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リニア新幹線(その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確 [産業動向]

リニア新幹線については、本年1月4日に取上げた。今日は、(その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実)である。明日は、川勝知事に関連したテーマを取上げる予定である。

先ずは、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127652?imp=0
・『「差別発言」の内容を分解してみると…  静岡県の川勝平太知事が新規採用職員に向けて述べた訓示に、特定の職業を指して「知性が低い」などとする差別的発言が含まれていたとして広く批判された。川勝は、当初は新聞報道の「切り取り」のせいだなどと述べて頑張ったが、まもなく辞職を表明した。 訓示の全文を確認すると、「知性」のくだりで川勝が言いたかったらしいことは、大きく次の三点に要約できそうだ。 1(県庁勤務者は)勉強して知性を磨くべきである 2 知性の程度には個人差がある(「自分の知性がこの人に及ばないなと思っても……」) 3 第一・二次産業従事者は知性が低い(「野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」) 問題になったのは3の発言で、批判されるのは当然である。だが、1と2についてはどうだろうか。 1について批判する者はいないだろう。知性に価値があることや勉強の必要性は常識とされ、すべての学校では勉強が推奨されている。2は公の場での発言としては微妙だが、内心でこう考えている人間は多そうだ。3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか』、「3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか」、なるほど。
・『そもそも「知性」とは何か  朝日新聞は4月5日の社説で川勝発言を批判したが、1の点はもちろん、2についても批判することを慎重に避けた印象を受ける。そして「社会の一員としてそれぞれの日々を懸命に生きる他者の知性のあり方に、敬意を持って欲しい。」と書いているが、この一文はむしろ、知性の質や量に個人差があることを匂わせている。 だが、もしそうだとしても、「他者の知性のあり方」とは具体的にどのようなものか。 川勝はもともとは経済学者で、学部と修士課程では早稲田大学で学び、その後オックスフォード大学で博士号を得ている。いかにも「知性」の高そうな経歴だが、そもそも知性とはなんだろうか。 知性に大きな価値があり、さらにもし知性に個人差があるなら、我々の中にも川勝と同じ、知性によって他者を差別する気分が潜んでいたりはしないか? あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう。 たとえば、知的な能力の基盤ともいえる読み書き能力については、少しだけデータが残されているようだ。 『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』に続く』、「あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう」、なるほど… 

次に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127653?imp=0
・『江戸の庶民は文字が読めた?  まるで人間のような自然な作文をするAIが話題になった2023年、いくつかの新聞が、「読み書き」を巡る目立たないニュースを報じた。それは、国立国語研究所(東京)が、1948年以来実に75年ぶりに、全国的な識字率の調査を試みているというものだ。 誰もが読み書きできるはずのこの日本で、どうしてわざわざ識字率などを調べるのか。そう感じる日本人は多いと思われる。記事のひとつで国立国語研究所准教授の野山広が言うように、日本では「読み書きができない人はほぼいないと長く信じられてきた」からだ。 だが、野山も言うように、それは「共同幻想」である。 「日本人なら誰でも読み書きができるはず」という幻想は、極めて根強い。どのくらい根強いかというと、時間を遡り、歴史上の事実をも塗り替えたほどだ。 江戸時代や明治時代の日本人の識字率は高かったとか、大半が読み書きできたとか、大胆なものでは識字率が世界一だったとかいう言説をよく目にする。たとえば「江戸文化歴史研究家」を名乗る作家の瀧島有はこう書いている。 「江戸後期、日本は『江戸の町の人口』の他に、もう一つ、世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている。こういった俗論は主に1970年代以降、ロナルド・ドーアらによる寺子屋教育の過大評価などによって広まったらしいが、実はドーア本人は後にその見解を訂正している(『日本人のリテラシー』リチャード・ルビンジャー、柏書房など)』、「世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている」、なるほど。
・『「新聞」を読めたのはたったの1.7%  では、当時の日本人の読み書き能力はどのようなものだったのか。 江戸時代末期の日本人の8割以上は農民だったため、「普通の日本人」の識字能力を知るためには、農民についてのデータが欠かせない。だが、多くの研究者も認めるように、江戸時代はもちろん明治時代に入っても、農民の識字率に関する資料は極めて少ない。 しかし、過去の日本人の識字能力に関心がある者の間では有名な、極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない(「近代日本のリテラシー研究序説」島村直己など)。 しかも忘れてはならないのは、この調査は女性を対象外としていた点である。明治時代の識字率には地域によりかなりのばらつきがあるが、女性の識字能力が男性よりも大幅に劣っていた点は全国に共通している。したがって、当時の常盤村の住民全体の読み書き能力は、上の数値よりもかなり落ちる可能性が高い。女性を含めると、村で新聞を読めた人間は1%程度しかいなかったのではないだろうか。 日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態』に続く…』、「極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない』、「自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在・・・必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては・・・1.7%しかいない」、一般的に信じられている姿は全く信頼性に欠けるようだ。

第三に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127654?imp=0
・『「江戸時代の日本人の識字率は高かった」「大半が読み書きできた」さらには「日本は識字率が世界一」……こういった言説はネットだけでなく、書籍でも散見される。しかし、本当にそうだったのか。たとえば1881年(明治14年)、長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)にて15歳以上の男子882人を対象に行われた調査では、「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては1.7%しかいなかった。引き続き、日本人の「知性格差」についてみていこう。 『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』より続く…』、やはり伝承とは当てにならないものだ。
・『識字率が最も低かった鹿児島県  長野県の北安曇郡常盤村の調査の結果は、決して例外的ではない。当時の他の資料と照らし合わせると、常盤村の住人の読み書き能力は全国的には高い方だった可能性さえある。 常盤村の調査が貴重なのは、読み書き能力を細かく段階に分けた点にあるが、同時期の1890年前後に、当時の文部省が全国の数県で「自署率」、すなわち自分の名前を書けるかどうかの調査を行っている。この調査によると、近江商人の本拠地であり、調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない(「近代日本のリテラシー研究序説」島村直己、「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」斉藤泰雄など)。また、読み書きができるものの割合は、士族階層や農村部の指導層など社会の上層ほど高く、農村内部にもかなりの格差があった可能性が高い(『日本人のリテラシー』リチャード・ルビンジャー、柏書房など)。 このように識字率にはかなりの階層差・地域差・男女差があったが、ある研究者は、識字レベルが滋賀県と鹿児島県のおよそ中間だった岡山県の数値(男子の50~60%、女子の30%前後が自分の名前を書けた)が全国平均に近かったのではないかと推測している(「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」斉藤泰雄)。先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない』、「調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない・・・先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない」、なるほど。
・『読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部  忘れてはならないのは、この調査の数字はあくまで自分の名前を書ける者の割合であって、「自由に読み書きできる者」の割合はずっと低くなる点だ。「識字率」の定義は実は難しいが、少なくとも今の一般的な文脈では、かろうじて自分の名前を書けるだけで、日常的な文章も新聞も読めないようでは「識字」に含まれないだろう。 明治期の識字について多くの研究がある東北大学の八鍬友広は、自署能力に加えて文通する能力についても調べた明治初期の和歌山県の調査の例をひき、そこでは文通可能なリテラシーを持っていた男子は自署できた者の1/4以下の約10%だったと述べている(「明治期滋賀県における自署率調査」八鍬友広)。 この割合は、自署できた男子の1割強だけが普通の書簡を読めたとする先の常盤村のデータよりもかなり高いが、当時の調査の正確さに限界がある以上、詳細な議論はあまり意味がないだろう。いずれにしても、自由に読み書きができた者は、自分の名前だけが読み書きできる者よりずっと少なかったと考えるのは自然ではある。 ということは、女性を含めると(日本人のリテラシーを考えるときに女性を排除する理由はない)半数前後が自分の名前さえ書けなかったと思われる明治初期の日本では、圧倒的多数は自由な読み書きができなかったことになる。特に、常盤村の調査からも分かるように、社会の動きを知る手段である新聞等を読めた人間の割合は、人口の数%に過ぎなかったのではないか。 読み書き能力は、知的な能力の基礎であると言わざるを得ない。だが、明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している。 では、その格差は、今日では解消されているのだろうか? 次回『「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証』に続く』、「明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している」、なるほど。

第四に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/128138?imp=0
・『連載第1回『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』  日本語が読めない大学生たち  前回、日本人の大半は明治時代初期、つまりほんの数世代前までは読み書きができなかったことを資料によって確認した。読み書きの力や知的なものに触れる機会・能力はまったく平等ではなく、著しい格差があったのである。 しかし、それは明治時代の、しかも初頭の話ではある。戦後や現代ではどうだろうか? たしかに、近年は社会的な格差がよく話題になる。だが、そこで語られる「格差」の内容はほとんどが経済・金銭的なもので、文化的・知的な格差は見て見ぬふりをされている。 しかし、文化格差について研究を続けてきた社会学者が「日本社会は文化的には平等だ」という主張を「文化的平等神話」と切り捨てるように(※1)、経済以外でも重大な格差があることは、少なくとも専門家の間では知られているらしい。 知的格差がすっかり忘れ去られた2011年、全国の大学生を対象に数学能力の調査を行った数学研究者である新井紀子は、結果を見て愕然とした。数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かったのである。そして、その力は大学の偏差値が低いほど低かった。 驚いた新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになったのである』、「新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになった」、「数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かった」というのは驚くべきことだ。
・『「字が読めない日本人は1.7%だけ」のウソ  この調査では、中学生のうちは歳とともに読解力が伸びる傾向があるのに、高校では伸びが止まることも確認された。それはつまり、かなりの成人も読解力に問題を抱えていることを示唆している。 また、読解力はやはり学校の偏差値と「極めて強い」正の相関があり、家庭の経済力と負の相関があった。つまり読解能力や論理的思考力には著しい社会的格差があることが判明したのだった。 新井は「(基礎的読解力調査は)これまで世界中で誰もやっていません」とも記しているが、少なくとも、前回書いたように読解力の調査は明治時代初頭にもあり、そこでも著しい格差が示されている。 明治と平成の日本社会には知的格差があるらしい。では、その間に位置する昭和ではどうか。 1948年に、GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(「日本人の読み書き能力調査」)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった。この結果はその後独り歩きし、「敗戦直後でも100%近い日本人が読み書きできた」とか「日本人の識字率の高さにGHQが驚愕した」といった神話となって今も生き残っているが、実は近年、その解釈が正しくなく、実態はむしろ逆だったことが専門家によって指摘されている。 まず、たしかに98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている。この点に着目したある研究によると、この調査で得点がゼロになる確率は0.000015%しかないという。 したがってゼロ点だった1.7%は、はじめから回答しようとしなかった可能性が高い(※3)』、「GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(・・・)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった・・・98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている」、なるほど。
・『日本人の半数は新聞が読めなかった!  また、言語政策を研究する角知行は調査対象者に送られた案内状が難解な漢字を含む文章で書かれていたため読み書き能力が低いものはその段階で脱落した疑いがあることや、心身にハンディキャップを持つ人々を排除していたことなども指摘している(※4)。さらに付け加えるなら、若い世代より識字能力が低かっただろう65歳以上の者も調査対象から外されている。 要するに、当時の日本人の本当の読み書き能力は、この調査から受ける印象よりかなり低い可能性が高い。 では、実態はどのようなものだったのか。識字能力は「ある/ない」と白黒つけられるものではなく程度問題なので定量化は難しいが、角は先の論文で、新聞の文章についての問いの正答率から、調査対象者の半数弱は新聞の読解にも困難を抱えていただろうと推測している。加えて先ほどの対象者の偏りを考慮すると、1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである。 ちなみに、この調査は「日本人の識字率の高さを示したことでGHQが推進しようとしていた日本語のローマ字化を防いだ」という文脈で取り上げられることも多いが、先の論文の執筆者の一人である横山詔一によると、その主張の根拠は弱いという。 横山は、実態とはかなり異なる伝説が広まった理由として、敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」(※5)。 後編『多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実』に続く』、「1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである・・・敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」、そんな時代背景も影響するとは奥が深いようだ。

第五に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/128137?imp=0
・『「日本人の識字率は極めて高い」「経済格差はあっても、文化的には平等」といった言説は、ネットはもちろん書籍でもよく見られるものだ。こうした主張の根拠とされがちなのは1948年に16,820名を対象に実施された「日本人の読み書き能力調査」で、「完全文盲が1.7%」という結果が出ている。だが近年、この結果を再検証した研究によって、当時の日本人の識字率はもっと低い可能性があることがわかってきた。 『「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証』より続く』、興味深そうだ。…
・『知的格差から逃れられない日本社会  小熊英二は日本人の読み書き能力についてのこの調査結果を「都市と農村、上層と下層の知的階層格差」の表れだとしている(※1)が、たしかに成績には世代差以外にも、地域や学歴による差があった(※2)。 要するに、明治にも、昭和にも、そして2010年代にも日本社会には読み書き能力の格差があり、したがっておそらく、今もあるということだ。新井紀子は読解力の格差をはじめて見つけたのではなく、戦後長らく忘れられていた知的格差を、ようやく再発見したというべきかもしれない。 ここまで見てきたのは主に読み書きや言葉を扱う能力の格差だが、読み書き能力は広く知的な力の基盤だし、そもそも日本社会では教育水準にも格差があるため、日本社会での知的能力の格差が読解力だけに留まると考えることは難しい。たとえば最終学歴が高校の人間と、大学院で博士号を取った人間の知的パフォーマンスになにも差が出なかったら、むしろおかしい。 東日本大震災後の福島県を中心に、原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」』、「原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、「住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、確かに「確率的に考える」のには慣れていない人は殆どだろう。
・『日本社会にひそむ教育格差  神谷はもちろん、難関大学(広島大学医学部)を出て、博士号も取得している。研究者としては標準的な学歴かも知れないが、日本社会では例外的な高学歴だと言っていい。 一方で、日本人の過半数は大学を出ていない。2023年の大学進学率こそ過去最高の57・7%を記録しているが、これは若年層の数値である。日本の大学進学率は徐々に上昇してきたので、全日本人を対象にすると大卒率ははるかに低くなる。たとえば、社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない。次回に続く… 』、「社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない」、「次回に続く」とあるので、探したがまだ出版されてないようだ。このシリーズは「教育格差」を取上げ、本題の「リニア」とは関係がないので、ここでお許し頂きたい。ただ、次回は「リニア」と密接に関係しているので、大いにご期待を! 
タグ:リニア新幹線 (その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確 現代ビジネス 佐藤 喬氏による「早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題」 「3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか」、なるほど。 「あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう」、なるほど… 佐藤 喬氏による「「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」」 「世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている」、なるほど。 「極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない』、「自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在・・・必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては・・・1.7%しかいない」、一般的に信じられている姿は全く信頼性に欠けるようだ。 佐藤 喬氏による「日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態」 やはり伝承とは当てにならないものだ。 「調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない・・・先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない」、なるほど。 「明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している」、なるほど。 佐藤 喬氏による「「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証」 「新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになった」、「数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かった」というのは驚くべきことだ。 「GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(・・・)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった・・・ 98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている」、なるほど。 「1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである・・・敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。 「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」、そんな時代背景も影響するとは奥が深いようだ。 佐藤 喬氏による「多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実」 「原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、 「住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、確かに「確率的に考える」のには慣れていない人は殆どだろう。 「社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない」、 「次回に続く」とあるので、探したがまだ出版されてないようだ。このシリーズは「教育格差」を取上げ、本題の「リニア」とは関係がないので、ここでお許し頂きたい。ただ、次回は「リニア」と密接に関係しているので、大いにご期待を!
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メディア(その34)(このままでは13年後に紙の新聞は消滅する…熱心な読者からも"質が落ちた"と苦言を呈される残念な理由 減少率は"7.3%"で過去最大となった、「人権意識が強くなりすぎると 番組がつまらなく…」フジテレビ番組審議会が物議を醸した“ズレ感”の本質、視聴率急落で「死の谷」にはまったテレビ局の苦悩 激減するテレビCM収入を配信で補う日は来るか) [メディア]

メディアについては、昨年8月8日に取上げた。今日は、(その34)(このままでは13年後に紙の新聞は消滅する…熱心な読者からも"質が落ちた"と苦言を呈される残念な理由 減少率は"7.3%"で過去最大となった、「人権意識が強くなりすぎると 番組がつまらなく…」フジテレビ番組審議会が物議を醸した“ズレ感”の本質、視聴率急落で「死の谷」にはまったテレビ局の苦悩 激減するテレビCM収入を配信で補う日は来るか)である。

先ずは、本年2月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した元日経新聞記者で経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「このままでは13年後に紙の新聞は消滅する…熱心な読者からも"質が落ちた"と苦言を呈される残念な理由 減少率は"7.3%"で過去最大となった」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/78272
・『2036年には紙の新聞は姿を消す計算になる  紙の新聞が「消滅」の危機に直面している。日本新聞協会が2023年12月に発表した2023年10月時点の新聞発行部数は2859万部と1年前に比べて7.3%、225万6145部も減少した。2005年から19年連続で減り続け、7.3%という減少率は過去最大だ。 新聞の発行部数のピークは1997年の5376万部。四半世紀で2500万部が消えたことになる。全盛期の読売新聞と朝日新聞、毎日新聞の発行部数がすべてごっそり無くなったのと同じである。このまま毎年225万部ずつ減り続けたと仮定すると、13年後の2036年には紙の新聞は消滅して姿を消す計算になる。 昨今、朝の通勤時間帯ですら、電車内で紙の新聞を読んでいる人はほとんど見かけなくなった。ビジネスマンだけでなく、大学生の年代はほとんど新聞を読んでいない』、「新聞発行部数は」、「1年前に比べて7.3%、225万6145部も減少」、「全盛期の読売新聞と朝日新聞、毎日新聞の発行部数がすべてごっそり無くなったのと同じである」、それは大変だ。
・『「デジタルで新聞を読んでいる」学生はごく一部  私は、教えている大学で学生に「紙の新聞をどの程度読んでいるか」を毎年アンケート調査で聞いている。2023年度に教えた、のべ1026人の学生のうち、紙の新聞を「まったく読まない」と回答した学生は728人と7割に達した。一方で「定期購読している」という学生はわずか13人、1.3%だった。この数には自宅通学生で親が購読している新聞を読んでいる学生も含まれているから、ごくわずかしか毎日読んでいる人がいない、ということになる。 たまに読むという学生も「レポートなどで月に数回程度読む」という回答で、もはや「紙の新聞」は学生の情報源ではないのだ。学生時代に紙の新聞を読んだことがなければ社会人になっても読む習慣はほぼないから、ビジネスマンが新聞を読んでいる姿をほとんど見ることがなくなったのも当然だろう。ますます紙の新聞の発行部数は減っていくことになるに違いない。 いやいや、デジタル新聞に移行しているのだから、紙の新聞が減るのは当然だろう、と言う人もおられるだろう。だが、電子新聞など新聞社の情報メディアを使っている学生もごく一部で、「新聞」という媒体自体が凋落しているのは明らかである。学生の情報源はタダのSNSが主体だし、ビジネスマンの多くも無料の情報サイトで済ませている人が少なくない。つまり、情報を得るために「新聞」を買って読むという行為自体が、失われつつあるように見える』、「教えている大学で学生に「紙の新聞をどの程度読んでいるか」を毎年アンケート調査で聞いている。2023年度に教えた、のべ1026人の学生のうち、紙の新聞を「まったく読まない」と回答した学生は728人と7割に達した。一方で「定期購読している」という学生はわずか13人、1.3%だった・・・電子新聞など新聞社の情報メディアを使っている学生もごく一部で、「新聞」という媒体自体が凋落しているのは明らかである。学生の情報源はタダのSNSが主体だし、ビジネスマンの多くも無料の情報サイトで済ませている人が少なくない。つまり、情報を得るために「新聞」を買って読むという行為自体が、失われつつあるように見える」、なるほど。
・『新聞社が儲からなくなり、人材も育たなくなった  紙の新聞の凋落による最大の問題点は新聞社が儲からなくなったことだ。新聞記者を遊ばせておく余裕がなくなり、今の若い記者たちは私が新聞社にいた頃に比べて格段に忙しくなっている。紙の新聞は日に何度かの締め切りがあったが、電子版は原則24時間情報が流せるから、記者にかつてとは比べ物にならないくらいの大量の原稿を求めるようになった。ハイヤーで取材先の自宅を訪れて取材する「夜討ち朝駆け」も減り、取材先と夜飲み歩く姿もあまり見なくなった。新聞社も働き方改革で「早く帰れ」と言われるようになったこともある。 新聞社は取材を通じて勉強していくOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が伝統で、ベテランのデスクやキャップから、若手記者は取材方法や原稿の書き方を学んでいた。そんなOJT機能が忙しさが増す中で失われ、人材が育たなくなっているのだ。儲からなくなった新聞社で人材枯渇が深刻化し始めている。 もちろん、それは新聞記事の「品質」にも表れる。長年、新聞に親しんだ読者からは、最近の新聞は質が落ちたとしばしば苦言を呈される。また、新聞の作り方が変わってきたことで、伝統的な紙の新聞のスタイルも変化している』、「新聞社が儲からなくなったことだ。新聞記者を遊ばせておく余裕がなくなり、今の若い記者たちは私が新聞社にいた頃に比べて格段に忙しくなっている・・・新聞社は取材を通じて勉強していくOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が伝統で、ベテランのデスクやキャップから、若手記者は取材方法や原稿の書き方を学んでいた。そんなOJT機能が忙しさが増す中で失われ、人材が育たなくなっているのだ・・・それは新聞記事の「品質」にも表れる。長年、新聞に親しんだ読者からは、最近の新聞は質が落ちたとしばしば苦言を呈される。また、新聞の作り方が変わってきたことで、伝統的な紙の新聞のスタイルも変化している」、なるほど。
・『貴重な情報が隠されている「ベタ記事」が激減  最近の新聞からは「ベタ記事」が大きく減っている。かつて「新聞の読み方」といった本は必ず、「ベタ記事こそ宝の山だ」といった解説を書いていた。新聞を読まない読者も多いので、ベタ記事と言われても何のことか分からないかもしれない。紙の新聞では1ページを15段に分けて記事が掲載される。4段にわたって見出しが書かれているのを「4段抜き」、3段なら「3段抜き」と呼ぶ。これに対して、1段分の見出ししか付いていない記事を「ベタ記事」と呼ぶ。そうした細かい、ちょっとした記事に、貴重な情報が隠されているというのだ。 ところが最近は、このベタ記事がどんどん姿を消している。デジタルでネットに情報を出すことを前提に記事を作るため、ひとつの原稿が長くなったことで、ベタ記事が入らなくなった、という制作面の理由が大きい。長い読み物的な記事が紙の新聞でも幅をきかせるようになり、新聞が雑誌化している、とも言われる。一見同じページ数でも、記事の本数が減れば、実質的に情報量が減ることになる。細かいベタ記事に目を凝らして読んでいた古い新聞愛読層が新聞の情報量が減ったと嘆くのはこのためだ』、「1段分の見出ししか付いていない記事を「ベタ記事」と呼ぶ・・・デジタルでネットに情報を出すことを前提に記事を作るため、ひとつの原稿が長くなったことで、ベタ記事が入らなくなった、という制作面の理由が大きい。長い読み物的な記事が紙の新聞でも幅をきかせるようになり、新聞が雑誌化している、とも言われる」、なるほど。
・『「成功している」日経ですら電子版は100万契約にすぎない  一方で、細かいベタ記事がたくさん必要だった時代は、記者が幅広に取材しておくことが求められた。駆け出しの記者でもどんどん原稿を出すことができたのだ。ところが、雑誌化すれば訓練を積んだ記者しか原稿が出せず、結果、若手の訓練機会が失われている。これも記者の質の劣化につながっているのだ。それが中期的には紙面の質の低下にもつながるわけだ。紙の新聞の凋落による経営の悪化や、デジタル化自体が、記者を劣化させ、新聞の品質を落としている。 デジタル版が伸びているので新聞社の経営は悪くないはずだ、という指摘もあるだろう。確かにニューヨーク・タイムズのように紙の発行部数のピークが150万部だったものが、デジタル版に大きくシフトして有料読者が1000万人になったケースなら、紙が半分以下に落ち込んでも十分にやっていける。 デジタル化で成功していると言われる日本経済新聞も、紙はピークだった300万部超から半分になったが、電子版は100万契約に過ぎない。紙の新聞は全面広告などで高い広告費を得られたが、デジタルの広告単価は低い。マネタイズする仕組みとして猛烈に優秀だった紙の新聞を凌駕できるだけの仕組みがまだできていないのだ。1000万部を超えて世界最大の新聞だった読売新聞はデジタルで大きく出遅れている中で、紙は620万部まで減少している』、「ニューヨーク・タイムズのように紙の発行部数のピークが150万部だったものが、デジタル版に大きくシフトして有料読者が1000万人になったケースなら、紙が半分以下に落ち込んでも十分にやっていける。 デジタル化で成功していると言われる日本経済新聞も、紙はピークだった300万部超から半分になったが、電子版は100万契約に過ぎない。紙の新聞は全面広告などで高い広告費を得られたが、デジタルの広告単価は低い。マネタイズする仕組みとして猛烈に優秀だった紙の新聞を凌駕できるだけの仕組みがまだできていないのだ。1000万部を超えて世界最大の新聞だった読売新聞はデジタルで大きく出遅れている中で、紙は620万部まで減少」、「ニューヨーク・タイムズ」が「デジタル版に大きくシフトして有料読者が1000万人になった」、大したものだ。「日本経済新聞も、紙はピークだった300万部超から半分になったが、電子版は100万契約に過ぎない。紙の新聞は全面広告などで高い広告費を得られたが、デジタルの広告単価は低い。マネタイズする仕組みとして猛烈に優秀だった紙の新聞を凌駕できるだけの仕組みがまだできていないのだ」、日本はまだまだのようだ。
・『「新聞の特性」自体が消滅しつつある  このまま紙の新聞は減り続け、消滅へと進んでいくのだろうか。本来、紙の新聞には情報媒体としての優位性があった。よく指摘されるのが一覧性だ。大きな紙面にある見出しを一瞥するだけで、情報が短時間のうちに目に飛び込んでくる。36ページの新聞でも、めくって眺めるだけならば15分もあれば、大まかなニュースは分かる。その中から興味のある記事をじっくり読むことも可能だ。 ネット上の記事は一覧性に乏しいうえに、自分の興味のある情報ばかりが繰り返し表示される。便利な側面もあるが、自分が普段関心がない情報が目に飛び込んでくるケースは紙の新聞に比べて格段に低い。自分の意見に近い情報ばかりが集まり、反対する意見の情報は入ってこないネットメディアの性質が、今の社会の分断を加速させている、という指摘もある。 そんな紙の特性を生かせば、紙の新聞は部数が減っても消えて無くなることはないのではと私は長年思っていた。ところがである。前述の通り、デジタル版優先の記事作りが進んだ結果、1ページに載る記事の本数が減り、ベタ記事が消滅するなど、新聞の特性自体が消滅しつつある。新聞社が紙の新聞を作り込む努力をしなくなったのだとすれば、紙の新聞の消滅は時間の問題、ということになるのだろう』、「紙の新聞には情報媒体としての優位性」は「一覧性」だが、「ベタ記事が消滅するなど、新聞の特性自体が消滅しつつある。新聞社が紙の新聞を作り込む努力をしなくなったのだとすれば、紙の新聞の消滅は時間の問題、ということになるのだろう」、「紙の新聞の消滅は時間の問題」というのは、寂しい感じもあるが、やはりやむを得ないのだろう。

次に、2月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「人権意識が強くなりすぎると、番組がつまらなく…」フジテレビ番組審議会が物議を醸した“ズレ感”の本質」を紹介しよう。
・『「発言者の名前を記してほしい」「緊張感が感じられない」そんな内容の批判が相次いだのは、フジテレビが公表した番組審議会の議事録だ。有名コメンテーターらが名を連ねる番組審議委員の意見が物議を呼んでいる。これを機に、テレビ報道の在り方を考えてみよう』、興味深そうだ。
・『ホテルオークラで開かれるフジテレビの番組審議会とは  「人権意識が強くなりすぎると良い表現ができなくなり、テレビ局の挑戦も締め付けられ、番組がつまらなくなり、世の中から見捨てられてしまうのではないか」――。 フジテレビがネット上に掲載した、番組審議会議事録概要が物議を醸している。批判的に捉える声が多く、審議委員の人選が間違っているのではないかという声も多い。 まず概要から整理しよう。 これは2024年1月10日に東京都港区のホテルオークラで開かれた「第533回 番組審議会議事録概要」で、外部の弁護士と研究者がそれぞれ委員長、副委員長を務める。そのほかの委員は、コメンテーターや脚本家、元大相撲力士のタレントなどである。 また、フジテレビからは遠藤龍之介副会長、港浩一社長や幹部、コンプライアンス担当者など13名が参加していたようだ。 【参考】第533回 番組審議会議事録概要 https://www.fujitv.co.jp/company/action/shingikai/shingikai_533.html ) 過去の議事録を見ると、2月〜10月までは毎回、放送中の一番組を取り上げて批評を行っている。毎年1月のみ、テレビと社会の関係を俯瞰する議題が設定されている(12月は休会)。例えば2022年1月は「コロナ禍のテレビ」、2023年1月は「フジテレビの未来への提言」だった。 今年のテーマは「テレビと人権」だった。また、この回ではメインテーマに入る前に「2023年11月発生の事件を報じるニュースで、容疑者として別の人物の顔写真を誤って放送」についての報告があったようだ。 これは2023年11月末、フジテレビ系列の東海テレビが名古屋市で起こった死体遺棄事件について、容疑者とは別人の写真を計8回放送した件についてだろう。報道によれば、報道番組に携わる社員がX(旧ツイッター)を通じて入手し、容疑者を知る複数の関係者に確認したものだったという。 報道であってはならない事故であり、テレビの影響力の重さを考えざるを得ない。こういった重い不祥事が報告された後での議論と考えると、なお冒頭のような意見は「軽い」印象を受ける』、冒頭で紹介した「「人権意識が強くなりすぎると良い表現ができなくなり、テレビ局の挑戦も締め付けられ、番組がつまらなくなり、世の中から見捨てられてしまうのではないか」――」、は確かに「「軽い」印象を受ける」、その通りだ。
・『「堅苦しい」「世の中から見捨てられてしまう」物議を醸した委員たちの意見  議事録に掲載された意見の中で、特に批判を浴びているのは以下のものである。なお、どの委員がどの意見を言ったのかについては、公開されている議事録からはわからない。 ・テレビが行儀の良いことを目指しすぎる動きの中で、テレビ以外の媒体の方が真実だったり、面白いと思われないか、危険性を感じる。 ・人権はもちろん大切だが、人権をうたえばうたう程、テレビだけが宙に浮いてしまって堅苦しい箱になってしまう。 ・人権意識が強くなりすぎると良い表現ができなくなり、テレビ局の挑戦も締め付けられ、番組がつまらなくなり、世の中から見捨てられてしまうのではないか。) まるで昨今のポリコレ(政治的公正性)を嘆くネット上の匿名アカウントのような意見が散見され、これならばわざわざ有名人を招かなくとも、一般人にアンケートを取れば良いのではないかと言いたくなる。 多様な意見があるのだから、バランスを取るためにこういった意見も必要なのかもしれないが、人権をテーマにした議論設定をしながら、人権の問題に取り組む識者や専門家の意見を聞いた様子がないのはどういうことなのだろうか。 「人権はもちろん大切だが」「人権意識が強くなりすぎると」といった意見はそもそも人権問題を考えることに拒否を示す人にありがちな反応である。人権を学ぶことは、誰にとっても多少の苦痛を感じる経験である。それまでの価値観が揺さぶられ、自分の偏見に気付かされることがあるからである。ある意味、自然な反応とも言える。 だからこそ、こういった拒否反応を起こす人がいる前提で、それを包摂し乗り越えるための教育が必要であり、人権について意識が高まることは「息苦しさ」を意味しないと納得してもらう必要がある。しかし日本ではまだ、拒否反応が「一つの意見」と見なされる傾向があり、それがこの度の議事録でもはっきりとした』、「「人権はもちろん大切だが」「人権意識が強くなりすぎると」といった意見はそもそも人権問題を考えることに拒否を示す人にありがちな反応である。人権を学ぶことは、誰にとっても多少の苦痛を感じる経験である。それまでの価値観が揺さぶられ、自分の偏見に気付かされることがあるからである。ある意味、自然な反応とも言える。 だからこそ、こういった拒否反応を起こす人がいる前提で、それを包摂し乗り越えるための教育が必要であり、人権について意識が高まることは「息苦しさ」を意味しないと納得してもらう必要がある。しかし日本ではまだ、拒否反応が「一つの意見」と見なされる傾向があり、それがこの度の議事録でもはっきりとした」、なるほど。
・『松本人志氏の番組を絶賛 ネットなどへのライバル心が「チラ見え」  ちなみに、重箱の隅をつっつくようで申し訳ないが、このような要約すると「最近はすぐクレームが来るから大変だ」的な委員からの意見はこれ以前にもあり、例えば「品性に欠ける番組だとお叱りを受けることもあるだろうが、子どもや若者に美しい物だけを見せても良くない」(2023年1月「フジテレビの未来への提言」)、「批判を恐れてドラマやバラエティーが面白くなくならないようにしてほしい」(同)などがあった。 松本人志氏の降板が話題となっている『まつもtoなかい』(現「だれかtoなかい」)は、審議委員の中で「最近見たトーク番組の中で断トツに面白い」「何よりも良かったのは、攻めている匂いがしたこと。最近テレビがどうしても萎縮しがちな中で、『人々が見たいものを見せるんだ』という自由な制作側の意志が伝わってきた。フジテレビの元気の種につながるのではと感じた」と絶賛されていた(2023年5月の議事録より)。) フジテレビ側の「ここ数年『テレビより他メディアの方が面白い』と言われ続けているのが悔しく、『結局テレビが一番面白い』と思ってもらえるコンテンツを作りたいと考えている」というコメントからは、ネット動画などへのライバル心が垣間見える。こういった焦りが、「自分たちはコンプライアンスに過剰に縛られてやりづらい」という発想につながるのかもしれない』、「『結局テレビが一番面白い』と思ってもらえるコンテンツを作りたいと考えている」というコメントからは、ネット動画などへのライバル心が垣間見える。こういった焦りが、「自分たちはコンプライアンスに過剰に縛られてやりづらい」という発想につながるのかもしれない」、その通りだ。
・『「他者をおもんばかる力」のズレを指摘する委員も  念のため、委員たちからはこれ以外の意見もあったことを紹介する。ざっと見た限り、ネット上で肯定的に受け止められていた彼らの意見は次のようなものだ。 ・何より大事なのは子どもたちがより良い未来を手にするために、大人が人権の概念をアップデートさせていくこと。 ・テレビは勝ち組の集まりだった。弱者の視点や他者をおもんぱかる力が無意識の内にずれてくる。一人一人が弱者に寄り添う人生観を持つことが港社長の言う“愛”なのでは。 ・視聴者、出演者、取材対象者だけでなく、テレビの番組制作に携わる人々の人権にも目を向けてほしい。自身の人権を守られていないスタッフが、テレビの向こうの人の人権に敏感になれるはずがない。 ・関東大震災では誤報が人々の思想を先導し、誤った思想に基づいて大勢の命が奪われたという悲惨な過去がある。その過去は絶対忘れてはならない。テレビ報道はSNSがどうであろうと、真実しか放送しないということを固く守ってもらいたい。 最後に紹介した意見は、東海テレビが別人の顔写真使用した問題についてではないだろうか。 「大人が人権の概念をアップデート」は前述の通り、その通りであると思う。 テレビが「勝ち組の集まり」であるのもその通りで、かつて就職活動でテレビ局の倍率はとても高かったし、タレントでもテレビに出る人は「勝ち組」である。彼らの視点を重視すれば、自然と中心点がズレてくるという指摘は重要である。) 局が異なるが、読売テレビの大橋善光社長は1月に松本人志氏の件について、「告発女性と松本氏が対決するのであれば放送したい」という発言をし、非難を浴びた。これもテレビ局関係者と世間のズレを感じる一件だった。 一方、テレビ番組制作に携わる人の人権についても、納得感のある指摘だと感じた。テレビが絶対的な王者であった頃から、テレビ局は朝も夜もないスケジュールで回っていることはよく知られていたし、最近では下請けの番組制作会社の低賃金、長時間労働問題も表面化している』、「テレビ番組制作に携わる人の人権についても、納得感のある指摘だと感じた。テレビが絶対的な王者であった頃から、テレビ局は朝も夜もないスケジュールで回っていることはよく知られていたし、最近では下請けの番組制作会社の低賃金、長時間労働問題も表面化している」、なるほど。
・『安易な取材方法も散見 負のスパイラルは続くのか  先日、作家の吉本ばなな氏が関西テレビの番組公式アカウントから直接「突然のご連絡、失礼いたします。(略)吉本様の投稿を番組でご紹介させていただきたく、ご連絡いたしました」と連絡を受け、断ったことがネット上で騒ぎとなり、その後同社が電話で吉本氏に謝罪したことが明らかになった。 テレビ局のスタッフがX上で事件の関係者や目撃者に接触するのは以前から見られた光景であり、その都度ネットユーザーからは様々な批判が上がっていた。今回は相手が有名人であるだけに、連絡の取りようはいくらでもあるはずであることから、さらなる非難につながった。 対象者と連絡を取る方法がネットに限られている場合もあるので、一概に批判はできないが、時間やコストの制限がある中でスタッフが安易な取材方法を選択しているように見える。長期的にテレビ局(引いてはマスコミ)への信頼を損ねているように感じるし、負のスパイラルを見る気持ちだ。 ネット上でのこのような批判を受け、今後は議事録に出る内容が大幅に減るのではないかという点が心配ではあるが、来年1月の審議会ではぜひ、旧ジャニーズ問題や松本人志氏に対する報道について、委員からの意見を聞いてみたい』、「ネット上でのこのような批判を受け、今後は議事録に出る内容が大幅に減るのではないかという点が心配ではあるが、来年1月の審議会ではぜひ、旧ジャニーズ問題や松本人志氏に対する報道について、委員からの意見を聞いてみたい」、同感である。

