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金融関連の詐欺的事件(その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、4月14日に取上げた。今日は、(その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」)である。

先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した編集者・ライター・昭和文化研究家のミゾロギ・ダイスケ氏による「【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編 」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98216?imp=0
・『戦後の高度経済成長期以降、無数の前例があるにもかかわらず、被害者を出し続けている不思議な詐欺の手口がある。「M資金詐欺」である。この詐欺の類型では、大企業の経営者や多くの資産を有する実業家などが被害に遭っている。「M資金詐欺」とはどんなものか? なぜ、被害が後をたたないのだろうか? (※事件発生当時の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、週刊文春などの報道をもとに構成しています。またわかりやすさの観点から、当時の紙面・誌面を平易な文章に修正している箇所があります)』、いまだに「M資金詐欺」類似の事件が起きていることから、元祖の事件を振り返ることにも意義が大きい。
・『「存在が証明されたことがない」謎の資金  終戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本で接収した莫大な資産をもとに秘密裏に運用され続けている「M資金」と呼ばれる資金がある……。 一般的な「M資金詐欺」は、上記を前提とした詐欺である。 ただし、M資金について、日本政府が公式に言及したことや、司法機関やメディアなどが存在を立証したことは1度もない。つまり、一種の都市伝説である可能性も高いのだ。 一方で、GHQの水面下での動きは謎の部分も多く、その背景がM資金に「あってもおかしくない」と思わせる妙なリアリティを与えていた。 なお、M資金の「M」は、GHQ経済科学局・局長のウィリアム・マーカットの頭文字だとされるが、ダグラス・マッカーサー(GHQ最高司令官)、フリーメイソン (またはフリーメイソンリー) 、MSA協定(日米相互防衛援助協定)などの頭文字だという説も存在する。もっとも、存在しなければ名称の由来を探ること自体が無意味だ。 他方、一部には「M資金は存在する(した)」と主張する声もあるが、その点については深追いしないこととする。なぜなら、本稿の主題であるM資金詐欺において、これから明らかにするようにM資金の存否は「重要ではない」からである』、「M資金の存否は「重要ではない」」のは何故だろうか。
・『「 M資金詐欺」の典型的な手口  M資金詐欺において、主なターゲットとされるのは、経営者、事業家など普段から大金を動かしている人たちである。詐欺師は、そうした人々の「自尊心」や「山っ気」を絶妙に刺激する。そのベーシックなシナリオは以下のようなものだ。 まず、国家の中枢部に近い立場にあると自称する人物(詐欺師)が面会を求めてくる。そして、「実はM資金と呼ばれる巨大な秘密資金がある。選ばれたごく一部の人しかその存在を知らない。あなたは、その一人に選ばれたので、M資金のなかから多額の融資を受けられる」といった旨が説明され、他言無用であることが強調される。 「社会に役立てるための融資である」といった理由で、無利子、無担保、返済義務ナシなど通常ではありえない条件が示されることもある。また、これまでに資金を託された企業や人物などのリスト(ニセモノ)、資金の存在を証明する公的書類(ニセモノ)、詐欺師と要人(ホンモノ)とのツーショット写真などを見せられ、別の地位の高い人物(ニセモノ)との対面などもセッティングされる。 こうした演出によりすっかり信じ切った被害者は、「自分は選ばれし特別な人間である」といった優越感に酔いつつ、巨額融資によるメリットに浮足立つ。そうなれば、詐欺師の思うつぼだ。融資の前提として、手数料、紹介料といった名目で金銭の振り込みを請求するのだ。 何十億円、何百億円の融資を受けられると信じ込んだ人は百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう。着金を確認した詐欺師が以後、連絡を断つのはいうまでもない』、「無利子、無担保、返済義務ナシ」というあり得ないような好条件で、「何十億円、何百億円の融資を受けられる」のであれば、「手数料、紹介料」の「百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう」、欲の皮が突っ張ると、常識的判断など吹っ飛んでしまうのだろう。
・『詐欺師にとって重要なことは?  「M資金詐欺において、M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである。 また、相手に“巨大な資金から多額の融資が受けられる”と思い込ませることができれば、資金の名称がM資金である必要もない。実際に、他名称の架空資金をネタに同じような詐欺を働いた手合いもいるし、「M資金はインチキだが、この●●資金は実在する」といったロジックを用いた詐欺師もいた。 ただし、M資金をネタにした詐欺犯罪の事例が多かったこともあり、巨大資金から多額の融資をもちかけ、金銭を騙し取る犯罪行為そのものを「M資金詐欺」と総称することがあるのだ。ここからは、事件当時の報道をもとに、「M資金詐欺」のアウトラインをなぞってみよう』、「M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである」、なるほど。「「M資金詐欺」のアウトライン」とは興味深そうだ。
・『「元首相の親族」を名乗る  「またM資金サギ 融資話で1億5千万円」(朝日新聞1980年1月21日付夕刊) まずは、“正統派”ともいえるM資金詐欺の例から紹介しよう。経営難から融資を求めていた経営者に「M資金から3億円を融資できる」ともちかけ、380万円を「運動資金」としてだまし取っていた金融ブローカー・岩谷建蔵(57=仮名)が逮捕された。 「岩谷はこのほか都内の十社や群馬、九州の小企業主から計一億五千万円をだまし取っていた」(同上) 容疑者の岩谷は中小企業経営者の前に高級外国車に乗って現れ、「アメリカ大使館の嘱託顧問」を名乗ったり、元首相夫人の親戚だと吹聴したりしたという。インターネットのない時代、被害者はそうした怪しいプロフィールを容易に確認する術はなかったのだ』、現在では、「そうした怪しいプロフィール」は、インターネットで「容易に確認」できる。
・『「M資金で1億円詐取 組員ら三人を逮捕」(朝日新聞1978年11月6日付夕刊)  M資金の噂は反社会勢力にも利用された。 警視庁組織暴力犯罪取締本部と本富士署は六日までに、詐欺会社を作り、『M資金、CIAやオイルダラーの資金を融資してやる』『おたくの銀行に数億円を預金してやる』などうそをついて企業や銀行から謝礼金などの名目で総額一億一千万円だまし取った暴力団関係者の三人を逮捕した」(同上) 「オイルダラー」とは一般的には産油国がドルで蓄積した資金を指す言葉であり、M資金とはまったく筋が違うものだ。また、CIAと関連性があるものでもない。繰り返しになるが、詐欺師にとって資金の存否や名称はどうでもいいことなのだ。このケースでは、騙されたというより、脅し取られたというニュアンスが近い可能性も考えられるが、言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実なのである』、「言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実」、現在の資金余剰の時代とは異なり、かつては、資金不足時代だったことも背景にある。
・『「『M資金』に前社長念書 詐欺師の小道具に」(朝日新聞1983年4月26日付朝刊) メーカーの経営者・中田信三氏(59=仮名)が架空の資金からの200億円もの融資話に乗り、融資の念書にサイン・捺印をした。詐欺師は中田氏から手数料を騙し取ったとともに、中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している。 「二人とも中田氏の社会的地位から、この念書にある二百億円の支払いを信じて疑わなかった、という」(同上) 犯人は、他にも同様の手口で各地の経営者、事業家などにM資金詐欺を働き、被害額は数千万円単位に及んだとされる』、「中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している」、「中田氏」の責任は重大だ。
・『大企業をゆるがす大スキャンダルになった例も  この事件のように、「M資金からの融資」を前提とした念書が、大企業を揺ゆるがすスキャンダルに発展したこともある。1969年、当時の全日本空輸(以下:全日空)の中野富士夫社長(仮名)のもとに、「M資金という資金が眠っているが、管理者はそれを有効活用したがっている。全日空と連名でこれを利用したい」といった旨の申し出があった。 「話を持ち込んできたのは佐藤博志(仮名)という元代議士で、彼にはレッキとした紹介者がいた。現職運輸大臣牧田仁代議士(仮名)と、前運輸大臣の小岩英二代議士(仮名)(役職はいずれも当時)。中野氏は、この二枚の名刺にすっかり心を動かされてしまったらしい」(週刊文春1976年3月11日号) 中野社長は「借受け保証念書」に社長印を押して振込先口座を指定。ところが、その口座に金が振り込まれることはなかった。通常のM資金詐欺と異なるのは、佐藤元代議士が手数料などを求めなかったことだ。つまり、全日空側は1円も損をしなかった。ただし、件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった。 「中野氏が念書に、全日空社長印を使っていたのが、致命的だった。株主総会で、『社長の経営責任』を追及された中野氏は就任後1年あまりで社長のポストを投げ出した」(同上) 実は、融資を持ちかけた佐藤元代議士は、落選後、詐欺行為で複数回の逮捕歴のある曰く付きの人物だ。中野社長がそのことを把握していたかどうかは不明だが、元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない。なお、当該の代議士2名は後日、この件について「記憶にない」「(紹介状を書いたが)内容については知らない」と深いつながりを否定した』、「全日空側は1円も損をしなかった」とはいえ、「件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった」、「元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない」、政治家は気易く「紹介」したりするので、それを信じたとすれば、「中野」氏の完全な手落ちだ。
・『ロッキード事件が関連…?  では、佐藤元代議士の目的は? 当時のマスメディアの多くは、戦後史に残る疑獄事件「ロッキード事件」につながった中野社長の社会的な信頼失墜が目的だったのではないかという見方をしている。 「ロッキード事件」とは、アメリカの航空機メーカー「ロッキード」社による主に同社の旅客機「トライスター」の受注を目的とした世界規模の汚職事件である。中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた。ところが……。 「中野氏在任当時は、考えられもしなかったトライスターが上昇してくる」(同上) その後、全日空のトライスター導入は現実のものとなるのだ。結局、ロッキード事件にまつわる数々の謎や疑惑はクリアになることはなく、全日空に対するM資金融資騒動は真相が明らかになることはなかった。ただ、いずれにしてもなんらかの思惑のためにM資金の名前が利用されたことは間違いないだろう。 全日空の一件を経て、M資金はそれまで以上に要注意ワードとして広く認識された。しかし、しばらくすると、今度はテレビドラマに主演する人気俳優がM資金詐欺の被害者となったことで世間はざわつくことになる。後編<超有名ドラマの主演人気俳優を死に追いやった「M資金詐欺」の暗部がヤバすぎる>では、引き続き、各時代の報道をもとにM資金詐欺について迫ってみたい』、「中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた」、事件後、「全日空のトライスター導入は現実のものとなる」、とすれば、「事件」は「ダグラス社」側が仕掛けた可能性も否定できない。こんな裏面があったとは、初めて知った。

次に、7月7日付けRKBオンライン「「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾」を紹介しよう。
https://rkb.jp/news-rkb/202207072282/
・『先月、「投資用マンション」の購入をめぐりトラブルに巻き込まれたと訴える福岡市の男性会社員を紹介しました。この男性と同様に静岡県に本社を置く「スルガ銀行」から返済不可能な額のローンを組まされたと訴えている人は、全国で400人以上に上っています。 被害を訴える男性「融資額は6億なんですね。どうせ融資が下りないと思ってたんですよ。サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」 今年4月、福岡市のJR博多駅近くの公園に集まった人たち。職業や住んでいる場所は異なりますが、みな投資用のアパート・マンションのオーナーです。スルガ銀行の不正融資により、本来は買えるはずもなかった物件を不当に高い価格で購入することになったと訴えています』、「サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」、書類を「改ざん」したとはやはり悪どい。
・『立ち上がった被害者  冨谷皐介さん「多くの方が銀行、公的機関である金融機関が、詐欺・不正をはたらくなんて思うわけないんです。そういう世間の期待を裏切って不正をはたらいていたのがスルガ銀行なんです」 消費者問題の被害者を救済・サポートをする社団法人の代表・冨谷皐介さん。「スルガ銀行から不正な融資を受けた」と訴える投資用アパートやマンションのオーナーたちが結成した「スルガ銀行不正融資被害者同盟」の支援を続けています。 冨谷皐介さん「みんなで一斉に日にちを決めて、集まって困っているという窮状を、嵯峨社長に見せたいんです」) 冨谷さん自身も6年前、スルガ銀行でローンを組むことを条件に、東京都内のシェアハウス「かぼちゃの馬車」1棟を1億9000万円で購入した、元被害者です。 家賃収入が一度も入らないまま、シェアハウスの運営会社は破綻。借金だけが残り、物件を売却しても数千万円の損失が出る状況から、同じ境遇の購入者とともに被害者同盟を結成した冨谷さんは、スルガ銀行の不正融資を追及し続けました。 その結果、銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解。地獄の手前から奇跡の生還でした。 冨谷皐介さん「悪いことをしたとシェアハウスの問題を認めたわけですから、『中古1棟アパ-ト・マンション』の問題にも真摯に対応していただきたい」』、「シェアハウス」では、「銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解」。まさに「奇跡の生還」だ。
・『被害者400人超 ローン総額は1000億円超  冨谷さんが支援する「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円にも上ります。 被害者同盟のメンバー「レントロールと預金残高。貸せないはずなのに、通帳の改ざん。お金がなくなってしまって、生活を養えなくなって、それで離婚しました」 「みんなここにいる人たちは、死を覚悟したり。銀行が私利私欲のために改ざんなんかしないでまともな業務を行っていれば、私たちも今ここに立っていなくてすみますし。憎しみしかないです」 「私と同じように、スルガ銀行の返済に1人で悩み、家族を残して自殺をした同僚もいます」 被害を訴える同盟のメンバーは、「スルガ銀行」に対し、冨谷さんがかつて購入したシェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中です。 果たしてこの調停は、解決に向かっているのか? 50人の弁護士が名を連ねる被害弁護団に話を聞きました。 河合弘之弁護士「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」』、「「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円」、これらも「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」、「シェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中」、まだこんなにあるとは驚かされた。
・『内部資料は「偽造の裏付け」と弁護団  弁護団が「偽造の裏付け」とする資料の数々です。左が、不動産会社から入手した賃貸明細表。右が、融資の際にスルガ銀行に提出された明細表です。同じ平成28年(2016年)3月ですが、空いているはずの部屋がほとんど入居したことになっていて、家賃収入も2倍近く水増しされています。 こちらは、家賃の改ざんです。全ての部屋で、実際の家賃より1万円から2万4000円も上乗せされています。自己資金を示す預金通帳は、38万円ほどの残高が1538万円に、90万円が1090万円に改ざんされています。 実際には払っていない手付金の領収書や、契約した不動産会社とは別の会社の名前が記載された売買契約書もあります。 さらに弁護団は、スルガ銀行の行員と不動産会社の社員とのラインのやりとりも入手していました。 不動産会社の社員から、家賃収入明細表がスルガ銀行の行員に送られています。満室時の家賃は600万円程度、実際の家賃収入は450万円ほどです。この後、訂正分としてすぐにほぼ満室に近い家賃収入が記載された明細表が送られています。 預金通帳の偽造についてとみられるやりとりには、履歴の改ざんの指示と偽装が発覚しないための注意が記されています。) 河合弘之弁護士「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」』、「「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」、個別の交渉では時間がかかりそうだ。
・『株主総会で対決へ  非を認めながらも個別にしか対応ができないとするスルガ銀行に対し、一括での和解を求める「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、次の一手を打ちます。「株主提案権」の行使です。 同盟のメンバーと弁護団は、スルガ銀行の株を4万3800株購入。議案を提出できる3万株以上を保有して10の議案を記載した「株主提案権行使書」をスルガ銀行に提出しました。 (1)4月24日に提出提案書の影ナレ真の経営再建をめざすため嵯峨行介社長の解任を強く求める。 (2)アパートマンション不正融資事件について全く解決していない。迅速に正しい解決をすること  株主総会の約3週間前に、「スルガ銀行」は異例の通知を出します。新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をしたのです。 迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます。 RKB植高貴寛「株主総会の真っただ中なんですが、スルガ銀行の本店の前ではデモ活動が始まっています」 「スルガ銀行は、まっとうな銀行に生まれ変われー!」 「不正があったのは事実なので、早く僕たちのことを助けてほしいです」 「銀行は社会のお金のベースだから、そこに問題があると社会が成長しない。まだ諦めてないです」』、「株主提案権行使書」に対抗して、「新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をした・・・迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます」、総会での模様は第三の記事を参照されたい。
・『「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」  被害弁護団 山口広弁護士「株主総会ではありましたが、実質的には、被害者側が抗議をする、不正融資の早期解決を求める、という発言がほとんどでありました」 弁護団によると、スルガ銀行の嵯峨社長は不正融資の問題について「早期解決を追求します」という発言を繰り返したといいます。しかし、いつまでにどのような形で解決をするかという具体的な質問については、「個別対応で考えている」というこれまで通りの回答にとどまったということです。 河合弘之弁護士「預金通帳偽造を容認した銀行なんて、歴史上ないんですよ。こんなことをして、反省もしないで、被害者の救済もしないで生き延びる銀行があるなんてことは、日本の金融界にとっては大変な禍根を残すことになります。ですから、金融関係者は全員この問題に注目して、『日本の銀行の信用をなくすようなことをするなよ』と言ってほしいですね」』、今後の動向を注視したい。

第三に、10月22日付けNHK NEWS WEB「スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20220629/3030016389.html
・『アパートなどの投資用不動産向け融資の書類の改ざんをめぐりオーナー側と交渉を続けているスルガ銀行の株主総会が29日、沼津市で行われ、被害者団体が提出した社長の解任などの議案はすべて否決されました。 総会のあとオーナー側の弁護団が会見し「救済を求める声を経営陣に突きつけたのは意味があった。多くの人が救済されるようにスルガ銀行を説得する」と述べ交渉を継続する方針を示しました。 大規模な不正融資の問題が明らかになったスルガ銀行では、シェアハウスへの融資についてはほぼ解決しましたが、アパートなどの投資用不動産向け融資の書類の改ざんをめぐっては融資で被害を受けたとするオーナー側と交渉が続いています。 29日、沼津市で行われたスルガ銀行の株主総会の会場前には200人以上の人が集まり「不正融資の早期解決を」と書かれた旗を持って救済を訴えていました。 午前10時から始まった株主総会では、株主でもあるオーナー側が提出した嵯峨行介社長の解任や、不正行為の内容の株主への開示などを求める議案の採決が行われましたが、すべて否決されました。 オーナー側の弁護団によりますと株主総会のなかで嵯峨社長は、弁護団が解決を要求している430人あまりおよそ1050億円のアパートやマンションの融資について「不正行為が一部にあったのは確かだが、一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」と述べたということです。 総会のあと弁護団が会見し、弁護士の山口広団長は「被害者株主が救済を求める声を経営陣に突きつけたのは意味があった。多くの人が救済されるようにスルガ銀行を説得する」と述べ交渉を継続する方針を示しました。 総会に参加した株主は、「去年に比べると怒号などはなかったと思います。会社の経営が改善される方向に進んでもらいたいです」と話していました』、「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。第二記事にあるように「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。
タグ:「M資金の存否は「重要ではない」」のは何故だろうか。 いまだに「M資金詐欺」類似の事件が起きていることから、元祖の事件を振り返ることにも意義が大きい。 「【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編 」 ミゾロギ・ダイスケ 現代ビジネス 金融関連の詐欺的事件 (その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」、「みんクレ」1億円賠償にみる投資被害回復の困難 裁判で全面勝訴した投資家に10%も戻らない) 「無利子、無担保、返済義務ナシ」というあり得ないような好条件で、「何十億円、何百億円の融資を受けられる」のであれば、「手数料、紹介料」の「百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう」、欲の皮が突っ張ると、常識的判断など吹っ飛んでしまうのだろう。 「M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである」、なるほど。「「M資金詐欺」のアウトライン」とは興味深そうだ。 現在では、「そうした怪しいプロフィール」は、インターネットで「容易に確認」できる。 「言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実」、現在の資金余剰の時代とは異なり、かつては、資金不足時代だったことも背景にある。 「中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している」、「中田氏」の責任は重大だ。 「全日空側は1円も損をしなかった」とはいえ、「件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった」、「元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない」、政治家は気易く「紹介」したりするので、それを信じたとすれば、「中野」氏の完全な手落ちだ。 「中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた」、事件後、「全日空のトライスター導入は現実のものとなる」、とすれば、「事件」は「ダグラス社」側が仕掛けた可能性も否定できない。こんな裏面があったとは、初めて知った。 RKBオンライン「「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾」 「サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」、書類を「改ざん」したとはやはり悪どい。 「シェアハウス」では、「銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解」。まさに「奇跡の生還」だ。 「「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円」、これらも「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」、 「シェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中」、まだこんなにあるとは驚かされた。 「「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」、個別の交渉では時間がかかりそうだ。 「株主提案権行使書」に対抗して、「新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をした・・・迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます」、総会での「株主提案」は粛々と否決されたのだろう。 確かに「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。 NHK NEWS WEB「スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」」 「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。確かに「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい 「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。第二記事にあるように「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。
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株式・為替相場(その18)(24年ぶり円買い介入が告げる「通貨防衛戦」の号砲 円安は低成長・日本の国力低下に見合っている、円安阻止の為替介入は「二重の意味で無駄玉」だった、為替介入でも止まらぬ円安 「国民感情」悪化懸念 やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ) [金融]

株式・為替相場については、8月26日に取上げた。今日は、(その18)(24年ぶり円買い介入が告げる「通貨防衛戦」の号砲 円安は低成長・日本の国力低下に見合っている、円安阻止の為替介入は「二重の意味で無駄玉」だった、為替介入でも止まらぬ円安 「国民感情」悪化懸念 やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ)である。

先ずは、9月27日付け東洋経済オンラインが掲載した時事通信社解説委員の窪園 博俊氏による「24年ぶり円買い介入が告げる「通貨防衛戦」の号砲 円安は低成長・日本の国力低下に見合っている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/621273
・『政府と日本銀行は22日、急速に進む円安に歯止めをかけるため、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入に踏み切った。 為替介入と言えば、デフレ圧力となった円高を阻止する円売りの為替介入を思い浮かべる読者が多いだろう。実は、頻度は少ないものの、わが国は何度か円買い介入も実施している。 ただし、今回の円買い介入は過去の介入とは意味合いが異なる。わが国にとっては変動相場制以降で初めてとなる「通貨防衛戦」の領域に突入したと考えられるのだ』、「変動相場制以降で初めてとなる「通貨防衛戦」の領域に突入した」、とは大げさな感じもあるが、確かにその通りだ。
・『「円売りが定番」だった為替介入の歴史  第2次世界大戦後は長らく、ドルの交換比率を一定にしたブレトン・ウッズ体制が続いた。それが1971年の「ニクソン・ショック」で変動相場制に移行した。 日本はそれまで1ドル360円の固定相場のもと、経済の実力と比べて大幅な円安を享受し、輸出主導で復興を遂げた。ニクソン・ショック後に急速に進んだ円高は、日本経済の実力相応の動きだったが、日本は円高を成長阻害とみなし続けた。 21世紀に入っても円高は執拗に進み、政府・日銀はたびたびドル買い・円売りの為替介入を行った。このため、為替介入と言えば「円売りが定番」となった。 過去半世紀近くの歴史を振り返ると、為替介入は円売りと円買いの双方向で実施されているが、頻度・規模とも圧倒的に前者が上回る。だからこそ、外貨準備高は円換算で180兆円台もの水準に積み上がった。 次に介入の目的である。円売り介入の目的は、経済に打撃となる「円高の阻止」に尽きる。これに対し、過去の円買い介入は「国際批判をかわすため」と「誤解を正すため」という2つの目的で実行された。 国際批判をかわす目的で介入した代表例は、1985年のプラザ合意時の円安ドル高の是正だ。当時のアメリカでは、ボルカー議長率いる連邦準備制度理事会(FRB)が悪性インフレを退治するために大幅な金融引き締めを断行。金利が上昇し、大幅なドル高となった。 同時に過度な円安が進行し、輸出好調の日本は対米中心に大幅な貿易黒字を計上した。その結果、日米間で深刻な貿易摩擦が起きた。日本はドル高を是正するために、円買い・ドル売りの協調介入を主導し、為替レートを輸出に不利な方向に自ら誘導した』、「国際批判をかわす目的で介入した代表例は、1985年のプラザ合意時の円安ドル高の是正だ」、当時は「日米間で深刻な貿易摩擦が起きた。日本はドル高を是正するために、円買い・ドル売りの協調介入を主導」、したのは確かだ。
・『国際批判を恐れ、たびたび円買い介入  当時の国際金融界では「貿易不均衡を是正するには為替の調整が有効である」と考えられていた。プラザ合意以降の相場は、ドル売り介入が効き過ぎて、これにブレーキをかけるドル買い・円売りの介入も行われたほど。しかし、日本の貿易黒字は円高が進行しても是正されず、欧米からの批判は続いた。 1990年代初頭にやや円安に振れた。と言っても140円程度のものだったが、貿易黒字増加への国際批判を恐れた政府・日銀は、円高にするための円買い介入を実施した。 財務省は1991年4月以降の介入実績を詳細に公表している。それによると、1991年5月~1992年8月までは断続的に円買い・ドル売り介入を実施し、総額は円換算で8000億円近くにのぼった。ニクソン・ショック後はもっぱら円高に歯止めをかけようとした政府・日銀だったが、80年代半ばから90年代前半は貿易黒字を国際的に批判され、自ら円高にするための円買い介入を行っていたのだ。 次に円買い介入を行ったのは1997~1998年である(総額は4兆円強)。これは金融危機に対応した日銀の潤沢な流動性供給が海外の投機筋から不健全なオペとみなされ、「悪い円安」が過度に進行したことに歯止めをかけるためだった。過去の記事にあるように、当時はなおも巨額の貿易黒字を稼ぐ力を有し、円安は一過性にとどまった。 そして今回の円買い介入だ。円安が進んだ要因は「内外金利差の拡大」と「貿易収支の赤字」というファンダメンタルズに沿ったものであり、金利差拡大を助長しているのは日銀の超金融緩和策だ。通貨の下落は金融緩和の効果であり、為替市場は日銀の意図に沿って正しく円安に動いている。 巨額の貿易赤字は「為替市場で恒常的なドル買い・円売りを招く」(大手邦銀アナリスト)とされ、もはや「輸出で稼げず、成長率が低下して低金利が常態化した日本の国力低下に沿った円安」(同)になっている』、「通貨の下落は金融緩和の効果であり、為替市場は日銀の意図に沿って正しく円安に動いている。 巨額の貿易赤字は「為替市場で恒常的なドル買い・円売りを招く」・・・とされ、もはや「輸出で稼げず、成長率が低下して低金利が常態化した日本の国力低下に沿った円安」(同)になっている」、なにやら寂しい限りだ。
・『円買い介入は無限に実行できない  ここで注意すべきは、介入はあくまでも「為替需給を一時的に締めるだけの対症療法に過ぎない」(日銀OB)ことだ。さらに、自国通貨高を阻止する介入は、自国通貨を無限に発行できるため、理論的には無限に介入できる。これに対し、自国通貨の下落を阻止する介入は保有外貨が上限となる。つまり、円安阻止の円買い介入は、円安の流れ自体を食い止められない上に、「集合すると圧倒的な規模になる投機筋に対し、有限の弾薬で立ち向かう」(同)ことになる。 政府・日銀としては、円安の反転を狙ったものではなく、円安の速度を緩める「スムージング介入」の意識が強いだろう。しかし、資本の自由な移動を容認する変動為替相場制のもとでは、為替市場の主体である投機筋は政府・日銀の都合など無視し、容赦なく利益を追求する。 円安が国力低下に沿ったトレンドなら、徹底的に円が売られると考えた方がいい。政府・日銀にとって望ましいシナリオは、近い将来にアメリカの利上げ局面が終わり、金利差の縮小観測が浮上し、円高に戻る事態であろう。 だが、根強いインフレでアメリカの金利が高止まり、円安・ドル高に歯止めがかからない場合、為替介入は消耗戦に陥る。外貨準備という弾薬の減少が顕著になると、介入規模は節約のために縮小せざるを得ない。そして、それを見越して投機筋の円売り攻勢が強まり、通貨価値の防衛戦に追い込まれる恐れもある。 これはまさに通貨防衛に失敗した国家がたどる運命と似通っている。政府・日銀はそうしたリスクがはらんでいることを自覚して投機筋と戦った方がいいだろう』、「自国通貨の下落を阻止する介入は保有外貨が上限となる。つまり、円安阻止の円買い介入は、円安の流れ自体を食い止められない上に、「集合すると圧倒的な規模になる投機筋に対し、有限の弾薬で立ち向かう」(同)ことになる。 政府・日銀としては、円安の反転を狙ったものではなく、円安の速度を緩める「スムージング介入」の意識が強いだろう」、「根強いインフレでアメリカの金利が高止まり、円安・ドル高に歯止めがかからない場合、為替介入は消耗戦に陥る。外貨準備という弾薬の減少が顕著になると、介入規模は節約のために縮小せざるを得ない。そして、それを見越して投機筋の円売り攻勢が強まり、通貨価値の防衛戦に追い込まれる恐れもある。 これはまさに通貨防衛に失敗した国家がたどる運命と似通っている。政府・日銀はそうしたリスクがはらんでいることを自覚して投機筋と戦った方がいいだろう」、同感である。

