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百貨店業界(その6)(セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、そごう・西武売却劇は外資ハゲタカファンドの「丸儲け」で決着…「大失敗」のセブン&アイ 明暗分かれたヤバい取引、西武池袋は売却 東急本店は閉店…首都圏の電鉄系百貨店「縮小・撤退ドミノ」の理由) [産業動向]

百貨店業界については、本年5月17日に取上げた。今日は、(その6)(セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、そごう・西武売却劇は外資ハゲタカファンドの「丸儲け」で決着…「大失敗」のセブン&アイ 明暗分かれたヤバい取引、西武池袋は売却 東急本店は閉店…首都圏の電鉄系百貨店「縮小・撤退ドミノ」の理由)である。

先ずは、5月25日付け東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699144
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は9月1日、百貨店子会社のそごう・西武をアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。売却先をフォートレスに決めたのが昨年11月。長期に渡った売却交渉がようやく完了した。 売却額は2200億円と一見高額。しかし売却日当日、セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正している。 セブン&アイはなぜ損失計上を迫られたのか』、「セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正」、なるほど。
・『2200億円は有利子負債を含めた評価  その理由は極めて単純。そごう・西武の企業価値の評価が、極めて低かったからだ。 2200億円は確かに実際の売却額だが、これは有利子負債を含めた企業価値がベースとなっている。そごう・西武はこれまで約3000億円と多額の有利子負債を抱えていた。売却に伴ってセブン&アイが自社の貸付金のうち916億円を債権放棄しており、残る有利子負債は単純計算で約2100億円。つまり、2200億円という企業価値の大部分は、有利子負債で占められていたことになる。 セブン&アイは損失計上と同時に公表したリリースで、「そごう・西武株式の譲渡価額は(中略)85百万円を見込んでおります」としているが、まさにこのことを指している。有利子負債のほかに運転資本の減少分などを考慮した「実質的な」譲渡価額が、8500万円だったということだ。 セブン&アイはこの実質的な譲渡価額と簿価との差を、株式譲渡関連特損411億円として損失計上した。そごう・西武の企業価値は当初2500億円とされていたが、売却交渉の長期化や売却後の西武池袋本店(池袋西武)のフロアプランの見直しなどに伴って、300億円減額されたことも、損失計上の要因となっている。 ただ、セブン&アイからすれば、譲渡価額8500万円は完全に想定内だったようだ。「損失を出さずに売るのは超ウルトラC」。そごう・西武の売却の過程で、セブン&アイの関係者はこう漏らしていた。 セブン&アイ側も、買収したフォートレス側も、当初から百貨店事業についてはほとんど価値を見出していなかった。逆に実質評価がマイナスにならずに売却できたことで、セブン&アイの担当者は胸をなで下ろしているかもしれない。 損失計上には別の要因もある。売却に伴ってセブン&アイが損失補填を余儀なくされたことだ。損失補填のほとんどは前述した債権放棄額916億円だが、もう一つの理由がある。 テナントの移転・撤退に伴う「クリーニング費用」の負担だ。今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」(ディール関係者)。損失補填の中には、このクリーニング費用の負担が含まれている模様だ。 売却スキームではヨドバシの入居によって多くのテナントの移転・撤退が見込まれ、その費用を誰が負担するかも1つの焦点だった。セブン&アイの実際の負担額は非公開だが、「今回で株式譲渡にかかわる損失は出しつくした」(セブン&アイ広報担当者)。売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ。 しかし、終わったのはあくまで会計上の処理だけだ。セブン&アイの経営陣には、今後対峙しなければならない課題がなお残されている』、「売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ」、なるほど。
・『法廷の場で明らかになる取締役の責任  一つは株主対応だ。セブン&アイの株主であるそごう・西武の元社員らは、昨年11月の売却公表時に算定された同社の企業価値2500億円が不透明であるとして、井阪隆一社長らセブン&アイHD取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提訴している。 問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。 もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ。同社の労働組合は、ヨドバシの入居で百貨店の売り場面積が大きく縮小し、「雇用継続の確証が得られない」と反発。8月31日には、池袋西武で大手百貨店として61年ぶりのストライキを決行した。 この問題はフォートレスに売却された後も、くずぶり続ける。セブン&アイはかねてから「(ヨドバシの入居で)従業員の働く場所が物理的になくなり、社内での配置転換も難しい場合、当社も受け入れる用意はある」(広報担当者)としている。 しかし、セブン&アイの主力業態であるコンビニはフランチャイズビジネスであり、それほど多くの社員が必要なわけではない。さらにイトーヨーカ堂などのスーパー事業は構造改革の真っただ中。事業会社の再編に取り組んでおり、「とても人を受け入れられる状況ではない」(セブン&アイ関係者)。十分な雇用の受け皿となるかは不透明だ』、確かに、「西武」で人員削減の必要が出た場合、コンビニや「イトーヨーカ堂」などの雇用吸収力は現地的だ。
・『終盤は「孤軍奮闘」状態だった井阪社長  今回、ここまで事態が混乱したのは、労組との関係が象徴するように、「最初から正直に話し合って納得を得るのではなく、ごまかしながら進めた」(ディールの関係者)からだ。 井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない。セブン&アイの関係者によると、首脳陣の一部はそごう・西武売却に際し、「『大変ですね』などと発言するだけで、井阪さんの言う『真摯な対応』をしようという姿勢ではなかった」という。この関係者は売却劇終盤の井阪社長を「孤軍奮闘していた」と哀れむ。 株式譲渡の契約から実行まで、セブン&アイは井阪体制におけるガバナンスのもろさを露呈した。今回セブン&アイが失ったものは、決して少なくないように思える』、「井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる」、というのはやはり問題だ。売却してしまうので、「百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかった」のも理解できる。

次に、9月7日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「そごう・西武売却劇は外資ハゲタカファンドの「丸儲け」で決着…「大失敗」のセブン&アイ、明暗分かれたヤバい取引」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115866?imp=0
・『企業価値はたった「8500万円」  労働組合が百貨店業界では61年ぶりというストライキを決行したことで耳目を集めたそごう・西武は、9月1日、予定通りにセブン&アイホールディングスが米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに株式を売却。外資の元、家電量販店大手・ヨドバシカメラホールディングスと連携して再建を進めることになった。 驚きはそごう・西武の企業価値が、わずか8500万円だったことだ。セブン&アイが昨年11月11日、優先交渉権を付与したフォートレスと全株の譲渡契約を締結した際の開示資料では「企業価値2500億円」となっていた。それが8500万円となったカラクリは以下のようなものである。 2500億円は約10カ月の交渉過程で、ヨドバシの想定より進出面積が少なくなるなどフロアプランの見直しもあって、減額されて2200億円となった。 一方、そごう・西武の持つ有利子負債は2938億円(2月末)であるが、このうち1659億円(7月末)を融資するセブン&アイに916億円だけ放棄させ、残る負債の約2000億円を全額返済する。さらに今後の運転資金などとして約200億円を留保したため、セブン&アイに支払う株式譲渡代金は8500万円となった――。 新聞・テレビは、セブン&アイの発表のままこう報じるのだが、全国に10店舗と豊富な不動産を持つそごう・西武の企業価値がなぜ8500万円なのか。 この疑問を解消するように、「セブン&アイはそごう・西武の株式譲渡代金が、限りなくゼロとなるところまで逆算して債権放棄させられたのです。その結果が8500万円であり、セブン&アイは株式譲渡損なども合わせて1457億円もの特別損失となりました」と、説明するのは阪中彰夫氏である。 阪中氏は、内外で報道されない政治・経済・金融事情などを『闇株新聞』で発信しており、現在は新しいタイプの情報発信プラットフォームを準備中だ。阪中氏が続ける。 「フォートレスは3メガバンクから約2300億円を借り入れて約2000億円の負債を完済する一方で、ヨドバシにそごう・西武の一等地の資産である西武池袋本店やそごう千葉店、西武渋谷店の不動産の一部を約3000億円で売却します。それでメガバンクの約2300億円を返済すれば、手元に無借金となったそごう・西武と現金1000億円が残るのです」』、「開示資料では「企業価値2500億円」となっていた。それが8500万円となったカラクリは以下のようなものである。 2500億円は約10カ月の交渉過程で、ヨドバシの想定より進出面積が少なくなるなどフロアプランの見直しもあって、減額されて2200億円となった。 一方、そごう・西武の持つ有利子負債は2938億円(2月末)であるが、このうち1659億円(7月末)を融資するセブン&アイに916億円だけ放棄させ、残る負債の約2000億円を全額返済する。さらに今後の運転資金などとして約200億円を留保したため、セブン&アイに支払う株式譲渡代金は8500万円となった――」、なるほど。
・『一等地の「資産狙い」  フォートレスは、後述するように「西武池袋本店の店舗改装を中心に600億円を投じる」という。それを差し引いても、「400億円が手元に残るビッグディール。これだけ見事な強欲ファンドの投資成功例は見たことがありません。ただ、600億円を投じるというのですが、勝算が読めない再生に取り組むとは思えず、再転売の可能性もあります」と阪中氏はいう。 フォートレスは1998年に設立された投資ファンドで約440億ドル(6兆4000億円)を世界で運用する。日本法人のフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパンを率いるのは山下明男氏(61)で、日本政策投資銀行、モルガンスタンレー証券を経てフォートレス入りし、13年から在日代表を務める。近年はゴルフ場最大手のアコーディア・ゴルフグループや不動産会社のレオパレス21を買収。不動産活用による企業再生を得意とする。 そごう・西武の買収も百貨店の再生というより、池袋本店を始めとするそごう・西武が持つ一等地の「資産狙い」である。山下氏は1日付でそごう・西武の代表取締役にフォートレスのマネージング・ディレクターである劉勁氏(39)を送り込み、自身も取締役に就任した。田口広人社長は代表権のない取締役となり執行役員社長として続投。経営と業務執行の分離を明確にした。 セブン&アイがそごう・西武の売却を決断したのが22年2月。そこから入札が始まり、前述のように11月にセブン&アイ取締役会がフォートレスへの売却を決議したものの、ヨドバシカメラの出店が前提となっていることに、地元の豊島区長、商店街、地権者の西武ホールディングス、そごう・西武労働組合などのステークホルダーがこぞって反発し、契約締結は延期が続いた。 約10ヵ月が経過し、これ以上の延期は違約金が発生する事態となって、セブン&アイは強権を発動し、売却に慎重だった生え抜きの林祐二社長を8月1日に解任し、セブン&アイの意を汲む田口氏を社長にして、8月31日の労組ストライキをものともせず、9月1日に売却を断行した。 井坂隆一・セブン&アイ社長の根回し不足と指導力のなさが混乱を生み、決着を長引かせたのは間違いないが、それが結果的にフォートレスのしたたかで強気のディールにつながって、「DAY1(1日目)」で巨額利益を得ることができた。 それにしても、どうして井坂社長はここまで外資にしてやられたのか。そして「儲け」という意味では初日にディールを完了させたフォートレスはそごう・西武をどうするのか。ストライキを初めて打った労組は今後、どう戦っていくのか』、「フォートレス・・・そごう・西武の買収も百貨店の再生というより、池袋本店を始めとするそごう・西武が持つ一等地の「資産狙い」である。山下氏は1日付でそごう・西武の代表取締役にフォートレスのマネージング・ディレクターである劉勁氏(39)を送り込み、自身も取締役に就任した」、「ヨドバシカメラの出店が前提となっていることに、地元の豊島区長、商店街、地権者の西武ホールディングス、そごう・西武労働組合などのステークホルダーがこぞって反発し、契約締結は延期が続いた。 約10ヵ月が経過し、これ以上の延期は違約金が発生する事態となって、セブン&アイは強権を発動し、売却に慎重だった生え抜きの林祐二社長を8月1日に解任し、セブン&アイの意を汲む田口氏を社長にして、8月31日の労組ストライキをものともせず、9月1日に売却を断行した」、「井坂隆一・セブン&アイ社長の根回し不足と指導力のなさが混乱を生み、決着を長引かせたのは間違いないが、それが結果的にフォートレスのしたたかで強気のディールにつながって、「DAY1(1日目)」で巨額利益を得ることができた。 それにしても、どうして井坂社長はここまで外資にしてやられたのか」、確かに「井坂社長はここまで外資にしてやられたのか」、全く情けない限りだ。
・『そごう・西武の売却を急いだ理由  まず指摘すべきは、そごう・西武の売却は「物言う株主」に追い詰められた井坂氏の「個人的事情」から始まっていることだ。 セブン&アイは05年12月、当時、会長兼CEOだった鈴木敏文氏の決断によってそごう・西武を取得した。百貨店からスーパー、コンビニと消費領域をすべてカバーする戦略だった。 百貨店の斜陽は始まっていたが、そごう・西武には28店舗があり、その不動産価値も視野に入れた買収だった。 だが、結果的にセブン&アイの百貨店事業は失敗し、取得から17年度のうち10年度が赤字で特に直近4年度の最終損益は、コロナ禍もあって20年2月期が75億円、21年2月期が172億円、22年2月期88億円、23年2月期が130億円の損失。有利子負債は2938億円に膨らんだ。 セブン&アイは16年途中から井坂体制となったが、21年5月に大株主として登場した「物言う株主」のバリューアクトは、不採算部門のそごう・西武とイトーヨーカ堂の売却を迫っていた。 23年5月の株主総会では井坂氏を含む4取締役の再任を拒否して独自候補を擁立する株主提案を提出しており、「祖業」のイトーヨーカ堂を切れない井坂氏は、なんとしてもそごう・西武の売却を急がねばならなかった。 であったとしても、「ステークホルダー資本主義」という言葉の定着でわかるように、株主の意向がすべてに優先する時代ではないのに、そこを井坂氏は見誤り、一切の根回しを行わなかった。それはそごう・西武労組との関係に象徴されている』、「祖業」のイトーヨーカ堂を切れない井坂氏は、なんとしてもそごう・西武の売却を急がねばならなかった」、「井坂氏」の動機は余りに見えすいている。
・『労組にも街にも説明はなかった  入札が始まった22年2月の段階から、労組は一貫して百貨店事業の継続と雇用の確保を求め、「事前協議を行いたい」と申し入れてきた。 これは労働協約で認められた権利だが、セブン&アイは応じることなく、労組幹部が井坂氏と面談できたのは10月に入ってからで、そこでも詳細は知らされず、結局、労組が概要を知るのは11月11日のフォートレスとの契約締結の発表後だった。 労組ですらそうなのだから、豊島区や地元商店街、西武HDへの事前説明はない。ヨドバシ入居構想が明らかになると、「池袋を芸術の街に」と長年取り組んできた高野之夫・豊島区長(今年2月に急逝)は、「家電量販店は低層階に入って欲しくない」と反発。後藤高志・西武ホールディングス社長(現会長)は、事前説明がなかったことを明かしたうえで「百貨店の持つ情報発信力や文化創造力を活かして頂きたい。なによりステークホルダー全員が参加する協議の場を持ちたい」と述べた。 結局、ステークホルダーが一堂に会する協議の場は3回持たれたが、「納得」にはほど遠かった。その象徴が8月31日に決行された労組ストである。 『日本経済新聞』は、6日付の一面トップでフォートレスの「そごう・西武再建計画」を詳細に書いた。前述の「店舗改装などに600億円」の他の骨子は、現在の10店舗体制を維持して閉鎖する予定はなく、配置転換が生じる可能性はあっても人員削減を今は検討しておらず、収益力拡大のために販路拡大にも取り組む、というものだった。 西武池袋本店売却などで得た豊富な資金でテコ入れを図り、営業体制も雇用も維持するということだが、都心の富裕層向けというコンセプトを持つ店舗はともかく、地方の百貨店が生き残るのは容易ではない。 だからセブン&アイはアクティビストに厳しく詰め寄られた。また、議決権行使会社も「井坂選任に反対」の声を上げた。それだけに井坂氏は、フォートレスに厳しい条件を突きつけられてもそれを飲むしかなく、巨額損失を発生させた』、「井坂氏は、フォートレスに厳しい条件を突きつけられてもそれを飲むしかなく、巨額損失を発生させた」、こじらせた責任の多くは「井坂氏」にあるようだ。「イトーヨーカ堂」との関係は自らが自信を持って弁明すればいい話だ。そのお鉢を西武で晴らそうとするのは筋違いも甚だしい。
・『資本の論理で突っ走ることは許されない  「百貨店というビジネスモデルは終了した」というのが、投資ファンドとしてのフォートレスの本音である。従って「営業体制の維持」や「余剰人員が発生すれば、セブン&アイのほかフォーレストが展開するゴルフ場やホテルでも受け入れる」という約束が果たされるかどうかは保証の限りではない。 そごう・西武売却を巡る騒動は、「労働者にはストライキ権がある」という“当たり前”の事実を教訓として残した。戦後経済成長において労働組合は、終身雇用、年功序列と並ぶ構成要件だった。雇用と賃金に不満があれば労組はストを打ち、経営者側から譲歩を引き出すことで組合員の支持を得た。 しかし官公労を中心に労組が猛威を振るい、75年にスト権を求めるためのスト(スト権スト)を打つなど過激化、政治化していくなかで、しだいに労組は忌避され、存在感を失っていった。 同時に企業別労組の必然的結果として、「会社が儲かれば給料も増える」という理屈で労使は協調路線を取るようになり、労組はますます存在意義を失った。リクルートワークスの調査では6割の人が「労組とは何かがわからない」と回答していた。 そういう意味で61年ぶりのストは画期的であり、支配権を握ったフォートレスは今後、資本の論理だけで突っ走ることは許されない。 目覚めたそごう・西武労組との密な協議は欠かせないし、「店舗と雇用を守る」という方針を簡単に撤回してはならず、メディアはフォートレスの言い分を報じるだけでなく、そごう・西武の百貨店事業と雇用を本当に守るかどうかを監視しなければなるまい』、「61年ぶりのストは画期的であり、支配権を握ったフォートレスは今後、資本の論理だけで突っ走ることは許されない。 目覚めたそごう・西武労組との密な協議は欠かせないし、「店舗と雇用を守る」という方針を簡単に撤回してはならず、メディアはフォートレスの言い分を報じるだけでなく、そごう・西武の百貨店事業と雇用を本当に守るかどうかを監視しなければなるまい」、その通りだ。

第三に、9月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「西武池袋は売却、東急本店は閉店…首都圏の電鉄系百貨店「縮小・撤退ドミノ」の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329464
・『渋谷、新宿、池袋駅で一大勢力を築いた電鉄系百貨店が、大きな転換期を迎えている。東急百貨店が閉店するなど、街の再開発に伴い「縮小・撤退ドミノ」にあるのだ。西武池袋本店では売却・ストライキ騒動も勃発。片や、呉服店系百貨店の代表格・伊勢丹新宿本店は、富裕層戦略で過去最高の売上高をたたき出している。明暗が分かれる理由を多方向から分析してみよう』、興味深そうだ。
・『業績好調でも維持できない!? 都心の電鉄系百貨店は「縮小・撤退ドミノ」  首都圏の中心部にある百貨店は、古くからの呉服の商いを発祥とする「呉服店系百貨店」(三越、松坂屋、高島屋など)と、鉄道会社がターミナル駅に建設した「電鉄系百貨店」(東急、京王など)に分かれる。このうち、渋谷、新宿、池袋駅で一大勢力を築き上げていた電鉄系百貨店が、「縮小・撤退ドミノ」にある。 最近では、渋谷エリアでの「東急百貨店本店」の閉店(2023年1月)が記憶に新しい。1967年開業の同店は、東急の文化事業の核である「Bunkamura」施設とも隣接。帆船をイメージした真っ白い店舗は、近隣の富裕層のショッピング需要を一手に背負っていたが、周辺一帯の再開発によって、いったん更地となる予定だ。なお東急渋谷駅の直上にあった「東横店」も2020年3月に閉店しており、グループのホームタウンといえる渋谷から、東急百貨店の旗艦店が姿を消してしまった。 一方で、「西武池袋本店」のように、百貨店としては一定の業績(2022年度の売上高は1768億円、前年度比14.8%増、国内第3位)を上げていても、変革を強いられる場合もある。セブン&アイ・ホールディングス傘下の百貨店会社、そごう・西武の全株取得を表明した米投資ファンド(フォートレス・インベストメント)は、「表通りを含む約半分のフロアを家電量販店(ヨドバシカメラ)に改装し、百貨店は大幅減床」という改革案を提示したもよう。これにそごう・西武の労働組合が反発し、西武池袋本店が全館ストライキに至ったのは記憶に新しいところだ。 しかし反発もむなしく、そごう・西武の株はフォートレスに売却が完了した。なお、ヨドバシは、池袋と同様に「西武渋谷店」への出店にも意欲を示しているという。 池袋では西武とツートップを成す「東武百貨店池袋店」が、池袋駅西口再開発計画(三菱地所や東武鉄道などが参画)にかかっている。そして新宿に目を向けると、「京王百貨店新宿店」と「小田急百貨店新宿店」にまたがる広いエリアで再開発計画(JR東日本なども参画)が進行中だ。再開発構想「新宿グランドターミナル」の一環ですでに、小田急百貨店新宿店の本館が22年10月に売り場を大幅縮小し、近隣の「小田急ハルク」館内に移転した。なお各社とも、再開発後の新しいビルに百貨店が入るかは明言を避けている。 百貨店という業態そのものが、約30年間で売上高が半減以下(1991年は約12兆円、2020年は約4.7兆円)に低迷している。しかし都心で比べると、呉服店系百貨店の高島屋や三越・伊勢丹が一定の勢力を保っているのに対して、電鉄系百貨店は際立って今後の状況が厳しく、縮小・撤退ドミノに向かっている』、「呉服店系百貨店の高島屋や三越・伊勢丹が一定の勢力を保っているのに対して、電鉄系百貨店は際立って今後の状況が厳しく、縮小・撤退ドミノに向かっている」、なるほど。
・『コロナ禍後の電鉄会社が「百貨店より再開発」を選ぶ事情  鉄道系百貨店と呉服系百貨店、その明暗が分かれる原因をざっくり言うと、「経営の主導権が百貨店そのものにあるか、鉄道会社にあるか」だろう。 鉄道系百貨店はおおむねターミナル駅に直結し、例えば池袋駅なら1日平均乗降客数は約179万人(20年度)で、大量の人流があるエリアの一等地に立地する。それゆえ、たとえこの場所で百貨店が収益を上げていても、鉄道会社にとって「百貨店よりもっと収益がいい」「会社としてのブランドイメージを向上できる」案件があれば、再開発とともに入れ替える判断を下されがちだ。特に近年はコロナ禍もあって小売部門の力が落ちており、百貨店側から意見することは難しい。 先に述べた東急百貨店本店の場合、跡地は「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」の一環として地上36階・地下4階・高さ164.8mのビルが建設される(22年7月21日付け公表文)。入居するのは、海外で観光客獲得にノウハウを持つ「スワイヤー・ホテルズ」が手掛けるラグジュアリーホテル、高級賃貸マンションなど、インバウンドや富裕層に照準を合わせたラインナップとなっている。 同店は近隣の松濤地区などの富裕層の支持が根強いものの、東急電鉄からすると、「渋谷に新たなインバウンドを呼び込み、金を落としてもらおう」「スクランブル交差点で写真を撮って終わり、の状態を改善したい」といった考えもあろうことは想像に難くない。なお、計画では「洗練されたライフスタイルを提案するリテール」という表現で商業施設の入居が伝えられているが、東急百貨店がそのまま入ることはないという。 一方、呉服系百貨店はどうか。多くの場合、自社で株を持ち経営判断の決定権を持っている。例えばJ.フロントリテイリング(大丸・松坂屋の持ち株会社)の場合、長らく業績不振が続いた「松坂屋銀座店」が13年6月に閉店した後、跡地は商業施設「銀座SIX」を据え、J.フロントは手堅くテナント賃料を得る道を選んだ。今その収益はJ.フロントを潤し、旗艦店である「大丸心斎橋店」や「松坂屋名古屋店」の改装、セゾングループから継承したファッションビル・パルコの営業力強化など、今後の生き残りへの原資に充てられている』、「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」では、「入居するのは、海外で観光客獲得にノウハウを持つ「スワイヤー・ホテルズ」が手掛けるラグジュアリーホテル、高級賃貸マンションなど、インバウンドや富裕層に照準を合わせたラインナップとなっている。 同店は近隣の松濤地区などの富裕層の支持が根強いものの、東急電鉄からすると、「渋谷に新たなインバウンドを呼び込み、金を落としてもらおう」「スクランブル交差点で写真を撮って終わり、の状態を改善したい」といった考えもあろうことは想像に難くない」、期待できそうだ。
・『西武百貨店と西武鉄道の特殊な関係 池袋本店は“持ちダマ”で振り回された(電鉄系百貨店の中でも、西武池袋本店は、他と事情が違う。西武百貨店はもともと西武鉄道から分離したセゾングループ傘下にあり、同グループが事実上崩壊した際、そごうと経営統合した上で05年に全株をセブン&アイHDに売却、という経緯をたどっている。つまり、西武鉄道との直接の関係は、とうの昔に切れているのだ。 なお、鉄道とセゾングループの分離は、元はといえば西武鉄道の社内事情(中興の祖・堤義明氏が流通部門を堤清二氏に引き渡した)が発端だ。約3000億円あるそごう・西武の負債も、バブル期に出店した地方店や旧そごう店舗の業績不振の影響が大きい。西武池袋本店は一定の利益を出し続けながら、そうした西武グループの内部事情や、全体の経営改革の“持ちダマ”として振り回されてしまった感がある。 西武ホールディングスの後藤高志CEO社長は、「池袋が家電量販店の激戦区になるのは好ましくない」「百貨店の文化的側面を大切にしたい」などと述べ、その行く末を案じていたようだ。せめて一定数の株を持っていれば具体的な行動に移れるが、全株を売却している以上、アクティビスト(物言う株主)である米投資ファンドの手に渡ってしまった西武池袋本店を、西武鉄道はどうすることもできない。※ただし西武HDは、そごう・西武に土地や建物の多くを貸す「大家」である』、「(電鉄系百貨店の中でも、西武池袋本店は、他と事情が違う。西武百貨店はもともと西武鉄道から分離したセゾングループ傘下にあり、同グループが事実上崩壊した際、そごうと経営統合した上で05年に全株をセブン&アイHDに売却、という経緯をたどっている。つまり、西武鉄道との直接の関係は、とうの昔に切れているのだ」、その通りだ。「西武ホールディングスの後藤高志CEO社長は、「池袋が家電量販店の激戦区になるのは好ましくない」「百貨店の文化的側面を大切にしたい」などと述べ、その行く末を案じていたようだ。せめて一定数の株を持っていれば具体的な行動に移れるが、全株を売却している以上、アクティビスト(物言う株主)である米投資ファンドの手に渡ってしまった西武池袋本店を、西武鉄道は」「大家」としての立場を超えては「どうすることもできない」、「後藤高志CEO社長」はさぞやイライラしていることだろう。
・『呉服店系百貨店は富裕層戦略で勝ち組 電鉄系百貨店から顧客奪取も  東京都心における電鉄系百貨店が縮小する一方、「伊勢丹新宿本店」の22年度の売上高が、バブル期を上回る過去最高(3276億円)を記録した。買い上げ金額上位5%の顧客の購買額が全体の5割を超え、外商の購買額が大幅に上昇したという。まさに富裕層ビジネスで成功し、百貨店では圧倒的な勝ち組だ。 こうした点においても、都心の電鉄系百貨店は、呉服店系百貨店に比べると限られた層への振り切った施策・アプローチが弱いといわれる。また、伊勢丹新宿は東急百貨店本店や小田急百貨店新宿店が握っていた顧客を取り込んでいるとみられ、百貨店業態全体としては縮小しつつも、“脱落組”から勝ち組が顧客を奪う状態がしばらく続くだろう。 翻って西武池袋本店は、数少ない勝ち組に残る実力があるはずだ。明治通り沿いの一等地を含む多くの売り場を、このタイミングで明け渡さなければいけないのは、とてももったいない。従業員の方々が、少しでも納得して働けることを祈るばかりだ』、「西武池袋本店は、数少ない勝ち組に残る実力があるはずだ。明治通り沿いの一等地を含む多くの売り場を、このタイミングで明け渡さなければいけないのは、とてももったいない。従業員の方々が、少しでも納得して働けることを祈るばかりだ」、同感である。
タグ:百貨店業界 (その6)(セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、そごう・西武売却劇は外資ハゲタカファンドの「丸儲け」で決着…「大失敗」のセブン&アイ 明暗分かれたヤバい取引、西武池袋は売却 東急本店は閉店…首都圏の電鉄系百貨店「縮小・撤退ドミノ」の理由) 東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」 「セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正」、なるほど。 「売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ」、なるほど。 確かに、「西武」で人員削減の必要が出た場合、コンビニや「イトーヨーカ堂」などの雇用吸収力は現地的だ。 「井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる」、というのはやはり問題だ。売却してしまうので、「百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかった」のも理解できる。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「そごう・西武売却劇は外資ハゲタカファンドの「丸儲け」で決着…「大失敗」のセブン&アイ、明暗分かれたヤバい取引」 「開示資料では「企業価値2500億円」となっていた。それが8500万円となったカラクリは以下のようなものである。 2500億円は約10カ月の交渉過程で、ヨドバシの想定より進出面積が少なくなるなどフロアプランの見直しもあって、減額されて2200億円となった。 一方、そごう・西武の持つ有利子負債は2938億円(2月末)であるが、このうち1659億円(7月末)を融資するセブン&アイに916億円だけ放棄させ、残る負債の約2000億円を全額返済する。さらに今後の運転資金などとして約200億円を留保したため、セブン&アイに支払う株式譲渡代金は8500万円となった――」、なるほど。 「フォートレス・・・そごう・西武の買収も百貨店の再生というより、池袋本店を始めとするそごう・西武が持つ一等地の「資産狙い」である。山下氏は1日付でそごう・西武の代表取締役にフォートレスのマネージング・ディレクターである劉勁氏(39)を送り込み、自身も取締役に就任した」、 「ヨドバシカメラの出店が前提となっていることに、地元の豊島区長、商店街、地権者の西武ホールディングス、そごう・西武労働組合などのステークホルダーがこぞって反発し、契約締結は延期が続いた。 約10ヵ月が経過し、これ以上の延期は違約金が発生する事態となって、セブン&アイは強権を発動し、売却に慎重だった生え抜きの林祐二社長を8月1日に解任し、セブン&アイの意を汲む田口氏を社長にして、8月31日の労組ストライキをものともせず、9月1日に売却を断行した」、 「井坂隆一・セブン&アイ社長の根回し不足と指導力のなさが混乱を生み、決着を長引かせたのは間違いないが、それが結果的にフォートレスのしたたかで強気のディールにつながって、「DAY1(1日目)」で巨額利益を得ることができた。 それにしても、どうして井坂社長はここまで外資にしてやられたのか」、確かに「井坂社長はここまで外資にしてやられたのか」、全く情けない限りだ。 「祖業」のイトーヨーカ堂を切れない井坂氏は、なんとしてもそごう・西武の売却を急がねばならなかった」、「井坂氏」の動機は余りに見えすいている。 「井坂氏は、フォートレスに厳しい条件を突きつけられてもそれを飲むしかなく、巨額損失を発生させた」、こじらせた責任の多くは「井坂氏」にあるようだ。「イトーヨーカ堂」との関係は自らが自信を持って弁明すればいい話だ。そのお鉢を西武で晴らそうとするのは筋違いも甚だしい。 「61年ぶりのストは画期的であり、支配権を握ったフォートレスは今後、資本の論理だけで突っ走ることは許されない。 目覚めたそごう・西武労組との密な協議は欠かせないし、「店舗と雇用を守る」という方針を簡単に撤回してはならず、メディアはフォートレスの言い分を報じるだけでなく、そごう・西武の百貨店事業と雇用を本当に守るかどうかを監視しなければなるまい」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「西武池袋は売却、東急本店は閉店…首都圏の電鉄系百貨店「縮小・撤退ドミノ」の理由」 「呉服店系百貨店の高島屋や三越・伊勢丹が一定の勢力を保っているのに対して、電鉄系百貨店は際立って今後の状況が厳しく、縮小・撤退ドミノに向かっている」、なるほど。 「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」では、「入居するのは、海外で観光客獲得にノウハウを持つ「スワイヤー・ホテルズ」が手掛けるラグジュアリーホテル、高級賃貸マンションなど、インバウンドや富裕層に照準を合わせたラインナップとなっている。 同店は近隣の松濤地区などの富裕層の支持が根強いものの、東急電鉄からすると、「渋谷に新たなインバウンドを呼び込み、金を落としてもらおう」「スクランブル交差点で写真を撮って終わり、の状態を改善したい」といった考えもあろうことは想像に難くない」、期待できそうだ。 「(電鉄系百貨店の中でも、西武池袋本店は、他と事情が違う。西武百貨店はもともと西武鉄道から分離したセゾングループ傘下にあり、同グループが事実上崩壊した際、そごうと経営統合した上で05年に全株をセブン&アイHDに売却、という経緯をたどっている。つまり、西武鉄道との直接の関係は、とうの昔に切れているのだ」、その通りだ。 「西武ホールディングスの後藤高志CEO社長は、「池袋が家電量販店の激戦区になるのは好ましくない」「百貨店の文化的側面を大切にしたい」などと述べ、その行く末を案じていたようだ。せめて一定数の株を持っていれば具体的な行動に移れるが、全株を売却している以上、アクティビスト(物言う株主)である米投資ファンドの手に渡ってしまった西武池袋本店を、西武鉄道は」「大家」としての立場を超えては「どうすることもできない」、「後藤高志CEO社長」はさぞやイライラしていることだろう。 「西武池袋本店は、数少ない勝ち組に残る実力があるはずだ。明治通り沿いの一等地を含む多くの売り場を、このタイミングで明け渡さなければいけないのは、とてももったいない。従業員の方々が、少しでも納得して働けることを祈るばかりだ」、同感である。
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携帯・スマホ(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年7月24日に取上げた。今日は、(その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる)である。