第三に、4月15日付け東洋経済オンライン「視聴率急落で「死の谷」にはまったテレビ局の苦悩 激減するテレビCM収入を配信で補う日は来るか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/747634
・『「死の谷はいつまで続くのか」――。いま、テレビ局の将来をそう憂う声が日増しに強まっている。 電通が2月に発表した「2023年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は過去最高の7兆3167億円を記録した一方、地上波テレビの広告費は前年比4%減の1兆6095億円となった。 コロナ禍では、ネットフリックスやU-NEXTなど動画配信サービスの利用者が急増。それに押されるかたちで2021年以降、地上波テレビの視聴率は低下に拍車がかかり、テレビ局の収益柱である広告収入の減少がいっそう鮮明となっている』、「2021年以降、地上波テレビの視聴率は低下に拍車がかかり、テレビ局の収益柱である広告収入の減少がいっそう鮮明となっている」、そんなに「テレビ局」の環境が厳しくなっているのを改めて再認識した。
・『「3冠獲得」に燃えるテレ朝  日本民間放送連盟(民放連)の定める放送基準では、節度ある広告などを目的に、週間でのテレビCMの時間を総放送時間の18%以内とする規制が明記されている。 放送できるCMの本数(時間)に限界がある以上、カギを握るのはCM1本当たりの単価だ。一般的に、視聴率が高いほど広告主がCM1本(15秒)に対して支払う広告費も上がるとされる。そのためテレビ局にとっては、自社の視聴率がそのまま広告収入に直結すると言っても過言ではない。 その視聴率をめぐり、並々ならぬ闘志を燃やしているのがテレビ朝日だ。 「昨日までの段階で、個人全体では(中略)2冠という状況だ。世帯視聴率では3冠。今日を含めて残りあと6日、最後まで全力を尽くしていきたい」 3月26日に開かれたテレビ朝日の社長定例会見の冒頭、篠塚浩社長は2023年度の視聴率についてそう述べた。) テレビ視聴率には、世帯単位の視聴率である「世帯視聴率」と、個人単位の視聴率である「個人視聴率」の2つがある。さらに時間帯ごとの区分として、全日(6~24時)、ゴールデン(19~22時)、プライム(19~23時)という3つの指標があり、これらいずれの時間帯でもトップをとれれば「3冠」達成となる。 テレビ朝日は昨年3月に発表した中期経営計画で、2025年度までに年間・年度での個人全体視聴率で3冠をとることを目標に掲げている。2023年の年間視聴率は開局以来初の世帯3冠、個人全体2冠を獲得。長年王者であった日本テレビは首位陥落となり、今やテレビ朝日が“視聴率王”に躍り出ている。 (2023年の年間高視聴率番組ランキング はリンク先参照) 「相棒」や「科捜研の女」など、定番シリーズ番組を複数抱えるテレビ朝日。テレビ視聴率を調査するビデオリサーチが公表した、2023年の年間高視聴率ランキング(関東地区)の上位に同社の番組が多数入っている状況からしても、“視聴率王”の座に違和感はない。 しかし、あるキー局の社員は「テレ朝の視聴率が高いのは高齢者の視聴割合が高いから。在宅時間の長い高齢者はテレビの視聴時間も長い」と指摘する』、「「相棒」や「科捜研の女」など、定番シリーズ番組を複数抱えるテレビ朝日」は「“視聴率王”」のようだが、「「テレ朝の視聴率が高いのは高齢者の視聴割合が高いから。在宅時間の長い高齢者はテレビの視聴時間も長い」と指摘する」、「テレビ朝日」は「高齢者」に強いようだ。
・『現役世代に強い日テレの底力  ビデオリサーチが2020年3月から開始した新視聴率調査によって、今では視聴者の人数だけでなく、性別や年齢層も詳細に把握できるようになった。 そうした中、長らく視聴率王であった日本テレビは今年4月の番組改編から、13~49歳の男女の視聴率を「コアターゲット」視聴率として重視する戦略(コアMAX戦略)を明確に打ち出している。 日本テレビの公表資料によると、個人全体(全日)の視聴率ではテレビ朝日が1位、日本テレビは2位だが、コアターゲット視聴率では日本テレビが3冠で、テレビ朝日はいずれの時間帯でも4位(2023年実績)。コアターゲットの全日視聴率では両社で倍以上の差がついており、テレビ朝日の視聴者層が高齢者に偏っていることが読み取れる』、「日本テレビは今年4月の番組改編から、13~49歳の男女の視聴率を「コアターゲット」視聴率として重視する戦略(コアMAX戦略)を明確に打ち出している」、「個人全体(全日)の視聴率ではテレビ朝日が1位、日本テレビは2位だが、コアターゲット視聴率では日本テレビが3冠で、テレビ朝日はいずれの時間帯でも4位(2023年実績)」、「日本テレビ」が「コアMAX戦略」を打ち出したのは、「個人全体」では負けるので、あえて自分が優位に立てるセグメントを打ち出したのかも知れない。
タグ:メディア (その34)(このままでは13年後に紙の新聞は消滅する…熱心な読者からも"質が落ちた"と苦言を呈される残念な理由 減少率は"7.3%"で過去最大となった、「人権意識が強くなりすぎると 番組がつまらなく…」フジテレビ番組審議会が物議を醸した“ズレ感”の本質、視聴率急落で「死の谷」にはまったテレビ局の苦悩 激減するテレビCM収入を配信で補う日は来るか) PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「このままでは13年後に紙の新聞は消滅する…熱心な読者からも"質が落ちた"と苦言を呈される残念な理由 減少率は"7.3%"で過去最大となった」 「新聞発行部数は」、「1年前に比べて7.3%、225万6145部も減少」、「全盛期の読売新聞と朝日新聞、毎日新聞の発行部数がすべてごっそり無くなったのと同じである」、それは大変だ。 「教えている大学で学生に「紙の新聞をどの程度読んでいるか」を毎年アンケート調査で聞いている。2023年度に教えた、のべ1026人の学生のうち、紙の新聞を「まったく読まない」と回答した学生は728人と7割に達した。一方で「定期購読している」という学生はわずか13人、1.3%だった・・・ 電子新聞など新聞社の情報メディアを使っている学生もごく一部で、「新聞」という媒体自体が凋落しているのは明らかである。学生の情報源はタダのSNSが主体だし、ビジネスマンの多くも無料の情報サイトで済ませている人が少なくない。つまり、情報を得るために「新聞」を買って読むという行為自体が、失われつつあるように見える」、なるほど。 「新聞社が儲からなくなったことだ。新聞記者を遊ばせておく余裕がなくなり、今の若い記者たちは私が新聞社にいた頃に比べて格段に忙しくなっている・・・新聞社は取材を通じて勉強していくOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が伝統で、ベテランのデスクやキャップから、若手記者は取材方法や原稿の書き方を学んでいた。そんなOJT機能が忙しさが増す中で失われ、人材が育たなくなっているのだ・・・それは新聞記事の「品質」にも表れる。 長年、新聞に親しんだ読者からは、最近の新聞は質が落ちたとしばしば苦言を呈される。また、新聞の作り方が変わってきたことで、伝統的な紙の新聞のスタイルも変化している」、なるほど。 「1段分の見出ししか付いていない記事を「ベタ記事」と呼ぶ・・・デジタルでネットに情報を出すことを前提に記事を作るため、ひとつの原稿が長くなったことで、ベタ記事が入らなくなった、という制作面の理由が大きい。長い読み物的な記事が紙の新聞でも幅をきかせるようになり、新聞が雑誌化している、とも言われる」、なるほど。 「ニューヨーク・タイムズのように紙の発行部数のピークが150万部だったものが、デジタル版に大きくシフトして有料読者が1000万人になったケースなら、紙が半分以下に落ち込んでも十分にやっていける。 デジタル化で成功していると言われる日本経済新聞も、紙はピークだった300万部超から半分になったが、電子版は100万契約に過ぎない。紙の新聞は全面広告などで高い広告費を得られたが、デジタルの広告単価は低い。マネタイズする仕組みとして猛烈に優秀だった紙の新聞を凌駕できるだけの仕組みがまだできていないのだ。1000万部 を超えて世界最大の新聞だった読売新聞はデジタルで大きく出遅れている中で、紙は620万部まで減少」、「ニューヨーク・タイムズ」が「デジタル版に大きくシフトして有料読者が1000万人になった」、大したものだ。「日本経済新聞も、紙はピークだった300万部超から半分になったが、電子版は100万契約に過ぎない。紙の新聞は全面広告などで高い広告費を得られたが、デジタルの広告単価は低い。マネタイズする仕組みとして猛烈に優秀だった紙の新聞を凌駕できるだけの仕組みがまだできていないのだ」、日本はまだまだのようだ。 「紙の新聞には情報媒体としての優位性」は「一覧性」だが、「ベタ記事が消滅するなど、新聞の特性自体が消滅しつつある。新聞社が紙の新聞を作り込む努力をしなくなったのだとすれば、紙の新聞の消滅は時間の問題、ということになるのだろう」、「紙の新聞の消滅は時間の問題」というのは、寂しい感じもあるが、やはりやむを得ないのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 鎌田和歌氏による「「人権意識が強くなりすぎると、番組がつまらなく…」フジテレビ番組審議会が物議を醸した“ズレ感”の本質」 冒頭で紹介した「「人権意識が強くなりすぎると良い表現ができなくなり、テレビ局の挑戦も締め付けられ、番組がつまらなくなり、世の中から見捨てられてしまうのではないか」――」、は確かに「「軽い」印象を受ける」、その通りだ。 「「人権はもちろん大切だが」「人権意識が強くなりすぎると」といった意見はそもそも人権問題を考えることに拒否を示す人にありがちな反応である。人権を学ぶことは、誰にとっても多少の苦痛を感じる経験である。それまでの価値観が揺さぶられ、自分の偏見に気付かされることがあるからである。ある意味、自然な反応とも言える。 だからこそ、こういった拒否反応を起こす人がいる前提で、それを包摂し乗り越えるための教育が必要であり、人権について意識が高まることは「息苦しさ」を意味しないと納得してもらう必要がある。 しかし日本ではまだ、拒否反応が「一つの意見」と見なされる傾向があり、それがこの度の議事録でもはっきりとした」、なるほど。 「『結局テレビが一番面白い』と思ってもらえるコンテンツを作りたいと考えている」というコメントからは、ネット動画などへのライバル心が垣間見える。こういった焦りが、「自分たちはコンプライアンスに過剰に縛られてやりづらい」という発想につながるのかもしれない」、その通りだ。 「テレビ番組制作に携わる人の人権についても、納得感のある指摘だと感じた。テレビが絶対的な王者であった頃から、テレビ局は朝も夜もないスケジュールで回っていることはよく知られていたし、最近では下請けの番組制作会社の低賃金、長時間労働問題も表面化している」、なるほど。 「ネット上でのこのような批判を受け、今後は議事録に出る内容が大幅に減るのではないかという点が心配ではあるが、来年1月の審議会ではぜひ、旧ジャニーズ問題や松本人志氏に対する報道について、委員からの意見を聞いてみたい」、同感である。 東洋経済オンライン「視聴率急落で「死の谷」にはまったテレビ局の苦悩 激減するテレビCM収入を配信で補う日は来るか」 そんなに「テレビ局」の環境が厳しくなっているのを改めて再認識した。 「「相棒」や「科捜研の女」など、定番シリーズ番組を複数抱えるテレビ朝日」は「“視聴率王”」のようだが、「「テレ朝の視聴率が高いのは高齢者の視聴割合が高いから。在宅時間の長い高齢者はテレビの視聴時間も長い」と指摘する」、「テレビ朝日」は「高齢者」に強いようだ。
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コミュニケーション(その2)(伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」、「気を遣いすぎる」のは、日本人の長所か欠点か? "なあなあ"の国・日本が「誇れるもの」もある、【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>) [文化]

コミュニケーションについては、2019年7月7日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」、「気を遣いすぎる」のは、日本人の長所か欠点か? "なあなあ"の国・日本が「誇れるもの」もある、【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>)である。

先ずは、2020年5月15日付け日経ビジネスオンラインが掲載した現在は亡きコラムニストの小田嶋 隆氏による「伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00070/
・『毎日新聞が伝えているところによれば、なんでもJR東神奈川駅の駅員が、 《新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校や外出自粛が長引く中、少しでも明るい気持ちになってもらおう》 ということで、改札の前にあの昔なつかしい黒板の伝言板を設置したのだそうで、これが、好評をもって迎えられているのだという。なるほど。 いきなりのヒマネタだ。やれ新型コロナだ検察庁法改正だで世間の空気が緊迫しているなかで持ち出すには、あまりにも能天気な話題にも思える。でも、「伝言板」というフレーズを何十年ぶりかで見て、いろいろな記憶がよみがえってしまった私の執筆脳は、もはや後戻りができないのだね。 今回は伝言板の話をする。 そもそも、こんなほのぼの系の街ネタがどうして私のアンテナにひっかかったのかというと、週イチで出演しているラジオのディレクターさんが拾ってきてくれたからだ。ディレクター氏は、毎週、私が出演する20分ほどのコーナーのために、トークの材料になりそうな新聞記事やネット上の話題を収集してくれている。ありがたいことだ。ここのところ、私は、気がつくと、その、彼が拾い集めてきたネタをあてにしていたりする。不思議なもので、自力で見つけた記事よりも、他人が発見して集めてきてくれた話題のほうにより強くひきつけられることが多い。あるいはこれは、私自身の世間を見る目が、経年劣化にともなって摩耗していることの表れなのかもしれない。 テレビでもラジオでも、あるいは雑誌、YouTubeでも同じことなのだが、番組なりページなりを制作しているスタッフは、常に有意義な話題や価値のある情報だけをサーチしているわけではない。むしろ、コンテンツの制作にたずさわる人間は、有意義な話や価値を持った情報を受け手にしっかり伝えるためにも、一定量の無駄話(まあ、「余白」ですよね)を希求している。番組枠のすべてがカタくてマジメなネタで埋められていると、視聴者がついてきてくれないし、なによりスタッフ自身が疲弊してしまうからだ。そういう意味でも、 「神奈川県の駅で伝言板が復活していて好評らしいですよ」 式のこぼれ話枠の話題は、貴重なのだ。 瞬間視聴率を採取してみると 「多摩川に流れ着いたアザラシのタマちゃんに地元の区役所から特別住民票が発行されて、このほど授与式がおこなわれました」 みたいな視聴者をバカにしている感じのニュースが、一番数字を稼いでいたりもする。ヒマネタはバカにできない』、小田嶋氏らしい軽妙なタッチだ。懐かしい。
・『私のこの連載にしても、有意義な話題にキャッチアップしようとする書き手の側のリキみが、アダになっている可能性は否定できない。毎度毎度、政局やら政治がらみの話題に拘泥し続けてきたことの結果が、こめかみに青筋を立てた無粋なコメント記入者を蝟集させることにしかなっていなかったのだとしたら、なんともむなしいことだ。 伝言板は、1980年代までに青年時代を過ごした人間にとっては、ある意味で、生命線だった。 もっとも、伝言板というブツを、たぶん40歳より若い世代の人々はリアルには知らないはずだ。仮に知識として知っていたのだとしても、その使われ方と存在意義を、当時の実感とともに想像することは、不可能だろう。 さてしかし、伝言板が昔の若者にとって不可欠なツールだったという言い方は、必ずしも正しい要約ではない。当時であっても伝言板を利用しなかった若者は少なくなかったはずだ。 というよりも、伝言板と無縁な生活を送っていた人々からしてみると、当時の私のような伝言板経由の情報を積極活用しているテの学生は、「いつも大勢でツルんでやがるいけ好かない連中」に見えていたはずだ。 じっさい、伝言板が「リア充(注1)」のための、実に甘ったれたコミュニケーションツールだった側面はどうやっても否定できない。 私自身は、いまの言葉で言う「リア充」の青春を過ごした学生ではなかった。大勢の仲間に囲まれて学生生活を謳歌しているタイプのいわゆる「パリピ(注2)」でもなかった。 ただ、そんな草も生えない二十代を完走した私のような男にも、ひととおりの人との行き来はあったわけで、伝言板経由でたどりつくコンパの席に連なっていたことだって、まるでなかったわけでもない。 まわりくどい書き方をしてしまった。要約すれば、クソ甘ったれた年頃の男女が集まってちいちいぱっぱの青春ごっこをやらかすクソ甘ったれた学生サークルが、週末ごとに開催するクソ甘ったれた飲み会みたいなものの連絡事項をメンバーに広く知らしめるためには、大学の最寄りの駅の伝言板が不可欠だったということを、私は言おうとしている。でもって、その際、コンパ会場のあたりをつけて店の人間と価格交渉をする役割の二年生と、会合の日時と場所を伝言板に書き込みに行く係の一年生がコンビを組むのが通例だったわけなのだが、私は、幾度か、その一年坊の仕事をしたことがあったのである。 こんな些末な青春のメモリーを披露することで、私が読者の皆さんに何をお伝えしようとしているかを、あらかじめお知らせしておく。私は、以下の話を通じて、40年前の学生が、いまの若い人たちとは比べものにならないほど未熟な人間だったということをお知らせしたいと考えている。 「そんな話に何の意味があるんだ?」 と、ぜひ、そう喧嘩腰にならないでいただきたい。 私は、大切な話をしようとしている。 大筋の前提として、私は、自分たちが、日常を充実させるためにコミュニケーションをとっていた時代から、コミュニケーションを充実させるために日常を運営している時代にたどりついてしまったのだというふうに考えている。 で、そのことを立証するひとつの手がかりとして、自分が伝言板を使っていた時代の記憶を、いまこうして引っ張り出してきている次第なのである』、「大筋の前提として、私は、自分たちが、日常を充実させるためにコミュニケーションをとっていた時代から、コミュニケーションを充実させるために日常を運営している時代にたどりついてしまったのだというふうに考えている」、なるほど。
(注1)リア充:現実の生活が充実している
(注2)パリピ:集まって陽気に騒ぐのが好きな若者たち(goo辞書)
・『実際、駅の伝言板が果たしていた役割と、21世紀の必需品たるスマホの機能を比較し、また伝言板を利用していた1970~80年代の若者たちと、スマホとインターネットを駆使している現代の若者たちの情報感度ならびにコミュニケーション能力を見比べることで、自分たちがたどりついてしまったこの時代の意味を明らかにすることができたら、当稿は有意義なテキストになるはずだ。 そんなことが可能なものなのかどうかは、まだわからないが。 さて、伝言板係の一年生は、一応の心構えとして、その日のコンパ情報を外部の悪意ある人間が簡単に読み取れない形式で記述する職責を担っている。 「6時半さかえ通りコマツ先着30人締切:男2000円女子1000円早稲女3000円」 みたいな、あからさまな書き方はよろしくない。鼻の下をのばしたサラリーマンがまぎれこんできたりして、必ずや面倒なことになるからだ。 で、伝言板係としては 「フォーメーション1830清瀧斜め向かいコ◯◯秋のリーグ戦会議」 くらいな、適当にボカした書き方でデータを書き込むわけなのだが、私の場合、生まれ持ったサガゆえに、こういうところでもウケ狙いの一発ネタをもぐりこませずにはおれなかった。のみならず、文体のズラし方も、変に凝りすぎていて、ニブめの学生には伝わらなかったりした。 で、いまの言葉で言えば「炎上」したわけです。 「伝言、まるで意味わかんなかったんだけど」 「青木狼の夕べってどういう意味だ?」 「あれでさかえ通り見つけろってパズルでしょ」 もっとも、オダジマの書き込みに限らず、当時の伝言板に記されていた文字は、ほかの誰かが書いたほかの目的の書き込みも含めて、意味不明なものが多かった。 というよりもあれは、ガチなコミュニケーションツールであるよりは、サルの群れにとってのグルーミングみたいな「じゃれ合い」「もたれ合い」のための場所だった。 交際初期の恋人同士によるあられもない愛の告白 暴走族のツーリング告知 待ちぼうけを食って帰宅する男の愚痴 謎の商材屋集団による謎のマーキング 祈り などなど、関係者以外には解読できない暗号文も含めて、伝言板のメッセージは、情報として要約される以前のコミュニケーションの体温そのものを伝えているテのものが多かった。 これは20世紀の人間が、それほど相互に孤立していたということでもある。 随時の連絡が簡単でなかったからこそ、われわれは、顔を合わせる機会では、おどろくほどベタベタしていた。実家に遊びにきた下宿学生は、夕飯を食べさせても帰ろうとしなかった。というのも、YouTubeもスマホもない時代の下宿学生の夜はどうにも時間のつぶしように困る呪われた空白だったからだ。一事が万事こんなふうで、われわれは、いまの若い人たちが二言目には冷笑する「必死な」「ベタベタした」「お花畑の」「しつこい」人々だった』、「伝言板のメッセージは、情報として要約される以前のコミュニケーションの体温そのものを伝えているテのものが多かった。 これは20世紀の人間が、それほど相互に孤立していたということでもある。 随時の連絡が簡単でなかったからこそ、われわれは、顔を合わせる機会では、おどろくほどベタベタしていた」、その通りだ。
・『伝言板は情報の向きが「一対多」で、なおかつ、書き手と読み手が基本的に匿名だった。それゆえ、書き込まれる情報は、その内容も、拡散方向も、すべてが不確かで曖昧だった。 のみならず、私がときどき利用していた高田馬場駅の伝言板は、内容の如何にかかわらず、3時間だか6時間だかが経過したら必ず消されることになっている、テンポラリー(一時的)な情報空間だった。 ん? とすると、 「基本的に匿名」「発信者は一人。受け手は複数」 時間の経過とともに消える」 って、これ、ツイッターとそっくりではないか。 なるほど。私がこの10年ほどツイッター廃人になっているのもむべなるかな、という話ではある。私は、はるか40年前から、不特定多数相手の匿名発信ネタに異様な情熱を傾ける若者だった。さらにさかのぼれば、ほんの小学生だった時代から、授業中に思いついた小ネタを小さな紙に書いて回し読みさせる作業に熱中している哀れな子供だった。 話を戻す。 大切なポイントは、機能としての伝言板が機能としてのツイッターに似ていることではない。 むしろ現代人たるわれわれが重視せねばならないのは、本来の機能としてはよく似たメディアであるはずの伝言板とツイッターのツールとしての扱われ方が、まるでかけ離れてしまっている現状だ。 たとえば、ツイッターは、登場した当初こそ、そのトラフィックの多くを無邪気なネタ見せ(あるいは大喜利)と、リアルな知り合い同士のグルーミングに費やしていたものだったが、じきに、タイムライン全般を罵倒や中傷やデマやプロパガンダが埋め尽くすようになり、そこから先は、一定のタイミングでやってくる大きな炎上案件を通じて、もっぱらタイムラインで暮らす人間たちにメディア・リテラシーの教育をほどこすアイテムとして、社会に貢献している。 そのツイッターがもたらしているメディア・リテラシー教育とは、おおよそ 「自分の発言には責任を持て」 「不確かな情報をうっかり拡散するな」 「犯罪に結びつく話題にさわるな」 「自他のプライバシー情報をうっかり発信するな」 「思っていることを全部口にするのは子供だぞ」 といったようなお話だ。 「当然じゃないか」 と思う人が多いはずだ。特に若い世代の人々にとっては、私がいまここに挙げたような注意事項は 「いうまでもないこと」 に属する話であるはずだ』、「ツイッターがもたらしているメディア・リテラシー教育とは、おおよそ 「自分の発言には責任を持て」 「不確かな情報をうっかり拡散するな」 「犯罪に結びつく話題にさわるな」 「自他のプライバシー情報をうっかり発信するな」 「思っていることを全部口にするのは子供だぞ」 といったようなお話だ」、なるほど。
・『君たちにぜひ知ってほしいのは、伝言板世代の人間であるわれわれ  オダジマを含めた50歳以上の男たち)にとって、上記の自己責任に基づいたメディア・リテラシーの五箇条の御誓文は、何回か実際に痛い目を見た経験を通じて、やっとのことで身につけて、いやいやながら従っている、およそめんどうくさくもよそよそしいきまりごとに過ぎないということだ。 ことコミュニケーション作法に限った話をすれば、わたくしども20世紀の若者は、今の若い人たちには想像もつかないほど甘ったれた人間たちだった。 われわれは、胸のうちで思ったことをさしたる抵抗なく口に出したものだし、そうすることで起こったトラブルにもおおむね鈍感だった。 「なんだ。やけに神経質なヤツだなあ」 てな調子で自分がひどいことを言ったにもかかわらずにやにや笑っていた。 他人の秘密をあばくことにも、自分のプライバシーを開陳することにも、犯罪告白にもおよそ無頓着だった。 のみならず、昨日言ったこととまるで違うことを今日口に出すことを恥じなかった。ダブルスタンダードなんていう言葉は、そんな言葉があることすら知らなかった。発言の記録が残ることもなかったし、失言一発で職を失うようなリスクとも無縁だったからだ。 だから、学生といわずサラリーマンといわず、昭和の人間たちは、いつも不穏当な失言をしたい放題に発信して、それで問題が起こっても、 「ごめんごめん」 で済ませていた。 「めんご」 という謝罪法さえ開発されていた。これは、 「オレは、本当は反省なんかしていないけど、ここは一応おまえらの顔を立てて謝罪のカタチだけ見せてやることにする。めんごめんご」 というアレで、最近では麻生さんくらいしか使わない奥のテだ。 話を元に戻してそろそろ結論を述べよう。 当稿は、伝言板が、不正確かつ曖昧でどうにも不徹底かつ無責任なクソ甘ったれたコミュニケーションツールであった旨を振り返ったテキストだったわけだが、その理由について、私は、伝言板そのものの機能の貧弱さにその責を求めるべき話ではないと思っている。あれがあんなふうであったのは、われわれがそんなふうであったからだ。つまり、わたくしども20世紀の人間は、少なくともコミュニケーションに関しては、およそ野放図で信用ならない人々であったということだ。 ひるがえって、ツイッターが厄介で剣呑で重箱の隅をつつくみたいで、口うるさくてひがみっぽくてうそつきなのは、それを使っているわれわれがそんなふうな人たちだからであると考えなければならない。 つまり伝言板とツイッターの間にある気の遠くなるような距離は、ツールとしての性質の違いに起因する違いではなくて、どちらかといえば、それらを扱う人間たちのこの40年間の変容を反映しているということだ。 われわれは、賢く、慎重になった。 そして、それ以上に臆病になってもいる。 結果として、昨今の若い人たちは、非常に行き届いたコミュニケーション作法を身につけている。 彼らはなにより、ほとんどまったく他人に甘えていない。感情的になることもないし、バカなことも言わない。出過ぎたマネもしない。いつも冷静な、実にハードボイルドな人たちだと思う。 見ていて、人間としての品質の高さに驚きつつ、ちょっとかわいそうになるときもある。ほんとうのところ、彼らは大丈夫なのだろうか。 ともあれ、最終的にわたくしども21世紀の情報至上主義ピーポーは携帯火炎放射器みたいな情報ツールを使いこなすに足る、極度に慎重な姿勢を身につけるに至っている。あっぱれなことだと思う。 ただ、それでわれわれが幸せになったのかどうかは、誰にもわからない。 私個人としては、伝言板に書く文言を工夫するために20分ほど駅頭に立ち尽くしていた40年前のあの場所に戻れるのであれば、いくら支払ってもかまわないと思っている』、「伝言板とツイッターの間にある気の遠くなるような距離は、ツールとしての性質の違いに起因する違いではなくて、どちらかといえば、それらを扱う人間たちのこの40年間の変容を反映しているということだ・・・われわれは、賢く、慎重になった。 そして、それ以上に臆病になってもいる。 結果として、昨今の若い人たちは、非常に行き届いたコミュニケーション作法を身につけている。 彼らはなにより、ほとんどまったく他人に甘えていない。感情的になることもないし、バカなことも言わない。出過ぎたマネもしない。いつも冷静な、実にハードボイルドな人たちだと思う。 見ていて、人間としての品質の高さに驚きつつ、ちょっとかわいそうになるときもある。ほんとうのところ、彼らは大丈夫なのだろうか。 ともあれ、最終的にわたくしども21世紀の情報至上主義ピーポーは携帯火炎放射器みたいな情報ツールを使いこなすに足る、極度に慎重な姿勢を身につけるに至っている。あっぱれなことだと思う・・・私個人としては、伝言板に書く文言を工夫するために20分ほど駅頭に立ち尽くしていた40年前のあの場所に戻れるのであれば、いくら支払ってもかまわないと思っている」、「伝言板に書く文言を工夫するために20分ほど駅頭に立ち尽くしていた40年前のあの場所に戻れるのであれば、、いくら支払ってもかまわないと思っている」、やはり懐古趣味的なところがあるようだ。

次に、本年3月28日付け東洋経済オンラインが掲載した総合エンターテインメントプロデューサーのつんく♂氏と Mistletoe Founderの 孫 泰蔵氏による対談「「気を遣いすぎる」のは、日本人の長所か欠点か? "なあなあ"の国・日本が「誇れるもの」もある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729691
・『音楽家、プロデューサーのつんく♂さん、連続起業家としてさまざまな事業を手がける孫泰蔵さんの対談。 2023年、つんく♂さんが『凡人が天才に勝つ方法 自分の中の「眠れる才能」を見つけ、劇的に伸ばす45の黄金ルール』、孫泰蔵さんが『冒険の書 AI時代のアンラーニング』をそれぞれ刊行。お互いの著書を読み、仕事論からAI時代の話まで、深い話は尽きることなく盛り上がりました。 今回は、日本と海外の仕事のとらえ方の違いや、そこから生まれるメリット、デメリットについて話し合います。第4回目(全6回)。*この対談の1回目:「仕事で成功するのはプロか天才か?」意外な結論 *この対談の2回目:AI時代「子どもが不登校でも"問題"ない」本当の訳 *この対談の3回目:日本の会社員が「世界中から嫌われる」納得の理由』、興味深そうだ。
・『ネイティブ同士は「なあなあ」「ふわっと」なりやすい  孫:日本は特に同調圧力を感じ取りやすいと思います。 相手を慮って、気を遣い合って……というのは決して悪いことではないけれど、気を遣いすぎた結果、「既存の範疇外のことをしたらまずい」という空気があるんですよね。 つんく♂:たしかに、何をするにも周りを見てから、ですよね。 孫:日本で仕事をしていると、基本的に日本人とばかり会って、日本語でやりとりしますよね。 ネイティブ同士の世界にいると、みなまで言わなくても「いつもの感じでさ。うまくやろうよ」「わかりました。うまくやりますわ」みたいに進むでしょう。 つんく♂:いわゆる「なあなあ」の世界ですね。 孫:外国人がいたら「うまくやりましょうってどういうことですか?」と聞かれますから、きちんと説明しなきゃいけないですよね。 ネイティブ同士の世界だと、ふわっと進んでやりやすい面もあるでしょうが、いざうまくいかないときに、なぜうまくいかないのか、どこを変えたらいいのかが見えないんです。 だから、うまくいかなくても「よくわかんないっすねー」みたいに相変わらずふわっとして、結局、停滞してしまうんですよね』、「日本で仕事をしていると、基本的に日本人とばかり会って、日本語でやりとりしますよね。 ネイティブ同士の世界にいると、みなまで言わなくても「いつもの感じでさ。うまくやろうよ」「わかりました。うまくやりますわ」みたいに進むでしょう。 つんく♂:いわゆる「なあなあ」の世界ですね・・・やりやすい面もあるでしょうが、いざうまくいかないときに、なぜうまくいかないのか、どこを変えたらいいのかが見えないんです。 だから、うまくいかなくても「よくわかんないっすねー」みたいに相変わらずふわっとして、結局、停滞してしまうんですよね」、なるほど。
・『○言い出しっぺが悪者になる世界  つんく♂:うまくいっているときは、「古いやり方はやめよう」「もっといい方法がある」なんて言い出した人が悪者になりますよね。もっとよくしようと思って言っているのに、「あいつが言ったからめんどうくさいことになった」みたいな感じで。 孫:そうですよね。みんな言い出した人のせいにして、「自分は関係ないです」みたいな感じになりがちですよね。そうしたらみんな言わなくなりますよ。言うだけ損だから』、「言い出しっぺが悪者になる世界」とは困ったことだ。
・『アメリカでは、要求しないと水は飲めない  つんく♂:たとえばアメリカ人だってみんながみんな積極的ではないですが、日本のような忖度はありませんよね。 孫:アメリカ人だって気を遣う人もたくさんいるけど、さすがに「それを言うとまずいんじゃないか」という雰囲気までにはならないんですよ。 つんく♂:僕が今住んでいるハワイは「多言語社会」でいろいろな民族がいるから、日本のように「のどが渇いたかも」と言っても飲み物は出てこないんです。ちゃんと「水が1杯ほしい」と言う必要があるわけですよね。 それは気を遣ってくれないわけじゃなくて、いろんな言語の人がいるから、要望があればわかりやすく英語に置き換えて伝える必要がある。日ま本人のようにニュアンスでは通じない。 孫:たしかにそうですね』、「日本のように「のどが渇いたかも」と言っても飲み物は出てこないんです。ちゃんと「水が1杯ほしい」と言う必要があるわけですよね。 それは気を遣ってくれないわけじゃなくて、いろんな言語の人がいるから、要望があればわかりやすく英語に置き換えて伝える必要がある」、その通りだ。
・『○「業者もゆるい」のがハワイカルチャー  つんく♂:反面、ハワイで感じたのは「責任者って誰?」みたいな言葉が伝わらないことです。  ハワイでは「責任者、誰?」が伝わらない  つんく♂:たとえば家にトラブルがあって業者を呼んだとき「これって、どこに責任があるの?」と聞くと、「えっ? じゃあ直さないんですか?」と言われる。 「いや、直すけど、誰が責任をとるの?」「保険会社です」「いやいやお金を払うのは保険会社だけど、このトラブルの責任はどこにあるの?」「いやあ……」というやりとりになるんですよ。 孫:ハワイのカルチャーもあるかもしれませんね。僕もハワイで水道漏れの業者を呼んだら、直せないっていう。「あなたはプラマー(配管工)なのになぜ直せないのか」と聞けば「いや、部品が今ないから」って。 つんく♂:そういうの、めっちゃあります(笑)。 孫:「いつ直るの?」と聞いても「部品が来るまで直らないよね」と言われて、「いや、誰かちゃんと責任持ってよ」と言っても「いや、部品が来るまでは難しいよね」としか言われない(笑)。 孫:たとえばシリコンバレーだと、問題が起こる前に「ここ、ちょっとまずくない?」と言う人が出てきて、「たしかにここは事前に対策しておかないとまずいね」「じゃあ、俺が言い出したから俺がやるわ」という感じです。) つんく♂:その的確さがあるのもシリコンバレー特有な気もします。そうすることで評価されて、報酬もきちんと上がっていくわけですよね』、「「あなたはプラマー(配管工)なのになぜ直せないのか」と聞けば「いや、部品が今ないから」って」、日本でも「部品」がない場合は同様だ。
・『シリコンバレーで「足の引っ張り合い」が少ない理由  孫:シリコンバレーは事業がうまくいけばストックオプションにもろ反映されますから、ボーナス2割アップとかいうレベルじゃなく、将来、何億、何十億という差になっていく。だから足の引っ張り合いじゃなく、全体の利益を考えるんです。 「お前より俺のほうがうまくできる」と思えるなら、積極的に仕事をとりに行く人もいる。そのとき「それは俺の仕事だ。お前にとられる筋合いはない」なんて言われないわけですよ。 「たしかにこの仕事はお前のほうが向いている。じゃあ俺はこっちやるわ」というコラボレーションになる。全体がうまくいけばみんなが潤うことがわかっているからです。 つんく♂:個人のレベルが高いからこそでしょうね。めちゃくちゃうまい人たちが野球をしている感じで、ランナー2塁でピッチャーゴロだったら、誰が捕ってどこに投げるかをチーム全員が脳で考える前に体が完璧にわかっているような。 孫:そうです。そもそもプロフェッショナルな人材が集まっているので、人材を育成しようという雰囲気がないんです。 でも、すごい人たちだらけだから、お互いに学び合うし「それすごいから自分にも教えて」「どうぞどうぞ」、「その件なら知り合いの詳しい人を紹介するよ」「ありがとう」みたいに、自然と高め合っていく感じですよね。) つんく♂:でも、僕が日本っていいなと思うのは、やはり接客力というか「おもてなし文化」ですよ。ホテルや空港、ちょっとしたカフェだってかゆいところに手が届くサービスをしてくれる。あれは世界に誇れるものだと思うんだけどなあ』、「僕が日本っていいなと思うのは、やはり接客力というか「おもてなし文化」ですよ。ホテルや空港、ちょっとしたカフェだってかゆいところに手が届くサービスをしてくれる」、私個人は「おもてなし文化」は余り評価しないが、高く評価する人が多数だろう。
・『日本の「おもてなし文化」は世界に誇れるか!?  孫:他国は接客について重要視していないとか、ホスピタリティにまったく興味がないのかも。だから「僕に言われても困るよ」みたいな感じになりがちですよね。 おもてなし文化とシリコンコンバレーの話でわかるのが、全体的に平均が高いけど突出した人がいない日本と、数少ないすごい人たちが突出して二極化しているアメリカということかもしれませんね。 つんく♂:たしかに、日本人の平均的なレベルは高いですよ。 孫:シリコンバレーを理想とすれば「日本はつまらない」と感じるでしょうし、一方おもてなし文化に感銘を受けると「日本最高」と感じるでしょうね。 おもてなしについては、僕もつんく♂さんと同感です。どちらがいいかと言われると、なんとも言えませんが。 つんく♂:「なあなあ」や過度な忖度はビジネスの世界では悪手でしょうが、一方、日本人の気遣い文化みたいなものも、評価されてほしいですよね。 *この対談の1回目:「仕事で成功するのはプロか天才か?」意外な結論 *この対談の2回目:AI時代「子どもが不登校でも"問題"ない」本当の訳 *この対談の3回目:日本の会社員が「世界中から嫌われる」納得の理由 対談場所:Rinne.bar/リンネバー(お酒を飲みながら、カジュアルにものづくりが楽しめる大人のためのエンタメスポット。廃材など、ゴミになってしまうはずだった素材をアップサイクル作品に蘇らせる日本発のバー』、「「なあなあ」や過度な忖度はビジネスの世界では悪手」、その通りだ。私は「おもてなし」は評価せず、「シリコンバレーを理想」とする方だ。

第三に、3月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元フジテレビアナウンサーの松尾紀子氏による「【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341218
・『「“自分らしくいること”が、コミュニケーションがうまくいく一番の秘訣」 つい周りに合わせて無理をしてしまったり、自分の言いたいことをうまく言えなかったり…そうして、悩んだ経験はありませんか? 『感じがいい、信頼できる 大人のちょうどいい話し方』は、そんないつも周りを気遣うことのできる人に向けて作られた書籍として注目を集めている。 アナウンサー歴30年超でありながら、実はもともと極度の人見知りで「人前で話すのがずっと苦手」だった著者による、「大人にふさわしい会話のテクニック」が多数掲載されている。 自分と相手が調和するコミュニケーションの秘密がわかる本書。 今回はその中から特別に「相手に端的に意見を伝える方法」を紹介します。 【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>』、興味深そうだ。
・『「リアクション」の達人になろう  相手に心地よく話してもらう最大のコツ。それは、「リアクション」です。 これは、声を大にして言いたいくらい重要です。自分は話し下手だと思っている人は、まずリアクションの達人を目指しましょう。 たとえばあなたが話している時、相手がお地蔵様のように無表情で何も反応しなかったらどうでしょう。「私の話、大丈夫かな」と不安になりますよね。まして、目も合わせてくれなかったら「怒っているのかも」と心配になります』、「まずリアクションの達人を目指しましょう」、意外な感もあるが、よくよく考えれば、「相手」が話易くすることも必要だ。
・『気の利いた言葉が出なくても気持ちが伝われば大丈夫  世の中にはさまざまな「リアクション」の方法があふれていますが、実はどんな言葉でも、相手を心から思い、発した言葉は人の支えになる力を持っているのです。 特に言葉がなくても、「気にかけている」と示すだけでも十分なときがあります。 以前、友人のお母様が急逝した時のこと。どれほどのショックか、彼女の胸中を思うとそっとしておくべきかと迷いましたが、やはり電話だけでも……と思い切って連絡を取ってみました。しかし私は、電話口で泣く彼女に対して何も言うことができませんでした。ただ「本当に寂しいね」と、私も一緒に涙することしかできなかったのです。 しかしその友人は、会うといまだに「あの時、一緒に泣いてくれたことは今でも忘れられない。感謝している」と言ってくれます』、これは女性ならではの武器で、男性の場合は通用しないだろう。
・『言葉は「気持ち」を伝えるもの  気の利いた言葉や名言を言えなくてもいいのです。相手の気持ちに寄り添い、そこから出た一言が人を助けることもあります。 大切なのは、あなたを思っているという気持ちを自分なりの言葉で伝えていくこと。言葉は気持ちを伝えるツールに過ぎません。大切なのは、必ずしも何か気の利いた言葉やリアクションだけではなく、自分と相手が、ちょうどよく調和するコミュニケーションなのです。 (本記事は、『感じがいい、信頼できる 大人のちょうどいい話し方』の一部を抜粋・編集・加筆したものです)』、「大切なのは、必ずしも何か気の利いた言葉やリアクションだけではなく、自分と相手が、ちょうどよく調和するコミュニケーションなのです」、その通りなのだろう。
タグ:コミュニケーション (その2)(伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」、「気を遣いすぎる」のは、日本人の長所か欠点か? "なあなあ"の国・日本が「誇れるもの」もある、【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>) 日経ビジネスオンライン 小田嶋 隆氏による「伝言板世代が身に付けた「五箇条の御誓文」」 小田嶋氏らしい軽妙なタッチだ。懐かしい。 「大筋の前提として、私は、自分たちが、日常を充実させるためにコミュニケーションをとっていた時代から、コミュニケーションを充実させるために日常を運営している時代にたどりついてしまったのだというふうに考えている」、なるほど。 (注1)リア充:現実の生活が充実している (注2)パリピ:集まって陽気に騒ぐのが好きな若者たち(goo辞書) 「伝言板のメッセージは、情報として要約される以前のコミュニケーションの体温そのものを伝えているテのものが多かった。 これは20世紀の人間が、それほど相互に孤立していたということでもある。 随時の連絡が簡単でなかったからこそ、われわれは、顔を合わせる機会では、おどろくほどベタベタしていた」、その通りだ。 「ツイッターがもたらしているメディア・リテラシー教育とは、おおよそ 「自分の発言には責任を持て」 「不確かな情報をうっかり拡散するな」 「犯罪に結びつく話題にさわるな」 「自他のプライバシー情報をうっかり発信するな」 「思っていることを全部口にするのは子供だぞ」 といったようなお話だ」、なるほど。 「伝言板とツイッターの間にある気の遠くなるような距離は、ツールとしての性質の違いに起因する違いではなくて、どちらかといえば、それらを扱う人間たちのこの40年間の変容を反映しているということだ・・・われわれは、賢く、慎重になった。 そして、それ以上に臆病になってもいる。 結果として、昨今の若い人たちは、非常に行き届いたコミュニケーション作法を身につけている。 彼らはなにより、ほとんどまったく他人に甘えていない。感情的になることもないし、バカなことも言わない。出過ぎたマネもしない。いつも冷静な、実にハードボイルドな人たちだと思う。 見ていて、人間としての品質の高さに驚きつつ、ちょっとかわいそうになるときもある。ほんとうのところ、彼らは大丈夫なのだろうか。 ともあれ、最終的にわたくしども21世紀の情報至上主義ピーポーは携帯火炎放射器みたいな情報ツールを使いこなすに足る、極度に慎重な姿勢を身につけるに至っている。あっぱれなことだと思う・・・ 私個人としては、伝言板に書く文言を工夫するために20分ほど駅頭に立ち尽くしていた40年前のあの場所に戻れるのであれば、いくら支払ってもかまわないと思っている」、「伝言板に書く文言を工夫するために20分ほど駅頭に立ち尽くしていた40年前のあの場所に戻れるのであれば、、いくら支払ってもかまわないと思っている」、やはり懐古趣味的なところがあるようだ。 東洋経済オンライン つんく♂氏 孫 泰蔵氏による対談「「気を遣いすぎる」のは、日本人の長所か欠点か? "なあなあ"の国・日本が「誇れるもの」もある」 「日本で仕事をしていると、基本的に日本人とばかり会って、日本語でやりとりしますよね。 ネイティブ同士の世界にいると、みなまで言わなくても「いつもの感じでさ。うまくやろうよ」「わかりました。うまくやりますわ」みたいに進むでしょう。 つんく♂:いわゆる「なあなあ」の世界ですね・・・やりやすい面もあるでしょうが、いざうまくいかないときに、なぜうまくいかないのか、どこを変えたらいいのかが見えないんです。 だから、うまくいかなくても「よくわかんないっすねー」みたいに相変わらずふわっとして、結局、停滞してしまうんですよね」、なるほど。 「言い出しっぺが悪者になる世界」とは困ったことだ。 「日本のように「のどが渇いたかも」と言っても飲み物は出てこないんです。ちゃんと「水が1杯ほしい」と言う必要があるわけですよね。 それは気を遣ってくれないわけじゃなくて、いろんな言語の人がいるから、要望があればわかりやすく英語に置き換えて伝える必要がある」、その通りだ。 「「あなたはプラマー(配管工)なのになぜ直せないのか」と聞けば「いや、部品が今ないから」って」、日本でも「部品」がない場合は同様だ。 「僕が日本っていいなと思うのは、やはり接客力というか「おもてなし文化」ですよ。ホテルや空港、ちょっとしたカフェだってかゆいところに手が届くサービスをしてくれる」、私個人は「おもてなし文化」は余り評価しないが、高く評価する人が多数だろう。 「「なあなあ」や過度な忖度はビジネスの世界では悪手」、その通りだ。私は「おもてなし」は評価せず、「シリコンバレーを理想」とする方だ。 ダイヤモンド・オンライン 松尾紀子氏による「【気の利いた言葉が言えない】人がコミュニケーションで軽視している超大事なこと<元フジ女子アナが教える>」 「まずリアクションの達人を目指しましょう」、意外な感もあるが、よくよく考えれば、「相手」が話易くすることも必要だ。 これは女性ならではの武器で、男性の場合は通用しないだろう。 「大切なのは、必ずしも何か気の利いた言葉やリアクションだけではなく、自分と相手が、ちょうどよく調和するコミュニケーションなのです」、その通りなのだろう。
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事業再生(その4)(カネボウ破綻 絶望からの経営訓 クラシエ・石橋社長 「復興の10年」を語る、マレリに再び「資金不安説」が浮上!経営破綻→再スタートから1年半で“暗雲”のワケ、【実話】トヨタからの転職先のパン会社が民事再生中!?「トヨタ式カイゼン」で再建してみた) [企業経営]

