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半導体産業(その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に) [産業動向]

半導体産業については、本年5月27日に取上げた。今日は、(その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に)である。

先ずは、本年5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したクライス&カンパニー顧問/Tably代表の及川卓也氏による「半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ、日本企業のあるべき姿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323643
・『コロナ禍による工場稼働率の低下に続き、ウクライナ侵攻で国家安全保障上も注目されるようになった半導体業界。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、AIの活用で成長著しい業界大手・NVIDIAの30年の歴史からは学べることが多いという。NVIDIA、そして半導体産業に見る日本企業のあるべき姿とは』、興味深そうだ。
・『再び注目される半導体業界 日本政府も製造強化に乗り出す  最近、半導体業界が再び注目されています。国家安全保障上の戦略的な意味合いも非常に強まっており、米国では中国への半導体の輸出を禁じたほか、自国内で半導体製造を行う取り組みも進めています。日本でも国内のメーカーや通信会社など大手8社が出資して、2022年に半導体プロセッサー(ロジック半導体)メーカー・Rapidus(ラピダス)を設立。政府が同社に3000億円超を支援しています。また台湾の半導体メーカー・TSMCの工場が2022年、熊本県へ進出したことも話題となりました。 半導体にはいくつかの種類があります。日本では従来、DRAM製造に強みがありましたが、価格競争となって投資が続けられず、競争力が落ちてしまいました。最後まで残っていたエルピーダメモリも、2013年にマイクロン・テクノロジーによる買収が完了しています。一方、NAND型フラッシュメモリーの領域では今でも強く、キオクシア(旧東芝メモリー)が世界シェア2位を維持しています。またアナログ半導体の領域では、特にセンサー系でソニーがシェアを持っています。 現在、世界的に需要が高く、最も不足しているのはロジック半導体です。CPUやGPUなど、コンピュータの頭脳を担う半導体なのですが、この領域では日本企業は強みを発揮できていません。そこで今回は政府も加わって国家プロジェクト的に強化が図られています。 実は、日本がDRAMやプロセッサーで強かった頃にも「超LSI技術研究組合」というプロジェクトがありました。これは官民合同でVLSIの製造技術の確立に取り組むというもので、1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入されています。このプロジェクトの成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました。今回のプロジェクトも、同様にうまくいけばいいと願っているところです』、「超LSI技術研究組合」では「1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入」、「成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました」、なるほど。
・『GPUの王者・NVIDIAが大きくシェアを落とした“危機的状況”  さて、ロジック半導体の分野で今一番注目を浴びている企業が米国のNVIDIA(エヌビディア)です。NVIDIAは現在、GPUで80%以上のシェアを持つといわれています。CPUがさまざまな処理をこなす汎用(はんよう)的なコンピュータの頭脳であるのに対して、GPUは3Dグラフィック処理などにおいて、単純な計算を並列で多数行うという特徴を持つプロセッサーです。 NVIDIAは1993年にGPUに可能性を感じて創業された企業で、当初は複雑な描画処理を行うゲームにフォーカスして事業をスタートしました。歴史を振り返ると、NVIDIAはこれまでに何度か危機的状況を迎えています。 GPUはCPUから命令を受けて動作するので、CPUとの連携が欠かせません。2006年、GPU設計・製造でNVIDIAの最大のライバルだったATIが、Intelに並ぶプロセッサー大手のAMDに買収され、AMD製CPUとの組み合わせでNVIDIA製品が採用されなくなりました。IntelはIntelで、1つのボードにネットワークやグラフィック処理ができるチップを自社で搭載し、廉価で販売し始めます。NVIDIAのGPUは、ハイエンドのゲームユーザーやグラフィッククリエイターを除いて売れなくなっていき、市場が一気に縮小してしまいました。 一般にプラットフォーマーは、他のプラットフォーマーを排除しようとする傾向があります。AMDはCPUではなくGPUが製品の核となることを避けるため、競合のATIを買収してNVIDIAを排除しようとしました。Intelも同様に、自社でオンボードグラフィックスを進めることで、NVIDIAを排除しようとしたわけです。 祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした』、「祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした」、なるほど。
・『AIの深層学習に画期的発展をもたらしたGPUと「CUDA」  先述したとおり、GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます。 CUDAを開発したイアン・バック氏は、Silicon Graphicsにグラフィックエンジニアとして在籍した後、スタンフォード大学でBrookというGPUによる並列処理のためのプログラミングモデルを発表しました。その後NVIDIAに入社して研究を続け、CUDAを発表しています。 CUDAとGPGPUが大きな注目を浴び、広く普及したのはAIの深層学習(ディープラーニング)で活用できることが分かったからです。現在、AIは第3次ブームといわれていますが、このブームの発端は2012年に深層学習で起きたブレークスルーにあります。当時トロント大学教授だったジェフリー・ヒントン氏はアレックス・クリジェフスキー氏とともに、画像データベースImageNetを使った画像認識コンテストで飛躍的成果を出し、大差で優勝しました。そのときに使ったのが、GPUとCUDAを活用した深層学習モデルです。 ジェフリー・ヒントン氏はその後AI研究の第一人者としてGoogleでAI研究に携わってきましたが、今年5月に「AIの危険性について語るため」としてGoogle退職を発表し、話題となった人物でもあります』、「GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます」、なるほど。
・『ファブレスでありながらソフトウェアでは「垂直統合」を実現  NVIDIAはプロセッサーメーカーとして誕生しましたが、もはやハードウェアではなくソフトウェアの会社といっていいほど、ソフトウェア開発に多額の投資を行い、大変優秀な人材を集めています。しかし、最初からソフトウェアに事業としての可能性があると強い自信を持っていたわけではないようです。 NVIDIA CEOのジェンセン・フアン氏は、2016年のForbes誌のインタビューに対し「自社のグラフィックチップが最新のビデオゲームを動かす以上の可能性をを秘めていることは知っていたが、ディープラーニングへのシフトは予想していなかった」と述べています。しかし、彼らはCUDAとAIに賭け、この10年ほどで大きく変貌を遂げることとなりました。 現在の半導体業界は、「水平分業」と「垂直統合」とでは、どちらかというと水平分業、つまりファブレス企業として設計だけを行う会社が、TSMCのような企業へ製造を委託する潮流の中にあります。Intelやサムスンは垂直統合モデルをとっていますが、Intelなどは特に水平分業モデルの企業による攻勢の影響を受け、業界の中では成長が鈍化しています。 一方のNVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です。 歴史的には「プラットフォーマーは他のプラットフォーマーを排除する」という法則によって、苦い経験を持つNVIDIA。単に一部品を展開するのではなく、できるだけ多くの部分で市場に食い込み、ロックインを避けたがる顧客もロックインせざるを得ないような状況を作る戦略を取っているとも考えられます』、「NVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です」、なるほど。
・『ソニーCMOSセンサーの奇跡と顧客の需要を想定する力  水平分業と垂直統合については、似たような話がソニーにもあります。 ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました。 ソニーはもともとカメラなどの製品が強く、民生用ビデオカメラのCCDセンサーでは圧倒的なシェアを誇っていました。しかし、これをCMOSセンサーへシフトさせるよう自ら仕掛けています。自身が築いたCCD市場を壊し、独自技術による高性能なCMOSセンサーを世に送り出すことで、イメージセンサー市場におけるシェアを守ったのです。 ソニーも単にイメージセンサーを持つだけでなく、実際に製品として使われる部分を自身で手がけており、その点で垂直統合型に近いところがあります。 2010年時点のイメージセンサー市場は、金額ベースで携帯電話向けが36%、デジタル一眼レフカメラ向けが27%、デジカメ向けが21%、監視カメラ向けが12%、カムコーダー向けが3%という構成でした。当時のソニーはカムコーダーでは98%(数量ベース)という高いシェアを持っていましたが、これはイメージセンサー市場全体の中では3%しかない領域です。市場の大きい携帯電話や一眼レフ、デジカメのシェアを取りに行かなければ、伸びしろはありません。 ソニーの半導体事業部は、自社の他の事業部や他社にCMOSセンサーの採用を働きかけ、それぞれの場で必要な機能を加えることで、普及を図ることに成功しました。他社製品でもデジカメで動画を撮影して楽しむといったユースケースを作ったほか、一眼レフ機へのセンサー採用の働きかけも行い、それをきっかけにソニー社内でもαシリーズへの採用が決まっています。 つまり、実際に使われるシーンをしっかり想定し、その需要を満たすためにどうすればいいか、部品の方を改良するというアプローチを取っていたということになります』、「ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました」、「売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残る」、それが、現在は収益の柱に成長したとは、分からないものだ。
・『「言われたものを作る」のではなくニーズをつかんで将来を描く  ソニーには、リチウムイオン電池を手がけていた部門の担当者が、バッテリーの寿命を画期的に長くする技術としてデル会長のマイケル・デル氏に直接売り込みをかけた逸話もあります。また話はITからは外れますが、“消せるボールペン”でおなじみの「フリクション」のインク開発者にも、自らインクの用途を説明するために国内外を営業してまわったエピソードがあるそうです。 部品メーカーには、マーケティング部門がない会社が結構あります。受託で作ってほしいと言われたものを作るだけでも十分大きなビジネスになるので、自分たちの技術をどう使ってほしいかを説明する、あるいは顧客に何が求められているかを把握する必要がないことも多いからです。しかし、ソニーのイメージセンサーやリチウムイオン電池、フリクションのインクの例を見ると、やはりそれだけでは、大きな事業の成長は得られないのではないかと感じます。 元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏は、半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」といっています。坂本氏はかつてテキサスインスツルメンツ(TI)にいたことがあるのですが、TIでは技術系営業が7割を占めていて、顧客のニーズや不満を常に吸い上げていたといいます。それに対して日本企業は顧客のニーズを把握せず、悪い意味での「プロダクトアウト」をやる傾向があると坂本氏は述べています』、「半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」」だが、現実には難しそうだ。

次に、7月26日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/688716
・『電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手の台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)は7月10日、インドでの半導体製造の合弁プロジェクトから撤退すると発表した。 同社は2022年2月、傘下の富士康科技集団(フォックスコン)を通じてインド資源大手のベダンタグループと合弁会社設立の覚書に調印。同年9月には、インドのモディ首相の故郷であるグジャラート州に195億ドル(約2兆7414億円)を投じて半導体工場を建設し、10万人の雇用を創出する計画をぶち上げた』、ずいぶん大規模な計画だ。
・『スタートから1年余りで頓挫  ところが、両社の協業はスタートからわずか1年余りで頓挫した格好だ。ホンハイの声明によれば、同社はベダンタとの合弁事業から完全に手を引き、合弁会社はベダンタの100%子会社に移行するという。 とはいえ、ホンハイはまだインドでの半導体製造を断念したわけではない。同社は声明のなかで、「わが社はインド政府の『メイク・イン・インディア』構想を引き続き支持しており、インドの半導体業界の発展を確信している」と強調した。) 同じく7月10日、インド情報技術省のラジーブ・チャンドラセカール副大臣はSNS(交流サイト)に投稿し、ホンハイとベダンタの合弁解消の背景を次のように述べた。 「両社は回路線幅28ナノメートルの半導体工場の建設計画をインド政府に提出していた。しかしホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」』、「ホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」、全く実体が伴ってないお粗末な計画だったようだ。
・『STマイクロとの交渉が難航か  本記事は「財新」の提供記事です ロイター通信の2023年5月の報道によれば、インド政府はスイス半導体大手のSTマイクロエレクトロニクスに対して、技術ライセンスの供与にとどまらない合弁プロジェクトへの深い参画を期待していた。 だが、実際には合弁会社とSTマイクロの交渉が難航し、プロジェクトは遅々として進まない膠着状態に陥っていた。(財新記者:劉沛林)※原文の配信は7月12日)』、なかなか「インド政府」の思惑通りにはいかないようだ。
タグ:財新 Biz&Tech「台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に」 生き残る」、それが、現在は収益の柱に成長したとは、分からないものだ。 なかなか「インド政府」の思惑通りにはいかないようだ。 開し、下流から上流まで一通りの技術を有するのがNVIDIAの特徴です」、なるほど。 東洋経済オンライン 「半導体製造業は「ユーザー企業の今後の製品戦略を知って、予測して先取りしていくことが大事」」だが、現実には難しそうだ。 「ソニーにとってイメージセンサーを中心とした半導体事業は現在、収益の柱の1つとなっています。しかし、一時はその事業を売却しようとするほど、会社にとって“お荷物”な存在と見なされていました。売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で生き残ることとなりました」、「売却先がなかったため、できるだけ資産を持たない軽量な事業にしようと工場を売却し、ファブレスモデルへ移行。ギリギリのところで半導体事業がソニーの中で 「ホンハイもベダンタも半導体製造の経験がなく、外部の技術パートナーを必要としていたが、見つけられなかった」、全く実体が伴ってないお粗末な計画だったようだ。 (その10)(半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ 日本企業のあるべき姿、台湾ホンハイ「インド半導体合弁」から撤退の誤算 モディ首相の故郷で「10万人雇用」計画が幻に) 半導体産業 「NVIDIAは、チップの製造は外部に委託するファブレスメーカーですが、「自社でソフトウェアまで提供している」という意味では水平分業と垂直統合の両面を実現しているといえそうです。CUDAを出して機械学習での賭けに勝ったことだけでなく、このことがNVIDIAの成功の要因といえるかもしれません。 NVIDIAは単にソフトウェアライブラリを持つだけではなく、自動運転のためのソフトウェア開発を自社で行い、フォルクスワーゲンやアウディへ提供しています。こうした一連の技術群に加え、データセンターレベルの機能も自社で展 CUDAを使えば、GPUの高い演算性能を利用して、グラフィック以外の一般的な並列計算処理を実行することが可能になります。このCUDAはNVIDIAのビジネスを大きく変え、半導体が重要視される現在の状況にもつながっているといえます」、なるほど。 「GPUはグラフィック処理のためのプロセッサーですが、並列処理に非常に長けています。単純な計算を大量に高速で行うのに適しているのです。そこでGPUをグラフィック以外の処理にも使えるよう、GPUによる汎用計算(GPGPU)のためにNVIDIAが開発したプラットフォームがCUDAです。 「祖業であるゲームと自動車、そしてモバイル向けのGPU提供を主力事業とするようになったNVIDIA。危機的状況の中で2006年、彼らがリリースしたのが、GPU向けのプログラム開発基盤「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」でした」、なるほど。 「超LSI技術研究組合」では「1976年からの4年間で700億円の補助金が国から投入」、「成果は、1980年代の日本の半導体産業に隆盛をもたらしました」、なるほど。 及川卓也氏による「半導体業界大手・NVIDIA「30年の浮沈」に学ぶ、日本企業のあるべき姿」 ダイヤモンド・オンライン
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ホテル(その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」) [産業動向]

ホテルにつては、昨年4月3日に取上げた。今日は、(その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」)である。

先ずは、昨年4月14日付け東洋経済オンライン「プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化」を紹介しよう。
・『業界大手のプリンスホテルは長年、ホテルの所有と運営を一体で進めてきた。だがコロナ禍を機に、シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る。 “持たざる経営”にシフトする背景と、本格的にブランドを拡大する成長戦略について、プリンスホテルの小山正彦社長に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは小山社長の回答)。 Q:ホテル運営に特化する背景とは何ですか。 A:コロナ禍によって需要が瞬間蒸発する中、資産を持つリスクが顕在化したことが大きな要因だった。稼働率が落ち、売り上げが下がる中でも、社員数は多く、固定費は確実に出ていく。(オーナー側から委託料を受け取り運営する)運営受託に特化できれば、コストは減り、損益分岐点を引き下げた経営体質にできる。 スピード感を持った規模拡大も課題だった。2017年には中長期で国内外250拠点に拡大する目標を掲げていた。達成するにはホテル運営に特化し、持たざる経営に徹底的にシフトすることが重要だった。建物をリースする形でなく、運営受託を軸に拡大する点にはこだわっていきたい。 今後、31事業所はGIC、それ以外は総合不動産会社の西武リアルティソリューションズがオーナーになる。北海道・富良野や箱根、軽井沢といったリゾートと高輪・品川エリアは、西武グループで引き続き開発を進める方針だ。 ホテル運営に特化することで業績は安定し、赤字がほぼ出ない形になるだろう。一方で、ホテル数を増やし、顧客基盤を拡大し続けることが大事になる。 Q:250拠点(現在84)の目標達成のメドは約10年後です。国内と海外でのブランド戦略は? A:いずれインバウンドは戻り、海外旅行もできるようになる。そのとき、宿泊特化型など効率性を重視したホテルと、より豪華なラグジュアリーホテルとで二極化が今以上に進むと考える。 そこで、プリンスホテルのブランドはすでに一般に浸透しているが、富裕層が利用し、ラグジュアリーなブランドというイメージをさらに高めたい。国内では大阪や神戸、福岡などの大都市にまだ出店できていない。主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい』、「シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る」、「主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい」、なるほど。
・『NYやパリに出店したい (小山氏の略歴はリンク先参照) 海外では2023年にタイ・バンコクでラグジュアリーブランドの「ザ・プリンス アカトキ」を出店する。世界で名前を知ってもらうためにも米ニューヨークや仏パリ、伊ローマなど世界の主要都市、観光都市には出店したい。 ヒルトンやマリオットなど、世界的なホテルチェーンと比べると知名度はまだまだ低い。すぐには難しいが、10年後には一定程度の知名度に引き上げるつもりだ。 フランチャイズ展開も将来的に可能性がないわけではない。オファーが来るようなブランドに仕上げていかないとならない。) Q:運営会社は不動産オーナーに選ばれなければ出店できません。競合と比べた優位性は何ですか。 A:例えば法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ。 一定のブランドで安定したサービスを提供できる点もそう。この点を強化するため、4月に「オペレーション部」を新設した。ホテルはブランドごとにマニュアルがあり、サービスの標準化やレベルアップを進める。 シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ。 地域の魅力を把握し、発信していくことも大事で、PRは地域に存在するホテルの意義だ。魅力ある施設をどんどん案内するなど、顧客にも地元にも喜ばれるポジションをつくっていきたい』、「法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ」、「シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ」、これらの強みを如何に結実させてゆくかがポイントだ。
・『世界に認められるブランドへ  Q:ラグジュアリーの強化はコロナ禍前から課題の1つでした。 A:14年に開業した「ザ・プリンス ヴィラ 軽井沢」は1泊1棟20万円以上と高価格帯のホテル。これが転換点になった。16年開業の「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」も客室単価は7万~8万円と高く、「ザ・プリンス」より上の価格帯を狙ったものだった。 インバウンドが拡大する中で、ラグジュアリーのノウハウを蓄積し、世界に認められるブランドにしたいという考えがあった。 Q:一方で、宿泊特化型の「プリンス スマート イン」など、若い顧客層の獲得も狙っています。 A:コロナ禍前から若手を中心に取り組んできたが、顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組みをやってきてよかったと思っている。「非接触は安心安全」という価値観に変わってきたので、プリンスホテルでもこうした機能を導入している。スマートインでテストマーケティングができている形だ。(1990年代半ば以降に生まれた)Z世代などの価値観は勉強すべきものがある。彼らは30~40年先の将来や環境について真剣に考えている。ホテルを選ぶ基準も環境に対してどう取り組んでいるかが評価される。これは国際的なビジネスパーソンも同じだ。 顧客の目線はどんどん高くなっている。環境への取り組みは、業界の先頭に立って進めていく』、「ラグジュアリーの強化」。「顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組み」、など課題は多いようだ。

