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ドイツ(その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか) [世界情勢]

ドイツについては、昨年10月22日に取上げた。今日は、(その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか)である。

先ずは、12月9日付けNewsweek日本版「ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/13-48_1.php
・『<クーデターを計画した極右組織のリーダーは今も一族が城を保有する貴族の家系。組織とロシアとの関係が疑われている> ドイツで政権転覆を企てたとして極右テロ組織のメンバーら25人が逮捕された問題で、同組織の活動にロシアが関与していた疑いが浮上している。ロシア政府は関係を否定しているが、貴族の家系で一族が現在も城や狩猟用の別邸などを保有している「ハインリッヒ13世」と名乗る男性がリーダーを務めるこの組織は、ロシア側と接触していたとみられている。 ドイツ当局は12月7日朝、3000人以上を投入して強制捜査を行い、組織のメンバーとみられる25人を逮捕した。逮捕者には、組織のリーダーで「ハインリッヒ13世」を名乗る、71歳の貴族の家系出身の男も含まれている。 当局によると、逮捕されたメンバーらは、リーダーの男を新政府の指導者にすることを計画していた。男はクーデター計画への支持を得るために、ドイツ国内とロシアにおいて、ロシアの代表者と連絡を取ったとされる。 ドイツ連邦検察庁によると、この組織は「ライヒスビュルガー」と呼ばれる極右勢力や「Qアノン」の陰謀論を支持しているという。ライヒスビュルガーは、ドイツの現代の国家体制を否定し、第2次大戦前の国境に従って存在すべきだと主張している。 組織は遅くとも昨年11月までにクーデターを計画し、「ドイツは現在『ディープステート(影の政府)』のメンバーによって統治されていると固く信じている」と検察は説明。組織は、この体制からの解放が米国やロシアを含む「さまざまな国家の政府、情報機関、軍による秘密結社」からなる「同盟」からの介入を約束するものだと考えているという』、「ドイツ」でこんな「極右」「クーデター計画」が発覚、「25人を逮捕」、とは、衝撃だ。
・『「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」  新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」と検察庁は明らかにした。 検察庁はまた、逮捕者の中にロシア人の女1人が含まれていると発表した。ドイツの個人情報保護規則に従い「ビタリア・B」と公表されたこの女は、テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかったという。 過激派について研究するロンドンのシンクタンク「戦略対話研究所」(ISD)の政策・研究担当シニアマネージャー、ヤコブ・グールは、ネオナチやアイデンティタリアン運動など、ドイツに従来から存在する極右勢力は、ロシアへの支持で二分されているとニューズウィークに語った』、「新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」、しかし、「ビタリア・B」が「テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかった」、なるほど。
・『ロシアに共感する陰謀論信奉者  「しかし、ライヒスビュルガーやQアノンの(ような)陰謀論信奉者は親ロシア的であるため、特にこの組織のメンバーが(ロシア政府に)共感することはそれほど不思議ではない」とグールは言う。 同組織のメンバーには、2021年まで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の連邦議会議員を務めていたビルギット・マルザックウィンケマンも含まれている。 グールは、プーチンのウクライナ侵攻に対するAfD内の意見は分かれているものの、「自由主義に立ち向かうキリスト教の伝統的な強い支配者として」プーチンを支持する派閥が党内に存在すると指摘する。AfDの共同党首のティノ・クルパラとアリス・ワイデルは、今回のクーデター計画を非難している。 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた』、「ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は」、「今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた」、「ロシア」との関係はいまのところないようだ。

次に、12月9日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/13-48_1.php
・『<米連邦議会の襲撃事件と同様、ドイツでのクーデターを企てた組織にもQアノンの陰謀論や、ネット上で広まる極右過激派の思想が大きく影響していたとみられる> 「インターネットを理解せずに極右は理解できない。極右を理解せずしてインターネットは理解できない」「何年もの間、当局はデジタル空間を真剣に考えず、法整備が不十分だ。このため極右テロリストのサブカルチャーが何の規制も受けることなく繁殖することが可能になり、未成年者でも簡単にアクセスできる」 陰謀論イデオロギー、偽情報、反ユダヤ主義、右翼過激主義に対する早期警告システムの構築を目指すドイツ非営利組織CeMASのミロ・ディトリッヒ上級研究員はこう警鐘を鳴らしてきた。そんな中、独連邦検察庁が独自国家樹立のため現体制の転覆を狙って連邦議会の襲撃を企てた疑いがあるとして極右テロ組織と支援者計25人を拘束し、世界に衝撃を広げた。 独裁者アドルフ・ヒトラーが第二次大戦を引き起こし、ユダヤ人やマイノリティを虐殺したドイツは戦後、ナチズムや極右思想を徹底的に排除して自由と民主主義、平和主義の模範生になった。今や欧州連合(EU)の押しも押されもせぬリーダーだが、欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている。辛い出来事だったコロナ・パンデミックによりグループがさらに過激化し、支援者も増えた。陰謀論は多くの人々にとって非常に魅力的だった」と英BBC放送に語る。陰謀論は自分の存在意義を見失った人たちに居心地のいい独自の世界観を与えている』、「欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている」、「ドイツ軍ともつながっている」というのは衝撃的だ。
・『「民主主義は無防備だ」  「民主主義は無防備だ。今朝から大規模な対テロ作戦が行われている。ドイツ連邦検察庁は『ライヒスビュルガー(帝国市民)』系のテロリスト・ネットワークが関与していた疑いがあるとみて捜査している。憲法上の機関に対する武力攻撃が計画された疑いがある」――マルコ・ブッシュマン独法務相は7日こうツイートした。 主犯格の1人は「ハインリヒ13世」を名乗る男(71)で、貴族の家系出身。右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」元連邦議会(下院)議員で現職裁判官ビルギット・マルザック=ヴィンクマン容疑者や元空挺部隊員も拘束された。この組織は昨年11月末に設立され、1871年のドイツ帝国を模倣した王政を復活させることを目指し、射撃訓練も行っていた。) 拘束された支援者3人のうち1人はロシア出身。オーストリアとイタリアでも1人ずつ逮捕された。このほか27人の容疑者がいるという。容疑者が所有する国内の関係先130カ所以上に3000人超を投入して捜索に当たっている。ナンシー・フェーザー内相は声明で「摘発された組織は、暴力的な幻想と陰謀論に突き動かされている」と述べた。 拘束者の中には米国の過激な陰謀論勢力「Qアノン」の信奉者も複数含まれていた。ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている。ディトリッヒ上級研究員は「(陰謀論イデオロギーにおける)暴力の可能性は常にあったが、より具体的になりつつある」と前から指摘していた』、「ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている」、「陰謀論」も困ったものだ。
・『「ドイツのQアノン」  『ドイツのQアノン』という報告書の中で「なぜ陰謀論は今日の社会に肥沃な土壌を見つけることができたのか」という疑問に対してディトリッヒ上級研究員はこう答えている。「現代社会は分断され、伝統的な出会いの場が失われつつある。同時に人々はコミュニティに憧れ、オンラインスペースに見つける人もいる」 「多くの人が日常生活で見出せなくなった自分の人生に意味を与えてくれる物語を渇望している。右翼過激派の物語に目を向けるかもしれない。イスラムに対する戦い、移民に対する戦い、ユダヤ人に対する戦いなどの物語だ。今、私たちは陰謀論イデオロギーへの転換を目の当たりにしている」 独国営国際放送ドイチェ・ヴェレ(DW)によると、ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた』、「ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた」、「税金を納めることを拒否」、これはさすがに違法だろう。
・『爆発寸前に達した社会のフラストレーション  捜査当局によると、ロシアとドイツの新しい国家秩序を交渉するため暫定政府を設立する計画があったという。グループは銃器に親しみ、一斉捜索で大量の武器や弾薬が押収された。ライヒスビュルガー運動にはドイツ軍や旧東ドイツの国家人民軍の元兵士もかなり含まれ、特殊な軍事訓練を受けた者もおり、以前から危険視されていた。) ディトリッヒ上級研究員はコロナ危機でQアノンが広がったことについて報告書の中で「歴史を見ると、危機のたびに陰謀論イデオロギーが拡大している。国民がこれまでと同じように物事をどう続けていけば良いのか分からなくなった時、秩序が失われる。こうして不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」と分析している。 2016年12月、ワシントンのピザ屋に男がライフル銃を持って押し入り、3発を発射した。男は民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏がこのピザ屋に幼い子供たちを性奴隷として拘束しているというQアノンの陰謀論を信じていた。クリントン氏を嫌うQアノン支持者にとってドナルド・トランプ前米大統領は一種の救世主的存在になった。 昨年1月に米連邦議会を襲撃したのもトランプ氏をあがめるQアノンの信奉者だった。陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある。勝者総取りのネオリベラリズム(新自由主義)が拡大させた貧富の格差、コロナ危機、ウクライナ戦争が悪化させたエネルギー危機とインフレで社会のフラストレーションは爆発寸前に達している。 民主主義はまさに危機に瀕している』、「不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」、「陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある」、「民主主義はまさに危機に瀕している」、その通りだ。

第三に、12月12日付けBBC News「ドイツ国家の転覆を画策、どういう集団なのか」を紹介しよう。これは、より深く掘り下げた分析である。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63932787
・『真冬の森に囲まれた地面を、雪がうっすらと覆っている。 ドイツ東部チューリンゲン州のこれまた東部で、私たちは車を走らせていた。うねり続ける田舎道の急カーブを十数回も曲がると、そこにアルパカが3頭、わびしげに私たちを見つめていた。 3頭の後ろには丘。その上に、私たちはついに目当てのものを見つけた。ネオゴシック様式の狩猟用別荘、石塔がそびえるヴァルドマンスハイル城の姿を。 この城は7日まで、ドイツ連邦議会を占拠して現代ドイツ国家を破壊しようと企む、雑多な集団の本部だった。このグループは現代ドイツの代わりに王制を復古させ、そのトップに「プリンス(侯子)」を据えようとしていた。第1次世界大戦まで数百年にわたりこの地方を治めていた一族の一員のことだ。 この集団は、この国家転覆計画をクリスマスまでに完了させようとしていた。 とんでもない、ほとんど信じられないことのように思えるだろう。 その通りだ。そして今や当の「プリンス」は逮捕され、クリスマスを留置所で過ごすことになった。 しかし、このクーデター計画をドイツの治安当局は真剣に受け止めていた。そして、国内にとどまらず、オーストリアやイタリアにも及ぶ150カ所を警官3000人が家宅捜索し、25人を逮捕した。ほとんど類を見ないほど大規模な一斉摘発だった。 情報機関関係者によると、捜査が進めば今後数週間や数カ月のうちに逮捕者はさらに増えることになる。そして、国内の連邦議会や州議会の内外でいかに警備体制を強化するかの話題で、ドイツ・メディアは持ちきりだ。 ロイス侯爵家の「ハインリヒ13世」をはじめ、25人が逮捕された(7日、フランクフルト) ロイス侯爵家の「ハインリヒ13世」をはじめ、25人が逮捕された(7日、フランクフルト) そうやってドイツ・メディアはセンセーショナルに大騒ぎしているのだが、それとは実に対照的に、ハンティング・ロッジ(狩猟用別邸)の敷地にひとけはなく、ひっそりとしていた。施錠された門の外からのぞき込むと、あまりに静かで、不気味でさえあった。敷地内に建つ朽ちたような小屋の壁には、いくつものシカの頭蓋骨が所在なさそうにつるされていた。おそらく敷地内で狩られたのだろう。 マスコミをいぶかしむ近隣の人たちはいやそうに、ロッジの中で明かりがつくのは見たことはあるが、この数カ月というもの人の出入りはほとんど気づかなかったと、私に教えてくれた。来訪者は正面玄関ではなく、脇の裏口を使うのだそうだ。地元の墓地の後ろを通る森の中の裏道を経て、建物に入るのだという。 ヴァルドマンスハイル城を頻繁に訪れる人たちが、なぜ人目を避けていたのか、今ならその理由がわかる。 このグループは2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた』、「2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた」、ずいぶん「計画」は進んでいたようだ。
・『「プリンス」と呼ばれてこのグループの中心にいた人物は、世襲貴族の一族ロイス家の末裔(まつえい)だ。オーストリアに邸宅を構える一族の当主、ロイス侯爵ハインリヒ14世はズーム経由で、私の取材に応じてくれた。 「とんでもないことだと、私たちは思っている」と、ハインリヒ14世は言った。 「このつまはじき者は、荒唐無稽な陰謀論と反ユダヤ主義の考えが理由で、何年も前に一族から縁を切られている。私たち家族の代表でも何でもない」 逮捕された「ハインリヒ13世」について、ロイス侯は、「ずっとこうだったわけではない」とも言った。ちなみに、この一族では男子は全員「ハインリヒ」と名付けられる。存命の一族のハインリヒは30人いる。13世は若いころ、「レーシング・ハインリヒ」と呼ばれていた。レーシングカーと美しいモデルが好きだったからだ。 ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された。 「レーシング・ハインリヒ」の遠縁にあたるロイス侯によると、ハインリヒ13世は次第に世間を恨むようになった。「不運続きだった」のだと、侯爵は首を振りながら言った』、「ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された」、「東ドイツ」だったら、やむを得ないだろう。
・『国家転覆計画容疑での一斉摘発で25人が逮捕された  逮捕されたハインリヒ13世には、重病の娘がいる。フランクフルトを拠点にした不動産業は、あまり成功していない。そして、一族の所領を取り戻そうと膨大な数の訴訟を起こしてきたものの、そのほとんどで敗訴している。 東独の共産党政権は、ヴァルドマンスハイル城をユースホステルとして使った。ドイツ・メディアに「Prinz Putsch(反乱侯子)」と呼ばれるようになったハインリヒ13世は、ベルリンの壁とソヴィエト連邦が崩壊したのち、1990年代前半に自らヴァルドマンスハイル城を買い戻す羽目になった。 「悪い仲間と付き合うようになった」のだと、ロイス侯は言った。 「今となっては、それは誰が見てもわかる」 ハインリヒ13世が計画した反乱の一味の顔触れは、まるでスパイ・スリラーか、あるいはそのパロディーの登場人物一覧だ。 さまざまな陰謀論を信じる71歳のドイツ貴族。はるかに年下のロシア人の恋人(彼女はロシア政府に、ドイツ国家転覆を支援してもらおうとしていた)。腕利きの料理人。ドイツの精鋭特殊部隊の現役関係者。元警察幹部。ベルリンの裁判官。そして、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の元連邦議会議員。 今もAfDに所属するビルギット・マルザック=ヴィンケマン元議員は、新国家の法相になる予定だった。連邦議会の内部の様子を知る元議員の知識が、武装蜂起の立案に不可欠だった。クリスマス前に予定されていた連邦議会襲撃は、暴力的なものになるはずだった。 グループの通話を傍聴していた捜査員たちは、人が死ぬのは「避けがたい」と一味が話し合うのを聞いていた。マルザック=ヴィンケマン元議員は、神秘主義に情熱をそそいでいたとされており、捜査関係者によると、議会襲決行の日にちを決めるために、占星術のホロスコープ(天体配置図)を参考にしていたという。 連行される逮捕者(7日、カールスルーエ) しかし、この計画にドイツの治安当局が本気で対応したのは、複数の元軍関係者が集まり、軍事組織を立ち上げようとしていたからだ。捜査当局が「リュディガー・フォン・P」と名前を公表した人物が、この軍部のトップで、連邦議会襲撃の責任者だった。議事堂を襲撃し、議員たちの両手を縛って人質にとり、警察の動きを封じる計画だった。 「リュディガー・フォン・P」は元陸軍中佐で、精鋭空挺(くうてい)部隊の指揮官だった。ドイツ・メディアによると、現役軍人だったころから兵器を集めて隠し持っていたという。 その直属には、現役の特殊部隊将校「アンドレアス・M」と、元陸軍中佐の「マクシミリアン・エデル」がいた。エデル容疑者はソーシャルメディア「テレグラム」で活発に活動しており、最近では友人たちに、クリスマス前に社会が激しく揺れる動乱があると、動画メッセージで警告していた。 そのほかには、解職された元警官で陰謀論者を公言している「ミヒェル・F」や、ネオ・ナチスにつながりのあるサバイバルのエキスパート「ペーター・W」などがいる。「ペーター・W」について捜査当局は、今年4月に家宅捜索した際に自宅に武器や銃弾を発見したことから、捜査線上に浮上したとしている。 7日の一斉摘発では、捜索した50カ所から武器が見つかった。これにはドイツ南部の陸軍兵舎も含まれる。報道によると、ヴァルドマンスハイル城を捜索した警官の1人は近隣住民に、弾薬や爆発物を探しているのだと話したという。 ドイツの軍や治安機関にいったいどれだけ、極端なイデオロギーが浸透しているのか、その実態は把握されていない。これは非常に心配なことだと、極右人種差別や反ユダヤ主義に詳しい研究者のニコラス・ポッター氏は言う。 極右の軍関係者が大量の武器や銃弾を入手していたことを、ポッター氏は懸念している ベルリンのアメデオ・アントニオ基金で上級研究員を務めるポッター氏は、ドイツ軍でこのところスキャンダルが相次いでいることを、BBCの取材で指摘した。中でも、精鋭部隊の陸軍特殊戦団(KSK)で、極右思想があまりに蔓延(まんえん)しているという理由で中隊が解体されていることも、ポッター氏は取り上げた。 「とんでもないほど大量の弾薬や武器が基地から消えて、極右の兵士の手に渡っている。(今回のクーデター計画で)明らかになったのは、氷山の一角に過ぎない。実態の規模はもっと大きくて深いのだと思う。これは非常に心配な事態だ。高度に訓練されて、強い目的意識を持った兵士が数人いれば、民主主義にとっては深刻な危機となることを、忘れてはならない」 クーデターを計画したグループの中には、いわゆる「ライヒスビュルガー」と呼ばれる人が大勢いた。その名の通り「帝国の住民」を自認する総数2万1000人超のこの人々は、現代ドイツの連邦共和国を認めていない。そのため、納税を拒否し、ドイツの判事による判決を受け入れず、連邦共和国のナンバープレートも使わない。「ライヒスビュルガー」たちは、第1次世界大戦の敗戦をもってドイツ帝国が崩壊して以来、正統で合法的なドイツ国家は存在しなくなったと考えている。 2016年にそうした「ライヒスビュルガー」の自宅を警察が強襲し、違法に所持する銃器を押収しようとした際には、家の所有者が応戦し、警官1人を殺害している。情報機関の関係者は私たちの取材に対して、近年「ライヒスビュルガー」は過激性を増していると話した。ただし、実際に暴力行為に自ら及ぶ用意のある「ライヒスビュルガー」は、ごく少数だとみられている。 今年の夏、ハインリヒ13世は、連邦共和国発行の身分証を持つ者はれっきとしたドイツ人ではないという内容のチラシを用意し、保養地バート・ドビンゲン一帯の民家の郵便箱に投函して回った。侯子のヴァルドマンスハイル城は、このバート・ドビンゲンにある。 「頭がおかしいんだと思った」。年金暮らしのイザベルさんはこう言ってから、古い石畳の町の中心部でATMに入っていった。 「帝国のパスポートや運転免許証を申請できるとかいうウエブサイトのリンクが、チラシに書いてあった。今のドイツの国旗ではなくて、赤と黒と白の古い帝国の旗がついた免許証。それから、ここでミニ王国を作るための選挙に参加しませんかという呼びかけもあった。そのミニ王国とやらのトップに、本人がなるつもりだったんでしょう。私はすぐにくしゃっとチラシを丸めて、ごみ箱に捨てました」 しかし、私たちがバート・ドビンゲンで会ったすべての人が、このイザベルさんほどきっぱり否定的だったわけではない。 ごみ回収業のセバスティアンさんは、家族や友人の中にはハインリヒ13世に同情的な人もいると話した。 「こんなことは言いたくないが、残念ながらそうなんです。この国の現状に不満を抱く人は大勢いる。ドイツ政府に不信感を抱いていて、今とは違うドイツになってもらいたいと思っている」 ベルリンにある非営利団体「監視・分析・戦略センター(CEMAS)」の偽情報研究者、ヨゼフ・ホルンブルガー氏によると、実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる。 今のドイツ人は特に陰謀論に取り込まれやすくなっていると、ホルンブルガー氏は言う。新型コロナウイルスのパンデミックを経た今、経済が下落を続け、ウクライナでの戦争の影響でエネルギー価格に対する懸念が高まっている状態なだけに。現状は政府当局のせいだと、大勢が思っているのだという。 ハインリヒ13世のヴァルドマンスハイル城があるドイツ東部チューリンゲン州の情報機関トップ、ステファン・クラマー氏は、ドイツだけでなく欧州の大部分にとって、パンデミックが分岐点だったと話す。過激派勢力とはこういう危機の時代に乗じて、自分たちのいいように現状を利用しようと乗り込んでくるものだと語った。 ステファン・クラマー氏は、パンデミックが分岐点だったと話す 「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」と、クラマー氏はBBCに話した。 「ドイツ連邦共和国を倒すという共通の目的があるので、彼らは今や協力しあっている。一方(ライヒスビュルガー)はそもそも連邦共和国など本当は存在しないと言う。もう一方(ナショナリストな極右)は、連邦は存在するが、それを滅ぼして代わりに新しい(独裁)政権を作りたいと言う。双方は思想的な結びつきはないが、この共通の目的でつながっている。一緒になってデモに参加して、新しいメンバーを勧誘している」 こうしたデモの一つがパンデミックの最中にベルリンで行われ、約4万人が参加した。そしてその渦中で、デモに加わっていた少数のグループが、連邦議会襲撃のまねをしてみせたのだ』、「実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる」、「20%ものドイツ人が陰謀論を信じがち」、意外に多いようだ。「「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」」、パンデミックが「手を組む」きっかけだったとは、あり得る話だ。
・『カルトはなぜ危険なのか、なぜ人はカルトに入るのか 心理的トリックを知る重要性 これはその5カ月後に米ワシントンでドナルド・トランプ前大統領の支持者と陰謀論者が起こした、連邦議会襲撃事件の前触れでもあった。トランプ氏はかつてベルリンでのデモについて、自分はデモ参加者の間で人気だったようだと言及したことがある。 確かにその通りだ。ドイツ連邦政府に抗議していた人の多くは、トランプ氏や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を支持していた。彼らにしてみればトランプ氏やプーチン氏は、「より良い」、そして「より白い」、より保守的でキリスト教的な社会の強力な守護者ということになる。 アメリカで生まれ、そしてトランプ氏を称揚する陰謀論「Qアノン」の支持者が最も多いのは、英語圏以外ではドイツだ。Qアノン信奉者は世界的な権力者の闇のネットワーク「ディープステート」の存在を主張し、その「ディープステート」を憎悪する。世界を支配しているのは、権力志向で腐敗した、幼い子供を虐待しては殺しまくるエリートたちだと、Qアノン信奉者は言い張る。そういうQアノン信奉者の敵は、リベラルで、グローバルで、そして多くの場合はユダヤ人だ。 陰謀論を広める「Qアノン」とは何か? 止める方法は? ドイツのQアノン信奉者は、声高なワクチン否定派やネオナチやライヒスビュルガーと手を組み、2020年8月末にベルリンのドイツ連邦議会議事堂に向かった。彼らが中に押し入る前に、警察が制止したものの、ドイツの反主流派勢力にとっては象徴的な大成功だと受け止められた。 黒・赤・白の帝国旗に身を包んだ抗議者の映像が、世界中で放送されたからなおさらだった。ここドイツでは、ナチスのカギ十字は完全に違法で使うことができない。そのためネオナチが特に好んで使うのが、この帝国旗なのだ。 ドイツ連邦議会を襲撃しようとしたデモ隊(2020年8月、ベルリン) 一方で、今後のドイツの治安体制をどう改善するかと言うと、この記事のため取材した実に大勢が、日常的に殺害予告を受けていることを知って、私は驚いてしまった。その多くが、いわゆるドイツの主流派のために働いているとみなされる人たちだ。 たとえば前出のホルンブルガー氏は安全対策として、CEMASのオフィスではない場所で取材を受けたいと希望した。チューリンゲン州の情報機関幹部のクラマー氏は、自分が常に標的にされていることを自覚している。 ドイツの極右をウォッチする前出のポッター氏と同僚の研究者たちは、しばしば脅迫を受ける。反ファシズム運動を展開する左翼党選出のマルティナ・レナー連邦議会議員も同様だ。 私たちの取材にレナー議員は、ドイツでは過激な陰謀論や新しい極右運動が台頭するだけでなく、それに伴う実際の暴力行為や攻撃が増加していると、懸念を示した。殺人事件も起きている。 ネオナチから反ファシスト活動家に転じたインゴ・ハッセルバッハ氏に会いたいと持ちかけると、「表では」会えないと言われた。 「よそ者」に対する治安対策をどれだけ強化したところで、最近では、脅威というのは国内からやってくるものでもある。 情報機関幹部のクラマー氏は、これこそ近年で最も懸念される変化の一つだという。 「最近の過激主義者は、表でパッと見てすぐそれと分かる格好をしていない。ネオナチでもスキンヘッドではないし、むしろピンストライプのスーツを着ていたりする。あるいは、コーデュロイのボトムをはいた中年男性だったりする。極右過激派とは一見思わないような見た目をしている。過激アナキストに見えない極左どころの話ではない。この国の政府転覆を図る人間の数と、その生き方は、社会の中心にがんのように広まっている。まだ少数派だが、一部はこの国の主流派の間でも増えつつある」 今週のドイツでは、クラマー氏も、あらゆる治安当局関係者も口をそろえて強調する。クーデターを計画したグループが逮捕され、捜査が続いているといっても、ドイツ政府や連邦議会の存続そのものが本格的に危険にさらされていたわけではないと。ただし、暴力事件が実際に起きる危険は本物だった。 「私は……最悪に備えて、最善を期待するようにしている」と、苦々しい表情でクラマー氏は言った。 ドイツについてこの国の外で思われているイメージと、私が受ける印象は大きく異なる。外国にいる人たちはドイツを、ルールを守りハイテクで地味でリスクを嫌い中庸で安全で中道的な社会だと思っているかもしれない。だが、もしかするとそれは、アンゲラ・メルケル前首相が体現したステレオタイプなのかもしれない。 そのステレオタイプのせいで、ドイツで起きる極右や極左の攻撃は、「単独犯」の犯行だと軽視されすぎてきたと、前出のポッター氏は言う。たとえば2019年に起きた保守派政治家、ヴァルター・リュブケ氏の暗殺がそのひとつだ。リュブケ氏は難民や移民の権利を声高に擁護していた。そして彼を殺害した男は、極右「ドイツ国家民主党(NPD)」やイギリスの極右団体「コンバット18」とつながりがあった。 「もちろん、公共交通機関がきちんと動くとか、効率的だとかとか、ドイツ社会のそういう部分に注目したってかまわないが、この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだと、ポッター氏は強調する』、「この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだ、闇に埋もれたままよりは、望ましい。
タグ:ドイツ (その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか) Newsweek日本版「ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが」 「ドイツ」でこんな「極右」「クーデター計画」が発覚、「25人を逮捕」、とは、衝撃だ。 「新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」、しかし、「ビタリア・B」が「テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかった」、なるほど。 「ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は」、「今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた」、「ロシア」との関係はいまのところないようだ。 Newsweek日本版 木村正人氏による「ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機」 「欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている」、「ドイツ軍ともつながっている」というのは衝撃的だ。 「ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている」、「陰謀論」も困ったものだ。 「ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた」、「税金を納めることを拒否」、これはさすがに違法だろう。 「不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」、「陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある」、「民主主義はまさに危機に瀕している」、その通りだ。 BBC News「ドイツ国家の転覆を画策、どういう集団なのか」 「2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた」、ずいぶん「計画」は進んでいたようだ。 「ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された」、「東ドイツ」だったら、やむを得ないだろう。 「実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる」、「20%ものドイツ人が陰謀論を信じがち」、意外に多いようだ。 「「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」」、パンデミックが「手を組む」きっかけだったとは、あり得る話だ。 「この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだ、闇に埋もれたままよりは、望ましい。
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梨泰院ハロウィン圧死事故(その1)(雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し、韓国・ソウル雑踏事故でメディアが報じなかった…犠牲者の横で若者たちが連呼した「卑猥な言葉」と「ヤバすぎる現場」、韓国・梨泰院159人圧死事件から考える 韓国で大規模事故が減らない理由) [世界情勢]

