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投資(商品販売・手法)(その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり) [金融]

投資(商品販売・手法)については、昨年6月3日に取上げた。今日は、(その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり)である。

先ずは、本年4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321432
・『最近、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。コロナ禍を経た「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。 2023年3月、欧州では金融大手のクレディ・スイスが経営危機に陥り、同じく金融大手のUBSに救済買収された。また、米国では中堅銀行の破綻が立て続けに複数件発生した。4月中旬現在、世界の金融市場はひとまず落ち着きを取り戻している。ただ、危機的な状況がすべて去ったと判断するのはやや尚早だろう。米国の中堅銀行の経営不安はまだくすぶっている。加えて、一部の大手ファンドが厳しい状況に追い込まれつつあるとの見方もある。 それは、新型コロナウイルス感染拡大による「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。 もう一つ懸念されるのは、投資家の間で「年央から米FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを行う」との期待が出ていることだ。一連の銀行破綻で景気後退の懸念が高まり、「FRBは物価より景気の下支えを優先する」との見方だ。しかし、冷静に考えると、世界的にインフレは高止まりしている。短期的に、FRBやECB(欧州中央銀行)の金融政策が緩和に転じるとは考えづらい。 今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう』、「金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある」、「今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう」、なるほど。
・『厳しい状況に向かう一部の投資ファンドとは  最近、資産価値の下落や、それに伴う市場流動性の低下などによって、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。資産分類(アセット・クラス)の中でも、オフィスビルなど「商業用不動産」を対象にした一部の大手ファンドの苦境が鮮明だ。 現在、米国では、資産運用大手の商業用不動産ファンドが焦点となっている。22年11月頃から、投資家の解約請求が急速に増えたようだ。一方、ファンド側は運営を維持するため解約を制限した。「自分の投資が解約できなくなる」との不安から、投資家は連鎖反応のように解約請求に走ったとみられる。その結果、23年3月まで5カ月連続で、当該ファンドの返金は制限された。 また、3月、フィンランドの商業用不動産を裏付けに発行された証券化商品が「デフォルト」と判定された。類似の事例が世界で増えている。 リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した。 また、GAFA (Google、Apple、Facebook〈現Meta〉、Amazon)などIT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した。 低金利環境が続くとの見方を背景に、より高い利得が期待できる商業用不動産に資金を振り向ける投資ファンドは増えた。3月に破綻した米シグネチャー銀行、救済された米ファースト・リパブリック銀行に関しても、IT企業のオフィスが入る不動産向けの融資を積み増した。しかし不動産価格の下落によって、そうした状況が急速に悪化している』、「リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した」、「IT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した」、なるほど。
・『資金運用行き詰まり「3つの要因」  資金運用に行き詰まるファンドが急増している要因として、大きく3つ指摘できる。まず、米欧でオフィスの空室率が上昇している。テレワークや在宅勤務が増加し、かつてのように毎日オフィスに通勤する必要性が低下した。加えて、米国や中国ではリーマンショック後の景気回復をけん引したIT先端企業の業績が悪化し、リストラが進んでいることもオフィス需要を低下させている。 次に、不動産の価値そのものも下落している。22年3月以降、米国ではインフレ鎮静のためにFRBが利上げを進めた。世界的に金利は上昇したことで、長期的に不動産が生み出すと期待される価値は押し下げられる。そのため、米国やユーロ圏では商業用不動産の市況が悪化している。中国やシンガポールでも、商業用不動産の価格下押し圧力が高まっている。 さらに、多くの投資ファンドは、多額の借り入れによる運用を行ってきた。例えば不動産に1億円を投資し、10%のリターンが得られるとする。その場合の利益は1000万円だが、自己資金1億円に加えて10億円を借り入れ、10%のリターンが得られた場合には、計11億円の10%、1億1000万円の利益が手元に残る。それを狙って、多くのファンドが借り入れによってレバレッジをかけた。 しかし、米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えているのだ』、「米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えている」、なるほど。
・『「危機の火種」は依然残っている  金利上昇によって資産価値が下落し、投資ファンドが苦境に陥る――こうした事態は、過去も繰り返されてきた。リーマンショック以前、証券化商品に投資を行うファンドが急増した。多くが短期で資金を借り入れ、満期償還までの期間が長い資産に資金を投じた。金融市場が安定している間は、さほど大きな問題は起きない。 しかし、07年の年初以降、米国の住宅価格下落が鮮明化し、同年8月には「パリバショック」(仏金融大手BNPパリバ傘下の投資ファンドの運用行き詰まり)も発生した。世界的に、「売るから下がる、下がるから売る」といった負の連鎖が鮮明となり、金融市場は混乱した。その結果としてリーマンショックが発生した。 商業用不動産ファンドが一斉に苦境に追い込まれ、世界経済と金融市場が大きく混乱するリスクは、23年4月上旬の時点ではそれほど高くはない。しかしながら、危機の火種が残る中、世界的にインフレは高止まりしている。一例としてサウジアラビアの追加減産により、原油価格にも押し上げ圧力がかかりやすくなった。 インフレ懸念が残る中で、FRBやECBなど中銀が短期間で金融緩和に動くことは難しいだろう。むしろ米国では政策金利の高止まりが続く可能性が高い。それに伴い、景気後退の懸念が高まり、貸倒引当金の積み増しによって業績が悪化する金融機関が増える可能性がある。 そうした状況下、米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない。4月3日、ECBは「商業用不動産ファンドの増加は、ユーロ圏における潜在的な金融システムの不安定性を高める恐れがある」との懸念を表明した。 米欧の金融機関に対する不安は取り敢えず後退したかにみえる。ただ、商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう』、「米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない」、「商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう」、その通りだ。

次に、5月9日付け東洋経済オンラインが掲載した金融ジャーナリストの川辺 和将氏による「金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670248
・『証券会社などの投資信託の管理システムを、一部事業者が寡占化していることが、投資家のコスト負担につながっている――。 金融庁は今年4月、投資信託の現状について課題を整理した、「資産運用業高度化プログレスレポート2023」において、冒頭のような問題認識を提示した。 システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない。金融庁が直接の管轄ではないシステム領域の課題に踏み込んだ背景には、政府が打ち出したNISA拡充策をめぐって証券界や銀行界で渦巻く不満がある』、「投資信託の現状」について、「システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない」、確かにその通りだろう。
・『シェア7割を占める  投信システムの寡占化とは、どういうことか。 投信業界はおおざっぱにみると、個々の商品のメーカーにあたる運用会社と、銀行や証券会社などの販売会社で構成される。運用会社と販売会社は日々、投信の運用状況などに関する膨大な量のデータを「公開販売ネットワーク」と呼ばれる仕組みを通じてやりとりする。さらにこの公販ネットワークは、基準価額(投信を売買する際の価格)を算出する「計理システム」という別の仕組みとつながっている。 この計理システムにおいて、金融庁調査では残高、件数ベースでトップの事業者のシェアが約7割を占める(下図参照)。ベンダーごとの仕様の違いのせいで、異なる会社のシステムをつなぐには追加的な手数料を求められるケースが多く、結果的に公販ネットワークでも寡占状態が広がっているとみられる。(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)) 当局内には、「システムのコストは結果的に、投資家への負担増加につながり、『貯蓄から投資へ』の流れを阻害する要因となりかねない」(金融庁職員)という懸念がある。 レポートは、各種システムにおける寡占化の結果として事業者間の競争が働かず、それが金融機関側のコスト高の原因になっていると指摘。投資信託協会に対し、システムの仕様統一などを通じた寡占状況の解消を促している。 公表資料では事業者の社名こそ伏せられているものの、投信まわりの各種システムの分野では野村総合研究所(NRI)など証券会社系の存在感が強いことで知られる』、「計理システムにおいて・・・トップの事業者のシェアが約7割を占める」、「システムにおける寡占化」は顕著なようだ。
・『仕方がないと黙認された過去  システム分野の寡占状態については過去にも水面下、何度か金融庁内で議題に上っていた。ある事情通の金融庁関係者によれば、森信親元長官の時代にもシステムの寡占化について正式に問題提起すべきという声が上がったものの、「それが彼らの商売なら仕方ない」と幹部からの意見で頓挫した経緯があるという。 別の関係者によれば中島淳一・現金融庁長官は就任後、「こういう市況で一部システム会社の業績だけが好調というのは違和感がある」と周囲に話した。制度上は直接的な監督の権限をもたないはずの金融庁が、このタイミングでなぜシステム分野の寡占化という問題に足を踏み入れたのか。) その背景のひとつに、2024年1月に予定されているNISA制度の刷新がある。 NISA拡充は、岸田政権が昨年11月の資産所得倍増プランで掲げた看板施策だ。ただ、実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる。 一方、システム会社側からは「金融分野は特に高い安全性が求められるため、コストの削減幅には限度がある」(システム会社幹部)という意見も聞こえる』、「実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる」、なるほど。
・『システム業界をスケープゴートに?  NISA口座倍増という政府目標に向けた取り組みに事業者間の温度差も目立つ中、金融庁は足元、現行一般NISA枠の機能を引き継ぐ「成長投資枠」の対象商品選定をめぐって業界側との折衝に苦戦している。システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた今回のレポートには、資産運用業界全体の“ガス抜き”的な狙いも透ける。 単に金融機関のコスト削減にとどまることなく、一般利用者である国民の利益追求につながる改革を実現できるかどうか、金融庁の調整力が問われている』、「システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた」のはともかく、「一般利用者である国民の利益追求につな」げてほしいものだ。

第三に、6月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニコンやMUFGのCFOの徳成旨亮氏による「社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは」を紹介しよう。
・『毎年平均100名近い海外機関投資家と面談しているニコン現CFOの徳成旨亮氏によると、海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた、という。 海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている。結果、日経平均は1989年の最高値を未だ更新できておらず、水準を切り上げ続けている欧米株と比べて魅力がないと言われても仕方がない状況だ。 この現状を打破するにはどうしたらいいか? 徳成氏は、「CFO思考」が「鍵」になるという。 朝倉祐介氏(アニマルスピリッツ代表パートナー)や堀内勉氏(元森ビルCFO)が絶賛する6/7発売の新刊『CFO思考』では、日本経済・日本企業・日本人が「血気と活力」を取り戻し、着実に成長への道に回帰する秘策が述べられている。本書から、一部を特別に公開する』、「海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち・・・には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた」、「海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている」、いずれも的確な指摘だ。
・『日本の上場企業すべてを買収できる資金力を持つ世界最大の資産運用会社とは  私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の役員として、さまざまな国際的な金融のフォーラムや会議などに参加してきましたが、「会議の中心」が10年単位で変わってきたという印象を持っています。 すなわち、2000年より前は商業銀行が中心的立場にいました。米国ではシティバンクやJPモルガン・チェース、英国ではバークレイズやHSBCなど商業銀行の経営者が会議で基調講演をしたり、パネルディスカッションにも登壇したりしていました。 2000年前後からはM&Aなどの投資銀行ビジネスが花形となり、投資銀行(インベストメントバンク。日本で言えば証券会社)が金融界で主要な立場を占めるようになってきました。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズといった金融機関の発言力が大きくなっていったのです。 そして、世界は2008年、日本ではリーマンショックと呼ばれる世界金融危機を迎え、商業銀行や投資銀行は大きく傷つきました。 その後の世界経済の回復と世界的な株高局面で、金融機関の序列はがらりと変わりました。すなわち、これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきているのです。 資産運用会社の雄である米国のブラックロックがその代表選手であり、同社CEOのラリー・フィンク氏が金融業界で最もその発言の影響力がある人物と目されるようになりました。 グローバルな会議、たとえば毎年1月下旬にスイスのリゾート地で開かれるダボス会議では、「ラリーが何を言うか」に、金融界、さらには経済界の注目が集まるようになっています。 米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)。世界最大のアセットマネジメント会社です[*1]。 東証の時価総額が5兆ドル、上海証取と香港証取を足した中国上場企業の時価総額が11兆ドル、GAFAに代表されるテック企業が多数上場しているNASDAQの時価総額が18兆ドル[*2]。ブラックロック1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います』、「これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきている」、「米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)・・・1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います」、全く凄い規模だ。
・『資産運用業が金融界で覇権を握るのは歴史の必然  銀行から投資銀行、そして資産運用会社へという金融界の覇権の移行は、歴史の必然である、と私は考えています。すなわち、資本主義が高度に発展・進展すると、金融資本主義に進み、そこでは富の蓄積が行われ、最も効率的な利益創出である資産運用が行われるようになります。 ピケティ氏の「r>g」という不等式において、「r」を受け取ることができるのは投資のリスクを取っているファミリーオフィス、ソブリンウエルスファンド、年金基金、大学基金などのアセットオーナーです。そして、セームボートマネー(注)やプロフィットシェアリングの形で(欧米の)資産運用会社もその「r」の成長の恩恵に与ることができる立場にいます。 同じ金融機関でも、経済成長「g」を裏で支える銀行業は金利という定額の収入しかなく、それを超える上振れメリット(アップサイド)を享受することはできません。 また、証券会社は、企業の成長率「g」が株式や債券という有価証券に形を変えていくプロセスには株式増資や債券発行の引き受けという形で関与しますが、その株式や債券が生み出すリターン「r」を受け取る立場にはありません。 実は、資産運用業が金融機関の序列の最上位にいる状況は欧米先進国だけに限りません。 中国や中東の諸国も早くから「r>g」の不等式に気づき、ソブリンウエルスファンドという名の国営の資産運用会社を立ち上げ、最優秀の人材をここに投入して国富を増やしてきました。 たとえば、シンガポールの国家予算の4分の1は、同国のソブリンウエルスファンドの1社であるGICによる運用収益で賄われている状況です。つまり、シンガポールでは政府そのものがアセットオーナーとなって、「r」のメリットを享受し、国家予算を厚くしています。その結果、シンガポール国民も「r」の恩恵に与っている、と表現することもできます。 このように、欧米先進国や一部中進国においては、「r>g」という「ピケティの不等式」のメリットを貪欲に追求するアセットオーナーやそのおこぼれに与ろうとするアセットマネージャーがおり、各企業はこうした機関投資家から選ばれようと成長戦略を磨き、ROE(自己資本利益率)などの資本効率を高める努力をしています。 これが、金融資本主義が発展した社会の姿です』、「ソブリンウエルスファンド」の意味がより深く理解できた。
(注)セームボート(出資):不動産投資法人(リート)の資産運用会社のスポンサー(資産運用会社の大株主)が当該投資法人の投資口を購入・保有することを言います。セイムボート出資は、不動産投資法人の投資主、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させる取り組みの一つです。投資口価格が下落して投資主が損をすれば、スポンサーも損をする仕組みです。セイムボート出資は不動産投資法人、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させることで、投資家の信頼の獲得にも資する(投信資料館)。
・『日本の資産運用業界は平均並みのリターンでよしとする「草食系」がほとんど  一方、日本の機関投資家の行動様式や業界構造はほかの先進国とは異なる状況にあります。 すなわち、金主であるアセットオーナーは多様性が乏しく年金性資金が主流です。また、資産運用会社もTOPIXなどベンチマークに追随する運用が多く、どこも似たり寄ったりで特徴がありません。 まず、金主から見てみると、日本における最大のアセットオーナーは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という政府系機関です。GPIFは日本国民の国民年金や厚生年金を管理・運用する世界最大の年金基金です。その他、共済年金や各企業の年金などが日本における主な資金の出し手です。年金基金に匹敵する1000億円以上を運用するファミリーオフィスや大学基金などはほとんどありません。 日本の年金性資金のアセットオーナーは、リスク許容度が小さく、いわば「安全運転」の運用をアセットマネージャーに指示します。 すなわち、運用対象資産は流動性のある株式や債券などが中心で、不動産やPE(プライベート・エクイティ)など低流動性の資産への投資は限定的です。たとえば、GPIFの運用対象資産は、「伝統的4資産」と呼ばれる「国内株式」「海外株式」「国内債券」「海外債券」の4つであり、これらに25%ずつ投資する基本的ポートフォリオを組んでいます。 GPIFに代表される公的年金および企業年金の運用では、TOPIXやS&P500といったベンチマークよりも高い運用利回りを求めるアクティブ運用の割合が年々減少し、市場平均並みのリターンでよしとする草食系のインデックス運用(パッシブ運用)の割合が年々増加しています。 また、資産運用会社サイドも、欧米のようなセームボートマネーやプロフィットシェアリング方式の運用を採用している会社は少なく、AUM(アセット・アンダー・マネジメント。運用残高)に一定の料率をかけた金額を運用報酬として受領する、という手数料体系が一般的です。 この方式に従えば、ある運用機関の運用成績が業界平均を下回っても、相場自体が堅調で資産の時価が増えれば、得られる手数料も増えることになります。 セームボートマネーやプロフィットシェアリングがない以上、同業他社と同じような運用成績をあげておけば、AUMを削られることもなく、業界標準並みの報酬を得られます。つまり、アップサイドもないかわりにダウンサイドリスクも限定的です。 日本では、資産運用会社のファンドマネージャーがクビになるといった例はきわめて稀です。この点で、運用成績が振るわなければ市場から淘汰される欧米のファンドマネージャーとは大きく異なります。 もっと言えば、日本の運用機関で資産運用をしている大多数が「サラリー・ファンドマネージャー」であり、毎月、定額の給料を得ながら運用し、運用が上手くいっても失敗してもボーナスが若干上下する程度という報酬体系のなかで働いています。 また、日本では資本主義の歴史の違いや資本市場の厚みの違いから、欧米では主流の独立系資産運用会社は少数派です。その多くは銀行や証券会社などの子会社であり、経営者も資産運用の経験のない人物が天下りで派遣されるケースも見られます。 2023年4月に金融庁が公表した「資産運用高度化プログレスレポート2023」によれば、海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です[*3]。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」と指摘しています。また、欧米の資産運用会社では、誰が責任を持ってファンドや投資信託を運用しているのかがわかるようにファンドマネージャーの個人名が開示されていますが、日本では運用担当者の氏名開示が進んでおらず、ファンドの本数に占める開示割合は、世界各国の中でも最低水準だと指摘しています。 このように、日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです』、「海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」、「日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです」、皆が「草食系」とはやれやれだ。
・『【著者からのメッセージ】 私は国内外あわせて毎年平均100名前後の機関投資家の方々と、直接もしくはネット経由で面談し、自社の株式への投資をお願いしてきました。これら多くのグローバル投資家から、私が繰り返し言われてきた言葉があります。それは、 「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」 というフレーズです。 経済学者のジョン・メイナード・ケインズによれば、アニマルスピリッツとは、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」を意味します。海外の投資家たちは、日本の社会全体や企業経営から血気と活力が衰えている、つまり「アニマルスピリッツ」が日本経済から失われていると見ているのです。 この現状を覆すにはどうすればよいか? それが本書のテーマです。その答えは「CFO思考」にあると私は考えています。 「CFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)」と聞くと、数字のプロであり経理や資金調達に責任を負っている「経理・財務担当役員」が思い浮かぶ方も多いと思います。 しかし、欧米で「CFO」といえば、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)とともに3名で経営の意思決定を行う「Cスイート」の一角を占める重要職です。CFOは、投資家をはじめとする社外の多くのステークホルダー(利害関係者)に対しては、会社を代表してエンゲージメント(深いつながりを持った対話)を行い、社内に対しては、ROE(自己資本利益率)に代表される投資家の期待・資本の論理や、ESG投資家や地域社会など、異なるステークホルダーの要望を社員にもわかるように翻訳して伝え、その期待を踏まえた経営戦略を立て、それを実践するよう組織に影響を与え行動を促す、という役割を担っています。 そして、「アニマルスピリッツ」をCEOなどほかの経営陣と共有し、「数値をベースにした冷静な判断力」を持って考え、企業としての夢の実現に向け行動する、いわば企業成長のエンジンの役割を果たしています。 本書では、従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」と呼びます。「『CFO思考』こそが、企業のパーパス(存在意義・目的)を実現させる」。これが本書の結論です。 本書でお話する内容には、企業経営に関するテーマが多く含まれています。同時に、現在、各企業において、経理、予算、財務、税務、IR、サステナビリティ・ESG、DX・ITといった分野で働くビジネスパーソン、もしくはそのような分野に興味がある方々も意識して書き下ろしました。皆さんが担当しておられるこれらの業務において、どのように「CFO思考」を発揮すればよいのかをご紹介しています。 こうした実務に携わっておられる皆さんには、グローバルで活躍できる人材として、将来日本企業と日本経済の成長のエンジンになっていただきたいと考えています。 CFOという仕事の魅力と楽しさが、一人でも多くの読者の皆さんに伝われば、それに勝る喜びはありません』、「従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」」、「CFO思考」が広がってほしいものだ。

第四に、6月10日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり」を紹介しよう。
・『セゾン投信は5月31日の取締役会で、6月1日付で創業者の中野晴啓会長の退任を決めた。中野氏は、親会社のクレディセゾンのドン・林野宏会長と経営の路線を巡り対立したとされ、「不本意な退任だ」(中野氏)との言葉を残し会社を去る。 中野氏は東京都出身で、1987年に明治大学商学部を卒業し、クレディセゾンに入社。同グループの金融子会社で資金運用業務を担当、2006年にセゾン投信を設立し社長に就任した。2014年には日本郵便の資本参加を受け入れ、2017年からゆうちょダイレクトへの商品提供を開始している。「中野氏は金融庁の金融審議会『市場ワーキング・グループ』の中核メンバーで、投資信託協会副会長も務めている。投信業界のカリスマの一人だ」(市場関係者)とされる。 投資哲学は、積み立て投資を長期的に続けることによる資産形成の素晴らしさを主張しており、「積立王子」と称される。長期投資の普及を目指し、日本全国でセミナー活動を精力的に展開している。また、2010年には、コモンズ投信会長の渋沢健、レオス・キャピタルワークスCIO(最高運用責任者)の藤野英人と「草食投資隊」を結成し、話題を集めた。) セゾン投信の運用資産残高は6000億円超で口座保有者は15万人を超える。自社で投資信託商品を設定・運用し、インターネットなどを通じて購入手数料のかからないノーロード型、信託報酬の低い投資信託として販売している。 そのカリスマ退任に業界では激震が走っている。 「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」(市場関係者)というのだ。 中野氏退任の背景にはグループの販売戦略の転換も指摘されている。 「クレディセゾンによるスルガ銀行の持ち分法適用会社化の動きと関係しているのでしょう。セゾングループのドン・林野氏にしてみればセゾン投信は総合金融グループ化のための重要なエンティティーであり、スルガ銀を通じた窓口販売で預かり資産を一挙に増やしたいと考えている」(別の市場関係者)という』、「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」、「資金流出」といっても、中野氏が独自の「投信」を立ち上げた訳でもないので、流出規模は知れているだろう。ただ、「ファン」心理は合理的に動くとは限らないだけに、不確定要素も大きいようだ。
・『顧客離れの懸念も  だが、セゾン投信の顧客はほぼイコール積立王子ファンであり、中野氏の退任で顧客離れも懸念される。また、セゾン投信の株主はクレディセゾン(所有比率60%)と日本郵便(同40%)。日本郵便がどう判断するかも注目点だ』、「ファン」心理については、上述と同様なので、不確定要素も大きいとみておくべきだろう。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 「投資信託の現状」について、「システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない」、確かにその通りだろう。 投資(商品販売・手法) 「リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した」、「IT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した」、なるほど。 (その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり) 東洋経済オンライン 「米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない」、「商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう」、その通りだ。 「米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えている」、なるほど。 「金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある」、「今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう」、なるほど。 真壁昭夫氏による「商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感」 川辺 和将氏による「金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘」 「計理システムにおいて・・・トップの事業者のシェアが約7割を占める」、「システムにおける寡占化」は顕著なようだ。 「実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、 「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる」、なるほど。 「システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた」のはともかく、「一般利用者である国民の利益追求につな」げてほしいものだ。 徳成旨亮氏 「社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは」 「海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち・・・には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた」、「海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている」、いずれも的確な指摘だ。 「これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきている」、「米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)・・・1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います」、全く凄い規模だ。 「ソブリンウエルスファンド」の意味がより深く理解できた。 (注)セームボート(出資):不動産投資法人(リート)の資産運用会社のスポンサー(資産運用会社の大株主)が当該投資法人の投資口を購入・保有することを言います。セイムボート出資は、不動産投資法人の投資主、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させる取り組みの一つです。投資口価格が下落して投資主が損をすれば、スポンサーも損をする仕組みです。セイムボート出資は不動産投資法人、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させることで、投資家の信頼の獲得にも資する(投信資料館)。 「海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」、 「日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです」、皆が「草食系」とはやれやれだ。 「従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」」、「CFO思考」が広がってほしいものだ。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり」 「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」、 「資金流出」といっても、中野氏が独自の「投信」を立ち上げた訳でもないので、流出規模は知れているだろう。ただ、「ファン」心理は合理的に動くとは限らないだけに、不確定要素も大きいようだ。 「ファン」心理については、上述と同様なので、不確定要素も大きいとみておくべきだろう。
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資本市場(その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠) [金融]

資本市場については、本年2月3日に取上げた。今日は、(その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠)である。