事業再生については、昨年2月19日に取上げた。今日は、(その4)(カネボウ破綻 絶望からの経営訓 クラシエ・石橋社長 「復興の10年」を語る、マレリに再び「資金不安説」が浮上!経営破綻→再スタートから1年半で“暗雲”のワケ、【実話】トヨタからの転職先のパン会社が民事再生中!?「トヨタ式カイゼン」で再建してみた)である。

先ずは、2017年8月22日付け日経ビジネスオンラインが掲載したジャーナリストの金田 信一郎氏による「カネボウ破綻、絶望からの経営訓 クラシエ・石橋社長、「復興の10年」を語る」を紹介しよう。やや古いが、改めて取上げる価値は十分にあると取上げた次第である。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/081700155/082100002/
・『10年前、壮絶な破綻劇を引き起こしたカネボウは今――。当時、中堅幹部だった石橋康哉氏は、残された3事業を引き継いだクラシエホールディングスの社長となり、収益力を急回復させている。「家族主義を復活させる」。社員を訪ね、酒を酌み交わし、社員旅行を復活させた。そんな石橋社長は、どのようにして会社を蘇らせたのか。 ※日経ビジネス8月7・14日合併号では「挫折力 実録8社の復活劇」と題した特集を掲載しています。併せてお読みください。 Q:カネボウからクラシエに社名が変わって10年、赤字体質から収益力が大きく回復してきました。そして、「クラシエ10年の歩み」という社史を作ったのに、その半分を破綻の経緯に割いている。不祥事を起こした企業は、その後、事件を語ろうとしません。ところが、カネボウの創業から始まって、破綻の経緯を詳しく書いてある。なぜ、こうした社史を作ろうとしたんですか。 石橋社長(以下、石橋):私たちはそういう(破綻という)過去があったことを知っている者として、正しく文字にして残して、次の世代につないでいく。それが、あの時代を経験した人間の大きな責任なんだろうと。2度とあってはならないことだから。 でも、クラシエって、あの経験を超えてきたことで今があると思うんですよ。もう1回やれって言われても嫌ですよ、絶対(笑)。2度と経験したくない。 僕は「普通の会社を目指す」と言い続けているけど、「普通」って失った時に初めて気付くものなんですよ。まじめに働いていればボーナスが出て、結婚して家を建てて、定年後は年金と退職金で暮らしていく。企業人の心のどこかに、そういう物語があるじゃないですか。それがある日突然、ご破算になっちゃった。その傷みや悔しさ、情けなさを乗り越えて今まで来たことを、「その時代」を知らない人たちに伝えていきたい。 Q:今は優良企業でも、破綻しかけた企業は多い。失敗を物語として語り継いでいる会社の方が、学ぶ力が強く、「何のために仕事をしているのか」を知っています。 石橋:いい効果があると思いますよ。だから、今は50%以上の人がカネボウ時代を知らない社員です。で、ここ(10年史)を読むと、「上司は偉そうにしてるけど、こんなことになってたんじゃないか」と。それでいいと思うんですよ。 破綻直後は、結構気にする雰囲気がありました。「先祖帰りだ」とか、「過去の栄光にすがっている」とかね。最近はめっきり減りましたけど。 正しく認識して、何が悪かったのか、真正面から向き合うことで見えてくるものがある。カネボウの破綻を、斜陽産業になった繊維(事業)の問題だとか、経営者の問題だとか、そんなことで片付けてはならないんだと思うんですよ。我々だって、その企業にいたわけですから、責任はゼロではない。だから、変えていこうよ、と』、「今は50%以上の人がカネボウ時代を知らない社員です。で、ここ(10年史)を読むと、「上司は偉そうにしてるけど、こんなことになってたんじゃないか」と。それでいいと思うんですよ。 破綻直後は、結構気にする雰囲気がありました。「先祖帰りだ」とか、「過去の栄光にすがっている」とかね。最近はめっきり減りましたけど。 正しく認識して、何が悪かったのか、真正面から向き合うことで見えてくるものがある。カネボウの破綻を、斜陽産業になった繊維(事業)の問題だとか、経営者の問題だとか、そんなことで片付けてはならないんだと思うんですよ」、「今は50%以上の人がカネボウ時代を知らない社員」もうそんなになったのかと、時間が経つのの速さに改めて驚かされた。
・『家族主義を貫く  Q:変えるべき問題はどこにあったんでしょうか。 石橋:一番の問題は、「内向き」だったこと。130年前の紡績が創業ですから、全国から15歳ぐらいの子を集めて寮に入れて、社内に学校を作って教育していく。その先生は社員です。大学を出て3年ぐらいは、その先生役を担っていくわけで、そうなれば自分の弟であり、妹になっていくわけですよね。 Q:まさに家族ですね。 石橋:そう、家族ですよ。「家族主義」って悪いことじゃない。すばらしい一面は伝えていきたい。毎年、1〜3月に現場に行って、100人単位でフェイス・トゥー・フェイスで「進んでいく道はこっちだろう」と話している。 繊維、ヒール(悪)役じゃないんだよ、と。昔は中卒で入ってきた子が、ずっと寮で生活して、地元の人と知り合って結婚していく。そうすると、まだ味噌汁の作り方や裁縫とか分からない。そこで、退職前の数カ月間、そういうことを教えてから嫁に出していたんですよ。 Q:これから退職するという人に。 石橋:そう。それを話すとちょっと、うるっときてね。「カネボウという会社の家族主義には、そこまでやっていたDNAがあるんやで」って。「僕らが残してもらったすばらしいDNAなんだ。だから僕らは、これを引き継いで残していこう」って話して回った。 でも一方で、かばい合いすぎてダメなところを指摘できなかったり、弊害も出てくる。経営判断を遅らせたり、誤らせたり、問題につながってきた。それを1つひとつ解きほぐしながら、「何をこれからも継承していくの」「どんな新しい(改革の)風を吹かせるの」っていうことを、毎年のようにみんなで話し合っていく。そして2度と間違いが起こらないようにする。 Q:何が間違いだった。 石橋:悪くなる原因は1つではない。特定の事業や経営者に限定すると、本質にたどり着かない。本質は、そうなってしまう風土とか、空気が会社にあったんだと思うんですよね。そういう空気にならないためにはどうするのか、みんなで考えられると思うんですよ。 Q:その議論の結論は、家族主義は守るべき。 石橋:僕は守ろうと思っている。 Q:「働き方改革」には逆行するようにも聞こえますが、一方で家族のように仲良く仕事をするのが悪いこととは思えないですね。 石橋:思えないんですよ。今は、合理主義や能率主義ばかりが取りざたされている。目指す会社はあっていい。僕らは違うと思っている。「自分のため」ではなくて、「チームのため」とか。そこに一生懸命やろうという価値観を持っている日本人て、たくさんいるじゃないですか。 Q:そっちの方が日本人の強さが出る。 石橋:自分のためより、チームのための方が、力が出ますよね。僕はよく、「居場所」と言うんですけど、会社を辞めていく人の共通項があって、「集団の中に居場所がなくなった」って言うんですよ。役に立っていると思える人は、辞めようとしない。つらいことがあっても、仲間の中で自分の存在が認められていると頑張れるわけですよね。 個人の業績だと、結果が出なくなった瞬間に居場所がないですよね。そうじゃねえだろう、って。「おまえにはちゃんと役割があるだろう。それを果たしていたら、良い業績の時もあれば悪い時もある」と。それをみんなが認め合っていれば、それでいいんですよ。) Q:カネボウが悪くなってしまった1つのポイントとして、「売り上げを常に上げるように求められて、個人も組織も疲弊した」と多くの部署の人が証言しています。とにかく数字を作らないといけない、と。 石橋:今だって、事業をやっている限り、数字は必要だとは思う。でも、何のための数字なのか。僕は、「利益の永続的な成長だよ」って言い続けている。「売上高至上主義は絶対ダメだ」と。でも、売り上げがダメだとは言っていない。利益を上げるために、一番まっとうなやり方は売り上げを上げることですよね。でも、売り上げが目的になっちゃったんです。だから、利益は上がらず、やっているヤツも疲弊していく。 去年、「10年後のクラシエをどんな会社にしたいですか」と社員にアンケートをとった。すると、「家族や友人に誇れる会社にしたい」とか「環境を大切にする会社になりたい」と。どれも正解だと思う。でも、みんなが頑張って利益をあげて、そのカネの使い方だよね、と。ボーナスが高かったり、環境保護に資金を投じられるのも、儲かったカネがあるから、そういう夢がかなうんだよね、と。何をするにも儲からなかったら始まらない。 だってうち1回、潰れたやろ、と。儲けなければ、同じことが起きる。事業を営んでいる限り、儲けることができないと夢は実現しないよ、と言っているんです』、「「家族主義」って悪いことじゃない。すばらしい一面は伝えていきたい・・・かばい合いすぎてダメなところを指摘できなかったり、弊害も出てくる。経営判断を遅らせたり、誤らせたり、問題につながってきた。それを1つひとつ解きほぐしながら、「何をこれからも継承していくの」「どんな新しい(改革の)風を吹かせるの」っていうことを、毎年のようにみんなで話し合っていく。そして2度と間違いが起こらないようにする・・・売り上げが目的になっちゃったんです。だから、利益は上がらず、やっているヤツも疲弊していく」、なるほど。
・『社員旅行、数千万円の効果  Q:そうした会話も、現場を回って、直接話した方が効果は高いのでしょうか。 石橋:今の時代、ネットとかいろいろあるし、はるかにそっちの方がいいと思いますよ。でも、芸風は変わんねえわ(笑)。直接現場に行って、みんなの顔を見ながら「そやろ、そやろ」と言って、終わったらば、「じゃあ、飲み行くぞ」と。どこまで伝わっているのか、ギャップがどこにあるのか、「確かめ算」みたいなものです。 Q:飲んで話しながら、その反応を見たり、全体の雰囲気を確かめたりするわけですね。 石橋:うちって、やっぱりそういう会社やと思っているんです。年初にビデオで経営方針を流したりはしている。だけど、現場に行って、「今日はナマの社長、来たよお」って(笑)。「言いたいことがあれば、言ったらいいよ」って。 人事を長くやったけど、本社に呼んで面接している時と、現場に行って話をする時と全然違う。僕はよく、サッカーのホームとアウェーに例えるんですが、選手の動きが違いますよね。会社も同じで、聞き出せる話の内容も量も全然違うんですよ。本社に呼ばれたらガチガチで、ほとんど本音なんか出てこない。でも自分の職場で、普段着ならポロポロ本音が出てくる。酒飲みにいったら、もっと本音が出るじゃないですか。 Q:退職する女子を結婚前に修業させていたわけだから、地元ではカネボウファンは多いですよね。そういう地域の店で飲んでいると、もう思っていることがバンバン出てくる。 石橋:全然違いますよね。私が本社に戻って(担当役員に)「現場でこんな意見が出ているぞ」って言えば、担当者は「もっとよく知らなければ」と現場に目が向くわけじゃないですか。それによって、経営陣と社員の距離って、もっと短くできるし、風通しをよくできるかもしれない。 どこの破綻した企業も、ダメだと分かっていてやっている経営者はいないと思う。いつの間にか、気がつかなくなってしまう。「社員のために」と最初は思っていたのに、いつの間にか「自分のため」になっていて、社員の思いとはかけ離れてしまう。社員の思いと合っているのかどうか、見ておかないと。 4年前、社員旅行を復活させたんだけど、「やるぞ」って言ったら、「えーっ」って経営陣が冷ややかな目で見る。「社長だけですよ、そんなの喜ぶのは」って。「今の子はそんなの来ませんよ」って。「あれ」と思って、しばらく考えたりしたんだけど、「お前ら、やっぱり絶対うけるよ」と。 20〜30年前までは慰安旅行って、日本中の会社がやっていたじゃないですか。で、若い子たちが「オフまで会社の人と一緒なんて嫌だ」っていうことで、下火になってきたことはありましたよ。でも、最近は違います。 Q:本当ですか。 石橋:それには、条件があります。内容とか企画は、すべて若い子たちにやらせる。「年寄りは文句を言うな」と。入社1~2年目の子たちが必死に考えてくれて。でも、遊びと言えども、何百人という人たちを一斉に動かすって大変なんですよ。そういうことを学んでくれたら、いい話じゃないですか。 Q:部署単位で行くんですか。 石橋:工場や支店など、いろんな単位でやっている。任せています。 Q:社長もたまには行くんですか。 石橋:それがね、最初は「全部、俺が出る」って言ったんだけど、本当に地方から電話がかかってきて、「やっぱ、全部出られない」と(笑)。「社長やめたら出る」と言ってます。今は本社の(慰安旅行)だけ出ています。 仕事って、つらくて苦しいことは当たり前じゃないですか、カネもらってるんだから。でも、それだけじゃない。みんなで頑張ったら慰安旅行があったり、工場では地域の人と夏祭りや盆踊りをやったりね。そういうことが出来ることが、この会社の良いところだと思うんですよ。 Q:それがなければ、個人で仕事をやればいい話ですね。 石橋:そう。僕はよくそれを言うんですよ。「チームでやった方がいいと思うから会社にいるんだろう」って。「自分一人で満足できるんだったら、会社なんか辞めて個人で事業やった方がいいじゃん」って。自分以上の力を発揮する醍醐味があるから組織の中で生きているわけだから、その喜びとかを感じなかったら意味ないじゃないですか。 Q:だから、家族主義はパフォーマンスを上げるための仕組みだったんでしょうね。 石橋:元々はね。だから、すばらしい発想だった。でも繰り返しているうちに、保身(の道具)に変わってきて、歪みが少しずつ出ていった。だから、今の自分たちの仕事に置き換え、「原点」のいい部分を引き継いでいけばいいと思うんですね。 Q:慰安旅行もやり方によってはいい。 石橋:まあ、多くの会社はカネがないから、なくしたんでしょうけどね(笑)。全社で数千万円かかってるもん。これも、「儲けたから、旅行するんやで」って。がんばった分は反映されるように、経営者は絶対にやっていかないといけない。ボーナスや福利厚生などトータルしてみた時に、頑張った分は会社が答えてくれているなと実感させろ、と。会社だけ良くなっていて、自分の生活が変わらなかったら、「搾取されてるだけだ」と考え始め、誰も頑張らないですよ。 Q:慰安旅行も、数千万円の効果はあると。 石橋:十分戻ってきます、結果的には。数千万円使っても、その子たちが数億円にして返してくれますよ。間違いないです。生きたカネ(の使い方)だと思いますよ。 Q:親が子供にカネをかけるようなものですかね。 石橋:だから、「10周年ぐらいで社史を作って」と思う人もいるかもしれないし、全国5カ所で(10周年)パーティーを開いて「なんだ」と思う人もいると思う。ただ、(社員が)はち切れんばかりの表情で帰って行くのを見て、これはきっと「頑張ろう」と思ってくれると。費用対効果で見たら、「ナイスだな」と思いますよ。 Q:今の企業人は、会社のことをあまり知らないと思います。でも、10年史を見ると、激動の歴史の中で、今の会社があることが分かる。「会社とは何か」を考える機会が多いでしょうね。 石橋:やっぱり会社をよく知って、好きになってほしい。何かの縁で入ってきたんだから、「この会社が日本で一番、好きな会社だ」と本人にも、家族にも思ってもらいたい。日本一の企業を目指しているわけではないけど、でも、働いていて「この会社が好きなんだ」と言える会社が素敵だと思うんですよ。) Q:現場を回って、「働き方改革」時代の若い社員をどう捉えている? 石橋:私の若い時は、「こうやれ」って言われたら、何も考えずにやって、そのプロセスの中で、自分で意味を考えていった。 今の子はそれがまったく通用しない。「なぜ、これをするの」って。だから、「なんでこの仕事をするのか」「こういう意味があって、こう成果につながっているんだよ」とか説明する必要がある。本音を言えば、すごく面倒くさい。その面倒くさいことをきっちり説明してあげなさいって管理職に言っている。そうしないと、今の子は育たない。でも、意味づけを理解させておけば、残業でも文句を言いませんよ。 Q:上司や先輩が説明不足だから、若手が「なんで」と反発する。 石橋:説明でかなりの部分は解決する。それでも、1分1秒も残業したくない、という連中も出てくると思います。でも、成果をあげなあかんわけで、そのためには説明してやらないと。意外とみんな、「そういうことですね」と納得してくれますけどね。 Q:納得すれば、若い人も仕事に没頭する。 石橋:一緒だと思いますよ。チームで評価されることに意義を感じる子は、うちは一杯いてくれている。 ▽若手に考えさせる経営(Q:家族主義はカネボウ時代には悪い方向にも行ってしまった。どこを修正すれば、家族主義は今の時代に機能するのか。 石橋:1つは透明にすることですね。今は、ホールディングスの経営会議の議事録もかなりの人が見ることができます。隠す必要がない。とにかく可能な限り「見える化」してしまい、みんなが近いレベルで情報を共有することが、大事なんだと思う。 カネボウ時代、社長が「好調だ」とか言ってて、その実態はボロボロだった。昔の大本営発表と同じで、戦況はいいと言い続けていて、最後は原爆をボーンと落とされて負けた。国民の大部分は、こんなにボロボロに負けてると知らなかったわけじゃないですか。 苦しいなら、みんなでシェアしておけばいい。社長も工場長も特別な人間がやっているわけじゃない。だから、悪い状況に陥っても、みんながシェアしてたら、誰かのアイデアが救う時もありますよね。社長一人のアイデアで切り抜けるなんて、できると思ってない。 若い頃、カネボウで腹が立ったことがあってね。上司から「お前ら危機感がない」と怒られたことがあるんですよ。怒っている人は、会社の悪い状況をよく知っている。我々、下っ端はブラックボックスで全部隠されているのに、危機感なんてどうやって持てるんだよ、と。「ふざけるな」と思った。どこまで会社が追い込まれているか、(幹部層は)オレたちに言ったことがないじゃないか。 一方でね、悪い話を伝えすぎると、現場の勢いがなくなって、沈みかけた船から逃げるネズミも増えると言う人がいる。僕は違うと思っている。逃げるネズミは、いつかは逃げるんだ。みんながシェアしている方が、はるかに活力を生む。 僕は、ほとんどの情報を知れるように(仕組みを)作ってきたつもりなんです。経営状況から、各事業の商品の原価まで。昔は原価を教えることに大反対されました。「辞めてよそのメーカーに行ったとき、原価がばれてしまう」とか。そんなもの、調べたらわかりますわ。そんなことよりも、「この原価だから、販促費はこれくらいでないと儲からない」と教えてる。原価を隠しておいて、「儲かるような売り方をしてこい」って言われても、分かんないですよ。それよりも「どんな売り方をしたら儲かるか、君が知恵を出したらいい」と。 そうすれば、社員は利益を生む方法を、現場で考えますね。やみくもに販売数を追うのではなくて。 石橋:若い子は、みんな優秀だと思います。うちの子だけじゃなくて、日本企業の若手社員は優れている。でも、大事なのは、考えさせることですよね。どんなに優秀な子でも、1〜2年考えなくなったら、確実にアホになりますよ。自分で考えることを習慣化すれば成長していきます。 Q:考える材料が与えられなかったわけですね。日本の敗戦と同じで。 石橋:みんな隠しちゃう』、「本社に呼んで面接している時と、現場に行って話をする時と全然違う。僕はよく、サッカーのホームとアウェーに例えるんですが、選手の動きが違いますよね。会社も同じで、聞き出せる話の内容も量も全然違うんですよ。本社に呼ばれたらガチガチで、ほとんど本音なんか出てこない。でも自分の職場で、普段着ならポロポロ本音が出てくる。酒飲みにいったら、もっと本音が出るじゃないですか・・・どこの破綻した企業も、ダメだと分かっていてやっている経営者はいないと思う。いつの間にか、気がつかなくなってしまう。「社員のために」と最初は思っていたのに、いつの間にか「自分のため」になっていて、社員の思いとはかけ離れてしまう。社員の思いと合っているのかどうか、見ておかないと」、「本社に呼んで面接している時と、現場に行って話をする時と全然違う」、確かにその通りだ。
・『情報格差は上司の自己満足  Q:今回の「挫折力」特集でも、『失敗の本質』を書いた野中郁次郎さんのインタビューをしました。彼は、日本企業の多くの失敗って、日本軍の失敗と重なると言います。ガダルカナル戦とかミッドウェー戦と同じで、情報をフィードバックしないまま、お友達ネットワークで事態が進んでいく。空気を大事にするとか、もう同じような組織問題ばかりです。 石橋:そうですね。それが、流行の言葉では「忖度」につながったり、下の方からは「今の経営陣を守るために、粉飾に近いけれども、やらないとダメだ」とか、いろんなことが起きる。ぼくは正しい情報が伝わるという状況を作ることが、そういうことの抑止力になるような気がするんですよ。 Q:情報をオープンにして困ったことはありましたか。 石橋:1つもないです。 Q:そうですよね。 石橋:あるわけがないですよ。だから、結局、情報格差は、役職上位職の「自分の方が多くの情報を持っている」という自己満足だけだったんですよね。 Q:情報格差によって、組織を統率できると勘違いする。 石橋:そうそう。そこが全部ボトルネックになって情報が伝わらない。大事なことを言っても、幹部が止めてしまう場合もありますよね。下から悲鳴があがっていることも、その人が(上に)止めちゃう。その上下の両方向に、スムースに正しい情報が伝わっていれば、もっと判断を早く、正しくできたのに。 Q:カネボウは関係会社で決算数字をつけ回す「循環取引」もやっていたが、これも情報がオープンだったらできなかったことですね。 石橋:オープンだったらね。オープンになれば、みんなが意見を言えますし、間違いを犯す確率は確実に減るんだと思います。 Q:多くの経営者はそこまで胆力がない。情報をすべて出せば、自分の判断ミスも明らかになりかねない。それでも、オープンにした方がいいと言い切れるのはなぜですか。 石橋:潰れたからですよ。会社が続いていたら、世話になった上司たちの名誉を傷つけてしまうとか、考えてしまう。ぼくらは潰れたから、全部オープンになっちゃってるので関係ないんですよ。だから、そのままオープンにしておけば、次の世代が私たちに気を遣う必要がないですよね。 Q:石橋さんのお話だと、会社は1回潰れないとダメなのかと思ってしまいます。 石橋:そんなことないと思います。「会社は何のためにやっているの」という所だと思うんですよ。確かに過去に世話になったが、今いる社員と未来の社員のために仕事をしているわけですよね。 ただ、人間は今の自分がかわいいのは当たり前で、「なんとか自分の時代だけは乗り切りたい」と思ってしまう。過去を見てもしがらみが多すぎる。でもカネボウはそれで潰れてしまった。 だから、ほんの10%でもいいから、10年経った時の自分と会社をイメージして、少しでも良い状態を作るには、何をしておかなければならないのか、みんなでそれを考えよう、と。10年後、仕事を違う人がやった時、もっとやりやすい仕事になっているには、何を変えておく必要があるのか。みんなで考えられたら、その会社は永遠に潰れないと言い続けているんですよ。 Q:やっぱり過去を見ると、しがらみになる恩人がいる。その存在がいない状態がいいんでしょうね。 石橋:その通りです。 Q:しがらみを断ち切れる? 石橋:できます。だから、定年の内規を厳しく運用する。僕は任期が重要だと思っている。長い人の時代に問題が生まれていることが多い。うちの歴史もそうだった。役職上は退いているんだけど、実質上は君臨しているとか。そういうことを認めず継承することが、抑止することにつながると思いますね。うちは8年と内規で決めました。役員の定年も従業員とほぼ同じにして、徹底して守る。少しはリスクを回避できるかな、と思います。 Q:中嶋(章義・前会長)さんも定年で辞めた? 石橋:定年です。会長も社長も定年は63歳と決めてますから。 Q:顧問とかは就いていない? 広報:半年だけ顧問をやりました。 石橋:うちは「顧問は1年」と決めていますので、それ以上はありません。 Q:なるほど。では、石橋さんが「老害」になることもない。 石橋:ない。顧問になったら1年で辞める。中嶋さんは会社が好きだったから来ていたけど、僕は顧問になったら会社には来ないから。そっちの方が会社のためになるでしょ(笑)。 Q:それで、しがらみなく次の人が経営する。 石橋:そうそう。うちは大株主が(染毛剤大手の)ホーユーというオーナー企業です。サラリーマン社長とオーナー社長を同列で考えてはいかんと思うんですよ。オーナー社長は何年でもやればいいんですよ、カリスマになって。でもサラリーマンはサラリーマンです。サラリーマン社長は期限を決めて循環させていくことで、会社が長く正常な状態に保たれると思う。 Q:最後に、カネボウ破綻劇で、一番つらかったことというと、何が頭に浮かびますか。 石橋:(10秒ほど沈黙)社員の生活が本当に守れるんか、という葛藤が一番つらかったですよね。 ▽いろいろな会社があっていい(Q:人事部長の時代ですか。 石橋:破綻前でしたが、「会社更正法の適用でもなんでも、早くしよう」と上司たちにかけあったことがあるんです。その時にこう言われた。「会社って、ここだからこそ生きているやつもいっぱいいるんだ。もし潰したら、そいつらに対して、どう責任を取るんだよ」と。 確かに、会社が潰れれば信用を失い、うまく再生できないかもしれない。その時に、どこかで拾ってもらえる優秀な人材もいるが、カネボウでしか働き口がなさそうな人もいる。これを言われて「うーん」と思って、腰が引けましたね。 Q:誰に言われたんですか。 石橋:上司。でも、後で気がついたんですよ、産業再生機構に入って。実は、会社が潰れても、本当に職を失うのは役員だけなんです。儲かっている事業だったら、売却されても従業員の雇用は守られるんです。その頃、そこまで頭が回らなかった。 でも当時は、「確かになあ」と。僕の出身である化粧品事業では、美容部員の優秀だった子たちは、外資系の化粧品会社とかに引っ張られるけど、そうじゃない子たちもいっぱいいるじゃないですか。その子だって、その収入で家族が生活していることもありますよね。「その家族の生活をお前は守ってやれるのか」って言われた時は、反論できなかったですね。 でも、それで腰が引けた自分が情けなかったし、つらかった。だからこそ、再生機構に入って以降は、社員の雇用だけは絶対守るというスタンスで今日まで来ました。ありがたいことにリストラはクラシエになって一度もないんで、信念を全うできているから幸せだと思っています。 Q:その言葉を言った上司は、自分の保身だった? 石橋:違います。本心でそう思っていた。「そのリスクをお前は負っていけるんか」って。僕はまだ40代半ばで、重たいなあ、と。人事が長かったから、走馬灯のように何千人の知ってる顔が浮かぶ。「あいつなんか無理だろうなあ」とか。「でも、あいつ、今年中学生になる子供がいるのに、生活どうなるんやろ」とか。 Q:大家族主義だからこその悩みでもありますね。クラシエでも、その思いは続いている。 石橋:一緒です。でも、うちだけじゃなくて、東芝さんもそうだし、日本の伝統ある企業って、昔はみんなそうだったんじゃないでしょうか。だから、会社に骨を埋めようというギブ・アンド・テークみたいな関係が成立していた。今は、会社も雇用を守りきれなくなっているし、従業員側も「もっといいところがあったら移ろう」という関係が一般化していて、大家族的なものが日本から少なくなってきている。でも、僕は大家族主義的なものが好きでこの会社に入ったし、いまクラシエはそんなに大きな会社ではないけど、その精神は守りたいと思ってやっていますけどね。 Q:それは会社が大きくなってもできる? 石橋:できると思っている。それは規模じゃない、経営者の考え方だと思うんです。甘やかさず、家族だから言える厳しい事を指摘してチームとして勝つ。家族主義的会社を全否定することはないと思う。 いろんな形態の会社があっていいじゃないですか。アメリカ合理主義を生かして成功した企業もいっぱいあるから、個人主義的な評価の中で自分を成長させたい人はそういう会社に行けばいいと思うんです。会社は受け皿なわけですから、いろんな考え方があった方がいい。みんな同じだったらつまんないもん。 Q:若い人も会社を選べるし。 石橋:ねえ。うちはこんな規模ですけど、こんなことを目指しているとフラッグを掲げる。 Q:それを見て、思いが合った人たちが集まる。 石橋:そうそう。その企業の価値に賛同する人が集まってくれば、戦いようがあると思うんですね。 Q:クラシエというのは、そういう意味で、チームで戦うのがいいという人が集まる原点に戻ろうとしているわけですか。 石橋:それが喜びになるような子たちが集まってきてくれているんだと思います。それが、収益力が回復してきた最大のポイントだと思って、これからもその旗を掲げ続けようと思っています』、「4年前、社員旅行を復活させたんだけど、「やるぞ」って言ったら、「えーっ」って経営陣が冷ややかな目で見る。「社長だけですよ、そんなの喜ぶのは」って・・・それには、条件があります。内容とか企画は、すべて若い子たちにやらせる。「年寄りは文句を言うな」と。入社1~2年目の子たちが必死に考えてくれて。でも、遊びと言えども、何百人という人たちを一斉に動かすって大変なんですよ。そういうことを学んでくれたら、いい話じゃないですか・・・実は、会社が潰れても、本当に職を失うのは役員だけなんです。儲かっている事業だったら、売却されても従業員の雇用は守られるんです。その頃、そこまで頭が回らなかった。 でも当時は、「確かになあ」と。僕の出身である化粧品事業では、美容部員の優秀だった子たちは、外資系の化粧品会社とかに引っ張られるけど、そうじゃない子たちもいっぱいいるじゃないですか。その子だって、その収入で家族が生活していることもありますよね。「その家族の生活をお前は守ってやれるのか」って言われた時は、反論できなかったですね」、「会社が潰れても、本当に職を失うのは役員だけ」というのはその通りだ。「クラシエというのは、そういう意味で、チームで戦うのがいいという人が集まる原点に戻ろうとしているわけですか。 石橋:それが喜びになるような子たちが集まってきてくれているんだと思います。それが、収益力が回復してきた最大のポイントだと思って、これからもその旗を掲げ続けようと思っています」、「クラシエ」が今後とも「回復」を続けることを期待したい。

次に、本年2月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済取締役東京本部長の井出豪彦氏による「マレリに再び「資金不安説」が浮上!経営破綻→再スタートから1年半で“暗雲”のワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338373
・『自動車部品大手の「マレリ」(さいたま市北区)がふたたび資金繰り不安に直面していることが分かった。持株会社で金融機関からの資金調達窓口である「マレリホールディングス(HD)」(同)が1月16日にバンクミーティングを開催し、足元の厳しい資金状況などについて説明したという』、興味深そうだ。
・『資金計画の狂いから数百億円規模の調達必要か  自動車部品大手の「マレリ」(さいたま市北区)がふたたび資金繰り不安に直面していることが分かった。 金融筋によれば、資金計画の狂いから新たに数百億円規模の調達が必要になる可能性があるとされ、スポンサーの米大手ファンドKKRなどが主導していざというときの調達先を探しているもようだが、成否は流動的だ。 マレリHDが2022年8月に東京地裁で民事再生手続(簡易再生)を終結してからまだ1年半しかたっていない。法的整理による再スタートから間もない段階での異例ともいえる資金不安。背景には、事業譲渡や資産売却が思うように進んでいないことがあるという。 たしかに昨年2月に東証スタンダードに上場する東京ラヂエーター製造の株式の一部を27億円で売却したほかは目立った動きが見られない。一方、従業員のリストラについては各事業部門が順調に積み上げた結果、退職金などのキャッシュアウトが先行してしまっているとされる。「リストラの効果はこれから出るため、今期以降、業績改善が見込めるのは事実だが、足元で一時的に資金ショートの危険性がある。グループの資金管理がうまくできていない」(取引行関係者)というからなんともお粗末だ』、プロである「米大手ファンドKKRなどが」「スポンサー」になっているにしては、お粗末だ。
・『事業再生ADR成立せず簡易再生に移行した経緯  マレリグループはカルソニックカンセイ(当時)が19年に欧州の同業大手であるマニエッティ・マレリ(同)を62億ユーロ(約9900億円)で買収して誕生した。カルソニックカンセイはもともと日産自動車の子会社だったが、日産の系列解体などをうけ17年に米大手投資会社のKKRが買収し、M&A(企業の合併・買収)による拡大路線をとった。 巨額の買収資金の大半を借入金で賄ったところ、翌年からのコロナ禍で完成車メーカーが大幅な減産を強いられたことなどが痛手となり、経営が悪化。22年3月にマレリHDは私的整理の一種である「事業再生ADR」を申請した。 ADR(裁判外紛争解決手続き)の成立には26社あった金融債権者が全て同意する必要があるが、中国系の3行が反対したことで成立に至らず、同年6月に法的整理(民事再生手続)を申請した経緯がある。法的整理は「倒産」とカウントされる。負債は1兆1300億円に達した。 さらに同年7月には民事再生法の簡易再生手続に移行した。「簡易再生」とは聞き慣れないが、ADRが成立しなかった場合でも迅速かつ円滑な再生を可能にするために21年に新たにできた制度だ。ADRで対象債権額の60%以上を保有する債権者の同意があれば、裁判所での手続きを大幅に省略し、ADRでの事業再生計画案をそのまま民事再生での再生計画案として決議できる。 ADRに反対した中国系3行の債権額は合計でも10%に満たなかったことから難なく再生計画は認可され、22年8月に早くも再生手続は終結した。 再生手続ではあらためてKKRがスポンサーに決まり、マレリHDはKKRへの第三者割当増資で888億円の払い込みを受けた。併せて、みずほ銀行をはじめとする取引銀行団は4301億円の債権放棄を実施したほか、債務株式化(DES)による253億円の現物出資にも応じた。これで経営再建は峠を越したはずだった』、「KKR」や「みずほ銀行」は一体、何をやっているのだろう。
・『取引銀行団の対応に注目 再び混乱が起きる可能性も  にもかかわらず、このほど資金不足の懸念が浮上している背景はすでに記したとおり。「グローバル企業といえば聞こえはいいが、実態は身の丈を越えたM&Aの弊害で各事業部がバラバラ。結果的に資金コントロールが機能不全に陥っているのが根本的な問題だ」(前出の金融筋)。当初から一度マレリグループの経営にしくじったKKRがふたたび主導権を握って大丈夫かという不安は銀行団の中にもあったが、その不安が的中してしまった可能性がある。 実際、準主力行だった三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行は再生計画に賛成したにもかかわらず、手続終結直後から貸出債権の売却に動き、すでにマレリから手を引いてしまっているとの情報もある。残っているのはメインのみずほ銀行のほか、国際協力銀行、日本政策投資銀行などだ。 今回の資金不安に対し、前出の金融筋は「みずほといえども追加融資には応じにくいはず。KKRが調達先を見つけてくるにしても、マレリグループの資産に対する新たな担保権の設定には既存の取引銀行団の同意を得る必要があり、担保の取り分が目減りする既存行がすんなり受け入れるかどうかは不透明だ」と分析する。 ADRのときと同じ混乱が繰り返される懸念がある。別の金融関係者は「遅れている事業売却が実現すればなんとかなるかもしれない」と期待を寄せるが、いずれにしても目が離せない状況になってきた』、「準主力行だった三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行は再生計画に賛成したにもかかわらず、手続終結直後から貸出債権の売却に動き、すでにマレリから手を引いてしまっているとの情報もある」、「みずほ銀行」は「準主力行」への説得に失敗、「準主力行」が逃げ出したとはみっともない限りだ。
・『ダイヤモンド編集部の質問に対するマレリHDからの回答は  なお、ダイヤモンド編集部からの質問に対し、マレリHDのジェラード・ファン・ブッティンガ・ウィッチャーズ・グローバルコミュニケーション部門長副社長は下記の通り、回答した。 <質問1>1月16日にバンクミーティングを開催したとの情報がありますが、事実ですか? <回答>弊社と銀行とは定期的にミーティングを行っており、CFO並びにCEOからも定期的に説明しています。 <質問2>その席上、グループの事業売却や資産リストラが遅れているとの説明があったとの情報がありますが、事実ですか? <回答>計画は順調に進捗しています。固定費を削減し、効率を向上させ、プロセスを更に簡素化し、デジタル化することに取り組んできました。その結果、利益を取り戻し、将来に適した運営体制を維持するためのバランスの取れた施策を実施し、ビジネスを最適化できました。業績も大きく改善、将来に向けて受注残も堅調です。2024年および2025年についても安定した収益を見込んでいます。2023年についても、事業再編にかかる一時的費用を除外したベースで営業利益は黒字となりました。 <質問3>足元でグループの資金繰りが悪化しており、数百億円規模の資金調達に動いているとの情報がありますが事実ですか? <回答>業績は大きく改善しており、受注も将来に向けて堅調な水準にあります。営業フリーキャッシュフローも創出できており、財務的に健全な状況に向かっています。 <質問4>今回の資金繰り悪化の原因は何ですか?またどのように乗り切る計画ですか? <回答>繰り返しになりますが、弊社の業績は大きく改善しており、受注も堅調な水準にあります。営業フリーキャッシュフローも創出できており、財務的に健全な状況に向かっています。 <質問5>民事再生手続きが終結後、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行が貸出債権を売却したとの情報がありますが事実ですか? <回答>当事者の代わりにコメントすることは差し控えさせていただきます。(ご参考情報として:銀行がセカンダリー市場に貸出債権を売却することは通常よく行われていると理解しております)』、「銀行がセカンダリー市場に貸出債権を売却することは通常よく行われていると理解しております」と「準主力行」が逃げ出した問題をスマートに表現しているのはさすがだ。それにしても、メガバンクで唯一残された「みずほ銀行」は単独でも融資を続けるのだろうか。

