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エネルギー(その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?) [産業動向]

エネルギーについては、昨年4月11日に取上げた。今日は、(その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?)である。

先ずは、本年1月29日付け日刊SPA!「“太陽光パネル”の知られざる闇。「米ができない」農家が嘆く理由とは」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1882821/2
・『道路や水道など、生活を支えるインフラが全国各地で崩壊の一途を辿っている。しかし維持管理できない自治体も出てきているという。一体現場では何が起きているのか。全国で顕になりつつある“荒廃する日本”の実態に迫る』、興味深そうだ。
・『「米ができない」地元農家が嘆く太陽光パネルの闇  メガソーラーを巡っては、利益重視で運営を行う業者と住民間でのトラブルが全国で相次ぐ。中国系企業が運営する太陽光発電所の建設が進められている山口県岩国市もそのひとつ。市議会議員の石本崇氏はこう喝破する。 「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません。使用するパネルは、世界でもシェアを広げる格安な中国メーカーのものです」』、「中国系企業が運営する太陽光発電所」で「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません」、やれやれ、「中国系企業」らしい。
・『水田の土砂からは有害物質が検出  工事中の発電所下で農業を営む人々も重い口を開く。 「工事が始まってから水田の土砂を調査してみると、ヒ素、鉛など有害物質が検出されて、それからは稲作のできない状態が続いています」』、「ヒ素、鉛など有害物質が検出」とは深刻だ。自治体は工事業者に現状回復命令などを出したのだろうか。
・『「水害でパネルが水没することも想定すべき」  その危険性に鑑み、パネル設置を規制する条例を定める自治体も少なくないが、東京都は’22年12月、新築住宅太陽光パネル設置義務条例を制定した。東京都議会議員の上田令子氏は声を上げる。 「水害でパネルが水没することも想定すべきですよ。屋根から外れたパネルが水たまりに落ちれば、そこで勝手に発電してしまい、ガレキの片づけにあたる住民が感電する危険性もありますから」 再生可能エネルギー=環境に良いとの幻想が打ち砕かれる現実を目の当たりにした』、「新築住宅太陽光パネル設置義務条例」は「東京都」が制定したようだが、全国レベルでも規制すべく、法制化すべきだろう。

次に、4月6日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの河野 博子氏による「埼玉・小川町メガソーラー、事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664196
・『この夏で創設11年となる再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)制度。日本の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を飛躍的に伸ばした反面、太陽光発電では土砂災害、景観、自然環境破壊を懸念する地域住民との紛争が絶えない。経済産業省資源エネルギー庁は4月3日、認定失効の可能性が高い大量の案件について失効確認作業を本格化、失効分の公表を始めた。失効案件の一つ、経済産業相が厳しい勧告を出した埼玉県の「さいたま小川町メガソーラー」を例に、失効をめぐる事情を探った』、興味深そうだ。
・『事業者は失効回避に自信を見せていた  さいたま小川町メガソーラーは、国の環境影響評価(環境アセス)制度に基づいて手続き中。2022年2月、事業者による環境アセス準備書に対し、経済産業相が事業の抜本的見直しを求める異例の勧告を行い注目された。 事業者は、小川エナジー合同会社(埼玉県寄居町、代表社員=株式会社サンシャインエナジー、職務執行者・加藤隆洋氏)。官ノ倉山と石尊山の一部、約86ヘクタールに太陽光パネルを敷き、出力約3万9600kWの発電を行う計画だった。 1月28、29日の両日で小川エナジーは事業計画地近くの公民館で住民説明会を開き、経済産業相の勧告を受けて事業計画を変更すると説明した。勧告は約72万立法メートルという大量の盛り土を行い、その約半分にあたる土砂を外から搬入するという点を問題視した。 当初計画された盛り土の量は、2021年夏に起きた静岡県熱海市の土石流の起点となった源流部に盛り土された量の10倍以上。また、周辺の農家には有害物質を含む建設残土が持ち込まれるのでは、との懸念もあった。 説明会で事業者は計画変更を明らかにした。 ①外からの建設残土の搬入を一切中止する ②パネル設置方法を工夫し、地面に垂直に立てる架台を利用して傾斜をつけて並べる  会場からは事業の現実性や持続性について質問が相次いだ。それにひるむことなく加藤代表は「認定の失効にはならない。(固定価格で電気を買い取ってもらえる期間の)20年間事業を行える」と自信を見せた。 認定失効制度には、事業者側が失効を回避する手立ても用意されている。一定の期限までに電力会社の系統につなぎますという「系統への着工申し込み(系統連携着工申込書)」を出し、受領されることが失効回避の一つのステップになっている。) 1月29日の説明会終了後、住民に対応した加藤代表によると、東京電力側に着工申し込み文書を提出し、受領されたという。またこれとは別に、国の環境アセス制度に沿って手続きを進めていることを経済産業省に確認してもらう段取りも踏んでおり、「認定失効は回避された」と判断したようだ。 4月3日に公表された認定失効情報は、資源エネルギー庁のホームページの「失効情報紹介」コーナーに知りたいメガソーラーの設備IDを入力しすると、認定が失効している場合には「〇年〇月〇日以降、認定が無効です」と表示される仕組み。 「さいたま小川町メガソーラー」の設備IDを入力すると、4月1日に認定が失効していることがわかった。小川エナジーの「回避できた」という理解は「誤解」だったといえる。 電力会社に系統への着工申し込みを行う際には、県から林地開発許可を得ていることなどが要件になっている。着工申込書にそれを証明する文書を添付する必要はない。しかし申込書には、要件をクリアしていないことが判明した場合、「失効となる可能性がある」と明記されてもいる。 小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない。環境アセス手続きを早く終え、林地開発許可を得ていれば、認定失効を免れることができただろう』、「小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない」のであれば、「誤解」との認識は事実誤認だ。
・『国が認定失効制度を新設し、大量処分に踏み切った背景  認定失効制度は2020年の法改正で盛り込まれ、2022年度に本格施行された。FIT制度では、認定を受けた時点で設定される調達価格で20年間にわたり、電力会社(送配電事業者)に売電できる。小川エナジーが認定を受けたのは2017年3月で、設定された調達価格(電力会社による買い取り価格)は1kWh(キロ・ワット・時)当たり24円。 太陽光発電の場合、調達価格は大きく下がってきた。2022年度は1kWh当たり10円を切っている。いったん認定を受ければ、年数がたってからの稼働でも、認定時の高い値段で電気を売れるが、この仕組みは国民の賦課金によって支えられている。2022年度の賦課金は再生可能エネルギー全体で1kWh当たり3.45円。平均的な使用量の家庭では年1万6560円だった。 0.22円だったFIT導入時から約16倍にも膨らんだ賦課金。当然批判は強く、国民負担の増大抑制が喫緊の課題となった。経済産業省は「高い調達価格の権利を保持したまま運転を開始しない案件が大量に滞留する」(資源エネルギー庁)事態に、メスを入れる必要に迫られた。発電事業者の中からも「無理筋な未稼働案件が消えてくれれば、容量が限られている電力会社の送配電網を優良な事業で使える」との声が出ていた。) 高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい、2022年4月に経済産業、環境、国土交通、農林水産の4省のもとで再エネ発電設備の適正導入・管理の検討会を設けた。 背景には「地域で太陽光発電イコール悪という認識が広まってしまうと、脱炭素の取り組みが難しくなる」(環境省)という危機感があった』、「高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい」、そんな案件を「認可」取り消しするべきだが、大義名分に欠けるのだろうか。
・『小川メガソーラーはどうなる  FIT認定の失効を受け、小川エナジーはどうするのか。3月31日、小川エナジーに電話したところ、同社の加藤代表は「失効については聞いていない。環境アセス準備書に対する経産相の勧告を受け、昨年末まで調査を続け、評価書を出す準備を進めているところだ。事業を中止するという噂は何回も流されたが、そういう事実はない」と話した。 確かに、FIT認定失効イコール事業中止ではない。固定価格買い取り制度による売電のほかにも、電力の売り先企業を探して相対取引で売電するなど太陽光発電事業を行う方法はある。 しかし、さいたま小川メガソーラー事業の実現には、いくつものハードルがある。特に、住民団体「比企の太陽光発電を考える会」が事業の悪影響について調査を続け、小川町、埼玉県、国に事業化への懸念を伝えていることは大きい。3月21日には「雨水を浸透させ、蓄える能力」が事業地の土地にどのくらいあるかの調査が行われた。 「比企の太陽光発電を考える会」の依頼を受けて調査を実施したのは、法政大学エコ地域デザイン研究センターの神谷博・客員研究員。事業地内の4カ所でインフィルトロメーターという透明なプラスチック製の筒状の計測器を使い、地面の雨水浸透能力を測った。地面に置いた計測器に用意した水を入れ、筒の中を下がった水面の高さを30秒ごとに読み取っていった。 その結果、事業敷地の治水蓄雨高(単位面積当たりの雨をしみ込ませる能力)はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」(神谷研究員)。 パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定された。事業地は森林土壌が比較的薄く、全体として保水性の乏しい丘陵地として知られており、それが裏付けられた形だ。) 神谷研究員は土地の雨水浸透能力に着目する理由をこう説明する。「2014年の水循環基本法制定、雨水利用推進法施行により、雨水の流出を抑え、地下浸透を促進することが求められている」。また事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘する。 資源エネルギー庁の認定失効情報検索サイトによると、さいたま小川町メガソーラーのほかにも埼玉県内で地域住民の反対があるメガソーラーの認定が失効していた』、「事業敷地の治水蓄雨高・・・はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」・・・パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定」。「事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘」、「水源地域」の「雨水浸透能力を奪ってしまう」のはやはり大きな問題だ。
・『地域や自治体とのトラブル案件の認定失効続々  埼玉県日高市で、2019年8月に公布・施行された「日高市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」により太陽光発電事業が禁止された区域内に計画地があったため、事業を進められなくなったメガソーラーも「4月1日以降、認定が無効」となった。 さいたま小川町メガソーラーの事業地近くの炭鉱跡地の丘に計画されているメガソーラー、やはり小川町内の谷津にある棚田に隣接した遠ノ平山に計画されたメガソーラーをめぐっては住民の反対が根強いが、この2件については「2023年4月1日に失効期限日を超過している可能性があり、認定状況を確認中」との表示が出た。 こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた。 西村康稔経済産業相は3月31日、閣議後の記者会見で2022年度末の失効見込み数を「50000件」程度、その容量の総計を「約400万kW」としている。しかし、現時点で全国の失効総数については明らかにしていない。確認作業を進めており、失効が確認されたケースから五月雨式に公表しているとみられる』、「こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた」、熱海市の盛土崩壊事故を踏まえると、慎重にも慎重な判断が求められる。

第三に、5月16日付けCOURRiERが転載したニューヨーク・タイムズ「日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?」を紹介しよう。これは有料記事だが。無料閲覧は今月あと2本。
https://courrier.jp/news/archives/325542/#paywall_anchor_325542
・『日本には膨大な地熱エネルギーが眠っているが、不可解なことに、その豊富な資源はまったく生かされていない。なぜ安価でクリーンな純国産エネルギーを開発しないのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が答えを探ってみると、日本ならではの葛藤が見えてきた』、興味深そうだ。
・『総発電量のわずか0.3%  日本を旅する人々に愛される保養地といえば、山あいや風光明媚な沿岸部に位置する温泉リゾートだ。国内に何千ヵ所もある温泉地のなかには、何世紀にもわたって観光客でにぎわってきたところもある。 そうした温泉地のすべてを支えているのが、日本の豊富な地熱エネルギーだ。実際、日本の地下には膨大な地熱エネルギーが眠っており、発電に利用されれば、国内の石炭・ガス火力発電や原子力発電に代わる重要な役割を果たす可能性がある。 だが、地熱エネルギーの普及を目指す日本の野望は何十年もの間、驚くほど強力な温泉地の抵抗に阻まれている。 福島県の山中にたたずむ隠れ家的旅館「二岐温泉大丸あすなろ荘」の佐藤好億社長は、「地熱開発が乱立すれば、私たちの文化が脅かされる」と話す。二岐温泉は開湯1300年の歴史があるとされる。「万が一にでも私たちの温泉に何かあったら、誰が代償を払うのでしょうか」 日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる。新しくクリーンな発電方法を切望している資源の乏しい国にとって、せっかくの機会が生かされていないとアナリストらは指摘する。 この謎に対する答えの一つは、佐藤が経営する旅館のような由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている。 政府官僚や日本の電力大手、さらには製造業大手でさえ太刀打ちできない。東京に本社を置く電源開発(Jパワー)の阿島秀司は「開発を無理やり進めるわけにはいかない」と話す。地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった。 「地熱発電所は決してゲームチェンジャーにはなれませんが、(二酸化炭素を排出しない)カーボンフリーエネルギーの一翼を担うことはできると考えています」と阿島は言う』、「日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる」、その理由は、「由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている」、「地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった」、なるほど。
・『アイスランドが「再生可能エネルギー」100%で電力をまかなえている理由 「日本に必要なものはそろっている」  温泉は、岩石に浸透した雨水が地熱で温められ、数年から数十年の歳月をかけて地表に湧き出してくる自然界の小さな奇跡だ。 日本全国に点在する温泉旅館や立ち寄り湯は1万3000ヵ所を超える。入浴には厳しいルールがあり、壁の張り紙にはさまざまな言語で注意事項が書かれている。水着の着用禁止、せっけんのついた体での入湯禁止……。 一方、地熱発電所は、地下深く掘った井戸から高温の蒸気・熱水をくみ上げ、巨大なタービンを回して発電する。開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い。 京都大学名誉教授で、地熱科学の専門家である由佐悠紀は、地熱開発がもたらす影響の全容はまだ充分に理解されていないと語る。 世界5位の温暖化ガス排出国である日本は、気候関連目標を達成し、化石燃料の輸入依存を低減するため、よりクリーンなエネルギーを必要としている。2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故以降、国内の原発は多くが稼働を停止したままだ。 そうしたなか、環境に配慮した地熱発電は比較的安価であるうえ、24時間安定的に電力を供給できることから、再生可能エネルギー源として有望視されている。 2030年までに国内の地熱発電容量を3倍にすることを目指す日本政府は、国立・国定公園内の地熱開発にかかる規制を緩和し、環境アセスメント(影響評価)を迅速化することで、より多くのプロジェクトに道を開こうとしている。 NPO法人「環境エネルギー政策研究所」によると、日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る。 地熱エネルギーは「国産であり、再生可能」だと語るのは、南カリフォルニア大学のエネルギー専門家ジャック・ハイマンスだ。「日本に必要なものはすべてそろっているのです」 しかし、全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大した。 全国の温泉を代表する日本温泉協会の関豊専務理事は「国のエネルギー需要は理解している」と話す。「私たちは地熱開発に反対するために声を上げているわけではありません。ただ、野放図な大規模開発には強く警告します」』、「開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い」、「日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る」、しかし、「全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大」、やはり「温泉」側の抵抗は強力だ。
・『湯けむりに包まれる街  大分県別府では、いたるところに湯けむりがたちこめ、蒸気が通りや家々を包み込む。この数十年、大型ホテルや旅館、個人宅までもが地域の温泉を引き込み、温泉資源の著しい枯渇を招いた。 そんな状況で大規模な地熱開発はとうてい考えられないようだ。別府市役所温泉課の樋田英彦課長は「別府の文化、確立された生活様式を維持するために何をすべきか話し合っています」と語る。 別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす』、「別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす」、やはり「温泉側」の抵抗は強いようだ。
・『別府温泉 地熱エネルギー  日本政府は、地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分だと専門家たちは言う』、「地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分」、残念だ。
・『地熱と共存する湯沢温泉  秋田県の豪雪地帯・湯沢市は、地熱エネルギーを取り入れた温泉地として珍しい例だ。 初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用している。 日本は第2、第3の湯沢の誕生に期待したが、思うようにはいかなかった。1966年に国内初の商業用大型地熱発電所が運転を開始し、それから数十年の間に湯沢を含む十数ヵ所で発電所が建設された。 しかし各地の温泉旅館からの反発が強まるなか、1990年代以降は地熱発電設備がほとんど増設されていない。東芝など日本の大手メーカーが地熱タービンの世界市場を席巻しているにもかかわらず、この状況だ。各社の地熱事業に占める国内向けの割合は極めて小さい。 それゆえ、2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」 とはいえ、そんな湯沢でも問題がないわけではない。地元のある温泉旅館は2020年後半から、湯量の減少に伴い、定期的に休業せざるを得なくなった。市は、地熱開発が原因ではないとしている。 湯沢の温泉旅館の一つ、阿部旅館で働く柴田昌美は「不安がないとは言い切れません」と話す。それでも地熱エネルギーは、湯沢という街を形作る重要な要素の一つになっていると言う。「温泉と地熱の共存は可能だと思っています」』、「湯沢」の「初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用」、「2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」、「湯沢」だけは例外的に上手くいっている。これは、「湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部」の存在が大きいようだ。 
タグ:エネルギー (その11)(“太陽光パネル”の知られざる闇 「米ができない」農家が嘆く理由とは、埼玉・小川町メガソーラー 事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景、日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?) 日刊SPA!「“太陽光パネル”の知られざる闇。「米ができない」農家が嘆く理由とは」 「中国系企業が運営する太陽光発電所」で「太陽光パネルが破損し、有害物質が流出したのではと疑念を持つ人も少なくありません」、やれやれ、「中国系企業」らしい。 「ヒ素、鉛など有害物質が検出」とは深刻だ。自治体は工事業者に現状回復命令などを出したのだろうか。 「新築住宅太陽光パネル設置義務条例」は「東京都」が制定したようだが、全国レベルでも規制すべく、法制化すべきだろう。 東洋経済オンライン 河野 博子氏による「埼玉・小川町メガソーラー、事業化困難で大誤算 経産省が大量の認定失効に踏み切った背景」 「小川エナジーは、埼玉県からの林地開発許可をまだ受けていない」のであれば、「誤解」との認識は事実誤認だ。 「高い調達価格で電気を売れる権利を持ったまま運転を開始していない案件の中には、地元住民から反対の声が高いケースがある。国は「地域との共生」をうたい」、そんな案件を「認可」取り消しするべきだが、大義名分に欠けるのだろうか。 「事業敷地の治水蓄雨高・・・はソーラーパネルを設置した場合に37mmと算定された。「一戸建てが並び、敷地面積の半分は建物で、そのほかにも駐車スペースなどがあり、雨がしみ込む場所が少ない住宅地とほぼ同程度」・・・パネルを設置せず、現状のままの林地の場合、治水蓄雨高は60mmと算定」。「事業地の大部分は「埼玉県水源地域保全条例」により水源地域に指定され、多くのため池や集落の井戸の水源地にあたるが、神谷研究員は「そこの雨水浸透能力を奪ってしまうのではないか」と指摘」、「水源地域」の「雨水浸透能力を奪ってしまう」 のはやはり大きな問題だ。 「こうした案件に共通するのは、なだらかな丘陵の山林に計画されたこと。大雨の際の土砂崩れの恐れや景観の破壊を挙げ、周辺住民が懸念を強めていた」、熱海市の盛土崩壊事故を踏まえると、慎重にも慎重な判断が求められる。 COURRIER ニューヨーク・タイムズ「日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」を米紙が報道─なぜ純国産エネルギーを利用しないのか?」 「日本は世界3位の地熱資源国とされるが、不可解なことに、その豊富な資源をほとんど利用していない。総発電量に占める地熱発電の割合は約0.3%にとどまる」、その理由は、「由緒ある温泉にある。こうした旅館は何十年もの間、ミネラル成分の豊富な泉質に害が及ぶことを恐れ、地熱開発に抵抗してきた。 佐藤はあすなろ荘に水流と水温をリアルタイムで計測できるモニタリング装置を設置し、全国の温泉地にも同様の対応を呼びかけている。「日本秘湯を守る会」の会長を務める佐藤は、地熱開発反対運動の陣頭指揮を執っている」、「地熱発電所を国内で1ヵ所のみ運営するJパワーは、過去数十年の間、多数の地熱開発を断念せざるを得なかった」、なるほど。 「開発事業者によると、地熱発電所は温泉の地下深くにある源泉を利用するため、どちらか一方が他方に影響する可能性は低い。 それでも、温泉と地熱の関係は依然として謎めいた部分がある。温泉の流れが変わった場合、その原因を突き止めるのは難しいことが多い」、 「日本が地熱資源をすべて発電用に開発した場合、総電力の約10%を供給できる。これは2019年の水力、太陽光、風力、原子力の発電量を上回る」、しかし、「全国各地の地方自治体はこのところ新たな規制を導入している。 草津温泉で知られる群馬県草津町は2022年、地熱開発が地元の温泉に影響しないことを証明するため、掘削事業者に町から許可を得ることを義務付ける条例を可決した。厳しいハードルが設けられたといえる。 日本一温泉の多い大分県は最近、国内最大の温泉地とされる別府市の掘削禁止区域を拡大」、やはり「温泉」側の抵抗は強力だ。 「別府から65キロほど離れた場所には、国内最大の地熱発電所、九州電力の八丁原発電所が建っている。運転開始から40年余りがたつが、同社はこれ以降、同規模の発電所を建設できていない。 九州電力の地熱部グループ長の千手隆徳は「(建設の)受け入れに前向きな場所を見つけるのは難しい」と明かす」、やはり「温泉側」の抵抗は強いようだ。 「地熱発電などの再生可能エネルギーの売電価格に一定の補助を上乗せする制度を導入した。この補助金制度「FIP」により、最近は小規模の地熱開発が盛んになっている。ただ、制度導入後に建設された発電所のほとんどは、おそらく数百世帯分の電力を賄う規模にとどまる。そうすることで環境アセスメントや規制を回避できるからだ。 しかし、日本のエネルギー市場全体に大きな影響を与えるには不充分」、残念だ。 「湯沢」の「初期開発を手がけた同和鉱業(現DOWAホールディングス)は、湯沢市出身の優秀な学生を採用したり、地元の祭りに職員を派遣したりするなど、地域社会のリーダーを巻き込んで計画を進めた。 自治体側も、人里離れた地域で新たな産業を育てることに意欲的だった。地元の酪農家は現在、牛乳やヨーグルトの低温殺菌処理に地熱を利用」、 「2019年に湯沢で山葵沢地熱発電所が運転を開始したことは、突破口の一つとなった。約10万世帯の電力を賄える大規模地熱発電所の新規稼動は、国内では実に23年ぶりだった。 湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部の岩田峻は、日本の地熱開発が直面する最も困難な課題は地質や技術とは関係がないと話す。 「それ以上に重要なのは、地域社会に働きかけ、関係を築くことです」、「湯沢」だけは例外的に上手くいっている。これは、「湯沢で20年近く地元住民の理解向上に取り組んだ同和鉱業元幹部」の存在が大きいようだ。
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百貨店業界(その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声) [産業動向]

百貨店業界については、2021年9月9日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声)である。

先ずは、昨年2月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/296175
・『西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し。資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へ方針転換を図り、ウィズコロナ時代に生き残りをかける』、興味深そうだ。
・『ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設を海外ファンドに売却  西武ホールディングス(HD)は、ホテルなど31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。今回の決定の背景には、新型コロナウイルス感染再拡大など経営環境が激変する中で、生き残るために資産売却に踏み切らざるを得ない危機感がある。 西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる。 資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる。 国内外でコロナ変異株・オミクロン株の影響が深刻化し、人流や物流が寸断あるいは不安定な状況が続いている。そうした状況下、「ウィズコロナ」の経済運営に取り組む国や企業が増えている。西武HDがウィズコロナ時代において、どのように効率的なアセットライト経営を実現し、新しいビジネスモデルを作り出すことができるか注目される』、「西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる」、「資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる」、結構なことだ。
・『ウィズコロナ時代に生き残りを目指す西武 交通や飲食、宿泊は以前と同様には戻らない  当面、世界経済はウィズコロナを余儀なくされる。どこかの時点では感染を克服するだろうが、いつまた違う変異株が出現するかわからないため、先行きは見通しづらい。 不確定要素が増大する環境下で企業が生き残るためには、身軽になって損益分岐点を引き下げ、収益を獲得しやすい体制整備が不可欠だ。西武HDがアセットライト経営に大胆にかじを切った背景には、そうした危機感がある。 コロナ禍で人々の生き方は激変した。交通や飲食、宿泊などの業界では、コロナ禍以前と全く同じ様相には戻らないだろう。ただし、それは単純に需要が減退するだけでなく、新しい価値観を生み出してもいる。 例えば、ワーケーションやテレワークの一環としてホテルを利用する人が増えている。シェアオフィスを利用する手もあるが、落ち着いた環境で安心して仕事をするのに、相応のサービスが行き届いたホテルやレジャー施設の利用に意義を感じる人が多い。「ホテルは宿泊施設」という既成概念は、コロナ禍の発生によって崩れた。また、コロナ禍を境にアウトドアやキャンプの需要も急増している。  感染状況が落ち着けば、国内の観光需要は急速に回復する可能性が高い。飲食や宿泊、音楽イベントへの参加など、これまで我慢してきた需要(ペントアップ・ディマンド)が一気に表出する。その際にホテル・レジャー施設やイベントの運営者が、どれだけ鮮烈な参加体験を提供できるかが、中長期的な収益獲得に大きく影響する。 西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める。 グループ経営としては建設子会社を売却する一方、ホテル運営に特化した新会社、西武・プリンスホテルズワールドワイドを設立し、構造改革を加速させる』、「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、「消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす」、どんな「体験の場」が出てくるのだろう。
・『世界最大手ホテルチェーン 米マリオットもアセットライトを推進   2021年5月に西武HDが発表した中期経営計画では、アセットライトをテーマに経営改革を断行すると明記された。その後、所有するホテルなどの売却先を探し始め、2月10日に売却先と内容の詳細を発表した。 アセットライト経営とは、バランスシート上の資産(アセット)を圧縮して、財務面の負担を軽く(ライトに)する経営をいう。今回、西武HDは資産を投資ファンドに売却することで、事業運営の効率性向上が期待される。 具体的には、保有資産の減少はコスト削減につながる。また、得られた資金を成長期待の高い分野に再配分することによって、資本の収益率は高まる可能性がある。売却資金を負債返済に充てる場合、財務内容は改善するだろう。 事業運営の観点から考えると、新しいサービスの創出やホテルブランドの価値向上などに集中しやすくなる。その成果によって、投資ファンドなどホテルの所有者は利得を手にする。 もし、期待する利得が実現できなければ、オーナーは別の企業に運営を任せようとするだろう。アセットライト経営によって、所有を前提としたビジネスモデルは大きく変わる。 海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう』、「海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ」、「ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、その通りだ。
・『施設の魅力を磨くだけでなく潜在的な顧客の目を向けさせることが必要  今後の注目点は、西武HDがいかに高付加価値型のサービスを創出できるかだ。20年に実施された国の支援策、Go Toトラベルキャンペーンの際、多くのシニアが自宅から近いエリアで旅行を楽しんだ。特に、首都圏からほど近い箱根や軽井沢などのリゾートが多くの人気を集めた。 どんなに困難な状況下でも、私たちは「日常と異なる空間を楽しみたい」という欲求がある。国の家計調査によると、60歳を超える世代の貯蓄額は、他の世代を大きく上回る。シニア層のレジャーへの支出余地は大きい。 ウィズコロナで、感染に留意しつつ自宅から1~2時間圏内で旅行を楽しむ「マイクロツーリズム」への潜在的な需要は増えるだろう。また、訪日外国人(インバウンド)需要は蒸発しているが、「コロナ禍が収束すれば日本を訪れたい」と考えている外国人は多い。そうした需要を取り込み、業績の回復と拡大につなげるためには、客単価の高い富裕層向けビジネスの強化も必要だ。 西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか。 そうした取り組みが成果につながれば、新しいホテル運営会社がグループ外施設の運営を受託する展開もあるだろう。アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている』、「西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか」、「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、その通りだ。