先ずは、8月12日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/693960
・『予想以上によい決算だったというのが、私の印象です。楽天グループは8月10日、2023年12月期中間決算(1~6月)を発表しました。営業赤字は1250億円(前年同期は1987億円の営業赤字)、最終赤字は1399億円(同1778億円の最終赤字)です。莫大な赤字なのに「よい決算」という理由は、赤字幅が大きく縮小し始めたからです。 楽天グループは、連続赤字に陥って4期目になります。理由は新規参入した携帯電話事業が莫大な赤字を産んでいるからです。ある程度の赤字は計画で織り込み済みだったにせよ、楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした』、「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。
・『足元の「営業赤字」を評価できる理由  ところが総務省の指導でNTTドコモのahamoが20GBで2970円(税込、以下同じ)になるといった具合に、大手携帯会社が格安スマホの料金でサービスを提供する新しい流れができてしまいました。 こうなると20GBで2178円、データ無制限で3280円という楽天モバイルのプランは安いとはいえ劇的にというほどの価格差ではなく、低コストを武器に急拡大を狙うことが難しくなったのです。 本業の2本柱であるインターネット通販とファイナンス事業が好調であるにもかかわらず、こうしてモバイルが足を引っ張る形の赤字決算が続いてきました。 その赤字幅がいよいよ縮小したというのが、大きなニュースです。過去6四半期で営業赤字を並べていくと、2022年の第1四半期(1~3月)が1131億円で、そこから855億円(4~6月)、942億円(7~9月)、786億円(10~12月)、761億円(2023年1~3月)と続いてきたのが、今回の2023年第2四半期(4~6月)では488億円まで縮小しました。 数字としては赤字ではありますが、前年同期比で367億円の利益増です。何より赤字幅を縮小させるといってきたことを、有言実行できたということが評価できると思います。) 決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう。 かなりおどろおどろしい表現をしてしまい恐縮なのですが、実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています。 【2023年8月17日15時追記】有利子負債額を金融事業を除いた数字に修正しました。 これは日本の資本主義の悪い側面といっていいと思いますが、大企業グループの経営がいったん傾き始めると、投資家と金融機関が群がるようにグループの解体を始めます。最近の例でいえば東芝解体がその典型です』、「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。
・『楽天と東芝の危うい共通点  東芝の場合、経営陣による不正会計とアメリカの原子力関連の買収会社の巨額損失で経営が傾いた結果、グループ解体が始まります。 東芝メディカルシステムズはキヤノンに、テレビのレグザは中国ハイセンスに、パソコンのダイナブックはシャープにといった具合に売却されました。稼ぎ頭でもあるフラッシュメモリは、キオクシアとして分社化され外部の資本が注入されます。 その後、資金調達の必要性から本体にいわゆる物言う株主であるファンドを受け入れたことで、東芝はファンドの思惑に沿ってさらに分社化される寸前まで事態が悪化します。そこで登場した政府系ファンドの力を借りて経営を巡る状況が一転し、このたびTOBが成立する見込みになりました。 これ以上の東芝解体の動きは止まると思われますが、歴史のある大企業ですら、いともたやすく解体されていくというのが日本式の資本主義です。 銀行管理下で企業の解体が行われる場合、おいしい事業から順に手放すのが定石です。わかりやすい例を出しますと、ダイエーや西武グループが傾いた際にはスーパー事業ではなくコンビニ事業を売却しています。そして楽天グループでも、同じことが起き始めているのが懸念点です。 具体的にはまず楽天銀行が上場し、次いで楽天証券が上場準備を開始しています。上場というと一見ポジティブなイベントに見えますが、グループの中枢会社が上場するということは、実際には資金繰りの一環で外部資本を受け取ることと引き換えに子会社を切り売りする財務戦略です。) ここまでは既定路線と言える動きなのですが、今回の決算発表で衝撃を与えたのが、楽天ペイ(オンライン決済)事業と楽天ポイント(オンライン)事業を、楽天カード株式会社へ集約するという機構改革です。並列の子会社だった楽天ペイメントを楽天カードの子会社にするとともに、楽天経済圏の中枢を担うポイントの権限を楽天カードに移管するのです。 楽天グループによれば、これはファイナンス事業の相乗効果の向上策だといいます。カード事業とQR決済事業とポイント事業をひとつの組織に一体化すれば、確かに事業戦略には一貫性が生まれるでしょう。 一方で一部メディアはこの再編を巡って「楽天カード株式会社の上場を検討している」と報道しています。私は経済評論家として長年楽天グループについて注目してきた外部の立場ですが、プレスリリースから感じたことは同じです。 ▽傾きかけた大企業の内部で起こること(嫌な話でもありますので私がこれまで経験してきたことを、あくまで一般論として説明させていただきます。大企業が傾きかけたときに関係者は、3つの勢力に分かれます。必死に経営を立て直そうと尽力する人々、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々、そしてこの機に一儲けしてやろうと画策する人々です。 最初に動くのはこの機に一儲けしてやろうと画策する人々で、その典型例はハゲタカファンドだったり、晴れた日にしか傘を貸さないと揶揄される銀行だったりします。あくまで一般論です。こういった人たちにとっては企業が傾くことは好機です。通常よりもずっと安いお金で、経営がうまく行っているグループ会社を手に入れることができるからです。 この人たちは目的を達成するために2番目の、傾いた船から安全な形で逃げ出すことを優先する人々を段階的に篭絡していきます。 「このままだといくら儲けても赤字部門に資金を吸い取られるだけだ」 「全体が赤字なら給料も上がらないだろう。気の毒に思うよ」 「健全な部門なのだから、切り出してしまえば君ならもっとずっと成長させられるだろう」 繰り返しこのような言葉を聞かされるうちに、自分のいる組織はグループから独立したほうがいいと心から信じるようになります。実際、この甘言は真実でもあったりします。ダイエーに残って経営破たんを経験することになった従業員よりも、分離されたローソンの従業員のほうがビジネスパーソン人生としてはよかったかもしれません。) こうして子会社を分離させようという一派が動き始めます。親会社にとって、それが最善だと働きかけるようになります。タフな交渉を続けてもなかなか資金を出してくれない金融機関に比べれば、有力な子会社を上場させればずっとイージーに事業継続のための資金が手に入るでしょう。「そのほうがいいですよね」と経営陣にも囁き続けるわけです。 さて、ここまでが一般論なのですが、楽天グループの場合はどうなのでしょうか? 楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう。 たとえて言えば、仮にセブン&アイからセブン銀行が完全に資本離れするようなことが起きたとしても、セブン-イレブンの戦略に大きな影響はないというのと同じです』、「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。
・『「虎の子」の分離はありえない  一方で楽天カードは違います。楽天市場で買い物をした人が楽天カードで決済する。これがビジネスモデルの両輪で、楽天はひとりの顧客から二度稼ぐことができます。 そしてここに今回、楽天ポイントと楽天ペイが再編の形で加わりました。そうなると4000万ユーザーを擁する楽天ポイント経済圏の未来も楽天カードに委ねられることになりますし、今後の市場拡大が期待されるキャッシュレスも楽天カードの一部門となります。 当然のことながら楽天カード株式会社は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません。 しかし仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します。 ここで楽天ポイントを握っていることが、ハゲタカに有利に働きます。ポイント還元率を絞れば絞るほど楽天市場は弱体化していくでしょうし、足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう』、「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。
・『悪魔シナリオから楽天を守れ  最終的に楽天グループが何らかの形で経営破たんすることをハゲタカは待ちます。最終目的があるのです。それは経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です。 これはあくまで私個人が考える「もし私がハゲタカだったら」という悪魔シナリオです。日本経済では過去にはこんなことも履いて捨てるほど起きてきたのですが、当然ながらこんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう。 この楽天の資本問題は関係者以外にとっての対岸の火事ではなく、日本経済の重要な分岐点だと思うべき大事です。そしてメディアもこの先、変なことが起きないように注視すべき事柄なのです』、「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。

次に、8月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72584
・『赤字を垂れ流し続ける三木谷楽天の末路とは  楽天グループが崩壊過程に入っている。2023年第1四半期(1~3月期)の最終損益は、マイナス825億円。第1四半期としては、4期連続の赤字になった。グループ全体の足を引っ張っているのは、三木谷浩史会長兼社長肝いりのモバイル事業である。インターネットサービスやフィンテック事業は黒字だが、モバイル事業は1027億円の営業損失を計上した。 モバイル事業への巨額投資が響いて、財務も厳しい。楽天グループが今後5年で償還を迎える社債の額は、1兆2000億円。それに対して、23年3月末の手元資金は1175億円と心細い。 投資家の目もシビアである。21年3月、日本郵政が楽天グループに1500億円の出資を行ったときの株価は1245円だった。それが、23年6月末には499円まで下落。株価が半値以下になり、日本郵政は850億円の特別損失を計上せざるをえなくなった。 もっとも、三木谷楽天王国の崩壊はモバイル事業に手を出すずいぶん前から始まっていた。 10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘した。すると、三木谷会長兼社長本人が抗議にやってきた。私は根拠を示しつつ指摘についての説明を述べたが、結局彼は納得いかない表情で帰っていった』、「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いかない表情で帰っていった」、そんなことがあったとは初めて知った。
・『楽天市場とアマゾンの違い  当時指摘したのは、楽天市場とアマゾンの違い。楽天はECの黎明れいめい期である1997年に、当時アメリカで流行していた「ジオシティ」というコンセプトをモデルに、仮想のショッピングモール「楽天市場」をインターネット上につくった。ユーザーが出店している店舗から商品を買い、楽天は手数料で利益を得るビジネスモデルである。 このビジネスモデルの問題点は2つある。1つは物流を握っていないこと。商品を届けるのは第三者依存で、自社ではコントロールができない。 もう1つは、売り上げが立たないこと。商品が売れて取扱高が膨らんでも、楽天市場自身は場所貸しにすぎないので、計上できる売り上げが小さい。 それに対して、00年に日本でEC事業を開始したアマゾンは、自身が企業から商品を買って倉庫に在庫を持つ。このモデルだと物流を管理できて、売り上げも立つ。アマゾンがウォルマートと競い合う世界最大規模の小売業者になったのは、単なるサイバー上の場所貸しにならなかったからである。 三木谷会長兼社長には、ビジネスモデルを見つける才能はある。時代を先取りして、楽天市場というECをつくった嗅覚はさすがだ。しかし、その後アマゾンが出てきたときに、両者のビジネスモデルの違いを理解できなかったのだ。アマゾンの進出時から対抗手段を打っていれば、今ほどEC事業で差をつけられることはなかった。 12年に買収した電子書籍事業Koboも、アマゾンのKindleに大きく後れを取っており、散々だ。 14年にメッセージアプリのViberを買収したが、この狙いは悪くなかった。 流行っているメッセージアプリは、国によって違う。日本ではLINE、イギリスやインドではWhatsApp、アメリカやフランスではFacebook Messenger、中国ではWeChat。そしてヨーロッパ、とくにギリシャやウクライナではViberの人気が高い。 世界で最も利用されているメッセージアプリであるWhatsAppの月間利用者数は20億人。Viberの月間利用者数は2.6億人だが、LINEの月間利用者数が2億人弱ということを考えると、ヨーロッパで健闘しているのがわかる。 メッセージアプリのシェアをイギリスやフランスを含めたヨーロッパ全体で掌握し、勢いそのままに日本へ輸入してLINEを打倒しようと、Viberに目をつけたところまでは良かった。しかし、その後がよろしくなかった。 Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある。買収後にミンスクのオフィスを2度ほど訪問したことがあるが、現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ』、「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがある」、困った性格だ。
・『すぐに結果が出ないと投げ出してしまう  楽天グループの海外展開にも、その傾向がよくあらわれている。楽天グループは、社内公用語を英語にすると発表した10年くらい前から、海外展開を加速させた。当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている。 10年に中国大手IT企業のバイドゥと手を組んで開設した中国版楽天市場「楽酷天らくてん」は、2年後の12年に閉鎖。08年にはECの欧州市場でアマゾンに対抗すべく、欧州拠点としてルクセンブルクに楽天ヨーロッパを置いた。しかし、16年を境に欧州各国からの撤退と縮小が相次ぎ、現在ではフランスでわずかにEC事業を展開しているのみだ。楽天グループの現地法人で今も頑張っているのは台湾くらいで、あとはもう積極的な海外投資をしていない。海外事業の勢いは、最初だけだった。 たとえリーダーが偏ったタイプでも、その下の人たちの足腰が強ければ、事業を回していける。しかし、楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ。 日用品や弁当などの宅配システムを九州で展開している、エブリデイ・ドット・コムという会社がある。私が同社のオーナーをしていた十数年前、楽天から業務提携の打診があり、流通や販売など3つの組織の長が来社して打ち合わせをすることになった。朝9時に私がオフィスで出迎えると、3人はその場でお互いに名刺交換を始めた。同じグループでも交流がないのだ。 さらに驚いたのはその後だ。打ち合わせはそれなりに盛り上がり、3人は意気いき軒昂けんこうとして帰っていった。しかしその後、連絡はなかった。実務をフォローする人が誰もいないし、もともと起案した人は既に辞めてしまっていた。 別件で楽天グループ本社に行ったときも、興味深い体験をした。打ち合わせをしていると、突然モニターに三木谷会長兼社長が映り、「今週の進捗は」と英語で語り始めた。社員は最初の1~2分こそ聞いていたが、そのうち自分の仕事に戻り始めた。英語ではわからない、という人を置きざりにしており、トップとしては求心力が低すぎる。 楽天グループには、創業期から三木谷会長兼社長と苦楽を共にしてきた社員がほとんど残っていない。幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい』、「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。
・『楽天存続の唯一の術はモバイル事業との決別  モバイル事業での躓つまづきも、グループ全体としての足腰の弱さが原因だ。「楽天であれば、NTTドコモなど大手キャリア3社が寡占している国内携帯市場に風穴を開けられる」。三木谷会長兼社長やそのまわりは、そんな思いでモバイル事業を始めたに違いない。 しかし、これこそ現実が見えていない、頭でっかちな人の考えだ。 まず、ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった。 もう1つはカバレッジの問題だ。楽天モバイルは人口カバー率99%とアピールしている。ただ、ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない。 では、楽天グループは今後どうするべきなのか。私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう』、「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
タグ:「仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。 ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。) 私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。 「楽天カード・・・は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません」、 「楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう」、なるほど。 それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう・・・実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています」、なるほど。 「決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。 さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。 「楽天グループにとって計算外だったのは、参入後に政府の政策でスマホ価格が大幅に下げられたことでした。 先行する携帯大手3社よりも低コストにネットワークを構築できる方式を取ったことで、本来であれば楽天モバイルは他社よりも劇的に安い料金でスマホサービスを提供できるはずでした」、なるほど。 鈴木 貴博 氏による「赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ」 東洋経済オンライン (その12)(赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ、大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる) 携帯・スマホ そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。 こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。 そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します」、「足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう」、なるほど。 「経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です」、「こんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 大前 研一氏による「大前研一「楽天モバイルの大赤字は氷山の一角にすぎない」…三木谷会長がたどる最悪の末路とは 楽天衰退の根本原因は10年前にさかのぼる」 「10年前に、私は「楽天のビジネスモデルは今後行き詰まる」と指摘・・・三木谷会長兼社長本人・・・は納得いかない表情で帰っていった」、そんなことがあったとは初めて知った。 「Viberはイスラエル発の会社で、開発拠点はベラルーシのミンスクにある・・・現地社員は「自由にやらせてもらっていてうれしい」と言っていた。自由にやらせているというと聞こえはいいが、要は放置で、これでは宝の持ち腐れだ。とくにViberはLINEのような通話機能を持っているので、早期に日本へ持ち込めば後発のモバイル事業者として楽天が投資に喘ぐこともなかった。 三木谷会長兼社長は、これから伸びるものを見つけるところまでは優秀。しかし、ダイヤの原石を見つけても、磨こうとしないきらいがあるのだ」、「ダイヤの原石を 「当初は世界各国・地域でのビジネス展開を意気込んでおり、有望なマーケットを目ざとく見つけ出して事業を始めた。しかし、すぐに結果が出ないと投げ出してしまう三木谷会長兼社長の短期思考がゆえに、いずれの海外事業も尻すぼみになっている」、「楽天グループは社員たちも三木谷会長兼社長に似たタイプの寄せ集めで、チームとして結束できておらず、機能不全だ」、 「幹部は高い給料で引っ張ってきた高スペック人材が中心だ。彼らは、嫌なら別の会社に転職すればいいと考えていて忠誠心が低い。三木谷会長兼社長に負けず劣らず短期志向なので、足腰も頼りない。 楽天グループは、いわば細い鉛筆を立てて束ねたような組織だ。三木谷会長兼社長が関心を持って見ているうちはまとまって立っているが、手を放すとバラバラと倒れる。これでは事業を太く長く育てていくことは難しい」、なるほど。 「ユーザーは既存の通信会社におおむね満足している。世界の多くの国は1~2社の寡占で、生き残れるのはせいぜい3位まで。4位以降が単独で浮上したケースはまずない。日本は既に3社が存在し、4社目は誰も求めていなかった」、「もう1つはカバレッジの問題だ・・・ユーザーが気にしているのは地理的・・・なカバー率である。たとえば旅行中に災害に遭い、助けを呼ぼうとしたときに、つながらない通信会社とは誰も好んで契約しない。 本来なら基地局を地味に増やすべきだ。しかし、もともと地理的カバー率を軽視していたし、いざその重要性に気づいても、足腰が弱いために基地局の整備が遅々として進まない」、「私が社長なら、楽天モバイルを今すぐあきらめる。厳しいが、それくらい思い切った手を打たないと、会社は存続できない。 楽天グループは、23年7月に楽天証券ホールディングスの上場申請に踏み切ったが、上場で資金調達できるのはせいぜい2000億円程度。年間5000億円の赤字を垂れ流すモバイル事業の穴埋めにならず、焼け石に水だ。 既存の社債は組み直しで急場を凌ぐと思うが、償還までの道のりは険しい。まずは三木谷会長兼社長が頭でっかちの経営をやめて、モバイル事業に見切りをつけない限り、楽天グループに明るい未来はないだろう」、極めて厳しい見立てだ。それにしても、「三木谷会長兼社長の短期思考」は「楽天」に組織としての力を大きく殺いだようだ。遺産が何も残りそうもないのは寂しい限りだ。
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不動産(その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた) [産業動向]

不動産については、本年4月9日に取上げた。今日は、(その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた)である。