次に、9月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「円安阻止の為替介入は「二重の意味で無駄玉」だった」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310373
・『円安を阻止するため、政府が24年ぶりとなる為替介入を実施した。しかしこれは、「二重の意味で無駄玉」だった。その理由をお伝えしたい。
・金融緩和継続の裏での為替介入はアクセルとブレーキを同時に踏む愚挙  何とも無駄で有害なことをしてくれた。9月22日に財務省が実施を決めた円買い・ドル売りの為替介入のことだ。筆者はこの介入を「無駄玉介入」と名付けることに決めた。 念のために補足すると、市場で介入を実施するのは日本銀行だが、介入を決めて指示するのは財務省である。日銀自身が為替市場への介入を決めるわけではない。 そればかりかこの日には金融政策決定会合が行われて、金融緩和政策を継続することが決まった。黒田東彦・日銀総裁は、日本経済は金融緩和を止めることが適当な状況ではないことと、従って今後しばらくの間は利上げが不適切であることを記者会見で丁寧に説明した。 日銀が金融緩和政策の維持に強い意思を見せたことは、外国為替市場では間違いなく円安材料であり、それは政策効果の一部でもある。しかし、財務省はこの日に円買い介入を行った。これは、アクセルを踏んでいる最中に、同時にブレーキを踏むような愚挙である。普通ならどちらかが間違っているし、直接的には介入を決めた人々が明白に「悪い」。 しかし、首相官邸か財務省の中やその近辺にいると思われる、世間の円安批判が気になる官僚や政治家にとっては、「何かやらないと気が済まない」心境だったのだろう。) 希望的な観測として、円安対策を一度やったという実績ができたので、関係者がこれで気が済んで「一回限りでやめてくれる」かもしれない。それだったら、「大人の解釈」として今回の無駄玉介入を大目に見てもいいと思う(この見解は甘すぎるかもしれないが、「皮肉」を言っているのだと分かってほしい)』、「アクセルを踏んでいる最中に、同時にブレーキを踏むような愚挙である。普通ならどちらかが間違っているし、直接的には介入を決めた人々が明白に「悪い」。 しかし、首相官邸か財務省の中やその近辺にいると思われる、世間の円安批判が気になる官僚や政治家にとっては、「何かやらないと気が済まない」心境だったのだろう」、「世間の円安批判が気になる官僚や政治家」向けの「介入」だったようだ。
・『日銀の金融緩和が続く限り為替介入は効かない  今回の介入は、円安への流れを止めるために行ったものだ。円安が生活に関連する物価上昇につながっていて、庶民の生活にマイナスの影響を与えているという認識に基づくものだろう。これを決めた当事者(例えば財務大臣)には、経済思考的には幼稚だが、ある種の「正義感」があったに違いない(そこがかえって厄介なのだが)。ただ、後で触れるがその正義感は、残念ながら実現手段を間違えている。 現在の円安は、米国を中心とする外国の金利が上昇する一方で、わが国の長短金利が低位にコントロールされている金融環境の差から、いわば「自然に」生じているものだ。この構造が変わらない限り状況が逆転することは期待しにくい。しかも、米国の金利はさらに上昇する可能性がある。 わが国の金融政策が緩和から引き締め方向に転換しない限り、円安の反転は難しい。 逆に、今はまだその時ではないが、わが国の金融政策の方向性が変われば、大幅な円高は簡単に実現するはずだ。円安に歯止めを掛ける手段はあるので、「円が無価値になる」というようなトンデモ本的な脅しに対する心配をする必要はない。 「金利を上げたら、何十円の円高になる」と軽々には言いにくいが、円高にすることだけに目的があるなら、手段はある。 ついでに言うなら、今回の無駄玉介入も、将来日本の金利が上昇した場合に、「あのときドルを売って円を買ったおかげでもうかった」という損得になる可能性は十分ある(だからといって、今の政策として正当化できるわけではないが)』、「現在の円安は、米国を中心とする外国の金利が上昇する一方で、わが国の長短金利が低位にコントロールされている金融環境の差から、いわば「自然に」生じているものだ。この構造が変わらない限り状況が逆転することは期待しにくい。しかも、米国の金利はさらに上昇する可能性がある。 わが国の金融政策が緩和から引き締め方向に転換しない限り、円安の反転は難しい」、その通りだ。
・『今回の為替介入には「限界」がある  今回の介入は、内外の金利環境を背景として起こるべくして起こっている自然な円安に抵抗するものであり、ドルを売って円を買う介入だ。そうである以上、原資となるドルが外貨準備に制約される。この2点から、「よく効くはずだ」とは言いがたい。 後者が具体的に懸念されるほどの円買い介入を続けると、それ自体が問題だ。ただ、メディアや日本政府を「カモ」としたい市場参加者が、円安批判を気にしている人たちをけしかけて追加の介入に引きずり込もうとする可能性がある。この点には少し注意したい(政策当局が、そこまで愚かだとは思いたくないが)。 もう1点注目に値するのは、今回の円安に対して米国からは文句が出ていないことだ。多額の対米貿易黒字を記録していたかつての状況や、ごく最近でもドナルド・トランプ大統領時代なら、「日本は円安で稼ごうとしている」と非難の矢が飛んできそうなところだ。しかし、歴史的な水準の円安になっても、現在そのことに対する米国からの批判はない。 米国自身の最大の問題がインフレだという事情もあろう。ただ、中国・ロシアに依存しないサプライチェーンの構築が必要な現在、日本にはその一翼を担うことが期待されていると考えることができる。 「日本よ、もう少し頑張ってくれてもいいぞ」と思われている可能性があるし、世界の政治・経済構造が冷戦時代的なものに少々戻ったという事情もあろう。ともあれ、為替市場の動向を考える上で「米国の意思」は極めて重要な要素だ。 ここまでの話を集約すると、今回の円買い介入は円安を阻止する効果が乏しい点において、まず「無駄玉介入」の名に値するということになる』、「今回の介入は、内外の金利環境を背景として起こるべくして起こっている自然な円安に抵抗するものであり、ドルを売って円を買う介入だ。そうである以上、原資となるドルが外貨準備に制約される。この2点から、「よく効くはずだ」とは言いがたい」、「歴史的な水準の円安になっても、現在そのことに対する米国からの批判はない」、「今回の円買い介入は円安を阻止する効果が乏しい点において、まず「無駄玉介入」の名に値するということになる」、その通りだろう。
・『「二重の意味で無駄玉」である理由 そもそも円安を阻止する必要がない  そして今回の介入は、二重の意味で「無駄玉介入」だ。その理由は、そもそも円安を阻止する必要がないからである。日本の経済が活性化し、多くの人の賃金が上がるような状況をつくるには、円高よりも円安の方が良い。 確かに、日本企業の生産は多くが海外にシフトしたので、かつてのように円安による輸出増加といった分かりやすいメリットは見えにくい。そして、賃金が十分上がらない中で、資源価格上昇に輪を掛ける円安が、企業のコスト上昇や、何よりも庶民の生活を圧迫している現実は存在する。 しかし、そこで思考を停止して円安悪玉論にくみするのはいかがなものだろうか。率直に言って、過去とその延長である現状を固定化しすぎた「非未来思考」に傾きすぎていないか。 日本の経済が活性化するには、日本国内に設備投資や研究開発投資が活発に行われて、何よりも日本人が積極的に雇われる状況が望ましい。 では、日本国内で設備投資する場合、円安と円高ではどちらがいいか? 日本人の技術者を雇う場合、円安と円高のどちらがいいか? そもそも投資は、企業がもうかっているときともうかっていないときではどちらが活発か? 法人企業統計を見ると、当面の円安を背景に日本の企業は大いにもうかっている。 ついでにもう一つ問うが、日本の国力が衰えて円安になっていることを嘆く向きがあるが、国力が衰えた国にとって、自国通貨は高い方がいいのか、安い方がいいのか?』、「日本の経済が活性化するには、日本国内に設備投資や研究開発投資が活発に行われて、何よりも日本人が積極的に雇われる状況が望ましい」、その通りだが、「日本の企業は大いにもうかっている」が「国内に設備投資や研究開発投資が活発に行われて、何よりも日本人が積極的に雇われる状況」、とは程遠いのが現実だ。
・『アベノミクス開始当初と同じく今も日本には円安が求められている  「円高で苦しい方が、企業は工夫して頑張るはずだ」と思うのは、かつてまだ大いに成長力があった時代の日本がオイルショックを克服したことを懐かしむがごとき「無益な根性論」にすぎない。 日本の「将来への変化の方向」から考えると、円高よりは、円安の方がマシなのだ。特に企業人は、円安によるコスト高を嘆くばかりでなく、円安が提供している大きなビジネスチャンスをいかに生かすかを真剣に考えるべき時だ。 もともと、いわゆる「アベノミクス」が始まった時から、日本がデフレを脱却して成長力を回復するためには円安が求められていた。その事情は、現在も大きくは変わっていない。 日銀の黒田総裁は金融緩和の継続が適切だと「日銀の分をわきまえた」説明を丁寧に繰り返している(その「胆力」は大したものだと思う)。ただ、その適切性の中には、金融緩和がもたらす円安の効果も含まれていると考えるべきだ。 そもそも現在の円安は有効に利用するべきものであって、阻止すべきものではない。つまり手段としてだけでなく目的の点でも、今回の円買い介入は「無駄玉介入」だったと言えるのである』、「現在の円安は有効に利用するべきものであって、阻止すべきものではない」、「円安」を「有効に利用するべきもの」であることには、異論はないが、やれることは既にやっている筈で、追加的に利用するのはどうすれば可能なのだろう。
・『円安で困っている庶民の生活をどうするか?  「日本経済のマクロ的な成長のためには円安がいいかもしれないが、円安で困っている庶民の生活を捨てておくのか?」という議論はあり得るだろう。もちろん、庶民を捨てていいはずがない。 しかし、そのために為替レートを丸ごと円高にしようとするのは、考えとしてあまりに「雑」なのではないか。 端的に言って生活困窮者に対しては、給付金なり減税なりでより多くの可処分所得を持てるような再分配政策を強力に行う必要がある。為替レートに働きかけて、効果の乏しいところでお茶を濁されては困る。 アベノミクスの「3本の矢」として有名になった、「金融緩和」「積極財政」「成長戦略」は、いずれも必要であると同時に適切な政策だった。しかし、アベノミクスには残念ながら分配政策が欠けていた。 真剣に検討すべきは、一時の為替介入ではなく大規模な再分配政策だ。例えば、ベーシックインカムの実現を真剣に考えていい。ベーシックインカムは、丸ごと実現しなくとも部分的に実現することができる。また、「ベーシックインカム的政策」(子ども手当の支給や基礎年金の保険料の全額国庫負担など、方策は有望なものが複数ある)を実現するのでもいい。 政府には、「二重の意味で無駄玉」な為替介入などもう考えずに、広い範囲で継続的に実施される経済的弱者へのサポートを考えてほしい』、「真剣に検討すべきは、一時の為替介入ではなく大規模な再分配政策だ。例えば、ベーシックインカムの実現を真剣に考えていい」、これは為替政策・金融政策とはかなり離れたので、ここではこれ以上のコメントはしない。総じて、山崎氏とは、金融政策に対する見方は違うので、この問題でも違いが明確だった。

第三に、9月29日付け東洋経済オンライン「為替介入でも止まらぬ円安、「国民感情」悪化懸念 やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/622359
・『止まらない円安に物価高。それに対して日本銀行は金融緩和を継続するのみ。政府は為替介入を実施したが、円安を招いている根本的な要因は何も変わっていない。 日本が抱える問題は何か、どう変わっていくべきなのか。日本や世界経済、金融市場分析を専門とするみずほ証券の小林俊介チーフエコノミストに話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは小林氏の回答)』、興味深そうだ。
・『Q:一部では政策転換の声もありましたが日本銀行は金融緩和継続を決定。一方で、アメリカでは景気後退懸念が出る中でFRB(米連邦準備制度理事会)は0.75%の連続利上げで引き締めを拡大しました。 A:市場では一部サプライズと受け止められたが、基本的にはノーサプライズだ。FOMC(連邦公開市場委員会)参加高官らは政策金利をできるだけ早く4%台に上げ、しばらく高い状態を維持すると言い続けていた。 一部では1%の利上げが予想されていたが、0.75%利上げでも早いペースであり、現在の消費者物価や雇用統計の動きを見ても、さらに加速させる理由はない。一方で、一部市場関係者は来年7月から利下げが始まると期待している中、来年は簡単に利下げしないと示したことでショックが起きた。ただFRBは事前のコミュニケーションどおりのことをやっているといえる』、なるほど。
・『日銀は市場の圧力に屈しない  日銀はなおさら事前のコミュニケーションどおりだ。従来から需給ギャップをプラスに転換して景気の足腰を強くし、過熱させてインフレにするために緩和を継続すると言っていた。一部外資系コミュニティで日銀は市場や世論の圧力に屈して政策変更するとの予想が出ていたこともあり、一部で誤解が広がった。 ただ、市場の圧力に屈して政策変更することは日銀の信頼性を傷つけることになりかねず最もやってはいけないことだ。市場が催促すればするほど日銀は政策変更しないことが今回改めて確認できた。 Q:日銀やFRBと市場で事前の意思疎通がうまくできていないのはなぜでしょうか。 A:過去、言ったこととやったことが異なったために信頼性を失ってきた面はある。FRBは昨年、インフレは一時的と緩和を続けてしまい、その巻き直しで現在急速な引き締めを行っている。出てくるデータに振り回されているとみられ、政策の一貫性への信頼性が低くなっている。 日銀も過去に消費者物価指数(CPI)の伸び率がマイナスだった際にイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)の金利変動幅を広げ、実質的な引き締め政策を行ったことがある。また過去10年で金融緩和を維持するためにあらゆるロジックを重ねたため政策の全体像が見えづらくなっている。ミスコミュニケーションが発生しやすい状況にある。 Q:景気後退懸念がある中でのFRBの引き締めや、さらには円安や物価高の悪影響が出る中での日銀の緩和継続はそれぞれ正しい判断なのでしょうか。 A:FRBによるオーバーキル懸念があるのは事実だ。だが、現在アメリカのインフレ率が8%を超えている状況に対して政策金利はまだ3%台。もう少し上げる余地があるだろう。4.5~4.75%まで上げるべきとの見方が主流だが、5.5%まで上げる必要があるかもしれないし、4%がちょうどいいという可能性もあり、今は手探り状態なのは確かだ。 一方で日銀が金融緩和継続したことでインフレや円安を助長して日本経済を痛める可能性があるのも確かだ。かつては経済にプラスだった円安がマイナスになりつつあり、緩和継続が日本にとっていいことかわからなくなっている』、「日銀が金融緩和継続したことでインフレや円安を助長して日本経済を痛める可能性があるのも確かだ」、その通りだ。
・『金融緩和継続の目的を検討し直す必要  まず緩和は金融経済にプラスであり、株式や債券、不動産の価格高騰を助長し、輸出企業や商社は潤う。一方で輸入負担が増加することで家計や内需産業にはマイナスとなり、格差拡大要因になる。 かつては貿易収支が黒字だったためよかったが、今は貿易赤字のため円安になると支払金額が増えるデメリットが目立ってしまう。そもそも日本企業は長年の円高対策で海外現地生産を拡大するなど為替リスクを下げてきた。さらに国内労働人口が減少していることもあり、有効求人倍率はコロナ禍でも1.3倍と慢性的な人手不足だった。どんどん生産して輸出ができる状態でもない。 (小林俊介氏の略歴はリンク先参照) かつては円安進展後に短期的に貿易収支が悪化した後に黒字に向かって上昇するJカーブ効果があったが、リーマンショック以降にはその効果は検出できなくなっている。円安だから国内で生産した財を輸出して経済が伸びるという構図ではなくなった。 Q:日銀の金融政策は見直す必要がありますか。 A:格差拡大効果だけが強く出ているなら、状況や課題を鮮明にして、この金融緩和は何を目的に継続しているかを検討し直す必要がある。 (黒田東彦日銀総裁の任期は来年4月までなので)次の総裁の下でフレームワークを一度整理して、この10年間で積み上がってしまった金融政策をゼロベースで検証してきれいに組み直すことが必要になる。ただ、その際に黒田時代のすべてを否定して政策を変更していくべきではない。) Q:どういうことですか。 A:すべての政策はベネフィットに対してコストも発生するのでそのバランスの検証が重要だ。日銀の量的緩和に関しては日本国債だけでなくETF(上場投資信託)の購入も行い、金融機関の収益に打撃を与えるマイナス金利の導入や、金融市場の価格発見機能を阻害するYCCなど劇薬を複数使っている。それなりのコストと引き換えに緩和を行っている。 とは言え、ジェンガを無理矢理引っ張るように、ETFを来月から全部売る、今日でYCCをやめるなど急な引き締めをやっては、これまで行ってきた緩和効果がすべて水泡に帰す。YCCは現在のように厳しい範囲でする必要があるか、マイナス金利だけはあまり意味なかったのでやめてもいいのではないか、ETF購入は本当に企業の設備投資や雇用を活性化したかなどを1つひとつ検証してコストに見合うベネフィットがなければ徐々に政策をやめていけばいい。 黒田総裁に代わってアベノミクスや黒田政策が始まったときは、金融緩和が不十分だと思われた白川方明前総裁時代へのアンチテーゼの色合いが強かった。その結果として黒田総裁はやりすぎた面があったかもしれない。一方で、黒田氏の政策でよかった面もあるはずで、10年前と同様に逆サイドに振りきる政策転換をしないよう気をつけるべきだ』、「逆サイドに振りきる政策転換をしないよう気をつけるべき」、には同意できるが、私は出口戦略を密かに検討しておくべきと考える。
・『中央銀行の独立性の意義が問われる  Q:物価高や円安の影響が出てきて日銀の政策が問題視されている中で、国民感情に左右されずに冷静に変われるかが焦点ということですか。 A:まさにそのとおりで、中央銀行の独立性の意義も問われている。本来、政府の財政政策や雇用・労働政策と中央銀行の金融政策は一体で調整されるほうが最適なはずだが、あえて独立性を担保しようとしている理由の1つは、政治が国民感情に極端に振れて最適な政策遂行ができない可能性があるからだ。 1990年前後のバブル最終期に、不動産成金など一部で儲かる人が出た一方で、平均的なサラリーマン家庭は恩恵どころか地価高騰で住宅を購入できず苦しんでいた。そこに「平成の鬼平」とも称された三重野康氏が日銀総裁に就任して、庶民のためと急速な引き締めを行った。それが一因となり、「日本経済は失われた20年」に入ってしまったともいわれる。本来であればソフトランディングをうまく行うべきセンシティブな問題だったが、ポピュリズムが入り込んでしまった一例だ。それは避けなければいけない。 Q:次期日銀総裁の人選が水面下で始まる中、国民感情の行方も左右しそうな今後半年の日本経済の見通しはどう見ていますか。 A:国民感情を左右する最大のファクターはインフレであり、それは次の2つの要因に左右される。1つは国際商品市場だ。日本はエネルギーや食料品を輸入に頼っている。原油価格が落ち着いてきているとはいえ、基本的にはウクライナ戦争の動向次第だ。休戦で資源価格高止まりが一気に解消して日本のインフレが収まると考えるのは楽観的すぎるだろう。 2つ目は為替だが、貿易赤字は続いており、日銀が緩和を継続しているため円安が続く構図は変わらない。政府はドル売り円買いの為替介入を実施したが、あくまで円安の進行速度を調整したにすぎず、水準やトレンドは変えられない。 インフレが続くか否かのいずれの要因も外部環境に依存するため、日本政府が短期的に行える政策手段は限られる。今後も複数回、為替介入を実施して、円安のペースダウンを図るほかは、政策としてはまったく褒められないが補助金や給付金を支給することで物価高対策をアピールすることだろう。いずれも日銀に対する民意が過激な批判の方向にいかないようにする措置となる』、現在の政策に自由度が少ないのは事実だが、前述の通り、出口戦略を密かに検討しておくべきだ。
・『コロナ禍からの経済再開需要が本格化  一方で欧米が先行したコロナ禍からの経済再開需要が日本ではこれから本格化していく。欧米は経済再開による回復が落ち着き始め、金融引き締めもあり景気後退局面に入るだろう。日本もいずれは世界経済と軌を一にして景気後退に入る可能性も残るが、来年前半にかけてしばらく内需主導型の景気回復の余地がある。 FRBも利下げは先としても来春には利上げがひとまず止まるだろう。欧米の景気後退が明確になればドル高トレンドも終わる。日銀総裁の交代で実際に出口戦略(政策修正)をやるかは別として、金利の先安感は収まり、日米金利差も縮小傾向で円高方向になりやすくなる。さらに世界景気が後退することで資源価格など国際商品市場も落ち着き、輸入物価も下がれば「いいデフレ」が起き、実質所得の改善につながるかもしれない。 Q:補助金や給付金など目先のばらまき政策ばかりで大丈夫でしょうか。 A:確かに本質的な問題は別にある。そもそも日銀が黒田路線でマイナス金利やYCCなどやりすぎな面もあったが、低金利政策を余儀なくされたのは単純に日本経済が過熱しなかったからだ。それは政府の政策に問題がある。 足元ではワクチン接種率が向上し、致死率も低下した中でいまだにコロナ禍からの経済再開に向けた施策が緩慢なために需給ギャップがマイナスであり続けている。過去にさかのぼれば、安倍晋三政権時代に財政再建の文脈ではプラスになったが、機動的財政支出を継続せずに財政支出を削ったうえに消費増税を行うなど景気を冷やした。 そもそも資源高でインフレ率が高まっているのは化石燃料に頼ってしまっているからで、安全を確保しながらの原発再稼働に向けた動きも遅かった。また、より長期構造的な潜在成長率を左右する要因に目を移すと、労働力不足でも社会保険における「130万円の壁」や在職老齢年金など制度上の雇用環境の制約に対処もしていないほか、中長期で少子化に歯止めをかけるための現役世代への支援も岸田政権で削られている。外国人労働者への門戸開放も停滞している。 2013年に日銀と政府は政策協定(アコード)を結び、日銀は金融緩和を行い、政府は成長力強化に取り組むと明記した。日銀はやれることをやったし、やりすぎたところもあったが、一番の問題はこの10年間やるべきことをやらなかった政府にある。10年放置されていた課題が再び主要な問題として戻ってきている』、「一番の問題はこの10年間やるべきことをやらなかった政府にある。10年放置されていた課題が再び主要な問題として戻ってきている」、その通りだ。
タグ:山崎 元氏による「円安阻止の為替介入は「二重の意味で無駄玉」だった」 ダイヤモンド・オンライン 「根強いインフレでアメリカの金利が高止まり、円安・ドル高に歯止めがかからない場合、為替介入は消耗戦に陥る。外貨準備という弾薬の減少が顕著になると、介入規模は節約のために縮小せざるを得ない。そして、それを見越して投機筋の円売り攻勢が強まり、通貨価値の防衛戦に追い込まれる恐れもある。 これはまさに通貨防衛に失敗した国家がたどる運命と似通っている。政府・日銀はそうしたリスクがはらんでいることを自覚して投機筋と戦った方がいいだろう」、同感である。 (その18)(24年ぶり円買い介入が告げる「通貨防衛戦」の号砲 円安は低成長・日本の国力低下に見合っている、円安阻止の為替介入は「二重の意味で無駄玉」だった、為替介入でも止まらぬ円安 「国民感情」悪化懸念 やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ) 株式・為替相場 「変動相場制以降で初めてとなる「通貨防衛戦」の領域に突入した」、とは大げさな感じもあるが、確かにその通りだ。 窪園 博俊氏による「24年ぶり円買い介入が告げる「通貨防衛戦」の号砲 円安は低成長・日本の国力低下に見合っている」 東洋経済オンライン 「自国通貨の下落を阻止する介入は保有外貨が上限となる。つまり、円安阻止の円買い介入は、円安の流れ自体を食い止められない上に、「集合すると圧倒的な規模になる投機筋に対し、有限の弾薬で立ち向かう」(同)ことになる。 政府・日銀としては、円安の反転を狙ったものではなく、円安の速度を緩める「スムージング介入」の意識が強いだろう」、 「通貨の下落は金融緩和の効果であり、為替市場は日銀の意図に沿って正しく円安に動いている。 巨額の貿易赤字は「為替市場で恒常的なドル買い・円売りを招く」・・・とされ、もはや「輸出で稼げず、成長率が低下して低金利が常態化した日本の国力低下に沿った円安」(同)になっている」、なにやら寂しい限りだ。 「国際批判をかわす目的で介入した代表例は、1985年のプラザ合意時の円安ドル高の是正だ」、当時は「日米間で深刻な貿易摩擦が起きた。日本はドル高を是正するために、円買い・ドル売りの協調介入を主導」、したのは確かだ。 「今回の介入は、内外の金利環境を背景として起こるべくして起こっている自然な円安に抵抗するものであり、ドルを売って円を買う介入だ。そうである以上、原資となるドルが外貨準備に制約される。この2点から、「よく効くはずだ」とは言いがたい」、「歴史的な水準の円安になっても、現在そのことに対する米国からの批判はない」、 「現在の円安は、米国を中心とする外国の金利が上昇する一方で、わが国の長短金利が低位にコントロールされている金融環境の差から、いわば「自然に」生じているものだ。この構造が変わらない限り状況が逆転することは期待しにくい。しかも、米国の金利はさらに上昇する可能性がある。 わが国の金融政策が緩和から引き締め方向に転換しない限り、円安の反転は難しい」、その通りだ。 「アクセルを踏んでいる最中に、同時にブレーキを踏むような愚挙である。普通ならどちらかが間違っているし、直接的には介入を決めた人々が明白に「悪い」。 しかし、首相官邸か財務省の中やその近辺にいると思われる、世間の円安批判が気になる官僚や政治家にとっては、「何かやらないと気が済まない」心境だったのだろう」、「世間の円安批判が気になる官僚や政治家」向けの「介入」だったようだ。 「日本の経済が活性化するには、日本国内に設備投資や研究開発投資が活発に行われて、何よりも日本人が積極的に雇われる状況が望ましい」、その通りだが、「日本の企業は大いにもうかっている」が「国内に設備投資や研究開発投資が活発に行われて、何よりも日本人が積極的に雇われる状況」、とは程遠いのが現実だ。 「今回の円買い介入は円安を阻止する効果が乏しい点において、まず「無駄玉介入」の名に値するということになる」、その通りだろう。 現在の政策に自由度が少ないのは事実だが、前述の通り、出口戦略を密かに検討しておくべきだ。 「逆サイドに振りきる政策転換をしないよう気をつけるべき」、には同意できるが、私は出口戦略を密かに検討しておくべきと考える。同意できるが、私は出口戦略を検討しておくべきと考える。 「日銀が金融緩和継続したことでインフレや円安を助長して日本経済を痛める可能性があるのも確かだ」、その通りだ。 東洋経済オンライン「為替介入でも止まらぬ円安、「国民感情」悪化懸念 やりすぎた日銀と課題を放置した政府のツケ」 「真剣に検討すべきは、一時の為替介入ではなく大規模な再分配政策だ。例えば、ベーシックインカムの実現を真剣に考えていい」、これは為替政策・金融政策とはかなり離れたので、ここではこれ以上のコメントはしない。総じて、山崎氏とは、金融政策に対する見方は違うので、この問題でも違いが明確だった。 「現在の円安は有効に利用するべきものであって、阻止すべきものではない」、「円安」を「有効に利用するべきもの」であることには、異論はないが、やれることは既にやっている筈で、追加的に利用するのはどうすれば可能なのだろう。 「一番の問題はこの10年間やるべきことをやらなかった政府にある。10年放置されていた課題が再び主要な問題として戻ってきている」、その通りだ。
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保険(その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開) [金融]

保険については、5月21日に取上げた。今日は、(その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開)である。

