、とウクライナが外交努力を重ねた成果が、94年12月15日に、ハンガリーの首都ブダペストで開かれた欧州安全保障協力機構(OSCE)会議で、領内の核兵器をロシア移送後に非核保有国となったウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン3国と米英ロの核保有3国が署名した「ブダペスト覚書」(正式名称「ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの核拡散防止条約加盟に関連した安全保証上の覚書」)である。 「ブダペスト覚書」は、非核保有国となったベラルーシ、カザフスタン、ウクライナ3国にその代償として、米英ロの核保有3国が以下の3点の保証を約束していた。すなわち、①3国の独立・主権・既存国境の尊重(「力による現状変更の禁止」)、②3国に対する通常兵器・核兵器による脅威・武力行使を抑制(「消極的な安全の保証」)、③3国が特定の核保有国による侵略の犠牲者または核兵器使用の侵略脅威の対象となった場合、3国に支援を提供(「核の傘」提供と「積極的な安全の保証」)の3点である。 フランス、中国もまた、別々の書面で類似の約束をした。しかし、この「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった』、「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。
・『親米革命でロシアは侵略国に変貌  それから約20年後の2014年、「ブダペスト覚書」が破られる大事件が突発した。安全の保証国ロシアが、突然、被保証国のウクライナに軍事侵略の牙を剥いたのだ。 ウクライナ東部2州に軍事介入したばかりか、ロシアは、ウクライナ領クリミア半島を占領し、自国に併合してしまったのである。その口実とされたのが、同年2月に勃発した「マイダン革命」だ。すなわち、親西欧の市民運動「ユーロマイダイン」が首都キーウの独立広場で起こした民衆蜂起で、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権を打倒した政変である。 これを「米国扇動の革命による親米国家の出現である」と非難したロシアのプーチン大統領は、反ロの新国家ウクライナには「安全保証のいかなる義務も負っていない」と断言し、「ブダペスト覚書」違反やその白紙化、死文化を正当化したのである。 米英など他の保証国は、ロシアの行動は「「ブダペスト覚書」の義務違反だ、と非難したが、ウクライナに軍事援助を与え、ロシアの暴挙を阻止する具体的な行動はとらなかった。 安全の「保証国」から真逆の「侵略国」への変貌。ロシアの態度豹変のうらには、東欧諸国の怒涛のようなロシア離れやNATO加盟に対するプーチン大統領の焦燥感、不安感があったようである。 米ソ冷戦初期の1949年に12カ国の原加盟国からスタートしたNATOは、91年のソ連やその軍事同盟「ワルシャワ条約機構」の崩壊後に、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、エストニア、リトアニア、ラトビアなどを次々と吸収して、30カ国のメンバーを抱える巨大な軍事同盟に膨張した。 プーチン大統領の期待に反して、ロシア盟主の「集団安全保障条約機構(CSTO)」にとどまったのは、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キリギリスタン、タジキスタン5カ国にすぎない。肝心の東欧諸国の政治地図は、ロシアに与したのがベラルーシ1国だけで、それ以外の国はすべてNATO加盟の1色に塗りつぶされてしまったのだ。つまり、NATOに加盟しその「核の傘」に入ってしまったのである。 しかし、NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである。91年の独立以来、親ロ派保守政権と親西欧革新政権が交互に政権交代をくりかえした不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったからである』、「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。
・『核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領  「核を含む武力による現状変更」をいとわないプーチン大統領下のロシアにとって、丸裸、無防備状態のウクライナは、かっこうの攻撃ターゲットである。オレンジ革命(2004年)、マイダン革命(14年)など親西欧の草の根民主化運動による親ロ派ヤヌコヴィチ大統領の失脚・追放や、ポロシェンコ(14~19年)、ゼレンスキー(19年~)など相次ぐ親欧米派大統領の誕生を見たプーチン大統領は、これを、持論の「米国扇動による親ロ政権打倒やNATOの攻撃的・侵略的な東方拡大策動」の証左ととらえた。 プーチン大統領からみれば、NATOの核の傘の外にあるウクライナやその親欧米派政権は、ロシアの核威嚇下の大規模軍事侵攻によって簡単に掃討、転覆できるはずであった。まず、米国やNATOの反応を試すために、核威嚇のシグナルを送った。2月19日、ロシア軍は自慢の核戦力を総動員して、ロシアに対する核攻撃への迅速な反撃作戦の大々的な演習をバイデン米大統領に誇示してみせた。つぎに、2月27日、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を呼びつけ、じきじきに、テレビカメラの前で、「ロシア核抑止力を特別警戒態勢におけ」と下命した。 この核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった。 これで、ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始した。この電撃作戦によって短期間にキーウを占領し、ゼレンスキー大統領打倒、傀儡(かいらい)親ロ政権樹立をもって、ウクライナをロシア色1色に塗り変え、東欧地図のロシア色への塗り変え戦略の橋頭保にしようとしたのだ。 しかし、ウクライナ軍の想定外の抵抗という誤算があった。たしかに、NATO軍の直接武力支援はなかったが、ウクライナ軍の強靭な抵抗によって、主進撃路の北部戦線で多大な損失を被ったロシア軍は退却を余儀なくされ、サブ進撃路の東部、南部の両戦線に、明確な戦略目的のない転進を迫られている。しかも、この間、3戦線の進撃路上のウクライナ都市は、無差別ミサイル攻撃で廃墟と化し、多数の住民がロシア軍の戦争犯罪行為によって殺害されている。 「ブダペスト覚書」の白紙化からはじまったウクライナの悲劇は、いま、そのピークに達しようとしている。ウクライナの安全の「保証国」から「侵略国」にかわり、東欧地図の塗り変えという侵略の牙を剥いたロシアは、全世界の非難を浴びている。 おなじ「保証国」だった英米中仏は、ロシアの侵略を阻止する支援をあたえず、悲劇の深刻化、長期化を招いた責任の一端がある。ウクライナは、NATO加盟の国論の統一ができず、その核の傘に入らなかった結果、国土・都市の破壊や人命損失という過酷な代償を払っている。 ウクライナの悲劇を、いつ、だれが、どのように終わらせるのか。ロシア、米英仏中などの特権的核保有国、ウクライナ自身やそれを支援する世界中の国民の責任がいま問われているのである。(丸山浩行・国際問題評論家)』、「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。

第三に、5月21日付けNewsweek日本版が掲載した元CIAオフィサーのグレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2022/05/post-81.php
・『<ヒトラーを蹴散らした歴史を誇るロシア軍がなぜ? 失敗の原因は軍事ドクトリンと経験にある> ウクライナではロシア軍が苦戦を続け、逆にウクライナ軍が見事な応戦を見せている。軍事専門家の目にも驚きの展開だ。 この流れは、侵攻開始当初から見られた。2月24日、ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港を急襲したが、明らかな戦術ミスによって失敗に終わった。ウクライナ軍は少なくとも輸送機1機を撃墜し、ロシアが誇る空挺部隊を退けた。 以来、ロシア軍は苦しんでいる。民間人の居住区域を空爆し、いくつかの都市を破壊したが制圧できた所は一つもない。侵攻開始から2カ月半が過ぎた今も、ロシア軍は大量の装甲車両と兵力を維持しているが、ウクライナ軍はロシア軍部隊の4分の1以上を「戦闘不能」の状態に追い込んでいる。 強力で非情に見えるのに、実は無能なロシア軍──。この特徴は今後も変わることがないだろう。 ウクライナでのロシア軍の戦いぶりは、その歴史と軍事ドクトリンを反映したものだ。第2次大戦時のスターリンの赤軍以来、ロシア軍は同じことを続けている。民間人を標的にし、相手国の戦闘員と民間人の人権を侵害する。大砲やロケット弾、装甲車、兵器と兵力を大量に投入する一方で、兵站(へいたん)を軽んじる。 民間人を標的にするのは戦争犯罪だ。ところがロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている』、「ロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている」、「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。
・『残虐さは軍事ドクトリンから(軍事ドクトリンと実際の戦闘の内容は、軍の能力と経験に基づく部分が大きい。ロシア軍は1994年のチェチェン紛争で自軍に多くの死傷者を出し、膠着状態に陥って撤退した。だがウラジーミル・プーチンを大統領の座に押し上げた99年の第2次チェチェン紛争では、ロシアは訓練不足の歩兵に攻撃させる代わりに大砲を大量に配備してチェチェンの首都グロズヌイを破壊し、多数の民間人を殺害。2015年にも、ロシアはシリア内戦への軍事介入で同じ戦術を使い、成功を収めた。 ロシアの戦争のやり方は、ウクライナでも変わっていない。地面にロシア語で「子供たち」と書かれていた南東部マリウポリの劇場への空爆は残虐なものだったが、これも意図的であり、民間人を攻撃するロシア軍のドクトリンを示す例だ。 前線の兵士の独断と意図的な方針が合わさることにより、ロシア軍が組織的な人権侵害を行った記録もある。スターリンが、ドイツ軍に対抗して進軍する自国軍に略奪とレイプを許可していたというのがそれだ。ソ連兵がドイツ人女性を集団レイプしているという報告を受けると、「兵士のやりたいようにやらせろ」と指示した。 この流れは今も続いている。欧州人権裁判所は21年、ロシア軍が08年にジョージア(グルジア)に侵攻した際に民間人を「非人道的」に扱い、捕虜を拷問したと結論付けた。) いまロシア軍は、ウクライナで同じような行為を繰り返している。100万人ともされるウクライナ市民のロシアへの強制連行に、裁判なしの民間人の処刑。ロシア兵がウクライナ女性をレイプした事例も多数報告されている。プーチンは、ウクライナのブチャで戦争犯罪を働いたとされる部隊に名誉称号まで付与した。 ロシアの軍事戦略は、自国の広大な面積と脆弱な地理的条件に基づいている。およそ1000年にわたり東西から侵略を受けてきたロシアの歴代指導者は、中欧の脆弱な平原に位置する緩衝国を支配することで戦略的な安全保障を模索してきた。 ロシアの戦略家が安全保障と帝国の確立を求めてきた場所が、まさに現在のウクライナだ。プーチンは長年にわたってNATOに対し、ロシアにとってウクライナは自国存亡の問題だと警告してきた。ウクライナが親欧路線を強めるなか、「わが国には侵攻以外に選択肢がなかった」とも述べている。 ロシアの軍事文化は貴族社会で発展し、農民が多数死傷しても犯罪的とも言えるほど意に介さず、おびただしい数の兵士を送り込んで圧倒する戦術を特徴とした。自国兵士を軽視するボリシェビキの姿勢にも、類を見ない残忍さがあった。こうした以前からの傾向は、最近ウクライナで傍受されたロシア軍の無線通信にも表れ、「われわれは使い捨ての駒。平和な市民を殺している」と嘆く兵士の声が記録されている。 このような歴史から生まれたロシアの軍事ドクトリンは、いくつかの前提を基にしている。まずロシアは地理的な広さと脆弱性から、戦略的な奇襲に備えておかなければならない。ロシアは戦略的に唯一無二の国だが、西側は自分たちが提案する「軍事改革」(核兵器削減、軍備管理交渉、紛争削減措置など)を通じてわが国の弱体化をもくろんでいる。 さらにロシアの軍事・経済基盤は、敵対する可能性の高いアメリカやNATOより技術的に劣っている......。そのためロシア軍の計画立案者たちは先制攻撃、すなわち「エスカレーション・ドミナンス」に重点を置く。敵にとっての犠牲を増大させる用意があることを示しつつ、応戦すれば危険なことになり得ると思わせて優位に立とうという考え方だ。 ウクライナへの一方的な侵攻は、まさにこの戦略的先制攻撃だ。そしてプーチンが侵攻3日目にして核兵器使用をちらつかせたことも、優位に立って敵を無力化させようとするロシアの典型的なやり方だ。 ロシアの軍事ドクトリンは、先制と奇襲、大規模攻撃の威力による衝撃とスピードを重視してきた。ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致している』、「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。
・『兵站を軽視したツケは大きい  ロシアは将来の戦争においても、今回のウクライナ侵攻と同じアプローチを、そして同じ失敗を繰り返す可能性が高い。それはロシアが、第2次大戦時の米軍司令官オマー・ブラッドリーの「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という言葉に耳を傾けてこなかったからだ。 ロシア軍の戦闘部隊は米軍部隊よりも保有している火器は多いが、支援車両や補給車両はずっと少ない。その結果、ロシア軍は何度も燃料切れに陥り、より機敏に動けるウクライナ軍の餌食になってきた。 ロシア軍には通信のトラブルが少なくなかった。軍の装備は長年にわたり修理が行き届かないままの状態で、戦場に配備されている。無線は機能せず、兵士たちが装備の使い方について十分な訓練を受けていないケースも多い。) さらに大隊や連隊レベルに有能な将校が不足しており、部隊間の連携やリーダーシップがうまく機能していない。そのため、将校たちが前線に出ざるを得なくなった。結果として、侵攻当初に前線に就いたロシア軍将校20人のうち、実に12人がウクライナ軍に殺害されている。 しかしトラックや整備士を増やすだけでは、ロシア側は問題を解決できない。 兵站業務には、従軍期間がわずか1年という、訓練不足で士気も低い徴用兵が割り当てられることが珍しくない。腐敗も兵站能力を弱体化させている。横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化している。 米国防総省によれば、いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう』、「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。
・『活かされなかったアフガン侵攻の教訓  歴史は未来を見通す窓である。10年に及んだ旧ソ連のアフガニスタン侵攻はソ連の荒廃を招いたが、それでも指導部や軍の専門家は、アナリストが指摘したいくつもの誤りを一切修正しなかった。例えば、いくつかのポイントは次のように修正されるべきだった。 「現地の協力勢力を、ロシア流に当てはめて組織し直そうとするな」 「彼らがわれわれの大義のために進んで戦おうとしなければ、われわれは敗れる」 さらにここに、「アメリカによる敵対勢力への武器供与の意思を過小評価してはならない」という新たなポイントを加えたい。 ロシア軍は将来の紛争でも圧倒的に優位に立つことを狙うだろう。指導部は即座に全面戦争の脅しをかけ、また核兵器を使って敵を守勢に立たせようとする。軍は兵站の大幅な不足に苦しみ、それが軍全体の動きを減速させるかストップさせる。指揮権は上層部に集中し、連隊以下には回ってこない。それでもロシア軍は、とてつもない数の火器を保有し、それを使用し続ける。 多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた。 ロシア軍の残虐性も、将来の紛争に受け継がれる可能性が高い。徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ。 今後10年、あるいはそれ以上にわたり、ロシア軍の低迷は続くだろう。それでも、プーチンの帝国主義的な野望は消え去らないが』、「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。

第四に、本年2月2日付け現代ビジネスが掲載した笹川平和財団主任研究員の畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105424?imp=0
・『すべての領土奪還まで支援を続けるかは分からない  昨年2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってから、そろそろ1年が経とうとしている。現時点で全くの膠着状態で先が見えないが、この戦争の決着、そしてその後の世界の様相はどうなっていくのか、探ってみたい。 ます侵攻当初、ロシア側は早期にキエフを陥落させるという計画だったが、それは失敗した。実はその直後、すぐ停戦交渉が始まっている。まずベラルーシのミンスクで、そしてトルコのイスタンブールで。2月末から3月末にかけて行われた。 「ウクライナのNATOからの中立化、ロシアを含む国連安保理常任理事国+アルファの国々によるウクライナへの安全保障の供与、ただしそのギャランティはドンバス地域とクリミアには及ばない、その代わりにロシアは2月24日以前の線に退く」。恐らく、その線で一旦、暫定的な合意に近づいたのではないかという観測がある。ただこれはブチャでのロシア軍による一般住民虐殺が発覚したしたことがあり、吹っ飛んでしまった。 ロシアが、特にプーチンが、本当にどこまで、この時の条件を守るつもりがあったのかは疑問だ。あの時期、まだそれほどロシアは負けているという感じではなかった。これ以降、ロシアは撤退したキエフ攻略部隊などで、東部と南部を増強し、占領地域を拡大する方針に舵を切った。 アメリカのバイデン政権は6月1日にウクライナから求められていた自走多連装ロケット砲システムHIMARSを含む7億米ドルの武器支援パッケージを正式に発表しているが、それに先立つ5月30日、バイデン大統領自身が射程70キロのミサイルは与えるが、ロシア領内への攻撃が可能な300キロの長射程ものは含めないと明言している。 問題はその翌日5月31日に、同大統領がニューヨークタイムズに発表したオプエドだ。この中に「米国の目標は明確だ。我々は更なる侵略を抑止し、自らを防衛できる手段を有する民主的で独立した主権を有する繁栄したウクライナを見たいのだ」との記述がある。ここで注目すべきは、「主権(sovereign)」という言葉はあるが通常必ずこれとセットで使用される「領土の一体性(territorial integrity)が入っていないことだ。 このオプエドは、事実上の外交文書に近い意味を持つ。もし方針として存在するなら、そこに一番重要な言葉を入れないということはあり得ない。 ただし、その後に「この危機を通じた私の原則は“ウクライナの関与なしにウクライナについて何も決めない”というものだ。私は私的にも公的にもウクライナ政府に対して何らかの領土的譲歩をするように圧力を掛けることはしない」とも述べている。 何れにせよ、長射程のミサイルを送らないという、ある種のエスカレーション管理を含めた対ウクライナ方針とセットとなって、その意味するところは、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めたことにある』、「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。
・『あきらめないプーチン、小出しにする西側  この時期、ロシア有利の状況が続くのではという恐れもあった。ただ、この後、アメリカが供与を始めたミサイルや重砲などの兵器が効果を表してきており、ロシアの東部での攻勢などを食い止めていた。そして9月に入って、ロシア側が南部のヘルソン方面を気にして、精鋭部隊をドニエプル川西岸に集めていたところ、ウクライナが東部のハリコフ方面で攻勢をかけ、イジゥーム、リマンなどの拠点を始め、ハリコフ州全域を取り返す事に成功した。 この事態を受け、ロシア側は侵攻当初、否定的だった動員を決断し、9月21日、プーチン大統領が30万人の部分動員を発表。続いて30日に、ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の4州の併合を発表し、さらに核の使用を示唆した。こうして態勢を立て直そうとしたが、兵力が整うまでタイムラグがあるのであまりうまくいかず、結局、ヘルソン方面も西岸から撤退することになった。 そして11月には、アメリカのミリー統合参謀本部議長が、「ウクライナはそろそろ確保した奪還地域を交渉で確定させるべきなのではないか、停戦を真剣に考えるべきなのではないか」という発言を行っている。 ただこれに対してはバイデン政権内で異論があった。そもそもプーチンに全くそのつもりがない。プーチンが口にしている停戦というのは、あくまでも4州の併合をウクライナが認めるということを前提にした停戦である、という見方だった。 この前後まで、ヨーロッパでも、フランスのマクロンが停戦に言及するといった動きがあった。だが11月末、マクロンはワシントンに行ってバイデンと会談している。それと同時にドイツのショルツ首相がプーチンに電話している。 その結果、ヨーロッパの中でロシアとの対話が必要といっていた独仏とアメリカの間で、「今はまだロシアに圧力をかけ続ける時期だ」と、アセスメントを近づけていった。このことが年末に歩兵戦闘車を米独仏が同時出すという決定に、さらには1月末に戦車を供与するという動きに繋がっていったと考えられる。 ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう。 一方、1月にアメリカのバーンズCIA長官がウクライナにベラルーシからのロシアによるキエフ侵攻が再びあるかも知れないという警告を伝えたという報道があった。実際に行うかどうかはわからない。そう見せかけて、ウクライナに東部、南部での攻勢を控えさせるためかも知れない。 しかし、今の段階でいえることは、プーチンは全くあきらめていないということだ。そうでなければ、再動員をする、軍を150万人体制にする、と発言したりはしない。ソ連並みの軍事国家への回帰だ。彼からすると、ウクライナ戦争はネオナチとの戦いなので、現代の大祖国戦争のイメージなのだろう』、「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。
・『クリミアには慎重姿勢  1年前の侵攻開始の段階では、今よりも兵力も装備も充実していた。準備も出来ていた。しかし、南部ではかなり侵攻したが、全体としては、計画は挫折し、兵力も大きく失った。結局、西側の軍備体系に質的に勝てないのではないか、それでもなぜあきらめないのか、という見方も確かにあるかも知れない。 ただし、西側が直接、ロシアと戦うわけではない。どこまでも武器を供与するだけ。しかもやはり限定的だ。最終的にはドイツのレオパルド2、アメリカのM1エイブラハムズの供与が決定されたが、それでも、特にドイツは、長い期間、戦車供与に否定的な態度をとり続けていた。 ドイツは今回、ゴーサインを出したが、ウクライナ側が求める300両までどこまで近づけることが出来るか不明だし、しかも時期はかなり後になる。やはりなんだかんだいっても、ウクライナ軍が西側の援助でロシア軍を圧倒して、ウクライナ領から追い出すというのは簡単ではない。 そこで最近、議論されているのは、はやりアメリカの目指すゴールというのは、ウクライナの完全な勝利ではなく、ロシアを追い詰めて、交渉の場に(引き出すこと)引き出す事ではないかということだ。 12月の頭にアメリカのブリンケン国務長官がWSJのフォーラムに出席した際、モデレーターに「エスカレーションのリスクを第一の考えているのか?」と質問され、「アメリカのフォーカスは2月24日の前までに戻すことだ」と答えている。 アメリカも今のところクリミアからロシア軍を追い出す、つまり2014年以前の状態に戻すということが実行可能かといえば、そうは思っていないということだ。それでも、最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う。 だから最近、議論に出ているのが、クリミアへの攻撃を容認するのかしないのかだ。具体的には、ロシアが侵攻当初、まずザポロージャ州を抑えたが、それはロシアにとって、クリミアへの陸の回廊だったからだが、この方面に攻め込むための援助をウクライナに供与すべきかどうかということだ。そのための歩兵戦闘車であり、戦車である。 長射程のミサイルについては、まだそこまでは行かないだろう。それでもザポリージャ州を奪い返し、海岸線まで進出すれば、今持っているミサイルでもクリミアまで届くことになる。 そこまでロシアを追い込めるのかどうか。そこまでいって、改めてロシア側が交渉に乗るつもりにさせることが出来るのか』、「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。
・『大した影響のないバフムト戦線  現在、ロシア側は盛んに「交渉、交渉」と叫んでいるが、あれは全くやる気が無いものだ。「西側がウクライナに対して圧力をかけてくれ、我々は今の線だったら呑むぞ」といっているのだ。もちろん西側はそんな話にも圧力に応じる気持ちはない。 さらにいえば、今、ロシアは、ドネツクのバクムット周辺で延々と大攻勢をかけて、優位に立っていると宣伝しているが、戦略的には余り大きな意味を持たないだろう。 戦闘をやっているのは民間軍事会社のワグネルで、囚人兵を大量に犠牲にして攻撃を続け、ロシアの政権や国内向けに自分たちのアピールをしているもので、ハリコフのイジュームから攻勢をかけられるのであれば、ウクライナ軍を包囲できたかも知れないが、ハリコフ州をウクライナが奪い返した今、バクムットを占領しても大勢に大きな影響を与えない。 実はロシアの正規軍はあんなところを占領しても何の意味も無い事はわかっている。だからワグネルに勝手にやらせている。ワグネルからすれば、正規軍と競争関係にあるので存在感のアピールである。 確かに今、わずかでも成果を上げているのはワグネルだけだ。しかし、プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる。だからといってワグネル代表のプリゴジンを完全にパージすると言うことはないと思うが。 東部の戦いで本当の重要なのは、東部戦線におけるロシア軍の補給路のスバトベ-クレミンナの線の帰趨だ。ウクライナ軍はジワジワと前進しているが、なかなか一気に奪うということは難しく、膠着状態に陥っている』、「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。
・『双方があきらめるまで消耗戦  ロシアもウクライナも、それぞれ思い描いている成功を手にするにはほど遠く、この膠着状態の末、妥協せざるを得ない均衡点に達することを、西側は狙っていることになる。 ただ、今はそのタイミングではない。お互い主張している事があまりにもかけ離れている。結局、ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる。 ウクライナでの戦闘が終息するまで、まだ相当な道程がある。その過程で、両国が消耗するだけでなく、世界に対する影響も深刻なものになる。ウクライナ戦争後の世界がどのような様相になるのか。大国とはいえないほど衰亡するであろうロシアの立ち回りによって引き起こされる世界の対立構図を【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】で解説する』、「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
タグ:ウクライナ (その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) デイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」 「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。 「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。 「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。 「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。 「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。 「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。 「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。 また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。 「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。 「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。 「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。 エコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」 「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。 「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。 「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。 「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、 「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。 Newsweek日本版 グレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」 「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。 「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。 「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。 「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。 現代ビジネス 畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」 「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。 「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。 「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。 「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。 「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、 その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
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ロシア(その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備) [世界情勢]