次に、3月9日付けAERAdot「西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2023030800031.html?page=1
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)が子会社の「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する。注目はフォートレスと連携する家電量販ヨドバシホールディングスの動向だ。西武池袋本店などへの出店が取りざたされるが、元西武百貨店社長の水野誠一さん(76)は「三つのハードルがある」と指摘する(Qは聞き手の質問、Aは水野氏の回答)。 Q:かつて売り上げ日本一を誇ったそごうと、消費文化をリードしたセゾングループの中核を担った西武百貨店は、ともに経営危機に陥り、統合して持ち株会社制に移行した。その持ち株会社(現そごう・西武)は2006年にセブン&アイHDの完全子会社となったが、低価格専門店やネット通販の台頭で閉店は止まらなかった。 21年度までの10年間で赤字は7度にのぼる。 A:私は西武百貨店にいた当時から「百貨店は中途半端な存在だ」と言っていました。マーケットが成熟し、合理性では量販店に、専門性では専門店に、利便性ではコンビニにかなわなくなっていた。これでは消費の高度化に対応できません。「百貨店には一通りの商品があるけど欲しいものがない。そんな業態になるぞ」って。 社長になる話があった時は社内に総投資額約3千億円の出店計画がありましたが、堤清二さん(元セゾングループ代表)に「全部やめたい。先を考えると店を減らして質の高さを目指すべきだと思う」と言って、すべての投資計画をやめたんです。 地域一番店以外の既存店は、ロフトのような専門大店に転換すべきだと考えていました。全国百貨店の総売り上げは当時約10兆円でしたが、「20~30年で半分になるだろう」と取材に答えたこともあります。実際、そうなりました。 前任社長時代の不祥事が発覚し、後処理を見届けた上で辞任しましたが、その後の西武は「普通の百貨店」に逆行してしまい、セブン&アイHDの傘下に入ってからも閉店が進みました。店の質的な変革はなく、売り場を取引先に任せ、ボリュームゾーンだった平場(既製服売り場のように一般的商品を集めた売り場)は利益を生まなくなっています。) 若い人も来てくれません。専門大店をもっと拡充すべきでした。 Q:フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上しているという。ただ、水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武との信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか』、「フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上」、しかし、「水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武との信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか」、「ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか」。「調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された」、確かに「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しい」、ようだ。
・『百貨店の役割を理解しているか  A:私はヨドバシカメラを否定しているわけではありません。大阪の梅田では複合商業施設を運営していますし、必需品を中心にネット販売も大いに結構だと思います。配送態勢がしっかりしていて便利ですから私も時々利用しています。 ただ、百貨店の役割と意味をどれほど理解しているのでしょうか。百貨店はお客様にじっくりと商品を試していただき、店員と商品にまつわる会話を楽しんでいただき、豊かな気分でお買い上げいただく。そうしたプロセスを楽しんでいただく場所です。物質的な充足を得る文明的消費ではなく、心の豊かさにつながる文化的消費を提供するのが役割で、売り方なども含めたクオリティーが問われます。つまり存在意義が異なるのです。) エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入したものですが、(西武池袋本店の)現在の最適な場所から、ヨドバシの都合で移動しろということになれば、かなりの軋轢(あつれき)が生じることになるでしょう。ヨドバシの名前がついている店舗にブランド品を買いに来るのかという問題もあります。 ヨドバシカメラと百貨店の混在は、私はありえないと思います。 Q:昨年12月には豊島区の高野之夫区長(今年2月に死去)が西武池袋本店の存続を西武鉄道の親会社の西武ホールディングスに嘆願した。池袋の文化戦略の中心が西武だとして、ヨドバシの参入により文化のまちの土壌が喪失してしまうと訴えたが……。 A:高野さんは池袋を文化都市にする強い思いを持っておられました。美術館をいち早くつくり、書籍や音楽の専門店も立ち上げた西武に対し、文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました。街に人を呼ぶには演劇や映画、食事、買い物など総合的なアートやアミューズメントが必要ですし、百貨店も画廊や展覧会、催事などにもっと注力しなければいけません』、「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入した」、かつての「西武」は先進的だったようだ。「文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました」、なるほど。
・『「初めて」のもの強く求められる  百貨店は入居するブランドのおかげで一定の客が動員できるので、自ら文化的魅力を作り上げる力が退化しています。その結果どの百貨店も差異がなくなってしまっています。その代わりブランド側が文化的発信をしています。 いまルイ・ヴィトンではアーティストの草間彌生さんとのコラボが人気です。伝統にあぐらをかくのではなく、新しい文化を先取りして進化し続けているわけです。 Q:かつての西武百貨店はどんな店だったのだろうか。水野さんは高校生時代に、流行し始めていたアイビールックのブランドを扱う西武百貨店に興味を持ち、通い始めたという。 A:大阪で産声を上げた「VAN」が、東京では池袋の西武など数カ所にしかなかったんです。西武は情報に敏感だと感じ、始終入り浸っていた思い出があります。入社後は婦人服の売り場に配属されました。) 若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです。 お客様に「初めて」のものをどれだけ提供できるか。これはいまも変わらない百貨店の役割ですし、今後はむしろそれが強く求められる時代になっていくのではないでしょうか。 Q:では水野さんならどうするのか。 A:様々なサブカルチャーやライフスタイルを打ち出す専門店の集積に力を入れます。現代は「必要なモノ」はいくらでもネットで買える時代ですから、まさに「欲しくなるモノ」を見つけられなければ、専門店や百貨店までわざわざ来てくれない。 また、同じモノを売ればおのずから価格競争に陥ってしまいます。デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です。 さらに世界に目を向けると、欧州ではSDGsの時代に即して、人や社会、環境に配慮したエシカル消費に特化した小型百貨店が出現しています。また中国の北京にある「SKP」という小ぶりな百貨店はハイブランドに特化し、店内に最新のアートロボットなどを展示するなどアミューズメント性のある店づくりを進め、年間2千億円以上売り上げています。 今回の売却話は、百貨店のあり方をゼロから考え直すラストチャンスだと思うのですが……』、「若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、かつての「西武」は堤の影響もあって、文化的な香りがあり、「絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、なるほど。「デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です」、やはり「ヨドバシカメラと百貨店の」相性は悪いようだ。

第三に、5月15日付け東洋経済オンライン「そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声」を紹介しよう。
・『業績は絶好調のセブン&アイ・ホールディングス。しかし物言う株主から揺さぶられて袋小路から抜け出せない。『週刊東洋経済』5月15日(月)発売号では「漂流するセブン&アイ」を特集。イトーヨーカ堂の改革やそごう・西武売却の舞台裏を徹底取材、なぜ構造改革を進められないのかその理由を探る。「抵抗するなら(そごう・西武の)社長をさっさと交代させるしかないんじゃないか!」 今年2月、セブン&アイ・ホールディングスの本社では、こんな怒鳴り声が響いた。 事情に詳しい関係者によれば、声の主はフォートレス・インベストメント・グループ日本法人の山下明男氏。セブン&アイから傘下の百貨店、そごう・西武の全株式を購入する契約を結んでいる米投資ファンドの日本代表だ。 山下氏は、「机をたたきながら、かなり怒っていた」(セブン&アイ関係者)というが、それも無理はない。セブン&アイが契約を一向に実行せず、期日の延期を繰り返しているからだ。 2022年2月、セブン&アイはコンビニエンスストア以外の事業からの撤退を求める米バリューアクト・キャピタル・マネジメントに応える形でそごう・西武の売却を決断。2度の入札を経て、11月11日にフォートレスに全株式を2000億円超で売却する契約を締結した』、「米投資ファンドの日本代表」が怒るのも当然だ。
・『契約が実行されないばかりかメドさえ立たず  ところがだ。期日の2月1日になっても契約が実行されないばかりか、メドさえ立たず、セブン&アイは「3月中」に実施すると期日を延期したのだ。 「延期になっている障害が何も解消していないのに、解決しますから大丈夫です』と繰り返していた。それで結局、契約を実行できないのだから山下さんも怒るよ」とセブン&アイ関係者はあきれる。 しかし、いよいよ3月に入って延ばした期日さえ守れそうにないことがわかると、さすがに井阪隆一社長ら幹部は慌てて、対処方法の検討を始める。そこで出たのが、①2月、3月と延期したから、さらに4月まで延期、②株主総会前の5月に延期、③期限を定めない無期限延期、の3案だった。) 最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択。3月30日になって、「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表した』、「最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択・・・「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表」、無責任な姿勢だ。
・『仕切り直すべしとの声も  投資ファンドの幹部たちが、「無期限延期なんて、聞いたことがない史上最低のディール」と口をそろえる今回の売却劇。話がまとまらないのは、フォートレスが家電量販大手のヨドバシホールディングスをビジネスパートナーに選んだことにある。 ヨドバシは多額の資金を拠出し、西武池袋本店や、そごう千葉店の一部などの不動産を取得する見込み。そこにヨドバシカメラを出店する意向だ。関係者によると、ヨドバシは西武池袋本店について、「当初、最も好立地の本館北エリア地下1階から地上6階への出店を主張していた。それが今では中央エリアや別館にも拡大し、全体の5割をよこせと言っている」。フォートレスの山下氏もセブン&アイに「四の五の言わずに半分、よこせばいいんですよ」と言い放ったという。) だが百貨店の顔である1階を含めた半分がヨドバシの店舗になるのは、そごう・西武としては受け入れがたい。ヨドバシと隣り合わせになる高級ブランドが逃げるのは必至で、客離れが加速し事業継続すら危ぶまれかねないからだ。 こじれているのはそれだけではない。フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ。 「契約に盛り込まれているなら即座に話し合いの場を持ち、時間をかけて説得に当たるべきなのに、井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」(そごう・西武関係者)との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」(西武HD関係者)との見方がもっぱらだ』、「フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ」、「井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」・・・との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」、放置してきた「井阪社長」の責任は重大だ。
・『組合側も態度を硬化  組合側も態度を硬化させている。「インサイダー情報に当たる」としてセブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」(投資ファンド幹部)なのだ。 さらにここにきて混迷に拍車をかける出来事が起きている。売却話が出てから1年が経過した今年2月、セブン&アイの株主が取締役を相手取り、売却の差し止めを求める仮処分を申し立てたのだ。東京地裁は却下したものの株主はこれを不服とし、東京高裁に即時抗告。近々、取締役を相手取り、株主代表訴訟にも打って出る構えだ。 「ここまできたら一度、ディールを取りやめ、仕切り直すべきではないか」と市場関係者は口をそろえる。だが、そうなればフォートレスはヨドバシに多額の違約金を支払わなくてはならなくなり、認めるはずがない。そごう・西武の売却は袋小路から抜け出せそうにない』、「セブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」・・・なのだ」、「セブン&アイが説明してこなかったため」、問題をこじらせた責任は極めて重い。「井坂」氏が「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした」とは、信じられないような不手際だ。本当にどうするつもりなのだろう。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 百貨店業界 (その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声) 真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」 「西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる」、「資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる」、結構なことだ。 「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、「消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす」、どんな「体験の場」が出てくるのだろう。 「海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ」、「ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、その通りだ。 「西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか」、 「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、その通りだ。 AERAdot「西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」」 「フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上」、しかし、「水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武と の信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか」、 「ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか」。「調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された」、確かに「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しい」、ようだ。 「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入した」、かつての「西武」は先進的だったようだ。「文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました」、なるほど。 「若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、 かつての「西武」は堤の影響もあって、文化的な香りがあり、「絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、なるほど。「デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です」、やはり「ヨドバシカメラと百貨店の」相性は悪いようだ。 東洋経済オンライン「そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声」 「米投資ファンドの日本代表」が怒るのも当然だ。 「最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択・・・「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表」、無責任な姿勢だ。 「フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ」、「井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」・・・との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」、放置してきた「井阪社長」の責任は重大だ。 「セブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」・・・なのだ」、「セブン&アイが説明してこなかったため」、問題をこじらせた責任は極めて重い。 「井坂」氏が「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした」とは、信じられないような不手際だ。本当にどうするつもりなのだろう。
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小売業(一般)(その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情) [産業動向]

小売業(一般)については、2021年12月11日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情)である。

先ずは、昨年5月16日付け文春オンライン「年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54008
・『天候不順による野菜の高騰、レジ袋の有料化、消費税の増額といった、生活に直結するニュースが出るたびに、「スーパーアキダイ」社長の秋葉弘道氏は、市井の景況感についてコメントを求められる。なんと、その取材量は年間300本以上。なぜ、数ある八百屋・スーパーのなかで「スーパーアキダイ」は取材先として選ばれ続けるのか。 ここでは、秋葉氏の著書『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』(扶桑社)の一部を抜粋。TV局からの取材が殺到する理由について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)』、確かにTVが取上げるのは、「スーパーアキダイ」が圧倒的に多い。
・『年間300本! テレビに出る本当の理由  近年、アキダイには年間300本以上のテレビ局の取材が来ています。 いつ頃から取材依頼が舞い込むようになったかははっきりと覚えていませんが、記憶に残っているのは、農林水産省が作成した「野菜高騰」と書かれた資料を手にしたテレビや新聞の記者さんたちが、取材でウチを訪れたのが始まりです。 その資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました。 そのことで信頼を得られたのか、徐々に取材が増え始めて、東日本大震災が起きた2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになったんです。震災によって日本の物流網が寸断され、野菜や果物の価格が高騰していたのと、原発事故によって福島県産の青果物の風評被害が懸念されていたので、当時、テレビ局のみなさんはこの点について話を聞きたがっていました。 現在では、民放をはじめ、NHKのEテレまで、テレビは地上波の全局がよく取材に来ています。なぜ、アキダイばかりに取材が集中するのか? よく聞かれる質問ですが、決して僕が目立ちたがりというわけではないのです』、「年間300本以上のテレビ局の取材が来ています」、「資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました」、記者に迎合せず、自分の主張を堂々とする姿勢が評価されたのだろう。「2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになった」、「クルーが取材の順番待ちの列を作るように」とは凄いことだ。
・『番組ディレクターが「今日、これから行ってもいいですか?」  取材を受ける理由は大きく二つあります。 一つめの理由としては、メディアの方々が野菜の価格について誰かに話を聞くにしても、たとえば大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません。だから僕のスマホには、テレビ各局の情報番組のディレクターの電話番号がたくさん入っています。当日お昼に「夕方のニュースに間に合わせたい」と電話が入っても、すぐに対応できるのはそのためです。 二つめの理由は、6店舗の八百屋を経営しているとはいえ、ウチが個人店だからでしょう。 通常、テレビ番組がどこかの企業や店に取材する場合、事前にADさんがリサーチを重ねて、ここなら大丈夫だろうと判断して取材先が決まるようです。アキダイは1日の仕入れ量が金額にして800万~1000万円ほどと個人店にしては多く、長年の付き合いで関係を構築した青果市場がいくつかあり、仕入れ値も比較的安定しています。 一般的に、個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです。 また、ウチが東京の八百屋というのも、テレビ局が取材したがる理由の一つでしょう。日本の首都で人口がもっとも多い東京は物流が多いので、地方のように隣町と野菜の値段が大きく変わるようなことはない。平均的な価格相場の中心になっているから、ウチに取材に来る民放キー局の立ち場で考えると全国放送に適しているのかもしれません』、「大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません」、「個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです」、確かに使い勝手がよさそうだ。
・『毎日市場に行き、店頭に立つから言えること  さらに言うなら、取材に答える僕は経営者ではあるけれど、今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる。自分で言うのも何ですが、この他にも経営状況や従業員のことも把握しているし、経営者の立場で受け答えもできれば、経営者目線も消費者目線も持ち併せている……等々、引き出しが多いところがお声がけいただいている理由なのかもしれません。 関西や九州から東京に転勤してきたディレクターさんの中には、「『スーパー関係の取材で困ったら、秋葉社長は信用できるんで電話してみな』とプロデューサーに言われて、連絡しました」という人も何人かいました。とはいえ、信頼されているということは、当然、責任も生じます。 取材に答えるときに自分の責任と思っているのは、いい加減なことは言わないということ。 アキダイはいくつかの市場とお付き合いさせてもらっていて、それぞれの市場は個々の産地からの情報を持っています。そうやって貴重な情報を入手するラインがいくつもあるおかげで、産地の生産者も僕のことを知ってくれている。 だから、生産者は市場の売り子さんを介して、たとえば「洪水の影響でどの程度の被害が出たか」「大雪で今後どれくらい出荷が落ち込む見通しか」といったリアルタイムの情報を提供してくれるし、何かあれば写真をスマホに送ってきてくれることもあります。 2016年8月、北海道に1週間で三つの台風が上陸し、道東が豪雨に襲われたときも、多くの畑が冠水し、プカプカ浮いた玉ねぎが流されていく様子を撮った動画を送ってくれました。それを知ったテレビ局のディレクターにこの動画データを貸してくれと頼まれて、その日のうちにニュースで映像が放送されたのです。報道は早い者勝ちで、マスコミ各社が競争しているので、北海道に画を撮りに行っていたのでは遅すぎますからね。 こうしたことは自分の役割だと思っているんです。生産者も産地の惨状を伝えたいけれど、どう発信していいかわからない……。だから、僕はその橋渡し役を務めたい。 たとえば、豊作で生産過剰になっていたら、商品を無駄にしないために少しでも消費したいで、ウチで「今、安いからお買い得ですよ!」と一所懸命売るわけです。大したきっかけで取材を受け始めたわけじゃないのですが、多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています』、「今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる」、「多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています」、その通りだろう。
・『テレビ出演はすべてノーギャラ  店頭での取材の収録が終わり、オンエアの映像でテレビ画面の中の自分を見ると、すごく新鮮でワクワクするというのも本音です。取材にきちんと答えられていれば、それは僕の商品知識がしっかりしている証でもありますから。 取材を通して、いわば自分で自分をテストしているようなものです。普段はこうした商品知識を、お客さんに品質のいい野菜や果物を美味しく食べてもらい、喜んでもらうために役立てていますが、取材では僕の知識が正しくてタイムリーな報道に繋がる。アキダイのお客さんの役に立つことが嬉しいのと同じくらい、メディアのみなさんのお役に立てることも嬉しいんです。 ちなみに取材はすべてノーギャラで、一銭ももらったことはありません。アキダイという店の名前はずいぶん知名度が上がりましたが、僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません。誰だって街で人に道を聞かれたら教えてあげますよね。そのときにお金なんて要求しませんよね。僕からすれば、テレビの取材も一緒。 前にも述べたように、これは人のためというより自分のため。仮に、僕が困っている人を放っておいたら、その後、「あの人どうなったかな?」って気になってしょうがない。そんなふうに気を揉むのが嫌なんです。 それと、これは僕が“ブーメランの法則”と呼んでいるんですけれど、人にいいことをすると、いつか巡りめぐって自分に返ってくるような気がする。それを見込んで困っている人を助けているわけではないし、たとえ見返りがなくても、僕は放っておけないんでしょうね。 【前編を読む】「『儲かっているでしょ?』なんて言われますが…」TV番組でおなじみ“スーパーアキダイ”社長の“意外な実生活”』、「僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません」、「取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから」、なかなか感心な心構えだ。

次に、昨年6月15日付け東洋経済オンライン「「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降、外部から執行役員を新たに5人採用」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/596482
・『外からの風は、独特の世界観を持つ無印にどんな化学反応をもたらすのか。 「無印良品」を運営する良品計画が今年2月以降、セブン-イレブン・ジャパンやZOZOなど外部から、6月14日時点で5人の執行役員を採用していたことがわかった。 新たに役員に就いたのは、セブン-イレブン・ジャパンで商品本部長などを務めた高橋広隆氏、ゼネラル・エレクトリック日本法人などでの勤務経歴がある辻祥雅氏、コンサルや民泊サイト「Airbnb」日本法人での経歴を持つ長田英知氏、「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの元執行役員の久保田竜弥氏と宮澤高浩氏。 5人が加わったことにより、良品計画の執行役員は取締役兼務者も含めて30人体制となった』、興味深そうだ。
・『役員の3割近くが外部出身組に  良品計画では2021年9月、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングで過去に副社長などを歴任した堂前宣夫氏が、同社初の外部出身社長に就任。その新体制発足時にも、堂前氏と同じファストリで上席執行役員を務めた横濱潤氏ら3人の外部出身者を役員に迎えている。 高橋氏ら新役員に託す担当業務もすでに決まっており、30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ。 西友のPB(プライベートブランド)から派生した良品計画では従来、西友出身者や良品計画の生え抜き社員が順当に役員に就くケースが多かった。それが今、外部人材の登用にここまで力を入れるのはなぜなのか。) 今回の役員人事の意図について、良品計画は「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する。 2021年7月、同社は堂前社長が中心となって策定した中期経営計画を公表している。無印の店舗で実現したい具体的な事業イメージとともに、「2030年に売上高3兆円」などの数値目標を設定。それらを達成するうえで土台となる組織のあり方に関しては、「自律」や「プロ化」といった言葉をたびたび用いて、人材育成を強化する方針を掲げていた。 中計では、各店舗が地域の特産品を商品化したり、地域住民の困りごとを解決したりする、“地域密着型の個店経営”を目標に据える。自分事として地域の課題を考え、率先して行動に移せるような店長やスタッフで構成された店舗を目指す、ということだ。 その実現に当たっては、常日頃からインフラ整備や商品の開発・投入などの面で的確な支援を行えるよう、本部側の体制強化も不可欠となる。商品計画やデジタルなど各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記している』、「30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ」、「「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する」、「各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記」、「社長」自身も「外部」出身と、ずいぶんオープンな組織のようだ。
・『ZOZO出身役員の下でEC強化へ  外部人材の採用強化は、社員の意識改革を促す狙いもある。2021年10月に東洋経済が行ったインタビューで堂前社長は次のように語っていた。「(2019年に)無印に入社したとき、思った以上にトップダウン型の組織風土で、自律型の組織に変えなければと思った。力がある人に(外部から)入ってもらい、切磋琢磨してチームを強くすることが必要だ」。 長年小売業界をウォッチしている市場関係者も「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」と、同社固有の課題を指摘する。社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ。 今後は新たに就任した役員らの知見を取り入れ、事業課題や成長領域のテコ入れを一段と進める構えだ。 ZOZO出身の役員のうち、久保田氏はITサービス部門を、宮澤氏はEC(ネット通販)・デジタルサービス部門を担当する。両者はともにZOZOで子会社社長を長年務めるなど、急拡大するECビジネスの最前線においてサービス運営や技術開発に携わった実績を持つ。) 無印はほかの小売企業と同様、自社サイトを軸にECへ注力してきたが、サイトの利便性などが課題で成長が遅れていた。コロナ禍が始まった当初、巣ごもりで自社ECへの注文が殺到した際には、出荷作業が間に合わず配送の大幅な遅延が発生。物流インフラの面でも体制の脆弱さが露呈していた。 今年4月に行われた決算会見で堂前社長は「懸念はデジタルだが、(自社ECの)売り場としての整備も進み、これから売り上げが増えていくと思う。人材の体制も十分になりつつある」と言及している。 久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる』、「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」、しかし、「社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ」、「久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる」、なるほど。
・『セブンプレミアムでの知見を食品に  セブン-イレブン・ジャパン出身の高橋氏は、食品部門を担当する。同氏は商品本部長として、国内最大のPB(プライベートブランド)である「セブンプレミアム」の開発などで陣頭指揮を執った経験も持つ人物だ。 良品計画の売り上げの約1割を占める食品は、顧客の来店頻度を高める効果も期待でき、同社が近年とくに力を注ぐ分野。実際、この3年で食品カテゴリの売り上げは2倍近くに跳ね上がっている。 堂前社長も「今まではレトルトカレーやバウムクーヘンが食品の中心になっていたが、これ以外で柱となる商品を増やしたい」と意気込んでいた。 セブンプレミアムと言えば、製造元の食品メーカーなどとの密な協業体制で知られ、価格よりも品質に重点を置いた商品戦略で他社のPBと一線を画す。その開発を率いた高橋氏の知見を取り入れることで、食品の売り上げ拡大へ弾みをつける狙いだろう。 足元の業績に目を向けると、堂前社長にとって就任1年目の今2022年8月期は、厳しい情勢を強いられている。売上高の4割近くを占める衣服では商品施策が外れたことで値引き処分が増え、利益率が悪化。中国事業も上海ロックダウンなどの打撃を受けた。4月には期初に出した通期の業績予想を下方修正し、前期比で増収減益となる見込みだ。 外部からの新しい風で社内に変化を起こせるか。人材交流の成果が本格的に現れてくる来期以降、堂前体制の真価が問われることになる』、将来への布石は着実に打っているので、今後の展開が楽しみだ。

第三に、本年4月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い、減益が続く事業を拡大する裏事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322292
・『イオンが食品スーパーの「いなげや」を子会社化すると発表しました。しかしイオンの食品スーパー部門における営業利益は2年連続で減益し「ほぼ半減」状態です。なぜ、利益が減る事業を拡大するのでしょうか。その裏には3つの狙いがあるのです』、興味深そうだ。
・イオンがいなげやを子会社化 スーパー業界に激震  イオンが首都圏の食品スーパー「いなげや」を子会社化すると発表しました。現在の出資比率の17%を今年11月をめどに51%の過半数に引き上げたうえで、最終的には同じイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)に経営統合する方針です。 イオン傘下の食品スーパー部門は売上高に相当する営業収益が約2兆6400億円と、国内最大です。USMHに参加するマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東に加えて、マックスバリュ東海、中四国を地盤とするフジ、旧ダイエーの店舗や、小型スーパーのまいばすけっとなど、合計49社で構成されるのですが、今回のいなげやで50社目のメンバーが加わるわけです。 いなげやがイオンの連結子会社になる理由は、単独での成長に限界を感じたからでしょう。 歴史的経緯としては1989年のバブル当時、不動産大手の秀和に株式を買い占められる事件が起きました。バブル崩壊後、秀和の経営が行き詰まったこともあり2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました。しかし、コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます。 いなげや側の事情はこのように推察できるのですが、では、イオンの側の事情はどうでしょうか?』、「2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました」、「コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます」、なるほど。
・『イオンの食品スーパー部門は2年連続で減益、ほぼ半減に  実は、イオンの2023年2月期の本決算を眺めると食品スーパー部門は2年連続して営業利益が減り続けています。2年前の営業利益は462億円だったのですが、今期が228億円ですから利益は2年でほぼ半減。 いなげやと同じくコロナ禍、物価高騰、DX化への投資負担増など経営環境の悪化はイオンの食品スーパー部門にも等しく打撃を与えているのです。 ここで気になるのは、なぜイオンが減益の続く事業の規模を拡大しているのかということです。 経営理論としては利益が減る事業を拡大するのはあまり良い手には見えません。しかし、戦略としてこのような規模拡大が正しい打ち手になる場合が3つあります。 おそらくイオンの経営陣はこれから解説する「3つの逆手定石」を意識しているのでしょう。順に説明していきたいと思います』、「3つの逆手定石」とは何なのだろう。
・『イオンの強みは子会社の成功を全体に還元できること  減益部門の規模拡大が経営戦略的に正しい場合の一つ目の条件は「全体としては苦境だが、その中にうまくやっている地域や子会社があって、その成功を全体に移植できる場合」です。 イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです。 イオンのスーパー事業にはたとえば「コンビニキラー」と呼ばれる“まいばすけっと”があります。私の住んでいる東京都新宿区には「コンビニと同じくらいの密度でお店があるのではないか」と思えるほど、たくさんのまいばすけっとがあります。 近くにあって便利なうえに、コンビニではなくスーパーの価格で安く買い物ができますから住民としては使いやすい。コンビニの客を奪うことからコンビニキラーと呼ばれるのですが、このやり方が首都圏で通用するのであれば、全国の同じような事情の地域に同じように出店していくことで全国のコンビニの顧客を奪えるかもしれません。 また今期の営業減益の要因でみると旧ダイエー、カスミ、マルエツ、マックスバリュ西日本、マックスバリュ東海などが軒並み営業利益を減らしているのですが、中四国のフジは営業増益に貢献しています。 このように規模が大きいことを活用して、一部の成功を全体へと拡大していくことができれば、減益下での規模の拡大は経営戦略として成立します。これが一つ目の条件です』、「イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです」、その通りなのだろう。 
・『DX投資は大規模スーパーほどメリットが大きい  二つ目の条件は、共通して使える大規模投資が必要なケースです。スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です。 食品スーパー部門では多くのオペレーションは人力に頼る必要があり、規模が大きくなると逆に営業経費がかさむというデメリットも大きかったものです。しかしDXでの自動化が進めば進むほど、規模は利益につながります。 イオングループで面白いと思うのは、ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます。これが逆手定石の2つ目の条件です』、「スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です」、「ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます」、なるほど。
・『イオンは赤字要因縮小を予想しているのではないか  そして3つ目はこれまでの赤字要因の縮小が確実に見込める場合です。イオンの食品スーパー部門が減益傾向にある中で、その赤字要因には変化が起きています。 イオンの食品スーパー部門の状況をシンプルにまとめると、客数は減少ないし停滞する中で、客単価が増加してその減少を補っています。そしてその客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の武器がトップバリュではないかということです。 これまで日本では消費者はプライべートブランドを一段低く見て、基本的にはナショナルブランドを好んで購入する傾向がありました。まだそのナショナルブランド信仰自体は揺らいではいないのですが、物価高騰が引き金となったことでプライベートブランドの売上比率は年々上昇しています。 小売業からみればプライベートブランドの方が当然利益率が高いため、このような変化も黒字増加につながります。プライベートブランドに関しては、コンビニ最大手のセブンイレブンが先行していて、売り場のかなりの部分をプライベートブランドが占めるようになってきています。それと同じ変化がイオンの売り場に起きると経営陣が確信すれば、規模の拡大戦略にゴーサインが出るようになるでしょう。これが3つ目の定石です。 そしてもうひとつ、これとは別の戦略定石があります。これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です。 イオンの食品スーパー部門拡大戦略が、これらの戦略定石のどの部分に確信をもって進められているのかはイオン側が詳細に語ることはないでしょう。 しかし、日本の小売業は長らく非効率な構造が続いていたことから、欧米と比較してなかなか規模が大きくならないままここまで来ていました。 今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです』、「客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の武器がトップバリュではないかということです」、「これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です」、「今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです」、「イオン」の今後が要注目だ。 
タグ:「30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ」、「「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する」、「各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記」、「社長」自身も「外部」出身と、ずいぶんオープンな組織のようだ。 東洋経済オンライン「「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降、外部から執行役員を新たに5人採用」 「僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません」、「取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから」、なかなか感心な心構えだ。 「今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる」、「多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています」、その通りだろう。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません」、「個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです」、確かに使い勝手がよさそうだ。 「大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 「2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになった」、「クルーが取材の順番待ちの列を作るように」とは凄いことだ。 「年間300本以上のテレビ局の取材が来ています」、「資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました」、記者に迎合せず、自分の主張を堂々とする姿勢が評価されたのだろう。 確かにTVが取上げるのは、「スーパーアキダイ」が圧倒的に多い。 文春オンライン「年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2」 将来への布石は着実に打っているので、今後の展開が楽しみだ。 「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」、しかし、「社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ」、「久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる」、なるほど。 小売業(一般) (その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い、減益が続く事業を拡大する裏事情」 「2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました」、「コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます」、なるほど。 「3つの逆手定石」とは何なのだろう。 「イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです」、その通りなのだろう 「スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です」、「ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます」、なるほど。 「客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の 武器がトップバリュではないかということです」、「これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です」、「今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです」、「イオン」の今後が要注目だ。
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リニア新幹線(その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議) [産業動向]