次に、本年7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した伊達美和子・森トラスト社長インタビュー「【無料公開】ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326686
・『コロナ不況により電鉄大手でホテル売却が相次ぐのに対し、不動産大手はホテル事業を守った。2業種の間でなぜ差が出たのか。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#10では、ホテル業界の女王、森トラストの伊達美和子社長が、コロナ禍を経て気付いた多角化の強さと落とし穴について語る。 ※2022年7月9日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開します!全ての内容は取材当時のままです。 コロナ不況により電鉄大手でホテル売却が相次ぐのに対し、不動産大手はホテル事業を守った。2業種の間でなぜ差が出たのか。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#10では、ホテル業界の女王、森トラストの伊達美和子社長が、コロナ禍を経て気付いた多角化の強さと落とし穴について語る。 ※2022年7月9日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開します!全ての内容は取材当時のままです』、興味深そうだ。
・『「事業」「立地」「対象人口」 バリエーションでリスク分  Q:2022年3月期決算のホテル事業の売上高は前期比31.1%増となり、今期は同22.4%増を予想しています。コロナ禍のさなかでも新規開業し、ホテル事業拡大の手を緩めていません。リスク覚悟で攻めているのですか。 A:リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです。 観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました。 一つの業態だけを手掛けているところ、例えばシティーホテルに特化した事業者などは非常に厳しかったと思います。ボラティリティの高いホテル事業を拡大していく中では、バランスを取る経営を常に意識してきました。 Q:コロナ禍を通じた気付き、学びはありましたか。 A:ホテル事業を展開するのと同時に海外投資も始めており、その効果はありました。資産を円で持つか、ドルで持つかを含めてリスクヘッジしておく。実際、ちょうどいいタイミングで米サンノゼのオフィスビルを売却でき、利益も出せました。 昨今の為替の影響はネガティブな面もありますが、ドル資産を持つ立場からするとポジティブな面もある。うまく広く分散することでリスク回避の確度が上がってくるんだなと。 Q:電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか』、「観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました」、なるほど。
・『「事業」「立地」「対象人口」 バリエーションでリスク分散  Q:2022年3月期決算のホテル事業の売上高は前期比31.1%増となり、今期は同22.4%増を予想しています。コロナ禍のさなかでも新規開業し、ホテル事業拡大の手を緩めていません。リスク覚悟で攻めているのですか。 A:リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです。 観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました。 一つの業態だけを手掛けているところ、例えばシティーホテルに特化した事業者などは非常に厳しかったと思います。ボラティリティの高いホテル事業を拡大していく中では、バランスを取る経営を常に意識してきました。 Q:コロナ禍を通じた気付き、学びはありましたか。 A:ホテル事業を展開するのと同時に海外投資も始めており、その効果はありました。資産を円で持つか、ドルで持つかを含めてリスクヘッジしておく。実際、ちょうどいいタイミングで米サンノゼのオフィスビルを売却でき、利益も出せました。 昨今の為替の影響はネガティブな面もありますが、ドル資産を持つ立場からするとポジティブな面もある。うまく広く分散することでリスク回避の確度が上がってくるんだなと。 Q:電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか』、「リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです」、なるほど。「電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか」、どう違うのだろう。
・『不動産会社は各事業で顧客が異なり交通系企業は同じ  A:当社は不動産事業をどう拡大し、多角化しようかという観点で取り組んできました。オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということですね。 A:結果的にそうだったのかもしれません。鉄道事業と分譲事業でいえば、沿線で住宅を分譲し、そこに住む人に鉄道を使ってもらう。住む人が減ると、鉄道を使う人も減るとなれば、それは同じターゲットを相手にしていることになる。多角化の在り方が不動産会社とは違うように思います。 (伊達美和子社長の略歴はリンク先参照)「オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということです」、なるほど。
・『集客でもバリエーション 外資と組み、自社でも法人会員組織  Q:ホテル運営の方で他にバリエーションを意識しているものはありますか。 A:集客の在り方。ここも複数持つようにしています。 Q:集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます。 外資系のほとんどの皆さんとお話しします。結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約(運営全体の委託)を嫌がってフランチャイズ契約(ノウハウやブランドを使用)を要望したり、当社の会員制施設(ラフォーレホテル)をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド(ラフォーレ会員が優先予約する権利も継続する)でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド(16年にマリオットが買収)はいい反応を見せてくれたんですよ。 Q:外資系はブランド力よりも何よりも、巨大な会員組織を持ち、海外から予約客を送り込む送客ネットワークが最大の強みです。 A:世界中でホテルの数を増やし、会員もどんどん増えていますよね。世界の潮流として、彼らの持つ顧客網に乗っておきたい。一方で、当社オリジナルの法人会員制倶楽部「ラフォーレ倶楽部」は変わらず残しています。 今回のコロナ禍においてラフォーレ倶楽部は利用の動きがやや鈍かった。法人の福利厚生を利用して旅行するというタイミングではありませんでしたからね。対して個人で加入しているマリオットの会員の方たちはポイントプログラムをためるためにも利用したいといったニーズがあり、そちらの動きの方が強かった。 ただ、東日本大震災の後では当社の法人会員の方が早く動きが出ました。 それぞれ母集団が異なり、ケースによって反応が変わってくる。だから販売チャネルもいくつか持っておくべきだと考えます』、「集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます・・・結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約・・・を嫌がってフランチャイズ契約・・・を要望したり、当社の会員制施設・・・をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド・・・でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド・・・はいい反応を見せてくれたんですよ』、「マリオット」が契約に「柔軟性があった」というのは初めて知った。有名ホテルチェーンの意外な面だ。
タグ:東洋経済オンライン「プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化」 ホテル (その6)(プリンスホテル「持たざる経営」にシフトした理由 海外はラグジュアリーブランドの展開を強化、ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」) 「シンガポールの政府系ファンド・GICと、西武グループの総合不動産会社に資産を売却、ホテル運営に特化し再スタートを切る」、「主軸のプリンスホテルや、より高級な「グランドプリンスホテル」のブランドで出店していきたい」、なるほど。 「法人客向けの(国際会議や展示会などの)MICE需要。大きな宴会場で会議を開き、パーティーを開催し、翌日にゴルフを楽しむケースがある。東京や広島などに加えて軽井沢や箱根など、リゾートでMICEに対応できるのは当社の強みだ」、「シティホテルだけでなく、繁閑差のあるリゾートホテルを運営してきたことで、柔軟な人員配置ができる点も強み。これはチェーンだからこそできるものだ」、これらの強みを如何に結実させてゆくかがポイントだ。 「ラグジュアリーの強化」。「顔認証によるチェックインなど、デジタルを活用した非接触の取り組み」、など課題は多いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 伊達美和子・森トラスト社長インタビュー「【無料公開】ホテル業界の女王・森トラスト社長がコロナで悟った、多角化の「強さ」と「落とし穴」」 「観光業は、別の場所へ動いていく流動人口が対象です。対してオフィスはちょっと移動はしますけど同じ場所にとどまる人口が、住宅分譲も同様にその場所に定住する人口が対象です。コロナ禍では流動人口が減るという現象が起こり、人が動くことを前提にしたホテルや商業施設がマイナスの影響を受けました」、なるほど。 「リスク分散をしているんです。会社全体のポートフォリオで見れば、ホテル事業に力を注いでいるけれども、オフィス賃貸、不動産販売事業などをやっている。不動産という共通項がありながら、事業にバリエーションを持たせる。また都心部、地方、リゾートといった立地のバリエーションもある。そういったものをミックスさせることでリスク分散をしているんです」、なるほど。 「電鉄会社でホテル売却が相次いでいます。彼らも多角化によりポートフォリオにバリエーションを持たせてきましたが、森トラストのそれとは何が違うのでしょうか」、どう違うのだろう。 「オフィスもホテルもマンションも同じ不動産ですが、例えばオフィスとホテルの顧客は何らつながっていない。顧客ターゲットが異なっている。 対して交通系の企業は既存の顧客、ポートフォリオを生かして多角化してきたのでターゲットが同じ。そのターゲットが何らかの社会的、経済的な影響を受けた場合、それぞれの事業が同じように影響を受けてしまう。 Q:リスク分散になる多角化ではなかったということです」、なるほど。 「集客力のある外資系大手ホテルチェーンと組んで、外資ブランドのホテルをどんどん日本に開業させてきました。特に世界最大手の米マリオット・インターナショナルとよく組んでいます・・・結果的にマリオットが多くなっているのは、一番柔軟性があったから。 当社は交渉のときにマネジメント契約・・・を嫌がってフランチャイズ契約・・・を要望したり、当社の会員制施設・・・をマリオットホテルへリブランドする際にハイブリッド・・・でやりたいと要望したりしてきました。他が断ってくるようなものでも、マリオットや米スターウッド・・・はいい反応を見せてくれたんですよ』、「マリオット」が契約に「柔軟性があった」というのは初めて知った。有名ホテルチェーンの意外な面だ。
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携帯・スマホ(その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年6月8日に取上げた。今日は、(その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い)である。

先ずは、本園6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324176
・『6月2日、アマゾンが「携帯サービスの提供」を検討していると米国で報じられました。実はこのニュース、日本にとっては要警戒です。もしも日本でも携帯を始めるとしたらその先には、アマゾンが楽天グループを買収する最悪シナリオが起こる可能性を否定しきれないからです』、興味深そうだ。
・『アマゾンの「携帯電話サービスの提供」検討は“アマ天”爆誕につながりかねない  アメリカのブルームバーグ通信は6月2日、アマゾンドットコムがAmazonプライム会員向けに有料の携帯電話サービスの提供を検討していると報じました。アマゾン側は現段階ではこの報道を否定していますが、関係者によるとベライゾンやTモバイルUSと交渉をしていて、月額10ドルもしくは無料のサービスを目指しているといいます。 アマゾンは以前、携帯電話サービスに参入して失敗し、1年で撤退した過去があります。それを知っている方はこのニュース、3秒で興味をなくしてしまったかもしれません。 しかし、未来予測専門の評論家としては、耳にした瞬間にピリリと電気ショックが走ったのです。アマゾンが携帯サービスを提供すれば、成功確率は意外に高いと思ったからです。 さらに、この戦略は日本が絶対に見過ごしてはいけない「怖い話」にもつながりかねません。具体的に言うと、アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できないのです。 一部の方は同じように気づいたかもしれません。それを解説したいと思います』、「アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できない」、面白い時代になったものだ。
・『アマゾンが狙うのは中流〜下流層の消費者  アマゾンは2014年に、Fire Phoneを発売しました。これはiPhoneと競合する独自のスマホだったのですが、結果としては不振で販売中止に追い込まれます。 また、同じ失敗を繰り返すのか?」 そう思うかもしれませんが、実は今回は違います。アマゾンが提供するのは、携帯電話サービスです。 簡単に言えば、アマゾンが今回提供するのはSIMカードないしはeSIMで、たとえばiPhoneのユーザーがAT&Tなどの通信会社からアマゾンへ乗り換えるようなケースを想定したサービスだということです。 アメリカは日本以上に貧富の格差が拡大しているため、中流ないしは下流の消費者に向けたサービスは市場のボリュームゾーンになっています。この格差拡大でたとえば小売り最大手のウォルマートは独り勝ち状態で、店舗の売り上げが激増しただけではなく、下流層に向けた金融サービスや広告サービスで新しい収益源を獲得しています。 アマゾンが狙っているのも、おそらく同じ消費者を対象としたビジネス市場でしょう。これまでもAmazonプライムが、その強力な武器として使われてきました。 アメリカと日本では、Amazonプライムの内容というか質が若干違います。説明すると、アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です。 一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です。 Amazonは国別のプライム会員数を公表していませんが、報道ではコロナ禍でアメリカのプライム会員が1億人を突破したそうです。すでに国民的に利用するインフラサービスの位置づけにあるのです』、「アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です・・・一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です」、なるほど。
・『アマゾンは会員数の頭打ちに悩んでいる  そのアマゾンにとって頭が痛いのが、プライム会員数がそれ以上増えないという現象です。すでに飽和状態になっているうえに、2022年2月に年額119ドルから139ドルに値上げしたことで会員数が純増しなくなった。言い換えると新規会員と同じくらい退会者も増えているのです。 アメリカは日本以上のインフレに悩まされていますから、生活防衛のためにAmazonプライムを退会する人が出てくるのはある意味わかります。そこで、今回のような戦略をアマゾンが模索しているのだと私はとらえました。 生活防衛のためにはスマホの通信料もAmazonプライムの中でまかなえるようにサービスメニューを拡大すれば、消費者も生活防衛のためにAmazonプライムをやめる必要がなくなります。 ですから、このニュースを耳にした私は、「意外にこのサービスは成功するかもしれない」と即座に思ったわけです。 これが成功すればの話ですが、GAFAMクラスのIT企業にとっては携帯サービスが持つビッグデータの有用性は莫大(ばくだい)です。この点ではグーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つわけですが、この業界地図が、アマゾン携帯サービスが普及すれば塗り替わることになるのです。 さて、ここからお話しする未来予測は「もしも?」が二つ重なったときに起こることです。たとえ、それぞれが5割の確率だったとしても、それが二つ起こる確率は25%と高くはありません。ただ、それが起きたときのインパクトはものすごいことがある。そんな話です』、「アマゾン携帯サービスが普及すれば」、「グーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つ・・・業界地図」が「塗り替わることになるのです」、なるほど。
・『日本市場はアマゾンにとって重要な稼ぎどころ  今から15年ほど前に「グーグルゾン」という言葉が、ITビジネス界隈で話題になりました。激しく競争をしているグーグルとアマゾンですが、もし15年前の段階で2社が合併していたら、世界をあやつれるほどの独占企業が出現するのではないかという未来予測です。 現実にはそんなことは起きなかったのですが、別の現実としてグーグルとアマゾンはそれぞれ、この15年で個別に世界をあやつれるほどの力を持つようになりました。 そのアマゾンですが、世界売り上げの9割弱はたった四つの国で稼いでいます。アメリカ、ドイツ、イギリス、そして日本です。わたしたち日本人はアマゾンが大好きですが、日本市場はアマゾンにとっても全体の5%を占める重要市場なのです。 それで最初の「もしも?」は、アメリカでプライム会員に向けた携帯サービスが成功したとしたらどうなるかという話です。そうなれば当然アマゾンは次にドイツ、イギリス、そして日本でプライム会員向けに携帯サービスを導入したいと考えます。でも、誰が携帯回線をアマゾンに提供するのでしょうか? その疑問についてはこの記事の後半にお話しするとして、皆さんの中にもアマゾンエフェクトという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています。 2018年にシアーズやトイザらスが、2019年にフォーエバー21が、2020年にバーニーズ・ニューヨークが破綻しました。コロナ禍では金融緩和で大型倒産は目立たなかったものの、2023年4月には家庭用品販売最大手のベッド・バス&ビヨンドが破産に追い込まれました』、「アマゾンエフェクト」、「アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています」、なるほど。
・『アマゾンは「弱体化した日本企業の買収」を計画するかもしれない  私は、日本でのアマゾンエフェクトは、アメリカよりも遅れて2020年代に本格化すると予測しています。それも小売店だけでなく動画、音楽、書籍など電子メディア業界を含めた侵攻規模になると考えています。 その危惧は、コロナ禍で日本でもアマゾンを含めたインターネット通販の売上高が急増したことで、現実になり始めています。もちろん物流の2024年問題など日本固有の社会問題があるので、アマゾンエフェクトが一本調子で拡大するとは限りません。ただ、いろいろありながらも経済への悪影響が年々拡大していくことは間違いないと思っています。 そしてもう一つ、日本的なアマゾンエフェクトとしては、アマゾンは弱体化した企業を買収する形で拡大するのではと私は考えています。小売業については、アマゾンは無人店舗技術で他の小売流通の先を進んでいます。セルフレジではなく無人店舗です。 これはセンサーとAI技術を使うことで、レジを通さなくても駅の改札のようなゲートを通るだけで精算が終わる未来型の流通で、少子化に悩む日本にとっては最適なソリューションでもあります。このような技術的な優位のあるアマゾンならば、日本で販売網を拡大するには弱体化した全国スーパーや、2番手3番手のコンビニを買収したほうが、拡大が早い。 日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です』、「日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です」、大変だ。
・『もしもアマゾンが楽天を買収して「アマ天」が爆誕したら?  そこで、携帯サービスの話です。2024年にアメリカでアマゾンの携帯サービスが「もしも」成功したとして、2025年にアマゾンが日本でも同様のサービスを展開しようと考えたとします。 ここで、もう一つの「もしも?」が登場します。もしも2025年段階で楽天モバイルのユーザー数が伸びず、三木谷浩史CEOが窮地に陥っていたとしたらどうでしょうか? 私は経済評論家の中では楽天モバイル擁護派で、今は大赤字の楽天モバイルも加入者が1000万人を突破すれば楽天グループ全体はV字回復していくと予想しています。 楽天経済圏のユーザー数は4000万人いるので、1000万人という数字は現実的に到達可能な数字だとも考えています。 一方で、経営状態を考えると楽天にとっては資金調達という現実的な経営課題が重しになっています。膨大な数の基地局を建設してきたことで巨額の借金を背負っているのですが、その借り換えのスケジュールがどんどん迫ってくるのです。 2年後、楽天モバイルが躍進しているか、それとも伸びが止まってしまうのか。「もしも?」悪い方の50%の確率が起きてしまっていたとします。そのときのアマゾンの経営会議を想像してみてください。 「日本の携帯サービスへの参入、どうしようか?」 「それなんですけど、建設に3兆円かかる携帯電話網を持っている日本の会社が1兆円で売られてますよ」 それをアマゾンのアンディ・ジャシーCEOが気づいたら、どう考えるでしょうか? 「うん。ワンクリックでその会社をポチろう」 と言い出すかもしれません。 これは2025年に「アマ天」が誕生するという、競争企業にとっては悪夢のシナリオです。 このアマ天、思いもよらない組み合わせですが、考えてみると悪くはない。少なくとも消費者にとってこれは悪い話ではありません。 楽天モバイルと同じ、3GBまでなら月額1078円、20GBまでなら2178円、それ以上は無制限で3278円の携帯サービスに加入すれば500円分のアマゾンプライムも無料でついてくるとしたらどうでしょう。生活防衛のために他社から乗り換えようという人が、これまで以上に出てくるのではないでしょうか。 楽天の国内EC流通総額は、直近1年分で5.8兆円です。アマゾンは国別売り上げは非公開ですが、調査によれば楽天とアマゾンは国内ではほぼ互角。つまり合併で新たに10兆円小売業が誕生します。 これはイオンやセブンアンドアイと同等規模の巨大流通となります。同時にECやクラウドの規模を考えると、国内最大のビッグデータの保有企業となり、資金規模を考えると国内最大のAI企業の誕生になるでしょう。 そうなると、国内の主要産業の破壊が現実味を帯びてきます。中規模な小売流通は、当然のようにアマ天の巨大な販売力の下で競争力を失うでしょう。2030年までに家電量販店が消え、ホームセンターが凋落し、アパレル業界は衰退します。動画、音楽、書籍といったメディア業界でも、アマ天エフェクトで崩壊スピードは速まります。 それを予感させたからこそ、冒頭のシーンのように「アマゾンがアメリカで携帯サービスに再参入」というニュースを耳にしたとたん、私の頭の中に電気が走ったのです。 さて、アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか』、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません」、ただよくよく考えれば、それほど悪くないとも考えられる。ただ、「早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」には賛成である。

次に、6月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324345
・『かつて、NTTドコモ(当時)は、世界で初めて携帯電話によるインターネット接続を可能にする「iモード」を発表。iモード対応1号機として投入されたのが、富士通の「ムーバ F501i」だった。そうして富士通の携帯電話事業本部を母体に発足したのが、FCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)だ。同社の「らくらくスマートフォン」はシニアに支持されたヒット商品だ。しかし5月末、FCNTは民事再生法を申請した。背景には何があったのか』、「旧富士通の携帯電話事業が破綻」とは何があったのだろう。
・『旧富士通の携帯電話事業が破綻  5月30日、「らくらくスマートフォン」などを手掛けるFCNT(旧富士通コネクテッドテクノロジーズ)が、東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理された。同日、親会社のREINOWAホールディングス、その子会社であるジャパン・イーエム・ソリューションズ(JEMS)も民事再生手続き開始の申し立てを行った。わが国のスマホメーカーの凋落ぶりは鮮明だ。 今回の破綻要因は、FCNTが世界経済の速い変化に対応ができなかったことだろう。国内の人口減少などによる収益悪化や世界的な競争激化、さらに物価上昇や円安によりコスト負担が増すなどし、資金繰りが悪化していた。 FCNT以外にも、そうした変化に対応できず破綻する企業が目立つようになってきた。1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている』、「1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている」、その通りだ。
・『凋落鮮明な日本のスマホメーカー  FCNTの民事再生法は、わが国スマホ産業の凋落ぶりを象徴する。99年、かつて、NTTドコモ(当時)は、世界で初めて携帯電話によるインターネット接続を可能にする「iモード」を発表した。iモード対応1号機として投入されたのが、富士通の 「ムーバ F501i」だった。そうして富士通の携帯電話事業本部を母体に発足したのが、FCNTだ。 かつて富士通の携帯電話事業部門は、21世紀の世界経済が「データの世紀」に入ることを予見していただろう。2000年代に入ると、世界全体でインターネット利用が急増した。それに伴い、ビッグデータを用いたビジネスモデルの確立も加速した。本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた。 一方、世界経済は劇的に変化し、冷戦終結後は「分断からグローバル化」へ突き進んだ。 中国は、「世界の工場」としての地位を確立した。共産党政権による国有企業などへの土地や、安価かつ大量な労働力の供給は大きな影響力を持った。 米国ではIT革命が起きた。アップルやエヌビディアはソフトウエアの設計・開発に集中し、ファブレス体制を強化した。台湾のTSMCや鴻海(ホンハイ)精密工業などは、米国企業が設計・開発したスマホやチップなどの製造を受託した。こうしてグローバル化は加速した。 3G・4G、そして5Gと、通信速度も向上した。デジタル化も加速し、ジャスト・イン・タイムなサプライチェーンも整備された。企業の新商品の開発スピードは加速し、国際分業体制の強化によって米国をはじめとしたグローバル企業の収益性、事業運営の効率性は高まった』、「本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた」、「わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった」というのは確かだ。
・『日本の通信市場は「ガラパゴス化」  わが国企業は、そうした環境変化への対応が難しかった。わが国には1億人超の人口がある。バブル崩壊後、多くの企業経営者は相応の需要獲得が期待できる国内市場を念頭に、事業戦略を立案した。 それによってわが国企業は、雇用や既存事業を維持した。攻勢をかけるタイミングを計る姿勢も示された。それは、利害関係者の理解の取り付けに重要だった。また、国内の消費者などとの関係を強化するために、企業は自前での設計・開発・国内製造なども重視した。 一方、人口規模が小さい韓国や台湾の企業は、急速に海外事業を強化し、収益の得られる分野を拡大。内向き志向の強まる本邦企業との成長戦略の違いは鮮明化した。 わが国の国土は狭く、人件費も高い。政府による民間企業のリスクテイク支援策も遅れた。IT化、国際分業の加速など、世界経済の環境変化にわが国企業が対応することは難しくなった。 追い打ちをかけるように、07年頃から世界全体で、スマホが急激に普及した。デバイスの供給面でアップル、サムスン電子、低価格攻勢をかけた小米(シャオミ)など中国メーカーのシェアが拡大した。スマホOS市場では、グーグルのアンドロイド、アップルのiOSの寡占が鮮明化した。 わが国はそうした環境変化に取り残された。NTTドコモによる海外買収戦略の失敗などもあり、ソフト・ハードウエアの両面でわが国の通信市場は「ガラパゴス化」した。国際市場での競争力は失われ、三菱電機やNECはスマホ事業から撤退した。 16年、富士通は量子コンピューティングや光通信など、成長期待の高い分野への選択と集中のために、携帯端末事業を分社化し、FCNTが発足した。続く18年、富士通はFCNTをプライベートエクイティ・ファンドに売却した。その後、世界的な資源価格高騰や円安の進行によってFCNTのコストは急増。収益力は低下し、財務内容も悪化した。そうして23年5月末、FCNTは縮小均衡から抜け出すことができず、民事再生法を申請した』、「日本の通信市場は「ガラパゴス化」」、かえすがえすも残念だ。
・『ハイブリッド車に続く世界的ヒットの実現は…  1990年代以降、日本企業はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッド車の世界的ヒットを実現した。ただ、それに続く高付加価値の商品が見当たらない。コロナ禍を境に、わが国のデジタルデバイドの深刻さも鮮明化した。 それにもかかわらず、能動的に収益分野を拡大し、高成長の実現を狙う企業は限られている。FCNTの民事再生法申請は、これまでの発想で企業が成長を目指すことが限界に差しかかりつつあることを示唆する。 わが国企業は、スマホ企業が凋落した教訓を生かすべきだ。一例として、デジタル分野など成長期待の高い分野に進出して収益の得られる分野を拡大することだ。反対に、それが難しくなると、環境変化に取り残される企業は増えるだろう。収益力・財務体力は低下し、長期の存続は難しくなる恐れも高まる。 最近、FCNT以外にも破綻に陥る国内企業が目立つ。4月、不動産のユニゾホールディングスが民事再生法を申請した。コロナ禍によるインバウンド需要の一時消滅、物価上昇による事業運営と資金調達コストの増加などが重くのしかかった。 中小企業の倒産件数も増加している。中小企業庁「倒産の状況」によると、22年12月以降、倒産件数の増加率は前年同月比20%を上回って推移している。23年4月末の倒産件数は前年同月比25.5%増の610件だった。うち、70%超が販売不振を理由に倒産した。 バブル崩壊後の30年以上にわたり、日本全体で「現状維持の発想」がまん延している。その結果、事業規模の大小にかかわらず、企業にとって能動的に収益分野を拡大し、より高い利益率の達成がままならなくなっている。 今後の展開次第では、米欧で物価は高止まりし、金融引き締めは長引きそうだ。世界経済の後退懸念も高まるだろう。それが現実となれば、わが国の経済成長率は停滞し、事業運営に行き詰まる企業は増えるはずだ。そうならないためにも、本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている』、「本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている」、同感である。