先ずは、7月2日付け東洋経済オンライン「日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々、不正はなぜ多い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/600015
・『生命保険会社の営業職員による金銭詐取事案が頻発している。 明治安田生命は6月27日、元営業職員が契約者から約2000万円をだまし取っていたと発表した。2020年に発覚した第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件を筆頭に、メットライフ生命やソニー生命で営業職員による金銭詐取事件が次々と明らかになっている。 事態を重く見た金融庁は2021年9月から2022年1月にかけて、第一生命に立ち入り検査を実施して監視を強化している。同時に、業界団体である生命保険協会と2022年に複数回の意見交換を行い、「営業職員の管理態勢の見直しや高度化に向けた取り組みを後押ししている」(金融庁)という』、「第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件」については、2021年3月4日付けのこのブログでも紹介したが、確かに金額の大きさは世の中を震撼させた。
・『固唾をのむ生保最大手  こうした中、当局の動きを固唾をのんで見守っている会社がある。業界最大手の日本生命だ。 というのも、日本生命の営業現場では保険募集に関わる重大な事故が毎年発生しており、同社からの事故の届け出を受けた金融庁が、とりわけ監視の目を光らせているからだ。 営業職員チャネルを持つどの生保会社でも同じだが、営業職員による金銭詐取やコンプライアンスに抵触する保険募集が発覚した場合、各社は地元の財務局へ事故の届け出をしなければならない。そして、届け出を受理した財務局が金融庁に報告する流れになっている。) 日本生命の場合、2021年度は12月時点(2021年4月~12月)で34件の事故が発覚し、その旨を財務局に届け出ている。「重要事項の不説明」や「特別利益の提供」(契約者や被保険者に対して保険料の割引きなどを行うこと)など、保険募集に関わるさまざまな違反行為が報告されたが、特に目立つのが保険に加入意思のない人の名義だけを借りて作成する「名義借り契約」と呼ばれる不正契約の多さだ。 日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る。 中には、1人で30件もの名義借り契約を作成した営業職員もいた。1つの営業部で営業職員9人が不正に関わるケースも発覚するなど、組織ぐるみの不正が疑われる事案もあった。金融庁は不正の件数だけでなく、事案の悪質性も問題視している』、「日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る」、最大手にあるまじき悪質な「不正」だ。
・『異例の要請のきっかけになった事件  「今後、金銭詐取事案が発生した場合には、財務局だけでなく、金融庁にも前もって報告するように」――。 金融庁が日本生命に対して異例の要請を出すきっかけになったのは、2021年度に発覚した同社青森支社における金銭詐取事件だ。 同支社所属の営業職員が70代の契約者の配偶者と懇意になり、銀行の通帳とパスワードを入手。約8カ月間に計38回も契約者貸付金や配当金を不正に引き出して金銭を取得した事故が同社の社内調査で判明している。 契約している保険の解約返戻金の範囲内で、保険会社からお金を借りることができる「契約者貸付制度」を悪用したという点で、この事故は第一生命などで発覚した金銭詐取事件と類似点がある。「自分は被害を受けているのではないか」と不審に思った契約者が、日本生命と金融庁の両方に申し出たことで詐欺行為が発覚した。 問題はそれだけではない。日本生命の内部資料によると、2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明している。もちろん金融庁は事故の報告を受けているが、中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生している。にもかかわらず、日本生命はこうした事実を一切公表していない』、「2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明」、「中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生」、「日本生命はこうした事実を一切公表していない」、公表すれば、契約者へ自分の契約は大丈夫かと確認を促すメリットもあるため、「一切公表していない」という隠蔽体質は問題だ。
・『第一生命は再発防止策に取り組んでいるが…  営業職員による巨額詐欺事件の発覚を受けて、第一生命は再発防止策の策定と実行に取り組んでいる。営業職員チャネルの積年の課題であるターンオーバー(大量採用・大量脱落)問題への対応策として、2022年4月から営業職員の採用基準と給与水準、教育体制を刷新する改革をスタートさせている。 そうした動きとは対照的に日本生命は金銭詐取事案を公表せず、ターンオーバー問題でも明確な改善策を打ち出していない。 節税保険の不適正営業によるマニュライフ生命への金融庁検査は6月中旬で終わり、7月からは金融庁が新しい事務年度に入る。「(営業職員チャネルについては)現時点で顕在化されていない問題であっても、当局が把握し問題だと考える事案があれば、必要に応じて立ち入り検査を活用する」と金融庁の担当者は話す。 金融庁が口を酸っぱくして言う「顧客本位の業務運営」から鑑みて、日本生命に金融庁の立入検査が入る可能性が高まっている』、「日本生命」への「金融庁の立入検査」は当然のことだが、果たしてどんな問題を指摘するのだろうか。

次に、8月20日付け東洋経済オンライン「金融庁、「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け、取り締まりを徹底強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/612389
・『金融庁が外資系のエヌエヌ生命保険(旧アイエヌジー生命保険)に対して、近く立ち入り検査に入ることがわかった。 エヌエヌ生命の関係者によると、8月19日までに検査予告があったという。中小企業オーナーなどを対象にした「節税保険」の販売や商品開発の実態について、今後検査を進めるとみられる』、外資系生保であれば、「中小企業オーナーなどを対象にした」大口商品に力を入れるのは当然だ。
・『同業のマニュライフに行政処分  節税保険の不適切販売を巡っては、金融庁が2022年7月にマニュライフ生命保険に対して初の行政処分を下したばかりだ。販売行為の組織性や悪質性が生保各社の中でも際立っていたことでやり玉に挙がった格好だったが、同じく節税保険販売における組織性などが強く疑われていたのがエヌエヌ生命だった。 そもそも同社は2022年2月、金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令を受けており、逓増定期保険などを活用し、「租税回避行為」を指南する私製の資料が多数見つかったことをすでに報告している。 今後の立ち入り検査の動向次第では、マニュライフ生命の事例と同様に、他社に転じたエヌエヌ生命の旧経営陣に対する責任追及に発展する可能性もある。 さらに今回の金融庁検査は、節税保険の撲滅という所期の目的にとどまらず、業界再編の引き金をひくことにもなりかねない。 なぜなら、エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」(同社元幹部)からだ。金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる』、「エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」ので、「金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる」、「エヌエヌ生命」の今後が注目される。
・『焦点は日本生命の動き  仮にそのような事態に陥った場合、エヌエヌ生命に救いの手を差し伸べる生保は現れるのか。過去にはエヌエヌ生命が抱える税理士代理店網に目をつけ、業界最大手の日本生命保険が買収を検討しているとささやかれたこともあった。 だが、節税保険への規制が年々強まる中で、身動きがとりづらくなっている生保をわざわざ買うメリットはやはり見出しづらいだろう。それでも、かろうじて買収の動機付けになる材料があるとすれば、グループでの規模拡大ぐらいだ。 そうした状況下で、折しも日本生命は2022年4~6月期の連結決算において、トップライン(保険料等収入)の規模で7年ぶりに第一生命ホールディングスの後塵を拝す結果になっている。 日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い。今後四半期だけでなく、年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば、日本生命の動きから目が離せなくなりそうだ』、「日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い」、「年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば」、「エヌエヌ生命が抱える税理士代理店網」を「買収」する可能性も出てきたようだ。

第三に、9月15日付け東洋経済オンライン「ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/618469
・『中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区、兼重宏行社長)による保険金の不正請求問題をめぐって、損保ジャパンが苦しい立場に追い込まれている(詳細はこちら)。 損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた。 ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって、不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきている。結局、9月に入り取引を再び停止したが、損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている。 こうした批判に、損保ジャパンから反論があってもおかしくないが、そうした声はまだ聞こえてこない。それは、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろう』、「損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた」、「ほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている」、「ビッグモーター」がよほど重要な「中古車販売」店だったのだろう。
・『実態調査の問題点  これまでの経緯を振り返りながら、損保ジャパンの対応における問題点を改めて整理していこう。まずは、冒頭でも触れた不正請求の実態調査に対するスタンスだ。 ビッグモーター側の自主調査によって、関東地域の4つ工場で不正請求が発生していることが明確になったのは、6月末のこと。取引のある損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は複数の工場で不正が発覚したことで、組織的関与の疑いを強めるとともに、不正請求被害の全容解明に向けて、追加調査の必要性についてそれぞれ社内で議論していた。 自動車保険の販売代理店でもあるビッグモーターと、それぞれ数十億円の取引がある3社が一丸となり、不正請求に対して毅然と対応するかに思われた。だが、7月中旬になると風向きが大きく変わる。 損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」(大手損保役員)からだ』、「7月中旬になると」、「損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」」、抜け駆け的行為だ。
・『ビッグモーター社長の不可解な訪問  実はその7月中旬、「(ビッグモーターの)兼重社長がうちの役員を訪ねてきている」と損保ジャパンのある幹部は明かす。そこで何が話し合われたのかは不明だが、この幹部によると面談を境に、ビッグモーターへの対応方針が大きく変わったようだ。 まずは兼重社長との面談から数日後、ビッグモーターの社内で東京海上と三井住友海上の自賠責(自動車損害賠償責任保険)の取り扱いを一部で「停止するよう指示が出ている」(ビッグモーター関係者)。7月下旬には、3社ともにストップしていたビッグモーターへの事故車の修理紹介を、損保ジャパンだけが再開している。 損保ジャパンは不正請求された保険金の返還や、不正請求の対象になった車両の持ち主への経緯説明を、ビッグモーター側に求めてすらいない段階で事故車の修理紹介を再開している。コンプライアンス(法令順守)軽視、顧客軽視という批判を受けても仕方がない状況を、自ら招いているように映る。 不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」(大手損保役員)という。これまでの説明の辻褄がもはや合わない状況に陥ってしまっている』、「不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」、こんな節操のない姿勢で、「損保ジャパン」は恥ずかしくないのだろうか。
・『契約者の払う保険料にも影響か  ここで押さえておきたいのは、今回のビッグモーターをめぐる不正請求の問題が、ビッグモーターとの取引の有無にかかわらず、3社の自動車保険の契約者全体に影響が及ぶかもしれないという点だ。 杞憂に終わるかもしれないが、もし不正請求が過去を含めて組織的かつ大規模に行われていた場合、損保会社にとって費用となる保険金が必要以上に膨らんでいたことになる。そうすると、自動車保険の契約者が支払う保険料の計算に影響していた可能性があるわけだ。 それゆえ、不正請求被害の全容解明に向けた調査は損保会社として不可欠なはずだ。自動車保険の契約獲得という営業成績の維持向上を狙って、それをおざなりにしていたとすれば、損保ジャパンだけでなく、業界全体の信用問題にも発展しかねない。 折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる』、「折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる」、追い込まれた「損保ジャパン」は、如何に乗り切ってゆくのだろうか。
タグ:「日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い」、「年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば」、「エヌエヌ生命が抱える税理士代理店網」を「買収」する可能性も出てきたようだ。 「7月中旬になると」、「損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」」、抜け駆け的行為だ。 「損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた」、「ほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている」、「ビッグモーター」がよほど重要な「中古車販売」店だったのだろう。 東洋経済オンライン「ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開」 「折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる」、追い込まれた「損保ジャパン」は、如何に乗り切ってゆくのだろうか。 「不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」、こんな節操のない姿 「エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」ので、「金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる」、「エヌエヌ生命」の今後が注目される。 外資系生保であれば、「中小企業オーナーなどを対象にした」大口商品に力を入れるのは当然だ。 東洋経済オンライン「金融庁、「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け、取り締まりを徹底強化」 「日本生命」への「金融庁の立入検査」は当然のことだが、果たしてどんな問題を指摘するのだろうか。 「2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明」、「中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生」、「日本生命はこうした事実を一切公表していない」、公表すれば、契約者へ自分の契約は大丈夫かと確認を促すメリットもあるため、「一切公表していない」という隠蔽体質は問題だ。 「日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る」、最大手にあるまじき悪質な「不正」だ。 「第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件」については、2021年3月4日付けのこのブログでも紹介したが、確かに金額の大きさは世の中を震撼させた。 東洋経済オンライン「日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々、不正はなぜ多い」 (その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開) 保険
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暗号資産(仮想通貨)(その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、ここへきて「仮想通貨」「株」が大ピンチに…投資家も目を逸らす「ヤバすぎる危機」) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、6月4日に取上げた。今日は、(その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、ここへきて「仮想通貨」「株」が大ピンチに…投資家も目を逸らす「ヤバすぎる危機」)である。

先ずは、6月17日付け現代ビジネスが掲載した帝京大学経済学部教授・博士(経済学)の宿輪 純一氏による「価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/96328?imp=0
・『株価より高い暗号資産の暴落率  一般的な暗号資産(仮想通貨)の価格が“乱高下”するのは、法定通貨ではなく単なる金融商品であることを考えれば、当たり前といえば当たり前である。暗号資産の代表銘柄、ビットコインは、最高値6万7000ドル超(2021年11月)まで行ったが、6月中旬、“3分の1”の2万2000ドルあたりまで暴落した。 ちなみに、IMFの注意にも関わらず、ビットコインを通貨としたエルサルバドルや中央アフリカはこの急落で「通貨危機」という皮肉な状況になっている。 第2位のイーサリアムもピークから5割下落している。ハイテク株が多いナスダックでも約2割の下落となっており、暗号資産の暴落幅はいかにも大きい。 今回の下落の主因は、株式市場と同じく、米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)のハイペースな利上げである。今回FRBは高いインフレ率に基づいて判断している。そのため、FRBは経済成長率以上にハイペースで利上げを行っている。株式市場はFRBの利上げと先行きの利上げ継続ムードと合わせて不安定化した。 この不安定な暗号資産の市場が、もともとある金融システムに悪影響を与えるのではないかと懸念されている。しかしこれは、新しい金融商品が登場するときには通る道であり、仕方ないステップである。 奇しくも、6月3日、暗号資産の一種であり資産の裏付けなどで価格固定を謳った「ステーブルコイン(StableCoin)」を対象とする「改正資金決済法」が制定され、裏付け資産の国内保管義務が発生するなど、投資家保護の規制も巡らされてきている』、「ビットコイン」の価格は、6月中旬以降、2万ドル前後で低迷。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-07/RHTJPXT1UM0W01
「改正資金決済法」については、金融庁の説明資料が詳しい。
https://www.fsa.go.jp/common/diet/208/03/setsumei.pdf
・『ステーブルコインは価格が固定的なはずだが  変動する暗号資産に対して、ステーブルコインは価格が固定されている暗号資産である。例えば1ドル=1ステーブルコインと固定されている。 暗号資産を中心に取引する投資家は、変動する暗号資産の取引を一旦止めるときに、暗号資産取引の外に出すよりも、暗号資産取引の中で、固定的なステーブルな暗号資産に移すことがある。外の他の金融資産に移すのはいろいろと手間が掛かるためである。 一般的な暗号資産の変動下落は当たり前であるが、ところが最近、価格が固定されているステーブルコインが大幅に暴落するという、暗号資産の仕組み全体を揺るす事件が発生している。 ステーブルコイン「テラ」(テラ:Terraはもともとは「兆」の意味)の取引量は、185億ドルある。ステーブルコインの取引量で、テザー、USDコインに続き第3位であった。それほどの取引量を誇っていた。 ステーブルコインには担保でその価値を保証する「担保型」と「無担保型」がある。今回の「テラ」はその無担保型にあたり、供給量をコントロールすることで価格を安定させる「アルゴリズム型」だった。 しかも、テラは、独自の貸借市場メカニズム「アンカープロトコル」を持ち、運営者はそのメカニズムで年20%の利回りを得ることが出来るとして、資金を集めていた』、「テラ」の8月10日以降の価格は2.17ドルから1.54ドルの間にある。
https://www.coindeskjapan.com/price/terra/
・『「テラ」暴落のメカニズム・疑心暗鬼  この20%の利回りというメカニズムは、現在の金融経済情勢で、通常の仕組みでは到底、維持可能とは考えられない。暗号資産の暴落が始まって、このメカニズムをもつテラからも、引き出しが相次ぎ、取り付け騒ぎのようになり、固定価格が耐えられなくなり、暴落したということである。 ステーブルコインであるにも関わらず、一般の暗号資産の暴落に連られ、安定的な価格を維持できなくなり、9割以上暴落した。その売られ方はさながら通貨危機の状況であった。 さらにマズいのは、相場としての取引というよりは、そのステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった。この状態は、新しい金融商品にとって非常にまずい。特に暗号資産全体の評価にも影響を及ぼすことになった。 ブロックチェーン技術を使用した「デジタル金融資産」の範疇には、暗号資産に加えて「NFT」もある。NFTとはNon-Fungible Token(非代替性トークン)のことである。もっとわかりやすい言い方をすれば「デジタル権利書」のことである。筆者は今後、一般化・発展してくるものと考えている。 ところがその、NFTも今回の仮想通貨やステーブルコインの暴落の時期に合わせ、その平均価格が8000ドルから1000ドルまで大幅下落してしまった。つまりは「デジタル金融資産」全体が残念な状況となってしまっている』、「ステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった。この状態は、新しい金融商品にとって非常にまずい。特に暗号資産全体の評価にも影響を及ぼすことになった」、「NFTも今回の仮想通貨やステーブルコインの暴落の時期に合わせ、その平均価格が8000ドルから1000ドルまで大幅下落」、確かに「「デジタル金融資産」全体が残念な状況」のようだ。
・『不安増幅-ブロックチェーン型プログラムの問題  昨今のデジタル金融商品は、ブロックチェーン技術をベースとしたものが主流であるが、そこで使われる技術がDAO(Decentralized Autonomous Organization)である。日本語訳すると「自律分散型組織」となる。 そもそもデジタルの世界は、発展したIT技術によって、中央集権的に情報を集め、早く確実に判断を下す仕組みとして普及した。 それに対して、DAOは中央管理者が介在せず、当事者だけで判断を下し実現する自立稼働するプログラムである。いわゆる分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)であり、今までのデジタル化された中央集権型のシステムと比べると分散していることもあり、サーバー攻撃も相次ぐという問題も発生している。 最近ではDAOは導入が結構進んでいる。一言でいうと、シンプルでコストが安いシステムということもできるかと考えている。さまざまな取引システムにも取り入れられている。 ところが実はそのことが、最近の為替相場の動きのように、相場の波の振れが大きくなるという現象につながっている様である。管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる。 安定した運用のためには、システム自体の役割、そして基本的な目的の確認が必要となる。すべての参加者が善人であるとは限らず、この分野でもガードレールが必要となる』、「管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる」、やむを得ないようだ。
・『今後の対処法として  筆者は、暗号資産よりも「デジタル権利書」としてのNFTに将来性があると考える。新たな金融市場を形成していくことになろう。 残念なことであるが、暗号資産の業界には、ハッキング(詐欺)の事件が多い。現在、暗号資産やNFTの取引をするのは、暗号資産交換業者である。現在、日本の登録業者は30社ある。 金融機関の決済を始めとしたネットワークは、各金融機関をつなぎ共有されたインフラとなっている。例えば、日本が世界に誇る「全銀システム」は、銀行、信用金庫、信用組合など、現在、937機関を繋いでいる、大きなデジタル化した組織となっている。その最終決済は日本銀行である。今後、仕組みとしてCBDC(Central Bank Digital Currency :中央銀行デジタル通貨)も検討されている。 ハッキング事件の対応として、暗号資産交換業者は“それぞれ”に堅固なシステムを構築した。その全体の状況は、その基本機能である「ブロックチェーン」のような個別の塊がいくつもあるような形状であり、一体化することはない。金融システムのような相互のネットワークを作り上げていくことが大事なことと考える。 新しい金融商品の業界が立ち上がっていくときに、大事なのが「業界の自主規制団体」である。現在、急ピッチで統合が進んでいる。現在では、暗号資産やNFTを決済手段とし、また取引の場となるであろうメタバースの業界は、「日本デジタル空間経済連合」と「メタバース・ジャパン」の2つの団体にまとまりつつある。これは極めて重要なことである。 今後、デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている。筆者も微力であるが、最大限協力していきたいと思っている』、「デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている」、同感である。

次に、9月5日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「ここへきて「仮想通貨」「株」が大ピンチに…投資家も目を逸らす「ヤバすぎる危機」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99431?imp=0
・『金融緩和という「固定観念」  米国連邦準備理事会(FRB)の数課に亘る金利引き上げにも拘らず、消費者物価指数は前年対比で8%を超える水準にとどまっている。 FRBは、さらに金利引き上げなどを続けることになる。 ある意味では、FRBはかなり追い込まれた状況になっている。 今年に入って、FRBは既にゼロ近辺だった金利を2%以上まで引き上げ、これまで供給してきた市中の資金も吸い上げ始めている。 それにも拘らず、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)後は、ビットコインや米国の一部の株式などは上昇した。 その背景には、主要投資家の間でこれまでの金融緩和期の記憶が一種のアンカー(固定観念)として残っていたのだろう。 主要投資家にとって、その固定観念は強い。 景気後退懸念が高まればFRBは経済と金融市場に配慮するという思い込みに浸る投資家は多い。 一方、9月以降FRBは、市中のお金を吸い上げて量的引き締めを本格化し、追加利上げを続けるとみられる。 それによって、市中に流れるお金の量は徐々に縮小することになるはずだ。 これまで、“金余り”に支えられてきた一部の株式や、ビットコインなどの価格は不安定化する可能性が高いと見とくべきだ』、「主要投資家にとって、その固定観念は強い。 景気後退懸念が高まればFRBは経済と金融市場に配慮するという思い込みに浸る投資家は多い」、しかし、「9月以降FRBは、市中のお金を吸い上げて量的引き締めを本格化し、追加利上げを続けるとみられる。 それによって、市中に流れるお金の量は徐々に縮小することになるはずだ」、「投資家」の「思い込み」は、客観的な見方を鈍らせるだけに恐ろしい。
・『「低金利が続く」と信じた人たち  1990年代の初頭以降、世界経済はグローバル化した。 自由貿易の促進、中国の工業化などによって国境を超えたヒト、モノ、カネの再配分が加速した。 韓国や台湾ではデジタル家電や半導体の受託製造を行う企業が急成長を遂げ、国際分業体制が強化された。 米国ではアップルなどが生産設備を自前で整備する負担から解放され、ソフトウェア開発に集中して取り組むことによって事業運営の効率性が高まった。 グローバルにサプライチェーンが張り巡らされ、企業は需要変化に即座に対応し、供給を行う体制を整備した。 それが、経済成長と低物価環境の同時進行を支えた。 ITバブルや住宅バブルの膨張局面を除き、FRBは失業率の上昇などに配慮して金融緩和を進め、経済と金融市場の安定を目指しやすくなった。 1980年から89年末まで、米国の政策金利の平均値10.3%だった。 1990年から99年末までは5.4%、2009年までの10年間では3.0%と政策金利水準は切り下がった。 その結果、低金利環境が続くと信じる投資家が増えた。 米国など先進国では国債から十分な利得を得られなくなり、ジャンク級社債、成長期待の高いIT関連の株式に投資資金が流入した。 その状況下、2013年にキプロスショックが発生するとビットコインが注目を集めた。 民間企業などが発行する仮想通貨には価値を一定に保つ仕組みがない。 ビットコインの価値は不安定であり、どうしても投機の対象になりやすい。 それでも、世界の低金利環境が続くとの楽観が投資家のリスクテイクを支えた。 買うから上がる、上がるから買うという強気心理が連鎖し、ビットコインや株価の上昇は鮮明化した。 コロナショックによって株価などが下げた2020年3月中旬以降もFRBによるドル資金供給や積極的な金融緩和が楽観論の回復を支え、仮想通貨や株式の価格は高騰した。 グローバル化が低金利環境を支えるという主要投資家の思い込みは強いと考えられる』、「投資家」は自分が儲かる楽観的見方を信じ込み易いようだ。
・『インフレ退治に追い込まれた中央銀行  世界的に金利には上昇圧力がかかりやすくなっている。 近年の世界経済ではグローバル化とは逆の動き(脱グローバル化)が加速した。 その一つとしてウクライナ危機のインパクトは大きい。 ロシアからドイツなどへの天然ガス供給量が減少するなど、世界全体で需要を満たすことが難しくなった。 世界経済は1980年代以前のようにインフレが進みやすい環境を迎えたと考えられる。 足許、景気後退懸念が高まっているが、米国の労働市場は非常にタイトだ。 旺盛な個人消費がコストの価格転嫁を支え、インフレ予想は高止まりしている。 FRBは追加利上げなどによって需要を削ぎ、インフレ退治を最優先しなければならない。 失業率が上昇するのは避けられない。 そうしたFRBの覚悟がジャクソンホール会合で示された。 9月からはQT(量的引き締め)が加速する。 状況によってはFRBがQTのさらなる加速を検討する可能性も否定できない。 一方、7月のFOMC後から8月半ばまで、ビットコインなどの仮想通貨や低格付けの社債、ナスダック上場銘柄などが値を戻した。 それを支えたのが、7月のFOMC後の記者会見でパウエル議長が日和見姿勢を示したことだ。 FRBが景気に配慮して金融を緩和するという投資家の思い込みは依然として強いといえる。 インフレ退治のための金融政策のインパクトを主要投資家が本当に認識するには、時間がかかる。 FRBは徹底して金融を引き締め、インフレ率を2%程度に安定させなければならない。 それは失業率の上昇など痛みを伴う。 その後、需要が盛り返し始めると、近年に経験しなかったペースで物価は再上昇する可能性が高い。 世界的に金利は上昇し、株式や仮想通貨などの価格には下落圧力がかかりやすくなるだろう。 その中でも、価値の裏付けがないビットコインなど仮想通貨の価値は大きく調整する展開が懸念される』、「インフレ退治のための金融政策のインパクトを主要投資家が本当に認識するには、時間がかかる」、「FRBは徹底して金融を引き締め、インフレ率を2%程度に安定させなければならない。 それは失業率の上昇など痛みを伴う。 その後、需要が盛り返し始めると、近年に経験しなかったペースで物価は再上昇する可能性が高い。 世界的に金利は上昇し、株式や仮想通貨などの価格には下落圧力がかかりやすくなるだろう」、「物価」や「金利」の「再上昇」が現実にあるか否かはともかく、あり得るシナリオで、要注意だ。
タグ:「インフレ退治のための金融政策のインパクトを主要投資家が本当に認識するには、時間がかかる」、「FRBは徹底して金融を引き締め、インフレ率を2%程度に安定させなければならない。 それは失業率の上昇など痛みを伴う。 その後、需要が盛り返し始めると、近年に経験しなかったペースで物価は再上昇する可能性が高い。 世界的に金利は上昇し、株式や仮想通貨などの価格には下落圧力がかかりやすくなるだろう」、「物価」や「金利」の「再上昇」が現実にあるか否かはともかく、あり得るシナリオで、要注意だ。 「投資家」は自分が儲かる楽観的見方を信じ込み易いようだ。 「主要投資家にとって、その固定観念は強い。 景気後退懸念が高まればFRBは経済と金融市場に配慮するという思い込みに浸る投資家は多い」、しかし、「9月以降FRBは、市中のお金を吸い上げて量的引き締めを本格化し、追加利上げを続けるとみられる。 それによって、市中に流れるお金の量は徐々に縮小することになるはずだ」、「投資家」の「思い込み」は、客観的な見方を鈍らせるだけに恐ろしい。 真壁 昭夫氏による「ここへきて「仮想通貨」「株」が大ピンチに…投資家も目を逸らす「ヤバすぎる危機」」 「デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている」、同感である。 筆者は、暗号資産よりも「デジタル権利書」としてのNFTに将来性がある 「管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる」、やむを得ないようだ。 「ステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった。この状態は、新しい金融商品にとって非常にまずい。特に暗号資産全体の評価にも影響を及ぼすことになった」、「NFTも今回の仮想通貨やステーブルコインの暴落の時期に合わせ、その平均価格が8000ドルから1000ドルまで大幅下落」、確かに「「デジタル金融資産」全体が残念な状況」のようだ。 「テラ」の8月10日以降の価格は2.17ドルから1.54ドルの間にある。 https://www.coindeskjapan.com/price/terra/ 「ビットコイン」の価格は、6月中旬以降、2万ドル前後で低迷。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-07/RHTJPXT1UM0W01 「改正資金決済法」については、金融庁の説明資料が詳しい。 https://www.fsa.go.jp/common/diet/208/03/setsumei.pdf 価格固定を謳った「ステーブルコイン(StableCoin)」を対象とする「改正資金決済法」が制定され、裏付け資産の国内保管義務が発生するなど、投資家保護の規制 宿輪 純一氏による「価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ」 現代ビジネス (その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、ここへきて「仮想通貨」「株」が大ピンチに…投資家も目を逸らす「ヤバすぎる危機」) 暗号資産(仮想通貨)
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株式・為替相場(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) [金融]

株式・為替相場については、5月14日に取上げた。今日は、(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?)である。