リニア新幹線については、昨年4月25日に取上げた。今日は、(その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議)である。

先ずは、本年3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106289
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする』、「安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動き」、とは興味深そうだ。
・『ブレーンは財務省の事務次官ライン  葛西は数多くの政府審議会の委員となり、霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない。ざっとあげれば、元国税庁長官の牧野治郎にはじまり、勝(かつ)栄二郎や香川俊介、岡本薫明(しげあき)といった事務次官ラインが葛西と懇親を深めてきた。 1980(昭和55)年6月から82年6月まで2年間、防衛庁に出向して経理局会計課に勤めた牧野は思想的に葛西と近く、主計局総務課時代に公共事業担当として旧国鉄の窓口となる。その後、牧野は97年7月に主計局総務課長に就任し、24兆円にのぼる旧国鉄の債務処理を担った。 JR東日本社長の松田昌士やJR西日本社長の井手正敬は、政府の主張したJRの債務負担法案に反対した。彼らは、株式を上場している民間企業が旧国鉄時代の債務を背負うのは株主に対して理屈が立たない、と主張した』、「霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない」、さすがだ。
・『葛西の歯に衣着せぬ過激な発言  ちなみにJR本州3社の株式上場は、JR東日本が93年10月、JR西日本が96年10月、JR東海が97年10月という順番だ。その3社のなかで最後に上場したJR東海の葛西だけが、政府案に賛成した。JRによる債務負担は、国の財政をあずかる財務省にとっても好都合だ。結果、JR側の負担は政府案の半額にあたる1800億円で決着した。 また75年大蔵省入省の勝は小泉純一郎政権時代、2年先輩の牧野に葛西を紹介され、国鉄改革を進めた自民党代議士の野呂田芳成(ほうせい)とも知り合いだったことから葛西と親しくなっていく。 勝は民主党の菅直人内閣や野田佳彦内閣で財務事務次官となり、後輩次官となる香川を葛西に引き合わせ、さらに岡本へと省内の葛西人脈が引き継がれていった。 勝は民主党政権で活動を止めていた「財政制度等審議会」(財政審)復活の声が高まったことを受け、事務次官退官の置き土産として復活後の財政審入りを葛西に働きかけた。 財政審は政府予算や決算をはじめとする国の財政全般の審議をする財務大臣の諮問機関だ。勝から香川、岡本と葛西人脈が引き継がれていった財務省では、岡本が第二次安倍政権で財政審担当の主計局次長となる。 葛西はその財政審で歯に衣着せぬ過激な発言をして政府に対する影響力を増していった。岡本は葛西が催した朝食会や夜の会合に呼ばれ、付き合いを深めていった。) リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる。むろんそれは関西出身の国会議員に迫られたからではない。第二次安倍政権時代のある官邸関係者が打ち明けてくれた。 「早くから関西の自民党議員たちが、『リニアは大阪まで一気通貫で早く造るべきだ』と言い出してきたのはたしかです。しかしそれは前々からあった話でした。JR東海の副社長だった金子慎(しん)さんが自民党の集まりに呼ばれ、『財投は受け入れられません』と弁明していた記憶があります。大阪の早期開業についてJR東海は自民党議員に押し切られたわけではなく、むしろその逆。のらりくらりとかわしていました」』、「リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる」、長年の財務省官僚との付き合いが結実したようだ。

次に、3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106293?imp=0
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする 前編記事【「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで】 前編に引き続き、第二次安倍政権時代のある官邸関係者の証言をみていく』、興味深そうだ。
・『官邸の介入  情勢が変わったのは、やはり官邸が介入してからだ、とこう続けた。 ある日、安倍首相自身が、『経済政策の大きな目玉としてリニアの大阪延伸を早めてほしい』と自民党の稲田(朋美)政調会長を訪ね、依頼したのです。安倍首相が葛西さんに直接伝えればいいようにも感じましたが、その前の根回しのつもりなのかもしれないし、あるいはまず葛西さんの意向を確かめたかったのかもしれません。それで、稲田さんが早期大阪延伸案を葛西さんに投げた。といっても稲田さんには葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています。葛西さんは宇宙開発に関心があり、宇宙政策委員会という内閣府の審議会にも参加していて、窓口になってきた片瀬(裕文元経産審議官)という親しい経産官僚がいるんです」』、「稲田さん(政調会長)には葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています」、直接の「パイプ」がない場合には、「経産官僚があいだをつないだ」、ということもあるようだ。
・『3兆円を捻り出す「3つのやり方」  ここから官邸や自民党は、大阪までの工事を一挙に進めるために3兆円が必要になる、と試算した。むろん財務省としては想定外の“予算”であり、決して乗り気ではなかった。実のところ、当初財務省で3兆円を捻り出す方法は、財投の活用だけではなく、3通り検討されたという。 一つは「整備新幹線並みの公共事業予算に組み入れる方法」、もう一つが「税制上の特別な措置」、そして「財投」だ。本来、鉄道の建設事業認可は国交省所管のはずだが、3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた。 「リニア計画を予算化するには、国会で審議しなければなりません」 「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした。 「そこにも課題はあります。かつての財投は使い道がないので無理やり貸し付けてきましたが、今はなぜ必要かという説明責任が政府にあります。本来は、現状のまま名古屋までの開通を先行させてJR東海にやってもらったほうがいい。でも、この問題については官邸がらみで稲田政調会長まで介入してきている。国交省は何も口を出さない。それで、気心の知れている財務省の岡本さんが葛西さんのところへ説明に通ったのです。葛西さんに選択肢を与え、向こうに決めてもらうという形になった。その答えは財務省経由ではなく、稲田政調会長を通して安倍総理に直接返ってきたと聞いています」』、「3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた」、信じられないような徹底サービスだ。「「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした」、なるほど。
・『「稲田政調会長が一所懸命やってくださった」  そうして葛西は財投しか方法がないと決めたのだという。その真意は、安倍政権の経済政策をバックアップするためだったのだろうか。あるいは首相のメンツを重んじた結果だろうか。 財投の投入に関しては、国鉄改革の取材の流れで、初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです。稲田政調会長が一所懸命やってくださったというのは聞きました」 もっとも、葛西が財投を受け入れた背景は資金繰りの事情だけではない。財投を使った3兆円の融資を申請した16年の春、葛西は病魔に襲われた。命を奪った間質性肺炎である。あまり知られていないが、難病指定されているこの病気は、実は国鉄の動労委員長だった仇敵の松崎明からも命を奪っている。) そんな恐ろしい病気にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか。 一方、リニア中央新幹線の終点となる大阪では、日本維新の会が2025年の大阪・関西万博とカジノIRの同時オープンをぶち上げてきた。結果的にカジノ計画はうしろにずれ込んだが、安倍は政権発足以来ずっと維新の会の政策を後押ししてきた。リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか』、「初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです」、「そんな恐ろしい病気(間質性肺炎)にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか」、「リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか」、大いにありそうな話だ。

第三に、4月22日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666250
・『リニア新幹線計画に疑念を持っている。 時速500キロメートルで東京─大阪間を1時間で結ぶと言われても、「それが、どうしたの?」という感じである。そもそも、大阪まで開通するのは早くても14年後だ。そんなことに、10兆円もかけるのはいかがなものだろうか。 どうやら私だけではなく、鉄ちゃん(鉄道マニア)もリニアにはあまり興味がないと聞く。9割近くはトンネル内を走るため、撮影することも難しい。乗ったところで旅情はまったくない。 数年前、山梨の実験線に試乗した。半世紀以上もかけて開発してきただけに、走行は安定している。騒音も思ったよりは少ない。だが、車内は狭いし、窓の景色は暗闇ばかり。言ってみれば、高速の地下鉄といったところか。 やっぱ、いらないんじゃね。 ところがJR東海の経営陣や社員は、口をそろえて「絶対に必要だ」と言い張る。いわく、「東海道新幹線だけでは心もとない」「地震などの災害時に、リニアがあれば輸送に使えるので安心である」と。 本当だろうか?』、「JR東海」の必要論には無理がありそうだ。
・『リニアにまつわる不安  今現在、東海道新幹線を利用していて、「遅くて使いものにならない」とか、「もっと速いダイヤが組めないのか」と思っている人はどれほどいるのだろうか。 リニアが完成したら東海道新幹線を廃止するならば、まだ少しは理解できる。だが、併存するというのだから意味がわからない。人口が減っていく中で、東京─大阪間の需要が2倍になるとでも思っているのだろうか。 地震が起きた際に、緊急輸送に使えるという理屈は、まったくもってナンセンスだ。そもそも、リニアに貨物車両は存在しない。また、南アルプスの地下を走ることになるが、そこには活断層がいくつも走っている。大震災が起きれば、断層のズレでトンネルが損傷するリスクも想定される。輸送どころか、復旧自体に相当の時間を要する可能性すらある。 JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。 こうした不安の声に、JR東海側が真摯に向き合ってきたとは言いがたい。住民説明会に出たことがあるが、質問は1人3つまで。そこでマイクが取り上げられて、あとは壇上の社員が「慎重に進めてまいります」などと具体性を欠く回答をするばかりだった。会場からヤジと怒号が飛ぶ中、司会役の社員が途中で会を打ち切った。 工事への不安は、年々高まっている。3年ほど前、東京・調布の住宅街で道路が陥没したのは、外環道のトンネル工事の影響だったとわかった。同じシールド工法を採用しているリニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている。ちなみに、リニアは東京や神奈川、愛知の都心部や住宅街の地下を掘り進める計画で、田園調布といった高級住宅街の直下も通過する。 「どこまで工事が進んでいるのか、まったく見えてこない」。リニア新駅が設置される神奈川・相模原の住民は、不安を隠せない。 反対住民は、各地で土地を共同登記するなど、「立ち退き」を迫るJR東海と全面対立する構えだ。 リニアのパートナー企業も、腰が引けている』、「JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。「松田昌士氏」が反対しているとは初めて知った。「同じシールド工法」を採用している」外環道のトンネル工事」で「道路が陥没し」、「リニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている」、「シールド工法」の安全性を立証しない限り、致命的なダメージだ。
・『後に引けないリニア計画  ゼネコン大手4社がリニア談合事件で起訴されたのは2018年のこと。入札額を調整するために、ゼネコン側が事前に打ち合わせをしていたとされる。この構図だけを見ると、JR東海は「被害者」ということになる。 だが、そうした伝統的な談合の構図は、このケースには当てはまらないだろう。なぜなら、リニアの地下深くに造る新駅やトンネルは、超難工事となるため、事前に特定のゼネコンと打ち合わせて、工法や機械の開発を進める。その費用はゼネコンが負担している。それなのに、いざ発注となった段階でほかのゼネコンにも入札をさせれば、準備コストをかけていない会社が安値を提示できる。 「リニア工事は割に合わない」 ゼネコンの経営陣からは、そんな声が聞こえる。 早々に撤退した会社もある。 三菱重工業はリニアの車体開発に航空機の技術を持ち込み、現在の実験線を実現させた立役者といえる。ところが、受注金額をめぐって大きなズレが生じ、すでに手を引いている。 そこまでしてパートナー企業を値切っても、予算額がジリジリと膨張してきている。2年前に1兆5000億円ほど膨らんで、ついに10兆円の大台に乗った。 リニア計画を推進してきたJR東海の元会長、葛西敬之氏が昨年、亡くなっている。これを機に、いったん計画を見直してもいいのではないか? だって、このまま進めて14年後に完成したとしても、リニアの負債がJR東海の経営を崖っぷちに追い込んでしまう危険があるのだから。 「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる。 でも、27年の東京─名古屋間の開業予定も延期され、総工費はさらに膨らむだろう。こんなプロジェクトに、今後も巨額の公金を注ぎ続けるのだろうか。 「お前は暇だから、そんな戯言(ざれごと)が言えるんだ」 うむ、そうかもしれない。 だが、そんなに時間を節約したいのなら、ネット会議のほうが効率はいいのではないか。 私は鉄道の将来を考えるとき、頭に浮かぶ風景がある。千葉の市街地から、外房に向かって山間部まで39キロメートルを走る小湊鉄道。その石川晋平社長がこう話していた。 「新幹線はどんどん速度を上げていくけど、こっちはそうはいかない。悔しいから速度を落としてやろうと思っているんですよ」 そう笑っていた石川社長は、本当に実現してしまった。しかも、車両の壁を取り払ったトロッコ列車を造って、時速20キロメートル程度で走らせる。列車がやってくると、地元の人が手を振って応える。乗客と地域がぐっと近づいた。そして、閑古鳥が鳴いていた山間の駅は、乗降客が2倍に増えた。 「鉄道会社って、引っ越しができないんですよ。だから、地域とともにやっていくしかない」と、石川社長は言う。 それでいいのだと思う。未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ』、「「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる」、そんなへ理屈で強行していけば、損失はもっと飛躍的に拡大する恐れがある。「未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ」、同感である。止めるにしても一刻も早く止めるべきだ。
タグ:「未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ」、同感である。止めるにしても一刻も早く止めるべきだ。 「「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる」、そんなへ理屈で強行していけば、損失はもっと飛躍的に拡大する恐れがある。 「JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。「松田昌士氏」が反対しているとは初めて知った。「同じシールド工法」を採用している」外環道のトンネル工事」で「道路が陥没し」、「リニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている」、「シールド工法」の安全性を立証しない限り、致命的なダメージだ。 「JR東海」の必要論には無理がありそうだ。 金田 信一郎氏による「リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議」 東洋経済オンライン 「そんな恐ろしい病気(間質性肺炎)にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか」、「リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか」、大いにありそうな話だ。 「初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです」、 「3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた」、信じられないような徹底サービスだ。「「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした」、なるほど。 「稲田さん(政調会長)には葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています」、直接の「パイプ」がない場合には、「経産官僚があいだをつないだ」、ということもあるようだ。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 森 功氏による「安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前」 「リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる」、長年の財務省官僚との付き合いが結実したようだ。 (その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議) リニア新幹線 「霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない」、さすがだ。 「安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動き」、とは興味深そうだ。 森 功氏による「「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために」 現代ビジネス
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携帯・スマホ(その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す)) [産業動向]

携帯・スマホについては、昨年6月8日に取上げた。今日は、(その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す))である。

先ずは、本年2月20日付け東洋経済オンライン「巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653347
・『モバイルへの巨額投資で財務状況が大きく悪化する楽天グループ。資金調達の選択肢が狭まる中、押し寄せる社債償還の波をどう乗り越えるのか。 「健全なバランスシートを保ちながら成長していきたい」。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は記者会見の席上、そう言い切ってみせた。 2月14日に発表した2022年12月期決算は、最終赤字が3728億円と過去最大となった。携帯基地局などの設備投資がかさんだモバイル事業で、4928億円もの営業赤字を計上したことが最大の要因だ。銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ。負債膨張の原因だったモバイル事業の設備投資が「一巡した」(三木谷氏)ことを理由に、有利子負債を圧縮すると宣言した。 さらに三木谷氏は、投資家の懸念を払拭するためか、楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言もしている。だが、モバイル事業の設備投資にカネをつぎ込んできた「ツケ」は、想像以上に重い』、「銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ」、「楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言も」、財務健全化は喫緊の課題だ。
・『機関投資家の間で広がる「楽天離れ」  9000億円――。これは今後3年間で償還を迎える社債の合計額だ。 モバイル事業の設備投資に当たって、楽天は資金調達のほとんどを銀行からの借り入れではなく、社債に頼ってきた。2018年12月に発行した劣後債計1820億円を皮切りに、これまで20本以上を発行。調達した資金を子会社の楽天モバイルに出資しては、基地局建設などにつぎ込んでいる。 下図は、2025年までに償還日を迎える社債の一覧だ。劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている。 2022年末時点における、楽天の連結ベースでの現預金は約4.7兆円。一見潤沢に見えるが、大半は楽天銀行が集めた預金で、楽天単体に限れば現預金はわずか926億円だ。 非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない。 この先で手元資金が不足する場合、別の社債を発行して借り換えることも選択肢だ。だが、楽天の場合は事情が異なる。実は今、機関投資家の間で「楽天離れ」が起きているのだ。) 「財務が悪すぎて、楽天グループの社債はもう買えない」。ある大手機関投資家の債券運用担当者は声を潜める。「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」。 楽天は2021年12月以降、機関投資家向けの円建て社債を発行していない。複数の債券運用担当者は「楽天のクレジット(信用リスク)が悪化し、国内では引き受ける機関投資家がいなくなった」と口を揃える。 代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評する。 国内の機関投資家向けが厳しいと見るや、楽天は個人投資家にも目を付けた。発行体のクレジットよりも目先の利回りを重視するため、社債を引き受けてもらいやすいためだ。2022年6月に1500億円、2023年2月には2500億円のリテール債を発行にこぎ着けたが、利率は前者が0.72%に対して、後者は3.3%。対個人であっても、楽天のクレジットは急速に悪化している』、「劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている」、「非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない」、「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」、「代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評す」、海外でも「「ジャンク債」扱い」とはギリギリの状況だ。
・『モバイルへの投資は当初計画の倍以上に  果たして楽天は償還の波を乗り越えられるのか。最初の焦点は、2023年12月に控える劣後債680億円のファーストコール(発行時に決められる、最初の繰り上げ償還日)だ。償還は義務ではないが、発行体はこれを行うのが慣例だ。 モバイル事業に対しては2023年も3000億円もの設備投資を見込んでおり、累計の投資額は、当初計画していた6000億円から2倍以上に膨らんでいる。1月のドル建て債や2月のリテール債で調達した資金もここにつぎ込む予定で、償還の原資は別途工面する必要がある。) 2024年と2025年にはさらなる償還の大波が押し寄せる。金額が大きいうえ、過去に低利で発行した社債が多数償還を迎える。海外では格付け機関のS&Pグローバル・レーティングが2022年末、楽天の長期発行体格付けをBB+からBBへと格下げした。国内でも2月15日に格付投資情報センターが、楽天の発行体格付けをA-から格下げする見通しを示した。借り換えとなれば、利率がハネ上がるのは必至だ。 資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO(新規株式公開)だ。三木谷氏は「楽天銀行のIPOはオンプロセスで進めたい。楽天証券HDの上場も今年度(2023年度)中に行う予定」と話す。 ただ、軟調な株式市場のあおりを受けて、ネット専業の金融機関の評価額は落ち込んでいる。楽天銀行も当初予定していた2022年内の上場を延期した。IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない』、「モバイルへの投資は当初計画の倍以上に」、「資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO」、しかし、「IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない」、本当に厳しそうだ。
・『さらなる子会社「切り売り」も  この点、三木谷氏は2月14日の決算説明会において「親会社および子会社での戦略的業務提携・外部資本の活用」も検討すると言及している。 同社は2022年10月、みずほ証券に楽天証券株の約20%を800億円で売却した。そのためカードや保険会社など、安定して稼いでいる子会社の株式を切り売りする可能性は否定できない。 外部企業からの増資も選択肢だが、クレジットが悪化する楽天グループへの出資要請は、これまでよりも難航が予想される。足元の株価は600円台後半と、2021年に日本郵政などに割り当てた額の6割の水準にとどまる。希薄化を懸念する株主からの反発もあるだろう。) 資金繰りに奔走する楽天とは対象的に、静観を崩さないのが銀行団だ。 関係者によれば、メインバンクのみずほ銀行の楽天本体に対する融資残高は、2022年末時点で約1100億円。前年末から300億円程度しか増えていない。 三井住友や三井住友信託、三菱UFJといった準メイン行の残高もあまり増えていないもようで、モバイル事業の設備投資額からすれば、焼け石に水だ。楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ。 ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す。三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げるが、楽天の中堅社員は「まず無理だ」と悲観的だ。競合キャリアからも「契約回線数が伸び悩んでおり、黒字化は難しいだろう」という声が漏れる。 かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない』、「楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ」、「ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す」、「かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない」、そうなれば大変だ。
・『伝家の宝刀「コミットメントライン」  楽天にとって最後の手段は、総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)の使用だ。銀行団から無条件で融資を引き出せる権利であり、2022年1月に1200億円から増額された。 しかしながら、1500億円は流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる。コミットメントラインが使用されたときこそ、楽天が崖っぷちに立たされたことを意味する。 三木谷氏は2023年を「勝負の年」と位置づけるが、こと資金繰りの観点でいえば、勝負はとても年内では決着しそうにない』、「総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)」は、「流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる」ので使えないようだ。「崖っぷちに立たされた」状況がまだ続きそうだ。

次に、3月9日付け企業法務ナビ「楽天モバイル元部長ら、水増し請求による詐欺の疑いで逮捕」を紹介しよう。
https://www.corporate-legal.jp/news/5189
・『はじめに  携帯電話大手の楽天モバイルからおよそ25億円をだまし取ったとして、警視庁は3月3日、楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕しました。携帯事業に新規参入した楽天モバイルが携帯電話基地局を整備するために交わした設備運搬の業務委託に絡み、業務委託費を水増しし同社より金を騙し取ったということです』、「楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕」、グルになっていたのでは始末が悪い。
・『事件の経緯  楽天モバイルの発表や報道などによりますと、当時、物流管理部長だった元従業員が業務委託先の会社関係者と共謀し、資材の保管や運送に係わる業務において携帯電話基地局の整備に関する費用をおよそ9億2000万円水増しするなど、およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求していたとされています。 具体的には、資材を運ぶ車両の発注台数を多く装う、資材を保管する倉庫の面積を実際よりも広く偽るなどして輸送費や保管料を水増ししていたとみられていて、これらの業務全般について、元部長が統括的に管理し、決裁権限も有していたということです。 また、架空のコンサルティング料などの名目で水増し請求していたケースもあったとされています。 水増し請求で不正に得た利益は、再委託先の会社から元部長らに流れていたということです』、「およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求」とは「楽天」もだらしない。
・『水増し請求の法的取り扱い (省略)
・『決裁権とは  (省略)
・『水増し請求を予防するために  水増し請求は、加害者全員がメリットを享受し合うことが多く、また、クローズドな関係性の中で展開されることも少なくないため、加害者からの自発的な申告や関係者からの内部通報が機能しづらい不正類型といえます。そのため、水増し請求の発覚は、税務調査における取引先への立ち入り調査を端緒とすることが多いとされています。 そんな、水増し請求を予防するうえでは、社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます。また、取引先の社長に定期的に挨拶に行くだけでも牽制効果があります。 さらに、初回の取引のみならず、継続中の取引に関しても定期的に相見積もりを行い、取引先選定の適切性を担保することも有効です。また、取引先との数字の中身を知るものが必ず2名以上いる体制を敷く等の工夫も重要になります』、「社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます」、その通りだ。
・『コメント  今回の事件を受け、楽天モバイルは元部長を懲戒解雇し、事件に関わった取引先2社との取引を停止した上で、預金口座の仮差押さえを申請したとされています。 水増し請求事案では、会社の口座に入金されたお金を自由に引き出して還元できる人間ということで、取引先の社長や役員と協力して不正が行われるケースが少なくありません。その意味で、社員が取引先の役員と密接な関係性を築いている場合、不正の発生リスクが相対的に高い取引としてアラートを働かせる必要があります。 検知が難しい水増し請求。法務としても、社内規程の周知やコンプライアンス教育の徹底などで、予防に貢献したいところです』、楽天は基地局建設を急いでいた事情があるにせよ、他の報道によれば、「楽天モバイル」の部長は高級車を乗り回し、高額なタワーマンションに住んでいたとの報道もあり、社員の日頃の行動管理という基本的なことがなおざりにされていたようだ。「三木谷」の責任は重大だ。

第三に、3月17日付け文春オンライン「丸の内コンフィデンシャル:《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61359
・『日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年4月号より一部を公開します。 「ゼロ円プラン」を廃止し、平均収入は大手3社の半分に  楽天(三木谷浩史会長兼社長)の経営に黄信号が灯った。2022年12月期の最終損益は3728億円の赤字。赤字は4期連続で、赤字幅は過去最大となった。 22年12月期の売上収益は21年12月期に比べて15%増の1兆9278億円だった。楽天市場などのインターネットサービス事業、クレジットカード・銀行などの金融事業が伸びを牽引したが、19年10月にサービスを開始した携帯電話事業で進めている基地局の設備投資が利益を吹き飛ばした。 同社のカギを握るのは携帯電話事業の成長だ。同事業の収益は契約者数と契約あたりの月間収入の掛け算で決まるが、昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる。 22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通しという。だが、これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い。 楽天は21年3月に日本郵政から約1500億円の出資を受け、昨年11月には傘下の楽天証券ホールディングスが保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却して775億円を確保した。 手元の資産を切り売りする「タケノコ生活」は引き受ける相手がいてこそ成立する話だ。「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている』、「昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる」、「22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通し」、「これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている」、瀬戸際だ。
・『岸田首相や麻生氏との関係も深く——経団連新副会長の素顔は?(省略)

