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金融業界(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) [金融]

金融業界については、3月31日に取上げた。今日は、(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態)である。

先ずは、3月24日付け3/24プレジデント ウーマンが掲載した楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジストの窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67831
・『欧米で金融不安が広がっている。株式市場にどのような影響があるのか。楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之さんは「米国で銀行株が軒並み急落、日本の銀行株も急落していますが、私は海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」という――』、興味深そうだ。
・『急落する日本の銀行株は買いか  米国でシリコンバレー銀行(総資産全米16位)、シグネチャー銀行(同29位)が破綻してから、欧米で金融不安が広がっています。米国で銀行株が軒並み急落、地方銀行の一部で預金の取り付けが起こっています。欧州ではかねてより経営不安が噂されていたクレディ・スイスの株価が急落し、UBSが救済合併に動きました。 欧米の金融当局は、信用不安の拡大を抑えるためにやれることは何でもやる姿勢ですが、金融不安はまだ収まっていません。 欧米の不安は、日本の銀行にとって「対岸の火事」でしょうか。日本の銀行株も急落していますが、買い場と考えていいのでしょうか。私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています。その理由を解説します』、「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。
・『シリコンバレー銀行はなぜ破綻することになったか  シリコンバレー銀行(以下、SVBと表記)は、なぜ破綻に追い込まれたのでしょうか? クレディ・スイス(以下、CSと表記)は、なぜ救済合併が必要になるまで財務が悪化したのでしょうか、そこから解説します。 結論から申し上げると、SVBは米国の急激な金利上昇に備えができていなかったために破綻しました。CSは、投資銀行部門の暴走で財務が急激に悪化しました。どちらも特殊要因で信用不安に陥ったもので、日本の大手金融機関が現時点で同様の問題を抱えているとは考えていません。 日本の話をする前に、まずSVBの破綻原因を詳しく解説します。 【図表1】SVB破綻の原因 図表=筆者作成 SVBは、銀行ALM(資産・負債のリスク管理)の初歩ができていなかったために破綻しました。SVBは、テック系新興企業との取引で知られていました。テック系新興企業から預金を預かり、融資をする銀行でした。 ところが、テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化しました。 通常、金利が上昇しただけで銀行は破綻しません。そうならないように、金利上昇リスクを管理しているからです。具体的に言うと、資産のデュレーション(平均運用期間)と負債のデュレーション(平均調達期間)の乖離かいりが大きくなり過ぎないように管理しています。それが銀行ALMの初歩です。 もう少しわかりやすく言うと、1年定期預金で集めたお金で30年の固定利付住宅ローンを出すようなことはしない、ということです。金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました』、「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。
・『もう1つの破綻原因  SVB破綻のもう1つの原因は、負債サイド(預金)にあります。逃げ足の速い大口の法人預金中心に資金調達していたことも、破綻の原因です。信用が低下すると、すぐに預金の引き出しが集中しました。 銀行ALMにおいて、同じ流動性預金(普通預金や当座預金)でも、個人預金はデュレーションが長い(長い年月にわたって滞留する)ことがわかっています。出入りの激しい法人預金と違って、給与振り込みやクレジットカードの引き落としに指定された個人口座は、長期に滞留するので「コア預金」と呼ばれます。 預金保険制度の存在も、個人預金がコア預金となる要因です。銀行が破綻した場合、日本では1人1000万円まで、米国では1人25万ドル(約3300万円)まで、普通預金や当座預金の残高が保護されます(預金保険機構に加入している銀行)。個人預金は保証額を下回る金額が多いので、信用不安の噂が出てもすぐ引き出しに走ることはありません。ところが、SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました』、「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。
・『急激な利上げが直接の原因  このように、SVBは、きわめてリスクの高い資産・負債構造を持っていたために、破綻することになりました。過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB(米連邦準備制度理事会)が、破綻の直接の原因を作りました。0.5%や0.75%など過去に例のない大幅な利上げを繰り返し、1年で一気に4.5%も利上げしたことが、SVBを追い詰めました。 年1%の利上げを4年連続で続けたとしても、SVBは破綻に至らなかったでしょう。年1%ずつの金利上昇ならば、それに対応する資産の入れ替えを少しずつ進めることができたからです。パウエルFRB議長は、2021年当時、米国のインフレは一時的と誤った判断をしていたために、金利引き上げの判断が遅れました。その分、過去に例のない急激な利上げが必要になりました。それが、SVB破綻を生じた直接の原因です』、「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。
・『クレディ・スイスはなぜ救済合併が必要になったか  SVBが破綻すると、信用不安が欧州に伝播しました。スイスで2番目の資産規模を持つ大手銀行クレディ・スイス(CS)の株価が急落、放置すれば預金流出が止まらなくなる危機に瀕しました。CSは破綻すると世界の金融システムに重大な影響を与える「国際的に重要な金融機関」に指定されています。破綻すればリーマンショックを超えるダメージが世界の金融システムに及ぶ可能性があります。 CSはなぜ急激に財務が悪化したのでしょうか? 巨大銀行の転落は、さまざまな複合要因が重なった結果です。近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です。スイスの銀行が世界中の富裕層から秘密の預金を集めてビジネスをやってきた時代は終わりました。伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました』、「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。
・『法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引  投資銀行部門の暴走で大手金融機関が破綻というと、2008年のリーマンショックを思い出します。リーマンショックの経験から、「国際的に重要な金融機関」には、厳しい自己資本規制が課せられ自己資本を危険にさらす取引は制限されることになりました。そのおかげで、リーマンショック以後、巨大金融機関の危機は起こらなくなっていました。 ところが、CSはその規制をかいくぐる形で危険な取引を繰り返し、財務を毀損きそんしました。CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます。 危機拡大を防ぐためスイス金融当局は、すぐに動きました。CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表しました。通常これだけの大型買収を決める時、資産査定にかなりの時間をかけますが、急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります』、「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。
・『「なんでもあり」の救済劇  UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました。UBSがCS買収で損失を被った場合、最大90億フランまで政府が補塡ほてんするという内容です。さらに、もう1つ金融市場を驚愕きょうがくさせたのは、CSが資金調達のために発行していた劣後債の一種、AT1債160億スイスフラン(約2.3兆円)を無価値にすると発表したことです。株式に約4200億円の価値をつけておきながら、劣後債の価値をゼロにするというのは、きわめて異例の措置です。CSの預金者の不安を取り除き、預金流出を抑えるために、「なんでもあり」の救済劇が演じられました。 これで一件落着かと言うと、そうはいきません。CSの預金者を安心させるには効果があったと思いますが、代わりに世界中のAT1債保有者に強烈なダメージを与えました。世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります。CSをめぐる混乱は続きそうです』、「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。
・『「なんでもあり」の金融不安対策は、奏効するか  SVB・CSの危機を発端に、欧米の金融機関全般に危機が拡散しないよう、米政府は、なんでもありの対策を発動しています。 【1】SVB、シグネチャー銀行の預金を全額保護すると米政府が発表(預金保険機構による預金保護は1人当たり25万ドルまでだが、信用不安の連鎖を防ぐため全額保護としました。 【2】ファースト・リパブリック銀行にJPモルガンなど11行が資金支援(SVB破綻の連鎖で、カリフォルニア州のファースト・リパブリック銀行の株価が急落し、預金流出が深刻になりました。これに対し、JPモルガンなどが300億ドル(約4兆円)の資金支援を実施しました。米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません』、「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。
・『それでもFOMCは利上げを実施  ただ、FRBは金融危機への対応よりも、まだインフレ抑制を重視する姿勢です。22日のFOMC(公開市場委員会)で0.25%の利上げを実施しました。金利上昇がSVB破綻のきっかけになり、信用不安を引き起こしていることに対して、配慮がありませんでした。パウエル議長は22日の記者会見で、「銀行の不安は、放置すると重大なシステム不安につながる」と認識を示したものの、「銀行システムは健全で回復力がある」と、危機が深刻化するリスクが低いとの認識を示しました。私も、このままリーマンショックのような危機に発展する可能性は低いと、現時点では判断しています。 過去の金融危機は、不良債権の拡大で起こりました。日本の1990年代の金融危機は、不動産バブルの崩壊で不良債権が拡大したことで起こりました。米国の2008年の金融危機(リーマンショック)は、米国の住宅価格が急落して、住宅ローン債権(サブプライムローン)が不良債権化したことで起こりました。 今まだ、米国の銀行で、不良債権が急拡大しているということはありません。金利上昇で、保有する米国債などに含み損が生じていますが、不良債権が拡大しない限り、金融全般の危機に広がる可能性は低いと考えています。 ただし、不良債権問題が今後、深刻になるリスクの芽はあります。米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっていることです。貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります。そのリスクへの目配りは必要ですが、現時点でそのリスクが高いとは考えていません』、「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。
・『日本のメガ銀行株は買い  欧米の金融不安をきっかけに日本の銀行株も急落しましたが、私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJと表記)などメガ銀行株について、買い判断を継続しています。 欧米の金融不安が、日本の銀行にとって対岸の火事と考えているわけではありません。リーマンショックの時と同様、直接的なマイナス影響は大きくありませんが、間接的には大きなマイナス影響を受けます。ただし、そのマイナス影響を勘案してもなお三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断しています。 メガバンク買いの理由【1】リーマンショックの影響レビュー  リーマンショックの時、欧米の金融機関が多数破綻しましたが、日本の金融機関への影響は大きくありませんでした。欧米の金融機関が破綻する原因となった北米住宅ローン債権に投資していた銀行は、日本にもあって損失は発生しましたが、日本の金融システム全体への影響は限定的でした。 日本の金融機関は、1990年代に深刻な金融危機を経験し、やっとそこから抜け出した後でしたから、財務的なリスクを拡大することに慎重でした。米国の住宅ローン債権に投資してしまった銀行があったのは、米国の格付機関がトリプルAなどの誤った格付をつけていたためです。信用リスクを取ることに慎重だったので、致命的なダメージを受けた金融機関はほとんどありませんでした。 ただし、リーマンショックを契機に、世界中の中央銀行が大規模な量的緩和を打ち出し、世界的に金利低下が進んだことで、日本の銀行も間接的に大きなマイナス影響を受けました。それに2014年に始まった黒田日銀の異次元緩和が追い打ちをかけました。日本の長期金利はゼロ近辺に沈み、国内商業銀行の預貸金利ザヤを圧迫しました。国内商業銀行業務の比率が高い、国内金融機関の多くが収益にダメージを受けました。 三菱UFJは、海外ビジネスや、投資銀行業務への多角化を進めることで、純利益8000億円から1兆円の高収益を維持してきました。ただし、リーマンショック以降、株価は長期にわたり低迷が続いてきました。低金利が収益にダメージを与える懸念が続いていたからです』、「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。
・『メガバンク買いの理由【2】今起こっている欧米の金融危機の影響  今ある欧米の金融危機も、日本の銀行への直接的な影響は限定的と考えています。SVB破綻の原因となった米国の金利急騰は、日本の銀行にも影響しています。米金利急騰で、外債に含み損を抱える銀行が増えました。ただし、日本の大手銀行は今、全般的に不良債権比率が低く、保有する株式に含み益があるため、財務的な問題はほとんどありません。 日本には、SVBのように、ALMの初歩を踏み外した銀行も、CSのように投資銀行業務で過剰なリスクを負っている銀行も無いと判断していますので、今回の欧米の信用不安が日本の銀行に連鎖することはないと予想しています。 ただし、日本の銀行も、間接的に大きなマイナス影響を受ける可能性が出ています。今回の危機で、世界的に金利が低下しました。金利低下は、長期的に銀行の利ザヤを低下させる懸念があります。日本の銀行にとって影響が大きいのは、日本の長期金利が低下した影響です。 日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀の政策で、長らくダメージを受けてきました。昨年12月、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた時、やっと国内商業銀行業務の収益性が改善する期待が出たことを好感して、日本の銀行株は急騰しました。 ところが、3月に入り、欧米の金融危機が伝播すると、日本の長期金利は一時0.25%に戻ってしまいました。0.5%への長期金利引き上げに喜んだのも束の間、また元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落しました。 【図表3】日本の長期金利(10年国債利回り)と、東証・銀行株指数の推移:2016年1月-2023年3月(22日) 出所=QUICKより楽天証券経済研究所が作成』、「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。
・『長期投資していく価値が高い  先行きのインフレがどうなるか不透明ですが、私は日本にもしぶとくインフレが定着すると予想しています。欧米の金融危機が収束すれば、また日本の長期金利にも上昇圧力が働くと予想しています。そうなると、三菱UFJの株価も見直されて反発していくと予想しています。 仮に長期金利が上昇しないとしても、三菱UFJは、海外ビジネスの拡大や、ユニバーサルバンク経営(投資銀行業務などへの多角化)で安定的に収益を稼いでいく力があると考えています。欧米の金融不安が収まるまで、不安定な値動きが続きそうですが、今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断しています。(窪田 真之氏の略歴はリンク先参照)』、「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したオペレーショナル・デザイナー(沼津信用金庫 非常勤参与)の佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320429
・『シリコンバレー銀行の破綻とクレディ・スイスの経営不安  3月10日の米国のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻と、3月15日のスイスのクレディ・スイスグループの経営不安は、それぞれ別要因で起きたものの、これらを契機に、銀行の財務健全性に対する不安が広がっている模様だ。2008年のリーマンショックを契機とした世界金融危機のような事象を防止・抑止しようと、各国の金融当局が緊密に連携されているようだ。 SVBの破綻の引き金となった要因の一つに、米国内のインフレ抑制を目的に繰り返された利上げが、債券価格の下落をもたらしたことが挙げられる。利上げによってSVBが投資・運用していた不動産担保証券(MBS)の価値が毀損し、それに伴う信用不安が預金流出に拍車をかけた事実が報じられている。 米国のみならず、欧州中央銀行も、インフレ率を2%まで引き下げることを目標に、3月まで6回連続で利上げを実施している。従って欧州でも、低金利時代に発行された債券の価格が、漏れなく下落していることだろう。 “金余り”と呼ばれる低預貸率を背景に膨らんだ余裕資金の運用を巡り、邦銀は、かねて投資先に悩んできた。2016年2月のマイナス金利政策導入から既に7年が経過し、利ざやを求めて外国債券(外債)などに投資した残高が、既に相当額に積み上がってもいる。 短期の預金流出によって経営破綻したSVBの預金者に占める法人比率は高く、個人預金比率の高い邦銀の調達構造とは異なる。わが国では個人の預金保険制度への認知度をはじめとする金融リテラシーも総じて高く、短期的には、信用不安を背景とした取り付け騒ぎは発生しないだろう。 その一方で、金利上昇によって投資した債券の価格が下落し、いわゆる含み損となって邦銀の体力を着実に奪っている。その状況について、昨年11月から今年1月にかけて公表された2022年9月末時点の地方銀行62行・第二地方銀行37行の半期ディスクロージャー誌(中間ディスクロージャー誌)より、特徴的な動向を紹介したい』、興味深そうだ。
・『地方銀行・第二地方銀行99行の1行当たりの「貯金」は約156億円(各行の半期ディスクロージャー誌には、保有する有価証券の時価情報が記載されている。掲載情報のうち、利息・配当やキャピタルゲイン目的で投資する有価証券を抽出し、市場における時価を貸借対照表上に計上する「その他有価証券」に着目した。 その他有価証券は、主に「株式」「債券」「その他」の3種で区分けされる。おのおのについて、時価が取得原価(=購入・投資時の原価)を上回る含み益のある有価証券の金額・差益と、取得原価を下回る含み損のある有価証券の金額・差損が表示されている。 これらについて、地方銀行・第二地方銀行99行の金額を合算した[図表1]。ひと言で言えば株式の含み益をそれ以外の含み損が減らし、全体としての含み益の合計は1兆5525億円となった。99行で単純に割った“貯金”は、1行当り156億8223万円となる計算だ』、「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。
・『日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態  含み損が含み益を上回ったのは3行のみ 次に、その他有価証券の内訳別の動向を概観したい。最初に「株式」に着目する。 99行の株式の含み益と含み損を差し引きし、金額順で並べ替えた上で、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表2]。 図表2:保有株式含み益順位[単位:百万円] 図表1で示した通り、全体として約3兆8400億円の含み益を保有するだけあって、99行中、ゼロの3行、マイナスの3行を除く93行の評価がプラスだ。上位10行のうち、第二地方銀行は9位の北洋銀行だけ、逆に下位10行のうち地方銀行は90位の東北銀行だけとなっていることが特徴的だ。北洋銀行も、1998年に旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受けているため、歴史や事業規模との一定の相関性が認められよう』、「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。
・『全体の9割以上が「債券」で含み損  次に、国債・地方債・社債等を区分する「債券」に着目した。図表2と同様の手順で債券についても含み益と含み損を差し引きし、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表3]。 図表3:保有債券含み益順位[単位:百万円] 株式とは逆に、含み益が認められたのはわずか7行にとどまり、全体の9割以上の91行に含み損が認められた。含み益が認められた7行の合計額約260億円のうち、1位の岩手銀行の約184億円だけで、7割を占める。 数値は昨年9月末現在の市場環境での時価だが、その後の昨年12月20日には、日本銀行が大規模な金融緩和政策の修正方針を決定し、±0.25%から±0.50%への事実上の利上げを行っている。 それまでマイナス金利で発行されていた2年国債も12月23日にはプラスに転じ、1月18日までプラスで発行され続けている。3月末まで現在の金利水準で推移した場合には、邦銀が低金利時代に積み上げた債券ポートフォリオの含み損が、さらに膨らむ可能性があろう』、長期金利上昇には脆弱なようだ。
・『「外債・投信」の含み益は11行  内訳の最後は、外債・投信などを含む「その他」の区分だ。株式・債券と同様の通算・並べ替えを行ったが、10位の長崎銀行に続く11位の福邦銀行までがプラス、ゼロの但馬銀行と北九州銀行の2行を除く86行がマイナスとなった。90位から99位までの10行の単純合計だけで、含み損が6552億円に達する[図表4]。 図表4:保有その他含み益順位[単位:百万円]  報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、SVBグループの株式と債券を約437億円保有している模様だ。わが国以外でも、ノルウェーの政府系ファンドがSVBグループに投資を行っていた事実とその後の動向が断続的に報じられている。 邦銀が直接SVBに投資を行っていなくとも、SVBの破綻によって損失を被ったこのような機関投資家などに投資していれば、外債などの価格が下落する可能性がある。 ライバル行であったUBSによる買収によって信用不安の収束を図っているクレディ・スイスグループも、3月19日にスイス金融当局がAdditional Tier1債券(偶発転換社債/AT1債)を無価値にして自己資本に組み入れると発表した。) AT1債は株式と劣後債の間に位置付けられ、破綻時の弁済順位が低い分だけリスク・プレミアムが乗る。それゆえに、直接の社債投資のほか、グローバル運用などをうたう投資信託に組み入れられて投資していた可能性もあろう。 もちろん、特定の発行体絡みの信用リスクの低下のみならず、金利上昇による価格低下も見込まれる。昨秋以降の相次ぐ米欧の利上げは、直接的な価格低下をもたらすだろう』、「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。
・『地方銀行・第二地方銀行はグループ化や増資を模索  含み損となった債券は、国内債・外債を問わず満期まで保有すれば全額で償還されるものの、取得価格に対して一定の水準まで価格が下落すれば、帳簿価格を引き下げて損失の計上が求められる。いわゆる減損処理だ。 米欧日が金融緩和からのシフトチェンジ、すなわち利上げをなお模索する中では、国内債・外債共に逆風と言わざるを得ず、減損に至る前に諦めて損失処理に踏み切ろうとする動きが見込まれよう。 その際の経営判断は、自己資本などの経営体力のほか、収益力による補填と対比することとなろう。そこで、その他有価証券の損益通算が赤字となっている地方銀行・第二地方銀行58行について、中間純利益を機械的に2倍して「1年分」とし、「稼ぐ力」の何年分の含み損に該当するのかを試算した[図表5]。 図表5:「その他有価証券」合計含み損解消所要年数(試算([単位:百万円、年]) 不良債権処理などの特殊要因によって中間純利益が赤字となったきらやか銀行と福邦銀行を除く56行のうち、18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ。従って、減損処理に当たっても各行経営者は慎重な匙加減を図っていることだろう。 今後、わが国発の信用不安を引き起こさないため、地方銀行・第二地方銀行はさらなるグループ化のほか、増資などの資本政策を模索することとなるだろう。 (オペレーショナル・デザイナー〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)』、「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
タグ:(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) 金融業界 プレジデント ウーマン 窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」 「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。 「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、 「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。 「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。 「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。 「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。 「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。 「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。 「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。 「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。 「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。 「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。 「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。 「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」 「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。 「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。 長期金利上昇には脆弱なようだ。 「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。 「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
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「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その5)(京都銀 海外ファンドから「無視できない」要求 地銀にとって決して他人事ではない株主の動き、日本におけるアクティビスト活動と2022年6月株主総会を概観する――株主提案数は過去最高も 盛り上がりに欠ける結果に、2022年アクティビスト=“物言う株主”による重要提案行為の提出件数 ) [金融]

「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)については、2021年7月1日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(京都銀 海外ファンドから「無視できない」要求 地銀にとって決して他人事ではない株主の動き、日本におけるアクティビスト活動と2022年6月株主総会を概観する――株主提案数は過去最高も 盛り上がりに欠ける結果に、2022年アクティビスト=“物言う株主”による重要提案行為の提出件数 )である。

