最低賃金(その2)(最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰、「年収200万円暮らし」炎上の裏で 最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌、最低賃金を巡る「大矛盾」 正社員増加でも解決しない問題の本質とは) [経済政策]
最低賃金については、昨年8月6日に取上げた。今日は、(その2)(最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰、「年収200万円暮らし」炎上の裏で 最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌、最低賃金を巡る「大矛盾」 正社員増加でも解決しない問題の本質とは)である。
先ずは、本年6月14日付けAERAdotが掲載した経産省出身の古賀茂明氏による「最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰」を」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2022060900046.html?page=1
・『岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の意味が分からない。 この言葉は、6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる骨太の方針)にも大きく掲げられたが、これを読んでもわかる人はほとんどいないだろう。 この骨太の方針で、「新しい資本主義」の1丁目1番地に掲げられたのが「人への投資と分配」だ。そのうち、人への「投資」については、3年間で4000億円使うと言うが、年平均では1333億円。防衛費を5兆円から10兆円にという話が進んでいるのに比べると、あまりに規模が小さい。あの日本経済新聞でさえ、8日の1面トップで「人への投資、世界水準遠く骨太方針決定」という見出しをつけ、落胆ぶりを露わにした。 一方、人への「分配」はどうか。「資産所得倍増」と掲げたので、我々の資産を「倍増」してくれそうなのだが、よく考えると、その元手がない人はどうなるのかがさっぱり見えない。唯一低所得層一般に確実にメリットがありそうなテーマが最低賃金の引き上げだ。そこで、骨太の方針に掲げられた最低賃金1000円という目標について、少し掘り下げてみよう。 実は、最低賃金の目標は、安倍晋三政権以来ずっと1000円のままだ。2016年度の骨太の方針では、年率3%程度引き上げて1000円を目指すとしていた。15年度の最低賃金798円をベースに毎年3%増やすと、23年度には1000円を超える計算だった。 この間、19年度の骨太の方針では、単に1000円を目指すのではなく、「より早期に」という言葉を書き加えて、目標達成の前倒しのニュアンスを出したが、1000円達成の年限は書いていない。 16年度の骨太の方針通りに進んでいれば、23年度、すなわち来年度には1000円に達するはずだから、「分配」を強調する岸田政権の骨太の方針では、本来は1年くらい前倒しして、今年22年度の改定で1000円達成と言ってもおかしくないはずだ。しかし、実際には、21年度が930円なので、7.5%の引き上げが必要になる。 岸田氏は、それは無理と諦めた。当初目標の23年度1000円なら、2年連続4%引き上げで何とかなるのだが、それすらも書かなかった。これでは、16年度の骨太の方針よりも後退したことになる。そこで、「できる限り早期に」という言葉を加えてお茶を濁した。本来なら、1000円どころか1500円を目指してもおかしくないのに、これが岸田氏の「新しい資本主義」における「分配」への「本気度」なのである。 もう一つ、重要なことを指摘しておこう。安倍政権直前の12年度の最低賃金は749円だったが、これは1ドル80円時代のことだから、ドル換算で9.4ドルだった。一方、仮に今すぐ目標である1000円を達成したとしても、現在の為替レート1ドル130円で換算すると7.7ドルだ。アベノミクスから新しい資本主義に入り、最低賃金は、国際的に見ると2割近く下がることになる。 こんな目標しか掲げられないなら「骨太の方針」ではなく、国民が「やせ細る方針」と名称変更した方がよい。自民党政権が続く限り、庶民の生活は貧しくなるばかり。来たる参議院選挙で、国民はこの流れを変えるための投票を行うべきだ』、岸田政権は、「最低賃金」に関してはこれまでの政権以上にやる気がないようだ。
次に、6月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305211
・『「最低賃金1000円」という言葉が自民党の公約から消えた 世界各国で着々と賃上げが進む中、日本だけで賃金の横ばいが30年続き、ついには平均給与で韓国にまで抜かれてしまった。さらに、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルも炎上したことも受けて、「なぜ日本の賃金はいつまでも上がらないのか」という議論が活発に行われている。 その「答え」がつい先日、これ以上ないほどわかりやすい形で国民に示された。6月16日に発表された、自民党の参院選公約である。 6年前から参院選のたびに掲げていた「最低賃金1000円」という数値目標がしれっと引っ込められたのだ。野党の多くは「1500円」など数値目標を掲げているのに、自民党はサクッともみ消したのだ。 岸田政権は「最低賃金1000円の早期達成」を打ち出している。6月7日に発表した「新しい資本主義実行計画工程表」の中にも、表の「枠外」ではあるが、「できる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指す」とちゃんと明記されている。にもかかわらず、岸田首相が総裁を務める自民党ではスルー。なぜこんなダブルスタンダードが起きるのか』、「最低賃金1000円」という言葉が自民党の公約から消えた」、とは初めて知った。
・『反対勢力のご機嫌取り国民の妥協こそ低迷の元凶 報道では、「公約に目標額を記載しなかった理由には直接答えず、労働者や企業側の代表者らによる審議会での議論に委ねる姿勢を示した」(東京新聞6月16日)ということだが、「選挙対策」であることは明白だ。 「最低賃金1000円」に反対する中小企業経営者の業界団体である日本商工会議所、全国商工連合会は自民党の有力票田だ。機嫌を損ねたら大勝できない。配慮のために引っ込めたと考えるのが自然だ。実際、2カ月前、日本商工会議所は「最低賃金に関する要望」を政府に届けて、「最低賃金の引上げを賃上げ政策実現の手段として用いることは適切でない」と自民にくぎを刺している。 そう聞くと、「まあ、政治は選挙に勝たないことには何もできないんだからある程度の妥協はしょうがないだろ」と感じる人もいるかもしれないが、実はその“妥協の構図”に日本が30年賃上げできなかった原因がすべて集約されている。 政府は世論の支持が生命線なので「最低賃金引き上げます!」と国民ウケのいいことを盛んにアピールするが、自民党としては中小企業団体からの選挙支援も大事なので、その裏で「実際はそんなに上げませんのでご安心を」と賃金引き上げの足を引っ張らざるを得ない。この「選挙での勝利と引き換えに最低賃金の引き上げをあきらめる」という妥協を、自民党政治家が30年以上も続けてきた結果が、「安いニッポン」である。 この構造は、同じく有力支持団体の日本医師会と自民党の関係を思い出していただければわかりやすい。新型コロナ感染拡大で公立病院などに患者が集中しても「町医者」がノータッチという問題や、「2類相当」の扱いがいつまで経っても見直されず結局ウヤムヤにされたのは、日本医師会が自民党の有力支持団体だからだ。政治力学的に自民党政権は、日本医師会が嫌がる「医療改革」ができないのだ。 賃金もこれとまったく同じことがいえる。世界では最低賃金の引き上げは国民生活を維持するためのメジャーな経済政策だが、日本ではいつまで経ってもウヤムヤにされている。自民党的に有力支持団体の逆鱗に触れる「NG政策」だからだ』、「最低賃金の引上げ」は「骨太の方針」には書き込んであるが、選挙公約からは外したは初めて知った。
