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森友学園問題(その20)(森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」、「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間、森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構) [国内政治]

森友学園問題(その20)(森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」、「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間、森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構)

先ずは、3月20日付け文春オンライン「森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/36755
・『「週刊文春」3月26日号に掲載された「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。このスクープを取材・執筆したのは、大阪日日新聞の記者である相澤冬樹氏だ。長きにわたって粘り強く取材し、遺書公開にこぎつけたが、今回のスクープ、すべての始まりは相澤氏がNHKを辞め、自殺した財務省職員・赤木俊夫氏の妻と面会したことだった。相澤氏の来歴、そしてNHKを辞めるまでの経緯とは――。著書「安倍官邸 vs. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋)から「はじめに」を全文公開する』、あの相澤氏の言い分とは興味深そうだ。
・『NHKを辞めた日の出来事  この夏、2018年(平成30年)8月31日、私はNHKを辞めた。31年間、記者として勤めたNHKを退職した。 この日、NHK大阪放送局の最上階、18階の局長室で、私は角英夫局長から退職辞令を受け取った。角局長は10年ほど前、私が大阪でニュースデスクをしていた時に大型番組の担当でお世話になった人。大阪の局長になってからも、司法担当記者としての私の仕事に理解を示してくれた。私は局長にお願いした。「最後に一緒に記念写真を撮らせてください」そして2人並んで写真に収まった。 それから数時間後。上司を通して角局長から伝言があった。「あの写真はSNSなどにアップしないように」……もとよりそのつもりはなかったが、私は自分が思い違いをしていることに気づかされた。局長が理解を示してくれたのは、記者としてデスクとしてNHK報道の仕事に邁進していた私であって、記者を外され退職の道を選んだ私ではないということに。人はしばしば相手の置かれた立場によって態度を変える。心しなければ。 では、なぜ私はNHKを辞めたのか? それは記者を外されたから。記者の仕事を続けるため、森友事件の取材を続けるため、私はNHKを辞めて大阪日日新聞に移った』、「記者の仕事を続けるため、森友事件の取材を続けるため、私はNHKを辞めて大阪日日新聞に移った」、とは勇気ある行動だ。
・『NHKに就職、阪神・淡路大震災に直面  1987年(昭和62年)。昭和の終わりに大学を出た私はNHKに就職。初任地・山口で記者の産湯をつかい、原発誘致で大揺れの上関町、瀬戸内海の密漁の実態、保守政界が真っ二つに割れた山口県知事選挙などを取材し、記者の基礎を学んだ。同時に、維新のふるさと長州で吉田松陰先生の思想に染まり、より大切な、人としての道を学んだ。 次いで事件の本場・神戸でサツ回りの修業を重ね、95年(平成7年)、阪神・淡路大震災に直面。震災半年で避難所を閉鎖しようとする神戸市に対し、神戸局の記者が家族まで総出で避難所での聞き取り調査を行い、避難所を出られない被災者の思いを私が右代表でリポートした。NHK神戸ニュースの総力を挙げた調査報道だったと思う』、正義感が強そうだ。
