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天皇制度(その2)(安倍前首相 皇位継承問題で“神風”発言 御厨貴が明かす、眞子さまPTSD公表が誘発した3つの危機 宮内庁「亡国の危機管理」とは、精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は 宮内庁は苦しむ患者を追い詰めた) [国内政治]

天皇制度については、2月15日に取上げた。今日は、(その2)(安倍前首相 皇位継承問題で“神風”発言 御厨貴が明かす、眞子さまPTSD公表が誘発した3つの危機 宮内庁「亡国の危機管理」とは、精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は 宮内庁は苦しむ患者を追い詰めた)である。

先ずは、1月3日付けAERAdot「安倍前首相、皇位継承問題で“神風”発言 御厨貴が明かす」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020122500013.html?page=1
・『上皇さまの天皇退位をめぐる有識者会議で、座長代理を務めた政治学者の御厨貴さん。今の皇室が抱える問題について、作家の林真理子と語り合いました。 林:先生は天皇陛下の退位のあり方を考える有識者会議の座長代理をされましたけど、まさか皇室がこんなことになるとは思わなかったですか。 御厨:まったく思わなかったですね。天皇が退位を表明されたこともびっくりでしたけど、あれを実現すれば、今までは天皇陛下ご夫妻だけに光が当たってたのが、今度は上皇さまになられるので、上皇ご夫妻、天皇陛下ご夫妻、皇嗣殿下ご夫妻、この3代にわたって皇室を見られることになる。今までのモノトーンの天皇・皇室ではなく、非常にカラフルな天皇・皇室になって、それぞれがそれぞれの魅力を発揮していけるのではないかと思ったし、周りにもそう言ったんです。それがこんなことになっちゃって。 林:「税金を使ってこんな好き放題なことをしていいのか」という論調がありますが、皇室の方に関して「税金を使いやがって」という声があがるようになったのは、ちょっとまずいんじゃないかなと思うんです。 御厨:ただ、皇室の問題でいちばん怖いのは、みんながまったく関心を持たなくなることです。これは非常に危険なんですよ。天皇の存在とか、皇居の意味もわからなくなって、「あそこは一等地なんだし、公園にして開放すれば?」とかいう話が出てくる可能性があるわけですよ。だけど、「税金ばかり使いやがって」というのは、「皇室? 何それ」という状況になるよりはまだマシ。関心を持っていることに変わりはないですから。週刊誌にいろんな取り上げ方をされますけど、無視されるよりはまだマシだと思います。 林:ああ、なるほど。 御厨:ただ、皇室の側から反論はできませんから、言われっぱなしになっちゃうわけですよね。だから本当は宮内庁長官がもっと考えていろいろな発言をすべきなんだけど、宮内庁長官の西村(泰彦)さんはああいうことを中途半端に言っちゃった感じがするんですよね(12月10日の定例会見で「小室さん側は説明責任を果たすことが重要」と発言)。最終的に皇室をこうしたいという考えがあって、その第一歩としてしゃべってるならいいんだけど、今の非常にまずい状況を何とかしようという一時的な措置というスタンスでしか言ってないので、あの発言がどういう千波万波を呼ぶかわからない』、「宮内庁長官」が「定例会見で「小室さん側は説明責任を果たすことが重要」と発言」、した件については、批判的なようだ。
・『林:先生は今の天皇、皇后両陛下に何度も会われたと思いますけど、私もこのあいだお言葉をいただく機会がありまして、やっぱりふつうの方とは違う素晴らしい方だと思いました。皇后さまも素敵な方で、ご苦労された分だけ人間力が増して、素晴らしい女性だと感じました。各国の要人が総理大臣と会ったってそんなにうれしがりませんけど、皇居に行けばどんな方もみんな喜ぶじゃないですか。あれをもっと認識すべきだと思うんです。 御厨:そうなんです。中国だって韓国だって、日本がうらやましいのは、天皇が続いてることなんですよ。天皇のような、ある種優雅な、のりしろがたっぷりある部分というのは、中国や韓国の制度の中にはないですからね。日本の天皇制というのは、豊かな文化ののりしろの部分を代表してますから、海外の人も日本に来たら、いの一番に「陛下にお会いしたい」と言いますよ。 林:そうですよね。外国の賓客をもてなしているときのお二人を見ると、ほんとに誇らしい気持ちになります。私も今「文藝春秋」で李王家の話(「李王家の縁談」)を連載していますが、史料を読むうちに皇族について初めて知ることがたくさんありました。しかし天皇家の評価が高くなって、「愛子さまも素晴らしい」という声が出てくると、シーソーみたいに秋篠宮家の評価がどんどん下がっていく感じがするんです。どうしてそうなっちゃうんでしょう。 御厨:秋篠宮さまは次男ということで、かなり自由にお育ちになったことは間違いないですよね。実際に美智子さまは、今の天皇陛下に対しては相当程度の天皇教育をしたけれども、その分、あとのお子さん方には手をかける時間がなかったということを、おっしゃったことがあると聞いています。 林:将来、秋篠宮家の悠仁さまに男児ができない限り、大変なことになりますよね。) 御厨:そうなんですよ。僕らが天皇退位の会議をやったときも、その最後のところで、「皇位継承者の問題について、すぐに別途有識者会議を開いて検討を始めるべし」と言ったし、国会もそういう決議をしたんです。だけど、あのときは天皇退位で精いっぱいだから、退位されて次の天皇になってから検討しようということで、2~3年はあいだを置くということを官邸の連中は言ってましたよ。僕は「それでは遅い。今の天皇に人気と関心があるうちに話を進めないとまずい」と言ったんです。 林:それはすごいご慧眼ですね。 御厨:ところが、政府はもともとあんまりやりたくなかった。安倍さんは女系・女性天皇には反対ですからね。安倍さんは僕にはっきり言いましたよ。 林:なんて言ったんですか。 御厨:「こういう問題はあせらないほうがいいんだ」と言うから、「悠仁さんの先はどうするんですか」と聞いたら、「まだ40年あるよ。そのあいだに日本は“神風”が吹くから、必ずいい解答が出る」と言ったわけ。それを聞いた瞬間、「あ、この人は(女系・女性天皇問題を)やりたくないんだな。自分のときにやったと言われるのが嫌なんだな」と思いました。 林:ほぉ~。後々何か言われるのが嫌だったのかもしれないですね。 御厨:安倍さんはあのとき、つながりのある右の支援団体から「そこは絶対曲げないでくださいよ」と言われてた可能性が高いわけですから、それはできなかったと思いますね。(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)(御厨氏の略歴はリンク先参照) ※週刊朝日  2021年1月1‐8日合併号より抜粋』、「皇位継承者の問題」について、「政府はもともとあんまりやりたくなかった。安倍さんは女系・女性天皇には反対ですからね。安倍さんは僕にはっきり言いましたよ。 林:なんて言ったんですか。 御厨:「こういう問題はあせらないほうがいいんだ」と言うから、「悠仁さんの先はどうするんですか」と聞いたら、「まだ40年あるよ。そのあいだに日本は“神風”が吹くから、必ずいい解答が出る」と言ったわけ。それを聞いた瞬間、「あ、この人は(女系・女性天皇問題を)やりたくないんだな。自分のときにやったと言われるのが嫌なんだな」と思いました」、先送りした犯人はやはり「安部」元首相のようだ。政治家が「神風」に頼るとは飛んでもない話だ。

次に、10月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「眞子さまPTSD公表が誘発した3つの危機、宮内庁「亡国の危機管理」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284062
・『宮内庁の発表は「火に油を注いだ」どころではない理由  10月1日、宮内庁は、秋篠宮家の長女、眞子さまが「複雑性PTSD」(複雑性心的外傷後ストレス障害)と診断される状況だということを公表した。 小室圭さんと今月26日に結婚することを明かし、「なぜこのタイミングに結婚するのか」という説明の中で、心の病について言及されたのである。 小室家の金銭トラブル問題もあって、結婚の時期はこれまで慎重に検討されてきた。しかし、眞子さまが、ご自身や家族らに向けられる誹謗中傷にもはや耐えられないというところまで追いつめられ、「本人の好きなようにやらせてあげる」ということが最善の治療ということで、今回の結婚が決定したという。 しかし、このPTSD公表は批判も受けている。『眞子さまの複雑性PTSD公表、狙いが『批判封殺」なら逆効果に(JBプレス)』では、体のいい言論封殺ではないかと言っているし、『宮内庁の策は、火に油を注いでしまった」眞子さまの結婚と「複雑性PTSD」公表の全内幕(アエラdot.)』でも反発する意見を紹介している。 確かに、結婚のタイミングについては、小室さんの就職が決まったからなど、いくらでも説明できたはずで、病を持ち出す理由はない。宮内庁は「明かす必要のない事実をわざわざ言って事態を悪化させる」という危機管理のミスを犯した、という指摘も多いのだ。 ただ、今回の宮内庁がやったことは「火に油」や「逆効果」程度で片付けられるような失態ではない。 おめでたい話にみそを付けただけではなく、アメリカで新生活を送る「小室眞子さん」という一般女性の幸せと穏やかな日常を危険に晒してしまった。そして何よりも、皇室の信用を大きく失墜させるなど、日本を危機に晒した。 これは「亡国の危機管理」といってもいいほど罪深いものなのだ』、「「亡国の危機管理」といってもいいほど罪深い」、私も呆れ果てた。
・『PTSD公表が誘発した3つの危機  「ずいぶん厳しいじゃないか」と驚く方もいるだろうが、筆者の説明を聞けばそれが大げさではないことがわかっていただけるはずだ。実は眞子さまのPTSD公表は、次の3つの「危機」を新たに誘発したのだ。 (1)世界中のメディア・諜報機関に眞子さまを「協力者」に仕立てる方法を教えた (2)来月から一般人として生活する女性の「病歴」を世界に公表した (3)「皇族もメンタルヘルスに問題を抱えたら自由を得られる」という前例を世に示した  まず、(1)について説明しよう。『眞子さま、小室圭さんと「年内結婚」で日本人が覚悟すべき3つのリスク』で詳しく解説したが、これからアメリカで暮らす眞子さまは、さまざまな国の諜報機関から標的にされる可能性が高い。 海外ではロイヤルファミリー、特に王室から離脱した人は国家間の諜報戦に巻き込まれるケースが多い。その国の「弱み」を握るために、表に出ない国の体制や王室メンバーの情報を吸い上げるための「協力者」とされるのが一般的なのだ。 例えば、チャールズ皇太子と離婚したダイアナ妃や、クアラルンプール国際空港で暗殺された金正男氏の周囲に、米NSA(アメリカ国家安全保障局)やCIA(中央情報局)が暗躍していたと言われる』、「世界中のメディア・諜報機関に眞子さまを「協力者」に仕立てる方法を教えた」、のは罪深い。
・『元ロイヤルファミリーが機密情報を漏らしてしまう理由  ではなぜ元ロイヤルファミリーが、自国の秘密を漏らすようなことをしてしまうのかというと、ほとんどのケースでご本人たちには悪気はない。スキャンダルを握って脅迫されるというようなケースもなくはないが、多くの元ロイヤルファミリーは諜報機関の人間を心から信頼して、自ら進んで機密情報を流すのだ。 「そんなことができるのか」と思うかもしれないが、これは諜報機関のみならず、メディアでもよく使う極めてポピュラーな情報入手テクニックである。 例えば、英大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」が、英国王室関係者を盗聴するという事件が起きた。では、なぜそんな重要人物の電話番号が入手できたのかというと、同紙の記者が裁判で明かしたことによれば、故ダイアナ元妃が王族やスタッフの部外秘の電話番号が載っている通称「グリーンブック」という機密情報を流していたからだ。報道によると、被告は法廷でこう証言したという。 「ダイアナ元妃は夫のために働いている人々や王室の規模がどれほどのものか見てほしいと考えていた」 「元妃は夫の周辺の人々から強い圧力を受けていると感じ、夫とやり合ってくれる仲間を探していた」 世間から叩かれ、周囲から敵意を向けられた人が「理解者」や「味方」を欲するというのは、一般人であろうとロイヤルファミリーであろうと変わらない。諜報機関の人間は、その不安、孤独、ストレスにつけ込んで、信頼関係を築き、欲しい情報を引き出すのである。 ここまで言えば、筆者が何を言いたいかわかっていただけるのではないか。 眞子さまは、日本という国の根幹にある天皇家に連なる女性だ。公にされていない儀式、皇室内部の情報など、日本の国民でさえ知らない情報をたくさんご存じだ。日本と利害関係のある国が、眞子さまを「協力者」に仕立て上げれば、日本にプレッシャーをかけるスキャンダルや内部情報も引き出すこともできる』、「「ダイアナ元妃は夫のために働いている人々や王室の規模がどれほどのものか見てほしいと考えていた」 「元妃は夫の周辺の人々から強い圧力を受けていると感じ、夫とやり合ってくれる仲間を探していた」」、確かに狙い目だ。
・『眞子さまの危険をさらに高めた  アメリカ移住でこのリスクがさらに高まっている中で、宮内庁はのんきに眞子さまのPTSDを全世界に公表した。不安や孤独につけ込みたい者たちにとって、これ以上のナイスアシストはない。 例えば、眞子さまが受けたという「誹謗中傷」を批判するような立場で接近して、信頼を勝ち得るというやり方もあるだろう。また、眞子さまが生活するコミュニティ内に、意図的に日本で叩かれているような情報を流して、孤立させたところで、救いの手を差し伸べるというようなやり方も考えられる。 海外ではそんな人でなしはいない、と思うのは日本人の感覚であって、生き馬の目を抜く国際インテリジェンスの世界では、どんな手段を使ってでも、自国が有利になるような情報を抜き出すものだ。「眞子さまも一般人になったからそっとしておいてあげよう」なんて思いやりを期待する方が間違いだ。 宮内庁は今回の公表で、ただでさえ工作活動のターゲットになっている眞子さまの危険をさらに高めたのだ。「平和ボケ」で済まされる話ではない』、「宮内庁は今回の公表で、ただでさえ工作活動のターゲットになっている眞子さまの危険をさらに高めたのだ」、確かに大きな手落ちだ。
・『一般人になる方の病歴を公表する危うさ  そして、筆者がもうひとつ責任が重いと感じるのは、(2)の「一般人の病歴を公表した」ということだ。 皇后雅子さまの「適応障害」のように、ご公務をずっと休まれている皇族の方に対して、一部の国民から誹謗中傷があったので、それを抑えるために心の病を公表するというのはよく理解できる。 しかし、眞子さまはアメリカで一般人の小室眞子さんとして生活をするのだから、わざわざ「PTSD」を公表する大義はない。むしろ、マイナスの方が大きい。 自分の立場で想像していただきたい。新天地で新たな人間関係を築こうという中で、わざわざ自分のメンタルヘルスの問題を伝えるだろうか。 大坂なおみさんや、メーガン妃のように、自分自身の心の傷を公表することで、同じ悩みを持つ人々を勇気づけたいとか、世界を変えたいという思いを、眞子さまが持っていらっしゃるのなら別だ。しかし、一般人として穏やかな毎日を送っていこうという人にとって、病歴の公表は足を引っ張ることにしかならず、プライバシーの侵害にしかならない』、「一般人として穏やかな毎日を送っていこうという人にとって、病歴の公表は足を引っ張ることにしかならず、プライバシーの侵害にしかならない」、その通りだ。
・『もし悠仁さまのお相手が受け入れ難いものだった場合  そして、最後の(3)の「前例をつくった」という点だが、これを理解していただくには、たとえ話で説明したい。近い将来、皇室に次のようなことが起きたと想像してほしい。 立派な成人男性に成長した秋篠宮家の長男、悠仁さまが、留学先で外国人女性と恋に落ちたとする。これまで男性皇族はオックスフォード大など海外留学をしているのでまったくありえない話ではない。実際、ご両親も学生時代に出会っているし、姉の眞子さまもキャンパスで伴侶を見つけた。 では、この悠仁さまの「国際結婚」が国民から即座に祝福されるかというと、かなり厳しいものがあるだろう。保守的な方たちからすれば、皇位継承順位第2位の悠仁さまのお相手が、外国人というのは正直受け入れ難いだろう。もし仮に、お相手が中国人や韓国人だったら激しい反対運動も起きるかもしれない。 では、そのように「国民の祝福が少ない」ということを受けて、悠仁さまはこの結婚をあきらめるか。 「きっとご自身の立場を考えて、気持ちを改めてくれるはず」と思う人もいるだろうが、筆者はそう思わない。おそらく、悠仁さまはどんなに世間から批判・反対されても、この恋を貫くのではないか。姉、眞子さまがそのスタイルで結婚したことを「学習」されているからだ。 何人かの子どもを持つ親ならばわかると思うが、「姉だけを特別扱い」みたいな子育てはトラブルの元だ。兄や姉にやらせてあげたことは、弟や妹にもやらせてあげないと親子関係はおかしくなる。「お姉ちゃんばっかり大事にされた」とグレる場合もある。眞子さまができたことは、佳子もさまもやりたいし、悠仁さまも真似をする。姉弟というのはそういうものだ。 しかし、そこで日本政府も我々国民も、この「国際結婚」を反対できない。メンタルヘルスに悪影響が出そうな時、ご本人の意思を尊重したという「前例」を全世界に公表しているからだ。「悠仁さまは皇位継承順位第2位なので、眞子さまの時とはワケが違う」なんて理屈を持ち出したら、国際社会から冷ややかな目で見られる。男女平等は常識で、ヘンリー王子も王室から離脱して、ネットフリックスでドキュメンタリーに出演する時代だ。「個人の自由を握り潰す国」というイメージが広まってしまう恐れもある。 結婚決定の背景など伏せておけばいいものを、わざわざ「心の病」を引っ張り出したことで結果として、自分たちの首を締めるような「前例」をつくってしまったのだ』、「悠仁さまが、留学先で外国人女性と恋に落ちた」、場合には確かに本当に悩ましい問題が生じる。
・『皇室が自由になる=現行の天皇・皇室制度の否定  「デイリー新潮」(9月15日)は、秋篠宮妃紀子さまと口論をした佳子さまが「私たちは籠の鳥」というようなことをおっしゃったと報じている。それは決して大げさな話ではなく、日本の天皇・皇室の皆さま方は、「日本国民のため」に「人権」を制約されている、という動かし難い現実がある。自分で車を運転して、外出できるようなイギリス王室メンバーとは明らかに違うのだ。 だから、心を病みやすい。そんな日本の皇室の方が、国民よりも自分の幸せを優先して、自由に生きられるようになっていく、ということは喜ばしいことだが、それは裏を返せば、現行の天皇・皇室という制度を否定することでもあるのだ。  このようなセンシティブな議論をすっとばして、宮内庁は「眞子さまの結婚の決定打はPTSD」などと公表した。これから結婚が控える皇室メンバーや天皇制を「守る」意識が少しでもあれば、こんな軽率なことはできないはずだ。 筆者は報道対策アドバイザーとして、これまで多くの企業のリスクコミュニケーションにアドバイスをしてきたが、もっとも多く目にするのが、「守る対象を間違える」という失敗パターンだ。経営幹部や広報部員たちは、とにかく社長を守ろうとする。 社長に恥をかかせないよう、批判されないように、その場しのぎの回答を用意する。それで会見の席上の社長は守れるが、それが嘘であったりすることが発覚して、企業のイメージや信用を大きく失墜してしまう。つまり、社長を守ることに頭がいっぱいで、会社が守れないのだ。 今回の宮内庁も同じ罠に陥っている。結婚に踏み切る眞子さまへの批判を和らげたい。それを認めた秋篠宮家を守りたい。そのような目先のことで思いで頭がいっぱいになって、眞子さまの一般人になってからの生活や安全、そして皇室を守れていない。 公表すべきは、眞子さまの「病」ではなく、小室母子の金銭トラブル解決に向けた進捗だ。ここまで大きな騒ぎになって、なぜ相手と向き合わないのか。直接話せない事情でもあるのか。結婚前にそれを公表すべきだ。 スキャンダルで炎上する企業も、「なぜマスコミはこんなに叩くのだ」とよく逆ギレする。宮内庁も、なんでもかんでも「誹謗中傷」で片付けるのではなく、なぜここまで国民に祝福されないのかということを真摯に受け止め、皇室と眞子さまを守るリスクコミュニケーションをすべきではないか』、「結婚に踏み切る眞子さまへの批判を和らげたい。それを認めた秋篠宮家を守りたい。そのような目先のことで思いで頭がいっぱいになって、眞子さまの一般人になってからの生活や安全、そして皇室を守れていない。 公表すべきは、眞子さまの「病」ではなく、小室母子の金銭トラブル解決に向けた進捗だ」、同感である。

第三に、10月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した国際医療福祉大学大学院教授の和田 秀樹氏による「精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は 宮内庁は苦しむ患者を追い詰めた」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50716
・『宮内庁は10月1日、眞子さま(29)と小室圭さん(29)が同月26日に結婚されると正式発表するとともに、眞子さまが「複雑性PTSD」と診断されたことを明らかにした。精神科医の和田秀樹さんは「会見に同席した精神科医は『結婚について周囲から温かい見守りがあれば、健康の回復が速やかに進むとみられる』と発言しましたが、これは国民に誤解を与え、現実に複雑性PTSDの症状に苦しむ虐待サバイバーに脅威を与えるおそれがある」という。その理由とは――』、興味深そうだ。
・『精神科医が腰を抜かすほど驚いた「眞子さまは複雑性PTSD」  宮内庁は1日、秋篠宮家の長女・眞子さま(29)が「複雑性心的外傷後ストレス障害(PTSD)」と診断されたことを明らかにした。 そのため、この病名がネット上で一気にトピックワードとなった。 この病名については、秋篠宮家の側近部局トップの加地隆治皇嗣職大夫が眞子さまの病状について切り出し、精神科医で、公益財団法人「こころのバリアフリー研究会」理事長の秋山剛氏が会見に同席して「長期にわたり誹謗中傷を体験された結果、複雑性PTSDと診断される状態になっておられる」と述べた。 1991~94年にアメリカに留学して以来、この疾患に向き合ってきた私は、宮内庁のその後の説明を聞くにつけて、腰を抜かすほど驚いてしまった。 なぜなら、複雑性PTSDとは虐待のような悲惨な体験を長期間受け続けた人に生じる心の病であり、治療も大変困難なものとされているからだ。 1970年代、ベトナム戦争で兵士が受けた心理的後遺症やレイプトラウマの研究が進み、1980年に発表されたアメリカ精神医学会の診断基準第3版(DSM-3)に「PTSD」という病名が採用された。 その後もトラウマ研究が進み、児童虐待のような長期反復型のトラウマ体験の場合は、もっと深刻な病状が生じることがわかってきた。 当時のアメリカにおけるトラウマ研究の第一人者であるジュディス・ハーマン(ハーバード大学准教授)は、その主著と言える『心的外傷と回復』(みすず書房)において、複雑性PTSDという病名を提起した』、和田氏は「複雑性PTSD」を「アメリカに留学して以来、この疾患に向き合ってきた」権威で、「宮内庁」が言うほど軽い症状ではないようだ。
・『複雑性PTSDの症状…自傷行為、性的逸脱、解離症状、希望喪失  ハーマンが提起し、94年に発表されたアメリカ精神医学会の診断基準第4版(DSM-4)の「複雑性PTSD」に加えることが検討された症状には以下のようなものが列挙された。 1:感情制御の変化(自傷行為や性的逸脱など) 2:意識変化(解離症状など) 3:自己の感覚の変化(恥の意識など) 4:加害者への感覚の変化(復讐への没頭だけでなく、加害者を理想化することもある) 5:他者との関係の変化(孤立・ひきこもりなど) 6:意味体系の変化(希望喪失など) 実際、私の留学中も虐待の被害者の患者をかなりの数で診たが、この指摘には心当たりがある。ここで注目したいのは、2の項目にある「解離」という症状だ。 解離は、自分の忌まわしい記憶をふだんとは別の意識状態に置くことで生じると考えられている。要するにトラウマ的な出来事を覚えている意識状態と、普段の意識状態は、別の意識状態になっている。 そのため、その人は、トラウマ的出来事を覚えている意識状態になったときのことは覚えていないし、その意識状態は、普段の意識状態と連続性をもたない。 解離性健忘の場合、その解離状態の時の言動を覚えておらず、かなりの暴言を吐いても、犯罪的な行為(万引きや暴行など)や性的逸脱を行っても、それを覚えていない。 別の意識状態になったときにアイデンティティ(自分が子どもか大人かとか、ふだんの名前や役職など)まで変わってしまう状態は多重人格と呼ばれてきたが、DSM-4では解離性同一性(アイデンティティ)障害と呼ばれるようになった』、なるほど。
・『「複雑性PTSDとは、悪口レベルの外傷的体験ではない」  またこの複雑性PTSDの場合、感情も対人関係も不安定なので、婚姻生活や社会生活に支障をきたし、定職にもつけない境界性パーソナリティー障害と呼ばれる診断を受けることも多い。 ただ、ハーマンの過去の記憶を思い出させて、それをぶちまけさせるような治療方針がかえって患者の具合が悪くすることが多いことが明らかになったことで、彼女のアメリカ精神医学会での影響力はかなり弱まった。ハーバード大学でも教授に昇格していない。そのせいか、2013年改訂のアメリカ精神医学会の診断基準の第5版(DSM-5)では、複雑性PTSDの病名は採用されなかった。 ところが、WHOが作るもう一つの国際的な診断基準の最新版(ICD-11)が2018年に公表された際に複雑性PTSDが採用されることになった。これまでの歴史をみるとアメリカ精神医学会の基準に追随することが多かった中で画期的なことである。 おそらくは、世界的に深刻化する児童虐待だけでなく、人権を弾圧するような政府や軍事介入などで生じる心の後遺症を無視することができないと考えたのだろう。 実際、この診断基準で挙げられている逃れることが困難もしくは不可能な状況で、長期間・反復的に、著しい脅威や恐怖をもたらす出来事の例としては、「反復的な小児期の性的虐待・身体的虐待」のほか、「拷問」「奴隷」「集団虐殺」が挙げられている。けっして悪口レベルの外傷的体験などではない。 これに対して秋山医師は、「複雑性PTSDは言葉の暴力、インターネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントでも起こる」と拡大解釈をしたわけだ。 実際、インターネット上の誹謗中傷で自殺する人もいるのだから、私もその可能性を否定するつもりはない』、「けっして悪口レベルの外傷的体験などではない。 これに対して秋山医師は、「複雑性PTSDは言葉の暴力、インターネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントでも起こる」と拡大解釈をしたわけだ」、かなり無理がありそうだ。
・『「温かい見守りがあれば、健康の回復が速やかに」という発言の問題点  むしろ今回、国民に誤解を与え、現実に複雑性PTSDの症状に苦しむ虐待サバイバー(※)に脅威を与えるおそれがあるのは、秋山医師が発した「(小室圭さんとの)結婚について周囲から温かい見守りがあれば、健康の回復が速やかに進むとみられる」という言葉だ。 ※児童虐待を受けたあと、生き残り、心の病に苦しんでいる人たち。 自らが虐待サバイバーで複雑性PTSDの実際の症状を赤裸々に記録した『わたし、虐待サバイバー』(ブックマン社)の著者である羽馬千恵さんは、自身が発行するメルマガ(※)の中で、「虐待が終わってからが、本当の地獄だった」と記している。 ※大人だって虐待で苦しんでいる。当事者が語る子供時代のトラウマ - まぐまぐニュース!(mag2.com) 虐待を受けた子供たちは大人になり複雑性PTSDに苦しむわけだが、親元を離れ、虐待を受けなくなったり、多少周囲が温かくしてくれたりしところで、そう簡単に治るものではない。 つい最近も3歳児が母親の同居人の虐待で死亡した事件があったが、それに関するニュースの多くは、初動で行政がしっかり対応していたら死ななくてすんだという類のものだった。 たしかにそういう面もあるかもしれない。しかし、もっと重要なのは子供の今後の人生だ。「運よく生き残ったから、よかった」で済む問題ではない。生き残った子供たちは下手をすると生涯にわたる複雑性PTSDに苦しむのである』、「複雑性PTSD」は「そう簡単に治るものではない」、「下手をすると生涯にわたる複雑性PTSDに苦しむ」、と簡単に直るものではなさそうだ。
・『「眞子さまはおそらく適応障害なのではないか」  人格変化のために周囲の人が犠牲になることさえある。古くは永山則夫事件、あるいは大阪・池田小事件の宅間死刑囚、そして山口県光市の母子殺しの少年など、子供時代などに虐待を受けた人物が起こす重大事件は枚挙に暇がない。 銃社会のアメリカでは、虐待を受けた子供が将来重大犯罪を起こすことが多いことも、虐待を受けた子供を親元に返さない大きな理由となっている。 眞子さまの場合、もし、環境が変わり周囲の批判がなくなった結果、秋山医師が断言したように「健康の回復が速やかに進むとみられる」ならば、それは複雑性PTSDなどという心の重病でない。もちろん、私は直接診察したわけではないので100%そうだと言い切れないが、眞子さまに関してはおそらく適応障害(注)(この疾患の詳細は、拙著『適応障害』宝島社新書を参照いただきたい)にあたるのではないかと思う。 ただ、日本の場合、精神科の主任教授が臨床軽視・研究重視の大学教授たちの多数決で決まるため、私のようなカウンセリングや精神療法を専門とする大学医学部は全国どこを探してもない。そのため、複雑性PTSDであれ、適応障害であれ、よい治療者をみつけることはかなり困難だ。 そういう点で、いい治療者を見つけるために眞子さまがご結婚されアメリカに行かれるのはいいことだ。 複雑性PTSDについては予防の必要性は極めて高い。私は、アメリカのように、虐待が見つかったら原則的に親元に返さないできちんとしたチャイルドケアを受けさせるべきだと考える。そうでないと一生不幸を抱えてしまうことになりかねない。 その一方、虐待をしてしまった親に対するカウンセリングも重要だ。アメリカではこれが盛んに行われ、カウンセラーが認めれば、子供はその親元に返される。 日本の場合、残念ながら医学の世界、精神医学の世界がカウンセリングを軽視する傾向があり、見通しは暗いと言わざるを得ない。私の留学先のような「大学でない精神科医の養成機関」をかなりの数作らなければならないと思われる』、和田氏は「複雑性PTSDなどという心の重病でない」、「眞子さまに関してはおそらく適応障害」とみているようだ。
(注)適応障害:はっきりと確認できるストレス因子によって、著しい苦痛や機能の障害が生じており、そのストレス因子が除去されれば症状が消失する特徴を持つ精神障害(Wikipedia)。
・『「複雑性PTSDの患者は数十万人に達する可能性がある」 実は、複雑性PTSDの患者はかなり多いと予想できる。というのは、虐待の数が想像以上に多いからだ。2021年8月27日に、令和2(2020)年度の児童相談所における虐待相談対応件数が発表されたが、ついに20万件を超えた(心理的虐待12万1325件:全体の59.2%、身体的虐待5万33件:24.4%、ネグレクト3万1420件:15.3%、性的虐待2251件:1.1%)。 虐待された子供が新規で毎年20万人(実際はもっと多い可能性が高い)ということは、日本中に虐待経験者は全体で数百万人単位いるということになる。仮にその1割が複雑性PTSDになったとしても数十万人だ。これはかなり少なく見積もった数と言えるものだ。これから複雑性PTSDを増やさないだけでなく、現在複雑性PTSDの人たちを救うことが急務だ。 今回の報道でもっと危惧するのは、複雑性PTSDになった人は周囲の人がやさしく見守れば、そのうち症状が緩和する軽い病気であるかのような誤解が広まることだ。 あるいは、芸能人や政治家がバッシング逃れのために知り合いの精神科医に複雑性PTSDの診断書を書いてもらうケースが増え、この疾患に直面している人の苦しみをどこか軽んじるような風潮が世間に広まることもあり得る。 複雑性PTSDという病名が世間に知られることは望ましいことだが、本当の実態が知られないと逆にいちばん迷惑をこうむるのは複雑性PTSDの患者であることも知ってほしい』、「今回の報道でもっと危惧するのは、複雑性PTSDになった人は周囲の人がやさしく見守れば、そのうち症状が緩和する軽い病気であるかのような誤解が広まることだ」、「宮内庁」の今回の発表は余りにも問題が多いようだ。天皇制度を支えるべき官庁がこんな体たらくでは情けない限りだ。
タグ:天皇制度 (その2)(安倍前首相 皇位継承問題で“神風”発言 御厨貴が明かす、眞子さまPTSD公表が誘発した3つの危機 宮内庁「亡国の危機管理」とは、精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は 宮内庁は苦しむ患者を追い詰めた) AERAdot 「安倍前首相、皇位継承問題で“神風”発言 御厨貴が明かす」 「宮内庁長官」が「定例会見で「小室さん側は説明責任を果たすことが重要」と発言」、した件については、批判的なようだ 「皇位継承者の問題」について、「政府はもともとあんまりやりたくなかった。安倍さんは女系・女性天皇には反対ですからね。安倍さんは僕にはっきり言いましたよ。 林:なんて言ったんですか。 御厨:「こういう問題はあせらないほうがいいんだ」と言うから、「悠仁さんの先はどうするんですか」と聞いたら、「まだ40年あるよ。そのあいだに日本は“神風”が吹くから、必ずいい解答が出る」と言ったわけ。それを聞いた瞬間、「あ、この人は(女系・女性天皇問題を)やりたくないんだな。自分のときにやったと言われるのが嫌なんだな」と思いまし ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「眞子さまPTSD公表が誘発した3つの危機、宮内庁「亡国の危機管理」とは」 「「亡国の危機管理」といってもいいほど罪深い」、私も呆れ果てた。 「世界中のメディア・諜報機関に眞子さまを「協力者」に仕立てる方法を教えた」、のは罪深い。 「「ダイアナ元妃は夫のために働いている人々や王室の規模がどれほどのものか見てほしいと考えていた」 「元妃は夫の周辺の人々から強い圧力を受けていると感じ、夫とやり合ってくれる仲間を探していた」」、確かに狙い目だ。 「宮内庁は今回の公表で、ただでさえ工作活動のターゲットになっている眞子さまの危険をさらに高めたのだ」、確かに大きな手落ちだ。 「一般人として穏やかな毎日を送っていこうという人にとって、病歴の公表は足を引っ張ることにしかならず、プライバシーの侵害にしかならない」、その通りだ。 「悠仁さまが、留学先で外国人女性と恋に落ちた」、場合には確かに本当に悩ましい問題が生じる。 「結婚に踏み切る眞子さまへの批判を和らげたい。それを認めた秋篠宮家を守りたい。そのような目先のことで思いで頭がいっぱいになって、眞子さまの一般人になってからの生活や安全、そして皇室を守れていない。 公表すべきは、眞子さまの「病」ではなく、小室母子の金銭トラブル解決に向けた進捗だ」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 和田 秀樹 「精神科医・和田秀樹「複雑性PTSDなんかではない」眞子さまの本当の病名は 宮内庁は苦しむ患者を追い詰めた」 和田氏は「複雑性PTSD」を「アメリカに留学して以来、この疾患に向き合ってきた」権威で、「宮内庁」が言うほど軽い症状ではないようだ。 「けっして悪口レベルの外傷的体験などではない。 これに対して秋山医師は、「複雑性PTSDは言葉の暴力、インターネット上の攻撃、いじめ、ハラスメントでも起こる」と拡大解釈をしたわけだ」、かなり無理がありそうだ。 「複雑性PTSD」は「そう簡単に治るものではない」、「下手をすると生涯にわたる複雑性PTSDに苦しむ」、と簡単に直るものではなさそうだ。 和田氏は「複雑性PTSDなどという心の重病でない」、「眞子さまに関してはおそらく適応障害」とみているようだ。 (注)適応障害:はっきりと確認できるストレス因子によって、著しい苦痛や機能の障害が生じており、そのストレス因子が除去されれば症状が消失する特徴を持つ精神障害(Wikipedia)。 「今回の報道でもっと危惧するのは、複雑性PTSDになった人は周囲の人がやさしく見守れば、そのうち症状が緩和する軽い病気であるかのような誤解が広まることだ」、「宮内庁」の今回の発表は余りにも問題が多いようだ。天皇制度を支えるべき官庁がこんな体たらくでは情けない限りだ。
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カジノ解禁(その11)(なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議、反対相次ぐ「カジノ」がどうしても不可欠な理由 横浜市長選でノー!知られざる「IR」儲けのカラクリ、フィリピンカジノ前トップが明かすIRの成功条件 海外カジノ元社長が警告!日本人の大いなる誤解) [国内政治]