今日は、梨泰院ハロウィン圧死事故(その1)(雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し、韓国・ソウル雑踏事故でメディアが報じなかった…犠牲者の横で若者たちが連呼した「卑猥な言葉」と「ヤバすぎる現場」、韓国・梨泰院159人圧死事件から考える 韓国で大規模事故が減らない理由)を取上げよう。

先ずは、11月2日付け東洋経済オンラインが掲載したソウル在住ジャーナリストで「ニュースタンス」編集長の徐 台教氏による「雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/629938
・『「ここで働いて10年になるが歴代トップレベルの人出だった」 事故から丸1日経った10月30日夜、匿名を条件にインタビューに応じてくれた現場付近のコンビニ店員はこう述べて目を伏せた。 29日晩、ソウルで最も多文化な街・梨泰院(イテウォン)に集まった人々が、同地のランドマークであるハミルトンホテル脇の路地で将棋倒しとなった。死者155人、負傷者152人(1日午前6時現在)。2人の日本人を含む26人の外国人をも巻き込んだ文字通りの大惨事となった。 「梨泰院の惨事」と名付けられ、社会的なインパクトとしては修学旅行中の高校生258人を含む304人が亡くなった2014年4月16日のセウォル号沈没事件以来のものとされる今回の事故が今、韓国社会にどんな議論を投げかけているのか。現在の争点から韓国社会が抱える問題が見えてきた』、興味深そうだ。
・『事故の原因をめぐる「すれ違い」  一晩明けた30日の朝から事故の詳報があらゆるメディアを通じ韓国社会に伝わった。あまりの被害の大きさから、韓国社会はショックを受け、次いで哀悼の雰囲気に包まれた。そして、「いまは哀悼の時間」というフレーズがネット上のあちこちに溢れた。非常に韓国的な表現であると、私は思わず唸った。 韓国はここ数年、いわゆる「保守」と「進歩」という両陣営間の政治的な分断が急速に深まっている。政治家間は言うに及ばず、市民が集うネット上の言論空間でも衝突が先鋭化している。 事故の原因究明を求める動きがすぐに政争へと転化する発火寸前の状況が存在するということだ。こうした中での「まずは哀悼」という主張は、「政治の話はやめよう」と置き換えることができる。 事故が社会に与える影響の深刻さを逆説的に伝える表現だった。自制心を失い陣営間に分かれ感情的な対立が起こる場合、社会秩序が崩れる恐れすらあったと私は見ている。 しかし、市民は冷静を保った。一方で追悼を優先する雰囲気に大統領も便乗する。 30日午前、尹錫悦大統領は国民向けの談話の中で「事態の収拾が付くまで国家哀悼期間とする」旨を明かした。期間中は派手なイベントを自粛することが求められる。百貨店や遊園地はハロウィンに向けて準備していたイベントをすべて取りやめ、売り物も撤去した。国が哀悼を指示していた。 だが、韓国市民は事故直後から、積極的に「なぜ」と問い続けた。 密閉空間でもない場所で、たくさんの犠牲者が出た理由を知りたがった。背景には、政府への不信がある。生者を乗せたまま沈みゆく船を全国民が見守るしかなかった8年前のセウォル号沈没事故を引き合いに出すまでもなく、忘れた頃にやってくる大型人災の陰には、必ず政府の予防や対応のまずさが存在してきたからだ。 そして、今回も同じだった。 事故当時、現場の路地一帯ではたくさんの人出にもかかわらず人流を整理する警官や公務員がほぼ見当たらなかったことが早々に明らかになった。さらに事故当日の昼間からは、人出の多さに危険を感じた現場周辺で商売を営む人物たちやユーチューバーなどが警察に通報し介入を要求したのにもかかわらず、黙殺されていたこともわかった』、「事故当時、現場の路地一帯ではたくさんの人出にもかかわらず人流を整理する警官や公務員がほぼ見当たらなかった」、「人出の多さに危険を感じた現場周辺で商売を営む人物たちやユーチューバーなどが警察に通報し介入を要求したのにもかかわらず、黙殺されていた」、これでは「行政」の責任重大だ。
・『行政の不備を指摘する声が出てきた  こうした内容が伝わるや、世論は哀悼ムードを維持しつつも行政の不備、つまり警察や公務員の対応が不足していた点を指摘する方向へと一斉に向かった。 印象的だったのはニュース専門チャンネルのYTNだ。31日の放送でアンカーは「国民は皆、警備の手薄さに憤っている」と発言した。事故の責任がどこにあるのかを示すもので、速報とファクト中心の報道を心がける同局としては、かなり踏み込んだ発言だった。 他局も同様で、続々と行政の不備に関するニュースを流している。 地上波主要局の1つSBSは、31日のメインニュースで、当日のソウルにはデモなどの対応で機動隊約4800人が投入されたが、13万人の人出が見込まれた梨泰院には「配備ゼロ」だったこと報道。また、1日には警察が事故の直前にあった市民の通報を「緊急度高」と分類したにもかかわらず、出動しなかった事実を伝えた。 このように「明らかな人災である」という世論が広まる傍らで政府は、「誰が実際に事故を引き起こしたのか」という点を明らかにしようと、周辺の監視カメラの映像や目撃証言を集め捜査を進めている。) ある生存者は「屈強な20代男性の一団が『押せ!押せ!』という叫ぶ声が背後から聞こえてきた。彼らを許さない」という趣旨の内容をネット上に書き込んだ。特徴的な髪型や衣装の様子が書かれており、ネットを中心に犯人捜しに拍車がかかっている。 当然、必要な捜査ではあろう。だがもし警察が「犯人」を特定したとしても、この事故の原因がすべてそこにあるのか、どう罰することができるのかもまた、議論となっている。「それよりも未然に路地の通行を規制すべきではなかったのか」という行政の不備を指摘する声が圧倒的な中、この「すれ違い」が今後は大きな争点となる見通しだ』、「デモなどの対応で機動隊約4800人が投入されたが、13万人の人出が見込まれた梨泰院には「配備ゼロ」だった」、「ある生存者は「屈強な20代男性の一団が『押せ!押せ!』という叫ぶ声が背後から聞こえてきた。彼らを許さない」という趣旨の内容をネット上に書き込んだ」、「「それよりも未然に路地の通行を規制すべきではなかったのか」という行政の不備を指摘する声が圧倒的」、やはり「行政の不備」が主因のようだ。 
・『政府の責任はどこまで?  「爆弾ゲーム」とは、爆弾に見立てたボールを数人で回し、音楽が止まった際にボールを持っていたものが罰ゲームを行う遊びだ。今回の事故後の政府内の動きは、これに近いものがある。 ゲームの登場人物は、梨泰院が所属するソウル龍山区長、ソウル市長、市民の安全を司る行政安全部の長官などだ。 まず、朴熙英(パク・ヒヨン)龍山区長は、事故直後に現場に駆けつけたというものの、事故後に連絡が取れなくなり立場表明が事故翌日の午後5時まで遅れた。朴区長は韓国メディアに「現場の収拾が先だった」としたが、立場表明文には事前の備えが足りなかったという認識は含まれず、謝罪の言葉もなかった。 朴区長はこれに対し「魂の込もっていない謝罪は意味がない。事前の準備がどう適用されていたのかをまず把握する」とかわした。 そして31日の会見では「区長としてはできることはやったが、ここまでの人出は予想できなかった」とした上で、「これ(ハロウィン)はお祭りではない。お祭りならばイベントの主催者がいるが、ただハロウィンの日に集まる一つの『現象』として見るべき」と見解を明かした。やはり謝罪の言葉はなかった。「現象」という発言は「責任逃れだ」とメディアや世論の批判を浴びている。 ソウル市の呉世勲(オ・セフン)市長は事故翌日の午後になって現場に到着した。事故の一報を聞き、海外出張から急遽帰国したものだ。 呉市長は現場で「子どもを亡くした親御さんたちにどんな労りの言葉をかけていいかわからない」とし、「ソウル市は事故の収拾に万全を期す」と述べた。謝罪はまたもなかった。翌31日には韓国メディアの記者たちに対し「捜査結果が出た後に立場を明かすのが順序である」との見解を明かした。 きわめつけは、文字通り市民の安全を総括する行政安全部(日本の総務省と警察庁を合わせた省庁)の李祥敏(イ・サンミン)長官の発言だった。 事故翌日の会見で「警察と消防を事前に配置したといって解決される問題ではなかった」とし、31日には「警察と消防の配置不足が事故の原因だったのかは疑問」と責任逃れと取れる見解を連発した。連日の失言に与党内からも辞任を求める声が上がるほどだった。 李長官は31日夜と1日午後に相次いで正式に謝罪したが、初動からすでに尹錫悦政府の「責任逃れ体質」を韓国社会に強く印象づけた』、「初動からすでに尹錫悦政府の「責任逃れ体質」を韓国社会に強く印象づけた」、無責任極まる対応だ。
・『なぜ行政の「責任」になるのか  このように政府の重要な位置にいる人物たちは相次いで責任から逃れようとした。それはまるで、「責任」という名のボールを回す爆弾ゲームそのものだった。 李祥敏長官 行政安全部の李祥敏長官。判事出身で、尹錫悦大統領の高校・大学の後輩にあたる(写真:行政安全部のサイトより) 読者の中には「なぜ行政側が謝罪をする必要があるのか?」と思う方がいるかもしれない。当然、あり得る疑問だ。これに対する答えは2つある。 まず、韓国市民が政府に求める役割は想像以上に大きいということだ。2020年に新型コロナが流行した際にも、こうした感覚は明確になった。政府は国民を保護する義務があるという認識は深く根付いており、韓国の有権者は日々、政府にさまざまな対策を求めるデモを行っている。 次に法律で行政の責務が定められている点が挙げられる。 『災難および安全管理基本法(災難安全法)』の第4条では「国家と地方自治体では災難やその外の各種事故から国民の生命・身体および財産を保護する責務を負い、災難やその外の各種事故を予防し、被害を減らすために努力しなければならず、発生した被害を迅速に対応・復旧するために計画を樹立・施行しなければならない」と国、そして行政の役割は明確だ。 これらの点を行政側が理解していないはずはない。そして前述したようなすでに明らかになっている事実から、謝罪の必要性は充分に認識できるはずだ。「哀悼優先」や「原因究明」をかかげ謝罪を後回しにするのは不自然であったと考えるほかにない。 その後ついに1日午前、警察庁長が記者会見を開き、100件を超える事前の通報を見逃した警察の判断不足を認め、事故における警察の責任に言及した。また、李祥敏長官も同日「国家は国民の安全に対し限りない責任がある」とし、深い謝罪の意を明かした。呉世勲ソウル市長もこれに続き、「限りない責任」を繰り返した。 だが、政府が一度見せた責任逃れの印象は、そう簡単に覆らないだろう。 前述したように、現在は「実行犯」を探す動きと、「システムの不備や不作為」を究明する動きが同時に行われている。今後、特定の個人が「犯人」とされる可能性もある。この場合、政府の責任をどう問うのかが焦点となる。 そして再発防止策も議論されるだろう。実は、今回の事故は「法の死角」で起きたものでもあった。 韓国では1000人以上のイベントが行われる際に、主催者による安全管理措置の計画が規定されているが、梨泰院のハロウィンのイベントには主催者がいなかったため、対策が宙ぶらりんとなっていた。 この空白が事故を生んだとも考えることができることから、補完する法律を早急に作る必要がある。この空白は同時に、遺族が政府(行政)の責任を問えるのかどうかの争点をはらんでもいる。明確な政府の不手際が明らかになる場合、遺家族は政府に対する損害賠償請求ができるという専門家の指摘もある』、「韓国では1000人以上のイベントが行われる際に、主催者による安全管理措置の計画が規定されているが、梨泰院のハロウィンのイベントには主催者がいなかったため、対策が宙ぶらりんとなっていた。 この空白が事故を生んだとも考えることができることから、補完する法律を早急に作る必要がある」、「明確な政府の不手際が明らかになる場合、遺家族は政府に対する損害賠償請求ができるという専門家の指摘も」、なるほど。
・『大型事故が相次ぐ韓国社会は「安全」なのか  だが何よりも「韓国社会ははたして安全なのか」という問いに政府が答えなければならない。 同様のな問いはセウォル号事件が起きた8年前にも発せられ、OECD諸国でも屈指の多さとなるワーストの労働災害被害が相次いだ続いた文在寅政権の5年間にでも続いたが、残念ながら儚い望みであったことが今回の事件で明らかになった。 日本でも知られるアーティスト、イ・ランがツイートした「生きていることを個々人の運に任せる社会とは」という言葉は、ドラマ「イカゲーム」を彷彿とさせ、危険と隣り合わせの韓国社会の本質を鋭く突いている。 一方で事故を受けて韓国社会でも「あんな危険な場所に行くのが悪い」という「自己責任論」が、事故直後からはびこっている。 しかし、「梨泰院の惨事」は明らかに人災であり、政府は事故直後に責任を回避しようとした。こんな厳しい現実を前に韓国社会は今、「国民を保護する」という政府の役割を求め続け前に進もうとするのか、それとも無力感の中で自己責任論が幅を利かす方向へとなし崩しで変わっていくのか、その大事な分岐点を迎えている。「梨泰院の惨事」が投げかける問いは、あまりにも重い』、「韓国社会は今、「国民を保護する」という政府の役割を求め続け前に進もうとするのか、それとも無力感の中で自己責任論が幅を利かす方向へとなし崩しで変わっていくのか、その大事な分岐点を迎えている」、どちらに進むのだろうか。

次に、11月7日付け現代ビジネス「韓国・ソウル雑踏事故でメディアが報じなかった…犠牲者の横で若者たちが連呼した「卑猥な言葉」と「ヤバすぎる現場」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101873?imp=0
・『ハロウィン直前の週末、多くの若者が集まる韓国・梨泰院で起きた大惨事。その裏では一部の若者たちがあまりに無軌道な行動をとっていた』、「一部の若者たちがあまりに無軌道な行動」とはどいうことなのだろう。
・『阿鼻叫喚の地獄絵図 「なにこれ! ウケる!」  救助活動を手伝っている最中に聞こえてきたはしゃぐような声に、朴恩周さん(20代・仮名)は耳を疑った。 目の前に広がるのは阿鼻叫喚の地獄絵図。隙間なく密集した群衆が、さまざまな言語で助けを求めて絶叫していた。 「助けて!」「押せ!」「戻れ!」――。 四方八方から押された圧力によって、誰もが苦悶に満ちた表情を浮かべている。 裂けそうなほど口を大きく開き、断末魔のような悲鳴を上げている女性。目を見開いたまま、動かなくなってしまった男性、顔色がみるみるうちに紫色に変わっていく少女。 それなのに――。 「酔っ払った男女が犠牲者にスマホを向けて、笑っていたのです。救急車の前で『セックス』と連呼しながら、飛び跳ねて踊っていた集団もいました。地獄があるとしたら、あの光景のことでしょう」(前出・朴さん)』、「「酔っ払った男女が犠牲者にスマホを向けて、笑っていたのです。救急車の前で『セックス』と連呼しながら、飛び跳ねて踊っていた集団もいました」、韓国の若者は酷く分断が進んでいるようだ。
・『横で躍りまくる若者たち  10月29日、若者たちでにぎわう韓国・ソウルの梨泰院エリアで、午後10時15分ごろ群衆雪崩が発生した。 日本人女性2人を含む、156名が圧死するという大惨事が起きた小道は、幅3・2mほど。その道の、長さわずか5・7mほどのスペースに約300人もの人々が押し込められた。 多くの犠牲者は倒れて下敷きになったのではなく、立ったまま周囲の人に押し潰され圧死した。 この大惨事にもかかわらず、犠牲者を好奇の対象とする野次馬が無数に存在したことはあまり報じられていない。 中には救助され、下着姿や半裸状態で心肺蘇生をされている女性たちを性的な目で見ていた男性もいた。 「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて身体を触っていた男性もいたそうです」(韓国留学中の日本人女子大生)』、「救助され、下着姿や半裸状態で心肺蘇生をされている女性たちを性的な目で見ていた男性もいた」、「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて身体を触っていた男性もいたそうです」、盗人猛々しい恥ずべき行為だ。
・『むき出しの「エゴと欲望」  混乱に乗じて、ショックを受ける女性に励ますふりをして声をかけ、「お持ち帰り」を試みる男性もいたという。 大勢の遺体が横たわる場所で、エゴと欲望をむき出しにする人々。 まさに「鬼畜な現場」だった。 この日、韓国人の夫と梨泰院を訪れていた川上恵理さん(20代・仮名)も、信じられない光景を前に唖然とした一人だ。 「すぐ近くに、救助される人や死にそうな人たちがいたのに、町中にはクラブミュージックが爆音で流れ、お酒を飲んで踊りまくる集団をいくつも見かけました。現場に残された犠牲者の財布やスマホを盗んだ火事場泥棒もいたようです」 犠牲者の多くは、四方から圧力がかかり、胸部や腹部が圧迫されて呼吸困難に陥る「外傷性窒息」を引き起こしたとみられている。 「外傷性窒息は発症すると、血圧低下や血中の二酸化炭素濃度が上昇します。同時に静脈が圧迫されて血が戻らなくなり、顔色が紫色に変色する。そして二酸化炭素の麻酔作用で痛みや苦しさがわからなくなり、眠るように命を落とします。 体重の5倍の力で圧迫された場合、およそ5分で死に至る。圧迫直後に救助されなかったら、助かりません」(法医学が専門の徳島大学・西村明儒教授)』、「「外傷性窒息は発症すると、血圧低下や血中の二酸化炭素濃度が上昇します。同時に静脈が圧迫されて血が戻らなくなり、顔色が紫色に変色する。そして二酸化炭素の麻酔作用で痛みや苦しさがわからなくなり、眠るように命を落とします。 体重の5倍の力で圧迫された場合、およそ5分で死に至る。圧迫直後に救助されなかったら、助かりません」、恐ろしい症状だ。
・SNSで「いいね」稼ぎ  そうした意識不明の人々の傍らには、冒頭でも紹介したように、悲惨な最期を迎えた若者たちに手を合わせるのではなく、スマホのカメラを向けて撮影する人々の姿が多く見られた。 「血だらけの道路、並んで横たわっている遺体、下着姿で心臓マッサージや人工呼吸を受けている負傷者、担架で運ばれる人などを撮影。フィルターなしでこぞってSNSに投稿していた人々がいて、問題になっています」(東京新聞論説委員の五味洋治氏) ジャーナリストの金敬哲氏も、思わず目を背けたくなるような惨状を狙って撮りに行く若者たちがいたと指摘する。 「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています。そうした人たちの多くが事故現場を撮影し、配信したのでしょう」 そんな行動に対し、韓国国内からも、「あまりに恥ずべき行為だ」と批判の声が上がっている。 一方で、前出の朴さんによると犠牲者に対する批判も多くみられるという。 梨泰院のハロウィンは人が多く、「行かないほうがいい」と再三、注意喚起されており、「自業自得」というものだ』、「「血だらけの道路、並んで横たわっている遺体、下着姿で心臓マッサージや人工呼吸を受けている負傷者、担架で運ばれる人などを撮影。フィルターなしでこぞってSNSに投稿していた人々がいて、問題になっています」、「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています。そうした人たちの多くが事故現場を撮影し、配信したのでしょう」、「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています」、全く嘆かわしいことだ。
・『先行きが見えない韓国  批判の矛先は韓国政府や警察庁にも向けられた。 事故発生が懸念されていたにもかかわらず、認識が甘く、対策が不十分だったからだ。 4日、犠牲者を追悼する法要に出席した尹錫悦大統領は初めて公式に謝罪した。 だが、今後の対応次第では政権を揺さぶる事態に発展する可能性もある。 悲嘆と批判、同情や嘲笑などが入り混じって渦巻く中、このままでは別の場所で同じような事態が起きかねないと前出の五味氏は危惧する。 「自然発生的なハロウィンイベントは、韓国では集まった人と気軽に盛り上がれるコミュニケーションの場として、若者に人気です。厳しい受験競争や兵役がある韓国で、ストレス発散になるこのイベントは自分を解放できる側面があるようです」 その背景には、先行きの見えない韓国の社会で、若者たちの間に漂う諦念が垣間見える。 「就職も結婚も難しい。夢もなく、他人には興味がないけれど、楽しいことだけには熱中する。今だけを生きる、といった刹那的な感覚の若者が増えています」(前出・金氏) 悪夢のハロウィンは起こるべくして起こったのかもしれない―』、「「自然発生的なハロウィンイベントは、韓国では集まった人と気軽に盛り上がれるコミュニケーションの場として、若者に人気です。厳しい受験競争や兵役がある韓国で、ストレス発散になるこのイベントは自分を解放できる側面があるようです」、「ハロウィンイベント」は日本でも盛んになってきたが、「韓国」では遥かに盛んになる要素が多いようだ。