・『震災半年で異動 東京社会部から徳島へ  震災半年で異動した東京社会部では、介護保険制度創設、日の出町ごみ処分場の汚水漏れ、医療保険制度改革を取材。旧厚生省担当となり、初の脳死臓器移植を経験したほか、歯科医師国家試験漏洩事件で漏洩源を特定する特ダネを出して、13年間の記者生活にいったんピリオドを打ち、ニュースデスクとなって徳島へ。 3年の徳島勤務では、なぜか3回の県知事選を経験する。1回目は通常の任期満了。2回目は現職知事が東京地検特捜部に逮捕されたことに伴う出直し選挙。そして3回目は、出直し選挙で誕生した民主党系知事に対する、自民党県議らの不信任決議による再度の出直し選挙。現職が再度立候補するのかどうか報道陣に問われ、徳島1区選出の民主党の仙谷由人衆議院議員(当時)が「男の子は売られた喧嘩は買わなきゃだめでしょ」と言い切ったのが懐かしい。対する自民党は総務省から徳島県庁に出向していた部長を擁立。大接戦の末、20万対19万で自民が激戦を制した』、「歯科医師国家試験漏洩事件で漏洩源を特定する特ダネを出して」、なかなか腕利き記者のようだ。
・『大阪ではJR福知山線脱線事故を取材  その直後、私は大阪府警キャップに。ハンナンBSE補助金詐欺事件、奈良女児誘拐殺害事件の修羅場をくぐり、2005年(平成17年)に107人が死亡するJR福知山線脱線事故が発生。その日から脱線事故担当デスクとなり、さらにアスベスト健康被害問題、発達障害のシリーズ企画も担当。同和行政の問題を追及する番組では部落解放同盟と、部落差別の実態に迫る番組では、解放同盟と対峙し「部落差別は解消した」と主張する民権連=民主主義と人権を守る府民連合と、がっぷり四つに組んだ。脱北者の悲劇を描く番組では朝鮮総連と切り結び、在日差別発言訴訟では差別発言者と対峙。いずれも相手方の主張をはね返した。真実の報道を貫き、圧力に負けなかったと自負している』、サラリーマン化した記者が多いなかで、なかなか骨がある記者魂を持っているようだ。
・『志願して記者に戻り、森友事件に出会う  その後、取材現場を外れて東京でBSニュースの制作担当者の一人になるが、11年(平成23年)の東日本大震災で「やっぱり現場取材」と思い定め、翌年、志願して記者に戻してもらい、再度、大阪へ。子どもの自殺をなかったことにする学校現場と教委を告発する番組、大阪市立桜宮高校の体罰自殺事件、生活保護の現場の取材を経て、大阪府北西部の豊中市と近隣市町の地域担当に。 そして16年(平成28年)7月、大阪司法担当キャップを任された。ここで森友事件と出会い、「これは天命」と感じて取材する。そして迎えた18年(平成30年)6月の人事異動……記者を外された私は、NHKを辞めて大阪日日新聞に移籍することを決意した』、「東日本大震災で「やっぱり現場取材」と思い定め、翌年、志願して記者に戻してもらい」、通常の社内のエスカレータに乗らず、「現場取材」の戻してもらうとは珍しい存在だろう。
・『「森友事件」は国と大阪府の事件である  森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件である。こう言うと違和感を持つ方が多いかもしれないが、おかしなことをしたのは森友学園ではなく、むしろ国と大阪府の方だ。なぜそう言えるのか? それを読者・視聴者に説明するのが私たち記者の務めだ。そのためには、根拠を示すことが欠かせない。 この本で私は、自分が森友事件をどのように取材し報道したか、そのプロセス、つまり記者の企業秘密を明かすことにする。根拠を示すためにそれが欠かせないと考えるからだ。取材源の秘匿との兼ね合いに配慮しつつ、取材先や関係各方面の方々のご理解もできる限り頂いて、極力明かすことにする。そして、森友事件の報道の背後で何が起きていたのか、森友事件の真の問題点は何かを明らかにしたいと思う』、森友学園の籠池理事長や奥さんには有罪判決が下されたが、「「森友事件」は国と大阪府の事件である」、同感である。この続きをみてみよう。

次に、この続き、3月21日付け文春オンライン「「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/36772
・『「週刊文春」3月26日号に掲載された「森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が大きな反響を呼んでいる。このスクープ、すべての始まりは取材・執筆した大阪日日新聞記者・相澤冬樹氏がNHKを辞め、自殺した財務省職員の妻と面会したことだった。相澤氏がNHKを辞めるきっかけを明かした「週刊文春」2018年12月20日号掲載の「独占手記」を全文公開する。(相澤氏は「安倍官邸 vs. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋)の著者。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のもの)』、今回はどんな事実が出てくるのだろう。