先ずは、本年4月27日付け日経ビジネスオンラインが掲載したUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントのエクイティ・リサーチ・ヘッドの居林 通氏による「簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”」を紹介しよう。Qは聞き手の質問。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00130/00026/
・『居林:「市場は『晴れ、ときどき台風』」を長きにわたって連載させていただきましたが、次回をもって最終回となります。 Q:2016年2月15日の「大荒れ相場? いえ、これって“普通”です。」で始まって、まる7年を越えましたね。長い間ありがとうございました。それではラストは何のお話を。 
・最後のテーマは「日本企業の将来」  居林:株価は市場の誤解による変動の波こそあれ、最終的には業績予想の関数として説明できる、と、この7年間ずっとご説明してきましたよね。 Q:はい。だから「市場が現状を誤解して」、その企業の業績予想に対して高すぎる、あるいは安すぎる株価を付けているときに、周囲の流れに逆らって、胃薬を飲みながら投資しましょう、と。 居林:はい(笑)。長年にわたり日本株を見てきた投資家として、最後に語りたいのは「日本企業の将来」についてです。前半は企業視点、後半は投資家視点となります。今回はボリューム多めです。さて、まずは日本企業の時価総額の変遷を見てみましょう。 各国のトップ100社の時価総額(兆円、中央値)のグラフはリンク先参照) 居林:日本企業の時価総額(中央値)は、2010年の1.3兆円から22年に2.9兆円まで復活しました。しかし、米国の19.6兆円と比べると、この差は一体何なんだと言いたくなりますよね。 Q:何がこの差を生んだのでしょう。 居林:2000年ごろの日本企業には「六重苦」がありました。(1)円高、(2)高い法人税率、(3)厳しい労働・解雇規制、(4)経済連携協定の遅れ、(5)厳しい温暖化ガス削減目標、(6)電力不足です。 このうち、円高と高い法人税率についてはある程度緩和されました。不採算部門の閉鎖を行ったことで利益水準も純利益率で5~6%程度まで戻ってきました。しかし、利益は一定水準出るようになったのですが、日本企業の経営、事業展開、バランスシート、事業価値創造にはまだまだ課題が多いです。 Q:具体的な数字では何がそれを物語っていますか? 居林:それが顕著に表れているのが、日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されているという事実です。 純資産は、企業が「今すぐ負債を返済し終わったとして、会社に残る資産」、いわゆる解散価値ですね。それを発行済み株式数で割ると「1株当たり純資産(BPS)」になる。PBRは株価をBPSで割ったもの。それが1倍以下というのは、「今、株を全部買い占めて会社を買い取って潰すと儲かる」ってことですから、投資家から見れば「この会社は、事業を続けるより売却したほうがいいんじゃないか」という……』、確かに「日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されている」というのは極めて深刻な事態だ。
・『上場企業の約5割が簿価割れ  居林:株価=株主資本+将来の付加価値と考えれば、株価が1株当たり純資産=株主資本よりも下で取引されているということは、投資家はその企業の将来の付加価値がマイナスであると考えていることになります。これは日本企業の低いROE(株主資本純利益率)の結果でもあり、「伊藤リポート」(14年8月、伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を座長とする経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称。これに盛り込まれたROE目標水準は8%だった)が鋭く指摘したところです。 なぜこんな事態になったのか。2000年代初めの日本の銀行の不良債権危機、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、20年の新型コロナ危機など、予想外のネガティブイベントが次々と起こったため、企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました。 Q:えっ、アクティビスト。 居林:渋い顔をしましたね(笑)。アクティビストというと、目先の利益しか考えず、日本的経営の美点を破壊する連中、というイメージがあります。00年代のスティール・パートナーズとブルドックソース、英ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドと電源開発(現Jパワー)のケースを覚えておられる方も多いと思います。 Q:そうそう、もっと遡るとブーン・ピケンズ氏と小糸製作所とか。 居林:アクティビストの提案全てが正しいわけではもちろんありません。しかし、日本市場に上場している企業の50%程度がPBR1倍割れ、つまり簿価割れで取引されているという事態は、どう考えても異常です。 Q:投資家が将来性を見限っている企業が半分って、確かにおかしいですね。 居林:23年に入って東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して、「対応策を強く要請」するという事態になっているほどです』、「企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました」、なるほど。
・『アクティビストが決断を迫る  居林:そのため、ここにきて日本的経営の良いところは残しつつも、直すべきところは直そう、という機運が高まっています。14年に導入された機関投資家向けの行動規範である「スチュワードシップ・コード」は、それまで物言わぬ株主であった機関投資家を、「責任ある投資家」に変貌させるという大きな転機になり、投資先の企業の株主総会の議案について一定の基準を持って、賛成・反対意見を表明するようになりました。端的に言えば、アクティビストの提案であっても「企業のためになる」と考えれば、国内の機関投資家が賛成に回るケースが出てきたのです。これによって、日本企業の経営は、今まさに大きく変化しようとしています。 Q:具体例では。 居林:オリンパスの例が分かりやすいかもしれませんね。 日経ビジネスでも記事にしていました(「物言う株主味方に最高益へ オリンパス 反骨・竹内改革の内幕」)。 居林:オリンパスは、祖業である顕微鏡や映像事業(デジタルカメラ)と収益源の内視鏡のビジネスの間にシナジーがないので、これを切り分けることで、ディスカウントが減少しました。ロジックはシンプルですが、注意すべきは、なかなか意思決定ができなかった会社が、アクティビストに背中を押してもらうことで、決断できるようになったというところだと思います。 日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある。 Q:日本企業は変わる余地があるということだと思いますが、実際にどんなことが変わるのでしょうか? 居林:よく聞かれるのが「終身雇用制度はなくなるのか」ですが、中長期的にはそうなるだろうと思いつつ、なかなか急には難しいだろうと思いますので、そこは当面の論点ではありません。そして、それよりも重要なことがあるのです。 Q:何でしょう。 居林:それは、投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです』、「日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある」、「投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです」、なるほど。
・『「コングロマリット・ディスカウント」は大企業に限らない  Q:目的の共有でそこまで可能になるんですか。でも目的の共有って、当たり前のような、あり得ないような。これまで共有が難しかったのだとしたら、それはなぜなんでしょうか。 居林:そのからくりはこうです。そもそも日本の企業は、一体何の事業をやっているのか、理解するのが大変です。例えば、業種が化学であったとしても、実際の事業領域は石油化学から特殊化成品や医薬品、繊維まで多岐にわたることが多い。投資家は企業をどのように評価してよいか分かりにくくて、いわゆる「コングロマリット・ディスカウント」に陥ってしまいます。 Q:株価は1つなのに、携わる事業範囲が広すぎて、しかもそれぞれの関連性が低い、ってやつですね。でもそれは大企業に限ったお話では。 居林:ではないのです。コングロマリット・ディスカウントは、祖業から枝分かれして様々な事業を展開する多くの日本企業に当てはまるのです。 コングロマリット・ディスカウントとその解消例としては大企業、例えばオリンパス、ソニーグループ、日立製作所の例がよく出ますが、もう少し小さい企業の例ではJSRが目を引きます。JSRはもともとJapan Synthetic Rubberという名の通り合成ゴムをつくる企業でしたが、その祖業とも言える合成ゴムのエラストマー事業を売却してしまいました。そして、新しく投資をしているのがバイオテックのビジネスです。こんなダイナミックな動きをしている日本企業がいくつか現れています。 一つひとつの事業を切り出したり、他社の同じ事業と合併したりという経営判断をすることで、会社の注力する分野を明確にして、投資・開発リソースを集中する。それによって競争力も上がります。 社員の方も投資家も今後の事業方針を理解しやすくなり、経営・事業に対する理解の解像度が大幅に上昇する、という道筋を描けます。すでに申し上げましたが、株価=企業価値=株主資本+将来の付加価値と分解すれば、簿価割れというのは、「将来の価値がマイナスである」ということを意味しているわけです。企業はプラスの将来価値をつくり出すことができると会社側は投資家に(そして社員、取引先にも)納得してもらう必要があります。日本企業の経営が大きく変わる必要があるとしたら、まずここです。 Q:なるほど。そういう意識でニュースを見ると、「なるほど」と思えるものが出てきていますね。 居林:しかしまだまだこれからです。例えば「スピンオフ(事業を新会社として独立させた後、既存の株主にその株式を交付すること)」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません。 米国では多くのアクティビストが企業の再編の提案をして、実際にそれが行われています。その全てが成功しているとは言えませんが、投資家と経営陣の対話が実際の経営に反映されており、投資家としては評価しやすい。 企業価値は事業利益と投資家の評価の結果のはずです。日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい。) Q:「成長したい」という意志と、それを社内外に分かりやすく伝えることが必要だと。 居林:その通りです。そのためには大胆な事業再編と組織運営の変更は避けて通れないでしょう。これはアクティビストのみならず、日本の機関投資家、個人投資家、東証など各方面から要請されていると言えます』、「「スピンオフ・・・」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません」、「日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい」、なるほど。
・『利益率が低く、将来への投資を株主還元に回している  Q:ちなみに、伊藤リポートで指摘されたROEですが、近年、それなりに上昇しているのではありませんでしたっけ。 居林:はい、ROEは利益÷株主資本ですから、文字通り「株主が預けた資本に対して、どれだけの利益を生んでいるのか」を示します。会計上の株主資本に対する利回りとも呼べるもので、これが高い方が株主としては好ましいわけです。しかし、ROEは比率ですから、分子が大きくなるだけでなく、分母が小さくなっても上昇します。 日本企業のROEは低いと言われますが、よく見ると日本企業は利益率が低いのです。利益額が小さい、ということに目が行きがちですが、実は利益「率」が低いほうがはるかに大きな、構造的問題なのです。 なぜなら、企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです。そして、海外投資家に「日本企業は不況に弱い」といわれる最大の理由だと思います。 結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です。 居林:コングロマリット・ディスカウントで「どこに投資すれば成長できるのか」が分かりにくくなり、そもそも投資を行わないことで、将来への期待が持ちにくい。これが日本企業の多くが陥っている状態です。加えて、この負債返済とその後の自社株買いが、将来への投資が不足している状態を引き起こしてしまう、というさらに悪い循環に今日本企業は入ろうとしているように見えます。) Q:株価が業績予想の関数であるならば、将来への投資が足りないし方向性も見えなければ、そりゃ、上がるわけはないですね。 居林:ROEを上げるには分母の株主資本を減少させるという自社株買いや株主還元も確かに有効ですが、本来、重要なのは利益「率」を上げるというところです。ならばどうすれば上がるのか。そのコミュニケーションを投資家と企業が取るためには、「投資家と企業との目的の共有」が必要です。 Q:目的というのは……。 居林:基本的に経営の目的は事業の継続と成長、そしてその存在によって社会に何らかの貢献をなすことでしょう。そのどれにも前向きな投資は欠かせない。日本企業の財務体質はこの10年強で大きく改善しました。手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです。 Q:「何に投資して、生き残り、成長して、社会に貢献するか」を、経営者は積極的に、明確に、投資家に、世の中に対して語るときがきましたよ、と。 居林:「成長して社会に役立ちたいと考えているよね」と投資家から聞かれれば、どんな経営者も「もちろん」と答えるでしょう。だけどそこに行動が伴わなければコミュニケーションに必要な信頼が生まれません。この場合の行動とは、コングロマリット・ディスカウントの解消と、成長の目標、そのための手段を経営者がしっかり語ること、だと思います』、「企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです・・・結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です」、「手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです」、なるほど。
・『リーマン・ショック時クラスの長期的なチャンス  Q:上場企業の半分程度が簿価以下で取引されている市場というのは、普通に考えておかしな状態ですよね。 居林:はい、非常に特異な事態だと思います。データを振り返るとこんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います。 Q:おお、なるほど! 居林:日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです。 Q:さて、企業側の話はここまでにして、これからは投資家としての話をしましょうか。 では、そちらは次回に伺いましょう』、「こんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います・・・日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです」、前向きな気分になった。

次に、5月8日付け東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670115
・『「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」。2023年3月、スマホゲーム開発企業のマイネットがリリースを公表した。同社は東証プライム市場に上場しているが、近くスタンダード市場に移行すると表明したのだ。 プライム市場を捨て、自らスタンダード市場に「降格」する――。マイネットを皮切りに、こうした宣言をする企業が相次いでいる。4月末時点で、スタンダードへの移行を宣言したプライム上場企業は9社にのぼる。突如訪れた「降格ラッシュ」の背景に何があるのか』、興味深そうだ。
・『プライム市場「背伸び組」  発端は、2022年4月の市場区分見直しにさかのぼる。プライム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンスが求められる市場として発足した。 ところが、旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった。経過措置の期間は「当分の間」とされており、いつまでプライム市場に残れるのかはわからなかった。改善計画を達成できなかった場合にスタンダード市場へ自動的に移れるのか、改めてスタンダード市場の上場審査が必要なのかも不明確だった。「後者の場合、一斉に移行されると審査の人手が足りなくなる」。証券業界からはこんな悲鳴も上がった』、「旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった」、なるほど。
・『スタンダード移行特例の資料  そこで東証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫った。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となる。スタンダード市場に移る場合には、一度上場廃止してから再度審査を受ける必要がある。 その代わりの選択肢として、早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ。では、どんな企業が特例を利用したのか。以下は、4月末時点でスタンダード市場への移行を表明した企業の一覧だ。いずれの企業もプライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていない。 (流通株式時価総額が鬼門 ースタンダード選択企業の上場維持基準の適合状況ーの表はリンク先参照) 各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東証の指示によって流通株式時価総額を引き上げる計画を策定していた。ところが、業績や株価の低迷によって達成の見込みが立たず、およそ1年で撤回したことになる。 土壌汚染調査や産業廃棄物処理を手がけるダイセキ環境ソリューションは2021年末、3年間で純利益を3倍にする中期経営計画を策定した。ところが、首都圏での大型案件受注が想定を下回り、翌2022年に業績予想を2度下方修正。このまま流通株式時価総額が伸び悩めば上場廃止となるリスクを考慮し、スタンダード市場への移行を決めたという。 東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する(ランキングはこちら)。背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない』、「早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ」、なるほど。
・『「6月」が分水嶺?  降格ラッシュは今後も続くのか。みずほ信託銀行の八木啓至・企業戦略開発部次長は、「6月までにスタンダード市場への移行表明が増えるのではないか」と推測する。 スタンダード市場に無条件で移行できるのは、前述のとおり2023年9月末が期限だ。一方、3月期決算企業の場合、流通株式時価総額などの上場維持基準は3月末時点の数値を基に審査され、未達の場合は6月末までに改善計画を提出ないし更新する必要がある。 スタンダード市場への移行表明が7月以降にずれこむと、それまでにプライム市場への上場を維持するための計画を公表する必要があり、矛盾が生じる。そのため、スタンダード市場を選ぶ企業は改善計画の期限までに移行方針を発表し、定時株主総会で株主に説明するという見立てだ。 ほとんどの企業が旧東証1部から横滑りしたことから「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている』、「「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、望ましいことだ。

第三に、5月8日付け東洋経済オンライン「PBR1倍割れ多発、東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670458
・『東京証券取引所が3月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が波紋を呼んでいる。プライム・スタンダード市場に上場する全企業に対し、年に1回資本コストや資本収益性、市場評価について取締役会で分析・評価をすることや、改善に向けた計画の開示などを要請した。 東証は現状分析にROE(自己資本利益率)やWACC(負債・株式の加重平均資本コスト)、PBR(株価純資産倍率)といった指標を使うことを例示する。中でも、最も問題になったのはPBR1倍未満の会社への対応だ。 PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する。 地方銀行など、構造的に低いPBRにあえぐ企業にとっては東証の掲げる「1倍」という数字は、すぐに達成できる現実的な数字でもない。PBRがおよそ0.5倍のある上場企業幹部は「株主還元でどうにかなる話ではない。結局地道に利益を積み上げていくしかないが、それでも限界がある」と嘆く』、「PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する」、厳しい評価だ。
・『「共通言語」がずれていた  東証の要請はPBRだけに着目した取り組みを求めているわけではない。今回開示を求めた意図について、東証上場部の池田直隆課長は「それぞれの企業に資本コストやマーケットからの評価を意識してもらって企業価値の向上に取り組んでほしい。そのための『共通言語』がずれていた」と説明する。業界内順位や売上といった指標だけでなく、株主が意識する指標を使った対話を促したいというわけだ。 東証にとって「PBR1倍」はあくまで「ひとつの目安」(池田課長)に過ぎない。PBR1倍を割っているからといって上場廃止になることもないという。 それでも、PBRにばかり注目が集まるのは、今回の要請に至るまでの経緯が関係している。 この議論は、2022年4月の市場区分見直しが上場企業の価値向上につながっていないという問題意識から始まったものだ。経営者や学者などで作る「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」は同年7月から議論を重ね、1月30日に論点整理を発表。市場区分について「全上場会社の約半数がPBR1倍割れの状況にメスを入れない限り意味がない」と断じた。 日本は、PBR1倍割れの企業の数が際立って多い。「多くの機関投資家の投資対象となるのにふさわしい」とされているプライム市場においても、上場する企業のおよそ半数が1倍割れとなっており、テコ入れは急務だ。比較対象として挙げられたアメリカでは、PBR1倍を割っている企業は2割程度だという。 東証を運営するJPX(日本取引所グループ)の清田瞭CEO(最高経営責任者、当時)は3月30日の記者会見で「1倍割れの銘柄が世界的に見ても飛び抜けて多い。直していかなければいけない。資本のコストを意識したリターンを上げる経営に取り組めば十分可能だという企業はたくさんあると思う」と語った。こうした背景が3月末の要請につながったのだ。 それでも、東証はPBR1倍の改善のみを強調はしなかった。それによって小手先のPBR向上策が蔓延することを懸念したからだ。 PBRは、分母である純資産を自社株買いや増配で減らすことで向上させることができる。ただ、これでは本質的な企業価値向上とは言えない。本来は、その企業自身が優れた業績を上げ、株価を向上させる必要があるのだ。東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ。具体的な経営指標によって線引きをしなかったことで、企業にとっては「何をすればいいかわからない」(上場企業幹部)要請になった。目指すべき「資本コストや株価を意識した経営」を達成できている企業が何社あるのかも東証は示していない。このあいまいさが、今回の要請の難しさだろう』、「東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ」、なるほど。
・『PBRにフォーカスした新指数  要請ではあいまいな表現を使うことになったが、その裏でPBRにフォーカスした取り組みも出てきた。JPX総研が新たに発表した「JPXプライム150指数」だ。 この指数に採用されるには、プライム上場企業のうち時価総額上位500位に入っていなければならない。その上で、推定エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)上位75社と、PBR上位75社が選ばれる。こちらは明確にPBRを基準に採用した。 5月末までに詳細な選定方法を公表し、7月3日から算出することになっている。この指数が投資信託などに採用されれば、選ばれた銘柄にとっては株価上昇のチャンスになる。指数作成を担ったJPX総研の三浦崇宏インデックスビジネス部長は「指数に選ばれるために上場企業には経営努力をしてもらい、市場全体の底上げになるようにしたい」と話す。) JPXの一連の取り組みに対して、投資家や企業は早くも反応を示した。もの言う株主(アクティビスト)として知られる投資会社シティインデックスイレブンスはコスモエネルギーホールディングスに対して2月22日、東証の取り組みを理由としてPBRを上げるために大規模な株主還元を求めた。 岡三証券グループも3月24日、PBRが1倍を超えるまで年間10億円以上の自己株買いを継続的に実施すると発表した。表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう』、「表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう」、なるほど。
・『上場企業へ増え続ける要求  上場企業に求められる取り組みはPBRだけに止まらない。東証は「PBR1倍」要請を出した3月31日に、プライム市場の上場企業に対して株主との対話状況を公開するよう要請した。このほか、投資家との対話において説明が不十分な例を出して、注意を促した。 要求が増えるにつれて、プライム市場の上場維持コストは増えていく。実際、そのコストに耐えられない企業も出てきている。 「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ。 こうした取り組みは、本来プライム市場かどうかに関係なくすべての上場企業が達成できていることが望ましい。区分を変えてスタンダードに行けば、取り組まなくていいというものではないだろう。市場区分の変更を通じて市場全体を底上げするという、東証の目標が達成されるには、まだまだ遠い道のりが待っている』、「「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ」、賢明な選択だ。こうした企業がもっと増えてほしいものだ。

第四に、6月15日付け東洋経済オンライン「千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679601
・『仕組み債の販売からいち早く撤退した「優等生」が、まさかの「問題児」だった。 証券取引等監視委員会は6月9日、ちばぎん証券や親会社の千葉銀行などの3社に対し、仕組み債を顧客に十分な説明なく販売していたとして、行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令など行政処分を検討する。 ちばぎん証券と提携し顧客を紹介していた武蔵野銀行も勧告の対象になった。3社は「厳粛に受け止め、改善・再発防止に取り組む」とのコメントをそれぞれ発表した。 仕組み債はこれまでも個人投資家に販売するには適さないと指摘されてきた商品だ。デリバティブ(金融派生商品)を使うことで、高い利回りを可能にする反面、株価や為替に連動して償還条件が変動するなど商品性は複雑。通常の債券とは異なるリスクがあるうえに手数料も不透明だった。 金融庁は昨年5月に公表したリポートで、仕組み債の1つであるEB債(他社株転換可能債)を「購入する意義はほとんどない」と断じたほどだ』、興味深そうだ。
・『販売をいち早く中止したちばぎん証券  2022年8月、金融庁は仕組み債の販売状況について実態把握に乗り出す。地方銀行系証券会社はとくに仕組み債の販売に積極的だったが、強まる逆風を前に販売を次々と取りやめた。その結果、仕組み債を取り扱う地銀の数は2022年3月末に100行中77行あったが、11月末には33行と激減した。 この流れにいち早く反応していたのが、ちばぎん証券だった。金融庁の実態調査前の6月、他社に先駆けて仕組み債の販売を中止した。 親会社の千葉銀頭取は、業界団体である全国地方銀行協会の会長。「協会長として金融庁とやりとりする中で、調査の実施を事前に知ったのでは。抜け駆けだ」(ある地銀関係者)。そんな恨み節まで漏れていた。 ところが、そのちばぎん証券で無理な販売が横行していた。監視委によると、2022年6月末に仕組み債を保有していた約8400人の顧客のうち、3割が同社の基準でも仕組み債の販売に適さない「低リスク投資」の意向を持っていた。また、顧客の多くは70代以上だったほか、投資経験がまったくなかった例もあった。) 仕組み債で生じた損失について苦情も出ていた。証券会社でつくる自主規制法人の日本証券業協会は、3度にわたってちばぎん証券に注意喚起をしていた。ところが顧客からの苦情を「一方的申し出」として真摯に対応してこなかったという。 銀行が注力してきた銀証連携で生じた「歪み」も、今回の勧告を通じて浮き彫りになった。 監視委によると、千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていたという』、「千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていた」、証券販売の基本中の基本が出来ていなかったようだ。
・『武蔵野銀は役員が支店長に積極仲介を指示  証券会社が仕組み債を販売して受け取った手数料の一部は、紹介した銀行の収益になる。銀行の営業職員にとっては自分の実績になるため、手数料の高い仕組み債は、「効率がよい」商品だった。 武蔵野銀に至っては、役員が支店長に対し店別の「仕組み債収益実績表」を送付して、積極的に仲介をするよう指示していた。行員に対しても投資信託や個別株の販売ではなく、仕組み債の販売に特化した研修を行っていた。 ちばぎん証券にとっても、銀行経由の仕組み債販売は大きな収益源だった。監視委によると、同社の営業収益のうち銀行経由の収益は70~80%。そのうちの多くが仕組み債関連で、2021年3月期には営業収益全体の約半分を占めた。 仕組み債の販売をやめた2023年3月期のちばぎん証券の業績は、純営業収益が39億7700万円と前年同期比で39・1%減となり、11億3700万円の営業赤字に沈んでいる。 「地銀が証券子会社をつくる目的は、リスク許容度の高い顧客の大手証券会社への流出を防ぐことだった。ただ、そうした顧客はすでにほかの証券会社と取引しており、もくろみどおりの顧客は想定より少なかった」 金融庁でかつて主任統括検査官を務めた日本資産運用基盤グループの長澤敏夫主任研究員は、地銀系証券が高リスク商品の販売に走る背景を解説する。そのうえで「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する。 千葉銀は2022年度、有価証券運用を除く本業利益で518億円を稼いだ。地銀99行のうち3位という優等生だった。融資一辺倒では稼げない危機感が招いた顧客軽視の「ツケ」は、大きな痛手となって回ってきた』、「「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する」、これでは処分されても当然だ。

第五に、6月19日付け東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679779
・『優雅に達観した生活を送っているように見える富裕層。ただ陰では投資や税金対策に頭を抱え、時にもがき苦しむ様子が垣間見える。6月19日発売『週刊東洋経済』の特集「富裕層のリアル国内150万世帯、受難の時代」では、富裕層の偽らざる実像に迫った。 「こちらがドル建て債券に関する資料です。足元で金利が軒並み上昇している状況なので、円債に比べて高い利回りを確保できます」 今年初め、ある国内証券会社の営業マンは富裕層の顧客にそう言って1枚のリストを見せていた。提示したリストに載っているのは、海外の銀行などが発行するドル建ての「永久劣後債」だ。 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて後回しになる(劣後する)債券のことだ。 中でも永久劣後債は、5年後や10年後といった満期の定めがない。そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品だ』、「永久劣後債」は「かなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品」、なるほど。
・『投資リスクが高いAT1債  先ほどのリストには6?7%台の商品がずらりと並んでいるが、その中で10%超というひときわ高い利回りを示していた債券がある。スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債だ。別名「AT1(その他ティアワン)債」とも呼ばれる。 クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループだ。その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入していった。 (投資リスクが高いAT1債の図はリンク先参照)) それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。 スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ』、「日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」が多くを販売していたとは、やれやれだ。リスクをきちんと説明していたことを願うのみだ。
・『仕組み債でも損失の悲劇  急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。 ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。 足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。 訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。 実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。) 同書面を見ると、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてある。今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)がトリガーを引いたことになり、書面上は問題がないように見える。 一方で、大手証券会社の幹部は「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める。 つまり、販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれるということだ』、「「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める」、そうであれば、問題は深刻だ。
・『仕組み債でも大きな損失  金融庁の幹部は、AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」と明かす。 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のこと。デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しい。 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売。富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯がある。 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債だった。そこで大きな悲劇が発生するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない』、「利回り」追及の余り「過剰なリスクを取らせていた」のであれば、大問題だ。  
タグ:「「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 「日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある」、「投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです」、なるほど。 「東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ」、なるほど。 「PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する」、厳しい評価だ。 東洋経済オンライン「PBR1倍割れ多発、東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標」 「「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、望ましいことだ。 「早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ」、なるほど。 「旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった」、なるほど。 東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」 「こんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います・・・日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです」、前向きな気分になった。 でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です」、「手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです」、なるほど。 「企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです・・・結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。 「「スピンオフ・・・」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません」、「日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい」、なるほど。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました」、なるほど。 「表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう」、なるほど。 (その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠) 資本市場 「企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 確かに「日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されている」というのは極めて深刻な事態だ。 居林 通氏による「簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”」 日経ビジネスオンライン 東洋経済オンライン「千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに」 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ」、賢明な選択だ。こうした企業がもっと増えてほしいものだ。 東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」 興味深そうだ。 「千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていた」、証券販売の基本中の基本が出来ていなかったようだ。 「「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する」、これでは処分されても当然だ。 「永久劣後債」は「かなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品」、なるほど。 「日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」が多くを販売していたとは、やれやれだ。リスクをきちんと説明していたことを願うのみだ。 「「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める」、そうであれば、問題は深刻だ。 「利回り」追及の余り「過剰なリスクを取らせていた」のであれば、大問題だ。
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株式・為替相場(その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由) [金融]

株式・為替相場については、昨年8月16日に取上げた。今日は、(その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由)である。

先ずは、本年6月8日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677793
・『ドル円相場は年初来の円安圏で取引が続いている。この原因をどこに求めるかは識者により見方が異なるものの、筆者は円相場を取り巻く基礎的需給環境の変化から目をそらすべきではないという立場を続けている。 需給環境といった場合、象徴的には国際収支統計を軸に議論を展開するのが基本だが、家計の金融資産構成の動きに着目する価値も大きい。日本の家計金融資産は2000兆円にも及ぶため、多少の構成変化でも大きなインパクトになりうる。 日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成にある。 (家計金融資産グラフはリンク先参照) リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり、それが外貨だった場合の為替への影響は気がかりである』、「日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成」、「リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり」、確かにその通りで、要注意だ。
・『若年層ほど外貨建て投資  この点、気になる報道も断続的に見られている。 例えば、1カ月前の日本経済新聞(2023年5月1日)は「外貨資産『増やした』4割若手投資家、日本より米国株」と題し、若年層ほど外貨建て資産の比率を増やしていることを報じた。 かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた。 上記の日経記事の中で紹介されていたアンケート結果に目をやると、「外国企業の方が日本企業よりも期待リターンが高いから」「右肩上がりの成長が不可能となり、日本株を長期で保有するにはリスクがある」など、内外の成長格差への意識が透ける。 これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう。) こうした「国内から海外へ」という資産運用の動きは今に始まったものではなく、過去数年の潮流である。 例えば投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える。 (投資信託経由の株式売買グラフはリンク先参照) 同統計からでは為替ヘッジの有無までは判別できないものの、こうした外国株式(おそらく多くは米国株式)への投資を通じた円売りも、今の円安局面に寄与しているのではないかと推測される』、「これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう」、「投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える」、「かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた」、いよいよ「家計の円売り」が始まったのかも知れない。
・『空気で一気に動くおそれ  もっとも、上述した通り、家計金融資産の半分以上はまだ円建ての現預金に集中している。よって、外国株式への投資などが過去に比べて盛り上がっているのは事実としても、そうした「日本人の円売り」が資金循環構造を根本的に変容させるような状況にはまだない。 しかし、任意となっても大多数が続けているマスク着用のように、日本人は合理性よりも「皆がやっているから、やる」という空気で意思決定を下しやすい。冒頭の日経報道で指摘されたように、外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある。) 実際、「半世紀ぶりの安値」が続く実質実効為替相場(REER・物価格差を考慮し、主要貿易相手国に対する通貨の実力を測る指標)が象徴するように、日本が海外に対して持つ購買力はこの上なく弱まっている。 (円の実質実効為替相場のグラフはリンク先参照) よって外貨運用を増やすこと自体に相応の合理性もある。円の購買力が弱いからこそ海外から輸入される財の値段が押し上げられ、毎日のように値上げが報じられる状況に直結する。 片や、海外から日本へやってくる訪日外国人観光客(インバウンド)は「弱い円」の裏返しである「強い外貨」を背景として旺盛な消費・投資意欲を発揮し続けている』、「外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある」、その通りだ。
・『「弱い円」と「強い外貨」に諦観  日本人の多くは「こんな高いホテル誰が泊まるのか」「こんな高い鮨、誰が食べるのか」「どうせインバウンド向けでしょう」という会話をしたことがあるのではないか。これは「弱い円」と「強い外貨」に対する諦観に基づいた会話であり、「もう円で買えるものは少なくなっている」という日本人の胸中が透ける。 こうした状況に対し名目賃金が上昇してくればよいが、大きな望みは持てない。 6月6日に発表された4月の実質賃金は、前年比マイナス3.0%と13カ月連続でマイナスだった。日本人の懐事情は確実に貧しくなっている。 このような状況が極まっていった場合、合理的な経済人ならば、資産を「弱い円」ではなく「強い外貨」で持つという意欲は強まるはずである。毎日のように「円は安い(≒外貨は高い)」という情報にさらされれば、自国通貨の脆弱性に愛想を尽かす向きは増えて当然である。 事実、円の対ドル相場は2019年12月から足元までの間に、1ドル=110円から140円へと30%弱も下落している。これまで一番安全だと考えられていた「自国通貨建ての現預金」に置くだけでこれほど目減りしてしまった以上、何らかの形で対策を打とうと考えるのは普通である。) 円安が2022年の一過性の動きで終わればそのような心配もなかったかもしれないが、2023年に入ってからもしっかり持続している。必然的に「円から外貨へ」という投資意欲を持つ層は増えてくるだろう。 こうした動きは広義には「貯蓄から投資へ」という意味合いをはらむが、筆者は若干異なるように思っている。 「貯蓄から投資へ」のスローガンが企図するのは、資産運用を通じて保有資産を増やしていこうという「攻め」の姿勢転換だろう。だが、上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している』、「上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している」、確かに「円安に悩む」のは未知の展開だ。
・『1ドル=152円は序章にすぎないかもしれない  2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう。 ちなみに、その経常黒字自体も第一次所得収支黒字を主軸としているため、実需としての円買いは乏しいという実情もある(この点は別の機会に深く議論させていただきたいが、同黒字の半分近くは円に転換されていない可能性が高い)。 このような需給環境の下で「日本人の円売り」がたきつけられた場合、円相場は相当にまとまった幅で下落する懸念があるのではないか。 裏を返せば、2022年に直面した113円付近から152円付近までの円急落は「日本人の円売り」を抜きにして起きた現象であり、その意味で限定的な円安相場だったという見方もできる。 本当の円安リスクはまだ顕在化していないという目線を持ちたい』、「2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう」、これは私が異次元緩和の副作用として懸念していた円大暴落シナリオだ。植田新総裁が余りに慎重過ぎる政策運営をしていることが、「本当の円安リスク」「顕在化」につながる可能性がある。

