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相次ぐ警察の重大ミス(その7)(「地下鉄サリン事件」神奈川県警に重大疑惑 無差別テロの元凶は捜査ミスだった、再び被告の逃走許した大阪地検 収容時の不手際が相次ぐ意外な理由、中央署内で“金庫破り”8572万円 問われる広島県警の捜査力、相模原障害者施設殺傷事件で死刑となった被告の「犯行理由が解明されていない」のはなぜか?) [社会]

相次ぐ警察の重大ミスについては、昨年7月21日に取り上げた。今日は、(その7)(「地下鉄サリン事件」神奈川県警に重大疑惑 無差別テロの元凶は捜査ミスだった、再び被告の逃走許した大阪地検 収容時の不手際が相次ぐ意外な理由、中央署内で“金庫破り”8572万円 問われる広島県警の捜査力、相模原障害者施設殺傷事件で死刑となった被告の「犯行理由が解明されていない」のはなぜか?)である。

先ずは、文藝春秋 前社長の松井 清人氏が昨年8月26日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「「地下鉄サリン事件」神奈川県警に重大疑惑 無差別テロの元凶は捜査ミスだった」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/29736
・『1995年、オウム真理教は東京の地下鉄に猛毒サリンを撒いた。乗客や駅員ら13人が死亡、約6300人が負傷するという凶悪事件の背景には、なにがあったのか。当時、『週刊文春』編集部は、その元凶に神奈川県警の捜査ミスがあったことをつかんでいた——。 ※本稿は、松井清人『異端者たちが時代をつくる』(プレジデント社)の第1章「『オウムの狂気』に挑んだ6年」の一部を再編集したものです』、「その元凶に神奈川県警の捜査ミスがあった」、とはどういうことだろう。
・『龍彦ちゃんが眠っている  「まだ極秘なんですけど、これを見てください」 江川紹子さんは、『週刊文春』編集部の小さな会議室で私と向かい合うと、一枚の紙を広げた。1990(平成2)年2月20日ごろのことだった。 それは手書きの地図で、こんな手紙が添えられていた。 「龍彦ちゃんが眠っている。誰かが起こして、龍彦ちゃんを煙にしようとしている。早く助けてあげないと! 2月17日の夜、煙にされてしまうかも、早くお願い、助けて!」 金くぎ流の文字からは、筆跡を隠そうという意図が見て取れた。地図には、断面図のような絵が添えられていた。一本の木が描かれ、傍に×印がつけてある。縦に掘った穴からさらに横穴があり、そこに子どもが横たわっている。 横に掘った穴に、妙なリアリティーを感じたのを覚えている。 地図入りの手紙は、神奈川県横浜市の磯子警察署と横浜法律事務所に送られてきたという。差出人の名前はない。封筒は新潟県高田市の消印で、日付は2月16日となっていた。 横浜法律事務所には、妻の都子さん(29)、一人息子の龍彦ちゃん(1歳2カ月)と共に、3カ月前から行方不明になっている坂本堤弁護士(33)が所属している。事件を捜査しているのが、神奈川県警の磯子署だった』、「横に掘った穴に、妙なリアリティーを感じたのを覚えている」、こうした第六感はやはり大切にすべきもののようだ。
・『いたずらだと思うんだけど……  地図が示しているのは、長野県大町市山中の具体的な場所だ。 しかしなぜ、龍彦ちゃんだけなのか。「誰かが起こして、煙にしようとしている」とは何を意味しているのか。消印翌日に当たる「2月17日の夜」も、何を指すのかわからない。 「いたずらだと思うんですけど……。何か気になって」 江川さんもしきりに首を傾げていた。 「とにかく長野県警が捜索することになったんで、お伝えしておきます。いたずらだと思うんだけど……」 「何かあったら、すぐ記事にするよ。その態勢だけは整えておく」私は、そう返すしかなかった。 神奈川県警は2月21日、長野県警の協力を得て、地図に示された場所の捜索を行った。しかし、現場には雪が60センチも積もっていて、捜索は難航。45人体制で、積雪を搔き分けて地面を掘り起こしたが、何の手がかりも得られないまま、捜索はわずか半日で打ち切られてしまう。いまひとつ真剣さに欠けたのは、両県警にも「いたずらだろう」という思いがあったのかもしれない』、「雪が60センチも積もって」いたにせよ、「捜索はわずか半日で打ち切られてしまう」、かえすがえすも残念だ。
・『麻原彰晃が認めた男  前年の1989(平成元)年11月3日の深夜、オウム真理教の岡崎一明、早川紀代秀、新實智光、中川智正、端本悟の各元死刑囚と故・村井秀夫幹部の6人が、横浜市磯子区の坂本弁護士の自宅アパートに侵入した。 寝ている3人をその場で殺害したのち、布団にくるんで運び出し、別々の山中に埋めてしまう。都子さんの「子どもだけは……お願い……」という最期の懇願も、教祖・麻原彰晃から「家族ともども殺るしかない」と指示を受けていた信徒たちには通じなかった。 後述するように、当初からオウム真理教による犯行が疑われたが、解決の糸口もつかめないまま、早くも3カ月が過ぎていた。 手紙の送り主は、犯行グループの一人、岡崎一明だったことが、のちに明らかになる。岡崎は麻原教祖の側近中の側近で、専用リムジンも運転していた古参信徒だ。麻原から修行の成就者と認められ、麻原の「尊師」に次ぐ「大師」の地位を、教団で二番目に得ている。ちなみに一人目の「大師」は、麻原の愛人の一人で、教団が省庁制を採用したのち大蔵省大臣となった女性信徒だ』、「岡崎は麻原教祖の側近中の側近」、が「坂本弁護士」襲撃に加わっていたとは、襲撃を「麻原」が重視していた表れだろう。
・『「Mがずれていてよかった  岡崎が匿名の手紙を出したのは、麻原以下25人が、「真理党」から衆議院選挙に立候補していた時期だった。1990(平成2)年2月3日公示で、18日が投票日。岡崎も東京11区の候補者だったが、選挙戦さなかの2月10日、オウムから脱走を図る。 その際、2億2000万円の現金と8000万円の預金通帳を持ち逃げしようとしたが、これは幹部の早川に阻止されてしまう。 そこで岡崎は、麻原に対して、退職金名目の「口止め料」を要求。麻原がなかなか応じないので、自分の本気さを示す目的で手紙を送ったのだという。坂本弁護士と都子さんの遺体遺棄現場を示した手紙も投函したが、ようやく麻原が830万円の支払いを了承したため、郵便局に出向いて回収している。 両県警の捜索にもかかわらず、龍彦ちゃんの遺体が見つからなかったことをニュースで知った岡崎は、麻原に電話をかけた。麻原は、「Mがずれていてよかった」と喜んだという。「M」は「メートル」を意味する。 神奈川県警は、それから半年以上たった同年9月になって、手紙を書いたのが岡崎だと知り、当時住んでいた山口県宇部市へ出向いて、3日間にわたる事情聴取を行う。ポリグラフも使われた』、「岡崎は、麻原に対して、退職金名目の「口止め料」を要求・・・麻原が830万円の支払いを了承」、「岡崎」はなかなかしたたかだったようだ。だからこそ、「3日間にわたる事情聴取」もしのいだのだろう。
・『千慮の一失  岡崎は、自分が手紙を投函したこと、麻原から金を受け取ったことは認めたものの、頑として坂本事件への関与を否定。こう言ってはぐらかした。 〈「教祖に金を無心したところ、教団には選挙の自由妨害や住民票の不正移動で警察の捜査が入るおそれがあるので、その矛先をそらすため、子どもの遺体でも何でもいいからウソの投書をして、捜査を攪乱してくれ。そうしたら金を出すと言われた」〉(『オウム法廷』④) この供述を、捜査員は信用してしまう。しばらくして、横浜法律事務所に神奈川県警から連絡が入る。 「例の手紙ですが、差出人がわかりました。悪質ないたずらだと、厳しく説教しておきましたから」 千慮の一失。 連絡を受けた弁護士は、いたずらの主が誰なのか聞き返さなかった。 3人の遺体が見つかったのは、6年近くあとのこと。地下鉄サリン事件をきっかけに、オウム真理教に対して大規模な強制捜査が行われ、岡崎がようやく自供を始めてからだ。 龍彦ちゃんの遺体は、地図が示した場所のすぐ近くから発見された。地図が正確なのも当然で、岡崎は、そこに龍彦ちゃんを埋めた張本人だったからだ。しかも手紙を送るに際し、山口県宇部市から長野県大町市の現場を再度訪れて確かめ、ビデオや写真まで撮っていたことも明らかになる』、道理で「手紙」が「妙なリアリティーを感じた」ものになった筈だ。
・『神奈川県警の最大の手抜かり  雪の中の捜索が時間をかけて丹念に行われていたら、神奈川県警の捜査員が岡崎を厳しく尋問していたら、もっと早く見つけることができたに違いない。江川さんは、この手紙の処理を、初動捜査における神奈川県警の「最大の手抜かりだった」と、著書に記している。 その江川さん自身も悔やんでいた。あとになって、私にこう述懐したことがある。 「ひたすら坂本さん一家の生存を願っていたから、手紙はいたずらであってほしいという思いがありました。私にも、同僚の弁護士たちにも。警察の捜索はたしかに物足りなかったけど、見つからなくてホッとしたのも事実。いたずらでよかったという、気持ちのゆるみがあったんですね」 手紙の一件に限らず、捜査本部の初動捜査は滅茶苦茶だった。 坂本事件の発生直後に、神奈川県警が真剣に捜査に取り組んでいれば、間違いなくもっと早期に解決していただろう。すべての証拠が、オウムの犯行を示唆していたからだ。 そして、坂本事件で麻原教祖を検挙していれば、その後の教団の拡大や武装化を防ぐこともできた。松本サリン事件や地下鉄サリン事件は起こらずに済み、多くの人命や、数え切れない人々の平穏な生活が失われずに済んだ。龍彦ちゃんの捜索を半日で打ち切るなど、まったくやる気のない神奈川県警の姿勢を目の当たりにし、自分の身辺に捜査は及ぶまいと甘く見たからこそ、麻原彰晃は際限なく増長していったのだ。 神奈川県警の罪は、あまりにも重い』、「神奈川県警」の他にも、公安警察も秘かにかなり実態を把握していたが、公安・刑事部門間の壁で生かせなかったとの指摘もある。「江川さん」や「同僚の弁護士たち」にも「いたずらでよかったという、気持ちのゆるみがあった」のも事実だが、やはり警察のミスの罪は深い。

次に、事件ジャーナリストの戸田一法氏が11月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「再び被告の逃走許した大阪地検、収容時の不手際が相次ぐ意外な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220257
・『大阪地検が、また被告人の逃走を許した。9日未明、覚せい剤取締法違反罪などで起訴されていた大植良太郎被告(42)が護送車から脱走。11日午後2時ごろ、大阪市内で身柄が確保されたが、2日半にわたり逃走していた。10月30日には、無免許運転とひき逃げの罪で公判中の野口公栄被告(49)に逃走されたばかりだった。8日付で着任した田辺泰弘検事正が同日の記者会見で、野口被告の事件について「遺憾であり、住民を不安にさせたことは重く受け止めている」と発言した翌日の失態。市民からは「またか。ええ加減にせえよ」と憤りの声が聞かれた』、謝罪会見の「翌日の失態」には、「またか。ええ加減にせえよ」との憤りも当然だ。なお、本件は「警察」ではなく「検察」だが、司法機関を「警察」が代表しているとして、取上げた次第だ。
・『右手に手錠のまま逃走  大植被告は9日午前4時ごろ、大阪府東大阪市新町の路上で、大阪地検の事務官3人が護送していたワゴン車から逃走した。 全国紙社会部デスクによると、3列シートの3列目に乗っていた大植被告が「手錠がきつい」と話したため、事務官が緩めようとして左手の手錠を外したところ暴れだした。 ワゴン車は走行中で、大植被告が2列目のスライドドアを開けて半開きの状態になったため、運転していた女性事務官が危険だと判断して停車。大植被告はそのまま開いたドアから逃走したという。 大植被告は慎重171センチのやせ型で、頭は丸刈り。逃走時は紺色のシャツ、迷彩柄のズボンを着用。靴は履いておらず、はだしだった。 右手は手錠が付いたままの状態だったとみられる。 大植被告は覚せい剤取締法違反罪(使用・所持)と大麻取締法違反罪(所持)で起訴されていたが、大阪地裁岸和田支部の判決公判に3回連続で出頭せず、7日に保釈が取り消されていた。 大阪府警の河内署員が東大阪市で大植被告を発見。事務官が同署で手続きし、収容先の枚岡署に護送する途中だった。 大阪地検は発生直後に110番。約2時間半後の午前6時半ごろ、東大阪市役所に連絡した。 現場は先日までラグビーワールドカップの熱戦が繰り広げられていた花園ラグビー場から数百メートルの場所で、町工場や倉庫が多い国道170号沿い。 近くに住む男性は電話に「なんや、えらいパトカーのサイレン聞こえるな思うてたら、ニュースで『また逃げられた』って。何やっとんねんいう感じやな」と呆(あき)れ果てていた』、「大植被告は・・・判決公判に3回連続で出頭せず、7日に保釈が取り消されていた」、札付きのワルなのに、「護送していた」「事務官」の緊張感のなさには呆れるばかりだ。
・『公表5時間後、市には連絡せず  10月30日にも同じ大阪地検が、保釈が取り消され収容予定だった野口公栄被告(事件時49)=自動車運転処罰法違反(無免許過失傷害)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪で起訴=の逃走を許していた。 逃走劇があったのは午前10時50分ごろ。大阪府岸和田市上野町東の地検岸和田支部前の路上で、息子の仁容疑者(事件時30)=傷害と公務執行妨害容疑で逮捕=が運転手する軽乗用車の助手席に乗り込んで逃げていた。 野口被告は2月12日、無免許運転で8歳の児童をはねてけがをさせた上、逃げたとして起訴された。3月20日に保釈が決定。5月15日の初公判に出頭し、起訴内容を認めていた。 しかし、9月9日の第2回公判、10月10日の第3回公判にいずれも出頭せず、同15日に保釈が取り消された。 そして呼び出しを受けた同30日に収容の手続きについて説明を受けている際、事務官に「荷物を取りに行きたい」と告げ、事務官4人の付き添いで仁容疑者が軽乗用車を止めていた支部前の路上に向かった。 野口被告は軽乗用車の助手席に乗り込み、仁容疑者がそのまま急発進。制止しようとした男性事務官がはねられ、軽傷を負った。 野口被告は岸和田支部から約6キロ離れた和泉市にある市営団地の知人に匿(かくま)われており、翌々日の11月1日、身柄を確保された。 この事件を巡っては、大阪地検が野口被告の逃走を公表したのは発生から5時間後で、岸和田市には連絡していなかったことが問題視された。 大阪地検は「事実関係の正確な把握と確認に時間を要した」と説明したが、吉村洋文大阪府知事は「府民にすぐ情報を伝えることで、危険が及ばないように対策が取れる。速やかに情報を提供すべきだ」と対応を批判していた』、「大阪地検が野口被告の逃走を公表したのは発生から5時間後で、岸和田市には連絡していなかった」、とは問題外だ。
・『倍増する収容業務に疲弊  実は今年に入り、大阪以外にも検察事務官が許した逃走劇がある。 6月19日、窃盗や傷害、覚せい剤取締法違反の罪で実刑が確定していた小林誠元被告(事件時43)を収監しようと、横浜地検の事務官が神奈川県愛川町の自宅アパートを訪問した際、小林元被告が刃物を振り回して車で逃走した事件だ。 小林元被告は4日間にわたって逃走を続け、23日に約50キロ離れた同県横須賀市で身柄を確保されたが、この時も検察が地元の愛川町に連絡したのが3時間後だった。 翌24日、横浜地検の中原亮一検事正が神奈川県庁を訪れ、黒岩祐治知事に「こういう事案を発生させ痛恨の極み。誠に申し訳ありません」と謝罪した。 一方で、愛川町の小野沢豊町長と厚木市の小林常良市長は25日、地検からの連絡が遅かったとして、当時の山下貴司法相と中原検事正に対し、迅速に情報が共有できる仕組みづくりを求める要望書を提出していた。 ところで、なぜ収容時の逃走が立て続いたのか。 結論から言えば「検察の緩み」になってしまうのだが、ほかに被告の権利擁護の流れが背景にあるとの指摘もある。 というのは、司法統計によると、被告が保釈されたケースは昨年が30.7%と3分の1近くに上ったが、10年前の08年からほぼ倍増(15.8%)しているのだ。 これは、被告と弁護人が公判に備え打ち合わせる時間を確保すべきだとする考え方や、逮捕や起訴で勾留を続ける「人質司法」を解消しようとする考え方が広まっているためとみられている。 しかし、検察事務官は増えていないのに、収容業務は単純にここ10年で負担が倍に増えたわけだ。 前述の全国紙社会部デスクが検察OBの弁護士から聞いたところによると、後輩の現職検察官が「弁護士は申請するだけ、裁判官は許可するだけだが、しわ寄せはこっちに来る」とぼやいていたという。 被告には推定無罪の原則があり、権利は擁護されるべきだ。 しかし、検察事務官は警察官のように柔剣道や逮捕術などの訓練を受けているわけではないので、屈強な被告が暴れたら制止できない場合も十分にあり得る。 実際にこうして逃走劇が相次いでいる以上、裁判官は逃げないだろうという「性善説」に寄りかかるのではなく、保釈に関しては適正な見極めも必要だろう。 大植被告の逃走により、現場周辺の博物館や図書館、体育館などが休館となり、中止になったイベントもあった。 迷惑するのはほかでもない、無関係の住民なのだから…』、「被告が保釈されたケースは・・・10年前の08年からほぼ倍増」、という事情はやむを得ないので、「検察事務官」の「護送」のあり方を抜本的に見直すべきだろう。

第三に、本年2月15日付け日刊ゲンダイ「中央署内で“金庫破り”8572万円 問われる広島県警の捜査力」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/269109
・『最後まで吐かせることができなかった――。 警察署内で起きた前代未聞の「金庫破り事件」は事件発覚から約2年10カ月が経ち、「一応の決着」をみた。 広島県警は14日、事件後に死亡した元広島中央署生活安全課の警部補の男(36=当時)が事件に関わった疑いが強いと判断し、容疑者死亡のまま、窃盗などの疑いで書類送検した』、「事件発覚から約2年10カ月が経ち、「一応の決着」」、時間がかかり過ぎだ。
・『お粗末な管理体制  2017年5月8日、広島中央署の金庫に保管されていた現金8572万円が忽然と消え去った。現金は、生活安全課が2月に押収した特殊詐欺事件の証拠品だった。捜査員が最後に確認したのは3月15日。以降、事件が発覚するまでの約2カ月間、一度も現金を確認していなかった。そのため現金が盗まれた時期すら断定できず、捜査対象者は大幅に膨らんだ。さらに金庫が置かれていた会計課やその出入り口に防犯カメラが設置されておらず、お粗末な管理体制が明らかになった。 捜査の結果、現場付近から署員、職員以外の指紋や足跡が見つからなかったことから、県警は内部の犯行と断定。約600人の関係者を事情聴取し、約6万件の金融機関の口座を照会。延べ2万8000人の捜査員を動員した。そんな中、同年9月に警部補が自宅で死亡。遺書はなく、死因は依然、不明のままだ。 「警部補は事件後、競馬などのギャンブルで同僚らから借りていた数千万円の借金を返済しています。事件前の3月まで生活安全課で特殊詐欺事件に関わり、金庫に多額の金があるのを知っていた。金庫は差し込み式の鍵とダイヤル式ロックの二重施錠になっていて、警部補はダイヤル番号を知る立場にあった」(捜査事情通) 広島中央署には署員職員合わせて約350人が勤務していたが、生活安全課と会計課に限れば数十人しかおらず、さらに金庫周辺から警部補の指紋が検出された。県警は任意で警部補を事情聴取し、ウソ発見器にかけたものの一貫して関与を否定。捜査令状を取って自宅を調べたが、証拠を見つけることも口を割らすこともできなかった。警察の威信にかけて早期解決を目指したにもかかわらず、これだけの「状況証拠」がありながら身内の逮捕に至らなかったのだから、捜査力のレベルを露呈したことになる。 盗まれた現金はいまだ見つかっておらず、県幹部や職員互助会から資金を集め、詐欺被害の救済に充てるという。いっそのこと最初から、他府県の警察に捜査を任せた方がよかったのかもしれない』、「お粗末な管理体制」も問題だが、「これだけの「状況証拠」がありながら身内の逮捕に至らなかったのだから、捜査力のレベルを露呈」、「身内」への甘さはそれ以上に問題だ。

第四に、作家の橘玲氏が4月6日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「相模原障害者施設殺傷事件で死刑となった被告の「犯行理由が解明されていない」のはなぜか?【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/233977
・『神奈川県の知的障がい者施設で入所者ら45人が襲われ、19人が刺殺されるという衝撃的な事件の裁判(横浜地裁)で、元職員(30歳)の被告に求刑どおり死刑が言い渡されました。 新型肺炎のニュースに隠れてしまったものの、この裁判はマスコミ各社によって大きく扱われました。その報道には、はっきりとした共通性があります。それは、「犯行の理由が解明されていない」です。 このような結論に至るには、当然のことながら、「正しく裁判すれば被告の動機がわかるはずだ」との前提があります。しかし、これはほんとうなのでしょうか。すなわち、「ひとは自分の行動を合理的に説明できるのか?」という問題でもあります。 ルール違反をした子どもに対して、親や教師は「なんでそんなことをしたの!?」と問い詰めます。ちゃんと説明できる子もいれば、できない子もいるでしょう。なんと答えていいかわからず黙り込んでしまう子どもは、いつまでも許されずに、居残りとか外出禁止の罰を受けるかもしれません。 誰もが経験したことで当たり前と思うかもしれませんが、これは「自分の行動を合理的に説明できる子ども」と「合理的に説明できない子ども」がいるということです。しかし、ある子どもは意図的にルール違反をし、別の子どもはよくわからずにルールを破っているとしたら、罰せられるのは「合理的な理由でルール違反した」子どもであるべきです』、「子ども」に引き直して説明するとはさすがだ。
・『こんな奇妙なことになるのは、「行動には意図があるはずだ」という最初の前提がまちがっているからです。子どもたちはたいした理由もなくルールを破り、それが見つかって怒られたときに、自分の行動を言語化(説明)できる子どもとできない子どもがいるだけなのです。 ひとは本能的に、理解できないものを恐れます。「なんでそんなことをしたの!?」は教育やしつけのためではなく、「あなたの行動を理解できるように説明して私を安心させなさい」という命令です。だからこそ、言外の意味を的確に把握し、大人が納得する説明ができる言語的知能の高い子どもが許されるのです。 大量殺人事件の犯人に対しても、世間は同じように「合理的な説明」を求めます。なぜなら、そのような異常な行動を理由もなくする人間がいるという不安に、ほとんどのひとは耐えられないから。 そのような強い圧力にさらされれば、加害者はなんとかして「説明」を考え出そうするでしょう。それと同時に、すべての人間は自分の行動を正当化したいという強固なバイアスをもっています。とりわけ今回のような取り返しのつかない事件を起こしたなら、それが間違っていたことを認めるのは自分の「生きている意味」を全否定することになってしまうので、正当化の誘因はさらに強いものになるでしょう。 そのように考えれば、裁判での被告の態度はきわめて「合理的」です。どれほど問い詰めたところで、ひとびとが納得するような合理的な理由などそもそもないのですから』、「「なんでそんなことをしたの!?」は教育やしつけのためではなく、「あなたの行動を理解できるように説明して私を安心させなさい」という命令です」、言われてみればその通りなのかも知れない。ただ、「裁判での被告の態度はきわめて「合理的」です。どれほど問い詰めたところで、ひとびとが納得するような合理的な理由などそもそもないのですから」、さしずめ「言語化(説明)・・・できない子ども」と同じなのだろう。我々は理由を知ることをあきらめるしかないようだ。
タグ:相次ぐ警察の重大ミス (その7)(「地下鉄サリン事件」神奈川県警に重大疑惑 無差別テロの元凶は捜査ミスだった、再び被告の逃走許した大阪地検 収容時の不手際が相次ぐ意外な理由、中央署内で“金庫破り”8572万円 問われる広島県警の捜査力、相模原障害者施設殺傷事件で死刑となった被告の「犯行理由が解明されていない」のはなぜか?) 松井 清人 PRESIDENT ONLINE 「「地下鉄サリン事件」神奈川県警に重大疑惑 無差別テロの元凶は捜査ミスだった」 松井清人『異端者たちが時代をつくる』 第1章「『オウムの狂気』に挑んだ6年」の一部 龍彦ちゃんが眠っている 江川紹子 地図には、断面図のような絵が添えられていた。一本の木が描かれ、傍に×印がつけてある。縦に掘った穴からさらに横穴があり、そこに子どもが横たわっている 横に掘った穴に、妙なリアリティーを感じたのを覚えている いたずらだと思うんだけど…… 神奈川県警は2月21日、長野県警の協力を得て、地図に示された場所の捜索を行った 雪が60センチも積もっていて、捜索は難航。45人体制で、積雪を搔き分けて地面を掘り起こしたが、何の手がかりも得られないまま、捜索はわずか半日で打ち切られてしまう 麻原彰晃が認めた男 岡崎は麻原教祖の側近中の側近 「Mがずれていてよかった 岡崎は、麻原に対して、退職金名目の「口止め料」を要求 麻原が830万円の支払いを了承 3日間にわたる事情聴取を行う。ポリグラフも使われた 千慮の一失 で警察の捜査が入るおそれがあるので、その矛先をそらすため、子どもの遺体でも何でもいいからウソの投書をして、捜査を攪乱してくれ。そうしたら金を出すと言われた 神奈川県警の最大の手抜かり 公安警察 戸田一法 ダイヤモンド・オンライン 「再び被告の逃走許した大阪地検、収容時の不手際が相次ぐ意外な理由」 大阪地検が、また被告人の逃走を許した 「またか。ええ加減にせえよ」と憤りの声 右手に手錠のまま逃走 公表5時間後、市には連絡せず 大阪地検が野口被告の逃走を公表したのは発生から5時間後で、岸和田市には連絡していなかった 倍増する収容業務に疲弊 日刊ゲンダイ 「中央署内で“金庫破り”8572万円 問われる広島県警の捜査力」 警察署内で起きた前代未聞の「金庫破り事件」 事件発覚から約2年10カ月が経ち、「一応の決着」 お粗末な管理体制 金庫に保管されていた現金8572万円が忽然と消え去った 警部補が自宅で死亡。遺書はなく、死因は依然、不明のままだ 事件後、競馬などのギャンブルで同僚らから借りていた数千万円の借金を返済 生活安全課と会計課に限れば数十人しかおらず、さらに金庫周辺から警部補の指紋が検出 盗まれた現金はいまだ見つかっておらず、県幹部や職員互助会から資金を集め、詐欺被害の救済に充てる これだけの「状況証拠」がありながら身内の逮捕に至らなかったのだから、捜査力のレベルを露呈 橘玲 「相模原障害者施設殺傷事件で死刑となった被告の「犯行理由が解明されていない」のはなぜか?【橘玲の日々刻々】」 「行動には意図があるはずだ」という最初の前提がまちがっているから ひとは本能的に、理解できないものを恐れます。「なんでそんなことをしたの!?」は教育やしつけのためではなく、「あなたの行動を理解できるように説明して私を安心させなさい」という命令です 正当化の誘因はさらに強いものになる 裁判での被告の態度はきわめて「合理的」です。どれほど問い詰めたところで、ひとびとが納得するような合理的な理由などそもそもないのですから
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東京都の諸問題(その16)豊洲以外の問題8(小池都政の嘘と隠蔽 名建築・葛西臨海水族園が排除の危機、小池百合子・東京都知事「ロックアウト」「オーバーシュート」横文字連発の陰に都議会の“ドン”〈週刊朝日〉、東京都のコロナ対策に垣間見える 小池知事「五輪延期問題」への執着) [国内政治]

東京都の諸問題については、2018年11月3日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その16)豊洲以外の問題8(小池都政の嘘と隠蔽 名建築・葛西臨海水族園が排除の危機、小池百合子・東京都知事「ロックアウト」「オーバーシュート」横文字連発の陰に都議会の“ドン”〈週刊朝日〉、東京都のコロナ対策に垣間見える 小池知事「五輪延期問題」への執着)である。

先ずは、昨年12月27日付け日刊ゲンダイ「小池都政の嘘と隠蔽 名建築・葛西臨海水族園が排除の危機」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/266836
・『日本有数の名建築が「排除」の危機だ。小池都政が約243億円をかけ、都立「葛西臨海水族園」の近隣に新たな建物を建築する報告書の原案をまとめた。 同園は世界的建築家の谷口吉生氏が手掛け1989年に開、館。大きなガラスドームが特徴で、数多くの建築賞を受賞。 日本を代表する建築家の槇文彦氏が「非常に広いオープンスペースがある水族“園”。軽やかなテント群の向こうに東京湾が見えてくる。これだけ重層した風景を経験できる場所はない。東京にとって欠くことのできない景観だ」と激賞するほど、文化的価値が極めて高い施設だ。 通算来園者は5500万人超。多くの思い出が蓄積された景観をたった30年でブッ壊す計画が浮上したのは2017年。都は同園の「あり方検討会」を5回開き、18年10月に「改築」を基本とする構想をまとめた。 そのパブリックコメントを募集すると改築反対が89%に上り、都は「改築」という表現を修正。「水族園機能を(新水族園に)移設後、施設状態を調査の上、在り方を検討」としたが、水槽の水を抜いた後に解体する可能性は残る。 都が挙げる理由は老朽化だ。「バリアフリーじゃない」「ろ過設備の更新ができない」と指摘するが、いずれも嘘。バリアフリー化は07年に都の委託により改修実施設計が完了済み。ろ過設備の更新も19日の日本建築学会主催のシンポジウムで、同園の設備設計者だった森村設計の村田博道副社長が「大型ろ過器を運び出す開口部を用意し、当初から更新に配慮してある」と証言した。 23日に報告書原案をまとめた検討会も建て替えの結論ありき。都庁で傍聴した建築エコノミストの森山高至氏が言う。 「建築専門の委員が『施設保存と長寿命化を求めてきた意見が議事録に残っていない』と疑義を挟んでも、担当課長が遮って関西弁で取り仕切り、原案をまとめました」 日本建築学会やエール大、ハーバード大の両教授らが保存の要望書を提出しても、小池知事は無視し続けている。 小池都政は嘘と隠蔽のブラックボックスに逆戻り。「水ぜんぶ抜く」なら再選は遠のくだけである』、「葛西臨海水族園」の建物は、私も行ったことがあるが、確かに素晴らしいもので、なんとか残して欲しいものだ。「パブリックコメントを募集すると改築反対が89%」、「都が挙げる理由は老朽化だ。「バリアフリーじゃない」「ろ過設備の更新ができない」と指摘するが、いずれも嘘」、初めから「改築」ありきで、強引に突き進むとは、驚くべきことだ。「水族園機能を(新水族園に)移設後、施設状態を調査の上、在り方を検討」、とは言っても、豊洲市場移転や築地市場でも嘘をつき続けた前科があるだけに、信用できない。何故、新水族園を作ることにしたかの理由は不明なままで。「「水ぜんぶ抜く」なら再選は遠のくだけ」との記者の希望的観測は、以下の記事でみるようにコロナ問題で、覆されたようだ。

次に、本年3月30日付けAERAdot「小池百合子・東京都知事「ロックアウト」「オーバーシュート」横文字連発の陰に都議会の“ドン”〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020033000016.html?page=1
・『新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都の小池百合子知事が外出の自粛を呼びかけた週末。普段ならにぎわうはずの東京・銀座も、週末恒例の歩行者天国は中止。特に3月29日は雪が降ったこともあり、人影はまばらだった。 その直前の25日、小池知事は緊急の記者会見を開き、「感染爆発(オーバーシュート)の重大局面」だと訴えた。週末は不要不急の外出を自粛するように要請したほか、平日はできるだけ自宅で仕事をするように求めた。今夏に開催予定だった東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決まった翌日のことだ。 「ロックアウト(都市封鎖)」「オーバーシュート」 ビッグワードを連発し、テレビ視聴者を引き付けた。さらに、周辺4県とのテレビ会議、安倍晋三首相への申し入れ、テレビ出演――。7月5日投開票の都知事選に向け、早くも突き進んでいるようにも見えた』、「東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決まった翌日」に、いきなり「ビッグワードを連発し」、「外出の自粛を呼びかけた」、変わり身の早さには呆れ果てる。
・『この小池知事を支持するのが、都議会のドンこと、内田茂・元自民党都連幹事長だ。 昨年11月に開催された内田氏のパーティーには、都連の国会議員や都議たちが詰めかけた。2017年都議選に立候補せず、引退したはずだったのに、突然の復活。ある自民党都議は言う。 「(自民党本部の)二階(俊博)幹事長や安倍首相、党本部の意向を受けて、内田さんが動いているんですよ。『小池支持』で都議会自民党を説得しているんです。内田さんは4年前、小池知事にさんざんののしられ、あげくの果ては失脚してしまったのに、忘れてしまったのかと思います」 4年前の都知事選で、内田氏は都政のブラックボックスの象徴的存在と祭り上げられた。その結果、自民党などが推薦した候補は112万票差の大敗を喫した。 17年の都議選では、小池氏が率いる地域政党「都民ファーストの会」が圧勝、自民党都議団は告示前の57議席から23議席に激減した。 だから、自民党本部の二階幹事長が24日、都知事選の候補者について「小池氏支援」を表明すると、若手の自民党都議を中心に猛反発が起きた。) 「自民党内では相当、もめています。前回の16年の都知事選では、小池知事と自民党などが推薦した増田寛也・現日本郵政社長との戦いになりましたが、安倍首相は『地方の選挙にはかかわらない』と言って、選挙の応援に来なかったんです。二階さんも、東京都のことには口を出さないと発言していました。それなのに、今回は党本部が顔を出してくるというのはおかしい」(前出の自民党都議) 都議会自民党の小宮安里政調会長は、26日の記者会見で小池知事を批判した。 「自民党本部は小池さんを支持していると言うけれど、それは党本部の見解かもしれませんが、私どもは小池さんを都知事としてふさわしいとは思っていません」 自民党のねじれが見えた瞬間だった。 自民党都連の深谷隆司最高顧問は、小池知事の対抗馬を探したが、見つからなかったと告白する。 「小池さんはもともとが人気がある上に、現職です。首長選挙というのは現職が圧倒的に強い。対抗馬となると、よほどのタマじゃないと勝てない。残念ながら、執行部が頑張って候補者を探したんですか、これはという人が浮かばなかった」 さらに新型コロナウイルスの感染が拡大し、「それどころじゃなくなった」と明かす。 ただ、深谷氏は小池氏を応援するには条件があるという。 「新型コロナの問題では、日本最大の危機ですから、小池さんが都民を守ろうと努力しておられることには協力したいと思います。が、前回の都議選で、自民党は現職議員が3分の2落選しているんだから、この人たちにとっては許せないという思いがあるでしょう。来年予定されている都議選では、小池さんがかつてのように、都民ファースト一辺倒に応援するのでは困ります。知事としての中立的な立場をきちっとお考えになって、公正に行動することが大事な条件だと思っています。それと、自民党が求める政策をちゃんと受けて、都政に反映するようにしてもらいたい」 一方、小池知事を支えてきた都民ファーストの森愛都議は、こう語る。 「小池知事は4年前、都知事選に出馬する際に、『崖から飛び降りる覚悟』と決意を表明しました。自民党が行ってきた都政のブラックボックスと戦った。それに私も共感し、都民ファーストに飛び込んだんです。小池さんには、初心を忘れないで、この4年間の都政の継続に取り組んでいっていただきたい。小池知事となり、受動喫煙防止条例の制定や、行財政の見直しで財源の確保など、都民ファーストの視点での数々の改革を高く評価しています」 小池知事の動向に注目が集まることは間違いない』、「内田茂・元自民党都連幹事長」が復活したとは、驚きだ。「自民党都連」を「小池」支持でまとめる狙いなのだろうが、遺恨が残っているだけに、キレイに一本化とはいかないだろう。

第三に、4月8日付けダイヤモンド・オンライン「東京都のコロナ対策に垣間見える、小池知事「五輪延期問題」への執着」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/234120
・『新型コロナウイルスの感染拡大を受け、メディアへの露出を増やす東京都の小池百合子知事。「感染爆発 重大局面」「ロックダウン」などの刺激的なワードを多用し、危機下のリーダーシップを強調している。だが、つい先日までは東京オリンピックの中止回避に血道を上げてはいなかったか。東京五輪への小池知事のこだわりが、都の感染防止対策に影響した可能性はないのだろうか』、興味深そうだ。
・『失策で追い込まれ、レガシーは五輪だけ 延期決定で安倍首相と“グータッチ”  「残念ながら、都内の感染者数はおとといの土曜日は117名、そして日曜日は143名、今日は83名と高水準で推移しています」──。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を出す前日の4月6日、東京都の小池百合子知事は緊急記者会見を開いて都内の感染者数の増加に触れ、危機感をにじませた。 小池知事が新型コロナ関連で最初に緊急記者会見を開いたのは3月23日。この時の会見で、もしも対策を実施しなかった場合、ピーク時には都内の外来患者数が1日約4万人、入院患者数が約2万人を超えるとの試算に言及。配布資料には、厚生労働省クラスター対策班の3月21日時点の推計として、4月8日までに都内では530人の感染者(うち重篤者25人)が発生するとの予測も盛り込まれた。 現実はどう推移したか。4月6日時点の都内の感染者数は1116人、重篤者は27人。当時の推計値を上回る深刻な展開をみせている。 東京都はもっと早急に対策を取ることができたのではないか。小池知事の優先事項は、新型コロナウイルスよりも、東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否だったのではないか――。 一部の有識者やインターネット上では、こうした疑念が指摘されている。小池知事自身はこの見方を否定するものの、過去の会見を振り返ると、そう捉えられても仕方のない言動があったことは事実だ。 2016年の都知事選でぶち上げた、築地市場の豊洲への移転見直し計画を説明不足のまま撤回し、翌17年の総選挙では「希望の党」を立ち上げ惨敗。それ以降、小池知事は「五輪のホスト知事を務めることしか考えていない」(都政担当記者)と周囲からは見られていた。 五輪の21年への延期が決まったのは、緊急記者会見の翌日の3月24日。首相公邸で実施された、安倍晋三首相とトーマス・バッハ国際五輪委員会(IOC)会長とのテレビ会談には小池知事も同席していたものの、延期の決定を報道陣に伝えたのは安倍首相だった。 この時の小池知事は、「五輪中止」という最悪のシナリオを避けることができたため、大満足だったようだ。読売新聞によれば、小池知事は公邸で喜びのあまり安倍首相と“グータッチ”。朝日新聞は小池知事が翌25日に都の五輪担当の職員を訪れて3分間スピーチした模様を報じ、「終始上機嫌だった」と表現している』、「小池知事の優先事項は、新型コロナウイルスよりも、東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否だったのではないか」、その通りだろう。
・『「マラソンは東京で」のこだわり再燃 コロナ緊急会見で五輪日程に言及する不思議  さらに、延期した五輪の具体的な開催日程がまだはっきりとしない3月27日の段階で、IOCによって昨年、開催場所が札幌市に変更されたマラソンについて、夏以外の時期の開催になれば「(東京に戻すのが)当然だと思う。都民も望んでいる」と言い切った。「感染爆発 重大局面」のパネルを誇示し、都内のロックダウン(都市封鎖)の可能性に言及した3月25日の記者会見の2日後のことである。 そして延期した五輪の開催日が21年7月23日に決まった3月30日。小池知事はこの話題を、新型コロナウイルスに関する緊急記者会見の中で突然挟み込んだ。 この日の緊急会見の趣旨は、都内の累計感染者数が443人に達し、感染経路不明のケースが増えていることへの警戒の呼び掛けだった。しかし、小池知事は会見中に都の内藤淳福祉保健局長の発言を「ちょっと待ってください」と遮り、「先ほど組織委員会に参りまして、バッハ会長との電話会談がございまして、そのご報告をまずさせていただきます」「開催都市の都知事であります私、森(喜朗・組織委)会長、橋本(聖子・五輪担当)大臣との間で電話会談が行われまして、2021年7月23日の開催が決定をいたしましたのでお知らせいたします」などと、感染症が専門の医師らが同席する中で滔々(とうとう)と語った。 福祉保健局長の発言を遮ってまで、小池知事が言及したかった21年の五輪開催日の決定。ただその内容は会見前に既に報道されており、周知の事実だった。3月24日の五輪延期発表は、開催都市のトップではなく安倍首相が前面に出たことがよほど悔しかったのだろうか。30日の会見では、「開催都市の知事であります私」などという表現まで使っている。 新型コロナにより都民の生命が脅かされていることへの警鐘を鳴らす会見には不似合いな発言で、小池知事の五輪への執着を感じさせたるには十分だった。舛添要一前知事は翌日のテレビ番組でこの発言に触れ、「緊急会見を開き、ロックダウンなどと発言したその日に五輪(に言及していて)、私はものすごい違和感を感じたんですよ」と批判した』、ニュースキャスター出身の「小池知事」が、「新型コロナウイルスに関する緊急記者会見の中で」、「五輪日程」を「突然挟み込んだ」、とは信じられないようなこだわりの強さだ。「舛添要一前知事」の批判ももっともだ。
・『質問にもまともに答えない姿勢を徹底 それでも今のところコロナは“追い風”?  そして、国の緊急事態宣言を目前に控えた4月6日の緊急会見。報道陣からは、3月21日の厚労省クラスター班の推計を踏まえ、「ロックダウンについて言及したのが、五輪延期決定後の3月25日だった。なぜ3連休(3月20~22日)に緊急会見を開いてクラスター班の予測を公表しなかったのか」との質問が出た。 これに対して小池知事は、「クラスター班のみなさま方の熱心な予測でございますけれども、最初1万7000という数字が出たり、その次、3000が出て、その翌日、300になっていたりと、数字が大きく揺れているところもございました」などと述べ、クラスター班が推測した感染者数が大きくぶれていたことを公表しなかった理由に挙げた。まるで、クラスター班の推計が甘かったと言わんばかりである。 ただ冒頭で触れた「都内のピーク時の外来患者数1日約4万人、入院患者数2万人超」という予測は、小池知事が自ら説明したように、根拠となる数式を国が示したのは3月6日だ。 記者会見では、小池知事が質問にまともに答えないケースも目立つ。米国ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は毎日のように記者会見を開き、ネガティブな情報も包み隠さず公開していると評価されている。クオモ知事の行動を踏まえ、小池知事の情報発信の姿勢について問われると、「YouTubeなどを使いまして、今、都の情報を皆さんに届くようにSNSも通じまして、お届けするようにしております」などと回答しただけだった。 小池知事は最近、「ライブ配信」と称して、知事室と思しき部屋をスタジオに見立て、医師や感染症の専門家を招いて自身が質問する動画を、都の公式動画チャンネル「東京動画」にアップし始めた。だがこれは小池知事側の一方的な情報発信だ。記者からの質問に答える記者会見とは根本的に異なる。 記者会見では、新型コロナウイルスで本来入院すべき患者が都内の特別養護老人ホームに止め置かれていることを踏まえ、都の病床確保などの取り組みに落ち度はなかったか、と問われる場面もあった。 だが小池知事は、落ち度があったかどうかは言及せず、「現場の人たちの負担を少しでも減らすなど、さまざま学びながら、この難局をともに乗り越えていきたいと思っております」と答えただけだった。 想定外の事態に対し、完璧な対応は難しい。それでも、欧米での医療崩壊の事例を把握している国内の専門家もいたはずであり、都内の準備に取り組む時間的な猶予はあった。今さら都の病床確保などの医療体制について、「学びながら」ことを進めるという発言には、不安を覚えざるを得ない。 全世界での新型コロナウイルスの蔓延はとどまるところを知らず、来年の五輪開催すら危ぶまれている。一方で今夏には、小池知事の再選がかかる都知事選も予定されている。小池知事を蛇蝎のごとく嫌っていた都議会自民党も、党本部の意向や現下の危機的な状況を踏まえ、表向き小池知事の再選を支持する姿勢を見せている。 危機管理や安全保障をライフワークと自負し、コロナ危機が政治的な“追い風”にもなりつつある小池知事のことだ。もし今後、都内の感染者数が抑えられれば、自身の政治的な成果として最大限、アピール材料に活用される。たとえそれが、都民の協力と医療関係者の懸命な尽力の賜物であったとしても、である。 一方で感染爆発が現実のものとなれば、五輪の中止回避で大喜びし“グータッチ”に興じていた安倍首相と同様、小池知事の責任が厳しく問われることになる』、仮に「感染爆発が現実のもの」となったとしても、「小池知事」は巧みに責任逃れをするのだろう。やれやれだ。
タグ:東京都の諸問題 (その16)豊洲以外の問題8(小池都政の嘘と隠蔽 名建築・葛西臨海水族園が排除の危機、小池百合子・東京都知事「ロックアウト」「オーバーシュート」横文字連発の陰に都議会の“ドン”〈週刊朝日〉、東京都のコロナ対策に垣間見える 小池知事「五輪延期問題」への執着) 日刊ゲンダイ 「小池都政の嘘と隠蔽 名建築・葛西臨海水族園が排除の危機」 都立「葛西臨海水族園」 近隣に新たな建物を建築する報告書の原案 世界的建築家の谷口吉生氏が手掛け1989年に開、館。大きなガラスドームが特徴で、数多くの建築賞を受賞 東京にとって欠くことのできない景観 同園の「あり方検討会」を5回開き、18年10月に「改築」を基本とする構想をまとめた パブリックコメントを募集すると改築反対が89%に上り、都は「改築」という表現を修正。 水族園機能を(新水族園に)移設後、施設状態を調査の上、在り方を検討 都が挙げる理由は老朽化だ。「バリアフリーじゃない」「ろ過設備の更新ができない」と指摘するが、いずれも嘘 建築専門の委員が『施設保存と長寿命化を求めてきた意見が議事録に残っていない 日本建築学会やエール大、ハーバード大の両教授らが保存の要望書を提出しても、小池知事は無視し続けている AERAdot 「小池百合子・東京都知事「ロックアウト」「オーバーシュート」横文字連発の陰に都議会の“ドン”〈週刊朝日〉」 「感染爆発(オーバーシュート)の重大局面」 東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決まった翌日 「ロックアウト(都市封鎖)」「オーバーシュート」 ビッグワードを連発 小池知事を支持するのが、都議会のドンこと、内田茂・元自民党都連幹事長 二階(俊博)幹事長や安倍首相、党本部の意向を受けて、内田さんが動いている 『小池支持』で都議会自民党を説得している 自民党都連の深谷隆司最高顧問 小池知事の対抗馬を探したが、見つからなかったと告白 ダイヤモンド・オンライン 「東京都のコロナ対策に垣間見える、小池知事「五輪延期問題」への執着」 失策で追い込まれ、レガシーは五輪だけ 延期決定で安倍首相と“グータッチ” 東京都はもっと早急に対策を取ることができたのではないか。小池知事の優先事項は、新型コロナウイルスよりも、東京オリンピック・パラリンピックの開催の可否だったのではないか 「マラソンは東京で」のこだわり再燃 コロナ緊急会見で五輪日程に言及する不思議 質問にもまともに答えない姿勢を徹底 それでも今のところコロナは“追い風”?
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パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その7)(新型コロナウィルス感染拡大 アメリカは異常事態、「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない 死亡原因は「重い肺炎」だけではない、「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?、108兆円規模のコロナ緊急経済対策が「看板に偽りあり」といえる理由) [国内政治]