・『各国で賃金は上がっているのに 日本は労働者、消費者を貧しくさせる こんな話をすると脊髄反射で、「最低賃金を大きく引き上げると、中小企業が倒産して失業者が大量にあふれかえるので、自民党は責任政党として慎重に判断をしているのだ」という反論する自民党支持者の方も多い。しかし、実はそういう珍妙なロジックを唱えて、最低賃金を引き上げない国は世界でもかなり珍しい。 例えば、米国のロサンゼルスでは7月1日から、最低賃金がこれまでの時給15ドルから16.04ドル(日本円で約2179円、6月22日現在)へと引き上げられる。これは中小零細だからと免除されるようなものではなく、全ての事業所が対象だ。また、法定最低賃金に物価スライド制が採用されているフランスでも、5月から最低賃金が10.85ユーロ(日本円で約1552円、同上)にアップした。オーストラリアの公正労働委員会も7月から現在の最低賃金20.33豪ドルから21.38豪ドル(日本円で約2006円、同上)に引き上げる。こちらも5.2%の引き上げ幅だ。 アジアも普通に最低賃金を引き上げる。ベトナム政府も7月1日から最低賃金を月額で全国平均6%引き上げる。これは世界的な物価高とかではなく「平常運転」で、20年1月1日にも平均5.5%引き上げている。マレーシアでも5月1日、地域により月額1000~1200リンギットだった最低賃金が全国一律で1500リンギット(約4万6305円)まで一気に引き上げられている。 これらの国々は、今回の世界的な物価上昇で慌てて賃上げをしているわけではなく、それ以前から継続的に最低賃金を引き上げているのだ。しかし、そこで日本のように、「最低賃金を引き上げたら倒産が増えて国内は地獄になる」みたいなヒステリックな終末論が叫ばれることはない。 もちろん、どの国でも反対する中小企業経営者はいる。しかし、物価が上昇して価格が上がるのが当たり前のように、物価が上昇すれば賃金もそれにともなって上がっていくのは経済の常識である。むしろその好循環を後押ししないと、経済は成長しないという考え方がベースにある。 だから日本のように「物価は上がったけど、今こそ辛抱の時だ!」なんて精神論を唱えて、労働者=消費者を貧しくして、自国経済を冷え込ませるようなことはしないのだ。 「いや、韓国を見ろ!最低賃金を引き上げたことで今は地獄のようになっているぞ」とか言う人もいるが、実はそれはウクライナ報道と同じで、「日本人は日本人がハッピーになれるような国際ニュースしか耳に入れない」といういつもの悪いクセだ。 最低賃金を引き上げても失業率には影響がないという海外の論文を紹介して、最低賃金引き上げの必要性を唱えるデービッド・アトキンソン氏の「反論」を引用しよう。 <それはやはり日本のマスコミと日本の評論家の中身のなさを反映しているだけですね。あの時(韓国が最低賃金を引き上げた時)に、失業率はボンっと跳ねた。日本では絶対にするもんじゃないって。(マスコミも)いいこと言うじゃんって。 ただマスコミはそれしか見ないですから。その後どうなったかって、みんなもう無関心・思考停止っていいますか。あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいったんです>(nippon.com 21年10月25日) 確かに冷静に考えれば、「最低賃金を上げたら失業者増」というストーリが思考停止の賜物だということはわかる。) 社員を最低賃金ギリギリで使っている経営者は、確かに最低賃金引き上げによって会社が倒産するかもしれない。しかし、そこで失業者になるのは、その経営者だけだ。社員たちは別にこの会社と「奴隷契約」をしているわけではないので転職をするからだ。しかも、新しい就職先は、最低賃金引き上げによって前の会社よりも賃金が高い。同じスキルの人がそれまでよりも高い賃金を生み出すということは、労働生産性も上がったということだ。こういう現象が、日本全国で広がれば、日本の労働生産性も上がっていくのだ。 日本経済が成長していないから賃上げできないというが、海外のエビデンスを見ると事実は真逆だ。日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しないのである』、「韓国」では「あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいった」、最低賃金引上げで生産性が上がった事実は、反対派には不都合なので、無視されたようだ。「日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しない」、その通りだ。
・『88年前から指摘されている日本の労働者の賃金が安い理由 では、なぜ日本だけで、「最低賃金を上げたら失業者増」というこの珍妙な経済観が根付いたのだろうか。 ひとつにはこれまで述べてきたように、日本商工会議所など有力経営者団体と自民党がしっかりとタッグを組んで半世紀以上も「最低賃金の引き上げは恐ろしい」という常識を広めてきたことが大きい。これまで自民党議員は、最低賃金の引き上げを阻止すればするほど選挙に強くなるというインセンティブがついたからだ。 そこに加えて、「賃金は低くていい」というのが日本の伝統的な美徳だったということも大きい。それが保守政党である自民党の政策的にもフィットしたし、保守的な考えの政治家も受け入れやすいということもあるだろう。 実は日本の低賃金はこの30年の問題だと勝手に思い込んでいる人が多いが、日本が「高賃金」だった時代などほんのわずかで、日本は近代からずっと低賃金だ。 例えば、今から88年前の経済書「平価切下とソシアルダンピングの話」(昭和9年 和甲書房)の中で、「日本の労働者の賃金は何故安いか」という問題が論じられている。低賃金の原因として、日本が世界第2位の人口密度をもっている「超満員の国」だからなどさまざまな考察がされているが、注目すべきは、現代にも通じる中小零細企業の問題を指摘していることだ。 「第三には我が国の企業組織だ。紡績業や鉄工業・船舶製造業等の如きは欧米各国に劣らぬ大規模な進んだ設備を持つているが、尚一般には小規模の手工業・家内工業が甚だ多く取り入れられている。(中略)家内工業の性質として、少ない資本で長い時間を働き。家族全体がこれを手伝って、一人前の仕事をするといふやうな事から、賃金はグッと低下される」(P.87) 日本企業の99.7%は中小企業で、労働者の7割が働いている。中小企業の賃金が低いので、日本の賃金は低い。約90年前から日本の産業構造と、それがもたらす低賃金という問題は何ひとつ変わっていないのだ。 このように、「小さな会社の賃金はグッと低下される」というのが日本経済の伝統だとすると、自民党が最低賃金の引き上げに消極的なのも納得ではないか。 保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。そこには科学的視点や合理性はない。「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ』、「保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。そこには科学的視点や合理性はない。「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ」、「科学的視点や合理性はない」、のは確かだが、寂しいことだ。