ロシアについては、2018年7月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、プーチンに新たな悩みの種 旧ソ連のキルギス・タジキスタンが国境で衝突 2人死亡、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備)である。なお、ウクライナ問題は別途、取上げている。

先ずは、本年1月13日付け日経ビジネスオンラインが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の宮家 邦彦氏による「プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった」の無料部分を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/011100306/
・『米ロ首脳会談、カザフスタンでの衝突、日米2プラス2――。年末から2週間、世界を騒がすイベントが相次いだ。これらは一見したところ無関係な事象にみえるが、ロシアの視点に立てば1つの文脈でつながる。プーチン大統領の目には、1941年にナチス・ドイツが西欧、東欧、北欧の各国と共にソ連(当時)に侵攻した「大祖国戦争」と重なる。ロシアには約25年ぶりで危機と好機が訪れている。 国際報道を追いかける者にとって、今回の年末年始は例年以上に忙しかったのではないか。米国のジョー・バイデン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2021年12月30日、約50分間の電話会談を行った。2人は12月7日に電話会談したばかり。年明け1月10日には事務レベル協議が予定されているにもかかわらず、である。しかも、30日の会談はロシア側の求めにより行われたらしい。プーチン大統領は、何か虫の知らせでもあったのか。 案の定、新年2日に中央アジアが揺れた。カザフスタン西部で、燃料価格上昇の抗議デモが始まり、その後、南部のアルマトイで治安当局とデモ隊の衝突が激化した。5日、カザフスタン政府は全土に非常事態宣言を発令。6日にはロシア主導で「集団安全保障条約機構(CSTO)」加盟国部隊2500人が派遣された。今回の衝突では死者が160人、拘束者は8000人を超えると報じられている。 続く7日、今度はインド太平洋地域で動きがあった。日米安全保障協議委員会(2プラス2)がテレビ会議方式で開かれた。共同文書で「中国の軍事的な台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念」を示したほか、中朝の「極超音速技術に対抗するための共同分析の実施」などで意見が一致。日本は米側に「敵基地攻撃能力」保有を念頭に「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」と表明したという。 過去2週間、ほぼ数日おきに、東欧、中央アジア、東アジアの各地で、相互に無関係の、地域特有の個別の動きがあったようにみえる。だが、本当にそうか。これらを個別に分析することは重要だが、ロシアが専門ではない筆者は今回あえて、これら全体をロシアの視点から分析してみたい。誤解を恐れず言えば、プーチン大統領はロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか。筆者の問題意識はここにある』、「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で現実化した。
・『1997年「NATO・ロシア基本文書」を拒否するロシア  12月7日の米ロ首脳会談でプーチン大統領はNATO(北大西洋条約機構)に対する新たな戦略を打ち出した。ロシア外務省は同17日、NATO側が「ウクライナなどに対する拡大を慎み、ウクライナや他の東欧、南コーカサス、中央アジア諸国の領土内で軍事行動をしない」「ロシア及びその同盟国とNATO諸国との国境付近で旅団規模以上の軍事演習やその他の軍事活動を行わない」などとする新たな条約草案を公表した。 中でも筆者が注目するのは、ロシア側が新条約の内容として「ロシアと、1997年5月27日までにNATO加盟国であった諸国は、他のいかなる欧州諸国の領土にも、同日までに配備していた以上の軍隊や兵器を配備しないと約束する」ことを求めたことだ。 1997年5月27日は「NATO・ロシア基本文書」が署名された日。NATO側は新たな加盟国の領土に核兵器や常駐部隊を配備しないと約束し、ロシア側はNATOの「東方拡大」を事実上黙認した。プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える。 ロシア側はこの「基本条約」署名で、NATOが「核政策を変更しない」「ロシアに対し敵対的行動は取らない」ことなどを約束したと思っていた。ところが、その後のNATO側の動きはロシア側の理解に著しく反している。今回ロシア側は目いっぱいの提案を行ったのだろう。それにしても、あれから四半世紀がたった今、なぜプーチン大統領はNATO側がのむはずのない要求をあえて行ったのだろうか』、「NATO・ロシア基本文書」は、「プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える」、そういう経緯があったのを改めて思い出した。
・『日米2プラス2会合が持つ戦略的意味とは  日米2プラス2会合の開催は2021年3月以来10カ月ぶり。共同声明の内容を見る限り、中国を念頭に置いた日米同盟の抑止力は順調に強化されそうだ。20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある。今回の2プラス2会合の成果は、初めて「台湾海峡」に言及した昨年3月の会合以上に、より具体的内容を含むものだろう。 林芳正外務大臣は「変化する地域の戦略環境に関する認識を、丁寧にすり合わせるための突っ込んだ議論を行うことができた」「特に、ルールに基づく秩序を損なう中国の取組が、様々な課題を提起していることへの懸念を共有し、日米が地域における安定を損なう行動を共に抑止し、必要であれば対処することを決意した」と述べている。 同外相はさらに「日米同盟の抑止力・対処力の抜本的強化に向けて、具体的な議論を進めることを確認」し、「日本としても、国家安全保障戦略の改定等を通じて、自身の防衛力の抜本的強化を行う」と述べている。抽象的かつ官僚的言い方ではあるが、日米、特に日本側の「本気さ」が行間から読み取れる。ロシアから見れば、これは「米中覇権争いが当面続く」という新しい地政学的現実を意味する』、「20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある」、なるほど。
・『カザフスタン騒乱は西側による意趣返し?  こうしたプーチン大統領の戦略観の中で「カザフスタンでの反政府デモ」は予想外だったのではないか。カザフスタンは旧ソビエト連邦の中で最も資源の豊富な共和国の1つであり、対中関係では有力な「緩衝国家」だ。さらに、内政的にも、旧ソ連における「独裁体制の円滑な継承」の数少ない実験場として、特にベラルーシやロシアにとって重要な国家である。 このカザフスタンで新年早々、しかも、ロシアが対NATO強硬姿勢を取り始めた直後に、大きな騒乱が発生した。プーチン大統領は決してこれを「偶然」とは考えないだろう。この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ。これはロシアにとって、対米関係だけでなく対中関係においても、決して譲歩できない一線である』、「この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ」、なるほど。
・『「大祖国戦争」を再開するプーチン大統領  ロシアでは、帝政ロシアが1812年に戦った対ナポレオン戦争を「祖国戦争」、ソ連(当時)がナチス・ドイツなどと1941年6月~1945年5月に戦った戦争を「大祖国戦争」と呼ぶそうだ。80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった。 これらの国名が並ぶのは決して偶然ではない。今、プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ。 米中覇権争いが激化する中、ロシアには約25年ぶりで危機と好機が訪れている。(以下は有料)』、「80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった」、「プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ」、「プーチン大統領」にしてみれば、「「大祖国戦争」を再開」するとの意気込みのようだ。

・次に、1月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・外交政策センター理事の蟹瀬誠一氏による「カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293834
・『カザフスタン騒乱で権益拡大したロシア  日本の実業家の前澤友作氏らが搭乗したロシアの宇宙船が先月に打ち上げられたことで話題となったバイコヌール宇宙基地がある中央アジア・カザフスタンで、今月初め160人以上が死亡する流血の惨事が起きた。実はその騒乱に乗じて漁夫の利を得た強権政治家がいた。 ロシアのプーチン大統領(69歳)である。 突然のカザフ騒乱は同国内でのロシアの権益を拡大させたばかりでなく、中央アジア全域での勢力圏拡大に弾みをつけたからだ。 騒乱は燃料価格高騰に抗議するデモ隊と治安部隊が衝突した結果だと日本では報道されていたが、それだけであれほどの暴動と銃撃戦が瞬く間に全土に広がるわけがない。おそらく30年近く強権を振るったナザルバエフ前大統領派が現政権に仕掛けたクーデター未遂とみた方が妥当だろう。 その証拠に慌てたトカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である。)  2008年のジョージアへの軍事侵攻に続いて2014年には黒海北岸のクリミア共和国を武力で併合したプーチン大統領は、足並みのそろわない欧州と国内問題で手いっぱいの米国からの批判は口先だけで弱腰だと見抜いている。そして昨年からウクライナの国境付近に10万人もの大規模な兵力を集結させている』、「トカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である」、こんなにも上手く手に入ることもあるようだ。
・『プーチン大統領が目指す旧ソ連邦の復活  直近の狙いは、西側の北大西洋条約機構(NATO)に加盟したいというウクライナの望みを打ち砕くことにある。だが筋金入りの国家主義者の野望は実はもっと大きい。 目指すは旧ソ連邦の復活である。つまり、1991年のソ連解体で次々と独立した14の旧ソ連構成国を再びロシアの強力な支配下に置くことだ。その中にはウクライナやカザフスタン、ベラルーシ、ジョージア、リトアニアなどが含まれている。 「私に20年間を与えてくれれば、ロシアは見違える姿に変わるだろう」 10年以上前にプーチン大統領はスピーチやインタビューでそう思わせぶりに語っていた。 危機感を抱いたバイデン米大統領は昨年末の米ロオンライン首脳会談で、ロシアがウクライナに侵攻すれば「同盟国と共に強力な措置で対応する」と警告を発した。これに対してプーチン大統領は「国境で軍事力を増強しているのはNATOの方だ」と平然と切り返したという。 思い返せば、ソ連崩壊後にエリツィン初代ロシア連邦大統領が領有権を主張したのはジョージアとウクライナの一部とカザフスタン北部だった。これらの地域はロシア系住民が多数いるのでナショナリズムを刺激しやすい。ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう。 ロシア語が堪能でプーチン大統領とは政治的に愛憎併存の関係にあったアンゲラ・メルケル前独首相の言葉を借りれば、「ミスタープーチンは我々と別の世界に住んでいる」のだ』、「ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう」、「プーチン大統領」の狙いが的中したことになる。
・『プーチン大統領が強気でいられる理由  それにしても、プーチン大統領はなぜそんなに強気でいられるのか。 その背景には国家保安委員会(KGB)の工作員からロシアの「皇帝」にまで上り詰めた彼の揺るぎない国家観がある。プーチン大統領は冷徹な国家主義者である。 彼の国家観のルーツはふたつの社会主義国の崩壊を経験したことによるものだ。ひとつはKGB工作員として1989年に東ドイツに駐在していたときに民主化運動によって政権が瓦解するのを目の当たりにしたこと。もうひとつは、ソ連に帰国後の1991年に誇り高き祖国ソ連が無残に崩壊してしまったことだ。 反対勢力を打ち負かさなければ国家は崩壊するということを彼は肝に銘じた。そして政治的対立に敗れた者は抹殺されることを学んだのだ。 「歴史家を自称するプーチンはソ連崩壊後のNATOの東方拡大を1941年のナチス・ドイツによるソ連侵攻と重ね合わせているかもしれない」と米国家安全保障会議(NSC)元ロシア担当首席顧問だったフィオナ・ヒルは共著“Mr. Putin: Operative in the Kremlin”(邦題『プーチンの世界』)で示唆している。 権謀術数を巡らしてKGB工作員から大統領府副長官、ロシア連邦保安庁(FSB)、首相、そして48歳の若さでロシア連邦の最高権力者へと上り詰めたプーチン大統領は、生き残るためには手段を選ばないことで知られている。 国内ではオルガルヒ(新興財閥)と手を結び、メディアを統制し、反対勢力を容赦なく弾圧、政敵を抹殺してきた。そして海外ではクリミア併合でロシア国民の愛国心に火をつけ、2015年9月にはロシア史上初めて中東シリアへの直接軍事介入に踏み切って崩壊寸前に陥っていたアサド政権を救った。目的のためには武力行使にも躊躇(ちゅうちょ)がないのだ。 さらには、昨年夏の国民投票で8割近くが賛成した憲法改正によって2036年まで現職続投が可能になったプーチン大統領は、昨年12月には大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなしというわけだ』、「憲法改正によって2036年まで現職続投が可能に」、「大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなし」、ただ、ウクライナ戦争の行方と、ガンと闘病中ともいわれるのが唯一の懸念材料だ。
・『米ロ対立による核開発競争のリスク  彼にはお気に入りのフレーズがある。それは「我々に必要なのは偉大な変革ではない。偉大なロシアだ」だ。1907年、ニコライ2世時代に首相を務めたピョートル・ストルイピンが議員たちを批判したときの演説を引用したものである。 プーチン政権の執拗な拡大主義に危機感を募らせたブリンケン米国務長官は7日、報道陣に対していかにもインテリらしい辛辣(しんらつ)なコメントを口にしている。 「近年の歴史の教訓のひとつは、いちどロシアを家に入れると出ていってもらうのが難しくなることだ」 2014年のロシアによるクリミア併合と現在進行中のウクライナへの露骨な軍事的圧力に対する明らかな批判だ。 ロシアの経済力はいまや韓国程度の規模しかない。人口も日本とさして変わらない。だが侮ってはいけないのは、依然として米国をしのぐ数の核兵器を保有する軍事大国で、世界3位の産出量を誇るエネルギー大国であることだ。そして従来の同盟国であるインドとの軍事・エネルギー関係を強化している。 迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイルを実戦配備するとさえ発表しており、米ロの核開発競争の激化につながりかねない。 国際政治では、不確実性に備えることが戦略の最も重要な要素だといわれる。新たなパワーポリティックスの時代に突入した今、米中対立だけでなく冷徹な戦略家であるプーチン大統領が率いるロシアの動向を注視する必要がある』、「迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイル」については、あとで紹介する。「エネルギー大国」のメリットは十分に享受している。

第三に、1月6日付けNewsweek日本版「「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/01/post-100499.php
・『<開発競争でアメリカに先んじ、西側のいかなる対空システムも破れるとプーチンが豪語する「ツィルコン」搭載艦が地中海に向かった。ウクライナ侵攻の終わりはますます遠い> ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は4日、核弾頭搭載可能な極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」を搭載したフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」を実践配備したと発表。他の国にはツィルコンと肩を並べるような兵器はないと述べた。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はプーチンとのビデオ会議で、アドミラル・ゴルシコフは大西洋からインド洋、そして地中海に至る航海に出たと述べた。同艦は「海と陸上のどちらにいる敵にもピンポイントで強力な攻撃」を行うことができ、実戦配備は大きな意味を持つ、とがロシア高官らは言う。 プーチンは軍の幹部らに対し、ツィルコンは「他に類を見ない最強兵器」だと労った。 「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」 ツィルコンの配備は、ロシアがウクライナ侵攻を終わらせる気がないことを示している。開始から1年近く、侵攻は世界各国の指導者から非難を浴びてきた』、「「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」」、凄い武器を手に入れたことで、ますます強圧的な姿勢を強める可能性がある。
・『「さまざまな環境条件での演習」を予定  ショイグは4日、ツィルコンについて「いかなる先進的な近代防空・対ミサイルシステムをも出し抜くことができるのは間違いない」と述べた。一方でショイグは、アドミラル・ゴルシコフの航海の主な目的はロシアへの脅威に対抗するとともに、「友好国とともに地域の平和と安定を維持すること」だとも述べた。 ショイグはまた、同艦の乗組員は「さまざまな環境条件における」長距離巡航ミサイルや極超音速兵器の演習を行うだろうと述べた。 米FOXニュースによれば、同艦の実戦配備に先立つ数カ月前、ロシア国防省はツィルコンの発射実験成功を発表している。この時のツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートルだったという。 一方、ロシアの独立系ニュースサイトのメデューサはツィルコンについて、「対艦超極音速ミサイルで、最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」と伝えている。西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難だという(動画参照)。 プーチンは昨年、アドミラル・ゴルシコフがロシア海軍初のツィルコン搭載艦になると明らかにしていた。プーチンは「極超音速兵器の開発競争」においてロシアはアメリカを凌駕したと述べるとともに、ツィルコンの開発は西側の脅威に対応したものだと主張したとメデューサは伝えている。 伝えられるところでは、ロシアは他にもミサイルの性能試験も行っている。FOXニュースによれば核弾頭の搭載も可能な大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)、「サルマート」の試験発射もその一例だ』、「ツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートル」、「最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」、「西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難」、やっかいな兵器を手にしたものだやれやれ・・・。
タグ:「ツィルコンの飛翔距離は約1000キロメートル」、「最高時速はマッハ9(音速の9倍)を超える」、「西側の既存の兵器では、探知、追尾、迎撃は困難」、やっかいな兵器を手にしたものだやれやれ・・・。 「「世界のいかなる国にも(ツィルコンと)同じようなものは存在しない」とプーチンは述べた。「非常に強力な兵器で、ロシアを外部の脅威から確実に守ると共に、国益を守る役に立つと確信している」」、凄い武器を手に入れたことで、ますます強圧的な姿勢を強める可能性がある。 Newsweek日本版「「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備」 「迎撃が難しいとされる核弾頭搭載可能な極超音速ミサイル」については、あとで紹介する。「エネルギー大国」のメリットは十分に享受している。 「憲法改正によって2036年まで現職続投が可能に」、「大統領経験者とその家族を生涯にわたって刑事訴追から免責する法案に署名した。これで怖いものなし」、ただ、ウクライナ戦争の行方と、ガンと闘病中ともいわれるのが唯一の懸念材料だ。 「ウクライナの次はカザフスタンというシナリオは、プーチン大統領の目には当然の領土奪還としか映っていないのである。 しかも今回のカザフ騒乱によって、ロシアはさらなる権益拡大を目指すことはまず間違いないだろう」、「プーチン大統領」の狙いが的中したことになる。 結果として、世界最大の内陸国で、石油、天然ガス、ウランなどエネルギー資源豊富な地政学的要衝であるカザフで、ロシアはまんまと支配権を強化するとともに周辺の旧ソ連構成国を震え上がらせた。まさに狡猾な戦略家プーチンの真骨頂である」、こんなにも上手く手に入ることもあるようだ。 「トカエフ大統領はロシアに救いを求めた。これ幸いとばかりにプーチン大統領は即座に介入に踏み切る。ロシア主導の旧ソ連構成国6カ国で作る集団安全保障条約機構(CSTO)がカザフ政府から要請を受けたという大義名分を振りかざし、精鋭ロシア空挺部隊などからなる2500人規模の「平和維持軍」を送り込んで動乱を鎮圧し、部隊は撤退を始めている。 蟹瀬誠一氏による「カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味」 ダイヤモンド・オンライン 「80年前にドイツ軍と共にソ連に侵攻したのは、ルーマニア、フィンランド、ハンガリー、スロバキア、クロアチア、イタリア、スペイン各軍とフランスの義勇軍団だった」、「プーチン大統領が感じているNATO東方拡大への反応は80年前と基本的に同じはずだ」、「プーチン大統領」にしてみれば、「「大祖国戦争」を再開」するとの意気込みのようだ。 「この事件を新たなNATO政策に対する西側の意趣返しと捉えるロシアは、いかなるコストを払ってでも、カザフスタンの現政権を維持するはずだ」、なるほど。 「20数年前、この種の文書を担当課長として取りまとめた経験を持つ筆者には、実に隔世の感がある」、なるほど。 「NATO・ロシア基本文書」は、「プーチン大統領にとって同条約の内容は屈辱的なものであり、今回ロシア側はソ連崩壊後のNATOの東方拡大という「新常態」そのものに真正面から挑戦し始めたように思える」、そういう経緯があったのを改めて思い出した。 「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で現実化した。 「ロシア「大祖国戦争」を再び戦いたいのではないか」との問題意識は、ウクライナ侵攻の形で結実した。 (その3)(プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった、カザフ騒乱鎮圧のプーチンが目指す「旧ソ連邦復活」の現実味、「西側には撃ち落とせない」 ──プーチンが極超音速ミサイル「ツィルコン」を実戦配備) ロシア 宮家 邦彦氏による「プーチン大統領の「大祖国戦争パート2」が始まった」 日経ビジネスオンライン
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中国経済(その19)(内部レポート入手!公式発表とは正反対 中国のコロナ感染こんなにヤバかった 東アジア「深層取材ノート」(第168回)、長すぎたゼロコロナでワクチンの効果激減 中国の感染爆発の本番はこれから なぜ中国の習近平国家主席のゼロコロナ政策は破綻したのか、春節を控えた中国で再び“コロナ感染爆発”が起こっている「2つの根本的原因」 なぜ今「ゼロコロナ政策」をやめたのか) [世界情勢]

中国経済については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その19)(内部レポート入手!公式発表とは正反対 中国のコロナ感染こんなにヤバかった 東アジア「深層取材ノート」(第168回)、長すぎたゼロコロナでワクチンの効果激減 中国の感染爆発の本番はこれから なぜ中国の習近平国家主席のゼロコロナ政策は破綻したのか、春節を控えた中国で再び“コロナ感染爆発”が起こっている「2つの根本的原因」 なぜ今「ゼロコロナ政策」をやめたのか)である。