先ずは、本年6月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討、そして知った“驚きの事実”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324757
・『少し前に話題になったサブリース。サブリースとは本来、転貸借全般を指す用語ですが、一般には収益不動産の一括借り上げのことをいいます。マンションやアパートなどの賃貸不動産の所有者が、空室リスクなどを避けるため、いったんサブリース会社に不動産を貸して、サブリース会社に客付けやら管理やらの面倒なことをやってもらおうというもので、多くの不動産オーナーが利用している仕組みです。ところが2019年、大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています。あれから数年がたち、現在、全国のサブリース物件所有者の人たちには何が起きているのでしょうか』、「大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています」、これは大変だ。
・『ワンルームマンション購入後は赤字続き 売却もできず苦しむ横浜在住の医師  横浜在住のお医者さんである佐藤さんは言います。 「熱心なワンルームマンションの営業マンに勧められて、2020年に立て続けに神奈川県にあるワンルームマンションを3室買いました。全額銀行借り入れで購入し、サブリースをつけています。本業が忙しいのですが、煩わしい管理などはすべてやってくれるということだったので、サブリースがいいかなと。もちろん、所得税の節税になるという話だったので、税金対策も兼ねて投資しました。営業マンから『これはお医者様専用の投資物件で、医師が自身で住みたくなるようなプレミアムな物件です』と言われ、なんとなく自尊心をくすぐられたのを覚えています」 しかし、購入してから3年間、収支は赤字。借金返済のため、半年ごとに一回、銀行にお金を別の口座から60万円ほど入金して赤字補填をしています。そのため年間の赤字補填額は120万円に上ります。) 「コロナで医療収入も減ったので、結局節税になりましたが、マンション投資も含めたトータルで考えると損したなというのが感想です」 佐藤さんは、赤字の補填をし続けていることを不安に思い、我々の会社に相談に来ました。そして、もしこの物件を売却した場合の査定結果にがくぜんとします。 2020年に1室2500万円の物件を計3室、合計7500万円で購入。諸経費を含めた支払額は8000万円弱でした。佐藤さんはこれを全額ローンで購入しました。 しかし、現在の相場で売却した場合の値段は1室につき2000万円。つまり、1室につき700万円近くの赤字になります。もちろん、借り入れがほぼまるまる残っているので、売却金額が残債を下回る、いわゆる『オーバーローン』状態です。 佐藤さんは、昨今の不動産価格の上昇でこのマンションも上昇しているのかと思っていたのですが、さにあらず。詳細を調べると、たしかに土地の価格は上昇していますが、最近の不動産価格の上昇の恩恵にあずかれず、売却したくてもできない状況に陥っていることがわかったのです。 また、賃料相場を調べてみると、佐藤さんがサブリース会社から受け取る家賃は8万円でしたが、実際は借主からサブリース会社が10万円の賃料をとっていることが分かりました。2万円の収益減です。 サブリース会社に聞いたところ「そういうものなので仕方ないですよ」と言われてしまい、それ以来営業マンから電話はかかってきません。 現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました』、「現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました」、確かにこれでは売却できない。
・『相続したマンションの売却でサブリース契約解除めぐりトラブル  もう一人サブリースで苦しんでいる方をご紹介します。 ある地方都市にマンションを丸々5棟保有している原さん。彼は、2022年にお父さまが亡くなったことで、複数不動産を相続した方です。父が生前の2021年に、2棟売却する契約をしていました。売買契約書まで交わしたものの、収益不動産の2棟引き渡しの前に亡くなってしまいました。 そこで父の代わりに、長男の原さんが相続人として、新しい買い主やその契約を仲介した仲介会社と引き渡しまでのやり取りをすることになったのです。 そもそもこの2棟の売却話をまとめたのが、1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです。 しかし、相続したばかりの原さんは、不動産の仲介を担っていた高齢の社長から「君は素人だし、まだ若い。大丈夫、私に任せなさい」と言われたので、原さんもそれをうのみにしてしまったのです。 この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました。 驚いた原さんは、自ら複数の弁護士に相談をしましたが、いずれの弁護士からも「借地借家法の側面で解約は難しい」と説明されてしまいました。 以下が、そのサブリースの解除条項です。 <第○条 契約の解除> 甲乙(筆者注:所有者とサブリース会社のこと)いずれか一方に契約続行不可能な事由がある場合に限り、3カ月の予告期間をもって相手方に通告し本契約を終了させることができる。また、正当な解約事由がない場合や即時に解約の場合は前条の保証家賃の3カ月分を相手方に支払うものとする。上記条文によると、解除条項があるため、一見、サブリース契約は解除が可能のように見えます。実際、不動産仲介の高齢の社長だけではなく、原さんの父親も建築当初「サブリースにすれば、何もしなくてよい」と管理会社に言われ、かつ上記契約書に書かれている通り「解約できるもの」と認識して、サブリース契約をしました。しかし、相続した人間が望まなくても、サブリースは引き継ぎとなる「止められない契約」なのです。 この物件の買い手は、ある程度不動産投資をしている人だったため、サブリースの解除を求めました。前述のお医者さんの佐藤さんのお話でも触れた通り、本来の家賃は100だとしても、サブリース会社に20中抜きされるため、80ほどしか賃料収入が入りません。買い手としては20損するわけですので、投資家にとってサブリースの継続はメリットがありません。 原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました』、「1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです」、「この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました」、「原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました」、なるほど。
・『不動産所有者に不利益が多い サブリース契約を解約できない理由  売り手である原さんが驚いたのは、サブリース契約が法的によほどの正当事由がない限り解除できないという事実でした。裁判例を確認すると ・よほど切迫した理由がなければ不可 ・自己使用の必要性のみを理由としたサブリース解除は相当困難 ・契約書上の違約は、信頼関係の破壊に至るほどのひどいものでない限り解約不可 という事実が判明します。弁護士の見解も同様で、サブリース物件の売却後、新たな買い手が解除することもできないのです。 当然賃料も下がりますので、売却価格も下がります。売り手としては安い値段で売らざるを得ません。一方でサブリース契約を継続しても、築年数が古くなれば、家賃の下落、修繕費の増加で収支は悪化します。よって、経営の巧拙はもちろんありますが、それよりもサブリースがそもそもの不動産経営のボトルネックというケースが非常に多いのです。 サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。 一般に、消費者契約法などは個人と法人の関係で立場の弱い個人が守られるものですが、サブリース契約ではその逆で、法人が賃借人という立場に基づいて守られ、個人が賃貸人という立場に基づいて不利な立場になってしまっているのです。 面倒な手間をサブリース会社にやってもらうということ自体は、「お客様の手間を解決する商売」として成り立つと思いますが、サブリース契約を一度結んでしまうと更新時も含めて半永久的に解除できません。たとえ解除条項があったとしても、借地借家法と判例によって解除ができず、契約関係が続いてしまうという「沼」なのです。これからサブリース契約をされる方は、そのリスクを認識して契約されるべきだと思います』、「サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。「借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっている」、何故、こんな不当な解釈が横行しているのだろう。

次に、7月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326114
・『アパートなどを所有者から一括して借り上げて入居者に貸すサブリース会社をめぐるトラブルがいまだに絶えない。今回はトラブルに巻き込まれた2人の不動産所有者のケースをもとに、サブリース契約の3つのデメリットについて解説したい』、興味深そうだ。
・『サブリース会社によるさまざまな中抜きの「手口」  サブリースとは、転貸借全般を指す用語で、一般的に収益不動産の一括借り上げのことを指します。マンションやアパートなどの賃貸不動産の所有者が、空室リスクなどを避けるため、いったんサブリース会社に不動産を貸し、サブリース会社に客付けや管理などの面倒なことをやってもらうというものです。今では多くの不動産オーナーが利用している仕組みです。 ところがコロナ前、業界内に激震が走りました。大手サブリース会社が物件の一部で、当初約束した家賃を、約束からわずか数年で、強制的に「引き下げた」ためです。このような目に遭った不動産所有者の中には、銀行借り入れをして不動産を購入した人もいたため、家賃を引き下げで「借り入れと賃料収入との収支がマイナス」になってしまった方も続出しました。 前回の記事で、私がサブリースで苦境に陥った不動産所有者の事例を2つ取り上げたところ、多くの方からの反響をいただきました。そこで今回はもう少しサブリース全般の問題点を掘り下げてみたいと思います。 所有者がいったん、サブリース会社に貸して「後の面倒なことはサブリース会社にやってもらう」という、一見便利に見えるこの仕組み。もちろん商売ですから、サブリース会社(もしくはその関連会社である管理会社)がもうかるようになっています。当然、所有者はサブリース会社に手間賃を払うことになりますので収益は減少します。不動産所有者が払う手間賃とはいわゆる「中抜き」というものです。 そもそも当時話題となったのは「安普請の家(割高な建物)を建てさせられる」という点。コロナ前に話題となった某上場企業の欠陥建築問題はまさにこの話です。つまり高いお金を払って安普請の家を建てさせられる。そして建築後、中抜きが始まります。まずは賃料を業者によって15~20%程度中抜きされます。 サブリース会社は一般の賃借人から例えば10万円の家賃を取ったとします。そして不動産所有者には8万円を支払うことで2万円中抜きできるということです。そして賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。もちろん、サブリース業者に丸投げすることで、クーラーの購入や工事の手配といった手間は省けますので、「まあ、仕方ないよね」と思える人には便利な仕組みだとは思います。しかし、実際には、こうした中抜きの状況について気付いていない所有者が多いようサブリース会社は一般の賃借人から例えば10万円の家賃を取ったとします。そして不動産所有者には8万円を支払うことで2万円中抜きできるということです。そして賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください』、「賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください」、巧みなやり方だ。
・『借地借家法により多くのサブリース契約の解除は困難  このように中抜きされるポイントがいくつもあるというのが、サブリース会社と契約することの第一のデメリットなのですが、第二のデメリットが前回も申し上げた「借地借家法によりサブリース会社が守られている故、サブリース契約を解除できず、半永久的に継続せざるを得ない」というものです。 例えば私の前回の記事を読んだ、サブリース契約をしている賃貸アパートを所有している瀬戸さん(仮名)。彼は遅ればせながらサブリースのデメリットを理解したので、業者に解除を申し立てたところ「解除できない」と強硬に言われてしまい、弊社に相談に来ました。 彼は悲痛な面持ちで次のように説明してくれました。 「なんとなく割高だよな、というのは分かっていたんです。でもそれも手間賃かなと。しかし納得いかないのは、クーラーの取り換えや換気扇の取り換えなどについて、サブリース会社は毎回事後報告なのです。また、私に報告もなく勝手に取り換え代金が引き落とされることも常態化しています。この6月末にも月の締めをチェックしていたのですが、管理会社から送られてきた支払書に、報告された記憶のない『301号、403号 浴室換気扇交換 各々4万6200円』という代金が引かれていました。不審に思い、担当に連絡をしたところ、取り換えをするという連絡は4月に行っていたものの、その後見積書を提出することなく、勝手に発注・取り換えをし、代金を引き落としていたのです」 以下は瀬戸さんに送られたサブリース会社の担当者からのメールの引用です。 お世話になっております。○○(サブリース会社の管理社名)の和田(仮名)です。(中略)浴室換気扇につきましては、4月3日にメールでの不具合報告をさせていただき、交換工事の金額の文章での御見積提出を忘れておりました。大変申し訳ありません。今後このようなことが起こらない様、進捗状況を確認しながらご報告をいたします。「換気扇に関して4万6200円とあったのですが、私の持っている物件の換気扇は昔の換気扇で、よくあるプロペラファン型です。ネットで検索してみたら工事費込みでも1つ1.5万円で交換できるということが分かりました。ああ、ここでも3万円近く中抜きされていたんだなと。そこでサブリース契約の解除を申し出たところ、できませんの1点張りです。知り合いの弁護士に相談しても、サブリースの解除は無理ですよと言われてしまい…」と、瀬戸さんは途方に暮れています。 もちろんお客様の手間を解決するのがビジネスですので、双方納得の上で、サブリース会社が中抜きすること自体は悪ではないと思います。大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます』、「大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます」、なるほど。
・『サブリース付きの物件は売却価格でも不利に  埼玉でサブリース物件を所有する加藤さん(仮名)は、中抜きの実態について、瀬戸さんよりも突っ込んで調べた方です。 「サブリース会社から入ってくる家賃が少ないと思い、サブリース会社に『家賃の一覧を見せてくれ』って言ったんです。当初は『見せられない』と言ってきたのですが、激しいやりとりの末、レントロールというんですか、家賃の一覧表を出してくれました。ところが、どう見ても入居者の家賃が実際の家賃と違うんですよ。家賃の中抜きをしていることを言いたくなかったんでしょうね。そこで、たまたま入居者の1人が私の知り合いだったので、家賃を聞いてみたんですよ。するとサブリース会社が報告した家賃と実際の家賃がやっぱり違っていたんです。わざわざ虚偽のレントロールを作ってきたんですよ」 加藤さんが契約したサブリース会社もひどいですが、さらに問題のある業者も存在します。例えば、設備が壊れてから交換するのではなく、数年に1回、アパート全体の温水洗浄便座やエアコンを定期的に交換することで中抜きをしたりするのです。そして不動産の所有者がそれに気付いても、借地借家法に守られているのはサブリース業者なので、所有者個人はなかなか解除できないという、まさに「沼」に入り込んでいる状況なのです。 そしてサブリース会社と契約する第三のデメリットは、物件の売却に関することです。 不動産の所有者がサブリースの解除を諦め、でも赤字物件を持っていたくないので、物件の売却をしようとします。ところが売却のときも、契約したサブリース会社を仲介しないと当該物件を売却できないということも多々あるのです。不動産を手離したいのなら、仲介手数料を自分たちに払えということです。 なお、サブリースが付いた収益不動産を売却するとき、売却価格も下がるということにも注意が必要です。 売却価格は多くの場合、収益不動産は収益還元法をベースに算出します。 例えば都内23区内の築20年の木造アパート1棟で、駅徒歩10分強、利回りが約5%の物件があったとします。 家賃収入が年間1500万円だとすると、物件価格は一般的に、1500万円÷5%で3億円になります。 しかしサブリースを解除できれば、家賃収入は中抜きがなくなったことで2割ほど増えて1875万円になります。その結果、物件価格は1875万円÷5%で3億7500万円と、大幅に上昇することになるのです。 不動産所有者にとっては当然高値で売却したいでしょうし、サブリース解除は必須となります。 投資で負けるのは情報弱者です。 金融商品などの証券投資であれば、小口化されているので数万円から投資できます。したがって、投資家は少額から始めることで「慣れる」ことができます。しかし、不動産はそうではありません。収益不動産に関しては安くても数百万、普通で数千万、基本的には数億かかる買い物です。 投資家と業者では情報格差が大きいため、投資の初心者にとってサブリースは「面倒なことは全部丸投げ」できて始めやすいように思います。しかし、おいしい話にはそれ相応のデメリットもあります。 個人を守る消費者契約法と異なり、業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています』、「業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています」、その通りだ。

第三に、8月22日付け東洋経済オンライン「オープンハウス、「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/696158
・『「われわれも買収のアプローチをしていたのだが、先をこされた」。あるハウスビルダーの幹部は唇をかむ。 この幹部が言う、買収を狙っていた企業とは、東京や埼玉などで戸建て分譲を展開する三栄建築設計のことだ。「行こうぜ1兆!2023」のスローガンを掲げ、今期に売上高1兆円超えを確実視する、ハウスビルダーのオープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化を目指すことを発表した』、「オープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB・・・を実施し、完全子会社化を目指すことを発表」、なるほど。
・『元社長が暴力団員に金銭を供与  三栄建築については、元社長が暴力団員に金銭を供与していたとして、東京都公安委員会から暴力団排除条例に基づく勧告を受けていた。新たな体制で、経営の建て直しを図る。 オープンハウスは8月17日から9月28日まで、1株当たり2025円で三栄建設株に対してTOBを実施する。買い付け代金は429億円。三栄建築株の63%超を保有する元社長の小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する。 三栄建築の2022年8月期業績は売上高1390億円、営業利益128億円。買収が完了すれば2024年9月期から、オープンハウスの業績(2023年9月期売上高1兆1300億円、営業利益1410億円計画)に、三栄建築の業績が上乗せされる。 三栄建築の純資産額は611億円(2023年5月末時点)と買い付け代金とは差があることから、2024年9月期に負ののれん特別利益が計上される可能性も高い。) 三栄建築については、「安定していてよい会社」(ハウスビルダーの幹部)と評価する関係者が多い。「戸建て業界のさまざまなコンテストの受賞実績があるなど、デザイン力の高いことで有名」(別のハウスビルダーのベテラン社員)。 経営トップが暴力団員と関わりを持っていた同社は、2021年後半あたりから株価が低迷していたこともあり、複数の企業が三栄建築の買収に関心を持っていたと見られる。ハウスビルダー幹部は次のように語る。 「戸建て販売のシェアを上げるチャンスだったこともあり、当社も三栄建築側に『資本参加してもいい』という話をしていた。三栄建築は、ビッグモーターとは違う。創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」』、「買い付け代金は429億円」と「純資産額は611億円」を大きく下回るので、「負ののれん特別利益が計上される可能性も高い」、なるほど。「創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」、その分が「負ののれん」になっているようだ。
・『あの「モノ言う株主」もTOBを画策  今年7月には、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた。 ハウスビルダーやアクティビストの思惑が入り交じり、「買収争奪戦」の様相を呈していたが、混乱する事態にはならなかった。三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である三井住友銀行が、「橋渡し役になった」(ハウスビルダーのベテラン社員)ことで、オープンハウスの買収スキームがまとまったからだ。「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」(別の業界関係者)。 小池氏からオープンハウス側に株式譲渡の打診があったのは今年6月24日。オープンハウスは、三栄建築が設置した第三者委員会の調査報告書などを確認したうえで、8月16日に買収を決定した。) 三栄建築の小池氏とオープンハウスの荒井正昭社長は、個人的なつながりもあった。両者は業界団体である日本木造分譲住宅協会の理事を務める(小池氏は2022年11月辞任)。同じく理事であるケイアイスター不動産の塙圭二社長を含めて、「3人で食事をすることもあるなど仲が良い」(ハウスビルダーの幹部)と言われる。 こういった経営トップ同士の関係も、買収スキームがまとまる要因になったと考えられる』、「香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた」、「三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」、さすが三井住友銀行の動きは素早い。
・『解体工事代金の一部が住吉会系の暴力団員に  オープンハウスが8月16日に公表した「株式会社三栄建築設計株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」によると、小池氏と暴力団員との関係は「少なくとも20年以上の長期にわたるもの」とされる。 暴力団員の便宜を図ったり、トラブルの交渉を委ねたりしていていた。2021年3月には、解体工事を発注した業者に対する工事代金として、小切手を指定暴力団の住吉会系の暴力団員に対して交付し、利益を供与した。 そして2022年9月に警察当局により、小池氏と他3名が会社法違反(特別背任)容疑で捜索を受ける。この動きをうけて、小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」(債務者がこれ以上は返済を待てないと残金の一括返済を求める通知)を受けていた。 一方、オープンハウスはこれまで、「攻め」の経営で業容を拡大してきた。「M&A(企業の合併・買収)をまとめるのがうまい」(ハウスビルダーの幹部)とされ、2015年にはアサカワホーム(現オープンハウス・アーキテクト)、2018年にはホーク・ワンを完全子会社化、そして2021年1月にプレサンスコーポレーションを子会社化した。 足元の業績も好調だ。戸建て、マンション、不動産開発の全セグメントで業績が拡大。過去最高純利益を更新中で、財務基盤も厚い(2023年6月末自己資本比率33.7%)。 三栄建設が設置した第三者委員会による報告書では、小池氏と暴力団員とは複数の取引があったが、元社長とそのほか3人の元従業員を除き、「暴力団員と直接関わりを持った人はいなかった」とされる。 「小池さんと、ほかの3人が反社会的勢力との付き合いがあったが、4人ともすでに会社を辞めている。小池さんや、彼のファミリーが所有していた同社株式もすべて買い取るため、小池さんの影響力を排除することができる。これらにより(暴力団員との関係が)クリアになる」(オープンハウスのIR担当者)としている。 オープンハウスの戸建ては「地味なデザインが多い」(業界関係者)と指摘されることもあり、デザイン力の高い三栄建築の戸建てがラインナップとして加わる意味は大きい。また資材調達などの面で「スケールメリットが発現する」(IR担当者)。こういった相乗効果を期待して、オープンハウスは買収に踏み切った』、「小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」・・・を受けていた」、のであれば、三井住友銀行も尻に火がついた緊急事態だったようだ。さすがと褒めたのは取り消すこととする。
・『買収成立まで一波乱の可能性も  ただ、TOBがすんなりと成立する保証はない。三栄建築を1代で売上高1300億円をたたき出す企業に育てた小池氏だが、「おぼっちゃま気質で、Jリーグチームのスポンサーになるなどいろんなところに首をつっこみたがる」(ハウスビルダーの幹部)と言われる。 この小池氏については、「オープンハウスへの株式譲渡には、本音ではいまも納得していない」(別の業界関係者)との見方もある。買収成立まで、一波乱あるかもしれない』、「小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する」、予定ではあるが、「小池氏」は「本音ではいまも納得していない」、いまさら「小池氏」の打つ手は限られている筈だ。どう出てくるのか、要注目だ。
タグ:不動産 (その11)(不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討 そして知った“驚きの事実”、情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態、オープンハウス 「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた) ダイヤモンド・オンライン 江幡吉昭氏による「不動産会社を信じて「8000万円マンション投資」の医師…赤字続きで売却検討、そして知った“驚きの事実”」 「大手サブリース会社で問題になったのは、当初約束した家賃を、数年後強制的に『当初家賃から引き下げられた』所有者が全国で相次いだという事例です。所有者に銀行借り入れがある場合、家賃を引き下げられると「借入との収支がマイナス」になってしまう方も多く存在しています」、これは大変だ。 「現状では年間の赤字補填額は120万円。一方で売却できたとしても1室につき700万円の損。どちらにも進むことができない状況です。 さらに追い打ちをかけるのが消費税です。佐藤さんは消費税の課税事業者だったため、マンションを売却した場合、消費税が10%かかります。つまり、一室につき200万円、3室で計600万円も追加でかかるというわけです。ただでさえ「損切り」なのに、プラス600万円の消費税がかかるということで、売却をストップすることにしました」、確かにこれでは売却できない。 「1人社長である不動産仲介会社の高齢の社長。彼は高齢のため、現在の宅建業者としてのルールを守っておらず、トラブルを引き起こします。その中でも最もひどかったのが、買い手にサブリースの物件であるということを説明せず、契約まで済ませてしまったことです。通常は契約時に説明すべきことであり、初歩的なミスです」、 「この社長は「サブリースの解除条項が契約書にあるから解約できる」と踏んでいたのです。 しかし、その後、サブリース会社から原さん宛てに内容証明郵便が送られてきて、そこには「たとえ売却を理由としても、それは正当事由ではないのでサブリースは継続であり、たとえ正当事由があっても違約金を払うもの」と書かれてありました」、 「原さんのケースは最終的に、サブリース会社の社長が、上記法律を盾に原さん、仲介会社の高齢社長、さらには買い手にまで、強硬な姿勢を崩さぬまま押し通し、サブリースのまま引き渡すということで、妥協の決着となりました」、なるほど。 「サブリース契約を取り交わすときは「一括借り上げで面倒なこともないですよ」という売り文句がよく言われるようです。しかし、そもそも建築コストも割高、賃料も10~20%中抜きされる、さらに途中で賃料が減額される、エアコンの交換や法定検査などでサブリース会社の利益を乗せて所有者に費用が請求される、かといって契約は解除できない、という泥沼に入り込んでしまうケースが少なくないのです。 それほどまでに不利益なサブリース契約を法的に解除できない理由はなぜでしょうか。それは、借地借家法によりサブリース会社が守られているという背景があります。 借地借家法は不動産の賃借人を守る法律で、通常は「所有者→実際の入居者(賃借人)」という関係なのですが、サブリース契約では「所有者→サブリース会社(賃借人兼転貸人)→実際の入居者(転借人)」という構図になります。 借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっているのです。 「借地借家法により、賃借人であるサブリース会社が守られ、所有者の立場が弱いという、おかしな状況になっている」、何故、こんな不当な解釈が横行しているのだろう。 江幡吉昭氏による「情報弱者をカモにする不動産「サブリース契約」あまりにエゲツない“中抜き”の実態」 「賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。 実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。 つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。に思います。また、受水槽に関する法定点検費用なども当然中抜きされますのでご注意ください 「大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます」、なるほど。 「業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています」、その通りだ。 東洋経済オンライン「オープンハウス、「暴力団に関与」同業買収の背景 ライバル企業やアクティビストも狙っていた」 「オープンハウスグループは8月16日、この三栄建築にTOB・・・を実施し、完全子会社化を目指すことを発表」、なるほど。 「買い付け代金は429億円」と「純資産額は611億円」を大きく下回るので、「負ののれん特別利益が計上される可能性も高い」、なるほど。「創業者で元社長の小池信三氏と一部の幹部が反社会的勢力との関係があっただけで、組織全体は悪くない。経営トップを入れ替えて、再成長を目指すシナリオが描けた」、その分が「負ののれん」になっているようだ。 「香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントも三栄建設に対して、TOBを検討する提案書のドラフトを送っていた」、「三栄建築とオープンハウスの両社の主要取引行である「三井住友銀行は、11月に予定される三栄建築の定時株主総会を乗り切れない(小池氏が取締役として選任されない)と判断し、一刻も早く手を打つ必要があると、動いたようだ」、さすが三井住友銀行の動きは素早い。 「小池氏は同年11月に代表取締役を辞任。今年6月20日には、東京都公安委員会より東京都暴力団排除条例に基づく勧告を受ける。 この間、金融機関の融資姿勢が極めて慎重になり、6月26日には取引金融機関の1行から、融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するとして、「期限の利益の喪失通知」・・・を受けていた」、のであれば、三井住友銀行も尻に火がついた緊急事態だったようだ。さすがと褒めたのは取り消すこととする。 「小池信三氏とは、公開買付公募契約書を締結している。この公開買い付けの成立後、スクイーズアウト(少数株主から強制的に株式を取得する手法)を実施し、完全子会社化する」、予定ではあるが、「小池氏」は「本音ではいまも納得していない」、いまさら「小池氏」の打つ手は限られている筈だ。どう出てくるのか、要注目だ。
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鉄道(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も) [産業動向]