第三に、7月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載した企業アナリストの大関 暁夫氏による「日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/71678
・『好調な事業の黒字をモバイルが一気に食いつぶしている  楽天の株価下落が止まりません。2021年3月に上場来最高値の1545円を付けて以降、右肩下がり一辺倒。直近では四半期ごとの大赤字決算発表の都度株価を下げ、今や500円前後を行ったり来たり。最高値の3分の1以下になってしまった、という体たらくぶりなのです。 楽天の株価を引き下げているものは、楽天モバイルの業績不振に尽きます。モバイル事業準備段階の19年決算からグループ決算の赤字化が始まり、サービススタート後の20年決算からは3期連続で1000億円を超える大幅赤字を計上。 直近の23年1~3月の四半期決算でも営業損益で761億円の赤字を計上していますが、モバイル事業単体ではこれを上回る1026億円の赤字となっています。つまり、好調なインターネット事業や金融事業の黒字を、モバイル事業が一気に食いつぶしている構図が見てとれるのです。 そもそも、楽天が第4の通信キャリアとしてモバイル事業に名乗りを上げたのは、この事業で大きな利益を得ようと思ってのことではありません。ECビジネスからスタートした楽天は、新規事業の立ち上げや企業買収によってビジネス領域を着々と広げていきました。 そして、ポイント・サービスやキャッシュレス決済をキーにして、利用者を楽天ビジネスに囲い込む「楽天経済圏」を形作ってきたのです。各サービスを有機的につなげ、経済圏を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だったのです』、「楽天経済圏」「を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だった」、なるほど。
・『あまりにも大きい「3つの誤算」  このような狙いの下、20年4月に「第4の携帯キャリア」として鳴り物入りでスタートしたはずの楽天のモバイル事業が、なぜ巨大な「お荷物事業」になってしまったのでしょう。そこには、楽天グループを創業から発展軌道に乗せてきた三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした。監督官庁の総務省は、遅々として進まぬ受信状況改善に業を煮やして、19年10月の開業予定に待ったをかけたのです。 これは明らかに、国の認可業務である通信事業を舐めていたと言えます。楽天モバイルは開業の半年先延ばしを余儀なくされ、期待の「第4の携帯キャリア」のイメージは、いきなり大きく損なわれることとなりました』、「三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした」、なるほど。
・読みの甘さを象徴する三木谷社長の発言  しかし、これはまだ、序の口に過ぎません。基地局設置に関しては、その投資額に関する見通しの甘さが何より致命的でした。当初の投資計画では基地局整備に必要な投資は約6000億円を想定していたようですが、現状で既にそのほぼ倍額が投じられながらもいまだ目標の通信人口カバー率99%以上に至らず、なのです。 この巨額投資地獄が、とりもなおさず楽天の財務状況を悪化させた根源となったのです。すなわち人口カバー率99%以上達成を甘く見過ぎていたことが、今の大苦境に直結したと言えるでしょう。 この点での読みの甘さを象徴したのが、22年度決算発表時の三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていたのが印象的でした』、「三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていた」、「三木谷」には冷静な判断力が欠如しているようだ。
・『6万局では勝負にならないのは明白  現実を見れば、三木谷社長の見通しの甘さ、考えの甘さは明白です。社長が同社基地局数の当面の目標としていたのが、6万局です。一方で、NTTドコモの国内基地局数が約26万局(4G)、auは約20万局、ソフトバンクでも約17万局を備えています。 ソフトバンクですらいまだに、「上位2社に比べてつながりが悪い」と言われていることを考えれば、6万局ではおよそ勝負にならないのは明白であり、「基地局投資が24年度で一段落する」などという考えこそ大甘であったことが分かるでしょう。 結果的に、今年5月にKDDI(携帯キャリアはau)回線借用契約におけるローミング(相互乗り入れ)の拡大を決めました。これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です。楽天のただならぬ苦境と、基地局整備に対するこれまでの見通しの甘さが、ここに完全露呈したと言えます』、「これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です」、なるほど。
・『2つ目の誤算「プラチナバンド問題」  この問題に微妙に絡んでいるのが、2つ目の誤算であるプラチナバンド問題です。プラチナバンドとは、我が国の電波利用においてもっとも携帯電話に適してつながりやすい、700MHzから900MHzの周波数帯のことです。国内のプラチナバンドは先行3大キャリアに独占され、現在空きはありません。 後発の楽天に割り当てられた周波数は1.7GHzであり、屋外では大きな問題はないものの室内での先行3社に比べた接続の悪さは利用者の知るところです。すなわち、いかに基地局整備を進めようとも、プラチナバンドを持たない現状では「つながりにくい楽天」は解消されず、飛躍的な契約者数増強は望めないのです。 楽天のプラチナバンド問題については、同社が業界参入を決めた当初から業界内では「プラチナバンドなしで、どう戦う気なのか(大手キャリア幹部)」と不安視する声と、同時に「楽天、臆するに足らず(別の幹部)」との声も聞こえていました。 しかし、この段階で楽天は脳天気にも、「うちの1.7GHzはつながりやすい(山田善久社長、当時)」と自信を見せていたわけで、この点での見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです』、「見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです」、その通りだ。
・『初動の遅れが「つながりにくい楽天」を決定づけた  楽天が総務省に対してプラチナバンドの再分配要望を初めて出したのが、事業開始から半年以上経た20年12月です。1.7GHzでやってみたが、やっぱりつながりが悪い。これではどうにも勝負にならない、と遅ればせながら気がついたのでしょう。 事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言えるのです。 ちなみに、楽天のプラチナバンド獲得に関してはこの4月に、3大キャリアの携帯電話700MHz帯と隣接の地上波テレビ帯などの間に存在する空き部分に3MHz幅×2の携帯電話4Gシステム導入を検討し、それを楽天に優先供与する見通しにはなりました。しかし、先を急がざるを得ない楽天はこれを待っている猶予はなく、先に書いたようにプラチナバンドを使用したau回線を全面的に借用することとなったのです』、「事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言える」、どうも「楽天」は「通信」では素人のようだ。
・『官製値下げによって事業計画は大幅に狂わされた  3つ目の誤算は、携帯料金の官製値下げです。これは最も予期せぬものだったかもしれませんが、最も事業計画にダメージを与えた誤算でもありました。楽天モバイルのスタートから半年後の20年9月、総務大臣経験者の菅義偉首相が誕生。菅氏は持論である「携帯料金は4割程度下げる余地がある」を実践すべく、「携帯料金官製値下げ圧力」を発動しました。まず政府が大株主であるNTTドコモがこれに従ったことで、au、ソフトバンクも追随するという、予想だにしなかった展開になってしまったのです。 サービススタート当初は圧倒的な業界最安値であった楽天の月額2980円は、瞬く間に大手3キャリアに追いつかれてしまうこととなり、後発でかつ「つながりにくい楽天」としては一層の値下げを強いられることになりました。結果的に楽天のモバイル事業黒字化は先が見えなくなり、官製値下げによって事業計画は大幅に狂わされたのです。 表向きは、楽天も時の首相の人気取り政策の犠牲者であると言えるかもしれません。しかし、そもそも政府による楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます』、「楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます」、その通りだ。
・『有利子負債は「これ以上増やせない」のが実情  もちろん、それは先に述べたように、楽天が基地局整備を甘く見たために開業が遅れ受信状況の改善が遅々としてすすまなかったこと、加えてプラチナバンドを軽視したが故に一層「つながりにくい」印象となったことで、3大キャリアにほとんど危機感を与えることができず、政府の期待に沿えなかったことに起因しているわけです。これも結局のところ、甘い見通しによる誤算の連鎖が、自らの首を絞めた自業自得の結果であると言えそうです。 楽天がここにきて自前の基地局設置からau回線の全面借用に180度方針転換した理由は、この先も年間3000億円という基地局設置投資を続けていくことが、財務上難しくなってきたことに他なりません。 22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです』、「22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです」、「これ以上増やせない」とは苦しいところだ。
・『5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けている  今後最大の問題は、有利子負債の大半を占めている社債が、続々償還を迎えることにあります。今年度が800億円、来年が3000億円、再来年には5000億円、この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります。 現状の財務内容で1兆円を超える償還資金を手当てするのは容易ではなく、かといって借り換えを実施しようにも今の格付けでは金利が跳ね上がってしまい、ますますグループ経営の足を引っ張ることになるでしょう。 資金調達に関しては、21年に1500億円を楽天に出資した日本郵政が同社の株価低迷で800億円もの減損処理を迫られていることもあり、現状で第三者から新たな巨額出資を求めるのは難しいでしょう。増資自体がますます株価を下げることにもなるので、これ以上の新株発行は難しい状況にあると言えます』、「この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります」、これまでの放漫な調達政策のツケだ。
・『存続を賭けた本当の正念場にさしかかっている  資産売却については、既に楽天銀行の上場で700億円が調達済みで、楽天証券も上場申請を済ませ約1000億円を調達予定と聞きます。まだ他にも、カードや保険などの子会社はあるものの、近年親子上場が少数株主の利益が損なわれるという批判も多く、ここでも手詰まり感があるのが実情なのです。 こうしてみてくると、甘い見通しのまま新規事業に手を出したツケが誤算という形で次々ボディブロー的に効いてきて、いよいよロープ際に追い込まれた楽天の現状がよく分かると思います。現状ではモバイル事業黒字化の見通しはあまりに遠く、社債の巨額償還を前にどのような秘策を繰り出していくのでしょうか。楽天モバイルは今、存続を賭けた本当の正念場にさしかかっていると言えるでしょう』、ジジ殺し「三木谷」氏の手綱さばきが注目される。
タグ:携帯・スマホ (その11)(アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ、「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路、日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「アマゾンが楽天を買収し「アマ天」爆誕!?最悪シナリオを否定しきれないワケ」 「アマゾンが日本進出を果たす際の足がかりとして、楽天グループが狙われる可能性を否定できない」、面白い時代になったものだ。 「アメリカではサービスが月額14.99ドル、年間プランは139ドル(約1万9500円)なので、日本の年額4900円よりもかなりお高めです。 しかし、日本と違うのは無料サービスの量です。日本人がよく使う送料無料はもちろんのこと、Prime Video(動画配信)とPrime Reading(書籍)のコンテンツ数は日本の10倍以上あります。音楽のAmazon MusicやゲームのPrime Gamingを含めて基本的に付帯サービスだけで、下流層はスマホ生活を十分に楽しむことが可能です ・・・一方で、中流の上や富裕層は当然のように動画はNetFlixに入り、音楽はSpotifyにという形で有料サブスク消費が広がっているのですが、ベースとしてAmazonプライムを使うという点では中流も富裕層も、下流層と共通です」、なるほど。 「アマゾン携帯サービスが普及すれば」、「グーグルとアップルはアマゾンに対して優位性を持つ・・・業界地図」が「塗り替わることになるのです」、なるほど。 「アマゾンエフェクト」、「アメリカでは、有名な小売店ブランドが毎年何社も経営破綻するという状況が、もう10年以上続いています」、なるほど。 ・『アマゾンは「弱体化した日本企業の買収」を計画するかもしれない  私は、日本でのアマゾンエフェクトは、アメリカよりも遅れて2020年代に本格化すると予測しています。それも小売店だけでなく動画、音楽、書籍など電子メディア業界を含めた侵攻規模になると考えています。 その危惧は、コロナ禍で日本でもアマゾンを含めたインターネット通販の売上高が急増したことで、現実になり始めています。もちろん物流の2024年問題など日本固有の社会問題があるので、アマゾンエフェクトが一本調子で拡大するとは限りません。ただ、いろいろありながらも経済への悪影響が年々拡大していくことは間違いないと思っています。 そしてもう一つ、日本的なアマゾンエフェクトとしては、アマゾンは弱体化した企業を買収する形で拡大するのではと私は考えています。小売業については、アマゾンは無人店舗技術で他の小売流通の先を進ん 「日本でのアマゾンエフェクトは、その莫大な時価総額を背景にしたM&Aを武器に進むのではないかという予測です」、大変だ。 「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません。そうならないためにはどうすればいいか? あまり楽天の携帯事業をいじめないで、早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」、「アマ天の出現というのは日本経済にとっては良いシナリオだと私は思いません」、ただよくよく考えれば、それほど悪くないとも考えられる。ただ、「早いうちにプラチナバンドを開放してあげてはどうでしょうか」には賛成である。 真壁昭夫氏による「「らくらくスマホ」の会社はなぜ破綻した?富士通の携帯がたどった残念な末路」 「旧富士通の携帯電話事業が破綻」とは何があったのだろう。 「1990年初頭のバブル崩壊以降、「守り」を重視したわが国企業の事業運営は限界を迎えつつある。縮小均衡から脱するため、企業は収益を獲得できる分野を拡大し、より価格帯の高い最終商品やサービス供給を目指すことが必要だ。しかし、それができる企業の数は限られている」、その通りだ。 「本来、富士通は、事業環境の変化を収益増加につなげられたはずだ。 しかし、実際はそうならず、いくつもの壁が立ちふさがった。まず、90年代初頭、わが国の資産バブルが崩壊した。株価、地価の下落、不良債権問題の深刻化などを背景に、国内の経済環境は急速に悪化した。雇用維持などのために、事業領域の拡大よりも、既存事業の維持を優先する企業は増えた。 また、わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった。86年、「第1次日米半導体協定」が締結された。その後、わが国の企業は市場開放や、韓国など海外企業への技術供与を迫られた」、「わが国の電機メーカーにとって、日米半導体摩擦の負の影響も大きかった」というのは確かだ。 「日本の通信市場は「ガラパゴス化」」、かえすがえすも残念だ。 「本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 大関 暁夫氏による「日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」 モバイル事業黒字化の見通しはあまりにも遠い」 「楽天経済圏」「を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だった」、なるほど。 「三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。 まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした」、なるほど。 「三木谷社長の発言です。22年末時点の楽天モバイルの通信人口カバー率が前年の95.6%から98%に向上し、「7年かける計画を3年で達成し、基地局投資は24年度で一段落する」と息巻いていたのです。 しかし、この発言を聞いた3大キャリア幹部が、「ここからの1%が地獄の苦しみだということを、三木谷さんはご存じではないのでしょう」と冷めた言い方をしていた」、「三木谷」には冷静な判断力が欠如しているようだ。 「これまで楽天は、受信状況の悪い地域ではau回線を借用して穴埋めしつつも、あくまで自前の基地局増強による早期の回線借用解消をめざしてきたわけですが、都心部も含めたすべての地域でau回線を使って「つながりやすさ」を実現しようというのです。180度の方針転換です」、なるほど。 「見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです」、その通りだ。 「事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言える」、どうも「楽天」は「通信」では素人のようだ。 「楽天の業界参入認可は、3大キャリアの実質カルテル状態で高止まりが続いていた日本の携帯電話料金を、大幅に引き下げさせるための起爆剤として期待してのものでもあったわけです。残念ながら楽天ではその役割が果たせないと判断したからこその、国による「強制値下げ執行」であったとも言えます」、その通りだ。 「22年12月期段階での有利子負債の総額が1兆7600億円にも上り、財務状況の急激な悪化で投資格付は投機的水準にまで格下げになっています。決算会見時に三木谷社長は「有利子負債はこれ以上増やさない」と宣言しましたが、実際には「これ以上増やせない」のが実情なのです」、「これ以上増やせない」とは苦しいところだ。 「この先5年間で1.2兆円もの巨額償還が待ち受けているのです。それまでに償還資金の手当てをするか、あるいは借り換え資金の調達が必要になります」、これまでの放漫な調達政策のツケだ。 ジジ殺し「三木谷」氏の手綱さばきが注目される。
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鉄道(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) [産業動向]

鉄道については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も)である。

先ずは、本年5月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322125
・『千葉県・東葉高速鉄道が、早くて2028年度にも資金ショートする可能性が取り沙汰されている。多額の長期債務残高があり、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているからだ。その原因を突き詰めると、建設前の「鉄建公団」の枠組みにある。最近の金利上昇も“泣きっ面に蜂”状態で、返済にはさらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ』、どういうことなのだろう。
・『早くて2028年度にも「資金ショート」  「鉄道会社としての売り上げは年間130億円以上」「1日12万人以上が利用」「営業利益は年間33億」――。千葉県八千代市と船橋市を通る「東葉高速線」を運営する東葉高速鉄道は、これらの数値だけ見れば経営が順調そうに思える。 しかし同社は、早くて2028年度にも「資金ショート」する可能性がある。長期債務残高が2356億円あり、その返済はおろか、利払いだけでも精いっぱいな状況が続いているのだ。 その原因は、「建設にかかった2948億円を償還(返済)する」というスキーム(枠組み)にある。東京メトロ東西線と相互直通運転し、都心への通勤輸送を担う東葉高速線の利用状況は好調であるものの、コロナ禍前に行われていた元本返済も止まり、返済が進んでいない。21年度は、約10.5億円を長期債務にかかる利払いのみに費やしている。 東葉高速鉄道は、なぜこうした経営状況に陥っているのか。また、利用者から「高い」と言われる運賃は、なぜ高いのか? まずはこれまでの経緯をたどってみよう』、興味深そうだ。
・『免許申請から開業まで22年かかり建設費用が3倍に  東葉高速鉄道が開業したのは1996年。しかし免許の申請が行われたのは74年で、工事の大幅な遅れが建設費用の増大につながった。 74年の免許申請は営団地下鉄(現在の東京メトロ)によって行われ、当時は955億円の事業費(建設費など)を見込んでいた。しかし並行する京成電鉄などの事情も絡み、営団は免許を取り下げ、中野駅~西船橋駅間を東西線として開業した。営団は東葉高速鉄道に出資した上、「乗り入れ」という形の関与となる。 その後80年には「日本鉄道建設公団(以下:鉄建公団、現在のJRTT)」が工事を行い、千葉県や船橋市、八千代市などが出資する第三セクターが設備を引き取って運営する、現在の東葉高速鉄道が成立した。そうしてようやく84年に着工を果たす。 しかし、用地買収の交渉は遅々として進まなかった。通常ならここで「土地収用法」に基づき、裁決手続きの上で行政代執行となるはずだが、この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す。 そしてこの期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」(建設中の資金調達にかかる利息)や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった』、「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。
・『無理があった「公団P線方式」での建設  鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う。 このスキームは経営体力のある大手私鉄の新線(東急田園都市線など)で頻繁に用いられた。一方、経営能力に乏しい第三セクター会社にも適用され、業績低迷とともに支払いに苦しむ事例が続出した。例えば、92年に開業した千葉急行電鉄(現在の京成千原線)はたった6年で経営破綻した。自治体のみならず、出資した京成電鉄も大きな損害を負うことになった。 当時の鉄建公団は政治的な決断を背景に、さまざまなスキームで後に「負の遺産」となる路線を量産している。「P線方式」も建設のための方便として使われた面も否めない。その上、P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ。 最近の金利上昇により、東葉高速鉄道の返済計画には、さらなる不幸が襲い掛かることになりそうだ。21年度の約12億円の利払いは、リーマンショック後の超低金利が前提となっている。そうなる以前は、年間50億円以上の利払いを行っていた時期もある。返済内容として、金利が0.1%変動しただけで、返済金額が数億円も上振れする可能性があるという』、「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。
・『鉄道建設と資金調達に変化、東急・相鉄直通線は?  東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている。どういったことか、各地の事例を見てみよう。 23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ。 もしこれが「P線方式」で建設されていたとしたら、東急・相鉄が事業費の約2700億円を負担することになる。2社の営業利益を合計した8年分に相当する額だ。なお、東急・相鉄直通線の加算運賃も現行の範囲では済まなかっただろう。 05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している』、「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。
・『株主である自治体が国に支援を要請へ  東葉高速鉄道は、西船橋駅~東葉勝田台駅間(16.4Km)の運賃で640円、1カ月の通勤定期で2万6890円という、距離の割に高い運賃が問題視されている。 同じ千葉県内では、北総鉄道が通勤定期運賃を13.8%、通学定期運賃を64.7%も大幅値下げした(22年10月1日)。同社は「北総線・成田スカイアクセス」など成田空港への輸送で利用が上向いたことから、20年前には450億円もあった累積損失の解消を見込んでいる。片や、東葉高速鉄道の返済金額はその数倍とあって、なかなか値下げに踏み切れない。 3月20日、東葉高速鉄道に出資する千葉県・八千代市・船橋市は、国土交通省に対して、同社への「抜本的な支援策」を求める申し入れを行った。出資者による財政支出は500億円に上っているが、自治体のみによる支援には限界があるとして、踏み切ったもよう。これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」(裁判外紛争解決手続。私的整理の一つ)で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた。 東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ』、「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、その通りなのだろう。

次に、5月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675824
・『ETR252型「アルレッキーノ」――欧州の鉄道に関心のある人でも聞き慣れない名前かもしれない。 だが、昭和世代の乗り物好きなら乗り物図鑑の中で一度は目にしたことがあるであろう、前面展望車両の元祖とも言うべきETR300型「セッテベッロ」といえば、ご存知の人も多いのではないだろうか。 通常は車体前部に設ける運転台を屋根上へ置き、その代わりに前方を眺められる展望席を設けた画期的なデザインで、あの小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車、と言っても過言ではないだろう』、「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。
・『錆びて朽ち果てた名車  ETR250型アルレッキーノは1960年、そのセッテベッロの増備車として同年に開催されたローマオリンピックの観客輸送のため、ETR251~254型の4両編成4本が製造された。オリンピック終了後は、イタリア国内の主要都市間を結ぶRapido(特急列車)で使用されていたが、1990年代に入ると徐々に定期運用から外され、主に臨時列車やチャーター用に使用された。 だが、その回数も徐々に減っていき、ついに保留車両として完全に運用から退くことになった。4本造られたうち、第2編成のETR252型を除いた3本は1999年までにすべて解体されてしまった。残ったETR252型も、海からの潮風が吹くアンコーナ駅構内に長期間野ざらしの状態で放置され、車体は錆びて朽ち果てた状態となった。) 転機となったのは2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ。車両は同財団によって速やかに回収され、ひとまず盗難や落書きなどの被害から守るため建物の中へ収容した。資金のメドが立った2016年に、修復を請け負う民間企業の工場へ移送され、すぐに動態保存へ向けた修復工事が始まった。 ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった。工場へ運ばれた後、まず基礎以外の車体の外板を全て剥がし、配線などもすべて撤去、ほぼゼロの状態から再構築した』、「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。
・『3年かけ修復完了、直後にコロナ禍が…  内装はオリジナルの状態を極力再現するため、シート生地は現代の基準を満たしつつ、当時の素材を忠実に再現。内壁に使う化粧板なども当時の色彩を保っている。その一方で、本線上を運行するにあたって現代の基準に適合させる改造も行われている。 例えば信号保安装置には、イタリアの主要幹線で採用されている安全性の高いSCMTシステムを搭載、空調装置は最新のものへ交換し、各座席には充電用のサービス電源ソケット(コンセント)を設置している。また、それに伴い必要となる電源容量が不足するため、コンバーター(変圧器)も出力を向上させた新型に交換した。 3年間にわたる修復工事を終え、再びその姿を現したのが2019年だった。お披露目は同年6月27日、ローマで開催されたイタリア鉄道(FS)グループの観光計画発表の場で行われた。すぐに一般向けの公開運転がスタートすることが期待されたが、間もなく世界はコロナ禍によって大混乱へと陥り、運転再開は無期限休止の状態となった。 2021年へ入り、ようやくコロナ禍が少し落ち着きを見せ始めたことで、各国は自由な移動やマスク着用、ワクチン接種などの規制を緩和し始めた。 それに呼応する形で、アルレッキーノの一般向け公開運転開始がアナウンスされた。最初の運行は2021年10月3日、ボローニャ―ローマ間で実施され、チケットは発売開始と同時に完売した。その後、今年2023年に至るまで、年に数度の一般向け公開運転や、チャーター運用などに使用されている。) 鉄道車両の保存には大きく分けて静態保存と動態保存の2種類がある。博物館や公園など、屋内外に動かない状態で保存する静態保存に対し、つねに動かせる状態で保存するのが動態保存だが、日本では前者が一般的となっている。乗り物である鉄道車両は、可能なら動態保存してほしいと願うファンがほとんどだろうと思うが、現実問題として、古い車両を動かせる状態で保存するためには、さまざまな難問をクリアしなければならない。 まず技術の継承が不可欠なのはもちろん、車両を維持管理するためのスペース、すなわち車庫の問題も出てくる。そして、それらを恒久的に続けていくために、当然多額の資金が必要となる。 古い車両は、きちんとしたメンテナンスが必要なのは言うに及ばず、現代の車両とは異なる車体や装置、技術の場合には、特別なケアが必要となる。こうした車両のメンテナンスには、熟練の技術者が必要不可欠となるが、若い技術者を育てなければ恒久的な維持管理は難しくなる。もちろん、ただ技術を教えるだけではなく、その技術者が一人前になった後、その技術だけで生活ができなければ、いずれなり手はいなくなってしまうし、その技術者が定年を迎えるときまでに後継者を育てなければ、その技術は潰えてしまうことになる』、なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。
・『相当な資金が必要な「動態保存」  部品の確保もまた、今後は重要な課題となってくるだろう。古い車両は、実は技術さえ継承できれば修理や整備は何とかなる可能性があるもので、昔の家電製品のように「叩けばなんとかなる」ではないが、ある意味で言えばスパナやハンマーなどがあれば直せるものが多い。 だが近年、特に半導体技術を使うようになった1970~1980年代以降の車両の場合、部品の交換以外に修理する手段がなくなるため、廃車となった車両から保守用部品を抜き取って保管する必要が生じる。そして、部品が枯渇した段階で修理不能となるため、装置そのものを最新の装置へ換装する以外に修理する手段がなくなる可能性もある。 つまり車両を動態保存するためには、鉄道会社側に相当な負担が生じ、とりわけ資金面に十分な余裕がない限り、まず不可能と言っていいだろう。日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある。ファンがいくら声を上げたところで、ない袖は振れないのはやむをえないことだ。 では、一度はスクラップ寸前の状態となった1960年代の車両を通常の運行ができる状態にまで完全に復元した、イタリア鉄道財団の財源はどうなっているのだろうか。 イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある』、「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。
・『政府が保存をバックアップ  民間からの寄付については、筆者も一度財団へ寄付を申し出たことがあるが、個人からの少額の寄付は受け付けていないようで、今のところは企業などからの大口の寄付で賄われているようだ。 なお、2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い。 FS財団では現在、冒頭で触れた世界的に有名なETR300型セッテベッロのほか、1957年に運行開始した国際特急TEE用のALn442-448型気動車、数々の超特急を牽引したE444型高速旅客用電気機関車などの完全復元を目指して修復工事が進められている。これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない』、「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。