先ずは、2022年5月9日付け東洋経済オンライン「京都銀、海外ファンドから「無視できない」要求 地銀にとって決して他人事ではない株主の動き」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/586653
・『株主は特別配当の実施を京都銀行に要求。定時株主総会での議案記載を拒否した場合、海外投資家は「臨時株主総会開催の手続きを取る」としている。 日本の上場企業に対する物言う株主の注文は日常茶飯事だが、その矛先が地方銀行にも向き始めた。 注文を付けたのはイギリスの運用会社であるシルチェスターだ。4月25日、京都銀行に対して特別配当の実施を求める催告書を送ったと公表した。6月に開催予定の定時株主総会の議案として記載することを求めている。 京都銀行がこれを拒否した場合、シルチェスターは「臨時株主総会開催の手続きを取る」とリリースに明記しており、 京都銀行株を10年以上保有するという海外投資家の注文をないがしろにはできない状況だ。 東洋経済の取材に対して京都銀行は「(シルチェスターからの)書簡が届いていることは認識している。対応についての回答は差し控える」と回答した』、「京都銀行」は要求通り、株主提案を「定時株主総会の議案として記載」。
・『1兆円を超える有価証券の「含み益」  シルチェスターは4月に入り、岩手銀行、滋賀銀行、中国銀行にも特別配当実施を求めたことを公表している。だが、臨時株主総会の開催まで言及したのは京都銀行だけだ。 この背景には、京都銀行ならではの事情があるといえる。収益における有価証券運用への依存度が高いのだ。 京都にはエレクトロニクス関係の大手上場企業が数多く存在する。京都銀行はそうした会社がまだ小さかったころから株式を保有し、取引を続けてきた。 保有する上場銘柄は日本電産や任天堂、村田製作所などそうそうたる顔ぶれだ(図参照)。そうした企業の株価上昇に伴い、貸借対照表に計上されている金額は大きく膨らんできた。 2021年3月期時点で京都銀行の有価証券の評価損益(含み損益の合計)は1兆0232億円のプラスで、そのうち1兆0016億円が株式によるものだ。これは京都銀行の時価総額の倍以上の水準で、地銀の中でも突出して大きい。そして、株から得られる配当が収益に大きく貢献している。 では、肝心の銀行業務の実力はどうか。有価証券から得られる収益を除外し、融資と手数料でどれだけ利益を上げられているかをみる指標で、本業利益(貸出残高×預貸金利回り差+役務取引等利益−営業経費)というものがある。これは金融庁が定義して重視する指標だ。 東洋経済が試算した本業利益(詳しくは、100社のうち30社が赤字「地方銀行 本業利益ランキング」)をみると、2021年3月期の京都銀行は約13億円の赤字。100ある地銀のうちワースト15位だ。) シルチェスターも京都銀行の本業部分の収益力の弱さを問題視する。実際、4月25日付のリリースで、「2021年3月期の純利益は169億円。保有株式に関して173億円の配当金を受け取った。これは、銀行業務の損失が約4億円だったことを意味する」と指摘している。 今回の要求を行う前、シルチェスターは2022年2月に配当政策の修正を要求している。このときは、京都銀行が保有株式から得る年間配当の100%に相当する配当などを求めていた。配当増加を求めたのは、「コアの融資・銀行業務から利益を生むためのインセンティブを確実に与えられる」(シルチェスター)からだとしている。 要は、潤沢な配当収入に依存せず、もっと銀行業務からの収益力強化に努めよ、というメッセージだろう。株主の期待に応えて収益改善を図るには、手数料収益を向上させたり、店舗などのインフラを削減するほかない』、「株式含み益」が恵まれた環境を生かして「1兆0016億円」とは大したものだが、肝心の「本業利益」は「約13億円の赤字」とは寂しい限りだ。
・『「政策保有株」の縮減は銀行の共通テーマ  さらに大きな問題として、政策保有株式がある。今回は京都銀行に対して売却を迫ることこそしなかったものの、シルチェスターは「顧客との関係維持に必要なものではない」と見直しの必要性もにおわせている。 政策保有株などから生み出される莫大な含み益について、京都銀行は自社のサイトで「強固な財務基盤」とアピールしている。だが、投資家からは「資本効率が悪い」と見られてしまう。 コーポレートガバナンスの改善が謳われる中、政策保有株式の縮減は銀行界の一大テーマでもあり、今後、物言う株主が売却を迫る展開もありうると見ておくべきだろう。 シルチェスターは、今回増配を要求した4行のほかにも、横浜銀行を傘下にもつコンコルディア・フィナンシャルグループや沖縄銀行を傘下に持つおきなわフィナンシャルグループの株を保有している。これらの銀行に対する動きには注目だ。 当然、ほかの地銀もひとごとではいられない。あるファンドの関係者は「ここ数年、地銀周りをしているファンドが増えてきた」と明かす。有価証券運用頼みで銀行業務での収益がなかなか改善しない地銀や、自己資本比率が高い地銀などを狙って、物言う株主が動き出す可能性もある』、「ファンド」の要求に従うことを通じて、銀行経営が効率化してほしいものだ。

次に、8月29日付けMARRonlineが掲載したみずほ証券エクイティ調査部チーフ株式ストラテジストの菊地 正俊氏による「日本におけるアクティビスト活動と2022年6月株主総会を概観する――株主提案数は過去最高も、盛り上がりに欠ける結果に」を紹介しよう。※本記事は、M&A専門誌マール 2022年10月号 通巻336号(2022/9/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
https://www.marr.jp/menu/ma_strategy/ma_planning/entry/38875?gclid=Cj0KCQjw2cWgBhDYARIsALggUhoGGw1TeuNj6Z0CoDdcDw6aAtpPNQZ4J0tN60sM97CmscKRlh-44lsaApq7EALw_wcB
・『世界のアクティビスト活動の約6割は米国で  Lazardの集計によると、2022年上期に世界のアクティビスト・キャンペーン数は前年同期比34%増の126件と2018年上期以来最高になったが、アクティビスト活動の過半数は北米で行われている。日本はアクティビストの投資対象になった企業数が米国、オーストラリアに次いで世界3位であるが、小さなキャンペーンが多いため、日本を含むアジア太平洋地域が世界のアクティビスト・キャンペーン数に占めるシェアは17%にとどまる(図表1)。 バリューアクトはオリンパス(7733)とJSR(4185)に社外取締役を送り込むことに成功した。両社とも株式市場から評価される事業ポートフォリオの見直しを行ったが、エリオットやサードポイントなどの米国大手アクティビストは最近、日本市場で音沙汰がない。(1)日本企業は依然として株式持合が多い、(2)国内機関投資家の株主提案への賛成率が低い、(3)日本語でキャンペーンを実施しなければならないのでコスト高になる――ことなどが欧米大手アクティビストの参入が増えない理由だろう。 一方、任天堂(7974)の創業家の運用会社Yamauchi-No.10 Family Officeが、インフロニアHD(5076)による東洋建設(1890)へのTOBに介入したため、新興のアクティビストとみなす向きもあった。日本株に投資しているアクティビストはAUM(運用資産規模)が小さいため、ターゲットになるのはほとんどが中小型企業である。日本ではPBRが1倍を割っている企業が依然約半数あり、ROEも国際比較で低いので、持合解消が進み、アクティビストと国内機関投資家との対話が進めば、アクティビストの活動余地は大きいだろう。 図表1 アクティビストのキャンペーン件数の地域別比率の推移  注: データは、キャンペーン発表時に時価総額5億ドル以上の企業に対してアクティビストがグローバルに行ったキャンペーンを示す。発表時の時価総額が5億ドル未満の一部のキャンペーンには、COVID-19パンデミックによる市場低迷期に行われたものを含む。キャンペーンのプロセスの一環としてスピンオフした企業は別にカウント。出資比率および投下資本は、デリバティブを通じたポジションを反映していない場合がある 出所: Lazard “H1 2022 REVIEW OF SHAREHOLDER ACTIVISM”よりみずほ証券エクイティ調査部作成』、「日本株に投資しているアクティビストはAUM(運用資産規模)が小さいため、ターゲットになるのはほとんどが中小型企業である。日本ではPBRが1倍を割っている企業が依然約半数あり、ROEも国際比較で低いので、持合解消が進み、アクティビストと国内機関投資家との対話が進めば、アクティビストの活動余地は大きいだろう」、その通りだ。 
・『世界の主要アクティビスト  日本に投資する主なアクティビストを図表2に示した。世界最大のアクティビストは、米国の投資家であるポール・シンガー氏によって設立されたエリオットである。エリオットはHPに1977年創業、2022年6月末時点でAUM557億ドル(1ドル=130円換算で約7.2兆円)、499人の社員などと掲載している。エリオットは巨大なので、運用戦略も株式、PE、プライベート・クレジット、ディストレス債券、ヘッジ・アービトラージ、イベント・ドリブン、不動産、コモディティ、ボラティリティ取引など様々な取引を行う。日本株投資も担当者が変わると、戦略が変わる印象だ。 以前は香港から日本株に投資していたが、担当者がいなくなり、その後ロンドン経由になったようだ。2020年にソフトバンクグループ(9984)に投資して以来、マーケットから音沙汰がなくなった。欧米の大手アクティビストは運用資産が大きいので、ターゲットとする企業も大きくなる一方、日本のアクティビストはAUMが小さいので、中小型株をターゲットにしやすい。 エリオットは2021年に薬品セクターの中で、同業他社比で株価がアンダーパフォームしていた英GSKに対して経営陣刷新や事業再編を求めた。エリオットと並んで、東芝に対して社外取締役を送り込んだファラロンは1986年創業で、運用資産は422億ドル(約5.5兆円)と報じられている。投資先に対する姿勢はエリオットの方がファラロンよりアグレッシブのようである。エリオットのエンゲージメントがソフトバンクグループの大規模な自社株買いにつながったとみられる一方、ファラロンが過去5年に東芝以外で大量保有報告書を提出したのはアイリックコーポレーションだけである。ファラロンはロー・プロファイルを維持しているようであり、投資先があまり報じられない。 サードポイントも2019年にソニーグループ(6758)に2度目の株主提案をした後、日本株で音沙汰がない。サードポイントは2021年に株価がアンダーパフォームしていたインテルのCEO交代で大きな役割を果たし、英国シェルに会社分割を求めた。サードポイントはグロース株への投資で失敗し、今年上期の運用パフォーマンスが-20%になったと報じられている。欧州最大級のアクティビストである英TCIに至っては、2007年に電源開発(9513)に対する投資が外為法に抵触し、撤退して以来、日本株では存在感がなくなり、欧州で環境アクティビスト活動を中心に行っている。 図表2 日本株に投資する主なアクティビスト(リンク先参照) アクティビストの評判の日米格差(以下は有料の会員登録必要)』、「海外の有名アクティビスト」も現在では、「日本株で音沙汰がない」、「撤退」など様々なようだ。

第三に、2月9日付けダイヤモンド・オンラインが転載したM&A Online編集部「2022年アクティビスト=“物言う株主”による重要提案行為の提出件数 」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317040
・『2022年に提出された大量保有報告書の件数は1万1694件と昨年の1万2470件より6.2%減少となった。また保有目的欄に「重要提案行為等を行う」と明記された報告書件数は100件と昨年の98件とほぼ同数だった。(M&A Online編集部) かつてのアクティビスト(物言う株主)は標的企業に対し、水面下で資本効率の改善や株主還元を働きかけていたが、最近は表立って行動している。コーポレートガバナンス改革の流れの中で、議決権行使の個別開示制度が導入されたことや持ち合い株の解消が進んだことが背景にある。 2022年はアクティビストの提案に賛成票を投じる機関投資家の動きが目立った。例えば、英アクティビストファンドのシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは、岩手銀行、滋賀銀行、京都銀行、中国銀行の地銀4行に対し、特別配当を求める株主提案を行う書簡を送ると表明した。この株主提案は賛否が分かれたが、農林中金や三井住友DSアセットマネジメント、ゴールドマンサックスなどが賛成した。)  一方で気になる動きもある。水面下で協調しながら標的企業の株式を一気に買い進めるウルフパック戦術という投資手法だ。協調関係の有無を立証するのは難しく、関係者も頭を悩ませている。 3月に任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィスが東洋建設の株式を大量取得した際には、当初素性が分からず株式市場が一時騒然となった。4月には仕手筋とも外国資本とも言われるリ・ジェネレーションがナガホリに対し市場内で株式を買い集め、買収防衛策の導入を決議する事態となった。2023年も法律の抜け穴を突いた仕手筋による中小株を狙った日本版ウルフパックが増えると予想される。 司法判断に至ったのは、アダージキャピタルに対する三ッ星の買収防衛策だ。アダージとの争いは最高裁までもつれ込み、ポイズンピル(新株予約権の無償割当)の差し止め決定が最高裁で確定した。経営陣による過度な防衛策は認められなかった。 例年同様に旧村上ファンド系の動向にも注目が集まった。旧村上系の提案を受け入れる形で、大豊建設とセントラル硝子が400億〜500億円規模の自社株買いを実施、旧村上系が20%近い株式を保有するジャフコグループも年末から2023年1月末にかけて420億円の自社株買いを行った。建設株を売り抜けた旧村上系が次に狙うのは石油元売り業界。コスモエネルギーホールディングスの筆頭株主に躍り出た後も追加取得を進め、11月22日に提出した変更報告書によると19.81%まで買い増しており、要注目だ』、「かつてのアクティビスト(物言う株主)は標的企業に対し、水面下で資本効率の改善や株主還元を働きかけていたが、最近は表立って行動している。コーポレートガバナンス改革の流れの中で、議決権行使の個別開示制度が導入されたことや持ち合い株の解消が進んだことが背景にある」、動きが透明化したことは望ましい。ただ、「水面下で協調しながら標的企業の株式を一気に買い進めるウルフパック戦術という投資手法だ。協調関係の有無を立証するのは難しく、関係者も頭を悩ませている。 3月に任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィスが東洋建設の株式を大量取得した際には、当初素性が分からず株式市場が一時騒然となった。4月には仕手筋とも外国資本とも言われるリ・ジェネレーションがナガホリに対し市場内で株式を買い集め、買収防衛策の導入を決議する事態となった。2023年も法律の抜け穴を突いた仕手筋による中小株を狙った日本版ウルフパックが増えると予想される」、資本市場の公正さを歪めることのないよう市場関係者やマスコミも監視してゆくべきだろう。
タグ:「物言う株主」(アクティビスト・ファンド) (その5)(京都銀 海外ファンドから「無視できない」要求 地銀にとって決して他人事ではない株主の動き、日本におけるアクティビスト活動と2022年6月株主総会を概観する――株主提案数は過去最高も 盛り上がりに欠ける結果に、2022年アクティビスト=“物言う株主”による重要提案行為の提出件数 ) 東洋経済オンライン「京都銀、海外ファンドから「無視できない」要求 地銀にとって決して他人事ではない株主の動き」 「京都銀行」は要求通り、株主提案を「定時株主総会の議案として記載」。 「株式含み益」が恵まれた環境を生かして「1兆0016億円」とは大したものだが、肝心の「本業利益」は「約13億円の赤字」とは寂しい限りだ。 「ファンド」の要求に従うことを通じて、銀行経営が効率化してほしいものだ。 MARRonline 菊地 正俊氏による「日本におけるアクティビスト活動と2022年6月株主総会を概観する――株主提案数は過去最高も、盛り上がりに欠ける結果に」 「日本株に投資しているアクティビストはAUM(運用資産規模)が小さいため、ターゲットになるのはほとんどが中小型企業である。日本ではPBRが1倍を割っている企業が依然約半数あり、ROEも国際比較で低いので、持合解消が進み、アクティビストと国内機関投資家との対話が進めば、アクティビストの活動余地は大きいだろう」、その通りだ。 「海外の有名アクティビスト」も現在では、「日本株で音沙汰がない」、「撤退」など様々なようだ。 ダイヤモンド・オンライン M&A Online編集部「2022年アクティビスト=“物言う株主”による重要提案行為の提出件数 」 「かつてのアクティビスト(物言う株主)は標的企業に対し、水面下で資本効率の改善や株主還元を働きかけていたが、最近は表立って行動している。コーポレートガバナンス改革の流れの中で、議決権行使の個別開示制度が導入されたことや持ち合い株の解消が進んだことが背景にある」、動きが透明化したことは望ましい。 ただ、「水面下で協調しながら標的企業の株式を一気に買い進めるウルフパック戦術という投資手法だ。協調関係の有無を立証するのは難しく、関係者も頭を悩ませている。 3月に任天堂創業家の資産運用会社ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィスが東洋建設の株式を大量取得した際には、当初素性が分からず株式市場が一時騒然となった。4月には仕手筋とも外国資本とも言われるリ・ジェネレーションがナガホリに対し市場内で株式を買い集め、買収防衛策の導入を決議する事態となった。2023年も法律の抜け穴を突いた仕手筋による中小株を狙 った日本版ウルフパックが増えると予想される」、資本市場の公正さを歪めることのないよう市場関係者やマスコミも監視してゆくべきだろう。
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金融業界(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、上司が10億円融資を白紙に…銀行員はつらいよ 現役メガバンク行員の赤裸々日記、半年で3例 地銀の「県内再編ドミノ」は終わらない 地銀最大手の横浜銀が神奈川銀を子会社化へ) [金融]

金融業界については、昨年5月25日に取上げた。今日は、(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、上司が10億円融資を白紙に…銀行員はつらいよ 現役メガバンク行員の赤裸々日記、半年で3例 地銀の「県内再編ドミノ」は終わらない 地銀最大手の横浜銀が神奈川銀を子会社化へ)である。

先ずは、昨年6月6日付け東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594421
・『本業がじり貧に陥り、年々体力を低下させる「構造不況」が定着している銀行業界。一部の地域銀行では経営統合に踏み切ったものの、多くの地銀は依然として業務提携という名の“不可侵条約”を周囲の銀行と結び、自分たちの営業エリアを守ることに終始している。 6月6日発売の『週刊東洋経済』6月11日号では「瀬戸際の銀行」を特集。金融のデジタル化によって、銀行に求められる役割や存在感が急速に低下する中で、今後のあるべき姿とは何なのか。模索を続ける銀行業界の実情に迫った』、「業務提携」が事実上「“不可侵条約”」として機能しているようだ。
・『フィデアHDに君臨する「最高権力者」  「真摯に協議を進めたものの、互いの戦略を理解し、共有することができなかった」 2022年2月、東北銀行の村上尚登頭取は岩手県盛岡市で記者会見し、フィデアホールディングスとの経営統合の基本合意を解消すると硬い表情で発表した。 その半年余り前、村上氏は「本業利益を拡大させていくには、提携から一歩踏み込んで(フィデアと)合流する必要がある」とまで言い切っていた。にもかかわらず、いったいなぜ“婚約破談”に至ったのか。 その背景を探る中で見えてくるのは、“みずほ”の影だ。 そもそも、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアと東北銀は、2018年に包括業務提携を結んで、ATMの利用手数料を相互に無料化するなど、連携を深めてきた。 その一方で、東北地方では2021年5月、青森銀行とみちのく銀行が経営統合で基本合意したと発表し、地方銀行再編の大きなうねりが生まれていた。) その動きに触発されたかのように、2カ月後の21年7月に東北銀は拙速ながらも、フィデアとの経営統合交渉に踏み切ったわけだ。 東北銀の幹部によると、「銀行業に対する価値観がフィデアとはまったく違うので、(統合交渉は)当初から破談への不安が強かった」という。  実際にその予感は的中した。顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかったのだ。それでも、東北銀の村上氏はフィデア側に「何とか歩み寄ろうと試行錯誤していた」(前出の幹部)という』、「顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかった」、これでは乗り越えるのは、よほどの幸運に恵まれる必要があり、やはり乗り越えられかったようだ。
・『”上から目線”の取締役会議長  「理解できない」。2022年に入ると、村上氏はフィデアについて周囲にそう漏らすようになる。 その言葉はフィデアという会社に対してだけでなく、かつてみずほ銀行頭取を務め、現在はフィデアの社外取締役を務める西堀利(さとる)氏に対してのものでもあった。 フィデアの関係者によると、西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」と話す。 とはいえ村上氏としては、口うるさい一人の社外取の発言に、いちいち神経質になっていたわけではないだろう。 フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ。 その最高権力者の考えや方針を理解できなければ、経営統合など当然ありえないわけだ。 その西堀氏は、6月の株主総会を経て社外取から非業務執行の社内取締役に移る見通しだ。まさか指名委員会の委員長として、自らの人事案の決議に参加してはいないだろうが、ガバナンス上はたして問題はないのか。 企業統治に詳しい川北英隆・京都大学名誉教授は、西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている』、「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ」、「西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」、これでは、「こういう人間がいる銀行とは組めない」となったのだろう。さらに「西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている」、「フィデア」側にも問題があるようだ。
・『トラウマの経営統合  みずほ銀出身者によって再編が進まないという事例は、ほかにもある。静岡銀行と名古屋銀行の経営統合を前提としない包括業務提携が、まさにそうだ。 名古屋銀を提携に駆り立てたのは、2021年12月に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合だ。両行が組めば、貸出残高で愛知県トップの座を「愛知+中京」連合に譲り渡すことになる。 両行の最終合意発表が翌月に迫っていた2022年4月27日、名古屋銀は地銀上位行である静岡銀との包括業務提携を発表。製造業が多い静岡と愛知において両行の企業支援の知見・ノウハウを共有し、環境規制など産業構造の変化に対応していく狙いだと説明した。 名古屋銀の藤原一朗頭取は、記者会見で「愛知銀と中京銀の経営統合を意識したのか」と問われると、「ありません」と一蹴し、それ以上言葉を続けなかった。 ただ、経営統合はしないという方針について質問されると、途端に「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と生々しい記憶を吐露したのだ。 藤原氏の「前職」は日本興業銀行で、「大変だった経営統合」とは、3つの母体銀行による内部抗争とシステム障害を繰り返してきた、みずほ銀のことである。 経営統合や合併が、経営陣や現場の行員にどれだけの苦しみをもたらすのか。藤原氏の20年越しの思いからは、それが垣間見えるようだった』、「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と記者会見で発言したのは、いささか軽率だが、よほど身に染みているのだろう。