先ずは、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604586
・『毎回同じことばかり書いていると言われそうだが、7月20~21日に行われる金融政策決定会合を前に、日本銀行の政策について総括したうえで、「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」を提示したい。 以下の複数のプランの目的はいずれも日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することにある。また、敵は投機を繰り返すトレーダーであって、日銀ではない。 今回の決定会合は日銀が動くチャンスかもしれない。なぜなら、市場のトレーダーたちはアメリカの中央銀行の政策決定会合であるFOMC(連邦公開市場委員会、26~27日開催)における利上げ幅の予測の議論に掛かり切りで、日銀の政策変更を狙った投機的動きがないからである。政策変更が投機に屈したことにならない大チャンスだ』、今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。
・『なぜ「連日指し値オペ」を即刻やめるべきなのか  早速、日銀が原則毎営業日行っている「連日指し値オペ」(日銀が国債の利回りを指定して、無制限に買い入れる措置)の出口戦略から提案したい。 超短期:「指し値オペ出口戦略」 目的:投機的トレーダーを追い払うため アクション1:連日指し値オペを即時中止する。今回の金融政策決定会合で行う。 解説:① 日銀は自ら宣言して市場に約束した手前、アクションは縛られている。したがって、投機トレーダーに完全に読まれている。というか、読む必要もない。そのアクションを利用して、むしろ絶好のターゲットとして、好きなときに好きなだけ揺さぶりをかけることができる。 ② 国債を先物で売る投機トレーダーは失うものがない。国債の値上がり(利回り低下)の可能性はほぼゼロで、金利の上昇を避けようとして日銀が動けば儲かる。 ③ 一方、日銀は追い込まれている。金融政策も、中央銀行の信頼性も背負っているから、自由度がない。さらに、物価高の主要要因の1つである円安の1つの原因である日銀が政治的に、かつほぼ全国民から責められている。異次元緩和に当初から反対してきた経済学者だけでなく、これまで支持してきたエコノミストまで日銀総批判に回っている。 ④ 連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである。 アクション2:国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする。株式ETF(上場投資信託)についても日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)先物も買えるようにする。やはり今回の決定会合で決定するか、もしくは、検討されたことを議事要旨に書き込む。 解説:① 投機トレーダーは先物を多用するからだ。なぜかといえば、小額で大きく動かせるからである。そこへ、規模で圧倒的に大きい日銀が参入してくれば、先物市場も日銀に支配され、トレーダーたちの勝ち目はない。 ② 「日銀が先物市場に入ってくる可能性」だけで、十分投機トレーダーを撤退させることができる。彼らは、リスク小さく楽に儲ける、勝ち戦にしか参入しない小心者である。勝ち目がなければすぐに逃げる。 ③ 国債(株式も)の現物保有量を減らすことができる。少ない保有量で同じ金融緩和効果を持つので、先物利用はもともと望ましい。 アクション3:指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う。 目的:日銀側のアクションを読ませないように、多様な手段を持つ。かつ、利回りは絶対に低下しない、という投機トレーダーの予想を大きく外し、彼らにいったんポジション解消で撤退させる。 解説:① そもそも0.25%は変動幅の上限にすぎず、目標値でない。目標値は0%程度である。だから、0.1%指し値は極めて妥当、普通、むしろ本来の政策により整合的である。 ② ただし、いったん彼らを退却させたら直ちに次のアクションに移る』、「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う」、現在の硬直的なやり方を柔軟にする上で有効そうだ。
・『指し値オペ出口戦略の「次」は?  短期1:イールドカーブコントロール(長短金利操作)出口戦略 目的:投機家との戦いの場を、最後まで徹底的に戦い抜ける土俵に移す アクション1:イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある(その際はアクション2となる)。 ④ その場合は、傷が深くなる前に、さっさと戦いをやめることである。小を捨てて、本丸を守るということである。 ⑤ 本丸とは、日銀の金融政策への信頼の維持である。修正を繰り返し、ずるずると後退すれば、信頼を失うだけである。) 短期2:異常な円安の修正戦略 目的:円安を修正し、景気にプラスの影響を与えるため。なぜなら①円安は貿易赤字が巨大な現在、景気にマイナスである。②物価高は、日本においては、輸入コストの上昇が主な理由だ。つまり円安になれば、さらに輸入コストは上昇する。円安を解消すれば物価高は軽減される。 解説:① 為替は金融政策の目的ではない。つまり、為替相場にひずみを与えるような金融政策は望ましくない。為替相場は、経済、金融市場の妥当なバランスの上に決まるべきものである。 しかし、現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である。 ② 要は、手段が歪んでいる金融政策を、金融緩和の効果は維持したまま、修正するだけのことであり、為替市場が金融政策の目的になるかどうか、というような哲学的、理論的、枠組み的話ではなく、ただのテクニカルな修正である。バグを取り払うのである。 ③ そして、円安修正は日本の景気にプラスである。貿易赤字は異常に膨らんでおり、経常収支まで一時赤字になり、今後は再び赤字になり継続しそうな勢いである。この状況では、輸出よりも輸入のほうが圧倒的に大きいのだから、円安になれば、赤字は拡大し景気にはマイナスである。エネルギーや食品への支出額の増加によって、それ以外への消費、投資額が減少する。つまり、貧しくなる。 ④ 物価高の要因は、エネルギー・食料品などの必需品の輸入コストの上昇、必需品の部品など(スマートフォンなどの製品も)の上昇だから、為替は直接に影響する。円安が修正されれば、輸入インフレの影響は大きく減る』、「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある」、「現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である」、なるほど。
・『投機トレーダーを打ちのめすために団結せよ!  以上述べたことは、金融政策について、どんな立場をとろうとも、日本経済にプラスになるように行動しようと考えている人々であれば、議論の余地がなく、なんのデメリットもないはずだ。政治も国民も歓迎する。批判的な有識者、エコノミスト、経済学者も歓迎する。だから、即刻実行するべきである。 冒頭でも一部触れたが、大事なことは①金融引き締めではなく、緩和の継続であり、緩和の持続性、有効性を高めるために必須である。テクニカルな政策の修正にすぎない。②何よりも目的は日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することである。また、敵は投機トレーダーである。日銀ではないということだ。 有識者、メディアも日銀を攻撃するのをやめ、一致団結して、日銀と日銀の金融政策を支え、支持しよう。まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬について語るコーナーです。あらかじめご了承ください』、「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。

次に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307880
・『米国をはじめとして世界中で利上げが続出し、新型コロナウイルス感染拡大「第7波」も重なる中、意外にも日経平均株価は堅調だ。ほぼ2万8000円まで戻したこの株価の回復は「本物」なのか考えてみよう』、「日経平均株価」のグラフは
https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『意外に堅調な株価 ほぼ2万8000円まで戻す  ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの流行「第7波」、安倍晋三元首相の非業の死など、経済的な悪材料に事欠かない中で、株価は意外に堅調だ。8月9日火曜日の日経平均株価は2万7999円(端数切捨)とほぼ2万8000円の水準にある。これは昨年末の2万8791円と大きく変わらず、ロシアのウクライナ侵攻の前日(2月23日)の2万6449円をかなり上回っている。 ロシアのウクライナ侵攻がエネルギーや食糧などのインフレにつながり、これを受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の急激な金融引き締めを背景に、内外の株式市場は不調である――。そんなイメージをお持ちの方が多いのではないかと推測するのだが、現在の株価の推移は少々意外なのではないだろうか。 株価の回復は今後も続くと見ていいのだろうか』、どうだろうか。
・『日本の株価は米国の株価次第 「小国のマーケット」  長期的には「ズレ」が生じるとしても、日本の株価の動きは米国の株価と連動せざるを得ない。ここまで、世界株に占める日本株の割合が低下し、世界の大きな投資資金がグローバル投資への傾斜を強めてきた。そうした背景から、日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている。 さて、米国の株式市場の状況を考えると、「下落相場はまだ終わっていない」と考えることが妥当ではなかろうか。 下図は、金融政策と景気の場合分けで株価の典型的な上下の循環パターンを図式化したものだ。 (図はリンク先参照) 左上の第2象限からスタートすると、景気はまだ良くないが金融緩和政策の影響が優勢で株価が上昇する「金融相場」の状況を想定している。その後、景気が回復して企業業績の改善が株価の上昇を牽引する「業績相場」(第1象限)、しかし景気が過熱してインフレが問題となり、強い金融引き締めが行われて株価が下落する「逆・金融相場」(第4象限)、不景気から企業業績が悪化することが株価の下落につながる「逆・業績相場(第3象限)」と株価と景気、金融政策、物価が循環するのが典型的なパターンとして想定できる。 「○○相場」の前に「逆」と付いている呼称は、「○○」が主導する「下げ相場」の意味で、わが国の株式投資の世界では、割合広く使われている言い回しだ。 周知の通り、米国のインフレは消費者物価指数(CPI)で9.1%(6月、前年同月比)、企業物価(卸売物価)で11.3%という、「FRBが焦る」状況となっている。先ほどの図の循環で考えると、普通なら円で循環するところが、右に大きく引っ張られた楕円になってしまったような状況だと考えられる』、「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。
・『原油価格に変化あり ウクライナ危機前の水準まで下落  ただ、物価の状況には少々変化が見られる。小麦などはすでにロシアのウクライナ侵攻前をかなり下回るところまで価格が下落していた。さらに、ここにきて原油相場も米国の原油指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で見て一時90ドル割れまで下落しており、侵攻直前の約92ドルを下回る場面もあった。 商品市場では景気後退を価格に織り込み始めたということでもあるし、ロシアに対する経済制裁が有効に機能しなくなっていることの表れでもあるだろう。従って、必ずしも喜べない状況だが、インフレに頭打ち感が出てくる可能性はある。 一方、エネルギーは欧州向けのガス供給量の操作を通じて、むしろロシア側の武器になっている。冬の需要期に向けてロシアが欧州向けのガス供給を絞って、エネルギー価格の上昇が再び起こる可能性は捨てきれない。現時点で「インフレの頭打ち」を決めつけるのは早計だろう。 米国のCPIではサービス価格の影響が大きいが、労働市場の逼迫を通じた賃金の上昇でサービス価格の上昇に歯止めが掛からなくなっている。先般発表された7月の雇用統計(非農業部門雇用者数)は52.8万人増と市場の予想を大きく上回り、失業率は前月の3.6%から3.5%に低下した。 FRBは物価と雇用の二つの目的を追う組織だが、雇用が堅調であることから物価抑制に集中しやすい状況になっている。 今や金融政策のさじ加減が分からなくなってしまったように見えるFRBが賃金の上昇に歯止めをかけるためには、景気を悪化させるところまで金利を引き上げる必要がある。しかも一般に雇用は景気に対する遅行指標なので、金融引き締めが物価抑制に効果を上げるところまでの道のりは長い。 先の図式でいうと、「逆・金融相場」の規模と期間は想定を上回る可能性がある。さらに、金融引き締めの終わりまでには「逆・業績相場」的な状況が現出することが予想される。 典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる』、「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。
・『「岸田リスク」の行方は? 金融所得課税、金融政策変更…  岸田文雄首相と株式市場は、これまで相性がいいとは言えない関係だった。これまで、金融所得課税の見直し(増税)や、自社株買いへの規制、日本銀行の金融政策見直しの可能性など幾つかのリスク要因を株式市場に提供した。そのうちの幾つかは小さいながら株価が急落する「岸田ショック」をもたらし、岸田首相が慌ててそれらを撤回する場面があった。 他方、話自体は言葉の印象ほど大きくなさそうだが、「資産所得倍増計画」を打ち出したことは、各種のNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充への期待を通じて、株式市場にフレンドリーな言動だった。 小さな問題から片付けると、金融所得課税の見直しは、自民党の税制調査会会長である宮沢洋一氏が最近のテレビ番組で「議論はしないといけない」と述べているように、「まだ死にきっていない」。従って、年末にかけての税制の議論の中で再登場して株価を下げるリスクが残っている。 投資のリスクを取って利益を得ることを処罰するがごとき悪しき増税であるし、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」に逆行する施策でもある。そのため、実現はしないと思われるが、税の世界の住人たちの中では「いまだ諦めていない人たちがいる」ことは警戒しておきたい。 一方、「特大の岸田リスク」になり得るのは、岸田首相が来春の日銀正副総裁3人の交代人事に絡めて、日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性だ。これは、リフレ派が減った今年の政策委員会人事で既に示唆されていると見ることができる。また、「アベノミクス」の名の下に金融緩和政策を主導してきた安倍元首相が不在となったことの政治的影響もあって、大いに懸念されるところだ。 本日10日に行われるとされている内閣改造で、「悪い円安論者」であると同時にほぼ財務省の言いなりの鈴木俊一財務大臣が留任するようだと、一段と心配が増す(本稿執筆時点では「留任調整」の報道があった)。 9月27日に予定されている安倍元首相の国葬が終わってから日数を経て、追悼ムードが薄れてくる頃合いが株式市場的には心配だ。 円安で上場企業の業績は好調であり、上方修正含みだ。また、日本企業がいわば有利なハンディキャップをもらっている効果を上げている点で、日本の金融緩和継続がもたらしている円安は、日本国内での技術・設備・人材への投資の大きなチャンスを提供している』、「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。
・『政策手段の見直し  例えば日銀の上場投資信託〈ETF〉買いはいい政策だとは思えない)は必要であるとしても、金融緩和の維持はまだしばらくの間必要だろう。岸田氏が功を焦って自分の政策を打ち出したがるリスク、あるいは緊縮財政や金融の引き締めを指向する官僚に担がれて利用されるリスクには注意が必要だ。 一方、資源価格の上昇が一服していることや、FRBの金融引き締めが続いて円安がキープされそうな状況は、日本の株価に対してはプラスのファクターだ』、なるほど。
・『個人投資家はどうしたらいいか? 株価下落を「楽しみにする」心構えを  前述の通り、株価の循環のパターンを考えると、「株価下落のリスクは遠のいた」とはまだ言えそうにない。 だが、一方では、FRBが金融引き締めを継続しそうだという株価下落リスクの主因となる状況は、多くの市場参加者の知るところでもある。従って、現在の株価にもある程度織り込まれていると考える必要もある。 内外の株式に投資している個人投資家は、「株価の下落に耐える準備をしながら」(自分にとって過大なリスクは早急に排除すべきだ、という程度の意味である)、「逆・金融相場」と「逆・業績相場」をやり過ごして、次の株価上昇を待つのが概ね上策だろう。 「持ち株をいったん売って、安く買い戻す」オペレーションは、想像する以上に難しく、機関投資家でも平均的にはうまくいかない。 精神的にタフでないとなかなかできないが、相場の循環パターンに「何周も付き合って長期投資する」のが投資の王道だ。利益が出たところで持ち株を売却すると、その時点で課税されることの不利も長期的にはばかにならない。 近年投資を始めて、つみたてNISAやiDeCoなどを開始した投資家は、今後来るかもしれない株価の下落局面を「むしろ楽しみにする」くらいの心境で積立投資を継続するのがいいだろう。 また、長期投資中心のオーソドックスな投資家も、意外に大きな株価の下げ局面が現れたときに追加投資する金策を想像しておくといい。「だいたい投資済みだが、まだ少し投資する余力がある」というくらいの状況は、多くの投資家にとって「適正なリスク量」に近いと想像する。 もちろん個人差はあるが、将来の稼ぎと支出の柔軟性を考えると、多くの人がイメージしている以上に自分のリスク負担能力は大きい。「株価下落の可能性」を説きながら言うのも気が引けるが、どっしり構えて投資を続けてほしい』、「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。
タグ:「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。 「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。 「日経平均株価」のグラフは https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr= 「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。 「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。 山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」 ダイヤモンド・オンライン 「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。 「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよ 「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1% 「連日指し値オペ」を即刻やめるべき 今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。 「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」 小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」 東洋経済オンライン (その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) 株式・為替相場
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金融業界(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか) [金融]

金融業界については、5月25日に取上げた。今日は、(その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか)である。

先ずは、6月6日付け東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594421
・『本業がじり貧に陥り、年々体力を低下させる「構造不況」が定着している銀行業界。一部の地域銀行では経営統合に踏み切ったものの、多くの地銀は依然として業務提携という名の“不可侵条約”を周囲の銀行と結び、自分たちの営業エリアを守ることに終始している。 6月6日発売の『週刊東洋経済』6月11日号では「瀬戸際の銀行」を特集。金融のデジタル化によって、銀行に求められる役割や存在感が急速に低下する中で、今後のあるべき姿とは何なのか。模索を続ける銀行業界の実情に迫った』、興味深そうだ。
・『フィデアHDに君臨する「最高権力者」  「真摯に協議を進めたものの、互いの戦略を理解し、共有することができなかった」 2022年2月、東北銀行の村上尚登頭取は岩手県盛岡市で記者会見し、フィデアホールディングスとの経営統合の基本合意を解消すると硬い表情で発表した。 その半年余り前、村上氏は「本業利益を拡大させていくには、提携から一歩踏み込んで(フィデアと)合流する必要がある」とまで言い切っていた。にもかかわらず、いったいなぜ“婚約破談”に至ったのか。 その背景を探る中で見えてくるのは、“みずほ”の影だ。 そもそも、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つフィデアと東北銀は、2018年に包括業務提携を結んで、ATMの利用手数料を相互に無料化するなど、連携を深めてきた。 その一方で、東北地方では2021年5月、青森銀行とみちのく銀行が経営統合で基本合意したと発表し、地方銀行再編の大きなうねりが生まれていた。 その動きに触発されたかのように、2カ月後の21年7月に東北銀は拙速ながらも、フィデアとの経営統合交渉に踏み切ったわけだ。 東北銀の幹部によると、「銀行業に対する価値観がフィデアとはまったく違うので、(統合交渉は)当初から破談への不安が強かった」という。  実際にその予感は的中した。顧客情報などをフルに活用した広域での営業体制を志向するフィデアと、地元の中小企業に密着した金融サービスを貫く東北銀とでは、当初からなかなか話がかみ合わなかったのだ。それでも、東北銀の村上氏はフィデア側に「何とか歩み寄ろうと試行錯誤していた」(前出の幹部)という』、カルチャーの違いを無理に乗り越えようとせず、慎重になったのは正解なのかも知れない。
・『”上から目線”の取締役会議長  「理解できない」。2022年に入ると、村上氏はフィデアについて周囲にそう漏らすようになる。 その言葉はフィデアという会社に対してだけでなく、かつてみずほ銀行頭取を務め、現在はフィデアの社外取締役を務める西堀利(さとる)氏に対してのものでもあった。 フィデアの関係者によると、西堀氏は「村上氏に、銀行業のあり方などをかなり“上から目線”で説くようなことがあった。そうした姿勢を含めて、こういう人間がいる銀行とは組めないとなったのではないか」と話す。 とはいえ村上氏としては、口うるさい一人の社外取の発言に、いちいち神経質になっていたわけではないだろう。 フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」(フィデアの関係者)なのだ。 その最高権力者の考えや方針を理解できなければ、経営統合など当然ありえないわけだ。 その西堀氏は、6月の株主総会を経て社外取から非業務執行の社内取締役に移る見通しだ。まさか指名委員会の委員長として、自らの人事案の決議に参加してはいないだろうが、ガバナンス上はたして問題はないのか。 企業統治に詳しい川北英隆・京都大学名誉教授は、西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」としている』、「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」、それが「社内取に移る」というのは、確かに「透明性のきわめて低い人事だ」。
・『トラウマの経営統合  みずほ銀出身者によって再編が進まないという事例は、ほかにもある。静岡銀行と名古屋銀行の経営統合を前提としない包括業務提携が、まさにそうだ。 名古屋銀を提携に駆り立てたのは、2021年12月に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合だ。両行が組めば、貸出残高で愛知県トップの座を「愛知+中京」連合に譲り渡すことになる。 両行の最終合意発表が翌月に迫っていた2022年4月27日、名古屋銀は地銀上位行である静岡銀との包括業務提携を発表。製造業が多い静岡と愛知において両行の企業支援の知見・ノウハウを共有し、環境規制など産業構造の変化に対応していく狙いだと説明した。 名古屋銀の藤原一朗頭取は、記者会見で「愛知銀と中京銀の経営統合を意識したのか」と問われると、「ありません」と一蹴し、それ以上言葉を続けなかった。 ただ、経営統合はしないという方針について質問されると、途端に「前職時代に経営統合を経験した。現場にいて大変だったという思いがある」と生々しい記憶を吐露したのだ。 藤原氏の「前職」は日本興業銀行で、「大変だった経営統合」とは、3つの母体銀行による内部抗争とシステム障害を繰り返してきた、みずほ銀のことである。 経営統合や合併が、経営陣や現場の行員にどれだけの苦しみをもたらすのか。藤原氏の20年越しの思いからは、それが垣間見えるようだった』、「名古屋銀の藤原一朗頭取」には、「みずほ」時代の「経営統合」の「苦しみ」の経験があり、それが「愛知銀と中京銀の経営統合」をしないという「方針」につながった可能性がある。やはり「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛」であることは間違いないようだ。

次に、6月24日付け東洋経済オンライン「地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598886
・『地方銀行の経営者にとって決して無視できない動きだろう。 村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンス(以下シティ)が、地銀に触手を伸ばしている。 5月24日に公表された、山梨中央銀行の株主総会招集通知。大株主の欄に、1.92%の株式を保有する第7位の大株主としてシティの社名が記載されている。5月30日に公表された滋賀銀行の招集通知にもシティが登場した。1.67%を保有する第9位の大株主だ。 これ以外にも東洋経済の調査で、シティはさらに3つの地銀の株式を保有していることがわかった』、物言う株主(アクティビスト・ファンド)がいよいよ「地銀に触手を伸ばしている」時代に入ったようだ。
・『財務体質は優良だが、株価水準は著しく低い  1つ目は長野県を地盤とする八十二銀行。シティは1.36%を保有する13位の大株主だ。2つ目は秋田銀行で、0.94%保有し同じく13位に位置する。最後は東京きらぼしフィナンシャルグループ(以下、きらぼし)。保有比率は1%で、こちらは12位だ。 東洋経済の調査によると2021年9月末時点で大株主にシティの名前がなかったことから、地銀への投資は最近になって開始したようだ。 シティが投資した地銀は、自己資本比率の高さが目立つ。全国地方銀行協会によれば、地銀平均の自己資本比率は国内基準行で9.92%、国際統一基準行で14.23%。きらぼしを除く4行は、平均値を超える財務基盤を誇っている。 株価も著しく安い。PBR(株価純資産倍率)は0.1~0.2倍台と、解散価値の目安である1倍を大きく割っている。割安に放置された株式を取得して余剰資本を生かした株主還元を要求し、株価を向上させる出口戦略をとりうるだろう。 シティの狙いは株価水準以外にもありそうだ。東洋経済の取材に対して、村上世彰氏はこう話す。「(機関投資家である)生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」 地銀の大株主として名を連ねながらも、株式の売却を進めているのが日本生命保険だ。 2020年度末時点で八十二銀行株を1700万株保有していたが、2021年度末には1360万株に減少。同様に秋田銀行株も、保有株式数が1年間で62.5万株から43.7万株に減った。安定株主の存在感が低下すれば、シティのようなモノ言う株主の声が通りやすくなる』、「生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」、上場地銀にとっては、悩みの種が増えたことになる。
・『なぜ、きらぼし銀行の株式を保有しているのか  一方で、5つの地銀の中で特異なのがきらぼしだ。自己資本比率は5行で唯一、地銀の平均値(9.92%)を割っており、株主還元を一層強化する余地は限られる。ある地銀役員は「再編を期待した投資だろう」と指摘する。 シティには再編をめぐる「成功体験」がある。昨年にSBIホールディングスがTOB(株式公開買い付け)を行った新生銀行だ。シティはTOBの進捗と並行して新生銀株を買い進め、12月には共同保有者と合わせた保有比率が9.16%にも達した。その後TOBの成立を受け、シティは全株式をSBIに売却した。 銀行業界初となる敵対的買収が成立したことについて、村上氏は「金融庁もマーケット中心主義へと舵を切った」と評価する。企業価値向上に資するなら、金融庁は再編を推奨すると見ている。 きらぼしの再編相手としては、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループが考えられる。折しも、昨年8月にはストラクチャードファイナンスなどの分野において、きらぼし銀行とコンコルディア傘下の横浜銀行が業務提携を発表した。 きらぼし銀と東日本銀は同じ東京都が地盤で、両者の再編観測は浮かんでは消えを繰り返している。仮に再編が成就すれば、シティにとっては新生銀行に次ぐ「二匹目のどじょう」となる。 シティによる株式保有で何が起こりうるのか。村上氏は地銀株の保有についてこう述べた。 「地銀には3つの選択肢がある。1つ目は合併や買収が起こりうること。2つ目は非上場化すること。3つ目は企業価値を上げること」 今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ。 全国地方銀行の2021年度決算を徹底分析したランキングはこちら。 ■地銀99行「衰弱度」総合ワーストランキング ■地方銀行、頭痛の種となっている「3大リスク」 ①有価証券評価損益ワーストランキング  ②保証依存度ワーストランキング  ③自己資本率ワーストランキング』、「今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ」、地道に業績を上げるのが王道だろう。

