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SNS(ソーシャルメディア)(その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、4月12日に取上げた。今日は、(その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に)である。

先ずは、7月5日付け日経ビジネスオンライン「「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00324/070100003/
・『米中と比べ、「聴く文化」は日本にはまだ浸透していない。米調査会社のリポートを見ても、日本で少なくとも月に1回ポッドキャストを開く人口は米中の3分の1にすぎない。 この状況を一変させたのが2021年初頭に日本で巻き起こった音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」ブームだ。招待制も相まって熱狂の渦を巻き起こした。数カ月で騒ぎは沈静化したものの、「聴く習慣」を日本にもたらした効果は大きい。 コロナ禍で働き方が多様化し、リモートワークが一気に普及した点も音声市場にとって追い風となっている。長時間にわたるオンライン会議やデスクワークで、「目の疲れ」が慢性化しているためだ。 日本に「聴く習慣」が根付き、「聴く文化」へと昇華していくためには良質なコンテンツは欠かせない。音声メディア「Voicy(ボイシー)」を運営するVoicy代表取締役最高経営責任者の緒方憲太郎氏による著書『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦~』から一部抜粋・再編集して掲載する。 今、世界で音声市場が成熟しつつあるのは、アメリカと中国だ。米調査会社のMAGNA(マグナ)による「The Podcasting Report(2019年7月)」によると、「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」(インターネットの普及率に応じて補正した値)はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている。これを「日本はすっかり出遅れている」としか見ないか、「日本の伸びしろはすさまじく大きい」と考えるか。 まずはそれぞれの市場を簡単に見ていこう。 アメリカについては、既にスマートスピーカーやポッドキャストに焦点を当てて説明したが、もう少し音声市場拡大の背景にある特徴について紹介したい。 アメリカはもともと、スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのデバイスが普及する随分前から、「聴く」文化が定着していた。国土が広く、車社会のため、通勤や移動するとき、運転しながら音声を楽しむ人が多い。 ラジオも発達しており、英語、スペイン語、ロシア語などのさまざまな言語、ニュース、スポーツ、カントリーやR&Bなどのさまざまなジャンルの音楽などで細分化された専門ラジオ局があり、その数は全米で1万5000以上といわれている。 車の中で本を「聴く」ことも当たり前になっていて、早いうちからカセットテープやCDによる「オーディオブック」市場が形成されていた。そしてスマホの普及で、これらがそのままポッドキャストやスマホで聞くオーディオブックなどに置き換わってきた。アメリカのオーディオ出版社協会(APA)によると、2019年のアメリカのオーディオブックの売り上げは、前年比16%増の12億ドル(約1300億円)に上り、8年連続の2ケタ成長を続けている』、「「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」・・・はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている」、これは大きな開きだ。ただ、「中国」が多い理由は何故なのだろう。
・『世界で巻き起こるVoiceTech革命  GAFAと呼ばれる米IT大手が音声への投資を続けている。米グーグルや米アマゾン・ドット・コム、米…  こうした背景からも、スマートスピーカーへの抵抗感は低かったことが考えられる。スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている。 ポッドキャストコンテンツの成長ぶりも前述の通りだ。大手IT各社が競い合うようにポッドキャストに投資しているほか、大手新聞社やテレビ局、ラジオ局などの既存マスメディアも、質の高いポッドキャスト専用番組を制作している。 例えば、実録クライム(犯罪)系の連続シリーズとして制作された「Dirty John(ダーティ・ジョン)」は、リリースから6週間で1000万回以上、累計5200万回以上ダウンロードされた。ニューヨーク・タイムズのニュース番組「The Daily(ザ・デイリー)」は1日で200万人が聴く人気コンテンツになっている』、「スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている」、日本とはずいぶん違うものだ。
・『ポッドキャストに目をつけたスポティファイ  注目すべきは、スポティファイが2019年に、ポッドキャストコンテンツの制作スタジオGimlet Media(ギムレット・メディア)とParcast(パーキャスト)の2社を買収し、オリジナル番組で差別化の勝負に出たことだ。さらに配信サービスのAnchor(アンカー)、広告プラットフォームを展開するMegaphone(メガフォン)、スポーツやポップカルチャーの番組を得意とするThe Ringer(ザ・リンガー)などを次々と買収している。 また、オバマ元大統領夫妻、世界1位のポッドキャスト番組を運営するコメディアンのジョー・ローガン、イギリスのヘンリー王子とメーガン妃らと相次いでポッドキャストの独占契約を結んでいる。スポティファイの担当者は、音楽よりも(ポッドキャストのような)音声コンテンツの方が課金につながりやすいという趣旨の発言をしている。同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白だ。 前述の通り、アメリカのポッドキャスト市場は急速に成長しており、今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算もある。ポッドキャストの広告市場も急拡大しており、2021年は10億ドルを超えて、3年前の3倍近くになると予測されている。良質な音声コンテンツがリスナーを増やし、さらなる投資を生むという好循環が起こっていると言えそうだ』、「同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白」、「今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算も」、日米でこれほど違いがあるのも珍しい。
・『広告よりも有料課金が大きい中国  もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する。広告市場よりも、有料課金コンテンツ市場の方が圧倒的に大きい。 中国では人口の29%がインターネットアクセスを持つとされているが、そのうちの53%が月に最低1回はポッドキャストを聴いていると推計されている。多くのユーザーが、ビジネスやプレゼンテーションスキルなどの学習コンテンツを有料で購入している。 主なプレーヤーを見てみよう。 中国の音声配信サービスでトップシェアを占めるのが、日本版の名称としては「himalaya(ヒマラヤ)」で知られる「シマラヤFM」だ。中国では6億以上のアプリダウンロード、月間1億1000万のアクティブユーザーを持つ。配信者は約600万人で、主にプロのクリエイターが配信するPGC(Professionally Generated Contents:プロ生成コンテンツ)が中心だ。 ヒマラヤは、版権を取得して音声化した作品を提供することで、優良な音声コンテンツを提供してきた。ユーザーは、音声コンテンツのリスナーとなるだけでなく、ヒマラヤが版権を持つコンテンツを音声化する配信者としても参加できる仕組みだ。例えば、人気の小説投稿サイトとヒマラヤが提携し、権利を取得した小説をヒマラヤ内で公開。ユーザーはその小説を音声化して配信する。ユーザー投票によって選ばれた配信者には報酬が支払われる。 さまざまな課金システムがあり、コンテンツの単品販売、月額料金によるサブスクリプション、投げ銭(ギフティング)などがある。ユーザーと配信者がコミュニケーションを取ることもできる。 チンティンFM(QingTing FM、以下チンティン)も、ヒマラヤと同様にPGCが中心。スマートスピーカーやインターネットテレビ、5G搭載の自動車などのハードウエア製品と提携してユーザーを伸ばしているのが特徴だ。アクティブユーザー数は月間1億3000万。ヒマラヤはスマホアプリが中心だが、チンティンはこうした多様なハードウエアを介した戦略を取っている。チンティンもヒマラヤと同様、配信者に報酬を支払ってコンテンツの充実を図っている。2019年には1年間で1000万元(約1億5000万円)を売り上げた作品が登場したり、プロではない配信者の作品が3カ月で100万元(1500万円)を売り上げたりしている。 ライチFM(Lizhi FM)は、ヒマラヤやチンティンとは異なり、素人のオリジナル作品を中心とした音声配信サービスだ。ユーザー層は若者が多く、1990~2000年代生まれの若者がユーザーの約60%を占めている。約590万人のアクティブ配信者による1億7000万本以上のコンテンツが公開されており、アクティブユーザーは月間5100万人に上る。中国最大のUGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)音声コミュニティーだ。 インタラクティブ性が強く、配信者とユーザー間のコミュニティーとなっている面があり、インスタグラムやユーチューブに近い特性を持っていると言える。ライブ配信では投げ銭課金の売り上げが伸びている。2020年1月には音声配信サービスで中国初のナスダック上場を果たしている。) 中国では、「ナレッジシェア(知識の共有)」としてテキストや動画、音声などにお金を払う文化が浸透しているといわれており、ヒマラヤやチンティンはその文脈に沿って成長してきた。その一方で、プロコンテンツを作るための作品の著作権使用料が負担になっているとされる。このため近年は、ヒマラヤも広告ビジネスに力を入れ始めている。2018年には米スターバックスの中国法人とコラボし、音声コンテンツ番組へのリンクを印字したカップ飲料を300万杯限定で販売。コンドームの英デュレックスは、恋愛や性の悩みについて語るチャンネルを立ち上げた。 また、米ケンタッキー・フライド・チキンの店内に公式ラジオ局を作り24時間生配信をした番組は、1842万回再生・最大同時聴取数6万5000人を記録している。音声コンテンツのマネタイズ手法が多様化してきていると言えるだろう』、「もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する」、なるほど、同じ漢字を使っているとはいえ、日中の違いも大きいようだ。
・『なぜ日本の音声コンテンツは未成熟だったのか  急拡大しているアメリカや中国に比べると、日本の音声市場はようやく成長し始めたところだ。 市場の規模もそうだが、聴かれているコンテンツの内容についても、アメリカ・中国などの成長市場とは異なる。じっくり聴くタイプのポッドキャストやオーディオブックなどは、日本ではまだそれほど多く聴かれていない。音楽や、BGM的にさらっと聴き流すタイプのコンテンツが中心である。 音声の聴取は、大きく分けて2パターンある。一つは、例えば事務作業などの仕事をしているときや、勉強をしているときなど、視覚を使い、思考しているときに聴くものだ。聴くものは、思考の邪魔にならないような音楽などが中心となる。日本のラジオは比較的こちらに入るものが多いだろう。 もう一つは、体を使い、思考はそれほどしていないときに聴くものだ。家事や運動、何かの袋詰めや畑仕事など、反復作業をしているときをイメージしてもらうとよいだろう。こうした場合は、BGM的なものでなくても、思考や集中力が必要な学習コンテンツ、オーディオブックなどもマッチする。 日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ。 これはあくまでも私個人の印象なのだが、アメリカや中国などに比べて、日本ではこれまで、「視覚で楽しむ」傾向が強かったように感じられる。ユーチューブですら音を消して見る人が多いし、テレビ番組も、特にバラエティーや情報番組などでは字幕を多用し、視覚情報で楽しむ傾向が強い。このためか、これまでなかなか良質な「面白い」音声コンテンツが生まれる土壌がなかった』、「日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ」、後半部分は本当だろうかと疑問に思う。
・『「聴く習慣」の広がり  聴く習慣がないから良質な音声コンテンツが生まれないのか、良質な音声コンテンツがないから聴く習慣が生まれないのか。おそらくそのどちらでもあるのだろう。私がボイシーのサービスを立ち上げたときも、一番苦労したのは「聴く習慣」を広げることだった。 海外でポッドキャストが急成長している一方、日本でポッドキャストに注目が集まるようになってきたのはつい最近のこと。日本ではまだ、ポッドキャスト専門の制作スタジオや配信サービスは少なく、これまでは、ラジオ局が電波で流している番組をそのままポッドキャストに仕立てたものが多かった。「ポッドキャストといえば、英語学習者が海外の英語コンテンツを聴くためのもの」といったイメージもあったのではないだろうか。 世界的な広告代理店インター・パブリック・グループ・オブ・カンパニーズ(IPG)傘下のマーケティング調査会社であるマグナグローバル(MAGNA)は、日本でこれまでポッドキャストがなかなか伸びなかった理由として、日本ではもともと、海外に比べてデジタルで音声を聴く習慣がないことを挙げている。一例として、「スポティファイが上陸した2016年時点で、音楽市場の8割をCDが占めており、歴史的に、レコードレーベルは楽曲をストリーミングサービスに提供することに抵抗感を持っていた」ことを挙げている。 インターネットを介してアプリなどで聴ける音声コンテンツの老舗といえば、2010年にサービスを開始した「radiko(ラジコ)」がある。ラジオの電波が届かないところを補完する目的で始まり、当初は関東や関西の一部のエリアのみが対象だったが、徐々に対象地域やラジオ局が広がり、現在では民放ラジオ全99局の番組を聴くことができる。スマホのアプリで聴くことができるため、今では「ラジオは聴かないけどラジコは聴く」という若者も多い。 そして2010年代後半から、ほかにもさまざまな音声配信サービスが生まれ始めた。2016年にボイシーがサービスを開始しているほか、2017年には中国発のヒマラヤ、エキサイトの社内ベンチャーとして生まれた「Radiotalk」が始まった。 2018年には韓国の「Spoon(スプーン)」が上陸、ライブ配信やコミュニティー機能を持つ「stand.fm」も開始した。2020年になると、HIKAKINなどの人気ユーチューバーを抱えるUUUMが、「REC.」を立ち上げている。そして2021年に入り、音声SNSのクラブハウスブームが巻き起こったことで、「音声」にようやく注目が集まり始めた。 ただ実は、それよりも前の2020年12月の時点で、「1カ月に1回以上ポッドキャストを聴く人の割合」は14.2%、人口の推定で1123万人にまで増えていたことが、デジタル音声広告を手掛けるオトナルと朝日新聞の共同調査で分かっている。この調査では、ポッドキャストを聴いている人のうちの47.1%は、聴き始めたのが1年以内と回答。そのきっかけとして22.5%が、「スポティファイやAmazon Musicでポッドキャストが聴けるようになったから」と答えている。海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ。私自身も今年に入ってから、音声ビジネスに関する取材が急激に増え、他業界の人からも「ちょっと話を聞きたい」と声を掛けられることが多くなった。 その背景としては、グローバルの動きと同様、音声認識などのテクノロジーの進化と、スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンなどのデバイスの普及などがあるだろう。 デバイスの進化が進んでいたところに世界中を襲ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。感染拡大を抑えるために、各国でロックダウンや外出自粛が行われ、リモートワークが推進されるようになった。オンライン会議が増え、イヤホンをしながら仕事をする習慣が広がると同時に、いわゆる「Zoom疲れ」「パソコンやスマホの画面疲れ」も引き起こした。そうした人たちが、音声に目を(耳を)向け始めたのは、ある意味自然なことだっただろう』、「海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ」、なるほど。
・『クラブハウスの上陸による「気付き」  そのタイミングで上陸したのが音声SNSのクラブハウスだ。Zoomと違って画面がないので、着替えたり身だしなみを整えたりする必要がなく、何かをしながらでも気軽に参加できる。招待制、iPhoneのみの対応といったハードルにもかかわらず、人と自由に会えない生活が続き、気軽な雑談さえできない寂しさを埋めるのにちょうどいい場として、日本でも爆発的に参加者が増え、ちょっとした「クラブハウスブーム」が起きた。 アメリカのアプリ調査会社センサータワーによると、クラブハウスのユーザーは2020年の5月には数千人程度だったが、2021年2月19日にはアプリのダウンロード数が1000万を超えた。このうち700万は1月25日以降で、日本は約150万を占める。 ポッドキャストの場合、15分から30分程度のものも多いが、1時間程度の番組もあったりと、聴くのに比較的まとまった時間がかかる。一方クラブハウスは、より雑談を聴くのに近く、さまざまな会話が行われているルームを少しずつのぞき見(のぞき聴き)する感覚なので、時間の長さよりもタイミングが勝負。細切れの時間でも十分楽しめる。今まで、わざわざラジオやポッドキャストを聴いたりしなかったような、隙間時間にも入り込んできた。クラブハウスのおかげで「聴く習慣」がついた人も多いはずだ。 上陸から2、3カ月がたつと、当初のブームは沈静化したものの、多くの人が音声の可能性に目を向けるきっかけになった。クラブハウスで話してみて、これまでのテキストや動画での発信と、音声による発信の違いに気付いた人も多いだろう。 また、誰もが目の疲れを感じていたのではないだろうか。一日中パソコンやスマホの画面を凝視し続ける生活には限界がある。特にコロナ下のリモートワークでは、「Zoom疲れ」という言葉が聞かれたように、映像コミュニケーションを負担に感じたり、パソコン画面を見続けることに疲れたりして、画面から離れ目を休ませたいというニーズも増えたようだ。 当初は、「クラブハウスが出てきたせいで、日本の音声サービスは危ないんじゃないか」「海外サービスに蹂躙(じゅうりん)されるんじゃないか」といった意見をよく見かけたが、たくさんの人がクラブハウスを使い、特性について理解を進めるにつれ、そうした意見は聞かれなくなってきた。むしろ、クラブハウスによって日本の音声業界は活性化したし、私もそうしたメッセージを意識的に伝えてきた。 ボイシーについても、当初は「クラブハウスは競合になるのではないか」という見方をしていた人が多かったが、私自身は相乗効果を得られる相手だということを実感している。それはデータにも表れており、ボイシーのユーザー数はクラブハウス上陸前に比べて、3カ月で2.5倍になった。また、リスナーが増えただけでなく、「ボイシーでしゃべりたい」という人も増えた。 それは数字にもはっきり表れている。クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。 ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う。 クラブハウスブームの数カ月前までは、1カ月に5人くらいしか新しいパーソナリティーを増やしていなかったが、2021年2月には一気に50人ほど増えた。パーソナリティーへの応募数自体が増え(パーソナリティーは応募者の中からボイシーが選考している)、かつそのレベルも上がったからだ』、「クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。「ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う」、さて「クラブハウス」や「ボイシー」は今後、どうなってゆくのだろう。

次に、9月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した情報工場チーフ・エディターの吉川清史氏による「クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282749
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『「クラブハウス」ブームが示した「声」の可能性  2021年初頭のインターネット界隈で話題をさらったものといえば、「クラブハウス」が筆頭に挙がるのではないだろうか。これは周知の通り、米国発の「音声」に特化したSNSだ。本国でサービスがローンチされたのは2020年4月だが、2021年1月に本格的に日本上陸を果たす。すると、何人もの有名人が発信を始めたこともあり、またたく間に利用者が拡大、一大ブームとなった。 だが、3月に入る頃には、早くも人気が沈静化。もちろん使用が習慣化しているユーザーも少なくないのだろうが、今では話題に上ることも少なくなった。 人気が衰えた理由については、さまざまなメディアで考察されているが、おそらく、参加が「招待制」だったことが大きいのではないか。7月に「ベータ版」終了とともに自由に参加できるようになったが、当初は既存ユーザーから招待されなければ入会できず、しかも招待枠が1人2枠しか与えられていなかった。 また、5月にAndroid版アプリが配布されるまで、iPhoneでしか使えず、アプリの使い勝手も決して良いとはいえなかった。さらに、発信された音声は録音不可で、リツイートのように拡散できない仕様になっていた。クローズドなサービスのまま人気が爆発したために、ユーザー拡大のチャンスを逸したのだろう。 しかし、クラブハウスが示した「音声メディア」の可能性はついえたわけではない。フェイスブックは今年4月に、音声特化型SNSサービスの新設を発表、6月に米国で「Live Audio Rooms」という名でスタートした。ツイッターも、昨年12月からテストを行っていた音声チャットサービス「Space」を、今年5月からフォロワー数600人以上のユーザー限定で正式スタートしている。 アップルやアマゾン、スポティファイなどで配信されているポッドキャストの人気も高い。今年7月期放送の深夜ドラマ「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)は、元乃木坂46の伊藤万理華さん扮する主人公がポッドキャスト番組を始めるストーリーで、スポティファイのポッドキャスト番組との連動も注目された。 本書『ボイステック革命』では、国内の音声メディアVoicy(ボイシー)の創業者でCEOを務める緒方憲太郎氏が、クラブハウス人気で弾みがついた「ボイステック(音声関連のテクノロジー)」市場の現状と可能性について詳細に解説している。 緒方氏が主宰するボイシーは2016年に創業。現在、ビジネスのプロや芸能人などの「声のブログ」、4大マスメディアの記事が声で聴ける「メディアチャンネル」、企業が発信する「声の社外報」「声のオウンドメディア」など500以上のチャンネルが楽しめる音声プラットフォームとなっている。昨今の「音声ブーム」や、コロナ禍の「巣ごもり需要」もあり、昨年末時点で約100万人だった月間ユーザー数は、今年3月には約250万人と、急激に増加している』、ずいぶん急速に「月間ユーザー数」が増えたものだ。
・『「ながら聴き」と手軽な発信が音声メディアのメリット  緒方氏によると、音声メディアの最大のメリットは「ながら聴き」ができることだ。昔ながらのラジオも同様だが、流しておけば、家事や仕事、食事など何か別のことをしながら楽しめる。この点で音声は、テキストや動画に比べ、圧倒的に有利だ。 さらに、ながら聴きを容易にしているのが、Amazon Echo、Google Homeといったスマートスピーカーや、アップルのAirPodsをはじめとするワイヤレスイヤホンの普及だ。私の知人にも、仕事から帰宅してから寝るまで、ほぼワイヤレスイヤホンを付けっ放しという人がいる。 音声コンテンツを「発信」する側の手軽さもメリットだ。ポッドキャストの場合、スマホの録音ボタンをタッチしてしゃべるだけで、コンテンツができ上がる。10分のコンテンツを作るのに(録り直しをしなければ)10分しかかからない。テキストや動画の場合、こうはいかないだろう。動画は編集の手間と時間がかかるし、文章を書くにはそれなりの時間がかかる。 これまで多忙で、SNSなどに投稿する時間がなかった人たちでも、音声メディアならば気軽に発信側にもなれる。忙しくてスマホの画面チェックもままならなかった人でも「ながら聴き」で情報収集の幅を広げられる。このようにして音声メディアは、ネットコミュニティーへの参加者を格段に増やす働きをする可能性があるのだ。 そもそも、インターネット上の情報発信やコミュニケーションは、当初は技術的な制約からテキストベースで始まった。その後、日進月歩の技術進化により大きな画像や動画もストレスなく送信、閲覧できるようになったものの、利用者数の多いツイッターやLINEのコミュニケーションは、テキストによるものが主流だ。 テキストで伝えられる情報量は、リアルな対面に比べ圧倒的に少ない。画像や動画、さらにはVR(仮想現実)などが使えるのであれば、より多くの情報が伝えられ、コミュニケーションを深められるはずだ。それなのに、VRはさほど普及せずに、現状、多くの人がテキストのコミュニケーションで満足している。 おそらく現代のネットユーザーの多くは、「深いコミュニケーション」をネットに求めていないのだろう。それよりも、手軽さを優先させる。浅いコミュケーションや情報交換を、多く行う。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、著書『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)の中で、「浅く、広く、弱い」つながりこそが、これからの時代の人間関係のあり方と述べている。 おそらく、これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか』、「これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか」、なるほど。
・『声はうそをつかない その人の全てが表れる  緒方氏は、音声の「本人性」の高さも強調する。テキストは、たとえ署名があったとしても、本当に本人が書いたかどうかわからない。手書きならば筆跡でわかるかもしれないが、画面上の文字で判断するのは難しい。画像や動画も、いわゆる「盛っている」ことがままあり、アップした本人の本当の姿であることは、むしろまれだ。その点、音声は、声質や話し方に個性や「人となり」が表れやすい。 音楽・音声ジャーナリストの山﨑広子氏が著した『声のサイエンス―ーあの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』(NHK出版新書)によると、人が声を出す時には、口だけでなく、体のさまざまな器官を総動員しており、そのため声には、身長、体格、顔の骨格、性格、生育歴、体調から心理状態まで、その人の全てが表れる。言葉でうそはつけても、声はうそをつかないのだという。 緒方氏は、「ボイステック」の事例として、2012年に設立された医療系ボイステックベンチャー企業PSTによる、「声」をAI分析して、うつ病や認知症、パーキンソン病などの診断に役立てる試みを紹介している。 また山﨑氏は、私たちのほとんどは普段「作り声」を出しているが、「本物の声」を出すことで、心身を健全に保つとともに、人の心を動かせるのだと述べている。 ボイシーでは、人気を集めるパーソナリティー(メディアで話をする人)は、豊かな人生を生きる、人間として魅力のある人が多いのだそうだ。彼らはおそらく「本物の声」で話しているのだろう。そのために、話の内容だけでなく、その人の生き方が声を通して伝わり、ファンになるリスナーが後を絶たないとのことだ。 コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない』、「コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない」、「生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動き」であればいいのだが・・・。