第三に、3月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したTESIC株式会社CEOの川越貴博氏による「【実話】トヨタからの転職先のパン会社が民事再生中!?「トヨタ式カイゼン」で再建してみた」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339191
・『高卒でトヨタ自動車に入社し、13年間の工場勤務中に「カイゼン思考」を骨の髄まで叩き込まれた筆者。トヨタ退職後に民事再生中のパン製造会社に転職した筆者は、周囲の猛反発を受けながらも、短期間で組織を立て直すことに成功した。筆者が打った「カイゼン」の策とは――。本稿は、川越貴博『経営課題をすべて解決するカイゼン思考 利益最大化・資金繰り安定・組織健全化』(現代書林)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『トヨタ自動車を退社して民事再生中のパン製造会社へ  あるとき私は家庭の事情で東京に移住することになりました。 東京でもトヨタ自動車で働ければ、と考えたのですが、残念ながら東京には支社・支店機能があるだけで工場はありませんでした。自分の経験が生きる部署では働けないので、退職することを決意しました。 世界一の企業を辞めるわけですし、「トヨタの従業員」という特権的な感覚もある。もうこれ以上の損失はありません。上司の反応も、「トヨタを辞めるなんて信じられない」というものでした。 トヨタという会社に守られていることは理解していたので、辞める以上はさらにステップアップするために、自分に地力をつけなければならないと考えました。 そこで、トヨタ在籍中に今後必要になるだろうと思われる資格をいろいろと取得して転職活動に備えました。まずはビジネス実務法務、ファイナンシャルプランナー(FP)、さらにメンタルヘルスマネジメントの資格も取得しました。 なぜ、こうした順番で取っていたのかというと、トヨタを辞める以上、10年以内に起業して経営者になることを目指そうと決めていたからです。 東京での転職先は民事再生中のパン製造会社でした。 就職活動はエージェントにお願いしていたのですが、「生産管理部門を立ち上げてほしい」とのミッションで社長直下での勤務という会社がある、という触れ込みでした。 生産管理の部署の立ち上げはすでにトヨタで経験していたので目新しい仕事ではなかったのですが、“社長直下”というポジションに魅力を感じました。「経営の勉強ができるんじゃないか」と考えたのです。 この会社が一度破綻していて、そのときは民事再生中だということは入社してから知りました。 社長直下だったので、決算書などを見せてもらい経営状態を詳しく調べました。トヨタ時代に財務的な勉強もしていたので、その会社の経営の実態はすぐに理解しました。 とんでもない状況でした。原価率95%。まさに火の車です。 「生産管理部署を立ち上げる」という生ぬるいことをいっている場合ではないと考え、私は「ターンアラウンドをやらせてほしい」と社長に直訴しました。 そして、ターンアラウンド・マネージャーとして事業再生に取り組むことになったのです』、「ビジネス実務法務、ファイナンシャルプランナー(FP)、さらにメンタルヘルスマネジメントの資格も取得」、とは大したものだ。「ターンアラウンド・マネージャーとして事業再生に取り組むことになった」、目のつけどころがよさそうだ。
・『猛反発を食らった「経営再建」への道筋  当時、ターンアラウンドの知識やノウハウは全くありませんでした。思考は単純でした。お金がないのなら儲ければいい。売上を増やして、無駄な出費を削ればいいだけの話です。 家計を管理するのと同じです。そもそも給料が少ないのか、給料はそこそこあるけれど無駄な支出が多いからダメなのか、と自分の実体験に照らしてそのバランスを分析し、社長や社員に実態を伝えて経営再建への道筋を伝えていきました。 当時、私はまだ30代前半。周りの社員はみな年上です。 「なんで、入社して間もない若造に偉そうにいわれなければならないのか」「これまで自分たちがやってきたスタンスを崩さないでくれ」 多くはそういった反応でした。しかし、そもそも後ろ向きのスタンスで続けていても何も解決しません。 事業を再生するためなら、べつに嫌われてもかまわないと思い、私のやろうとしていることを懇切丁寧に説明していきました。 それでも刺さらない人には刺さりません。ただ、一部には目の色の変わった人もいました。その目を輝かせた人たちをどうやって多勢にしていくかをまず戦略の一つにしました。 役職や勤続年数などの垣根は全く関係なしに、私の提案を理解して前向きに捉えてくれた人たちだけを残そうと考えたのです。 目の色を変えて頑張ろうとなったのは、最初は全社員60人中わずか3人だけでした。それも営業の若い社員1人とアルバイトの子2人です。 でも、若いからこそ、「この会社、このままではヤバいよね」という鋭敏なセンサーと危機感を持っていました。 そこに私自身も感銘を受け、一緒にやっていこうと決めたのです。そして、徐々に上の人間も切り崩していこうと考えました』、「私の提案を理解して前向きに捉えてくれた人たちだけを残そうと考えたのです。 目の色を変えて頑張ろうとなったのは、最初は全社員60人中わずか3人だけでした。それも営業の若い社員1人とアルバイトの子2人です。 でも、若いからこそ、「この会社、このままではヤバいよね」という鋭敏なセンサーと危機感を持っていました。 そこに私自身も感銘を受け、一緒にやっていこうと決めたのです。そして、徐々に上の人間も切り崩していこうと考えました」、よく嫌にならずに頑張ったものだ。
・『経営状態を数値化して客観的に評価する  私の戦略は、とにかく主観を排して経営状態を数値化して示し、客観的に評価するというものです。このやり方をどんどん導入しました。 たとえば、「売上が3億で、それに対して使っているお金がこれだけあります。単純に足りていませんよね」とまず説明します。) さらに、「では、売上が少ないことが問題なのか、売上に対して出費が多すぎることが問題なのか、どっちだと思いますか?」といったことを、営業やマーケティング、総務、コスト管理をしている部署、工場などで調査させました。 こうして問題点を見える化していくと、当然ながら売上も足りないし、出費も多すぎるという結論になります。 では、「売上を増やすためにどういうアクションが必要だと思いますか?」と考えてもらいます。 コストについては、「たとえば、この経費を減らしたらどのような副作用があると思いますか?」と検証していきます。副作用がなければ、そのコストをカットすればいいわけです。 このように進めていくと、どんどん主観的な理由が取り除かれていきます。たとえば、この会社では創業当時から付き合っている仕入れ先がありました。その仕入れ先に問題があっても、「長い付き合いだから」という話になってくるわけです。そこで、「健全なお付き合いができていますか?」「向こうの言いなりになっていませんか?」と疑問を突きつけて考えてもらいました』、「たとえば、この会社では創業当時から付き合っている仕入れ先がありました。その仕入れ先に問題があっても、「長い付き合いだから」という話になってくるわけです。そこで、「健全なお付き合いができていますか?」「向こうの言いなりになっていませんか?」と疑問を突きつけて考えてもらいました」、客観的な基準で洗い直すのはいいことだ。
・『品質を変えずに生産量を増やすにはどうすべきか  販売の方では、大手のOEM商品の問題もありました。当時、このOEM商品は売上の40%を占めていました。その製品に対する原価計算をして、売上に対してどのくらいの費用を使っているかを調査したところ、ほぼすべての商品が逆ザヤだったのです。 製造コストがかかりすぎていて、作れば作るほど赤字が増える構造になっていたわけです。その状況に当時の担当者は気づいていませんでした。 「OEM先が大きな企業だし、昔からの付き合いなので価格交渉はできない」「これだけ大きな会社と取引ができているのは、うちの会社の信用になっているから」 そんな訳のわからない説明を受けました。客観的に見れば、そもそもその注文をとってくるべきなのかどうかを考え直さなければなりません。 価格の見直しを交渉しましたが、「卸値は変えられない」ということでした。かといって、40%の売上を飛ばすわけにもいきませんし、そのへんは一定程度理解できます。) そこで、どうすれば儲けを出せるか、会社を挙げて考えることになりました。 まずは、トヨタで学んだことを活かし、製造の標準作業を可視化することから始めました。標準3票(トヨタ生産方式の標準作業に不可欠な工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票の3点セット)を作って、それぞれの手順を分析し、どのくらいのバラツキがあり、どう品質に影響するのかを明らかにしました。 その上で、OEM先の担当者も工場に呼んで説明・提案を行いました。 経営状態を正直に話して、品質に影響のないものからカイゼンしたいと申し入れました。まず、商品の包装紙を安価なものに変えさせてほしいと提案しました。 また、一日に製造する量を増やせば一つあたりの単価は落ちます。そこで、パンは発酵食品なので難しいのですが、品質を落とさずに生産量を上げる方法を考えました。 「水の配合などの調整をしながらスピードを上げて機械に通せば、このくらいの分数なり秒数で発酵するので、このタイミングで出して温度や時間をこう設定すれば、前と変わらない品質のものが仕上げられます」 このように、一度卓上でシミュレーションし、さらに現場でテストして披露しました』、「大手のOEM商品の問題もありました。当時、このOEM商品は売上の40%を占めていました。その製品に対する原価計算をして、売上に対してどのくらいの費用を使っているかを調査したところ、ほぼすべての商品が逆ザヤだったのです・・・製造の標準作業を可視化することから始めました。標準3票(トヨタ生産方式の標準作業に不可欠な工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票の3点セット)を作って、それぞれの手順を分析し、どのくらいのバラツキがあり、どう品質に影響するのかを明らかにしました。 その上で、OEM先の担当者も工場に呼んで説明・提案を行いました。 経営状態を正直に話して、品質に影響のないものからカイゼンしたいと申し入れました。まず、商品の包装紙を安価なものに変えさせてほしいと提案しました・・・卓上でシミュレーションし、さらに現場でテストして披露しました」、なるほど。
・『原価率を70%まで下げ1年半で黒字化を達成  重要なのは、感情ではなくロジックです。このように「カイゼン」を見せたことで、OEM先には「この会社は信用できる」と思っていただき、これ以降、受注量が一気に増えました。 こうした会社の評判は業界でも噂になるのでしょう。さらに、某有名コンビニチェーンからもお声がけいただき、この2本の柱ができたことによって業績は一気に回復したのです。 結果的に、初年度で原価率を70%くらいまで下げることができ、1年半で黒字化し、経営が安定しました。 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていくことができました。 60人いた従業員は最終的には24人になっていました。でも、一人あたりの労働時間自体は増えていません。 売上や受注量は増加しているので生産性は上がっていました』、「「カイゼン」を見せたことで、OEM先には「この会社は信用できる」と思っていただき、これ以降、受注量が一気に増えました。 こうした会社の評判は業界でも噂になるのでしょう。さらに、某有名コンビニチェーンからもお声がけいただき、この2本の柱ができたことによって業績は一気に回復したのです。 結果的に、初年度で原価率を70%くらいまで下げることができ、1年半で黒字化し、経営が安定しました。 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていくことができました。 60人いた従業員は最終的には24人になっていました。でも、一人あたりの労働時間自体は増えていません。 売上や受注量は増加しているので生産性は上がっていました」、地道な努力で「受注量」を「増やし」、「1年半で黒字化し、経営が安定しました。 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていくことができました」、とはさすがだ。
タグ:事業再生 (その4)(カネボウ破綻 絶望からの経営訓 クラシエ・石橋社長 「復興の10年」を語る、マレリに再び「資金不安説」が浮上!経営破綻→再スタートから1年半で“暗雲”のワケ、【実話】トヨタからの転職先のパン会社が民事再生中!?「トヨタ式カイゼン」で再建してみた) 日経ビジネスオンライン 金田 信一郎氏による「カネボウ破綻、絶望からの経営訓 クラシエ・石橋社長、「復興の10年」を語る」 「今は50%以上の人がカネボウ時代を知らない社員です。で、ここ(10年史)を読むと、「上司は偉そうにしてるけど、こんなことになってたんじゃないか」と。それでいいと思うんですよ。 破綻直後は、結構気にする雰囲気がありました。「先祖帰りだ」とか、「過去の栄光にすがっている」とかね。最近はめっきり減りましたけど。 正しく認識して、何が悪かったのか、真正面から向き合うことで見えてくるものがある。 カネボウの破綻を、斜陽産業になった繊維(事業)の問題だとか、経営者の問題だとか、そんなことで片付けてはならないんだと思うんですよ」、「今は50%以上の人がカネボウ時代を知らない社員」もうそんなになったのかと、時間が経つのの速さに改めて驚かされた。 「「家族主義」って悪いことじゃない。すばらしい一面は伝えていきたい・・・かばい合いすぎてダメなところを指摘できなかったり、弊害も出てくる。経営判断を遅らせたり、誤らせたり、問題につながってきた。それを1つひとつ解きほぐしながら、「何をこれからも継承していくの」「どんな新しい(改革の)風を吹かせるの」っていうことを、毎年のようにみんなで話し合っていく。そして2度と間違いが起こらないようにする・・・売り上げが目的になっちゃったんです。だから、利益は上がらず、やっているヤツも疲弊していく」、なるほど。 「本社に呼んで面接している時と、現場に行って話をする時と全然違う。僕はよく、サッカーのホームとアウェーに例えるんですが、選手の動きが違いますよね。会社も同じで、聞き出せる話の内容も量も全然違うんですよ。本社に呼ばれたらガチガチで、ほとんど本音なんか出てこない。でも自分の職場で、普段着ならポロポロ本音が出てくる。酒飲みにいったら、もっと本音が出るじゃないですか・・・どこの破綻した企業も、ダメだと分かっていてやっている経営者はいないと思う。いつの間にか、気がつかなくなってしまう。「社員のために」と最初は思って のに、いつの間にか「自分のため」になっていて、社員の思いとはかけ離れてしまう。社員の思いと合っているのかどうか、見ておかないと」、「本社に呼んで面接している時と、現場に行って話をする時と全然違う」、確かにその通りだ。 「4年前、社員旅行を復活させたんだけど、「やるぞ」って言ったら、「えーっ」って経営陣が冷ややかな目で見る。「社長だけですよ、そんなの喜ぶのは」って・・・それには、条件があります。内容とか企画は、すべて若い子たちにやらせる。「年寄りは文句を言うな」と。入社1~2年目の子たちが必死に考えてくれて。でも、遊びと言えども、何百人という人たちを一斉に動かすって大変なんですよ。そういうことを学んでくれたら、いい話じゃないですか・・・ 実は、会社が潰れても、本当に職を失うのは役員だけなんです。儲かっている事業だったら、売却されても従業員の雇用は守られるんです。その頃、そこまで頭が回らなかった。 でも当時は、「確かになあ」と。僕の出身である化粧品事業では、美容部員の優秀だった子たちは、外資系の化粧品会社とかに引っ張られるけど、そうじゃない子たちもいっぱいいるじゃないですか。その子だって、その収入で家族が生活していることもありますよね。 「その家族の生活をお前は守ってやれるのか」って言われた時は、反論できなかったですね」、「会社が潰れても、本当に職を失うのは役員だけ」というのはその通りだ。「クラシエというのは、そういう意味で、チームで戦うのがいいという人が集まる原点に戻ろうとしているわけですか。 石橋:それが喜びになるような子たちが集まってきてくれているんだと思います。それが、収益力が回復してきた最大のポイントだと思って、これからもその旗を掲げ続けようと思っています」、「クラシエ」が今後とも「回復」を続けることを期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 井出豪彦氏による「マレリに再び「資金不安説」が浮上!経営破綻→再スタートから1年半で“暗雲”のワケ」 プロである「米大手ファンドKKRなどが」「スポンサー」になっているにしては、お粗末だ。 「KKR」や「みずほ銀行」は一体、何をやっているのだろう。 「準主力行だった三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行は再生計画に賛成したにもかかわらず、手続終結直後から貸出債権の売却に動き、すでにマレリから手を引いてしまっているとの情報もある」、「みずほ銀行」は「準主力行」への説得に失敗、「準主力行」が逃げ出したとはみっともない限りだ。 「銀行がセカンダリー市場に貸出債権を売却することは通常よく行われていると理解しております」と「準主力行」が逃げ出した問題をスマートに表現しているのはさすがだ。それにしても、メガバンクで唯一残された「みずほ銀行」は単独でも融資を続けるのだろうか。 川越貴博氏による「【実話】トヨタからの転職先のパン会社が民事再生中!?「トヨタ式カイゼン」で再建してみた」 川越貴博『経営課題をすべて解決するカイゼン思考 利益最大化・資金繰り安定・組織健全化』(現代書林) 「ビジネス実務法務、ファイナンシャルプランナー(FP)、さらにメンタルヘルスマネジメントの資格も取得」、とは大したものだ。「ターンアラウンド・マネージャーとして事業再生に取り組むことになった」、目のつけどころがよさそうだ。 「私の提案を理解して前向きに捉えてくれた人たちだけを残そうと考えたのです。 目の色を変えて頑張ろうとなったのは、最初は全社員60人中わずか3人だけでした。それも営業の若い社員1人とアルバイトの子2人です。 でも、若いからこそ、「この会社、このままではヤバいよね」という鋭敏なセンサーと危機感を持っていました。 そこに私自身も感銘を受け、一緒にやっていこうと決めたのです。そして、徐々に上の人間も切り崩していこうと考えました」、よく嫌にならずに頑張ったものだ。 「たとえば、この会社では創業当時から付き合っている仕入れ先がありました。その仕入れ先に問題があっても、「長い付き合いだから」という話になってくるわけです。そこで、「健全なお付き合いができていますか?」「向こうの言いなりになっていませんか?」と疑問を突きつけて考えてもらいました」、客観的な基準で洗い直すのはいいことだ。 「大手のOEM商品の問題もありました。当時、このOEM商品は売上の40%を占めていました。その製品に対する原価計算をして、売上に対してどのくらいの費用を使っているかを調査したところ、ほぼすべての商品が逆ザヤだったのです・・・製造の標準作業を可視化することから始めました。標準3票(トヨタ生産方式の標準作業に不可欠な工程別能力表、標準作業組み合わせ票、標準作業票の3点セット)を作って、それぞれの手順を分析し、どのくらいのバラツキがあり、どう品質に影響するのかを明らかにしました。 その上で、OEM先の担当者も工場に呼んで説明・提案を行いました。 経営状態を正直に話して、品質に影響のないものからカイゼンしたいと申し入れました。まず、商品の包装紙を安価なものに変えさせてほしいと提案しました・・・卓上でシミュレーションし、さらに現場でテストして披露しました」、なるほど。 「「カイゼン」を見せたことで、OEM先には「この会社は信用できる」と思っていただき、これ以降、受注量が一気に増えました。 こうした会社の評判は業界でも噂になるのでしょう。さらに、某有名コンビニチェーンからもお声がけいただき、この2本の柱ができたことによって業績は一気に回復したのです。 結果的に、初年度で原価率を70%くらいまで下げることができ、1年半で黒字化し、経営が安定しました。 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていくことができました。 60人いた従業員は最終的には24人になっていました。でも、一人あたりの労働時間自体は増えていません。 売上や受注量は増加しているので生産性は上がっていました」、地道な努力で「受注量」を「増やし」、「1年半で黒字化し、経営が安定しました。 最終的には原価率を60%まで下げ、一般的なサプライヤーの水準にまで持っていく ことができました」、とはさすがだ。
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”右傾化”(その17)(大前研一「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する、もはや「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者激怒」が相次いで勃発、ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」) [経済政治動向]

”右傾化”については、本年1月26日に取上げた。今日は、(その17)(大前研一「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する、もはや「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者激怒」が相次いで勃発、ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」)である。

先ずは、昨年12月27日プレジデント 2024年1月12日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長大前 研一氏による「大前研一「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77131
・『グローバル経済の恩恵を忘れるな  世界の右傾化が止まらない。2023年11月19日に行われたアルゼンチン大統領選の決選投票で、「アルゼンチンのトランプ」を自称する右派のハビエル・ミレイ下院議員が、左派のセルヒオ・マサ経済大臣を破って当選、12月10日に就任した。その他、各地で極右政党が勢力を伸ばしている。これは世界の破滅につながる道である。 今では知らない人も多いが、20世紀初頭のアルゼンチンは非常に豊かな国だった。肥沃な土壌を活かして農業大国として成長し、最盛期は世界第5位の経済大国になったほどだ。 しかし、世界恐慌以降のアルゼンチンは没落の一途だ。工業化の波に乗りきれず、左派の正義党(ペロン党)による長期政権のバラマキ政策で政府の債務が増大。何度もデフォルトを起こし、今やインフレ率は140%に達した。経済的には、もはや三流国だ。 こうした状況に不満を持つ国民が選んだのが、過激な政策を掲げる野党ラ・リベルタド・アバンザ(自由の前進)を率いるミレイ氏だ。ミレイ氏は銃所持の合法化を訴え、臓器売買を容認する。しかし、急進的な自由主義者なのかというと、宗教的には保守的で、人工妊娠中絶には反対の姿勢を示している。演説会ではチェーンソーを振り回し、筋骨隆々の大型犬マスティフを5匹飼っているという。まさにマッチョを売りにするミニ・トランプだ。 トランプ的な政治家の躍進は、アルゼンチンに限らない。イタリアでは22年10月に極右のジョルジャ・メローニ氏が首相に就任。ドイツでは23年10月、ヘッセン州の州議会選挙で、反移民を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第二党に躍り出た。 フランスではマクロン大統領の支持率が低迷しており、27年の大統領選では親子2代にわたって極右を標榜しているマリーヌ・ル・ペン氏が勝つと分析する評論家が多い。世界が右傾化する流れを決定的なものにしたドナルド・トランプ氏も、4つの刑事裁判を抱えながら依然として一定の支持があり、24年大統領選でふたたび政治の表舞台に出てくる可能性がある。 トランプ的な主張が支持を集める原因は、グローバル経済への「慣れ」だ。) 私が『ボーダレス・ワールド』(プレジデント社)を書いてグローバル経済を提唱したのは、約30年前だ。世界には、「材料」生産の最適地と、それを加工成形して組み立てる「人材」の最適地がある。2つの最適地でモノをつくって自由に輸入できるようすれば、品質のいいものが安く手に入り、世界中の消費者に恩恵をもたらす。このボーダレス経済論は一世を風靡ふうびし、事実、世界経済はその方向で発展していった。 ボーダレス経済論は、価格に敏感な繊維・アパレル業を例にするとわかりやすい。戦後、日本は材料でも人でも世界の繊維産業で最適地だった。自国の繊維産業の衰退を恐れたアメリカは、日米繊維交渉で日本を抑え込もうとした。アメリカを前に日本は屈服せざるをえなかったが、交渉しているうちに日本の人件費が上がり、すでに最適地は韓国に移っていた。その後、最適地は韓国から台湾、インドネシアへと移動を重ね、90年代からは中国だ。 今では中国も人件費が上がり、産業によっては最適地が異なるものの、総じてみれば世界の工場は中国に集まり、そこでつくられた製品を各国が輸入している。そして、消費者は自国でつくるよりも安い価格で製品を手に入れるというのが、ここ30年の流れだった。 90〜00年代は、多くの消費者がグローバル経済の恩恵を実感していた。それが今では当然になり、逆にグローバル経済が右派政治家による排外主義的な主張のやり玉に挙がったとしても、抵抗を覚えなくなってしまったのだ。 トランプ氏は大統領在任中、中国による知的財産権侵害に対する懲罰と称し、対中関税をたびたび引き上げた。懲罰の目的を「自国の産業保護」と謳うたっていたが、これは建前だ。本当は「中国は日本のように尻尾を振らないから、罰を与えて支持者の溜飲を下げる」という、政治的なパフォーマンスなのだ。 実際、トランプ氏による中国の排斥が政治的なパフォーマンスにすぎなかったことは、現状を見ればわかる。トランプ氏は補助金をちらつかせ、メーカーが中国ではなくアメリカに工場をつくるように働きかけた。釣られた台湾の鴻海ホンハイ精密工業は、ウィスコンシン州で工場建設を計画。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏が現地に来て鍬入れ式まで行ったが、その後頓挫した。 アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ』、「トランプ氏は大統領在任中、中国による知的財産権侵害に対する懲罰と称し、対中関税をたびたび引き上げた。懲罰の目的を「自国の産業保護」と謳うたっていたが、これは建前だ。本当は「中国は日本のように尻尾を振らないから、罰を与えて支持者の溜飲を下げる」という、政治的なパフォーマンスなのだ。 実際、トランプ氏による中国の排斥が政治的なパフォーマンスにすぎなかったことは、現状を見ればわかる。トランプ氏は補助金をちらつかせ、メーカーが中国ではなくアメリカに工場をつくるように働きかけた。釣られた台湾の鴻海ホンハイ精密工業は、ウィスコンシン州で工場建設を計画。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏が現地に来て鍬入れ式まで行ったが、その後頓挫した・・・アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ」、なるほど。
・『愛国者を喜ばせるパフォーマンス  前述のアルゼンチンのミレイ大統領は、新自由主義者らしく国内政策では小さな政府を標榜している。しかし、対外的には保護主義色が強く、選挙期間中は南米の自由貿易協定であるメルコスール(南米南部共同市場)からの離脱をほのめかしていた。ただ、これもおそらくパフォーマンスだ。南米のライバル国であるブラジルが中心的存在を担うメルコスールを抜けると言えば、国内の愛国者たちが喜ぶからだ。 ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある。ユーロを参考にすると、その導入には①物価安定性②健全な財政とその持続性③為替安定④長期金利の安定性という4つの基準を満たす必要がある。このうち、①と②については次の通りだ。 ①過去1年間の自国のインフレ率が、ユーロ導入国でインフレ率が最も低い3カ国の平均値との格差が1.5%以内 ②財政赤字がGDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下 アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう。 ミレイ大統領は経済学部の出身で、大学で教鞭をとっていたほどだから、自分が掲げる政策が実現できないことがわかるはずだ。もし本気なのであれば、頭がおかしいと言わざるをえない』、「ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある。ユーロを参考にすると、その導入には①物価安定性②健全な財政とその持続性③為替安定④長期金利の安定性という4つの基準を満たす必要がある。このうち、①と②については次の通りだ。 ①過去1年間の自国のインフレ率が、ユーロ導入国でインフレ率が最も低い3カ国の平均値との格差が1.5%以内 ②財政赤字がGDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下 アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう」、なるほど。
・『衆愚政治化を止める唯一の方法とは  問題は、現実にありえない政策を掲げる人物を、なぜ国民が選ぶのかだ。トランプ氏は、大統領選で「MAGA」というスローガンを掲げて当選した。Make America Great Again、アメリカをふたたび偉大な国にするという意味だ。実はミレイ大統領も選挙で「MAGA」を掲げて聴衆から喝采を浴びている。アルゼンチンも頭文字がAなので、国名だけを入れ替えてスローガンを拝借したわけだ。 MAGAという主張には、誰も反論のしようがない。アメリカのリベラル派も自国が復活してほしいと願っている。このように誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である。 MAGAはまさにマザーフッドだが、右傾化を許した国の国民は、マザーフッドだと思わずに素直に心を震わせる。反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる。 衆愚政治から抜け出す道は一つしかない。国民が賢くなることである。 私は学校で政治家の甘言を見抜く政治リテラシーの教育をしたらいいと思う。特定の政治的思想を教えるのではない。右だけではなく左にもポピュリストやアジテーター(扇動者)はいる。「こういうのが還付金詐欺です」と警察が啓蒙するように、ポピュリストの手口を広く教えて、それに惑わされずに自分の頭で考える術を教えるのだ。 残念ながら今のところ学校で「市民術」と言えるような、政治リテラシーを教えている国はない。それならば、右傾化していない国の国民は、なぜ政治的に成熟しているのか。 ポピュリスト勢力の拡大を抑えられている国には、ある共通点がある。ベルギー、シンガポール、ポーランド。これらは国土や人口、資源などの面でハンデを負った小国であり、政治的には大国のはざまで何とか生き抜いてきた歴史を持つ。真剣に政治のことを考えないと国が消滅するおそれがあるので、国民が政治参加に積極的で、お互いに啓発し合うのである。 一方、右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである』、「トランプ氏は、大統領選で「MAGA」というスローガンを掲げて当選した。Make America Great Again、アメリカをふたたび偉大な国にするという意味だ。実はミレイ大統領も選挙で「MAGA」を掲げて聴衆から喝采を浴びている。アルゼンチンも頭文字がAなので、国名だけを入れ替えてスローガンを拝借したわけだ。 MAGAという主張には、誰も反論のしようがない。アメリカのリベラル派も自国が復活してほしいと願っている。このように誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である・・・反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる・・・右傾化していない国の国民は、なぜ政治的に成熟しているのか。 ポピュリスト勢力の拡大を抑えられている国には、ある共通点がある。ベルギー、シンガポール、ポーランド。これらは国土や人口、資源などの面でハンデを負った小国であり、政治的には大国のはざまで何とか生き抜いてきた歴史を持つ。真剣に政治のことを考えないと国が消滅するおそれがあるので、国民が政治参加に積極的で、お互いに啓発し合うのである。 一方、右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである』、「日本も同じ轍を踏むのか」、残念ながらその可能性が高そうだ。

次に、本年4月9日付け現代ビジネス「もはや「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者激怒」が相次いで勃発」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126777?imp=0
・『日本全国の神社のうち約95%が加盟している宗教法人「神社本庁」で内紛が勃発。トップの座を巡り裁判にまで発展している。知っているようで知らない神社の仕組みとともに、その内幕をルポする—』、「神社本庁」といえば、右派勢力の本拠ともいえる団体、興味深そうだ。
・『鶴岡八幡宮、離反の衝撃  全国約8万の神社、約2万人の神職を傘下に治める「神社本庁」が揺れている。 3月5日、「日本三大八幡宮」の一つ、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮が神社本庁からの離脱を突然表明した。鶴岡八幡宮は源頼朝が1180年に遷座した神社で、鎌倉を代表する観光スポットだ。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が放送された'22年には約586万人もの観光客が訪れた巨大神社である。その鶴岡八幡宮が神社本庁離脱に動いたとあって、神道関係者に衝撃が走った。 三大八幡宮の一つが、なぜ本庁離脱へと踏み切ったのか。混乱のきっかけはいくつかあるが、大きな原因は、'10年から神社本庁の事務方トップを務める田中恆清総長と、その盟友である神道政治連盟の打田文博会長による「不正土地取引」の問題だと見られる。ジャーナリストの伊藤博敏氏が解説する。 「事の発端は、'15年10月に田中氏の了解のもと、神奈川県川崎市にある神社本庁の職員寮『百合丘職舎』を1億8400万円という、不当に安い金額で売却したことです。本来なら3億円は下らないと見られるこの職舎を安値で購入したのは、打田と懇意にしている不動産会社。同社は翌月に物件を転売し、3000万円近い利益を得ている。打田らはこの不動産会社と癒着していた可能性が指摘されているのです」 相場よりも極端に安い価格で売却していたことが神社本庁内の一部で問題視され、'16年には同庁の職員が内部告発し、表沙汰に。結局、告発者が懲戒解雇となり、裁判にまでもつれこんだ。伊藤氏が続ける。 「3年以上続いた裁判は、'21年3月に判決が下り『売却価格は相当低かった。田中氏や打田氏が背任を行ったと信じる相当の理由があった』と、裁判所が告発者の主張が正しいことを認めました」 神社本庁トップによる背任行為が疑われた以上、本来であれば調査のうえで、辞任や降格などの措置が取られるべきだ。ところが、田中氏は総長職を続投。何事もなかったかのようにトップの座に居座り続けているのだ。 こうした独裁的な体質に嫌気がさした鶴岡八幡宮が、神社本庁から脱退を表明したというわけだ。 しかし、なぜ周囲の強烈な反発を招いてもなお田中氏は総長の座を死守するのか。そこには、神社界ならではの特殊な事情が透けて見える。まずは日本人が知っているようで知らない神社の仕組みを見ていこう』、「'15年10月に田中氏の了解のもと、神奈川県川崎市にある神社本庁の職員寮『百合丘職舎』を1億8400万円という、不当に安い金額で売却したことです。本来なら3億円は下らないと見られるこの職舎を安値で購入したのは、打田と懇意にしている不動産会社。同社は翌月に物件を転売し、3000万円近い利益を得ている。打田らはこの不動産会社と癒着していた可能性が指摘されているのです」 相場よりも極端に安い価格で売却していたことが神社本庁内の一部で問題視され、'16年には同庁の職員が内部告発し、表沙汰に。結局、告発者が懲戒解雇となり、裁判にまでもつれこんだ。伊藤氏が続ける。 「3年以上続いた裁判は、'21年3月に判決が下り『売却価格は相当低かった。田中氏や打田氏が背任を行ったと信じる相当の理由があった』と、裁判所が告発者の主張が正しいことを認めました」 神社本庁トップによる背任行為が疑われた以上、本来であれば調査のうえで、辞任や降格などの措置が取られるべきだ。ところが、田中氏は総長職を続投。何事もなかったかのようにトップの座に居座り続けているのだ。 こうした独裁的な体質に嫌気がさした鶴岡八幡宮が、神社本庁から脱退を表明」、「神社本庁トップによる背任行為が」裁判で認定されたにも拘らず、「田中氏は総長職を続投。何事もなかったかのようにトップの座に居座り続けている」、宗教法人のトップとしてあるまじき行為だ。
・『神道体制の起源  そもそも神社が今のような神社本庁を中心とする運営体制になった大元は明治時代に遡る。宗教学者の島田裕巳氏が解説する。 「当時は、神社が国家の宗祀と位置付けられ、神社に特権が与えられていました。国の機関である神祇院が神社を管轄、宮司などの神職は公務員として扱われ、国が給料を出していたのです。 しかし戦後、GHQによって国家と神道の結びつきを断ち切ることを目的とした『神道指令』が出されます。これによって、神道は国家から切り離され、数多くある宗教の一つという扱いになりました」 そこで国家神道とは別の形で神道文化を維持するために立ち上がったのが神社本庁だ。 「このとき、伊勢神宮を本宗(全国の神社の総親神)として頂点に位置付ける現在の神道体制ができあがりました」(島田氏) 神祇院の頃は、税金で組織を維持していたが、神社本庁となってからは国からの支援は受けられない。そのため、神社本庁は、組織維持のために収入を得る必要に迫られた。そこでつくられたのが、伊勢神宮のお札「神宮大麻」だ。 「神社本庁傘下の神社には『天照皇大神宮』と記された神宮大麻が頒布されます。各神社はこれを氏子に売り、代金を神社本庁に上納する仕組みです」(同)』、「戦後、GHQによって国家と神道の結びつきを断ち切ることを目的とした『神道指令』が出されます。これによって、神道は国家から切り離され、数多くある宗教の一つという扱いになりました」 そこで国家神道とは別の形で神道文化を維持するために立ち上がったのが神社本庁だ。 「このとき、伊勢神宮を本宗(全国の神社の総親神)として頂点に位置付ける現在の神道体制ができあがりました」(島田氏) 神祇院の頃は、税金で組織を維持していたが、神社本庁となってからは国からの支援は受けられない。そのため、神社本庁は、組織維持のために収入を
・『宮司では食べていけない  神社本庁が神宮大麻から得られる収入は、10億円近いとされており、神社本庁の資金の源となっている。神社本庁の収入はそれだけではなく、「神職賦課金」という会費を全国の神社から徴収している。その額は在籍している神職の数や階級によって異なってくるが、一人あたり数万円になる。 こうした会費を支払わなければならない「宮司」たちの懐事情は、意外にも厳しい。埼玉県の古尾谷八幡神社の宮司を務める新井俊邦氏は「宮司だけの収入ではとても暮らせません」と語る。 「私は主に奉仕する神社1社に加えて、13社の宮司を兼務しています。私のように10社以上の宮司を兼務している人は決して珍しくなく、日本中にそうした宮司がいます。 14社も兼務していると、収入もそれなりと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。神職としての収入はすべて宗教法人の口座に入金され、そこから給与として報酬を得ていますが、その金額は年間約140万円にしかなりません。宮司だけでは食べていけず、中小企業診断士の資格を取り、コンサルタントの仕事もしています」 地方の神社だけでなく、都市部の神社であっても、「神社の経営は非常に難しい状況に置かれている」と島田氏は言う。 「宗教活動だけで経営が成り立っている神社は数えるほどしかありません。大きな神社ではお賽銭だけでかなりの収入になるところもありますが、そんな神社は稀。お賽銭やご祈祷、お札やお守りの販売といった『社頭収入』だけで神社を維持し続けるのは難しい。大きな神社では、持っている土地を貸したりして収入を得られますが、小さな神社ではそれもできない。 たとえば明治神宮は、コロナの影響で参拝者数が激減。外苑の維持管理費もかさみ、実は経営難に陥りかけている。神宮外苑いちょう並木の問題は、そうした明治神宮が抱える金銭的な問題も背景にあるわけです」 後編記事『ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」』ヘ続く』、「私は主に奉仕する神社1社に加えて、13社の宮司を兼務しています。私のように10社以上の宮司を兼務している人は決して珍しくなく、日本中にそうした宮司がいます。 14社も兼務していると、収入もそれなりと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。神職としての収入はすべて宗教法人の口座に入金され、そこから給与として報酬を得ていますが、その金額は年間約140万円にしかなりません。宮司だけでは食べていけず、中小企業診断士の資格を取り、コンサルタントの仕事もしています」 地方の神社だけでなく、都市部の神社であっても、「神社の経営は非常に難しい状況に置かれている」と島田氏は言う・・・」、「「宗教活動だけで経営が成り立っている神社は数えるほどしかありません。大きな神社ではお賽銭だけでかなりの収入になるところもありますが、そんな神社は稀。お賽銭やご祈祷、お札やお守りの販売といった『社頭収入』だけで神社を維持し続けるのは難しい。大きな神社では、持っている土地を貸したりして収入を得られますが、小さな神社ではそれもできない」、なるほど。