・『「私は聞いてない。なぜ出したんだ」  電話の向こうで激怒する声が響く。声の主は、全国のNHKの報道部門を束ねる小池英夫報道局長。電話を受けているのはNHK大阪放送局のA報道部長だ。 私はたまたまA部長のそばにいたため、電話の内容を知ることになった。「なぜ出したのか」と問われているのは、私が報じた森友事件の特ダネ。近畿財務局が森友学園に国有地を売却する前に、学園が支払える上限額を事前に聞き出していたというニュースだ。 ところが、その特ダネに報道局長が激怒しているという。なぜか。 NHK報道局で広く知られた言葉がある。「Kアラート」だ。Kは小池局長の頭文字。小池局長がニュースの内容に細かく指示を出してくることを指す。 「また官邸から何か言われたに違いない」 Kアラートが出るたびに、報道局内ではそう囁かれている。政治部畑を歩み、政治部長も経験した小池局長。安倍官邸中枢に太いパイプがあるのは知られたところだ。Kアラートが出たということは、この特ダネは官邸が嫌がるニュースだったのだろうか。 小池局長との電話が終わった後、A部長は苦笑しながら私に言った。 「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」 その瞬間、それは私のことだ、と悟った。翌年6月の人事で私は記者を外され、考査部へ異動する。そして今年8月末、NHKを辞めることにした――』、「小池局長」は「政治部畑を歩み、政治部長も経験」、「安倍官邸中枢に太いパイプがあるのは知られたところだ」、安部政権がNHKをコントロールするのは、うってつけの人物のようだ。
・『原稿から削られた昭恵夫人の部分  NHK大阪報道部の司法担当記者だった私は、発覚時から森友事件を追い続けてきた。その間、感じてきたのは、事実をあるがままに報じようとしないNHKの姿勢だ。 森友事件が公になったのは、昨年2月8日、木村真豊中市議による記者会見だった。学園の小学校用地として売却された国有地の金額について情報公開請求をしたのに、開示されないのは不当だと訴えたのだ。 だが、私が最も驚いたのは、小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任していたこと。それがこのニュースの最大のポイントだろう。だから私は原稿に昭恵氏のことを書き、本文でも事実として明記した。ところが、デスクの判断でこの部分が削られてしまう。 それでも関西では、当日夕方の報道番組でこのニュースが報じられたからまだよかった。私はこの原稿を「全中(全国ニュース)に送るべき」と進言したが、東京には送られなかった。昭恵氏の名誉校長就任が核心なのに、それゆえに放送を躊躇(ためら)ったとしか思えない。 その2日後のことだ。鑑定価格9億5600万円だった国有地が、約8億2000万円も値引きされ、1億3400万円で売却されていたという驚きの事実が判明する。だが、この「8億円値引き」も放送は関西のみ。全国放送は報じない。 NHKの森友報道は忖度で始まったのだった』、「名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任」、「8億円値引き」、などの特ダネが、「放送は関西のみ。全国放送は報じない」、とはNHKの忖度は徹底しているようだ。
・『特ダネも書き換えられていく  それから1カ月余りが経った頃、取材を進める私は耳を疑う情報に接した。 「国有地の売却前に、近畿財務局は学園側との売却交渉の過程で、学園が幾らまでなら出せるのか聞き出している。そして実際にその金額以下で売っている」 事実なら背任の可能性を強く窺わせる話だ。一本筋の情報では書けない。2カ月以上取材を重ね、ようやく事実の確認ができた。 ところが、報道には大きな壁があった。4月に就任したばかりの小池報道局長。6月中は「国会中は局長のOKが出ない」、7月に入っても「局長を説得するのが難しい」。そんな状況がしばらく続いた。 最後は「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」という要素を付け足すことにした。小池氏を説得するには、検察当局も把握している事実だということに触れる必要があると聞いたからだ。 そして昨年7月26日夜の「ニュース7」で、背任の実態に迫る特ダネを報じた。要約すると、以下のような内容だった。 「財務局の担当者が購入できる金額の上限を尋ねたところ、学園側は約1億6000万円と答えた。一方、財務局側は、土地の土壌改良工事で国が約1億3200万円を負担予定で、これを上回る価格でなければ売れないと事情を説明した。 その後、財務局はゴミの撤去費の見積もりを、大阪航空局に依頼するという異例の対応を取り、値引き額を約8億2000万円と決めた。