第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462069
・『いまの社会は、SNSの発達などによりコミュニケーションツールは非常に充実しています。しかし、本当にそれによって私たちはコミュニケーションをうまく行えているでしょうか?ちょっと考えてみても、じつに怪しく心もとない感じがします。私は、SNSがじつは人間関係を結びつけるどころか、むしろ分断するツールになると思っています。その理由を拙著『読解力の強化書』をもとに解説します』、「SNSがじつは・・・人間関係を・・・分断するツールになる」、とは思い切った仮設だ。
・『ある現象によって分断されるアメリカ  SNSが私たちを分断するツールになる──。そんな危険性が巷に知られるようになったのは、2008年、バラク・オバマがマケインを破り大統領に就任した際の、選挙戦にさかのぼります。 当時、民主党のオバマ陣営はSNSを駆使してライバルに大きな差をつけて勝利しました。陣営と支持者たちの間で、SNSを通じてさまざまなやり取りが行われました。それが集票につながった、最初の大統領選挙だと言われています。 その後、あるリサーチャーによる調査によって、面白い現象が明らかになりました。民主党と共和党のそれぞれのブログコミュニティーのつながりを解析したのです。すると、それぞれのつながりの中で完結し、両党の間でのコミュニケーションがほとんど行われていなかったのです。 このことによって、SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるようになりました。 その後、共和党のドナルド・トランプが登場し、民主党のヒラリー・クリントン候補を破った大統領選挙では、この傾向にますます拍車が掛かりました。この頃から言われるようになったのが、「エコーチェンバー現象」と言われるものです。 エコーチェンバー現象とは、ある人物の意見や主張が、肯定され評価されながら、集団内のメンバーによって繰り返される現象を言います。それはあたかもこだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます』、「SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるように」、「エコーチェンバー現象」によって、「こだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます」、SNSの危険性を的確に指摘している。
・『主義主張の違うもの同士の対立を煽った  トランプの過激なツイッターの投稿が、支持者たちの間でリツイートされながら、エコーチェンバー現象によって大きな力になっていった。それによって巷の予想を裏切り、多くの支持を集めたトランプは大統領に就任します。 彼は大統領就任後もSNSの力を最大限利用し、ときに相手をおとしめ誹謗するかのようなツイートを上げながら、自らの支持者をより熱狂的なトランプ教の信者に仕立て上げます。彼が行ったことは、民主主義の下での国民同士の対話ではなく、主義主張の違う者同士の対立と敵対感情を煽り、結果的にアメリカを分断することでした。 その結末が、2021年1月6日、1000名近いトランプ支持者が、選挙の不正を訴え、バイデンの大統領就任を阻止するべく、連邦議会を襲撃した事件です。そして彼らの多くが、トランプこそがさまざまな陰謀からアメリカや国民を救う救世主であり、バイデンなどの民主党やその支持者は、自らの利権と権力をほしいままにするために真実を歪め不正を働く、悪の集団だと信じていました。 この事件によって、ここ数年の間でアメリカに深刻な社会的な分断が起きていることが明らかになりました。同質性の高い内輪のコミュニケーションだけで完結し、異質なものを排除する。エコーチェンバー現象によって自己正当化が行われ、対立や分断が深まる。その結果が、この事件だと言えるでしょう。 他者の存在を意識し、認識するところから始まる、本来の民主主義の理念はすでにそこにはありません。 代わってはびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです。 言葉を換えて言うならば、アメリカ人が対象を理解しようとする「読解力」を決定的に失ってしまった、ということに他なりません』、「はびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです」、ツイッター社やフェイスブック社が、「トランプ」のフェイクニュースなどを阻止したのも、SNSのマイナス面を意識した行動なのだろう。
・『「異質な意見」が入りにくくなりがちに  翻って日本はどうでしょうか?アメリカほど深刻な分断が起きているわけではありません。しかしながら、日本の場合は、社会全体が一つのコンセンサスに基づいて一元化しがちです。アメリカのように分断、分裂化するほどの社会的なダイナミズムがあるわけではありませんが、同調圧力が高く、エコーチェンバー現象が起きやすい文化的な土壌があるように思います。 その上にネットやSNSツールの持つ閉鎖性が重なることで、同じ考え方や価値観を持った、同質性の高い者同士でネットワークが完結し、異質な意見が入り込みにくくなりがちです。自分たちの考えや意見が、あたかも多数派のように錯覚してしまうのです。 自分にとって心地よく都合の良い情報ばかりに囲まれ、いつしかそれが当たり前になってしまう。しかもSNSでやり取りするのは、皆自分と同じ意見の人たちばかり……。それが続くとどうなるか? 自分の意見や価値観が大多数の意見だと錯覚し、自分にとって異質な情報、都合の悪い情報を受け入れる許容力がなくなってしまうでしょう。コミュニケーションツールはたくさんあり、その中でのやり取りは膨大ですが、その内容は非常に貧困でワンパターンなものばかりです。 一見コミュニケーションがたくさんあるようで、じつはコミュニケーション不全の状態といってよいでしょう。そこでは決定的に「読解力」が失われていくことになるのです。 その流れの中で起きているのが、ときに過剰に思える日本礼賛ムードだと思います。テレビの番組でも、相変わらず日本の伝統文化や科学技術などを外国人に紹介し、彼らが驚き、賞賛する様子を映すという、日本礼賛番組がゴールデンタイムに流されます。 このような日本礼賛ものは、最近はとくにYouTubeなどに比重が移ってきているように感じます。「中国人が日本のラーメンのおいしさに絶句!」「日本の街の美しさに驚く欧米人」といったタイトルの動画が目立ちます。 あたかも、日本人が他国民に比べて文化度が高く、手先が器用で繊細で、創造的なセンスにあふれた国民であるような気持ちになる。 ですが、ちょっと目を転じれば、多くの国々にもモノづくりの確固とした歴史や伝統があり、古くからの地場産業が栄え、世界的なブランドが出ている地域がたくさんあります。それらに目を向けようとせず、十分な比較や検証もなく、自分たちの文化が優れている、特殊だと考えるのは単なる思い込みで、自己満足的な妄想に近いのです』、「日本礼賛ムード」のなかでも特にいやらしいのは、政府が旗を振るクール・ジャパン運動や、NHKの番組だ。これについては、このブログの2019年8月26日にも取り上げた。
・『ワイプで人の表情を抜く目的は?  テレビの話が出たついでにもう1つ。ワイドショーなどで、出演者たちの表情をワイプ(注)で抜くことがいまや当たり前になっています。悲惨なニュースには悲しい出演者の顔を映し出し、楽しい話の時には笑顔が映る。30年ほど前にはなかった映像手法だと思います。果たしてそのような映像が必要かと私などは思いますが、ワイプで誰かの表情を確かめないと安心できないということなのでしょうか。 1つの出来事に対する反応や判断は人それぞれですから、いろんな反応、表情があったっていい。ところがワイプに出て来る表情は、皆同じです。もし、心和むような話の時に苦虫をかみつぶしたような表情をしていたら?きっとツイッターなどでさんざんに叩かれるでしょう。 ある出来事に対して、誰もが同じ感覚、同じ感情を持たなければいけない。そんな同調圧力のようなものを感じるのは、私だけではないと思います。 皆が笑っている時につまらなそうにしていたり、皆が悲しんでいる時に平然としていたりするのを許さない。いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか』、「いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか」、強く同感する。
(注)ワイプ:画面Aが紙芝居のように横に引き抜かれて、次の画面Bに替わること(Wikipedia)
タグ:SNS ソーシャルメディア (その10)(「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの、クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む、SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に) 日経ビジネスオンライン 「「クラブハウス」の狂乱が日本に残したもの」 緒方憲太郎氏による著書『ボイステック革命 ~GAFAも狙う新市場争奪戦~』 「「少なくとも月に1回はポッドキャストを開く人口」・・・はアメリカが26%、中国が29%と大きく、日本は8%にとどまっている」、これは大きな開きだ。ただ、「中国」が多い理由は何故なのだろう。 「スマートスピーカーは、今や「1家に1台」から「1部屋に1台」の時代になっているともいわれ、アメリカ人が音声コンテンツに触れる時間はどんどん長くなっている」、日本とはずいぶん違うものだ。 「同社が、「音楽の次」のコンテンツとして、ポッドキャスティングをターゲットとしているのは明白」、「今やアメリカの12歳以上の人口の37%がポッドキャストを聴いているとの試算も」、日米でこれほど違いがあるのも珍しい。 「もともと中国では、文字入力の煩雑さなどから音声入力のニーズが高く、音声認識の技術も進んでいた。そして現在の中国のポッドキャスト市場は、有料コンテンツのユーザーの多さが一つの特徴となっており、その規模は70億ドルと、アメリカの音声市場(130億ドル)の半分以上にも達する」、なるほど、同じ漢字を使っているとはいえ、日中の違いも大きいようだ。 「日本の音声コンテンツは、前者のBGM的なものは多くあるが、後者の、集中して聴き思考を要するものは諸外国に比較して少ない。情報欲求や学びの欲求が高まる中、思考や学びにつながる音声コンテンツの需要はもっと広がるはずだ」、後半部分は本当だろうかと疑問に思う。 「海外でのポッドキャストブームが、日本にも波及し始めていると言えるだろう。 日本でも「機は熟した」と言えそうだ」、なるほど。 「クラブハウスは、「誰かとしゃべりたい。人の声が聴きたい」という欲求は満たしてくれるが、やはり発信者にしてみると物足りなさが残る。話したことが残らないと、自分の世界観を表現し、維持したいという欲求は満たされないからだ。「ボイシーはおそらく、「自分の声を残しておきたい」「自分の場所をつくりたい」「フォロワーの反応も知りたい」といった欲求を持った発信者や、「クラブハウスで話すことの楽しさを知り、もっとやってみたくなった」という人たちの、受け皿になったのだと思う」、さて「クラブハウス」や「ボイシー」は今後、どう ダイヤモンド・オンライン 吉川清史 「クラブハウスが下火になっても「音声メディア」の可能性が広がり続ける必然~『ボイステック革命』(緒方憲太郎 著)を読む」 ずいぶん急速に「月間ユーザー数」が増えたものだ。 「これからもテキストによるコミュニケーションは主流であり続けると思われる。そして、それに次ぐネットでのコミュニケーション手段として「音声」が台頭してくるのではないだろうか」、なるほど。 「コロナ禍は、テクノロジーでは補強しきれない、生身の「人間」の弱さを改めて認識させることになった。GAFAをはじめとするテック企業が今、音声に注目するのは、もしかしたら生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動きなのかもしれない」、「生身の人間が持つ力を取り戻そうとする動き」であればいいのだが・・・。 東洋経済オンライン 佐藤 優 「SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に」 「SNSがじつは・・・人間関係を・・・分断するツールになる」、とは思い切った仮設だ。 「SNSは同質性の高い集団の中においてはコミュニケーションを活性化させる働きが強い一方、立場や意見が違う者同士を排除する閉鎖性が強いツールであることが指摘されるように」、「エコーチェンバー現象」によって、「こだまが鳴り響くかのように反響し、共鳴して、集団内で一層大きく強力なものになっていきます」、SNSの危険性を的確に指摘している。 「はびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです」、ツイッター社やフェイスブック社が、「トランプ」のフェイクニュースなどを阻止したのも、SNSのマイナス面を意識した行動なのだろう。 「日本礼賛ムード」のなかでも特にいやらしいのは、政府が旗を振るクール・ジャパン運動や、NHKの番組だ。これについては、このブログの2019年8月26日にも取り上げた。 「いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか」、強く同感する。 (注)ワイプ:画面Aが紙芝居のように横に引き抜かれて、次の画面Bに替わること(Wikipedia)
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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香港(その7)(「終刊号は100万部に」香港"リンゴ日報"を廃刊に追い込んだ習近平政権の誤算 言論封殺にはしっぺ返しが必ずある、中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける、中国の脅威に香港の日本人が続々帰国 残留する経営者の決断) [世界情勢]

香港については、昨年9月1日に取上げた。今日は、(その7)(「終刊号は100万部に」香港"リンゴ日報"を廃刊に追い込んだ習近平政権の誤算 言論封殺にはしっぺ返しが必ずある、中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける、中国の脅威に香港の日本人が続々帰国 残留する経営者の決断)である。

先ずは、本園6月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの沙鴎 一歩氏による「「終刊号は100万部に」香港"リンゴ日報"を廃刊に追い込んだ習近平政権の誤算 言論封殺にはしっぺ返しが必ずある」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/47451
・『香港から他国に拠点を移す企業が多く出ている  中国・習近平(シー・チンピン)政権に対する批判を続けてきた香港紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」が、6月24日付の朝刊を最後に発行を停止し、廃刊した。国家安全維持法(国安法)違反容疑で創業者や主筆、編集幹部らが次々と逮捕されたうえに資産が凍結され、発行が継続できない状態に追い込まれたのである。 これは言論の封殺だ。中国という国は世界第2位の経済大国に成長しても、一党独裁体制の過ちを反省することなく、民主主義の土台となる言論の自由を香港から奪い去った。自由な国際金融都市として大きく発展してきた香港市場も、国際社会の信頼を失い、後は衰退するのみである。すでに香港から他国に拠点を移す企業が多く出ている。 蘋果日報は1995年6月創刊で、発行部数は約10万部で香港第2位、ネット版の閲覧数は香港で最大だ。扇情的なイエロージャーナリズムと批判されたこともあったが、反中国政府・親民主派のスタンスが香港市民の自由と民主主義を求める意識と呼応して、読者を獲得してきた。 ちなみに「蘋果」は中国語でリンゴのことだが、創業者の黎智英れい ちえい氏=英名ジミー・ライ、今年4月に有罪判決を受けて服役中=によれば、新聞名はアダムとイブが食べたリンゴに由来する。アダムとイブがリンゴを口にしなかったら世界に善も悪もなく、ニュースもないという意味だという』、興味深そうだ。
・『中国政府にとっての「政治」とは国民を弾圧すること  蘋果日報の廃刊は、一国二制度の下で認められてきた香港の言論の自由が、国安法という悪法によって崩れ去ったことを意味する。 だが、沙鴎一歩は「ペンは剣よりも強し」という諺を固く信じる。言論を封殺するような習近平政権は、やがて国際社会から見捨てられ、必ず崩壊する。 中国政府は天安門事件(1989年6月)以来、自由と民主主義を求めて立ち上がる知識人や学者、学生、市民を繰り返し弾圧してきた。習近平政権の傀儡に過ぎない香港政府は、自由のために抗議デモを続ける香港市民を力ずくで抑え込み、昨年6月には無期懲役を最高刑とする国安法を制定し、運動家などを次々と逮捕した。 中国政府にとって国民を弾圧することこそが、政治なのである。沙鴎一歩はそんな中国に生まれなくて本当に良かったと思う。 この7月1日、中国共産党は創設100周年を迎える。習近平政権はその祝賀ムードを盛り上げるために中国政府を批判する民主派の一掃に余念がない。中国では国家よりも党が上に位置する。このため習近平・国家主席は、1982年以来廃止されている「党主席」を狙っている』、筆者が「「ペンは剣よりも強し」という諺を固く信じる」、のは勝手だが、報道の自由がない世界では通用しないのではなかろうか。
・『逮捕された香港の運動家は、臓器を抜かれる恐れもある  習近平政権は香港と同様に「絶対に譲れない核心的利益」とみなす台湾と新疆しんきょうウイグル自治地区を軍事的に弾圧している。日本の尖閣諸島(沖縄県)周辺海域では、中国海警船が侵入を繰り返しては日本の漁船を追い回す。東・南シナ海では巨大軍事力を背景に軍事要塞を次々と作る。中国の国際的脅威は増すばかりである。 いまの中国は「ならず者国家」と批判されても文句は言えないだろう。国際社会は中国に対して軍事的優位に立つアメリカを中心に包囲網を築き、中国に対して圧力を加えていくべきだ。 どうしても気になるのが、逮捕された香港の活動家たちの命である。国安法の最高刑が死刑ではなく無期懲役とはいえ、服役中に病死と偽って殺すことも可能だろう。 さらに中国では死刑囚に麻酔をかけて眠らせ、その体から心臓や肝臓などの臓器を摘出し、移植用の臓器として海外の患者に売り払うことが続いてきた。摘出された心臓はひとつ1億~2億円で闇取引されていたという。中国政府は2015年に、刑執行後に死刑囚の臓器を摘出する慣行を廃止するとしているが、実態はわからない。そもそもそうした慣行があったこと自体がおそろしい』、「中国では死刑囚に麻酔をかけて眠らせ、その体から心臓や肝臓などの臓器を摘出し、移植用の臓器として海外の患者に売り払うことが続いてきた」、恐ろしい国だ。これがOECD加盟国とは・・・。
・『ジャーナリズムの原点は権力に屈しない反骨精神にある  6月25日の毎日新聞の社説は「りんご日報の廃刊 許されぬ香港の言論封殺」との見出しを立てて、その冒頭部分でこう訴える。 「24日付が最後の紙面となった。『別れの書』と題した社説は『報道の自由は暴政の犠牲となった』と憤りを込め、読者と香港を『永遠に愛する』と結んだ」 「1995年に創刊され、共産党批判からゴシップまでタブーを恐れない紙面作りで知られた。昨年6月の国安法施行後も民主派支援の論調を貫いた」 「党批判を恐れない」。そこに蘋果日報の素晴らしさの本質がある。ジャーナリズムの原点は、権力に屈することのない反骨精神だ。中国政府を恐れ、香港の新聞やテレビなどが次々と権力批判を中断するなかで唯一蘋果日報だけが批判を続けた。 はたして日本のメディアはどうだろうか。日本の新聞社やテレビ局もそうあってほしい。とくに新聞の社説は、ときの政権の誤った政策をきちんと正す主張を展開し、首相や閣僚らをうならせてほしい』、「日本の新聞社やテレビ局」の場合、忖度や自主規制が目立つことは、このブログのメディアで紹介している通りだ。
・『最後の蘋果日報は通常の10倍以上の100万部を発行  毎日社説は指摘する。「国際都市としての香港の信頼は決定的に損なわれた。言論の自由があればこそ、中国と外部を結ぶ情報の窓口として存在感を発揮できた。共産党体制の内実を知る貴重なルートだった」「国際金融センターの地位も揺らぐ」 前述したが、香港から自由な国際金融都市の姿はなくなり、各国の企業は撤退のスピードアップを図る。香港から自由を奪うことで経済的に大きなダメージを被るのは、中国本土の経済である。潤滑な香港経済があったからこそ、中国の経済は大きく成長した。そこは習近平政権も理解しているはずだ。なのになぜ、香港を悪法でがんじがらめにするのだろうか。 一党独裁国家の頂点に君臨する習近平氏は、自由と民主主義を求めて立ち上がる香港市民が怖いのだ。独裁が民主主義の手で倒されてきたことは、歴史が証明している。習近平氏は独裁者ゆえの自己防衛に走り、自らの地位を維持し、さらには地位の向上を狙っている。 最後に毎日社説は「蘋果日報の危機を知った多数の人が買い求め、最後の新聞は通常の10倍以上となる100万部が発行された。言論の自由を支えようとする香港市民の強い意思表示である」と指摘し、次のように主張する。「抑圧下にあっても自由の価値を信じる人々を、国際社会は孤立させてはならない」 香港市民は中国政府によって命を奪われることさえある。それにも屈せずに彼らは戦ってきたし、これからも戦う意思を示している。今度は欧米や日本などの民主主義国家で構成する国際社会が、断固として中国の習近平政権の悪業を追及しなければならない』、「毎日新聞」が「社説」で主張しても、「中国政府」にとっては痛くも痒くもないだろう。
・『「言論封殺は度を越している」「断じて容認できない」と読売社説・・・。
・『国安法による逮捕者は100人を超えた  読売社説は書く。 「蘋果日報は、国安法の施行後も中国批判を続け、自由で多様な香港社会を代弁する最後の砦となっていた。中国企業の出資に頼る香港メディアが増える中、経営の独立を保つ貴重な存在だった」 「最後の砦」が打ち破られたわけだが、習近平政権も返り血を浴びているはずだ。それが証拠に香港の国際金融センターの機能や地位が消滅しつつある。 その点に関し、読売社説も「国安法による逮捕者は、この1年で100人を超えた。蘋果日報の事例は、香港の民主派やグローバル企業をさらに萎縮させ、『中国化』を加速させることになろう。国際金融センターとしての地盤沈下は避けられまい」と指摘している。 最後に読売社説はこう主張する。 「習近平国家主席は、『愛される中国』の国際イメージ作りを指示したばかりだ。一連の言論封殺は自らの言葉を踏みにじる行為である。これでは、国際社会の信用を失うだけではないか」 その通りである。何が、どこが「愛される中国」なのだ。中国の度重なる強権ぶりを見ていると、「嫌われる中国」としか思えない』、「「国安法による逮捕者は、この1年で100人を超えた・・・国際金融センターとしての地盤沈下は避けられまい」、「中国の度重なる強権ぶりを見ていると、「嫌われる中国」としか思えない」、同感である。

次に、8月23日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/447387
・『香港は、中国経済にとってきわめて重要な役割を果たしている。香港経由の迂回輸出とすると、関税を回避できる場合がある。さらに重要なのは、金融面での役割だ。これまで、中国企業のIPOの大半は香港市場で行われた。アメリカ市場でのIPOが規制されると、香港の役割はますます強まるだろう。 中国が「一国二制度」を踏みにじれば、こうしたメリットは失われる。それは中国経済に深刻な打撃を与えるだろう。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第50回。 中国は、香港の民主化運動の弾圧を強めている。 6月24日、香港最大の民主派新聞「蘋果日報(アップルデイリー)」が廃刊となった。 中国当局による香港民主化運動の弾圧がついにここまで来たかと、全世界に衝撃を与えた。 1年前の2020年6月、中国の全国人民代表大会常務委員会は、香港での反政府的な動きを取り締まるための「香港国家安全維持法案」を、全会一致で可決した。 これは、「一国二制度」を踏みにじるものであり、中国はいずれ香港を併合してしまうのではないかとの懸念が広がった。 その後の動きを見ると、警察は同法を使って、活動家や民主派の元立法会議員などを相次ぎ逮捕し、収監した。そして、アップルデイリー廃刊事件だ。1年前の懸念は的中しつつあるように思われる。 では、中国共産党は、このまま、まっしぐらに香港併合に向けて進むのだろうか? 経済活動の側面から見ると、それはきわめて難しいと考えられる。 なぜなら、香港は中国経済のために不可欠な役割を果たしており、併合してしまえば、その役割を果たせなくなるからだ。 では、香港は、中国にとってどのような役割を果たしているのか? これには、貿易の側面と金融の側面がある。まず、貿易面を見よう。 2019年において、中国の輸出相手国の第1位はアメリカ(4186億ドル。中国輸出総額の17%)だが、第2位は香港だ(2797億ドル。同11%)。これは対日、対韓の合計(同10%)より多い。 通信設備、コンピューター設備、集積回路設備などが中国から香港に輸出されている。 もちろん、これらは香港で使われるわけではない。中国の製品は、香港に持ち込まれたあと、世界各地に輸出される。つまり、香港は中国の対外貿易の中継点になっているのだ。 2019年において、香港の輸出総額は5357億ドル。うち対米が391億ドルだ。 なぜこうしたことをしているのか? 香港からの輸出とすれば、関税を軽減できる場合があるからだ。 とくに重要なのが、アメリカの「香港政策法」(1992年成立。1997年7月1日に、香港が中国に返還されると同時に効力が発生)だ。これは、中国製品に課している関税を、香港には適用しないという優遇措置だ。 米中貿易戦争によって中国の多くの対外貿易が阻害されたとしても、香港というパイプがあれば、中国は多くのことをすり抜けられる。 香港は中国にとっての合法的な「貿易障壁の抜け道」なのだ。 これを見直されると、中国経済には大きな打撃になる。そして、後述するように、アメリカでは見直すべきだという動きが実際に生じている』、「香港は中国にとっての合法的な「貿易障壁の抜け道」なのだ」、「中国」が「香港」の「一国二制度」を否定するのであれば、米国も「香港」への特典はなくすべきだろう、
・『香港が果たす金融面での役割  金融面において香港が果たす役割は、もっと本質的で、もっと重要だ。 中国では強い資本規制が実施されており、当局が金融市場や銀行システムに介入する。しかし、香港には資本規制がない。香港市場は、世界有数の自由で開放的な市場だ。 このため、中国企業は、香港の株式や債券市場を利用して、外国資金を呼び込むことができる。 外国企業は、中国大陸に進出する際に、香港を足掛かりにする。外国から中国への直接投資も、中国から外国への直接投資も、大半は香港経由で行われる。 1997年に中国が香港の管轄権を回復して以来、香港は何兆ドルもの資金調達を行い、中国と世界をつなぐパイプ役となってきた。 資金調達の第1の形態は、新規株式公開(IPO)だ。 工商銀行などの国有企業も、IT大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)などの民間企業も、大手中国企業のほとんどは、香港に上場している。 最近では、すでにアメリカ市場で上場を果たした中国企業が香港で上場する動きもある。 阿里巴巴(アリババ)集団は、2014年にニューヨーク証券取引所でIPOを実施したが、2019年11月に香港への重複上場を果たした。 2020年6月には、インターネットサービス大手の網易(ネットイース)やネット通販大手の京東集団(JDドットコム)も相次いで香港に上場した。 そして、アメリカ・ナスダック市場に上場している中国IT大手の百度(バイドゥ)は、2021年3月、香港証券取引所にも上場した。重複上場はバイドゥで15社目になる』、「中国企業」の「米国市場上場」については、情報開示に後ろ向きなことから、上場を認めない方向になりつつあり、その場合、「香港」がますます脚光を浴びることになる。
・『中国当局は中国企業のNY上場を制限  最近起こった滴滴(ディディ)のIPO直後の当局による規制強化事案に見られるように、中国当局は、中国企業がニューヨーク市場で新規上場するのを制限する方針だ。そうなると、香港市場の役割はさらに増すだろう。 リフィニティブのデータによると、2018年の中国企業によるIPOを通じた資金調達額は642億ドルであり、世界全体のIPO総額のほぼ3分の1を占める。そのうち、香港上場の上場での調達額は350億ドルだ。それに対して、上海と深圳は197億ドルにとどまる(Reuters, 2019.9.5) また、香港ドルは米ドルに連動しているため、国際決済通貨で資金調達できることになる。香港市場への上場は、外国企業の買収や国外投資に向けた国際決済通貨を入手できることを意味するのだ。 中国企業はまた、香港を通じ、銀行の融資および社債の発行という形で多額の資金を借り入れている。 中国企業が昨年海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルのうち、33%を香港の債券市場が占めた(Reuters, 2019.9.5)。 香港の経済規模は、1997年には中国大陸の18.4%もあった。この比率は、2018年には、2.7%に低下している。 しかし、表現の自由や、独立した司法が保証する国際金融センターとしての地位は、中国の他の都市によって代替することはできない。 香港には、中国内外の金融・ビジネス関係者が公平で非政治的な取引を行うことのできる欧米型の法・規制制度がある。法の支配、有能な規制当局、低い税率、自由な資本移動、英語の使用といった面で、香港は中国本土のライバル都市と比べて大きな違いがある。 上海市場と深圳市場は、以前に比べれば利用しやすい市場になったと言われる。しかし、投資家は、香港における法的保護のほうが依然望ましいと考える。このため、上海市場でさえ、近い将来に香港の役割を果たすことはできないだろうと言われる』、「香港」の「欧米型の法・規制制度」は、今後多少は中国型に近づくだろうが、それでも「上海市場と深圳市場」よりは遥かに自由な市場だろう。
・『中国軍が乗り出せば香港の地位は傷つき、中国にも打撃  こうした仕組みを運営できるのは、「一国二制度」という独特の統治制度があるためだ。この制度の下で、香港には中国本土にはない表現の自由や独立的な司法などの自由が保障されてきた。 これが保障されないことになれば、「安定した国際金融センター」「世界から中国本土への投資の玄関口」という香港の地位は、深刻なダメージを受ける。 貿易面でもそうだ。アメリカが香港に対して「香港政策法」で特別扱いをしてきたのは、香港が中国政府から独立していると判断してきたためだ。それが保障されなければ、アメリカが同法を修正することもありうる。 トランプ政権時代の2020年5月、ポンペオ国務長官(当時)は、香港がもはや中国本土からの自治を維持していないと判断していると議会に伝えた。そして、ドナルド・トランプ前アメリカ大統領は、2020年7月、香港への優遇措置を撤廃する大統領令に署名した。 一部のアメリカ上院議員は、「香港政策法」を修正し、香港を中国本土と別の関税エリアとする扱いを変更する意向を示唆している。 中国政府が今後も香港で強権的な弾圧を続けるなら、海外の投資家は、香港を捨て、シンガポールなどの信頼度が高い金融センターに取引を移す可能性がある。 そうしたことが起きれば、中国経済に対して、きわめて大きな打撃となるだろう』、「中国」が予想以上に早いスピードで「香港で強権的な弾圧」を続けているのは、私も予想外だった。どうも、「中国政府」は政治を重視して、「中国経済に対して、きわめて大きな打撃となる」ことを覚悟の上で「強権的な弾圧」を続けているように思える