第三に、11月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した韓国在住ライターの田中美蘭氏による「韓国・梨泰院159人圧死事件から考える、韓国で大規模事故が減らない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/312822
・『韓国・ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)でハロウィーンのために集まった群衆が転倒し、158人が死亡するという大惨事が起こってから2週間が過ぎた。いまだ深い悲しみに包まれている韓国であるが、その悲しみの裏で、度重なる安全を軽視した人災に対する怒りと失望感も広がっている。日本でもこのニュースは衝撃をもって伝えられ、「どこにでも起こり得る事故だ」という声も聞かれる。しかし、韓国でこれだけの人災とも言うべき大きな事故が多発する背景には、安全対策の見直しや反省だけでは改善できない韓国の事情もありそうである』、「安全対策の見直しや反省だけでは改善できない韓国の事情」、とはどんなことなのでろう。
・『第二、第三の梨泰院事故を引き起こしそうな予兆は至るところに  日本でも報道されているが、今回の事故現場となった梨泰院の路地は、緩やかな傾斜のある狭い道の両側に店舗が軒を連ねている。事故当日はそこに身動きを取れない程に群衆が密集していたこと、また、再三指摘されている通り、警察の警備が不十分であったことを考えると、さまざまな不運や要因が重なって起こってしまった事故だと言えるだろう。 しかし、こうした事故は梨泰院に限ったことではなく、韓国の繁華街であればどこでも起こる可能性を秘めている。韓国の繁華街は、大通りから一本裏に入れば狭い路地がひしめき合っていることが多い。その路地のほとんどは一方通行で袋小路のようになっており、「コルモク」と呼ばれている。韓国の繁華街の多くは古くから栄えている地域であり、こうした入り組んだ道がそのままで今も残されていることが多いのである。 写真のこの路地は第二の都市・釜山の西面(ソミョン)という繁華街にある。見ての通り狭い道の両端には、店が看板やディスプレーを出していたり、廃棄用の段ボール箱が置かれていたりして乱雑な様子が 分かるかと思う。その上、実際に歩くと度々、歩行者の横をかなりのスピードですり抜けて行くオートバイや車もあり、危険も感じる。) さらに今回の事故では、現場近くのホテルのテラスが増設されていたことで道幅を狭め被害を拡大したのではないかと指摘されている。こうした建物の違法建築も韓国では度々、問題視されているが、実際には罰金を課せられてもそれに従わないケースも多いのも事実である。 こうした韓国の路地の危険性は、今回のような群衆による転倒事故に限ったものではなく、他の災害でも被害を大きくする原因になるであろうことは十分に考えられる。例えば火災が起きた場合に、消防車や救急車が狭い道幅や、障害物によって現場へ進入するのが困難になったり、消火や救助活動に支障が出たりすることは容易に想像できる。 こうした街中の地理的な事情に加えて、公共の場での秩序というものも韓国で日常生活を送っていると気になることが多い。例えば、混雑した雑踏や車内、店内といった場で、前方の人を一言もなく押して追い抜こうとしてくることが多い。また現在でこそ、交通ルールが厳しくなって改善されたものの、かつてはバスがバス停留場で完全に止まらず、減速してきたバスをめがけて客たちが一目散に小走りで飛び乗るといった光景が普通であった。また、車の運転を見ても運転の荒さや、車がいったん停止をしない、駐車の仕方が悪いなど、外国人からは韓国の「交通マナー」について苦言の声もよく聞かれる。 こうしたところからも、危険を考えたり、ルールを守ったりするということよりも「少しぐらいはルールを破ってもいい」「みんなもやっているから」といった自分本位な姿勢が目についてしまう。こうしたことも、今回の事故と全くの無関係とはいえないのではないかと考えるのである』、「混雑した雑踏や車内、店内といった場で、前方の人を一言もなく押して追い抜こうとしてくることが多い」、「車の運転を見ても運転の荒さや、車がいったん停止をしない、駐車の仕方が悪いなど、外国人からは韓国の「交通マナー」について苦言の声もよく聞かれる。 こうしたところからも、危険を考えたり、ルールを守ったりするということよりも「少しぐらいはルールを破ってもいい」「みんなもやっているから」といった自分本位な姿勢が目についてしまう。こうしたことも、今回の事故と全くの無関係とはいえないのではないかと考える」、その通りなのだろう。
・『人災のみならず自然災害でも、安全が軽視されがち  そして、人災のみならず自然災害においても、対策をしていれば被害を防げていたかもしれないところ、大きな被害が出てしまった不幸なケースもある。 今年8月、ソウルとその周辺の首都圏は100年に一度というレベルのゲリラ豪雨に見舞われた。その結果、ソウルの南部を中心に広範囲で道路が冠水し、多くの車が洪水に巻き込まれる被害が出た。また、地下鉄駅構内や商業施設でも浸水被害が続発、さらに映画「パラサイト」でも注目された半地下住宅で、大量に流れ込んできた水で3人が溺死するという被害が出た。 また9月には台風11号が南東部の浦項(ポハン)を直撃し、市内を流れる河川が氾濫。近くのマンションの地下駐車場に、水が流入したことで駐車場から車を退避させようとした住民たちが巻き込まれ7人が死亡した。 筆者の住むアパートも河川が近く、大雨の際には川の水位が上がり、水が遊歩道まで押し寄せていること、やはり地下に駐車場があることから、浦項の台風被害は人ごととは思えない。 韓国の建築物は、そのほとんどが地下駐車場を持っている。半地下は、元は朝鮮戦争時の避難壕として造られ、その後、1980年代には都市部の住宅不足の解消手段として住居として利用されるようになったものだ。家賃の安さなどから、かつては独身者や学生に人気があったものの、現在では新たに半地下を建造することは禁止されている。老朽化や、火災や水害など災害時に逃げ遅れるリスクがあるなどの面で問題視されているが、都市部を中心に半地下に住んでいる人は今も多い。今回の豪雨での被害も、「懸念されていたことが的中してしまった」という声が上がっていた』、「都市部を中心に半地下に住んでいる人は今も多い。今回の豪雨での被害も、「懸念されていたことが的中してしまった」という声」、なるほど。
・『政府・自治体レベルでは災害対策が進みつつあるが……  韓国では2016、17年にマグニチュード5クラスと観測史上最大の地震が起き、これ以降、特に国や自治体は災害時の緊急速報や、国民への安全確保の呼びかけ、地域ごとの避難場所の設置といった施策を積極的に行うようになっている。それでも近年、世界各地を襲う異常気象や地震災害は韓国も無関係ではなく、韓国でも大型台風の直撃や集中豪雨といった気象被害に悩まされている。特に前述した、この夏ソウルを襲った集中豪雨では都市部の治水工事の必要性を見せつけられた。政府、自治体、企業いずれも、今後さらなる対策の必要に迫られるだろう。 韓国も、2014年の旅客船セウォル号の沈没事故や、近年の大きな地震、台風の自然災害、さらに2015年のMERS(中東呼吸器症候群)や新型コロナウイルスといった感染症による社会的混乱を経て、少しずつではあるが、政府や自治体による対策や対応に変化が見られていることも事実である。また、社会に大きな衝撃や影響を与えた事故や災害が契機となり法が改正されることも多く、そのスピードも速いといえる。 しかし、国民一人一人の根本的な意識は、それほど変わっていないと言えるかもしれない。大きな事故や災害が起こるたびに、その検証が行われるよりも先に、国全体が追悼ムードに染まり悲しみに暮れる。非難のターゲットを見つけては糾弾、デモを起こし「政治問題」として世論が扇動される、という事態を、韓国社会は毎回繰り返してしまう特徴がある。今回の梨泰院事故も、同じパターンをたどる可能性は高い。感情だけでは何も解決しないのだが……。この、韓国特有の体質が変わらない限り、これからもこうした事故が起こり続けるのではないかと懸念してしまうのだ。)【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。 タイトル:韓国・梨泰院159人→韓国・梨泰院158人 1段落目:156人が死亡するという大惨事が起こってから2週間が過ぎた。→158人が死亡するという大惨事が起こってから2週間が過ぎた』、「大きな事故や災害が起こるたびに、その検証が行われるよりも先に、国全体が追悼ムードに染まり悲しみに暮れる。非難のターゲットを見つけては糾弾、デモを起こし「政治問題」として世論が扇動される、という事態を、韓国社会は毎回繰り返してしまう特徴がある。今回の梨泰院事故も、同じパターンをたどる可能性は高い。感情だけでは何も解決しないのだが……。この、韓国特有の体質が変わらない限り、これからもこうした事故が起こり続けるのではないかと懸念してしまうのだ」、こうした「韓国」の体質も困ったものだ。
タグ:(その1)(雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し、韓国・ソウル雑踏事故でメディアが報じなかった…犠牲者の横で若者たちが連呼した「卑猥な言葉」と「ヤバすぎる現場」、韓国・梨泰院159人圧死事件から考える 韓国で大規模事故が減らない理由) 梨泰院ハロウィン圧死事故 東洋経済オンライン 徐 台教氏による「雑踏事故が露わにした韓国社会の「イカゲーム化」 責任逃れしようとする政府と始まった犯人捜し」 「事故当時、現場の路地一帯ではたくさんの人出にもかかわらず人流を整理する警官や公務員がほぼ見当たらなかった」、「人出の多さに危険を感じた現場周辺で商売を営む人物たちやユーチューバーなどが警察に通報し介入を要求したのにもかかわらず、黙殺されていた」、これでは「行政」の責任重大だ。 「デモなどの対応で機動隊約4800人が投入されたが、13万人の人出が見込まれた梨泰院には「配備ゼロ」だった」、「ある生存者は「屈強な20代男性の一団が『押せ!押せ!』という叫ぶ声が背後から聞こえてきた。彼らを許さない」という趣旨の内容をネット上に書き込んだ」、「「それよりも未然に路地の通行を規制すべきではなかったのか」という行政の不備を指摘する声が圧倒的」、やはり「行政の不備」が主因のようだ。 「初動からすでに尹錫悦政府の「責任逃れ体質」を韓国社会に強く印象づけた」、無責任極まる対応だ。 「韓国では1000人以上のイベントが行われる際に、主催者による安全管理措置の計画が規定されているが、梨泰院のハロウィンのイベントには主催者がいなかったため、対策が宙ぶらりんとなっていた。 この空白が事故を生んだとも考えることができることから、補完する法律を早急に作る必要がある」、「明確な政府の不手際が明らかになる場合、遺家族は政府に対する損害賠償請求ができるという専門家の指摘も」、なるほど。 「韓国社会は今、「国民を保護する」という政府の役割を求め続け前に進もうとするのか、それとも無力感の中で自己責任論が幅を利かす方向へとなし崩しで変わっていくのか、その大事な分岐点を迎えている」、どちらに進むのだろうか。 現代ビジネス「韓国・ソウル雑踏事故でメディアが報じなかった…犠牲者の横で若者たちが連呼した「卑猥な言葉」と「ヤバすぎる現場」」 「一部の若者たちがあまりに無軌道な行動」とはどいうことなのだろう。 「「酔っ払った男女が犠牲者にスマホを向けて、笑っていたのです。救急車の前で『セックス』と連呼しながら、飛び跳ねて踊っていた集団もいました」、韓国の若者は酷く分断が進んでいるようだ。 「救助され、下着姿や半裸状態で心肺蘇生をされている女性たちを性的な目で見ていた男性もいた」、「失神した女性の服をわざと脱がし、救助や心肺蘇生に見せかけて身体を触っていた男性もいたそうです」、盗人猛々しい恥ずべき行為だ。 「「外傷性窒息は発症すると、血圧低下や血中の二酸化炭素濃度が上昇します。同時に静脈が圧迫されて血が戻らなくなり、顔色が紫色に変色する。そして二酸化炭素の麻酔作用で痛みや苦しさがわからなくなり、眠るように命を落とします。 体重の5倍の力で圧迫された場合、およそ5分で死に至る。圧迫直後に救助されなかったら、助かりません」、恐ろしい症状だ。 「「血だらけの道路、並んで横たわっている遺体、下着姿で心臓マッサージや人工呼吸を受けている負傷者、担架で運ばれる人などを撮影。フィルターなしでこぞってSNSに投稿していた人々がいて、問題になっています」、「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています。そうした人たちの多くが事故現場を撮影し、配信したのでしょう」、「SNSに投稿して『いいね』を貰うことに快感や幸福を覚え、存在価値を見出している人たちが増えています」、全く嘆かわしいことだ。 「「自然発生的なハロウィンイベントは、韓国では集まった人と気軽に盛り上がれるコミュニケーションの場として、若者に人気です。厳しい受験競争や兵役がある韓国で、ストレス発散になるこのイベントは自分を解放できる側面があるようです」、「ハロウィンイベント」は日本でも盛んになってきたが、「韓国」では遥かに盛んになる要素が多いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 田中美蘭氏による「韓国・梨泰院159人圧死事件から考える、韓国で大規模事故が減らない理由」 「安全対策の見直しや反省だけでは改善できない韓国の事情」、とはどんなことなのでろう。 「混雑した雑踏や車内、店内といった場で、前方の人を一言もなく押して追い抜こうとしてくることが多い」、「車の運転を見ても運転の荒さや、車がいったん停止をしない、駐車の仕方が悪いなど、外国人からは韓国の「交通マナー」について苦言の声もよく聞かれる。 こうしたところからも、危険を考えたり、ルールを守ったりするということよりも「少しぐらいはルールを破ってもいい」「みんなもやっているから」といった自分本位な姿勢が目についてしまう。こうしたことも、今回の事故と全くの無関係とはいえないのではないかと考える」、その通りな のだろう。 「都市部を中心に半地下に住んでいる人は今も多い。今回の豪雨での被害も、「懸念されていたことが的中してしまった」という声」、なるほど。 「大きな事故や災害が起こるたびに、その検証が行われるよりも先に、国全体が追悼ムードに染まり悲しみに暮れる。非難のターゲットを見つけては糾弾、デモを起こし「政治問題」として世論が扇動される、という事態を、韓国社会は毎回繰り返してしまう特徴がある。今回の梨泰院事故も、同じパターンをたどる可能性は高い。感情だけでは何も解決しないのだが……。この、韓国特有の体質が変わらない限り、これからもこうした事故が起こり続けるのではないかと懸念してしまうのだ」、こうした「韓国」の体質も困ったものだ。
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中国情勢(軍事・外交)(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、8月31日に取上げた。今日は、(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”)である。

先ずは、9月5日付け現代ビジネスが掲載した元航空自衛隊情報幹部の鈴木 衛士氏による「【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99430?imp=0
・『台湾へのペロシ訪問以後、中国は台湾やわが国周辺で軍事活動を活発化させているが、無人機(大型ドローン)も例外ではない。しかし、この運用の実態はあまりに危険で、飛行高度の問題で最悪、日本の沖縄周辺の領域を飛ぶ民間旅客機との事故の危険性があり得ることを緊急で報じたい。 まず、7月28日の拙稿『中国大型軍事ドローンが日本周辺で活発化、でも「領空侵犯されても撃墜できない」日本政府見解がヤバすぎる』において、中国軍がわが国周辺における大型無人機(ドローン)の運用を本格化させたことなどを指摘した。この時以来、中国軍はわが国、特に沖縄周辺の空域で、偵察型無人機BZK-005や偵察/攻撃型無人機TB-001など大型ドローンの活動を常態化させようとしている。 ちなみに、大型無人機、大型ドローンという言葉に関してだが、無人機の中でも「ドローン」は通常小型のものを指し、大型の無人機は自衛隊や米軍などでは「UAV(Unmanned aerial vehicle)」と呼称しているが、本記事では一般読者に分かりやすいように「大型無人機」「大型ドローン」などと使い分けて使用する。なお大きさについてだが、今回の写真のものを含めて軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上に達する』、「軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上」、かなり大きく、本格的なようだ。
・『中国大型軍事ドローンの「飛行高度」が危険すぎる  それにしても、中国の無人機の運用方法は、傍若無人で危険極まりない。 前述の拙稿のとおり、7月25日以来、中国の大型ドローンは、単独で自国のレーダ・カヴァレッジ(覆域)外をはるかに超えて、沖縄・宮古島間というわが国の島嶼(とうしょ)間を通過し、太平洋側からわが国の領空へ接近するという活動を繰り返しているが、自国レーダで安全監視していない領域でのこの運用がいかに危険なことか、中国軍は本当に理解しているのだろうか。 分かってやっているなら、これは明らかな挑発行為であり、それはそれでわが国の対応の仕方もあろう。しかし、もしこれが危険という認識が欠如しているものならば、わが国にとってこれほど恐ろしいことはない。 筆者が現役時代、中国空軍から幾度も接触(自衛隊でいうスクランブル)を受けたことのある米軍のパイロットは、中国軍の対応は、「アン・プロフェッショナル(さじ加減を知らないの意)でとても危険だ」と嘆いていたものである。同様な発言は、米海軍艦艇の軍人からも聞いたことがある。この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧している。 そして、何よりこの大型ドローンの危険性の本質は、その高度帯にある。 わが国も装備を始めた米国製の大型ドローン・グローバルホーク(RQ-4)は、ハイハイ(high high altitude)と呼ばれる超高高度帯域約13,000m~18,000mで飛行する。これは、何よりも敵戦闘機からの要撃を回避するためではあるが(酸素濃度の理由で戦闘機のこの高度帯域での攻撃は困難となっている)、これによって民間機などとの高度帯による隔離が可能(民間機の上昇限度は約13,000m)となり、飛行経路の自由度(安全性)が高くなるというメリットもある。 これに対して、中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動しているのである。 民間の飛行監視サイト「Flightradar24」を見ても分かるように、沖縄・宮古島間は少ない時で2~3機、多い時では7~8機の民航機が常時行き来している。これを考えると、この大型ドローンの飛行は、北朝鮮や中国の弾道ミサイルがわが国EEZに落下するよりは、「はるかに危険な行為である」ということが分かるだろう』、「この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧」、「中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動している」、危険なことこの上ない。
・『ついに台湾は中国小型ドローンを撃墜した  ここで、近日の中国軍事ドローンに関する変化について振り返ってみよう。我々が特に注目すべきは、9月1日、ついに台湾陸軍が中国大陸に近い(台湾が実効支配する)金門群島の石宇島上空を飛行した3機の中国から飛来してきた小型ドローンを撃墜したことである。 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発して台湾周辺で行った大規模な軍事演習以来、わが国や台湾周辺で大型ドローンの活動を活発化させていたが、この金門群島周辺でも(市販のものと見られる)小型のドローンが再三領空内へ侵入して来ていたが、台湾はついにこれを撃墜したのである。 この経緯について、順を追って説明すると、まず中国がこの大規模な軍事演習において、わが国の排他的経済水域(EEZ)を含む演習(航行警報)海域に弾道ミサイルを発射した8月4日、前述2機種の大型ドローンなど3機が、この演習海域を含む沖縄周辺の空域において、午前から夜間にかけて長時間活動した。 また、同30日には、TB-001が単機で7月25日と同様のコースで沖縄・宮古島間を通過し、宮古島の南方空域から台湾東方の海域で昼間帯に活動し、往路と同じコースで帰投した。 
台湾国防部によると、この演習以降、中国に近い(台湾が実効支配する)金門群島では、中国から飛来した小型ドローンが度々領空に侵入し、これらのドローンから撮影した台湾の軍事施設の動画が中国のSNSで拡散されていたとのことである。 中でも、前述のTB-001がわが国周辺に飛来した8月30日には、金門島の離島である二胆島に中国から飛来した小型ドローンに対して、台湾軍が「度重なる(音声や信号弾などの)警告に応じなかったため、実弾射撃を実施した」と発表した。台湾軍が中国のドローンに対して実弾を発射したのは、これが初めてであった。 そして9月1日、台湾陸軍は、金門群島の石宇島上空に侵入してきた3機のドローンに対して、信号弾を発射し、警告射撃を行ったのち、いずれにも従わず引き返さなかったドローンを撃墜した(同陸軍発表)。 このドローンは、一般でも入手可能な撮影用の小型ドローンと見られる。しかし、ラジコン程度の大きさであっても、軍事施設付近ならば軍用ヘリなども飛行するだろうし、不安定な飛翔をする小型ドローンが周辺を飛行するのはとても危険なことだ。中国本土から6kmしか離れていない領域であることなどから、民間人による悪質ないたずらの可能性も考えられるが、これが相手国の軍事施設の上空を飛行したとすれば、その実行者が誰であれ国際問題となる類の行為である。 国籍不明の無人機が領空侵犯したら「問答無用で撃墜すべき」というのは、前述の拙稿で主張したとおりである。まさに、台湾軍の対応は正しいといえる。無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだというのは、拙稿で述べたとおりだ』、「無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだ」、その通りだ。
・『ドローンは「飛ぶロボット」に過ぎないから即撃墜を  国際民間航空(ICAO)条約においては、長距離洋上及び航空機用救命無線機(ELT)を装備しなければならない区域を飛行する場合には、航空機に対して国際緊急周波数(VHF:121.500MHzまたはUHF:243.000MHz)の聴取を義務付けているが、通常各国の軍用機や艦艇もこれに準じてこの周波数をモニター(聴取)している。 したがって、領空に接近する国籍不明機(軍用機等)に対しても、航空自衛隊のレーダサイトからこの周波数帯を使用して通告や警告を実施している。その他、突発的な危険回避などの際にも、この周波数で相手との通信を試みるのが通例である。 2018年12月20日に発生した「韓国海軍レーダ照射事案」の際も、海上自衛隊の哨戒機から韓国海軍の艦艇へ向けてこの周波数帯で交信を試みたが、この際は(おそらく聞いていたであろう)韓国海軍艦艇からの応答はなかった。応答はなかったものの、この艦艇がこれをモニターしていた(可能性は大)とすれば、海上自衛隊の哨戒機が「危険を感じた」ということは認識したであろう。 これに対し、ドローンの場合は、これをモニターする人間が搭乗していないのだから、このような手順はすべて無効である。例えば、ドローンがこのままのコースで飛行すれば民間機と衝突する恐れがあると、航空自衛隊のレーダサイトや航空管制用レーダサイトで認識されたとしても、これを伝えるすべがないのである』、「国際緊急周波数」、を使用して通告や警告を実施しても返答・応答がなく、領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する撃ち落とすのは当然だ。
・『民間機と衝突する前にまずは抗議し、我の方針を伝えよ  中国の大型ドローンの単独による長距離進出は、いまだ緒に就いたばかりである。中国軍に言わせれば、「日本の民航機の通過時間などはすべて承知している」と言うかも知れない。しかし、民航機が何時間も遅れることなどよくあることだ。コースも高度もその時の気象などによっては変化する。 パイロットによる安全監視もなく、自国レーダによる監視もなく、接近する領空や航空機などに関わる通報や警告にも耳を貸さず、ただひたすらに命じられたコースや空域で任務を遂行するこのドローンは、一歩間違えばとてつもない凶器となる。民航機と衝突して大惨事が発生する前に、十分な対策を講じておく必要があろう。 まず政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となるのである。 決して、この行動に対応する航空自衛隊などの現場が、いざという時に躊躇することのないよう、政府は毅然とした姿勢を明確にしておいてもらいたいと切に願う』、「政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。 このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となる」、その通りだ。

次に、10月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310709
・『9月の大洪水をきっかけに親中国のパキスタンが米国に接近  アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、9月26日に首都ワシントンでパキスタン外相のビラーワル・ブットー・ザルダリ氏と会談した。 ブリンケン国務長官は洪水による被害を受けたパキスタンへの支援を約束すると同時に、中国に対してもパキスタンが負っている債務を軽減するように呼びかけている。パキスタンでは9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害を受けている。 ブリンケン国務長官は5600万ドル(約80億円)の人道支援のほか、航空機17機分の物資など、長期にわたるパキスタン支援を表明している。 反米色の強かったカーン前首相が辞任したあとの7月6日に、両国外相は電話会談を行って、パートナーシップの強化を確認している。 パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ』、「パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ」、「9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害」、とは深刻な被害だ。
・『一帯一路離れを招いた中国の「自国第一主義」 パキスタンにとって中国は最大の経済パートナーである。中国にとっても、パキスタンはライバル関係にあるインドと隣接していることで、インド洋において最も信頼する戦略的パートナーである。中国は一大インフラ事業である「中国経済パキスタン回廊(CPEC)」を2015年から進めており、その予算規模は実に540億ドル(約7兆8000億円)に上る。 CPECには海港の整備、新鉄道の敷設、地下鉄建設、水力発電、ファーウェイによる中パ間の光ファイバーの敷設などがある。いずれも国家的な大規模プロジェクトであり、中国はパキスタンにとって最大の投資者だったわけだ。 だが、アメリカ政府はCPECに対して「持続可能な投資ではない」と警告を繰り返してきた。中国を全面的に頼るパキスタン政府はこの警告を無視してきたが、高金利と高インフレによる財政危機に見舞われ、親中のカーン首相が辞任に追い込まれてしまった。そして、今回の大水害がダメを押す形になって、ついにアメリカとの本格交渉が開始される運びとなった。 パキスタンはインドの陰に隠れて目立っていないが、人口は世界第5位の2億2000万人を有している。ただ、腐敗が横行したまま政治改革が遅れ、経済規模も外貨準備高も年々縮小し、失業率が急上昇。自国通貨パキスタン・ルピーも2015年以降下落の一途をたどっている。そのため、対外債務は1310億ドル(約18兆9000億円)という、その経済規模に似つかわしくない莫大な額に積み上がってしまった。 政府は負債の返済のために借り入れを増やす債務の雪だるま状態に陥っている。パキスタン政府は、紅茶の輸入量を減らすために国民に紅茶を飲む量を減らすことまで求めて、当然のことながら国民から強い反発を受けている。 パキスタンの債務の4分の1が中国からで、これは一帯一路の受け入れで急速に借り入れを増やしたものだ。中国にとってCPECは一帯一路最大のプロジェクトであることから、中国がパキスタンをかなり重視していることがうかがえる。 また、パキスタン政府もその見返りとして中国に対して最大限の配慮をして、たとえば世界中から批判を浴びているウイグル人虐待に対して、同じイスラム教徒の多い国ながらノータッチを貫いてきた。このあたりは経済連携を深めながらも、反中感情を隠さないインドとは根本的な違いがある。 ただ、中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである。 これはパキスタン国民からすれば、見えない損失を負わされたようなものである。 また、中国とパキスタンは自由貿易協定(FTA)を2006年から実施しているが、中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたからだろう。そのためパキスタン側の不満が鬱積して、2020年に仕切り直しをして中国側が歩み寄らざるをえなくなった。だがそれでも、パキスタンの中国に対する債務は増すばかりだ』、「中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである」、「FTA」では、「中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたから」、「中国」も悪どいやり方をしたものだ。
・『グワダル港から見える中国投資の問題点  パキスタンが中国投資に関していま最も不満をもっているのが、グワダル港に対するものである。グワダルは南西部にある小さな港町だが、中国が巨大投資を行って商業用深水港を建設し、急成長している。 このプロジェクトで特筆すべきは、無償援助が含まれていることだった。中国が無償援助を行うことはほとんどなく、それはパキスタンを重視していたことの証明だと考えられてきた。 もちろん、相手のことを思いやって無償援助するわけではない。グワダルが中国西部と近いことで、もともとはパイプライン建設や軍港建設を通して「中国の飛び地」とすべく計画している。 結局、グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態にある。 グワダルはさらに大きな問題を抱えている。グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在しているのだ。 BLAは中国の経済侵略に抗議していることから、今後プロジェクト自体に攻撃を仕掛ける可能性がある。実際、すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている。 グワダルはいまだに上水道が完備されておらず、電気も安定供給からはほど遠い。莫大な投資はしたはいいが、本当に計画どおりに発展させられるのかにも疑問符がつく』、「グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態」、「グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在」、「すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている」、「中国」にしたら身から出た錆なのかも知れない。
・『一帯一路の重荷を背負い続ける中国政府  一帯一路は主に陸のシルクロード(一帯)と海のシルクロード(一路)を中国からヨーロッパまで経済的につなぐという構想だが、実際にはアジアやアフリカ、中南米などの新興国を中心に莫大なカネを投資してきた。 だが、ウクライナ戦争をきっかけに、エネルギーや食糧価格の高騰、金利上昇などが新興国の経済を直撃している。先述のパキスタンや、最近政変が起こったスリランカ、その前に政変が起こったモルディブなど、中国依存が大きい国ほど、危機下で大きな打撃を被っており、一帯一路を受け入れた債務国からの返済が滞ってきている。 一帯一路受け入れ国には独裁国家が多いが、あまり雇用を生まない中国からの投資は国民から反発されることが多く、反政府的な感情を高めやすくなる。 また、一帯一路は欧米機関が「採算の見込みが認められない」としたプロジェクトが多く含まれており、実際、中国への借金が膨らむだけで、完成しても採算が見込めないことが多いことが、返済の行き詰まりに拍車を掛けている。 今後のプロジェクトについて、中国側では融資の基準を厳格化する案も浮上しているが、いずれにせよ、これまで投じた資金の回収が困難になりつつある状況は変わらない。また、今後の投資案件は著しく絞り込まざるをえなくなっている。 さらに、中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている。) とくに、スリランカ南部のハンバントタ港などのように、借金返済ができず、その「カタ」として港が中国に占領されると、「債務のわな」ではないかと中国は国際的な批判を浴びるようになっている。 体面を重視する中国政府にとって、一帯一路の評判の悪さは頭痛の種になっており、中国国内の反習近平勢力を中心に「一帯一路は失敗」という論調が高まっているという見方をする専門家も出てきている。 10月に習近平国家主席の3期目が決定すれば、中国の影響力拡大を続けるためにも一帯一路を撤回することはありそうもない。だが、だからといって、今後、債務国の財政が健全化して資金回収がスムーズになることもありえない。 中国経済が強かった時代であればそれでも続ける体力があるだろうが、中国経済は低成長期に入っている。中国がこれまで一帯一路という莫大な大型投資の原資に困らなかったのは、政府が社会福祉への財政を絞り込み、将来が不安な人民が勤勉に貯蓄してきたことが大きいが、今後の経済状況次第ではそれもどうなるかわからない。 だが、一帯一路をいったん緩めてしまうと、今まで広げてきた中国の影響範囲を再び欧米に覆させる可能性がある。進めるのもやめるのも困難な「不良債権」と化しつつある。 一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある』、「中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている」、「一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある」、こんな問題を抱えながら、「習近平」はよくぞ「3期目」を手にしたものだ。