カジノ解禁については、昨年6月15日に取上げた。今日は(その11)(なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議、反対相次ぐ「カジノ」がどうしても不可欠な理由 横浜市長選でノー!知られざる「IR」儲けのカラクリ、フィリピンカジノ前トップが明かすIRの成功条件 海外カジノ元社長が警告!日本人の大いなる誤解)である。特に、第一の記事は最近まれにみる傑作なので、必読である。

先ずは、昨年12月26日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399377
・『いよいよ今年の日本競馬の総決算、有馬記念が行われる。この持ち回り連載は最後に競馬の話があるが、いきなりそのページに飛んでいるわけではない。「競馬ではない、競馬の話」である。 有馬記念というレースは、普段馬券を買わない人々でも買う。ボーナス後のクリスマス前後に行われる年末総決算のお祭りであり、ギャンブルと意識せずにギャンブルをさせるのに絶好のチャンスだ。これは、JRA(日本中央競馬会)が生み出した、世界最高のギャンブルビジネスモデルである』、「JRA・・・が生み出した、世界最高のギャンブルビジネスモデル」、とはどういうことなのだろう。
・『日本人は「世界一のギャンブル好き」だ  実は、日本の競馬産業は圧倒的世界一で、それはJRAが圧倒的に世界一の馬券売り上げを生み出したからだ。 この結果、賞金だけなく馬の生産者、馬主や調教師、騎手の得られる収入も圧倒的に世界一。世界中の良血馬は日本に集まる。いまや世界の超一流の騎手たちは日本語の勉強をして、JRAの所属騎手になりたがっている。 この成功はJRAの産業戦略によるものが大きいが、背景には日本人が世界一のギャンブル好きであることがある。これは世間の常識に真っ向から反するが、動かしがたい事実だ。 馬券の売り上げは世界一、競馬への社会的許容度も世界一だ。さらに、宝くじの売り上げも世界一で、これだけ宝くじを普通の人々がみな買う社会はほかにはない。アメリカで宝くじを買うと言ったら、白い目で見られる。宝くじは期待値が低く、合理的でないからだ。 日本人は、リスクの高いギャンブルが大好きなのであるが、世間の常識では、日本人は世界一リスク回避的だと思われている。日本人はリスクが嫌い。リスクをとらないから日本企業はイノベーションを生み出せない。利益率が低い。経済が停滞している。大学生は大企業への就職を求め、異常な安定志向である。これらのイメージが世間には定着している。「リスクが嫌いだが、ギャンブル大好き」。いったいこのギャップはどこから来るのだろうか? まず、ギャンブルとは何かから始めよう。Gamblingの定義は、「ロングマン現代英英辞典」によると
when people risk money or possessions on the result ofsomething which is not certain, such as a card game or a horse race ということである。Lotteryつまり、宝くじは最も人気のあるギャンブルである、という例文も引用されている。そして類義語として、ベッティングが挙げられている。こちらは、when people risk money on the results of games, competitions etc or other future eventsとされている』、「馬券の売り上げは世界一、競馬への社会的許容度も世界一だ。さらに、宝くじの売り上げも世界一」、「「リスクが嫌いだが、ギャンブル大好き」。いったいこのギャップはどこから来るのだろうか?」、確かに不思議だ。
・『ギャンブルとベッティングは何が違うのか?  では、この2つは同一なのか、というと、実は違う、と言われている。すなわち、ギャンブルとベッティングの違いは何か?という疑問に対する1つの有力説は、ギャンブルは純粋に運によるものに対する賭け事であり、ベッティングとは、自分で結果を予想し、それに対して賭けること、とされている。 実は、ギャンブルの世界では「究極のギャンブル」はバカラだと言われている。そして、大きなカネを動かせない人にとっては、スロットである。ここでのポイントは、ブラックジャックでもなく、パチンコでもないのである。 なぜなら、バカラは、純粋に運にだけ頼る賭けであり、一方、ブラックジャックでは、自分の判断、つまり、能力、記憶力、センスが問われる、という違いがあるのであり、究極のギャンブラーは純粋に運に賭けることに興奮するからなのである。 実際、日本でも純粋に運による賭け事のほうが、圧倒的に人気がある。競馬では「win5」という5つのレースの勝ち馬をすべて当てる馬券があるが、最高2億円(キャリーオーバーありのときは4億円)にもかかわらず、それほど人気はなく、サッカーくじのtotoのBIGには遠く及ばない。BIGにおいては、Jリーグの勝敗などに賭けるのだが、BIGの場合は、自分で予想をすることはできず、ランダムに結果を割り振られ、まさに運任せのくじとなっている。 日本人がギャンブル好き、というのは、運だめしが好きだ、ということなのだ。つまり、タロット占いよりも星占いよりも、おみくじが好きなのである。 振り返ってみると、日本人は運に任せるということが極めて好きだ。戦争まで、神風頼みだ。そして、自然観もそうであり、自然が神であり、山や海が神である』、「究極のギャンブラーは純粋に運に賭けることに興奮するからなのである。 実際、日本でも純粋に運による賭け事のほうが、圧倒的に人気がある」、「日本人は運に任せるということが極めて好きだ。戦争まで、神風頼みだ。そして、自然観もそうであり、自然が神であり、山や海が神である」、言われてみれば、確かにその通りだ。
・『日本人独特の自然観や世界観がギャンブル好きの背景に  自然を支配してコントロールする、という欧米的な自然観ではなく、自然に支配されるなかで、どうやって自然と付き合っていくか、生き残っていくか、という発想である。 欧米よりはるかにサステイナブルであるどころか、太古の昔から、持続可能な社会を営んできたのである。狩猟が中心と思われた縄文人たちは、実は、農業を主とした弥生人よりも遥かに自然との共生を大切にしていた。そもそも日本的な感覚では、農耕というものこそ、自然環境を人間の力で変えてしまう自然を破壊する行為であり、縄文人たちは然に影響を与えぬよう、慎重に暮らしていたのである。 現代人の人生においても、企業経営においても、この精神は受け継がれており「人事を尽くして天命を待つ」ことが大好きで、天命に働きかけようとする欧米人とはまったく異なる世界観なのである。 私も、ビジネススクールで、経済社会をわが物顔に支配しているほとんどの有名企業の成功要因は、運であり、たまたまである、と教えている(誰も知らないが、これが私の有名な「たまたま理論」である)。 運に身を任せ、自然に身を任せ、柳のような武術を好む日本人、柔道では返し技こそが美しいのに、それでは指導になってしまいオリンピックに勝てないのだが、それでも美しい返し技一本の柔道を追究し続ける日本。この自然観、世界観こそが、日本人がギャンブル好きとなった背景なのである。 では、なぜリスクテイクが嫌いなのか。) 日本人が嫌いなのはベッティングである。自然が決めるべきことを、自分の力で変えようとすることも嫌いだし、将来のことを自分だけが予想して、それが運ではなく、予想の力で当てるということが嫌いなのである。それはサイコロと神に任せるべきであり、丁半賭博やチンチロリンが大好きなのである。 したがって、欧米、とくにアメリカで大流行の「スポーツ ベッティング」は、日本ではそれほど人気がないのである。アメリカのスポーツ ベッティングは分析力を競うゲーム、賭け事であり、運ではなく、ほとんどが分析力による戦いである』、「「人事を尽くして天命を待つ」ことが大好きで、天命に働きかけようとする欧米人とはまったく異なる世界観なのである」、「この自然観、世界観こそが、日本人がギャンブル好きとなった背景なのである。 では、なぜリスクテイクが嫌いなのか。 日本人が嫌いなのはベッティングである。自然が決めるべきことを、自分の力で変えようとすることも嫌いだし、将来のことを自分だけが予想して、それが運ではなく、予想の力で当てるということが嫌いなのである」、極めてユニークで大胆な仮説だ。
・『日本で逆張り手法が好まれるワケ  実は株式投資においても同じことが言える。欧米では株式は投資であるが、日本語では株に投資する、ではなく株を「やる」のである。昔からコメ相場の人気があるのは天候によるものだからであり、経営の手腕を見抜くわけではなく、運の要素、しかも自然の支配によるものであったことが大きかったと私は捉えている。 日本の個人投資家は相場がボックス圏にあると考え、上がれば売り、下がれば買うという短期の逆張り手法を伝統的に好むが、背景には前出のことがあると思われる。FX(外国為替証拠金取引)が好きなのも、同様の背景であると思われる。 さらに言うと、行動経済学において有名なバイアスである自信過剰バイアスも、世界中で日本でだけ観察されないことは有名である(人々にアンケートを取り『自分の自動車の運転能力はどのくらいか』と尋ねると、日本以外ではほとんどの人が平均よりも少し上、と答えるが日本では過半数が、平均か平均よりも少し下と答える)。 これが、日本でだけ株式市場に中期のモメンタム(半年から1年の期間では、個別株式の株価は上がり続けるか下がり続けるという傾向がある)が観察されないことの背景にあると私は考えている。 さて、話を競馬に戻すと、ギャンブルとベッティングの違いなどを述べてきたが、難しいのは競馬の解釈であり、競馬はギャンブルなのかベッティングなのか、という問題である。 普通なら、ベッティングに入れるだろう。なぜなら、自分で勝ち馬を予想するのであるから、まさにその能力が問われるからだ。しかし、ロングマンの辞書にもあるように、競馬が運に支配されているか、されていないか、というのは解釈が分かれるところである。 そして、日本の競馬産業が大成功した理由は、競馬のファン層が若者、女性と幅広く受け入れられたことにある。彼らが馬券を買うのは、競馬をギャンブルと捉え、ライトなファンであっても楽しめると捉え、予想の力で勝負しようとしていないことにあるのである。 その結果、欧米では馬券の中心は単勝であり、勝ち馬を当てるという予想力がいちばん問われる馬券が人気であるのに対し、日本では3連単という3着までの順列を当てる、ギャンブル性の高い、つまり、配当も高くなるが、運の要素が最も大きくなる馬券が圧倒的に人気になっている。 これは、レース関係者は皆1着だけを目指して戦うため、1着は実力がほぼ反映されるが、勝ちに行って負けることになれば、2着も3着もそれ以下でも同じになるため3着にはこだわらない。その結果、3着には無欲の馬が来ることも多く、運が大きく作用することとなり、まさにギャンブル性が高い馬券が3連単であるからである』、「昔からコメ相場の人気があるのは天候によるものだからであり、経営の手腕を見抜くわけではなく、運の要素、しかも自然の支配によるものであったことが大きかった」、「日本の競馬産業が大成功した理由は、競馬のファン層が若者、女性と幅広く受け入れられたことにある。彼らが馬券を買うのは、競馬をギャンブルと捉え、ライトなファンであっても楽しめると捉え、予想の力で勝負しようとしていないことにあるのである。 その結果、欧米では馬券の中心は単勝であり、勝ち馬を当てるという予想力がいちばん問われる馬券が人気であるのに対し、日本では3連単という3着までの順列を当てる、ギャンブル性の高い、・・・運の要素が最も大きくなる馬券が圧倒的に人気」、さすが行動経済学の学者らしい分析だ。
・『「破滅の美学」が大好きな、不思議な国ニッポン  したがって、日本人は運が大好きだが、リスクをコントロールして、リスクを自分の力で少なくすることや、リスクをマネージすることが好きではない。その結果、リスクテイクが苦手であり、嫌いになっている、というのが私の解釈である。 こう考えると、リスクが嫌いなはずなのに、突然、社運を賭けて大規模な投資をして失敗する電機メーカーが多いことや、中小企業で倒産までギリギリ頑張ってしまうことも、逆説的に説明できる。 すなわち、リスクを支配しようとすることを忌み嫌い、その結果、マネージすることが苦手であり、同時にするべきでなく、自分はリスクと無関係に頑張ることを選択し、後は運に任せてしまう、という「破滅の美学」が大好きになってしまっているのである。 これが、日本人も日本企業も日本社会もリスクテイクが嫌いなのに、ギャンブル好きであり、かつリスクを無視してリスクを取りすぎて破滅し、そしてそれでも後悔しないとうそぶいている、という不思議な国ニッポン、の私の解釈である(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「日本人は運が大好きだが、リスクをコントロールして、リスクを自分の力で少なくすることや、リスクをマネージすることが好きではない。その結果、リスクテイクが苦手であり、嫌いになっている」、「リスクが嫌いなはずなのに、突然、社運を賭けて大規模な投資をして失敗する電機メーカーが多いことや、中小企業で倒産までギリギリ頑張ってしまうことも、逆説的に説明できる。 すなわち、リスクを支配しようとすることを忌み嫌い、その結果、マネージすることが苦手であり、同時にするべきでなく、自分はリスクと無関係に頑張ることを選択し、後は運に任せてしまう、という「破滅の美学」が大好きになってしまっている」、「「日本人」の「ギャンブル好き」、「リスクテイクが苦手であり、嫌いになっている」、ことを絶妙なまでに説得的に説明した近来にない好論文だ。

次に、8月24日付け東洋経済Plus「反対相次ぐ「カジノ」がどうしても不可欠な理由 横浜市長選でノー!知られざる「IR」儲けのカラクリ」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27881
・『横浜市長選で「ノー」を突きつけられたIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致。日本版IRは国際競争に打ち勝てるか。 浜っ子たちは、黒船ビジネスに「No」を突きつけた――。 8月22日、横浜市長選挙が投開票され、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を推進してきた現職の林文子市長が落選した。 当選した元横浜市立大教授の山中竹春氏は出馬に当たり、横浜でのIR誘致に反対を表明。ほかの大半の立候補者も林市長の進めるIR計画に反対を掲げ、IR誘致の是非は今回の市長選の争点の1つとなった。山中氏は市長就任後、市が現在進める運営事業者の選定など、IR誘致に向けた手続きを中止するとみられる。 もっとも、横浜IRが頓挫しても、全国複数の都市でIRの誘致活動は続く。 大阪府と大阪市は7月、アメリカのIR大手、MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスのコンソーシアムから、2020年代後半の事業開始を目指す計画の提案を受けた。同提案での初期投資額は約1兆円にのぼり、府と市は9月ごろまでに運営事業者を決定する見込み。同様に誘致を進める和歌山県は事業者の選定を終え、長崎県も選定の最終段階まで手続きを進めている』、「和歌山県」、「長崎県」まで準備中とは初めて知った。
・『”2次募集”へ動き出している  さらにある業界関係者は、「多くの自治体が(事実上の)2次募集に備えて、IR事業者とコンタクトをとり始めている」と明かす。 政府は2021年10月~2022年4月まで全国の自治体から区域整備計画の申請を募り、その内容をもとに国内で3カ所を上限にIR整備を認める方針だ。ただ7月19日に施行された「特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)」は、最大3カ所の認定から7年が経過した後、必要性が認められればIR整備の上限数を見直すことができると定める。 つまり日本では今後、いつどこでIR誘致案が浮上してもおかしくない環境が整っているのだ。 自分の住む自治体でIR誘致が本格化すれば、今回の横浜市と同様に、選挙や住民投票などでIRの是非について判断を求められることは十分起こりうる。そのときに重要なのが、そもそも「IR」とは何なのかを理解することだ』、「最大3カ所の認定から7年が経過した後、必要性が認められればIR整備の上限数を見直すことができる」、初めて知った。
・『最大のカギはカジノ解禁  日本初上陸のビジネスとなるIRは、アメリカのラスベガスやシンガポールが有名だが、「統合型リゾート」という名称からは具体的な施設や機能のイメージが浮かびづらい。 IRの整備に向けた動きが加速する背景には、日本の人口減少が進む一方、国際的には人の交流が増大するという情勢の変化がある。国は日本の経済社会の活力向上と持続的発展を図るため、国内外で観光客の来訪・滞在を促進することが一層重要になると訴える。つまるところIRは、自民党政権が2010年代に推進してきた「観光立国」構想の強力なエンジンというわけだ。 IR整備法では、「①カジノ②国際会議場③国際展示場④公演施設⑤日本観光の情報提供や移動・宿泊サービス手配を担う施設⑥宿泊施設⑦観光促進に寄与する施設」が一体で設置・運営される施設をIRとして定義している。 このうち②~⑦は法整備をするまでもなく、すでに国内に存在する。最大の特徴は、①のカジノが設置される点だ。 日本で賭博行為は刑法で禁じられており、競馬や競輪、ボートレースなどのギャンブルはそれぞれ特別法の下で運営されている。ギャンブル産業という視点で見た場合のIR整備法の意義は、カジノにおけるバカラやルーレットなどの新ジャンルの賭博が公的に認可されることにある。 横浜市で起きているようなIR反対運動の多くは、そのカジノを作ることで、マネーロンダリングやギャンブル依存症患者が増える懸念から発生している。それでもIR計画がカジノありきで進むのは、IRで収益をあげるためにはカジノが必要不可欠なためだ』、「IRで収益をあげるためにはカジノが必要不可欠なため」、やはり「カジノ」に依存するようだ。
・『カジノはIR運営のドル箱  IR業界の世界2強であるアメリカのラスベガス・サンズとMGMリゾーツ・インターナショナルの収益構造を分析すると、カジノがドル箱として大きな存在であることが見て取れる。 (カジノが売り上げの過半を稼ぐ IR運営大手の売上高の内訳(億円)の図はリンク先参照)) (利益もカジノが支える IR運営大手の利益内訳(億円)の図はリンク先参照) 新型コロナウイルス感染拡大前の2019年12月期、ラスベガス・サンズは売上高の71%、MGMも50%をカジノから稼ぎ出した。利益も同様に、大半をカジノが生み出している。 カジノでは、客が賭けた金額から運営側に儲けが生じる確率がゲームごとに設定されている。ただしこれはあくまで「確率」にすぎず、当然1回1回のゲームで生じる勝ち負けの差額には振れ幅がある。一定のノウハウの下で年間を通した勝ち負けで生じる儲けを予測し、それに基づく費用コントロールを両立できれば、高い収益性を実現できるビジネスモデルだ。 カジノの収入は大きくVIP(富裕層顧客)と、それ以外のメインフロア・スロットに分けることができる。 (カジノの4割弱を富裕層で稼ぐ MGMチャイナのカジノ収入内訳(億円)の図は(リンク先参照)  VIPはカジノの運営事業者側に一定以上の保証金を預け入れることなどにより、専用エリアでのゲーミングといった、一般客とは差別化されたサービスを受けることができる。例えばマカオを軸に展開するMGMの中国部門では、2019年12月期のカジノ収入のうちVIPが36%を占め(上図)、運営側にとってVIPの集客戦略は重要なポイントとなる』、「カジノ収入のうちVIPが36%」、「一般客」の比重の方が高いのだろうか。
・『IRの成否を占う非カジノ施設  収益面でカジノの重要度が極めて大きいIR。だがフィリピンでIR経営の実績を持つ、カーチスホールディングス社長の大屋高志氏は、むしろ飲食やショッピングモール、国際会議場といったカジノ以外の部門を赤字覚悟でも磨き上げることが重要だと指摘する。 「富裕層はカジノに限らず、いろいろな目的でIRに訪れる。そのときにカジノなんてどこでやってもルールは同じなので、差別化につながらない。(カジノ以外の施設での)より良いホスピタリティーやエンターテインメント体験の有無で、差別化が実現する」(大屋氏) 実際、世界のIR大手はカジノ以外の部門の強化に投資を惜しまない。MGMの場合、IRの聖地・ラスベガスでは、カジノ以外の部門の売上高合計額がカジノ収入を上回る規模となっている。 MGMのジム・ムーレン前CEO(最高経営責任者)は2019年の東洋経済のインタビューで「21年前は収益の過半をゲーミング(カジノ)が占めていたが、この20年で割合が逆転した。重要なのは(飲食やショッピングモールなどの)非ゲーミングで、施設の多様性を実現し、進化させることだ。ラスベガスでも多様化を実現したことで、幅広い客層を誘致できるようになった」と語っている。) (非カジノ施設が集客装置として機能 ー理想的なIR運営の例=の図はリンク先参照) 日本のIRは、マカオやシンガポールといった近隣諸国のIRとの国際競争に打ち勝てるのか。それは誘致する自治体がこうしたIRの本質を理解したうえで全体の構想を練り、構想を具体化できる事業者と手を組めるか否かにかかっている』、「カジノなんてどこでやってもルールは同じなので、差別化につながらない。(カジノ以外の施設での)より良いホスピタリティーやエンターテインメント体験の有無で、差別化が実現」、なるほど。

第三に、8月30日付け東洋経済Plus「フィリピンカジノ前トップが明かすIRの成功条件 海外カジノ元社長が警告!日本人の大いなる誤解」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28041
・『横浜市長選で「ノー」を突きつけられたIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致。日本版IRは国際競争に打ち勝てるか。 「観光立国」構想の強力なエンジンとして、菅義偉首相自らが旗振り役となって進めてきたIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致。2020年代後半の開業を目指し、2021年10月からは全国の自治体から、区域整備計画の募集を始める予定だ。 しかし、カジノに対する反対運動に加え、日本で参入を検討していた海外の大手IR事業者の相次ぐ撤退など、そのプロセスは順風満帆と言いがたい。日本初上陸となるIRは、果たして実現するのか。 実は日本にも、IRの運営を経験した人物がいる。2020年までフィリピンのIR「オカダマニラ」の社長を務め、現在は中古車買い取りのカーチスホールディングス社長である大屋高志氏だ。約2時間半にわたったインタビューで大屋氏は、日本人のIRに対する大きな誤解、そして日本版IRへの懸念を指摘した(Qは聞き手の質問、Aは大屋氏の回答)』、「2020年までフィリピンのIR「オカダマニラ」の社長を務め」、こんな人がいたとは初めて知ったが、体験談は貴重だ。
・『撤退する事業者が出て当然  Q:IR運営に携わってきた立場から、日本で進むIR計画の現状をどう見ていますか。 A:度重なるIR大手の撤退や横浜市長選における自民党の変わりようなど、国が当初想定したシナリオとは異なる方向に進んでいるとしか思えない。とくに、ここまで多くの企業が手を引いてしまうとは思わなかった。 コンプライアンス面において世界でいちばん高いレベルにあるべきというのが、国による計画設計の大きな柱だろう。カジノ収益に対する高い税率やジャンケット(カジノに顧客を紹介する仲介)業務の一部禁止、入場時のマイナンバーカードの提示といった規制に加えて、入場者のバックグラウンドなどのチェックは世界の中でもそうとう厳しい。 さらに、日本のIRの区域認定期間は当初は開発期間を含めて10年、それ以降は5年だけ。その都度ライセンスの更新時期がやってくる。 企業からすれば、巨額の投資回収に必要な事業期間が保障されていないことになる。数千億円から1兆円の投資に見合わないと考える事業者が出て当然だ。 Q:各自治体におけるIR誘致への姿勢に気になる点はありますか。 A:参入を希望する事業者と、本当に重要なことを話し合えていないのではないか。その企業がIRによって、地域をどうしたいのかという「ビジョン」だ。 現実には、自治体が事業者に「いくら投資するか、何人雇用するか、経済波及効果はいくらを見込むか」などと、数字を追い求めている。その結果、「1兆円(をかける投資)の先」を多くの事業者が発信せずにいる。 (大屋氏の略歴はリンク先参照) Q:そもそも、IRというビジネスのうまみはどこにあるのでしょう? A:カジノの存在により、通常のビジネスよりも余剰の利益が生まれる。最低でも年間500億円以上のEBITDAが見込まれ、ここからカジノ以外の機能に投資などを行う資金が生まれる。 パチンコ機を通して液晶産業が儲かるように、システムやセキュリティーといった周辺産業にもお金が回る。ハイエンド向けの施設なので、メンテナンスコストは大きく、監視カメラも何万個と導入する。すさまじい額が周辺産業に落ちていく。 ホテルの内装も、2年くらいで替える。宿泊料金こそ5万円程度でも、実際には10万円の価値を持たせて、富裕層のデスティネーション(目的地)にしなければいけないからだ。 Q:カジノの存在がIR経営の肝だと。 A:いや、その考えは完全に間違いです。 結果論として客がカジノで大きな金額を消費するため、部門別に見るとカジノが儲かっているように映るだけで、(IRの経営への)貢献度とはまったく違う。カジノに金が落ちるのは、ホテルなどカジノ以外の施設に魅力があるおかげだ』、「カジノに金が落ちるのは、ホテルなどカジノ以外の施設に魅力があるおかげだ」、確かにその通りなのだろう。
・『IRの本質はカジノ以外にある  Q:ただ、アメリカのIR大手のラスベガス・サンズなどでは、ホテルや飲食といったカジノ以外の部門より、ゲーミング(カジノ)の収益のほうが大きいです。 A:どのIRにもカジノはあるが、カジノは(世界の)どこでもルールは同じ。だから(他のIRとの)差別化の決め手は、よりよいホスピタリティーやエンターテインメントを提供できるかに委ねられる。IRビジネスの本質はカジノ以外の部分にある。 IRは全体最適のビジネスだ。仮に部門別の採算を重視すると、カジノの部門の運営者は「コンプ(各種サービスの無料待遇)を出せ」、「他の部門ももっと金を稼げ」などとカジノ以外の部門を責め立てる。 しかしホテルやレストランの採算性が高いかなんて、IRの経営において知ったことではない。これらの部門が低採算でも、(ホテルや飲食に積極投資を行い、魅力を高めることで)IR全体で富裕層の最上級顧客を囲い込めれば、(カジノへの送客も増えて)利益の最大化につながる』、「(ホテルや飲食に積極投資を行い、魅力を高めることで)IR全体で富裕層の最上級顧客を囲い込めれば、(カジノへの送客も増えて)利益の最大化につながる」、なるほど。
・『カジノ以外に命令をするな  だから人材の面でも、ホテル、エンターテインメント、飲食などの各部門のトップ(責任者)は、ゲーミングとほぼ同格にしてあげないといけない。 私が社長を務めていたフィリピンのIR「オカダマニラ」では、もともとゲーミングのほうが(立場は)上だったが、徹底して「ノンゲーミング(カジノ以外の部門)に命令するな」とクギを刺した。そうしないと一流の人材も集まらない。 Q:日本でIRが整備されたら、他国のIRとVIP(富裕層顧客)の獲得競争などは厳しくなるとみていますか。 A:一定数の顧客は物珍しさから日本のIRに来るだろう。問題はその頻度を上げられるか、だ。 世界の各都市で、本当に富裕層の満足するIRを運営できているかというと、観光資源の乏しさで苦戦する都市も散見される。 ジャンケット(カジノに顧客を紹介する仲介業者)も、VIP客の予算や好みに合わせた渡航プランを組む。ホテルや食事が無料になるといった特典はどこも付与している。来訪頻度を上げるためには、日本のコンテンツで差別化するしかない。 例えば日本ほど食事が美味しいところはない。オカダマニラにおいても、どれだけ調達が困難でコストがかかっても、食材にはこだわった。 Q:オカダマニラのビジョンは何だったのでしょうか。 A:「フィリピン人が誇りに思い、アジアを代表する富裕層のデスティネーション」だ。明文化されてこそいないが、それは設計を見ればわかる。 ホテルのいちばん広い部屋は1000平方メートルを優に超える。天井高が10メートルぐらいあるところで割烹料理を出し、中華もミシュランの星付きレストランを誘致した。すべての富裕層を満足させるスペックがハード面で確保できていた。 (VIP以外の幅広い)来場者数を追い、「マクドナルドを誘致しろ」「スパゲッティを安く出せ」と意見する人間とのけんかは日常茶飯事。しかし、「いやいや待て。富裕層は5000円を払っても、うまい朝食を食べたいんだ」と、オペレーションでもビジョンを曲げなかった。 すべての部門を同じビジョンで統一し、最高のハードウェアにオペレーションがついてきて、「オカダマニラは恐ろしい、勝てない」という状況を作り上げることができた。 Q:近隣エリアにある複数のIRとの競争は激しかったのでは? A:その中には、香港のメルコリゾーツ&エンターテインメントやゲンティン・シンガポールといった(世界的なIR大手が運営する)強敵がいた。ただ、結果的にフィリピンIRの中で月間の売り上げトップに立った。 (日本のIR計画においても)大手のブランドを過信してはいけない。大切なのは、ローカライズのスピード感と精度だ。例えば規制当局や地元経済界との付き合い、そして何をしたら施設の顧客と従業員が喜ぶのか。これを理解し、成功させるためには、経営のローカライズが必要になる。 大手が運営するIRは、現地ならではのキャンペーンなどを実施する際、本社に「お伺い」を立てないといけない。大手のIR施設の社長は、本社でいうところの部長に当たるから、そもそも権限がない。 オカダマニラは、親会社であるパチスロ機メーカーのユニバーサルエンターテインメントにとって初めてのIR参入だった。そのため現地で細かいことを全部決められ、圧倒的なスピードと丁寧さをもって経営をローカライズできた』、「規制当局や地元経済界との付き合い、そして何をしたら施設の顧客と従業員が喜ぶのか。これを理解し、成功させるためには、経営のローカライズが必要になる」、「大手が運営するIRは、現地ならではのキャンペーンなどを実施する際、本社に「お伺い」を立てないといけない。大手のIR施設の社長は、本社でいうところの部長に当たるから、そもそも権限がない」、権限の現地移譲が必要なようだ。
・『星野リゾートのほうが成功する?  日本で成功するためには、見たこともないホスピタリティーやエンターテインメントを創る必要がある。 日本に(IR世界大手の)MGMリゾーツ・インターナショナルやゲンティンが来ることがIRの成功条件ではない。よって、相次ぐ外資大手の日本参入からの撤退は、そこまで悲しむべきことではない。 例えば日本では星野リゾートのほうがスピード感を持って、現地のコンセプトでIRを運営することができるかもしれない。 Q:カジノ運営の経験がない星野リゾートでも可能ですか。 A:実はカジノの運営なんて誰がやっても同じ。なぜなら、ゲームのルールがどの国でも一緒だから。マーケティングプログラムの内容などが違うだけだ。 Q:そうなると、遊技機の検定などで日本の警察と関係の深いパチンコホールやパチンコメーカーのほうがむしろ適役? A:彼らのほうがベターではあるけど、ベストではない。 IRはツーリズムやホスピタリティーの世界で、トップオブトップ(最上級)に当たる産業だ。カルティエやエルメスといった高級ブティックが立ち並び、提供されるワインもロマネコンティとかが当たり前。客室も恐ろしい広さの部屋がある。 一方、パチンコ屋のターゲットは完全にマス(大衆)で、ハイエンドを相手にしてない。そういった面での難しさがある』、「相次ぐ外資大手の日本参入からの撤退は、そこまで悲しむべきことではない。 例えば日本では星野リゾートのほうがスピード感を持って、現地のコンセプトでIRを運営することができるかもしれない」、なるほど。
・『和歌山と長崎はポテンシャルある  Q:IR誘致を進める大阪や和歌山、長崎のポテンシャルをどう見ていますか。 大都市圏と観光・地方都市のIRは別々に議論するべきだ。 シンガポールやマカオ、大阪などにおけるIRは、街の商圏やブランドといった価値にぶら下がることになる。横浜や大阪はそもそも人流が大きいため、一定の集客が期待できる。 和歌山と長崎は観光都市だが、最先端の観光施設が不足している。ただ、IRを整備するうえでは大きなポテンシャルを持っている。 高野山やキリシタン関連の施設といった文化資産、すばらしい景色や素材がいい意味で手つかずの状態だ。 富裕層は、すばらしい食やホスピタリティーのためにいくらでもお金を使うし、何時間でも飛行機を飛ばして来る。もし私が(運営にかかわったとして)より力を発揮できるとしたら、観光・地方都市型のIRだ。 Q:大屋さんは国内で数少ないIR運営の経験者です。現在社長を務めるカーチスでIR運営に乗り出すなど、日本でもIRの経営にかかわる考えは? A:カーチスでの社長業から離れた週末などの時間をすべて使い、ちょうど今、(個人の活動として)準備をしている。 日本のIR計画は地域のブランディングビジネスでもあり、大衆向けにやっては意味がない。世界中の富裕層に、日本の観光資源や文化、ホスピタリティーを提供することで、日本を再発見できる場所にしなくてはならない。 こういったことを理解できる人間が、まだ10人足らずだが集まってきた。事業計画の策定やカジノのVIPビジネス、法務など、各方面に長けた人材がそろっている。現在は「チームジャパン」という仮称で活動しており、近くきちんと法人化する予定だ。 自治体に選定されるIR事業者は、IRというよりゲーミング(カジノ)のオペレーターとしての役割が大きい。われわれは選定された事業者と一緒に、カジノ以外も含めた真のIR経営のビジョン設計と、その運営を担っていきたいと考えている』、「事業計画の策定やカジノのVIPビジネス、法務など、各方面に長けた人材がそろっている。現在は「チームジャパン」という仮称で活動しており、近くきちんと法人化する予定だ」、「われわれは選定された事業者と一緒に、カジノ以外も含めた真のIR経営のビジョン設計と、その運営を担っていきたいと考えている」、さてどんな「IR経営のビジョン設計と、その運営」になるのだろうか。
タグ:(その11)(なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議、反対相次ぐ「カジノ」がどうしても不可欠な理由 横浜市長選でノー!知られざる「IR」儲けのカラクリ、フィリピンカジノ前トップが明かすIRの成功条件 海外カジノ元社長が警告!日本人の大いなる誤解) カジノ解禁 東洋経済オンライン 小幡 績 「なぜ日本人は「有馬記念」を賭けてしまうのか リスク嫌いでもギャンブル大好きの摩訶不思議」 「JRA・・・が生み出した、世界最高のギャンブルビジネスモデル」、とはどういうことなのだろう。 「馬券の売り上げは世界一、競馬への社会的許容度も世界一だ。さらに、宝くじの売り上げも世界一」、「「リスクが嫌いだが、ギャンブル大好き」。いったいこのギャップはどこから来るのだろうか?」、確かに不思議だ。 「究極のギャンブラーは純粋に運に賭けることに興奮するからなのである。 実際、日本でも純粋に運による賭け事のほうが、圧倒的に人気がある」、「日本人は運に任せるということが極めて好きだ。戦争まで、神風頼みだ。そして、自然観もそうであり、自然が神であり、山や海が神である」、言われてみれば、確かにその通りだ。 「「人事を尽くして天命を待つ」ことが大好きで、天命に働きかけようとする欧米人とはまったく異なる世界観なのである」、「この自然観、世界観こそが、日本人がギャンブル好きとなった背景なのである。 では、なぜリスクテイクが嫌いなのか。 日本人が嫌いなのはベッティングである。自然が決めるべきことを、自分の力で変えようとすることも嫌いだし、将来のことを自分だけが予想して、それが運ではなく、予想の力で当てるということが嫌いなのである」、極めてユニークで大胆な仮説だ。 「昔からコメ相場の人気があるのは天候によるものだからであり、経営の手腕を見抜くわけではなく、運の要素、しかも自然の支配によるものであったことが大きかった」、「日本の競馬産業が大成功した理由は、競馬のファン層が若者、女性と幅広く受け入れられたことにある。彼らが馬券を買うのは、競馬をギャンブルと捉え、ライトなファンであっても楽しめると捉え、予想の力で勝負しようとしていないことにあるのである。 その結果、欧米では馬券の中心は単勝であり、勝ち馬を当てるという予想力がいちばん問われる馬券が人気であるのに対し、日本で 「日本人は運が大好きだが、リスクをコントロールして、リスクを自分の力で少なくすることや、リスクをマネージすることが好きではない。その結果、リスクテイクが苦手であり、嫌いになっている」、「リスクが嫌いなはずなのに、突然、社運を賭けて大規模な投資をして失敗する電機メーカーが多いことや、中小企業で倒産までギリギリ頑張ってしまうことも、逆説的に説明できる。 すなわち、リスクを支配しようとすることを忌み嫌い、その結果、マネージすることが苦手であり、同時にするべきでなく、自分はリスクと無関係に頑張ることを選択し、後は 東洋経済Plus 「反対相次ぐ「カジノ」がどうしても不可欠な理由 横浜市長選でノー!知られざる「IR」儲けのカラクリ」 「和歌山県」、「長崎県」まで準備中とは初めて知った。 「最大3カ所の認定から7年が経過した後、必要性が認められればIR整備の上限数を見直すことができる」、初めて知った。 「IRで収益をあげるためにはカジノが必要不可欠なため」、やはり「カジノ」に依存するようだ。 「カジノ収入のうちVIPが36%」、「一般客」の比重の方が高いようだ。 「カジノ収入のうちVIPが36%」、「一般客」の比重の方が高いのだろうか。 「カジノなんてどこでやってもルールは同じなので、差別化につながらない。(カジノ以外の施設での)より良いホスピタリティーやエンターテインメント体験の有無で、差別化が実現」、なるほど。 「フィリピンカジノ前トップが明かすIRの成功条件 海外カジノ元社長が警告!日本人の大いなる誤解」 「2020年までフィリピンのIR「オカダマニラ」の社長を務め」、こんな人がいたとは初めて知ったが、体験談は貴重だ。 「カジノに金が落ちるのは、ホテルなどカジノ以外の施設に魅力があるおかげだ」、確かにその通りなのだろう。 「(ホテルや飲食に積極投資を行い、魅力を高めることで)IR全体で富裕層の最上級顧客を囲い込めれば、(カジノへの送客も増えて)利益の最大化につながる」、なるほど。 「規制当局や地元経済界との付き合い、そして何をしたら施設の顧客と従業員が喜ぶのか。これを理解し、成功させるためには、経営のローカライズが必要になる」、「大手が運営するIRは、現地ならではのキャンペーンなどを実施する際、本社に「お伺い」を立てないといけない。大手のIR施設の社長は、本社でいうところの部長に当たるから、そもそも権限がない」、権限の現地移譲が必要なようだ。 「相次ぐ外資大手の日本参入からの撤退は、そこまで悲しむべきことではない。 例えば日本では星野リゾートのほうがスピード感を持って、現地のコンセプトでIRを運営することができるかもしれない」、なるほど。 「事業計画の策定やカジノのVIPビジネス、法務など、各方面に長けた人材がそろっている。現在は「チームジャパン」という仮称で活動しており、近くきちんと法人化する予定だ」、「われわれは選定された事業者と一緒に、カジノ以外も含めた真のIR経営のビジョン設計と、その運営を担っていきたいと考えている」、さてどんな「IR経営のビジョン設計と、その運営」になるのだろうか。
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中国国内政治(その12)(「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット、中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本) [世界情勢]