第三に、10月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国の脅威に香港の日本人が続々帰国、残留する経営者の決断」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284031
・『香港を去る住民が増えている。駐在員のみならず、香港で独立起業した日本人でさえも、香港を後にしている。外国人だけではない。一部の香港人は共産化する香港を恐れ、逃げようとしている。今、香港に住むすべての人々に迫られているのが、「去るか、残るか」の決断だ。香港との一蓮托生を選んだある日本人の心境を追った』、「香港で独立起業した日本人でさえも、香港を後にしている」、とはよほどのことで、驚かされた。
・『日本人の間で飛び交う「帰国の挨拶」  「この秋に日本に帰国します。長い間お世話になりました」――そんなメッセージがスマホに着信する。最近、香港に住む多くの日本人の間でこうした「お別れメッセージ」が飛び交っている。 香港で25年にわたり生活してきた鶴見国光さん(52歳)の元にも「帰国の挨拶」が届いた。メッセージの送り主は、駐在員期間中に香港に魅了され、脱サラして起業した香港在住歴30余年のエキスパート。「とうとう彼も日本に帰国してしまうのか…」と、鶴見さんは嘆息する。 1年の中で駐在員の異動が集中するのは2~5月といわれているが、2021年のこの時期は、「送別会ばかりで歓迎会はほとんどない」という寂しい状況となった。理由の一つが新型コロナウイルスだ。香港の日系企業ではリモートワークが定着し、日本人駐在員を帰国させ、現場はローカルスタッフに任せるという動きが加速した。 香港にはさまざまな日系企業が集まっている。ここを中継貿易の拠点にする企業もあれば、中国や東南アジアに進出するための足掛かりとする企業もあり、多くの日本人が居住していた。外務省の資料によれば、近年は2万4000~2万6000人の水準を保っていた。 もっとも、在外公館に在留届を提出していなかったり、あるいは帰国時に届け出なかったりするケースもあり、数字は必ずしも実態を反映していない可能性もある。現地に長く暮らす日本人の間では「すでに2万人を割り込んで、今や1万人ほどなのでは」といった声も聞こえる』、「脱サラして起業した香港在住歴30余年のエキスパート。「とうとう彼も日本に帰国してしまうのか…」、日本を離れて「30余年」も経てば、日本とのつながりも薄くなるだろうが、これでも「帰国」せざるを得ないのは、やはりよほどのことなのだろう。
・『香港人は「移民の決断」に頭を悩ませている  ここを後にするのは日本人だけではなかった。香港では今年8月28・29日の土日を利用し、香港会議展覧センターで2回目となる「国際移民と不動産EXPO」が開かれた。事前の入場予約者は2万8000人だったという。少なくともこれだけの人数が「とどまるのか、それとも去るのか」という大きな決断に思い悩んでいることがうかがえる。 鶴見さんの周辺でも、2021年に入ってから、英国へ4家族、オーストラリアへ2家族、シンガポールへ1家族の合計7家族が移民したという。 「ある程度の資金力があり、また英語圏で仕事ができるという若い世帯を中心に、移民を決断する人は多いです」(鶴見さん) 特に小さい子どもを抱えている世帯は、今後の教育環境の変化を相当心配しているようだ。確かに香港では、教科書検定で「三権分立の原則」が削除されたり、香港全域の学校で中国国旗掲揚や中国国歌斉唱などの活動が行われたりするなど、2019年の反政府活動の反動で、中国共産党の支配色がよりいっそう強くなっている。 家族の団結が強いことでも知られる香港市民だが、若い世帯は「自分の親と子ども」を天秤にかけざるを得ない状況に直面している。年老いた親を残す呵責にさいなまれつつ、若い家族は脱出を考える。2019年の反政府デモ以来、社会は親中派と反中派の分断をもたらしたが、「家族にまで“分断の危機”をもたらしてしまいました」と鶴見さんは無念がる。 鶴見さんの香港歴は25年になる。1996年から香港に駐在し、駐在終了後に退職すると、2016年から日系の三宝不動産香港本店で働き始めた。その後「のれん分け」をしてもらい、三宝不動産九龍支店を設立し、現在は賃貸事業の経営者として奔走する日々を送っている。香港人の妻との間に18歳になる息子が1人いる。その鶴見一家に「日本への本帰国」という選択肢はあるのだろうか。 「確かに本帰国は考えましたが、妻の生活や息子の進路を思えば、日本への帰国は現実的ではありません。何より、私自身が25年も日本を離れてしまっています。私たちはここで生きていくしか道はありません」』、「若い世帯は「自分の親と子ども」を天秤にかけざるを得ない状況に直面している。年老いた親を残す呵責にさいなまれつつ、若い家族は脱出を考える」、悩ましい選択だが、親より子どもを選択する人の方が多いのではなかろうか。
・『香港は「生活者で回す経済」に  鶴見さんの仕事は不動産仲介業だが、そのビジネス環境にも変化が表れる。コロナ禍以前は、多くの日系企業が反政府デモに揺れる政治情勢を様子見していたが、感染拡大を経て国際情勢の見通しが利かなくなる中で、事業規模を縮小あるいは撤退する企業が目立つようになった。在宅勤務も定着した。今の鶴見さんの仕事を回転させているのは、ダウンサイジングを前提とした「引っ越し需要」である。 「旅行やビジネスも含め、海外から香港に来る人もいなくなり、香港経済は生活者だけで回さざるを得ない状況です。不動産賃貸も例外ではなく、厳しい状況が続いています。そんな中でも、『部屋をきれいに使い、家賃の滞納もない日本人に貸したい』というオーナー側のニーズがあるのは有り難いことです。新しく接するオーナーに日本ファンを増やしていく、それが私のもう一つの使命だと思っています」 金融、観光、物流で繁栄した香港だが、反政府デモの混乱とその後のコロナ禍により、香港経済が受けたダメージは決して小さいものではない。とりわけ、デモが激化する以前の2018年時点で観光客の約8割を中国大陸に依存した香港の観光業は、深刻な状況に陥っている。 香港特別行政区の面積は1110平方キロメートル、そこには311のホテルがある。香港の面積は札幌市とほぼ同等で、札幌市にも303のホテルがある(2019年7月現在)。しかし、香港の総客室数は8万6700室と、実に札幌市(総客室数は3万3049室)の2.6倍だ。コロナ前夜まで、香港もまたインバウンドバブルに沸いていたのだ。 中国人客を狙い、無数に店舗数を広げたドラッグストアもシャッターが下りたままだ。香港特別行政区の統計によれば、2019年は2.9%だった失業率が、2020年は5.8%に倍増している』、「コロナ前夜まで、香港もまたインバウンドバブルに沸いていた」、のであれば、影響は深刻だろう。
・『今後の香港は悲観的なのか?  とはいえ、暗い話ばかりではないようだ。買い物客でにぎわう日系大手量販店もあれば、店舗を増やす日系飲食業もあり、コロナ禍で日本に行けない香港人向けの商戦が活発化している点は見逃せない。鶴見さんも「日系飲食業からの賃貸店舗物件の問い合わせが増えています」と話している。 直近の香港の賃貸市況も悪くはない。過去を振り返れば、2019年6月に反政府デモが大規模化したが、それ以前の5年間は、小・中型(40~69.9平方メートル)の物件を中心とした香港の住宅賃料は同年8月まで上昇傾向が続いていた(数字は香港特別行政区の統計)。デモの長期化と暴徒化とともに、8月以降相場は下落を始めたが、最近は下げ止まった感がある。 今後の香港をどう占うのか。中国政府による香港政府への介入がより強まれば、移民を選択する市民はさらに続出するだろう。2015年に729万人だった香港の人口は、2019年には750万人にまで増えたが、2020年には748万人に減少した。 香港では2000年代から、中国マネーがもたらした住宅価格の高騰をはじめ、諸物価の上昇が市民生活を直撃し、富の偏在が社会問題化して若者の不満が蓄積していた。香港の中国返還(1997年7月1日)以降は、住環境の改善、政府退陣、教育と言論の自由などを求める反政府デモが散発していたものの、ある程度の秩序は保たれていた。 しかし、「逃亡犯条例」で火がついた2019年の大規模な反政府デモはあまりにも暴力的で、社会の安定と秩序を揺るがす結果となってしまった。こうした一連の流れを経験した香港市民の中には、中国政府の香港政策で社会が安定することを願う人々が一定数いることも事実だ。 日系企業の駐在員や独立起業した日本人の中には、流転する香港の運命に身を委ね、香港で生きていくことを選んだ人もいる。そこには「一般の市民生活まで脅かされることはないだろう」という推察や希望もある。 今の鶴見さんに本帰国の選択肢はない。だが、決して香港の将来を「悲観一色」だけでは捉えていない』、「香港の人口は、2019年には750万人にまで増えたが、2020年には748万人に減少」、2021はもっと減っているのだろうが、2020年までの減り方はそれほど多くないようだ。「住宅価格」の騰勢も一服した筈だ。政治的な面を除けば、暮らし易くなってきたのかも知れない。
タグ:香港 (その7)(「終刊号は100万部に」香港"リンゴ日報"を廃刊に追い込んだ習近平政権の誤算 言論封殺にはしっぺ返しが必ずある、中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける、中国の脅威に香港の日本人が続々帰国 残留する経営者の決断) PRESIDENT ONLINE 沙鴎 一歩 「「終刊号は100万部に」香港"リンゴ日報"を廃刊に追い込んだ習近平政権の誤算 言論封殺にはしっぺ返しが必ずある」 筆者が「「ペンは剣よりも強し」という諺を固く信じる」、のは勝手だが、報道の自由がない世界では通用しないのではなかろうか。 「中国では死刑囚に麻酔をかけて眠らせ、その体から心臓や肝臓などの臓器を摘出し、移植用の臓器として海外の患者に売り払うことが続いてきた」、恐ろしい国だ。これがOECD加盟国とは・・・。 「日本の新聞社やテレビ局」の場合、忖度や自主規制が目立つことは、このブログのメディアで紹介している通りだ。 「毎日新聞」が「社説」で主張しても、「中国政府」にとっては痛くも痒くもないだろう。 「「国安法による逮捕者は、この1年で100人を超えた・・・国際金融センターとしての地盤沈下は避けられまい」、「中国の度重なる強権ぶりを見ていると、「嫌われる中国」としか思えない」、同感である。 東洋経済オンライン 野口 悠紀雄 「中国が香港を併合したくてもできない決定的理由 弾圧を強化すれば経済面で大きな打撃を受ける」 「香港は中国にとっての合法的な「貿易障壁の抜け道」なのだ」、「中国」が「香港」の「一国二制度」を否定するのであれば、「香港」への特典はなくすべきだろう、 「中国企業」の「米国市場上場」については、情報開示に後ろ向きなことから、上場を認めない方向になりつつあり、その場合、「香港」がますます脚光を浴びることになる。 「香港」の「欧米型の法・規制制度」は、今後多少は中国型に近づくだろうが、それでも「上海市場と深圳市場」よりは遥かに自由な市場だろう。 「中国」が予想以上に早いスピードで「香港で強権的な弾圧」を続けているのは、私も予想外だった。どうも、「中国政府」は「中国経済に対して、きわめて大きな打撃となる」ことを覚悟の上で「強権的な弾圧」を続けているようだ、 ダイヤモンド・オンライン 姫田小夏 「中国の脅威に香港の日本人が続々帰国、残留する経営者の決断」 「香港で独立起業した日本人でさえも、香港を後にしている」、とはよほどのことで、驚かされた。 「脱サラして起業した香港在住歴30余年のエキスパート。「とうとう彼も日本に帰国してしまうのか…」、日本を離れて「30余年」も経てば、日本とのつながりも薄くなるだろうが、これでも「帰国」せざるを得ないのは、やはりよほどのことなのだろう。 「若い世帯は「自分の親と子ども」を天秤にかけざるを得ない状況に直面している。年老いた親を残す呵責にさいなまれつつ、若い家族は脱出を考える」、悩ましい選択だが、親より子どもを選択する人の方が多いのではなかろうか。 「コロナ前夜まで、香港もまたインバウンドバブルに沸いていた」、のであれば、影響は深刻だろう。 「香港の人口は、2019年には750万人にまで増えたが、2020年には748万人に減少」、2021はもっと減っているのだろうが、2020年までの減り方はそれほど多くないようだ。「住宅価格」の騰勢も一服した筈だ。政治的な面を除けば、暮らし易くなってきたのかも知れない。
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日韓関係(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) [外交]

日韓関係については、7月25日に取上げた。今日は、(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果)である。

先ずは、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448082
・『韓国メディアの“オフレコ破り”によって解任、帰国に追い込まれた在韓日本大使館・相馬弘尚公使の事件は、韓国メディアのどうしようもない反日体質と、日本の対韓外交の難しさを改めて印象付けている。 外交官の異動には通常、発令後1カ月近くの時間的余裕が保障されているが、相馬・前公使は発令からわずか10日後の2021年8月11日、追われるように帰国となった。 帰国に際し本人は「2次被害を避けるため」と電話口で苦笑していたが、内心、忸怩たるところがあっただろう。再起を期待したい』、新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。
・『「オフレコ」が通じない韓国メディア  相馬公使は韓国をよく知るいわゆる“コリア・スクール”のエリート外交官である。これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官だった。今回はそれが逆にアダとなった形で、韓国メディアの罠にはめられてしまった。今、この事件をめぐって在韓日本人たちの間の共通の懸念は「これで日本大使館の外交官たちが萎縮しなければいいが……」である。 事件のポイントは2点ある。1つは「妄言」として外交問題になり、解任の理由となった「文在寅大統領に対する性的な不適切発言」の問題であり、もう1つはその発言の場になった韓国の特定メデイアとのオフレコ(非公開)懇談の問題である。 事件としては前者が大騒ぎになり印象的だが、実態的には「これじゃ韓国は信頼できない!」という意味で、日韓関係的には後者のほうがより重要である。 問題になった韓国メディア「JTBC」との昼食懇談は2021年7月15日、メデイア側の要請で行われた。場所はメディア側が準備した大使館近くの洋食レストラン。相馬公使と面識のある先輩記者が、後輩の大統領官邸担当の女性記者を紹介する形だった。懇談の中身は主に日韓関係の現状についてで、時期的には文大統領の東京五輪開会式出席のための訪日問題が取りざたされているときだった。 伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし  オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし  オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。 今回、相馬公使にとっての不幸を一言でいえば「相手が悪かった」である。JTBCのメディアとしての傾向、体質についてはすでに触れた。 これとは別に、懇談の相手が女性記者だったことが事件につながったと思う。韓国社会は近年、男女差別や性的問題に極めて敏感である。公的人物や有名人のセクハラ問題が、非難や告発事件として毎日のようにメディアを賑わせている。メディアはそのことに鵜の目鷹の目、虎視眈々である』、「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。
・『男女差別や性的問題に極めて敏感な韓国社会  したがって、今の韓国では「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は、そこだけを抜き出していえば十分問題になりうる。今回、仮に担当の女性記者はその場でことさら羞恥心を感じず問題視しなかったとしても、帰社した後、周囲にそのことを語れば周りは間違いなく「セクハラじゃないか!」と騒ぐ。とくに相手が日本外交官だったということを聞けば。 日本大使館は報道があった後、7月17日の午前2時(!)過ぎに「相馬妄言事件」について大使名義の公式コメントを発表し「懇談中の発言とはいえ外交官として極めて不適切で大変遺憾であり、厳重に注意した」と頭を下げた。日本国内でも加藤勝信官房長官が記者会見で同様の見解を発表しているが、日本政府としては「コトが大統領がらみ」と「韓国世論への刺激」を考え、外交問題化を避けようと早期鎮火のため素早く頭を下げたというわけだ。 外交的にはこの措置はやむをえなかっただろう。これまでの経験からも、韓国社会はメディア主導(世論)で反日妄言キャンペーンが始まるとブレーキが利かなくなるからだ。しかも問題が「性的な不適切発言」とあっては勝ち目はない。 韓国における近年の日本外交官受難史をひもとけば、発言をめぐっては高野紀元大使(2003~2005年)の「竹島発言」問題が印象深い。日本の島根県が「竹島の日」を制定したことに反発、韓国で反日ムードが高まっていたときだった。 ソウル外信記者クラブの昼食会見で竹島問題を質問された際、「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」という日本政府の公式見解を述べたところ、これが韓国メディアによって「日本大使がソウルのど真ん中で妄言!」と報じられ、日本大使館に連日、反日デモが押し掛ける騒ぎになった。日本の国を代表する日本大使が、公式の場で問われて日本の国家としての公式見解を語ることが「妄言」として排撃、非難される。 当時、この事件でおじけついた日本大使館は竹島問題での想定問答を作成し、できるだけ具体的には触れず「従来の立場に変わりはない」程度にとどめるようにしたと記憶する。ことなかれ主義で萎縮してしまったのだ。 今回、「マスターベーション」はまずかったとして、だからといって日本外交官が韓国相手の対外情報発信において萎縮したりいじけては元も子もない。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。相馬公使は日韓情報戦争で韓国メディアのテロに遭い、"戦死"したようなものである。駐韓日本外交官たちは、途中下車を余儀なくされた相馬公使の“弔い合戦”の気概が求められる』、「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。

次に、9月10日付けNewsweek日本版が掲載したニッセイ基礎研究所 准主任研究員の金 明中氏による「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」を紹介しよう。
・『<反日・親北の李在明氏、知日・親北の李洛淵氏、対日協力と対北強硬姿勢の尹錫悦氏> 来年3月に行われる韓国大統領選をめぐり、進歩(革新)系与党「共に民主党」と保守系最大野党「国民の力」が候補者を絞り出す予備選挙を始める等、11月上旬の候補選出に向けた争いが本格的に始まった。与野党の候補者の中でも最も注目されているのが与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン、以下、李洛淵氏)前代表と、同じ与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、以下、李在明氏)京畿道知事、そして、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル、以下、尹錫悦氏)前検察総長の3人である。 大統領選挙の雰囲気が熱くなると、特に対日政策と対北朝鮮政策が注目される。その理由は対日政策と対北朝鮮政策が選挙結果を大きく左右する要因になるからである。 例えば、朴正熙政権(大統領任期:1963年12月17日 - 1979年10月26日)、全斗煥政権(同 1980年8月27日 - 1988年2月24日)、盧泰愚政権(1988年2月25日 - 1993年2月25日)時代には北朝鮮に対する反共主義が「万能薬」のように使われた』、「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。
・『大統領選の行方を左右  しかしながら、金泳三(同1993年2月25日 - 1998年2月25日)政権時代の1995年10月の村山富市総理発言(「日韓合併条約は当時の国際関係等歴史的観点から法的に有効に締結したものだと認識している」)や江藤隆美総務庁長官発言(「日本は植民地時代に韓国に良いこともやった」)、1996年2月の池田行彦外務大臣の竹島(韓国名・独島)領有権主張(韓国政府が発表した竹島での接岸施設建設計画発表に対し「竹島は日本固有の領土」であると抗議、建設中止を求めた)以降、韓国国内で反日感情が高まると、金泳三政権は世論を意識して反日姿勢を強化する等、日韓関係は政権の維持や獲得において重要な手段として使われることになった。 さらに、初めて国民の選挙により政権交代が実現された金大中政権(同 1998年2月25日 - 2003年2月25日)以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった。金大中政権、盧武鉉政権(同 2003年2月25日 - 2008年2月25日)が「太陽政策」など親北路線を強化したからだ。但し、北朝鮮に対する反共主義は過去に比べて影響力は弱まったものの、南北が分断されており、徴兵制度が残っている韓国においては相変わらず重要な選挙手段の一つとして使われている。 では、上述した3人の大統領候補者の対日・対北朝鮮政策はどうだろうか。まず、与党・共に民主党の李在明氏から見てみよう。人口約1300万人の京畿道知事である李在明氏は、マスコミにより過去のスキャンダルや失言が報じられている中でも、与党の次期大統領選挙候補レースで不動のトップを維持している。9月4日には韓国の中部、大田・忠南で与党「共に民主党」の候補を決める予備選が始まり、李在明氏は得票率54.8%で勝利し、順調な滑り出しを見せた。2位の李洛淵氏(27.4%)を大きく上回る数値だ。ちなみに、「共に民主党」は9月4日から10月10日まで全国11か所で順次、党員と、事前登録した国民による投票を行い、最終候補者を決定する』、「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。 
・『「問題は日本国民ではなく保守右翼」  李在明氏の対日政策は、過去に対日強硬派とも言われるほど強い発言が目立っており、今後もこの姿勢はある程度維持されると考えられる。彼は2018年3月1日の3.1節行事で「侵略国家がその責任で分断・占領されるのが歴史の法則であるが、代わりに朝鮮半島が分割・占領された」と述べながら分断の悲しさを強調した。そして、今年の7月2日に行われたオンライン記者会見では「私を反日的だと評価する人がいるが、私は日本を嫌ったり、日本国民に対して反感は持っていない。(中略)問題は日本の保守右翼政治集団である。(中略)日韓関係は同伴者的関係で、お互いに認めて行くことが正しい。その過程が屈辱的になってはならない。(中略)容赦は被害者がするものである。加害者がするのは容赦ではない。問題をすべて明らかにし、必要なものはお互いに受け入れて認めるべきである。そうすることで新しい未来、合理的関係が開かれると思う」と主張した。 対北朝鮮政策は、基本的に文政権の親北政策を維持しながら、場合によっては文政権とは差別化した政策を展開する可能性がある。上述の7月2日の記者関係では、今後の南北関係に対する質問に対して「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家である我々がなぜ分断されなければならないのか」と南北に分かれている現実を嘆きながら、「米中葛藤が朝鮮半島に及ぼす影響はとても大きいが、どちらかに巻き込まれず自主的立場から南北関係を解決すべきであり、そこから危機を乗り越えるのみならず、新しい機会を作ることができると思う」と答えるなど南北関係改善に期待感を表明した。 一方、8月22日に発表した「大転換時代に統一外交構想」では韓国と北朝鮮の絶対多数は朝鮮戦争以前の単一国家を経験していない世代であることを強調しながら、「今後は単一民族に基づいた必然的統一論理では国民の同意を得ることができない。(中略)統一外交政策も理念と体制を乗り越えて韓国と北朝鮮両方の成長と発展に役に立つ実用的方向への転換が必要だ」と強調した。一方、北朝鮮が間違った行動をした場合には明確に韓国政府の立場を伝える。そして北朝鮮の呼応がない状態で南北協力事業を一方的に進めないと主張する等、文政権とは差別化した対北朝鮮政策を実施する可能性を示唆した。 次は、与党「共に民主党」の李洛淵氏の対日政策と対北朝鮮政策を見てみよう。李洛淵氏の対日政策は、李在明氏より、そして現在の文政権より親日になる可能性が高い。李洛淵氏は、東亜日報(韓国の大手紙)の東京特派員を務めた経験もあり、韓国の政治圏内では「最高の知日派」として知られている。しかし支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている』、「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。
・『竹島の削除を要求  支持率を意識したのか、東京オリンピックの参加をめぐって世論が分かれていた今年の5月には自分のフェイスブックに、東京オリンピック・パラリンピックの公式ホームページに掲載されている日本の地図に、竹島(韓国名・独島)が表示されていることについて、「直ちに削除することを要求する」と書いた。また、東京オリンピック・パラリンピックのボイコットを含めて可能なすべての手段を使い、断固対応すると主張した。知日で親日派と言われている彼がここまで極端的な行動をしたことに対して、専門家らは日本に対する強硬な姿勢で支持基盤を拡大した李在明氏や文大統領を意識した可能性が高いと解釈している。 対北朝鮮政策について李洛淵氏は、文政権の政策を継承する立場を明らかにした。2020年10月21日に外国のマスコミ向けに開かれた記者会見で、「現政権の対北朝鮮政策について、部分的に補完することはあり得るが、大枠では継承することが正しいと信じる」と述べた。 最後に、尹錫悦氏は対日政策と対北朝鮮政策についてまだ明確に言及していないが、日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い。尹錫悦氏は今年の8月に政策ブレーンとなる政策諮問団42人を公開しており、42人には昨年末まで文政権で北朝鮮の核問題を総括した李度勲(イ・ドフン)前外交部朝鮮半島平和交渉本部長らが含まれている。対日政策と対北朝鮮政策共に文政権の失敗を強調しながら、次々と具体的な代替案を発表すると予想される。) 最近、野党「国民の力」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員の支持率上昇が目立っているが、大きな変数がない限り、上述の3人のうち、一人が韓国の第20代大統領になる可能性が高いと考えられる。今後3人がどのような対日政策と対北朝鮮政策を発表するのか今後の3人の動きに注目したい。 (■韓国第20代大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策等」の表はリンク先参照)』、「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。