先ずは、昨年12月25日付けJBPress が掲載したジャーナリストの近藤 大介氏による「内部レポート入手!公式発表とは正反対、中国のコロナ感染こんなにヤバかった 東アジア「深層取材ノート」(第168回)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73283
・『日本はクリスマスで浮かれているというのに、中国がこの世の地獄のような事態に陥っている。全土に凄まじい勢いでコロナウイルスが蔓延し、数億人の発熱者と、大量の死者を出しているもようだ。 中国で日本の厚生労働省にあたる国家衛生健康委員会の12月24日の発表によれば、23日の中国全土の新規感染者数は4128人で、死亡者はゼロである。また前日の22日の新規感染者数は3761人で、死亡者数はゼロ。まったく問題のない状況だ。 だがこれこそ、「大本営発表」というものだ。実は、国家衛生健康委員会は12月21日午後4時から、極秘の緊急テレビ電話会議を開いていた。この会議の正式名称は、「新型コロナウイルス患者の医療救急活動を強化することに関するテレビ電話会議」。主催したのは、同委員会の李斌副主任で、全国の衛生健康委員会や主要病院などと回線をつないで行った』、死者急増で火葬場に長い順番待ちができているというのと、「大本営発表」には余りに大きなギャップがある。
・『当局によってSNS上から削除された「極秘会議」の概要  この極秘会議の概要を、おそらく参加者の一人が、あまりにいたたまれなくなって、SNS上にアップした。それはほどなく、当局によって削除されたが、その前にかなり拡散しており、私もその内容を入手した。 私はその概要を読んで、2019年の大晦日に、湖北省の省都・武漢で、李文亮医師が世界に先駆けて、新型コロナウイルスの感染爆発を告発したことを思い出した。李医師は公安(警察)に出頭命令を受けて、「デマを流した」ことにされた。 そしてそれから1カ月余り後に、新型コロナウイルスの治療に当たっていて自らも感染し、34歳の若さでこの世を去った。今回、内部告発した中国人も、おそらく李文亮医師と同じ気持ちから行ったのだろう。以下に、その内容を訳す』、どんな内容なのだろう。
・『12月20日の新規感染者数、3699万6400人!  <国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は、次のような見解を示した。全国の防疫措置をさらに一歩、調整するにつれ、春節(2023年1月22日)の大移動と春節期間中、人々が大規模に流動するようになる。 おそらくさらに多くの地域で、ウイルスの蔓延は増加していくだろう。都市部と農村部の感染率が、ともに伸びていくことが見込まれる。 かつ農村部の医療体制は底が薄い。慢性病にかかった老人が多い。いったん感染が加速的に蔓延していけば、局面はさらに厳しいものとなるだろう。 全国31の省級行政地域の中で、北京市と四川省の感染状況が最も深刻で、それぞれ1位と2位だ。どちらも累計の感染率は、すでに50%を超えている。続いて、感染率が20%から50%の間が、深刻な順に、天津市、湖北省、河南省、湖南省、安徽省、甘粛省、河北省となっている。 12月20日の新規感染者数は、おそらく3699万6400人に上る。これは総人口の2.62%にあたる。18日よりも19日の方が、そして19日よりも20日の方が感染者数が増えている。 省別に言えば、20日の感染率が高かったベスト5は、四川省、安徽省、湖北省、上海市、湖南省の順だ。都市別で言うなら、トップ4都市は、成都市、蘭州市、合肥市、上海市の順だ。 累計の感染者数で言えば、2000万人を超えたのが、多い順に四川省、河南省、湖北省だ。1000万人から2000万人の間が、多い順に湖南省、河北省、広東省、北京市、安徽省、山東省だ。都市別に言えば、累計の感染者数が500万人を超えたのが、多い順に北京市、成都市、武漢市、天津市、鄭州市、重慶市だ』、「北京市と四川省の感染状況が最も深刻で・・・どちらも累計の感染率は、すでに50%を超えている」、「累計の感染率」の定義がよく分からないが、かなり高いことに驚かされる。
・『一部の都市ではピークアウトの兆しも見られるものの…  このように現在、各地域のウイルスの蔓延状況は、比較的大きな差異がある。そしてウイルスが多発している地域は、「密集空間」という特徴がある。 中でも、北京市・天津市・河北省、四川省と重慶市、湖北省と湖南省、華中地域のウイルスの拡散が比較的早い。一方、長江三角州、珠江三角州、西北と東北地方のウイルスの流行は、相対的に緩慢だ。 北京市・天津市・河北省地域のウイルス状況は現在、「高止まりの流行」の段階だ。ただ北京市はすでにピークを過ぎ、ここ数日は「緩やかに下降」の態勢だ。 それでも日々、大量の新規感染者が出ている。加えて現在、重症者のピークを迎えている。そのため、医療救急治療サービスは大きなプレッシャーに直面している。 天津市は、いままさに流行のピークを迎えている。おそらくあと2日か3日で、山を越えるだろう。河北省は全体的に「ウイルスの拡散スピードが速く、感染者が急増」している。おそらくあと3日から5日で、ウイルスのピークを迎えるだろう』、流行にはサイクルがあるので、「ピーク」も何度も来るようだ。
・『医療逼迫  四川省と重慶市地域、湖北省と湖南省地域のウイルスの拡散は迅速だ。特に四川省全域でウイルスは急速に増えており、北京に次いで2番目に感染率が50%を超えた地域となった。成都市を含む多くの都市が同時に流行のピークを迎えており、全省の救急医療の圧力は大きい。 重慶市に至っては、市内の主要地域から遠く郊外へと、急速に広がりつつある。おそらくこれから一週間前後でウイルスのピークを迎えるだろう。 湖北省全省はまさに、ウイルス流行のピークを迎えている。直近の二日間は、感染の波が下向きの傾向を示した。 12月1日以降、中国の19省で累計1100例の感染者のウイルスのゲノムから、12種類の配列のオミクロン変異株が発見されている。主要な流行株は「BA.5.2」「BF.7」「BM.7」だ。 その中で、北京市、黒竜江省、貴州省、新疆ウイグル自治区では「BF.7」の比重が高い。その他の省ではすべて、「BA.5.2」の比重が高い。いまのところ拡散力、感染力、免疫逃避で具体的に明らかにこれまでとは異なる新たな変異株は発見されていない』、単に偶然見つからなかったに過ぎないのだろう。
・『猛烈な感染拡大で新たな変異株発生のリスクも増大  昨今、全国のウイルスは全体的に、加速的に広がっている段階にある。一日の新規感染者数も増え続けている。12月になってから、人々の累計の感染率は(全人口の)17%を超えた。おそらく12月下旬が、全国の多くの省で、引き続き感染のピークを迎えるだろう。 加えて、現在ウイルスが広がっている省では、現在もしくはこれから「省の中心都市から中小の都市や農村地域への広がり」が進んでいく状況にある。そしてウイルス流行のピークの1週間前後に、重症及び非重症患者のピークを迎える。 全国の各地域では確実に、流行のピークに対する応対準備の活動を強化し、ウイルスの流行の進み具合に応じて、全面的な医療救急治療など各種の準備活動を行っていかねばならない。 馬暁偉主任はこう総括した。各地域の病院は、大量の病人の面倒を看るにあたって、「病人が病院の前にいまにもやって来るのに、(一部の病院は)まだ粗暴な対処しかできていなかったり、逃避しようとしている」。どの病院もそれぞれの地域に置かれた病院として、「あれこれ考えずに、これはやらねばならない任務なのだ」として、早めに準備し、チャレンジに立ち向かうのだ> 以上である。「大本営発表」の感染者数とはゼロが4つも違う「阿鼻叫喚の世界」が広がっているのだ。大半の若者たちは、数日の高熱の後、回復に向かっているようだが、少なからぬ高齢者が犠牲になっているもようだ。ちなみに中国国家衛生健康委員会は、12月25日より、感染者数の「大本営発表」すらやめてしまった。 それにしても、一日に約3700万人もが感染したと衛生健康委員会が推定した12月21日、習近平主席はロシアからドーミトリー・メドベージェフ前大統領(統一ロシア党党首)を北京に招いて、会見した。その時の「満面の笑顔」が、CCTV(中国中央広播電視総台)のトップニュースで流されたが、「恐るべき鈍感力」の持ち主だと畏れ入ってしまった。 今後、何より恐ろしいのが、概要でも指摘されていた「新たな突然変異」である。これだけ同時期にウイルスが拡散すれば、当然ながら「新たな突然変異」が起こる確率も高まってくる。 私たちはコロナウイルスを、「もはやカゼのようなもの」と認識し始めているが、とてつもなく深刻なウイルスに変異するかもしれないということだ。その意味で、いま中国で起きている惨事は、日本人にとっても他人事ではない』、「これだけ同時期にウイルスが拡散すれば、当然ながら「新たな突然変異」が起こる確率も高まってくる。 私たちはコロナウイルスを、「もはやカゼのようなもの」と認識し始めているが、とてつもなく深刻なウイルスに変異するかもしれないということだ。その意味で、いま中国で起きている惨事は、日本人にとっても他人事ではない」、その通りだ。

次に、12月28日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「長すぎたゼロコロナでワクチンの効果激減、中国の感染爆発の本番はこれから なぜ中国の習近平国家主席のゼロコロナ政策は破綻したのか」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73295
・『中国各地でゼロコロナ政策に反対する抗議デモが続発したことを受け、行動制限を緩和した中国の習近平国家主席が感染の急拡大に苦しめられている。英国の医療系調査会社エアフィニティは「現在、われわれのモデルでは1日当たりの感染者が100万人、死者は5000人を超えている恐れがある」との推計を12月21日に発表した。 直近の1週間で感染者数は1800人、死者はわずか7人(そのあと1人削除)という中国の“大本営発表”とは非常に大きな開きがある。エアフィニティのモデルでは新年1月に最初のピークを迎え、1日当たりの感染者は北京や広東省を中心に370万人、第二のピークとなる同年3月には他の地域にも広がり420万人に達すると予測している。 (中国におけるゼロコロナ政策転換後の感染者予測(英国の医療系調査会社エアフィニティの発表 はリンク先参照) エアフィニティのワクチン・疫学部長ルイーズ・ブレア博士はこう指摘している。「中国は集団検査を中止するとともに、無症状の感染者を報告しなくなっている。この組み合わせは公式データが中国全土で発生している感染の流行を正確に反映しているとは考えにくいことを意味している」 「中国はコロナ死者数の記録方式も変更し、陽性反応後に呼吸不全または肺炎で死亡した人のみを記録するようになった。これは陽性反応から一定期間内の死亡や、死因がコロナに起因していた場合にカウントする他の国の方式とは異なる。この変更により中国で報告される死者数の程度が過小評価されてしまう恐れがある」(ブレア博士)』、「中国はコロナ死者数の記録方式も変更」、「中国で報告される死者数の程度が過小評価されてしまう恐れ」、中国の「大本営発表」は何でもありのようだ。
・『「ゼロコロナ政策終了なら130万~210万人死亡」  英国家統計局(ONS)のデータから年齢、基礎疾患別の死者を見てみよう。年齢層別のコロナ死者の割合は85歳以上が40%、75~84歳が29%、65~74歳が17%、55~64歳が9%、45~54歳が4%、25~44歳が2%となっている。新型コロナウイルスが変異して弱毒化しても、基礎疾患を持っていることが多い高齢者の死亡率がずば抜けて高いことが分かる。) 基礎疾患別にみると、不定愁訴(原因ははっきりとは分からないが、体調が悪い状態)が27%、慢性下気道疾患が16%、泌尿器系の疾患15%、認知症およびアルツハイマー病14%、糖尿病13%、心不全および合併症と定義が不明確な心臓病13%、虚血性心疾患12%、高血圧性疾患10%、不整脈9%、脳血管障害6%。基礎疾患のない死亡例は13%だった。 コロナに感染した状態で死亡した人をコロナ死者として計上した英国や米国では膨大な死者を数えた。新型コロナウイルス変異株のオミクロン株は肺に与える影響が他の株に比べて小さい。さらに呼吸不全が直接の原因で死亡した感染者に数を限定すると統計上、コロナ死者の数を小さく抑えることができる半面、本当の被害を覆い隠してしまう恐れがある。 エアフィニティは11月にも「中国がゼロコロナ政策を終了した場合、低いワクチン接種率とブースター率、ハイブリッド免疫(感染とワクチン接種の両方)の欠如により、130万~210万人の命が危険にさらされる恐れがある」と警鐘を鳴らしている。中国では国産ワクチンが接種されたが、感染や死亡に対する防御力が低いことが明らかになっている。中国・シノバック製のワクチンを接種しても米欧のmRNAワクチンの接種者よりも3倍重症化しやすいという』、「エアフィニティは11月にも「中国がゼロコロナ政策を終了した場合、低いワクチン接種率とブースター率、ハイブリッド免疫(感染とワクチン接種の両方)の欠如により、130万~210万人の命が危険にさらされる恐れがある」と警鐘」、「中国・シノバック製のワクチンを接種しても米欧のmRNAワクチンの接種者よりも3倍重症化しやすい」、中国の「コロナ対応」の遅れは致命的だ。
・『米欧はワクチン接種後の集団感染でハイブリッド免疫(注)を獲得  エアフィニティによると、ワクチンによる免疫力は時間とともに低下する。中国ではブースター接種率が低く、ゼロコロナ政策で自然感染もしなかったため重症化しやすい。80歳以上のブースター接種率は40%。中国で感染が拡大した場合、1億6700万~2億7900万人の感染者が発生し、130万~210万人が死亡、医療システムは限界に達する恐れがあるという。 「高齢者人口を考えると、免疫力を高めるためワクチン接種を強化することが不可欠だ。将来の感染の波に対する抵抗力を強めるハイブリッド免疫を獲得することが必要だ。他の国や地域でも有効であることが証明されている。米欧では接種後の集団感染でハイブリッド免疫が形成され、感染拡大による影響を小さく抑えることができた」(前出のブレア博士)) 米保健指標評価研究所(IHME)は「中国では今後数カ月で大規模なオミクロン株の感染が起きる。新年4月ごろピークを迎え、総死者数は32万3000人と推定される。その後も感染しやすい人口は維持される。中国で使用されている国産ワクチンのオミクロン株に対する効果は比較的低く、人口の8割が感染しやすい状態だ」と警戒を呼びかけている。 中国の国産ワクチンのシノバックやシノファームは米欧のmRNAワクチンに比べ効果が低い。抗ウイルス剤も普及していない。ゼロコロナ政策を解除すれば80歳以上の死者数が大幅に増え、新年の死者数は100万人をはるかに上回る恐れがある。mRNAワクチンに切り替えるとともに高齢者のワクチン接種率を上げ、抗ウイルス剤を使えるようにする必要がある』、「中国の国産ワクチンのシノバックやシノファームは米欧のmRNAワクチンに比べ効果が低い。抗ウイルス剤も普及していない。ゼロコロナ政策を解除すれば80歳以上の死者数が大幅に増え、新年の死者数は100万人をはるかに上回る恐れがある」、恐ろしいことだ。
(注)ハイブリッド免疫:ワクチンと感染の両方による免疫を海外ではハイブリッド免疫と呼ぶ(日経新聞)。集団免疫とも呼ばれる
・『コロナ、インフルエンザ、RSウイルスの「トリプルデミック」の恐れも  これまで中国はゼロコロナ政策で感染爆発を回避してきたため、国民は感染しやすい状態にある。感染率が高ければ高いほど、新型株が発生する確率は高くなる。IHMEのモデルでは流行は新年1月中旬に始まるため、地方政府は病院の支援策を講じ、社会的距離政策やマスクの義務付けを再実施し、感染を遅らせる対策をとらなければならないという。 米国ではコロナ、インフルエンザ、RSウイルスの「トリプルデミック(三大流行)」が医療現場の病床を逼迫させており、中国も同じように「トリプルデミック」に直撃される恐れがあるという。中国当局は景気と学校教育への影響と、80歳以上の死亡のバランスをとる難しい選択を迫られることになるとIHMEは分析している。) 中国のソーシャルメディアでは「国家衛生健康委員会議事録」が出回り、それによると中国では12月20日の新規感染者数が3700万人にのぼり、同月1~20日までの累積感染者数が2億4800万人に達したという。“大本営発表”では同月1~22日の累積感染者数は約28万4700人とされ、大きな食い違いが生じている。 英イースト・アングリア大学医学部のポール・ハンター教授はこう指摘する。「中国は現在、明らかに非常に困難な状況にある。すべての国でコロナ規制を終了すると感染が急増した。これは避けられないことだ。ワクチン接種も自然感染も数カ月以上の防御を与えないことが分かっている。しかし重症化(呼吸困難、入院、死亡)に対する免疫はある程度長く続く」』、「中国のソーシャルメディアでは「国家衛生健康委員会議事録」が出回り、それによると中国では12月20日の新規感染者数が3700万人にのぼり、同月1~20日までの累積感染者数が2億4800万人に達したという。“大本営発表”では同月1~22日の累積感染者数は約28万4700人とされ、大きな食い違いが生じている」、こんな「“大本営発表”」では、中国国民も信じなくなるだろう。「ワクチン接種も自然感染も数カ月以上の防御を与えないことが分かっている。しかし重症化(呼吸困難、入院、死亡)に対する免疫はある程度長く続く」、なるほど。
・『英専門家「中国の問題はコロナ規制の解除が早すぎたことではない」  ハンター教授は続ける。「ワクチン接種後の免疫(50%以上の人)はおそらく1年程度だが、自然感染でやや長くなり、ハイブリッド免疫ではさらに長くなる。ハイブリッド免疫は少なくとも数年間は重症化に対する良好な予防効果を発揮する。中国では2月ごろからワクチン接種をほとんど行っていないため、感染に対する防御はほとんど失われている」 中国の人々は最近まであまり感染してこなかったので、ハイブリッド免疫を持っている人は非常に少ない。重症化に対する免疫も失われている。感染が拡大した米欧ではほとんどの人がハイブリッド免疫を持っているため、感染による死亡率は1年前よりはるかに低くなっている。一方で中国では高齢者のワクチン接種が若者に比べて遅れていると報じられる。) 「中国でのコロナ致死率がどの程度なのか現状では分からない。公表されているデータでは死者はほとんどいないようだが、多数の死者が出ているとの報道と矛盾する。現在、中国で何が起きているのか、統計の信頼性はどうなのか、全くわからない」とハンター教授は首を傾げた。 「中国の問題はコロナ規制の解除が早すぎたからではなく、ワクチン接種後のゼロコロナ政策が長すぎたため、ワクチン接種の予防効果がほとんどなくなってしまったことにある。ニュージーランドはワクチン接種後すぐに制限を解除し、予想通り感染者が急増したにもかかわらず、死者はほとんど出なかった」』、「「中国の問題はコロナ規制の解除が早すぎたからではなく、ワクチン接種後のゼロコロナ政策が長すぎたため、ワクチン接種の予防効果がほとんどなくなってしまったことにある」、なるほど。
・『ウィズコロナ政策に転換するタイミング  ハンター教授は世界保健機関(WHO)緊急事態対応責任者マイク・ライアン氏と同じように「ゼロコロナ政策が転換されたからではなく、規制が解除される以前から感染は猛烈に広がっていた」との見方を示した。ゼロコロナ政策で感染を食い止めることができなかったため、ゼロコロナは最善の選択ではないと判断して習氏は政策を転換したというわけだ。 ワクチンの集団接種で社会全体に「免疫の丘」を築いたあと、ゼロコロナではなくウィズコロナ政策への転換を唱えたハンター教授はロックダウン(都市封鎖)支持派から罵詈雑言を浴びせられた。効果的なワクチンで社会全体の免疫が高まっている時にわざわざ都市封鎖をする必要はないと主張した。この決断のおかげでハイブリッド免疫を獲得することができた。 「コロナは永遠に続くのだから、パンデミックは終わらない。私たちの孫の孫が感染することになる。しかし少なくとも米欧では感染の波が来るたびに、医療サービスへの影響が小さくなっている。中国の現在の状況が他の多くの国々に大きなリスクをもたらすとは思えない。 他の国はハイブリッド免疫を持っているのだから」とハンター教授は断言した。 英国の死者は21万人超。米国は約111万6000人。一方、ゼロコロナ政策を続けてきた中国の死者は“大本営発表”で5240人超。効果に限りのある国産ワクチンに見切りをつけ、米欧のmRNAワクチンに切り替えて再び集団接種を急ぎ、ウィズコロナ政策に転換できるのか。中国は14億人と人口が多いだけに死者も大きく膨らむ恐れがある』、「米欧のmRNAワクチンに切り替えて再び集団接種を急ぎ」、現在のところ「国産ワクチン」にこだわっているようなので、「ウィズコロナ政策に転換」は容易ではなさそうだ。