中国国内政治については、5月18日に取上げた。今日は、(その12)(「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット、中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本)である。

先ずは、7月2日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの浦上 早苗氏による「「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/438115
・『中国共産党が7月に結党100周年を迎え、中国は祝賀ムードが高まっている。アメリカに対抗しうる国力を得て、コロナ禍から早期に抜け出したことは、中国人の愛国心や自信を揺るぎなくしているように見える。 では、今の若者は自国や共産党をどう思っているのか。何気なく北京在住の20代女性に聞くと、意外な答えが返ってきた。 「私は愛国者ですけど、共産党は支持していません。党員の私がそうなんだから、党員じゃなければもっと支持してないですよ」』、興味深そうだ。
・『就職に有利、親も喜ぶ  その女性、王甜甜(仮名、25歳)さんは、「共産党を嫌いというわけではないが、特段の感情がない。党員であるメリットも感じない」と付け加えた。 王さんが党員になったのは6年前、大学3年生のときだ。「1年生のとき、学生幹部から推薦されて党の研修を受け始めた。私はクラスで成績が1番だったから選ばれたのではないか。うちのクラスからは3人が選ばれた。残り2人は学生会の幹部とか、教員と関係がいいとかそんな基準じゃないかな」 1年以上かけて党の思想やマルクス主義などの座学を受け、予備党員になった。ここからさらに半年ほど「教育」が続き、優秀だと認められたら正式な党員になる。かなりの時間が取られるため、予備党員止まりの人も多いという。 王さんは「就職に有利と言われていたし、親も『大きなチャンスをもらえた』と喜んだので、党員になった。でも実際には何も有利なことはなかった。年間100元(約1700円)くらい党費を払っているけど、それ以上の関わりはなく、(党員になるのに費やした)時間がもったいなかった」と話した。 大学時代に王さんと同級生だった趙心さん(仮名、26歳)は、「王さんはSaaSを手掛ける北京のIT企業で働いている。グローバルな実力主義の会社だと、党員の恩恵は感じにくいけど、公務員や教師にとっては、共産党はやっぱり箔ですよ」と強調した。 昨年重点大学の大学院を修了した趙さんは、地元に帰って中学校教師になった。今は結党100周年に伴う学内活動の運営や広報を担当している。 趙さんは共産党員ではない。高校や大学で、共産党員になりたい人はとても多かったが、推薦されるのはクラスで数人。エンターテインメント企業に就職して、30歳で喫茶店を開く夢を描いていた趙さんは「党員を目指すと品行方正が求められるし、競争も激しいし、学生時代はあまり興味がなかった」という。 気持ちが変わったのはこの1~2年だ。 著名企業に入りかった趙さんは、「自分の大学はそれほど有名ではなく、競争に勝てない」と考え、海外に1年留学し、さらに中国の大学院に進学した。そのため就職活動が大学の同級生より2~3年遅れ、先に働き始めた友人からリアルな現実をたくさん聞くことになった。 「友達のほとんどはすでに1回転職して、北京や深圳で働いている。王さんは学生時代とても優秀で、今は給料の高いIT企業に勤めている。私が学生時代に憧れてた生活を送っているのに、『もっと頑張らないと淘汰される』と危機感が強くて、幸せそうじゃない」』、「党員」になるのは狭き門だが、「IT企業」では「党員」の肩書は重要ではなく、社内の競争は激烈なようだ。
・『年内に共産党に入党予定  趙さんは就職をすっ飛ばしてコーヒーショップを開こうと考え、カフェオーナーのコミュニティーに入ってもみたが、オーナーの大半も生存競争にさらされていた。 半年ほどの就職活動を経て、趙さんは地元に戻って教師になることを決めた。海外留学、大学院修了の経歴は、小さな街の学校で歓迎された。 年内には共産党入党の申請もするつもりだ。 「学生の頃は、党員になるのは競争が激しいと思っていたけど、民間企業で働いたり、起業するほうが競争は熾烈だった。安定路線を選んだからには、党員になっておくべきと思う」。 中国の若い世代と話していると、彼らは「愛国」ではあるものの、それが「愛党」と直結していないと感じる。共産党員になることへの20代の共通見解は、「就職や昇進に有利」「希望者は大勢いて競争が激しい」「親が喜ぶ」だ。 中国西部の省で銀行に勤める20代女性は、「昨年のコロナ禍のとき、党員がボランティアで感染者を輸送したり、住民を統率しているのを見て、共産党が社会の安定に貢献していると実感した」と愛党精神を口にしたが、同時に「私は予備党員だけど、早く党員になりたい。昇進にも有利ですし」と、やはり「昇進」という言葉が出てきた。 日本の大学院に留学し、日本企業に就職した李強国さん(仮名、26歳)は、日本社会と比較しながら説明してくれた。 僕は愛国ですが愛党ではありません。日本人だって母国を愛していることと政府を支持するのは同じことではないでしょう」 中国人は総じて、地縁血縁を重視する傾向があり、その延長に愛国がある。最近は、アメリカとの対立によって「中国が理不尽にいじめられている」という認識が広がっていることや、「党と国民が一致団結してコロナを早期に封じ込めた」という自信も、愛国心を高めているように見える。 李さんは、「愛国と愛党は別次元です。僕たち庶民にとって、共産党員になるのは『上級国民』になるという感覚です」という』、「僕たち庶民にとって、共産党員になるのは『上級国民』になるという感覚です」、さすが「日本の大学院に留学し、日本企業に就職した」だけある。
・『入党できなかった父の影響  大学時代に成績優秀だった李さんは、党員になる研修を受けられたが、思うところあって距離を置いた。 「僕は高校の頃から、大人になったら海外で暮らしたい、できれば国籍も取得したいと思っていました。海外で中国の共産党がどう見られているか、大学に入る頃には知っていたし、海外就職で不利になりたくなかった」 ただ、李さんは「中国人は義務教育で愛国、愛党教育を受けるので、世の中のことが分からないうちは愛党精神が強いのが普通。僕は特殊なパターン」とも言った。 李さんの父方の祖父は、共産党と対立して台湾に逃れた国民党のメンバーだった。李さんの父は身内に国民党関係者がいたため、共産党に入党できず、社会のさまざまな場面で不利な扱いを受け、望む道を歩めなかったという。 李さんは父から、「共産党は社会の基盤だから、お前は党員になってほしい」と言われて育った。だが、党員になれないコンプレックスを引きずり続けた父を重く感じ、むしろ党の支配の及ばない場所に行きたいとの思いを強めた。 選挙がない国で、国民が政治を変えることは現実的ではない。自分の力で変えられないものに、愛情や関心を保ち続けるのも容易ではない。だから中国政府は愛国・愛党教育に力を入れざるをえない。 都市部の若者は競争と変化の中で「自分で変えられるもの」、つまり学歴やスキルアップに投資する。党員になるかどうかも、キャリアの一環として判断する。 安定を望む人は、共産党の傘に入ることを選び、自身の安定の基盤である党を支持する。親が「共産党員になってほしい」と望むのは、日本人の親の一定数が子どもに公務員になってほしいと考えるのと似たような感覚だろう』、「都市部の若者は競争と変化の中で「自分で変えられるもの」、つまり学歴やスキルアップに投資する。党員になるかどうかも、キャリアの一環として判断する」、なるほど。
・『共産党機関紙は寝そべり族を批判  最近、寝そべるという意味の「躺平」という言葉が中国で大流行している。仕事も消費も最低限にとどめ、低燃費で生きる若者の生態を指し、中国青年報や南方日報など共産党機関紙は「快適な環境に隠れていても、成功は決して天から降ってこない」「奮闘する人生こそ幸福な人生だ」と躺平を非難する記事を掲載した。 「奮闘より安定を選んだ上級国民の集団」、それが若者から見た共産党の姿だ。 「上級国民に叱咤激励されてもね。格差の上にいる人たちは、自分たちが若者を躺平にしていると思わないんですかね」。李さんは皮肉を交えて語った』、「格差の上にいる人たちは、自分たちが若者を躺平にしていると思わないんですかね」」、本当に痛烈な皮肉だ。

次に、7月3日付けNewsweek日本版が掲載した中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏による「中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本」を紹介しよう。
・『建党100周年大会の構成と習近平演説を解剖:7月1日の建党100周年祝賀大会の構成と習近平の演説は強いシグナルを発していた。参加者が歓声を上げた個所は「人民の心」の表れだ。習近平だけが中山服を着ているのは中国の現役最高指導者のルールに過ぎない』、「習近平だけが中山服を着ているのは中国の現役最高指導者のルールに過ぎない」、初めて知った。
・『一、建党100周年祝賀大会の構成から見えるもの  大会冒頭の挨拶は民主党派の一つ「中国国民党革命員会」主席  何よりも驚くべきは、「中国共産党」の建党100周年祝賀大会だというのに、大会の冒頭の演説が習近平・中国共産党中央委員会(中共中央)総書記ではなく、中国国民党革命委員会の万鄂湘主席(全国人民代表大会常務委員会副委員長兼任)だったということだ。 この党は、いま中国にある「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」という「非中国共産党の党派」の一つで、1948年に孫中山(孫文)の妻・宋慶齢等を中心に結成された。 万氏は、「非中国共産党の党派」を代表して、中国共産党に祝辞を述べた。 拙著『裏切りと陰謀の中国共産党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』のp.88~p.90に書いたように、毛沢東は建国当初は「新民主主義体制」により国家運営を始めていたので、「新中国」の「中国人民政府」の指導層には、宋慶齢など多くの民主党派が入っている。 毛沢東が建国した当時の、この「新中国」と同じ形式を演出したわけである。 と同時に、中国には中国共産党以外に、「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」の代表が全国政治協商会議や全人代(全国人民代表大会)の代表を構成しているということを世界に示そうとしたものとみなすことができる。 6月25日には『中国新型政党制度』白書が出版され、民主党派等の存在をアピールしたばかりだ』、「中国には中国共産党以外に、「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」の代表が全国政治協商会議や全人代(全国人民代表大会)の代表を構成している」、のを改めて示す意味はあるのだろう。
・『式典は青少年に重心  天安門広場を埋めた7万人に及ぶ参加者の中に、青少年の示す割合が多く、習近平の演説の前に少年先鋒隊(紅いリボンを締めたピオネール。6歳~14歳)と共青団(中国共産主義青年団。14歳~28歳)の代表たちが「私たちは共産主義の後継者」などという歌を歌い、また4人の代表が舞台の演出のように、中国共産党を讃える言葉を唱えて青少年全員で重ねて唱えるという演出場面があった。 事実、6月30日に新華網が発表した中国共産党員に関する統計によれば、35歳以下の党員は全体の約25%を占め、かつ2020年1月から2021年6月5日の間に新しく入党した党員数は473.9万人で、2020年は242.7万人、2021年6月5日までに231.2万人が入党しているので、2021年で急増していることになる。その中の35歳以下が80.7%を占めるので、「中国共産党の後継者」として若い世代が重要視されていることが分かる。 一人っ子政策で若者が激減し人口構成が危険な領域に入っている中、習近平がいかに若者党員を増やそうとしているかが見て取れる。ハイテクを進めていくためにも、大学生などの学生党員が求められており、習近平政権になってからは、党員構成として「学生党員」の統計を取るようになり、おおむね35~40%を継続している』、「学生党員」は「おおむね35~40%を継続」、なるほど。
・『二、中山服と習近平の演説から見えてくるシグナル  中山服は特別ではない  なんだか日本のメディアでは盛んに習近平が 中山服を着ているので、「毛沢東を模倣した」とか「一人だけ権威付けを行っている」といった分析が見られるが、短絡的としか言いようがない。もっと言うならば、中国の政治を何も知らない者の分析とさえ断言することができる。 中山服は孫中山が考案したとされることからこの名が付いているが、これは毛沢東も蒋介石も着ていた服だ。新中国になってからは「人民服」とも呼ばれていた。 2012年12月に習近平が広州戦区を考察した時も、中山服を着ている。 そもそも1998年11月に訪日した江沢民が宮中晩餐会に招かれた時に着ていたのも中山服で、中国としては最もフォーマルな服をまとったという意識でしかなかっただろう。 習近平も2018年11月にスペインを国賓として訪問し国王と面会しているが、その時も最もフォーマルな中山服を着ている』、「中山服」は「中国としては最もフォーマルな服」、なるほど。
・『現役最高指導者は常に一人だけ中山服  一歩進んで言うならば、江沢民政権以降の中国には「現役の最高指導者だけが中山服を着て、他の人は背広を着るというルール」がある。 まず、江沢民が国家主席だった時の写真をご覧に入れよう。 これは建国50周年記念(1999年)の時の天安門楼上における江沢民と他の指導者の写真である。 古いのでCCTVの映像は探し出せず、動画サイトbilibiliの動画からキャプチャーしたものである。江沢民(国家主席)だけが中山服を着ていて、他の指導者はみな背広であることが一目瞭然だ。 しかも深圳商報を見ればもっと鮮明に分かるが、江沢民は毛沢東が着ていた同じ灰色の中山服を着ているのが分かるだろう。 胡錦涛の時はどうだろうか。 映像が不鮮明だが、2009年の建国60周年記念の時に、やはり胡錦涛だけが中山服を着ている。 真ん中にいるのが胡錦涛で、胡錦涛だけが白いワイシャツが見えてないので、中山服を着ていることが見て取れる。念のため江沢民と胡錦涛だけの写真を貼り付ける。 2015年9月3日、抗日戦争勝利記念日において、習近平国家主席は中山服を着て、江沢民と胡錦涛は背広であるという写真もある。 江沢民や胡錦涛以外の、天安門楼上に並ぶ他の指導層もみな背広だ。写真が多くなりすぎるので省略する。 そして最後に今般の習近平の中山服姿。 このように習近平だけが中山服を着ているが、これは「トップの最高指導者のみが中国伝統のフォーマルな中山服を着る」という、中国政治の基本ルールがあるからだ。 これを「習近平だけが権威付けをしようとしている」などと解説した全ての中国研究者には猛省を求めたい。もっと中国政治の基本を勉強なさった方がいいだろう。さもないと日本の視聴者や読者に、正しい中国分析を提供することができない。それは国益にも国民の利益にも反することにつながるので、注意を喚起したい』、「「トップの最高指導者のみが中国伝統のフォーマルな中山服を着る」という、中国政治の基本ルールがある」、初めてきちんと知ることが出来た。
・『新時代とは何かを明確にした  習近平の演説内容は共産党員網が正確に文字化して報道しているので、そちらを参照した。動画に関しては接続が不安定なので省く。この文章を見る限り「新しい道のり(新的征程)」が10回使われている、「新時代」が8回出てくる。 その言葉の周辺にある文章から読み取ると、これまで何度もコラム(たとえば6月25日のコラム<建党100年、習近平の狙い――毛沢東の「新中国」と習近平の「新時代」>など)で書いてきたように、「新時代」とは「アメリカと拮抗するところまで中国が力を持つようになった時代(中華民族が偉大な復興を成し遂げつつある時代)」のことで、「新段階に入った」という言葉は、式典における青少年たちの合唱のような讃歌の中でも語られている。長くなりすぎるので、ここでは省く』、「「新時代」とは「アメリカと拮抗するところまで中国が力を持つようになった時代」、なるほど。
・『習近平の鄧小平への復讐  演説の中で習近平の鄧小平への復讐が透けて見える個所がいくつかある。たとえば「以史為鑑」(歴史を以て鑑とする)を 10回も言っており、「初心」も 5回ほど言っているが、建党100年なので、100年の歴史を鑑とするのは当然で、「党の初心を忘れるな」と言うのも当然だろうと切り捨てるわけにはいかない。 拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』で詳述したように、習近平の父・習仲勲は毛沢東の革命根拠地となる「延安」を築いた英雄の一人だ。鄧小平は、毛沢東が習仲勲を高く評価していることを警戒して、冤罪により習仲勲を陥れ、16年間もの長きにわたって投獄・軟禁の月日を強いた。 その間、鄧小平は革命根拠地「延安」の重要性をかき消し、革命の初心を薄めていった。 だから習近平は今、その欠落を埋めるために「初心忘るべからず」を党のスローガンにして、鄧小平を乗り越えようとしているのである』、「鄧小平は、毛沢東が習仲勲を高く評価していることを警戒して、冤罪により習仲勲を陥れ、16年間もの長きにわたって投獄・軟禁の月日を強いた」、「習近平」が「鄧小平を乗り越えようとしている」のもよく理解できた。
・『三、習近平の演説を遮るほどの歓声と拍手喝采に見る「人民の心」  演説の後半になると、習近平の言葉を遮るほどの歓声と拍手喝采が起きた場所が2回もあった。一ヵ所は以下の件である。 ――中国人民は正義を敬い、強暴を恐れない民族で、中華民族は強烈な民族の誇りと自信を持っている。中国人民は、一度も他国の人民を虐めたり圧迫したり奴隷のように扱ったりしたことがない。過去も現在も、そして将来もそういうことはしないだろう。同時に・・・ と言った時だ。普通なら演説の段落となる区切りがあるときに拍手をするという暗黙の了解があるのだが、まだ言葉が終わってないのに拍手が起きてしまって、習近平の言葉が遮られてしまった。ようやく静まったので、習近平は「同時に」を二度言って言葉をつないだ。 ――同時に、中国人民はいかなる外来勢力がわれわれを虐め、圧迫し、奴隷のように扱うことに対しても絶対に許さない・・・ 習近平が息を継いで、次の言葉を言おうとしたときだ。ここでまた歓声と拍手の嵐が巻き起こり、習近平は言葉を中断して、喝采が終わるのを待たなければならなかった。そして次のようにこの段落の言葉を続けた。 ――このような妄想を抱く者は、必ず14億の人民の血と肉を以て築いた鉄の長城によって木っ端微塵にやられるだろう! この最後の「木っ端微塵にやられるだろう」の中国語は「頭破流血」という、『西遊記』に出てくる言葉だが、直訳すれば「頭が破裂し血を流すだろう」となる激しい中国語だ。散々な目に遭うという意味でもある。 この一連の言葉は、中国の国歌の冒頭の歌詞「立て!奴隷となることを望まない者よ!私たちの血と肉を以て私たちの新しい長城を築け!」をもじったものであることは、中国人なら分かるはずだ。 この段落が終わると、天地を揺らさんばかりの拍手喝采が起こり、「いいぞ―!」という意味の「好(ハオ)―!」という歓声がしばらく鳴り響いて、習近平は一時演説を続けるのを止めてしまったほどだ。 これは演説を聞くときのルールを逸脱した行為で、拍手喝采がいかに聴衆側から自発的に発せられたものであるかが窺(うかが)われる。 つまり、これは「人民の声」であることを示唆しており、多くの中国人民、特に若者はアメリカから中国が「虐められている」と感じており、アメリカが対中包囲網を叫べば叫ぶほど若者の愛国心が強化され、中国共産党への声援を強くしていくということを示しているのである。 しかも、あまり効力の高くない対中包囲網だとすると、アメリカは結局、中国人民の党への忠誠心を増強させる結果を招くだけになる。一党支配体制強化につながるのだ。 だから私は日頃から、バイデン政権の「実際には効力のない、表面上の対中包囲網」に対して警鐘を鳴らし続けているのである。 若者の心理を心得ている習近平は、さらに以下のように演説している。 ――中国共産党と中国人民を分裂させようとする如何なる外国の企ても、絶対に成功しない。9500万人の中国共産党は絶対にそれを許さない!14億以上の中国人民も絶対に許さない! これはポンペオ(元国務長官)が言った「中国共産党と中国人民を分離させろ」という言葉に対する抗議で、拍手の度合いが、その非現実性を表していると言っていいだろう。  文字数が良識の程度を超えてしまったようだ。 今回の分析は、ここまでにしておこう』、「若者はアメリカから中国が「虐められている」と感じており、アメリカが対中包囲網を叫べば叫ぶほど若者の愛国心が強化され、中国共産党への声援を強くしていくということを示している」、実に困ったことだ。これでは、米中の溝は深まるだけだろう。
タグ:中国国内政治 (その12)(「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット、中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本) 東洋経済オンライン 浦上 早苗 「「共産党100周年」中国の若者達が語る党への本音 20代が考える入党のメリットとデメリット」 「党員」になるのは狭き門だが、「IT企業」では「党員」の肩書は重要ではなく、社内の競争は激烈なようだ。 「僕たち庶民にとって、共産党員になるのは『上級国民』になるという感覚です」、さすが「日本の大学院に留学し、日本企業に就職した」だけある。 「都市部の若者は競争と変化の中で「自分で変えられるもの」、つまり学歴やスキルアップに投資する。党員になるかどうかも、キャリアの一環として判断する」、なるほど。 「格差の上にいる人たちは、自分たちが若者を躺平にしていると思わないんですかね」」、本当に痛烈な皮肉だ。 Newsweek日本版 遠藤誉 「中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本」 「習近平だけが中山服を着ているのは中国の現役最高指導者のルールに過ぎない」、初めて知った。 「中国には中国共産党以外に、「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」の代表が全国政治協商会議や全人代(全国人民代表大会)の代表を構成している」、のを改めて示す意味はあるのだろう。 「学生党員」は「おおむね35~40%を継続」、なるほど。 「中山服」は「中国としては最もフォーマルな服」、なるほど。 「「トップの最高指導者のみが中国伝統のフォーマルな中山服を着る」という、中国政治の基本ルールがある」、初めてきちんと知ることが出来た。 「「新時代」とは「アメリカと拮抗するところまで中国が力を持つようになった時代」、なるほど。 「鄧小平は、毛沢東が習仲勲を高く評価していることを警戒して、冤罪により習仲勲を陥れ、16年間もの長きにわたって投獄・軟禁の月日を強いた」、「習近平」が「鄧小平を乗り越えようとしている」のもよく理解できた。 「若者はアメリカから中国が「虐められている」と感じており、アメリカが対中包囲網を叫べば叫ぶほど若者の愛国心が強化され、中国共産党への声援を強くしていくということを示している」、実に困ったことだ。これでは、米中の溝は深まるだけだろう。
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司法の歪み(その16)(法律に弱い人が修羅場で役に立たない納得理由 最新情報を集め 学び 法務を味方につけよう、裁判制度を悪用した新手詐欺が横行 「知らぬ間敗訴」と「少額訴訟」に要注意!、刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた) [社会]

司法の歪みについては、2月19日に取上げた。今日は、(その16)(法律に弱い人が修羅場で役に立たない納得理由 最新情報を集め 学び 法務を味方につけよう、裁判制度を悪用した新手詐欺が横行 「知らぬ間敗訴」と「少額訴訟」に要注意!、刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた)である。

先ずは、3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した経営共創基盤(IGPI) ディレクター・IGPI弁護士法人代表弁護士の宮下 和氏による「法律に弱い人が修羅場で役に立たない納得理由 最新情報を集め、学び、法務を味方につけよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/414048
・『大企業で先行して導入された「同一労働同一賃金」のルールが2021年4月から中小企業にも導入される。また、「改正高年齢者雇用安定法」により70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務となる。 昨今の法改正ラッシュの背景にあるのは、社会・経済の激しい変化だ。働き方改革や経済のデジタル化の進展によって、新しいルールの必要性が高まっている。そしてその新ルールを知るべきなのは、実務担当者だけではない。 『週刊東洋経済』3月6日号は、「働き方と仕事の法律」を特集している。仕事で失敗しないために一般のビジネスパーソンも法律に関して最低限の情報は頭に入れておいたほうがいいだろう。今号では1年前に施行された改正民法も含め、新ルールのエッセンスを法律家にわかりやすく解説してもらった。 ここでは特集記事の中から、経営共創基盤ディレクターで弁護士の宮下和昌氏による「ビジネスパーソンのための法律の独学・情報収集術」、「職場の法律問題への対応」をお届けしたい』、興味深そうだ。
・『ビジネスパーソンが法律を学ぶ必要性とは  いわゆるSWOT分析(強み:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat の分析フレームワーク)において、法制度は「脅威」に分類されることが多いが、実は、ビジネス上の「機会」でもあることを知ってほしい。 当局によって電子署名に関する新たな法解釈が公表されたことにより、電子契約ビジネスが大きく前進したというのは近時の好例だ。こうした機会を逃さず大企業で先行して導入された「同一労働同一賃金」のルールが2021年4月から中小企業にも導入される。また、「改正高年齢者雇用安定法」により70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務となる。 昨今の法改正ラッシュの背景にあるのは、社会・経済の激しい変化だ。働き方改革や経済のデジタル化の進展によって、新しいルールの必要性が高まっている。そしてその新ルールを知るべきなのは、実務担当者だけではない。 『週刊東洋経済』3月6日号は、「働き方と仕事の法律」を特集している。仕事で失敗しないために一般のビジネスパーソンも法律に関して最低限の情報は頭に入れておいたほうがいいだろう。今号では1年前に施行された改正民法も含め、新ルールのエッセンスを法律家にわかりやすく解説してもらった。 ここでは特集記事の中から、経営共創基盤ディレクターで弁護士の宮下和昌氏による「ビジネスパーソンのための法律の独学・情報収集術」、「職場の法律問題への対応」をお届けしたい』、「法律の独学・情報収集術」、「職場の法律問題への対応」とは役立ちそうだ。
・『ビジネスパーソンが法律を学ぶ必要性とは  いわゆるSWOT分析(強み:Strength、弱み:Weakness、機会:Opportunity、脅威:Threat の分析フレームワーク)において、法制度は「脅威」に分類されることが多いが、実は、ビジネス上の「機会」でもあることを知ってほしい。 当局によって電子署名に関する新たな法解釈が公表されたことにより、電子契約ビジネスが大きく前進したというのは近時の好例だ。こうした機会を逃さず、自身の関わる事業の法的なリスクと機会を正しく認識したい。 では、何をしたらいいか。ここでは、多忙なビジネスパーソンにオススメの情報収集や独学の方法、そしてそのポイントを紹介したい。 まずは、情報収集だ。必ずしも法律を専門にしないビジネスパーソンにとっては、法律情報が向こうから自動的に飛び込んでくるような「PULL型の情報収集」の仕組みづくりが重要となる。例えばツイッターのようなSNS(交流サイト)で、弁護士や法務に携わる人たちの情報発信に触れてみてはどうか。フォローするだけで、今話題の法律トピックに関する情報が入ってくる。法律事務所が顧客向けに無料で発行しているニュースレターを読むのもいいだろう。自分の業界に関する情報を配信してもらえるよう、メールアドレス登録をしておくだけだ。 また、所管省庁による関連資料や研究会の報告書について、RSS(新着情報配信)を設定しておくと最新情報のチェックに便利だ。これらは、一度フォロー、登録、設定するだけで情報が自動的に入ってくる「仕組み」だ。今の生活スタイルを変えず、気軽に始められる。自身の関わる事業の法的なリスクと機会を正しく認識したい。 法律雑誌も、1年に1度、総目次くらいは見ておくといい。総目次には、今年どんなトピックが取り扱われたかが網羅される。毎月読むのは現実的ではないが、1年分をざっと眺めてみるこの1回の作業で、自分の仕事に関係する法律の改正や裁判例が見つかるかもしれない。新しい法律の施行が新規事業のヒントになる可能性もある。 次は、法律を勉強する際に、何を優先的に学ぶかであるが、その答えは「民法」(契約法)だ。 どんな複雑なITを使おうと、AIやロボットがビジネスの主役を飾ろうと、最後は人と人との間の権利義務の関係に行き着く。人間がどんなツールを使おうと、社会生活を営むうえでの問題は、最後は必ず民法に帰着するのだ。私自身、クライアントのDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトに長く関わっているが、そこで実際に使う法律知識の大宗を占めるのは民法なのである。 テキストは、まずは薄い本で分野の全体感をつかむのがよい。最初の時点で、木を見て森を見ず、にならないことが重要だ。 また、法律は具体的な事例に結び付けながら学習しなければならない。法律はあらゆる事象に対応する普遍的ルールとしての性質上、非常に抽象的に作られている。しかし、学習する際は具体的な事例に結び付けながら帰納的にルールを理解していく必要がある。したがってテキストは、具体的な事例が多く載ったものを選ぶのが望ましい。 「ビジネス実務法務検定試験2級」といった検定試験を利用して勉強するのもいい。時間をかけず短期集中で一気呵成に学習するのがポイントだ。公式テキストは非常によくできている。日々のビジネス実務に生かせる知識がコンパクトにまとまっており、集中して一度勉強すれば長く役立つだろう』、銀行員では、入港して数年間は、民法・手形小切手法、商法などの通信教育で徹底的にしごかれ、その後役立った記憶がある。
・『社内の法務部をどう頼るか  仕事をする中で、法律上の問題に直面する機会は少なくない。その際にまず頼る先が、社内の法務部門だ。このとき、ビジネス現場にいる側から何を尋ね、法務部にはどのような仕事をしてもらえばよいか。そのポイントを押さえよう。 法務部の機能は「予防系」と「臨床系」に大別される。予防系とは、事前の法律相談や契約書審査といった、問題発生を未然に防ぐための機能だ。これに対し、臨床系とは、事後対応機能。訴訟対応といった紛争の有利解決機能がこれに該当する。 まずは、予防系について。実は、「この案件、リスクはありますか?」というのは愚問だ。リスクのない施策などない。いってみれば、明日、隕石が降ってくる可能性だってリスクなのだ。この聞き方では、有益な回答は望めない。) 有効なのは、「これはどの程度のリスクか、そしてそれは踏めるリスクかどうか、踏めない場合の代案は何か?」だ。ここでリスクを算定する際の前提として、「法的リスク=影響の大きさ×発生確率×ダメージコントロールの失敗可能性」という公式を覚えておきたい。リスクは多くの要素の掛け合わせで、濃淡もある。 その濃度と施策のメリットとを比較考量して実行するか否かを決めるのはビジネス部門の役目で、その作戦参謀が法務部だ。よって、法務部からは、ある施策に対して質の高い判断をするための材料、すなわち「リスクの可視化」と「対案」を引き出すことが重要なのだ。 リスクの可視化に当たっては、「他社事例はどうなっているのか」「検挙例が実際にあるのか」など具体例を聞く。「厳密には法に触れる」ことと、実際に検挙されるのかどうかには、意外と大きな隔たりがある。また究極的には、そのリスクが最悪、金で解決できるものであるかという点も重要だ』、「法的リスク=影響の大きさ×発生確率×ダメージコントロールの失敗可能性」との公式は有名だ。顧問弁護士も「法務部」と同様に使い方如何で薬にも毒にもなる。
・『「やらないほうがいい」と言われたら?  そのうえで、「このビジネスはやらないほうがいい」と法務部に言われたらどうするか。そこで終わりにはせず、「一緒に対案を考えてください」と求めてほしい。これは、社内に強い法務部を育てることにもつながる。法的にダメだ、と言うのは簡単だが、対案まで考えられて初めて、企業価値向上を担う作戦参謀としての法務部といえるのだ。 なお、法務担当者や弁護士は、担っている職責上、記録が残るものについては保守的な回答をせざるをえない。書面やメールでの保守的な回答を額面どおりに受け止めてしまうのは、仕事の仕方としてはいまひとつ。本当のリスク感を知りたければ、記録に残るものとは別に、あえて口頭で「実際のところ、どんな感じですか」などと聞いてみるのもいいだろう。 臨床系の案件を相談する際は、すでに起こったことをわかりやすく伝える必要がある。法務部に相談する前に、事前準備として「関係図」と「時系列表」を作成し、事実関係を整理しておきたい。 「関係図」とは、事案の登場人物(法的主体)をプロットし、これらを線でつなげて、誰が誰に対して何をしたのかを一覧化したものだ。「時系列表」とは事実関係を時系列で整理したもので、これを作ることによって事実関係の抜け・漏れや関係者の主張の矛盾を明らかにできる。 法務部門の役割をビジネスにブレーキをかけることのみと捉えているなら、間違いだ。それは法務部門の使い方を誤っている。法務部門をビジネスの作戦参謀として使いこなす力、それもビジネスパーソンに求められる重要な能力なのだ。(構成:山本 舞衣/週刊東洋経済編集部)』、「関係図」を基に相談するというのは、法務部門にとっても理解し易く時間短縮になる。