第三に、4月9日付け現代ビジネス「ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126781?imp=0
・『日本全国の神社のうち約95%が加盟している宗教法人「神社本庁」で内紛が勃発。トップの座を巡り裁判にまで発展している。知っているようで知らない神社の仕組みとともに、その内幕をルポする—。 前編記事『まさかの「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者が猛激怒」が相次いで勃発』より続く』、興味深そうだ。
・『総長職への異常な執着  さて、神社本庁の田中総長は京都府八幡市にある石清水八幡宮の宮司を務めている。ところが、神社本庁関係者は「石清水八幡宮も構図は同じで、経営はラクではないはず」と明かす。 「総長職の報酬は年間1000万円以上あるので、田中さんが総長の席にこだわっているのは、権力欲のほかに、金銭的側面もあるのでは、とも見られています」 氏の総長職への執着は異常だ。前述の通り田中氏側の敗訴という判決が下された職員寮の不正土地取引疑惑を巡る裁判の後も、辞任を求める声を無視して総長の座を死守。通常は2期6年で交代となる総長の座を現在14年も続けているのだ。 「'22年6月の役員会で田中総長は5期目に名乗りを上げました。驚くべきことに、この時の役員会で過半数の理事が田中氏続投に賛成票を投じたのです」(神社本庁関係者) 職員寮売却の件でも背任が疑われたというのに、なぜ多くの理事が田中氏を支持したのか。神社本庁関係者が続けて解説する。 「実は役員会は田中さんと、彼の側近で神道政治連盟の打田会長に近い役員らで固められていて、自浄作用が働かない。だから、何年も総長の座を維持し続けることができるのです」 田中氏は三大八幡宮(宇佐、石清水、鶴岡)の社家(神社を世襲する家柄)出身の神職エリート。國學院大學の神道学科を修了し、平安神宮の権禰宜(宮司の補佐役)を経て石清水の宮司となった。若手神職の集まりである神道青年全国協議会の会長を務めたのち、神社本庁副総長となり、総長に昇格する。 その田中氏を副総長時代から支えてきたのが打田氏だ。打田氏は國學院大學の神道学科を修了後、'77年に寒川神社に奉職。'80年に神社本庁に転任し、本庁職員となる。渉外部長として対外人脈を広げつつ、神道政治連盟の事務局長に就任してからは日本会議や政界ともつながりを深めていった』、「職員寮の不正土地取引疑惑を巡る裁判の後も、辞任を求める声を無視して総長の座を死守。通常は2期6年で交代となる総長の座を現在14年も続けているのだ・・・実は役員会は田中さんと、彼の側近で神道政治連盟の打田会長に近い役員らで固められていて、自浄作用が働かない。だから、何年も総長の座を維持し続けることができるのです」 田中氏は三大八幡宮(宇佐、石清水、鶴岡)の社家(神社を世襲する家柄)出身の神職エリート。國學院大學の神道学科を修了し、平安神宮の権禰宜(宮司の補佐役)を経て石清水の宮司となった。若手神職の集まりである神道青年全国協議会の会長を務めたのち、神社本庁副総長となり、総長に昇格する。 その田中氏を副総長時代から支えてきたのが打田氏だ。打田氏は國學院大學の神道学科を修了後、'77年に寒川神社に奉職。'80年に神社本庁に転任し、本庁職員となる」、一旦、要職に着いたら、「神職エリート」として「何年も」その座を「維持し続ける」ようだ。
・『長期政権が叶ったワケ  「田中さんは'04年に副総長になったものの、事務方の本庁職員に人脈があるわけではなく、政界との縁もそれほど深くない。そんな田中さんを資金面、人脈面、政治面で支えたのが打田さんでした」(神社本庁関係者) 打田氏は、'07年には神道政治連盟の幹事長に就任し、本庁人事にも口出しできる存在となった。 「神社本庁を運営する理事たちは有力神社の宮司を務める地方の名士たち。神社本庁内部のことはズブの素人なので、打田さんがアドバイスをして、本庁全体の運営をさばいていた。 さらに打田さんは驚くほど口が達者で、本庁役職員を取り込むのもうまい。自分に近しい職員にはいいポジションをあてがうなど、人事面で優遇する人心掌握にも長けていました」 人事を掌握し、役員会をコントロールすることで、田中氏が総長になる'10年には、神社本庁全体を牛耳る「田中-打田体制」が完成していた。 そして理事の多くを側近らで固めることで、田中氏は4期目、5期目という異例の長期政権を実現していったのだ』、「「神社本庁を運営する理事たちは有力神社の宮司を務める地方の名士たち。神社本庁内部のことはズブの素人なので、打田さんがアドバイスをして、本庁全体の運営をさばいていた。 さらに打田さんは驚くほど口が達者で、本庁役職員を取り込むのもうまい。自分に近しい職員にはいいポジションをあてがうなど、人事面で優遇する人心掌握にも長けていました」 人事を掌握し、役員会をコントロールすることで、田中氏が総長になる'10年には、神社本庁全体を牛耳る「田中-打田体制」が完成していた。 そして理事の多くを側近らで固めることで、田中氏は4期目、5期目という異例の長期政権を実現していったのだ」、なるほど。
・『総長の座を巡って  ところがあまりに横暴な行いを看過できず、これに「待った」をかけた人物がいる。神社本庁の象徴としてのトップ・鷹司尚武統理だ。 「鷹司統理は、公家の家格の頂点である『五摂家』の一つ、鷹司家の現当主であり、昭和天皇の第3皇女の養子で、上皇陛下の義理の甥にあたる人物です。神社界の頂点ともいえる伊勢神宮の大宮司も務めたこともあり、まさに『神社界のボス』という存在です」(神社本庁関係者) 田中氏の暴挙を許さなかった鷹司統理は、'22年の役員会で田中氏とは別の理事を指名した。しかし、前述のとおり役員会の結束は固く、田中派の賛成多数で、統理が指名した理事は総長の座を得られなかった。 この総長の座を巡るイス取りゲームは、統理から指名された理事が、総長になれないのはおかしい、と訴え出たことで裁判にまで発展。'22年12月に下された一審では「鷹司統理が原告を次期総長に指名したとしても、役員会が議決により原告を次期総長に決定していない以上、原告は、総長に就任していない」として司法の場でも田中総長側に軍配が上がった。さらに、'23年6月の第二審でも一審が支持され控訴を棄却。田中氏は総長のイスに座り続けている—これが「神社本庁の田中派支配」の実態だ』、「あまりに横暴な行いを看過できず、これに「待った」をかけた人物がいる。神社本庁の象徴としてのトップ・鷹司尚武統理だ。 「鷹司統理は、公家の家格の頂点である『五摂家』の一つ、鷹司家の現当主であり、昭和天皇の第3皇女の養子で、上皇陛下の義理の甥にあたる人物・・・しかし、前述のとおり役員会の結束は固く、田中派の賛成多数で、統理が指名した理事は総長の座を得られなかった。 この総長の座を巡るイス取りゲームは、統理から指名された理事が、総長になれないのはおかしい、と訴え出たことで裁判にまで発展。'22年12月に下された一審では「鷹司統理が原告を次期総長に指名したとしても、役員会が議決により原告を次期総長に決定していない以上、原告は、総長に就任していない」として司法の場でも田中総長側に軍配が上がった。さらに、'23年6月の第二審でも一審が支持され控訴を棄却。田中氏は総長のイスに座り続けている」、なるほど。
・『神社本庁が空中分解する日  同会の呼びかけ人には、鶴岡八幡宮に加え、出雲大社、東京大神宮などが名を連ねる。彼らもまた本庁離脱も辞さない構えだ。前出の島田氏が言う。 「以前から田中体制と険悪な関係にあった香川県の金刀比羅宮は'20年にすでに離脱をしていますが、鶴岡八幡宮も離脱を決断したことで、ほかの神社が追随する可能性があります。神社界は田中総長派と鷹司統理派で二分されている。このままでは神社本庁が空中分解してしまいかねません」 この分断こそが、神社本庁の危機の正体なのだ。 神社本庁に、田中体制に批判が集まっていること、また鶴岡八幡宮が本庁を離脱した経緯について質問書を送ったが、期日までに回答がなかった。 国立歴史民俗博物館名誉教授で社会学博士の新谷尚紀氏は、こうした内紛は「神様への感謝の気持ちが薄れている証拠」だと指摘する。 「神社は、みんなが拝んでご利益をいただく場でもあります。そこにお仕えする人は、奉仕に徹しなくてはいけません。『神様が見ておられる』と思えば、自然とそうなるでしょう。現在の神社本庁はそうした神職の基本に立ち返るべきではないでしょうか」 神社本庁の内紛が収まり、純粋な気持ちで参拝できる日が早く訪れることを願うばかりだ』、「「以前から田中体制と険悪な関係にあった香川県の金刀比羅宮は'20年にすでに離脱をしていますが、鶴岡八幡宮も離脱を決断したことで、ほかの神社が追随する可能性があります。神社界は田中総長派と鷹司統理派で二分されている。このままでは神社本庁が空中分解してしまいかねません・・・「神社は、みんなが拝んでご利益をいただく場でもあります。そこにお仕えする人は、奉仕に徹しなくてはいけません。『神様が見ておられる』と思えば、自然とそうなるでしょう。現在の神社本庁はそうした神職の基本に立ち返るべきではないでしょうか」 神社本庁の内紛が収まり、純粋な気持ちで参拝できる日が早く訪れることを願うばかりだ」、その通りだ。
タグ:”右傾化” (その17)(大前研一「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する、もはや「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者激怒」が相次いで勃発、ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」) プレジデント 2024年1月12日号 「大前研一「世界的右傾化はなぜ止まらないのか」…衆愚政治から抜け出すたった一つの解決法 真剣に政治のことを考えないと国が消滅する」 「トランプ氏は大統領在任中、中国による知的財産権侵害に対する懲罰と称し、対中関税をたびたび引き上げた。懲罰の目的を「自国の産業保護」と謳うたっていたが、これは建前だ。本当は「中国は日本のように尻尾を振らないから、罰を与えて支持者の溜飲を下げる」という、政治的なパフォーマンスなのだ。 実際、トランプ氏による中国の排斥が政治的なパフォーマンスにすぎなかったことは、現状を見ればわかる。 トランプ氏は補助金をちらつかせ、メーカーが中国ではなくアメリカに工場をつくるように働きかけた。釣られた台湾の鴻海ホンハイ精密工業は、ウィスコンシン州で工場建設を計画。トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏が現地に来て鍬入れ式まで行ったが、その後頓挫した・・・アメリカの執拗な中国叩きにもかかわらず、結局iPhoneなどのスマートフォンは今も中国で組み立てられており、中の部品についても6割が中国製である。 アメリカの消費者はその高くなったスマホを喜んで買い、アメリカ政府は高くなった関税をポケットにしまい込んで知らん顔をしている。精巧なサプライチェーンを基盤としたボーダレス経済は、何も変わっていないのだ」、なるほど。 「ミレイ大統領は中央銀行の廃止や、ペソを廃止してドル化するといった無茶苦茶な政策も掲げている。 もしペソを廃止してドルを使うなら、ユーロ導入国がマーストリヒト条約に批准するのと同じような図式でアメリカと条約を結ぶ必要がある。ユーロを参考にすると、その導入には①物価安定性②健全な財政とその持続性③為替安定④長期金利の安定性という4つの基準を満たす必要がある。 このうち、①と②については次の通りだ。 ①過去1年間の自国のインフレ率が、ユーロ導入国でインフレ率が最も低い3カ国の平均値との格差が1.5%以内 ②財政赤字がGDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下 アメリカが同様の水準をアルゼンチンに求めたら、ドル化の話は瞬時に終わる。140%のインフレ率を一桁台に抑える魔法は存在しない。また、基準を満たすくらいに債務を減らすには、あらゆる行政サービスを削らなくてはならず、国内で暴動が起きるだろう」、なるほど。 「トランプ氏は、大統領選で「MAGA」というスローガンを掲げて当選した。Make America Great Again、アメリカをふたたび偉大な国にするという意味だ。実はミレイ大統領も選挙で「MAGA」を掲げて聴衆から喝采を浴びている。アルゼンチンも頭文字がAなので、国名だけを入れ替えてスローガンを拝借したわけだ。 MAGAという主張には、誰も反論のしようがない。アメリカのリベラル派も自国が復活してほしいと願っている。このように誰も文句のない主張をする人を、英語圏では「マザーフッド」と呼ぶ。 「母の愛は素晴らしい」といったあたりまえのことを、さも意味のあることのように言うのはバカだと揶揄するときに使う表現である・・・反知性主義とも言われる所以だ。はっきり言えば、衆愚政治化が進んでいる・・・右傾化していない国の国民は、なぜ政治的に成熟しているのか。 ポピュリスト勢力の拡大を抑えられている国には、ある共通点がある。ベルギー、シンガポール、ポーランド。これらは国土や人口、資源などの面でハンデを負った小国であり、政治的には大国のはざまで何とか生き抜いてきた歴史を持つ。 真剣に政治のことを考えないと国が消滅するおそれがあるので、国民が政治参加に積極的で、お互いに啓発し合うのである。 一方、右傾化しやすいのは、少なくとも一度は栄華を誇った過去があり、現在も何らかの条件に恵まれ、必死にならなくてもとりあえず生きていける国だ。アメリカやヨーロッパの大国、アルゼンチンがまさしく当てはまる。 没落しつつも、まだ経済大国である日本は後者だ。アルゼンチンと同じバラマキ大国である日本も同じ轍を踏むのか。それは、国民の集団知性しだいである』、「日本も同じ轍を踏むのか」、残念ながらその可能性 現代ビジネス「もはや「神社本庁・崩壊」の危機...総長の「不正土地取引」に「超有名神社の離脱」と「2000人関係者激怒」が相次いで勃発」 「神社本庁」といえば、右派勢力の本拠ともいえる団体、興味深そうだ。 「'15年10月に田中氏の了解のもと、神奈川県川崎市にある神社本庁の職員寮『百合丘職舎』を1億8400万円という、不当に安い金額で売却したことです。本来なら3億円は下らないと見られるこの職舎を安値で購入したのは、打田と懇意にしている不動産会社。同社は翌月に物件を転売し、3000万円近い利益を得ている。打田らはこの不動産会社と癒着していた可能性が指摘されているのです」 相場よりも極端に安い価格で売却していたことが神社本庁内の一部で問題視され、'16年には同庁の職員が内部告発し、表沙汰に。結局、告発者が懲戒解雇となり、裁判にまでもつれこんだ。伊藤氏が続ける。 「3年以上続いた裁判は、'21年3月に判決が下り『売却価格は相当低かった。田中氏や打田氏が背任を行ったと信じる相当の理由があった』と、裁判所が告発者の主張が正しいことを認めました」 神社本庁トップによる背任行為が疑われた以上、本来であれば調査のうえで、辞任や降格などの措置が取られるべきだ。ところが、田中氏は総長職を続投。何事もなかったかのようにトップの座に居座り続けているのだ。 こうした独裁的な体質に嫌気がさした鶴岡八幡宮が、神社本庁から脱退を表明」、「神社本庁トップによる背任行為が」裁判で認定されたにも拘らず、「田中氏は総長職を続投。何事もなかったかのようにトップの座に居座り続けている」、宗教法人のトップとしてあるまじき行為だ。 「戦後、GHQによって国家と神道の結びつきを断ち切ることを目的とした『神道指令』が出されます。これによって、神道は国家から切り離され、数多くある宗教の一つという扱いになりました」 そこで国家神道とは別の形で神道文化を維持するために立ち上がったのが神社本庁だ。 「このとき、伊勢神宮を本宗(全国の神社の総親神)として頂点に位置付ける現在の神道体制ができあがりました」(島田氏) 神祇院の頃は、税金で組織を維持していたが、神社本庁となってからは国からの支援は受けられない。そのため、神社本庁は、組織維持のために収入 得る必要に迫られた。そこでつくられたのが、伊勢神宮のお札「神宮大麻」・・・各神社はこれを氏子に売り、代金を神社本庁に上納する仕組みです」、なるほど。 「私は主に奉仕する神社1社に加えて、13社の宮司を兼務しています。私のように10社以上の宮司を兼務している人は決して珍しくなく、日本中にそうした宮司がいます。 14社も兼務していると、収入もそれなりと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。神職としての収入はすべて宗教法人の口座に入金され、そこから給与として報酬を得ていますが、その金額は年間約140万円にしかなりません。宮司だけでは食べていけず、中小企業診断士の資格を取り、コンサルタントの仕事もしています」 地方の神社だけでなく、都市部の神社であっても、「神社の経営は非常に難しい状況に置かれている」と島田氏は言う・・・」、「「宗教活動だけで経営が成り立っている神社は数えるほどしかありません。大きな神社ではお賽銭だけでかなりの収入になるところもありますが、そんな神社は稀。お賽銭やご祈祷、お札やお守りの販売といった『社頭収入』だけで神社を維持し続けるのは難しい。大きな神社では、持っている土地を貸したりして収入を得られますが、小さな神社ではそれもできない」、なるほど。 現代ビジネス「ついに「公家家格の頂点」「神社界のボス」も超激怒...ヤバすぎる横暴を続ける現在の「神社本庁」につきつけた「ノー」」 「職員寮の不正土地取引疑惑を巡る裁判の後も、辞任を求める声を無視して総長の座を死守。通常は2期6年で交代となる総長の座を現在14年も続けているのだ・・・実は役員会は田中さんと、彼の側近で神道政治連盟の打田会長に近い役員らで固められていて、自浄作用が働かない。だから、何年も総長の座を維持し続けることができるのです」 田中氏は三大八幡宮(宇佐、石清水、鶴岡)の社家(神社を世襲する家柄)出身の神職エリート。國學院大學の神道学科を修了し、平安神宮の権禰宜(宮司の補佐役)を経て石清水の宮司となった。若手神職の集まりである神道青年全国協議会の会長を務めたのち、神社本庁副総長となり、総長に昇格する。 その田中氏を副総長時代から支えてきたのが打田氏だ。打田氏は國學院大學の神道学科を修了後、'77年に寒川神社に奉職。'80年に神社本庁に転任し、本庁職員となる」、一旦、要職に着いたら、「神職エリート」として「何年も」その座を「維持し続 ける」ようだ。 「「神社本庁を運営する理事たちは有力神社の宮司を務める地方の名士たち。神社本庁内部のことはズブの素人なので、打田さんがアドバイスをして、本庁全体の運営をさばいていた。 さらに打田さんは驚くほど口が達者で、本庁役職員を取り込むのもうまい。自分に近しい職員にはいいポジションをあてがうなど、人事面で優遇する人心掌握にも長けていました」 人事を掌握し、役員会をコントロールすることで、田中氏が総長になる'10年には、神社本庁全体を牛耳る「田中-打田体制」が完成していた。 そして理事の多くを側近らで固めることで、田中氏は4期目、5期目という異例の長期政権を実現していったのだ」、なるほど。 「あまりに横暴な行いを看過できず、これに「待った」をかけた人物がいる。神社本庁の象徴としてのトップ・鷹司尚武統理だ。 「鷹司統理は、公家の家格の頂点である『五摂家』の一つ、鷹司家の現当主であり、昭和天皇の第3皇女の養子で、上皇陛下の義理の甥にあたる人物・・・しかし、前述のとおり役員会の結束は固く、田中派の賛成多数で、統理が指名した理事は総長の座を得られなかった。 この総長の座を巡るイス取りゲームは、統理から指名された理事が、総長になれないのはおかしい、と訴え出たことで裁判にまで発展。'22年12月に下された一審では「鷹司統理が原告を次期総長に指名したとしても、役員会が議決により原告を次期総長に決定していない以上、原告は、総長に就任していない」として司法の場でも田中総長側に軍配が上がった。さらに、'23年6月の第二審でも一審が支持され控訴を棄却。田中氏は総長のイスに座り続けている」、なるほど。 「「以前から田中体制と険悪な関係にあった香川県の金刀比羅宮は'20年にすでに離脱をしていますが、鶴岡八幡宮も離脱を決断したことで、ほかの神社が追随する可能性があります。神社界は田中総長派と鷹司統理派で二分されている。このままでは神社本庁が空中分解してしまいかねません・・・「神社は、みんなが拝んでご利益をいただく場でもあります。 そこにお仕えする人は、奉仕に徹しなくてはいけません。『神様が見ておられる』と思えば、自然とそうなるでしょう。現在の神社本庁はそうした神職の基本に立ち返るべきではないでしょうか」 神社本庁の内紛が収まり、純粋な気持ちで参拝できる日が早く訪れることを願うばかりだ」、その通りだ。
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イタリア(その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪) [世界情勢]

今日は、イタリア(その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪)を取上げよう。

先ずは、昨年4月20日付けNeweek日本版「イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2023/04/post-51_1.php
・『4月11日、イタリアは、ムスメチ市民保護および海洋政策担当大臣の提案に基づき、閣僚評議会は、移民の流れの例外的な増加に関連して、国の領土全体で6か月間の「非常事態宣言」を承認した。 移民は最初の受付センターであるランペドゥーサ島のホットスポットに一時収容されるが、最大収容数が4倍に膨らむ過密状態である。 今後数か月で、さらにその数も増加するという予測がされている。 移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にするためのものが「非常事態宣言」である』、「非常事態宣言」で「移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にする」、とはどういうことだろう。
・『「非常事態」の対策内容とは  1、迅速な移民の身元確認、亡命庇護希望者保護ステータスの認定、承認手続きの時間短縮化、早期国外追放活動 2、本国送還センターCPRを新たに新設、特別コミッショナー設定、統合プロジェクト設定 イタリアに留まる権利を持たない移民の本国送還を可能にする構造や新しい本国送還のための拘留センター(CPR=Centro di Permanenza per il Rimpatrio) の開設などが盛り込まれた。 受け入れのニーズ、滞在の必要条件を満たしていない移民の身元認識と本国送還の両方を迅速に進める緊急に提供することができるようになるという。 その新構造を作成するためには、特別コミッショナーの措置も必要である。 フロー管理により、効率的かつタイムリーな対応を行い、庇護希望者の承認手続きの時間短縮化を図る。 マッテオ・ピアンテドージ内務大臣によると、強制送還などの対策をとるための費用として500万ユーロ、日本円でおよそ7億3,600万円を拠出するとしている。 3、現行法令の見直しと改正:非政府組織 (NGO) に所属する船舶に関する法令 海軍閉鎖や港の封鎖を行う安全命令の回復。 複数回の救助や行政上の入港停止を無視し、救助活動を妨げるものやNGO船舶を禁止する。 それに対し、 野党・左派政党によると、 「ピアンテドージ内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている。NGOによる救助は平均して上陸のわずか12%にすぎないという具体的なデータを出してきて、あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した。」 と、メローニ政権を批判をしている』、「内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている・・・あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した」、「NGO船」を遠ざけようとする努力は失敗に終わったようだ。
・『| 非常事態宣言は本当に必要だったのか?  野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘した。 実際には、今年3月には約13,000人の移民がイタリアに上陸したが、これは、2022年7月の13,802人とほぼ同じ人数であり、8月の16,822人よりも少い。同様に、9月は13,533人、10月は13,493人である。 さらに、世界最大の国際人権NGO法人のアムネスティ・インターナショナルによると、2014年から2017年にかけて、イタリアには623,000人の移民が上陸し、400,000件の亡命申請書が提出され、528,000件が受付システムに登録されたと言う。 "緊急非常事態が宣言されていないにもかかわらず"、190,000人以上の人々を受け入れてきた。過去10年間、その人数はほぼ一定のままだ。 なぜ今、「非常事態宣言」が必要なのかと、メローニ政権に質問を投げかけている。 また、これまでのところ、多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している。 昨年2022年のデータでは、亡命申請を行った人数の最多はスペインの116,140人、2番目がフランスで137,505人、3番目がドイツで 217,735人だったのに対し、イタリアは77,195人だった。 2022年の全体では、合計10,865人の外国人が特別保護を受け、亡命申請者の44% が一次保護ステータス、32%が国際的保護の形式を付与され、12%が特別保護ステータスを付与された。 イタリアは、亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられる。 右派政党によるプロパガンダ要素が強く、政治的策略であることは数字からも明らかで、移民政策の失敗だと野党は声高に叫び始めた。 野党によると、「"非常事態宣言"は偽装されたものであり、つまりNGO船舶を止めることは単なる口実である、既に以前、失敗に終わった緊急型の規制・行政運営を帳消しにするために、メローニ政権は、より高い目標を掲げて、本当の緊急・非常事態宣言を誇示することしかできなかった。今回もまた失敗だ。」と非難している』、「野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘・・・多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している・・・亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられた」、なるほど。
・『 前左派政権の人道的保護の法令を廃止せよ、新「クトロ法令」決議  メローニ首相は「私の目的は、特別保護の撤廃です」と、はっきりと述べた。 前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である。 その「特別保護」というものは、ヨーロッパの他の国々で起こっていることと比較すると、イタリアの場合は保護の範囲がさらに追加されており、それは度が過ぎているからだという。 特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である。 そして、特別保護に関しては、災害や医療のための居住許可を最小限に制限することを目的とし、左派による過度に拡大された特別保護の廃止と居住許可を取り消すと修正し、「クトロ法令」を上院で決議した。 それ以前の2018年には既に、前内務大臣で現副首相の極右政党同盟のサルビーニ氏が制定したサルビーニ法令というものが存在している』、「前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である・・・特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である」、「特別保護」の撤廃はやむを得ないようだ。
・『"サルビーニ法令は、人道的保護を廃止した"  第1条では、庇護の付与に関する新しい規定が含まれており、移民に関する統合法によって想定されていた人道的理由による保護の廃止を効果的に規定している。 ・人道的性質、またはイタリア国家の憲法上または国際的義務に起因するものでなければならない。 ・深刻な災害による理由または医療目的のため、もしくは紛争などの緊急事態から逃れる人々に居住許可を与える。 ・人道的保護は、自国で迫害を受ける可能性があるとき(移民法第 19条) ・労働搾取や人身売買の被害者は国外追放しない。 ・就労滞在許可に変換できない。 などである。 第2条では、本国送還のための拘留センター(CPR) で本国送還を待っている外国人は、最大90日間の拘留であったが、その制限を最大180日に拡大した。 第3条は、亡命・庇護希望者はCPRに最大30日間収容して、身元と市民権を確認できると規定している。 第4条は、CPRに場所がなく、治安判事の許可があれば不法移民を国境事務所に拘留することができると規定した。 第5条は、亡命申請のための居住許可を登記所に登録するための資格に変更した。 第6条は、本国送還のためにより多くの資金を配分することを規定した。 2018年に50 万ユーロ、2019年に150 万ユーロ、2020年にさらに150 万ユーロである。) 国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある。 亡命・庇護希望の申請者が1つでも犯罪を犯し刑事訴訟手続中であった場合、また、有罪判決が下された場合に庇護申請は拒否され停止される。 さらに、難民が出身国に戻った場合、たとえ一時的であっても、国際的および補助的な保護を失うことも規定したものである。 この度決議された「クトロ法令」は、このサルビーニ法令に修正を加えたものであるという。 野党左派反対勢力は、移民に関してメローニ政権が審議した非常事態宣言も強く批判しており、民主党のエリー・シュライン書記官は、「メローニ政権は、移民政策を策定できないことの代償を最も脆弱な人々に負わせている」と不満を漏らし、「メローニは、人身売買業者ではなく、人身売買の犠牲者を攻撃している」と非難、クトロ法案にも強く反発している』、「国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある」、この程度の強化はやむを得ないようだ。
・『イタリアの入管収容施設:本国送還のための拘留センター  CPR) の実態  本国送還のための拘留センターCPR(=Centro di Permanenza per il Rimpatrio) は、日本の入国者収容所のようなものに近い、送還される前の拘置所で、移民を閉じ込める施設だ。 イタリアに滞在するための書類がないこと以外は、内部に収容されている人は誰も犯罪を犯してはいないが、依然とした拘留システムであり、その権利も意味もない刑務所である。 市民の自由と権利のイタリア連合の市民社会組織ネットワーク「ブラック ホール」によってCPRの2つの闇の側面がレポートされた。 イタリアには、本国送還のための拘留センターCPRは10箇所ある。 通常は1つのCPRには、400人未満の移民が収容されている。 送還される可能性が低い人々を拘束し、基本的生活のために必要な経費は、1日で40,000ユーロ(約590万円)以上で、2018年から2021年までの3年の合計は4,400万ユーロ(約64億9,600万円)x 10センター分が税金で賄われた。 実際には、10のセンターの維持費と、センターの内外を監視するために配置されている警察の維持費なども加算しなければならない。 移民の出身国との合意がなされず、何らかの事情で速やかに送還できない場合、長期収容となるが、法律で定められた最大滞在日数に達すると、ほとんどの人がこれら収容所から解放される。本国送還は50%のみ行わている。 2020年1月1日から2022年9月15 日までに本国強制送還が延期された半分以上は、チュニジア国民が関与しており、移民の主な出発国がチュニジアである理由は、移民に対する弾圧が行われているからであるという。 チュニジアのサイード大統領は「移民は国家転覆を目論む犯罪者である」と提言し、 国から脱出する移民を厳しく取り締まり、一斉強制送還にも踏み切ったという背景がある。 チュニジアの次に多い国順で、モロッコ、ナイジェリア、エジプト、アルバニア、ガンビア、アルジェリアが続く。 イタリアはこれらの国々とは、国家間の協定があるため最も簡単に送還できると報告書が強調しているが、正確にはこれらの送還の速さは、"深刻な権利侵害につながる"可能性がある。 実際、多くの場合、彼らは亡命を申請し、保護を正式に申請することが可能であるということは、彼らに全く知らされていない。 難民や亡命希望者から権利を奪うことで、イタリアの移民問題を何らかの形で解決できるだろうという考えなのだろうか。 少数派であるグループの権利の範囲を狭めることは、民主主義の原則と憲法に反することであると同時に、社会的紛争を助長し、領土内の関係の質を悪化させる。 人道上の亡命申請を取り消すことは、地方自治体が責任を負う不規則性と社会不安を助長するだけだ。 同時に、地方自治体の公共システムは解体され、その役割を大幅に削減し、民間システムに依存し支持することは、地方自治体の公共支出の増加にも直接つながっていくのではないだろうか。 ・トリノの本国送還のための拘留センターCPR 亡命申請者のための個別の施設の欠如。窓なしの部屋で一晩のみの滞在可能な施設。 ・ミラノ、トリノ、ローマのグラディスカ、パラッツォ サン ジェルバシオの本国送還のための拘留センターCPR 自律的に照明ライトをオンまたはオフにすることはできない。 ・バーリの本国送還のための拘留センターCPR シーツのないマットレス。部屋にはゴキブリがいる。ドアのない和式トイレ。 悪い衛生状態と質の悪い食品。 などである。 収監所で移民の世話をしなければならない文化仲介者、医師、心理学者などの人員は不足しているので、サービスの実行時間数もおのずと減る。 欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けている』、「欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けている」、これらはいかにもまずい。
・『拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス。その闇と実態  ヨーロッパ全土には、さまざまな種類の拘置所や刑務所を管理するサービスを提供する多国籍企業が存在する。 2020年に、サルデーニャのマコマー本国送還のための拘留センターCPRの事業が発足した。 拘留施設は、スイスの持株会社である Orsイタリアによって管理されている。 Orsはイタリアを中心に、スイス、ドイツ、オーストリアを拠点としたホスピタリティ事業で、22もの刑務所施設のサービスを管理する多国籍企業だ。 昨年の売上高が約600億ドル(約8兆円)に達する巨大ビジネスである。 地域ネットワークの非営利団体ではなく、収益性の高い企業で、イタリア連帯コンソーシアム (Ics) とトリエステのカリタス財団が率いており、人材派遣会社アデコの分社として誕生したのが、このスイスのグループ傘下のOrsイタリアだ。 Orsイタリアは、特にスイス、オーストリア、ドイツで亡命希望者のために特化したセンターを運営しているという。 しかし、近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された。 2020年1月18日(土曜日)の早朝、ゴリツィアの本国送還のための拘留センターCPRで、37歳のグルジア人が死亡した。亡命希望者であった彼は、難民保護の資格を得るには必要条件を満たしていなかった。目撃者には「警備員に殴られた」とのことだ。 民間管理会社CPRからの情報が漏洩して判明したこともある。 収監されていた移民の自傷行為、自殺未遂、管理団体からの苦情、食べられない食事、衛生と健康、心理的援助における重大な欠陥、弁護権を行使することが困難、などである。そして、少なくとも3回の脱走があったことも報告されていた。 CPR内の死亡者数は2年間で6人。決して高くない数字だが、とにかく、入札を獲得し続けているというのは、とても不可思議ではある。 移民の受付システムを管理する外国人収容施設の入札は、より競争力のある大企業に飲み込まれており、イタリア領土全体にそれは存在するのが現状だ。 市場シェアを占有するために収益を先延ばしにして、競合他社をしのぐための積極的なマーケティングをしているというのが印象で、結局、非営利団体NGOを排除することを目的としているとも見える。 海上のNGO船舶に続いて、陸路についても不可解な権利の歩哨が横行しているようだ』、「拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス」、初めて知った。ただ、「近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された」、これはやはり問題だ。
・『 今後、考えられるイタリアの抱えるリスク  現在決議で認可されているこの非情事態宣言が、パンデミックのいくつかの段階のように、移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ。 非常事態宣言は、送還の流動性を保証するものでもない。出身国との協定がなければ、送還は行われない。近年さまざまな国ですでに行われているように、出身国と協定を結ぶ必要がある。 移民増加現象の緊急管理は、中長期的なこの政策で構造的な解決策の基礎を築くことができるだろうか』、「移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ」、その通りだ。

次に、4月14日付けNeweek日本版「メローニ首相が代理出産を激しく非難、イタリアでは普遍的犯罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2024/04/post-62.php
・『イタリアのジョルジア・メローニ首相は4月12日金曜日、ローマで行われた『若きヨーロッパのために』と題したイタリアの出生率と人口減少問題について考える会議に出席した。 人口動態の変化、環境、将来についてを話す中で、「代理出産」を激しく非難した。 首相は、代理出産は「非人道的」であると定義し、いわゆる「子宮貸し、レンタル子宮」についてを強調し、「それは間もなく普遍的な犯罪になるだろう」と発表した。 代理出産を普遍的犯罪とする法案を支持する用意があると付け加え、同法案が「できるだけ早く承認されることを期待している」と演説をした。 メローニ首相が「子宮を貸し出す行為」と定義する代理出産とは、国境を越えた愛の行為として偽装することで養われている闇市場のことである。 これは、「意図された親」とも呼ばれ、これから生まれる子供の親となる人々に代わって女性が妊娠を行う生殖補助医療である。 子どもを妊娠する卵子は、ドナーから提供される。 つまり、妊婦は胎児と血のつながりはない。 または、卵子は将来の母親から、精子は将来の父親からのものである可能性がある。 同性カップルの場合、あるいはドナーの場合も同様。 通常、夫婦が代理出産で子どもを産む場合、将来の両親のうち少なくとも一方が、卵子か精子で生まれた子供と遺伝的つながりを持っている。 他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金が科される。 現在イタリアでは代理出産は禁止されており、代理出産のために海外に出るカップルは年間3千?4千件。 最も頻繁にその目的地として選ばれていたのがウクライナだ。 代理出産は、実際にはヨーロッパや世界中のいくつかの国では合法である。 合法の国は、ウクライナ、ギリシャ、ジョージア、アメリカ、カナダ。 コリエレ・デッラ・セーラ 紙によると、海外で赤の他人の女性を妊娠させて生まれたイタリア人の子供に関する公式的な数字はないが、年間250人から350人がいると推定されている』、「他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金」、なるほど。
・『 イタリア司法の判決で国が敗訴  海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという。 また、2024年3月5日にも、イタリア・パドヴァ裁判所判決で、同性カップルの母親が、2人の子どもの出生証明書について有効を求めていた裁判では、母親2人の認知の取り消しを求めた検察庁の上訴が棄却された。 よって、同性親家庭の非生物学的な母親は形式的にも母親であり続ける。どちらか一方の母親を削除することはできないという判決が下され、国が敗訴した形となった。 メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている。 また、メローニ政権で家族・出生・機会均等大臣を務めるエウジェニア・ロッチェッラ氏は、「イタリアでは子供たちはみな同じであり、同じ権利を持っている。これは最近欧州人権裁判所によって認められており、破毀院も共同セクションである」と言い、メローニ政権は我々の制度を一ミリも変えていないと強調した。同大臣は、「異性愛者と同性愛者の両方のカップルに適用される簡単で利用しやすい手続きもすでにある」と、述べている。 昨年3月にも、ミラノで生まれた同性カップルの息子と娘の登記所への登録を停止するよう要請が、イタリア内務省からミラノ市長へ通達されるという騒動が話題となった』、「海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという・・・メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている」、「メローニ首相」は右翼なので、やはり判断は保守的なようだ。
・『イタリアでの同性カップルの子どもの家族登記・役所への届出  父&父(海外産まれの子)[満月]?認可 母&母(海外産まれの子)[満月]?認可 母&母(イタリアで出産した子)[×]認可しない というものが、現在のイタリアの現状である。 メローニ首相: 「子供たちをスーパーマーケットの棚に並ぶ商品のようにみなすことが愛の行為だということは、私には納得できない。子どもたちを産みたいという正当な欲求を諦めることも愛の行為ではない。子どもには可能な限りどんな手段を使ってでも保障できる権利があるのです。」と述べた。 一方、野党は、「家族が第一であり、出生率が政府の優先事項であるとも述べているが、これは、子供用品(特におむつやミルク)に対する付加価値税の引き上げなど、前年と比較して行政が実施した一部の措置と客観的に見て矛盾する言葉である」と、すぐに反応を示して批判をした。 イタリアの標準税率は22%で、主に生活必需品を対象として、10%、5%、4%の軽減税率がある。 メローニ政権は、家族向け対策として、おむつやミルクなどの子供向け製品の付加価値税VAT(イタリアではIVA)を2023年に22%から5%に引き下げる減税措置をしたが、現在は5%だったものを10%に引き上げ、増税をした。 野党民主党の書記長シュライン氏は独身女性であり、同性のパートナーがいるレズビアンであることを公表しているが、視野が狭いのではいかと感じる。 子どもの育児は、母乳やミルクや離乳食が終わり、おむつが外れる期間までではない。ピンポイントの時期だけに必要な雑貨購入にかかる税率を5%にしたとて、直接的に出生率の向上に繋がるわけではないとも思える。子どもは成長をしていくにつれ、もっとお金は掛かるものであって、一児の母親であるメローニ首相の5%税率の撤廃は妥当である。 メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ』、「メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ」、どんな形なのだろう。
・『 イタリアの子育て世代支援策  新しい予算法においては、行政には次の権限もあるということも強調しておく必要がある。 2024年に親の育児休暇を増やすために、約1億4,000万ユーロ(約228億4000万円)を割り当てた。 ・保育所のボーナスを増額する(経済状態指数ISEE年間所得が4万ユーロ未満(約652万円未満)の家庭に対して3,000ユーロ(約49万円)から3,600ユーロ(約58万7000円)に増額する。 資金は2025年には2億4,000万(約391億5400万円)から2億5,400万(約407億8500万円)、2026年には最大3億ユーロ(約489億円)に増加する。) ・母親ボーナスを導入する(子供(2人以上)を持つ労働者に対する拠出金軽減』、どれも面白いが、特に「母親ボーナスを導入」は傑作だ。
・『 イタリアの深刻な人口減少とリスク  すべての措置は、センセーショナルな出生率の低下を食い止めようと計画されている。 イタリア国立統計研究所(ISTAT) のデータによると、2023年に生まれた子どもの数はわずか37万9千人。 1000人当たり6.4人の子どもが出生し、過去最高のマイナス記録となった。 2022年には6.7人で、昨年は出生数がマイナス1万4千人、出生率は3.6%であった。 メローニ首相は、スピーチの中で、出生率低下という長年の問題について再び語った。「何年にもわたって作られてきた物語を覆さない限り、具体的な介入は決して十分ではない。 子どもをこの世に産むということは、女性にとって自由、夢、キャリア、場合によっては美貌を犠牲にすることになるため、それは最終的には不都合な選択になるといったこの種のメッセージは所謂、"反面教師"であると捉えるべきである。キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張した。 近年の傾向を逆転させることができなければ、人口減少がイタリアとヨーロッパを崖っぷちに引きずり込む危険にさらされるだろう』、「キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張」、正論ではあるが、女性の昇進に一定のクオータ(割り当て)などをする方が本筋だろう。
・『 イタリアの出生率の緊急事態  ローマの会議にはエウジーニア・ロッチェッラ家族・出生・機会均等大臣も出席し、イタリアの出生率の深刻な傾向について語った。 家族・出生・機会均等大臣は、「この問題への無関心が何年も続いたため、影響を残さず、この問題を止めて傾向を逆転させるには長い時間がかかるだろう」と説明している。 同大臣によれば、出生率政策への投資に対する大きなインセンティブは欧州連合から得られる可能性があるという。 そしてこれが、イタリア政府が人口動態の問題を次期欧州委員会と新しい欧州議会の優先事項に据える理由であり、「グリーン移行とデジタル移行に関してすでに行われたように、人口動態の移行、すなわち厳しい冬からの移行への投資とヨーロッパにおける大胆さと未来感を通して、少なくとも新生の春が訪れるだろう」と、演説で述べている。 出生率を上げたい、子どもの数を増やし人口減少に歯止めをかけたいが、代理出産によって子どもを増やすことはしてはいけない。 La Repubblica @repubblica 公式Youtubeチャンネルより教皇フランシスコ「代理出産は嘆かわしい。世界レベルで禁止されなければならない」 今年1月には、ローマ教皇フランシスコは、代理出産、レンタル子宮、ジェンダー理論について言及した。 「平和への道には、母親の胎内にいる胎児から始まる、すべての人間の生命は、その存在のあらゆる瞬間において尊重され保護されなければなりません。一方で、特に西洋では、これは抑制できず、文化が根強く普及していることを遺憾に思います。商業化の対象となってはならない。」 いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている』、「いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている」、同感である。
タグ:イタリア (その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪) Neweek日本版「イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態」 「非常事態宣言」で「移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にする」、とはどういうことだろう。 「内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている・・・あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した」、「NGO船」を遠ざけようとする努力は失敗に終わったようだ。 「野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘・・・多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している・・・亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられた」、なるほど。 「前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である・・・特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である」、「特別保護」の撤廃はやむを得ないようだ。 「国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある」、この程度の強化はやむを得ないようだ。 「欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けて いる」、これらはいかにもまずい。 「拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス」、初めて知った。ただ、「近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された」、これはやはり問題だ。 「移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ」、その通りだ。 Neweek日本版「メローニ首相が代理出産を激しく非難、イタリアでは普遍的犯罪」 「他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金」、なるほど。 「海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという・・・メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている」、「メローニ首相」は右翼なので、やはり判断は保守的なようだ。 「メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ」、どんな形なのだろう。 どれも面白いが、特に「母親ボーナスを導入」は傑作だ。 「キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張」、正論ではあるが、女性の昇進に一定のクオータ(割り当て)などをする方が本筋だろう。 「いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている」、同感である。
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その他公共交通(その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」) [産業動向]