・『年収200万円で豊かに暮らす道は日本人にピッタリ!? 低賃金を守る、という自民党の基本スタンスを多くの日本人は消極的だが受け入れている。 今回、自民の公約から「最低賃金1000円」が落ちたということにも、ほとんど関心がない。「給料が上がらない」と文句は言っているが、そこにマグマのような怒りはなく、「まあしょうがないか」とあきらめてしまっている。 これも約90年前から続く日本人の伝統である可能性が高い。先ほどの経済書が興味深いのは、日本人労働者が低賃金である理由として、日本人の国民性も指摘していることだ。 「第四には国民の生活が伝統的に、一般的に簡易だから、安い賃金でも暮し得る。第五に、日本人は個人主義的な欧米人と違ひ、家族主義であり、家族員各自の稼ぎを出し合つて暮しを立てて行く良風があるから、自然安い賃金でも満足している。第六に、日本は資源に乏しいから、どうしても賃金が安くなる。第七に、労働能力が低いから賃金も安い。これ等の事で、日本人は安い賃金でありながら大した苦痛を感じてはいないのだ」(同上) 最近、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルが炎上したが、実はあれは日本人の本質をついている。我々は祖父母の世代から、「労働者ってのは低賃金で生きるものだ」と受け入れて、さまざまな理由をつけて自分たちを納得させてきた。一方、企業経営者や政治家という「上級国民」は、その低賃金労働者をこき使って、彼らがそこそこ満足をする豊かな社会をつくってやる。そういう役割分担がしっかりなされていた。 今回の自民党の公約からも、そういう日本の伝統的な社会システムが、実が100年経過してもそれほど変わらず続いているという現実を浮かび上がらせている。 中小企業経営者団体によれば昨年、日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう。そろそろ我々も悪あがきはやめて、先人たちのように賃金が上がらない事実を受け入れて、「年収200万円で豊かに暮らす道」を模索していった方がいいのかもしれない』、「日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう」、「日本」はますます国際的潮流から取り残されることにならざるを得ない。寂しい限りだ。
第三に、7月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏による「最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305733
・『最低賃金問題の裏にはあまり知られていない三つのファクトがある 参議院議員選挙の争点のひとつになっているのが、最低賃金の問題です。現在の日本の最低賃金は全国加重平均で930円。コロナ禍が始まった2020年が1円しか上がらなかったのを除き、過去5年では毎年3%程度上昇して現在の賃金水準に至ります。 政府はこの最低賃金を早期に1000円台に乗せたいといいますが、年3%ペースの上昇ではそこまで到達するのにあと3年かかります。海外の最低賃金を見るとEU諸国が1600円近辺、アメリカは州にもよりますが、例えばカリフォルニア州は約2000円と、G7の中では日本はかなり置いていかれた感じです。 国民感情としては最低賃金を上げてもらわないと値上げラッシュの中で生活が成り立たない一方で、以前記事に書かせていただいたように経済学的には最低賃金を人為的に動かすと逆に雇用が減るなどマイナス点が大きいことも分かっています(詳細は、『日本の最低賃金を1500円に引き上げたら起こる「三つの悪いこと」』を参照)。 そもそもの問題として、最低賃金を議論する政治家も行政も有識者もメディアの社員も、基本的に最低賃金で働いているわけではないという矛盾があります。 そして、最低賃金近辺で働いている人たちがどのような生活をしているのかはSNSなどで個別の情報は入る一方で、統計的な数字はあまり知られていないものです。 実は最新の数字を見ると、最低賃金の問題は一般の読者の想像とは少し違う問題になりかけているかもしれません。あまり知られていない三つのファクトを提示したいと思います』、興味深そうだ。
・『ファクト1:コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている 2020年にコロナ禍が始まった当初、飲食業界や観光業界など多くの業界で「雇い止め」が問題になりました。企業が需要の急激な減少を乗り切るために、雇用の調整弁として非正規労働者の雇い止めに走ったことがニュースになったのです。 ミクロの視点では非正規労働者の苦境が報道されたものですが、マクロの数字を見てもこの2年間で非正規労働者は101万人も減少しています。これは令和3年の労働力調査からの数字です。 過去10年間で見ると、コロナ禍以前は非正規労働者が一貫して増加していたのにもかかわらず、この2年間だけ大幅に減少したことがわかります。 しかしその一方で、実はアベノミクス以降、日本の正社員の数も一貫して増えています。日本の正社員数は過去8年間で267万人増加、特にコロナ禍では伸び率が上がり2年間で正社員は61万人増えました。 この差し引きで、コロナ禍で減少した雇用は40万人ほどです。コロナ禍で雇い止めが起きた一方で、より安定した雇用を求めて正規雇用に流れた元非正規労働者も結構な人数が存在したわけです』、「コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている」、これほど「正規労働者」が増えたとは驚かされた。
・『ファクト2:若年層のパートアルバイトの従事者と希望者は過去10年で4分の3に減少 同じく労働力調査で年齢階級別の非正規労働者の推移を見ると、全体の中でも15歳から34歳までの若年層の非正規比率が下がっていることがわかります。特に25歳から34歳の働き盛りの層の非正規比率はアベノミクスの2014年以降、毎年一貫して下がり続けています。 そして非正規の仕事についた理由を尋ねると「正社員の仕事がない」という回答は非正規全体の1割と少なく、かつ前年から16%も減っています。 今や非正規労働者の最大の理由は「自分の都合のよい時間に働きたいから」が全体の約3分の1で、前年からは35%も増えています。 つまり、「若年層に雇用がなく仕方なく非正規を選んでいる」という就職氷河期からリーマンショックにかけてよく見られたのとは違う構造へと、非正規雇用がシフトし始めているのです』、「非正規雇用」が自発的なものに「シフトし始めている」のも初めて知った。