第四に、4月24日付け日経ビジネスオンライン「銀行上場も遠い夜明け、楽天Gが背負うモバイルの「重い十字架」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00128/042100048/
・『楽天グループ子会社でネット銀行の楽天銀行が4月21日、東証プライムに上場した。初値は公開価格を3割上回ったものの、調達額は当初想定より約300億円下がった。株式市場の厳しい目は、楽天銀行よりもむしろ親会社である楽天Gに向けられている。赤字が続くモバイル事業の立て直しが急務だ。・・・同日に都内で開いた会見で永井啓之社長は「1億人超の会員基盤を生かして成長を加速させる」と語った。 初値は公開価格の1400円を33%上回る1856円。その後も1965円の高値を付け、2000円の大台に近づく場面もあった。上場前に市場関係者からは「公開価格割れもありうる」との声も上がっていたが、そんな逆風をはねのけた格好だ。 だが、手放しでは喜べない。3月に東京証券取引所から上場承認を受けた際、楽天銀行の公募・売り出し価格の想定仮条件は1630~1960円だった。ところが4月に入ってから1300~1400円に引き下げられた経緯がある。最終的な公開価格は上場1週間前に上限の1400円と決まった。 一般的に、上場承認を受けた際の想定仮条件は主幹事証券会社が提示する参考価格を基に決まる。上場承認後に機関投資家向けに説明会を開き、そのフィードバックを受けて最終的な公開価格が決まる仕組みだ。機関投資家が「高すぎる」と判断すれば、価格を下げざるを得なくなる。 楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない』、「楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない」、なるほど。
・『「虎の子」の銀行株放出で赤字埋める  楽天Gの赤字が続いて「楽天経済圏」の成長に陰りが出れば、楽天銀行への悪影響も避けられないとみるためだ。収益力の高い楽天銀行は経営不振の楽天Gにとっていわば「虎の子」。その株式の一部を手放して得た資金は、赤字の続くモバイル事業に投じられる。同事業は楽天G全体の足を引っ張る「重い十字架」だ。 モバイル事業は多額の資金をネットワークに先行投資し、契約数と、ARPUと呼ばれる1契約あたりの月間平均収入をともに増やすことで回収していくビジネスモデルだ。モバイル事業の収益は、契約数とARPUのかけ算によって決まる。 楽天Gのモバイル事業は現状、契約数とARPUの両面で稼ぐ力が弱い状態にある。契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった。一方でモバイル事業への設備投資は、22年12月期に約3000億円だった。さらに23年12月期にも約3000億円を計画し、重い負担が続く。 楽天Gは、法人市場の開拓や紹介キャンペーン、ポイントプログラムの還元率向上など、楽天経済圏のリソースも使って、あの手この手で契約数の積み増しに動く。だが、いずれも決定打に欠ける。 数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない。 楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は23年2月の決算説明会で「23年は勝負の年」と語った。生き残りに向けて、楽天Gの綱渡り状態は続く。モバイル事業を稼げる体質へと早期に転換させなければ、この苦境からは抜け出せない』、「契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった」、「数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない」、さて今後の展開はどうなるのだろう。

第五に、4月26日付け東洋経済オンライン「楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/668228
・『楽天銀行は4月21日、東証プライム市場に上場を果たした。公開価格ベースでの時価総額は約2380億円と屈指の大型IPOとなったが、耳目を集めたのは楽天銀行自身よりもむしろ、親会社である楽天グループだった。 2021年9月に楽天銀行が上場準備に着手してから1年半。国内最大手級のネット銀行による上場劇は、最後まで親会社に翻弄された』、どういうことなのだろう。
・『親会社による「金策」  「成長資金を獲得するため、上場を検討している」。2021年11月、楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は決算説明会において、初めて楽天銀行の上場に言及した。 上場の意義について、楽天銀行は「より自律的な経営視点と成長戦略を遂行できるとともに、独自の資金調達を含めた様々な成長及び財務戦略を検討することが可能になる」と説明する。ただ、親会社の苦しい懐事情が上場を後押しした面もある。 楽天Gは2018年に携帯事業者として認可を受けて以来、子会社である楽天モバイルを通じて多額の資金を投じている。 当初の計画では基地局建設などの設備投資費用を総額6000億円で十分としていたが、2020年末時点ですでに5000億円弱に膨張。計画以上に投資額が膨らむのは明白で、資金を確保する必要があった。楽天銀行の上場には、株式売り出しによる楽天Gの金策の色合いがにじんだ。 「PBR(株価純資産倍率)6~10倍」。上場発表時の資料で楽天Gは先駆的な銀行のPBR水準を示していた。楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた。 引き合いに出したのは、2021年8月に韓国取引所へ上場したネット専業銀行「カカオバンク」。初日の時価総額は3兆円規模に達した。さらにブラジルのネット専業金融グループ「ヌー・ホールディングス」も比較対象に挙げた。2021年末のニューヨーク証券取引所に上場した際、時価総額は一時6兆円以上に膨らんだ。) ところが、2022年に入ると欧米の金利上昇や景気後退懸念を受けて、ハイテク株が相次いで下落した。カカオバンクやヌー・ホールディングスの足元の株価は、上場当初からおよそ3分の1に縮小している。 向かい風が吹く中でも、楽天Gの資金繰りを考えれば楽天銀行の上場をいたずらに延期することはできない。こうして2022年7月、楽天銀行は東京証券取引所に上場申請を行った。 ネット銀行の評価が後退する中、楽天銀行は当初の目標だった2022年中の上場を断念。少しでも高値で上場できるタイミングを探った結果、「東証からOKをもらいマーケット状況もまずまずと判断した」(楽天銀行の永井啓之社長)として、2023年4月の上場を目論んだ。 3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ』、「楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた」、「3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ」、これだけ悪条件が揃えば、やむを得ないだろう。
・『調達・運用ともに「楽天経済圏」  楽天銀行は楽天経済圏を2つの面で活用している。1つは預金の獲得だ。1億超を誇る楽天ID保有者に対して、ネット通販や証券、カードなどほかのサービス利用時のメイン口座としての利用を推進。2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準だ。 調達のみならず、運用サイドにおいてもグループとの関係を活用している。2022年末時点における楽天銀行の運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく』、「2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準」、大したものだ。「運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく」、なるほど。
・『楽天銀行の運用ポートフォリオ  調達・運用両面で楽天と絡み合う構図に投資家が懸念を示したためか、楽天銀行は4日、英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記した。) 最終的に公開価格は1400円となった。親会社から飛び火した信用リスクに加えて、「資金繰りを考えれば、これ以上上場は先延ばしできない」(金融筋)と、足元を見られた面もあったようだ。 21日の初値は1856円と公開価格から3割も上昇し、楽天にとっては「底値」で楽天銀行を売却させられた形となった。初値から逆算したPBRは約1.5倍と、6〜10倍どころか、2021年11月に「従来型『銀行』」と揶揄した水準と同程度に着地した。 株価について永井社長は「マーケットや投資家のセンチメントはコントロールできない。証券会社の意見を伺いながらそれぞれのタイミングで価格を決めた」と述べるにとどめた』、「英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記」、むしろ書かない方が問題だ。
・『上場後に問われる成長戦略  すったもんだの末の上場となった楽天銀行。楽天本体は引き続き約63%を保有する筆頭株主として君臨するが、外部資本を調達した以上、親会社におもねる経営を続けることは許されない。「楽天(本体)が銀行の経営に指示をしてはならないシステムを構築している。少数株主の利益を害さない意思決定をできる」(永井社長)。 楽天銀行は2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる。上場に伴う公募増資などで調達した約140億円も活用しつつ、当面は株主還元よりも成長投資を重視する方針だ。 (楽天銀行の経営指標 ハリンク先参照) 今後の焦点は、法人向け事業の伸長やグループ外の企業との連携だ。帝国データバンクによれば、2022年10月末時点で楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破した。法人顧客には専門の営業担当者を配置し、「ITを活用して、他の銀行ではできないソリューションを提案したい」(永井社長)。 2023年1月には、JR東日本と共同でネット銀行を開業すると発表した。楽天銀行が事業会社に銀行機能を提供する形で、これまでも第一生命や地銀と協業している。楽天経済圏を基盤としつつも、グループ外の企業との提携を通じた果実を取り込むバランス感覚も問われる』、「2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる」、「楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破」、大したものだ。「楽天」そのものについては問題も多いが、「楽天銀行」は成長のポテンシャルが高いようだ。
タグ:携帯・スマホ (その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す)) 東洋経済オンライン「巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路」 「銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ」、「楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言も」、財務健全化は喫緊の課題だ。 「劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている」、「非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない」、「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」、 「代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評す」、海外でも「「ジャンク債」扱い」とはギリギリの状況だ。 「モバイルへの投資は当初計画の倍以上に」、「資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO」、しかし、「IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない」、本当に厳しそうだ。 「楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ」、「ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す」、「かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない」、そうなれば大変だ。 「総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)」は、「流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる」ので使えないようだ。「崖っぷちに立たされた」状況がまだ続きそうだ。 企業法務ナビ「楽天モバイル元部長ら、水増し請求による詐欺の疑いで逮捕」 「楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕」、グルになっていたのでは始末が悪い。 「およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求」とは「楽天」もだらしない。 「社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます」、その通りだ。 楽天は基地局建設を急いでいた事情があるにせよ、他の報道によれば、「楽天モバイル」の部長は高級車を乗り回し、高額なタワーマンションに住んでいたとの報道もあり、社員の日頃の行動管理という基本的なことがなおざりにされていたようだ。「三木谷」の責任は重大だ。 文春オンライン「丸の内コンフィデンシャル:《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」 「昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる」、「22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通し」、 「これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷 は大きな決断を迫られている」、瀬戸際だ。 日経ビジネスオンライン「銀行上場も遠い夜明け、楽天Gが背負うモバイルの「重い十字架」」 「楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない」、なるほど。 「契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった」、「数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない」、さて今後の展開はどうなるのだろう。 東洋経済オンライン「楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す」 どういうことなのだろう。 「楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた」、「3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ」、これだけ悪条件が揃えば、やむを得ないだろう。 「2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準」、大したものだ。「運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく」、なるほど。 「英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記」、むしろ書かない方が問題だ。 「2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる」、「楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破」、大したものだ。「楽天」そのものについては問題も多いが、「楽天銀行」は成長のポテンシャルが高いようだ。
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コンビニ(その10)(コンビニ事業以外は「全面撤退すべき」と主張 セブン 米ファンドが示した「株価2倍計画」の中身、ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、「グリーンローソン」は何が違う?新型店が示す“コンビニの未来”とは) [産業動向]

コンビニについては、2021年8月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その10)(コンビニ事業以外は「全面撤退すべき」と主張 セブン 米ファンドが示した「株価2倍計画」の中身、ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、「グリーンローソン」は何が違う?新型店が示す“コンビニの未来”とは)である。

先ずは、昨年2月17日付け東洋経済オンライン「コンビニ事業以外は「全面撤退すべき」と主張 セブン、米ファンドが示した「株価2倍計画」の中身」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576819
・『セブン&アイに対し、米ファンドのバリューアクトは株価の上昇余地があると主張した。そのためには「4つのステップ」が必要だという。 セブン&アイ・ホールディングスに事業変革を求めているアメリカの投資会社、バリューアクト・キャピタル。2月9日、自身が考えるセブン&アイの「戦略計画」を公開した。 計画を実行すれば、コンビニ事業のセブン-イレブンは「グローバルチャンピオン」となり、1株あたり利益が748円、株価は直近の約2倍となる1万2708円まで上昇余地があると主張する。 バリューアクトはセブン&アイ変革のための「4つのステップ」を提案した。第1段階で行うのはコンビニ事業に注力する戦略の発表。コンビニ事業以外の非中核事業は「聖域なしに改革する」との意思表明だ』、物言う株主が、主張の根拠を具体的な形で示すとは珍しい。
・『百貨店は「速やかに完全売却」  第2段階は、百貨店子会社のそごう・西武の速やかな完全売却だ。同社の持つ不動産価値を生かしそれを実行する。その価値は大手アドバイザリー会社の推計値を基に4800億~5000億円とした。なおバリューアクトは、コロナ禍前の利益水準を基にそごう・西武の事業価値を490億円と試算する。 次に着手するのが総合スーパー子会社のイトーヨーカ堂の売却、もしくは食品事業に集中したうえでのスピンオフ(分離独立)だ。衣料品など食品以外の小売りが利益の足を引っ張っているため、スピンオフ時は同社の事業を食品小売りに集中させる。 第3段階は、ほかの非中核事業からの撤退だ。セブン銀行といった金融事業、ファミレスのデニーズ、雑貨店のロフトやフランフラン、通販のニッセンなど、コンビニを除く事業から全面撤退する。 第4段階は海外のコンビニ戦略の見直しだ。本部コストを中心に営業経費が他社より多いアメリカのセブン-イレブンの効率改善と、未進出地域への出店を加速させる。 4つのステップからわかるように、バリューアクトが訴えるのは「コンビニ事業への集中」だ。無人店の登場やデリバリーサービスの普及などコンビニを取り巻く環境が国内外で大きく変化する中、今後数十年にわたって勝ち残るためには早急な事業の集中が必須だとする。 他方、非中核事業がセブン&アイの業績を押し下げていると指摘。さらに、同事業を支えるために2021年度以降の5年間で約7700億円を投じる割には投資効率が低いと問題視する。 セブン&アイの井阪隆一社長は、バリューアクトの戦略計画は「想像に基づいた形で作られたもの」とコメント。「国内のセブン-イレブンはサービスや商品の取り扱い範囲を見直していかなければならない。その際、食品を充実させるためにもイトーヨーカ堂が必要だ」とも述べる。 しかしバリューアクトは、グループシナジーにも疑問符を付ける。集中購買などでシナジーが最も期待できる国内のセブン-イレブン、イトーヨーカ堂、食品スーパーのヨークベニマルの3社においても、その効果は2021年2月期の営業利益のうち4%未満だと分析している。 主張は平行線をたどっているようだが、両者の認識が一致している部分もある。アメリカのコンビニ事業におけるフレッシュフード(日本での弁当やおにぎりに相当)の強化などだ。イトーヨーカ堂の軸足を食品小売りに置く点についても、両者に認識のズレはない』、「第1段階で行うのはコンビニ事業に注力する戦略の発表」、「第2段階は、百貨店子会社のそごう・西武の速やかな完全売却」、「総合スーパー子会社のイトーヨーカ堂の売却、もしくは食品事業に集中したうえでのスピンオフ(分離独立)だ」、「第3段階は、ほかの非中核事業からの撤退だ。セブン銀行といった金融事業、ファミレスのデニーズ、雑貨店のロフトやフランフラン、通販のニッセンなど、コンビニを除く事業から全面撤退する」、「第4段階は海外のコンビニ戦略の見直し」、「グループシナジーにも疑問符を付ける」、「集中購買などでシナジーが最も期待できる国内のセブン-イレブン、イトーヨーカ堂、食品スーパーのヨークベニマルの3社においても、その効果は2021年2月期の営業利益のうち4%未満だと分析」、一見すると説得力がありそうだが、「井阪隆一社長は、バリューアクトの戦略計画は「想像に基づいた形で作られたもの」とコメント」、立場上、そうコメントせざるを得ないのだろう。
・『取締役会の構成にもメス  とはいえ、バリューアクトはもはやセブン&アイの現経営陣を信頼していない。そのため戦略計画で「ガバナンス体制の変革」として次の2点を打ち出した。 1点目は客観的に戦略を評価できる社外取締役を取締役会の過半数にすること。2点目は持ち株会社による経営体制から、セブン-イレブンを中心としたグローバルに連携した経営体制への移行だ。 現在のセブン&アイの取締役は13人。その過半数の8人が社内取締役で、井阪社長を除く7人は事業子会社の社長や役員を務めている。これら社内取締役の関心は各事業子会社の利益追求に向かい、内部対立を生じさせていると指摘する。 各事業子会社の役員が取締役に就いていることでスムーズな意思決定が可能になっており、セブン&アイは現体制に問題がないと主張している。しかしバリューアクトは、その点こそを問題視しているのだ。 2点目の持ち株会社による経営体制の見直しは、コンビニ事業に集中すべきとの訴えと関連する。170社以上の子会社・関連会社を持つために組織が複雑化して連携不足を起こしていると言っているわけだ。2019年の「セブンペイ」の失敗も連携不足が原因になったとする。 バリューアクトは75枚に及ぶ資料の末尾で、次のようにセブン&アイ株主に問いかけた。 「セブン&アイのコーポレートガバナンス体制を修正し、すべてのステークホルダーのためになるようセブン&アイを変革するには、株主のどのような介入が必要か」 セブン&アイの定時株主総会は5月。4.4%の株式を保有するバリューアクトが、株主提案で独自の取締役選任案を出してくる可能性は高まっている』、「取締役は13人。その過半数の8人が社内取締役で、井阪社長を除く7人は事業子会社の社長や役員を務めている」、やはり少なくとも過半数は「社外」とすべきだろう。

次に、5月17日付け東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589235
・『ローソンの営業利益の4分の1を稼ぎ出す、優良子会社の成城石井。あえて今、持ち株を一部手放すのはなぜなのか。 「2000億円でも安いと個人的には考えている」。ローソンの唐沢裕之・経営戦略本部長はそう語った。 ローソンが、完全子会社の高級スーパー・成城石井の上場を検討している。一部報道によれば、上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性がある。食品スーパー大手のライフコーポレーションでさえ、時価総額は1390億円(5月16日終値換算)。実現すれば、国内のスーパーとしては破格の規模となる。ローソンの持ち株比率をどの程度まで下げるかについても検討中という。 ローソンは2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得した。その後も順調に成長を続け、関東を中心に展開する店舗数は現在、買収時の約1.7倍に当たる200店超に達する。 業績も拡大している。買収直後の2016年2月期に690億円だった営業総収入は、前2022年2月期に約1.6倍の1092億円、同じく58億円だった営業利益は約2倍の120億円に成長。直近まで4期連続の増益を達成している。 営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す。今後も成長が見込める“虎の子”の持ち分を、このタイミングで一部売却する狙いは何なのか』、「2014年に総額約550億円を投じ・・・全株式を取得」、それが「上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性」とはローソンにとってもすごい投資効率だ。
・『競合も一目を置くSPAモデル  成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデルだ。 飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みにしている。外食が制限されたコロナ禍においても、調理済みの食品を家庭内で食べる中食需要をうまく取り込んだ。 成城石井は現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定。最終的には総菜の生産能力を現状の2倍以上に増強するという。 【2022年5月17日12時01分追記】初出時の表記を上記のように修正いたします。 自社の製造拠点を軸に培った商品力や開発力を武器に、高級スーパーとしてのブランドを確立。競合スーパーの関係者も「成城石井のブランド認知度は非常に高い」と一目を置く。 上場を実現させたとしても、ローソンは成城石井株を相当数保有し続ける方針ではある。商品の共同開発など事業面での協業も継続するという。 上場の狙いについて、成城石井の取締役も兼任するローソンの唐沢経営戦略本部長は「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」と説明する。 また、「成城石井は成長志向が強い一方、ガバナンスなどの経営体制の整備は弱かった。ローソンの支援によって体制が整ったことで、上場を検討できる状態になった」(唐沢本部長)という』、「成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデル」、「飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みに」、「現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定」、なるほど。
・『SPAのノウハウ吸収を狙ったが…  一方、あるコンビニ大手の幹部は「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ。 成城石井の買収時、ローソンが想定したシナジーの1つが、成城石井が持つSPAのノウハウを取り入れることだった。 買収を主導したローソンの玉塚元一社長(当時、現ロッテホールディングス社長)は、「(買収の狙いは)小商圏の製造小売業という本業の強化だ。成城石井は原材料調達から製造方法まで非常にこだわっている」と期待を語っていた(当時のインタビューはこちら)。 しかし、結果として思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い。両社による商品の共同開発は実現したとはいえ、ローソンがSPAのノウハウを吸収して自ら総菜製造に乗り出したわけでもない。 客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった。地方にある一部のローソン店舗に成城石井コーナーを展開したことや、ローソンで成城石井のワインや冷凍食品などを扱っていることなど、商品展開における協業効果はかなり限定的だった。 「ローソンは国内コンビニ事業を立て直すために、投資を集中する必要がある。そのために、成城石井に限らず非コンビニ事業の見直しを検討しているようだ」。あるコンビニ業界関係者はそう明かす。 ローソン側は「現金がどうしても必要というわけではない」(唐沢本部長)と、あくまで成城石井の資本戦略としての側面を強調するが、株式売却によって得られる巨額のキャッシュは、ローソンにとって大きな意味を持つ。 1店舗の1日当たり売上高である平均日販でローソンは現在、セブン-イレブンとファミリーマートに次ぐ業界3位の座に甘んじている。ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された』、「思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い・・・客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった」、「ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された」、なるほど。
・『販促施策でセブン、ファミマに出遅れ  ローソンが反転攻勢に向けて強化を迫られるのが、従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない。ローソン関係者も「以前から、資金があればもっと広告費を投下したいとは思ってきた。広告は集客効果も高い」と、販促施策の重要性を強調する。 ファミマは2020年、日本マクドナルド復活の立役者としても知られるマーケターの足立光氏をCMO(最高マーケティング責任者)として招聘。足立CMOの下でブランド戦略の強化を推し進めている。 ローソンの竹増貞信社長は「コストを削って加盟店利益を伸ばしてきたがそれももう限界。売り上げを伸ばしていかないといけない」と語る。国内でコンビニの店舗数が飽和状態にある現状では、日販を伸ばす以外に成長曲線を描くことは難しい。 再び業界2位に浮上し、セブンの背中を捉えることはできるか。虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない』、「従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない」、「成城石井」上場で「ローソン」の「広告宣伝費」はどこまで増やせるのだろう。

第三に、本年4月8日付けダイヤモンド・オンライン「「グリーンローソン」は何が違う?新型店が示す“コンビニの未来”とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/319474
・『ローソンは昨年11月下旬、「グリーンローソン」の1号店をオープンした。廃棄ゼロなどを目指すなど環境に配慮した店舗で、2024年までに全国展開するというが、果たして地域に根付いた店舗となり得るのか。その特徴や普及の見込みについて、流通ジャーナリストの渡辺広明氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『ワンオペ営業という未来のコンビニ 「グリーンローソン」  ローソンは昨年11月、東京・北大塚に「グリーンローソン 北大塚一丁目店」をオープンした。プラスチック削減など環境に配慮しつつ、完全セルフレジやアバター接客なども導入した実験型店舗である。 また、通常の店舗で販売している「チルド弁当」や「常温弁当」の販売は行わず、冷凍弁当と店内厨房で作る弁当のみを販売。これによって弁当の廃棄を大幅に削減し、食品ロスにも対応するという。 このような今回のローソンの実験的な試みについて、渡辺氏はこう評する。 「『グリーン』というネーミングやSDGs的な取り組みが大きく取り上げられますが、それは今回の新店舗の一側面にすぎません。今回の新店舗はいわば“未来のコンビニ”です。今後のコンビニのエッセンスが詰め込まれていると思います。なにせ23のさまざまな取り組みのうち、13は初の取り組みですからね」 前述の取り組みの他にも、デリバリー配達員の商品受け取り用BOX、商品を手に取った客への推薦の声かけロボットの設置など目新しいものが多い。最も渡辺氏が驚いたのはレジカウンターに接客の店員が基本的にいないことだという。 「グリーンローソンは基本的に接客においてはワンオペを念頭に置いています。これは、人手不足への対応とそのなかでも利益を確保するというコンビニ業界の姿勢が如実に表れています。セルフレジ化の課題は酒とたばこの年齢確認でしたが、運転免許証か店員による確認が選択できるようになったことでスムーズになっています。また、今年、日本フランチャイズチェーン協会によるセルフレジを使った非対面販売のガイドラインが策定され、マイナンバーカードによる確認も可能になったので、ますます障壁はなくなっています」 グリーンローソンではたばこはレジの下に陳列されており、客が直接取り出せるようになっている。また、セルフレジではモニター上のアバターが使い方をサポートするため、店舗にいる店員の接客業務はほぼ必要ない(アバターはオンラインでつながっているスタッフが遠隔操作する)。 「アバターはセルフレジの他、店内のモニターで、入り口のあいさつ、商品やサービスの説明を行っています。アバターは複数店で場所も選ばずに働けるため、将来は外出できない人や障がいのある人の働き口にもなると思います。他にも法整備は必要ですが、薬剤師のアバターを用いて薬販売を行うなど、さまざまな展開が予想できます」』、「今回の新店舗はいわば“未来のコンビニ”」、「デリバリー配達員の商品受け取り用BOX、商品を手に取った客への推薦の声かけロボットの設置など目新しいものが多い。最も渡辺氏が驚いたのはレジカウンターに接客の店員が基本的にいないこと」、「セルフレジ化の課題は酒とたばこの年齢確認でしたが、運転免許証か店員による確認が選択できるようになったことでスムーズになっています」、面白い試みだ。
・店内業務の無人化で店内調理に注力可能に  こうして店内業務の大半を無人化できることで、冒頭で触れた店内調理に注力することが可能となる。 「工場で作ったものよりも、たとえ冷凍食品に一手間かけただけでも、作りたてのほうがおいしいという顧客ニーズに応えるのが狙いです。また、地方など飲食店が家の近くにない場所だと、手作りが食べられるということはとてもありがたいもの。高齢者が家から出る理由になりますし、コミュニケーションも生まれます」 グリーンローソンの店内厨房の一部メニューでは、オーダーを受けてから作る「できたてモバイルオーダー」を導入。モバイルオーダーのメニューには「スンドゥブとチョイ飯セット」など、通常のローソンでは販売していない専門店メニューがあるという。もはや、コンビニではなく、「ほっともっと」や「オリジン弁当」がライバルになりそうだ。 「普通に考えたらコンビニの店内調理なんて手間暇がかかってやってられません。しかし、セルフレジが9割であるグリーンローソンなら、店員の業務は品出しと掃除くらい。そのぶん手作りを好むお客さんに向けた商品を提供できるし、店員自身の負担減、フードロスの削減にもつながります」 また、箸やフォークなどのカトラリーは順次完全撤廃していき、レジ袋はオープン時から販売していない。その代わり、自宅で不要になった紙袋を店頭で回収し、買い物袋として再利用してもらう。 「他にもこれまでのコンビニと異なるのは、扉付き要冷機(冷蔵ショーケース)です。今までの多くのコンビニの要冷機はペットボトルなどが取りやすいように、扉などがなくオープンな状態でした。しかし、グリーンローソンでは扉を付け、大幅な省エネを実現しています」』、「セルフレジが9割であるグリーンローソンなら、店員の業務は品出しと掃除くらい。そのぶん手作りを好むお客さんに向けた商品を提供できるし、店員自身の負担減、フードロスの削減にもつながります」、「今までの多くのコンビニの要冷機はペットボトルなどが取りやすいように、扉などがなくオープンな状態でした。しかし、グリーンローソンでは扉を付け、大幅な省エネを実現しています」、合理的なやり方だ。
・『コンビニの「便利さ」は見直しの転換期に  グリーンローソンのさまざまな取り組みに共通しているのは「不便さ」だと渡辺氏は話す。 「レジ袋がない、セルフレジ、箸がない、一手間かけてペットボトルを取る……、これらはすべて『楽で便利』であったはずのコンビニがどんどん不便になっていることを示しています。近年の円安、物価高、エネルギー不足、人手不足などを経て、これまで通りでは持続不可能と誰もがわかっています。かつての日本のぜいたくの象徴であり、世界最高の小売店といわれたコンビニも、そうした流れのなかで、不便を受け入れて新しい業態に変わろうとしているということです。その象徴がグリーンローソンなのでしょう」 セブンイレブンは今年創業50周年、ローソンも2025年で50周年という節目を迎える。それと同時に転換期も迎えているのだろう。それでは、このような未来のコンビニであるグリーンローソンは全国に普及するのだろうか。 「今回の試みのすべてが成功することはないでしょう。試行錯誤しながらいい形に落としどころを見つけていき、ある程度の汎用性を持つものになると思います。また、全国一律に広がるわけではなく、人との触れ合いを求めるお客さんが多い地域などでは、昼は店員がレジを打ち、深夜はセルフレジにするなど、ニーズに合わせて変わっていくでしょう。一方で、人手不足はローソンだけの問題ではないので、今後このような省人化店舗は全国的には広がっていくと思います。我々はそうした不便なコンビニを今後受け入れなければならないのです」 実際にグリーンローソンに行ってみると、若者のみならず高齢者もセルフレジで買い物をしていた。「不便なコンビニ」にすでに多くの人が対応しつつあるようだ。今後も、ローソンによる業界をけん引する取り組みに注目だ。』、「「レジ袋がない、セルフレジ、箸がない、一手間かけてペットボトルを取る……、これらはすべて『楽で便利』であったはずのコンビニがどんどん不便になっていることを示しています」、「かつての日本のぜいたくの象徴であり、世界最高の小売店といわれたコンビニも、そうした流れのなかで、不便を受け入れて新しい業態に変わろうとしているということです。その象徴がグリーンローソン」、「若者のみならず高齢者もセルフレジで買い物をしていた。「不便なコンビニ」にすでに多くの人が対応しつつあるようだ。今後も、ローソンによる業界をけん引する取り組みに注目だ」、同感である。
タグ:物言う株主が、主張の根拠を具体的な形で示すとは珍しい。 (その10)(コンビニ事業以外は「全面撤退すべき」と主張 セブン 米ファンドが示した「株価2倍計画」の中身、ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、「グリーンローソン」は何が違う?新型店が示す“コンビニの未来”とは) 「第1段階で行うのはコンビニ事業に注力する戦略の発表」、「第2段階は、百貨店子会社のそごう・西武の速やかな完全売却」、「総合スーパー子会社のイトーヨーカ堂の売却、もしくは食品事業に集中したうえでのスピンオフ(分離独立)だ」、「第3段階は、ほかの非中核事業からの撤退だ。セブン銀行といった金融事業、ファミレスのデニーズ、雑貨店のロフトやフランフラン、通販のニッセンなど、コンビニを除く事業から全面撤退する」、「第4段階は海外のコンビニ戦略の見直し」、「グループシナジーにも疑問符を付ける」、 「取締役は13人。その過半数の8人が社内取締役で、井阪社長を除く7人は事業子会社の社長や役員を務めている」、やはり少なくとも過半数は「社外」とすべきだろう。 東洋経済オンライン「コンビニ事業以外は「全面撤退すべき」と主張 セブン、米ファンドが示した「株価2倍計画」の中身」 東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」 「集中購買などでシナジーが最も期待できる国内のセブン-イレブン、イトーヨーカ堂、食品スーパーのヨークベニマルの3社においても、その効果は2021年2月期の営業利益のうち4%未満だと分析」、一見すると説得力がありそうだが、「井阪隆一社長は、バリューアクトの戦略計画は「想像に基づいた形で作られたもの」とコメント」、立場上、そうコメントせざるを得ないのだろう。 米ファンドのバリューアクト コンビニ 「2014年に総額約550億円を投じ・・・全株式を取得」、それが「上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性」とはローソンにとってもすごい投資効率だ。 「成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデル」、「飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みに」、「現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定」、なるほど。 「思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い・・・客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった」、「ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された」、なるほど。 「従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない」、「成城石井」上場で「ローソン」の「広告宣伝費」はどこまで増やせるのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「「グリーンローソン」は何が違う?新型店が示す“コンビニの未来”とは」 「今回の新店舗はいわば“未来のコンビニ”」、「デリバリー配達員の商品受け取り用BOX、商品を手に取った客への推薦の声かけロボットの設置など目新しいものが多い。最も渡辺氏が驚いたのはレジカウンターに接客の店員が基本的にいないこと」、「セルフレジ化の課題は酒とたばこの年齢確認でしたが、運転免許証か店員による確認が選択できるようになったことでスムーズになっています」、面白い試みだ。 「セルフレジが9割であるグリーンローソンなら、店員の業務は品出しと掃除くらい。そのぶん手作りを好むお客さんに向けた商品を提供できるし、店員自身の負担減、フードロスの削減にもつながります」、「今までの多くのコンビニの要冷機はペットボトルなどが取りやすいように、扉などがなくオープンな状態でした。しかし、グリーンローソンでは扉を付け、大幅な省エネを実現しています」、合理的なやり方だ。 「「レジ袋がない、セルフレジ、箸がない、一手間かけてペットボトルを取る……、これらはすべて『楽で便利』であったはずのコンビニがどんどん不便になっていることを示しています」、「かつての日本のぜいたくの象徴であり、世界最高の小売店といわれたコンビニも、そうした流れのなかで、不便を受け入れて新しい業態に変わろうとしているということです。その象徴がグリーンローソン」、「若者のみならず高齢者もセルフレジで買い物をしていた。「不便なコンビニ」にすでに多くの人が対応しつつあるようだ。今後も、ローソンによる業界をけん引す る取り組みに注目だ」、同感である。
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不動産(その10)(空き家が増加中 高級住宅街「田園調布」の住民が 自らの首を絞めることとなった“建築協定”とは?、東京のオフィス賃料が来年下落?「2023年問題」が避けられない理由、中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変) [産業動向]