鉄道については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も)である。

先ずは、本年5月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322125
・『千葉県・東葉高速鉄道が、早くて2028年度にも資金ショートする可能性が取り沙汰されている。多額の長期債務残高があり、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているからだ。その原因を突き詰めると、建設前の「鉄建公団」の枠組みにある。最近の金利上昇も“泣きっ面に蜂”状態で、返済にはさらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ』、どうしてそんなことになったのだろう。
・『早くて2028年度にも「資金ショート」  「鉄道会社としての売り上げは年間130億円以上」「1日12万人以上が利用」「営業利益は年間33億」――。千葉県八千代市と船橋市を通る「東葉高速線」を運営する東葉高速鉄道は、これらの数値だけ見れば経営が順調そうに思える。 しかし同社は、早くて2028年度にも「資金ショート」する可能性がある。長期債務残高が2356億円あり、その返済はおろか、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているのだ。 その原因は、「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある。東京メトロ東西線と相互直通運転し、都心への通勤輸送を担う東葉高速線の利用状況は好調であるものの、コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.  5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている。 東葉高速鉄道は、なぜこうした経営状況に陥っているのか。また、利用者から「高い」と言われる運賃は、なぜ高いのか? まずはこれまでの経緯をたどってみよう』、「「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある・・・コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている」、「コロナ禍前に行われていた元本返済」が止まった理由は何なのだろ。
・『免許申請から開業まで22年かかり建設費用が3倍に  東葉高速鉄道が開業したのは1996年。しかし免許の申請が行われたのは74年で、工事の大幅な遅れが建設費用の増大につながった。 74年の免許申請は営団地下鉄(現在の東京メトロ)によって行われ、当時は955億円の事業費(建設費など)を見込んでいた。しかし並行する京成電鉄などの事情も絡み、営団は免許を取り下げ、中野駅~西船橋駅間を東西線として開業した。営団は東葉高速鉄道に出資した上、「乗り入れ」という形の関与となる。 その後80年には「日本鉄道建設公団(以下:鉄建公団、現在のJRTT)」が工事を行い、千葉県や船橋市、八千代市などが出資する第三セクターが設備を引き取って運営する、現在の東葉高速鉄道が成立した。そうしてようやく84年に着工を果たす。 しかし、用地買収の交渉は遅々として進まなかった。通常ならここで「土地収用法」に基づき、裁決手続きの上で行政代執行となるはずだが、この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す。 そしてこの期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」(建設中の資金調達にかかる利息)や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった』、こんなに遅れたものを取上げるには、経済性の見込みの変化などによほどの注意が必要だ。
・『無理があった「公団P線方式」での建設  鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う。 このスキームは経営体力のある大手私鉄の新線(東急田園都市線など)で頻繁に用いられた。一方、経営能力に乏しい第三セクター会社にも適用され、業績低迷とともに支払いに苦しむ事例が続出した。例えば、92年に開業した千葉急行電鉄(現在の京成千原線)はたった6年で経営破綻した。自治体のみならず、出資した京成電鉄も大きな損害を負うことになった。 当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ。 最近の金利上昇により、東葉高速鉄道の返済計画には、さらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ。21年度の約12億円の利払いは、リーマンショック後の超低金利が前提となっている。そうなる以前は、年間50億円以上の利払いを行っていた時期もある。返済内容として、金利が0.1%変動しただけで、返済金額が数億円も上振れする可能性があるという』、「当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とはとんでもない話だ。
・『鉄道建設と資金調達に変化、東急・相鉄直通線は?  東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている。どういったことか、各地の事例を見てみよう。 23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる。2社の営業利益を合計した8年分に相当する額だ。なお、東急・相鉄直通線の加算運賃も現行の範囲では済まなかっただろう。 05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している』、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる」、安易に「P線方式」で先送りしたことが、現在の窮状につながったようだ。
・『株主である自治体が国に支援を要請へ  東葉高速鉄道は、西船橋駅~東葉勝田台駅間(16.4Km)の運賃で640円、1カ月の通勤定期で2万6890円という、距離の割に高い運賃が問題視されている。 千葉県内では、北総鉄道が通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%も大幅値下げした(22年10月1日)。同社は「北総線・成田スカイアクセス」など成田空港への輸送で利用が上向いたことから、20年前には450億円もあった累積損失の解消を見込んでいる。片や、東葉高速鉄道の返済金額はその数倍とあって、なかなか値下げに踏み切れない。 3月20日、東葉高速鉄道に出資する千葉県・八千代市・船橋市は、国土交通省に対して、同社への「抜本的な支援策」を求める申し入れを行った。出資者による財政支出は500億円に上っているが、自治体のみによる支援には限界があるとして、踏み切ったもよう。これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」(裁判外紛争解決手続。私的整理の一つ)で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた。 東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ』、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、同感である。

次に、5月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675824
・『ETR252型「アルレッキーノ」――欧州の鉄道に関心のある人でも聞き慣れない名前かもしれない。 だが、昭和世代の乗り物好きなら乗り物図鑑の中で一度は目にしたことがあるであろう、前面展望車両の元祖とも言うべきETR300型「セッテベッロ」といえば、ご存知の人も多いのではないだろうか。 通常は車体前部に設ける運転台を屋根上へ置き、その代わりに前方を眺められる展望席を設けた画期的なデザインで、あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車、と言っても過言ではないだろう』、「あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」とは興味深そうだ。
・『錆びて朽ち果てた名車  ETR250型アルレッキーノは1960年、そのセッテベッロの増備車として同年に開催されたローマオリンピックの観客輸送のため、ETR251~254型の4両編成4本が製造された。オリンピック終了後は、イタリア国内の主要都市間を結ぶRapido(特急列車)で使用されていたが、1990年代に入ると徐々に定期運用から外され、主に臨時列車やチャーター用に使用された。 だが、その回数も徐々に減っていき、ついに保留車両として完全に運用から退くことになった。4本造られたうち、第2編成のETR252型を除いた3本は1999年までにすべて解体されてしまった。残ったETR252型も、海からの潮風が吹くアンコーナ駅構内に長期間野ざらしの状態で放置され、車体は錆びて朽ち果てた状態となった。 転機となったのは2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ。車両は同財団によって速やかに回収され、ひとまず盗難や落書きなどの被害から守るため建物の中へ収容した。資金のメドが立った2016年に、修復を請け負う民間企業の工場へ移送され、すぐに動態保存へ向けた修復工事が始まった。 ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した』、「長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した」、「海からの潮風が容赦なく吹き付けた」とは過酷な環境だ。
・『3年かけ修復完了、直後にコロナ禍が…  内装はオリジナルの状態を極力再現するため、シート生地は現代の基準を満たしつつ、当時の素材を忠実に再現。内壁に使う化粧板なども当時の色彩を保っている。その一方で、本線上を運行するにあたって現代の基準に適合させる改造も行われている。 例えば信号保安装置には、イタリアの主要幹線で採用されている安全性の高いSCMTシステムを搭載、空調装置は最新のものへ交換し、各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年だった。お披露目は同年6月27日、ローマで開催されたイタリア鉄道(FS)グループの観光計画発表の場で行われた。すぐに一般向けの公開運転がスタートすることが期待されたが、間もなく世界はコロナ禍によって大混乱へと陥り、運転再開は無期限休止の状態となった。 2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた。最初の運行は2021年10月3日、ボローニャ―ローマ間で実施され、チケットは発売開始と同時に完売した。その後、今年2023年に至るまで、年に数度の一般向け公開運転や、チャーター運用などに使用されている。) 鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる。こうした車両のメンテナンスには、熟練の技術者が必要不可欠となるが、若い技術者を育てなければ恒久的な維持管理は難しくなる。もちろん、ただ技術を教えるだけではなく、その技術者が一人前になった後、その技術だけで生活ができなければ、いずれなり手はいなくなってしまうし、その技術者が定年を迎えるときまでに後継者を育てなければ、その技術は潰えてしまうことになる』、「各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年」、「2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた」、「鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる」、「アルレッキーノ」を「動態保存」している「イタリア」も大したものだ。
・『相当な資金が必要な「動態保存」  部品の確保もまた、今後は重要な課題となってくるだろう。古い車両は、実は技術さえ継承できれば修理や整備は何とかなる可能性があるもので、昔の家電製品のように「叩けばなんとかなる」ではないが、ある意味で言えばスパナやハンマーなどがあれば直せるものが多い。 だが近年、特に半導体技術を使うようになった1970~1980年代以降の車両の場合、部品の交換以外に修理する手段がなくなるため、廃車となった車両から保守用部品を抜き取って保管する必要が生じる。そして、部品が枯渇した段階で修理不能となるため、装置そのものを最新の装置へ換装する以外に修理する手段がなくなる可能性もある。 つまり車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある。ファンがいくら声を上げたところで、ない袖は振れないのはやむをえないことだ。) では、一度はスクラップ寸前の状態となった1960年代の車両を通常の運行ができる状態にまで完全に復元した、イタリア鉄道財団の財源はどうなっているのだろうか。 イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある』、「車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある・・・「イタリア」では「イタリア鉄道財団」が担っているようだ。
・『政府が保存をバックアップ  民間からの寄付については、筆者も一度財団へ寄付を申し出たことがあるが、個人からの少額の寄付は受け付けていないようで、今のところは企業などからの大口の寄付で賄われているようだ。 なお、2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い。 FS財団では現在、冒頭で触れた世界的に有名なETR300型セッテベッロのほか、1957年に運行開始した国際特急TEE用のALn442-448型気動車、数々の超特急を牽引したE444型高速旅客用電気機関車などの完全復元を目指して修復工事が進められている。これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない』、「イタリア」は鉄道に限らず、歴史的遺産の保存・修復に膨大なエネルギーを費やしている。鉄道もこの一環のようだ。

第三に、7月12日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/685797
・『日本で初めて全線を新設するLRT(次世代型路面電車)、芳賀・宇都宮LRTは2023年8月26日の開業だ。新設の路面電車は75年ぶりとあって、鉄道ファンだけでなくその動静に関心を寄せる人々は少なくないだろう。宇都宮市と隣接する芳賀町という2つの自治体にまたがる路線という点も注目すべきポイントだ。また、JRや東武鉄道への乗り入れの可能性も考慮し、軌間はこれらの鉄道と同じ狭軌(1067mm)で敷設されている。 一方、トラム(路面電車)の先進地である欧州には、自治体どころか「国」をまたいで走り、かつ路面の軌道から在来線鉄道に乗り入れて線路上を爆走するトラムがある。そんなユニークなトラムを紹介したい』、「ユニークなトラム」とは興味深そうだ。なお、「宇都宮市」の「トラム」は軽微な事故を起こしたようだ。右折禁止を無視して右折しようとした乗用車がぶつかってきたようだ。
・『ドイツ南部を走る「国際トラム」  国をまたいで走るトラムがあるのは、ドイツ南部ザールラントの中心都市・ザールブリュッケン(Saarbrücken)だ。ここを走るトラム「ザールバーン(Saarbahn)」は1997年に開業。現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている。 もともとザールブリュッケンには路面電車が存在したが、モータリゼーションの影響などで1965年に全線廃止となり、その後の市内交通はバスが担っていたが、1990年代に入ってトラムの整備案が浮上。市内中心部は併用軌道、郊外は鉄道線に乗り入れて運行するという形態で整備することとなった。このようなスタイルは「トラムトレイン」と呼ばれる。 北側は、最初の開業が19世紀後半にまでさかのぼる「レーバッハ・フォルクリンゲン線(Bahnstrecke Lebach–Völklingen)」につながっている。同線は1985年をもって一旦旅客運行を終了し、その後は保存鉄道として不定期に列車が走っていた。2010年代に入って復活構想が持ち上がり、2014年にザールバーンと直結した。同区間は非電化区間のまま放置されていたため、ザールバーンとの接続に伴い、市街地区間と同じ直流750Vで電化された。 一方、ザールブリュッケンの市街地から南に向かう路線はやはり途中でドイツ鉄道(DB)の在来線ザールブリュッケン・サルグミーヌ線(Bahnstrecke Saarbrücken–Sarreguemines)へと乗り入れる。こちらは1997年の開業時から直通している。電化方式はザールバーンと在来線とで異なっており、在来線側は交流1万5000Vで電化されている。そのため、車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている』、「現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている」、「車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている」、なるほど。
・『終点はフランスの街  そして、ザールバーンの南端の終点であるサルグミーヌ駅は、国境を越えた先のフランス国内にある。そのため、ドイツのトラム車両がフランス国鉄(SNCF)の駅に入り込むという不思議な光景が見られる。 もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ。 車両はボンバルディア(現・アルストム)製の「フレキシティ・リンク」と呼ばれるタイプで、開業時に導入された。車内の約半分のスペースが低床構造となった部分低床車で、鉄道線と路面電車を直通する車両としては世界初の低床構造を採用した車両でもある。路面電車といっても3車体で全長は40m近い大型車両だ。) 欧州は一般の鉄道もプラットホームが低いが、市街地の併用軌道区間はそれよりも低いため、両方のプラットホームに対応すべく乗降扉の下側には併用軌道での乗降時に開く「収納式ステップ」が設置されている。 ザールバーンの車両は市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう。 多くの国境で出入国審査の必要ない欧州では、列車に乗っていて気づけば国境を越えていたということは珍しくないが、鉄道線に乗り入れているとはいえ、路面電車の終点が隣国というのは珍しい』、「もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ」、「市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう」、「途中から時速100kmで爆走」、知らなければ驚くだろう。
・『環境配慮の交通機関  近年、欧州ではトラム網の増強が盛んに行われてきた。温暖化対策としての二酸化炭素排出量削減や、公共交通中心の街づくりといった狙いで、かつて廃止した都市やもともとトラムがなかった街での整備も多い。日本では基本的に路面電車の編成超は最大30mまでに抑えられているが、欧州のトラムはザールバーンも3車体で40m近く、さらに他都市でも5車体や7車体、複数編成をつないで走るケースもある。1編成当たりの乗車定員も多い。 日本でも富山のLRTや福井のえちぜん鉄道・福井鉄道での路面電車タイプの車両による乗り入れなど最近は路面電車をめぐる動きが増えてきている。日本では「国際路面電車」は無理だが、環境意識が高まる中、芳賀・宇都宮LRTに次いで、日本でもLRTが積極的に導入される日は来るのだろうか』、前述の「宇都宮LRT」の事故は「LRT」には責任はない。日本でも地方都市に広がってほしいものだ。
タグ:鉄道 (その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?、大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も) ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」 どうしてそんなことになったのだろう。 「「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある・・・コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている」、「コロナ禍前に行われていた元本返済」が止まった理由は何なのだろ。 こんなに遅れたものを取上げるには、経済性の見込みの変化などによほどの注意が必要だ。 「当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とはとんでもない話だ。 「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる」、安易に「P線方式」で先送りしたことが、現在の窮状につながったようだ。 「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、同感である。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」 「あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」とは興味深そうだ。 「長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した」、「海からの潮風が容赦なく吹き付けた」とは過酷な環境だ。 「各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年」、 「2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた」、 「鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる」、「アルレッキーノ」を「動態保存」している「イタリア」も大したものだ。 「車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある・・・「イタリア」では「イタリア鉄道財団」が担っているようだ。 「イタリア」は鉄道に限らず、歴史的遺産の保存・修復に膨大なエネルギーを費やしている。鉄道もこの一環のようだ。 さかい もとみ氏による「大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も」 「ユニークなトラム」とは興味深そうだ。なお、「宇都宮市」の「トラム」は軽微な事故を起こしたようだ。右折禁止を無視して右折しようとした乗用車がぶつかってきたようだ。 「現在の運行距離は全長44kmで、全体の43駅のうち23駅はザールブリュッケン市内のトラムとして路面の併用軌道を走るが、路線の南北で鉄道の在来線に乗り入れている」、「車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている」、なるほど。 「もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ」、 「市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう」、「途中から時速100kmで爆走」、知らなければ驚くだろう。 前述の「宇都宮LRT」の事故は「LRT」には責任はない。日本でも地方都市に広がってほしいものだ。
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エネルギー(その12)(《特捜部が家宅捜索》千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い、秋本衆議院議員だけではない…自民党の総理経験者や閣僚の意向もあって起きた「洋上風力発電をめぐる汚職事件」、「ガソリン価格200円超え」は目前に…政府が「トリガー条項」発動を決められないワケ) [産業動向]

エネルギーについては、本年5月21日に取上げた。今日は、(その12)(《特捜部が家宅捜索》千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い、秋本衆議院議員だけではない…自民党の総理経験者や閣僚の意向もあって起きた「洋上風力発電をめぐる汚職事件」、「ガソリン価格200円超え」は目前に…政府が「トリガー条項」発動を決められないワケ)である。

先ずは、本年8月5日付け文春オンライン「特捜部が家宅捜索》千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/64865
・『8月4日、東京地検特捜部は、自民党の秋本真利外務大臣政務官(47)に風力発電会社「日本風力開発」から不透明な資金提供を受けていた疑いがあるとして、衆議院第一議員会館内にある秋本氏の事務所に家宅捜索に入った。同日、秋本氏は外務政務官を辞任した。 秋本氏を巡っては、これまで「週刊文春」が複数の疑惑を報じてきた。当時の「週刊文春」のスクープ速報を公開する。(初出:週刊文春 2023年3月9日号 年齢・肩書きは掲載当時のまま) 秘書給与法違反の疑いが浮上している秋本真利・外務大臣政務官(47)が、国会での“想定質問”を、外務官僚である事務秘書官に作成させていた疑いが強いことが、「週刊文春」の取材でわかった。“想定質問”を添付した事務秘書官から秋本氏へのメールを入手した。自身のスキャンダルという政務について、事務方の官僚を使うことに疑問の声が上がりそうだ』、「自身のスキャンダルという政務について、事務方の官僚を使うことに疑問の声」、確かにやり過ぎだ。
・『「週刊文春」が入手した事務秘書官のメール  秋本氏は2012年に千葉9区から初当選し、現在、当選4回。昨年8月の内閣改造で、外務大臣政務官に就任した。再生可能エネルギー事業の推進に熱心で、河野太郎デジタル相の最側近としても知られている。 「週刊文春」2月2日発売号では、秋本氏の地元事務所が無許可で市街化調整区域内に建築され、違法状態にあった旨を報道。「週刊文春」2月9日発売号では、再生可能エネルギー企業関係者からの献金を巡って国会で虚偽答弁をした疑いを報じた(秋本氏は「法的には何ら問題ない」などとしている)。 さらに「週刊文春」2月16日発売号で報じたのが、秘書給与法違反疑惑だ。政策秘書・小林亞樹氏と私設秘書・C氏の個人会社が締結した業務委託契約書などを基に、本来は事務所が負担すべきC氏の給与を、小林氏の給与から支払わせていた疑いを指摘。秋本氏は「秘書給与法違反には当たらない」などとしている。この取材の過程で「週刊文春」は2月13日、秋本事務所に事実確認を求める質問状を送付し、同日夜までに一定の回答を得ていた。 「週刊文春」が入手したのは、外務省の若手官僚でもある事務秘書官のM氏が秋本政務官宛に送付したメールだ。送信日時は2月14日夕方5時44分。メールの件名は〈想定される問〉。以下のような文面が記されていた。 〈当方にご依頼いただいておりました想定される問を別添いたします。限定された省内関係者で想起したものとなります〉』、「事務秘書官のM氏」は有能でよくわきまえた人物のようだ。
・『国会答弁に備え“想定質問”を外務官僚に作らせていた疑い  そして、〈別添〉されたワードファイルには、次のような文言が列挙されていた。 〈問 2021年5月に政策秘書として採用した小林亞樹氏の勤務実態如何。勤務実態のない政策秘書を雇用しているのではないか。〉 〈問 本来秋本事務所が負担すべき、C氏(編集部註・原文は本名)の給与を、小林氏に肩代わりさせていたのではないか。これは秘書給与法21条の3(寄付の要求)に違反するのではないか。〉 〈問〉の数は24問に及ぶ。秋本氏は2月2日、2月3日、2月9日、2月13日と毎週のように国会で自身の疑惑を追及されていた。それだけに、近く秘書給与法違反疑惑についても問われることを予期したのだろう。つまり、国会答弁に備え、24問もの“想定質問”を外務官僚に作らせていた疑いが強いのだ。実際、2月17日の国会では野党議員から“想定質問”通り、小林氏の勤務実態や秘書給与の肩代わり疑惑などを問う質問が出て、秋本氏は「C氏はB氏(小林氏)が自分の政策秘書業務を補完するために契約した方」などとする答弁を繰り返した。 だが、秘書給与の疑惑は外務省の政策とは全く関係のない秋本氏の政務にかかわる問題だ。にもかかわらず、事務秘書官に“想定質問”を作成させることは適切なのか』、「国会答弁に備え、24問もの“想定質問”を外務官僚に作らせていた疑いが強いのだ。実際、2月17日の国会では野党議員から“想定質問”通り、小林氏の勤務実態や秘書給与の肩代わり疑惑などを問う質問が出て、秋本氏は「C氏はB氏(小林氏)が自分の政策秘書業務を補完するために契約した方」などとする答弁を繰り返した。 だが、秘書給与の疑惑は外務省の政策とは全く関係のない秋本氏の政務にかかわる問題だ。にもかかわらず、事務秘書官に“想定質問”を作成させることは適切なのか」、「秋本氏」の秘書使いは余りに酷い。
・『「官僚である事務秘書官は政務に関わらないのが大前提」  元総務官僚で政策コンサルタントの室伏謙一氏はこう指摘する。 「官僚である事務秘書官は政務に関わらないのが大前提。まして外務省の所掌事務と関係の無い政治家個人の問題であるならば、外務官僚を巻きこむのではなく、政策秘書など事務所スタッフで対応するのが筋です」 秘書官経験者も言う。 「森友問題のような行政が関わる疑惑なら別ですが、政務案件に事務秘書官はタッチしないものです」 外務省が省ぐるみで、秋本政務官のスキャンダル対応にあたったのは事実なのか。林芳正外相ならびに外務省にM氏が送付したメールについて見解を尋ねたところ、揃って以下のような回答があった』、「「官僚である事務秘書官は政務に関わらないのが大前提。まして外務省の所掌事務と関係の無い政治家個人の問題であるならば、外務官僚を巻きこむのではなく、政策秘書など事務所スタッフで対応するのが筋です」」、その通りだ。
・『「外務省として一定程度の関与が発生することは自然なこと」  「御指摘の事実関係を当方で確認することはできませんが、一般論として申し上げれば、国会において秋本政務官が答弁する際は、外務大臣政務官としての身分において質問を受け、答弁を行うことになる以上、その準備に際して外務省として一定程度の関与が発生することは自然なことだろうと理解しております。 なお、当然ながら、事務方の関与いかんに関わらず、答弁は最終的にはあくまでも秋本政務官自身が政治家としての責任においてされてきているものと承知しております」 一方、秋本事務所は事実確認に対し、次のように回答した。「政務に関わることについては、公務に支障がないよう極力事務所スタッフなどで対応しているところであり、国会答弁の準備は事務所スタッフなどが主体となって準備をしているところです。なお国会において答弁する際は、外務大臣政務官の身分において質問を受け、答弁を行うことになる以上、その準備に際して外務省の一定程度の関与が発生することはあります」 ロシアや北朝鮮の問題など、岸田政権において外交課題は山積している。とりわけ北朝鮮を巡っては、同国が2月8日に軍事パレードを開き、緊張が高まる中、2月18日に発射されたミサイルが日本の排他的経済水域内に落下。これを受け、秋本氏もNSC(国家安全保障会議)で岸田文雄首相らと協議をするなど、外務政務官として対応に追われる状況だった。そうした最中、本来は外交政策に従事すべき立場の事務秘書官を、次々浮上する自らの疑惑への対処に携わらせている実態が明らかになったことになる。こうした外務政務官としての秋本氏の振る舞いについてどのように説明するのか、岸田首相や林外相の対応が注目される。 3月1日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および3月2日(木)発売の「週刊文春」では、秘書給与法違反を巡るより詳しい“想定問答”の中身や、M氏との一問一答などについても報じている』、「本来は外交政策に従事すべき立場の事務秘書官を、次々浮上する自らの疑惑への対処に携わらせている実態が明らかになったことになる」、どうみてもやらせ過ぎだ。