次に、9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「裁判制度を悪用した新手詐欺が横行、「知らぬ間敗訴」と「少額訴訟」に要注意!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281116
・『存在しない債務をでっち上げてメールや郵便物、電話などで支払いを求める架空請求詐欺が一時流行し、一般的に無視を決め込めば問題ないと認知されてきたが、それを逆手に取って実際に裁判所に民事訴訟を起こし、法的に債権を得て預金口座を差し押さえる手口などが散発している。少額訴訟や相手に訴訟があったこと自体を気付かれないようにする「知らぬ間敗訴」など、手口はさまざま。裁判所は訴訟手続きの申請があれば事務的に処理するため、詐欺と見破るのは不可能で、内容証明などが届いたら確認するよう呼び掛けている』、恐ろしく悪質な「詐欺」が流行っているとは困ったことだ。
・『未払い賃金があるとして相手に知られないように提訴  8月25日。大分県警は国から新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったとして、詐欺容疑で住所不定、職業不詳の男(38)を逮捕した。逮捕容疑は昨年8月、個人事業主を装って新型コロナの影響で大幅に減収したとする虚偽の確定申告書などを提出し、給付金100万円をだまし取った疑いだ。 全国紙デスクによると、実はこの男、九州の裁判所関係者や詐欺を担当する捜査員の間では知らない者はいないほどの有名人だった。複数の飲食店でアルバイトをしては短期間で辞め、未払い賃金があるとして経営者を相手に提訴を繰り返し、「勝訴」で経営者の口座を差し押さえていたのだ。 手口はこうだ。男は飲食店に未払い賃金があるとして各地の裁判所に提訴。ここがポイントだが、訴状には被告(今回の場合は被害者)の住所を記載する必要があるのに、無関係の場所を記載するのだ。 提訴を受けて裁判所は被告に訴状を郵送するも、当然、受取人はいない。裁判所は原告(提訴した男)に問い合わせるのだが「夜は電気がつき、住んでいると思われる」などと回答。こうした場合、裁判所は書留で「付郵便」を送達する。この手続きにより、たとえ受取人が存在していなくても、内容がでっち上げであろうとも、訴訟手続きは成立してしまうのだ。 被告が訴訟の存在さえ知らないまま、裁判所は口頭弁論の期日を設定。ここがもう一つのポイントだが、答弁書(訴状に対する反論など)の提出も弁論への出廷もなければ、法的には訴えを全面的に認めたことになる。こうして裁判所は男の請求を全面的に認め、何も知らないまま被告は賠償を命じられ、控訴期限を過ぎて法的に判決は確定したのだ』、「被告・・・の住所」がデタラメでも「訴訟手続きが成立」とは制度上の欠陥だ。
・『法的知識はあるが明らかにヤバイ橋  福岡県久留米市の被害者は、口座の通帳に「サシオサエ」の記載で、約134万円が引き出されていて被害に気付いた。久留米簡裁の裁判記録では「未払い賃金請求事件」の名称で、訴えは賃金をまったく受け取っていないという内容だった。 被害者は当然、賃金は支払っているし、言い掛かりでしかない。事実確認をして判決の取り消しを求め、提訴した。もちろん、訴えそのものがでっち上げだし、住所の虚偽記載などもあるから、判決は取り消された。久留米簡裁以外にも熊本簡裁、大分地裁などでも同じ手口を繰り返していたことが判明している。 この事態を受け、最高裁は全国の裁判所に内容を通達。大分の被害者も訴訟記録を偽造した私文書偽造容疑で県警に刑事告発し、受理されたが、事の本質が詐欺であることは言うまでもない。 大分県警が逮捕したのはあくまで給付金詐欺なので、この私文書偽造容疑での再逮捕は先の話で、どこまで踏み込むのか不明だ。さらに詐欺罪は親告罪なので、被害者が告訴しないと事件にはならない。被害者も判決取り消しで被害が消えれば「面倒くさい」と考えるかも知れず、詐欺罪では立件されない可能性もある。 この男が逮捕された「本件」は給付金詐欺だから、自分で確定申告書を作成できる、そうした手続きを知る人物だろうと推察される。この手口を思いついたということは、法的知識も相当なものだろう。ただ、訴状で原告として素性を明らかにして詐欺行為をするのは捕まる危険性が高い「もろ刃の剣」なので、不可解さは感じる』、なるほど。
・『少額訴訟制度を悪用し架空請求の手口も  これはレアケースなので詳しく紹介させていただいたが、一般的にあり得る例で警戒していただきたいのは、むしろ少額訴訟手続きを悪用した架空請求詐欺である。 少額訴訟手続きとは、金銭を巡る少額のトラブルで解決に至らず訴訟になった場合、長期を要しないように、その日のうちに即断即決する制度だ。バイトの賃金不払いや個人間の金銭貸借、アパートの敷金問題などに適用される。 1998(平成10)年に設けられ、当初は30万円以下に限定していたが、利用が多かったことから現在は60万円以下に枠を拡大している。詐欺師たちはこれに目を付けたわけだ。 多いのは、アダルトサイトや出会い系サイトなどの運営会社が、過去の利用者などを相手に60万円以下の金額を支払うよう、提訴する手口だ。 裁判所から提訴された旨の連絡である内容証明が自宅に届き、慌てふためいて各方面に問い合わせて、詐欺であることに気付くケースもあるが、詐欺と見抜いて放置したことで結局は被害に遭ってしまうのだ。 前述したが、自宅に内容証明が届いたということは、詐欺師は氏名・住所を含む個人情報を握っているということだ。そして、放置することで判決が確定してしまう。さらに怖いことには、詐欺師たちはこうした個人情報を融通し合っているという点だ。 実際にある男性が「出会い系サイト」を利用したと架空請求の少額訴訟を起こされ、内容証明が届いたため応訴したケースがある。男性は「身に覚えがない」と争う姿勢を示したため、詐欺師側は訴訟を取り下げた。 詐欺師側の誤算だったのは、男性側が訴訟取り下げを認諾せず、訴訟継続を求めたことだ。さらに男性側は、架空・不当請求であるとして損害賠償と慰謝料を求め反訴した。裁判所も裁判制度を悪用した詐欺の疑いがあるとして、見過ごせなかったのだろう。扱いを簡易裁判所から地方裁判所に移送。少額訴訟ではなく実際に弁論を開くよう期日を指定した。 まさか、詐欺師側もこの事態は想定していなかっただろう。一切の証拠を提出せず、弁論にも出席しなかった。つまり、逃げたわけだ。裁判所は判決で、当たり前に業者側の訴訟自体を棄却。争点の男性がサイトを利用していないと証言したこと、使った証拠がないことにより「(業者側の訴えは)詐欺行為に該当する可能性が高い」と踏み込んだ。 さらに男性の慰謝料請求についても、業者側にプライバシーの侵害、支払いの通告書送付などは恐喝行為だったと認定した(ただし、未遂のため減額)。しかし、業者側はトンズラし、支払いはなされなかったとみられる。ただ、判決は、民事訴訟で業者側の詐欺未遂と恐喝未遂の「犯罪」を認めたわけだ。 この訴訟では、20人近い弁護団が組まれた。弁護団にも「たとえ少額でも、裁判制度を悪用した詐欺を許すわけにいかない」という意図があったのだろう。 「自分はだまされない」と思っている方も、はめられる可能性がある。筆者は架空請求を受けた「気弱な被害者」を演じて、電話したことがある。法的なやりとりをしたので気付いたのか、「テメェ、素人じゃねぇだろ。何が目的だ!」とすごまれた後に電話を切られたが、相手はなかなか法的な知識があった。 「詐欺だな。放っておこう」ではなく、こうしたケースにはくれぐれもご注意いただきたい』、「男性側が訴訟取り下げを認諾せず、訴訟継続を求めたことだ。さらに男性側は、架空・不当請求であるとして損害賠償と慰謝料を求め反訴」、「業者側はトンズラし、支払いはなされなかった」とはいえ痛快だ。「自宅に内容証明が届いた」のに、「放置することで判決が確定」、とは大いに気をつけたい。

第三に、10月4日付けYahooニュースが転載した読売新聞「刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/985c511a189cac13c663f51ee886b87d26809380?page=1
・『18歳が今年の司法試験に合格――。9月に報じられた驚きのニュースの主役は、 大槻凜(おおつきりん) さん(18)という慶応大法学部の1年生だった。気になる「挑戦のきっかけ」や「勉強のコツ」、そして「合格後も大学で学ぶ意義」とは。さらに、好きな「法律の条文」から「芸能人」に至るまで、100分間、丁寧に答えてくれた。(読売中高生新聞)(Qは聞き手の質問、Aは大槻さんの回答)』、すごい学生がいたものだ。
・『「目の前で裁かれている」刑事裁判のリアル  司法試験を受けるには「法科大学院を修了」「予備試験に合格」の2ルートがある  Q:満18歳3か月(受験時)での司法試験合格は、少なくとも、法科大学院修了生の受験が始まった2006年以降、最年少です。いつ、どんなきっかけで勉強を始めたんですか。 A:司法試験の勉強を始めたのは高校1年の2月ですが、そもそもは、中学1年の秋に東京地裁で刑事裁判の傍聴をしたことがきっかけです。 Q:中1で裁判の傍聴ですか。 A:はい。中学校(慶応義塾普通部)で毎年、卒業生を招いた特別授業がありました。その一環で弁護士の先生が20人くらいの同級生と一緒に傍聴へ連れて行ってくれました。 覚醒剤取締法違反の事件でした。特別な事件ではなかったんですけど、裁判を見るのは初めてで、すごく衝撃を受けました。 「これはフィクションではない。本当に起きた事件が、目の前で裁かれているんだ」と気づいて。一人の人間が法によって裁かれている現場を目の当たりにしたというか。その時に、司法の最前線を見たような気がしたんです。 Q:どこに衝撃を? A:なんというか、リアルさと言いますか……。法廷で被告人の生い立ちが語られ、「この人はどんな人生をたどったんだろう」などと色々考えてしまいました。被告人も発言していて、30歳代ぐらいの男性だったんです。「こんな普通の人が犯罪、覚醒剤をやるのか」という点もショックでした。 とにかく、本当に実在する人間が、目の前で裁かれていると強く感じました。「裁判ってこういうものなのか」と関心を持ったことが大きなきっかけです。 Q:その後も傍聴を続けたんですか。 A:そうです。裁判は平日しかやっていないので、学校の授業がない夏休みや春休みなどに通うようになりました。 朝に一人で行き、昼になったら裁判所地下のフードコートのような大きな食堂でご飯を食べて。今はお店が少なくなりましたが。そして午後にまた傍聴して、夕方に帰る…というようなことをしていました。 毎日ではなく、裁判員裁判や気になった刑事裁判を見つけて、ちょっと通ってみるという程度です。傍聴記録をつけ、法廷イラストを描くこともありました。逆転無罪判決や死刑判決の言い渡しも聞きましたし、逆送された少年事件も傍聴しました。 中学校では年に1回、数学でも美術でもなんでもいいから自分の興味、関心を追求して、作品として発表する「労作展」という展覧会がありました。中2で「裁判・司法を考える 実際に裁判員裁判を傍聴して」というリポートを作り、中3では今思えば大それた題名ですが、「刑法解釈を考える 実際の傍聴によるケーススタディー」を発表しました』、慶応高校の「特別授業」の「一環で弁護士の先生が20人くらいの同級生と一緒に傍聴へ連れて行ってくれました」、さすが「慶応高校」だが、刺激を与えるにはいい試みだ。
・『勉強は講座の「早聞き再生」で週18時間  Q:そうした裁判や法律への関心から、司法試験の勉強を? A:そうです。「いま何の話をしているのかな?」と法律的なやり取りがわからないことが傍聴中にありましたが、高校(慶応義塾高)1年になると、そこにだんだん歯がゆさを覚えてきて。中学でリポートを作成した時にも刑法の入門書を読みましたが、「もっと勉強したいな」と思いました。 そして「司法に参画したい」「将来は法律家になりたい」という自分の気持ちにも気づき、受験しようと決めました。 Q:どんな勉強をどれくらいしましたか。 高1の(2019年)2月から、司法試験の受験指導校「伊藤塾」で学び始めました。収録されたものを自宅で好きな時間、自由に巻き戻せるウェブ講義です。“早聞き再生”で自分の部屋のパソコンで受講しました。 友だちにも「1日何時間勉強した?」と聞かれましたが、その日によってバラバラで。高校の授業で疲れて帰ってきて寝ちゃうような時もあれば、休日は一日中勉強することもありました。それに受験の直前期は朝起きてから寝るまでずっと……みたいな感じでもありました。「1日何時間」というのは難しいんです。 ただ、目安として、伊藤塾の講義は1回3時間、それが週3日あって計9時間。それと同じ時間をかけて復習したので、1週間で合計18時間か、やや多いくらいの時間をやっていた気がします』、「高1の・・・2月から、司法試験の受験指導校「伊藤塾」で学び始めました」、「1週間で合計18時間か、やや多いくらいの時間をやっていた」、通常の勉強もした上で、やるのは大したものだ。
・『学校優先、部活は生徒会の「幽霊部員」  Q:学校との両立は大変だったのでは? 大槻さんには通常の大学入試がなかったとはいえ、慶応の法学部への内部進学には、上位の成績が求められるはずです。 A:高校の授業との両立は、やっぱり難しかったです。 平日は朝から午後3時ぐらいまで、化学、物理、世界史……と法律と全然関係ない授業を受けますし。いきなりリポートや英語のエッセーを書く課題が出ることもありました。 選択を縛られたくなくて全学部に行けるように対策をしていたので、(高3で合格した予備試験の)直前期は別ですけど、基本的には学校優先でした。 Q:司法試験の勉強法は? コツをぜひ教えてください。 A:整理すると三つあって、一つは〈セルフレクチャー〉というやり方です。声を出して自分に講義することで復習する勉強法です。 テキストを開き、「今日は△△という単元を進めよう」「この言葉の定義は○○だ」「□□という判例があって」などと、ぶつぶつ言いながらやります。 自分が本当に理解しているかどうかがよくわかり、文章の読み飛ばしもなくなります。それに、「なぜこういう結論になるのか」みたいなことも同時に思考できる方法です。僕はポケット六法で条文を確認しつつ、考えながらセルフレクチャーをしていました。 Q:他には? A:二つめは〈寝る前5分間は暗記の時間〉と決めて、毎晩必ずやりました。もう一つは〈スキマ時間の活用〉で、電車通学の片道20分に○×形式の正誤問題をこなしました。 Q:いずれも「驚くべき勉強法!」というわけではなさそうです……。 A:そうですね(笑)。どれも(伊藤塾の)伊藤真塾長が最初の講義で教えてくれたやり方なんですが、その時に「たぶん今日、セルフレクチャーも寝る前の5分の暗記も、ほぼ全員がやるでしょう。1週間後にやってくれる人は半分ぐらいかな。1年続く人は1割もいないです」と言われました。 おそらく毎年、受講者に伝えているんでしょうね。さらに続けて、「でも、こういうことを真面目に続けた人が受かる試験です」と。そこで自分は変に意地になって「絶対1割に入ってやる」と思い、やり続けました。 Q:それらの方法は、学校の勉強にも役立ちましたか? A:学校の勉強では、セルフレクチャーはあまり使いませんでした。ただ、役に立ったといえば、話が少し変わりますが、論文式試験では、法律的な知識も大事ですが、それ以前に論理的な文章を書く力、わかりやすい文章を書く力が大切です。 そういう点は高校、大学問わず役に立っていると感じます。やっぱりリポートなどを書く時に、司法試験で学習した論理的な思考、論理の展開は使えていると思っています。 それと、自分が昨年高3で(合格率4%の)予備試験を突破し、今年大学1年で(同41・5%の)司法試験に合格できたのは、新型コロナの影響だと思っています。 Q:コロナの影響? A:もともと去年(2020年)の予備試験は、短答式5月、論文式7月、口述10月の予定でした。それが、コロナ禍の影響で3か月ずつ延期されて8月、10月、翌年1月になりました。当初のスケジュールでは、勉強が間に合わなくて落ちていたと思います。 それに高校も4~6月頃は休校になったので時間ができ、集中して勉強できました。それで予備試験に合格できたと思っています。受講のペースもそれまでは遅れ気味でしたし』、「伊藤真塾長が最初の講義で教えてくれたやり方なんですが、その時に「たぶん今日、セルフレクチャーも寝る前の5分の暗記も、ほぼ全員がやるでしょう。1週間後にやってくれる人は半分ぐらいかな。1年続く人は1割もいないです」と言われました」、「そこで自分は変に意地になって「絶対1割に入ってやる」と思い、やり続けました」、大したものだ。自分ブツブツ言うのが「セルフレクチャー」というのは初めて知った。
・『大学飛ばして司法修習に行く?  Q:そして今年(2021年)、司法試験に合格しました。「もう大学卒業を待たずに司法修習に行こうかな」と思ったことはありませんか? A:たしかに「法律の勉強」という点だけを見れば、司法試験の勉強も今の法学部での勉強も、それほど変わらないかもしれません。 ただ、両者は目的が違うんですよね。つまり、司法試験は「難しい」とは言われますが、合格というわかりやすいゴールがあります。一方で、大学というのは学問や真理の探究の場であり、そこにゴールはありません。 なので、今まで試験勉強として見てきた法律を、大学の場でまた別の視点から勉強するのは、意義があることだと思っています。「大学は真理の探究の場」という部分は、これも伊藤塾長の受け売りです(笑)。 Q:大学では教養科目も学べますね。 A:はい。やっぱり教養って大事だと思います。極端な話、いま大学を中退して、司法修習を受けて、弁護士になりました、ということも理論上は可能です。けれど「こんな若いやつに相談や依頼をしたいですか?」と聞かれたら、頼みたくないと思うんですよ。 法律家は、法律の知識だけで仕事をしているわけじゃないと思うので。教養という面で考えても、やっぱり大学に通う意味はある。よりよい法律家になれるんだろうなと考えています。 そして、これから勉強に限らず、幅広く社会経験も積みたいです。今まであまりしてこなかったので、いろんなことに手を出したいです。その一つとして、留学があると思いますし、英語もそうですし。法律と全然関係のないアルバイトもしたいです。 Q:裁判官、検察官、弁護士の法曹三者、どれになりますか? A:今はいずれを目指すか、まだ決められていません。けれど、もともと法廷でのリアルなやり取りに衝撃を受けてこの道を目指しました。なので、目(の前にいる被告人や当事者、依頼人と心から向き合うことを忘れない。そんな法律家になりたいと思っています』、「法律家は、法律の知識だけで仕事をしているわけじゃないと思うので。教養という面で考えても、やっぱり大学に通う意味はある」、健全な考え方だ。
・『好きな条文、推しの裁判官は…  Q:ここからは「好きな○○」などを聞かせてください。まず好きな条文は? A:そういう質問があるかもと思って、考えてきました(笑)。憲法なら23条が好きです。「学問の自由は、これを保障する」という、ただそれだけの条文です。 声に出すと五七五になっていて、音がきれいだなというのもあります。それに、たった17音の条文に、判例が積み重なり、ここから派生した原理、解釈がたくさんあり、学問的にも蓄積している。それがかっこいいなと思って。あまり多くを語らない態度が、かっこいいと思っています。 Q:民法にも五七五があったような。 A:「相続は、死亡によって開始する」(882条)ですね。 Q:さすがの即答ですね。 A:五七五だったから、たまたまです。六法全書をすべて覚えるわけではないです。ドラマでもそういう設定の弁護士がいますけど、現実にはその必要はありません。 Q:では、好きな食べ物は? A:ゆでたホタルイカを酢みそにつけて食べるのが好きです。中高生新聞でホタルイカというのも変かな……。たまに家で出るんですけど、最近食べてないです。 Q:苦手な食べ物は? A:ブロッコリーですかね。 Q:特技は? A:特技を聞かれてうまく答えられないことに困って、高校生の時にルービックキューブを練習しました(笑)。一定のコツがあって、しっかり学べば、誰でもできるようになるんです。 頑張って2分間でそろえられるようになったんですが、それ以上早くすることはできませんでした。 Q:こういう話題もホッとするので…。 A:わかります。ゆるい話題もあったほうがいいですよね。堅い選挙報道でも、候補者のゆるいプロフィル情報が面白いです。 Q:ありがとうございます。憧れている人、尊敬する人は? 芸能人など。 A:芸能人なら、長澤まさみさんのファンです。主演の「コンフィデンスマンJP」は、ドラマも映画も全部見ました。犯罪のドラマですけど……司法試験に受かった人間が犯罪のドラマが好きというのもまずいですか(笑)。 映画版の「プリンセス編」は、予備試験の短答式が終わった記念にすぐ見ました。論文の試験に向けて気合を入れるためにも。 それと、ちょっとマニアックになるかもしれませんが、 合田悦三(ごうだよしみつ) さんという裁判官がいたんです。東京高裁で傍聴していた時に、その人柄が好きだなと思いました。 高等裁判所のいわゆる「エリート裁判官」なのに、すごくおおらかな方で、被告人ともざっくばらんに会話して、たまには笑ったりしていました。「この裁判官、いいな」と思ったんです。でも直後に転勤してしまって。 札幌高裁の長官まで務めて、8月に定年退官を迎えられました。 Q:人事までフォローしているんですね。 A:裁判傍聴が好きになると、最後は裁判官人事にまで関心を持つようになるんです(笑)。最終形態というのかな。 Q:推しは合田裁判官。 A:推しでしたね(笑)。訴訟指揮が好きでした。先ほど話した「逆転無罪判決」も、合田裁判長の法廷でのことでした。 Q:好きな裁判官まで教えてくださり、ありがとうございました。最後に、ここまで読んでくれた読売中高生新聞の読者にメッセージを。 上から目線な言い方になってしまいますが、やっぱり、自分が興味のあることを突き進めてほしいなと思います。僕の場合は裁判でした。それを突き進めた結果、司法試験を目指しました。 Q:興味があって楽しいから、好きだからこそ、苦しいことがあっても突破できると? A:そうですね。司法試験の世界でも、「自分は弁護士にならないといけないんだ」みたいな義務感だけでやると、たぶんつらくなってしまうと思います。 僕の場合は、幸せなことに純粋な興味、関心として追求できました。それが、この結果に結びついたのかと思っています。(聞き手・森田啓文)文)』、「司法試験」に何回となく挑戦している方には、頭に来るほどのクールさだ。今後が楽しみだ。
タグ:読売新聞 「男性側が訴訟取り下げを認諾せず、訴訟継続を求めたことだ。さらに男性側は、架空・不当請求であるとして損害賠償と慰謝料を求め反訴」、「業者側はトンズラし、支払いはなされなかった」とはいえ痛快だ。「自宅に内容証明が届いた」のに、「放置することで判決が確定」、とは大いに気をつけたい。 慶応高校の「特別授業」の「一環で弁護士の先生が20人くらいの同級生と一緒に傍聴へ連れて行ってくれました」、さすが「慶応高校」だが、刺激を与えるにはいい試みだ。 「裁判制度を悪用した新手詐欺が横行、「知らぬ間敗訴」と「少額訴訟」に要注意!」 「刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた」 すごい学生がいたものだ。 恐ろしく悪質な「詐欺」が流行っているとは困ったことだ。 「被告・・・の住所」がデタラメでも「訴訟手続きが成立」とは制度上の欠陥だ。 yahooニュース 「法的リスク=影響の大きさ×発生確率×ダメージコントロールの失敗可能性」との公式は有名だ。 「法的リスク=影響の大きさ×発生確率×ダメージコントロールの失敗可能性」との公式は有名だ。顧問弁護士も「法務部」と同様に使い方如何で薬にも毒にもなる。 銀行員では、入港して数年間は、民法・手形小切手法、商法などの通信教育で徹底的にしごかれ、その後役立った記憶がある。 「関係図」を基に相談するというのは、法務部門にとっても理解し易く時間短縮になる。 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法 「高1の・・・2月から、司法試験の受験指導校「伊藤塾」で学び始めました」、「1週間で合計18時間か、やや多いくらいの時間をやっていた」、通常の勉強もした上で、やるのは大したものだ。 「伊藤真塾長が最初の講義で教えてくれたやり方なんですが、その時に「たぶん今日、セルフレクチャーも寝る前の5分の暗記も、ほぼ全員がやるでしょう。1週間後にやってくれる人は半分ぐらいかな。1年続く人は1割もいないです」と言われました」、「そこで自分は変に意地になって「絶対1割に入ってやる」と思い、やり続けました」、大したものだ。自分ブツブツ言うのが「セルフレクチャー」というのは初めて知った。 「法律家は、法律の知識だけで仕事をしているわけじゃないと思うので。教養という面で考えても、やっぱり大学に通う意味はある」、健全な考え方だ。 「司法試験」に何回となく挑戦している方には、頭に来るほどのクールさだ。今後が楽しみだ。 「法律の独学・情報収集術」、「職場の法律問題への対応」とは役立ちそうだ。 宮下 和 「法律に弱い人が修羅場で役に立たない納得理由 最新情報を集め、学び、法務を味方につけよう」 東洋経済オンライン 司法の歪み (その16)(法律に弱い人が修羅場で役に立たない納得理由 最新情報を集め 学び 法務を味方につけよう、裁判制度を悪用した新手詐欺が横行 「知らぬ間敗訴」と「少額訴訟」に要注意!、刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた刑事裁判の傍聴にはまった中学生が最年少で司法試験に合格するまで…推しの勉強法を聞いてみた)
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携帯・スマホ(その7)(「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害 集中力低下 うつ 肥満などデメリットは深刻、「かわいい子にはスマホを持たせよ」脳科学者・中野信子さんがそんな極論を主張するワケ ずっとスマホと無縁ではいられない、財務基盤悪化が顕著 格付け会社が示した懸念 楽天 銀行上場の巨額調達で挑む携帯「背水の陣」) [産業動向]

携帯・スマホについては、7月7日に取上げた。今日は、(その7)(「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害 集中力低下 うつ 肥満などデメリットは深刻、「かわいい子にはスマホを持たせよ」脳科学者・中野信子さんがそんな極論を主張するワケ ずっとスマホと無縁ではいられない、財務基盤悪化が顕著 格付け会社が示した懸念 楽天 銀行上場の巨額調達で挑む携帯「背水の陣」)である。

先ずは、7月5日付け東洋経済オンラインが掲載した成蹊大学客員教授/ITジャーナリストの高橋 暁子氏による「「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害 集中力低下、うつ、肥満などデメリットは深刻」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/434481
・『「スマホ脳」と聞いてドキッとした人は多いのではないか。多くの人が長時間利用している自覚があるうえ、「何となく良くない」ことを感じているためではないだろうか。スマホの長時間利用には確かに弊害がある。今回は、長時間利用で起きる3つの副作用と対策までを解説していく』、興味深そうだ。
・『リスクその1:集中力や能力の低下  「スマホを持たせたら、YouTubeにはまってしまって。やめろと言ってもやめないし、休みの日は一日中見ている。宿題も後回しでまったく勉強しないし、学校についていけるか心配」と、小学生の子どもを持つ40代女性は眉をひそめる。 仙台市が令和元年に小学3〜4年生14465名を対象に行った調査によると、小学3〜4年生のスマホ保有率は63.3%に及ぶ。 スマホを持っていない、もしくは持っているがまったく使わない、使用を1日1時間未満に抑えている子どもたちの多くは、平均点より高い成績を収めた。 一方、1時間以上使用している子どもたちの成績は、平均点より低い傾向が見られた。「1時間以上使用している子どもが勉強していないとか、睡眠時間が足りていないだけでは」と考えたくなるが、1時間以上使用している子どもは長時間勉強して睡眠時間を確保していても、やはり平均点より低い傾向が見られたという。 それまで小学5年生〜中学3年生を対象として同様の調査を行った結果よりも、小学3〜4年生を対象とした今回の調査では、この傾向は顕著だったという。少なくとも小学校低・中学年において、長時間のスマホ使用は学力に悪影響を及ぼすと言えそうだ。 では、なぜスマホの長時間利用は成績低下につながるのだろうか。 「勉強すると自室にこもったはずが、実はまったく勉強をしていなかった。スマホを自室に持ち込んだせいで、SNSのやり取りをしたりで忙しく、まったく集中できていなかったようだ。おかげで成績がガタ落ちで、スマホを取り上げることになった」 ある中学生の保護者に聞いた話だが、これは珍しいことではない。 「ゲーム依存」は、2018年にWHOによって病理と認定された。ゲーム依存症患者は、アルコール中毒、ギャンブル中毒患者と脳の状態が酷似した状態となっている。また、SNSにおける「いいね」は、つくかどうかわからないため、ついた時にはドーパミンが放出され、中毒性の高さが指摘されている。 ゲームやSNSだけでなく、スマホの存在自体で集中力が削がれることもわかっている。米テキサス大学の心理学者エイドリアン・ウォード氏は、800人の被験者に対して問題を解かせる実験を行っている。参加者はスマホを机の上に下向きに置くか、ポケットやバッグの中に置くか、別の部屋に置くように無作為に指示された。そのうえで、数学の問題を解いたり、無作為な文字列を記憶させたり、複数の画像からパターンを見いださせたりさせた。 その結果、別の部屋に置いた者は、机の上に置いた者よりずっと高い点数となり、ポケットやバッグに入れた者よりもわずかに高い点数となった。スマホがオン・オフどちらであろうと関係なく、途中で通知があったわけでもない。つまり、スマホが目の前にあるだけで気が散り、集中力や認知能力が下がるということを意味しているのだ。 スマホがあることで、われわれは認知能力に統計的に有意なマイナスの影響を受ける。それは睡眠不足と同程度になるという。先に紹介したように子どもの成績低下などにつながるだけでなく、大人も仕事の集中力や能力低下につながる可能性が高い』、「少なくとも小学校低・中学年において、長時間のスマホ使用は学力に悪影響を及ぼす」、「スマホがあることで、われわれは認知能力に統計的に有意なマイナスの影響を受ける・・・子どもの成績低下などにつながるだけでなく、大人も仕事の集中力や能力低下につながる可能性が高い」、「スマホがある」だけで影響を受けるとは人間は誘惑に弱いようだ。
・『リスクその2:視力低下  「子どもの視力が一気に下がってしまい、眼鏡をかけることになりそう。最近スマホばかり見ていたからかと後悔している」 小学生の子どもを持つある30代主婦は、子どもの視力が低下したことを気に病む。 令和元年度学校保健統計(令和2年3月)によると、裸眼視力1.0 未満の児童生徒は、小学校、中学校、高等学校で過去最多となっており、子どもたちの視力の低下傾向は続いている。 ロート製薬の「コロナ禍における子どもの目の調査」(2020年10月)によると、新型コロナウイルス感染症の流行前の2020年1月頃と比較し、視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じるとの回答は、約5人に一人(18.6%)に上った。 小学生以上の子どもを持つ方に限ると、約4人に一人(24.4%)が視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じると回答している。 さらに、2020年1月頃と比較し、「動画配信サービス等を見る時間が増えた(31.4%)」、「家にいる時間が増えた(30.1%)」など、デジタル機器接触時間が長くなったという回答は55.2%に上る。なお学年が上がるにつれこの傾向は顕著になり、小学生以上の子どもを持つ人は60.8%が長くなったと回答している。 デジタル機器接触時間の長さと視力低下への感じ方には、相関関係があると考えられるのだ。 近視は、「近業」と呼ばれる30センチ以内の近い距離のものを見る時間が長くなると進行すると言われる。つまり、スマホやゲームなどのデジタル機器の利用が長すぎることは影響すると考えられる。 対策として、米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルールだ。意識して遠くを見る習慣づけをすることで、視力低下の促進が防げる可能性があるという』、「米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルール」、なかなかいいルールだ。
・『リスクその3:睡眠障害やうつなど心身の不調  スマホのブルーライトは、目に刺激が強く、眼精疲労や頭痛などの症状を引き起こすと言われている。長時間のパソコン作業などによって目が疲れる原因ともなっている。 ブルーライトは太陽光にも含まれ、メラトニン分泌を大幅に抑えるものだ。夜にこの光を浴びるとメラトニンが十分に分泌されず、睡眠障害に陥ることがわかっている。睡眠の質が落ちると、食欲をつかさどるホルモンの分泌に影響を及ぼし、肥満を促進したり、生活習慣病のリスクが高まるという指摘もある。 医学誌『JAMA Pediatrics』に掲載された、カナダの高校生を対象とした「スクリーンタイムと青少年のうつの関連性」(2019年7月)によると、SNS・テレビ・ネットサーフィンを問わず、スクリーンタイムが1時間伸びるごとに、孤独感、寂しさ、絶望感といったうつ状態のレベルが高まるという。 つまり、スマホの長時間利用が、睡眠障害や肥満、生活習慣病、うつなどの心身の不調につながる可能性があるというわけだ。 言うまでもなく、スマホは非常に便利な端末であり、利用しないということは現実的ではない。これまで多くの医師に取材してきたが、「スマホやタブレットを使ってはいけない」という医師はいなかった。どの医師も「長時間利用しすぎると悪影響が出る可能性があるが、時間を制限して利用するなら問題はない」と言っていた。 そもそもスマホは、長く頻繁に利用したくなる誘惑にあふれている。SNSやゲームアプリには、通知、人間関係、時間での体力回復、毎日のログインボーナスなど、頻繁に利用したくなるような、利用を習慣化するような仕組みが多数ある。そのようなアプリにとっては長く頻繁に利用してもらうことがビジネスにつながるためだ』、「スマホの長時間利用が、睡眠障害や肥満、生活習慣病、うつなどの心身の不調につながる可能性がある」、しかし、「SNSやゲームアプリには、通知、人間関係、時間での体力回復、毎日のログインボーナスなど、頻繁に利用したくなるような、利用を習慣化するような仕組みが多数ある」ので厄介だ。
・『長時間利用を抑える「3つの対策法」  ご紹介したような副作用を考えると、スマホの利用時間はコントロールするべきだろう。 スマホの利用時間をコントロールするためには、iOS端末ならスクリーンタイム機能、Android端末ならデジタルウェルビーイング機能を使えば可能である。自分の利用時間の長さを確認し、アプリごとや一日の利用時間、利用しない時間帯などを設定するとコントロールしやすくなるはずだ。 そのほか、そもそも使うアプリを整理したり、通知をオフにしたり、バイブレーションをオフにすることでも、利用を抑えられるだろう。目覚まし時計代わりに使う人は多いので、目覚まし時計を手に入れて枕元にスマホを置かないようにするというのも良い方法だ。 子どもの場合、スマホ以外に夢中になれること、やることがあるとスマホから離れられるはずだ。習い事や部活動、塾など、場を変えたり夢中になれることがあるといい。保護者がスマホを預かったり、スマホを置いて外出する機会を設けたりしてもいいだろう。この機会に利用時間をうまくコントロールし、使いこなしていただければ幸いだ』、「子どもの場合、スマホ以外に夢中になれること、やることがあるとスマホから離れられるはずだ。習い事や部活動、塾など、場を変えたり夢中になれることがあるといい」、その通りだろう。