次に、6月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324520
・『日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く――。私はそう確信しています。日経平均を押し上げる「三大要因」が強力に作用しているからです。しかし、「そのあとの世界」はどうなるのでしょうか。実は、上場企業の過半数が足をすくわれる「大・不安時代」がやってくるかもしれません。3メガバンクやオリックス、三井不動産や野村不動産ホールディングス(HD)、日本郵船や商船三井、鹿島建設や大林組、東レや旭化成、日本製鉄やJFEHD、ホンダにSUBARUなど……日本を代表する上場企業も例外ではないのです』、「日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く」が、「その先に迫る上場企業の“大・不安時代”」、とは興味深そうだ。
・『日経平均は今年中にバブル最高値を抜くだろう  経済評論家の鈴木貴博です。未来予測を専門にしているせいで最近よく聞かれるテーマが、AIと日経平均です。日経平均は、バブル期の過去最高値(終値)の3万8915円87銭を今年中に抜く可能性が高まってきました。もう一歩踏み込んで予測すると9月までに一度、3万8000円台に到達する可能性も高いと思っています。 そこまで到達するのには、日経平均があと16%も上がる必要があります。株価の平均が16%上がるというのは相当なことなので、「年内に」と区切ればそのような予測をしている専門家は少数です。それでも、私は「たぶんそうなる」と確信しています。 今回の記事では、その根拠もお話しします。さらに、もう一つ問題にしたいのが「そのあとの世界」です。 日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました。「もしそれを超えたらその先は?」というと、ここが問題で日本人にはイメージしづらい未知なる世界が待っているわけです。 ということで、今回の記事では「なぜ日経平均は3万8915円を超えるのか?」という話と、「超えた後、日本企業はどうなっていくのか」について、予測とその根拠を書いていきたいと思います。 まず、日経平均がなぜ上がっているのかですが、大きく三つ理由があります』、「日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました」、確かにその通りだ。
・『日経平均の上昇要因は「異次元緩和」「円安」「地政学リスク」  一つ目に、日銀が相変わらず異次元緩和を継続していることです。もう1年以上、利上げによる引き締めを行っているアメリカやEUとは対照的な状況です。お金がじゃぶじゃぶ集まる場所では投資が過熱するわけですが、その場所が世界の中でも日本に限られているため日本が過熱しやすい。これが、一つ目の理由です。 二つ目に、円安です。今、都心に戻ってきたインバウンド消費で外国人がこれほど日本旅行を楽しんでいる最大の理由が、「日本は安い」からです。この日本が安いという感覚は観光客だけでなく外国人投資家にとっても同じで、日本企業は割安とその目に映っているのです。 円安は昨年と比べるとマイルドな形におさまっています。しかし、もしこの夏、円ドルレートが1ドル=160円台に突入したとしたらどうでしょう。 アメリカ人にとって「160円台での日経平均3万8915円」という価格は、「1ドル=140円での3万3500円」とドル建てで見れば同じ数字です。 冒頭で申し上げた今年9月までに日経平均が3万8000円台もありうるという予測の前提の一つが、「もしこの夏に円安進行の事態になれば」という懸念とつながっているのです。 そして三つ目が、地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます。 関連して、世界の製造業にもそれまでのサプライチェーンを見直して日本に軸足を移す動きが出てきています。金融緩和、円安、サプライチェーンの見直しの3要因はどれも日本の製造業にとってはラッキーチャンスです。 ですからこの先、決算発表の記者会見の内容が悪くなるはずはない。全体的に明るいニュースが増え、投資家心理も「買い」に向かっていくでしょう。 ということで私は経済評論家の中では楽観的に「年内3万8915円超え」を予測しているのですが、一番の問題はその先です』、「地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます」、確かにその通りだ。
・『日本の上場企業の大半は「たたんだほうが株主が喜ぶ」会社  よく、長年のゴールを達成した後に虚脱状態になるアスリートがいらっしゃいますが、私は「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧しています。来年にかけてはコロナやウクライナのようなサプライズなマイナス要因が出現しない限り、日経平均が4万2000円ぐらいまでは余裕でいくと思うのですが、それが長くは続かないという予測です。 先に根拠を示しましょう。投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さです。PBRとは企業の時価総額を純資産、言い換えると会社の資産を全部売り払った後に残る価値で割ったもので、このPBRが1よりも低い会社は株主から見れば「ここでもう活動をやめちゃった方が、利益が出る会社」を意味しています。 今、問題になっていることは東証のプライム市場とスタンダード市場に上場する3274社のうち、過半数にあたる1728社がPBR1倍を割り込んでいることです(2023年6月14日時点)。 直近のデータで銘柄スクリーニングをしてみると、時価総額5000億円以上の超優良銘柄の中にも「会社をやめちゃったほうがお得な」PBR1倍以下の企業が79社あります。 主な企業名を挙げると、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクやオリックス、SBIホールディングス(HD)のような金融関連の企業、三井不動産や野村不動産HD、日本郵船や商船三井、鹿島建設や大林組、東レや旭化成、日本製鉄やJFEHD、ホンダにSUBARUといったような会社の名前がずらりと並びます。 ちなみに13日、トヨタがPBR1.03倍と1倍以上のグループに昇格したことが経済ニュースになりましたが、それまでのトヨタも会社をたたんだほうが、株主が喜ぶ側の一員だったわけです。 このことの何が重要なのかというと、これらの会社はお金があるのに投資をしていない会社なのです。経営者目線で考えるとわかりやすいのですが、経済の先行きが不透明で不安な場合、内部留保を増やしてこれから先に備えようとします。何に備えるかというと、従業員の給料が払えなくなることがないように備えるわけです』、「「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧」、「投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さ」、なるほど。
・『日本企業はチャンスがあっても「投資」を十分に行わない  日本人経営者から見れば「年功序列はもうすたれたにせよ、終身雇用は依然残っていて、正社員は家族のようなものだからそれを守る責任がある」と考えるので、お金を手元にためる性向があるのです。「会社は、本当は従業員のもの」という昔の経営哲学が、上場企業の半数以上でいまだに続いているのです。 これが海外の投資家から見ると不満なところです。日本企業は海外の投資家から見ると現金の保有比率が高いのです。その状況を「目の前にものすごく投資チャンスがあるのに投資をしていない」と受け止めるのです。 わかりやすい例を若干デフォルメしながらお伝えすると、金融業界は少なくともアメリカの場合は、AIの台頭を大チャンスだと捉えています。実際に、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーといった会社では従業員の3分の1がITエンジニアやデータサイエンティストに置き換わり、内部は実質的にIT企業と呼ぶべき状態になっています。 かたや日本のメガバンクはAIやDX化の流れを受けて2017年頃から大規模な行員のリストラ計画を発表して、人員削減には邁進(まいしん)しています。 人件費という固定費を削減するのはリスクにはならないので、経営者も自信をもって進められるのですが、投資の側がわからない。いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで、今、業界としては脱炭素とAIのダブルチャンスが起きていて、仕事の領域を「自動車製造」から「モビリティービジネス全般」ないしは「エネルギービジネスへの進出」まで、いくらでも投資を広げられる状態にあります。 にもかかわらず、トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです。 まあ、「日本企業なんだし、外国人投資家のためにビジネスをやっているわけじゃないですから」という意見もわかります。 ただそれでも不安なのは、だからといって日本企業が投資を十分に行っていないことであり、そしてもっと恐ろしいことを言えば、それはアメリカ企業も実は同じなのです』、「日本のメガバンクは・・・いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで・・・トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです」、なるほど。
・『大半の上場企業が日経平均を「押し下げる」時代が来る  日経平均と同じようなアメリカの株式インデックスがS&P500という上位500社の平均株価なのですが、このS&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞しています。 495社からさらにエヌビディア、テスラ、ネットフリックスを除いたら、状況はもっと悲惨なことになるはずです。 つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない。だとすれば日本企業もマクロ要因で3万8915円超えを達成した後、その後でも成長を続けていくことができるのは、ほんのごく一部のチャレンジングな企業だけということになると予測されます。 具体的にはソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です。 少子高齢化、人手不足、脱炭素、コスト高、エネルギー不足、防衛問題――何を考えてもこの先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません』、「S&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞・・・つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない」、「ソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です」、「この先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません」、なるほど。

第三に、6月19日付け東洋経済オンラインが掲載したブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリストの馬渕 治好氏による「それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680453
・『日本株が続騰基調にある。代表的な指標である日経平均株価は反落も交えたものの、6月16日にはザラ場高値(3万3772円)と終値(3万3706円)がともに平成バブル崩壊後の最高値を更新した。 同日のアメリカではシカゴ日経平均先物は3万3675円で引けたが、これは現物指数に換算すると3万3750円辺りに相当する。今週(19~23日)も勢いだけの上振れが続くことで、「3万4000円超え」の局面到来を否定できない』、興味深そうだ。
・『相場予測は大外れ、率直にお詫びす  当コラムでは「今年前半は投資環境の悪化による株価下落が優勢になる」と唱え続け、安値のメドとして現時点では2万7000円を提示している。だが、実際の市況はこれとは真逆の株価暴騰となっており、筆者の見通しは大外れだ。 筆者は種々の機会において、専門家の予想数値だけを取り上げることは有益ではなく、その背景となる分析のほうがはるかに重要だと主張してきた。また、投資家の方々が自分自身で投資戦略を立案するうえで、専門家の主張や見解を丸ごと信じるのではなく、それを踏み台として、それらを上回り、高みに立つような展望を構築してほしい、とも述べてきた。 とはいっても、市況の予測数値は筆者から提示する情報の重要な一部であり、それが大外れであることは専門家として重責だ。すでに多くの叱責を頂戴しているが、そうした声をいただく以前から、筆者の予測の誤りが投資家の判断に悪影響を与え、投資収益面でご迷惑をおかけしているという点に日頃から思いを巡らせている。 実際、毎日胃が痛い思いをし、眠れない日も少なくない。当コラムの執筆だけでなく、雑誌、電子媒体などへの寄稿、テレビやラジオへの出演も「投資家にさらにご迷惑をおかけするばかりではないか」との恐怖にとらわれる。 だが、筆者が心痛を覚えても、皆さんに及ぼしたご迷惑は消えてなくならない。実際に投資成績に悪影響を被った投資家の方々のほうが、筆者の何倍も辛い思いだと拝察する。この場を借りて、心よりお詫び申し上げたい。) 筆者は、証券会社の調査部門に勤務した期間が長い。市場見通しを誤った際には、上司から「お前の軽い頭を下げて詫びられても、投資家の収益が改善するわけではない、そんな役に立たない謝罪をしている暇があったら、分析を再点検することに時間を使え」と諭された』、「上司」のアドバイスももっともだ。
・『日本への知見が浅い「ツーリスト投資家」が今の主役  当時の上司の教えに従って、現在の日本株暴騰の背景を再点検したい。その結論は、読者の方々は「懲りないやつだな」とあきれるだろうが、やはり世界の投資環境は悪化し続けており、日本を含む世界主要国の株価下落が示唆されているということだ。 投資家動向から述べると、5月以降の日経平均暴騰の主役は海外投資家の買いだ。ただし、筆者自身が情報交換している海外投資家から得られる感触では「日本株投資の経験が長く、日本を熟知している長期投資家は本格的な買いは行っていない」というものだ。 こうした感触は、海外投資家と接しているほかの多くの証券関係者からも寄せられる。加えて、日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く。 観光業界ではその国を団体旅行で初めて訪問したり、「単なる旅行者」として訪れるよう人を「ツーリスト」と呼ぶ。「ツーリスト投資家」はそれと同様、日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い。 こうした投資家について、豊島&アソシエイツ代表の豊島逸夫氏が、14日付の日本経済新聞電子版で披露していた見解が興味深いので、一部を引用したい。 「すでに日本株を購入した投資家は、日本株保有の『初体験組』が多いので、その決断が正しかったのかどうか、不安な心理状態にいる。そのため、日本株についての好意的な記事をあさるように探している。マーケティング理論でいうところの『認知的不協和』を最小限に抑えるように行動しているのだ」) ここで言う「認知的不協和」とは、自身の中に2つの矛盾する認識があることを意味する。人はその矛盾が不快なので、何かのこじつけでもそれを解消しようとする。 有名なのは「すっぱいブドウ」の逸話だ。キツネは、高い場所にブドウを見つけ、食べたいと思った。しかし、高すぎて手に取って食べることができない。「食べたい」という気持ちと「食べられない」という現実との矛盾を解消するため、キツネは「どうせあのブドウはすっぱくてまずい」といった、真実かどうかわからない言い訳で気持ちを落ち着かせる。 それと同様に、ツーリスト投資家も「自分は日本株を買った、儲かりたい」という願望と「自分は日本株投資の経験がなく、日本のこともよくわからないので、買いは失敗だったのでは」との不安が、矛盾しているのだろう。 その矛盾解消のため、「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう』、「日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く・・・「ツーリスト投資家」は・・・日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い」、「「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう」、「ツーリスト投資家」とは言い得て妙だ。
・『海外投資家のレベルを知り、椅子から転げ落ちそうに  「海外投資家」と聞くと、そのすべてが高度な投資手法を駆使し、知識も見識もすばらしい投資家だと、誤解しているかもしれない。 だが、日本を知らない海外投資家は本当に多い。最近、「ある豪州の機関投資家が日本株に関心があり、とくに日本の政治について知りたがっている」と知人から紹介され、メールで解散総選挙の可能性を中心に、政治情勢について質問を受けた。多くの質問のあと、最後のメールの末尾の文章を読んで、椅子から転げ落ちそうになった。 「ハル(筆者のニックネーム)、詳細に教えてくれてありがとう。衆議院の解散について、とてもよくわかったよ。ところで、参議院の解散についてはどう思う?」 日本の国会制度などをきちんと説明したが、その程度の投資家も今は日本株買いに多く参戦していると考えたほうがよい。) 世界の金融・経済環境も再点検しよう。金融政策については、最近2週間だけでも、ユーロ圏、カナダ、豪州で利上げが行われた。ユーロ圏では、昨年10~12月期、今年1~3月期と、実質経済成長率(前期比)が「景気後退の目安」とされる2四半期連続のマイナスとなった。それでも、根強いインフレを抑え込むため、景気をさらに押し下げ、株価には逆境となる政策が進行し続けている。 また、アメリカではFED(連銀)が、13~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)でこそ利上げを見送ったものの、年末の政策金利予想値を0.5%幅引き上げた。アメリカの資金面では、経済全体の資金量を測るM2(現預金合計)の前年同月比は、昨年12月から直近の4月分(4.6%減)まで5カ月連続の減少だ。M2が前年同月比でマイナスとなるのは1960年1月以来初めてで、アメリカの景気や株価を締め上げていくだろう。 さらに中国でも、経済統計は4月以降、不振が目立つ。ゼロコロナ政策解除による景気押し上げが期待されたが、空振りに終わっている。確かに足元で中国は政策金利引き下げの姿勢を強めているが、景気悪化に歯止めがかかるかは心もとない。 こうした世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない。しかも、何とか増加している輸出金額でも、中国向けは6カ月連続の減少だ。中国と地理的・経済的に関係が深い日本への悪影響が強く懸念される事態で、「中国がダメだから日本株に資金が逃避する」などという主張は夢物語だろう』、「世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない」、その通りだ。
・『「長期展望は悲観せず」も不変  ただ筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう。ただし『週刊東洋経済』(6月17日号)の40ページではその背景に簡単に触れているので、お読みいただければ幸いだ。 また、筆者が主催しているセミナーの参加者の方々には「日経平均はいったん下落したあと、今年末までには再度3万円の大台を奪回すると見込むし、2024年はさらに株価が上がるだろう。日本株を購入するなら、株価がいったん下振れすることを覚悟しつつ、じっと現物株やファンドを持ち続ければよい」と解説している。 避けるべきなのは、今後日経平均が2万7000円程度に「下がってから」、怖くなって株式などを思いっきり売却してしまうことだ。逆に、この水準に近いところまで下がったら買い場だ」とも伝えている。 今回コラムでは冒頭でお叱りの声があると述べたが、それ以上に激励や応援のメッセージを多く賜り、うれしさで涙することもある。そうしたご厚意に甘えてはいけないと自身を戒めつつも、この場を借りて心より御礼申し上げたい』、「筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう」、短期悲観・長期楽観と分けるのも1つの考え方だ。
タグ:株式・為替相場 (その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由) 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然」 「日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成」、「リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり」、確かにその通りで、要注意だ。 「これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう」、「投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える」、「かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた」、いよいよ「家計の円売り」が始まったのかも知れない。 「外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある」、その通りだ。 「上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している」、確かに「円安に悩む」のは未知の展開だ。 「2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう」、これは私が異次元緩和の副作用として懸念していた円大暴落シナリオだ。植田新総裁が余りに慎重過ぎる政策運営をしていることが、「本当の円安リスク」「顕在化」につながる可能性があ ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?」 「日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く」が、「その先に迫る上場企業の“大・不安時代”」、とは興味深そうだ。 「日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました」、確かにその通りだ。 「地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます」、確かにその通りだ。 「「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧」、「投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さ」、なるほど。 「日本のメガバンクは・・・いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで・・・トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです」、なるほど。 「S&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞・・・つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない」、 「ソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です」、 「この先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません」、なるほど。 馬渕 治好氏による「それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由」 「上司」のアドバイスももっともだ。 「日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く・・・「ツーリスト投資家」は・・・日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い」、 「「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう」、「ツーリスト投資家」とは言い得て妙だ。 「世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない」、その通りだ。 「筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう」、短期悲観・長期楽観と分けるのも1つの考え方だ。
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金融業界(その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ) [金融]

金融業界については、本年4月22日に取上げた。今日は、(その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ)である。

先ずは、本年4月24日付けデイリー新潮「「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も、立ちはだかる意外な障壁」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04241102/?all=1
・『米IT大手のアップルが「金利4.15%」の預金サービスに乗り出したことが話題になっている。“雀の涙”以下の預金金利に慣れきった日本人にとっては夢のような話のため「上陸」を待ち望む声も多いが、コトはそう簡単でないという。 4月17日から始まったアップルの新しい預金サービスは、同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできるという。 「金利4.15%は、米連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する金融機関の平均預金金利0.37%の10倍以上、日本のメガバンクの普通預金金利0.001%と比べると4000倍以上になります。口座維持手数料や最低預金額などの条件はない一方で、残高の上限はFDIC保護対象の25万ドル。新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」(米在住ジャーナリスト) アップルが2月に発表した決算(2022年10~12月期)では、中国でのコロナ感染再拡大を受けたiPhone減産などによって、19年以来となる減収減益を記録。そのためモバイル決済部門の伸長が経営課題に浮上していたという。 ITジャーナリストの三上洋氏の話。「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです。それでも新サービスが与えるインパクトは大きく、金利面の魅力だけでなく、既存のiPhoneユーザーの利便性向上に直結することから、顧客の囲い込み効果は非常に大きいと見られています」』、「同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできる」、「新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」、「「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです」、なるほど。
・『「アップル内ですべて完結」  三上氏が続ける。 「もともとアップルは、iPhoneならOSから端末、アプリなどのコンテンツまで“アップル内ですべて完結させる”との企業理念のもと事業を展開してきました。そんななか、iPhoneに唯一欠けていたのが銀行機能だった。電子決済ではアップルカードのほか、iPhoneの支払い機能もありますが、これまで支払い口座は別の銀行でした。新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」 アップルの具体的な狙いについては、 「クレジットカード事情が日米では異なっており、アメリカでは“ミニマムペイメント”と呼ばれる、日本でいう“リボルビング払い”が主流でアップルカードも同様です。またアップルは『Apple Pay Later』というApple Payでの後払いサービスも先行して始めていました。いずれも手堅い手数料収入が見込め、利用者がカードを使うほどアップルの収益に繋がる仕組みとなっています」(三上氏) 顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという』、「新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」、「顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという」、なるほど。
・『「日本上陸」が簡単でない理由  他国と比べてiPhone(OS)シェア率の高い日本はアップルにとっても重要市場とされ、今後「アップル預金」が日本に上陸する可能性も指摘されている。 しかし話はそう簡単ではないとの声も。 「携帯キャリアでいえば、日本でもauのじぶん銀行やソフトバンク系のpaypay銀行などがありますが、いずれも普通預金金利は0.001%と、金利だけを単純比較すれば日本勢はとても太刀打ちできない。しかしアップルが同様のサービスを日本で展開するには越えなければならないハードルが幾つかあり、その一つが日本の場合、大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘されています」(ITジャーナリストの井上トシユキ氏) 経済評論家の荻原博子氏もこう言う。「アップルの新サービスが日本で話題になっているのは、それだけ日本の銀行の預金金利が低すぎることの裏返しです。長く続いたゼロ金利政策で、お金を預け入れるメリットがない状況に慣れきった日本人からすれば、“上陸”を待望する声が上がるのも当然。ただしアップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」 「異国の夢物語」と考えたほうがいいのかも』、「大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘」、「アップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」、やはり「異国の夢物語」なのだろう。

次に、5月13日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/322866
・『参議院の愛知選挙区選出の大塚耕平議員(63)が次の名古屋市長選に立候補する意向を表明した。大塚議員は1959年、名古屋市生まれ。旭丘高校、早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本銀行の職員を経て、2001年の参院選に当時の民主党から立候補し初当選した。 民主党政権時代は、内閣府の副大臣や厚生労働副大臣を歴任。民主党から民進党に変わった後の17年、総選挙の際に衆院議員が「希望の党」と「立憲民主党」に分かれて党を出ていく中で、民進党の代表に就いた。現在4期目で、国民民主党の代表代行と政調会長を務めている。学生時代や日銀時代はバレーボール部所属で、スキューバダイビングのインストラクターという一面もある。 大塚議員は出馬の動機について、「経済界や地元議員らから出馬の要請があり、統一地方選直後に市長選への立候補の意思を固めた」と語り、「日本全体が非常にさまざまな課題を抱えて低迷しているという実感を私は持っていますので、そういう中で名古屋というのは非常に重要な位置づけにあると思っています。国政の課題は十分理解しているつもりでありますし、貢献できる潜在的なスキルを持っていると思いますので」と抱負を語った。名古屋市長選挙は25年4月に行われる予定だ。) 市長選は2年後だが、早くも大塚氏が名古屋市長になれば動き出すのではないかと金融界で囁かれている構想がある。名古屋市に本店を置く大手銀行の創設だ。大塚氏は「名古屋の経済規模にふさわしい大手銀行が必要」と語ったことがあるためだ。 名古屋にはかつて東海銀行という都銀があったが、幾度かの再編を経て三菱UFJ銀行となっている。名古屋を本店とする都銀は今はなく、第二地銀以下の中小金融機関の牙城となっている。このため東海銀行以上の規模の大手銀行を創設すべきというのが大塚氏の主張だった。 その有力候補とみられているのがトヨタ自動車だ。トヨタの財務基盤はメガバンクをしのぐ。金融界では大塚氏が名古屋市長になれば、「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた』、「名古屋市長選挙」では、2009年に民主党推薦の河村たかし氏が当選、その後は減税日本推薦として、民主党や自民党・公明党が推薦する候補を破って勝ち続けている。大塚氏はさわやかな印象で、十二分に河村氏に対抗し得る。推薦母体は未定だが、国民民主党、立憲民主党、自民党・公明党などが推薦すると思われる。「「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた」、「トヨタ」はいまさら銀行経営などに興味を示す筈はないとみるべきだろう。

第三に、5月26日付け東洋経済オンライン「SBI新生銀、TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/674481
・『4半世紀にわたって未解決だった公的資金の返済はすんなりと進むのか。 SBIホールディングス(以下、SBI)は5月12日、50.04%の株式を保有するSBI新生銀行をTOB(株式公開買い付け)によって非公開化すると発表した。子会社であるSBI地銀ホールディングスを通し、政府系株主である預金保険機構と整理回収機構が保有する22.98%を除くすべての株式を買い取る。TOB価格は1株当たり2800円で、総額は約1542億円になる。 5月15日に始まったTOBの期限は6月23日。東証スタンダード市場に上場しているSBI新生銀は、TOB後上場廃止になる。TOBに応じなかった少数株主に対しては、同じく2800円で強制的に株式を買い取るスクイーズアウト(締め出し)を行うことから、SBI新生銀の株主はSBIと政府系株主のみになる。 今回のスクイーズアウトでは、株式併合で株式の単位を切り下げ、少数株主の保有株を1株未満とすることで強制的に買い上げる手法をとる。株式併合には臨時株主総会で3分の2の賛成が必要だが、SBIと政府系株主を合わせて考えれば、議決権を7割超保有している。このためTOBに応じる株主がゼロでもスクイーズアウトは必ず成功するという仕組みだ』、「北尾社長」らしい実に巧妙なやり方だ。
・『SBI北尾社長の狙い  2019年以来、SBIは新生銀をグループに引き入れるために心血を注ぎ、銀行業界初ともいわれた敵対的TOBを2021年に成功させた。SBIの北尾吉孝社長は側近である川島克哉氏をSBI新生銀の社長として送り込むなどしてきた。 同行がSBI傘下に入ったことによるシナジーは徐々に発揮されつつある。法人向けビジネスでの連携などの施策が寄与。2022年度はSBI新生銀の純利益を50億円押し上げた。 SBIは上場廃止によって、より積極的なシナジーを狙った施策が可能になると主張する。一時的なコスト増になる先行投資など中長期的な取り組みについても、意思決定を迅速に行えるようになるという。北尾社長はこの日の会見で「少数株主がいなくて(株主が)われわれと政府系だけになれば、経営の自由度が高まっていくから、それだったらいろいろやり方があるんじゃないか」と狙いを語った。) SBI新生銀にとって、かねて懸案だったのは前身の旧日本長期信用銀行が破綻した1998年に国から注入された公的資金の返済だ。現在、未回収の額は約3500億円。その返済は進むのだろうか。 公的資金の返済には、これまでも難しい壁が立ちはだかっていた。返済すべき公的資金の裏付けとなっているのは、政府系株主が保有する22.98%(約4900万株)の株式。政府系株主が保有分を売却すればその分が「回収額」となる。 ところが、新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない。このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた』、「新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない」、「このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた」、打開しようとするのが今回の動きだ。
・『少数株主との不平等  逆に言えばSBI新生銀の株式は、将来の返済に伴って「7000円」を超える価値になりうる株式だ。今回のTOBは、その株を「2800円」で買うということになる。少数株主から見れば、不平等ともとられかねない。 非公開化すれば、市場での株価はつかなくなり、政府系株主が持つ株式の価値は明確には見えなくなる。しかし、不平等になる懸念を考慮すれば、政府系株主が持つ4900万株に要回収額である3500億円をすぐさま払うわけにもいかないだろう。 SBIはこの問題をどう考えているのか。TOB開始を知らせる公表文によると、「持株比率に応じた配当を行う方法等により公的資金の返済を行う」としている。要するに、今は2800円が適切であるSBI新生銀の企業価値を、時間をかけて向上させ、配当の形で返済していくということだ。) ところが、ここにひとつの問題が立ちふさがる。TOBに際して、SBIと政府系株主、そしてSBI新生銀との間で交わされた「公的資金の取扱いに関する契約書」だ。 契約書では、回収すべき公的資金の額を3493億円と確認。そのうえでSBI新生銀は「可能な限り早期に要回収額を返済するよう努める」としている。ただ、具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした』、「具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした」、なるほど。
・『「可能な限り早期」どのように  「可能な限り早期」の具体的な時期は不明だ。配当により返済するにしろ、SBI新生銀の直近2023年3月期の純利益は427億円。政府系株主に回せる配当金は数十億円程度とみられる。これでは、全てを返済するのに20年以上かかってしまい、到底「可能な限り早期」とは言えない。 実際SBIは、SBI新生銀が設置したTOBの是非を諮る特別委員会に対し、配当が公的資金の残額に達するには「相応の期間」がかかることを説明したという。結局、公的資金返済の期間が明確にならないことから、SBI新生銀の社外取締役の1人はTOB賛同決議に反対した。 「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った。 TOB発表の翌5月15日のSBI新生銀の終値は2806円と、TOB価格の2800円を上回った。予定通りTOBが行われればこの価格で購入した株主は損をすることになる。投資家がこうした事情を見て、TOBまでにはまだ一波乱があると踏んだ可能性もある。SBIとSBI新生銀、そして政府系株主を巡る問題はまだ一筋縄ではいかないようだ』、「「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った」、今後の展開が要注目だ。