第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461861
・『慰安婦や徴用工問題など、日韓関係をこじらせる問題は韓国でどのように研究されているのか。韓国では史実よりも感情的に連呼されている。では、韓国で日本の植民地時代とその後の事実を究明する研究はないのか。韓国在住40年、日本を代表する朝鮮半島ジャーナリストが発掘し、日本で翻訳出版された『帰属財産研究―韓国に埋もれた「日本資産」の真実』(李大根著、金光英実訳・黒田勝弘監訳、文藝春秋)から、そのポイントと現実的意義を紹介する。 最悪といわれる日韓関係がここまで悪化しているのは、慰安婦問題や徴用工問題など歴史にかかわる韓国側の執拗な要求、対日非難が背景にある。日本側は過去についてはすでに1965年の国交正常化の際「清算され解決済み」と主張しているのに対し、韓国側は「いや個人補償の権利はある」といって韓国内の日本企業の資産を差し押さえし、売却を強行しようとしている』、「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。
・『日本が朝鮮半島に残した資産は数千億ドル  実は歴史的に日本は敗戦後、朝鮮半島からの撤収に際して膨大な資産を彼の地に残しているのだ。これによって韓国経済は発展した。その実態を多くの資料を駆使し、実証的に分析・研究した本が、韓国で2015年に出版された李大根氏の著書『帰属財産研究』だ。 本書は、戦前の朝鮮半島における日本資産の形成過程と戦後のその行方を追求したものだが、われわれには「戦後の行方」のほうが興味深い。1945年の終戦当時、朝鮮半島には約100万人の日本人がおり、うち7割が民間人だった。すべての日本人が着の身着のまま、両手に下げ背負える荷物とわずかな現金だけを持って強制退去させられた。 財産は公私を問わず、企業・個人財産も含めすべて没収された。接収された日本人企業は約2400社。日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある。これらの日本資産は進駐米軍経由ですべて韓国に譲渡され、解放・独立後の韓国経済を支えた。 ところで、韓国との過去補償問題の背景にはいわゆる請求権問題がある。日本が撤収した後、アメリカ軍政を経て韓国は独立した。1950年代に入り国交正常化交渉が始まり、相手側に残した資産に対する「請求権」が問題になった。韓国側は日本の支配による人的・物的被害を日本に請求し、日本側は逆に韓国に残した資産を根拠に「むしろ日本側がもらうべきだ」などと主張して大もめした。 最後は日本側が経済協力資金5億ドルを提供し、請求権つまり補償問題は「完全かつ最終的に解決された」とされ、国交正常化が実現した。韓国内では「植民地支配の補償としては少なすぎる」と反発が強かったが、国交正常化と経済開発を急ぎたい当時の朴正熙政権は戒厳令などによって反対論を抑え、交渉妥結を決断したという経緯がある。 5億ドルは、正確に言えば相互の請求権による相殺金額では必ずしもない。請求権(補償)を言い出すと交渉がまとまらないため、お互い請求権を放棄するような形で「経済協力資金」として政治的・外交的に処理されたのだ。これで韓国側は補償問題の「完全かつ最終的な解決」に同意したが、その裏には膨大な日本資産が韓国に残されていたという事実があるのだ。その後、韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施している。したがって慰安婦問題や徴用工問題で個人補償が必要なら韓国政府が対応すれば済む話だが、そこを改めて日本を引き込むという外交問題にしているため、問題がこじれている』、「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。
・『「敵の財産」を生かし経済成長を遂げた韓国  朝鮮半島に残された日本資産は、まず戦勝国のアメリカ軍によって接収された。「帰属財産」というのはアメリカ軍が名付けた英語の「VESTEDPROPERTY」の訳である。歴史的にはこれが正式名称になる。 しかし韓国では「敵産」と称してきた。「敵の財産」という意味だ。対日戦勝国ではないにもかかわらず、戦勝国つまり連合国の一員になった気分でそう名付けたのだ。評価の分かれる言葉とも言えるが、そう表現することで日本資産を自分のものにする根拠にしたのである。 だから、日本資産は当初は「アメリカに帰属」し韓国のものではなかった。それが1948年、李承晩政権樹立で韓国政府が発足したのを機に韓国に移管、譲渡された。うち電気や鉄道、通信、金融機関など公的資産の多くは国公有化され、企業や商店など民間の資産の多くは民間に払い下げられた。 本書ではその経緯と実情が詳細に紹介されており、結果的にそうした「帰属財産」が韓国の経済発展の基礎になったというのだ。著者によると「歴史的事実を無視、軽視してきた韓国の既成の歴史認識に対する研究者としての疑問」が研究、執筆の動機だという。 現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている。時の経過でその事実を知る人も少ない。 一方で、例えば現在の韓国の財閥規模3位にある「SKグループ」はその痕跡がわかる珍しい企業だ。日本統治時代の日本の繊維会社「鮮京織物」を入手し、その名残である「鮮京(ソンキョン)」の頭文字を今も使っている。戦後は「鮮京合繊」として石油化学に手を広げ、やがて移動通信、半導体など先端系まで含む大企業グループになった。 また、学術書である本書にはこうした具体的な企業名が登場するわけでは必ずしもないが、少し調べるとわかるものもある。ビールや焼酎でお馴染みの大手飲料メーカー「ハイト眞露グループ」は自社の来歴として、日本統治時代の大日本麦酒(サッポロ・アサヒ)系の「朝鮮麦酒」を「帰属財産」として受け継いだと明記している。ライバルの「OBビール」もキリンがルーツである。 さらに、ソウル都心にある一流ホテル「朝鮮ホテル」は日本時代の総督府鉄道局経営の「朝鮮ホテル」がルーツで、当初はアメリカ軍が軍政司令部として接収。軍政終了で韓国側に譲渡され民間のホテルになったという経緯がある。また、同じ都心に位置するサムスン・グループの流通部門のシンボル「新世界百貨店」は日本時代の三越百貨店だ。ロッテ・ホテル向かいにあるソウル市庁舎別館は近年までアメリカ政府の文化センターだったが、元は三井物産京城支店でこれも「帰属財産」である。基幹産業の韓国電力はもちろん「帰属財産」が土台になっている。 紹介すればきりがない。とはいえ、「帰属財産」あるいは「敵産」を活用し、企業および経済をここまで発展させてきた韓国の努力は大いに評価されるべきだろう。日本人にとっては「もって瞑すべし」かもしれない。 ところで以上のようなことを現在、日韓の外交的懸案になっている徴用工補償問題に関連させればどうなるか。補償を要求され韓国で資産を差し押さえられている日本製鉄(旧・新日鉄)は、朝鮮半島にあった工場(多くは北朝鮮)などの資産を残している。しかも日韓国交正常化後、韓国で建設された浦項製鉄所(現在のPOSCO)には韓国政府が日本から受け取った経済協力資金(韓国的には請求権資金)が投入され、日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう』、「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう」、確かに踏んだり蹴ったりだ、
・『感情的に流される日本研究  「帰属財産」という名の日本資産について、戦後の日本は1952年の対日講和条約で国際的にその請求権を放棄したことになっている。したがって、日本では個人補償の要求の声はない。ところが韓国は1965年の日本との国交正常化条約で「完全かつ最終的に解決した」と約束したのに、「個人請求権は存在する」として改めて日本に補償要求をしているという構図になる。この理屈だと、韓国からの引き揚げ日本人も残してきた個人資産について個人補償を韓国に要求できるということになる。これは国際的約束を守るかどうかの違いである。 以上は李大根教授の著書に対する筆者(黒田)なりの読み方である。しかし経済史学者による学術書としての本書の核心は、日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である。 その意味では、先に日本でもベストセラ―になった李栄薫編著『反日種族主義』(日本語版、文藝春秋刊)とも一脈通じるところがある。それどころか、著者は経歴的には李栄薫氏の先輩格にある。 ただ、こうした主張は「植民地近代化論」といわれ、「日本の歴史的罪」ばかりを主張する韓国の学術界やメディアに対して1980年代から「学問的良心」として奮闘を続けているが、いまだ大勢を変えるには至っていない。「帰属財産」をテーマにした今回の実証研]、究は、韓国に根強い観念的で一方的な反日歴史認識に改めて一石を投じるものだ』、「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。
タグ:「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」 「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」 「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。 「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。 「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。 「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。 金 明中 Newsweek日本版 「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本 「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。 「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。 「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。 日韓関係 (その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) 東洋経済オンライン 黒田 勝弘 「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」 新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。 「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。 「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。 「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。 「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。
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金融業界(その11)( みずほ「システム障害」4題:金融庁は異例の措置でガバナンスを問題視 第1回 みずほ「システム障害」が終わらない真因、顧客のセグメント化で「中小企業切り」との批判 第2回「数十年に1度」の営業店改革に顧客の不満爆発、「3メガバンク」の比較だけでは不十分 第3回 12の指標で読み解くみずほの実力と弱点、抜本改革にはトップの外部招聘が必要との声も 第4回 みずほ、システム障害の裏にある根深い「病巣」) [金融]

金融業界については、10月1日に取上げた。今日は、(その11)( みずほ「システム障害」4題:金融庁は異例の措置でガバナンスを問題視 第1回 みずほ「システム障害」が終わらない真因、顧客のセグメント化で「中小企業切り」との批判 第2回「数十年に1度」の営業店改革に顧客の不満爆発、「3メガバンク」の比較だけでは不十分 第3回 12の指標で読み解くみずほの実力と弱点、抜本改革にはトップの外部招聘が必要との声も 第4回 みずほ、システム障害の裏にある根深い「病巣」)である。ただし、第2回以降は後半の有料部分は除いた。

先ずは、10月8日付け東洋経済Plus「金融庁は異例の措置でガバナンスを問題視 第1回 みずほ「システム障害」が終わらない真因」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28391
・『みずほフィナンシャルグループのシステム障害が止まらない。事態を重く見た金融庁は、検査の途中で業務改善命令を出すという異例の措置に出た。だが、当局が問題視しているのはシステムだけではない。 今のままでは、いつまでたっても障害が収まることはなく、今後、永遠に続くのではないか──。 システムを担当するみずほ銀行の中堅行員は、こんな不吉な“予言”を口にする。 みずほでは、今年2月から9月にかけて、実に8回ものシステム障害が発生。6月には、原因を調査した第三者委員会の報告を受けて抜本的な再発防止策を打ち出したものの、その後も相次いで障害を起こすなど、まさに泥沼の様相を呈している。 中でも影響が大きかったのは、1回目と5回目の障害だ。 1回目の障害では4318台のATMが停止し、カードや通帳が取り込まれる事態が相次いだ。原因となったのは、定期預金のデータ移行作業。2月末という取引集中日にもかかわらず移行作業を行ったため、メモリーが容量不足を起こしてしまったのだ。他行やシステムの関係者は「月末に作業をするなんて考えられない」と呆れ顔で、みずほの甘い考えが招いた障害だった。 8月20日に発生した5回目の障害では、店頭取引が停止した。9時から45分間にわたってすべての店頭取引ができず、融資や外国為替の取引に至っては11時58分まで影響が続くありさまだった。こちらは機器故障が原因だったが、顧客に対する周知の遅さも問題となった。 システムが停止したのが8月19日の午後8時57分。20日未明には、システム担当者に「開店に間に合わない可能性があると連絡がきていた」(システム担当者)にもかかわらず、みずほがホームページにお知らせを掲載したのは午前8時30分と開店のわずか30分前で、あわよくば障害を隠そうとしていたフシがあったからだ。 こうした障害が「永遠に続くのでは」とシステム担当者がみるのにはわけがある。それは、障害の原因を詳細に見ていくとわかる』、「1回目の障害」の原因はソフトウェアや機器ではなく、システム運用の問題だ。「5回目の障害」では「機器故障が原因」だった。「ホームページにお知らせを掲載したのは・・・開店のわずか30分前で、あわよくば障害を隠そうとしていたフシがあった」と非難しているが、故障が回復するのを待っていた可能性があるのではなかろうか。
・『手つかずの古い周辺システム  みずほは2019年に新しい勘定系システム「MINORI」を導入。口座や融の残高管理、利息計算などを担う銀行の中核システムで、開発に約8年の歳月と4500億円もの大金を投じた。 だが、実は新しくしたのは勘定系システムのMINORIだけ。ATMや営業店端末などをつなぐ周辺のシステムは、「古い設計のものがいまだに使われている」と前出のシステム担当者は指摘する。 上の図は、複数の関係者への取材を基に、みずほの現行システムの構成と障害が発生した箇所をまとめたものだ。 これを見ると、周辺システムはMINORI開発計画の対象外とされ、手付かずとなっていたことがわかる。MINORIと周辺システムの仕様がマッチしていないことから、MINORI側の停止は防げても、予想に反してATMなど周辺機器やシステムが停止してしまうのだ。 さらに、機器故障の多さも目につく。これは「メーカーの保守期限を超えた機器を、いまだに使用しているから」(前出のシステム担当者)。保守の切れた部品を大量に確保し、壊れたら交換するという方法でしのいでいるといい、中には「保守が切れてから、10年以上使っているものもある」(同)というから、起きるべくして起きた障害と言っても過言ではない』、「周辺システムはMINORI開発計画の対象外とされ・・・MINORIと周辺システムの仕様がマッチしていないことから、MINORI側の停止は防げても、予想に反してATMなど周辺機器やシステムが停止してしまう」、仮に「周辺システム」を残すとしても、「仕様」の「マッチ」には十分に検証すべきだった。「メーカーの保守期限を超えた機器を、いまだに使用している」、には開いた口が塞がらない。
・『システム分野のコストカットが仇に  なぜこうした状況を放置してきたのか。背景には、みずほが目下、最重要課題として取り組んでいる経費削減がある。 超低金利が長きにわたるなど昨今の金融環境を鑑みれば収益を劇的に向上させるのは無理な話で、コストカットが喫緊の課題。とくにみずほは3メガの中でも経費率が高く、店舗や人員をはじめとするコストカットに邁進してきた。 中でも、コストカットの圧力をかけられていたのがシステム部門だった。「前年対比で10%程度の予算削減を毎年のように迫られていた」と別のシステム担当者は明かす。システムの維持には、どうしても一定のコストがかかるため、さらに減らすとなれば保守費用を削るしかない。結果的に、保守に十分な手が回らない体制ができあがってしまったわけだ。 削減しているのは予算だけではない。MINORI移行期間に大量投入された人員も、移行完了と同時に大幅に削減されている。 例えばシステム管理を担うみずほリサーチ&テクノロジーズでは、2018年3月末に1051人いたMINORIに関わる人員が2021年3月末には345人まで減少、FGや銀行でも、一定役職以上の人員が76人から65人に減っており、「人事部付で出向待ちのような状態になっている人もいる」(みずほ幹部)という。 しかしシステム分野は、ほかのメガバンク幹部が「銀行にとって最も重要な『基盤』であり、コストカットなどありえない」と指摘するように、ヒトとカネを最も割かなくてはいけない分野。つまりみずほは、システムを軽視し続けてきたわけだ。 こうしたシステム軽視は、障害が続いている現在も変わっていない。システム部門からは、「数十人規模のシステム経験者のリストを作り、人員補充をお願いしている」(システム担当)というが、「検討されている形跡はない」(同)という。こうした現状に、「現経営陣は危機をやり過ごすことに必死で、障害の原因を根本的に解決しようという考えはない」と言い切る行員も少なくない』、「システム分野は、ほかのメガバンク幹部が「銀行にとって最も重要な『基盤』であり、コストカットなどありえない」、とあるが、「コストカット」に聖域などないのが常識で、この表現はいささか誇張が過ぎるようだ。
・『当局の怒りは尋常ではない?  金融庁もこうした状況を把握しており、みずほに対し厳しい目を向けている。その怒りの大きさは、金融検査中の今年9月に業務改善命令を出すという「異例」の措置に表れている。 今年2月からシステム障害をめぐる金融検査に入っていた金融庁は、みずほが再発防止策を発表したことを受けて、8月ごろに業務改善命令を出す準備を進めていた。ところがだ。まさに処分を発表しようとしていた8月20日、みずほは5回目の障害を起こしてしまう。 その後も障害が相次ぎ、止まる気配はまったくない。 この期に及んでみずほが「(新規のサービス展開を含む)能動的なアクションを起こそうとしている」(金融庁幹部)といい、金融庁は「少なくとも今はそういう局面ではない」(同)と怒り心頭。「もうみずほ自身に任せておくことはできない」(同)と異例の改善命令に突き進んだというわけだ。 金融庁からの処分は、今回の改善命令にとどまらないと見られている。今回、わざわざ注意書きまでつけて、「全般的な検証は継続する。その結果を踏まえて、改めて必要な行政対応について検討する」とクギを刺しているためだ。 複数の関係者によれば、この言葉には「システムだけを問題にしているわけではない」という意味が隠されているという。金融庁がシステム障害の原因として「3行が合併してから今に至るまで培われてきた組織風土やガバナンスにある」と見ているというのだ。 みずほは当初、みずほ銀行の藤原弘治頭取の首を差し出すことで事態の収拾を図ろうとした。しかし金融庁は、これにストップをかける。「人事は当事者が判断する話。ただ、その判断の理由が世の中に納得のいく形でないといけない」(金融庁幹部)。つまり、根本的な問題解決を図らずに首にすることでお茶を濁すようなことは許さないというわけだ。 金融庁は「一個人の適性には着目していない」(前出の金融庁幹部)という。また、「社外取締役を含めた、組織としてガバナンス体制が機能しているかが重要」としており、それを聞いた他のメガバンク幹部は「組織をゼロから作り直すかのような、再出発を図れとのメッセージなのではないか。金融庁の怒りが尋常でないことの表れだろう」と解説する。 「免許制の銀行にとって、金融庁のいうことはある意味、絶対。しかしみずほは金融庁とのコミュニケーションが取れていなかったことに加え、変に前向きなところがあって『話せばわかってもらえる』とどこか舐めていたフシがある。そうした対応が金融庁の怒りに油を注いでしまったのだろう」(他のメガバンク幹部) 事実、坂井辰史FG社長が事情を説明しようと金融庁の中島淳一長官に面会を申し込んでも拒むほど。最近になってようやく面会できたというが、「金融庁の意図を理解できないみずほに、行動をもってわからせようという意思の表れではないか」(同)とみられている。 まさに窮地に陥るみずほだが、問題はシステムやガバナンス面だけではない。「みずほ 解けない呪縛」の第2回ではビジネス面からみずほが直面する問題について見ていく』、検査の最中に「異例の改善命令に突き進んだ』要因の1つに、「みずほが「(新規のサービス展開を含む)能動的なアクションを起こそうとして」いたとは、初めて知ったが、確かにみずほの正気を疑いたくなるような有様だ。「金融庁の怒りに油を注いでしまった」のも当然だ。

次に、この続き「顧客のセグメント化で「中小企業切り」との批判 第2回「数十年に1度」の営業店改革に顧客の不満爆発」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28392
・『システム障害の終わりが見えない中、みずほは営業店の大改革を始めた。しかしそのタイミングや内容に、顧客からは不満が噴出している。 「久しぶりにみずほの支店に行ったら、『法人の取引はできない』と門前払いされた」 都内で中小企業を営む社長は憤りを隠さない。この社長が通っていたみずほ銀行の支店が突如、個人に特化した店舗に変わってしまったからだ。 社長は「別の支店を案内されたが、3駅も先。しかも予約が必要と言われ、その日は受け付けてもらえなかった」と嘆き、「これからは、みずほに合わせてスケジュールを組まなければならなくなった。急に出入金しなければならないときはどうすればいいんだ」とため息をつく。 この社長のように、支店で対応してもらえればまだいいほう。より小さな企業に対しては、「今後、支店での対応ではなく、リモートで対応するという手紙が届いた」(40代の男性経営者)というのだ。この男性は「みずほは、われわれのような小さくて儲からない客はいらないということだろう」と、取引銀行の変更を検討しているという』、「法人の取引」については、超大企業はみずほコーポレート銀行が、それ以外をみずほ銀行が担当していたのが、ワンミズホで両行が合併した経緯がある。この間、他のメガバンクは、企業取引は各支店の法人営業部
が、個人取引を支店が担当するように営業体制を再編成した。みずほの場合、漸く再編成を始めたが、取引先への根回しなどが不十分で混乱したようだ。
・『拙速な改革に戸惑う現場  このように、最近、みずほ銀行の営業体制に対する批判が相次いでいる。原因は、みずほフィナンシャルグループ自ら「数十年に1度」と評する大規模な営業店改革だ。 改革の詳細は後述するが、みずほは2021年5月から、新しい営業店体制を導入した。一言でいえば、法人・個人双方の取引すべてができるフルバンキング型の店舗から、顧客属性に合わせた店舗の体制に移行したのだ。 だが、その移行はあまりにも拙速だった。当初、移行は4月に予定されていたが、相次ぐシステム障害によって延期。「障害の解決には時間を要するため、改革は早くても来年というのが支店の共通認識だった」(営業担当の20代行員)。 ところが蓋を開けてみれば、延期の期間はわずか1カ月で5月から移行しろとの命が下る。「システム障害に関して不安に思う顧客が多く、お詫びに走り回っていたのに、そんなタイミングで営業店の移行も実行するなんて。大慌てで顧客の元に出向いて説明に回っているが、上は何を考えているのか」(同)と行員たちも困惑している。 混乱のしわ寄せは、当然顧客に向かう。結果、いきなりの店舗改革に顧客の不満が爆発しているというわけだ』、顧客へ十分に説明して、納得を得たかを確認すらしなかったようだ。
・『内部資料が示す改革の全貌  今、手元にみずほがまとめた「新営業店体制業務運営マニュアル」と題した文書(上写真)がある。 これは東洋経済が独自に入手したもので、改革の概要や具体的な現場対応などをまとめた行員用のマニュアルだ。これを見れば現在みずほが進めている改革の全貌がわかる。ここからはマニュアルを通して、改革の詳細を見ていくことにする。(あと有料のため紹介終了)』、「新しい営業店体制を導入」には、取引先や営業現場の混乱を避けるため、周到に用意すべきだが、よりにもよって「システム障害」の真っ最中とは、最悪のタイミングで、愚策を繰り出したものだ。

第三に、この続き「「3メガバンク」の比較だけでは不十分 第3回 12の指標で読み解くみずほの実力と弱点」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28393
・『業績や財務面からみたみずほの実力はどうなっているのか。各社の決算データなどから12の指標を抽出し、3メガバンクグループ、さらには、りそなグループとの比較も交えて解説する。 システムトラブルの続発で出口の見えないみずほフィナンシャルグループだが、直近の決算数字は決して悪くない。 これまで、3メガバンクグループの中で規模が最下位で、経費率も高止まりしていた。 だが、2021年3月期は手数料収入の拡大で、銀行の収益力を示す業務純益が大幅に改善。 経費率(営業経費÷業務粗利益)では三菱UFJフィナンシャル・グループを抜いて、2位になった。 利益が積み上がった結果、2019年度から始まる5カ年計画で掲げた自己資本比率9%台という目標に到達。比率でみると他の2メガにまだ劣るが、みずほとしては、買収や新規事業など戦略投資に資金を振り向ける余裕が出てきている。 ただ、このほかにさまざまな指標でメガバンク同士を比較すると、必ずしもみずほが順風満帆とは言えないことが分かる。ここからさらに8つの指標を見ていく。(あと有料のため紹介終了)』、「経費率・・・では三菱UFJフィナンシャル・グループを抜いて、2位になった」、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」も「経費率」で「みずほ」に抜かれるとは情けない。