次に、7月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載した脳科学者・医学博士・認知科学者の中野 信子氏による「「かわいい子にはスマホを持たせよ」脳科学者・中野信子さんがそんな極論を主張するワケ ずっとスマホと無縁ではいられない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/47701
・『スマートフォンを子どもに持たせてもいいのだろうか。脳科学者の中野信子さんは「『スマホは悪の機器』という意見に、親が振り回されないことが大切だ。取り上げるのではなく、持たせて上手な使い方を教えたほうがいい」という。セブン‐イレブン限定書籍『脳を整える 感情に振り回されない生き方』からお届けする――。 ※本稿は、中野信子『脳を整える 感情に振り回されない生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、第一の記事とは若干異なる観点で、興味深そうだ。
・『「家族は仲良くあるべき」の“副作用”  人間関係における思い込みのひとつに、「家族は仲良くあるべき」というものがあります。 確かに家族の仲がいい状態でいると、社会生活を送るうえでなにかと都合がいいうえ、いろいろな助けを得られるので有利に働くことはたくさんあると思います。 でも、だからといって、家族は仲良くあるべきだと決めつける必要はまったくありません。「家族仲」は本来、誰に評価されるものでもなく、そもそも血縁関係の有無は仲の良さとは関係ありません。個々人がそれぞれの立ち位置で、いちばん心地よく過ごせるかたちを選べばいいのではないかとわたしは思います。 さらにいえば、家族という近い関係だからこそ、感情はもつれます。2016年に摘発された殺人事件(未遂を含む)のうち、半分以上の55%が親族間で起きているという警察庁の調査結果も、その傾向を裏づけています。 それを思うと、無理して「家族は仲良くあるべき」と自分を追い詰めるのではなく、「わたしは親のことが嫌いなんだ」「娘がとても苦手だ」と冷静に事実を受け止めたほうが、余裕が生まれるでしょう。 「家族だから嫌いになることもある」と、ときには考えてみることも必要でしょう。そう考えられると、本来、囚われる必要のない罪悪感などから、心が解放されると思います』、「2016年に摘発された殺人事件・・・のうち、半分以上の55%が親族間で起きている」、「親族間」の「殺人」がこんなに多いというのは初めて知った。
・『過度な期待がコロナ離婚やトラブルを生む  近しい人間関係においては、お互いに脳のなかで脳内物質オキシトシンの濃度が高まり、「仲間意識」が強くなっている状態にあると考えられます。 オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、相手に親近感を持たせたり、愛着を感じさせたりする働きを持っています。同じ空間にずっと一緒にいることで、オキシトシンの濃度はさらに高まります。 ただ、お互いが信頼し合い絆を育むことはいいことですが、同時にお互いに期待する面も大きくなります。 家族なら、育児や家事のサポート、収入面での協力、親の介護など、ひとりの力では大変なことがたくさんあるでしょう。そのため、必然的に自分以外の家族に期待してしまいます。そうして自分が与えた愛情にふさわしい(ときにそれ以上の)“見返り”を求めるようになるのです。 このとき、想像以上に見返りが少なかったり、期待外れだったりすると、反動で相手を責めたり束縛したり、攻撃したりするといった行動に出ることがあります。 コロナ禍では、夫婦が同じ場所で一緒にいる時間が増えたことで、相手の嫌な部分とまともに向き合うことになり、離婚やトラブルなどが増える現象も生じました。「自分だけ楽をしてずるい」「期待していたのに」といった気持ちになるのが、理由のひとつと考えられます。 こうした現象も、オキシトシンによって高まった期待が裏切られた反動として現れたと考えることができるかもしれません』、「家族なら、育児や家事のサポート、収入面での協力、親の介護など、ひとりの力では大変なことがたくさんあるでしょう。そのため、必然的に自分以外の家族に期待してしまいます・・・このとき、想像以上に見返りが少なかったり、期待外れだったりすると、反動で相手を責めたり束縛したり、攻撃したりするといった行動に出ることがあります」、これにも「オキシトシン」が影響している可能性がありそうだ。
・『“振り回されない”子どもとの上手な付き合い方  近しい関係という観点から見たとき、子どもの教育について悩んでいる人も多いと思います。それこそあまり勉強せず、嫌なことはまったくやりたがらない子どもだと、「手がかかっていつも振り回されているな……」と感じるかもしれません。 前提として、小学校や中学校で学ぶ勉強は、子どもにとって楽しいことではないかもしれません。しかし、この時期に養うのは「学ぶ力の土台」であり、その後に本人が楽しいことを見つけたときに、自分ひとりで学んでいけるようにするための基礎となるものです。 そのため、たとえ嫌いな勉強でも、取り組ませる意義は大きいとわたしは考えます。「苦手なことを好きになる力を身につけられたら、それは生涯あなたの宝物になるよ!」と伝えるなど、嫌なことにも取り組ませる工夫をしてほしいと思います。 そうしてある程度基礎的な学びを終えたあとは、今度は逆に、好きなことに没頭できる環境を整えてあげたいですね。 このとき、子どもが感じる「嫌なこと」が役に立ちます。嫌なことを、子どもがきちんと「これは嫌い」「やっぱりやりたくない」と安心していえる環境をつくってあげることで、子どもはより自分が好きなことに集中して取り組めるはずです。 そうして、進みたいと思う道へ、自分の力で向かっていけるようになるでしょう』、「子どもが感じる「嫌なこと」が役に立ちます。嫌なことを、子どもがきちんと「これは嫌い」「やっぱりやりたくない」と安心していえる環境をつくってあげること」、これはそんなに簡単なことではない。
・『かわいい子にはスマホを持たせよ  子どもの育て方についてのよくある悩みが、「スマホ問題」です。スマホを子どもに持たせるべきかどうか、様々な意見があります。 わたし自身は、スマホは社会の基本ツールであり、子どもでもデジタルデバイスに積極的に触れることは必要だと考えています。スマホを使うことで多様な情報やアイデア、先端技術に関する知識などを得ることができ、デジタル社会を生きるための力を養えます。 これからの時代を生きる子どもたちからむやみにスマホを取り上げて、果たして親は子どもたちの将来に責任を負えるのでしょうか? 確かにスマホには中毒性があり、注意を分散させてしまったり必要以上にハマってしまったりと、勉強の妨げにもなります。寝る前の使用で睡眠の質が低下することもわかっています。これはデジタル社会特有のリスクでしょう。 だからこそ、親が「上手な使い方」を身をもって教え、実際にやらせてみる必要があるのです。スマホを使うにも知性が必要です。親自身がその中毒性のとりこになり、使い方が下手であれば、それがそのまま子どもにも踏襲されてしまうでしょう。 ここでお伝えしたいのは、子どもたちが新しいものに触れられる機会を奪ってしまうことの是非を考えてみてほしいということです。スマホを悪の機器のようにみなす意見に振り回されずに、子どもがスマホとうまくつきあっていけるように、親が一緒になってしっかり教えていける環境をつくっていきましょう』、「確かにスマホには中毒性があり、注意を分散させてしまったり必要以上にハマってしまったりと、勉強の妨げにもなります・・・親が「上手な使い方」を身をもって教え、実際にやらせてみる必要がある」、なるほど。
・『大人こそ注意したい「スマホ脳」  わたしたちは、ふだんなにげなくスマホで知りたい情報を検索し、ものごとを幅広く理解しているように思いがちですが、実はまったく違います。 例えば、おもな検索エンジンの検索結果は、過去の自分の表示履歴や検索履歴によって最適化されて表示されます。つまりそれの意味するところは、気づかないうちに自分が好むような、似た情報ばかりに触れているということ。 すると、それらが正確な情報ならまだしも、間違った情報に振り回されたり、極端な考え方に影響を受けたりします。たとえ正しい情報だとしても、反対意見などが得られないため思考がどんどん偏っていき、狭い世界へと追い詰められていくのです。 このような、自分にとって都合のいい意見ばかりを求め、反対意見や客観的なデータを無視するようになる傾向のことを「確証バイアス」といいます。 本来、自分とは異なる多様な人々の価値観に触れられるインターネットという場が、スマホの使い方ひとつで、狭い考え方を助長する場へと変わってしまうのです』、「おもな検索エンジンの検索結果は、過去の自分の表示履歴や検索履歴によって最適化されて表示されます。つまりそれの意味するところは、気づかないうちに自分が好むような、似た情報ばかりに触れているということ」、「確証バイアス」によって、「スマホの使い方ひとつで、狭い考え方を助長する場へと変わってしまう」、恐ろしいことだ。
・『「いいね!」の数に意味はない  特定の人たちとゆるくつながれるSNSの世界はとくに注意が必要です。 多くの人がSNSを気軽に使っていますが、自分のSNS上で起きている「ふつう」の状態は、その集団だけの「ふつう」である場合がたくさんあるからです。 これはつまり、異なる集団のSNSでは、自分たちとはまったく違う情報や考え方が「ふつう」とされているということを意味します。こうして集団間でのコミュニケーションが難しくなっていき、やがて互いを攻撃し合ったり、炎上したりする現象が頻繁に起きてしまうわけです。 その意味では、SNS上の友だち(フォロワー)の数や「いいね!」の数が多くても、たいした意味がないことが理解できるでしょう。 それは単に、同質的な集団のなかで意見を評価し合っているだけであり、その思考や判断はゆがみがちで、ものごとの本質を見誤りやすくさせます。 これはあたりまえのことですが、SNS上の友だち数などで、あなたの人生の充実度は測れないのです』、「SNS上の友だち数などで、あなたの人生の充実度は測れない」、なんとなく一安心だ。

第三に、10月7日付け東洋経済Plus「財務基盤悪化が顕著、格付け会社が示した懸念 楽天、銀行上場の巨額調達で挑む携帯「背水の陣」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28390?utm_campaign=EDtkprem_2110&utm_content=460490&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
・『すべては楽天モバイルへの「巨額投資」のために――。楽天グループが銀行の上場を目指す背景には、財務状況悪化で引き下げとなったS&Pグローバル・レーティングの「格付け」改善への狙いもある。 まさに”背水の陣”といえる状況だ。楽天グループは9月30日、子会社である楽天銀行の株式上場の準備に入ったと発表した。実現すれば楽天グループとして初めての子会社上場となる。上場後も連結子会社とする予定だ。 複数の証券アナリストは、楽天銀行の純資産が約1900億円であることに鑑み、上場時の時価総額は数千億円規模になるとみている。この巨額資金の行き先は明白だ。通信子会社の楽天モバイルである。 楽天の三木谷浩史社長は今年2月の決算説明会で、当初は約6000億円と見込んでいた通信事業における4G基地局の設備投資額が3~4割増え、1兆円に迫る見通しを示した。 さらにシティグループ証券の鶴尾充伸アナリストは、4Gの「プラチナバンド」(つながりやすい700~900メガヘルツの周波数帯)の再配分や5G周波数帯の追加割り当てが実現すれば、約5000億円の追加投資が必要になる可能性が高いと試算する』、「4G基地局の設備投資額が・・・1兆円に迫る」、「プラチナバンド」関連で「約5000億円の追加投資」、合計すれば、相当巨額な投資だ。
・『格付け会社が財務悪化を懸念  今年6月末時点の携帯電話事業の設備投資実績は6000億円強。つまり今後の投資には1兆円近くの資金が必要になる。だが楽天の有利子負債はこの数年で急増しており、通信参入発表前の2016年末に14.8%だった自己資本比率が、20年末には4.9%まで低下している。 楽天モバイルは2020年4月のサービス開始後に1年無料キャンペーンを実施したうえ、基地局の償却費やKDDIへのローミング費用が負担となり、同年に前年比約3倍となる2269億円の赤字を計上。今年も1~6月ですでに1972億円の赤字となっている。 こうした財務状況の悪化を懸念したのが、アメリカの格付け会社S&Pグローバル・レーティングだ。同社は今年7月、楽天の長期発行体格付けを投資適格の「トリプルBマイナス」から、投機的とされる「ダブルBプラス」に1段階引き下げたと発表。今後の見通しについても、引き下げの可能性がある「ネガティブ」とした。 S&Pは、通信事業での巨額赤字が続く中、「本業からのキャッシュフローによる債務返済能力が非常に弱い」と判断。同社の試算によれば、キャッシュフローと投資のバランスを示すフリーオペレーティング・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資額を差し引いた額)は、金融事業を除くと2021年12月期は約6200億円の赤字、2022年12月期は約4200億円の赤字となる見通しだ。 楽天は今年3月に日本郵政などを引受先とする第三者割当増資などによる約2400億円の資金調達を発表。さらに4月には総額約3200億円の永久劣後債を発行した。S&Pは楽天の格下げの前提として、今年はこれらの資金調達で財務負荷を一定程度緩和できるものの、来年は有利子負債による調達が主体となり、財務基盤が大きく悪化するとした。 これを受け楽天側は決算資料で「有利子負債に依存しない資金調達を最優先」する姿勢を強調。そこから金融事業、中でも楽天銀行の上場につながったというわけだ』、「楽天の長期発行体格付け」が「ダブルBプラス」になったことで、「楽天銀行」の上場に踏み切ったようだ。
・『「100%子会社主義を緩めていく」  三木谷社長は2月の決算説明会で金融事業の上場をにおわせる発言をしていた。社名を「楽天グループ」に変更した理由の説明で、「楽天銀行やクレジットカード、証券は他社に比べると成長スピードも収益性も圧倒的だが、必ずしも株価に正確に反映されているとはいえない。今までは親会社が集約して資金調達をしてきたが、今後はさまざまな成長に向けて100%子会社主義を緩めていく」と話した。 上場させる子会社として楽天銀行を選んだ理由について、シティグループ証券の鶴尾氏は、「(最大の金融事業である)クレカ事業は通信など他事業と密接に連携しており、公開企業になることは戦略上好ましくない。その点、銀行は金融庁の厳格な規制下でもともと高い透明性が求められている。上場しても競争力はそがれず、親子上場による利益相反の懸念も小さい」と分析する。 楽天銀行は2001年に開業したイーバンク銀行が源流で、2009年に楽天が連結子会社化。グループのEC(ネット通販)モールである楽天市場での決済や楽天証券での金融取引などの需要を取り込み、直近の口座数はネット銀行として最多の1123万に達した。 楽天は上場先を東京証券取引所を想定。事業規模に鑑みれば、中でも最上位の市場区分「プライム」になるとみられる。楽天は楽天銀行の連結を維持するが、プライム市場は外部株主の保有比率を35%以上と定めているため、一定規模の売り出しが発生する。そうなれば、銀行上場による楽天の調達額は少なくとも1000億円を超えるとみられる公算が大きい。 今回の発表を受けS&Pは、「銀行子会社の上場を含む資金調達を実現し、フリーオペレーティング・キャッシュフローの赤字埋め合わせに充当できれば、信用力に一定のプラスになる」とコメントした』、「今回の発表を受けS&P」の「コメント」は「楽天」には救いだろう。
・『人口カバー率の目標達成は遅延  通信事業について三木谷社長は「2023年までに単月黒字化」を目指すとしている。6月末時点で累計契約申込数は442万で、「おおむね想定通り」(三木谷氏)という。直近では2台目需要の新規契約だけでなく、他社からのMNP(モバイルナンバーポータビリティ)による乗り換えも増えてきた。 ただ、当初「今年夏」をメドとしていた通信ネットワークの人口カバー率96%の達成は、半導体不足の影響による基地局建設の遅れを受け、「年内」に後ろ倒しとなった。人口カバー率を上げれば、四半期で数百億円規模とみられるKDDIへのローミング費用の支払いが減る。「来年3月頃から大幅に削減される計画だ」(三木谷氏)。 一方で、「(通信事業の)黒字化時期を前倒しすることができる(要因になる)かもしれない」と三木谷氏が期待するのが、仮想化通信ネットワークの海外輸出だ。今年8月にはドイツのMVNO(仮想携帯通信事業者)大手の1&1から受注を獲得。一部報道によれば今後10年間で3000億円規模の収入を得られるという。 実は楽天は、銀行の上場準備開始と同時に、この通信インフラの外販事業を「楽天シンフォニー」として法人化することを発表している。発表の中では、グローバル展開を加速させるため、「戦略的パートナーとのビジネス上のパートナーシップに加え、資本等の受け入れの検討も進める」とし、さらなる資金調達手段を確保したことを示した。 突然にもみえた楽天銀行の上場準備発表は、莫大な投資と財務基盤の悪化を考えれば必然だったといえる。手を尽くして資金を集め、「絶対に失敗できない事業」になった楽天モバイル。その前途には希望が見えつつも、まだ越えるべき壁が待っていそうだ』、「仮想化通信ネットワークの海外輸出」で「今後10年間で3000億円規模の収入を得られる」、そんなに優位性があるのか、この記事だけでは判断できない。もう少し様子を見る必要がありそうだ。
タグ:携帯・スマホ その7)(「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害 集中力低下 うつ 肥満などデメリットは深刻、「かわいい子にはスマホを持たせよ」脳科学者・中野信子さんがそんな極論を主張するワケ ずっとスマホと無縁ではいられない、財務基盤悪化が顕著 格付け会社が示した懸念 楽天 銀行上場の巨額調達で挑む携帯「背水の陣」) 東洋経済オンライン 高橋 暁子 「「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害 集中力低下、うつ、肥満などデメリットは深刻」 リスクその1:集中力や能力の低下 「少なくとも小学校低・中学年において、長時間のスマホ使用は学力に悪影響を及ぼす」、「スマホがあることで、われわれは認知能力に統計的に有意なマイナスの影響を受ける・・・子どもの成績低下などにつながるだけでなく、大人も仕事の集中力や能力低下につながる可能性が高い」、「スマホがある」だけで影響を受けるとは人間は誘惑に弱いようだ。 リスクその2:視力低下 「米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルール」、なかなかいいルールだ。 リスクその3:睡眠障害やうつなど心身の不調 「スマホの長時間利用が、睡眠障害や肥満、生活習慣病、うつなどの心身の不調につながる可能性がある」、しかし、「SNSやゲームアプリには、通知、人間関係、時間での体力回復、毎日のログインボーナスなど、頻繁に利用したくなるような、利用を習慣化するような仕組みが多数ある」ので厄介だ。 長時間利用を抑える「3つの対策法」 「子どもの場合、スマホ以外に夢中になれること、やることがあるとスマホから離れられるはずだ。習い事や部活動、塾など、場を変えたり夢中になれることがあるといい」、その通りだろう。 PRESIDENT ONLINE 中野 信子 「「かわいい子にはスマホを持たせよ」脳科学者・中野信子さんがそんな極論を主張するワケ ずっとスマホと無縁ではいられない」 第一の記事とは若干異なる観点で、興味深そうだ。 「2016年に摘発された殺人事件・・・のうち、半分以上の55%が親族間で起きている」、「親族間」の「殺人」がこんなに多いというのは初めて知った。 「家族なら、育児や家事のサポート、収入面での協力、親の介護など、ひとりの力では大変なことがたくさんあるでしょう。そのため、必然的に自分以外の家族に期待してしまいます・・・このとき、想像以上に見返りが少なかったり、期待外れだったりすると、反動で相手を責めたり束縛したり、攻撃したりするといった行動に出ることがあります」、これにも「オキシトシン」が影響している可能性がありそうだ。 「子どもが感じる「嫌なこと」が役に立ちます。嫌なことを、子どもがきちんと「これは嫌い」「やっぱりやりたくない」と安心していえる環境をつくってあげること」、これはそんなに簡単なことではない。 「確かにスマホには中毒性があり、注意を分散させてしまったり必要以上にハマってしまったりと、勉強の妨げにもなります・・・親が「上手な使い方」を身をもって教え、実際にやらせてみる必要がある」、なるほど。 「おもな検索エンジンの検索結果は、過去の自分の表示履歴や検索履歴によって最適化されて表示されます。つまりそれの意味するところは、気づかないうちに自分が好むような、似た情報ばかりに触れているということ」、「確証バイアス」によって、「スマホの使い方ひとつで、狭い考え方を助長する場へと変わってしまう」、恐ろしいことだ。 「SNS上の友だち数などで、あなたの人生の充実度は測れない」、なんとなく一安心だ。 東洋経済Plus 「財務基盤悪化が顕著、格付け会社が示した懸念 楽天、銀行上場の巨額調達で挑む携帯「背水の陣」」 「4G基地局の設備投資額が・・・1兆円に迫る」、「プラチナバンド」関連で「約5000億円の追加投資」、合計すれば、相当巨額な投資だ。 「楽天の長期発行体格付け」が「ダブルBプラス」になったことで、「楽天銀行」の上場に踏み切ったようだ。 「今回の発表を受けS&P」の「コメント」は「楽天」には救いだろう。 「仮想化通信ネットワークの海外輸出」で「今後10年間で3000億円規模の収入を得られる」、そんなに優位性があるのか、この記事だけでは判断できない。もう少し様子を見る必要がありそうだ。
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高齢化社会(その16)(茂木健一郎氏「年齢で決めつける人の方が“老害”」、高齢者の特別扱いは厳禁 65歳までは全員働くべきこれだけの理由、高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」 歩行速度低下や食べこぼしは危険視号) [社会]

高齢化社会については、昨年7月7日に取上げた。今日は、(その16)(茂木健一郎氏「年齢で決めつける人の方が“老害”」、高齢者の特別扱いは厳禁 65歳までは全員働くべきこれだけの理由、高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」 歩行速度低下や食べこぼしは危険視号)である。

先ずは、本年1月20日付け日刊スポーツ「茂木健一郎氏「年齢で決めつける人の方が“老害”」」を紹介しよう。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202101200000288.html
・『自民党が内規で定める衆院比例代表の「73歳定年制」の是非をめぐり、脳科学者の茂木健一郎氏(58)や作家の乙武洋匡氏(44)らが私見を述べた。 自民党の青年部が二階俊博幹事長ら党幹部に73歳定年制のルール厳守を求めたことが報じられ、ツイッター上でも賛否を呼んでいる。乙武氏は「ベテラン議員が長く居座ると、慣習やしきたりが温存され、新しい手法やアイディアが取り入れられにくくなる」と指摘し、「いまの政治や社会に満足している人はともかく、不満を持っている人は『定年制堅持』に賛同したほうがいい」との考えを示した。 また、元NHK職員で「お笑いジャーナリスト」として活動する芸人たかまつななは、73歳定年制に「私は賛成です」とし、「若い人の意見が通りやすくなりますように。長くやると利権やしがらみもあり、柔軟になりにくい。若手に素敵な議員さんいるのでそういう人が順番待ちしないで早く権限ある役職ついてほしい」とした。 一方、茂木氏は「年齢で人を判断するのはエイジズムだし、若手議員が要望しているというのは利害関係も明白で、このニュースはどうなんだろうと思います。個人差が多すぎて、年齢だけであれこれ言うのは無理」とツイート。「老害と安易に言う人の方がよっぽど『老害』 人を年齢で決めつけるエイジズムにとらわれている人の方が、固定観念に縛られているという意味で『老害』。年齢じゃなくて個人を見ないと」とした。 73歳定年制は、小泉純一郎氏が首相時代の2003年衆院選の候補者選定の際に導入。重鎮の中曽根康弘、宮沢喜一両元首相にも適用し、両者が「議員引退」に追い込まれた経緯がある。昨年6月、自民党のベテラン議員から撤廃するよう求める声が出ていた』、「自民党」の「衆院比例代表の「73歳定年制」」「党幹部に73歳定年制」、の2つが混在しているが、前者はあくまでも「比例代表」の話で、実力がある政治家であれば、選挙区で立候補すればいいので、特に問題はないと思う。後者については、あくまでも「自民党」内の問題だが、「重鎮」にお引き取り頂く仕組みとしては、有効なのだろう。こちらも特に問題ないと思う。

次に、3月12日付け日経ビジネスオンライン「高齢者の特別扱いは厳禁、65歳までは全員働くべきこれだけの理由」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00223/030900012/
・『今年4月から、70歳までの就労機会の確保を企業の努力義務とする改正高齢者雇用安定法が施行される。労働経済学の大家で、今回の法改正にも関わった慶応義塾学事顧問の清家篤氏は、深刻な少子高齢化労働力不足を踏まえて、「高齢者の就労促進なしに、日本の経済社会の将来はない」と改めて強調した上で、「そもそも、『高齢者』と特別扱いすること自体がおかしい時代になってきている」と話す。女性の就労が当たり前になったように高齢者の就労は当たり前になり、テクノロジーもそれを後押しすると説く清家氏に、高齢者が活躍できる社会について聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:70歳までの就労機会の確保を企業の努力義務とする改正高齢者雇用安定法が4月から施行されます。ご自身も改正作業に関わられましたが、改正の理由や背景を教えてください。 清家篤・慶応義塾学事顧問(以下、清家氏):日本が世界に類を見ない高齢化を経験していて、これからさらに加速することが確実だからです。2025年には団塊の世代が全て後期高齢者になる。2040年ごろには団塊ジュニアが65歳以上になる。高齢人口比率は、最終的には2060年に40%ぐらいまで上昇しますが、高齢人口の絶対値で見ると2042年ごろに最も多くなり、ピークに達します。 私は労働経済学者なので、少子高齢化をめぐっては、労働力に最も注目しています。労働力人口は現在、6700万人を少し超えるぐらいですが、厚生労働省の雇用政策研究会の推計によれば、何も手を打たないと、2040年には5500万人を割り込むと予測されているわけです。つまり、これから20年ぐらいの間に、労働力人口は1200万人以上も減少していくという予測です。 (関連記事:75歳まで働く社会の現実味、「年齢不問社会」をどうつくる? (清家氏の略歴はリンク先参照) Q:働き手の減少が社会経済に与える影響は甚大ですね。 清家氏:労働力が減るということは、需要と供給の両面で、非常に大きな成長制約になります。モノやサービスを生産する労働者の数が減るということは、生産性がぐんと上がらない限り、あるいは労働時間をぐんと伸ばさない限り、生産量の減少につながります。また、労働者の数が減れば、雇用者所得の総計も減る。従って、消費の減退につながります。 要するに、需給両面で経済成長が鈍化、あるいはマイナスに転じて、一人一人の生活水準も低下しかねません。 さらに、今のままですと、社会保障制度の持続可能性も低下するおそれがあります。社会保障制度は働く人が支えている。つまり働く人とその雇い主が払う社会保険料で基本的には維持されているので、働く人が減ってしまうということは、それだけ支え手が減ってしまう。結果として将来世代にものすごく重い負担がかかることになります』、「労働力人口は現在、6700万人を少し超えるぐらいですが・・・何も手を打たないと、2040年には5500万人を割り込む・・・1200万人以上も減少していくという予測」、「結果として将来世代にものすごく重い負担がかかることになります」、このままでいったら大変だ。
・『外国人頼みでは乗り切れない  Q:高齢になっても働き続けることは不可避だと。 清家氏:高齢者の就労を促進することは、日本の経済社会を持続させるために不可欠です。今は引退している年齢層の高齢者ももっと働き続ける必要があります。 男性の場合、60代前半の労働力率(人口に占める就労意思のある人の割合)は現在でも80%を超えていて、諸外国に比べて高いですが、これを90%程度にまで引き上げる。60代後半についても、現状の50%台半ばを70%ぐらいまでに引き上げる。 こうしたことができれば、労働力人口(15歳以上で就労意思のある人の数)の減少は一定のところで食い止められ、2040年に6200万人ぐらいの規模を維持することも可能です。これであればある程度生産性を高めることで経済成長は可能で、社会保障制度の維持も楽になります。 さらに言えば、現時点で既に高齢者の労働力なしに日本経済はたち行きません。既に、65歳以上の労働力人口は900万人強ですが、これは1000万人強の20代の労働力人口に近い数字です。経済も社会保障も、高齢者に依存せざるを得ない。これが実態で、今後さらに顕著になっていくわけです。 Q:女性の就労促進や移民の受け入れといった手段も有効なのではないですか。 清家氏:女性の就労促進は高齢者と同じように非常に大切です。30代の女性の労働力率は現在70%台半ばですが、これを90%に近づけていく。そのためには子育て支援を強力に進めていく必要があります。 外国人労働者については、日本の人口構造の変化を考えれば、もっと来てもらう必要はあると思いますが、これはそんなに簡単ではない。日本に限らず、中国や韓国など東アジア全体で少子高齢化が進展しています。日本と韓国は既に外国人労働力の確保で競争関係にある。外国人に門戸を開けば、簡単に来てくれるというふうに思うのは、甘い考えと言わざるを得ません。 もちろん条件をしっかりと整えて、海外から人材を受け入れる政策を進めなければいけないとは思いますが、外国人頼みで人口構造の変化をしのぐことはできません。まずは、国内にいる女性や高齢者の就労意欲を喚起する政策を強力に進めていく。そうすれば、自ずと外国人労働者にとっても、魅力ある国になっていくでしょう』、「男性の場合、60代前半の労働力率・・・は現在でも80%を超えていて・・・これを90%程度にまで引き上げる。60代後半についても、現状の50%台半ばを70%ぐらいまでに引き上げる。 こうしたことができれば、労働力人口・・・の減少は一定のところで食い止められ、2040年に6200万人ぐらいの規模を維持することも可能」、「外国人頼みで人口構造の変化をしのぐことはできません。まずは、国内にいる女性や高齢者の就労意欲を喚起する政策を強力に進めていく。そうすれば、自ずと外国人労働者にとっても、魅力ある国になっていくでしょう」、妥当な考え方だ。
・『健康、定年退職、年金がポイント  Q:高齢者の就労意欲を高める上でのポイントはなんでしょうか。 清家氏:私の長年の研究対象は高齢者の労働供給でした。高齢者の労働供給関数を計量経済学的に推計し、その就労を規定する要因は何かということを分析してきました。その結果、はっきり分かったのは3つの大きな要因です。それは、「健康」「定年退職制度」「年金制度」です。 Q:順番に詳しく伺えますか。 清家氏:高齢になっても働き続ける上で最も大きな要因は健康です。健康寿命を延ばす政策をもっと強力に進めていく必要があります。加齢に伴う支障が顕著になってくるのは、やはり健康寿命を超えた頃。個人差はありますが、平均では70代半ば以降からです。加齢に伴う支障が表れる年齢をできるだけ先に延ばすためにも、生活習慣病の予防のような地道な取り組みを積み上げていくことはきわめて大切です。 定年退職と、それに伴う賃金低下も大きな要因です。定年そのものも退職のきっかけになりますし、定年による賃金の大幅な減少も大きな要因になる。今の制度では、60歳定年の後に再雇用になると、賃金が3~4割も減少しますが、これは当然ながら就労意欲を大きく低下させます。定年後再雇用にスムーズに接続できるよう、もう少し早い段階から年功賃金のカーブを緩やかにする必要があります。 Q:年功賃金の見直しは徐々に進んでいますね。 清家氏:厚労省の賃金構造基本調査を見ると、1980年代ぐらいからの定年延長に合わせて、賃金カーブはだんだんフラットになってきています。こうした流れをさらに進めていけばいいのだろうと思います。 参考になるのは中小企業です。中小企業の中には、定年がない、あるいは定年を65歳以上に定めている会社も実はたくさんあります。もちろんその最大の理由は、大企業のように若い人を簡単には採用できないからです。ベテランに活躍してもらわないと会社が回っていかないので、定年を延長したり廃止したりしている。 そして年功賃金の傾きも大企業よりずっとフラットです。これも若い人を集めるためですが、初任給から30歳ぐらいまでは大企業とほとんど差がありません。大企業の場合はその後も年功的に賃金は上昇していきますが、中小企業の場合は40代前半ぐらいでかなりフラット化していくわけです。 このように、中小企業は中高年の人に働き続けてもらってもコストが高くならないような賃金構造になっていると同時に、プレーイングマネジャーが当たり前です。少ない人数で仕事を回しているので、管理職の椅子にただ座って仕事をしているというわけにはいかない。比較的フラットな賃金制度の下で、一人一人の持っている能力を活用し続ける。こういう仕組みの下で、中小企業では60代の雇用も比較的スムーズに進んでいるわけで、大企業も大いに参考にすべきです』、「比較的フラットな賃金制度の下で、一人一人の持っている能力を活用し続ける。こういう仕組みの下で、中小企業では60代の雇用も比較的スムーズに進んでいるわけで、大企業も大いに参考にすべきです」、その通りだ。
・『繰り下げ受給を台無しに  Q:高齢者雇用を規定する3つめのファクターは年金でしたね。 清家氏:年金受給資格を得れば、年金給付で生活できるので、引退する可能性は高まります。年金というのは引退を可能にするための社会保障制度ですから、それは当然です。なんら問題とすべきことではありません。 問題は在職老齢年金制度です。これは働き続けると年金額が減額されてしまう仕組みで、年金制度が働き続けることにいわばペナルティーを課しているようなものです。さらにこの制度は、せっかくの繰り下げ受給の効果も台無しにしているのです。 繰り下げ受給とは、65歳で受給資格を得ても年金を受け取るのを我慢して先に延ばすと、その期間に応じて、月々の年金額が増えるというものです。これは働き続けることへの強いインセンティブになるはずですが、在職老齢年金で減らされた分は加算の対象にはならないのです。せっかくの就労を後押しする仕組みを、在職老齢年金が減殺してしまっているのです。 (関連記事:年金が減るから働きたくない? 制度が定年後の就労意欲そぐ) 税制にも課題はあります。年金は勤労収入ではないので、雑所得扱いになり、しかも公的年金等控除という控除もあります。ケース・バイ・ケースですが、多くの場合、同じ収入であれば、働いて収入を得るより年金で収入を得たほうが有利になる。民間企業に高齢者雇用を進めてもらうためにも、国はまず高齢者の就労を阻害している公的な制度を見直すべきでしょう。 Q:高齢者にどんな仕事をしてもらうのか。頭を悩ませる企業も多いようです。 清家氏:高齢者にしてもらう仕事、という考え方自体すでに少し変ですね。今までやってもらっていた仕事をやってもらえば何も問題はない。高齢者だから、何か特別に仕事を用意するという発想がおかしくはありませんか。例えば企業が今時、「女性にやってもらう仕事がなかなかなくて困っているんですよね」と言ったら、変でしょう。 女性にやってもらう仕事がなくて困るというのは、かつて女性は一般職の事務しかやってもらわない仕組みにしていた時代の話です。高齢者にやってもらう仕事がなくて困るという企業があるとしたら、それは高齢者自身の問題ではありません。年を取ると、管理職になるとか、仕事を限定しているとか、そういった仕組みの問題だと思います』、「民間企業に高齢者雇用を進めてもらうためにも、国はまず高齢者の就労を阻害している公的な制度を見直すべき」、その通りだ。
・『テクノロジーは高齢者に優しくなる  Q:高齢人材ではテクノロジーの進化に対応できないという懸念もあるようですが。 清家氏:テクノロジーの進化はむしろ、高齢者の就労を後押しするのではないでしょうか。例えば、脳外科医。かつては、手の震えや視力の低下のために50代半ばくらいで引退を余儀なくされていたという話ですが、内視鏡の精度の向上や手術支援ロボットの誕生などで、60代でも現役でいられるようになった。パワードスーツなどもそうですね。体力が衰えても、力仕事や介護の現場で楽々と働くことも可能になっています。(関連記事:「老い」から解放? パワードスーツで筋力補完、アバターで若返り) 新しいテクノロジーを使うことで、肉体的な限界で高齢者には無理だろうとされていた仕事でさえできるようになる。 私は、現在進行している第4次産業革命は高齢者雇用とウィンウィンの関係になると思っています。これから高齢者はどんどん増えて、高齢者の就労も進みます。そんな時代に、高齢者が使えないようなテクノロジーは淘汰されていくでしょう。 若い人を中心にテクノロジーも進んでいた時代から高齢者の多くなる時代への端境期には、高齢者が技術変化に遅れて不利になることもあるでしょう。しかし、高齢者が多数になる時代に、利用者の多くを占める高齢者にフレンドリーでない技術が存在し続けるとは、市場経済的には考えづらい。市場が解決してくれるでしょう。 Q:働く高齢者の間では、短時間勤務の希望も多いようです。高齢者雇用が進むと、労働時間の在り方も柔軟になるのではないでしょうか。 清家氏:とても大切なポイントです。高齢者や女性にもっと働いてもらわなければなりませんが、そのためには労働時間の柔軟性を高める必要があります。世界的にパンデミックに対処するため、時差出勤や在宅勤務は一気に増えました。この経験をぜひ生かして、中長期的な視点で高齢者や女性の能力を十分に引き出すための環境整備を進めるべきです』、「新しいテクノロジーを使うことで、肉体的な限界で高齢者には無理だろうとされていた仕事でさえできるようになる」、「これから高齢者はどんどん増えて、高齢者の就労も進みます。そんな時代に、高齢者が使えないようなテクノロジーは淘汰されていくでしょう」、そんなに高齢者に働き易くなるのであれば、改めて就職してもよさそうだ。