第三に、本年1月10日付け現代ビジネスが掲載した『週刊現代』特別編集委員・『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「春節を控えた中国で再び“コロナ感染爆発”が起こっている「2つの根本的原因」 なぜ今「ゼロコロナ政策」をやめたのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104472?imp=0
・『「民族大移動」の季節  1月22日、中国は春節(旧正月)を迎える。14億中国人は、1月1日の元日を「単なる一休日」としか見なしていない。春節こそが、絶対的に故郷で親族と過ごすべき「最重要の祝日」である。 中国政府の予測では、今年の春節期間(前後を含めた40日間)、延べ20億9500万人の「民族大移動」になる見込みだという。これは、「コロナ前」の2019年の延べ29億8000万人の約7割にあたる。すでに7日から、鉄道や航空などで、「春運」(チュンユン)と呼ばれる春節の帰省ラッシュが始まった。 「春運」で恐れられているのが、現在、都市部で猛威を振るっているコロナウイルスが、農村部にも拡散し、いよいよ「全民感染」の状態になることだ。 当然ながら農村部は都市部と較べて、医療体制が整っていない。かつ高齢者の住民が多いので、彼らが重症化して多数の死者を出すことも考えられる。すでに都市部では、火葬場に人々が殺到し、どこも機能不全に陥っている。 だがそれでも、最悪のコロナ禍の中で、「春運」は始まった……。 中国で、なぜいま再びコロナウイルスが猛威を振るっているのか。現地での個々の現象については、すでに様々な報道があるので重複しないが、その根本的原因とも言える中国の政治システムの「欠陥」について指摘しておきたい。 中国の政治システムには、少なくとも二つの大きな「欠陥」がある。一つは時期的なもので、もう一つは普遍的なものだ』、「中国の政治システム」には「少なくとも二つの大きな「欠陥」がある。一つは時期的なもので、もう一つは普遍的なものだ」、なるほど。
・『5年に一度の「空白の5ヵ月」  まず前者から述べる。 中国の政治は、憲法前文などが法的根拠となり、「共産党が政府を指導する」システムである。具体的には、5年に一度、秋に共産党大会を開催し、その人事と方針に基づいて、翌年3月に新政府が発足する。そして新政府が5年間、行政を司っていくというものだ。 ところがこのシステムを進めると、5年に一度、「陥穽(かんせい)」が生まれる。「空白の数ヵ月」と言ってもよい。 つまり、秋に共産党大会で新たな人事と方針が決まっても、それを実行していく新政府は、翌年3月にならないと発足しないのだ。それまでは「旧政府」が継続して行っていくことになる。 特に、10年に一度、政権が代わる時が要注意である。巨大な官僚機構から見ると、新しいボスは3月にならないとやって来ない。それまでは以前からのボスたちが司っているが、彼らは3月には去っていく。そのため万事「後ろ向き」で、「膨大な不作為」が起こるのである。 つまり、諸政策が停滞する。そしてそうした中から、「重大な危機」が起こるというわけだ。 一例を示そう。2002年11月に第16回共産党大会が開かれて、江沢民総書記から胡錦濤総書記にバトンタッチされた。しかし胡錦濤政権が発足したのは2003年3月で、その間に「空白の4ヵ月」が生まれた。その時起こったのが、SARS(重症急性呼吸器症候群)だった。 突如発生した未知のウイルスに対して、時の江沢民政権は有効な手立てを打てないまま、2003年3月に胡錦濤政権にバトンタッチした。その結果、新政権発足が華々しく行われた北京は、SARSが蔓延して修羅場と化した。 最終的には、中国を中心に8096人の感染者が報告され、うち774人が死亡したのだった。いまの新型コロナウイルスに較べれば小規模に思えるかもしれないが、感染者の1割近くが死亡するという点では、SARSの方が恐ろしかったとも言える。 ともあれ、それから20年を経た現在も、「空白の5ヵ月」の真っただ中なのである。本来なら、「2期10年」で引退すべき習近平総書記が、昨年10月の第20回共産党大会で、トップの座に居座った。しかも、序列2位の李克強首相を始めとする「気に入らない幹部たち」を、あまねく蹴散らしてしまった。それでも蹴散らされた面々は、3月まで残っているのだ。 こうした「変則形」は、巨大な官僚組織に、とてつもない「停滞」をもたらしている。国務院(中央政府)の「本丸」からして、李克強首相は共産党大会で「否定」されたのにまだ残っていて、代わって「肯定」された李強新首相が就くのは3月だ。そのため部下たちは、いま李克強首相に従えば、3月に李強新首相に蹴飛ばされると思うから、戦々恐々と委縮している。 そうした巨大な官僚機構の機能不全の中で起こっているのが、いまの中国の新型コロナウイルス騒動なのである。そのため、中国政府が万事、適正な政策を講じられるはずもないのだ』、「10年に一度、政権が代わる時が要注意である。巨大な官僚機構から見ると、新しいボスは3月にならないとやって来ない。それまでは以前からのボスたちが司っているが、彼らは3月には去っていく。そのため万事「後ろ向き」で、「膨大な不作為」が起こるのである。 つまり、諸政策が停滞する」、「国務院(中央政府)の「本丸」からして、李克強首相は共産党大会で「否定」されたのにまだ残っていて、代わって「肯定」された李強新首相が就くのは3月だ。そのため部下たちは、いま李克強首相に従えば、3月に李強新首相に蹴飛ばされると思うから、戦々恐々と委縮している。 そうした巨大な官僚機構の機能不全の中で起こっているのが、いまの中国の新型コロナウイルス騒動なのである。そのため、中国政府が万事、適正な政策を講じられるはずもないのだ」、その通りだ。
・『すでに14億中国人の過半数が感染  中国は、それまで3年近く続けてきた「ゼロコロナ政策」を転換するにあたって、ウイルスの急激な蔓延と、それに伴う影響などについて、適切な措置を取るよう準備していなかった。「空白の5ヵ月」にあたるため、「誰も責任を取らない状況」だったのだ。1月8日からは、新型コロナウイルスは「乙類乙管」という、それまでより低レベルの感染症に切り替えられた。 こうしたことによって「全民感染」という状況を引き起こした。中国では「津波」にたとえられている。はっきり統計を取っていないので実数は不明だが、すでに14億中国人の過半数が感染したとも言われる。 おそらく多数の重症化した高齢者が、死亡していることだろう。「おそらく」というのは、圧倒的多数のコロナウイルスによる死者が、「別の要因」をつけて葬られているため、実態が掴みきれないからだ。 昨年12月20日から、コロナウイルスによって心臓、脳、血管などに障害が起こって死亡した場合は、「コロナウイルスによる死亡」とはしないと定めた。ちなみに、国家衛生健康委員会が発表した1月7日の新規感染者数は7074人で、死者は2人である。 こうした状況に、憤りを隠せない現場の医師も多い。上海のある医師は、1月6日にSNSにこんな投稿をした。 〈 本来ならこんな文章を発表したくはない。だがあれこれ迷った末に、やはり出すことにした。(この文章を題材に)討論したり憤ったりすることを歓迎する。 私は上海で仕事をしていて、最近は大量の新型コロナウイルスの患者が入院しに来る。その中の少なからぬ人々に対して、病院側は新型コロナウイルスの患者と診断するなと言ってくる。 病人は咳(せき)と発熱で入院している。PCR検査をしたら陽性だった。胸部のCTスキャン検査をしたら肺に炎症を起こしている。入院後も肺の症状が悪化し、家族が延命措置を拒否したため、最後は血圧や心拍数が下がるなどして死亡した。 私は死亡通知書に、「死亡の原因は重症化した肺炎で、そこに至ったのは新型コロナウイルスのせいだった」と書いた。すると翌日、病院側から電話が来て、「死亡原因を変更するように」と言われた。「では何と書けばいいのか?」と聞いたら、向こうも押し黙ってしまった。 私は問いたい。一体なぜなのか? なぜ新型コロナウイルスにかかって死亡したと書いてはいけないのか? 患者の家族に対して、もうこれ以上の書き換えはしたくない 〉 まさに、「無理が通れば道理が引っ込む」というわけだ。この医者の投稿は瞬く間に削除されたが、多くの人々に回覧され、共感が広がった。 ともあれ、「空白の5ヵ月」の間、適切な政策が臨機応変に打てないことが、中国の政治システムの「時期的な欠陥」である。こうした状況が、春節を挟んであと2ヵ月ほど続くことになる』、「「空白の5ヵ月」の間、適切な政策が臨機応変に打てないことが、中国の政治システムの「時期的な欠陥」である。こうした状況が、春節を挟んであと2ヵ月ほど続くことになる」、やれやれだ。
・『「2023年世界の10大リスク」第2位  もう一つの中国の政治システムの「普遍的な欠陥」とは、先の第20回共産党大会によって、習近平総書記という今年、古稀を迎える高齢の政治家に、権力が集中してしまったことである。 このことは、アメリカで地政学を研究する著名な民間組織「ユーラシア・グループ」が、「2023年世界の10大リスク」の第2位に挙げている。ちなみに第1位は、「ならず者ロシア」だ。 以下、ユーラシア・グループの発表を引用する。 〈 リスクNo.2 「絶対的権力者」習近平 中国の習近平国家主席(共産党総書記)は2022年10月の第20回党大会で、毛沢東以来の比類なき存在となった。 共産党の政治局常務委員を忠実な部下で固め、国家主義、民族主義の政策課題を事実上自由に追求することができる。しかし、彼を制約するチェック・アンド・バランスがほとんどなく、異議を唱えられることもないため、大きな誤りを犯す可能性も一気に大きくなった。 習近平の中国では、恣意的な決定、政策の不安定さ、不確実性の増大が常態化することになる。国家資本主義の独裁国家が世界経済でこれほど大きな位置を占めるという前例のない現実を考えると、このグローバルで巨大な問題は過小評価されている…… 〉 一人に権力が集中することは、物事の決定を早めるというメリットもありそうだが、実際はそうなっていない。そもそも、これだけ複雑化している世の中で、森羅万象を一人で決めることなど、神でもなければ不可能だ。しかも小国ならまだしも、中国は14億という世界最大の人口大国なのだ。 ユーラシア・グループは、「習近平主席が犯した不手際」の例として、やはりコロナ対策を挙げている。 〈 昨年、私たちは中国がゼロコロナの罠に自らはまったと警告したが、残念ながらその通りであった。習近平は高品質の外国製mRNAワクチンを拒否し、国産ワクチンの接種率も不十分だった。中国国民は重症化しやすく、突然のゼロコロナ政策からの転換は致命的となった。(中略) わずか数週間前、習近平は2年以上前にゼロコロナ政策を開始した際と同様、恣意的な方法で同政策を終了させた。高齢者のワクチン接種率が低いにもかかわらず、市民や地方政府に警告することもなく、その結果発生する集団感染に対処する十分な準備もないまま、すべての制限を解除してウイルスを野放しにするという彼の即断により、100万人以上の中国人が死ぬことになるだろう(ほとんどはコロナによる死者と報告されないだろうが)。 このような途方もない、そして巨大なコストのUターンを実行できるのは、無敵の権力を持つ指導者だけである 〉 読んでいて、いずれも納得のいく指摘である。ちなみに先日、中国外交部の関係者と雑談していたら、外交部の退職者だけで、すでに50人以上「急死」していて、そのリストが回覧されているのだとか』、「習近平の中国では、恣意的な決定、政策の不安定さ、不確実性の増大が常態化することになる。国家資本主義の独裁国家が世界経済でこれほど大きな位置を占めるという前例のない現実を考えると、このグローバルで巨大な問題は過小評価されている……」、「ゼロコロナ政策を開始した際と同様、恣意的な方法で同政策を終了させた。高齢者のワクチン接種率が低いにもかかわらず、市民や地方政府に警告することもなく、その結果発生する集団感染に対処する十分な準備もないまま、すべての制限を解除してウイルスを野放しにするという彼の即断により、100万人以上の中国人が死ぬことになるだろう」、全く酷い話だ。
・『中国国内で噂される「4つの説」  それでは、習近平主席は昨年末になぜ突然、あれほど固執していた「ゼロコロナ政策」を放棄したのか? これには中国国内で、4つの説が噂されている。いずれも噂の域を出ないが、一応、列挙しておく。 【1.経済悪化深刻説】(昨年3月5日、全国人民代表大会の初日に、李克強首相が「今年は5.5%前後の経済成長を達成する」と華々しく述べた。ところが、「ゼロコロナ政策」が足を引っ張り、2022年の中国経済は悪化する一方だ。 足元で、第3四半期までの経済成長率3.0%、11月の輸出は前年同期比-8.7%、輸入は-10.6%、小売売上高(消費)は-5.9%、10月の若年層(16歳~24歳)失業率は17.9%……。 このままでは政府が掲げる「復工復産」(仕事と生産の復活)は厳しいと判断し、「ゼロコロナ政策」に終止符を打った。 【2.「白紙運動」影響説】(昨年11月24日に、新疆ウイルグル自治区の中心都市ウルムチで、マンション火災が発生。極端な「ゼロコロナ政策」によって住民が逃げ遅れたり、消防隊が駆けつけられなかったりして、10人が死亡した。 この事件の実態がSNSで拡散されたことで、中国各地の大学や市街地などで、いわゆる「白紙運動」が起こった。若者たちが白紙の紙をかざして、「習近平下台!」(習近平は退陣せよ)「共産党下台!」(共産党は退陣せよ!)などと叫んで抗議する様子は、日本でも広く報道された。 このように、あからさまに共産党や最高指導者を非難するデモが中国で発生したのは、1989年の天安門事件以来、33年ぶりのことだった。習近平総書記としては、10月に第20回共産党大会を開いて、異例の「総書記3期目」を確定させたばかりというのに、その威信にすっかり傷がついてしまった。 中国の若者たちが、ここまで怒りを爆発させたのは、中国がいつまでも理不尽極まりない「ゼロコロナ政策」を続けていたからだった。しかも、このままでは、習近平指導部としては望まない若者たちとの全面対決になるリスクがあった。 そこで、ひとまず「ゼロコロナ政策」の看板を一気に下ろして、国内的な宥和を図ろうとした。 【3.習近平主席感染説】(昨年11月18日と19日、タイのバンコクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれ、習近平主席も参加した。その中で習主席は19日、自らが昨年7月1日に任命した李家超香港行政長官と会談した。二人はマスクをつけずに握手を交わし、近距離で比較的長時間、話し込んだ。 その翌日に李家超長官が香港に戻った時、空港でPCR検査を受けたところ、コロナに感染していることが判明した。おそらく李長官は、自らが感染したこと以上に、畏れ多い習近平主席に移してしまったのではないかということを懸念したに違いない。何せ自分を香港トップに押し上げてくれた恩人なのだ。 だがやはり、習近平主席に感染していた。ただちに「中南海」(最高幹部の職住地)で緊急医療体制が組まれ、習主席は隔離静養生活に入った。 実際、19日の晩にバンコクから帰国して以降、25日にキューバのディアス・カネル主席と人民大会堂で会談するまで、丸5日間も公の場に姿を現さなかった。こうしたことは極めて異例だ。 ところが、習主席はほぼ無症状だった。「なんだ、コロナって、こんなものか」。それで習主席は、「ゼロコロナ政策」の解除を決断した。 【4.WHO圧力説】(WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長は、「習近平主席の盟友」とも揶揄されているが、昨年来、中国の極端な「ゼロコロナ政策」に頭を悩ませていた。そこでコロナ対策に関して、世界と足並みを揃えるよう、中国に何度も要請してきたが、馬耳東風だった。 WHOは昨年秋、中国が今後とも極端な「ゼロコロナ政策」を継続するならば、世界から中国だけを切り離して、2023年以降のコロナ対策を実行していくと、最終通告を出した。中国が一番恐れるのは、中国を除外することによって、台湾を加盟させたり、オブザーバーとして迎え入れたりすることだ。そこで渋々、「ゼロコロナ政策」に終止符を打った。 重ねて言うが、これ4説は、いずれも噂の域を出ておらず、何ら確証を得られたものではない。だが1月8日、中国は完全に「ゼロコロナ政策」と決別した』、4要因いずれも、当てはまりそうだ。
・『より深刻な新型が出現した場合  今後の展開だが、前述の「ユーラシア・グループ」が、こんな警鐘を鳴らしていることを、おしまいに紹介しておこう。 〈 もしコロナに深刻な新型が出現した場合、習近平の存在が理由で、中国国内外に広く拡散する可能性が高くなる。 中国は検査やゲノム解析に力を入れていないため、新型のウイルスを特定することができないだろう。医療制度が貧弱すぎるため、感染症が変化してより深刻になっていても気づくことができない。 これまでの習近平の透明性のなさから考えると、強力な変異体のニュースを公表することもできないだろう。世界はより致命的なウイルスに備えるための時間をほとんど、あるいは全く持てないだろう 〉』、「中国は検査やゲノム解析に力を入れていないため、新型のウイルスを特定することができないだろう。医療制度が貧弱すぎるため、感染症が変化してより深刻になっていても気づくことができない。 これまでの習近平の透明性のなさから考えると、強力な変異体のニュースを公表することもできないだろう。世界はより致命的なウイルスに備えるための時間をほとんど、あるいは全く持てないだろう」、中国を完全に切り離すことは不可能だ。現在でも、日韓両政府の水際対策強化に対し、中国側は理不尽な言いがかりをつけてきた。困ったことだ。
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台湾(その6)(元自衛隊陸将が解説 台湾有事で日本に起こりうる「シナリオ」と「課題」、中台の緊張激化の中、中国抑止をどう考えるのか 中国の台湾政策変遷の背景にある3つの変化、巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか) [世界情勢]

台湾については、昨年8月12日に取上げた。今日は、(その6)(元自衛隊陸将が解説 台湾有事で日本に起こりうる「シナリオ」と「課題」、中台の緊張激化の中、中国抑止をどう考えるのか 中国の台湾政策変遷の背景にある3つの変化、巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか)である。

先ずは、昨年9月4日付けAERAdot「元自衛隊陸将が解説 台湾有事で日本に起こりうる「シナリオ」と「課題」」を紹介しよう。
・『米海兵隊トップのバーガー総司令官は昨年4月、「遠征前進基地作戦(EABO)」を含む新しい作戦構想を発表した。元陸上自衛隊幹部は「イラクやアフガニスタンでの戦闘が終わり、米海兵隊は新しい戦略環境に対応できる能力を求められている」と語る。急いでいるのは現在保有していない地対艦ミサイルの開発だ。台湾有事の際、中国軍艦艇の展開を封じ込める狙いがある。 自衛隊関係者によれば、在沖縄海兵隊は昨年後半から、沖縄本島周辺での航空機やヘリによる降下訓練、輸送機の着陸訓練などを増やしている。米海兵隊は自衛隊に対し、宮古島や石垣島などでも共同訓練や防災・住民保護での協力をしたい考えを非公式に伝えているという。別の元陸自幹部は「米軍は自衛隊が駐屯している場所に展開したい。言葉の問題を解決できるし、現地住民との衝突を避け、米軍の責任も緩和できる」と話す。 陸上自衛隊は15年ほど前、「南西の壁」と名づけた構想をまとめた。対馬から九州、沖縄本島などを経て日本最西端の与那国島までに対空・対艦ミサイルと地上部隊を組み合わせた部隊を配置して防衛ラインを作り上げる構想だった。 陸自は現在、奄美大島と宮古島に12式地対艦誘導弾(12SSM)部隊を配備し、今年度末までに石垣島にも同部隊を配備する。台湾から約110キロしか離れていない与那国島には、沿岸監視部隊と電子戦部隊が配備されている。 中国軍のミサイルは今回、与那国島から80キロの沖合に着弾した。中国軍が設定した訓練区域の一部は、与那国島をはさむように設定された。 陸自中部方面総監などを務めた山下裕貴元陸将は「中国軍が台湾東部に上陸するためには、台湾と与那国島の間を通る可能性が高い。地対艦ミサイルの射程などを考えれば、中国は石垣島より西側の島々から妨害行動を受けることを想定し、戦域として考えているだろう」と語る。同時に「中国の立場では、日本が尖閣諸島を不法占拠していることになる。当然、尖閣も戦域に含まれる」と語る。 中国が与那国島や尖閣諸島などの日本領土を攻撃した場合は「武力攻撃事態」になり、自衛隊は防衛出動する。中国軍が、日本に退避してきた台湾軍の航空機や艦船を攻撃すれば、やはり武力攻撃事態になる。 一方、台湾有事になれば、米軍の海空軍が台湾の上空や近海で活動するだろう。米軍は自衛隊に補給支援を求めるほか、航空機や艦船が攻撃を受ければ、救助活動も要請する可能性が高い。その場合、日本が2015年に制定された安全保障法制に基づき、「重要影響事態」を宣言すれば、給油や弾薬提供、救難活動などの後方支援を行う』、「「中国軍が台湾東部に上陸するためには、台湾と与那国島の間を通る可能性が高い。地対艦ミサイルの射程などを考えれば、中国は石垣島より西側の島々から妨害行動を受けることを想定し、戦域として考えているだろう」と語る。同時に「中国の立場では、日本が尖閣諸島を不法占拠していることになる。当然、尖閣も戦域に含まれる」」、なるほど。
・『与那国島や石垣島での住民避難が課題になる  さらに、事態が進み、自衛隊が一緒に活動している米軍が攻撃されれば、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅(おびや)かされる」という「存立危機事態」の宣言が視野に入ってくる。集団的自衛権の行使が可能になり、防衛出動という状況になっていく。 山下氏は「米軍の行動とは切り離して、日本が単独で攻撃を受けた場合は武力攻撃事態になり、日本は一刻も早く米軍の来援を求めるだろう。逆に米軍の行動に関連して事態が推移し存立危機事態になる場合、日本は否応なく自動的に巻き込まれる」と語る。場合によっては、二つのシナリオが同時に別の場所で発生することもありうる。 日本は今、年末に向けて国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の戦略3文書の改定を目指している。山下氏によれば、護衛艦や航空機などの保有数、地対艦ミサイル部隊を配備する石垣島と配備済みの宮古島の両部隊の増強、沿岸監視部隊と電子戦部隊しかいない与那国島に地対艦ミサイルなどの戦闘部隊を配備するのか──といった課題がある。 同時に、尖閣諸島を巡っても、自衛隊による平時からの領域警備を認めるかどうかという問題もある。中国軍による尖閣諸島攻撃の事態に備え、日米安保条約の発動を円滑に進める働きかけも重要になる。) 有事に備えた人員や弾薬、物資の補充も必要になる。自衛隊は現在、増額の必要性が唱えられている予算の範囲内で、弾薬や物資を備蓄している。有事では爆発的に使用量が増えるため、現在の弾薬や物資などの確保が課題になる。自衛隊が南西諸島への配備を進めている12式地対艦ミサイルなどの誘導弾も高価なため、数が絶対的に不足しているとみられる。 さらに、国民保護法制に基づき、与那国島や石垣島などでの住民避難が課題になる。山下氏は「どの時点で、どのくらいの規模で、どこに、どのように避難するのか、早急に訓練を始めるべきだ」と語る。 そして、こうした複雑な事態を指揮する政治家の判断も重要になる。「重要影響事態」と「存立危機事態」「武力攻撃事態」が同時に混在し、変化していく事態も起こりうる。山下氏は「中国軍の演習は、日本と台湾の危機意識を高め、日本や米国、台湾の軍にとって貴重な情報収集の機会にもなった。今回の事態を前向きに捉え、努力していくことも重要だ」と語った。(朝日新聞記者、広島大学客員教授・牧野愛博)※AERA 2022年9月5日号より抜粋』、「与那国島や石垣島などでの住民避難が課題になる。山下氏は「どの時点で、どのくらいの規模で、どこに、どのように避難するのか、早急に訓練を始めるべきだ」」、「こうした複雑な事態を指揮する政治家の判断も重要になる」、単に自衛隊に任せておくば済む話ではない。訓練の準備だけでも早急に始めるべきだ。

次に、9月21日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「中台の緊張激化の中、中国抑止をどう考えるのか 中国の台湾政策変遷の背景にある3つの変化」を紹介しよう。
・『アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問(8月2日)以後、台湾海峡をはさんだ中台の緊張の高まりが恒常化している。 中国は「重要軍事演習」と称して台湾封鎖の予行演習を実施、実際にミサイルまで飛ばした。これに対しアメリカは議員団の訪台を繰り返す。中国は連日、台湾海峡の中間線を越えて台湾側に戦闘機を侵入させるだけでなく、離島にはドローンを飛ばし威嚇を続ける。するとアメリカ政府が新たに11億ドル(約1500億円)相当の武器売却方針を打ち出し、議会でも台湾への軍事支援を大幅に強化する法案が審議されている。 緊張のエスカレーションはとどまるところを知らないように見える。これが「新常態(ニューノーマル)」を作り状況を変えようとする中国流のやり方なのだろう。 尖閣諸島でも2012年の日本の国有化をきっかけに、今日に至るも連日のように中国海警局の船が日本の接続水域内に入り、時には領海内にまで侵入を続けている。人海戦術で同じ行為を長期間にわたって継続し、相手を疲弊させ諦めさせようとでもいうのだろう。だからと言って軍事力を使って一線を越えようとはしない。台湾海峡でも同じ手法だとすれば、戦闘機の中間線越えはこれから先も長く続くかもしれない』、「連日のように中国海警局の船が日本の接続水域内に入り、時には領海内にまで侵入を続けている。人海戦術で同じ行為を長期間にわたって継続し、相手を疲弊させ諦めさせようとでもいうのだろう」、「台湾海峡でも同じ手法だとすれば、戦闘機の中間線越えはこれから先も長く続くかもしれない」、覚悟する必要がありそうだ。
・『中国の台湾政策はどのように変遷してきたか  中台関係が一貫して緊張状態にあったわけではない。むしろ、今ほど関係が悪化しているのは例外的だ。その背景には3つの大きな変化を指摘できる。 まず、最もはっきりしているのは中国の変化だ。国民党と戦った毛沢東主席にとって台湾を武力解放し統一することは最大の目標だったが、アメリカに阻まれ実現できなかった。そこで毛沢東は「外交戦」に転じ、国連で多数派形成に力を入れ国連加盟と米中共同声明で国交樹立の実現へ向かうとともに、国際社会における台湾の孤立化に成功した。 続く〓小平(最高指導者1978~1989年)はさらに巧みだった。改革開放政策を進めるために日本やアメリカなど西側諸国に接近するとともに、台湾問題については「平和的統一」や「一国二制度」という柔軟な方針を打ち出して経済成長の基礎作りに成功した。 ところが江沢民(同1989~2002年)は〓小平が残した経済成長の成果に自信を持ったのか、台湾問題については「祖国の完全統一の早期実現」「武力不行使の約束はできない」などと柔軟性を欠く原則論にこだわった。 このころ台湾では民主化が進み総統選が導入された。中国と距離を置く勢力の台頭を抑えるため江沢民はミサイル発射など稚拙な手段で2度の総統選に介入したが見事に失敗した。その結果、「二国論」を唱えた李登輝や、独立指向の強い民進党の陳水扁の政権が誕生した。 江沢民のあとを継いだ胡錦涛(同2002~2012年)は力のない指導者だったと評されているが、台湾問題への対応は理にかなっていた。強引な手法は逆に台湾の人々の心を遠ざけてしまうことを知る胡錦涛は、統一という言葉を避けて「平和的発展」を打ち出した。さらに独立に走ろうとする陳水扁とそれをよしとしないアメリカとの隙間をつく巧みな外交でアメリカを味方につけた。その結果、陳水扁は自滅し中国寄りの馬英九・国民党政権が誕生し中台関係は一気に改善した。中台の良好な関係はこの時代がピークだった。 習近平(同2012年~)が主席になると状況は大きく変わった。国際社会で評価を得た胡錦涛だが、中国共産党内では「中台関係が改善しても、統一の話は一歩も進まず何の成果もない」などと批判が強かった。 〓小平や胡錦涛に批判的と言われる習近平は台湾政策をガラッと変えてしまい、「この問題を一代一代先送りはできない」と統一を急ぐ姿勢を前面に出した。一方の台湾でも総統が独立志向の強い民進党の蔡英文に交代した。習近平のかたくなな姿勢は今年8月に公表された「台湾統一白書」にも表れた。過去の白書にあった「統一後に駐留軍や行政官を派遣しない」という文言が消えたのだ。香港の現状が示すように習近平にとって「一国二制度」はもはや意味のない構想なのだ』、「香港の現状が示すように習近平にとって「一国二制度」はもはや意味のない構想なのだ」、もう恰好つけずに本音でいくようだ。
・『習近平とアメリカの不安、台湾の自尊心  習近平が統一を急ぐ理由は何か。 よく指摘されるのは政治的レガシーの欠如だ。毛沢東は国を作り、〓小平は経済大国を作った。これに対し習近平は権力を握って10年たつが大きな成果がない。異例の3期目に入ればさらに焦るだろうというのだ。 それ以上に自らの権力維持や共産党の一党支配の維持への不安もあるだろう。〓小平に始まる改革開放路線によって中国経済は成長を続け国民を豊かにしてきた。そのことが権力者に正統性を与えてきた。ところが成長のスピードが落ち、所得格差などさまざまな社会問題が顕在化してきた今、習近平や共産党の権力維持の正統性が揺らぎかねない状況となりつつある。そうした不安が習近平を焦らせているのかもしれない。 2つ目の変化はアメリカだ。1970年代のニクソン政権、続くカーター政権による国交正常化以後、アメリカは経済が発展すれば中国は民主化すると考え、中国に対する関与政策を続けてきた。しかし、現実は逆方向に進んだ。トランプ政権はそれまでの政策が誤りだったと判断し対中政策を180度転換した。その対中強硬政策はバイデン政権になっても継承されている。あらゆる政策で激しく対立する民主党と共和党が、中国問題については強硬論で一致しているのだ。 だからと言って全面的に対立するつもりはなく、経済関係などは活発に行われている。しかし、胡錦涛時代のように米中が手を取って台湾の独立派を抑えるというようなことはありえないだろう。 そして3つ目の変化が台湾の人々の意識だ。かつて台湾では、中国との統一について賛否が割れていた。ところが経済が発展し政治制度の民主化が進むと、共産主義中国との統一を支持する声が減っていき、現状維持を望む声が強まった。1990年代以降、台湾には台湾独自の文化や制度があるという「台湾アイデンティティー」という言葉が広がった。 さらに習近平がウイグルや香港で強引な政策を実行し、中国政府がこれまで掲げてきた「一国二制度」が空中分解すると、台湾の各種世論調査では過半数が台湾の独立を支持するようになってきた。一度、民主主義の自由を知れば、個人の言動が厳しく監視され規制される中国本土との統一など望む人はいないだろう。もちろん中国にとってこの変化を黙って見逃すことはできない。さまざまな手段で圧力をかけているしかないのだ』、「習近平や共産党の権力維持の正統性が揺らぎかねない状況となりつつある。そうした不安が習近平を焦らせているのかもしれない」、「対中強硬政策はバイデン政権になっても継承・・・民主党と共和党が、中国問題については強硬論で一致」、「「一国二制度」が空中分解すると、台湾の各種世論調査では過半数が台湾の独立を支持するようになってきた」、これでは「個人の言動が厳しく監視され規制される中国本土との統一など望む人はいないだろう」、「統一」には難しい局面だ。
・『中国の軍事行動を抑制するにはどうすべきか  3つの変化は、中国が掲げる台湾の統一をますます困難にしている。だからと言ってただちに軍事侵攻というわけにはいかない。ロシアのウクライナ侵攻が示すように、力による現状変更は軍事的にも経済的にも中国をいっそうの困難に陥れる可能性が高い。 前アメリカインド太平洋軍司令官のフィリップ・デービッドソンが「今後6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と発言したことなどをきっかけに、軍事専門家の間では、中国の軍事侵攻と米中戦争の可能性が盛んに議論されている。その多くが軍事面での戦力や作戦の分析だ。こうした議論を受けて日本国内では、いざというときに備えた防衛力強化とそのために必要な防衛予算の大幅な増額が既定路線となっている。 確かに中国が台湾問題で何らかの軍事行動に出る可能性は高まっている。したがって日本を含む関係国が中国の誤った行動を抑えるために一定の抑止力を持つことは必要なことだ。しかし、抑止力の本来の目的は、相手国の軍事行動を押しとどめ、外交による問題解決を可能にすることにある。 また中国の台湾政策の変遷や習近平の対応を分析すれば、盤石といわれる習近平体制の強硬姿勢の背景にある政治的脆弱性が浮かんでくる。軍事的衝突を回避するためにも、多角的分析や思考を踏まえた解決の道を探っていかなければならない』、「抑止力の本来の目的は、相手国の軍事行動を押しとどめ、外交による問題解決を可能にすることにある」、「軍事的衝突を回避するためにも、多角的分析や思考を踏まえた解決の道を探っていかなければならない」、同感である。