次に、2月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した現役行員の目黒冬弥氏による「上司が10億円融資を白紙に…銀行員はつらいよ、現役メガバンク行員の赤裸々日記」を紹介しよう。
・『地方転勤は前日に通達。ようやく取り付けた大口融資も上司の好み一つで白紙に。金融庁も厳しく批判する銀行の企業風土はこうして形成された。業界の伝統や上司の機嫌に振り回され続けた苦労の日々を、現役行員が赤裸々に語る。本稿は、目黒冬弥『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『子どもが生まれるまで1カ月。しかし……『人事異動は突然に』  銀行の人事異動はほぼ毎月のようにある。大きな異動なら、4月、7月、10月。とくに7月は昇格も影響し、人が大きく動く。200~300人が民族大移動する。小さな異動でも月50~60人。銀行員の宿命とはいえ、引っ越しもたいへんだし、家族がいれば、子どもの転校や奥さんのパートの退職もある。同僚の子どもは小学校を3回転校した。家具は傷むし、異動先で使えない家電の買い替えなど負担は大きい。 午前9時、支店長からの内線電話だった。今すぐに課長と一緒に支店長室に来いと言う。 転勤だ。すぐにピンとくる。背広の上着を羽織り、村石課長とともに支店長室に向かう。 「私、もしかして転勤ですか?」 廊下を歩きながら、おそるおそる課長に尋ねる。 「この時間に呼ばれるなら、そうやろな」 支店長室に入る。 「目黒、おめでとう。異動だ。九州の宮崎中央支店だ。今と同じ営業だ。前任者は課長代理で、産業調査部に行くらしい。おまえはその後任だ。相当、期待されるぞ。頑張ってこい」 銀行内で異動は機密情報だ。もし異動の時期や行き先があらかじめわかっていれば、不祥事の隠蔽などがなされる可能性がある。だから人事異動は秘密裡に計画・遂行される。本人への通達も突然だ。 私にとっても九州への異動は唐突な知らせだった。銀行員になったからには覚悟していることではあるが、このときの私にはひとつだけ気がかりがあった。妻がちょうど臨月を迎えていたのだ。 「あと1カ月で子どもが生まれるんですが……」 「そんなことは知らん。おまえが産むわけじゃなかろう。明日の朝から行け」 異動先は都市圏内ではない。しかも一度として訪れたこともない場所だ。身重の妻になんと伝えればいいのか。そんなことを考えて呆然としていた。 「ありがとうございました。お世話になりました」 たとえ思いどおりの異動先でなくても、そう言うのが礼儀だ。 支店長室から出ると、フロアにいる全員の注目が集まる。 「異動やろ? どこ行くん?」 「宮崎中央支店です」 「へー、おめでとう。よかったな」 これも、そう会話するのがお決まりである。人事異動の話は瞬く間に行内に広まる。こういう話に限って、伝達スピードはピカイチな組織だ。) 3時をすぎると、まず行く先の宮崎中央支店の支店長に電話する。 「本日の異動発令でこれからお世話になる目黒です。よろしくお願いします」 「ああ、目黒君だね。期待してるよ」 支店長の後、同じ電話を副支店長に、さらに課長に、総務担当の女性行員の順番に……一度切ってはまたかけるを繰り返す。順番にまわしてもらえばいいと思うが、無駄に思えるこの作業も銀行の恒例行事だ。 次の支店にいつから赴任するのかは副支店長同士が話し合って決める。しかし、今回はもう明日と言い渡されてしまった。 日常業務の引き継ぎもそこそこにまずは飛行機を予約する。 身重の妻に一緒に来てくれなどと言うのは無理だ。私は単身で宮崎に行くことに決めた』、「前任者は課長代理で、産業調査部に行くらしい」、かなり出来のいい人間の後釜とは大変だ。
・『宮崎への単身赴任から1年後、『10億円融資』が支店長の一声で…  いつもの独身寮での夕食時だった。 「桜田工業の融資案件、10億円掴めそうなんです」 諏訪君がそう切り出した。 「10億? 本当かよ?」 寮内最年長の課長代理・西山さんが食べているごはん粒を吐き出しながら驚く。 諏訪君によると、桜田工業に足繁く通い、社長の信頼を得ることができ、メインバンクで決まっていた融資案件のうちの半分10億円の貸付をF銀行に分けてもらえることになったというのだ。いつもの暗い夕食の場が一気に活気づいた。 今月、宮崎中央支店では融資残高の目標にあと3億円足りていなかった。 営業マンにとって目標達成はミッションである。各メンバーが自身に課された目標を達成することでチーム(支店)の目標が達成される。支店の業績の良し悪しで賞与の査定はまったく変わるし、自分自身の評価も大きく左右される。宮崎中央支店というチームの中で誰かがコケれば、その穴を誰かが埋めなければならない。自分がコケるわけにはいかない。営業マンはどうやったら目標を達成できるのかばかりを考えている。 「目黒、おまえ、融資残高増強の推進責任者だろ。支店全体の融資残高の目標、あとどのくらいだ?」西山さんがそう問う。 「おおよそ3億円足りないくらいかと」 「そうか、諏訪の案件で一発逆転だな!」西山さんの鼻息が荒くなる。 諏訪君がモジモジしながら口を挟む。 「これから稟議を書くんです。僕、こんな大きな案件の稟議、書いたことなくて自信ないんです」 「大丈夫だ。心配するな。みんなで手分けしよう。いいよな、村上、目黒」 私より2歳上の村上さんと一緒にうなずく。 「よし、2日で仕上げるぞ。村上は業績推移表を作ってくれ。目黒は担保になる不動産の評価を頼む」 「明日の午前中、桜田工業の近くを通りますから、写真を撮って評価報告を作ります」私は即答する。 「よしっ! 俺は稟議書の骨子を書き上げる。諏訪は意見を書け。おまえがどんだけこの案件をやりたいか、気持ちこめて書けよ」 「はい、もちろんです!」 諏訪君の目の色が変わった。独身寮に入寮してから1年弱。寮生4人がこんなにも熱く語り合ったのは初めてだった。同僚とともに大きな仕事に取り組めることに私の心も沸き立っていた。われわれはワンチームだった。 翌日の夕方の報告会、寺川支店長がいつものように罵声を飛ばしたが、まったく耳に残らなかった。そんなことよりも私たち4人には立ち向かう目標があった。 早く仕上げたい。その一心で4人は寮のリビングで徹夜で稟議を仕上げた。一人でやれば1週間はかかる作業が、2日で終わった。完成した稟議書は私の目から見ても完璧なものだった。 その翌朝、矢野課長は机の上の稟議書を見て、目を丸くした。 「これ、この前話してた桜田工業の設備資金だろ? 諏訪、よく書けたな」 課長はあっという間に回覧印を押し、副支店長にまわした。副支店長も同じリアクションですぐに回覧した。その様子を見た西山さんが親指を立てるのを見て、お互いに顔を見合わせて笑った。 10億円くらいの融資金額になると、地方支店の支店長に権限はなく、本部の審査部が決裁する。支店がアクセルを踏むところに、ブレーキをかけるのが審査部の役目だ。われわれはそこがヤマになると踏んでいた。審査部を突破できるかどうか……。 その日の夕方、寺川支店長が矢野課長と諏訪君を呼びつけた。 「この稟議だけどな、10億は貸しすぎじゃないか」 その声がフロアに響いてきて、私は耳を疑った。朝夕の報告会で融資残高を上げろと発破をかけているのは寺川支店長だったからだ。 「桜田工業はメイン行で20億円の支援が決まっていたんですが、なんとか半分食い込めたんです」 諏訪君が必死で状況を報告する。 「そうか、それならメイン行で全部借りたらいい。これはやめよう。断ってこい」 「あの……支店長………」 諏訪君は驚いて言葉を継ぐことができない。横にいる矢野課長はただ黙って立っている。 「俺、ここの社長、気に食わないんだよ。あの生意気な二代目だろ? アイツ、嫌いなんだ」 諏訪君の後ろ姿が耳まで紅潮していた。課長に肩を叩かれ引き下がると、真っ直ぐに部屋を飛び出していった。西山さんが走ってそのあとを追った。 虚しさと悔しさと腹立たしさと、さまざまな感情が込み上げてきた。 その晩、寮での夕食はいつもの光景に戻っていた。私は諏訪君になんと声をかければいいかわからず、ただNHKのニュースを眺めていた。 ある日、営業まわりから支店に戻ると、諏訪君が満面の笑みを浮かべ、駆け寄ってきた。 「先輩、支店長が異動です!」 支店長の異動は特別だ。まず本店の人事部から支店長へその旨連絡があり、支店長は副支店長へ伝え、そして各課の課長に下りてくる。その後、情報は部下たちに広まっていく。 「本当かよ!?」 諏訪君はそのことを直接、私に伝えたいと駐車場で待っていたという。諏訪君は2年、私は1年を寺川支店長につかえた戦友だ。 支店長の異動は“株式会社みやざきちゅうおう支店”という中小企業の社長交替と同じようなものだ。寵愛を受けていた者は落胆し、虐しいたげられていた者は歓喜する。 「本当なんだよな」と私が念を押すと、諏訪君は「夢ならこのまま覚めないでほしいですよ」と真顔で言った。 このニュースが支店中に伝わった2週間後、寺川支店長は異動していった』、融資案件に消極的な「支店長」が「転勤」とはラッキーだ。転勤まで平均在籍期間を3年とすれば、嫌な上司にも1.5年我慢すればいいことになる。これが、一般企業と比べ銀行のいいところだ。

第三に、2月9日付け東洋経済オンライン「半年で3例、地銀の「県内再編ドミノ」は終わらない 地銀最大手の横浜銀が神奈川銀を子会社化へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/651298
・『わずか半年で3度続いた同一県内での再編劇。そこから見えた共通点とは。 「環境変化に対応し、神奈川県の発展に寄与するには、両行がグループ一体となるべきだ」 地方銀行最大手の横浜銀行は2月3日、神奈川銀行をTOB(株式公開買い付け)によって今夏をメドに完全子会社化すると発表した。買い付け金額は約82億円で、期間は2月6日から4月4日まで。同日の会見で、横浜銀の片岡達也頭取は買収の意義を強調した。 買収目的については、県内の顧客基盤拡大やソリューション営業の強化、経営資源の集約に伴うコスト削減などを挙げた。神奈川銀の近藤和明頭取も「中長期的な企業価値向上に向けて、最善の選択だ」と歓迎する。買収後も神奈川銀の看板は残し、合併はしないという。 もともと横浜銀が神奈川銀の株式を保有するなど、両行は親密な関係にあった。経営統合へ動き出したのは2022年8月。横浜銀の片岡頭取が神奈川銀の近藤頭取に提携を持ちかけ、協議を重ねるうち、営業基盤強化のためには完全子会社化が最適との結論に至った。 横浜銀は、2016年に経営統合した東日本銀行との協業深化が今も道半ばの状況にある。にもかかわらず今回の買収に踏み込んだのは、なぜなのか』、「もともと横浜銀が神奈川銀の株式を保有するなど、両行は親密な関係にあった」、「神奈川銀行をTOB・・・によって今夏をメドに完全子会社化」、TOBを使うとは異例だ。
・『相次ぐ「県内再編」に2つの共通点  大手行が同一県内の小規模地銀と経営統合を行う事例は、2022年来相次いでいる。2022年9月には長野県首位の八十二銀行が長野銀行と、同年11月にはふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が福岡中央銀行と経営統合を行うと発表した。 それぞれの統合事例には、2つの共通点がある。 1つは当事者の業績が好調なことだ。横浜銀の片岡頭取は「統合効果は1、2年では出てこない。両行の業績が堅調な状況で先手を打つ」と話す。長野銀や福岡中央銀も、先行きの不透明感を挙げていた。 コロナ禍からの再建や脱炭素、デジタル化など、取引先企業のニーズが多様化する中、小規模地銀には課題解決ノウハウが限られる。経営体力が残されているうちに地元の大手行と手を結び、コンサル機能の育成や経営の効率化につなげる。 もう1つの共通点は、経営統合の機関決定が2023年3月末までに行われることだ。長野銀は3月の臨時株主総会で経営統合を決議する予定。FFGと福岡中央銀も、3月に最終契約を交わす。 背景には日本銀行による再編推進策がある。日銀は経営統合を行う地銀に対し、日銀への当座預金の金利を3年間上乗せする措置(特別付利)を講じている。2023年3月末までに機関決定を済ませることが条件だ。 機関決定の定義は「『原則』株主総会」とされている。ただし、総会決議が4月以降になったからといって、即座に適用対象から外れることはないもようだ。 日銀の措置が業績にもたらす影響は小さくない。横浜銀の2022年9月末時点の現預金は4.8兆円。うち約9割が日銀当座預金とみられ、年間40億円強の利息収入が付与される計算だ。 相次ぐ再編について金融庁幹部は、「特別付利制度が効いている」と評する。片岡頭取は「今年度末が締め切りだと理解している。(神奈川銀の買収に向けて)最後に背中を押す部分はあった」と認める。 このほか、経営統合の過程でシステム統合や店舗統廃合を進めた場合にも、国から最大で30億円が補助される。各種の資金支援が一連の再編を後押しした側面は、大いにあるだろう』、「2つの共通点」、「1つは当事者の業績が好調なこと」、「小規模地銀には課題解決ノウハウが限られる。経営体力が残されているうちに地元の大手行と手を結び、コンサル機能の育成や経営の効率化につなげる」、「あと1つは」、「日銀」の「特別付利制度」で、「横浜銀」の場合、「国から最大で30億円が補助される。各種の資金支援が一連の再編を後押しした側面は、大いにあるだろう」、「特別付利制度」は強いインセンティブだ。
・『金利上昇がさらなる再編の起爆剤に  特別付利制度は3月末で終了する一方、今後は新たな要素が地銀再編の起爆剤となる可能性がある。国内の金利上昇だ。 日銀は2022年末、長期金利の上限を引き上げた。今後、政策金利の引き上げやマイナス金利政策の撤廃が行われれば、銀行にとっては貸出金利の上昇を通じて収益の改善へとつながる。貸出金残高が多いほど収益が増えるため、経営統合による規模拡大を求める動機が生まれる。 実際、横浜銀の片岡頭取は「金融政策変更が(今回の買収の)きっかけではないが、そうした動きも含めながら最終判断に至った」と話す。神奈川銀の近藤頭取も「金利が上がると、規模のメリットはかなりの収益力の差になる」と応じた。 この点、経営統合の効果として、横浜銀が調達した資金を神奈川銀に振り向ける、といった機動的な資金融通も期待できそうだ。 神奈川銀は2021年3月、優先株を発行して横浜銀などから20億円を調達した。コロナ禍の影響を被った取引先への融資を積極化した結果、自己資本比率が低下する懸念が生じたためだ。横浜銀の子会社となれば、財務面で後ろ盾を得られる。「積極的に融資を伸ばしていける」(近藤頭取)。 2行以上の地銀が併存する都道府県はまだ複数ある。コロナ後の生き残りや国内金利上昇を見据えた再編は、さらに続く可能性がある』、「今後は新たな要素が地銀再編の起爆剤となる可能性がある。国内の金利上昇だ。 日銀は2022年末、長期金利の上限を引き上げた。今後、政策金利の引き上げやマイナス金利政策の撤廃が行われれば、銀行にとっては貸出金利の上昇を通じて収益の改善へとつながる。貸出金残高が多いほど収益が増えるため、経営統合による規模拡大を求める動機が生まれる」、「2行以上の地銀が併存する都道府県はまだ複数ある。コロナ後の生き残りや国内金利上昇を見据えた再編は、さらに続く可能性がある」、今後も続く「再編」の行方を注視したい。
タグ:金融業界 (その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、上司が10億円融資を白紙に…銀行員はつらいよ 現役メガバンク行員の赤裸々日記、半年で3例 地銀の「県内再編ドミノ」は終わらない 地銀最大手の横浜銀が神奈川銀を子会社化へ) 東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」 「業務提携」が事実上「“不可侵条約”」として機能しているようだ。 「顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかった」、これでは乗り越えるのは、よほどの幸運に恵まれる必要があり、やはり乗り越えられかったようだ。 「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ」、「西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」、これでは、「こういう人間がいる銀行とは組めない」となったのだろう。 さらに「西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている」、「フィデア」側にも問題があるようだ。 「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と記者会見で発言したのは、いささか軽率だが、よほど身に染みているのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 目黒冬弥氏による「上司が10億円融資を白紙に…銀行員はつらいよ、現役メガバンク行員の赤裸々日記」 目黒冬弥『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』(三五館シンシャ) 「前任者は課長代理で、産業調査部に行くらしい」、かなり出来のいい人間の後釜とは大変だ。 融資案件に消極的な「支店長」が「転勤」とはラッキーだ。転勤まで平均在籍期間を3年とすれば、嫌な上司にも1.5年我慢すればいいことになる。これが、一般企業と比べ銀行のいいところだ。 東洋経済オンライン「半年で3例、地銀の「県内再編ドミノ」は終わらない 地銀最大手の横浜銀が神奈川銀を子会社化へ」 「もともと横浜銀が神奈川銀の株式を保有するなど、両行は親密な関係にあった」、「神奈川銀行をTOB・・・によって今夏をメドに完全子会社化」、TOBを使うとは異例だ。 「2つの共通点」、「1つは当事者の業績が好調なこと」、「小規模地銀には課題解決ノウハウが限られる。経営体力が残されているうちに地元の大手行と手を結び、コンサル機能の育成や経営の効率化につなげる」、「あと1つは」、「日銀」の「特別付利制度」で、「横浜銀」の場合、「国から最大で30億円が補助される。各種の資金支援が一連の再編を後押しした側面は、大いにあるだろう」、「特別付利制度」は強いインセンティブだ。 「今後は新たな要素が地銀再編の起爆剤となる可能性がある。国内の金利上昇だ。 日銀は2022年末、長期金利の上限を引き上げた。今後、政策金利の引き上げやマイナス金利政策の撤廃が行われれば、銀行にとっては貸出金利の上昇を通じて収益の改善へとつながる。貸出金残高が多いほど収益が増えるため、経営統合による規模拡大を求める動機が生まれる」、「2行以上の地銀が併存する都道府県はまだ複数ある。コロナ後の生き残りや国内金利上昇を見据えた再編は、さらに続く可能性がある」、今後も続く「再編」の行方を注視したい。
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資本市場(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) [金融]

資本市場については、昨年4月13日に取上げた。今日は、(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ)である。

先ずは、本年1月31日付け東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649493
・『アクティビスト(物言う株主)が、子会社に続いて親会社にも噛みついた。2022年、医薬品中堅の鳥居薬品(東証プライム上場)に株主提案したアクティビストが、今度は親会社であるJT(日本たばこ産業)にも、3月の定時株主総会に向けて株主提案したことが東洋経済の取材でわかった。 今年に入って東京証券取引所が親子上場問題に関する研究会を再開させるなど、親子上場問題をめぐる議論が活溌になっているだけに、今回の株主提案は波紋を広げそうだ』、興味深そうだ。
・『「JTは大株主の責任を果たしていない」  提案をしたのは、香港の投資会社であるリム・アドバイザーズ。リムは2022年1月にも、JTが54.8%の株式を握る子会社で、現在は医薬品の販売会社となっている鳥居薬品に対して株主提案を行っている。今回は鳥居薬品に加えて、親会社のJTにも株主提案を行った。 関係者の話を総合すると、リムはJTに対して、同社が鳥居薬品を買収してから25年が経過したにもかかわらず、「一定の実績だと認められるのは、2020年に発売したアトピー性皮膚炎治療剤コレクチムに限られ、親子間のシナジーが見込めなくなっている」としたうえで、「鳥居薬品のPBR(株価純資産倍率)が0.7倍程度で1倍を割っていることに加え、EV/EBITDA倍率(買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す指標)が、同規模の医薬品会社が10?15倍程度であるにもかかわらず、それを大きく下回る4倍程度に沈んでいる」ことを問題視しているようだ。 そのためリムは、「JTは鳥居薬品の企業価値向上に失敗し、大株主としての責任を果たしていない」として、JTに対して鳥居薬品の非上場化もしくは売却を求めているという。 またまたJT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案しているという。) さらに、キャピタル・アロケーション(資本の配分)の観点から、グループ内で資金を包括的に管理するキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によって、「鳥居薬品からキャッシュを適切に活用する機会を奪っている」として、CMSをやめることも合わせて求めているもようだ。 これに対しJTは、「株主提案を受領したことは事実」と認めたうえで、「現在、株主提案に対する会社意見を作成中であり、取締役会で承認され次第開示する予定だ」としている。他方でリムは「個別案件にはお答えできない」とコメントした』、「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。
・『東証も親子上場議論を再開  親子上場をめぐっては、東証が2022年4月にスタートさせた市場区分の再編に関する議論の中でも問題視されるなど、ここ数年、市場では大きな検討課題となっている。そのため東証は、プライム市場を選択する企業の基準として「流通株式比率35%以上」を求めるなど、親子上場の解消を間接的に促している。 また、2020年1月に設置し、2020年9月に「中間整理」を発表して以降、休眠状態だった親子上場の問題点を議論する「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」も2023年1月6日に再開、議論を再スタートさせた。 というのも市場区分の見直しをきっかけに、東証には海外の機関投資家やアクティビストなどから親子上場に関する抗議の声が相次いで寄せられているといい、無視できない状況に追い込まれているからだ。 リムが昨年鳥居薬品に行った株主提案には、JTからの天下りの禁止やCMSによる資金提供の禁止などが盛り込まれていたが、いずれも株主総会で否決されている。今回は親会社であるJTにも同様の提案を行うことで、親子上場の問題を正面から問いかける姿勢だ。両社の株主はどう判断するか。その結果次第では、他の親子上場会社にも影響を及ぼしそうだ』、「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。