第四に、5月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「三菱UFJ、みずほFG、三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323454
・『メガバンク3行(三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ〈FG〉、三井住友銀行)が、退職者交流サイトの立ち上げと出戻り社員の採用に踏み切りました。ついに「中途退職者=裏切り者」の意識を変えようとしているのです。「人手不足なんだから当たり前でしょ」と思った銀行業界以外の方、実は、あなたにとっても「おいしい話」かもしれません』、興味深そうだ。
・『中途退職者=「裏切り者」は時代遅れ! ついにメガバンクも姿勢をチェンジ  メガバンク3行(三菱UFJ銀行、みずほFG、三井住友銀行)が相次いで退職者の交流サイトを立ち上げ、また、一度退職して銀行を離れた人を再び採用するカムバック採用(いわゆる“出戻り採用”)が活発になってきました。このことが銀行業界の常識を覆す施策として話題になっています。 というのもメガバンクを中途で退職して外資系金融機関に移籍した行員は、これまで「裏切り者」呼ばわりされてきたからです。 メガバンク以外でも、退職者のネットワークが活発な会社とそうではない会社があります。日本の大企業も退職者について「もう外部の他人だ」と冷たく捉える風土の会社と、離職した後も仲間だと考える会社に分かれるのです。 退職者の交流ネットワークは、日本でもアルムナイ(卒業生)ネットワークと呼ばれることが定着しています。 実は、「アルムナイネットワークが強いかどうか」が企業の命運を分ける時代がすぐそこまできています。さらに、アルムナイネットワークは個人が自分自身の転職を「成功」させるためにも重要なのです。) 今回の記事では、日本社会で退職者を裏切り者と考える会社と大切に考える会社がある理由とその変化、そして転職が当たり前になった時代のアルムナイネットワークの意味についてまとめてみたいと思います。 私の個人的な経験からお話しすると、私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています。このあたりはその会社の社風もありますが、本人が辞めた際の経緯によるケースも多々あったようです。 特に印象に残っているのは中堅社員で比較的後輩の面倒見もよく、周囲から慕われていたコンサルタントが競合他社に転職したときのことです』、「私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています」、当時は「裏切り者扱い」が普通だったようだ。
・『コンサル業界は90年代後半から「アルムナイ歓迎」にチェンジ  私がまだ20代だった頃の話です。 その直後の社員集会で幹部から、「個人的な知り合いも多い業界ではあるけれども、プロフェッショナルとして仕事をする以上、競合するコンサルティングファームの社員とプライベートで食事をしたりするのは気をつけるように」とお達しがありました。 その際に、「付き合い方次第では自分の評価に影響する」とまで言われたので、あとでこっそりとどういう意味なのかをパートナーの一人に尋ねたところ、「あいつとはもう付き合うなという意味だ」と厳しく言われたことを覚えています。 90年代後半になって、わたしのいた会社ではグローバル本社のお達しで日本でもアルムナイパーティーが開催されるようになりました。その時も当初は裏切り者をパーティーに呼ぶか呼ばないか幹部が議論したぐらい、競合への転職についてはピリピリした空気がありました。 最終的には、その議論をしていた幹部たちがごっそりと移って新しいコンサルファームを立ち上げたうえで、堂々とアルムナイパーティーに顔を出すようになり、今では当時の空気はなくなったようです。 私もその時期にアルムナイになったのですが、退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです。 当時の私はネットベンチャーに転職して、その仲間にはコンサルファーム出身者が何人かいました。そのひとりがアクセンチュア出身だったのですが、彼がこっそりアクセンチュアのアルムナイネットワークの画面を見せてくれたうえで、アルムナイネットワークの意義について熱く語ってくれたことがあります』、「退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです」、なるほど。
・『アクセンチュア、ソニー、リクルートはアルムナイのおかげで成長した  そこでは退職者同士、お互いの悩みを打ち明けあい、ビジネス上で困っていることを助け合っている実態がありました。 「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」 これは西暦2000年頃の話なのですが、それをWeb上で当時のアクセンチュアが行っていたのです。「ずいぶん違うな」と感心したものです。 その当時の日本では、アルムナイネットワークが強いことで知られる会社は数えるほどでした。アクセンチュアはそのひとつで、他に名前がよく挙がるところとしては、リクルートとソニーがアルムナイの絆の強さで有名でした。 ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました。ソバとはSONYのOBのASSOCIATIONの略だと言われたのですが、もし間違っていたらごめんなさい。 私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある。だからみんな後ろを振り返らずに元気をもらって帰ってくるという話です。あくまで個人の感想かもしれませんが、雰囲気の伝わるエピソードだと思います。 リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています。 さて、これら3社は今でも存在感の強い大企業です。何かと不安定な要素が多く人材流出の激しい現代でも3社がトップ企業の座を守ることができている理由の一つは、「アルムナイネットワークの強さ」ではないかと思います。 一方、前述した3社のアルムナイネットワークと比較すると、冒頭でお話ししたような銀行のアルムナイネットワークは構築しはじめたばかりの新参者です。報道によれば、みずほFGではカムバック採用も10人規模で行われているようですが、ある意味その程度の規模でもあります。 こういった状況の日本企業は、これからアルムナイネットワークをどうしていくべきなのでしょうか? 三つのポイントがあると思います』、「アクセンチュア」では、「「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」」、「ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました・・・私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」、「社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」とは凄い。「リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています」、「リクルート」もさもありなんだ。
・『アルムナイ同士が結束するほど自分自身が「転職で成功」する  一つは「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです。 20代、30代の転職が当たり前になった日本社会ではありますが、本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます。 「会社の常識は他社の非常識」と言われるくらい、前の組織の経験が新しい会社では通用しないことも少なくありません。一方で、アルムナイネットワークの仲間はその点で同じような苦労をし、同じようなチャレンジをしてきています。そして一人で挑戦するよりも大勢で力を合わせたほうが挑戦は成功しやすいものです。 アルムナイネットワークに積極的にかかわることは、自分自身の転職を「成功」させるためにも重要だというのが一つ目のポイントです』、「「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです・・・本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます」、「転職で成功する人」の「比率」は「半々」とは予想以上に高いようだ。
・『アルムナイは会社の「顔」 企業側もサポートするほど得をする  二つ目に、退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります。 もし仮に、メガバンクを退職した社員たちが新しい職場で「使えない」などという評判が立ってしまうとしたら、それはそのまま銀行の評判に跳ね返ってくることは明らかでしょう。 そう考えたら、新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから』、「退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります」、「新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから」、その通りだ。
・『競合からの出戻り人材は企業にとってイノベーションの特効薬になる  そして三つ目に、カムバック人材は会社にとってさらに使える人材だということです。 別に他社の企業秘密を知っているからということではありません。 単純にゴールドマン・サックスからみずほ銀行に戻ってくる人材や、テスラからトヨタ、グーグルからソニー、TSMCからNECに戻ってきた人材をイメージしてみればわかります。 みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です。 これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです。 そうなるためにはどうすればいいでしょうか? 要点はシンプルです。アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません』、「みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です」、「これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです」、「アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません」、同感である。
タグ:「北尾社長」らしい実に巧妙なやり方だ。 東洋経済オンライン「SBI新生銀、TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か」 「名古屋市長選挙」では、2009年に民主党推薦の河村たかし氏が当選、その後は減税日本推薦として、民主党や自民党・公明党が推薦する候補を破って勝ち続けている。大塚氏はさわやかな印象で、十二分に河村氏に対抗し得る。推薦母体は未定だが、国民民主党、立憲民主党、自民党・公明党などが推薦すると思われる。「「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた」、「トヨタ」はいまさら銀行経営などに興味を示す筈はないとみるべきだろう。 小林佳樹氏による「金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言」 日刊ゲンダイ 「大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘」、「アップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」、やはり「異国の夢物語」なのだろう。 「新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」、「顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという」、なるほど。 「「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです」、なるほど。 「同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできる」、「新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」、 デイリー新潮「「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も、立ちはだかる意外な障壁」 金融業界 (その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ) 「新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない」、「このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた」、打開しようとするのが今回の動きだ。 「具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした」、なるほど。 「「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った」、今後の展開が要注目だ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「三菱UFJ、みずほFG、三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ」 「私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています」、当時は「裏切り者扱い」が普通だったようだ。 「退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです」、なるほど。 「アクセンチュア」では、「「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」」、 「ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました・・・私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」、「社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」とは凄い。「リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています」、「リクルート」もさもありなんだ。 「「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです・・・本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます」、「転職で成功する人」の「比率」は「半々」とは予想以上に高いようだ。 「退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります」、「新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから」、その通りだ。 「みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です」、 「これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです」、 「アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません」、同感である。
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バブル崩壊(その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ) [金融]

バブル崩壊については、2021年3月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ)である。

先ずは、2021年3月20日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの児玉 博氏による「バブルの狂乱、いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/80850?imp=0
・『「賭け麻雀」騒動が投げかけた問い  その人事は「賭け麻雀」が発覚し、あっけなく幕引きとなったのが安倍政権下で行われようとしていた検事総長人事だった。昨年5月のことだ。 官僚人事を掌握し、その人事権で官僚を統治した安倍政権。その象徴でもあったのが東京高検検事長の黒川弘務を検事総長にするために、検事長の退官を63歳と定めた検察庁法を改め、退官年時を半年間延長した、いわゆる“定年問題”だった。この“定年問題”は、賭け麻雀で一気に終息したが、この問題は改めて政治と検察との在りようを問うこととなった。 かつて検察庁はロッキード事件(1976年)では元首相、田中角栄を逮捕した。検察庁は行政機関に組み込まれた一組織であることに変わりはない。 けれども、このロッキード事件に国民の多くが喝采を送ったのは、たとえ元首相であろうとも逮捕に踏み切った政治からの独立性だった。当時、主任検事だった吉永祐介(後の検事総長)は、“ミスター特捜”とも呼ばれ、ドラマの主人公となるほどその検察官としての高潔さを讃えられた。 しかし、検察と政治家など権力者との距離感は常に微妙な問題を孕んでいる。 筆者はかつて住友銀行(現、三井住友銀行)の伝説の“MOF(大蔵省担当)担”と呼ばれ、住友銀行を窮地に追いやったイトマン事件では、救世主となり、事件の元凶であった“住友銀行の天皇”磯田一郎(当時、会長)とその取り巻きを一掃するきっかけを作り出した国重惇史(元丸の内支店長)が、20数年間、秘匿し続けたメモを託された。 かつて、1986年に住友銀行により吸収合併された平和相互銀行という銀行が存在していた。後に金屏風事件など数々の事件を引き起こすきっかけとなったこの合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ』、「住友銀行により吸収合併された平和相互銀行・・・この合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ」、「伝説の“MOF担”」による「メモ」とは興味深そうだ。
・『国重メモとは何か  筆者はそのメモを元に『堕ちたバンカー 國重惇史の証言』という本を上梓した。 国重は39歳ながらこの合併劇に立役者の1人だった。大蔵省、日銀、竹下登(当時、大蔵大臣)、そし検察庁幹部などに接近しては、住友銀行に吸収合併させて行く様を克明に描いた“國重メモ”の迫力、詳細さは圧巻だった。この“國重メモ”が明らかになったことにより、長らく日本金融史史の闇とされていた、合併劇の内幕、金屏風事件の内幕などがすべて明らかとなったのである。 このメモの中で、筆者を驚愕させた1つが住友銀行と検察幹部との関係だった。 そもそも、住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂(戦後12代目。1981〜1983)を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた。 当初、大阪で始まり、その宴席が料亭「花月」で行われたことからその会は「花月会」と呼ばれた。料亭「花月」は後に東京にも出店し、その後は東京での会合が主になっていった。どの金融機関も検察、警察との関係を築いてはいる。けれども、住友銀行のそれは他の金融機関を圧するほどのものだったことが“国重メモ”からはうかがえる』、「住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂・・・を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた」、「親睦の会」の費用も「住友銀行」が負担したのだろうか、当時だったらあり得る話だ。
・『平和相互銀行をめぐる暗闘  当時は、“住友銀行の天皇”と呼ばれていた会長、磯田一郎の号令一下始まった「平和相互銀行」の吸収合併工作が行われていた。 住友銀行の水面下での工作は、大蔵省(現財務省)、日本銀行、蔵相、竹下登(後の総理大臣)、そして検察庁と多岐に渡った。しかも、工作する相手は幹部ばかり。“国重メモ”を読めば読むほど、住友銀行という一民間金融機関に過ぎない銀行が、金融当局のみならず、政界、検察の最深部にこれほどの人脈を築きあげていることにまず驚かされる。 “国重メモ”の中身を見ていこう。 まず昭和60年11月22日の項には次のように記されている。面談をしているのは、住友銀行取締役、松下武義。国重の上司であり、当時、住友銀行の“政治部長”と言われていた人物。この松下に相対している人物の名前は、伊藤栄樹。この時、東京高等検察庁検事長だった。検察庁ナンバー2の座にあった伊藤は、誰もが認める次期検事総長候補だった。 「平和相互銀行」の吸収合併を目論む住友銀行には1つの大きな障害があった。それは、「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった。そんな折に実現したのが、松下と伊藤との宴席だった。 松下から聞き取った“国重メモ”はこう記している。 〈伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる。あの銀行は年々1000オク(億円)悪くなっている。今やらねばならない。MOF(大蔵省)はだらしない。自分は第一相互の時の主任検事だったが、その時もMOFをギュギュやった。MOFに再建プランを出せと言ってある〉 伊藤栄樹は“ミスター検察”と呼ばれたほど、誰もが認めるエースだった。伊藤自身が就任時の訓示で吐いた「巨悪は眠らせるな」のフレーズは余りに有名だった。 退官後、「秋霜烈日」という回想録を記した伊藤は、その中で検察と政治との微妙な距離感について触れ、検事といえども行政官であることの苦渋を遠回しな表現ながら吐露している。その“ミスター検察”が、住友銀行側に「心配するな」「大蔵省には言ってある」などと発言をしているわけだ。 同年12月19日、松下から国重への電話での会話は次のようにメモされていた。 〈検察に行って話を聞いた。「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが』、「「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった」、これに対し、「伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる」、「「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが」、反対派をそれを上回る「検察の序列」を通じて潰すとは、凄い工作だ。
・『自宅への電話  これ以前の「国重メモ」にも東京地検特捜部と住友銀行との関係が伺える部分が見られる。 たとえば昭和60年6月25日、地検内部の声を次のように記している。 〈H(平和相互銀行)の職員を呼んで事情聴取することは消極的。「やる時は一斉にバサッとやる」「そのためにOBらと極秘裏に会いたい。仲介を頼みたい」 さらにメモは続く。〈同年7月12日 今日、検察に追加資料を持っていった。地検は「何かスパッとどぎついのはないか」。 同年7月18日 地検に行く。「パンチのきいた材料が欲しい」〉 最終的に平和相互銀行は、こうした昭和61年(1986年)10月1日をもって住友銀行に吸収合併され、その名前は日本の金融史から消える。が、実質的に平和相互銀行が住友銀行の軍門に降るのは同年2月6日、合併反対を唱え続けていた伊坂ら反対派の幹部が辞任した時だったといえるだろう。 そんな折の昭和61年1月9日、松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。 〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」と。1月中に動くかもしれない。〉 平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えたのである。 同年1月14日、松下の動きを国重はこうメモしている。 〈昨日、地検の吉永部長と会った。「総長の陣頭指揮で危なくて、情報が取れない。ただそんなに早くやれるとは思えない」〉 この吉永部長というのは、ロッキード事件で名を馳せ、“ミスター特捜”とも呼ばれたあの吉永祐介だ。吉永はこの時、最高検公判部長の職にあった。その吉永が、平和相互銀行事件は検事総長、伊藤の直轄で捜査をしていた。〈同年1月24日 今朝、吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない。伊坂についてのデータ、集まりが悪い。地検も急いではいないようだ。但し、地検は仲間内でもウソあり」と〉』、「松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」・・・「平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えた」、「吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない・・・」、「住友銀行」の情報網は、驚くほどしっかりしていたようだ。
・『メモが投げかける「大きな意味」  結局、先にも触れたように吸収合併を画策する住友銀行の最大の障害であった伊坂らは2月6日に銀行をさり、さらにおよそ5ヶ月後の7月6日、特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕される。 “国重メモ”が明らかにされるまで、こうした事実は一切明らかにあることはなかった。 “国重メモ”は、ひとつの銀行が、大蔵省、日銀、政治家などに広く、そして深くかかわっていた時代の現実を詳らかにした。そんな“国重メモ”が投げかける意味は今も変わらない――』、住友との合併に反対していた検察OBで平和相互銀行監査役の「伊坂」を「特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕」とは、単に反対していただけでなく、どこかから裏金でも受け取っていたのかも知れない。「検察」をここまで利用し尽くしたとは、さすが住友銀行だ。

次に、2021年11月26日付けデイリー新潮「投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/11261057/?all=1
・『店のテーブルには金融関係者がずらりと陣取り、奥の庭からは時折、どんな銘柄が上がるのか占うご託宣が聞こえる。2700億円をだまし取ったとして浪花の料亭経営者「尾上縫」が摘発されて30年、彼女がベタ惚れしたプロ野球解説者・江本孟紀氏(74)が振り返る。 内閣府のレポートには、かつて日本中を狂奔させたバブル経済は、1991年3月をもって“崩壊”が始まったとある。ちょうど30年前のことだが、人々に宴の終りを感じさせたのは、その5カ月後の出来事だったに違いない。 同年8月13日の早朝、大阪地検特捜部は大阪・千日前の料亭「恵川」のおかみ・尾上縫(61)=当時=を有印私文書偽造などの容疑で逮捕する。東洋信用金庫に巨額の預金があるように見せかけ、それを担保に大手金融機関から2700億円もの金をだまし取っていたのだ。 詐欺そのものは複雑ではなく、端緒は日本興業銀行が発行していたワリコー(割引金融債)を大量に買ったことだった。 奈良の貧困家庭の出身だった尾上は、ミナミの料亭で仲居だった時、大手住宅メーカーの会長が“旦那”になり、恵川を開店。会長からもらった三十数億円を元手にワリコー10億円分を買い付ける。それを担保に興銀が融資し、さらにワリコーを買い増した。いつしかワリコーの額が膨れ上がると興銀の黒澤洋頭取が、夫婦連れで恵川を表敬訪問したこともあった。 一介の料亭経営者ながら天下の興銀が融資している。それを知った他の大銀行も競うように金を貸し、5年間で彼女に貸し付けられた金は延べで2兆7736億円にものぼった。これは本州と四国を結ぶ瀬戸大橋を含む本四架橋の総工費に匹敵する。さらに尾上はこの金でNTTや新日鉄の株を買い漁ったものだから、北浜の証券界では「謎の女相場師」として名を馳せたのだ。だが、所詮は借金をぐるぐる回すだけの錬金術である。怪しんだ銀行が資金を引き揚げると、彼女が手を染めたのが架空預金証書による詐欺だったというわけである』、超大企業としか取引しない「興銀」の「黒澤洋頭取が、夫婦連れで」、「料亭「恵川」のおかみ・尾上縫」、「を表敬訪問」、との事実は国会喚問で明らかにされただけに、全国に大きな衝撃を与えた。
・『江本氏が特ダネを取れた理由  尾上逮捕の一報に新聞・テレビは料亭に押しかけ、連行される姿を追いかけた。が、地検に入る彼女はただの地味な老女にしか見えない。女傑からはほど遠いイメージに誰もが首をひねった。ところが、その日のニュースで、すぐさまフジテレビだけが、彼女の生々しい“素顔”を流す。株の注文欲しさに料亭に蝟集する大手証券マンや、融資話を持ち込んでくる大銀行の幹部。そして数千万円の着物を身にまとい、満面の笑みで株券の束をわし掴みにしてみせる尾上。その様子は、歪み切った世相そのものだったといえよう。 ネタを明かせば、同局が尾上の映像を流すことができたのは、逮捕の2年前に運よく恵川や姉妹店「大黒や」の奥までカメラを入れ、彼女のインタビュー映像を撮っていたからだ。フジテレビに、この特ダネを提供したのは、株や金融の世界には門外漢のはずの、あのエモやんこと江本孟紀氏である。当時の江本氏は阪神のピッチャーを引退して、著書『プロ野球を10倍楽しく見る方法』が大ヒット。野球解説者のほか、ドラマの役者、歌手などマルチタレントとして活動していた。 その江本氏が言う。 その頃、私はフジの『なんてったって好奇心』という番組の司会を三田寛子さんと一緒にやっていたんです。当時、プロデューサーだった太田英昭さん(後のフジ・メディア・ホールディングス社長)に“大阪にすごいオバさんがいる”って教えてあげたら、ぜひ会って取材したいという。それで尾上のおばちゃんに電話で聞いてみたら“ええよ”って二つ返事でOKだったのです」 謎の女相場師を登場させた番組は、ゴールデンタイムに放送されたが、その時点で錬金術の正体を知る者は誰もいなかった。それにしても、株取引もせず、酒も飲まない江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか』、「江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか」、確かに不思議だ。
・『江本氏に入れ込んでいた尾上  「もともと尾上さんを私に紹介してくれたのは、日本リスクコントロールという会社を経営している寺尾文孝さんという人なのです」 と江本氏。ここで寺尾氏のことを説明しておこう。寺尾氏は、警察官出身で、警視総監、法務大臣を歴任した秦野章氏の秘書を務めたのちに日本リスクコントロールを設立。政界・警察・芸能界に顔が利くことで知られた人物だ。今年6月に寺尾氏が半生を振り返って出版した『闇の盾』(講談社)には、寺尾氏が対峙してきたバブル紳士に並んで、 〈尾上縫がベタ惚れした男〉として、江本氏が登場する。 それによると、寺尾氏から江本氏を紹介された尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった。そんな江本氏の頼みだからと、テレビの取材も快諾したのだろう。 改めて江本氏が尾上との出会いを話す。 「私の父親が高知県で警察官をしていたことから、寺尾さんとは気が合って昭和51年ぐらいからの付き合いでした。年に数度食事に行くような関係だったのですが、その寺尾さんが日本ドリーム観光という会社の副社長に就いて大阪に行くことになった。私も大阪で阪神戦の野球解説があるので、向こうで会う約束をしたのです。その際、寺尾さんと待ち合わせしたのが料亭『恵川』でした」』、「尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった」、大いにあり得る話だ。
・『特別な客  日本ドリーム観光とは、大阪の新歌舞伎座や横浜ドリームランドなどを経営していた老舗の興行会社。だが、当時、元暴力団組長で、株の仕手戦で巨額の金を動かした「コスモポリタン」の会長・池田保次氏に“食い物”にされており、経営陣の内紛も勃発していた。寺尾氏は立て直しのため、87年、日本ドリーム観光に乗り込む。 大阪に常駐するようになった寺尾氏は、自分の友人・知人も連れて恵川に通った。江本氏のほか、勝新太郎、当時の大阪府警本部長や刑事部長もその中にいた。上客ばかりを紹介してくれる寺尾氏は、尾上にとって特別な客だったに違いない。当時、銀行から湯水のように金を引き出していた彼女は、寺尾氏に「新歌舞伎座を600億円で私に売ってほしい」と持ち掛けたこともある。 江本氏が続ける。 「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」』、「江本氏・・・「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」、「江本氏」も無理をして付き合ったのだろうか。
・『NTT株の束  会食当日、寺尾氏から教えてもらった住所を頼りに繁華街のミナミに出かけた江本氏は、とある木造3階建ての小料理屋の前で、打ち水をしている女性従業員に「この辺で恵川って店知りません?」と尋ねる。 「すると、その人が“あんた江本さんやないの!? うちの板前が、あんたのこと懐かしがってたわ”と言うではありませんか。聞けば、私が以前、贔屓にしていた料理人が、その小料理屋にいるという。彼はもともと北新地の料亭にいて、和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」 前述のとおり、大黒やは恵川の姉妹店で店もすぐ裏手にあった。尾上は“旦那”の住宅メーカー会長からもらった三十数億円を、しばらく大黒やの3階にある箪笥の引き出しに現金のまま保管していたこともある。 とまれ、この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった。 「恵川はちゃんとした料亭でしたが、大黒やは小料理屋。玄関を入るとカウンターがあって、20人も入ればいっぱいになるような店だった。料金も1人7千~8千円と安めでしたが、店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」』、「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」、「この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった」、「店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」、「「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれ」る「料理人」が「目当てだった」とは面白いものだ。
・『怪しげな儀式を行う尾上  尾上は、隣に来ると、なぜか箸の柄にガーゼを巻いて水で濡らして眼を何度も拭いていたという。何のおまじないだったのか?と江本氏は今でも首を傾げるのだが、そこでさらに奇妙な光景を目にする。 「目立たない店でしたが、大黒やはびしっとスーツを着込んだお客さんでいつもいっぱいでした。また店の奥には坪庭があって、そこに仏像が鎮座していたのが印象的だった。スーツのお客さんたちは、店に来ると皆、おかみさんに言われて仏像を拝むんです。さらに、坪庭の奥には事務所があって、男性が2人ほど常駐していました。お客さんの中には野球ファンもいるので、プロ野球の話をしているうちに何となく彼らの職業が分かってきた。スーツ姿の客は全員が銀行員か証券マン。それも支店長とか部長といった役職者ばかりだったのです」 恵川が尾上の「表向きの顔」なら、大黒やは「本業」の投資ビジネスを行う場所だった。だが、彼女のやることはすべて神がかりである。毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる。株をやらない江本氏にはピンとこないシーンだが、大黒やの中で行われていることは世間の常識からも大きく外れており、異様な世界だった。 「ある時などは、大黒やの事務所にNTT株が束になって積んであるのを見ました。100枚以上あったと思います。同社の株は86年に初めての売り出しがあって、翌年2月の上場後数カ月で株価が3倍近くまで上がった。当時、公募株は抽選になり、一般の人にはなかなか手に入りにくかったはず。それが事務所の机に山のように積んである。これには、さすがに驚きました」』、「毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる」、「ご託宣」が外れる場合も多いだろうが、どうするのだろう。
・『「チケット買うたる」  銀行・証券マンたちと話していると、尾上が彼らを引き連れてパチンコに出かけることがあると聞かされた。 「私はパチンコをやらないんだけど、尾上は“ここでやりなさい”などと台を指示するそうなのです。すると、ジャンジャカ出るという。そんなことってあるのかと思いました」 当時、ワイドショーの司会を始めていた江本氏にとって、尾上は格好の取材先だったのである。 寺尾氏の著書にも出てくるように、尾上は江本氏のために大サービスもしてくれた。大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ。 「それはね、ある時、大阪で僕のトークショーがあると大黒やで飯を食っているとき話をしたんです。そうしたら尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」 江本氏が本拠地の東京から大阪に行くのは、年に数度。プロ野球解説の合間に大黒やを訪れていたが、91年になると、店にもバブル崩壊の足音が聞こえはじめた。 「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」』、「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」、「江本氏」はバブル崩壊は経験せずに済んだようだ。さすがだ。
・『尾上から影響されたこと  すでに、大阪ではイトマン事件が表面化し、同社の河村良彦元社長や伊藤寿永光元常務が大阪地検特捜部に特別背任容疑で逮捕されていた。そしてマスコミ関係者の間では「イトマンの次は、尾上縫」と囁かれていたのだ。どこからか、それを聞きつけた尾上は、精神的に追い詰められるようになり、最後は自殺しかねない様子だったという。そのため大阪地検は捜査を早め、急遽、奈良地検から応援人員を頼んで、彼女の逮捕に踏み切る。 事件後、江本氏は彼女について人に話すことはほとんどなかった。一方、実刑判決を受けた尾上は出所後、2014年に亡くなり、生前に建てた高野山の墓所に葬られる。 当時、尾上との会話で印象に残っている言葉があるか、江本氏に聞いてみた。 「店の中で尾上のおばちゃんとは、世間話ぐらいしかしませんでした。でも彼女が“朝はちゃんと仏壇に線香と蝋燭を立てて、花の水も毎日替えてあげなアカンよ”とよく話していたのを覚えています。やることが神がかっていたのは確かだけど、昔の女性らしく親や先祖のことは大事にしていました。そう言われてから、私も先祖供養をきちんとやるようになった。彼女の言葉に影響されたのかもしれません」 30年という年月は長い。だが、つわものどもが徒花として散ったバブルの記憶は昨日のことのようでもある。 (江本氏の略歴はリンク先参照) 週刊新潮 2021年11月25日号掲載 特集「バブル崩壊から30年 不思議なめぐり逢いでベタ惚れされて…『江本孟紀』が初めて明かす“女帝相場師”『尾上縫』という徒花」より』、「江本氏」とのつながりは、今回の記事で初めて知った。最後は距離を置いたとは、「江本氏」はさすがだ。