第三に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680988
・『昭和の頃からいまだ抜本的解決策が見いだせない赤字ローカル線問題。近年は「人口減少」を理由として、半ば諦めムードの世論形成の末に、廃線への道を突き進むケースがほとんどである。筆者もこれなら廃線も仕方がない、そう信じていた。 ところが、その赤字ローカル線、本当に人口減少が原因なのかと首をかしげるようなデータを入手した。それによれば「人口減少率が低い・または人口が微増しているにもかかわらず、鉄道利用者が最大半減になっている線区がある」あるいは「鉄道利用減少率が人口減少率の2倍・3倍の線区がある」という事実がある』、興味深そうだ。
・『人口減より急速に進む利用者減  これが本当ならば、人口減少のみがローカル線衰退の原因ではなく、鉄道事業者の無策・愚策がローカル線衰退の一助になっていたり、むしろローカル線を衰退させて沿線人口減少にもつながっていたりすることもありえるのではないだろうか。 これから挙げる4線区の例は、2000年、2010年、2020年と10年おきの乗車人員、駅から2km圏の沿線人口、そして通学利用者が多いと考えられる10代後半の人口のデータだ。2020年のデータはコロナの影響を排するため、2019年の数値を用いている。人口は国勢調査から引用している。 まず注目したいのはJR小海線の中込―小諸間だ。小海線は2000年から2010年にかけて沿線人口は横ばい、10代後半の人口は8%も増え、2010年から2020年までは人口も2%増えている。) それにもかかわらず、小海線の乗車人員は2000年と比べて2010年は30%減、2020年に至っては人口増で若干持ち直しているものの、2000年比で26%の減少であり、この差分を取りこぼしたままとなっている。 沿線人口を維持、あるいは増えているにもかかわらず利用者数が3割減とは、鉄道が移動の選択肢から外れる要因に手を打つことができなかった鉄道事業者の落ち度ではないだろうか。 通常、人口1人あたりの鉄道利用回数が変わらなければ、人口減少率を超えた鉄道利用者の減少率にはならないはずであり、人口減少だけを利用減少の理由にするには無理がある。 (小海線と米坂線の沿線人口・乗客数の変化を表したグラフはリンク先参照、横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 米坂線の小国―坂町間については、10代後半の人口はあまり減っていないのに大幅な減少だ。こちらは2000年比で10代後半の人口は2010年で4%増、2020年はほぼ同レベルを維持している。沿線人口は全体で2020年までに18%減っているとはいえ、乗車人員は36%も減っている。ローカル線の大口顧客である通学生はほぼ減っておらず、沿線人口の減少率の2倍も客が減るのは、人口減少のせいにする前に商売のやり方のまずさに気付くべきところもあるのではないか』、「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。
・『首都圏にも実例が  さらに、首都圏にもこのような路線がある。内房線の君津―館山間だ。こちらもこの20年で乗車人員が半減し、列車も新車への置き換えの際に4両から2両に減らされた。ところが沿線人口は1割しか減っていないのである。10代後半に限ってみても3割減だが、高校生人口は全体の5?6%程度であり、その3割が減ったからといってそう大きな差にはならないはずである。 陸羽東線の最上―新庄間も内房線と同じ傾向だ。こちらは人口2割減だが乗車人員6割減だ。高校生は半減だがこちらも全体の5%に過ぎない。となると、これは事業者側の商売音痴がローカル線の衰退を招いたというべきではないだろうか。 (内房線と陸羽東線の沿線人口と利用者数のグラフもリンク先参照。横軸の数字は年、縦軸の数字は2000年を1とした場合の増減割合を示す(環境経済研究所データを基に筆者作成)) 他業界のビジネスパーソンなら、市場の人口が増えている、あるいは微減しかしていない状態にもかかわらず客数や売り上げが半減したら、担当者は幹部から何をやってるんだ!と叱責の対象となり、責任を追及されるはずだ。 大阪産業大学の那須野育大准教授の研究「JR地方交通線の輸送需要に関する考察」(公益事業研究第74巻第1号・2022年発表)では、列車本数や運賃施策が輸送密度に有意な影響を及ぼすとしている。つまり値上げや減便をすれば客が減るし、逆に値下げや増便によって客が増える方向に有意な影響があるということだ。 内房線の南半分についていえば、列車接続はかなり良いほうではある。ただ本数が少なかったり、東京直通列車がほとんどなかったりするため、東京湾アクアライン開通による高速バスの設定にトドメを刺されたのかもしれない。だが、それならば何か高速バスに対抗するような施策を講じただろうか。東京直通の特別快速を1日1往復、1年間走らせたくらいではないだろうか。これでは「やってはみましたよ・けどダメでした」という既成事実を作るための取り組みにすぎない』、JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。
・『「使いたい時間に列車がない」  価格面でも高速バスに対抗しただろうか?特急料金を取ることに執着して価格競争に敗れた結果、特急がなくなるくらいなら、乗車券と指定席券のみで乗れる快速列車でも走らせていれば運賃を取りっぱぐれることはなかったのではないか。例えばJR九州は高速バスへの対抗で実質往復運賃のみの料金水準で新幹線や特急で往復できる企画きっぷを多数出している。このようにできることはたくさんあったはずである。ところがJRが行ったのは、逆に房総料金回数券を廃止し、特急料金の実質値上げしたことであった。 他の線区はどんな状況だろうか。最近は久留里線の廃線議論でも利用減少を原因に挙げているが、住民からは「そもそも使いたいタイミングに列車がないのにどうやって乗れというのか」という声が上がったそうだ。 宇都宮線では高校生の下校のタイミングに走っていた列車が削減され、学校側が残された列車に合わせた時間割への変更を余儀なくされたことが話題となったこともある。先の那須野教授の研究では高齢化率や1人あたり自動車保有台数による悪影響もあるとしているが、ならば高齢者の利用促進や車より高いアドバンテージの実現といった努力をすべきである。) 例示した線区の現状のダイヤはどうなっているのか。通勤・通学に適したタイミングで運行されているのか。例えば内房線の安房鴨川―館山間では、安房鴨川方面は館山8時01分発の後は9時36分発までないし、反対方向も安房鴨川8時04発の後は9時40分発までないなど、まだ通勤を含む需要がありそうな時間帯に1時間半も列車が来ない。朝ラッシュ時でも1時間も間隔が開くのだから、これでは使えるとは言いがたい。 さらに終電も21時台の駅が目白押しで、これでは飲んで帰るのにも使えない。一部列車を除き、4両編成を2両編成にしたうえで車掌をなくし、ほぼ半分の経費で運転できるようにしたのだから、多少の増発をしてくれてもいいのではないか。 小海線はもっとひどい。小淵沢7時03分着の後は9時08分着まで列車がなく、その後も10時37分着までない。日中や夕方はもっと壊滅的なダイヤだ。沿線人口が増えている線区なのにこの扱いである。一体どうやって生活に使えというのだろうか!?』、確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。
・『ローカル線対策、今のままでいいのか  今回のデータの提供元の環境経済研究所、上岡直見氏は「JR東日本の深沢祐二社長は、収益重視で減便が利用者減少の原因とする批判は的外れであり、沿線人口が減る中で利便性をいくら改善しても需要喚起には限界があると述べている(『日本経済新聞』記事「ローカル線は維持できるか」2022年9月5日付)。しかし第三セクターのえちぜん鉄道では、さまざまな工夫によってコロナ下でさえ増客を実現(2022年度前年度比)している。JRのローカル線対策はあまりにもお粗末ではないだろうか」と指摘する。 「人が乗らないから助けてください・もう持ちません」と訴えるローカル線は日本中にあるが、すべてではないにせよ、そう言っている割には団地や商業施設の前に駅も置かずに素通りしているなど、泣き言を言う前にやることあるだろうと思うようなところはあるのではないかと感じる。 一方で、本当に沿線人口が少なすぎてどうしようもない線区もある。そのような線区を、都市部の黒字、つまり都市部の負担で多額の赤字を垂れ流しながらも残せというのは、コロナ禍の営業自粛のような、わずかな犠牲を回避するために多額の経済損失を繰り返す行為であり、何でもかんでも残せばいいというのも違うのではないか。きちんと残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引きをしたうえで存廃論議が進められることを期待したい』、「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
タグ:鉄道 (その10)(千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ 金利上昇が追い打ち、イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元 財源はどこから出ている?、赤字ローカル線の惨状 本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も) ダイヤモンド・オンライン 宮武和多哉氏による「千葉・東葉高速鉄道が「28年度に資金ショート」の恐れ、金利上昇が追い打ち」 「この頃千葉県は成田国際空港の2期工事を巡ってトラブルが相次ぎ、裁決をつかさどる収用委員会の機能がまひ状態だった。全ての地権者と合意を取り付けることができず、91年度を予定していた開業は93年→95年→96年と、延期を繰り返す・・・この期間に、バブル景気による土地や資材の急騰が起きた。加えて「建中利息」・・・や管理費が増大し、トンネル陥没事故などが次々と重なる。着工当初に2091億円を見込んでいた事業費は、2948億円まで膨れ上がった」、全く不運という他ない。 「鉄建公団の「公団P線方式」で建設が行われたことも事態を深刻化させた。このスキームは、建設や資金調達までを鉄建公団が行い、引き渡しを受けた事業者が「譲渡代金」などの名目で開業後に分割で支払いを行う」、「P線区間は不相応な高規格で建設され、工事の遅延などで費用も上がりがちだ」、「不相応な高規格で建設」とは問題だ。 「東葉高速鉄道などの失敗例を踏まえて、近年の鉄道新線は「最初から補助、開業後の負担を減らす」という考え方にシフトしている」、「23年3月に開業した東急・相鉄直通線では、05年に制定された「都市鉄道等利便増進法」によって、自治体が3分の1を補助し(残りはJRTTが調達)、新線開業で出る範囲の受益から東急・相鉄が施設利用料を支払う「受益活用型上下分離方式」が採用されている。いわば「最初から補助、鉄道会社は無理なく支払い」のパターンだ」、 「05年に開業したつくばエクスプレスのように、「宅地・鉄道一体化法」で、沿線開発と一体化して鉄道を整備し、費用をある程度組み込んだ例もある。この路線は田中角栄元首相の“鶴の一声”で着工を果たしたともいわれ、いわば「政治の力技で何とかした」パターンともいえるだろう。 また、JR東海のように、低金利の環境を生かし、社債の発行で資金を「自社で調達」する事例も増えてきた。なお、同社が建設中のリニア中央新幹線や、89年に開通した瀬戸大橋などは、国の特別会計を活用した「財政投融資」で費用を確保している」、なるほど。 「これまでのように利払いの補填や猶予だけでは、いわば止血にすぎない。 第三セクターの鉄道会社では、例えば埼玉高速鉄道が「事業再生ADR」・・・で元本の圧縮を図っている。また、P線方式で建設され、約650億円の負債を抱えた北神急行電鉄は、筆頭株主の阪急電鉄に198億円を支払う形で、神戸市が事業の譲渡を受けた。阪急側からすれば「損切り」となるが、神戸市側は市営地下鉄との一体運営で、念願の運賃値下げを行うことができた」、「東葉高速鉄道の株主である自治体も、そうした何らかの具体策に踏み込む時期に来ているはずだ」、 その通りなのだろう。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「イタリアの「元祖パノラマ」名車復活させた原動力 朽ち果てた車体復元、財源はどこから出ている?」 「小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーがデザインの参考にしたとされる、イタリアが誇る名車中の名車」、とは興味深そうだ。 「2013年。イタリア鉄道の歴史的遺産を保護・管理する目的で設立されたイタリア鉄道財団(Fondazione FS)が、後世へ残すべき車両としてETR252型を保護する決定を下したのだ」、「ETR252型の復元工事は完成まで3年を要した。長年留置されていたアンコーナの車庫は海沿いにあり、海からの潮風が容赦なく吹き付けたことで、車体はかなり傷んだ状態だった」、よくぞ「保護する決定」をしたものだ。 なるべきなら「動態保存」してもらいたいものだ。 「日本の場合、JRも私鉄も民間企業であるから、多額の寄付金でもない限り資金力には限界がある」、「イタリア鉄道財団では、財団創立メンバーであるイタリア鉄道FS、旅客運行子会社トレニタリア(Trenitalia)、インフラ子会社RFIの3社からの寄付金のほか、国や地方自治体、欧州連合などの公的機関からの寄付金、民間からの寄付金、動産および不動産の売買による収益、財団の資産から生じる年金などの配当金による収益、保有する株式による収益などがある」、なるほど。 「これらの歴史的名車が、再び本線上を疾走する日が一日も早く訪れることを願ってやまない」、その通りだ。「2015年からは政府の文化遺産観光省が協賛パートナーとして名を連ねている。古い車両のほか、歴史的価値のある駅や信号所などの建築物、廃線となった風光明媚なローカル線など、鉄道関連施設や路線そのものを文化遺産と位置付け、国がこれらの保存に全面的なバックアップを約束しているのだから心強い」、日本もインバウンド促進策にもなり得るとして政府の支援策拡大も検討してよいように思う。 北村 幸太郎氏による「赤字ローカル線の惨状、本当に「人口減」が原因か 沿線人口は微増だが利用者数が減った例も」 「小海線」の場合、人口増加が仮に別荘族によるものであれば、鉄道を利用しないのもやむを得ない。 JR東日本でも具体策を真剣に検討しても、有効な打開策が出てこないのであれば、簡単な話ではないのだろう。 確かにこれらの運転間隔では利用促進を呼びかけるのはとうてい無理だ。 「残すべき路線と残すべきでない路線の適切な線引き」と簡単に言うが、実際には極めて難しい難問である。ただ、何らかの基準でメリハリをつけて「存廃論議」を進めるべきだろう。
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自動車(一般)(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は)である。

先ずは、昨年3月23日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/03/post-1265_1.php
・『<日本型の「高付加価値部門の空洞化」に、クリーンエネルギーへの転換の遅れが追い討ちをかければ、自動車産業は風前の灯火に> アメリカの消費者は厳しいインフレに直面していますが、何よりも価格の上昇率が高いのは中古車です。つい先週、11年落ちで19万キロ走った小型SUVを「もらい事故」で廃車にした人の話では、車両保険で1万1000ドル(132万円)の保険金が出たそうです。中古としての市場価値からすると、そんな金額になるのです。 実際に中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。
・『日本の半導体産業が復興?  ここからが本論ですが、「自動車用の半導体」でそんなに日本が強いのなら、そして供給不足で世界中が困っているのなら、強気の価格交渉をして日本の半導体産業を20世紀のように再び強くすることができそうにも思えます。ですが、その可能性はありません。 日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています。ですが、ここまで市場占有率が高く、需要と供給のバランスが崩れているのなら、思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。) そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです。 しかも、トヨタをはじめ、多くの日本の最終組み立てメーカーは、国内販売比率が10%前後まで低下しています。そして、海外で販売する部分は、そのほとんどが現地生産になっています。さらに言えば、研究開発、デザイン、マーケティングなど主要な高付加価値部門も海外に出している企業が多くなっています。つまり、日本のGDPに寄与しているのは、日本国内の部品や素材メーカーが価格を叩かれて、薄い利幅にあえぎながら生産している部分が中心ということになります。 つまり、人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいると言えます』、「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。
・『見通せないエネルギー政策  これに追い討ちをかけそうなのが、エネルギー問題です。今回の電力逼迫が示しているように、もう日本の世論は原子力発電については、部分的であれ期限を限ったものであれ本格稼働を許容することはなさそうです。そうなると、トヨタの豊田章男社長が警告しているように、やがて「化石燃料まみれの電源」を使って作ったクルマは世界では売れなくなり、自動車産業は完全に日本から出ていく可能性もあるといいます。エネルギー政策に答えがなければ、やがて製鉄も国内では不可能になるでしょう。 産業自体が、EV(電気自動車)化や、AV(自動運転車)化へと大きな改革を進める中で、日本の自動車産業は本来であればそこで挽回を図らなければならないはずです。その日本の自動車産業が、空洞化とエネルギー問題で、崖っぷちまで追い詰められているというのは、大変に厳しい状況と思います。 日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります』、「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。

次に、4月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したノンフィクション作家の野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68210
・『トヨタ自動車の河合満さんは中学卒業後、トヨタ技能者養成所(現トヨタ工業学園)を経て入社し、現場出身者初の副社長になった。なぜ河合さんはそこまで出世できたのか。なぜトヨタは学歴や門閥を重んじない会社になったのか。『図解 トヨタがやらない仕事、やる仕事』(プレジデント社)を上梓した野地秩嘉さんが解説する――』、興味深そうだ。
・『トヨタに学歴や門閥は関係ない  普通の企業では学歴や門閥を重んじる。一流大学を出ていたり、欧米大学のビジネススクールを出てMBAを持っていたりすると確実に得をする。また、企業トップ、医師、弁護士、有名人の子女が入社するとエリート部署に配属される。エリート部署とは経歴に傷がつかないセクションだ。企画室、秘書室、海外との窓口みたいなところだ。炎天下、靴をすり減らして飛び込み営業するような部署にはまず行かない。 ただし、良家の子女であっても「どぶ板営業をやらせてください」という骨のあるビジネスパーソンもいる。そういう人は必ず大成する。 話は戻る。 トヨタは学歴や門閥を重んじない。社内には一流大学を出た人もいればMBAを持っている人もいる。企業トップや有名人の子息もいる。だが、高学歴だからといって得をすることはない。有名人の子どもだからといって特別な配慮があるわけではない。豊田章男新会長はトヨタに入社してから、現場でしごかれた。社長の息子だからといって得をする会社ではない。 一方で、大学や普通高校を出ていなくとも役員になり、会社を引っ張る役職に就くことができるのがトヨタだ。f その典型が「おやじ」兼エグゼクティブフェローの河合満である』、なるほど。
・『ちゃんと叱ってくれ、一緒に謝ってくれる存在  彼は75歳だ。中学を出た1963年、トヨタ技能者養成所(現・トヨタ工業学園)に入所。トヨタに入って60年になる。肩書は「おやじ」。「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること。わたしは河合さんが豊田新会長とふたりで本社に隣接している工場にやってきて、若い作業者と話をしていた姿を見たことがある。 おやじについては豊田新会長が、こんな説明をしている。 「トヨタには、かつて、仲間から『おやじ』と呼ばれる人がたくさんいたと思います。 張相談役(富士夫、当時)は、大野耐一さんのことを親しみを込めて『おやじ』と呼ばれていますし、私にとっては張相談役、成瀬(弘、前マスタードライバー)さんらが『おやじ』と呼べる存在です。 もちろん、豊田(章一郎)名誉会長は本当の『おやじ』ですが(笑) 『おやじ』『おふくろ』という言葉に、『包容力』を感じるのは私だけでしょうか。 間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」(トヨタイムズ 2020.6.17)』、「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。
・『現場出身者として初の副社長に  河合さんが副社長、そして、おやじになることができたのは、全体を見ることのできる人だったからだ。そして、彼は誰よりも勉強熱心だった。河合さんの職場は鍛造工場だ。鉄を叩いて成型する、うるさくて、暑くて、危ない職場だ。そこで河合さんは職場のカイゼンに励んだ。 少しでも仕事がしやすいよう鍛造機械を改良した。暑さを防ぐために自らミスト扇風機を設計して配置した。カイゼンすれば職場環境が良くなるし、対番(2交代の時の同僚)が喜んでくれるからだ。 河合さんは対番のこと、職場全体を考える人だった。そうしているうちに上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ。 河合さんが副社長、おやじになることができたのはトヨタが多様性を重んじるからだ。意見が違うからといって排斥されることはない。国籍もジェンダーも何も関係ない。 ただし、仕事においては原則がある。それは現地現物を大切にすることだ。つねに現場で考え、現場では複雑な工作機械は使わない。 それはリーマンショックの後、赤字になった反省から来ている』、「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。
・『トヨタが大切にする言葉はなぜ「幼稚」なのか  河合さんはこんな説明をする。 「リーマン(ショック)前には世界中で毎年50万台ずつ増産していき、ラインをどんどん作っていたが、それが設備余剰になってしまった。知恵や工夫、技術を入れない設備をどんどん並べてしまった。まさしく無駄なラインを作った結果だ」 「設備が複雑となり、コストが高くなった。故障しても現場で直せない。生産性は落ちていった」 「人がとことんこだわって手作業でラインを作り込み、改善の積み上げで作業を簡単にしていく。誰がやっても同じ作業となるようにしたうえで、自働化するのが基本だ。そうすることで、シンプル、スリム、フレキシブルなラインになる」(東洋経済オンライン「工場一筋トヨタ副社長が語る車づくりの真髄」2017.10.13) トヨタの現場は複雑な工作機械を使わない。そして、難解な経営用語もまた使わない。 豊田新会長が使ってきたのは「もっといいクルマ」「町いちばん」「自分以外の誰かのために」という3つの単純な言葉だ。 ただ……。評論家やマスコミからの評判はよくない。 「幼稚だ」「意味がわからない」 さんざんなことを言われてきた。 「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う』、「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。
・『本業と関係ないフェイスシールドを作った思い  河合さんはこんなことをしゃべっている。「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」。対番のためにカイゼンを施した河合さんらしい話だ。 「社会貢献については、アメリカで3D(プリンター)を使って、フェイスシールドをつくり出し、欧州・日本の各所に横展(横展開)をして、昨日までで10万(個)以上を医療の方々に送り届けております。 工場ではマスクも自前で作り、近隣の方々にも提供しようとしています。 ちょうど(トヨタの)運動部が(活動を)自粛している最中なので、選手たちもマスク作りをしてくれています。 そこには当然、トヨタ生産方式があり徹底的にムダを排除して、“1枚でも多く”ということで(やっていますので)(TPSの)良い勉強の場となっております。 休校中の小学校・中学校・幼稚園・保育園に出向いて、草刈りや地域貢献をやったりもしてくれていました」(トヨタイムズ 2020.6.17) マスクを配ること、校庭の草刈りをすること。やらないよりもやったほうがいいに決まっている。小さな貢献かもしれないが、確実に喜ぶ人がいる。 トヨタは人事において多様性を大切にしてきた。そして、佐藤恒治新社長になってからはさらにその原則を推し進めている。以下は佐藤新社長の発言だ』、「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。
・『河合おやじがその身をもって示している  「『多様性』『成長』『貢献』の3つを柱に、人事制度や仕組みの見直しを進めたいと思います。トヨタで働く一人ひとりが、『多様』な個性を力に変えて、挑戦と失敗を繰り返す中で『成長』を実感できる。(中略) まず『多様性』です。 トヨタで働く皆さんが、自分らしい人生を歩むための多様な選択肢をつくってまいります。 そのひとつとして、年内に、製造現場も含めたあらゆる現場で、誰もが気兼ねなく、パートナー育休を取得できる環境を整えます。また、今年の10月からは、社内公募制を本格導入し、2024年4月からは、社内FA制度を新設いたします」(トヨタイムズ 2023.3.15) 河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』、「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。