第三に、12月21日付け東洋経済オンラインが掲載した社会学者・東京工業大学名誉教授の橋爪 大三郎氏と社会学者の大澤 真幸氏による「巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか」を紹介しよう。
・『市民動員の発令で国内の反発が広がり、苦戦続きのロシアだが、その様子をつかず離れずの位置でうかがう中国。2022年10月に開かれた中国党大会では習近平総書記の3期目入りが決まり、習一強体制がスタートした。台湾の強行統一を目論む中国は、ロシアの苦戦をどう見ているのだろうか。 アメリカ衰亡の中で目立ってきた中国とロシアという2つの専制主義陣営のパワーにどう対抗すべきか。橋爪大三郎氏、大澤真幸氏、2人の社会学者による『おどろきのウクライナ』(集英社新書)では、文明論、宗教学、歴史、社会学と、あらゆる視座から検証し、白熱した討論が展開される。本稿では、プーチン退場を視野に入れつつ、習近平一強体制をさらに固めた中国の今後を両氏が予測する』、興味深そうだ。
・『ロシア敗北でも中国は目的を果たす  大澤:今、実際に戦争をしているのはロシアとウクライナですが、その後ろにはもっと重要な中国という脅威があります。 もし、ロシアが破れかぶれで戦術核に手を出して戦争に敗北したとして、中国が台湾に侵攻する、あるいはその他の国に及ぼす中国の脅威には、それが必ずしも教訓にならない可能性がある。その点も踏まえ、中国とどう付き合うかは、またロシアとは別途に考えなければいけないと思うのですが、その辺はどうですか。 橋爪:ロシアは、ヨーロッパの盲腸のようなもので、サイズは大きいけど、いわばおまけですね。だけど、中国はどこかのおまけや付録じゃない。中国は中国なんですよ。それに中国は昔から気がついていて、イギリスが来て戦争に負けたときも「あれ?俺たちは本当はもっと中心的な存在ではないか」と思っていた。 さらに、日本があっという間に近代化して日清戦争に勝って、支那事変で中国の半分ぐらいを占領したときも「これはまずい、革命が必要だぞ」と国民党、共産党が出てきた。だから、中国が新しく本当の中国になるためには革命が必要だというのは中国の合意だったんですね。) そこで、ソ連と協力するかしないかで路線が分かれて、ソ連と協力するという人たちが中国共産党になった。本当はソ連と協力なんかしたくないんですよ。中国は中国なんだから。だけど、やむを得ず、共産党という選択をしたと思うわけ。共産党って、モスクワの手下になることですからね。でも、手下になってもいいことが一つもなかったので、中ソ論争の結果、早々とけんか別れしたということです。 その中ソ論争の結果、中国は共産主義だけど、中国というものになった。ここで今日の中国の基本ができたわけです。その後、アメリカや西側世界との関係をどうするかについては、一応協力するという選択をして改革開放になり、ソ連が解体したあとも前進を続け、今日の社会主義市場経済の巨大な中国になった。 大澤:その転換はうまくいきましたね。 橋爪:大成功です。アメリカをうまくだましたんです。いかにも民主主義になりそうなリップサービスをしておきながら、そのつもりは全然なかった。科学技術も資本も全部欲しいものは手に入れた。いよいよ中国を中心に世界を動かしますからねという話になってきた。それで今、アメリカも世界もびっくりしているという状態なのであって、負け惜しみでけんかを売っているロシアとは話が違うんですよ。 大澤:なるほど。いまや中国はアメリカと競る軍事大国ですからね。 橋爪:中国の場合は、通常戦力で勝てますから、核兵器を使う必要がない。核兵器は念のため奥の手にとってあればいいので、通常戦力でやるつもりでしょう。戦争の勝ち負けとはフェアな問題なのであって、戦争で勝って台湾が取られてしまえば、国際社会はこれを認めるしかない。これは主権が侵されたというウクライナとはちょっと違うと思います』、「アメリカをうまくだましたんです。いかにも民主主義になりそうなリップサービスをしておきながら、そのつもりは全然なかった。科学技術も資本も全部欲しいものは手に入れた。いよいよ中国を中心に世界を動かしますからねという話になってきた。それで今、アメリカも世界もびっくりしているという状態」、「中国の場合は、通常戦力で勝てますから、核兵器を使う必要がない。核兵器は念のため奥の手にとってあればいいので、通常戦力でやるつもりでしょう」、なるほど。
・『中国が覇権国となるカギは「台湾」  大澤:今は、ロシアのウクライナ侵略に対して、直接軍事行動はしなくても、西側諸国やアメリカの圧倒的なウクライナ応援がありますね。もし中国が台湾に侵略したとき、実際にアメリカ軍が動くのかどうかが常に話題になっているわけですが、どうなんでしょうか。 というのは、今回のロシアとウクライナの戦争が長引いていて、いろいろ応援はしているものの、やっぱりどこかで妥協しようよという感じが、ヨーロッパやアメリカで出てきています。あまりにもコストが大きいし、ロシアからの石油・天然ガスの禁輸も非常に負担が大きい。この理不尽な戦争を仕掛けられたウクライナに関してでさえ、そうなるんです。 まして、中国の台湾侵略に関してはどうなるか。ヨーロッパの人はどっちでもいいやみたいなところもあるでしょう。ウクライナは公式に独立の主権国家でしたけれど、一応中国に関しては「台湾は一つの中国」という建前もあります。そういう中で台湾が侵略されたとき、果たして大きなコストをかけて台湾を応援しようと西側諸国が思うのかどうか。それはかなり微妙な感じがします。その辺の実際上の見通しを橋爪さんにお聞きしたいんですが。) 橋爪:台湾が存在しているのであれば、西側世界は台湾を支持し続けると思うし、中国としては失敗だと思う。その意味で、台湾が存在しなくなるというのが、中国の戦略目標、戦争目的ですから、台湾が存在しなくなってしまえば、どうしようもない。 それを具体的に言うなら、中国が通常戦力で台湾に上陸して、台湾に新しい政府をつくるということです。それで、形も整うでしょう。そうなると、中国は一つだという中国に、外部から軍事介入する理由がなくなる。だから、これで終わりということになる。 その後どうなるかというと、「台湾を守ります」とかバイデンが言っていたのにそうならなかったわけだから、アメリカは約束を守る能力がなかったということになり、覇権国ではなくなる。そして、文字どおり、中国がアメリカに代わって世界の覇権国になり、まったく新しい時代が始まるということです。 大澤:なるほど、嫌な展開ですね。中国が覇権を持つと、周辺国はどうなりますか。 橋爪:ロシアとインドが中国に寄ってきて、東南アジアは中国圏になります。アフリカも中国になびき、ヨーロッパの貧しい国は中国にがんじがらめになる。さらに中央アジアが中国となって、ラテンアメリカも中国圏になり、残ったのはアメリカとヨーロッパ、そして日本だけという世界が待っているかもしれないという話です』、「中国が通常戦力で台湾に上陸して、台湾に新しい政府をつくるということです。それで、形も整うでしょう。そうなると、中国は一つだという中国に、外部から軍事介入する理由がなくなる。だから、これで終わりということになる」、「「台湾を守ります」とかバイデンが言っていたのにそうならなかったわけだから、アメリカは約束を守る能力がなかったということになり、覇権国ではなくなる。そして、文字どおり、中国がアメリカに代わって世界の覇権国になり、まったく新しい時代が始まる」、「ロシアとインドが中国に寄ってきて、東南アジアは中国圏になります。アフリカも中国になびき、ヨーロッパの貧しい国は中国にがんじがらめになる。さらに中央アジアが中国となって、ラテンアメリカも中国圏になり、残ったのはアメリカとヨーロッパ、そして日本だけという世界が待っているかもしれない」、嫌だが、ありそうなシナリオだ。
・『今まさに文明の衝突が起きている  大澤:それはまさに文明の衝突ということですかね、ビジョンとしては。 橋爪:うん、そう思う。イスラムも、ヨーロッパよりは中国のほうがいいと思うかもしれないな。新疆ウイグルでいじめられているけど、それなりに世話にもなっているし、イスラム教徒の扱いについては中国は慣れているからね。 大澤:『おどろきのウクライナ』でも話しましたが、いま起きているロシアとウクライナの戦争も、ある意味で文明の衝突なんですよね。 サミュエル・P・ハンチントンの『文明の衝突』(1996年)の話をするときに、もう一つ浮かぶのがフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』(1992年)のビジョンです。歴史の終わりというのは、リベラルデモクラシーが勝利して、平和な世界が来るというイメージ。 一方、文明の衝突は、ある種のコンフリクトが地球に残っている状態を指しているわけだから、この2つは一見対立するビジョンに見えますけれど、実際には同じものの2つの側面を語っているともいえる。 つまり、文明の衝突があったとしても、プラクティカルに解決できる程度の文明の衝突であれば、ゆるやかでリベラルデモクラティックな多文化主義のようなものが地球レベルでできるということで、それなりに見通しは明るいという感じです。 ただ、その2つのビジョンが世に提示されて30年ぐらいの時間が経ってみると、文明の衝突ってそんなに生易しいものじゃないということがわかった。文明の衝突的なビジョンというのは、一番危険な場合はこうなるよというのを今回僕らは見せつけられているんだと思う。) 橋爪:うん、場合によってはもっと最悪なことも起こりかねない。 大澤:はい、そうですね。今後もしロシアが戦争に負けたとしても、広い意味での文明の衝突状態が続くとすれば、中国、インドが出てくると、もっと深刻な問題になります。 重要なことは、いま僕らに起きていることは、すべてつながっているということ。そのつながりをポジティブに利用する形で解決するしかないんですね。 コロナ危機でもそれがはっきりしたわけですが、コロナだけじゃない。気候変動の問題にしても、世界がいかに連帯に向かうかということが試されている。その場合に文明の衝突的な因子があると、いろんなことがうまくいかないわけです。 ほかの文明の場合は、ほっといても、経済的な意味でうまくいかないので弱体化していくんですよね。だけど、中国の場合は、改革開放以降、大変な成功を手中にしている。そういう状況の中でどうすればいいのか、誰にも見えないというか、少なくとも僕には見えないというのが今の現状なんですが、どうでしょうね』、なるほど。
・『中国は「新しい規格」を提供できるのか  橋爪:世界がつながっていて、まとまって対抗しなきゃいけないということと、覇権国、仕切り屋が複数あって、しかも文明の背景が違うから対立しなきゃいけないということは同時に起こるんですよ。これはちっとも矛盾することじゃない。 例えば二昔ぐらい前に、ビデオテープの規格でVHSとベータの覇権争いがあったじゃないですか。1つのほうが使う側には便利がいいに決まっているわけですよ。でも、2つが提案されて、ベータのほうが性能がよかったらしいんだけど、VHSのほうがメジャーなメーカーを複数押さえたことで標準規格を勝ち取った。だから、覇権があっても、覇権争いは起こるんですよ。 だから、西側世界がしばらく世界を仕切ってきて、いろんな規格を世界中に押しつけて、異なった文明は居心地の悪い思いをしながら従ってはきたものの、この規格でなくてもいいんじゃないかとみんな思っているわけだ。そのときに、別の規格が提案されて、そっちのほうが安く使えますというオファーが来たら、乗り換えることは十分考えられる。 今、中国と西側は、そういう関係になりかかっているんじゃないか。中国が世界中をこれで仕切るという新しい規格を提供する力があるのかどうか、世界はそっちに乗り換えるのかどうかという、そういう話なんですよ。 大澤:ああ、世界の規格がドラスティックに置き換わるという話なんですね。これはかなり怖い話ですよ。 橋爪:そのための一番手近な問題として台湾がある。台湾を解放できなければ、中国にはそういう能力がないということになるから、中国は世界を仕切るもう一つのオプションになることができない。しかし、台湾を中国の思うように解決すれば、もはや中国はローカルな政権ではなくて、グローバルな覇権国だということが明らかになる。こういう話だと思う。 ただ、イギリスがアメリカになったように、アメリカが中国になるかというと、全然系統が違うので、そのリスクは甚だしく大きいと思う。このことは簡単に証明できる。中華人民共和国憲法を見てみると、中国共産党の条項がない。 大澤:ポイントはそこですね』、「中国が世界中をこれで仕切るという新しい規格を提供する力があるのかどうか、世界はそっちに乗り換えるのかどうかという、そういう話なんですよ。 大澤:ああ、世界の規格がドラスティックに置き換わるという話なんですね」、「中華人民共和国憲法を見てみると、中国共産党の条項がない」、初めて知ったが、中国にとっては都合がよさそうだ。
・『人類の運命を一人の人間に預けていいのか  橋爪:前文に、中国共産党が頑張ったから、中華人民共和国ができたのでよかったというようなことが書いてあるんだけど、第1条から最後のほうまで読んでも、中国共産党の規定がないんですよ。普通の立憲君主制であれば、存在すべき団体はすべて憲法に書いていなければならない。アメリカ合衆国憲法だったら、大統領が存在し、議会が存在し、最高裁判所が存在し、ときちんと規定がある。 ところが、中華人民共和国憲法に中国共産党が書かれてないということは、中国共産党は国家機関じゃないということだ。中華人民共和国憲法によってコントロールされないということだ。 中国共産党は任意団体であって、超憲法的な存在として中華人民共和国を指導して、支配しているということなんです。これはもう世界中の憲法とまるで違う。似ているのはソ連の憲法くらい。ソ連の憲法は、ソ連共産党が超法規的に、ソビエト社会主義連邦共和国を支配していたので、それを真似したものが残っているんですね。 こんなものが世界標準になって、世界中を支配していいのか。憲法が中国共産党をコントロールしないとすれば、中国共産党は自分で自分をコントロールするしかない。しかし、中国共産党はそうではなく、中央委員会、政治局常務委員会、チャイナセブンといったものがコントロールしていて、そのトップの総書記が実権をすべて握っているわけです。これはもう完全な権威主義で独裁じゃないですか。 これは伝統的に中国のやり方ではあるが、人類の運命を一人の人間に預けてしまっていいのか。これを世界のやり方として認めていいのかどうか。まずそういう問題があることを深刻に認識したうえで、台湾の問題を考えなきゃいけないと思いますよ。 大澤:なるほど。説得力ありますね。巨大中国を取り仕切っている共産党が憲法の条項にも載っていない、ただの任意団体であるということは、『おどろきのウクライナ』でも言及しましたね。しかし、いまやそのトップがただならぬ権力を握っていて、世界に影響を及ぼそうとしている。おっしゃるとおり、これはもう人類の未来の問題といっていい。我々自由主義陣営がどう押し返すか、今が正念場だと僕も思います』、「中国共産党はそうではなく、中央委員会、政治局常務委員会、チャイナセブンといったものがコントロールしていて、そのトップの総書記が実権をすべて握っているわけです。これはもう完全な権威主義で独裁じゃないですか。 これは伝統的に中国のやり方ではあるが、人類の運命を一人の人間に預けてしまっていいのか。これを世界のやり方として認めていいのかどうか。まずそういう問題があることを深刻に認識したうえで、台湾の問題を考えなきゃいけないと思いますよ」、「もう人類の未来の問題といっていい。我々自由主義陣営がどう押し返すか、今が正念場だと僕も思います」、強く同意する。
タグ:AERAdot「元自衛隊陸将が解説 台湾有事で日本に起こりうる「シナリオ」と「課題」」 台湾 (その6)(元自衛隊陸将が解説 台湾有事で日本に起こりうる「シナリオ」と「課題」、中台の緊張激化の中、中国抑止をどう考えるのか 中国の台湾政策変遷の背景にある3つの変化、巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか) 薬師寺 克行氏による「中台の緊張激化の中、中国抑止をどう考えるのか 中国の台湾政策変遷の背景にある3つの変化」 東洋経済オンライン 「「中国軍が台湾東部に上陸するためには、台湾と与那国島の間を通る可能性が高い。地対艦ミサイルの射程などを考えれば、中国は石垣島より西側の島々から妨害行動を受けることを想定し、戦域として考えているだろう」と語る。同時に「中国の立場では、日本が尖閣諸島を不法占拠していることになる。当然、尖閣も戦域に含まれる」」、なるほど。 「与那国島や石垣島などでの住民避難が課題になる。山下氏は「どの時点で、どのくらいの規模で、どこに、どのように避難するのか、早急に訓練を始めるべきだ」」、「こうした複雑な事態を指揮する政治家の判断も重要になる」、単に自衛隊に任せておくば済む話ではない。訓練の準備だけでも早急に始めるべきだ。 「連日のように中国海警局の船が日本の接続水域内に入り、時には領海内にまで侵入を続けている。人海戦術で同じ行為を長期間にわたって継続し、相手を疲弊させ諦めさせようとでもいうのだろう」、「台湾海峡でも同じ手法だとすれば、戦闘機の中間線越えはこれから先も長く続くかもしれない」、覚悟する必要がありそうだ。 「香港の現状が示すように習近平にとって「一国二制度」はもはや意味のない構想なのだ」、もう恰好つけずに本音でいくようだ。 「習近平や共産党の権力維持の正統性が揺らぎかねない状況となりつつある。そうした不安が習近平を焦らせているのかもしれない」、「対中強硬政策はバイデン政権になっても継承・・・民主党と共和党が、中国問題については強硬論で一致」、「「一国二制度」が空中分解すると、台湾の各種世論調査では過半数が台湾の独立を支持するようになってきた」、 これでは「個人の言動が厳しく監視され規制される中国本土との統一など望む人はいないだろう」、「統一」には難しい局面だ。 「抑止力の本来の目的は、相手国の軍事行動を押しとどめ、外交による問題解決を可能にすることにある」、「軍事的衝突を回避するためにも、多角的分析や思考を踏まえた解決の道を探っていかなければならない」、同感である。 橋爪 大三郎 大澤 真幸 「巨大中国が「台湾侵攻」に踏み出す決定的理由 「ロシア暴走」の教訓は覇権国争いに生きるのか」 おどろきのウクライナ』(集英社新書 「アメリカをうまくだましたんです。いかにも民主主義になりそうなリップサービスをしておきながら、そのつもりは全然なかった。科学技術も資本も全部欲しいものは手に入れた。いよいよ中国を中心に世界を動かしますからねという話になってきた。それで今、アメリカも世界もびっくりしているという状態」、「中国の場合は、通常戦力で勝てますから、核兵器を使う必要がない。核兵器は念のため奥の手にとってあればいいので、通常戦力でやるつもりでしょう」、なるほど。 「中国が通常戦力で台湾に上陸して、台湾に新しい政府をつくるということです。それで、形も整うでしょう。そうなると、中国は一つだという中国に、外部から軍事介入する理由がなくなる。だから、これで終わりということになる」、「「台湾を守ります」とかバイデンが言っていたのにそうならなかったわけだから、アメリカは約束を守る能力がなかったということになり、覇権国ではなくなる。 そして、文字どおり、中国がアメリカに代わって世界の覇権国になり、まったく新しい時代が始まる」、「ロシアとインドが中国に寄ってきて、東南アジアは中国圏になります。アフリカも中国になびき、ヨーロッパの貧しい国は中国にがんじがらめになる。さらに中央アジアが中国となって、ラテンアメリカも中国圏になり、残ったのはアメリカとヨーロッパ、そして日本だけという世界が待っているかもしれない」、嫌だが、ありそうなシナリオだ。 「中国が世界中をこれで仕切るという新しい規格を提供する力があるのかどうか、世界はそっちに乗り換えるのかどうかという、そういう話なんですよ。 大澤:ああ、世界の規格がドラスティックに置き換わるという話なんですね」、「中華人民共和国憲法を見てみると、中国共産党の条項がない」、初めて知ったが、中国にとっては都合がよさそうだ。 「中国共産党はそうではなく、中央委員会、政治局常務委員会、チャイナセブンといったものがコントロールしていて、そのトップの総書記が実権をすべて握っているわけです。これはもう完全な権威主義で独裁じゃないですか。 これは伝統的に中国のやり方ではあるが、人類の運命を一人の人間に預けてしまっていいのか。これを世界のやり方として認めていいのかどうか。まずそういう問題があることを深刻に認識したうえで、台湾の問題を考えなきゃいけないと思いますよ」、 「もう人類の未来の問題といっていい。我々自由主義陣営がどう押し返すか、今が正念場だと僕も思います」、強く同意する。
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香港(その8)(香港返還25年の年に上海封鎖の因縁 中国の2大「制御不能都市」陥落の意味、コロナ禍の香港から「金融専門人材」の流出続く 金融管理局や証券先物委員会でも離職率上昇、1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く) [世界情勢]

香港については、2021年10月19日に取上げた。今日は、(その8)(香港返還25年の年に上海封鎖の因縁 中国の2大「制御不能都市」陥落の意味、コロナ禍の香港から「金融専門人材」の流出続く 金融管理局や証券先物委員会でも離職率上昇、1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く)である。