第三に、本年5月27日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673654
・『「景気が良くなんねえなあ」 そう嘆く社長は多い。いや、社長だけではない。大企業から中小企業まで、50代後半以上のオヤジ(私も含む)は、高い確率で「経済状態が悪い」と思っている。 昔はタクシーがつかまらなくて、1万円札をヒラヒラさせて止めたよなあ」 彼らの頭に焼き付いているのは、1980年代のバブル景気である。 だが、残念ながら、いくら待っても、そんな大波はやってこない。バブル景気とは、一般の景気循環とまったく違う。実質価値より価格が大きく超えて上昇している状態を指すものであり、そうなると皆が「われ先に」と買いに走るので、さらに価格が高騰する。そして、いつか夢がはじけ、経済が壊滅的な打撃を受ける。バブルは順ぐりに巡ってくるものではないし、そもそも巡らせてはならない』、興味深そうだ。
・『「バブル四天王」の多くの逸話  私はかつて『真説 バブル』(共著)を書くため、1年半にわたってバブル経済について調査・取材をした。バブル経済はカオスであり、集団的陶酔状態でもある。人々は正常な判断ができない。そして、そこには必ず、異常な状態に導いている人物がいる。 経済学者のガルブレイスもバブルを検証し、先導者の存在を指摘した。カネ集めに長けた「悪魔の錬金術師」が登場するというのだ。 80年代の日本のバブル経済にも、そんな男たちがいた。 「バブル四天王」。そう呼ばれたのは、麻布自動車の渡辺喜太郎氏、第一不動産の佐藤行雄氏、秀和の小林茂氏、そしてEIEインターナショナルの高橋治則氏だ。 彼らはそれぞれ数千億円から兆円単位のカネを動かしていた。不動産を転がし、銀行を手玉に取った彼らは多くの逸話を残している。 「社員旅行先はサイパン。専用ジェットを飛ばし、日本から花火師まで連れていった」「銀座のクラブを200万円で貸し切りにして、ママと風呂に入っていた」 中でも伝説的な男は高橋氏だろう。長銀などの金融機関から2兆円ものカネを借りて、世界の高級リゾートや一流ホテル、大学、ゴルフ場などを買いあさった。 慶応大学卒で、日本航空に入社、血縁に元長銀頭取がいたこともあって、バブル紳士の中では毛並みが良い人物とみられた。 だから、80年代後半、高橋氏が株式上場を目指すと、銀行がこぞってメインバンクの座を狙った。結果は、慶大出身の長銀マンが高橋氏に食い込んで勝利する。その頃、栃木に高橋氏のゴルフ場が完成、会員権は450万円から3000万円に跳ね上がった。その後、国内に次々とゴルフ場を造り、そのたびに会員権が数千万円で売れていった。 「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語した。 その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった。 サイパンの最高級ホテル、ハイアット・リージェンシー・サイパンを皮切りに、「南太平洋最高のリゾート」と称された豪サンクチュアリー・コーブ、ハワイ高級リゾートなどを手にしていく。80年代後半だけで長銀は約5000億円を高橋氏のグループに注ぎ込む。 要するに、カネは膨らませたもの勝ちなのだ。リゾート構想なる大風呂敷を広げて、金額を膨らませていく。倍々ゲームである。どこの銀行も、貸し出し競争に負けじとマネーを注ぎ込んでいった。 だが中身は空っぽだった。高橋氏の部下にこっそり資産一覧を見せてもらったことがある。そこには物件名と買収額こそ記載されていたが、売上高や利益の数字が見当たらない。部下はこう解説した。 「それは、はっきり言って売上高がほとんどないからです。あれば書きますよ」 え、売り上げがない……。2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは』、「「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語」、「その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった」、「2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは」、返済のことを考えずに借金するムードも確かにあった。
・『「責任」を負わない高橋兄弟  そして90年代、バブル経済が崩壊する。慌てた長銀はEIEグループに役員を送り込み、資産売却を進めるが、価格暴落でほとんど回収できなかった。結果、名門バンクの長銀は、98年にあえなく破綻し、高橋氏の会社も破産宣告を受け、自身も背任の罪に問われることになる。 だが当時、高橋氏を訪ねて元赤坂のオフィスに行くと、彼は悠然とデスクにふんぞり返っていた。 「あれは、銀行が勝手に貸し付けてきたものですからね」 はあ。でも、借りたのは高橋さんですよね? 当時、兄の高橋治之氏にも会いに行った。場所は築地の旧電通本社ビル。そう。五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう。 スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる。 「地上波で流せるように、テレビ局が払えよ」という声もある。だが、問題はそう単純ではない。テレビ局が放映権を買うということは、広告を出している大企業が払っている構図なのだ。だから、商品価格が上がるなどして、結局は国民が「高すぎるスポーツ放映権料」を払うことになる。 その上、高橋氏は各企業にコンサルティング料を5000万円とか7000万円とか払わせている。やはり、バブルってやつが巡ってきてはいけないのである。 【情報提供をお願いします】東洋経済ではあなたの周りの「ヤバい会社」「ヤバい仕事」の情報を募っています。ご協力いただける方はこちらへ』、「兄の高橋治之氏にも会いに行った・・・五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう」、それにしても、兄弟揃って、無責任なのには呆れる。「スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる」、「国際スポーツ大会」では「バブル状態なのだ」、とはやれやれだ。
タグ:「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」、「この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった」、 「江本氏」とのつながりは、今回の記事で初めて知った。最後は距離を置いたとは、「江本氏」はさすがだ。 「住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂・・・を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた」、「親睦の会」の費用も「住友銀行」が負担したのだろうか、当時だったらあり得る話だ。 「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」、「江本氏」はバブル崩壊は経験せずに済んだようだ。さすがだ。 「住友銀行により吸収合併された平和相互銀行・・・この合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ」、「伝説の“MOF担”」による「メモ」とは興味深そうだ。 児玉 博氏による「バブルの狂乱、いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層」 「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、 「毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる」、「ご託宣」が外れる場合も多いだろうが、どうするのだろう。 「江本氏・・・「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」、「江本氏」も無理をして付き合ったのだろうか。 「尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった」、大いにあり得る話だ。 「兄の高橋治之氏にも会いに行った・・・五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。 そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった」、「2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは」、返済のことを考えずに借金するムードも確かにあった。 「「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語」、「その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。 金田 信一郎氏による「「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ」 「店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」、「「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれ」る「料理人」が「目当てだった」とは面白いものだ。 「江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか」、確かに不思議だ。 超大企業としか取引しない「興銀」の「黒澤洋頭取が、夫婦連れで」、「料亭「恵川」のおかみ・尾上縫」、「を表敬訪問」、との事実は国会喚問で明らかにされただけに、全国に大きな衝撃を与えた。 デイリー新潮「投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔」 住友との合併に反対していた検察OBで平和相互銀行監査役の「伊坂」を「特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕」とは、単に反対していただけでなく、どこかから裏金でも受け取っていたのかも知れない。「検察」をここまで利用し尽くしたとは、さすが住友銀行だ。 「松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」・・・「平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えた」、「吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない・・・」、「住友銀行」の情報網は、驚くほどしっかりしていたようだ。 「「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが」、反対派をそれを上回る「検察の序列」を通じて潰すとは、凄い工作だ。 「「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった」、これに対し、「伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる」、 東洋経済オンライン これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる」、「国際スポーツ大会」では「バブル状態なのだ」、とはやれやれだ。 「スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう」、それにしても、兄弟揃って、無責任なのには呆れる。 現代ビジネス (その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ) バブル崩壊
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保険(その7)(癌になって思う「がん保険は やっぱり不要だ」、保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題、あんしん生命 元営業職員4億円詐取に透ける課題 大量離職問題がもたらす再発防止の高い壁) [金融]

保険については、昨年5月27日に取上げた。今日は、(その7)(癌になって思う「がん保険は やっぱり不要だ」、保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題、あんしん生命 元営業職員4億円詐取に透ける課題 大量離職問題がもたらす再発防止の高い壁)である。

先ずは、本年2月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「癌になって思う「がん保険は、やっぱり不要だ」」を紹介しよう。
・『「がん保険は要らない」と言っていた筆者が癌になった。それでも「がん保険は、やっぱり不要だ」と思った。これは筆者としての結論だが、その判断に影響を与えた要素が筆者と同様の方は少なくないはずだ。今回はその要素についてお伝えするので、読者は、ご自身としての結論を得てほしい』、興味深そうだ。
・『私の癌と治療経過  冒頭から私事で恐縮だが、筆者は昨年不幸にして癌にかかった。ステージIIIの食道癌である。そして、幸いにして治療は順調であり、体力はかなり回復した。現在、再発防止目的で薬剤を投与しており、向こう一年ほど検査なども含めて1カ月に一度程度通院する予定だが、仕事を含めて日常生活に支障はない。 ただし、「不幸」と「幸い」の比較は、残念ながら「不幸」の勝ちだ。最大限に治っても病前の状態までは回復しない。端的に言って、以前と同じように飲んだり食べたりできるようにはならない。飲んだり、食べたりは、本当に楽しかった。ビジネスや人間関係の上でも大変有効だった。そして、何よりも再発のリスクを抱えている。食道癌は再発や転移が多い癌なのだ。読者は癌にかからない方がいい。 さて、癌になってみると、筆者の元にはがん保険に関する質問が多数寄せられた。「がん保険は要らない」と言っていた人物が、実際に癌になってどう感じたか興味を持たれたのだろう。 本稿では、筆者の癌とその治療経過を手掛かりに、がん保険の要否について考える。筆者と似た条件にある方は多いと思うが、読者と筆者とで意思決定のための条件が同じでない点はあるかもしれない。もとより自分一人の経験を一般化して押しつけるつもりはない。 読者は、ご自分の問題として改めて考え直してご自身の結論を得てほしい。) なお本記事では、病気としての癌の表記として漢字の「癌」を充てる一方、「がん保険」への言及では「がん」を充てる。保険会社は癌が恐ろしい病気ではないというイメージを醸し出したいのだろうと推察して、その慣行を尊重する。 患者になってみた実感としても、文章の字面としても、癌一般には「癌」が適切だと強く思う。ひらがなの「がん」は間抜けだし、それで病気が軽くなるわけでもない』、「「不幸」と「幸い」の比較は、残念ながら「不幸」の勝ちだ。最大限に治っても病前の状態までは回復しない。端的に言って、以前と同じように飲んだり食べたりできるようにはならない。飲んだり、食べたりは、本当に楽しかった。ビジネスや人間関係の上でも大変有効だった。そして、何よりも再発のリスクを抱えている。食道癌は再発や転移が多い癌なのだ。読者は癌にかからない方がいい』、「最大限に治っても病前の状態までは回復しない。端的に言って、以前と同じように飲んだり食べたりできるようにはならない」、「食道癌は再発や転移が多い癌なのだ」、なるほど。
・『癌患者としての筆者の条件  筆者の癌治療の概要を簡単に説明する。 癌が見つかったのは昨年の夏だ。ある大学病院を選んで治療することにした。手術で病変部分を取り切れると見込まれる食道癌の現在の標準治療は、先に抗癌剤治療を二度程度入院して行い、その後に手術を行うものだ。筆者は、つごう三度、合計40日程度入院した。 手術を受けたのは昨年の10月下旬で、術後13日で退院した。治療の進歩とともに厚生労働省の方針もあってか、入院は意外に短かった。 現在、手術後3カ月と少々が経過し、再発防止のための投薬治療を続けている。幸い、概ね順調な回復過程をたどっていて、先般の術後3カ月目のCT(コンピュータ断層撮影)検査では再発・転移は見つかっていない。 筆者は発病時も現在も満64歳で、証券会社の社員であり、東京証券業健康保険組合に加入している。民間保険会社のがん保険には一切入っていなかった。さて、筆者の癌に治療費はいくらかかったのだろうか?』、「つごう三度、合計40日程度入院」、した場合の「治療費」はいくらかかったのだろう。
・『筆者の場合の治療費負担  確定申告を控えた時節柄、筆者の手元には医療費の領収書がまとめられている。支払いで大きなものは、3回の入院から退院した際に行った支払いだが、1回目の入院の際に67万円、2回目の入院で55万円、手術を含む3回目の入院の際の支払いが83万円だ。合計で205万円である。なお、以下も含めて、金額は1万円単位で大まかに記述する。 それぞれの支払いは、まず診察券を支払い用の端末機に入れ、次にクレジットカードを入れて暗証番号を打ち込むだけだった。その後に、機械から領収書と診療明細書など数枚がプリントアウトされて完了だ。支払い自体には3分もかからない。 手術入院の退院までを一区切りと考えると、ここまでに、大学病院で支払ったその他の医療費(検査費用、処方薬代など)と、大学病院に至る前の段階でお世話になった街のお医者さん3軒や調剤薬局で払った費用の領収書が、「合計で、20万円を超えるかもしれないけれども、30万円には至るまい」と思える程度に存在する。多めに見て、医療費の合計を235万円と見積もっておこう。 この235万円の支払いの大きな部分は、いわゆる差額ベッド代だ。一泊約4万円で、合計40泊している。この大学病院は個室(シャワー付き)の部屋代が相対的にやや高めだと後から分かった。近隣の大きな病院は3万円台半ばくらいの設定が多い。地方の病院だともっと安い場合が多いだろう。 病院の選択に当たっては、個室代などの価格を全く気にしていなかった。病院の症例数や執刀してくれる医師の経験や評判などで決定した。結果的に「当たり」だったと思うが、この点は真剣に選んだ。少々の値段の差よりも、受けられる治療の質が重要だと考えた(普通の考えだと思う)。 個室を選んだ理由は、主に、消灯時間が自由であることや、原稿書きや電子メール、オンライン会議ができることなどだ。個室代分を稼ぎ出すほど熱心に仕事をしたわけではないが、仕事に穴を空けずに済んだし、他の患者さんに気を遣わずに済んだので、これで良かったと思っている。 同じ病院でもっと高い部屋のオプションが複数あったし、4人一部屋の入院だと一泊約7000円なのだが、この辺を自分の現状にとってほどほどだと判断した。もう入院せずに済むといいのだが、仮に再入院するとしたら、同様の条件の部屋をまた選ぶだろう』、「病院の選択に当たっては、個室代などの価格を全く気にしていなかった。病院の症例数や執刀してくれる医師の経験や評判などで決定した。結果的に「当たり」だったと思うが、この点は真剣に選んだ。少々の値段の差よりも、受けられる治療の質が重要だと考えた」、オーソドックスな考え方だ。「個室を選んだ理由は、主に、消灯時間が自由であることや、原稿書きや電子メール、オンライン会議ができることなどだ。個室代分を稼ぎ出すほど熱心に仕事をしたわけではないが、仕事に穴を空けずに済んだし、他の患者さんに気を遣わずに済んだので、これで良かったと思っている」、私が大腸ヘルニアで聖路加国際病院で手術した際には、「個室」以外の選択肢はなく、高いけど優雅な入院生活を送った。
・『健康保険組合の給付金制度で医療費は思ったより安く  ちなみに、差額ベッド代は健康保険の対象外だ。また、税務的にも医療費として控除の対象にはならないと聞いている。この一泊4万円は、筆者の「自発的贅沢(ぜいたく)」だと思ってくれていい。もっと安く済ませることが十分可能だ。 加えて、差額ベッド代を除いた約75万円が全て自己負担の医療費になるかというと、現実はもっともっとお財布に優しかった。筆者の場合、健康保険組合独自の給付金制度があるからだ。 東京証券業健康保険組合の場合、一回に2万円を超える保険診療の医療費支払いは、2万円との差額が給付される制度がある。給付のタイミングは自己負担額の支払いの3カ月後だ。 他の健康保険組合では、医療費の支払い一回当たりに自己負担の上限を設けて計算するケースもあるし、1カ月の医療費に上限があって差額が後から補填されるケースもあるようだ。 また、加入員の自己負担における上限金額の設定に違いがある。個々の健康保険組合によって条件が異なるが、企業や業界単位の健康保険組合の場合は何らかの補填的給付があるケースが多い。特に、サラリーマンはご自身が加入する健康保険組合の条件をホームページなどで確認しておくといい。 例えば、初回の入院費を支払った昨年9月分の医療費では、保険診療分として筆者が窓口で機械に支払った金額が25万円だった。ところが、「一部負担還元金現金給付」として健康保険組合が支給してくれた金額が23万円あって、この支払いは12月半ばに行われている。 2度目の入院の支払い27万円と、2万円を超える通院の支払い3万円があった10月分には、後から26万円が支給されている。支給額の決定は支払い一件単位なので、前者の支払いに対して25万円と、後者の支払いに対して1万円の合計が26万円だということなのだろう。この月は2万円を超える支払いが2回あったので、筆者は4万円負担した。 3度目の入院の支払いがあった11月は、筆者の支払いが14万円で、健保組合からの給付は12万円だ。ここまでの3回で合計61万円支給されている。 なお、煩雑になるが本記事の性質上記しておくと、筆者が窓口で支払った金額のうち保険診療に該当する金額については、国民健康保険の高額療養費制度の上限額が支払いの上限になるように病院側が調整する仕組みがある。一回当たりの支払い額があまり大きくならないようにとの配慮だろう。 これが先に適用されて高額療養費制度で支払いの上限があり、まずこれを支払う。その支払い額に対して健康保険組合が一件2万円を超える分をさらに負担してくれる仕組みだ』、「健康保険組合独自の給付金制度」とはいい仕組みだ。
・『健康保険の保障は手厚い  ここまでのところ、個室代の160万円を筆者の個人的贅沢として考えて除外すると、健康保険でカバーされなかった「どうしても必要だった」医療費の支払いは、手術の入院が終わって治療が一段落した段階で十数万円だった(75万円マイナス61万円は14万円だ)ということになる。 今後の医療費はどうなるか。筆者は主治医と相談して、再発防止のための薬剤投与を行うことにした。毎月一回、1年間である。その他に、定期的に検査があったり、飲み薬の処方があったりするが、大きな金額ではない。 高価な薬だが、毎月の窓口の支払いは、保険適用部分が12万円に、時間を予約して診療できる仕組みの利用料が1万円の合計で13万円見当の予定だ。そして、12万円の方は健康保険組合の給付金を考えると負担が2万円に減る。結局、1カ月当たり3万円を1年間負担することになると見込んでいる。 改めて計算してみて、そもそものわが国の健康保険制度および健康保険組合(筆者の場合は東京証券業健康保険組合)の付加的な給付制度が、こんなに手厚いものなのかと感心する。 証券会社のサラリーマンである筆者の場合、どうしても必要な医療費支出は煎じ詰めると十数万円だった。本人の収入によって負担額が変わるが、国民健康保険の高額療養費制度までが負担の上限額になるフリーランスの場合も、筆者程度の癌にかかった場合の負担額は数十万円の単位だろう。「治療費が足りなくなる心配」だという理由からがん保険に加入する必要性はない場合が多いだろう。 読者は何らかの健康保険に加入しているに違いない。ならば、少々余裕を見るとして自由になる預金が200万円か300万円くらいあれば、入院の条件などをその都度考えるとして、健康保険が適用される標準的な治療を行う限り、がん保険に入っていなければ癌の治療費が払えないという事態はまずないだろう。 がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと筆者は思う。老後の生活に備えた蓄えの形成も必要なのだから、同時に行うといい』、「読者は何らかの健康保険に加入しているに違いない。ならば、少々余裕を見るとして自由になる預金が200万円か300万円くらいあれば、入院の条件などをその都度考えるとして、健康保険が適用される標準的な治療を行う限り、がん保険に入っていなければ癌の治療費が払えないという事態はまずないだろう。 がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと筆者は思う」、その通りだろう。
・『意思決定は結果論ではなく「事前」がベース  筆者が、がん保険に加入していたらどうだっただろうか。例えば、癌と診断を受けた時に50万円とか100万円といった一時金をもらえるケースもあるだろうし、入院一日当たり1万円とか2万円といった保険金も大いに助けになったはずだ。 筆者の場合も、癌にかかることが前から分かっていたなら、何らかのがん保険に入っておいた方が金銭的に「得」だった可能性は大きい。 しかし、がん保険に加入するか否かの意思決定は、自分が将来癌にかかるかどうかが分からない「事前の」時点で行うものだ。かつての筆者にとってもそうだったし、多くの読者にとってもそうあるべきだ。 筆者が思うに、特定の結果の損得と、確率を考えた「事前の」損得を区別して、後者のロジックに従って判断できるかどうかが、経済的に正しい意思決定ができるか否か、いわゆる「カモになるか否か」の一つの大きな分岐点だ。せっかく人間に生まれて、多少なりとも確率の概念が分かるのなら、正しく考えたいものだ。 ここで、しゃくし定規に真面目な人なら、将来自分が癌にかかる確率、その場合に支払われる保険金の予想額などを考え、他方の保険料負担と、保険料を他の運用に回した場合の期待リターンなどを考慮して、損得の期待値を計算するのかもしれないが、これは賢くない。本気でやるなら人生の時間の浪費だ。 保険会社が商品設計の際の計算に失敗しない限り、がん保険の条件は保険会社が十分利益を期待できる水準に設定されていて、加入者側にとって損であるに決まっている。なぜなら、平均的に加入者が得をするのであれば、原理的に保険会社はつぶれてしまうからだ。そして、商品としてのがん保険は長年にわたって継続しており、保険会社はもうかっているし、保険を売るための熱心なセールスの努力が続いている。推測の根拠は十分だ。 損得の点に関しては、営利会社であり保険の専門家でもある保険会社を大いに信用していいはずだ。「大人の経済常識」を働かせた判断として、確率と期待値を考えた損得の問題として、保険会社がもうかっているなら、加入者は損をしていると考えて間違いない』、「保険会社が商品設計の際の計算に失敗しない限り、がん保険の条件は保険会社が十分利益を期待できる水準に設定されていて、加入者側にとって損であるに決まっている」、「保険会社がもうかっているなら、加入者は損をしていると考えて間違いない」、その通りだ。
・『「がん保険には入らない」という結論を何度でも出すだろう  従って、仮に筆者が30代、40代の時分に戻って、将来癌にかかるかどうか分からない時点でがん保険の加入について検討するなら、「がん保険には入らない」という結論を、自信を持って出すはずだ。 なぜなら、がん保険に入ることが確率を考えると大幅に損である一方、万一癌にかかっても自分の手元のお金で十分対処できるからだ。この意思決定に不安はない。そして、この種の架空の状況の繰り返しが何度も可能であるとすれば、何度でもそうするだろう。 ただし、架空の人生のうち、何度かに一度は癌にかかって何らかの治療費を自己負担することになるに違いない。しかし、架空の人生を何度も通算すると、保険に加入しない方が大いに得になっているはずだ。 保険はお金の問題だ。感情を交えずに損得と必要性の有無で判断したい。 例えば、通院には交通費が掛かるが、この交通費をがん保険が支給してくれると嬉しいといった声がある。結果論として、嬉しかったり、助かったりする場合があるのはその通りだろう。しかし、保険会社は交通費を支払うような保険の場合に、交通費の発生確率や期待値も計算して保険料を設定しているはずだ。 また、そもそもがん保険に入る動機の小さくない部分が、癌にかかることへの不安の感情だろう。冷静に考えると、がん保険に入っても癌に罹患(りかん)する確率は少しも小さくならないのだが、不安な問題に何らかの対処を行ったということが、精神的な満足感につながることがある。率直に言ってこの満足感は賢くないし、賢くないことが我慢できても相当に高く付く。 保険一般として、利用の判断基準は、「損か、得か?」ではなく、「損だけれども、必要か?」であるべきだ。保険の専門家ほど、これが当たり前だと思っているはずだ。 自動車を運転する際の自賠責保険のように、平均的に損ではあろうけれども必要な保険というものはある。 他方、がん保険は、それ自体が損であることと同時に、がん保険がなくても治療費の支払いに心配はないので不要である。 これは、筆者の状況での判断だが、意思決定に影響を与える要素が筆者と同様の方は少なくないはずだ。ご参考になれば幸いだ。 読者ご自身の場合はどうなのか。ご判断は読者にお任せする』、「保険一般として、利用の判断基準は、「損か、得か?」ではなく、「損だけれども、必要か?」であるべきだ」、「がん保険は、それ自体が損であることと同時に、がん保険がなくても治療費の支払いに心配はないので不要である」、同感である。

次に、4月10日付け東洋経済オンライン「保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664676
・『「未然防止や再発防止のための取り組みが形式的・表面的なものにとどまらず、営業現場の隅々にまで浸透するよう、実効性のある管理態勢を整備・確立していくことが課題となっている」 これは金融庁が昨秋に公表した「保険モニタリングレポート」で、生命保険業界が抱える課題として記した一節だ。 大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発する中で、業界を挙げて取り組みを徹底するよう圧力をかける意味合いがあった。 『週刊東洋経済』4月10日(月)発売号では「保険動乱」として、契約者に加えて保険会社の営業職員が引き起こす不正行為とその舞台裏について特集している。 同レポートの公表と時を同じくして、業界団体の生命保険協会(生保協)は、営業職員の管理態勢をめぐる新たな指針の策定に着手。協会長の稲垣精二氏(第一生命会長)が旗振り役となり、営業職員チャネルを持つ20社のトップと意見交換するなど、急ピッチで策定作業を進めることになった』、「大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発」、由々しい状況だ。
・『生保協が新たな指針を策定  「ガイドライン(指針)として、業界に一律での自主規制を求めるのは筋が違うのではないか」 複数の生保からそうした反発の声が出る状況で、複雑に絡み合った利害関係のひもをほどくのは、簡単ではなかった。当初は2022年中に指針を取りまとめるとしていたが、実際にこぎ着けたのは今年2月になってからだ。 そのタイトルは「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」。「指針」の文字が抜け落ち「着眼点」となっているあたりに、一部生保の後ろ向きな姿勢がにじみ出ている。 ただし、その中身はというと、各社が管理態勢の強化に向けて取り組む際の原理・原則を、大きく15項目に分けて詳細に記しており、後々に言い訳できる逃げ場をなくそうとしていることが伝わってくる内容だ。 協会長会社として、管理指針取りまとめに奔走した第一生命の苦労がしのばれるが、そもそも新たな指針が必要な状況をつくったのは、第一生命でもある。) 今から2年半前の20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表した。元職員は、特別調査役という第一生命で唯一与えられた肩書を利用し、「特別調査役に特別な特権・権限が与えられた。私にお金を預けたほうがよい」などと言って、顧客などに架空の投資話を持ちかけては金銭をだまし取っていた。 全国で約4万人いる営業職員の中で、優秀成績職員として第一生命の新聞広告にもたびたび登場していただけに、一営業職員の不祥事では済まされず、稲垣氏は当時社長として謝罪会見に追い込まれている』、「20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表」、こんな巨額の「金銭詐取事件」を起こすとは、と驚いた記憶がある。
・『金銭詐取事案が頻発  その後、事態を重くみた金融庁は生保協を通じて、営業職員の管理に関する実態調査に踏み切ることになった。 21年4月に公表した実態調査では、19億円の金銭詐取事件を「特異な事例」としたうえで、当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。 ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった。 さらに金融庁と生保協は、22年1月にかけて2度目の実態調査に踏み切り、それが新たな管理指針を策定する契機になった。 指針を公表した直後の今年3月には、日本生命の長崎支社の元営業職員が、架空の保険商品を提案するなどして、約1530万円をだまし取る事案が発覚している。 不祥事が連鎖する事態を現場の営業職員はどうみているのか。 「伝説の営業職員」と呼ばれた柴田和子氏が名誉会長を務め、生保の営業職員を中心に約4万人の会員を抱えるJAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、「営業職員は、お客様一人ひとりに真摯に向き合い『安心』と『満足』を提供する顧客本位の活動が重要であると考えている。そのため、一部の営業職員による不祥事案が起こってしまったことはとても残念であり、今後、不祥事がなくなることを望んでいる」と文書で回答した。 生保協が策定した管理指針については、「内容に対する評価をする立場にはないが、当協会としても連携できることは連携していきたい」としている』、「当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。 ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった」、確かに「根岸秋男会長」の発言はお粗末だ。
・『大量離職が招く悪弊  生保協調べの営業職員数は全国で24万人。そのうち6割強に当たる15万人は国内大手4社の営業職員が占めている。 「これだけの数がいれば、年間数件の不祥事に対して、いちいち目くじらを立てるのもどうなのか」という声が業界関係者から時折聞こえてくる。だが、生保は免許制の金融機関だ。法令順守に対する体制や意識が、その程度で本当によいのだろうか。 そもそも、不祥事が頻発する構造的な要因に対して、生保各社がどれだけ正面から向き合い、解消しようとしているのか。構造的な要因とは、営業職員の大量採用・大量退職、いわゆる「ターンオーバー問題」だ。下表でわかるとおり、入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまうという状態だ。 コンプライアンス研修で意識を徹底させようにも、短いスパンで顔ぶれが大幅に変わってしまってはどうしても実効性が乏しくなる。) さらに、ターンオーバー問題は別の問題も引き起こす。それは優秀成績職員への依存と忖度(そんたく)だ。支社ごとに契約獲得数などの営業目標を課すケースが多い状況で、新人が定着しないのであれば、おのずと優績職員に頼らざるをえない。 そうなると、優績職員の立場が強くなり、部長や支社長でも口を挟めなくなる。何か注意でもしようものなら、「役員の携帯に直接電話して不満をぶちまけるといったことは、この業界ではよくある話」(大手生保幹部)。そうしたことが、優績職員が日中どこで何をしているのか、誰もわからないという状況を招くわけだ。 第一生命の19億円事件をはじめとして、生保各社の金銭詐取事案は、そうした優績者に対する管理・監督不足に起因している場合が多い。 第一生命では、長年にわたって染み付いてしまった悪弊を改善しようと、特別調査役などの肩書を見直した。採用についても人材の質を高めるために、ピーク時の半分以下に新規採用数を絞り込むといった取り組みを進めている。 業界内では、営業職員チャネルの改革が最も進んでいるのは第一生命という声が多い。だが実は、その裏側で、経営陣主導による必死の取り組みに冷や水を浴びせるような事案が発生していたことはほとんど知られていない』、「ターンオーバー問題」・・・入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまう」、「優秀成績職員への依存と忖度」、確かに不祥事の温床だ。
・『損失を自腹で補塡  同事案が発覚したのは、21年秋のこと。当時、高齢の優績職員が付き合いの深い顧客に、投資話を持ちかけていたことがわかったのだ。預かった金銭をだまし取ったり、投資仲介で手数料を得たりしていたわけでは決してない。 ただ、投資先が筋悪の業者とは知らずに紹介したことで顧客が損失を抱えてしまい、優績職員はそれに焦ったのか「損失を自腹で補塡していた」(第一生命元役員)という。 これは保険業法に照らして、直ちに違反になるような行為ではない。しかし、第一生命が優績職員の営業適正化を進める中で、あってはならないグレーな行為だった。 第一生命社内でも一定の影響力を持つ優績職員だっただけに、同事案を知った役員たちの衝撃はそうとう大きかったようだ。 同事案について、第一生命は「営業職員を守りたいので、個人が特定できるような形で記事にしないでもらいたい」としているが、はたして今後どこまで隠し通せるだろうか。 この事案がきっかけかは定かでないが、金融庁は今、明治安田生命への立ち入り検査で、副業や投資勧誘行為の有無について、営業職員へヒアリングを進めている。もし同様の事例が多数見つかるようなことがあれば、金融庁の逆鱗(げきりん)に触れ、さらなる処分や規制強化があるかもしれない』、「明治安田生命への立ち入り検査」の結果が注目される。