第四に、この続き「抜本改革にはトップの外部招聘が必要との声も 第4回 みずほ、システム障害の裏にある根深い「病巣」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28394
・『今年に入って相次ぐシステム障害は、技術的な問題よりも、みずほに巣くう根深い病巣にこそ原因があるとの声が根強い。 「組織として(リスク管理や危機対応が)本当にワークしているのか、もう一度よく考えるべきだ」 みずほ銀行による7度目のシステム障害を受けて、金融庁が検査期間中の業務改善命令という異例の処分を下した今年9月下旬。金融庁の幹部は、厳しい表情でそう語った。 第1回の「みずほの『システム障害』が終わらない真因」でもお伝えしたが、金融庁は一連のシステム障害の原因について、技術的な問題点よりも、むしろみずほのガバナンス体制に目を向けている。システム障害発生前後の一連の稚拙な対応の裏側に、経営陣と現場をつなぐパイプの目詰まりや断絶があると見ているからだ。 「坂井(辰史みずほフィナンシャルグループ社長)さんは怖い。彼が嫌がりそうな報告は上げるなと言われている」「報告を上げても勝手に忖度して部長が止めてしまい、役員にまで伝わらない」。現場から上がるこうした声が、金融庁の耳にも入っているのだ。 なぜ、そうした目詰まりが起きるのか。背景には、日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行の3行が合併、みずほフィナンシャルグループ(FG)が誕生してから現在に至るまで、さまざまな“病巣”が組織を蝕み続けているからだ』、「システム障害発生前後の一連の稚拙な対応の裏側に、経営陣と現場をつなぐパイプの目詰まりや断絶があると見ているからだ。 「坂井・・・さんは怖い。彼が嫌がりそうな報告は上げるなと言われている」「報告を上げても勝手に忖度して部長が止めてしまい、役員にまで伝わらない」、合併銀行とはいえ、余りに酷過ぎる。
・『旧行ベースでポストを奪い合い  イタリア人、フランス人、ドイツ人――。これは、旧3行の英語表記の頭文字「I」「F」「D」を使った出身行を表す隠語だ。みずほと取引のある企業の社長は宴席の場で、みずほの役員がこの隠語を使い「イタリア人とは話が通じない」などとくだを巻く姿を何度も見ているという。 これこそが、病巣の1つである「旧行意識」だ。旧3行の出身者がそれぞれ出身行の地位と影響力を維持しようと、みずほは誕生以来、内向きな縄張り争いを繰り広げてきた。 事の発端は2000年。旧3行が「対等合併」にこだわって経営統合したことだ。当初、興銀の西村正雄頭取、富士の山本恵朗頭取、一勧の杉田力之頭取の3人が、持ち株会社みずほホールディングスの共同CEO(最高経営責任者)となり、事実上の3トップ体制を敷いた。 だが不良債権問題で業績は悪化、経営体制の刷新を迫られる。そうした状況を受けて2002年にみずほ銀行(BK)とみずほコーポレート銀行(CB)という2バンク体制を軸とする、みずほグループが発足した際にも、持ち株会社の社長に富士出身の前田晃伸氏が就き、BK頭取に一勧出身の工藤正氏、CB頭取に興銀出身の齋藤宏氏が就任、3行でポストを分け合った。 トップだけではなかった。FGと傘下2バンクの役員ポスト数を足して3で割り、1人の誤差も出ないよう、3行出身者を均等に割り振るこだわりよう。それは「まるで芸術作品」(みずほOB)と揶揄されるほど見事なもので、すべては対等合併を円満に進めるためだった。 だが、その内実は決して円満ではなかった。(あと有料のため紹介終了)』、建前としての「対等合併」へのこだわりが、現在の問題の根底にあるような気がする。
タグ:金融業界(その11)( みずほ「システム障害」4題:金融庁は異例の措置でガバナンスを問題視 第1回 みずほ「システム障害」が終わらない真因、顧客のセグメント化で「中小企業切り」との批判 第2回「数十年に1度」の営業店改革に顧客の不満爆発、「3メガバンク」の比較だけでは不十分 第3回 12の指標で読み解くみずほの実力と弱点、抜本改革にはトップの外部招聘が必要との声も 第4回 みずほ、システム障害の裏にある根深い「病巣」) 金融業界 東洋経済Plus 「金融庁は異例の措置でガバナンスを問題視 第1回 みずほ「システム障害」が終わらない真因」 「1回目の障害」の原因はソフトウェアや機器ではなく、システム運用の問題だ。「5回目の障害」では「機器故障が原因」だった。「ホームページにお知らせを掲載したのは・・・開店のわずか30分前で、あわよくば障害を隠そうとしていたフシがあった」と非難しているが、故障が回復するのを待っていた可能性があるのではなかろうか。 「周辺システムはMINORI開発計画の対象外とされ・・・MINORIと周辺システムの仕様がマッチしていないことから、MINORI側の停止は防げても、予想に反してATMなど周辺機器やシステムが停止してしまう」、仮に「周辺システム」を残すとしても、「仕様」の「マッチ」には十分に検証すべきだった。「メーカーの保守期限を超えた機器を、いまだに使用している」、には開いた口が塞がらない。 「システム分野は、ほかのメガバンク幹部が「銀行にとって最も重要な『基盤』であり、コストカットなどありえない」、とあるが、「コストカット」に聖域などないのが常識で、この表現はいささか誇張が過ぎるようだ。 検査の最中に「異例の改善命令に突き進んだ』要因の1つに、「みずほが「(新規のサービス展開を含む)能動的なアクションを起こそうとして」いたとは、初めて知ったが、確かにみずほの正気を疑いたくなるような有様だ。「金融庁の怒りに油を注いでしまった」のも当然だ。 「顧客のセグメント化で「中小企業切り」との批判 第2回「数十年に1度」の営業店改革に顧客の不満爆発」 「法人の取引」については、超大企業はみずほコーポレート銀行が、それ以外をみずほ銀行が担当していたのが、ワンミズホで両行が合併した経緯がある。この間、他のメガバンクは、企業取引は各支店の法人営業部 が、個人取引を支店が担当するように営業体制を再編成した。みずほの場合、漸く再編成を始めたが、取引先への根回しなどが不十分で混乱したようだ。 顧客へ十分に説明して、納得を得たかを確認すらしなかったようだ。 「新しい営業店体制を導入」には、取引先や営業現場の混乱を避けるため、周到に用意すべきだが、よりにもよって「システム障害」の真っ最中とは、最悪のタイミングで、愚策を繰り出したものだ。 「「3メガバンク」の比較だけでは不十分 第3回 12の指標で読み解くみずほの実力と弱点」 「経費率・・・では三菱UFJフィナンシャル・グループを抜いて、2位になった」、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」も「経費率」で「みずほ」に抜かれるとは情けない。 「抜本改革にはトップの外部招聘が必要との声も 第4回 みずほ、システム障害の裏にある根深い「病巣」」 「システム障害発生前後の一連の稚拙な対応の裏側に、経営陣と現場をつなぐパイプの目詰まりや断絶があると見ているからだ。 「坂井・・・さんは怖い。彼が嫌がりそうな報告は上げるなと言われている」「報告を上げても勝手に忖度して部長が止めてしまい、役員にまで伝わらない」、合併銀行とはいえ、余りに酷過ぎる。 建前としての「対等合併」へのこだわりが、現在の問題の根底にあるような気がする。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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日本の政治情勢(その57)(日経平均株価の急落は岸田首相のせいなのか? 市場が騒ぐ「岸田ショック」なるものの正体、反撃はある?冷や飯組「河野・小泉・石破」次の一手 「次の首相候補」で人気の3人が組んだのに完敗、岸田首相“脱安倍・麻生傀儡”シフト鮮明で…「3A」支配に深い亀裂か、岸田政権不人気!自民が頭を抱える“甘利ファクター”の破壊力、衆院選まさかの単独過半数割れも) [国内政治]

日本の政治情勢については、8月18日に取上げた。今日は、(その57)(日経平均株価の急落は岸田首相のせいなのか? 市場が騒ぐ「岸田ショック」なるものの正体、反撃はある?冷や飯組「河野・小泉・石破」次の一手 「次の首相候補」で人気の3人が組んだのに完敗、岸田首相“脱安倍・麻生傀儡”シフト鮮明で…「3A」支配に深い亀裂か、岸田政権不人気!自民が頭を抱える“甘利ファクター”の破壊力、衆院選まさかの単独過半数割れも)である。なお、スガノミクスもこのなかに統合した。

先ずは、10月10日付け東洋経済オンラインが掲載した双日総合研究所チーフエコノミスト の東洋経済オンライン氏による「日経平均株価の急落は岸田首相のせいなのか? 市場が騒ぐ「岸田ショック」なるものの正体」の4頁目までを紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461327
・『日経平均株価が8営業日連続で下げた。10月7日になってようやく止まったが、8日続落は2009年以来のことである。TOPIX(東証株価指数)に至っては9日連続で下げて、日経平均からさらに1日遅れて8日に反転した』、「岸田」氏にとっては不名誉なことだ。
・『外国人投資家は岸田新内閣に「最低評価」  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら 日本株がかくも弱いのは、中国の不動産大手、恒大集団の経営悪化、アメリカの債務上限問題、そして原油価格の上昇など、海外の悪材料をいくつも指摘することができる。 とはいうものの、外国株と比べると日経平均の約6%下落は突出している。岸田文雄氏が自由民主党総裁に選ばれた9月29日から、実に2000円も下げているのである。 9月3日の菅義偉前首相の不出馬発言から、一時は年初来高値をつけた日経平均は同月末から反落し、文字どおり「行ってこい」になってしまった。すでにマーケットでは、「岸田ショック」などという言葉も飛び交い始めている。 特に外国人投資家の間では、自民党総裁選挙の結果への失望が強い。彼らの間では、「高市総裁なら女性初の首相誕生となり、それは日本の変革を意味するから買い。河野総裁誕生でも、今後の変化が期待できそうだから買い」という期待があった。しかるに結果は、いかにも現状維持といった感じの岸田氏の勝利であった。 総裁選当日のThe New York Times紙の報道も、こんな風に突き放したトーンであった (The choice for Japan’s prime minister is a party stalwart who lagged in opinion polls.)。 エリートのパワーブローカー(有力者を陰で操る実力者)が世論をねじ伏せ、日本の与党はこの水曜日、岸田文雄元外相を次期首相に選出した。党内穏健派の岸田氏を自民党の総裁に選出することで、党の幹部たちは世論の選択を無視し、去り行く不人気な菅義偉首相(当時)と差別化できないような候補者を選択した。 アメリカのような直接民主主義の国の感覚では、党員票で1位だった河野太郎氏が勝つべきであって、議員票でそれと違う結果が出るのはケシカラン、となるらしい。) とはいえ、日本は間接民主主義であり、自民党総裁選は元来が議員票の戦いであった。1972年の「三角大福決戦」であまりに現金が乱れ飛んだので、あとから党員票という制度を付け加えたという経緯がある。今回の結果は、「岸田氏の圧勝」とみるのが国内的には順当であろう。 ちなみにNY Times紙は「岸田氏は菅氏と大差がない」と言っているが、これは事実誤認と言えよう。真っ先に総裁選に名乗りを上げて、菅首相に勝負を挑んだのが岸田氏であった。出馬宣言自体は確かに高市氏も早かったけれども、恐縮ながらその時点で周囲の見方はまだ懐疑的だった。 逆に菅氏は、河野候補を支援して何とかして勝たせようとしていた。一部には、「河野政権誕生なら、小泉進次郎官房長官、菅義偉官房副長官」などという読み筋もあったとか。何もそこまでワーカホリックにならなくても……、と言いたくなるところだが、真面目な話、前首相の肩入れはむしろ河野氏にとって逆効果となっていたのではないか』、なるほど。
・『金融所得課税の本当の影響はどれだけ?  ともあれ、岸田政権発足に対する海外の見方は散々なようである。というより、「わかってないなあ」と言いたくなるところだ。国内的にはどうかと言うと、10月4日の新内閣発足を受けて行われた世論調査の結果は、以下のように幅が広いものとなった。 日経新聞 支持59%、不支持25% 読売新聞 支持56%、不支持27% 共同通信 支持55.7%、不支持23.7% 毎日新聞 支持49%、不支持40% 朝日新聞 支持45%、不支持20% 各社によって尋ね方が違うので、日経と読売が高めに出て、朝日と毎日が低めに出るのは毎度のことだ。事前の想定よりもやや低め、という感もあるが、不支持率が低いこと、この間に自民党支持が上昇している(日経51%、共同50.8%、読売43%、朝日37%、毎日34%)ことを考えれば、今月31日に控える総選挙を戦うにはまずまずの状況といえるだろう。 マーケットが岸田政権を嫌気する理由として、「金融所得課税強化を狙っている」ことが挙げられる。合計所得1億円以上の人は所得税負担率が低くなる、という「1億円の壁」なるものも注目され始めた。これまで、自民党で税調会長を務めていた甘利明氏が幹事長に転じたので、後任は岸田氏のいとこである宮沢洋一参議院議員になる、と言われている。今年度の税制改正では、金融所得課税が検討課題となる公算が大であろう。 とはいえ、「大金持ち」がそんなに多くはないわが国においては、年収1億円を超えるのは2万人強に過ぎない。しかもこの人たちは、すでに所得税の最高税率45%に住民税や社会保険料などを払っている。仮に現行税率の20%を30%に引き上げたところで、そんなに大きな財源とはなりそうにない。「貯蓄から投資へ」という流れにも逆行するので、金融所得課税の強化が「好手」であるとは考えにくい。 その一方で、株式譲渡益や配当への課税は、国際的に強化される流れにある。また、非居住者である外国人投資家から見れば、本件は文字どおり「どうでもいい話」であろう。確かに「マーケット・フレンドリー」ではないけれども、この問題が「日本株売りの主犯格」と見るのは考えすぎであろう。 宏池会の会長である岸田氏は、自民党においては「20年ぶりのセンターレフト派閥出身の総裁」となる。海外においても、アメリカでは昨年、共和党のドナルド・トランプ大統領を破って民主党のジョー・バイデン政権が誕生した。先月行われたドイツの総選挙では、長らく政権を担ってきたCDUの得票をSPDが上回った。世界的に貧富の格差が拡大し、なおかつコロナが追い打ちをかけている状況にあって、左派政権が増えているのは自然な流れと言えよう』、確かに、主要国では「左派政権が増えているのは自然な流れ」のようだ。「金融所得課税」については期待していたのに、ひっこめてしまったのは残念だ。
・『岸田総裁はファーストペンギン!?  そこで世界各国で、「中間層の復活」や「社会的包摂」(Social Inclusion)といったかけ声が上がるわけだが、これまでのところ何か格差是正の「妙手」が見つかったわけではない。岸田内閣もまた、「新しい日本型資本主義」や「成長と分配の好循環」というテーマを掲げている。とはいえ、具体策はなかなか見えてこないのが実情だ。 この問題について、10月1日に行われた木原誠二官房副長官の勉強会で、甘利明幹事長が「岸田総裁はファーストペンギンだ」と語ったそうである。氷の上で群れているペンギンのうち、最初の1頭が海に飛び込む。海の中にエサとなる魚がいるかどうかは、もちろん氷の上からはわからない。それでも最初の1頭が飛び込むと、あとに続くペンギンが現れる。最初から「できっこない」などと言ってないで、とにかくやってみろ、というわけだ。 10月8日の所信表明演説において、岸田首相は「分配戦略」と銘打って、企業の四半期開示の見直し、下請け取引に対する監督体制の強化、賃上げを行う企業への税制支援、子育て支援、看護・介護・保育などで働く人々の収入を増やす、あるいは財政単年度主義の弊害是正などを訴えた。が、いかんせん新味を感じさせるものではなかったようだ。 とはいえ、岸田内閣が景気を回復させ、株価を再び上昇に向かわせることは十分に可能なのではないか、と筆者は考えている』、なるほど。
・『自民党は大きくは負けず、第2次岸田内閣発足へ  まず、10月31日の総選挙では自民党は大きく負けないだろう。となれば、10日後くらいに特別国会が召集され、そこで第2次岸田内閣が発足する。真っ先に取りかかるのは補正予算である。出馬宣言の直後から、岸田氏は「数十兆円規模」という大胆な言い方をしてきた。これは事前に財務省と何らかの「調整」があったからだろう。だったら話は早い。 バイデン政権の「インフラ投資」予算は、議会の与野党対立の中でほとんど五里霧中であるが、議会制民主主義の日本では予算はちゃんと12月までに成立する。中小事業者や生活困窮者への給付金などが盛り込まれる見込みだ。 そして以前にも当欄で寄稿したように、日本経済には巨額の強制貯蓄がある (日本経済には36兆円もの埋蔵金が眠っている)。2020年度分で計算してみたところ、コロナ下で生じた「意図せざる貯蓄」は実に38.2兆円にもなった。このうち半分でも消費に回ってくれれば、それだけでブームを起こせるはずである。 もちろん年内にもコロナの第6波が到来するかもしれないし、中国経済の減速や資源価格の高止まりなど海外経済の影響を受けるおそれもある。ただし現下のマーケットの反応は、やや慎重になりすぎているのではないかと感じているところである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「強制貯蓄」を述べた記事を読んでないので、何とも言えないが、「このうち半分でも消費に回ってくれれば、それだけでブームを起こせるはず」、というのは余りに楽観的過ぎるようだ。

次に、10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「反撃はある?冷や飯組「河野・小泉・石破」次の一手 「次の首相候補」で人気の3人が組んだのに完敗」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461831
・『自民党総裁選で本命視されながら「完敗」したのが河野太郎前規制改革相。最大の敗因は小泉進次郎前環境相、石破茂元幹事長と組んだいわゆる「小石河」連合への、大派閥幹部をはじめとする多くの自民党議員の冷たい視線だった。 9年近く続いた「安倍・菅政権」下での次の首相候補の人気番付でトップを争い続けたのが河野、小泉、石破3氏。「トリオを組めば負けるはずがないとの思い込み」(自民幹部)が、権謀術数渦巻く総裁選での多数派工作の手抜きにつながり、「人気者ゆえの上から目線」(若手)が多くの自民議員を敵に回したのが実態だ。 一敗地にまみれた3氏は、すでにそれぞれの立場で未来を見据えている。河野氏は党7役の末席とされる広報本部長、小泉、石破両氏は実質的に「無役」となり、“冷や飯食い”を余儀なくされる。ただ、党内の見方は3者3様でもある。 河野氏は新政権発足後の世論調査でも次期首相候補ではトップを独走、国民の期待はなお根強い。その一方、小泉氏は人気低落が際立ち、石破氏は「首相候補ではその他大勢のグループ」(若手)に追いやられつつある』、「「トリオを組めば負けるはずがないとの思い込み」・・・が、権謀術数渦巻く総裁選での多数派工作の手抜きにつながり、「人気者ゆえの上から目線」(若手)が多くの自民議員を敵に回したのが実態だ」、その通りなのだろう。
・『露出が減った小泉氏、石破氏は「もう終わった人」  初当選以来、注目され続けた小泉氏は一気にメディア露出が減り、「最強の応援弁士」との評価も失われつつある。「可能性がある限り(総理総裁への)挑戦は続ける」と語る石破氏は、石破派からの離脱者が相次ぐ事態も受けて「もう終わった人」(自民長老)との見方が支配的だ。 そもそも今回の総裁選を振り返ると、政界では「河野氏の自滅」(首相経験者)との指摘が多い。大手紙など各メディアが累次実施してきた世論調査での「次期首相候補は誰」との人気投票における、「小石河」連合3氏の支持を単純合計すれば、1桁の下位に低迷していた岸田氏の10倍以上だったのは事実だ。 だからこそ河野陣営は、一般国民の感覚に近いとされる党員・党友投票で「最低でも7割以上の圧勝」を狙った。「そうなれば、目前に衆院選を控えた国会議員票も河野支持に雪崩を打つ」(河野氏周辺)との思惑からだ。 しかし、総裁選が進むにつれ、最大のライバルだった岸田文雄氏との差がどんどん縮まった。岸田陣営が党員・党友全体の4割近くを占めるとされる職域党員への多数派工作に全力投球したからだ。しかも、保守派のマドンナと呼ばれた高市早苗氏や、河野氏以上の党改革を訴える野田聖子氏への党員・党友の支持も日増しに拡大した。 その結果、9月29日の投開票での党員・党友票の配分は、河野氏169票、岸田氏110票、高市氏74票、野田氏29票となった。河野氏の得票は全体の44%、岸田氏が29%、高市氏と野田氏の合計で27%という結果だ。 その一方で、議員票ではトップの岸田氏が146票、2位が高市氏の114票で、河野氏は86票の3位。その結果、議員票と党員・党友票の合計を争う1回戦では、岸田氏が河野氏に1票差の1位となり、その時点で河野氏の敗北が確定した。 河野陣営は「敗因は党員・党友で圧勝できなかったこと」と肩を落としたが、投開票直前の河野氏の表情はすでに負けを覚悟しているようにも見えた』、私は「河野氏」をもともと評価してなかったが、驕り高ぶっていたことは事実だろう。
・『「広報本部長をよく引き受けた」との揶揄も  そこで注目されたのが、悲願を達成した岸田・総理総裁の党・内閣人事。総裁選中の「他の候補者を重用して挙党体制を築く」との公約も踏まえ、高市氏は党政調会長、野田氏は内閣府特命担当相(地方創生、少子化対策、男女共同参画)・女性活躍担当相、こども政策担当相、河野氏は党広報本部長に起用された。それぞれ一定の要職ではある。 岸田氏は河野広報本部長について「抜群の発信力を生かして衆院選での自民の顔になってもらう」と起用の理由を語った。しかし、岸田氏周辺からは「河野氏は断ると思ったのに、よく受けた」と揶揄する声もあった。 河野氏が所属する麻生派を率いる麻生太郎副総裁は「まず、雑巾がけに徹することだ。それが次につながる」と激励。しかし、「広報本部長は選挙が終わればやることがなくなる」(自民幹部)のが実態で、来夏の参院選以降は存在感が薄れるのは避けられそうもない。 河野氏は10月1日の菅義偉前内閣の最後の定例閣議後の記者会見で「どんな仕事が与えられても全力で務める」と吹っ切れた表情で語った。広報本部長として作成して同11日に公表した衆院選向けのポスターでは、岸田氏の笑顔を大写しにした写真を中央に据え、「新しい時代を皆さんとともに。」と、岸田色を前面に押し出してみせた。 河野氏はこのキャッチコピーについて「総裁の肝いりだ」と解説。「私のポスターも(党本部の)6階に貼ってありますから」と笑顔で付け加えて、存在感もアピールした。 「次」を目指す河野氏にとって、最大の課題は自民党内の信頼獲得だ。衰えない国民的人気をテコに、選挙戦での応援に東奔西走することが、次期総裁選での勝利につながることを自覚しているようにみえる。 一方、2年間環境相を務めた小泉氏は、10月5日の退任時には、目を潤ませながら慣れ親しんだ職場を去った。ただ、菅前首相の退陣表明の際と同様の「涙のパフォーマンス」に、党内からは「本物のリーダーを目指すのなら、涙は禁物、いい加減に受け狙いはやめたほうがいい」(閣僚経験者)との批判も相次ぐ。 環境相として小泉氏の残した「実績」の1つが国民的には極めて不評なレジ袋の有料化だ。ところが小泉氏は菅前首相の退陣表明直後のネットメディア出演で「批判されているが、レジ袋有料化を決めたのは僕ではない」と発言。すぐさまネット上で大炎上し、「誰が決めた決めないではなく、責任者はあなたでしょ」「政治家なのに責任転嫁はありえない」などの厳しい書き込みがあふれた。 小泉氏の後任となった山口壮環境相のもとにはレジ袋無料化を求める声が集中し、桜田義孝元五輪相は「レジ袋無料化を山口大臣に直接相談した」と語るなど、党内でも「選挙向けにすぐ無料化を決めるべきだ」との声が広がる』、「河野氏」は菅内閣ではワクチン担当として、マスコミ露出は極めて多かったが、今後は激減し、国民の支持も低下するだろう。
・『今回の総裁選で完全にメッキははがれた?  初当選以来、将来の総理総裁確実と言われ続けた小泉氏も、「今回の総裁選で完全にメッキははがれた」(閣僚経験者)との声が多い。 岸田首相が人事で小泉氏の陰に隠れていた若手実力者たちを抜擢したことで、「小泉神話は消えた」との見方もある。若手議員の間でも「小泉さんよりもっと能力のある人がいっぱいいる」との指摘が相次ぐ。 これまでの選挙では最強の応援弁士として全国を駆け回った小泉氏だが、今回は地元横須賀に張り付くとの見方も出る。 「当面は雑巾がけに徹するしかない。そうでないと次の総裁選どころか、次の次も怪しくなる」(自民長老)との厳しい声が広がる。 そうした中、4度総裁選に挑み、今回は河野氏の支援に回った石破氏の立場は厳しさが増す。 石破氏は10月1日に地元鳥取で記者会見し「河野さん、小泉さん、私が一致してやっても打ち破れない壁ってのはすごいんだなぁと」と苦笑したうえで、「それにびっくりしてくじけちゃどうにもならん。壁が厚いと認識したら、もっともっと頑張らないと」と再挑戦への意欲をアピールした。 しかし、政界では地元会見の前に「政界引退」や「離党」「派閥解散」などの臆測が飛び交った。自身が率いる石破派から2人が離脱して現時点での勢力はわずか15人。しかも衆院選後にはさらに数が減る可能性もある。 石破氏は会見で「私自身、自民党公認候補として12回目の選挙になる。(石破派の仲間を)一人残らず(国会に)帰ってこられるようにしたい」と語った。しかし、党内からは「もはや石破氏は総理総裁候補たりえず、石破派も存在意義を失った」との厳しい声が多い』、「石破派から2人が離脱して現時点での勢力はわずか15人。しかも衆院選後にはさらに数が減る可能性もある」、のであれば、「石破氏」の今後は余り期待できないようだ。
・『菅前首相、二階前幹事長に対する冷遇ぶりも際立つ  「安倍・麻生忖度人事」との批判が渦巻く岸田新政権の陣容だが、際立つのは「小石河」連合と、総裁選で岸田氏と対峙した菅前首相、二階俊博前幹事長に対する冷遇ぶりだ。そのため、党内の一部には「冷や飯グループの反転攻勢で、菅グループが合流し、小石河連合も取り込む」との噂も飛び交う。 「二階派を菅派に衣替えし、石破派と河野、小泉両氏も取り込めば、細田派に対抗できる巨大な反主流派が結成できる」(二階氏周辺)との構想だ。ただ、そのこと自体が「冷や飯組の置かれた立場の厳しさの表れ」(麻生派幹部)でもある。 もちろん、岸田首相の前途は平坦ではない。「ご祝儀相場で勝てるほど次の選挙は甘くない」(自民選対)のは当然だ。冷や飯組の反転攻勢も含め、衆院選直後の11月には「ポスト岸田への自民党内の戦いが始まる」(自民長老)ことだけは間違いなさそうだ』、選挙結果にもよるが、「自民党内の戦い」がどうなるか、大いに注目したい。