結果、売却額は1億3400万円となり、財務局と学園が示した金額の範囲内に収まる形となった」 異変が起きたのはその夜のことだ。冒頭で記したように、小池氏が激怒したのだ。実はこのネタは大阪報道部を通さず、東京社会部から出したもの。A部長は直接関知していない。だが、A氏も政治部出身で、初任地は同じ鳥取。昔からの後輩で文句を言いやすいのだろう。最後に電話を切ったA氏が言った一言が、「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」というものだった。 このネタは翌朝用に続報が準備されていた。だが小池氏の怒りを受け、何度も書き直され、意味合いを弱められてしまう。翌朝の「おはよう日本」のオーダー(放送順)も、後ろの方へ下げられた。こうして忖度報道は本格化していったのだ』、相澤氏も「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」という要素を付け足す」ことで、「小池報道局長」の壁を突破したり、「大阪報道部を通さず、東京社会部から出した」など、なかなかやるものだ。
・『“口裏合わせ”のスクープが……  しばらく世間の注目から逸れていた森友事件だったが、今年3月2日、朝日新聞が朝刊で「財務省が公文書書き換え」という特ダネを報じたのを機に、再び大きくクローズアップされる。 NHKも動く。パラリンピックで休止中だった「クローズアップ現代+」(夜10時~)が4月2日に再開されるのを受け、4日のクロ現で森友事件を取り上げることが決まったのだ。 何か新ネタが欲しい。そこで私が掴んだのが、昨年2月、事件発覚直後に財務省が直接、学園側に「トラック何千台もゴミを搬出したことにして欲しい」と電話をかけていたという事実である。つまり、財務省の方が口裏合わせを学園側に求めていたという話だ。改ざん同様、行政のルールを歪めた行為と言っていい。 私は東京の社会部デスクの助言に従い、このネタを大阪のデスク、そして報道部ナンバー2のS統括に伝えずに進めることにした。S氏からA部長、そして小池局長へと伝わり、介入される心配があるからだ。 口裏合わせの電話をかけていたのは、財務省理財局のZ課長補佐(当時)。私はある日の朝、自宅近くで彼に接触を図った。 「記者さんですか。何も言えませんよ」そう答えるのは無理もない。そこで「私が喋りますから」と一方的に話を続けた。Z氏の人となり、仕事ぶり……。会話の感触が良くなってきたところで、用意した質問を繰り出した』、「Z課長補佐」のような確信犯から感触を探るのは、並外れたテクニックが必要だろう。
・『記者の問いかけにやっと頷いたZ氏  ーーZさんは昨年2月20日に籠池泰典理事長に雲隠れを指示する電話をかけたと言われていますが、そういう電話はしてませんよね。 籠池氏はこの頃、自宅を離れ、京都のホテルに滞在している。本人は「Z氏に雲隠れを指示された」と話すが、実際は違う。「雲隠れ」に近い発言を探せば、その3日前、2月17日に遡る。安倍晋三首相が国会で「私や妻が(売却に)関係していたということになれば、総理も国会議員も辞める」と答弁した日だ。 これを受け、近畿財務局のI氏が「マスコミが押しかけてきて大変なことになります。ホテルにでも避難した方がいいんじゃないですか」という旨の話を学園側にしている。一方、Z氏も「対応は顧問弁護士に一本化し、籠池氏は対外的に発言しないでほしい」旨の電話をしている。弁護士から籠池氏にこの話が伝わる過程で「雲隠れ指示」と受け止めた可能性がある。そのことはおそらく記者では、私だけが気付いていた。 私の問いかけに、Z氏はやっと頷いた。 ――でも、別の電話をしていますよね。同じ日に。「トラック何千台でゴミを搬出したと言ってほしい」という電話。 「知ってるんだ……」 ――Zさんはあの日、そのことをメールで省内の複数の人に報告したでしょう。電話をしたけどダメだったということを報告している。 「なるほどね」 ――でも、私はZさんが自分からこういうことをしたとは思えない。上司の指示があったわけでしょう。中村稔総務課長(当時)ですね。 「自分の判断でやりました……課長補佐だからね」 ーー学園側に電話をしたのが2月20日、月曜日ですよね。それは当然、その前があるわけですよね。 「(苦笑して答えず)」 ――土日を挟んで、金曜日。2月17日に安倍首相が「関係していたら総理も議員も辞めます」と言ってますよね。あれが大きかったんじゃないんですか? 「(地下通路の途中で立ち止まって笑顔で)そう思われるよね。……そこは捜査を受ける身なので、答えを控える、ということに」 確認としてはもう充分だろう。私たちは和やかに別れたのだった。 取材結果を報告したところ、翌4月4日のクロ現の放送に先立ち、ニュース7でも取り上げることが決まる。私は3日夜、Z氏に翌日のニュースで報じることを伝えたが、動揺した様子もなく、何も言うことはなかった。上司はZ氏に明確に指示はしなかったかもしれない。だが、彼が忖度してやらざるを得ない状況にあったのではないだろうか』、「課長補佐」であれば、「忖度して」やるのは当然だろう。