先ずは、6月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「香港返還25年の年に上海封鎖の因縁、中国の2大「制御不能都市」陥落の意味」を紹介しよう。
・『156年間イギリスの統治下にあった香港が、1997年7月1日に中国へ返還されてから間もなく25年がたつ。くしくもその直前に、香港と肩を並べる国際都市の上海で、2カ月にもわたる厳格なロックダウンが断行された。オミクロン株の感染拡大防止には非有効的といえる上海での措置は、3年前の「香港100万人デモ」の鎮圧と通底するものがある。上海と香港の2都市の歴史にさかのぼり、今後の上海の行方を深読みしてみた』、興味深そうだ。
・『市民を中央政府に服従させることが狙いか  香港返還から25年を迎えた今年、上海ではロックダウンが断行されたことに因縁を感じるのは行き過ぎでもないだろう。 少なくともこの2都市には共通点がある。それは、中央政府のコントロールが利かない“制御不能な都市”ということだ。それを象徴する出来事が、最近では2019年の「香港100万人デモ」と、大胆な住民の反発が起こった今回の「上海ロックダウン」だ。 習近平国家主席の”子飼い”と言われる上海市トップの李強氏(上海市共産党委員会書記)を歯牙にもかけない上海市民の態度は、習氏をして「自分への対抗意識」と警戒させた節がある。 上海は、習氏にとって天敵と言える江沢民派閥の牙城であった。習氏は2012年の党総書記就任以降、「反腐敗運動」を展開して上海閥の一掃に本腰を入れた。1991年から続いた「上海市長は、地元で経験を積んだ官僚が就く」という慣例が2020年に破られたのもその一例で、中央から“子飼い”が派遣されるという人事に、上海市民は不満を高めていた。 こうした一連の“上海つぶし”も、裏を返せば、そこに独特な政治風土があるからだと解釈できるだろう。 そんな上海で行われた今回のロックダウンは、2500万人もの市民を「自宅に幽閉」するもので、「最低限の外出」を許可した武漢市のロックダウンと比較しても、かなりの強硬措置だったことがうかがえる。上海出身の妻を持つ台湾人の王忠義さん(仮名)は、今回のロックダウンの背景をこう解釈している。 「ゼロコロナを大義名分に、上海市民を中央政府に服従させることが狙いだと思いました。軟禁同然の厳しい措置は、共産党の指示に従う習慣を養うためであり、いわば“市民教育の一環”ではないかと。上海市民がおとなしくなれば、他の都市の市民もおとなしくなりますから」』、「「ゼロコロナを大義名分に、上海市民を中央政府に服従させることが狙いだと思いました。軟禁同然の厳しい措置は、共産党の指示に従う習慣を養うためであり、いわば“市民教育の一環”ではないかと。上海市民がおとなしくなれば、他の都市の市民もおとなしくなりますから」、なるほど。
・『開港と“西洋譲り”の思考回路は上海・香港共通  上海は、以前から欧米との接点を持つ人口が一定の層を成し、それゆえ合理的な思考と自由主義的な志向が強い地域ともいわれてきた。ゼロコロナを徹底しようとする当局に対しては「違法行為につき訴える」と歯向かう市民もいたように、党の指導に異議を唱える人たちが一段と増えた。そんな上海からは、「開港」の歴史で香港と共通する文化的素地が見えてくる』、「開港と“西洋譲り”の思考回路は上海・香港共通」、確かにその通りだ。
・『香港返還25年の年に上海封鎖の因縁、中国の2大「制御不能都市」陥落の意味  香港は1841年、上海は1842年に、いずれも英国によって開港させられた都市だ。今なお残る当時の西洋建築からは、文化や制度や思想面でも大きく影響を受けたことが垣間見える。 二つの都市の市民には、「新しい物好きで、多様な価値に抵抗がなく、なおかつ遵法精神があるなどといった面で、共通するものがある」(澎拜新聞)。こうした点こそ“西洋譲り”といえるだろう。 戦後から1950年代にかけて、共産党による内戦と建国を嫌い、上海から多くの住民が英領香港に命からがら逃げ込んだ。その結果、香港島の北角(ノースポイント)は移民が増え、「リトル上海」と呼ばれたそうだ。ベッドタウンで知られる新界(ニューテリトリー)の荃湾(ツェンワン)でも上海語を使う住民が多かったといわれている。上海で財を成した実業家や映画人も、香港に渡り活躍した。 このとき、19世紀に香港に拠点を設け、大陸の港湾都市に支店網を張り巡らしたイギリス資本の香港上海銀行(以下、HSBC)も、上海支店を残して香港に退去した。当時の上海には、公債、株、先物などの金融業に従事する人材もいたが、彼らも香港に移住した。 HSBCは当時、大陸での金融業を独占し、中国経済に深く入り込み、また本拠地の香港でも、特殊な地位と特権とともに金融市場を支配した。1949年、大陸では新中国が誕生、その後共産党政権のもとで混乱が続く中、香港は経済の発展期に突入し、アジアの国際金融センターとして成長した。 ところが、1978年以降、中国が改革開放(市場経済)路線に転換すると、逆の流れが始まった。 香港系資本が上海などの諸都市で投資に乗り出したのだ。特に不動産開発は香港系が得意とするところで、黎明(れいめい)期の上海の不動産市場をけん引した。こうして地下では互いに深いつながりを持ちながら、“兄貴分”としての香港が上海の発展に大きく貢献した。上海が国際金融センターとしての地位を築いたのも、香港との関係と無縁ではなく、2010年代は互いに競い合いながらも協力関係を構築してきた。 HSBCについて言えば、中国の改革開放を商機と読み、1997年の香港返還とともにアジア本部を香港から上海に移転させようとしていた。2000年、森ビルは浦東・陸家嘴に開発したオフィスビルの名称をHSBCに譲渡し、「HSBCタワー(現在の恒生銀行大廈)」と変更したが、これは再び上海が国際金融センターになることを意味していた。 このように、香港の発展には上海系の力が、上海の発展には香港系の力が相互に作用しあっていた』、「香港の発展には上海系の力が、上海の発展には香港系の力が相互に作用しあっていた」、それほど深い関係があったとは初めて知った。
・『上海でも人や資本の流出が始まるか  他方、香港の繁栄のシナリオは1997年の中国返還以降、徐々に狂いを見せた。 1984年12月、当時の英首相マーガレット・サッチャー氏と中国国務院総理の趙紫陽氏が「英中共同声明」に署名した。「中国は一国二制度をもとに、中国の社会主義を香港で実施せず、香港の資本主義の制度は50年間(2047年まで)維持される」とする公約のもと、香港は英国から中国に返還された。 ところが中国は、「50年間不変」とした公約をほごにしたため、学生層は “民主と自由”を求めて大反発した。2014年には、3年後(2017年)に予定されていた普通選挙の導入が事実上撤回されたことに抗議する「雨傘革命」が、5年後の2019年には、逃亡犯条例の改正に反対する「時代革命」が起こった。 警察とデモ隊の武力衝突やデモ隊による地下鉄駅や銀行の破壊などで、香港は大混乱に陥った。中央政府が徐々に干渉や圧力を強化した結果、一部の企業や資本は香港から撤退し、また一部の香港人や外国人も生活や仕事の拠点を他の国に移す事態となった。 そして今、上海では似たような現象が見られる。当局による“ロックダウン”という締め付けで、一部の外国人は上海から出国(もしくはその計画)を進めているのだ。上海市民の間では一時、隠語を使った「移民」情報の検索が激増したが、当局は中国人の不要不急の出国に制限をかけた。 今回のロックダウンにより、上海市民は「兵糧攻め」さながらのやり方で苦しめられた。市内に26ある総合病院も診療停止となり、急患ですらPCR検査が前提だという非合理的なルールが敷かれ、命を落とした市民もいる。陽性者は劣悪な環境の野戦病院に連行されるが、鼻っ柱の強い上海住民は警察権力などものともせずに闘い続けた。マンションや小区にまで視察に来た李強氏に食ってかかる住民もいた。「食ってかかる」とはつまり習政権に歯向かうことを意味する。だからこそ、上海市民を幽閉して“おきゅうを据える”必要があったのだろう。前出の王忠義さんはこう語っている。 「習指導部からすれば、上海市民が“革命”など企てたらたまったものではありません。その押さえ込みのためにコロナを利用して、長期にわたり上海市民を監禁する。それが中央政府の上海に対する“おきゅう”だったのではないかと私は考えています」 「香港デモ」は制圧され、その後急速に「中国化」が進み、香港はすっかり骨抜きにされてしまった。支配のためには経済発展も台無しにするそのやり方は、上海でも繰り返されるのだろうか。 中国共産党が完全な支配を実現させる上での“目の上のコブ”は、西洋文化の影響を受けた香港であり上海だった。そういう“西側の精神”が根付く都市を衰退させ、トンキン湾が囲む海南島を香港に取って代わる自由貿易港と国際的商業都市にする――習氏の野望はここにつながっていくのではないだろうか』、「中国共産党が完全な支配を実現させる上での“目の上のコブ”は、西洋文化の影響を受けた香港であり上海だった。そういう“西側の精神”が根付く都市を衰退させ、トンキン湾が囲む海南島を香港に取って代わる自由貿易港と国際的商業都市にする――習氏の野望はここにつながっていくのではないだろうか」、「習氏の野望」は冷静な計算抜きにした大雑把なもののようだ。

次に、6月28日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「コロナ禍の香港から「金融専門人材」の流出続く 金融管理局や証券先物委員会でも離職率上昇」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598270
・『2020年に新型コロナウイルスの世界的大流行が始まって以降、香港政府は海外からの入境者に対する(中国本土に準じた)厳格な水際対策を続けている。そんななか、香港の金融業界では海外から派遣された駐在員や専門知識を持つ人材の流出に歯止めがかからなくなっている。 香港金融管理局(HKMA)の余偉文(エディー・ユー)総裁は6月13日、同局職員の2021年の離職率が7%に上ったことを明らかにした。過去の離職率はおおむね3~4%だったのと比較して大幅な上昇だ。 余氏によれば、2021年の離職者はIT(情報技術)分野の人材が最も多かった。彼らはIT技術を駆使した金融機関の検査・監督や、同局の業務プロセスのデジタル化などに携わっていたという。 HKMAは香港政府の金融監督機関であると同時に、事実上の中央銀行でもある。香港の金融業界で最もステータスの高い組織の1つだ。香港政府の開示資料によれば、2021年初め時点の職員数は948人。しかし定員は1005人であることから、全体の5%を超える欠員が生じている状況だ』、「香港金融管理局」の「職員の2021年の離職率が7%に上った」、確かに通常の倍と多いようだ。
・『行政長官は「将来を楽観」と言うが…  人材流出が顕著なのはHKMAだけではない。香港証券先物委員会(SFC)の雷添良(ティム・ルイ)主席は、2月7日に開催された香港立法評議会の金融サービス委員会で、SFCの職員の離職率が2020年の5.1%から2021年は12%に上昇したことを明らかにした。 雷氏によれば、離職者の増加の背景には金融業界内での人材争奪戦の激化や、香港から海外への移民の増加がある。そこでSFCは、職員の報酬や昇進の見直し、働き方の多様化などあの手この手の対策を打ち、人材の呼び戻しを図っている。SFCの2022~2023会計年度の人件費予算は、前年度より1億4100万香港ドル(約24億円)増額された。 本記事は「財新」の提供記事です 香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は6月12日、金融専門人材の流出問題について公開の場で次のように発言した。 「香港の(国際金融センターとしての)優位性は、他所がたやすく取って代われるものではない。(北京の)中央政府も香港を強力に支援してくれている。香港には内外の人材を再び引き寄せる力があり、私は将来を楽観している」、「香港証券先物委員会」の「職員の離職率が2020年の5.1%から2021年は12%に上昇」、「林鄭月娥行政長官」の強気発言はどう見ても無理があり、「金融専門人材の流出問題」の深刻さを表していると見るべきだろう。

第三に、12月25日付け東洋経済オンラインが掲載したライター・行政書士の熊野 雅恵氏による「1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/641227
・『2019年11月、香港で発生した逃亡犯条例改正反対デモで最多となる1377 名の逮捕者を出した香港理工大学包囲事件。デモ参加者として学内でその様子を撮影した『理大囲城』は香港では上映禁止となったものの、世界の映画祭を席巻。今回は、同作品を監督した「香港ドキュメンタリー映画工作者」に撮影時のエピソードや現在の香港の様子について話を聞いた。 【あらすじ】香港屈指の繁華街にある香港理工大学を警官隊が包囲し、デモ隊と学生はキャンパスで13 日間に及ぶ籠城を余儀なくされた。警察とデモ隊たちの激しい攻防によりキャンパスには火の手が上がる中、デモ隊は「残るか、去るか」の決断を迫られる。個人情報と引き換えに警察が投降を迫る中、暴動罪で逮捕されれば懲役 10 年を課せられる恐怖と仲間を裏切る後ろめたさによって、デモ隊の心はかき乱される……。ロープを使い橋から飛び降り支援者のバイクで脱出する者、下水道から脱出する者、最後まで大学に留まり戦い続けようとする者。彼らの行く手に待つものは―― ――香港理工大学(以下、「理大」)に籠城していたのは若い世代だと思うのですが、日本でも1960年代後半と1970年代後半に学生運動が、また北京では1989年に多くの若者たちが命を落とした天安門事件があり、いずれも敗北に終わっています。彼らはそのことは意識していたのでしょうか。 日本もしかり、中国もしかり、彼らは政府に対する抵抗運動が敗北に終わったケースがたくさんあるのはわかっていました。 でも、「失敗するのをわかりながらも戦わなくてはいけない」という気持ちが学生たちの中にあったんです。 当初は「Be Water」というキャッチフレーズが付くぐらいにデモ隊は縦横無尽に街中を占拠しており、それは文字通りまるで水のようでした。 ところが、後半になるにつれて、デモはストリートから、ロケーション(場所)に変化していきました。すでに水のように柔軟に神出鬼没に表れてデモをするという雰囲気ではなくなっていました。 それはデモ隊の若者が駐車場の4階から転落して亡くなってしまった事件がきっかけでした。いまだに真相はわかりませんが、その事件をきっかけにデモ隊の中に「復讐しなくてはならない」と怒りをあらわにする人たちが出てきたのです。 理大での籠城が発生した当時、デモは後半に差しかかっていましたが、状況はよくなっているとはいえず、学生たちも運動全体に対して悲観的になっていました。ただ、失望がありながらも、「家にじっとしていられない」と思った人たちがあの大学の建物の中にいたんです。 そういう意味では、失敗するとわかっていたかもしれないけど、体の方が動いてしまっていたし、わずかな希望にかけていました。民主化は確かに失敗続きでした。でも、今回は変われるかもしれない、少しは違う結果があるかもしれないと。 さらにこの世代で結果が出なくても、この運動が次の世代に何かしらの意義や意味をもたらして、次の機会に変えられるきっかけになるかもしれない。そうした希望や期待を持って立てこもっていた人たちは多くいました。 一方で、理大に籠城した学生の参加者たちの討論で、よく聞いたのは「悲観的になって行動を起こさない人たちや運動から引いて行ってしまった人たちに対して失望した」という言葉でした。デモから撤退する人もいる中、籠城した人たちは強い意志を持って運動に参加している人たちだったんです(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、「香港理工大学」の事件は記憶にないが、どうなったのだろう。
・『「自由を奪われたくない」若い世代  Q:学生たちの祖父母の世代は、元々自由のない環境で育って、香港に移住して自由を満喫したという感覚が強く、孫に向かってデモへの参加を辞めるように叱責しているという話も聞きました。一方で若い世代は自由を守ろうと必死になっています。 A:若い世代はインターネット世代なので、リアルタイムに世界中から入って来る様々な情報に影響されています。 そうした環境の中で、中国により自分たち香港人の文化が奪われてしまう、いわば「文化の侵食」ですが、そのことに対してとても敏感になっていると感じました。) 複雑な社会背景の中で、より自分たちの住んでいる場所である香港の文化を守りたいという気持ちが他の世代に比べて強いのかもしれません。 そのことが、2019年4月に犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改定案が議会に上がったときに、デモへと駆り立てたのではないでしょうか。中国に移送される恐怖をほかの世代よりも敏感に感じ取っていたと思います。 Q:香港のデモは2020年に入って始まったコロナ禍により、デモそのものができなくなってしまい、鎮静化の一途を辿ってしまいました。デモに参加した人たちはその後、どうしているのでしょうか。 A:デモのリーダー格の人たちの多くは出国したか、当局によって刑務所に入れられたかのどちらかです。 では香港に残った人たちがどのような生活をしているかということについては、むしろ私たちが知りたい、知って取り上げたいという気持ちです。これから調査したいと思っています。 一時的ではあるかもしれませんが、絶望して、香港の政治的な出来事から意識してすべて離れるという人もいるでしょう。また、いわゆる「ブタ(港猪/香港の豚の意味)」になった人(=政治に無関心になった人)もいるかもしれません。 でもそれは一時的なもので、例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています』、「でもそれは一時的なもので、例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています」、根拠に乏しい希望的観測に過ぎないようだ。
・『子どもの将来を考えて移住する人  Q:人材の海外流出は進んでいると思いますか。 A:全員が香港を離れようとしているわけではありません。ただ、現実に人材流出は起きているとは思います。 台湾やイギリスに移住した人もいました。あくまで自分の肌感覚ですが、やはり高学歴でスキルがあり、どこの国でも働ける人や、子どものいる人が彼らの将来を案じて香港を離れるという決断をする人が多いです。 一方で、とても有能な人が香港に残っていることも事実で、こういう時期だからこそと、お互いに支え合ったり、励まし合っている人たちもいます。 Q:2022年7月に林鄭月娥(キャリー・ラム)に代わり、新たに警察出身の李家超(ジョン・リー)が行政長官に就任しました。デモ以後、香港では天安門事件に関する記述が教科書から消えたと聞きましたが、いわゆる「表現規制」は進んでいると感じますか。 A:確かに、天安門事件に関する歴史の教科書における記述は少なくなっています。また、報道全般において、政治的なニュースの量が減っていたり、政府にとって不都合な事実は明らかに隠そうとしているように感じます。 表現規制は政策レベルで実施しています。少し前にも、政府に対して批判的なコメントをSNSに掲載しただけで、国家安全維持法に抵触し、訴追されるということがありました。 2020年6月に成立した国家安全維持法はとても曖昧な内容だったので、私たちの生活はどんな風に変わるのか、当時はわかりませんでした。しかし、今、香港で生活をしていて感じるのは、自由な表現空間は間違いなく縮小傾向にあるということです。 Q:被写体とカメラの距離が近いように感じましたが、どのようにして撮影していたのでしょうか。 A:現場でカメラを回していると目立つので、被写体の人たちは自分が撮影されていることはわかっています。撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました。 例えば大きな決定をするときの会議などにも立ち会い、撮影していますが、おそらくその時にはもう誰もカメラを気にしていなかったと思います。すべての撮影について了承している、という状況で撮影していました』、「撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました」、やむを得ないテクニックだ。
・『なかったことにされたくない  Q:撮影中に印象に残ったことはありましたか。 A:「今の自分を記録してほしい」というリクエストを受けました。13日間の撮影の後半に現場にいた学生たちが私たちにインタビューをして欲しいと声を掛けてきたのです。 そのとき、私たちは彼らの考えや感じたことなどを聞きました。香港のデモは公式には「違法な出来事」として存在しなかったことにされる可能性もあります。 その瞬間の自分を記録できるのは、そこにいた人しかいない。記録されなければそこで過ごした時間がなかったことになってしまうかもしれない。その瞬間の自分を残してほしい、という切実な願いがありました。 また、籠城していた13日間は理大の外に出ることはできませんでした。私は食べ物がなくパンばかり食べていたのですが、デモの参加者の一人が鶏のもも肉をみつけて、学食で唐揚げを作ったんです。 それを見て私は「美味しそうだな」と思ったのですが、デモの参加者は「この唐揚げは僕の人生で最後の食事になるかもしれない。あなたはまだ外でいくらでも食べられる」といわれました。それがとても衝撃的で、忘れられない瞬間でした。それほどまでに覚悟をして籠城していたんですね』、「香港のデモは公式には「違法な出来事」として存在しなかったことにされる可能性もあります。 その瞬間の自分を記録できるのは、そこにいた人しかいない。記録されなければそこで過ごした時間がなかったことになってしまうかもしれない。その瞬間の自分を残してほしい、という切実な願いがありました」、自己満足の色彩が濃いようだ。
・『記憶されることの大切さ  Q:現地を取材していて、外国メディアも含めて、マスメディアによる報道が香港当局や中国政府に対してプレッシャーを与えることができていると感じましたか。 A:アメリカのCNNやBBCなど国際的に大きなメディアの記者たちは数多くいましたし、デモのライブ中継もかなり見かけました。 ただ、デモの現場でもよく討論されていましたが、現場レベルでは「報道が政府に対してプレッシャーを与えている」という実感はあまりなかったというのが正直なところです。 メディアが盛り上がって取り上げても、そのことが現場に影響を与えていたことはなかったように感じました。報道によって政府の決断が変わったかというと、結果としてそれはなかった。そういう意味では、報道は失敗に終わっているところもあるかと思います。 しかし、もう少し視点、視界を広く持つと、世界のメディアでこの問題が取り上げられるということは、世界の人々に記憶されるということでもあると思います。 「記憶される」ということは香港に残ると決めた人たち、もしくはデモに参加したことがある人たちにとってはとても有意義なことです。自分が自由を求めて戦った記録として後世に伝えることができるし、世界の人々に記憶されれば、協力者が増えて民主化への流れを作りやすくなるかもしれません。 そのことが香港に残った人たちにとってこれからの香港での活動や生活をあきらめない理由につながると思っています。 私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです』、「私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです」、「メディア」関係者の思い上がりのような気がする。専制主義政府に対しては、そんな力はないと考えるべきではないだろうか。

第三に、12月25日付け東洋経済オンラインが掲載した ライター・行政書士の熊野 雅恵氏による「1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く」を紹介しよう。
・『2019年11月、香港で発生した逃亡犯条例改正反対デモで最多となる1377 名の逮捕者を出した香港理工大学包囲事件。デモ参加者として学内でその様子を撮影した『理大囲城』は香港では上映禁止となったものの、世界の映画祭を席巻。今回は、同作品を監督した「香港ドキュメンタリー映画工作者」に撮影時のエピソードや現在の香港の様子について話を聞いた。 【あらすじ】香港屈指の繁華街にある香港理工大学を警官隊が包囲し、デモ隊と学生はキャンパスで13 日間に及ぶ籠城を余儀なくされた。警察とデモ隊たちの激しい攻防によりキャンパスには火の手が上がる中、デモ隊は「残るか、去るか」の決断を迫られる。個人情報と引き換えに警察が投降を迫る中、暴動罪で逮捕されれば懲役 10 年を課せられる恐怖と仲間を裏切る後ろめたさによって、デモ隊の心はかき乱される……。ロープを使い橋から飛び降り支援者のバイクで脱出する者、下水道から脱出する者、最後まで大学に留まり戦い続けようとする者。彼らの行く手に待つものは―― ――香港理工大学(以下、「理大」)に籠城していたのは若い世代だと思うのですが、日本でも1960年代後半と1970年代後半に学生運動が、また北京では1989年に多くの若者たちが命を落とした天安門事件があり、いずれも敗北に終わっています。彼らはそのことは意識していたのでしょうか。 日本もしかり、中国もしかり、彼らは政府に対する抵抗運動が敗北に終わったケースがたくさんあるのはわかっていました。 でも、「失敗するのをわかりながらも戦わなくてはいけない」という気持ちが学生たちの中にあったんです。 当初は「Be Water」というキャッチフレーズが付くぐらいにデモ隊は縦横無尽に街中を占拠しており、それは文字通りまるで水のようでした。) ところが、後半になるにつれて、デモはストリートから、ロケーション(場所)に変化していきました。すでに水のように柔軟に神出鬼没に表れてデモをするという雰囲気ではなくなっていました。 それはデモ隊の若者が駐車場の4階から転落して亡くなってしまった事件がきっかけでした。いまだに真相はわかりませんが、その事件をきっかけにデモ隊の中に「復讐しなくてはならない」と怒りをあらわにする人たちが出てきたのです。 理大での籠城が発生した当時、デモは後半に差しかかっていましたが、状況はよくなっているとはいえず、学生たちも運動全体に対して悲観的になっていました。ただ、失望がありながらも、「家にじっとしていられない」と思った人たちがあの大学の建物の中にいたんです。 そういう意味では、失敗するとわかっていたかもしれないけど、体の方が動いてしまっていたし、わずかな希望にかけていました。民主化は確かに失敗続きでした。でも、今回は変われるかもしれない、少しは違う結果があるかもしれないと。 さらにこの世代で結果が出なくても、この運動が次の世代に何かしらの意義や意味をもたらして、次の機会に変えられるきっかけになるかもしれない。そうした希望や期待を持って立てこもっていた人たちは多くいました。 一方で、理大に籠城した学生の参加者たちの討論で、よく聞いたのは「悲観的になって行動を起こさない人たちや運動から引いて行ってしまった人たちに対して失望した」という言葉でした。デモから撤退する人もいる中、籠城した人たちは強い意志を持って運動に参加している人たちだったんです(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、「デモから撤退する人もいる中、籠城した人たちは強い意志を持って運動に参加している人たちだった」、なるほど。
・『「自由を奪われたくない」若い世代  Q:学生たちの祖父母の世代は、元々自由のない環境で育って、香港に移住して自由を満喫したという感覚が強く、孫に向かってデモへの参加を辞めるように叱責しているという話も聞きました。一方で若い世代は自由を守ろうと必死になっています。 A:若い世代はインターネット世代なので、リアルタイムに世界中から入って来る様々な情報に影響されています。 そうした環境の中で、中国により自分たち香港人の文化が奪われてしまう、いわば「文化の侵食」ですが、そのことに対してとても敏感になっていると感じました。) 複雑な社会背景の中で、より自分たちの住んでいる場所である香港の文化を守りたいという気持ちが他の世代に比べて強いのかもしれません。 そのことが、2019年4月に犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改定案が議会に上がったときに、デモへと駆り立てたのではないでしょうか。中国に移送される恐怖をほかの世代よりも敏感に感じ取っていたと思います。 Q:香港のデモは2020年に入って始まったコロナ禍により、デモそのものができなくなってしまい、鎮静化の一途を辿ってしまいました。デモに参加した人たちはその後、どうしているのでしょうか。 A:デモのリーダー格の人たちの多くは出国したか、当局によって刑務所に入れられたかのどちらかです。 では香港に残った人たちがどのような生活をしているかということについては、むしろ私たちが知りたい、知って取り上げたいという気持ちです。これから調査したいと思っています。 一時的ではあるかもしれませんが、絶望して、香港の政治的な出来事から意識してすべて離れるという人もいるでしょう。また、いわゆる「ブタ(港猪/香港の豚の意味)」になった人(=政治に無関心になった人)もいるかもしれません。 でもそれは一時的なもので、例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています』、「例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています」、甘い希望的観測の色彩が濃い。
・『子どもの将来を考えて移住する人  Q:人材の海外流出は進んでいると思いますか。 A:全員が香港を離れようとしているわけではありません。ただ、現実に人材流出は起きているとは思います。 台湾やイギリスに移住した人もいました。あくまで自分の肌感覚ですが、やはり高学歴でスキルがあり、どこの国でも働ける人や、子どものいる人が彼らの将来を案じて香港を離れるという決断をする人が多いです。 一方で、とても有能な人が香港に残っていることも事実で、こういう時期だからこそと、お互いに支え合ったり、励まし合っている人たちもいます。) Q:2022年7月に林鄭月娥(キャリー・ラム)に代わり、新たに警察出身の李家超(ジョン・リー)が行政長官に就任しました。デモ以後、香港では天安門事件に関する記述が教科書から消えたと聞きましたが、いわゆる「表現規制」は進んでいると感じますか。 A:確かに、天安門事件に関する歴史の教科書における記述は少なくなっています。また、報道全般において、政治的なニュースの量が減っていたり、政府にとって不都合な事実は明らかに隠そうとしているように感じます。 表現規制は政策レベルで実施しています。少し前にも、政府に対して批判的なコメントをSNSに掲載しただけで、国家安全維持法に抵触し、訴追されるということがありました。 2020年6月に成立した国家安全維持法はとても曖昧な内容だったので、私たちの生活はどんな風に変わるのか、当時はわかりませんでした。しかし、今、香港で生活をしていて感じるのは、自由な表現空間は間違いなく縮小傾向にあるということです。 Q:被写体とカメラの距離が近いように感じましたが、どのようにして撮影していたのでしょうか。 A:現場でカメラを回していると目立つので、被写体の人たちは自分が撮影されていることはわかっています。撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました。 例えば大きな決定をするときの会議などにも立ち会い、撮影していますが、おそらくその時にはもう誰もカメラを気にしていなかったと思います。すべての撮影について了承している、という状況で撮影していました』、「現場でカメラを回していると目立つので、被写体の人たちは自分が撮影されていることはわかっています。撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました」、「ボディランゲージで伝えていました」とはやむを得ない技ではある。
・『なかったことにされたくない  Q:撮影中に印象に残ったことはありましたか。 A:「今の自分を記録してほしい」というリクエストを受けました。13日間の撮影の後半に現場にいた学生たちが私たちにインタビューをして欲しいと声を掛けてきたのです。 そのとき、私たちは彼らの考えや感じたことなどを聞きました。香港のデモは公式には「違法な出来事」として存在しなかったことにされる可能性もあります。 その瞬間の自分を記録できるのは、そこにいた人しかいない。記録されなければそこで過ごした時間がなかったことになってしまうかもしれない。その瞬間の自分を残してほしい、という切実な願いがありました。 また、籠城していた13日間は理大の外に出ることはできませんでした。私は食べ物がなくパンばかり食べていたのですが、デモの参加者の一人が鶏のもも肉をみつけて、学食で唐揚げを作ったんです。 それを見て私は「美味しそうだな」と思ったのですが、デモの参加者は「この唐揚げは僕の人生で最後の食事になるかもしれない。あなたはまだ外でいくらでも食べられる」といわれました。それがとても衝撃的で、忘れられない瞬間でした。それほどまでに覚悟をして籠城していたんですね』、「デモの参加者は「この唐揚げは僕の人生で最後の食事になるかもしれない」、「それほどまでに覚悟をして籠城していた」、なるほど。
・『記憶されることの大切さ  Q:現地を取材していて、外国メディアも含めて、マスメディアによる報道が香港当局や中国政府に対してプレッシャーを与えることができていると感じましたか。 A:アメリカのCNNやBBCなど国際的に大きなメディアの記者たちは数多くいましたし、デモのライブ中継もかなり見かけました。 ただ、デモの現場でもよく討論されていましたが、現場レベルでは「報道が政府に対してプレッシャーを与えている」という実感はあまりなかったというのが正直なところです。 メディアが盛り上がって取り上げても、そのことが現場に影響を与えていたことはなかったように感じました。報道によって政府の決断が変わったかというと、結果としてそれはなかった。そういう意味では、報道は失敗に終わっているところもあるかと思います。 しかし、もう少し視点、視界を広く持つと、世界のメディアでこの問題が取り上げられるということは、世界の人々に記憶されるということでもあると思います。 「記憶される」ということは香港に残ると決めた人たち、もしくはデモに参加したことがある人たちにとってはとても有意義なことです。自分が自由を求めて戦った記録として後世に伝えることができるし、世界の人々に記憶されれば、協力者が増えて民主化への流れを作りやすくなるかもしれません。 そのことが香港に残った人たちにとってこれからの香港での活動や生活をあきらめない理由につながると思っています。 私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです』、「私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです」、「映像制作者」の自己満足といった印象が拭えない。私にはやはり圧倒的な中国側の力に負けたとしか思えない。
タグ:香港 (その8)(香港返還25年の年に上海封鎖の因縁 中国の2大「制御不能都市」陥落の意味、コロナ禍の香港から「金融専門人材」の流出続く 金融管理局や証券先物委員会でも離職率上昇、1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く) ダイヤモンド・オンライン 姫田小夏氏による「香港返還25年の年に上海封鎖の因縁、中国の2大「制御不能都市」陥落の意味」 「「ゼロコロナを大義名分に、上海市民を中央政府に服従させることが狙いだと思いました。軟禁同然の厳しい措置は、共産党の指示に従う習慣を養うためであり、いわば“市民教育の一環”ではないかと。上海市民がおとなしくなれば、他の都市の市民もおとなしくなりますから」、なるほど。 「開港と“西洋譲り”の思考回路は上海・香港共通」、確かにその通りだ。 「香港の発展には上海系の力が、上海の発展には香港系の力が相互に作用しあっていた」、それほど深い関係があったとは初めて知った。 「中国共産党が完全な支配を実現させる上での“目の上のコブ”は、西洋文化の影響を受けた香港であり上海だった。そういう“西側の精神”が根付く都市を衰退させ、トンキン湾が囲む海南島を香港に取って代わる自由貿易港と国際的商業都市にする――習氏の野望はここにつながっていくのではないだろうか」、「習氏の野望」は冷静な計算抜きにした大雑把なもののようだ。 東洋経済オンライン 財新 Biz&Tech 「コロナ禍の香港から「金融専門人材」の流出続く 金融管理局や証券先物委員会でも離職率上昇」 「香港金融管理局」の「職員の2021年の離職率が7%に上った」、確かに通常の倍と多いようだ。 「香港証券先物委員会」の「職員の離職率が2020年の5.1%から2021年は12%に上昇」、「林鄭月娥行政長官」の強気発言はどう見ても無理があり、「金融専門人材の流出問題」の深刻さを表していると見るべきだろう。 熊野 雅恵氏による「1377人逮捕「香港理工大包囲事件」現場で見た衝撃 学内でその様子を撮影した監督に話を聞く」 「香港理工大学」の事件は記憶にないが、どうなったのだろう。 「でもそれは一時的なもので、例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています」、根拠に乏しい希望的観測に過ぎないようだ。 「撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました」、やむを得ないテクニックだ。 「香港のデモは公式には「違法な出来事」として存在しなかったことにされる可能性もあります。 その瞬間の自分を記録できるのは、そこにいた人しかいない。記録されなければそこで過ごした時間がなかったことになってしまうかもしれない。その瞬間の自分を残してほしい、という切実な願いがありました」、自己満足の色彩が濃いようだ。 「私たちは映像制作者として、やはりメディアの力、映像の力を信じています。今の香港の状況がメディアに取り上げられることによって、その存在を世界から忘れ去られることを防ぐことができる。そしてそれはそのまま、現地でも海外でも自由を求めて活動している人たちの励みになるんです。そのことを信じてこれからも取材を続けていきたいです」、 「メディア」関係者の思い上がりのような気がする。専制主義政府に対しては、そんな力はないと考えるべきではないだろうか。 「デモから撤退する人もいる中、籠城した人たちは強い意志を持って運動に参加している人たちだった」、なるほど。 「例えばコロナが完全に収束したり、もしくは2019年に起こったデモのような大きな出来事があったとき、また覚醒して再度姿を現すのではないかと。そこは希望も込めてそのように思っています」、甘い希望的観測の色彩が濃い。 「現場でカメラを回していると目立つので、被写体の人たちは自分が撮影されていることはわかっています。撮る前に、名前や撮影したいことなど自分の情報をいったうえで「これから撮影したい」とボディランゲージで伝えていました」、「ボディランゲージで伝えていました」とはやむを得ない技ではある。 「デモの参加者は「この唐揚げは僕の人生で最後の食事になるかもしれない」、「それほどまでに覚悟をして籠城していた」、なるほど。 「映像制作者」の自己満足といった印象が拭えない。私にはやはり圧倒的な中国側の力に負けたとしか思えない。
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中国経済(その18)(中国 ゼロコロナ解除で「困難に直面」 WHOが指摘、抗議活動に負けてのゼロコロナ政策撤廃でコロナ感染爆発の危機、習近平政権「ダブル敗戦」の大打撃、一気に大緩和?中国・ゼロコロナ政策撤廃の現実 音楽家ファンキー末吉が経験した緩和直後のドタバタ劇、【習近平の大誤算】若者の失業率約18% 富裕層の国外脱出加速 米輸出規制で“科学技術立国の夢”が泡に) [世界情勢]