第三に、10月16日付け文春オンライン「「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/57918
・『7月6日、ロンドンで米連邦捜査局(FBI)長官、英情報局保安部(MI5)長官による企業経営者向け合同講演会が開かれました。その際のクリストファー・レイFBI長官の講演録をFBIの許可を得て文藝春秋11月号に掲載(「FBI長官からの警告」翻訳・布施哲)。その一部を公開します』、興味深そうだ。
・『「中国政府こそが長期的かつ最大の脅威である」  ありがとう、ケン(・マッカラム、MI5長官)。今週ここに来て我々が直面している共通の脅威と我々の2つの機関の素晴らしい協力について話せることはとても光栄です。 FBIにとってMI5ほど親密なパートナーはいません。テロ対策からサイバー攻撃を使った知的財産の窃取、国際的な弾圧から諜報活動まで、私たちの機関が直面するほとんどすべての任務において連携しています。私たちが共に取り組む課題に共通項があることにお気づきでしょう。そしてどれも困難な課題ばかりです。 私たちの世界はさまざまな困難な課題であふれています。ロシアによるウクライナへの侵攻、民間人に対する無慈悲な殺害行為、民間インフラの破壊はその最たるものです。 我々両機関は目下、ロシアの脅威に取り組んでいますが、その一方で本日は、ここにいるビジネスパーソンの皆さんにとっても脅威となる、複雑かつ広範な問題について話したいと思います。私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました。「私たち」とは、米英両国と欧州やその他の地域の同盟国という意味です』、「私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました」、「一貫して」は言葉がスベリ過ぎた感もある。
・『中国政府はあらゆる手段を使って盗む  ここで明確にしておきたいのは、中国政府と中国共産党こそが、私たちが対抗しようとしている脅威であることです。中国国民でもなければ、中国政府による弾圧の犠牲者ともいえる、わが国に住む中国系移民でもありません。中国でのビジネス、中国とのビジネスが魅力的であることはわかっています。私は公職に戻る前は12年間、民間において世界有数の企業に助言をする仕事をしていました。FBIでは日々、さまざまな規模の企業と関わっています。中国市場に目を向け、競争力を維持しようとする企業の考え方も理解しているつもりです。しかし、今日皆さんにお伝えしたいのは、賢明なるビジネスパーソンの皆さんが認識している以上に、中国が欧米の企業にとって深刻な脅威だという事実です。その脅威を見極め、それに対処するための計画を立てるには長期的視点が不可欠です。 その脅威とはどのようなものか。 中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています。狙われている欧米企業は大都市から小さな町にまで至り、企業規模もフォーチュン上位100社からベンチャーまで、所属セクターも航空、AI、製薬などあらゆる分野にわたっています。 中国企業のために働いている協力者がアメリカ国内のある畑に忍び込み、独自に開発した遺伝子組み換え種子を掘り出したのを逮捕したこともあります。この種子は、開発するのに10年近くの期間と、数十億ドルの研究費がかかったものでした。そうした長年の企業努力も、すべての主要国の予算を足した額を大幅に超える資金を使った中国のサイバー攻撃工作にかかったらひとたまりもないのです』、「中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています」、こうした組織的な情報工作に対抗するのは容易ではなさそうだ。
・『中国政府は、サイバー攻撃を大規模な不正行為や窃盗を行うための有力な手段だと考えています。例えば、昨年の春、マイクロソフト社はExchange Serverソフトウェアにかかわる、これまで知られていなかった脆弱性をいくつか公表しました。中国のハッカーはこの脆弱性を利用して、米国のネットワークに1万以上のバックドアをインストールし、これらのシステム上のデータへの継続的なアクセスを可能にしていました。これは中国政府が脆弱性を悪用した一例に過ぎません。) ここ数年、中国政府の支援を受けたハッカーが、脆弱性を修正するパッチが適用されていないネットワーク機器やインフラへの侵入方法を執拗に探し出そうとしているのを私たちは注視してきました。中国のハッカーは、防御策を回避する戦術を常に進化させています。彼らは、ネットワーク・ディフェンダー(セキュリティ担当者)のアカウントを監視し、検知されないように必要に応じて戦術を変えることすらします。カスタマイズしたハッキング・ツールと、通常のネットワーク環境に存在するツールを組み合わせることで、ネットワークの「ノイズ」や通常のネットワーク環境に紛れ込ませて、自分たちの動きをカムフラージュしています。重要なのはその規模の大きさだけではありません。それらの戦術が効果的でもあることです。 さらに伝統的なサイバー攻撃によるデータ窃取に加えて、彼らはもっと陰湿な手口で表玄関から侵入し、お金を奪おうともしています。中国政府は技術を盗み取ることを目的とする投資や提携を好む傾向があります。中国企業の多くは、中国政府、つまり実質的には中国共産党に支配されています。その所有権は間接的でわかりにくく、対外的に公表されることもありません。そうでない中国企業についても実際は政府の統制下にあるといえます。なぜなら中国企業は、その規模にかかわらず、共産党の下部組織を組織することが義務付けられているからです。つまり、中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています。また、中国政府は正確なデューデリジェンス(投資先企業の調査)を可能にするデータの多くを遮断しており、例えば、取引先の企業が中国国有企業の子会社であるかどうかを中国国外の企業が見極めることは非常に難しい。私たちは、MI5やその他のパートナーと協力して、この種の秘密の投資を特定しようとしています。米国では何百もの不自然な取引を特定し、CFIUSの投資審査にかけました』、「中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています」、巧みなやり方だ。
・『中国政府指定の税務ソフトを使うと……  中国国内になると、同じような問題はさらにあります。中国政府が米国や英国の企業に対して、中国企業との合弁を義務づけていることは、皆さんもご存知でしょう。その合弁相手は往々にして競合相手にその後変貌するのです。それだけではなく、中国政府はあなたがた企業が持つ知的財産やデータの扱いについて、中国のやり方を求める立法措置をとっています。 2015年以降、中国政府は中国で事業を行う企業の権利とセキュリティを侵害する法律を次々と可決させています。例えば、2017年の法律では、中国政府によって「重要情報インフラ」と指定された場合、その企業は中国国内にデータを保存しなければならないと定めており、当然ながら、中国政府はデータに容易にアクセスできるようになりました。 2017年の別の法律では、中国にいる中国人従業員に中国の諜報活動を支援するよう強制することができるようになりました。そして、2021年に可決された法律では、中国で収集されたデータを集中管理し、そのデータへのアクセス権とコントロール権が中国政府に与えられています。その他の新しい法律では、中国に対する国際的な制裁の実施に参加した場合、中国政府が罰則を科すことが可能になり、外国企業は制裁参加か、中国政府の側に立つかの板挟みの状態に置かれます。また、中国株式を保有する企業に対して、自社ネットワーク製品の脆弱性情報を報告するよう求める規定もあり、中国当局がその脆弱性を悪用することができるようになりました。 そうした法律があっても中国政府が信頼に足る存在であれば問題はないのですが、残念ながら中国政府が法律や規制を悪用して外国企業の知的財産やデータを盗む実例を、私たちはこれまでにも見てきました。 例えば2020年には、中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます。 ◆ FBI長官クリストファー・レイ氏による講演録「FBI長官からの警告」(翻訳・布施哲)全文、そして布施氏による解説「日本企業の経営者への警鐘でもある」は、文藝春秋11月号、および文藝春秋digitalに掲載しています』、「中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます」、ここまでされても「中国」でビジネスをしたいという欧米企業は、本当にあるのだろうか。われ先に逃げ出してもおかしくなさそうだ。ただ、ドイツのフォルクスワーゲンのように特別待遇を享受しているような企業は残るのだろう。シュルツ首相も驚きの訪中をしたことだし・・・。
タグ:「グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態」、「グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在」、「すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている」、「中国」にしたら身から出た錆なのかも知れない。 文春オンライン「「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”」 中国情勢(軍事・外交)(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”) 現代ビジネス 「FTA」では、「中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたから」、「中国」も悪どいやり方をしたものだ。 「中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである」、 「軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上」、かなり大きく、本格的なようだ。 「パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ」、「9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害」、とは深刻な被害だ。 白川 司氏による「中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由」 ダイヤモンド・オンライン 鈴木 衛士氏による「【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も」 「一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある」、こんな問題を抱えながら、「習近平」はよくぞ「3期目」を手にしたものだ。 「政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。 このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となる」、その通りだ。 「この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧」、「中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動している」、危険なことこの 「国際緊急周波数」、を使用して通告や警告を実施しても返答・応答がなく、領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する撃ち落とすのは当然だ。 「中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている」、 「無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだ」、その通りだ。 ただ、ドイツのフォルクスワーゲンのように特別待遇を享受しているような企業は残るのだろう。シュルツ首相も驚きの訪中をしたことだし・・・。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます」、ここまでされても「中国」でビジネスをしたいという欧米企業は、本当にあるのだろうか。われ先に逃げ出してもおかしくなさそうだ。 「中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 「中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています」、巧みなやり方だ。 厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています」、こうした組織的な情報工作に対抗するのは容易ではなさそうだ。 「中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。 「私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました」、「一貫して」は言葉がスベリ過ぎた感もある。 文藝春秋11月号に掲載(「FBI長官からの警告」翻訳・布施哲)
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北朝鮮問題(その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは) [世界情勢]

北朝鮮問題については、昨年10月24日に取上げた。今日は、(その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは)である。

先ずは、本年10月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家/芸術文化観光専門職大学教授の山中俊之氏による「金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察」を紹介しよう。
・『北朝鮮が弾道ミサイルを立て続けに発射している。金正恩総書記は、軍事的に圧倒的に強い米国を向こうに回して、後へ引かない。ロシアのプーチン大統領のように軍事侵攻を断行した後、国際的に厳しく追い詰められるような失敗はしない――金正恩総書記をこう捉えると、“希代の戦略家”と思えてしまうから不思議だ。世界96カ国を訪ねた元外交官が考察する』、「金正恩総書記を」、「“希代の戦略家”」とは興味深い比喩だ。
・『金正恩総書記が戦国時代に生まれていたら...  「してやったり」「プーチンのように追い詰められることはしない」――北朝鮮の金正恩総書記は、ゆったりとした椅子に座りながら、NHKの報道で慌てふためく日本の映像を見て、こうつぶやいているのではないか。 10月4日、北朝鮮が打ち上げた中距離弾頭ミサイルが4600キロメートルの距離を飛んで太平洋上に落下した。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは5年ぶりだ。 国内各地で「Jアラート」(全国瞬時警報システム)のサイレンが鳴り響いた。北朝鮮のミサイルが上空を飛んでいる、墜落するかもしれない――第2次大戦を経験した世代の人は、戦時中を思い出したかもしれない。また、ウクライナでの戦争が、人ごとではないと感じた人もいただろう。 いずれにしても、自国の上空を他国のミサイルが飛んでいくことは、安全保障上の重大な危機である。日本政府は厳しく批判するのが当然だ。日米韓が合同軍事演習などを通じて軍事的圧力をかけていくだろう。 片や、金正恩総書記は、軍事的に圧倒的に強い米国を向こうに回して、後へは引かない。ロシアのプーチン大統領のように軍事侵攻を断行した後、国際的に厳しく追い詰められるような失敗はしない――金正恩総書記をこう捉えると、“希代の戦略家”と思えてしまうから不思議だ。 もし、金正恩総書記が戦国時代に生まれていたら、徳川の大軍を撤退させた真田昌幸くらいの戦績を残したのではないか。 「対米抑止で自国の体制を守るためなら何でもする」――金正恩総書記の視点で考えると、実に合目的的(一定の目的にかなっているさま)であることが分かる。 そもそも、金正恩総書記の“ミサイル連射戦略”の狙いとは何か。 それは、北朝鮮の指導者として存在し続け、その存在を世界に誇示し、世界から恐れを抱かせることだ。 そのためには、暗殺やクーデターを避け、外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ。 今の時期に日本上空を通過する弾道ミサイルを撃つのは、日米を含む西側諸国と、中露の関係が悪化していることが大きな要因にある。 ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアは西側と完全に対峙(たいじ)する国家となった。これは、ロシアが北朝鮮に味方する、少なくとも敵にはならないことを意味する。 中国も、8月のペロシ米下院議長の台湾訪問以降、特に台湾問題をめぐって米国と激しく対立している。過去25年間で最も高位の米政治家による訪台を、中国は「極めて危険」な行動だと非難していた。 北朝鮮としては、自分の“陣営”である中露両国が西側諸国と激しく対立しているので、国連安全保障理事会における新たな非難決議などに「拒否権を行使してくれる可能性が高い」と見ているはずだ。 中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう(ただし核弾頭は除く)』、「外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ」、「中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう」、その通りだ。
・『グアムまで届くことを米国に見せつけたかった  10月4日のミサイルは、飛行距離4000キロメートル級であり、初めて本格的に米国領であるグアムが射程距離に入った。5年前に日本上空を飛んだ際は、グアムまではまだ届かないとみられていたので、今回は技術的に大きな進捗を遂げている。 ただ、勘違いすべきでないのは、グアムが北朝鮮の実際の攻撃対象になるということではない。攻撃対象になりうること自体が、北朝鮮にとって大事な対米抑止になる。グアムまで届くミサイルを開発したことを米国に見せつけたかったわけだ。 そもそも、ミサイル発射にしても、合同軍事演習にしても、抑止のためである。実際に攻撃するためではない。安全保障の分野では、「こっちに何かしてきたら反撃するだけの軍事力を持っている、覚悟しておけ」と常日頃アピールすることが大事なのだ。 気がかりなのが、北朝鮮による核兵器の小型化・弾頭化だ。今後、核弾頭が米国領にまで到達しうることによって、対米抑止が真に効果を持つだろう。 西側の呼びかけに聞く耳を持たない金正恩総書記。今後の展開はどうなるのか。 第一に、北朝鮮は核兵器と核搭載のミサイル開発をいっそう進めるだろう。日米韓が何か言っても聞く耳を持たないことは明らかだ。 ただし、中国は北朝鮮の核開発には反対している。そのため、中国からの働きかけで核開発を緩める可能性はゼロではない。 とはいえ、それは限りなくゼロに近いだろう。繰り返すが、米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない』、「米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない」、確かにその通りのようだ。
・『プーチン氏を他山の石として示威行動に専念  第二に、プーチン大統領を「他山の石」として、実際の軍事的侵攻はせず示威的行動を続けるだろう。 北朝鮮は、ロシアのウクライナ侵攻に関して、国連総会におけるロシアへの非難決議に「反対票」を投じた数少ない国である(中国でも棄権だった)。それだけロシアには近い姿勢を続けてきたが、ここにきてロシア側の軍事的劣勢が明らかになり、複雑な思いを抱いていることだろう。 プーチン氏には2008年、ジョージアとの戦争においてわずか5日間で勝利し、ロシア占領地を拡大した“成功体験”がある。ところが、今回のウクライナ戦争では、ジョージアでの成功体験が完全にあだとなっている。 金正恩総書記は、そのような轍(てつ)を踏まないためにも、直接刃を向ける軍事作戦は行わない。示威行為を続けることで抑止力を高めるだろう。 10月6日、またしても北朝鮮が、今度は日本海へ短距離弾道ミサイル2発を発射した。Jアラートが国内各地で鳴るような事態は、いったいいつになったら終わるのだろうか』、「金正恩総書記」が「“希代の戦略家”」であると、「山中俊之氏」は記述した理由がよく理解できた。確かに「“希代の戦略家”」のようだ。

次に、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「「北朝鮮の核実験」は既定路線に、金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは」を紹介しよう。
・『わずか約2週間で7回 弾道ミサイルを発射  北朝鮮は、9月25日に続き、28日、29日、10月1日、4日、6日、9日と2週間余りの間に、7回弾道ミサイルを発射した。 わけても注目すべきは4日に中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射したことだ。これは日本の上空を通過、最高高度1000kmで4600kmの距離を飛行し、日本にJアラートを発出させ、太平洋上の日本のEEZ外に落下した。北朝鮮のミサイルとして最長の距離を飛び、米国のグアムを射程に入れた。 また、9日に発射したミサイルは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や「超大型放射砲」などさまざまな可能性があり、詳細は分析中である。 今後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通常軌道で初めて発射する可能性も出ている。 さらに、北朝鮮は核実験の準備を終えていると言われている。 北朝鮮の核・ミサイル開発とその実験は、計画に基づき進められているように思われる。ミサイルの連続発射は、核実験に対する日米韓や国際社会の対応を見極めるものでもあろう。 核実験は止められない可能性が高い。しかし、日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている』、「日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている」、その通りだ。
・『核・ミサイル保有に向け北朝鮮は着実に前進  金正恩氏にとって、核・ミサイルの保有は自らの生存をかけた大事業である。 北朝鮮は、2021年1月の第8回朝鮮労働党大会で、「最大の主敵である米国を制圧・屈服させることに焦点を合わせる」と表明した上で、米本土を狙ったICBMの高度化や原子力潜水艦、戦術核兵器の開発にも言及し、非核化に応じない姿勢を鮮明にした。 22年4月、金正恩氏が労働党トップに就任し10年を記念する日には「国家核武力の歴史的大業を実現した」として成果を誇示した。 9月8日の北朝鮮の最高人民会議では、核による先制攻撃を容認する法律を制定した。それは、他国からの核による攻撃が迫ったり、通常兵器であっても国家指導部と国家核戦力指揮機構に対する攻撃である場合を想定している。 北朝鮮外務省は「先制攻撃は米国の奇襲攻撃に勝つことのできる唯一の方法だ」と指摘しており、北朝鮮国防委員会も「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」と警告している。 北朝鮮は既に核保有を前提に戦術を考えているようである』、「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」、確かに「核保有を前提に戦術を考えているようである」。
・『北朝鮮の弾道ミサイル発射は実験ではなく実戦配備を想定  北朝鮮の一連の弾道ミサイル発射も、既に実験段階から核を搭載した実用段階に移行している、と考えるべきだろう。 米韓情報当局によると、北朝鮮がこの間に発射したミサイルは、「プルアップ機動」(ミサイルが下降中に再上昇)が可能な機種であり、パトリオット(PAC3、MSE)や高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)体系など、米韓のミサイル防衛システムを無力化する懸念のある新型戦略武器である。 北朝鮮は多種多様で戦術核搭載が可能なミサイルを発射することで、米韓による拡大抑止が有効でないことを示しているのかもしれない。米韓が拡大抑止カードを活用して圧力を加える場合、北朝鮮も武力示威の程度と頻度を高めて対抗することになろう。 9月25日と28日のミサイル発射は、米原子力空母「ロナルド・レーガン」が釜山に寄港、米韓合同演習、日米韓対潜水艦訓練に参加しているのに合わせたものであるが、これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである。米韓に対抗できるとの自信をのぞかせたものである。 また、29日の2発のミサイルは夜間に発射されたが、これは一日中いつでも発射できることを意味し、「実戦配備」が可能となったというメッセージといえる』、「これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである」、「北朝鮮」の自信の表れなのかも知れない。
・『北朝鮮の核実験が行われるのは中国共産党大会と米中間選挙の間か  9月7日、韓国国防部主催の会合で韓国の申範チョル(シン・ボムチョル)国防次官は、「北朝鮮は、追加核実験の準備はほとんどできているが、どんな意図をもってするかは明白ではない。1回のとても強力なメガトン級実験をするか、数回の連続的核実験をするかもしれない。おそらく核能力を最もよく見せる方法を選択するだろう」と予想した。 申次官は、北朝鮮の非核化を促すためには「金正恩政権に核保有よりも核保有のリスクと負担のほうがはるかに大きい点を認識させることが最も重要な非核化解決策」と強調した。 韓国の情報機関は、核実験が10月16日に開催される中国共産党大会と来月の米中間選挙の間に行われるだろうと予測している。この時、数回の実験が行われる可能性も排除できない。 北朝鮮の核実験が行われる場合には、米韓はこれまでにない対応をすると予告している。しかし、IRBM発射に対する国連安保理会合で何のアクションも取れなかったことを考えれば、効果的な制裁の強化が行えるか疑問もある。 北朝鮮の暴挙を遮断するためには、もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある』、「北朝鮮の核実験」に対しては、「もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある」、その通りだ。
・『北朝鮮のミサイル発射に対抗し日米韓と米韓の合同演習が活発化  北朝鮮の一連のミサイル発射に対抗し、日米韓、米韓、日米では合同演習を活発化させている。 米韓海軍は9月26日から28日の日程で合同演習を行った。これには米第7艦隊所属の原子力空母「ロナルド・レーガン」とミサイル巡洋艦1隻、イージス艦2隻などが含まれる空母打撃群が参加した。 このほかにも海軍のイージス駆逐艦など20隻を超える米韓の艦艇が日本海に展開した。北朝鮮全域を射程圏に置いたトマホーク巡航ミサイルを搭載した原子力潜水艦「アナポリス」も作戦に参加した。 日米韓3カ国は9月30日、日本海の竹島から150km離れた公海上で潜水艦を探知・追跡する対潜水艦訓練を実施した。3カ国によるこうした訓練は2017年に初めて行われ、今回は5年ぶりである。 この訓練は米海軍の原子力潜水艦「アナポリス」を潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した北朝鮮潜水艦と仮定し、これを探知・追跡しながら情報をやりとりする方式で行われた。この訓練には、米「ロナルド・レーガン」、韓国海軍の駆逐艦「文武大王」、日本の海自の護衛艦「あさひ」が参加した。 また、在韓米軍特殊戦司令部は人質の救出や夜間の浸透などの訓練「ティークナイフ」の様子を公開した。「ティークナイフ」はいわゆる北朝鮮指導部を狙った「斬首作戦」とも呼ばれるものであり、北朝鮮が最も警戒する訓練である。 梨花女子大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「米空母打撃群が動員された合同演習期間に北朝鮮がミサイル挑発を敢行したのは、核能力を完成した国が表出する攻撃的な軍事行為」と憂慮している』、「在韓米軍」の「ティークナイフ」作戦に対し、「北朝鮮」としても「ミサイル挑発」をする他ないのだろう。
・『北朝鮮のIRBM発射により米原子力空母が韓国に回航  しかし、米空母がいったん韓国を離れた後、北朝鮮によるIRBM発射に伴って、再び日本海に回航したのを見た北朝鮮の反応は注目に値する。 米空母「ロナルド・レーガン」は5日、進行方向を変え日本海に回航した。日本の海上自衛隊と米韓海軍は6日、日本海で北朝鮮によるミサイル挑発を想定し、標的に対する情報共有を通じて探知・追跡・迎撃の手順熟練に重点を置いた共同訓練を実施した。 また、米韓は7日と8日、日本海で海上機動訓練を行った。合同参謀本部は「北朝鮮のいかなる挑発にも対応できる作戦遂行能力と態勢を持続し、強化していく」と明らかにした。 さらに両国海軍は、空母を済州東南まで護送した。 加えて、米韓では合同で対応射撃を行い、地対地ミサイル「エイタクムス(ATACMS)」など4発を日本海に向けて発射した。ただ、韓国軍が発射した弾道ミサイル「玄武2」は通常の軌道を外れて落下するという異常事態が発生した。 日米韓の外交チャンネルもフル稼働している。日本でJアラートが発動したのを受け、日米では4日、岸田文雄首相とバイデン大統領の電話首脳会談が行われた。また、日韓でも6日、電話首脳会談が行われ、IRBMに対する緊急対応や、日韓関係の構築に向けた話し合いが行われた。 日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている』、「日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている」、その通りだ。
・『原子力空母の動きに神経をとがらせる北朝鮮  北朝鮮は「ロナルド・レーガン」が朝鮮半島水域に再び出現したことに対し、「朝鮮半島と周辺水域の情勢安定に重大な脅威を生じさせていることに対して注視している」と論評した。 「ロナルド・レーガン」の回航を受け、北朝鮮軍は6日、2発の短距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮の弾道ミサイルは変則軌道を取るため、現在の米韓弾道ミサイル迎撃体系で無力化するのは難しい。特に超音速ミサイルを「空母キラー」として開発中なことは、空母を狙った示威との分析が出ている。 さらに北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である。空中戦力では米韓が北朝鮮を圧倒している。北朝鮮は数十年前の老朽戦闘機が主力であるのに対し、米韓はステルス機能を備えたF35を保有している。北朝鮮が戦闘機まで動員したということは、あらゆる軍事力を動員した全面戦争で対応するという意思表示だろう。この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った。 これに対し、韓国軍は約30機を出動させた。 統一研究院の呉庚燮(オ・ギョンソプ)研究委員は「北は基本的に米国の戦略資産展開を深刻な脅威と認識する」として米空母やB52の動向を注視している。「今後、北が核保有国の地位を主張しながら対応の程度をさらに高める可能性がある」と警戒する。 半面、北朝鮮としては、9月26~28日に米空母が演習に参加した機会に弾道ミサイルを発射したにもかかわらず、再度回航したことを深刻に受け止めている可能性がある。北朝鮮が脅威と感じることで、その姿勢をさらに強硬にする可能性がある。だが、韓国が譲歩姿勢を示しても核ミサイルの高度化を進めるだけであり、危機を遅らせ、より深刻にするだけである。日米韓も毅然(きぜん)とした姿勢を取る必要がある。 韓国の外交安保シンクタンク・峨山(アサン)政策研究院とランド研究所が4月13日に共同で発表した報告書「北朝鮮核兵器の脅威への対応」は、韓米の取るべき行動として「北朝鮮が核兵器を使用しても勝利できないという認識を与える抑止力戦略で対応すべき」と提案している。 具体的には、北朝鮮との核戦争を準備しながら、主要目標は北朝鮮政権の除去であり、いかなる状況でも安全保障公約を守るという米国の意思を見せることが重要という。 北朝鮮が今恐れているのは、米原子力空母の展開と斬首作戦であろう。金正恩氏を押さえ込むためには、対話の呼びかけと合わせ、金正恩氏に脅威を意識させることが重要である』、「北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である」、「この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った」、今回の米韓の動きを深刻に捉えているためだろう。
・『北朝鮮を擁護し続ける中国の姿勢をいかに翻意させるか  北朝鮮の核・ミサイルによる挑発を抑えるためには中国の役割が重要である。しかし、中国は北朝鮮制裁を話し合う安保理で拒否権を行使し、北朝鮮制裁の抜け穴を提供するなど北朝鮮を擁護する姿勢を鮮明にしている。 とはいえ、中国の協力なくして北朝鮮を制御することは不可能である。 中国の姿勢を翻意させ、北朝鮮に対する圧力を加えさせるためには、「北朝鮮の挑発に対し、日米韓は一致して力による対抗姿勢を取る」「北朝鮮を助けたければ、北朝鮮の核・ミサイルを止めるしかない」と認識させることが不可欠である。 そのためにも、北朝鮮の挑発に対し、日米韓も空母常駐などあらゆる選択肢を排除せず強力な対抗姿勢を堅持することを鮮明にする必要があろう』、米中関係の悪化は、「中国の姿勢を翻意させ」ることを難しくしている。しかし、理想論の傾き過ぎるかも知れないが、「北朝鮮」と「米国」の関係改善に向けた努力を、再度、掘り起してみないと、事態打開の扉は開かないのでは、なかろうか。そのためには、前回の「北朝鮮」と「米国」の交渉を再検証し、そこから糸口を見出すべきだろう。
タグ:北朝鮮問題 (その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは) ダイヤモンド・オンライン 山中俊之氏による「金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察」 「金正恩総書記を」、「“希代の戦略家”」とは興味深い比喩だ。 「外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ」、 「中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう」、その通りだ。 「米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない」、確かにその通りのようだ。 「金正恩総書記」が「“希代の戦略家”」であると、「山中俊之氏」は記述した理由がよく理解できた。確かに「“希代の戦略家”」のようだ。 武藤正敏氏による「「北朝鮮の核実験」は既定路線に、金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは」 「日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている」、その通りだ。 「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」、確かに「核保有を前提に戦術を考えているようである」。 「これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである」、「北朝鮮」の自信の表れなのかも知れない。 「北朝鮮の核実験」に対しては、「もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある」、その通りだ。 「在韓米軍」の「ティークナイフ」作戦に対し、「北朝鮮」としても「ミサイル挑発」をする他ないのだろう。 「日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている」、その通りだ。 「北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である」、「この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った」、今回の米韓の動きを深刻に捉えているためだろう。 米中関係の悪化は、「中国の姿勢を翻意させ」ることを難しくしている。しかし、理想論の傾き過ぎるかも知れないが、「北朝鮮」と「米国」の関係改善に向けた努力を、再度、掘り起してみないと、事態打開の扉は開かないのでは、なかろうか、
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英国(その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく) [世界情勢]