第三に、10月10日付け日刊ゲンダイ「岸田首相“脱安倍・麻生傀儡”シフト鮮明で…「3A」支配に深い亀裂か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/295815
・『8日、自民党の総務会が開かれ、麻生太郎前財務相の副総裁就任が正式に決定した。岸田総裁―麻生副総裁―甘利幹事長のラインが出来上がった。これまで「3A」と称され、自民党を牛耳ってきた安倍晋三、麻生太郎、甘利明の3氏のうち、安倍元首相だけラインから外れた形だ。すでに「3A」には亀裂が生じていると報じられている。新体制によって亀裂が深まる可能性がある。 岸田新政権の人事の特徴は、甘利カラーが前面に出ていることだ。甘利氏に近い議員が次々にポストに就いている。山際大志郎経済再生担当相も、小林鷹之経済安保担当相も、田中和徳幹事長代理も甘利人脈。さすがに、安倍元首相の出身派閥“細田派”からは「これじゃ甘利内閣だ。甘利がやりたいようにやっている」と不満の声が上がっている。 その一方、意向が反映されなかったのが安倍氏だ。「高市幹事長、萩生田官房長官」を求めたが、どちらも蹴られたという。しかも、細田派からも抜擢はされたが、松野博一官房長官も、福田達夫総務会長も、高木毅国対委員長も、安倍氏とは距離がある。「3A」のメンバー甘利氏が幹事長に就いているのに、意向が通らない。安倍氏は一連の人事に苛立ちを募らせているという』、「甘利氏が幹事長に就いているのに、意向が通らない。安倍氏は一連の人事に苛立ちを募らせている」、いい気味だ。
・『「3A」が「1A」と「2A」に  これまで「3A」のタッグは鉄壁だとみられていたが、いったい、なにが起きているのか。 「念願の幹事長に就き、権力を握った甘利さんが暴走しているという見方もあります。ただ、麻生派に所属している甘利さんは、派閥領袖の麻生さんに逆らうことはない。2人は一体でしょう。実際、“甘利人事”によって、麻生派には満点の人事になっている。“3A”が対立しているわけではないでしょうが、岸田政権の誕生によって、立場が1Aと2Aに分かれた。いくら盟友だとしても、麻生さんも甘利さんも、自分たちの利益を削ってまで安倍さん個人のために動くことはない。そもそも、安倍―麻生の結束が固かったのは、二階前幹事長や石破元幹事長など“共通の敵”が存在したからです。でも、二階さんも石破さんも弱体化してしまった。共通の敵がいなくなったことで盟友関係に変化が起こることは十分あり得ることです」(政界関係者) 岸田首相も“脱安倍・麻生傀儡”にシフトしようとしている可能性があるという。 「岸田さんは、本音では安倍さんに恨みがあるはず。安倍さんからの禅譲を期待していたのに、昨年の総裁選ではハシゴを外され、安倍さんは“菅支持”に回った。今回の総裁選でも、安倍さんは“高市支持”で動いた。どう考えても岸田さんを軽く見ている。もともと、安倍さんと岸田さんは、政治信条が百八十度違う。巧妙に“安倍離れ”を画策しても不思議はありません」(自民党事情通) もともと「宏池会」出身だった麻生氏は、「大宏池会構想」を掲げ、岸田派に合併を持ちかけていた。この先、「3A」支配の構図が大きく変わる可能性がある。』、「安倍―麻生の結束が固かったのは、二階前幹事長や石破元幹事長など“共通の敵”が存在したからです。でも、二階さんも石破さんも弱体化してしまった。共通の敵がいなくなったことで盟友関係に変化が起こることは十分あり得ることです」、今後、孤立した「1A」はどうやっていくのだろう。

第四に、10月14日付け日刊ゲンダイ「岸田政権不人気!自民が頭を抱える“甘利ファクター”の破壊力、衆院選まさかの単独過半数割れも」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/296027
・『岸田首相が14日午後、衆院を解散し与野党激突の選挙戦が事実上スタートした。19日公示・31日投開票の超短期決戦は戦後最短の日程で、早い方が勝てるという岸田自民の思惑が強く反映されている。だが、岸田政権が想定以上に不人気で、よもやの単独過半数割れも囁かれ始めた。 永田町では、自民党が先週末の9、10日に行った全選挙区の情勢調査が出回っている。自民党は現有276議席から21減らし、さらに当落線上の接戦区が20あるとの結果だったという。 「野党候補が一本化されれば、さらに40から50選挙区が激戦区になるとみられています。岸田首相は、超短期決戦なら野党共闘の効果も間に合わないと考えたのでしょうが、この戦術は諸刃の剣になりかねない。岸田内閣の支持率は“ご祝儀相場”もなく、おおむね50%台と発足直後にしては低調ですが、それより特徴的なのは、支持するかどうか『答えられない』『わからない』の回答が多いことです。まだ何も仕事をしておらず、評価が定まっていないからで、そういうときは失言などのミスひとつが致命傷になり、流れが一気に変わる可能性があります。そして、それを挽回する時間もないのが超短期決戦の怖さなのです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏) 野党共闘は13日、共産党が22選挙区、立憲民主党が3選挙区で候補者を取り下げることを決め、急ピッチで候補者調整が進んでいる。289選挙区のうち、230近い選挙区で野党候補の一本化が実現することになり、今後さらなる上積みもあり得る』、「岸田氏」も「超短期決戦の怖さ」も考慮した上で、決断した筈だ。
・『自公選挙協力もギクシャク  もし50議席減らして単独過半数(233議席)を割り込めば、岸田首相の進退問題に発展しかねない。そこに大きな影を落とすのが、甘利幹事長の存在だ。 選挙を仕切る幹事長は“党の顔”。公明党との関係が良好だった二階前幹事長、菅前首相に代わってカウンターパートになった甘利幹事長が「政治とカネ」の疑惑を抱えていることもあって、公明との選挙協力がうまくいっていないというのだ。 「選挙の実動部隊になる学会女性部は政治家のカネや女の問題を極端に嫌います。しかも、甘利さんはもともと公明党との関係が良くない。安倍政権で選対委員長を務めていた時、『なぜ公明党に名簿を渡さなきゃいけないんだ』『公明に査定されて候補者が言いなりになる』などと反発を深め、公明党が自民党支持層を奪っていると警戒感をあらわにしていました。2019年参院選の前には、選挙協力の合意文書にわざわざ『与党内部での集票活動の競合につながるような行為は互いに慎む』の一文を入れさせたほどで、学会で選挙責任者だった佐藤副会長とは犬猿の仲でした」(自民党関係者)) 佐藤氏は退任し、当時のような実権は握っていないが、学会側の“選挙のプロ”として影響力を行使しているという。 野党の候補者一本化で与野党接戦区が増えるほど、自公選挙協力の重要性は増し、学会の動きが雌雄を決する可能性も高まるのだが、甘利幹事長のせいで激戦区を落としかねない状況だ。自民の過半数割れも十分、考えられる。 岸田首相は今ごろ、公明党の“甘利嫌い”の大きさに頭を抱えているかもしれない』、「選挙の実動部隊になる学会女性部は政治家のカネや女の問題を極端に嫌います。しかも、甘利さんはもともと公明党との関係が良くない」、「岸田首相は今ごろ、公明党の“甘利嫌い”の大きさに頭を抱えているかもしれない」、自業自得だろう。
タグ:日本の政治情勢 (その57)(日経平均株価の急落は岸田首相のせいなのか? 市場が騒ぐ「岸田ショック」なるものの正体、反撃はある?冷や飯組「河野・小泉・石破」次の一手 「次の首相候補」で人気の3人が組んだのに完敗、岸田首相“脱安倍・麻生傀儡”シフト鮮明で…「3A」支配に深い亀裂か、岸田政権不人気!自民が頭を抱える“甘利ファクター”の破壊力、衆院選まさかの単独過半数割れも) 東洋経済オンライン 「日経平均株価の急落は岸田首相のせいなのか? 市場が騒ぐ「岸田ショック」なるものの正体」 「岸田」氏にとっては不名誉なことだ。 確かに、主要国では「左派政権が増えているのは自然な流れ」のようだ。「金融所得課税」については期待していたのに、ひっこめてしまったのは残念だ。 「強制貯蓄」を述べた記事を読んでないので、何とも言えないが、「このうち半分でも消費に回ってくれれば、それだけでブームを起こせるはず」、というのは余りに楽観的過ぎるようだ。 泉 宏 「反撃はある?冷や飯組「河野・小泉・石破」次の一手 「次の首相候補」で人気の3人が組んだのに完敗」 「「トリオを組めば負けるはずがないとの思い込み」・・・が、権謀術数渦巻く総裁選での多数派工作の手抜きにつながり、「人気者ゆえの上から目線」(若手)が多くの自民議員を敵に回したのが実態だ」、その通りなのだろう。 私は「河野氏」をもともと評価してなかったが、驕り高ぶっていたことは事実だろう。 「河野氏」は菅内閣ではワクチン担当として、マスコミ露出は極めて多かったが、今後は激減し、国民の支持も低下するだろう。 「石破派から2人が離脱して現時点での勢力はわずか15人。しかも衆院選後にはさらに数が減る可能性もある」、のであれば、「石破氏」の今後は余り期待できないようだ。 選挙結果にもよるが、「自民党内の戦い」がどうなるか、大いに注目したい。 日刊ゲンダイ 「岸田首相“脱安倍・麻生傀儡”シフト鮮明で…「3A」支配に深い亀裂か」 「甘利氏が幹事長に就いているのに、意向が通らない。安倍氏は一連の人事に苛立ちを募らせている」、いい気味だ。 「安倍―麻生の結束が固かったのは、二階前幹事長や石破元幹事長など“共通の敵”が存在したからです。でも、二階さんも石破さんも弱体化してしまった。共通の敵がいなくなったことで盟友関係に変化が起こることは十分あり得ることです」、今後、孤立した「1A」はどうやっていくのだろう。 「岸田政権不人気!自民が頭を抱える“甘利ファクター”の破壊力、衆院選まさかの単独過半数割れも」 「岸田氏」も「超短期決戦の怖さ」も考慮した上で、決断した筈だ。 選挙の実動部隊になる学会女性部は政治家のカネや女の問題を極端に嫌います。しかも、甘利さんはもともと公明党との関係が良くない」、「岸田首相は今ごろ、公明党の“甘利嫌い”の大きさに頭を抱えているかもしれない」、自業自得だろう。
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企業不祥事(その25)(販売会社との関係再構築が急務 トヨタ「45分で車検」の表示取りやめが示す課題、同業界にいた女性の叫び「電通の高橋まつりさんは長時間労働に殺されたんじゃない」 自分も同じ行動をしたかもしれない) [企業経営]

企業不祥事については、5月26日に取上げた。今日は、(その25)(販売会社との関係再構築が急務 トヨタ「45分で車検」の表示取りやめが示す課題、同業界にいた女性の叫び「電通の高橋まつりさんは長時間労働に殺されたんじゃない」 自分も同じ行動をしたかもしれない)である。

先ずは、9月8日付け東洋経済Plus「販売会社との関係再構築が急務 トヨタ「45分で車検」の表示取りやめが示す課題」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28110#contd
・『系列販売店で相次ぐ不祥事。国内はシェア50%を超す独り勝ち状態の中、どのように軌道修正するのか。 「トヨタからの通達があったので、すべて45分で完了するといった誤解を生まないように短時間車検の名前を変えた」 トヨタ自動車系の販売会社、トヨタカローラ名古屋の幹部はそう話す。同社では「でらはや45分車検」と銘打った短時間車検を8月上旬まで展開していたが、お盆休みを挟み、「でらはや車検」に改めた。短時間車検自体は続けている。 「お客様への車検訴求内容のご確認のお願い」――。系列販売会社で相次ぐ不正車検の発覚を受けて、トヨタは8月3日、全国の販売会社にそう題した通達を出した。車検の名称を顧客に誤解のないものにすることに加え、「車種・年式・追加整備によっては、作業時間が長引く、後日改めて整備する場合がある」などの例外表記をわかりやすく、必ず記載するよう求めている。 前出の通達から程なくして、トヨタは自社のホームページから「プロの技術で45分で車検完了」といった文言を削除した。もともと、販売店や整備内容によって作業時間が異なることは明記していた』、あの「トヨタ」で「車検不正」が発生した件については、4月27日、5月26日にも取上げたので、これは続々報である。
・『表記の修正より大事なこと  ただ、不正車検が発覚したネッツトヨタ愛知や直営のトヨタモビリティ東京の店舗で、時間内に済ませようとして適切な作業を行わない、いわば「時間の目的化」が不正を招いた事態を重く見た。トヨタ幹部は「メーカーの統一商品として45分車検や60分車検を展開したことが間違いだった」と認める。 通達を受けてどの販社も分数の表示を単純に削除しているわけではない。ネッツトヨタ山形の場合、「プレミアム車検30分」という名称から「30分」をいったん削除した。販社の車検を所管するトヨタの担当者と相談中で、精査が済み次第、「30分」とホームページに掲載するという。 同社が短時間車検として60分車検を導入したのは1999年。その後も作業効率の改善を進め、30分車検を実現。2019年6月から店舗への導入を開始し、今では全店舗が取り扱う。ただし30分車検を実施する際は、60分の事前見積もりを行っている。顧客には2回車を持ってきてもらう必要があるため、逆に不便に思う人もいる。そのため、事前見積もりを行わない60分車検もサービスメニューに残している。 ネッツトヨタ山形の髙橋修社長は「30分で車検を終わらせることが目的ではない。整備士の作業改善が目的で、無駄をなくすことできびきびと楽に働けることが大切だ」と話す。結果として、6カ月点検や12カ月点検、洗車での効率がよくなり、収益にも貢献しているという。 トヨタが販社に対応を求めた車検の名称の確認や表記の修正は、不正車検の再発防止策の一環だが、本質ではない。最も重要なのは短時間車検に対する正しい認識だ。改善を重ねることで、整備士の負荷を減らしつつ、生産性を高める。その結果、作業時間が短縮され、顧客の利便性も向上する。トヨタはその意義を販売会社に対して丁寧に説明し、改めて浸透を図る必要がある。 それが不十分なままだと、慢性的な整備士不足の中で、数ありきの過剰な車検の入庫がなされ、不正車検が再発しかねない』、「メーカーの統一商品として45分車検や60分車検を展開したことが間違いだった」、個別販社の問題というより「トヨタ」全体の問題だ。特に、「短時間車検に対する正しい認識」が重要なようだ。「30分車検を実施する際は、60分の事前見積もりを行っている。顧客には2回車を持ってきてもらう必要があるため、逆に不便に思う人もいる」、なるほど。
・『注目は11月の全国販売店大会  トヨタの販社をめぐっては不適切な個人情報の取り扱いも8月に発覚した。系列の9社が顧客の同意を得ずに計3318人分の個人情報を登録し、トヨタ側に提供していた。 トヨタが展開する顧客向けウェブサービスのIDを発行するため、販売店の営業スタッフが顧客の同意を得ないまま、注文書などに書かれた氏名や生年月日などの個人情報を転用していたという。以前からトヨタは販売店に顧客へのID発行を促しており、今年は取得件数を販売店の表彰制度に盛り込んでいた。評価を高めようと不適切な取り扱いを招いたといえる。 系列販売店で相次ぐ不祥事に対し、「(創業から)80年かけて先輩たちが培ってきた信頼の原点に今こそ立ち返る必要がある」(トヨタ幹部)と危機感を募らせる。トヨタは車検の入庫台数や新車販売台数などを基準とした現在の販売店表彰制度について、今後ゼロベースで見直す方針だ。 販売店表彰制度の新たな方向性を示すとされるのが、例年11月に行う、全国の販売会社の代表を集めた会議だ。 トヨタ系販社の幹部は「評価するのは今の実績なのか、将来性なのか。トヨタが販売店をどうしていきたいかで、新たな評価基準も変わってくる」と話す。トヨタは国内で登録車のシェアが50%を超える。独り勝ちの中で露呈した不正車検などのほころびをどう是正していくのか。全国の販売を支える260近い地場の販社との関係構築のあり方が問われている。)』、「11月」の「全国の販売会社の代表を集めた会議」で、どんな方針が示されるのかが注目される。

次に、8月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した広告関連の仕事をしている女性、笛美(ふえみ)氏による「同業界にいた女性の叫び「電通の高橋まつりさんは長時間労働に殺されたんじゃない」 自分も同じ行動をしたかもしれない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48871
・『現在、広告業界で働きながら、ツイッターでフェミニズムに関する発信を続けている笛美さんは、かつて大手広告代理店で働いていました。2016年、電通で働いていた高橋まつりさんが亡くなったというニュースを見た笛美さんは、大きな衝撃を受けました――。 ※本稿は、笛美『ぜんぶ運命だったんかい おじさん社会と女子の一生』(亜紀書房)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『高橋まつりさんのツイッター  30歳になろうとする頃、少しずつ世の中の空気が変わりはじめました。 2016年、当時電通の新入社員だった高橋まつりさんが前年のクリスマスの朝に自殺したことが大きく話題になりました。会社でそのニュースを同僚が話しているのを聞いたとき、まるで冬のコンクリートの冷たさを肌で感じたような気がしました。 気になってスマホでまつりさんのTwitterアカウントを検索してみると、アカウントは削除されずにちゃんと残っていました。誰にも見られないように気をつけながらスマホで彼女のタイムラインを見ました。 「部長(…)「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」 わたし「充血もダメなの?」 この人は、私なのだろうか? 「充血した目で会社にくるな」は私が新入社員のときに先輩から指摘されたこと、そのまんまじゃないか。 「1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きてるのか分からなくなって笑けてくるな」 うんうん、わかるよ。1日20時間会社にいると、意識が朦朧として、まともな思考ができなくなるんだよね。みんな平気なのかと思ってたけど、辛いのは私だけじゃなかったんだ』、「高橋まつり」さんとは気持ちが通じる面が大きかったようだ。
・『怖いくらいわかりすぎる  男性上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である。おじさんが禿げても男子力がないと言われないのずるいよね。鬱だ~」 ほんとそれ! ていうか、こんなかわいい人にまで女子力いじりする上司がいるんだね。腹立つな。 「私の仕事や名前には価値がないのに、若い女の子だから手伝ってもらえた仕事。聞いてもらえた悩み。許してもらえたミス」 なんだろうね、大学まではクラスのリーダー的存在でも、社会人になってからいきなり「若い女の子」扱いされるあの感じ。ありがたいんだけど複雑だよね。人はいつか老いるし。 「優しかったり面白かったり超仕事できたり後輩や同僚思いだったりする先輩や同期も、たまにプライベートが垣間見えることがあって、仕事が終われば女の子を弄んだり泣かしたりしているいわゆるところの『広告マン』なんだなぁと思うと切ない気持ちになる」 うんうん! 自分にはやさしい上司が、他の女子を粗末に扱っているのを見ると空恐ろしくなるよね。男性の先輩のモテっぷりに比べて女性の自分は……と愕然とすることもあったよ。 「異性とまともに愛を育む時間がなく子孫を残せる可能性がないのでは?と危機感を覚えてるのに、しっかり生理痛にだけは悩まされてるのかわいそうじゃないですか?」 ああ、怖いくらいわかりすぎる。自分は子孫を残せないかもしれない絶望感。でも体は子孫を残すために機能し続ける虚しさ』、「自分は子孫を残せないかもしれない絶望感。でも体は子孫を残すために機能し続ける虚しさ」、女性特有なのだろう。
・『私はただ運が良かっただけ  まつりさん、辛かったね。寂しかったね。殺伐としたオフィスの片隅で、押しつぶされそうになりながら頑張っていたんだね。 彼女は私と同じような景色を見て、私と同じような痛みを感じていた。しかも、私がこれまで自覚しないようにしてきた感情の一つ一つを言語化していた。その存在に気づいたときには、彼女はもうこの世にはいなかったけれど。 広告業界の女性たちは、多かれ少なかれ、きっとまつりさんと同じような経験をしているはずです。ちょっとでも条件が違ったら、私だってまつりさんと同じ行動をとっていたかもしれません。ただ、私は運よく自分が好きな仕事ができていたから、長時間の残業や理不尽にも耐えることができました。そして私には運よく自分のことを気にかけてくれる密な人間関係がありました。でもどんな部署に配属されるかなんて、努力ではどうにもならない。もはや運でしかない。それは会社の中で何の権力も持たない新入社員がどうにかできる問題ではないと思うのです。 もしも私がまつりさんと同じ部署にいる先輩だったら、悩みを聞いてあげられたのに。いや、でも無理だったに違いない。きっとその場にいたら、忙しくて殺伐とした空気に飲み込まれてしまって、誰かを気遣うとかそんな余裕もなかったかもしれません。かわいい新入社員に女の子ポジションを脅かされるのではないかと、ライバル心を燃やしていた可能性もあります』、「もしも私がまつりさんと同じ部署にいる先輩だったら、悩みを聞いてあげられたのに。いや、でも無理だったに違いない。きっとその場にいたら、忙しくて殺伐とした空気に飲み込まれてしまって、誰かを気遣うとかそんな余裕もなかったかもしれません」、筆者は自省が深いようだ。
・『残業時間に注目するのは「ピントがずれている」  ニュースでは残業時間月100時間という労働環境の悪さばかりが注目されたけど、私はどこかピントがずれているような気がしました。実際、広告業界では月100時間残業している人なんてざらにいました。まつりさんを苦しめたのは長時間労働に加えて、女性だからこその終わりのない苦しみだったんじゃないか? そんな思いが頭を離れませんでした。 女性として日常的に上司にバカにされ、男性より圧倒的に下の存在であることを自覚しながら、そこに長時間労働が組み合わさったときに、人はどれだけ自尊心を削られるだろう。男性社員なら長時間労働の先にも輝かしい栄光が見えるのではないか。六本木のクラブや銀座コリドー街に行けば、きれいな女の子たちにチヤホヤしてもらえるだろうし、美人の奥さんと結婚できて家事も育児もしてもらえるだろう。でも私たち女性社員は、はたして彼らと同じように働いたところで報われるのだろうか? 子孫も残せないのに生理痛に耐えて残業する日々を何十年も繰り返すのだろうか。 まつりさんの一件から広告業界の労働環境は大きく改善され、どの会社でも夜10時以降の残業はオフィシャルではNGになりました。あれだけ変わらないと思っていた「残業してなんぼ」という慣習も建前としてはなくなったのです。それは奇跡のようなことに思えました。資料をスピーディに作成したり、会議を効率的に進める方法が導入されたり、クライアント対応を調整したりする部署もありました。完全ではないにしろ、やればできたんだと思いました』、「まつりさんを苦しめたのは長時間労働に加えて、女性だからこその終わりのない苦しみだったんじゃないか?」、「男性社員なら長時間労働の先にも輝かしい栄光が見えるのではないか。六本木のクラブや銀座コリドー街に行けば、きれいな女の子たちにチヤホヤしてもらえるだろうし、美人の奥さんと結婚できて家事も育児もしてもらえるだろう」、確かに女性の場合、男性のような息抜きがないのは事実だ。
・『業界を大きく動かした高橋まつりさん  広告業界には「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」などの賞があり、広告業界に顕著な変化をもたらした人は毎年表彰されます。たいていは有名クリエイターがノミネートされるのですが、近年で業界を本当に動かしたのは、紛れもなく高橋まつりさんだったと思います。 「まつりさんは敏感な子だったのでは?」「ゆとりは打たれ弱いから」「プライドの高い東大女子が社会に出て鼻をへし折られたのだろう」「仕事ではなくプライベートに問題があったのでは?」「まつりさんのせいで残業すらできなくなった」 そんな社員の声もちらほら聞かれました。 きっと表面上でも話を合わせた方がいいのでしょうが、私は内心モヤモヤしていました。でも実際に同じような経験をした自分たちが生き残って、まつりさんが亡くなってしまったことを考えると、「近頃の若者はがまん強さが足りないから」という結論に到達するのが理解できてしまう自分もいました。 もし自分の娘さんが将来同じ目にあったら、彼らはそんなことを言えるんだろうか? でも彼らは「娘には広告の仕事はさせない」と言うのです。大切な娘にさせたくないヤバい仕事をしている女が、あなたのすぐ目の前にいるんですけど』、「彼らは「娘には広告の仕事はさせない」と言うのです」、父親としての正直な気持ちだろう。
・『「選ばれるはずない」最初からわかっていた  まつりさんの件が話題になった頃に、働く女性のストレスを癒すことをコンセプトにした化粧品のコンペがありました。 クライアントのオリエンは「話題性を出したい」ということだったので、いまちょうど話題になっているあのことを出さないわけにはいかないだろう、むしろそれを避けて「前髪を切りすぎちゃった」みたいなゆるふわなストレスを描いたら、噓になってしまうだろうと思いました』、面白そうな「コンペ」だ。 
・『CM企画「女性のストレス」篇  <働く女性に様々な言葉がぶつけられ、肌がダメージを受ける様子を描きます> 「疲れた顔をするな」「女子力がない」「女の子は偉い人の隣に行ってお酌して」「女の賞味期限は25歳まで」 NA:現代女性の肌はかつてないほどの大きなストレスにさらされています。 ○○○美容液は△△成分配合で、肌ストレスを軽減。 使うたび、健やかな肌へ。 <夜に自宅で女性が商品を使ってほっとしたような顔> NA:いまを生きる女性とともに。 ○○○美容液。 社内での企画打ち合わせのとき「このクライアントでは実現が難しいと思いますが、こんな方向性もあるかもしれません」と前置きしつつ、この企画をプレゼンしました。 私以外は男性メンバーだらけの会議室は凍りついてしまいました。 男の人は女の怒りの表現に慣れていないのかもしれない、そう思いました。 クリエイティブ・ディレクターは言いました。「広告業界は、最近あんな事件が起きたばかりだしねえ。こういう強い表現だと、クライアントもショックを受けてしまうかもしれないね。笛美の気持ちは伝わるんだけど、もっと他にも癒しを描けてる企画があるから、今回はそっちを出そう」 この企画が選ばれるはずないことなんて、出す前からわかっていました』、「この企画が選ばれるはずないことなんて、出す前からわかっていました」、それでも堂々と「プレゼン」するとはさすがだ。
・『近くて遠い#MeToo  2017年に起きた#MeTooのムーブメントを、私は遠い世界のできごとのように眺めていました。ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之氏にホテルに連れ込まれて性行為を強要されたというニュースを聞いて、新入社員のときに先輩にホテルに連れ込まれかけたことを少しだけ思い出しました。でも当時はちょっと気になるニュースだなとしか思わず、そのまま流していました。 その後、#MeTooの声は、広告業界の男性に向けても上がり始めました。著名なブロガーのはあちゅうさんは、元電通のクリエイティブ・ディレクター岸勇希氏からのセクハラ・パワハラに対して声を上げました。グラビア女優の石川優実さんは、電通の名を騙って枕営業をさせた男性を告発し、芸能界にはびこる枕営業文化を明らかにしました。芸能界の枕営業の噂は、やはり本当だったのだと思いました』、なるほど。
・『うまく言語化できなかった  仕事の合間にニュースアプリでそれらの記事を読みながら、男性たちのした行為自体にはまったく驚きませんでした。正直、本当によくある話だなと思いました。なぜセクハラをする男性というのは、判で押したように同じ言動をとってしまうのだろう? 普段は素晴らしいクリエイターとして評価されている人たちも、セクハラするときはちっともクリエイティブじゃなくなる。 でもなぜ彼らの行いが悪いことなのか、なぜ世の中が騒いでいるのか、自分の言葉でちゃんと説明できませんでした。他の人はバレないように上手くやっているのに、そこら辺を誤って下手にやったから悪いのだろうと思っていました。 私の辞書に「人権」という言葉はあっても、そのページにたどり着くことはできませんでした。セクハラは人権を侵害していて、人間としての尊厳を奪っている。 どんなに競争の激しい業界だからといって、どんなに地位のある業界人だからといって、女性の人権を侵害していいわけではない。偉いクリエイターさんも被害にあった女性も、本当は人間として平等なのだ。そんな当たり前のこともわかりませんでした。 彼女たちが訴えてくれていることが、どれだけ自分の人生に直結しているかも気づいていませんでした。 私はむしろ訴え出た女性に対して驚いていました。なぜ他の人も同じ目にあっているのに、ひとりだけこんなに騒いでるのかな? なぜそこまでして訴え出たの? 社会人生命が終わるのが怖くないのだろうか? 彼女たちはきっとメンタルが強い特別な人で、自分とは違うんだろうと結論づけるしかありませんでした』、「セクハラは人権を侵害していて、人間としての尊厳を奪っている・・・そんな当たり前のこともわかりませんでした」、「彼女たちはきっとメンタルが強い特別な人で、自分とは違うんだろうと結論づけるしかありませんでした」、深く自省したようだ。
・『「女を使う」ってどういうこと?  会社の男性たちは「怖い時代になったものだ」「うかうか女子社員と会話もできない」「なんでもセクハラになってしまう」などと古典的なリアクションをしていて、私もそうだなと思っていました。 でもこんなに世の中で騒ぎになっているのを見ると、やはりうちの業界はおかしかったのかもしれないと思う反面、「異常な環境でサバイブできてる私って特別だ」と自分に酔ったりもしました。 #MeTooをした女性に対して「自分だって女を使って散々トクをしたんだろ」という批判をよく見かけました。その言葉がなぜか私の心にチクリと刺さりました。 私も「女を使った」と男性陣に言われたことがあります。「女を使う」とはどういうことでしょうか? 女として求められる化粧や服装や笑顔や愛想を発動することが「女を使う」になるならば、私は女を使ったことになると思います。自分が「女を使った」から、相手が「女」に反応してセクハラや性加害に及んだのだとしたら、もしかしたら責任の半分は自分にもあるのではないかと思っていました。 じゃあ、なぜ私は女を使わなければいけなかったのでしょうか? 刻々と迫っている、と思わされている女性の人生のタイムリミット。わずか数年で確固たるキャリアを身につけなければならない焦り。早く結果を出すためには、権力のある人と仲よくしたい、無理なことも我慢しようと思うのは、そんなに不自然なことでしょうか? たとえ「何かおかしいな?」と思っても相手から逃げ出せたでしょうか?』、「刻々と迫っている、と思わされている女性の人生のタイムリミット。わずか数年で確固たるキャリアを身につけなければならない焦り。早く結果を出すためには、権力のある人と仲よくしたい、無理なことも我慢しようと思うのは、そんなに不自然なことでしょうか?」、女性の時間概念は男性よりはるかに厳しいことを初めて知った。なるほどと納得した。
タグ:企業不祥事 「もしも私がまつりさんと同じ部署にいる先輩だったら、悩みを聞いてあげられたのに。いや、でも無理だったに違いない。きっとその場にいたら、忙しくて殺伐とした空気に飲み込まれてしまって、誰かを気遣うとかそんな余裕もなかったかもしれません」、筆者は自省が深いようだ。 あの「トヨタ」で「車検不正」が発生した件については、4月27日、5月26日にも取上げたので、これは続々報である。 「刻々と迫っている、と思わされている女性の人生のタイムリミット。わずか数年で確固たるキャリアを身につけなければならない焦り。早く結果を出すためには、権力のある人と仲よくしたい、無理なことも我慢しようと思うのは、そんなに不自然なことでしょうか?」、女性の時間概念は男性よりはるかに厳しいことを初めて知った。なるほどと納得した。 「セクハラは人権を侵害していて、人間としての尊厳を奪っている・・・そんな当たり前のこともわかりませんでした」、「彼女たちはきっとメンタルが強い特別な人で、自分とは違うんだろうと結論づけるしかありませんでした」、深く自省したようだ。 「自分は子孫を残せないかもしれない絶望感。でも体は子孫を残すために機能し続ける虚しさ」、女性特有なのだろう。 「高橋まつり」さんとは気持ちが通じる面が大きかったようだ。 東洋経済Plus 「彼らは「娘には広告の仕事はさせない」と言うのです」、父親としての正直な気持ちだろう。 面白そうな「コンペ」だ。 「同業界にいた女性の叫び「電通の高橋まつりさんは長時間労働に殺されたんじゃない」 自分も同じ行動をしたかもしれない」 「メーカーの統一商品として45分車検や60分車検を展開したことが間違いだった」、個別販社の問題というより「トヨタ」全体の問題だ。特に、「短時間車検に対する正しい認識」が重要なようだ。「30分車検を実施する際は、60分の事前見積もりを行っている。顧客には2回車を持ってきてもらう必要があるため、逆に不便に思う人もいる」、なるほど。 (その25)(販売会社との関係再構築が急務 トヨタ「45分で車検」の表示取りやめが示す課題、同業界にいた女性の叫び「電通の高橋まつりさんは長時間労働に殺されたんじゃない」 自分も同じ行動をしたかもしれない) 「11月」の「全国の販売会社の代表を集めた会議」で、どんな方針が示されるのかが注目される。 「この企画が選ばれるはずないことなんて、出す前からわかっていました」、それでも堂々と「プレゼン」するとはさすがだ。 笛美 「販売会社との関係再構築が急務 トヨタ「45分で車検」の表示取りやめが示す課題」 PRESIDENT ONLINE 「まつりさんを苦しめたのは長時間労働に加えて、女性だからこその終わりのない苦しみだったんじゃないか?」、「男性社員なら長時間労働の先にも輝かしい栄光が見えるのではないか。六本木のクラブや銀座コリドー街に行けば、きれいな女の子たちにチヤホヤしてもらえるだろうし、美人の奥さんと結婚できて家事も育児もしてもらえるだろう」、確かに女性の場合、男性のような息抜きがないのは事実だ。
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デジタル通貨(その2)(中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット) [金融]