第三に、7月2日付けダイヤモンド・オンライン「高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」、歩行速度低下や食べこぼしは危険視号」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/275268
・『高齢者が健康な状態から要介護状態にシフトしていく“中間段階”のことを指す「フレイル(虚弱)」。通常、運動不足や社会活動の減少によってリスクが高まるとされるが、長引くコロナ禍の自粛生活によって、高齢者の健康に与える二次被害として注目を集めている。桜美林大学老年学総合研究所で所長を務める、医学者の鈴木隆雄氏にフレイルの特徴と向き合い方について聞いた』、身につまされる話で、興味深そうだ。
・『歩行速度の低下や食べこぼしは危険なサイン  フレイルの語源は、日本語では「虚弱」や「老衰」と訳される「Frailty(フレイルティー)」。老化によって運動機能や認知機能にトラブルを抱えやすくなった状態であり、放置しておくと認知症などの発症につながり、自立した生活が困難になる。 65歳から74歳までの前期高齢者にはあまり見られないものの、75歳を過ぎると身体活動が次第に減っていくことから、フレイルになるリスクが上昇するという。健常な状態と介護を必要とする状態の間に位置する“移行段階”であり、「適切な対応を取ることによって健康な状態に回復する余地がある」のが特徴だ。 フレイルの症状は身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素の3つの側面に表れ、それぞれが強く連関しており、予防のためにはいずれの要素にも配慮する必要がある。鈴木氏にそれぞれの特徴を解説してもらった。 「フレイルの身体的な表れとしては、第一に筋肉量が減少することによって歩行スピードが遅くなり、何かにつまずいて転倒するケースが増えることが挙げられます。他にも、握力が低下することによってペットボトルのふたを開けることができなくなったり、口周りの筋肉が衰えることにより、食事の食べこぼしや蒸せ(むせ)をする機会が増え、滑舌の悪化なども目立つようになる。人によってこれらの症状の一部のみが強く出る場合と、全ての症状が表れる場合があります。いずれにせよ、これらの異変が見られた場合はフレイルの可能性が高く、要介護状態に移行する前に適切な対応を取る必要があるでしょう」 では、上記のような兆候が表れた場合、どのような措置を講じればいいのだろうか。 「脚力が衰えている場合は、週に数回、ゆっくりで構わないので近所を30分間ほど散歩することで、失われた筋力を取り戻すことができます。その際は、自分の脚力が衰えているということを自覚して、無理のない範囲で運動を行うことが大切です。上肢の筋力や握力が衰えている場合は、ダンベル運動を1日に1回行うといいでしょう。鉄アレイの代わりに、手近にある椅子などを使っても構いません。口周りの筋肉に衰弱が見られる人には、発声しながら口を動かす『パタカラ体操』がお勧めです。『パ』『タ』『カ』『ラ』をそれぞれ5文字3回ずつ発音する運動を日常的に行うことで、口腔の筋力を回復させることができます。これらは身体的フレイルの改善策であると同時に予防としても有効です」』、「75歳を過ぎると身体活動が次第に減っていくことから、フレイルになるリスクが上昇するという」、数年先にはやってくるようだ。「これらの異変が見られた場合はフレイルの可能性が高く、要介護状態に移行する前に適切な対応を取る必要がある」、早目に気付いて「適切な対応」を取りたいものだ。
・『社会的な孤立がフレイルを招くケースも  老いに伴う衰弱が身体の異変として表れる場合、高齢者当人も自覚しやすく、周囲の人間が気付く機会も多いため、大事に至る前に対策を講じるのは比較的容易だ。しかし、精神・心理的な面に表れる場合は勝手が異なる。 「精神・心理的なフレイルの特徴として最も顕著なのは、うつ症状です。うつ状態になると喜びの喪失、自責感といった症状に加えて、倦怠感、体重減少といった身体的な異変を伴うこともあります。また、認知機能の低下も特徴です。この場合、今まで問題なくこなせていた簡単な暗算ができなくなったり、買い物に行っても同じものばかり買ってしまうなど、適切な行動プランが立てられなくなります。厄介なのは本人が異変に気付きにくいこと。身体的には健康であっても、精神・心理的なフレイルだけが顕在化する人は多く、改善可能な段階で手を打つことができないまま、認知症の発症など回復余地のない状態に移行してしまうケースも少なくありません」 さらに、身体的なフレイルと精神・心理的なフレイルと並び、「社会的なフレイルも憂慮すべきだ」と鈴木氏は警鐘を鳴らす。 「社会的なフレイルの特徴は、外出頻度や他者との交流の著しい減少、引きこもりといった点が挙げられます。家族と一緒に暮らしている高齢者でも、孤食が多かったり、コミュニケーションの頻度が極端に少ない場合には注意が必要です」 身体的なフレイルは、日常生活に適度な運動を導入するといった自助努力によって予防・改善できる。これに対し、精神・心理的フレイルと社会的フレイルは他者とのコミュニケーション不足に起因する部分が大きく、解決のためには自助だけでは不十分であり、共助、互助といった観点に基づいたアプローチが求められるという。 「高齢者に対し、積極的に周囲とコミュニケーションを取るべきだと口で言うのは簡単ですが、希薄になった人間関係を修復するのは、年を取れば取るほど難しい。そこで大事になってくるのは、各自治体が高齢者の生活状況をつぶさに把握し、孤立させないように包括的なケアをしていくことです。社会的なつながりは個人の努力で容易に作れるものではありませんから、公的な支援が必要なのです」』、「社会的なつながりは個人の努力で容易に作れるものではありませんから、公的な支援が必要なのです」、なるほど。
・『フレイルを予防しながら衰弱と上手に付き合う  身体的要素、精神・心理的要素、社会的要素という3つの領域にわたって表れるフレイルだが、「社会とのつながりを保つことが最も有効な対策だ」と鈴木氏は語る。 「社会とのつながりというと抽象的なので、他者とのつながりと言い換えてもいいでしょう。常日頃からコミュニケーションを取り合う友人や知人がいれば孤独に悩む機会が減り、引きこもり防止にもなります。また、日常的に人と話したり、メールのやり取りをすることは認知機能を正常に保つことにつながり、誰かに会いに出掛けるといったアクションが生じることで、体を動かす機会も増える。フレイルのリスクを下げるためには、他者との関わりを絶やさないことが大事なのです」 対面での交流を図ることが難しいコロナ禍だからこそ、高齢者はオンラインツールを活用して社会とのつながりを保ち、適度な運動を続けることによって、心と体の働きを衰弱させないために配慮する必要がある。一方で、フレイルが高齢者にとって避けては通れない、普遍的な問題であることも忘れてはならない。 「フレイルの予防とは発症リスクの根絶ではなく、あくまで先送りが主眼。つまり年を取るにつれ、いずれは誰もがフレイルと向き合うことになるのです。とはいえ、決して予防を軽視してはいけません。例えば、75歳の時点でしっかり対策をしておけば、80歳や85歳になるまでフレイルと無縁の生活を送ることも十分可能になります。大切なのは、老いに伴う衰弱から目を逸らすのではなく、うまく付き合っていくことなのです」 コロナ禍でクローズアップされるフレイル。一過性の問題では決してなく、今後日本が超高齢化を迎える上で、高齢者のみならずその周囲の人間も含めた国民全員が、根気強く向き合っていくべき課題なのかもしれない』、「75歳の時点でしっかり対策をしておけば、80歳や85歳になるまでフレイルと無縁の生活を送ることも十分可能になります。大切なのは、老いに伴う衰弱から目を逸らすのではなく、うまく付き合っていくことなのです」、私としても「うまく付き合って」いきたいものだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 「労働力人口は現在、6700万人を少し超えるぐらいですが・・・何も手を打たないと、2040年には5500万人を割り込む・・・1200万人以上も減少していくという予測」、「結果として将来世代にものすごく重い負担がかかることになります」、このままでいったら大変だ。 「男性の場合、60代前半の労働力率・・・は現在でも80%を超えていて・・・これを90%程度にまで引き上げる。60代後半についても、現状の50%台半ばを70%ぐらいまでに引き上げる。 こうしたことができれば、労働力人口・・・の減少は一定のところで食い止められ、2040年に6200万人ぐらいの規模を維持することも可能」、「外国人頼みで人口構造の変化をしのぐことはできません。まずは、国内にいる女性や高齢者の就労意欲を喚起する政策を強力に進めていく。そうすれば、自ずと外国人労働者にとっても、魅力ある国になっていく 「高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」、歩行速度低下や食べこぼしは危険視号」 「新しいテクノロジーを使うことで、肉体的な限界で高齢者には無理だろうとされていた仕事でさえできるようになる」、「これから高齢者はどんどん増えて、高齢者の就労も進みます。そんな時代に、高齢者が使えないようなテクノロジーは淘汰されていくでしょう」、そんなに高齢者に働き易くなるのであれば、改めて就職してもよさそうだ。 「民間企業に高齢者雇用を進めてもらうためにも、国はまず高齢者の就労を阻害している公的な制度を見直すべき」、その通りだ。 「自民党」の「衆院比例代表の「73歳定年制」」「党幹部に73歳定年制」、の2つが混在しているが、前者はあくまでも「比例代表」の話で、実力がある政治家であれば、選挙区で立候補すればいいので、特に問題はないと思う。後者については、あくまでも「自民党」内の問題だが、「重鎮」にお引き取り頂く仕組みとしては、有効なのだろう。こちらも特に問題ないと思う。 「比較的フラットな賃金制度の下で、一人一人の持っている能力を活用し続ける。こういう仕組みの下で、中小企業では60代の雇用も比較的スムーズに進んでいるわけで、大企業も大いに参考にすべきです」、その通りだ。 日経ビジネスオンライン 「高齢者の特別扱いは厳禁、65歳までは全員働くべきこれだけの理由」 高齢化社会 (その16)(茂木健一郎氏「年齢で決めつける人の方が“老害”」、高齢者の特別扱いは厳禁 65歳までは全員働くべきこれだけの理由、高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」 歩行速度低下や食べこぼしは危険視号) 日刊スポーツ 「茂木健一郎氏「年齢で決めつける人の方が“老害”」」 身につまされる話で、興味深そうだ。 「75歳を過ぎると身体活動が次第に減っていくことから、フレイルになるリスクが上昇するという」、数年先にはやってくるようだ。「これらの異変が見られた場合はフレイルの可能性が高く、要介護状態に移行する前に適切な対応を取る必要がある」、早目に気付いて「適切な対応」を取りたいものだ。 「社会的なつながりは個人の努力で容易に作れるものではありませんから、公的な支援が必要なのです」、なるほど。 「75歳の時点でしっかり対策をしておけば、80歳や85歳になるまでフレイルと無縁の生活を送ることも十分可能になります。大切なのは、老いに伴う衰弱から目を逸らすのではなく、うまく付き合っていくことなのです」、私としても「うまく付き合って」いきたいものだ。
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医薬品(製薬業)(その6)(ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした 医薬品製造の「構造的課題」、アステラス製薬 3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、3月3日に取上げた。今日は、(その6)(ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした 医薬品製造の「構造的課題」、アステラス製薬 3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか)である。

先ずは、6月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした、医薬品製造の「構造的課題」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/272822
・『ジェネリック医薬品メーカーの小林化工が、医薬品を不正に製造・販売したとして業務停止命令を受けた。水虫などの治療薬として使用される医薬品に睡眠導入薬が混入されていたのである。問題の背景には、医薬品製造における構造的、制度的な課題が見え隠れする。われわれの生活にも大きく関わる医薬品の安全性の問題と、その対策について専門家に聞いた』、興味深そうだ。
・『決して他人事ではない睡眠導入薬混入事件  食料品の購入時には産地や賞味期限、添加物などを細かく吟味する人でも、処方薬に関しては医師、薬剤師の判断に身を委ね、何ら吟味せずに使用している人は多いのではないだろうか。 それだけ皆、日本の医療を信頼しているということなのだろうが、昨年12月、その信頼を打ち砕く事件が起きた。ジェネリック医薬品メーカーの小林化工(福井県あわら市)が製造販売した水虫やいんきんたむし、カンジダなどの感染症治療薬「イトラコナゾール」に睡眠導入薬が混入されるという前代未聞の事件が発覚したのである。 報道によれば、混入は厚生労働省の承認を得ていない「原薬の継ぎ足し」という工程で、原料を取り違えたのが一因。加えて、2人で行うべき作業を1人で行い、ダブルチェックが働かなかったという理由も挙げられている。同剤を処方されたのは344人、3月8日時点で245人に健康被害が出ている。この中には、車の運転中に意識を失うなどして事故を起こした人が38人おり、服用した80代男性と70代女性の2人が死亡した。 テレビや新聞では、ざっくりと「皮膚病などの治療薬」と報じているので、「自分とは関係ない」と思っている人も多いかもしれないが、水虫は日本人の10人に1人が罹患(りかん)する“国民病”。なかでも爪水虫の患者は1100万人もいると推定されている。しかも足指の間などにできる水虫は市販の塗り薬でも治るので、靴を履く時間が短くなる年代で減少するが、爪水虫は内服薬を使ってしっかり治療しないと治癒しないため、一度罹患するとそのままとなり、高齢になるほど患者が増える。カンジダ症も患者数は多く、女性の5人に1人が発症するとされているし、男性だってかかる。決して他人事ではないのである。) また、小林化工がジェネリック医薬品メーカーであることから、事件を「ジェネリック医薬品だけの問題」として論じる向きもあるが、いかがなものか。 日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事で日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役の武藤正樹氏は「同様の問題は先発品でも起こり得ます」と断言する。現場の医師であると同時に医療政策の専門家として「全国民が医薬品の恩恵を等しく受けるためにはジェネリック医薬品の普及が欠かせない」との信念のもと、20年以上にわたってジェネリック医薬品の信頼性の向上と普及に尽力してきた武藤氏に話を聞いた』、「水虫やいんきんたむし、カンジダなどの感染症治療薬」、初め塗り薬と思ったが、「車の運転中に意識を失うなどして事故を起こした人が38人おり、服用した80代男性と70代女性の2人が死亡」、などの薬禍からみると、飲み薬なのだろうか。
・『特許切れ処方薬の8割近くはジェネリックに置き換え済み  本題に入る前に、ジェネリック医薬品について説明しよう。 ジェネリック医薬品とは、新薬の特許が切れた後に新薬と同じ有効成分で作られる安価な後発品を指す(従来の新薬は「先発品」と呼ばれる)。国は2015年6月、高止まりする医療費の抑制を目的に、「2017年度に70%以上、2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上」とジェネリック医薬品普及目標を設定した。結果、先発薬と後発薬がある場合、後発薬が全体に占める使用割合は(13年7~9月期)47.3%から78.9%(20年7~9月期)に急増した(日本ジェネリック製薬協会の調べ)。 もはや特許の切れた処方薬の8割近くはジェネリックに置き換わっているのである。 ただ、どんなに置き換わろうとも、大部分の国民が理解しているように「ジェネリックは先発品と“同じ薬”で値段が安い」ということであれば、何ら問題は生じない。しかし、ジェネリックと先発品とでは、原料も工場も、添加物も違うのだ。 「添加物が違えば、薬の効果も随分変わります。ただし、ジェネリックが先発品より劣るということにはなりません。先発品よりも剤形などに工夫を凝らした改良型、付加価値型のジェネリック医薬品も数多く存在するので、単純に比較はできません。たとえば嚥下(えんげ)障害のある患者さんが服用しやすいよう剤形を口の中で溶けやすくしたり、ゼリー剤や小型錠剤にしたりといったこともあります。 だからこそジェネリックの場合、患者さんを使った臨床試験こそしていないものの、20人以上の健康な成人(ボランティア)に製剤を投与し、時間を追って薬物の血中濃度を測定するなどで、先発品と同等であることを証明しています」(武藤氏、以下同)』、「ジェネリックと先発品とでは、原料も工場も、添加物も違う」、「ジェネリックの場合、患者さんを使った臨床試験こそしていないものの、20人以上の健康な成人・・・に製剤を投与し、時間を追って薬物の血中濃度を測定するなどで、先発品と同等であることを証明しています」、なるほど。
・『先発品であっても時がたてばジェネリックと一緒  では今回のような事件は、ジェネリックに限らず「先発品でも起り得る」とはどういうことなのか。 「薬は工業製品なので、承認時の規格と実際に市場に出回っている規格では違うことは結構あります。 先発品であっても、20年前に承認された製剤と現在使われている製剤は違います。製造工程も添加物もどんどん進歩するので、ある意味当然ですよね。こうした違いがあったとしても、先発品として承認された製剤と同等であることを証明する試験は、ジェネリックの承認試験と全く同じです。 つまり先発品ですら、時がたてばジェネリックと変わらないということです」) なるほど。だがそれならば以前から、ジェネリックの効果や安全性に不安を抱き、処方薬のジェネリック化に異を唱えてきた医師や薬剤師は、単なる偏見でモノ申してきたことになるのだろうか。 「いいえ。当初からジェネリックに対して否定的な医療従事者はいましたが、それはジェネリック医薬品が誕生した1960年代の中頃から80年代までは、現在の承認基準とは全然違う、低い基準が使われていたからです。 たとえば人ではなく動物試験でよしとされていましたし、長期・条件下の保存で規格から外れることがないかどうかを観察する安定性試験や、試験液中で製剤から薬物の溶け出す速度や量が同じかどうかを見る溶出試験も義務付けられていませんでした。承認ハードルや品質保証体制が厳しくなったのは80年から90年代にかけてです。 移行期には、97年以前に承認されたジェネリック医薬品4264品目について再評価が行われ、結果、359品目が不適応となり、市場から完全に駆逐されました。 以降、今世紀に入ってジェネリックは、かつての『ゾロ品(先発品の再審査期間、特許期間が過ぎてから市場にゾロゾロと売り出される二流品の意味)』とは全く異なる医薬品に生まれ変わったと言ってもいい。しかし、昔を知る方々にとっては、ゾロ品のイメージはなかなか払拭(ふっしょく)できるものではないのでしょう」 武藤氏は「今回の事件によって70年代、80年代の『ゾロ品』の亡霊がさまよい出てきたようだ」と嘆く。 一方、医師の中には「そもそも問題は『ジェネリックかどうか』とは関係ない。『ずさんな製造体制』が主問題であり、今回の問題をジェネリック薬品に論点を持っていくのは論点のすり替えに近い」とする声もある』、「承認ハードルや品質保証体制が厳しくなったのは80年から90年代にかけてです」、「以降、今世紀に入ってジェネリックは、かつての『ゾロ品(・・・二流品の意味)』とは全く異なる医薬品に生まれ変わったと言ってもいい」、かっては「二流品」のイメージも強かったようだ。
・『ジェネリックメーカーを追い詰めた行政の責任  2016年以降、製薬企業が不正製造で行政処分を受ける事件は毎年のように起きている。昨年12月の小林化工に続き、今年3月にはジェネリック業界最大手の日医工に業務停止命令が下された。同社は、品質試験で「不適合品」となった製品を、製造販売承認書と異なる方法で「適合品」となるように処理して出荷していた上に、品質管理体制にも不備が認められたのだ。こうした不正は10年ほど前から行われており、昨年2月の富山県とPMDA(医薬品医療機器総合機構)による立ち入り調査をきっかけに発覚。同年4月から今年1月中旬にかけて同社は75品目を自主回収した。 このあまりにもずさんな状況の背後には、2015年に政府が掲げた、ジェネリックの普及率を80%とする市場拡大目標の影響が大きかったのではないかという見方がある。 「メーカー間の競争が激化してすさまじい市場圧力が働き、小林化工や日医工はプレッシャーに耐え切れず供給を優先した結果、品質をおろそかにしてしまったのでしょう。とはいっても、他はそんなことはしていないので、言い訳にはなりません。最大の原因は両社の企業モラルの欠如です」というのが武藤氏の分析だ。) 外部の有識者で構成された特別調査委員会も、小林化工について「一連の問題の根幹にあったのはやはり、スケジュールに追われる中での時間的・人員的余裕のなさだったようだ」(日刊薬業)と調査報告書の中で述べており、日医工に対しても「14年から16年にかけて生産数量や品目が急増し、人員・設備が整わず不適切な出荷試験結果処理が増えた」(日刊薬業)と外部の調査報告書に記載されている。 制度的には、2005年の薬事法改正の影響も大きいようだ。 「それ以前の制度では、医薬品販売を行う業者は、製造工場を持つことが義務付けられていたのに対し、改正後は全ての製造工程を外部業者に委託することができ、販売と製造を完全分離することが可能となりました」 つまり、工場と販売が分離され、大幅なコスト削減が可能になったおかげで、ジェネリックメーカーがなんと200社以上も誕生。市場は一気に拡大したが、そのほとんどは工場を持たない販売業者だった。 「この薬事法改正は確かに市場拡大には貢献したものの、市場競争を激化させ、そのしわ寄せが小林化工や日医工のような工場を持っている企業に行ってしまったことは否定できません。 2021年現在、目標80%はほとんど達成されたので、政府は今、次の目標を立てています。しかし『90%を目指そう』なんていう馬鹿なことはやめて80%に据え置き、今後は品質基準の向上に重点を置くべきだと思います」 加えて、メーカーを監督指導する行政の体制にも問題はある。両社には県の薬事監視員が立ち入り調査を行っていたが、不正を見抜くことはできなかった。 「偽資料を作成してごまかしたんですね。一般企業でも監査法人がごまかされることがあるのと一緒です。不正を見抜くのが監査法人の仕事ですが、ジェネリックの場合、県の監査法人の数も少ないし、スキルの向上も必要です」』、「両社には県の薬事監視員が立ち入り調査を行っていたが、不正を見抜くことはできなかった」、「監査法人」には頑張ってもらいたいものだ。
・『監視体制の強化とともに患者も声を上げることが大事  既に、ジェネリック医薬品なしにはわれわれの健康生活は成り立たないところまで来ており、単純に使用を拒否するだけでは、身を守ることはできそうもない。ではどうしたらいいのか。 「不正を防ぐには、監視体制の強化しかないと思います。 第一に、都道府県の監視員による抜き打ち検査を増やす、監視員の技術レベルをアップさせる。 第二に、既に流通しているジェネリック医薬品を集めてきて再試験をする『一斉監視指導』を増やす。現在年間900品目について、都道府県の試験場で承認時と同じ試験で品質の確認をしています。この試験の頻度を増やすことは有効でしょう。試験の結果、不適応であることがわかり、回収につながっている例は少なくありません。 第三として、『患者の声』を届けること。PMDAには患者さんの相談窓口があるので、医薬品による副作用などが疑われる場合には積極的に報告するのがよいでしょう。日本のユーザーは世界一厳しいことで知られているので、世界の医薬品の品質と安全性の向上に貢献できると思います」 本問題に深い関心を寄せる医師の中には、「AG(オーソライズド・ジェネリック)を選べば安心だ」とする声もあるが、武藤氏は首を横に振る。 「AGとは、先発品と同一の有効成分、同一添加剤、そして同一適応を持ち、さらに先発メーカーからお墨付きを得たジェネリック医薬品、要するに、AGは先発品と全く同じ薬です。 ただ、実はAGにも種類があります。 簡単に言うと、パターン1は、先発品メーカーのラインの一部をAG用としているだけで、あとは全く同じ。包装と添付文書だけ変えた薬です。 パターン2は、料理で言うところの材料とレシピは同じだけど、キッチン、つまり工場だけ子会社で作らせる。キッチンもコックさんも変わるわけですから、先発メーカーがお墨付きを与えているというだけで、普通のジェネリックと全く変わらない。こういうAGは多いです。 さらにパターン3では、レシピが同じだけで、原材料も工場も違う。安い原材料を海外から輸入し、製造は子会社。こうなると完全にジェネリックと同じ。 先発品メーカーはこうした情報を開示していません。自社ブランドのイメージが損なわれると思っているのでしょう」 新型コロナウイルスの影響で、昨今は特効薬やワクチンに対する関心がかつてないほど高まっているが、前々からある薬にももっと関心を持つべきだ。問題が起きたり、疑問が生じたりした際には社会と共有する。それが、日本の医療の質と安全性を向上させ、われわれ自身を守ることになる。(監修/日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事、社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 武藤正樹))』、「患者も声を上げることが大事」、については理屈上ではその通りだが、情報量が少ない「患者」には自ずから限界がある。

次に、10月4日付け東洋経済オンライン「アステラス製薬、3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/459514
・『製薬大手のアステラス製薬が思わぬ試練に直面している。 9月14日、アステラスは開発中の遺伝子治療薬「AT132」の臨床試験で、被験者1名が死亡したことを発表した。この被験者の「重篤な有害事象」はすでに報告されていたため、薬の治験そのものはすでに9月1日時点で一時ストップしている。 製薬業界全体を見渡せば、思わぬ副作用が出たり有効性が確認できなかったりで、治験がうまくいかないことは日常茶飯事だ。創薬の成功確率は3万分の1ともいわれる。 だが問題なのはその中身。今回開発を中断したAT132は、アステラスが約3200億円という巨費を投じて2020年に買収したアメリカのベンチャー企業・オーデンテス社が持っていたもの。同社の中でも、AT132は最も開発が進んでいた新薬候補だ。製品化されれば、将来的には最大1000億円の売上高も期待されている』、未完成の新薬候補を抱える「オーデンテス社」を「約3200億円」で買収とは、製薬業界とは一般業界とはやはり相当違うようだ。
・『2度目の治験ストップ  実は治験がストップしたのは今回が初めてではない。2020年8月までに、被験者23名のうち高用量を投与されていた3名の被験者が死亡、治験を監督するアメリカのFDA(食品医薬品局)から差し止め指示を受け、一度治験を中断している。 その後のFDAとの協議によって投与量を減らす治験プログラに変更し、2020年12月から治験を再開。これで問題はクリアしたかに思われたが、再開時に低用量を投与された最初の患者が、9月に死亡した冒頭の被験者だった。 AT132が治験の対象にしているのは「X連鎖性ミオチュブラーミオパチー」という、まれな遺伝性の病気だ。新生児が重度の筋力低下と呼吸障害によって死に至る難病で、生後1年半の生存率は50%といわれている。4万~5万人の男児に1人の割合で発症し、現在、治療法はない。 遺伝性の難病に対し、AT132は「遺伝子治療薬」と呼ばれるもの。これは、本来の遺伝子の欠損や変異によって起こる病気の場合、その遺伝子を補うことで治療を目指す。比較的新しいアプローチの治療法で、これまで治療法がなかった難病などへの応用が期待されている。 1度目の治験中断時、アステラスの業績への影響は小さくなかった。AT132の無形資産として計上していた1023億円のうち、588億円を減損損失として計上。2021年3月期の営業利益は元々見込んでいた2105億円を大きく下回る1360億円で着地し、前期比でも4割以上の減益となった。 アステラスの安川健司社長は、「治験の失敗を最初から見込めるわけではない。減損で騒ぐほうが不思議」と話すが、業績の足を大きく引っ張る要因となったことは確かだ。 【2021年10月4日11時00分追記】初出時のコメントを上記のように修正いたします。 有価証券報告書によれば、オーデンテスの買収額約3200億円のうち2712億円が無形資産として計上され、AT132だけで1023億円を占めていた。つまり買収金額のおよそ3分の1はこの新薬候補に支払った計算だ。減損の計上後も、AT132の無形資産は427億円が残っている』、「AT132が治験の対象にしているのは・・・まれな遺伝性の病気だ。新生児が重度の筋力低下と呼吸障害によって死に至る難病で、生後1年半の生存率は50%・・・4万~5万人の男児に1人の割合で発症・・・「遺伝子治療薬」」、「まれ」ではあっても、市場の存在は統計的に確保されているのだろう。
・『追加の減損はあるか  アステラスは「今後FDAと治験の再開などについて協議する。(AT132の治験ストップに伴い)現段階で減損を計上するかどうかは未定」とする。ただ前回の減損は、治験プログラムの変更によって投与量が想定よりも減り、対象患者が少なくなったことが引き金になっている。今回、その低用量でも治験を中断せざるをえなかったことを踏まえれば、追加の減損計上の可能性は否定できない。 ただし、今回の治験中断が発表されても、アステラスの株価が大きく下がることはなかった。「前回の減損時からAT132は少しあやしいという認識だった。今回の中断で急にドタバタすることはないが、第2四半期(2021年9月期)の決算に影響があるのかどうか」(クレディ・スイス証券の酒井文義アナリスト)を株式市場は注視している状況だろう。 アステラスにとって、遺伝子治療薬のような次世代薬を育てることは急務だ。なぜなら、全社の売上高の4割を占める大黒柱、前立腺がん薬「イクスタンジ」の特許切れが2027年に迫っているからだ。イクスタンジは2022年3月期で5572億円の売上高が見込まれている超がつく大型薬。だが特許が切れる2027年以降、同じ薬効でより安価なジェネリック薬が登場し売上高の急降下は避けられない。 もちろん、そうした状況に手をこまねいているわけではない。2021年7月にはアメリカで尿路上皮がん治療薬「パドセブ」の正規承認を取得。開発が佳境を迎えている婦人科領域の「フェゾリネタント」への期待も大きく、それぞれピーク時には4000億円、5000億円の大型薬に成長すると見通している。 だがこの規模まで大型化するには10年以上かかるうえ、新薬は継続的に生み出さなければならない。焦点は、今見えているこれらの薬の「次」だ。 現在の安川社長は、2018年の社長就任以後、従来の研究開発スタイルを大々的にシフトしている。それまでは泌尿器や免疫関連など、開発を狙う薬の領域をあらかじめ定めていた。だが、新しいスタイルでは研究開発の“出口”を決めず、創薬技術をベースに研究開発を進める方針にシフトし、研究の“入り口”を強化した』、新薬やその候補をどれだけ持っているかが勝負のようだ。
・『遺伝子治療の分野に注いだ大金  その戦略の一環で、自社に足りない技術を補うような会社を次々に買収してきた。ターゲットになったのが、遺伝子治療やがん免疫などの4つの分野だった。今回のオーデンテスもその1社だ。数百億円規模にとどまるほかの分野への投資額に比べ、遺伝子治療を担う同社への投資額は突出して大きい。 新たな研究開発スタイルで有望な新薬を生み出すこと、特に多額の資金を注ぎ込んでいる遺伝子治療の分野で結果を出すことは、安川体制の通信簿にも直結する。 アステラスはこの研究開発戦略でこれから生み出す新薬を合わせて、2030年に売上高5000億円という目標を掲げている。また、足元では3.5兆円の時価総額総額を、2025年までに倍の7兆円に高めるという。 安川社長は「アステラスがやろうとしていることがちゃんとできれば世間はこれくらいの評価をくれるはずだというストーリー」と話す。こうした中で、遺伝子治療の位置づけは特に大きいだろう。 AT132の治験中断があっても、治験に入る前の新薬候補を含め、遺伝子治療そのものをやめるという選択肢はないはず。アステラスにとっての正念場は続く』、製薬会社の「研究開発戦略」の大変さを垣間見られたようだ。
タグ:(製薬業) (その6)(ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした 医薬品製造の「構造的課題」、アステラス製薬 3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか) 医薬品 ダイヤモンド・オンライン 木原洋美 「ジェネリック不正製造事件が浮き彫りにした、医薬品製造の「構造的課題」」 「水虫やいんきんたむし、カンジダなどの感染症治療薬」、初め塗り薬と思ったが、「車の運転中に意識を失うなどして事故を起こした人が38人おり、服用した80代男性と70代女性の2人が死亡」、などの薬禍からみると、飲み薬なのだろうか。 「ジェネリックと先発品とでは、原料も工場も、添加物も違う」、「ジェネリックの場合、患者さんを使った臨床試験こそしていないものの、20人以上の健康な成人・・・に製剤を投与し、時間を追って薬物の血中濃度を測定するなどで、先発品と同等であることを証明しています」、なるほど。 「承認ハードルや品質保証体制が厳しくなったのは80年から90年代にかけてです」、「以降、今世紀に入ってジェネリックは、かつての『ゾロ品(・・・二流品の意味)』とは全く異なる医薬品に生まれ変わったと言ってもいい」、かっては「二流品」のイメージも強かったようだ。 「両社には県の薬事監視員が立ち入り調査を行っていたが、不正を見抜くことはできなかった」、「監査法人」には頑張ってもらいたいものだ。 「患者も声を上げることが大事」、については理屈上ではその通りだが、情報量が少ない「患者」には自ずから限界がある。 東洋経済オンライン 「アステラス製薬、3000億円買収会社に思わぬ試練 期待を寄せる遺伝子治療薬は実を結ぶのか」 未完成の新薬候補を抱える「オーデンテス社」を「約3200億円」で買収とは、製薬業界とは一般業界とはやはり相当違うようだ。 「AT132が治験の対象にしているのは・・・まれな遺伝性の病気だ。新生児が重度の筋力低下と呼吸障害によって死に至る難病で、生後1年半の生存率は50%・・・4万~5万人の男児に1人の割合で発症・・・「遺伝子治療薬」」、「まれ」ではあっても、市場の存在は統計的に確保されているのだろう。 新薬やその候補をどれだけ持っているかが勝負のようだ。 製薬会社の「研究開発戦略」の大変さを垣間見られたようだ。
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TPP問題(10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か) [外交]

TPP問題については、2017年1月15日に取上げたままだった。中国、台湾の加盟申請を受けた今日は、(10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か)である。