・『ファクト3:最低年収近辺の若年労働者世帯の5人に1人は正社員 ここまでの記事を読まれて、「正社員の仕事が増えているなら、最低賃金の問題は社会全体から見れば大きな問題ではなくなっているのではないか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、実は結論は逆です。最低年収近辺で働く人は減っているのではなく、むしろ増えているのです。 そもそも、最低賃金近辺で働く人の数が政府の統計ですぐに出てこないということ自体に問題があるのですが、この問題に詳しい都留文科大の後藤道夫名誉教授の試算によれば、2020年に最低賃金の1.1倍以内で働いている人の割合は14.2%で、2009年の7.5%から倍近くまで増加しています。最低賃金から1.2倍以内に範囲を広げるとその割合は23.7%と全従業員の4分の1近くに達します。 ただ、最低賃金に近い労働者はアルバイト・パートが多いことが知られていて、かつ女性のパートの多くが家計を助けるために年間103万円の壁を意識しながら働いていることもよく知られているファクトです。したがって、最低賃金を貧困の問題として捉えるならば、世帯主の年収を調べる必要があります。 では、世帯主が最低賃金近辺という比率はどれくらいなのでしょうか? これも統計を加工して分析しないと出てこないのが難点なのですが、せっかくなので分析してみました。 最低賃金930円で週40時間、年間2000時間フルタイムで働いた場合に年収は186万円になります(注:東京都や神奈川県では最低賃金が1000円を超えているので、フルタイムで働くと年収は200万円を超える)。では、世帯主の年収が200万円未満の世帯はどれくらいの比率なのでしょうか? 2019年に発表された独立行政法人労働政策研究・研修機構の「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」というリポートの付属集計表から独自に数字を拾ってみると、次のようなことがわかります。25歳から49歳までのいわゆる若年層の世帯のうち、世帯主の年収が200万円未満の世帯は全体のちょうど10%です。 それで、今度はその世帯主年収が200万円未満の世帯主の働き方を集計すると、22%が正社員なのです。わかりやすく繰り返すと、「若い世帯の約1割が最低賃金レベルの年収で、その中の2割は正社員なのにそのような暮らしをしている」ということです。 最低賃金レベルの世帯は数としては男性世帯主と女性世帯主がちょうど半々ぐらいなのですが、男性世帯主の場合は正社員が28%、つまり若い男性のうち最低賃金レベルの生活をしている人の約3割が正社員ということです。 この「最低賃金レベル」の範囲を、世帯主年収が250万円未満までに広げると全世帯の17%で、その中での正社員比率は38%まで上がります。数字を切り上げてしまうことにはなりますが、約2割が最低賃金レベルで、そのうち約4割が正社員です。ここからわかることはワーキングプアの問題は非正規だけの問題ではなく、今では正社員の問題へと変質し始めているのです』、「ワーキングプアの問題は非正規だけの問題ではなく、今では正社員の問題へと変質し始めている」、初めて知ったが、深刻だ。
・『最低賃金問題の本質は人材の固定化にある さて、ここからは以上の三つのファクトをもとに、これからの日本社会がどうあるべきかを考えてみましょう。 実は今、経営者の話を聞くと幅広い業種で、とにかく人が採れない状況が続いているようです。新規採用時には、最低賃金よりも上乗せしないと採れない。アルバイト・パートでも不人気職種であれば、条件を上げないとダメだという人もいます。 つまりここが一見おかしなところで、市場原理に任せていたら自然と最低賃金よりも高いところに需給がマッチするポイントが生じているのです。しかし実際には最低賃金近辺で働く人の数が増えている。この矛盾はいったいどういうことか?というのが最低賃金問題の本質です。 そうなる理由は、人材の固定化にあります。実は我が国の転職者の数はコロナ禍で2年連続して3割以上減少しています。仕事の条件よりも安定を重視する人が多いことで日本人はあまり転職しない。そして企業から見れば、固定化している部分については賃金を上げなくていいのです。 人手が足りない今の状況では求人の際には売り手市場で、私たち労働者側の方が交渉力を持ちます。「おたくの条件が悪ければ他を探しますよ」というわけです。 ところが、いったん就職して落ち着くと交渉力の関係は逆になります。従業員が安定を求めているのがわかれば、経営者の側が「他に移りたければどうぞ」という立場に変わるわけです。 最低賃金は毎年3%ずつ上がっていると説明しましたが、会社の中での賃上げが毎年3%というわけではありません。要するに最低賃金が3%上がる度に、それまで最低賃金だった人に加えて新たに最低賃金を下回る人が出てきて、その人も最低賃金の対象者になります』、「いったん就職して落ち着くと交渉力の関係は逆になります。従業員が安定を求めているのがわかれば、経営者の側が「他に移りたければどうぞ」という立場に変わるわけです」、「最低賃金が3%上がる度に、それまで最低賃金だった人に加えて新たに最低賃金を下回る人が出てきて、その人も最低賃金の対象者になります」、なるほど。
・『最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とは 一番低い人だけが3%上がっていく現象が10年続けば、社会全体で最低賃金近辺で働く人の割合は増えていく。この現象が先ほど紹介した後藤名誉教授の分析結果の原因でしょう。こういった構造を踏まえて考えないと、日本の貧困問題はなかなか根絶するのは難しいという話でした。 さて、最低賃金近辺の人が増える中で日本もいよいよベーシックインカムを真剣に議論しなければいけないと思います。私の新刊『日本経済復活の書』では、ベーシックインカム論について詳しく論じていますので、ご興味のある方はこの本をぜひ手に取ってみてください』、「一番低い人だけが3%上がっていく現象が10年続けば、社会全体で最低賃金近辺で働く人の割合は増えていく」、これを避けるためには、やはり全体へのベアも重要なようだ。
先ずは、本年6月14日付けAERAdotが掲載した経産省出身の古賀茂明氏による「最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰」を」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2022060900046.html?page=1