今日は、その他公共交通(その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」)を取上げよう。

先ずは、本年4月2日付け東洋経済オンラインが掲載した 経済ジャーナリストの櫛田 泉氏による「北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/743468
・『鈴木直道知事の対応を巡って北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態だ』、「北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態」、みっともない事態だ。
・『議会軽視で自民会派と溝  問題となったのは、鈴木知事の北海道の観光振興予算に関する答弁。この答弁を巡り自民会派と事前の調整がつかなかったことが延会の原因だ。発端は、新年度の観光振興予算を巡る動きだった。当初は、「引き続きインバウンドの誘客のための海外への広報活動が必要」として26億円を要望しており道側からも前向きな回答を示されていたというが、実際に道議会の予算審議で提示された金額は14億円と半減されていた。これに対して、道の観光振興予算の大半を執行する北海道観光振興機構は新年度の予算が要求額よりも大幅に削減されたことに対して不満を抱いた。) この後、地元紙が報じたところによると、議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった。この日、自民会派の安住太伸幹事長は記者団に対し「知事は観光振興に力を入れると言ってきたが、具体的な中身が全く示されていない。知事を支えることが困難になりかねない」と述べている。 翌29日には議会は再開されたが、鈴木知事はこれを受け「外部への追加予算案の説明をしたといった事実はない」と答弁しているが、自民会派の中堅議員は「何も予算の話をしていないなんて誰も信じない」と苦笑した。また、野党側も「審議の根底が崩れることになる」と知事の行動を批判。道議会は荒れ模様となった』、「議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった」、完全に「鈴木知事」の不手際だ。
・『鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢  鈴木知事は「観光振興に力を入れる」方針を示しているものの、2019年の知事就任前に市長を務めていた夕張市は観光振興とはかけ離れた状況に置かれている。 市長在任中だった2017年、夕張市所有の「ホテルマウントレースイ」「マウントレースイスキー場」など観光4施設を中国系企業に格安の2億4000万円で売却する。しかし、2019年にこの中国系企業は約15億円で観光4施設を香港系ファンドに転売し、その後、施設の運営会社は倒産した。このときの負債総額は8億3000万円であったが、一般債権者は全額を踏み倒され夕張市の経済が破壊されたことは2022年11月2日付記事(北の鉄路切り捨て鈴木知事「夕張市長時の問題点」)で詳しく触れている。「北海道の不動産取得を目的とした計画倒産だったのではないか」という疑念の声もいまだ絶えない。 現在は、「マウントレースイスキー場」はかろうじて営業を再開しているものの、スキー場に隣接した「ホテルマウントレースイ」は閉鎖したままだ。スキー場は、夕張市近隣から自家用車で訪れる地元客がまばらな状況で、インバウンドの波は及んでいない。こうした状況の中でも、夕張市は2024年の観光入込客数の目標を60万人としており、目標達成に向けて観光ホームページの更新、観光案内看板整備、市内観光マップの更新作業に取り組んではいる。しかし、2022年の観光入込客数は23万6000人にとどまっており、2023年12月6日に行われた夕張市の定例市議会で厚谷司市長は「目標達成は厳しい状況であることは事実」と答弁している。) なお、市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない。 こうした状況に対し、全国各地の地域が抱える問題に精通する日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「多くの国では鉄道に乗ること自体が観光資源として認知されていることからインバウンド来訪の波は鉄道のある地域に波及しやすい傾向がある」と指摘する。 実際に北海道のインバウンド誘致は一定の成果を見せており、この冬の観光シーズンは札幌から函館や帯広、網走方面に向かう特急列車は大混雑となっていたほか、ニセコリゾートエリアの玄関口となる函館本線の倶知安―小樽間でも日中に通常運行される2両編成のH100形では途中の余市駅で乗客の積み残しが発生する事態が生じたことなどから、急きょ3両編成のキハ201系が投入され輸送力の増強が図られた。 さらに藻谷氏は、「北海道ではせっかく存在していた鉄道が廃止されてしまったために、優れた景観を持つにもかかわらずインバウンド来訪の波が及んでいない地域もあるのは残念だ。つい最近の廃止事例である日高本線などについては、維持を北海道だけの判断に任せず、インバウンド振興という国策的な観点から対処を考えるべきだったのではないか」と続けた』、「市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない」、「攻めの廃線」など言葉遊びに過ぎない。何故、こんな馬鹿な「廃線を提案」が行われたのだろう。「中国系企業への観光4施設の売却」も不透明だ。それにしても「鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢」は大いに問題だ。
・『東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線に  鈴木知事就任以降、道は北海道の鉄道維持のために積極的な財政支出をしようとはせず、北海道の鉄道ネットワークの破壊を続けている。知事就任以降に廃止された鉄道路線は2020年5月の札沼線(学園都市線)北海道医療大学―新十津川間47.6km、2021年4月の日高本線鵡川―様似間116.0km、2023年4月の留萌本線石狩沼田―留萌間35.7km、2024年4月の根室本線富良野―新得間81.7kmで、その総距離は297.1kmに及ぶ。さらに、2026年3月31日限りで留萌本線深川―石狩沼田間14.4kmも廃止となる見込みで、この距離を加えると311.5kmの鉄道路線が廃止となり、この距離は東海道新幹線の東京―名古屋間に匹敵する。 鉄道だけではない。北海道新幹線の並行在来線問題では道が廃止の方針を決めた函館本線の長万部―倶知安―小樽間140.2kmについて、近年深刻化するバスドライバー不足を背景にバス転換協議が中断に追い込まれた。鈴木知事には、北海道が全体的に活気づくような筋の通った政策立案を望みたいが、その思いは届くのだろうか』、「東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線」と、「鈴木知事」は「廃線」で何を狙っているのだろうか。

次に、4月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339256
・『東京メトロは4月1日、民営化から20年の節目を迎えた。筆者が入社したのは民営化2年目のこと。当時、株式上場・完全民営化は「目前」とされたが、いまだ実現はしていない。前身である帝都高速度交通営団(営団地下鉄)から始まった、完全民営化への取り組みの歴史を振り返る』、興味深そうだ。
・『私鉄・東京地下鉄道から始まる東京の地下鉄史  東京メトロが創立20周年と聞いて、時間の流れの早さをしみじみと感じる。2017年まで同社に勤務していた筆者は、大学3年生だった2004年秋に就職活動を開始して「エントリー」すると、2005年春に試験、面談を行い、民営化2年目の2006年4月に入社した。 一つ上の代は、エントリー時点では帝都高速度交通営団(営団地下鉄)であり、二つ上の世代は、入社のタイミングで東京メトロに改組された「一期生」。そうなると、我々の世代こそが、採用のスタートから全て東京メトロだった「新世代」と言えるかもしれない。 営団地下鉄といってもピンと来ない人が増えているだろうから簡単に説明しておくと、東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった。 営団の民営化が唱えられるようになったのは1980年代初頭のことだ。オイルショック後の財政悪化を受けて、政府は1981年3月に「臨時行政調査会」を設置し、国鉄や電電公社(現NTT)など三公社五現業と特殊法人の整理、民営化方針を決定した。 その後、「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した』、「東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった・・・「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した」、なるほど。
・『完全民営化へのステップである特殊法人  前述のように営団は、民営企業では負担できない莫大な建設費を公的な信用を背景に調達し、新線建設を促進するために設立された。建設が終了し、「路線運営が主たる業務」になれば民営企業になっても差し支えない、というわけだ。 なおここでいう特殊会社とは、公益上の目的のため法律によって設立された株式会社を指す。特定の政策を遂行するために設置された、完全民営化を前提としない特殊会社もあるが、特殊法人民営化の過程で設置される特殊会社は、完全民営化の第一段階に位置づけられる。) 特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ。 JR東日本・JR西日本・JR東海・JR九州も、国鉄民営化当初は国が全株式を保有する特殊会社だったが、全株式を売却した。一方、経営再建中のJR北海道・JR四国は特殊会社のままである。そして東京メトロもまた、国と都が全株式を保有する特殊会社である(都営地下鉄がありながら営団にも出資していた経緯はややこしいのでここでは省く)』、「特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ」、なるほど。
・『新線建設の終了と表裏一体だった営団民営化  こうして動き出した営団民営化だが、すぐに足踏みとなる。当時、着工したばかりの7号線(南北線)に加え、1985年の運輸政策審議会答申第7号に盛り込まれた11号線(半蔵門線)の押上延伸、13号線(副都心線)の計画が浮上し、「地下鉄ネットワークの概成」には時間を要することが見えてきたからだ。 政府は「5年以内」の期限を目前にした1990年12月、「可及的速やかに特殊会社への改組を図るため、その具体的措置等について検討する」と目標を棚上げしたが、1995年に、「帝都高速度交通営団については完全民営化する。その第一段階として現在建設中の7号線、11号線が完成した時点をめどに特殊会社化を図る」と具体的な目標を設定した。 2000年9月に南北線が全通し、2003年春に半蔵門線押上開業のめどが立ったことで、国土交通省と営団は、押上開業からおおむね1年後の特殊会社化を要望。2001年12月の閣議決定「特殊法人等整理合理化計画」に、2004年春の特殊会社化が明記された。 上述のように、営団民営化とは新線建設の終了と表裏一体であったが、営団は1999年になって地下鉄13号線の免許を申請し、さらなる新線建設に乗り出している。13号線の計画自体は1972年から存在したが、東京の地下鉄整備は12号線(都営大江戸線)で建設は終了する予定だった。ところが小渕恵三内閣が1998年に策定した「緊急経済対策」で状況は変わった。補正予算に13号線が盛り込まれ、「最後の新線」が動き出したのである。 ただ7号線、11号線のケースとは異なり、13号線建設は民営化スケジュールとは切り離された。2004年に東京メトロが発足した後も建設工事は続き、2008年6月に副都心線として開業。営団時代からの新線建設はようやく完了した。 国鉄の事例に見られるように、民営化の象徴といえるのが関連事業の展開だ。公営鉄道は公的な資金を投入して建設、営業するため、公有資産を用いた金もうけは公営の趣旨に反するとともに、民業圧迫になるとして関連事業は制約されている。 ただ民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。 帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである』、「民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである」、なるほど。
・『完全民営化を遠ざけた石原都政の「地下鉄一元化」論  筆者が東京メトロに入社した2006年、社内は「民営化」に高揚していた。国鉄民営化が議論から決定まで数年で駆け抜けたのに対し、営団は20年弱を要した。民営化方針が固まった1980年代後半以降に入団(営団時代は入社ではなく入団といった)した総合職は、既に課長級になっていたのである。 東京地下鉄株式会社法は付則に「できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」と定めていた。関連事業の積極的な展開で経営基盤を確立し、最後の新線である副都心線が開業すれば、いよいよ株式上場し、完全民営化が達成される。それは間近であると思われた。 ところが副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。 しばしば勘違いされるが、株式上場は株主が決めることである。もちろん会社側も上場に備えた準備をしなければならないのだが、最終的に株主が売らないと言えば上場はできない。東京メトロの株式は国が53.4%、都が46.6%という絶妙のバランスで保有しており、かろうじて国が主導権を握っている。国だけ売却すれば、都が東京メトロを支配しかねない。 その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた。 この辺りの経緯は過去記事で取り上げたので詳細は省くが、副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない』、「副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた・・・副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない」、「今年度に上場が実現するかもしれない」、というのは初めて知った。
・『上場後のビジョンが見えない東京メトロ  ただ外部から見た東京メトロは、あまり変わったように思えない。3月25日発表の「2024年度事業計画」は、安全対策に309億円、旅客サービスに362億円など、計1146億円の設備投資予算を策定。うち約3割(約350億円)を新規不動産取得・開発、自動運転、技術開発などの「成長投資」に使うとしている。 個別の項目には「DX」や「ESG」などはやりのワードは並ぶが、結局はキャッシュフローの多くを鉄道の機能強化に振り向けており、関連事業(都市・生活創造事業)への投資は1割強。物件は変わってもメニュー自体は代わり映えしない。これでは上場しても何かが変わるとは思えない。 だが、それも仕方のない話なのかもしれない。メトロ(営団)にとって、上場とは国策として決まった話であり、上場自体が目的であり目標だった。もちろん社会的な信用が高まるとか、株式市場から資金調達が可能になるとか、それらしい目的を立てることはできるのだが、上場しなければ困る理由はなく、その先の明確なビジョンが見えない。 都心の地下を走る地下鉄はビジネスの可能性が無限と思われがちだ。しかし、莫大な建設費がかかる地下鉄は、なるべく自社用地を持たず、設備は必要最小限で建設するため、自由に使える資産は実は少ない。 変電所など業務用地に施設を一体化したビルの建設は、可能な範囲で終わっている。新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである。 これは筆者が在籍していた頃から感じていたことであり、実際に社内の一部にもそういう空気は漂っていた。上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、「新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである・・・上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、どうも、「上場」しても余り変わりばえしなさそうだ。これは、株式の評価額にも影響するだろう。  
タグ:その他公共交通 (その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」) 東洋経済オンライン 櫛田 泉氏による「北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?」 「北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態」、みっともない事態だ。 「議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった」、完全に「鈴木知事」の不手際だ 「市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない」、「攻めの廃線」など言葉遊びに過ぎない。何故、こんな馬鹿な「廃線を提案」が行われたのだろう。「中国系企業への観光4施設の売却」も不透明だ。それにしても「鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢」は大いに問題だ。 「東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線」と、「鈴木知事」は「廃線」で何を狙っているのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 枝久保達也氏による「東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」」 「東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった・・・ 「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した」、なるほど。 「特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ」、なるほど。 「民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。 帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである」、なるほど。 「副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた・・・ 副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない」、「今年度に上場が実現するかもしれない」、というのは初めて知った。 「新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである・・・ 上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、どうも、「上場」しても余り変わりばえしなさそうだ。これは、株式の評価額にも影響するだろう。
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小池都知事問題(その10)(神宮外苑の再開発 日本人ではない私が懸念する理由…無視できない疑念と横暴の数々、「小池百合子首相」誕生の可能性はまだある!政治学者が本気で期待するワケ、女帝・小池百合子氏が大誤算で窮地へ…補選に向けて発覚した「驚きの数字」 まさかこれほどまでとは…) [国内政治]

小池都知事問題については、本年3月11日に取上げた。今日は、(その10)(神宮外苑の再開発 日本人ではない私が懸念する理由…無視できない疑念と横暴の数々、「小池百合子首相」誕生の可能性はまだある!政治学者が本気で期待するワケ、女帝・小池百合子氏が大誤算で窮地へ…補選に向けて発覚した「驚きの数字」 まさかこれほどまでとは…)である。

先ずは、本年4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長のロッシェル・カップ氏による「神宮外苑の再開発、日本人ではない私が懸念する理由…無視できない疑念と横暴の数々」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341423
・『100年近く都心の緑を守ってきた明治神宮外苑だが、大規模再開発によって多くの樹木が伐採されることになり、昨年から論争を巻き起こしている。故・坂本龍一氏や作家の村上春樹氏ら各界の有識者が声明を出したり、ロックバンド・サザンオールスターズが再開発に異を唱える歌を発表したりするなど、世論の反発が波及している。それにもかかわらず、再開発工事が強行されているのはなぜなのか。夏の東京都知事選挙の争点にもなるといわれ、改めてこの問題を考える』、興味深そうだ。
・『なぜ日本人でもないのに「再開発」に必死にこだわるのか  私は米国人で、30年間日本と米国を行き来して、経営コンサルタントとして働く一方、2年前から神宮外苑再開発計画の見直しを求める運動を率先して行っています。 日本人でもないのに、なぜ神宮外苑を守るために、これほど必死に闘うのかと多くの人に聞かれます。 きっかけは、偶然見たニュースでした。2022年2月、東京都の都市計画審議会が神宮外苑再開発計画を承認したというニュースです。約1000本の樹木が伐採されることをはじめ、問題の多い再開発が、十分な周知もディスカッションもないまま、決定されたことに大きな驚きと疑問を覚えました。 神宮外苑再開発は、本来できないはずの地域に、制度や条例をねじ曲げてでも強引に再開発を可能にしようという、異常な手法の計画だと考えています。何よりも都民、市民の利益を優先すべき東京都が、どうしてこれほど事業者のために献身的に動くのかは大きな疑問です。歴史的価値の高い都市資産である神宮外苑に、もっと敬意を払うべきなのではと思います。 ショックを受けた私は、すぐにオンライン署名を立ち上げ、計画について住民とオープンに意見交換や議論することを求めました。 私はこのように社会にコミットすることに国籍は関係ないと思っています。「Think global, act local(グローバルに考え、ローカルに行動する)」が私の信念です。世界のどこであろうと、自分が住む愛着のある街、地域社会に問題を感じたら、情報を集め、議論し、解決に向かって貢献しようとするのは自然なことだと思っています。 日本では、なぜか環境や社会の問題について発言を控えたがる経営者もいるようですが、米国や欧州では、重要な社会問題について発言し関与することは、ビジネスリーダーとしての社会的責務だと考えられています』、「東京都の都市計画審議会が神宮外苑再開発計画を承認・・・約1000本の樹木が伐採されることをはじめ、問題の多い再開発が、十分な周知もディスカッションもないまま、決定されたことに大きな驚きと疑問を覚えました」、同感である。
・『再開発で何が失われるのか 〈低下する緑の質と環境〉  今回の計画を、事業者(三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター〈JSC〉、伊藤忠商事)や都知事は、「緑の更新」という言葉を使います。しかし、古木は不要だと切り捨て、若木に取り換えればいいという考えは、短絡的で、サステナブルな時代の感覚に合っているとはいえません。 また「開発後に緑の割合は増える」と言いますが、それは葉の密度の濃い古木と、そうではない若木や芝生を均一に扱う面積比から割り出した、巧妙に錯覚をもたらす作為的な数字といえます。 再開発されれば、若木や屋上緑化や芝生などの面積を増やした分、あたかも緑化が進んだようにみえるでしょう。しかし、実際には樹齢を重ねた多くの大木が失われることにより、都市のヒートアイランド現象の軽減に貢献する緑の体積は減り、質的には低下してしまうのです。 また、改修して保存活用可能な建物を壊して建て替えるスクラップ・アンド・ビルドは、膨大な二酸化炭素を排出することになり、脱炭素化が進む世界の潮流に全く逆行しています』、「再開発されれば、若木や屋上緑化や芝生などの面積を増やした分、あたかも緑化が進んだようにみえるでしょう。しかし、実際には樹齢を重ねた多くの大木が失われることにより、都市のヒートアイランド現象の軽減に貢献する緑の体積は減り、質的には低下してしまうのです」、「「開発後に緑の割合は増える」と言いますが、それは葉の密度の濃い古木と、そうではない若木や芝生を均一に扱う面積比から割り出した、巧妙に錯覚をもたらす作為的な数字といえます。 再開発されれば、若木や屋上緑化や芝生などの面積を増やした分、あたかも緑化が進んだようにみえるでしょう。しかし、実際には樹齢を重ねた多くの大木が失われることにより、都市のヒートアイランド現象の軽減に貢献する緑の体積は減り、質的には低下してしまうのです」、なるほど。
・『〈問われる民主性〉  過剰な高度利用による高層ビルと巨大施設の建て替えという、無謀な再開発の犠牲になるのは、樹木だけではありません。 スポーツクラスター(一帯をスポーツ施設の集積地にすること)」という目標を掲げておきながら、既存の軟式野球場、ゴルフ練習場、フットサルコート、バッティングセンターなど、一般市民が利用できる公益性の高い施設が全て廃止されるのは大きな矛盾です。 小池百合子都知事は、情報開示と民主的な都政を掲げていますが、このプロジェクトの進め方は真逆です。21年12月に開かれた住民説明会でも、一方的に計画内容の説明をした上で、計画はすでに決まったことであり、変更は認められないと告げるだけでした。十分な周知もないまま、22年2月の都市計画審議会において「議論は十分尽くされた」と採決を強行し可決。事業者ありき、再開発推進が前提の住民不在の決定でした。それから約2年がたった今も、情報の少なさ、住民や専門家の意見を顧みない決定プロセスは変わっていません。 そのため、景観・環境破壊を含め、風害、騒音、あるいは長期の工事期間中の災害時の避難対策の不備など、深刻な住民被害の問題を抱えたまま、非民主的な再開発は進んでいます』、「スポーツクラスター・・・」という目標を掲げておきながら、既存の軟式野球場、ゴルフ練習場、フットサルコート、バッティングセンターなど、一般市民が利用できる公益性の高い施設が全て廃止されるのは大きな矛盾です・・・住民説明会でも、一方的に計画内容の説明をした上で、計画はすでに決まったことであり、変更は認められないと告げるだけでした。十分な周知もないまま、22年2月の都市計画審議会において「議論は十分尽くされた」と採決を強行し可決。事業者ありき、再開発推進が前提の住民不在の決定でした・・・景観・環境破壊を含め、風害、騒音、あるいは長期の工事期間中の災害時の避難対策の不備など、深刻な住民被害の問題を抱えたまま、非民主的な再開発は進んでいます」、由々しいことだ。
・『再開発を不公平に先導する東京都の責任  小池都知事は、再開発は民間事業として進められているのであり、都として介入することはできないと言います。しかし、この再開発事業は都が発案したことに始まっています(参照:東京都都市整備局「岸記念体育会館の移転等に関する主な経緯」)。「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」にかなう市街地再開発として、都知事が施行を認可したからこそ、実施されているのです。その事実を無視し、責任から逃れようとするのは不誠実です。 東京都は、再開発事業を進めるに当たり、まずオリンピック・パラリンピック開催のための国立競技場建て替えを機に、建築物の高さ制限を、外苑一帯にまでエリアを広げ、大幅に緩和しました。そして、都が独自に作った「公園まちづくり制度」という名の「要綱」により、3.4ヘクタールの区域を都市計画公園から削除するという前代未聞の荒技を用いて、高層ビル建設の敷地を確保しました。その際、ラグビー場は「公園として利用されていないスペース」だからという理屈をつけています。その上、「再開発等促進区」という土地の高度利用を目的とした手法を駆使し、容積率を極限まで拡大して積み上げ、本来この地区には建てられないはずの超高層ビルの建設を可能にしてしまいました。 それだけではありません。 神宮外苑は創建時より、その景観や環境が保護されるべきものとして風致地区に指定されています。 しかし20年、東京都は、風致地区条例の許可権を持つ新宿区に対し、市街地再開発エリアについて最も保全の厳しい基準から一番緩い基準へと変更するよう依頼し、区議会や都市計画審議会などに諮ることなく決裁しました。これにより、樹木伐採や建築の高さ基準は、事業者にとって都合のいいように、大幅に緩和されてしまいました。 また、神宮外苑再開発の環境アセスメント(影響評価)に提出された評価書には重大な誤りや虚偽があり、正しい判断とは認められないことを、日本イコモス国内委員会など専門家が厳しく指摘してきました。 しかし、23年1月の環境アセスメントの最終プロセスにおいて、東京都は審議会委員からの懸念意見を「助言」という制限をかけて無力化しました。そして、審議会会長が「虚偽と指摘された評価書に基づいた着工届に、ゴーサインを出すことは難しい」と明言したにもかかわらず、この時点で審議を打ち切りにし、強引に施行認可をしてしまいました。このような都の横暴なやり方に対して、環境アセスメントの世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」や、国内の権威ある「日本弁護士連合会(日弁連)」からも、公式声明により非難されたことは、恥ずべき事態です。 事業者も都も、口をそろえて「法的にも、手続きにも問題はない」と言いますが、そもそも両者が結託し、事業計画に合わせてガイドラインを作り、無理やりな解釈で制度に当てはめたり、区域を削除したり、条例の方を変更したり、あるいは審議会運営を操作したりしているのです。このようにゆがめられた都市計画行政は実に不公平であり、非民主的であると言わざるを得ません』、「小池都知事は、再開発は民間事業として進められているのであり、都として介入することはできないと言います。しかし、この再開発事業は都が発案したことに始まっています・・・都知事が施行を認可したからこそ、実施されているのです。その事実を無視し、責任から逃れようとするのは不誠実です・・・オリンピック・パラリンピック開催のための国立競技場建て替えを機に、建築物の高さ制限を、外苑一帯にまでエリアを広げ、大幅に緩和しました。そして、都が独自に作った「公園まちづくり制度」という名の「要綱」により、3.4ヘクタールの区域を都市計画公園から削除するという前代未聞の荒技を用いて、高層ビル建設の敷地を確保・・・風致地区条例の許可権を持つ新宿区に対し、市街地再開発エリアについて最も保全の厳しい基準から一番緩い基準へと変更するよう依頼し、区議会や都市計画審議会などに諮ることなく決裁しました。これにより、樹木伐採や建築の高さ基準は、事業者にとって都合のいいように、大幅に緩和・・・環境アセスメントの最終プロセスにおいて、東京都は審議会委員からの懸念意見を「助言」という制限をかけて無力化しました。そして、審議会会長が「虚偽と指摘された評価書に基づいた着工届に、ゴーサインを出すことは難しい」と明言したにもかかわらず、この時点で審議を打ち切りにし、強引に施行認可をしてしまいました。このような都の横暴なやり方に対して、環境アセスメントの世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」や、国内の権威ある「日本弁護士連合会(日弁連)」からも、公式声明により非難されたことは、恥ずべき事態です」、特に「環境アセスメント」の「審議を打ち切りにし、強引に施行認可をしてしまいました」、乱暴極まりないやり方だ。
・『明治神宮への疑問、利用される「内苑の護持」  当初、最大の地権者である明治神宮をはじめとした事業者は「老朽化した神宮球場の建て替え」を再開発の主な理由としていましたが、だんだんと都知事までも口裏を合わせ「内苑の護持のため」と言い始めるようになります。 つまり、広大な内苑の維持管理費用が明治神宮の財政を圧迫し、その救済のため、より収益を上げるよう外苑の施設の更新・増設が必要だというのです。内苑を支えるため、外苑はもっと稼がなくてはならないという主張です。 しかし、一宗教法人の利益の便宜を図るために、公益を損ねるような再開発が進められていいのでしょうか。「内苑の護持」という言い分は、再開発を正当化するために利用される口実のように思えます。 最近の報道で、今から20年も前の03年に、明治神宮の依頼を受け、都市計画や造園学の専門家がまとめた「神宮外苑の整備構想」があったことが分かりました。それは創建の理念を尊重した「外苑の環境を壊さないよう、神宮の維持のための必要最小限の計画」であり、造営当時のように住民から行政までを巻き込んで事業を進める民主的な構想でした。しかし、この構想は当時のゼネコンやデベロッパー、都などに説明したものの、賛同者が集まらず実現には至りませんでした。 その後、オリンピック・パラリンピック招致を機に、現在のデベロッパー主導の大規模再開発計画が浮上したのですが、明治神宮がどのようにして、計画に同意したのかは明らかではありません。 たしかに内苑の維持は重要なことですが、そのために外苑を犠牲にするような現在の計画が唯一の選択肢だとは思えません。03年の構想がそうであったように、もっと環境に配慮した計画に見直すこともできるのではないでしょうか。 あるいは、内苑の社殿を囲む森は神域として明治神宮が守り、宝物殿前の風景式庭園などは都市公園として国や都などが公的に管理することで、経済的負担を軽減することも可能だと思います』、「内苑の維持は重要なことですが、そのために外苑を犠牲にするような現在の計画が唯一の選択肢だとは思えません。03年の構想がそうであったように、もっと環境に配慮した計画に見直すこともできるのではないでしょうか」、なるほど。
・『緑の更新でも老朽化でもない再開発の理由  樹木伐採に対する批判を受け、再開発は「緑の更新に必要」「木を切らずにこの計画は成り立たない」と明治神宮は説明しています。しかし、それならば、木を切らずにできる計画に見直せばいいのではないでしょうか。 野球場とラグビー場の用地を入れ替えず、そして高層ビルを建設しなければ、大量の樹木伐採をすることなく景観も破壊されず、周辺住民の被害も軽減するのです。 建築の専門家は、2つのスタジアムの改修による保存活用は可能であると指摘しています。日本イコモス国内委員会も、新建築家技術者集団も、樹木伐採を必要としない改修による代替案を出していますが、受け入れたくない事業者は、それを無視し続けています。 実際に、神宮球場より古い甲子園球場は、シーズンオフを利用し試合を継続しながら改修工事を行い、次の100年に向かって見事に再生を果たしています。なぜ神宮球場はそうしないのでしょう。なぜ現在の計画が唯一無二のプランであると言い張るのでしょうか。 事業者は、表向きは「老朽化」による施設の建て替え、その際の「競技の継続性」を理由に、野球場とラグビー場の用地を入れ替えて新設するのだとしていますが、ではなぜ「3棟もの超高層ビル」の建設が必要なのかという疑問には答えていません。 再開発の真の狙いが、都市計画公園の中に無理やりスペースを確保し、異常なまでに容積率を拡大した高層ビル建設によってもたらされる莫大(ばくだい)な利益にあるとしか思えません』、「野球場とラグビー場の用地を入れ替えず、そして高層ビルを建設しなければ、大量の樹木伐採をすることなく景観も破壊されず、周辺住民の被害も軽減するのです。 建築の専門家は、2つのスタジアムの改修による保存活用は可能であると指摘しています。日本イコモス国内委員会も、新建築家技術者集団も、樹木伐採を必要としない改修による代替案を出していますが、受け入れたくない事業者は、それを無視し続けています。 実際に、神宮球場より古い甲子園球場は、シーズンオフを利用し試合を継続しながら改修工事を行い、次の100年に向かって見事に再生を果たしています。なぜ神宮球場はそうしないのでしょう・・・ではなぜ「3棟もの超高層ビル」の建設が必要なのかという疑問には答えていません。 再開発の真の狙いが、都市計画公園の中に無理やりスペースを確保し、異常なまでに容積率を拡大した高層ビル建設によってもたらされる莫大(ばくだい)な利益にあるとしか思えません」、なるほど。
・『一人の市民として声を上げていく  この頃よく「環境アクティビストになりましたね」といわれますが、自分では「民主主義アクティビスト」だと感じています。 この活動を通じて、神宮外苑を守りたいという多くの人たちとつながり、情報を共有して知れば知るほど疑問は拡大していくばかりです。開発の環境への悪影響は言うまでもなく、計画の進め方についても多くの問題があること、その根本的な問題は民主主義の欠如だと気付きました。 そして、これは神宮外苑だけの問題ではなく、都内や日本中の多くの公園や緑地が開発事業によって脅かされている現実を知りました。皆同じように企業の利益、政治家の利権、それに癒着する行政が一体となって、公益性や民主性をないがしろにし、市民が大切にしてきた場所や景観を奪い、結果として環境へのダメージや樹木伐採という形で顕在化しています。 神宮外苑を巡る議論は、再開発による環境破壊の典型として広がりを見せ、過剰な再開発に抵抗する市民にとって励みになっているといわれています。コモンスペースである公園や街の景観が、市民が皆で考える課題であることは、もっと注目されるべきです。これからも、一人の市民として、多くの同じ思いの人たちと共に声を上げていきたいと思います』、「神宮外苑を巡る議論は、再開発による環境破壊の典型として広がりを見せ、過剰な再開発に抵抗する市民にとって励みになっているといわれています。コモンスペースである公園や街の景観が、市民が皆で考える課題であることは、もっと注目されるべきです。これからも、一人の市民として、多くの同じ思いの人たちと共に声を上げていきたいと思います」、大いに頑張ってもらいたいものだ。

次に、4月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「「小池百合子首相」誕生の可能性はまだある!政治学者が本気で期待するワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341830
・『政治資金パーティーを巡る「裏金問題」を受けて、安倍派と二階派の議員に処分が下された。その中には、小池百合子東京都知事の「国政復帰の後ろ盾」と目された大物議員も含まれる。これによって、小池知事の自民党復帰や総裁選出馬は先送りになったと見る向きは多い。だが、本当にそうなのか――。政治学者が大胆な説を展開する』、興味深そうだ。
・『裏金議員の処分は不公平!? 岸田首相に自民党内から批判の声  自民党は4月4日、政治資金パーティーを巡る「裏金問題」を受けて、安倍派と二階派の議員ら39人を処分した。このうち、安倍派の座長を務めていた塩谷立(しおのやりゅう)元文部科学相と、安倍派で参議院側のトップだった世耕弘成前参院幹事長には「離党勧告」が出された。 このほか、下村博文元政務調査会長と西村康稔前経済産業相には「1年間の党員資格停止処分」が科された。ただし、2018年からの5年間において、収支報告書への不記載額が「3526万円」と最も多かった二階俊博元幹事長は処分の対象外となった。二階氏が次の衆議院選挙に立候補しない考えを表明し、事実上の「政界引退」宣言をしたためである。 一方、処分の対象となった39人には岸田派議員が含まれず、岸田文雄首相「本人」への処分もなかった。党内から「不公平だ」との声が上がったが、岸田首相はそうした批判を気にしていないようだ。国民からの支持率も低下しているものの、今の岸田首相には、上記の処分を断行できるほど強い権力・権限が集中しているといえる。 裏金問題が発覚する前の岸田内閣では、岸田派・安倍派・麻生派・茂木派が党内の主流派を形成していた。そして、岸田派を除く3つの派閥が首相の権力・権限を牽制(けんせい)および制限してきた(本連載第286回)。だが現在は、その派閥のほとんどが事実上消滅した。 麻生派だけは存続を決めたが、この派閥は岸田派と同じく、故・池田勇人元首相が立ち上げた池田派(旧宏池会)を源流としている。このことから、解散した岸田派が麻生派を頼って合流し、旧宏池会を復活させるのではないかという「大宏池会構想」がまことしやかにささやかれている。現段階ではあくまで臆測にすぎないが、実現した場合は、岸田首相の強力な後ろ盾となる可能性もある。 そのため厳密に言えば、現在の麻生派は「岸田首相の強力な牽制役」だとは言い切れない。こうした要因によって、今の岸田首相にはヒト・モノ・カネが集中している。結果、岸田首相の支持率は低下しているにもかかわらず、なぜか権力が強まっている。この不思議な状況を、本連載では「低支持率首相による独裁体制」と呼んでいる(第349回)』、「現在の麻生派は「岸田首相の強力な牽制役」だとは言い切れない。こうした要因によって、今の岸田首相にはヒト・モノ・カネが集中している。結果、岸田首相の支持率は低下しているにもかかわらず、なぜか権力が強まっている」、確かに不思議だ。
・『「首相交代」を阻止するべく強権振るう岸田首相  岸田首相の「強権」は今、9月の自民党総裁選での再選に向けた、自らの権力基盤の強化に向けて振るわれている。 従来の総裁選では、不人気な首相がその座を降りて新たなリーダーが就任すると、まるで政権交代が起きたかのようなフレッシュな印象を国民に与えた。この「疑似政権交代」は、旧体制での閉塞感を忘れさせる「最終兵器」として機能してきた(第285回)。 昨今の岸田首相は、この「疑似政権交代」が起きて新たなリーダーが誕生しないよう、着々と手を打っている。 最大派閥・安倍派は解散に追い込まれ、幹部はことごとく処分された。「ポスト岸田」と目されていた西村康稔前経済産業相には1年間の党員資格停止処分が下された。同じく萩生田光一前政調会長は1年間にわたって「党の役職停止」となった。 高市早苗経済安全保障担当相は無派閥であり、裏金とは無縁だとみられる。しかし、彼女を支持する議員の多くは、安倍派を中核とする保守派だ。 高市氏の支持者の中には、何らかの処分を受けた者もいる。処分の対象となった議員は、関係各所への説明・謝罪に追われる。次の選挙で落選の危機にあり、地元での政治活動に専念せねばならない。 当然、次の総裁選で誰を担ぐかを考える余裕はない。高市氏は総裁選出馬への意欲を隠さないが、「みこしを担ぐ人」が減ってしまうと総裁を目指すのは難しくなる。 また、現在は自民党の外にいる「最強の総裁候補」こと小池百合子東京都知事も、その動向が不透明になっている。詳しくは後述するが、その裏側でも岸田首相が「強権」を振るった可能性がある。 小池知事を巡っては、近く国政に復帰して自民党に入り、「日本初の女性首相」の座に就くための最後の挑戦として、総裁選に打って出るのではないかとうわさされてきた。 その挑戦の一歩目として、小池知事が衆議院東京15区補選(4月16日告示・28日投開票)に出馬する可能性が取り沙汰されてきた。この選挙区は、かつて自民党議員が汚職で二度辞職したことがあり、「自民党政治の腐敗の象徴」として注目を集めてきたエリアだ。 ところが、この衆議院東京15区補選に、作家で政治団体「ファーストの会」(*)副代表の乙武洋匡氏が出馬表明した。幅広く支持を得るため無所属として出馬するが、元々は小池知事が、ファーストの会の公認候補として擁立するために、乙武氏を副代表に迎えた経緯がある。小池知事の出馬の可能性は消滅し、国政復帰も断念したとみられている。 ※小池知事自身が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が、国政進出に向けて立ち上げた政治団体』、「衆議院東京15区補選に、作家で政治団体「ファーストの会」(*)副代表の乙武洋匡氏が出馬表明・・・小池知事の出馬の可能性は消滅し、国政復帰も断念したとみられている」、なるほど。
・『小池知事が出馬断念の裏で岸田首相が暗躍!?  小池知事はかねて、今回処分された萩生田前政調会長と親密な関係を築いてきた。今年1月には、萩生田氏のお膝元である東京都八王子市の市長選に小池知事が駆け付け、自民党推薦の初宿(しやけ)和夫氏を応援したこともある。 すでに萩生田氏が裏金問題の渦中にあったことから、選挙は異例の大苦戦となっていた。そこに小池知事が応援に入り、形勢を逆転させて初宿氏は辛勝できた。小池知事は萩生田氏の窮地を救い、恩を売った形となった。 そのため、小池知事が国政復帰して首相を目指すならば、萩生田前政調会長を中心に安倍派が担ぐ形になると思われた。しかし「派閥解散」によって、このシナリオは難しくなった。 萩生田氏だけでなく、事実上の政界引退を発表した二階氏も、小池知事とは親しい間柄にある。小池知事が政界入りした90年代から、両者は新進党、保守党、そして自民党で行動を共にしてきた。小池知事が自民党とたもとを分かっても、その関係は続いてきた。 したがって、二階氏が小池知事の「最後の挑戦」の後ろ盾になる可能性もあった。しかし、二階氏に政界引退によって、そのシナリオも雲散霧消した。 一部報道によると、その背後で“暗躍”していたのが岸田首相だという。 もともと二階氏は、自身の三男を後継者とし、和歌山の選挙区(衆議院新2区)を継がせるつもりでいた。しかし、冒頭で触れた世耕前参院幹事長は、将来の首相就任を目指していることから、二階氏の引退後は衆議院新2区を引き継いで衆議院へのくら替えを狙っていたとされる。衆議院選挙区を巡って、二階・世耕の両氏は「戦争状態」にあった。 そこに、岸田首相が「裏取引」を持ちかけたというのだ。二階氏が政界を引退すれば、裏金問題で処分はしない。その選挙区の後継を三男とする。世耕氏には「離党勧告」を出し、衆議院にくら替えする芽を摘む。さらに、世耕氏の参議院選挙区には、二階氏の長男を公認候補として擁立することを検討する――。二階氏はその取引を受けたというのだ。 (参考記事)・息子二人を国会議員に…二階元幹事長「引退会見」のウラにあった、岸田首相との「裏取引」の中身(『現代ビジネス』2024年4月2日掲載) ・絶体絶命!世耕弘成氏をさらに追い込む二階俊博氏の「息子2人を国会議員に」構想…関係者は「好き勝手にさせない」と激昂(『SmartFLASH』2024年4月4日掲載) 結果、岸田首相は「強権」を牽制し得る二階氏と世耕氏を自民党から追い出した。それだけでなく、最大のライバルとなり得る小池知事の国政復帰の芽も摘んだ。「一石三鳥」の効果を得たといえる。) 今後も岸田首相は、強力な「人事権」「公認権」「資金配分権」を行使して政敵をつぶし、自らの権力基盤を盤石にしていくだろう。 9月の自民党総裁選には、石破茂元幹事長、野田聖子元総務相など、実績ある政治家が出馬を検討すると思われる。しかし、岸田首相に権力・権限が集中し、派閥がなくなった今、立候補に必要な「20人の推薦人」を集めるのは大物政治家といえども至難の業だといえる。 総裁選で対立候補を推した議員は、岸田首相の権力・権限によって徹底的に干されるかもしれない。また、岸田首相は国民からの支持率がどんなに下がっても、心が折れて退陣することはないだろう。絶対に延命して、9月の総裁選で勝利するために、どんなことでもする。それが「低支持率首相による独裁体制」による、当面の目的である』、「萩生田氏が裏金問題の渦中にあったことから、選挙は異例の大苦戦となっていた。そこに小池知事が応援に入り、形勢を逆転させて初宿氏は辛勝できた。小池知事は萩生田氏の窮地を救い、恩を売った形となった・・・二階氏が小池知事の「最後の挑戦」の後ろ盾になる可能性もあった。しかし、二階氏に政界引退によって、そのシナリオも雲散霧消した。 一部報道によると、その背後で“暗躍”していたのが岸田首相だという・・・今後も岸田首相は、強力な「人事権」「公認権」「資金配分権」を行使して政敵をつぶし、自らの権力基盤を盤石にしていくだろう」、「小池知事」もなかなかの策士のようだ。
・『政治学者が大胆提言! 小池都知事が首相になるための「奥の手」  小池知事は今後、こうした状況を黙って見ているのだろうか――。あくまで筆者による仮説だが、本稿では彼女の将来について、大胆なプランを提言してみたい。 筆者を除いたほとんどの識者が、自民党に戻る可能性をつぶされた小池知事の国政復帰は「ない」とみているようだ。だが、本当にそうなのか。 小池知事が立憲民主党や日本維新の会をはじめとする野党を取りまとめ、政権交代を目指しても面白いのではないか。掲げる公約はもちろん、自民党の「中央集権」に対抗した「地方主権」である。「希望の党」を率いて敗れた17年の総選挙のリベンジを目指すのだ(第169回)。 改革と地方主権を掲げる馬場伸幸・日本維新の会代表。消費増税を封印し、安全保障政策などで現実路線を志向する泉健太・立憲民主党代表。「中道路線」を貫く玉木雄一郎・国民民主党代表。そして、かつて民進党を希望の党に合流させて政権交代を狙った前原誠司氏(新党「教育無償化を実現する会」代表)。 彼らには過去のさまざまな因縁がある。それらを乗り越えて、「シン・野党連合」といえる一大勢力をまとめ上げる才覚を持つのは小池知事ではないか。 小池知事は、日本新党からの政界参入、自民党入り、都知事への転身、希望の党を結成しての総選挙挑戦など、常識外れな行動で数々の修羅場を生き抜いてきた人物だ(第137回)。 それだけの実績と経験を持つ人物が、最後にして最大の目標である「日本初の女性首相」になる上で、自民党に担がれる必要はどこにあるのか。諦めるのはまだ早い。それよりも「シン・野党連合」をまとめ切って自民党を倒すという、小池知事らしい常識外れな挑戦に期待したい』、「シン・野党連合」といえる一大勢力をまとめ上げる才覚を持つのは小池知事ではないか」、しかし、これは、第三の記事のように東京15区の補欠選挙で担いだ候補が予想外の不人気だったことで、実現の可能性は薄らいだ。