今日は、英国(その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく)を紹介しよう。

先ずは、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由」を紹介しよう。
・『英国のトラス首相が10月20日、辞任した。9月6日の政権発足からわずか44日、異例の短命政権となったのはなぜなのか。経済と金融市場が混乱すると、社会全体で閉塞感は高まってしまう。そうならないためにも各国は、英国史上最短に終わったトラス政権の教訓を生かすべきだ』、「トラス政権の教訓」とは興味深そうだ。
・『財源を国債増発に依存するのは無理だった  9月下旬から、世界の金融市場では英トラス政権の財政政策に対する懸念が急上昇していた。世界で物価が高騰する状況下、減税を行い、その財源を国債増発に依存することには無理があった。重要な点は、財政・金融政策の組み合わせ=ポリシーミックスのリスクが一段と上昇していることだ。トラス首相の辞意によって、それは一段と明確化した。 世界的に、エネルギー資源や食料の価格は高止まりし、一般家庭の電力料金なども上昇している。EUでは天然ガス価格の上限設定をめぐり、イタリアとドイツなどで利害が食い違っている。財政支出を増やして、家計への支援を強化しようとする政治的発想は各国で強くなっている。 今後、米国などでインフレ鎮静化のために金融政策は引き締められる。それによって、世界は景気後退に向かうだろう。 そうした状況下で国債増発懸念が高まれば、9月下旬以降の英国のように金利が急騰し、金融市場が大きく混乱するだろう。その結果、社会と経済全体で不満が膨張し、政治基盤は追加的にぜい弱化する展開が予想される。どう財源を確保し、持続可能な政策を運営するか、これまで以上に各国政府の政策運営手腕が問われている』、「トラス」氏は、司法長官、大法官、国際貿易大臣、商務庁長官、外務・英連邦担当大臣などを経験したが、財務大臣は未経験だった。
・『財源不明の大規模減税で鮮明化した矛盾  9月下旬、英国のトラス政権は財源が不明なまま、大規模減税などの経済対策を発表した。特に、減税規模は当初の予想を上回った。総額450億ポンド(約7兆5000億円)の減税策には、予定されていた19%から25%への法人税率引き上げの凍結や、所得税率の引き下げなどが含まれていた。 トラス政権下のクワーテング財務相は財源を明示しなかった。ということは、国債の増発は避けられなくなる。税収が減少する一方で国の債務が増加すれば、財政悪化懸念の上昇は避けられない。減税と国債増発のポリシーミックスは持続可能ではない。 そうした矛盾が鮮明になった負のインパクトは大きかった。まず、英国の国債流通市場では超長期を中心に国債の供給が急増するとの懸念が大きく高まった。主要投資家は英国債(ギルト)を投げ売った。 大型減税が発表される前日の9月22日、イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は7会合連続での利上げを決定した。保有する国債売却を開始する方針も発表したばかりだった。これまで以上に英金利の上昇圧力が強まるタイミングで、国債増発懸念が大きく高まったわけだ。短期から超長期までの国債流通利回りは、急速かつ大幅に上昇(債券価格は下落)した。 金利上昇によって主要投資家は、英国経済に深刻な打撃が生じる先行き不安を追加的に高めた。主要投資家は英国株を売却し、スターリング・ポンド(GBP)もドルなどに換えた。 トラス政権の政策の矛盾を発端に、大規模な「英国売り」が発生した結果、国民生活に負の影響が及ぶとの危機感が社会全体で急速に高まった。そのインパクトは大きく、トラス首相は辞意を表明せざるを得なくなった。 持続可能ではない各種政策が社会・経済に与える負のインパクトはこれまで以上に大きくなっている。その一つが、英国の年金基金への打撃だ』、どういうことなのだろう。
・『英年金基金が大規模な資産売却に追い込まれた  9月下旬以降の金利急騰によって、英国では資産売却に追い込まれる年金基金が急速に増えた。英国では、「ライアビリティ・ドリブン・インベストメント」(LDI)と呼ばれる資金運用を行う年金基金が増えてきている。LDIは、「債務に連動した資金運用」などと訳される。 具体的には、将来に発生するキャッシュフローを予測し、それを満たす利得の確保を目指す。そのために、「金利スワップ」(固定金利と変動金利などキャッシュフローを交換するデリバティブ取引)を利用することが多い。 リーマンショック後は、世界的に低金利環境が長期化した。中長期的な金利収入を確保するために、資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加した。スワップ取引を行う投資家は、相手方の金融機関に国債などを担保として差し入れる。 金融市場が落ち着いている場合、レバレッジをかけた資金運用に大きな問題が発生することは少ない。しかし、トラス政権の大規模減税発表によって、英国債は急落した。担保価値の急落によって追加の担保支払い要請(マージンコール)に直面する年金基金は急増した。資金捻出のために年金基金は保有する国債の売却に追い込まれた。 「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道もある。最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れがある。 トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しくさせた。9月、英国の消費者物価指数は前年同月比10.1%上昇した。本来、イングランド銀行は、追加利上げや国債売却など金融引き締めを強化すべき局面にある。しかし市場混乱による年金基金への打撃を緩和するために、臨時の国債買い入れを行わざるを得なくなった。 10月14日に買い入れ措置は終了した。その後、イングランド銀行は、年内は20年超の国債を売却しない方針を示した』、「資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加」、「「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道も」、「最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れ」、「トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しく」、金融市場の反応は予め分かっていた筈だが、それを考慮してなかったとすれば、余りにお粗末だ。
・『先行き懸念高まる世界経済と金融市場  イングランド銀行の金融引き締めは遅れる。その負のインパクトは軽視できない。今後も世界各国でエネルギー資源や食料の価格は高止まりするだろう。となると後々、イングランド銀行が、想定を上回るペースで金融を引き締める可能性が高まったと考えられる。それは、世界の実体経済と金融市場にとって大きなマイナスだ。 急速な英国の利上げ懸念が高まれば、世界全体でリスクオフの動きがさらに鮮明となるだろう。その場合、欧州ではクレディ・スイスの経営に対する不安心理が追加的に高まり、株価が大きく下落する展開は排除できない。 消費者心理は悪化し、EU加盟国の消費、投資などは下振れるだろう。リスクオフの加速により中国からの資金流出も加速する恐れは増す。欧州、中国経済の本格的な景気後退リスクは追加的に高まるだろう。 また、現在は相応の底堅さを維持する米国経済でも、先行き懸念は高まっている。米FRB関係者は、一段と追加の金融引き締めを強化する考えを強めている。今後、金利は一段と上昇するだろう。すると企業と家計の利払い負担は増える。 また、リストラが増えて米国の労働市場は悪化し、個人消費は減少するだろう。それは、世界経済の下支えが弱まることを意味する。金利上昇によって米国の株価がさらに下落する恐れも増している。世界全体が本格的な景気後退に陥る恐れは一段と高まっている。 そうした状況下、各国で、政府により手厚い支援を求める世論が急速に高まることは想像にたやすい。懸念は、政治家が近視眼的に考え、世論に迎合しがちであることだ。 有権者の負担増を避け、財源が不明なまま国債増発を重視する国では、これまで以上に金利が上昇し、追加的に実体経済と金融市場の悪化懸念が高まるだろう。その場合、経済と金融市場の混乱に拍車がかかり、社会全体で閉塞感は高まってしまう。そうならないためにも各国は、英国史上最短に終わったトラス政権の教訓を生かすべきだ』、ポピュリスト的政策がイタリアなどでも強まっているが、それが国債利回りを上昇させることで、ブレーキ役になればいい。しかし、日本では-0.1%の短期金利、長期金利を0%とするイールドカーブ・コントロール(YCC)をしているので、マーケットが警鐘を発するメカニズムを始めから殺しているという極めて危険な状態にある。日本の場合、まずはYCCを外すことからやるべきだが、その場合、国債利回りの急騰、新規国債発行コスト上昇を覚悟する必要がある。

次に、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの
田中 理氏による「スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく」を紹介しよう。
・『わずか44日で辞任に追いこまれたトラス前首相。スーナク新首相はイギリスの政局の混乱を収め、市場の信頼に足る財政計画とインフレ対策を両立させるという難題に直面している。 大型減税と規制緩和による経済再建で「第2のサッチャー」を目指したイギリスのリズ・トラス首相は20日、政策迷走による金融市場の混乱と党内外の信用失墜を招き、就任からわずか44日で辞任表明に追い込まれた。トラス政権の経済政策(トラスノミクス)はなぜ失敗に終わったのか。 減税と規制緩和による経済活性化のストーリーは、具体策と説得力に乏しかった。巨額の財政悪化につながるエネルギー料金の凍結と大型減税の発表を先行し、予算責任局(OBR)の財政評価も求めなかったことで、財政規律を軽視していると受け止められた。 イングランド銀行(BOE)が過去の量的緩和で購入した資産の売却(量的引き締め)を開始するタイミングと国債の大幅増発観測が重なり、国債需給悪化に対する不安に拍車がかかった。 国債価格の下落(国債利回りの上昇)により、年金基金の流動性不安が広がった。多くの年金基金は、低金利下で年金の給付水準を確保するため、国債を担保に金融派生商品(デリバティブ)などに投資していた。担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環をもたらした』、「担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環」、英国金融界の常識ではあるが、それを無視した「トラス前首相の無知ぶりには驚かされた。
・『後任選びを急いだ保守党  トラス首相は保守党の党首選を通じて、財務省主導の経済運営やBOEの物価抑制の取り組みが不十分と批判してきた。トラス氏は首相就任後、閣僚やアドバイザーの顔ぶれを一新し、自身に近い人物で固めた。盟友のクワジ・クワーテング氏を財務相に任命し、官邸主導で経済運営を取り仕切ろうとした。だが、減税と規制緩和に固執し、政策発表の手順や危機後の対応でも経験不足を露呈した。 トラス首相の後任を選ぶ保守党の党首選は、立候補に必要な推薦議員の数を前回の20名から100名に引き上げ、立候補者を最大で3名に絞るとともに、議員投票の開始から党員投票の結果が判明するまでの期間を前回の約1カ月半から最長でも5日に短縮し、英国各地での遊説も取りやめた。 英国では2010年にデイヴィッド・キャメロン首相が労働党から政権を奪取して以来、保守党による連立ないし単独政権が続いている。2016年の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の直後に就任したテリーザ・メイ首相、離脱実現を掲げて2019年に就任したボリス・ジョンソン首相、そして9月に誕生したトラス首相と、過去3代の首相はいずれも保守党の党首選を勝ち抜いた人物で、首相就任時に総選挙で選ばれていない。 スキャンダル続きのジョンソン首相が退陣に追い込まれた後、トラス首相は物価高騰の負担を軽減し、景気を浮揚させるどころか、経済を混乱させただけで終わった。国民が物価高騰に苦しむなかで、さらなる党内抗争を繰り返せば、有権者の一段の保守党離れを招きかねない。一刻も早く後継党首(首相)を選出する必要があった。 後継党首選は、①前回党首選で5回の議員投票をいずれも一位で通過したものの、一般党員による決選投票でトラス氏に敗れたリシ・スーナク元財務相、②党首解任劇からわずか3カ月での電撃復帰を目指したジョンソン元首相、③前回党首選で最終3候補まで残ったペニー・モーダント上院議長兼下院院内総務の3人の争いとなった』、なるほど
・『保守党の支持率は史上最低圏  トラスショック後の金融市場の動揺封じ込めと堅実な政策運営に対する期待から、スーナク氏が順調に推薦人を集めていくなか、不気味な存在感を示したのが休暇先から急遽帰国したジョンソン元首相だった。トラス政権による政策迷走の後、保守党の支持率は史上最低圏に沈み、野党・労働党に大幅なリードを許している。 ジョンソン元首相には2019年の総選挙で、労働党が牙城としてきたイングランド北部の選挙区を次々と奪い、保守党に地滑り的な勝利をもたらした実績がある。次の総選挙で保守党に勝利をもたらせる人物として、ジョンソン氏に期待を寄せる声も浮上していた。同氏は今も草の根の党員から絶大な人気を誇る。立候補に必要な100名の推薦議員を確保し、党員投票に持ち込めば、首相返り咲きも夢物語ではなかった。 だが、相次ぐスキャンダルで3カ月前に辞任に追い込まれたばかりのジョンソン氏の再登板は劇薬となりかねない。保守党の政治倫理は地に落ち、党内の分断が一段と進むおそれがあった。 パーティーゲート(コロナの行動制限規則を破り、パーティーを開催あるいは参加した疑惑)をめぐる同氏の疑惑追及はなおも続いており、再登板後に再び首相退任に追い込まれ、後継党首の選出が必要となれば、保守党の権威は一段と失墜する。 過去の政権運営や党首選でジョンソン氏を支持した強硬離脱派議員の一部もスーナク候補支持に回り、結局、ジョンソン氏は将来の首相再登板を視野に、名誉ある撤退を選択した。モーダント氏も立候補を取り下げ、立候補の届出期間を迎えた24日、スーナク氏の後継党首選出と次期首相就任が決まった。 後継首相の速やかな選出でひとまず結束した保守党だが、英国を二分した2016年の国民投票とEU離脱の評価、ジョンソン政権時代の政治倫理の欠如や強引な政治手法も加わり、党内の亀裂は深まっている』、「ジョンソン」氏が早目に降りたのは、「パーティーゲート」が想像以上に深刻だった可能性がある。
・『次の総選挙ではジョンソン元首相がリベンジ出馬か  新たな党首に選出されたスーナク氏は、選出直後のスピーチで団結を呼びかけた。スーナク氏は若い頃から英国のEU離脱を支持し、2016年の国民投票でも離脱に投票したが、強硬離脱派とは一定の距離を保ち、財務相就任後も離脱のメリットを声高に主張することはなかった。 こうした同氏の姿勢は、党内の右派勢力からは懐疑的に見られがちだが、党内中道・左派勢力との橋渡し役となる可能性を秘めている。自身に近い立場の議員で閣僚を固めたトラス氏と異なり、近く発表予定の閣僚人事では、党内の幅広い人材が登用される公算が大きい。 不安要素もある。ジョンソン氏は出馬を断念した声明を、「私には提供できるものが沢山あると信じているが、残念ながら今はその時ではない」との言葉で締め括った。同時に、「私は2024年の総選挙で保守党に勝利をもたらすことができると信じている」とも語っており、次の総選挙までの首相復帰を匂わす発言もしている。 スーナク氏がジョンソン氏の首相退陣の引き金を引いたのと同様に、スーナク氏が政権運営や党運営に行き詰まれば、ジョンソン氏がいつでも牙を向く機会を窺っている。 トラス首相がクワーテング財務相を更迭し、後任のジェレミー・ハント財務相がトラス減税の大半を撤回した後も、政府債務の均衡には追加で300~400億ポンド程度の財政赤字の削減が必要とされる。 政府は10月31日に前倒しされた中期財政計画の発表と合わせて、新たな増税や歳出削減策を発表する。国民保険料の引き上げ、国防費やインフラ投資の削減、年金給付の抑制などが検討されるとみられ、議会審議は紛糾が予想される』、「10月31日に前倒しされた中期財政計画の発表と合わせて、新たな増税や歳出削減策を発表する。国民保険料の引き上げ、国防費やインフラ投資の削減、年金給付の抑制などが検討されるとみられ、議会審議は紛糾が予想される」、さてどんな「中期財政計画」になるんだろう。
・『マイナス成長への転落は避けられず  財政規律を重視するスーナク首相の誕生で、金融市場の不安心理は後退するとみられるが、大型減税の撤回と追加の財政赤字削減策により、英国景気のマイナス成長への転落は避けられない。家庭向けのエネルギー料金凍結を半年に短縮したことで、来年4月以降のエネルギー料金が再高騰し、物価が高止まりする可能性もある。 政策転換で短期的にはBOEによる利上げ幅の大幅拡大の可能性は遠のいたが、当初の想定以上に利上げ局面が長期化するおそれがある。家計のエネルギー負担の軽減を続けるには、新たな財源を確保しなければならない。スーナク首相は、保守党の信頼回復と党内融和を進めるとともに、緊縮財政と金融引き締め下で、物価高騰による生活困窮対策と景気浮揚を目指すことになり、その前途は多難と言わざるをえない』、「スーナク首相」の「前途は多難と言わざるをえない」のは確かなようだ。
タグ:「トラス政権の教訓」とは興味深そうだ。 英国 (その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく) ダイヤモンド・オンライン 田中 理氏による「スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく」 ポピュリスト的政策がイタリアなどでも強まっているが、それが国債利回りを上昇させることで、ブレーキ役になればいい。しかし、日本では-0.1%の短期金利、長期金利を0%とするイールドカーブ・コントロール(YCC)をしているので、マーケットが警鐘を発するメカニズムを始めから殺しているという極めて危険な状態にある。日本の場合、まずはYCCを外すことからやるべきだが、その場合、国債利回りの急騰、新規国債発行コスト上昇を覚悟する必要がある。 真壁昭夫氏による「英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由」 どういうことなのだろう。 「担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環」、英国金融界の常識ではあるが、それを無視した「トラス前首相の無知ぶりには驚かされた。 東洋経済オンライン 「ジョンソン」氏が早目に降りたのは、「パーティーゲート」が想像以上に深刻だった可能性がある。 「スーナク首相」の「前途は多難と言わざるをえない」のは確かなようだ。 「資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加」、「「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道も」、「最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れ」、「トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しく」、金融市場の反応は予め分かっていた筈だが、それを考慮してなかったとすれば、余りにお粗末だ。 「トラス」氏は、司法長官、大法官、国際貿易大臣、商務庁長官、外務・英連邦担当大臣などを経験したが、財務大臣は未経験だった。
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インド(その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る) [世界情勢]

インドについては、昨年8月13日に取上げた。今日は、(その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る)である。

先ずは、本年3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員の笠井 亮平氏による「インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係」を紹介しよう。
・『2022年2月24日、国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案は、ロシアの拒否権発動によって葬り去られた。棄権した国も3つあった——中国、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドである』、「QUAD」の一角を占めるのに、「ウクライナ侵攻を非難する決議案」に「棄権」とはどういうことなのだろう。
・『軍事面で不可欠なパートナー  この3カ国は、国連総会の緊急特別会合開催を求める採決でも棄権に回った(ロシアも反対したが、手続き事項に関しては拒否権の対象とならないため、賛成多数で採択された)。民主主義国であり、近年は「自由で開かれたインド太平洋」構想に参加し、日本、アメリカ、オーストラリアとともに「QUAD(クアッド)」の一角を占めるインドがなぜロシアの軍事侵攻を非難しないのか。 その最大の理由は、インドがロシアに対して軍事面で不可欠なパートナーであることだ。金額ベースで見ると、2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め、2021年11月には実際に供給が始まった。近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない。 インドは隣国との間で国境問題や領土問題を抱えており、防衛力の整備をおろそかにするわけにはいかないという事情がある。北の中国とは2020年に国境で軍事衝突が発生し、双方に死者が出る事態にまで発展した。西のパキスタンとは、過去3度にわたり戦火を交えてきたほか、カシミール地方をめぐり対立が続いており、過激派によるテロにも悩まされている。中国のインド洋進出を受けて、海軍力の増強も進めている。インドも今回のウクライナ情勢を憂慮しているものの、自国の安全保障を考えればロシアとの良好な関係を損なうわけにはいかないのだ。) インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる。「非同盟」を掲げてきたインドだが、米中接近や中国・パキスタン関係の強化という事態を受けて、1971年には当時のソ連との間で軍事同盟的性格の強い「平和友好協力条約」を結んだ。1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻した際には、翌1980年1月に開かれた国連総会の緊急特別会合でソ連を事実上支持するという、今回の先例とも言える立場をとったこともあった。カシミール問題でインドに不利な決議案が安保理に提出された際、拒否権を発動して不採択に導いたのはソ連だった。 この関係はソ連が崩壊してロシアになってからも続き、両国は軍事以外にもエネルギー(原発)、科学技術、宇宙開発といった分野で協力を進めてきた。インドは日本と「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を構築しているが、ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけている。BRICSやインド・中国・ロシア3カ国会議、上海協力機構(SCO)といった多国間の枠組みでの協力もある』、「2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め・・・近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない」、「インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる」、「ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけ」、ここまで強固なつながりがあるとは・・・。
・『プーチン「インドの外交哲学はロシアと似ている」  ロシア側もインドを重視してきた。プーチン大統領は2021年11月の外交演説でインドを「多極世界のなかで独立し、強固な中心のひとつ」であり、「(ロシアと)よく似た外交における哲学とプライオリティを持っている」と評した。コロナ禍によって各国の首脳外交は激減するなか、2020年2月からの2年間でプーチン大統領が外国に出たのは3回。スイス(2021年6月のバイデン米大統領との会談)と中国(2022年2月の北京冬季五輪開会式出席)、そしてインド(2021年12月)だった。 このときの訪問では、印ロ間の防衛協力推進がうたわれ、ロシアのカラシニコフ社製自動小銃AK-203をインド国内の工場で60万挺生産する契約がまとまったと報じられた。ロシアとしては、日米豪印のうちもっとも友好的なインドと関係強化を図ることで、「クアッド」にくさびを打ちたいという狙いもあったのだろう。 では、インドは今後もロシア寄りの姿勢を続けるのか。前述したとおり、軍事面の依存を考えれば全面的に対ロ非難に転換することは考えにくい。だが、ロシア軍侵攻によってウクライナの状況がさらに悪化し、国際的非難が一層高まることになれば、対応の再考を迫られることになるかもしれない。) インド有力英字紙『ヒンドゥー』は2022年2月28日付の社説で、安保理での棄権は「既定路線」としながらも、「インド政府は世界の安全を脅かす紛争に対して毅然とした態度をとることなく、自国が『大国』になれるか考える必要がある」「曖昧な立場は強者が弱者を武力で侵略することに対する肯定と受け止められてしまうが、インドは自らの周辺地域でそうした行為に抗議してきたのではないか」と指摘した。 また、2014年まで長く政権与党の座にあった最大野党・インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している』、「インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している」、「インド」も「安保理常任理事国入りを目指」しているとは初めて知った。
・『インドこそ解決への仲介役に適役  インドはロシアと密接な関係にあるが、そのインドだからこそ担いうる役割がある。ロシアと国際社会の仲介役だ。ロシア軍の侵攻が始まった2022年2月24日、モディ首相はプーチン大統領と電話会談を行い、ロシアとNATO(北大西洋条約機構)の対立を解決する唯一の方途は対話だと主張するとともに、暴力の即時停止を求めた。 その訴えは実らなかったが、インドとロシア首脳のパイプが生きていることを印象づけた。ロシアとしても、戦況が思うように進まず、事態が長期化する事態になれば、いずれ「落としどころ」を模索することになるだろう。その際にインドが米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる。 日本もインドに対してこの点を提起すべきだ。ウクライナ情勢次第だが、岸田文雄首相は2022年3月中に訪印を予定していると報じられている。モディ首相に対しロシアへの働きかけを促すことこそ、最優先で取り組むことではないだろうか。そうすることで、インドの立場を損なうことなく、日米豪印によるクアッドとしての結束を維持していけるはずだ。(本稿は筆者個人の見解であり、所属先との見解を表すものではありません』、「インドが」ウクライナ問題で「米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる」、現実には、「ウクライナ問題」での「米欧との橋渡し」はむしろトルコの方が適しているかも知れず、「インド」には多くを期待できないのではなかろうか。