次に、2月1日付け東洋経済オンラインが掲載した関西学院大学経済学部教授の堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/648604
・『もし「どこに投資するかは決めていないが、私を信じてあなたのお金を私に預けなさい」と言われたら、多くの人はうさんくさく感じるに違いない。しかし、そんな証券が米国などの市場で取引されている。特別買収目的会社(SPAC)の証券である。 SPACの仕組みはこうだ。まず、設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める。この時点では、資金をどこに投資するかは決まっていない。次にスポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる。米国ではSPACの制度自体は以前から存在していたが、2020年ごろから突然、金融業界の関心を集めるようになった。20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった』、「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの比重だ。
・『何がSPACの魅力か  SPACは上場証券なので、投資家保護に一定の配慮がある。制度上、スポンサーに持ち逃げされる心配はない。企業との合併には投資家の一定割合の賛成が必要で、スポンサーは独断できない。SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる。 事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る。 だが、いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介したい』、「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。
・『問題が発生する理由  米国では企業が合併する際、ニューヨーク証券取引所やナスダックの規制により、被買収企業が買収企業の純資産の80%以上の価値を有することが条件となっている。したがってSPACは調達額を大きく下回る価値しか持たない企業とは合併できない。 だがこの条件が、スポンサーが事業会社を真剣に審査する誘因をそぐことになる。時間と費用をかけて企業を審査し、その企業が相対的に低価値だとわかったとする。前述の規制によってSPACはその企業とは合併できない。合併できなければスポンサーは報酬を得られない。それならいっそ、審査などせず「この会社は高価値です」と投資家に伝えるほうが得になる。 もちろんすべてのスポンサーがつねにそのような無精をするわけではない。スポンサーの報告が虚偽だと明らかになれば投資家からの信用を失い、以後、SPACを組成することは難しくなるからだ。だが、スポンサーが短期的な利益を志向するのであれば、将来の評判の損失を気にせず虚偽の報告を続けるかもしれない。時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある。 なぜこのような問題が起きるのか。原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ。 こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう』、「時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある」、「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう」、同感である。
タグ:(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) 資本市場 「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。 「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。 「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、 東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」 東洋経済オンライン 堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」 「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの 比重だ。 「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行う ので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償 還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保 有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。 「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策は ないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきで あろう」、同感である。
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ESG(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資) [金融]

ESGについては、2021年4月14日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資)である。

先ずは、本年3月7日付けBloomberg「日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏」を紹介しよう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-07/R8CPWHT0G1L101
・『ゴールドマン・サックス証券で副会長を務めたキャシー・松井氏は、日本では今も多くの企業や人々がESG(環境・社会・企業統治)を形式的な「確認作業」と捉えており、実体が伴わないのに環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」につながっているとの認識を示した。 松井氏はブルームバーグテレビジョンで、「ESGは単なるコンプライアンス(法令順守)上の取り組みではない」と指摘した。 女性活躍による経済活性化を目指す「ウーマノミクス」の提唱者としても知られる松井氏は、2020年にゴールドマンを退職後、翌年にベンチャー・キャピタル・ファンド「Mパワー・パートナーズ・ファンド」を立ち上げた。同ファンドはヘルスケアやフィンテック、教育、環境などに1億5000万ドル(約170億円)投資する予定。 元ゴールドマン松井氏のファンド、ESG重視で起業家を支援 (2) 岸田文雄政権はグリーン投資を政府の重要課題に位置付け、グリーンテクノロジーへの投資倍増を表明しているが、松井氏はさらなる取り組みが必要だと語った。 日本は輸入化石燃料に大きく依存する一方、50年までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル達成という野心的な目標を掲げている」ことについて、「革新的技術へ投資しなければ目標に到達できないだろう」と述べた。 日本のエネルギー輸入に関しては、ロシアのウクライナ侵攻が日本企業にとって頭痛の種になっているとみている。 松井氏は「自動車やテクノロジー分野でロシアでの業務停止または撤退する企業が既に見られる」と指摘。化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」と語った』、「化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」その通りだ。

次に、6月10日付けダイヤモンド・オンライン「【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304043
・『多くの企業が取り組む「ESG経営」。社会での重要性は高まっているものの定着しているとは言いがたい。しかし、すべてのステークホルダーの利益を考えるESG経営こそ、新規事業の種に悩む日本企業にとって千載一遇のチャンスなのaである。企業経営者をはじめとするビジネスパーソンが実践に向けて頭を抱えるESG経営だが、そんな現場の悩みを解決すべく、「ESG×財務戦略」の教科書がついに出版された。本記事では、もはや企業にとって必須科目となっているESG経営の論理と実践が1冊でわかる『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』より本文の一部を抜粋、再編集してお送りする(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、興味深そうだ。
・『似て非なるESGとSDGs  Q:今や聞かない日はないほどメジャーな言葉となったSDGsですが、似たようなキーワードとして使われるESGとは何が違うのでしょうか。 A:理解を深めるためには、歴史を紐解く必要があります。2000年に国連ミレニアム・サミットで採択された「ミレニアム開発目標」(Millennium Development Goals、以下「MDGs」)が2015年で終了するのに合わせ、同年9月、国連総会で「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals、以下「SDGs」)が新たに採択されました。 SDGsは、主に極度の貧困にあえぐ途上国の目標だったMDGsと違い、世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定されています。「誰ひとり取り残さない」(leave no one behind)という要請のもと示されたSDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています。 大手町・丸の内エリアへ行くとジャケットの胸の部分に17色に彩られたSDGsのバッジを付けているビジネスパーソンが(GPIFのESG投資開始の影響か)2017年あたりから増えてきたこともあり、日本においてはコロナ禍で認知が広がったESGにくらべてSDGsの方が馴染み深いと思います。 日本ではESGと同じ文脈で語られることの多いSDGsですが、両者の違いと関係をうまく説明できるか言われると言葉に詰まる人が多いと思います。 なぜなら、両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがちだからです』、「世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定」、「SDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています」、「両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがち」、なるほど。
・『ESGとSDGsの具体的な違い  Q:ESGとSDGsの具体的な違いを教えていただいてもいいでしょうか。 A:ESGというのは、一般に「ESG投資」という言葉で語られる場面が多いことからもわかるとおり、機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のことです。 つまり、機関投資家は、投資先の企業の長期的な株主価値向上を図るため、投資判断にあたり環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を考慮に入れることになるわけです。 他方、SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示と理解することができます』、「ESGというのは・・・機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のこと」、「SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示」、なるほど。
・『日本とは相性がいいESGの理念  Q:似ているようで違うものなんですね。 A:そうですね。ですが、一緒に考えた方がいいのではないかという見方もあります。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で最高投資責任者CIOを務めていた水野弘道氏は、古くから「三方良し」の精神が根付いている日本では、「ESGとSDGsは表裏一体の概念である」と啓蒙した方が政財界にすんなり受け入れられるとの読みがありました。 また、水野氏は、ESGとSDGsのコンセプトは日本が古くから守ってきた文化と親和性が高く、日本がこの分野でオピニオンリーダーになれるとの期待があったとも述べられています※1。 欧米の専門家の間ではESGとSDGsはまったく別物という扱いをされることが多いようですが、日本ではGPIFが両者は表裏一体というコンセプトで啓蒙をしてきているため、企業の間でもそのように理解されるようになっています。 これはかつて日本独特の考え方といわれていましたが、近年では欧米のグローバル企業もこれにならい、毎期開示する統合報告書において、自社の事業ポートフォリオがSDGsの掲げる17のどの目標の解決につながるのかを明示することがすっかりお決まりの基本作法になりつつあります』、「日本ではGPIFが両者は表裏一体というコンセプトで啓蒙をしてきているため、企業の間でもそのように理解されるようになっています。 これはかつて日本独特の考え方といわれていましたが、近年では欧米のグローバル企業もこれにならい、毎期開示する統合報告書において、自社の事業ポートフォリオがSDGsの掲げる17のどの目標の解決につながるのかを明示することがすっかりお決まりの基本作法になりつつあります」、「欧米」が「日本」の考え方に近づいた数少ない貴重な例だ。
・『ESGは中長期と言われる理由  Q:企業がESGシフトしていく際のポイントなどあるのでしょうか。 A:企業にしてみれば、機関投資家の資金がどんどんESG投資へシフトしていくなかで自社に投資してもらうためには、ESG投資の基準にフィットするような事業ポートフォリオを構築する必要があるわけです。特にEUの投資家は、ESGスコアが低い(特に環境)企業に対してはダイベストメント(投資の撤退=保有する債券や株式の売却)という手段を選ぶ傾向にあります。 したがって、企業としては、ESGテーマである環境、社会課題を解決する事業としてSDGsに機会を見出すことになるのです。その結果、SDGsに取り組む企業は中長期的な株主価値の向上を実現し、ESG投資を実践する投資家は中長期的に高いリターンを享受し、持続可能な社会をつくることができるようになるわけです。 そして、SDGsに代表される環境・社会課題を解決する事業は資金も時間もかかることが容易に想像されます。だからこそ、ESGのガバナンスが重要課題として理解されています。企業の経営陣が「この四半期も稼がないといけないから」と近視眼的で安易な経営判断に陥ることを防ぐ必要があります。経営陣の暴走を防ぐ役割をガバナンスが担保するわけです。 ガバナンスは、環境・社会課題を解決する事業に取り組むことで長期的な株主価値の向上を図る(高いESGパフォーマンスを実現する)ための前提として捉えるとしっくり来ます。もちろん、ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています。 ※1:2021年6月1日開催のBRIDGEs 2021 ESG & SDGs Meeting基調講演「なぜ私たちはESG&SDGsに取り組まなければならないのか?」より) ★攻めと守りの経営を実現する「ESG×ファイナンス」の決定版!! ★ユニリーバやグーグルをはじめとするESG/SDGs先進企業の事例を多数掲載!! ★実務担当者から若手経営者まで使える財務の教科書!! ★ビジネスとアカデミアの両方からESG/SDGs経営を解説。 『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』桑島浩彰/田中慎一/保田隆明、定価2860円(本体2600円+税10%) ESG財務戦略 ESG実践企業 【この本のここがスゴい!!】 [>]ビジネスとアカデミアによる共著だから論理と実践が1冊でわかる! [>]日本と世界の両方からESG/SDGsを知ることができる! [>]現場で実践できる内容に特化!企業に必要な考え方が無駄なく書かれているから取り組みやすい!』、「ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています」、「投資家」の責任も大きそうだ。

第三に、9月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院 会計研究科 客員教授・アビームコンサルティング エグゼクティブアドバイザーの柳 良平氏による「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308699
・『日本企業に対する投資家の企業価値評価が低い。主因は説明不足にある。外国企業との差を端的に示すのがPBR(株価純資産倍率)。会計上の簿価に対してどれだけ付加価値を創出しているか、市場が判断する指標だ。人材など非財務資本の活用と同時に、それをきちんと伝えて市場に評価されることが求められる。今、注目のESGはその象徴といえる。ESGと企業価値をつなぐ方法論「柳モデル」を製薬大手のエーザイでCFOとして確立した柳良平氏が、その理論と実践法を全10回の連載で提示していく。 連載第7回は、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」について考察する』、興味深そうだ。
・『ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 (柳良平氏の略歴はリンク先参照) この連載で提示してきた「ESG ジャーニー」(詳細は第1回ご参照)で、日本企業は、自社のESG経営を新しいESG会計で開示することは可能であろうか。 実は世界的にも、ESGの開示規則やESG会計の在り方が議論されている。 ESG会計の先行事例としては、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)のジョージ・セラフェイム教授が、インパクト加重会計イニシアティブ(IWAI)を主導している(セラフェイム2021)。IWAIは、現在進行形のプロジェクト(2022年にはIFVIへと発展)であるが、ESGがもたらすさまざまな種類の社会的インパクトを勘案して、従来の会計情報(GAAP)に調整を加える簡便法を提唱している。 IWAIでは、ESGの売上収益に与える影響を「製品インパクト」とし、損益計算書(PL)の従業員関連支出や社会的価値の影響を「雇用インパクト」、環境負荷・コストを売上原価に反映される「環境インパクト」として米国企業を中心に具体的な計算事例を蓄積しつつある。 例えば、ハーバード・ビジネス・スクールの論文(Freiberg, Panella, Serafeim and Zochowski 2020)では、米国企業インテルの2018年の「従業員インパクト」のPLを紹介している(図表1)。 インテルでは、内部昇格の機会ロスやダイバーシティーの促進不足によって、一部に価値破壊があるものの、従業員数が多く、平均賃金がマーケットレベルより高いため、大きな社会的な付加価値の絶対額を創出している。 負の影響を相殺しても、「雇用インパクト(従業員インパクト)」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆されている。 人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献をしていることになる』、「「雇用インパクト・・・」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆・・・人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献」、なるほど。
・『ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」(出所)Freiberg, Panella, Serafeim and Zochowski (2020)から筆者作成 こうしたインパクト加重会計の試みは、基本フォーマットが確立しており、米国企業でも事例が積み上がっている。ESG会計の先行事例として意義が大きいと思料する。日本企業にも一定の示唆があるだろう。) ▽「柳モデル」とエーザイの回帰分析の示唆(一方で、筆者の「柳モデル」(柳 2021a)(Yanagi 2018)は、ESG経営の価値(非財務資本)はPBRに織り込まれるという「PBR仮説」(IIRC-PBRモデル)の立場を取る。 【IIRC-PBRモデル】株主価値=長期的な時価総額=株主資本簿価 (BV) +市場付加価値 (MVA)  株主資本簿価 (BV) =PBR 1倍の部分=「財務資本」 市場付加価値 (MVA) = PBR 1倍超の部分 =非財務資本関連(インタンジブルズ)=「知的資本」+「人的資本」+「製造資本」+「社会・関係資本」+「自然資本」=ESGの価値 (=遅延して将来の「財務資本」に転換されるもの) そして、柳モデルをエーザイに適用したケース研究(柳 2021a)では、2019年7月時点で、エーザイのESGのKPI(88種類)につき、データが入手可能な限り過年度までさかのぼり(平均12年)、時系列データを抽出(1088個)して、ESGファクターとPBR(28年分)との正の相関関係を検証する対数変換での重回帰分析(ROEをコントロールした2ファクターモデル)を実行した。 筆者は従来、「ESGは事後的・長期的に企業価値に遅延浸透効果を持つ」という仮説を立てていたことから、28年分のPBRを用意して、期差分析による回帰分析を行った。 柳 (2021a) では、「p値5%未満、t値2以上、R2 0.5以上」を統計的に有意な水準とし、「正の相関関係」を示した結果を、エーザイ統合報告書2020と エーザイ価値創造レポート2021で開示した。 実証分析の結果、障がい者雇用率と連結人件費がp値1%未満で有意、社員の健康診断の受診率、女性管理職比率、管理職比率、育児短時間勤務制度利用者数、欧米従業員数がp値5%未満で有意に、遅延浸透効果をもってPBRと正の関係がある。 「知的資本」では、承認取得した医療用医薬品数、連結と単体の研究開発費も有意水準5%で長期遅延浸透効果として、PBRにポジティブな影響を及ぼしている。製薬企業における長期的な研究開発投資の重要性が改めて明示された。 さらに、感応度分析を概算(相関係数、遅延浸透効果とPBRや時価総額のレベルから換算)で解釈すると、95%の信頼確率で、以下の事例のような相関関係の示唆となる(柳 2021ab)。 ・エーザイでは人財に10%追加投資すると5年後にPBRが13.8%向上する
・エーザイでは研究開発に10%追加投資すると、10年超の年数をかけてPBRが8.2%拡大する ・エーザイでは10%女性管理職を増やす(例:女性管理職比率を10%から11%に引き上げる)と7年後にPBRが2.4%上がる ・エーザイでは育児時短制度利用者が1割増えると9年後にPBRが3.3%改善する
 加えて、頑強性テストとして、柳・杉森(2021)が柳モデルをTOPIX100企業に適用して回帰分析を行った。 人件費投入を1割増加させることで、7年後にTOPIX100企業平均ではPBRが2.6%上昇するという関係が得られた。同様の計算を研究開発費に対しても行うと、研究開発費投入を1割増加させることで、7年後にTOPIX100企業平均でPBRが3.0%上昇する示唆となる。 このように柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆している。 ここから、新しいESGの会計の価値観の提案を考えてみる。』、「柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆」、短期的には「マイナス」でも、「5年-10年の長期では」プラスであれば、よさそうだ。 
・『ESG EBITの提案と開示  このように、エーザイでは人件費が5年後に、研究開発費が10年超で企業価値を創造することが証明できた(柳 2021ab)。 さらに日本企業全体でも、人件費と研究開発費は事後的・長期的にPBRを高める(柳・杉森 2021)。 しかしながら、財務会計上は、人的資本や知的資本への先行投資が会計上の利益を低減してしまう。そのため、会計規則だけに縛られると、投資家も経営者も裁量的利益調整やショートターミズムに陥る蓋然性があるのではないか。 ここから、CFOの考えるべきプロフォーマとしては、これらは「費用」ではなく、将来価値を生む非財務資本への「投資」と見做し、営業利益に足し戻したESGの営業利益「ESG EBIT」(人件費・研究開発費控除前営業利益)を「真の利益」「ESGの利益」と見做して、ESG会計の価値提案として示すべきではないだろうか。 筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある。 ちなみにニューヨーク大学のレブ教授も「財務会計では企業価値の半分も説明できない」「現在の会計基準(GAAP)の最大の誤謬(ごびゅう)は、人件費や研究開発費をサンクコストのように営業利益から差し引いてしまうことである」として、一定の方式で人件費や研究開発費を足し戻すことを提案している(Lev and Gu 2016)。 このESG EBITの開示により筆者は、CFO(当時)として資本市場のショートターミズム「人件費や研究開発費を大幅に削減して、今期の利益を上げるべきだ」といった短期志向の主張に、「人件費や研究開発費は費用ではなくて将来価値を生む無形資産への投資である」「エーザイでは重回帰分析で人件費は5年後に、研究開発費は10年超でPBRを高める結果が得られている」とロングターミズムで反論して、長期的企業価値を訴求してきた。 こうした考え方は、野村アセットマネジメントCIOの荻原亘氏、東京海上アセットマネジメントの菊池勝也氏、三菱UFJ信託の兵庫真一郎氏、日興アセットマネジメントの中野次朗氏、米国ブラックロックのインパクト投資責任者のエリック・ライス氏などの内外の知見の高い長期投資家からの支持を得ている。 世界が株主資本主義からステークホルダー資本主義に大きくかじを切る中、国内外でESGと企業価値の関係を説明することが求められている。 新時代のアカウンタビリティを一企業で果たすべく、あるいはCFO(当時)の受託者責任として、ESGのPBRへの遅延浸透効果を回帰分析で測定して、その感応度分析を行い、人的資本・知的資本への投資である人件費・研究開発費が事後的・長期的に企業価値向上に正の相関があることを開示した。 そして、これを根拠として、簡便法として、人件費・研究開発費を足し戻したESGの営業利益であるESG EBITを「真の利益」として、「ESG会計の価値提案」を行い、エーザイの統合報告書で開示した。 こうした試みに絶対的な解はなく、企業ごと、業界ごとの特殊事情を織り込んだ創意工夫が必要である。ESG会計は発展途上ではあるが、引き続き理論と実践の融合で「見えない価値を見える化」する研究や議論を継続していきたい。 例えば、今回のESG EBITでは、「人件費は費用ではなく投資である」として、100%をEBITに足し戻して計算する提案をしているが、「全ての人件費が価値創造的ではなく、良い人件費、悪い人件費もあり、マイナス項目も斟酌(しんしゃく)すべきではないか」という意見も寄せられた。 HBSのインパクト加重会計でも、限界効用や、地域社会への貢献、ジェンダーや人種による賃金差・昇進昇給差・構成比率差などを加減して調整した上で、人件費をEBITDAに加算している。 柳モデルの実証研究やESG会計の価値提案は、HBSのジョージ・セラフェイム教授から高い評価を得ており、さらに日本企業のESG会計を発展させるべく、関係者とインパクト加重会計の共同研究を継続的に行っているので、次回以降で紹介したい。 なお、ESGの会計について、幅広く広めていくために、筆者はアビームコンサルティングのエグゼクティブアドバイザーとして多数の日本企業に貢献する一方で、早稲田大学で大学院会計研究科の清水孝教授と共に責任者を務め、2022年度から「早稲田大学 会計ESG講座」を立ち上げる。「ESGの見えざる価値を企業価値につなげる方法」(柳 2021b)を求めて、ESGと柳モデルの旅は続く。(【参考文献】はリンク先参照)』、「筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある」、「エーザイ」の「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」は興味深い取り組みだ。「野村アセットマネジメント」など機関投資家からの支持も得ているようだ。