第三に、6月11日付け東洋経済オンラインがしたしたみずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員・中央大学兼任教員・上海工程技術大学客員教授の湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」を紹介しよう。
・『中国の新興BEV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(Xpeng)は2023年5月23日、新型BEV「G6」をラインオフした。 価格約440万元程度の同モデルは、同社の次世代技術アーキテクチャ「SEPA 2.0扶揺」をベースにした戦略SUVモデルであり、航続距離755kmを実現。800ボルトの急速充電システム、高度運転支援システムXNGP(Xpeng Navigation Guided Pilot)を搭載し、アメリカのテスラ「モデルY」と競合しようとしている。 特筆すべきは、G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ。 今後、ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない。こうした技術や設備の革新が、日系のプレス・ダイカストメーカーに衝撃を与えると予測され、また業界のサプライチェーンを大きく変える可能性もある。一体成型技術の行方は、より一層注目されるだろう』、「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。
・『テスラ「アンボックストプロセス」のインパクト  小鵬汽車より大胆な革新を提起したのは、テスラだ。 同社は、車両コスト全体の1割超を占めるボディ(モノコックボディ)のコストダウンを通じて、競争力の向上を図っており、2019年からギガプレスによるアンダーボディ製造を進めている。 テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ。 テスラは一体成型を採用したことにより、製造原価の大幅な削減や収益の向上を実現した。2022年の粗利益率は25.9%に達してトヨタ自動車を超え、車両1台当たりの収益率でもトヨタ自動車を大幅に上回った。 テスラは今、車載バッテリーを原価の高いパナソニック、CATL、LGEから調達しているため、バッテリー以外の部品コストのさらなる低減をすることに注力し、製造工程のイノベーションにより次世代EV工場の実現へ手を打とうとしている。) また、テスラは、2023年3月に投資家向け説明会を開催し、同社5カ所目の生産拠点となるメキシコ工場に新生産方式を導入する方針を示した。高価なレアアースを使用しないモーターの開発やワイヤーハーネスの改良、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体などにも取り組み、大衆向けEV開発を急いでいるという。 製造工程についても、新しい方式が発表された。従来の自動車工場では、プレス加工で作られた車体が塗装されたあとに、一度ドアが取り外され、パワートレインや内装品を実装してから、再びドアを取り付ける形で製造されている。 今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる』、「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。
・『BYD他、中国企業もギガプレスに参入  近年、テスラは機動的に車両の値付けを変動させている。これができたのは、イノベーションを通じて、生産コスト・効率を高めたことによる車両価格のダウンや、スケールメリットが実現したからだ。 テスラの生産性を見据えて、小鵬汽車を含む新興勢のNIO、理想汽車は一体成型ラインを建設し、中国国有自動車大手の長安汽車、BEV大手のBYDもギガプレス機の導入を計画している。これを受け、大型プレス機最大手の中国・力勁(LK)集団 は、2022年に1万2000トンのギガプレス機を投入し、2万トン級の開発にも着手している。 同社は2008年にイタリア・IDRAを買収してグローバル展開を加速しており、2020年にはカリフォルニア州フリーモントのテスラ工場(モデルY生産)に装置を供給しはじめた。この装置で生産したアンダーボディは17%の軽量化、1.8倍のねじり剛性アップを実現したと発表している。 また、スイス・ビューラーや中国・海天集団も、自動車メーカーに6000トンのギガプレス機を供給。中国車体部品大手の文燦集団、アルミ鋳造大手の広東鴻図科技、ジャーシ大手の拓普集団、金型メーカーの賽維達(Sciveda)がギガプレス機を導入し、一体成型した部品や大型金型を自動車メーカーに納入している。) 鉄、銅、チタン、マグネシウムなどさまざまな合金が使用されている鋳造工程で、テスラのギガプレスはアルミ合金を使用しており、アメリカとドイツの工場ではイタリア・IDRA製、中国工場ではLK集団製の大型ギガプレス機により、フロント・リア部のアンダーボディ生産を実現した。 一方、巨額な設備投資、サイクルタイムの長さ、変形・伸びを含む機械的特性の悪さ、異材接合の難しさなどが、ギガプレスのネックとなっている。 また、押し出し材の使用量が多くなり、BEVの軽量化に繋がらない可能性もある。さらに、事故を起こした場合に修理ができない大型アルミダイカストの品質維持などの課題も、クリアする必要もあるだろう。 現在、中国では機械的に締結する接合方法として採用されているフロードリルスクリュー(FDS:Flow Drilling Screw)は、技術的難易度が下がりつつあるが、シーラーやメディアを採用したことより、製品のウェイトは上がる傾向だ。 大手プレスメーカーは、「難易度の低い機械締結を普及させたうえで、本格的な異材接合技術のイノベーションが起きれば、ウェイト問題が解決する」という。 テスラが提唱したホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)とアルミの締結は、一見してFDSに類似しているものの、溶接融合や固相接合などの製造工程、マルチマテリアルに対応した異材接合技術が求められる。 現在、地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される』、「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。
・『日本プレスメーカーの事業戦略は?  テスラや中国メーカーが積極的に一体成型技術の開発に取り組んでいる一方、日本の自動車メーカーは導入が遅れている。 また、ギガプレスを採用するホットスタンプ事業は設備投資が大きいため、既存設備を抱える日系プレスメーカーは、日本自動車メーカーから新製法を採用する部品の受注を確保できなければ、テスラを含む一体化成型を採用するBEVメーカーへの対応は難しいだろう。) 日系プレスメーカーはこれから、どのような対策を取っていけばいいのだろうか。 短期的には、アンダーボディ向けの中小型ダイキャスト部品を中心に、一体成型の需要は増加し、車体の一部はアルミと鉄のハイブリッド構造(異材接合)とすることでコストダウンを図れるだろう。 そうした異材接合技術の改善が行われ、高強度部材を鉄などに置き換えれば、それなりのコスト競争力を維持する可能性も考えられる。 ただし、そのためには日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる。 中長期的に見ると、中国地場プレスメーカーの成長や技術・設備の進化にともなって、コストダウンが実現できれば、一体成型が業界主流になっていくと予測される。こうした技術変化を見据えて、プレスメーカーは技術路線を再検討する必要があるだろう。 実際、日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している。日本大手化学・成型機械メーカーのUBEは、一度に成型できるアルミ部品製造装置を開発した』、「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。
・『手をこまぬいている時間は、もうない  自動車メーカーがギガプレスを導入すると、系列部品メーカーからの部品調達が減ってしまうというトレードオフがあるが、一体成型化が進むのは間違いない。 中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう。 そうなれば、ガソリン車ブランドが独占している大衆車市場を、BEVが塗り替えることになると予測される。日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ』、「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。
(注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
タグ:Newsweek日本版 「「選択と集中」とか「パーパス経営」とか言っておけば評論家やマスコミは「さすが」と感心する。それは重々、承知のうえで、豊田新会長や河合さんはユーザーや世間が理解しやすい言葉を使う」、さすがだ。 「上司が河合さんを管理職に引き上げ、工場の責任者にした。そして彼は現場出身者として初めての副社長になり、おやじになった。トヨタ以外の会社ではまずありえない。学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」、確かに「学歴も門閥もないトヨタだからこその人事だ」。 「日系プレスメーカーが、レーザーや一般溶接による異材接合で、腐食やサビなどの課題をクリアする必要がある。また、アルミのコスト高を勘案すれば、押し出し成型に代替できる熱間・冷間プレスや鍛造などの技術・工法も求められる」、「日本の自動車メーカーが、プレス成型で車体のコストダウンを実現する中で、多くのプレスメーカーも高張力鋼板技術を生かし、協力メーカーとして競争力を維持している」、なるほど。 「地場自動車メーカーはプレスメーカーや金型メーカーと提携しながら、ラインの内製に取り組んでいる。今後は技術の成熟度やコストダウンを勘案すれば、自動車メーカーが一体化成形部品を大手専業プレスメーカーに委託生産すると予測される」、なるほど。 「今回、テスラが発表した「アンボックストプロセス」とは、BEVを前部・後部・底部・ドア・フロントフードなどのブロックに分け、それぞれを組み立てる生産方式である。すなわち、内装品やタイヤなどもブロックごとに生産することで製造コストを低減させることができ、コンパクトな工場により生産効率を高めることもできる」、日本企業もうかうかしていられないようだ。 「テスラが導入するギガプレス装置は、型締め力6000トン級で、車両のリア部分を構成する多くの部品を1つの部品に置き換えることで、製造コストを4割削減できるという。 「モデル3」の場合、171個あった金属部品を2個の大型アルミ部品に置き換え、約1600回必要であった溶接工程や関連設備も不要となったというから、驚きだ」、 「G6がテスラと同様に、超大型アルミダイカスト技術「ギガプレス」を採用し、車両前・後部の一体成型を実現していること。中国メーカーでのギガプレスの採用は、これが初だ」、「ギガプレスによる部品の成型技術が進化すれば、ボディを丸ごと成型できるようになるかもしれない」、確かに「ギガプレス」は画期的技術だ。 「「おやじ」とは居酒屋で酒を飲んで、くだをまく、「オヤジ」のことではない。同社の正式な肩書である。 おやじの仕事は生産現場に目を光らせること」、「間違ったことをすれば、ちゃんと叱ってくれる。迷惑をかけた時には、一緒に謝ってくれる。口数は少なくても、いつも見守っていてくれる。職場にも、そんな『おやじ』や『おふくろ』が増えるといいな、と思っています」、なるほど。 野地 秩嘉氏による「高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ」 PRESIDENT ONLINE 「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、同感である。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです」、「日本の部品産業」の悲しい宿命だ。 「日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています」、「思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 「中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません」、「売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになる」、「それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです」、極端な「売り手市場」になっているようだ。 冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」 湯 進氏による「ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は」 東洋経済オンライン 「河合さんは今も自分が育った鍛造セクションの仕事部屋にいる。そこから現場までは50メートルも離れていない。何があってもすぐに駆けつけることができる。 河合おやじがいるかぎり、トヨタは多様性と自由を重んじている。そして、偉そうな経営用語ではなく、わかりやすい言葉で経営を語る』」、「河合さん」は「トヨタ」に不可欠の存在のようだ。 「『自分以外の誰かのために』が社会貢献だ」、言い得て妙だ。 (その6)(半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、高校に行かなくても副社長になれる…トヨタ自動車が学歴や門閥を重んじない会社になったワケ むかしから多様性と自由を重んじているからこそ、ボディ丸ごと成型「ギガプレス」で日本車ピンチ 日本の「お家芸」鋼板プレスメーカーの選択は) 自動車(一般) 「中国メーカーが大型アルミダイカスト装置を本格導入し、ギガプレスの適用範囲がボディ製造まで広がっていけば、コストパフォーマンスに優れたBEV(注)が続々と投入されるだろう」、「日本の自動車メーカーやプレスメーカーが手をこまぬいている時間は一層なくなり、難しい選択を迫られることになるはずだ」、大変だ。 (注)BEV:Battery Electric Vehicle、一般にはEV(新電源))
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携帯・スマホ(その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年4月27日に取上げた。今日は、(その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」)である。

先ずは、本年5月19日付け東洋経済オンライン「楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673675
・『不退転の決意は、はたして実を結ぶのか。 モバイル事業に巨額の投資を続ける楽天グループ。同社は5月16日、公募増資と第三者割当増資により最大3300億円の資金を調達し、モバイル事業への投資や社債の償還に振り向けると発表した。 新たに発行する株式は最大5億4690万株で、同社の発行済み株式総数の34%に相当する。うち9割弱は国内外の一般投資家向けに発行し、残りの1割強を三木谷浩史会長兼社長の親族の資産管理会社2社のほか、サイバーエージェントと東急に割り当てる。 増資によって調達する資金のうち、6割弱をモバイル事業の設備投資に、残りを社債償還などに充てる方針だという。 公募増資を検討している旨の報道が流れた5月15日以降、株式の大幅な希薄化に対する懸念から、投資家の間では楽天グループ株の売りが殺到。報道前と比べ、足元の株価は2割近く下落している。 こうした事態は当然、楽天側も織り込み済みだっただろう。だが、リスクを負ってでも、楽天は資金調達する必要に迫られていた』、「最大3300億円の資金を調達」というのでは、「株式の大幅な希薄化に対する懸念」から、「株価は2割近く下落」したようだ。
・『決算短信には従来目標を撤回する一文  2020年にサービスを本格的に始動した楽天モバイルの大赤字が続く中、楽天グループの自己資本比率は3.8%(2023年3月末時点)と危険水域に到達。さらには今後3年で約9000億円の社債償還が控えている。 (償還時期の近い楽天グループの社債一覧はリンク先参照) 手元資金を確保すべく、4月に楽天銀行を上場させて717億円を調達したほか、楽天証券ホールディングスの上場も計画している。5月12日には、20%を出資する西友ホールディングスの株式をすべて売却することを発表した。 ここに来て、あの手この手で資金調達に奔走する楽天。その最大の誤算は、モバイル事業の契約数の伸び悩みにある。 「計画の見直しを行った結果、モバイル事業単体での2023年中の単月営業黒字化は困難だと考えている」 5月12日に開示された2023年第1四半期の決算短信。「連結業績予想に関する定性的情報」の項目には、こんな一文がひっそりと載せられている。 これまで三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げ、2月時点でも「年内に頑張って目指したい」と公言していた。ところが年度が始まって早々、その目標を断念した格好だ。) 2023年第1四半期決算で、モバイル事業は1026億円の営業赤字(前年同期は1323億円の営業赤字)を計上した。楽天グループ全体でも761億円の営業赤字となっており、本業のECと金融が稼いだ利益を食い潰している』、「モバイル事業の契約数の伸び悩み」、「黒字化」の「目標を断念」とは深刻だ。
・『楽天グループの決算短信  楽天モバイルの契約回線数(MVNOを除くMNO)は、3月末時点で454万。四半期ベースでは1年前から減少が続いていたが、2022年12月末時点(446万)と比べると、わずかながら増加へと転じた。 ただ、事業単体での営業黒字化には最低でも1000万以上の回線数が必要との見方が多い。足元の回復度合いでは、2023年中に黒字化することは到底無理だと判断したもようだ。 それでも三木谷氏は強気な姿勢を崩していない。5月12日の決算説明会では、「将来的にはナンバーワン携帯キャリアになる」と豪語した。 株価を犠牲にしてでも、巨額の資金調達に踏み切る決断をしたのは、モバイル事業から撤退しない意思の表明とも受け取れる』、「契約回線数」はかろじて下げ止まったが、「事業単体での営業黒字化には」程遠いようだ。
・『KDDIとの新たな契約で方針転換  モバイル事業をめぐる楽天の方針転換は、黒字化計画の後ろ倒しだけではない。通信網の整備についても、従来の「自前主義」を見直す方向へと舵を切った。 5月11日、楽天はKDDIとの間で、自社回線でカバーできていないエリアでKDDIの回線を利用できる「ローミング」契約を新たに締結したと発表した。2023年6月から2026年9月まで、これまでローミングの対象ではなかった東京23区や大阪市といった都市部繁華街や地下空間などにおいて、KDDIの回線を使えるようになるという。 楽天モバイルがKDDIのローミングを使い始めたのは、2019年10月。契約期間は2026年3月末までとし、KDDIに使用料を支払う代わりに、サービス参入当初から全国で顧客へのデータ提供を行えるようにした。 ただ、当時の契約の約款から推計すると、KDDIのローミングが使われた場合、ユーザーの利用料金が仕入れ値を数百円ずつ割り込む「逆ザヤ」が起きていたとみられる。そのためローミングエリア内では、月5GB(ギガバイト)以上は速度制限がかかるプランとなっていた。 こうした事情から、楽天は自前の通信網をできるだけ早く整備するべく、基地局の設置を急ピッチで推進。とくに都市部など人口密集地帯から自社回線のみでカバーするエリアを広げて、KDDIのローミング地域を段階的に減らしてきた。 今回締結した新たなローミング契約の詳細な条件は明かされていない。ただ、楽天はローミング費用については当初計画に対して「若干の増加」としており、以前より単価は下がった可能性が高い。 楽天としては、当面KDDIの助けを借りることで、基地局の整備スケジュールを見直して資金難の急場をしのぐ狙いだ。新たな契約により、2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む。 背に腹は代えられない楽天がすがったように映る今回の契約だが、実はKDDIにとってもメリットは大きい。ある通信業界関係者は「KDDIは2023年度に楽天からのローミング収入が前期比で600億円減少する見込みで、この埋め合わせは容易ではない。KDDIから楽天に話を持ちかけた可能性もある」と推測する。 楽天の自社回線による人口カバー率(通常速度でデータを無制限で使えるエリア)は、2023年4月末時点で98.4%。それが新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる。 新契約の下、楽天モバイルは6月1日から新プラン「最強プラン」を投入する。料金は従来の980~2980円(税抜き)のまま、楽天回線もKDDI回線も使い放題にするという』、「KDDIのローミング」の再拡大で、「2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む」、「楽天の自社回線による人口カバー率は・・・新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる」、なるほど。
・『最強プランでどこまで契約を伸ばせるか  今後の焦点は、新プランを契機として楽天モバイルの契約回線数が伸びるかどうかだ。 月々2980円で良質な通信が全国で使い放題となれば、大手キャリアが展開するプランの中では最安値圏と言える。楽天経済圏のサービス利用が多いユーザーなどが、一定数流入する可能性はあるだろう。 ただ、KDDIのローミングを使えるようになったとはいえ、ローミングがカバーするエリアは都市部など一部にとどまる。契約獲得や解約抑止に当たって障壁となってきた通信品質の問題では、イメージ改善へのハードルは依然として高い。 通信品質という点で、楽天と大手3キャリアとの最大の違いは、障害物を避けてつながりやすい700~900MHz(メガヘルツ)の周波数帯「プラチナバンド」の有無だ。楽天モバイルのみがプラチナバンドを割り当てられていない。 楽天は総務省に対して長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある。増資や投資計画の見直しで一息つく暇もなく、今後も綱渡りの経営は続きそうだ』、「長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある」、「プラチナバンドの割り当て」が当面の注目点だ。

次に、5月25日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69905
・『楽天銀行を上場させて資金調達をしたばかり  楽天グループが「金食い虫」と化したモバイル事業に悪戦苦闘を迫られている。5月16日には公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達すると発表。調達資金はモバイル事業の設備投資と社債償還に当てるとしている。 増資で新たに発行する株式は最大5億4690万株に達する。増資前の発行済株式総数の34%に相当する株式が増えることになるため、報道が流れた直後から株式価値の希薄化を懸念した売りに押されて株価は大きく下げた。市場全体は海外投資家の買いで活況を呈し、株価が大幅に上昇したのとは対照的だった。 5月17日に日経平均株価は3万円を突破、その後も上昇し続けて22日には33年ぶりに3万1000円台に乗せた。そんな中で楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが、つい1カ月前にも市場を使った資金調達をしたばかりだった。子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達した。これも携帯電話の基地局整備などに当てられる』、「つい1カ月前にも」、「子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達」、今回は「公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達」、「投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている」、その通りだ。
・『携帯事業は1026億円の赤字  こうして調達を繰り返している資金も、砂漠に水を撒くように消えていく。2023年12月期は3000億円の設備投資を予定しているほか、今後3年間で9000億円の社債償還が控える。それだけではない。さらに毎年巨額の赤字を計上しているからだ。 楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない。 5月12日に発表した2023年第1四半期(1~3月)も825億円の赤字だった。携帯事業の契約者数が454万件と前年同期の492万件から大きく減った。データ使用量1ギガバイトまで料金を「0円」とするプランを廃止した影響で解約が増えた。携帯事業は1026億円の赤字を出している。 なぜ、楽天が携帯事業でこんなに苦戦を強いられているのか。もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ。ソフトバンクが携帯事業に参入する際は旧ボーダフォンを買収したにもかかわらず、それでも苦汁を舐める時期が続いた。楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ』、「楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない」、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ」、なるほど。
・『楽天銀行を上場させて資金調達をしたばかり  楽天グループが「金食い虫」と化したモバイル事業に悪戦苦闘を迫られている。5月16日には公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達すると発表。調達資金はモバイル事業の設備投資と社債償還に当てるとしている。 増資で新たに発行する株式は最大5億4690万株に達する。増資前の発行済株式総数の34%に相当する株式が増えることになるため、報道が流れた直後から株式価値の希薄化を懸念した売りに押されて株価は大きく下げた。市場全体は海外投資家の買いで活況を呈し、株価が大幅に上昇したのとは対照的だった。 5月17日に日経平均株価は3万円を突破、その後も上昇し続けて22日には33年ぶりに3万1000円台に乗せた。そんな中で楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが、つい1カ月前にも市場を使った資金調達をしたばかりだった。子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達した。これも携帯電話の基地局整備などに当てられる』、「楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが・・・」、なるほど。
・『携帯事業は1026億円の赤字  こうして調達を繰り返している資金も、砂漠に水を撒くように消えていく。2023年12月期は3000億円の設備投資を予定しているほか、今後3年間で9000億円の社債償還が控える。それだけではない。さらに毎年巨額の赤字を計上しているからだ。 楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない。 5月12日に発表した2023年第1四半期(1~3月)も825億円の赤字だった。携帯事業の契約者数が454万件と前年同期の492万件から大きく減った。データ使用量1ギガバイトまで料金を「0円」とするプランを廃止した影響で解約が増えた。携帯事業は1026億円の赤字を出している。 なぜ、楽天が携帯事業でこんなに苦戦を強いられているのか。もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ。ソフトバンクが携帯事業に参入する際は旧ボーダフォンを買収したにもかかわらず、それでも苦汁を舐める時期が続いた。楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ』、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ・・・楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ」、なるほど。
・『「Rakuten最強プラン」が起死回生の一打になるか  ネット上では、楽天は携帯事業から撤退するのではないかとか、他のキャリアと統合するのではないかと言った見方も出ている。だが、万が一、そんなことになれば、菅首相の介入が新規参入を疎外し、競争を排除したことになってしまう。結局、既得権を持つ3社が有利になるということだろう。それを菅首相が意図していたとは思わないが、政府が価格をコントロールしようとして介入すれば、市場競争は大きく歪むことになるのは現実だろう。 楽天自身は、今回の公募増資の発表資料の中で、Eコマースやトラベル、金融決済などの同社のサービスを展開していく中で、「モバイル端末が最も重要なユーザーとのタッチポイントであることに疑いの余地はなく」重要だとし、携帯事業を死守し続けていく覚悟を示している。三木谷浩史会長兼社長が描く、全体の事業構造に携帯事業は不可欠だということだろう。 つながりにくいと批判される楽天モバイルの通信環境を改善する切り札としてauを運用するKDDIとの間で、自社でカバーできていないエリアでの「ローミング」契約を新たに締結した。また、6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入する。これが起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場だろう』、「6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入」、「起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場」、その通りだ。
・『「官製値下げ」は国民の利益に繋がるのか  政治家の介入による「官製値下げ」は国民受けが良いこともあって、繰り返されがちだ。6月からの電気料金の値上げに対しても河野太郎大臣と消費者庁が苦言を呈したことで、値上げ幅が圧縮された。電力料金も新規参入を促し競争状態を作ることで価格引き下げを進めていたはずが、いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える。岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ』、「いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える」、「岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ」、その通りだ。