次に、9月5日付けNewsweek日本版「時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2022/09/post-99545_1.php
・『インドのヒンドゥー語映画産業「ボリウッド」は壊れているかもれしれない。彼ら自身がそのことを認識している。 大スクリーンで全編にわたって素晴らしい歌とダンスが繰り広げられるボリウッド映画は厳しい現実から逃れられる娯楽として、インド国民や世界中の人々を長らく魅了してきたが、最近は興行面で不振が続いている。 兄と妹たちのきずなを描いた新作「ラクシャバンダン」の興行成績がさっぱりだったことを受け、ボリウッドの大スターで主演を務めたアクシャイ・クマールさんは先月記者団に「映画がうまくいっていない。これはわれわれ、そして私の責任だ。私はいろいろと変えなければならないし、観客が何を望んでいるか理解する必要がある。私の映画はこうあるべきという概念をたたき壊したい」と胸の内を語った。 実際、インド現代文化の1つの柱だったボリウッドは曲がり角を迎え、その輝きは色あせつつある。 特に若い世代は多くのボリウッド映画を時代遅れで「格好悪い」とみている。そこに折あしく登場してきたのがネットフリックスやアマゾン・プライムといった動画配信サービスだ。 業界データを分析するウェブサイト「コイモイ」によると、今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった。 ボリウッドの拠点ムンバイで暮らす女性で、2人の10代の娘を持つクリスティナ・スンダレサンさん(40)はパンデミック発生前まで、最低でも週に1回は映画館でボリウッド映画を楽しんでいたにもかかわらず、今は滅多には足を向けない。「笑いが必要な時にボリウッド映画は向いているけれど、もうわざわざ映画館に鑑賞には行かない。昔はどの映画にも一緒についてきた娘たちも、動画配信プラットフォームで韓国のショーやドラマにはまっている」という。 海外の動画配信サービスに流れたのは彼女らだけではない。ネットフリックスとアマゾン・プライムがインドでサービスを開始したのは2016年と比較的最近だが、欧米やインド、その他アジアで制作された「パラサイト 半地下の家族」「アベンジャーズ」「イカゲーム」などさまざまな人気作品を提供している。 市場データ会社スタティスタの分析では、19年にインド国民14億人の約12%だった動画サービス利用者は足元で25%に増加している。この比率は27年までに31%する見通しで、さらに上振れる余地もある。例えば北米では利用率はおよそ80%に達しているからだ』、「今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった」、「パンデミック」は予想外に幅広い影響をもたらしたようだが、原因は嗜好の変化など他にもありそうだ。
・『時代への順応必要  インドの映画興行収入はでは19年まで毎年着実に増加し、同年には20億ドル前後に達した。その後パンデミックで落ち込み、現在も持ち直す気配は乏しい。 今年3月以降、興行成績は毎月悪化し続けている。投資銀行エララ・キャピタルの調査に基づくと、特にボリウッド映画は7-9月期に45%の減収が予想される。 ロイターが複数の映画ファンやプロデューサー、配給会社、映画館運営会社などの業界関係者に取材したところ、ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならないと訴えた。 4人の業界幹部は、業界内に広がる混乱や不安の背景をこう描写する。各製作会社はパンデミック前の市場であればヒットしたであろう作品を公開している一方、消費者の好みは動画配信、すなわちインターネット回線で提供されるコンテンツサービス(OTT)の台頭とともに変化が起き、そこにずれが生まれている、と。 インド第2位のシネマコンプレックス運営企業INOX幹部のシン・ジアラ氏は、製作サイドとのやり取りを踏まえ、プロデューサーは脚本の練り直しを急ぎ、俳優への出演料を前払いではなく興行成績と連動する形に切り替えることを検討していると明かした。 一方でジアラ氏は「本当の問題が何なのか誰も分かっていない。パンデミック期間中は映画が1本も公開されず、人々はOTTでさまざまな種類のコンテンツを視聴する時間がたっぷりあった。だから2年前に成功していたコンテンツはそれが何であれ、今ではもう全く価値がない」と話す。 ともかくも業界はすぐさま現実に適応しなければならない。 ある大学の研究によると、ボリウッド映画は収入の75%近くを映画館の興行収入に依存していることが分かった。米国映画協会のデータによると、世界全体では映画の興行収入への依存度は50%未満だ』、「ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならない」、「本当の問題が何なのか誰も分かっていない」、何やら頼りない感じだ。
・『見えない正解  ボリウッド映画のファンからは、進化を遂げて存在感を維持することはできるとエールも送られている。例えば最近の社会情勢をより適切に反映させるために、ゲイの人たちの関係や性転換した人物を作品に取り入れることはそうした進化の1つとみなされる。 ニューデリーの大学生は「話の展開が問題で、過去2年間に視聴者は非常に多くの新しいテーマにさらされ、新しい考え方を提示されてきた。それこそボリウッドに欠けている分野ではないかと思う」と自身の見解を披露した。 先月はクマールさんのラクシャバンダンだけでなく、別のボリウッド大物俳優アーミル・カーンさんが主演した「ラール・シン・チャッダー」も「大コケ」し、まさにボリウッドのたそがれが鮮明になっている。ラール・シン・チャッダーは、米ハリウッドの人気映画「フォレストガンプ」のリメーク版で、祝祭の連休入り前日だった8月11日に公開されたにもかかわらず、興行収入は5億6000万ルピーと投入予算の4分の1程度に過ぎなかった。 INOXのジアラ氏は、あまりの不振ぶりに運営するシネコンでラール・シン・チャッダーの上映回数を25%減らしたと述べた。 今後公開予定で巨額予算を投じた映画2本を抱えるボリウッドのある有力プロデューサーはロイターに、各プロデューサーは新しい映画の製作に当たり、予算から脚本、出演者まで何もかも再調整していると語り、視聴者の求めるものに寄り添っていかなければならないと強調しつつも、「その正解はもう持ち合わせていない」と不安を打ち明けた』、「視聴者の求めるもの」、「その正解はもう持ち合わせていない」とは本当に頼りない限りだ。
・『負担感大きい映画料金  インドは他のほとんどの国・地域と同じく、人々が生活費高騰と苦闘している。それだけに映画ファンや業界関係者は、映画館で鑑賞するのに結構なお金がかかるというのも重大な問題だと指摘する。 大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない。 映画プロダクションと配給会社を所有し、ボリウッド女優と結婚しているアニル・タダニ氏は「どこかで調整が必要になる。予算を組み直し、映画館に行く費用を下げなければならない。ヒンドゥー語映画産業は一般大衆からかい離しつつある。国民の大部分はこれらの映画と一体感を持たなくなっている」と危機感をあらわにした。 スンダレサンさんもタダニ氏と同じ感覚を持っている。「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」と話す』、「大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない」、「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」、興行収入の伸び悩みには、こうした「映画館」の「料金」、「OTTで視聴」というライバルの登場、などの問題もあるようだ。

第三に、10月3日付け東洋経済オンライン「日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/622982
・『カーボンニュートラルの要請が強まるタイミングで、なぜ二酸化炭素の排出が多い「高炉」を新設するのか。 日本製鉄のインド拠点  国内拠点のリストラを進めてきた日本製鉄が、今度は「量の拡大」に向けて海外でアクセルを踏み込み始めた。 9月28日、日本製鉄は4割を出資するインド合弁会社「アルセロール ミタル ニッポンスチールインディア(AMNSI)」が約1兆円の投資に踏み切ると発表した。 AMNSIは2019年に欧州アルセロール・ミタル(AM)と共同で買収したインド5位の鉄鋼メーカーだ。7300億円を投じて高炉2基を含む各種生産設備を増強するほか、3400億円を投じて港湾や電力などのインフラを買収する。総投資額1兆0700億円は、AMNSIが自己資金と借入金でまかなう。借入金額は未定だが、必要に応じて、AMと日本製鉄が出資比率に従い債務保証を行う予定。 2基目の高炉が稼働する2026年にはAMNSIの粗鋼生産能力(年間)は現在の900万トンから1500万トンに拡大する。港湾などはAMNSIの製鉄事業に不可欠なインフラばかりだが、買収時には対象外だった。自社保有とすることでこれまで払ってきた使用料が不要になる上、今後の能力拡張にも対応しやすくなる』、なるほど。
・『インドは鉄鋼需要が飛躍的に伸びる  AMNSIを通じてインドで積極投資するのは、成長が確実視されている市場であるからだ。「インドは人口構成が若く、発展が期待でき、人口もさらに伸びていく。鋼材需要も飛躍的に伸びる。能力を拡張して成長市場を捕捉する」と森高弘副社長は9月28日の会見で力を込めた。 2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない。 経済成長に伴って1人当たり使用量は2030年に倍増すると見込まれている。加えて、人口は増加が続いており、2023年には中国を抜いて世界一となる見通し。 インドの粗鋼生産量は1億1820万トン。輸入規制もあって国内でほぼ完結している。9633万トンを生産し、約4割を輸出する日本と市場構造が対照的だ。 つまり、今後のインド国内の需要増に対応するには、現地での生産能力拡大は必須となる。ただ、インドのカントリーリスクが高いため、AMとの共同歩調を取ることで、リスクをコントロールしながらインドの成長を取り込むスタンスだ。) AMNSIには新たな製鉄所を建設するなど、さらなる能力増強の構想もある。「2030年に3000万トンを(目標として)考えていきたい」(森副社長)。 日本製鉄は将来ビジョンとしてグローバルで1億トンの粗鋼生産能力を掲げている。今回の増強が完了する2026年には7000万トンに到達する。さらにインドを3000万トンに増強すれば、トータルで8500万トンとなる。 1億トンまでの残り1500万トンについては「インドでさらに(の可能性も)あるし、米国は市場が大きく高級鋼の需要もある。ASEANも強い」(森副社長)と、海外に視線を向ける。反面、国内は需要が減退していくので能力拡張はない。日本国内は現状4700万トンの能力があるが、2025年に鹿島の高炉を休止することで4400万トンまで減らすことが決まっている。 鉄鋼業の収益構造を考えると、利益を増やすにはトン当たりの付加価値を上げるか、量を拡大するしかない。2021年以降、大口顧客に対する値上げを実施して付加価値を引き上げてきた。今度は量の拡大にアクセルを踏み込む。市場の成長期待がもっとも高いインドに賭けることに不思議はない』、「2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない」、特に「国民1人当たり」では成長余地が大きそうだ。
・『二酸化炭素排出の多い高炉を選択する事情  他方、カーボンニュートラル(CN)の要請が強まるタイミングでなぜ高炉を新設するのか。 鉄鉱石から鉄を造り出す最上流工程で、世界でもっとも活用されているのが高炉法。高品質の鉄を大量・高効率に造ることに優れており、日本は粗鋼生産の75%が高炉によるもの。一方、鉄鉱石に含まれる酸素を石炭に含まれる炭素で取り除く(還元)ため、原理的に二酸化炭素(CO2)の排出が多い欠点がある。 鉄鋼業は日本全体のCO2排出量の13%、産業全体でも4割を占める。その8割は高炉を中心とする上工程から出ている。このため近年、CO2排出を減らすために電炉を活用する動きが出てきた。9月初頭にJFEホールディングスが国内で高炉1基を休止し、電炉に置き換えると発表したのはこの流れにある。 還元済みの鉄スクラップを電気の熱で溶かして鉄を造る電炉のCO2排出量は高炉の4分の1と低い。使用電気をCN電力に切り替えれば、理論上はCNスチールの実現も可能である。 しかし、日本製鉄は電炉ではなく、高炉を選んだ。「機会損失をできるだけなくす。自動車を始めとする高級鋼需要にも対応するなら、高炉法が一番だからだ」と森副社長は説明する。 不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない。品質が均一な加工くずのスクラップを使えば造ることは可能だが必要量の確保が難しい。 そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない。現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス炉」が主力だ。 ミドレックスは天然ガスに含まれる炭素と水素で還元するため、電炉と組み合わせても高炉法よりもCO2排出量が少ない。「電炉やミドレックスが環境負荷やCO2排出だけなら少ないのは明らか」(森副社長)。 スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ』、「不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない」、「そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない」、「現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス炉」が主力だ」、「スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ」、しかし「高炉」を選択した理由は以下の通りだ。
・『高炉の選択が示すカーボンニュートラルの難題  だが、ミドレックス+電炉は生産性で高炉に劣る。完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的といえる。 インドは2070年のCNを目標としており、2050年のCNを目標にしている先進国より20年余裕があることも大きい。だからといって大量のCO2排出が許されるわけではない。新しく建設する高炉は、日本製鉄やAMが開発中の低炭素化技術を導入することが前提。高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS(CO2の回収・利用・貯蔵)も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難しいかを示している』、「完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、「高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS・・・も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難しいかを示している」、「今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、今後「厳密なCNを求められる時期が来た時」、どうするのかはその時点での「鋼材需要」などの不確定な条件によって決まるようだ。
タグ:インド (その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る) 東洋経済オンライン 笠井 亮平氏による「インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係」 「QUAD」の一角を占めるのに、「ウクライナ侵攻を非難する決議案」に「棄権」とはどういうことなのだろう。 「2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め・・・近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない」、「インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる」、「ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけ」、ここまで強固なつながりがあるとは・・・。 「インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している」、「インド」も「安保理常任理事国入りを目指」しているとは初めて知った。 「インドが」ウクライナ問題で「米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる」、現実には、「ウクライナ問題」での「米欧との橋渡し」はむしろトルコの方が適しているかも知れず、「インド」には多くを期待できないのではなかろうか。 Newsweek日本版「時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振」 「今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった」、「パンデミック」は予想外に幅広い影響をもたらしたようだが、原因は嗜好の変化など他にもありそうだ。 「ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならない」、「本当の問題が何なのか誰も分かっていない」、何やら頼りない感じだ。 「視聴者の求めるもの」、「その正解はもう持ち合わせていない」とは本当に頼りない限りだ。 「大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない」、「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」、興行収入の伸び悩みには、こうした「映画館」の「料金」、「OTTで視聴」というライバルの登場、などの問題もあるよ うだ。 東洋経済オンライン「日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る」 「2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない」、特に「国民1人当たり」では成長余地が大きそうだ。 「不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない」、「そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない」、「現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス 炉」が主力だ」、 「スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ」、しかし「高炉」を選択した理由は以下の通りだ。 「完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、「高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS・・・も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難し いかを示している」、「今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、今後「厳密なCNを求められる時期が来た時」、どうするのかはその時点での「鋼材需要」などの不確定な条件によって決まるようだ。
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ウクライナ(その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告) [世界情勢]

ウクライナについては、8月11日に取上げた。今日は、(その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告)である。

先ずは、9月22日付け現代ビジネス「ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100050?imp=0
・『奇襲作戦で北東部・ハルキウ州の大半を奪還したウクライナ軍。しかし、油断してはいけない。プーチンはまさに今、最終兵器を放とうとしている。最悪のシナリオを徹底的にシミュレーションする』、興味深そうだ。
・『ウクライナ軍が仕掛けた罠  ウクライナ戦争が重大な転換点を迎えている。9月11日、ウクライナ軍は北東部のハルキウ州のほぼ全域を奪還した。取り戻した領土は4000~6000平方キロメートルとされ、東京都の面積の1.8倍にあたる。ロシア軍は守勢に回り、部隊の再編制を余儀なくされた。被害も甚大で主力兵器である戦車『T-80』を100台以上破壊され、ロシア軍の重要な補給地点であったイジューム、クピャンスクも失った。'14年の東部ドンバス紛争で指揮を取った元ロシア軍司令官のイゴール・ガーキンは此度の敗走についてこう語っている。 「現在の状況を日露戦争になぞらえて表現するならば、奉天会戦という言葉しか思い浮かばない。ロシアは負けつつあるかもしれない」 奉天会戦は日露戦争において、圧倒的に兵力差があったロシア軍を日本軍が破り、後の勝利を決定的とした戦いだ。国内からそんな声が出るほど、ロシアは窮地に立たされているのだ。 ハルキウ州の奪還は用意周到に仕組まれた奇襲作戦だった。8月9日、ウクライナ軍はクリミア半島西部のサキ航空基地を砲撃し、20日には軍港都市セバストポリでロシア黒海艦隊司令部を爆撃した。 その際、黒海艦隊が所有する戦闘機の半数以上を破壊した。ロシア軍は南西部の要衝へルソンで反攻が始まると予測し、北部、東部に駐留していた兵力を南部に移送し、守備を固めた。 しかし、それが罠だった。ウクライナ軍は手薄になったハルキウ州を一気に攻め立てた。軍事評論家の高部正樹氏が語る』、「罠」としては極めて大規模な仕掛けだ。
・『ウクライナが求めていた戦果  「NATO諸国にウクライナへの『支援疲れ』が漂うなか、戦地はほどなく冬を迎えようとしている。積雪や極寒で前線が膠着するし、天然ガス不足に悩むドイツなどヨーロッパ諸国からの支援が滞るかもしれない。ウクライナは、更なる支援を求めるにあたって、何としても戦果を上げたかったのでしょう」 奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器である。まずは制空権を確保するために、攻守両面で重要な役割を果たすレーダーを破壊するミサイル『AGM-88 HARM』を導入した。 そして、それを正確に撃ち込むのに一役買ったのが高性能偵察ドローンの『スキャンイーグル』だ。昼夜問わず、24時間航行することが可能で、ロシア軍の砲撃の射程外から電子光学、赤外線を使ったセンサーで敵レーダーの位置を捉えていたのだ。 さらに、自爆特攻ドローン『スイッチブレード』『フェニックスゴースト』が装甲車両などを攻撃し、兵力を弱らせていった。 「特に戦果をあげたのは、高機動ロケット砲システム『HIMARS』です。静止したものを目標にすればGPS誘導でほぼ100%命中させることができます。1~2ヵ月前まで戦況は膠着状態で、ロシア軍がじりじりと前進していましたが、 HIMARSにより司令部、弾薬庫などが攻撃され、前線への補給が滞った。ロシア軍の圧力が弱くなったことで、ウクライナ軍が反撃するための時間・空間的余裕が生まれたのです」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏) 北東部を解放したウクライナ軍は、南部でも攻勢を強めていくだろう。ゼレンスキー大統領も独立記念日の前日にあたる8月23日、こう宣言している。 「クリミア半島はわれわれの領土であり、他国との協議なしにわれわれが正しいと決めた方法で取り戻す。奪還は、欧州における安全と正義の回復に向けた歴史的な反戦の一歩となる」』、「奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器」、やはりロシア製よりはいいようだ。
・『領土を失うくらいなら  ロシア軍はクリミア半島を死守すると同時に、ウクライナ軍を押し戻すために北部の防衛ラインを急いで再構築しなければならない。10月下旬になれば、雪が降り始め前線は動けなくなるからだ。ロシア軍は主力部隊をへルソンに配置しているが、ドニプロ川周辺の橋を『HIMARS』により破壊されて輸送路が断たれている。 自軍が敗退するさまを眺めるプーチン大統領は冷酷な表情を崩さない。だが、その内面は怒りと屈辱、焦りで煮えたぎっているだろう。 プーチンにとって、この戦争の大義名分は「ウクライナに跋扈するネオナチを排除するための祖国防衛」だ。しかし、現状を見てみれば、実効支配していたウクライナ東部のドンバス地方、クリミア半島を失う恐れすらある。 そして、侵攻以前より領土を減らすことになれば、それはプーチンにとって明白な敗北であり、ロシア史上最大の恥となる。 19世紀にナポレオンがロシアに侵攻したとき、政治家たちは自らの指示でモスクワを燃やした。ナポレオンは『占領する意味がない』と撤退。プーチンはその逸話を『ロシアの勝利』とし、何度もプロパガンダとして利用してきた。プーチンは極端な愛国主義者だ。そして、奇しくも、その状況が現代に再現されている。 欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります。プーチンが現在、動員している陸軍、空軍の兵力で巻き返すことができないと判断すれば、核兵器を使用する可能性は否定できません」(軍事ジャーナリストの菊池雅之氏) 後編記事『「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」』では、プーチンが核ミサイルを落とし得ると言われる理由、核を落とし得る場所について紹介する』、「欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります」、恐ろしい話だ。「後編」を見てみよう。

次に、この続きを、9月22日付け現代ビジネス「「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100052?imp=0
・『前編記事『ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」』に続き、プーチンが核ミサイルを落とし得る場所とその理由について、迫っていく』、「核ミサイルを落とし得る場所とその理由」、穏やかではないが、見てみよう。
・『側近はますます強硬に  国内で活発化し始めた反戦運動も核使用の現実味を高める一因となっている。ロシア軍が守勢に回っているという情報が徐々に伝わり、9月11日に行われた統一地方選では、公然と反戦の声を上げる野党政治家や有権者が目立った。 さらに「プーチンの頭脳」と呼ばれるロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏が暗殺された事件でも、反プーチンを掲げる『国民共和国軍』が犯行声明を発表した。 今、ロシア国内ではプーチン更迭を求める動きがかつてないほどに大きくなっているのだ。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が言う。 「プーチンは、11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い。今の状況のまま出席すると、当然、欠席する国は多くなり、国際社会での孤立が浮き彫りになってしまいます。そうなれば、厭戦気分が漂い始めた国内でも世論に押され、プーチン陣営の支持基盤も揺らいでくる。 一方で、ウクライナ侵攻を主導したロシア連邦安全保障会議書記のパトルシェフら側近はより強硬な手段を主張し始めています。核兵器を使い、強引にでも作戦を終わらせることもあり得なくはありません」』、「11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い」とはいうものの、「核兵器を使」えば、「G20」から締め出されることは確実だ。
・『プーチンが「狙う」場所  ウクライナ軍が米国から供与された最新兵器で攻勢を続けるなか、プーチンは一発の核ミサイルで戦況をひっくり返そうとしている。いったい、どこが狙われるのか。 「『威嚇』として人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野などに、広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイルを落とす可能性があります。首都・キーウとオデーサを結んだ直線から東に離れたウクライナ中央部が着弾地点になると思います」(軍事評論家の高部正樹氏) 人的被害を避けるという意味では海上で爆発させる可能性もある。その際、狙われるのはオデーサ沖合の黒海だ。海上ならば人的被害もなく、北風で放射能は南に流れていき、クリミア半島に放射能の影響が及ぶことはない。NATO諸国も報復はしてこないと踏んでいるのだ。 プーチンは原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発だろう。 現在ロシアが実効支配している地域にあるザポリージャ原発とちがって、ここならば、支配地域や周辺国の汚染は最小限となる。国際社会からの反発は必至だが、ロシアは「偶発的な事故」としてシラを切るだろう。いずれにしても、南部で攻勢を仕掛けようとしているウクライナ軍に対して強烈な牽制となる。 だが、さらにおぞましいシナリオもある。奪還された都市に駐留するウクライナ軍をターゲットに核ミサイルを撃ち込むことだ。先述したように、プーチンは戦争に負けるくらいなら、自国の領土を放射能で汚染させても勝利をもぎ取ろうとするかもしれない』、「広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイル」を、「人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野」、或いは「オデーサ沖合の黒海だ」、さらに、「原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発」、いずれも恐ろしいシナリオだ。
・『「早すぎる撤退」の不気味  現在、ロシア側にとって、最も窮地に立たされている戦線は東部のドンバス地方だ。ウクライナ軍は徹甲部隊を投入し、米国から新たに供与された対地雷装甲車『マックスプロ』を駆使して一気に領土奪還を目論んでいる。 「このような状況での核兵器の使われ方はごく単純に言うと二つがあり得ます。一つは相手を引き下がらせるために『使うぞ!』と脅して、相手が引き下がらなかった場合に使うパターン。もう一つは黙って奇襲的に使うパターンです。軍事的には黙って使うほうが効果は高い」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏) その場合に狙われる地域として、候補に挙げられるのはハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない。 「使用される核兵器は短距離弾道ミサイル『イスカンデル』と見て、間違いないでしょう。射程は500km程度で、東部の国境地帯に配備すれば、現在、戦闘が行われている地域のほとんどの主要都市が射程圏内に収まります」(前出・高部氏) このミサイルの恐ろしいところは、複雑な軌道を描きながら超音速で巡航し、さらに本命の核弾頭を確実に着弾させるために囮の爆弾をバラまくことだ。敵の防空システムは攪乱され、迎撃が非常に難しい。また、機動性も高く、装甲車両に積み込んで敵の攻撃が届かない地域へ短時間で移動させることができる。 ウクライナ軍の奇襲作戦で敗走した3日後、ロシア大統領報道官のペスコフはこう強調した。 「特別軍事作戦は継続しており、当初の目標を達成するまで継続する」 これが本気の発言なら、目標達成のため使われる兵器はもはや一つしか残されていない。77年の歳月を経て、再び世界は核の炎による悲劇を目の当たりにするのか』、「ハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない」、このシナリオも注目される。

第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/620861
・『プーチン大統領が2022年9月21日、ついに「部分的動員」という大きな賭けに出た。兵力不足が露呈したロシア軍がウクライナ軍の巧妙な反攻作戦で崖っぷちに追い込まれた中、30万人規模の予備役投入で戦局の好転を図った苦肉の策だ。 しかし、予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い。おまけにこれまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある』、「予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い」、「これまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある」、既に、自治共和国などへの出国なども増加、招集逃れへの厳罰化なども相次いでとられているようだ。
・『ためらいがちな「部分的動員」発令  今回のプーチン氏の決定は、「ためらい」の色が濃いものだった。当初前日の2022年9月20日夜に行われると言われていた国民向けの声明は延期され、モスクワ時間の同21日朝にテレビ放送された。もともと大統領は、政権内で「戦争党」とも呼ばれる強硬派や民族派が求めていた国民総動員には消極的だった。クレムリンが独自に秘密裡に行う世論調査で否定的な意見が強かったからだ。 しかし、東北部ハルキウ(ハリコフ)州の要衝イジュムがウクライナ軍の奇襲によってあっという間に陥落するなど日々悪化する戦局に対し、クレムリン内では何らかの手を打つべきとの圧力が高まった。一方で大統領の個人的友人でもある新興財閥の中では「平和党」と呼ばれるグループがいて、総動員に反対していた。 このままでは政権内に大きな亀裂が走ることを恐れたプーチン氏は結局、両派の主張の間をとった妥協策として今回の部分的動員になったとみられる。 「戦争党」には政権ナンバー2のパトルシェフ安全保障会議書記やメドベージェフ前大統領、ウォロジン下院議長など大物政治家が揃っている。平和党と比べ、政治的権力は圧倒的に強い。今回の決定でプーチン氏は政権内でのガス抜きを図ったと言えよう。) しかし、実際の戦局を好転させるだけの結果を出せるかとなると疑問が残る。30万人の予備役招集は発表当日から有効とされたが、いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある。おまけにロシア軍の東部・南部での士気低下や指揮系統のマヒは隠しようもないほどだ。予備役が配備されても一度壊れた態勢が回復するとはとても思えない。 現在ウクライナ軍は現在ドネツク州陥落に力点を置いており、隣のルハンシク(ルガンスク)州にはもはや重点を置いていない。ロシア軍の士気があまりに低いからだ。ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている。さらに、ミサイルなどの主力兵器の不足も決定的だ。兵力だけ増やしても戦死者を増やすだけとの批判がウクライナ側からも出ている』、「いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある」、「ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている」、実情を知らない「プーチン」が口出しするのも考えものだ。
・『部分動員が国内政治にもたらすリスク  今回の部分動員の発表と合わせ、プーチン氏はロシアへの編入を問う「住民投票」がウクライナ東部や南部の計4州で2022年9月23日から27日までの日程で実施されることを初めて認めた。編入支持が「圧倒的多数」で承認されることは確実で、プーチン氏は新たな領土拡大という戦果を誇示する狙いだろう。 しかし、部分動員という折衷的措置であっても、より広い層の国民を戦場に駆り出すことになる今回の決定は、プーチン氏にとって国内政治的にも大きなリスクをもたらした。多くのロシア国民、とくにモスクワやサンクトペテルブルクといった大都市の住民の多くは、自分たちが戦場に送られない限りにおいて、侵攻を支持するという消極的支持派だからだ。 プーチン政権の内部事情に精通する元クレムリンのスピーチライターで政治評論家のアッバス・ガリャモフ氏は「プーチン氏が国民との社会契約を破った」と指摘する。つまり、社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている。 一方でウクライナ側としては、ロシア軍の追加派兵によって早期勝利への青写真が狂うことを警戒している。今後米欧に追加の軍事支援を求めることになるだろう。 同時に、ウクライナは巧妙な戦略を別途に検討し始めている。それは、前線のロシア将兵に対し、投降と同時にウクライナへの亡命を呼び掛ける作戦だ。戦線ではすでに投降の動きが出始めている。これを受け、ロシア議会では投降を処罰する法が制定された。 このため、ウクライナ軍はロシア兵に対し、プーチン体制がなくなり、徴兵も投降への処罰もなくなるまでウクライナに留まることを許す方針だ。戦死や投獄よりマシと考えるロシア兵が出てくる可能性はある』、「社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている」、「これまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た」、初めて知った。「都市部住民」はまだ余裕がありそうだ。
・『米欧はプーチン執務室への報復も示唆  今回、国際的に衝撃をもたらしたプーチン氏による核兵器使用の警告について、アメリカをはじめとする西側は警戒しつつも、ロシアに対し、水面下で強く警告している。軍事筋によると、2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている。今回のプーチン発言後も同様の警告をしたとみられる。 それでもプーチン氏が核使用に踏み切る可能性があるのか否か。それは本人にしかわからない。しかし、通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高いと筆者はみる。国際社会は冷静に行動すべきだ』、「2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている」、「通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高い」、「核」が「脅し」ではなく、現実化する可能性もあるだけに、こんな綱渡り戦術は避けてもらいたいものだ。
タグ:「2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている」、「通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高い」、「核」が「脅し」ではなく、現実化する可能性もあるだけに、こんな綱渡り戦術は避けてもらいたいものだ。 「これまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た」、初めて知った。「都市部住民」はまだ余裕がありそうだ。 「社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている」、 ない「プーチン」が口出しするのも考えものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある」、「ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている」、実情を知ら 「いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 「予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い」、「これまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある」、既に、自治共和国などへの出国なども増加、招集逃れへの厳罰化なども相次いでとられているようだ。 「11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い」とはいうものの、「核兵器を使」えば、「G20」から締め出されることは確実だ。 「核ミサイルを落とし得る場所とその理由」、穏やかではないが、見てみよう。 現代ビジネス「「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」」 「欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります」、恐ろしい話だ。「後編」を見てみよう。 「奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器」、やはりロシア製よりはいいようだ。 吉田 成之氏による「「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告」 東洋経済オンライン 「ハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない」、このシナリオも注目される。 「罠」としては極めて大規模な仕掛けだ。 「広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイル」を、「人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野」、或いは「オデーサ沖合の黒海だ」、さらに、「原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発」、いずれも恐ろしいシナリオだ。 (その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告) ウクライナ 現代ビジネス「ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」」
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中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) [世界情勢]