第三に、5月11日付け東洋経済オンライン「あんしん生命、元営業職員4億円詐取に透ける課題 大量離職問題がもたらす再発防止の高い壁」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671567
・『2022年末、保険業界に衝撃を走らせた東京海上日動あんしん生命の元営業職員による巨額詐欺事件。 同社は事件発覚後、弁護士などを中心とする特別調査委員会を設置し、事件発生の経緯や営業管理体制など組織上の問題点について調査。2023年4月に報告書をまとめた。 報告書を読み進める中で見えてくるのは、あんしん生命に限らず業界全体に横たわる人材難という根深い問題と、それがもたらす再発防止に向けた高い壁だ。事件の経緯を振り返りながら、そうした問題点について詳しく解説していこう』、興味深そうだ。
・『巧妙だった詐欺の手口  まず元社員による巨額の金銭詐取事件が発覚したのは、2022年10月のこと。ライフパートナー(LP)と呼ばれる40代の男性営業職員が、警察署に駆け込み自供したことがきっかけだ。 その主な手口は、契約内容の変更などと顧客に虚偽の説明をしながら、名義を元LPの知人などに巧妙に変更したうえで、その後解約や契約者貸し付けなどを利用し金銭をだまし取るというものだった。 元LPは顧客が不審に思わないように、「名義変更」などと書かれた部分に付箋を貼り隠しながら手続きさせていたといい、書類を記入した顧客が名義変更の手続きだったと気付いていなかったケースもあったという。 あんしん生命では事件発覚前まで、契約名義を変更しても変更前の名義人には通知を送付しない対応をとっており、元LPはその仕組みを熟知したうえで悪用したとみられる。このほか架空契約といった手口も駆使しており、被害者は個人7人、法人13社で被害金額は合計で4.1億円にも上るという。) あんしん生命では2022年12月以降、名義変更手続きをした場合は変更前の名義人にも手続き完了の通知を送付するように対応を改めているが、それによって同様の手口を今後封じ切れるわけではない。なぜなら「『システム上どうしても通知が送付されてしまうけれども、不要なので廃棄してください』などと事前に言っておけば、顧客は不審に思わず、発覚しにくいからだ」と大手生保のある幹部は話す。 あんしん生命では、再発防止策として上記のほかに支社や本社における営業管理体制や新規契約に偏った人事評価・報酬制度の抜本的な見直し、コンプライアンス(法令順守)部門の増員なども打ち出している。だがそれらも結局は泥縄式の対応でしかなく、それさえこなせば根本的な原因の解消につながるというものではない。 では、再発防止策の実効性を高めるために求められる取り組みとはいったい何なのか。その1つは、今回の報告書ではまったく触れられていない「ターンオーバー」と呼ばれる営業職員の大量採用・大量離職問題への対応だ。 そもそもあんしん生命に在籍する約650人のLPのうち、入社から25カ月目に残っている人の割合は50.5%にとどまる。2年間で約半分の人が入れ替わってしまうというのが実情で、これはほかの生保にも共通する構造的な問題だ。 そうした状況の中で、不正を働いた元LPは中途採用で2010年に入社している。報告書によると、元LPは少なくとも入社から3年後には契約締結の見返りに金銭を契約者に提供するといった保険業法の違反行為に手を染め始めていたといい、もともとコンプライアンス意識の低い人物だったとみられる』、「主な手口は、契約内容の変更などと顧客に虚偽の説明をしながら、名義を元LPの知人などに巧妙に変更したうえで、その後解約や契約者貸し付けなどを利用し金銭をだまし取るというものだった。 元LPは顧客が不審に思わないように、「名義変更」などと書かれた部分に付箋を貼り隠しながら手続きさせていたといい、書類を記入した顧客が名義変更の手続きだったと気付いていなかったケースもあった」、「契約名義を変更しても変更前の名義人には通知を送付しない対応をとっており、元LPはその仕組みを熟知したうえで悪用したとみられる。このほか架空契約といった手口も駆使しており、被害者は個人7人、法人13社で被害金額は合計で4.1億円にも上る」、悪質だ。「再発防止策の実効性を高めるために求められる取り組みとはいったい何なのか。その1つは、今回の報告書ではまったく触れられていない「ターンオーバー」と呼ばれる営業職員の大量採用・大量離職問題への対応だ。 そもそもあんしん生命に在籍する約650人のLPのうち、入社から25カ月目に残っている人の割合は50.5%にとどまる。2年間で約半分の人が入れ替わってしまうというのが実情で、これはほかの生保にも共通する構造的な問題だ」、こんなに「ターンオーバー」が高いのであれば、コンプラインスに目がいく筈もないだろう。
・『人材の質を確保するには  不正の再発防止に向けたさまざまな仕組みを会社として整えたところで、そうした人物が営業部隊にひとたび入り込めば、管理の網をすり抜けるようにして不正行為が発生してしまう。その現状において、頼みの綱になるのは個々の職員の高い倫理観だ。しかしながら、たった2年で半数の顔ぶれが変わるような状況で、倫理観の高い人材を集め続けるというのは至難の業だろう。 もし現状の運用では人材の質を保てないというのであれば、おのずと採用者を厳選して質を維持できる水準まで営業の陣容を縮小するしかない。今から3年前、19億円の巨額詐欺事件を引き起こした大手生保の第一生命では、すでに営業職員の年間採用数をピーク時の約3分の1にまで絞り込んでいる。 東京海上グループの子会社として、これまで親会社から高い業績目標を課され、業容拡大を最優先してきたあんしん生命が、規模縮小という真逆の経営判断に踏み込めるかどうか。それが今後の経営改革の本気度を測る一つの指標になりそうだ』、「頼みの綱になるのは個々の職員の高い倫理観だ・・・もし現状の運用では人材の質を保てないというのであれば、おのずと採用者を厳選して質を維持できる水準まで営業の陣容を縮小するしかない。今から3年前、19億円の巨額詐欺事件を引き起こした大手生保の第一生命では、すでに営業職員の年間採用数をピーク時の約3分の1にまで絞り込んでいる」、「これまで親会社から高い業績目標を課され、業容拡大を最優先してきたあんしん生命が、規模縮小という真逆の経営判断に踏み込めるかどうか。それが今後の経営改革の本気度を測る一つの指標になりそうだ」、その通りだ。 
タグ:保険 (その7)(癌になって思う「がん保険は やっぱり不要だ」、保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題、あんしん生命 元営業職員4億円詐取に透ける課題 大量離職問題がもたらす再発防止の高い壁) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「癌になって思う「がん保険は、やっぱり不要だ」」 「「不幸」と「幸い」の比較は、残念ながら「不幸」の勝ちだ。最大限に治っても病前の状態までは回復しない。端的に言って、以前と同じように飲んだり食べたりできるようにはならない。飲んだり、食べたりは、本当に楽しかった。ビジネスや人間関係の上でも大変有効だった。そして、何よりも再発のリスクを抱えている。食道癌は再発や転移が多い癌なのだ。読者は癌にかからない方がいい』、 「最大限に治っても病前の状態までは回復しない。端的に言って、以前と同じように飲んだり食べたりできるようにはならない」、「食道癌は再発や転移が多い癌なのだ」、なるほど。 「つごう三度、合計40日程度入院」、した場合の「治療費」はいくらかかったのだろう。 「病院の選択に当たっては、個室代などの価格を全く気にしていなかった。病院の症例数や執刀してくれる医師の経験や評判などで決定した。結果的に「当たり」だったと思うが、この点は真剣に選んだ。少々の値段の差よりも、受けられる治療の質が重要だと考えた」、オーソドックスな考え方だ。 「個室を選んだ理由は、主に、消灯時間が自由であることや、原稿書きや電子メール、オンライン会議ができることなどだ。個室代分を稼ぎ出すほど熱心に仕事をしたわけではないが、仕事に穴を空けずに済んだし、他の患者さんに気を遣わずに済んだので、これで良かったと思っている」、私が大腸ヘルニアで聖路加国際病院で手術した際には、「個室」以外の選択肢はなく、高いけど優雅な入院生活を送った。 「健康保険組合独自の給付金制度」とはいい仕組みだ。 「読者は何らかの健康保険に加入しているに違いない。ならば、少々余裕を見るとして自由になる預金が200万円か300万円くらいあれば、入院の条件などをその都度考えるとして、健康保険が適用される標準的な治療を行う限り、がん保険に入っていなければ癌の治療費が払えないという事態はまずないだろう。 がん保険の保険料を毎月支払うよりも、預金なり積立投資なりで早く何百万円かの備えを作ることを考えた方がいいと筆者は思う」、その通りだろう。 「保険会社が商品設計の際の計算に失敗しない限り、がん保険の条件は保険会社が十分利益を期待できる水準に設定されていて、加入者側にとって損であるに決まっている」、「保険会社がもうかっているなら、加入者は損をしていると考えて間違いない」、その通りだ。 「保険一般として、利用の判断基準は、「損か、得か?」ではなく、「損だけれども、必要か?」であるべきだ」、「がん保険は、それ自体が損であることと同時に、がん保険がなくても治療費の支払いに心配はないので不要である」、同感である。 東洋経済オンライン「保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題」 「大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発」、由々しい状況だ。 「20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表」、こんな巨額の「金銭詐取事件」を起こすとは、と驚いた記憶がある。 「当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。 ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった」、確かに「根岸秋男会長」の発言はお粗末だ。 「ターンオーバー問題」・・・入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまう」、「優秀成績職員への依存と忖度」、確かに不祥事の温床だ。 「明治安田生命への立ち入り検査」の結果が注目される。 東洋経済オンライン「あんしん生命、元営業職員4億円詐取に透ける課題 大量離職問題がもたらす再発防止の高い壁」 「主な手口は、契約内容の変更などと顧客に虚偽の説明をしながら、名義を元LPの知人などに巧妙に変更したうえで、その後解約や契約者貸し付けなどを利用し金銭をだまし取るというものだった。 元LPは顧客が不審に思わないように、「名義変更」などと書かれた部分に付箋を貼り隠しながら手続きさせていたといい、書類を記入した顧客が名義変更の手続きだったと気付いていなかったケースもあった」、 「契約名義を変更しても変更前の名義人には通知を送付しない対応をとっており、元LPはその仕組みを熟知したうえで悪用したとみられる。このほか架空契約といった手口も駆使しており、被害者は個人7人、法人13社で被害金額は合計で4.1億円にも上る」、悪質だ。「再発防止策の実効性を高めるために求められる取り組みとはいったい何なのか。その1つは、今回の報告書ではまったく触れられていない「ターンオーバー」と呼ばれる営業職員の大量採用・大量離職問題への対応だ。 そもそもあんしん生命に在籍する約650人のLPのうち、入社から25カ月目に残っている人の割合は50.5%にとどまる。2年間で約半分の人が入れ替わってしまうというのが実情で、これはほかの生保にも共通する構造的な問題だ」、こんなに「ターンオーバー」が高いのであれば、コンプラインスに目がいく筈もないだろう。 「頼みの綱になるのは個々の職員の高い倫理観だ・・・もし現状の運用では人材の質を保てないというのであれば、おのずと採用者を厳選して質を維持できる水準まで営業の陣容を縮小するしかない。今から3年前、19億円の巨額詐欺事件を引き起こした大手生保の第一生命では、すでに営業職員の年間採用数をピーク時の約3分の1にまで絞り込んでいる」、 「これまで親会社から高い業績目標を課され、業容拡大を最優先してきたあんしん生命が、規模縮小という真逆の経営判断に踏み込めるかどうか。それが今後の経営改革の本気度を測る一つの指標になりそうだ」、その通りだ。
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金融関連の詐欺的事件(その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、昨年4月14日に取上げた。今日は、(その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!)である。

先ずは、本年2月1日付け現代ビジネスが掲載した農業ジャーナリストの窪田 新之助氏による「【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105378?imp=0
・『保険の不正販売や口座の借用、貯金の横領……。全国のJAで顧客の金融資産を狙った不祥事が絶えない中、岐阜県のJA職員たちは白寿を迎えた女性を食い物にしていた。その動機と手口とは—』、「JA」で「顧客の金融資産を狙った不祥事」とは興味深そうだ。
・『記憶にない保険契約が37件  '20年3月、都内に住む40代男性・新開希さん(仮名)にとって身に覚えのないJA共済の契約書が、岐阜県大垣市で一人暮らしをしている祖母・康子さん(99歳・仮名)の家から見つかった。 それは「養老生命共済」で、死亡時や介護状態になったときに金銭が保障される生命保険である。康子さんはJA(農業協同組合)の組合員。ただ、新開さんはJAとは無縁の生活を送ってきた。それなのに、なぜかJA共済の契約者となっていた。 新開さんは、保険事業も手がける金融機関に勤めている。保険営業の基本は知っているので、契約書を見た瞬間に「アウト」だと感じたという。 「契約者だという私とは一度も面会していないので。保険会社は契約者に商品を説明する義務があり、契約者と被保険者は加入時に、保険会社に健康状態を告知する義務があるわけですから」 さらに怪しんだのは、保険の販売元が岐阜県大垣市に本店がある「JAにしみの」だったことだ。契約書の住所欄には、新開さんが一度も住んだことがない康子さん宅がある本籍地が記されていた。 新開さんがJAにしみのに電話で問いただしたところ、契約は白紙にして、すべての掛け金はその出所である康子さんの口座に払い戻すという。それ以上の詳しい説明がないまま、やがて約43万7000円が祖母の口座に振り込まれてきた。 ところが、すぐにまたおかしな契約書が康子さん宅から見つかる。今度は新開さんの父を契約者と被保険者にした「JA安心倶楽部」。これはJAグループの「共栄火災海上保険」が扱う傷害保険だ。販売元のJAにしみのに再び苦情を入れると、過去の掛け金の総額約8万5000円が、その出所である康子さんの口座に払い戻された』、なるほど。
・『保険料の支払い総額「3146万」  不信感を強めた新開さん父子は、康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件に及んだ。だが、たちまちこれは杜撰な調べ方だったことがわかる。 新開さん父子が通帳の入出金情報を基に契約を確認していくと、最終的に計37件の保険契約があることが判明した。これらは転換や解約、新規加入を繰り返してきた累計の契約件数である。 続けてJAにしみのに契約内容を開示させ、中身を見ていくと、新開さん父子以外にも、康子さん本人や彼女に近い親族4人が契約者や被保険者になっていた。それぞれ本人に確認したところ、いずれもJAの保険に加入した記憶はないという。共通点は、康子さんの口座から掛け金が引き落とされていたことである。 「複数のJA職員が祖母を標的に不適正な保険契約をしたのではないか」 新開さん父子はこう強く疑っている。 康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない。 JA職員が本人の了承も得ずに保険の契約や解約を繰り返す背景には、JAを蝕む「ノルマ」の存在があると推測できる。後述するように、一定数の保険の新規契約を取ることがJA職員に課せられているのだ。 住居以外の資産はとくにないものの、夫婦共働きだった康子さん。70歳まで正職員として働いてきた。保険営業の目的でJA職員が康子さんに近づくようになったのは、遅くとも退職間際の'92年から。前年に夫を亡くし、一人暮らしとなった康子さんの家には、JA職員が「近所の家で仕事があるから、それまで待たせて」とお願いするなど、何かと用事をつくっては上がり込むようになった。以後、少なくとも5人のJA職員によって、保険契約が契約者や被保険者に無断で行われていった』、「康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件」、「最終的に計37件の保険契約があることが判明」、「康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない」、信じ難いような酷い話だ。
・『異常な口座の記録  JA職員が課せられたノルマは、保険の契約だけにとどまらない。JAバンクの口座新設や貯金の獲得にもノルマがあるようだ。実際、康子さんのJAバンク口座が、JA職員の手によって悪用されていたと思われる痕跡がいくつも見つかった。 一つは、康子さんの定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約している。 康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ。 さらに不可解なのは、定期積立口座の解約日と開設日が同じであることだ。おまけに毎月の積立金の設定が奇妙である。7万円にしていた口座を解約すると、今度は2万円と5万円で2つの口座を作る。続いてこれらの口座を解約し、7万円の口座を1つ新設する。この繰り返しだ。 新開さんの父は、 「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」と語る。 さらにJAが開示した別口座の入出金の履歴をたどると、定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている。JA職員が直接横領した証拠はないものの、誰が何のために引き出したのか不明だ。 新開さん父子は「普通では考えられないことだらけ」と驚きを隠せない。 後編記事『【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる』につづく』、「定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約」、「康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ」、「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」、「定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている」、「JA」の職員が実質的に管理していたのだろう。これはどうみても違法だ。

次に、この続きを、2月1日付け現代ビジネスが掲載した農業ジャーナリストの窪田 新之助氏による「【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105385?imp=0
・『前編『【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】』から続く。 「カモ」が引き継がれて  康子さんは言葉巧みに物品も売りつけられていたようだ。判明している中で最も金額が大きいのは、'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった。 「祖母によると、JA職員が『隣の家だけでなく私も買ったから、あなたもぜひ』と言うんで、買わされたようなんです」(新開さん) いずれも長年にわたって、複数の職員が高齢者を食い物にしてきた形跡がある。その理由について、近畿圏に勤める筆者の知人のJA職員は次のように推測する。 「JA職員はだいたい3〜5年で別の地区担当に異動します。歴代の担当者の間で『あの家は簡単に保険や物を買ってくれる』と、カモになる組合員の家が引き継ぎされてきたんでしょう。JAではよくあることです」 不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」』、「'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった」、金融商品だけでなく、物販もしていたようだ。「不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」、「「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした」、一般の金融機関では、コンプライアンスはもっと以前から厳しく求められたが、「JA」は遅れたようだ。
・『高齢者や認知症を狙う  康子さんへの保険の不正販売疑惑について、JAにしみのに取材すると、計37件の契約のうち8件は不祥事として、'22年12月に行政庁の岐阜県に届けたという。 さらに10件は「事務不適のため、契約者の意向によっては取り消しに応じる予定」として、なぜか不祥事にしていない。 残る19件の保険契約や口座絡みの不正疑惑については、「調査中。謝罪とともに誠意をもって、迅速に対応してまいります」と回答した。 JAにしみのは新開さん父子に直接謝罪した。ただ、払込額が大きい「終身共済」については「引き続き、ご加入したままにしておいてください」と説得しようとしたというから、謝罪もどこまで本気なのかわからない。 それにしても、JA職員はなぜ不正販売を繰り返したのか。それを解く鍵はやはり「ノルマ」だ。 全国の多くのJAは保険の営業に関して、毎年、職員に過大な営業ノルマを課している。それをこなせる職員はごく一部だ。 そこで、自らが必要以上に加入する。あるいは知人や友人に加入させて、その掛け金を代わりに払う。JA職員はそれらの営業行為を「自爆」と呼んでいる。その負担額は、年間で数十万円は当たり前で、数百万円というのもざらだ。 自爆による負担を減らすには、とにかくノルマをこなすしかない。とはいえ、過大なノルマを達成するほどの数の新規顧客を獲得するのは容易ではない。 そこで、既存の顧客に「転換」や「解約新規」を勧めることになる。JAによって違いはあるものの、新規契約から一定期間が経つと、転換や解約新規でもノルマ消化のポイントとして計上されるからだ。 もちろん顧客が納得し、その利益となるなら問題ない。だが、そうではない事例が全国で多数報告されている。契約者に不利な保険に切り替えられたり、不要な保険に加入させられたり、ときには顧客が知らないうちに転換や新規契約がなされていることもある。とくに高齢者や認知症の人が被害に遭いやすい中、康子さんもその標的にされたのではないか』、「ノルマ」は「JA」だけでなく、ゆうちょ銀行、日本郵政、さらには一般の民間金融機関にもあるが、民間金融機関ではコンプライアンスが厳格化され、現在ではそれほどの問題にはなっていない。
・『組合員と職員を犠牲にするノルマ  多くのJAでは、口座の新設でもノルマが残っている。ノルマは定期貯金の満期総額の場合もあれば、獲得件数の場合もある。JAにしみのでは、職員が短期間で解約と新規開設を繰り返させたので、後者のノルマがあったと疑われる。 康子さんはJA職員から勧められるままに、年金の受取口座を地方銀行からJAバンクに移している。そしてJA職員はその口座内容を見ることができるという。 かつて取材したJA職員が「あとはパズルゲーム」だとし、次のように証言したことがある。 「つまり組合員の口座にある貯金を、ノルマ達成のためにどこにどうはめ込むか。過大なノルマを抱えたJA職員ならみんな考えていることです」 一方、JAが職員にノルマを課すのは、上部団体から営業実績に応じた手数料が入るからである。共済(保険)では保有残高に対しても発生する。JAにしみのが新開さん父子に謝罪しながらも、既存契約の一部を残してもらおうとした理由はおそらくここにある。 岐阜県内の保険事業を担うJA共済連岐阜にノルマについて尋ねると、 「各JAで組合員や利用者への万全な保障提供に向けて、地域における保障充足状況や推進体制もふまえて検討いただいております」 と回答した。 今年8月に100歳を迎える康子さんはいま、こう嘆き悲しんでいる。 「JA職員には誠実さと親切さがあるとずっと信じてきました。それなのに裏切られて、あまりにショックです」 最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い』、「最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い」、同感である。

第三に、5月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「Z世代を狙う投資詐欺への注意点、「FIRE」「億り人」は怪しい!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322326
・『Z世代を狙った投資詐欺の被害が目立っているという。「FIRE(早期リタイア)」が実現できるだとか、「億り人」になれるという誘い文句がはやっているようだ。そこで今回は、詐欺が疑われる「怪しい話」のチェックポイントを二つに絞って解説する』、興味深そうだ。
・『新年度から1カ月 詐欺の「だまし頃」?  5月に入り、典型的な日本企業の新年度の開始から1カ月が経過した。新入社員もオフィスに慣れる頃である一方、「5月病」など特有の問題が生じやすい季節だが、昨今、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」をターゲットにした投資詐欺の被害が目立っているという(「Z世代狙う投資詐欺 『FIRE』『億り人』が売り文句」日本経済新聞電子版、5月1日)。 確かに、新入社員は給与振り込みの口座を作り、おそらく同時にクレジットカードの申し込みが済み、会社の社員としてのステータスが確立するとともに、「借金」をしやすくなっている。しかも、社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである。 ちなみに、新入社員を中心とした若いビジネスパーソンに問いたい。クレジットカードの決済は、「一括払い」にしたか、「リボルビング払い(リボ払い)」にしたか? リボ払いは、カード会社に対して借金の残高が残り、しかもその利率が非常に高いので避けた方がいい支払い方法だ。この点を明確に意識して、「リボ払い」を断固避け、「一括払い」を選択したのであれば、少し安心だ』、「新入社員は・・・社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである」、「「だまし頃」のターゲット」とは言い得て妙だ。
・『しかし、勧められるままに  金融機関はリボ払いを選んでくれる方がもうかるので、こちらを勧める)「リボ払い」を設定していたとすると、はっきり言ってあなたは「マネーリテラシーが低い」。投資詐欺のカモ予備軍であることを自覚した方がいい。 カードの支払い設定は、すぐに見直してみてほしい。 「あの時は手続きを急いでいた。だからよく考えずに、勧められるままにリボ払いをチェックした」などという言い訳は恥ずかしい。投資詐欺であったり、詐欺まで非合法ではなくても明らかに拙い投資案件に引っ掛かったりする経緯の本質は同じなのだ。十分に恥じてから、今後に気を付けることだ』、「リボ払い」は止めておこうというのは、同感だ。
・『うたい文句がFXでも暗号資産でも 投資詐欺には典型的パターンがある  投資詐欺自体は、古くからある。FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産(俗に言う「仮想通貨」)など、新種の投資対象が現れても手口の本質は変わらない。(1)初期に期待させて、(2)まとまったお金を振り込んだら、それが返ってこなくなる、というパターンが繰り返される。 例えば、FXの優れた自動売買のシステムがあるとされる(本当は、そのようなものが「あるはずがない」と考えるのが大人の経済常識だ)。これに従って、例えば、10万円を先方が設定したアプリ上で投資してみると、数万円の含み益が出たと表示される。この時点で、もうけに興奮する一方で、ノウハウを信じているし、紹介者に対して恩義を感じ始めていたりする。 次に「まとまったお金を投資しましょう」と言われて、カードローンなどで資金を調達して、指定の口座(海外口座である場合が多い)にお金を振り込むと、その後、相手方との連絡がスムーズでなくなる状態が現れ、解約しようとすると音信不通になる、といったコースが一つのパターンだ。 昨今は、マネー関係の有名人の画像を勝手に使って、投資サークルを装って会員を募るケースもあるので、気を付けたい。 また、もう一つのタイプは、「もうかる出資話」でお金を集めるものだ。投資先は、国内であることもあれば、海外であることもあり、例えば未上場のベンチャー企業に資金を回すという設定になる。出資対象が、フィリピンのエビの養殖だったり、高級なワインだとされたり、実物に投資すると称する場合もある。) 当初は順調に、例えば一月に3%といった配当が得られて喜ぶけれども、出資額が大きくなると、配当が滞ったり、連絡が付かなくなったりする。あるいは、新規の出資者の紹介を求められる場合もある。友人をお金のトラブルに巻き込むと悲惨である。 付け加えておきたいのは、これらは違法な詐欺であって売り手側にも引っ掛かる投資家側にも問題があるが、非合法ではないとしても似たようなケースがあることだ。「サラリーマンでも大家さんになって、不労所得を得よう」などと若いサラリーマンに大きな借り入れを伴う不動産投資(ワンルームマンション投資など)を持ちかけるケースなどだ。 金融商品・不動産などをセールスする側から見て、会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである』、「会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである」、その通りだ。
・『怪しい話のチェックポイント 二つに絞って解説  大人の経済常識としては、「他人から紹介された、有利な投資話は全て怪しい」と思っておいて、ほぼ間違いはない。ただ、例えば若手社員の場合、詐欺話をまだ信じている先輩から話を聞く場合もあろうし、セミナーなどに誘われるケースもあろうから、「なぜ、断るのか?」について、チェックポイントを持っている方がいいだろう。 業者の登録免許とか、各種の評判とか、関係すると考えられるものが幾つかあるが、これらは実際には存在しないものを「装う」ことも可能だし、煩雑だ。 ポイントを以下の二つに絞ってお伝えする。 【ポイント1】不自然に有利な利回りの提供ではないか? 【ポイント2】資金の預け先は確かで、解約が可能か? どちらかに、問題があるものは「直ちに」関係を切るべきで、「絶対に」お金を払うべきではない。) 不自然に有利な利回りとは、例えば「毎月2%が確実に配当される」「年間の期待投資利回りが20%」といった、「法外に有利」な利回りのことだ。 毎月2%が法外なのだから、これが、3%、4%となると、ますます怪しいと思っていい。 現在、プロの運用者がマーケットから得ることができる利回りは、「リスクなし」を前提とすると「年率で」0%から(せいぜい)0.5%だ。「確実に配当される」という話の前提の「確実」が本当なら、これ以上の利回りを他人に提供すること自体が合理的な行動ではない。関わらないことだ。 ちなみに、かつて筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある(幸い、家計が傾くほどの多額ではなかった)。当然、後日トラブルになった。この場合に筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった』、「筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある」、「筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった」、「山崎」氏の「身内」にもそんな「感覚の者」がいたのを白状した勇気は大したものだ。
・『「元本保証で年間5~10%の利回り」がまともであるわけがない理由  期待される収益率は、リスクを取ることによって増やすことができるが、例えばプロが内外の株式に投資する場合、期待される利回りは年率でせいぜい金利+5〜6%くらいだ。しかも、年間に3割程度は値下がりすることが十分あり得る、というリスク付きが前提だ。 例えば、「元本保証で、年間5〜10%の利回りが期待できます」などいう話が「まとも」であるわけがない。 さて、実際にお金をどうやって支払わせるかは、詐欺であるにせよないにせよ、投資案件の売り手側にとって、大いに工夫が必要なポイントだ。 出資する側から見ると、「投資の運営会社の銀行口座」「アプリにひも付いた海外口座」、案件の紹介者から見て「あの人の銀行口座」、あるいは「俺の口座」、などなどがあり得る。ただ、いずれもお金を預ける側から見ると、会ったばかりの人に多額の現金を預けるくらい心もとない。 例えば、国内の信託銀行に口座を開いて資産を預かり、出資者ごとに資産が管理されている、というくらいのレベルであれば、一応信用してもいいだろう。それ以外の「指定の口座」は、そもそも存在が怪しい場合もあるし、一度支払ったお金の取り戻しようがない。 「断る理由」というのは、現実の人間関係では案外難しい場合があるが、「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と親からきつく申し渡されていて、これは家訓の一つなのです、とでも言って逃げ切りを図るべきだ。苦しい言い訳だろうと、恥をかこうと、お金を支払ってしまうよりはマシだ。つまらないお金の話に関わるのは、人生の損失だ』、私は親から本当に「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と、「きつく申し渡されてい」たので、頷ける。
・『「FIRE」「億り人」を投資で目指すな  仕事を得て大いに稼ぎ、使わないお金を投資に回し、気が付いたら、「FIREが可能になっていた」「資産が億を超えている」といったことは、人生が順調なら大いにあり得ることだ。 ただ、若いビジネスパーソンが、投資を手段として「億」を目指したり、「不労所得で食える状態」を目指したりするのは、はっきり言って効率が悪すぎる。 そもそも、本人の本業は何で、どのような経済条件で働いているのだろうか。 会社が与えてくれる仕事(他の労働者と取り替え可能な仕事)をこなして、毎月決まった給料を受け取る、といった工夫のない働き方をしているのであれば、そもそもその状態で大きな資産を作ろうとすること自体が「間違っている」と言わないまでも「ひどく非効率的」だ。 仮に、そこそこに有利な条件でストックオプションを持てるベンチャー企業に入社できたとしよう。仕事は忙しいだろうし、会社は不安定だろうし、たぶん(ほぼ確実に)社長のわがままに振り回される。しかし、会社が軌道に乗って株式公開まで至ると、「億」はそれほど非現実的ではない。 この場合「失敗したら、失業して再就職を目指さなければならない」という程度の賭け金で、成功した場合は「億の資産」という、非常に大きなレバレッジが掛かったコールオプションを手に入れることができる。 普通のビジネスパーソンが「大金持ち」を目指せるとすると、多分これが最も見込みがあって、かつ最短のルートだ。もちろん、事業は自分で始めてもいい。その代わり、何度かの失敗は覚悟する必要がある。しかし、「この程度のリスクで済むなら有利だ」と考えるたくましさが必要だ。あなたにできるか? 定時出勤、定型勤務、定額報酬の「工夫のないサラリーマン」をやりながら(本当にそのままでいいと思っているのだろうか?)、そこに手を付けずに、金融資産の投資にばかり関心を向け、爪に火を灯す(FIREする!)ような暮らしをしつつ、「ファイナンシャル・フリーダム」を求めるのは、むしろ、お金の奴隷になって人生を送ることに近いように思うのだが、いかがだろうか。「守銭奴型FIRE」は目指さない方がいいと、心から思う。人生そのものがもったいない。 資産運用でFIREを目指すと意気込む若者を見ると、「お金だけでつまらなくないか?」「脳みそが暇なのではないか」と余計な心配をしたくなる。 「投資でFIREを目指している」などと言うと、いかにもツマラナイ人間像が思い浮かぶ。仮に心で思っていても、秘密にしておく方がいい』、「定時出勤、定型勤務、定額報酬の「工夫のないサラリーマン」をやりながら(本当にそのままでいいと思っているのだろうか?)、そこに手を付けずに、金融資産の投資にばかり関心を向け、爪に火を灯す(FIREする!)ような暮らしをしつつ、「ファイナンシャル・フリーダム」を求めるのは、むしろ、お金の奴隷になって人生を送ることに近いように思うのだが、いかがだろうか。「守銭奴型FIRE」は目指さない方がいいと、心から思う。人生そのものがもったいない」、同感である。
タグ:私は親から本当に「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と、「きつく申し渡されてい」たので、頷ける。 「筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある」、「筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった」、「山崎」氏の「身内」にもそんな「感覚の者」がいたのを白状した勇気は大したものだ。 【ポイント1】不自然に有利な利回りの提供ではないか? 【ポイント2】資金の預け先は確かで、解約が可能か? 怪しい話のチェックポイント 二つに絞って解説 「会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである」、その通りだ。 「リボ払い」は止めておこうというのは、同感だ。 「新入社員は・・・社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである」、「「だまし頃」のターゲット」とは言い得て妙だ。 山崎 元氏による「Z世代を狙う投資詐欺への注意点、「FIRE」「億り人」は怪しい!」 ダイヤモンド・オンライン 「最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い」、同感である。 「ノルマ」は「JA」だけでなく、ゆうちょ銀行、日本郵政、さらには一般の民間金融機関にもあるが、民間金融機関ではコンプライアンスが厳格化され、現在ではそれほどの問題にはなっていない。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」、「「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした」、一般の金融機関では、コンプライアンスはもっと以前から厳しく求められたが、「JA」は遅れたようだ。 「'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった」、金融商品だけでなく、物販もしていたようだ。「不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 窪田 新之助氏による「【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる」 「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」、「定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている」、「JA」の職員が実質的に管理していたのだろう。これはどうみても違法だ。 「定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約」、「康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ」、 「康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件」、「最終的に計37件の保険契約があることが判明」、「康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない」、信じ難いような酷い話だ。 「JA」で「顧客の金融資産を狙った不祥事」とは興味深そうだ。 窪田 新之助氏による「【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】」 現代ビジネス (その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!) 金融関連の詐欺的事件
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金融業界(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く) [金融]