先ずは、9月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏による「「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50292
・『中国、台湾が相次いで加盟を申請した背景は  9月16日、中国商務省は“環太平洋経済連携協定(TPP)”への加盟を、現在の事務国であるニュージーランドに正式に申請した。その背景には、中国が、日米豪印や欧州各国がインド太平洋地域での連携を強化する動きに揺さぶりをかける狙いがある。 一方、中国の加盟申請後の22日、台湾も加盟を正式に申請した。台湾は中国と対立している。両国の加盟申請によってTPP交渉は、中国・台湾の対立が持ち込まれ複雑化している。中国の申請によって、TPP加盟国の中に中国との関係を重視する国が増える可能性がある。それは、国際世論における台湾の発言力維持にマイナスだ。台湾はその展開への危機感を一段と強め、申請を急いだとみられる。 本来、米国のバイデン政権はTPPへの復帰を目指して、自由で公正な貿易、投資、競争に関する多国間連携の強化に取り組むべきだった。しかし、トランプ前政権の離脱以降、米国の対TPP姿勢がはっきりしない。中間選挙を控える中、バイデン政権が多国間の経済連携にエネルギーを振り向けることも難しい。 その状況下、本年のTPP議長国であるわが国は、是々非々の姿勢を明確に示してTPPの根本的な目的とルールを加盟国、米欧各国などと共有し、今後の交渉議論の環境を整えなければならない』、「中国」外交は実に巧みだ。
・『もともとは米国による”対中包囲網“だったが…  もともと、TPPの目的は米国を中心にした中国包囲網の形成にあった。時系列で米国の対中姿勢を確認すると、2013年に米オバマ政権(当時)の国家安全保障担当大統領補佐官だったスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えたと考える安全保障などの専門家は多い。その後、フィリピンやベトナムなどが領有権をめぐって中国と対立し始めた。 中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ。オバマ政権はTPP交渉をより重視し、関税の撤廃、知的財産の保護、国有企業に関する補助金政策などに関して加盟国間でルールを統一し、より効率的、かつ公正な経済面での多国間連携を目指した。政府調達に関する内外企業の差別を原則認めないこともTPPに含められた。 米国にとってTPPは、経済を中心に安全保障面からも対中包囲網を整備し、自国を基軸国家として経済のグローバル化を進め、そのベネフィットを得るための取り組みだったのだ』、「オバマ政権のスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えた」、「中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ」、「オバマ政権」の対中政策のブレは酷いものだったと改めて思い出した。
・『なぜこのタイミングでの申請だったのか  ところが、2017年1月に事態は一変した。トランプ前大統領がTPP離脱を表明した。それによって米国を基軸とする経済、安全保障面からの対中包囲網というTPPの性格は弱まった。その後、2020年11月に中国の習近平国家主席がTPP加盟を積極的に検討すると表明した。 TPPから離脱した米国は、日豪印との外交・安全保障の枠組みである“クアッド”を整備した。9月15日には、英豪と新しい安全保障の枠組みである“AUKUS(オーカス)”も創設した。 その直後に中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい。マレーシアやシンガポールが中国の加盟申請を歓迎したのは、中国の影響力の大きさを示している。その上、9月22日には台湾がTPP加盟を正式に申請した。今、TPPは大きな変化の局面を迎えている』、「中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい」、心難いばかりに巧みな外交だ。米国のお粗末な外交と好対照だ。
・『市場開放の姿勢を国際世論に印象付けたい  中国と台湾の対立は深まっている。イメージとしては、緊迫感が高まる台湾海峡のように、TPPは中国と台湾の対立激化の縮図と化している。 経済運営面から考えたTPPの意義は、多国間で競争などのルールを統一し、より効率的な生産要素の再配分を目指すことだ。しかし、中国が最も重視することは違う。それは、共産党政権の体制維持だ。そのために中国はTPP加盟申請によって国際世論を揺さぶりたい。 中国は思慮深く9月16日の申請タイミングを見定めたと考えられる。中国は簡単にTPP加盟が承認されるとは考えていないはずだ。それよりも、中国はTPP陣内に対中批判の考えを持つ国が増える前に申請を行い、切り崩しを図りたかった。 AUKUS創設の翌日である9月16日の申請は、中国が米国に対抗し、市場開放を進める姿勢を、より鮮明に国際世論に印象付けることに役立つだろう。また、その日は台湾の正式な申請前でもあった。米国の同盟国であるわが国の議長国としての任期も残り少ない。2022年には中国を歓迎したシンガポールがTPP議長国につく。国際世論に揺さぶりをかける、その上で2022年以降のTPP交渉環境を追い風にするために、9月16日はベストなタイミングとの判断が習政権にあったはずだ』、確かに「ベストなタイミング」での申請だ。
・『TPPが新たな中台対立の舞台に  その結果、台湾は中国に先を越された。蔡英文政権が対中関係を重視する国が増える展開への不安をいっそう強めたことは容易に想像できる。中国がTPP加盟国を揺さぶり、結果的に切り崩される国が増えれば、国際社会の中で台湾の立場は一段と不安定化する恐れがある。その展開を阻止するために、台湾は急いで申請作業を進めただろう。台湾には、半導体分野などで連携を強化するわが国が議長国であるうちに申請し、今後の加盟交渉を勢いづける狙いもある。 今後、中国は経済面での結びつきが強い国に働きかけ、台湾との交渉に慎重に臨む、あるいは避けるよう求めるだろう。それに台湾は反発するだろう。対立が激化する中国と台湾が国際世論への働きかけを強める結果、TPP加盟国が経済運営ルールの統一と遵守などに論点を集中して加盟交渉に臨むことは難しくなるだろう』、「台湾」が「中国に先を越された」のは、重大な手落ちだ。
・『議長国日本は是々非々の姿勢で臨むべき  中国と台湾の対立が持ち込まれた結果、TPPは複雑化した。複雑化するTPPの論点を経済・安全保障面からの対中包囲網の整備に再度集中させるには、米国のTPP復帰が必要だ。今後のTPPの展開には、米国の復帰の可能性が高まるか否かが決定的な影響をもたらすだろう。 そのために、わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ。それは、今後のTPP交渉が議論される大まかな道筋を示すことと言い換えてもよい。台湾はそうした展開を期待しているだろう。 今後、中国は産業補助金など共産党政権の体制維持に関わる項目に関して、例外事項をTPP加盟国に認めさせようとするだろう。コロナ禍によって経済が傷ついたアジアや南米の新興国にとっても、例外措置の導入は魅力的に映る可能性がある』、「わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ」、その通りだ。
・『米国の復帰を求め続けなければならない  ただし、TPP加盟交渉は全会一致でなければ正式に開始されない。オーストラリアやわが国の存在を考えると、中国の揺さぶりがすぐにうまくいくとは考えにくい。しかしながら、やや長めの目線で考えると、マレーシア、来年の議長国のシンガポールなどの歓迎姿勢によってTPPのルールや制度が変化、弱体化する恐れはある。 そうした展開を念頭に、わが国は中国が求めるだろう例外事項の設定を受け入れない姿勢を明確に国際世論に示す。その上で、既存の加盟国にとどまらず、世界経済のサプライチェーンと成長面で重要性が増すアジア新興国、米国、欧州各国などとTPPの意義を共有すべく連携を目指す。それはTPPの目的とルールの堅持と、それを尊重する加盟申請国との交渉進行を支える。 それに加えて、わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない』、「わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない」、その通りだ。

次に、9月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの山田厚史氏による「中国のTPP加盟申請は本気、議長国日本の役割は「門前払い」か」を紹介しよう。
・『中国、台湾が相次いでTPP加盟を申請  環太平洋経済連携協定(TPP)に中国が正式に加盟を申請した。 音頭とった米国が国内の風向きが変わって離脱。主役不在の間隙を突く中国の動きに議長国・日本はうろたえる。 中国の動きを見て台湾も加盟を申請し一段と対応は難しくなった。 「中国にTPPは無理だ」「米国を牽制する政治的アクションではないか」などと本気度を疑う見方が少なくないが、自ら主導してRCEP(地域的な包括的経済連携協定)とTPPを合体させ、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)へと発展させる大きな戦略があるという。 アジア太平洋を舞台に、自由貿易よりも中国封じ込めを狙った安全保障の枠組み作りが進む中で、地域の安定を考えればTPPで中国を「門前払い」をすることが得策なのかどうか。 国内に目を向ければ、自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない。米中の間で日本はどう針路を取るのか。新政権には待ったなしの課題のはずだ』、「自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない」、寂しい限りだ。
・『日本は「真剣に受け止めていない」 政府系の中国研究者が警告  中国が「TPP加盟申請」を発表する直前、日本政府に警鐘を鳴らす論文が発表されていた。 「中国のCPTPP参加意思表明の背景に関する考察」(9月11日)と題して、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の政策レポートに載った40ページの論文だ。 「中国側の本気度とTPP枠組みを主導した日米の受け止め方には落差がある」と冒頭から問題を提起。「TPP枠組みの要求する内容は中国の体制と矛盾する項目が多いと考えられているため、実現の可能性が極めて低いアクションであるという予見があり、真剣に受け止めていない印象がある」と、政府のゆるい姿勢に疑問符を投げかけた。 RIETIは経産省の外郭団体、筆者は中国経済を専門とする渡辺真理子学習院大教授ら4人で、TPP参加へと動く中国の真意や問題点を分析している。 習近平主席が昨年11月、「TPP加盟を積極的に検討する」と表明したとき、政府もメディアも半信半疑だった。 「閉鎖的で統制だらけの中国がTPPに加入するのは難しい」「日米主導で進むアジアでの貿易や投資の枠組み作りに揺さぶりをかけているのだろう」という見方が支配的だった。 RIETI論文は、こうした見方を退け、「オバマ大統領がTPP12の締結に動き始めると、中国は独自のイニシアティブをスタートすると同時に、米国の動きに沿うような調整も行う、二面作戦に出ていた」と指摘。 TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介している』、「TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介」、初めからヘソを曲げていたと思っていたが、「二面作戦」で「入念な準備作業を進めてきた」とは初めて知った。
・『アジア太平洋の自由貿易圏作り 外圧テコに国内改革目指す 「独自のイニシアティブ」とは一帯一路構想だ。中央アジア・中東から欧州へと進む膨張政策である。 そしてもう一つの「米国の動きに沿うような調整」は、自由貿易・開放経済への対応だ。 中国が国内の市場開放に応ずるだけでは受け身になる。外に乗り出してアジア太平洋に自由貿易圏(FTAAP)を作り、共存共栄を図り中国が中核的役割を担う、という戦略だ。 周小川・前中国人民銀行総裁ら経済改革派がこの路線を進めてきた、という。国際ルールを受け入れ、外圧をテコにして旧態依然の国内制度を変革するという狙いもあるようだ。 中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟、国際ルールに沿う開放体制に取り組んできた。2010年代半には、WTO内のルール作りに参画するようになり、主要ポストに人材を送るようになった。今では「WTO改革」を主張する主要国である。 次に狙いを定めたのがRCEPだ。 ASEAN10カ国が2011年に提唱した地域の経済連携で、日本、韓国、中国が乗り出し「ASEAN+3」で協議が始まった。 中国の影響力が強まるのを警戒する日本はオーストラリア、ニュージーランド、インドを招き入れASEAN+6の枠組みに広げた。やがて人口で中国を抜くインドを加えて中国の力を薄めようとしたが、インドは経済自由化を一気に進めれば中国からの輸入や投資が急増することを恐れ途中で離脱。日本の思惑は空転した。 RCEPは昨年11月、最終合意にこぎつけ、15カ国が署名した。人口22億人超、GDPや貿易額で世界の3分の1を占める経済圏が来年1月に発効する。 ここにTPPを重ねればアジア太平洋に広がる巨大な共同市場が生まれる。 中国は、「米国の世界支配」は経済や軍事力だけでなく、国際機関や国境を越えたルール作りで発言権・指導力を持ち、米国に都合のいいルールを世界秩序にしていることにある、とみている。 論文は、TPP加入の狙いを「国際的なルールメイキングへの協力の強化、域外適用法制の整備による防衛体制の構築、という意図があり、2021年から25年にかけて、この動きを本格化しようという意図がうかがえる」(抜粋)と指摘している。 TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略というわけだ』、「TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略」、なるほど。これは手強そうだ。
・『中国が「抱える「3つの課題」 国有企業問題で指導部内に緊張関係  だが一方で、中国には「超えなければならない課題」が内在することは確かだ。 政府補助を受けている国有企業や労働慣行、電子商取引の3部門で「TPP基準をクリアできるか」という問題を抱えている。 中国の急成長を担ってきたのは民間企業だ。国有企業は雇用を吸収し、地域では欠かせない存在だが、非効率で、さまざまな政府支援によって支えられている。 TPPは国有企業への過剰な支援を禁止し、民間と対等な競争条件を求めている。 国有企業改革を巡っては、中国の指導部の中で「企業の公平性」を主張する改革派と、「国家の安定性」を重視する保守派の緊張関係が背後にある。「対等な競争条件」を急ぐと、政権内部の暗闘を招きかねない。 労働を巡る問題はさらに微妙だ。 TPPは、労働者が労働組合を選択できる自由を求めているが、中国では、労組の全てが中華全国総工会に加盟し統制を受けている。「労働組合の結成の自由」は共産党の指導体制とぶつかりかねない。「強制労働」が疑われる新疆ウイグル問題などの難題もある。 電子商取引では、中国はソフトウエアの鍵ともいえるソースコードの開示を求めたり、データの国外持ち出しなどを制限したりしている。TPPは当局による過剰な監視や統制を原則として認めていない。情報やデータは、国家の安全保障と絡むだけに問題は複雑だ』、「TPP基準」は多少弾力的にするべきだが、安易に緩めるべきではない。
・『「門前払い」が日本の役割? 排他性はTPPの価値を落とす  RCEPの場合は、共同経済圏を創るため、例えば日本ならコメのように、各国が抱える国内調整が難しい品目を対象に例外規定を設けているが、TPPはより高いレベルの自由化を求めている。 中国を排除するために「厳しい自由化基準」を盾にすることもできる。 西村康稔経済再生担当相は「中国がTPPの極めて高いレベルのルールを満たす用意があるのか、しっかり見極める必要がある」。梶山弘志経産相も「全てのルールの受け入れを用意できているか、見極めが必要」と語った。 不参加の米国に忖度し日本が門前払いの役割を演ずるつもりのようだが、遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう。 中国が加盟するRCEPがまもなく誕生する中で、米国も中国もいないTPPは無用の長物になる恐れがある。排他性は自由な貿易や投資の経済圏をやせ細らせるだけだろう』、「遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう」、確かに重要なポイントだ。
・『経済より安全保障重視の危うさ 分断の象徴「QUAD」「AUKUS」  経済連携の時代は終わったのだろうか。 始まりはEU統合だった。国境を越えるヒト・モノ・カネが経済に活気を与え、相互に依存しあう国と国との関係は戦争を回避する平和の土台であることが確認された。 その流れはアジアに及び、アジア共同体構想などが模索され、APEC(アジア太平洋経済協力)ができた。米国が加わり21カ国・地域の大所帯になって、アジア共同体はかすんだ。 そして経済的な同盟として米国中心のTPPと中国を軸とするRCEPがそれぞれ生まれた。この20年、こうした地域の経済連携を軸にアジアは投資が集まり成長した。 流れを変えたのが、米中対立だ。 ビジネスを軸とする地域連携より、安全保障を優先する同盟関係が前面に出た。時代は、統合から分断へと動いている。 米国はアフガニスタンから軍を引き、カネと力を中国との競争へと注ぐ。相互依存を前提としたサプライチェーン(物流網)が見直され、デカップリングと呼ばれる「切り離し」があちこちで起きている。 さらに、日本、インド、オーストラリアを束ねQUAD(日米豪印協力)を立ち上げた。海洋安全保障を掲げ、インド洋で合同海洋演習を行い自衛艦が参加した。 24日、ワシントンで行われたQUAD首脳会議にはバイデン大統領が呼び集めた対面形式の会合に4首脳がそろい、中国とは名指しはしなかったが、対中国に対する連携強化を印象付けた。 もう一つの対中安全保障の枠組みは、「AUKUS」だ。 米英豪による軍事面の協力関係で、米英はオーストラリアに原子力潜水艦の技術を供与し、核を配備して中国牽制に当たらせるという挑発的な構想が明らかにされた。 アングロサクソンの軍事同盟である』、なるほど。
・『薄っぺらい「中国脅威論」 米中双方をいさめる役割を  アジアは平和を前提とする経済連携から、一触即発の緊張をはらむ対中安全保障優先へと変わろうとしている。 そんな中でTPPも変質し、中国をブロックすることが日本に役目となろうとしている。アジア太平洋の経済的繁栄というTPPの大義はどこへ行ったのか。 「こういう時こそ、中国と腰を据えて向かい合い、TPP基準をクリアできる国内改革の後押しをする交渉が必要ではないか」。アジア・中国を見てきた経産省OBはいう。日本の国益は「平和な中で安定したビジネスを続けること」ではないのか。 対立を乗り越え、決裂を回避するのは、交渉相手と「人間としての信頼」が欠かせない。経済交渉でも外交でもそれは同じだ。信頼のパイプをどれだけ持っているか、その厚みが国家の安全保障でもある。 薄っぺらな中国脅威論は誰もが語るが、このままいけば日本は戦争に巻き込まれるかもしれない。世界は「経済連携」から「軍事ブロック」へと動いている。その危うさを感じてか、バイデン大統領や習近平主席も、電話首脳会談やファーウェイ問題の手打ちなど緊張緩和に動いている。 アジアでは来年1月にRCEPが動きだす。これからを遠望すれば、中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい。 自民党総裁選の後には総選挙がやってくる』、「中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい」、同感である。
タグ:TPP問題 (10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か) PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫 「「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき」 「中国」外交は実に巧みだ。 「オバマ政権のスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えた」、「中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ」、「オバマ政権」の対中政策のブレは酷いものだったと改めて思い出した。 「中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい」、心難いばかりに巧みな外交だ。米国のお粗末な外交と好対照だ。 確かに「ベストなタイミング」での申請だ。 「台湾」が「中国に先を越された」のは、重大な手落ちだ。 「わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ」、その通りだ。 「わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 山田厚史 「中国のTPP加盟申請は本気、議長国日本の役割は「門前払い」か」 「自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない」、寂しい限りだ。 「TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介」、初めからヘソを曲げていたと思っていたが、「二面作戦」で「入念な準備作業を進めてきた」とは初めて知った。 「TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略」、なるほど。これは手強そうだ。 「TPP基準」は多少弾力的にするべきだが、安易に緩めるべきではない。 「遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう」、確かに重要なポイントだ。 「中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい」、同感である。
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子育て(その4)(「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情 「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状、「どうして泣き止まないの?」親が気づかない“子どもが癇癪を起こすワケ“、毒親育ち アダルトチルドレン…日本で急増する「生きづらさ」を感じる人の特徴) [人生]

子育てについては、3月27日に取上げた。今日は、(その4)(「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情 「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状、「どうして泣き止まないの?」親が気づかない“子どもが癇癪を起こすワケ“、毒親育ち アダルトチルドレン…日本で急増する「生きづらさ」を感じる人の特徴)である。

先ずは、4月19日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーライターの我妻 弘崇氏による「「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情 「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/422447
・『コロナ禍によって、子どものフラストレーションがたまっている。 「国立成育医療研究センター」(世田谷区)による、0歳から高校3年生までの子ども・保護者を対象とした「コロナ×こどもアンケート」によると、15~30%の子どもに中等度以上の「うつ症状」の傾向がみられたという。 同調査は、コロナ禍以降4回にわたって行われ、直近の2020年11~12月に実施したアンケートでは、回答した小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状がある――ことに加え、その保護者の29%にも中等度以上のうつ症状がみられたと報告している』、「子ども」たちだけでなく、「その保護者」にも「中等度以上のうつ症状がみられた」とは驚きだ。
・『子どもの相談が「以前の4倍」に  「当院でも中高生の子どもの相談がとても増えています。ここ3ヵ月で、以前の4倍ほどの急増です」と語るのは、うつ病のカウンセリングや依存症の認知行動療法を専門とするライフサポートクリニック(豊島区)の山下悠毅氏。 同クリニックは、基本的に成人を対象としているのだが、依存症を専門に取り扱うため、保護者が「ゲーム依存症になっているのではないか?」などの不安を覚え、親子で来院するそうだ。切羽詰まっている、そんな保護者が少なくないという。 実は、昨年9月に実施された「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」(厚生労働省)において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べた変化の項で、約2割が「ゲーム時間が増加した」と回答している。 男性15〜19歳にいたっては58.1%、女性15〜19歳も43.2%という数字が示すように、10代のゲーム時間の増加は著しい。言わずもがな、休校や外出自粛などにともなうイエナカ時間の増加に比例する形でゲーム時間も増加しているわけだが、どうやら話はもっと複雑のようだ。 「私も、当初は『イエナカ時間の増加によるゲーム依存』といったケースを想像したのですが、ふたを開けると『子どもがコロナを怖がり学校に行かない』『感染しても無症状と伝えても家から出ない』といった相談ばかりでした。そのため、『過度に不安が強いお子さんや、理解力がまだ不十分なお子さんなのかな』と思ったのですが、診察室でお子さんと二人きりで話してみると、不安を語る子どもは少なく、新型コロナウイルスへの理解も問題のない子ばかりだったのです」(山下氏、以下同)) いったいどういうことか。 「診察を重ねていくと、どうやらこのたびの不登校の子どもたちは、私が今まで相談に乗ってきた、いわゆる“学校に行きたいのに行けない”子どもではなく、“学校には行く必要がないから行かない”と考えている印象です。もちろん、前者のようなケースの相談もありますが、緊急事態宣言の発令で学校が急に休みとなり、登校が再開したかと思えば、異なるクラスや学年の感染により再び休校となる。しかし、家族や友人が誰もが健康であり、『コロナはただの風邪』なんて話す大人までいる。その結果、一部の子どもは『学校は休んでも問題がないのでは』と疑い始めているのです」 これまでであれば、親が「学校へ行きなさい!」としかりつけることに、一定の効果はあっただろう。しかし、コロナ禍を経て、「え? どうして行かないといけないの。だって、学校へ行かなくても何とかなっているよ」が、一つの回答として間違いではないことが示されてしまった。 ゲームに依存しているのではないかという不安は、入り口にすぎず、奥へと進むと子どもと保護者の関係性に関する悩みがほとんどだという。「義務教育という、ある種の洗脳が解けてしまった。学力が低下することを危惧する保護者もいます」と山下氏が指摘するように、コロナ以前では通用した親から子への教育のフォーマットも、ニューノーマルを迎えているというわけだ』、「一部の子どもは『学校は休んでも問題がないのでは』と疑い始めているのです」,「義務教育という、ある種の洗脳が解けてしまった。学力が低下することを危惧する保護者もいます」、困った現象だ。
・『どうすれば「子どもとの軋轢」を防げるのか?  保護者の戸惑いはイライラとなり、子どもにも伝わる。先の第4回「コロナ×こどもアンケート」では、「すぐにイライラするか?」という設問もあるのだが、小学生以上の子どもを持つ保護者の36%が該当すると答えている。さらに、子どもたち自身も、小学1~3年生32%、小学4~6年生37%、中学生42%、高校生27%が、「すぐにイライラする」と回答しているほどだ。いつ割れるともわからない巨大風船が膨らみ続けている。 こうした軋轢をどのように解決したらいいのか。山下氏に尋ねると、「我々としても初めてのケースなので、日々向き合っている最中」と前置きした上で、「親の価値観を見つめ直さないと、子どもを導くことは難しい」と説明する。 「私が、診察室で『どんな親だったら子どもは言うことを聞くと思いますか』と親御さんに尋ねると、多くの方が言葉に詰まってしまいます。『何と言えばいいか教えてください』と聞かれることもしばしばです。しかし、大切なことは“何を言うかではなく誰が言うか”です。『学校に行くのは当たり前。子どもの仕事は学校に行き勉強をすること』では、子どもは納得しないのです。この話は子どもに限った話ではなく、誰だって、尊敬や信頼できない人からのアドバイスに耳を傾けたいとは思わないですよね」 ライフサポートクリニックへ親とともに来院したある男子中学生は、「義務教育というのは子どもが学校へ行く義務ではなくて、親が子どもに教育を受けさせる義務であって、子どもの義務ではない」といった正論を展開したそうだ。感心してしまうほどの頭の良さ。だが、もし親である自分が言われたらと思うと頭が痛い。言い返す言葉がない……』、「子ども」から「「義務教育というのは子どもが学校へ行く義務ではなくて、親が子どもに教育を受けさせる義務であって、子どもの義務ではない」、などと「正論を展開」されたら、返す言葉に詰まってしまう。
・『大事なのは「親としての器」  「『社会で生きていくことは大変。お父さんもお母さんも、必死で仕事を頑張っている。だからお前も学校へ行け』なんてことを言いたくなる気持ちは、もちろんわかります。しかし、子どもにしてみたら『そんな人生がつらそうな親のアドバイスを聞いたなら、自分も将来、同じ目に遭いかねない』と意識下で感じ取るため逆効果です。 そうではなく繰り返しになりますが、人を導びくには、相手からの信頼や尊敬が不可欠。『ゲームの時間を守らせたいなら、親も帰宅したらスマホをいじらない』『家で勉強させたいなら、まずは親が読書や勉強をする』『早く寝かせたいなら、親も一緒に早く寝る』というように説得力をともなわなければいけません。もちろん、『子どもと親は別』もその通りです。しかし、私たちだって『遅刻するな』と口うるさい社長がいつも遅刻していたら、『社員と社長は別』であることを知っていながらも、その社長を信頼や尊敬することは困難なわけです」 経済力や職業といったスペックが大事なのではない。大切なのは、親としての器をどう作り上げていくかということ。 そして、言葉で説明する際は、抽象的な説明は避けることも控えたほうがいいとも。例えば、「遅刻はよくない」ことを伝える際も、「ダメなものはダメ」ではなく、なぜ遅刻がいけないのかを具体的に伝えなければ信頼を得ることは難しいとも。たしかに成人すれば、遅刻=デメリットだとイヤでもわかる。しかし、子どもの時分では、せいぜい先生から注意される程度。子どもには理解できないだろうから、親自身が想像力を働かせて、伝えることが肝要となる』、「『ゲームの時間を守らせたいなら、親も帰宅したらスマホをいじらない』『家で勉強させたいなら、まずは親が読書や勉強をする』『早く寝かせたいなら、親も一緒に早く寝る』というように説得力をともなわなければいけません」、「親」がまず行動で示すというのは言うは易く、実行は困難だ。
・『「心理学の世界に、“社会的結末を共有する”という考え方があります。遅刻を続ければ、いずれ保護者が先生に呼び出されて、子どもと一緒にしかられる。ところが、多くの親がそれを面倒くさがり嫌がるわけです。つまり、社会的結末を共有したがらない。ですが、それをやってあげることこそが親の愛情なのです」 診察では「先生の言いたこともわかるが、そもそも痛い目を見る前に行動を変えられる子どもにしたい」と補説する保護者もいるという。 「社会的結末を共有すれば、子どもは考えるきっかけを得ることができます。しかし、その共有もせずに親の言いつけを守らせたい気持ちは『親のコントロール願望』」と言えます。また、言われたことをむやみに実行する子どもは、将来、人から簡単に騙されかねないのです。子どもは子どものうちにたくさんの失敗をすることで、自分の頭で考える大切さを学び、人を見る目を養うのです」』、「「社会的結末を共有すれば、子どもは考えるきっかけを得ることができます。しかし、その共有もせずに親の言いつけを守らせたい気持ちは『親のコントロール願望』」と言えます」、手厳しい指摘だ。
・『特に大事なのは「良好な夫婦関係」 尊敬や信頼は、社会的結末を共有する際にも効果を発揮する。 「親子で先生に呼び出された際に、先に謝るのは子どもではなく保護者である場合が多いでしょう。なぜなら呼び出されて困るのは、子どもではなく親なわけですから。ただし、そうした場面でも子どもからの尊敬や信頼が強ければ強いほど、『親に迷惑がかかるから、同じ失敗は避けよう』と子どもは考えるのです。 最後に、私は夫婦そろって受診にいらしたケースでは、決まって良好な夫婦関係の再構築をお願いしています。言うまでもなく、子どもにとって両親はどちらも大切な存在です。そして、子どもはそんな二人が仲睦まじく生活する姿を通して、両親への尊敬や信頼を深めるからです」 コロナによって社会の様式やルールが刷新された。保護者自身、子どもとの向き合い方をバージョンアップする局面を迎えている』、本題とは離れるが、最近、シングル・マザーが子育てに苦労しているニュースをかなり目にする。「子ども」のためを考えたら、我慢してでも「夫婦関係」を続けてほしいものだ。

次に、6月19日付けYahooニュースが転載したPHPファミリー「「どうして泣き止まないの?」親が気づかない“子どもが癇癪を起こすワケ“」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/528e12fce5b72e6c794c2ccc897d7e181f872376?page=1
・『小さいお子さんを持つ多くの親御さんの頭を悩ませるのが「子どもの癇癪」。声が嗄れるほど泣き叫ぶ我が子を見て、「わたしが泣きたいよ...」なんて思ってしまうこともあるでしょう。 しかし、子どもの癇癪についてあまり理解できていない親御さんも多いのではないでしょうか。 「癇癪を起している子どもはどのような状態なの?」「泣き止むまではほっといていいの?」「成長とともに癇癪は収まるものなの?」「ウチの子もしかして発達障がいなんじゃ...」 小学校・幼稚園で勤務し、公的ボランティアを通して多くの親子と関わった経験を活かして、現在は執筆や講演、個別指導などで幅広く活動する田宮由美氏が、多くの親御さんを悩ませる「子どもの癇癪」を丁寧に解説し、その疑問に答えます。※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年6月号より転載したものです』、私も若い頃は「子どもの癇癪」に悩まされたものだ。
・『「子どもの癇癪」って?  声が嗄れるほど泣き叫ぶ。床に仰向けになって手足をバタつかせ、大声を出す。なかにはモノを投げたり、人や自分自身を傷つけたりするようなケースもある子どもの癇癪。 いったん気持ちが爆発すると、自分でコントロールができない状態になり、パニックに陥ったように泣く子どもに、親のほうが泣きたくなることもあるでしょう。 癇癪には個人差がありますが、概ね1歳を過ぎた頃から始まり、2~3歳がピークで、5歳くらいにはおさまると言われています。 2歳頃は第1次反抗期、いわゆるイヤイヤ期と重なり、本当に子育てが大変と感じる方が多いと思います』、いま思い出してもゾッとする。
・『「癇癪」は成長発達の一過程  癇癪を起こすのは「育て方が悪いから?」「愛情が不足しているのでは?」などと悩まれる親御さんもおられるかもしれませんが、これは自然な成長発達の一過程です。 ですので、親のほうがイライラして怒鳴りつけたり、子育てに自信を失くして落ち込んだりしないようにしましょう。正しく理解し、適切な対応法で上手に乗り切りましよう。 「望むモノが欲しい」「試してみたい」「かまってほしい」「今の情況が不快」などのとき、自分の思いどおりにしようとする気持ちから、癇癪は生じます。 幼い子どもは、身体機能や言語能力がじゅうぶんに発達していません。 そのため、やりたい行動が思うようにできなかったり、感情や伝えたいことをうまく表現できなかったりしてイライラし、怒りやストレスを抱えることがあります。 ですが、その怒りやストレスをどのように扱えばいいのか、どう対処すればよいのかが自分でも分からず、大声で泣いたり、モノに当たったりして表現している状態です。 そして、もう一つのポイントは、癇癪を起こしている子どもは、自分でも感情をコントロールできない状態であるということです。 生まれもった性格や環境などの影響もありますが、「思いどおりにならない」いら立ちからの爆発した感情を制御できない状態であることを理解しておきましょう』、その通りなのだろう。
・『年齢によってどう変わる?  赤ちゃんは「快・不快」の世界で生きていて、空腹やオムツが濡れて不快を感じれば、泣いて知らせ、親にお世話してもらうことで、「快」を得ます。同時に「安心」も感じることでしょう。 この「快」や「安心」は生きていくための本能で、それらが脅かされると必死で泣き叫びます。 やがて1歳頃から、身体機能が発達し行動範囲も広がり、自我が芽生え始めます。すると、さらに新しい世界への興味も湧き、見たい、触れたいという気持ちも高まってくることでしょう。 ですが、まだ危険の認識も浅く、親の「ダメ」という禁止の言葉に、「思いどおりにならない」という気持ちのいら立ちや、「親は自分を嫌いになったのでは?」という不安から癇癪を起こすことがあります。 2歳を過ぎると、簡単なコミュニケーションはとれるようになりますが、それらは未熟で、自分の要求や気持ちを思うように伝えられません。体も声も大きくなった2歳児の激しい癇癪も、5歳頃には徐々におさまってくると言われています』、なるほど。
・『手がつけられないときはどうする?  子どもが癇癪を起こすと、なかには親がその場を離れたくなることもあるかもしれませんね。 大声で泣き叫んでいる子どもには何を言っても聞こえないので、親が傍にいても同じ、「思う存分泣けば、いつかは泣き止むでしょう」と、子どもを放置するようなことはないでしょうか。 実は、この対応法はよくありません。子どもは幼い頃に、生きていくうえで心の基盤となる基本的信頼感(Basic trust)を構築しています。 泣き叫んでいるときの放置は、この妨げになったり、今後の人生にマイナスの影響を与える可能性があります。根気よく声をかけたり、しっかり抱きしめてください。 それでも、体を反らしたりし、手足をバタつかせ泣き叫ぶようでしたら、危険から回避させ、その場で見守るのもよいでしょう。 親のほうが疲弊するならば、少しの間は子どもから離れても大丈夫ですが、そのときは、たとえ聞こえなくとも「少し隣の部屋にいるね」など声をかけ、またすぐに戻ってくることを伝えてからにしましょう』、確かに「子どもを放置」すると、ますます泣き声が大きくなってしまったので、「放置」はしないことにした。
・『「発達障がい」ではないのか?  癇癪を起こす頻度が高い子どもに対し、発達障がいの可能性を疑う親御さんもおられるようですが、癇癪を何度も起こすことが、発達障がいとイコールで結びつくわけではありません。 しかし、発達障がいによって感情のコントロールが苦手な傾向にある場合、不満やストレスをどんどん蓄積させ、それが一気に爆発し癇癪を起こしやすくすることはあるでしょう。 また、言葉で伝えることがスムーズにいかなかったり、相手の気持ちや意図することを察知するのが苦手な傾向にあったりする場合も、コミュニケーションがうまくとれないことや、相手への誤解から自分のしようとすることを妨げられたと思い、癇癪を起こすことがあるでしょう。 このように、発達障がいの子どもによく表われる特徴が、癇癪を起こしやすくしていることはあると思います。ですので、親はこれらの要因や特徴、また子どもの日常の他の行動をよく観察し、不安がある場合は、専門医を訪ねられることをおすすめします』、私の「子育て」時代には「発達障がい」といった概念はなかった。
・『親からの言葉は積極的に届けてあげて  1歳くらいの場合、まずは子どもが不快だと感じる要因、たとえば排せつの有無や空腹、室温などをチェックし、原因を取り除きましょう。 それでもおさまらなければ、子どもを抱きかかえ、その場所から離れましょう。周囲の雰囲気が変わると、気持ちにも少し変化が現われることがあります。 そのとき、背中をトントンと叩き、気持ちを落ち着かせるように静かに語りかけ、「~したかったのね」「寂しかったのね」など、子どもの気持ちを代弁し、寄り添うような言葉をかけてみてください。 すると親の声が届くことがあります。そして必ず、「頑張って泣き止んだね」「お母さんの声が聞けたのね」など、気持ちを落ち着かせたことをほめてあげましょう。 2歳頃からは、癇癪も激しくなり、壁や床に体をぶつけるような行為もみられたりしますので、その場合は、クッションを挟む、危なくない場所に移動させるなど、身の安全を確保してから、落ち着かせる関わりをしてください。 言葉でコミュニケーションがとれるようになれば、癇癪を起こした原因についても話してみるとよいでしょう。危険が及ぶこと、人や自分に迷惑や危害を与えるようなことは、「絶対にしてはいけない」と伝えてください。 やってみたいことや欲しいものがある場合は、「次はあなたにお願いするね」「次のお誕生日に買おうね」など約束をするとよいでしょう。 また「お店のお菓子を全部買って」など無理難題を言う場合は、寂しさや親の関わりの希薄さが根底にあるかもしれません。日常生活を見直してみましょう』、「背中をトントンと叩き、気持ちを落ち着かせるように静かに語りかけ、「~したかったのね」「寂しかったのね」など、子どもの気持ちを代弁し、寄り添うような言葉をかけてみてください」、確かに効果がありそうだ。
・『癇癪を起こすのは親を信頼している証  癇癪を起こす子は、がまんできない子、躾がされていない子、というイメージをもたれる場合もありますが、 実はそうではなく、日頃から厳しすぎる躾や過度な期待で我慢を強要され続けたり、欲求を抑圧されている子どもがストレスを溜め込み、一気に爆発させたりするケースが多いでしょう。 癇癪は、いつまでも続くわけではありません。子どもが順調に成長していること、また親を信頼して感情をぶつけていることなどをポジティブに考え、できるだけおおらかな気持ちで乗り切りましょう』、「癇癪を起こすのは親を信頼している証」、「子育て」時代に知っていれば、気持ちが楽になったろう。