・『岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の意味が分からない。 この言葉は、6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる骨太の方針)にも大きく掲げられたが、これを読んでもわかる人はほとんどいないだろう。 この骨太の方針で、「新しい資本主義」の1丁目1番地に掲げられたのが「人への投資と分配」だ。そのうち、人への「投資」については、3年間で4000億円使うと言うが、年平均では1333億円。防衛費を5兆円から10兆円にという話が進んでいるのに比べると、あまりに規模が小さい。あの日本経済新聞でさえ、8日の1面トップで「人への投資、世界水準遠く骨太方針決定」という見出しをつけ、落胆ぶりを露わにした。 一方、人への「分配」はどうか。「資産所得倍増」と掲げたので、我々の資産を「倍増」してくれそうなのだが、よく考えると、その元手がない人はどうなるのかがさっぱり見えない。唯一低所得層一般に確実にメリットがありそうなテーマが最低賃金の引き上げだ。そこで、骨太の方針に掲げられた最低賃金1000円という目標について、少し掘り下げてみよう。 実は、最低賃金の目標は、安倍晋三政権以来ずっと1000円のままだ。2016年度の骨太の方針では、年率3%程度引き上げて1000円を目指すとしていた。15年度の最低賃金798円をベースに毎年3%増やすと、23年度には1000円を超える計算だった。 この間、19年度の骨太の方針では、単に1000円を目指すのではなく、「より早期に」という言葉を書き加えて、目標達成の前倒しのニュアンスを出したが、1000円達成の年限は書いていない。 16年度の骨太の方針通りに進んでいれば、23年度、すなわち来年度には1000円に達するはずだから、「分配」を強調する岸田政権の骨太の方針では、本来は1年くらい前倒しして、今年22年度の改定で1000円達成と言ってもおかしくないはずだ。しかし、実際には、21年度が930円なので、7.5%の引き上げが必要になる。 岸田氏は、それは無理と諦めた。当初目標の23年度1000円なら、2年連続4%引き上げで何とかなるのだが、それすらも書かなかった。これでは、16年度の骨太の方針よりも後退したことになる。そこで、「できる限り早期に」という言葉を加えてお茶を濁した。本来なら、1000円どころか1500円を目指してもおかしくないのに、これが岸田氏の「新しい資本主義」における「分配」への「本気度」なのである。 もう一つ、重要なことを指摘しておこう。安倍政権直前の12年度の最低賃金は749円だったが、これは1ドル80円時代のことだから、ドル換算で9.4ドルだった。一方、仮に今すぐ目標である1000円を達成したとしても、現在の為替レート1ドル130円で換算すると7.7ドルだ。アベノミクスから新しい資本主義に入り、最低賃金は、国際的に見ると2割近く下がることになる。 こんな目標しか掲げられないなら「骨太の方針」ではなく、国民が「やせ細る方針」と名称変更した方がよい。自民党政権が続く限り、庶民の生活は貧しくなるばかり。来たる参議院選挙で、国民はこの流れを変えるための投票を行うべきだ』、岸田政権は、「最低賃金」に関してはこれまでの政権以上にやる気がないようだ。
次に、6月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305211
・『「最低賃金1000円」という言葉が自民党の公約から消えた 世界各国で着々と賃上げが進む中、日本だけで賃金の横ばいが30年続き、ついには平均給与で韓国にまで抜かれてしまった。さらに、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルも炎上したことも受けて、「なぜ日本の賃金はいつまでも上がらないのか」という議論が活発に行われている。 その「答え」がつい先日、これ以上ないほどわかりやすい形で国民に示された。6月16日に発表された、自民党の参院選公約である。 6年前から参院選のたびに掲げていた「最低賃金1000円」という数値目標がしれっと引っ込められたのだ。野党の多くは「1500円」など数値目標を掲げているのに、自民党はサクッともみ消したのだ。 岸田政権は「最低賃金1000円の早期達成」を打ち出している。6月7日に発表した「新しい資本主義実行計画工程表」の中にも、表の「枠外」ではあるが、「できる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指す」とちゃんと明記されている。にもかかわらず、岸田首相が総裁を務める自民党ではスルー。なぜこんなダブルスタンダードが起きるのか』、「最低賃金1000円」という言葉が自民党の公約から消えた」、とは初めて知った。
・『反対勢力のご機嫌取り国民の妥協こそ低迷の元凶 報道では、「公約に目標額を記載しなかった理由には直接答えず、労働者や企業側の代表者らによる審議会での議論に委ねる姿勢を示した」(東京新聞6月16日)ということだが、「選挙対策」であることは明白だ。 「最低賃金1000円」に反対する中小企業経営者の業界団体である日本商工会議所、全国商工連合会は自民党の有力票田だ。機嫌を損ねたら大勝できない。配慮のために引っ込めたと考えるのが自然だ。実際、2カ月前、日本商工会議所は「最低賃金に関する要望」を政府に届けて、「最低賃金の引上げを賃上げ政策実現の手段として用いることは適切でない」と自民にくぎを刺している。 そう聞くと、「まあ、政治は選挙に勝たないことには何もできないんだからある程度の妥協はしょうがないだろ」と感じる人もいるかもしれないが、実はその“妥協の構図”に日本が30年賃上げできなかった原因がすべて集約されている。 政府は世論の支持が生命線なので「最低賃金引き上げます!」と国民ウケのいいことを盛んにアピールするが、自民党としては中小企業団体からの選挙支援も大事なので、その裏で「実際はそんなに上げませんのでご安心を」と賃金引き上げの足を引っ張らざるを得ない。この「選挙での勝利と引き換えに最低賃金の引き上げをあきらめる」という妥協を、自民党政治家が30年以上も続けてきた結果が、「安いニッポン」である。 この構造は、同じく有力支持団体の日本医師会と自民党の関係を思い出していただければわかりやすい。新型コロナ感染拡大で公立病院などに患者が集中しても「町医者」がノータッチという問題や、「2類相当」の扱いがいつまで経っても見直されず結局ウヤムヤにされたのは、日本医師会が自民党の有力支持団体だからだ。政治力学的に自民党政権は、日本医師会が嫌がる「医療改革」ができないのだ。 賃金もこれとまったく同じことがいえる。世界では最低賃金の引き上げは国民生活を維持するためのメジャーな経済政策だが、日本ではいつまで経ってもウヤムヤにされている。自民党的に有力支持団体の逆鱗に触れる「NG政策」だからだ』、「最低賃金の引上げ」は「骨太の方針」には書き込んであるが、選挙公約からは外したは初めて知った。
・『各国で賃金は上がっているのに 日本は労働者、消費者を貧しくさせる こんな話をすると脊髄反射で、「最低賃金を大きく引き上げると、中小企業が倒産して失業者が大量にあふれかえるので、自民党は責任政党として慎重に判断をしているのだ」という反論する自民党支持者の方も多い。しかし、実はそういう珍妙なロジックを唱えて、最低賃金を引き上げない国は世界でもかなり珍しい。 例えば、米国のロサンゼルスでは7月1日から、最低賃金がこれまでの時給15ドルから16.04ドル(日本円で約2179円、6月22日現在)へと引き上げられる。これは中小零細だからと免除されるようなものではなく、全ての事業所が対象だ。また、法定最低賃金に物価スライド制が採用されているフランスでも、5月から最低賃金が10.85ユーロ(日本円で約1552円、同上)にアップした。オーストラリアの公正労働委員会も7月から現在の最低賃金20.33豪ドルから21.38豪ドル(日本円で約2006円、同上)に引き上げる。こちらも5.2%の引き上げ幅だ。 アジアも普通に最低賃金を引き上げる。ベトナム政府も7月1日から最低賃金を月額で全国平均6%引き上げる。これは世界的な物価高とかではなく「平常運転」で、20年1月1日にも平均5.5%引き上げている。