第三に、5月30日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/05/post-236_1.php
・『<かつては極めて良好な財務体質を誇り、市場の期待も高かった楽天だが、「最後の軍資金」で立ち直れるかどうかの瀬戸際に立たされている> 楽天が約3000億円の公募増資に踏み切った。同社は携帯電話事業の不振で4期連続の最終赤字を計上しており、財務が急激に悪化している。資金を捻出するため楽天銀行を上場させたものの、親子上場に当たることから、市場の評判はすこぶる良くない。 今回の増資でも携帯電話事業が軌道に乗らなかった場合、同社は重大な決断を迫られることになるだろう。 楽天は、日本のネット企業の雄と言われ、2000年に上場(店頭公開)を果たした際には、当時としては過去最高額の資金を調達している。財務体質も極めて良好で、上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった。 ネットバブルの崩壊によって株価は一時、下落したものの、その後は順調に時価総額を増やし、15年には株価が2400円目前まで上昇。豊富な資金を背景に次々と諸外国のネット企業を買収し、市場の期待は高まったが、ここが成長のピークとなった。 相次ぐ買収がうまく収益に結び付かず、17年12月、同社は携帯電話事業への参入を決断した。これまで同社にはネット企業として高い成長期待が寄せられていたが、携帯電話は巨額の設備投資を必要とする典型的なオールド・ビジネスである。 日本の携帯電話市場は人口減少から縮小が予想されており、しかもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社による寡占状態が続く。経営学的に見て新規参入が困難であることは明らかだ』、「楽天グループ」の株価は足元552円と、ピークの「2400円目前」の約1/4となった。「上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった」、22年12月期は3.98%だ。
・『社員の50億円横領事件も  同社トップの三木谷浩史氏は、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)出身で、ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得した人物であり、この状況を理解できないはずがない。それにもかかわらず携帯電話事業への参入を決めたことから、市場関係者は「楽天はよほど追い込まれている」と判断せざるを得なかった。 実際、携帯電話事業は先行投資ばかりがかさみ、軌道に乗っていない。他事業の黒字を携帯電話事業が食いつぶす状況が続く。基地局の設置を急ぐあまり社内管理体制も追い付いておらず、グループ会社の社員が50億円もの金額を横領するという刑事事件まで発生した。株価もピーク時と比較すると4分の1まで下落している。 日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド・サービスのいずれも実現していない。 直近の決算では、約20兆円の総資産に対して自己資本はわずか8700億円と4%程度にまで減少しており、財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない』、「社員の50億円横領事件」は「同社トップの三木谷浩史氏」の力量の限界を示している。「日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド・サービスのいずれも実現していない」、「財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない」、同感である。 
タグ:・サービスのいずれも実現していない」、「財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない」、同感である。 「社員の50億円横領事件」は「同社トップの三木谷浩史氏」の力量の限界を示している。「日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド 「楽天グループ」の株価は足元552円と、ピークの「2400円目前」の約1/4となった。「上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった」、22年12月期は3.98%だ。 加谷珪一氏による「「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」」 Newsweek日本版 「岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ」、その通りだ。 「いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える」、 磯山 友幸氏による「「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか」 PRESIDENT ONLINE 「長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある」、「プラチナバンドの割り当て」が当面の注目点だ。 「KDDIのローミング」の再拡大で、「2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む」、「楽天の自社回線による人口カバー率は・・・新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる」、なるほど。 「6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入」、「起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場」、その通りだ。 「契約回線数」はかろじて下げ止まったが、「事業単体での営業黒字化には」程遠いようだ。 「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ・・・楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ」、なるほど。 「楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが・・・」、なるほど。 「楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない」、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ」、なるほど。 「つい1カ月前にも」、「子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達」、今回は「公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達」、「投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている」、その通りだ。 「モバイル事業の契約数の伸び悩み」、「黒字化」の「目標を断念」とは深刻だ。 「最大3300億円の資金を調達」というのでは、「株式の大幅な希薄化に対する懸念」から、「株価は2割近く下落」したようだ。 東洋経済オンライン「楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも」 (その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」) 携帯・スマホ
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電気自動車(EV)(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」) [産業動向]

電気自動車(EV)については、昨年2月21日に取上げた。今日は、(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)である。

先ずは、本年2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/651556
・『1月24日、日本電産は2023年3月期第3四半期の決算説明会で、通期の営業利益を当初予想より1000億円少ない1100億円、最終利益を1050億円少ない600億円と、大幅に下方修正した。パソコンのハードディスク市場の急速な縮小や中国でのロックダウンによる影響などで市場環境が急速に悪化しているとして、第3四半期に128億円、第4四半期には500億円を投じて収益構造を改善するための改革に乗り出すという。 説明会で永守重信会長は、「前経営陣が外部から来て好き放題の経営をやって、大きな負の遺産を作って去っていった。そうしたいろいろなゴミをすべてきれいにしてしまおうということだ」と述べて、昨年9月に辞任へと追い込んだ関潤前社長に責任転嫁するかのような発言をした。 とても聞き捨てできるものではないが、こうした構造改革費用には、ほかにも看過できない事情があった』、「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。
・『誰も突っ込まなかった問題  出席したアナリストが構造改革に取り組む理由を重ねて尋ねたところ、永守氏はヨーロッパで起きた問題に前経営陣が「スピード感を持って対応せず、客先にも行かず、工場にも出向かなかったばかりか、さまざまな問題を処理せずに放置した」と述べた。 「日本電産の基本的な姿勢は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』で、それが強い行動指針になっている。(前経営陣のように)問題を半年も1年も放置すれば、どんなものでも腐って臭いが出てきて、誰も直すことができなくなる。それが今回の大きな損害を出した主因だ」 ただ、ヨーロッパで起きた問題の具体的な中身について、この日の説明会では十分な説明はなく、出席したアナリストや記者からも突っ込んだ質問がなかった。そのため、もやもやとした消化不良感ばかりが残った。 ヨーロッパで起きた問題とは何だったのか。筆者はその一端を示す日本電産の内部資料を入手した。) 資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPM社が起こした顧客とのトラブルについてのものだ。顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、2021年10月にジャガー社から賠償を求められたという。 GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が2015年2月に買収した。ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは2016年6月に生産を開始、2019年3月になって最初の市場不具合が報告された。 不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った』、「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。
・『「コスト感性をもっと磨け!」日本電産の稟議書  入手した資料の中には、ジャガー社からの求償に対し25億3300万円を上限に和解調停することに、取締役会の了解を求める稟議書も含まれている。決裁の日付は2022年6月22日。会長である永守氏の大きな決裁印が押され、「AMEC(=車載事業本部)のデタラメな先おくり対応が大問題である」、「天からお金はふってこない」と手書きで書き込まれた永守氏によるメモや「コスト感性をもっと磨け!」との赤字のスタンプが押され、永守氏が巨額の和解金を支払うことに強い不満を持っていたことがうかがえる。 なお、この決裁の後、直ちに和解に至ったが、この経緯を日本電産は詳しく説明していない。それはなぜか。こうしたトラブルを説明することによって過去の買収が失敗だったと批判される可能性があるからではないか。 日本電産がM&Aを繰り返すことで事業規模を大きくしてきたことはよく知られている。その数は2021年9月までで67社に上る。メディアでは「M&Aの名手」などと喧伝され、永守氏自身も日経BP社から出版した『永守流 経営とお金の原則』で、〈これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛するが、日本電産の元幹部は「M&Aで100%成功はウソ。少なくともドイツでの買収は完全に失敗している」と言い切る。 社内でも「ババを引いた」と言われるのが、このGPM社である。買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めたのである。数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収について2014年12月12日付日本経済新聞でこう述べていた。 「GPMは75年の歴史があり、多くの人が商品イメージを持ち、技術力を高く評価している。環境規制で最低でも世界の車の半分はアイドリングストップが搭載されるようになり、売り上げ、利益の成長が短期で期待できる」) なお、ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。 稟議書が決裁された昨年6月といえば、2年前に社長に就任したばかりの関氏が永守氏と衝突し、事実上、国内から追放される形でドイツに常駐して欧州の問題案件の処理に当たっていたころである。その3カ月後には社長を解任されてしまう』、「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。
・『関前社長「本件以外の“負の遺産”」  入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。 「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」 GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。 1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。 「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」 説明会の翌日にインターネットで公開された音声を聞いて私は驚いた。そして、説明会に参加したアナリストや記者からさらなる説明を求める質問が出なかったことが不思議で仕方がなかった。処理に数百億円もかかりかねない品質問題が起き、リコールになるおそれもあることを永守氏が自ら認めているというのに、それを追及しないとは。 筆者は以前に日本電産の子会社が顧客に無断で製品の仕様を変更していた問題を明らかにしたが(「仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題空調機器用モーター子会社に無理な収益要求」)、このときも日本電産は事実を明らかにしようとせず、他のメディアはこの問題をさして追及しようとはしなかった。 仕様の無断変更という重大問題はメーカーには説明しても公表されず、今回のGPMの問題もいっさい公に説明がない。こんなことを続けていれば、日本電産が信用を失うことになるのではないか』、「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。

次に、4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321435
・『EV化は製品ではなく産業構造のシフト 日本の出遅れに懸念  カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、世界的な“EVシフト”という大きなうねりが自動車業界に押し寄せている。「CASE革命」がありふれた言葉となったように、「コネクテッド」「自動運転」「カーシェアリングサービス」や、とりわけ「電動車」などでの技術革新が生き残りへのカギを握る。 だが、日本自動車産業全体のEV出遅れは、世界新車販売において明確な実績として反映されている。2022年のBEV世界販売は約726万台で21年に比べ7割増となったが、日本市場は軽自動車EVが注目されたものの全体で約5万8800台、乗用車に占める割合は1.7%にとどまっている。 その中にあって日本車を引っ張るトヨタ自動車は、佐藤恒治新社長へ体制を移行するとともに、4月7日に方針説明会を行ってEV戦略強化に拍車をかけることを明言にした。佐藤トヨタ新体制は全方位戦略を貫きつつ「EVファースト」を前面に掲げてきている。 この佐藤トヨタ新体制の方針発表に先立つ3月末には、EU委員会が35年以降も合成燃料e-fuelを使用するエンジン車を容認することを発表するなど、方針転換の動きも出てきた。元々「脱炭素は、EV一辺倒ではない」ことも確かだが、それでも、世界の趨勢はEVシフトにあることは間違いない。 志賀俊之・元日産COOは「日本車全体のEV施策の遅れによって、日本は世界から取り残されることになる」と危惧し真剣に警鐘を鳴らす。前回のインタビューに引き続き、改めて日産の最高執行責任者としての経営体験に加え、官民ファンドで日本のスタートアップ企業などを支援する今の立場で志賀氏に俯瞰した日本自動車産業の進むべき道を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:まずは、EVシフトに対して日本車の出遅れがよく指摘されています。CNの実現、脱炭素に向けてはいろいろな見方がありますが、世界では大きなうねりとしてEVシフトが進んでいる中で、志賀さんは日本の出遅れに警鐘を鳴らしていますね。) 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) 業界の将来に対して、いくつか心配しているところがあるんですが、一番心配しているのは日本の自動車産業の行方ですね。私は、日本自動車工業会の会長をやった時に東日本大震災も経験したんですが、そこで実感したのは日本の自動車産業の強みはOEM(自動車メーカー)だけでなく、部品産業のティア1、2、3、4とあらゆる部品企業によるものということでした。現在、スタートアップを支援している立場でティア2、3クラスの社長さんたちと議論する機会が多いんですが、彼らから「これからどうなっていくんですか?EVシフト・EV化は本当に起きるんですか?」と聞かれるのが実態なんですね。 Q:確かに、内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね。 志賀氏 そう、インフラ充電網が整備され、航続距離が上がりコストは下がって、EVの価値が認められるようになればお客様もEVが買えるようになるね、ということですが、EVシフトとは、製品のシフトというより産業のシフトということですから、産業転換が必要なんです。私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです。 Q:つまり、日本はエンジン部品を軸とした従来の自動車サプライチェーン(供給網)の産業構造転換を急ぐべきだと。 志賀氏 EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります。 Q:日本のモノづくりを管轄する経済産業省などはどう見てるんでしょうか。また、世界を見るとEVシフトで構造転換はどう動いているんですかね』、「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。
・『志賀氏 経産省も地方の経産局とも連動して「ミカタプロジェクト」なるもので動き出していますよ。部品企業はみんな迷っているんですから。海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です。 Q:それでは、日本の自動車産業はどうすればいいんですかね。 志賀氏 その意味では、自動車は日本の市場だけでは食っていけない。日本だけではガラパゴスになってしまう。世界のトレンド、マーケットの動向に対抗してやっていかねばならない。 OEMサイドはそれができちゃうんですが、部品系はどうなのか。35年には欧米でエンジン車が販売できなくなるが(欧州は合成燃料限定でエンジン車容認に転じた)、日本ではハイブリッド車も含めて電動車として容認されているから、エンジン車は残るとされる。だから20年先なら何もしなくていいよね、との考えにもなる。 国全体で35年、40年が見えているかどうかが分かりづらいのが問題なんです。日本のマーケットも縮んではいるが、年間約500万台販売しており35年にEVが4割、40年には8割となると、そこに向かって対応しなければならない、ということです。 Q:EVシフトとともに、この100年に一度の大変革におけるCASE関連で産業構造の転換を促すのがソフトウエアといわれています。EVと自動運転は親和性が高いし、つながるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。 志賀氏 そう、もう一つ日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています』、「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。
・『今のままでは日本は弱い。内燃機関関連が減っていく中で自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアからソフトウエアエンジニアを増やしていくなど、人的なシフトが求められている。あるいは最近はやりのリスキリングですかね(笑)。本当にこれを加速していかないと間に合わなくなる。これも大きな警鐘の一つですね。 Q:日本の自動車メーカーは乗用車8社にトラック4ブランドが生き残ってきた世界でもまれなケースですが、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況もあります。 志賀氏 EVのスタートアップは何社か出てきていますが、実は資金調達、投資が間に合わない。米国などはテスラの他にも新興メーカーのリヴィアンなどが出てきて、相当資金が流れています。日本は乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由でしょう。われわれのような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルが応援していますが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。 それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています(筆者注:日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社が統合した日立AstemoがEVシフトをにらんで工場投資をするのに、官民ファンドのJICキャピタルが出資して支援することが3月30日に発表されるなど、ファンドの動きも見られるようになっている)。 Q:日本のEV市場も中国BYDや韓国・現代自動車が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました。 志賀氏 軽EVは本当にようやくですね。私が日産COO最後の年の13年6月に三菱自動車工業と共同開発の軽デイズの発表を三菱の水島工場でやったんですが、その時に益子さん(故益子修三菱自工元社長)と「次は軽EVをやろうね」と言ってたのがちょうど10年かかったんですよ。それでも日本のEVは緒に就いたばかりです。 Q:豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります』、「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。
・『志賀氏 まあ、章男自工会会長ということだけではなく、各社が悩ましい時期に来ているんじゃないんですかね。かつて私が日産COOをやっていたころは経営オペレーションが明快でしたから。つまり、どうしたら成長できるか、もうけることができるかについて本当にシンプルな答え、法則があったんです。「いいものをより安く提供する」ということですね。9年間、日産のCOOとしてオペレーションを任され迷うことはなかったんです。 しかし、この100年に一度の大変革期における経営者は「全方位でやるのか、集中と選択でやるのか」、集中するなら「限られた経営資源でどこに集中するのか」ということに悩んでいるのでしょう。 世界を見渡すと、GMのメアリー・バーラCEOの戦略が明快ですね。「EVと自動運転」に集中するという明確な戦略です。経営者が方向性をはっきりさせて集中と選択を進める好例として受け止めています。 もちろん、経営資源が限られる中で行う集中と選択に対して、世界各地域に対応した全方位戦略も必要でしょう。だが、例えば「全方位といわれてもどこに行くんですか」との問いに、2030年には○○で、2040年には○○で、そして「2050年には内燃機関車はないぞ」とのマイルストーンを、OEMから裾野のサプライヤーに対して出してあげることも必要なんじゃないかな。 世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している(バイデン米政権は4月12日に自動車新環境規制の導入を発表、この新規制で32年に新車販売の最大7割がEVとなる)。こうした情勢にあって日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた』、「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。
・『日本の電源構成ではEVの実質的なCO2排出量はさほど減らない上、高コストな電池や充電設備の未整備、航続距離の問題など、消費者サイドが自発的にEVを選ぶには課題も多い。 日本車をリードするトヨタが脱炭素へ全方位(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーEV、水素、CN燃料)戦略を掲げる中で「EVも本気」と宣言したのが豊田章男前社長(現会長)だった。それが4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した。 いずれにしても、志賀氏の「日本車のEV出遅れは日本自動車産業の構造転換の遅れとなり、世界から取り残されることになる」という主張と懸念に対し、トヨタもこのEV本格化の方針で、産業構造転換に向けた歩みが進むことになった。 軽EVの日産「サクラ」/三菱自「ekクロスEV」がヒットした22年は「日本のEV元年」と言われたものの、日本の新車販売に占めるEVは1.7%にとどまる。世界販売ではEV比率は1割に達し、中国は約2割、欧州は1割、米国は5%で日本車のEVシフトの遅れが逆に鮮明となった。 カーボンニュートラルの時代、世界のEVシフトの進展スピードが加速する中で、モビリティの在り方やビジネスモデルはどう変革していくのか。注視していきたい』、「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。
タグ:電気自動車(EV) 「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。 「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。 「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。 「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。 「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。 「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。 「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、 「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。 「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、 佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」 ダイヤモンド・オンライン 「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、 「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。 「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。 大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」 東洋経済オンライン (その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)
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半導体産業(その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ) [産業動向]

半導体産業については、本年2月17日に取上げた。今日は、(その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ)である。

先ずは、本年2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した未来調達研究所株式会社所属 経営コンサルタントの坂口孝則氏による「半導体産業が九州で復活へ、でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318223
・半導体世界大手TSMCが熊本県に工場建設することで、九州が「シリコンアイランド」に復活しようとしている。TSMCのデータや米国の動きを踏まえながら、改めてその意義を考えてみた』、興味深そうだ。
・『TSMCの工場建設で九州の半導体産業が復活  九州が、「シリコンアイランド」として復活しようとしている。近年、半導体関連の投資が増加し、関連企業約1000社が集結。IC(集積回路)の生産は全国の4割を占める。 周知の通り、半導体の受託生産で世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県にて新工場を建設中だ(2024年末までに操業開始予定)。さらに、TSMCは日本で二つ目の工場建設を検討していることも明らかにした。早ければ25年内、熊本の近隣に設立する可能性が報じられている。実現すれば九州の半導体“熱”はさらに上昇するに違いない。 産業界は行政と連携し、九州7県で「九州半導体人材育成等コンソーシアム」も結成。半導体人材の育成や確保を拡充していくと発表している。関連企業の誘致は過去3年で急増し、インフラ整備も急ピッチで進む。 九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い。 TSMCが日本に進出すると報じられた当初は、生産予定の半導体が最先端のものではなかったことから、疑問視する声も相次いだ。しかし、世界中で半導体不足が深刻化したこと、地政学リスクも顕在化したことで、日本政府も尽力したTSMCの工場誘致は、評価されるに至った。 ただし、熊本では今、人材確保に苦労していると聞く。このあたりは引き続き、課題になるだろう』、「九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い」、なるほど。
・『以下は有料記事だが、今月の閲覧本数、残り1本まで無料) 米バイデン大統領の半導体に向けた熱意 他方、米国も、日本円にして数兆円規模の予算を可決し、国を挙げて半導体工場の建設に取り組んでいる。バイデン大統領の評価は分かれるが、少なくとも半導体分野では、あらゆる手を尽くしていると言っていいだろう。21年4月には、ホワイトハウスに半導体やIT関連企業のトップを招き、「CEO Summit on Semiconductor(半導体CEOサミット)」と名付けた決起集会を開いてもいる。 当日の様子はホワイトハウスのホームページやYouTubeでも見ることができる。決起集会におけるバイデン大統領は、わざわざ半導体ウエハーを手に持って、「これがわれわれのインフラ・ストラクチャーであり、多額の投資を行う」と関係者に向けて宣言。多数の企業が米国政府に賛同し、まさに政財界を挙げて半導体の入手に注力している。 そのかいあってか、22年12月、TSMCは米アリゾナ州に二つ目の工場を建設すると発表した。そこで生産するのは回路幅が3ナノの次世代チップだ。TSMCが台湾以外の、海外で最先端型を生産するのは初となる。その意味では、画期的といえるだろう。 そして発表の際、TSMCが出した文章はいろいろな示唆に富んでいた。内容を読むと、アマゾンやAMD、アップル、ブロードコム、NVIDIAといった米国の名だたる企業が、TSMCの工場建設について賛辞を連ねている。 その一方で、TSMCのトップであるマーク・リュウ氏は「米国に連れてきてくれて(has brought us here)ありがとうございます」と述べているのが印象的だ。自ら望んで進出したわけではないけれども、米国に呼んでくれてありがとう――と。この進出は、経済合理性というよりも、政治的な色彩が濃かったと暗に述べているようだ。もっとも、中国への配慮もあっただろう。 いずれにしても筆者からすると、米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる』、「米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる」、その通りだ。
・『読むとショックなTSMCの年次報告書(世界の半導体製造(ファウンドリー)を眺めると、TSMCの他にも、韓国のサムスン、米グローバルファウンドリーズなどの大手企業がある。しかし、TSMCの強さは圧倒的だ。世界はTSMCに依存しているといっても過言ではない。 では、なぜTSMCは強いのか。筆者が思うに、サムスンの製品も優れてはいるものの、サムスンと競合する企業がサムスンには注文しにくいといった事情もあるだろう。自社の先端技術を競合のサムスンには開示したくないからだ(もちろん、機密情報の保持はされている前提で)。 TSMCはあくまで半導体製造に特化した企業であり、そうした意味ではバッティングしない。しかも、台湾は「自由主義」経済圏であり、取引先としても付き合いやすい。 TSMCの強みは、営業戦略にもある。ここ数年、筆者はTSMCの年次報告書を熟読しているのだが、これを見ると、いろいろと考えさせられる。ショックだったのは、自動車産業向けの売上高が低いことだ。最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎないだろう。さらに言えば、使っているのは旧世代の回路幅である。自動車メーカーは複数の階層に分かれたサプライヤーを抱え、まるで製造業の王者として君臨しているようだが、こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえないことがわかる。 また、同様に年次報告書から回路幅に関する詳細を見ると、最先端の5~7ナノが54%と過半数を占める(!)。自動車が使用する40~65ナノは12%しかない』、「最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎない・・・使っているのは旧世代の回路幅」、「自動車メーカーは・・・こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえない」、その通りなのだろう。
・『TSMCが熊本に工場建設する意義  もっとも自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう。旧世代のデバイスを使わずに、新世代のデバイスを使えばいいのではないか、と。 しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる。 とまあ、なんだか自動車産業の言い分を述べているようだが、それが現実だ。 改めて、TSMCが熊本に工場を設ける意義を考えると、たとえ新世代デバイスでなくてもメリットは大きい。世界的企業のTSMCはもとより、他の台湾企業との連携が深まるのは望ましいからだ。それに、半導体の需要が減ることは当面、考えにくい。半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない』、「自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう・・・しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる」、「半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない」、同感である。