デジタル通貨については、昨年6月16日に取上げた。今日は、(その2)(中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット)である。

本年1月17日付けCOIN POST「中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット」を紹介しよう。
https://coinpost.jp/?p=199956
・『中国をはじめとする各国は、独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)の構築競争を繰り広げています。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)ではなく、独自のデジタル通貨の導入を目指すのはなぜでしょうか。 この記事では、誰が通貨の構築競争をしているのか、競争のメリットは何か、そしてそれがさらなるの普及のために何を意味するのかを見ていきたいと思います。 目次(CBDCとは 銀行はなぜCBDCを推進するのか なぜビットコインでなく、独自通貨なのか スピード感とアプローチ CBDCのリスク CBDC決済の構造)』、COIN POSTは仮想通貨の交換業者だが、この記事は分かり易いので紹介した次第である。誇張した表現などは適宜コメントしたい。「構築競争を繰り広げています」というのは大げさだ。後述するように、主要国の中央銀行は中国を除けば慎重に検討している段階だ。
・『CBDCとは  中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、その名の通り、日銀のような既存の国家の金融機関が作成・管理する通貨です。今までの通貨との違いを挙げると、紙幣や硬貨というアナログな貨幣の代わりに、すべてデジタルなものに置き換えられています。 国際決済銀行によると「CBDCは厳密に定義された言葉ではない」とされており、それは「何が(CBDCの導入により)変わるかを分析するためには、CBDCが何でないかを明確にすることを定義したほうが簡単だ」といわせるほどです。この論理によると、CBDCは「伝統的な準備口座や決済口座に保有されている貨幣とは異なる形式の、デジタルな中央銀行貨幣」との見方も出来ます』、なるほど。
・『銀行はなぜCBDCを推進するのか  なぜ、銀行はこれほどまでにCBDCの構築に熱心なのでしょうか? この疑問には対象とする国の通貨がどのような状態にあるかによって、さまざまな理由が考えられます。 ○価値の平等化(例えばベネズエラでは、米国からの経済制裁などの影響に伴うハイパーインフレや国民の外貨購入制限により、自国経済が機能不全に陥っています。国が管理するデジタル通貨は、自国通貨の価値をより一貫したものにするための一つの方法かもしれません。 ○送金の高速化(一方で他の国では、国家から国民への資金の分配には、銀行やクレジットカード会社などの中間業者が関与しているため余計に手数料と時間がかかります。銀行によっては多額の通貨の動きを処理するのに何日もかかるところもあることを考えると、この影響はさらに身近に感じられるでしょう。しかし、デジタル通貨であれば、瞬時に送金することができ、効率性が向上します。 COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で世界経済が大きな打撃を被るなか、多くの国が特別給付金などの臨時策で、国民に直接現金を渡しています。しかし、デジタル通貨が普及していれば、分配をはるかに迅速に行うことができたでしょう。 ○経済の把握(そして中央銀行がデジタル通貨の創設に関心を持つ最後の理由は、今の経済が物理的な貨幣を置き去りにして、キャッシュレスなどデジタル化を急速に進めていることです。これが欧米ではPayPal、中国ではWeChatに代表されるような決済サービスの台頭につながっています。 これらの企業だけで、人々は何十億ドルものお金のやり取りを行っています。その結果、政府はそのお金の流れを把握しきれておらず、経済の予測を立てるのに困っています。例えば、政府が総マネーサプライ(経済学でいうM2)を測定できなければ、インフレなどを正確に予測することができず、雇用、個人消費、企業投資、通貨の強さ、貿易収支などに影響を及ぼします。 中央集権的に発行されたデジタル通貨であれば、政府は経済に何が起こっているのかをより明確に知ることができます』、「銀行はなぜCBDCを推進するのか」、「銀行」と言っても、民間銀行ではなく、「中央銀行」である。「推進」も大げさで、実際には研究を推進している段階である。
・『なぜビットコインでなく、独自通貨なのか  ビットコインは最も有名な仮想通貨であり、後続の通貨の道を切り拓いてきましたが、国家にとって公然と支持できるようなものとはみなされていません。 それは、ビットコインがオープンソースかつ支持基盤がグローバルであるため、政府によって完全にコントロールすることが不可能であることが主な理由です。ビットコインの発行方法、ディフィカルティ(難易度調整)などは国家の管轄外であり、またマイニング(採掘)の主な現場は、電気代の安い中国などに集中しています。 その点、CBDCは必ずしもブロックチェーンを利用したものでなくてはならないとは限りません。従来の中央集権型のシステムのほうがコントロールしやすい側面もあるからです。わざわざ制御しにくいビットコインに信頼を預けるよりも、己の管理下に通貨を置きたい。国家機関として当然のスタンスとも言えます』、「マイニング(採掘)の主な現場は、電気代の安い中国などに集中」、とあるが、その後、「中国」は「マイニング」を禁止した。
・『スピード感とアプローチ  ここで注目すべきは、国によって、将来のデジタル通貨がどのようなものになるのかについて、さまざまなコンセプトを打ち出していることです。 多くの国がCBDCの導入に取り組んでいますが、そのうちほとんどの国は、自分たちに最適なバージョンを見つけるべく、時間をかけて検討を進めています。 先進国のなかで、CBDCの導入への動きをけん引しているのは中国でしょう。2020年10月、中国のハイテクハブである深セン市は、国内デジタル通貨のパイロットテストの一環として、1000万元(150万ドル)以上を市民に配布すると発表しました。 (文中の関連事項は省略) しかし、米ドルなどの法定通貨と金融・経済への影響を懸念し、ほとんどの政府は難しい舵取りを迫られています。 英国は、現金へのアクセスを保護することを誓い、米国では現金経済に依存している多くの人々が取り残されることをおそれ、すでに各州がキャッシュレス小売業に反対する法律を制定し始めています。 (文中の関連事項は省略) また、国営のデジタル通貨がプライバシーを奪うことになるのではないかという懸念もあります。この例として中国では、国がすべての取引を審査することが可能で、誰の資金でもいつでも凍結できるシステムとなっています』、「中国」は「深セン市」で「パイロットテスト」を始めるなど、積極的だ。 
・『各国のCBDCに対する取組意欲などの評価(詳細の表はリンク先参照)』、(筆者コメント)取組意欲が高いのは中国のみ、他国は低い。日本も含めた他国は、中国が先行してCBDCを出すことを警戒して、準備している受け身の姿勢である。
・『CBDCのリスク (文中の関連事項は省略) CBDCの不明点の一つに「CBDCが広い経済圏の中でどのような役割を果たすようになるのか」があります。特に金融サービス業についてはどのように共存するのか、共存がまず可能なのか、さまざまな議論が交わされています。 代表的な例としては銀行があります。国に直接貯蓄を預けることができるようになったなら、同様のサービスを提供していた銀行はどうなるのでしょうか。 そのほかにも、少しすでに触れましたがプライバシーとセキュリティの両立の難しさも争点です。すべての国民が政府を貯蓄を預けられるほどに信頼しているわけはなく、またサイバーセキュリティの問題もあり、完全な移行には相応の反発があるでしょう。 これらのリスクを踏まえ、各国中央銀行は中央銀行の口座に最大預金額を設けるなど、CBDCの規模を制限する策を検討しています』、「中央銀行の口座に最大預金額を設ける」、限度額がなく、全額をCBDCに入れられたら、民間銀行の預金はなくなり、貸出も出来なくなり、信用創造機能が発揮できなくなってしまうためである。
・『CBDC決済の構造  CBDCの導入にあたって、考えられる決済の構造は多数あります。それぞれメリット、デメリットがあり、どれを採用するかは金融当局のニーズとキャパシティ次第です。 CBDCの一例 A(図はリンク先参照) CBDCの一例 B(図はリンク先参照) CBDCの一例 C(図はリンク先参照)  これらのうち、AはダイレクトCBDCといい、これまでの金融と最もかけ離れたシステムです。中央銀行がすべての決済にかかわり、すべての口座の残額を把握します。このシステムではすべての情報を中央銀行が所有しているため、確認がとても容易になります。 このシステムの最大の問題点は民間の参加の少なさです。付加価値を利用するフィンテック市場の保護のため、このシステムを採用したがる中央銀行は少ないでしょう。ネットワークの強靭化もまた課題となります。 Aの反対ともいえるのがC、インダイレクトCBDCです。すべての銀行がリザーブのCBDCをもち、中央銀行に預けることを要求されます。この場合、金融機関が破産などしたとき、後処理が大変になるでしょう。誰が何を持っていたのか、長い司法手続きが想像できます。 そしてAとCの妥協ともいえるのがBです。ハイブリッドCBDCとも呼ばれるBですが、利用者の法的要求を中央銀行に向け、プロバイダの帳簿と分離することでCBDCサービスプロバイダが破産したときも、利用者の口座の詳細は明かされないという利点があります。この時、中央銀行が円滑に利用者の保護をするためにはCBDCの取引の帳簿が必要となります。しかし、すべての利用者の取引を中央銀行が把握するのは、プライバシーやセキュリティの問題を生じさせることになり、このどちらを選んだとしても利点と欠点は現れます。CBDCの導入により中央銀行は厳密な監視か複雑なインフラのどちらかを要求されることとなるでしょう』、私見では、中国が仮想通貨のマイニングだけでなく、流通も禁止したことで、CBDCを出す意欲も低下した可能性がある。
なお、日銀が9月30日付けで「プレスリリース:中央銀行とBISはリテール型CBDCがどのようなものかを検討」、「中央銀行デジタル通貨:エグゼクティブ・ペーパー」を公表した。これはかなり専門的なので、紹介は省略する。 
タグ:デジタル通貨 (その2)(中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット) COIN POST 「中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは|ビットコインとの違いと主なメリット」 COIN POSTは仮想通貨の交換業者だが、この記事は分かり易いので紹介した次第である。誇張した表現などは適宜コメントしたい。「構築競争を繰り広げています」というのは大げさだ。後述するように、主要国の中央銀行は中国を除けば慎重に検討している段階だ。 「銀行はなぜCBDCを推進するのか」、「銀行」と言っても、民間銀行ではなく、「中央銀行」である。「推進」も大げさで、実際には研究を推進している段階である。 「マイニング(採掘)の主な現場は、電気代の安い中国などに集中」、とあるが、その後、「中国」は「マイニング」を禁止した。 「中国」は「深セン市」で「パイロットテスト」を始めるなど、積極的だ。 (筆者コメント)取組意欲が高いのは中国のみ、他国は低い。日本も含めた他国は、中国が先行してCBDCを出すことを警戒して、準備している受け身の姿勢である。 「中央銀行の口座に最大預金額を設ける」、限度額がなければ、全額をCBDCに入れられたら、民間銀行の預金はなくなり、貸出も出来なくなり、信用創造機能が発揮できなくなってしまうためである。 「中央銀行の口座に最大預金額を設ける」、限度額がなく、全額をCBDCに入れられたら、民間銀行の預金はなくなり、貸出も出来なくなり、信用創造機能が発揮できなくなってしまうためである。 私見では、中国が仮想通貨のマイニングだけでなく、流通も禁止したことで、CBDCを出す意欲も低下した可能性がある。 なお、日銀が9月30日付けで「プレスリリース:中央銀行とBISはリテール型CBDCがどのようなものかを検討」、「中央銀行デジタル通貨:エグゼクティブ・ペーパー」を公表した。これはかなり専門的なので、紹介は省略する。
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防衛問題(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ) [国内政治]

防衛問題については、6月5日に取上げた。今日は、(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ)である。

先ずは、5月28日付け日経ビジネスオンライン「中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/052500056/
・『台湾有事が話題になる機会が増えている。これは日本にとって他人事ではない。中国は沖縄をはじめとする南西諸島を勢力圏に取り込む意図を持つとされる。抑止力強化のため、敵基地攻撃能力を持つことが選択肢として挙がる。果たして、これは得策か。台湾有事に詳しい尾上定正・元空将に聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:台湾有事が話題になる機会が増えています。菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領が4月16日に行った日米首脳会談後の共同声明にも、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と盛り込まれ、注目されました。 台湾有事は、いつ、どのような条件が整ったときに起こると考えられますか。 尾上定正・元空将(以下、尾上):時期については、習近平(シー・ジンピン)国家主席すら分からないでしょう。私は当初、2024年までが危ないと考えていました。新型コロナウイルスの感染症が最初、中国・武漢で広まったのを受けて、中国経済が数年にわたって打撃を受けると推測したからです。経済成長は、中国共産党政権の統治の正当性を支える土台。これが揺らげば、台湾統一など別の要素で補強する必要が生じます。 しかし、中国はこのときの予想をはるかに上回る勢いで経済を回復させました。よって今は、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が3月に示したのと同様、6年後の2027年までが1つの区切りになるとみています。 それでも、経済の状況が習近平政権の「意志」を刺激し、台湾有事の引き金になり得る構図は変わりません。 注目するのは人口です。中国の人口は2030年ごろにピークを迎えると予想されています。中国はGDP(国内総生産)で、2028年にも米国を抜くとの予想があります。しかし、人口がマイナスに転じれば経済の成長も鈍化する。いったん米国を抜いても、再び抜き返されることが想定されます。ならば、中国にとって「機会の窓」が開いている期間はそれほど長くない。その短いチャンスをものにして事を成就する――ことへの誘惑が働くのではないでしょうか。 また中国は軍事力の増強を続けており、「能力」面でも「今ならできる」との自信も深めているとみられます。脅威は「意志」と「能力」から成ります。能力において、短期的な優位が長期的には不利に移行していく状況が最も危ないのです。1930年代の日本と同じですね。 軍事力は、1996年の台湾海峡危機*では、米空母を前に沈黙せざるを得なかった。この悔しさをバネに毎年2けた%増で防衛費を増やしてきました。デービッドソン司令官が上院軍事委員会の公聴会で示した資料をみると、西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります。 *:1996年の台湾総統選に独立派の李登輝が立候補した。中国はこれに反発し台湾近海にミサイルを撃って圧力をかけた。米国はこれに対抗すべく、空母2隻を派遣した  中国は今年の4月23日には強襲揚陸艦とミサイル艇、原子力潜水艦の3隻を同時に就役させ国際社会の耳目を集めました。記念の式典には習近平国家主席のほか、2人の中央軍事委員会副主席が出席し、能力の増強を誇示しました。 Q:中国海軍は4月6日、台湾周辺の海域に空母「遼寧」を派遣しての軍事訓練も実施しています。 尾上:そうですね』、「西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります」、なるほど。
・『台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激  ここまで中国の意志と能力についてお話ししました。これに加えて台湾と米国の事情も、中国の意志を刺激する可能性があります。 台湾で2024年、次の台湾総統選が予定されています。このときに、与党・民進党の頼清徳・副総統が立候補する可能性があります。同氏は台湾独立を強く訴えてきた人物。総統選で独立を打ち出すことが考えられます。そうなれば、中国の逆鱗(げきりん)に触れるでしょう。 もちろん、民進党はそんなばかなことはしないでしょうし、米国も抑えようとするにちがいありません。しかし、李登輝の例もあることです。 同じく2024年に米国でも大統領選が実施されます。これが混乱することが予想される。トランプ前大統領を支持する勢力が今でも力を持っており、米国内を分断しています。仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません。Q:中国と台湾との経済関係が抑止力として働く可能性はありませんか。中国は、輸入の約8%が台湾からです(2019年実績。以下同じ)。半導体をはじめとする主要な電子部品が含まれている。これが途絶えれば、中国経済に大きな打撃を与えることになります。米国が介入する事態になれば、受ける打撃がさらに大きくなる。米国との取引は輸入で約12%、輸出で約17%を占めています。中国国民はこれらを失うことに耐えられるでしょうか。共産党政権が一党独裁を敷いているとはいえ、中国国民の世論を無視することは難しくなっています。 尾上:経済が抑止力として働く要素は間違いなくあります。ブッシュ政権でコンドリーザ・ライス国務長官(当時)の顧問を務めた安全保障の専門家であるフィリップ・ゼリコー氏とロバート・D・ブラックウィル氏は米外交問題評議会で発表したリポート「The United States, China, and Taiwan : A Strategy to Prevent War」の中で、核抑止でいうMAD(相互確証破壊)*と同様の役割を経済が果たすと指摘しています。 *:敵の第1撃を受けた後も、残った戦力で相手国の人口の20~25%に致命傷を与え、工業力の2分の1から3分の2を破壊する力を維持できていれば、相手国は先制攻撃を仕掛けられない、というもの。米国のロバート・マクナマラ国防長官(当時)が1960年代に核戦争を抑止する戦略として提唱した しかし、中国共産党にとって台湾統一は統治の正当性を担保する「1丁目1番地」です。習近平国家主席は2019年1月の演説で、「中華民族の偉大な復興へのプロセスにおいて台湾同胞を欠くことはあり得ない」と強調しました。その習近平政権は、統治の正当性と経済のどちらを優先するでしょう。抑止が働くかどうかには疑問符を付けざるを得ません。 よって、われわれは習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります』、「台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激」、「民進党」の候補が中国を過度に刺激しないよう発言を抑制してほしいものだ。「仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません」、確かに中国には侵攻のチャンスなのかも知れない。「習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります」、その通りだ。
・『中国空軍が日本領空を通過して台湾東岸を攻撃  Q:抑止力を高めるために何が必要でしょう。 尾上:こちらも意志と能力に分けてお話ししましょう。 日本は米国とともに既に意図を示しています。冒頭で言及された、日米共同声明において「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記したことです。日米のこの意図が習近平国家主席やその政策を立案するスタッフに浸透するよう、今後も繰り返し伝える必要があると考えます。 能力面では、南西諸島から台湾に至る第1列島線の防衛力を日米で高めていく必要があります。習近平政権が台湾の軍事統一を試みた場合に負担しなければならないコスト、もしくは被るリスクを高める。 Q:日本の南西諸島の防衛力を高めることが、台湾有事の抑止につながるのですか。 尾上:つながります。例えば、中国空軍が日本の南西諸島上空を経由して台湾東岸を攻撃する可能性があるからです。台湾の地形は、西は平地、東は山地になっています。中国は西の平地は短距離弾道ミサイルで容易に攻撃することができる。しかし、東の山地を攻撃するのは難しい。台湾軍はこの地の利を生かして、東部の花蓮県や台東県に地下シェルターを装備する基地を設け、戦闘機などの装備を隠す作戦を立てています。 中国空軍はこの台湾東部の基地を攻撃するのに、より東の太平洋側から回り込む必要がある。既に中国は、爆撃機H-6を使って宮古海峡*を抜けて太平洋側に進出する訓練を実施しています。3月29日には多数の中国軍機が台湾周辺と同時に、宮古・沖縄本島間を飛行する「2正面訓練」も実施しています。こうした中国空軍の攻撃への備えを宮古島などに配備することで、中国がこの作戦を実行する際のリスクを高めることができます。 *:宮古島と沖縄本島との間の海峡  Q:陸上自衛隊は鹿児島県・奄美大島や沖縄県・宮古島、石垣島に、12式地対艦誘導弾(SSM)や対空ミサイル「03式中距離地対空誘導弾改善型(=03式中SAM改)」を備えた陸上自衛隊の部隊を配備しています。 尾上:この取り組みは評価しますが、まだ十分とはいえません。 Q:政府は2020年12月、自衛隊の12式地対艦誘導弾の射程を延長する作業に着手すると閣議決定しました。現行の200kmから900km、1500kmへ伸ばすとされています。 尾上:これは抑止力の向上に寄与するでしょう。より遠くまで攻撃することができれば、それだけ中国艦船が近づきづらくなりますから。中国の爆撃機H-6に搭載できる対地巡航ミサイルCJ-10の射程は1500kmあります。南西諸島防衛はこれにも対抗できるようにすべきです。巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要があります』、「巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要」、その通りだ。
・『中国を狙う敵基地攻撃能力の取得は得策か?  Q:米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約が2019年8月に失効したのを受けて、米国は地上発射型中距離ミサイル(射程500~5500km)を保有できるようになりました。中距離弾道ミサイルの開発に着手したとされます。これを中国への抑止力として第1列島線上に配備することが取り沙汰されています。米国から要請があった場合、日本はどうすべきだと考えますか。 尾上:地上に目に見える形で中距離ミサイルを配備することは、抑止力の向上を図る上で大きなインパクトを持ちます。置く場所を考えると日本しかありません。フィリピンはドゥテルテ政権の姿勢が安定しません。オーストラリアは距離的に遠すぎます。 しかし、現実にはかなりの困難を伴います。国民の合意を得るのが難しい。配備地の地元住民のみなさんは、懸念されることが多々あるでしょう。イージス・アショアの配備でも地元の合意を得る作業が不調に終わりました(関連記事「ブースターは一部、陸上イージスが無理筋なこれだけの理由(上)」)。 Q:日本が独自に中長距離ミサイルを配備し、中国を対象にしたいわゆる敵基地攻撃能力を備えるという選択肢もありますか。 尾上:こちらも国民の合意を得るのは容易ではありません。私は、北朝鮮の核ミサイル脅威に対して日本は独自の攻撃能力を持つべきであり、その有力な選択肢が弾道ミサイルだと考えます。けれども中国に対しては、軍事的にみても必ずしも得策とはいえません。中国が配備する中距離ミサイルの量に比べて、日本が備えることができる装備は圧倒的に少ないからです。まして、2027年までと期限を切って考えるならば、その難易度はさらに高まります。 中国は、空母キラーと呼ばれる中距離弾道ミサイルDF-21D(射程2150km)を50基以上、グアム・キラーと呼ばれるDF-26(射程5000km)を100基以上保有しているとの報道があります。DF-26は日本列島全体を射程に収めるものです。 米太平洋軍のハリー・ハリス司令官(当時)が2017年4月、「中国は2000発以上の弾道ミサイル・巡航ミサイルを保有している。そのうち95%は、INF条約加盟国であれば違反に相当する」と議会で発言し、注目されました。 尾上:中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい、と考えます。(P5有料なので、紹介省略)』、「中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい」、その通りなのだろう。