次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「秋本衆議院議員だけではない…自民党の総理経験者や閣僚の意向もあって起きた「洋上風力発電をめぐる汚職事件」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114447?imp=0
・『追及はどこまで広がるのか?:今月末には逮捕の見通し  洋上風力発電の開発地域を巡る入札ルールが国民負担の増大を懸念させる形に変更された問題に関連して、東京地検特捜部は先週金曜日(8月4日)、外務政務官の秋本真利・衆議院議員(自民党、千葉選出)の事務所や自宅の強制捜査に踏み切った。強制捜査を受けて、秋本議員は同日中に外務政務官を辞任するとともに、翌5日には自民党を離党した。 疑惑の核心とされているのは、秋田県沖の2カ所と千葉県沖の合計3カ所を対象にした、一連の入札の第一ラウンドで三菱商事が3カ所を総取りしたことを受けて、当時、すでに別の場所を対象にした第2ラウンドの入札が公示され、手続きが始まっていたにもかかわらず、秋本氏が国会での質疑を通じて入札ルールの見直しを迫り、この第2ラウンドから価格競争を働きにくくした問題の背景だ。 国民経済的には、明らかに電気代を高止まりさせかねない反消費者的な行為だったが、秋本氏は日本風力開発など再エネベンチャーが有利になるようルール変更を迫っていた。そして、当局はこの秋本氏の行動の裏に贈収賄罪にあたる行為があったと判断したというのである。筆者が取材したところ、早ければ、秋本議員は秋の臨時国会召集前の今月末にも正式に逮捕される見通しだ。 その一方で、秋本議員の役回りは国会質問などを通じて、この異例の入札ルールの変更の端緒を作ったことに過ぎない。実際の変更は、自民党の総理経験者や当時の閣僚の意向があって実現に漕ぎ着けたとされており、当局の追及の手がどこまで広がっていくのかが事件の焦点となっている。 洋上風力発電は、その名の通り、海上に大型風車を設置して行う発電だ。日本は国土が広くない島国で風力発電に適した陸地が限られる半面、海上には強い風が吹く地域も多い。 ところが、過去20年あまり、大手電力会社が既存の原子力や火力の発電所の活用に拘泥する一方で、風力発電所が建設しやすい地域への送電網の整備を新たなコスト負担だと嫌ってきたことなどが響いて、洋上風力発電の普及で大きな遅れをとってしまった』、「大手電力会社が既存の原子力や火力の発電所の活用に拘泥する一方で、風力発電所が建設しやすい地域への送電網の整備を新たなコスト負担だと嫌ってきたことなどが響いて、洋上風力発電の普及で大きな遅れをとってしまった」、その通りだ。
・『再エネベンチャーの動き  対照的に、北海など欧州北部では早くから開発・普及が進み、劇的な発電コストの引き下げ競争が進んでいた。中国もこうした動向に着目、近年では沿岸部の開発が猛烈な勢いで行われてきた。 そこで、日本はキャッチアップを目指し、「洋上風力発電利用促進法」を2018年に経済産業省と国土交通省が所管で制定。 今回焦点の洋上風力発電を巡る入札は、同法の「促進区域」で発電を行う開発業者の地位を巡るものだ。一般に、発電所は迷惑施設で、その建設には環境アセスメントで複雑かつ時間のかかる手続きが求められる。が、カーボンニュートラル(脱炭素)が世界共通の課題で再エネの普及が急務となっていることから、同法の促進地域の事業は国が手続きを代行するなどの形で迅速な事業開始を後押しする策になっている。 注目の第1ラウンドの入札結果が2021年暮れに明らかになった際、参入を目論んでいた大手電力会社や総合商社、エネルギー企業、再エネベンチャーなどの間に衝撃が走った。というのは、この業界ではそれまで伏兵と見られていた三菱商事が率いる企業連合が3地域すべてで2番札に1kWhあたり5円以上の大差をつける発電価格の低さや「地域貢献」での評価の高さを武器に3カ所すべてを総取りしたからだ。特に、発電価格の安さは、長年、固定価格買取制度(FIT)による政府支援漬けに慣れ切った再エネベンチャーにはとても対抗できないものだった。 実は、これでも、当時の欧州など海外の標準的価格に比べて1kWhあたり4~8.5円程度高かったのは事実だ。筆者は本コラムで2022年の1月から6月にかけて3回、一連の問題を執筆しているので、詳細はそちらを参照してほしいが、「カーボンニュートラル時代の国際競争力を支える発電価格として考えれば、まだまだコスト削減努力を期待したい水準だ」と論評した。 しかし、新聞やテレビの報道によると、秋本議員に2021年10月から今年6月までに約3000万円の資金提供を行ったとされ、すでに当局から任意で社長の塚脇正幸氏が事情聴取を受けたという日本風力開発(報道によると、塚脇氏の弁護人は、資金提供について、同氏と秋本氏が所属する馬主組合への資金提供であり、秋本氏個人への賄賂ではないと反論している)のほか、再エネ大手のレノバといった企業が当時、政治家や官僚の間を陳情に奔走したり、政府の審議会で自社の主張を展開したり、関係の深い学者を動員してルール見直しを迫ったりしたことは、幅広く知られている。 当時の再エネベンチャー各社の主張は、「三菱商事の事業計画は実現性が乏しい」という名誉棄損のような意見もあれば、「(終わった)入札をやり直すべきだ」とか極端な議論が目立ち、「価格への評価が全体に占める配分が大き過ぎる。入札のやり方を見直してほしい」という主張も荒唐無稽なものと受け止められていた』、「当時の再エネベンチャー各社の主張は、「三菱商事の事業計画は実現性が乏しい」という名誉棄損のような意見もあれば、「(終わった)入札をやり直すべきだ」とか極端な議論が目立ち、「価格への評価が全体に占める配分が大き過ぎる。入札のやり方を見直してほしい」という主張も荒唐無稽なものと受け止められていた」、なるほど。
・『結論ありきの茶番  ところが、秋本議員は2022年2月17日の衆議院予算委員会第七分科会で、当時の荻生田光一経済産業大臣に「今公示している二回目の公募から評価の仕方というのをちょっと見直していただきたい」「(落札した企業の洋上風力発電所の)運転開始時期が見えない」などと迫った。 そして、同大臣から「運転開始時期を明確にルールを決めて競争していただいた方が、それは評価もしやすくなると私も思います」という答弁を引き出し、価格がほとんど決め手にならない形への入札ルールの見直しの実現に繋げたのだ。もちろん、自民党内の議員連盟などの会合で、秋本氏の同僚議員や閣僚経験者らが騒いだことも、ルール見直しを勢い付かせた。 そして、最後に見直し案にお墨付きを与えたのは、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会」の下部組織「省エネルギー・新エネルギー分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 洋上風力促進ワーキンググループ」と、国土交通省の「交通政策審議会」の下部組織「港湾分科会 環境部会 洋上風力促進小委員会」の合同会議だ。委員からは、最後まで「(新たなルールは)法制定時や運用方針の閣議決定時に想定しておらず、矛盾する」「(事業開始の迅速性の)高い配点については配慮が必要」など、様々な反対意見が出た。が、両省の意向を受けた座長らが押し切った。合同審議会やその後の両省によるパブリックコメント募集は、政治家たちの強い意向を受け、結論ありきの茶番に過ぎなかったのだ。 ちなみに、前述のレノバについては、ルール見直しに向けて奔走した一人とされ、当時、取締役会長だった千本倖生氏(現名誉会長。KDDI副社長などを歴任)が、<政、官界に厚い人脈を持つことで知られ、今回も精力的にロビイングに歩く姿が目撃されていた>と、筆者は当時の本コラムに書いた。 実は、この時の取材段階では、千本氏がある総理経験者を訪ねている事実について質したところ、千本氏は「その方とは以前から懇意にしていただいており、その面談の目的は洋上風力発電の入札ルール見直しではない」と言い、陳情はしていないと否定していた。) いずれにせよ、後出しじゃんけんのような第2ランドからの入札ルールの見直しで、せっかく始まりかけた日本の洋上風力発電の価格競争は大きく阻害されかねない状況になっている。 すでに第2ラウンドの札入れは完了しており、結果の公表は今年の年末になる見通しだが、企業の経営コストの押し上げ、家計の負担を増すものとして看過できない見直しだった。 今回の秋本議員への強制捜査では、資金提供額がすでに報じられている約3000万円だけなのか。日本風力開発以外には、資金提供者はいないのか。秋本氏については、立憲民主党の源馬謙太郎衆議院議員が今年2月の衆議院予算委員会で、レノバ株の売買をしている事実を突き付けて詳細の説明を求めたものの、秋本氏は「国土交通大臣政務官の在任中に株式の取引は行っておりません。その上で、政府の役職にない一議員が株取引を行うことは適法でございます」と繰り返すばかりで、明確な回答を拒んだこともあり、なぜ、レノバ株に投資したのかの追及も欠かせない。 また、秋本氏と同様に、自民党の党内世論作りに動いた議員や閣僚、総理経験者に賄賂性のある資金提供を受けた者はいないのか、も大きな焦点になる。 本来ならば、秋本氏や当時の萩生田経産大臣が一致して、一部業者の利害に拘泥して、価格競争を歪めて国民負担をいたずらに増大させた問題こそ、もっと追及してほしいところである。国民が負担させられる金額は天文学的なものになるからだ。 しかし、その裏に贈収賄という犯罪があるというのならば、その追及も国民にとっては見逃せない関心事だ。その意味で、まずは捜査の行方をしっかりと見守りたい』、「本来ならば、秋本氏や当時の萩生田経産大臣が一致して、一部業者の利害に拘泥して、価格競争を歪めて国民負担をいたずらに増大させた問題こそ、もっと追及してほしいところである」、その通りだ。

第三に、8月23日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「「ガソリン価格200円超え」は目前に…政府が「トリガー条項」発動を決められないワケ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115174?imp=0
・『補助がなければ「210円」だった  ガソリンの小売価格が1リットルあたり180円を突破した。このままでは1リットルあたり200円に到達する可能性も十分にある。政府は1年半にわたってガソリン代の補助を行ってきたが、9月末で終了の予定だ。このままガソリン価格の高騰を放置するのか、補助を再開するのか、あるいはガソリン税のトリガー条項を発動するのか岸田政権は厳しい選択を迫られている。(なお8月22日、期限の延長について検討に入ったと報じられている)。 2023年8月14日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル181.9円と、前週から1.6円上がり、2週連続で180円を超えた。このところガソリン価格が急上昇しているのは、1年半にわたって続けられてきた政府の補助が6月以降、段階的に削減されているからである。 政府は全世界的な資源価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻によって、ガソリン価格が急上昇したことを受けて、ガソリン代の一部を補助する政策を2022年1月からスタートさせた。 おおよそ170円を目安に、この金額を超えた分について政府が石油元売り事業者に補助することでガソリン価格を抑制する。 国民にとっては、補助がなければガソリンがいくらだったのかが分かりにくいため、あまり効果を実感できていなかったかもしれない。 だが、ガソリン価格がピークを付けていた2022年の夏には、もし補助がなければ1リットルあたり210円を突破していたことを考えると、補助は結構な規模なものだったことが分かる。 実際、この施策には莫大な税金が注ぎ込まれており、2022年については約3兆円の予算が組まれた。政府としてはいつまでも補助は続けられないとして、2023年6月から段階的に補助を削減し、9月末に終了させることを決定している』、「おおよそ170円を目安に、この金額を超えた分について政府が石油元売り事業者に補助することでガソリン価格を抑制する。 国民にとっては、補助がなければガソリンがいくらだったのかが分かりにくいため、あまり効果を実感できていなかったかもしれない。 だが、ガソリン価格がピークを付けていた2022年の夏には、もし補助がなければ1リットルあたり210円を突破していたことを考えると、補助は結構な規模なものだったことが分かる。 実際、この施策には莫大な税金が注ぎ込まれており、2022年については約3兆円の予算が組まれた。政府としてはいつまでも補助は続けられないとして、2023年6月から段階的に補助を削減し、9月末に終了させることを決定している」、「政府」は「終了」を先送りするようだ。
・『円安が最大の誤算に  ガソリン価格を決める大きな要因である原油価格は今年に入って落ち着いており、政府としては補助を終了してもガソリン価格は跳ね上がらないとの判断だったが、最大の誤算となったのが円安である。 年明けには120円台まで戻していたドル円相場で、再び円安が進行し、とうとう145円を突破する状況となった。いくら原油価格が落ち着いても、日本の場合、原油はほぼ全量輸入なので円安になれば価格が上昇してしまう。 円安によってガソリン価格が上昇してきたことに補助の終了が重なったことから、ガソリン価格が跳ね上がる可能性が高くなってきた。 しかも主要産油国であるサウジアラビアが減産の方針を示していることから、原油価格が再び上昇に転じると予想する専門家も増えてきた。円安と原油価格の上昇が重なった場合、1リットルあたり200円を突破する可能性も見えてきたといってよいだろう。 今年の春闘ではこれまでにない賃上げが行われたが、定期昇給分が大きくベースアップ(ベア)が不十分であることに加え、全体の7割を占める中小企業の賃上げは進んでいないのが現実だ。 一方で物価は着実に上昇しており、賃金が物価に追い付く兆しは見えていない。ここでガソリン代が上昇すると、他に交通手段の選択肢がない地方を中心に、国民の生活はさらに苦しくなる。 政府はこれまで補助打ち切りの方針を変えていなかったが、8月22日に岸田首相が延長の検討を指示したことで、何らかの形で制度が延長される可能性が高まってきた。一方、消費者からはガソリン税の減税(トリガー条項の発動)を求める声も上がっている』、前述のように「岸田首相が延長の検討を指示したことで、何らかの形で制度が延長される可能性が高まってきた」、なるほど。
・『トリガー条項を発動させるとどうなるか  ガソリン価格の約4割は税金となっており、とりわけ揮発油税(いわゆるガソリン税)の割合が高い。ガソリン価格が1リットルあたり170円だった場合、ガソリン税は約54円にもなる。 だがガソリン税の減税については、2010年に当時の民主党政権が、1リットルあたり160円を超えた場合、ガソリン税のうち約半分を免除するというトリガー条項を法制化した。 このトリガー条項については当時、野党だった自民党が猛反発したことや、2011年に起きた東日本大震災の復興財源を確保するため、運用が凍結されている。なお、この条項を復活させれば、約25円分だけガソリン価格が安くなるので、補助を延長したことに近い効果が得られる。 だが自民党は、民主党が作った政策であることや、当時、ガソリン税の減税に反対していたことなどから、トリガー条項の復活には消極的であり、今のところトリガー条項を復活させ、ガソリン税を減税しようという動きは見せていない。 ガソリン代の補助であれ減税であれ、原資が税金という点では同じだが、経済ヘの影響という点では両者には違いが生じる』、「だがガソリン税の減税については、2010年に当時の民主党政権が、1リットルあたり160円を超えた場合、ガソリン税のうち約半分を免除するというトリガー条項を法制化した。 このトリガー条項については当時、野党だった自民党が猛反発したことや、2011年に起きた東日本大震災の復興財源を確保するため、運用が凍結されている」、「だが自民党は、民主党が作った政策であることや、当時、ガソリン税の減税に反対していたことなどから、トリガー条項の復活には消極的であり、今のところトリガー条項を復活させ、ガソリン税を減税しようという動きは見せていない」、なるほど。
・『トリガー条項の「副作用」  ガソリン代の補助は170円を目安に超過分を補助するという仕組みなので、170円以下になった場合には補助が行われない代わりに、170円を超えた分については、上限金額に達するまで170円近辺での価格が継続する。一方、トリガー条項は1リットルあたり160円が設定価格なので、ここを超えると機械的に25円安くなる。 消費者からすると価格抑制のパターンが変わることになるが、それほど大きな違いとはいえないだろう。 補助と減税の最大の違いは、地方経済への影響である。補助については全額政府予算から支出されるが、ガソリン税の一部は地方税収となっている。トリガー条項を発動して減税を行った場合、政府の税収だけでなく地方の税収も大幅に減る。 ガソリン代高騰の影響は地方経済に深刻な影響を及ぼしているが、トリガー条項を発動すると、ガソリン代は安くなるものの、今度は地方経済に深刻な影響を及ぼしかねない。トリガー条項を発動する場合には、地方の税収不足を補填する仕組みも必要となる。 いずれにせよ、最大で年間3兆円となる莫大な予算が必要であり、財源の議論は避けられない。政府は防衛費の増額を決めたばかりであり、子育て支援の予算も大幅に拡充する方針である。補助の延長や減税を行う場合、他の予算とのせめぎ合いになるのはほぼ確実だろう。 では補助や減税ではなく、ガソリン価格そのものを抑制する方策はないのだろうか。 ガソリン価格は基本的に原油価格に連動して決まる仕組みだが、原油価格は国際的な市場で決定されるため日本が影響力を行使することはほぼ不可能である。そうなると日本側で出来ることは為替のみということになる』、「トリガー条項を発動すると、ガソリン代は安くなるものの、今度は地方経済に深刻な影響を及ぼしかねない。トリガー条項を発動する場合には、地方の税収不足を補填する仕組みも必要となる。 いずれにせよ、最大で年間3兆円となる莫大な予算が必要であり、財源の議論は避けられない」、これでは非現実的だ。
・『円高に転換できない事情  日銀は4月に総裁が交代したが、今のところ植田新総裁はアベノミクスの中核的な政策である大規模緩和策を継続する方針を崩していない。前回の金融政策決定会合では政策の微修正が行われたものの、市場はアベノミクス継続と認識しており円安が進んでいる。 アベノミクス(大規模緩和策)は、日銀が大量のマネーを市場に供給し、意図的にインフレ(物価上昇)を発生させる政策なので、この政策を実施している限り、円安と物価上昇が発生しやすい。 大規模緩和策を終了し、日銀が金融引き締めに転じれば円高となる可能性が高く、ガソリン価格を抑制できる。だが日銀にとっては簡単に政策を転換できない事情がある。 自民党内部では、アベノミクスの継続を強く主張するグループの影響力が依然として大きく、日銀が政策転換しないようプレッシャーをかけている。実際、前回の政策微修正についても、世耕弘成参院幹事長が「植田和男総裁に目を光らせておかないといけない」と、穏やかではない口調で警戒感を示した。 日銀は日銀法で独立が担保されているものの、かつて安倍元首相が「日銀は政府の子会社」と発言したこともあり、自民党内には、日銀の政策は政府がコントロールすべきという声が大きい。こうした状況下では、日銀は簡単に政策変更に踏み切れないだろう。 政治的な駆け引きに加え、現実問題として金利の引き上げが難しいという事情もある。日本経済は10年にわたる大規模緩和策にどっぷりと浸かった状態となっており、ここで金利を上げてしまうと、企業の倒産や住宅ローンの破産者が急増するリスクがある。 このため日銀は当分の間、大規模緩和策を継続せざるを得ず、そうなると円安が進行するのでガソリン価格は上がりやすくなる。 もっとも、大規模緩和策を継続したまま、ガソリン価格高騰に対処する方法はひとつだけ残されている。それは日本経済の仕組みを変革し、コストが増大しても総供給量を維持できる体制にシフトすることである。だが、この政策を実現するまでには相当な時間がかかることに加え、企業の経営改革が必須となるため、多くの抵抗が予想される。 結局のところ、現時点においては、ガソリン価格高騰を放置するのか、他の政策を犠牲にして財源を確保し、補助や減税を実施するのかの二択に近い状況だ』、「自民党内部では、アベノミクスの継続を強く主張するグループの影響力が依然として大きく、日銀が政策転換しないようプレッシャーをかけている」、「現時点においては、ガソリン価格高騰を放置するのか、他の政策を犠牲にして財源を確保し、補助や減税を実施するのかの二択に近い状況だ」、「日銀」は自民党に忖度することなく、最適な金融政策に転換してゆくべきだ。 
タグ:(その12)(《特捜部が家宅捜索》千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い、秋本衆議院議員だけではない…自民党の総理経験者や閣僚の意向もあって起きた「洋上風力発電をめぐる汚職事件」、「ガソリン価格200円超え」は目前に…政府が「トリガー条項」発動を決められないワケ) エネルギー 文春オンライン「特捜部が家宅捜索》千葉市は「おそらくアウトでしょうね…」“河野太郎の最側近”秋本真利政務官の地元事務所に違法建築の疑い」 「自身のスキャンダルという政務について、事務方の官僚を使うことに疑問の声」、確かにやり過ぎだ。 「「官僚である事務秘書官は政務に関わらないのが大前提。まして外務省の所掌事務と関係の無い政治家個人の問題であるならば、外務官僚を巻きこむのではなく、政策秘書など事務所スタッフで対応するのが筋です」」、その通りだ。 「本来は外交政策に従事すべき立場の事務秘書官を、次々浮上する自らの疑惑への対処に携わらせている実態が明らかになったことになる」、どうみてもやらせ過ぎだ。 現代ビジネス 町田 徹氏による「秋本衆議院議員だけではない…自民党の総理経験者や閣僚の意向もあって起きた「洋上風力発電をめぐる汚職事件」」 「大手電力会社が既存の原子力や火力の発電所の活用に拘泥する一方で、風力発電所が建設しやすい地域への送電網の整備を新たなコスト負担だと嫌ってきたことなどが響いて、洋上風力発電の普及で大きな遅れをとってしまった」、その通りだ。 「当時の再エネベンチャー各社の主張は、「三菱商事の事業計画は実現性が乏しい」という名誉棄損のような意見もあれば、「(終わった)入札をやり直すべきだ」とか極端な議論が目立ち、「価格への評価が全体に占める配分が大き過ぎる。入札のやり方を見直してほしい」という主張も荒唐無稽なものと受け止められていた」、なるほど。 「本来ならば、秋本氏や当時の萩生田経産大臣が一致して、一部業者の利害に拘泥して、価格競争を歪めて国民負担をいたずらに増大させた問題こそ、もっと追及してほしいところである」、その通りだ。 加谷 珪一氏による「「ガソリン価格200円超え」は目前に…政府が「トリガー条項」発動を決められないワケ」 「政府」は「終了」を先送りするようだ。 前述のように「岸田首相が延長の検討を指示したことで、何らかの形で制度が延長される可能性が高まってきた」、なるほど。 「だがガソリン税の減税については、2010年に当時の民主党政権が、1リットルあたり160円を超えた場合、ガソリン税のうち約半分を免除するというトリガー条項を法制化した。 このトリガー条項については当時、野党だった自民党が猛反発したことや、2011年に起きた東日本大震災の復興財源を確保するため、運用が凍結されている」、 「だが自民党は、民主党が作った政策であることや、当時、ガソリン税の減税に反対していたことなどから、トリガー条項の復活には消極的であり、今のところトリガー条項を復活させ、ガソリン税を減税しようという動きは見せていない」、なるほど。 「トリガー条項を発動すると、ガソリン代は安くなるものの、今度は地方経済に深刻な影響を及ぼしかねない。トリガー条項を発動する場合には、地方の税収不足を補填する仕組みも必要となる。 いずれにせよ、最大で年間3兆円となる莫大な予算が必要であり、財源の議論は避けられない」、これでは非現実的だ。 「自民党内部では、アベノミクスの継続を強く主張するグループの影響力が依然として大きく、日銀が政策転換しないようプレッシャーをかけている」、「現時点においては、ガソリン価格高騰を放置するのか、他の政策を犠牲にして財源を確保し、補助や減税を実施するのかの二択に近い状況だ」、「日銀」は自民党に忖度することなく、最適な金融政策に転換してゆくべきだ。
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半導体産業(その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に) [産業動向]

半導体産業については、本年5月27日に取上げた。今日は、(その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に)である。