中国国内政治については、2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道)である。

先ずは、3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。
・『集団指導体制を廃止したツケ  だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔いたタネだ。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論  習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。 こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力  いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。 そんな習の運命は、今秋の党大会で決まる。2018年の憲法改正で国家主席の任期制限が撤廃され、「終身国家主席」も夢ではなくなったが、中国で真の権力を握り続けるためには、共産党総書記の座を維持できなければ意味がない。そして習がその座を維持するためには、冬季オリンピックの成功が不可欠だった。 そのために中国は、世界一厳しいゼロコロナ政策を実施してきた。だが、それでもデルタ株とオミクロン株の感染拡大は封じ込められなかったし、ゼロコロナ政策は中国社会に計り知れないダメージを与えるとともに、経済成長も減速させてきた。さらに、妥協のない防疫措置は、中国が全体主義の国であることを世界中に印象付けることにもなった。 「中国共産党の絶対的指導者である習は、オリンピックで壮大なスペクタクルを見せつければ、自分の体制の正当性を国内外にアピールして名声を獲得できると思ったのだろう」と、マクドナルド・ローリエ研究所(カナダ)のチャールズ・バートン上級研究員は言う。「ところが逆に、国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」』、「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。
・『五輪で世界の人々が体感した中国の闇  冬季オリンピックは、世界中から集まった競技関係者やジャーナリストが中国のシステムを「体感」する機会にもなったと、バートンは指摘する。ウイグル人やチベット人などの人種的・宗教的マイノリティーに対する虐殺や長期収容、拷問、レイプ、奴隷化、臓器摘出といった残虐行為は話題にさえできない。 だが、こうしたおぞましい行為は、中国共産党の本質であり、今後大衆の目から隠し続けるのは難しくなるだろう。過去3回オリンピックに出場している中国のプロテニス選手の彭帥(ポン・シュアイ)が、昨年11月に前政治局常務委員・副首相をレイプで告発して以来、沈黙を強いられていることに世界の注目が集まったのは、オリンピック開催国だったからでもある。 習は批判の声には直接応えないし、自分に都合のいい現実をつくり出すのがうまい。だが、今後はそのやり方や体制に疑問を投げ掛けるのは、反体制派だけではない。批判の一部は、チャンスをずっとうかがってきた党内上層部から出てくる可能性もある。習は、党と軍の敵対派閥に対する粛清を強化してきたが、敵対派閥もオリンピックで習を粛清する理由を見つけたかもしれない。 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。

次に、9月1日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71641
・『秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表された。七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。 思ったより早い開催となったのは、おそらく人事に大きな波乱の要素が今のところない、ということだろう。おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだ。 ただ、5年、その権力を保てるかは別だ。周辺の状況をみるに、習近平が圧倒的な権力を掌握しての3期目続投ではなく、今の「習近平 vs.李克強」という党内に「2つの司令部」の権力闘争状況を含めた集団指導体制の継続ということではないだろうか。つまり、党大会で決着がつくと思われていた権力闘争が党大会では終わらず、継続するということだ。 台湾の親中紙の「聯合報」と「経済日報」が8月25日に、「『李上習不下』(李克強が総書記になり、習近平は国家主席と軍事委主席の職位を維持して、権力闘争が継続すること)が“確定”した」と党内筋の話として報じていたが、このニュースはすぐに削除された。可能性としてはこういう形もゼロではないが、このような人事が実現するならば、もう少し周辺がざわつくのではないかと思われる。 では、どのような人事で、どのような路線が党大会後に展開されるのだろう。ちょっと気が早いが、今の段階でありえそうな想定を出してみよう』、興味深そうだ。
・『李克強と習近平がアピールする鄧小平路線と毛沢東路線  河北省で8月1日から15日まで行われた夏の非公式会議、北戴河会議では、習近平が外交、経済、新型コロナ政策、一帯一路などの失敗について、かなり厳しい批判の矢面に立ったとみられている。 内容ははっきりとはわかっていないが、明確にされたのは、8月16日に李克強が経済特区の深圳を視察し、同じ日に習近平が遼寧省錦州市の遼瀋戦役革命記念館を訪れたことだ。 深圳では李克強が鄧小平像に献花し、自ら鄧小平路線の継承者であることをアピールし、企業家や南東部沿海省市の経済官僚を集めて経済座談会も行った。 一方、遼瀋戦役、つまり国共内戦三大戦役の1つである1948年の遼瀋戦役の現場を視察した習近平は、毛沢東路線の継承者であることをアピールしたといえる。遼瀋戦役は毛沢東の戦争であり、国共内戦は今の台湾問題の根源となる戦争だったので、習近平としては、毛沢東の成しえなかった夢を受け継ぐ、つまり台湾を中華民国から「解放」し統一する、というシグナルを発したとみられている。 この北戴河会議直後、李克強と習近平が、それぞれ鄧小平路線と毛沢東路線の両極端をアピールした背景を想像力逞しくすると、北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない。 ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。) おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる』、「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる」、「路線闘争」はさぞかし激しいいものになるだろう。
・『「劣化版」の戦いはずるずる続く  では、最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。 次の党大会の指導部の陣容を想像すると、これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないか、と思われる。 政治局常務委員7人のうち、習近平を除く68歳以上の老人が引退し、67歳以下が全員残るとすると、引退するのは72歳の栗戦書と68歳の韓正の2人。政治局常務委員の定員数が拡大されないなら、新たに昇進するのは2人で、常識的な予想であれば、現政治局委員で副首相を務める胡春華と丁薛祥の2人だろう。 胡春華は李克強、汪洋の両方から可愛がられている共青団派のエースであり、鄧小平路線の継承者だ。丁薛祥は習近平の秘書役をしてきた習近平の側近で、頭はいいが、党内で重視される、いわゆる行政実務経験が十分ではない。つまり総理や総書記が務まる器ではない。 そうすると、政治局常務委員7人は、習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、丁薛祥、胡春華となる。李克強派(鄧小平路線継承)が李克強、汪洋、趙楽際、胡春華の4人、習近平派が習近平、王滬寧、丁薛祥の3人で、李克強派が有利になる。 仮に汚職の噂が絶えない趙楽際が引退するとしてもう1人あがるとしたら、宣伝部長で習近平派の黄坤明の可能性があるが、丁薛祥にしても黄坤明にしても小粒感が否めない。また、そもそも王滬寧自身は、江沢民、胡錦涛、習近平という、派閥の色合いの違う3人の指導者とうまくやってきた玉虫色のキャラクターであり、単純に習近平派ともいえない。 政治局25人の面子を考えると、年齢的に11人が引退することになる。この引退者の中に劉鶴(副首相、習近平の経済ブレーン)、栗戦書(全人代常務委員長)、陳希(中央組織部長)が含まれる。この3人は習近平の側近の中で、比較的能力が高く、しかも習近平が心から信頼を置いている人物だ。この3人が政治局を引退することは習近平に大きな痛手となろう。 なぜなら、この3人を除けばその他の習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろいで、しかも習近平の権力におもねって近寄ってくるに過ぎず、いまいち信用されていないからだ。具体的には蔡奇(北京市書記)、李強(上海市書記)、陳敏爾(重慶市書記)、李希(広東省書記)、丁薛祥(中央弁公庁主任)、黄坤明(中央宣伝部長)、李鴻忠(天津市書記)の7人である。この中で本来、政治局常務委員への出世が期待されていた蔡奇、李強、陳敏爾、李希は全員、新型コロナ対応や電力問題などで行政評価にミソがつき、その無能ぶりを露呈してしまった。彼らが政治局常務委員に出世できるとはちょっと考えにくい。 こうした状況で、権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。 すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。李克強は能力的に総書記も十分に務められるので、聯合報の特ダネのような「李克強総書記説」が流れるのだろう。ただ、李克強が総書記になってしまうと、総書記を引退した習近平が首相や全人代委員長など格下の職位に就くことは党内的にはありえないので、政治局常務委員7人では足りなくなる。 中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろう』、「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。
・『習近平が台湾統一を試みる可能性  こういう状況なので、党大会のあとに展開する中国の状況としては、現在の路線矛盾を抱えながら、外交の孤立化、経済の停滞、社会の混乱が長期化するだろうとの予測が出ている。 つまりは、習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からない。 要するに習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか。 だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう。台湾ではロシア・ウクライナ戦争後、防衛費増強と徴兵制延長の問題がかなりホットな話題として議論されているが 8月上旬、ペロシ米下院議長の訪台後に行われた中華民意研究協会の世論調査では、74.7%が徴兵制を現在の4カ月から1年に延長することに賛成している。 知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していた。 党大会まであと1カ月半、今後どのような変化があるかまだ分からないが、なかなか厳しく不穏な時代が始まろうとしているといえよう』、「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。
タグ:「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 Newsweek日本版 「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。 「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、 「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。 「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとする 「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。 福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」 JBPRESS 「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。 「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、 「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。 「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。 「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) 中国国内政治
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韓国(尹錫悦大統領)(その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした1 [世界情勢]

韓国(尹錫悦大統領)については、7月2日に取上げた。今日は、(その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)(一部)、韓国経済に黄信号  中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由)である。

先ずは、9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの田中 美蘭氏による「韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98856?imp=0
・『「先進国」になった韓国でひっそり進む「危機」  韓国では、少子高齢化がとどまるところを知らない。 そんな韓国の高齢者たちは一見するとアクティブで、スマホといった最新機器も積極的に使いこなしたり、パワフルで、感心させられることが多い。 しかし、その反面で、社会が急速に変化し、世代間などで生じる対立や分断も深まる中、高齢者たちを取り巻く環境は実に厳しいものとなっている。 韓国といえば、「家族との付き合いが深い」というイメージがある。 このため、家族の集まりや旧盆、旧正月といった伝統行事は妻の立場である女性たちにとってこの上にない精神的な負担と苦痛であることが少なくない。 さらに、義両親があれこれと息子、娘夫婦の孫の育児や教育事情など家庭全般に口出しをして介入してくることで、摩擦が生じることはよくある話である。 だからこそ、ママ友同士で集まれば自然と義実家の愚痴話に花が咲くのである。 一方、中高年の女性たちが集まりながら自分の子どもや嫁、孫の自慢話をしてマウンティングを繰り広げるというのは、これもまた“韓国あるある”な話であり、ドラマなどでもよく描かれる。 これだけを聞けば、韓国の女性たちの老後は子どもや孫の存在が「生きる糧」になっているような印象を受けるが、必ずしもそうではないようである』、「子どもや孫の存在が「生きる糧」に「必ずしもそうではないようである」、どういうことなのだろう。
・『広がる「絶望」  先日、朝鮮日報で韓国のジェンダー問題について特集した記事の中で、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つに「孫育て」が含まれているというのだ。 日本と同様に共働き家庭が多い韓国では、夫または妻の両親の助けを借りながら育児をする。その理由が「若い頃は義実家に縛られ、老後では孫に縛られ、いつまでも自分のためではなく家族のために生きなくてはならない」ということに虚しさを感じ、自分の人生を悲観するというものである。 5年ほど前に大手建設会社KCC建設のCMが大きな反響を呼んだ。高齢の女性が孫とおぼしき子どもを背負いながら、台所で食事の準備をするシーンが描かれたCMでは、その女性の顔に疲れの色と憂いの表情が浮かんで見えるが、これが「孫育て」をする韓国の高齢女性のありのままの姿といえる。 一人当たりGDPで日本を間もなく抜き去り、「先進国になった」「日本を超えた」という韓国だが、そのウラではこのような社会の歪が起きているわけだ。 日本でも孫の面倒を見ることに疲れやストレスを感じている高齢者は多いという話を聞くが、韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている。ここへきて韓国ではウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に悩まされている韓国経済だが、新たに高齢者問題が「四重苦」として注目されてきた。 後編記事『“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!』では、そんな韓国経済でいま起きている“危ない現実”についてレポートしよう』、「韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている」、その通りなのだろう。

次に、この続きを、9月3日付けダイヤモンド・オンライン「“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98856?imp=0
・『ウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に苦しむ韓国で、いま新たに高齢者問題が浮上してきている。 最新の調査では、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つが「孫育て」だということがわかり、いま話題になっている。よもや家族を支える高齢者が“離脱”すれば、韓国で新たな家族問題に発達しかねない。 そこへ追い打ちをかけるように、韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上してきた。「先進国」になったと騒ぐ韓国にあって、いま危ない危機が進行し始めているわけだ。その最前線をレポートしよう』、「韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上」、どんなことなのだろう。
・『高齢女性たちの「深刻すぎる貧困問題」  韓国では、高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化している。 映画『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を獲得したユン・ヨジョンが主演を務めた『バッカスレディ』は、生活のために売春を行う高齢女性の姿を赤裸々に描いた作品である。 「バッカス」は韓国を代表する栄養ドリンク剤の名前であり、ソウルなど都市部の高齢者が集まる場所に現れ、「バッカス」を中高年相手に売りながら、売春を行うというというものである。 一見すると都市伝説のような話であるが、現実であるからこそ、映画にもなり、社会問題としても注目されるのである』、「高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化」、「売春」を行うこともあるとは驚かされた。
・『年金、金利、不動産、高齢労働…  最近では高齢女性に限らず、高齢男性がタクシー運転手や配達員、警備員などをして働く姿も目にする。 かつての韓国では50代で仕事をリタイヤするケースがほとんどであった。 それでも、今とは比較にならないほど、物価は安く、銀行の金利は高かった時代でもあり、小さくとも不動産を所有し、それを貸し出すことで得た収入の利息でも受けて蓄えを増やす人も多かった。 そして、老後の生活や介護は子ども、特に長男が無条件に見ることが当然のこととされていた。 つまり、「年金や蓄えがなくとも子どもがいれば何も心配はない」ということだったのだ。 しかし、現在ではどうであろうか――。子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である』、「子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である」、韓国だけでなく、日本でも同様だ。
・『500万世帯に迫る「独居高齢者」  年金制度も開始されて30年ほどで、公務員や教員、軍人といった一部の職業を除けばあとは国民年金であり、その支給額にはやはり大きな差がある。 このため、現在、60代以上の高齢者は少しでの生活の足しを得るために、働かざるを得ない状況なのである。 また、独居高齢者の数は2020年に161万8000世帯で、年々増加傾向にあり、30年後の2050年頃には467万1000世帯にまで増えると見られている。 この背景には、核家族化が進んだことや、日本でいうところの「熟年離婚」の増加が挙げられる。 女性が結婚生活に不満や理不尽さを感じても、昔であれば「離婚はマイナスイメージ」というのが強い上に、女性が一人で生きていくことはほぼ不可能であり、じっと耐えるしかできなかった。 それが、今では迷わず離婚を選ぶことも普通になった』、日本でも「独居高齢者」は2015年で5.7百万人、「熟年離婚」も増えているのも同様だ。
・『完全に崩壊した「人生のモデルケース」  とはいえ、公的年金や高齢者向けの職業斡旋も充実しているとは言い難い。 まして、家族や親族に頼ることが当たり前であった韓国で、いまや子どもに頼ることもできず、高齢者たちにとっては非常に厳しい時代であるといえる。 韓国のみならず、中国でも長きにわたる「一人っ子政策」の弊害が少子化を加速させ、貧困の高齢者問題も深刻化している。 日本も韓国や中国と比較すれば、まだマシと言えるかもしれない。 が、それでも、筆者と同世代の40代は「就職氷河期世代」と言われ、この世代が高齢者の仲間入りをする20~30年後の生活や日本の状況は厳しいと予測されている。 韓国も日本も親世代が歩んで来た「結婚し、子どもを生み育て定年まで勤め上げれば老後は安泰」というモデルケースが完全に崩壊したのだ』、「人生のモデルケース」が「完全に崩壊した」のは「韓国も日本」も同様だ。
・『「日本を超えた」などと言っている場合ではない  いま、高齢者の生活苦や孤独死といった問題はさらに増えていくことであろう。 特に中年世代はこれからの年の重ね方や老後の過ごし方、さらには「終活」についてもシュミレーションをしておく必要があるかもしれない。 この問題を放置しておけば、韓国経済が足元から崩れていくリスクすら秘めている。このままでは「日本を越えた」などと言っていられないほどの危機に直面する危険性すら出てきたというわけだ。 さらに連載記事『韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!』では、そんな韓国で広がる高齢者たちの新たな問題についてレポートしよう』、「韓国」も「日本を超えた」のであれば、「日本」を比較材料にするのではなく、絶対的な指標を重視するべきだろう。

第三に、9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したビジネスライターの佐久間 俊氏による「韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308940
・『技術者の「日本離れ」が進んでいる。国内大手企業に勤めるエンジニアや研究者が海外メーカーに引き抜かれ、技術が海外に流出するのだ。長く勤めて安定した大企業正社員の立場を捨てて、海外に出る技術者は、何を魅力に感じて転職するのか?2010年にサムスンに引き抜かれ、10年間勤めたある日本人研究者が、どのように&どんな条件でサムスンに誘われたのか、勤めてみて分かったサムスンと日本の一般企業の違い、韓国社会のどこが良かったかなどについて語る。 閉鎖的な島国、日本の技術の海外流出に歯止めが効かない。 2021年のノーベル物理学賞を受賞した、日本出身で米国籍の気象学者、眞鍋淑郎氏の言葉は記憶に新しい。真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している。 眞鍋氏でなくても、現在の日本で研究者が自由に研究に打ち込むことは難しくなって来ているのは事実だ。日本でそんな違和感を抱え、私は韓国という新天地を選んだ』、「真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している」、「日本」でのやり難さを的確に指摘している。
・『今の給与の1.7倍払うので、サムスンで素材開発をしてほしい  2010年当時、私は国内大手材料メーカーで研究者として勤務していた。 朝から雨が降っていたある日、総務課経由で私宛に外線が入っていると連絡があった。いぶかしがりながら回送されてきた受話器を取ると、それは怪しいヘッドハンターからの電話だった。 当時は日本社会全体としてエンジニアの転職(引き抜き)が活発であった時期であり、私も以前から同じような勧誘は何度か受けたことがあったので、特に驚きはしなかった。私はいわゆる古いタイプの会社員であることを自覚している。定年まで勤め上げるのが当たり前、転職には全く興味がなかったし、むしろ転職していく元同僚を憐れんでいた方ですらあった。「怖いもの見たさで、一度くらい話を聞いてみるのもいいか。酒の席で話のネタになるかな……」などと思い、その人と自宅近所の駅の喫茶店で会うことにした。 初回面談の内容はこんな話だった。「サムスンで素材開発を行ってほしい」「あなたの特許出願内容を見て声をかけた」「来て頂けるなら給与は現行の1.5倍出す」と言う。それまで勤めていた会社で心身ともに少し疲れていたタイミングだったこともあり、提示された年棒と残りの会社員人生の期間をあざとく計算しつつ、再度面談するということで一旦別れた。 2回目の面談では、給与は現行の1.7倍に上がり、より具体的な職務内容が提示された。しかしこれまでのキャリアや人脈を捨て、日本を出て韓国にある研究所へ移籍することになるのだ。身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない』、「身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない」、慎重なようだ。
・『ヘッドハンターは、心が弱っているときにやってくる  これから海外に行って何年務めることができるか不安があったし、体力的、精神的な限界もあるだろう。急な病気・事故などに遭うこともあるかもしれない。将来貰えるであろう日本での退職金や厚生年金が激減することも容易に計算できた。また、サムスンを退職した後で日本の会社で再就職できるのかという不安もあった。それに、一部には「韓国企業に引き抜かれて転職した人は裏切り者だ」という極端な考え方の人がいることも知っている。 そんな後ろ向きなことばかり色々と考えていると、数日後には3度目の面談を要請された。今度は高級料亭で、しかも先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得するというではないか。 私は当時40代になったばかり。国内の会社ではふるいに掛けられ、これ以上役職としては上がれそうもなかった。しかし逆に言えば、日本企業に勤め続ければ法律に守られている。あくせく必死に働かずとも、適当に優先度の低い実験をしながら定年まで勤め上げれば、安定した生活を送ることもできる。実際、そういう人間は研究所には多くいた。 そう思っていたはずなのだが、面談を進めていくうちに気持ちが変わってきた。そんなぼんやりとした人生を送るよりも、研究者として世界的大企業に求められて働くほうが、断然刺激的な気がしてきたのだ。3回目の面談の最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていたのをよく覚えている。 ヘッドハンティングは、新興宗教の勧誘に近いものがあるのかもしれない。心が弱っているときにやってきて、それまでの自分の考え方をがらりと変えてしまう。 そうこうしているうち、気が付くとソウル行きの航空券と高級ホテルが用意されていた。週末を利用した韓国ツアーだ。韓国に着くと、設備見学や担当役員、上長予定の人との面談が待っていた。細かい契約を文書化して締結し、初めて電話を受けてから3カ月後には、人生初の退職届を出していた』、「3度目の面談」、「先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得」、「最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていた」、さすが説得が巧みだ。
・『サムスンの素晴らしい福利厚生  こうして私は韓国に引っ越し、サムスンで働くことになった。ここからは少し社内外の環境について述べたいと思う。 サムスンは韓国を代表する大企業なだけのことはあり、基本的にはほぼあらゆる面で日本の会社と同等以上のサービスが用意されている。韓国人社員がつくるサムスンの企業文化は、日本の会社にとてもよく似ている部分もあるが、日本では見かけない、ユニークな面もいろいろあった。 例えば福利厚生。私の前職の会社との比較しかできないが、福利厚生で利用できるカフェテリアポイントは日本企業と同じようにいろいろと利用でき、契約している宿泊施設や遊興施設も数多い。また、通販にも利用できるので、家庭を持っている社員には好評のようだ。 また、特筆すべきは年1回の健康診断である。サムスン系列の病院で行うのだが、まるでホテルのように豪華だ。検診には最新鋭の装置を使い、診断後2週間以内には結果が送付されてくる。サムスンの健康診断はどんな小さな異変も見逃さないと、韓国内でも定評があるらしい。特に胃腸の内視鏡検査はすばらしく、睡眠薬で眠っている間に全て完了する。これは是非日本でも普及してほしいと切に思う。 また、社内食堂ではバラエティーに富んだ食事が1日3回無償で提供される。サムスンには労働組合がないのだが(※類似の働きをする組織はあるが、組合ではない)、他にも、誕生日や結婚記念日には会社からプレゼントがもらえるほか、運動会や文化イベント、夕食会など飽きが来ないようにイベントが目白押しだ(※コロナ前)。 面白いのは、文在寅政権になってから週40時間労働制が推進されたおかげで、勤務時間が明らかに短くなったことだ。それまでは土曜日にも当たり前のように出勤していたのだがその習慣もなくなり、無意味な残業が激減したように思う。サムスンのトップはいろいろな罪で頻繁に収監されていたが、会社は国のお手本になろうと努力しているように見えた。 しかしこれだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する』、「これだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する」、「上昇志向」の強さは韓国の強味だ。
・『やりすぎ感のある社内情報セキュリティー  もう一つサムスンの社内環境で印象深かったのは、セキュリティーの厳しさだ。仕事に支障をきたすほど厳格に情報セキュリティーを推進していた。 日本からサムスンの会社、工場、研究所などへ出張で来たことがある人なら、建物に着いてから入場までの時間の長さに辟易(へきえき)したことがあるだろう。社内で使用する全ての紙にはメタルファイバーが埋め込まれており、カバンに隠していても出入口の金属探知機を通過することができないのは有名な話だ。 USBメモリやSDカードなどを持っていても、社内のパソコンでは認識されないので誰も使わない。それどころか、個人用に支給されるパソコンの内部ハードディスクにはデータを記録することができず、特別なクラウドに保管するようになっている。パソコンを記録媒体として使わないのだ。 また、個人所有のスマホには特別なアプリをインストールされ、社内ではカメラが起動できないようになっている。さすがに会社も全社員に強制することはできないので、アプリのインストールを拒否することも可能だ。ただ、そうなると、カメラのレンズ部分に特殊なシールを貼られるまで入場できない。なお余談になるが、社員は皆、スマホはGalaxyを持っているイメージだったが、実際には「かっこいいから」という理由でiPhoneを持っている率も結構高かった』、「社内情報セキュリティー」の厳しさはさすがだ。
・『韓国社会&暮らしのいいところ  ミセモンジ(微細粉塵)で晴れ間が少なく、曇りの日が多い韓国。韓国暮らしについても少し紹介しておこう。 韓国では、新しいテクノロジーを使いこなしている部分と伝統を守っている部分がうまい具合に混じり合い、日本人の目にはユニークな社会を形成しているように見える。みんながスマホまたはパソコンを持っているという前提で社会インフラができており、日本のように弱者に合わせた“優しい社会”ではない。高齢者の方はどう考えているか分からないが、スマホが使える私の年齢だと、とても合理的に見える。 例えば、外国人登録証と銀行口座を紐づけして登録しているので、役所の手続きなどはほとんどオンラインで完結する。最近の例では、新型コロナウィルス関連の生活支援金がこういったシステムのおかげで当日入金されたのは有名だ。日本でこうしたことが進まないのは個人情報を守るべきだという声があるからだろうが、韓国にいると、個人情報の心配より利便性だと感じるし、日本のマイナンバーカードは帰国したらすぐに登録しなければと強く思った。 また、法的規制が少ないのか規制されるのが遅いのか分からないが、韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える。もしかすると、日本以外の国はみんなそうで、韓国が特別なわけではないのかもしれないが……。 また、交差点にパラソル(信号待ちの人に日陰を作るため)を設置したり、散歩道や公園が整備されたりと、生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い。このあたりは税金の使途が分かりにくい日本に比べて、とてもうらやましい点だ。) 住環境に関しては、韓国は日本よりも大変かもしれない。 サムスンに勤める日本人には、単身者でも60~80平方メートル前後、2~3LDKのアパートが貸与される。私の住んでいたアパートは、築年数や駅からの距離、室内設備などから考えると、日本人の感覚としては2000万~3000万円程度の物件にしか見えなかったが、ポストに投函されるチラシを見ると7000万円超のマンションらしい。韓国の不動産バブルが垣間見える瞬間である。 物価面ではよく言われていることだが、光熱費、交通インフラなどが安く、食料品は高い。全体としては日本よりも高いかもしれない。コロナ禍の前には、若い韓国人社員がよく日本出張のついでにiPadを買いたいなどと話していた。確かに、たまに帰国すると日本は安いなと感じてしまう(特に飲食関係)。 ここまで紹介したことはすべて、私が在籍した10年間で急激に変化したことだ。この国の進歩の速さはおそろしい。 後編では、サムスンで働いていたときに感じていたこと、働きやすさや人間関係などについて詳しく紹介する。 >>後編「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差」に続く』、「韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える」、「生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い」、「日本」も学ぶべきだ。