昨日に続いて、パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その7)(新型コロナウィルス感染拡大 アメリカは異常事態、「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない 死亡原因は「重い肺炎」だけではない、「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?、108兆円規模のコロナ緊急経済対策が「看板に偽りあり」といえる理由)を取上げよう。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が4月4日付けメールマガジンJMMに掲載した「新型コロナウィルス感染拡大、アメリカは異常事態」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『前回、この欄でお話したのが3月21日。その時は、現地時間で3月20日(金)時点での数字をお伝えしました。それから2週間、事態は加速度的に悪化しています。 
全米レベル・・・・・・・・3月20日時点での感染者 14630
             4月3日時点での感染者 257773
             3月20日時点での死者    210
             4月3日時点での死者    6586
ニューヨーク州・・・・・・3月20日時点での感染者  7845
             4月3日時点での感染者 102863
             3月20日時点での死者     31
             4月3日時点での死者    2985
うちニューヨーク市内・・・3月20日時点での感染者  5151
             4月3日時点での感染者  57159
             3月20日時点での死者     26
             4月3日時点での死者    1562
ニュージャージー州・・・・3月20日時点での感染者   890
             4月3日時点での感染者  29895
             3月20日時点での死者     11
             4月3日時点での死者     646
具体的には医療崩壊に近い状況も伝えられていますが、とにかく、この間、膨大な数の死者が続いています。本稿の直前(アメリカ時間の2日の木曜から3日の金曜にかけて)1日間だけでも、私の住むニュージャージー州では、113名が亡くなり、マーフィ知事は「あらゆる国旗、州旗を半旗とするように」という布告を出しました。 ニューヨークはもっと厳しい状況となっています。ほんの数日前には、クイーンズ区の病院に仮の遺体安置所として、冷蔵トレーラーが横付けされている映像が衝撃を与えました。ですが、今週には同じような冷蔵トレーラーが5台並んでいる映像が出回っています。この4月2日から3日の丸1日の間に亡くなった人は562人。毎日のニュースでは、コロナ問題を巡る最新状況に加えて、犠牲者を追悼するコーナーが定例化されるようになってきました。 更に今週、トランプ大統領と、政権の専門家委員会のファウチ博士、バークス博士からは、2つの大きな指摘がありました。1つは「これからの2週間は、もっと厳しい状況になる」ということ、そしてもう1つは「全米の死者累計は、ベストケースシナリオ、つまり社会的距離の確保に成功した場合で、10万人から24万人」そして「ワーストケースとしては100万人を越えることもある」というのです』、「ファウチ博士、バークス博士」の予測は厳しい目の数字を出しておいて、現実にはそこまで悪化しなかった場合に、「トランプ大統領」による抑え込みが成功したと誇れるようにするといった政治的予測のようだ。
・『一方で経済的影響はどんどん数字となって現れてきています。3月最終週の失業保険申請は660万件、更に3月末の失業率は前月の3.5%から一気に4.4%に悪化しました。これはあくまで「雇用崩壊の始まり」に過ぎず、10%を越えるのは時間の問題と言われています。 政策としては、例えば外出禁止令の発動は各州権限となっており、現時点では全米の4分の3の州が発動していますが、例えば中西部のネブラスカ、オクラホマなどは実施に抵抗をしている状況です。一方で、私の住むニュージャージー州の場合は、ロックダウン(外出禁止)となってほぼ3週間が経過しました。 現時点では既に、事態の深刻度は911の同時多発テロや、2008年のリーマンショックを遥かに超えており、第二次世界大戦後の最大の危機という言い方が普通にされています。また、アメリカの場合は、医療崩壊を回避しながら、感染拡大をスローダウンさせること、同時に職を失った人や破綻に直面した企業をどう救済するかが日々のテーマとなっています。 従って、「11月の大統領選がどうなるのか?」とか、「経済を再起動する場合はどんな手順になり、どんな政策が採用されるのか?」といったようなテーマは、ほとんど議論になっていません。そのような余裕はないというのが正直なところです。とにかく、人々は、どうやって犠牲者を一人でも減らすのかということと、どうやって自分たちが生きていくのかという問題で必死です』、「11月の大統領選がどうなるのか?」まで考える余裕もないところに追い込まれているようだ。
・『アメリカがいかに異常事態かということですが、例えば、地上波のTVでは、NYローカルでも全国中継のものでも、多くの特番が組まれています。そんな中で、苦闘するNYの医療従事者の声というのは、様々な形で紹介されているのですが、その中では「もう疲れました。怖くてたまりません」という看護師の叫びなども出てきています。 以前のアメリカであれば、こうした危機に際しては医療従事者は神格化され、アメリカ人の好きな「ドタンバの馬鹿力」とか「未経験ゾーンにおける臨機応変なアドリブ危機管理」などが美談として語られて「団結して頑張ろう」というストーリーで押し通すのが通例だったように思います。ですが、現在NYで進行している事態というのは、美談で対応可能なレベルを超えているわけです。 軍も異常事態と言えます。例えば、太平洋を航行中であった海軍の原子力空母USSセオドア・ルーズベルトでは、艦内で新型コロナウイルスの感染が拡大してしまいました。5000名近い将兵の中で、100名を越える感染者が出た中で、ブレット・クロージャー艦長は、国防総省に宛てて「乗員を救って欲しい」という「SOSレター」を発したのでした。 このレターに対して、海軍の上層部の動きが鈍かったために、艦長は守秘義務規定では本来禁じられている民間人へのレターの公開を行ったようで、レターの内容をサンフランシスコの新聞が暴露する事態となりました。海軍上層部は激怒して、艦長は即刻権限を剥奪されるとともに海軍を解雇されました。 ところが、これに対して当該艦の水兵たちは、自分たちを救うために手段を選ばなかったクロージャー艦長を強く支持。事態を重く見た海軍は、同艦長の解雇を撤回して、事実関係が明らかとなるまで艦長の指揮権を復活させたようです。この問題では、グアムへ寄港が許可された当該艦を離れて一旦上陸する艦長に対して、千人近い水兵が称賛のコールをする映像までが全国ニュースに流れてしまいました。 この問題ですが、海軍の上層部には、トランプ大統領の介入による人事の混乱が続いていたという背景が指摘できます。ですから異常事態というのは、トランプ現象の延長で発生したという見方も可能です。そうではあるのですが、アメリカ海軍でこれほど大規模な指揮系統の混乱が顕著な形で発生したというのは、極めて異常だと思います』、「アメリカ海軍でこれほど大規模な指揮系統の混乱が顕著な形で発生」、確かに安全保障の基盤まで揺らぐとは、異常だ。
・『異常ということでは、大統領選も異常事態となっています。投票日まで7ヶ月となりましたが、選挙のことはほとんど話題にならなくなりました。大統領は毎日夕刻の定例会見でも、コロナ対策にかかりっきりです。 民主党のバイデン候補は、当初は毎日「シャドー・ガバメント」として「トランプに対抗してコロナ政策を出す」と言っていたのですが、目立った動きはありません。 最新の動きとしては、トランプ政権が実施しようとしている2兆ドル(日本円換算で、総額220兆円)の経済対策について、「より効果的で公正な運用を」というチェックリストを公開しています。ですが、内容は悪い意味で実務的で、発想力に乏しく「政権を奪う」迫力には欠けています。 そんな中で、数字には余り出てきていませんが、バーニー・サンダース候補の存在がある種、不気味です。歴史上始まって以来という急速なスピードで雇用が失われ、しかも医療サービスが人々に切実な時期に、雇用とともに医療保険も失う、そうした混乱に陥った人々が、ここ2週間だけで全米で1000万人いるわけです。 3月までのサンダース氏の政策については、格差是正のターゲットとして、どうして国民皆保険なのか、民間の医療保険に公的助成を加えたオバマケアでは、どうしていけないのか、多くの中道派の有権者は違和感を抱いて来ていました。 ですが、今回の事態というのは格差と医療という2つの問題が、見事に一体化したダブル危機であるわけで、そうなると同氏や民主党左派の存在感は、見えないところで高まっていることが想定されます。 そう言えば、今回の経済対策について、サンダース候補の弟子であるアレクサンドリア・オカシオコルテス議員(AOC)は、火のような激しい口調で「この法案では格差の再生産を生むだけだ」と批判していました。また彼女の選挙区である、ニューヨークのクイーンズ区は、今回のコロナ危機における「ホットゾーン」だと言われ、医療崩壊、コミュニティの危機に直面している中で、AOCはワシントンから必死の活動を行っています。 そうした動きと比較しますと、バイデン候補の支持者というのは、どちらかと言えば「リモート勤務で雇用は安泰」という層を多く含んでいるわけで、そうなると民主党内の候補の一本化は改めて難航するかもしれません』、「急速なスピードで雇用が失われ、しかも医療サービスが人々に切実な時期に、雇用とともに医療保険も失う、そうした混乱に陥った人々が、ここ2週間だけで全米で1000万人いる」、確かに深刻な事態で、「バイデン候補」では対応できないだろう。。
・『今回の経済危機は、最悪の場合は大恐慌に匹敵する可能性も否定できません。にも関わらず、株式市場は実体経済の崩壊とは別の部分でのマネーゲームに陥っています。 暴落せよとは言いませんが、ロシアとサウジの原油増産ストップ合意を材料に大きく上げたり、経済の実態とは乖離が大きいわけで、そうした空虚な動きが続くようですと、「資本主義の枠組みでの経済の再起動」が本当にできるのかが、危ぶまれるとも言えます。 そうした混乱状態を見ていますと、アメリカより社会の規模が小さいとはいえ、「クラスター対策」を柱に感染の抑え込みを続けて持ちこたえている日本、そして、 仮に感染を早期に抑えた場合は、当面はワクチンの登場までは免疫力がないので鎖国を覚悟しながら、その時点での国内の需要喚起策を今から考えている日本というのは、はるかに筋が通っているように思われます。 日本ということでは、日本では当たり前になっていた「非感染者のマスク着用」について、アメリカは今日付で本格的な路線変更を行いました。トランプ大統領は、その会見の中でアダムス公衆衛生局長官に丁寧な説明をさせていました。アダムス長官は「無発症者による感染が危惧される中では全員が公共空間でマスクをすべき」だという方針転換を行うとして「それは私を守り、あなたを守る」と国民に語りかけていました。 アメリカの場合は、日本のように「クラスター追跡」を行う余裕は全くなく、その段階はとっくに過ぎてしまっています。ですが、このマスク問題を含めて、手洗い、衛生管理など、日本がアメリカに教えるべき問題は沢山あるように思います。 例えば、「3つの密」が重なる空間の危険性というのは、日本におけるクラスター解析の中から発見されたもので、その背景には「エアロゾル(マイクロ飛沫)」の問題があるわけです。ですが、アメリカの場合は「どうやらクシャミと咳だけでなく、至近距離での会話も危ないらしい」というのは、今日、4月3日になって初めて報道され始めた感じです。こうした点も遅れています。 話を経済に戻しますと、絶好調から最悪の状況へと急転落しつつあるアメリカ経済の状況に関しては、マスクや「3つの密」のように日本の事例を参考にしてもらうことは不可能です。 但し、日本の場合は、仮に早期の収束が可能となった場合に、その頃には再起動が進んでいるかもしれない中国経済と上手に連携することで、何とか経済の落ち込みを緩和してゆくことは可能かもしれません。また、その場合に、欧米の混乱が長期化した場合には、円高を覚悟する事態もあるかもしれず、そのデメリットを最小化しつつ、そのメリットを活かす政策を考えておく必要があるようにも思います。 いずれにしても、アメリカの混乱は更に今月1ヶ月をかけて更に悪化を覚悟しなくてはならないように思います』、「日本」については楽観的過ぎる印象があるが、「アメリカの混乱は更に今月1ヶ月をかけて更に悪化を覚悟しなくてはならない」、まだまだのようだ。

次に、国際医療福祉大学大学院教授で精神科医の和田 秀樹氏が4月3日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない 死亡原因は「重い肺炎」だけではない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/34283
・『新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出自粛の呼びかけが広がっている。精神科医の和田秀樹氏は「そうした見解は、政府の専門家会議を根拠にしているが、メンバーのほとんどが感染症の専門家で、他分野の声が届きづらい。感染拡大防止だけを目的にすると、経済苦による自殺などを見落としてしまう。もう少し冷静な対応が必要ではないか」という——』、興味深い指摘だ。
・『コロナ対策を指揮する安倍首相を感染症専門家の「言いなり」か  新型コロナウイルスにまつわるパニックのような状態が世界中に広がっている。 現状、日本は欧州などに比べれば感染者数も死者数も少ない。その意味で、政府や国民の「慌て方」はいかがなものかと前回の記事で述べた。感染爆発するかどうかの重大局面であることは承知しているが、やはりもう少し冷静な対応が必要ではないか。 安倍政権の対応を見ていて、もう1点、首をかしげたくなることがある。それは特定分野の専門家の意見に従いすぎていないかということだ。 現在、政府が国民に休校や自粛を呼びかける際に、おおむね新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言に従っていると言っていいだろう。座長の脇田隆字氏は国立感染症研究所の所長、副座長の尾身茂氏は世界保健機関(WHO)の感染症対策部長を歴任した感染症の大御所だ。そのほか、日本医師会の常任理事や大学の呼吸器内科の教授、弁護士なども入っているが、ほとんどが感染症の専門家である。 彼らが担当することに異論があるというわけではない。ただ注意が必要なのは、「医学」においてはある専門分野の人が勧める治療などが、ほかの医療の専門分野については逆効果となることが少なくないということだ』、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」のメンバーの「ほとんどが感染症の専門家」という偏りは確かに問題なのかも知れない。
・『感染症の専門家の意見だけを聞いていればいいのか  新型コロナから話はそれるが、たとえば、「善玉・悪玉コレステロール」だ。あまり正しく認知されていないが、これは体にとって善玉か悪玉かという分類ではない。動脈硬化の研究者や循環器内科の医師にとっての善玉・悪玉ということである。要するに善玉コレステロールの値が高ければ動脈硬化になりにくく、悪玉コレステロールの値が高いと動脈硬化になりやすい。 しかし、同じ医学であっても、循環器系とは異なるジャンルの免疫学者に言わせるとコレステロール値が高い人ほど免疫機能が高いということになる。つまり、がんや感染症になりにくくなる。新型コロナについても該当する可能性がある。おまけに皮肉なのは、悪玉と言われているコレステロールのほうがむしろ免疫機能を高めるとされていることだ。 ホルモン医学の世界では、コレステロールがさまざまなホルモンの材料になるとされている。特に男性ホルモンをつくる主な材料は悪玉コレステロールである。男性ホルモンの値が低下すると性欲や意欲が低下するだけでなく、筋肉がつきにくくなり、記憶力も落ち、また人付き合いもおっくうになることが知られている。薬でコレステロール値を下げるとED(勃起障害)になるというのもよく聞く話だ。つまり、悪玉を含むコレステロールが少ないとさまざまな弊害が起こるのだ』、私も「悪玉コレステロール」値が高いが、かつてに比べると、医者も余り煩く注意しなくなったようだが、その理由が分かった気がする。
・『ある分野の「常識」は別の分野の「非常識」  わたしの守備範囲である精神科の領域でもコレステロール値が高いほうがうつ病になりにくいことが知られている。これも悪玉のほうがいいとされている。ついでにいうと、コレステロール値はやや高めの人が、いちばん死亡率が低いこともわかっている。 要するに、善玉コレステロール、悪玉コレステロールというのは動脈硬化についてのみ通じる話で、身体全体について言える話でない。にもかかわらず、コレステロールについて論じられる際に、ほとんどが循環器内科や動脈硬化の専門家の意見ばかりが取り上げられ、コレステロールが多いのはよくない、悪玉は特によくないという考え方が定着してしまった。 これと似たようなことが今回の新型コロナ騒動でも起こっているのではないだろうか』、「ある分野の「常識」は別の分野の「非常識」」、とは言い得て妙だ。
・『外出自粛の自宅閉じこもりでセロトニン値低下→うつ病リスク  人々の行動を規制するためのガイドラインを考えるための専門家会議であるはずなのに、心理的悪影響を検討する心理学者や精神科医も入っていない。また、症状を軽くすませるための方法論を検討したり、どういうふうに免疫力がつくのかを考察したりする免疫学者も入っていない。こういう形で、人々の行動指針を決めていいのかというのが医師としてのわたしの素朴な疑問である。 テレビ番組に出演するコメンテーターやゲスト解説者もほとんどが感染症学者で、どうやって感染を防ぐかという話に終始している。その結果、街を出歩く若者を断罪するような風潮が形成されている。感染爆発するかどうかの鍵は若い世代であることは知っている。だが、前回記事でも書いたように、人々が家に長期間閉じこもることによる精神医学的・免疫学的な悪影響がほとんど語られないのはおかしい。 ここにきて週刊誌などでは、これまでと異なる視点でコロナ騒動にアプローチする動きが出てきた。たとえば『週刊女性』(4月7日号)には「次はコロナうつが襲ってくる」という見出しの記事があった。これも不安を煽あおるものと言えなくもないが、「心理的な悪影響」を完全に無視するよりは良心的だと私は考える(同号では、免疫学者にインタビューして免疫力を高める方法も紹介していた)。『週刊ポスト』(4月3日号)では「このままでは感染死の10倍の自殺者が出るぞ」というセンセーショナルな見出しが出ていた。 「10倍」という数字はともかく、過度な外出自粛の精神面での悪影響や日光を浴びないことでのセロトニン値の低下を考えると、うつ病のリスクが高まるのは間違いない』、「過度な外出自粛の精神面での悪影響や日光を浴びないことでのセロトニン値の低下を考えると、うつ病のリスクが高まるのは間違いない」、重要な副作用の指摘だ。一般のマスコミも、大本営発表だけでなく、こうした見方も取上げるべきだろう。
・『「コロナ関連死」が8000人でも何も不思議はない  わたしは先日、医師のかたわらに長年手がけている教育事業の売り上げがコロナ騒動の影響で激減したため緊急融資を申し込んだが、過去3年分の決算をみて審査するという返答だった。政府が金融機関に無審査融資を促していないということだが、まるで業績が悪い会社は売り上げが落ちたらそのまま潰れろというような物言いで不快だった。実際、私のところには融資しないという結論がきた。今の売り上げは下がっているのは認めるが、過去の業績が悪いということが理由だった。結局のところ、政府は大企業のフォローは手厚いが、中小には冷たい。 もし、実際にここ数年、業績不振の会社がコロナ騒動で倒産の危機に陥っている中小企業があるとすれば、その経営者の不安は計り知れない。売上激減・景気低迷に加え、資金繰りの不安が強くなることとで、うつ病となり、それが自殺の大きな要因になることは十分に考えられる。 景気が比較的よいとされる昨年までのデータ(内閣府と警察庁調べ)の推移をみると「経済・生活問題で自殺する人」は例年4000人前後おり、多い年には人8000以上になっている。おどすわけではないが、2020年に8000人に近い数の自殺者が出ても不思議でないのではないか。それは「コロナ関連死」といってもいい。 つまり、前出の週刊誌が書いていたように、もしコロナ感染死が数十人レベルでとどまるなら「10倍の自殺者」というのは決して大げさな話ではない。 感染者を減らすことはもちろん重要なミッションである。だが、それと同時に重視すべきは死者を減らすことだろう。死亡原因は、感染して重い肺炎になることだけではない。そのことを、政府はもっと配慮すべきだ』、その通りだ。
・『「専門バカ」体質の蔓延が日本をダメにする  日本には「専門バカ」ということばがある。 辞書には「ある限られた分野の事柄には精通しているが、それ以外の知識や社会的常識が欠けていること。また、その人」と解説されている。わたしはもっと広い意味で、自分の専門分野での常識がすべて正しいと思い、ほかの分野のことを考慮しないことというような意味としてこのことばをとらえている。 日本では、このように感染症に限らず、経済的な問題でも、教育の分野でも、専門家に任せればいいという考えが蔓延している。しかし、他分野の人の意見や素朴な疑問をぶつけたほうが有意義なことも多いはずだ。 経済政策の審議会で、わたしに限らず心理学者が呼ばれるという話は聞いたことはない。あるいは、テレビのさまざまな討論番組で、わたしが専門と思われている教育や老年医療の分野で呼ばれることはあっても、不況回復のようなメンタルの要因が強いと思われる分野でも、呼ばれたことは一度もない。 いっぽう、海外では、たとえば経済の分野で心理学を取り入れるということがトレンドになっている。 心理学を取り入れた経済学の理論である行動経済学は21世紀になってから3回もノーベル賞を受賞しているし、その開祖の一人のダニエル・カーネマンはプリンストン大学の心理学の教授の肩書でノーベル経済学賞を受賞している』、「「専門バカ」体質の蔓延が日本をダメにする」、との主張は説得的で、全面的に同意する。
・『新型コロナ対策に免疫学者や呼吸器内科学者、精神医学者もいていい  複数の専門分野の研究者が共同して研究にあたる学際的研究というのも、各学部のセクショナリズムが強い日本ではなかなか進まない。医学部にいたっては、医学を専門とする人同士であっても、専門分野が違う人の共同研究というのはほとんど聞かない。 今回の新型コロナのケースでいえば、免疫学者と感染症学者と呼吸器内科学者と精神医学者というのが共同で研究して、患者の治療や精神的後遺症の予防も含めた総合的な対策を立てるという話は聞いたことがない。 わたしの経験上、専門分野での地位が高いほど、自分の専門分野に関しては、他分野の人の話を聞こうとしなくなる。ビジネスエグゼクティブの人たちも、成功者ほど、自分の分野には口を挟まれたくないだろう。 知らないうちに「専門バカ」体質になっていないかの自己チェックは、賢い人をバカにしないために重要なものだと信じる』、最近は医学分野でも、「総合診療科」が出来て、他の診療科と協力して治療に当たっているようだ。「「専門バカ」体質」を乗り越える1つの試みとして注目したい。

第三に、4月7日付け文春オンライン「「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/37088
・『「緊急事態 7都府県…首相『1か月程度』 きょうにも宣言」(読売新聞) 緊急事態宣言、なぜ「今」だったのか。本日の新聞各紙を読んでみた。 「経済政策がまとまったから、宣言を出すということだ」  これまで首相が宣言に慎重だったのは国内経済に与える影響を懸念したためと各紙書いていた。しかし感染経路が不明の患者が増加したことに加え、専門家や首長らの不満が広がって発令せざるを得なくなった(毎日新聞)。その見出しは「外堀埋まった政権」であった。 与党内からも「出すのが遅い」(自民若手議員・朝日)と対応の遅れが出ていることもあってか、「経済政策がまとまったから、宣言を出すということだ」(自民党関係者) 「ただ宣言すればいいのではなく、ちゃんとした経済対策を練り上げる時間が必要だった」(首相周辺) という“解説”も毎日新聞には載っていた。私はてっきり宣言に慎重なのは私権制限の論議が起きているからなのかと思ったが、各紙を読むと経済中心だった』、「ちゃんとした経済対策を練り上げる時間が必要だった」、なるほど。
・『小池都知事の「ロックダウン」強調に官邸は「迷惑だ」  見逃せないのは、小池百合子都知事の「影響」である。 首相は 「日本では緊急事態宣言を出しても、海外のような都市の封鎖を行うことはしないし、そのようなことをする必要もない」(6日)と述べた。 その背景には、都知事が3月23日の会見でロックダウンを強調したことが「首相らを困惑させた」という(朝日)。「緊急事態宣言」と「ロックダウン」を同一視する見方が広がり、スーパーなどで買い占めが起きたからだ。 《こうした事態に、官邸からは「迷惑だ」(首相周辺)との声が上がり、政府関係者は「『ロックダウン』のイメージを払拭しなければ、パニックが起きる。経済へのダメージも計り知れない」と懸念を口にした。》(朝日)』、「小池都知事」が突然、横文字を振りかざして喜々として騒ぎ出したのには、強い違和感を感じた。
・『小池都知事はなぜ急に騒ぎ出した?  迷惑と言われた都知事のあの発言。それにしても小池都知事は急に騒ぎ出した気がする。その印象は私だけではないようで3月27日の毎日社説は、 ・そもそも、都の対応はこれまで出遅れていた。 ・他の都市部のようにトップが強いメッセージを発する場面は乏しかった。姿勢が変わったのは、東京五輪延期の流れが強まった時期とも重なる。 ・3連休には、都内の花見の名所に多くの客が訪れていた。本来であれば、もっと早く注意喚起すべきだった。 と指摘している。東京で感染者が増えているのは3連休の結果が出ていることを考えれば同感だ。 つまり、小池都知事は自らの出遅れを取り戻すために強い言葉を発しているように見える。「おい、小池」とはこのことである』、「東京五輪延期の流れが強まった」ので、これまで封印してきた「強い言葉を発している」、筋が通った説明だ。
・『“布マスク2枚配布”に安倍推しの「夕刊フジ」が激おこ  こうして緊急事態宣言は出されることになったが、新聞読み比べ的にはすでに先週の時点で「緊急事態」だった。例の布マスク2枚配布の件。 4月2日発行の「夕刊フジ」は一面で「マスク2枚ふざけるな!!」と激おこ。「日刊ゲンダイ」と間違えた人が多数! ※タブロイド紙は安倍推しの夕刊フジ、安倍批判の日刊ゲンダイという売りがある。 ツイッターの「日刊ゲンダイ ニュース記者」のアカウントは「まるでウチみたい…きょうの夕刊フジさんの一面が日刊ゲンダイ化していて、ビックリしました。」とつぶやいた。 まるでウチみたい…きょうの夕刊フジさんの一面が日刊ゲンダイ化していて、ビックリしました。 ますます、本紙の真価が問われます。#アベノマスク 「日刊ゲンダイ ニュース記者」より するとその2時間半後に「こちら夕刊フジ編集局」のアカウントが「日刊ゲンダイさん、ありがとうございます! お互いコロナに負けず、頑張りましょう。お手柔らかに。」と返した。 こちら夕刊フジ編集局 日刊ゲンダイさん、ありがとうございます! お互いコロナに負けず、頑張りましょう。お手柔らかに・・・ 日刊ゲンダイ ニュース記者・・・ まるでウチみたい…きょうの夕刊フジさんの一面が日刊ゲンダイ化していて、ビックリしました。 ますます、本紙の真価が問われます。#アベノマスク・・・「こちら夕刊フジ編集局」より なんだこの緊急事態は。200億円かけて布マスク2枚配布という「対策」の衝撃の大きさがわかる』、「“布マスク2枚配布”に安倍推しの「夕刊フジ」」もさすがに批判し、「日刊ゲンダイ」とエールを送り合ったようだ。
・『「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」  一般紙でも緊急事態だった。産経新聞の一面コラム「産経抄」(4月3日)は、 《政府の発表には耳を疑った。(略)優先すべき政策は山のようにある。首相の決断を押しとどめるブレーンはいなかったのか。》 と驚き、呆れた。あの産経師匠が! 産経の「ブレーンはいなかったのか」は大きなポイントだった。というのも、《「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」。首相にそう発案したのは、経済官庁出身の官邸官僚だった。》という内幕記事が出てきたからだ(朝日新聞4月3日)。 ブレーンが止めるどころか「不安はパッと消えますから」。今年の流行語大賞候補である。 読売新聞は3週間ほど前にこんな「答え」をすでに書いていた。 「『知恵袋』は腹心2人、首相がトップダウンの決断繰り返す…菅長官との間にすきま風」(読売新聞オンライン3月15日) この記事には《首相が今、政治決断を下す際に知恵袋として頼りとするのが、今井尚哉首相補佐官と北村滋国家安全保障局長だ。》とあり、 ・一斉休校の科学的根拠を専門家には諮問せず、検討は今井氏に委ねた。 ・3月5日に首相が表明した中国・韓国からの入国制限強化は今井氏に加え、北村氏が調整を切り盛りした。 ・今井、北村両氏が下支えする「首相主導」の政治決断には根回し不足も目立ち、省庁とのあつれきが生じている。 と具体的に書いていた』、「ブレーンが止めるどころか「不安はパッと消えますから」」、これでは海外マスコミから批判されるのも当然である。
・『布マスク2枚問題で「今の政権内の意思決定」が見えた  「経済産業省出身の今井氏と警察庁出身の北村氏」とあるので、今回布マスク配布を発案した「経済官庁出身の官邸官僚」は今井氏のことではないだろうか。 さらにこの読売の記事の読みどころは、首相は「令和おじさん」として注目を浴びた菅官房長官に距離を置きはじめ、そのため今井&北村氏が、《官邸内で重みを増したのは、昨年9月だ。今井氏は政策全般を担当する首相補佐官の兼務となり、北村氏は外交・安全保障政策の司令塔となる国家安保局長に昇格し、前面に出やすい立場となった。》 とある。布マスク2枚問題はその是非とは別に「今の政権内の意思決定」が見えた案件だったことがわかる。 ではその意思決定はどのように判断されているのか。ここであらためて注目したい記事がある。 「ネット上に批判、政府二転三転 前例なき対応、首相見切り発車」(朝日新聞2月19日) 1月末の武漢へのチャーター機派遣を検証した記事だが、こんな気になる「証言」がある。 《「ネットでこう批判されているぞ」「テレビの全チャンネルで言われている」――こんな官邸幹部の反応が、政府の新型肺炎への対応に影響していると官邸関係者は証言する。》 首相官邸がSNSに力を入れているのはこれまでも言われてきたが、今回のコロナ対策では別の意味でネットを気にしていたのだ。 つまりブレーンの判断の「源」が、政策論よりネットの反応が大という可能性すら考えられる。支持率重視という姿勢が。 しかし布マスク2枚はネットでもウケなかった。マスク不足のサプライズとして発表したのだろうけどスベった。 なら、ここから見えることは一連のコロナ対応の「意思決定」の過程や可視化はやっぱり大事だということだ』、「一連のコロナ対応の「意思決定」の過程や可視化はやっぱり大事だ」、その通りだ。
・『謎の2020年にしてはいけない  政府の対応を「一生懸命やっているのだから」という人もいる。しかしこれは警戒したい論理だ。 たとえば、 「新型コロナ『歴史的緊急事態』で記録は消されるのか 見え隠れする『桜』の手法」(毎日新聞WEB3月22日)という記事はコロナ対応で、安倍政権が「記録」と「議事録」を巧妙に使い分けていると指摘している。 意思決定のプロセスがあいまいだと、同じような状況を迎えた後世の人々が参考にしづらい。 あのとき誰が決めたのか、なぜそういう判断をしたのか、何か説明されていないものはないか。 謎の2020年にしてはいけない。未来の日本人に迷惑をかけることになる』、最近の「毎日新聞」の安部批判は頼もしいが、朝日新聞は一体どうしたのだろう。

第四に、総務省出身で室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏が4月8日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「108兆円規模のコロナ緊急経済対策が「看板に偽りあり」といえる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/234065
・『4月7日、政府は緊急経済対策をまとめ、発表した。事業規模は108兆円という。しかし、よくよく見れば、まさに「看板に偽りあり」で、危機感の欠片もない内容だ。そこで、元官僚でもある筆者が解説する。 緊急経済対策は「看板に偽りあり」  令和元年度の年度末の3月31日、自民党の政務調査会が新型コロナウイルスの感染拡大による経済的危機への経済対策の提言をまとめ、安倍総理に提出した。その名も「緊急経済対策第三弾への提言〜未曾有の国難から「命を守り、生活を守る」ために〜」(以下、「対策提言」という)。 いつの間に第三弾だったのか――というのはさておき、仰々しく、御大層な題名からすると、それに見合った内容、「未曾有の国難」に対処するに十分な施策が詰まっているのかと思いきや、結論から言えば、題名とは程遠い、本当に「未曾有の国難」と考えているのかと疑いたくなる、危機感の欠片もないようなもの。 まさに「看板に偽りあり」であるが、その危機感の欠如した様は、別の見方をすれば失笑を禁じ得ず、まるでお笑い芸人のネタ帳か何かのようだ。 加えて言えば、損害の実態、その裾野がどれくらい広いのかなどについて、的確に把握できていないであろうことが容易に推測できる内容と構成である。 そして、4月7日、この対策提言を受けて、政府は緊急経済対策を取りまとめ、決定した(本稿執筆時点ではその正式名称は未定であるが、また党の対策提言に輪をかけた仰々しい名称になるであろうことは容易に想像がつくが)。 事業規模108兆円に対して政府の財政支出は39兆円(このうち、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費」として位置付けられた経費は、なんと16兆円強)と、こちらもその金額からしても「看板に偽りあり」であり、かなり底上げしてあるコップで提供される生ビールのようなものであり、まさに「見かけ倒れ」である。 なぜそのように見かけ倒れなのかについては、やはり永田町、霞が関に蔓延する“緊縮脳・増税脳”によるところが大きいと考えられるが、本稿ではまず、この見かけ倒れ緊急経済対策の下地になった「基本的な考え方」において通底する自民党の対策提言について、それがいかに実態から乖離した、ある種滑稽なものであるかについて考察することとしたい。 ちなみに、緊急経済対策については、話題となった「Go To キャンペーン(仮称)」に代表されるように、端的に言ってヒドイ内容であるし、未執行の政策をシラっと入れ込んで膨らませているのではないかと思われるもの、特定事業者の利益のためなのではないかと疑いたくなるようなものまで含まれている。これについては別稿で分析することとしたい』、「危機感の欠片もない・・・「看板に偽りあり」・・・その危機感の欠如した様は、別の見方をすれば失笑を禁じ得ず、まるでお笑い芸人のネタ帳か何かのようだ」、極めて手厳しい批判だ。
・『お粗末感が拭えない 事業者の資金繰り対策や家計への支援  さて、この対策提言、事業規模は60兆円とされ、「極めて大規模」だと喧伝されているが、これは事業規模であって実際の政府による財政支出、いわゆる「真水」と言われる部分はその半分にも満たない20兆円に過ぎない。 それで「未曾有の国難」なるものに対処できると本気で考えているのだろうか。耳と目を疑う。 この規模の記載と併せて、「日々刻々と変化する内外の経済情勢を踏まえ、対策の規模について、財源にとらわれることなく更なる積み上げを図ること」とされているが、リップサービスの類だろう(むろん、今後の更なる補正予算の編成について含みを残しているということなのだが、残念ながら規模感には期待は持てまい)。 また、この対策提言の日程感、なんと東京オリンピックが1年延期されたことを受けて、来年のオリンピック開催に向けて、「感染拡大抑制期」「反転攻勢期」「中長期」などと組まれている。つまり、来年のオリンピックまでにはなんとかするということなのだろうが、新型コロナウイルスの感染は世界的に拡大の一途をたどっており、終息する兆しは全く見えない。 加えて、「新型コロナショック」と評される経済社会への影響についても、それ以前からの世界的な景気後退と相まって目下拡大中であり、これに一部専門家の間で懸念されている複数の国・地域でのバブル崩壊が合わされば、「第2次世界恐慌」に至る可能性さえある(既に恐慌に突入しているとの見解すらある)。 そうした中で、1年強で感染拡大抑止に反転攻勢とは、なんと楽観的でお気楽なことか。 しかも、感染拡大抑制期について、そのための医療・検疫体制の整備を進めるべしとするのは異論を挟む余地はないだろうし、大いにやっていただきたいと思うが、事業者の資金繰り対策や家計への支援となるとお粗末感は拭えない』、「「真水」と言われる部分はその半分にも満たない20兆円に過ぎない」、それを財政投融資や官民金融機関による融資などで膨らまして、「事業規模は60兆円」にしたに過ぎない。なお、7日に発表された「事業規模は」さらに108兆円にまで膨らんだようだ。。
・『今一番大事なのは、事業を継続できるようにすること  企業の資金繰り対策については、基本的に融資という考え方であり、利子補給に信用保証、民間金融機関から政府系金融機関への借り換えと、困窮する事業者の負担を根本的に軽減するものにはなっていない。融資は借金であり、負担増にしかならない。 雇用調整助成金にしても、あくまでも企業で働くいわゆる給与所得者向けのものであり、支給限度日数の延長や助成率の引上げ等を行うべしとしているが、100%の給与補償ではないし、一時凌ぎにしかならないだろう。 いや一時凌ぎでもないよりはマシなのかもしれないが、本気で支援し、雇用を確保し、所得を補償するつもりがあるのであれば、事業者の失われた粗利の100%補償を行うべきであろう。事業者の粗利には従業員の給与も含まれるから、雇用を守るとともに給与も補償することができる(むろん、粗利の補償に当たっては、そのうち従業員の給与相当分については、必ず従業員に支払うことを条件とする必要はあるが)。 加えて、わが国の貧困化が止まらない中、低賃金で働き、住まいがなく、ネットカフェ等で寝泊りする、いわゆる「ネットカフェ難民」については、当然住所というものがなく、銀行口座も作ることができないので、金額や支給範囲が取り沙汰されている給付金も受給することができない。 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、過剰ともいえる自粛ムードが世を覆いっているところ、事業が継続できなくなって廃業する事業者や、止むを得ず従業員を解雇せざるをえない事業者も出てきている。 今一番大事なのは、雇用を継続できるようにするために事業を継続できるようにすることであり、その場凌ぎの給付金や支援の名を借りた借金ではないはずである(事業者にとっても、時間をかけて育成し、仕事を覚えてもらった従業員を、資金繰りの問題で解雇せざるを得ないというのは大きな痛手であり、新たに雇用するのは大きなコストである)。 しかし、「通常時なら十分に事業継続が可能な事業者を支えるとの観点から」との記載があることからも明らかなように、「あらゆる事業者を支援しよう」という気は最初からないようだ。 またこうした給付金等の支援に関して、「消費税5%減税分(国分)に相当する約10兆円を上回る給付措置を、現金給付・助成金支給を中心に、クーポン・ポイント発行等も組み合せ、全体として実現すること」と、対策の基本的な考え方の一つとして記載されている』、「事業者」「支援」を実務的にどうやっていくのかは極めて難しい課題だ。
・『消費税率の引き下げは絶対に行いたくないということ  なんとなく消費税を税率10%から5%に引き下げるような対策してくれるかのように見えるが、当然のことながらそんなことはない(なお、この事項に関する記載は、政府の緊急経済対策からはなくなっている。念のため指摘しておく)。 その心は、 第一に、消費税率の引き下げは絶対に行いたくないということ。だからこそ「消費税5%減税分に相当」なのである。 第二に、現金は出したくないとうこと。「~を中心に」と書かれるとなんとなく現金や助成金が大部分を占めるように見えるが、その配分は書かれていない。額の多寡に関わらず「中心」と位置付ければいいわけであって、現金給付等がポイントやクーポンに係る予算よりも多額になるとは限らない(というかおそらくそうならない)。 第三に、ポイントをインセンティブにしてキャッシュレス決済インフラを普及させたいということ。消費税増税キャッシュレスポイント還元が単なる愚策であり、キャッシュレス決済インフラの普及は、特に中小零細事業者にとっては負担にしかならないことについては、拙稿『消費税増税のポイント還元は「どうしようもない愚策」と断言できる理由』で解説しているので、ここでは詳しくは書かないが、要するに、「新型コロナショック」という惨事に便乗し、ドサクサに紛れてキャッシュレス決済インフラ事業者のビジネスを伸長させよう、ということであろう(しかも、どうやら世耕前経産大臣はこのことが日本経済にとっていいことだと本気で信じているようなので、タチが悪い)』、「「新型コロナショック」という惨事に便乗し、ドサクサに紛れてキャッシュレス決済インフラ事業者のビジネスを伸長させよう」、本当に「タチが悪い」。
・『「危機感の徹底した欠如の表れ」としか言いようがない  外出、外食を自粛しようが、在宅勤務になろうがどうしようが、人は食べていかなければ生きていくことはできないし、生活必需品は使うことになるから、当然それらの物資を購入しなければならない。 自粛したからといって、在宅勤務になったからといって、消費が完全に止まるわけではない。そして消費には、食糧や生活必需品の購入には消費税がかかる。 収入が減って、場合によってはなくなって、一時凌ぎの助成金や給付金はあったとしても、家計が苦しくなっている中で、さらに消費税とは二重苦である。 しかし、消費税を減税すれば、その分負担が軽くなるばかりか、これまで消費税として支払っていたお金が手元に残ることになるので、別の支出に回すことが可能となる。 従って、本来必要不可欠なのは、減税に相当する給付措置ではなく、消費税減税のはずなのであるが、この対策の検討に引き続き行われた自民党税制調査会では、消費税減税は一蹴されたようだ。 「国難」にあっても、国民に重くのしかかる消費税を減税しないとは、本当に「命を守り、生活を守る」気はあるのだろうか? そして、目前の状況への対応、しかも大規模な対策を考え、実施していかなければならない時に、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、新型コロナショックも落ち着き、出口が見えた段階の施策を考えるという、極めて楽観的な反転攻勢期。 そこに列挙された施策には呆れ返る。 マイナポイントにキャッスレスの推進・拡充、旅行代金の割引助成、商店街活性化事業に観光・消費の国民的キャンペーンだそうな。 安心して旅行に行ったり飲食店に行ったりできるようにするためには、現状で不自由なく生活できていること、休業しても、それがある程度の期間になっても、休業の必要がなくなったらそれ以前と同様に営業が再開できること、従前同様に働いて給料を稼げることである。 つまり、休業補償、粗利の補償であり、それなしに、不確実な未来の話を希望的観測に基づいて考えても意味がない。「危機感の徹底した欠如の表れ」としか言いようがない』、「新型コロナショックも落ち着き、出口が見えた段階の施策を考えるという、極めて楽観的な反転攻勢期」、などを夢想するとは、確かに「危機感の徹底した欠如の表れ」だ。
・『国民や国民経済の窮状など全く考えていない 「愚策中の愚策」である  さらに、その反転攻勢期の先に、「新たな経済社会を見据えた対応」と称して、以下のような施策を促進するとしているが、「新型コロナショック」への対応とは全く関係がない。 ・企業および地方自治体における在宅勤務、テレワークの導入を促進するための取組みを推進すること。 ・一人一台端末の前倒し整備、学習データ基盤の検討、遠隔教育による家庭 学習環境の整備、遠隔教育に不可欠な著作物利用の円滑化等、GIGAスクール構想を加速・拡充すること。 ・遠隔医療・遠隔薬剤処方等を促進するとともに、SNSやPHR(パーソナルヘルスレコード)の活用等を進めること。 ・デジタルガバメントやキャッシュレス社会の実現、スマートシティの推進、その前提となる安心安全な5Gインフラの早期全国展開など、経済社会活動を可能な限りデジタル空間に移行する「デジタル遷都」に取り組むこと。 特定企業の利益増進のための単なる便乗商法に等しく、国民や国民経済の窮状など全く考えていない「愚策中の愚策」である。  加えて、これらが実現すれば、人件費を中心としたコスト削減が可能となり、国民は窮状に陥り、貧困化がさらに進む可能性が懸念される。 シラーっと、このような施策を入れるとは、ほとんど犯罪と同等レベルである。 各部会が取りまとめた個別の「経済対策に関する重点事項」には、さらに具体的かつ詳細な事項が記載されており、話題になった「お肉券」に関連する記述も、その言葉自体はなくなったが、これにつながる事項がしっかりと記載されている。今後政府の施策となった際にちゃっかり復活する可能性は十分ある。 いずれにせよ、今の与党はこの程度のことしか考えられない、国民、事業者の窮状などものともしていないことが、これで明らかとなったわけであるが、諦めたり、達観したりもしていられない。 やはり、先述のとおり、損失が出ている事業者の粗利の100%補償と消費税減税を実現すべきであり、それを強く求めていく必要がある』、「特定企業の利益増進のための単なる便乗商法に等しく、国民や国民経済の窮状など全く考えていない「愚策中の愚策」、手厳しいが、その通りだ。自民党も、官邸主導に慣れ切って、政策立案能力は劣化したのだろう。
・『真に必要である対策に向けた真摯な議論の活発化を期待  これについては、同じ自民党の良識派の議員たちによる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」が3月上旬の段階で次のような提言を行っており、安倍総裁以下、主要幹部に手交されている。 1.50兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行してそれに充てること。なお、2025年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。 2.被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対しては、失われた粗利を100%補償する施策を講ずること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できることは、有効な防疫対策にもなる。 3.消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして6月を目指し、各種調整を速やかに行うこと。 4.従来から存在するあらゆる制度も活用し、資金繰り支援等企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り組むこと。 5.国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再構築、特定国依存型のインバウンドの見直しなど、内需主導型の経済成長を促す政策を検討すること。 事業規模108兆円に対して国の支出である真水が39兆円に過ぎない、見かけ倒れの政府の緊急経済対策よりも、真水で50兆円と、真水の部分については多い「日本の未来を考える勉強会の」提言を、是非そっくりそのまま採用して、次の他段階、すなわち令和2年度第2次補正予算として編成・執行してほしいものである。 同勉強会でも、既に真水で100兆円規模の経済対策を講じるべしとの認識の下、検討が進められているとも聞く。 今回の政府の経済対策を踏み台、否、「反面教師」として、真に必要である対策に向けた真摯な議論が活発化することを期待したい』、「自民党の良識派の議員たちによる議員連盟」の方がよりましな感はあるが、総額を膨らますことにしか関心はない安部政権には、真剣に検討する気はなさそうだ。
タグ:謎の2020年にしてはいけない 一連のコロナ対応の「意思決定」の過程や可視化はやっぱり大事だ 布マスク2枚問題で「今の政権内の意思決定」が見えた 株式市場は実体経済の崩壊とは別の部分でのマネーゲームに陥っています 当該艦の水兵たちは、自分たちを救うために手段を選ばなかったクロージャー艦長を強く支持。事態を重く見た海軍は、同艦長の解雇を撤回して、事実関係が明らかとなるまで艦長の指揮権を復活させた 海軍上層部は激怒して、艦長は即刻権限を剥奪されるとともに海軍を解雇 マスク問題を含めて、手洗い、衛生管理など、日本がアメリカに教えるべき問題は沢山あるように思います 海軍の上層部には、トランプ大統領の介入による人事の混乱が続いていたという背景 投票日まで7ヶ月となりましたが、選挙のことはほとんど話題にならなくなりました 海軍の上層部の動きが鈍かったために、艦長は守秘義務規定では本来禁じられている民間人へのレターの公開を行ったようで、レターの内容をサンフランシスコの新聞が暴露する事態 急速なスピードで雇用が失われ、しかも医療サービスが人々に切実な時期に、雇用とともに医療保険も失う、そうした混乱に陥った人々が、ここ2週間だけで全米で1000万人いる 首相にそう発案したのは、経済官庁出身の官邸官僚 「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」 首相が今、政治決断を下す際に知恵袋として頼りとするのが、今井尚哉首相補佐官と北村滋国家安全保障局長だ 室伏謙一 ダイヤモンド・オンライン 「108兆円規模のコロナ緊急経済対策が「看板に偽りあり」といえる理由」 文春オンライン 循環器系とは異なるジャンルの免疫学者に言わせるとコレステロール値が高い人ほど免疫機能が高い その危機感の欠如した様は、別の見方をすれば失笑を禁じ得ず、まるでお笑い芸人のネタ帳か何かのようだ 「真水」と言われる部分はその半分にも満たない20兆円に過ぎない お粗末感が拭えない 事業者の資金繰り対策や家計への支援 「看板に偽りあり」 今一番大事なのは、事業を継続できるようにすること 「新型コロナショック」という惨事に便乗し、ドサクサに紛れてキャッシュレス決済インフラ事業者のビジネスを伸長させよう 消費税率の引き下げは絶対に行いたくないということ 真に必要である対策に向けた真摯な議論の活発化を期待 国民や国民経済の窮状など全く考えていない 「愚策中の愚策」である 「危機感の徹底した欠如の表れ」としか言いようがない “布マスク2枚配布”に安倍推しの「夕刊フジ」が激おこ 「夕刊フジ」は一面で「マスク2枚ふざけるな!!」と激おこ 強い言葉を発している 小池都知事はなぜ急に騒ぎ出した? ツイッターの「日刊ゲンダイ ニュース記者」のアカウントは「まるでウチみたい…きょうの夕刊フジさんの一面が日刊ゲンダイ化していて、ビックリしました。」とつぶやいた 東京五輪延期の流れが強まった 「緊急事態宣言」と「ロックダウン」を同一視する見方が広がり、スーパーなどで買い占めが起きたからだ 「「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?」 ちゃんとした経済対策を練り上げる時間が必要だった 小池都知事の「ロックダウン」強調に官邸は「迷惑だ」 「医学」においてはある専門分野の人が勧める治療などが、ほかの医療の専門分野については逆効果となることが少なくない 感染症の専門家の意見だけを聞いていればいいのか パンデミック 新型肺炎感染急拡大 メールマガジンJMM (その7)(新型コロナウィルス感染拡大 アメリカは異常事態、「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない 死亡原因は「重い肺炎」だけではない、「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?、108兆円規模のコロナ緊急経済対策が「看板に偽りあり」といえる理由) 冷泉彰彦 政権の専門家委員会のファウチ博士、バークス博士からは、2つの大きな指摘 「新型コロナウィルス感染拡大、アメリカは異常事態」from911/USAレポート もう1つは「全米の死者累計は、ベストケースシナリオ、つまり社会的距離の確保に成功した場合で、10万人から24万人」そして「ワーストケースとしては100万人を越えることもある」というのです 5000名近い将兵の中で、100名を越える感染者が出た中で、ブレット・クロージャー艦長は、国防総省に宛てて「乗員を救って欲しい」という「SOSレター」を発した 海軍の原子力空母USSセオドア・ルーズベルト 1つは「これからの2週間は、もっと厳しい状況になる」 済的影響はどんどん数字となって現れてきています アメリカの混乱は更に今月1ヶ月をかけて更に悪化を覚悟しなくてはならない コロナ対策を指揮する安倍首相を感染症専門家の「言いなり」か 「「外出自粛はすべてに優先する」という専門家を信じてはいけない 死亡原因は「重い肺炎」だけではない」 PRESIDENT ONLINE ほとんどが感染症の専門家 ね新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言に従っている 和田 秀樹 男性ホルモンをつくる主な材料は悪玉コレステロールである。男性ホルモンの値が低下すると性欲や意欲が低下するだけでなく、筋肉がつきにくくなり、記憶力も落ち、また人付き合いもおっくうになる 、悪玉コレステロールの値が高いと動脈硬化になりやすい 「コロナ関連死」が8000人でも何も不思議はない 「専門バカ」体質の蔓延が日本をダメにする 新型コロナ対策に免疫学者や呼吸器内科学者、精神医学者もいていい 外出自粛の自宅閉じこもりでセロトニン値低下→うつ病リスク 過度な外出自粛の精神面での悪影響や日光を浴びないことでのセロトニン値の低下を考えると、うつ病のリスクが高まるのは間違いない 精神科の領域でもコレステロール値が高いほうがうつ病になりにくい ある分野の「常識」は別の分野の「非常識」
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パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その6)(上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている、日本のコロナ感染者数が「少なすぎる」と疑念を持たれる本当の理由、首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”か) [国内政治]