金融業界については、本年4月1日に取上げた。今日は、(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く)である。

先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」を紹介しよう。
・『終わったのか――。「新銀行」の開発を受託していた企業の担当者は、流れてきたニュースを見て驚いた。事前の連絡はなく、プロジェクトは唐突に終焉を迎えた。「それなりに開発が進んでいただけに、残念だ」。 3月30日、LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で進めてきた「LINE Bank」(以下、LINEバンク)の開業を中止すると発表した。 「(サービス開発に)さらなる時間と追加投資が必要であり、スムーズな提供が現時点で見通せない」ためという。新銀行の母体となるはずだった設立準備会社は解散・清算される』、興味深そうだ。
・『開業の意義は失われた  空転の4年半だった。LINEが銀行業への参入を表明したのは2018年11月。若年層を中心に月間7800万人(当時)を誇る顧客基盤を生かし、スマートフォンを起点とする新たな銀行を掲げた。 華々しい構想とは裏腹に、LINEバンクはつまずきの連続だった。 関係者によれば、銀行の心臓部である勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた。同年に台湾法人がLINEバンクを開業させており、その勘定系システムを開発した実績を評価したようだ。 だが、乗り換え先のベンダーは日本での稼働実績がない。「金融業への規制が違えば、勘定系システムに求められる要件も異なる。海外で実績があるからといって、日本でもスムーズに稼働するとは限らない」。別のITベンダーはそう評する。2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した』、「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。
・『LINEバンクをめぐる年表  もたつくLINEバンクを尻目に、同業のネット銀行は口座数や預金量を着々と伸ばしていった。旧来型の金融機関においても、2021年にふくおかFGが「みんなの銀行」を、2022年には東京きらぼしFGが「UI銀行」を開業するなど、ネット専業銀行の設立が相次いだ。 銀行機能の一部を切り出して提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の台頭も逆風となった。預金や貸し出し、決済といった銀行機能を事業会社が容易に搭載できるようになり、銀行業への参入障壁は著しく下がった。群雄割拠のネット銀行業界にあって、費用と時間をかけてまでLINEバンクを開業する意義は失われていった。) 見果てぬ夢となったLINEバンク。だが、LINEにとって今回の撤退劇は前哨戦にすぎない。 「重複事業や重複機能に手を入れてコストを最適化する」 2月2日に開催されたZホールディングス(HD)の決算説明会上、坂上亮介専務執行役員最高財務責任者はそう説明した。 同日、ZHDは2023年度中にも傘下のLINE、ヤフーと合併する方針を発表していた。LINEがZHDと経営統合したのは2021年3月。ポータル機能の強化を目指すヤフーとは、もともと重複するサービス・機能が多かったが、組織体制上の問題などから事業再編は進んでこなかった。 目下ZHDでは、収益柱である広告事業が低迷している。合併により事業の整理・統合を加速させて、コスト削減や意思決定の迅速化を図る狙いだ。LINEバンクの開業中止と3社合併についてZHDは「直接の関係はない」とするものの、あるZHD社員は「統合に沿った動きとして、まったく違和感はない」と語る』、タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。
・『金融事業にさらなるメスか  これから本格化する事業整理において焦点となるのは、同じくLINEが展開する金融事業だ。不採算が続くうえ、グループ内に「PayPayブランド」の類似サービスが存在するためだ。あるZHD関係者も「グループ全体でPayPay経済圏を強化している中、その牽引役となる金融事業を軸に統廃合が進むのでは」とみる。 赤字額が最も大きいLINE証券は、株式投資の手軽さを訴求すべく1株単位の売買を可能にした結果、小口取引が中心となり、委託手数料が稼ぎにくい構図に陥った。一方のPayPay証券も黒字化には至っていないが、3月31日にはソフトバンク、みずほ証券の3社に対して100億円規模の第三者割当増資を行うなど、着々と事業拡大を進めている。 無担保ローンや信用スコアリングを展開するLINE Creditも、2018年5月の設立以来、純損失が膨張の一途をたどる。2022年12月には、同じく無担保ローンを提供していたみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」と事業統合を行うと発表したものの、抜本的な収益改善は見込みづらい。 LINEにとって金融事業はアキレス腱だ。2021年に「LINE家計簿」、2022年にテーマ型株式投資の「LINEスマート投資」から撤退した。2023年4月末には損害保険サービス「LINEほけん」が終了する一方、一部商品は「PayPayほけん」で引き続き販売される。メッセージアプリを通じた潤沢な顧客基盤を抱えていながら、金融事業では収益に結び付けられていない。 2月にZHDが公表した決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記されている。LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない』、「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。

次に、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/04/post-229_1.php
・『<一連の問題は個別の要因で起こったものではあるが、背景には世界の金融システムに共通する「バブルのツケ」という深刻な事情が> 米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの経営不振など、金融システムに対する不安が広がっている。一連の問題は個別の要因で起こったものであり、金融システム全体に欠陥があるわけではない。 だが、同じタイミングで金融機関の経営問題が複数発生した背景には、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)の急激な利上げがある。 FRBが急ピッチで利上げを行っているのは、これまで行ってきた大規模緩和策の弊害が大きくなってきたからであり、一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう。 FRBは2023年3月22日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決めた。銀行の相次ぐ破綻を受けて、政策金利の引き上げを据え置くとの見方もあったが、FRBはインフレ抑制を最優先し、金利引き上げを継続した。 金利が上昇すると債券価格が下落するため、金融機関によっては損失が発生する可能性がある。金融機関の多くは調達金利と貸出金利の差額(利ざや)を収益源としているので、利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる』、「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。
・『不安の払拭に必要な手が打てない  一連の経営不安を払拭するには、利上げを停止する、あるいは利下げに踏み切るといった措置が必要だが、今の中央銀行にはそれができない深刻な事情がある。過去10年にわたる大規模緩和策によって全世界に大量のマネーがばらまかれており、これを回収しなければ、インフレが手が付けられなくなるリスクを負っているからである。 リーマン・ショックをきっかけにアメリカをはじめとする各国の中央銀行は、市場に大量のマネーを供給する大規模緩和策の実施に踏み切った。07年の段階で1兆ドル以下であったFRBのベースマネー(中央銀行が直接、供給する貨幣の量)は、ピーク時には6兆ドルを超える水準まで膨らみ、実体経済の規模を大きく上回った。 経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している』、「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。
・『利上げなら日本にも混乱が生じる可能性  しかしながら、ここまで肥大化したマネーを回収するのは容易ではなく、その過程においてはさまざまな混乱が発生する。今回の経営不安もまさにその1つであり、こうした問題は正常化が終了するまで続くことになるだろう。 不安の連鎖を恐れる市場からは利下げを求める声が上がっている。中央銀行がこの要求を受け入れた場合、インフレリスクが台頭する可能性があり、逆に利上げを継続した場合には、再び金融システム不安が起こる可能性がある。いずれにしても金融当局にとってはいばらの道にならざるを得ない。 主要国の中央銀行で日銀だけが唯一、大規模な緩和策を継続中でありマネーの大量供給が続く。日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい』、「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。

第三に、4月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664761
・『アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)破綻から1カ月が経過しようとしている。第2次リーマンショックをはやし立てるムードが強かった当初と比較すれば、金融市場は平静を取り戻しつつあるように見えるが、依然として「次の危機の芽はどこにあるのか」といった警戒心は漂っている。 この点、アメリカではオフィスやホテルなど商業用不動産(CRE:commercial real estate)に内包されたリスクは常々指摘されている。 特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない』、「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。
・『欧州ではECBが異例の警鐘  実はこうした問題はアメリカだけではなく欧州も同様に抱えており、最近では中央銀行自らがその危うさに警鐘を鳴らしている。 ECB(欧州中央銀行)は4月3日、「ユーロ圏不動産市場における投資ファンドの強まる役割」と題し、過去10年で急拡大したファンドによる商業用不動産投資が金融安定のリスクになるとの論説を発表した。 現状、複数のユーロ加盟国で不動産投資ファンド(REIF:real estate investment funds)が強い影響力を有しており、当該国の不動産市況悪化に伴ってREIFも不安定化する展開が懸念される。 ECBは急成長したREIFが「流動性のミスマッチ(the liquidity mismatch)」に直面し、これが金融不安定の種になる可能性を指摘している。不動産ファンドの多くが投資家の払い戻し請求を認めるオープンエンド型ファンドとして資金調達しているため、不動産市況への懸念が高まれば、非常に早く・大きな規模の資金引き出しに直面することが懸念される。) バランスシートの観点から言えば、顧客からの預り金である負債の流動性は非常に高い。 同時に、不動産ファンドは大量の解約に応じるため保有資産の売却に踏み切る必要があるが、資産の性質上、商業用不動産は容易に売却できない。つまり、バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい』、「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。
・『不安定化の相互作用でシステミックリスクに  ECBによれば、ユーロ圏の商業用不動産市場に占める不動産ファンドの割合は2012年の20%から2022年には40%にまで倍増し、無視できない存在感を放つようになっている。 (ユーロ圏の商業用不動産市場におけるファンド保有の不動産価値のシェア(%)のグラフはリンク先参照) こうした不動産ファンドの存在感を踏まえれば、商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る。ECBはSVB破綻やクレディ・スイス再編などの域外イベントを背景に、こうした展開が現実化する可能性を見据え始めているようだ。) ちなみに、ECBはアメリカの大手資産運用会社ブラックストーンの不動産投資信託(REIT)である「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」が最近、急増する解約請求を制限しなければならなかった例を挙げ、類似の事案が今後も増えてくる可能性を指摘している(英国でもそのような光景が出始めていることを指摘している)。 当然、こうして窮地に陥ったファンドは流動性確保のため保有不動産の売却はもちろん、資金調達にも勤しむため、市場全体の資金調達コストは押し上げられる。後述するように、それは将来的な利下げ可能性を高める話になる』、「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。
・『部分的に現実化しつつある危機  ユーロ圏において商業用不動産(CRE)と不動産ファンドは過去10年で猛烈な伸びを示してきた。すでにCRE市場のシェアが10年で倍増したことは言及したが、絶対額で見た場合、不動産ファンドの純資産総額は2012年から2022年の10年間で、3230億ユーロから1兆40億ユーロへ3倍以上に膨らみ、うち80%がオープンエンド型(つまり常時解約可能)という。 この所在地を国別に見た場合、不動産ファンドは5つの加盟国(ドイツ、ルクセンブルク、フランス、オランダ、イタリア)に集中している模様だが、直接的に不動産投資をする形態以外に債券など金融商品の形態で保有している場合もあるため(ECBによれば30%程度)、商業用不動産や不動産ファンドの不安定化がこれらの国々だけで限定されるとは限らない。 商業用不動産市場の不調はパンデミックによるリモートワークやeコマースの隆盛、その他行動様式の変化が真っ先に指摘されるものの、その終息と入れ替わるように主要国で利上げが行われ、資金調達コストが上昇し始めたことも無視できない。) 上述したように、パンデミックに至る直前までは極めて速いペースで価格が上がっていたこともあり、「調整余地も大きい」と捉える雰囲気は強い。 過去1年で投資家における高値警戒感は一方的に強まっており、資金調達環境のタイト化もかなり進んでいる。市況の悪化を感じ取る投資家が多数となる中、直近では域外での金融不安も重なり、商業用不動産(CRE)を取り巻く環境はかなり悪化している。 2022年10~12月期、商業用不動産にまつわる取引がにわかに細っているというデータもあり、これに伴って価格も下がっている事実をECBは指摘する。 ここまで考えるとCRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える』、「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。
・『カギはやはり「流動性のミスマッチ」  冒頭に述べた通り、危機が起きると想定した場合、やはり「カギとなる脆弱性(A key vulnerability)」は不動産ファンドに対する解約請求が押し寄せた際に直面する「流動性のミスマッチ」問題である。 「解約請求に対応するまでの期間」と「保有資産を現金化するまでの期間」を比較し、前者が後者より顕著に短い場合、ファンドは資金繰りに行き詰まる(流動性のミスマッチに直面する)ことになる。 現状、その危機にさらされやすい加盟国を特定するのは難しいものの、域内の金融安定を監視する欧州システミックリスク理事会(ESRB)の調査によれば、2021年7~9月期時点、オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている(反対にイタリアやポルトガルが現金バッファの大きい国として紹介されている)。 実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる。 一連の金融引き締めや3月以降続いている国際金融不安は、商業用不動産市場やそれを主戦場とする不動産ファンドにとって「泣きっ面に蜂」ともいえる動きであり、依然として利上げや量的引き締めを政策オプションから外せないECBは大きな葛藤を覚えていることだろう』、「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる」、なるほど。
・『解約ストップは逆効果  多くの不動産ファンドが流動性のミスマッチに備え始めれば、資産売却と資金調達が盛り上がることになる。それは資産価格の下落と資金調達コストの上昇につながる。 ECBは今回の論説の結びとして考えられる政策対応を示している。現状、オープンエンド型ファンドには解約請求の停止という手段が与えられているものの、これはファンド経営の不安定化を宣言するようなものであり、いわゆるスティグマ(汚名)リスクを伴う。 よって、ファンド出資者に対しては解約コストや最低保有期間の導入、解約通知期間の長期化など、多様な流動性管理手段(LMT:Liquidity Management Tool)の導入をECBは提唱している。また、不動産ファンドに関してはそもそも解約が容易なオープンエンド型ではなくクローズド型しか認めないといった規制面からのアプローチもECBは言及している。) 実際、構造的に流動性の低い資産(不動産)を抱える不動産ファンドの性質を踏まえれば、「解約のハードルを上げる」というのは本質的な一手ではあり、すでにいくつかの国では導入されているという。こうした規制傾向は今後、強まるものだろう。 しかし、目下、金融市場が注目するのは、”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか』、「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。
・『問題提起は利上げ幅縮小の布石?  現状ではCRE危機というフレーズが市民権を得るほどの事態にはなっていない。しかし、仮にそうなってしまえば、眼前のインフレを犠牲にしてでも利上げ路線の急旋回(例えば0.5%利上げから0.25%の利下げへ、など)を強いられるリスクはある。政策金利の急変動は市場にボラティリティをもたらし、要らぬ混乱を招く。 ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない。 5月4日の政策理事会では0.5%から0.25%への利上げ幅縮小に注目したいところである』、「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
タグ:金融業界 (その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く) 東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」 「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。 タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。 「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。 Newsweek日本版 加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」 「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。 「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。 「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」 「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。 「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。 「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の 減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。 「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。 「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増して いる状況が読み取れる」、なるほど。 「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、 「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。 「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
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決済(その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由) [金融]

決済については、昨年1月4日に取上げた。今日は、(その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由)である。

先ずは、昨年1月22日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300262
・『今年前半にも市場規模が1兆円に乗ると予想される新興ビジネスがある。クレジットカードを使わずに、オンラインで買い物ができる「後払い決済サービス」だ。 同サービスは、インターネット通販(EC)で商品を購入し、商品が届いた後、2週間から1カ月程度の間に紙の請求書やスマホアプリに届くバーコードを使ってコンビニや銀行などで代金を支払う仕組みだ。 「衣料品や食品などの物販のほか、旅行代金やオンラインゲームの課金サービスも対象で、クレジットカードを持たない若者層を中心に急速に利用額を伸ばしています」(メガバンク幹部)という。 昨年10月に米ペイパルが3000億円で買収したペイディや、同12月15日に東証1部に上場したネットプロテクションズホールディングスは最大手の事業者として知られる。 だが、代金の精算を翌月1回払い(マンスリークリア)のみとしている業者が大半で、割賦販売法の適用除外となっていることもあり、市場規模の拡大とともに消費者トラブルも増えている。「国民生活センターには利用者の支払い能力を超えて決済が行われているケースや事業者が問い合わせに十分な対応をとってくれないといった苦情が多く寄せられているようです」(前出のメガバンク幹部)という』、「国民生活センター」が2020年1月23日:に公表した「(特別調査)消費者トラブルからみる立替払い型の後払い決済サービスをめぐる課題」によれば、2019年度の相談件数は2018年度の同時期と比較すると、約3倍に増加」、なお、その後の調査はみつからなかった。
・『業界団体を設立して自主ルールを策定予定  また、後払い決済サービス事業者はEC事業者(加盟店)の売り上げを立て替え、請求書の発行や代金回収を行うことで、加盟店から2~5%程度の手数料を得ているが、「収益を伸ばすため、クレジットカード会社の加盟店審査で落とされた信用力に問題のあるEC事業者を加盟させるケースも散見される」(前出のメガバンク幹部)という。このため大手後払い決済サービス事業者は昨年5月に、「日本後払い決済サービス協会」なる業界団体を設立し、今年早々にも加盟店審査に関する自主ルールを策定する予定だ。 急速に市場規模を拡大する後払い決済サービスだが、割賦販売法の網のかからない新興ビジネスだけに事業者は玉石混交だ。過度に規制を強化すれば伸び盛りの市場に水を差す。しかし、消費者トラブルが大きく社会問題化したのでは後の祭りとなるジレンマを抱えている』、「日本後払い決済サービス協会」の正会員は僅か8社に留まっている。

次に、昨年3月11日付けダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298716
・『先日、スマートフォンに知らない番号からSMSが届きました。「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください」。しかし認証コードを届くようなことはしていないし、ログイン画面のURLも書かれていないのです。いったいどうしろと……?』、怪しげだ。
・『見知らぬ名前のサービスからSMSで認証コードが届いた  先日、スマートフォンに見慣れない電話番号からSMS(テキストメッセージ)が届いた。文面は「【Paidy】認証コードはxxxxです。ログイン画面にご入力ください。」というものだ(xxxxは4桁の数字)。 二段階認証の確認のような文面だが、そもそもこの【Paidy】というサービスを使ったことがない。ログイン画面に入力というが、入力するURLもない。 何だろうと思って調べたところ、Paidy(ペイディ)とは「メールアドレスと携帯電話番号だけでお買い物ができる」という触れ込みのキャッシュレス決済サービスだった。AmazonやQoo10など複数のECサイトで使うことができ、使った分は翌月にまとめてコンビニ払いなどで支払う。iPhoneを分割手数料0%で購入できるというプランもあるという。どうやら、クレジットカードを持っていなくても、クレジットカード的な使い勝手を手軽に実現するというコンセプトのサービスのようだ。 Paidyの利用方法  似た名前で「ペイジー」という決済サービスもあるので一瞬それかと思ったのだが、まったくの別物。決済系のサービスは「ペイなんとか」という名前が多いので、探せば他にも似た名前のサービスがありそうな気がする。実に紛らわしい……』、「Paidy」は、ソーシャルレンディングサービス「AQUSH」を主な事業としていた。2014年7月にオンライン決済サービス「ペイディ」を開始してからは事業の軸足を「ペイディ」に移し、2021年9月にPayPalホールディングスが27億USドル(約3000億円)で買収、その子会社となった。ホームページには、私が探した限りでは不正勧誘についての記載はない。
・『SMSの文面はさまざまなパターンがある PaidyをかたるSMS  「誰かが何かをオンラインで買おうとして、間違えて私の電話番号を入力したのだろうか」とも思ったが、それなら認証番号が届かないから気が付いてやりなおすはずだ。念のためと思ってTwitterで検索してみると、「Paidyを使っていないのにSMSで認証コードが届いた」と気味悪がっている人がたくさんいた。怪しい。 私が受け取ったSMSはやはり不審なものだったようだ。調べてみると、文面は私が受け取ったもののほかにも数種類あり、 Paidy 決済認証番号: xxxx を Paidy(ペイディー)の画面に入力すると、こちらの電話番号で決済手続きがおこなわれます。 ・【Paidy】ペイディのお支払い方法に問題があります、更新してください https://~ ・【Paidy】お使いのアカウントを一時的に停止しました, ご確認が必要ですhttps://~  といった、特定のURLに誘導するものもある。 SMSではなく、メールが届いている人も多数いるようだ。こちらはSMSと同様の文面のものに加えて、 ・「Paidyご利用確認のお願い」と称して、カード利用の一時制限を行いカードの利用確認をさせる ・「利用制限解除の手続き」と称してアカウントの再設定を行うことを誘導する など、さらにバリエーションが豊か(?)だった。 Paidyも認識はしているようで、公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている。 対処法としては、原則「無視」。気持ち悪いが、せいぜい届いたSMSやメールを削除する、送信元の電話番号をブロックするくらいしかできない。間違っても、SMSやメールに書かれたリンクに飛び、誘導された通りに個人情報を入力したり、支払いをしたりといったことがないようにしてほしい』、「公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている」とあるが、私が探した限りでは前述の通り、見つからなかった。
・『典型的なフィッシング詐欺  PaidyをかたるSMSやメールは、2021年12月ごろに急増したがいったん減少、そして今年に入ってまた増えている。フィッシング対策協議会が21年12月27日に「緊急情報」を出していた。 https://www.antiphishing.jp/news/alert/paidy_20211227.html 手口を見ると典型的なフィッシング詐欺で、SMSやメールに書かれているURLは偽物。Paidyのログイン画面を装った偽のWebサイトに誘導し、メールアドレスや携帯電話番号を入力させて個人情報を抜くのが目的のようだ。 実行者は日本人ではないのか、メールの文面で「カード」が「カド」になっていたり、送信元が「ペンディ」「パイディ」などとなっていたりと、ずさんなメールも多くある。URLが【http://paily~】や【http://paidyi~】となっているなど、よく見ると見破れるものもある。 基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする』、「基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする」、その通りだろう。
・『手軽さがウリのサービスには危険もある  「メールアドレスと携帯電話番号だけで買い物ができる」という手軽さがウリのサービスだが、手軽さはまた、抜け穴の多さにもつながりやすい。実際、19~20年には、メルカリに架空出品した上でPaidyを悪用し、売上金を詐取するという事件が起きている。 私はつい最近まで知らなかったが、Paidyをかたる迷惑メールや迷惑SMSは相当な数が飛び交っているようだ。今回の記事を書くにあたって、直接Paidyの人に話を聞こうと思ったのだが、問い合わせフォームに記入して送信するとエラーになり、本社に電話をして担当者のPHSに電話をするも応答しないか留守番電話で、コールバックはなかった。フィッシング詐欺の実害は起きていないのか、またPaidyとしてFAQで注意喚起する以外に何らかの対応をしているのか聞きたかったのだが、残念だ』、「手軽さがウリのサービスには危険もある」、その通りだ。同社の問い合わせ対応は、ホームページを見る限り良くなさそうだ。

第三に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り、解禁されても誰も知らない残念な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321027
・『4月1日、給与の「デジタル払い」が解禁された。が、その認知度は、国民の間で高まっていない。金融庁によると、3月15日時点で「PayPay」(ソフトバンク系)、「楽天ペイ」(楽天系)、「d払い」(NTT系)など84業者が登録されている。わが国の一般庶民や企業は、世界的に進むデジタル化に対する関心が低いといえるかもしれない』、興味深そうだ。
・『給与の「デジタル払い」解禁の認知度が低い  2023年4月1日、給与の「デジタル払い」が解禁された。デジタル払いとは、給与をスマホの決済アプリや、電子マネーの口座に支払う仕組みをいう。 これまで厚生労働省は、1975年に銀行口座への給与振り込みを、そして98年には証券総合口座への振り込みを解禁した。今回、社会のデジタル化に対応するため、「資金移動業者」の口座が給与支払いの対象に含められた。 世界の主要な中央銀行は、法定通貨のデジタル化に関する実証実験などを進めている。その中、デジタル払い解禁は人々の生活の利便性、経済運営の効率性向上に寄与することが期待できる。 ただ、デジタル払い解禁の認知度が、国民の間で高まっていない。デジタル払いのアンケート調査の結果を見ると、デジタル払いに関する理解はあまり高くないことが分かる。素直に考えるとかなり便利になるはずなのだが、給料を受け取る側も、払う側の企業もあまり関心がないように見える。 わが国の一般庶民や企業は、世界的に進むデジタル化に対する関心が低いといえるかもしれない。それは、世界的なデジタル化の波に乗り遅れることにもなりかねない。そうした状況が続くと、わが国の「デジタル後進国」ぶりは一段と鮮明になる。それは、世界経済における存在感の低下につながることも考えられる』、日本では「給料」の「銀行振込」が既に普及していることが、「関心」の低さにつながっているのではなかろうか。
・『デジタル給与支払いに84事業者が登録  リーマンショック後、わが国でもデジタル化の加速を背景に、非金融分野の企業による銀行分野への新規参入が増えた。一例が、資金移動業を行う企業の増加だ。デジタル払いはこの仕組みを利用し、企業が就業者に銀行を介さずに給料を支払う。資金移動業とは、銀行以外の事業者が行う送金サービスをいう。 事業者は送金の上限金額(5万円以下、100万円以下、100万円超)によって3つに分類される。100万円以下であれば監督当局への登録を経て事業を開始する。登録とは、行政機関に申請を行い事業者として名簿に記載されることで、正式にビジネスを開始できる制度を指す。金融庁によると、2023年3月15日時点で「PayPay」(ソフトバンク系)、「楽天ペイ」(楽天系)、「d払い」(NTT系)など84業者が登録されている。 資金移動サービスの利用者は、銀行口座とひも付けたスマホのアプリに入金し、買い物や送金に使う。デジタル払いでは、この仕組みを利用し、銀行口座を介する手間を省いて企業(雇用者)から就業者へ、給与は支払われる。 デジタル払いは、資金決済システムがネット空間に取り込まれた結果として、口座振替決済などの銀行ビジネスが他の業界に染み出していることを象徴する変化の一つだ。そのメリットを生かすため、20年夏以降、厚生労働省は賃金支払いの新しい選択肢として資金移動業者の口座活用を目指し、法令の改正に取り組んだ。 なお、デジタル払いの利用に当たって、雇用主は就業者の個別の同意を得る必要がある。不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない。振込金額が100万円を超える場合には、あらかじめ就業者が指定した銀行口座などに自動的に出金される。ATMなどによって1円単位での現金化も可能だ(最低月1回は就業者の手数料負担なし)』、「不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない」、当然のことだ。
・『解禁の背景はある地方企業の提言  デジタル払い解禁のきっかけの一つが、福岡県に拠点を置くフィンテック企業、ドレミングホールディングの提言だった。18年6月14日に開催された国家戦略特区諮問会議で、同社の高崎義一CEOがデジタル支払いを進めるための規制緩和を求めた。高崎氏は、外国人の受け入れ強化のために、銀行口座開設の困難さを解消し、リアルタイムでのデジタル給与支払いを可能にする必要性が高まっていると主張した。 それに加えて、同社にはデジタル払いの活用によって、新興国の需要をより多く獲得できるとの思惑もあっただろう。例えば、アフリカ大陸などの途上国では、無線通信基地局の設置によって携帯電話の利用者数が増えている。これまで銀行口座を持たなかったが、スマホアプリなどで口座を開設し働いた分の給料を受け取る人は増えている(生活に必要な金融サービスにアクセスする人が増えることを「金融包摂」と呼ぶ)。 アプリを通して銀行、ネット通販、さらには医療などのサービスを利用することも可能になった。こうして、加速度的に経済活動はデジタル化している。それは社会の厚生、人々の「ウェルビーイング」を高める。既存の銀行システムが未整備な分、新興国における給与デジタル払いなどのスピードはわが国より早い。 ドレミングの提言をきっかけに、政府はデジタル払いの実現に取り組んだ。企業は銀行口座振込手数料を削減し、就業者もATMなどからお金を引き出す手間が省かれると期待された。世界的に主要中央銀行による、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)の利用を目指す動きも強まった。 加えてコロナ禍の発生は、民間、政府、両分野でのデジタル化を加速させた。効率性を高め成長を目指そうとする民間企業の考えに触発されるようにして、わが国はデジタル払いの準備を進めたといえる。 一方、銀行ではない資金移動業者に関しては、破綻時に預かっていた財産の価値をどう保全するかなどの懸念がある。ITセキュリティーの強化も欠かせない。利用者の保護体制の整備など、より安心したデジタル払いの実現に向け、解禁は当初予定されていた21年度ではなく、23年度にずれ込んだ』、なるほど。
・『日本のデジタル化の遅れは経済的地位を揺るがす  デジタル払い解禁は、わが国が世界的なデジタル化に対応するために欠かせない要素の一つと考えられる。一時、政府の内部では、デジタル払いの解禁を足掛かりにしてフィンテック企業の成長を加速し、海外の需要取り込みにつなげる考えもあったようだ。それは、規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ。 ただ、現在のわが国では、デジタル払いの意義が社会全体で共有されているとは言いづらい。変化が起きていることは重要だが、そのペースはかなり緩慢といってもよいだろう。 デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない。その状況が深刻化すると、わが国が現在の経済的な地位を維持することも難しくなるだろう。そうした点を踏まえても、デジタル払いの普及ペースは注目に値する』、「規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ」、「デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない」、「わが国の「デジタル・ディバイド」ぶり」については、筆者の「危機感」が上滑りしているきらいがある。「アンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない」、のは「制度やルールを改変することの難しさ」のためであって、無理やりに旗を振るべきものでもないのではなかろうか。
タグ:決済 (その9)(急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル、「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話、給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り 解禁されても誰も知らない残念な理由) 「国民生活センター」が2020年1月23日:に公表した「(特別調査)消費者トラブルからみる立替払い型の後払い決済サービスをめぐる課題」によれば、2019年度の相談件数は2018年度の同時期と比較すると、約3倍に増加」、なお、その後の調査はみつからなかった。 小林佳樹氏による「急成長する「後払い決済サービス」1兆円市場の死角は? 増える消費者トラブル」 日刊ゲンダイ 「日本後払い決済サービス協会」の正会員は僅か8社に留まっている。 ダイヤモンド・オンライン「「Paidy」って何だ?見知らぬサービスから怪しい認証コードが届く裏話」 怪しげだ。 「Paidy」は、ソーシャルレンディングサービス「AQUSH」を主な事業としていた。2014年7月にオンライン決済サービス「ペイディ」を開始してからは事業の軸足を「ペイディ」に移し、2021年9月にPayPalホールディングスが27億USドル(約3000億円)で買収、その子会社となった。ホームページには、私が探した限りでは不正勧誘についての記載はない。 「公式サイトには「ペイディを利用していないのに認証コードのSMSを受信された方」「ペイディを装った不審なメール・SMSについて」という注意喚起のページができている」とあるが、私が探した限りでは前述の通り、見つからなかった。 「基本的な対応は「信用しない」ことだ。このサービスを使っていないのであれば上述の通り無視する、ユーザーであれば専用アプリや、MyPaidyのURLからログインする、といった対応をし、SMSやメールからURLにアクセスしないことをおすすめする」、その通りだろう。 「手軽さがウリのサービスには危険もある」、その通りだ。同社の問い合わせ対応は、ホームページを見る限り良くなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「給料を「PayPayや楽天ペイ」で受け取り、解禁されても誰も知らない残念な理由」 日本では「給料」の「銀行振込」が既に普及していることが、「関心」の低さにつながっているのではなかろうか。 「不正な資金引き出しなどによって就業者が損失を負った場合、補償されなければならない」、当然のことだ。 「規制によって守られてきた銀行などの分野で競争を喚起する狙いもある。 より成長期待の高いビジネスモデルが生み出され、当該分野へヒト・モノ・カネの再配分が勢いづく可能性も増す。地方企業の提言をきっかけに規制緩和が進み、デジタル払いが解禁されたことは、ある意味エポック・メイキングな変化だ」、「デジタル払いに関するアンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない。特に、「言葉は聞いたことはあるが、内容は理解していない」という人が過半数を占める結果が散見される。 理解度が十分ではないため、積極的にデジタル払いを活用したいという考えの人も増えにくい。 認知度の低さの要因の一つとして、政府、企業にとって十分な準備期間が取れなかったことは大きい。特に、雇用者である企業にとって、給与の振り込み形態の多様化に対応するには時間がかかる。個々の就業者からの理解や同意の取り付けなどの負担もある。結果的に、経済環境や技術の変化に合わせて、制度やルールを改変することの難しさが分かる。 依然として、わが国全体でデジタル技術への活用の危機感は希薄といえるだろう。その状況が続けば、世界経済 におけるわが国の「デジタル・ディバイド」ぶりは一段と鮮明にならざるを得ない」、「わが国の「デジタル・ディバイド」ぶり」については、筆者の「危機感」が上滑りしているきらいがある。「アンケートを見ると、デジタル払いの認知度は高いといえない」、のは「制度やルールを改変することの難しさ」のためであって、無理やりに旗を振るべきものでもないのではなかろうか。
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金融業界(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) [金融]