次に、9月3日付け東洋経済オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの清谷 信一氏による「陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/450823
・『陸自の普通科(歩兵)の7.62ミリ62式機銃は廃止され、89式小銃と同じ弾薬を使う5.56ミリMINIMIで置き換えられた。世界を見渡してこのような決定をした「陸軍」は陸自ぐらいである。普通の軍隊では5.56ミリ機銃は分隊支援火器として使用されており、それとは別に7.62ミリ機銃を運用している。 7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明している。であれば装甲車輌の同軸機銃も7.62ミリでなく5.56ミリ機銃でいいわけだが、そうはなっていない。 射程が長く、貫通力の強い7.62ミリ機銃を持った敵と撃ち合えば射程においても、威力においても圧倒的に不利である。敵は陸自普通科の射程外から攻撃できるし、同じ距離で撃ち合うにしても陸自の5.56ミリ弾では相手のバリケードは抜けなくても、相手の7.62ミリ弾ならば同じようなバリケードを貫通できる』、「7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明」、撃ち合いになれば、日本側が不利になることが明らかなのに、不可思議な決定だ。
・『5.56ミリMINIMI置き換えの理由は人員削減?  本当の理由は人員削減だろうと筆者は推測している。7.62ミリ機銃だと最低でも射手と補弾手の2人が必要だ。しかも小銃小隊と別にである。ところが5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう。実戦をしない前提ならば合理的な考え方である。 そのMINIMIだが30年かけても調達が完了せずに、現在は不足分の約800丁分のトライアルを行っている。そのトライアルから住友重機械工業が撤退し、将来の機銃生産事業からも撤退する。これは筆者が「スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ」(2021年4月15日配信)で報じた通りだ。 陸自の装甲車輌は主砲の同軸機銃に7.62ミリの74式機銃を使っているが、弾薬は旧式の64式小銃と同じで7.62ミリNATO弾の減装薬弾を採用している。これは64式機銃採用時に日本人の体型では反動が強すぎるということで採用されたが、その分、NATO弾に比べて威力が低く、射程距離も短い。 64式がほぼ退役した現在、64式との弾薬の共用性を重視し、同軸機銃に減装薬弾を使う必要はないが、そのままに使用されている。 だがこれだとアメリカ軍との弾薬の相互互換性はない。NATO弾をそのまま使用すると暴発や作動不良が起こる可能性が高い。NATO弾を使用できるように調節しても射程も弾道も違うので命中が期待できない。 陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい』、「5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう」、なんたる逆立ちした発想なのだろう。「陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい」、「兵站の負担」が小さくなるような体系にしておきべきだ。
・『機械化部隊の利点を自ら捨てている  事実上、普通科の主力APC(装甲歩兵輸送車)である軽装甲機動車は非武装であり、96式装甲車のような12.7ミリ機銃を積んでいるわけでもない。そして運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう。このためAPCからの火力支援も受けられない。機械化部隊の利点を自ら捨てていると解釈できる。 96式装甲車に搭載されている豊和工業が開発した40ミリ96式自動擲弾銃にも問題がある。作動不良がひどくて実質上調達が中止になっているが、部隊ではいまだに使用されている。しかも弾薬の口径は40ミリと他国のグレネードランチャーと同じながら、NATO規格の40x53mm弾ではなく、独自の40×56mm弾である。 このためアメリカ軍との相互互換性はない。水陸機動団で導入された水陸両用装甲車AAV7にはFMS(有償軍事供与)で、アメリカ軍と同じMk19ランチャーが装備されているが、これは96式の性能、信頼性が低かったためだろう。国産の40ミリ弾も使用できない。わざわざ世界の標準と異なる弾薬を採用したのに軍事的な整合性はない。 「非関税障壁」とし て国内弾薬メーカーの仕事を確保するためだろうか。) 12.7ミリM2機銃は住友重機械工業がライセンス生産しているがオリジナルと同等の信頼性があるかについては疑問がある。陸自では12.7ミリ機銃をヘリコプターのドアガンとして使っているが、M2は俯角を掛けて撃つと作動不良が起こりやすい。また航空用としては初速も低い。筆者の知る限りM2をドアガンとして使用しているのは世界で陸自ぐらいだ。アメリカ軍では航空用のM3を採用している。陸自が導入したオスプレイには付属品として7.62ミリのM240と併せて、M3がFMS(有償軍事援助)で調達されている。 自衛隊の機銃は住友重機械工業が生産してきた。2014年、同社が40年以上にわたって機銃の性能や品質を偽造してきたことが明らかになった。筆者は長年現場の多くの隊員から同じ機銃でもアメリカ軍の機銃のほうが、信頼性が高いと多々聞いてきた。 また機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる。 機銃の範疇ではないが、84ミリ無反動砲も問題がある。陸幕は、84ミリカール・グスタフ84ミリM2無反動砲を使用してきたが、2012年度からM3に更新を始めた。だが、配備はほぼ水陸機動団だけだ』、「軽装甲機動車は非武装であり・・・運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう・・・機械化部隊の利点を自ら捨てている」、何か理由があるのだろうが、ここに書かれたことからみる限り、信じ難いお粗末な決定だ。「機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる」、お粗末の極みだ。
・『陸自はM4を採用しなかった  問題は陸自がM3を採用した頃、より軽量で高性能な新型のM4がすでに開発され、生産が決まっていたことだ。M4の重量は7㎏未満。およそ10㎏のM3より3.4㎏ほど軽い(現用のM2の重量は16.1㎏)。これを採用すれば隊員の負担は大きく低減されていたはずだ。 近年、諸外国ではM4を採用する国が増えている。M4はM3に比べて軽量であるだけではなく、火器管制装置を装備できる。取材する限り、M4のほうが調達単価はより高いが、射撃数をカウントする装置もあり、寿命管理が厳格にできるのでライフサイクルコストはM3とさほど差がないようだ。またカール・グスタフは弾薬の種類が多いのがセールスポイントだが、陸自はそれらをほとんど使用していない。 問題は性能だけではない。M3の生産は近く終了する見込みだ。そうしたら陸幕はどうするのか。M3とM4を混在して使うのか。そうなれば兵站も教育は2重になる。M3を採用するならば必要数を一気呵成に調達したほうがよかった。陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた』、「陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた」、ここまでくると呆れ果てて、腹も立たなくなった。
・『メーカーを弱体化させた要因  それはメーカーの能力や体質を弱め、国際価格の数倍から10倍の値段で、実用性にも疑問符が付くような装備を調達して税金を無駄使いすることになってしまった。その結果がコマツの装甲車生産からの撤退、住友重機械工業の機関銃からの撤退など企業が防衛部門から次々と手を引く事態である。ミネベアミツミや豊和工業の撤退も時間の問題と筆者は読んでいる。防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない。 筆者は岸信夫防衛相や吉田圭秀陸上自衛隊幕僚長、湯浅悟郎前幕僚長らに会見でこうした件について質してきたが、どこに問題があるか認識していないようだった。無論、大臣や幕僚長が個々の装備に微に入り細に入り口を出す必要はないが、仮想敵はもちろん、世界の潮流から何周も遅れている、そして兵站上も大きな問題点を抱えて、税金を無駄使いしている事実すら認識していないのは大きな問題だ。 政府も防衛省も陸幕も今の組織文化を本気で変えない限り、有事になればそのつけを隊員と国民の血で贖うことになりかねない』、「防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない」、防衛産業のやる気まで奪っているとは、「防衛省」の罪は深い。

第三に、10月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの松田 小牧氏による「数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ」を紹介しよう。
・『「防衛大学校」は自衛隊の幹部候補生の教育機関だ。その卒業生であるライターの松田小牧さんは「忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、だれしもが着校したその日から『これが防衛大か……』と息を呑むことになる。例年、わずか数日で入学者の1割が辞めてしまうほどだ」という——。(第1回) ※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『二千人の学生が生活する防衛大学校  2007年4月1日。私は京浜急行馬堀海岸駅からタクシーに乗り、防大にたどり着いた。 正門からは、白く綺麗な建物が見える。受験はすべて居住地にある施設で行われたので、防大を見るのは着校日が初めてだった。 持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度。そこまで大きいわけでもないカバンに収まってしまう程度の分量だ。とてもこれから大学生活を始める女子の荷物の量とは思えない。胸には新たな生活への期待と、厳しい環境でやっていけるだろうかという一抹の不安があった。 午前8時半から11時の間に着くよう事前に指示があったため、余裕を持って8時半過ぎに着くと、すでに多くの同期たちが到着していた。私の心情も手伝ってか、みなやや緊張した面持ちに見えた。 当時は大体が本人だけで来ていたが、今は保護者の付き添いも目立つという。防大は大隊制を敷いており、二千人弱の学生が四つの大隊に分かれ、校内の「学生舎」と呼ばれる寮で生活している』、「持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度」、「持ち物」の少なさには驚かされた。
・『入校してすぐに叩き込まれる「連帯責任」  私の所属は第1大隊だとの指示を受け、校内を移動する。校門から学生舎までの道のりは桜が立ち並び、思わず見惚れてしまうような光景だった。防大のみならず、自衛隊の駐屯地には桜が咲き誇っている場所が多い。 一見美しく整備された防大を見て、「ここならやっていけそうだ」と何の根拠もない感慨が湧いたことを強く覚えている。そして1大隊に到着すると、学生舎の前で待っていた上級生に名を告げ、またしばらく待つ。 そのうちに、上級生の女子学生がやってきた。「よろしくね! 早く来てくれてよかった」。威圧感を感じさせない、明るい人だった。この上級生が、防大で導入している「対番制度」の相手、私から見た「上対番うえたいばん」だ。 対番というのは企業でいうメンターのようなもので、新入生にいろんなことを教えてくれる、なくてはならない存在だ。入校してしばらくは、ミスをするたびに上級生に呼び出されて叱責されるが、最初のうちは自分が怒られる代わりに「きちんとした指導ができなかった」と上対番が怒られることもままある。 自分のせいでなんの落ち度もない上対番が怒鳴られる姿を見るのは極めて心苦しい。「上対番のためにも早く成長しなければ」。こうして、入校ほどなくして「連帯責任」「誰かのために頑張る」ことを学ぶ。 基本的には2学年が1学年の上対番となるため、校内には四人の「対番系列」が存在することになる』、「対番」による「連帯責任」は秩序維持にはいい仕組みのようだ。
・『「おぉ、軍隊だ……!」  「対番会」といって最上級生が下級生を街へ連れ出す独特の風習もある。対番系列は脈々と続いているものなので、自分の下対番が防大を去ることになると、「自分の代で対番系列を途切れさせてしまった」と悲しむことになる。 話を戻すと、「早く来てくれてよかった」と言われたのには理由がある。防大の生活はとにかく初日から忙しいのだ。まずは特にお世話になる指導官、上級生への挨拶を行う。そして制服の採寸から作業服への着替えに校内の案内、学生舎のルールの説明など、あっという間に時間が過ぎる。 身体検査も行われるが、この際併せて薬物検査も実施される。ちなみに、1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる。移動中、他学年とすれ違えば敬礼を交わし、頻繁に「1300ひとさんまるまる舎前に集合せよ」といった専門用語を交えたアナウンスが流れる。 最初のころはそんな一つ一つに「おぉ、軍隊だ……!」と心の中で感動していた。私の住む寮は、学生隊で最も古い「旧号舎」と呼ばれる建物だった。「旧号舎」という字面だけでもいかめしいが、とにかく住環境としては全く褒められたものではない建物だった』、「1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる」、ずいぶん厳しいルールだ。
・『「大奥」と呼ばれていた女子フロア  クーラーなんてものはなく、あるのは大きな音を出すヒーターのみ。夏は暑く、冬は寒い。ベッドには真夏でも毛布しかない。時々、暑すぎて床に伏して涼を取る者もいたくらいだ。雨が降ると雨水が室内に浸入してくるのを防ぐため、窓の桟に新聞紙を折り曲げて挟む。 強風が吹けば、窓が割れないようにガムテープをバッテン印に貼る。「このガムテープになんの意味が?」と長らく思っていたところ、ガムテープを貼りそびれた窓は確かに割れた。ちなみに紙のガムテープだと剝がすのに苦労するので、布テープのほうがいい。どんなに昔の話かと思われるかもしれないが、恐ろしいことに、これは2010年代の話である。 今は全員が新号舎に移っており、さすがにこういったことはない。羨ましい限りだ。 建物の構造としては、1〜3階が男子フロア、四階が女子フロアになっており、女子フロアは心理的にも男子が極めて足を踏み入れにくいことから、「大奥」とも呼ばれていた』、「大奥」に忍び込むような「男子」はいないのだろうか。
・『テレビもない殺風景な8人部屋で生活  部屋員は1~4学年混成の4~6人で構成されていた。防大の部屋割は時代によって変化し、同期二人部屋という時期もあったが、「同期二人では堕落がすぎる」というのですぐに廃止となり、現在の学生舎では8人部屋が基本となっている。 部屋は居室と寝室に分かれ、居室にはそれぞれの机が置かれている。テレビやゲームはおろか不必要なものが全く見当たらない、いたって殺風景な部屋だ。漫画は持っていてもいいが、見えない場所に隠さなければならない。 高校まではかなりのテレビっ子だったので、テレビがない生活に戸惑うかと思いきや、とてもそこまで思いを致す余裕などないことをすぐに知ることになる。机の上の書籍は、綺麗に背の順に並んでいる。これを「身幹順しんかんじゅん」といい、何事もこの順序が自衛隊の基本となる。 パレードなどでも「身幹順に整列!」と指示される。ただこのパレードでの身幹順というのは、背が高い者から前に並んでいくため、女子は基本的に一番後ろに並ぶことになる。結果、女子の視界には男子の背中しか入らない。 忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、誰しもが着校したその日から「これが防衛大か……」と息を呑むことになる』、「8人部屋」は、「2人部屋」に比べ相互牽制が利き易いので、秩序維持にはよさそうだ。
・『「やばいところに来ちゃったと思った」  防大では着校日、上級生による「歓迎の腕立て伏せ」が行われることが多い。 入校した1学年の期別の数だけ(私の場合は55期=55回)上級生が腕立て伏せをする姿を見て、「なんだこれはと衝撃を受けた」「やばいところに来ちゃったと思った」「見ている分には面白かった」などという声が取材の中でちらほら聞こえた。 防大について「なんの予備知識もなく来た」という者の中には、「あまりにびっくりしてしまってその夜は寝られなかった」という声もあった。 防大生には毛髪の長さの指定がある。染髪は当然禁止だ。女子は1学年のみショートカットにせねばならず、その長さも耳や襟足が完全に隠れればアウトと決められている。春高バレーでよく見かける髪型、と言えば想起しやすいだろうか。ショートの中でもベリーショートの部類だ。 うら若き十代の乙女がこの髪型にするのはなかなかの決意がいる。私は高校時代、いわゆる「お姉系」を軽く自称していた。休日には髪をコテでグルグルに巻き、大人っぽい服装を好んで着用していた私にとって、この「髪を切ること」が防大入校への第一の関門となった』、「やばいところに来ちゃったと思った」、偽らざる感想だろう。
・『同じ髪型になるからこそ個性が浮き彫りになる  女子の中にもこの髪型を「あまり気にしていない」というツワモノもいるにはいたが、「好ましい」と思っている者は聞いたことがない。2学年の5月以降は伸ばしてもよくなるため、みなその時期を心待ちにしていた。 しばらくは鏡で自分の姿を見るたびに落ち込んでいたが、同時に1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った。 ちなみに、男子の髪型は「帽子からはみ出さない」が基準となる。そのためトップには多少ボリュームを残し、サイドが短いといった男子が量産される。この髪型は1学年であろうが4学年であろうが、はたまた部隊に行こうが大して変わらない。 駐屯地や基地のある地域でこういう髪型をした屈強な男がいたら、それは大体自衛官だと思って間違いない。ただ、最初のうちは「みんな似たような髪型で同じ制服を着て、見分けがつかない」と思っていたのが、みな同じ服装だからこそ、その人の持つ本質的な個性がより浮き彫りになることを実感したのは面白い発見だった』、「1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った」、なるほど。
・『次々と中退していく新入生  防衛大学校に到着したのは4月1日。入校式は4月5日。この期間は通称「お客様期間」と呼ばれ、まだ防大生として正式に認められない期間となる。 最初は歓迎ムードで迎え入れてくれ、優しかった上級生も、入校式を終えて正式に「1学年」として認められると一転、厳しい態度になる。この数日間は、「すぐに防大をやめられる期間」でもある。 入校までに退校の意思を伝えると即日受理され、家に帰ることができるが、入校式を過ぎてからの退校手続きは完了までにかなりの時間がかかるようになる。上級生も、やめるなら早い方が本人のためになると信じているので、この「お客様期間」にあえて厳しい態度を見せつける。 ただし、まだお客様の1学年に、ではなく、2学年にこれでもかというほどの指導をし、1学年を震え上がらせるのだ。とはいえ、私は「仮にも幹部自衛官になると決意して入校してきたやつが、数日やそこらでやめるわけがないだろう」と思っていた。 仮にも軍隊組織であり、入校案内にも、「熟考し、しっかりとした自覚と、やり抜く覚悟を持って入校することを期待する」と書いてあるくらいだから、厳しい場所であることくらいは分かっていただろう、と。しかし学生の数は目に見えて減っていった』、「お客様期間」とは面白い仕組みだ。
・『わずか数日で1割が退校  私の隣に座っていた北海道から来た女子学生も、2日目までは「とりあえず最初の給料日までは頑張ろう」と言い合っていたのに、3日目には「ごめん、無理だわ、やめる」と去って行った。 毎日入校式のための練習があり、最後に学生代表が「総員○名!」と言う場面があるのだが、うろ覚えだが当初520名ほどいた学生が、入校式当日には470名超になっていた。わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている。私の3期上にあたる52期では、入校561名、卒業424名、退校106名、留年31名だった。また女子に限って言うとやめる割合はさらに高く、これまでの女子全体では入校したうちの3分の1は卒業前にいなくなる(直近5年間では6分の1)。 ただし一つ補足しておくと、やめていく人間というのは別に弱い人間でも、頑張れない人間でもない。単に自衛隊という組織に合わなかっただけだ。 自衛隊には「国を守る」という崇高な大義があるだけに、「みんな頑張っているのに、これを乗り越えられない自分はダメなんじゃないか」と思い悩んでしまう真面目な人間が必ずいる。でもそれは違う。組織がその人に合わなかっただけなのだ。 国の守り方、志の実現の方法など、ほかにもいくらでもある。やめることは逃げではない。自衛隊的に言うと、長い目で見て勝利を得るために必要な「戦略的撤退」だ。この点は声を大にして言いたいところである』、「わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている」、初めの「数日」を乗り切れば、その後は辞める人は大幅に減るようだ。なお、5頁目の下の略歴によれば、「2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。 陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う」、やはり「中途退校」したようだ。でも、その後も、人生をエンジョイしているようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン 防衛問題(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ) 「中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?」 「西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります」、なるほど。 「台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激」、「民進党」の候補が中国を過度に刺激しないよう発言を抑制してほしいものだ。「仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません」、確かに中国には侵攻のチャンスなのかも知れない。「習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります」、その通りだ。 「巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要」、その通りだ。 「中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい」、その通りなのだろう。 東洋経済オンライン 清谷 信一 「陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない」 「7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明」、撃ち合いになれば、日本側が不利になることが明らかなのに、不可思議な決定だ。 「5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう」、なんたる逆立ちした発想なのだろう。「陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7. 「軽装甲機動車は非武装であり・・・運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう・・・機械化部隊の利点を自ら捨てている」、何か理由があるのだろうが、ここに書かれたことからみる限り、信じ難いお粗末な決定だ。「機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる」、お粗末の極みだ。 「陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた」、ここまでくると呆れ果てて、腹も立たなくなった。 「防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない」、防衛産業のやる気まで奪っているとは、「防衛省」の罪は深い。 PRESIDENT ONLINE 松田 小牧 「数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ」 「持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度」、「持ち物」の少なさには驚かされた。 「対番」による「連帯責任」は秩序維持にはいい仕組みのようだ。 「1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる」、ずいぶん厳しいルールだ。 「大奥」に忍び込むような「男子」はいないのだろうか。 「8人部屋」は、「2人部屋」に比べ相互牽制が利き易いので、秩序維持にはよさそうだ。 「やばいところに来ちゃったと思った」、偽らざる感想だろう。 「1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った」、なるほど。 「お客様期間」とは面白い仕組みだ。 「わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている」、初めの「数日」を乗り切れば、その後は辞める人は大幅に減るようだ。なお、5頁目の下の略歴によれば、「2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。 陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う」、やはり「中途退校」したようだ。でも、その後も、人生をエンジ
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