パンデミック(新型肺炎感染急拡大)については、3月18日に取上げた。今日は、(その6)(上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている、日本のコロナ感染者数が「少なすぎる」と疑念を持たれる本当の理由、首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”か)である。

先ずは、3月23日付け日刊ゲンダイが医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏にインタビューした「上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270711
・『中国・武漢市が「震源地」だった新型コロナウイルスは世界中に感染拡大し、WHO(世界保健機関)は「パンデミック」を宣言した。日本でも連日、感染者が増え、「政治決断」の名の下、安倍首相が思いつきで打ち出す対策は効果に科学的根拠が見えない。感染を判断する検査件数も依然増えず、国民の不安は募るばかりだ。そんな状況を、内科医の立場から冷静に分析し、話題を呼んでいるのがこの人。山積する問題の背景には何があるのか(Qは聞き手の質問、Aは上氏の回答)』、上氏については、このブログでは3月10日に取上げている。
・『Q:日本でも感染拡大が止まりません。政府の対策について、どう見ていますか。特に「一斉休校」は、安倍首相の思いつきと批判が多く上がっています。 A:医学的にはあまり効果がありません。「学級閉鎖」にはそれなりのエビデンス(根拠)があります。学級閉鎖すると、接触者である子供たちの数が少なくなるので、伝染する機会が減るのです。しかし、今回は全国一律ですから流行していない学校まで閉鎖してしまう。すると、子供から教育を受ける権利を奪ったり、保護者の負担を増やすことになる。この「副作用」は全ての学校に出てきます。一方、効果については、校内に感染者がいなければありませんね。政治的メッセージとしては効果があったとは思いますが。 Q:イベントの自粛要請についてはどうでしょうか。 A:まず、イベント自粛について効果を検証した事例が過去にありません。過去の医学論文をほぼ全て収載している米国国立医学図書館のデータベースで検索したところ、大型イベントの中止で地域の感染症が減るといった研究は見つかりませんでした。効果については「分からない」としか言いようがないです。純粋な政治的メッセージで、科学的なバックボーンはないと思います。 Q:3月5日に政府が発表した中国、韓国からの入国制限策については、WHO幹部も「政治的な争いは必要ない」と苦言を呈していました。 A:この対策は、医学的なエビデンスに反します。3月に、アメリカの一流科学誌「サイエンス」で、ボストンの研究者がある論文を発表しています。1月下旬の武漢封鎖が周囲への蔓延防止に効果があったかを検証した結果、「ほとんど効果がなかった」「数日間、(感染拡大を)遅らせた程度」ということでした。封鎖した時に、既に周囲に広がっていたのです。ウイルスが蔓延している状況で、中韓をシャットアウトすることは、科学的に意味がありません。これも政治的判断なのでしょう。 Q:陽性か陰性かを見分けるための「検査」の態勢にも賛否があります。保険適用されてもなお、日本では検査件数が増えていません。 A:日本では、誰でも検査を受けられるようになると、「病院がパンクする」「院内で感染が広がる」と否定的な意見が多く聞かれます。しかし、いくらでも対策は取れるはずです。 韓国はドライブスルー式の検査を実施しました。これなら車内で検査するわけですから、感染を広げることはない。また、ネットを通じて患者さんに検体を送ってもらい、検査できる可能性があります。そもそも、現在、実施されているPCR検査に難しい技術は必要ありません。新型コロナの正体を知る上でも、検査態勢の拡充が肝要です』、「学級閉鎖すると・・・子供から教育を受ける権利を奪ったり、保護者の負担を増やすことになる。この「副作用」は全ての学校に出てきます。一方、効果については、校内に感染者がいなければありませんね。政治的メッセージとしては効果があったとは思います」、「中国、韓国からの入国制限策については・・・科学的に意味がありません。これも政治的判断なのでしょう」、安部政権の対応は、政治的判断を優先しているようだ。
・『検査が増えない理由は感染研が仕切っているから  Q:なぜ検査件数が増えないのでしょうか。 A:厚労省の研究機関「国立感染症研究所」が検査を仕切っていることが原因だと思います。現在、感染研が検体をハンドリングして、一部を外注したりしながら取り仕切っています。感染症研究の原資は税金です。これがもし、一般診療になり、民間のクリニックと健康保険組合、検査会社の仕事になると、感染研と厚労省はタッチできなくなる。 患者さんのデータはクリニックと患者が保有します。検査会社は研究所にデータを横流しできません。感染研は研究する上で極めて重要な臨床データを取れなくなる。ですから、感染研のキャパシティーの範囲内で、検査をハンドリングしたいということでしょう。 Q:医師の紹介があったにもかかわらず、保健所に検査を拒否されたという声も上がっています。 A:あってはならないことですが、これは基本的に「積極的疫学調査」という研究事業の延長線上です。専門家会議の方々が、「こういう基準を満たした人を検査します」と決めています。治療より研究を優先させているのでしょう。専門家会議は、コロナウイルスの効率よい研究体制を念頭においているように見えます。 Q:今、専門家を中心に行われているのは「治療」ではなく「研究」であると。 A:例えば、90代のおばあさんが38度の熱を出しても、専門家会議は「2日間病院に行くのを控えてくれ」と条件をつけています。一部からは「陽性が判明しても、治療法がないから検査しても意味がない」という指摘もあります。 しかし、我々医師の考え方は全く違います。患者さんに高熱が出た場合、コロナウイルスはあくまでひとつの可能性と捉える。まずは脱水になったら点滴をします。熱を下げないと体力を失います。もちろん、インフルエンザの可能性も探ります。それから、実際に診て「大丈夫だよ」と話をして、安心してもらう。それが患者さんの立場に立つということです。 現行のやり方はあくまで「研究」で、患者ではなくコロナウイルスだけを見ているような気がするのです。 Q:国の研究機関が患者の治療よりも新型コロナの研究を優先する現状は、社会で「人体実験」が行われているようなものではないですか。 A:はい。今、行われていることは「人体実験」だと思います。患者を見ていないと思うんです。例えば、高齢者の致死率が高いことが問題視されていますけど、介護や高齢者医療の専門の人はひとりも専門家会議に入っていません。多くが公衆衛生、感染症対策の専門家なのです。 Q:恐ろしい話です。医師と研究者・専門家は全然考え方が違うのですね。 A:私は「国立がん研究センター」に2001年から05年まで勤務していました。同センターはがん対策基本法で、研究の司令塔となることが規定されるほどの機関でしたが、臨床医としては違和感を持つことがままありました。部長の先生が入院を希望した患者に、「臨床研究できないから、あなたは受け入れられない」と発言しました。こういう発言が問題視されないというのは、驚きでした。ある意味、病的だと思いますね。 Q:そういった環境下で仕事をされ、どう感じましたか。 A:役人が仕切っており、「非効率だな」と感じることはありました。病院長のポジションに臨床経験の全くないキャリア官僚がやってくるのですから。ほんの一部ですが、エリート意識の強すぎる人物もいました。ただ、大半はみな非常に真面目。悪意がある人もほとんどいません。長年、こういう組織の中にいるので分かるのですが、「我々が国を率いねばならない」と本気で考えているのです』、「検査が増えない理由は感染研が仕切っているから」、「今、行われていることは「人体実験」だと思います。患者を見ていないと思うんです。例えば、高齢者の致死率が高いことが問題視されていますけど、介護や高齢者医療の専門の人はひとりも専門家会議に入っていません。多くが公衆衛生、感染症対策の専門家なのです」、唖然とするほど酷い話だ。。
・『陸軍の「伝染病研究所」を引き継ぐDNA  Q:上先生は05年から16年までは、「東京大学医科学研究所」に所属していました。同研究所も“体制側”です。辞めて今の立場になったのは、やはり専門家や研究者に対して違和感を覚えることがあったからでしょうか。 A:いやいや、純粋に自分のキャリアのことで、年も重ね独立しないといけないと思ったまでです。独立したほうが動きやすいという事情もありましたので。東大医科研は国立がん研究センターほど、国べったりではありませんでした。ただ、創設者の北里柴三郎以来の長い歴史を感じることが多かったです。陸軍と密接に関係して、研究を進めてきたのです。 戦前、「日本のCDC(米疾病対策センター)」とも言える組織は伝染病研究所です。これが現在の東大医科研と国立感染症研究所です。今回の専門家会議を仕切る人たちです。同じDNAを引き継いでいると思います。 Q:「お国のために」では、患者目線から離れていくのも当然かもしれません。 A:専門家の方々は医師免許があっても普段は診療しませんから。こういう方が主導的に感染症対策を決めるのは、暴走するリスクすらあると思います。テクノクラート(科学者・技術者出身の政治家・高級官僚)が主導権を握ると、しばしば暴走して第2次世界大戦のようなことになる可能性もありますよね。専門家に対応を丸投げするのは非常に危険なことだと思います。医療現場の判断を優先すべきでしょう』、「専門家の方々・・・が主導的に感染症対策を決めるのは、暴走するリスクすらあると思います・・・専門家に対応を丸投げするのは非常に危険なことだと思います。医療現場の判断を優先すべきでしょう」(上氏の略歴は省略)、説得力溢れた妥当な指摘だ。

次に、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が3月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「日本のコロナ感染者数が「少なすぎる」と疑念を持たれる本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/232937
・『日本は本当にうまくやっている? コロナ感染者数が少ないことへの勘繰り  世界に新型コロナウイルスが広がる中で、日本は比較的うまく感染の広がりを抑え込んでいます。日本にいるとその感覚に疑問は湧かないのですが、欧米では「日本だけが例外的に感染を抑え込んでいる」ということに対して、統計上の疑念が提起されています。 ドイツのウィルトシャフツウォッヘ誌が「日本のコロナの謎」という記事を掲載し、飲食店などが普通に開いているにもかかわらず感染者が少ない状況を謎だと捉え、検査数が少ないことが一因ではないかと問題提起しました。 データベースによれば、PCR検査数は韓国の31万件、イタリアの20万件に対して、日本は1万5000件しか行われていないことから、アメリカのメディアも同様に日本の検査数の少なさを指摘しています。 直近(3月24日時点)で公表されている感染者数は、イタリアが6.4万人、アメリカが4.2万人、スペインが3.3万人、フランスが2.3万人といった拡大を見せている一方で、日本はいまだに1128人と1ケタ少ない状況です。 我々から見れば、手洗いを頻繁にし外出時にマスクも着用すること、イベント自粛・全校休校・リモートワークなどに早い段階から動いたことなどによって、パンデミックをぎりぎりのところで抑え込めているという認識です。しかし、「検査していないだけで、本当は他の国と同じようにもっと感染者がいるのではないか?」と勘繰る人たちが、海外にはいるということです。 実際のところはどうなのでしょうか。先に結論を言うと、その背景には3つの別々の問題が絡まり合った状態があるように思います。それらの論点を1つずつ検証し、解き明かしていきたいと思います』、実態はどうなのだろう。
・『日本の感染者数をめぐる検証すべき「3つの論点」  (1)検査数の少なさの影響は多少あるが、実際は日本の感染者は欧米ほど増えてはいない。 (2)検査数が少ないことについては、その是非について議論すべき論点が存在している。 (3)別の問題として、「日本の公的統計は国際的な信頼を一度失っている」ことを憂慮すべきである。 まず1つ目の論点ですが、検査漏れのせいで把握されていない感染者がいることは事実です。実際、新規の感染者の中に感染経路が不明の人が増えているという報道があります。これは裏を返すと、数的に把握されないまま外出行動をしている感染者が一定数存在していると考えて間違いありません。しかしそういった人が、欧米のように何万人もいるということはあり得ません。 その論拠は、コロナによる死亡者数の違いです。イタリア6077人、スペイン2182人、フランス860人、アメリカ471人に対して、日本は42人と、死亡者数はやはり一ケタないし二ケタ少ないのです。日本の医療体制を知っている我々であれば、「新型コロナによる死亡者の把握漏れがあって、実際の死者はもっと多い」などということは、起こり得ないであろうことを誰もが知っています。 ただ同時に理解しておくべきことは、日本では高熱が4日続く症状が出るなど、感染した可能性が高い人しか検査を行わない方針をとってきたことから、把握されていない感染者が一定数いることは、現実問題としてあり得ます。その人数を推論で見積もるならば、「コロナの致死率は実際は低く1%程度だ」という学説に基づき、日本の死亡者数から逆算した場合、把握されていない人を含めた日本の本当の感染者数は4000人程度いる可能性があると考えるべきです。 この推定値あたりが実際の感染者数の上限であって、数万人単位であることは考えられません。また欧米でも、さまざまな事情により、把握されていない感染者は把握されている感染者の数よりもたくさん存在するはずです。それを考慮すれば、パンデミックの規模感として、日本はやはり欧米よりも1ケタ低い数に感染者を抑え込むことができているとみるべきです』、なるほど。
・『PCR検査数を抑えることはデメリットばかりではない  次に2つ目の論点ですが、日本の「PCR検査数を抑える」という政策については、その功罪が議論されています。功罪のプラス面についていえば、検査希望者が病院に押し寄せることで起きかねない医療崩壊を防げているという意見があります。実際、医療現場では他の病気で治療を受けている重症患者が圧倒的に多く、それらの治療に支障を及ぼしていない点は高く評価すべきです。 一方でマイナス面は、行政が把握できていない感染者が前述の推論のように、把握されているよりも多く存在する可能性があること。そういった人たちは知らずに出歩いてしまうので、新たなクラスターを発生させるリスクが社会に生まれています。 PCR検査数が抑えられている背景には、検査をして陽性反応が出ると軽症者であっても専門医療機関に入院させなければいけないルールがあることから、検査を増やすことで医療崩壊につながるではないかという論理があります。 ただ、コロナ発生からずいぶん期間がたち、軽症者や無症状者の存在もわかってきた今、私は「入院させるというルールを早く変更して柔軟に治療すべきだ」という意見が正論のように思います。これは、立法府や行政府が素早く動けば解決する問題だと思います』、安部首相は「PCR検査」を1日2万件にすると豪語しているが、実際の件数はせいぜい4000件前後で低迷しているようだ。やはり上氏が指摘するような厚労省の抵抗が大きいのかも知れない。
・『さて、今回一番厄介なのは、3つ目の「日本の公的統計は国際的な信頼を一度失っている」という論点です。その1つは、昨年発覚した厚生労働省による「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実」として公表されている事案のこと。2004年以降、2019年に問題化するまで統計法に違反した調査が続けられており、その統計に基づいて行われる雇用保険の給付額がのべ1973万人に対して567億円も過少だったことが、問題になった事件です。 政府の公式見解としては「組織的な隠ぺいはなかった」という報告に落ち着き、日本のメディアも統計法違反ではなく「不適切調査」と見出しを統一しました。「現場の担当者が起こした不祥事であって大きな問題ではない」という雰囲気が醸成され、幕引きが行われたのです。ただ、海外では捉え方が少し違うようです。 海外のアナリストの間でその前年に問題になったケースとして、2017年12月と2018年1月の間に、毎月勤労統計の公表値が連続性を失ったという現象がありました。調査にあたってサンプルとベンチマークが変更されたにもかかわらず、新旧のデータを段階調整せずに接続する方針に変えたことで、賃金指数が2018年に入って高い伸び率を示すようになったという問題です。これは国内のアナリストからも指摘され、当時社会問題になった事件でした。 海外のアナリストたちは、こうした事件を覚えています。官邸がデフレ脱却を主張した時期に統計方針が変更され、不連続ながら賃金指数が上昇したという事実と、その後に発覚した統計法違反事件を見て、「厚生労働省は統計を操作している」と考えるようになったようです。 まあ、私が海外のアナリストの知人から直接小馬鹿にされた体験からいえば、彼らは「厚生労働省が統計をいじっているのではないか」ということまでは理解しておらず、「日本政府の統計はときに信用できないことがある」くらいの、ざっくりとした認識で揶揄してくることが多いように思いましたが』、海外が「日本政府の統計はときに信用できないことがある」、とみられているのは、先進国として恥かしいことだ。
・『海外からケチをつけられたら大いに反論すべき  さて、東京五輪の延期が決まったとたんに東京のコロナ感染者数が1日で40人以上も増加したというニュースは、日本の統計に疑念を持つ海外の人たちを、いかにも喜ばせそうです。しかし、本稿の結論として私が言いたいのは、コロナに関する統計にケチをつける外国メディアに対しては、日本人も大いに反論すればいい、ということです。 ただし、3つ目の論点で触れた通り、彼らの疑心暗鬼はそもそも厚生労働省への信頼が2年前から揺らいでいることに端を発していることを、肝に銘じるべきです』、根拠のない「ケチ」には「大いに反論すべき」だが、日本政府の統計に対するいい加減な姿勢を踏まえると、「反論」できないケースの方が多そうだ。

第三に、3月31日付けNEWSポストセブン「首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”か」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20200331_1551622.html
・『新型コロナ対策の拠点となるべく新設された大学病院で、希少な病床のひとつが、「本来入院できない患者」のために充てられた。その人物は、首相直轄の諮問委員会メンバーにして、公衆衛生学の権威。発症から検査、そして治療まで、ルールを逸脱して進んだ入院劇──』、どういうことなのだろう。
・『◆「まさか、先生が」  新型コロナウイルスの国内流入を防ぐ“水際作戦”で厳戒態勢を敷く成田空港のそばに、3月16日、国の第一種感染症指定医療機関「国際医療福祉大学成田病院」(642床)が開業した。 同病院は安倍政権が推進する国家戦略特区制度(医療特区)で新設された国際医療福祉大学医学部の附属病院。同大の「国際臨床感染症センター」の診療部門として強力な感染症にも対応できる感染症専門病床を備え、外国人患者の診療・入院をサポートするために医療通訳のスタッフもいる。まさに成田空港の“水際作戦”に欠かせない拠点病院といっていい。 厚労省は欧米などからの帰国者、入国者の感染が増えていることから、4月1日の予定だった付属病院開設の前倒しを強く要請し、病院側は感染症科を先行開業して642床のうち48床の個室フロア(減圧室12床)で新型コロナの患者に対応することにした。異例の要請を行なった厚労省の判断も、それに応じた大学病院側も見事な対応だったといえるだろう。 ところが、開業早々、ハプニングに見舞われる。3月19日、東京から意外な患者が運ばれてきたのだ。 「まさか、先生が」。慌ただしく準備に追われていた医師、看護師らは驚いた。 同大学の看板教授で、著名な公衆衛生学者として知られるA教授だった。A教授は安倍首相が議長を務める未来投資会議の医療・介護分野の副会長で、いわば首相の医療ブレーン。医学界での知名度は高く、全国を飛び回って高齢化社会の医療体制などについて講演している人物だ。大学関係者が証言する。 「大学の看板教授が入院してきたからびっくりです。A教授は発熱の自覚症状が出るまで医師グループとの勉強会や学会などへの出席のために新幹線で全国を飛び回っており、接触者は数え切れない。多くは研究者、医師、保健所など医療関係者です。大学内では教授の陽性(感染)を公表すると影響が大きすぎるのではないかと議論になった」 海外からの帰国者、入国者の感染者を収容するために前倒し開業した専門病床が、同大学の教授によって使われることになったのだ』、なんと「看板教授が入院」、とは驚きだ。
・『◆クラスター発生の可能性  国際医療福祉大学は3月21日付でホームページに「教員2名」の感染が判明したことを発表した。 〈本学に所属する感染症や公衆衛生の専門医、感染管理認定看護師らの指導のもと、当該教員2人と接触した教職員に対して、健康観察を実施していますが、現時点では発熱、咳などの症状が出たものはおりません。所轄保健所と連携を図り、濃厚接触者の特定を行いましたが、現時点では学生ならびに教職員には濃厚接触者がいないことが確認されております〉 しかし、「濃厚接触者がいない」という説明には違和感がある。感染したもう1人の教員はA教授の共同研究者である同僚のB教授で、2人はともに東京・赤坂キャンパスにある同大大学院医学研究科で教鞭をとっている。B教授の携帯に電話が繋がった。 「新型コロナで入院中です。熱があって、話すのもたいへん。今日が入院何日目かもわからないんだよ」。苦しそうな声だった(Qは聞き手の質問、AはB教授の回答)。 Q:いま、千葉の成田病院ですか? A:「うん」 Q:A先生といっしょに。 A:「そうそう」 Q:どこで感染したのか。A先生経由? A:「ぜんぜん、よくわからないんだ」 とぎれとぎれにそこまで答えてくれた。 政府の新型コロナ対策では、すべての感染者を都道府県ごとに把握して年齢、職業、発症日、男女の別などを公表し、地元の保健所が感染ルートの調査や濃厚接触者への対応にあたる。 東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトが連日発表する陽性患者情報によると、A教授に該当する人物の発症日は3月8日、「出勤、帰宅後発症」と記載され、陽性が判明したのは3月19日。 もう1人のB教授に該当するデータは千葉県のホームページにあった。3月11日に咳、鼻水が出て発症。千葉県外の病院を2回受診した後、3月19日に千葉県内の病院に入院、検査で陽性と判明した。 行動歴には「東京都で確認された患者と3月8日に接触」と記載されている。その日はA教授が大学に出勤し、発症した日にあたる。調査した千葉県疾病対策課はA教授との学内接触によって感染した可能性があると見ていることがうかがえるのだ。 元東京大学医科学研究所特任教授の上昌広・医療ガバナンス研究所理事長が指摘する。 「大学の同じキャンパスから少なくとも2人の感染者が出ていればクラスター(小規模感染集団)の発生を警戒する必要がある。とくに国際医療福祉大学は厚労省のクラスター対策班にメンバーを出している協力機関ですから、学内での感染者発生についてもっとしっかり情報開示する責任があるでしょう」』、「国際医療福祉大学は厚労省のクラスター対策班にメンバーを出している協力機関ですから、学内での感染者発生についてもっとしっかり情報開示する責任があるでしょう」、との上氏の指摘は正論だ。
・『◆発症前日に会食 さらに注意喚起が必要なのは、A教授が発症直前まで勉強会の講師や学会出席で各地を回っていたことだ。 保健所は後で感染者が出た場合に感染ルートを辿ることができるように、A教授の発症前2週間程度の行動を追跡している。その足取りを辿ってみよう。大学関係者の話である。 「A先生のスケジュールなどから判明しているのは、2月下旬には京都出張や東京都内で医師グループとの勉強会の講師を務めています。3月に入るとコロナ対応で学校行事の日程変更などがあり、大学院教授と学部長を兼務するA先生は毎日赤坂キャンパスに出勤し、発症前日は静岡県に出張、医療関係者と会食していました。発症当日も大学に出勤しています」) 現在の国立感染症研究所(NIID)の定義によると、「濃厚接触者」はあくまで患者が発症した後に接触した者が対象で、発症前に接触したケースは濃厚接触者とは呼ばれない。 では、前日に会食したメンバーは安全と言えるのか。感染症のエキスパートである堤寛・つつみ病理診断科クリニック院長(元藤田保健衛生大学医学部教授)が指摘する。 「濃厚接触者とは呼ばれなくても、発症前日に感染者と一緒に会食した人は、新型コロナに感染するリスクは十分ある」 同大学がホームページで「濃厚接触者はいない」と発表しているのは定義上は間違いではないが、だから感染者が広がらないという意味ではない』、「濃厚接触者」はあくまで患者が発症した後に接触した者が対象で、発症前に接触したケースは濃厚接触者とは呼ばれない」、のであれば、「発症前に接触したケース」の感染リスクはカバーできないとは、再定義の必要もありそうだ。
・『◆越境入院  A教授の発症後の行動にも疑問点が浮かんだ。厚労省のルールでは、一般の国民は、発熱などの症状が出るとかかりつけ医に相談し、「風邪の症状や発熱」が4日間以上続いている場合は、地元保健所の「帰国者・接触者相談センター」に電話で相談する手順が定められている。 そこで必要と判断されればセンターが指定する「コロナ外来」(東京都は77病院。病院名は非公表)で感染しているかどうかを調べるPCR検査を受けることができるが、実際には、高熱が続いて主治医が検査を求めても相談センターで「検査の必要なし」とハネられるケースが非常に多い。 そして検査で陽性が出た場合、保健所が指定する感染症指定病院に入院することになる。 「都内のコロナ外来の検査で感染が判明した人は、都内の病院に入院するのが原則です」(東京都福祉保健局感染症対策課) ところが、A教授はこのルールに従わなかった。 東京の自宅で療養していたA先生は、肺炎の症状が出ると帰国者・接触者相談センターを通さずに都内の知り合いの病院でPCR検査を受診、陽性が判明すると自宅から千葉の成田病院に入院しています。東京の保健所を完全にスルーしています」(同大学関係者) ルールを無視して東京から千葉の最新鋭の感染症指定病院に“越境入院”したことになる。 ちなみに、同僚のB教授も自宅は東京だが、成田病院入院後の検査で陽性が判明したため、ルール上は千葉県の感染者扱いになり、越境ではない。A教授が東京の感染者、B教授が千葉の感染者として登録されているのはそのためだ。 「医師だからと保健所を通さずに知り合いの病院で検査をしてもらう。違法とはいえないが、一般の患者からすると納得できないでしょう」(上氏) 大学側の対応にはもっと大きな疑問がある。国際医療福祉大学の医学部開設と附属病院建設は、かつて国会で「第二の加計学園」問題として取り上げられたことがある(本誌2017年9月8日号既報)。 同大学は厚労省や文科省OBが要職を占める「天下り王国」と呼ばれ、安倍政権は国家戦略特区として38年ぶりに医学部新設を認可。全国的に病院の病床数を減らすなかで付属病院に大幅なベッド数の増加を認めた。 地元・成田市が医学部誘致のために巨額の補助金を出したことも加計問題と構図が似ている。 その大義名分が成田エリアを医療特区にして外国人医師の養成と外国人患者を受け入れ、医療の国際化を推進するというものだった。今回の新型コロナへの対応は、同大学にとって批判をはねのけ、医学部と付属病院開設の意義を示す大きなチャンスのはずだ。 ところが、同大学は成田空港の水際対策のためにわざわざ開設を早めた附属病院に、感染者とはいえ首相ブレーンの教授を優先的に入院させた。同大学広報部にA教授が入院した経緯について問うと、こう回答した。 「患者さまが成田病院受診前に他の医療機関を受診された経緯については、把握しておりません。成田病院は十分な病床数を有しており、医療機関として診療や入院が必要とされる患者さまについては、可能な限り受け入れることが社会的責務であると考えております」 病院が「社会的責務」を全うするのであれば、少なくとも、A教授を優遇入院させるのではなく、保健所を通じて都内の指定病院に入院させ、成田病院のベッドを帰国者などの感染者のために空けておくという姿勢を取るべきではなかったのか。 これでは医学部と病院開設の意義を問われても仕方がない』、安部首相の公費の私的乱用が目立ったが、「首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”」、上が腐れば下も腐ってくるようだ。
明日も、パンデミックを取上げるつもりである。
タグ:パンデミック 新型肺炎感染急拡大 (その6)(上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている、日本のコロナ感染者数が「少なすぎる」と疑念を持たれる本当の理由、首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”か) 日刊ゲンダイ 「上昌広氏激白 新型コロナ対策で“人体実験”が行われている」 学級閉鎖 子供から教育を受ける権利を奪ったり、保護者の負担を増やすことになる。この「副作用」は全ての学校に出てきます 一方、効果については、校内に感染者がいなければありませんね。政治的メッセージとしては効果があったとは思います 中国、韓国からの入国制限策については・・・科学的に意味がありません。これも政治的判断なのでしょう 検査が増えない理由は感染研が仕切っているから 今、行われていることは「人体実験」だと思います。患者を見ていないと思うんです。例えば、高齢者の致死率が高いことが問題視されていますけど、介護や高齢者医療の専門の人はひとりも専門家会議に入っていません。多くが公衆衛生、感染症対策の専門家なのです 陸軍の「伝染病研究所」を引き継ぐDNA 専門家の方々 主導的に感染症対策を決めるのは、暴走するリスクすらあると思います 専門家に対応を丸投げするのは非常に危険なことだと思います。医療現場の判断を優先すべきでしょう 鈴木貴博 ダイヤモンド・オンライン 「日本のコロナ感染者数が「少なすぎる」と疑念を持たれる本当の理由」 PCR検査数は韓国の31万件、イタリアの20万件に対して、日本は1万5000件しか行われていない 感染者数は、イタリアが6.4万人、アメリカが4.2万人、スペインが3.3万人、フランスが2.3万人といった拡大を見せている一方で、日本はいまだに1128人と1ケタ少ない状況 日本の感染者数をめぐる検証すべき「3つの論点」 1)検査数の少なさの影響は多少あるが、実際は日本の感染者は欧米ほど増えてはいない (2)検査数が少ないことについては、その是非について議論すべき論点が存在している (3)別の問題として、「日本の公的統計は国際的な信頼を一度失っている」ことを憂慮すべきである PCR検査数を抑えることはデメリットばかりではない 安部首相は「PCR検査」を1日2万件にすると豪語 実際の件数はせいぜい4000件前後で低迷 「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実」 「日本政府の統計はときに信用できないことがある」 Newsポストセブン 「首相ブレーン医師 コロナ感染でルール逸脱の“優遇入院”か」 「まさか、先生が」 国の第一種感染症指定医療機関「国際医療福祉大学成田病院」 国家戦略特区制度(医療特区)で新設された国際医療福祉大学医学部の附属病院 同大学の看板教授で、著名な公衆衛生学者として知られるA教授 安倍首相が議長を務める未来投資会議の医療・介護分野の副会長で、いわば首相の医療ブレーン クラスター発生の可能性 国際医療福祉大学は厚労省のクラスター対策班にメンバーを出している協力機関ですから、学内での感染者発生についてもっとしっかり情報開示する責任がある 発症前日に会食 濃厚接触者 越境入院
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ウイルス(その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今) [生活]

今日は、現在のパンデミック騒動の基本である、ウイルス(その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今)を取上げよう。

先ずは、昨年10月15日付けEMIRAが掲載した神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授による「人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/7814/
・『ことしは早くも9月にインフルエンザA型の流行が確認され、また乳幼児へのRSウイルス感染症のニュースも出た。人口密度の高い都市部では感染スピードも速く、もはやウイルスとは無縁の生活はできない現代。悪者のイメージが強いウイルスだが、実は人体を守り、さらには人の誕生に関わる働きもしているという。そもそもウイルスがどのようなものなのか正確に知っている方はいるだろうか。今回は、植物や糸状菌を材料にした染色体外因子の研究を専門とする神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授に、ウイルスとは何なのかを聞いた』、基本を押さえるにはもってこいの記事だ。
・『ウイルス=病原体とは限らない  「ウイルスとは、バクテリア(細菌)、菌類、微細藻類、原生動物などとともに、よく“微生物の一種”と思われています。中でもウイルスは、一般的に病原体、つまり“悪いもの”というイメージですね」 神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授がそう話すとおり、「ウイルス」と聞くと、悪いイメージを持つ人が大半だろう。しかし、「病原体」とされる微生物には他にバクテリアや真菌(カビや酵母の総称)などもあり、必ずしもウイルスだけが“悪者”というわけではないという。その理由を知るためには、まずはそもそもウイルスとは何者なのかを理解する必要がある。 「よく大学の新入生に、大雑把なイメージをつかんでもらうために、真菌はわれわれと同じ多細胞生物、バクテリアはその体の一つの細胞が飛び出して独立して生きているもの、そしてウイルスは、その細胞の中の遺伝子が細胞から飛び出て“独立”したようなもの、と説明しています。もちろん遺伝子だけだと何もできませんから、細胞の中に入ることで初めて活動できるのがウイルスなんですよ。学術的には『ヌクレオキャプシド(nucleocapsid)』と呼ばれていて、遺伝子である核酸(DNAやRNAの総称)をキャプシドと呼ばれるタンパク質の殻が包み込んで粒子を作っているものとされています。つまり、核酸とタンパク質の複合体がウイルスに共通するコアな構造ということになります」 細胞からは独立した存在だが、宿主の細胞に入ると遺伝子として機能する。侵入した細胞のタンパク質を利用するなどして、活動できるようになるのだという。要するにウイルスは、人間などの細胞を構成している一つのパーツのような存在なのだ。 ちなみに、テレビなどでは菌のことをウイルスと表現することもあるが、「そこは区別しておきたい」と中屋敷教授は言う。 「ウイルスがバイ菌の中に含まれて表現されることがあります。しかしウイルスは『菌と呼んでくれるな』と思っているでしょうね」 ここまで聞くと、ウイルスは人間の体内で次から次へと細胞に侵入し、グループをつくっていくように感じるが、「ウイルスは人間と違って、意思を持って行動しているわけではないので、仲間を作ろうとか、他のウイルスと仲良くやろうとか、言ってしまえが(注:正しくは「ば」)、自分を増やしていこうとも思っていない」のだそう。 「“増やす”ではなく、正確には環境を与えられたので、“増えられるから増えている”ものだと思います。その中でより増えることができたものが残っていくのですが、まれにウイルス同士で助け合うこともあります。調べてみると、ウイルス集団の中には、しばしば自分だけでは増えることができないものが見つかり、他のウイルスからタンパク質をもらうことで、生きているようです。共助ですね」 積極的に増殖するのではなく、他人を利用して増えられるなら増えていく。ちゃっかり者のような存在なのかもしれない。 しかし、「ウイルスの全てが病気の元になっているわけではないのです。いることによって何かしらの役に立っているものもあるんですよ」と教授は続ける。 現に、われわれの根本であるヒトゲノム(人間の遺伝情報)の45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されていることが示されている。「ウイルスがいたからこそ人間はここまで進化できた」と中屋敷教授は言うが、そうなると、やはり「=病原体」ではないのかもしれない』、「ヒトゲノムの45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されている」、なくてはならない存在でもあるようだ。
・『人体にとってウイルスは善か、悪か?  とは言うものの、現実問題としてさまざまなウイルスに人間は感染し、病気にかかってしまう。例えば、大腸にはもともとさまざまな大腸菌が存在している。そこに、ウイルスの介在によってコレラ菌から毒素遺伝子が大腸菌に運び込まれることで、人を病気にする腸管出血性大腸菌「O-157」が出現したとのことだ。ここでは完全に“悪役”だ。 「ウイルスは一般的には病気の元になりますし、それは事実。一方でウイルスがあるからこそ元気でいられることもあるんです。例えば、子宮で子供を育てるという戦略は、哺乳類が繁栄できているキモだと言われています。実は、子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしていることが知られています。現在でも、その遺伝子がなければ胎盤は正常には作れません」 また、ウイルスには他の病原体の感染をブロックしてくれるような存在意義もあるそう。 「例えばヘルペスのように、それがいることで他の菌に感染しにくくなっている、と報告されているものがあります。あるウイルスのおかげでわれわれの体は他の菌やウイルスに対して強くなる。つまり、ワクチンを打っているようなものかもしれませんね」 ウイルスは遺伝子として機能するため、ゲノムの中に存在するウイルスは、多様で重要な役割を果たしていることが、次々と分かってきているという。中屋敷教授が、「そもそもわれわれの進化も、そういったウイルスや“ウイルスのようなもの”のおかげで加速されてきた側面があると思います」というように、DNAにウイルスが入ってくることで変革が起こり、それが長いスパンで見ると“進化”の引き金になったとこともあるそうだ』、「子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしている」、は「“進化”の引き金になった」重要な例の1つだろう。
・『ウイルスは生き物なのか?  このウイルスの“活動”は、あくまで自分から何かを生み出し、消費するのではないという。 「ウイルスは基本的にエネルギーを作ったりはしません。自身では設計図を持っているだけで、それを誰かに渡して製品(遺伝子産物や子孫)を作ってもらっているような感じです。自分の製品をより多く作ってくれるところへ潜んでいき、そこで設計図を渡す。その動きだけを見ると、結構世渡り上手な感じですね。だからウイルス自身が何か生産的なことをしているというより、宿主の細胞に働きかけて上手にそのシステムを利用しているイメージです」 そして、自分の子孫をより多く作ってくれるように働きかける過程が、人間の体内では免疫を抑制することにつながっているそうだ。 「自身を増やす過程で、自分を排除しようとするものから巧妙に逃れる性質があります。この活動があるからこそ、ウイルスは増えていき、その結果、病気を引き起こすことにもつながっているのです」 これらの活動から考えると、ウイルスはまるで生きているかのようだ。“かの”とあえて付けたのは、ウイルス=生き物かどうか、には賛否両論があるからだ。 「自分では動けない、しかし自身を増やすことはできる。何をもって“生きている”と定義するかによるのですが、進化をして、子孫を残すという性質を重視すれば、生きていると考えることもできるように思っています」 人間が長い年月をかけて現在の形になったように、もしかしたら今から10億年後に、現在のウイルスを先祖として進化した“生物”がいるかもしれない。 ちなみに多くの場合、ウイルスは遺伝子を10個以下、少ない場合は1、2個しか持っていないが、最新の研究では、遺伝子を2500個以上も有する「パンドラウイルス」という巨大ウイルスが見つかったそう。遺伝子数で見れば、小型のバクテリアとほぼ変わらない存在だ。 「この巨大ウイルスが、遠い未来に意思を持つような生物になるかもしれませんね(笑)。実は、巨大ウイルスを研究していたところ、彼らに“寄生するウイルス” (これは普通サイズ)というのが見つかり、寄生されると巨大ウイルスが病気になることが分かったのです。その後、巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明しました」 つまり彼らは自己、非自己の認識ができて、非自己はやっつけるという仕組みを持っているということ。「巨大ウイルスが持つ“免疫”の仕組みは、バクテリアのシステムに似ている」と中屋敷教授は言う。 「こういった“生物的な”巨大ウイルスの活動を考えるともう、ウイルスを生き物の仲間に入れてあげてもいいんじゃないかと思いますね」 この巨大ウイルスのように、「進化」していることが分かると、今後のウイルス研究では、われわれの健康に役立つことも見つかるのではないだろうか? 「今までウイルスは、それを原因とした病気の発生を通して見つかるという歴史でしたが、次世代シーケンサー(遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置)と呼ばれる技術の発展により、病気を起こさないウイルスというのが生物界に広く存在していることが明らかになりつつあります。そういったものの中には、病気やストレスに対するワクチンのような効果を持つことが分かったものも少なくありません。ウイルス研究が進めば、これからさらに“共生体としてのウイルス”の良い面がどんどん分かってくるかもしれません。今からのウイルスの研究は、これまでと一味違うものになっていく可能性がありますし、その動きは既に始まっています」 人間にとっては善でも悪でもあるウイルス。しかしその活動や進化の状況を考えると、善の側面が将来的には広がり、ウイルス=悪いものという存在ではなくなっていくのかもしれない。 本特集第2回では、毎年猛威を振るうインフルエンザウイルスについて掘り下げていく』、「巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明」、まだまだ分かっていないことが多そうで、今後の解明が待たれる。