金融業界については、3月31日に取上げた。今日は、(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態)である。

先ずは、3月24日付け3/24プレジデント ウーマンが掲載した楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジストの窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67831
・『欧米で金融不安が広がっている。株式市場にどのような影響があるのか。楽天証券チーフ・ストラテジストの窪田真之さんは「米国で銀行株が軒並み急落、日本の銀行株も急落していますが、私は海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」という――』、興味深そうだ。
・『急落する日本の銀行株は買いか  米国でシリコンバレー銀行(総資産全米16位)、シグネチャー銀行(同29位)が破綻してから、欧米で金融不安が広がっています。米国で銀行株が軒並み急落、地方銀行の一部で預金の取り付けが起こっています。欧州ではかねてより経営不安が噂されていたクレディ・スイスの株価が急落し、UBSが救済合併に動きました。 欧米の金融当局は、信用不安の拡大を抑えるためにやれることは何でもやる姿勢ですが、金融不安はまだ収まっていません。 欧米の不安は、日本の銀行にとって「対岸の火事」でしょうか。日本の銀行株も急落していますが、買い場と考えていいのでしょうか。私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています。その理由を解説します』、「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。
・『シリコンバレー銀行はなぜ破綻することになったか  シリコンバレー銀行(以下、SVBと表記)は、なぜ破綻に追い込まれたのでしょうか? クレディ・スイス(以下、CSと表記)は、なぜ救済合併が必要になるまで財務が悪化したのでしょうか、そこから解説します。 結論から申し上げると、SVBは米国の急激な金利上昇に備えができていなかったために破綻しました。CSは、投資銀行部門の暴走で財務が急激に悪化しました。どちらも特殊要因で信用不安に陥ったもので、日本の大手金融機関が現時点で同様の問題を抱えているとは考えていません。 日本の話をする前に、まずSVBの破綻原因を詳しく解説します。 【図表1】SVB破綻の原因 図表=筆者作成 SVBは、銀行ALM(資産・負債のリスク管理)の初歩ができていなかったために破綻しました。SVBは、テック系新興企業との取引で知られていました。テック系新興企業から預金を預かり、融資をする銀行でした。 ところが、テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化しました。 通常、金利が上昇しただけで銀行は破綻しません。そうならないように、金利上昇リスクを管理しているからです。具体的に言うと、資産のデュレーション(平均運用期間)と負債のデュレーション(平均調達期間)の乖離かいりが大きくなり過ぎないように管理しています。それが銀行ALMの初歩です。 もう少しわかりやすく言うと、1年定期預金で集めたお金で30年の固定利付住宅ローンを出すようなことはしない、ということです。金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました』、「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。
・『もう1つの破綻原因  SVB破綻のもう1つの原因は、負債サイド(預金)にあります。逃げ足の速い大口の法人預金中心に資金調達していたことも、破綻の原因です。信用が低下すると、すぐに預金の引き出しが集中しました。 銀行ALMにおいて、同じ流動性預金(普通預金や当座預金)でも、個人預金はデュレーションが長い(長い年月にわたって滞留する)ことがわかっています。出入りの激しい法人預金と違って、給与振り込みやクレジットカードの引き落としに指定された個人口座は、長期に滞留するので「コア預金」と呼ばれます。 預金保険制度の存在も、個人預金がコア預金となる要因です。銀行が破綻した場合、日本では1人1000万円まで、米国では1人25万ドル(約3300万円)まで、普通預金や当座預金の残高が保護されます(預金保険機構に加入している銀行)。個人預金は保証額を下回る金額が多いので、信用不安の噂が出てもすぐ引き出しに走ることはありません。ところが、SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました』、「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。
・『急激な利上げが直接の原因  このように、SVBは、きわめてリスクの高い資産・負債構造を持っていたために、破綻することになりました。過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB(米連邦準備制度理事会)が、破綻の直接の原因を作りました。0.5%や0.75%など過去に例のない大幅な利上げを繰り返し、1年で一気に4.5%も利上げしたことが、SVBを追い詰めました。 年1%の利上げを4年連続で続けたとしても、SVBは破綻に至らなかったでしょう。年1%ずつの金利上昇ならば、それに対応する資産の入れ替えを少しずつ進めることができたからです。パウエルFRB議長は、2021年当時、米国のインフレは一時的と誤った判断をしていたために、金利引き上げの判断が遅れました。その分、過去に例のない急激な利上げが必要になりました。それが、SVB破綻を生じた直接の原因です』、「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。
・『クレディ・スイスはなぜ救済合併が必要になったか  SVBが破綻すると、信用不安が欧州に伝播しました。スイスで2番目の資産規模を持つ大手銀行クレディ・スイス(CS)の株価が急落、放置すれば預金流出が止まらなくなる危機に瀕しました。CSは破綻すると世界の金融システムに重大な影響を与える「国際的に重要な金融機関」に指定されています。破綻すればリーマンショックを超えるダメージが世界の金融システムに及ぶ可能性があります。 CSはなぜ急激に財務が悪化したのでしょうか? 巨大銀行の転落は、さまざまな複合要因が重なった結果です。近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です。スイスの銀行が世界中の富裕層から秘密の預金を集めてビジネスをやってきた時代は終わりました。伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました』、「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。
・『法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引  投資銀行部門の暴走で大手金融機関が破綻というと、2008年のリーマンショックを思い出します。リーマンショックの経験から、「国際的に重要な金融機関」には、厳しい自己資本規制が課せられ自己資本を危険にさらす取引は制限されることになりました。そのおかげで、リーマンショック以後、巨大金融機関の危機は起こらなくなっていました。 ところが、CSはその規制をかいくぐる形で危険な取引を繰り返し、財務を毀損きそんしました。CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます。 危機拡大を防ぐためスイス金融当局は、すぐに動きました。CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表しました。通常これだけの大型買収を決める時、資産査定にかなりの時間をかけますが、急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります』、「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。
・『「なんでもあり」の救済劇  UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました。UBSがCS買収で損失を被った場合、最大90億フランまで政府が補塡ほてんするという内容です。さらに、もう1つ金融市場を驚愕きょうがくさせたのは、CSが資金調達のために発行していた劣後債の一種、AT1債160億スイスフラン(約2.3兆円)を無価値にすると発表したことです。株式に約4200億円の価値をつけておきながら、劣後債の価値をゼロにするというのは、きわめて異例の措置です。CSの預金者の不安を取り除き、預金流出を抑えるために、「なんでもあり」の救済劇が演じられました。 これで一件落着かと言うと、そうはいきません。CSの預金者を安心させるには効果があったと思いますが、代わりに世界中のAT1債保有者に強烈なダメージを与えました。世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります。CSをめぐる混乱は続きそうです』、「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。
・『「なんでもあり」の金融不安対策は、奏効するか  SVB・CSの危機を発端に、欧米の金融機関全般に危機が拡散しないよう、米政府は、なんでもありの対策を発動しています。 【1】SVB、シグネチャー銀行の預金を全額保護すると米政府が発表(預金保険機構による預金保護は1人当たり25万ドルまでだが、信用不安の連鎖を防ぐため全額保護としました。 【2】ファースト・リパブリック銀行にJPモルガンなど11行が資金支援(SVB破綻の連鎖で、カリフォルニア州のファースト・リパブリック銀行の株価が急落し、預金流出が深刻になりました。これに対し、JPモルガンなどが300億ドル(約4兆円)の資金支援を実施しました。米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません』、「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。
・『それでもFOMCは利上げを実施  ただ、FRBは金融危機への対応よりも、まだインフレ抑制を重視する姿勢です。22日のFOMC(公開市場委員会)で0.25%の利上げを実施しました。金利上昇がSVB破綻のきっかけになり、信用不安を引き起こしていることに対して、配慮がありませんでした。パウエル議長は22日の記者会見で、「銀行の不安は、放置すると重大なシステム不安につながる」と認識を示したものの、「銀行システムは健全で回復力がある」と、危機が深刻化するリスクが低いとの認識を示しました。私も、このままリーマンショックのような危機に発展する可能性は低いと、現時点では判断しています。 過去の金融危機は、不良債権の拡大で起こりました。日本の1990年代の金融危機は、不動産バブルの崩壊で不良債権が拡大したことで起こりました。米国の2008年の金融危機(リーマンショック)は、米国の住宅価格が急落して、住宅ローン債権(サブプライムローン)が不良債権化したことで起こりました。 今まだ、米国の銀行で、不良債権が急拡大しているということはありません。金利上昇で、保有する米国債などに含み損が生じていますが、不良債権が拡大しない限り、金融全般の危機に広がる可能性は低いと考えています。 ただし、不良債権問題が今後、深刻になるリスクの芽はあります。米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっていることです。貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります。そのリスクへの目配りは必要ですが、現時点でそのリスクが高いとは考えていません』、「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。
・『日本のメガ銀行株は買い  欧米の金融不安をきっかけに日本の銀行株も急落しましたが、私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJと表記)などメガ銀行株について、買い判断を継続しています。 欧米の金融不安が、日本の銀行にとって対岸の火事と考えているわけではありません。リーマンショックの時と同様、直接的なマイナス影響は大きくありませんが、間接的には大きなマイナス影響を受けます。ただし、そのマイナス影響を勘案してもなお三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断しています。 メガバンク買いの理由【1】リーマンショックの影響レビュー  リーマンショックの時、欧米の金融機関が多数破綻しましたが、日本の金融機関への影響は大きくありませんでした。欧米の金融機関が破綻する原因となった北米住宅ローン債権に投資していた銀行は、日本にもあって損失は発生しましたが、日本の金融システム全体への影響は限定的でした。 日本の金融機関は、1990年代に深刻な金融危機を経験し、やっとそこから抜け出した後でしたから、財務的なリスクを拡大することに慎重でした。米国の住宅ローン債権に投資してしまった銀行があったのは、米国の格付機関がトリプルAなどの誤った格付をつけていたためです。信用リスクを取ることに慎重だったので、致命的なダメージを受けた金融機関はほとんどありませんでした。 ただし、リーマンショックを契機に、世界中の中央銀行が大規模な量的緩和を打ち出し、世界的に金利低下が進んだことで、日本の銀行も間接的に大きなマイナス影響を受けました。それに2014年に始まった黒田日銀の異次元緩和が追い打ちをかけました。日本の長期金利はゼロ近辺に沈み、国内商業銀行の預貸金利ザヤを圧迫しました。国内商業銀行業務の比率が高い、国内金融機関の多くが収益にダメージを受けました。 三菱UFJは、海外ビジネスや、投資銀行業務への多角化を進めることで、純利益8000億円から1兆円の高収益を維持してきました。ただし、リーマンショック以降、株価は長期にわたり低迷が続いてきました。低金利が収益にダメージを与える懸念が続いていたからです』、「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。
・『メガバンク買いの理由【2】今起こっている欧米の金融危機の影響  今ある欧米の金融危機も、日本の銀行への直接的な影響は限定的と考えています。SVB破綻の原因となった米国の金利急騰は、日本の銀行にも影響しています。米金利急騰で、外債に含み損を抱える銀行が増えました。ただし、日本の大手銀行は今、全般的に不良債権比率が低く、保有する株式に含み益があるため、財務的な問題はほとんどありません。 日本には、SVBのように、ALMの初歩を踏み外した銀行も、CSのように投資銀行業務で過剰なリスクを負っている銀行も無いと判断していますので、今回の欧米の信用不安が日本の銀行に連鎖することはないと予想しています。 ただし、日本の銀行も、間接的に大きなマイナス影響を受ける可能性が出ています。今回の危機で、世界的に金利が低下しました。金利低下は、長期的に銀行の利ザヤを低下させる懸念があります。日本の銀行にとって影響が大きいのは、日本の長期金利が低下した影響です。 日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀の政策で、長らくダメージを受けてきました。昨年12月、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた時、やっと国内商業銀行業務の収益性が改善する期待が出たことを好感して、日本の銀行株は急騰しました。 ところが、3月に入り、欧米の金融危機が伝播すると、日本の長期金利は一時0.25%に戻ってしまいました。0.5%への長期金利引き上げに喜んだのも束の間、また元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落しました。 【図表3】日本の長期金利(10年国債利回り)と、東証・銀行株指数の推移:2016年1月-2023年3月(22日) 出所=QUICKより楽天証券経済研究所が作成』、「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。
・『長期投資していく価値が高い  先行きのインフレがどうなるか不透明ですが、私は日本にもしぶとくインフレが定着すると予想しています。欧米の金融危機が収束すれば、また日本の長期金利にも上昇圧力が働くと予想しています。そうなると、三菱UFJの株価も見直されて反発していくと予想しています。 仮に長期金利が上昇しないとしても、三菱UFJは、海外ビジネスの拡大や、ユニバーサルバンク経営(投資銀行業務などへの多角化)で安定的に収益を稼いでいく力があると考えています。欧米の金融不安が収まるまで、不安定な値動きが続きそうですが、今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断しています。(窪田 真之氏の略歴はリンク先参照)』、「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したオペレーショナル・デザイナー(沼津信用金庫 非常勤参与)の佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320429
・『シリコンバレー銀行の破綻とクレディ・スイスの経営不安  3月10日の米国のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻と、3月15日のスイスのクレディ・スイスグループの経営不安は、それぞれ別要因で起きたものの、これらを契機に、銀行の財務健全性に対する不安が広がっている模様だ。2008年のリーマンショックを契機とした世界金融危機のような事象を防止・抑止しようと、各国の金融当局が緊密に連携されているようだ。 SVBの破綻の引き金となった要因の一つに、米国内のインフレ抑制を目的に繰り返された利上げが、債券価格の下落をもたらしたことが挙げられる。利上げによってSVBが投資・運用していた不動産担保証券(MBS)の価値が毀損し、それに伴う信用不安が預金流出に拍車をかけた事実が報じられている。 米国のみならず、欧州中央銀行も、インフレ率を2%まで引き下げることを目標に、3月まで6回連続で利上げを実施している。従って欧州でも、低金利時代に発行された債券の価格が、漏れなく下落していることだろう。 “金余り”と呼ばれる低預貸率を背景に膨らんだ余裕資金の運用を巡り、邦銀は、かねて投資先に悩んできた。2016年2月のマイナス金利政策導入から既に7年が経過し、利ざやを求めて外国債券(外債)などに投資した残高が、既に相当額に積み上がってもいる。 短期の預金流出によって経営破綻したSVBの預金者に占める法人比率は高く、個人預金比率の高い邦銀の調達構造とは異なる。わが国では個人の預金保険制度への認知度をはじめとする金融リテラシーも総じて高く、短期的には、信用不安を背景とした取り付け騒ぎは発生しないだろう。 その一方で、金利上昇によって投資した債券の価格が下落し、いわゆる含み損となって邦銀の体力を着実に奪っている。その状況について、昨年11月から今年1月にかけて公表された2022年9月末時点の地方銀行62行・第二地方銀行37行の半期ディスクロージャー誌(中間ディスクロージャー誌)より、特徴的な動向を紹介したい』、興味深そうだ。
・『地方銀行・第二地方銀行99行の1行当たりの「貯金」は約156億円(各行の半期ディスクロージャー誌には、保有する有価証券の時価情報が記載されている。掲載情報のうち、利息・配当やキャピタルゲイン目的で投資する有価証券を抽出し、市場における時価を貸借対照表上に計上する「その他有価証券」に着目した。 その他有価証券は、主に「株式」「債券」「その他」の3種で区分けされる。おのおのについて、時価が取得原価(=購入・投資時の原価)を上回る含み益のある有価証券の金額・差益と、取得原価を下回る含み損のある有価証券の金額・差損が表示されている。 これらについて、地方銀行・第二地方銀行99行の金額を合算した[図表1]。ひと言で言えば株式の含み益をそれ以外の含み損が減らし、全体としての含み益の合計は1兆5525億円となった。99行で単純に割った“貯金”は、1行当り156億8223万円となる計算だ』、「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。
・『日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態  含み損が含み益を上回ったのは3行のみ 次に、その他有価証券の内訳別の動向を概観したい。最初に「株式」に着目する。 99行の株式の含み益と含み損を差し引きし、金額順で並べ替えた上で、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表2]。 図表2:保有株式含み益順位[単位:百万円] 図表1で示した通り、全体として約3兆8400億円の含み益を保有するだけあって、99行中、ゼロの3行、マイナスの3行を除く93行の評価がプラスだ。上位10行のうち、第二地方銀行は9位の北洋銀行だけ、逆に下位10行のうち地方銀行は90位の東北銀行だけとなっていることが特徴的だ。北洋銀行も、1998年に旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受けているため、歴史や事業規模との一定の相関性が認められよう』、「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。
・『全体の9割以上が「債券」で含み損  次に、国債・地方債・社債等を区分する「債券」に着目した。図表2と同様の手順で債券についても含み益と含み損を差し引きし、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表3]。 図表3:保有債券含み益順位[単位:百万円] 株式とは逆に、含み益が認められたのはわずか7行にとどまり、全体の9割以上の91行に含み損が認められた。含み益が認められた7行の合計額約260億円のうち、1位の岩手銀行の約184億円だけで、7割を占める。 数値は昨年9月末現在の市場環境での時価だが、その後の昨年12月20日には、日本銀行が大規模な金融緩和政策の修正方針を決定し、±0.25%から±0.50%への事実上の利上げを行っている。 それまでマイナス金利で発行されていた2年国債も12月23日にはプラスに転じ、1月18日までプラスで発行され続けている。3月末まで現在の金利水準で推移した場合には、邦銀が低金利時代に積み上げた債券ポートフォリオの含み損が、さらに膨らむ可能性があろう』、長期金利上昇には脆弱なようだ。
・『「外債・投信」の含み益は11行  内訳の最後は、外債・投信などを含む「その他」の区分だ。株式・債券と同様の通算・並べ替えを行ったが、10位の長崎銀行に続く11位の福邦銀行までがプラス、ゼロの但馬銀行と北九州銀行の2行を除く86行がマイナスとなった。90位から99位までの10行の単純合計だけで、含み損が6552億円に達する[図表4]。 図表4:保有その他含み益順位[単位:百万円]  報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、SVBグループの株式と債券を約437億円保有している模様だ。わが国以外でも、ノルウェーの政府系ファンドがSVBグループに投資を行っていた事実とその後の動向が断続的に報じられている。 邦銀が直接SVBに投資を行っていなくとも、SVBの破綻によって損失を被ったこのような機関投資家などに投資していれば、外債などの価格が下落する可能性がある。 ライバル行であったUBSによる買収によって信用不安の収束を図っているクレディ・スイスグループも、3月19日にスイス金融当局がAdditional Tier1債券(偶発転換社債/AT1債)を無価値にして自己資本に組み入れると発表した。) AT1債は株式と劣後債の間に位置付けられ、破綻時の弁済順位が低い分だけリスク・プレミアムが乗る。それゆえに、直接の社債投資のほか、グローバル運用などをうたう投資信託に組み入れられて投資していた可能性もあろう。 もちろん、特定の発行体絡みの信用リスクの低下のみならず、金利上昇による価格低下も見込まれる。昨秋以降の相次ぐ米欧の利上げは、直接的な価格低下をもたらすだろう』、「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。
・『地方銀行・第二地方銀行はグループ化や増資を模索  含み損となった債券は、国内債・外債を問わず満期まで保有すれば全額で償還されるものの、取得価格に対して一定の水準まで価格が下落すれば、帳簿価格を引き下げて損失の計上が求められる。いわゆる減損処理だ。 米欧日が金融緩和からのシフトチェンジ、すなわち利上げをなお模索する中では、国内債・外債共に逆風と言わざるを得ず、減損に至る前に諦めて損失処理に踏み切ろうとする動きが見込まれよう。 その際の経営判断は、自己資本などの経営体力のほか、収益力による補填と対比することとなろう。そこで、その他有価証券の損益通算が赤字となっている地方銀行・第二地方銀行58行について、中間純利益を機械的に2倍して「1年分」とし、「稼ぐ力」の何年分の含み損に該当するのかを試算した[図表5]。 図表5:「その他有価証券」合計含み損解消所要年数(試算([単位:百万円、年]) 不良債権処理などの特殊要因によって中間純利益が赤字となったきらやか銀行と福邦銀行を除く56行のうち、18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ。従って、減損処理に当たっても各行経営者は慎重な匙加減を図っていることだろう。 今後、わが国発の信用不安を引き起こさないため、地方銀行・第二地方銀行はさらなるグループ化のほか、増資などの資本政策を模索することとなるだろう。 (オペレーショナル・デザイナー〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)』、「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
タグ:(その16)(シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」、日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態) 金融業界 プレジデント ウーマン 窪田 真之氏による「シリコンバレー銀行にクレディ・スイス…金融不安連鎖で急落する「日本の銀行株」は買いなのか プロが指南する「個人投資家が狙いたい優良投資先」」 「私は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど海外展開が進んでいるメガ銀行は買っていいと考えています」、一安心だ。 「テックバブルで、テック系企業にはベンチャーキャピタルなどから、巨額の資金が供給されていました。すぐに使う予定のない現金をたくさん持つ新興企業が、SVBに多額の預金をしていたため、SVBは預金過多で貸付金が不足していました。そこで、SVBは、期間の長いMBSや米国債など債券投資にのめり込んでいき、金利上昇(債券価格下落)で一気に財務が悪化」、 「金利が上昇した時、調達(預金)金利だけ上昇して逆ザヤになるリスクがあるからです。このリスクを避けるため、日本の銀行は30年の固定利付住宅ローンを出したら、金利スワップを使って固定金利を変動金利に変換します。そうすることで、金利上昇リスクに備えます。SVBは、そんな銀行経営の初歩ができていなかったから破綻しました」、お粗末だ。 「SVBは大口の法人預金を中心に資金を調達していたため、信用不安の噂が出ると、預金の流出が増えて、資金が行き詰まりました」、脆弱な資金調達構造が破綻につながったようだ。 「過去に例のないピッチで金利を急騰させたFRB・・・が、破綻の直接の原因を作りました」、なるほど。 「近年、CSの不祥事が相次いで報道されていました。超富裕層のファミリーオフィスとの取引で巨額損失、不正預金の発覚、経営の混乱……。一連の不祥事の根幹にあるのが、投資銀行部門の暴走です」、「伝統的なスイス銀行のビジネスが衰退する中で、米国流の投資銀行業務を取り入れて収益を稼いでいこうとしたことが、巨大銀行の転落を早めました」、なるほど。 「CSは見かけ上、自己資本規制をクリアしていましたが、裏で法令違反ぎりぎりのきわどい危険な取引を繰り返し、財務を毀損しました。CSの転落を見ると、リーマンショックの亡霊がよみがえった感を覚えます」、「CSに対し、スイス中銀は15日、最大500億スイスフラン(約7.2兆円)の資金供給を表明し、さらに19日にはスイスのトップ銀行UBSが、約4200億円(円換算額)で買収すると発表」、「急転直下で決まったのは、それだけCSの信用不安が深刻だったことになります」、なるほど。 「UBSにCS買収を決断させるために、スイス政府は90億フラン(約1.3兆円)の損失補償をつけました」、さらに深刻なのは、「世界中の金融機関がAT1債を使って自己資本を調達してきましたが、AT1債の信用が急低下したことで、今後は発行が難しくなり、銀行資本の調達に支障が生じる可能性が出ています。 また、CSのAT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、「AT1債」の信用力は、本来は株式より高く、普通社債や預金よりは低い筈なのに、今回は株式が合併により価値が守られ、「AT1債」はデフォルト(債務不履行)になるという極めて異常な事態となった。 「AT1債への投資家が、無価値化の決定にすんなり納得するとは思えません。これからCSを買収したUBSに対して訴訟が起こされる可能性もあります」、確かに大いにあり得るシナリオだ。 「米政府は、公的資金だけでなく、民間銀行の資金も使って信用不安を抑える姿勢です。 ただし、ファースト・リパブリック銀行の株価下落・預金流出は続いており、信用不安はまだ収まっていません」、なるほど。 「米国の銀行の資金繰りが厳しくなり貸し渋りが発生していることから、オフィスビルなど不動産市況の下落が始まっている」、「貸し渋りの影響で、不動産市況の下落が加速すると、銀行全体に不良債権が拡大するリスクはあります」、しかし、金融政策は金融政策の論理で展開されるので、銀行システムなどの付随的問題が影響することはないと考えるべきだ。 「三菱UFJの株価は割安で、長期的な投資魅力は高いと判断」、異論はない。 「日本の長期金利」が「元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落」、困ったことだ。 「今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 佐々木城夛氏による「日本の地銀も他人事ではない欧米の金融不安、含み損で見る「経営不安」の実態」 「1行当り156億8223万円」とは想像以上に小さいようだ。これでは、長期金利が上昇し始めればひとたまりもなく吹き飛ぶだろう。 「北洋銀行」は「旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受け」たことがプラスになっているようだ。 長期金利上昇には脆弱なようだ。 「外債・投信などを含む「その他」」も厳しいようだ。 「含み損解消所要年数」で「18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ」、とは深刻だ。今後の長期金利上昇への備えなどないようだ。
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