第三に、4月12日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの宮原 健太氏による「女帝・小池百合子氏が大誤算で窮地へ…補選に向けて発覚した「驚きの数字」 まさかこれほどまでとは…」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127723?page=1&imp=0
・『きわめて厳しい数字  女帝、小池百合子都知事の思惑は大きく外れてしまったのかもしれない。 4月28日に行われる衆議院の3つの補欠選挙のうちの1つ、東京15区補選に満を持して作家の乙武洋匡氏を擁立した小池氏だが、与野党各党の情勢調査で既に厳しい数字が叩きつけられている。 都知事から国政に戻ってくることも噂され、補選はその足掛かりとも見られていたが、元側近による文藝春秋への告発によって学歴詐称疑惑も再燃しており、早くも窮地に立たされている』、興味深そうだ。
・『「乙武氏にここまで悪い数字が出るとは」  永田町に出回っている情勢調査の結果を見て、自民党関係者は絶句した。 日本維新の会が実施したとされる東京15区補選の情勢調査によると、立憲民主党の酒井菜摘氏が15.6ポイントで首位となり、維新の金澤結衣氏が次点の10.2ポイント、日本保守党の飯山陽氏が9.2ポイント、共産党の小堤東氏が7.8ポイントと続き、乙武洋匡氏は7.5ポイントと遅れをとっている。 すでに共産党は小堤氏の出馬を取り下げ、酒井氏を支援することを表明しており、酒井氏のポイントはさらに上積みされていく可能性が高い。 また、自民が実施したとされる情勢調査でも、立憲・酒井氏18ポイント、維新・金澤氏15ポイント、乙武氏11ポイントとなっており、乙武氏の劣勢が伝えられている。 そもそも東京15区補選は、昨年4月に実施された江東区長選で自民の柿沢未途元衆院議員が選挙買収を行い、公職選挙法違反の罪で逮捕、起訴(すでに懲役2年、執行猶予5年の有罪判決が確定)された「政治とカネ」の問題が発端になっている。 裏金問題が自民を揺るがす大逆風の中で、同党は候補者擁立もままならない状態だったが、小池氏は乙武氏の擁立を内々に自民幹部に伝達。選挙に強い小池氏が、乙武氏という知名度抜群の候補を立てるという「助け舟」に自民は飛びつき、推薦を出す方向で調整していた。 しかし、乙武氏は自民の裏金問題に関する悪評を懸念してか、出馬会見で「政策を見て推薦したいという思いをいただけるのであれば1つ1つの政党とお話をしたいが、現時点では私自身から推薦依頼を出している事実はない」と発言。 一方の自民も、予想以上に伸び悩んでいる乙武氏の情勢を見て「惨敗するなら推薦を出さないほうがいいのではないか」(関係者)という声が出ている』、もともと女性問題を抱えていた「乙武氏」を担ぎ上げたことが問題だ。
・『構想はすでに瓦解  もともと厳しい情勢になる懸念はあった。 2016年参院選では自民党が乙武氏を擁立する予定だったが、不倫などの女性問題が週刊新潮で報じられて出馬を断念。 乙武氏は2022年参院選にも、無所属で東京選挙区(定数6)に出馬したが、9位となり及ばなかった。 それでも都内の選挙で圧倒的な強さを見せる小池氏がバックアップする体制に自民は勝機を見出していたが、創価学会女性部(旧婦人部)の影響が大きい公明党は女性問題に難色を示し、都民ファーストの会と連携してきた国民民主党も「自民党が推薦を出すような人は応援できない」(榛葉賀津也幹事長)と述べるなど、思い描いていた構想はすでに瓦解しつつある。 そうした中でさらに小池氏を追い込んでいるのが、都民ファーストの会で事務総長をしていた小池氏の元側近、小島敏郎氏が文藝春秋に寄せた「告発」だ。 2020年に小池氏の「カイロ大学卒業」に関する学歴詐称疑惑に迫った『女帝 小池百合子』(ノンフィクション作家・石井妙子著)が発売されたのに対して、駐日エジプト大使館がFacebookに小池氏の卒業を認めるカイロ大学声明を掲載して沈静化を図ったが、この声明は小池氏の依頼によってジャーナリストが執筆したという内容になっている。 学歴詐称を払拭するための声明に小池氏自身が深く関わっていたことを示すもので、その正当性は大きく揺らいでいる。 乙武氏の補選勝利を足掛かりに国政に戻り、総理大臣の座を狙うのではないかとまで言われていた小池氏だが、情勢調査による厳しい数字、再燃する学歴詐称疑惑で状況は一変してしまったと言えよう。 候補者が乱立して混戦模様の東京15区補選。そこに小池氏や自民の思惑、疑惑が重なって、より状況は混沌としている』、「乙武氏の補選勝利を足掛かりに国政に戻り、総理大臣の座を狙うのではないかとまで言われていた小池氏だが、情勢調査による厳しい数字、再燃する学歴詐称疑惑で状況は一変してしまったと言えよう。 候補者が乱立して混戦模様の東京15区補選。そこに小池氏や自民の思惑、疑惑が重なって、より状況は混沌としている」、やはり「小池」氏自身が立候補していれば、当選し、総理大臣になる可能性もあったが、「乙武氏」を持ち出したことで、致命的なミズを犯したようだ。
タグ:「東京都の都市計画審議会が神宮外苑再開発計画を承認・・・約1000本の樹木が伐採されることをはじめ、問題の多い再開発が、十分な周知もディスカッションもないまま、決定されたことに大きな驚きと疑問を覚えました」、同感である。 ロッシェル・カップ氏による「神宮外苑の再開発、日本人ではない私が懸念する理由…無視できない疑念と横暴の数々」 ダイヤモンド・オンライン (その10)(神宮外苑の再開発 日本人ではない私が懸念する理由…無視できない疑念と横暴の数々、「小池百合子首相」誕生の可能性はまだある!政治学者が本気で期待するワケ、女帝・小池百合子氏が大誤算で窮地へ…補選に向けて発覚した「驚きの数字」 まさかこれほどまでとは…) 小池都知事問題 「「開発後に緑の割合は増える」と言いますが、それは葉の密度の濃い古木と、そうではない若木や芝生を均一に扱う面積比から割り出した、巧妙に錯覚をもたらす作為的な数字といえます。 再開発されれば、若木や屋上緑化や芝生などの面積を増やした分、あたかも緑化が進んだようにみえるでしょう。しかし、実際には樹齢を重ねた多くの大木が失われることにより、都市のヒートアイランド現象の軽減に貢献する緑の体積は減り、質的には低下してしまうのです」、なるほど。 「再開発されれば、若木や屋上緑化や芝生などの面積を増やした分、あたかも緑化が進んだようにみえるでしょう。しかし、実際には樹齢を重ねた多くの大木が失われることにより、都市のヒートアイランド現象の軽減に貢献する緑の体積は減り、質的には低下してしまうのです」、 上久保誠人氏による「「小池百合子首相」誕生の可能性はまだある!政治学者が本気で期待するワケ」 そして、審議会会長が「虚偽と指摘された評価書に基づいた着工届に、ゴーサインを出すことは難しい」と明言したにもかかわらず、この時点で審議を打ち切りにし、強引に施行認可をしてしまいました。このような都の横暴なやり方に対して、環境アセスメントの世界的な学会「国際影響評価学会(IAIA)」や、国内の権威ある「日本弁護士連合会(日弁連)」からも、公式声明により非難されたことは、恥ずべき事態です」、特に「環境アセスメント」の「審議を打ち切りにし、強引に施行認可をしてしまいました」、乱暴極まりないやり方だ。 都市計画公園から削除するという前代未聞の荒技を用いて、高層ビル建設の敷地を確保・・・風致地区条例の許可権を持つ新宿区に対し、市街地再開発エリアについて最も保全の厳しい基準から一番緩い基準へと変更するよう依頼し、区議会や都市計画審議会などに諮ることなく決裁しました。これにより、樹木伐採や建築の高さ基準は、事業者にとって都合のいいように、大幅に緩和・・・環境アセスメントの最終プロセスにおいて、東京都は審議会委員からの懸念意見を「助言」という制限をかけて無力化しました。 「小池都知事は、再開発は民間事業として進められているのであり、都として介入することはできないと言います。しかし、この再開発事業は都が発案したことに始まっています・・・都知事が施行を認可したからこそ、実施されているのです。その事実を無視し、責任から逃れようとするのは不誠実です・・・オリンピック・パラリンピック開催のための国立競技場建て替えを機に、建築物の高さ制限を、外苑一帯にまでエリアを広げ、大幅に緩和しました。そして、都が独自に作った「公園まちづくり制度」という名の「要綱」により、3.4ヘクタールの区域を 「衆議院東京15区補選に、作家で政治団体「ファーストの会」(*)副代表の乙武洋匡氏が出馬表明・・・小池知事の出馬の可能性は消滅し、国政復帰も断念したとみられている」、なるほど。 「現在の麻生派は「岸田首相の強力な牽制役」だとは言い切れない。こうした要因によって、今の岸田首相にはヒト・モノ・カネが集中している。結果、岸田首相の支持率は低下しているにもかかわらず、なぜか権力が強まっている」、確かに不思議だ。 景観・環境破壊を含め、風害、騒音、あるいは長期の工事期間中の災害時の避難対策の不備など、深刻な住民被害の問題を抱えたまま、非民主的な再開発は進んでいます」、由々しいことだ。 「スポーツクラスター・・・」という目標を掲げておきながら、既存の軟式野球場、ゴルフ練習場、フットサルコート、バッティングセンターなど、一般市民が利用できる公益性の高い施設が全て廃止されるのは大きな矛盾です・・・住民説明会でも、一方的に計画内容の説明をした上で、計画はすでに決まったことであり、変更は認められないと告げるだけでした。十分な周知もないまま、22年2月の都市計画審議会において「議論は十分尽くされた」と採決を強行し可決。事業者ありき、再開発推進が前提の住民不在の決定でした・・・ 「神宮外苑を巡る議論は、再開発による環境破壊の典型として広がりを見せ、過剰な再開発に抵抗する市民にとって励みになっているといわれています。コモンスペースである公園や街の景観が、市民が皆で考える課題であることは、もっと注目されるべきです。これからも、一人の市民として、多くの同じ思いの人たちと共に声を上げていきたいと思います」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 実際に、神宮球場より古い甲子園球場は、シーズンオフを利用し試合を継続しながら改修工事を行い、次の100年に向かって見事に再生を果たしています。なぜ神宮球場はそうしないのでしょう・・・ではなぜ「3棟もの超高層ビル」の建設が必要なのかという疑問には答えていません。 再開発の真の狙いが、都市計画公園の中に無理やりスペースを確保し、異常なまでに容積率を拡大した高層ビル建設によってもたらされる莫大(ばくだい)な利益にあるとしか思えません」、なるほど。 「野球場とラグビー場の用地を入れ替えず、そして高層ビルを建設しなければ、大量の樹木伐採をすることなく景観も破壊されず、周辺住民の被害も軽減するのです。 建築の専門家は、2つのスタジアムの改修による保存活用は可能であると指摘しています。日本イコモス国内委員会も、新建築家技術者集団も、樹木伐採を必要としない改修による代替案を出していますが、受け入れたくない事業者は、それを無視し続けています。 「内苑の維持は重要なことですが、そのために外苑を犠牲にするような現在の計画が唯一の選択肢だとは思えません。03年の構想がそうであったように、もっと環境に配慮した計画に見直すこともできるのではないでしょうか」、なるほど。 一部報道によると、その背後で“暗躍”していたのが岸田首相だという・・・今後も岸田首相は、強力な「人事権」「公認権」「資金配分権」を行使して政敵をつぶし、自らの権力基盤を盤石にしていくだろう」、「小池知事」もなかなかの策士のようだ。 「萩生田氏が裏金問題の渦中にあったことから、選挙は異例の大苦戦となっていた。そこに小池知事が応援に入り、形勢を逆転させて初宿氏は辛勝できた。小池知事は萩生田氏の窮地を救い、恩を売った形となった・・・二階氏が小池知事の「最後の挑戦」の後ろ盾になる可能性もあった。しかし、二階氏に政界引退によって、そのシナリオも雲散霧消した。 「乙武氏の補選勝利を足掛かりに国政に戻り、総理大臣の座を狙うのではないかとまで言われていた小池氏だが、情勢調査による厳しい数字、再燃する学歴詐称疑惑で状況は一変してしまったと言えよう。 候補者が乱立して混戦模様の東京15区補選。そこに小池氏や自民の思惑、疑惑が重なって、より状況は混沌としている」、やはり「小池」氏自身が立候補していれば、当選し、総理大臣になる可能性もあったが、「乙武氏」を持ち出したことで、致命的なミズを犯したようだ。 もともと女性問題を抱えていた「乙武氏」を担ぎ上げたことが問題だ。 宮原 健太氏による「女帝・小池百合子氏が大誤算で窮地へ…補選に向けて発覚した「驚きの数字」 まさかこれほどまでとは…」 現代ビジネス 「シン・野党連合」といえる一大勢力をまとめ上げる才覚を持つのは小池知事ではないか」、しかし、これは、第三の記事のように東京15区の補欠選挙で担いだ候補が予想外の不人気だったことで、実現の可能性は薄らいだ。
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M&A(一般)(その3)(任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ、ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける、「法律違反」「異常なやり方」M&Aで急成長する企業の“トップ解任騒動”の全内幕!) [企業経営]

M&A(一般)については、2021年12月20日に取上げた。今日は、(その3)(任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ、ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける、「法律違反」「異常なやり方」M&Aで急成長する企業の“トップ解任騒動”の全内幕!)である。

先ずは、昨年6月6日付け東洋経済オンライン「任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677008
・『中堅ゼネコンの株式を巡る攻防が、一段と激しくなってきた。 海洋土木(マリコン)大手の東洋建設は5月24日、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が東洋建設に対して行っていたTOB(株式公開買い付け)提案に反対することを発表した。取締役会の全員一致で反対することを決めた。 同時に、社内取締役2人、社外取締役7人の計9人の選任を求めるYFOによる株主提案に反対することも決定した。 東洋建設はどちらの提案を受けるよりも、今年3月に策定した2027年度を最終年度とする新中期経営計画を遂行することこそが、「当社の企業価値や株主の共同利益の最大化につながる」とした。また、YFOが提示している公開買い付け価格1000円についても、「プレミアムはわずか1.5~3.8%に過ぎず、当社の本源的価値を反映した価格とは言えない(1000円の価格は安すぎる)」とした』、「YFOが東洋建設に対して行っていたTOB提案」、「社内取締役2人、社外取締役7人の計9人の選任を求めるYFOによる株主提案」、に「反対」、なるほど。
・『YFO「完全な二枚舌だ」  東洋建設の時田学執行役員は、「YFOの企業価値向上策を遂行しても当社の企業価値は向上しない。経営の基盤が崩壊し、受注活動に悪影響を与える」と語る。 一方、YFOの関係者は、東洋建設の決定に不満を漏らす。「完全な二枚舌だ。当初は『1000円という価格の根拠がわからない。そこまでの株価にはいかない』(1000円の価格は高い)と言っていたはず」。「協議の当初から、経営基盤の崩壊論を展開していた。あたまからそれ(反対)ありきで動いていた」。 東洋建設の株価については、1年前の2022年5月31日時点では833円(終値)だったが、今年5月31日は985円(同)をつけている。洋上風力発電事業に本格参入するなど骨太の方針を打ち出した新中期経営計画の内容や、2023年度から2025年度の配当性向を100%(下限50円)とする株主還元策を掲げたことが、市場から評価された。 YFOによる東洋建設の保有株式が27%を超過し、YFOが東洋建設に対してTOBを提案した2022年4月以降、YFOと東洋建設は荒々しいやりとりを繰り広げてきた。どちらかというと、東洋建設はYFO側の話を聞くことに終始する、受け身一辺倒だったと言える。 ところが、今年3月の新中期経営計画発表時に「(経営の姿勢を)守りから攻めへ転換する」(時田執行役員)と宣言すると同時に、YFOへ反撃の姿勢をみせるようになった』、「東洋建設はYFO側の話を聞くことに終始する、受け身一辺倒だったと言える。 ところが、今年3月の新中期経営計画発表時に「(経営の姿勢を)守りから攻めへ転換する」・・・と宣言すると同時に、YFOへ反撃の姿勢をみせるようになった」、なるほど。
・『反対表明を冷静に受け止めるYFO  YFOも受けて立つ。「東洋建設の現取締役会のガバナンスが機能していないことを顕著に示すもの」。YFOは5月25日付のリリースで、攻めに転じた東洋建設の反対表明を批判した。 しかし、攻撃的な言葉とは裏腹に、YFO側は東洋建設の反対表明については、冷静に受け止めている。「反対表明は想定の範囲内。賛同表明を出すとは、まったく考えていなかった」(YFO関係者)。 むしろ、YFO側が驚いたのは、東洋建設が反対表明と同じ5月24日に発表した新しい経営体制への移行だ。東洋建設は新役員候補案として社内取締役の5人、社外取締役6人を掲げた。土木畑の長い大林東壽氏(はるひさ、取締役・専務執行役員)と、建築分野を歩んできた平田浩美氏(取締役・執行役員副社長)を新任の代表取締役にするとした。 加えて、現任の武澤恭司社長と藪下貴弘専務執行役員の代表取締役2人が退任することも発表した(それぞれ相談役、顧問に就任予定)。武澤社長と藪下専務は東洋建設のツートップであり、YFOとの協議も両者が前面に出て対応してきた。 「この人事案には意外性があった。東洋建設は現体制のままで中期戦略を進めるのか、新体制で望むのか、どちらを選択するのか注視していたが、後者を選択した。特に、代表取締役2人が同時交代することは異例で、意外だった」と、YFO関係者は語る。 同YFO関係者は、「東洋建設は(6月27日に予定される)定時株主総会で、当方の株主提案に対する票読みが難しいとみて、代表取締役2人の退任を発表したのではないか」といぶかる。) この見方に対して、東洋建設は「(武澤社長らの退任は)既定路線だった」(時田執行役員)と強調する。武澤社長は2014年4月に就任して以降、9年にわたり経営トップを務めてきた。 東洋建設は不動産開発事業に失敗し、債務免除を受け、2003年から前田建設工業の傘下で経営再建を図ってきた。武澤社長はその経営改革のまさに牽引者だった。「中興の祖と言ってもおかしくない」(別の東洋建設関係者)。 5月24日に行われた社長交代の記者会見で、武澤社長は次のように語った。 「9年間、経営基盤の強化に取り組んだ。社長就任当初は存続の危機だった。純資産200億円を上回るかどうか厳しい状況で、信用力が低下し、民間工事の受注も厳しかった。そこから、社員の頑張りもあり、収益を上げ、純資産を積み上げることができた。前2023年3月期末は純資産が700億円を超えた。立派な数字になったなと思う」 記者は会見を終えたばかりの武澤社長に近づき、「続投は考えなかったのか」と質問した。武澤社長は「いやいや」と首を横に振りながら、こう語った。「私は守りを託された。それを成し遂げたので、(攻めに転じる)いまがいいタイミングだ」。 この人事案にどのような真相があるかは不明だ。だが、昨年12月にトップ会談が決裂して以降、協議の場が持たれていないYFOと東洋建設の冷え切った関係に、何らかの変化を与える可能性はある。「役員が新しいメンバーに変わることもあり、(こちらからYFOに)対話を再開するメッセージを出していくのは大事なこと」と、東洋建設の時田執行役員は話す』、「現任の武澤恭司社長と藪下貴弘専務執行役員の代表取締役2人が退任することも発表・・・特に、代表取締役2人が同時交代することは異例で、意外だった」とYFO関係者は語る・・・東洋建設は不動産開発事業に失敗し、債務免除を受け、2003年から前田建設工業の傘下で経営再建を図ってきた。武澤社長はその経営改革のまさに牽引者だった・・・社長就任当初は存続の危機だった。純資産200億円を上回るかどうか厳しい状況で、信用力が低下し、民間工事の受注も厳しかった。そこから、社員の頑張りもあり、収益を上げ、純資産を積み上げることができた。前2023年3月期末は純資産が700億円を超えた。立派な数字になったなと思う」、確かに再建を果たしたようだ。
・『株式を追加取得する可能性も?  1年以上も続いているYFOと東洋建設の株式攻防戦は、今後どういう展開を見せるのか。 YFOは5月24日に、別のリリースも出している。それによると、東洋建設の同意を得ずに東洋建設株式を追加取得しないことを誓約していたが、5月24日までとしていた誓約期限を延長しない、つまり今後は「東洋建設の株式を買い増す可能性もある」という。 ただ、市場の混乱などを避けるために、保有株式が3分の1を超えないようにし、かつ追加の買い付け価格は提示するTOB価格の1000円を超えないようにする、としている。 上記のリリース内容やこれまでの経緯からして、YFOが強引に会社を“乗っ取る”ような行動に出ることは考えにくい。 当面の焦点はやはり、6月27日に予定されている定時株主総会だ。 東洋建設が提案する新役員案について、YFO関係者は次のように明かす。「大林氏や平田氏といった、土木と建築という事業柱のバックグラウンドがある方については、(YFO側は)反対しないだろう。ただ、スキルセットを考慮したうえで、一部の役員候補については反対するかもしれない」。 この関係者のいうスキルセットとは、YFOが株主提案する役員候補との経営上のバランスのことだ。YFOは常勤取締役候補として、元三菱商事の代表取締役である吉田真也氏、元フジタの建築本部理事の登坂章氏、そして社外取締役候補として弁護士で日本ガバナンス研究学会理事の山口利昭氏などを提案する』、「YFO」は「東洋建設の同意を得ずに東洋建設株式を追加取得しないことを誓約していたが、5月24日までとしていた誓約期限を延長しない、つまり今後は「東洋建設の株式を買い増す可能性もある」という」、なるほど。
・『役員が混在する「連邦」体制になる可能性  YFOとしては、提案する新役員候補の9人全員が東洋建設の経営に参画することが前提だが、そのうち数名が選任されることも考えられる。つまり、結果としては、今後の東洋建設の経営は、東洋建設側が提案する役員とYFO側が提案する役員が混在する「連邦」体制になる可能性はある。 YFO側の株式保有比率は合計で27%超。一方、前田建設(20%超保有)と、ほかの親密な政策保有先が東洋建設を支持するとみられる。海外投資家がどう動くのかが、定時株主総会の行方を決定づける』、最終的にどうなったのかについては、12月20日付けロイター「「任天堂創業家の資産運用会社、東洋建設へのTOB提案取り下げ」として、 任天堂創業家の資産運用会社YFOは20日、東洋建設への株式公開買い付け(TOB)開始を取りやめると発表。12月下旬までに買い付けを始めることを目指していたが、東洋建設取締役会の賛同を得られていなかった 。YFOは、現時点で1株1255円を超える価格提案は難しく、東洋建設取締役会の賛同を取り付けるなどTOBの前提条件を満たすのは困難と判断。東洋建設の取締役会は6月の総会後にYFOが提案した取締役が過半を占めているが、今月14日に全員一致で反対意見を決議、結局、TOBを断念したようだが」、「YFO」の「取締役会は6月の総会後にYFOが提案した取締役が過半を占めている」にも拘らず、「全員一致で反対意見を決議」、とは意外だ。

次に、本年3月21日付け東洋経済オンライン「ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/742140
・『投資ファンドと組んだMBO(経営陣が参加する買収)に、「待った」をかけたのは協業関係にあった事業会社だった――。投資ファンドに普通の事業会社が噛みつくという構図の異例の事態が起きている。 ミシンで知られるブラザー工業は3月13日、産業用印刷中堅のローランド ディー. ジー.(DG)に対抗TOB(株式公開買い付け)を行う予定であると発表した。 ローランドDGに対しては、2月13日から3月27日までの期間で、タイヨウ・パシフィック・パートナーズによるTOBが行われている。タイヨウはアメリカの投資ファンドでローランドDGの大株主。ローランドDGのMBOの一環としてTOBが実施されている。TOB価格は1株あたり5035円だ。 一方のブラザーは5200円のTOB価格を提示した。タイヨウによるTOBが継続中もしくは不成立であることを条件に、5月中旬をメドに開始する。買収総額は640億円の見込み。これは2015年に買収したイギリスの産業印刷機メーカーの約10.5億ポンド(当時の為替レートで約1930億円)に次ぐ金額規模となる』、「投資ファンドと組んだMBO・・・に、「待った」をかけたのは協業関係にあった事業会社だった――。投資ファンドに普通の事業会社が噛みつくという構図の異例の事態」、確かに「異例」だ。
・『注力分野の1つが産業印刷機  ブラザーの売り上げ規模は8000億円超。世界的なミシンメーカーとして知られる同社だが事業領域は幅広い。 売り上げの過半を占めるのは家庭用インクジェットプリンターを中心とするプリンター関連で、ほかに産業印刷機、工作機械、通信カラオケの「ジョイサウンド」なども手がける。この中で近年注力しているのが産業印刷機と工作機械だ。 その産業印刷の分野で、広告看板向けの大型インクジェットプリンターに強みを持つのがローランドDG。布に印刷するガーメントプリンターや歯科用ミリングマシンなども手がけており、2023年12月期の売上高は540億円だった。 ブラザーはTOBの意義について、両社の資産共有によるローランドDGの競争力強化を第一に掲げる。開発にブラザーのインクジェット技術を活用、共同購買を通じた製造コストの削減が期待できるなど、同じ印刷業界だからこそ可能な価値向上施策を実施できるとする。 ブラザーにとっては産業印刷の強化にもつながる。ペーパーレス化が逆風といえるオフィスや家庭用のプリンターとは異なり、新興国で工業製品の消費が増えることなどによる市場の拡大が見込める。ブラザーの事業ポートフォリオ的には、産業印刷領域の拡大は望ましい』、「ブラザーの事業ポートフォリオ的には、産業印刷領域の拡大は望ましい」、その通りだ。
・『2度拒否されたTOB提案  今回のブラザーによる対抗TOBはローランドDGの同意を得ていない。いわゆる「同意なきTOB」だ。しかしブラザーの佐々木一郎社長は、「両企業にとって、さらにはお互いのお客様にとってもWin-Win-Winの関係を構築できる」との内容でコメントを出した。 実はブラザーはこれまでに2度、ローランドDGにTOB提案を拒否されている。1度目の提案は2023年9月。1株あたり4800円でTOBの提案を行った。2019年の1月頃から、ローランドDGとの親和性について意識し始めたという。同12月からは製品の共同開発を始め、関係を強化していた。 しかしローランドDGは提案に慎重な姿勢を示した。理由に挙げたのが「ディスシナジーの発生懸念」だ。ブラザーとの協議を繰り返すも、やはり懸念が拭えないことを理由に今年2月2日、協議の中止をブラザーに伝達した。 2度目の提案は協議中止から4日後の2月6日。TOB価格を1株あたり4850円に上げると伝えた。だがローランドDGの意思は変わらず、2月9日に再度TOBについての検討中止をブラザーに伝達した。 その日、タイヨウがMBOを前提としたローランドDGへのTOBを2月13日から始めると発表した。ブラザーは1度目の提案を行った昨年9月頃から水面下でMBOの準備が進んでいたことについて知らされていなかった。) もはや執念すら感じる今回の対抗TOBだが成功する可能性はある。 ローランドDGの株価は3月19日の終値で5460円。タイヨウはおろかブラザーが提示したTOB価格をも上回る水準だ。ローランドDGが当初描いたMBOには暗雲が漂う。 TOBに応募するかどうかを決めるのが株主である以上、その判断はTOBの価格に大きく左右される。このままMBOを進めるのであれば、タイヨウがブラザーよりも高いTOB価格を提示する必要がある。 ローランドDGは今後、取締役会などでの検討を経てブラザーの対抗TOBに対する推奨・非推奨の意を表明する予定だ。もし非推奨として3度目の拒否をする場合には、「ディスシナジー」についても踏み込んだ説明が求められるだろう』、「このままMBOを進めるのであれば、タイヨウがブラザーよりも高いTOB価格を提示する必要がある。 ローランドDGは今後、取締役会などでの検討を経てブラザーの対抗TOBに対する推奨・非推奨の意を表明する予定だ。もし非推奨として3度目の拒否をする場合には、「ディスシナジー」についても踏み込んだ説明が求められるだろう」、その通りだ。
・『過去の巨額買収は利益創出に課題  一方のブラザーも宿願成就の後が本番だ。 先述した2015年買収のイギリス産業印刷機メーカー、ドミノ・プリンティング・サイエンシズ社はブラザー入りして以降、売り上げ成長は続けている。ただ、利益創出に時間を要している。 買収後に投資がかさんでいる影響で、2023年3月期においてもドミノ事業の実質的な営業利益は56億円。100億円近くあった買収前の営業利益に遠く及ばない。 このブラザー史上最高額の買収となったドミノ社の事業統括は当時社長だった小池利和・現会長が就いた。今回のローランドDGへのTOBも小池会長が陣頭指揮を執っているとみられる。 ローランドDGのMBO、そしてブラザーの対抗TOBの行方を握るのは現状、タイヨウの出方にかかっている。勝敗が決するまでにもう一波乱ありそうだ。 ブラザー工業の株価・業績 は「四季報オンライン」で』、「2015年買収のイギリス産業印刷機メーカー、ドミノ・プリンティング・サイエンシズ社はブラザー入りして以降、売り上げ成長は続けている。ただ、利益創出に時間を要している。 買収後に投資がかさんでいる影響で、2023年3月期においてもドミノ事業の実質的な営業利益は56億円。100億円近くあった買収前の営業利益に遠く及ばない」、やはり「利益」がしっかり出せるかどうかがカギだ。