次に、2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したタフツ大学フレッチャー法律外交大学院国際歴史学准教授のクリス・ミラー氏と翻訳家 千葉敏生氏による「 絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318251
・『NYタイムズが「映画『チャイナ・シンドローム』や『ミッション:インポッシブル』並のノンフィクション・スリラーだ」と絶賛! エコノミストが「半導体産業を理解したい人にとって本書は素晴らしい出発点になる」と激賞!! フィナンシャル・タイムズ ビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー2022を受賞した超話題作、Chip Warがついに日本に上陸する。 にわかに不足が叫ばれているように、半導体はもはや汎用品ではない。著者のクリス・ミラーが指摘しているように、「半導体の数は限られており、その製造過程は目が回るほど複雑で、恐ろしいほどコストがかかる」のだ。「生産はいくつかの決定的な急所にまるまるかかって」おり、たとえばiPhoneで使われているあるプロセッサは、世界中を見回しても、「たったひとつの企業のたったひとつの建物」でしか生産できない。 もはや石油を超える世界最重要資源である半導体をめぐって、世界各国はどのような思惑を持っているのか? 今回上梓される翻訳書、『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』にて、半導体をめぐる地政学的力学、発展の歴史、技術の本質が明かされている。発売を記念し、本書の一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは  半導体メーカーによる過剰投資こそ日本不調の原因だった  ソニーの盛田昭夫は、1980年代、ジェット機で世界中を飛び回り、ヘンリー・キッシンジャーとの夕食、オーガスタ・ナショナルでのゴルフ、三極委員会などでの世界のエリートたちとの交流に明け暮れる毎日を送っていた。 彼は国際舞台でビジネスの賢人として崇められ、昇り竜のような勢いの世界的な経済大国、日本の代表的人物として扱われていた。 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」  「ナンバーワンとしての日本」という意味で、アメリカが教訓にすべき日本の高度経済成長の要因について分析したエズラ・ヴォーゲルの1979年の著書のタイトルとして有名〕の体現者だった彼にとって、この言葉を信じるのはたやすかった。ソニーのウォークマンをはじめとする消費者家電を追い風に、日本は繁栄を遂げ、盛田は財を築いた。 ところが、1990年に危機が襲いかかる。日本の金融市場が崩壊したのだ。経済は落ち込み、深刻な不況へと突入した。たちまち、日経平均株価は1990年の水準の半値近くにまで下落し、東京の不動産価格はそれ以上に暴落した。日本経済の奇跡が音を立てて止まったのだ。 一方、アメリカは、ビジネスの面でも戦争の面でも復活を遂げる。わずか数年間で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はもはや的外れな言葉に思えてきた。日本の不調の原因として取り上げられたのが、かつて日本の産業力の模範として持ち上げられていた産業だった。そう、半導体産業である。 ソニーの株価急落とともに、日本の富が目減りしていく様子を眺めていた69歳の盛田は、日本の問題が金融市場より根深いものだと悟った。彼は1980年代、金融市場における「マネー・ゲーム」ではなく、生産品質の改善に励むよう、アメリカ人に説いてきた。 しかし、日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである[2]。 日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった。 日立のある経営幹部は、過剰投資について「心配しだすと、夜も眠れなくなる」と認めた[3]。銀行が融資を続けてくれるかぎり、収益化の道はないと認めるよりも、支出を続けるほうがCEOたちにとっては楽だった。 アメリカの非情な資本市場は、1980年代にはメリットとは思えなかったが、裏を返せば、融資を失うリスクこそがアメリカ企業を常に用心させたともいえる』、「日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである」、「日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった」、なるほど。
・『日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは「PCの隆盛を見逃したこと」  日本のDRAMメーカーは、アンディ・グローブのパラノイアや、商品市場の気まぐれに関するジャック・R・シンプロットの知恵から学べることがあったはずなのに、全員でいっせいに同じ市場に投資した結果、共倒れを運命づけられてしまったのだ。 その点、DRAMチップに大きく賭けることがなかったという意味で、日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった[4]。 しかし、日本の大手DRAMメーカーの大半は、1980年代の影響力を活かしてイノベーションを促進するのに失敗した。大手DRAMメーカーの東芝では、1981年、工場に配属された中堅社員の舛岡(ますおか)富士雄が、DRAMとはちがって電源が切られたあともデータを“記憶”しつづけられる新種のメモリ・チップを開発した。 ところが、東芝が彼の発見を無視したため、この新種のメモリ・チップを発売したのはインテルだった。そのメモリ・チップは一般に、「フラッシュ・メモリ」またはNANDと呼ばれている[5]。 しかし、日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった。一方、日本の株式市場が暴落するころには、日本の半導体分野での優位性はすでにむしばまれつつあった。) ([著者]クリス・ミラーの略歴、および[訳者]千葉敏生氏のry句歴はリンク先参照)』、「日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった」、「日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった」、いま思い返しても腹立たしい世紀の大失敗だ。

第三に、5月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「半導体不足から一転、業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322597
・『世界の半導体メーカーの業績が悪化している。不足感から一転、利上げの長期化や景気後退への懸念もあり、半導体市況の「谷」は深まるだろう。ただ、中長期的には「戦略物資としての半導体」の重要性は増すはずだ。目先の市況悪化に耐えつつ設備投資を積み増し新しい製造技術を確立できるかが、メーカーの優勝劣敗を分ける。次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの行方やいかに』、興味深そうだ。
・『世界の半導体メーカーで業績悪化  足元、世界の半導体メーカーの業績悪化が鮮明だ。背景には、コロナ禍の巣ごもり需要の反動でパソコンなどの需要が減少していることに加えて、一時、半導体不足から在庫を積み上げ過ぎたことなどがある。短期的に世界の半導体の需給が改善するとは考えにくく、当面、厳しい状況が続くとみられる。 米欧の金融引き締めは長引くことも予想され、世界的な景気後退の懸念も一段と高まりやすい。景気の強弱によって需要が大きく変動するのが半導体市況であり、需要の「谷」が一段と深まることが懸念される。 また、先端分野での米中対立の先鋭化も、半導体市況を下押しするだろう。そうした状況下、半導体関連の設備投資を維持できるか否かで、長い目で見た世界の大手半導体メーカーの競争力の差は鮮明化しそうだ。 それは、わが国の半導体産業が再び成長する重要な機会になり得る。わが国では産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう』、「産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう」、なるほど。
・『ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少  足元、メモリ、ロジック、アナログなど、ほとんど全ての分野で半導体の需要が減少している。2022年後半以降、世界の半導体市況では、まずメモリ半導体の価格が下落し始めた。 台湾の調査会社トレンドフォース(Trend Force)によると、23年1~3月期のDRAM価格は平均して20%程度下落した。その結果、23年1~3月期、サムスン電子の半導体部門の営業損益は4兆5800億ウォン(約4600億円)の赤字に陥った。営業損益の赤字転落は14年ぶりだ。サムスン電子は減産を余儀なくされるほど需要は減少している。 ロジック半導体の需要も減少し始めた。22年10~12月期までファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の純利益は増加基調だった。TSMCは、アップルやAMD、エヌビディアなどのIT先端企業や世界の自動車メーカーの需要に応じて生産を行う。そのため、他社に比べると在庫の増加リスクには対応しやすかった。 しかし、23年1~3月期、TSMCの増益ペースは前年同期比で2%にとどまった。顧客企業は最終需要の減少に対応するために発注を絞り始めた。 パソコン向けを中心に、プロセッサーなどを生産する米インテルの業況はさらに厳しい。1~3月期、インテルの売上高は前年同期比36%減の117億1500万ドル(1ドル=136円換算で約1兆6000億円)、最終損益は27億5800万ドル(約3800億円)の赤字だった。 その要因の一つに、利益率の高い最先端チップの製造体制を確立できなかったことは大きい。16年頃、インテルは回路線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)の製造ライン立ち上げに失敗した。その後、同社は旧世代の製造ラインを用いて生産されるチップの演算処理能力の向上に取り組みつつ、最先端の製品面ではTSMCに依存した。 さらに、産業分野でのIoT技術の導入や、車載用の画像処理センサーなどの需要が拡大してきたアナログ半導体の分野でも、事業環境は悪化し始めた。この分野の大手である米テキサス・インスツルメンツは4~6月期の一株利益予想を下方修正している』、「ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少」、なるほど。
・『当面、半導体市況は一段と悪化する懸念  今後、半導体の市況はさらに悪化しそうだ。特に、スマホ需要の飽和は大きい。米国の調査会社IDCは、23年の世界のスマホ出荷台数が前年から1.1%減少すると予想する。スマホはコモディティー化している。また、パソコン需要も落ち込みが鮮明だ。 それに加えて、IT先端企業のビジネスモデルも行き詰まっている。SNSやサブスクリプション(継続課金制度)の分野で競争が激化し、成長は以前に比べると鈍化した。また、マイクロソフトのように、人工知能(AI)によって検索や広告などの需要を喚起する動きはあるものの、AI利用が世界各国で支持を得ているとは言い難い。新しいビジネスモデルが確立されるにはまだ時間がかかるだろう。 さらに、世界的に設備投資が絞られていることも、目先の半導体需要を下押しする。主要国経済の中でも相対的に底堅さを保ってきた米国でさえ、3月の米耐久財受注統計によると、国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア資本財の出荷が減少した。 アジア新興国地域では、中国のスマホ需要の減少、個人消費の停滞などを背景に、4月も韓国の輸出が減少した。半導体は前年同月比41.0%減だった。世界のITデバイスなどの製造拠点としての地位を高めてきた台湾では、鴻海(ホンハイ)精密工業やパソコン受託生産企業のコンパルなどの業績が急速に悪化している。一部で不足感は残ってはいるが、車載用半導体の需給ひっ迫も徐々に解消されている。 マクロ経済面でも、当面、米FRBや欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めを続けるだろう。それに伴い、米国の一部中堅銀行の経営不安や、米欧の商業用不動産の価格下落リスクは高まりそうだ。米国などで家計や企業の利払い負担は増加し、個人消費や設備投資は一段と圧迫されるだろう。世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ』、「世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ」、なるほど。
・『半導体の優勝劣敗とラピダスの行方  中長期的に考えると、経済安全保障体制の強化、デジタル化の加速などを背景に、「戦略物資としての半導体」の重要性は増すはずだ。目先の市況悪化に耐えつつ設備投資を積み増し新しい製造技術を確立できるか否かは、世界の半導体メーカーの優勝劣敗を分けるといっても過言ではないだろう。 一つのシナリオとして、回路線幅3ナノメートルのロジック半導体、次世代チップと呼ばれる2ナノ以降のチップ製造面で、インテルとTSMCの差が一段と拡大する可能性もありそうだ。その展開が現実となれば、米国政府はさらに半導体分野の支援策や対中禁輸措置を強化する可能性も高まる。 今後の世界経済では、「新しい需要を生み出す力」がより、その国の成長に大きな影響を及ぼすだろう。それを念頭に、わが国産業界は対応策を練らなければならない。 注目すべきは、2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ。 また、2ナノのチップ製造に関しては、平面上での回路微細化に加え、チップを積層するなど新しい製造技術の実装が求められる。ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい。かつて業界の盟主だったインテルは、半導体の微細化につまずき競争力を低下させた。世界の半導体市況のさらなる悪化懸念が高まる中、本邦企業のモノづくりの底力が問われている』、「2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ」、「ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい」、「ラピダス」の成功に大いに期待したい。

第四に、5月20日付け日刊ゲンダイ「政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/323213
・『19日開幕のG7広島サミットは、半導体など戦略物資のサプライチェーン(供給網)強化も主要議題。本番を控え、岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社。世界的な半導体大手の幹部が一堂に集うのは異例だ。 岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した。 面会の場でマイクロンは広島工場での次世代半導体製造に最大5000億円を投じると表明。サムスンも先端分野の研究開発について対日投資を検討していると伝えた。 「海外の半導体メーカーからすれば、日本に製造拠点を置くことは魅力的でしょう。政府支援に加えて、円安のおかげで安価な賃金で優秀な日本人を雇用できるからです。かつて日本の製造業は、人件費が安い中国や東南アジアに製造拠点を移転し、コストダウンを図りました。今、日本は逆の立場になっているのです」(経済ジャーナリスト・井上学氏)』、「岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社」、「岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した」、わざわざ「岸田首相」に会いに集まるのは、補助金目当てだろう。
・『“日の丸復権”にはほど遠く  熊本に新工場を建設中のTSMCは製造能力の拡張を検討している。世界的な半導体メーカーが国内に工場を次々と建てれば、雇用が生まれ、経済効果も大きい。しかし、それでは“安いニッポン”から抜け出せない。1980年代、日本は半導体分野で世界をリードした。半導体メーカーの日本進出が増えれば、“日の丸半導体”は復権を果たせるのか。 「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです。海外メーカーは重要な技術ノウハウや知見は教えてくれません。日本の技術で半導体を国産化するのと、海外メーカーの製造拠点になるのは全く次元が異なる。先進国の製造拠点となってきた東南アジアは技術立国にはなっていません。サプライチェーンにしても、メリットは少ないでしょう。半導体が入手しづらくなった場合、ドライな半導体メーカーが日本の製造拠点から、日本のユーザーに優先的に供給してくれるとは考えにくいからです」(井上学氏) 政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ』、「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです」、それでも「政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ」、情けない限りだ。
タグ:半導体産業 (その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ) ダイヤモンド・オンライン 坂口孝則氏による「半導体産業が九州で復活へ、でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書」 「九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い」、なるほど。 「米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる」、その通りだ。 「最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎない・・・使っているのは旧世代の回路幅」、「自動車メーカーは・・・こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえない」、その通りなのだろう。 「自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう・・・しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる」、「半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない」、同感である。 クリス・ミラー氏 千葉敏生氏 「 絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは」 『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』 「日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである」、 「日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった」、なるほど。 「日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった」、「日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった」、いま思い返しても腹立たしい世紀の大失敗だ。 真壁昭夫氏による「半導体不足から一転、業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方」 「産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう」、なるほど。 「ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少」、なるほど。 「世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ」、なるほど。 「2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ」、 「ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい」、「ラピダス」の成功に大いに期待したい。 日刊ゲンダイ「政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ」 「岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社」、「岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した」、わざわざ「岸田首相」に会いに集まるのは、補助金目当てだろう。 「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです」、それでも「政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ」、情けない限りだ。
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医薬品(製薬業)(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、2021年10月5日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌)である。

先ずは、昨年2月22日付けダイヤモンド・オンライン「モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む」を紹介しよう。
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『コロナ禍前までは製品販売の売り上げがゼロだったモデルナ  オミクロン株のまん延によって、新型コロナウイルスと人類の闘いの出口が見えづらくなってきた。今後どんな変異株が登場するか、予測がつかないからだ。ワクチンと特効薬の開発、そして日常生活での感染対策を続けるとともに、一人一人が当事者意識を持って、ウィズコロナへのシフトを考えていかなければならない。 ワクチンに関しては、ファイザーに続きモデルナも、オミクロン株に対応したワクチンの臨床試験を開始したと報じられている。日本における新型コロナウイルスワクチン接種は今のところ、この2社製に限られており、有効性の高いワクチンの開発に期待したいところだ。 さて、もはやほとんどの日本人にその名が知れ渡ったモデルナだが、どのような企業なのか、ご存じだろうか? 海外では有名な、製薬大手と思っている人もいるかもしれない。だが実はモデルナは、2010年に米国で設立されたばかりのバイオベンチャーなのだ。 わずか創業10年余りのベンチャー企業が、170年以上の歴史を誇る巨大製薬会社であるファイザーと、コロナワクチンでは肩を並べているのは驚くべきことだ。しかもモデルナは、2019年度まで市販製品が一つもなく、製品販売による売り上げはゼロだったという。) 本書『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』は、モデルナをはじめ、アップル、アマゾン、アリババといった企業の戦略が世界の医療・健康(ヘルスケア)産業を激変させる可能性を探っている。 著者の田中道昭氏は立教大学ビジネススクール教授で、テレビ東京の「WBS(ワールドビジネスサテライト)」コメンテーターを務める。シカゴ大学経営大学院MBA、専門は企業戦略&マーケティング戦略。『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH』(日本経済新聞出版)など多数の著書がある。 モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、「モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、よくぞここまでスピードアップできたものだ。
・『「一石○鳥」を狙うmRNAプラットフォーム戦略  モデルナが驚異的な速さでワクチンを開発し、しかもその有効性が認められ世界中で使われるようになった理由について田中氏は、「プラットフォーム」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という二つのポイントを指摘している。 まず、モデルナの「mRNAプラットフォーム戦略」から説明しよう。 知っている人も多いだろうが、ファイザー製とモデルナ製のワクチンは「mRNAワクチン」である。mRNA(メッセンジャーRNA)は、体内の細胞でタンパク質を作り出すのに必要な「設計図」を伝える働きをする物質。各細胞にはヒトの全遺伝子情報が格納されたDNAがあり、mRNAはその一部をコピーして細胞の外に持ち出し、タンパク質の「工場」であるリボソームに伝える。リボソームでは、mRNAがもたらした情報をもとに、特定の機能を担うタンパク質を作り出す。 mRNAワクチンは、体外から人工のmRNAを注入し、特定のタンパク質を合成させる。新型コロナウイルスワクチンの場合は、コロナウイルス特有のスパイクと呼ばれる細胞を覆う突起部分となるタンパク質を作らせる。スパイクという異物が体内にできれば、それを排除する免疫機能が働き、抗体ができる。そうすれば次にコロナウイルスが体内に侵入しても、抗体がスパイクを目印に撃退するので、感染や重症化を防げるというわけだ。 mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう。すなわち、これまでは個々の疾患ごとに治療法を考え、それに応じた薬を開発していた。しかし、mRNAを共通のプラットフォームとして開発すれば、mRNAを使った同じ仕組みでさまざまな疾患に対処できるようになる。) モデルナは、創業当初から、こうしたmRNAの可能性に着目し、より効率的でスピーディーに開発できる「mRNAプラットフォーム」を構築してきた。その最初の成果が新型コロナウイルスワクチンだった。 mRNAプラットフォームは、言ってみれば「一石○鳥」を狙うものだ。mRNA(一石)を使うことで、複数の疾患(○鳥)に対応できるからだ。 アマゾン ジャパンで新規ビジネス立ち上げに携わったキャリアを持つ太田理加氏が著した『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』(宝島社)によると、アマゾンでは「イノベーションは誰にでも起こせる」という意識が全ての社員に浸透しているそうだ。 太田氏もそうした意識を持ち、イノベーションを「一石二鳥の問題解決」と分かりやすく解釈し、二つ以上の問題を同時に解決するにはどうしたらいいか、という視点で新規ビジネスを考えていったという。 太田氏も指摘しているが、アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ。 『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』で紹介されているアマゾンのヘルスケア事業の一つに「アマゾン・ヘルスレイク」がある。病院、薬局などのデータをAIによって整理・インデックス化・構造化するもので、AWSの機能の一つに位置付けられている。アマゾンも、AWSというプラットフォームを活用して多事業展開をしているのである』、「mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう」、「アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS・・・がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ」、「mRNA」に通じる考え方だ。
・『モデルナは創業当初から「デジタルを前提とした」製薬会社  田中氏が指摘するモデルナのもう一つの成功ポイントが、「DX」だ。モデルナの場合、前述のmRNAプラットフォームを機能させるのに、DXが前提となっているとのこと。より多くのデータの集積・解析や実験・臨床試験、それらによる、より効果のあるmRNAによる医薬品や治療法の開発のためにはデジタル技術が必須だからだ。実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ。田中氏は、プラットフォームとDXをセットで展開するモデルナを「製薬業界のアマゾン」とみなしている。 モデルナは、2021年5月に開催した「Moderna Fourth Annual Science Day」において、生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している。 このように、異分野のシステム同士の類似性を見つける「見立て」は、さまざまなイノベーションのヒントになるだろう。なかなか新しい発想が浮かばない時には、「一石○鳥」で問題を解決できる方法はないか、異分野の似たシステムに「見立て」ることはできないか、と考えてみてはいかがだろうか』、「実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、「生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している」。「モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、すごいビジネスモデルのようだ。