第四に、この続きを9月6日ダイヤモンド・オンライン「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)」の無料部分を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308941
・『日本の大手材料系メーカーに約20年勤めていたが、研究者としてもっと活躍したいという気持ちから、サムスンのヘッドハンティングに応じた筆者。2010年、40代前半で韓国へ渡り、サムスンで働き始めた。韓国ナンバーワン企業であるサムスンでの仕事は、社内の文化も、専門職へのサポート体制も、外国人社員の国籍構成も、日本企業とは大きく異なっていた。筆者同様に引き抜かれた日本人社員の中には、1年程度で去って行った者も多く、さらには文在寅政権下で極端な反日キャンペーンが張られていた時期でもあった。内側から見たサムスンの強みや独自性、そして外国人社員がサムスンで生き抜くために気を付けるべき人間関係について、生々しく語る』、興味深そうだ。 
・『研究者にとっては天国のような環境だが、技術以外のものも求められる  2010年、サムスンに引き抜かれて始まった韓国暮らし。前編ではヘッドハンティングの経緯と韓国で暮らして感じたことを述べたが、後編は実際にサムスンで働いてみて気がついたこと、社内事情などについて紹介していこうと思う。 入社して2年を過ぎた辺りからは生活に慣れ、3年を過ぎると日本へ一時帰国するのが面倒になってきた。単身者だったということもあるが、サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった。サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ。 昔はスペシャルな技術ノウハウを持った人であれば、数年在籍するだけで大金を稼げたそうだが、今は日本人が韓国企業に勤める場合、韓国人と一緒に働くための技術面以外の能力も必要になってきている。ヘッドハンティングされる人は、基本的な技術、ノウハウは当然みな持っているものだが、課題に対して韓国人社員が納得できるような技術指導ができなかったり、社内でのリーダーシップが取れなかったりする日本人は多い。 社内でのリーダーシップを獲得するためには、日本人社員は韓国人社員から嫌われたり、なめられたりしてはいけない。普段は会議も通訳を介して行うため、直接的な表現はマイルドにされて伝わり、言い争いになるようなことは滅多にない。しかし、韓国人と日本人は情緒的に驚くほど似ており、怒りや自信の無さなど気持ちのブレはすぐに読みとられてしまう。さらに日本語を理解している社員もとても多いので、そういう人にはもちろん伝わってしまうし、また、社内では日本人同士の会話も気を使わなければいけない。 結局は、仕事に対しても、人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう。 今後サムスンに入社する人へちょっとしたアドバイスをするとすれば、「日本のマンガ」の知識を習得しておくべきだと思う。韓国人は『ONE PIECE』(ワンピース)、『スラムダンク』、『ドラゴンボール』で育った人が多い。この3大マンガの大まかなストーリーくらいは把握している方が良い。かめはめ波の一発でも打てれば、人気者間違いなしだ。(これ以下は有料)』、「サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった」。うらやましい。「サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ」、これはよくあることだ。「人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう」、当然の厳しさだ。

第五に、9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「韓国経済に黄信号、中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309190
・『8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。一つの要因として、中国が韓国の“お得意さま”から、競争上の脅威に変わり始めたことがある。中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいて、これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。韓国経済が直面する環境の急変は、わが国にとっても他人事ではないはずだ』、「これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている」、これは大変だ。
・『中国が、韓国の“お得意さま”からライバルに変化  足元で、韓国経済の減速懸念が急速に高まっている。背景として、中国経済の低迷に加えて、これまで“お得意さま”だった中国企業との関係が変化していることがある。中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ。 また、ゼロコロナ政策に固執する共産政党の経済施策や、歴史的な渇水によって経済活動が低迷する中国経済は景気の回復が遅れている。その結果、韓国は最大の輸出先である中国の需要を、これまでのようなペースで獲得することが難しくなっている。 最近では、電気自動車(EV)、車載用バッテリーなどの分野で、中国企業が急速に価格競争力を強めている。サムスン電子が健闘しているスマートフォンに関しても、中国企業がシェアを奪取する可能性は高い。それに加えて、ウクライナ危機などによって世界経済の脱グローバル化が加速し、天然ガスなどの供給体制が不安定化したことも韓国にマイナスだ。 1990年代の初頭以降、韓国はグローバル化を追い風にして加工貿易体制を強化した。それが中国の需要取り込みに決定的な役割を果たした。今後の経済成長をどう実現するか、韓国は正念場を迎えている』、「中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ」、この構造的変化は「韓国」にとっては打撃だ。
・『中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している  8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。2020年9月以来の50割れだ。ウクライナ危機が発生して以降、世界経済の中でもわが国を含むアジア地域の景況感は相対的に底堅さを保ってきたが、韓国の景況感は急速に弱含み始めた。 一つの要因として、中国が韓国のお得意さまから、競争上の脅威に変わり始めたことがある。産業振興策である「中国製造2025」が推進されたことは大きい。半導体や車載用などのバッテリー、量子コンピューティング、人工知能(AI)などの最先端分野に対して共産党政権は産業補助金を積み増した。 また、共産党政権は国有・国営など主要企業に土地も供与した。このことで中国企業の固定費負担は主要先進国の企業と比較して大きく低下した。その後、米中対立などによって中国の最先端の半導体製造技術の確立は遅れたが、車載用のバッテリー分野やスマートフォン、有機ELパネルなどのディスプレー分野で中国企業の成長は加速している。韓国企業が高シェアを維持した、あるいは事業運営体制を強化している分野で中国企業の台頭が鮮明だ。 中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している。1960年代以降、韓国ではサムスングループなど財閥の事業運営体制が強化された。それと同時に、当時の韓国政府はわが国などからの技術移転を加速させた。こうして、鉄鋼、家電、自動車など工業化が進んだ。 97年に発生したアジア通貨危機の後、韓国は資材を輸入し、国内でテレビなどの大量生産を行い、ウォン安を追い風にして中国などへの輸出競争力を高めた。近年は、メモリ半導体などの供給体制が急速に強化され、経済面で韓国の対中依存度は高まった。 しかし、中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう』、「中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう」、同様なことは、日本と「韓国」の間でも発生した発展段階の必然だ。
・『韓国経済を直撃する中国経済「想定外」の失速  目下、韓国経済は中国経済の失速に直面している。中国経済は成長の限界を迎えつつあり、背景にはゼロコロナ政策に固執する共産党政権の経済運営など複合的な要因がある。一部の経済専門家からは、「中国が経済規模などの面で米国を上回るのは難しくなった」との見方さえ出始めている。 無視できないファクターの一つは不動産バブル崩壊だ。20年8月に共産党政権が導入した「3つのレッドライン」によって、想定外に中国経済は悪化した。不動産市況の悪化は止まらず、債務問題が深刻化。不動産デベロッパーなどの民間企業のデフォルト懸念が追加的に高まっている。 加えて、家計や地方政府も含めて経済全体で不良債権の増加懸念が上昇している。そのため共産党政権は、人民元安加速のリスクを冒してまで追加利下げを実施しなければならない状況に追い込まれた。 また、ゼロコロナ政策の徹底によって中国国内の人流・物流はかなり不安定だ。最悪期を脱して生産活動は徐々に持ち直しているものの、個人消費の戻りはかなり鈍い。 3月下旬から5月、習近平政権は有無を言わさぬ姿勢で、最大の経済都市である上海でゼロコロナ政策を徹底した。その結果、物流が途絶えて食料不足が発生するなど、市民生活はかなりの苦境に陥った。これは人民にあまりに強いショックを与えたと考えられる。「生活と安全を自力で守らなければならない」と先行きに危機感を強める人が増え、節約志向が強まっているようだ。 さらに、脱グローバル化の負の影響も増大している。ウクライナ危機の発生以降、ロシアから欧州などに対する天然ガスなどの供給が減少した。供給体制は不安定化し、各国で物価は高騰している。中国では主食の豚肉価格が高騰し、消費者物価が徐々に上昇していることが消費者心理をさらに冷え込ませている。 その結果、22年4~6月期の中国の実質GDP成長率は、前期比マイナス2.6%だった。日米と同様に前期比年率換算で見ると、中国の実質GDPは前期から10%減少(失速)した。それが韓国の景況感を悪化させたのだ』、「中国経済「想定外」の失速」は、確かに「韓国経済を直撃する」不運な材料だ。
・『厳しさ増す韓国経済を取り巻く環境  今後、韓国が経済成長を目指すことは追加的に難しくなる恐れが高まっている。90年代以降、世界経済のグローバル化が加速し、国際分業体制が強化された。これにより世界全体で緩やかに経済が成長すると同時に物価が上昇しづらい環境が出現した。 それを追い風に韓国の財閥系大手企業は積極的に設備投資を行って大量生産を行い、世界の需要変化に機敏に対応して輸出を増やす経済体制を急速に整備した。その象徴として、サムスン電子などはデジタル家電のユニット組み立て型の生産体制を強化しつつ、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業を強化して最先端分野の需要をより効率的に獲得した。ちなみに、この裏返しとしてわが国の家電、半導体、液晶パネルなどの競争力が失われた。 中国共産党政権は半導体やバッテリー、EV、脱炭素関連の技術やAIなどの開発、生産体制をさらに強力にサポートするだろう。それによって、韓国企業から中国勢へ、シェアや技術の移転が加速するだろう。 加えて、米国では北米生産のEVに補助金が支給されるなど、物価上昇圧力に対応しつつ雇用を支えるために、各国は自国の事情を優先せざるを得ない。他方、韓国統計庁によると21年の合計特殊出生率は前年比0.03ポイント低下の0.81だった。国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう。 韓国経済が直面する環境の急速な変化は、わが国にとって他人事ではない。少子高齢化などによって、わが国の需要は伸び悩んでいる。一方で、天然ガス価格などの上昇は経済に逆風だ。 世界経済の先行き懸念が高まる中で、わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう』、「国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう」、「わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう」、同感である。
タグ:「国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう」、「わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう」、同感である。 「中国経済「想定外」の失速」は、確かに「韓国経済を直撃する」不運な材料だ。 「中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう」、同様なことは、日本と「韓国」の間でも発生した発展段階の必然だ。 「中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ」、この構造的変化は「韓国」にとっては打撃だ。 「これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている」、これは大変だ。 「真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している」、「日本」でのやり難さを的確に指摘している。 佐久間 俊氏による「韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)」 「韓国」も「日本を超えた」のであれば、「日本」を比較材料にするのではなく、絶対的な指標を重視するべきだろう。 「人生のモデルケース」が「完全に崩壊した」のは「韓国も日本」も同様だ。 日本でも「独居高齢者」は2015年で5.7百万人、「熟年離婚」も増えているのも同様だ。 「子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である」、韓国だけでなく、日本でも同様だ。 「高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化」、「売春」を行うこともあるとは驚かされた。 「韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上」、どんなことなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!」 「韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている」、その通りなのだろう。 「子どもや孫の存在が「生きる糧」に「必ずしもそうではないようである」、どういうことなのだろう。 田中 美蘭氏による「韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!」 ダイヤモンド・オンライン ダイヤモンド・オンライン「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)」 「韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える」、「生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い」、「日本」も学ぶべきだ。 「社内情報セキュリティー」の厳しさはさすがだ。 真壁昭夫氏による「韓国経済に黄信号、中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由」 「サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった」。うらやましい。「サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ」、これはよくあることだ。「人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう」、当然の厳しさだ。 「これだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する」、「上昇志向」の強さは韓国の強味だ。 「3度目の面談」、「先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得」、「最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていた」、さすが説得が巧みだ。 「身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない」、慎重なようだ。 (その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした1 韓国(尹錫悦大統領)
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中国情勢(軍事・外交)(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、6月6日に取上げた。今日は、(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?)である。

先ずは、6月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57786
・『中国は2008年から外国の優秀な研究者を集める「千人計画」を進めている。目的は一体何なのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「破格の待遇で研究者を呼んでいる。中国が行っているのは単なる技術競争ではない」という――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。Qは聞き手の質問、Aは北村氏の回答』、興味深そうだ。
・『中国の論文数は2016年に世界トップになった  Q:中国の科学発展の歴史について聞きたい。 A:中国は1950年代から、核兵器と弾道ミサイル、人工衛星の開発を並行して行う「両弾一星」のスローガンを掲げて、軍主導の宇宙開発に乗り出した。有人宇宙活動や月探査など、現在の宇宙事業も、軍が密接に関与しながら進められている。 文化大革命(66~76年)では知識人が迫害され、科学技術の発展が遅れた。だが、最高実力者の鄧小平氏が70年代後半から「国家の根幹は科学技術力にある」として立て直しを図った。90年代に海外から中国人留学生を呼び戻す「海亀政策」を進め、先端技術を取り込んだ。94年には、国外で活躍する優秀な人材を中国に呼び戻す政策の一環として「百人計画」が始まった。 中国製のスーパーコンピューターが2010年、計算速度で世界一を達成し、13年には無人探査機「嫦娥じょうが3号」が月面探査に成功した。科学の発展は、論文数にも表れている。日本の文部科学省の集計では、1981年に1800本だった中国の論文数は、2015年までに160倍増となった。全米科学財団(NSF)の報告書によると、16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立ったようだ』、「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
・『外国から優秀な人材を集める「千人計画」  中国版GPSと呼ばれるグローバル衛星測位システム「北斗」が既に運用されている。人工衛星は、艦艇や航空機の位置把握、ミサイル誘導などの軍事目的にも役立つ。 21年3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された新5カ年計画には、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的な支えとする」との文言が盛り込まれた。最先端の民間技術を積極的に軍事に転用する国家戦略「軍民融合」の下、今後も、世界トップレベルの研究者の招請や企業買収などを通じ、最先端技術を吸収していくだろう。 軍民融合の一環として、中国は「千人計画」を進めている。百人計画が成功したのを受けて、外国から優秀な人材を集める中国政府の人材招致プロジェクトだ。国家レベルでは08年から実施されている。採用される日本人研究者も増えている。 Q:外国人研究者は破格の待遇で集められているようだ。読売新聞の取材では、研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあったようだ。 A:招聘に応じた日本人研究者には、「日本の大学だと研究費が年数十万円ということもある。日本の研究者は少ない研究費を奪い合っている。中国からの資金補助はとても助かる」と話す人もいる』、「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。
・『補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで…  補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。 米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。 中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。 Q:中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。 A:日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう』、「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ」、これでは「起訴」されて当然だ。
・『兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も  Q:「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。 A:中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。 国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。 ・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化) ・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI) ・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス) ・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学) ・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力) ・南京航空航天大(航空・宇宙工学) ・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)』、「国防7校」とは権威がありそうだ。
・『本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」  Q:「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。 A:米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。 風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のような洞ほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。 この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。 本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という』、「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。
・『ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」  Q:「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。 A:論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。 中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。 中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ』、「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。
・『日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う  Q:日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。 A:全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。 習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。 中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている』、「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ」、恐ろしいことだ。
・『日本にとっての軍事的な脅威は増していく  Q:中国の国家体制は盤石なのか。 A:短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。 ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。 習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない』、「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。

次に、8月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員の土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60947
・『リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化  8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 中国北京市で2022年7月26、27両日、省部級の主要指導幹部対象の「習近平総書記の重要演説の精神を学び、中国共産党第20回全国代表大会を迎える」特別研修班が開かれ、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が開講式で重要演説を行った 昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。 とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。 2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。 その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。 共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。 それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。 貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう』、「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。
・『中東欧に「選択と集中」をかける中国  しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。 具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。 2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。 こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。 つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる』、「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。
・『有効な対抗手段を持っていないEU  加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。 中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。) EUは立法機関である欧州議会を中心に、対中姿勢を硬化させている。 一方で、中国は引き続きヨーロッパの市場へのアクセスを重視している。その足場として、バルカン半島からハンガリーを一体的にとらえているように考えられる。これらの国々がロシアとも比較的友好的であることも、中国にとっては都合がいいといえるのではないか。 インフラ投資といったハード面のみならず、公衆衛生でのサポートという一種のソフトパワーも行使した中国に対して、EUは有効な対抗手段をまだ用意できていない。EU版一帯一路ともいえる「グローバル・ゲートウェイ」構想下での支援対象からEU加盟済みの中東欧諸国は外れているし、EU未加盟の国々への支援の展望も描きにくい。 EUによる開発支援は、当然だがEUの経済観が色濃く反映される。新興国ではインフラの建設には経済性よりも政治性が重視される傾向が強いが、EUは支援に当たり経済性の高さを強く要求する。さらに「グローバル・ゲートウェイ」構想では、EUが重視する「デジタル化」と「脱炭素化」にかなう領域でのサポートを念頭に置いている。 とはいえ、新興国でそうした諸条件をクリアできるプロジェクトなど、まずない。欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている』、「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。
・『岐路に立つ中国の「一帯一路」  そもそも「16+1」は、習近平政権の「一帯一路」構想の延長線上にあったものだ。 中国がもともと「一帯一路」構想に確たるビジョンを持っていたわけでもないが、バルト三国が離反したことや、コロナ禍で中国が中東欧の「選択と集中」を進めていたことは、この「一帯一路」構想そのものが岐路に立っていることの証左といえよう。 時を同じくして生じたスリランカの国家破綻も、中国の「一帯一路」構想が岐路に立っていることをよく示している。スリランカは7月5日、国家が破産したと宣言した。スリランカのハンバントタ港は、その建設から運営までが中国の手によって行われており、スリランカが陥った「債務の罠」を象徴する存在としてよく知られている。 もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。 さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう』、「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。
・『「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」  スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。 両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。 それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。 またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。 ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。 つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない』、「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。

第三に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308567
・『習近平氏とプーチン氏 裏目に出た「永遠の友情」  8月16日、中国の李克強首相が広東省深センを視察したときに発した言葉が物議を醸している。李氏は「中国の開放はまだ引き続き進めなければならない。黄河と長江は逆流しない」と述べて、鄧小平氏(故人)の改革開放路線の保持を訴えて、対米強硬と内製化に傾く習近平国家主席を批判したのではないかと憶測を呼んでいるのである。政権内で習主席に対する風当たりが強まっていることがうかがえる。 習主席は対米強硬を強化するとともに、ロシアとの連携強化に乗り出している。中ロが現在のような連携関係となるきっかけとなったのが、2021年2月4日の北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった。 2014年ソチオリンピックでも、両者は首脳会談を行っており、第2次世界大戦70年でナチスや日本軍と対抗した「戦勝国」の立場からの連携を確認しているものの、それ以上の連携には進まなかった。 当時、ロシアはウクライナのNATO加盟の動きに軍事圧力をもって対抗して、各国から非難を浴びていた。ロシアが軍事侵攻に及ぶと予期した専門家は少なく、中国もその可能性を小さく見積もっていたと伝えられている。たとえ軍事侵攻が起こったとしても、ごく短期で終わるという見方が大勢を占めていた。 だが、2月24日以降のウクライナ軍事侵攻で、ロシア軍は首都キーウ攻略作戦で苦戦を強いられて、撤退に追い込まれてしまった。ロシアは国際的な非難を受け、ウクライナ軍には武器援助が集まり、ウクライナ軍の奮闘ぶりが各国に伝えられた。 これは中国、特に習主席としては大誤算だった。中国はこれまでロシアとは一定の距離を取り、2014年のロシアのクリミア併合の際も、中国はあくまで中立を保っていた。だが、ウイグル問題で中国が非難されて、「ハレの舞台」である北京オリンピックに対して西側からの政治的ボイコットを受けたことで、習氏はロシアへの「無限の友情」を確約したのである。このことがプーチン大統領にウクライナ軍事侵攻を決心させる一つの要因となったことは間違いないだろう。 メディアでウクライナ軍の快進撃が報じられ続ける一方で、ロシア軍による民間人への被害や虐待行為などが伝えられるようになると、その批判が中国にも向くようになった。西側は経済制裁でロシアを締め上げる策に出たが、中国がそれを和らげるバッファーになっていたことが明らかだったからである。 これまでロシアに対しては慎重姿勢だった中国が、積極支援に入った途端に国際的なロシア孤立政策に巻き込まれることになったことからも、習主席が外交センスに恵まれていないことは明らかだろう。しかも、異例の3期目には入れるかどうかの重要な時期であったことで、習主席は自分の首を絞めることとなった。 また、この状況は異例の3選を企んでいた習主席にとっては打撃になった。不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた』、「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた」、面白い展開になってきた。
・『内政も外交も失敗 それでも盤石な権力基盤  習近平指導部がこれまで取ってきた政策は「ほとんどが失敗」と言ってもいいほど惨憺たるものだった。 たとえば、習主席が先導してきた国家的プロジェクトである「中国製造2025」と「一帯一路」は、いずれもここにきて行き詰まりを見せている。 中国製造2025においては、先端半導体の内製化に失敗して半導体自給率は目標を大きく下回り、一帯一路も現地で雇用を生まず収益性も考慮されていなかったことから、各地で反中感情を高めた。 先述したゼロコロナ政策や不動産投資規制は中国経済に直接ダメージを与えており、IT企業への規制も虎の子の自国IT企業を痛めつけるだけであり、習主席の肝いりだったスマートシティー「雄安新区」もうまくいってないと伝えられている。やることなすことが裏目に出ていると言ってもいいだろう。 本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている。習主席の権力基盤が思いのほか頑強で、失政にもかかわらず取って代わるほどの人材がいないからだろう。 さらに、6月の全人代(中国全国人民代表大会)の常務委員会では、趙克志公安相の後任として、習主席側近の王小洪が起用されることとなった。王氏は習主席が福建省役員だったころからの部下だった。公安はもともと反習派の牙城といわれていた組織だったが、そのトップを習派にすげ替えることに成功したわけである。 ところが、その習主席に大きなダメージを与えかねない事件がアメリカから訪れる。8月のペロシ米下院議長の台湾訪問である。ペロシ氏の訪台は4月に計画されていたが、本人が新型コロナに感染して延期されていたものだ。 4月時点での訪台は中国側から大きな反発は見られなかった。だが、8月は習主席が異例の3期目をかけて権力闘争を繰り広げている真っただ中にあり、習近平指導部としてどうしてもペロシ氏訪台は避けたかった。直前のバイデン大統領との電話会談でも習主席は「火遊びをする者は火で焼け死ぬ」ということわざを使って恫喝すらいとわなかったが、ペロシ氏は訪台して蔡英文総統と会談し、習主席は顔に泥を塗られることとなった。 ペロシ氏が台湾をたつと、人民解放軍が台湾海峡の中間線を越えて軍事示威行動を続けた。さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発のミサイルを撃ち込んでいる。これは「中国の軍事計画が一つ先に進んだ」という面があるが、同時に日米が中国による台湾有事に備えることを強いた点で、中国にとっては外交上の失策ともいえる。 アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである』、「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。
・『ウクライナ戦争の長期化で高まる欧米への不満  失策続きの習近平指導部だったが、ウクライナ戦争が長引くごとに、情勢は徐々に中国に有利に働き始めた。エネルギーと小麦などの食料が高騰することで、途上国などのグローバルサウス(南北問題の南側)が、ウクライナ支援とロシア経済制裁を強める欧米に対して、不満を持ち始めたのである。そのため、ウクライナ支援を続ける西側とグローバルサウスの分裂が始まってしまったのだ。 習主席は4月に「世界安全保障構想(GSI)」という新たな戦略的枠組みを発表して、グローバルサウスの取り込みに入ったのである。まだ始まったばかりではあるが、ウクライナ戦争の余波でハイパーインフレや食料不足に苦しむ途上国や新興国から賛同を得る可能性が高まっている。 さらに、9月にカザフスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構サミットでは、中国が習・プーチン会談を実施しようとしていることをアメリカ経済紙の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がすっぱ抜いている。 上海協力機構(本部は北京)は中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの計8カ国で構成される国際組織であるが、中国が近隣国をまとめるための枠組みだと言っていいだろう。 ここでの最大の懸念はインドだ。インドはもともと反米親ロの傾向があるのだが、それを日米側に引き入れたのが安倍晋三元首相だった。安倍首相は中国との領土問題でインド国内で反中感情が強まっていた時期にモディ首相の信頼を勝ち取り、トランプ大統領を説得して日米豪印の4カ国による「クアッド(4カ国戦略対話)」を成立させた。 インドの反対で軍事同盟化することはできなかったものの、海側から日米が、陸側からインドが中国を牽制することで、中国を封じることを中心とした戦略的枠組みとして中国封じ込め政策は大きく前進した。 だが、ウクライナ戦争でインドはウクライナ側に付かず、ロシアに配慮した中立に近い姿勢を見せた。インドは武器とエネルギーをロシアに依存しており、西側がいくら要請してもロシア封じ込めには参加するわけにはいかないのである。インドのみならず、ロシアのエネルギーが西側より安く買えるのであれば、中ロ側に付きたいと考える国は多いはずだ。 そのインドをはじめ、イスラエル、トルコ、ブラジルなど一筋縄ではいかない国々の首脳の信頼を勝ち取ってきたのが、安倍元首相だったのだが、それらの国の気持ちは、ウクライナ戦争の長期化によって西側から離れつつある。 ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである。習主席の3期目が決まり南北分裂が進めば、冷戦期ほどのはっきりした対立にはならないものの、両者がそれぞれの陣営で共存し合う「ソフト冷戦」に突入する可能性が否定できない。 また、ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない。 日本としても、台湾防衛を第一に考えるなら、現在の状態は望ましいものではない。また、中国のこのような動きはまだ始まったばかりであり、巻き返しはじゅうぶん可能だ。 中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである』、「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経験も長く、「ポスト安倍」にうってつけである。ただ、ハッタリも必要になる外交交渉能力には疑問なしとしないが、大筋では筆者の主張に同意できる。
タグ:『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) 北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」 PRESIDENT ONLINE (その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) 中国情勢(軍事・外交) 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経 「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライ 「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。 「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢い 白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」 ダイヤモンド・オンライン 「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。 「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。 「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。 「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。 「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。 土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」 「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。 「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの 「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。 「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。 「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから 「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。 「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
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