第四に、本年1月20日付け日経ビジネスオンライン「三菱UFJ銀行、企業買収にサステナビリティ融資」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00159/011200063/
・『金融機関と中小企業支援の投資ファンドが、タッグを組んだ。企業買収の資金融資でもESGが欠かせない要素となってきた。 三菱UFJ銀行は2022年11月18日、企業買収にサステナビリティ目標を課し、達成すれば貸出金利が下がる融資を、プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドのユニゾン・キャピタルに実施した。 ユニゾンは22年7月、企業や病院内にある保育所の運営を受託するキッズコーポレーションホールディングスの株式を取得し、この買収資金の一部を三菱UFJ銀行が融資した。キッズ社が持つ資産や将来収益を担保にするレバレッジド・バイアウト(LBO)ローンと呼ばれる融資手法を用いており、このLBOローンの一部をサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)に置き換えた。融資金額は数十億円。SLLと連動したLBOローンは大手行では初である。 SLLの融資に当たり設定した目標は2つ。保育所受託契約数の一定数の増加と、保育士の入社後1年間の離職率を一定水準以下にすることである。毎年、目標が達成できたかどうかを確認し、両目標をクリアしたら支払金利が0.数%低下する。 買収資金の融資に当たり、サステナビリティ目標の達成で支払い金利が低下するサステナビリティ・リンク・ローンを活用した』、LBOはリスクが高く金利も高いが、こうした目標達成度に応じて、リスクや金利を下げるのは合理的だ。
・『中小企業のESGを強化  ユニゾンは、キッズ社の経営改革を支援し企業価値を高めていく。ユニゾンの後藤玲央ディレクターは、「待機児童の解消を目指すキッズ社は社会的価値が高く、ビジネスの成長という点でも余地がある」と評価する。経営陣のガバナンス改革と現場の業務改革を進めて企業価値を向上させ、4~5年後をめどに新規株式公開(IPO)や他社への株式売却で投資資金を回収したい考えだ。 三菱UFJ銀行ソリューション本部ソリューションプロダクツ部部長の加藤晶弘氏は、「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない。ESGを考慮したM&A(合併・買収)が解決のカギを握る」と話し、広がりに期待する。 日本経済の底上げには、ESG経営を中堅・中小企業に広げていく必要がある。優れた技術・サービスを持つ中小企業や未公開企業を支援するPEファンドの存在感が高まっている。企業買収でもESGが欠かせない要素となってきた』、「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない」、同感である。
タグ:(その2)(日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏、【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?、ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」、三菱UFJ銀行 企業買収にサステナビリティ融資) ESG Bloomberg「日本のESGは今なお形式的な「確認作業」-元ゴールドマン松井氏」 「化石燃料の供給を全面的に輸入に頼る日本は「地政学的考察と経済の実情との間の微妙なバランスを常に取らなければならない」その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン「【財務戦略のプロが教える】意外と説明できないESGとSDGsの違いとは?」 SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略 「世界のあらゆる人、国や組織の包括的な目標(アジェンダ)として設定」、「SDGsの具体的指針は、17の目標、および、それらをブレークダウンした169のターゲットとして示されています」、「両者ともに国連から生まれたイニシアティブであり、コンセプトも似ているため、「ESG/SDGs」とひとくくりにされがち」、なるほど。 「ESGというのは・・・機関投資家(アセットオーナー)が資産運用会社(アセットマネージャー)を通じて企業に投資をするときに適用する投資規範のこと」、「SDGsは全人類のグローバル・アジェンダですが、とりわけ企業にとっては具体的に取り組むべき社会・環境課題に関する事業機会の例示」、なるほど。 「欧米」が「日本」の考え方に近づいた数少ない貴重な例だ。 「ESG投資の世界では、企業の経営陣がショートターミズムへの引力に引っ張られることのないよう、投資家にも健全なエンゲージメントが期待されています」、「投資家」の責任も大きそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 柳 良平氏による「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」 「「雇用インパクト・・・」にはプラス39億ドルの影響があり、ESG会計(インパクト会計)におけるEBITDAは、実質的には約6割増になることが示唆・・・人的資本の向上という非財務価値創造で、インテルは大きな社会貢献」、なるほど。 「柳モデルとその回帰分析が「人件費や研究開発費は、会計上は損益計算書(PL)の営業利益のマイナス要因になるが、5年-10年の長期では事後的に価値を生む先行投資」であることを示唆」、短期的には「マイナス」でも、「5年-10年の長期では」プラスであれば、よさそうだ。 「筆者はエーザイCFO(当時)として、図表2の内容を、エーザイ統合報告書2020とエーザイ価値創造レポート2021のCFO特集で開示している。 ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」 例えばエーザイは、2019年度の会計上(エーザイはIFRS採用)の営業利益は1200億円レベルであるが、ESG EBITは3600億円レベルと約3倍になっている。 「エーザイのPER(株価収益倍率)は近年概ね30倍以上で推移しているため、株価が割高という人もいるが、ESGの利益が3倍なので、人的資本・知的資本を勘案したESGの利益は3倍あるので、見えない価値を考えると実質PERは10倍であり、むしろ割安ではないか」とIRの場でも主張したことがある」、「エーザイ」の「ESGを会計に反映させる「ESG EBIT」」は興味深い取り組みだ。「野村アセットマネジメント」など機関投資家からの支持も得ているようだ。 日経ビジネスオンライン「三菱UFJ銀行、企業買収にサステナビリティ融資」 LBOはリスクが高く金利も高いが、こうした目標達成度に応じて、リスクや金利を下げるのは合理的だ。 「様々な社会課題を解決するためには中小企業のESG強化や積極的な事業再編が欠かせない」、同感である。
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保険(その8)(三井住友海上を悩ませる子会社アムリンの「呪縛」 英当局の罰金処分に透ける稚拙なリスク管理、富裕層が円安で「ドル建て養老保険」活用 節税策狭まる中での資産防衛術、節税保険に迫る「2025年問題」 今から備えるべき“4つの出口対策”) [金融]

保険については、昨年9月18日に取上げた。今日は、(その8)(三井住友海上を悩ませる子会社アムリンの「呪縛」 英当局の罰金処分に透ける稚拙なリスク管理、富裕層が円安で「ドル建て養老保険」活用 節税策狭まる中での資産防衛術、節税保険に迫る「2025年問題」 今から備えるべき“4つの出口対策”)である。

先ずは、昨年10月28日付け東洋経済オンライン「三井住友海上を悩ませる子会社アムリンの「呪縛」 英当局の罰金処分に透ける稚拙なリスク管理」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/629019
・『経営管理体制の不備を理由に、当局から罰金の支払いを命じられたアムリン。巨額買収後間もなく赤字体質に陥った問題児を、どう立て直すのか。 損害保険大手、三井住友海上グループの“問題児”が業界をざわつかせている。イギリスの子会社であるMSアムリンが10月20日、過去の経営管理体制の不備を理由に、同国の金融監督当局(PRA)から969.5万ポンド(約16億円)の罰金処分を受けたからだ。 「期待する基準を満たせなかったことの重大さを反映している」。監督当局がそう厳しく指弾した経営管理体制の不備とは、一体何か。 それは2014~2019年の間、アムリンの取締役会や引受業務などの各部門と傘下事業会社において、意思決定の基礎となる過去の契約データといった情報が十分に共有されず、結果としてリスク査定をたびたび見誤り、さらにその責任の所在を曖昧にする体制を延々と続けてきたことにある』、「買収」前には徹底的な資産査定を行うのが普通だが、不十分だったのだろうか。
・『組織改編が失敗し慢性赤字の問題児に  三井住友海上がアムリンを買収したのは2016年。それに先立つ2014年9月、アムリンは旧持ち株会社の中に「戦略ビジネスユニット」を組成しており、同ユニットが傘下にある3つの事業会社(MS AULなど)を横断するかたちで管理・運営する組織への改編を実施している。 アムリンとしてグループガバナンス(統治)の強化を狙ったものの、MS AULなど傘下事業会社の自律性を損ない、リスク管理の甘さが目立つようになるなど組織改編は大コケ。契約時におけるずさんなリスク査定が仇となり、2017年度には約1100億円の巨額赤字を計上するに至っている。 その後もアムリンは、組織体制において実効性のある改善策を打ち出せず、慢性赤字の状態に陥るなど問題児へと転落していった。 業を煮やした三井住友海上が、アムリンのテコ入れを本格化したのは2020年に入ってからだ。アムリンの持ち株会社を事実上解散し、MS AULなど傘下事業会社に直接出資するかたちで統治する体制に改めている。 今回の罰金処分について、三井住友海上は「アムリンが当社による買収(2016年2月)以前に開始した事業運営体制に関し(中略)2019年まで十分でなかったとの指摘および課徴金の支払いについて、(監督当局から)通知を受けたもの」という声明を出している。 あくまで2020年のテコ入れによってすでに解決済みの問題であり、騒ぎ立てるようなことではないのだと必死に火消しをしているようにも映る。では一体なぜ、そんな問題児を買収したのだろうか。 「統合リスク管理のお手本のような存在だ」。三井住友海上の経営陣がイギリスのロイズ保険市場で2番手の位置にいたアムリンをそう持ち上げ、約6350億円に上る大型買収を発表したのは2015年9月のことだ。 その数カ月前には、東京海上ホールディングスがアメリカのHCC、第一生命が同プロテクティブ、明治安田生命が同スタンコープ、住友生命が同シメトラの買収を発表しており、生損保が入り乱れるかたちで海外での大型買収の発表が相次いでいた。 当時、三井住友海上のある役員は海外に向かう機中で、同業大手の役員と鉢合わせしたこともあって、買収合戦の異様な盛り上がりを実感したという。そして、後れを取ってはいけないという「焦りがなかったと言えば、うそになる」と周囲に語っていた。 その焦りが経営陣の目を曇らせたのだろう。実はアムリンの買収交渉の過程では、2014年の組織改編をめぐってイギリスの監督当局が当時懸念を示していたことを、三井住友海上の国際部門は「把握していたものの、さして問題ではないと軽視していたようだ」(日本の金融庁幹部)』、「「統合リスク管理のお手本のような存在だ」。三井住友海上の経営陣がイギリスのロイズ保険市場で2番手の位置にいたアムリンをそう持ち上げ、約6350億円に上る大型買収を発表」、「買収合戦の異様な盛り上がり」で「後れを取ってはいけないという「焦り」「が経営陣の目を曇らせた」、「2014年の組織改編をめぐってイギリスの監督当局が当時懸念を示していたことを、三井住友海上の国際部門は「把握していたものの、さして問題ではないと軽視」、どうみても「三井住友海上」の対応のお粗末さが目につく。
・『2022年度に黒字転換を描くが…  イギリスの監督当局とすれば、三井住友海上が買収前からアムリンの問題点を認識していながら、それが顕在化して以降も遅々としてテコ入れを進めず、軽視するような態度をとられ続けたことになる。 さらに言えば、三井住友海上は10年前の2012年にも、イギリスの監督当局から罰金処分を受けている。そのときの理由もアムリンと同じく、欧州現地法人の経営管理体制の不備だった。 3年以上も前の組織体制の話を持ち出して罰金処分を課された裏側には、三井住友海上の稚拙なリスク管理と「海外監督当局との対話の乏しさ」(金融庁幹部)が隠れているわけだ。 買収前には毎年300億円前後の最終利益を上げながら、買収後は一転して赤字を垂れ流し続けるアムリンを、どう立て直していくつもりなのか。 三井住友海上は2025年度に400億円の最終利益を稼ぎ出す青写真を描いており、2022年度は約30億円の黒字転換を見込んでいる。 しかしながら、アメリカで9月に発生したハリケーン「イアン」の被害拡大によって、2022年度の黒字予想はもはや風前の灯火だ。アメリカのHCCを軸に海外事業で2500億円超の利益を稼ぎ出す東京海上とは、埋めがたい差がついてしまっている。 それでも海外事業の中核会社としてアムリンを位置付ける三井住友海上に、果たして勝算はあるのか。2022年度の最終赤字が現実となれば、株主からの売却圧力は一気に強まることになる』、「10年前の2012年にも、イギリスの監督当局から罰金処分を受けている。そのときの理由もアムリンと同じく、欧州現地法人の経営管理体制の不備だった」、背景に「三井住友海上の稚拙なリスク管理と「海外監督当局との対話の乏しさ」があるようでは、抜本的な立て直し策が不可欠だ。

次に、11月4日付けダイヤモンド・オンライン「富裕層が円安で「ドル建て養老保険」活用、節税策狭まる中での資産防衛術」を紹介しよう。
https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29876
・『『週刊ダイヤモンド』11月12日・19日合併号の第一特集は「円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術」です。急激な円安や金利高、インフレの加速、ロシアによるウクライナ侵攻など社会を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。そうした中で、富裕層たちはいかにして節税および資産防衛を行っているのでしょうか。国税当局による節税策の封じ込めが激しさを増す中、富裕層が陥りやすいわなを含め、資産防衛術を赤裸々に明かします』、興味深そうだ。
・世界中でふさがれる節税手法 今の注目ポイントは?  コロナ禍以降、生命保険、暗号資産、世界の法人税下限の統一化、30万円以下の一括償却など、いわゆる節税手段がどんどんふさがれてきています。これに加えて生前贈与と相続の一体課税が行われるということも喧伝されています。 ありとあらゆる節税手段に、このようなふたをする動きは「税務当局の本気度がうかがえる状況」なのではないかと思います。コロナ禍で国の借金が膨らんでいますし、アフターコロナを見据え、大規模金融緩和や多額の財政出動という「広げた風呂敷」を畳むフェーズに入ってきているのでしょう。 「所得税・法人税は防衛費など大義名分がないと上げづらい。しかし消費税を上げたら選挙で不利」という状況下で、最初に上げやすいのが富裕層に対する税金である、贈与税・相続税となるのは当然の流れです。こういう情勢の今、富裕層の間でよく行われている節税手法にはどんなものがあるのでしょうか』、「富裕層の間でよく行われている節税手法」、私には縁遠いが、一応、みてみよう。
・『法人は養老保険とオペリの二者択一に ドル建ての保険は有望か  まずは法人、つまりもうかっている法人の経営者についてです。現在、法人側の税金対策に関してはほぼ手詰まりの状況です。 度重なる当局の対応により、生命保険を使った手軽な決算対策がほぼできなくなっています。日本生命保険などがこぞって節税商品として販売していた法人保険や、その後の名義変更プランがふさがれたのはかなり大きかったと思います。 一方で、飛行機などのオペレーティングリースに関しては、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻によって「事業リスク」が大きく顕在化しました。商品が出れば売れた時代から「より事業リスクの低いものを選んで買う」という状況に変化しています。 さらに、飛行機はドル建ての商品が多いので、円安になったために、「10年前、節税のために飛行機を買い、満期の今、為替の差益が30~40%程度も出てしまってどうしよう」という、うれしいような悲しいような状態になっている法人も多数あります。 また、昨年の税制改正によりドローンなどを30万円分一括償却して節税する手法もほぼ、ふさがれました。法人の決算対策という意味での節税に関しては、「生命保険のオーソドックスな養老保険の福利厚生プランで支払い保険料の半額を損金にする」か、または「オペレーティングリースにする」か、などといったところに限定されてしまったといえます。広まっていない手法は一部残されていますが、事業リスクが高過ぎて節税手法としては使い物にならないものも多いのです。 また、ちょっとひねったところでは、この円安下でドル建ての養老保険に法人で加入することで福利厚生プランにして半額損金を取っていく、という手段もあります。 契約形態は契約者を法人、被保険者を従業員、満期保険金受取人を法人、死亡保険金受取人を従業員の遺族とすることで、支払った保険料の半分が損金となる、といった仕組みです。これは従来の福利厚生プランと同じ仕組みで、通貨が円ではなくドルというだけです。ただ、ドル建ての養老保険になるので円建てよりも解約返戻率も高く、「経費で落としながらお金をためる」という使い方が可能になります。 一般的には5~10年後に満期保険金が法人に支払われる形です。もちろんドル建てなので為替リスクがありますが、当然リターンもあります。事業で為替に関して何らかの影響がある法人であれば、リスク回避の意味合いもあるので、ドル建てでお金をためておくということで本業のヘッジができる可能性もあります。もちろんドルを持たない輸出入企業以外の法人でも、通貨分散の一環として加入してもいいのではないでしょうか』、「ドル建ての養老保険になるので円建てよりも解約返戻率も高く、「経費で落としながらお金をためる」という使い方が可能になります。 一般的には5~10年後に満期保険金が法人に支払われる形です。もちろんドル建てなので為替リスクがありますが、当然リターンもあります。事業で為替に関して何らかの影響がある法人であれば、リスク回避の意味合いもあるので、ドル建てでお金をためておくということで本業のヘッジができる可能性もあります」、なるほど。
・『富裕層“御用達”税理士たちが赤裸々に実態を暴露  『週刊ダイヤモンド』11月12日・19日合併号の第一特集は「円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術」です。 国税当局による相次ぐ「節税策つぶし」により、富裕層の節税や資産防衛は苦しさを増しています。そうした中で、急激な円安、インフレ、金利高、そしてロシアによるウクライナ侵攻など、社会情勢が不安定化しています。 そこで、富裕層“御用達”の税理士や資産コンサルの方々に、赤裸々トークを繰り広げてもらいました。今の海外節税の動向や海外移住、事業承継税制、ホールディングス化、国税による税務調査の実態など興味深い話が尽きません。詰まるところ、節税封じのはてに、「詐欺」が残ったと喝破しています。 加えて、富裕層に人気の金投資や航空機投資のやり方、注意すべき節税保険の実態、金融庁が大なたを振るった仕組み債の中身、コインランドリーや足場レンタルといった富裕層に人気の節税術の実態にも迫りました。 そして、富裕層を悩ます大問題の一つである、相続。こちらに関しては、生前贈与と生命保険、不動産の3大節税術を解説しています。併せて、大きな金額を節税できる不動産で陥りがちなわなも徹底解説しています。 節税策が閉じられていく中、富裕層がいかにして資産防衛を図っているのか、本特集をぜひご覧ください』、具体策は雑誌版にあるようだ。