不動産については、昨年4月21日に取上げた。今日は、(その10)(空き家が増加中 高級住宅街「田園調布」の住民が 自らの首を絞めることとなった“建築協定”とは?、東京のオフィス賃料が来年下落?「2023年問題」が避けられない理由、中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変)である。

先ずは、昨年5月3日付け幻冬舎Gold Online「空き家が増加中。高級住宅街「田園調布」の住民が、自らの首を絞めることとなった“建築協定”とは?」を紹介しよう。
https://gentosha-go.com/articles/-/42647?per_page=1
・『近年、都内の高級住宅地に空き家が増加するという現象が起こっています。それはかつての高級住宅地の代名詞「田園調布」も例外ではありません。なぜ、空き家が増加しているのか? その原因のひとつである“建築協定”とはどんなものかについて解説します』、「田園調布」で「空き家が増加中」とは興味深そうだ。
・『渋沢栄一が創った理想住宅地「田園調布」  日本資本主義の父と謳われる渋沢栄一。1873年に自ら設立に携わった日本最初の銀行・第一国立銀行(現・みずほ銀行)の総監役に就任したのを皮切りに、次々と銀行の設立、経営を手がけました。その天賦の才を発揮するフィールドは銀行にとどまることを知らず、ガスや鉄道などのインフラ事業、貿易や保険、新聞など、産業革命後の日本人の暮らしを支える、あらゆる重要事業で活躍しました。 常に未来を見据え、進歩的な目線で社会システムの構築に取り組んだ渋沢栄一。彼が都市づくりを目的に設立した「田園都市株式会社」が開発したのが、現在の「田園調布」である「多摩川台住宅地」です。 イギリスの近代都市計画の祖と敬われている、エベネザー・ハワードというイギリス人社会改良家がいます。彼が1898年に提唱した、都市労働者が健全な生活を送るため、都市と田園の長所を兼ね備えた、自然の美と都市の機能が同時に享受できる理想都市論が「田園都市論」です。 この「田園都市論」を日本で応用しようと考えたのが渋沢栄一です。「田園調布」は1923年(大正12年)の誕生以降、昭和の高度経済成長期の一戸建て住宅需要の高まりとともに、高級住宅地の代名詞としてその名を高めていきました。 しかし、近年では「空き家」の増加、それに伴う住人の高年齢化などが懸念されています。なぜ? 人気住宅地として高名な「田園調布」で、「空き家」が増加したのでしょうか。その理由は“建築協定”にあります』、「“建築協定”」はさぞかし厳格なものなのだろう。
・『住民自らが取り決める“建築協定”  建築基準法(第69条~77条)に基づくまちづくりの制度のなかに、“建築協定”というものがあります。建築基準法で定められた国の基準に加えて、住民が自発的に基準を設けるのです。 建築物の形態や用途に関してルールを決めて、互いに守り、監視し合うことで、良好な住環境を永続させていくための制度です。「田園調布」の場合は、「田園調布憲章」という名のもとに、次のような基準が設けられています。 “●敷地は165平方メートル以上 ●建物の高さは9メートル、地上2階建てまで ●敷地周囲に原則として塀は設けず、植栽による生け垣。石材、コンクリートなどの塀の場合、高さ1.2メートル以下 ●一定面積の樹木による緑化。既存樹木は原則として残す ●外壁や屋根などの色は、地区の環境に調和した落ち着いたものとする ●道路や敷地境界線から1メートルには塀や門、看板など、緑化を妨げる工作物の設置禁止 ●ワンルームタイプの集合住宅は不可” (2016年10月6日付朝日新聞「(田園調布…高級住宅地の街:1)時間ゆるり、緑の邸宅街」より引用) つまり、「田園調布」では165平方メートル以上の敷地がなければ、住宅を建てることが出来ません。すなわち、土地の所有者が亡くなり、相続人が手放そうとした場合、土地を分割して売ることが難しいという問題が発生してしまうのです』、「「田園調布」では165平方メートル以上の敷地がなければ、住宅を建てることが出来ません。すなわち、土地の所有者が亡くなり、相続人が手放そうとした場合、土地を分割して売ることが難しいという問題が発生してしまう」、確かに厳格だ。
・『個人にも、不動産業者にも不都合な土地  例えば、相続人が300平方メートルの土地を売ろうとする場合、分割して売りに出し、各々にしっかり買い手を見つけることは非常に困難です。 なぜなら、最低165平方メートル以上の面積がなければ住宅を建てることができず、この面積を確保するとなると、残りは住宅を建てられる基準には広さが到底及ばず、適切な使途が見当たらないからです。 土地を分割せずに売るとしても、土地代があまりに高額すぎるため、購入できる層の母数がぐっと減ってしまい、こちらも買い手を見つけるのが非常に困難です。「田園調布」の300平方メートルの土地の相場は1億数千万円にも及ぶと言われています。 では、個人の住宅用ではなく、資金の準備がある不動産業者は買い手になるでしょうか。この場合も“建築協定”の「田園調布憲章」がネックとなります。 「建物の高さは9メートル、地上2階建てまで」とされているため、継続的な利益が見込める、高層マンションや商業ビルなどを建てることはできません。さらに、「ワンルームタイプの集合住宅は不可」とされているため、単身者向け住宅も建てられません。 このように、「田園調布」の土地は個人にとっても、不動産業者にとっても、手が出しづらい状況にあります』、「「田園調布」の土地は個人にとっても、不動産業者にとっても、手が出しづらい状況にあります」、細分化を防ぐ狙いなのだろうが、「手が出しづらい状況にあります」、やむを得ないとはいえ、困ったことだ。
・『高額な相続税も、相続人のネックに  土地の価値が高いということは、それだけ相続税も高騰します。支払う余力がない場合には、相続した土地を担保に融資を受け、別の土地で不動産経営をするなど、工夫が必要です。また、リフォームをしてファミリー向け賃貸物件として経営するという選択肢もあります。 さらに、空き家が増え新しい住民が入らなくなると懸念されるのは、住民の高齢化です。「田園調布」は坂も多く、スーパーなどの商業施設は駅周辺にしかないことを考えると、高齢者にとって住みやすいとは決して言えない街でもあります。ですが、住民にとっては、このうえなく親しみのある街なのです。 戦前に誕生し、高度経済成長期の日本とともに成長し、様変わりしてきた「田園調布」。さらなる時代の変化とともに、新たな息吹が吹き込まれることを期待せずにはいられません』、「田園調布憲章」には多少の問題はあっても、住民は全体としてはこれを支持しているようだ。

次に、6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したLIFULL HOME’S総合研究所・副所長チーフアナリストの中山登志朗氏による「東京のオフィス賃料が来年下落?「2023年問題」が避けられない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304129
・『コロナ禍での「働き方改革」で東京のオフィス空室率が拡大  西暦2000年になるとコンピュータが誤作動する恐れがあるとされた「2000年問題(Y2K問題)」以降、「オフィス2003年問題」「国債償還期限2008年問題」「生産緑地2022年問題」など、毎年のように「20××年問題」と、火のないところに煙を立てるかのような話題作りが続けられてきた印象がある。 だが「東京のオフィス2023年問題」だけは、例外だと言わなければならないようだ。 コロナ前の2019年、東京のオフィス平均空室率は1%台で安定推移しており(しかも年間を通じてじりじりと縮小していた)、2019年12月には1.55%、新築ビルでも4.82%と、入居好不調目安の5%を下回るほどの好調を維持していた(三鬼商事調べ、以下同)。 また全国で見ても、新型コロナ感染者が発生し“Withコロナ”に突入した2020年2月時点で平均1.49%、新築ビル3.95%と順調かつ安定的な空室消化を示している。 しかし、それ以降はコロナ感染者の増加に初の緊急事態宣言の発出と、コロナ感染の急拡大状況を受けて東京のオフィス空室率は拡大の一途となり、同年8月には平均で3%、11月には4%を突破した。その後も東京のオフィス空室率は拡大を続け、1年後の2021年10月には6.47%(新築ビル14.03%/既存ビル6.39%)にまで達している。 新規に供給されるオフィスの空室率を見る上では5%、つまり95%埋まっているかどうかが市況の好不調の目安とされている。新築マンションの初月契約率については70%が売れ行きの好不調の目安とされるように、その数値自体にさしたる根拠はないのだが、コロナ禍における2021年のオフィス空室率の推移はその目安を上回る状況であり、少なくとも好調とは到底いえない状況だった。それだけオフィス市場に対するコロナの影響は直接的だったというべきだろう。 正確に言えば、コロナの影響というよりは、コロナによっていわゆる“働き方改革”が半強制的に推進されることとなり、テレワークが多くの企業で導入・実施されたことが影響したというべきだろう。 テレワークも当初は毎週1日程度の試験的な導入であったものが、コロナ禍の拡大によって毎週数日になり、政府や自治体、経団連などの団体からの要請も重なって、ついには原則として在宅で勤務し必要なときだけ出社するという就業形態を導入する企業が増えた。 特に東京はテレワークという働き方に親和性の高い規模の上場企業(就業者数が多い企業ほど導入率は高い傾向がある)、業種(情報・通信、金融・保険業などは特に親和性が高い)、およびエリア(こういった規模および業種は東京都内に本社を置いていることが圧倒的に多い)という条件がそろっており、テレワークの導入が加速度的に進んだことが、不要になったオフィスの返却、契約変更などに表れたものとみることができる』、「東京のオフィス平均空室率は」「コロナ前の2019年」「1%台で安定推移」していたが、「2021年10月には6.47%」にまで上昇した。「テレワークの導入が加速度的に進んだことが、不要になったオフィスの返却、契約変更などに表れたものとみることができる」、ここまで上昇したとは驚かされた。
・『余談ながら、筆者が所属する不動産ポータルサイトLIFULL HOME’Sを運営するLIFULLでも、コロナ禍の拡大とともに出社とテレワークの選択制からテレワーク推奨へ、さらに原則テレワークへと出社頻度が漸減し、宣言や措置が発出されていない現状においても出社するかどうかは部署ごとにコントロールするという比較的柔軟な体制が敷かれている。ノートPC1台とネット環境さえあればどこでも仕事ができるというIT関連企業ならではの仕事のスタイルといえるだろう(この原稿も自宅で会社のノートPCに向かって打ち込んでいる)。) 従来、オフィスは効率良くかつ快適に活用できることで、その利便性と利用価値をアピールし続けてきたわけだが、コロナ感染防止の観点から社員相互の直接交流が難しくなったことで、“場”としてのオフィスの役割は大きく変化したといえる。従業員全員を収容する必要が初めからないのであれば、オフィスはそれだけ少なくて済むし、リモートワークが促進されれば、賃料が高額な都心にオフィスを構える意味も薄らいでくるというものだ。 これまでのビジネス慣習によってなかなか推進することが難しかった“働き方改革”だが、コロナ禍に対応せざるを得なくなった各企業が試しに導入してみたら、意外にもすんなりとテレワークに移行できた結果、これまで必要だったオフィスが余るという現象が発生することになった。このためコロナ禍の長期化とともにオフィスの空室率が徐々に拡大していったものと考えられる。 これまでも六本木ヒルズや丸ビル、品川インターシティなど巨大な床が創出される大型オフィスビルの竣工によって、一時的に空室率が高まるという現象はあったが(リーマン・ショック時も一時的にオフィス空室率が拡大した)、コロナ禍においてこのような大規模オフィスが次々と竣工すればコロナ禍&テレワークの進捗によって需要が減少したオフィス市場は一体どうなってしまうのか…これが「東京のオフィス2023年問題」の端緒といえる』、「これまでのビジネス慣習によってなかなか推進することが難しかった“働き方改革”だが、コロナ禍に対応せざるを得なくなった各企業が試しに導入してみたら、意外にもすんなりとテレワークに移行できた結果、これまで必要だったオフィスが余るという現象が発生することになった。このためコロナ禍の長期化とともにオフィスの空室率が徐々に拡大していったものと考えられる」、その通りだろう。
・『注目の常盤橋タワーでも開業時の空室率は10%  コロナ以前の2018年からコロナ禍に突入した2020年にかけては、幸いなことにコロナ前から新たに供給されるオフィスに入居する企業が順調に決まっていたこと、またオフィスの大量供給がなく需要と供給のバランスが取れていたことなどにより、冒頭で述べた通り、オフィス空室率は極めて良好な水準で推移していた。 またこれも幸か不幸か、2021年および2022年は東京オリンピック・パラリンピックのインフラ整備による人手不足などで、以前から新規のオフィス供給が控えめだったこともあり、コロナ禍においても空室率が7%前後にとどまっていたという見方ができる。 だが、2023年以降は一転してオフィスの大量供給が始まるため、これらの新規の床をどのように吸収・活用するのか、もしくはできるのかということが焦点となる。 それを占う意味で重要なポイントと思われるのが、2021年に竣工・開業した浜松町駅に直結する「世界貿易センタービルディング南館」と大手町に誕生した三菱地所の「常盤橋タワー」の需給状況だ。 開業時の空室率は、「世界貿易センタービルディング南館」でおおむね15%、「常盤橋タワー」も10%と、コロナ禍の収束が見通せないこの時期にしてはかなり健闘したというべきだろう。 だが、「常盤橋タワー」のような知名度と最新設備、立地条件をもってしても、好不調の目安とされる5%に届かなかったという事実は、今後のオフィス大量供給についてネガティブな印象を与える可能性が高いとみるべきだ。 これまで“去る者は追わず”だったオフィスの供給サイドも、新たな借り手探しが難しいと考えれば、入居企業が去ることを引き留めようとするだろう。その結果、オフィス市場は貸し手市場から借り手市場へと急激にシフトし、オフィス賃料が低下することになる』、「「常盤橋タワー」のような知名度と最新設備、立地条件をもってしても、好不調の目安とされる5%に届かなかったという事実は、今後のオフィス大量供給についてネガティブな印象を与える可能性が高いとみるべきだ。 これまで“去る者は追わず”だったオフィスの供給サイドも、新たな借り手探しが難しいと考えれば、入居企業が去ることを引き留めようとするだろう。その結果、オフィス市場は貸し手市場から借り手市場へと急激にシフトし、オフィス賃料が低下することになる」、その通りだろう。
・『2023年以降に完成予定の主な大規模開発案件とは  では、実際に2023年以降完成予定の主な大規模開発案件とはどういったものがあるのか。 先ず先頭を切るのは、森ビルが事業参画する「虎ノ門ヒルズステーションタワー・虎ノ門・麻布台プロジェクト」で、2023年7月(A-1/A-3街区)および11月(A-2街区)が竣工・開業する。 虎ノ門ヒルズステーションタワーの総床面積は合計で約33万平方メートルとされており、虎ノ門ヒルズプロジェクト全体では約80万平方メートルの床が創出されることになるから、森ビルのアプローチ次第ではあるものの、一気にオフィス床の流動化が発生する可能性が高まることは想像に難くない。 以降も、JR東日本が手掛ける総床面積約21万平方メートルの「高輪ゲートウェイシティ」が2025年3月竣工予定、三井不動産と野村不動産のJVで進行する総床面積約38万平方メートルの「日本橋一丁目中地区再開発・東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発・八重洲二丁目中築第一種市街地再開発」が2026年3月竣工予定、三菱地所が日本最高層のオフィスとして建築する「TOKYO TORCH(東京トーチ)」のシンボルとなる地上63階/高さ約390m、総床面積約54万平方メートルのTORCH TOWERが2027年度竣工予定などとなっている。) ほかにも再開発が進む浜松町~田町エリアでも多くの計画が進んでいることから、巨大オフィスが2023年以降続々と新たなオフィス床を創出し続けることになる。 これら最新の設備と仕様を誇る超高層オフィスビルは、当然のことながら賃料も周辺相場より格段に高額な水準となることが想定されるから、与信および信用力が担保できる大手企業以外に入居を検討するところはほぼ皆無であろうし、オフィスの移転(特に本社機能の移転)には多くの時間と労力を要することから、2027年度竣工予定のTORCH TOWERにおいても既に水面下での入居交渉が始まっている。 供給サイドもコロナ禍でのオフィス需要の厳しさは把握しており、ワンフロア全てではなく小分けにして活用できるように工夫したり、複数の企業がオフィスの一部を共同使用できるようにしたり、オフィス・インテリアごと貸せるようにしたりとあの手この手で需要を喚起しようとしているようだ。 東京都内の企業では2022年4月以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されていなくてもテレワークは今も継続しており(コロナ前の就業体制へ一気に戻すと再びコロナ感染が拡大する局面に対応しにくくなるため)、東京のオフィス需要は依然として厳しい状況に変わりはないといえる。 この状況下で、上記に掲出したオフィスビルだけでも合計200万平方メートル弱もの新規の床が創出されることになれば、「東京のオフィス2023年問題」(正確には2023年以降も続くのだが)は現実味を帯びて迫ってくることになる。 折悪しく、ロシアのウクライナ侵攻による資材・食料価格の高騰や日米の政策金利の格差拡大による円安が発生し、その多くを輸入に頼らざるを得ない資材・エネルギー価格の高騰が足元で起きているから、オフィスのテナントとして想定される多くの企業で今後の業績の悪化が懸念されている。 コロナ禍によるテレワークの実施・定着、円安などによる企業業績の悪化、物価の上昇傾向など、オフィス環境を取り巻く状況は決して芳しくはない。果たしてオフィス開発を手掛ける各デベロッパーにはこの状況を乗り越える手段があるのか、今後の推移を注視したい。 コロナが明けて外資の日本での動きが本格化すれば、「東京のオフィス2023年問題」などあっという間に雲散霧消するとうそぶく業界関係者もいるにはいるのだが…。 (記事は個人の見解であり、執筆者が所属する会社の見解を示すものではありません)』、「上記に掲出したオフィスビルだけでも合計200万平方メートル弱もの新規の床が創出されることになれば、「東京のオフィス2023年問題」・・・は現実味を帯びて迫ってくることになる。 折悪しく、ロシアのウクライナ侵攻による資材・食料価格の高騰や日米の政策金利の格差拡大による円安が発生し、その多くを輸入に頼らざるを得ない資材・エネルギー価格の高騰が足元で起きているから、オフィスのテナントとして想定される多くの企業で今後の業績の悪化が懸念」、「コロナ禍によるテレワークの実施・定着、円安などによる企業業績の悪化、物価の上昇傾向など、オフィス環境を取り巻く状況は決して芳しくはない」、一層の注意を要するようだ。