第三に、7月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したWebディレクター兼ライターの浅野友美氏による「毒親育ち、アダルトチルドレン…日本で急増する「生きづらさ」を感じる人の特徴」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/276176
・『「アダルトチルドレン」という言葉をご存じでしょうか。これは「子ども時代に、親との関係で何らかのトラウマを負ったと考えている成人」のことで、一定数居ます。その性格はさまざまで、「アダルトチルドレンはこう」と定義づけるのは難しいと言われています。やっかいなのは、ある程度の年齢にいたるまで「自分の家庭が普通じゃない」とは気付かないこと。アダルトチルドレンになる原因もさまざまですが、子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす「毒親」が原因になるケースもあります。今回は、なんとなく生きづらさを抱えながら、気付けば大人になってしまった「アダルトチルドレン」「毒親育ち」についてご紹介します』、興味深そうだ。
・『アダルトチルドレンの6つのタイプ  「アダルトチルドレン」はもともと、アルコール依存症の親のもと、機能不全家族の中で育った人の事を指す言葉です。現在では広く、過保護やDVなど家庭環境の問題や親との関係の中でトラウマを抱え、大人なった人をアダルトチルドレンと呼ぶようになっています。 医学的な診断などはないと言われており、こういった家族における親を「毒親」と呼ぶこともありますが、「毒親育ち=アダルトチルドレン」とも言えません。加えて毒親と言っても目に見えてわかる虐待やネグレクトだけでなく、精神的な虐待や圧力、過保護や過干渉を行う親、子どもをコントロールするような親など家庭によってさまざまです。 アダルトチルドレンには「6つの役割(タイプ・性格)」があるとされており、幼い頃から自分を守ためにある一定の型にはめて自分を演じたり、自然とそうなったりというケースが多いようです。具体的には下記の6つとなりますが、実際にはさらに細分化することもあり、必ずしも下記のパターンに当てはまるとは限りません。 +ヒーロー(期待に応えたいという一心で頑張る) +スケープゴート(問題行動を起こし、家庭内の問題で居続ける) +ロスト・ワン(極力目立たず、一人で静かにすごす) +プラケーター(感情を殺し、家族のケアをする) +クラン(わざとおどけて、恐怖感や悪い雰囲気をごまかす) +イネイブラー(過剰に他人の世話を焼く) こういった特徴を持っていると、大人になった時に生きづらさを感じる局面に遭遇しやすいと言えます。しかし、そもそも「自分はこういうタイプだ」と理解して大人になるパターンは少なく、「なんだか生きづらい」と感じてから「もしかしたら家庭が原因かも…」と気付くことも多いでしょう』、私の場合、「アダルトチルドレン」ではないのかも知れないが、このなかでは「ヒーロー」が当てはまりそうだ。
・『アダルトチルドレン・毒親育ちが感じる「生きづらさ」の5つの特徴  では実際に毒親に育てられ、そのまま大人になるとどうなるのでしょうか。ここでは、自分はアダルトチルドレンなのかも?毒親育ちなのかも?と気付くきっかけとなるような、日々感じる生きづらさについてご紹介します。※あくまで一例で個人差がありますので、参考としてお読みください。 (1)「とりあえずやる」ができない完璧主義者(常に「正解」を親に決められてきたからか、自分道を決めて踏み出したり合っているかわからない道に進んだりするのが苦手です。「完璧でなければ」という意識が邪魔をして、何もできないまま時間がたってしまうことが頻繁にあります。例えば「資格をとるべきかそうでないか」と考えすぎて何年もたつ、「明日の飲み会に参加すべきかしないべきか」を考えすぎて一日中悩んでしまうなどです。 (2)常に何かに追われている気がして、何も楽しめない(「息抜き」や「無条件に楽しむ」ことが苦手なのも、アダルトチルドレンの特徴のひとつです。とにかく常に頭の中に「タスクをこなさなければ」「こんな事をしていていいのか」と考えが巡っていて、メリハリをつけるのが苦手なのです。例えばせっかくの休日にも仕事の事が気がかりで遊びに没頭出来ず、過剰に仕事に精神をむしばまれてしまうことなどがあります。何もできずに一日が終わった日などは、自身を勝手に責めて立ち直れなくなることもあるでしょう。 (3)他人が気になるあまり、何も出来ない(親の顔色をうかがって育ってきたからか、過剰に他人からの評価や顔色が気になることも「自分は他人と違うかも」と考えるきっかけになります。仕事中に過剰に周りの言動や行動が気になったり、大勢の前での発表の際に言いたい事が言えなかったりすることはありませんか?発言や行動に慎重になりすぎて空回りし、相手に理解されにくかったりすることや、自分の過去の発言に対して酷く後悔する事、悩みすぎて思うように行動ができないことも「生きづらさ」の特徴の一つです。 (4)本当の自分が何かわからない(前述の「周りが気になる」「何かに追われている気がする」ことも相まって、自分の意思や感情が自分でもわからなくなる時があります。ただ、ある程度この状況に慣れてくると「何がしたいの?」「何が好きなの?」と聞かれた時に答えられるよう、とりあえず暫定的に自分の意見を決めておく傾向も増えてきます。 しかしその「仮の気持ち・意見」を決めてしまうことにより、ますます心の底で自分が何を望んでいるかがよくわからなくなることも。すると、時によって考え方が変わり、自分が何を考えているのかがわからなくなってしまいます。例えば主体性・自己分析を求められる就活などでは、自分の考えや価値観を明確に判断出来ないため、非常に苦労する方もいるでしょう。 (5)過剰な自己嫌悪を繰り返す(“自分への期待度が高いわりに何もできていない”、と自己嫌悪に陥る頻度が非常に高いことも、特徴のひとつと言えるかもしれません。悩んでも仕方ないことでも、思うようにいかなかったことや頑張れなかったことについて考え始めると、いつまでも悩み続けてしまう傾向があります。 例えば、事前に立てた一日のスケジュールが遂行できなかった場合、翌日以降のスケジュールを夜通し立て直してしまうことなども。他には「自分はこうなれるはずだ」と高い目標を立てたものの、すぐに現実との差に気付いて落ち込むことも。ある意味、自身を過大評価しすぎていて、無駄に落ち込んでしまっているとも言えるでしょう』、私の場合、どちらかというと(1)と(5)のけがある。
・『自分や家庭の特徴を言語化し俯瞰して捉えてみよう  前述した「アダルトチルドレンかも」と気付くポイントや特徴は、人それぞれです。すべての人に当てはまるわけではありませんし、当てはまってもアダルトチルドレンとは限りません。加えて、毒親が原因かどうかも家庭によって異なります。 大抵はある程度の年齢になるまで自身の家庭が普通じゃないことや、自身がアダルトチルドレンかもしれないことには気付くことができません。なんとなく「生きづらさ」を抱えていても、とくに表立った虐待などを受けていない場合は我慢をし続けてしまい、「何がおかしいのか」に気付くのは難しいでしょう。 もし今生きづらさを抱えているのであれば、自身の育った環境を一度客観的に俯瞰(ふかん)して捉えて見ることが大切です。そこで新たな気付きがあり、「自分はアダルトチルドレンかも」「自分の親は毒親かも」と認識することで、心が少し落ち着いたり解決方法が見えてきたりする場合もあります。自分が悪い、周りのせいにしてはいけない、と考えすぎずに敢えて自分や家庭の特徴を言語化してみるのもいいでしょう。 今回は、「アダルトチルドレン」と「毒親育ち」についてご紹介しました。いずれも自然に知るのは難しいワードで、何らかのタイミングで気付いて調べなければ「自身の性格がおかしいのではないか」と考えて続けてしまう事も多いかもしれません。生きづらさの理由を知ることで、少しでも心が楽になる道筋を見つけていきましょう』、そのうち「自分や家庭の特徴を言語化し俯瞰して捉えてみよう」、を試してみるつもりだ。
タグ:子育て (その4)(「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情 「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状、「どうして泣き止まないの?」親が気づかない“子どもが癇癪を起こすワケ“、毒親育ち アダルトチルドレン…日本で急増する「生きづらさ」を感じる人の特徴) 東洋経済オンライン 我妻 弘崇 「「怒りっぽい子ども」が増加している悲しい事情 「義務教育を放棄する中学生」まで現れだす現状」 「子ども」たちだけでなく、「その保護者」にも「中等度以上のうつ症状がみられた」とは驚きだ。 「一部の子どもは『学校は休んでも問題がないのでは』と疑い始めているのです」,「義務教育という、ある種の洗脳が解けてしまった。学力が低下することを危惧する保護者もいます」、困った現象だ。 「子ども」から「「義務教育というのは子どもが学校へ行く義務ではなくて、親が子どもに教育を受けさせる義務であって、子どもの義務ではない」、などと「正論を展開」されたら、返す言葉に詰まってしまう。 「『ゲームの時間を守らせたいなら、親も帰宅したらスマホをいじらない』『家で勉強させたいなら、まずは親が読書や勉強をする』『早く寝かせたいなら、親も一緒に早く寝る』というように説得力をともなわなければいけません」、「親」がまず行動で示すというのは言うは易く、実行は困難だ。 「「社会的結末を共有すれば、子どもは考えるきっかけを得ることができます。しかし、その共有もせずに親の言いつけを守らせたい気持ちは『親のコントロール願望』」と言えます」、手厳しい指摘だ。 本題とは離れるが、最近、シングル・マザーが子育てに苦労しているニュースをかなり目にする。「子ども」のためを考えたら、我慢してでも「夫婦関係」を続けてほしいものだ。 yahooニュース PHPファミリー 「「どうして泣き止まないの?」親が気づかない“子どもが癇癪を起こすワケ“」 私も若い頃は「子どもの癇癪」に悩まされたものだ。 いま思い出してもゾッとする。 その通りなのだろう 確かに「子どもを放置」すると、ますます泣き声が大きくなってしまったので、「放置」はしないことにした。 私の「子育て」時代には「発達障がい」といった概念はなかった。 「背中をトントンと叩き、気持ちを落ち着かせるように静かに語りかけ、「~したかったのね」「寂しかったのね」など、子どもの気持ちを代弁し、寄り添うような言葉をかけてみてください」、確かに効果がありそうだ。 「癇癪を起こすのは親を信頼している証」、「子育て」時代に知っていれば、気持ちが楽になったろう。 ダイヤモンド・オンライン 浅野友美 「毒親育ち、アダルトチルドレン…日本で急増する「生きづらさ」を感じる人の特徴」 私の場合、「アダルトチルドレン」ではないのかも知れないが、このなかでは「ヒーロー」が当てはまりそうだ。 私の場合、どちらかというと(1)と(5)のけがある。 そのうち「自分や家庭の特徴を言語化し俯瞰して捉えてみよう」、を試してみるつもりだ。
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電機産業(その4)(相次ぐ幹部の慎重論に「新旧社長」が下した決断 パナソニック、逆風の社内で7800億円買収の攻防、現場を見て「腹落ちした」自らのビジョンとの関係 パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中、日立グループ再編「最後の抵抗勢力」を攻略 新社長の日立ハイテク“操縦術”) [産業動向]

電機産業については、6月26日に取上げた。今日は、(その4)(相次ぐ幹部の慎重論に「新旧社長」が下した決断 パナソニック、逆風の社内で7800億円買収の攻防、現場を見て「腹落ちした」自らのビジョンとの関係 パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中、日立グループ再編「最後の抵抗勢力」を攻略 新社長の日立ハイテク“操縦術”)である。

先ずは、8月16日付け東洋経済Plus「相次ぐ幹部の慎重論に「新旧社長」が下した決断 パナソニック、逆風の社内で7800億円買収の攻防」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27804
・『アメリカのソフトウェア企業買収を決断。M&Aに失敗し続けた過去から脱し、長年の停滞を抜け出せるか。 2021年にアメリカのソフトウェア企業「ブルーヨンダー」を71億ドル(約7800億円)で買収するパナソニック。しかし、巨額買収で失敗した過去の歴史を記憶している社内の役員らの間では反対する声が大きかった。 2020年秋以降の買収の議論が本格化した期間は、2021年6月の社長交代が決まった時期とも重なる。長引く業績停滞からの脱却を探る、新旧それぞれの社長がブルーヨンダーに懸けた狙いは何か。 パナソニック経営陣が買収を決断するに至った内幕に、前編・後編で迫る』、興味深そうだ。
・『短期間で迫られた決断  6月の定時株主総会を経てパナソニックの社長となった楠見雄規氏は社長就任前の1月、法人向けシステム事業を担う社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ(CNS)の現場視察や、幹部らとの意見交換に回っていた。 「おまえが反対するなら俺はやらん」 2020年10月末に社長の内示を受けた後、津賀一宏社長(当時)からそう告げられた楠見氏。判断を委ねられたのは、サプライチェーンマネジメントを手掛けるアメリカのソフトウェア企業・ブルーヨンダーの買収だ。買収金額は71億ドル(約7800億円)に上る。 楠見氏が社長の内示を受けたときの肩書は車載事業のトップ。技術者としてテレビなどAV機器の開発に携わった経験も過去にはあるが、ブルーヨンダーが直接関係する法人向けシステム事業については「他人事」だった。 「たくさんお金を使うんだな」。社内会議でブルーヨンダーの買収をめぐる議論が出ても、当時の楠見氏の認識はその程度だった。 それが次期社長に決まって早々、「反対するかしないか短時間で」(楠見氏)決断を迫られ、買収が会社の成長に資するものか否か、見極めが急務となっていた』、「車載事業のトップ」であれば、「たくさんお金を使うんだな」で済むが、「次期社長」となれば、「「反対するかしないか短時間で」(楠見氏)決断を迫られ」るのはやむを得ない。
・『買収主導の役員の焦り  その楠見氏に現場を見るよう勧めた人物がいる。CNS社のトップであり、買収の窓口役でもあった樋口泰行(注)代表取締役専務だ。 樋口氏は「横からバイアスをかけるようなことはせず、プレーンに(先入観なく、ブルーヨンダーとの協業が進む各事業を)見てもらいたかった」と振り返る。 が、樋口氏の内心は焦りに駆られていた。かねてブルーヨンダーの完全買収を狙っていた樋口氏にとって、当時のパナソニックやブルーヨンダーの社内を覆う雰囲気はまさしく逆風だった。 パナソニックは2020年5月、8億ドル(約860億円)でブルーヨンダーの株式を20%取得すると発表。すでにこの時点で、樋口氏は完全子会社化を求めていた。パナソニックに知見が足りないソフトウェア技術を取り込み、得意のハードウェアと組み合わせることでシナジーを出し、ハードウェアに依存するパナソニックの収益構造を転換する一手になると確信していたからだ。 だが、樋口氏の狙いはかなわなかった。パナソニックは1990年代前半、映画会社のMCA(現・NBCユニバーサル)を買収した際にシナジーをうまく生み出せず、4年後に株式の大半を手放した(上図)。こうした過去の失敗が脳裏に浮かぶ社内の幹部らの反発は、あまりに大きかった。 一方、新型コロナウイルスの流行で世界ではサプライチェーンが寸断されるなどの事態が相次ぎ、サプライチェーンに対する企業の関心は高まった。ブルーヨンダーは、人工知能を活用した製品の需要や納期を予測するソフトウェアを開発し、企業の生産や在庫、物流の管理を効率化する支援を行う。同社が手掛けるような、サプライチェーン関連のソフトウェアの需要拡大への期待は高まっていった。 2020年7月に20%の株式取得が完了後も、ブルーヨンダーの既存株主であるファンド2社はIPO(新規株式公開)で高値がつくと強気の姿勢を示し、ブルーヨンダー社内はIPOに向けた議論を本格化させていた。 「上場していたら、(買収金額が)110億~130億ドルまで上がったかもしれない」(樋口氏)。社内はただでさえ巨額買収に尻込みしているのに、さらに金額が上がれば、買収は困難になる。樋口氏に、社内の説得に回る時間的猶予はなくなっていた。 樋口氏はパナソニックの幹部が集まるグループ戦略会議で、ブルーヨンダーの完全買収を再び提案することにした。 「樋口さんのコミットメント(責任)について書かれていないと通りませんから、(資料に)書いておきます」。CNS社の原田秀昭上席副社長は買収に関する会議用の資料を作成する際に、樋口氏に耳打ちした。同意した樋口氏は「自分が全責任をとる」と覚悟を決め、会議に臨んだ』、「樋口氏」は責任感が強いプロ経営者だ。
(注)樋口泰行:パナソニックからハーバード・ビジネス・スクールでMBA、日本ヒューレットパッカード社長、ダイエー社長、マイクロソフト日本のCOOを経て、パナソニックに復帰という異色の経歴(Wikipedia)。
・『焦点となった楠見氏の意向  2020年12月、いよいよブルーヨンダー買収の議論が本格化する中、津賀社長(当時)はCNS社の坂元寛明副社長の説明に耳を傾けていた。津賀氏は、パナソニックの経営陣の中で真っ先に買収への理解を深めた1人だった。 【2021年8月16日9時27分追記】坂元寛明氏の漢字表記を上記の通り修正いたします。 坂元氏が率いるモバイルソリューションズ事業部では、主力製品であるパソコン「レッツノート」などのサプライチェーン管理でブルーヨンダーのソフトウェアを導入していた。 導入により、業務効率がいかに改善したか。坂元氏は役員会議室の壁に、その効果を図表で示したポスター大の紙を貼り付け、津賀氏にブルーヨンダーの重要性を力説した。 多くの幹部が異議を唱える中、津賀氏は早くから買収の必要性を感じていた。 2012年に社長に就任して以降、津賀氏はBtoCが主体だったパナソニックの成長戦略にBtoB強化を据えた。柱の1つが、CNS社が中心に展開するソリューション事業だったが、その成功にはブルーヨンダーが持つようなソフトウェア技術が不可欠と在任期間中に痛感していた。坂元氏の説明を聞いて、パナソニック社内の改革につながることも理解した津賀氏はブルーヨンダー買収への自信を深めた。 しかし、仮にブルーヨンダーの買収が実現したとしても、その時点でパナソニックを率いる社長は楠見氏になる。社内の合意を得るうえで、まず楠見氏が納得するかが焦点となった。津賀氏は坂元氏の話を聞くよう、楠見氏に勧めた』、自分の意見を押し付けない「津賀氏」も大したものだ。

次に、この続き、8月16日付け東洋経済Plus「現場を見て「腹落ちした」自らのビジョンとの関係 パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27814
・『アメリカのソフトウェア企業買収を決断。M&Aに失敗し続けた過去から脱し、長年の停滞を抜け出せるか。 2021年にアメリカのソフトウェア企業「ブルーヨンダー」を71億ドル(約7800億円)で買収するパナソニック。しかし、巨額買収で失敗した過去の歴史を記憶している社内の役員らの間では反対する声が大きかった。 2020年秋以降の買収の議論が本格化した期間は、2021年6月の社長交代が決まった時期とも重なる。長引く業績停滞からの脱却を探る、新旧それぞれの社長がブルーヨンダーに懸けた狙いは何か。 前編では、買収の主導者として社内の説得に走った樋口泰行代表取締役専務の焦燥や、津賀一宏前社長が買収の必要性を確信した経緯を追った。後編となる今回は、巨額買収に同意した楠見雄規新社長の心中に迫る』、興味深そうだ。
・『新社長が見た2つの現場  2020年10月末に社長の内示を受けた後、前社長の津賀氏に「おまえが反対するなら俺はやらん」と、ブルーヨンダー買収の判断を委ねられた楠見氏。津賀氏や買収の窓口役だった樋口氏の助言を受け、樋口氏がトップを務める社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ(CNS)社を2021年1月に視察した。 楠見氏がそこで見たのは、ブルーヨンダーのソフトウェアを実際に導入したモバイルソリューションズ事業部と、製造や物流現場の効率化に向けたソリューションを提供する「現場プロセス」事業だった。 パソコン「レッツノート」の製造などを手がけるモバイルソリューションズ事業部では、製品の在庫や部材調達の状況、受注動向、納期などについて、神戸や台湾といった各工場の状況がリアルタイムでシステム上に表示されていた。 ブルーヨンダー導入前は、在庫や部材調達の動向に関する情報収集に追われて現場の社員が疲弊し、会議も状況を報告するだけの場と化していた。 それがブルーヨンダー導入後は、各工場の情報などを自動で細かく把握できるようになり、廃棄や評価減の対象となる在庫を導入前より1割削減できたほか、業務効率化の効果も表れ始めていた。 一方の現場プロセス事業は、センサーや画像認識技術を用いて製造や物流、小売りの各現場の状況を把握し、顧客企業に最適な業務フローや人員配置などのソリューション提案を行っている。 楠見氏は事業を担当する幹部らから、ブルーヨンダーのソフトウェアを導入したり、組み合わせたりすることにより、事業強化を図ることができるとの説明を受けた。 それぞれの現場を見終えた楠見氏は、ブルーヨンダー買収と自らが考える会社の成長ビジョンがいかに関係するものか、「腹落ちした」(楠見氏)という。』、社内で「ブルーヨンダー」を「導入」したのは格好のテストになり、「楠見氏」が「腹落ちした」のは何より説得力がある。
・『再成長に見いだした2本の柱  社長の内示を受けて以降、楠見氏は業績停滞の長引くパナソニックを再び成長軌道へと乗せるための糸口について思いをめぐらせてきた。着目したのが、現場力の強化と、環境問題への対応だった。 【2021年8月16日12時12分追記】初出時の図表表記に一部誤りがありました。お詫びの上、上記のように修正いたします。 現場の社員1人ひとりが日々、自分の業務について改善を重ねるのが現場力だが、最近のパナソニックの社員について楠見氏は「決められた仕事は真面目にやるが、それをさらに改善させることがおざなりになっていた」と指摘。「思考停止とまでは言わないが、1人ひとりが考えることが薄れてきている」(楠見氏)と危機感をにじませる。 他方で、楠見氏が再成長に欠かせない分野と考えたのが環境問題だ。 かつて創業者の松下幸之助は会社経営の使命として、蛇口をひねれば水道水が出るように、安価で良質なモノを提供する「水道哲学」を掲げた。根底には、「精神的な安定と物資の無尽蔵の供給が相まって初めて、人生の幸福が安定する」という考えがある。 現代では、多くの先進国や新興国はモノにあふれている。しかし楠見氏は「環境破壊や天然資源の枯渇を考えれば、次の世代まで豊かな生活が送れるか大きな不安がある」と考え、環境問題の解決につながる事業こそ「パナソニックの使命」と解釈した。 楠見氏なりに再成長の糸口を見いだし始めた過程で視察した、ブルーヨンダーと関連する事業の現場。それは自らのビジョンを実現するためにも、買収が必要と確信させるものだった。 視察を終えた楠見氏はブルーヨンダーの買収に同意することを決断。2021年4月の買収発表会見に、樋口氏とともに臨んだ。そこに当時社長だった津賀氏の姿はなかった』、後任者へのプレッシャーを減らそうとする「津賀氏」の動きもさすがだ。
・『現場の無駄撲滅で会社を変える  パナソニックは工場や倉庫などで作業状況を把握するための機器を開発し、ブルーヨンダーはこうした機器を使って得たデータを活用するソフトウェアを持つ。両社の技術を組み合わせて無駄な作業や在庫を撲滅すれば、パナソニックが失ってきた、現場のオペレーション力を高められる。楠見氏は「パナソニックを変えるための投資だ」と強調する。 「パナソニックをショーケースとして顧客に見せるなど、(ソリューション事業の)営業で使える」と樋口氏が展望するように、社内の改革は、津賀前社長の時代から強化してきたBtoB事業拡大への弾みにもなる。 不要な生産や物流プロセスなどを抑制するノウハウやソリューションを世界の企業に提供できれば、環境問題の解決につながる。ブルーヨンダー買収と楠見氏が見据える成長ビジョンは、ここでも方向性が合致する。 パナソニックがブルーヨンダー買収を通じて最終的に描くのは、「オートノマス(自律的な)サプライチェーン」という壮大な未来だ。サプライチェーンの上流から下流まで、ソフトウェアと現場に設置したデバイスやセンサーを連携させ、自動運転のようなオペレーション体制の構築・提供を目指す』、「ブルーヨンダー買収を通じて最終的に描くのは、「オートノマス・・・サプライチェーン」という壮大な未来だ」、これは夢物語に近い印象も受ける。
・『顧客拡大には障壁も  もっともパナソニックとブルーヨンダーが手がけるソリューションを導入する顧客が、どれほどの勢いで増えるかは未知数だ。 IT分野への理解が欧米より遅れている国内で、ブルーヨンダーのソフトウェアを提案することはとくにハードルが高い。パナソニック社内でも「本当に自分の事業に(ブルーヨンダーの)ソフトウェアを導入する必要があるのか」(家電部門幹部)と疑問視する声も一部にあり、今も理解が十分得られているわけではない。 買収を主導した樋口氏自身、「日本(企業での導入)はものすごく障害が大きい」と認め、「先進的な考え方を持つ顧客と成功事例を重ねることが大事」と話す。 すでにブルーヨンダーの顧客基盤がある欧米でも、パナソニックの技術力を組み合わせて他社と差別化できる「キラービジネス」(樋口氏)を開発できるかが、事業拡大の行方を左右する。 パナソニックは過去の買収で組織統合などに失敗した経験も踏まえ、ブルーヨンダーの経営の独立性を重視する方針を打ち出す。ただ買収に巨額を投じる以上、協業での成果をスピード感を持って生み出すことが当然求められる。 ブルーヨンダーの買収は2021年内に完了する予定。社内改革、環境分野での成長と一挙両得を狙う巨額買収で、パナソニックを再成長へと導けるか。楠見新体制は、早くも重責を担いスタートする』、「先進的な考え方を持つ顧客と成功事例を重ねることが大事」、なのは確かだ。「協業」が上手くいき、「パナソニック」び「再成長」につながってほしいものだ。

第三に、9月27日付けダイヤモンド・オンライン「日立グループ再編「最後の抵抗勢力」を攻略、新社長の日立ハイテク“操縦術”」を紹介しよう。
・:『週刊ダイヤモンド』10月2日号の第1特集は「日立財閥 最強グループの真贋」です。東芝、三菱電機、パナソニックなど日系電機メーカーが凋落する中、唯一気を吐いているのが日立製作所だ。デジタル化を軸にした同社の改革は本物だったのか、本当に世界で勝てる実力が付いたのか――。脱製造業のモデル、日立の真贋に迫ります』、興味深そうだ。
・『日立復活の裏に「二番底危機」や“虎の子上場子会社”の抵抗があった  日立製作所は、かつて「総合電機」を名乗っていたパナソニックや東芝に比べて、頭一つ抜けた存在になった。 リーマンショック後の2009年3月期決算では、7873億円という日系製造業史上で過去最大の最終赤字に沈んだが、そこからV字回復を果たし、現在の時価総額は4倍超に達している。 (日立製作所の歴代社長とパナソニック、三菱電機と比べた時価総額の推移はリンク先参照) 日立は収益力を改善しただけではない。事業の買収と売却を繰り返して、旧来の製造業からデジタル技術を使ったソリューション事業へと本業をシフトしてきたのだ。 しかし、日立の改革は外部から見えているほどには順風満帆ではなかった。 東原敏昭会長兼CEO(最高経営責任者)は14年に中西宏明氏から社長を引き継いだ後、社内の実態を知るにつけ、「このままでは日立がもう一回赤字になるという危機感をひしひしと感じていた」とダイヤモンド編集部の取材に対して明かしている。 リーマンショック後、倒産の危機を経験したばかりにもかかわらず、他人に任せておけば何とかなるという弛緩した意識が蔓延。「大企業病が払拭できておらず、いわゆる茹でガエル状態だった」(東原氏)というのだ』、なるほど。
・『カリスマでも崩せなかった牙城 日立ハイテクの支配権握った新社長  順調に見えた日立グループの組織再編でも、グループ企業から強い反発を受けてきた。抵抗勢力の1つが、“虎の子上場子会社”だった日立ハイテクである。 あまり知られていないが、デジタル化とのシナジーが見込めない事業の売却を進めていた中西氏は日立ハイテクの経営陣に、「半導体装置事業は外へ出したほうがいい」と呼び掛けていた。 しかし、日立ハイテクは中西氏の提案には従わなかった。同社は日立グループの中でも独立心が強く、利益も出ていたため、親会社の意向を無視するだけの「力」があったのだ。 中西氏といえば、日立のV字回復の立役者であり、社内での求心力を高めていたところだった。そのカリスマ経営者をもってしても、日立ハイテクの牙城は切り崩せなかったのである。 日立グループにはリーマンショック前、22社もの上場子会社があった。同グループは自立心が強い独立王国の集合体であり、日立本体もそれを良しとしていた。 だが経営危機後、川村隆、中西、東原の歴代3社長は、子会社が低収益事業を温存することを防ぐために経営のグリップを強め、中央集権化」といえどもにかじを切った。 中央集権化の成果の一つが、子会社の統合や売却である。とりわけ上場子会社については、親会社である日立と少数株主との間に利益相反が起きやすい。そのため、売却するか完全子会社化するかの経営判断は急務でもあった。 日立ハイテク(注)は最後に残った上場子会社4社のうちの1社。日立ハイテクの組織再編は、日立にとって、大きな懸案の一つだったのだ。 そして、その「手ごわい子会社」を説得し、ついに完全子会社化を実現したのが、6月に日立社長に就任した小島啓二氏である。 結果的に、日立ハイテクは切り売りされるのではなく、日立本体に取り込まれることになった。それでも、日立ハイテクの社員に平穏な日々が訪れるわけではない。 日立は、完全子会社化によって日立ハイテクの支配権を手にした上で、構造改革を行おうとしているのだ』、「子会社」といえども上場会社であれば、親会社の思うようにはいかないのは当然だ。
(注)日立ハイテク:2001年、エレクトロニクス専門商社である日製産業と日立製作所計測器グループ、同半導体製造装置グループが統合し誕生(同社HP)。
・『社長交代、米IT企業巨額買収で共通するパナソニックと徹底比較  『週刊ダイヤモンド』10月2日号の第1特集は「日立財閥 最強グループの真贋」です。 特集では、日立製作所が完全子会社化した日立ハイテクで行おうとしている構造改革の全貌を解明。 また、日立と同時期に米IT企業の巨額買収と社長交代を行ったパナソニックや、デジタルトランスフォーメーション(DX)事業で先行する独シーメンスといった競合他社との実力差を明らかにします。 日立は、低収益事業やデジタル化と相性の悪い事業を売却し、DX事業で世界に打って出られる事業ポートフォリオを構築しました。そこに到るまでには売却されたグループ会社社員らの痛みや苦しみがありました。 小島新社長が、歴代社長から受けたバトンは極めて重いものがあります。「世界のDX市場でグローバル大手に勝つ」という日立の悲願に向けて走り始めた小島氏が大ゴケすれば、リーマンショック後の日立の努力は水の泡になってしまいます。 それだけではありません。日立の戦略が頓挫すれば、「脱製造業」化に舵を切り、デジタル技術を使ったソリューションを提供するという国内製造業の生き残りシナリオに疑問符が付くことにもなます。 『週刊ダイヤモンド』10月2日号の第1特集は、国内製造業の“最後の砦”、日立の事業構造改革の真贋に総力取材で迫りました』、「「脱製造業」化に舵を切り、デジタル技術を使ったソリューションを提供するという国内製造業の生き残りシナリオ」、「日立」に限らずどこかが成功して「生き残りシナリオ」を示してほしいものだ。
タグ:電機産業 (その4)(相次ぐ幹部の慎重論に「新旧社長」が下した決断 パナソニック、逆風の社内で7800億円買収の攻防、現場を見て「腹落ちした」自らのビジョンとの関係 パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中、日立グループ再編「最後の抵抗勢力」を攻略 新社長の日立ハイテク“操縦術”) 東洋経済Plus 「相次ぐ幹部の慎重論に「新旧社長」が下した決断 パナソニック、逆風の社内で7800億円買収の攻防」 「車載事業のトップ」であれば、「たくさんお金を使うんだな」で済むが、「次期社長」となれば、「「反対するかしないか短時間で」(楠見氏)決断を迫られ」るのはやむを得ない。 「樋口氏」は責任感が強いプロ経営者だ。 (注)樋口泰行:パナソニックからハーバード・ビジネス・スクールでMBA、日本ヒューレットパッカード社長、ダイエー社長、マイクロソフト日本のCOOを経て、パナソニックに復帰という異色の経歴(Wikipedia)。 自分の意見を押し付けない「津賀氏」も大したものだ。 「現場を見て「腹落ちした」自らのビジョンとの関係 パナ新社長「就任目前」で巨額買収に同意した胸中」 社内で「ブルーヨンダー」を「導入」したのは格好のテストになり、「楠見氏」が「腹落ちした」のは何より説得力がある。 後任者へのプレッシャーを減らそうとする「津賀氏」の動きもさすがだ。 「ブルーヨンダー買収を通じて最終的に描くのは、「オートノマス・・・サプライチェーン」という壮大な未来だ」、これは夢物語に近い印象も受ける。 「先進的な考え方を持つ顧客と成功事例を重ねることが大事」、なのは確かだ。「協業」が上手くいき、「パナソニック」び「再成長」につながってほしいものだ。 ダイヤモンド・オンライン 「日立グループ再編「最後の抵抗勢力」を攻略、新社長の日立ハイテク“操縦術”」 「子会社」といえども上場会社であれば、親会社の思うようにはいかないのは当然だ。 (注)日立ハイテク:2001年、エレクトロニクス専門商社である日製産業と日立製作所計測器グループ、同半導体製造装置グループが統合し誕生(同社HP)。 「「脱製造業」化に舵を切り、デジタル技術を使ったソリューションを提供するという国内製造業の生き残りシナリオ」、「日立」に限らずどこかが成功して「生き残りシナリオ」を示してほしいものだ。
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