次に、この続きを10月15日付けEMIRAが掲載した国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏による「インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/7971/
・『特集第1回では、「ウイルス」そのものについて見てきた。自らエネルギーを発するわけではないものの、時に病原となって、われわれのエネルギーを奪っていくのは事実だろう。中でも、これからの時期に脅威となるのが「インフルエンザ」だ。今回は、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏に、誰もが知るウイルスが人体の中で一体何をしているのかを教えてもらい、来るべき脅威に対する防御策を考えていく』、「インフルエンザ」について深く知る意味も大きそうだ。
・『本当は一年中流行しているインフルエンザ  10月に入り、ことしもまたインフルエンザの予防接種シーズンが始まった。 インフルエンザは、「インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症であるが、『一般のかぜ症候群』とは区別できる『重くなりやすい疾患』」(国立感染症研究所HP参照)とされている。われわれにとって最も知名度が高く、身近なウイルスといえば、このインフルエンザウイルスだろう。実際、「インフルエンザは、いまだ人類に残されている最大級の疫病である」(同HPより)と言われている。 このインフルエンザウイルスについて、ワクチン検査や予防治療法研究などを行う国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏はこう補足する。 「インフルエンザウイルスというのは、簡単に言うとインフルエンザ(病名)を引き起こすウイルスなんです。インフルエンザというのは、一気に発熱して筋肉痛や関節痛といった体の痛みなど全身症状から発症するのが特徴です。一般的な風邪の症状である鼻水や咳(せき)は治りかけたころにやってくるんです」 そもそも風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」、つまり気道、呼吸器に起こる感染症を指す。その原因となるウイルスには、代表的な「ライノウイルス」、夏場のプールで感染する「アデノウイルス」など、さまざまな種類が存在している。ことしは9月1日に、今シーズン最初のインフルエンザによる学級閉鎖が大分県で報告されているが、通常、12月から翌2月が流行シーズンと言われている「インフルエンザ」もその一種だ。 「日本では、冬にはやるものですよね? それは、インフルエンザウイルスは乾燥と低温に強いため、冬場は空気中で長く生きることができるからなのです。そもそもヒトに感染するインフルエンザウイルスは、高温多湿になる夏場には活発に動くことができない。 また、インフルエンザウイルスは空気感染することはまれで、ほとんどは飛沫感染か接触感染。つまりウイルスが付着した手でモノを食べたり、顔をこすったりしてうつるのですが、次のヒトに到着するまでは空気中を浮遊する必要があるため、湿度の低い冬場に流行するわけです」 こうした“季節性”を持つウイルスであることも特徴だそうだが、実は、これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっているという。 「乾燥に強いということは、逆に言えば湿気に弱い。一見矛盾しているように感じますが、そうした地域では雨季にインフルエンザがはやります。屋外では湿度が高く、長く活動することが難しいものの、雨季になると人が屋内で過ごす時間が長くなり密集環境になるため、そこで感染が広がりやすくなるのです」 インフルエンザは、WHO(世界保健機関)によって世界規模で行う感染症サーベイランス(調査・監視)の対象と定められており、6エリアに分かれて常時調査、研究が行われている。日本はアジア圏を担当しており、夏場でも近隣国や東南アジア諸国でウイルス株を入手して研究が続けられているという。 インフルエンザは地球規模の感染症であり、冬場だけのものではない。実はこれが“流行型”を決めるカギになっている』、「そもそも風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」」、「湿度の低い冬場に流行する・・・これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっている」、などは初めて知った。
・『インフルエンザウイルスの“流行型”とは?  毎年4月ごろ、厚生労働省は次のシーズンのインフルエンザワクチンの製造株決定を通知している。インフルエンザのシーズンとは、毎年第36週から、翌年の第35週までの1年間を指し(9月~翌年8月末)、2018/2019シーズンは2018年9月1日~2019年8月31日までと区切られている。 「そもそも『株』というのは、ウイルスのことを意味しています。ワクチン製造には、敵となるウイルスそのものを使う必要があるので、ワクチンの製造株=シーズン中の流行株の代表選手なんです。ただ、前の2017/2018シーズンの流行型は『B/山形系統』が主流でしたが、実際にその年の冬にはやる型は完全には予想できないために、ヒト社会ではやるA型2種類とB型2種類の全てを含んだワクチンが使われているんですよ」 ここで、インフルエンザウイルスの種類についても解説しておきたい。インフルエンザウイルスには症状の激しいA型、腹部に症状が出やすいB型、幼児がかかりやすいC型の3種類が存在しており、季節性と言われるインフルエンザウイルスは、基本的にA型とB型を指しているという。その上で、流行株の名称にある「シンガポール」や「香港」といった地名は、その流行ウイルスが採れた場所を指す。つまり、例えば最新型のウイルスが東京で検出されれば、『A型東京(学術名ではA/Tokyo)』と名付けられる。 「毎年2月ごろにWHOの世界会議で、次のシーズンの北半球で使うインフルエンザワクチン株を決めています。シーズン真っただ中にある北半球諸国で次に主流となることが予想される流行株を見つけ出し、次シーズン向けのワクチンとして推奨しているのです。しかし、ワクチン株1つを見つけるためには、世界中の数千株の流行ウイルスをチェックする必要があり、それが本当にワクチンとして適切であるか、増殖性なども見極める必要があるのです。 また、日本では毎年3月下旬がワクチンの製造株を決めるデッドライン。ワクチンの製造と国家検定には少なくとも6カ月はかかるため、10月からの予防接種に間に合わせるためには、そこがギリギリなのです。ところが、流行のピークは12~2月ですが、日本でも4月下旬までは流行が続きます。なので、3月時点で流行株を決めても、その後に流行ウイルスが変わってしまったこともあります。 そもそもインフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもあるんですよ」 当然、より効果的なワクチンを製造するためには、流行型に対して使用するウイルスの抗原性がマッチしていることが重要だ。しかし、思いどおりにいかないのが、インフルエンザワクチンだと小田切氏は続ける。 「遺伝子の中でも、人体の細胞が持つのはDNA(デオキシリボ核酸)ですが、インフルエンザウイルスはRNA(リボ核酸)です。DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つなのですよ。本来、同じウイルスが5年、10年はやり続けたとすれば、人間の体内には免疫ができてくる。しかし、インフルエンザウイルスは変化が速いため、体の免疫機構が追いつかないのです。 昨年、ワクチン不足が問題となりましたが、『有効性が高い』と考えていたウイルスがうまく増殖せず、前シーズンに使用したワクチン株に軌道修正したために、製造開始が例年より2カ月出遅れてしまったのが原因でした。私たち研究者からすれば、効果の高いワクチンを供給したい思いが強いのですが、毎年約2600万本分のワクチンを作る必要がありますから、国からの要請で、時にワクチン株を変更する妥協をしなければならないこともあります」 昨年は結局、H3N2亜型(俗称は香港型)ワクチンを製造し直したそうだが、ことしはどうなるのか。ことしのワクチン株は、
・A/Singapore(A型シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09 ・A/Singapore(A型シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2) ・B/Phuket(B型プーケット)/3073/2013(山形系統) ・B/Maryland(B型メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統) と、どのウイルスがはやっても対応できるようにA型2種類、B型2種類の4種混合で製造されている。予防接種シーズンの半年前にその冬の流行型を見極めるのがいかに至難の技であるかは、お分かりいただけたのではないだろうか』、「インフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもある」、「人体の細胞が持つのはDNA・・・インフルエンザウイルスはRNA・・・DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つ」、なかなか厄介な代物のようだ。 
・『どんな薬でもいずれ耐性を持ったウイルスが出現してくる?  ここまで、インフルエンザウイルスの脅威をお伝えしてきたが、一方で、今話題となっている新薬がある。「抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル」、通称「ゾフルーザ」だ。 インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で自身の遺伝子を複製し、増殖・放出することで同体内の他の細胞に感染を拡大すると言われているが、この新薬は、細胞内でのウイルス遺伝子複製に必須となる酵素(RNAポリメラーゼ)の働きを抑えることで、その増殖を防ぐことができるという。 「ゾフルーザが酵素部分に直接作用することで、ウイルスは子孫を残せなくなる。つまりそれ以上伝染できなくなるわけです。もちろん、“予防”のためのワクチンと違い、あくまで発症してからの“治療”。空気中に浮遊するウイルス自体をなくすこともできません。それでも、体内で発症してからウイルスを根絶できるのは画期的だと思います」 ゾフルーザがあればインフルエンザも怖くない! ……と、思いきや、小田切氏は「油断はできない」という。 「先にお話したとおり、インフルエンザウイルスは、進化がとても速いのです。どんな新薬にも一定の割合で自発的に抵抗性を示す『耐性ウイルス』が出現します。つまり、ゾフルーザにもいずれ、抵抗性を示すウイルスが出てくるかもしれないのですよ」 人体と同じく、自らを攻撃してくる物質に対して耐性をつくる。特集第1回の中屋敷均教授の話にもあったとおり、やはりウイルスは“生きている”のかもしれない。 「ただ、面白いのは、薬が効かないインフルエンザウイルスは、薬が効くウイルスよりも早く死んでしまうのです。やっぱりどこか“生きるために”ちょっと無理をしているのですよね。耐性を作るために負荷がかかっている分、短命になる。命を削って、彼らも薬と戦っているわけです」 いたちごっこ状態となっているインフルエンザウイルスとワクチンや薬の研究だが、今後、ウイルスの突然変異によるパンデミック(爆発的な流行)が起こり、まったく歯が立たなくなる……なんてことも、起こり得るのだろうか。 「20世紀には3度、大きなパンデミックがありました。1度目は1918年『H1N1亜型』でいわゆる『スペインかぜ』、2度目は1957年『H2N2亜型』でいわゆる『アジアかぜ』、3度目は1968年『H3N2亜型』でいわゆる『香港かぜ』と呼ばれるものです。いずれも鳥から由来したウイルスによるもので、『香港かぜ』は50年たった今でも季節性インフルエンザウイルスとして主流の一つとなっています。そして21世紀に入って最初のパンデミックは2009年に流行したブタ由来の『H1N1pdm09』です。全て人間社会にはなかったウイルスが突然流行したため、大きな問題となりました。 今後、トリやブタ以外から新たなウイルスが流入することは考えにくいのですが、これらのインフルエンザの動向は注意深く監視していくことが非常に大切になります。それに、実は2017/2018シーズンのインフルエンザは、諸外国でも大流行したうえ、1999年の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によるサーベイランスが始まって以来の大流行だったのですが、それほど大騒ぎになりませんでしたよね? 一年中調査・研究を続け、対策は強化されていますから、きちんと予防接種をして、うがい手洗いを心掛けてもらえれば、インフルエンザには負けません」 最も身近であろうウイルスの脅威克服のために、人間は多くの予防線を張ってきた。それでもまだ、世界的な視野で「人類に残された最大級の疫病」の監視を怠ってはならないようだ。 次回は、その予防医療を実現し、われわれの盾となっているワクチン研究の今を見ていく』、「1999年の感染症法・・・対策は強化されています」、にも拘らず、今回の新型コロナウィルスには世界中が手を焼いているなど、「ウィルス」との戦いはまだまだのようだ。

第三に、この続きを10月15日付けEMIRAが掲載した国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長の石井健氏による「アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/8121/
・『特集第2回でも触れたとおり、インフルエンザウイルスは間違いなくことしもやって来る。そして、予防のためのワクチンを人々は接種する。この「ウイルス」と「ワクチン」は、そもそもどのようにせめぎ合っているのか? ワクチンとその効用に大きく関わる因子「アジュバント」の研究開発を専門とする、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長の石井健氏に、抗ウイルスの現在、そしてこれからを聞いた』、面白そうだ。
・『ワクチンはウイルスからつくられる  「例えばインフルエンザのワクチンは何からできているかというと、“無害化した”インフルエンザウイルスからできています。ウイルスを一度バラバラにして、そこから熱の原因などになるものを取り除き、人の免疫システムが認識できるHA(ヘマグルチニン)というタンパク質にしているのです」 まずそう教えてくれたのは、ワクチン・アジュバント研究センターでセンター長を務める石井健氏だ。 ウイルスによる感染症にはいろいろあるが、多くの場合、一度かかるとそのウイルスに対して体が強くなり、二度はかからないと言われている。それと原理はほぼ同じで、ワクチンとは簡単に言うと、体にウイルスを覚えさせるためのもの。ワクチンを体に入れることで、ウイルスに“感染するマネ”を体に認識させる。するとそのワクチンのもとになったウイルスに対して免疫ができるため、病気になる原因を持ったウイルスが体に入ってきても、やっつけたり、弱めたりできるというわけだ。 「現在ワクチンで予防できる疾患というのは世界中で27種類あり、インフルエンザ、天然痘、破傷風などがそこに含まれます。新しいワクチンもどんどん登場していて、帯状疱疹(たいじょうほうしん)のワクチンもことし日本で認可されたので、来年には世の中に登場するのではないでしょうか」 帯状発疹とは、ヘルペスウイルスの一種、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって発症する。子供のころに水疱瘡(みずぼうそう)にかかった場合、大人になって免疫力が低下してくることで、体内に残っていた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活発化してしまうのだ。「大人の水疱瘡」として話題になった帯状疱疹だが、このワクチンにより、水痘・帯状疱疹ウイルスの再始動を予防することができるという。 ちなみにワクチンには、ウイルスの毒性を弱めた生ワクチン、不活性化および消毒した不活化ワクチン、毒性をなくしたトキソイドがある。生ワクチンはウイルスが弱いものの生きていて、体内で増えながら免疫力を高めていくため、免疫ができるまでに時間がかかるが、接種は1回で済む。不活化ワクチンとトキソイドはウイルスの能力をなくしているので、免疫ができても力は強くなく、複数回接種することで免疫力を維持する。 これらワクチンの開発には実に20年近い歳月を要するそう。数え切れない実験を行い、人間の体に入れても安全だというお墨付きが得られて初めて認可される。だから世界中で日々研究・実証が行われているが、何がいつ認可されるかはその進捗(しんちょく)次第。ただし、常に進化しているということは言えそうだ』、「帯状疱疹」への「ワクチン」が今年、「世の中に登場する」とは嬉しい話だ。「ワクチンの開発には実に20年近い歳月を要する」のでは、新型コロナウィルスへのワクチンはまだまだ遠い先のようだ。
・『ワクチンの効果を高めるアジュバントの存在  ところで、実はワクチンだけを投与しても、その効果は持続しない。ワクチンの効果を高め、持続性をよくするために、ほとんどのワクチンには「アジュバント」と呼ばれるものが含まれている。 「アジュバントとは、ひと言で言うと“ワクチンの効き目を高めるもの”です。特定の物質名ではなく、効果を増強する因子の総称。一般的には耳慣れない言葉ですが、開発の歴史は80年以上もあるんですよ。アルミニウム塩をベースにつくられるものが現在は主ですが、他に人間の体内にもともと存在する核酸などでもアジュバントはつくられています。アジュバントを含んだワクチンを投与すると、含んでいない場合に比べて免疫反応は早く起き、その効果も高く、しかも免疫力が長く持続する。そして現在の研究は、この免疫力をどこまで長くできるかという点に重点を置いています」 先述したワクチンの種類のうち、生ワクチン以外は全てアジュバントを含んでいる。具体的な病名で言うと、ジフテリア毒素や破傷風、百日咳、B型肝炎、肺炎球菌など、よく知られる感染症のワクチンのほとんどに含まれているのだ。つまり効果があると言われているワクチンには必ずと言っていいほどアジュバントが含まれており、逆にアジュバントなしのワクチンは効き目が低い、と言えるそうだ。 また、アジュバントには効き目を高める以外にも、メリットがある。 「アジュバントはワクチンの効き目を高めるものなので、ワクチンの中にある不活性化・無毒化したウイルスなどの抗原(免疫反応を発生させる物質)の効き目を高めた上で、そもそもの含有量を減らすことも可能になります。例えばインフルエンザが大流行し、より多くのワクチンが必要になったときには、アジュバントを含むことによってワクチン1つあたりに使う抗原量を減らすことができるので、より多くのワクチンを作り出せることになります。それに、効き目が高ければ、ワクチン摂取量を減らすこともできるでしょう」 仮に「抗原15マイクログラム:アジュバントなし」のワクチンがあったとしよう。ワクチンの効きをよくするアジュバントを入れれば、同種のワクチンが大量に必要となった場合、理論上では抗原を半分から10分の1にしても、効果がさほど変わらないワクチンをつくることができるという。 ちなみに、アルミニウム塩をもとにつくられているアジュバントは、約90年前に偶然その効果が発見された。製造方法が確立して保存性も優れているため、1932年にジフテリアワクチンに用いられてからというもの、現在世界で最も普及しているアジュバントだ。 「ただ、現在のアジュバントにも限界点はあります」』、どういうことだろう。
・『ワクチンとアジュバント研究が未来の医療を変える!?  現在主流のアルミニウム塩アジュバントが抱える問題、それは「ワクチンの効き目を高めてウイルスの活動を抑えることはできたが、ウイルスが感染している細胞をやっつけるような免疫力までは引き出せていない」ということ。また、発熱やアレルギー反応を起こす可能性もあるそうだ。そのため、“次世代アジュバント”の研究開発が急ピッチで進んでいる。 「ワクチンは万能ではありません。他のどのような物質からアジュバントをつくり出せば、より多くのウイルスに効果を発揮できるのか研究していかなければならないのです。それで、核酸や脂質の分子からアジュバント開発が進められていて、私は『CpGDNA』という、ウイルスや細菌のDNAに多くある配列(CpG配列)を組み込んだDNA断片をアジュバントとして研究開発しています」 ワクチンにアルミニウム塩からつくり出したアジュバントを加えていくという従来の方法から一歩進んで、今後は対象となる疾患に合わせたワクチン+アジュバントをつくることが求められていくという。 では、その研究開発は、これからどうなっていくのだろう? 「日本ではすでに、ミネラルオイルと植物由来界面活性剤をもとにしたアジュバントの臨床研究が行われるなど、さまざまな種類のアジュバント開発が進んでいます。今後は予防医学の観点から、アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています。といってもすぐに完成するわけではなく、まだ開発段階なので、実現するのは近未来ですね」 他にも、世界では熱帯地域における寄生虫が原因のウイルス性疾患など、緊急の対策が必要な感染症をはじめとする病気が50近くあるそう。「これらはワクチン開発、実用化を急がなければなりません」 感染症への対応でいえば、ワクチンができたことで、例えば天然痘ウイルスは1980年にWHOが世界根絶宣言を行っていて、以後の患者の発生はないと発表されているし、ポリオウイルスも近い将来根絶できると言われているそうだ。そうなれば、先述の50近い病気の原因を含むいろいろなウイルスを根絶できる時代が来るのかと考えてしまうが、「ワクチンはウイルスを消し去るものではない」と石井氏は続ける。 「ワクチンによって一つのウイルスをやっつけるというのは、体内からウイルスを排除することではありません。私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます」 これを大前提の出発点として、ワクチン開発は進む。いずれワクチン、そしてアジュバントが医療を大きく変える日が来るのだろう』、「アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています」、嬉しい話だが、私が必要とする時には間に合いそうもなさそうだ。「私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます」、「ワクチン開発」もなかなか難しそうだが、大いに頑張ってもらいたいものだ。
タグ:ウイルス (その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今) EMIRA 中屋敷 均 「人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る」 ウイルス=病原体とは限らない ヒトゲノムの45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されている 人体にとってウイルスは善か、悪か? 子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしている ウイルスは生き物なのか? 巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明 小田切孝人 「インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策」 本当は一年中流行しているインフルエンザ 風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」 湿度の低い冬場に流行する これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっている インフルエンザウイルスの“流行型”とは? インフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもある 人体の細胞が持つのはDNA インフルエンザウイルスはRNA DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つ どんな薬でもいずれ耐性を持ったウイルスが出現してくる? 石井健 「アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今」 ワクチンはウイルスからつくられる 帯状疱疹(たいじょうほうしん)のワクチンもことし日本で認可されたので、来年には世の中に登場するのではないでしょうか ワクチンの開発には実に20年近い歳月を要する ワクチンの効果を高めるアジュバントの存在 ワクチンとアジュバント研究が未来の医療を変える!? アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています 私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます
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人生論(その4)(勝ち組が威張る同窓会も60過ぎたら「ただの人」、小田嶋氏対談2題:2015年、舛添都知事はオリンピック肥大化に猛反発していた 『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(前編)、「美」から「コンプレックス」へ広告がシフトした理由『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(後編)) [人生]

人生論については、昨年8月23日に取上げた。今日は、(その4)(勝ち組が威張る同窓会も60過ぎたら「ただの人」、小田嶋氏対談2題:2015年、舛添都知事はオリンピック肥大化に猛反発していた 『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(前編)、「美」から「コンプレックス」へ広告がシフトした理由『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(後編))である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が昨年8月20日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「勝ち組が威張る同窓会も60過ぎたら「ただの人」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00036/
・『今回のテーマは「同窓会」。 同窓会に、あなたは行く派? 行かない派? それとも、行きたくてもいけない派? あるいはホントは行きたくないけど行く派? …さて、どの“派”だろうか? かくいう私は「5人以上の飲み会は苦手」という社交性の低さから、めったに同窓会には参加してこなかった。 が、数年前「一緒に行こうよ!」と半ば強制的に高校の同窓会に参加したところ……、ものすごく楽しくて。「ウブな青春時代を3年間同じ場所で過ごしたってだけで、こんなにも心地いいものなんだ?」と至極感動した経験がある。 残念ながらその後は再び同窓会から遠ざかっているが、「同級生っていいじゃん」という確固たる観念は今も変わりなく続いている。 ところが、男性の場合、少々事情が違うらしい。 「同級生はみんな大企業のエリートばっかりなんで…」「活躍する同級生を目の当たりにすると落ち込むんで…」と複雑な感情を話してくれたり、 「『うちの会社が?』だの『うちの息子が?』だの自慢話ばっかでつまらない」「成功している同級生に嫉妬して色々という奴がいるから、気分が悪い」と吐き捨てたり、 「同窓会なんて行く意味はない。ノスタルジーに浸るか、病気の話をするか、人を妬んでグダグダ酒を飲むだけ」と、積極的不参加を訴える人もいた。 年齢、役職、職位、職種など、あらゆる上下関係を基盤とした会社組織で長年過ごしたことが関係しているのか? はたまた「1年上の先輩と給料が1万円違っていても気にならないけど、同期より100円少ないだけで、ものすごく落ち込んだりするのがサラリーマン」という、会社員ならでは習性によるものなのか? 行くも行かぬも個人の勝手と言ってしまえばそれまでだが、先日、60代の男性にインタビューをしたときに、流れで同窓会の話になり、それが実に興味深く、「60過ぎの同窓会」についてあれこれ考えてみようと思った次第だ。 というわけで、たかが同窓会。されど同窓会。 お盆休み明けの今回は、60歳で定年を迎え、再雇用で働く63歳の男性の話からお聞きください。 「50歳を過ぎた頃からですかね。定期的に高校の同級生と飲み会をやるようになりましてね。毎回集まっているのは10人くらいだと思います。あとは僕も含めて20人くらいに連絡はしてるはずです。最初の頃、何度か僕も参加しました。同級生の中には役職定年になってやる気をなくしている奴もいるし、孫がかわいくてしょうがない奴もいる。 それはそれでいいんだけど、なんだか爺(じい)さんのぼやきを聞いてるようでね。僕自身は忙しいというのもあったので、ほとんど参加しなくなっていました。ところが先日、常連出席組の1人から『たまには来いよ』と連絡が来て、久しぶりに行ってきました。 そうね。7、8年ぶりですかね。みんなもう定年になっていて、来ていたのは雇用延長組がほとんどでした。ただ、常連組の1人はがんで闘病中、1人は親の介護で実家に戻って再就職、1人は奥さんの具合が悪くて参加できなくなったみたいで。 それは悲しいことではあるけど、なんか妙にリアルで。60過ぎるとそういった変化は多かれ少なかれ誰にでもあるので、近い将来に備える上でも同級生の動向を知るのは意味があるし、みんなと話していると『ああ、自分だけじゃないんだなぁ』となんかホッとした側面もあったように思います」』、河合氏が「5人以上の飲み会は苦手」とは意外だ。私は、大学の学科の同期会はほ毎回参加しているが、高校の同期会は1回おきに参加している。
・『職場も住む場所も違う仲間との会話が貴重な機会に  「60歳まではなんやかんやいって、どんな会社にいるか?とか、役員になれるとかなれないとか、会社という枠での違いをお互いに気にしてしまうけど、60歳過ぎると大企業で出世した人も、小さな会社でやってきた人も、横を一線になる。 みんな一緒。学生時代にリセットされるんです。 勝ち組だろうと負け組だろうと、多く稼いでるとか、見た目が若いとか関係なく、健康や家族の問題は全員の共通の関心ごとです。年のせいなのか何なのかわかりませんが、自分でも驚くくらい、そういった問題に頭も心も縛られるようになる。 そんなとき同級生と、損得勘定なしで、かっこつけずに話せるのはすごくいいと思いました。 同じ会社でもない、近所に住んでいるわけでもない。恥も外聞もなく色々と話せる。60過ぎたら同窓会って、そういう貴重な機会になるんじゃないでしょうか。男って、あまり個人的なこと話さないですから……。 僕は同窓会に毎回顔を出すほど積極的にはなれないけど、『どうせ来ないよ』と愛想尽かされて連絡が途絶えないように、たまには出席するつもりです」 ……さて、いかがだろうか?) 私は40歳の時、50代の知人たちが「50過ぎると人生の逆算が始まるっていうのかな。もう、あれもこれもやってしまえ!と、やぶれかぶれな気分になるんだよ」だの、「50を過ぎるとさ、イチかバチかって気分になるんだよ」だの言っているのを聞いても、今ひとつ理解できなかった。 だが、実際に自分が50代になると……、実によく分かる。理屈じゃない。最近の私は結構、やぶれかぶれだし、以前にも増してイチかバチかって気分になることがある。 しかも、50歳を過ぎた途端「親が老いる」事態に直面し、同級生の「おまえもか。お互い大変だな」という言葉に何度も救われた。 少々大げさに思うかもしれないけど、「この世に同じ問題を抱えている人がいる。ストレスが一切かからず話せる人、共感してくれる人がいる」と肌で感じられたのは、何物にも代え難いものだった。 であるからして、あの時と同じように私も60歳を過ぎると「健康とか家族の問題」に翻弄される気持ちや、それを話せる仲間がいることの価値をもっとリアルに理解できると確信している』、同感だ。
・『定年、再雇用後はゆとり重視へ仕事観が変わる  実際、60歳以上の男女を対象に内閣府が行った調査では、60代前半では70.9%、後半の71.1%が、日常生活の不安事項のトップに「自分や配偶者の健康や病気」を挙げ、それに続くのが「自分や配偶者が寝たきりや身体が不自由になり介護が必要になること」(60代前半:61.8%、60代後半:62.1%)だった。 同様の不安はきっと50代でもあるかもしれない。だが、仕事の悩み、部下の悩みは日々尽きないし、働くことの忙しさが、そういった「仕事外の問題」を忘れさせてくれることも多い。 くしくも男性は、自分が驚くほどそういった問題に「頭も心も縛られがち」と語っていたけど、その背後には、60歳後の「会社との距離感の変化」も関係する。 労働政策研究・研修機構が定年退職で再雇用(雇用延長含む)になった人たちを対象に行った調査で、「定年退職した直後」の自分について8割の人が「人並みにはやってるし、寂しくなどなかった」と自己イメージを肯定的に捉え、6割以上が「合理的に働くという気持ちはなかった」と回答した。 ところが、実際に働き始めると半数以上が「仕事への考え方が変わった」とし、「自分に負担がかからないよう上手に仕事を選んでやっていこう」「不慣れな仕事はしないようにしよう」「業績にとわられず、ゆとりを持って仕事をしよう」といった具合に、コスパにあった合理的な働き方に心情が揺らぐ実態が明らかになったのである(「定年退職後の働き方の選択に関する調査研究結果」)。 定年直後は「自分のスキルを生かして頑張ろう!」と思っても、実際に働いてみるとその気持ちが萎える。「期待されないこと」「遠ざかる責任」「賃金の安さ」を目の当たりにし、“片思い”だったことを身をもって知り、やる気がうせる。 まだまだ体も頭も動くし、やる気もある。なのに会社は自分をちっとも認めてくれない。自分の努力ではどうにもならない「年齢」という壁にぶつかり、自ら会社との距離、仕事との距離を遠ざけていくのだ。 つまるところ、若い時にいい企業に入り、出世街道を歩み、大会社の役員になっても、定年になれば「ただの人」。会社の階層の階段の上がり方、到達点、そこまでのプロセスや経験、見てきた景色は異なれど、定年になればば全員「ただの人」になる。 そんな心の空虚感が余計に、健康や家族の問題に悩むスキを与えてしまうのだろう。 会社には自分の存在意義や生きる力を高める実によくできた仕組みがあり、その1つがルーティンである。定年前までは自分で意識的に努力しなくても、会社に所属するだけで、日常=ルーティンが自然と存在した』、確かに「日常=ルーティン」に身を委ねていると楽ではあるが、進歩はない場合が多い。
・『毎日の決まった行動パターンに救われている  ルーティンには、 ・ 決まった時間に起きる ・ 決まった朝食を取る ・ 決まった順序で家を出る準備をする などの1人完結型と、 ・ 食事はできる限り、家族あるいはパートナーと決まった時間に食べる ・ 家を出る時に必ず「行ってきます」と言う(家族などがいる場合) ・ 出社する時間が決まっている ・ 日々やるべき仕事が決まっている ・ 退社する時間が決まっている ・ 家に帰った時には必ず「ただいま」と言い、家族が「おかえり」と言う ・ 余暇はリビングなどで、家族でテレビを見たり世間話をしたりする といった2人以上のメンバーの間で繰り返されるルーティンがある。 毎日通う職場、そこで行う仕事は、メンバー型ルーティンの典型である。 毎週のチーム打ち合わせや管理職会議、アフターファイブの「ちょいと一杯」などもルーティンだし、理不尽な上司のむちゃぶりや突然の異動や出張もルーティンの変形型で、ある意味日常のスパイスになる。 リアルタイムではしんどいルーティンも、消えると妙に寂しくなりがちである。けったいなことに、つらい思い出ほど懐かしくてたまらないのだ。 とにもかくにも定年後は予期せぬ喪失の連続である。その度に心に穴があき、それと呼応するようにプライベートの心配事は増え、決して人には言えない寂しさだけが増していく。 おまけに肩書というやっかいな代物があると、おのずと肩書に惑わされ、似たような立場の人たちとつながりがちだ。だが、定年になれば肩書は消え、人間関係もリセットされる。それなりの地位にいるときは、いつか、どこかで、その力を借りることがあるかもしれないからと付き合ってくれる人は多いが、肩書が消えればあっさりと去る人も同じくらい多い。 もちろん定年前から肩書きとは全く関係ない人間関係を持っている人もいるが、問題がプライベートなことであればあるほど身近な人には言えないというケースもある。そんなとき「遠距離付き合い」の友人がいればどんなに心強いか。同窓会の誘いがあったときにその場に行き、恥も外聞もなく話せる人がいれば救われることは多いはずだ。 私の友人のお母さんは70歳を過ぎてから「誘われたら断らない」と決めたそうだ。 きっとその真意は、自分が70歳を過ぎたときにこそ分かるのだと思う』、「定年になれば肩書は消え、人間関係もリセットされる」、付き合いの幅がかなり絞られたのは確かだ。
・『人間関係の広さと質は健康にも影響している  最後に、非常に優れたネットワーク分析に関する調査結果を紹介しておく。 論文のタイトルは“Social relationships and physiological determinants of longevity across the human life span”。調査を行ったのは、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校社会学科研究グループで、この研究の売りは「大規模な異なる年齢層(若年、壮年、中年、老年)の縦断データ」を用い、「社会的つながり」と「心臓病や脳卒中、がんのリスク」の因果関係を明らかにした点だ。 ※分析に用いたサンプルは、Add Health(7889人)、MIDUS(863人)、HRS(4323人)、NSHAP(1571人)の4つで、それぞれ2時点の縦断データ。健康度の測定項目は、「血圧、ボディ‐マス指数(BMI)、ウエスト周囲径、炎症の測定指標となる特定のタンパク質(CRP)」で、これらはいずれも心臓病や脳卒中、がんの発症に高い関連性を持つ。 調査では、「社会的つながり」を、「広さ=社会的統合」と「質=社会的サポート」に分けて質問を設定。 ▼「広さ」については、結婚の有無や、家族、親戚、友人との関わり合い、地域活動、ボランティア活動、教会への参加などについて「接触する頻度」「一緒にいて楽しいか」「居場所があるか」を問う質問項目 ▼「質」については、おのおのと「互いに支え合う関係にあるか」「互いのことを分かり合えているか」「自分の本心を出せるか」など「心の距離感の近さ」を問う質問項目 について回答してもらい、得点化している。 その結果、人間関係の「広さ」は、若年期(10代~20代)と老年期(60代後半以上)の人たちの健康に、人間関係の「質」は、壮年期(30代~40代前半)から中年期(40代後半から60代前半)の人たちの健康に、高い影響を及ぼすことが分かった。 具体的には、 ・若年期の社会からの孤立は、運動をしないのと同じくらいCRPによる炎症リスクを上昇させていた。 ・老年期の社会からの孤立は、高血圧のリスクに大きく関連した。その度合いは、糖尿病患者が高血圧になるリスクを上回った。 ・中年期の社会的なサポートは、腹部肥満とBMIを低下させていた。 ・中年期の社会的なサポートがない人は、CRPによる炎症リスクが高かった。 これらを大ざっぱにまとめると、「若い時はあっちこっちに顔を出してネットワークを広げればいいけど、健康不安が高まるミドルになったら、健康な食事や運動と同じくらい信頼できる(親密な)友人は大切だよ。でもね、60歳過ぎたらいろんなところに行って、いろんな人と会った方が健康でいられるよ」ってことになる。 ふむ。たかが同窓会。されど同窓会。60歳過ぎたら参加できるよう関係をつなぎとめておこう……』、「若い時はあっちこっちに顔を出してネットワークを広げればいいけど、健康不安が高まるミドルになったら、健康な食事や運動と同じくらい信頼できる(親密な)友人は大切だよ。でもね、60歳過ぎたらいろんなところに行って、いろんな人と会った方が健康でいられるよ」、確かにその通りなのだろう。

次に、3月16日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏、元電通の岡氏らの対談「2015年、舛添都知事はオリンピック肥大化に猛反発していた 『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(前編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00077/031100008/?P=1
・『3月16日、「人生の諸問題」の語り手のお一人、コラムニスト小田嶋隆さんの新刊、その名も『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』が刊行されました。前作『超・反知性主義入門』から5年、2015年から現在までの間に日経ビジネスオンライン/電子版に毎週執筆したコラムをえり抜いた、まさに現代日本のクロニクル。 でも刊行記念とはいえ、こんなタイミングで座談会なんて、無理かな? と思ったら、なんと、岡、小田嶋、清野に加え、その他関係者まで意気軒高に会場に集まってくださいました。 コロナ騒動真っ最中の対談敢行です。本日は岡さん、小田嶋さん、編集Yさん、東京工業大学のヤナセ先生、コーディネーター清野とフルメンバーが集まりました。権威筋の推奨通り、みんな、1メートル離れて座りましょう(Qは進行役である清野氏の発言)』、このブログの前回、昨年8月23日にも座談会を紹介したが、今回も興味深そうだ。
・『岡:だから、もう全然、できなくなっちゃったんだよね、今。 Q:やっぱり仕事に影響が出ていますか。 岡:いや、仕事じゃなくて。 小田嶋:そう、確かにマージャンは、とても近くに座って、牌も手でばんばん触るというもんで、結構よくないですよね。 Q:あ、しょっぱなからマージャンの話ですか。 岡:そう、雀荘、やばいでしょう。 Q:でしたらeゲームみたいに楽しめばいかがですか。 岡:そうか。そうすれば、家でできるか。それだったらメンツが簡単に集まるよね。 小田嶋:ただ、eマージャンにすると、普通のルールでしかできなくなるでしょう。ローカルルール満載のリアルマージャンのスリルがなくなる。 岡:プログラミングに詳しい人がいたら、できるんじゃない? ということは、一番詳しいのは小田嶋なんだから、小田嶋がプログラムをどうにかしてくれればいいんだよ。 小田嶋:そうだね。ちょっと研究してみよう』、マージャンは確かにウイルスが伝染するにはもってこいの場のようだ。
・『ハイリスク役満世代  Q:小田嶋さんは、待ち合わせをよく忘れていますが、こういうことになると、パパッと話が決まるんですね。(*こういうこと、ああいうことは、『人生の諸問題 五十路越え』など好評既刊でどうぞ) 岡:ネットでマージャンができるなら、話は早い。でも、やっぱ、なんかねえ。 Q:結局、おじさんは、うだうだ集まりたい、と。 岡:そうなんだよ、集まって、顔突き合わせてやりたいんですよ。だいたいコロナウイルスって、今のところの致死率でいえば、インフルエンザぐらいでしょう。ちょっとこの騒ぎ方は、ヒステリックじゃないですかね。 Q:今現在、正体不明であること、感染力が強いこと、治療法が分かっていないことなど複合的な不安要因があって、大きな注意が必要とされています。また、トイレットペーパーや抗菌、除菌グッズの買い占めは、日本だけでなく世界中で起こっています。 小田嶋:それでいうと、俺なんかはハイリスクというのに、もろに当てはまる人物像なんですよ。60歳以上、高血圧、糖尿病、既往症で服薬中って、どんどん役満に近づいていく。 岡:60歳以上って、そこはリスクに入らないんじゃないの? 亡くなっているのは、70歳とか80歳以上だよ。(*この認識は正確ではありません。岡さんの願望であることをお断りしておきます。) 小田嶋:一応、60歳以上がハイリスクらしいけど、75歳以上のいわゆる後期高齢者と呼ばれるところの人たちが、本当は危ないゾーンだと思いますけどね。 岡:だいたいさ、後期高齢者って、この言葉は間違っているというか、ひどくない? 小田嶋:ひどいよね。後期って何だよ、じゃあ、末期ってのもあるのかよ、みたいな。 Q:自分たちが近づいていくと、他人事じゃないですよね。 岡:まあ、コロナは驚いたけど、日本って何かこう、一致団結といえばそうだけど、ものすごい勢いで一つのことを騒いでいくというのは相変わらずで……。 小田嶋:特にメディアがそうだよね。ところで、そのメディアから足を洗って、アカデミアに行かれたヤナセ先生とは、お久しぶりですね(*ヤナセ先生は2018年に、日経BPのあやしいプロデューサーから東京工業大学教授へ転身されました)。今日は大学の方はいいんですか。今年の入試とかは大変だったでしょう。 ヤナセ:大学自体はすでに春休みなんですが、その前に入試は何とか無事に終わりました。万が一のため大学も受験生に配るマスクを用意して、試験のときは、基本的に受験生にはマスクをして受けてもらうということで』、「日本って何かこう、一致団結といえばそうだけど、ものすごい勢いで一つのことを騒いでいくというのは相変わらずで……・・・特にメディアがそうだよね」、同調圧力の強さは並大抵ではない。
・『オダジマの入試時期は風疹が大流行  岡:異様な光景だよね。 ヤナセ:おかげさまでトラブルもなく二次試験も合格発表も終わりましたが、卒業式は大幅縮小、入学式は中止です。 小田嶋:それでいうと、俺たちのときに風疹、流行ったよね。大学の入試中に風疹のやつは結構いたのよ。 岡:流行った、流行った。 小田嶋:俺は入学してから罹ったんだけど、すごい大変だったのよ。科目登録のときになっても、まだ風疹で死んでいたからさ、岡が代わりにやってくれたんだよね。 岡:そういえば、そうだったね。 小田嶋:お前が俺の科目登録をしたというのが運の尽きで、これがひどい登録だった。 小田嶋:だって、フランス語と英語を同じ時間にダブルで登録しているんだよ。病から復活して、新学期をはじめたら、これはどういうことなのか? と。 Q:早速、どちらかの単位を落とす、という話になっちゃったんですね。 小田嶋:昔はe登録とか、そういうのがまるっきりなかったから、ダブりのチェック機能もなく、いい加減で。 岡:僕が理解している小田嶋隆というものから、適切な科目を推理して登録した。単位を取るのが楽だとか、試験がない先生だとか、出欠を取らないとか、そういうのは一切考慮していない。 小田嶋:何だか知らないけど、こいつの趣味で西洋史とか取らされたんだよ、俺は。 岡:でも、優しいと思わない? 小田嶋と僕って、学部も違うんだよ。それで教育学部の科目登録は、いろいろな条件があってすごく面倒くさいわけですよ。だから、まあ、間違っちゃったけど。 小田嶋:そう、面倒くさかったね。 岡:ね、優しいでしょう。 Q:ご自分の登録に重複はなかったんですか? 岡:僕、その辺は抜かりがないですから。 全員:(出た……。) 小田嶋:ところで、今日は話題って、用意してあるんですか?』、岡氏が「風疹で死んでいた」小田嶋氏に代わって「科目登録」をしたとは腐れ縁の典型だ。
・『5年間の「空気」はどう変わったのか  編集Y:はい、それはもう、小田嶋さんの新刊本について、ということで。3月16日に、弊サイト連載「ア・ピース・オブ・警句」の集大成、『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』が書店の棚を飾ります。 岡:(まだ印刷済みの本ができていなかったので、カバー見本を見つつ)「アベさんと日本の5年間」――って、これ、サブタイトルなの? すばらしいね。 編集Y:あ! ……それは見本用の仮のもので、最終的には改題しました。で、巻末には過去5年分、2015年から19年の、小田嶋さんのコラムの掲載履歴を付けさせていただいています……ううっ。 ヤナセ:どうしたの? 編集Y:これを見ていたら、ちょっと泣けてきました。小田嶋さんは、なんてマメに、倦まずたゆまず淡々と毎週毎週、書き続けてくださったんだろう、と……。 Q:その前に、私は担当の編集Yの苦労を思って、泣けてきましたけど。 岡:そうだよねえ。本来は。 小田嶋:編集Yさん、大変でしたよ。いつも締め切りと筆者の筆進みの板挟みで。 Q:あんたが言うんかい! まあ、そこで今回は、この5年間をお二人に振り返っていただこうかな、というわけです。 岡:確かにこの5年間ということでいえば、小田嶋には災難がたくさん降り掛かってきた年月だった。 小田嶋:自転車で転んで、足、折ってから、糖尿病でしょう、膝の大手術でしょう、脳梗塞でしょう。 Q:ちなみに皇居前、小雨の竹橋で自転車ごと転がって救急車で運ばれたのが、2015年。詳細は『人生の諸問題 五十路越え』(日経BP刊)に譲りますが、小田嶋さんの入院先にこのメンバーで押しかけて、そこでも対談を敢行しましたね。 小田嶋:そうね、そこから始まって、5年の間に入退院を繰り返しましたが、まあ、年を取ることのいいことは、そういうことがあっても別にどうってことない、ってことでしたね。 編集Y:え。 Q:それって、本当? 岡:だったら、それほど貴重な5年間じゃなかった、ということになるぞ。 小田嶋:そう。同じことが30代、40代で起こったら、結構ショックを受けていたはずだけど。 岡:そうだよ、25歳から30歳でそうなっていたら、人生が別のモノになる。 小田嶋:足を折って走れなくなったというのが30代だったら、俺にしても、「ああ、私の人生は半分終わった……」とおそらく思うよね。けれども、今だとたいして残念じゃない。というのはある。 岡:もう陸上部じゃないしね。 小田嶋:日常でそれほど走ってないしな、って。そもそも、走れないしな、というのもあるけど。 Q:だんだん、悟りへの道が開けてきました。 岡:だいたい、2015年って何があった年?』、高齢者になってからの入院は、「30代」ほど「残念じゃない」、というのはその通りなのかも知れない。
・『空気を読まない舛添さん、オリンピック予算に猛反発  小田嶋:その年は舛添さん(要一・前東京都知事)に、人生の諸問題がいろいろ発生した年だった。オリンピックの開催が決まって、国立競技場の設計が進んだら、すごく予算が膨張して、当時都知事だった舛添さんがそれに対して怒って。 岡:今考えると、たいへんまっとうな怒りだよ。 (前略)舛添都知事は、さる連載コラムで《新国立競技場の建設について、誰が最終的に責任を持つのか!?》《根拠不明な都の拠出額「500億円」 文科省は新国立競技場問題に誠実な回答を!》という寄稿をしている。  一読する限り、私の目には、舛添都知事の言い分は極めてまっとうに見える。 (中略)早い時期から予算オーバーが懸念され、工期の遅れが心配され、施工の困難が予想されていた状況をものともせずに、計画は奇妙な具合いに見直されたり手直しされたりしながらも、全体としてじりじりと前に進み、解体への反対運動が起こっていた旧国立競技場も、あっさりと破壊されてしまった。 で、ここへ来て、いよいよどうにも間に合わなくなった時点で、はじめていきなりお手上げのポーズをしてみせる形で、関係者が、各方面にバカな説明を繰り返し始めた次第だ。で、何をどうトチ狂ったのか、当事者以外の何者でもない文部科学大臣自らが、予算オーバーの尻を持って行く相手に向けて、当事者意識を持てだのという驚天動地の説教を 垂れているわけです。 こんなバカな話があるだろうか。舛添都知事は次のように述べている。 「新国立競技場建設の責任者に能力、責任意識、危機感がないことは驚くべきことであり、大日本帝国陸軍を彷彿とさせる。日本を戦争、そして敗北と破滅に導いたこの組織の特色は、壮大な無責任体制になる」「東京裁判の記録を読めばよく分かるが、政策決定について誰も責任をとらないし、正確な情報、不利な情報は上にあげない。新国立競技場建設について、安倍首相には楽観的な情報しか上がっていなかった。これは、各戦線での敗北をひた隠し、『勝利』と偽って国民を騙してきた戦前の陸軍と同じである」 まさにご指摘の通り、新国立競技場建設をめぐる物語は、意見の集約のされ方や、現状認識のあり方、決断のされ方やその受け継がれ方に至るまで、旧日本軍の無責任体制そのものだ。 この度、建設費をめぐって、舛添さんと下村さんの間で論争が起こったことは、幸運なめぐりあわせだったと私は考えている。もし現職の都知事が、猪瀬さんのままだったら、580億円の追加支出は都の臨時予算としてすんなり計上され、文科相と都知事が握手する絵柄の写真付きで、 「都民の夢のために、580億円を快諾」とか、そういう記事が配信されていたのかもしれない。 それどころか、工期が遅れていることや予算がショートしていること自体、報道されていなかったかもしれない。うちの国の巨大組織は、誰も責任を取らないで済むタイプの決断を好む。というよりも、われわれは責任を分散させるために会議を催している。(以上、『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』より引用) 小田嶋:ところが当の本人に公私混同話がずるずる出てきて、結局、翌年にぐずぐずで都知事を辞職することになって。 岡:そうそう、16年に都知事選があったよ。 小田嶋:そういうことがあったけど、その意味でいえば、15年はわれわれがはっきりと自覚する時代の区切り目ってわけではなかった。 岡:時代の区切り目といったら、それは、震災でしょう。 編集Y:あの……販促企画上、2015年以降の話題で……。 岡:東日本大震災から、もう10年か……(と、スルー)。 Q:9年です(しかも、間違っている)。 岡:そう、9年がたっているでしょう。でも、その後に大きな区切り目って、あんまりない気がするんですよね。 Q:昨年は平成から令和への改元がありました。 小田嶋:ああ、令和ってやつ、あったね。 Q:(ガクッ) 岡:まあ、でも、東日本大震災と、阪神大震災の二つの震災が日本社会に与えた影響は大きかった。 小田嶋:阪神大震災の年は、オウム真理教の大事件もあった。その意味で1995年は、一つの節目だった気がする。 Q:「失われた10年」が「20年」にならんとするころに、リーマン・ショックによる金融崩壊があり、09年、10年あたりに、その影響がボディブローのように日本に来て、11年に東日本大震災です。 岡:リーマン・ショックっていつだっけ?  Q:(ガクッ) 小田嶋:2008年ですよ。俺にとって不思議だったのは、第2次安倍政権に対する、いろいろな人たちの評価の違いの中で、大学の関係者がわりと安倍政権に好意的なことだったのね。そういう人たちがそこそこ多いのはなぜか、というと就職がよかったからなんだよね。 岡:なるほどね。 小田嶋:大卒の就職だけを取り上げると、非正規が増えたりとか問題はいろいろあるんだけど、新卒に限れば震災以降に就職状況が立ち直って、好調が続いた。 岡:失業率も低いしね。 小田嶋:大学の学生を直接見ている人たちに限れば、安倍政権で世の中が明るくなったような感じを持っている。それで、新卒の就職とは微妙に違うけど、俺がこの数年、患者目線で詳しくなった医療現場でいうと、女性医師の比率が上がっているな、と。 Q:もう一つの職業的な変化がそれですか。 岡:その患者目線で実感した、というのは、ちょっと避けたい事態だけどね』、「第2次安倍政権に対する・・・大学の関係者がわりと安倍政権に好意的なことだったのね・・・就職がよかったから」、「大学の関係者」の評価がここまで表面的要因で左右されるとは、驚かされた。
・『高齢男性のコミュニケーション問題  小田嶋:あくまで個人的な実感だけど、女性医師の方が全然優秀。腕とか医学的知識とかは、こっちからは正確に評価できないけど、何しろコミュ力がまるで違う。 岡:男の医者で患者の目を見ないという人は、結構いる(笑)。 小田嶋:男の医者って、俺からしても、この先生、大丈夫かなって思う人が結構いるんですよ。病気についてちゃんと説明ができて、患者とコミュニケーションが取れる人が、あんまりいないのよ。 Q:それを小田嶋さんに言われるのは、とてもまずいことだと思います。 小田嶋:いや、これ、本当よ。俺が接した女性のお医者さんは、あなたは今、こういう状況で、治療はこうでこうで、というコミュニケーションがちゃんと取れるんですよ。医大が入試で女性の受験生に露骨な差別を行っていたけど、医者ってむしろ女性向けの仕事ではなかろうか、と思います。 岡:ただ一方で、患者サイドのコミュ力という問題もあるだろう。はたから見ていても、どうしようもない患者って、いるじゃないか、病院には。 小田嶋:その問題を集約すると、おそらく、じいさんのコミュ力のなさということに整理される。 岡:それはおおいにあるな。 小田嶋:すごいですよ、じいさんって。俺は自分の入院回数が、もうよく分からなくなっているぐらい、ひんぱんに病院にお世話になったけど、おかげで入院しているおばあさんたちのコミュ力の高さと、じいさんのだめさ加減、看護師さんへの迷惑のかけ方のひどさっていうのを、いやというほど見ましたね。 Q:あくまで小田嶋さん個人の感想です。 小田嶋:じじいって本当、ひどいよ。 岡:そんなにひどい? 小田嶋:うん。全然、話にならない。一般社会でいえば、電車の中で怒っているのも、たいていがじいさんでしょう。病院でもそう。ナースさんに理不尽に文句を付けているとか、意味なく怒っているとか、オレを誰だと思っているとすぐ言うとかは、たいがいがじいさん。 岡:NHKの番組を見ていたら、認知症の第一人者である聖マリアンナ医大の先生がいて、その先生が認知症になった話を放映していました。彼はデイサービスというものを日本で提唱してきた人なんだよ。デイサービスなどのケアが充実すれば、介護をする家族の負担は減るし、本人も仲間がいた方がいいですよ、といって推進したんだけど。 小田嶋:まっとうな主張ですよね。 岡:そうでしょう。でも、自分が認知症になったでしょう。それでデイサービスに行くでしょう。そうすると、自分自身に、まったく笑顔が出ないんだって。 全員:……。 岡:それで、その先生は1週間も持たずに、家族に「(通所を)やめさせてくれ、耐えられない」と。 Q:せっかく自分がよかれとつくった仕組みなのに。 岡:そうなんだよ、自分でつくって、拒否するのはなぜなんだ、と。その先生がいうには「あそこでは孤独すぎる」っていう話なわけ。 全員:うわ……(身につまされています)。 Q:おうちには奥さまがおられますよね。 岡:上品でやさしい奥さんがいて、娘さんが「おばあちゃんが大変だから、デイサービスに行ってあげて」と諭しても、「でも、しょうがないだろう、行きたくないんだから」なんていっちゃっているわけです。 Q:それ、岡さんと小田嶋さんが、折に触れて使ってきたいい分ですね。 岡:いや、だから、そういう当事者の、しかも仕組みをつくってきた人ですら、我が身になると、話はまた別になってきちゃうんだよ』、「入院しているおばあさんたちのコミュ力の高さと、じいさんのだめさ加減、看護師さんへの迷惑のかけ方のひどさっていうのを、いやというほど見ましたね」、その通りなのだろう。「NHKの番組」は私も岡氏と同じ驚きを感じた。
・『ジャイアンシステムによる「上から適応」  小田嶋:病院では、おばさんとか、おばあさんたちは、ナースさんともすぐ仲良くなるし、おばあさん同士も仲良くなるんだけど、じいさん同士は仲良くならない。 岡:ああ、無理、無理。僕は絶対、無理ですね。 小田嶋:岡は、そういう共同生活みたいなところは、俺よりもあり得ないでしょう。 岡:僕は、小田嶋に比べると社会に適応している風じゃない? サラリーマンも意外と長くやったし。 Q:小田嶋さんの8ケ月に対して、岡さんは19年ですから、そこは圧勝です。しかし、みずからおっしゃる通り、あくまでも「適応している『風』」ですけど。 岡:それは僕に社会適応能力があったわけじゃなくて、周りが僕に対する適応能力が高かっただけだ、と。いや、自覚していますよ、我ながら。 小田嶋:俺は岡にすごく適応してきた感じがあるぞ。だから、岡は「上から目線」じゃなくて、「上から適応」なんだよ。自分が環境に合わせているんじゃなくて、環境を岡にフィットさせるようにつくりかえていってしまう。 岡:ということは、やっぱり僕はデイサービスも老人ホームも、まるでだめじゃない? Q:岡さんがみずから、上から適応の、老人ホームの新ビジネスモデルをつくってはどうでしょうか。 小田嶋:ジャイアンシステムみたいなのをつくるといいよ。あいつとは合わないって、避けていくやつは消えていって、気が付くと、介護してくれる人も、仲間も、自然に自分とフィットする人間しかいなくなっている仕組み。そこで、岡はビールの空き箱をひっくり返して、上に乗って歌っていればいいじゃん。 岡:なんか、ばかみたいだけど、仲間を間違えなければいい。 Q:というか、「人生の諸問題」を語るこの場も、結局、岡さんの上から適応でここまで回ってきたともいえなくもありません。 小田嶋:まさしくジャイアンシステムね。 岡:本当だ。のび太、スネ夫、しずかちゃんもいる。ちなみに、のび太は編集Yさんね。 Q:それで、スネ夫は、もちろん小田嶋さんね。 岡:ところが僕は小田嶋に、「お前はジャイアンの外見で中身がスネ夫だ」っていわれてきた。ということは、僕は結構、最低の人間ということになるじゃないか。めちゃくちゃだよね。 Q:力×知恵という意味なら最高じゃないですか。 岡:でも、横暴×セコさだったら、最低だね。年を取ると、そっちの悲しい末路の方にリアリティがある。 小田嶋:これ、大切な問題ですけど、じいさんはじいさんが嫌い。 岡:そう、じいさんはじいさんが嫌いです。 Q:はい。ばあさんもじいさんが嫌いです。 岡:それで、じいさんは意外とばあさんが好きなんだよ(笑)。 編集Y:あの……新刊……。 小田嶋:そこでまた、いろいろ問題が起きていくんだけど、一つ確かなのは、じいさんは誰からも愛されない、ということ。じいさんは本当に孤独なんですよ。 Q:……その「じいさん」を語る小田嶋さん自身が、ほかならぬ「じいさん」なのではないか。話をうかがっているうちに、心理学でいう同属嫌悪を私は感じるのですが。 小田嶋:う。 岡:いや、話を変えよう。それを認めるのは、辛すぎる。 (辛すぎるお年ごろ、ということで、後編に続きます)』、「一つ確かなのは、じいさんは誰からも愛されない、ということ。じいさんは本当に孤独なんですよ・・・心理学でいう同属嫌悪を私は感じる」、いまから覚悟しておく必要がありそうだ。