マレーシアでも5月1日、地域により月額1000~1200リンギットだった最低賃金が全国一律で1500リンギット(約4万6305円)まで一気に引き上げられている。 これらの国々は、今回の世界的な物価上昇で慌てて賃上げをしているわけではなく、それ以前から継続的に最低賃金を引き上げているのだ。しかし、そこで日本のように、「最低賃金を引き上げたら倒産が増えて国内は地獄になる」みたいなヒステリックな終末論が叫ばれることはない。 もちろん、どの国でも反対する中小企業経営者はいる。しかし、物価が上昇して価格が上がるのが当たり前のように、物価が上昇すれば賃金もそれにともなって上がっていくのは経済の常識である。むしろその好循環を後押ししないと、経済は成長しないという考え方がベースにある。 だから日本のように「物価は上がったけど、今こそ辛抱の時だ!」なんて精神論を唱えて、労働者=消費者を貧しくして、自国経済を冷え込ませるようなことはしないのだ。 「いや、韓国を見ろ!最低賃金を引き上げたことで今は地獄のようになっているぞ」とか言う人もいるが、実はそれはウクライナ報道と同じで、「日本人は日本人がハッピーになれるような国際ニュースしか耳に入れない」といういつもの悪いクセだ。 最低賃金を引き上げても失業率には影響がないという海外の論文を紹介して、最低賃金引き上げの必要性を唱えるデービッド・アトキンソン氏の「反論」を引用しよう。 <それはやはり日本のマスコミと日本の評論家の中身のなさを反映しているだけですね。あの時(韓国が最低賃金を引き上げた時)に、失業率はボンっと跳ねた。日本では絶対にするもんじゃないって。(マスコミも)いいこと言うじゃんって。 ただマスコミはそれしか見ないですから。その後どうなったかって、みんなもう無関心・思考停止っていいますか。あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいったんです>(nippon.com 21年10月25日) 確かに冷静に考えれば、「最低賃金を上げたら失業者増」というストーリが思考停止の賜物だということはわかる。) 社員を最低賃金ギリギリで使っている経営者は、確かに最低賃金引き上げによって会社が倒産するかもしれない。しかし、そこで失業者になるのは、その経営者だけだ。社員たちは別にこの会社と「奴隷契約」をしているわけではないので転職をするからだ。しかも、新しい就職先は、最低賃金引き上げによって前の会社よりも賃金が高い。同じスキルの人がそれまでよりも高い賃金を生み出すということは、労働生産性も上がったということだ。こういう現象が、日本全国で広がれば、日本の労働生産性も上がっていくのだ。 日本経済が成長していないから賃上げできないというが、海外のエビデンスを見ると事実は真逆だ。日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しないのである』、「韓国」では「あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいった」、最低賃金引上げで生産性が上がった事実は、反対派には不都合なので、無視されたようだ。「日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しない」、その通りだ。
・『88年前から指摘されている日本の労働者の賃金が安い理由 では、なぜ日本だけで、「最低賃金を上げたら失業者増」というこの珍妙な経済観が根付いたのだろうか。 ひとつにはこれまで述べてきたように、日本商工会議所など有力経営者団体と自民党がしっかりとタッグを組んで半世紀以上も「最低賃金の引き上げは恐ろしい」という常識を広めてきたことが大きい。これまで自民党議員は、最低賃金の引き上げを阻止すればするほど選挙に強くなるというインセンティブがついたからだ。 そこに加えて、「賃金は低くていい」というのが日本の伝統的な美徳だったということも大きい。それが保守政党である自民党の政策的にもフィットしたし、保守的な考えの政治家も受け入れやすいということもあるだろう。 実は日本の低賃金はこの30年の問題だと勝手に思い込んでいる人が多いが、日本が「高賃金」だった時代などほんのわずかで、日本は近代からずっと低賃金だ。 例えば、今から88年前の経済書「平価切下とソシアルダンピングの話」(昭和9年 和甲書房)の中で、「日本の労働者の賃金は何故安いか」という問題が論じられている。低賃金の原因として、日本が世界第2位の人口密度をもっている「超満員の国」だからなどさまざまな考察がされているが、注目すべきは、現代にも通じる中小零細企業の問題を指摘していることだ。 「第三には我が国の企業組織だ。紡績業や鉄工業・船舶製造業等の如きは欧米各国に劣らぬ大規模な進んだ設備を持つているが、尚一般には小規模の手工業・家内工業が甚だ多く取り入れられている。(中略)家内工業の性質として、少ない資本で長い時間を働き。家族全体がこれを手伝って、一人前の仕事をするといふやうな事から、賃金はグッと低下される」(P.87) 日本企業の99.7%は中小企業で、労働者の7割が働いている。中小企業の賃金が低いので、日本の賃金は低い。約90年前から日本の産業構造と、それがもたらす低賃金という問題は何ひとつ変わっていないのだ。 このように、「小さな会社の賃金はグッと低下される」というのが日本経済の伝統だとすると、自民党が最低賃金の引き上げに消極的なのも納得ではないか。 保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。そこには科学的視点や合理性はない。「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ』、「保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。そこには科学的視点や合理性はない。「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ」、「科学的視点や合理性はない」、のは確かだが、寂しいことだ。
・『年収200万円で豊かに暮らす道は日本人にピッタリ!? 低賃金を守る、という自民党の基本スタンスを多くの日本人は消極的だが受け入れている。 今回、自民の公約から「最低賃金1000円」が落ちたということにも、ほとんど関心がない。「給料が上がらない」と文句は言っているが、そこにマグマのような怒りはなく、「まあしょうがないか」とあきらめてしまっている。 これも約90年前から続く日本人の伝統である可能性が高い。先ほどの経済書が興味深いのは、日本人労働者が低賃金である理由として、日本人の国民性も指摘していることだ。 「第四には国民の生活が伝統的に、一般的に簡易だから、安い賃金でも暮し得る。第五に、日本人は個人主義的な欧米人と違ひ、家族主義であり、家族員各自の稼ぎを出し合つて暮しを立てて行く良風があるから、自然安い賃金でも満足している。第六に、日本は資源に乏しいから、どうしても賃金が安くなる。第七に、労働能力が低いから賃金も安い。これ等の事で、日本人は安い賃金でありながら大した苦痛を感じてはいないのだ」(同上) 最近、「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍タイトルが炎上したが、実はあれは日本人の本質をついている。我々は祖父母の世代から、「労働者ってのは低賃金で生きるものだ」と受け入れて、さまざまな理由をつけて自分たちを納得させてきた。一方、企業経営者や政治家という「上級国民」は、その低賃金労働者をこき使って、彼らがそこそこ満足をする豊かな社会をつくってやる。そういう役割分担がしっかりなされていた。 今回の自民党の公約からも、そういう日本の伝統的な社会システムが、実が100年経過してもそれほど変わらず続いているという現実を浮かび上がらせている。 中小企業経営者団体によれば昨年、日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう。そろそろ我々も悪あがきはやめて、先人たちのように賃金が上がらない事実を受け入れて、「年収200万円で豊かに暮らす道」を模索していった方がいいのかもしれない』、「日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう」、「日本」はますます国際的潮流から取り残されることにならざるを得ない。寂しい限りだ。