中国経済については、10月13日に取上げた。今日は、(その18)(中国 ゼロコロナ解除で「困難に直面」 WHOが指摘、抗議活動に負けてのゼロコロナ政策撤廃でコロナ感染爆発の危機、習近平政権「ダブル敗戦」の大打撃、一気に大緩和?中国・ゼロコロナ政策撤廃の現実 音楽家ファンキー末吉が経験した緩和直後のドタバタ劇、【習近平の大誤算】若者の失業率約18% 富裕層の国外脱出加速 米輸出規制で“科学技術立国の夢”が泡に)である。

先ずは、12月14日付けNewsweek日本版 がロイターを転載した「中国、ゼロコロナ解除で「困難に直面」 WHOが指摘」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/who-138.php
・『世界保健機関(WHO)のハリス報道官は13日、中国が新型コロナウイルス感染抑制に向けた厳格な「ゼロコロナ」政策を解除し、コロナとの「共生」を選択する中、「非常に厳しく、困難な時期」に直面するという認識を示した。 中国のコロナ規制緩和は国内で歓迎されつつも、感染急拡大を巡る懸念も高まっている。 ハリス報道官は「非常に厳格な管理体制からの脱却はどの国にとっても非常に難しい」と指摘。課題は国民のワクチン接種を確実にし、病院の受け入れ態勢を整えることとし、「移行を維持するためには、地域社会や病院、国家レベルで多くの措置を講じる必要がある」と述べた』、「中国が新型コロナウイルス感染抑制に向けた厳格な「ゼロコロナ」政策を解除し、コロナとの「共生」を選択する中、「非常に厳しく、困難な時期」に直面するという認識」、まして国産ワクチンは効果を疑問視されているのでは、本当に大変だろうと、同情を禁じざるを得ない。

次に、12月15日付け現代ビジネスが掲載した評論家の石 平氏による「抗議活動に負けてのゼロコロナ政策撤廃でコロナ感染爆発の危機、習近平政権「ダブル敗戦」の大打撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103314?imp=0
・『事実上の「ゼロコロナ」政策放棄  12月7日、中国の国家衛生健康委員会は、10の項目からなるコロナ対策の新しいガイドライン「新十条」を発表した。その注目すべきいくつかの重要内容を羅列すれば以下のものである。 1)各地における「強制的な全員PCR検査の定期実施」は廃止。 2)公共交通機関と病院・学校を除く公共施設、商店、スーパー、オフィスビルなどを利用する際のPCR検査陰性証明の提示は廃止。 3)省や自治区などを超えて移動する際の陰性証明提示は廃止。 4)すべての感染者を隔離施設や病院に移す措置は廃止、無症状あるいは軽症の感染者の自宅隔離を認める。 5)感染拡大への封鎖措置に関しては、都市全体あるいは住宅団地全体の封鎖はやめ、封鎖は感染が確認された建物やフロアに限定される。 以上の内容からすれば、この新しいガイドラインの発表と実施はもはや「ゼロコロナ」政策の「緩和」程度のものではない。それは事実上、「ゼロコロナ」政策の放棄であって、180度の政策の大転換である。 「ゼロコロナ」政策というのは文字通り、コロナ感染をゼロにすること、つまりコロナの完全撲滅を目指した政策である。この政策実施の前提は、まさに「強制的・定期的なPCR全員検査」である。例えば都市部なら、地方によっては48時間内に一度、あるいは72時間内に一度、政府当局の手によって、市民全員に対するPCR検査は徹底的に行われるのである。 このような徹底的なPCR検査の実施によって、陽性者と感染者は漏れることなく迅速に割り出されて隔離施設へ送られることになるから、どこかでコロナが出たところ、それは直ちに「撲滅」されて感染の拡大は最小限に封じ込められるのである。 封鎖なくして中国のコロナ制圧なし、だったが その一方、市民全員はPCR検査を受ける度に、陽性でなければ、有効期間限定の「陰性証明」を発行してもらうが、市民の方は48時間か72時間という有効期限内に、この「陰性証明」を提示することによって初めて電車やバスなどの公共交通機関を利用できるし、病院や学校、スーパーやオフィスビルなどの公共施設に入れる。このような措置が取られることによって、陽性者や感染者が市中に出回って公共施設に出没するようなことは基本的に無くされているから、コロナの感染拡大は極力避けられている。 それでもコロナの感染拡大が発見された場合、最後の手段として政府当局は住宅団地の1つ、あるいは町1つ、都市1つを丸ごと封鎖するという極端な措置をとる。例えば筆者の出身地である四川省成都市(人口2100万人)の場合、今年8月31日に新規感染者数が156名になったところで、翌日の9月1日からまる2週間、都市全体がロックタウンされた。 こうしてみると、「強制的・定期的なPCR全員検査」と、あらゆる公共施設に出入りする場合の陰性証明提示、そして極端な封鎖策は、中国政府の「ゼロコロナ」政策の実効性を支える3本の柱であって政策が成り立つ前提であることが分かる。 しかし、前述の「新十条」の内容を点検してみると、特に1、2、5を点検してみると、「3本の柱」となる政策措置は完全に廃止されたり大幅に緩和されたりしていることが明々白々である。それでは「ゼロコロナ」政策はもはや成り立たない。政策そのものが放棄されてしまったと見て良い。 つまり、前述の「新十条」の発表と実施は、「ゼロコロナ」政策の単なる「緩和」ではなく、むしろ思い切った政策の大転換であることがよく分かる。しかし問題は、この政策転換は決して、「コロナの撲滅」という「ゼロコロナ」政策当初の目標を達成した上での政策転換ではない、という点である』、「前述の「新十条」の発表と実施は、「ゼロコロナ」政策の単なる「緩和」ではなく、むしろ思い切った政策の大転換である」、本当に「思い切った政策の大転換」だ。
・『最悪のタイミングで  そもそも、オミクロンという新しい変異株が世界的に広がった時から、コロナの完全撲滅はすでに不可能になっている。実際、中国であれほど厳しい封じ込め策が実施されてきていても、感染拡大を完全に阻止できたわけではない。今年12月6日までの28日間連続、中国国内の新規感染者数は1万人を超えている。 そうすると、12月7日からの政策転換、すなわち「ゼロコロナ」政策の放棄は、まさに目標が全くできなかった中での政策の放棄であって、その意味するところはすなわち、「ゼロコロナ」政策そのものの敗退であって、約3年間にわたって政治権力によって強行された「ゼロコロナ政策」は結局、失敗に終わったわけである。 しかも、「ゼロコロナ」政策が放棄されたところ、今後の中国全土において再びコロナの感染拡大が起きてくることも予想されているから、国民に大きな犠牲と不自由を強いた「ゼロコロナ」政策は結局何の意味もない。政策の完全失敗である。 それでは習近平政権は、自らの宣言した「コロナとの戦い」にすでに敗戦していることは明らかであるが、さらに問題となってくるのは、今回の「ゼロコロナ」政策の転換が行われたタイミングである。 12月7日といえば、中国でも冬期の始まりである。周知のように、冬期というのはまさにコロナの感染しやすい季節だ。冬期の到来と同時に行われた中国政府のコロナ政策の大転換は拙速というしかないが、ましてや中国の場合、来年1月22日からは旧正月(春節)が始まって帰省などによる恒例の「民族大移動」は始まるという特別の事情もある。 このようなタイミングでの政策転換はどう考えても無謀かつ危険であろう。今月から来年1月にかけて、中国全土で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い。政策転換のタイミングはあまりにも悪すぎる』、「国民に大きな犠牲と不自由を強いた「ゼロコロナ」政策は結局何の意味もない。政策の完全失敗」、「今月から来年1月にかけて、中国全土で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い。政策転換のタイミングはあまりにも悪すぎる」、その通りだ。
・『民衆の抗議に負けてしまった  しかし習政権は一体どうして、上述のような危険も承知の上で拙速な政策転換に踏み切ったのか。時間列的に見ればその理由は実に簡単である。11月25日から29日までに全国で勃発した「反ゼロコロナ政策」の抗議運動こそは、政策の転換を促した主な要因の1つではないのか。 抗議運動の実態は12月1日掲載の本欄が詳しく伝えたところだが、政権の「ゼロコロナ」政策に対する強い反発から始まった民衆運動はあっという間に全国に広がり、同時に「反習近平・反体制運動」的革命運動にまで発展した。その後、当局は警察力を動員して抗議デモを封じ込めその鎮静化に成功したものの、運動の全国的拡大と先鋭化はやはり、習政権に大きな衝撃を与えたはずである。 そして運動収束直後の12月7日、当局は上述の「新十条」を発表しそれを直ちに実施に移した。やはり習政権は、抗議運動の拡大と継続化を恐れて民衆の不平不満を和らげるために急遽「ゼロコロナ政策」からの転換を断行した、と思われる。そういう意味では、「ゼロコロナ」政策からの政権の撤退あるいは敗退は、民衆は自分たちの力で勝ち取った勝利でもある。 しかし、もしそうであれば、このことの政治的意味は実に重大である。要するに一党独裁体制下の中国で、政権は民衆の抗議運動に押された形で政策の大転換、大後退を余儀なくされたわけであり、立ち上がった民衆の力を前にして、政権が敗退したのである。言ってみれば、今の習政権は、コロナとの戦いに敗退したのと同時に民衆の力にも敗退してしまった。まさに屈辱の「ダブル敗戦」というものである』、「一党独裁体制下の中国で、政権は民衆の抗議運動に押された形で政策の大転換、大後退を余儀なくされたわけであり、立ち上がった民衆の力を前にして、政権が敗退したのである。言ってみれば、今の習政権は、コロナとの戦いに敗退したのと同時に民衆の力にも敗退してしまった。まさに屈辱の「ダブル敗戦」というものである」、「ダブル敗戦」とは言い得て妙だ。
・『政権への不信とコロナ感染再拡大と  この「ダブル敗戦」は、今後の中国政治に及ぼす影響は決して小さくはない。それがもたらす政治的結果の1つはまず、習近平主席と習政権のさらなる権威失墜である。政権があれほど固執してきた「ゼロコロナ」政策は結果的に失敗に終わり、中国国民はもう一度、全国的感染拡大に直面していかなければならない。 この厳重な事実は、愚かな政策を強行した習主席自身と政権の愚かさをより一層露呈したのと同時に、国民一般の習主席と政権に対する不信感をさらに増幅させることとなろう。 その一方、民衆の抗議運動に押されたて行なった今回の政策大転換は実は、習近平政権の今後の政治に1つ、大きな「禍根」を残すとことなろう。政権が民衆の力に屈した形で政策転換を余儀なくされたのであれば、民衆側はこれで政権の足元を見てしまい、自分たちの力に対して大きな自信を持つこととなるに違いない。 それでは今後、政権のさまざまな政策に対してその不平不満が限界に達したとき、今回の「反ゼロコロナ政策運動」の成功に勇気つけられた民衆が新たな抗議運動に立ち上がる可能性は、以前より大きくなることは予想できる。つまり、習政権の「ダブル敗戦」は結局、今後における民衆運動あるいは反乱の発生を誘発する火種を自ら撒いた訳である。 中国国民と習政権にとっての大問題はもう1つがある。 今回、医療施設の充実や高齢者層へのワクチン接種の普及などの十分な準備はまだ整えられていない状況下で、主に政治的要因により「ゼロコロナ」政策が放棄されたことの結果、感染しやすい冬期の到来と相まって中国全国で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い。その中で重症者や死亡者が増える一方、医療機関の逼迫が深刻化してくるのであろう。 それでは政権は感染拡大をそのまま容認するのか、それとも「ゼロコロナ」政策に逆戻りするのかの選択を迫られることとなるが、封じ込めからやっと解放された中国国民はもう一度、広範囲な感染拡大に耐えていかなければならない。中国にとっての「コロナ問題」は、まさにこれからである』、「習政権の「ダブル敗戦」は結局、今後における民衆運動あるいは反乱の発生を誘発する火種を自ら撒いた」、「今回、医療施設の充実や高齢者層へのワクチン接種の普及などの十分な準備はまだ整えられていない状況下で、主に政治的要因により「ゼロコロナ」政策が放棄されたことの結果、感染しやすい冬期の到来と相まって中国全国で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い・・・政権は感染拡大をそのまま容認するのか、それとも「ゼロコロナ」政策に逆戻りするのかの選択を迫られることとなるが、封じ込めからやっと解放された中国国民はもう一度、広範囲な感染拡大に耐えていかなければならない。中国にとっての「コロナ問題」は、まさにこれからである」、本当にどうなるのか、大いに注目される。