第三に、この続きである3月26日付け日経ビジネスオンライン「「美」から「コンプレックス」へ広告がシフトした理由『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(後編)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00077/032300009/?P=1
・『「人生の諸問題」の語り手のお一人、コラムニスト小田嶋隆さんの新刊、『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』が刊行されました。前作『超・反知性主義入門』から5年、2015年から19年までの間に、日経ビジネスオンライン/電子版に毎週執筆したコラムをえり抜いた、まさに現代日本のクロニクル。 なんとか販売促進のため、座談の話題を引っ張りたい担当編集Y。しかし、そんな“忖度”をオカ&オダジマコンビがするわけもなく、新型コロナ騒動にも触れず、語り始めた話題は……(Qは進行役である清野氏の発言)。 Q:この2月に野村克也さんの逝去がありましたが、お二人はどう受け取られましたか。 編集Y:ああ! 話題を『ア・ピース・オブ・警句  5年間の「空気の研究」』に戻していただきたかったのに、キヨノさんまで、全然違う前振りを……(泣)。 岡:野村さんですね。すごく悲しいです。 小田嶋:同感。(編集Yの意図をまるで汲まない人たち) Q:星野仙一さんのときは、それほど思い入れはないです、ということでしたが、野村監督は違うんですね。 岡:星野さんにはなぜか感情移入できなかったけど、野村さんは違います。野村監督によって、プロ野球はいろいろなことが変わりましたからね。 例えば、ピッチャーがセットポジションで左足を上げないで投げる「クイックモーション」を洗練させたのは野村監督です。ほとんど足を上げない「すり足クイック」だから、ピッチャーが投げる時間が短縮される。よって、盗塁ができない。あれは発明でしたよ。 小田嶋:ノムさんが始めた革命的戦法はたくさんあるよね。 岡:投手分業制、ギャンブルスタート、ささやき戦術、ID野球、あと、小早川毅彦みたいに自由契約になったベテランをチームに入れて大活躍させた「野村再生工場」とか。 小田嶋:俺が昔、TBSラジオで働いていたとき、プロ野球のスコアを付ける係みたいなことをやっていたんだよ。その時代に、後楽園球場で野村さんが解説を務める現場に行きあたることがあった。 そのとき、野村さんが付けていたスコアブックというのが、我々が付けている普通のスコアブックどころじゃなくて、ストライクゾーンが9つに分かれているような、すごい詳細なもので。 岡:「野村スコープ」だよ。 小田嶋:俺らのようなアルバイトもどきは、ただのボールとストライクしか付けないんだけど、野村さんはボールでも、内角か、外角か、どっちに外れたボールなのか、またはストレートなのか、変化球なのか、落ちる球なのか、スライダーなのか、と、全部分けて、自分の記号で記録を付けながら解説していました。 岡:今はどのチームもやっているけど、ストップウオッチを野球のベンチに持ち込んだのも、野村監督が最初なんです。あのキャッチャーは二塁まで何秒で投げるんだろうと、時間を計った。 小田嶋:それまでは野球というものは、非常に大ざっぱな人たちが身体能力だけでやっていたスポーツだったけど、野村さんのおかげで、はじめて日本の野球に理屈らしいものが付きましたね。 岡:野村さんが亡くなったことは、悲しいな……。彼の記録って、生涯ホームラン、生涯打点って、ほとんどが2位なんですよね。何しろ、王、張本、長嶋がいた時代に行きあたってしまったもんだから。 野村さんが戦後初の三冠王を取ったとき、彼は翌日の新聞を楽しみにしていた。戦後初の三冠王なんて、すごい快挙、すごいニュースだよ。それでも野球ニュースの筆頭は、長嶋が二塁打を打ったことだった。 小田嶋:ああ……。 岡:戦後初の三冠王なのに、それでも一面を飾れないって、それってどうなのよ。しかも、彼はキャッチャーなんだよ。 小田嶋:彼が選手、監督として在籍していた南海ホークスをメジャーにしたのは、皮肉な話、王貞治ですからね。 岡:不思議だよね。これが人の持っている、何というの、運、めぐりあわせというものなのかね。 Q:会話が白熱しています。ただ、オダジマさんの新刊本に、まったく近づいていませんが……。 小田嶋:野村さんについては、沙知代さんという、いろいろ問題があるところの夫婦関係も話題だった。(さらに編集Yの意図から遠くなる) 岡:そっちもね。 小田嶋:俺はある雑誌の仕事で、あの人のことを調べたことがあったんだけど、ほとんどの経歴がウソなのよ。だけど、野村さんはそれを知っていて、世間から「ウソじゃないですか?」と問われたときに、「そうやってまで自分と一緒になりたかったんだから、ありがたい話じゃないか」と言っていたというのが、エラいというか、よく分からないことだよね。 岡:野村さんが南海ホークスで選手兼監督をしていたときに、沙知代さんが野村さんと付き合いだして、「あの選手は使うな」とかチーム運営にも口を出すようになった。選手からしたら、冗談じゃないよね。「あの人をなんとかしてください」ということで、主力選手たちが球団に訴えて、めちゃめちゃにもめた。で、後見人の高僧まで出てきて、「沙知代さんと、野球のどっちを取るのか」と、さとされたら、「はい、分かりました」といって、沙知代さんを取った人……といわれているんですよ。 Q:うーむ、ハタから見て、不思議な関係です。 小田嶋:並の人間には理解できないですよ。驚くべきことですよ。野村沙知代さんという人は、沙知代という名前からはじまって、自称した学歴も、経歴もウソなこともさることながら、あらゆるところでトラブルメーカーであり、少年野球チームでも、親から集めたお金を私腹に入れた疑惑で、訴訟を起こされかねないといった、ひどい話がいくつもあったでしょう。 岡:脱税で拘留もされているものね(2002年)。 小田嶋:そういう人と生涯添い遂げたというのも、偉かったよね。自分にはマネできない、ということで。 岡:野村さんにしてみれば、野球のこと以外は、全部命令されている方が楽だったんじゃないの。 小田嶋:それはあるかも。仕事のことしか考えたくないという人間は、それ以外のことは全部嫁さんに丸投げにしたい、というのが、ちょっとあるんじゃないかな。「あなた、今日の晩ご飯、何になさる?」じゃなくて、「あなた、今日は唐揚げを食べるのよ」と決めつけられた方が楽だ、と。これは落合博満さんにもちょっと似た雰囲気を感じない? 岡:似ている! 小田嶋:俺なんかはときどき沙知代さんと落合氏の奥さんがごっちゃになっていた。あれぐらい強烈な人じゃないと無理だということでしょう。面白いのは、野村さん、落合さんは、日本の野球の2大知性だったということで。 岡:そうなんだよ。落合がYouTubeで野球についてしゃべっているのを見たりすると、論理も分析も見事ですからね。 小田嶋:落合という人もしゃべらせると本当に頭がいい。 岡:ただ、暗いんだけどね(笑)。 小田嶋:そう、どちらも暗いの。だからボヤキ芸が成立したんだけど。 Q:この対談にちょっと似ていますね。 岡・小田嶋: ……まあ、そうね』、「「沙知代さんと、野球のどっちを取るのか」と、さとされたら、「はい、分かりました」といって、沙知代さんを取った人」、とのエピソードは初耳だが、ありそうな話だ。
・『岡:話を変えよう。この間さ、血液の検査をしたんだよ。そうしたら、僕はテストステロンの値が同世代の平均の半分しかないということが分かって。 Q:逆じゃないんですか? 「上から適応」のジャイアンのキャラ(前回参照)らしくないですね。 岡:でしょう? それで僕も、「これは間違いだから、2週間後にもう1回測ってください」とお願いして、もう1回測ってもらったら、やっぱり半分しかなかった。 小田嶋:あら、本当。 岡:このままいくと、すごくおとなしいおじいさんになっちゃう。外見とは別に、僕はもう極めておとなしい人みたいなの、血液的には(笑)。 小田嶋:昔の値は高かったんじゃないの? 岡:高いかどうかは知らないけれど、昔はあったと思うよ。だって、それがなきゃ電通を辞めたりしないし、既存の枠組みと戦ったりできないじゃないか。でも、この話をタグボート内でしたら、「そういえばこの何年間、岡さんが怒っているのを見たことないですね」っていわれて、ますますまずいな、と思って。 小田嶋:だったら、もういいじゃない? Q:いやいや。 岡:そうだよ、そう簡単にあきらめられないでしょう。 小田嶋:もう怒るあれでもないでしょう。 岡:だけど怒らないとだめじゃない、人間。 小田嶋:ハネ満、振ってもおとなしくしているという(笑)。 岡:そうそう。だから僕、弱くなっているでしょう、マージャンも。 Q:十何年か前、JALのファーストクラスだか、ビジネスクラスだかで座席がリクライニングしなかったといって、岡さんは超怒ってらっしゃいましたよね。 岡:それは怒るでしょう!! そのクラスで席がリクライニングしなかったら、俺、何のために高い料金を払っているんだ、って。 Q:今だったら、怒らないですか。 岡:いや、いや、エコノミーだって怒るでしょう。でも、その前にエコノミークラス症候群になっちゃうかもしれないけど(笑)。 小田嶋:俺は先日、ツイッター上に流れてきたヘンな広告のポスターを見て、怒ったわけではなくて、思わずリアクションを流しちゃったんだけど。その広告というのが、たぶん20年前だったらあり得ない話で、アフロヘアの黒人モデルの横に付いているコピーが「さらっさらのつやつやになりたい」とか何とかいう文言。これ、見るからに人種差別だろうよ、と。 岡:いや、その表現はあり得ない。通常はチェックを通らないですよ。というか、チェックの前の企画出しの段階で、ハネられますよ。 小田嶋:そのツイートは、そういうポスターが美容室とかに貼ってあるということだったんだよ。こんなのが通っちゃうんだ、と驚いてさ。 岡:通らない、通らない。ただ、BtoBだとそういうチェックがないのかな。 小田嶋:たぶん、そういう事情があるのだろうけど。それで、俺が大ざっぱな感想として抱いたのは、この20年ぐらいで、広告制作という仕事が、あこがれの仕事でなくなってしまった、ということではないだろうか、と。 岡:残念ながら、それはあるかもしれないね。 小田嶋:今の若い人たちは、広告をただ商品を売るための道具だと思っているのかもしれないけど、20世紀後半、広告が一番輝いていたころは、そこに才能のある人が集まって、すてきな広告が世の中に打ち出されていたんだよ、ということは歴史的事実として、言い残しておきたいと思ったんだよね。 Q:この話題は、「人生の諸問題」対談が始まった2007年から、折にふれて、ずっと話題にされてきたことでもあります。 岡:ゼロ年代にインターネットが定着したころから、広告表現の衰退は目に見えていたんだけど、特にこの5年間は、それがまた最悪なんです。 Q:ということは、SNSの流行と、もろ同時進行ですね。 小田嶋:テレビの昼間の時間帯の広告の安っぽさは、ゼロ年代からすごかったけれど、今はさらにすごいことになっているよね。俺が今、一番気持ち悪いのは、ほうれい線(を消す商品)の広告。ネットのニュース広告まわりで、しょっちゅう出てくるんだよ。 岡:気持ち悪いね。 小田嶋:ツイッターのタイムラインとか、ヤフーのニュースにプッシュされてくるけど、ひどい。醜いじじいと、醜いばばあが出てきて、ほうれい線だの、しみだのと、コンプレックス広告だらけになっているでしょう。 岡:そうなんだよ。 小田嶋:あとは、入れ歯だとか、何かそんなのばっかりだよね。盛り上がらないの、なんのって。かつて広告がビューティフルな人たちや、何らかの美を最大限に見せる場だった、ということが、完全になくなっている。 Q:コンプレックス広告が前面に出るようになって、表現がまったく反転しましたね。 小田嶋:肥満だったり、老化だったり、しわだったり、何かそんな暗い、げっそりするイメージのものばかりになっている。 岡:どうしちゃったの、これ、ね。 Q:どうしてなのか、広告制作のプロである岡さんに教えてもらいましょう。 岡:まず制作費の問題がありますよね。ネットメディアは媒体費が安い。で、それがオールドメディア(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の10分の1だとしたら、制作費も10分の1になるんですよ。そして、10分の1でもやりますよ、という人たちが引き受けることになる。そうなると、腕の立つカメラマンや照明マンは、当然のことながら使えません。企画を立案する人だって、プロフェッショナルは10分の1では引き受けない。 万が一の確率で、センスがよくて、やる気のある企画者が現れて、ほうれい線をあからさまに出さなくても、なるほど、ほうれい線のことをいっているのね、みたいなアイデアを持っていたとしたって、カメラと照明がだめだったら、結局、いい映像にはならない。そうなったら、ビューティフルをテーマにすることは、絶対できないですね。 小田嶋:これが1980年代、90年代だったら、どうでもいい商品に結構金のかかった広告が作られていたじゃない? それを思い出して、あ、あのころは俺たち、豊かだったんだな、と。 岡:本当にそうですよ。そのころ、三菱鉛筆の消しゴムのおまけに、たこ焼きスタンプ消しゴムというのがあったんだけど、その広告を3000万円かけて作りましたよ(笑)。 小田嶋:90年代の香りがするね。 岡:たこ焼きの形をしたスタンプが、消しゴムになっているわけで、オリエンテーションのときも、なんか座が脱力せざるを得ない。それが制作費3000万円で、テレビのスポット媒体費が3億円でしょう。今じゃ考えられないですね。 ※懐かしい!という方、なんだそれは?という方は、三菱鉛筆さんの公式ページをどうぞ。他にも「えっ」となるおまけが続々と(こちら)』、「醜いじじいと、醜いばばあが出てきて、ほうれい線だの、しみだのと、コンプレックス広告だらけになっている」、確かに耐え難い酷さだ。
・『小田嶋:たこ焼きスタンプ消しゴムは置いておくにしても、テレビCMで映像もアイデアもがっつりと豪華なものは、たくさんありましたよ。だから、当時はテレビを見ていて、いいところでCMが入ってきても、そんなに腹が立たなかった。でも、今は間のCMが長いと……。 岡:ふざけるな、と。 岡:悲しいことに、今、日本の映画も力がなくなっているんだよ。 小田嶋:興行収入は悪くない、だけど、韓国と日本の映画界はどうしてこんなに差がついたんだ問題、というのがときどき語られているね。あれはやっぱりお金の問題もあると思うけど、一説によれば、韓国は自国の市場がそんなに大きくないから、やむを得ず海外に出ていかないとやっていけない、という時代があった、と。 岡:今は韓国の映画人口も増えて、むしろ日本よりも余計に見ているから、1人当たりでいうと、日本と韓国の市場規模は、そんなに差がないそうだけどね。 小田嶋:ただ90年代とかは、韓国国内だけじゃ映画は無理だということで、国策として若い映画人をハリウッドに修業に出したんだって。映画のまわりの、編集だったり、メーキャップだったり、あらゆる種類の仕事を、その修業の人たちがタダで引き受けて、それで彼らが膨大なノウハウを持って自国に帰ってきた。そうやって、カメラマンとか編集とか、ハリウッドレベルで訓練を受けたすごい人たちが韓国映画界に蓄えられた、というのが一つ。 もう一つは、国が補助金を出して、海外向けの作品を作ろうということを、ずっとやっているということで、そもそもターゲットを世界に置いている。 岡:それだと、日本はかなわないよ。 小田嶋:日本は市場規模の点で、日本国内でなんとかなっちゃうからというので、キャスティングはジャニーズ任せだったりとか、何かそういうところに落ちていってしまう。 岡:数だけはある、ということで、ジャニーズかAKBがキャスティングされないと、客が入らないということにされてしまっている。それでいうと、韓国映画は役者たちもうまいんですよ。そんな美男美女じゃないんだけど、とにかく演技が力強い。役者のレベルが、日本と全然違います。 小田嶋:韓国にはレベルの高いアクターズスクールみたいなのがあると聞きましたよ。ハリウッドもそうだけど、俳優になる人って、そうやって専門に演技の勉強をするわけだよね。でも日本だと、演技力うんぬんの前に、タレントとして知名度があるから配役されました、みたいなことになっているから、レベル以前でキャストが決まる、と言えば言えるんだよね。 岡:端的にいうと、キャストから作っていたら映画そのものがだめになるんですよ。「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)には、もう圧倒されちゃいましたから。舞台は韓国だけで、そんなに制作費はかかっていないですよ。それでも、ここまでできるのか、と感動した。 小田嶋:町山智浩さんから聞いたんだけど、あの映画のカメラマンは、ハリウッドの一流映画を撮った人なんだってね。だから、ぱっととらえた映像に安っぽさが全然ない、と彼は言っていて、なるほどと思いましたね。 岡:カメラワークもそうだけど、でも、ホン(脚本)も違うね。まあ、韓国みたいに貧富の差が明らかすぎるほど明らかという社会だったら、それがドラマとして成り立つんだろうけど、日本はそこまで顕在化していないからね。ドラマを作りにくいというのはあるのかもしれない。そうすると、日本で世界に出すことができるのは、アニメと是枝さん(是枝裕和監督作品)しかなくなっちゃう、という。 Q:でも、かつての日本には黒澤明監督や、小津安二郎監督がいらっしゃいました。 岡:そうなんですよ。「マーケットイン」だか何だかという、製造業のマーケティングを映画製作に導入してから、ジャニーズとAKB+何か、というタコつぼに、どんどん入っていくようになりましたよね。 小田嶋:事前に市場を調査して、その市場に間違いのない商品を出す、なんてことで作っている限りは、そこから抜け出せないよね。 岡:だいたい黒澤監督のころって、マーケティング、なかったでしょう。黒澤さんが作りたいものを作ってくださいと、そういうことだったでしょう。 Q:究極の「プロダクトアウト」ですね。 岡:小津監督だってそうでしょう。マーケティングなんてもんじゃ、まったくない。 小田嶋:そこにあるのは、クリエーターのエゴだよね。 岡:映画会社と大げんかをしながら、自分の映画を作ったわけだよね。それで、その作品だって、決して明るいものじゃないんだよ。「麦秋」だって、「東京物語」だって、人間のどうしようもない悲しさ、はかなさを扱っている。だけど、それらが今にいたるまで、世界で絶大な人気を誇っているわけでしょう。ハリウッドをはじめ、後世の大監督たちに影響を与えて』、「「マーケットイン」だか何だかという、製造業のマーケティングを映画製作に導入してから、ジャニーズとAKB+何か、というタコつぼに、どんどん入っていくようになりましたよね」、日本映画の地盤沈下は自ら撒いた種ゆえのようだ。。
・『小田嶋:メディア表現の劣化で続けると、ネットニュースでは、新聞の見出しが今、マッシュアップみたいになっているんだよ。 岡:マッシュアップって、何? 小田嶋:IT業界では既存のコンテンツを混ぜ合わせて、新しいサービスを作り出す、ぐらいの意味で使われている用語なんだけど、とにかく文脈の違うものを混ぜて、耳目を集める、みたいな手法。新聞見出しのマッシュアップでいうと、例えば東武東上線の「ときわ台」駅で、踏切事故がありました、と。そういうときの新聞の見出しというのは、「ときわ台駅で踏切事故、23歳の巡査死亡」みたいなやつが通例で、その見出しだけで記事の内容が分かるように作るでしょう。つまり、記事の一番短い要約が見出しになっている。 岡:それが見出しの前提だもんな。 小田嶋:長いこと、そういうことになっていた。だから新聞って、記事全部を読まなくても、見出しだけをさーっと斜めに見ただけで、なんとなく中身が分かったじゃないか。でも、今、ネットニュースの見出しって、釣り広告みたいになっていて、「え? これどういうこと?」って、思わずクリックするように作ってあるわけだよ。 岡:例えばどんな感じ? 小田嶋:例えば、ときわ台の事故の見出しは、「危ない、そのとき巡査は飛び込んだ」という具合になる。 Q:東スポ化しているんですね。 小田嶋:そう、それが全国紙に及んでいる。こっちは、「危ない、そのとき巡査は」という文字を読んで、その後、巡査はどうしたんだろうと、謎に負けて、ついクリックしてしまう。 岡:ただ、紙の新聞は、普通のちゃんとした見出しになっているだろう、いくらなんでも。 小田嶋:使い分けられている。俺は以前に毎日新聞の紙面批評を1カ月やったことがあって、そのときにネット版と紙版の見出しが違うことを発見したんだよ。ネットの方がすごく扇情的にできているんだけど、実は全体的に紙の見出しも、そっちに近づいているんだよね。 岡:よくないよね。 小田嶋:新聞をすごく斜め読みしにくくしていますよ。 Q:そこかい! 小田嶋:いや、長い目で見ると、よくないです、はい』、「新聞の見出しが今、マッシュアップみたいになっている・・・ネットの方がすごく扇情的にできているんだけど、実は全体的に紙の見出しも、そっちに近づいている」、品位もへったくれもないようだ。
・『岡:それにしても東京でオリンピック・パラリンピックはどうなるのだろうか。社会的な混乱だけでなく、経済の方面でも、新型コロナショックの影響が甚大になっているし。(……と、対談中は思っていたのですが、3月24日に延期が決定しました) 小田嶋:今のところの政権って、導火線に火が付いている爆弾を、みんなにパスしまくって、最後に誰が持っているか、という話になっているじゃない。 岡:立憲民主党だって、共産党だって、逆にみんな、政権は今、持ちたくないよね(笑)。 小田嶋:まあ、俺らは、休校で売り先が減ってしまった牛乳を、粛々と飲むことぐらいしか、やることがないけど。何か乳牛ってやつは、乳を出し続けていないと、体がだめになるらしいですね。 岡:そうなんだ。どうでもいいけど。 小田嶋:いや、だから、コラムニストと一緒なんですよ(笑)。やめると、詰まっちゃう。だから、だらだらと吐き出してないとだめだという。牛とあんまり変わらない仕事なんですね。 Q:ついに自分を牛に例える境地にいたった小田嶋さんですが、そんなコラムニストの新刊本、みなさん、よろしくお願いいたします。ほら、編集Yさん、本の宣伝に着地しましたよ! 編集Y:あああ(涙)。 延々と続く無責任体制の空気はいつから始まった? 現状肯定の圧力に抗して5年間 「これはおかしい」と、声を上げ続けたコラムの集大成 ア・ピース・オブ・警句2015-2019 5年間の「空気の研究」 同じタイプの出来事が酔っぱらいのデジャブみたいに反復してきたこの5年の間に、自分が、五輪と政権に関しての細かいあれこれを、それこそ空気のようにほとんどすべて忘れている。 私たちはあまりにもよく似た事件の再起動の繰り返しに慣らされて、感覚を鈍麻させられてきた。 それが日本の私たちの、この5年間だった。 まとめて読んでみて、そのことがはじめてわかる。 別の言い方をすれば、私たちは、自分たちがいかに狂っていたのかを、その狂気の勤勉な記録者であったこの5年間のオダジマに教えてもらうという、得難い経験を本書から得ることになるわけだ。 ぜひ、読んで、ご自身の記憶の消えっぷりを確認してみてほしい。(まえがきより) 人気連載「ア・ピース・オブ・警句」の5年間の集大成『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』3月16日、満を持して刊行。 3月20日にはミシマ社さんから『小田嶋隆のコラムの切り口』も刊行されます』、「乳牛」の喩は微笑んでしまった。このブログでも、殆どを紹介している筈だが、「5年間の集大成」として一読してみる価値はありそうだ。
タグ:人生論 (その4)(勝ち組が威張る同窓会も60過ぎたら「ただの人」、小田嶋氏対談2題:2015年、舛添都知事はオリンピック肥大化に猛反発していた 『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(前編)、「美」から「コンプレックス」へ広告がシフトした理由『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(後編)) 河合 薫 日経ビジネスオンライン 「勝ち組が威張る同窓会も60過ぎたら「ただの人」」 職場も住む場所も違う仲間との会話が貴重な機会に 定年、再雇用後はゆとり重視へ仕事観が変わる 毎日の決まった行動パターンに救われている ルーティン 人間関係の広さと質は健康にも影響している 人間関係の「広さ」は、若年期(10代~20代)と老年期(60代後半以上)の人たちの健康に、人間関係の「質」は、壮年期(30代~40代前半)から中年期(40代後半から60代前半)の人たちの健康に、高い影響を及ぼす 若い時はあっちこっちに顔を出してネットワークを広げればいいけど、健康不安が高まるミドルになったら、健康な食事や運動と同じくらい信頼できる(親密な)友人は大切だよ。でもね、60歳過ぎたらいろんなところに行って、いろんな人と会った方が健康でいられるよ 小田嶋 隆 「2015年、舛添都知事はオリンピック肥大化に猛反発していた 『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(前編)」 ハイリスク役満世代 オダジマの入試時期は風疹が大流行 5年間の「空気」はどう変わったのか 空気を読まない舛添さん、オリンピック予算に猛反発 うちの国の巨大組織は、誰も責任を取らないで済むタイプの決断を好む。というよりも、われわれは責任を分散させるために会議を催している 高齢男性のコミュニケーション問題 入院しているおばあさんたちのコミュ力の高さと、じいさんのだめさ加減、看護師さんへの迷惑のかけ方のひどさっていうのを、いやというほど見ましたね ジャイアンシステムによる「上から適応」 「「美」から「コンプレックス」へ広告がシフトした理由『ア・ピース・オブ・警句 5年間の「空気の研究」』刊行記念鼎談(後編)」 「沙知代さんと、野球のどっちを取るのか」と、さとされたら、「はい、分かりました」といって、沙知代さんを取った人 醜いじじいと、醜いばばあが出てきて、ほうれい線だの、しみだのと、コンプレックス広告だらけになっている 「マーケットイン」だか何だかという、製造業のマーケティングを映画製作に導入してから、ジャニーズとAKB+何か、というタコつぼに、どんどん入っていくようになりましたよね 新聞の見出しが今、マッシュアップみたいになっている ネットの方がすごく扇情的にできているんだけど、実は全体的に紙の見出しも、そっちに近づいている
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中国情勢(軍事・外交)(その5)(中国とロシアが軍事同盟!? 戦略核へと協力深まる、中国政府が外国の世論を操作 「シャープパワー」はここまで身近に迫っている、「感染抑え込み」強調で習近平が狙う「国際貢献」 ウイルス制圧後の主導的立場を視野に) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、2018年9月10日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(中国とロシアが軍事同盟!? 戦略核へと協力深まる、中国政府が外国の世論を操作 「シャープパワー」はここまで身近に迫っている、「感染抑え込み」強調で習近平が狙う「国際貢献」 ウイルス制圧後の主導的立場を視野に)である。

先ずは、昨年11月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した東京大学先端科学技術研究センター特任助教の小泉悠氏へのインタビュー「中国とロシアが軍事同盟!? 戦略核へと協力深まる」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/103100105/?P=1
・『衝撃的な報道が流れた。中国とロシアが「事実上の軍事同盟締結を検討しているとの見方が強まっている」。両国の軍事協力はどのようなレベルにあるのか。同盟に至る蓋然性はどれほどか。日本への影響は。ロシアの軍事政策を専門とする小泉悠氏に聞いた(Qは聞き手の質問)』、中ロが「「事実上の軍事同盟締結を検討」、とは衝撃的なニュースだ。
・『Q:共同通信が10月29日、中国とロシアが「事実上の軍事同盟締結を検討しているとの見方が強まっている」と報じました。両国の軍事面での協力関係は現在、どのような状況にあるのでしょう。 小泉:相互防衛義務を伴うNATO(北大西洋条約機構)のような軍事同盟を締結する意図は両国ともにないでしょう。 否定する理由は明らかです。どちらも、いたずらに米国を刺激したくはない。加えて、もしいずれかの国が米国との軍事紛争に入れば、これに巻き込まれる懸念が生じます。そのような事態は避けたい。同盟に伴う「巻き込まれのリスク」は負いたくないのです。 ただし、このことは「軍事協力をしない」ことを意味するわけではありません。両国はむしろ軍事協力を着実に深めています。例えばロシア軍が主催する大規模軍事演習に中国の人民解放軍が参加するようになりました。2018年に極東地区(東部軍管区)で実施した「ボストーク2018」に人民解放軍が初参加。今年も中部(中央軍管区)で行われた「ツェントル2019」に参加しています。 今年7月に中ロの戦略爆撃機4機が日本海と東シナ海を共同で飛行したのは記憶に新しいところです。 また同月、両国の国防省は軍事協力協定を締結しました。内容は明らかになっていないのですが、軍艦の寄港や士官学校の学生の相互派遣について定めたものとみられます。もしかしたら機密情報の保護を含んでいるかもしれません』、確かに「中ロの戦略爆撃機4機が日本海と東シナ海を共同で飛行した」のは私も覚えている。両国とも「同盟に伴う「巻き込まれのリスク」は負いたくない」、虫がいいスタンスのようだ。
・『中国の核戦略にロシアが技術供与  さらに10月3日には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、中国の早期警戒システム開発をロシアが支援していると明らかにしました。これは、両国の軍事協力のレベルが1段上がったことを意味します。早期警戒システムは核戦略を担うものだからです。 Q:この早期警戒システムはどのようなものですか。 小泉:ロシアの報道で、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を探知するレーダーを開発する企業が関与していることが分かっています。ロシアは「ヴォロネジ」と呼ぶ弾道ミサイル警戒レーダーを運用しています。数千km先から飛んでくる弾道ミサイルを探知できるものです。ここで培った技術を利用するものとみられます。 米国も本土をターゲットとする核攻撃を捕捉するためのレーダー網「BMEWS(Ballistic Missile Early Warning System)」を運用しています。カナダやグリーンランドに巨大なレーダー網を設置して、北極海側から米本土に達するミサイルを警戒するものです。「ヴォロネジ」はこれに相当するシステムを構成しています。 米国とソ連は、このようなレーダー網をお互いに設置して、相互確証破壊(MAD)*を確立しました。「ICBMを打ったらすぐ分かる。報復攻撃するぞ」ということをお互いに言える環境を作ったわけですね。 *:2つの核保有国が核兵力の均衡を保つ状態。A国がB国から核兵器に対する先制攻撃を受けても、B国の人口と経済に耐えがたい損害を確実に与えるだけの2次的な核攻撃能力を温存できる状態  中国にはこれまで米国との間にMADを築く意図がありませんでした。「最小限の核戦力を保有していれば、米国に対して抑止力になる」と考えていたのです。米国と核戦争を戦う気はなかった。しかし「中国は最近これまでの考えを改めたのではないか」と米国の専門家が懸念し始めています。ロシアの技術を導入して核早期警戒システムを開発しているのはこの証左かもしれません。 だとすると、米中のパワーバランスを左右する部分に、ロシアが関わることになるわけです。米中の核戦略の均衡をロシアが崩しかねない。ロシアから見ると、冷戦終結後初めて、核兵器を保有し、国連安全保障理事会の常任理事国も務めるスーパーパワーとの軍事協力ですから、協力のレベルも非常に高いものになっています。 ロシアは国際秩序を構築できる国ではありません。国際秩序を構築できるのは、現在は米中だけです。しかしロシアは、米中のどちらにつくかで、シーソーのバランスを決めることができる。 Q:現在進行中の、中ロ軍事協力の深化は、ロシアがシーソーの中国側に乗ったことを示しているのでしょうか。 小泉:私はそう見ています。 今までお話しした一連の動きを素直に見れば、中ロ両国の軍事協力は相当深いレベルに達していると考えられます』、「国際秩序を構築できるのは、現在は米中だけです。しかしロシアは、米中のどちらにつくかで、シーソーのバランスを決めることができる」、「ロシア」にとっては、願ってもない有利なポジションのようだ。
・『「日ロが協力して中国をけん制」論に怒ったロシアのラブロフ外相  日本の一部に「ロシアと組んで中国がもたらすリスクをヘッジしよう」という考えがあります。中国はロシアにとっても脅威なので日ロは手を結ぶことができる、というもの。人口密度が非常に低いロシア極東に大量の中国人が流入し“中国化”する事態をロシアが懸念している、というのがこの考えの背景にあります。19世紀末~20世紀半ばにかけて欧米列強が中国を侵食する過程で、帝政ロシアが沿海州を奪いました。中国はこれを取り戻そうとしている、と見る向きもあります。 小泉:そうですね。しかし、ロシアが中国を恐れるレベルは、日本が抱く脅威の比ではありません。日本は中国との間に海を抱えています。経済力も、中国にGDPで追い抜かれたとはいえ、まだ世界3位の規模がある。一方のロシアは中国とは地続きです。そのGDPは韓国並みでしかありません。つい数十年前まで核戦争をしたかもしれない相手です。怒らせたくはありません。よってロシアは、日本と組むより中国と組む方を選ぶでしょう。中国を、ロシアにとって安全な存在にしたいのです。 日本の政治家が「日ロ平和条約を結べば、中国をけん制できる」と発言したことがあります。これに対し、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「けしからん。腹立たしい発言だ」と怒りをあらわにしました。 ロシアは自国が日米の側に寄っても、米国がロシアを対等な存在として扱うことはない、日本のように緊密な同盟国として遇することはない、と見切っているのです。 冷戦終結後、ロシアは西側に対し融和的な態度を示しました。しかし、彼らの目から見ると、これに対して西側はNATOの東方拡大*で応じた。ロシアの縄張りに手を突っ込んできたわけです。さらに、人権意識に乏しく、軍事力で周辺国を圧倒する後れた国として接した。大国意識が強いロシアにとって、これは屈辱的なことでした。このため、欧州で起きたのと同様の事態が、極東の地で再び起こることを懸念するのです。 *:冷戦終結後、ソ連に属していたバルト3国や、ポーランドなどの東欧諸国がNATOに加盟したことを指す  ロシアの洞察は適切です。日米はロシアを真のパートナーとはみなさないでしょう。我々が欧州でまいた種が、ロシアの不信感を強め、「日米と共に中国をけん制するという選択肢」を選ばせないようにしているのです。 中ロが軍事協力を深める事態を、米国は以前から「悪夢」と認識してきました。ニクソン政権で外交を担ったヘンリー・キッシンジャー氏は「クリミア併合をめぐって締め上げすぎると、ロシアは中国につくぞ」と懸念を示していました。今はまさに、この懸念が現実のものとなりつつあるのかもしれません。もしくは、「実現しつつあるぞ」というメッセージをロシアが米国に送っているのかもしれない』、「ロシアのラブロフ外相」を怒らせた日本の「政治家」や外務省の読みの浅さには、腹が立つ。「悪夢」が「現実のものとなりつつある」のであれば、恐ろしいことだ。
・『共に権威主義を頂く中国とロシア  ただし、ロシアは中国の完全なジュニアパートナーに甘んじるのをよしとはしないでしょう。中国はロシアの感情を害さないよう、この点をうまくこなしています。 米国とは異なり、「民主化せよ」などロシアの内政に口出しすることはありません。そもそも中国自身がそんなことを言えた義理ではありませんし。さらに、指導者が抱く素の国家観が似ている部分もあります。どちらも「この大国を統治するためには権威主義的な手法しかない」と考えている。この点は、ロシアと中国の関係が米ロ関係と大きく異なるところです。 旧ソ連を構成していた中央アジア諸国に、中国が一帯一路構想を振りかざして影響力を行使するのは、確かにロシアにとって面白くないでしょう。しかし、中国はこの地域の民主化を図るわけでもないし、人民解放軍が基地を置くわけでもありません。ロシアにとって「決定的に受け入れがたい」というほどではないのです』、中ロに楔を打ち込むのは難しそうだ。
・『インドを巻き込み、中国の優越をそぐ  Q:でも、ロシアにとって良いことばかりではないのではないですか。例えば、ロシアと協力する中国側の意図として、インドに対するヘッジが考えられます。仮に中国とインドが武力紛争に陥れば、ロシアはそれに巻き込まれる恐れが生じます。 小泉:おっしゃる通り、私も中ロの軍事協力においてインドがカギだと見ています。ただし、その意味は異なります。ロシアは、インドを参加させることで、中国のプレゼンスが大きくなりすぎるのを抑えたいのです。 インドを巻き込もうとする動きの一端が見えてきています。例えば、先ほど言及したように、演習「ボストーク2018」に、中国を初めて招きました。さらに、「ツェントル2019」ではインドとパキスタンを加えたのです。 これには2つの意図が垣間見えます。1つはインドを巻き込むこと。もう1つは米国を刺激しないことです。ロシア、中国、インド、パキスタンはいずれも上海協力機構のメンバーです。よって、「米国に敵対するグループ作りではなく、ユーラシア大陸全体を対象にした安全保障のフレームワークだ」という説明が可能になります。 またロシアは、9月に主催した東方経済フォーラムのメインゲストとしてインドのナレンドラ・モディ首相を招き厚遇しました。インドの首相がロシアの極東地域を訪れたのはこれが初めてのこと。この場で両国は様々な協力に調印しました。例えば、インドがロシアに対し10億ドルの信用供与枠を設定。インドはロシア製兵器の新たな購入を決めました。 Q:インドはロシア製の兵器をたくさん導入していますね。戦闘機に潜水艦…… 小泉:はい。戦闘機は、インド専用機としてロシアに開発させた「Su-30MKI」を導入しています。第4世代戦闘機の中でも最新鋭のモデルです。しかも、これはロシア空軍が利用するSu-30のデグレード版ではありません。むしろアップグレード版と言える性能を備えています。さらに、製造メーカーであるスホイはこれを、インド国内に設置した生産ラインで生産します。 ちなみにインド外務省のロシア課長は軍人です。つまりインドにとってロシアは、非同盟政策を貫くための武器調達先なのです。ロシアは武器供給を通じて、インドの独立と安全を守る役割を果たしている。インドは西側からもロシアからも武器を調達しなければならないのです。 ロシアの視点に立つと、2018年は中国との関係強化をアピールした年、2019年はインドとの距離を近づける年です。 その一方で、ロシアはインドをけん制する動きも見せています。2010年代の半ばからパキスタンに急速に接近し始めました。国防大臣が相互訪問したり、ロシアが軍艦をパキスタンの港に寄港させたり。わずかではありますがロシアはパキスタンに兵器も売却しています。さらには、カシミール地方でパキスタンと合同軍事演習を行ってもいます。 Q:それは、インドを刺激するのではないですか。カシミール地方では、インド、パキスタン、中国が三つどもえになって領土紛争を繰り広げています。 小泉:ロシアの一連の行動はインドへの当てつけなのだと思います。「ロシアをおろそかにして、米国から武器を購入するなどしていると、(インドの宿敵である)パキスタンにロシアは協力するぞ」というメッセージを送っているのです』、これら諸国間のパワーバランスも複雑なようだ。
・『自由で開かれたインド・太平洋戦略を過大評価してはならない  Q:インドは、日米からも、ロシアからも腕を引っ張られているのですね。取り合いの様相を呈している。 日米が「自由で開かれたインド・太平洋戦略」を提唱する中、インドはこれにポジティブであるかのように喧伝(けんでん)されています。しかし、そんな単純な話ではないのですね。 小泉:非同盟中立がインドの本質です。米国側に接近することはあっても、完全に寄ることはありません。もちろん、ロシア側にも同様の態度です。 自由で開かれたインド・太平洋戦略は、そのように振れるインドを日米の側にとどめておくための戦略と解すべきでしょう』、「自由で開かれたインド・太平洋戦略」への「インド」の姿勢はつかず離れずのようだ。
・『日韓の離間にすでに効果を発揮  Q:ロシアと中国が軍事協力を強化すると、日本にはどのような影響を及ぼしますか。 小泉:尖閣有事であるとか、北方領土の有事であるとか、個別の有事に、中ロ連合軍と日本が戦うという可能性は低いと思います。 Q:その先には米国との戦争が待っているからですね。 小泉:その通りです。むしろ、日本が留意すべきは有事に至る過程、平時からグレーゾーンでの中ロの行動でしょう。典型的な例は、7月に起きた、両国の戦略爆撃機による共同飛行です。ポイントは2つあります。1つは、これが「我々は結束している。追い詰めようとするならば痛い目に遭うぞ」という両国からのメッセージであることです。 もう1つは、この共同飛行の後に、ロシア軍の早期警戒管制機「A50」が竹島付近で領空侵犯。これをめぐって、日韓の防衛協力の課題があらわになったことです。 Q:A50が日韓の防空識別圏の境界を飛行したため、日韓のどちらが領空侵犯に対処するか“お見合い”状態が生じたことですね。 小泉:はい。結果的に韓国軍の戦闘機が警告射撃を実施。「日本の領土である竹島上空の領空侵犯に対し韓国軍機が警告射撃をした」ということで日本の世論は沸騰しました。 たった1機の早期警戒管制機を飛ばしただけで日韓の世論が激し、その後、防衛協力にも悪影響を及ぼす事態に発展した。ロシアは当然、徴用工問題で日韓が対立する状況を踏まえていたと思います。 軍事力を使ったこうした政治オペレーションが有効に機能したことは、中ロ接近がもたらす脅威が確実にあることを示したと思います。東アジアにおける米国を中心とする同盟関係が強固であることを示せればよかったのですが、逆の姿を露呈してしまいました。軍事的には愚かなことと言わざるを得ません。 Q:日韓は一刻も早く関係を修復する必要がありますね。 小泉:そうしてほしいですね。徴用工や慰安婦の問題について、日韓は世界観のレベルで分かり合えないことが徐々に明らかになってきました。無理に分かり合う必要はないかもしれませんが、防衛協力の実務で支障が生じる状態は改めてほしいものです。 Q:「文在寅(ムン・ジェイン)政権が続く間、関係修復は難しい」というあきらめムードの発言が自民党の政治家や有識者の口から出るようになりました。 小泉:問題は、今の韓国の主張が文在寅政権が持つ属人的な性格に由来するものなのか、韓国内により深い根を張る文脈が生み出したものなのか、です。後者なら長期戦を覚悟しなければなりません』,どうも「長期戦を覚悟」しておいた方がよさそうだ。