第三に、12月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「節税保険に迫る「2025年問題」、今から備えるべき“4つの出口対策”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/315016
・『業績好調な非上場企業の経営者であれば、多くが節税のために活用してきたであろう法人契約の生命保険。だが、2019年に税務取り扱いの大幅な変更があり、当時、駆け込み加入した保険の解約返戻金が2025年にピークを迎える。節税保険の加入を単なる「課税の繰り延べ」にしないための、出口戦略として有効な4つの手法について解説する』、興味深そうだ。
・『2025年にピークを迎える節税保険の解約払戻金  もうかっている非上場企業の経営者では大抵の方がお世話になってきた法人契約の生命保険。この所謂「節税保険」について2019年2月に大幅な税務取り扱いの変更があり、実質的に節税効果が期待できなくなりました。2019年2月14日に「節税保険の税務通達を見直す」という事前アナウンスがあり(バレンタインデーショックと呼ばれました)、その後、2019年6月末に新たな通達が出されました。 実はこの時、「新たな税務通達が出されるまでに節税保険に入っておけば、保険料を全損で経理処理ができるので、今のうちに新規に契約しておこう」ということで、2019年2月から6月にかけて節税保険の駆け込み加入がものすごい勢いでありました。 そして4年が経過し、2019年に駆け込み加入した節税保険の解約返戻金が2025年にピークに迎えるのです。その金額は一説には合計3.9兆円といわれているようです。保険業界全体の個人保険の新規年間保険料が大体1.3兆円ですので、その3倍である3.9兆円はかなり大きな金額といえるのではないでしょうか。 一般的にはこの手の法人保険はどの会社も加入者の年齢によって差はありますが、大体2025年をピークに解約返戻金が減っていくので、その前後に解約する必要があるのです。よって、節税保険の出口戦略は、経営者にとっての2025年問題だと考えています。 通常、こういった保険に加入する非上場企業は継続的にもうかっています。利益が出ている最中に2025年を迎え、「節税保険を解約したら多額の法人税がかかってしまって結局、課税の繰り延べにしかならない…」「何かいい出口戦略はないか」というのがよくある社長のセリフです。 継続的に利益を出し続けている会社でも「課税の繰り延べにならず、結果的に節税となる方法」はあります。その代表的なものが、保険の解約返戻金を社長の退職金と相殺することです。 仮に保険の解約返戻金が1億円として、会社が社長に退職金1億円を払えば、1億円の益金(解約返戻金)と1億円の損金(退職金)が相殺されることになり、保険を解約しても法人は税金を払わずに済み、社長個人は退職金を受け取れ、結果的に節税になります。 しかし、節税のためとはいえ、社長が退職を決断するのはなかなか難しいでしょう。そういった場合でも節税保険の出口として使える手法があるのでいくつか取り上げたいと思います』、どうやるのだろう。
・『生命保険の保全手続きとオペレーティングリース  第一に生命保険の保全手続きを使う方法です。 法人保険は「全部解約するか継続か」の2択ではありません。 全部を解約せず「一部減額」という形で、徐々に切り崩していくことも可能です。例えば解約返戻金のたまりが5000万円だとしても、何年かにかけて徐々に減額していくことで設備投資などの損金と相殺させるということが可能です。 5000万円のうちの1000万円を解約し、その1000万円で設備投資することで利益はゼロになり、課税の繰り延べが節税になったといえます。もちろん設備投資も即時償却から減価償却まで幅広いので、どのような設備投資を行うかは会社次第です。 それ以外にも保全変更の種類によっては、経理処理(益金計上)をしないで解約返戻金の進行をストップさせ、解約返戻金を高止まりさせたまま保険料を払わずに契約のみ継続させる手法も、保険会社によっては取り扱っています。いずれにせよ、生命保険は解約か継続かだけではないと認識いただきたいと思います。 第二にオペレーティングリースです。 オペレーティングリース自体は保険と比べて不確実性の高い金融商品ですので、万人向きではありません。しかし昨今、決算対策手法が限られる中、選択肢としては貴重な存在です。オペレーティングリースとは「船舶や飛行機、コンテナなどのリース事業に出資し、リース期間中に生じる損を経費として計上し、リース料や最終的なリース物件を売却することで投資金額を回収するもの」です。 メリットとしては、大きく次の2つがあります。 (1)2~3年で投資金額のほぼ全額を経費化できること(よくあるのは投資額の初年度7割損金、2年目2割損金…など) (2)支払うお金は投資時の1度だけで、保険のように毎年払わずに済むこと 一方、デメリットは事業リスクが保険と異なり高いことが挙げられるでしょう。 リーマンショック、コロナショック、ロシアのウクライナ侵攻など、各事業体のリスク(飛行機が飛ばないからリース料が入ってこないとか、賃借人である航空会社の破綻とか)が保険と比べて高いのが特徴です。そしてお金が戻ってくる償還期間も7~10年くらいが多く、短期的に投資資金を回収するという法人には向きません。 また、メリットにもデメリットにもなり得ますが、多くが基本米ドル建てで投資する必要があるので為替リスクがあります。 とはいえ、今、償還を迎えるものは円安のため為替差益が出ることになります。また、最低投資金額が3000万~5000万円以上の案件が多いので、100万円規模でもできる保険とは投資の大きさが異なります(リーマンショック時は償還時に大幅な為替差損で大変なことになりましたが)。 節税保険の解約返戻金を今後、オペレーティングリースに投資することで課税を繰り延べることはできても、10年後の償還時の計画的なタックスプランニングは必要です』、「オペレーティングリース」は「最低投資金額が3000万~5000万円以上の案件が多いので、100万円規模でもできる保険とは投資の大きさが異なります」、極めて大口のようだ。
・『意外と知られていない事前確定届出給与  第三に事前確定届出給与です。 これは課税の繰り延べではなく、節税保険の出口となる手法です。事前確定届出給与とは「事前に自社の株主総会で金額を確定し税務署に届け出る役員の賞与的給与」です。社長や役員の賞与は一般社員と異なり経費化できないので、支払わないことが一般的ですが、事前に税務署に届け出れば、役員の賞与も経費で落とせるのです。メリットは、社員と同様、自分たち社長や役員にも賞与を支払えること。 デメリットは、社長個人が受け取った賞与は「所得税、住民税などの対象になる」ので、年収がプロ野球選手のような高額所得の社長は税金も多額になり、選択肢にはなりません。 一方で会社の役員に「社長の妻や子供や母親がいるケース」でかつ「年間の役員報酬が1000万円前後の方」のような会社の場合、事前確定届出給与で例えば「取締役の妻に1000万円程度の役員報酬を払っている」ケースでは、課税される金額も社長に比べ低いものになりますので効果的です。 事前確定届出給与を決議するタイミングは「期末の決算報告時の株主総会」が一般的ですので、事前確定届出給与を支給したい事業年度の前の期における株主総会決議を経る必要があります。 例えば12月末決算の会社の場合、同年2月の定時株主総会でこの議案を通しておけば、その期中は任意のタイミング(これも株主総会で決議)で支給できます。ただし、社長の思い付きですぐに事前確定届出給与が使えるわけではないですし、日付と金額が少しでもずれると経費化できない厳格なルールがあるのでご注意ください。 国税庁のHPにも掲載されているにもかかわらず、意外に事前確定届出給与は企業経営者に知られていません。わざわざ事前確定届出給与にするくらいなら、新年度から社長の毎月の役員報酬を上げたほうが手間が少ないので、社長に案内しない税理士も多いようですが、検討すべきだと思います。 そして、第四は「地主が法人化しているケース」などで使える出口戦略です。具体的には大規模修繕費用と節税保険の解約返戻金を相殺する手法です。 地主は表向き農家ですが、実際はマンションやアパートなどの収益不動産を複数棟保有しているケースが多く、保有物件の外壁の塗り替えなどの大規模修繕を十数年に1度繰り返す必要があります。その費用は不動産の規模にもよって異なりますが、最低数百万円はかかります。規模が大きければ千万や億単位の費用がかかります。 これらの大規模修繕のための資金として保険の解約返戻金を充当し、解約返戻金の利益と大規模修繕の損金を相殺させるのです。 地主の多くは「大規模修繕ってお金がかかるから、10年後に備えて法人で農協の定期積立貯金を毎月一定額しているんだよね」とよくおっしゃいます。この定期積立貯金は経費で落ちませんが、節税保険であれば全額損金(2019年7月以降に新規で加入された方は4割損金の法人保険が多い)で落ちます。したがって、計画的な修繕に充てられる非常に効果的な手法です。 ただし、大規模修繕と一言で言っても、原状回復に関しては損金となりますが、設備のグレードアップなどの資本的支出(エレベーターの交換など)に関しては減価償却となりますので、ご注意ください。 このように、法人保険の出口戦略は特別なことをしなくても「普通に」いくつも存在します。しかしあらかじめ準備をせず、土壇場になって「来月決算だし、法人保険ピークだし、解約しなきゃ」というような場合では打つ手は限られてきてしまいます。本業のみならず、タックスプランニングによる「守り」の強化も、経営者にとって大事なことではないでしょうか』、「事前確定届出給与」は「会社の役員に「社長の妻や子供や母親がいるケース」でかつ「年間の役員報酬が1000万円前後の方」のような会社の場合、事前確定届出給与で例えば「取締役の妻に1000万円程度の役員報酬を払っている」ケースでは、課税される金額も社長に比べ低いものになりますので効果的です」、「法人保険の出口戦略は特別なことをしなくても「普通に」いくつも存在します。しかしあらかじめ準備をせず、土壇場になって「来月決算だし、法人保険ピークだし、解約しなきゃ」というような場合では打つ手は限られてきてしまいます。本業のみならず、タックスプランニングによる「守り」の強化も、経営者にとって大事なことではないでしょうか」、その通りなのだろう。
タグ:保険 (その8)(三井住友海上を悩ませる子会社アムリンの「呪縛」 英当局の罰金処分に透ける稚拙なリスク管理、富裕層が円安で「ドル建て養老保険」活用 節税策狭まる中での資産防衛術、節税保険に迫る「2025年問題」 今から備えるべき“4つの出口対策”) 東洋経済オンライン「三井住友海上を悩ませる子会社アムリンの「呪縛」 英当局の罰金処分に透ける稚拙なリスク管理」 「買収」前には徹底的な資産査定を行うのが普通だが、不十分だったのだろうか。 「「統合リスク管理のお手本のような存在だ」。三井住友海上の経営陣がイギリスのロイズ保険市場で2番手の位置にいたアムリンをそう持ち上げ、約6350億円に上る大型買収を発表」、「買収合戦の異様な盛り上がり」で「後れを取ってはいけないという「焦り」「が経営陣の目を曇らせた」、「2014年の組織改編をめぐってイギリスの監督当局が当時懸念を示していたことを、三井住友海上の国際部門は「把握していたものの、さして問題ではないと軽視」、 どうみても「三井住友海上」の対応のお粗末さが目につく。 「10年前の2012年にも、イギリスの監督当局から罰金処分を受けている。そのときの理由もアムリンと同じく、欧州現地法人の経営管理体制の不備だった」、背景に「三井住友海上の稚拙なリスク管理と「海外監督当局との対話の乏しさ」があるようでは、抜本的な立て直し策が不可欠だ。 ダイヤモンド・オンライン「富裕層が円安で「ドル建て養老保険」活用、節税策狭まる中での資産防衛術」 「富裕層の間でよく行われている節税手法」、私には縁遠いが、一応、みてみよう。 「ドル建ての養老保険になるので円建てよりも解約返戻率も高く、「経費で落としながらお金をためる」という使い方が可能になります。 一般的には5~10年後に満期保険金が法人に支払われる形です。もちろんドル建てなので為替リスクがありますが、当然リターンもあります。事業で為替に関して何らかの影響がある法人であれば、リスク回避の意味合いもあるので、ドル建てでお金をためておくということで本業のヘッジができる可能性もあります」、なるほど。 具体策は雑誌版にあるようだ。 ダイヤモンド・オンライン 江幡吉昭氏による「節税保険に迫る「2025年問題」、今から備えるべき“4つの出口対策”」 どうやるのだろう。 「オペレーティングリース」は「最低投資金額が3000万~5000万円以上の案件が多いので、100万円規模でもできる保険とは投資の大きさが異なります」、極めて大口のようだ。 「事前確定届出給与」は「会社の役員に「社長の妻や子供や母親がいるケース」でかつ「年間の役員報酬が1000万円前後の方」のような会社の場合、事前確定届出給与で例えば「取締役の妻に1000万円程度の役員報酬を払っている」ケースでは、課税される金額も社長に比べ低いものになりますので効果的です」、 「法人保険の出口戦略は特別なことをしなくても「普通に」いくつも存在します。しかしあらかじめ準備をせず、土壇場になって「来月決算だし、法人保険ピークだし、解約しなきゃ」というような場合では打つ手は限られてきてしまいます。本業のみならず、タックスプランニングによる「守り」の強化も、経営者にとって大事なことではないでしょうか」、その通りなのだろう。
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暗号資産(仮想通貨)(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・、) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、9月8日に取上げた。今日は、(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・)である

先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード  11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう」、不吉な予告だ。
・『FTT高騰の背景  FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 
FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大」、「政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ」、雰囲気作りは万全だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界  未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方も」、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、同感である。

次に、12月15日付けNEWS Collectが転載したSmart FLASH「資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男、ついに逮捕」を紹介しよう。
https://newscollect.jp/article/?id=975948198830800896
・『12月12日、暗号資産(仮想通貨)の交換所大手・FTXトレーディングの創業者サム・バンクマンフリード容疑者が、バハマで逮捕された。260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った30歳の男は、現状8つの罪で起訴されている。すべての容疑が立件されれば、懲役115年にもなるという――。 2019年に設立されたFTXは、成長に次ぐ成長を続け、世界最大級の規模を誇る暗号資産の交換所となった。だが、11月初頭、財務面の問題が指摘されると、投資家たちが一斉に資金を引き上げ、1週間ほどで経営破綻に追い込まれてしまった。 債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル、日本円で1兆4000億円から7兆円と幅広い数字が入り乱れている。 元参議院議員で、国際政治学者の浜田和幸さんが、こう語る。 「バンクマンフリード氏は、暗号資産の世界で若くして成功した出世頭として、注目を集めていました。マサチューセッツ工科大学で物理と数学を専攻し、両親はスタンフォード大学の教授という家庭で育ちました。 大学卒業後はニューヨークの金融機関で働いていましたが、普通のマネーゲームでは面白くないと、暗号資産の世界に飛び込みました。 彼はメディアを巻き込んだ話題づくりが上手なんです。コロナ禍で生活苦に追い込まれる人が増えると、『人々を救うためにお金を稼ぎたい。困っている人にお金を回して、世界全体をよくしたい』と国際会議の場で語り、世界中のメディアで絶賛されたんです。 バハマに大豪邸を建てたのですが、自宅とオフィスの行き来はトヨタのカローラを自分で運転するなど、メディア受けする姿を巧みに売り込んでいきました。 宣伝も上手で、エンゼルスの大谷翔平選手や女子テニスの大坂なおみ選手など著名人をアンバサダーに据えることで、社会的な信用を勝ち取ったんです。 大谷選手は、ギャラを暗号資産と株で受け取ったと報道されていますが、そのギャラもおそらく消失してしまったのではないでしょうか。大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」 実は、被害にあったのは両選手だけではない。孫正義氏が率いるソフトバンクグループのファンドも1億ドル(140億円)出資していたのだ。同グループの専務執行役員は会見で「影響は極めて小さい」と語っているが、出資額が戻ってくるかどうかはわからない。 前出・浜田氏が、FTXのずさんな経営についてこう説明する。 「専門家がいたわけではなく、資産管理は相当いいかげんだったようです。元ガールフレンドに任せていた運用会社に、彼が集めたお金をどんどんつぎ込んで、自転車操業みたいな形で回していたと言われます。 バンクマンフリード容疑者は、11月におこなわれたアメリカの中間選挙で、民主党におよそ4000万ドル(56億円)も個人献金したと報道されました。 それだけではなく、対抗馬の共和党にも莫大な選挙資金を投じていたと言われます。これはきちんとした収支報告書に出ていないお金でもあるので、今後、大きな問題につながるかもしれません。 実は、FTXはウクライナ戦争にも関わっていたという話があるんです。もともとアメリカからウクライナへ多額の資金援助があったわけですが、ウクライナのゼレンスキー政権は、この資金をFTXに還流させ、マネー・ロンダリングしていた可能性があるんです。 資金還流の話は噂レベルとしても、ウクライナ政府は、FTXのサポートで『Aid For Ukraine』という暗号資産による寄付サイトを作っていたのは事実です。その寄付金も、今はどうなったのかわかりませんが……」 今回の話は、暗号資産そのものの信用を揺らがす大騒動となっており、世界中の投資家たちが事態の行方を固唾を飲んで見守っている。 「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう。世の中、楽して億万長者になれる方法なんてないんですよ」(浜田さん)』、「260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った」、「債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル」、「大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」、「「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう」、これだけの被害をもたらした以上、「50〜60年は刑務所に入る」のは当然だ。

第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、「国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明」、とは驚かされた。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展  「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「台湾」での「被害」には「補償」がなかったのには何か理由があるのだろうか。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて  筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを2016年に設立すると、その代表取締役社長に就任している(現在は取締役会長)』、「小田氏」は「記者会見」の写真を見る限り真面目そうな印象だ。
・『時代の寵児がなぜ指名手配されたのか  ビジネスマンとしての経歴以外には、自民党金融調査会の講師や、党デジタル社会推進本部のプロジェクトチームの有識者として招かれている。本人のツイッターによると、安倍晋三元首相の国葬にも参列しており、政界からの同氏への信任の厚さも見て取れる。 そんな時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか。 前出の指名手配書の、告訴事実の詳細が綴られている欄には、詐欺以外の罪名も並んでいる。それらを要約すると、小田氏に対する嫌疑は以下の3点になる。 ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「政界からの同氏への信任の厚さ」、「時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか」、ここに列挙された「罪名」ではよく分からない。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ  しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「台湾の顧客」の「被害」「2億5000万円相当」について、「当初、補償する姿勢を見せていました」のに「補償」」しなかった理由は何かあるのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明  ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「BPジャパン」は「上場企業」として、「小田氏」の「法的責任」に正面から「向き合う」べきだ。 
タグ:(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・、) 暗号資産(仮想通貨) 「FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方も」、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、同感である。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ」、雰囲気作りは万全だ。 「FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大」、「政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 「暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう」、不吉な予告だ。 真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」 現代ビジネス NEWS Collect Smart FLASH「資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男、ついに逮捕」 「260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った」、「債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル」、「大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」、 「「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう」、これだけの被害をもたらした以上、「50〜60年は刑務所に入る」のは当然だ。 文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」 「国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明」、とは驚かされた。 「台湾」での「被害」には「補償」がなかったようだ。 「台湾」での「被害」には「補償」がなかったのには何か理由があるのだろうか。 「小田氏」は「記者会見」の写真を見る限り真面目そうな印象だ。 「政界からの同氏への信任の厚さ」、「時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか」、ここに列挙された「罪名」ではよく分からない。 「台湾の顧客」の「被害」「2億5000万円相当」について、「当初、補償する姿勢を見せていました」のに「補償」」しなかった理由は何かあるのだろうか。 「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。 ・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。 「BPジャパン」は「上場企業」として、「小田氏」の「法的責任」に正面から「向き合う」べきだ。
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金融業界(その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大) [金融]

金融業界については、8月17日に取上げた。今日は、(その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大)である。

先ずは、10月28日付けFRIDAY「「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/272186
・『今さらコンサルティング力やIT力を求められても…  ①人口減少、②低金利、③デジタル化、という三重苦により、メガバンクや地方銀行の苦戦が伝えられて久しい。特に、個人向けビジネスでは、楽天銀行やSBI証券といったネット銀行やネット証券がその利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、30代から50代のミドル世代、そしてシニア層に至るまで幅広く利用されるようになっており、相対的に銀行は収益機会を失っている。 ネット銀行やネット証券を傘下にもつデジタル企業は概して、①経営スピード、②テクノロジー、③デジタル人材で勝り、既存の銀行と違って、余剰人員と余剰店舗を抱えていないことも強みだ。 こうしたデジタル企業に対抗すべく、メガバンクや地銀の銀行員もデジタル専門力やクリエイティブさが問われるようになっている。 「ジェネラリストに価値はない。全員がスペシャリストになれ」「これまで比較的単純な作業に従事してきた行員をよりクリエイティブな仕事に振り向ける」といった発言をメガバンクの首脳がこぞってしている。 年功序列と終身雇用という暗黙のルールのなかで2年から3年での転勤を繰り返し、本部や支店などの様々な職場を体験するジェネラリストを意図的に養成してきた銀行と銀行員にとって、人事・組織方針の大転換だ。安定性を重視して就職し、一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」と不満の声が聞こえてくる』、確かに「一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」との不満は無理もない。
・『一種の「パワハラ」!?  メガバンク出身のある外資系証券会社のアナリストは、「銀行は、デジタル化に伴う業務量削減によって捻出した余剰人員を営業現場に投入し、コンサルティング業務を強化している。しかしながら、例えば、事務やバックオフィス、本部にいた銀行員が、急に営業の最前線に出され、専門知識や顧客配慮が求められるコンサルティング業務において活躍できるのだろうか。また、本人はそれを希望しているのだろうか」と疑問を呈する。 安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう。 多くの銀行が、豪華な研修施設を持ち、行内研修を充実させるというが、クリエイティブな職種であればあるほど、研修や資格ではなく、経験とセンスの比重も大きくなるものだ』、「安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう」、確かに時間をかえるべき人材育成を、急に手のひら返しで変更するのは、無理筋だ。
・『銀行員から公務員へ転職も  こうした状況下、メガバンクや地方銀行では、銀行に見切りをつける形で離職が相次いでいるという。営業やマーケティング担当、商品企画担当、プライベートバンカーやアナリストといった専門職など多くの職種に及ぶ。それも「20代から30代だけでなく、40代にも及んでいる」(転職サイト会社担当者)という。実際、「銀行員、転職」とスマホで検索してみると、ずらりと様々な転職サイトやアドバイス、動画での体験談まで出てくる。 かつての銀行員の転職や退職だと、家業を継ぐことを除けば、銀行から証券会社や外資系金融会社などが主流だったが、今は様変わりだ。はやりのスタートアップ企業やベンチャー企業の立上げや独立、コンサルティング会社やIT企業に転職かというと、「それはごく一部のケースであり、そうではない」(同)という。 なんと、例えば、メガバンクの場合、政府系金融機関や官公庁、地方銀行の場合、県庁や市役所といった地元の自治体やJAバンクグループや政府系金融機関などに転職するケースが増えているという。官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ。 銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ。銀行を見限り、更なる安定と保守を求めているといえよう。20代、30代の嗅覚は敏感だ。確かに、銀行がなくなったとしても、官庁に県庁、市役所、JAバンクや政府系金融がこの先もなくなることはないだろう』、「官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ」、もともと「銀行」を志向した学生は優秀なので、これらの「試験」もさしたる障害ではなかったようだ。 「銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ」、その通りだ。
・『なぜグーグルでなく、メガバンクに就職するのか?  銀行で退職者、転職者が増える一方、デジタル化が進む以上、銀行でもデジタル人材は必要だ。新しいスマホアプリやシステムを導入したものの、動かす仕組みを理解し、アップデートできる行員は数えるほどしかいない。結局、提携するシステムベンダーやデジタル企業に丸投げし、ブラックボックス化してしまう。みずほFGで相次いだシステム障害の遠因とされる、ブラックボックス化という二の舞を避けるためにも自前のデジタル人材は欠かせないのだ。 デジタル人材は、具体的には、システム開発は無論、クラウド、ビッグデータ、AI、サイバーセキュリティー関連の専門職、データサイエンティスト、金融工学や統計学専門職、アプリなどデジタルプロダクトデザイナーなどを指す。 実際、三井住友銀行では、国内外の大学院卒を対象に、総合職に「デジタライゼーションコース」を設け、ビッグデータやAI等を活用した先進ビジネスを構築する人材を募集している。また、三菱UFJ銀行では、データサイエンティスト、データアーキテクト、サイバーセキュリティーの専門家といった職種で中途採用を継続的に行っている。 もっとも、「なぜグーグルやアップルでなく、メガバンクに」「なぜ起業ではなく、銀行に」という点が解決されない限り、採用は苦戦しそうだ。優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう。 人口減少に低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況』、「優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう」、「銀行」にとっては劣勢を余儀なくされるようだ。
・『すでに早期退職制度も実施されている  人口減少、低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況である。実際、全国銀行全体の経費6.5兆円のうち、人件費は2.7兆円で42.6%を占めている(2022年3月末)。ちなみに、ネット銀行の一角である大和ネクスト銀行の営業経費に占める人件費の割合は16.9%に過ぎない(2022年3月末)。 メガバンクでは、みずほFGでは2026年度末までに1万9000人を削減。三菱UFJ銀行は2023年度末までに6,000人程度の自然減を見込む。多くの銀行で新卒採用の抑制も続いている。 しかし、こうした新卒抑制や定年退職など自然減だけでは対応できず、早期退職制度という名の人員削減が始まることも想定されよう。表向きは、セカンドキャリア支援制度、チャレンジ・キャリア制度、起業・独立応援などもっともらしい前向きな名前となるが、要は早期退職制度だ。 実は既に実施事例もある。2021年6月、名古屋市に本店がある中京銀行が、希望退職者を募集すると発表した。募集対象者は45歳以上の総合職などで、150人が応じ2022年3月末に退職している。なお、中京銀行は愛知銀行と経営統合し、2022年10月には、共同持ち株会社「あいちFG」を設立している。 全国銀行協会によると、メガバンク、地方銀行などあわせて全国27万1,515人の銀行員は、既に前年比で9,187人が減少している(2022年3月末)。 銀行の業務が異業種に代替され、銀行員の仕事がスマホに置き換わるなか、従来型の銀行員が消えてしまう日が刻一刻と近づいているのかもしれない』、「全国銀行」での「銀行員」の減少率は2022で3.3%とかなり高いようだ。