第三に、8月15日付け東洋経済オンライン「みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか」を紹介しよう。
・『みずほとソフトバンクの合弁会社が苦境に立たされている。国内初のフィンテックサービスが軌道に乗らない理由はどこにあるのか。 6月末、ある企業の決算公告が業界紙にひっそりと掲載された。2022年3月期決算では15億円の最終赤字を計上。バランスシートは負債199億円に対して純資産はわずか5億円と債務超過寸前だ。懐事情が苦しい企業の正体は、みずほ銀行とソフトバンクが設立した「J.Score」(Jスコア)だ。 2016年11月に設立されたJスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資を手がける。AIを用いた独自の審査技術を武器に、金融機関の審査が通らない個人に対しても、低い貸し倒れリスクで融資を行うことが特徴だ。設立に先立つ記者会見ではみずほ・ソフトバンク両グループのトップが登壇し、旧来のリテール業務に風穴を開ける画期的なビジネスだと印象づけた。 だが、当初の期待とは裏腹に、Jスコアは6期連続で最終赤字を計上。累積赤字は2022年3月末時点で200億円を超えた。当初抱いた野望に対して2つの誤算が生じ、Jスコアはいまだ足踏みを続けている』、「Jスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資」、として設立時には大いに注目された。
・『貸し出しの範囲を広げたい  「今までとはまったく違う、レンディングの世界を作りたい」。2016年9月、Jスコアの設立に先立ち行われた記者会見。みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長(当時)は、Jスコアの革新性をそう力説した。同じく登壇したソフトバンクグループの孫正義社長も「このジョイントベンチャー(合弁事業)には非常に期待している」と熱弁していた。 Jスコアの融資は個人向け・無担保・使い道自由。個人情報を基にAIが算出した「スコア」を基に、金利や借り入れ可能額が決まる。 銀行のフリーローンや消費者金融と異なるのは、旧来型の審査基準でははじかれてしまう顧客の発掘だ。収入や借り入れ状況といった信用情報のみならず、学歴や居住形態、資産背景、そして性格に至るまで多面的な属性をAIが分析。現時点での与信が低くとも、将来の成長が見込めれば融資を受けられる点をうたっていた。 2017年9月にサービスを開始し、半年後の2018年3月末時点でスコア取得者数は13万件。貸付極度額は35億円と、みずほ銀内部の計画対比で2倍の進捗をたたき出した。2019年3月末にはスコア取得者数は52万件、貸付極度額は193億円とさらに伸長。一見、事業は好調かに思われた。 ところが、Jスコア自身の業績は上向く気配を見せなかった。2019年3月期決算は47億円の最終赤字を計上。翌2020年3月末時点でのスコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進した一方、2020年3月期決算の最終赤字は63億円とさらに膨れ上がった。 背景にあるのが、積極的な広告宣伝だ。Jスコアはサービス開始当初からテレビやネット、公共交通機関などあらゆるメディアに広告を打ち、知名度向上と顧客の囲い込みに奔走した。結果、貸し出しによる利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字に陥っていた。 痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」(同社広報)ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった。2022年3月期決算では赤字額が縮小しているが、これは広告費を絞ったため。肝心の売上高はむしろ減少している』、「スコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進」したが、「利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字」、「痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」・・・ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった」、確かに不運だ。
・『進まぬ「情報銀行」構想  もう1つの誤算は、貸出利息に並ぶ収益柱である、利用者の個人情報を第三者に提供する「情報銀行」事業の停滞だ。 Jスコアは利用者の信用力を1000点満点で評価する。現時点での与信のほか、個人情報を任意で提供するほどスコアが上昇し、極度額の引き上げや金利優遇が受けられる。住居や家族構成をはじめ、語学力、保有資格、趣味、さらには性格診断に至るまで質問項目は100を超える。 利用者の同意を得たうえで、Jスコアは収集した情報をマーケティング材料として企業に提供し、対価を得る構想を練っていた。2019年12月に業界団体より「情報銀行」の認定を受け、2020年度にもデータ提供を開始する手筈だった。だが、認定を取得してから2年以上経った記事執筆時点でも、サービスは開始されていない。 遅れの一因とみられるのが、収集した個人情報の取り扱いルールが詰めきれていなかったことだ。総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会を断続的に開催。2018年6月に情報銀行の認定要件が策定された。だが、個人情報の運用方針や提供先の選定基準などは持ち越しとなった。 2021年11月に開かれた検討会には、Jスコアの担当者も参加。データ分析を通じて個人の趣味嗜好や信用力を予測し、分析結果を第三者に提供する際の留意点について議論が交わされた。 2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す。 踊り場を迎えたままのJスコアを、親会社であるみずほ銀とソフトバンクは座視し続けるのか。 株主資本の変動から推測するに、Jスコアは過去4回、みずほ銀とソフトバンクから増資を受けている。創業当初の資本金および資本準備金計50億は3年も持たずに溶け、両社は2018年度に合わせて50億円の増資を引き受けた。 その後もJスコアは増資を重ね、2021年3月期には資本金と資本準備金の合計は200億円に膨らんだ。なお、Jスコアは資本欠損を解消するため、今年2月、資本金を99億円、資本準備金を100億円取り崩すと発表している。 度重なる追加出資に応じた理由は、Jスコアの財務改善だけではない。貸金業法は、貸金業者は純資産額を常時5000万円以上に保つことを定めている。赤字が続くJスコアが融資を続けるには、親会社は否応なく増資を引き受ける必要があった。 Jスコアの業績が短期的に黒字化する見込みは薄く、業務を続けるためにはみずほ銀とソフトバンクGは今後も追加出資を余儀なくされる可能性が高い。Jスコアの業績を反転させるべく、親会社の顧客網を活用したテコ入れ策を検討しているようだ』、「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。ただ、それが決まる前に、それ抜きでとりあえず「Jスコア」を八足させたのも問題だった。
・『個人情報の利用に抵抗感  現状のJスコアは審査基準の違いこそあれ、同業の銀行やノンバンクと同じく無担保ローンの提供にとどまる。本丸である情報銀行が稼働しなければ、点数化した信用力は宝の持ち腐れだ。 ある金融機関関係者は「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」と指摘する。中国ではアリババの「芝麻信用」が算出するスコアが社会インフラと化しているが、急速な普及の背景にあるのが、クレジットカードのような信用力の物差しが普及しておらず、個人情報活用に対して国民の抵抗感が薄かったことだ。 翻って、国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」がサービスを終了した。同サービスは2019年6月に発表。ヤフーIDにひもづいた個人情報やネット通販の購買履歴、クレジットカードの決済動向などから利用者の信用力をスコア化し、外部企業に提供することを企図していた。だが、利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた。 今後Jスコアが軌道に乗るかどうかは、日本における情報銀行そのものの成否をも左右する』、「国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」が」、「「利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた」、とは初めて知った。やはり「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」のが確かなようだ。「Jスコア」が苦境をどう乗り切っていくかが注目される。
タグ:カルチャーの違いを無理に乗り越えようとせず、慎重になったのは正解なのかも知れない。 東洋経済オンライン「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀、経営統合破談の舞台裏」 (その15)(地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛 フィデアHDと東北銀 経営統合破談の舞台裏、地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢、みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか) 金融業界 「フィデアにとって西堀氏は「取締役会議長であり、指名委員会の委員長も務め、旧富士銀行出身の田尾祐一社長の先輩でもある、まさに“最高権力者”」、それが「社内取に移る」というのは、確かに「透明性のきわめて低い人事だ」。 「名古屋銀の藤原一朗頭取」には、「みずほ」時代の「経営統合」の「苦しみ」の経験があり、それが「愛知銀と中京銀の経営統合」をしないという「方針」につながった可能性がある。やはり「地方銀行の合従連衡を妨げる"みずほ"の呪縛」であることは間違いないようだ。 東洋経済オンライン「地銀の大株主に出現「村上系ファンド」の腹づもり 株価がまるで冴えない地銀に示した3つの選択肢」 物言う株主(アクティビスト・ファンド)がいよいよ「地銀に触手を伸ばしている」時代に入ったようだ。 「生命保険会社が、地銀の株式を売り始めた。安定株主を失えば、株式市場と向き合わざるをえなくなる」、上場地銀にとっては、悩みの種が増えたことになる。 「今回投資対象となったある地銀は「すでにシティと接触を図っている」と話す。目をつけられた以上、地銀は何らかの対応に動かざるをえないだろう。少なくとも「3つの選択肢」はいずれも難路だ」、地道に業績を上げるのが王道だろう。 東洋経済オンライン「みずほとソフトバンク、「情報銀行」の2つの誤算 個人の信用をスコア化する野心はなぜ躓いたか」 「Jスコアは、フィンテックを活用した個人向け融資」、として設立時には大いに注目された。 「スコア取得者数・貸付極度額はそれぞれ120万件・335億円と躍進」したが、「利息収入を広告宣伝費が上回り、営業利益段階から恒常的な赤字」、「痛手だったのは、広告費の回収フェーズに入った矢先にコロナ禍に見舞われたことだ。「借り入れ需要が減退してしまった」・・・ことで、右肩上がりだったスコア取得者数や貸付極度額に急ブレーキがかかった」、確かに不運だ。 「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。 「総務省および経済産業省は2017年より、情報銀行のあり方を議論する検討会」、「2022年6月に最新の指針が公表され、取り扱いの方針に一端の決着を見た形だ。総務省の担当者は「これまでは明確な指針がなく(個人情報の活用に)慎重だった情報銀行も、できるようになるのでは」と話す」、「指針」「公表」が遅れたのは大問題だ。ただ、それが決まる前に、それ抜きでとりあえず「Jスコア」を八足させたのも問題だった。 「国内では2020年8月に「Yahoo!スコア」が」、「「利用者からの反発を受け、約1年でサービスの終了を余儀なくされた」、とは初めて知った。やはり「日本では情報銀行が普及する土壌が乏しい」のが確かなようだ。「Jスコア」が苦境をどう乗り切っていくかが注目される。
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決済(その9)(5 年後の約束手形の利用廃止について 資金手当ての役割は薄れ手形残高は 30 年前の 4 分の1に、急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、これはれっきとした「ヤミ金」である…人気急上昇中の「ツケ払い」サービスで荒稼ぎする悪質業者の手口 法の抜け穴を突いた"後払い現金化"のカラクリ) [金融]

決済については、1月4日に取上げた。今日は、(その9)(5 年後の約束手形の利用廃止について 資金手当ての役割は薄れ手形残高は 30 年前の 4 分の1に、急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、これはれっきとした「ヤミ金」である…人気急上昇中の「ツケ払い」サービスで荒稼ぎする悪質業者の手口 法の抜け穴を突いた"後払い現金化"のカラクリ)である。

先ずは、昨年3月4日付け大和総研が掲載した金融調査部 主任研究員 鈴木文彦氏による「5 年後の約束手形の利用廃止について 資金手当ての役割は薄れ手形残高は 30 年前の 4 分の1に」の要約部分を紹介しよう。
https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/securities/20210304_022129.pdf
・『 5 年後(2026 年)の約束手形の利用廃止を目指し、政府は「約束手形の利用の廃止等に向けた自主行動計画」の策定を産業界、金融界に求める方針だ。去る 2 月 19 日に取りまとめられた中小企業庁「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」を受けた経済産業大臣記者会見で明らかになった。背景には下請取引の適正化、金融のデジタル化・ペーパーレス化の社会的な要請がある』、興味深そうだ。
・『 すでに支払手形は残高ベースで 30 年前の 4 分の 1 に落ち込んでいる。振出、受取、振出の連鎖の源流にある建設業で手形払いが減少した。企業単位でみれば手形払いから現金払いへの切り替えは資金不足要因となるため、5 年後の全面廃止に向けては個々の企業の資金手当てが課題となる。もっとも、コロナ禍による不確実性はあるが 30 年前に比べ借入余力があることからその程度は大きくないと思われる』、「支払手形は残高ベースで 30 年前の 4 分の 1 に落ち込んでいる」、とはいうものの、「4 分の 1」も残っているともいえる。今後、金融界の姿勢はまだハッキリしないが、慎重に検討してほしいものだ。

次に、本年1月22日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300262
・『今年前半にも市場規模が1兆円に乗ると予想される新興ビジネスがある。クレジットカードを使わずに、オンラインで買い物ができる「後払い決済サービス」だ。 同サービスは、インターネット通販(EC)で商品を購入し、商品が届いた後、2週間から1カ月程度の間に紙の請求書やスマホアプリに届くバーコードを使ってコンビニや銀行などで代金を支払う仕組みだ。 「衣料品や食品などの物販のほか、旅行代金やオンラインゲームの課金サービスも対象で、クレジットカードを持たない若者層を中心に急速に利用額を伸ばしています」(メガバンク幹部)という。 昨年10月に米ペイパルが3000億円で買収したペイディや、同12月15日に東証1部に上場したネットプロテクションズホールディングスは最大手の事業者として知られる。 だが、代金の精算を翌月1回払い(マンスリークリア)のみとしている業者が大半で、割賦販売法の適用除外となっていることもあり、市場規模の拡大とともに消費者トラブルも増えている。「国民生活センターには利用者の支払い能力を超えて決済が行われているケースや事業者が問い合わせに十分な対応をとってくれないといった苦情が多く寄せられているようです」(前出のメガバンク幹部)という』、興味深そうだ。
・『業界団体を設立して自主ルールを策定予定  また、後払い決済サービス事業者はEC事業者(加盟店)の売り上げを立て替え、請求書の発行や代金回収を行うことで、加盟店から2~5%程度の手数料を得ているが、「収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見される」(前出のメガバンク幹部)という。このため大手後払い決済サービス事業者は昨年5月に、「日本後払い決済サービス協会」なる業界団体を設立し、今年早々にも加盟店審査に関する自主ルールを策定する予定だ。 急速に市場規模を拡大する後払い決済サービスだが、割賦販売法の網のかからない新興ビジネスだけに事業者は玉石混交だ。過度に規制を強 化すれば伸び盛りの市場に水を差す。しかし、消費者トラブルが大きく社会問題化したのでは後の祭りとなるジレンマを抱えている』、「クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見される」、のは大いに問題だ。「消費者トラブルが大きく社会問題化したのでは後の祭りとなるジレンマを抱えている」、やはり「消費者トラブル」を「社会問題化」させないような工夫が必要だろう。

第三に、3月11日付けダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298716
・『先日、スマートフォンに知らない番号からSMSが届きました。「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください」。しかし認証コードを届くようなことはしていないし、ログイン画面のURLも書かれていないのです。いったいどうしろと……?』、怪しい誘導だ。
・『見知らぬ名前のサービスからSMSで認証コードが届いた  先日、スマートフォンに見慣れない電話番号からSMS(テキストメッセージ)が届いた。文面は「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください。」というものだ(xxxxは4桁の数字)。 二段階認証の確認のような文面だが、そもそもこの【Paidy】というサービスを使ったことがない。ログイン画面に入力というが、入力するURLもない。 何だろうと思って調べたところ、Paidy(ペイディ)とは「メールアドレスと携帯電話番号だけでお買い物ができる」という触れ込みのキャッシュレス決済サービスだった。AmazonやQoo10など複数のECサイトで使うことができ、使った分は翌月にまとめてコンビニ払いなどで支払う。iPhoneを分割手数料0%で購入できるというプランもあるという。どうやら、クレジットカードを持っていなくても、クレジットカード的な使い勝手を手軽に実現するというコンセプトのサービスのようだ。 Paidyの利用方法(PaidyはECサイトで使える“後払いサービス”。メールアドレスと携帯電話番号だけで決済ができるという 似た名前で「ペイジー」という決済サービスもあるので一瞬それかと思ったのだが、まったくの別物。決済系のサービスは「ペイなんとか」という名前が多いので、探せば他にも似た名前のサービスがありそうな気がする。実に紛らわしい……』、よくぞここまで、いい加減な誘い文句を考えるものだ。
・『SMSの文面はさまざまなパターンがある  「誰かが何かをオンラインで買おうとして、間違えて私の電話番号を入力したのだろうか」とも思ったが、それなら認証番号が届かないから気が付いてやりなおすはずだ。念のためと思ってTwitterで検索してみると、「Paidyを使っていないのにSMSで認証コードが届いた」と気味悪がっている人がたくさんいた。怪しい。 私が受け取ったSMSはやはり不審なものだったようだ。調べてみると、文面は私が受け取ったもののほかにも数種類あり、 ・Paidy 決済認証番号: xxxx を Paidy(ペイディー)の画面に入力すると、こちらの電話番号で決済手続きがおこなわれます。 ・【Paidy】ペイディのお支払い方法に問題があります、更新してください https://~ ・【Paidy】お使いのアカウントを一時的に停止しました, ご確認が必要ですhttps://~ といった、特定のURLに誘導するものもある。 SMSではなく、メールが届いている人も多数いるようだ。こちらはSMSと同様の文面のものに加えて、 ・「Paidyご利用確認のお願い」と称して、カード利用の一時制限を行いカードの利用確認をさせる ・「利用制限解除の手続き」と称してアカウントの再設定を行うことを誘導する など、さらにバリエーションが豊か(?)だった。 Paidyも認識はしているようで、公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている。 対処法としては、原則「無視」。気持ち悪いが、せいぜい届いたSMSやメールを削除する、送信元の電話番号をブロックするくらいしかできない。間違っても、SMSやメールに書かれたリンクに飛び、誘導された通りに個人情報を入力したり、支払いをしたりといったことがないようにしてほしい』、「対処法としては、原則「無視」。気持ち悪いが、せいぜい届いたSMSやメールを削除する、送信元の電話番号をブロックするくらいしかできない」、「気持ち悪いが」、しょうがないようだ。
・『典型的なフィッシング詐欺  PaidyをかたるSMSやメールは、2021年12月ごろに急増したがいったん減少、そして今年に入ってまた増えている。フィッシング対策協議会が21年12月27日に「緊急情報」を出していた。 https://www.antiphishing.jp/news/alert/paidy_20211227.html 手口を見ると典型的なフィッシング詐欺で、SMSやメールに書かれているURLは偽物。Paidyのログイン画面を装った偽のWebサイトに誘導し、メールアドレスや携帯電話番号を入力させて個人情報を抜くのが目的のようだ。 実行者は日本人ではいのか、メールの文面で「カード」が「カド」になっていたり、送信元が「ペンディ」「パイディ」などとなっていたりと、ずさんなメールも多くある。URLが【http://paily~】や【http://paidyi~】となっているなど、よく見ると見破れるものもある。 基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする』、「典型的なフィッシング詐欺」のようだが、大いに気をつけたいものだ。

第四に、7月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「これはれっきとした「ヤミ金」である…人気急上昇中の「ツケ払い」サービスで荒稼ぎする悪質業者の手口 法の抜け穴を突いた"後払い現金化"のカラクリ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59992
・『クレジットカードを持たないZ世代の間で人気上昇中  新興サービスには必ずといっていいほど、それを悪用して暴利をむさぼろうとする者が現れる。急成長しているクレジットカードを使わずにオンラインで買い物ができる「後払い決済サービス」(BNPL)もそのひとつだ。 同サービスは、インターネット通販(EC)で商品を購入し、商品が届いた後、2週間から1カ月程度の間に紙の請求書やスマホアプリに届くバーコードを使ってコンビニや銀行などで代金を支払う仕組みだ。衣料品や食品などの物販のほか、旅行代金やオンラインゲームの課金サービスも対象で、クレジットカードを持たない若者層を中心に急速に利用額を伸ばしている。 海外では、昨年10月に米PayPal(ペイパル)が3000億円で買収したPaidy(ペイディ)が代表格で、日本では昨年12月15日に東証1部に上場したネットプロテクションズホールディングスが最大手の事業者として知られる。とくに米国では、クレジットカードを持たない若者層を中心に急速に普及しており、いわゆる「Z世代」と呼ばれる層の約4割はBNLPを利用しているというデータもある』、興味深そうだ。
・『「錬金術」でそそのかし、暴利を取る悪質業者も  だが、代金の清算を翌月1回払い(マンスリークリア)のみとしている業者が大半で、割賦販売法の適用除外となっていることもあり、市場規模の拡大とともに消費者トラブルも増えている。「2020年の改正割賦販売法で後払い類似サービスに関する規制が定められたのですが、後払い期間が2カ月以内の場合、割賦販売法の規制を受けないことになっています」(メガバンク幹部)というのが理由だ。 例えば、国民生活センターには利用者の支払い能力を超えて決済が行われているケースや事業者が問い合わせに十分な対応をとってくれないといった苦情が多く寄せられているという。中でも懸念されるのは、今回紹介するような「錬金術」で消費者をそそのかし、利ザヤを稼ぐ悪質業者の存在である』、どんな「錬金術」があるのだろう。
・『「ブラックリスト入り」でも即現金化が可能  「いわゆる後払い(ツケ払い)現金化に要注意!」(日本貸金業協会、財務局、金融庁、警察庁、消費者庁は連携で、こうした注意喚起を行っている。モデルケースとされる事例は次のようなものだ。 ①利用者はスマホで後払い決済業者に商品を申し込む。②後払い決済サービス業者は利用者が金融取引でブラックリストに登録されていても利用可能なこと、商品とともにキャッシュバック名目などで金銭を利用者に支払うが、これは利用にとって借金(借り入れ)でないことを伝える。③利用者は商品の代金を後払いする――というフローだ。 この後払い(ツケ払い)現金化の特徴は、形式的には後払いによる商品売買だが、商品代金の支払いに先立ち、商品の購入者が金銭を受け取ること。商品の価値と販売価格が必ずしも見合っておらず、顧客も商品を購入することを目的にしていないことで、キャッシュバック・レビュー報酬名目や提携した買取業者が当該商品を買い取ることにより金銭を支払うことが多いこと。 また、給料日等に商品代金を支払うことになり、その商品代金と先に受け取った金銭との差額が高額であることなどが特徴となっている』、表現が一般的すぎて、あと1つ問題的がはっきりしない。
・『商品の売買に見せかけた「ヤミ金」である  日本貸金業協会や各省庁は、この後払い(ツケ払い)現金化について、「形式的には商品の売買であっても、その経済的な実態が貸し付けであり、業として行う場合には、貸金業に該当するおそれがあります。貸金業登録を受けずに貸金業を営む者は、違法なヤミ金融業者です」と厳しく指摘している。 インターネットで「後払い、現金化」で検索すれば、「後払いアプリの即日現金化方法とすぐ使えるアプリ」など数多くの紹介サイトがヒットする。「クレジットカードや消費者金融以外でもお金を用意する方法が流行っています」と銘打たれたサイトには、「後払い・ツケ払い現金化」は違法だが、「後払いアプリ現金化」は合法と謳うたわれている。 そして、両者の違いについては次のように説明されている。まず合法の「後払いアプリ現金化」は、後払いアプリを使ってECサイトなどで商品を購入して転売することで現金を得る仕組み。これに対して「後払い・ツケ払い現金化」は、業者から商品を後払いで購入したキャッシュバック特典として現金を受け取る仕組みで、実際の商品取引はないというものだ。 「後払い・ツケ払い現金化」は極めて違法性の高い、実質的にヤミ金融と指摘されている。日本貸金業協会や関係省庁が注意喚起しているのもこの取引にほかならない』、「「後払い・ツケ払い現金化」は、業者から商品を後払いで購入したキャッシュバック特典として現金を受け取る仕組みで、実際の商品取引はないというもの」、この説明はさっぱり理解できない。キャンセルをしていないので、「実際の商品取引はない」というのはどいうことだろう。
・『1万円の洋服を購入後、30%引きで転売し…  さらに、健全とされる「後払いアプリ現金化」の中にも合法すれすれのグレーゾーンな取引を行う業者が含まれている点は見逃せない。合法か違法かは、実際の商品取引の有無で分かれると紹介サイトで説明されているが、違法な後払い(ツケ払い)現金化でも商品取引がある場合もある。 また、合法とみられている後払いアプリ現金化でも、買い取り価格と購入代金の差が大きい場合、実質的に利用者は高利な消費者金融を利用しているのと同じケースも少なくない。例えば「後払いで買った商品を7割といった高い割引率で買い取って現金化するビジネスも横行し始めている」(メガバンク幹部)というのだ。イメージとしては次のような取引だ。 ECサイトで1万円の洋服を購入したと同時に、後払い決済業者を通じて買い取り業者に転売して現金が振り込まれる。利用者は商品を買うだけで当座の現金を手にでき、遊興費などに充てられるという仕組みだ。問題はその買い取りに際しての換金率が即日現金化業者の場合、大半が70~85%という水準に設定されていることだ。利用者は購入商品の価格が少額であることから、割引率が15~30%と高くても負担感は乏しく、むしろ当座の現金が得られることを優先しがちといえる』、「利用者は購入商品の価格が少額であることから、割引率が15~30%と高くても負担感は乏しく、むしろ当座の現金が得られることを優先しがち」、なるほど。
・『「1万3000円のうち利ザヤが3000円」の超高利  さらに、「ECサイトで1万円の商品を悪質事業者を通じて買えば1万3000円で買わなければならないが、商品を買うと同時に転売した形で利用者には1万円が振り込まれる。利用者は、商品を買うことで1万円の当座の現金を手にし、遊興費などに充てられる。ただし、1カ月後に、1万3000円を支払わなければならない。後払い事業者は利用者に代わって1万円を立て替え払いしているという仕組みも考えられる」(メガバンク幹部)という。 つまり消費者金融では利息制限法などにより上限金利があり、高利は付けられないが、商品を介する後払い決済サービスという新しい仕組みでは、その網を潜り抜けられる。割賦販売法も超短期では規制はない。超短期での返済なので表面的には高利という感じはないが、年利に引き直すと超高利になるのだ。 後払い決済サービス事業者はEC事業者(加盟店)の売り上げを立て替え、請求書の発行や代金回収を行うことで、加盟店から2~5%程度の手数料を得ている。だがこのところ、収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見されるという』、「収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見」、顧客との間でトラブルを起こし易い「EC事業者」が潜り込んだことで、損害は「クレジットカード会社」が負うのか、消費者が負うのかどちらなのだろう。
・『急成長市場に「悪質業者」はつきもの  利用限度額は数万円から20万円程度が多く、「未払い履歴があるなど明確な理由がなければ、ほぼ審査を通過できる」とされる。後払い決済サービス事業者は電話番号や住所など、簡便な情報をもとに与信を行っており、「犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を行う必要もない。それだけ事業コストがかからないが、焦げ付きリスクも高い」(メガバンク幹部)とされる。 審査は購買履歴などを活用するが、信用情報や属性などを活用するクレジットカードなどと比べて緩い分、不良債権化する割合は高いというわけだ。その分、利用額を小口化して、短期間返済(数回の分割や定額払いもあるものの、主流は一括払い)とすることで焦げ付きリスクを抑えるというビジネスモデルである。 信用力に問題のあるEC事業者も加盟店として登録されているだけでなく、新しいビジネスだけに後払い決済事業者そのものも玉石混交の状態にある。 新たなサービスでは法の未整備を突いた悪質業者が出てくることは歴史が証明している。社会問題化してはじめて法整備が図られる。それまでの間、悪質な業者はのさばるという構図である。商品の決済サービスの形をとっているが、事実上の高利の消費者金融(与信)と変わらないグレーゾーン取引は看過できない。 後払い決済サービスは今年前半にも市場規模が1兆円に乗ると予想されている。急成長する市場なだけに過度の規制は避けるべきだろうが、健全な利用者や金融知識に乏しい若者が泣きをみることはあってはならない』、「事業コストがかからないが、焦げ付きリスクも高い」、「審査は購買履歴などを活用するが、信用情報や属性などを活用するクレジットカードなどと比べて緩い分、不良債権化する割合は高い」、「その分、利用額を小口化して、短期間返済・・・とすることで焦げ付きリスクを抑えるというビジネスモデル」、「商品の決済サービスの形をとっているが、事実上の高利の消費者金融(与信)と変わらないグレーゾーン取引は看過できない」、これには何らかの形で規制すべきだろう。「健全な利用者や金融知識に乏しい若者が泣きをみることはあってはならない」、同感である。  
タグ:鈴木文彦氏による「5 年後の約束手形の利用廃止について 資金手当ての役割は薄れ手形残高は 30 年前の 4 分の1に」 大和総研 決済 (その9)(5 年後の約束手形の利用廃止について 資金手当ての役割は薄れ手形残高は 30 年前の 4 分の1に、急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、これはれっきとした「ヤミ金」である…人気急上昇中の「ツケ払い」サービスで荒稼ぎする悪質業者の手口 法の抜け穴を突いた"後払い現金化"のカラクリ) 「支払手形は残高ベースで 30 年前の 4 分の 1 に落ち込んでいる」、とはいうものの、「4 分の 1」も残っているともいえる。今後、金融界の姿勢はまだハッキリしないが、慎重に検討してほしいものだ。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」 「クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見される」、のは大いに問題だ。「消費者トラブルが大きく社会問題化したのでは後の祭りとなるジレンマを抱えている」、やはり「消費者トラブル」を「社会問題化」させないような工夫が必要だろう。 ダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」 怪しい誘導だ。 よくぞここまで、いい加減な誘い文句を考えるものだ。 「対処法としては、原則「無視」。気持ち悪いが、せいぜい届いたSMSやメールを削除する、送信元の電話番号をブロックするくらいしかできない」、「気持ち悪いが」、しょうがないようだ。 「典型的なフィッシング詐欺」のようだが、大いに気をつけたいものだ。 PRESIDENT ONLINE 森岡 英樹氏による「これはれっきとした「ヤミ金」である…人気急上昇中の「ツケ払い」サービスで荒稼ぎする悪質業者の手口 法の抜け穴を突いた"後払い現金化"のカラクリ」 どんな「錬金術」があるのだろう。 表現が一般的すぎて、あと1つ問題的がはっきりしない。 「「後払い・ツケ払い現金化」は、業者から商品を後払いで購入したキャッシュバック特典として現金を受け取る仕組みで、実際の商品取引はないというもの」、この説明はさっぱり理解できない。キャンセルをしていないので、「実際の商品取引はない」というのはどいうことだろう。 「利用者は購入商品の価格が少額であることから、割引率が15~30%と高くても負担感は乏しく、むしろ当座の現金が得られることを優先しがち」、なるほど。 「収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見」、顧客との間でトラブルを起こし易い「EC事業者」が潜り込んだことで、損害は「クレジットカード会社」が負うのか、消費者が負うのかどちらなのだろう。 「事業コストがかからないが、焦げ付きリスクも高い」、「審査は購買履歴などを活用するが、信用情報や属性などを活用するクレジットカードなどと比べて緩い分、不良債権化する割合は高い」、「その分、利用額を小口化して、短期間返済・・・とすることで焦げ付きリスクを抑えるというビジネスモデル」、「商品の決済サービスの形をとっているが、事実上の高利の消費者金融(与信)と変わらないグレーゾーン取引は看過できない」、これには何らかの形で規制すべきだろう。「健全な利用者や金融知識に乏しい若者が泣きをみることはあってはならない」
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暗号資産(仮想通貨)(その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、3月21日に取上げた。今日は、(その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】)である。