・『「なぜこのネタを出さないんですか!」  こうして「口裏合わせ」のネタは日の目を見ることになったはずだった。ところが4日夕方になって、社会部デスクから電話が入る。 「放送できないかもしれません。民進党のO氏が『今日NHKが森友の特ダネを出すから見ろ』と言い回ってるらしいんです。そのことが政治部を通して報道局長に伝わって、局長が『野党に情報が漏れている』と激怒しているんですよ」 また小池氏か。私がO氏に漏らしたとでも思っているのだろうか。だがニュース7の放送まで残り10分という時間になって、再びデスクから電話があった。 「ニュース7には出ます」 私は心底ほっとした。だが、その後に続くデスクの言葉に衝撃を受けた。 「クロ現にこのネタは入りません。O氏が『ニュース7にもクロ現にも出る』と言っていたので、報道局長が『野党議員の言うままに放送できるか!』と」 私は、クロ現に新ネタを出したいという一心でここまで取材してきた。なのに、クロ現に出ない? 担当記者・ディレクターが集まる編集室で私は荒れた。 「なぜこのネタを出さないんですか!」 誰も反論できない、と思いきや、大阪のS統括が反論してきた。 「私たちはそんなこと聞いていませんよ。出さないというのは決定事項です」 ……あなたが信用できないから、言わなかったのだ。 結局、「口裏合わせ」のネタは出た。だが、ニュース7の最後の項目。特ダネにもかかわらず、その日の暑さのニュースよりさりげなく目立たない形で。私は憤懣やる方なかったが、ウオッチ9では分厚く取り上げてくれた。それで満足するしかない。そして、ある予感がしたのだった。 「いよいよ、次の人事では何かあるな」 4月に入り、焦点は特捜部の捜査の行方に移っていく。検察幹部にも最後まで立件の道を探る気概を見せる人がいた。起訴か不起訴かまだ分からない、というのが、4月半ば時点の私の判断だった。だが5月半ばには、起訴が厳しいという雰囲気に変わってくる。 私が「記者を外す」という内々示を受けたのは捜査を巡る取材合戦の最中、5月14日のことだった。大阪放送局最上階にある局長応接室。私はA報道部長からこう告げられた。 「次の異動で考査部へ行って頂きます」 記者を外される――。私の心は決まった。5月31日、〈森友事件で財務省関係者全員を不起訴 大阪地検特捜部〉という短い一報原稿を出し、その日の関西向けニュースでスタジオ解説を行ってNHK記者としての仕事を終えた。 8月29日、私はNHK放送センターの報道局長室を退職の挨拶に訪ねた。 「記念写真を撮影してもよろしいでしょうか」そう声をかけると、小池氏は快く応じてくれた。悪意のある人ではないと思う。ただ、細かすぎる。現場にあまりに細かく口出しするから、Kアラートと揶揄される。それは揶揄にとどまらず、NHKの報道を蝕んでいるのではないか。 週刊文春編集部がNHKに取材を申し込んだところ、 「報道局長の意向で報道内容を恣意的に歪めた事実はありません」という回答だった』、「特捜部の捜査の行方・・・5月半ばには、起訴が厳しいという雰囲気に変わってくる」、NHKとしては、起訴となれば「相澤氏」に活躍してもらわねばならないが、不起訴になったので、異動させたのだろう。
・『文書改ざんは日曜日に始まった  NHKを辞めた私は大阪日日新聞記者として、再び森友事件の取材を始めた。 ずっと頭に残っていたのが、今年3月7日に自ら命を絶った近畿財務局の上席国有財産管理官・Bさんの存在だ。彼はなぜ、どのように改ざんに関わったのか。財務省の調査報告書や関係者への取材を通じて、見えてきた新事実がある。 前述したように、安倍首相が「私や妻が関係していれば、総理を辞める」と答弁したのは、昨年2月17日。その3日後の20日に行われたのが、財務省による「口裏合わせ」だ。 そして24日、佐川宣寿理財局長(当時)が「保管期間が一年未満なので面会記録は廃棄した」と答弁。一方で、理財局の中村総務課長に対し、残っている記録があったら廃棄するよう指示している。この中村氏が実際に改ざんの陣頭指揮を執った人物だ。夏の人事で大臣官房の筆頭参事官に就任している。 近畿財務局による文書改ざんが始まるのは2日後の26日。