次に、ジャーナリストの姫田小夏氏が本年1月10日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「中国政府が外国の世論を操作、「シャープパワー」はここまで身近に迫っている」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/225181
・『中国が新たな外交戦略として「シャープパワー」を行使している。シャープパワーとは、国家が外国に対する世論操作や工作活動などの手段で、自国に有利な状態を作り出していく外交戦略を指す。その矛先は日本にも向けられており、大学や企業などで影響が出始めている』、どういうことなのだろう。
・『中国の新外交戦略「シャープパワー」とは  中国が新たな外交戦略として「シャープパワー」を行使している。2019年11月、台湾で大規模な国際会議「2019年地域安全保障と越境犯罪に関する台湾・西アジアフォーラム」が開催された。31カ国から政府関係者、研究者を含む約450人が参加し、日本からは海上保安庁、警察庁、税関、麻薬取締部ほか、インド経済が専門でインド太平洋戦略の観点から日台関係に関心を持つ拓殖大学の小島眞名誉教授も参加した。小島氏は「会議での中心的議題のひとつが『シャープパワー』だった」と振り返る。 シャープパワーとは、国家が外国に対する世論操作や工作活動などの手段で、自国に有利な状態を作り出していく外交戦略を指す。2017年末に、米国シンクタンクの全米民主主義基金が提示した新しい用語だ。それによれば、シャープパワーは文化的魅力でハートをつかむソフトパワー、武力や威嚇に基づくハードパワーの中間に位置する概念であり、その根底には「当該国の指示に従わなければ、当該国から手痛い反撃を受ける」というニュアンスが含まれている。 振り返ればこんなことがあった。2018年9月、台風21号が近畿地方を襲い、関西空港で旅行者が孤立した。このとき、ネットに書き込まれた情報が台湾の外交官を自死に至らしめたのである。事の発端は救済に乗り出したバスで、SNS上では「中国の大使館が専用のバスを手配した」という書き込みが出回った。 旅行者には台湾人もおり、「大陸が手配したバスに乗るかどうか」の苦しい選択を迫られていた。その追い詰められた感情が「台湾駐日事務所は何をやっているのか」という言葉となり、SNS上で拡散され、果ては台湾メディアを巻き込んだ一大バッシングにつながった。しかしNHKの取材によれば、事実は関西空港が手配したバスであり、中国大使館によるものではなかった。 フェイクニュースや情報操作もシャープパワーの一種であり、上述の一連の騒動も、「台湾の民主主義を守る」とかたくなな蔡英文政権への圧力と解釈することができる。 一方、2020年1月の総統選を控えた昨年末、中国の影響が全面的に社会に浸透していると懸念が強まる中、台湾で「反浸透法」が成立した。「域外の敵対勢力」による献金やロビー活動、フェイクニュースの拡散などを行った場合、5年以下の懲役とするものだ』、「関西空港で旅行者が孤立」した際の「台湾駐日事務所」への「一大バッシング」で、「台湾の外交官を自死に至らしめた」事件は、記憶新しい。この「フェイクニュース」が意図的に行われたか否かは不明だが、結果的には大きな効果をもたらしたようだ
・『オーストラリアで香港デモの“場外乱闘”  オーストラリアでも2018年、「反スパイ法及び外国干渉防止法」「外国影響力透明化法案」など、台湾の「反浸透法」と同様の法案を通過させている。オーストラリアもシャープパワーの圧力を受ける典型的な国家だ。 オーストラリア情勢に詳しい消息筋によると、「オーストラリアでは中国共産党中央統一戦線工作部、中国人民政治協商会議、中国平和統一促進会の意を受けた形で、中国系コミュニティーを通じた世論操作や政治介入が幅広く展開されるようになってきた」という。2019年2月に起きた中国人実業家の政治献金発覚と永住権剥奪、同年3月に起きた中国系実業家の殺害事件は、中国政府の工作と無関係ではないといわれている。 オーストラリアは、約2340万人(2016年国勢調査)の人口のうち、先祖を中国に持つと回答する中国系豪州人は121万3903人で、人口の5%以上を占める。大陸から来た移民者や留学生などの中国人人口は過去10年で倍近く増えているが、その大学内でも頻繁に「工作」が行われている。 2019年、オーストラリアのキャンパスは、「逃亡犯条例」改正案に反対する香港デモの“場外乱闘”の場と化した。同年7月24日、オーストラリアのクイーンズランド大学に通う香港人留学生が集会を開いたところ、乱入した大勢の中国人留学生との間で殴り合いになる騒ぎに発展した。だが、これは自然発生的な動きではない。「共産党統一戦線工作部などの中国の組織が、在外の大使館を経由して大学生や若者に活動させるのは常とう手段となっている」(前出の消息筋)という。) 実は日本も無関係ではない。8月23日夜、大阪の高島屋大阪店の前で、中国人の若者による香港デモを非難する集会が行われた。集会をとらえた映像には、赤く染められた大きな国旗と「民主とは秩序破壊ではない」とするプラカード、そして声高らかに中国国歌を歌う中国人の若者が映し出された。関西を中心とした中国人勢力に詳しい在住の華人実業家によれば、「背後に中国の在外公館と華人メディアの存在があることは否定できない」という。 すでに、日本の大学では研究活動や授業にも影響が出ている。 「ウイグル問題や台湾問題を扱う教授については、中国人留学生たちが抗議運動で結束することもあり、授業がやりづらいという嘆きを聞くようになりました。これまで中立的な見方をしていた中国人教授が、香港問題について中国を支持するように立場を翻すなど、教学の場にも大きな影響が出ています」(都内の私大教授)』、「すでに、日本の大学では研究活動や授業にも影響が出ている」、とは由々しいことだ。米国の大学にも、「孔子学院」が一時は120校にも達したが、近年は政府や議会問題視、閉鎖が相次いでいるようだ。
・『ビジネスの利益かそれとも正義か  企業にも影響が出ている。2019年10月24日、ペンス米副大統領が中国に関する政策演説を行ったが、そこで中国マネーに翻弄される米企業の弱腰ぶりを糾弾した。背景には、米プロバスケットボールNBAのヒューストン・ロケッツ幹部が香港民主化デモを支援する内容をツイートしたところ、中国のファンやスポンサー企業から批判が殺到し、ロケッツ幹部が発言の撤回と謝罪に追い込まれた、という経緯がある。 2019年10月26日の日本経済新聞は、ペンス氏の「NBAは独裁政権の完全支配下にある子会社のようだ」とする批判を取り上げたが、そのような企業は日本にも数多く存在する。記事の末尾は「米国だけでなく、日本など他国の企業にも同じ問いが投げかけられるのは必至だ」と締めくくられたが、商売の利益か、はたまた正義か――という選択は、日本企業にも重くのしかかっている。 中国政府は以前から、外国人の言論に目を光らせてきた。筆者はかつて中国で日本語情報誌の編集・出版業務に携わっていたが、チベット問題、ウイグル問題、天安門事件などのキーワードや記事はタブー中のタブーとされた。「香港」「台湾」についても「中国香港」「中国台湾」とすべて4文字で表記するよう厳重に指示された。「中国国内で出版を行う以上は、郷に入れば郷に従え」と毎月当局による全ページの検閲を受け入れざるを得なかった。) ところがどうだ。今やこうした“中国ルール”は国境を越えている。フィナンシャルタイムズのコメンテーターであるギデオン・ラックマン氏のコラム(日本経済新聞2019年10月18日)によれば、「台湾を国家のように扱う表記をしたとしてその削除を余儀なくされるなど、中国政府の圧力に屈した外国企業は少なくない」という。 日本の企業も同様の圧力を受けている。東京に本社を置くPR会社の日本人管理職は「香港や台湾の表記をめぐって、中国がその扱いをうるさく指摘するようになり、多くの企業が対応に苦慮しています」と明かす。 「表記」だけにとどまらない。昨秋、アメリカでは通信アプリ「ウィーチャット」を使って発信した「香港の抗議デモ支持の言論」が、中国当局の検閲により削除されたことが物議を醸した。 「工作」の対象は、大学の講義や研究活動のみならず、今後、企業やメディアにも広がりを見せるだろう。明らかに言論の自由が保障されている日本においても、「中国の顔色」をうかがうことを余儀なくされているのが実情だ。 インターネット上のニュースやコラムでも、中国共産党に批判的な記事には中国を擁護するかのようなコメントが書き込まれ、中国を礼賛するような記事が高いアクセス件数をたたき出す現象が散見される。「五毛党」とは、ネット上のコメント欄などに一般人のふりをして中国共産党に有利な書き込みをする集団だが、在京の中国人識者は「中国の『五毛党』は、日本の世論をかく乱しようとしている」と懸念を示している。 前代未聞の巧みな手法で国際政治に影響を与えようとする中国。今年は習近平国家主席の来日を控え、久しぶりの「政熱経熱」で日中ビジネスが活気づくことが予想されるが、シャープパワーの潜在には警戒を怠るべからず、だ。 なお、台湾での国際会議に関する小島眞氏の論文は「拓殖国際フォーラム」で紹介されている』、日米企業にとっては、膨大な中国に需要は喉から手が出るほど欲しいので、「中国政府の圧力に屈」せざるを得ないのは、やむを得ないことなのだろう。しかし、我々としては、行き過ぎた「シャープパワー」の圧力には目を光らせておく必要がありそうだ。

第三に、4月2日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイト記事、新外交フォーラム」代表理事の野口東秀氏による「「感染抑え込み」強調で習近平が狙う「国際貢献」 ウイルス制圧後の主導的立場を視野に」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59949
・『新型コロナウイルスのパンデミックで、中国は、習近平国家主席と一党独裁体制の中国共産党の指導力があったからこそ危機を脱した、という局面を国内外で作り出そうとしていることは、拙稿『「主席と党に感謝せよ」評価を受けたい習近平の焦燥』(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59746)で触れた。 習近平指導部は、東京五輪まで延期せざるを得ないほど世界が混乱、とりわけ欧米に感染の中心が移った今こそ、悪化した中国の対外イメージを変え、さらには中国の国際社会での影響力拡大を可能とする「反転攻勢の絶好の機会」としてとらえているようだ。 そのカギとしているのが、中国から世界への支援、つまり国際協調する責任大国としての姿を宣伝することである。 4月8日に湖北省武漢市の封鎖を解除することを3月24日に発表したが、延期されていた全国人民代表大会(全人代=国会に相当)を早ければ4月中に開催し、「終息宣言」すると考えられる』、「「反転攻勢の絶好の機会」にしているとは、やはりしたたかだ。
・『「新規感染者をゼロに抑えよ」との指令  まず、武漢封鎖解除の布石となったのが、武漢での新規感染者ゼロ(3月19日発表)である。中国国内の報道は、新規感染者はすべて海外から帰国した中国人など中国本土以外で感染したケースであると強調する。 さまざまな情報から考えると、「新規感染者をゼロに抑えよ」との指令が党中央から全国に通達されたと推測できる。 真偽は不明だが、湖北省に対する中央からの通知が海外の華人ネットで転載されていたこともある。 通達は3月10日に習近平主席が武漢を視察する前のことであろうが、この視察を前にして、2月末には湖北省以外の全国のほとんどで新規感染者数はゼロとなり、湖北省でも3月に入り急減。2月初旬に3桁4桁だった新規感染者数が、いきなり3月18日にはゼロとなったのはなぜか、と疑いたくなるのは筆者だけだろうか。 初動対応と情報隠しを問われた前武漢市市長が、感染状況について、 「党中央からの指示がなければ情報を公表できない」と吐露したことがあったが、習近平指導部からの指示があれば、下部組織は感染者が出ても公表しないか、報告しないことはむしろ当然であるのが中国の体制である。新規感染者が出ても、末端の当局者は「ゼロ」と報告する状況は容易に推測がつく』、インターネット空間を含めて言論が厳しく統制されている中国ならではだ。
・『新規感染者を出せば何らかの処分を受ける  案の定、すでに中国のSNSでは政府当局による削除が追い付かないのか、新規感染者が病院や自宅で発生しているという医師の告発が転載されている。 また、米政府系メディアは、患者の話として、 「一斉に退院させたのは政治的な意図がある。退院者の中には完全に治癒していない者がいた」と伝えている。 重症の感染者は近郊の新造した隔離施設に移動しただけではないのかと疑う民主活動家が撮影したとされる、有刺鉄線に囲まれた施設の映像もあり、当局の新規感染者ゼロの発表を疑う中国人は少なくないようだ。 過去の経済成長率で、地方政府が生産高を水増しし、成長率を嵩上げしていたことは、中国国内でも伝えられ党中央が問題視したことがあったが、新規感染者ゼロはこれと同じ線上にあるのではないか。 また、新規感染者を出すなというのであれば、下部組織は生産活動の完全な正常化にはなかなか踏み切れない。新規感染者を出せば何らかの処分を受ける羽目となるからで、各地の現場では徹底した予防策を講じているようだ』、「一斉に退院させたのは政治的な意図がある。退院者の中には完全に治癒していない者がいた」、大いにありそうな話だ。
・『「世界貢献」「国際協力」イメージ醸成  中国では3月に入り、党中央の意向を受け、 「中国が感染を抑え込んだのは、中国共産党、習近平主席の指導力があったからこそ」としたうえで、2つの点を重視した報道を連日続けてきた。 たとえば、中国共産党機関紙『人民日報』系列の『環球時報』は、指導層の本音が垣間見えるとされる国際情報紙だが、最近の報道内容を意訳すると以下のようになる。 〈感染拡大がとまらない欧米は反省すべきだ〉〈中国の成功。比べて西側は〉〈中国に(世界に蔓延した)感染の責任を転嫁する米国〉〈今は逆輸入のリスク〉〈いずれ世界は中国に感謝するようになる〉〈中国が予防のための時間を、犠牲を払って稼いであげたのに、欧米は予防措置に失敗、後手に回った〉〈中国との協力こそ感染を抑え込む唯一の道〉〈中国に汚名を着せる米国の政治屋〉〈ドナルド・トランプの発言“中国人ウイルス”は米国内で批判を受けている〉〈中国が世界に援助〉〈中国の援助が欧州を潤す〉〈国際協力をよびかける中国、世界は感動〉〈(感染が拡大する)米国は時間を浪費した(準備する時間を中国は与えた)〉 冒頭で触れた拙稿でも指摘した、武漢での「感恩教育」推進発言に強い反発が出たことを教訓としているのか、「世界は中国に感謝せよ」(国営新華社)という露骨な表現は見受けられない』、確かに「露骨な表現」は控えたようだが、それでも「盗人猛々しい」印象がある。
・『「国際協力する中国」というイメージを宣伝し続ける  しかし、前面に出しているのは、(1)中国の成功と対比して欧米の感染拡大は中国を見習っていないから。 (2)中国は医師団や医療物資を欧州など各国に派遣しており、感謝されている。世界貢献しているのが中国である。国際協力こそ重要。という2点である。 とりわけ(2)の国際貢献を重視しているようで、物資支援、医師団派遣は世界中に拡大させつつある。 これについて、中国のシンクタンク関係者は、 「パンデミックで中国の国際イメージが傷ついたことは間違いない。国内でも(習近平指導部に対する)批判がある。国内外からの批判を受け続ければ、習指導部の威信、イメージは悪化してしまう」と指摘した。 つまり、世界へ医師団、物資を送ることで、ウイルス感染に国境はなく、世界に貢献する、国際協力する中国、というイメージを宣伝し続けることが反転攻勢の基礎となる、という考えであろう。国内向けにも、習近平主席が世界で発揮する指導力、という姿をイメージづける狙いもある。 今後、中国の支援は、中国の経済圏構想「一帯一路」を重要ポイントとして位置付ける国に対し、手厚く行われるのではないか、と筆者は考える。パンデミックが去った後での影響力行使を踏まえた援助となるのではないか。 ちなみに、3月1日発売の中国共産党機関誌『求是』では、習近平主席の寄稿として、 「ビッグデータ、人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどのデジタル技術でウイルスの感染源の特定」をするよう求めている。 2月の段階で、広東省にある華南理工大学の肖波涛教授らが、武漢市の「中国科学院武漢病毒研究所」や「武漢市疾病予防管理センター」からのウイルス漏出を示唆する分析を発表しているが、その後の調査研究でどのような結果が発表されるのか注視される(新潮社フォーサイト2020年2月12日『新型肺炎「感染源」いまも打ち消せない「疑惑」と「謎」』参照)』、「ウイルス漏出を示唆する分析」の最終結果は、いつ頃発表されるのだろうか。もっとも、当局に不都合な事実が出てくれば、差し替えられるのかも知れない。
・『「米軍陰謀説」報道官の発言を修正  中国のイメージ戦略は、対立が続く米中間の情報戦の一環であるが、3月12日、中国外務省の趙立堅報道官が「ウイルスは米軍が持ち込んだ」とツイッターに書き込み、トランプ政権を激怒させ、その後も対立が続いている。 米国と丁々発止と渡り合う強い中国のイメージを常に醸成したい習近平指導部の意思を背景に、報道官は敢えて意図的に米国を激怒させる書き込みをしたと思われる。 しかしここにきて、どうやら習近平指導部は、国際協調する中国のイメージづくりを優先し、悪化する米国民の対中感情をこれ以上逆なでしないよう方向転換したかに見える。 在米中国大使館の公式サイトによると、中国の崔天凱駐米大使は3月17日、米メディアに対し、すでに報道官の発言より前に流れていた「米軍陰謀説」について「クレージーな言論」と再確認し、報道官の発言をひっくり返したのだ。 大使の発言は公式の大使館ホームページに掲載され、「自分が習近平主席を代表している」旨の発言までしている。 この修正の訳については、3月24日の『環球時報』が回答を示したかに見える。 同紙は、米中の協力をなぜ米国は壊すのかという社説と、米中の民間交流は最後に残った支柱だとする記事を掲載した。 つまり、習近平指導部は、米国と対立するばかりではトランプ政権だけでなく米国民全体の対中イメージがさらに悪化してしまい、それは中国の国益にならないと判断し、世界的な対中イメージを変えるためにも、米国との協力の道を探る方が得策と判断したことが背景にあるとみられる。国内感染を抑え込んだ余裕もあろうか』、中国の「米軍陰謀説」は、余りに荒唐無稽だったので、撤回したのは当然だろう。
・『制圧後の主導的立場を視野に  ただし、互いの報道機関の記者などを追放し合うまで悪化した米中の対立は、米国での感染がさらに拡大すれば、トランプ大統領は11月の再選を意識し、中国批判の発言を強めることが予想され、責任の押し付け合い、責任転嫁が激しくなる可能性も十分にある。 実際、3月25日に行われたG7(主要7カ国)外相のテレビ会議で、マイク・ポンペオ米国務長官が「武漢ウイルス」と呼ぶことを強硬に主張したため、各国が反発して共同声明をまとめられなかった。 従来の習近平指導部の対外姿勢は、他国に対する強硬姿勢を続けても、米国にだけは慎重だった。米中貿易戦争にしても、休戦は中国側の譲歩が多分に見受けられる。 しかし、今回のウイルス蔓延が欧米にその中心が移ったことで、中国が「反転攻勢する絶好の機会」ととらえていることは、今後の局面で習近平指導部が米国に強い反発や報復をする可能性があることも意味する。 このまま感染拡大で米国の経済が落ち込み、中国が受ける経済打撃よりも米国の傷が深くなる可能性について、すでに中国の専門家は詳細な分析に入っているという。 そもそも、トランプ大統領がウイルス拡大の余波で再選されない結果となる可能性も中国は見ている。 「ウイルス対策の国際協調で欧州、日本などアジア、アフリカとの連携を強めることが重要だ。こうした地域での対中感情をよくしなければならない。言わば『健康の一帯一路』だ。結果的に、ウイルス制圧後に実際の『一帯一路』に効果も出よう」(中国のシンクタンク研究者)との考えだ。 中国では、本格的な「米中新冷戦」の時代が長引くと見ている向きが多く、習近平指導部は国内での感染拡大が収束したとする今、世界でウイルスが制圧された後の国際社会での中国の主導的位置付けを視野に入れていると思われる』、「世界でウイルスが制圧された後の国際社会での中国の主導的位置付けを視野に入れている」、「トランプ」の顔も余り見たくないが、「習近平」の顔も余り見たくない。出来れば、中国国内で反習近平の動きが強まってもらいたいものだ。
タグ:中国情勢 中国の核戦略にロシアが技術供与 新潮社フォーサイト 野口東秀 制圧後の主導的立場を視野に 軍事・外交 中国とロシアが「事実上の軍事同盟締結を検討しているとの見方が強まっている」 「米軍陰謀説」報道官の発言を修正 華南理工大学の肖波涛教授らが、武漢市の「中国科学院武漢病毒研究所」や「武漢市疾病予防管理センター」からのウイルス漏出を示唆する分析を発表しているが、その後の調査研究でどのような結果が発表されるのか注視 JBPRESS 小泉悠 共に権威主義を頂く中国とロシア ビジネスの利益かそれとも正義か 「反転攻勢の絶好の機会」 「国際協力する中国」というイメージを宣伝し続ける 『一帯一路』 オーストラリアで香港デモの“場外乱闘” 日経ビジネスオンライン 同盟に伴う「巻き込まれのリスク」は負いたくない シャープパワーとは、国家が外国に対する世論操作や工作活動などの手段で、自国に有利な状態を作り出していく外交戦略 ダイヤモンド・オンライン インドを巻き込み、中国の優越をそぐ 中国の新外交戦略「シャープパワー」とは (その5)(中国とロシアが軍事同盟!? 戦略核へと協力深まる、中国政府が外国の世論を操作 「シャープパワー」はここまで身近に迫っている、「感染抑え込み」強調で習近平が狙う「国際貢献」 ウイルス制圧後の主導的立場を視野に) 姫田小夏 新規感染者を出せば何らかの処分を受ける 日本の政治家が「日ロ平和条約を結べば、中国をけん制できる」と発言 「世界貢献」「国際協力」イメージ醸成 「「感染抑え込み」強調で習近平が狙う「国際貢献」 ウイルス制圧後の主導的立場を視野に」 自由で開かれたインド・太平洋戦略を過大評価してはならない 「日ロが協力して中国をけん制」論に怒ったロシアのラブロフ外相 「新規感染者をゼロに抑えよ」との指令 「中国政府が外国の世論を操作、「シャープパワー」はここまで身近に迫っている」 日韓の離間にすでに効果を発揮 「中国とロシアが軍事同盟!? 戦略核へと協力深まる」
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ソフトバンクの経営(その14)(資本欠損「LINE」も傘下に… さらに火の車「ソフトバンク」のヤバい節税術、ヤフーLINE経営統合 ライザップ化の恐れあり 単に専門店を集めただけの百貨店、ソフトバンクGが4.5兆円資産売却 「財務縮小」へ急転換の舞台裏) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、昨年11月28日に取上げた。今日は、(その14)(資本欠損「LINE」も傘下に… さらに火の車「ソフトバンク」のヤバい節税術、ヤフーLINE経営統合 ライザップ化の恐れあり 単に専門店を集めただけの百貨店、ソフトバンクGが4.5兆円資産売却 「財務縮小」へ急転換の舞台裏)である。

先ずは、会計専門家の細野祐二氏が本年1月3日付けデイリー新潮に掲載した「資本欠損「LINE」も傘下に… さらに火の車「ソフトバンク」のヤバい節税術」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01031102/?all=1&page=1
・『2018年12月のソフトバンク株式会社上場に始まって、19年9月、傘下のヤフー(現ZHD)によるZOZOへのTOB、11月に発表されたソフトバンクグループ(SBG)「真っ赤っか」決算、そして、同月のZHDとLINEの経営統合と、ここ1年に亘って、SBGは世間の耳目を集め続けた。新年を迎え、会計界のレジェンド・細野祐二氏がそのヤバい節税術を解説。ちょっと難しけれど絶対に為になる論考である』、あの細野氏が解説とは面白そうだ。
・『1.SBGという本丸に立ち入る前に、2019年にSBGが傘下に収めたLINEとZOZOの知られざる内情についての分析から始めてみたい。 (1)実態は連結資本欠損会社だった「LINE」  ヤフー(現ZHD)とLINEの経営統合は、ZHDの親会社であるソフトバンク側がかねてより持ち掛けていたものの、LINEの親会社であるNAVERが断り続けてきたという経緯がある。それが今年の夏ころからNAVERの風向きが変わり、今回一転、合意に至った。LINEの懐具合が大きく変わったからである。 LINEは対話アプリの利用者が8千万人を超える国内最大のスマホ向けメッセンジャーアプリ運営会社である。LINEは、東証1部上場企業ではあるものの、韓国のNAVERが株式の72.64%を所有するNAVERの完全支配子会社でもある。ここで、NAVERは韓国内最大のインターネット検索ポータルサイトを運営しており、韓国KOSDAQ上場企業である。 図(1)LINE 主要経営指標  LINEの売上高はここ数年順調に伸びているものの、その損益状況は芳しくない。LINEの当期純損益は、株式が上場された2016年12月期こそ71億円の当期純利益を上げたものの、その後、2017年12月期は82億円の当期純損失、2018年12月期が58億円の当期純損失と続き、2019年9月第3四半期に至ってはなんと339億円の当期純損失を出してしまった。会社の2019年9月第3四半期末の連結利益剰余金はマイナス394億円となっており、LINEは連結資本欠損会社なのである。 この会社が営業キャッシュフローをそれなりに上げていながらも当期純損益が悪いのは、主として、損失がキャッシュアウトしない(=関連会社の営業キャッシュフローは連結されない)関連会社の業績が悪いからである。ところが、2019年9月第3四半期には、頼みの綱の営業キャッシュフロー自体がマイナス91億円と赤字転落した。悪いのは関連会社だけではなく、本体の業績そのものが立ち行かなくなってきたのである。 LINEの業績不振の原因は、一般的には、会社が鋭意育成中のスマホ決済の利用者と加盟店の開拓費用が先行したためということになっている。会社は、2018年にユーロ円建社債を1421億円発行して、これら開発費用の資金手当てをしたが、2019年には、わずか9カ月で340億円もの損失を出してしまった。いくら金をつぎ込んでも一向に好転しないスマホ市場を前にして、LINEは、茫然と、乏しくなった金庫の底を見つめていたに違いないのである。 追い詰められたLINEに対して、ソフトバンク側より破格の経営統合案が出された。この経営統合案は、LINE株式の公開買付と株式交換を骨子としている。ここで、NAVERはLINEの発行済株式の72.64%を所有しており、LINEは本件経営統合後非公開会社化することになっている。統合会社は、LINE株式の残り27.36%(=100%-LINE持株72.64%)を、公開買付の方法により、1株5380円で日米の証券市場で買い取る。1株5380円で計算するとLINEの時価総額は約1兆3000億円となり、NAVERの持株評価は約9400億円となる。 経営統合案によれば、統合会社に対する持分はソフトバンク側とNAVER側で均等とするため、NAVERが持つLINE株の内50%を超過する部分(22.64%=72.64%-50%)は、LINEの新株発行により、ZHD株式と交換される。株式交換比率は、LINE株1株に対してZHD株11.75株とされている。ここで、LINEはTOB価格で1株5380円と評価されているので、ZHD株の評価は1株458円(=@5380円÷11.75)で固定され、これにZHDの発行済株式数を乗じると、ZHDの時価総額は2兆2000億円と計算される。NAVERはLINE株の22.64%と交換にZHD株2900億円相当を手にいれることができる。 LINEは資本欠損の赤字垂れ流し企業で、しかも、生き残りのためにはスマホ決済拡販のために巨額の資金を要する。あのまま(=ヤフーとの統合計画がないまま)事態が推移していれば、LINEの株価は、決算の大幅赤字と資金繰りの逼迫により、統合計画発表前の4000円台から暴落していたに違いないのである。ソフトバンク側はそのLINEに1兆3000億円もの時価評価を付けてくれた。まともな事業評価をする限り、とてもではないがLINEに1兆円を超える時価評価など出せるわけがない。ヤフーとLINEの統合計画は、ソフトバンク側が窮地のNAVER側に破格の大判振る舞いをした形になっている』、この頃は、コロナ・ショックで世界的な株価暴落が起きる前だったので、孫氏も気前が良かったのだろう。
・『(2)実際の資金繰りは火の車だった「ZOZO」  ZOZOはかねてより無借金経営で、資金繰りの問題など全くない財務優良会社であったところ、2018年におけるZOZOスーツの販売開始と前澤友作・前代表取締役社長の自社株売却を契機として、あれよあれよという間に資金破綻を起こし、2019年9月、ヤフーに身売りすることになった。ヤフーは、2019年9月30日から11月13日までの期間、ZOZO株をTOB(株式公開買付)により買付け、ZOZOの発行済株式の50.1%を総額4千億円で買収した。公開買付価格は1株2620円である。ヤフーは、2019年11月19日、買収資金4千億円を銀行借入により調達した。 ZOZOの前澤前社長は、2018年5月23日、所有するZOZO株の内6百万株をZOZOに230億円で売却した。ZOZOの取得単価は1株3843円である。ZOZOは、前澤前社長から自社株を取得するために、同年5月、三井住友銀行より240億円の短期銀行借入を行い、長く続けた無借金経営から脱落することになった。ヤフーによる買収計画発表前のZOZOの株価は2000円台にまで暴落していたので、ZOZOは、前澤前社長から買わされた自社株に110億円程度の含み損を抱えていたのである。当然のことながら、ZOZOがここで借りた240億円の銀行借入は、1年後の2019年5月に返済期日がやってくる。 一方、ZOZOの資金構造は、2018年3月期の決算期末直前、それ以前の資金余剰から資金不足に大転換することとなった。ZOZOは「つけ払いサービス」と「自社ブランド製品」の製造により入金サイトが長期化し、売り上げが増えるほど運転資金が売掛金と在庫に滞留してしまい、資金構造がキャッシュアウト先行(サイト負け)に変わってしまったのである。ZOZOは、2018年3月期以降、月額十億円単位の高速で資金が流出していた。 すなわち、ヤフーによる買収以前のZOZOは、前澤前社長ともども資金繰りが火の車だったわけで、前澤前社長とZOZOが同タイミングで巨額の資金不足に陥った点がZOZOの資金問題を難しくしていた。その絶体絶命のZOZOを、ヤフーが、1株あたり2620円という高値で引き取ってくれた。前澤氏はZOZOの株式の36.76%を持つ筆頭株主で、今回のTOBでその大半をヤフーに売却し、売却額は2500億円近くに上るといわれる。前澤氏はTOB発表日の9月12日付けでZOZOの社長を退任した。 ヤフーはTOBによりZOZOの発行済株式の過半数を4000億円で買収した。ということは、ヤフーはビジネスモデルと資金繰りが破綻しているZOZOに8千億円もの時価総額を付けてくれたことになる。あのまま(=ヤフーによる買収がないまま)事態が推移すれば、ZOZOの株価は、ビジネスモデルの崩壊と資金繰りの逼迫により、買収発表前の2200円台から暴落していたに違いないのである。ヤフーは窮地のZOZOを救済して、高い買い物をしたことになる』、この買い物も気前が良すぎる。「前澤前社長は・・・所有するZOZO株の内6百万株をZOZOに230億円で売却した。ZOZOの取得単価は1株3843円」、なんたる高値で引き取らせたのだろう。
・『(3)「孫正義」の狙い  ZOZOの買収とLINEの経営統合は、統合前のZOZOとLINEが共にビジネスモデルの行き詰まりと資金繰りの逼迫状態にあったものを、SBGが、共に高値で買収したものであることを論証した。両社とも、もう少し時期を後にずらせば、はるかに安い金額で買収できたことと思う。 では、なぜSBGはあえて9月にZOZOの買収を公表し、なぜ11月18日にLINEの統合を急遽公表して、高値掴みをしたのかということになるが、それは、これらの買収や経営統合の実質的意思決定者は孫正義SBG会長であるところ、買収や経営統合にかかる金はSBGから一切出ていかないからだと思う。孫会長とすれば、自分の懐を一切傷めずに、ZOZOとLINEが手に入るのである。ならば、たかが数千億円程度の高値買付など意に介する必要などないのだろう。 孫正義SBG会長は、世界のIT産業の覇権に強いこだわりがあり、その中で、ヤフーに対して、 「いつになったら楽天やアマゾンを追い越して世界のEコマースの覇権が握れるのか?」などと、強い圧力をかけていたことが報道されている。孫会長はソフトバンク帝国の帝王であり、世界有数の絶対的カリスマ経営者でもある。孫正義会長の圧力は、今年の春先より夏にかけて頂点に達し、ヤフーは、「何をいつまでも眠たいことをやっているのだ。」とばかり、孫会長に怒られたというのである。 そこで、2019年9月、窮地の前澤前ZOZO社長の相談に乗る形で孫会長自らがZOZOの買収を決めた。一方、子会社のソフトバンク(株)が、孫会長の叱咤に応える形で出してきたのがヤフーとLINEの経営統合ということであろう。だから、帝国内の下部組織体であるヤフーやソフトバンク(株)とすれば、帝王の逆鱗に応えてZOZOとLINEが買収できればそれで良いわけで、買収価額は二の次とならざるを得ない。 ZOZOの買収価格は4000億円である。しかし、この4000億円は、ヤフーが銀行借入で賄うわけで、SBGの懐は一切痛むことがない。LINEの経営統合に要する資金は総額6480億円であるが、このうち、2935億円はZHDの新株発行で賄われる。残りの3545億円は、LINE株の公開買付資金なので現金がいるが、それとて実際に資金を出すのはソフトバンク(株)とNAVERが半々ずつ出すので、結局SBGは一銭の金も出さなくて良い。孫会長は、独立採算子会社に帝王としての圧力をかけ、独立採算子会社の金を使って、帝王自らの懐を傷めることなく、SBGの株主価値なるものを上げることに成功したということになる。 そうすると、本件では、孫正義会長、SBG,ZOZO,前澤前ZOZO社長、NAVER、LINEの全てが経済的利益を得て満足をすることになるが、この中で、唯一巨額の損失を抱える可能性があるのはZHDだけである。ZHDは、ZOZOの買収により、推定3000憶円超の「のれん」の計上を余儀なくされる。LINEの統合では、推定1兆円の「のれん」が計上される。ZHDの連結資産は、1兆3千億円の「のれん」で“てんこ盛り”となってしまうのである。 ZOZOの「のれん」とLINEの「のれん」の投下資本利益率は、それぞれ1.97%と0%であり、これらの「のれん」には超過収益性が認められない。ヤフーはZOZOの買収以前は財務内容に全く問題のない超優良会社であった。ZOZOの買収とLINEの経営統合は、ZHDの財政状態計算書に1兆3千億円の不良資産を計上させ、その財務内容を壊滅的に毀損することになると思う』、「孫会長は、独立採算子会社に帝王としての圧力をかけ、独立採算子会社の金を使って、帝王自らの懐を傷めることなく、SBGの株主価値なるものを上げることに成功」、これは親子上場に伴う利益相反の典型例だ。
・『マスコミ向け強弁  2.買収や経営統合にかかる金はSBGから一切出ていかないとはいえ、苦境に直面するのは他ならぬSBGである。それを具体的に見ていこう。 現在のSBGは投資会社であり、その生殺与奪の権を握るのはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という10兆円の投資ファンドである。SBGは2019年9月第2四半期決算において、SVFの主力投資先ウィーカンパニーへの投資で9千億円もの評価損を出した。SVFには、他にも、経営不振に陥り株価低迷中のウーバーテクノロジーへの巨額投資もある。SBG株は、SBGが出す兆円単位の巨額利益が「非上場株式の金融工学的時価評価」で出した紙の上の利益に過ぎないことを嫌気されて、2019年6月の6000円台から同年10月の4000円台割れまで下落してきた。 孫正義会長は、2019年11月6日、2019年9月第2四半期における巨額損失の決算発表を見事なプレゼンテーションで乗り切った。そうしたところ、翌週の11月13日、SBG傘下のヤフーとLINEの経営統合という衝撃的なニュースが公表された。この結果、SBGの株価は回復軌道をたどり始めている。SBGは、SVFの巨額損失問題を乗り切ったと思う。 2019年9月第2四半期決算後、現在のSBGの苦境は、巨額の資金調達にある。SBGが苦しむ資金調達には3つの領域がある。まず第1番目に資金調達が必要なのは本業の運転資金である。 図(2)SBGの連結業績推移 SBGの会計利益先行率(=当期純利益÷営業キャッシュフロー)は、2016年3月期以前は一般的な50%台であったものが、2017年3月期から90%台へと急激に悪化し始め、2019年3月期からは100%を超過するようになった。会計利益先行率が100%を超過するということは、計上された利益の内営業キャッシュフローの100%を超過する部分は現金の裏付けがないということを意味し、その超過部分は運転資金の増加として貸借対照表に残留しているはずである。すなわち、現在SBGは、少なくとも会計利益先行率が100%を超過する部分の2393億円(1兆4112億円-1兆1719億円)の運転資金を借入れなくてはならない。 一方、SBGは2019年3月期末現在15兆6851億円の有利子負債を抱えており、毎期2兆円前後の返済期日が今後5年間にわたりやってくる。会計利益先行率が100%を超過しているのだから、SBGは、その返済原資を営業キャッシュフローで賄うことができない。要するに、SBGは、新規と更新を合わせグループ全体で、今後5年間、毎年のように2兆数千億円の資金調達を迫られているのである。 これに対してSBGは、15.6兆円の連結有利子負債の内10.1兆円は独立採算子会社等のものであり、SBGは「独立採算子会社の借入金を返済する義務は法的にも道義的にも存在しない」などとして、残りの5.5兆円だけがSBGに返済義務のある借入金であると主張する。また、SBG本体は投資管理会社に過ぎないので、運転資金の調達も独立採算子会社がやることで、SBGはその資金繰りに関知しないと言う。 これはSBG広報のマスコミ向け強弁だと思う。独立採算子会社の時価総額に重要性があるのであれば、親会社であるSBGは、これに救済融資せざるを得ない。現に、SBGは、独立採算子会社であるウィーワークに対して1兆円もの追加ファイナンスを打っている。SBG広報の強弁にかかわらず、SBGが、連結グループ全体として、毎年2兆円規模の資金調達に苦しんでいるという事実は変わらない。 資金調達が必要な2番目の領域は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド第2号である。SBGは2019年8月にSVF第2号を立ち上げることを発表し、同年11月の第2四半期決算発表の場でも、再度、第2号が第1号と同規模で粛々と立ち上がる旨を公言している。ところが、あれから半年近くたった2019年の年末現在、SVF第2号への出資者は、サウジアラビア政府を含め、何も確定していない。 投資家は、第1号ファンドにおけるウィーカンパニーやウーバーテクノロジーの失敗に怖気づいているはずで、ならば、まず何と言っても第1号同様に、SBG自身が第2号に3兆円程度の出資をしておかなくてはならないが、そんな金はどこにもない。SBGは公言したSVF第2号を組成するため、少なくとも2兆円程度の見せ金を調達しなければならない。 資金調達が必要な3番目の領域は、SVF第1号自体である。SBGの有価証券報告書には、SVFとデルタファンドの借入金が次の通り開示されている。 図(3)SVF及びデルタファンドの借入金 もとより、SVFに対する出資者にはプレミアム出資者と一般出資者があり、プレミアム出資者には7%での固定利回りが保証されている。また、SBGによる決算説明によれば、SVFは、利益が1兆8千億円に対して損が6千億円で、正味1兆2千億円儲かっていることになっている。ならば外部投資家に対して配当を支払わなければならない。その配当原資は、投資した非上場株の上場による資金回収しかないが、ユニコーンバブルが崩壊した現状において、資金回収は難しくなっている。だから、SVFは配当支払いのために2019年3月期末現在9千億円もの借金をしているのである。この借金のほとんどは、SBGあるいはその連結子会社が貸しているが、だからと言って、これが、独立採算子会社としてのSVFの借入金であることには変わりない。SVFは、投資非上場株が上場して9千億円の資金が回収できない限り、今ある9千億円の借入金を返済しなければならない』、「SVFは配当支払いのために2019年3月期末現在9千億円もの借金をしている」、極めて不健全な状態だ。このままでは、返済どころか、今年も「配当支払いのため」の「借金」がさらに膨らむ懸念がある。「SBGは「独立採算子会社の借入金を返済する義務は法的にも道義的にも存在しない」、との主張は驚くほど非常識だ。
・『4千億円を追徴すべき  私は、2019年が、非上場ユニコーンバブルと国際M&Aによる巨額「のれん」バブルの崩壊が始まった年として、歴史に記憶されるように思う。来る2020年はそのバブルの崩壊が本格化する年になるであろう。その中で、SBGは、グループ会社の運転資金で2兆円、SVF2号の見せ金で2兆円、SVF1号の配当原資で1兆円、合計5兆円の資金調達をしなくてはならない。この資金調達にはアリババ株を使うしかないが、持分時価相当額13兆円のアリババ株と雖も、それでこれだけの規模の資金調達ができるかどうかは疑問である。SBGはまことに多難な2020年の年明けを迎えることになると思う』、「合計5兆円の資金調達をしなくてはならない」、「アリババ株」の売却などでどこまで調達できるのだろう。
・『3.SBGは常に最新の節税スキームの研究(タックス・プランニング)により毎期巨額の節税を行っているが、それにつけても、SBGが携帯子会社であるソフトバンク(SB)の上場時の株式売却益を圧縮するために採った節税スキームは“ポンカス篭脱けスキーム”としか言いようのない、あざとい代物である。 SBGの2019年3月期の有価証券報告書167頁によれば、SBGは、ソフトバンクグループジャパン(SBGJ)がソフトバンク株式の上場売出で得た手取金2,349,832百万円に対する法人所得税相当額750,804百万円を、未認識の税効果資産を認識して、合計405,577百万円も減額させることに成功したと開示されている。4千億円もの節税を可能ならしめたスキームの概要は次のとおりである。 図(4)配当と現物出資による税務欠損の創造、SBG租税回避会計処理  この節税の舞台はSBG株式会社である。SBGは、2016年9月英国のアームHDを3兆3千億円で買収した(仕訳番号1)。ここで、アームHDは持株会社でアームLtd.の株を100%所有している。さて、2019年3月期に、SBGはアームHDよりアームLtd.の持ち株の4分の3を配当として受け取った(仕訳番号2)。この結果、アームHDは、唯一の資産であるアームLtd.の持ち株が4分の1に減少したので、税務上の企業価値は4分の1、すなわち8千億円(=2.5兆円÷4)となる。そこで、SBGは所有するアームHD株式の全てをソフトバンク・ビジョン・ファンドに現物出資した(仕訳番号3)。現物出資価格は税務上の簿価8千億円なので、SBGには2.5兆円(=3.3兆円-0.8兆円)の株式譲渡損失が出る。つまり、3.3兆円で買った企業の価値を、子会社配当を使って8000億円まで下げ、8000億円となった企業の株を現物出資することによって、SBGにあたかも2.5兆円の損失が出たかのごとき外観をつくりあげたのだ。 さて、この結果、SBGには2兆5千億円の受取配当と2兆5千億円の株式譲渡損が発生した。ここで子会社からの受取配当は税務上の益金とはならないところ、現行税務上、子会社株式の譲渡損は損金となる。このようにしてSBGは2兆5千億円の税務欠損金を創造した。ところで、SBGJはSBGの完全子会社なので、連結納税制度により、SBGJで出た2兆3千億円の課税所得はSBGで出た2兆5千億円の税務欠損金と相殺することができる。 SBGは、国税局の指摘により2019年3月期の法人税の修正申告を行い、一部税務欠損金を否認したものの、既実行の本件節税スキームはそのまま受け入れられたと報道されている。この報道はにわかには信じがたいが、私は、本件節税スキームは法人税法132条の2で規制する租税回避行為、すなわち脱税だと思う。 組織再編税制を悪用した租税回避行為については、日本IBM事件とヤフー・IDCS事件を受けた最高裁の2016年2月29日付判例がある。この判例の中で、最高裁は、「税法の濫用は租税回避行為である」と明言し、税法濫用の判断にあたって考慮する事情として次の2点を挙げている。 (1)当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか (2)税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等  私には、SBGによる本件節税スキームは、最高裁の挙げる2つの税法濫用判断基準にズバリ該当するように見える。2020年度の税制改正大綱では、簿価の1割超の配当は税務上の簿価引下げとし、これを過去10年以内に買収した子会社に限定して適用するという。ならば、SBGが行った本件脱税スキームは追認されてしまうことになる。これは税務当局と租税回避企業のイタチごっこで、それを税制改正で規制するというのでは、やったもの勝ちということになりかねない。SBGが行う脱税スキームに対する国民の怒りは強い。私は、今からでも遅くないので、国税当局は法人税法132条の2を適用して、SBGから本来の法人税4千億円を追徴すべきだと思う。 ――SBGはどう答えるか。まずは、本稿で論じた節税スキームについて尋ねると、広報担当者はこう回答した。「個別の取引についてはコメントを控えます。当社グループの海外事業における最適な資本関係を実現するため、2018年3月期、アームグループにおいて資本関係の再編が行われました。当社としても、今後の海外事業の発展に寄与する合理的な再編であると判断し、承認いたしました。当社の税務申告にあたっては、税法に従って適正な処理を行いました」 ――更にこの節税スキームは、最高裁の2016年2月29日付判例が示す税法濫用の判断基準に該当し、法人税法132条の2で規制する租税回避行為に該当する、脱税行為であると言えるのではないか、このようなSBGの脱税行為に対する国民の怒りが拡大している中で、税務係争事件化する前に、修正申告を行い、約4千億円あるいは約8千億円の納税を自主的に行うべきではないかと見解を聞くと、「先の回答の通り、税法に従って適切な処理を行いました」 ――次に、節税額は8千億円になるのではないか、2018年度の有価証券報告書に記載されている約4千億円の節税額とは約4千億円の差額が出てしまっており、この差額4千億円は、ソフトバンク株の売却益以外の他の益金(例えば、アリババ株の先渡し契約預り金の益金参入約1.2兆円)との相殺分が含まれるのではないかと訊ねると、「回答は控えます」 また、有限監査法人トーマツに支払っている、監査証明業務に対する約18億円、被監査業務に基づく約3億円、DTTに対する約39億円の内、税務報酬がいくらであったのかの質問に対しても、「回答は控えます」とのことだった。 ――この回答を受け、細野氏の見解は以下の通りである。 SBGは、自社に不利な内容の記事がマスコミに出ることに対し異様に反応し、その場合には、広報を通じて強烈なクレームをかけてくるのを常としている。このクレームは、著者に対しては名誉棄損の損害賠償訴訟、メディアに対しては広告出稿の停止を言外に強く匂わせるもので、従って、SBGの財務上の問題指摘をまともにする人はほとんどいないし、その論考を取り上げてくるメディアは限られる。このようにSBGに対して腫物に触るような社会環境の中で、私は、長くSBGの財務諸表分析を行ってきており、この間、あまたの論考をメディアに発表してきた。その中で、SBGが「回答を控える」と反応したのは、今回を含めて過去2回しかない。 前回は、2019年10月に、SVFに内在するウィー・カンパニーとウーバー・テクノロジーの損失が1兆円規模に上ることを指摘し、SBGはこれに対して回答を控えると反応した。翌11月、SBGは私の指摘通りの巨額損失を第2四半期決算で計上した。 SBGの2019年3月期におけるSBGの節税額は4千億円と開示されているところ、私は、これは節税の域をはるかに逸脱した脱税で、その規模も4千億円ではなく8千億円ではないかという疑問を持っていた。 国際会計基準が認める非上場株式の評価益は税務上の益金とはならないので、私は、SBGが国際会計基準と税務の差を利用した節税を行うこと非難するものではない。しかし、SBGが2018年12月に行った携帯子会社SBの上場で得た手取金2兆3千億円に対する法人所得税は会計基準差ではない。今回の質問の主眼はこの点を確認するものであったが、これに対してSBGは、「税法に従って適正な処理」、「回答を控える」というばかりである。 この難しい論考が一人でも多くの人の目に触れ、その結果、SBGに退蔵されている我が国の逋脱税8千億円の回収につながることを祈るものである』、難しくて私の理解能力を超えているが、国税当局の頼りなさにはがっかりした。「自社に不利な内容の記事がマスコミに出ることに対し異様に反応し・・・著者に対しては名誉棄損の損害賠償訴訟、メディアに対しては広告出稿の停止を言外に強く匂わせるもので、従って、SBGの財務上の問題指摘をまともにする人はほとんどいないし、その論考を取り上げてくるメディアは限られる」、道理でちょうちん記事が多い訳だ。「メディア」のだらしなさには、改めて憤りを覚える。