第三に、7月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏による「最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305733
・『最低賃金問題の裏にはあまり知られていない三つのファクトがある 参議院議員選挙の争点のひとつになっているのが、最低賃金の問題です。現在の日本の最低賃金は全国加重平均で930円。コロナ禍が始まった2020年が1円しか上がらなかったのを除き、過去5年では毎年3%程度上昇して現在の賃金水準に至ります。 政府はこの最低賃金を早期に1000円台に乗せたいといいますが、年3%ペースの上昇ではそこまで到達するのにあと3年かかります。海外の最低賃金を見るとEU諸国が1600円近辺、アメリカは州にもよりますが、例えばカリフォルニア州は約2000円と、G7の中では日本はかなり置いていかれた感じです。 国民感情としては最低賃金を上げてもらわないと値上げラッシュの中で生活が成り立たない一方で、以前記事に書かせていただいたように経済学的には最低賃金を人為的に動かすと逆に雇用が減るなどマイナス点が大きいことも分かっています(詳細は、『日本の最低賃金を1500円に引き上げたら起こる「三つの悪いこと」』を参照)。 そもそもの問題として、最低賃金を議論する政治家も行政も有識者もメディアの社員も、基本的に最低賃金で働いているわけではないという矛盾があります。 そして、最低賃金近辺で働いている人たちがどのような生活をしているのかはSNSなどで個別の情報は入る一方で、統計的な数字はあまり知られていないものです。 実は最新の数字を見ると、最低賃金の問題は一般の読者の想像とは少し違う問題になりかけているかもしれません。あまり知られていない三つのファクトを提示したいと思います』、興味深そうだ。
・『ファクト1:コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている 2020年にコロナ禍が始まった当初、飲食業界や観光業界など多くの業界で「雇い止め」が問題になりました。企業が需要の急激な減少を乗り切るために、雇用の調整弁として非正規労働者の雇い止めに走ったことがニュースになったのです。 ミクロの視点では非正規労働者の苦境が報道されたものですが、マクロの数字を見てもこの2年間で非正規労働者は101万人も減少しています。これは令和3年の労働力調査からの数字です。 過去10年間で見ると、コロナ禍以前は非正規労働者が一貫して増加していたのにもかかわらず、この2年間だけ大幅に減少したことがわかります。 しかしその一方で、実はアベノミクス以降、日本の正社員の数も一貫して増えています。日本の正社員数は過去8年間で267万人増加、特にコロナ禍では伸び率が上がり2年間で正社員は61万人増えました。 この差し引きで、コロナ禍で減少した雇用は40万人ほどです。コロナ禍で雇い止めが起きた一方で、より安定した雇用を求めて正規雇用に流れた元非正規労働者も結構な人数が存在したわけです』、「コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている」、これほど「正規労働者」が増えたとは驚かされた。
・『ファクト2:若年層のパートアルバイトの従事者と希望者は過去10年で4分の3に減少 同じく労働力調査で年齢階級別の非正規労働者の推移を見ると、全体の中でも15歳から34歳までの若年層の非正規比率が下がっていることがわかります。特に25歳から34歳の働き盛りの層の非正規比率はアベノミクスの2014年以降、毎年一貫して下がり続けています。 そして非正規の仕事についた理由を尋ねると「正社員の仕事がない」という回答は非正規全体の1割と少なく、かつ前年から16%も減っています。 今や非正規労働者の最大の理由は「自分の都合のよい時間に働きたいから」が全体の約3分の1で、前年からは35%も増えています。 つまり、「若年層に雇用がなく仕方なく非正規を選んでいる」という就職氷河期からリーマンショックにかけてよく見られたのとは違う構造へと、非正規雇用がシフトし始めているのです』、「非正規雇用」が自発的なものに「シフトし始めている」のも初めて知った。
・『ファクト3:最低年収近辺の若年労働者世帯の5人に1人は正社員 ここまでの記事を読まれて、「正社員の仕事が増えているなら、最低賃金の問題は社会全体から見れば大きな問題ではなくなっているのではないか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、実は結論は逆です。最低年収近辺で働く人は減っているのではなく、むしろ増えているのです。 そもそも、最低賃金近辺で働く人の数が政府の統計ですぐに出てこないということ自体に問題があるのですが、この問題に詳しい都留文科大の後藤道夫名誉教授の試算によれば、2020年に最低賃金の1.1倍以内で働いている人の割合は14.2%で、2009年の7.5%から倍近くまで増加しています。最低賃金から1.2倍以内に範囲を広げるとその割合は23.7%と全従業員の4分の1近くに達します。 ただ、最低賃金に近い労働者はアルバイト・パートが多いことが知られていて、かつ女性のパートの多くが家計を助けるために年間103万円の壁を意識しながら働いていることもよく知られているファクトです。したがって、最低賃金を貧困の問題として捉えるならば、世帯主の年収を調べる必要があります。 では、世帯主が最低賃金近辺という比率はどれくらいなのでしょうか? これも統計を加工して分析しないと出てこないのが難点なのですが、せっかくなので分析してみました。 最低賃金930円で週40時間、年間2000時間フルタイムで働いた場合に年収は186万円になります(注:東京都や神奈川県では最低賃金が1000円を超えているので、フルタイムで働くと年収は200万円を超える)。では、世帯主の年収が200万円未満の世帯はどれくらいの比率なのでしょうか? 2019年に発表された独立行政法人労働政策研究・研修機構の「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状」というリポートの付属集計表から独自に数字を拾ってみると、次のようなことがわかります。25歳から49歳までのいわゆる若年層の世帯のうち、世帯主の年収が200万円未満の世帯は全体のちょうど10%です。 それで、今度はその世帯主年収が200万円未満の世帯主の働き方を集計すると、22%が正社員なのです。わかりやすく繰り返すと、「若い世帯の約1割が最低賃金レベルの年収で、その中の2割は正社員なのにそのような暮らしをしている」ということです。 最低賃金レベルの世帯は数としては男性世帯主と女性世帯主がちょうど半々ぐらいなのですが、男性世帯主の場合は正社員が28%、つまり若い男性のうち最低賃金レベルの生活をしている人の約3割が正社員ということです。 この「最低賃金レベル」の範囲を、世帯主年収が250万円未満までに広げると全世帯の17%で、その中での正社員比率は38%まで上がります。数字を切り上げてしまうことにはなりますが、約2割が最低賃金レベルで、そのうち約4割が正社員です。ここからわかることはワーキングプアの問題は非正規だけの問題ではなく、今では正社員の問題へと変質し始めているのです』、「ワーキングプアの問題は非正規だけの問題ではなく、今では正社員の問題へと変質し始めている」、初めて知ったが、深刻だ。