日曜日にもかかわらず、本省理財局が近畿財務局の担当者に出勤を求めている。首相答弁や局長答弁によほど慌てたのだろう。どの公文書のどこをどう書き換えるのか、事細かく指示が出された。実は今まで報じられていないが、この日の夕方に呼び出された一人がBさんだった。 近畿財務局には、3月7日にも「書き換え案」という形で改ざんの指示が届く。本省の中村課長らから指示を受けた財務局の管財部長が、Bさんに伝えたという流れだ。最初は小幅な書き換えだったが、翌8日にかけ、さらに追加の書き換え指示が来る。 上席というポジションは本省からの指示と現場の摺り合わせが求められる役職だ。だが、Bさんは「これはおかしい」と意見するタイプだった。一方で経験豊富で仕事ぶりには上司からも一目置かれていた。そんなBさんゆえに、改ざんという不正に手を染めることが許せなかったのだろう。 財務省の調査報告書には「配下職員」という表現でBさんたちが改ざんに抵抗した姿が記載されていた。 〈近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員は、そもそも改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からのこの度重なる指示に強く反発し、平成29年3月8日までに管財部長に相談した〉 だが、結果は「書き換えは必要」と変わらなかった。Bさんはこれ以降、次第に体調を崩し、夏の人事での担当替えを強く希望していたがかなわず、休職に追い込まれてしまう。 そして今年3月7日、朝日新聞が改ざん疑惑を報じてから5日後、苦悩の末に自ら命を絶つことになる。 なぜ国有地は格安で売却されたのか。その謎は解明されていないし、誰も責任を取っていない。小学校を無理に認可しようとしたのは大阪府だ。国と大阪府はなぜそこまでしてこの小学校を設立させたかったのか。 森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ。国の最高責任者は安倍首相、大阪府の最高責任者は松井一郎府知事。2人は説明責任を果たしたと言えるだろうか。2人が説明しないなら、記者が真相を取材するしかない。 私がNHKを辞めた最大の目的は、この残された謎を全て解明することだ』、安部首相、明恵夫人、松井一郎府知事とも涼しい顔をしている。「相澤」氏が「この残された謎を全て解明する」ことに大いに期待したい。

第三に、ノンフィクション作家の森功氏が3月31日付けNEWSポストセブンに掲載した「森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20200331_1551629.html
・『森友学園問題の文書改竄に関与し、自殺した官僚の遺書は、世間に衝撃を与えたが、霞が関の動揺はその比ではない。震えているのは、その森友を機に、出世したエリート官僚たちだろう。それを知る霞が関の住人たちは、こう考えているはずだ。いったい我々は、誰のために尽くしているのか……安倍政権は、国家を支える官僚機構そのものを崩落させようとしている。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(敬称略)』、森氏はどんな角度で切り込んでくるのだろう。
・『佐川より首相夫妻  すべての嘘はモリカケに通ず。先ごろ飛び出した元財務省職員の手記を読むにつけ、思わずそう言いたくなる。さる3月18日、遺族の弁護士が大阪市内で記者会見し、自殺した元近畿財務局職員の手記を公表した。 〈(森友学園との)応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました〉 ジャーナリストの相澤冬樹が週刊文春で発掘した手記の発表を機に、野党も政府に森友学園問題の再調査を要求してきた。震える手で書かれた遺書には、赤木俊夫・元上席国有財産管理官(享年54)の伝えようとした“真実”が綴られている。 なぜ財務省が国有地を8億円以上も値引きして森友学園に売ったのか。加計学園と同じく、首相夫人の安倍昭恵と親しい籠池夫妻への依怙贔屓ではないのか。念を押すまでもなく、それが森友疑惑の原点である。 財務省近畿財務局と森友学園との間にどのようなやり取りがあったのか。森友疑惑を解明する上で、まず明らかにすべきが、駆け引きの記録だった。 ことが発覚した当初の2017年通常国会では、国有地を所管する理財局長の佐川宣寿が、取引にかかわる文書を「すべて廃棄した」と答弁する。だが、翌18年に入ると、朝日新聞の報道などにより、その嘘がばれていく。そして国有地売買を記した財務省近畿理財局の公文書が次々と明るみに出ていった。 