先ずは、本年5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したクライス&カンパニー顧問/Tably代表の及川卓也氏による「半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ、日本企業のあるべき姿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323643
・『コロナ禍による工場稼働率の低下に続き、ウクライナ侵攻で国家安全保障上も注目されるようになった半導体業界。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、AIの活用で成長著しい業界大手・NVIDIAの30年の歴史からは学べることが多いという。NVIDIA、そして半導体産業に見る日本企業のあるべき姿とは』、興味深そうだ。
・『再び注目される半導体業界 日本政府も製造強化に乗り出す  最近、半導体業界が再び注目されています。国家安全保障上の戦略的な意味合いも非常に強まっており、米国では中国への半導体の輸出を禁じたほか、自国内で半導体製造を行う取り組みも進めています。日本でも国内のメーカーや通信会社など大手8社が出資して、2022年に半導体プロセッサー(ロジック半導体)メーカー・Rapidus(ラピダス)を設立。政府が同社に3000億円超を支援しています。また台湾の半導体メーカー・TSMCの工場が2022年、熊本県へ進出したことも話題となりました。 半導体にはいくつかの種類があります。日本では従来、DRAM製造に強みがありましたが、価格競争となって投資が続けられず、競争力が落ちてしまいました。最後まで残っていたエルピーダメモリも、2013年にマイクロン・テクノロジーによる買収が完了しています。一方、NAND型フラッシュメモリーの領域では今でも強く、キオクシア(旧東芝メモリー)が世界シェア2位を維持しています。またアナログ半導体の領域では、特にセンサー系でソニーがシェアを持っています。 現在、世界的に需要が高く、最も不足しているのはロジック半導体です。CPUやGPUなど、コンピュータの頭脳を担う半導体なのですが、この領域では日本企業は強みを発揮できていません。そこで今回は政府も加わって国家プロジェクト的に強化が図られています。 実は、日本がDRAMやプロセッサーで強かった頃にも「超LSI技術研究組合」というプロジェクトがありました。これは官民合同でVLSIの製造技術の確立に取り組むというもので、1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入されています。このプロジェクトの成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました。今回のプロジェクトも、同様にうまくいけばいいと願っているところです』、「超LSI技術研究組合」では「1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入」、「成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました」、なるほど。
・『GPUの王者・NVIDIAが大きくシェアを落とした“危機的状況”  さて、ロジック半導体の分野で今一番注目を浴びている企業が米国のNVIDIA(エヌビディア)です。NVIDIAは現在、GPUで80%以上のシェアを持つといわれています。CPUがさまざまな処理をこなす汎用(はんよう)的なコンピュータの頭脳であるのに対して、GPUは3Dグラフィック処理などにおいて、単純な計算を並列で多数行うという特徴を持つプロセッサーです。 NVIDIAは1993年にGPUに可能性を感じて創業された企業で、当初は複雑な描画処理を行うゲームにフォーカスして事業をスタートしました。歴史を振り返ると、NVIDIAはこれまでに何度か危機的状況を迎えています。 GPUはCPUから命令を受けて動作するので、CPUとの連携が欠かせません。2006年、GPU設計・製造でNVIDIAの最大のライバルだったATIが、Intelに並ぶプロセッサー大手のAMDに買収され、AMD製CPUとの組み合わせでNVIDIA製品が採用されなくなりました。IntelはIntelで、1つのボードにネットワークやグラフィック処理ができるチップを自社で搭載し、廉価で販売し始めます。NVIDIAのGPUは、ハイエンドのゲームユーザーやグラフィッククリエイターを除いて売れなくなっていき、市場が一気に縮小してしまいました。 一般にプラットフォーマーは、他のプラットフォーマーを排除しようとする傾向があります。AMDはCPUではなくGPUが製品の核となることを避けるため、競合のATIを買収してNVIDIAを排除しようとしました。Intelも同様に、自社でオンボードグラフィックスを進めることで、NVIDIAを排除しようとしたわけです。 祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした』、「祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした」、なるほど。
・『AIの深層学習に画期的発展をもたらしたGPUと「CUDA」  先述したとおり、GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます。 CUDAを開発したイアン・バック氏は、Silicon Graphicsにグラフィックエンジニアとして在籍した後、スタンフォード大学でBrookというGPUによる並列処理のためのプログラミングモデルを発表しました。その後NVIDIAに入社して研究を続け、CUDAを発表しています。 CUDAとGPGPUが大きな注目を浴び、広く普及したのはAIの深層学習(ディープラーニング)で活用できることが分かったからです。現在、AIは第3次ブームといわれていますが、このブームの発端は2012年に深層学習で起きたブレークスルーにあります。当時トロント大学教授だったジェフリー・ヒントン氏はアレックス・クリジェフスキー氏とともに、画像データベースImageNetを使った画像認識コンテストで飛躍的成果を出し、大差で優勝しました。そのときに使ったのが、GPUとCUDAを活用した深層学習モデルです。 ジェフリー・ヒントン氏はその後AI研究の第一人者としてGoogleでAI研究に携わってきましたが、今年5月に「AIの危険性について語るため」としてGoogle退職を発表し、話題となった人物でもあります』、「GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます」、なるほど。
・『ファブレスでありながらソフトウェアでは「垂直統合」を実現  NVIDIAはプロセッサーメーカーとして誕生しましたが、もはやハードウェアではなくソフトウェアの会社といっていいほど、ソフトウェア開発に多額の投資を行い、大変優秀な人材を集めています。しかし、最初からソフトウェアに事業としての可能性があると強い自信を持っていたわけではないようです。 NVIDIA CEOのジェンセン・フアン氏は、2016年のForbes誌のインタビューに対し「自社のグラフィックチップが最新のビデオゲームを動かす以上の可能性をを秘めていることは知っていたが、ディープラーニングへのシフトは予想していなかった」と述べています。しかし、彼らはCUDAとAIに賭け、この10年ほどで大きく変貌を遂げることとなりました。 現在の半導体業界は、「水平分業」と「垂直統合」とでは、どちらかというと水平分業、つまりファブレス企業として設計だけを行う会社が、TSMCのような企業へ製造を委託する潮流の中にあります。Intelやサムスンは垂直統合モデルをとっていますが、Intelなどは特に水平分業モデルの企業による攻勢の影響を受け、業界の中では成長が鈍化しています。 一方のNVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です。 歴史的には「プラットフォーマーは他のプラットフォーマーを排除する」という法則によって、苦い経験を持つNVIDIA。単に一部品を展開するのではなく、できるだけ多くの部分で市場に食い込み、ロックインを避けたがる顧客もロックインせざるを得ないような状況を作る戦略を取っているとも考えられます』、「NVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です」、なるほど。
・『ソニーCMOSセンサーの奇跡と顧客の需要を想定する力  水平分業と垂直統合については、似たような話がソニーにもあります。 ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました。 ソニーはもともとカメラなどの製品が強く、民生用ビデオカメラのCCDセンサーでは圧倒的なシェアを誇っていました。しかし、これをCMOSセンサーへシフトさせるよう自ら仕掛けています。自身が築いたCCD市場を壊し、独自技術による高性能なCMOSセンサーを世に送り出すことで、イメージセンサー市場におけるシェアを守ったのです。 ソニーも単にイメージセンサーを持つだけでなく、実際に製品として使われる部分を自身で手がけており、その点で垂直統合型に近いところがあります。 2010年時点のイメージセンサー市場は、金額ベースで携帯電話向けが36%、デジタル一眼レフカメラ向けが27%、デジカメ向けが21%、監視カメラ向けが12%、カムコーダー向けが3%という構成でした。当時のソニーはカムコーダーでは98%(数量ベース)という高いシェアを持っていましたが、これはイメージセンサー市場全体の中では3%しかない領域です。市場の大きい携帯電話や一眼レフ、デジカメのシェアを取りに行かなければ、伸びしろはありません。 ソニーの半導体事業部は、自社の他の事業部や他社にCMOSセンサーの採用を働きかけ、それぞれの場で必要な機能を加えることで、普及を図ることに成功しました。他社製品でもデジカメで動画を撮影して楽しむといったユースケースを作ったほか、一眼レフ機へのセンサー採用の働きかけも行い、それをきっかけにソニー社内でもαシリーズへの採用が決まっています。 つまり、実際に使われるシーンをしっかり想定し、その需要を満たすためにどうすればいいか、部品の方を改良するというアプローチを取っていたということになります』、「ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました」、「売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残る」、それが、現在は収益の柱に成長したとは、分からないものだ。
・『「言われたものを作る」のではなくニーズをつかんで将来を描く  ソニーには、リチウムイオン電池を手がけていた部門の担当者が、バッテリーの寿命を画期的に長くする技術としてデル会長のマイケル・デル氏に直接売り込みをかけた逸話もあります。また話はITからは外れますが、“消せるボールペン”でおなじみの「フリクション」のインク開発者にも、自らインクの用途を説明するために国内外を営業してまわったエピソードがあるそうです。 部品メーカーには、マーケティング部門がない会社が結構あります。受託で作ってほしいと言われたものを作るだけでも十分大きなビジネスになるので、自分たちの技術をどう使ってほしいかを説明する、あるいは顧客に何が求められているかを把握する必要がないことも多いからです。しかし、ソニーのイメージセンサーやリチウムイオン電池、フリクションのインクの例を見ると、やはりそれだけでは、大きな事業の成長は得られないのではないかと感じます。 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は、半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」といっています。坂本氏はかつてテキサスインスツルメンツ(TI)にいたことがあるのですが、TIでは技術系営業が7割を占めていて、顧客のニーズや不満を常に吸い上げていたといいます。それに対して日本企業は顧客のニーズを把握せず、悪い意味での「プロダクトアウト」をやる傾向があると坂本氏は述べています』、「半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」」だが、現実には難しそうだ。

次に、7月26日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/688716
・『電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は7月10日、インドでの半導体製造の合弁プロジェクトから撤退すると発表した。 同社は2022年2月、傘下の富士康科技集団(フォックスコン)を通じてインド資源大手のベダンタグループと合弁会社設立の覚書に調印。同年9月には、インドのモディ首相の故郷であるグジャラート州に195億ドル(約2兆7414億円)を投じて半導体工場を建設し、10万人の雇用を創出する計画をぶち上げた』、ずいぶん大規模な計画だ。
・『スタートから1年余りで頓挫  ところが、両社の協業はスタートからわずか1年余りで頓挫した格好だ。ホンハイの声明によれば、同社はベダンタとの合弁事業から完全に手を引き、合弁会社はベダンタの100%子会社に移行するという。 とはいえ、ホンハイはまだインドでの半導体製造を断念したわけではない。同社は声明のなかで、「わが社はインド政府の『メイク・イン・インディア』構想を引き続き支持しており、インドの半導体業界の発展を確信している」と強調した。) 同じく7月10日、インド情報技術省のラジーブ・チャンドラセカール副大臣はSNS(交流サイト)に投稿し、ホンハイとベダンタの合弁解消の背景を次のように述べた。 「両社は回路線幅28ナノメートルの半導体工場の建設計画をインド政府に提出していた。しかしホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」』、「ホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」、全く実体が伴ってないお粗末な計画だったようだ。
・『STマイクロとの交渉が難航か  本記事は「財新」の提供記事です ロイター通信の2023年5月の報道によれば、インド政府はスイス半導体大手のSTマイクロエレクトロニクスに対して、技術ライセンスの供与にとどまらない合弁プロジェクトへの深い参画を期待していた。 だが、実際には合弁会社とSTマイクロの交渉が難航し、プロジェクトは遅々として進まない膠着状態に陥っていた。(財新記者:劉沛林)※原文の配信は7月12日)』、なかなか「インド政府」の思惑通りにはいかないようだ。
タグ:財新 Biz&Tech「台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に」 生き残る」、それが、現在は収益の柱に成長したとは、分からないものだ。 なかなか「インド政府」の思惑通りにはいかないようだ。 開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です」、なるほど。 東洋経済オンライン 「半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」」だが、現実には難しそうだ。 「ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました」、「売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で 「ホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」、全く実体が伴ってないお粗末な計画だったようだ。 (その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に) 半導体産業 「NVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます」、なるほど。 「GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 「祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした」、なるほど。 「超LSI技術研究組合」では「1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入」、「成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました」、なるほど。 及川卓也氏による「半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ、日本企業のあるべき姿」 ダイヤモンド・オンライン
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ホテル(その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」) [産業動向]

ホテルにつては、昨年4月3日に取上げた。今日は、(その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」)である。

先ずは、昨年4月14日付け東洋経済オンライン「プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化」を紹介しよう。
・『業界大手のプリンスホテルは長年、ホテルの所有と運営を一体で進めてきた。だがコロナ禍を機に、シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る。 “持たざる経営”にシフトする背景と、本格的にブランドを拡大する成長戦略について、プリンスホテルの小山正彦社長に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは小山社長の回答)。 Q:ホテル運営に特化する背景とは何ですか。 A:コロナ禍によって需要が瞬間蒸発する中、資産を持つリスクが顕在化したことが大きな要因だった。稼働率が落ち、売り上げが下がる中でも、社員数は多く、固定費は確実に出ていく。(オーナー側から委託料を受け取り運営する)運営受託に特化できれば、コストは減り、損益分岐点を引き下げた経営体質にできる。 スピード感を持った規模拡大も課題だった。2017年には中長期で国内外250拠点に拡大する目標を掲げていた。達成するにはホテル運営に特化し、持たざる経営に徹底的にシフトすることが重要だった。建物をリースする形でなく、運営受託を軸に拡大する点にはこだわっていきたい。 今後、31事業所はGIC、それ以外は総合不動産会社の西武リアルティソリューションズがオーナーになる。北海道・富良野や箱根、軽井沢といったリゾートと高輪・品川エリアは、西武グループで引き続き開発を進める方針だ。 ホテル運営に特化することで業績は安定し、赤字がほぼ出ない形になるだろう。一方で、ホテル数を増やし、顧客基盤を拡大し続けることが大事になる。 Q:250拠点(現在84)の目標達成のメドは約10年後です。国内と海外でのブランド戦略は? A:いずれインバウンドは戻り、海外旅行もできるようになる。そのとき、宿泊特化型など効率性を重視したホテルと、より豪華なラグジュアリーホテルとで二極化が今以上に進むと考える。 そこで、プリンスホテルのブランドはすでに一般に浸透しているが、富裕層が利用し、ラグジュアリーなブランドというイメージをさらに高めたい。国内では大阪や神戸、福岡などの大都市にまだ出店できていない。主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい』、「シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る」、「主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい」、なるほど。
・『NYやパリに出店したい (小山氏の略歴はリンク先参照) 海外では2023年にタイ・バンコクでラグジュアリーブランドの「ザ・プリンス アカトキ」を出店する。世界で名前を知ってもらうためにも米ニューヨークや仏パリ、伊ローマなど世界の主要都市、観光都市には出店したい。 ヒルトンやマリオットなど、世界的なホテルチェーンと比べると知名度はまだまだ低い。すぐには難しいが、10年後には一定程度の知名度に引き上げるつもりだ。 フランチャイズ展開も将来的に可能性がないわけではない。オファーが来るようなブランドに仕上げていかないとならない。) Q:運営会社は不動産オーナーに選ばれなければ出店できません。競合と比べた優位性は何ですか。 A:例えば法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ。 一定のブランドで安定したサービスを提供できる点もそう。この点を強化するため、4月に「オペレーション部」を新設した。ホテルはブランドごとにマニュアルがあり、サービスの標準化やレベルアップを進める。 シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ。 地域の魅力を把握し、発信していくことも大事で、PRは地域に存在するホテルの意義だ。魅力ある施設をどんどん案内するなど、顧客にも地元にも喜ばれるポジションをつくっていきたい』、「法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ」、「シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ」、これらの強みを如何に結実させてゆくかがポイントだ。
・『世界に認められるブランドへ  Q:ラグジュアリーの強化はコロナ禍前から課題の1つでした。 A:14年に開業した「ザ・プリンス ヴィラ 軽井沢」は1泊1棟20万円以上と高価格帯のホテル。これが転換点になった。16年開業の「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」も客室単価は7万~8万円と高く、「ザ・プリンス」より上の価格帯を狙ったものだった。 インバウンドが拡大する中で、ラグジュアリーのノウハウを蓄積し、世界に認められるブランドにしたいという考えがあった。 Q:一方で、宿泊特化型の「プリンス スマート イン」など、若い顧客層の獲得も狙っています。 A:コロナ禍前から若手を中心に取り組んできたが、顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組みをやってきてよかったと思っている。「非接触は安心安全」という価値観に変わってきたので、プリンスホテルでもこうした機能を導入している。スマートインでテストマーケティングができている形だ。(1990年代半ば以降に生まれた)Z世代などの価値観は勉強すべきものがある。彼らは30~40年先の将来や環境について真剣に考えている。ホテルを選ぶ基準も環境に対してどう取り組んでいるかが評価される。これは国際的なビジネスパーソンも同じだ。 顧客の目線はどんどん高くなっている。環境への取り組みは、業界の先頭に立って進めていく』、「ラグジュアリーの強化」。「顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組み」、など課題は多いようだ。

次に、本年7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した伊達美和子・森トラスト社長インタビュー「【無料公開】ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326686
・『コロナ不況により電鉄大手でホテル売却が相次ぐのに対し、不動産大手はホテル事業を守った。2業種の間でなぜ差が出たのか。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#10では、ホテル業界の女王、森トラストの伊達美和子社長が、コロナ禍を経て気付いた多角化の強さと落とし穴について語る。 ※2022年7月9日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開します!全ての内容は取材当時のままです。 コロナ不況により電鉄大手でホテル売却が相次ぐのに対し、不動産大手はホテル事業を守った。2業種の間でなぜ差が出たのか。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#10では、ホテル業界の女王、森トラストの伊達美和子社長が、コロナ禍を経て気付いた多角化の強さと落とし穴について語る。 ※2022年7月9日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開します!全ての内容は取材当時のままです』、興味深そうだ。
・『「事業」「立地」「対象人口」 バリエーションでリスク分  Q:2022年3月期決算のホテル事業の売上高は前期比31.1%増となり、今期は同22.4%増を予想しています。コロナ禍のさなかでも新規開業し、ホテル事業拡大の手を緩めていません。リスク覚悟で攻めているのですか。 A:リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです。 観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました。 一つの業態だけを手掛けているところ、例えばシティーホテルに特化した事業者などは非常に厳しかったと思います。ボラティリティの高いホテル事業を拡大していく中では、バランスを取る経営を常に意識してきました。 Q:コロナ禍を通じた気付き、学びはありましたか。 A:ホテル事業を展開するのと同時に海外投資も始めており、その効果はありました。資産を円で持つか、ドルで持つかを含めてリスクヘッジしておく。実際、ちょうどいいタイミングで米サンノゼのオフィスビルを売却でき、利益も出せました。 昨今の為替の影響はネガティブな面もありますが、ドル資産を持つ立場からするとポジティブな面もある。うまく広く分散することでリスク回避の確度が上がってくるんだなと。 Q:電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか』、「観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました」、なるほど。
・『「事業」「立地」「対象人口」 バリエーションでリスク分散  Q:2022年3月期決算のホテル事業の売上高は前期比31.1%増となり、今期は同22.4%増を予想しています。コロナ禍のさなかでも新規開業し、ホテル事業拡大の手を緩めていません。リスク覚悟で攻めているのですか。 A:リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです。 観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました。 一つの業態だけを手掛けているところ、例えばシティーホテルに特化した事業者などは非常に厳しかったと思います。ボラティリティの高いホテル事業を拡大していく中では、バランスを取る経営を常に意識してきました。 Q:コロナ禍を通じた気付き、学びはありましたか。 A:ホテル事業を展開するのと同時に海外投資も始めており、その効果はありました。資産を円で持つか、ドルで持つかを含めてリスクヘッジしておく。実際、ちょうどいいタイミングで米サンノゼのオフィスビルを売却でき、利益も出せました。 昨今の為替の影響はネガティブな面もありますが、ドル資産を持つ立場からするとポジティブな面もある。うまく広く分散することでリスク回避の確度が上がってくるんだなと。 Q:電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか』、「リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです」、なるほど。「電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか」、どう違うのだろう。
・『不動産会社は各事業で顧客が異なり交通系企業は同じ  A:当社は不動産事業をどう拡大し、多角化しようかという観点で取り組んできました。オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということですね。 A:結果的にそうだったのかもしれません。鉄道事業と分譲事業でいえば、沿線で住宅を分譲し、そこに住む人に鉄道を使ってもらう。住む人が減ると、鉄道を使う人も減るとなれば、それは同じターゲットを相手にしていることになる。多角化の在り方が不動産会社とは違うように思います。 (伊達美和子社長の略歴はリンク先参照)「オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということです」、なるほど。
・『集客でもバリエーション 外資と組み、自社でも法人会員組織  Q:ホテル運営の方で他にバリエーションを意識しているものはありますか。 A:集客の在り方。ここも複数持つようにしています。 Q:集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます。 外資系のほとんどの皆さんとお話しします。結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約(運営全体の委託)を嫌がってフランチャイズ契約(ノウハウやブランドを使用)を要望したり、当社の会員制施設(ラフォーレホテル)をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド(ラフォーレ会員が優先予約する権利も継続する)でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド(16年にマリオットが買収)はいい反応を見せてくれたんですよ。 Q:外資系はブランド力よりも何よりも、巨大な会員組織を持ち、海外から予約客を送り込む送客ネットワークが最大の強みです。 A:世界中でホテルの数を増やし、会員もどんどん増えていますよね。世界の潮流として、彼らの持つ顧客網に乗っておきたい。一方で、当社オリジナルの法人会員制倶楽部「ラフォーレ倶楽部」は変わらず残しています。 今回のコロナ禍においてラフォーレ倶楽部は利用の動きがやや鈍かった。法人の福利厚生を利用して旅行するというタイミングではありませんでしたからね。対して個人で加入しているマリオットの会員の方たちはポイントプログラムをためるためにも利用したいといったニーズがあり、そちらの動きの方が強かった。 ただ、東日本大震災の後では当社の法人会員の方が早く動きが出ました。 それぞれ母集団が異なり、ケースによって反応が変わってくる。だから販売チャネルもいくつか持っておくべきだと考えます』、「集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます・・・結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約・・・を嫌がってフランチャイズ契約・・・を要望したり、当社の会員制施設・・・をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド・・・でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド・・・はいい反応を見せてくれたんですよ』、「マリオット」が契約に「柔軟性があった」というのは初めて知った。有名ホテルチェーンの意外な面だ。
タグ:東洋経済オンライン「プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化」 ホテル (その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」) 「シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る」、「主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい」、なるほど。 「法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ」、「シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ」、これらの強みを如何に結実させてゆくかがポイントだ。 「ラグジュアリーの強化」。「顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組み」、など課題は多いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 伊達美和子・森トラスト社長インタビュー「【無料公開】ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」」 「観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました」、なるほど。 「リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです」、なるほど。 「電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか」、どう違うのだろう。 「オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということです」、なるほど。 「集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます・・・結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約・・・を嫌がってフランチャイズ契約・・・を要望したり、当社の会員制施設・・・をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド・・・でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド・・・はいい反応を見せてくれたんですよ』、「マリオット」が契約に「柔軟性があった」というのは初めて知った。有名ホテルチェーンの意外な面だ。
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携帯・スマホ(その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年6月8日に取上げた。今日は、(その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い)である。

先ずは、本園6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324176
・『6月2日、アマゾンが「携帯サービスの提供」を検討していると米国で報じられました。実はこのニュース、日本にとっては要警戒です。もしも日本でも携帯を始めるとしたらその先には、アマゾンが楽天グループを買収する最悪シナリオが起こる可能性を否定しきれないからです』、興味深そうだ。
・『アマゾンの「携帯電話サービスの提供」検討は“アマ天”爆誕につながりかねない  アメリカのブルームバーグ通信は6月2日、アマゾンドットコムがAmazonプライム会員向けに有料の携帯電話サービスの提供を検討していると報じました。アマゾン側は現段階ではこの報道を否定していますが、関係者によるとベライゾンやTモバイルUSと交渉をしていて、月額10ドルもしくは無料のサービスを目指しているといいます。 アマゾンは以前、携帯電話サービスに参入して失敗し、1年で撤退した過去があります。それを知っている方はこのニュース、3秒で興味をなくしてしまったかもしれません。 しかし、未来予測専門の評論家としては、耳にした瞬間にピリリと電気ショックが走ったのです。アマゾンが携帯サービスを提供すれば、成功確率は意外に高いと思ったからです。 さらに、この戦略は日本が絶対に見過ごしてはいけない「怖い話」にもつながりかねません。具体的に言うと、アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できないのです。 一部の方は同じように気づいたかもしれません。それを解説したいと思います』、「アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できない」、面白い時代になったものだ。
・『アマゾンが狙うのは中流〜下流層の消費者  アマゾンは2014年に、Fire Phoneを発売しました。これはiPhoneと競合する独自のスマホだったのですが、結果としては不振で販売中止に追い込まれます。 また、同じ失敗を繰り返すのか?」 そう思うかもしれませんが、実は今回は違います。アマゾンが提供するのは、携帯電話サービスです。 簡単に言えば、アマゾンが今回提供するのはSIMカードないしはeSIMで、たとえばiPhoneのユーザーがAT&Tなどの通信会社からアマゾンへ乗り換えるようなケースを想定したサービスだということです。 アメリカは日本以上に貧富の格差が拡大しているため、中流ないしは下流の消費者に向けたサービスは市場のボリュームゾーンになっています。この格差拡大でたとえば小売り最大手のウォルマートは独り勝ち状態で、店舗の売り上げが激増しただけではなく、下流層に向けた金融サービスや広告サービスで新しい収益源を獲得しています。 アマゾンが狙っているのも、おそらく同じ消費者を対象としたビジネス市場でしょう。これまでもAmazonプライムが、その強力な武器として使われてきました。 アメリカと日本では、Amazonプライムの内容というか質が若干違います。説明すると、アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です。 一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です。 Amazonは国別のプライム会員数を公表していませんが、報道ではコロナ禍でアメリカのプライム会員が1億人を突破したそうです。すでに国民的に利用するインフラサービスの位置づけにあるのです』、「アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です・・・一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です」、なるほど。
・『アマゾンは会員数の頭打ちに悩んでいる  そのアマゾンにとって頭が痛いのが、プライム会員数がそれ以上増えないという現象です。すでに飽和状態になっているうえに、2022年2月に年額119ドルから139ドルに値上げしたことで会員数が純増しなくなった。言い換えると新規会員と同じくらい退会者も増えているのです。 アメリカは日本以上のインフレに悩まされていますから、生活防衛のためにAmazonプライムを退会する人が出てくるのはある意味わかります。そこで、今回のような戦略をアマゾンが模索しているのだと私はとらえました。 生活防衛のためにはスマホの通信料もAmazonプライムの中でまかなえるようにサービスメニューを拡大すれば、消費者も生活防衛のためにAmazonプライムをやめる必要がなくなります。 ですから、このニュースを耳にした私は、「意外にこのサービスは成功するかもしれない」と即座に思ったわけです。 これが成功すればの話ですが、GAFAMクラスのIT企業にとっては携帯サービスが持つビッグデータの有用性は莫大(ばくだい)です。この点ではグーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つわけですが、この業界地図が、アマゾン携帯サービスが普及すれば塗り替わることになるのです。 さて、ここからお話しする未来予測は「もしも?」が二つ重なったときに起こることです。たとえ、それぞれが5割の確率だったとしても、それが二つ起こる確率は25%と高くはありません。ただ、それが起きたときのインパクトはものすごいことがある。そんな話です』、「アマゾン携帯サービスが普及すれば」、「グーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つ・・・業界地図」が「塗り替わることになるのです」、なるほど。
・『日本市場はアマゾンにとって重要な稼ぎどころ  今から15年ほど前に「グーグルゾン」という言葉が、ITビジネス界隈で話題になりました。激しく競争をしているグーグルとアマゾンですが、もし15年前の段階で2社が合併していたら、世界をあやつれるほどの独占企業が出現するのではないかという未来予測です。 現実にはそんなことは起きなかったのですが、別の現実としてグーグルとアマゾンはそれぞれ、この15年で個別に世界をあやつれるほどの力を持つようになりました。 そのアマゾンですが、世界売り上げの9割弱はたった四つの国で稼いでいます。アメリカ、ドイツ、イギリス、そして日本です。わたしたち日本人はアマゾンが大好きですが、日本市場はアマゾンにとっても全体の5%を占める重要市場なのです。 それで最初の「もしも?」は、アメリカでプライム会員に向けた携帯サービスが成功したとしたらどうなるかという話です。そうなれば当然アマゾンは次にドイツ、イギリス、そして日本でプライム会員向けに携帯サービスを導入したいと考えます。でも、誰が携帯回線をアマゾンに提供するのでしょうか? その疑問についてはこの記事の後半にお話しするとして、皆さんの中にもアマゾンエフェクトという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています。 2018年にシアーズやトイザらスが、2019年にフォーエバー21が、2020年にバーニーズ・ニューヨークが破綻しました。コロナ禍では金融緩和で大型倒産は目立たなかったものの、2023年4月には家庭用品販売最大手のベッド・バス&ビヨンドが破産に追い込まれました』、「アマゾンエフェクト」、「アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています」、なるほど。
・『アマゾンは「弱体化した日本企業の買収」を計画するかもしれない  私は、日本でのアマゾンエフェクトは、アメリカよりも遅れて2020年代に本格化すると予測しています。それも小売店だけでなく動画、音楽、書籍など電子メディア業界を含めた侵攻規模になると考えています。 その危惧は、コロナ禍で日本でもアマゾンを含めたインターネット通販の売上高が急増したことで、現実になり始めています。もちろん物流の2024年問題など日本固有の社会問題があるので、アマゾンエフェクトが一本調子で拡大するとは限りません。ただ、いろいろありながらも経済への悪影響が年々拡大していくことは間違いないと思っています。 そしてもう一つ、日本的なアマゾンエフェクトとしては、アマゾンは弱体化した企業を買収する形で拡大するのではと私は考えています。小売業については、アマゾンは無人店舗技術で他の小売流通の先を進んでいます。セルフレジではなく無人店舗です。 これはセンサーとAI技術を使うことで、レジを通さなくても駅の改札のようなゲートを通るだけで精算が終わる未来型の流通で、少子化に悩む日本にとっては最適なソリューションでもあります。このような技術的な優位のあるアマゾンならば、日本で販売網を拡大するには弱体化した全国スーパーや、2番手3番手のコンビニを買収したほうが、拡大が早い。 日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です』、「日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です」、大変だ。
・『もしもアマゾンが楽天を買収して「アマ天」が爆誕したら?  そこで、携帯サービスの話です。2024年にアメリカでアマゾンの携帯サービスが「もしも」成功したとして、2025年にアマゾンが日本でも同様のサービスを展開しようと考えたとします。 ここで、もう一つの「もしも?」が登場します。もしも2025年段階で楽天モバイルのユーザー数が伸びず、三木谷浩史CEOが窮地に陥っていたとしたらどうでしょうか? 私は経済評論家の中では楽天モバイル擁護派で、今は大赤字の楽天モバイルも加入者が1000万人を突破すれば楽天グループ全体はV字回復していくと予想しています。 楽天経済圏のユーザー数は4000万人いるので、1000万人という数字は現実的に到達可能な数字だとも考えています。 一方で、経営状態を考えると楽天にとっては資金調達という現実的な経営課題が重しになっています。膨大な数の基地局を建設してきたことで巨額の借金を背負っているのですが、その借り換えのスケジュールがどんどん迫ってくるのです。 2年後、楽天モバイルが躍進しているか、それとも伸びが止まってしまうのか。「もしも?」悪い方の50%の確率が起きてしまっていたとします。そのときのアマゾンの経営会議を想像してみてください。 「日本の携帯サービスへの参入、どうしようか?」 「それなんですけど、建設に3兆円かかる携帯電話網を持っている日本の会社が1兆円で売られてますよ」 それをアマゾンのアンディ・ジャシーCEOが気づいたら、どう考えるでしょうか? 「うん。ワンクリックでその会社をポチろう」 と言い出すかもしれません。 これは2025年に「アマ天」が誕生するという、競争企業にとっては悪夢のシナリオです。 このアマ天、思いもよらない組み合わせですが、考えてみると悪くはない。少なくとも消費者にとってこれは悪い話ではありません。 楽天モバイルと同じ、3GBまでなら月額1078円、20GBまでなら2178円、それ以上は無制限で3278円の携帯サービスに加入すれば500円分のアマゾンプライムも無料でついてくるとしたらどうでしょう。生活防衛のために他社から乗り換えようという人が、これまで以上に出てくるのではないでしょうか。 楽天の国内EC流通総額は、直近1年分で5.8兆円です。アマゾンは国別売り上げは非公開ですが、調査によれば楽天とアマゾンは国内ではほぼ互角。つまり合併で新たに10兆円小売業が誕生します。 これはイオンやセブンアンドアイと同等規模の巨大流通となります。同時にECやクラウドの規模を考えると、国内最大のビッグデータの保有企業となり、資金規模を考えると国内最大のAI企業の誕生になるでしょう。 そうなると、国内の主要産業の破壊が現実味を帯びてきます。中規模な小売流通は、当然のようにアマ天の巨大な販売力の下で競争力を失うでしょう。2030年までに家電量販店が消え、ホームセンターが凋落し、アパレル業界は衰退します。動画、音楽、書籍といったメディア業界でも、アマ天エフェクトで崩壊スピードは速まります。 それを予感させたからこそ、冒頭のシーンのように「アマゾンがアメリカで携帯サービスに再参入」というニュースを耳にしたとたん、私の頭の中に電気が走ったのです。 さて、アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか』、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません」、ただよくよく考えれば、それほど悪くないとも考えられる。ただ、「早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」には賛成である。