先ずは、5月1日付けロイター「アングル:ビットコイン採掘のエネルギー消費、米環境運動の標的に」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/usa-tech-climate-change-crypto-currency-idJPKCN2MH0BG
・『中国が昨年、暗合資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった。 中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった。写真はイメージ。2021年8月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic) ニューヨーク州議会のクライド・バネル議員にとって、これほどうれしいことはない。地元で雇用が生まれて「幸いだ」と語る。 一方で、アンナ・ケルズ議員は、電力を大量消費するマイニングを同州で厳しく規制する法案を推進中だ。「われわれの気候変動目標をすぐに脱線させてしまう産業がやってきた」と警鐘を鳴らした。 米国ではビットコインのマイニングによる環境への影響を巡る議論が活発化し、主要な環境団体が化石燃料の使用を批判する運動を全米で展開し始めた。 マイニングによるエネルギー消費量と温室効果ガスの排出量を正確に測定するのは難しい。 業界団体コインシェアが2021年に出した推計では、排出量は世界全体の1000分の1に満たないが、ニューヨーク・デジタル・インベストメント・グループの報告によると、2030年までに最大1%に達する見通しだ。 ビットコインのエネルギー消費を一貫して批判してきたエコノミスト、アレックス・ドゥ・ブリー氏は今年3月にエネルギー誌で発表した論文で、マイニングによってギリシャ1国分の二酸化炭素(CO2)が排出されたとの推計を示した。 ビットコインの推進派は、例えば、クリスマスの照明などもマイニングとほぼ同量のエネルギーを消費しているし、ビットコインの社会的機能を考えればエネルギーを消費するだけの価値がある、と主張する。 しかし、ニューヨークやペンシルベニアなどの州では、一部のマイナーが閉鎖された化石燃料発電所を復活させて電力を確保し、地元住民の抗議に遭う事例もあった。 環境団体・グリーンピースUSAの最高プログラム責任者、テフェレ・ゲーブル氏は、最近の記者会見で「今は気候変動危機の渦中だ」と指摘。ビットコインのマイニングは「われわれを間違った時期に間違った方向へと押し進めている」と批判した』、「中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった」、さすが目ざとい行動だ。
・『<NY州の法案>  ニューヨーク州議会のケルズ議員が策定した法案では、化石燃料を電源とするビットコインの新事業にモラトリアム(一時停止措置)を課すことが盛り込まれている。 同州のビットコイン・コンサルティング会社、ファウンドリーのディレクター、カイル・シュネプス氏は、法案が可決されれば「ニューヨークはこの事業に門戸を閉ざしたというシグナルになる」と反発する。 シュネプス氏は、再生可能エネルギーを利用しているマイナーもある上に、マイニング事業は地元に経済的な恩恵ももたらすと主張する。同社自体、ニューヨークで115人を雇用している。 法案に反対するバネル議員は、モラトリアムを導入すればマイナーが逃げかねないとし、議会は業界と協力して環境面の懸念に対処すべきだと話した。 ニューヨークで起こったことが全米に影響を及ぼすだろうという点では、賛成派と反対派の考えが一致している』、地元議員にとっては、「マイナー」の「雇用」も無視できない要素だ。
・『<コード変更を巡る対立>  エンバイロメンタル・ワーキング・グループやグリーンピースUSAなど主要な環境団体は、全米でビットコインによる環境への影響に注意を喚起する運動を展開している。 これらの団体は、ビットコインのソフトウエアコードを変更し、エネルギーを大量消費する「プルーフ・オブ・ワーク」方式から、消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式に切り替えるよう求めている。 新方式を使った暗合資産・リップルの共同創設者、クリス・ラーセン氏は、この運動に500万ドルを寄付した。 だが、ビットコイン推進派は、エネルギー集約型の設計こそが、ビットコインの安全性と分散化を維持する上で重要だと主張する。 これに対してラーセン氏は、ビットコインに投資する大手金融機関が増えるにつれ、ソフトウエア開発者に環境、社会、統治(ESG)目標に沿うよう求める圧力が増すと予想。「この圧力によって、中核的な開発者らは(コードの)変更を行うだろう。それがゴールだ」と述べた』、「プルーフ・オブ・ワーク」は「エネルギーを大量消費」するが、「消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式」で安全性が確保されるかどうかがカギである。

次に、5月14日付け東洋経済オンライン「混沌のビットフライヤー、ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/588664
・『国内最大手の暗号通貨交換所ビットフライヤー。創業者・加納裕三氏の決断次第では、日本の暗号資産業界における歴史の転換点になる。 暗号資産交換所で国内最大手のbitFlyer(ビットフライヤー)が揺れている。 5月中にも、ビットフライヤーを傘下にする持株会社でビットフライヤーホールディングス(未上場)の約6割に当たる株式をICT業界などの案件に実績のある投資ファンド、ACAグループが買収する。「このゴールデンウィーク中に大筋の合意が得られた」と、事情に詳しい関係者が東洋経済の取材に対して明らかにした。 ビットフライヤーHDの約4割の株式を握る共同創業者の加納裕三氏は、同社株式をまだ持ち続ける見通し。加納氏の持ち分を除く全株式がACAグループに渡り、加納氏とACAグループが4対6で株を分け合う新たな資本構成となる。ビットフライヤーHDの評価額は最大450億円と一部で報じられていたが、「その後ACAグループ以外の入札も加わり、それよりも高くなった」(前出関係者)もようだ』、なるほど。
・『転機は4年前の「退場勧告」  2014年1月創業のビットフライヤーは、暗号資産取引の預かり資産や会員数でコインチェックと国内で双璧をなす。2022年3月時点の預かり資産は5803億円で、本人確認済みの会員数は推定約170万人。2021年12月期の決算は、ビットコインやイーサリアムなど暗号資産の相場が上昇した恩恵で、営業収益275億円(前期比3.6倍)、営業利益178億円(同11倍)だった。 順調に見える同社が、なぜファンドに買収されるのか。その理由は2018年にさかのぼる。 2018年1月、暗号資産(当時の呼称は仮想通貨)業界を震撼させたのが、コインチェックによる約580億円相当の資産流出だ。この事件により、それまで暗号資産取引所の育成に前向きだった金融庁は姿勢を一転させ、コインチェックのみならずビットフライヤーなど多くの暗号資産交換所に業務改善命令を下した。 なかでも厳しく指弾されたのがビットフライヤーだった。 金融庁は「経営陣はコストを抑えることを優先して内部管理態勢を整備していない」「登録審査等に関して当局等へ事実と異なる説明等を行うといった企業風土」などと他社より踏み込んだ形で問題を指摘し、当時社長だった加納氏に事実上の退場を迫った』、「ビットフライヤー」に対する「金融庁」の指摘は極めて厳しかったようだ。
・『社長人事をめぐり株主間に亀裂  社内の混乱が始まったのは、加納氏が社長を退いた2019年1月以降だ。銀行や外資系証券会社など伝統的な金融機関からトップを招いたが、4年間で3回社長が交代している。いずれも筆頭株主である加納氏と対立したことが原因とみられ、「早期のエグジット(新規株式公開やM&A)を求める他の株主と加納氏との間に亀裂が生まれた」(関係者)。 実際にフリマアプリのメルカリや中国系の暗号資産交換所Huobi(フォビ)などへの売却交渉がまとまりかけたこともあったが、条件面で加納氏が首を縦に振らず、いずれも破談に終わった。今回のACAグループによる買収は、加納氏の関与を避ける形で話が進められたようだ。 コインチェック事件以降一連の出来事について加納氏は、2021年12月の東洋経済のインタビューで「(これまで好意的だった)金融庁側の姿勢の変化には驚きを禁じ得なかった。直近3カ年のセキュリティーやコンプライアンスなど内部体制への投資は300億円に上るが、これによって必要な成長投資ができず、世界と差が開いてしまった」と恨み節を語っている。 社長の交代が相次いだ点については、「ベンチャーとは言えない大企業のような組織風土になってしまっていて、見るに堪えなかった。(メルカリやフォビなど)株式売却の話が勝手に進められていることも不愉快だった」という趣旨の発言している。 加納氏はホールディングスの社長を外れて以降、ブロックチェーン事業を営む子会社や海外子会社の社長を務める。 ただし、ブロックチェーン事業は不振が続く。2017年4月には、積水ハウスと共同でブロックチェーン技術を活用した不動産情報管理システムの構築を開始すると発表したが、目立った成果を出せずに協業関係は解消した。積水ハウスはビットフライヤーと協業する前に同社への出資を行っており、現在も第3位の株主(保有比率は推定13%)として残る。 海外事業については赤字から脱せず、ビットフライヤーは2019年12月期にアメリカ子会社、2020年12月期には欧州子会社の株式を減損処理している。事業面で成果を出せていない加納氏が本体の人事に重ねて口を挟むことも、その他株主にとっては不満が募る原因となった可能性が高い』、「加納氏」は「事業面で成果を出せていない」くせに、「本体の人事に重ねて口を挟む」、やっかいな人物だ。
・『ファンドは短期売却という見方も  ファンド買収後のビットフライヤーはどうなるのか。暗号資産業界の浮き沈みは激しい。2021年を通じて、大手各社はいずれも好業績を叩き出したが、2022年に入って以降は暗号資産の相場が再び低迷して取引量が減少、コインチェックの第4四半期(2022年1~3月期)は営業赤字となった。ビットフライヤーもその例外ではなく、足元は厳しい業績になっているようだ。 「投資ファンドが交換所の株を持ち、企業価値を上げるのは容易ではない」と暗号資産業界の関係者は口を揃える。資産の漏洩やマネーロンダリングのリスクがつきまとう暗号資産交換業のコストは膨らむ一方で、ファンドが得意とするコストを抑えて収益を改善するという手法も通用しづらい。「ACAグループによる株式の保有は短期的で、すぐにほかへ転売するだろう」(同関係者)と見る向きもある。 そうした中、ACAの転売先として受け皿になり得るのが、一度買収交渉を行ったメルカリをはじめ、楽天グループやヤフーといった大手IT企業だ。 インターネット業界は現在、「ウェブ3.0」と呼ばれる大きな転機を迎えている。ブロックチェーンを用いて、ユーザーが暗号資産やNFT(非代替性トークン)といったデータの所有権を持てるウェブ3.0の仕組みは、巨大資本GAFAMの牙城を崩す可能性を秘めると言われる。 日本のIT企業もこのウェブ3.0への投資に関心を持ち始めており、ブロックチェーン技術を兼ね備えたビットフライヤーのような大手交換所の買収は、ウェブ3.0へ参入する格好の足がかりになる。 メルカリは東洋経済の取材に対し、「子会社を通じた暗号資産交換業のライセンス取得を最優先に目指しているが、(登録済みの交換業を買収することを含め)あらゆる可能性を排除せず検討している」と回答した』、米国の金融政策転換により「暗号資産」価格は低迷に転じ、「ウェブ3.0」の熱も冷めたようだ。
・『暗号資産業界における歴史の転換  焦点となるのは加納氏が持つ株式の行方だ。買収観測が浮上して以降、メディアに口を閉ざしていた加納氏に記者は5月11日、株式保有の意向について対面で真意を問うた。すると同氏は「今は答えられない」といらだちの様相を見せ、足早に去った。 暗号資産交換所はすでに再編淘汰の時代に突入している。2019年の改正資金決済法でデリバティブ取引が金融商品取引法の対象になるなど規制が強まった結果、「かつて100社以上あったFX(外国為替証拠金取引)の業者が半減以下になった現象と同じようなことが起きている」(SBI VCトレードの森本逸史代表取締役専務)。 そこで浮上してきた業界最大手ビットフライヤーの買収劇。2008年にビットコインが誕生して、交換所ビジネスが花開き、そして今ウェブ3.0の波が押し寄せてきている。将来的に、加納氏の持ち分も含めた全株が売却されることになれば、日本の暗号資産業界における歴史の転換点になるだろう』、現在の停滞する「暗号資産」市場からは考えられないような熱気を感じさせる文章だ。もっと冷静に考えるべきだ。

第三に、6月2日付けダイヤモンド・オンライン「ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304022
・『これから世界はどこに向かっていくのか、そして時代の波に乗るためのビジネスチャンスのヒントを書いた『メタバースとWeb3』の著者である國光宏尚氏と、IT批評家でフューチャリストの尾原和啓氏、『世界標準の経営理論』の著者で早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏の鼎談を実施。2回目は人間の本質からビジネスと社会貢献の両立について迫ります』、興味深そうだ。
・『通貨の「フォーク(分裂)」には、メリットもある?(入山章栄(以下、入山) DAOはプロジェクトであり組織であると思うんですが、だんだん盛り上がらなくなると終息してなくなっていく感じなんですか? 國光宏尚(以下、國光) 一時期、ビットコインの分裂が話題になったことがありますよね? あの時「通貨が分裂ってなんのこと?」という声が多かったと思います。でも、ビットコインやイーサリアムは技術的に言うとオープンソースのプロジェクトで、フォーク(分裂)自体はよくあることなんです。 尾原和啓(以下、尾原) ビットコインの分裂ってありましたね。 國光 ビットコインコミュニティーの中で、意見が真っ二つに分かれた事件がありました。ビットコインの本質的な価値というのは、ゴールドと同じ、変わらない「価値の保存」なのか、決済や送金などの「ユーティリティー(利便性)」なのかという議論です。 しかし、ユーティリティーに使おうと思うと、このままのビットコインでは効率も悪く無理なので、ビットコイン自体を変えていかないとダメだった。しかし、変えていくとするとハックされるリスクもある。ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった。 だから、やるべきか否かでコミュニティーが完全に対立して、そのときにフォークしたんです。 入山 なるほど。 國光 フォークさせた上でビットコインとビットコインキャッシュに分かれたんですけど、それぞれが互いの信念におもむくままやった結果、よりいいものになったほうが主流になり、よくなかったほうが消えていった。 尾原 結局、ゴールド側が勝って通貨側が弱くなっていったんですね。 國光 それぞれが、それぞれのビジョンどおりにやって、よりいいことをやったほうが主流になって、そうじゃないところが消えていく。そういうイメージですね』、「ゴールド側」、「通貨側」はどういう意味なのだろう。「ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった」、とあるが、これまでハッキングされた事件もあったように記憶しているが、本当のところはどうなのだろう。
・『DAOと経営学の意外な共通点とは?  入山 興味深いですね。僕は著書『世界標準の経営理論』の中で、個人と組織の新しいかたちを提示した「ティール組織」の世界観は、これからの未来にありえると書いていました。 ティール組織は組織を生命体として捉えるという考え方なんですが、DAO(注)に似てますよね。種として分裂をし、進化する方が生き残っていくように、「組織が生物的になっていく」イメージですね。 尾原 中央集権でやるケースもあるけれども、うまくいかない場合はフォークすればいいじゃないか、と生命が分裂していくみたいに意思決定の仕組みそのものが進化、淘汰を簡単にできるようになる世界というのがティールに合いやすい。 入山 この世界では、人類が400年間使っていた株式会社という仕組みをある意味で根底から変えるので、めちゃめちゃおもしろいですよね。400年越しの大革命ですよ。  國光 一方で、人は性善説では動きません。みんなが自分の利益のために動くことがひとつの自律型組織のベースだと思っています。 たとえば、私が投資しているTHETA(シータ)という動画配信のP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを提供する会社では、ネットワークに参加すると報酬としてトークンが得られるようになっています。 THETAは、VR版の動画投稿やeスポーツ配信プラットフォームを、クラウドサービスをベースに実現しているのですが、将来、4K/8Kといったように動画の解像度が上がり、さらにフルVRになったら、いまの100倍もの通信容量が必要になります。その対策として考えたのが、一般ユーザーのパソコンやスマートフォンの空いている通信帯域を共有して大量のデータをやりとりするP2Pネットワークです。 でも、誰も無償では他人にネットワークを貸したがらないものです。そこでTHETAでは、ネットワークに参加するとビットコインのマイニングと同じように、トークンがもらえるといったインセンティブを付けることで自律性を確保しています。 尾原 勝手にトークンがチャリンチャリン入ってくるとなると、つなぎっぱなしのほうが得だと感じますよね。 國光 ビットコインのマイニングも一緒だと思っています。みんな「新しい時代の通貨をつくる」とか、そんな大きなこと考えていないんですよ。ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト(ビットコインの創始者とされる人物)の悪魔的なところです。) 國光「ビジョンに共感してできたコミュニティーがあり、そのビジョンの実現のためにみんなが頑張る」という、性善説的なことを言っている一方で、ビジョンを実現させると報酬としてトークンがもらえる利己的な仕組みがある。性善説と利己的な仕組みの組み合わせなんです。 結局、僕は、最終的に人が動くのって「夢と金」なんじゃないかと思っています。 入山 おっしゃるとおりですね。人間の本質は「夢と金」ですよ。本当に。 経営やビジネスって結局は人間がやっているものです。だから、僕が専門にしている経営学とは結局、「人間の本質は何なんだ」を突き詰める学問だと思っています。そういうことをまとめたのが、『世界標準の経営理論』なんです。 例えば、心理学ベースの経営学だと人の本質は共感とかいろいろあります。一方で経済学のほうは合理性であり、その第一目的は当然「金」ですよね。みんな豊かになりたい。 このように、人というのは複雑で、スパッと性善とか性悪に分かれない。でも、それを突き詰めると大まかには「世の中に良いことをしたいけれども、お金もたくさんもうけてリッチになりたい」となりますよね。DAOには、その仕組みがあるということですよね。 國光 まさに。このあたりがおもしろい仕組みなのかなと思います。 入山 うん。おもしろい。 國光 僕はDAOがはやってきても、株式会社はなくならないとみています。株式会社が向いている点と、DAOが向いている点がそれぞれありますし、株式会社ができた理由はシンプルに資本の集積が必要だったからだと思うんですね。株式会社のひとつの業(ごう)はVCから投資が入った時点で売り上げと利益の成長というのが求められることなんですが。 入山 そうですね。 國光 これが、すさまじい業という感じで。ただ、今の時代でいくと売り上げ・利益や生産性じゃ語れない価値っていうのが出てきていて、そういうところはDAOが向いていると思っています。 尾原 事務所に所属するクリエイターやYouTuberも、DAOに向いていますよね? 國光 事務所から独立してVCの投資が入ると、そのタイミングで売り上げ・利益の最大化を求められます。一人で運営していくには限界があるから人を採用して育てなきゃいけない。 でも、クリエイターとして一流の人が人材育成が得意とは限らない。自分のコンテンツをつくる時間は減り、ファンの期待に応えられなくなることだってある。ならば株式市場からお金を集めるのではなく、ファンから直接、お金を集めたほうがいいじゃないかと。 その時にファンが求めているのは売り上げ・利益の成長ではなくて、おもしろいコンテンツを追い続けることが報酬なんじゃないかなと思うんです。すると、直接ファンから集めた方がよい、となります。一方で売り上げ・利益・生産性で語れる部分は株式会社のほうが効率はよいのではないでしょうか』、「マイニング」は、「ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト・・・の悪魔的なところです」、その通りだ。
(注)DAO:「 Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、「自律分散型組織」、ブロックチェーン上に構築(Cloud Ace)。
・『ビジネスと社会貢献の両立に必要なこととは?  入山 僕はいま、北海道の生活協同組合「コープさっぽろ」の理事をやっているんですね。理事長である大見英明(おおみひであき)さんがトップで、大見さんは経営者としてもたいへん素晴らしいので、今はとても成功しています。そして、興味深いのは生協の仕組みです。 “生協”は組合組織です。組合員が出資者となりますから、いわゆる株式会社ではないんです。株主もいません。 株式会社って、「株主」と「顧客」が違いますよね? そして株主は、株価を上げてほしいから企業に成長を求めるけれども、一方で顧客のためにもいいことをやらないといけない、というのが株式会社の難しいところです。 しかし、生協はそのコンフリクトがないんです。「出資者=顧客」なので、そういう意味ではちょっとDAOに近いと思います。 尾原 難しい点はないのですか? 入山「出資者=顧客」に生協の経営をモニタリングするインセンティブが弱いため、ガバナンスが効きづらい点ですね。とはいえ、北欧などヨーロッパの多くの国の小売りでは、かなりの部分が実は生協なんです。 國光 そうなんですね。 入山 日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです。 もうひとつ生協の難しい点は、ある意味で性善説で成り立っているところです。 例えば生協の理事って報酬があるものの、報酬委員会はないから株主が監視せず、理事たちの自制心で給料を抑えている。社員の平均給料の6倍を超えてはいけない、といった暗黙のルールが北欧の生協にあることはあります。それで無理やり抑えている。ただ、根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理、というのが僕の理解です。 尾原 北欧で生協が成り立つのは、民度が高いからなんですね。 入山 人間は欲もあるのでみんなが自制できるわけではないですし、自制できないところで、当然対価が欲しくなるものです。他方で、今日の國光さんと尾原さんの話を聞いていると、DAOの仕組みはうまくやると、その両方が取れるんだなと。 國光 アメリカやドイツ、フランスでも生協は成立していないんですか? 入山 アメリカは成立していないですね。ドイツはちょっとあったと思いますけど。基本はフィンラインド、デンマーク、スウェーデン、スイスあたり。 國光 やはり福祉国家を延々とやってきた中での、民度の積み上げがあったということですよね。 入山 だからDAOはいい意味での民主化的なものをやりつつ、インセンティブをみんなに幅広く与えることが可能になる。コミュニティーを作れてみんながハッピーで、お金の面でも得をする世界というところが、すごくおもしろいですよね』、「日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです」、「根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理」、なるほど。
・『必要なのは「応援した人が報われる」仕組み  國光 DAOはスポーツとすごく相性がいいなと感じています。インフルエンサーやアイドル、クリエイターなどさまざま試しているんですが、なかでも特にスポーツがハマっています。 スポーツチームのビジョンは、極めてはっきりしていて大半のチームが「スポーツを通して地元を盛り上げる」と地域貢献を挙げているんです。スポーツを通して地元を盛り上げたいといったビジョンがはっきりしているから、共感してコミュニティーになりやすい。みんなでそれをやっていこうと、力も湧きやすい。 でも、これまでのスポーツビジネスには大きな欠点が二つあった。ひとつは応援したファンにメリットがないことです。 入山 ですね。ただただ、応援していく。 國光 さらにもうひとつ。近くのチームの人しか応援しないケースが多く、商圏が狭まりがちなことです。 ただ、DAOを通じて、オーナーやコミュニティーの人たちが頑張っていることを知ると、ちょっと離れたところにいるけれども応援したい、サポートしたいといったことが起こる。これまでのスポーツビジネスやエンタメビジネスはファンしか応援しないため、ほぼNPOに近いと思っているんです。 今までもYouTubeとかTikTokのような広告モデルや「投げ銭」、サブスクなどありますが、一方的にファンが貢いでいるだけなんです。応援した人たちが有名になっていくのに、見返りがない。DAOで重要なのは、ただファンということだけではありません。「応援したらメリットもある=みんなが応援したい、サポートしたい」といった仕組みが必要なんだと思います。 入山 めちゃめちゃいいですね。地方創生と言っても、どこもお金がないので「ふるさと納税」に使っていることが多い。 國光 僕は今、大きく三つのことをやっているんですね。ひとつがThirdverseという会社で、ここはVR、メタバースのゲームをつくっている会社です。あとはFiNANCiEといってブロックチェーンベースの、誰でも簡単にDAOがつくれてトークンを発行してコミュニティーがつくれるサービス。あとはgumi Cryptos Capitalという、これはWeb3に特化したファンドで1号ファンドが23億くらい、2号ファンドが130億くらいです。 入山 えっ。すごい。 國光 その中のFiNANCiEがまさに、簡単にトークンやNFTを発行して資金を調達してコミュニティーを形成できるサービスなんですけど、スポーツチームで湘南ベルマーレさんやアビスパ福岡さんなどサッカー、野球、卓球などを展開し、60チームにトークンやNFTを発行してもらっています。 尾原 DAOとスポーツ、すごく相性がいいですね』、「DAO」は「スポーツ」と「相性」がよく、ずいぶんひろがりが出てきそうだ。今後の展開が注目される。 
タグ:「ビットフライヤー」に対する「金融庁」の指摘は極めて厳しかったようだ。 東洋経済オンライン「混沌のビットフライヤー、ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断」 「プルーフ・オブ・ワーク」は「エネルギーを大量消費」するが、「消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式」で安全性が確保されるかどうかがカギである。 地元議員にとっては、「マイナー」の「雇用」も無視できない要素だ。 「中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった」、さすが目ざとい行動だ。 ロイター「アングル:ビットコイン採掘のエネルギー消費、米環境運動の標的に」 暗号資産(仮想通貨) (その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】) 「加納氏」は「事業面で成果を出せていない」くせに、「本体の人事に重ねて口を挟む」、やっかいな人物だ。 米国の金融政策転換により「暗号資産」価格は低迷に転じ、「ウェブ3.0」の熱も冷めたようだ。 現在の停滞する「暗号資産」市場からは考えられないような熱気を感じさせる文章だ。もっと冷静に考えるべきだ。 ダイヤモンド・オンライン「ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】」 「ゴールド側」、「通貨側」はどういう意味なのだろう。「ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった」、とあるが、これまでハッキングされた事件もあったように記憶しているが、本当のところはどうなのだろう。 「マイニング」は、「ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト・・・の悪魔的なところです」、その通りだ。 (注)DAO:「 Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、「自律分散型組織」、ブロックチェーン上に構築(Cloud Ace)。 「日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです」、「根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理」、なるほど。 「DAO」は「スポーツ」と「相性」がよく、ずいぶんひろがりが出てきそうだ。今後の展開が注目される
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投資(商品販売・手法)(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由) [金融]