第三に、4月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済取締役東京本部長の井出豪彦氏による「「法律違反」「異常なやり方」M&Aで急成長する企業の“トップ解任騒動”の全内幕!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341414
・『後継者難などで悩む中小企業を次々買収してきた「MJG」(東京都港区、本社の外観写真あり)で、昨年11月に代表の田邑元基氏が解任される“クーデター”が発生した一件について、筆者は前回のダイヤモンド・オンラインの記事で報じた(なお、MJGは昨年10月にいったん、日本マニュファクチャリングホールディングスと社名を変更していたが、今年2月再び社名をMJGに戻した)。MJGでは一体何が起きているのか。2月の臨時株主総会と取締役会を経て代表に復帰した田邑氏が取材に応じた』、興味深そうだ。
・『田邑氏が解任された取締役会の議事録を入手  クーデターを受けて新代表に就任したA氏は代理人を通じてグループ会社や取引先に文書を送付し、田邑氏の解任理由について「田邑氏の代表取締役としての複数に及ぶ違法行為が判明している」などと説明していたが、具体的な違法行為の内容については言及がなかった。 このほど筆者は関係者から、田邑氏が解任された昨年11月14日の取締役会の詳細な議事録を入手した。それによれば田邑氏はMJGの実施した企業買収などに際し、取締役会決議を取っていないという会社法違反を指摘されていたことがわかった。 また、社外取締役4人はこの取締役会の翌日、一斉に辞任したが、このうち1人は取締役会で「田邑氏のM&Aのやり方は異常である。M&Aを資金繰りに使う、というのは完全に間違っている」などと発言していたことがわかった。MJGが2023年6月期中、新規に買収した会社からの預かり金として15億円を調達したなどと財務担当が説明したことを受けた発言である。 MJGは日本M&Aセンター名誉会長の分林保弘氏、レノバ名誉会長の千本倖生氏、上智大学大学院教授の織朱實氏らを社外取締役に招聘(しょうへい)するなどして、株式公開に向けてコンプライアンスの態勢を整えてきた経緯がある。 前回の記事掲載以降、筆者のもとには匿名を条件に「MJGの子会社のなかには親会社に資金を吸い上げられた結果、電気代や税金を払えないほど資金繰りに行き詰まっているところがある」との情報提供もあった。果たしてMJGとグループ会社約40社の経営は持続可能なのか。今回、2月の臨時株主総会と取締役会を経て代表に復帰した田邑氏が取材に応じた』、「田邑氏が解任された昨年11月14日の取締役会の詳細な議事録を入手した。それによれば田邑氏はMJGの実施した企業買収などに際し、取締役会決議を取っていないという会社法違反を指摘されていたことがわかった。 また、社外取締役4人はこの取締役会の翌日、一斉に辞任したが、このうち1人は取締役会で「田邑氏のM&Aのやり方は異常である。M&Aを資金繰りに使う、というのは完全に間違っている」などと発言していたことがわかった。MJGが2023年6月期中、新規に買収した会社からの預かり金として15億円を調達したなどと財務担当が説明したことを受けた発言である」、全く異常という他ない。
・『議事録に書かれた各取締役の発言内容  まず、クーデターが発生した昨年11月の取締役会でのやりとりについて議事録をもとに振り返る。なお、田邑氏を除く発言者はすでに会社を去っているため匿名化する。 「報告事項 全社財務状況の件」として財務担当の執行役員Z氏が「新規にグループインした会社からの預かり金として、15億円を調達した」と発言したことを受けて、次のやりとりがあった。 社外取締役P氏「グループ会社からの資金収集は借り入れなのか」 田邑氏「借り入れにはなっていない。前受金と配当金の前払いという形になっている」 Z氏「監査法人からは、借り入れなのか前受金なのか定義を明確にしてほしいと指摘されている。書面での契約は締結せずに各社に集金を指示している状況であり、社内でも定義ができていない。監査法人からも資金の流れを明瞭化してほしいと指摘が出ている」 田邑氏「キャッシュフローマネジメントにおいて、同一の資本のなかで資金繰りをしているということであり、処理の適切さについては、今後数字と構築を明確にすれば問題はない認識だ」 P氏「数字ではなく、グループ会社からの資金回収がどういう性格のものであるかが重要であり、適正さは監査法人が決めること」 田邑氏「ルールが明確ではないため、今後は金利の発生なども含めて整備していく」』、「全社財務状況の件」として財務担当の執行役員Z氏が「新規にグループインした会社からの預かり金として、15億円を調達した」と発言したことを受けて、次のやりとりがあった。 社外取締役P氏「グループ会社からの資金収集は借り入れなのか」 田邑氏「借り入れにはなっていない。前受金と配当金の前払いという形になっている・・・監査法人からも資金の流れを明瞭化してほしいと指摘が出ている」 田邑氏「キャッシュフローマネジメントにおいて、同一の資本のなかで資金繰りをしているということであり、処理の適切さについては、今後数字と構築を明確にすれば問題はない認識だ」、会計原則を無視した酷い処理だ。
・『「すべて独断」「やり方は異常」…会社法違反めぐる緊迫したやり取り  次に議題は「グループ全体の財務状況」に移る。そこで問題の会社法違反の指摘が出る。かなり長文となるが、発言内容は以下の通りだ。 Z氏「グループ会社からの借り入れ35億円の内容について、グループ会社全体で見る必要がある。将来退職金は、オーナーに株式取得額と将来的な退職金を合わせて提示することにより、初期の買収負担を軽減しつつ、オーナーのリテンションとして買収後も数年間頑張っていただく、という目的のもと設定している」 社外取締役Q氏「退職金の引き当ては行っているのか」 田邑氏「短いのもあるが、10年以上の契約もある」 Q氏「将来退職金は絶対に払わなければいけないものであり、これは負債である。負債に計上しているか、という話」 P氏「今日初めて将来退職金という設定をしていることを認識した。もし取締役会での承認なしで取締役田邑の独断で決定しているとしたら、かなり難しい問題である」 Q氏「もし対象者が死亡した場合、支払い義務が発生するのか」 田邑氏「状況によっては支払わなければいけないと理解している」 Q氏「状況によってではなく、将来退職金は契約で絶対に支払うべきもの。これは明確に定義すべきである」 田邑氏「株価対価(ママ)には記載されている」 Q氏「取締役に対しても明確に提示すべきだ。すべて独断で決めているのが問題である」 監査役R氏「会社法362条にて、取締役会において報告・決議すべきことが記載されている。最も重要な項目として、多額の資産の譲り受け、つまり買収に関しての内容が第1項に記載されている。買収理由、PMI(筆者注:M&A成立後の経営統合プロセスのこと)による5年間の業績改善計画、それを企業価値(ママ)に割り引いた場合、割安であるという提案を取締役会において実施し、そこで承認を得て進めることが投資。借入金が必要な理由を取締役会において説明をして承認されて初めて、借財に関する取引の実施が可能になる」 社外取締役S氏(会社法第362条を読み上げる) R氏「第3項の支配人そのほかの重要な使用人の選定について、つまり部長や執行役員のことであるが、10月1日に経営陣の体制を大きく変えたが、その際は取締役会において決議は取ったのか」 田邑氏「取っていない」 R氏「何のために取締役会を置いているのか、という疑問がある。田邑氏は会社法違反を重ねているということであり、取締役会設置会社としては由々しき事態である。監査法人や主幹事証券が認知するところとなれば、相当な指摘を受けかねないことであり、コーポレートガバナンスの基礎もなっていない状態。これは非常に由々しき事態であることを認識していただきたい」 田邑氏「M&Aの決定も私にしかでき得ないことであり、会社法が大事なのか会社を守ることのほうが大事なのかについてはまた議論すればよい。日々案件がある中、毎日取締役会をすることは難しい」 P氏「自分に能力があるから、自分で勝手に判断してもいい、会社法は後回しにしてもいい、というのは間違っている」 R氏「投資案件に関して、代表取締役田邑がスーパーハンターであることは認める。ただし、経営やM&Aのプロである社外取締役をなぜ活用しないのか。取締役会開催の頻度が問題なのであれば、取締役会の中に、投資委員会を設置すればよいのではないか」 Q氏「結局、田邑氏の独断になってしまう。M&A関連の投資は田邑氏が判断しなくてもよいことである。M&Aに関して、今まで何の相談もなかった」 P氏「田邑氏の今までの行動は法律違反である」 A氏「現状の議論はM&Aの継続可否が論点に含まれると認識したが、皆様の考えをお聞かせいただきたい」 Q氏「現状の田邑氏のM&Aのやり方は異常である。常識では考えられない。M&Aを資金繰りに使う、というのは完全に間違っている」 R氏「Q氏に同意で、これはM&Aとは呼ばない。現状のやり方は不動産購入と同じ」 Q氏「M&AはPMIでいかに買収企業の価値向上をするか、が目的であるが、現状グループ会社の価値向上に関して何も行っていない」 田邑氏「私が考えているM&Aは経営統合であり、資金はあるが技術がない、技術はあるが資金はない会社を経営統合して、各社の事業を継続していくというやり方である」 Q氏「買収した会社に対して何もしていない。田邑氏に決定権が集中しすぎている」 田邑氏「他の人に任せられればいいが、現時点で他に任せられる人がいない。今はグループ会社の従業員の生活を守ることを最優先としている」 P氏「従業員の生活を守ることと、法律を守ること、どちらが大事だと思うか」 田邑氏「法律も守れるように形を整えるしかないと考えている」 P氏「今の財務内容は、今までの田邑氏の法律違反の結果ではないのか」 田邑氏「組織として認識が甘かったことは認める」 P氏「これは会社法違反である」 Z氏「当社がグループ会社から資金授受している金額が、35億円。グループ会社全社の現預金は29億円、当社の現預金は6800万円であるためグループ全体で約30億円。問題は営業赤字の状態で166億円を借り入れているということ」 R氏「このような財務状況では、メガバンクは融資してくれないのでは」 田邑氏「元々メガバンクから融資は受けていない。他金融機関からの融資は受けられている」 Z氏「私の認識は田邑氏の認識と相違がある。今年9月にクロージングした会社の融資のため、8行の銀行を回った結果、X(筆者注:原文は金融機関の実名)とY(同)はグループ全体の資金収支状況の懸念を理由に見送りとなり、また他4行は営業利益状況と資金の使用使途が買収資金であるという点を理由に見送りとなった。残り2社は検討中という結果であった」 R氏「Xも含め誰も融資をしてくれないというのは、会社として由々しき事態なのではないか。正常な会社はどの金融機関も融資をしてくれるはず。財務状況を取締役会において協議しなかったというのはあり得ない」 田邑氏「取締役会において議論すべきであったかもしれないが、結局財務状況に関して責任を取れるのは私しかいない」 S氏「代表取締役が一人で責任を負うという点だが、取締役会の取締役には損害賠償責任が発生する。決議事項があり、それらが損害を被らせた場合、取締役にも責任が発生する」 田邑氏「取締役に迷惑をかけたい訳ではない。今後この財務状況をどう改善するかが重要」 Q氏「田邑氏に今までの経営判断、会社の財務状況を悪化させてきたことの責任がある」 田邑氏「各社の負債は、私が代表となり各社が背負っているもの」 R氏「代表取締役を選任するのは取締役会。取締役会に報告し事前協議を諮ることは義務である」 P氏「自分が全部やっているから自分が全部責任を持つ、ということのようだが、それであれば自分一人で会社をすればよかった。我々他の取締役を入れた上で、我々に責任と義務が発生する状態で、今まで協議がなかったということは由々しき事態」 こうした緊迫のやり取りを経て田邑氏は代表取締役を解任され、A氏が後任に就いたわけである。ただ、田邑氏は引き続き発行済み株式の約8割を保有するオーナーであり、株主の請求による臨時株主総会が今年2月13日に開催され、A氏が解任され、田邑氏が代表に復帰したのは前回の記事で報じたとおり。クーデターは鎮圧されたといえるが、信用回復は容易ではなさそうだ』、「会社法違反」は関係者からの告発がなければ、通常は問題とされない。「退職給与引当」は必ずしも正しく処理されてない可能性がある・・・経営陣の体制を大きく変えたが、その際は取締役会において決議は取ったのか」 田邑氏「取っていない」 R氏「何のために取締役会を置いているのか、という疑問がある。田邑氏は会社法違反を重ねているということであり、取締役会設置会社としては由々しき事態である。監査法人や主幹事証券が認知するところとなれば、相当な指摘を受けかねないことであり、コーポレートガバナンスの基礎もなっていない状態。これは非常に由々しき事態であることを認識していただきたい・・・元々メガバンクから融資は受けていない。他金融機関からの融資は受けられている」 Z氏「私の認識は田邑氏の認識と相違がある。今年9月にクロージングした会社の融資のため、8行の銀行を回った結果、X(筆者注:原文は金融機関の実名)とY(同)はグループ全体の資金収支状況の懸念を理由に見送りとなり、また他4行は営業利益状況と資金の使用使途が買収資金であるという点を理由に見送りとなった。残り2社は検討中という結果であった」 R氏「Xも含め誰も融資をしてくれないというのは、会社として由々しき事態なのではないか。正常な会社はどの金融機関も融資をしてくれるはず。財務状況を取締役会において協議しなかったというのはあり得ない」、どうも「他金融機関」との関係も悪化している可能性がある。
・『筆者の疑問に対する田邑氏の回答は  田邑氏はクーデターについてどう振り返り、今後いかに経営を立て直すのか。3月25日、田邑氏は本社の入っているビル「浜離宮ザ・タワー」の36階にあるプライベートオフィスで筆者の取材に応じた。主なやりとりは次のとおり(Qは聞き手の質問、Aは田邑氏の回答)。 Q:資金繰りが厳しい子会社があるようだ。 A:昨年買収した会社は、コロナ禍で毀損(きそん)していた会社が多い。銀行とのリレーションもうまくいっていないところもある。ただ、コロナが明け、MJGのグループに入ったことで改善しつつある。MJGには銀行とのリレーションがある。買収前にしっかりデューデリジェンスを行っており、改善の見込みがあるところしか買収していない。 Q:電気代すら払えていないという子会社があると聞いた。 A:どこのことかな? 工場なので電気代は結構な金額になる。昨年4月以降、経営と執行を分離し、執行をA氏らに任せたあと、資金繰りを先読みすることができず、おかしくなってしまった。7月、8月あたりからさまざまな問題が表面化したため厳しく叱責したが、改善しないので、元通り私が全部やるからA氏らに退いてくれと言ったところ、クーデターが起きてしまった。いま仕切り直ししている。 Q:足元のグループの有利子負債は160億円くらい? A:そこまでない。120億円くらい。それに対し現預金は20億~30億円ある。昨年7月から連結会計システムを導入しており、毎月5日には前月の月次決算ができる体制になっている。 Q:11月14日の取締役会では旧オーナーの退職金債務の話が出たが、いまはバランスシートで負債計上しているのか。 A:いまも負債として認識していない。上場するのであれば計上する必要があるが。 Q:上場計画はどうなったのか。 A:監査法人や主幹事証券会社とは契約を解消した。もともと上場するにしても私は東京プロマーケット市場を想定していたが、A氏らが入ってきて、プロマーケットでは資金調達できないからと東証グロース市場にターゲットを変更した経緯がある。MJGに上場するメリットはない。A氏らのやる気を出すために株を持たせたが、私は対価を受け取っていない。 Q:普通は1社買収して経営を立て直すだけでも大変な仕事なのに、事業内容も企業文化もバラバラの会社をこれほど多く買収して手が回るのか。 A:事業承継のニーズは非常に多い。買収時に外部の専門家に頼んで、事業デューデリもしっかりできている。得意先への値上げ交渉など、基本的なことを確実に進めていくだけでもずいぶん良くなる。コンサルは入れていない。将来的には開発設計の機能を持つ子会社と量産の機能を持つ子会社を連携させて、得意先に一貫して任せてもらう体制をとるなどグループのシナジーを発揮していく。しかし、まず足元は個々の子会社が自立できるようにすることが先決。MJGはプラットフォームの機能を果たす。 Q:MJGはA氏が代表を務めていた会社を買収しており、同社では現在田邑氏とクーデターの首謀者ともいえるA氏が共同代表になっている。いまの状態を続けるのか。 A:A氏に株式を売り戻してMJGから切り離すことになるだろう。同社は買収前から借入金の返済をリスケしており、低い株価しかつかない。昨年5月頃同社のバンクミーティングに出席したが、事業計画についてA氏は自ら説明せず、外部のコンサルに任せていた。経営者としてありえない。リスケしている子会社は他にも数社あるが、返済再開にこぎ着けているところもある。 Q:旧オーナーへの退職金の支払いでもめている会社があると聞いた。 A:旧オーナーではなく、その奥さんで取締役になっている人物から今回のゴタゴタを受けて辞任の申し出があり、退職金を払ってほしいと言われている。この会社についても旧オーナーに株を売り戻す可能性がある。 Q:グループ会社のなかには、買収直後に余剰資金をMJGに抜かれたと言っているところがある。取締役会でもM&Aを資金繰りに使っているという指摘があった。 A:キャッシュマネジメントシステム(CMS)の考え方を導入した。おかしくなったのはA氏らに任せてから。 Q:田邑氏のM&Aについて「不動産購入と同じ」との指摘もあった。 A:良い会社なら、金融機関から買収資金を借りても5年程度で返済できるかもしれない。しかし、不動産と違って中小企業の株に担保価値があるわけではない。たしかに私は不動産取引もいくつかしたことがあるが、M&Aを同じように考えていたら金融機関の信用を失ってしまう。 Q:CMSを導入するのであれば、資金使途の変更について子会社の借入先の金融機関との契約を結び直す必要があるのではないか。 A:その必要はない。子会社が借りた資金をMJGのM&Aに使うなどということは一切していない。実はメインバンクからは、グループの資金調達窓口をMJGに一本化しないかという提案を受けたが断っている。M&A案件は各地の金融機関の紹介から出てくるケースがあり、個々の子会社の金融機関との関係も大切にしたい。グループで40行程度の金融機関と取引がある。 Q:クーデター以降、新たな買収は行ったのか。 A:まだ開示できるものはないが、M&A仲介会社などから新規の案件は持ち込まれている。A氏らはM&Aを3年やめて上場するために足元を固めると言ってきた。しかし、私はM&Aをやめない。MJGが事業承継のモデルケースになる。いまは信頼できる人たちと経営できている。MJGと同じような会社がもっと出てくるといい。 田邑氏はインタビューにおいて、経営維持の自信を最後まで崩さなかった。MJGは混乱から立ち直って、中小企業の事業承継分野の希望の星になれるだろうか』、「Q:足元のグループの有利子負債は160億円くらい? A:そこまでない。120億円くらい。それに対し現預金は20億~30億円ある。昨年7月から連結会計システムを導入しており、毎月5日には前月の月次決算ができる体制になっている。 Q:11月14日の取締役会では旧オーナーの退職金債務の話が出たが、いまはバランスシートで負債計上しているのか。 A:いまも負債として認識していない」、「退職金」はやはり「債務」として認識してないようだ。「Q:CMSを導入するのであれば、資金使途の変更について子会社の借入先の金融機関との契約を結び直す必要があるのではないか。 A:その必要はない。子会社が借りた資金をMJGのM&Aに使うなどということは一切していない。実はメインバンクからは、グループの資金調達窓口をMJGに一本化しないかという提案を受けたが断っている。M&A案件は各地の金融機関の紹介から出てくるケースがあり、個々の子会社の金融機関との関係も大切にしたい。グループで40行程度の金融機関と取引がある・・・A:まだ開示できるものはないが、M&A仲介会社などから新規の案件は持ち込まれている。A氏らはM&Aを3年やめて上場するために足元を固めると言ってきた。しかし、私はM&Aをやめない。MJGが事業承継のモデルケースになる。いまは信頼できる人たちと経営できている。MJGと同じような会社がもっと出てくるといい。 田邑氏はインタビューにおいて、経営維持の自信を最後まで崩さなかった。MJGは混乱から立ち直って、中小企業の事業承継分野の希望の星になれるだろうか」、どう考えても「田邑氏」はM&A専門家として、情報に敏感なだけで、山師的で、財務原則順守・コンプラ意識も欠如しているようだ。こんな人物が「グループで40行程度の金融機関と取引がある」とは驚くべきことだ。しかし、取引金融機関のなかから、どうも怪しいとの見方が広がりだすと、一気に信用を失墜する可能性がある。
タグ:「YFO」は「東洋建設の同意を得ずに東洋建設株式を追加取得しないことを誓約していたが、5月24日までとしていた誓約期限を延長しない、つまり今後は「東洋建設の株式を買い増す可能性もある」という」、なるほど。 M&A(一般) 純資産200億円を上回るかどうか厳しい状況で、信用力が低下し、民間工事の受注も厳しかった。そこから、社員の頑張りもあり、収益を上げ、純資産を積み上げることができた。前2023年3月期末は純資産が700億円を超えた。立派な数字になったなと思う」、確かに再建を果たしたようだ。 「現任の武澤恭司社長と藪下貴弘専務執行役員の代表取締役2人が退任することも発表・・・特に、代表取締役2人が同時交代することは異例で、意外だった」とYFO関係者は語る・・・東洋建設は不動産開発事業に失敗し、債務免除を受け、2003年から前田建設工業の傘下で経営再建を図ってきた。武澤社長はその経営改革のまさに牽引者だった・・・社長就任当初は存続の危機だった。 「東洋建設はYFO側の話を聞くことに終始する、受け身一辺倒だったと言える。 ところが、今年3月の新中期経営計画発表時に「(経営の姿勢を)守りから攻めへ転換する」・・・と宣言すると同時に、YFOへ反撃の姿勢をみせるようになった」、なるほど。 「YFOが東洋建設に対して行っていたTOB提案」、「社内取締役2人、社外取締役7人の計9人の選任を求めるYFOによる株主提案」、に「反対」、なるほど。 東洋経済オンライン「任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ」 (その3)(任天堂創業家へ反撃!東洋建設「意外すぎる一手」 6月27日の株主総会を前に攻防がヒートアップ、ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける、「法律違反」「異常なやり方」M&Aで急成長する企業の“トップ解任騒動”の全内幕!) 「ブラザーの事業ポートフォリオ的には、産業印刷領域の拡大は望ましい」、その通りだ。 「投資ファンドと組んだMBO・・・に、「待った」をかけたのは協業関係にあった事業会社だった――。投資ファンドに普通の事業会社が噛みつくという構図の異例の事態」、確かに「異例」だ。 東洋経済オンライン「ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける」 東洋建設の取締役会は6月の総会後にYFOが提案した取締役が過半を占めているが、今月14日に全員一致で反対意見を決議、結局、TOBを断念したようだが」、「YFO」の「取締役会は6月の総会後にYFOが提案した取締役が過半を占めている」にも拘らず、「全員一致で反対意見を決議」、とは意外だ。 最終的にどうなったのかについては、12月20日付けロイター「「任天堂創業家の資産運用会社、東洋建設へのTOB提案取り下げ」として、 任天堂創業家の資産運用会社YFOは20日、東洋建設への株式公開買い付け(TOB)開始を取りやめると発表。12月下旬までに買い付けを始めることを目指していたが、東洋建設取締役会の賛同を得られていなかった 。YFOは、現時点で1株1255円を超える価格提案は難しく、東洋建設取締役会の賛同を取り付けるなどTOBの前提条件を満たすのは困難と判断。 監査法人からも資金の流れを明瞭化してほしいと指摘が出ている」 田邑氏「キャッシュフローマネジメントにおいて、同一の資本のなかで資金繰りをしているということであり、処理の適切さについては、今後数字と構築を明確にすれば問題はない認識だ」、会計原則を無視した酷い処理だ。 「全社財務状況の件」として財務担当の執行役員Z氏が「新規にグループインした会社からの預かり金として、15億円を調達した」と発言したことを受けて、次のやりとりがあった。 社外取締役P氏「グループ会社からの資金収集は借り入れなのか」 田邑氏「借り入れにはなっていない。前受金と配当金の前払いという形になっている・・・ MJGが2023年6月期中、新規に買収した会社からの預かり金として15億円を調達したなどと財務担当が説明したことを受けた発言である」、全く異常という他ない。 「田邑氏が解任された昨年11月14日の取締役会の詳細な議事録を入手した。それによれば田邑氏はMJGの実施した企業買収などに際し、取締役会決議を取っていないという会社法違反を指摘されていたことがわかった。 また、社外取締役4人はこの取締役会の翌日、一斉に辞任したが、このうち1人は取締役会で「田邑氏のM&Aのやり方は異常である。M&Aを資金繰りに使う、というのは完全に間違っている」などと発言していたことがわかった。 井出豪彦氏による「「法律違反」「異常なやり方」M&Aで急成長する企業の“トップ解任騒動”の全内幕!」 ダイヤモンド・オンライン 「2015年買収のイギリス産業印刷機メーカー、ドミノ・プリンティング・サイエンシズ社はブラザー入りして以降、売り上げ成長は続けている。ただ、利益創出に時間を要している。 買収後に投資がかさんでいる影響で、2023年3月期においてもドミノ事業の実質的な営業利益は56億円。100億円近くあった買収前の営業利益に遠く及ばない」、やはり「利益」がしっかり出せるかどうかがカギだ。 「このままMBOを進めるのであれば、タイヨウがブラザーよりも高いTOB価格を提示する必要がある。 ローランドDGは今後、取締役会などでの検討を経てブラザーの対抗TOBに対する推奨・非推奨の意を表明する予定だ。もし非推奨として3度目の拒否をする場合には、「ディスシナジー」についても踏み込んだ説明が求められるだろう」、その通りだ。 A:まだ開示できるものはないが、M&A仲介会社などから新規の案件は持ち込まれている。A氏らはM&Aを3年やめて上場するために足元を固めると言ってきた。しかし、私はM&Aをやめない。MJGが事業承継のモデルケースになる。いまは信頼できる人たちと経営できている。MJGと同じような会社がもっと出てくるといい。 田邑氏はインタビューにおいて、経営維持の自信を最後まで崩さなかった。MJGは混乱から立ち直って、中小企業の事業承継分野の希望の星になれるだろうか」、どう考えても「田邑氏」はM&A専門家として、情報に敏感な との契約を結び直す必要があるのではないか。 A:その必要はない。子会社が借りた資金をMJGのM&Aに使うなどということは一切していない。実はメインバンクからは、グループの資金調達窓口をMJGに一本化しないかという提案を受けたが断っている。M&A案件は各地の金融機関の紹介から出てくるケースがあり、個々の子会社の金融機関との関係も大切にしたい。グループで40行程度の金融機関と取引がある・・・ 「Q:足元のグループの有利子負債は160億円くらい? A:そこまでない。120億円くらい。それに対し現預金は20億~30億円ある。昨年7月から連結会計システムを導入しており、毎月5日には前月の月次決算ができる体制になっている。 Q:11月14日の取締役会では旧オーナーの退職金債務の話が出たが、いまはバランスシートで負債計上しているのか。 A:いまも負債として認識していない」、「退職金」はやはり「債務」として認識してないようだ。「Q:CMSを導入するのであれば、資金使途の変更について子会社の借入先の金融機関 いというのは、会社として由々しき事態なのではないか。正常な会社はどの金融機関も融資をしてくれるはず。財務状況を取締役会において協議しなかったというのはあり得ない」、どうも「他金融機関」との関係も悪化している可能性がある。 これは非常に由々しき事態であることを認識していただきたい・・・元々メガバンクから融資は受けていない。他金融機関からの融資は受けられている」 Z氏「私の認識は田邑氏の認識と相違がある。今年9月にクロージングした会社の融資のため、8行の銀行を回った結果、X(筆者注:原文は金融機関の実名)とY(同)はグループ全体の資金収支状況の懸念を理由に見送りとなり、また他4行は営業利益状況と資金の使用使途が買収資金であるという点を理由に見送りとなった。残り2社は検討中という結果であった」 R氏「Xも含め誰も融資をしてくれな 「会社法違反」は関係者からの告発がなければ、通常は問題とされない。「退職給与引当」は必ずしも正しく処理されてない可能性がある・・・経営陣の体制を大きく変えたが、その際は取締役会において決議は取ったのか」 田邑氏「取っていない」 R氏「何のために取締役会を置いているのか、という疑問がある。田邑氏は会社法違反を重ねているということであり、取締役会設置会社としては由々しき事態である。監査法人や主幹事証券が認知するところとなれば、相当な指摘を受けかねないことであり、コーポレートガバナンスの基礎もなっていない状態。 だけで、山師的で、財務原則順守・コンプラ意識も欠如しているようだ。こんな人物が「グループで40行程度の金融機関と取引がある」とは驚くべきことだ。しかし、取引金融機関のなかから、どうも怪しいとの見方が広がりだすと、一気に信用を失墜する可能性がある。
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半導体産業(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) [産業動向]

半導体産業については、2月24日に取上げた。今日は、(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと)である。

先ずは、本年4月5日付けダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341305
・『半導体株高をけん引する日本の製造装置メーカー。東京エレクトロンやレーザーテックなど、高い世界シェアで業界をリードしている企業が多い一方で、業界全体を見渡してみると深刻な状況に陥っている。市場規模が大きく、成長性が高い製品と分野で負けが続き、日本全体ではシェアが急落、米国に突き放され欧州に抜かれる状況になっているのだ。強い日本の製造装置業界に何が起こっているのか。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#5では、有望銘柄とその強みと共に、一見好調な製造業界の構造的問題について取り上げた』、興味深そうだ。
・『株価が130倍、20倍に暴騰した製造装置銘柄  その強さの秘密と本当の実力は  今の半導体関連株の高値をけん引する最大の立役者が半導体製造装置株だ。2014年には2000円台で推移していた東京エレクトロン(TEL)株は、現在なんと20倍の4万円台を付けている。 同じ製造装置のディスコ株は14年には3000円台で同じく16倍、14年に300円台だったレーザーテックは130倍の4万円台にまで伸びた。同期間でデバイスのルネサスエレクトロニクスは約2倍、素材の信越化学工業は約4倍の伸びだ。これに比較してもいかに装置株の伸び方が異常か分かるだろう。 「世界シェアトップ」「世界で他のどこにもできない技術を持つ」というきらびやかな修飾語が製造装置業界には付いて回る。そもそも、なぜ日本の製造装置は強いのか。歴史をひもといてみよう。 1980年代日本のデバイス企業が世界トップだった時代に、一蓮托生で製造技術を磨き併走することで成長してきたのが製造装置メーカーだ。 その後90年代以降、日本のデバイスメーカーは次々と凋落、事業撤退や縮小をしていく。だが、装置メーカーはその後台頭してきた韓国、台湾、それに米国のデバイス企業に広く製造装置を販売することで、事業を拡大してきた。 「経営のスピードが速く、経営者が事業に愛情を持ち、顧客との信頼関係を大事にするという経営スタイルが、アジア・米国の顧客企業にも受け入れられた。最初は欧米のものを優先するスタンスだった顧客も徐々に日本メーカーの製品に切り替えてくれるようになり、シェアを伸ばしていった」と、20年来製造装置企業の分析を行っているモルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉シニアアナリストは解説する。 中でも最近特異的に伸びているのが、生成AIのビジネスに絡む装置を販売できている企業だ。 例えば生成AI半導体に使われる米エヌビディアのGPU(グラフィックプロセッサユニット)を生産するのに必要なのが、最先端の微細加工が可能なEUV露光装置(極端紫外線を使い、シリコンウエハーに回路を焼き付けるための装置)だが、EUV向けのマスク(回路を焼き付ける元となる原板)検査技術を世界で唯一持っているのがレーザーテックだ。 EUVの登場と普及で、以前は100億円企業だった同社は売上高が10倍の1000億円規模に伸びた。同様に、GPUを動かすにはHBM(広帯域高速メモリー)という次世代DRAM(一時記憶用のメモリー)が必要だが、このHBM関連ビジネスに深く絡める研磨装置メーカーのディスコや検査装置メーカーのアドバンテストなどが大きく伸びている、といった具合だ。 今後半導体製造装置株に投資する場合は、どのような視点が必要なのか。さらに、一見絶好調の製造装置業界にアキレス腱はないのか。 実は、絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ。これほど株価も高く市場に評価されている企業が多数あるだけに、意外な事実だ。その理由と企業ごとの注目ポイントや、中長期的な展望について和田木シニアアナリストに分析してもらった』、「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。
・『既存・新規事業とも強い東京エレクトロンと業界トップの収益性のディスコに要注目  企業別に見ていこう。まずは代表格のTELだ。 多数の装置を抱える製造装置のデパートであるTELだが、特にコータ・デベロッパー(シリコンウエハー上に回路を焼き付けるための感光剤を塗り、現像する装置)、熱処理装置(シリコンウエハーを高温で熱して酸化、薄膜を形成する装置)、エッチング(回路を現像した後余分な部分を剥ぎ取るための装置)といった装置でシェアが昔から高い。「人材レベル、営業力、マーケティング力が向上し、既存ビジネスのシェアが上がっているのみならず、これまでの2倍以上の価格で売れる優れもののオンリーワン新製品を投入しており、収益性が向上している。高シェアを取れているコータ・デベロッパーでも大手の顧客との関係性が極めて良好で、ライバルを寄せ付けない」と和田木シニアアナリストは評価する。 さらに、グラインダ(ウエハーの裏側を研磨して薄くする装置)、ダイサー(ウエハーをチップごとに切り分ける装置)などで高シェアを持つのがディスコだ。売上高営業利益率では業界トップで「独自の経営スタンスを持ち、新興企業が価格競争を仕掛けてくるカテゴリに対しても高い競争力を維持している」(和田木シニアアナリスト)。 また、アドバンテストは、前ページで取り上げたようにGPUとHBM向けのテスタ(製品状態になった半導体を最終検査する装置)で他社を大きく突き放すシェアを握る。米テラダインというライバルはいるものの、その追撃を許さない状態になっている。また、米中摩擦で米国産の半導体製造装置が買えない中国メーカーからの受注を一手に引き受けることができたのも、好業績に貢献した。 装置各社の業績推移予測と将来の給与の伸びを見てみよう。下記にまとめた。 (図表:製造装置企業の業績予測 はリンク先参照) 市場データ企業IFISによる市場コンセンサス予想でも、これらの企業の売上高成長率は著しい。そしてIFISデータを基にダイヤモンド編集部で試算(試算方法は上記図注参照)した将来の給与水準は若干減少傾向にある企業が多い。そもそもこれらはエレクトロニクス業界最強の給与水準にある企業で、さすがにこれらがこのまま右肩上がりで伸び続けるのは厳しそうだという。それでもアドバンテストやローツェなどまだ伸びしろがありそうな企業もある。 このように、日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる。 (図:国籍別半導体製造装置のシェアの推移 はリンク先参照) どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがあると和田木シニアアナリストは指摘する。 以下は、モルガン・スタンレーMUFG証券作成の半導体の製造装置の市場規模と成長率の分布図だ。さらに、日本企業が50%以上のシェアを押さえている装置を編集部でマーキングしてみた。これで見ると、市場規模が大きいのはエッチング装置、露光装置、枚葉式CVD装置(シリコンウエハーに膜を付ける装置)などだ。そして成長率が高いのはマスク検査装置、ALD(新方式の成膜装置)などとなる。 ところが、このどちらも、日本企業はシェアが取れていない。 (図:装置別に見た成長率と市場規模の関係 はリンク先参照) 例えば、現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった。 これまで取り上げてきた日本が強い市場は、全体の規模からするとそこまで大きいわけではない。エッチング装置で2位に付けているTELや、EUVのレーザーテックなど一部を除くと、小さなしかも今後の成長率がいまひとつの池での高シェアを取っているにすぎない、ということになる。 この事態には、この30年間最先端の半導体技術を磨くための場が、国内には不在だった影響もありそうだ。前述のASMLは、ベルギーに拠点を置く世界最大級の独立系半導体研究開発機関、アイメックと密接な連携を行っている。 「近隣にこうした研究所があることは、新規で伸びる技術の見極めや、それを持ち帰り自社で行う開発・検証のスピード、それに顧客へのマーケティング面でも明らかに有利に働く」(和田木アナリスト)。欧州には先端技術をいち早く見いだし製品化するためのエコシステムがあるのだ。 各デバイスメーカーが国内での量産や先端技術の開発から次々と撤退してきた日本とは、環境面でかなりの差が生まれてしまった。 経済産業省が追加出資を発表した国策半導体会社ラピダスの設立に、各製造装置メーカーが期待を寄せるのはこのためだ。同社の東哲郎会長はTELで会長・社長職を長く務めた中興の祖でもある。国内でもう一度最先端半導体を作る、という一見無謀なチャレンジには、TELの経営を通して日本の半導体産業の失われた20年間を目撃しており、なんらかの打開策が国として必要という思いがあるからなのかもしれない。 失われた20年間を独自の経営努力で切り抜け、成長してきた輝かしい実績を持つ装置メーカー。だがさらなる成長のためには、国内の半導体産業全体の底上げが欠かせない。それには装置メーカーのみならず、国全体としての強化策と、その成否が鍵を握るのだ』、「日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。

次に、4月9日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『追加支援を行うと発表  齋藤健・経済産業大臣は先週火曜日(4月2日)の記者会見で、政府・経済産業省が最先端半導体の受託生産を目指すRapidus(ラピダス)に対し、今2024年度中に最大で5900億円の追加支援を行うと発表した。既存の支援額(3300億円)と併せて、政府の同社に対する直接的な支援の規模は1兆円に迫ることになる。 手厚い支援の背景には、経済安全保障の観点から半導体のサプライチェーン確立が必要不可欠な状況や、ラピダスが2027年頃の量産を目指している2ナノメートルサイズの半導体が「生成AIや自動運転など日本産業全体の競争力の鍵を握るキーテクノロジーである」(斎藤経産大臣)との問題意識がある。 今回、支援が決定した資金の使途は、従来から取り組んでいる米IBM社やベルギーの研究機関imecとの共同研究、量産化へ向けた製造プロセスのふかぼり、製造装置の購入などに充てる計画だ。また、半導体業界で「後工程」と呼ばれている技術(複数の半導体を1つの基盤に収納するチップレット技術など)の開発など、新たな分野にも充てると説明している。 ただ、今回で政府による支援が終わりということはないはずである。というのは、ラピダス自身も量産開始までに総額で5兆円程度の資金が必要だと認めているからだ。 客観的に見れば、ラピダスは、政府支援の積み増しのほか、民間金融機関からの借り入れ、上場を通じた公募増資や売り出しなど、様々な資金調達を実現できないと、量産の開始前に経営が行き詰まるリスクを抱えているのが実情だ。 そこで、今週は、ラピダスがそうしたハードルを超えるために。何が必要になっているのかを考えてみたい。 かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ』、「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。
・『またとない再興のチャンス  そうした中で、千載一遇の半導体産業再興のチャンスが巡ってきた。米国が中国とのデカップリング(経済の分断)を進める中で、世界の半導体業界のトップ3の中に自国企業がインテル1社しか含まれていないうえ、そのインテルが3位とはいえ、1位の台湾TSMCや2位の韓国サムスン電子に大きく後れを取っている状況に危機感を持ったからだ。そして、米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった。 かねて政府に対して、半導体産業の再興の支援を働きかけていた、半導体製造装置会社・東京エレクトロンの社長・会長経験者である東哲郎氏(現ラピダス会長)と元日立製作所半導体グループ・生産技術本部本部長の小池淳義氏(現ラピダス社長)の2人に「白羽の矢を立てた」経緯がある。 ちなみに、日、米両政府はそれぞれ、巨額の支援をして半導体業界世界一の台湾のTSMCの工場の誘致も進めている。 話を戻すと、実際のラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円(2022年11月時点)にとどまっている。 この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている。 そして、細かい市場ごとの上場基準などはさておき、新興企業が上場するために最も必要なことは、その企業のポテンシャルを示す成長シナリオをしっかりと描き出してみせることである。 この条件を、半導体のファブレス企業から発注を受けて量産するファウンドリを目指しているラピダスにあてはめると、最も重要なことは、実績のある、実在のファブレス企業から具体的な受注契約を獲得することになる。 では、ラピダスが量産の開始を目指す3年後、つまり2027年を想定して、2ナノ半導体の供給を必要としている企業は、いったいどこになるのだろうか』、「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。
・『ラピダスに熱視線  誰もが容易に想定できるのは、生成AIの開発でしのぎを削っているグーグルやマイクロソフトといった米国の巨大IT企業群GAFAMだ。また、トヨタやテスラといった全自動運転の実用化を急ぐ自動車メーカーも大いに2ナノサイズの先端半導体を必要としているはずである。医療機器メーカーにもニーズがありそうだ。 言い換えれば、ラピダスは、そうしたIT大手や自動車メーカー大手、医療機器メーカーから、実際に、2ナノ半導体の製造を受注してみせる必要があるのである。 つまり、政府・経済産業省だけでなく、ラピダス自身も、今回の政府支援で獲得する資金を、これまで取り組んできた前工程に加えて、後工程の開発力の獲得に充てると製造面の体制作りの重要性を強調しているが、それだけでは不十分というワケだ。 むしろ、それらの製造技術の開発・強化と並行して、2ナノ半導体の顧客の獲得が待ったなしなのである。これらの企業とは、必要なスペックを詳細に詰めたうえで、委託(受注)契約に漕ぎ着けなければならない。そして、その契約を開示することで、持続的な成長力があることを実証して見せる必要があるのである。 そして、筆者の取材によれば、こうしたIT企業や自動車メーカー、医療機器メーカーは概して、ラピダスが2ナノ半導体を量産するファウンドリとして名乗りを上げたことをかなり好意的に受け止めているとみてよさそうなのだ。 というのは、現在、ファウンドリとしてこうしたAIや全自動運転用、医療機器用の最先端の半導体の量産に対応できる企業と言えば、米半導体大手のエヌビディア1社しかなく、独り勝ち状態になりかねないと見られていたからだ。GAFAMにしろ、自動車メーカーにしろ、医療危機メーカーにしろ、そろって自社のサプライチェーンの強靭性を維持するためには、半導体の供給元を複数以上にしたいとの思いも強く持っている。それゆえ、ラピダスに対しても相応に熱い視線を送っているというワケだ。 まとめると、ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである』、「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。

第三に、4月11日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/746571
・『今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。2月に完工したTSMCの熊本工場は、日本の半導体産業と株式市場にとって大きな活性剤となっている。 この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト、林宏文氏が『TSMC 世界を動かすヒミツ」(CCCメディアハウス)』を日本で上梓。世界の半導体企業の興亡史をつぶさに見てきた林氏が、日本の半導体戦略に直言する(Qは聞き手の質問、Aは林宏文氏の回答)』、興味深そうだ。
・『TSMC熊本工場は「トヨタとアップルのため」  Q:2月にTSMCの熊本工場が完成しましたが、TSMCにとって日本で工場を建設する意義や目的はどこにあったのでしょうか。 A:日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。 重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。 もう1つの重要な顧客は、アップルです。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費しますが、それを供給しているのはソニーグループです。熊本工場が稼働すればソニーのCMOSセンサーの生産能力も上がり、結果としてアップルに貢献できます。) Q:アップルを筆頭に、TSMCの重要な顧客の多くはアメリカのハイテク企業です。重要市場であるアメリカに工場を作るのは理にかないますが、日本には作らないだろうと半導体関係者の多くは思っていました。TSMCは日本を重視するようになっているのでしょうか。 A:(リン・ホンウェン氏の略歴はリンク先参照)TSMCがアメリカをより重視してきたのは当然のことです。しかしその姿勢に、変化が生じているのではないかと私は感じています。 TSMCの経営陣は当初、アメリカのアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、アメリカ政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束しましたからね。 しかし今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。 実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました』、「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。
・『補助金で半導体産業は取り戻せるか?  Q:いつからそう指摘していたのですか。 A:アメリカのCHIPS法案(2022年に成立)が議論され始めた頃からです。チャン氏はアメリカの対中制裁には賛同しているものの、半導体製造復興政策に対しては一貫して反対してきました。) たとえば2022年8月にナンシー・ペロシ、アメリカ下院議長が台湾を訪れた際、訪台したアメリカ議員団にチャン氏はこう直言しています。 「TSMCのアリゾナ新工場が補助金の恩恵を受けられるのは喜ばしいことだ。しかし問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません。 TSMCの現在の経営陣はアメリカに工場を作ることについて楽観的だったのでしょうが、今となってはチャン氏の予言が正しかったと痛感しているでしょう。さらに日本での順調さが、経営陣の認識を変えつつあります。さらには、アメリカ政府に対しても大きなプレッシャーとなるのではないでしょうか』、「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません」、その通りだ。
・『TSMCのライバルはIBMの技術で「失敗」  Q:日本政府は国策企業であるラピダスにも巨額の支援を行っています。ラピダスの使命は最先端のロジック半導体を国産化することですから、言い換えればTSMCのライバルも育成しているわけです。ラピダス自身は「TSMCとは競わない」と説明していますが、あなたはこの状況をどう見ていますか。 日本が半導体産業を振興すること自体は、私は非常にチャンスがあると思います。 半導体製造装置において、日本はアメリカ、オランダと並ぶ最重要国です。多くの半導体材料でも、日本企業がトップシェアを掌握しています。これは日本企業が長期的なR&D(研究開発)を重視してきた成果です。息の長いR&Dを重視する姿勢は、台湾よりも日本のほうが顕著。製造装置や材料の強みがさらに増す政策であれば、日本にとって大きな価値があると思います。) ただ、ことラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがあります。 日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選びましたよね。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがあります。しかし失敗に終わっています。しかも企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきとなりました。 その企業はUMC(聯華電子)です。UMCはTSMCと同様、台湾政府の支援で生まれました。当初のビジネスモデルは少し違っていたのですが、今はTSMCと同じ半導体受託製造の世界的大手です。しかもUMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。 ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです』、「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。
・『IBMからは学べないことがある  Q:ハイテクの世界で、2年分の技術差は致命的です。UMC同様、ラピダスもIBMからの技術移転でつまずくリスクも出てくるかもしれない。 A:過去に台湾企業が失敗したからと言って、ラピダスも「絶対にうまくいかない」とは断言しません。ただ台湾企業の経験を踏まえて、日本政府とラピダスにはIBMの強みと弱みを冷静に分析してもらいたいのです。 IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか』、「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。
・『日本はかつての地位を追いかけるな  そもそも半導体というのは、何らかの夢を実現するための1つの部品に過ぎません。アップルのスティーブ・ジョブズはiPhoneの夢を実現するために独自半導体を追究しました。エヌビディアのジェンスン・ファンはAI(人工知能)の夢を実現しようとしています。こういった夢を追いかける顧客がいるからこそ、TSMCの成功があるのです。 Q:かつて日本でも、電機メーカーが家電やコンピューターなど最終製品の競争力を高めるために、半導体を自社で開発・生産していました。まず需要ありきということですね。 A:今ならたとえば、トヨタがハイブリッドカーや水素カーを世界に普及させる夢を抱いているじゃないですか。そのために半導体ができることは、かなりあります。日本はかつて半導体市場で圧倒的なシェアを持っていたため、当時の地位を取り戻したいと思うのかもしれません。 でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです』、「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。
タグ:同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」 (その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) 「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。 半導体産業 ません」、その通りだ。 「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。 日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。 「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」 その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落 「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではあり 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。 東洋経済オンライン 「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。 「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。 町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」 「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか? 現代ビジネス できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。 「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。 「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映 としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。
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