第三に、本年4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320914
・『日本のインバウンドツーリズムは再び幕を開け、ビジネス上の人的交流も息を吹き返しつつある。ポストコロナに期待されるのは「外からの目線」を利用した日本の課題解決だ。外国からの人の流れと資本の参入は街をどう活性化させるのか。中国からの人と資本の動きに注目して、大阪・西成一帯の変化をリポートする』、興味深そうだ。
・『中国人の間で西成区が人気  人口減少に悩まされる日本列島だが、大阪市で外国人居住者が増えている。2020年からのコロナ禍で減少傾向にあった外国人居住者が2022年12月末に15万2560人に達したのだ。 中でも注目したいのが同市西成区だ。統計が確認できる1960年以降、西成区は右肩下がりの人口減少が続き、その食い止めが行政の大きな課題のひとつになっていた。ところが、2022年は微増に転じたのである。 西成区の人口増加に貢献しているのが外国人居住者だ。2019年(9月末)には9525人だったが、コロナ禍にもかかわらず毎年その数は増え、2022年(9月末)には前年比で1563人増加し1万1696人になった。韓国・朝鮮籍(3422人)、ベトナム籍(3007人)に続くのが中国籍(2976人)の居住者だ。 中国語の通訳ガイドを務める楢崎宣夫さんは、「西成区役所の住民登録などを行う窓口では、以前に比べてはるかに多くの中国人を目にするようになりました」と語る。早朝の西成区役所窓口を訪れた筆者も、順番待ちの中に何人かの中国人を目撃した。 中国人が増えている背景には、いくつかの理由がある。その一つが中国からの“脱出”だ。大阪市に住む中国人の陳明さん(仮名)は「ここ数年で友人たちはみな、海外に出ていきました。ロックダウンで悲惨な目に遭った中国人は、なおさらこの国に居続けていいかを真剣に考えているのです」と明かす。 陳さん自身はすでにコロナ前に日本で経営管理ビザを取得しており、2022年6月に中国から東京に戻ってきたが、住みやすさを理由に大阪に転居したという。在留の中国人の中には、あえて西成区を選んで居住する中国人もいる。現在、独立起業した趙雲さん(仮名)も大阪定住を選んだ一人だが、その魅力をこう語っている。 「西成は物価が安く、さまざまな国から来た人たちが住んでいる。私たちにとってはそういう場所が住みやすい。ここが好きな中国人は結構多いですよ」 不動産情報サービスを手掛けるジープラスメディアによれば、2022年5月、「大阪で外国人が不動産を買いたい街」は、西成区が東大阪市を抜いて1位になった』、「西成区の人口増加に貢献しているのが外国人居住者だ・・・2022年(9月末)には前年比で1563人増加し1万1696人になった。韓国・朝鮮籍(3422人)、ベトナム籍(3007人)に続くのが中国籍(2976人)の居住者」、「在留の中国人の中には、あえて西成区を選んで居住する中国人もいる。現在、独立起業した趙雲さん(仮名)も大阪定住を選んだ一人だが、その魅力をこう語っている。 「西成は物価が安く、さまざまな国から来た人たちが住んでいる。私たちにとってはそういう場所が住みやすい。ここが好きな中国人は結構多いですよ」 不動産情報サービスを手掛けるジープラスメディアによれば、2022年5月、「大阪で外国人が不動産を買いたい街」は、西成区が東大阪市を抜いて1位になった」、「西成」は、「あいりん地区」もあり、かっては恐い街のイメージだったが、最近は変わりつつあるようで、驚かされた。
・『街の評価を変えたのは外国人  「JR新今宮駅周辺は独特な雰囲気だった」――。こう振り返るのは、大阪市浪速区に住む会社員・本田美幸さん(仮名)だ。浪速区との区界となる「堺筋」の南にある西成区の萩之茶屋一帯を、子どもの頃から異空間として見つめ続けてきた。 すぐそばにあるJR西日本・大阪環状線の天王寺駅には、日本一の高さを誇る複合ビル「あべのハルカス」があり、富裕層の住む街としても知られる。その隣接駅の新今宮駅や御堂筋線・堺筋線の2路線が乗り入れる動物園前駅一帯には、日雇い労働者のための宿が集積する「あいりん地域」がある。 「新今宮駅の周辺は、仕事や家族やお金がないといった難しい問題を抱える人たちが集まる地域でしたが、昨年春に星野リゾートのホテルができたのには本当に驚きました」と本田さんは続ける。 問題山積の、地元の人からも見捨てられた一帯だったが、「ここが変わり始めたのは、日本がインバウンドに向けて大きくかじを切った頃からでしょうか」と、前出の通訳ガイド・楢崎さんは話す。 堺筋を挟んで北の浪速区には、通天閣などの観光地がある。関西空港やUSJ(ユニバーサルスタジオ・ジャパン)などへのアクセスもいい。ある意味“手つかず”だった西成区の萩之茶屋一帯は、実は地の利に恵まれた絶好のエリアであり、インバウンドが本格化したこの10年で徐々に外国人客が訪れるようになった。 西成区の変遷を見つめる企業経営者の男性は、「日雇いの人々にも変化が起きています。スマホを見ながら場所探しする外国人ツーリストに積極的に声をかけて道案内するなど、できる限りの“おもてなし”をする風景を目にするようになりました」と語る。外国人の中にはホテルでの仕事に就いたり、バーを経営したりと、この地に根を下ろす人たちもいる。 日雇い労働者の街が遂げた一大変化の裏には、こうした外国人目線による再評価がある。 楢崎さん自身もこれを実感する一人だ。最近も中国人出張者から「大阪の安い宿を探してくれ」と頼まれてネットを検索し、一泊1700円で利用できる西成警察署前の宿を紹介したところ、「これは安い!」と手をたたいて喜ばれたという。 「バス・トイレは共同で、三畳一間というまるで独房のような部屋やけど、コスト重視の中国人出張者もめっちゃ気に入ってましたわ」(楢崎さん) 宿の向かいにある高い柵や鉄格子で囲まれた西成警察署が象徴するように、実は少し前まで、宿が立地するエリアは暴動が起きるなど、あいりん地域でも危険視されていた場所だった。 楢崎さんは長い歴史を振り返りながら、「そんないわく付きのエリアに外国人客が泊まるってこと自体が歴史的な一歩なんや」とつぶやく』、「西成区の萩之茶屋一帯は、実は地の利に恵まれた絶好のエリアであり、インバウンドが本格化したこの10年で徐々に外国人客が訪れるようになった。 西成区の変遷を見つめる企業経営者の男性は、「日雇いの人々にも変化が起きています。スマホを見ながら場所探しする外国人ツーリストに積極的に声をかけて道案内するなど、できる限りの“おもてなし”をする風景を目にするようになりました」と語る。外国人の中にはホテルでの仕事に就いたり、バーを経営したりと、この地に根を下ろす人たちもいる。 日雇い労働者の街が遂げた一大変化の裏には、こうした外国人目線による再評価がある」、「外国人目線による再評価」、なるほど説得力がある。
・『中国系店舗も地域との関係を重視  一帯には、“中国資本”も流入するようにもなった。 西成警察署から車で3分ほどの浪速区大国町に、2021年末、中国第一汽車の高級自動車ブランド「紅旗」の旗艦店がオープンした。毛沢東が乗ったといわれる中国の国産車だが、1000万円を超える中国の高級自動車を扱う旗艦店が大国町にできたことは、一部の地元民からも注目された。 日本の第一号店を大阪に設けたのは「中国でもハイエンドモデルができるという宣伝戦略」(中国メディア)であり、また「輸入元が関西にあるため」(日本メディア)とも言われる一方で、中国事情についてよく知る地元の男性は、こうした動向について次のような解釈を与えている。 「西成区と接するこの一帯も、地元の人からすれば『ややこしい地域』ですが、そんなところに高級車を売る外国資本が参入してきたことは、中国企業にとって過去の評判やイメージなどまるで関係ないことを意味しているのです」 前回、当コラムでは「2010年前後に萩之茶屋の商店街の空き店舗を中国資本が買収した」という話をお伝えした。 その後、瞬く間に数を増やした中国系カラオケ居酒屋は、「危険地帯にできた怪しげな店舗群」として、2015年頃に大手メディアなどでたびたび取り上げられてきた。萩之茶屋一帯に中国系カラオケ居酒屋ができた当初は、客引きや大音量のカラオケ、ゴミの不始末などの諸問題が増え、これまで以上に輪をかけた無秩序化が進んだ。しかし、約10年がたった今は、これも昔話になりつつある。 ゴミ問題については「依然として、路地裏に不法投棄をするケースもある」という地元の声もあるが、筆者がこの商店街を歩いたときには、目をそむけたくなるような光景や客引き、大音量のカラオケは特に気にならなかった』、「中国第一汽車の高級自動車ブランド「紅旗」の旗艦店がオープンした」。「西成区と接するこの一帯も、地元の人からすれば『ややこしい地域』ですが、そんなところに高級車を売る外国資本が参入してきたことは、中国企業にとって過去の評判やイメージなどまるで関係ないことを意味」、商売の流れに敏感な華僑の意見を参考にしたのかも知れない。
・『西成区も見て見ぬふりをせずコミット  後日、西成区役所に尋ねてみた。すると次のようなコメントが返ってきた。 「カラオケ居酒屋などの事業者は、民間業者に委託する形でゴミを回収するようになりました。当初は問題もあった中国系居酒屋でしたが、ルールを守るようになり、地域との関係を重視するようになったといえます」 西成区役所は「適正な指導を続けた結果」とも話していたが、そこには橋下徹氏が大阪市長時代に行った大改革を下地とした積極的なコミットがあったことが見て取れる。 同区は長らく“貧困と福祉の街”ともいわれ、「昔から“ややこしい人”の対応に慣れている」といった前向きな評価がある。この街には、コミュニケーションが難しい外国人をも包摂し、前向きに課題解決をする力があると捉えてもいいのかもしれない。 今後もアジアからの定住人口が増加すれば、人口減少に歯止めがかかり、若い世代が増えて新たなカルチャーを生み出す可能性がある。過渡期的には“ニューカマー”との摩擦やあつれき、犯罪発生やルール違反もあるだろうが、同区は恐らく今後も、見て見ぬふりをせず政策的サポートで地域の発展にリンクさせていくのではないか。 世界に目を転じれば、G7の多くの都市は外国からの人や資本の移動を新たなチャンスと受け止め、難題を抱えながらも積極的な受け入れで発展を維持している。西成区には、国際社会で進む“真のダイバーシティ”に比肩するようなダイナミズムがあり、多様なカルチャーが創る「未来都市の到来」を十分に予感させるのだ』、「西成区には、国際社会で進む“真のダイバーシティ”に比肩するようなダイナミズムがあり、多様なカルチャーが創る「未来都市の到来」を十分に予感させる」、「西成」の今後が楽しみだ。
タグ:(その10)(空き家が増加中 高級住宅街「田園調布」の住民が 自らの首を絞めることとなった“建築協定”とは?、東京のオフィス賃料が来年下落?「2023年問題」が避けられない理由、中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変) 不動産 幻冬舎Gold Online「空き家が増加中。高級住宅街「田園調布」の住民が、自らの首を絞めることとなった“建築協定”とは?」 「田園調布」で「空き家が増加中」とは興味深そうだ。 「“建築協定”」はさぞかし厳格なものなのだろう。 「「田園調布」では165平方メートル以上の敷地がなければ、住宅を建てることが出来ません。すなわち、土地の所有者が亡くなり、相続人が手放そうとした場合、土地を分割して売ることが難しいという問題が発生してしまう」、確かに厳格だ。 「「田園調布」の土地は個人にとっても、不動産業者にとっても、手が出しづらい状況にあります」、細分化を防ぐ狙いなのだろうが、「手が出しづらい状況にあります」、やむを得ないとはいえ、困ったことだ。 「田園調布憲章」には多少の問題はあっても、住民は全体としてはこれを支持しているようだ。 ダイヤモンド・オンライン 中山登志朗氏による「東京のオフィス賃料が来年下落?「2023年問題」が避けられない理由」 「東京のオフィス平均空室率は」「コロナ前の2019年」「1%台で安定推移」していたが、「2021年10月には6.47%」にまで上昇した。「テレワークの導入が加速度的に進んだことが、不要になったオフィスの返却、契約変更などに表れたものとみることができる」、ここまで上昇したとは驚かされた。 「これまでのビジネス慣習によってなかなか推進することが難しかった“働き方改革”だが、コロナ禍に対応せざるを得なくなった各企業が試しに導入してみたら、意外にもすんなりとテレワークに移行できた結果、これまで必要だったオフィスが余るという現象が発生することになった。このためコロナ禍の長期化とともにオフィスの空室率が徐々に拡大していったものと考えられる」、その通りだろう。 「「常盤橋タワー」のような知名度と最新設備、立地条件をもってしても、好不調の目安とされる5%に届かなかったという事実は、今後のオフィス大量供給についてネガティブな印象を与える可能性が高いとみるべきだ。 これまで“去る者は追わず”だったオフィスの供給サイドも、新たな借り手探しが難しいと考えれば、入居企業が去ることを引き留めようとするだろう。その結果、オフィス市場は貸し手市場から借り手市場へと急激にシフトし、オフィス賃料が低下することになる」、その通りだろう。 「上記に掲出したオフィスビルだけでも合計200万平方メートル弱もの新規の床が創出されることになれば、「東京のオフィス2023年問題」・・・は現実味を帯びて迫ってくることになる。 折悪しく、ロシアのウクライナ侵攻による資材・食料価格の高騰や日米の政策金利の格差拡大による円安が発生し、その多くを輸入に頼らざるを得ない資材・エネルギー価格の高騰が足元で起きているから、オフィスのテナントとして想定される多くの企業で今後の業績の悪化が懸念」、 「コロナ禍によるテレワークの実施・定着、円安などによる企業業績の悪化、物価の上昇傾向など、オフィス環境を取り巻く状況は決して芳しくはない」、一層の注意を要するようだ。 姫田小夏氏による「中国人に「大阪・西成一帯」が人気!中国高級車の旗艦店も出店で街が激変」 「西成区の人口増加に貢献しているのが外国人居住者だ・・・2022年(9月末)には前年比で1563人増加し1万1696人になった。韓国・朝鮮籍(3422人)、ベトナム籍(3007人)に続くのが中国籍(2976人)の居住者」、「在留の中国人の中には、あえて西成区を選んで居住する中国人もいる。現在、独立起業した趙雲さん(仮名)も大阪定住を選んだ一人だが、その魅力をこう語っている。 「西成は物価が安く、さまざまな国から来た人たちが住んでいる。私たちにとってはそういう場所が住みやすい。ここが好きな中国人は結構多いですよ」 不動産情報サービスを手掛けるジープラスメディアによれば、2022年5月、「大阪で外国人が不動産を買いたい街」は、西成区が東大阪市を抜いて1位になった」、「西成」は、「あいりん地区」もあり、かっては恐い街のイメージだったが、最近は変わりつつあるようで、驚かされた。 「西成区の萩之茶屋一帯は、実は地の利に恵まれた絶好のエリアであり、インバウンドが本格化したこの10年で徐々に外国人客が訪れるようになった。 西成区の変遷を見つめる企業経営者の男性は、「日雇いの人々にも変化が起きています。スマホを見ながら場所探しする外国人ツーリストに積極的に声をかけて道案内するなど、できる限りの“おもてなし”をする風景を目にするようになりました」と語る。外国人の中にはホテルでの仕事に就いたり、バーを経営したりと、この地に根を下ろす人たちもいる。 日雇い労働者の街が遂げた一大変化の裏には、こうした外国人目線による再評価がある」、「外国人目線による再評価」、なるほど説得力がある。 「中国第一汽車の高級自動車ブランド「紅旗」の旗艦店がオープンした」。「西成区と接するこの一帯も、地元の人からすれば『ややこしい地域』ですが、そんなところに高級車を売る外国資本が参入してきたことは、中国企業にとって過去の評判やイメージなどまるで関係ないことを意味」、商売の流れに敏感な華僑の意見を参考にしたのかも知れない。 「西成区には、国際社会で進む“真のダイバーシティ”に比肩するようなダイナミズムがあり、多様なカルチャーが創る「未来都市の到来」を十分に予感させる」、「西成」の今後が楽しみだ。
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携帯・スマホ(その9)(巨額赤字の楽天 これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、背水の楽天モバイル 黄信号灯る「黒字化」の約束 2023年中の達成掲げるが契約数倍増が最低条件、3人で100億円を詐取…「楽天モバイル」幹部社員たちが ここまでの不正に手を染められた理由《渡辺美奈代・K-1武尊との交友も》、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ) [産業動向]

携帯・スマホについては、昨年6月8日に取上げた。今日は、(その9)(背水の楽天モバイル 黄信号灯る「黒字化」の約束 2023年中の達成掲げるが契約数倍増が最低条件、3人で100億円を詐取…「楽天モバイル」幹部社員たちが ここまでの不正に手を染められた理由《渡辺美奈代・K-1武尊との交友も》、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ)である。

先ずは、本年2月22日付け東洋経済オンライン「背水の楽天モバイル、黄信号灯る「黒字化」の約束 2023年中の達成掲げるが契約数倍増が最低条件」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/654059
・『楽天グループの赤字の元凶であるモバイル事業。2023年中の単月黒字化を目指してきたが、その姿勢がトーンダウンし始めた。一方で楽天には、そう簡単に撤退できない事情もある。 「2023年中の黒字化はまず無理だろう。会社側からも、『しょうがない』というニュアンスを感じる」。楽天グループが2月14日に発表した決算内容を見て、ある市場関係者はそう話す。 焦点となっているのは、楽天グループが巨額投資を続けるモバイル事業だ。三木谷浩史会長兼社長は以前から、2023年中の単月営業黒字化を掲げ、決算資料などで目標として明記してきた。 ところが同社が2月14日に公表した2022年12月期決算の説明資料を見ると、「黒字化」の文字は1カ所のみ。時期的なメドも「フェーズ2」(編集注・2023~2024年を指す)と、あいまいだ。同日開かれた会見では、会社側から今2023年12月期の黒字化について言及することはなく、報道陣からの質疑で問われた結果、三木谷氏が「年内、なんとか頑張って目指していきたい」と述べるのみだった。 楽天グループの広報担当者は「従来の目標は何も変わっていない」と強調するものの、ここにきて、その姿勢は揺らぎつつあるように映る』、「巨額投資を続けるモバイル事業だ。三木谷浩史会長兼社長は以前から、2023年中の単月営業黒字化を掲げ、決算資料などで目標として明記してきた。 ところが同社が2月14日に公表した2022年12月期決算の説明資料を見ると、「黒字化」の文字は1カ所のみ。時期的なメドも「フェーズ2」・・・と、あいまいだ」、「報道陣からの質疑で問われた結果、三木谷氏が「年内、なんとか頑張って目指していきたい」と述べるのみだった」、苦しそうだ。
・『黒字化には「1000万以上」の契約が最低条件  それも無理はない。楽天モバイルの2023年1月末時点の契約数は451万。2022年1~3月期をピークに減少へと転じ、2022年7月の「0円プラン」の廃止も、顧客離れに追い打ちを掛けた。単月ベースでは同年11月に底打ちしたものの、いまだ1年前と同水準にとどまっている。  直近ではモバイル事業だけで毎四半期1000億円超の営業損失を垂れ流し、本業のEC(ネット通販)や金融事業で稼いだ利益を食い潰している。その結果、楽天グループは4期連続で最終赤字を計上。2022年12月期には3728億円と過去最大の赤字となった。 財務を圧迫し続けるモバイル事業の今期黒字化は、まさに株主や金融機関などのステークホルダーに対する「約束」でもあった(楽天グループに対する投資家や金融機関のスタンスについて詳細はこちら)。だが、業界関係者からは一様に「達成困難だ」との声が上がっている。 そもそもモバイル事業の黒字化には、どれだけの契約数が必要なのか。シティグループ証券の鶴尾充伸アナリストは「年間の営業黒字化には最低でも1000万以上」と分析する。) 前2022年12月期のモバイル事業の営業損失は4928億円、その大半を占める楽天モバイルの損失は4593億円だった。新規の契約獲得に苦戦する中、楽天モバイルは今となってコスト削減策を相次ぎ打ち出している。 2022年後半から順次、同社へ出向していたグループ社員を元の部署などへ戻し始めたほか、郵便局に併設したショップ約200店舗(全店舗の2割弱)を今春にも閉鎖する予定だ。さらに基地局の開設費用などが一巡することを理由に、2月14日には今後月間150億円(年間1800億円)のコスト削減ができるとの見通しを示した。 月間150億円のコスト削減が達成できる具体的時期は明示されていないが、単純計算をすると、年間の黒字化を実現するには、前期の損失額約4600億円からコスト削減額1800億円を引いた、約2800億円分を売り上げの増加によって穴埋めする必要がある。 通信キャリア事業の売上高は、契約数と1契約当たりの平均単価を掛けて算出できる。楽天モバイルの直近実績(月額の平均単価1805円)を前提とした年間の平均単価は2万円強。利ざやの少ない端末販売などを除外し、仮にキャリア事業のみで2800億円の売り上げを作るとすれば、現状の3倍弱に当たる1300万程度の契約が追加で必要だ』、「契約数は」「いまだ1年前と同水準にとどまっている」、「直近ではモバイル事業だけで毎四半期1000億円超の営業損失を垂れ流し、本業のEC(ネット通販)や金融事業で稼いだ利益を食い潰している。その結果、楽天グループは4期連続で最終赤字を計上。2022年12月期には3728億円と過去最大の赤字」、まさに危機的様相だ。
・『歯車を狂わせた「ahamo」の登場  楽天モバイルの料金プランは現在、データ使用量に応じて月額980~2980円(税抜き)に設定され、ユーザーのデータ利用拡大や「0円プラン」廃止などを背景に、平均単価は上昇し続けている。 とはいえ月額平均単価を3000円まで大幅に伸ばせたとしても、800万弱の契約を追加で積み増せないと、年間の黒字化は達成できない計算となる。単月ベースでは、月ごとに多少のコストの増減が想定されるが、持続性のある黒字化には大幅な契約数の積み増しが必要という事実に変わりはない。 楽天は、楽天経済圏のユーザーの取り込みや、2023年1月から本格参入した法人向けプランなどで契約数の積み増しを急ぐ。ただ、倍増させられるほどの起爆剤となるような策は現状打ち出せていない。 三木谷氏が心血を注いできた事業の歯車が狂った原因はどこにあるのか。通信業界に詳しい野村総合研究所の北俊一パートナーは、「楽天にとって、NTTドコモの新料金プラン『ahamo(アハモ)』の登場が最大の誤算だった」と指摘する。 楽天モバイルがサービスを本格始動させたのは2020年4月。それから1年も経たない2021年3月、NTTドコモがahamoをローンチした。データ使用量20GB(ギガバイト)で月額2700円(税抜き)という割安な価格帯が話題を呼び、後を追う形でKDDIとソフトバンクも新料金プランを導入し始めた。 それにより、価格優位性が武器だったはずの楽天モバイルと既存3キャリア間でのプラン価格の差は大幅に縮小。焦った楽天は対抗するべく、1GB以下は0円とする無料プランの提供を2021年4月に始めた。が、モバイル事業の収益改善が見込めないことなどから、2022年7月に廃止(実質無料キャンペーンは同年10月末まで継続)。その後は顧客離れに拍車が掛かり、現在に至っている。) 厳しい競争環境の下、当初計画していた2023年中の黒字化が困難となれば、そのタイミングで事業から撤退するのも選択肢だろう。ただ、楽天にはそう簡単に手を引けない事情がある。 「割り当てを受けた事業者が既存移動通信事業者へ事業譲渡等をしないこと」――。 これは、楽天モバイルが4G・5Gの通信用電波として使用している周波数帯、1.7GHz(ギガヘルツ)帯を2018年に割り当てられた際、総務省から課せられた審査条件だ。要は、同業の既存キャリアへの事業売却が禁じられているのだ。 ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社以外の新規事業者への売却であれば問題ないものの、巨額赤字を計上している経営状況で、新参者が名乗りを挙げるシナリオは考えづらい。さらに「手を挙げた事業者が外資系ともなれば、経済安全保障上の問題にも発展しかねない。そうとう揉めるのは間違いない」(総務省関係者)。 売却ではなく「廃止」することにより、従来手がけていたMVNO(仮想移動体通信事業者、キャリアの通信網を借りてサービスを運営する)に専念したり、通信事業から完全撤退したりする道も選択肢としてありうる。ただし、その場合はこれまで巨額の設備投資を続けてきた通信基地局の減損損失と撤去費用が発生しかねず、財務面への打撃が避けられない』、「楽天にとって、NTTドコモの新料金プラン『ahamo(アハモ)』の登場が最大の誤算だった」、「価格優位性が武器だったはずの楽天モバイルと既存3キャリア間でのプラン価格の差は大幅に縮小。焦った楽天は対抗するべく、1GB以下は0円とする無料プランの提供を2021年4月に始めた。が、モバイル事業の収益改善が見込めないことなどから、2022年7月に廃止・・・。その後は顧客離れに拍車が掛かり、現在に至っている」、プラスの材料はあるのだろうか。
・『成功に賭けて突き進むしかない  進むにせよ、撤退するにせよ、茨の道が待ち受けている楽天モバイル。楽天グループの中堅社員は「ほかの事業を切り売りして(投資余力を確保して)でも、モバイルの成功に賭けて突き進むしかない」とあきらめ顔だ。 「楽天のほぼ唯一の希望は(電波がつながりやすい700MHz~900MHz帯の)『プラチナバンド』を獲得できそうなことくらいだろう」。前出とは別の総務省関係者はそう見通す。 プラチナバンドについては現状、競合の3キャリアは割り当てを受けているのに対し、楽天のみが持っていない。総務省は楽天への割り当てに向けた制度の整備を進めており、獲得できれば基地局数が少なくても通信エリアを幅広くカバーできるほか、通信品質の大幅な改善も見込める。 もっとも、プラチナバンドの割り当てを受けられたとしても、実際に運用が始まるのは早くて2024年中との見方が濃厚だ。品質改善などが実際の契約数に結びつくまで、タイムラグも想定される。2023年中の単月黒字化という約束を果たすうえでは、到底貢献は見込めない。 過去最大の赤字を発表した翌日の2月15日、楽天グループ株の終値は前日比7.7%高の713円をつけた。今後の財務方針として、三木谷氏が有利子負債削減や外部資本の活用などを挙げ、資金繰り改善への期待感が広がったとみられる。ただ、財務悪化の元凶であるモバイル事業の視界は開けないままだ』、「プラチナバンドの割り当てを受けられたとしても、実際に運用が始まるのは早くて2024年中との見方が濃厚だ。品質改善などが実際の契約数に結びつくまで、タイムラグも想定される」、さらに「同業の既存キャリアへの事業売却が禁じられている」のでは、財務改善に使う訳にはいかないようだ。「成功に賭けて突き進むしかない」とはまさに悲劇だ。

次に、3月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「3人で100億円を詐取…「楽天モバイル」幹部社員たちが、ここまでの不正に手を染められた理由《渡辺美奈代・K-1武尊との交友も》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107230?imp=0
・『警視庁よりも先に国税が調査  「楽天モバイル」(東京都世田谷区)から携帯電話基地局をめぐる事業で約300億円を不正に支払わせていた3人の男が、詐取した金額は約100億円だった──。 不正請求といえば、通常の経費に詐取分を3%、5%と水増ししてごまかすというイメージだが、3分(注:「に」ではなく正しくは「の」)1以上をゴッソリ抜くというのは、バレても仕方がないと思った刹那的な確信犯か、楽天モバイルのガバナンス不全を読み切り、絶対にバレないと思った自信過剰の確信犯かのどちらかだろう。 警視庁捜査2課が3月3日に詐欺容疑で逮捕した3人は、楽天モバイル物流管理部長の佐藤友起容疑者(46歳)、中堅物流会社「日本ロジステック」(東京都千代田区)元常務の三橋一成容疑者(53歳)、運輸会社「TRAIL(トレイル)」(港区)の浜中治容疑者(49歳)である。 約100億円の使いっぷりはハンパではない。不正請求に気付いた楽天モバイルが、佐藤容疑者を解雇のうえで資産を差し押さえるなどして事件が発覚した時点で、筆者は本サイトに《楽天・三木谷を苦しめる「不良幹部社員」は4億円タワマンに住んでいた》(22年9月15日)と題して配信した。 港区に新築された地上26階建て最上階136平方メートルをキャッシュで購入したのだから国税から目を付けられるのも当然で、警視庁より先に東京国税局資料査察課が3人の行状に気付き調査していた。 佐藤容疑者はこのタワマン以外に、神奈川県鎌倉市や沖縄県名護市に高級マンションを持ち、高級車6台を所有。また妻が代表を務める「TKロジ」(京都府城陽市)が詐取資金の“受け皿”となっており、この会社名義でも会社所在地などの不動産のほか高級車8台を所有していた。夫妻の口座に残された現預金は約3億6000万円だったという。 佐藤容疑者と浜中容疑者をつなぐのは「車」である。浜中容疑者の場合は、趣味に投資を兼ねていて、150台もの車を神奈川県相模原市内にある「横領倉庫」に保管していた。古いスカイラインなど希少な旧車や1台数千万円の高級車を並べており、その内部写真は『FDIDAYデジタル』(23年1月25日配信)が報じた』、「携帯電話基地局をめぐる事業で約300億円を不正に支払わせていた3人の男が、詐取した金額は約100億円」、よくぞ「約100億円」も「詐取した」ものだ。「新築された地上26階建て最上階136平方メートルをキャッシュで購入したのだから国税から目を付けられるのも当然で、警視庁より先に東京国税局資料査察課が3人の行状に気付き調査」、「キャッシュで購入」とは捕まえてくれと言うようなものだ。
・『50億円を詐取した「物流のプロ」  浜中容疑者は派手な交遊も隠さず、ネット上には今も著名人との交遊履歴が残る。元おニャン子クラブの渡辺美奈代は、インスタグラムで浜中容疑者やK-1選手で元世界チャンピオンの武尊らと一緒に写真に収まり、「濱中社長」と紹介。トレイルは武尊のスポンサー企業であり、武尊のガウンやパンツには「TRAIL」の文字が刻まれていた』、「浜中容疑者は派手な交遊も隠さず、ネット上には今も著名人との交遊履歴が残る」、なるほど。
・『武尊のインスタグラムより  「車」とともに「卓球」が趣味。その縁で著名卓球選手とは親交があり、トレイルは五輪メダリストの吉村真晴、弟の和弘選手のスポンサーを務めていた(現在は離れる)。 真晴選手は、再起を図って21年10月、トレーナーなどを含む「チーム真晴(マハル)」を結成するが、それは真晴選手の決意を聞いた浜中容疑者が、「よし、それだったら一緒にやってやろう」と請け合ってスタートした。 約100億円のうち半分の約50億円が流れたという佐藤容疑者は、金融機関や外資系物流会社を経て、「物流のプロ」としての腕を見込まれて18年7月、楽天に入社。19年4月から楽天モバイルの基地局整備事業に携わるようになった。 楽天の三木谷浩史社長は2017年4月、「第四の携帯キャリア」の参入を表明した。当時は安倍晋三政権下で菅義偉元官房長官が力を持ち、元総務相としてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社寡占がもたらす携帯料金の高止まりに業を煮やしていた。そこでネットで完結する「楽天経済圏」を目指す三木谷氏の野心を読み取り、携帯事業への参入をバックアップした。 だが、携帯事業を一から立ち上げるのは想像以上にたいへんで、なにより「つながり難さ」を解消するための基地局整備が急務で、そこへの大量投資を惜しまなかった。それが楽天を直撃する。21年12月期決算は最終損益が1338億円の赤字、22年12月期決算はさらに膨らんで過去最高の3728億円の赤字だった。 この急拡大路線を担った「外人部隊」の佐藤容疑者は、19年4月に担当となり、その3か月後の7月には日本ロジと「物流業務の委託契約」を締結し、約2100万円の裏金を受け取っている』、「当時は安倍晋三政権下で菅義偉元官房長官が力を持ち、元総務相としてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社寡占がもたらす携帯料金の高止まりに業を煮やしていた。そこでネットで完結する「楽天経済圏」を目指す三木谷氏の野心を読み取り、携帯事業への参入をバックアップした」、「だが、携帯事業を一から立ち上げるのは想像以上にたいへんで、なにより「つながり難さ」を解消するための基地局整備が急務で、そこへの大量投資を惜しまなかった。それが楽天を直撃する」、「21年12月期決算は最終損益が1338億円の赤字、22年12月期決算はさらに膨らんで過去最高の3728億円の赤字だった。 この急拡大路線を担った「外人部隊」の佐藤容疑者は、19年4月に担当となり、その3か月後の7月には日本ロジと「物流業務の委託契約」を締結し、約2100万円の裏金を受け取っている」、なるほど。
・楽天のチェック体制の甘さ  楽天モバイル→日本ロジ→トレイル→TKロジという物流の流れはこの時に決まり、請求書はコンサル料や輸送費、部材保管料などの名目で水増しされ、TKロジ→トレイル→日本ロジ→楽天モバイルと渡っていった。この詐欺スキームによって、日本ロジの133億円だった売上高(20年3月期)は、約406億円(22年3月期)と倍増した。トレイルはそれ以上で、約26億円だった売上高(20年3月期)は約193億円(22年3月期)と7・4倍増になった。 内部と外部が確信犯として組んで詐欺を仕掛けたら防御は容易ではないが、それでも楽天のチェック管理体制の甘さは指摘しなければなるまい。 「外人部隊」による詐欺的スキームには先例がある。 楽天は、16年11月に始めた自前の配送サービス「楽天エキスプレス」を21年5月に打ち切った。それが突然の解除であったとして埼玉県の運送会社「トランプ」が、楽天などを相手取り約5億6000万円の損害賠償請求訴訟を起こしている。 その際、明るみに出たのが物流部門のトップに就いていた執行役員が、キックバックを受け取るための会社を作り、事業譲渡をトランプに強要したことだった。この執行役員と直属の部下は、内部告発を受けた社内調査の結果、21年3月までに退職している。執行役員は大手物流会社からの転職組で、18年7月、エキスプレスを本格化させるのに伴い担当責任者となった。 偶然とはいえ転職組の不正が続いたのは、「外部の目」から見て楽天管理体制にスキがあるからだろう。そこを突いて不正に走るのは論外だが、犯罪を誘引する芽は摘むべきだ。 楽天の「顔」である三木谷氏は、パーティー好きをガーシー参院議員に揶揄されてトラブルとなった。所属するNHK党の立花党首は「三木谷氏がガーシーを訴えて捜査が始まった。それは虚偽告訴にあたる」として三木谷氏を民事提訴した。 「告訴はしていない」と楽天が筆者の質問に答えたのは前回(3月2日)の本サイト配信で伝えた通りだが、三木谷氏がガーシー氏の挑発に乗ってしまい、「ハイエナか、お前は!」とツイートしたのは三木谷氏の失態である。 楽天は3月30日開催予定の株主総会で元警察庁長官の安藤隆春氏を社外取締役に迎える。警察OBを雇って何とかなるものではないが、わずか2年で100億円もの貴重な会社資産を抜かれてしまう「管理の甘さ」は、抜本的に変えなければならない』、「警察OBを雇って何とかなるものではないが、わずか2年で100億円もの貴重な会社資産を抜かれてしまう「管理の甘さ」は、抜本的に変えなければならない」、その通りだ。