次に、ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏が1月6日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ヤフーLINE経営統合、ライザップ化の恐れあり 単に専門店を集めただけの百貨店」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/31817
・『専門店を集めただけの百貨店のようだ  ポータルサイト日本最大手のヤフーを展開するZホールディングス(ZHD)と通信アプリ大手のLINEが経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。 ZHDの親会社であるソフトバンクとLINEの親会社である韓国ネットサービス大手のNAVER社が50%ずつ出資して共同出資会社を設立し、ZHDの筆頭株主となって、その下にヤフーとLINEが完全子会社として入る統合形式で、2020年10月までの統合完了を目指すという。 サービス利用者数5000万人を超えるヤフーとユーザー数8000万人のLINEが統合すれば単純計算でもユーザーは1億人規模になり、通販や金融、SNSなどを一手に担う巨大プラットフォーム企業が誕生することになる。AI、コマース、フィンテック、O2O(オンラインtoオフライン。オンラインとオフラインを連携させたマーケティング)などの分野への投資を加速して、アメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)などの巨大グローバル企業に対抗するのが狙いだという』、大前氏の見方はどんなものなだろう。
・『アメリカの大手企業とはケタ違いの差がある  ZHDの川邊健太郎社長は「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指していきたい」と抱負を述べている。一方、LINEの出澤剛社長は統合に動いた背景に巨大化するGAFAやBATの存在があったとして、「ネット業界は優秀な人材やデータなどすべてが強いところに集約する構造。2社が一緒になってもアメリカの大手企業とはケタ違いの差がある」と危機感を隠さない。 LINEの親会社NAVERは韓国系。ソフトバンクの孫正義会長は韓国では圧倒的に人気も知名度もあるし、相性からすればヤフーとLINEの経営統合は自然の流れともいえる。LINEはSNSでは日本一だが、どうやって事業をお金に換えるかというマネタイズ(収益化)の部分で問題を抱えている。キャッシュレス決済のブームに乗ってLINE Payを打ち出してはいるが、大幅な赤字の垂れ流しになっている。 同じSNSのフェイスブックは、広告モデルでのマネタイズをしつこくやって収益の軸にしているが、LINEにはそれがない。親会社のNAVERは「無料」で囲った8000万人のユーザーを十分にマネタイズできていない点を心配し、おそらくほっとしているだろう。 一方のZHDは収益の軸がわからなくなるほど事業を多角化してきた。ZHDの傘下にはeコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほかに、電子決済の「PayPay」、無料動画配信サイトの「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブジャパン」、オフィス関連商品の販売、その他配送事業の「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、金融系では「ジャパンネット銀行」に、クレジットカード事業の「ワイジェイカード」などがある。ファッション通販サイトのZOZOはTOB(株式公開買い付け)によって連結子会社化を完了している。 このうちPayPayは認知度アップに100億円還元キャンペーンを展開するなど、ソフトバンク孫会長の肝煎りで初期投資に資金をかけてきただけあって、将来価値は高いと言われている。しかし、これまたキャンペーンを止めれば決済の定番となるかどうかに不安がある。また、これだけルーツの異なる事業を寄せ集めると一体となって経営していくのは非常に難しい。下手をすれば急速なM&Aで子会社を抱えすぎて収拾がつかなくなったライザップグループのようになる恐れもある』、「下手をすれば急速なM&Aで子会社を抱えすぎて収拾がつかなくなったライザップグループのようになる恐れもある」、とは厳しい見立てだ。
・『一緒になって何をやるのか  それぞれに課題を抱えたZHDとLINEが一緒になって何をやるのか。統合によって何が補完され、課題がどのように解決していくのか。現状から絵図は見えてこない。組織図上は双方の親会社であるソフトバンクとNAVERが折半で共同出資した新会社が筆頭株主になってZHDを傘下に置き、その下に100%子会社としてヤフーやLINEが入る。私は40年以上コンサルティングをやっているが、そんな統合形態でうまく経営しているケースを見たことがない。 重複はしているだろうが、確かにLINEの8000万人というユーザーは魅力的だ。しかし、たとえばLINEから入ったユーザーが一休を利用するイメージはあまり湧かない。どちらかといえば富裕層ではないLINEユーザーが、一休が取り扱うような高級ホテルや旅館にどれだけ関心を寄せるだろうか。やはり求めるのは楽天トラベル的な手軽さであり、会社にも家庭にもバレずにポイントを稼いでヘソくれるお得感だろう。 PayPayの決済機能をLINEに持ち込み、8000万人のLINEユーザーの嗜好に適うようなサービスを一元的に提供する。一つ一つ吟味してそうしたことを立体的に展開できれば、統合のシナジーは出てくるだろう。私がZHDの社長なら、シャカリキにこれをやる。LINEも含めて各子会社から企画能力を持った優秀な人材を引き上げて、そこですべての戦略企画をやる。そこで決めたことを子会社に実行させる。各子会社がバラバラに動くことは明確な戦略が動き始めるまで控えてもらう。 ところが現状のZHDはあくまで財務的なホールディングカンパニーで、統合的な戦略を企画立案する機能は持ち合わせていないようにみえる。そのうえZHDの共同CEOには川邊氏と出澤氏が就いて、それぞれ代表権を持つという。しかし、やはり経営マインドというのは、EMS(電子機器受託製造サービス)で世界最大手になった台湾の鴻海精密工業のトップ、郭台銘氏のように、1人の人間が構想し、指揮、命令できるようでないといけない。彼らが目標にしているアリババも、創業者のジャック・マーが骨格をつくった。ソフトバンクも日本のヤフーも創業社長の情熱が成長の原動力だったのだ。 強者と強者が一緒になっても1+1=2にならず、1.6くらいにしかならないのは企業合併ではよくあることだ。ZHDに企画機能と権限を集約しない限り、専門店を集めただけの百貨店のようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入っただけでは、パズルがうまくはまるようなシナジー効果は期待できない』、「ZHDの共同CEOには川邊氏と出澤氏が就いて、それぞれ代表権を持つ」、「強者と強者が一緒になっても1+1=2にならず、1.6くらいにしかならないのは企業合併ではよくあることだ」、さすが大前氏ならではの辛口の見方だ。
・『ソフトバンクが巨大化する今、NTT再統合を  ZHDとLINEの経営統合には「独占禁止法の壁が立ちはだかるのでは」という指摘もあるが、それはさておき、孫会長の情熱と野望で投資会社となったソフトバンクが、さまざまな事業体を飲み込んで巨大化している昨今、純国産キャリアであるNTTにも再統合の機会が与えられるべきだと私は考える。 「増税なき財政再建」をスローガンに掲げる第二次臨時行政調査会(土光敏夫会長)で政府公社の民営化が議論され、その答申を受けて1984年に電気通信事業法と日本電信電話会社法(NTT法)が成立して日本電信電話公社の民営化が決定、1985年4月にNTTは誕生した。 さらに民営化してもNTTは巨大すぎて民業を圧迫するということで、手足を縛るために分割されることになった。当時、独占禁止法違反でAT&Tを地域分割したアメリカにならって、NTTもNTT東日本とNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTTデータに分割されたのだ。 携帯電話の時代になってからはドコモが長らく稼ぎ頭だった。しかし、5Gなど次世代技術の開発競争が激化する中、ここにきてドコモの稼ぐ力も弱まってきている。またデジタル交換機によって「長距離」という概念がなくなり、携帯電話から簡単に海外やネットにアクセスできる現代において、地域分割したり、国内通信と国際通信に分ける意味もなくなっている。 気がつけば22に解体されたアメリカの地域通信事業者(ベビーベル)は、通信技術の進歩とともにいつのまにか再統合されてAT&Tとベライゾンの2社にほぼ集約され、寡占状態に戻っている。それでもGAFAのようなデジタル・プラットフォーマーの勝者にはなっていない。 現在の通信実態を鑑みれば、NTTもバラバラに事業を行うよりもストレートに再統合したほうが、スケールメリットが生きる時代なのだ。ところが恐竜が暴れ回るといけないということで中生代につくったNTT法があるために、再統合ができない。 通信事業の頭打ち感が否めない中、NTTが将来的に目指すべきは銀行だと私は思っている。NTTが統合すれば、固定電話と携帯電話の顧客の名寄せは簡単にできる。その顧客データこそが最強の資産であって、それを活用して銀行業に取り組めばアリババ傘下のアント・フィナンシャルのようになれる可能性がある。 NTT分割民営化は中曽根康弘政権の産物。先般お亡くなりになった中曽根氏が現役だったら「NTT法を改正して、もう自由にしてやれ」と言って後押ししてくれるのではないだろうか』、「NTT再統合を」、前向きに検討すべきだ。ただ、「NTTが将来的に目指すべきは銀行」、には首を傾げざるを得ない。現在のNTTは政治との距離ができたとはいえ、政治家が口を出せば、経済合理性を無視した融資などが横行し、不良債権の吹き溜まりになるのは、新銀行東京の例を見るまでもなく明らかだ。慎重考えるべきだろう。

第三に、4月1日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンクGが4.5兆円資産売却、「財務縮小」へ急転換の舞台裏」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/233378
・『新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場が混乱する中で、ソフトバンクグループ(SBG)が4.5兆円の保有株の売却に乗り出した。紆余曲折を経て、資産を縮小する財務運営に急転換するまでの舞台裏を明かす』、「舞台裏」とは興味深そうだ。
・『危機で浮上の「株式非公開化」 株価下落で孫社長の不満がピークに  「いっそ株式を非公開化したらどうか」 3月23日に総額4.5兆円の保有株売却と計2.5兆円の自社株買いに乗り出したソフトバンクグループ(SBG)は、ぎりぎりの段階まで、究極の「株価対策」を模索していた。 それが、孫正義会長兼社長が自ら資金を借り入れて市場の株式を買い取る株式非公開化の案だ。関係者によると、3月の3連休の中日にあたる21日までに、SBG幹部の間で議論されたという。 孫社長が株式の非公開化を検討したのは、これが初めてではない。2008年のリーマンショック後の株価低迷や、傘下の米通信会社スプリントの業績低迷が顕著になった15年にも非公開化が議論されたことが分かっている。 株価が「異常値」にまで落ち込む度、それに不満を持った孫社長が自ら資金を投じてMBO(経営陣による自社買収)に乗り出す案が浮上したが、いずれも見送られている。それが再び俎上(そじょう)に載ったのは、足元の新型コロナウイルス感染拡大による金融市場の混乱が深刻化している表れでもある。 コロナショックで株価が下落する以前から、孫社長は、SBGの株価が「実力以下でしか評価されていない」と不満を募らせてきた。19年12月末時点で、中国・アリババ集団、国内通信子会社ソフトバンク、スプリント、英半導体設計会社アームなどSBGが保有する株式の価値は約27兆円だったが、SBGの時価総額はそれを大幅に下回っていたためだ。3月に入って株価が連日下落してその差が一段と広がり、孫社長が「株価対策」に再び動き出した。 最初に手を打ったのが、3月13日に発表した5000億円を上限とする自社株買いだ。ちょうどSBGに出資する米ファンド、エリオット・マネジメントが最大2兆円の自社株買いを要求していたため、SBGはそれに応じたように見えるが、SBG幹部によると「エリオットの要求よりも、孫さん自身がやりたかったのが実態だ」という。 だが、その狙いは裏目に出た。米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは17日、自社株買いの発表でSBGの財務の健全性に疑義が生じたとして、格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更。 さらに、同じ17日にはSBGが米シェアオフィス大手のウィーカンパニーに実施していた最大30億ドル(約3200億円)のTOB(株式公開買い付け)を見直す可能性があると既存株主に通知したことが明らかになり、もともと不安視されていた財務悪化懸念が一段と高まり、株価下落に拍車がかかった。 19日にはSBGの株価は3年8カ月ぶりの安値に落ち込み、時価総額は6兆円を割り込んだ。通信子会社ソフトバンクの時価総額を下回るレベルで、もはや、アリババ、スプリント、アームの価値は「ゼロ」と評価されたに等しく、SBG内部には激震が走った。こうして究極の策として再び浮上したのが冒頭の株式の非公開化の案だった』、株価が堅調な時には資本市場を最大限利用して、不調になれば、「株式の非公開化」、などいうおいしいところ取りは、取引銀行も許さないだろう。
・『新規の株式投資は抑制 資産売却と手元資金で「巣ごもり」  結果的に今回も非公開化は見送られたが、その代わりの対策として、2兆円の自社株買いを追加実施する方針に落ち着いた。だが、それに至るまでにもSBG内部で紆余曲折があった。 内情を知る関係者によると、最初に発表した5000億円の自社株買いで株価下落に不満を募らせた孫社長は即座に、自社株買いを追加投入して市場に真正面から対抗する構えを見せた。だが、それに財務部門の幹部が「待った」をかけたという。 SBGは2月25日、保有するソフトバンク株を担保にしたマージン・ローンと呼ばれる手法で、金融機関から5000億円を調達。これにより、手元資金は1.7兆円超の水準まで確保しているが、それだけでは追加で自社株を実施するには足りない計算だったからだ。 20~21年度の2年間に予定する社債償還は約1.5兆円にのぼる。SBGには「少なくとも2年分の社債償還資金を手元に置く」という財務規律があり、これを維持するためには、追加の自社株買いの原資を調達する必要があった。 「本当にこれ以上の自社株買いをやるなら、売るべきものは売って負債を減らしてもらいたい」。追加の自社株買いに前のめりな孫社長に対し、財務部門の幹部が釘を刺したことで、セットで保有株売却の方針がまとまった。 最後は孫社長の判断により、今後1年間で4.5兆円にものぼる保有株を売却して資金を調達することにした。それと引き換えに実施する自社株買いは計2.5兆円で、これも空前の金額だ。残る2兆円は負債の圧縮や手元資金に充てる。 「新規投資は控えて、手元資金と資産売却でしばらくは“巣ごもり”する」。あるSBGの幹部は、新型コロナの感染拡大で金融市場の混乱が長引くことを見据えながら、「外出自粛」になぞらえる。負債の積極活用で新規投資を増やしてきた拡大路線から、財務縮小への急転換だ』、「SBGには「少なくとも2年分の社債償還資金を手元に置く」という財務規律があり」、ちゃんとした「財務規律」があったとは意外だ。「追加の自社株買いに前のめりな孫社長に対し、財務部門の幹部が釘を刺したことで、セットで保有株売却の方針がまとまった」、「財務部門」が一定の発言力を持っているのも意外だ。
・『混乱下での株式売却 空前の実験がスタート  もっとも、すでにSBGの新規投資は、実態として凍結状態にある。17年5月から運用を開始した10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は投資枠の上限に達して19年9月末までに新規の投資を終了した。 2号ファンドは19年7月に1080億ドル(約11.7兆円)の資金が集まる見込みと発表していたが、ウィーカンパニーの経営不振で、資金集めは頓挫した状態だ。現在、2号ファンドはSBGの自己資金の数千億円だけで運用している状態で、外部資金は調達できておらず、新規投資はほとんど進んでいない。 こうした中で、3月28日には、SBGが出資する英通信衛星ベンチャーのワンウェブが、新型コロナによる市場混乱で資金調達が進まずに経営破綻し、米連邦破産法11条の適用を申請した。 ビジョン・ファンドの投資先でも、ウィーカンパニーのシェアオフィスや、インドの格安ホテルOYO(オヨ)は、コロナウイルスの感染拡大が需要を直撃するとみられ、投資先の経営悪化が徐々に進行する恐れが高まっている。 SBGが「巨額の保有株を売却して、大幅にディスカウントされた自社株を買う」(SBG関係者)という判断に傾いたのは、こうした危機のダメージを最小限に抑え込むのが本質だ。今後は、コロナショックで金融市場が混乱する中で、いかに株式売却を実現するかが最大の課題となる。 1年間で4.5兆円もの保有株を処分する大掛かりな取り組みを実施するにあたっては、売却候補はおのずと限られる。具体的には、傘下のアリババ(2月12日時点の保有価値は16兆円)、ソフトバンク(同4.8兆円)、スプリント(同3.2兆円)の上場3社が筆頭だ。 また、ビジョン・ファンド1号が保有する上場株8社も売却候補になるだろう。8社の累計投資額は19年12月末で95億8700万ドル(約1兆円)。これらを売却すれば、SBGはビジョン・ファンドの配当収入として現金を確保することができる。 ただ、格付け会社のムーディーズは、金融市場の混乱の中でSBGが巨額の保有株を売却する点を懸念。「割安な価格で株式を現金化して残った投資先の価値が低下する恐れがある」として、3月25日にはSBGの発行体格付けを2段階引き下げた。 これに対してSBGは「誤った憶測」と即座に反発し、ムーディーズへの格付け依頼を取り下げて、全面的に対立することとなった。 今後1年間で投資会社のSBGは、4.5兆円もの保有株を売却して現金を確保して、新たな姿に生まれ変わることができるか。未曽有の危機になりそうなコロナショックに端を発した金融市場の危機を乗り切るために、SBGの壮大な実験が始まる』、「ムーディーズへの格付け依頼を取り下げ」、とはいえ、取り下げたのは依頼格付で、ムーディーズとしては勝手格付として継続して格付を発表するだろう。SBGが「コロナショックで金融市場が混乱」を如何に乗り切るか、大いに注目される。
タグ:「ソフトバンクGが4.5兆円資産売却、「財務縮小」へ急転換の舞台裏」 合計5兆円の資金調達をしなくてはならない 4千億円を追徴すべき (その14)(資本欠損「LINE」も傘下に… さらに火の車「ソフトバンク」のヤバい節税術、ヤフーLINE経営統合 ライザップ化の恐れあり 単に専門店を集めただけの百貨店、ソフトバンクGが4.5兆円資産売却 「財務縮小」へ急転換の舞台裏) 「ヤフーLINE経営統合、ライザップ化の恐れあり 単に専門店を集めただけの百貨店」 強者と強者が一緒になっても1+1=2にならず、1.6くらいにしかならないのは企業合併ではよくあることだ ZOZOの前澤前社長は、2018年5月23日、所有するZOZO株の内6百万株をZOZOに230億円で売却した。ZOZOの取得単価は1株3843円 実際の資金繰りは火の車だった「ZOZO」 ソフトバンクの経営 細野祐二 ダイヤモンド・オンライン 新規の株式投資は抑制 資産売却と手元資金で「巣ごもり」 ソフトバンクが巨大化する今、NTT再統合を 下手をすれば急速なM&Aで子会社を抱えすぎて収拾がつかなくなったライザップグループのようになる恐れもある ウィーカンパニーへの投資で9千億円もの評価損 絶体絶命のZOZOを、ヤフーが、1株あたり2620円という高値で引き取ってくれた ZOZOの買収とLINEの経営統合は、ZHDの財政状態計算書に1兆3千億円の不良資産を計上させ、その財務内容を壊滅的に毀損する ZHDの傘下にはeコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほかに、電子決済の「PayPay」、無料動画配信サイトの「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブジャパン」、オフィス関連商品の販売、その他配送事業の「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、金融系では「ジャパンネット銀行」に、クレジットカード事業の「ワイジェイカード」などがある SBGは2019年3月期末現在15兆6851億円の有利子負債を抱えており、毎期2兆円前後の返済期日が今後5年間にわたりやってくる 自社に不利な内容の記事がマスコミに出ることに対し異様に反応し マスコミ向け強弁 ZHDの連結資産は、1兆3千億円の「のれん」で“てんこ盛り”となってしまう 「孫正義」の狙い SBGは「独立採算子会社の借入金を返済する義務は法的にも道義的にも存在しない」などとして、残りの5.5兆円だけがSBGに返済義務のある借入金であると主張 資本欠損「LINE」も傘下に… さらに火の車「ソフトバンク」のヤバい節税術」 実態は連結資本欠損会社だった「LINE」 SBGが携帯子会社であるソフトバンク(SB)の上場時の株式売却益を圧縮するために採った節税スキームは“ポンカス篭脱けスキーム”としか言いようのない、あざとい代物 一緒になって何をやるのか アメリカの大手企業とはケタ違いの差がある 独立採算子会社に帝王としての圧力をかけ、独立採算子会社の金を使って、帝王自らの懐を傷めることなく、SBGの株主価値なるものを上げることに成功した ムーディーズとしては勝手格付として継続して格付を発表するだろう 会計利益先行率が100%を超過しているのだから、SBGは、その返済原資を営業キャッシュフローで賄うことができない PRESIDENT ONLINE 危機で浮上の「株式非公開化」 株価下落で孫社長の不満がピークに 専門店を集めただけの百貨店のようだ ムーディーズへの格付け依頼を取り下げ 大前 研一 混乱下での株式売却 空前の実験がスタート LINEとZOZOの知られざる内情 ウーバーテクノロジーへの巨額投資もある 追加の自社株買いに前のめりな孫社長に対し、財務部門の幹部が釘を刺したことで、セットで保有株売却の方針がまとまった 著者に対しては名誉棄損の損害賠償訴訟、メディアに対しては広告出稿の停止を言外に強く匂わせるもので、従って、SBGの財務上の問題指摘をまともにする人はほとんどいないし、その論考を取り上げてくるメディアは限られる デイリー新潮 SBGには「少なくとも2年分の社債償還資金を手元に置く」という財務規律 20~21年度の2年間に予定する社債償還は約1.5兆円
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部活動問題(ブラック部活動)(その2)(日本のパワハラ・頑張りすぎ社会を生み出す「ブラック部活」の弊害、ブラック部活の裏に潜む「教師間いじめ」 教育研修の場で目にした衝撃的な場面とは 学校ハラスメントの実態(1)、 「暴力」が学校では「容認」されるおぞましい実態 指導の現場でなぜ暴力がなくならないのか?) [社会]

部活動問題(ブラック部活動)については、2018年3月7日に取り上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(日本のパワハラ・頑張りすぎ社会を生み出す「ブラック部活」の弊害、ブラック部活の裏に潜む「教師間いじめ」 教育研修の場で目にした衝撃的な場面とは 学校ハラスメントの実態(1)、 「暴力」が学校では「容認」されるおぞましい実態 指導の現場でなぜ暴力がなくならないのか?)である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が昨年4月25日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「日本のパワハラ・頑張りすぎ社会を生み出す「ブラック部活」の弊害」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/200985
・『過度な部活の見直しが進んでいない。背景には、「休まず頑張る」ことが人間にとって何よりも大切だという、信仰にも近い思い込みがある。教育現場でこの信仰を身につけた人は、社会に出ても心身が悲鳴をあげるまで働いてしまう。ブラック部活こそが、日本企業に蔓延するパワハラや、頑張りすぎを生み出しているのだ』、興味深そうだ。
・『ブラック部活を後押しする保護者も少なくない現実  今週末からいよいよ10日間の大型連休がスタートする。と言っても、「ごく普通に仕事だよ」とシラけている人も多いことだろう。テレビがお祭り騒ぎするように、海外旅行だキャンプだと浮かれことができるのは、ほんの一握りの人なのだ。 そんな風にシラけているのは社会人だけではない。中高で部活に燃える子どももそうだ。連休中には大会などのイベントが催されるため、いつもより忙しいという部活も多いのである。それがうかがえるのが、4月23日の「上毛新聞」の「10連休 部活休めない 保護者や指導者悲鳴 総量規制徹底されず」というニュースだ。 ご存じの方も多いかもしれないが、実は近年、子どもや教師への負担増から、部活を見直すべきという動きが進み、全国的に練習時間を制限するなどの「総量規制」が行われている。 群馬県もしかりで、2018年度から「総量規制」がスタートした。が、記事によるとそれが現実にはまったく守られず、この10連休も7日間朝から晩まで練習漬けの部活が多く存在しており、手弁当で関わる指導者や保護者が悲鳴をあげているというのだ。 背景には、先ほども触れたように、連休中に「大会」や「試合」が集中することもあるが、一部の保護者への「忖度」がある。部活の練習時間が短かったり休日が多かったりすると、「休みすぎる」「やる気がない」とクレームを入れる”体育会系保護者”がいるというのだ。 こういう話を聞けば聞くほど、日本の体罰、パワハラ、長時間労働からの過労死という一連の「ブラック労働カルチャー」というのは、「部活動」というシステムが底支えしているのだなあ、とつくづく感じる』、「全国的に練習時間を制限するなどの「総量規制」が行われている」、とは初めて知ったが、空念仏のようだ。「部活の練習時間が短かったり休日が多かったりすると、「休みすぎる」「やる気がない」とクレームを入れる”体育会系保護者”がいる」、これは学校全体として保護者に、粘り強く訴えていく必要がありそうだ。
・『「自ら頑張る」人の胸の内とは?  企業のリスクを扱うという仕事柄、過労やいじめで心身を病んでしまった方やそのご家族、そして加害者として訴えられる上司や企業とお話をさせていただく機会があるのだが、この三者の関係は、部活動にのめり込む子ども、家族、教師の関係と丸かぶりだ。 まず、瓜二つなのが「当事者」のメンタリティだ。部活に燃える子どもも、壮絶な長時間労働の末に病院に担ぎ込まれる人も共通しているのは、「自分がやりたいからやっている」という強い「自主性」である。 もちろん、中には嫌々ながら部活を続けさせられているという子どももいるかもしれないし、脅迫まがいのことを言われて会社に縛り付けられて無理に働かされるという人もいるかもしれない。が、ほとんどは自らの意思で進んで、ハードな環境へ飛び込んでいるのだ。 と聞くと、「そうなんだよ、自分で望んでいることなのだから外野が口出しすることじゃない」という人がいるが、この「自主性」が危ないのだ。 長時間の拘束は辛い。体も悲鳴を上げている。今日もいかなくちゃいけないのかと足が重い。でも、だからといって休んだら「みんな」に迷惑がかかる。やりたいと始めたことなのだから、休まずに頑張らないと――。なんて感じで、誰に命じられたわけでもないのに、どんどん自分自身を追い込んでいくのだ。 「それが部活をやる意義だろ!そういうチームへの献身やガッツが人生の財産になるんだ!」という体育会おじさんも多いかもしれないが、このような「休まず頑張る」という価値観が、どれほど対策をしても是正されない長時間労働や、ブラック企業問題を引き起こしているという現実も忘れてはいけない。 中高生の場合は3年生の夏の大会などで一応、この「ひとりブラック企業」状態は強制終了されるが、社会人は終わりがない。「休まず頑張る」と歯を食いしばっているうちにある日、心や体がポキンと折れてしまう。そして悲しいことに、休んだことで組織に「迷惑」をかけた自分の不甲斐なさが許せないと、自ら「死」を選んでしまうような方もいるのだ』、「中高生の場合は3年生の夏の大会などで一応、この「ひとりブラック企業」状態は強制終了されるが、社会人は終わりがない」、確かに深刻な問題だ。
・『家族も休まず頑張る姿を疑問に思わないのはなぜか  そして、この「休まず頑張る」が、人間として何をおいても重要である、という「休まず頑張る至上主義」ともいうべき価値観は、部活に燃える生徒や、過労で心身を病んでしまう方のご家族にも当てはまる。 例えば、ブラック企業の被害者のご家族とお話をして、「何か異変に気づきませんでしたか?」というよう質問をすると、たいがいこのような趣旨の答えが返ってくることが多い。 「ちゃんと休まずに会社へ行っているので、大丈夫だと思っていました」 「休む」というのが「異常のシグナル」であって、「休まず頑張る」を続けていたので問題なしだと思っていたというのである。断っておくが批判をしているわけではない。ご自分の大切な家族を身を案じる人であっても、「休まず頑張る至上主義」に知らぬ間に囚われており、このような無意識が、人々に「休む」ことに対する強烈な罪悪感、後ろめたさを植え付けていると言いたいのだ。 「先生、連休中もウチの子を休みなしで、ビシビシ鍛えてください」と訴えるような保護者も全く同じである。このような方たちからすれば、休みの日に家で子どもがゴロゴロしていることが「異常」であって、「部活で休まず練習する」ことが子どもの幸せに繋がる、と信じて疑わないのである。 もちろん、この「休まず頑張る至上主義」は、部活の顧問や指導者、そしてブラック企業のそしりを受ける企業やパワハラ上司に頭の中にもビタッと刷り込まれている。そして、それがパワハラや体罰、あるいはイジメにつながっている。 実は、部活改革が進んでいる背景には、教師が部活という「時間外労働」で疲弊しているということも大きい。2003年、東京八王子市で34歳の教師が帰宅後、お風呂の中で亡くなった。水泳部とバトミントン部などを掛け持ちで顧問をしていたため、41日間休みなしで授業と部活を繰り返した。その前には95日間も休まないこともあった、と「読売新聞」(2003年3月18日)が報じている』、「休まず頑張る至上主義」といった「無意識が、人々に「休む」ことに対する強烈な罪悪感、後ろめたさを植え付けている」、「部活の顧問や指導者、そしてブラック企業のそしりを受ける企業やパワハラ上司に頭の中にもビタッと刷り込まれている。そして、それがパワハラや体罰、あるいはイジメにつながっている」、確かにその通りだ。
・『パワハラで育った人は自身もパワハラを繰り返す  こういう壮絶なブラック労働が明らかになっても、教師の労働環境は変わらなかった。2012年、大阪市立桜宮高校バスケ部で顧問教師が生徒に体罰をし、その後生徒が自殺する事件が起きた際、宮城県が県内の教師にアンケートを行ったところ、78%が「部活指導に負担を感じる」と答えた。当たり前だ。自分の大切な家族との時間を犠牲にして、子どもたちと朝から晩まで過ごしても待遇が上がるわけでもない。 「教育」を掲げればなんでも許されるという、究極のブラック労働である。 そこで想像してほしい。こんな辛い思いをして歯を食いしばりながら部活の指導をしている教師や指導者が、練習に身が入らない生徒や、少しくらい叱り飛ばしたくらいでやる気をなくすような生徒を見たらどう思うか。 「ふざけるな」と怒りがこみ上げるに決まっている。中には、その怒りが制御できず、手や足が出てしまう者もいるはずだ。 これが、教育現場で「体罰禁止」が延々と叫ばれているにもかかわらず、「指導」の名目での体罰やイジメが横行している理由だ。なぜそんなことが言い切れるのかというと、大学運動部などのアマチュアスポーツの体罰、企業内の暴行やパワハラも、これと全く同じ構造で発生しているからだ。 女子選手の横っ面を叩くような体罰指導者や、新人をネチネチといびり倒すパワハラ上司というのは、自分の暴力的な振る舞いを正当化する時、たいていこのような釈明をする。 「自分も若い時はそのように厳しく指導されてきたので、それが当たり前だと思ってしまった」 要は、自分もやられたので、やりましたというのである。このあたりは、日本中の居酒屋で、おじさんたちがこんな風に愚痴っているのでピンとくる話だろう。 「あれくらいでパワハラなんて、俺が新人の時はもっとひどかったぜ」「俺らが子どもの時は、教師からボコボコにされるなんて当たり前だったよな」』、「パワハラで育った人は自身もパワハラを繰り返す」、こうした再生産プロセスはどこかで止めないと、無限に続いてしまう。
・『「休まず頑張る」が強迫観念になっている日本人  人は自分が受けた暴力やハラスメントを正当化する傾向がある。これらを全く無駄で意味のない行為だったと認めるのは辛いからだ。そのため、部活動の壮絶なシゴキも、新人時代に受けた上司からの理不尽なパワハラも、ロールプレイングゲームでレベルアップに必要な「経験値」のようにありがたいものと錯覚をするのだ。 もちろん、自分の人生なので、何をどう解釈をしても勝手なのだが、問題はこういう人が教師やスポーツ指導者、管理職などになると「信頼関係があれば、ある程度の体罰もアリだ」とか「若いうちは家に帰れないとか休日出勤なんて当たり前」などと、自分がやられたパワハラや暴力を忠実に「下」へ再現してしまうことにある。 このような「ハラスメントの再生産」が日本社会では延々と繰り返されている。そして、そのスタート地点になっているのが「部活」なのだ。 ということを言うと、「人生にかけがえのないことを教えてくれる部活をディスるなんて許せない!」と怒り狂う人もいるかもしれないが、部活自体が悪いのではない。 好きなスポーツや活動を、子どもたちが集まって好きなようにやることは何の問題もない。その中で、勝利を目指したいなどの目標ができれば、そこへ向けて努力をするのも素晴らしいし、本人たちの気が済むまでやればいいと思う。 では何が悪いのかというと、そのように本来は子どもたちの意志に任せた活動であるはずなのに、いつの間にやら「教育」という余計な意味合いを乗っけられている点だ。やれ努力は必ず報われるとか、困難を乗り越えたら人間として成長できる、みたいな軍隊のような精神主義や根性論が上乗せされ、「休まず頑張る」という強迫観念が植え付けられているのが問題なのである。 「部活」というものに、そういうおかしなものがつけ加えられているのは、戦後教育の歴史を振り返れば明白だ。よく言われることだが、今のように子どもも親も教師も一丸となって部活にのめり込むなんてカルチャーは戦前にはなく、戦後急に盛り上がったニューウェーブなのだ』、「本来は子どもたちの意志に任せた活動であるはずなのに、いつの間にやら「教育」という余計な意味合いを乗っけられている点だ。やれ努力は必ず報われるとか、困難を乗り越えたら人間として成長できる、みたいな軍隊のような精神主義や根性論が上乗せされ、「休まず頑張る」という強迫観念が植え付けられているのが問題なのである」、本質を突いた鋭い指摘だ。
・『学校教育の現場で軍隊風しつけが復活した背景  では、そんな新習慣がなぜ、全国の教育現場でこんな一気に広まったのかというと、国が「集団教育」を推進したからだ。今でこそ、日本の小中学生は刑務所の囚人のようにキビキビと整列して動くと世界から驚かれているが、戦後間もないころの子どもはバリバリの個人主義だった。敗戦の反動で、戦前教育を全否定していたからだ。 例えば1963年、神宮第二球場で催された「スポーツの日」というイベントに出てきた子どもたちの行進を見て、瀬尾弘吉文部大臣(当時)は「だらしないな…」とつぶやいたという。新聞にもこんな感じで冷やかされる始末だ。 「校庭に集まるのも三々五々。なにをやらしてもダラダラ、バラバラ、戦後の子どもに集団性と規律がないというのは定評のあるところだ」(読売新聞 1963年7月1日) そこで戦前の子どものように規律正しい行動ができるようにしよう、ということで東大教授の宮坂哲文氏を中心として結成されたのが、「集団主義教育」の普及を目的とした「全国生活指導研究協議会」。これがあれよあれよと勢力を伸ばし、1963年には会員が2000人を突破した。 そしてこの年、軍隊っぽいとして禁止されていた「気をつけ」と「休め」について、文部省が設けた集団行動指導の手引き指導委員会が「復活」を検討。その翌年には、「集団行動の統一スタイル」(読売新聞 1964年5月25日)として全国の小学校に徹底させたのである。 このあたりから「部活」はグーンと白熱する。翌年には、千葉県の中学校のバスケ部で現代にもよくあるおなじみの現象がスタートする。 《こんどは中学生がしごき 下級生袋叩き 千葉「練習さぼり生意気だ」》(読売新聞1965年6月3日) つまり、日本の「部活」は戦後教育で「集団主義」を推進する中で、それを子どもに叩き込むカリキュラムの一つとして普及していくのだ』、「集団主義教育」にそんな歴史があったとは初めて知った。「部活」がその推進の一翼を担っているとは、いやはや。
・『働き方改革をしたいなら部活から改革すべき  もちろん、子どもはもともと無秩序な生き物なので、当然こういう風潮に逆らう。そこで1970年あたりから校内暴力が盛んになるのだが、これが逆に「部活」の地位向上に繋がる。子どもはスポーツに打ち込ませると、校内暴力をやめて真人間になる、という意見が教育現場でどしどし出始めたのだ。 このトレンドは1980年代に入っても続き、1984年には「俺は今からお前たちを殴る」の名セリフで知られる伝説のスポ根ドラマ『スクール☆ウォーズ』が放映される。これらの作品に共通するのは、「スポーツをやれば問題児はスコーンと更正する」、「暴力も愛があれば問題なし」という戦後教育の二大理念であることは言うまでもない。 実際、本物の教師もみんな、その思想にとらわれた。例えば、1986年に日教組の教育研究機関「国民教育研究所」が、全国の小、中、高の教諭6171人を対象に調査を行なったところ、45%が「体罰は指導法の一つ」として回答した。特に、生徒数が1000人以上という大規模校になると、59%とその割合は高くなった。また1988年、「読売新聞」に、部活動がスパルタすぎるという投書が寄せらて紙面で議論が白熱すると、69歳の元教員という方が、こんな反論をしている。 「部活動の活発な学校ほど、学校全体に活気があり、問題行動もなく、学業面でもいい結果を出していることも事実である」(読売新聞1988年10月22日) ここまで見てもわかるように、日本の戦後教育は「集団主義」を、言ってもわからない奴には体でわからせる、というスタンスで延々とやってきた、という動かしがたい現実がある。こういう教育を効率的に、そして大義名分を持って進められるように、「部活」というものが利用されているのが、問題だと申し上げたいのだ。 どんなに「働き方改革」が叫ばれ、企業に様々なルールを押し付けても、日本人労働者の働き方が一向に変わらないのは、この問題の本質が「教育」にあるからだ。 実は我々の「病」は、小学生や中学生の頃にはすでに発症していて、社会に出る頃にはもう手の施しようがないほど重症化している。そんなタイミングで、「もっと休め」「辛くなったら逃げろ」なんて説教をしても誰も聞く耳を持たない。それどころか、「休まず頑張る」こそが正しいと叩き込まれているので、自分の心と体が壊れる瞬間まで、努力や我慢が足りないと自分を責め続けるのだ。 国は働き方改革を本気で進めたいのなら、「部活」と「教師」を改革すべきだ』、説得力溢れる主張で、全面的に賛成したい。「実は我々の「病」は、小学生や中学生の頃にはすでに発症していて、社会に出る頃にはもう手の施しようがないほど重症化している」、ここまで「病」が進んでしまうと、治療するとしても、極めて長い年月が必要なのだろう。