投資(商品販売・手法)については、昨年4月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由)である。

先ずは、昨年10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101400001/
・『50歳になると、突然目の前に現れる「お金の不安」。日本人の平均寿命が延び続ける中、将来への備えの必要性をヒシヒシと実感するタイミングではないでしょうか。 50代は、定年後を見据え、自分の資産運用戦略を見つめ直す“ラストチャンス”。年金受給額の減少や医療費負担の増加、そしてコロナ禍以降の増税など、家計の不安は募るばかり。今まで貯蓄したお金を投資すべきなのか、はたまたリスクは取るべきではないのか。今の資産運用ブームに乗ったほうがいいのかと、悩んだことは一度や二度ではないと思います。 資産運用のセオリーの一つに、「投資は若いうちから始めるのがよい」というものがあります。これは、投資期間が長いほど、複利(投資利回りの累積)の効果が高くなることを示しています。しかし、若いうちに資産運用を始めなかったからといって、焦る必要はありません。「急(せ)いては事を仕損じる」という言葉は、投資においても同じ。50歳からでも十分、間に合います。むしろ、平均寿命がこれだけ延び、どの家庭でも長期戦略の立案を迫られている今の流れを見ると、時間のゆとりができ、老後の不安が現実味を帯びてくる50代から資産運用を始める価値は十分にあります。 実際に、利回り表を用いて毎月の積立金額別でどれだけ資産をためられるかを簡単に試算しました(表1、表2)。 50歳から年金受給開始年齢の65歳まで、毎月一定金額を積み立て、保守的に年率3.0%で運用するとします。今現在、資産がなかったとしても、毎月10万円ずつ投資に回したとしたら、65歳の時には2275万円(積立金:1800万円、投資リターン:475万円)もの資産を手にしていることになります(表1)。積立金が5万円だとしても、1138万円(積立金:900万円、投資リターン:238万円)です。 資産運用では投資期間が長くなればなるほど、複利の効果によってリターンが増加するため、15年という長期間にわたって運用することで、大きな投資リターンが期待できます。 つまり、50歳の時点で全く資産運用をしてこなかったとしても、リターンはしっかり受け取れます(表2)。 また、リスク性の高い投資、つまり資産の増減幅が大きくなりやすい投資に飛びつかなくても、毎月の積立金額と運用期間によっては、今からでも老後の資金を得ることが可能です。 上記の試算の通り、50歳であってもまだまだ時間はあります。これまでやってこなかったからといって気後れする必要は一切ありません。今からでもできることをやっていくことが、将来の経済的なゆとりを得るための秘策なのです』、その通りだ。
・『資産運用コストに厳格になれ  ここからは、筆者の機関投資家としての経験に基づいた、個人投資家に参考にしてほしい観点についてご紹介します。もっとも、投資のスタイルは個人によって大きく異なるため、あくまで一例です。投資家マインドを身につけるための、一つのエッセンスとして参考にしていただければと思います。 資産運用を始めたばかりの人は、毎日株価を熱心にチェックし、自分の資産が上がったかどうかを気にしてしまいます。必ずしも、毎日チェックする必要はありませんが、投資のリターンに気を配ることは非常に重要です。しかし、本当に気にすべきは、投資のリターンではなく、投資に掛かるコストも考慮した「トータルリターン(総合収支)」です。) 国債金利が著しく低下し、株価が大きく上昇している中では、期待される投資の収益率は著しく低下しています。低下するリターンをどうにかして向上させたいと考えるかもしれませんが、それを実現するのは容易ではありません。 そこでカギになるのが、運用に掛かるコストの低減です。つまり、投資収支の改善を目指すことも有益な投資戦略になるのです。 一般投資家と比較して機関投資家は運用コストに非常に敏感です。資産規模の大きい投資家であれば、運用会社への交渉力も強いため委託手数料の低減を相談できます。また、規模の経済を活用し、投資チームを内製化することもできるでしょう。 しかし、個人投資家はそういった選択肢を取ることができません。そのため、普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう』、「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。
・『信託報酬などの経費に対する感応度を高く持つ  投資信託やETF(上場投資信託)を購入した場合、「信託報酬」と呼ばれる、委託資産額に対して支払うコストが発生します。信託報酬の設定はファンドによってまちまちで、年0.03%のものもあれば、年3.0%の場合もあります。ここ最近の傾向は手数料が低く、日経平均株価などの指数に連動するインデックスファンドが人気を博しており、信託報酬を強く意識して運用することがセオリーとなりつつあります。この機会に信託報酬の考え方をいま一度整理してみましょう。 【信託報酬の考え方】 ある投資信託に年1.0%の信託報酬を支払っていると想定します。年平均の投資リターンは3.0%を前提とします。そして、そんな投資戦略を今後30年間継続したとしましょう。「年1.0%の信託報酬」と聞くと非常に小さい数字のように思われますが、実は積み上がると膨大な負担となってしまいます(下記グラフを参照)。 毎年のリターン(3.0%)がコスト(1.0%)を上回っていることから、資産額は当初より増加していることになります。しかし、わずかな信託報酬であったとしても、長期では多大な費用負担が課せられることになるのです。この事実を知れば、否が応でも信託報酬を低く抑えたいと思われるでしょう。 そして、忘れがちなのが信託報酬以外のコストです。取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示されています。しかし、信託報酬以外の経費は開示される頻度が少なく、投資家が忘れがちなコストであるため「隠れたコスト」とも呼ばれています。 信託報酬率は一定ですが、それ以外の経費は「変動」します。そのため、信託報酬率が低位に設定されていたとしても、実際に投資家が負担するコストが著しく高くなる場合もあり得ます。流動性の低い資産(新興国資産など)を取り扱う投信はその傾向が強く、信託報酬の50%以上の追加コストが生じたケースもあります。信託報酬だけで投資するファンドを比較することは危険です。過大なコストはリターンを悪化させるため、投資信託やETFの購入を検討する際は、直近の運用報告書等を参照して経費率を比較すべきでしょう。 信託報酬などの経費はファンドにとっては税金と同じです。投資成績がマイナスであろうと、自動的に資産から引かれてしまいます。そして、負担する信託報酬が高いからといって、高いパフォーマンスを稼げるとも限りません(この観点は議論の的となっているため、別の機会で取り上げます)。であれば、支払う必要のある運用手数料を節約・低減させることは当然の選択です。 現在では、ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします』、「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。
・『取引額の5%もの手数料が掛かる金融商品もある  今では、株式や外国為替、暗号通貨などの資産をアプリ上で手軽に取引することができます。アプリを開いてから1分も掛からず取引を実行できるのは、一時代前からすると便利な時代になったと喜ばしく感じられます。しかし、手軽に取引ができるようになった一方で、取引コストに対して多くの人が鈍感になっていると感じられます。 取引に際して必要となるコストは以下の2つです。「ビット・アスク・スプレッド(以下、スプレッド)」と「取引手数料」です。スプレッドは取引する資産の「購入価格」と「売却価格」の差です。証券会社などの仲介業者(ディーラー)は安い価格で調達した資産を高く売却することが基本的なビジネスモデルですので、仲介する商品の価格差が彼らの利益になります。) 投資家の側に立って考えると、価格差が大きいほど高いコストを支払うことになります。このスプレッドは、仲介業者によって変わるだけでなく、取引環境によって変動します。流動性が高い(金融市場での取引量が多い)場合は、スプレッドが小さくなる一方で、流動性が低い(金融市場での取引量が少ない)場合は、スプレッドが大きくなる傾向があります。 もう一方の取引コストは「取引手数料」です。これは、取引業者が取引資産や金額ごとに決められている場合が多く、資産によっては取引金額が大きいほど手数料が安くなる場合もあります。一方で、スプレッドと異なり、市場環境によって料率が変化することはありません。 普段、個人投資家の方と話す機会も多くありますが、手数料を強く意識されている人は非常に少ない印象を受けます。「取引コストは必要経費」と捉えてしまい、どんなに高くとも受け入れてしまう傾向にあります。しかし、トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう。このような投資家マインドがある人ほど、中長期でしっかりと目標を達成しています。 機関投資家は「最良執行義務」を負っています。取引コストをできる限り低位に抑えるため、取引ごとに複数の銀行や証券会社から取引値を同時に聴取する「コンペ」を行っています』、「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。
・『個人投資家は手数料をどう抑えるか  個人投資家は機関投資家のようにコンペは行うことはできません。そのため、口座開設時に手数料を比較し、最も低い手数料率を提示する金融機関で口座を作成するのがよいでしょう。手数料率が低いことが売りの証券会社であれば、大きく表記されています。 そして、もう一歩踏み込むのであれば、複数の金融機関で口座を開設し、取引ごとにビット・アスク・スプレッドの水準を確認できる体制を作ることも検討すべきです。これは、取引する金融機関でネットワーク障害が起きた際のリスクヘッジにもつながります。 最後に、コストの見方について説明します。多くの場合、取引コストは取引金額に対する「パーセンテージ」ではなく、「絶対値」で表記されています。コストを絶対値とすることで、実際の負担額がわかりやすくなる一方で、パフォーマンスへの影響が見えにくくなり、コストの心理的な負担を緩和してしまう効果があります。 そのため、コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです。数回でもいいので、電卓をたたいて実際のコストがどの程度になるのか計算してみるとよいでしょう。感覚値との隔たりに、きっと驚くと思います。 ちなみに、取引コストが明示されていない場合もあります。例えば、ビットコインなどの暗号資産の場合、取引手数料は開示する一方で、スプレッドの目安が明示されていないケースが多くあります。しかし、それらの資産の取引コストは非常に高く、購入後に大幅な値上がりがなければ利益を得られない可能性が高いです。取引コストが投資リターンを大きく左右することになるため、取引する場合は信頼できる情報サイトを参照したり、実際に複数アカウントを開設してスプレッドを比較したりする必要があるでしょう。 後編では、「投資のルール化」や「家庭内投資委員会の設置」など、より実践的な内容について紹介します』、「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。

次に、この続きを、10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101500002/
・『50歳から投資を始めようとしたとき、まずは口座開設し全額投資しよう!と意気込んでしまうもの。しかし投資には最低限押さえておくべきルールが存在します。前編「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」では、元機関投資家の視点で資産運用にかかる手数料の重要性を解説しました。後編では、より実践的な内容について紹介します』、興味深そうだ。
・『投資をルール化する  機関投資家にとっては、顧客の資産が投資の原資にあたるため、どういった投資をするかには説明責任が生じます。投資成績がどうであろうとも、「なぜその資産(銘柄)なのか」「なぜこのタイミングなのか」など、自らがとった投資行動の根拠を用意しておく必要があります。そのため、社内で議論を尽くすだけでなく、取引証跡や判断根拠資料を保存し、説明責任を果たすための手間と時間を惜しみません。 一方で、個人の投資では、家計や自分の資産を運用に回すことになるため、第三者に対する説明責任を負うことはありません。誰にも相談せず、行き当たりばったりで投資をする「何となく投資」を始める傾向にあります。耳が痛い話かもしれませんが、投資家は往々にして自らの能力を過信しがち。自らの感覚やひらめきに頼って投資をしてしまう方が非常に多いのです。 十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします。事前に何らかの投資制約を課すことで、向こう見ずなギャンブルを避けることができるからです』、「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。
・『運用ガイドラインを設定する  機関投資家は、新たな運用戦略を立ち上げる際に「運用ガイドライン」を設定します。ここでいうガイドラインとは、常に順守を求められる「ルール」。あらかじめガイドラインを設定し、新たな投資をするときだけではなく、日々のモニタリングを含め、あらゆる状況下において、そのルールを順守することが求められます。また、運用ガイドラインは1年ごとなど定期的に見直し、環境や状況の変化に応じて内容を修正します。 運用ガイドラインを設定する目的は、意図しないリスクを負わないためです。このガイドラインの中で、運用の目的や収益目標、自分の組織のリスク許容度に基づいて投資可能資産や資産アロケーション(割り当て)の範囲などを事前に決めます。そうすることで、過度なリスクテイクを抑制し、自らの能力を過信した衝動的な投資を未然に防ぐことができるからです。 こうした運用ガイドラインの設定は、個人投資家こそ実践すべきです。具体的には以下の通りです。 【個人投資家が行うべき運用ガイドライン】 具体的な内容や数値については個々人のリスク許容度や目標金額によって異なるため、あくまでこれらは一例とお考えください。 (1) 投資は自由に使えるお金の80%までとする【理由】急な出費が重なったり、生活費が足りなくなったりした場合、資産を売却せざるを得なくなります。安定的な資産運用を継続するためにも、資金を投資に振り分けすぎないことが肝要です。 (2)信用取引やオプション取引は行わない【理由】投資リスクが非常に高まってしまうため、リスクを追い求める投資家以外は手を出さない方が身のためでしょう。投資原資を超える損失を被るリスクすらあります。 (3) 新興国への投資は運用資金の10%までとする【理由】期待される投資リターンは大きいが、リスクも相応に高いです。特に新興国の為替リスクは高いため、比較的小さい金額で運用すべきでしょう。 (4) 株式の配当金や債券の利払い金は全額再投資に回す【理由】長期的な複利効果を狙うためです。しかし、定年退職などの理由で収入が減った場合はその限りではありません。 機関投資家は当然、より詳細なガイドラインを設定しています。しかし、個人投資家であれば、過度に複雑になってしまうことを避けるため、この程度の粒度が適切でしょう。設定するルールは、投資期間や目標資産金額といった身の丈に合ったものにすることが肝要です。 もう一つ重要な点は、ルール設定の幅を広げすぎないことです。幅を広げすぎると、何でもありの投資を許容することになり、ガイドラインの意味をなくしてしまいます。ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう』、「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。
・『家庭内「投資委員会」を立ち上げよう  機関投資家は、資産運用に関する重要な決定を、四半期ごとなど定期的に開催される「投資委員会」にて行っています。委員会の主な機能は、投資に関する情報共有と意思決定です。 過去の運用成績を振り返るとともに、今後の見通しと運用戦略を議論します。また、ガイドラインの設定・修正や、新たな投資戦略、特に金額の大きい投資案件の承認も行われるなど、議論される内容は多岐にわたります。委員会を設置することで、PDCAサイクルを回し、投資を所管する部門へのけん制になります。 ほとんどの個人投資家は投資の意思決定を1人で行い、投資の相談を第三者にすることは少ないのではないでしょうか? 家計のリスク耐性や目標資産額に見合わないような過度なリスクテイクを避けるためにも、家庭内で「投資委員会」を立ち上げ、ご家族と資産運用について、定期的に話し合ってみてはいかがでしょうか。また、信頼できる友人や資産運用のプロフェッショナルに相談するのも選択肢の一つでしょう。 プライベートな投資委員会の設立は面倒が多いと思われるかもしれません。しかし、家庭内に投資委員会を設置することで、「何となく投資」を避けることができます。このプロセスを通すことで「本当に投資すべきなのか?」「その投資戦略に論理性はあるのか?」と自分に問うことができます。そして、自分以外の人に相談することで、違った視点での気づきを得られ、自らのロジックのもろさが露呈するかもしれません。 さらに、資産状況と資産見通しの共有ができるメリットもあります。ご家族に相談されるのであれば、将来的な相続について早くから話し合うことができます。「50歳代で相続の話をするのは早い」と思われるかもしれません。しかし、日ごろから将来相続を受ける立場である人の意見や意向を取り入れながら運用したり、家計の資産状況を共有したりしておけば、自分に何かあった場合にも円滑な相続手続きを行えます。老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考えることができる、という副次的な効果も期待できます。 ただ、相談する相手、つまり「投資委員会」のメンバーの選定には十分な注意が必要です。必ずしも資産運用のプロである必要はありませんが、話をうのみにせず自分で考えられる人であると同時に、センシティブな内容の相談もできる人が適任です。むしろ、投資経験がない人の方が、バイアスのない純粋な意見を期待でき、良いブレーキとなるかもしれません』、私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。
・『投資をする上での留意点  初心者の投資家が知るべきことはいろいろあります。ここからは、投資を始める上で最低限知っておくべき情報を、いくつかご紹介します。 (1)資産を増やすために適切なリスクを取る 資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります。日本で言うところの「働かざるもの食うべからず」に近い意味ですが、資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る(つまり、資金を働かせる)必要がある」ことを意味します。至極当たり前なことを言っていますが、実は非常に大事なことを伝えています。 資産の減少を過度に恐れるがゆえに、全く資産運用をせず、銀行預金に資金を寝かせたままの方が多くいます。そして、運用をしていたとしても、定期預金や国債などリスクが著しく低い投資に終始してしまう方もいます。個人投資家のリスク耐性は人それぞれであり、正解は存在しません。ただ、積極的に資産を増やしていきたいと考えるなら、手に入れたいリターンに見合うリスクを積極的に取る必要があります。 最近では、インデックス投信や同ETF(Exchange Traded Funds/上場投資信託)のみへの投資を推奨する戦略が増えています。個人的にも、運用コストを低減し、市場リターンを獲得する非常に有効な戦略だと思っています。ただ、目標資産額と運用期間によっては、インデックス投信やETFだけでは達成が難しい場合もあります。特に、これまで資産運用を積極的に行ってこなかった方々で、目標資産金額を高く設定している場合は、やや高めのリスクを取った運用をする必要もあるでしょう。その場合、資金の全てをインデックス投信に投じるのではなく、例えば保有資産の20%を個別株などリスク性の高い資産に回すことも一つの戦略ではないでしょうか』、「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。
・『2)高配当株に依存した生活設計をしない  現代では、ストレスフルな社会人生活を脱し、経済的自由を謳歌するという考え方が流行しています。その代表的な考え方が「FIRE(Financial Independence, Retire Early/経済的に独立し、早期に引退する)」です。文字通り、ある程度の規模を持つ資産を形成し、その後は職を辞して、資産からの収益で生活していく考え方を指します。 そして、FIREを実現させる投資戦略として、「高配当株」への投資がもてはやされています。配当金が多ければ、それだけ生活費に回せるお金が増えることが理由です。聞こえの良い話ではありますが、株式配当に依存した生活設計は実のところ危険をはらんでいるので注意が必要です。 企業がどれだけの配当金を支払うか決める「配当政策」は固定化されたものではなく、会社の業績や経営陣の方針によって変化します。特に、業績が大幅に悪化した際に配当支払いが減額されたり、場合によっては打ち切られたりすることもあります。 かつて、東京電力は高配当株として人気が高く、老後の収入源として同社の株を購入する投資家が大勢いました。しかし、東日本大震災に伴う原発事故によって、東京電力は配当支払いを停止し、以降、現在に至るまで配当を再開していません。米国においても、コロナ禍で資金繰りが悪化した航空関連会社やエネルギー関連会社の一部が配当の停止、または大幅な減額を決定しました。これらの企業も高配当株として以前から高い人気を誇っていました。しかし、業績悪化を理由に配当を停止し、そこから1年以上経過した今でも配当を再開していない企業が多く存在します。 「配当が減少した時点で他の高配当銘柄に乗り換えればいい」と考えている人もいるでしょう。しかし、配当が減額された銘柄の株価は往々にして大きく下落してしまいます。銘柄の入れ替えによって配当額を増やそうと考えても、時価の下落した銘柄からの入れ替えでは投資資金が足りなくなってしまう恐れもあります。 高配当株を選好する戦略を否定するつもりはありません。しかし、「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう。高配当株よりも配当利回りは劣りますが、分散効果によって配当の減額や停止の影響を抑えることができますし、社債投信であれば安定的な金利収入が期待できます。なので、FIREを実践したいのであれば世間でいわれているより多くの金融資産に投資し、分散効果を利かせながらリスクを下げていくことが必要になるでしょう』、「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。
・『(3)株主優待のみを目的にしない  日本特有の現象として、株主優待を目的とした投資を好む投資家が多く存在します。自社サービスの割引券や株主限定商品の配布など、魅力的な株主優待に目移りしがちですが、資産を増やすための投資において株主優待は不要な存在です。そもそも、諸外国と比較して、日本企業の配当性向(純利益に占める配当金額の比率)や自社株買いといった株主還元政策は遅れており、株主優待はその隠れみのにされているという批判があります。 投資対象として魅力的な企業が、たまたま魅力的な株主優待を提供しているのであれば問題ないでしょう。しかし、株主優待を目的に、投資対象として魅力的でない企業の株式を購入してしまっては本末転倒です。手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう。 資産を増やすことを一義的な目的とせず、株主優待を楽しむために投資することを批判するつもりは一切ありません。株主優待をどう捉えるかは投資の目的によって大きく変わってきます。中には株主優待が生活費の節約になったり、好きな特典がついてくるといったこともあるでしょう。ですが、資産形成のための投資をするのであれ、一時の株主優待に目がくらんではいけないということを忘れずにいてください。目先の利益や誘惑にとらわれないようにしましょう』、「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。

第三に、本年6月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303996
・『ESG(環境・社会・企業統治)の名目で資金を集める運用商品は一大ビジネスに育った。しかし、ESG投資によって生じた矛盾や無駄は小さくなく、運用としては「明らかにダメ」だ。その理由を解説しよう』、興味深そうだ。
・『運用業界が作り上げた新しいビジネスが「ESG投資」  米国の通称「SEC」こと証券取引委員会が、「ESG(環境・社会・企業統治)」「サステナブル(持続可能)」「低炭素」などと称する運用商品について、義務づける開示情報のルールを検討していることが運用業界で話題になっている。日本でも同類の商品について、商品名に内容が伴っているのかについて金融庁が関心を寄せていることが報じられている。 ところで、「ESG銘柄が○○%以上含まれていなければ、商品名にESGと付けてはいけない」といった規則ができると、運用会社にとってはなかなか厄介だ。どの銘柄が「ESG銘柄」なのか判断する納得性のある基準を提示するのは難しい。さりとて、「当社はESG銘柄を判断する明確な基準を持ってはいません」というわけにもいかない。今や、ESG投資は運用業界にとって無視できない大きさのビジネスに育ったからだ。 そもそも、ESG投資を大きな商品カテゴリーに育てるために、運用業界は多大な努力を払ってきた。「社会運動に便乗した」ともいえるし、「社会運動そのものを積極的に起こした」ともいえそうで、実態はおそらくその両方だろう。 筆者の見るところ、運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ。その善し悪しは別として、ビジネスとして広げる過程はなかなか興味深いものだった。 もっとも、これは運用業界側の事情だ。投資家の側では「ESG投資」をどう理解したらいいかという問題がある』、「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。
・『ESG投資とは「社会活動」と「運用手法」の二つの側面を持つ  ESG投資とは、投資対象企業の「環境(Environment)」「社会性(Social)」「(企業)統治(Governance)」を基準に行う投資を指す。例えば、地球環境の悪化をもたらしていると目される企業の株式に投資しないことや、社会的に好ましい貢献をしている企業の株式に積極的に投資するような投資行動を指す。 こうした投資行動によって、一つには企業の活動を好ましい方向に導くことが期待されるとする。また、株主である投資家が企業に対してE・S・Gそれぞれで望ましい行動を取るように企業とコミュニケーションを取ったり、議決権行使を行ったりすることで、企業の行動が改善する効果が期待される。これらは、いわば「社会活動としてのESG投資」だ。 さらには、E・S・Gそれぞれで望ましい行動を取る企業の株式は投資パフォーマンスが良いと期待できるのではないかという「運用上の効果」が語られることもある。こちらは「運用手法としてのESG投資」だ』、「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。
・『「ESG投資」vs「普通の投資」 軍配が上がるのはどちらか?  さて、企業そのものやその株式の価値を評価する上で、E(環境)やS(社会)やG(統治)が重要であることは論をまたない。これらの要素は将来のコストにも反映するし、これらの要素に対する現在の取り組みが将来の収益にも影響するだろう。 これらは、「ESG投資」でなくても、「普通の投資」にあっても真剣に評価されるべき重要な要素の一部だ。また、株式の保有・売却の判断だけでなく、保有株式の議決権の行使等に当たっても株式のオーナーたる機関投資家は、自らの保有する株式のパフォーマンス改善のために、E・S・Gを含めた企業経営上の諸要素への関与にあってベストを尽くすことが望ましい。この点も「普通の投資」にあって同様だ。建前上、手抜きは許されない。 こう考えると、「ESG投資」の判断は「普通の投資」の判断と何が違うのかという疑問が生じる。何かが違うのでなければ、少なくとも「運用手法としてのESG投資」には意味がなくなる。 しかし、「普通の投資」の総合的な判断と異なる結果のポートフォリオを持つということは、「普通の投資」としての運用会社のベストな判断から距離が発生するということだ。運用としては何らかの点でベストなポートフォリオから遠ざかることを意味する。 素朴な例を考えるとするなら、投資可能な上場銘柄が10銘柄しかない世界を想像して、E・S・Gのいずれかの事情で投資対象から2銘柄を除外するとしよう。ポートフォリオの「事前の判断」としては、10銘柄全てを使える条件のポートフォリオの方が、8銘柄に制約されたポートフォリオよりも少なくとも劣らないはずだ。むしろ、おそらくは優れたものになることは想像に難くない。 「普通の投資」と「ESG投資」について二つのポートフォリオを作ると、「事前の判断のレベル」ではほぼ常に「普通の投資」が優位なはずだ。そして、運用会社の真の商品は「事前の判断」なのである。運用会社の「事前の判断」に意味があるのでなければ、少なくともその運用会社のアクティブ運用には価値がない。顧客にとって両者の運用上の優劣は、結果論で判断すべきレベルの問題ではない。 投資家側から見ると、運用効率だけで判断するなら「ESG投資」は「普通の(ベストな)投資」よりも劣るポーフォリオに投資して、かつ何がしか高いフィー(運用手数料)を取られる投資商品だといえる。 商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる』、「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。
・『年金基金の立場が興味深いESG投資と職務義務に「深刻な矛盾」  さて、内外の企業年金や公的年金などの年金基金は、ESG投資の主要顧客だと言っていいのだが、ここで興味深い問題が生じている。 彼らは、建前として年金加入者の積立金の運用に当たって「運用効率至上主義」でなければならないからだ。ポートフォリオとしての効率が落ちて、さらにインデックス運用よりも高いフィーを支払うESG投資を採用することと、彼らが年金加入者などに対して負っている義務との間には深刻な矛盾がある。その義務とは、「プルーデントマンルール」などと呼ばれる、専門知識を生かして思慮深い投資行動を取ることを定めた原則だ。 筆者が思うに、年金基金がESG投資を採用するためには、運用部隊や、運用部隊に意見を具申する運用委員会のような組織の意思決定だけでは不十分だ。それだけでなく、代議員大会レベルで「ベストな運用効率には劣る可能性があるが、ESG投資を一定の上限額の下に採用していいか」といった内容を問う議案を可決して、意思決定する必要がある。 通常「運用委員会」は、運用の専門家として運用効率至上主義の観点から技術的なアドバイスを行う組織だ。「運用効率は一部損なわれるが、ESG投資には意義がある」といった価値判断を行う主体ではない。 また、各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない。 平たく言うと、年金基金には自分たちの一存によって「他人のお金で、格好を付ける」権限は与えられていないのだ』、「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。
・『しかし、マーケティングの急所は年金基金だった  一方、興味深いのは、年金基金には前記のような立場上の事情があるにもかかわらず、ビジネスとしてのESG投資を見ると、マーケティング戦略上の急所が他ならぬ年金基金だったように見えることだ。 ESG投資は、特に欧州の年金運用の世界から拡大し、わが国の年金運用にも影響を及ぼすようになった。そして、やがては「世界的にも拡大している運用手法」と喧伝されて個人向けの投資信託などにも採用されるようになった。 運用業界が意識的に年金基金を狙うマーケティング戦略を立てたのかどうかは確認のしようがない。しかし、考えてみるに、「インデックス運用ばかりになると商売はあがったりだ(=われわれのすることがなくなる)」という事情は運用会社だけでなく、年金基金にとっても同様だ。 また、ESGの諸要素に関して運用会社に注文を付けるのは、年金基金の担当者にとって「気分のいい仕事」になり得る点も商売上は見逃せない。 ちなみに、年金運用業界にあってESG運用と似た立場にあるのが、アクティブ運用だ。現実問題としてアクティブ運用には、以下のような事情がある。 (1)手数料まで考えた場合にインデックス運用の方がアクティブ運用よりも優れていると判断できる場合が多い (2)大規模な基金のリターンはほとんどがアセットアロケーション(資産配分)段階で決まること (3)アクティブ運用の採否や管理には手間とコストが掛かる  それにもかかわらず、「コアサテライト」(インデックスファンドを中核として、周辺にアクティブ運用を配するイメージだ)などという意味のない概念まで繰り出して、運用資産の一部だけでもアクティブ運用を続けようとする基金が多い。その理由は、運用会社や年金基金に付いているコンサルタントだけでなく、年金基金自身の「仕事作り」になっているからだ。 つまり運用業界は、経営コンサルタントが「経営企画部」に戦略コンサルティングを売ったり、法律事務所が企業の法務部門に「コンプライアンス研修プログラム」を売ったりするのと同じことをした。年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ。ビジネスとしては、別の商品・サービスにも応用が利きそうな興味深い経緯である』、「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。
・『投資すべきはESGの「優等生」か 実は「劣等生」に投資妙味  ところで、E・S・Gが企業評価上重要だとして、投資すべき対象はそれぞれの項目ないし総合点の上位企業なのだろうか、あるいは下位企業なのだろうか。 ESG投資が普及する初期によく語られたのは、ESGがダメな企業の株式を機関投資家が売るとすれば、株式を売られたくない経営者が改心する理由になるのではないかといったストーリーだった。この話を重視するなら、ESGの優等生企業に投資するのがいいということになる。 一方、株式投資で高いリターンが得られるのは、企業に「好ましい変化」が起こったときだ。ESGが企業評価上重要なら、ESGの劣等生企業に投資してESG要素の「改善」に期待する方が、既にESGの優等生企業がさらに意外なくらい優等生になる変化に期待するよりも有望な可能性がある。 加えて、企業の行動に対する効果を考えるとして、ESG劣等生企業の株式を保有する大株主が、経営者とのコミュニケーションや株主総会、議決権行使、さらには取締役会への関与などを通じて好ましい行動変化を促す方が、劣等生企業の株式を保有せず、関与しないよりも有効かもしれない。 ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか――。投資の効果の上ではもちろん、企業の行動変容を促す上でも案外判然としない』、「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。 
タグ:日経ビジネスオンライン 大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」 「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。 「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。 「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。 「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。 大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」 「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。 「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。 私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。 「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。 「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。 「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」 「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。 「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。 「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。 「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。 「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。 「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。
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金融業界(その14)(韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(上)流出資金は総計1000億円超、韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(下)その巧妙な儲けの手口とは、きらやか銀行 「3度の公的資金申請」に漂う不安 運用受託で含み損拡大のSBIにも厳しい視線、地銀が沈む時代に「信用金庫」が伸びている理由 明暗を分ける差とは? 『なぜ信用金庫は生き残るのか』) [金融]

金融業界については、1月26日に取上げた。今日は、(その14)(韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(上)流出資金は総計1000億円超、韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(下)その巧妙な儲けの手口とは、きらやか銀行 「3度の公的資金申請」に漂う不安 運用受託で含み損拡大のSBIにも厳しい視線、地銀が沈む時代に「信用金庫」が伸びている理由 明暗を分ける差とは? 『なぜ信用金庫は生き残るのか』)である。