第三に、3月17日付け文春オンラインが転載した丸の内コンフィデンシャル「《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」の前半部分を紹介しよう。後半は別の話なので、紹介省略。
https://bunshun.jp/articles/-/61359
・『日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年4月号より一部を公開します』、興味深そうだ。
・『「ゼロ円プラン」を廃止し、平均収入は大手3社の半分に  楽天(三木谷浩史会長兼社長)の経営に黄信号が灯った。2022年12月期の最終損益は3728億円の赤字。赤字は4期連続で、赤字幅は過去最大となった。 22年12月期の売上収益は21年12月期に比べて15%増の1兆9278億円だった。楽天市場などのインターネットサービス事業、クレジットカード・銀行などの金融事業が伸びを牽引したが、19年10月にサービスを開始した携帯電話事業で進めている基地局の設備投資が利益を吹き飛ばした。 同社のカギを握るのは携帯電話事業の成長だ。同事業の収益は契約者数と契約あたりの月間収入の掛け算で決まるが、昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる。 22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通しという。だが、これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い。 楽天は21年3月に日本郵政から約1500億円の出資を受け、昨年11月には傘下の楽天証券ホールディングスが保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却して775億円を確保した。  手元の資産を切り売りする「タケノコ生活」は引き受ける相手がいてこそ成立する話だ。「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている』、「今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている」、「「経済圏」という天領を開放するか否か」、ここまで追い込まれているとは、初めて知った。
タグ:(その9)(巨額赤字の楽天 これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、背水の楽天モバイル 黄信号灯る「黒字化」の約束 2023年中の達成掲げるが契約数倍増が最低条件、3人で100億円を詐取…「楽天モバイル」幹部社員たちが ここまでの不正に手を染められた理由《渡辺美奈代・K-1武尊との交友も》、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ) 携帯・スマホ 東洋経済オンライン「背水の楽天モバイル、黄信号灯る「黒字化」の約束 2023年中の達成掲げるが契約数倍増が最低条件」 「巨額投資を続けるモバイル事業だ。三木谷浩史会長兼社長は以前から、2023年中の単月営業黒字化を掲げ、決算資料などで目標として明記してきた。 ところが同社が2月14日に公表した2022年12月期決算の説明資料を見ると、「黒字化」の文字は1カ所のみ。時期的なメドも「フェーズ2」・・・と、あいまいだ」、「報道陣からの質疑で問われた結果、三木谷氏が「年内、なんとか頑張って目指していきたい」と述べるのみだった」、苦しそうだ。 「契約数は」「いまだ1年前と同水準にとどまっている」、「直近ではモバイル事業だけで毎四半期1000億円超の営業損失を垂れ流し、本業のEC(ネット通販)や金融事業で稼いだ利益を食い潰している。その結果、楽天グループは4期連続で最終赤字を計上。2022年12月期には3728億円と過去最大の赤字」、まさに危機的様相だ。 「楽天にとって、NTTドコモの新料金プラン『ahamo(アハモ)』の登場が最大の誤算だった」、「価格優位性が武器だったはずの楽天モバイルと既存3キャリア間でのプラン価格の差は大幅に縮小。焦った楽天は対抗するべく、1GB以下は0円とする無料プランの提供を2021年4月に始めた。が、モバイル事業の収益改善が見込めないことなどから、2022年7月に廃止・・・。その後は顧客離れに拍車が掛かり、現在に至っている」、プラスの材料はあるのだろうか。 「成功に賭けて突き進むしかない」とはまさに悲劇だ。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「3人で100億円を詐取…「楽天モバイル」幹部社員たちが、ここまでの不正に手を染められた理由《渡辺美奈代・K-1武尊との交友も》」 「携帯電話基地局をめぐる事業で約300億円を不正に支払わせていた3人の男が、詐取した金額は約100億円」、よくぞ「約100億円」も「詐取した」ものだ。「新築された地上26階建て最上階136平方メートルをキャッシュで購入したのだから国税から目を付けられるのも当然で、警視庁より先に東京国税局資料査察課が3人の行状に気付き調査」、「キャッシュで購入」とは捕まえてくれと言うようなものだ。 「浜中容疑者は派手な交遊も隠さず、ネット上には今も著名人との交遊履歴が残る」、なるほど。 「当時は安倍晋三政権下で菅義偉元官房長官が力を持ち、元総務相としてNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社寡占がもたらす携帯料金の高止まりに業を煮やしていた。そこでネットで完結する「楽天経済圏」を目指す三木谷氏の野心を読み取り、携帯事業への参入をバックアップした」、「だが、携帯事業を一から立ち上げるのは想像以上にたいへんで、なにより「つながり難さ」を解消するための基地局整備が急務で、そこへの大量投資を惜しまなかった。それが楽天を直撃する」、 「21年12月期決算は最終損益が1338億円の赤字、22年12月期決算はさらに膨らんで過去最高の3728億円の赤字だった。 この急拡大路線を担った「外人部隊」の佐藤容疑者は、19年4月に担当となり、その3か月後の7月には日本ロジと「物流業務の委託契約」を締結し、約2100万円の裏金を受け取っている」、なるほど。 「警察OBを雇って何とかなるものではないが、わずか2年で100億円もの貴重な会社資産を抜かれてしまう「管理の甘さ」は、抜本的に変えなければならない」、その通りだ。 「今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。
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半導体産業(その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、半導体製造装置の対中輸出規制は日本にとって良い?悪い?日本企業がやるべきことは、[新連載]2ナノ半導体「日本でやるしかない」 ラピダス生んだ辛酸と落胆 敗れざる工場【1】) [産業動向]

半導体産業については、昨年2月8日に取上げた。今日は、(その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、半導体製造装置の対中輸出規制は日本にとって良い?悪い?日本企業がやるべきことは、[新連載]2ナノ半導体「日本でやるしかない」 ラピダス生んだ辛酸と落胆 敗れざる工場【1】)である。

先ずは、昨年2月20日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石」
を紹介しよう。
・『1990年代中頃まで、半導体露光装置で、キヤノンとニコンは世界を制覇した。しかし、その後、オランダのASMLがシェアを伸ばし、現在では、EUVと呼ばれる半導体製造装置の生産をほぼ独占している。日本のメーカーは、なぜASMLに負けたのか?』、興味深そうだ。
・『ASMLとは何者?  オランダにASMLという会社がある。時価総額2642.2億ドル。これは、オランダの企業中でトップだ。オランダのトップ企業はフィリップスだと思っていた人にとっては驚きだ。「そんな会社、聞いたこともない」という人が多いだろう。 実際、ASMLは、歴史の長い企業ではない。生まれたのは1984年。フィリップスの1部門とASM Internationalが出資する合弁会社として設立された。フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタートした。 しかし、いまの時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い。世界の時価総額ランキングで32位。29位のトヨタとほぼ並ぶ。 ASMLの2020年の売上は160億ドル(約1兆8000億円)、利益(EBIT)は46.3億ドルだ。トヨタの場合には、売上が2313.2 億ドル。利益(EBIT)は169.9億ドルだ。売上に対する利益の比率は、ASLMが遙かに高い。 しかも従業員数は28000人しかいない(2020年)。トヨタ自動車(37万人)の7.6%でしかない。 ASMLは、最先端の半導体製造装置を作っている。極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれる装置だ。この技術は、 ASMLがほぼ独占している。 年間の製造台数は50台ほどだ(2020年度は31台。2021年は約40台、2022年は約55台の見通し)。1台あたりの平均価格が3億4000万ドル(約390億円)にもなる。大型旅客機が1機180億円程度と言われるので、その2機分ということになる。 主なクライアントは、インテル、サムスン、TSMCなどだ』、「創業1984年」「フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタート」、「いまの時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い。世界の時価総額ランキングで32位。29位のトヨタとほぼ並ぶ」、「極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれる装置だ。この技術は、 ASMLがほぼ独占」、実に凄い企業だ。
・『かつてのニコン、キヤノンの優位をASMLが崩した  半導体露光装置は、もともとは、日本の得意分野だった。ニコンが1980年にはじめて国産化し、1990年にはシェアが世界一になった。 キヤノンも参入し、1995年ごろまで、ニコンとキヤノンで世界の70~75%のシェアを占めた。 ASMLの最初の製品は、やはり半導体露光装置だった。しかし、この時代、キヤノンやニコンは、ゴミ捨て場に誕生した会社のことなど、歯牙にも掛けなかっただろう。 しかし、ニコン・キヤノンのシェアは、90年代後半に低下していった。その半面で、1990年には10%にも満たなかったASMLのシェアは、1995年には14%にまで上昇、2000年には30%になった。 2010年頃には、ASMLのシェアが約8割、ニコンは約2割と逆転した。そして、キヤノンはEUV露光装置分野から撤退した。ニコンも、2010年代初頭に、EUV露光装置の開発から撤退した』、「半導体露光装置は、もともとは、日本の得意分野だった。ニコンが1980年にはじめて国産化し、1990年にはシェアが世界一になった。 キヤノンも参入し、1995年ごろまで、ニコンとキヤノンで世界の70~75%のシェアを占めた」、「キヤノンはEUV露光装置分野から撤退した。ニコンも、2010年代初頭に、EUV露光装置の開発から撤退」、日本勢の退潮ぶりは惨めだ。
・『日本メーカーの自社主義がASMLの分業主義に負けた  ASMLとニコン、キヤノンの違いは何だったのか? それは、中核部品を外注するか、内製するかだ。 ASMLは中核部品を外注した。投影レンズと照明系はカールツァイスに、制御ステージはフィリップスに外注した。自社で担当しているのは、ソフトウェアだけだ。 製造機械なのに、なぜソフトウエアが必要なのか? 半導体露光装置は「史上最も精密な装置」と呼ばれるほど複雑な機械であり、安定したレンズ収差と高精度なレンズ制御が重要だ。装置として完成させるには、高度にシステム化されたソフトウエアが不可欠なのだ。 自動車の組み立てのように人間が手作業で作るのではなく、ロボットが作業するようなものだから、そのロボットを動かすためのソフトウェアが必要なのだと考えれば良いだろう。 それに対して、ニコンは、レンズはもちろんのこと、制御ステージ、ボディー、さらに、ソフトウェアまで自社で生産した。外部から調達したのは、光源だけだ。 このように、ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じたと言われる。 また、レンズをどう活用して全体の性能を上げるかというよりは、どうやってレンズの性能を引き出すかが優先されるというような問題が発生したといわれる。 結局、日本型縦割り組織を反映して全てを自社で内製化しようとする考えが、負けたということだ』、「日本メーカー」は「ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じた・・・レンズをどう活用して全体の性能を上げるかというよりは、どうやってレンズの性能を引き出すかが優先されるというような問題」、結局、「日本メーカーの自社主義がASMLの分業主義に負けた」、情けない限りだ。
・『核になる技術を持っていたことで躓いた  キヤノンもニコンも核になる技術、つまり「レンズ」を持っていた。それに対してASMLは、部品については、核になる技術を持っていない。レンズすらも外注しているのだ。他社が作っているものを、ただ寄せ集めているだけのようにさえ見える。 しかし、それにもかかわらず、売上の3割という利益を稼ぎ出すことができるのだ。このことは、ビジネスモデルに関する従来の考えに反するものだろう。 いままでは、企業は核になる技術を持っていなければならず、その価値を発揮できるようなビジネスモデルを開発することが重要だと言われてきた。しかし、ASMLは、このルールには当てはまらない。 部品について、ASMLは製造者ではなく購入者であったため、品質評価が客観的であったと言われる。 また、多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながったと言われる。 それに対して、技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いたというのだ』、「ASMLは、部品については、核になる技術を持っていない。レンズすらも外注しているのだ。他社が作っているものを、ただ寄せ集めているだけのようにさえ見える。 しかし、それにもかかわらず、売上の3割という利益を稼ぎ出すことができるのだ。このことは、ビジネスモデルに関する従来の考えに反するものだろう」、「多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながったと言われる」、「技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いたというのだ」、「日本メーカー」の独自性へのこだわりが敗因になったようだ。
・『ASMLの時価総額は、キヤノンの10倍、ニコンの60倍  現在のキヤノン、ニコンはどのような状態か? キヤノンは、時価総額が255.9億ドル、世界第759位だ。2007年には784 億ドルだったのだが、このように減少した。 ニコンは、時価総額が41.8億ドルで、 世界第 2593位だ。 2007年には126億ドルだった。 2007年には、ASMLの時価総額は126億ドル程度で、ニコンとほぼ同じ、キヤノンの6分の1だった。しかし、いまでは、キヤノンの10倍程度、ニコンの60倍程度になってしまったのだ。 こうした状態では、日本の賃金が上がらないのも、当然のことと言える』、これは、日本の経営者の判断の間違いが原因だ。
・『もしデジタルカメラを生産しなかったら  日本企業敗退の原因は、自社主義だけではない。 もう一つは、ビジネスモデル選択の誤りだ。つまり、カメラという消費財に注力したことだ。 もし、2000年代の初めに、キヤノンやニコンがデジタルカメラに注力するのでなく、半導体製造装置に注力していたら、世界は大きく変っていただろう。 2010年頃、日本では、円高などが6重苦になっているといわれた。そして、「ボリュームゾーン」を目指した戦略を展開すべきだと言われた。これは、勃興してくる新興国の中間層をターゲットに、安価な製品を大量に供給しようというものだ。ASMLとは正反対のビジネスモデルだ。 そして、日本ではこの方向が受入れられ、企業の経営者もそれを目指した。その結果が、いまの日本の惨状なのだ。 もちろん、将来がどうなるかは分からない。半導体の微細化をさらに進めるために、3次元の回路を作るということも考えられている。そうした技術が実用化された時に、はたしてASMLが生き残れるかどうかは、誰にも分からない。 日本企業が再逆転してほしいが、果たしてできるだろうか? 奇跡が起こることを祈る他はない』、「ビジネスモデル選択の誤りだ。つまり、カメラという消費財に注力したこと」、その通りである。「日本企業が再逆転」という「奇跡が起こることを祈る他はない」というのも、寂しい限りだ。

次に、本年2月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「半導体製造装置の対中輸出規制は日本にとって良い?悪い?日本企業がやるべきことは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317265
・『半導体製造装置の対中輸出規制は、日本にどんな影響を及ぼすのか。今後、わが国の半導体製造装置メーカーに求められるのは、他国の企業に先駆けて、新しい製造技術を創出することだ。その成否は、わが国経済の展開に大きな影響を及ぼすだろう』、興味深そうだ。
・『半導体サプライチェーンの地殻変動が激化  ここへ来て、米国は中国の半導体製造能力向上を食い止めるため、輸出規制を一段と強化している。その一つとして、1月下旬、わが国とオランダは半導体製造装置の輸出規制に関して米国と合意したと報じられた。半導体などの先端分野において、米国は対中制裁をさらに強化する可能性が高い。 今後、台湾から米国、わが国、その他の国と地域へ、半導体サプライチェーンの地殻変動が一段と激化するだろう。米国だけでなく主要先進国が半導体などにおける対中規制を追加的に引き締める公算も大きい。それは短期的というよりも、中長期的な世界経済の構造変化と考えたほうがよさそうだ。 それに伴い、わが国の半導体関連企業にとって、中国ビジネスに関する不確定要素が増える。一方、これまで以上に世界の半導体産業は、わが国の製造技術を必要とするだろう。世界の半導体産業の劇的な変化に対応するために、わが国企業はこれまで以上に最先端の製造技術の実現に取り組むべきだ』、第一の記事に比べ、なにやら甘い認識だ。
・『中国に対する半導体輸出を厳格化する米国  トランプ前政権の発足以降、米国は半導体の対中輸出規制を強化してきた。その背景には、戦略物資として半導体の重要性が急速に高まっていることがある。安全保障、経済、宇宙、脱炭素など、半導体を抜きに新しい考えを実現することは困難な時代だ。脱炭素に伴うパワー半導体の需要増加など、これまで半導体との関係性が薄かった分野でも、より多くのチップが必要とされている。 そうした状況下、中国では習近平政権が半導体産業の強化策を推進した。中国のファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)は、先端分野に分類される回路線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)のチップ生産を開始したようだ。チップの設計、製造技術やライン構築のノウハウを、中国は日米欧および台湾の企業から吸収してきた。 2016年頃、米国ではインテルが14から10ナノメートルへの微細化につまずいた。アップルはチップの設計・開発体制を強化し、製造を台湾積体電路製造(TSMC)により多く委託した。インテルも先端、および最先端チップの製造技術をTSMCに依存するようになった。 1990年代半ばに日米半導体摩擦が終わって以降、半導体産業の盟主の地位を確立したインテルなど、米半導体企業の製造能力の向上は鈍化した。対照的に世界経済への半導体供給地として台湾の存在感が高まった。その後、習政権は台湾に対する圧力を強めている。米国にとって台湾にチップ供給を依存するリスクは一段と高まっている。 経済安全保障体制の強化のため、バイデン政権は中国向けの半導体輸出規制を一段と強化している。2022年10月に米商務省産業安全保障局は、16または14ナノメートル以下のロジック半導体などの製造装置の対中輸出を事実上禁止した。 そしてこの度、米国は日蘭にも製造装置の対中輸出管理で足並みをそろえるよう求めた。バイデン政権はTSMCなどに補助金を支給し、米国内での生産能力増強も要求している』、「バイデン政権はTSMCなどに補助金を支給し、米国内での生産能力増強も要求」、その通りだ。
・『激化する世界の半導体産業の地殻変動  台湾に集積した世界の半導体製造能力は、他の国と地域に急速に分散し始めている。米国の要請に応じて、TSMCは24年から米国で回路線幅3ナノメートルのロジック半導体の量産を開始する予定だ。このことで、米国は世界経済の盟主としての立場を守ろうとしているように思える。 また、インテルは米国内外で、必ずしも先端分野の製造技術を必要としない車載用のチップなどの生産体制を強化し始めている。 一方、米国の規制強化などによって、中国の半導体自給率向上は遅れ始めた。要因の一つに、先端分野の半導体製造に不可欠な「深紫外線」(DUV)」と、回路線幅5ナノメートルよりも先の微細化に必要な「極端紫外線」(EUV)を用いた製造技術が十分ではないことがある。 中国の露光装置メーカーである上海微電子装備においては、28ナノメートルの回路形成の歩留まり向上の余地が大きいようだ。また、他の半導体製造装置や検査装置に関しても、中国の製造技術は旧世代のものが多い。 特に、EUVを用いた露光装置に関しては、今のところ、オランダのASMLの独壇場である。その他、感光剤であるレジストの塗布と現像を行う装置(コータ・デベロッパ)は、東京エレクトロンのシェアが高い。ガスを用いてウエハー表面から不要な部分を除去する「ドライ・エッチング」の装置は、米ラムリサーチなどのシェアが高い。 今回、日蘭が米国と半導体製造装置の対中輸出管理の厳格化に合意したことによって、中国の半導体の自給率向上は一段と遅れるだろう。それは、急速に需要拡大してきた中国の半導体製造装置市場において、わが国やオランダの半導体製造装置メーカーが、収益を獲得しづらくなることを意味する。 そうしたことから短期的に、日米欧の半導体製造装置メーカーによる、中国以外の市場におけるシェア争いが激化する公算は大きい。なお、日米蘭政府の合意に関する報道の後、ASMLは「業績の見通しに重大な影響はない」とした。背景には、中国以外の市場におけるEUV露光装置の需要拡大があるとみられる』、「今回、日蘭が米国と半導体製造装置の対中輸出管理の厳格化に合意したことによって、中国の半導体の自給率向上は一段と遅れるだろう。それは、急速に需要拡大してきた中国の半導体製造装置市場において、わが国やオランダの半導体製造装置メーカーが、収益を獲得しづらくなることを意味」、なるほど。
・『本邦企業に必要な新しい製造技術創出  今後、わが国の半導体製造装置メーカーに求められるのは、他国の企業に先駆けて、新しい製造技術を創出することだ。その成否は、わが国経済の展開に大きな影響を及ぼすだろう。 中長期的に考えると、中国は産業補助金政策をさらに強化し、半導体製造装置の国産化を急ぐだろう。製造装置は分解すれば、その仕組みを模倣できる。 共産党政権が海外企業に国有・国営企業との合弁設立を呼びかけ、これまで以上に生産技術の移転を急ぐ可能性もあるだろう。とりわけ近年、共産党政権は「専精特新」の考えを重視している。この考えは、先端分野で独創的な製造技術の実現に取り組む中小企業の支援を強化する産業政策である。 中長期的に、中国の半導体製造装置などの創出力が高まる可能性は軽視できない。そうした展開を防ぐために、米国政府は対中禁輸措置などを強化し、先端分野での米中対立は先鋭化するだろう。 将来的に、世界の半導体産業における製造装置などハードウエア創出力の重要性はさらに増すはずだ。1990年代以降の米国経済では、ハードよりもソフトウエアの開発を強化し、IT先端分野を中心に経済運営の効率性を向上してきた。それを受けて、台湾TSMCはファウンドリ専業のビジネスモデルを確立し、最新チップの製造需要を取り込んだ。 こうした流れをつくるのに必要不可欠な、超高純度の半導体部材、製造装置の供給において、わが国企業は大きな役割を果たしてきた。 ただ、次世代の回路線幅2ナノメートルのロジック半導体の製造に関しては、これまでとは異なる製造技術が求められるとの見方は多い。 また、半導体産業育成によって産業構造の転換を目指すインドは、より多くの部材や製造装置を求めるはずだ。新しい製造技術実現のためにも、本邦の半導体製造装置、関連部材メーカーはこれまで以上に研究開発を強化すべき局面を迎えている』、「新しい製造技術実現のためにも、本邦の半導体製造装置、関連部材メーカーはこれまで以上に研究開発を強化すべき局面を迎えている」、ややキレイゴトめいた感はあるが、その通りだ。