次に、10月6日付けデイリー新潮「「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画」を紹介しよう』、「パパ活女子」とは元気な「執行役員」もいたものだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/10061040/?all=1
・『接待攻勢  東京都民銀行と八千代銀行、新銀行東京が合併して誕生した「きらぼし銀行」。2018年5月の合併後から、行員による顧客の預金着服や妻殺害といった不祥事が相次いだが、さらなる不正も明るみに出そうだ。執行役員が業者からキックバックを受け取り、不正融資を行っていたのである。【写真】現金100万円入りの封筒を受け取るK氏 東京・目黒にある不動産会社の社長が告発する。 19年12月、同業者からきらぼし銀行のKという執行役員を紹介されました。外資出身だというKはファンドの組成が得意だとかで、後々、うちの傘下のソーシャルレンディング会社に転職する希望を持っていた。一方、こちらとしては、きらぼし銀行から有利な条件で融資を引き出すため、Kとの付き合いを始めました」 以後、社長は接待攻勢をかける。酒の席に“パパ活女子”を呼び、K氏に10回以上お持ち帰りさせたという。その成果は、20年7月に現れた。 「“恵比寿3丁目プロジェクト”と称し、2階建てアパートの建設計画を立てました。そのプロジェクトへの融資を受けられないかKに相談した。すると、Kは“自分の口利きなら、融資額の1%をキックバックする仕組みになっている”と言い出したのです」』、「融資額の1%をキックバックする仕組み」とは、さすが「外資出身」だ。
・『偽装工作  キックバックと引き換えに貸出金利を低く抑えるとのことで、「他の信用金庫などは年利3%前後。対して、きらぼし銀行は1.675%でした。Kの申し出を受け入れ、融資金1億1000万円を手にしました。Kはキックバックの振込先として、友人が経営するというコンサル会社を指定してきた。形式上、うちとコンサル会社が“業務委託契約”を交わし、その手数料として110万円を振り込む偽装工作が図られました」 このコンサル会社とは、月々30万円の「ファイナンスアドバイス契約」も締結。その結果、20年12月、東京都内のアパートを購入するプロジェクト2件に対し、1億3000万円の融資が実行された。 これら以外にも、K氏は他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている。 RIZINからのリベートを預かった社長は、証拠として残すため、K氏に渡す場面を隠し撮りしたという。 「週刊新潮」2022年10月6日号「MONEY」欄の有料版では、社長とK氏のやりとりの全貌と現金授受場面の動画を詳報する』、「K氏」は「他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている」、「K氏」はかなりアブナイ「ビジネス」にも手を広げているようだ。

第三に、12月5日付け東洋経済オンライン「銀行を襲う「外債含み損」、待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か、逆ザヤが続き損失は拡大」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/636881
・『銀行が抱える外債の含み損が目下急速に膨らんでいる。どう損失を処理するのか、各行は難しい決断を迫られている。 「金利上昇局面では、もう少しポジションは少なくてもよかった。ちょっと残念だ」。11月14日、みずほフィナンシャルグループ(FG)の決算会見上、木原正裕社長は悔恨の思いを吐露した。 みずほの2022年4~9月期決算は、本業の収益力を示す業務純益が4494億円(前年同期比2.3%減)とまずまずの水準だった。しかし利益の内訳は、当初思い描いていたものとは異なった。国内大手企業や海外向け貸し出しや手数料が伸びた反面、市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益となったのだ。 敗因は米ドル債など海外の債券、通称「外債」への投資だ』、「市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益」、これではお手上げだ。
・『勝負に出た夏の判断が裏目に  アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)による度重なる利上げを受け、代表的な投資対象である米10年債の利回りは、年初の1.5%程度から4%水準にまで達した。今後は5%まで上がるという観測もある。 ところが、みずほを含めた多くの銀行は、「米金利は3%程度が天井」というシナリオを描いていた。 実際、2022年7月には市場関係者の間で「米金利がピークアウトし始めた」という観測が広がった。アメリカの物価上昇が鈍化の兆しを見せ、3%中盤をつけた金利は下落基調に転じた。 金利が下落すると債券価格は上昇する。みずほはここで勝負に出た。債券の「買い場」が訪れたと判断し、米ドル債への投資を積極化させた。 しかし8月に入ると金利は再び上昇し始めた。結局みずほはポジションの解消を余儀なくされ、損失を抱えた。「今はポジションをニュートラルにしている。(市場運用による利益には)期待していない」(木原社長)。金利変動が一服するまで、積極的な売買を控えるという。 想定を上回る金利上昇に、銀行が翻弄されている。みずほのような直接的な損失にとどまらず、取得時の価格(簿価)を下回る「含み損」の拡大も、銀行の財務をむしばみかねない。 含み損は売却するまで、損失としては確定しない。債券を満期まで保有し続け、額面価格で償還されるのを待つことも本来は選択肢だ。だが、銀行にとっては含み損の膨張を無視できない事情がある。 1つは自己資本比率への影響だ。3メガバンクや一部の大手地銀が採用する自己資本規制の「国際統一基準」では、有価証券の含み損を自己資本から差し引く必要がある。現時点で自己資本を大きく毀損するほどの影響はないものの、今後も含み損が拡大すれば自己資本は傷み、銀行経営の手足が縛られる』、爆弾を抱えているようなものだ。
・『「逆ザヤ」で運用するほど損失は拡大  より深刻なのは、外債投資に用いるドルなどの外貨調達コストだ。外貨預金だけでは原資をまかなえないため、手元の円を担保に市場からドルを調達し、外債もしくは外債を組み入れた投資信託に投資を行う。 このとき銀行はいわばドルの借り賃として、日米の短期金利差にあたる額(ヘッジコスト)を支払う。低位に張り付く円金利を尻目にドル金利が上昇したことやドルの需要拡大によって、銀行が負担するヘッジコストが増大しているのだ。 今起きているのは、外貨調達コストが外債の利回りを上回る「逆ザヤ」だ。 増加する調達コストとは対照的に、銀行の多くは固定利付債に投資しているため、債券利息は増えない。調達コストと債券の利回りが逆転した状態では、運用を続けるほど損失を垂れ流すため、一時的な売却損を計上してでも手放し、含み損を縮小させる必要に迫られる。 外債投資をめぐっては、デリバティブ取引を駆使して調達コストを固定化したり、価格変動が外債とは逆方向に働く商品を併せて投資したりすることで、金利変動による損失を抑制できる。三菱UFJFGは、2022年4~9月の間に約5000億円の外債売却損が発生した。しかし相場下落時に価格が上昇するベアファンドを売却することで、業績への影響は相殺させた。 一方、ヘッジ手段をあまり講じず、メガバンクと比較して相対的に体力が乏しい地方銀行への影響はより甚大だ。 横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディアFGは、9月末時点で保有する外債3686億円に対して、含み損を316億円計上している。同社の試算では、仮に米金利が5%、ユーロ金利が3%まで上昇すると、自己資本比率が0.4%押し下げられるほか、半年間で約30億円の運用損が発生する。 同社は2020年3月の株価急落を受け、分散投資の一環で外債を買い増した。これがアダとなった。今期すでに外債を約600億円損切りしたものの、逆ザヤ状態の外債はまだ約800億円残る。今後は株式の売却益なども活用しつつ、含み損の解消に努める構えだ(地銀への影響の詳細についてはこちら)。 米金利の急騰で銀行が含み損に見舞われる光景は、過去にも見られた。2016年末から2017年にかけて、トランプ政権による経済政策がインフレを加速させるとの見方から米金利が上昇。銀行が保有する外債の価格が下落し、含み損の処理に追われた。静岡銀行(現しずおかFG)は2017年3月期に約300億円の債券損失を計上。逆ザヤリスクを抱えた外債を中心に売却した結果だ。 その後、しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ』、「しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ」、実にタイミング悪く「金利急騰」したものだ。
・『外債処理は「政治的な判断」  「外債をどう処理するかは、ひとえに経営者の『政治的な判断』による」。ある大手銀行幹部は指摘する。相場変動が原因とはいえ、巨額の損失を計上して大幅減益や赤字となれば、対外的なイメージが毀損される。そのため外債の処理は業績に影響を及ぼさない範囲でしか進まない、という見方だ。 多くの銀行は含み損をすぐに一掃はせず、利回りが低く調達コストとの逆ザヤが甚だしい外債から順次手放し、売却損を小出しに計上している。 幸い、外債運用を除けば銀行の経営環境は悪くない。企業の設備投資や個人の住宅ローンといった資金需要は堅調だ。倒産件数も少なく、貸倒引当金も見込んだほど発生していない。こうした利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる。 もっとも米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある。逆ザヤを承知で満期まで持ち続けるか、一過性だが巨額の実現損を計上するか。銀行はしばらく、苦渋の選択を迫られる』、(本業の)「利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる」、もっとも「米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある」のであれば、私なら「一過性だが巨額の実現損を計上」する方を選択する。
タグ:「安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう」、確かに時間をかえるべき人材育成を、急に手のひら返しで変更するのは、無理筋だ。 確かに「一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」との不満は無理もない。 FRIDAY「「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」」 金融業界 (その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大) 「官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ」、もともと「銀行」を志向した学生は優秀なので、これらの「試験」もさしたる障害ではなかったようだ。 「銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ」、その通りだ。 「優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう」、「銀行」にとっては劣勢を余儀なくされるようだ。 「全国銀行」での「銀行員」の減少率は2022で3.3%とかなり高いようだ。 デイリー新潮「「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画」を紹介しよう』 「融資額の1%をキックバックする仕組み」とは、さすが「外資出身」だ。 「K氏」は「他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている」、「K氏」はかなりアブナイ「ビジネス」にも手を広げているようだ。 東洋経済オンライン「銀行を襲う「外債含み損」、待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か、逆ザヤが続き損失は拡大」 「市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益」、これではお手上げだ。 爆弾を抱えているようなものだ。 「しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ」、実にタイミング悪く「金利急騰」したものだ。 (本業の)「利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる」、もっとも「米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある」のであれば、私なら「一過性だが巨額の実現損を計上」する方を選択する。
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暗号資産(仮想通貨)(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、9月8日に取上げた。今日は(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・)である。

先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード  11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇」、「バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ」、なるほど。
・『FTT高騰の背景  FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。) さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した」、なにやらバブリーな雰囲気も濃厚だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界  未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。) 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、やはり影響は深刻なようだ。

次に、11月27日付け東洋経済オンライン「FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/635558
・『アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが経営破綻してから、およそ2週間。その衝撃は冷めることなく、日本の投資家や業界関係者の動揺は収まらない。 「預け入れていた資産はおよそ300万ドル(4.2億円)相当。アメリカで適用が申請された連邦破産法11条(チャプター11)の行方次第で全額戻らないかもしれず、とても心配だ」。ツイッターアカウント名「ヨーロピアン」で活動する日本在住の30代男性は不安げにそう話す。 FTXトレーディングは、2022年3月に日本の交換業者を買収し、4月からFTXジャパンに社名変更した。この男性はそれまでFTXトレーディングの口座で取引を行っていたが、社名変更のタイミングで口座がFTXジャパンに移ったという。FTXジャパンの口座はシステムのトラブルで、現在出金できない状況が続いている。 日本の交換業者は金融庁の定めで預かり資産の分別管理が求められている。FTXジャパンも法令に則り、暗号資産はオンライン接続しないコールドウォレット、法定通貨は日本の信託口座において分別管理を行っていると会社は説明する。FTXジャパンが11月21日時点で保有する、円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円、及び別の現預金が約178億円あるという(2022年9月末の純資産は100億円)』、「円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円」、これは本社勘定とは「分別管理」され、保護されると考えてよいのだろうか。
・『日本の金融庁が示したFTX破綻に対する見解  チャプター11の申請書類にはFTXグループの債務整理の対象として日本法人が含まれており、FTXジャパンが保有する資産がそれに充てられる可能性はゼロではない。FTXトレーディングの新しいCEOに就任し、エネルギー取引会社エンロンの破綻処理を監督したジョン・レイ氏は11月19日、チャプター11の手続きの中で「子会社の売却や資本再編といった戦略的な取引が今後の優先事項だ」とコメントしている。 ただし、日本の金融庁の担当者によれば、「会社の資産と個人の資産管理はまったく別。FTXジャパンのコールドウォレットに預けられている暗号資産と法定通貨の預かり資産は、日本法の下で問題なく戻ってくる」という。そのうえで「資産の引き出しをした後も暗号資産の取引を続けたいという利用者もいるだろうし、事業の継続性という意味では優良な売却先が見つかることが望ましい」と話す。 アメリカを拠点に預かり資産は一時期2兆円を超えていたFTXトレーディング。瞬く間に破綻に至った裏にはいったい何が起きていたのか。 FTXはグループ全体で130を超える関係会社を持つ巨大組織だ。その頂点に立つのが30歳のサム・バンクマン・フリード氏。チャプター11の申請書類によると、グループのカテゴリーは大きく4つに分かれる。サム氏はそのいずれにも個人で過半の出資を行っている。) 中でも関係性が深いのが、交換業のFTXトレーディングとアービトラージ(裁定取引)やマーケットメイキング(相場の値付け)など、クオンツ投資と呼ばれる手法を暗号資産に特化して行っているアラメダ・リサーチだ。この2社の関係が、グループ崩壊のきっかけとなった。 発端は、アラメダのバランスシート(貸借対照表)だった。11月上旬、現地専門メディアが、同社の資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークンであると報じた。FTTを担保にアラメダは、FTXトレーディングから100億ドルを借り入れていたこともその後明らかになった。FTXトレーディングがアラメダに融資した資金は顧客から預かり資産の流用だったとされる』、「アラメダのバランスシート」で「資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークン」、とは確かに不健全だ。
・『自社トークンの価値が急落  FTTのような自社トークンは、いわば交換所にとっては「打ち出の小槌」といえる。法定通貨や国債などを担保にしたステーブルコインのように価値を裏付ける資産は不要で、発行の上限はあるものの設計次第では無限にすることもできるといわれる。 大谷翔平選手の広告塔起用などFTXトレーディングによる派手なマーケティングなどによってFTTの価値は上昇し、2022年4月時点の価格は1FTT当たり50ドルまであった。しかし、アラメダの脆弱な財務体質が明らかになったことで、交換所最大手のバイナンスが自社で保有するFTTを売却すると発表。野放図な貸し借りも暴かれたことにより、FTT価格は急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる。 融資元であるFTXトレーディングにもその影響は及び、一時は取り付け騒ぎのような事態が発生。同社は出金機能の停止措置に踏み切り、FTXジャパンも親会社の方針に従い出金を停止した。一方でFTXジャパンは、利用者からの財産の受け入れや利用者との暗号資産取引を継続していたため、11月10日に関東財務局から行政処分を受けている。 その翌日11日にFTXトレーディングはチャプター11の適用を申請。22日に、裁判所で初の法廷審問が開かれている。) 国内の交換所・SBI VCトレードでトレーディング部門を統括する久場健太郎取締役は、「FTXトレーディングのサービスは投資家がロスカットする際に(売買が成立する)約定レートがほかの交換所に比べて格段によかった。マーケットメイカーであるアラメダの流動性が豊富にあるからで、当時はさすがだと思っていたが、今から思えばアラメダの財務はFTTに依存しており、砂上の楼閣だったといえる」と話す』、「FTT価格は」、「4月時点の価格は・・・50ドル」だったのが、「急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる」、これでは担保にしていたら、大変だ。
・『暗号資産の相場が上向く兆しはある  アメリカを震源地とする今回の騒動、国内の暗号資産ビジネスには、どのような影響が及ぶのか。 日本の暗号資産交換業は2018年1月のコインチェックによる大規模な顧客資産の流出を受けて、厳しい規制を課されてきた。 2019年の法改正では交換業者に対し、顧客から預かる暗号資産全量の上限5%を除き、コールドウォレットで管理することを義務づけ、常時オンラインに接続されているホットウォレットで管理する顧客の暗号資産は、別途それに見合う弁済原資を保持することが義務づけられた。 メルカリの完全子会社で暗号資産交換業を営むメルコインの青柳直樹CEOは「暗号資産交換業に対する規制は、自己資本の蓄積などを含め、日本が世界で最も厳しいものになっている。FTXの破綻により、今後世界的に暗号資産への規制が強まることが予想される中で、逆に日本の規制は利用者に対して安心材料になるだろう」とみる。 現在の価格は約200万円前半と1年前と比べ3分の1に下がった代表的な暗号資産ビットコインの相場も上向く兆しはあるという。 同じく交換業を運営するビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリストは、「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が利上げペースを緩めるという観測があり、その前提でみれば来春には相場が回復してもおかしくない。経営破綻はFTXのガバナンス不全という同社固有の問題があったからで、ブロックチェーンにより信頼のコストが下げられるという暗号資産の価値は失われていない」と指摘する。) 一方で、「FTXショック」は暗号資産の規制改革には逆風となりそうだ。 暗号資産やトークンを使った「ウェブ3」と呼ばれる次世代のウェブビジネスを推進するために、業界関係者や一部の政治家が取り組んできたのが、税制改革だった。具体的には、ウェブ3を手がける企業がトークンを保有するだけで、その含み益に対して法人税が課される状況を解消することなどを目指している。 これらのロビイング活動についてマネーフォワードでパブリックアフェアーズ室長を務める瀧俊雄執行役員は、「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い。日本では個人の暗号資産取引を申告分離課税することなども求めているが、アメリカの政策は思うように進まないとなると、日本の推進派がよりどころを失うことで税制改革が遅れるおそれがある」と分析する』、「「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い」、共和党が下院を制した現在では、「税制改革」はますます難航するだろう。
・『暗号資産ビジネスは逆風を跳ね返せるか  ウェブ3をめぐっては、11月8日にNTTドコモがアクセンチュアなどと組み、新会社を設立すると発表。ウェブ3の分野に対し、向こう5~6年以内に最大6000億円の投資を行うとしている。暗号資産の交換やトークン発行といった共通基盤を提供するという。 ほかにも野村ホールディングスがスイスで暗号資産関連のベンチャーキャピタルを設立したり、電通がグループ横断の支援組織「web3 club」を発足したりするなど、日本の大企業も暗号資産を意識したビジネスを始めようとしている。 FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている』、「日本」では「ウェブ3」への動きが出てきたが、「FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている」、その通りだろう。

第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、悪い時には、悪いことが重なるものだ。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展  「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されている」、信じ難いような事件だ。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて  筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「BPジャパン」は何故、このような不祥事を起こしたのだろう。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ  しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件」、「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認」、「当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」、どういう事情の変更があったのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明  ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明」、送金や受取の記録をチェックすれば、判明する筈だ。「スプレッド」「計算」の「間違い」など「不審な点」も個々にチェックすれば、判明するのではなかろうか。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「リミックス社」は11月30日付けで「一部報道の件について」として以下のプレスリリースをした
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08938/5eee573d/b7d4/423a/824a/bbfcff3301a2/140120221130573320.pdf
どちらが正しいのかは直ちには分かりかねるが、「リミックス社」の言い分はやや苦しいような印象を受けた。
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投資(商品販売・手法)(その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ) [金融]

投資(商品販売・手法)については、6月3日に取上げた。今日は、(その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ)である。