・『最低賃金問題の本質は人材の固定化にある さて、ここからは以上の三つのファクトをもとに、これからの日本社会がどうあるべきかを考えてみましょう。 実は今、経営者の話を聞くと幅広い業種で、とにかく人が採れない状況が続いているようです。新規採用時には、最低賃金よりも上乗せしないと採れない。アルバイト・パートでも不人気職種であれば、条件を上げないとダメだという人もいます。 つまりここが一見おかしなところで、市場原理に任せていたら自然と最低賃金よりも高いところに需給がマッチするポイントが生じているのです。しかし実際には最低賃金近辺で働く人の数が増えている。この矛盾はいったいどういうことか?というのが最低賃金問題の本質です。 そうなる理由は、人材の固定化にあります。実は我が国の転職者の数はコロナ禍で2年連続して3割以上減少しています。仕事の条件よりも安定を重視する人が多いことで日本人はあまり転職しない。そして企業から見れば、固定化している部分については賃金を上げなくていいのです。 人手が足りない今の状況では求人の際には売り手市場で、私たち労働者側の方が交渉力を持ちます。「おたくの条件が悪ければ他を探しますよ」というわけです。 ところが、いったん就職して落ち着くと交渉力の関係は逆になります。従業員が安定を求めているのがわかれば、経営者の側が「他に移りたければどうぞ」という立場に変わるわけです。 最低賃金は毎年3%ずつ上がっていると説明しましたが、会社の中での賃上げが毎年3%というわけではありません。要するに最低賃金が3%上がる度に、それまで最低賃金だった人に加えて新たに最低賃金を下回る人が出てきて、その人も最低賃金の対象者になります』、「いったん就職して落ち着くと交渉力の関係は逆になります。従業員が安定を求めているのがわかれば、経営者の側が「他に移りたければどうぞ」という立場に変わるわけです」、「最低賃金が3%上がる度に、それまで最低賃金だった人に加えて新たに最低賃金を下回る人が出てきて、その人も最低賃金の対象者になります」、なるほど。
・『最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とは 一番低い人だけが3%上がっていく現象が10年続けば、社会全体で最低賃金近辺で働く人の割合は増えていく。この現象が先ほど紹介した後藤名誉教授の分析結果の原因でしょう。こういった構造を踏まえて考えないと、日本の貧困問題はなかなか根絶するのは難しいという話でした。 さて、最低賃金近辺の人が増える中で日本もいよいよベーシックインカムを真剣に議論しなければいけないと思います。私の新刊『日本経済復活の書』では、ベーシックインカム論について詳しく論じていますので、ご興味のある方はこの本をぜひ手に取ってみてください』、「一番低い人だけが3%上がっていく現象が10年続けば、社会全体で最低賃金近辺で働く人の割合は増えていく」、これを避けるためには、やはり全体へのベアも重要なようだ。
タグ:最低賃金 (その2)(最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰、「年収200万円暮らし」炎上の裏で 最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌、最低賃金を巡る「大矛盾」 正社員増加でも解決しない問題の本質とは) AERAdot 古賀茂明氏による「最低賃金1000円のまやかし 古賀茂明 政官財の罪と罰」を」 岸田政権は、「最低賃金」に関してはこれまでの政権以上にやる気がないようだ。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「「年収200万円暮らし」炎上の裏で、最低賃金1000円の公約もみ消す自民党の二枚舌」 「最低賃金1000円」という言葉が自民党の公約から消えた」、とは初めて知った。 「最低賃金の引上げ」は「骨太の方針」には書き込んであるが、選挙公約からは外したは初めて知った。 「韓国」では「あの2回目(賃上げを)やった後に、韓国の労働生産性は日本より初めて上にいった」、最低賃金引上げで生産性が上がった事実は、反対派には不都合なので、無視されたようだ。「日本は継続的な賃上げをしないから、いつまで経っても経済が成長しない」、その通りだ。 「保守政党というのは基本的に、これまで続いてきたことを続けようという考えがベースにある。そこには科学的視点や合理性はない。「続いてきたことを守る」ということが何よりも大事なのだ」、「科学的視点や合理性はない」、のは確かだが、寂しいことだ。 「日本は最低賃金を約3%ほど引き上げたが、経済に大変なダメージを負わせているという。物価高で疲弊する中小企業にはこれ以上の重い負担は課せられないという。 世界とは全く逆の考え方だが、これが日本の伝統的な経済観なのだ。自民党も参院選で大勝すると言われているので、この流れは止められないだろう」、「日本」はますます国際的潮流から取り残されることにならざるを得ない。寂しい限りだ。 鈴木 貴博氏による「最低賃金を巡る「大矛盾」、正社員増加でも解決しない問題の本質とは」 ファクト1:コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている 「コロナ禍で非正規労働者は101万人減ったが正規労働者が61万人増えている」、これほど「正規労働者」が増えたとは驚かされた。 ファクト2:若年層のパートアルバイトの従事者と希望者は過去10年で4分の3に減少 「非正規雇用」が自発的なものに「シフトし始めている」のも初めて知った。 ファクト3:最低年収近辺の若年労働者世帯の5人に1人は正社員 「ワーキングプアの問題は非正規だけの問題ではなく、今では正社員の問題へと変質し始めている」、初めて知ったが、深刻だ。 「いったん就職して落ち着くと交渉力の関係は逆になります。従業員が安定を求めているのがわかれば、経営者の側が「他に移りたければどうぞ」という立場に変わるわけです」、「最低賃金が3%上がる度に、それまで最低賃金だった人に加えて新たに最低賃金を下回る人が出てきて、その人も最低賃金の対象者になります」、なるほど。 「一番低い人だけが3%上がっていく現象が10年続けば、社会全体で最低賃金近辺で働く人の割合は増えていく」、これを避けるためには、やはり全体へのベアも重要なようだ。