次に、6月1日付けAERAdot.が教育社会学者・内田良氏の著書を紹介した「ブラック部活の裏に潜む「教師間いじめ」 教育研修の場で目にした衝撃的な場面とは 学校ハラスメントの実態(1)」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2019051700029.html?page=1
・『なぜブラック部活はなくならないのか? 実はその裏に、教師から教師への「ハラスメント」が潜んでいた……。教育社会学者・内田良氏が著書『学校ハラスメント』(朝日新書)で明らかにした「教師間いじめ」。その一端を紹介する』、興味深そうだ。
・『同僚から攻撃の言葉  学校の先生方との意見交換の場に参加するなかで、私が出会った、もっとも忌まわしい記憶の一つをご紹介しよう。 とある教員研修の場において、十名程度からなるグループで、「部活動のあり方」について議論が交わされた。一人の若手教員が、か細い声でこう嘆いた――「私は、○○科の教員です。教員採用試験を勉強して、○○を教えるために教員になりました。でも毎日、そして土日も部活で時間がつぶれます。自分はやったこともない競技を指導しなきゃいけないし、本当にしんどいです」。 それを受けて、別の教員が手をあげてこう言い返した――「それは一部ですよ! 全部の部活がそんなふうに思われては困ります。僕自身は、たしかに部活がしんどいときもありますが、楽しんでやっています」。さらには、それにつづいて何人かの教員が部活動のすばらしさを語り、援護射撃をつづけた。 私にとっては、本当に衝撃的な場面であった。 教員は教科を教えるために教員になったのであり、部活動というのは教員にとっては付加的な業務にすぎない。教員は、素人ながらに指導に従事し、多くの時間をそこに費やしている。 2019年1月に中央教育審議会が策定した「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」もこういった現状を問題視しており、「部活動指導は必ずしも教師が担う必要のない業務である」「教師の本務は授業であり、限られた時間の中で授業準備がおろそかになるほどまでに部活動に注力することは適切ではない」ことが明記されている』、「中央教育審議会」の「答申」に盛り込まれたのは、遅きに失したきらいがあるとはいえ、望ましい方向だ。
・『「一部」ならよいのか?  平日の夕刻はもちろんのこと、土日までもが、部活動に費やされる。そして自分の専門であるはずの、教科指導の準備時間がほとんどとれないまま、日々を過ごす。自分の専門性を発揮するための時間をとることができず、自分がやったこともない活動に時間が奪われる。これが、部活動指導の現状である。 教科指導が嫌で仕方がないというならば、これは一刻も早く教壇を去ったほうがよいだろう。だが部活動指導が苦しいというのは、教科指導の専門家として、しっかりと尊重されるべき意見である。労働者としても、時間外労働というかたちで、土日を含めて毎日数時間が費やされる部活動指導を問題視するのは、まっとうな主張である。ところが「それは一部」にすぎないと、同僚たちから反論される。 そもそも「ブラック企業」もまた、どこか一部の企業のことである。もっといえば、いじめや不登校、台風、震災、原発など、ほとんどすべての教育問題・社会問題は、一部の人や場所に限定された課題にすぎない。それを、みんなで考えるのが、教育問題・社会問題というものだ。 「それは一部」であるのは当然の事実であり、何も説明していないに等しい。そこから見えてくるのは、「それは一部」と過小評価し、「だから聞くに値しない」と一蹴する姿勢である。きわめて危険な態度である』、「「それは一部」と過小評価し、「だから聞くに値しない」と一蹴する姿勢である。きわめて危険な態度である」、その通りだ。
・『教師間いじめの見えにくさ  きっとすべての教員は、いじめや不登校については、「一部」だといってフタをすることはないはずである。みんなでどう考えていくべきかという問いを、立てるだろう。 集団全体で物事を進めるというのは、教員がもっとも得意とすることの一つである。だが当の指導に熱心なあまりに、批判の声を聞くと、つい「それは一部」とフタをしたくなってしまう。同僚は助けてくれるどころか、むしろ攻撃をくわえてくる。 この事例に限らず、教員が教員に対して怒鳴ったり、脅したりするというケースを耳にする。暴言だけではなく、会っても挨拶されない、集団で無視される、陰口を言われる、子どもたちがいる前で同僚から大声で叱責されるなど、教員の間にも程度の差こそあれ、さまざまなハラスメントがある。 これら「教師間いじめ」のケースは、教員の愚痴や嘆きとして、近しい立場の者が耳にすることはあっても、それが公に語られたり、調査が実施されたりすることは、ほとんどない。教師間いじめの現実は、教師=聖職者という幻想のなかで消える化していく。 誤解を恐れずに言うならば、教員だって人間である。小中高以外の職場でも、たとえば大学教員のなかにも同僚に怒鳴りつける人はいるし、民間企業の従業員の間でもいじめがある。それらと同様に、教員の間でもいじめがある。 とは言え、子どもにいじめ防止を説きながら、同僚の間でいじめが起きているようでは、あまりに不健全である。さらに言えば、同僚間でのいじめが容認される職場において、子ども間のいじめや、教員から生徒へのハラスメントが抑止されるはずもない。学校ハラスメント全体の改善のためには、教師間いじめの見える化と抑制もまた、重要な着眼点である』、この記事は、神戸市の小学校での「教師間いじめ」が報道された10月よりも前である。事件前に、警告した慧眼には恐れ入る。

第三に、ライターの広尾 晃氏が8月25日付け東洋経済オンラインに掲載した「 「暴力」が学校では「容認」されるおぞましい実態 指導の現場でなぜ暴力がなくならないのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/298496
・『小さなトラブルかもしれないが、筆者には、引っかかっている事件がある。 6月30日、広島東洋カープの緒方孝市監督が、チームの外野手野間峻祥の怠慢プレーに怒って暴力をふるった一件である。仮に野間が被害届を出していれば、緒方監督は罪に問われかねない。そうせよと言っているわけではないが、どのような理由があるにせよ、暴行は加害者に非があるし否定されるべき行為のはずだ。この件は7月24日にNPBに報告され、球団からは「厳重注意」処分が下されたという。 野球界には「暴力容認」の空気がいまだに残っていることは否定できない。日本学生野球協会は、定期的に審査室会議を開き、不祥事があった高校、大学の処分を決めているが、その中には必ず指導者や部員の暴力行為が含まれている』、「スポーツ」界での「体罰」は、前述の「部活動」から連綿と続くものだ。
・『市立尼崎高校で起きた事件  スポーツにおける「暴力」は野球だけでない。日本の体育会系部活の多くに暴力的な体質が根強く残っている。今年4月、兵庫県尼崎市立尼崎高校では、男子バレーボール部のコーチが3年生部員1人の顔を10回以上平手打ちして失神させ、顔面打撲などの怪我をさせた。 暴力行為は練習試合が行われているコートの横で行われたが、コーチは選手が失神しても試合を中断させず、医者にも連れて行かなかったという。高校日本一になったこともある強豪としても知られた男子バレーボール部ではこれも含め過去2年間に計7件の体罰をしたことが尼崎市教育委員会によって確認されている。 筆者は男子バレーの著名な指導者に話を聞いたことがあるが、昔の男子バレーでは監督やコーチが選手に暴力をふるうことがしばしばあったそうだ。別の男子バレー指導者は「今は手をあげることはないが、俺たちは殴られ、蹴られてうまくなった」と語っている。 市立尼崎高校では、硬式野球部も、部長が2017~19年、部員の顔や胸などを強く押したり?をつねったりするなど少なくとも16件の体罰を行っていた。また、部内で1日7合の米飯を完食させることを課し、食べ終えるまでは帰宅させないなどの不適切な指導をしていたという。無理に食事をとらせることが選手の体力、体格向上につながらないことは、医学的に明らかになっている。 市教委は、これら指導者を停職や減給処分にした。また暴力を看過し、事実と異なる報告をした校長と教頭を減給処分とし、市教委事務局に異動させた。また、教育長も給与の一部を自主返納した。6月には市立尼崎高のほかの3つの部活でも暴力、パワハラ行為があったことが明らかになっている。 学校の部活という空間であれば「暴力容認」なのか?筆者はまったく納得できない。 学校以外のほかの場所で、大人が高校生に失神するまで暴力をふるったら、警察に通報され、加害者は逮捕されるだろう。 そして暴力をふるった理由のいかんを問わず、その大人は名前を公表され、暴行罪、暴行傷害罪などの罪に問われるだろう。仕事を持っていれば、解雇されるなど、社会的制裁を受けるはずだ。 しかし、学校という枠の中では「暴力」は「体罰」という言葉にすり替えられ、暴力をふるった当事者も、それを看過した管理責任者も教育委員会内部での処分にとどまり、刑事罰を受けることはない。 尼崎市の稲村和美市長は、学校側が事件を隠蔽したことを厳しく叱責するとともに、暴力行為そのものを「暴行事件というより傷害事件。学校外で同様のことがあれば即逮捕というか傷害罪。そのように認識している」とコメントした。まっとうな市民感覚とはこういうものだろう。 日本は民主主義国家であり、国民の人権は日本国憲法によって保障されている。しかし日本国内にありながら「学校」という特別の枠に入ってしまうと、人権の保障は限定的になり、場合によっては暴力をふるわれても加害者が法的に処罰されない事態が起こりうるのだ。このダブルスタンダードは、かなり恐ろしい。 課外活動とはいえ、学校の部活は言うまでもなく「教育の一環」だ。部活を管理監督する教師、指導者に第1に求められるのは「生徒の生命、安全を守る」ことだ。そのうえで、技術の習得や心身の鍛錬などの指導を行うもののはずだ。 しかるに、一部の部活では「生命、安全を守る」はずの指導者が生徒に暴力やパワハラを加えている。「教育」の名の下に、生徒の人権が侵害されているのだ』、「日本国内にありながら「学校」という特別の枠に入ってしまうと、人権の保障は限定的になり、場合によっては暴力をふるわれても加害者が法的に処罰されない事態が起こりうるのだ」、「一部の部活では「生命、安全を守る」はずの指導者が生徒に暴力やパワハラを加えている。「教育」の名の下に、生徒の人権が侵害されている」、全く不合理極まる慣行だ。
・『熱心さの延長線上に「暴力」はない  日本では暴力やパワハラなどで謹慎処分となった指導者に、卒業生や父母などが赦免を求めて「嘆願書」や「署名」を出すことがよくある。 「あの先生は、熱意のあまり手が出てしまっただけだ」「生徒のことを誰よりも考えているから殴るのだ」 こうした「情」に訴える声が、事態の本質を見失わせる。これらの請願によって指導者の中には「暴力」「人権侵害」という深刻な行為への反省を十分にしないままに現場復帰してしまう人もいるのだ。 ここではっきりさせておきたいが「熱心な指導」の延長線上に「暴力」など存在しない。指導者がどんなに熱意をもって選手に接しても「暴力」をふるってしまえば、それは「指導」でも「教育」でもなくなる。これを「熱心な教育」というような国は文明国ではない。 筆者は昭和中期に成人したが、その当時の学校では「体罰」は日常的に見られた。今の40代以上で、教師や指導者が生徒に暴力をふるうのを1度も見たことがない人はまれではないか。 テレビ漫画「巨人の星」では、星一徹が息子の星飛雄馬を毎週のように殴っていた。それを見ても当時の人は、何とも思っていなかったのだ。 ただし昭和の時代であっても、誰もが暴力をふるっていたわけではない。その当時から生徒を殴るのは一部の教師、指導者だった。しかし当時はその行為を表立って問題視することはなく、校長、教頭や周囲の教師は「やりすぎなさんな」と言って遠巻きにしているものだった。こうした無責任、不作為が一部教師、指導者の暴力体質を醸成していったのだ』、その通りだろう。
・『社会の価値観の変化についていけているのか  教育現場の事なかれ主義的な体質は、おそらく昭和から平成そして令和の時代の学校にも引き継がれている。だから市立尼崎高校のバレー部や硬式野球部で起こった暴力を、校長や教頭は教育委員会に正しく報告せず、厳しい処分もしなかったのだろう。 学校の中の空気が、昭和の時代とさして変わらないままよどんでいるうちに、社会の価値観は大きく変化した。コンプライアンス意識が高まり、これまで許容されてきた問題行為が1つひとつ厳しく指摘されるようになった。所構わずの喫煙や飲酒運転、セクハラ、パワハラ、今問題になっているあおり運転、そして暴力。これまで看過されてきた行為が、ことごとく「不適切」として批判されるようになった。 これによって世の中の風通しはずいぶんよくなったように思う。力の弱いもの、声の小さいものが泣き寝入りをすることは減ったのではないか。 率直に言うが、教育委員会が、生徒に暴力行為やパワハラをしていた教師、指導者を警察に通報せずに、組織内部で処分するのは、結果的にその教師、指導者を「組織で守っている」ことになるのではないか。そして、学校内での「暴力」「パワハラ」体質を教育界が温存することにつながっていないか? 暴力をふるわないと生徒が言うことを聞かないという声もある。しかし一般的に、暴力、パワハラは「指導力不足」だと見なされている。また、暴力をふるう教師、指導者の指導を受けた生徒は、指導者になって暴力をふるう傾向にある。「暴力、パワハラの伝統」は継承されていくのだ。 さらに暴力をふるう教師、指導者がいる環境では、生徒同士の暴力も十分に抑止できない。教育上いいことなど1つもない』、教育界は世の中の流れから大きく取り残され、「学校内での「暴力」「パワハラ」体質を教育界が温存することにつながって」いるのは確かだ。
・『教育委員会にも求められる役目がある  日本の部活から本当に暴力を排除したいと思うのなら、教育委員会は内部で処分をするだけでなく、日本の法律に照らして問題がある行為については、警察に通報すべきだ。 身内に甘いといわれる教育委員会だが、そうした指摘を受けないためにも、外部の人々の意見も聞いて、教育委員会の責任で、暴力をふるった指導者を司法の手に委ねる必要がある。 東京五輪を来年に控えて、日本はスポーツ大国であることを内外にアピールしたいはずだ。そのひざ元で、スポーツ指導者が選手の人権を損なうような体質が温存されるのはあってはならない。 「学校の中で生徒に暴力をふるったりパワハラをすれば、罪に問われることがある」という意識が指導者に広がれば、部活の現場は劇的に変わるだろう』、「教育委員会」の「身内への甘さ」は、目に余る。独立性の闇に逃げ込ませることなく、市長など自治体の長や議会がもっと監視してもらいたいものだ。
タグ:部活の練習時間が短かったり休日が多かったりすると、「休みすぎる」「やる気がない」とクレームを入れる”体育会系保護者”がいる 「日本のパワハラ・頑張りすぎ社会を生み出す「ブラック部活」の弊害」 窪田順生 教育委員会にも求められる役目がある 学校内での「暴力」「パワハラ」体質を教育界が温存することにつながって」いる 社会の価値観の変化についていけているのか 熱心さの延長線上に「暴力」はない 一部の部活では「生命、安全を守る」はずの指導者が生徒に暴力やパワハラを加えている。「教育」の名の下に、生徒の人権が侵害されている 日本国内にありながら「学校」という特別の枠に入ってしまうと、人権の保障は限定的になり、場合によっては暴力をふるわれても加害者が法的に処罰されない事態が起こりうるのだ 市立尼崎高校で起きた事件 「 「暴力」が学校では「容認」されるおぞましい実態 指導の現場でなぜ暴力がなくならないのか?」 東洋経済オンライン 広尾 晃 神戸市の小学校での「教師間いじめ」 教師間いじめの見えにくさ 「それは一部」と過小評価し、「だから聞くに値しない」と一蹴する姿勢である。きわめて危険な態度である」 「一部」ならよいのか? 同僚から攻撃の言葉 『学校ハラスメント』(朝日新書) 内田良 「ブラック部活の裏に潜む「教師間いじめ」 教育研修の場で目にした衝撃的な場面とは 学校ハラスメントの実態(1)」 AERAdot. 実は我々の「病」は、小学生や中学生の頃にはすでに発症していて、社会に出る頃にはもう手の施しようがないほど重症化している 働き方改革をしたいなら部活から改革すべき 軍隊っぽいとして禁止されていた「気をつけ」と「休め」について、文部省が設けた集団行動指導の手引き指導委員会が「復活」を検討 「集団主義教育」の普及を目的とした「全国生活指導研究協議会」 学校教育の現場で軍隊風しつけが復活した背景 本来は子どもたちの意志に任せた活動であるはずなのに、いつの間にやら「教育」という余計な意味合いを乗っけられている点だ。やれ努力は必ず報われるとか、困難を乗り越えたら人間として成長できる、みたいな軍隊のような精神主義や根性論が上乗せされ、「休まず頑張る」という強迫観念が植え付けられているのが問題なのである 「休まず頑張る」が強迫観念になっている日本人 パワハラで育った人は自身もパワハラを繰り返す 部活の顧問や指導者、そしてブラック企業のそしりを受ける企業やパワハラ上司に頭の中にもビタッと刷り込まれている。そして、それがパワハラや体罰、あるいはイジメにつながっている 「休まず頑張る至上主義」 中高生の場合は3年生の夏の大会などで一応、この「ひとりブラック企業」状態は強制終了されるが、社会人は終わりがない 「自分がやりたいからやっている」という強い「自主性」である 「自ら頑張る」人の胸の内とは? (その2)(日本のパワハラ・頑張りすぎ社会を生み出す「ブラック部活」の弊害、ブラック部活の裏に潜む「教師間いじめ」 教育研修の場で目にした衝撃的な場面とは 学校ハラスメントの実態(1)、 「暴力」が学校では「容認」されるおぞましい実態 指導の現場でなぜ暴力がなくならないのか?) ブラック部活動 部活動問題 無意識が、人々に「休む」ことに対する強烈な罪悪感、後ろめたさを植え付けている 家族も休まず頑張る姿を疑問に思わないのはなぜか ブラック部活を後押しする保護者も少なくない現実 ダイヤモンド・オンライン
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携帯・スマホ(その2)(「5G戦争」で日本の通信機器業界が世界から取り残される理由、総務省と携帯業界 激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満、楽天 データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない、5G時代スタートも 乏しい通信大手の「差別化」 3社とも料金プラン出すが、決定打に欠ける) [産業動向]

携帯・スマホについては、2018年5月18日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(「5G戦争」で日本の通信機器業界が世界から取り残される理由、総務省と携帯業界 激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満、楽天 データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない、5G時代スタートも 乏しい通信大手の「差別化」 3社とも料金プラン出すが、決定打に欠ける)である。

先ずは、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が昨年4月5日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「5G戦争」で日本の通信機器業界が世界から取り残される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/198880
・『「5G」特需が見込まれるも 存在感が薄い日本の通信機器  2020年からいよいよ日本でも携帯電話の第5世代、いわゆる5Gのサービスが開始されます。5Gへの切り替えとなると、携帯電話会社1社で2兆円規模の投資が必要になります。単純計算すると、携帯4社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)合計で8兆円ですから、日本経済全体の景気を左右するくらいの特需が起きることになります。 しかし一方で、この5G通信網の調達先として、NECや富士通のような日本の通信機器メーカーの存在感が低いことが指摘されています。世界シェアで見ると、エリクソン、ノキアの北欧勢とファーウェイ、ZTEの中国勢の4社で占有率は9割を超えます。世界市場は完全に4社寡占になっているわけです。 ここから日本勢が盛り返すのは、不可能に近い情勢だと思います。しかし、わずか20年前には、こんな状況になることは逆に考えにくい時代がありました。そこからなぜ日本メーカーは凋落してしまったのか。時代の流れを遡って、振り返ってみたいと思います。 今から20年ほど前、20世紀終盤の通信網設備の世界シェアには、ある特徴がありました。簡単にその当時の様子を説明すると、アメリカ大陸の通信網の市場はアメリカの通信機器メーカーであるルーセントがほぼ独占していました。ヨーロッパ大陸はフランスのアルカテル、ドイツのジーメンス、そしてスウェーデンのエリクソンが寡占していました。そしてアジア市場は、NEC、富士通など日本企業が強いという形で、世界市場が棲み分けられていました。 この状況をスタート地点として眺めると、凋落したのは日本メーカーだけではないことがわかります。アメリカのルーセント、フランスのアルカテルは、現在はフィンランドのノキアの傘下に入っています。ドイツのジーメンスもノキアとの通信合弁会社をノキアに譲渡しています。日本勢だけでなくアメリカとヨーロッパの大手通信メーカーも、業界再編の波に飲み込まれてしまったわけです。 かつての大手メーカーが、わずか20年で業界競争から取り残されてしまった理由ですが、私は2つの歴史的な問題がその背景にあると考えています。 1つ目の問題は、世界的に通信網の研究開発は、もともとメーカーではなく政府が行うものだったこと。通信網というものは、公共のインフラであると同時に、敵国に情報を奪われないという国益のための意味合いが強いネットワークでした。 そこで、国が所有する通信キャリアが通信網の根本的な研究開発を担うことが、先進国では歴史的に当たり前のように行われてきました。アメリカで言えば、AT&Tのベル研究所がそれを担い、日本の場合は電電公社の電気通信研究所(通称・通研)がその役割を果たして来ました。 私が学生だった当時、通研と言えば東大工学部でも一番優秀なレベルの学生しか行くことができない、日本の技術者にとって最高峰の研究所でした。基本的に、日本やアジアの通信ネットワークは、この通研が開発したインフラをNECや富士通といった電電ファミリーの企業群が製品化したものを、採用していたのです』、「世界的に通信網の研究開発は、もともとメーカーではなく政府が行うものだった」、「電電公社の電気通信研究所(通称・通研)がその役割を果たして来ました」、確かにそんな時代があった。
・『旧電電ファミリーのシェアが「5G時代」に崩れそうな背景  この体制が崩れるのは、通信会社の分割民営化からです。しかもきっかけは日本のNTTではなく、アメリカのAT&Tから始まります。 当時アメリカでは、規制緩和による新規参入によって産業を活性化させようと、航空、金融など様々な分野で規制撤廃の動きが広まっていました。その中でAT&Tという巨大独占企業の存在が問題視され、AT&Tは長距離会社、8つの地域会社、そしてベル研究所などの研究所会社に分割され、この研究所会社が最終的にルーセントになります。 この時期、規制緩和で市場参入したMCIやスプリントといった新興の通信会社が、競争上不利になってはいけないということで、機器の調達先としてのルーセントは、当然のようにAT&Tから離れていくことになります。通信の研究開発のコア部分が、政府の手を離れ純粋な民営会社へと委ねられていったのです。 規制緩和は、調達先のグローバル化にもつながりました。たとえば、ソニーが中心となって始まった旧DDIでは、ソニーとエリクソンやサムスンとの距離が近かったこともあり、現在のKDDIの基地局網ではこの2社の通信設備が主に使われています。同様にソフトバンクは、孫正義社長の人脈がアジア方面に強いこともあり、ファーウェイが大きなシェアを持っています。 一方で、ドコモの従来の通信ネットワークでは、旧電電ファミリーの結束は強く、NECと富士通で8割弱のシェアを持っています。しかし、5Gでその状況も崩れそうになってきました。エリクソンやノキアに調達が切り替わりそうだと言われています。なぜ、そんな事態に陥ったのでしょう。) 携帯電話網の調達で電電ファミリーではないグローバル企業が優位に立つようになった背景として、もう1つの歴史があります。それは過去、非常に長い期間、携帯電話の技術者は研究所の中で傍流だったということです。 昭和時代、就職先の花形だった電電公社ですが、配属先として圧倒的に人気だったのは、まずは固定電話、次にデータ通信で、一番人気がなかったのが無線部門でした。エンジニアの間でも、人気だったのは伝送装置や交換機で、次にシステムやソフトウェア。無線部門のエンジニアに配属されると、新入社員は肩を落としたものでした。 その理由は、1980年代くらいまで自動車電話や携帯電話を含む無線部門というものが、通信ネットワークではあくまで「緊急時のバックアップ」と考えられていたからです。それはNTTだけの話ではなく、世界的に同じ話で、傍流なので人気がなく、かつ技術的な蓄積にも一番歴史がない技術分野だったのです。 フィンランドのノキアは、通信機器メーカーとして考えれば、ある意味欧州で一番存在感がないメーカーでした。しかし、傍流の技術分野が1990年代以降、世界の主流技術へ進化するという幸運が起きたことで、ノキアは成長します。結果的には、無線技術にフォーカスしていたノキアが、その勢いでルーセント、アルカテル、ジーメンスといった世界の名だたる通信技術の研究開発組織を呑みこみ、傘下に収めていくわけです』、「無線部門というものが、通信ネットワークではあくまで「緊急時のバックアップ」と考えられていた・・・世界的に同じ話で、傍流なので人気がなく、かつ技術的な蓄積にも一番歴史がない技術分野だったのです」、技術革新の方向性は、ことほど左様に見極め難いということなのだろう。
・『もしも2000年代にNTTから研究所がスピンオフしていたら  NTTも、全体としては固定網の技術陣が主流だったがゆえに、移動体通信の技術に対する資源配分が潤沢ではありませんでした。いわんや、ノキアやファーウェイのようにグローバルに打って出るインセンティブは、持ち株会社の経営陣の間では大きくなかったでしょう。 もし、2000年代にNTTの研究所がスピンオフして、NECないしは富士通と合併し、NTTと距離を置いたとしたら――。一番の成長分野である無線技術に力を入れ、今とは違う競争の流れができていたかもしれません。 巨大だけれども国内事業に留まっているNTTの研究所であるがゆえに、技術力は高くてもグローバル製品に出て行けないエンジニア部隊。グローバル企業でありながら、研究開発をNTTに頼って来た通信機器メーカー。この2つの機能が分離していたことこそが、日本の通信機器メーカーがグローバル競争から脱落していった原因ではないか。今から振り返ってみれば、そう思うのです』、それぞれで蓄積していた技術的蓄積を、結局、無駄にしてしまったことになる。技術革新の波はその時点では分からないものだ。

次に、9月29日付け東洋経済オンライン「総務省と携帯業界、激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/305293
・『スマホの新たな販売手法に対する総務省からの規制に、携帯キャリア各社から反発の声があがっている。 「ルールの中で創意工夫し、消費者に対してよりよいサービスを提供しようとする企業努力の否定にもつながる」 9月20日に開かれた携帯のルールを議論する総務省の有識者会議で、ソフトバンクの松井敏彦・渉外本部長は不快感をあらわにした』、どういうことなのだろう。
・『新販売プログラムに総務省が「待った」  10月から携帯電話の販売や通信契約に関する新ルールが施行されるのに伴い、ソフトバンクは端末の「実質半額値引き」をうたう販売プログラムを9月13日に始めた。auも10月1日から同様のプログラムを実施する予定だったが、総務省から「待った」がかかったのだ。 両社のプログラムは、指定の端末を48回の月額払いで購入し、25カ月目以降にその端末を返却して新端末を買えば、旧端末の残債が免除される仕組みだ。ただ、端末代とは別にプログラム利用料が390円(非課税)かかる。そのため、利用者の負担額は半額にはならない。 両社は、通信契約に関係なく端末を大幅値引きするプログラムだとアピールしていた。しかし、実際には端末にはSIMロックをかけ、他社回線の契約者は端末の購入後100日間は端末を使えないようにしている。そのため、利用者が自社回線の通信契約を結んでいなければ端末を使えず、半額値引きプログラムを使う意味がなくなる、という設計だった。 この手法は、総務省の定めた新ルールには抵触していない。総務省は10月1日から施行される改正電気通信事業法などで、通信契約への加入を条件とした端末の大幅値引きを禁じたが、両社はこれをかわすため、通信契約を直接の条件としない端末値引きの方法をひねり出したのだ。松井氏の言う「ルールの中での相違工夫」はこのことを指す。 しかし、総務省はこれを「実質的な囲い込み」とみて許さなかった。9月20日の有識者会議で高市早苗総務大臣は「SIMロック解除については、今後の方向性について速やかにルールの見直しを進める必要がある」と述べ、ただちにSIMロック解除を義務化すると表明した。総務省は11月にも指針を改正する方針だ。 さらに消費者庁も「半額値引き」とうたうのは消費者の誤解を招くと問題視し、9月26日には消費者への注意喚起を出した。その結果、両社は「半額値引き」のCMや店頭掲示も見直さざるを得なくなった』、「ルール」の抜け穴を探し出す携帯会社も問題だが、それ以上にそんな「ルール」を打ち出した「総務省」もお粗末だ。
・『「後出しじゃんけん規制」にキャリアの不満  ソフトバンクとKDDIは、総務省のSIMロック解除義務化の方針には従う方針だが、販売プログラムを発表した直後に、後出しじゃんけんのように打ち出される規制に不満を持っている。 ソフトバンクの松井氏は有識者会議で「サービス導入が市場に与える影響を注視する期間すらなく、排除や修正を余儀なくされるとすれば、今後のサービスの発展や企業活動を委縮させる懸念が著しく高い」と総務省のやり方を強く批判。さらに他業界も引き合いに出し、「車の残価設定クレジットやボリュームディスカウント、リピーターに対して安くするというビジネスモデルは一般的なものだ」と述べた。 携帯キャリアが総務省の厳しい規制に異を唱えることは珍しくない。例えば5月の有識者会議でキャリア各社の2年契約の囲い込みが問題視されたことに対し、ソフトバンクはアマゾンの年間契約が割引されることや鉄道の定期券の割引などを挙げ、「長期契約者を優遇して囲うのはビジネス戦略上、普通のことだ」と主張していた。 ただ、通信業界がほかの多くの業界よりも厳しい規制がかけられるのには、いくつかの理由がある。 まず、政治的な背景だ。総務相の経験もある菅義偉官房長官は、通信業界へ高い関心を持っている。2018年8月に菅氏が「携帯電話の料金は今より4割程度下げられる」と発言したことをきっかけに、携帯料金を下げさせるためのルール改正が大きく動き出した。安倍政権の実力者である菅氏がこうした考えを持つ以上、総務省としては顧客の囲い込みにつながるような売り方を認めるわけにはいかないはずだ。 電波の公共性もある。携帯電話事業向け電波の利用権をオークションにしているアメリカなどと違い、日本では事業者に電波利用の金銭的な対価を求めてこなかった。アメリカで2015年に行われた1.7/2.1ギガヘルツ帯のオークションの落札総額は約5兆円にものぼるなど、その価値は巨額だが、総務省は各社が提出する事業計画への評価だけで電波を割り当ててきた。 ただし、その代わりに電波を取得した事業者は、国民の財産である電波を適切に有効に使う責任がある。事業者は、総務省に提出した計画通り、採算の厳しい地方でもしっかりとネットワーク整備を行う必要があるなど別の負担がかかる。こうした高い公共性は、ほかの多くの業界とは異なる。 なお、改正電波法により、今秋以降の5Gの2次割り当てからは、審査の一項目として利用権への入札に近い仕組みが導入される』、「総務省」も「割り当て」の権限を維持したかったのだろうが、「5Gの2次割り当てからは、審査の一項目として利用権への入札に近い仕組みが導入される」、これだけでは不明な部分もあるが、好ましい方向であることは確かだ。
・『インフラなのに、複雑でわかりにくい料金プラン  携帯電話が子どもからお年寄りまで、文字通り老若男女が使うインフラとなっているという事情もある。それにもかかわらず、通信契約や端末を購入する料金プランは複雑で、一般消費者が自分に合う適切な選択をするのは容易ではない。 しかも、携帯電話の世界は技術革新のスピードが極めて速い。総務省で携帯料金政策に関わる関係者は「料金プランも端末も、すぐに今とはまったく違う新しいものも出てくるはずだが、囲い込みがあれば合理的な選択ができない」とし、一定の規制は必要だと語る。 また、総務省側はこれまでキャリア側の良識に期待していたが、それが裏切られたことも挙げられる。改正法が議論されていた最中から、有識者会議のある委員は「通信業界を金融業界のように厳格なルールで縛ることはしたくない。自浄作用に期待したい」と語っていた。あらかじめ過度に厳しいルールをつくることは、事業の柔軟性を失わせるからだ。 総務省とキャリアの認識の差が埋まらない限りは、今後も同じようなイタチごっこが続きそうだ』、「総務省側はこれまでキャリア側の良識に期待していた」、なんと甘い姿勢なのだろうか。「厳格なルールで縛る」べきではないにしても、実効性ある競争促進策が必要だろう。

第三に、本年3月5日付け東洋経済オンライン「楽天、データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/334600
・『「衝撃的、革新的な料金プランを実現できた」。楽天の三木谷浩史会長兼社長は自信満々にそう語った。3月3日、楽天モバイルが発表した4月開始の携帯電話事業の料金プランはたった1つ。データ通信は使い放題で、月額料金が2980円(税別、以下同)というものだった。 現在、大手3社の大容量のプランは、NTTドコモが月額6980円でデータ通信量が60ギガバイト(キャンペーン増量分込み)、KDDIのauが同7480円で無制限、ソフトバンクが同7480円で50ギガバイト(動画とSNSは使い放題)となっている。数字だけ見ると、第4のキャリアとして新規参入する楽天モバイルの料金は格段に安い。 ただし、当面は大きな制約がつく。データ通信が使い放題なのは、楽天モバイルの自社回線エリア内だけだからだ。4月の商用サービス開始当初、自社回線エリアは主に東京23区、名古屋市、大阪市、神戸市になるという』、「データ通信が使い放題なのは、楽天モバイルの自社回線エリア内だけ」、これでは魅力半減だ。
・『一部のエリアではデータに上限を設定  通信回線の自前化が途上のためKDDIから回線を借りる(ローミング)エリアでは、月間2ギガバイトの上限を設けた。それを超過すると速度制限がかかる。 ローミングエリアでは、楽天モバイルは、KDDIとの契約でユーザーが1ギガバイト使うと465円の使用料を支払うことになっている。ユーザーにデータ通信を無制限に使われるとコスト倒れになるため、やむなく上限を設けたのだろう。2ギガバイトを超えて通常速度でデータ通信を使う場合、ユーザーには1ギガバイト当たり500円の追加料金が発生する。 東名阪神エリアでも地下鉄や大きなビル内は当面、KDDIのローミングエリアとなる。そのため、使い放題エリアがかなり限られてしまうのが、新料金プランの大きなネックだ。楽天モバイルは料金プランと併せて、先着300万人を対象に最初の1年間は料金を無料にすると発表した。無料期間の異例の長さは、このネックを補う意味もあるのだろう。 楽天モバイルの料金発表会見を見終えた大手キャリアの関係者は、「正直、ホッとした。(今すぐの料金競争勃発など)当面の危機は去った」と胸をなで下ろした。そして、「現行の無料サポータープログラムの拡大版という印象だ」とも口にした。 もともと、楽天モバイルは携帯電話の商用サービスを2019年10月に開始する予定だったが、基地局整備が遅れたことから2020年4月にずれ込んだ経緯がある。この間、楽天モバイルは一部の利用者(現在は2万5000人)を対象に、通話もデータ通信も無制限の「無料サポータープログラム」を実施している。2020年4月以降の1年無料もテスト段階の延長程度のものに映ったというわけだ。 今後の焦点は、楽天モバイルが基地局の設置を拡大して、「データ使い放題」のエリアをどれだけ早く広げられるかだ。2020年2月末の基地局数は3490と、総務省が「必達」としていた2020年3月末の目標(3432)を超過している。3月末で4400を目指しており、以降も全国各地で自社回線エリアの構築を進める』、「東名阪神エリアでも地下鉄や大きなビル内は当面、KDDIのローミングエリアとなる」、やはり使い勝手が悪そうだ。
・『スピードと品質の両立が不可欠  楽天モバイルの山田善久社長は「計画より大幅に前倒しで自社回線エリアを広げていきたい」と意気込む。スピード感は重要だが、通信品質の確保も不可欠だ。基地局数は増えたが「つながらない」という不満が相次げば、信頼性を損なうおそれもある。 また、キャリア各社の足元(19年10~12月)の解約率は、ドコモが0.43%、KDDIが0.61%、ソフトバンクが0.53%と超低水準。楽天モバイルが使い放題のエリアを広げても、どこまで顧客を取り込めるかは不透明だ。顧客獲得には即効性がある「1年無料」も財務を毀損する副作用があるので、延長は厳しいだろう。 楽天の2019年12月期のモバイル事業は先行投資がかさみ、約600億円の営業赤字。だが、財務責任者の廣瀬研二氏は3月3日の会見で「(携帯事業は)3年程度で黒字化できるのではないか」と語った。そのためには、有料のユーザーをしっかり取り込む必要がある。 通信業界に詳しいMM総研の横田英明常務は、「1年間無料(のメリット)は大きいので、自社回線エリアの居住者ならば2台目の需要はある程度取り込めるだろう」と分析し、「その間に自社回線エリアを広げつつ一定の評価も確立しながら、ポイント付与策などで楽天経済圏に取り込んでいくことが重要だ」と指摘する。第4のキャリアとしての足場を築くうえで、今後1年がまさに勝負となる』、「楽天」がどこまで伸ばせるのか、大いに注目したい。

第四に、3月29日付け東洋経済オンライン「5G時代スタートも、乏しい通信大手の「差別化」 3社とも料金プラン出すが、決定打に欠ける」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340500
・『「データ使い放題なので、(4Gよりも先へ)もう一歩行きたい」 3月中に携帯大手3社が相次いで開催した次世代通信規格「5G」の料金プラン発表会。順番的にトリになったKDDIの髙橋誠社長が、23日の会見で「象徴的なもの」として紹介したのが、4つのコンテンツを組み入れたプランだった。 具体的には5Gの月間のデータ通信を使い放題とし、ネットフリックスやテラサ(KDDIとテレビ朝日が共同で創る新サービス)などの動画配信サービスを組み合わせたプランになっている。月額料金は1万1150円(割引適用前で税抜き、以下同)だ。 動画コンテンツがつかない5G使い放題プランもあり、実際はこちらが柱になるとみられる。月額料金は8650円で、4Gの使い放題プランの月額7650円に1000円上乗せした。8月末までに契約すると25カ月間は毎月1000円を割り引く』、「動画コンテンツ」が付くと月額2500円、というのではやはり「柱」にはなりそうもないだろう。
・『各社とも同水準の料金体系に  これに先立ち3月5日と18日に発表会を開いたソフトバンクとNTTドコモの5G最大容量プランの料金水準は、KDDIの使い放題のベースプランと大差なかった。 ソフトバンクの最大容量プランは、4Gで展開する月間データ通信上限が50ギガバイトで人気の動画やSNS(交流サイト)がノーカウントで使い放題というプランを5Gに横滑りさせたもの。5Gでは4Gの料金7480円に月間1000円を上乗せし、8月末までに申し込めば、こちらも24カ月間は毎月1000円の割引となる。 ドコモの5Gの最大容量プランは月間のデータ通信上限が100ギガバイトで7650円だが、キャンペーンでデータ通信を無制限にする。通信ネットワークに大きな負荷がかかればキャンペーン終了などもあるが、基本は使い放題だ。) このように3社の5G最大容量ベースプランの料金水準はキャンペーン込みで7000円台半ばとなった。各社とも3月25〜27日にサービス提供を開始した。 他社の料金プランがすでにわかっている中でKDDIは冒頭のようにセットプランの説明に時間を割き、髙橋社長は「OTTプレーヤー(インターネット上で動画などのコンテンツを提供する事業者)との連携で差別化を進めたい」と強調した』、「差別化」の柱が、「OTTプレーヤーとの連携」、とは寂しい限りだ。
・『コンテンツとの組み合わせをアピール  KDDIは昨年9月、5Gをにらみ4Gでもデータ通信を無制限にしたうえでネットフリックスをセットにしたプランを投入済みだ。そこに5Gでさらに多くのコンテンツを入れたプランを作り前面に押し出した。 ドコモは、昨年12月に始めた、4Gのプランにアマゾンの動画が見放題になるなどの有料会員制サービス「アマゾンプライム」を1年間無料でつけるキャンペーンを、5Gにも適用する。こちらも、5Gを見据え始めていたものだ。 5Gのデータ無制限プランに人気の有力コンテンツを組み合わせるやり方は、アピールポイントの1つにはなる。だが、5G時代の主戦場ははたしてコンテンツなどのサービスになっていくのか。 そもそもネットフリックスやアマゾンプライムは、KDDIやドコモの独占ではない。他キャリアの利用者も料金を払って個別加入さえすれば使えるものが、割り引きされて組み入れられているにすぎない。 有力なコンテンツを持つOTTプレーヤーほど、供給先を絞って視聴者を減らすことに意味はない。こうした点を踏まえれば、今後それらが特定のキャリアだけの配信になることは考えにくい。 通信業界に詳しいMM総研の横田英明常務は「決定的なサービスはまだ登場しておらず、5Gでも当面は引き続き料金面の勝負がメインになるだろう」と予測する』、「5Gでも当面は引き続き料金面の勝負がメインになるだろう」、妥当な「予測」だ。
・『ドコモはテザリングを無制限に  一見似通った3社の最大容量プランだが、細かく比べると微妙な違いも見えてくる。 例えばドコモは、キャンペーンが終わらない限りテザリング(通信契約を結ぶスマホをWi-Fiルーター代わりにパソコンなどの端末をネットにつなげること)も無制限とし、上限ありのKDDIや、テザリング自体に別途料金を課すソフトバンクとは差がある。現実的にはこうしたコストパフォーマンスが、競争力を左右するかもしれない。 5Gのサービス開始当初は3社とも対象の通信エリアは狭く、都市部のごく一部に限られる。全国的に広く使えるようになるまでには、まだ数年はかかる。 今後、エリアや利用者数の拡大とともに新たなサービスが生まれて差別化要素になる可能性はあるが、現時点で大きなものは見当たらない。従来の料金メインの競争がサービスメインに変わるとしても、転換点はまだまだ先になりそうだ』、今後の「競争」の展開に注目したい。
タグ:この体制が崩れるのは、通信会社の分割民営化から 規制緩和は、調達先のグローバル化にもつながりました 東名阪神エリアでも地下鉄や大きなビル内は当面、KDDIのローミングエリアとなる スピードと品質の両立が不可欠 「楽天、データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない」 旧電電ファミリーのシェアが「5G時代」に崩れそうな背景 (その2)(「5G戦争」で日本の通信機器業界が世界から取り残される理由、総務省と携帯業界 激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満、楽天 データ無制限の格安プランが抱える制約 大手より大幅に安いが顧客獲得は容易でない、5G時代スタートも 乏しい通信大手の「差別化」 3社とも料金プラン出すが、決定打に欠ける) 「5G時代スタートも、乏しい通信大手の「差別化」 3社とも料金プラン出すが、決定打に欠ける」 電電公社ですが、配属先として圧倒的に人気だったのは、まずは固定電話、次にデータ通信で、一番人気がなかったのが無線部門 ドコモはテザリングを無制限に 電電公社の電気通信研究所 一部のエリアではデータに上限を設定 世界的に同じ話で、傍流なので人気がなく、かつ技術的な蓄積にも一番歴史がない技術分野だったのです 新販売プログラムに総務省が「待った」 「総務省と携帯業界、激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満」 「後出しじゃんけん規制」にキャリアの不満 もしも2000年代にNTTから研究所がスピンオフしていたら 過去、非常に長い期間、携帯電話の技術者は研究所の中で傍流だった データ通信が使い放題なのは、楽天モバイルの自社回線エリア内だけ 東洋経済オンライン 各社とも同水準の料金体系に 従来の料金メインの競争がサービスメインに変わるとしても、転換点はまだまだ先になりそうだ 「5G」特需が見込まれるも 存在感が薄い日本の通信機器 5Gでも当面は引き続き料金面の勝負がメインになるだろう かつての大手メーカーが、わずか20年で業界競争から取り残されてしまった理由 1つ目の問題は、世界的に通信網の研究開発は、もともとメーカーではなく政府が行うものだったこと アジア市場は、NEC、富士通など日本企業が強い アメリカ大陸の通信網の市場はアメリカの通信機器メーカーであるルーセントがほぼ独占 ヨーロッパ大陸はフランスのアルカテル、ドイツのジーメンス、そしてスウェーデンのエリクソンが寡占 20世紀終盤の通信網設備の世界シェア なぜ日本メーカーは凋落してしまったのか エリクソン、ノキアの北欧勢とファーウェイ、ZTEの中国勢の4社で占有率は9割を超えます 「「5G戦争」で日本の通信機器業界が世界から取り残される理由」 鈴木貴博 ダイヤモンド・オンライン スマホ 携帯
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