先ずは、7月4日付け日刊ゲンダイが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307585
・『物価高が止まらない。菓子や清涼飲料水、食用油にビール……。値上げされない商品を探すほうが難しいぐらいだ。今月下旬に公表された5月の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年の同月に比べ2.1%上昇。9カ月連続で前年を上回った。このインフレ下、生活をどう守ればいいか。「全面改訂 第3版 ほったらかし投資術」がベストセラーになっている経済評論家に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは山崎氏の回答)。 Q:長期化するウクライナ戦争に加え、過度な円安進行で物価上昇が続いています。給与が上がればいいのでしょうが、一部の大手企業を除くと収入アップは厳しい状況です。賢い生活防衛術とは? A:金融業界からみると、インフレ時の商材は2つあります。1つは老後不安、もう1つはインフレリスクです。物価は上昇しているのに、銀行に貯金してあるお金は超低金利のままだからほぼ増えません。預金しているお金の価値は実質的に目減りするので、投資したほうがいいと勧めます。大事なのはインフレでも基本的なお金の扱い方は変わらないということです。インフレでもインフレでなくても、お金はなるべく増やしたいし、ムダな支出はしないほうがいい。最近は雑誌などでも節約術の特集が目立ちますが、欠けている視点があります。「もっと稼ぐ」です。稼ぎを増やすにはどうしたらいいか。これが一番、建設的だし重要なポイントでもあります。 Q:どうやって稼ぎを増やすか……。簡単ではありません。 A:大きく3つあると思います。副業、転職、そして自分の人材価値を高めるです。仕事に役立つ経験を積むのは大事です。それと「時間をうまく買う」も効果的。例えば、今より通勤時間が30分短くなる場所に住むと、1日に往復で1時間余裕が生まれます。その時間で残業や副業をしてもいい。睡眠時間を1時間多く取れば、頭の回転もよくなり、能率は上がるはずです。人間関係も大切です。外食をやめて節約しようとすると、人間関係は貧相になります。人材としての価値も向上しにくくなるでしょう。自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます』、「自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます」、極めてオーソドックスな見方だ。
・『食費を減らすのは「良くない節約」  Q:いまの収入のまま生活防衛するには、節約するしかありません。 A:ムダなお金を使わないは基本です。その上で、「オヤジの節約術」を考えてみましょう。確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則です。いい節約か、そうでないかを見分ける基準です。携帯電話を格安SIMに変更した場合はどうでしょう。変更後、確実に料金は下がります。近ごろは格安SIMも通話やデータのやりとりに不便を感じないのでストレスは小さい。実害もないのでいい節約です。 Q:悪い例は? A:食費の節約です。飲み会や外食の回数などは月ごとに異なるので、確実な節約にはなりません。それにランチ代を1000円から800円に削ったら、850円の焼き肉定食は食べられなくなります(笑)。これはストレスです。場合によっては食費を削減したために栄養が偏り病気になってしまう実害リスクもあります。良くない節約といえます。また節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃でしょう。ただ、引っ越しなどを伴うのですぐに見直すのは難しいとなれば、次は生命保険。保険が必要なのは基本的に貯金もなく、親にも頼れない「子どもが生まれたばかりの若い夫婦」ぐらいです。それも保険料は安く、掛け捨ての「ネット保険」で十分。医療保険に入っていなくても、健康保険には高額療養費制度があります。これは一定以上の医療費がかかったときは健保から医療費が還付される制度。だから、高額な医療保険に入る必要はありません』、「オヤジの節約術」は、「確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則」というもの。好例は「携帯電話を格安SIMに変更」。「食費を減らすのは「良くない節約」」、「節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃」、その通りだろう。
・『今どきのワザ「サブスクを見直す」  Q:見直すべき削減項目は結構ありますね。 A:今どきの節約方法も見逃せません。サブスクです。ネットTVやオンラインサロンなど最初の数カ月こそよく利用していても、現在はあまり使わなくなっているサービスはあるものです。それを探していくと、それなりの節約になります。また支払いをクレジットカードにすると便利です。カード明細がほぼ家計簿になるので、不要なサブスクや支出をピックアップしやすい。できれば1枚のクレジットカードに集約したい。現金で管理するよりセキュリティー面や衛生面も優れています。支出の見える化は大切です。 Q:コロナ禍で趣味を充実させたり、何かを収集したりする人が増えました。 A:「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります。地位財とは、自分のステータスを表すようなモノで典型的なのは不動産です。100坪の家はそれなりに広いし、世間からみれば十分に満足できる物件です。でも、周りの家が200坪、300坪あると、100坪に住んでいる人は満足できず、幸福を感じません。つまり他人との比較で幸福を得るのが地位財。クルマや腕時計、ファッションなどもそうでしょう。その競争から降りると、気持ちは楽になるし、余計な支出も減ります。地位財から“降りる”選択を検討してみて下さい』、「サブスクを見直す」は確かに有効そうだ。「「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります」、その通りだ。
・『資産運用はコレ1本でOK  Q:老後資金2000万円問題はどう考えますか。 A:実際に2000万円必要かどうかは人によって違います。大切なのは自分にとって必要な老後資金はいくらか。そして計画的に貯めることです。仮に65歳で引退し、85歳まで生きるとしましょう。もしかすると95歳まで長生きするかもしれません。余裕を持って老後は30年とします。30年は360カ月。この360を、ひとつの単位として考えると分かりやすい。もし3600万円の老後資金を持っていたら、毎月10万円を取り崩せる計算です。年金プラス10万円になります。9万円でも大丈夫と思ったら、360万円分を投資などに回せます。 A:年齢によっても異なるでしょうが、自分は毎月いくら貯めれば老後の不安がなくなるのか。心配は尽きません。 「人生設計の基本公式」というサイトがあります。現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額(貯蓄や将来の退職金など)、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります。例えば年収600万円で老後生活費率を70%、資産額は1500万円、現役年数12年、老後年数20年と打ち込むと、必要貯蓄率は21.15%と出ます。一般的なサラリーマンだと、貯蓄率は15~20%が限界。これに近づくように現役年数を延ばすなどして下さい。 Q:資産運用は「ほったらかし投資」で大丈夫ですね。 A:運用とはお金を増やすこと。年齢が違っても目的は同じです。違うとすれば運用する金額と、リスクの取れる金額。運用する対象(金融商品)は20歳も60歳も同じでいい。具体的には改訂版の「ほったらかし投資」で触れているように、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません。ただ、この投資信託はネット証券しか扱いはなく、証券会社の窓口では購入できません。では、どうするか。その場合は、窓口でETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」(証券コード2559)を買う。窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです。手数料が高いなど、金融機関が得する商品ばかりだからです。セールスされたときの対処法は「よく考えて、必要があれば、私のほうから連絡します」とキッパリ言うこと。また、どうしても減らしたくない資金は個人向け国債がふさわしいと思います』、「「人生設計の基本公式」というサイト」で「現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額・・・、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります」、「運用する対象(金融商品)」は「「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません」、「証券会社の窓口では・・・ETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」・・・を買う。「窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです」、その通りだ。

次に、8月4日付け文春オンライン「さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/56340
・『日本初の独立系投信会社として知られる「さわかみ投信」(東京都千代田区)。同社の最高投資責任者が、6月30日の臨時株主総会で事実上、更迭されていたことが「週刊文春」の取材でわかった。創業者・澤上篤人元社長(75)らが取材に対し、退任を認めた。 さわかみ投信を1996年に創業した澤上氏は“金融界のレジェンド”と呼ばれる人物だ。「さわかみファンド」一本の運用にこだわり、長期投資の重要性を唱えてきた。 ただ、2011年に社長から会長に退くと、2013年に社長に就任したのが、息子の澤上龍氏(46)だった。 「龍氏は専門学校卒業後、飲食店勤務などを経て、2000年にさわかみ投信に入社しました。金融の知識は乏しかったものの、“御曹司”として出世を重ねていった。昨年6月には篤人氏が会長を退任し、龍氏が“一本立ち”を果たしたと見られました」(現役社員)』、「澤上篤人」氏は数少ない独立系運用会社創業者として、かねてから尊敬していたが、息子を後任にしたとはガッカリした。
・『会社の功労者を事実上“更迭”  だが、6月30日の臨時株主総会で、取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動することが発表された。「事実上の更迭人事」(同前)とされる。 草刈氏は2008年、さわかみ投信に入社。2015年に最高投資責任者に就き、社内では「約2000億円の運用資産を約3400億円に成長させた功労者」(同前)と言われてきた。社員からもこの人事に対し、反発の声が上がったという。 にもかかわらず、なぜ、更迭されたのか。 社長の澤上龍氏は次のように答えた(Qは聞き手の質問、Aは澤上龍氏、或いは澤上篤人氏の回答)。 Q:解任理由は? A:「私が解任したわけではない。株主が決めたこと」 株主とは、澤上篤人氏のこと。さわかみ投信の100%株主はさわかみホールディングス。同社の株式をほぼ100%保有するのが、篤人氏の財団だ』、「取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動」、どういうことなのだろう。
・『澤上篤人氏「俺の下で鍛え直ししているの」  創業者の澤上篤人氏は以下のように答えた。 Q:草刈氏の解任の理由は。 A:「解任ではない。もともとうちは暑苦しい会社だったけれど、草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた。ホールディングスに来て俺の下で鍛え直ししているの。更迭ではない」 Q:社員には動揺が。 A:「色々言われるだろうけれど、5分の2くらい社員は辞めても構わない。それくらいさわかみ投信の原点は大事にしているから」 8月3日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および8月4日(木)発売の「週刊文春」では、更迭されたもう1人の取締役の名前、全社員の定例会議で複数の女性社員が澤上龍社長に詰め寄った場面、最高投資責任者だった草刈氏の言葉についても報じている。また、「週刊文春 電子版」では、オリジナル記事として澤上龍社長と澤上篤人氏との詳細な一問一答を配信している』、「草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた」、理解し難い説明だ。所詮、創業者が思い通りに経営したいのだろうが、運用成果に悪影響が出ないか否かを注視したい。

第三に、10月25日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/62492
・『日本経済は長く続いたデフレからインフレに状況が変化しつつある。経済評論家の加谷珪一さんは「インフレ時代に一番やってはいけないのは、銀行に預貯金を預けっぱなしにすること。物価上昇分だけ、資産を失うことになる」という――。(第3回) ※本稿は、加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『インフレでは「現金は最弱の投資対象」  ここからはインフレ時代において資産をどのように管理したらよいのかという運用の話に移ります。 デフレの時代においては、現金は最強の投資対象などと言われてきましたが、インフレ時代はまったくの逆になります。インフレが進んでいる時に多額の現金や銀行預金を保有していることは損失につながることを頭に入れておく必要があるでしょう。つまりインフレ時代において、現預金の保有はご法度なのです。 インフレとは継続的に物価が上がることを意味しています。たとえば、今年100万円だった自動車が5年後には150万円になっているという話です。この時、私たちの銀行預金はどうなるでしょうか。 今、銀行に預けている100万円を下ろせば、すぐに100万円の自動車を購入できます。しかし5年後には、この自動車は150万円出さなければ買うことができません。いっぽうで銀行預金は利子を除けば、5年経ってもやはり100万円のままです。つまり銀行預金の価値は5年で約3分の2に減ってしまったということになります』、「インフレ時代において、現預金の保有はご法度」、その通りだ。
・『現金の価値は気づかないうちに下がっている  インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます。ただ、インフレというのはジワジワと進みますから、日常生活では現金の価値が下がっていることについてなかなか認識できません。5年や10年という時間が経過し、気がつくと自身の資産が減っていた、あるいはなくなっていた。 これがインフレの怖さです。 銀行預金と同様、国債など債券に対する投資もインフレ時は大敵となります。 債券という商品は、満期まで保有していれば、その間に発行体(その債券を発行した企業や政府など)が破綻しなければ、毎年、一定額の利子を獲得できます。しかし満期になった時には、債券を買った時の元本がそのまま返ってくるだけです。 したがって利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません。仮に期間が5年の債券で、5年間で物価が1.5倍に上昇していた場合には、債券の購入者は実質的に損してしまいます』、「インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます」、「利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません」、その通りだ。
・『借金や固定金利の住宅ローンは「有利」  このように現金、銀行預金、債券はインフレにおいて著しく不利なわけですが、逆に借金は有利に働きます。 5年後に返済する契約で100万円を借りていた人がいるとしましょう。先ほど例に挙げたように、インフレが進み、5年後に物価が1.5倍になった場合、100万円の自動車は150万円になっているはずです。ところが100万円の借金は当初の契約通り、物価が1.5倍でも100万円を返すだけですみます。実はインフレが進んでいる時に借金をすると、インフレ分だけ利益を得ることができるのです。 だからといって、むやみに借金をすることは絶対にやめるべきですが、固定金利で住宅ローンを組んだようなケースでは、貸し主に対する支払い総額は変わりませんから、場合によってはインフレで大きな利益を獲得することも十分にありえます』、「借金や固定金利の住宅ローンは「有利」」、その通りだ。
・『物価が2倍になれば、政府の借金は半分に  過度なインフレでもっともトクをするのは政府でしょう。 現在、日本政府は1000兆円の債務を抱えており、これが原因でなかなか金利を上げられないということは第2回の記事でご説明しました。もし金利が大幅に上昇する前に過度にインフレが進んだ場合、物価は急上昇しているにもかかわらず、政府の借金の額は変わりません。最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります。 日本政府は今のところ税収を増やすことで政府債務を減らそうとしていますが、南米各国のように、意図的にインフレを発生させ、国民から実質的に預金を奪って政府の借金をチャラにしようと試みる政府もあります。 どちらがよいのかは国民の判断次第ですが、政府がインフレを放置した場合、基本的に重い税金が課せられていることと同じであるという現実について理解しておく必要があるでしょう』、「最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります」、「インフレ課税」とは嫌だが、実態をよく表した言葉だ。
・『不動産はインフレに強いと言われるが…  不動産は一般的にインフレに強い商品と言われており、インフレが予想される時に不動産を買うことはどこの国でも鉄則になっています。しかし日本の場合、特殊事情がありますから、不動産については条件付きの投資対象と考えてください。 実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です。 物価が上昇した分だけ不動産の価格は上がっていきますから、現金を保有している場合と比較して、資産の価値を維持することができます。しかし、金利によって返済額が変化するローンを組んでいた場合には、物価が上がると銀行への返済額も増えてしまうので、大きな利益にならないケースもあります。 第2回の記事で説明した変動金利での住宅ローンがこれに該当しますし、賃貸用の物件を短期ローンで購入している場合も、金利負担が大きくなりますから、必ずしも得策とは言えません』、「実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です」、なるほど。
・『価値を上げる物件を慎重に見極める  不動産会社への投資も基本的な仕組みは同じです。負債の割合が高く、しかも短期融資の比率が高い企業の場合、資産価格が上がっても業績は悪化する可能性が高く、株価はあまり期待できないでしょう。 加えて日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません。 地域の中心地から遠いエリア、あるいは近いエリアにあっても、駅からの距離が遠い物件の価格はあまり上昇しないと考えてください。今後、インフレが進むにつれて価値を上げる物件とそうでない物件の格差が急拡大すると予想されます。日本の場合、もともと価値が高かった物件の価格がさらに上がる可能性が高いですから、投資をする際には、物件の選別を慎重に行う必要があるでしょう』、「日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません」、その通りだ。
・『持っているだけでは収益を生み出さない金  一部の人はインフレと聞くと、金への投資を考えるかもしれません。 確かに、インフレが進む時は金の価格も上昇することが多く、インフレヘッジの有力な投資対象と言われています。しかしながら、金は特殊な商品であり、その特徴を理解せずに金投資を行うことは危険です。 一般的な投資対象と金の最大の違いは、金は持っているだけでは収益を生み出さないという点です。つまり、金は価格が上昇しない限り、収益を生み出さない商品なのです。 株式の場合、株価の値上がりが期待できるだけでなく、企業がしっかりと利益を上げていれば、配当を得ることができます。インフレ時に債券はお勧めできないという話をしましたが、債券も保有している間は利払いを受けることができます。ところが、金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です。金を保有しておくには、貴金属会社に保管を依頼したり、自宅の場合には金庫を購入したりするなど、保管コストが必要となります。金への投資を金融商品化した金ETF(上場投資信託)などの商品もありますが、これも取引価格に変化がない場合には、毎日すこしずつ、その基準価格は下がっていきます』、「金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です」、なるほど。
・『金投資に向いているのは投資家や富裕層  こうしたデメリットがあるにもかかわらず、金が投資対象になるのは、インフレ時に価格上昇が期待できるからです。厳密に言うと、金は世界の基軸通貨である米ドルと反対の値動きを示すことがほとんどです。インフレでドルの価値が下がると金の価格が上がるという流れです。 金にはこうした特徴がありますから、インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です。あまり資産を持っていない人が、いきなり金に多くの資金を注ぎ込むことはやめたほうがよいでしょう。 以上、3回にわたり、インフレが今後どのように進み、どう対応すべきかをテーマを絞って解説してきました。今回のインフレは非常にやっかいです。「自分の身を守る」ためにも、さらなる情報を集めることをおすすめします』、「金」は「インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です」、その通りだ。

第四に、11月17日付け現代ビジネスが記載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102287?imp=0
・『家賃5000万円のオフィス  「華麗なる投資集団」といって良かろう。 オフィスは、東京・港区の地下鉄六本木1丁目駅に直結した超高層「住友不動産六本木グランドタワー」の15階にある。1020坪のワンフロアを借り切り家賃は月約5000万円。インテリアに気を配った豪華オフィスでスタッフが投資家を出迎える。 経営するのは菊地翔(かける)氏。1977年生まれの「天才トレーダー」でFX(外国為替証拠金取引)では利益率2520%という驚異的なトラックレコードを記録したという“伝説”を持つ。ネットでは1日に数千万円を費やす豪快なキャバクラ遊びが暴露されており、遊びの際は「かけるん」と呼ばれている。居住するのは虎ノ門の高層マンション41階の87㎡。約3億円をキャッシュで購入した。 投資集団の名は「エクシア合同会社」──同社ホームページによれば、累計投資家数は1万1974名で累計出資金額は723億円である。投資ではなく出資となっているのは、顧客である投資家がエクシア合同の社員権を購入する形態となっているためだ。だから配当は社員権持分に応じて行われ、退社時に「持分払戻額」を受け取ることになる。 社員権販売で出資者を募るのはかなりイレギュラーである。近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない。 その華麗さに今年3月以降、影が差し始めた。5月からは投資家の払戻請求に応じないことが多くなり、訴訟が相次いでいる。また証券監視委は、「合同会社の社員権取得に対する出資と称して、不適切な投資勧誘が行われている」として、6月21日、金融庁設置法第21条に基づく建議を行った。それを受けて内閣府令は改正され、10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである。 追い打ちをかけるように、10月26日にエクシア被害対策弁護団のホームページが立ち上がり、広く情報が開示され、依頼受付が行われている。既に、第一次提訴(原告32名、被告エクシア合同)、第二次提訴(原告22名、被告エクシア合同)が行われ、第三次募集に入っている』、「近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない」、「10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである」、同社のバブルは終わったようだ。
・『訴訟の頻発と仮差押え  筆者が東京地裁で確認したところでは、法人や個人を原告、エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう。またエクシア合同の出資金送金口座を仮差押えした債権者がいるし、元幹部社員が「不法行為に基づく損害賠償請求訴訟」を起こしている例もある。 菊地代表の富の象徴のような高層マンションにも、10月に入って2件の仮差押えが登記されていた。訴訟の頻発と会社の銀行口座や代表の個人資産への仮差押えは、2015年の設立以降、高い配当率と代表や幹部らの派手な私生活で人気を集めてきたエクシア合同が、危機的状況に陥っていることを意味する。 エクシア合同はどんな状況にあるのか。投資家からの依頼を受け、準備中も含めて10件の原告訴訟代理人となっている唐澤貴洋弁護士が説明する。 「エクシア合同は、設立から2021年の年初ぐらいまでは海外法人に貸し付け、そこが運用を行い、その利息をエクシア合同が受け取り、出資者(社員)に分配する形でした。最初はイギリス法人のエクシア・リミテッドで次がシンガポール法人のエクシア・プラベート・リミテッド。ところがエクシア・リミテッドは休眠状態のまま解散。エクシア・プラベート・リミテッドの会計情報を取り寄せると、資産は2017年の段階でなく、18年になっても4236シンガポールドル(約34万円)でした。 そうした状態で、どうして高額配当が可能だったかは疑問です。また、現在はエクシア合同が子会社のエクシア・アセット・マネジメント(第二種金融商品取引業者)とエクシア・デジタル・アセット(暗号資産交換業者)に投融資を行い、利益を得て出資者に配当する形となっていますが、この両社は経営が思わしくなく、配当に応じられる状況にはありません。つまり設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ。 2016年 97・36% 2017年 43・84% 2018年 43・99% 2019年 35・33% 2020年 38・30% 2021年 18・49% これなら菊地、関戸両氏を始めとする幹部がどれだけ高額報酬を手にしてもいいし、豪華オフィスで余裕の業務を行うこともできる。また出金要請に応じることは可能なハズである。出資者は「マイページ」を割り当てられており、そこには出資額に応じた「現在評価額」が明示されている』、「エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう」、「設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ」、不可解だが危機的状況にあるようだ。
・『「究極の自転車操業」疑惑  ところがエクシア合同は、出資者が退社を要望し、「現在評価額」を請求してもそれに応じない。なぜなのか。 エクシア被害対策弁護団は、リンク総合法律事務所の弁護士を中心に結成されている。事務局長の小幡歩弁護士が説明する。 「原告らは、8月31日に到達する『通知書』によって、会社法に基づいた退社の意思表示をしました。それにより2ヵ月後の10月31日までには、全員の退社を認め、持分払戻請求に応じなければなりません。ところが、会社側は定款第15条の『代表社員は、その裁量により当社全体の払戻金の総額を設け、また、払戻金額の各社員ごとの配当を行うことができる』という但書を根拠に、払い戻しを拒絶しているのです」 合資会社の社員権を販売する、という形態の投資勧誘を憂慮した金融庁が、流行に歯止めをかけるべく内閣府令を改正したことは前述した。そのイレギュラーな社員権を使って定款で支払いを拒絶するのは、「会社法上も消費者契約法上も民法上も無効」というのが弁護団の見解である。 信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する。 高額配当を謳って投資を募りながら、実際には他に流用、あるいは自ら費消しながら、集めたカネを前の出資者に配当する究極の自転車操業がポンジスキーム。唐澤弁護士はこう続ける。 「海外での運用実態が見えず、国内子会社も総じて経常損失にある状態では、そう判断せざるを得ないのです」 出資者のなかには民事だけでなく、刑事告訴に踏み切ろうとする動きもある。まさに「華麗なる投資集団」のメッキは剥げ、崖っぷちに立たされている。 エクシア合同は、信頼醸成委員会、コンプライアンス委員会を立ち上げるなど内部規律の確立を図っている。また10月13日には広報PR部を設置、「メディアや顧客とコミュニケーションを図る」と発表した。しかし筆者が取材依頼を重ね、質問書を用意して回答を求めたものの、「対応は致しません」と、質問書を受け取ることさえしなかった。 批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる』、「信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する」、「批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる」、同感である。
タグ:投資(商品販売・手法) (その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ) 日刊ゲンダイ 山崎 元氏による「インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く」 「自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます」、極めてオーソドックスな見方だ。 「オヤジの節約術」は、「確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則」というもの。好例は「携帯電話を格安SIMに変更」。「食費を減らすのは「良くない節約」」、「節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃」、その通りだろう。 「サブスクを見直す」は確かに有効そうだ。「「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります」、その通りだ。 「「人生設計の基本公式」というサイト」で「現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額・・・、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります」、「運用する対象(金融商品)」は「「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません」、「証券会社の窓口では・・・ETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」・・・を買う。「窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです」、その通りだ。 文春オンライン「さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」」 「澤上篤人」氏は数少ない独立系運用会社創業者として、かねてから尊敬していたが、息子を後任にしたとはガッカリした。 「取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動」、どういうことなのだろう。 「草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた」、理解し難い説明だ。所詮、創業者が思い通りに経営したいのだろうが、運用成果に悪影響が出ないか否かを注視したい。 PRESIDENT ONLINE 加谷 珪一氏による「銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険」 加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書) 「インフレ時代において、現預金の保有はご法度」、その通りだ。 「インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます」、「利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません」、その通りだ。 「借金や固定金利の住宅ローンは「有利」」、その通りだ。 「最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。 財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります」、「インフレ課税」とは嫌だが、実態をよく表した言葉だ。 「実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です」、なるほど。 「日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません」、その通りだ。 「金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です」、なるほど。 「金」は「インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です」、その通りだ。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ」 「近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない」、「10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである」、同社のバブルは終わったようだ。 「エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう」、「設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ」、不可解だが危機的状況にあるようだ。 「信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する」、「批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キ ャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる」、同感である。
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