察するところ、取引現場となった近畿財務局の職員たちは、無茶な土地取引があとで問題になることを予想し、自己保身のために証拠を残したかったのだろう。安倍政権にとって都合の悪いことに、森友側との応接記録や取引を決裁したときの行政文書などが、近畿財務局に公文書として保管されていた。わけても決裁文書には、安倍昭恵が何度も出て来て、「いい土地ですから(取引を)前に進めてください」と森友学園理事長の籠池を励ますクダリまである。 国会で「私や妻が関係していたということになれば……」などと大見得を切った官邸の主は、そんな記録など、ツユほども知らなかったのだろう。国会対応に追われた財務官僚たちが大慌てして記録を隠し、さらに決裁文書の改竄に手を染めた。挙句、それが発覚し、文書の改竄を押し付けられた現場の近畿財務局職員が命を絶ってしまったのである。 〈元はすべて佐川(宣寿)理財局長の指示です〉 職員の遺書が表沙汰になり、野党やマスコミはわかりやすいそのひと言を取り上げるきらいがある。が、「佐川の指示」そのものは、これまでの財務省調査ですでに認めている。疑惑解明のポイントはそこではなく、首相夫妻の関与に戻る。 残念ながら手記ではそこが抜けているが、むしろ期待するのは、遺族が佐川や財務省を相手取って提訴している民事の損害賠償請求の行方だ。そして裁判のキーマンは佐川だけではない』、改竄に至る背景は森氏の指摘通りなのだろう。「疑惑解明のポイントは・・・首相夫妻の関与に戻る・・・期待するのは、遺族が佐川や財務省を相手取って提訴している民事の損害賠償請求の行方だ」、どこまで解明されるかはともかく、残された楽しみではある。
・『森友火消しの四人  もう一人の重要なキーマンが遺書に度々登場する財務省の太田充である。首相の「私や妻が」発言のあった2017年2月17日の5日後の22日、大臣官房審議官だった太田は、佐川とともに官房長官の菅義偉に呼び出され、森友対策を練った。応接記録などを破棄したという佐川の国会答弁を記者に突っ込まれた菅は、驚いたことに、この直後の24日の官房長官会見でこう言い放っている。 「(交渉経緯の)ほとんどは決裁文書に書かれているんじゃないでしょうか」 そこから近畿財務局の職員たちが佐川の指示により、決裁文書に記されている300か所におよぶ不都合な真実の改竄を繰り返したのである。 一方、これには疑問も残る。決裁文書には理財局総務課長の中村稔の承認印もあり、中村も菅との協議に加わって説明している。普通に考えれば、財務省の彼らは菅に決裁文書に昭恵の名前が何度も出てくることを報告したはずだ。 にもかかわらず、菅は24日、あたかも決裁文書を見てくれ、と言わんばかりの会見を開いている。財務官僚が説明を忘れたか、それとも官房長官がうっかり口走ってしまったのか。どちらにせよ結果、改竄前の文書内容が大問題になる。実に間の抜けた話なのである。 この菅、佐川、太田、中村という森友国会対策の四人組が、文書改竄の経緯を解明する鍵を握っているのは疑いようがない。それに加え、事務次官の福田淳一、官房長の岡本薫明や矢野康治、理財局次長の中尾睦、国有財産審理室長の田村嘉啓、国有財産企画課長の冨安泰一郎といった当時の面々。彼らも文書の改竄にかかわっているか、知りうる立場にあった。だが、国会では与党の数の力で多くが国会招致を免れ、尋問されてもシラを切り続けてきた。 財務省内では、会計検査院の審査に備え、森友学園との土地取引が法に触れないか、検討した。そのときの文書ものちに明らかになった。遺書はそこにも触れている。 〈新聞紙上に掲載された本(2018)年1月以降に新たに発覚したとして開示した「省内で法的に論点を検討した新文書」について、本年2月19日の衆院予算委員会で、太田理財局長が「当初段階で、法務担当者に伝え、資料に気付く状況に至らなかった。法務担当に聞いていれば(文書の存在)に気付いていたはずだ」との答弁も全くの虚偽である〉 民事裁判では裁判長が認めれば、証人出廷しなければならない。昭恵夫人の証人出廷なんてことになれば、埋もれてきた数々の虚をあぶり出すことができる。なかでも遺書に何度も登場する四人組の一人、太田などは気が気でないかもしれない』、「菅は24日、あたかも決裁文書を見てくれ、と言わんばかりの会見を開いている」、これは菅が安部に見切りをつけた上での発言の可能性もありそうだ。