次に、6月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324345
・『かつて、NTTドコモ(当時)は、世界で初めて携帯電話によるインターネット接続を可能にする「iモード」を発表。iモード対応1号機として投入されたのが、富士通の「ムーバ F501i」だった。そうして富士通の携帯電話事業本部を母体に発足したのが、FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)だ。同社の「らくらくスマートフォン」はシニアに支持されたヒット商品だ。しかし5月末、FCNTは民事再生法を申請した。背景には何があったのか』、「旧富士通の携帯電話事業が破綻」とは何があったのだろう。
・『旧富士通の携帯電話事業が破綻  5月30日、「らくらくスマートフォン」などを手掛けるFCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理された。同日、親会社のREINOWAホールディングス、その子会社であるジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)も民事再生手続き開始の申し立てを行った。わが国のスマホメーカーの凋落ぶりは鮮明だ。 今回の破綻要因は、FCNTが世界経済の速い変化に対応ができなかったことだろう。国内の人口減少などによる収益悪化や世界的な競争激化、さらに物価上昇や円安によりコスト負担が増すなどし、資金繰りが悪化していた。 FCNT以外にも、そうした変化に対応できず破綻する企業が目立つようになってきた。1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている』、「1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている」、その通りだ。
・『凋落鮮明な日本のスマホメーカー  FCNTの民事再生法は、わが国スマホ産業の凋落ぶりを象徴する。99年、かつて、NTTドコモ(当時)は、世界で初めて携帯電話によるインターネット接続を可能にする「iモード」を発表した。iモード対応1号機として投入されたのが、富士通の 「ムーバ F501i」だった。そうして富士通の携帯電話事業本部を母体に発足したのが、FCNTだ。 かつて富士通の携帯電話事業部門は、21世紀の世界経済が「データの世紀」に入ることを予見していただろう。2000年代に入ると、世界全体でインターネット利用が急増した。それに伴い、ビッグデータを用いたビジネスモデルの確立も加速した。本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた。 一方、世界経済は劇的に変化し、冷戦終結後は「分断からグローバル化」へ突き進んだ。 中国は、「世界の工場」としての地位を確立した。共産党政権による国有企業などへの土地や、安価かつ大量な労働力の供給は大きな影響力を持った。 米国ではIT革命が起きた。アップルやエヌビディアはソフトウエアの設計・開発に集中し、ファブレス体制を強化した。台湾のTSMCや鴻海(ホンハイ)精密工業などは、米国企業が設計・開発したスマホやチップなどの製造を受託した。こうしてグローバル化は加速した。 3G・4G、そして5Gと、通信速度も向上した。デジタル化も加速し、ジャスト・イン・タイムなサプライチェーンも整備された。企業の新商品の開発スピードは加速し、国際分業体制の強化によって米国をはじめとしたグローバル企業の収益性、事業運営の効率性は高まった』、「本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた」、「わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった」というのは確かだ。
・『日本の通信市場は「ガラパゴス化」  わが国企業は、そうした環境変化への対応が難しかった。わが国には1億人超の人口がある。バブル崩壊後、多くの企業経営者は相応の需要獲得が期待できる国内市場を念頭に、事業戦略を立案した。 それによってわが国企業は、雇用や既存事業を維持した。攻勢をかけるタイミングを計る姿勢も示された。それは、利害関係者の理解の取り付けに重要だった。また、国内の消費者などとの関係を強化するために、企業は自前での設計・開発・国内製造なども重視した。 一方、人口規模が小さい韓国や台湾の企業は、急速に海外事業を強化し、収益の得られる分野を拡大。内向き志向の強まる本邦企業との成長戦略の違いは鮮明化した。 わが国の国土は狭く、人件費も高い。政府による民間企業のリスクテイク支援策も遅れた。IT化、国際分業の加速など、世界経済の環境変化にわが国企業が対応することは難しくなった。 追い打ちをかけるように、07年頃から世界全体で、スマホが急激に普及した。デバイスの供給面でアップル、サムスン電子、低価格攻勢をかけた小米(シャオミ)など中国メーカーのシェアが拡大した。スマホOS市場では、グーグルのアンドロイド、アップルのiOSの寡占が鮮明化した。 わが国はそうした環境変化に取り残された。NTTドコモによる海外買収戦略の失敗などもあり、ソフト・ハードウエアの両面でわが国の通信市場は「ガラパゴス化」した。国際市場での競争力は失われ、三菱電機やNECはスマホ事業から撤退した。 16年、富士通は量子コンピューティングや光通信など、成長期待の高い分野への選択と集中のために、携帯端末事業を分社化し、FCNTが発足した。続く18年、富士通はFCNTをプライベートエクイティ・ファンドに売却した。その後、世界的な資源価格高騰や円安の進行によってFCNTのコストは急増。収益力は低下し、財務内容も悪化した。そうして23年5月末、FCNTは縮小均衡から抜け出すことができず、民事再生法を申請した』、「日本の通信市場は「ガラパゴス化」」、かえすがえすも残念だ。
・『ハイブリッド車に続く世界的ヒットの実現は…  1990年代以降、日本企業はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッド車の世界的ヒットを実現した。ただ、それに続く高付加価値の商品が見当たらない。コロナ禍を境に、わが国のデジタルデバイドの深刻さも鮮明化した。 それにもかかわらず、能動的に収益分野を拡大し、高成長の実現を狙う企業は限られている。FCNTの民事再生法申請は、これまでの発想で企業が成長を目指すことが限界に差しかかりつつあることを示唆する。 わが国企業は、スマホ企業が凋落した教訓を生かすべきだ。一例として、デジタル分野など成長期待の高い分野に進出して収益の得られる分野を拡大することだ。反対に、それが難しくなると、環境変化に取り残される企業は増えるだろう。収益力・財務体力は低下し、長期の存続は難しくなる恐れも高まる。 最近、FCNT以外にも破綻に陥る国内企業が目立つ。4月、不動産のユニゾホールディングスが民事再生法を申請した。コロナ禍によるインバウンド需要の一時消滅、物価上昇による事業運営と資金調達コストの増加などが重くのしかかった。 中小企業の倒産件数も増加している。中小企業庁「倒産の状況」によると、22年12月以降、倒産件数の増加率は前年同月比20%を上回って推移している。23年4月末の倒産件数は前年同月比25.5%増の610件だった。うち、70%超が販売不振を理由に倒産した。 バブル崩壊後の30年以上にわたり、日本全体で「現状維持の発想」がまん延している。その結果、事業規模の大小にかかわらず、企業にとって能動的に収益分野を拡大し、より高い利益率の達成がままならなくなっている。 今後の展開次第では、米欧で物価は高止まりし、金融引き締めは長引きそうだ。世界経済の後退懸念も高まるだろう。それが現実となれば、わが国の経済成長率は停滞し、事業運営に行き詰まる企業は増えるはずだ。そうならないためにも、本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている』、「本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている」、同感である。

第三に、7月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載した企業アナリストの大関 暁夫氏による「日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/71678
・『好調な事業の黒字をモバイルが一気に食いつぶしている  楽天の株価下落が止まりません。2021年3月に上場来最高値の1545円を付けて以降、右肩下がり一辺倒。直近では四半期ごとの大赤字決算発表の都度株価を下げ、今や500円前後を行ったり来たり。最高値の3分の1以下になってしまった、という体たらくぶりなのです。 楽天の株価を引き下げているものは、楽天モバイルの業績不振に尽きます。モバイル事業準備段階の19年決算からグループ決算の赤字化が始まり、サービススタート後の20年決算からは3期連続で1000億円を超える大幅赤字を計上。 直近の23年1~3月の四半期決算でも営業損益で761億円の赤字を計上していますが、モバイル事業単体ではこれを上回る1026億円の赤字となっています。つまり、好調なインターネット事業や金融事業の黒字を、モバイル事業が一気に食いつぶしている構図が見てとれるのです。 そもそも、楽天が第4の通信キャリアとしてモバイル事業に名乗りを上げたのは、この事業で大きな利益を得ようと思ってのことではありません。ECビジネスからスタートした楽天は、新規事業の立ち上げや企業買収によってビジネス領域を着々と広げていきました。 そして、ポイント・サービスやキャッシュレス決済をキーにして、利用者を楽天ビジネスに囲い込む「楽天経済圏」を形作ってきたのです。各サービスを有機的につなげ、経済圏を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だったのです』、「楽天経済圏」「を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だった」、なるほど。
・『あまりにも大きい「3つの誤算」  このような狙いの下、20年4月に「第4の携帯キャリア」として鳴り物入りでスタートしたはずの楽天のモバイル事業が、なぜ巨大な「お荷物事業」になってしまったのでしょう。そこには、楽天グループを創業から発展軌道に乗せてきた三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした。監督官庁の総務省は、遅々として進まぬ受信状況改善に業を煮やして、19年10月の開業予定に待ったをかけたのです。 これは明らかに、国の認可業務である通信事業を舐めていたと言えます。楽天モバイルは開業の半年先延ばしを余儀なくされ、期待の「第4の携帯キャリア」のイメージは、いきなり大きく損なわれることとなりました』、「三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした」、なるほど。
・読みの甘さを象徴する三木谷社長の発言  しかし、これはまだ、序の口に過ぎません。基地局設置に関しては、その投資額に関する見通しの甘さが何より致命的でした。当初の投資計画では基地局整備に必要な投資は約6000億円を想定していたようですが、現状で既にそのほぼ倍額が投じられながらもいまだ目標の通信人口カバー率99%以上に至らず、なのです。 この巨額投資地獄が、とりもなおさず楽天の財務状況を悪化させた根源となったのです。すなわち人口カバー率99%以上達成を甘く見過ぎていたことが、今の大苦境に直結したと言えるでしょう。 この点での読みの甘さを象徴したのが、22年度決算発表時の三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていたのが印象的でした』、「三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていた」、「三木谷」には冷静な判断力が欠如しているようだ。
・『6万局では勝負にならないのは明白  現実を見れば、三木谷社長の見通しの甘さ、考えの甘さは明白です。社長が同社基地局数の当面の目標としていたのが、6万局です。一方で、NTTドコモの国内基地局数が約26万局(4G)、auは約20万局、ソフトバンクでも約17万局を備えています。 ソフトバンクですらいまだに、「上位2社に比べてつながりが悪い」と言われていることを考えれば、6万局ではおよそ勝負にならないのは明白であり、「基地局投資が24年度で一段落する」などという考えこそ大甘であったことが分かるでしょう。 結果的に、今年5月にKDDI(携帯キャリアはau)回線借用契約におけるローミング(相互乗り入れ)の拡大を決めました。これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です。楽天のただならぬ苦境と、基地局整備に対するこれまでの見通しの甘さが、ここに完全露呈したと言えます』、「これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です」、なるほど。
・『2つ目の誤算「プラチナバンド問題」  この問題に微妙に絡んでいるのが、2つ目の誤算であるプラチナバンド問題です。プラチナバンドとは、我が国の電波利用においてもっとも携帯電話に適してつながりやすい、700MHzから900MHzの周波数帯のことです。国内のプラチナバンドは先行3大キャリアに独占され、現在空きはありません。 後発の楽天に割り当てられた周波数は1.7GHzであり、屋外では大きな問題はないものの室内での先行3社に比べた接続の悪さは利用者の知るところです。すなわち、いかに基地局整備を進めようとも、プラチナバンドを持たない現状では「つながりにくい楽天」は解消されず、飛躍的な契約者数増強は望めないのです。 楽天のプラチナバンド問題については、同社が業界参入を決めた当初から業界内では「プラチナバンドなしで、どう戦う気なのか(大手キャリア幹部)」と不安視する声と、同時に「楽天、臆するに足らず(別の幹部)」との声も聞こえていました。 しかし、この段階で楽天は脳天気にも、「うちの1.7GHzはつながりやすい(山田善久社長、当時)」と自信を見せていたわけで、この点での見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです』、「見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです」、その通りだ。
・『初動の遅れが「つながりにくい楽天」を決定づけた  楽天が総務省に対してプラチナバンドの再分配要望を初めて出したのが、事業開始から半年以上経た20年12月です。1.7GHzでやってみたが、やっぱりつながりが悪い。これではどうにも勝負にならない、と遅ればせながら気がついたのでしょう。 事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言えるのです。 ちなみに、楽天のプラチナバンド獲得に関してはこの4月に、3大キャリアの携帯電話700MHz帯と隣接の地上波テレビ帯などの間に存在する空き部分に3MHz幅×2の携帯電話4Gシステム導入を検討し、それを楽天に優先供与する見通しにはなりました。しかし、先を急がざるを得ない楽天はこれを待っている猶予はなく、先に書いたようにプラチナバンドを使用したau回線を全面的に借用することとなったのです』、「事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言える」、どうも「楽天」は「通信」では素人のようだ。
・『官製値下げによって事業計画は大幅に狂わされた  3つ目の誤算は、携帯料金の官製値下げです。これは最も予期せぬものだったかもしれませんが、最も事業計画にダメージを与えた誤算でもありました。楽天モバイルのスタートから半年後の20年9月、総務大臣経験者の菅義偉首相が誕生。菅氏は持論である「携帯料金は4割程度下げる余地がある」を実践すべく、「携帯料金官製値下げ圧力」を発動しました。まず政府が大株主であるNTTドコモがこれに従ったことで、au、ソフトバンクも追随するという、予想だにしなかった展開になってしまったのです。 サービススタート当初は圧倒的な業界最安値であった楽天の月額2980円は、瞬く間に大手3キャリアに追いつかれてしまうこととなり、後発でかつ「つながりにくい楽天」としては一層の値下げを強いられることになりました。結果的に楽天のモバイル事業黒字化は先が見えなくなり、官製値下げによって事業計画は大幅に狂わされたのです。 表向きは、楽天も時の首相の人気取り政策の犠牲者であると言えるかもしれません。しかし、そもそも政府による楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます』、「楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます」、その通りだ。
・『有利子負債は「これ以上増やせない」のが実情  もちろん、それは先に述べたように、楽天が基地局整備を甘く見たために開業が遅れ受信状況の改善が遅々としてすすまなかったこと、加えてプラチナバンドを軽視したが故に一層「つながりにくい」印象となったことで、3大キャリアにほとんど危機感を与えることができず、政府の期待に沿えなかったことに起因しているわけです。これも結局のところ、甘い見通しによる誤算の連鎖が、自らの首を絞めた自業自得の結果であると言えそうです。 楽天がここにきて自前の基地局設置からau回線の全面借用に180度方針転換した理由は、この先も年間3000億円という基地局設置投資を続けていくことが、財務上難しくなってきたことに他なりません。 22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです』、「22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです」、「これ以上増やせない」とは苦しいところだ。
・『5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けている  今後最大の問題は、有利子負債の大半を占めている社債が、続々償還を迎えることにあります。今年度が800億円、来年が3000億円、再来年には5000億円、この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります。 現状の財務内容で1兆円を超える償還資金を手当てするのは容易ではなく、かといって借り換えを実施しようにも今の格付けでは金利が跳ね上がってしまい、ますますグループ経営の足を引っ張ることになるでしょう。 資金調達に関しては、21年に1500億円を楽天に出資した日本郵政が同社の株価低迷で800億円もの減損処理を迫られていることもあり、現状で第三者から新たな巨額出資を求めるのは難しいでしょう。増資自体がますます株価を下げることにもなるので、これ以上の新株発行は難しい状況にあると言えます』、「この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります」、これまでの放漫な調達政策のツケだ。
・『存続を賭けた本当の正念場にさしかかっている  資産売却については、既に楽天銀行の上場で700億円が調達済みで、楽天証券も上場申請を済ませ約1000億円を調達予定と聞きます。まだ他にも、カードや保険などの子会社はあるものの、近年親子上場が少数株主の利益が損なわれるという批判も多く、ここでも手詰まり感があるのが実情なのです。 こうしてみてくると、甘い見通しのまま新規事業に手を出したツケが誤算という形で次々ボディブロー的に効いてきて、いよいよロープ際に追い込まれた楽天の現状がよく分かると思います。現状ではモバイル事業黒字化の見通しはあまりに遠く、社債の巨額償還を前にどのような秘策を繰り出していくのでしょうか。楽天モバイルは今、存続を賭けた本当の正念場にさしかかっていると言えるでしょう』、ジジ殺し「三木谷」氏の手綱さばきが注目される。
タグ:携帯・スマホ (その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ」 「アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できない」、面白い時代になったものだ。 「アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です ・・・一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です」、なるほど。 「アマゾン携帯サービスが普及すれば」、「グーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つ・・・業界地図」が「塗り替わることになるのです」、なるほど。 「アマゾンエフェクト」、「アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています」、なるほど。 ・『アマゾンは「弱体化した日本企業の買収」を計画するかもしれない  私は、日本でのアマゾンエフェクトは、アメリカよりも遅れて2020年代に本格化すると予測しています。それも小売店だけでなく動画、音楽、書籍など電子メディア業界を含めた侵攻規模になると考えています。 その危惧は、コロナ禍で日本でもアマゾンを含めたインターネット通販の売上高が急増したことで、現実になり始めています。もちろん物流の2024年問題など日本固有の社会問題があるので、アマゾンエフェクトが一本調子で拡大するとは限りません。ただ、いろいろありながらも経済への悪影響が年々拡大していくことは間違いないと思っています。 そしてもう一つ、日本的なアマゾンエフェクトとしては、アマゾンは弱体化した企業を買収する形で拡大するのではと私は考えています。小売業については、アマゾンは無人店舗技術で他の小売流通の先を進ん 「日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です」、大変だ。 「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません」、ただよくよく考えれば、それほど悪くないとも考えられる。ただ、「早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」には賛成である。 真壁昭夫氏による「「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路」 「旧富士通の携帯電話事業が破綻」とは何があったのだろう。 「1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている」、その通りだ。 「本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた」、「わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった」というのは確かだ。 「日本の通信市場は「ガラパゴス化」」、かえすがえすも残念だ。 「本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 大関 暁夫氏による「日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い」 「楽天経済圏」「を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だった」、なるほど。 「三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした」、なるほど。 「三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていた」、「三木谷」には冷静な判断力が欠如しているようだ。 「これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です」、なるほど。 「見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです」、その通りだ。 「事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言える」、どうも「楽天」は「通信」では素人のようだ。 「楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます」、その通りだ。 「22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです」、「これ以上増やせない」とは苦しいところだ。 「この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります」、これまでの放漫な調達政策のツケだ。 ジジ殺し「三木谷」氏の手綱さばきが注目される。
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鉄道(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) [産業動向]

鉄道については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も)である。

先ずは、本年5月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322125
・『千葉県・東葉高速鉄道が、早くて2028年度にも資金ショートする可能性が取り沙汰されている。多額の長期債務残高があり、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているからだ。その原因を突き詰めると、建設前の「鉄建公団」の枠組みにある。最近の金利上昇も“泣きっ面に蜂”状態で、返済にはさらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ』、どういうことなのだろう。
・『早くて2028年度にも「資金ショート」  「鉄道会社としての売り上げは年間130億円以上」「1日12万人以上が利用」「営業利益は年間33億」――。千葉県八千代市と船橋市を通る「東葉高速線」を運営する東葉高速鉄道は、これらの数値だけ見れば経営が順調そうに思える。 しかし同社は、早くて2028年度にも「資金ショート」する可能性がある。長期債務残高が2356億円あり、その返済はおろか、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているのだ。 その原因は、「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある。東京メトロ東西線と相互直通運転し、都心への通勤輸送を担う東葉高速線の利用状況は好調であるものの、コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている。 東葉高速鉄道は、なぜこうした経営状況に陥っているのか。また、利用者から「高い」と言われる運賃は、なぜ高いのか? まずはこれまでの経緯をたどってみよう』、興味深そうだ。
・『免許申請から開業まで22年かかり建設費用が3倍に  東葉高速鉄道が開業したのは1996年。しかし免許の申請が行われたのは74年で、工事の大幅な遅れが建設費用の増大につながった。 74年の免許申請は営団地下鉄(現在の東京メトロ)によって行われ、当時は955億円の事業費(建設費など)を見込んでいた。しかし並行する京成電鉄などの事情も絡み、営団は免許を取り下げ、中野駅~西船橋駅間を東西線として開業した。営団は東葉高速鉄道に出資した上、「乗り入れ」という形の関与となる。 その後80年には「日本鉄道建設公団(以下:鉄建公団、現在のJRTT)」が工事を行い、千葉県や船橋市、八千代市などが出資する第三セクターが設備を引き取って運営する、現在の東葉高速鉄道が成立した。そうしてようやく84年に着工を果たす。 しかし、用地買収の交渉は遅々として進まなかった。通常ならここで「土地収用法」に基づき、裁決手続きの上で行政代執行となるはずだが、この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す。 そしてこの期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」(建設中の資金調達にかかる利息)や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった』、「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。
・『無理があった「公団P線方式」での建設  鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う。 このスキームは経営体力のある大手私鉄の新線(東急田園都市線など)で頻繁に用いられた。一方、経営能力に乏しい第三セクター会社にも適用され、業績低迷とともに支払いに苦しむ事例が続出した。例えば、92年に開業した千葉急行電鉄(現在の京成千原線)はたった6年で経営破綻した。自治体のみならず、出資した京成電鉄も大きな損害を負うことになった。 当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ。 最近の金利上昇により、東葉高速鉄道の返済計画には、さらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ。21年度の約12億円の利払いは、リーマンショック後の超低金利が前提となっている。そうなる以前は、年間50億円以上の利払いを行っていた時期もある。返済内容として、金利が0.1%変動しただけで、返済金額が数億円も上振れする可能性があるという』、「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。
・『鉄道建設と資金調達に変化、東急・相鉄直通線は?  東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている。どういったことか、各地の事例を見てみよう。 23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる。2社の営業利益を合計した8年分に相当する額だ。なお、東急・相鉄直通線の加算運賃も現行の範囲では済まなかっただろう。 05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している』、「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。
・『株主である自治体が国に支援を要請へ  東葉高速鉄道は、西船橋駅~東葉勝田台駅間(16.4Km)の運賃で640円、1カ月の通勤定期で2万6890円という、距離の割に高い運賃が問題視されている。 同じ千葉県内では、北総鉄道が通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%も大幅値下げした(22年10月1日)。同社は「北総線・成田スカイアクセス」など成田空港への輸送で利用が上向いたことから、20年前には450億円もあった累積損失の解消を見込んでいる。片や、東葉高速鉄道の返済金額はその数倍とあって、なかなか値下げに踏み切れない。 3月20日、東葉高速鉄道に出資する千葉県・八千代市・船橋市は、国土交通省に対して、同社への「抜本的な支援策」を求める申し入れを行った。出資者による財政支出は500億円に上っているが、自治体のみによる支援には限界があるとして、踏み切ったもよう。これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」(裁判外紛争解決手続。私的整理の一つ)で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた。 東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ』、「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、その通りなのだろう。