第三に、12月16日付け東洋経済オンライン が掲載した音楽家のファンキー末吉氏による「一気に大緩和?中国・ゼロコロナ政策撤廃の現実 音楽家ファンキー末吉が経験した緩和直後のドタバタ劇」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/639893
・『新型コロナウイルス感染症に対し「ゼロコロナ」政策を厳しく続けてきた中国が一転、政策を緩和したのは12月上旬。全国に抗議活動が広がるなど混乱を受けて、習近平・国家主席の鶴の一声で緩和されることになった。 ロックバンド「爆風スランプ」のメンバーで現在は中国を中心に活動しているミュージシャンのファンキー末吉氏は、緩和された直後の北京に出向き、ゼロコロナ政策緩和直後の状況を目の当たりにする。これまでの中国のコロナ監視体制を経験、「IT武装も最後は『人力』頼みの中国コロナ監視体制」などを執筆したファンキー末吉氏は、PCR検査が必要だったりそうでなかったり、場所によって対応が変わったり……そんなドタバタ劇が起きている。中国社会の現実はいかに。 私は「布衣楽隊」という、中国で最も多くのツアーを行うバンドのドラマー兼プロデューサーとして中国全土をツアーして回っている。 2022年のツアーはコロナ禍のため例年より少なく57本を予定していたが、結局は14本がコロナのためにキャンセルとなって2022年9月末に終了。メンバーはそのまま、拠点として居住する中国西部・寧夏回族自治区の銀川(ぎんせん)市に帰ったのだが、私はレコーディング仕事があったのでそのまま北京に行った。 そうしたら、運のいいことに銀川市がロックダウン。しかし新たな感染者数が10人ほどで200万都市(周辺小都市を含めると700万人)をロックダウンして住民の自由を奪うのだから、中国のこのゼロコロナ政策というのはすさまじいと言うしかない』、「ロックバンド「爆風スランプ」のメンバーで現在は中国を中心に活動」、とは興味深い存在だ。コロナ問題を新聞とは違った角度で伝えてくれるだろう。
・『12月7日、突然訪れた「ゼロコロナ」緩和  銀川には帰れないのでそのまま1カ月半ほど北京に滞在していたら、北京がどんどん危なくなってきた。 私が銀川に帰った翌日にはすべての北京市民は毎日のPCR検査が義務付けられ、検査結果がスマートフォンにインストールする健康アプリに反映され、そこでのQRコードが緑色にならなければ商店や施設、タクシーにも乗れないというありさまである。 銀川はそれほど厳しくなく、外地から帰って来た人は3日間のうち2回PCR検査を受ければ健康アプリのQRコードは緑色のままとなり、それを施設入り口のリーダーにかざせばどこにでも自由に出入りすることができた。 帰ってきてから半月ほどは平和に過ごしていたのだが、2022年11月25日にいきなり都市封鎖の通達が来た。これは銀川の感染者数というより、中国全土の感染者数がこれまでになく増えたことで地方政府もそれぞれに危機感を高めたためではないかと思う。 今回のロックダウンは、いわば「ソフトロックダウン」程度のもので、飲食店はデリバリー以外の営業は禁止。私の住むマンション群は出入り禁止だが、そうでもなく自由に出入りできる地区もあり、どうやらマンション群の社区と呼ばれる自治体に判断を任されているようだ。 ところが、1週間の隔離も終わりにさしかかった11月24日に新疆ウイグル自治区で発生した火災で死亡者が出た。死亡者が出たのは、防疫用柵で消防隊の到着遅れたためではないかと考えられ、これをきっかけに中国全土でゼロコロナ政策に反対する抗議活動が起きた。 「第2の天安門事件(1989年)に発展するかも」と心配していたのだが、一転、政府はゼロコロナ政策を大幅に緩和することを発表した。2022年12月7日のことである。 これを受けて銀川では、スーパーや商業施設に入る際に必要だった48時間以内の陰性証明の提示が不必要となった。そんな頃である。北京でレコーディングの話が来た。 いや、話はだいぶ前からあったのだが、ゼロコロナ政策による厳しい行動制限や、外地からの流入規制、そして都会よりいつも1テンポ遅れて対策が変わるこの銀川に、北京から帰ってきてちゃんと入れるのかという心配があったので、「今は北京には行けない」と言うしかなかったのだ。 ところが、12月7日の規制緩和発表に続いて、中国で省をまたいで移動する際の陰性証明の提示が撤廃された。これはコロナ禍で長くツアーを回っていた私にとってはとてもうれしいニュースである』、「新疆ウイグル自治区で発生した火災で死亡者が出た。死亡者が出たのは、防疫用柵で消防隊の到着遅れたためではないかと考えられ、これをきっかけに中国全土でゼロコロナ政策に反対する抗議活動」、「政府はゼロコロナ政策を大幅に緩和することを発表した。2022年12月7日のことである。 これを受けて銀川では、スーパーや商業施設に入る際に必要だった48時間以内の陰性証明の提示が不必要となった」、「ゼロコロナ政策」も終わりはあっさりしたものだ。
・『PCR検査を課しても検査場は次々閉鎖  実はIT大国とされる中国で、便利に思えるそのアプリの数々、とくに省ごとに違う健康アプリのほとんどが、外国人には対応していないのだ。 そして、北京に住む友人の話によると、規制が緩和されたといっても飲食店などに入るためには48時間以内の陰性証明がいまだに必要なのに、12月7日の規制緩和によってPCR検査場が次々と閉鎖されたため、今度はその検査をきちんと受けられる検査場を探すのがたいへんになってしまった。とくに外国人にとっては、外国人に対応していないPCRR検査場というのがあるから、さらに探すのに一苦労、二苦労させられる。 こんな笑い話も伝わってくる。 「陰性証明が必要なんだけど、検査をやっているところがないじゃない!」「検査なら病院行ってやれ」 「その病院に入るのに、陰性証明が必要なんだよ!!」 銀川のような地方都市は対応が遅く、まだそこまで切羽詰まった状況にはならないが、北京などの大都市では急激な政策転換によってかなりの混乱が起こっているようだ。 そんな大混乱の中、12月9日に北京行きが決まった。出発の頃には北京で爆発的に感染者数が増えているという噂も聞くが、銀川の友人たちなんかは「お、いいじゃん!帰ってきたらメシ食おう」と笑う。感染したらメシどころじゃないのに何を言っているんだろうと不思議に思ったが、後にその意味がわかることになる。 さて、北京に行くとなると、心配なのはPCR検査をどう受けるかである。北京の友人夫婦は久しぶりに私と飲むことを楽しみにしてPCR検査を受けているのだが、毎日検査しても結果が健康アプリにまったく反映されず、結局8日間も検査を受けてないことになっており、飲食店どころかどこの施設にも入れないのだ。 そこで、北京で陰性証明をゲットするのは難しいだろうと思い、私は出発前に銀川でPCR検査をすることにした。 噂通り、PCR検査場が減ってきているので長蛇の列である。 検査は今までは無料だったのだが、今回から有料になっていた。3.5元。円安とはいえ70円程度で安い!10人分の検体を1つの試験管にまとめる方式の検査だ。 結果はだいたい半日後には出る。夜汽車に乗って北京に向かい、朝着くころには検査結果がアプリに反映されていることだろう。外国人はQRコードをかざして読み取るだけではダメで、さらにパスポート情報などを自分で入力するのだが、スペルなどちょっと間違えただけで結果は反映されない。私も実際、PCR検査を受けているのに反映されずにQRコードが黄色になってしまって困ったことがあったが、この検査場はいつも必ず反映されるので安心なのである。 さて、いつものように夜汽車に乗ったらすぐに眠れるようにガンガンに酒を飲んで銀川駅へ向かう。これまでは厳重な健康アプリや行動アプリのチェックがあったのだが、それらがまったくなくなり何もチェックされなかった』、「PCR検査」で「10人分の検体を1つの試験管にまとめる方式の検査」、1人でも陽性の人間がいると、何回か組み合わせを変えて検査を繰り返して、陽性の人間を絞り込むのだろう。これでも、個々人に検査をするより効率的なのだろう。
・『陰性証明が必要だったりなかったり  北京に着いた。スマホの地図アプリを開いたら、見慣れない赤いものがたくさんある。「疫情高??」。つまり「ここには感染者がいるからたいへんだよ」という意味だ。 北京西駅に着いてからもなんらチェックもまったくなく、以前検査場だった場所に看板だけが撤去されず残っていた。そこからは地下鉄に乗り換えるのだが、みればきっと同じ列車に乗ってきたのだろう、防護服を着ている親子連れらしき乗客もいた。 きっと感染爆発と言われている北京へ行くのに、娘だけには感染させないようにという親心なのだろう。「コロナは怖い病気だよ」と宣伝してゼロコロナ政策をやっていた中国政府が、いきなり「オミクロン株はまったく怖くない」と言い始めた。人民は自分の身は自分で守るしかない。全国の薬局から解熱剤などの風邪薬がすべて売り切れたという噂である。 地下鉄も、一時期はガラガラだったと聞いたがそうでもなくそこそこの乗客がいた。時間もあるので、先日大規模なデモがあったという北京市内東部の「亮馬橋」地区に行ってみたが、別にいつもと変わらない感じだった。上海では、デモが発生した場所の歩道が厳重に封鎖されたと聞いていたが……。 レコーディングまでには時間があるので、スターバックスにコーヒーを飲みに行ったら陰性証明の提出を求められた。それから、知り合いの中国人がやっている日本料理屋に行ったのだが、そこはホテルの施設内にあり、普段はより厳格な検査を行うのだが陰性証明の提出は必要なく、QRコードをスキャンして「この場所に来た」という足跡を残すのみであった。規制緩和を受けての対応が店によって違うのだろう。 日本語が上手な女将は病気で出勤してないということだが、来たことを告げると喜んでメッセージを送ってきた。「実はコロナにかかってしまったんです」と泣いている。女将さんはガンの闘病生活もしており、それにコロナはたいへんだろう。 「もうね、家とスーパーマーケットだけしか行ってなかったのに感染しちゃうなんて、なんてひどい国なの!」と怒っているが、女将さん、ここはあなたの国です……、といったメッセージをしばらくやり取りした後、スタジオに向かう。 出迎えてくれたのはドラムをレコーディングする歌手本人とエンジニアの2人。手にはアルコール噴霧器を持っていて、握手のたびに消毒したり、マスクを決して外さなかったり、とてもコロナを恐れているように見えて緊張した。ところが、理由はほかにあったことが後に判明する。 レコーディングは順調で、午後5時にはすべての作業を終えて「飲みに行こう」となった。歌手も一緒に行くのかと思ったら「帰る」というので、結局エンジニアと2人で飲むことに。場所は日本風の居酒屋だったのだが、そこでも陰性証明の提出は必要ではなくQRコードをスキャンして足跡を残すのみであった』、「全国の薬局から解熱剤などの風邪薬がすべて売り切れたという噂である」、最近は日本の薬局でも中国人が「風邪薬」を爆買いしているようだ。
・『どっぷりと濃い濃厚接触者になる  前述の友人ご夫婦も招待しようと連絡したら、ショッキングな事実を伝えられた。私と一緒に飲むのを楽しみにして飲み屋に入れるように毎日PCR検査を受けて、結果が出ないので毎日毎日検査を受け続けていたのだが、先日出た結果が「陽性」。厳密には「1つの試験管で検査した10人の中に陽性者がいた」というもので、彼ら自身が陽性なのかどうかはわからない。 そもそも10人が1つの試験管で検査するなんて、まるで毎日ロシアンルーレットをやっているようなものである。せめてもの救いが、昔なら有無をいわさず収容所のような隔離施設に送られるのだが、今は緩和されて自宅で自主隔離となっているようだ。 エンジニアと盛り上がって飲んでいるときに、またショッキングな事実を聞いた。 「歌手が『一緒に飲めなくてすみません』と謝ってましたよ。実は彼も陽性で」 それって陽性なのにスタジオ来てたの?というより、一瞬でそこまで緩くなったということか……。そして彼自身も私にショッキングなことを言った。 「実は妻も陽性で家で寝てるんです」 ということは、今の私は陽性者と同居している男とマスクを外して酒を飲んでいるのか!あれほど厳格に行われていた中国のゼロコロナ政策が、一瞬のうちにここまで緩くなっているのが信じられなかった。) 酔いも覚めてしまったので帰ろうと、北京の院子の同居人に連絡を取る。院子というのは中国伝統的な長屋式住居で、1つの庭(院子)を囲むように三方、もしくは四方の建物が建っており、院子を共有してそれぞれの棟は独立して緩い共同生活を営むという、友人と暮らすなら願ってもない生活環境である。 北京市内には、今ではこういった伝統的住居はなくなってしまい、すべて高層マンションになってしまったが、郊外などの辺鄙な場所にはまだ残っていて、私が住む院子も市内から30キロメートルほど離れた村の中にある。 連絡をしてみると、同居人は「村にはタクシーの乗り入れもできなければ、この村の住人である証明書(出入証)がなければ入れない」というのだ。もう緩いのか厳しいのかわからないゼロコロナ政策。あるところではとてつもなく厳しく、あるところではとてつもなく緩い』、「ゼロコロナ政策。あるところではとてつもなく厳しく、あるところではとてつもなく緩い」、これが緩め始めの実態だろう。
・『「早く帰ってきてうつしてよ!」  その日は友人宅に泊めてもらい、翌朝冷静になって考えてみて怖くなった。たとえマスクをしていたとしても、感染者と一緒に丸1日スタジオにいて、その後は感染者の同居人と一緒にマスクを外して酒を飲んでいた私は、普通で考えると当然感染しているのではないか。 少なくとも濃厚接触者であることだけは確かである。ほんの最近までなら、これだけで隔離施設行きである。私はもうすでに6回の隔離を経験していて、病気よりなにより隔離が怖い。また、もし感染していたとしたら、今度は人にうつしてしまうのが怖い。とくに一緒にバンドをやっているメンバーに、である。 スマホをみると、ちょうどバンドのメンバーによるグループチャットでは、感染についていろいろと面白おかしいやり取りがされていた。北京のスタッフに対して、「北京は大変なの?じゃあ、なんか菌が付いているのを郵送してよ」とか何の冗談なのかよくわからない。私だけ大真面目に前日のレコーディングの話をして、「このまま北京に滞在して様子を見ようか?」と提案してみる。 ところが、シリアスになっている私をよそに「イエィ!!」と盛り上がっている。「Funky、早く帰ってきてうつしてよ」とか「Funkyはぼくらの救世主だ」といったメッセージが来て、まったく訳がわからない。こちらは「とりあえず銀川に帰ったら1週間ぐらいは自主隔離かな」と思っていたのに、「じゃあ、火曜日のリハが終わったらみんなでFunkyを囲んでメシに行くからな!」と大盛り上がり……。 過去のチャット履歴を見ると、どうやらどこかのバンドのメンバーが感染してツアーが中止になったらしい。布衣楽隊の冬のツアーは本来ならもう始まっている予定だったが、2022年11月のゼロコロナ政策による締め付けのため、2023年1月から開始となった。だから、この12月の間にできればメンバー全員感染しておきたいのだ。) 「コロナは一度感染すると半年は感染しない」という医者の発言がネットで出回っている。もう、いったい何を信じていいのやらわからない。 銀川に戻ったが、私はまだ感染しているのかどうかはわからない。PCR検査を受ければ、もっといろんな面倒くさいことが起きるであろうから、怖くて受けられないのだ。 今ではPCR検査を受けなくても、この国で生きていける。省をまたぐ移動も何の障害もなくできる。このような無症状の感染者が平気で中国国内を自由に飛び回っているという事例はもっともっとたくさんあるのだ』、「省をまたぐ移動も何の障害もなくできる。このような無症状の感染者が平気で中国国内を自由に飛び回っているという事例はもっともっとたくさんあるのだ」、恐ろしいことだ。
・『自分の身は自分で守る  それなのに、政府発表による中国のコロナ感染者の数は減っていく一方である。もう誰もPCR検査を受けないのに、いったい何を根拠にこの数字を出しているのか。そのうち中国政府はこう発表するかもしれない。 「わが国の偉大なるゼロコロナ政策は大成功を収め、ついにこの国ではひとりのコロナ患者もいなくなりました!」 上に政策あれば下に対策あり。この国の人民は、政府の発表に翻弄されながらもたくましく「自分の身は自分で守って」生きていくのだ。 銀川に着いたその日、政府は「行動アプリ」の撤廃を発表した。これまで、過去1週間(ちょっと前までは2週間だった)に行った都市の一覧が出るアプリだ。仲間内は大喜びで、このニュースを拡散した。 しかし、だからといって国民の行動の監視が緩まるわけではない。「コロナに関して」ということだけであることに間違いはなかろう。ゼロコロナ政策の緩和。まだまだ混乱は続きそうだが、このままうまく着地して収束してくれることを願うのみである』、今日のニュースでは、コロナ感染者の数や死亡者数の発表は止めたようである。医療体制が不十分な「中国」で医療崩壊が激化するようであれば、まさに悲劇だ。

第四に、11月21日付け現代ビジネス 「【習近平の大誤算】若者の失業率約18%、富裕層の国外脱出加速、米輸出規制で“科学技術立国の夢”が泡に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103521?imp=0
・『前編『「中国の地殻変動」と「習近平の大誤算」コロナPCR受診者16倍、不動産競売市場崩壊、検閲ソフトをかいくぐる白紙デモ』では、今中国で起きている劇的な地殻変動についてレポートしてきた。後編では、さらに連鎖的に発生している深刻な事態と、中国の未来の姿が窺い知れる分析についてお届けする』、興味深そうだ。
・『将来を見限った人々  経済成長の足かせになっているのは、長引く不動産不況だ。恒大集団をはじめとする多くの不動産デベロッパーが資金繰りに窮し、住宅の完成と引き渡しが滞る事例が各地で発生。これに対抗する形で、住宅購入者たちがローンの支払いを拒否する動きも頻発している。直近10月の不動産販売は前年同月比23・2%減と、不調ぶりが著しい。 「不良債権処理の市場となる競売すら機能していない」と語るのは、ジャーナリストの姫田小夏氏だ。 「これまで、ある程度の不動産はアリババなどが運営するオークションサイトといった競売市場に出せば、買い手がつく傾向にありました。ところが昨今は、市場が動かず、在庫が積みあがっている状況です。 たとえば、破産した巨大民営企業が手放した、上海の一等地にある、建築面積1万㎡を超える20戸の高級戸建て群が'21年8月に競売にかけられました。査定額は総額16億元(約320億円)と、上海競売史上、屈指の高額案件です。昔なら投資物件として人気を集めそうなものですが、誰一人入札者は出ませんでした」 当然、国も低迷する不動産市場に対して金融面の救済措置に動いた。11月21日には、政府の指示により国有銀行が相次いで不動産会社向け融資枠を設定。その額は3兆1950億元(約63兆円)とケタ違いの規模に上った。しかし、これで市場が回復するかといえば、そう簡単な話ではない。中国の不動産大手幹部は弱音を漏らす。 「今回の支援策の対象は最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)など有力な企業に限った話。恒大集団など過剰債務に陥っている企業はことごとく対象外です。習近平は問題を先送りにしたに過ぎませんよ。実際、支援策発表後も住宅販売は相変わらず低調です」』、「「今回の支援策の対象は最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)など有力な企業に限った話。恒大集団など過剰債務に陥っている企業はことごとく対象外です。習近平は問題を先送りにしたに過ぎませんよ」、「恒大集団」が「対象外」ということは、殆どの不動産企業も「対象外」になってしまう。
・『科学的分野の危機  せっかくのテコ入れも空振りに終わってしまいかねない不動産市場。同様に危機感を抱いているのがテクノロジー市場だ。習近平が夢見た「科学技術立国」も昔の話、今やその道は閉ざされている。 決定打となったのは、アメリカ・バイデン政権による対中輸出規制の強化だ。そこには先端的な半導体を製造するのに不可欠な米国製の装置や人的資本が含まれていた。この輸出規制が続けば、それだけハイテク分野の技術も発想力も削がれていく。科学的技術で世界をリードするという野心の実現も難しくなる。 経済が停滞し、これ以上の技術発展も見込めないとなれば、もう中国に将来はない—先見の明がある者ほど、こう考えて祖国を見限り、国外に脱出していくという。ITベンチャー企業を経営していた深圳から'21年に日本に移住してきた40代男性はこう語る。 「'22年は『中国を脱出する』という意味の『潤』という単語がSNSで流行し、資産をシンガポールや日本などに移し、脱出を図る富裕層が急増しました。さらに最近、企業レベルでも将来性の乏しい国内での事業を切り捨て、海外に出て行こうとする向きがあります。 その一つが、民間企業の海外視察ブームです。12月6日には、浙江省が1万社以上の企業を率いて、6日間の欧州視察ツアーを行ったことが報じられました。表向きは省レベルの海外投資戦略の一環ですが、経営者の中にはこれを機に、拠点の海外移転を決める者も多いと聞きます」 中国人経営者たちの憂いの目は、急速な少子高齢化の波にも向けられている。国連が発表した最新の中国の人口予測によれば、2047年までの人口の減少幅は総人口の6%にあたる約9000万人に上る。また、平均年齢も現在の38・5歳から50歳に急上昇する』、「資産をシンガポールや日本などに移し、脱出を図る富裕層が急増しました。さらに最近、企業レベルでも将来性の乏しい国内での事業を切り捨て、海外に出て行こうとする向きがあります。 その一つが、民間企業の海外視察ブームです」、「経営者の中にはこれを機に、拠点の海外移転を決める者も多いと聞きます」、これでは大変だ。
・『党内部もバラバラ  それでいて、これから有望な働き手となるであろう16〜24歳の若年層の失業率が高止まりを続けているのも問題だ。背景には求職者と求人側とのミスマッチがある。 10月の失業率は5・5%とほぼ横ばいですが、一方で若年層は17・9%と高い水準にあります。原因は、1000万人の大台を超えた大卒者にあります。彼らには『大学に入った以上、こういう仕事に就きたい』という希望がある。特に習近平政権下の教育政策によって、『ブルーカラー=社会の底辺』という固定観念が根付いてしまったばかりに、仕事を選別するようになってしまった。結果として、ミスマッチが常態化しているわけです」(前出・阿古氏) ゼロコロナ、経済、そして教育。習近平が主導したあらゆる政策がことごとく裏目に出ている。それが今になって様々な問題を引き起こしているのは明らかだ。にもかかわらず、習近平の暴走は止まらない。最高指導部を構成する党政治局常務委員や下部組織の政治局員は、自らの側近とイエスマンで固められている。習近平が「これをやれ」と言えば、拒否できる者などいない。 中国問題グローバル研究所所長で筑波大学名誉教授の遠藤誉氏は、共産党指導体制内の信頼関係の欠如が、中国の地殻変動の根底にあると指摘する。 「ゼロコロナ政策の規制緩和も、実際には'21年1月には出されていました。しかし、現場を指揮する地方政府の役人たちは、『お上の指示に従って失敗したら自分が感染再拡大の責任を取らされる』と、自分自身が処罰される可能性に怯え、自らの保身のために2年近く動かなかったわけです」 そこで、中央は「規制緩和を守らない者は処罰する」と宣言。ここでようやく、各地方政府は「逮捕されるくらいなら」と緩和を実行に移したのだ。もはや信頼関係など存在しない。遠藤氏が続ける。 「そこにあるのは恐怖心です。恐怖による強権統治をやめないかぎり、どんな政策も現場との連携は取れないままで、中国は救われません」 幾多の危機に直面する中国。この国の地下で煮えたぎるマグマが噴出する日は近い』、「「ゼロコロナ政策の規制緩和も、実際には'21年1月には出されていました。しかし、現場を指揮する地方政府の役人たちは、『お上の指示に従って失敗したら自分が感染再拡大の責任を取らされる』と、自分自身が処罰される可能性に怯え、自らの保身のために2年近く動かなかったわけです」、「規制緩和」の「指示」の「実行」に「自らの保身のために2年近く動かなかった」、とは官僚主義もここに極まれりだ。急に「規制緩和」したことによる「感染爆発」による医療崩壊、死者急増の嵐が早く収まってくれることを期待する。
タグ:中国経済 (その18)(中国 ゼロコロナ解除で「困難に直面」 WHOが指摘、抗議活動に負けてのゼロコロナ政策撤廃でコロナ感染爆発の危機、習近平政権「ダブル敗戦」の大打撃、一気に大緩和?中国・ゼロコロナ政策撤廃の現実 音楽家ファンキー末吉が経験した緩和直後のドタバタ劇、【習近平の大誤算】若者の失業率約18% 富裕層の国外脱出加速 米輸出規制で“科学技術立国の夢”が泡に) Newsweek日本版 ロイターを転載した「中国、ゼロコロナ解除で「困難に直面」 WHOが指摘」 「中国が新型コロナウイルス感染抑制に向けた厳格な「ゼロコロナ」政策を解除し、コロナとの「共生」を選択する中、「非常に厳しく、困難な時期」に直面するという認識」、まして国産ワクチンは効果を疑問視されているのでは、本当に大変だろうと、同情を禁じざるを得ない。 現代ビジネス 石 平氏による「抗議活動に負けてのゼロコロナ政策撤廃でコロナ感染爆発の危機、習近平政権「ダブル敗戦」の大打撃」 「前述の「新十条」の発表と実施は、「ゼロコロナ」政策の単なる「緩和」ではなく、むしろ思い切った政策の大転換である」、本当に「思い切った政策の大転換」だ。 「国民に大きな犠牲と不自由を強いた「ゼロコロナ」政策は結局何の意味もない。政策の完全失敗」、「今月から来年1月にかけて、中国全土で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い。政策転換のタイミングはあまりにも悪すぎる」、その通りだ。 「一党独裁体制下の中国で、政権は民衆の抗議運動に押された形で政策の大転換、大後退を余儀なくされたわけであり、立ち上がった民衆の力を前にして、政権が敗退したのである。言ってみれば、今の習政権は、コロナとの戦いに敗退したのと同時に民衆の力にも敗退してしまった。まさに屈辱の「ダブル敗戦」というものである」、「ダブル敗戦」とは言い得て妙だ。 「習政権の「ダブル敗戦」は結局、今後における民衆運動あるいは反乱の発生を誘発する火種を自ら撒いた」、「今回、医療施設の充実や高齢者層へのワクチン接種の普及などの十分な準備はまだ整えられていない状況下で、主に政治的要因により「ゼロコロナ」政策が放棄されたことの結果、感染しやすい冬期の到来と相まって中国全国で爆発的な感染拡大が起きてくる確率は非常に高い・・・ 政権は感染拡大をそのまま容認するのか、それとも「ゼロコロナ」政策に逆戻りするのかの選択を迫られることとなるが、封じ込めからやっと解放された中国国民はもう一度、広範囲な感染拡大に耐えていかなければならない。中国にとっての「コロナ問題」は、まさにこれからである」、本当にどうなるのか、大いに注目される。 東洋経済オンライン ファンキー末吉氏による「一気に大緩和?中国・ゼロコロナ政策撤廃の現実 音楽家ファンキー末吉が経験した緩和直後のドタバタ劇」 「ロックバンド「爆風スランプ」のメンバーで現在は中国を中心に活動」、とは興味深い存在だ。コロナ問題を新聞とは違った角度で伝えてくれるだろう。 「新疆ウイグル自治区で発生した火災で死亡者が出た。死亡者が出たのは、防疫用柵で消防隊の到着遅れたためではないかと考えられ、これをきっかけに中国全土でゼロコロナ政策に反対する抗議活動」、「政府はゼロコロナ政策を大幅に緩和することを発表した。2022年12月7日のことである。 これを受けて銀川では、スーパーや商業施設に入る際に必要だった48時間以内の陰性証明の提示が不必要となった」、「ゼロコロナ政策」も終わりはあっさりしたものだ。 「PCR検査」で「10人分の検体を1つの試験管にまとめる方式の検査」、1人でも陽性の人間がいると、何回か組み合わせを変えて検査を繰り返して、陽性の人間を絞り込むのだろう。これでも、個々人に検査をするより効率的なのだろう。 「全国の薬局から解熱剤などの風邪薬がすべて売り切れたという噂である」、最近は日本の薬局でも中国人が「風邪薬」を爆買いしているようだ。 「ゼロコロナ政策。あるところではとてつもなく厳しく、あるところではとてつもなく緩い」、これが緩め始めの実態だろう。 「省をまたぐ移動も何の障害もなくできる。このような無症状の感染者が平気で中国国内を自由に飛び回っているという事例はもっともっとたくさんあるのだ」、恐ろしいことだ。 今日のニュースでは、コロナ感染者の数や死亡者数の発表は止めたようである。医療体制が不十分な「中国」で医療崩壊が激化するようであれば、まさに悲劇だ。 現代ビジネス 「【習近平の大誤算】若者の失業率約18%、富裕層の国外脱出加速、米輸出規制で“科学技術立国の夢”が泡に」 「「今回の支援策の対象は最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)など有力な企業に限った話。恒大集団など過剰債務に陥っている企業はことごとく対象外です。習近平は問題を先送りにしたに過ぎませんよ」、「恒大集団」が「対象外」ということは、殆どの不動産企業も「対象外」になってしまう。 「資産をシンガポールや日本などに移し、脱出を図る富裕層が急増しました。さらに最近、企業レベルでも将来性の乏しい国内での事業を切り捨て、海外に出て行こうとする向きがあります。 その一つが、民間企業の海外視察ブームです」、「経営者の中にはこれを機に、拠点の海外移転を決める者も多いと聞きます」、これでは大変だ。 「「ゼロコロナ政策の規制緩和も、実際には'21年1月には出されていました。しかし、現場を指揮する地方政府の役人たちは、『お上の指示に従って失敗したら自分が感染再拡大の責任を取らされる』と、自分自身が処罰される可能性に怯え、自らの保身のために2年近く動かなかったわけです」、 「規制緩和」の「指示」の「実行」に「自らの保身のために2年近く動かなかった」、とは官僚主義もここに極まれりだ。急に「規制緩和」したことによる「感染爆発」による医療崩壊、死者急増の嵐が早く収まってくれることを期待する。
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