第三に、2月8日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]2ナノ半導体「日本でやるしかない」、ラピダス生んだ辛酸と落胆 敗れざる工場【1】」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00478/020600042/
・『ウクライナ情勢などの地政学リスクや、それを機に進んだ円安、米中対立による経済のデカップリング(分断)への対応などで、日本の製造業が「国内回帰」の姿勢を強めている。かつて、バブル経済崩壊やリーマン・ショックが誘発した円高を背景に、安い人件費などを求めて生産拠点は海外に移った。今起きているのは、国内生産のメリットを再認識し、拠点を強化する動きだ。人手不足やエネルギーの確保など課題も多いが、敗れざる工場によって「メード・イン・ジャパン」はかつての輝きを取り戻せるのか』、興味深そうだ。
・『連載予定  タイトルや回数は変わる可能性があります ・2ナノ半導体「日本でやるしかない」、ラピダス生んだ辛酸と落胆(今回) ・「明治維新のようにもう一度やり直す」。ラピダス東会長 ・設備投資2割増、盛り上がる国内投資、経済安保が背中押す ・九州シリコンアイランド、TSMC特需に沸く熊本、経済効果は4兆円 ・有名ラーメン店も誘引、特需連鎖の突破力、地価上昇率全国トップに ・海外生産に勝つ「拠点集約」、クボタ、日機装の開発力強化 ・SUBARU、平田機工、DX進めて改善や提案が異次元のスピードに ・同じ屋根の下「究極の連携生産」など、SMC、東京エレクトロン ・ファナックに学ぶ国産哲学、「完全無人化」真の狙い ・「大事なのはTCO。国内一極集中生産を続ける」。ファナック山口社長 ・「製造業はかつての『日の丸半導体』に学べ」 混沌とする世界情勢を受けて経済安全保障の意識が急速に高まり、国内で工場新設や生産能力増強のニュースが相次いでいる。こうした国内製造回帰は、長らく空洞化に苦しんできたニッポン製造業の復権への序章だ。その象徴の1つが、国内では製造できなくなっていた最先端半導体の国産化を再び目指そうとするラピダス(東京・千代田)の挑戦だ。 2019年、東京エレクトロン元社長の東哲郎氏は、半導体メーカーからの断りの返事に落胆した。「ご提案の半導体は、我々が製造できる技術世代のはるか先。現状でも精いっぱいで、そこにジャンプするのは難しい」。実は、東氏は世界最先端の半導体を国内で量産しようと、半導体メーカー数社に打診をしていた。「これでは脈はない。深追いしてもしょうがない」。東氏はすぐに気持ちを切り替え、最先端半導体の国産化を目指す新会社の立ち上げに動き出した』、「2019年、東京エレクトロン元社長の東哲郎氏は、半導体メーカーからの断りの返事に落胆した。「ご提案の半導体は、我々が製造できる技術世代のはるか先。現状でも精いっぱいで、そこにジャンプするのは難しい」。実は、東氏は世界最先端の半導体を国内で量産しようと、半導体メーカー数社に打診をしていた。「これでは脈はない。深追いしてもしょうがない」。東氏はすぐに気持ちを切り替え、最先端半導体の国産化を目指す新会社の立ち上げに動き出した」、「半導体メーカー」は投資に極めて慎重なようだ。
・『米IBMとの連携に商機  きっかけはビジネス関係が深い米IBM幹部から持ち掛けられた提携構想だ。「回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端半導体の開発にめどがついた。日本で製造できないか」。東氏は思わず身を乗り出した。「最先端半導体を国産化する、またとないチャンスだ」 1980年代、記憶用半導体DRAMで世界シェア5割を誇った国内半導体産業。だが米国の強烈な巻き返しに遭い、水平分業の流れについていけず国際競争から脱落した。2000年代、電機大手は半導体部門の赤字に苦しみ再編を繰り返す。そして研究開発や量産に巨額費用がかかる最先端分野から一斉に手を引いた。 その結果、日本は最先端半導体の空白地帯となった。国内工場では40ナノの成熟品までしか生産できない。モバイル端末やパソコン、データセンター、自動車向け最先端半導体は、半導体受託生産(ファウンドリー)を担う台湾積体電路製造(TSMC)などに生産委託している。 TSMCはファウンドリー市場の過半を握る巨大企業だが、他に最先端半導体の受託生産をできる企業がほとんどない。世界中の半導体メーカーからTSMCに注文が押し寄せ、半導体メーカーは何年も先の分を発注して行列を作って出来上がるのを待つ。 限られたパイを世界中の有力顧客が奪い合うなか、例えば日本の通信事業者が新規事業のため最先端半導体の量産を依頼しようとしても、小規模の発注量では対応してもらいにくい。今後、人工知能(AI)や高速通信、ビッグデータ活用など、最先端半導体のニーズは高まり、デジタル社会の「頭脳」として欠かせなくなる。日本企業が最先端半導体を試作段階から入手できなければ、製品開発や事業の速度が遅くなる』、「今後、人工知能(AI)や高速通信、ビッグデータ活用など、最先端半導体のニーズは高まり、デジタル社会の「頭脳」として欠かせなくなる。日本企業が最先端半導体を試作段階から入手できなければ、製品開発や事業の速度が遅くなる」、その通りだ。
・『「国の産業競争力が落ちる」。東氏の懸念  「あらゆる産業のデジタル化が進むなか、最先端半導体を生産できる能力がなければ日本全体の産業競争力が現状よりさらに落ちてしまう」。東氏はこう危惧した。国内に最先端半導体の量産拠点がなければ、それらを使う新規事業も育たず、日本の地盤沈下に波及してしまうという懸念があった。 さらに米国と中国の技術覇権争いを背景に、欧州、韓国、台湾、インドなど各国・地域が半導体産業強化やサプライチェーン(供給網)の自立化を急いでいる。半導体の国内製造回帰という世界の潮流を逃せば、しばらく浮上のきっかけはないかもしれない。 だが、焦燥感を抱く東氏に呼応して挑戦する経営者はついぞ現れなかった。「だったら、自分でやるしかない」。国内の装置、材料メーカーの技術と、IBMから供与される技術を組み合わせれば、実現可能だ。東氏はそう判断し、日立製作所出身で半導体製造技術に詳しい旧知の小池淳義氏らに技術の検証を頼んだ。 「本当にものになる技術か、日本で製造できるか、そしてファウンドリーの事業化が可能か、検討に検討を重ねた」(東氏)。経済産業省に相談し、トヨタ自動車やNTTなど8社の経営陣を説得して出資を依頼。22年8月に設立されたのがラピダスである。IBMと技術を共同開発し、20年代後半に2ナノ品の生産工場を国内に設けて、ファウンドリー事業を展開する。小池氏を社長に据え、東氏は自ら会長を務める。 ラピダスは「国からの支援のほか、新規株式公開も検討」(東氏)しつつ、今後10年で開発と量産ラインの建設などに約5兆円の資金を投下し「日の丸半導体」の復権を期す。 東氏は半導体製造装置の経営トップとして、米インテルやTSMC、韓国のサムスン電子など世界の半導体メーカーと豊富な人脈を培ってきた。「世界の最先端の技術に接してきたなかで、日本の半導体メーカーは『諦めすぎ』ではないかと感じていた」。日本企業は決して技術力で負けていない。にもかかわらず、自信がない。そこに歯がゆさを感じていた。 終戦ムードが漂っていたのは、周辺もそうだ。半導体を使う側の産業界、政界、省庁の間にも、「半導体は輸入品でいい、という意識がずっとあった。でも自由貿易で何でも手に入る状態ではなくなってきている」(東氏)。 また新型コロナウイルス禍やウクライナ危機によって世界のサプライチェーンは混乱し、半導体不足が製造業の足元を揺さぶった。 東氏は「出資企業とは、最先端半導体が手に入らなくなることへの危機感を共有できている」と話す。幅広い産業の技術革新を左右する最先端半導体の開発や量産を国家が競い合う今、その国内生産は日本企業の競争力を担保するには欠かせない』、「「国内に最先端半導体の量産拠点がなければ、それらを使う新規事業も育たず、日本の地盤沈下に波及してしまうという懸念があった。 さらに米国と中国の技術覇権争いを背景に、欧州、韓国、台湾、インドなど各国・地域が半導体産業強化やサプライチェーン(供給網)の自立化を急いでいる。半導体の国内製造回帰という世界の潮流を逃せば、しばらく浮上のきっかけはないかもしれない。 だが、焦燥感を抱く東氏に呼応して挑戦する経営者はついぞ現れなかった」、「「だったら、自分でやるしかない」。国内の装置、材料メーカーの技術と、IBMから供与される技術を組み合わせれば、実現可能だ。東氏はそう判断し、日立製作所出身で半導体製造技術に詳しい旧知の小池淳義氏らに技術の検証を頼んだ。 「本当にものになる技術か、日本で製造できるか、そしてファウンドリーの事業化が可能か、検討に検討を重ねた」(東氏)。経済産業省に相談し、トヨタ自動車やNTTなど8社の経営陣を説得して出資を依頼。22年8月に設立されたのがラピダスである。IBMと技術を共同開発し、20年代後半に2ナノ品の生産工場を国内に設けて、ファウンドリー事業を展開する。小池氏を社長に据え、東氏は自ら会長を務める。 ラピダスは「国からの支援のほか、新規株式公開も検討」(東氏)しつつ、今後10年で開発と量産ラインの建設などに約5兆円の資金を投下し「日の丸半導体」の復権を期す」、「ラピダス」の今後の発展を大いに期待したい。
タグ:半導体産業 (その8)(ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石、半導体製造装置の対中輸出規制は日本にとって良い?悪い?日本企業がやるべきことは、[新連載]2ナノ半導体「日本でやるしかない」 ラピダス生んだ辛酸と落胆 敗れざる工場【1】) 現代ビジネス 野口 悠紀雄 「ASMLーゴミ捨て場に生まれた企業が世界の半導体製造を制覇した 技術力がニコン・キヤノンの躓きの石」 「創業1984年」「フィリップスのゴミ捨て場の隣に建てたプレハブで、31人でスタート」、「いまの時価総額は、日本のトヨタ自動車2742.5億ドルとほぼ同じだ。世界第678位のフィリップス(293.5億ドル)の10倍近い。世界の時価総額ランキングで32位。29位のトヨタとほぼ並ぶ」、「極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれる装置だ。この技術は、 ASMLがほぼ独占」、実に凄い企業だ。 「半導体露光装置は、もともとは、日本の得意分野だった。ニコンが1980年にはじめて国産化し、1990年にはシェアが世界一になった。 キヤノンも参入し、1995年ごろまで、ニコンとキヤノンで世界の70~75%のシェアを占めた」、「キヤノンはEUV露光装置分野から撤退した。ニコンも、2010年代初頭に、EUV露光装置の開発から撤退」、日本勢の退潮ぶりは惨めだ。 「日本メーカー」は「ほとんどを自前で作ったため、過去の仕組みにこだわるという問題が生じた・・・レンズをどう活用して全体の性能を上げるかというよりは、どうやってレンズの性能を引き出すかが優先されるというような問題」、結局、「日本メーカーの自社主義がASMLの分業主義に負けた」、情けない限りだ。 「ASMLは、部品については、核になる技術を持っていない。レンズすらも外注しているのだ。他社が作っているものを、ただ寄せ集めているだけのようにさえ見える。 しかし、それにもかかわらず、売上の3割という利益を稼ぎ出すことができるのだ。このことは、ビジネスモデルに関する従来の考えに反するものだろう」、 「多くの技術を他社に依存する必要があったため、他社と信頼関係を築く必要があった。そして、顧客であるTSMCやサムスン、インテルなどと連携して、技術と知識が蓄積された。それが成功につながったと言われる」、「技術力が高いニコンは、他社と協業するという意識が低かった。それが開発スピードを低下させ、開発コスト負担増を招いたというのだ」、「日本メーカー」の独自性へのこだわりが敗因になったようだ。 これは、日本の経営者の判断の間違いが原因だ。 「ビジネスモデル選択の誤りだ。つまり、カメラという消費財に注力したこと」、その通りである。「日本企業が再逆転」という「奇跡が起こることを祈る他はない」というのも、寂しい限りだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「半導体製造装置の対中輸出規制は日本にとって良い?悪い?日本企業がやるべきことは」 第一の記事に比べ、なにやら甘い認識だ。 「バイデン政権はTSMCなどに補助金を支給し、米国内での生産能力増強も要求」、その通りだ。 「今回、日蘭が米国と半導体製造装置の対中輸出管理の厳格化に合意したことによって、中国の半導体の自給率向上は一段と遅れるだろう。それは、急速に需要拡大してきた中国の半導体製造装置市場において、わが国やオランダの半導体製造装置メーカーが、収益を獲得しづらくなることを意味」、なるほど。 「新しい製造技術実現のためにも、本邦の半導体製造装置、関連部材メーカーはこれまで以上に研究開発を強化すべき局面を迎えている」、ややキレイゴトめいた感はあるが、その通りだ。 日経ビジネスオンライン「[新連載]2ナノ半導体「日本でやるしかない」、ラピダス生んだ辛酸と落胆 敗れざる工場【1】」 「2019年、東京エレクトロン元社長の東哲郎氏は、半導体メーカーからの断りの返事に落胆した。「ご提案の半導体は、我々が製造できる技術世代のはるか先。現状でも精いっぱいで、そこにジャンプするのは難しい」。実は、東氏は世界最先端の半導体を国内で量産しようと、半導体メーカー数社に打診をしていた。「これでは脈はない。深追いしてもしょうがない」。東氏はすぐに気持ちを切り替え、最先端半導体の国産化を目指す新会社の立ち上げに動き出した」、「半導体メーカー」は投資に極めて慎重なようだ。 「今後、人工知能(AI)や高速通信、ビッグデータ活用など、最先端半導体のニーズは高まり、デジタル社会の「頭脳」として欠かせなくなる。日本企業が最先端半導体を試作段階から入手できなければ、製品開発や事業の速度が遅くなる」、その通りだ。 「「国内に最先端半導体の量産拠点がなければ、それらを使う新規事業も育たず、日本の地盤沈下に波及してしまうという懸念があった。 さらに米国と中国の技術覇権争いを背景に、欧州、韓国、台湾、インドなど各国・地域が半導体産業強化やサプライチェーン(供給網)の自立化を急いでいる。半導体の国内製造回帰という世界の潮流を逃せば、しばらく浮上のきっかけはないかもしれない。 だが、焦燥感を抱く東氏に呼応して挑戦する経営者はついぞ現れなかった」、「「だったら、自分でやるしかない」。国内の装置、材料メーカーの技術と、IBMから 供与される技術を組み合わせれば、実現可能だ。東氏はそう判断し、日立製作所出身で半導体製造技術に詳しい旧知の小池淳義氏らに技術の検証を頼んだ。 「本当にものになる技術か、日本で製造できるか、そしてファウンドリーの事業化が可能か、検討に検討を重ねた」(東氏)。経済産業省に相談し、トヨタ自動車やNTTなど8社の経営陣を説得して出資を依頼。22年8月に設立されたのがラピダスである。 IBMと技術を共同開発し、20年代後半に2ナノ品の生産工場を国内に設けて、ファウンドリー事業を展開する。小池氏を社長に据え、東氏は自ら会長を務める。 ラピダスは「国からの支援のほか、新規株式公開も検討」(東氏)しつつ、今後10年で開発と量産ラインの建設などに約5兆円の資金を投下し「日の丸半導体」の復権を期す」、「ラピダス」の今後の発展を大いに期待したい。
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外食産業(その4)(スシローが客に「2つの裏切り」 おとり広告のひどすぎる実態とは、スシロー くら寿司 「寿司テロ」なぜ格安チェーンばかりで起こる?せっかくの努力が裏目に出ている可能性、「回転ずしテロ」の大きすぎる代償 高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は) [産業動向]

外食産業については、2021年7月19日付けで取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(スシローが客に「2つの裏切り」 おとり広告のひどすぎる実態とは、スシロー くら寿司 「寿司テロ」なぜ格安チェーンばかりで起こる?せっかくの努力が裏目に出ている可能性、「回転ずしテロ」の大きすぎる代償 高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は)である。

先ずは、昨年6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した消費者問題研究所代表・食品問題評論家の垣田達哉氏による「スシローが客に「2つの裏切り」、おとり広告のひどすぎる実態とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304738
・『6月9日、消費者庁は、回転ずし「スシロー」の運営会社「あきんどスシロー」(以降スシロー)に対し、景品表示法に違反する行為(おとり広告に該当)が認められたとして、再発防止を求める措置命令という行政処分を行った。スシローのあきれた集客行為の実態とは』、興味深そうだ。
・『おとり商品で集客し別商品を売りつける手口  おとり広告とは「実際には買えないのに、買えるかのような広告をして顧客を呼び寄せること」である。チラシ広告などで「超特価品100点限り」と表示しているにもかかわらず、この商品を全く用意していない場合や表示した量より少ない量しか用意していない場合、消費者(顧客)が店を訪問したとき「まだ開店したばかりなのに売り切れ!」となる。 そこで店側は「大好評のため品切れになりましたので、他の商品をご用意いたしました」「あっちは売り切れたので、こっちを買ってください」と別の商品を売りつけるのだ。 スーパーなどの小売店(物販店)やスシローのような飲食店は、顧客が店舗に来てくれなければ商売ができない。逆に顧客が店にさえ来れば、何も買わずに帰る客もいるが、多くは何かを買ってくれる(食べてくれる)のだ。ウェブサイトでも同じだが、サイトに来てくれなければ商売が始まらない。そこで販売する側は、顧客誘引のためにいろいろな手段を使う。 今回、公正取引委員会(以降公取委)(※注)は、スシローの違反行為であるおとり広告について後述する2点を指摘している。 ※景品表示法の所管は消費者庁だが、地方に出先機関がない消費者庁は、今回も公取委に調査を依頼している。スシローの違反記者会見も、関西の公取委が主催している』、「おとり商品で集客し別商品を売りつける手口 とは悪質だ。
・『全国9割以上の店舗で販売停止の違反行為  そもそもおとり広告とは、公取委の告示によれば、次の4つと規定されている。 (1)取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示 (2)取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (3)取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (4)取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示 上記の(4)に「実際には取引する意思がない場合(の広告)」がある。ある商品を販売する日(あるいは時間)を広告に掲載しているにもかかわらず、初めから掲載した商品を販売するつもりがなかった場合は違反となる。 公取委が指摘したスシローの違反行為の一つがこれである。 スシローが昨秋に実施したキャンペーンの中で「新物!濃厚うに包み」(期間は21年9月8日~20日)と「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」(期間は21年9月8日~10月3日)の2商品について、「新物!濃厚うに包み」は21年9月14日~17日までの4日間、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は21年9月18日~20日までの3日間、スシローは、どちらも販売を終日停止することを21年9月13日に決定し、各店舗の店長等に周知していた。販売停止を決めていた(販売する意思がなかった)にもかかわらず、消費者には通知していなかったのだ。 スシローは、自社のウェブサイトだけでなく地上波でのテレビコマーシャルもしている。サイトやCMで中止が告知されていないので、多くの消費者が中止されていることを知らずに、ウニを目当てに店舗を訪れていた可能性がある。まさに、ウニをおとりに集客していたことになるのだ。 販売停止の決定により、終日提供しなかった日がある店舗が「新物!濃厚うに包み」は583店舗、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は540店舗もあった。おとり広告は、1店舗であろうと、違反行為が1日間だけであっても違反となる。だが、スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていたのである』、「スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていた」とは極めて悪質だ。
・『キャンペーン期間中に1日も販売しない店舗も  公取委が指摘したスシローの違反行為の二つ目が、先述の「おとり広告」規定の(1)にある「取引を行うための準備がなされていない場合」である。広告で打ち出した商品を準備すらしていないのだから、当然ながらそれを目当てに来店した顧客に販売できるはずがない。 スシローは「冬の味覚!豪華かにづくし」(期間は21年11月26日~12月12日)について、提供するための準備をしておらず、終日提供しなかった日がある店舗は583店舗ある。 その中で、すでにキャンペーンの初日(21年11月26日)に販売していなかった(欠品していた)店が、583店舗中4店舗ある。しかも大阪府の歌島店は、期間中(21年11月26日~12月12日)の17日間、この商品が一切販売されていなかった。 さらに、キャンペーン期間である17日間のうち、開始早々の21年11月中(26日~30日)に欠品を起こしていた店は、583店舗中30%強、期間中の半分(9日間)以上提供できなかった店は70%強あった。 こうした事実から、公取委は「提供するための準備をしていなかった」と断定している』、「「提供するための準備をしていなかった」と断定」、悪質そのものだ。
・『表示内容が不明確だったスシローの「売切御免」  一般的に「売切御免」といった広告を打つ場合、普通は「○○点限り」のように販売点数を明示するとか「午前9時~午後12時まで」というように時間や販売日を限定した売り方をする。そういう表示があれば、消費者は「限定数が売り切れる前に行こう」とか「限定された時間内に行こう」とする。 ところがスシローは、今回問題となったキャンペーンで、期間を明示するとともに「売り切れ御免」という表示もしているが、そもそも売り切れが何のことを言っているのか、非常に不明確だった。 スシローは「いつの時点でも売り切れたら販売を中止する」という意味で使ったのかもしれないが、公取委は「期間中すべての日で提供するかのような表示をしていた」として、「売切御免と表示しても、期間中はすべて提供する必要がある」と、明確に否定している。だからこそ「終日販売されていなかった店舗」を問題にしている。 これは当然の判断である。期間を明示しておきながら、その一部の日だけ販売することが許されれば、例えば「6月1日から30日の期間、○○半額!売切御免!」と表示をしておいて、消費者が開始2日目に行ったときに「昨日で売り切れました」とすることが可能になってしまう。 スシローは、数量を一切表示することなく「売切御免」と表示をしていた。しかし公取委は、少なくとも「日を超えての売切御免は違反である」ことを指摘しているのだ。 ただし、今回は「一日中販売されていなかった店舗だけ」が公表されたのであって、終日ではなく「午前中に完売」「数時間だけしか販売していなかった」というように、限定販売されていた店もあるだろう。 実際の販売数量が公表されていないので、売り切れがいつ起こったのかは判断しようがないが、「朝早く行ったのになかった」「午前中に行ったのに売り切れていた」といったことも起きていたかもしれない』、「数量を一切表示することなく「売切御免」と表示」、不当だ。
・『公取委がスシローを摘発した2つの意味  公取委が、スシローのおとり広告を摘発した意味は二つある。 一つは、飲食店業界および物販業界への警鐘である。最近は、消費者の購買意欲をかき立てすぎているような「あおり広告」が多くなっている。公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告している。 また、スーパーマーケットのような小売店だけでなく「飲食店業界も監視・摘発するぞ」と忠告をしているのだ。 そしてもう一つが、消費者への注意喚起である。スシローのようなキャンペーン広告は、どの業界でも頻繁に見られる。そのとき、消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしているのだ。 公取委が記者会見で述べているが、実際、今回の件では、消費者からの苦情がスシローには多数届いていたようである。 景品表示法は、一般消費者の利益を守ることと同様、正直に商売をしている事業者を守ることも目的である。そういう意味では、今回のスシロー摘発は、消費者にも事業者にも大きなインパクトを与えたといえるだろう』、「公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告」、「消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしている」、「公取委」には大いに頑張ってもらいたい。

次に、本年2月1日付け東洋経済オンラインが掲載したフードジャーナリストの三輪 大輔氏による「「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649825
・『いわゆる「回転寿司テロ」が止まらない。「もう回転寿司には行けない」という声も聞こえてきて、回転寿司業界が対策に追われている。事の発端は、「はま寿司」で撮影された、レーンを流れる寿司にワサビを勝手に乗せる動画だ。これを皮切りに、「スシロー」や「くら寿司」でも、類似のイタズラ動画がSNSで次々と拡散されている。中には4年前のものと見られるものある。 こうした問題に対して、回転寿司各社は毅然とした対応を取る姿勢を示している。はま寿司を運営する株式会社はま寿司は、客からの謝罪の申し入れを断り、警察に相談の上、被害届を提出。同様に、スシローを運営するあきんどスシローも「警察と相談し刑事民事の両面から厳正に対処する」という声明を発表するとともに、くら寿司も過去にさかのぼって警察に相談し、場合によっては相応の対応を取っていく。 ただ今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。「回転寿司 根室花まる」や「金沢まいもん寿司」「がってん寿司」に代表されるグルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない』、「今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。・・・グルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない」、不思議だ。
・『回転寿司チェーンが力を入れる3つの戦略  あくまで現時点では、という前提だが、回転寿司テロが100円回転寿司チェーン特有の問題とすると、その背景には「低価格の維持」と「テクノロジー化」「ファミレス化」という回転寿司チェーンならではの戦略の課題が見えてきた。 まず低価格の維持だ。原材料費の高騰などの理由により、昨年、スシローが最低価格を一皿120円、くら寿司が一皿115円に値上げを行い、大きな話題を呼んだ。しかし、スシローは中国では一皿170円の価格設定をする一方、アメリカで店舗展開をするくら寿司も現地では一皿300円と日本より高価格で提供している。 各国で給与水準が違うので、単純な物価比較はできないが、日本で値段を上げられない背景には、多くの日本人の可処分所得が減っている事情がある。実際、スシローやくら寿司が値上げをしたときも、「回転寿司にいきづらくなる」という声が聞こえていた。今後、さらなる値上げとなると、どれだけ受け入れられるかは不透明だ。 一方、原材料費だけでなく人件費の高騰も続いている。東京都と神奈川県、大阪府では、アルバイトの最低時給が1000円を超えた。一方で、外食業界は慢性的な人手不足に悩まされている。必要な人材を確保するには、平均以上に時給を上げざるを得ない。その結果、あまり人数をかけると低価格が維持できなくなってしまう事態が起きている。 また、そもそも回転寿司は原価率も高い。一般的な飲食店では原価率が20〜30%だ。その中で100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業もある。つまり、お客にそれだけ還元しているということだ。 こうした中、低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる。自動案内やタッチパネルでの注文、セルフレジが導入され、入店から退店までスタッフとコミュニケーションをしなくてもいい店舗もあるほどだ。テクノロジーは仕入れや物流、調理にも利用されている』、「回転寿司は原価率も高い・・・100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業も」、「低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる」、なるほど。
・『周りの目が届きにくい環境になっている  最後に、ファミレス化だ。近年、回転寿司は業態として進化を続け、デザートやサイドメニューなどが豊富になり、ファミレスと遜色のないメニューラインアップとなっている。コロナ禍では、「ガスト」や「ロイヤルホスト」が大量閉店してファミレスの苦戦が目立った一方、回転寿司は家族連れを中心に好調だった。 コロナ禍で息苦しさのある日常の中、寿司という贅沢感のある食べ物を、家族や気の置けない仲間とゆっくりと楽しめる点が人気を集めた要因だろう。コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界だ。 以上を踏まえて、なぜ回転寿司テロが100円回転寿司チェーンで多発しているのかを探っていきたい。 100円回転寿司チェーンの客単価は1000円〜2000円なうえ、メニューが豊富なので幅広い層が来店しやすい。加えて、店内にはファミリーでゆっくりと過ごせるボックス席が並ぶとともに、テクノロジーの活用で省人化が進んでいる。つまり、店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっているのではないか。) それでは、どうすれば同様の事件が防げるのだろうか。もちろん刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ。 2019年2月5日、くら寿司のアルバイトが、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子が撮影された動画がSNSで拡散され、一気に炎上した。その3日後、くら寿司は法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表。 そこに「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とするため」という理由が記載されていて、当時、大きな話題を呼んだ。ただそれ以来、大きな問題となるバイトテロが起きていないので、今回の回転寿司テロでも一定の抑止力になるだろう』、「コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界」、「店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっている」、「刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ」、なるほど。
・『防犯カメラの設置は現実的ではない  合わせて、現場レベルでの改善も必要だ。防犯カメラの設置という案があるが、客と店との信頼関係の構築が難しくなるため現実的ではない。また、店内でスタッフが行き交う環境をつくるために人数を増やす案もあるが、そうなると今以上に値上げをしないとビジネスが成り立たなくなる。それを客が許容してくれるかというと難しいだろう。 となると、テクノロジーで解決するしかない。突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろう。 もともと回転寿司は、高級だった寿司を庶民でも楽しめるようにと考案された業態だ。その後、各社の熱意と独創性があって、誰もが手軽に寿司を食べられることが当たり前となった。今回も業界の創意工夫が問題を解決し、誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現することを、いち回転寿司ファンとして期待している』、「防犯カメラの設置は現実的ではない」、「突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろ」、「誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現」してほしいものだ。

第三に、2月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「回転ずしテロ」の大きすぎる代償、高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317356
・『今年に入り、回転ずしチェーン店で商品や備品にいたずらする映像がSNSで相次いで出回った。炎上後、謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した。刑事的にはさまざまな罪が考えられ、民事的にも店側の損害が大きく、賠償金も高額になる可能性もある』、「謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した」、法的にハッキリさせるのは望ましい。
・『謝罪受け入れ拒否し「正な対処」表明  最初に発覚したのは1月7日頃だった。TikTokに若い男性がレーンに流れてくる2貫のすしのうち1貫を箸でつまんで食べる動画が拡散。「おいしそうだったので食べちゃいました#人の注文#はま寿司」の文字が入っていた。 同9日ごろには、インスタグラムのストーリーで同じく「はま寿司」で撮影された「他人握りわさび乗せ」の文字が入った動画が投稿された。見る限り、他人が注文したすしにわさびを混入したようだ。これは24時間で削除されたが、数日後、ツイッターで拡散され一気に炎上した。 はま寿司はわさびを入れたとみられる人物から店舗に電話で謝罪の申し入れがあったとしているが、受け入れを拒否。既に警察に被害届を提出している。 同24日ごろには「くら寿司」で、若い男性3人がお皿の回収口にヘディングするように投入したり、一度取ったお皿をレーンに戻す動画が拡散された。レーンに流れている商品から4年前に撮影されたとみられるという。くら寿司も、警察に相談する意向を示している。 同29日ごろには「スシロー」で、男性客がテーブルのしょうゆ差しの注ぎ口や積まれた湯飲み茶碗の周囲をなめ回したり、つばを付けた手でレーンを流れるすしにこすりつけたりしている動画が拡散。瞬く間に炎上した。この動画もストーリーズ(注)に投稿されたとみられる。 スシローは同30日、公式サイトで「刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります」と表明。さらに2月1日には店舗が岐阜市内の店舗だったことを公表し、当事者と保護者から連絡があり、会って謝罪を受けたことを明らかにしたが「厳正に対処」の方針は維持する構えだ』、バイト・テロ事件の時と同じように面白がって悪ふざけをしているようだ。
(注)ストーリーズ:スライドショーのような形式で、画像や動画が投稿できるインスタグラムの機能(COLOR ME)。
・『窃盗や器物損壊 業務妨害罪の可能性も  それでは、それぞれの行為は刑事・民事でどれぐらいのペナルティーが科せられるのだろうか。 まず刑事だが、他人が注文したすしを食べたはま寿司のケースでは、その客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性が考えられ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性がある。同罪は「他人の物を損壊・傷害」することが前提だが、実際に壊さなくても心理的に使用できなくしたり、その価値を低下させたりする行為も損壊とみなされ、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となる。 そのほか、動画が拡散した結果について偽計業務妨害罪(刑法233条)か威力業務妨害罪(同234条)に問われる可能性がある。いずれも「他人の業務を妨害する」点で一致しているが、特徴としては偽計が「不可視的」、威力が「可視的」に妨害する行為と解釈され、両罪とも3年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 もちろん、複数の罪に問われる可能性もある。加えて当事者だけでなく、撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も考えられる』、「客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性」、「わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性」、「撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も」、なるほど。
・『民事での賠償額は数十万~数百万円か  民事ではどうか。SNSではスシローの株価が一日で百数十億円下落したことを受け「株価が下がった分を損害として賠償請求すべき」などのコメントが散見されるが、そもそも株価下落で損害を被ったのは株主であり、スシロー側ではない。 損害賠償請求訴訟を起こすなら株主であり、所有する株価が下がったことによる金額を請求するのが筋だろうが、動画が拡散した事実と株価が下がった因果関係を法的に立証するのはまず不可能で、現実的ではないだろう。 それではどれぐらいの請求額になるのだろうか。株価と同様、動画が拡散した事実と売り上げが減少した(場合の)因果関係を法的に立証するのは難しい。ただ、各社とも「厳正な対処」を表明しているだけに、清掃や備品の入れ替え・交換などにかかった実費だけ請求というわけにはいかないだろう。 全国紙社会部デスクによると、実はこうした行為に対する損害賠償請求訴訟というのはあまり例がなく、具体的な相場というのは不明らしい。ただ、東京都多摩市の老舗そば店で2013年、アルバイトの男子大学生4人が「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」のコメントを付けて洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりする画像などを投稿。 ネットで炎上する事態となり、倒産に追い込まれたそば店は4人に1385万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしたが、結局、200万円を支払うことで和解が成立したケースがあった。ただ、この訴訟はそば店が個人経営で、さまざまな出来事が重なったこともあり疲れ果てていたのだろうと推測される。 しかし、回転ずしチェーン各社は違う。全国展開する組織力と財力があり、抑止力・再発防止のためには中途半端な交渉に応じるつもりはないだろう。 前述のデスクは「この件で弁護士何人かと話しましたが『よくて実費だけ』『風評被害なども含め実費プラスアルファ』『動画拡散前と直後の売り上げを精査しきっちり請求すべき』など、回答はまちまちでした。ただ『払えない金額を請求してもペナルティーにはならない』という点では一致しており、行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」と説明。その上で「やはりスシローの件は高額になるでしょう」と予想した』、「行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」、「やはりスシローの件は高額になるでしょう」、なるほど。
・『回転ずしチェーン各社が毅然とした対応を行う理由  本稿では刑事・民事両面での展開について言及したが、実は刑事については非行歴のない未成年であれば「厳重注意」程度で、実際に罪に問われる可能性は薄いとみられる。 しかし民事では、客と店とのルールと信頼関係で成り立っている営業スタイルを根幹から揺るがすような悪質な行為のため、回転ずしチェーン各社が一斉に謝罪を拒否する姿勢で連帯しているように見える。 ぬるい対応では模倣犯が出たり、迷惑系ユーチューバーらが「この程度か」と高をくくり、アクセス数を稼ぐためやりたい放題になったりする可能性さえあるからだろう。 回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ。 当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ』、「回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ」、「当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ」、今後の「刑事裁判」「民事訴訟」の行方が注目される。
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