次に、5月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675824
・『ETR252型「アルレッキーノ」――欧州の鉄道に関心のある人でも聞き慣れない名前かもしれない。 だが、昭和世代の乗り物好きなら乗り物図鑑の中で一度は目にしたことがあるであろう、前面展望車両の元祖とも言うべきETR300型「セッテベッロ」といえば、ご存知の人も多いのではないだろうか。 通常は車体前部に設ける運転台を屋根上へ置き、その代わりに前方を眺められる展望席を設けた画期的なデザインで、あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車、と言っても過言ではないだろう』、「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。
・『錆びて朽ち果てた名車  ETR250型アルレッキーノは1960年、そのセッテベッロの増備車として同年に開催されたローマオリンピックの観客輸送のため、ETR251~254型の4両編成4本が製造された。オリンピック終了後は、イタリア国内の主要都市間を結ぶRapido(特急列車)で使用されていたが、1990年代に入ると徐々に定期運用から外され、主に臨時列車やチャーター用に使用された。 だが、その回数も徐々に減っていき、ついに保留車両として完全に運用から退くことになった。4本造られたうち、第2編成のETR252型を除いた3本は1999年までにすべて解体されてしまった。残ったETR252型も、海からの潮風が吹くアンコーナ駅構内に長期間野ざらしの状態で放置され、車体は錆びて朽ち果てた状態となった。) 転機となったのは2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ。車両は同財団によって速やかに回収され、ひとまず盗難や落書きなどの被害から守るため建物の中へ収容した。資金のメドが立った2016年に、修復を請け負う民間企業の工場へ移送され、すぐに動態保存へ向けた修復工事が始まった。 ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した』、「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。
・『3年かけ修復完了、直後にコロナ禍が…  内装はオリジナルの状態を極力再現するため、シート生地は現代の基準を満たしつつ、当時の素材を忠実に再現。内壁に使う化粧板なども当時の色彩を保っている。その一方で、本線上を運行するにあたって現代の基準に適合させる改造も行われている。 例えば信号保安装置には、イタリアの主要幹線で採用されている安全性の高いSCMTシステムを搭載、空調装置は最新のものへ交換し、各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年だった。お披露目は同年6月27日、ローマで開催されたイタリア鉄道(FS)グループの観光計画発表の場で行われた。すぐに一般向けの公開運転がスタートすることが期待されたが、間もなく世界はコロナ禍によって大混乱へと陥り、運転再開は無期限休止の状態となった。 2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた。最初の運行は2021年10月3日、ボローニャ―ローマ間で実施され、チケットは発売開始と同時に完売した。その後、今年2023年に至るまで、年に数度の一般向け公開運転や、チャーター運用などに使用されている。) 鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる。こうした車両のメンテナンスには、熟練の技術者が必要不可欠となるが、若い技術者を育てなければ恒久的な維持管理は難しくなる。もちろん、ただ技術を教えるだけではなく、その技術者が一人前になった後、その技術だけで生活ができなければ、いずれなり手はいなくなってしまうし、その技術者が定年を迎えるときまでに後継者を育てなければ、その技術は潰えてしまうことになる』、なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。
・『相当な資金が必要な「動態保存」  部品の確保もまた、今後は重要な課題となってくるだろう。古い車両は、実は技術さえ継承できれば修理や整備は何とかなる可能性があるもので、昔の家電製品のように「叩けばなんとかなる」ではないが、ある意味で言えばスパナやハンマーなどがあれば直せるものが多い。 だが近年、特に半導体技術を使うようになった1970~1980年代以降の車両の場合、部品の交換以外に修理する手段がなくなるため、廃車となった車両から保守用部品を抜き取って保管する必要が生じる。そして、部品が枯渇した段階で修理不能となるため、装置そのものを最新の装置へ換装する以外に修理する手段がなくなる可能性もある。 つまり車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある。ファンがいくら声を上げたところで、ない袖は振れないのはやむをえないことだ。 では、一度はスクラップ寸前の状態となった1960年代の車両を通常の運行ができる状態にまで完全に復元した、イタリア鉄道財団の財源はどうなっているのだろうか。 イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある』、「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。
・『政府が保存をバックアップ  民間からの寄付については、筆者も一度財団へ寄付を申し出たことがあるが、個人からの少額の寄付は受け付けていないようで、今のところは企業などからの大口の寄付で賄われているようだ。 なお、2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い。 FS財団では現在、冒頭で触れた世界的に有名なETR300型セッテベッロのほか、1957年に運行開始した国際特急TEE用のALn442-448型気動車、数々の超特急を牽引したE444型高速旅客用電気機関車などの完全復元を目指して修復工事が進められている。これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない』、「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。

第三に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680988
・『昭和の頃からいまだ抜本的解決策が見いだせない赤字ローカル線問題。近年は「人口減少」を理由として、半ば諦めムードの世論形成の末に、廃線への道を突き進むケースがほとんどである。筆者もこれなら廃線も仕方がない、そう信じていた。 ところが、その赤字ローカル線、本当に人口減少が原因なのかと首をかしげるようなデータを入手した。それによれば「人口減少率が低い・または人口が微増しているにもかかわらず、鉄道利用者が最大半減になっている線区がある」あるいは「鉄道利用減少率が人口減少率の2倍・3倍の線区がある」という事実がある』、興味深そうだ。
・『人口減より急速に進む利用者減  これが本当ならば、人口減少のみがローカル線衰退の原因ではなく、鉄道事業者の無策・愚策がローカル線衰退の一助になっていたり、むしろローカル線を衰退させて沿線人口減少にもつながっていたりすることもありえるのではないだろうか。 これから挙げる4線区の例は、2000年、2010年、2020年と10年おきの乗車人員、駅から2km圏の沿線人口、そして通学利用者が多いと考えられる10代後半の人口のデータだ。2020年のデータはコロナの影響を排するため、2019年の数値を用いている。人口は国勢調査から引用している。 まず注目したいのはJR小海線の中込―小諸間だ。小海線は2000年から2010年にかけて沿線人口は横ばい、10代後半の人口は8%も増え、2010年から2020年までは人口も2%増えている。) それにもかかわらず、小海線の乗車人員は2000年と比べて2010年は30%減、2020年に至っては人口増で若干持ち直しているものの、2000年比で26%の減少であり、この差分を取りこぼしたままとなっている。 沿線人口を維持、あるいは増えているにもかかわらず利用者数が3割減とは、鉄道が移動の選択肢から外れる要因に手を打つことができなかった鉄道事業者の落ち度ではないだろうか。 通常、人口1人あたりの鉄道利用回数が変わらなければ、人口減少率を超えた鉄道利用者の減少率にはならないはずであり、人口減少だけを利用減少の理由にするには無理がある。 (小海線と米坂線の沿線人口・乗客数の変化を表したグラフはリンク先参照、横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 米坂線の小国―坂町間については、10代後半の人口はあまり減っていないのに大幅な減少だ。こちらは2000年比で10代後半の人口は2010年で4%増、2020年はほぼ同レベルを維持している。沿線人口は全体で2020年までに18%減っているとはいえ、乗車人員は36%も減っている。ローカル線の大口顧客である通学生はほぼ減っておらず、沿線人口の減少率の2倍も客が減るのは、人口減少のせいにする前に商売のやり方のまずさに気付くべきところもあるのではないか』、「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。
・『首都圏にも実例が  さらに、首都圏にもこのような路線がある。内房線の君津―館山間だ。こちらもこの20年で乗車人員が半減し、列車も新車への置き換えの際に4両から2両に減らされた。ところが沿線人口は1割しか減っていないのである。10代後半に限ってみても3割減だが、高校生人口は全体の5?6%程度であり、その3割が減ったからといってそう大きな差にはならないはずである。 陸羽東線の最上―新庄間も内房線と同じ傾向だ。こちらは人口2割減だが乗車人員6割減だ。高校生は半減だがこちらも全体の5%に過ぎない。となると、これは事業者側の商売音痴がローカル線の衰退を招いたというべきではないだろうか。 (内房線と陸羽東線の沿線人口と利用者数のグラフもリンク先参照。横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 他業界のビジネスパーソンなら、市場の人口が増えている、あるいは微減しかしていない状態にもかかわらず客数や売り上げが半減したら、担当者は幹部から何をやってるんだ!と叱責の対象となり、責任を追及されるはずだ。 大阪産業大学の那須野育大准教授の研究「JR地方交通線の輸送需要に関する考察」(公益事業研究第74巻第1号・2022年発表)では、列車本数や運賃施策が輸送密度に有意な影響を及ぼすとしている。つまり値上げや減便をすれば客が減るし、逆に値下げや増便によって客が増える方向に有意な影響があるということだ。 内房線の南半分についていえば、列車接続はかなり良いほうではある。ただ本数が少なかったり、東京直通列車がほとんどなかったりするため、東京湾アクアライン開通による高速バスの設定にトドメを刺されたのかもしれない。だが、それならば何か高速バスに対抗するような施策を講じただろうか。東京直通の特別快速を1日1往復、1年間走らせたくらいではないだろうか。これでは「やってはみましたよ・けどダメでした」という既成事実を作るための取り組みにすぎない』、JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。
・『「使いたい時間に列車がない」  価格面でも高速バスに対抗しただろうか?特急料金を取ることに執着して価格競争に敗れた結果、特急がなくなるくらいなら、乗車券と指定席券のみで乗れる快速列車でも走らせていれば運賃を取りっぱぐれることはなかったのではないか。例えばJR九州は高速バスへの対抗で実質往復運賃のみの料金水準で新幹線や特急で往復できる企画きっぷを多数出している。このようにできることはたくさんあったはずである。ところがJRが行ったのは、逆に房総料金回数券を廃止し、特急料金の実質値上げしたことであった。 他の線区はどんな状況だろうか。最近は久留里線の廃線議論でも利用減少を原因に挙げているが、住民からは「そもそも使いたいタイミングに列車がないのにどうやって乗れというのか」という声が上がったそうだ。 宇都宮線では高校生の下校のタイミングに走っていた列車が削減され、学校側が残された列車に合わせた時間割への変更を余儀なくされたことが話題となったこともある。先の那須野教授の研究では高齢化率や1人あたり自動車保有台数による悪影響もあるとしているが、ならば高齢者の利用促進や車より高いアドバンテージの実現といった努力をすべきである。) 例示した線区の現状のダイヤはどうなっているのか。通勤・通学に適したタイミングで運行されているのか。例えば内房線の安房鴨川―館山間では、安房鴨川方面は館山8時01分発の後は9時36分発までないし、反対方向も安房鴨川8時04発の後は9時40分発までないなど、まだ通勤を含む需要がありそうな時間帯に1時間半も列車が来ない。朝ラッシュ時でも1時間も間隔が開くのだから、これでは使えるとは言いがたい。 さらに終電も21時台の駅が目白押しで、これでは飲んで帰るのにも使えない。一部列車を除き、4両編成を2両編成にしたうえで車掌をなくし、ほぼ半分の経費で運転できるようにしたのだから、多少の増発をしてくれてもいいのではないか。 小海線はもっとひどい。小淵沢7時03分着の後は9時08分着まで列車がなく、その後も10時37分着までない。日中や夕方はもっと壊滅的なダイヤだ。沿線人口が増えている線区なのにこの扱いである。一体どうやって生活に使えというのだろうか!?』、確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。
・『ローカル線対策、今のままでいいのか  今回のデータの提供元の環境経済研究所、上岡直見氏は「JR東日本の深沢祐二社長は、収益重視で減便が利用者減少の原因とする批判は的外れであり、沿線人口が減る中で利便性をいくら改善しても需要喚起には限界があると述べている(『日本経済新聞』記事「ローカル線は維持できるか」2022年9月5日付)。しかし第三セクターのえちぜん鉄道では、さまざまな工夫によってコロナ下でさえ増客を実現(2022年度前年度比)している。JRのローカル線対策はあまりにもお粗末ではないだろうか」と指摘する。 「人が乗らないから助けてください・もう持ちません」と訴えるローカル線は日本中にあるが、すべてではないにせよ、そう言っている割には団地や商業施設の前に駅も置かずに素通りしているなど、泣き言を言う前にやることあるだろうと思うようなところはあるのではないかと感じる。 一方で、本当に沿線人口が少なすぎてどうしようもない線区もある。そのような線区を、都市部の黒字、つまり都市部の負担で多額の赤字を垂れ流しながらも残せというのは、コロナ禍の営業自粛のような、わずかな犠牲を回避するために多額の経済損失を繰り返す行為であり、何でもかんでも残せばいいというのも違うのではないか。きちんと残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引きをしたうえで存廃論議が進められることを期待したい』、「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
タグ:鉄道 (その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」 「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。 「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。 「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、 「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。 「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、 その通りなのだろう。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」 「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。 「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。 なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。 「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。 「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。 北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」 「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。 JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。 確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。 「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
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自動車(一般)(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は)である。

先ずは、昨年3月23日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/03/post-1265_1.php
・『<日本型の「高付加価値部門の空洞化」に、クリーンエネルギーへの転換の遅れが追い討ちをかければ、自動車産業は風前の灯火に> アメリカの消費者は厳しいインフレに直面していますが、何よりも価格の上昇率が高いのは中古車です。つい先週、11年落ちで19万キロ走った小型SUVを「もらい事故」で廃車にした人の話では、車両保険で1万1000ドル(132万円)の保険金が出たそうです。中古としての市場価値からすると、そんな金額になるのです。 実際に中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。
・『日本の半導体産業が復興?  ここからが本論ですが、「自動車用の半導体」でそんなに日本が強いのなら、そして供給不足で世界中が困っているのなら、強気の価格交渉をして日本の半導体産業を20世紀のように再び強くすることができそうにも思えます。ですが、その可能性はありません。 日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています。ですが、ここまで市場占有率が高く、需要と供給のバランスが崩れているのなら、思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。) そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです。 しかも、トヨタをはじめ、多くの日本の最終組み立てメーカーは、国内販売比率が10%前後まで低下しています。そして、海外で販売する部分は、そのほとんどが現地生産になっています。さらに言えば、研究開発、デザイン、マーケティングなど主要な高付加価値部門も海外に出している企業が多くなっています。つまり、日本のGDPに寄与しているのは、日本国内の部品や素材メーカーが価格を叩かれて、薄い利幅にあえぎながら生産している部分が中心ということになります。 つまり、人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいると言えます』、「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。
・『見通せないエネルギー政策  これに追い討ちをかけそうなのが、エネルギー問題です。今回の電力逼迫が示しているように、もう日本の世論は原子力発電については、部分的であれ期限を限ったものであれ本格稼働を許容することはなさそうです。そうなると、トヨタの豊田章男社長が警告しているように、やがて「化石燃料まみれの電源」を使って作ったクルマは世界では売れなくなり、自動車産業は完全に日本から出ていく可能性もあるといいます。エネルギー政策に答えがなければ、やがて製鉄も国内では不可能になるでしょう。 産業自体が、EV(電気自動車)化や、AV(自動運転車)化へと大きな改革を進める中で、日本の自動車産業は本来であればそこで挽回を図らなければならないはずです。その日本の自動車産業が、空洞化とエネルギー問題で、崖っぷちまで追い詰められているというのは、大変に厳しい状況と思います。 日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります』、「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。

次に、4月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したノンフィクション作家の野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68210
・『トヨタ自動車の河合満さんは中学卒業後、トヨタ技能者養成所(現トヨタ工業学園)を経て入社し、現場出身者初の副社長になった。なぜ河合さんはそこまで出世できたのか。なぜトヨタは学歴や門閥を重んじない会社になったのか。『図解 トヨタがやらない仕事、やる仕事』(プレジデント社)を上梓した野地秩嘉さんが解説する――』、興味深そうだ。
・『トヨタに学歴や門閥は関係ない  普通の企業では学歴や門閥を重んじる。一流大学を出ていたり、欧米大学のビジネススクールを出てMBAを持っていたりすると確実に得をする。また、企業トップ、医師、弁護士、有名人の子女が入社するとエリート部署に配属される。エリート部署とは経歴に傷がつかないセクションだ。企画室、秘書室、海外との窓口みたいなところだ。炎天下、靴をすり減らして飛び込み営業するような部署にはまず行かない。 ただし、良家の子女であっても「どぶ板営業をやらせてください」という骨のあるビジネスパーソンもいる。そういう人は必ず大成する。 話は戻る。 トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない。豊田章男新会長はトヨタに入社してから、現場でしごかれた。社長の息子だからといって得をする会社ではない。 一方で、大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ。f その典型が「おやじ」兼エグゼクティブフェローの河合満である』、なるほど。
・『ちゃんと叱ってくれ、一緒に謝ってくれる存在  彼は75歳だ。中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある。 おやじについては豊田新会長が、こんな説明をしている。 「トヨタには、かつて、仲間から『おやじ』と呼ばれる人がたくさんいたと思います。 張相談役(富士夫、当時)は、大野耐一さんのことを親しみを込めて『おやじ』と呼ばれていますし、私にとっては張相談役、成瀬(弘、前マスタードライバー)さんらが『おやじ』と呼べる存在です。 もちろん、豊田(章一郎)名誉会長は本当の『おやじ』ですが(笑) 『おやじ』『おふくろ』という言葉に、『包容力』を感じるのは私だけでしょうか。 間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」(トヨタイムズ 2020.6.17)』、「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。
・『現場出身者として初の副社長に  河合さんが副社長、そして、おやじになることができたのは、全体を見ることのできる人だったからだ。そして、彼は誰よりも勉強熱心だった。河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番(2交代の時の同僚)が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ。 河合さんが副社長、おやじになることができたのはトヨタが多様性を重んじるからだ。意見が違うからといって排斥されることはない。国籍もジェンダーも何も関係ない。 ただし、仕事においては原則がある。それは現地現物を大切にすることだ。つねに現場で考え、現場では複雑な工作機械は使わない。 それはリーマンショックの後、赤字になった反省から来ている』、「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。
・『トヨタが大切にする言葉はなぜ「幼稚」なのか  河合さんはこんな説明をする。 「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる」(東洋経済オンライン「工場一筋トヨタ副社長が語る車づくりの真髄」2017.10.13) トヨタの現場は複雑な工作機械を使わない。そして、難解な経営用語もまた使わない。 豊田新会長が使ってきたのは「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」という3つの単純な言葉だ。 ただ……。評論家やマスコミからの評判はよくない。 「幼稚だ」「意味がわからない」 さんざんなことを言われてきた。 「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う』、「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。
・『本業と関係ないフェイスシールドを作った思い  河合さんはこんなことをしゃべっている。「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています。 ちょうど(トヨタの)運動部が(活動を)自粛している最中なので、選手たちもマスク作りをしてくれています。 そこには当然、トヨタ生産方式があり徹底的にムダを排除して、“1枚でも多く”ということで(やっていますので)(TPSの)良い勉強の場となっております。 休校中の小学校・中学校・幼稚園・保育園に出向いて、草刈りや地域貢献をやったりもしてくれていました」(トヨタイムズ 2020.6.17) マスクを配ること、校庭の草刈りをすること。やらないよりもやったほうがいいに決まっている。小さな貢献かもしれないが、確実に喜ぶ人がいる。 トヨタは人事において多様性を大切にしてきた。そして、佐藤恒治新社長になってからはさらにその原則を推し進めている。以下は佐藤新社長の発言だ』、「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。
・『河合おやじがその身をもって示している  「『多様性』『成長』『貢献』の3つを柱に、人事制度や仕組みの見直しを進めたいと思います。トヨタで働く一人ひとりが、『多様』な個性を力に変えて、挑戦と失敗を繰り返す中で『成長』を実感できる。(中略) まず『多様性』です。 トヨタで働く皆さんが、自分らしい人生を歩むための多様な選択肢をつくってまいります。 そのひとつとして、年内に、製造現場も含めたあらゆる現場で、誰もが気兼ねなく、パートナー育休を取得できる環境を整えます。また、今年の10月からは、社内公募制を本格導入し、2024年4月からは、社内FA制度を新設いたします」(トヨタイムズ 2023.3.15) 河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』、「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。

第三に、6月11日付け東洋経済オンラインがしたしたみずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員・中央大学兼任教員・上海工程技術大学客員教授の湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」を紹介しよう。
・『中国の新興BEV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(Xpeng)は2023年5月23日、新型BEV「G6」をラインオフした。 価格約440万元程度の同モデルは、同社の次世代技術アーキテクチャ「SEPA 2.0扶揺」をベースにした戦略SUVモデルであり、航続距離755kmを実現。800ボルトの急速充電システム、高度運転支援システムXNGP(Xpeng Navigation Guided Pilot)を搭載し、アメリカのテスラ「モデルY」と競合しようとしている。 特筆すべきは、G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ。 今後、ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない。こうした技術や設備の革新が、日系のプレス・ダイカストメーカーに衝撃を与えると予測され、また業界のサプライチェーンを大きく変える可能性もある。一体成型技術の行方は、より一層注目されるだろう』、「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。
・『テスラ「アンボックストプロセス」のインパクト  小鵬汽車より大胆な革新を提起したのは、テスラだ。 同社は、車両コスト全体の1割超を占めるボディ(モノコックボディ)のコストダウンを通じて、競争力の向上を図っており、2019年からギガプレスによるアンダーボディ製造を進めている。 テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ。 テスラは一体成型を採用したことにより、製造原価の大幅な削減や収益の向上を実現した。2022年の粗利益率は25.9%に達してトヨタ自動車を超え、車両1台当たりの収益率でもトヨタ自動車を大幅に上回った。 テスラは今、車載バッテリーを原価の高いパナソニック、CATL、LGEから調達しているため、バッテリー以外の部品コストのさらなる低減をすることに注力し、製造工程のイノベーションにより次世代EV工場の実現へ手を打とうとしている。) また、テスラは、2023年3月に投資家向け説明会を開催し、同社5カ所目の生産拠点となるメキシコ工場に新生産方式を導入する方針を示した。高価なレアアースを使用しないモーターの開発やワイヤーハーネスの改良、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体などにも取り組み、大衆向けEV開発を急いでいるという。 製造工程についても、新しい方式が発表された。従来の自動車工場では、プレス加工で作られた車体が塗装されたあとに、一度ドアが取り外され、パワートレインや内装品を実装してから、再びドアを取り付ける形で製造されている。 今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる』、「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。
・『BYD他、中国企業もギガプレスに参入  近年、テスラは機動的に車両の値付けを変動させている。これができたのは、イノベーションを通じて、生産コスト・効率を高めたことによる車両価格のダウンや、スケールメリットが実現したからだ。 テスラの生産性を見据えて、小鵬汽車を含む新興勢のNIO、理想汽車は一体成型ラインを建設し、中国国有自動車大手の長安汽車、BEV大手のBYDもギガプレス機の導入を計画している。これを受け、大型プレス機最大手の中国・力勁(LK)集団 は、2022年に1万2000トンのギガプレス機を投入し、2万トン級の開発にも着手している。 同社は2008年にイタリア・IDRAを買収してグローバル展開を加速しており、2020年にはカリフォルニア州フリーモントのテスラ工場(モデルY生産)に装置を供給しはじめた。この装置で生産したアンダーボディは17%の軽量化、1.8倍のねじり剛性アップを実現したと発表している。 また、スイス・ビューラーや中国・海天集団も、自動車メーカーに6000トンのギガプレス機を供給。中国車体部品大手の文燦集団、アルミ鋳造大手の広東鴻図科技、ジャーシ大手の拓普集団、金型メーカーの賽維達(Sciveda)がギガプレス機を導入し、一体成型した部品や大型金型を自動車メーカーに納入している。) 鉄、銅、チタン、マグネシウムなどさまざまな合金が使用されている鋳造工程で、テスラのギガプレスはアルミ合金を使用しており、アメリカとドイツの工場ではイタリア・IDRA製、中国工場ではLK集団製の大型ギガプレス機により、フロント・リア部のアンダーボディ生産を実現した。 一方、巨額な設備投資、サイクルタイムの長さ、変形・伸びを含む機械的特性の悪さ、異材接合の難しさなどが、ギガプレスのネックとなっている。 また、押し出し材の使用量が多くなり、BEVの軽量化に繋がらない可能性もある。さらに、事故を起こした場合に修理ができない大型アルミダイカストの品質維持などの課題も、クリアする必要もあるだろう。 現在、中国では機械的に締結する接合方法として採用されているフロードリルスクリュー(FDS:Flow Drilling Screw)は、技術的難易度が下がりつつあるが、シーラーやメディアを採用したことより、製品のウェイトは上がる傾向だ。 大手プレスメーカーは、「難易度の低い機械締結を普及させたうえで、本格的な異材接合技術のイノベーションが起きれば、ウェイト問題が解決する」という。 テスラが提唱したホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)とアルミの締結は、一見してFDSに類似しているものの、溶接融合や固相接合などの製造工程、マルチマテリアルに対応した異材接合技術が求められる。 現在、地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される』、「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。
・『日本プレスメーカーの事業戦略は?  テスラや中国メーカーが積極的に一体成型技術の開発に取り組んでいる一方、日本の自動車メーカーは導入が遅れている。 また、ギガプレスを採用するホットスタンプ事業は設備投資が大きいため、既存設備を抱える日系プレスメーカーは、日本自動車メーカーから新製法を採用する部品の受注を確保できなければ、テスラを含む一体化成型を採用するBEVメーカーへの対応は難しいだろう。) 日系プレスメーカーはこれから、どのような対策を取っていけばいいのだろうか。 短期的には、アンダーボディ向けの中小型ダイキャスト部品を中心に、一体成型の需要は増加し、車体の一部はアルミと鉄のハイブリッド構造(異材接合)とすることでコストダウンを図れるだろう。 そうした異材接合技術の改善が行われ、高強度部材を鉄などに置き換えれば、それなりのコスト競争力を維持する可能性も考えられる。 ただし、そのためには日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる。 中長期的に見ると、中国地場プレスメーカーの成長や技術・設備の進化にともなって、コストダウンが実現できれば、一体成型が業界主流になっていくと予測される。こうした技術変化を見据えて、プレスメーカーは技術路線を再検討する必要があるだろう。 実際、日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している。日本大手化学・成型機械メーカーのUBEは、一度に成型できるアルミ部品製造装置を開発した』、「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。
・『手をこまぬいている時間は、もうない  自動車メーカーがギガプレスを導入すると、系列部品メーカーからの部品調達が減ってしまうというトレードオフがあるが、一体成型化が進むのは間違いない。 中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう。 そうなれば、ガソリン車ブランドが独占している大衆車市場を、BEVが塗り替えることになると予測される。日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ』、「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。
(注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
タグ:Newsweek日本版 「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。 「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。 「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。 「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。 「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。 「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、 「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。 「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。 野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」 PRESIDENT ONLINE 「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。 「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。 冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」 湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」 東洋経済オンライン 「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。 「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。 (その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) 自動車(一般) 「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。 (注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
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