次に、本年5月25日付けダイヤモンド・オンラインが転載した医薬経済ONLINE「アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌」を紹介しよう。これは有料記事だが、今月はあと2本まで無料。
・『今年の大型連休は平日の5月1日と2日に有給休暇をとれば最大9連休となり、帰省や旅行に出かけた人も多いと思う。その大型連休の真っただ中にアステラス製薬が“サプライズ”を発表した。眼科領域の治療薬を開発する米アイベリック・バイオ(ニュージャー州)の買収で、5月1日の午前8時に発表。日本ではあまり知られていない企業の買収のうえ、連休中の早朝で寝ていた記者もいたようだが、買収額がアステラスとしては過去最高額の約59億ドル(約8000億円)というのを知り、一気に目が覚めるニュースだった。 アステラスの岡村直樹社長CEOは急遽、午前11時からオンライン記者会見を開くと、買収の戦略的意義を約1時間にわたり説明。アイベリックが米国で承認申請中の加齢黄斑変性の開発品を獲得するのが狙いで、主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題となっている。 4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された。 相次ぐトラブルから「運のない社長」と不名誉な呼称さえ囁かれる岡村氏だが、今度は大型買収というサプライズである。果たして、このサプライズは「吉」となるか』、「主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題」、「4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された」、確かに「運のない社長」だ。
・『9年前から狙っていた開発品  アステラスが買収するアイベリックは米国で07年に眼科領域に特化したバイオ医薬企業として設立。社員数は約260人とそれほど大きくない企業だ。パイプラインは、米国で承認申請中の加齢黄斑変性を対象とした補体因子C5阻害剤「アバシンカプタドペゴル」(ACP)を除けば、残りは前臨床段階であまりパッとしない。だが、その申請中のACPが「ブロックバスター」になる可能性を秘めており、しかも、米国食品医薬品局(FDA)から優先審査の指定を受けて8月19日には審査を終える予定。順調に承認されれば早期に収益を確保できそうだ。 老化で網膜の中心部である黄斑に障害が起こり、視力が低下する加齢黄斑変性には大きく分けて2つのタイプがある。ひとつが網膜の下にできた異常な血管から出血などを起こす「滲出型」と呼ばれるタイプ。現時点での加齢黄斑変性治療薬の主戦場で、バイエルの「アイリーア」やノバルティスの「ルセンティス」が鎬を削る。 もうひとつが網膜の下にある網膜色素上皮が痛んで弱っていく「萎縮型」で、このタイプは米アキュセラなどが開発に挑んできたが失敗。長きにわたり治療薬が望まれ、ようやく今年2月に米アペリス・ファーマシューティカルズの「サイフォブレ」が米国で初めて地図状萎縮症(GA)の適応で承認を取得した。1バイアルあたり2190ドル(約30万円)と安くはないが、GA治療の「ゲームチェンジャー」と目される。続いてアイベリックのACPが承認を得れば、2番手ながら標準治療に喰い込めるポテンシャルがある。米国のGA患者は160万人おり、この市場を狙ってノバルティスや米ビライト・バイオも開発を急ぐ。 アステラスはGAを対象に自社開発品の第I相試験を進行中。以前からアイリベックの開発品にも注目してきたそうで、岡村氏は14年頃から「実はウォッチしていた化合物。臨床試験のデータなどがだんだん明らかになり、当初は米国外のライセンス案件としてアイベリックと話してきた」と語る。それが今年3月に急展開。アイベリックから会社買収も視野に入れた提案があり、とんとん拍子で買収が決定した。 前々から注視していた開発品だけに失敗はないと願いたいが、買収にリスクはつきもの。20年に約3200億円で買収した米オーデンテス・セラピューティクスの遺伝子治療薬「AT132」には、500億~1000億円の製品ポテンシャルがあると期待をかけるが、臨床試験で死亡例が多発して開発が遅延。また、前臨床段階の複数の開発品では有効性が確認できず中止となり、4月に500億円の減損損失を計上した。 最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である。米ファイザーは今年3月に米シージェンを430億ドル(約5兆7000億円)で、米メルクは4月に米プロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドル(約1兆4500億円)で買収すると発表した。アステラスが吹っかけられてオーデンテスの二の舞になれば運がなかったでは済まない』、「最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である」、今回の「アイベリックのACP」買収が「吹っかけられ」たものでないことを祈る。
・『日本市場は期待薄か  では、ACPはどれほどの「金のなる木」になりそうなのか。アステラスはイクスタンジの特許切れで失う売上高減少分を、尿路上皮がん治療剤「パドセブ」と更年期障害治療薬「フェゾリネタント」に、ACPを加えることで埋める戦略を立てる。パドセブはピーク時3000億~4000億円を見込む。また、フェゾリネタントに関してはピーク時5000億円と試算。岡村氏はACPについて、「フェゾリネタント、パドセブに次ぐ第3の柱と申し上げているところから、だいたいの規模をお察しいただければといいなと思う」と述べており、ピーク時1000億~2000億円は固そう。 ただ米国で8月に承認されても勝負はこれから。先行するサイフォブレとの競合は避けられない。サイフォブレは臨床試験で18~24カ月の間に病変の拡大を最大36%減少。一方、ACPは12カ月で最大27.4%抑制した。岡村氏は「現在の症例の臨床試験の結果から議論するには時期尚早」と話すが、勝つ自信はあるようだ。 当然、米国以外でも開発しグローバル製品として展開したいところで、欧州と日本での開発を精査中という。ぜひ日本でも開発してもらいたいところだが、市場としての魅力は米国に劣るかもしれない。というのも米国では萎縮型の患者が多いが、日本ではほとんどが滲出型とされる。稼ぎは欧米市場が中心になると見られる。 アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない。 岡村氏は、前任の安川健司氏が策定した経営計画を託されるかたちで社長となった。就任会見では「結果にこだわる会社でありたい」と表明しただけに、運のせいにはできない。強引にでも運を引き寄せることができるかも力量。今回のサプライズ買収で流れが変わればいいのだが』、「アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない」、「焦り」でないことを願うばかりだ。
(注)POC:「概念実証」という意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指します(IoT用語辞典)
タグ:医薬品(製薬業) (その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌) ダイヤモンド・オンライン「モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む」 『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』 「モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、よくぞここまでスピードアップできたものだ。 「mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう」、「アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS・・・がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ」、「mRNA」に通じる考え方だ。 「実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、 「生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している」。 「モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、すごいビジネスモデルのようだ。 ダイヤモンド・オンライン 医薬経済ONLINE「アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌」 「主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題」、 「4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された」、確かに「運のない社長」だ。 「最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である」、今回の「アイベリックのACP」買収が「吹っかけられ」たものでないことを祈る。 「アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない」、「焦り」でないことを願うばかりだ。 (注)POC:「概念実証」という意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指します(IoT用語辞典)
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エネルギー(その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?) [産業動向]

エネルギーについては、昨年4月11日に取上げた。今日は、(その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?)である。

先ずは、本年1月29日付け日刊SPA!「“太陽光パネル”の知られざる闇。「米ができない」農家が嘆く理由とは」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1882821/2
・『道路や水道など、生活を支えるインフラが全国各地で崩壊の一途を辿っている。しかし維持管理できない自治体も出てきているという。一体現場では何が起きているのか。全国で顕になりつつある“荒廃する日本”の実態に迫る』、興味深そうだ。
・『「米ができない」地元農家が嘆く太陽光パネルの闇  メガソーラーを巡っては、利益重視で運営を行う業者と住民間でのトラブルが全国で相次ぐ。中国系企業が運営する太陽光発電所の建設が進められている山口県岩国市もそのひとつ。市議会議員の石本崇氏はこう喝破する。 「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません。使用するパネルは、世界でもシェアを広げる格安な中国メーカーのものです」』、「中国系企業が運営する太陽光発電所」で「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません」、やれやれ、「中国系企業」らしい。
・『水田の土砂からは有害物質が検出  工事中の発電所下で農業を営む人々も重い口を開く。 「工事が始まってから水田の土砂を調査してみると、ヒ素、鉛など有害物質が検出されて、それからは稲作のできない状態が続いています」』、「ヒ素、鉛など有害物質が検出」とは深刻だ。自治体は工事業者に現状回復命令などを出したのだろうか。
・『「水害でパネルが水没することも想定すべき」  その危険性に鑑み、パネル設置を規制する条例を定める自治体も少なくないが、東京都は’22年12月、新築住宅太陽光パネル設置義務条例を制定した。東京都議会議員の上田令子氏は声を上げる。 「水害でパネルが水没することも想定すべきですよ。屋根から外れたパネルが水たまりに落ちれば、そこで勝手に発電してしまい、ガレキの片づけにあたる住民が感電する危険性もありますから」 再生可能エネルギー=環境に良いとの幻想が打ち砕かれる現実を目の当たりにした』、「新築住宅太陽光パネル設置義務条例」は「東京都」が制定したようだが、全国レベルでも規制すべく、法制化すべきだろう。

次に、4月6日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの河野 博子氏による「埼玉・小川町メガソーラー、事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664196
・『この夏で創設11年となる再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)制度。日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を飛躍的に伸ばした反面、太陽光発電では土砂災害、景観、自然環境破壊を懸念する地域住民との紛争が絶えない。経済産業省資源エネルギー庁は4月3日、認定失効の可能性が高い大量の案件について失効確認作業を本格化、失効分の公表を始めた。失効案件の一つ、経済産業相が厳しい勧告を出した埼玉県の「さいたま小川町メガソーラー」を例に、失効をめぐる事情を探った』、興味深そうだ。
・『事業者は失効回避に自信を見せていた  さいたま小川町メガソーラーは、国の環境影響評価(環境アセス)制度に基づいて手続き中。2022年2月、事業者による環境アセス準備書に対し、経済産業相が事業の抜本的見直しを求める異例の勧告を行い注目された。 事業者は、小川エナジー合同会社(埼玉県寄居町、代表社員=株式会社サンシャインエナジー、職務執行者・加藤隆洋氏)。官ノ倉山と石尊山の一部、約86ヘクタールに太陽光パネルを敷き、出力約3万9600kWの発電を行う計画だった。 1月28、29日の両日で小川エナジーは事業計画地近くの公民館で住民説明会を開き、経済産業相の勧告を受けて事業計画を変更すると説明した。勧告は約72万立法メートルという大量の盛り土を行い、その約半分にあたる土砂を外から搬入するという点を問題視した。 当初計画された盛り土の量は、2021年夏に起きた静岡県熱海市の土石流の起点となった源流部に盛り土された量の10倍以上。また、周辺の農家には有害物質を含む建設残土が持ち込まれるのでは、との懸念もあった。 説明会で事業者は計画変更を明らかにした。 ①外からの建設残土の搬入を一切中止する ②パネル設置方法を工夫し、地面に垂直に立てる架台を利用して傾斜をつけて並べる  会場からは事業の現実性や持続性について質問が相次いだ。それにひるむことなく加藤代表は「認定の失効にはならない。(固定価格で電気を買い取ってもらえる期間の)20年間事業を行える」と自信を見せた。 認定失効制度には、事業者側が失効を回避する手立ても用意されている。一定の期限までに電力会社の系統につなぎますという「系統への着工申し込み(系統連携着工申込書)」を出し、受領されることが失効回避の一つのステップになっている。) 1月29日の説明会終了後、住民に対応した加藤代表によると、東京電力側に着工申し込み文書を提出し、受領されたという。またこれとは別に、国の環境アセス制度に沿って手続きを進めていることを経済産業省に確認してもらう段取りも踏んでおり、「認定失効は回避された」と判断したようだ。 4月3日に公表された認定失効情報は、資源エネルギー庁のホームページの「失効情報紹介」コーナーに知りたいメガソーラーの設備IDを入力しすると、認定が失効している場合には「〇年〇月〇日以降、認定が無効です」と表示される仕組み。 「さいたま小川町メガソーラー」の設備IDを入力すると、4月1日に認定が失効していることがわかった。小川エナジーの「回避できた」という理解は「誤解」だったといえる。 電力会社に系統への着工申し込みを行う際には、県から林地開発許可を得ていることなどが要件になっている。着工申込書にそれを証明する文書を添付する必要はない。しかし申込書には、要件をクリアしていないことが判明した場合、「失効となる可能性がある」と明記されてもいる。 小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない。環境アセス手続きを早く終え、林地開発許可を得ていれば、認定失効を免れることができただろう』、「小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない」のであれば、「誤解」との認識は事実誤認だ。
・『国が認定失効制度を新設し、大量処分に踏み切った背景  認定失効制度は2020年の法改正で盛り込まれ、2022年度に本格施行された。FIT制度では、認定を受けた時点で設定される調達価格で20年間にわたり、電力会社(送配電事業者)に売電できる。小川エナジーが認定を受けたのは2017年3月で、設定された調達価格(電力会社による買い取り価格)は1kWh(キロ・ワット・時)当たり24円。 太陽光発電の場合、調達価格は大きく下がってきた。2022年度は1kWh当たり10円を切っている。いったん認定を受ければ、年数がたってからの稼働でも、認定時の高い値段で電気を売れるが、この仕組みは国民の賦課金によって支えられている。2022年度の賦課金は再生可能エネルギー全体で1kWh当たり3.45円。平均的な使用量の家庭では年1万6560円だった。 0.22円だったFIT導入時から約16倍にも膨らんだ賦課金。当然批判は強く、国民負担の増大抑制が喫緊の課題となった。経済産業省は「高い調達価格の権利を保持したまま運転を開始しない案件が大量に滞留する」(資源エネルギー庁)事態に、メスを入れる必要に迫られた。発電事業者の中からも「無理筋な未稼働案件が消えてくれれば、容量が限られている電力会社の送配電網を優良な事業で使える」との声が出ていた。) 高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい、2022年4月に経済産業、環境、国土交通、農林水産の4省のもとで再エネ発電設備の適正導入・管理の検討会を設けた。 背景には「地域で太陽光発電イコール悪という認識が広まってしまうと、脱炭素の取り組みが難しくなる」(環境省)という危機感があった』、「高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい」、そんな案件を「認可」取り消しするべきだが、大義名分に欠けるのだろうか。
・『小川メガソーラーはどうなる  FIT認定の失効を受け、小川エナジーはどうするのか。3月31日、小川エナジーに電話したところ、同社の加藤代表は「失効については聞いていない。環境アセス準備書に対する経産相の勧告を受け、昨年末まで調査を続け、評価書を出す準備を進めているところだ。事業を中止するという噂は何回も流されたが、そういう事実はない」と話した。 確かに、FIT認定失効イコール事業中止ではない。固定価格買い取り制度による売電のほかにも、電力の売り先企業を探して相対取引で売電するなど太陽光発電事業を行う方法はある。 しかし、さいたま小川メガソーラー事業の実現には、いくつものハードルがある。特に、住民団体「比企の太陽光発電を考える会」が事業の悪影響について調査を続け、小川町、埼玉県、国に事業化への懸念を伝えていることは大きい。3月21日には「雨水を浸透させ、蓄える能力」が事業地の土地にどのくらいあるかの調査が行われた。 「比企の太陽光発電を考える会」の依頼を受けて調査を実施したのは、法政大学エコ地域デザイン研究センターの神谷博・客員研究員。事業地内の4カ所でインフィルトロメーターという透明なプラスチック製の筒状の計測器を使い、地面の雨水浸透能力を測った。地面に置いた計測器に用意した水を入れ、筒の中を下がった水面の高さを30秒ごとに読み取っていった。 その結果、事業敷地の治水蓄雨高(単位面積当たりの雨をしみ込ませる能力)はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」(神谷研究員)。 パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定された。事業地は森林土壌が比較的薄く、全体として保水性の乏しい丘陵地として知られており、それが裏付けられた形だ。) 神谷研究員は土地の雨水浸透能力に着目する理由をこう説明する。「2014年の水循環基本法制定、雨水利用推進法施行により、雨水の流出を抑え、地下浸透を促進することが求められている」。また事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘する。 資源エネルギー庁の認定失効情報検索サイトによると、さいたま小川町メガソーラーのほかにも埼玉県内で地域住民の反対があるメガソーラーの認定が失効していた』、「事業敷地の治水蓄雨高・・・はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」・・・パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定」。「事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘」、「水源地域」の「雨水浸透能力を奪ってしまう」のはやはり大きな問題だ。
・『地域や自治体とのトラブル案件の認定失効続々  埼玉県日高市で、2019年8月に公布・施行された「日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」により太陽光発電事業が禁止された区域内に計画地があったため、事業を進められなくなったメガソーラーも「4月1日以降、認定が無効」となった。 さいたま小川町メガソーラーの事業地近くの炭鉱跡地の丘に計画されているメガソーラー、やはり小川町内の谷津にある棚田に隣接した遠ノ平山に計画されたメガソーラーをめぐっては住民の反対が根強いが、この2件については「2023年4月1日に失効期限日を超過している可能性があり、認定状況を確認中」との表示が出た。 こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた。 西村康稔経済産業相は3月31日、閣議後の記者会見で2022年度末の失効見込み数を「50000件」程度、その容量の総計を「約400万kW」としている。しかし、現時点で全国の失効総数については明らかにしていない。確認作業を進めており、失効が確認されたケースから五月雨式に公表しているとみられる』、「こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた」、熱海市の盛土崩壊事故を踏まえると、慎重にも慎重な判断が求められる。

第三に、5月16日付けCOURRiERが転載したニューヨーク・タイムズ「日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?」を紹介しよう。これは有料記事だが。無料閲覧は今月あと2本。
https://courrier.jp/news/archives/325542/#paywall_anchor_325542
・『日本には膨大な地熱エネルギーが眠っているが、不可解なことに、その豊富な資源はまったく生かされていない。なぜ安価でクリーンな純国産エネルギーを開発しないのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が答えを探ってみると、日本ならではの葛藤が見えてきた』、興味深そうだ。
・『総発電量のわずか0.3%  日本を旅する人々に愛される保養地といえば、山あいや風光明媚な沿岸部に位置する温泉リゾートだ。国内に何千ヵ所もある温泉地のなかには、何世紀にもわたって観光客でにぎわってきたところもある。 そうした温泉地のすべてを支えているのが、日本の豊富な地熱エネルギーだ。実際、日本の地下には膨大な地熱エネルギーが眠っており、発電に利用されれば、国内の石炭・ガス火力発電や原子力発電に代わる重要な役割を果たす可能性がある。 だが、地熱エネルギーの普及を目指す日本の野望は何十年もの間、驚くほど強力な温泉地の抵抗に阻まれている。 福島県の山中にたたずむ隠れ家的旅館「二岐温泉大丸あすなろ荘」の佐藤好億社長は、「地熱開発が乱立すれば、私たちの文化が脅かされる」と話す。二岐温泉は開湯1300年の歴史があるとされる。「万が一にでも私たちの温泉に何かあったら、誰が代償を払うのでしょうか」 日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる。新しくクリーンな発電方法を切望している資源の乏しい国にとって、せっかくの機会が生かされていないとアナリストらは指摘する。 この謎に対する答えの一つは、佐藤が経営する旅館のような由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている。 政府官僚や日本の電力大手、さらには製造業大手でさえ太刀打ちできない。東京に本社を置く電源開発(Jパワー)の阿島秀司は「開発を無理やり進めるわけにはいかない」と話す。地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった。 「地熱発電所は決してゲームチェンジャーにはなれませんが、(二酸化炭素を排出しない)カーボンフリーエネルギーの一翼を担うことはできると考えています」と阿島は言う』、「日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる」、その理由は、「由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている」、「地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった」、なるほど。
・『アイスランドが「再生可能エネルギー」100%で電力をまかなえている理由 「日本に必要なものはそろっている」  温泉は、岩石に浸透した雨水が地熱で温められ、数年から数十年の歳月をかけて地表に湧き出してくる自然界の小さな奇跡だ。 日本全国に点在する温泉旅館や立ち寄り湯は1万3000ヵ所を超える。入浴には厳しいルールがあり、壁の張り紙にはさまざまな言語で注意事項が書かれている。水着の着用禁止、せっけんのついた体での入湯禁止……。 一方、地熱発電所は、地下深く掘った井戸から高温の蒸気・熱水をくみ上げ、巨大なタービンを回して発電する。開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い。 京都大学名誉教授で、地熱科学の専門家である由佐悠紀は、地熱開発がもたらす影響の全容はまだ充分に理解されていないと語る。 世界5位の温暖化ガス排出国である日本は、気候関連目標を達成し、化石燃料の輸入依存を低減するため、よりクリーンなエネルギーを必要としている。2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故以降、国内の原発は多くが稼働を停止したままだ。 そうしたなか、環境に配慮した地熱発電は比較的安価であるうえ、24時間安定的に電力を供給できることから、再生可能エネルギー源として有望視されている。 2030年までに国内の地熱発電容量を3倍にすることを目指す日本政府は、国立・国定公園内の地熱開発にかかる規制を緩和し、環境アセスメント(影響評価)を迅速化することで、より多くのプロジェクトに道を開こうとしている。 NPO法人「環境エネルギー政策研究所」によると、日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る。 地熱エネルギーは「国産であり、再生可能」だと語るのは、南カリフォルニア大学のエネルギー専門家ジャック・ハイマンスだ。「日本に必要なものはすべてそろっているのです」 しかし、全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大した。 全国の温泉を代表する日本温泉協会の関豊専務理事は「国のエネルギー需要は理解している」と話す。「私たちは地熱開発に反対するために声を上げているわけではありません。ただ、野放図な大規模開発には強く警告します」』、「開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い」、「日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る」、しかし、「全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大」、やはり「温泉」側の抵抗は強力だ。
・『湯けむりに包まれる街  大分県別府では、いたるところに湯けむりがたちこめ、蒸気が通りや家々を包み込む。この数十年、大型ホテルや旅館、個人宅までもが地域の温泉を引き込み、温泉資源の著しい枯渇を招いた。 そんな状況で大規模な地熱開発はとうてい考えられないようだ。別府市役所温泉課の樋田英彦課長は「別府の文化、確立された生活様式を維持するために何をすべきか話し合っています」と語る。 別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす』、「別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす」、やはり「温泉側」の抵抗は強いようだ。
・『別府温泉 地熱エネルギー  日本政府は、地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分だと専門家たちは言う』、「地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分」、残念だ。
・『地熱と共存する湯沢温泉  秋田県の豪雪地帯・湯沢市は、地熱エネルギーを取り入れた温泉地として珍しい例だ。 初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用している。 日本は第2、第3の湯沢の誕生に期待したが、思うようにはいかなかった。1966年に国内初の商業用大型地熱発電所が運転を開始し、それから数十年の間に湯沢を含む十数ヵ所で発電所が建設された。 しかし各地の温泉旅館からの反発が強まるなか、1990年代以降は地熱発電設備がほとんど増設されていない。東芝など日本の大手メーカーが地熱タービンの世界市場を席巻しているにもかかわらず、この状況だ。各社の地熱事業に占める国内向けの割合は極めて小さい。 それゆえ、2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」 とはいえ、そんな湯沢でも問題がないわけではない。地元のある温泉旅館は2020年後半から、湯量の減少に伴い、定期的に休業せざるを得なくなった。市は、地熱開発が原因ではないとしている。 湯沢の温泉旅館の一つ、阿部旅館で働く柴田昌美は「不安がないとは言い切れません」と話す。それでも地熱エネルギーは、湯沢という街を形作る重要な要素の一つになっていると言う。「温泉と地熱の共存は可能だと思っています」』、「湯沢」の「初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用」、「2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」、「湯沢」だけは例外的に上手くいっている。これは、「湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部」の存在が大きいようだ。 
タグ:エネルギー (その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?) 日刊SPA!「“太陽光パネル”の知られざる闇。「米ができない」農家が嘆く理由とは」 「中国系企業が運営する太陽光発電所」で「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません」、やれやれ、「中国系企業」らしい。 「ヒ素、鉛など有害物質が検出」とは深刻だ。自治体は工事業者に現状回復命令などを出したのだろうか。 「新築住宅太陽光パネル設置義務条例」は「東京都」が制定したようだが、全国レベルでも規制すべく、法制化すべきだろう。 東洋経済オンライン 河野 博子氏による「埼玉・小川町メガソーラー、事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景」 「小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない」のであれば、「誤解」との認識は事実誤認だ。 「高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい」、そんな案件を「認可」取り消しするべきだが、大義名分に欠けるのだろうか。 「事業敷地の治水蓄雨高・・・はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」・・・パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定」。「事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘」、「水源地域」の「雨水浸透能力を奪ってしまう」 のはやはり大きな問題だ。 「こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた」、熱海市の盛土崩壊事故を踏まえると、慎重にも慎重な判断が求められる。 COURRIER ニューヨーク・タイムズ「日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?」 「日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる」、その理由は、「由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている」、「地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった」、なるほど。 「開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い」、 「日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る」、しかし、「全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大」、やはり「温泉」側の抵抗は強力だ。 「別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす」、やはり「温泉側」の抵抗は強いようだ。 「地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分」、残念だ。 「湯沢」の「初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用」、 「2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。 「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」、「湯沢」だけは例外的に上手くいっている。これは、「湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部」の存在が大きいようだ。
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