先ずは、3月2日付け日刊ゲンダイが掲載したフリーライターの半田修平氏による「韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(上)流出資金は総計1000億円超」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/301939
・『韓国の大手銀行と機関投資家が、地上げ業者に資金提供し、日本の山林を乱開発させて荒稼ぎしている。そんな実態が明らかになった。 日本で最も日照時間が長く太陽光発電所が多い山梨県で最近、再生可能エネルギー業者の乱開発による悪影響が問題となっている。 昨年、甲斐市に建設中の東京ドーム3個分に相当する大規模太陽光発電所(メガソーラー)の一部が崩落し、隣接する川の斜面に土砂が流れ込む事態が発生した。10月に県が土砂の撤去を行政指導するも、地元紙によると、12月時点で土砂は放置されたままだという。 このメガソーラーでは、ずさん工事の数々が明らかになっている。十分な防災工事をせずに太陽光パネルを設置したことで、地面に亀裂が走り、排水に必要な調整池の施工法や建材に不備が見つかった。地盤の緩いハゲ山に大雨が降れば、熱海での崩落事故のように大規模な土砂崩れを引き起こしかねない。また、計画以上に森林を伐採するなど安全面以外でも問題が指摘されていた。 工事を手掛けたのは、東京の再エネ業者「ブルーキャピタルマネジメント」。そして、100億円近い費用を融資したのは、韓国銀行大手・新韓銀行の日本法人である「SBJ銀行」や韓国系の「ウリィ銀行」などである。 一般的にメガソーラーは、地上げや工事で巨額の資金が必要となる。だが日本の銀行は、融資の回収可能性や業者の信用力の問題などから、なかなか融資を出さない。住民運動が起きている案件や手抜き工事が指摘されている業者には、融資などもってのほかだ。 だが韓国系銀行は、この案件だけでなく、物議を醸している各地のメガソーラー計画で、資金の出し手として登場している。 審査が緩いのか、日本の事情に疎いのか──と思われたが、意外な裏事情があった』、「日本の銀行は、融資の回収可能性や業者の信用力の問題などから、なかなか融資を出さない」、「韓国系銀行は、この案件だけでなく、物議を醸している各地のメガソーラー計画で、資金の出し手として登場」、どいうことだろう。
・『債権譲渡ありきの融資  韓国系銀行による太陽光融資のカネの出どころは、実は韓国・新韓銀行グループの資産運用会社「新韓BNPパリバ資産運用」が、韓国機関投資家から集めたファンド資金だったのだ。 関係者の話を総合すると、次のようなスキームで日本に資金が投じられているという。 まず、日本の再エネ業者がメガソーラー用地を地上げし、林地開発許可などを得る。 すると新韓BNPパリバのファンドが、事業実施主体となる合同会社を設立するか、会社ごと再エネ業者から買い取るなどの方法で開発権を取得する。 そして実施主体に、リスクに応じて3階層の資金提供を行う。 リスクが低く金利3%程度の「デット」、担保はないが事業がうまくいけば利益が見込める「エクイティー」、その中間で5~7%といった高い金利が得られる「メザニン」、という具合で実施主体に投融資していく。 ファンドは融資債権から得られる金利を機関投資家に配当する。 ただし、このスキームには問題がある。韓国でいかに資金が集まろうと、日本で銀行免許や貸金業の許可を持たない韓国のファンドが、融資債権を組成したり、貸金業を営むことはできないからだ。 そこで、新韓銀行グループで、日本で銀行免許を持つSBJ銀行が役に立つ。同行がまず融資を実行し、ほぼ同時に、各融資債権をファンドに譲渡するというスキームが組まれた。 一見、SBJ銀行による純然たる融資に見えても、実態はファンドの資金なのだ。同様のスキームで日本に入っている資金は1000億円近いともいわれている。 だが、このスキームは、日本の法令に反しているという指摘がある。 一般的に、銀行は不良債権処理などで、債権を債権回収専門会社などに譲渡することがある。 しかし韓国ファンドのスキームでは、SBJ銀行は債権譲渡ありきで融資しており、物事の順序が逆である。いわば、韓国ファンドがSBJ銀行の名義を借りているに等しい。 「日本で免許を持つ銀行が、当初から債権譲渡を目的として融資債権を組成しているのであれば、名義貸しを禁じた銀行法に反していると見なされる恐れがあります」(九段下総合法律事務所・伊倉秀知弁護士) しかもこのスキームでは、韓国ファンドが荒稼ぎする一方、日本は満足な税収すら得られない可能性があるのだ。 =つづく』、損失吸収手段を「デット」、「エクイティ」、「メザニン」の3種類に分けるのは、プロジェクト・ファイナンスでは一般的だ。しかし、「SBJ銀行」が「韓国ファンド」に「名義」貸しをしているのは問題だ。それ以上に、これを見逃す形で、問題が多い「スキーム」が成立した点は由々しい問題だ。

次に、この続きを、3月3日付け日刊ゲンダイ「韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(下)その巧妙な儲けの手口とは」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/301997
・『韓国大手銀行・新韓銀行グループのファンドが、脱法的な手法で日本の太陽光発電事業に投融資し、ぼろ儲けしている。問題のスキームの最初の投資案件が、茨城・日立十王でのメガソーラーだ。 2015年ごろ、新韓銀行グループの「新韓BNPパリバ」が、韓国機関投資家の資金を集め、日本の太陽光投資を目的としたファンドを組成。日立十王の山林に55メガワットのメガソーラーを建設する計画に、日本のSBJ銀行などを通じ、約150億円の資金提供を行った。 パネル設置などの工事は韓国系の韓電KDNが担い、「オール韓国」で造成した発電所を昨年(21年)4月までに米ファンドに売却。劣後ローン債権を持つ投資家は約8%もの高い金利を得た。エクイティー部分の投資家は、投資元金が2.5倍となる高いリターンを甘受した。 日本の投資家が低金利で運用先に苦しんでいるのを横目に、韓国勢が成功を収めたのだ。 しかも、この儲け分を支払うことになるのは、日本国民である。 メガソーラーを取得した米ファンドは今後、電力会社への売電収入から投資資金を回収することになる。電力会社は再エネ業者に払うコストを「再生可能エネルギー賦課金」として電気料金に転嫁しているからだ。 さらに、韓国勢が日本で得る利益に対し、満足な課税すらできない可能性がある。 前回述べた通り、韓国ファンドは日本で銀行免許を持つSBJ銀行(新韓銀行の日本現地法人)に、太陽光事業の実施主体向け融資債権をつくらせ、ほぼ同時に、韓国のファンドに譲渡されるスキームを組んでいる。 これにより、実施主体が支払う金利は、韓国ファンドの収入になる。すると、法人税は日本ではなく、韓国で納められることになるのだ。 「もし、日本の銀行免許を持つ韓国系銀行が債権譲渡せず融資を継続した場合、得られる利息収入はSBJ銀行の課税所得として、日本で法人税が課税されます。ところが債権が韓国ファンドに譲渡されると、利子はファンドの利益となり、法人税が納められるのは韓国となる。日本での課税は源泉徴収だけとなり、日韓租税条約の制限税率である10%しか課税できない」(公認会計士・税理士の能勢元氏)』、「日本での課税は源泉徴収だけ」、ふざけた話だが、文句はいえない。
・『韓国系金融から資金を借り入れる背景  しかも、ファンドの資金を使っているのは、いわくつきの業者が多い。 前回の冒頭で紹介した、山梨県での乱開発が問題となっているブルーキャピタルマネジメント(東京都)。韓国系銀行は、同社のさまざまな案件に融資しており、その規模は500億円にも上る。だが、土砂崩れや手抜き工事が指摘されている案件が多い。 また、SBJ銀行などは、三重県四日市市に設置予定のメガソーラーにも数百億円規模の資金を提供している。東京ドーム20個分に相当する95ヘクタールの山林を開発するもので、一時期、地元で反対運動が起こっていた。 この実施主体はジーヴァエナジー(東京都)といい、代表者はバブル期に地上げ業者として知られ、住専(住宅金融専門会社)の大口融資先の一つだった。 これらの融資の出どころは、新韓BNPパリバが韓国機関投資家から集めたファンド資金である。 また、韓国系銀行から約150億円もの資金を引き出し、九州でメガソーラーを手掛けている業者は、数年前に介護報酬の不正請求が新聞沙汰となっている人物が経営者。他にも、巨額脱税が指摘された者など、日本の銀行借り入れが難しい面々が受けている韓国系銀行の融資は、ファンド資金と思われる。 海を越えて脱法的に持ち込まれた資金を使い、“アウトロー”たちが日本の国土を乱開発……。大手銀行とは思えぬ振る舞いだが、一連のスキームは現・新韓銀行首脳が関与している可能性が高い。 新韓銀行の頭取を務める晋玉童氏は、09年からSBJ銀行取締役を務め、14年副社長、15年から新韓銀行頭取になる19年まで社長を務めていた。前述の茨城・日立十王の案件は晋頭取の実績であると、韓国の経済メディアは報じている。 筆者はSBJ銀行に取材したが、期日までに回答がなかった。 国が太陽光を推奨する裏側で、日本の天然資源や国民の財産が、海外勢に食い物にされている。=おわり』、これだけ多くの不正事件に関与している「SBJ銀行」、その親の「新韓銀行」が、「日本の天然資源や国民の財産が、海外勢に食い物にされている」のは、由々しい問題だ。ただ、政治家へもヤミ献金などで金融庁に圧力をかけている可能性がある。

第三に、5月20日付け東洋経済オンライン「きらやか銀行、「3度の公的資金申請」に漂う不安 運用受託で含み損拡大のSBIにも厳しい視線」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590415
・『3度目となる公的資金の活用を検討している山形県のきらやか銀行。背景にあるのは、失敗続きの有価証券運用だ。 コロナ禍によって観光業などの地域経済が疲弊する中、山形県を地盤とするきらやか銀行が5月13日、金融機能強化法に基づく公的資金の注入を申請する方針を表明した。 政府が2020年に設けた強化法の「コロナ特例」を活用する方針で、全国では初。公的資金注入となれば、大分県の豊和銀行以来8年ぶりとなる。申請金額や払込時期などは今後詰める。 「(取引先を)今後も長期にわたって支援していくことが必要だ」。きらやか銀の川越浩司頭取は同日行われた記者会見で、公的資金申請の狙いについてそう言って理解を求めた』、興味深そうだ。
・『公的資金返済へ強まる懸念  ただ、同行への公的資金の注入は、2009年、2012年に続いて今回で三度目となる見通しで、回収への不安は強い。世界的な金融危機、東日本大震災、そしてコロナ禍と大きな経済的ショックによる不可抗力で、公的資金の注入申請に至ったように一見映る。だが、その内情は紛れもなく、有価証券運用をはじめとするきらやか銀の稚拙な経営にある。 「株や債券の相場がどう動いても利益が出ないような、どうしようもないポートフォリオになっていた」。金融庁のある幹部は、きらやか銀の有価証券運用の惨状についてそう話す。 預金と貸し出しによる銀行本来のビジネスが年々細る中で、有価証券による余資運用は地銀経営の要になっているが、きらやか銀の運用商品の中身は周辺の地銀からも「がんじがらめ」「支離滅裂」と揶揄されるような状態にあった。 そのため、きらやか銀は2021年3月期決算で、投資信託など運用資産の“損切り”を実施。さらに運用資産の入れ替えと運用の高度化に向けて、SBIグループへ運用業務の一部委託にも踏み切っている。 同決算では与信費用の増加もあり、最終赤字が過去最大の48億円にのぼったことから、当時頭取だった粟野学氏は責任をとって代表権のない会長に就き、取締役だった川越氏が昇格することになった。 そもそも、きらやか銀は、2012年に注入された公的資金200億円分の返済が2024年9月に迫っている。きらやか銀の親会社、じもとホールディングスの関係者によると、昨春時点できらやか銀の経営陣は、地元企業などへの第三者割当増資によって、公的資金の返済を乗り切る計画を温めていた。 引責辞任ながらも粟野氏を頭取から会長に据え置いたことについて、同関係者は「地元企業に出資をお願いして回るための顔役が必要だったから」と話す。記者会見で地域経済への万全の支援などとアピールしておきながら、その裏では地元企業に奉加帳を回して、お金を集めることを探っていたというわけだ。) だが、その計画はもろくも崩れ去った。高度化を目指しSBIに運用委託した勘定を中心に、外国債券などでの含み損がわずか1年で4倍以上にも膨らんでしまったのだ。2022年3月末時点で、SBIの運用委託分が含まれている有価証券の「その他」項目における含み損は、119億円にも上っている。 欧米で今後利上げが進めば、含み損はさらに膨らむとみられており、きらやか銀としてはまたしても運用資産の損切りを迫られ、赤字を垂れ流すことになりかねない状況にある。 SBIに対する恨み節が今にも聞こえてきそうだが、そうした状態では奉加帳を回す地元企業の数を大幅に増やすようなことでもしない限り、増資によって公的資金返済を乗り切るのは難しい。それゆえ、きらやか銀としてはコロナ特例による公的資金の注入申請に目を向けるざるをえなくなったというのが実情だ』、「高度化を目指しSBIに運用委託した勘定を中心に、外国債券などでの含み損がわずか1年で4倍以上にも膨らんでしまった」、「SBI」も罪作りだ。「コロナ特例による公的資金の注入申請」とは余りに安直だ。
・『問われる行政のかじ取り  公的資金への依存を一段と深める状況に、経営を監督する金融庁の中でも「安易な税金投入は避けるべき」「SBIがきらやかの増資を引き受けるべきだ」といった声も聞こえてくる。 しかしながら、政府・自民党が7月に参院選を控え、中小企業などへの経済支援をアピールしようと、強化法による公的資金の積極活用について地銀などに説いて回っていることもあり、その圧力には金融庁として抗えそうにもない。 コロナ特例は、おおむね15年以内という返済期限もなければ、申請時に経営体制の見直しも求めないなど、その条件はかなり緩い。 きらやか銀としては、経営のかじ取りの失敗を糊塗しコロナ禍のせいにすることで、返済が迫る公的資金を「特例の緩い公的資金に実質的に切り替えられて、ラッキーと腹の中では思っているのでは」(東日本の地銀役員)という見方すらある。 国難にかこつけて、地銀をひたすら甘やかすのか、それとも経営基盤強化に向けてさらなる再編を促すのか。きらやか銀のケースを通じて、政府や金融庁もその舵取りが厳しく問われることになる』、「きらやか銀としては、経営のかじ取りの失敗を糊塗しコロナ禍のせいにすることで、返済が迫る公的資金を「特例の緩い公的資金に実質的に切り替えられて、ラッキーと腹の中では思っているのでは」、安易な「コロナ特例」の適用は避けるべきだが、制度として創設した以上、申請されれば、認めない訳にもいかないだろう金融庁としては、行政指導の面で、厳しい目に指導するほかないのではなかろうか。

第四に、5月23日付けダイヤモンド・オンライン「地銀が沈む時代に「信用金庫」が伸びている理由、明暗を分ける差とは? 『なぜ信用金庫は生き残るのか』」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303552
・『レビュー  最後に銀行窓口に行ったのがいつだったか思い出せない。残高をスマートフォンで確認するようになってからもう何年も経つ。近年、新聞で銀行の苦境を報じる記事を頻繁に目にするようになった。投資信託などの金融商品の販売をめぐってはネット証券などに押され、銀行を取り巻く環境は厳しい。 一方、銀行の営業姿勢を問題視する声も少なくない。以前同い年の友人が、知り合いの銀行員からノルマ達成のために口座を開設してくれないかと迫られて困っていた。若手行員による座談会の記事で、自社の利益を最優先させよという指示に戸惑ったというコメントも読んだことがある。 そうした不安や課題を抱える銀行を横目に、信用金庫は顧客と自社の利益を両立させ、シェアを拡大しているらしい。本書『なぜ信用金庫は生き残るのか』は信用金庫の強みを隅々まで教えてくれる。顧客の事業の成功のため、数値だけでなく経営者の人柄まで考慮に入れて融資する。売れる商品でも投機的なものは扱わない。著者自ら取材した豊富な事例を紹介しつつ、信用金庫のビジネスモデルが平易な言葉で解説されている。 信用金庫のそうした真摯な姿勢は、地元企業からの信頼を勝ち取り、さらなる取引につながっていく。一見非効率そうでも結果的に利益を生む循環には納得できた。 本書は信金の歴史を語るうえで欠かせない、個性的な人物たちの言動も紹介し、最後まで読者を飽きさせない。金融業界の人はもちろん、業界になじみのない人にもお読みいただきたい。(まゆ)』、興味深そうだ。
・『本書の要点  (1)銀行の将来が不安視されている。手数料収入や収益の源泉である利ざやが減少し、事業基盤が揺らいでいる。特に地方銀行は少子高齢化のあおりを受けて厳しい。 (2)信用金庫は顧客本位の業務運営が評価され、シェアを拡大している。信金間の連携も進み、地域を越えた顧客支援も活発だ。 (3)信用金庫は利他的な経営を貫いた結果、顧客の信頼を得て自社の利益にもつなげた』、なるほど。
・『要約本文  ◆銀行の苦境 ◇経営の現状  生活において身近な存在である銀行の先行きが危ぶまれている。リアルの店舗数は急速に減り、銀行の象徴とも言える預金通帳は有料化を通じて姿を消しつつある。生まれた時からデジタルに慣れ親しんでいる「Z世代」を中心にインターネットバンキングの利用も拡大している。こうした傾向はさらに強まるだろう。 投資家の見方も厳しく、銀行の株価は低迷を続けている。それは将来性を示す株価指標であるPBR(株価純資産倍率)を見れば明らかだ。2021年2月における東京証券取引所第一部に上場する銀行業のPBRは平均で0.4倍と、成長性の有無の目安とされる1.0倍を割り込んだ。特に地方銀行は数値の低さが目立ち、将来不安が強いことがわかる。 文系の大学生にとって銀行は長らく憧れの就職先だった。メガバンクは民間企業が実施する「就職企業人気ランキング」において上位の常連だったが、ここ数年で大幅に順位を落としている。一方、同じ金融業界の損害保険会社は高い人気を集めている。目端の利く学生たちは銀行を見限り始めているのかもしれない』、「損害保険会社は高い人気」は昔から変わらない傾向だ。
・『なぜ業績が悪化しているのか  銀行の人気が落ちたのはその事業基盤が揺らいでいるためだ。銀行は預金金利と融資金利の差である「利ざや」で収益を得ているが、バブル崩壊を経てデフレ経済に陥ると、物価と連動する金利も低下した。利息収入の減少を受け、投資信託や生命保険の販売に力を入れてきたものの、その手数料収入も先行き不透明だ。投資信託は大手インターネット専業証券が販売時の手数料を原則無料にするなど、引き下げ競争が激しい。運用に伴う信託報酬も減少傾向にあり、投資信託からの収入は減り続けると予想されている。 2016年から始まった日本銀行のマイナス金利政策も経営悪化に拍車をかけた。銀行は経営破綻などに備えて顧客から預かった資産のうち一定額を「準備預金」として日銀に預ける。マイナス金利はこの準備預金の上限を超えて預けている超過分にマイナス0.1%の金利を付与するという政策だ。 日銀は超過分を企業への貸出や運用に回させて経済成長につなげる狙いだった。しかし政策開始から5年以上経っても日銀が目指す物価上昇率2%は実現していない。一方、2016年3月期のメガバンクの決算はほぼ減益に転落するなど即座に悪影響が出た。翌年、メガバンクは人員削減を発表し、その流れが店舗の削減や通帳の有料化につながっている』、確かに、異次元緩和政策で、長短金利差が縮小したのは、銀行業界には大打撃だった。
・『危うい地銀  なかでも地銀の業績悪化が目立つ。地方経済は少子・高齢化と過疎化により急速に悪化している。人や企業が減れば、預金や個人へのローン貸出、企業への融資も減少してしまう。傘下に証券会社などを抱えるメガバンクが事業の多角化・国際化を進める一方、「銀行」以外の業務を持たないのも地銀の弱みだ。 地銀の破綻は社会に対する影響が大きいため、金融庁は経営統合などの改革を迫っている。しかし再編により効率化が図られたところで、低金利や手数料収入の減少といった環境のもと、根本のビジネスモデルが崩壊している以上、遅かれ早かれ破綻は免れないのではないか。 金融庁によると、地銀の再編は高コスト体質のメガバンクが対応しきれない中堅企業を支え、経済を成長させるために必要だという。また著者は、金融機関のコスト構造を考えると、個人商店から売上高5億円程度の企業まで地域に密接して取り組めるのは信用金庫や信用組合に限られるという話を聞く。実は近年、信用金庫をメインバンクとする企業が増えている。地銀の存続が不安視される一方、信用金庫の評価は高まっているのだ』、「信用金庫の評価は高まっている」のは何故だろう。
・『【必読ポイント!】◆信用金庫の強み ◇なぜ順調なのか  信用金庫は金融機関だが銀行とは組織形態が異なる。 信用金庫は地域の会員や住民から資金を集めて地域の利益のために働く協同組織だ。預金は誰でもできるが会員資格がないとお金を借りることはできない。会員になるには営業エリアに住んでいるか、働いていることが条件となる。 東京商工リサーチの調査では、銀行業界における信用金庫のシェアは2015年の調査開始以来7年連続で拡大している。) 信用金庫が大手行や地銀から取引先を獲得しているのは、地域に密着したネットワークと支援の手厚さが評価されているためだ。メガバンクに比べ企業の規模は小さいが、営業エリア内の店舗数は多い傾向がある。狭いエリアで営業活動を継続することにより、地域の企業や住民との関係を深めることができる。 また親しみやすさも特長の一つだ。職員は頻繁に顧客のもとに足を運び、地域のイベントにも積極的に参加する。 不況時にこそ信用金庫の強さはきわだつ。銀行は景気が傾き貸出企業の業績が悪化すると、融資の返済を強く求めるようになる。しかし信用金庫は法律により営業エリアが制限されており、無茶な債権回収をすると狭い地域にあっという間に悪評が広まってしまう。そうした事情もあり、信用金庫は取引先が苦境に陥っても経営の立て直しに尽力する傾向がある』、「信用金庫は法律により営業エリアが制限されており、無茶な債権回収をすると狭い地域にあっという間に悪評が広まってしまう。そうした事情もあり、信用金庫は取引先が苦境に陥っても経営の立て直しに尽力する傾向がある」、これは説得的だ。
・『小原鐵五郎と城南信用金庫  小原鐵五郎は業界団体のトップである全国信用金庫協会(全信協)の会長を長期にわたり務めた象徴的存在だ。 1918年の米騒動で経済格差に危機感をおぼえた小原は、庶民の生活の安定を目指し仲間と大崎信用組合を設立。地域住民を熱心に説得し会員を増やした。その後は同組合の専務理事を務め、1951年の信用金庫法(信金法)制定後に城南信用金庫の理事長に就いた。全信協会長就任後は全国を奔走し、単純な利益追求を良しとしない金融機関のあるべき姿を訴えた。 「小原鐵学」と呼ばれるその思想を色濃く受け継ぐのが城南信用金庫だ。城南信用金庫は総資産や預金量の多さから「メガ信金」とも呼ばれる。 その成長を支えてきたのは顧客重視の姿勢にある。顧客には融資のことだけでなく補助金制度の情報についても頻繁に情報提供したり、経営者の人格など定性的なデータも加味して融資を判断したりとその本気度がうかがえる。また、他の金融機関が収益源としている高金利ローンや投資信託をいっさい販売せず、預金もリスク資産の割合を抑えて運用している。 異端にも映る経営方針を支えるのは歴史に対する誇りだ。1945年、15の信用組合が合併して城南信用組合が誕生し、信金法制定後に信用金庫に改組した。合併の旗振り役を務めた小原は第3代理事長に就任。投機的な融資はしない、カードローンは扱わないといった小原鐵学を根付かせた。一時、体制の変更による混乱はあったものの軌道修正し、小原の方針は現在にもしっかりと引き継がれている』、「小原」氏は確かに有名で、信金業界の基礎を築いた。
・『地域をまたぐつながり  信用金庫は営業エリアの制限により遠隔地の企業情報をほぼ持ち合わせておらず、従来は地域をまたいだ事業支援が難しかった。しかし東京が拠点の城南信用金庫が牽引役の「よい仕事おこし」プロジェクトで全国の信用金庫が連携を強めている。 きっかけは東日本大震災だ。城南信用金庫は第13代理事長の川本恭治氏が初代部長を務めた地域発展支援部を中心に被災地支援に取り組んだ。東北と首都圏の企業をビジネスマッチングする「よい仕事おこしフェア」の開催に際し、東北の信金に参加してもらうなどつながりを深め、運営に尽力した。 この成功を踏まえ、インターネットで全国の信用金庫と企業がマッチングできるサイト「よい仕事おこしネットワーク」も開設された。サイトにはビジネスパートナーの募集情報や特産品情報が寄せられる。全国200以上の信用金庫が取引先と共に参加し、顧客の販路拡大や事業連携の機会を創出している。 こうして生まれたつながりを通じ、全国の信用金庫は新型コロナウイルス禍での医療機関への物資提供や飲食店支援にも積極的に参加している』、「ビジネスマッチング」はどの金融機関も注力しているが、現実にはマッチする確率は高くはないようだ。
・『金融機関が生き残るには ◇地銀の非上場化  2017年、金融庁は金融機関に「フィデューシャリー・デューティー」の徹底、つまり顧客本位で業務をするよう求めた。金融機関と一般投資家では情報量に大差がある。そのため、その非対称性ゆえに顧客の意向が軽視されているのではないかと懸念したためだ。 しかし情報の非対称性は金融業界だけでなく、不動産業界などあらゆるビジネスに存在する。わざわざ金融庁が求めるところに、顧客本位の金融機関が少数派であるという事実が現れている。だが、本書に登場する信用金庫は地道な本業支援で地域および顧客の信頼を得ている。 信用金庫を規模や知名度で上回る地銀は、一部の大手を除いて経営が不安定化している。経営改善案として、近年「地銀の非上場化」が取り沙汰されている。上場をやめれば決算発表に伴う人的・金銭的負担や株主からのプレッシャーから逃れられるからだ。 だが、著者は上場をやめても地銀の経営状況は大きく変わらないと見る。自分たちの仕事内容を変えようとしない姿勢が、地銀の経営が悪化した最大の原因だからだ。上場している金融機関でも顧客本位の経営を実現させている企業はある』、上場の有無と「経営悪化」は確かに無関係だ。
・いちよし証券の例は金融機関とは異なるのでカット
・『地銀と信用金庫の明暗  金融業界では地銀の非上場化だけでなく、「信用金庫化」も囁かれている。確かに信用金庫に改編すれば、税負担やシステムコストが軽減される。 しかしこの動きに対し、信用金庫業界は懐疑的な目を向けている。業態転換をしても既存の信用金庫に受け入れられなければ、信用金庫が築いてきたネットワークを活用できない。地銀は自らの経営資源を見直して改革を行うしかないようだ。 地銀の経営不安が続く一方、信用金庫はコロナ禍で再評価されている。経済の先行き不透明感が増すなか、各地の信用金庫と中小企業の取引は飛躍的に増え、貸出残高の増加という形で信用金庫に利益をもたらしている。 明暗を分けたのは、地銀が金利という収益源にこだわったのに対して、信用金庫は利他的な経営を貫いたことで顧客からの信用を獲得し、地域での基盤を強くしたことにある』、「信用金庫は利他的な経営を貫いたことで顧客からの信用を獲得し、地域での基盤を強くしたことにある」、やや建前論的臭いもあるが、その通りなのかも知れない。
・「一読のすすめ」以下は紹介を省略
タグ:金融業界 (その14)(韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(上)流出資金は総計1000億円超、韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(下)その巧妙な儲けの手口とは、きらやか銀行 「3度の公的資金申請」に漂う不安 運用受託で含み損拡大のSBIにも厳しい視線、地銀が沈む時代に「信用金庫」が伸びている理由 明暗を分ける差とは? 『なぜ信用金庫は生き残るのか』) 日刊ゲンダイ 半田修平氏による「韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(上)流出資金は総計1000億円超」 「日本の銀行は、融資の回収可能性や業者の信用力の問題などから、なかなか融資を出さない」、「韓国系銀行は、この案件だけでなく、物議を醸している各地のメガソーラー計画で、資金の出し手として登場」、どいうことだろう。 損失吸収手段を「デット」、「エクイティ」、「メザニン」の3種類に分けるのは、プロジェクト・ファイナンスでは一般的だ。しかし、「SBJ銀行」が「韓国ファンド」に「名義」貸しをしているのは問題だ。それ以上に、これを見逃す形で、問題が多い「スキーム」が成立した点は由々しい問題だ。 日刊ゲンダイ「韓国大手銀行が日本で脱法的な太陽光投資(下)その巧妙な儲けの手口とは」 「日本での課税は源泉徴収だけ」、ふざけた話だが、文句はいえない。 これだけ多くの不正事件に関与している「SBJ銀行」、その親の「新韓銀行」が、「日本の天然資源や国民の財産が、海外勢に食い物にされている」のは、由々しい問題だ。ただ、政治家へもヤミ献金などで金融庁に圧力をかけている可能性がある。 東洋経済オンライン「きらやか銀行、「3度の公的資金申請」に漂う不安 運用受託で含み損拡大のSBIにも厳しい視線」 「高度化を目指しSBIに運用委託した勘定を中心に、外国債券などでの含み損がわずか1年で4倍以上にも膨らんでしまった」、「SBI」も罪作りだ。「コロナ特例による公的資金の注入申請」とは余りに安直だ。 「きらやか銀としては、経営のかじ取りの失敗を糊塗しコロナ禍のせいにすることで、返済が迫る公的資金を「特例の緩い公的資金に実質的に切り替えられて、ラッキーと腹の中では思っているのでは」、安易な「コロナ特例」の適用は避けるべきだが、制度として創設した以上、申請されれば、認めない訳にもいかないだろう金融庁としては、行政指導の面で、厳しい目に指導するほかないのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン「地銀が沈む時代に「信用金庫」が伸びている理由、明暗を分ける差とは? 『なぜ信用金庫は生き残るのか』」 『なぜ信用金庫は生き残るのか』 「損害保険会社は高い人気」は昔から変わらない傾向だ。 確かに、異次元緩和政策で、長短金利差が縮小したのは、銀行業界には大打撃だった。 「信用金庫の評価は高まっている」のは何故だろう。 「信用金庫は法律により営業エリアが制限されており、無茶な債権回収をすると狭い地域にあっという間に悪評が広まってしまう。そうした事情もあり、信用金庫は取引先が苦境に陥っても経営の立て直しに尽力する傾向がある」、これは説得的だ。 「小原」氏は確かに有名で、信金業界の基礎を築いた。 「ビジネスマッチング」はどの金融機関も注力しているが、現実にはマッチする確率は高くはないようだ。 上場の有無と「経営悪化」は確かに無関係だ。 「信用金庫は利他的な経営を貫いたことで顧客からの信用を獲得し、地域での基盤を強くしたことにある」、やや建前論的臭いもあるが、その通りなのかも知れない。
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