・『厳重注意の後、昇進  それでも森友国会対策の四人組をはじめ、キーマンたちのほとんどは出世してきた。首相を庇った論功行賞による出世は、安倍政権における見慣れた光景といえる。 佐川もいっときは理財局長から国税庁長官に昇進したが、公文書の改竄が明るみに出て財務省を追われた。安倍一強政権の犠牲者だと庇う声もある。政権を守るために犯罪行為を強いられたという意味では、その通りかもしれない。 モリカケに見られるように、批判の矢面に立たされてきた官僚たちは放り出されてきた。加計学園でいえば、「首相案件」発言を取り沙汰された元経産省産政局長の柳瀬唯夫もその一人だろう。 一方、太田は2018年6月、文書改竄問題で財務大臣から厳重注意処分を受けるが、翌7月には理財局長からナンバー2の主計局長ポストに昇進する。主計局長は次官の待機ポストとされ、それだけ官邸の覚えがめでたかった証だろう。今年7月の人事で後継次官に指名される見込みだといわれる。彼らは何ごともなかったかのように財務省の中核を固めている。四人組の残る中村は現在、駐英公使としてロンドン暮らしを満喫している。 半面、日本の頭脳と持ちあげられてきた財務官僚たちの堕ちた姿は、昨今の霞が関のあり様を象徴する出来事のように映る。かつて大蔵一家と呼ばれて結束を誇り、日本の政策の舵を握ってきた財務省には、まるで組織としての一体感がない。 その財務省に代わり、首相の側用人らが意のままに政策を動かしてきた。森友問題の調査についてある財務官僚に尋ねた。 「財務省内でも、佐川さんが自発的に文書の改竄を指示したなんて誰も思っていません。霞が関の役人は官邸からの圧力電話をしょっちゅう受けていますから、何らかの力が働いているのは肌で感じています。世間が納得しないのもわかります。しかし、当人は省内の調査に対し、本当に上からの圧力については口をつぐんでいる。そこで調査が止まってしまうので、どこまで行っても真相にたどり着かないのです」』、「首相の側用人」も今回の新型ウィルス問題での学校の休校騒ぎでは、若干ミスをしたようにも思える。
・『常に官邸のほうを見る  これこそ閉塞感というのだろう。そのせいで心ある霞が関の官僚たちの不満は募る一方だ。別の官僚はこう愚痴る。 「たとえば昨年10月の消費税増税のときにしてもそう。景気対策のためにキャッシュレスで買い物すれば、2~5%ポイント還元するという発案者は経産省の新原(浩朗・産政局長)で、それをバックアップしたのが首相補佐官の今井(尚哉)。社会保障のための増税ですから、財務省の基本はそんな財政負担など反対なのですが、新原が首相に泣きついて決まりました」 経産内閣と呼ばれる安倍政権では、経産官僚たちが幅を利かす。新原は女優・菊池桃子の亭主である。官邸官僚の頂点に立つ今井に引き立てられ、いまや事務次官候補として名が挙がっている。産政局長はかつて柳瀬が務めたポストだ。もっとも肝心の政策はさっぱり。景気対策で導入されたポイント還元のはずが、GDPの年率マイナス7%という景気の落ち込みは周知の通りである。 「ポイント還元で財務省が反対する中、賛成に回ったのが、太田主計局長です。次の事務次官になるためには、今井や新原たちを敵に回したくないからでしょうが、あまりに露骨。森友問題のときもそうでしたが、常に官邸のほうを見て仕事をするので、省内にはずいぶん反発があります」) 主計局畑を出世の本流とする財務省では、事務次官の福田がセクハラ問題で去り、官房長から主計局長に昇進していた岡本が後釜に座った。岡本の次官就任は役所の建て直しを担う省内の待望論があった。が、同じ主計畑の太田については、省内の評判がすこぶる悪い。それは、無茶な政策を黙ってやり過ごし、官邸にすり寄る姿が目にあまるからだという』、「ポイント還元で財務省が反対する中、賛成に回ったのが、太田主計局長・・・常に官邸のほうを見て仕事をするので、省内にはずいぶん反発があります」、「太田主計局長」が次官になったら、省内は面従腹背でいくのだろうか。
・『守り神を検事総長に  なぜそうなってしまうのか。理由は、官邸に幹部人事を握られてしまっているからにほかならない。古くは、総務省の事務次官候補と呼ばれた平嶋彰英が菅の肝煎りのふるさと納税に異議を呈し、2015年7月、自治税務局長から自治大学校長に左遷されてしまったケースもある。霞が関では今もそれが語り継がれている。 そして官邸による官僚支配は、一般公務員だけにとどまらない。1月31日、唐突に閣議決定された東京高検検事長の定年延長問題は、司法の独立という国の根幹を揺るがせている。 準司法官と位置付けられる検察官の定年は、検察庁法により、職務と責任の特殊性に基づき、一般の国家公務員の特例と定められてきた。刑事司法の公平性から、検事は誰もが63歳で任を解かれ、検察トップの検事総長だけが65歳まで務める。 東京高検検事長の黒川弘務もまた、今年2月8日の誕生日をもって63歳となり、定年退官するはずだった。が、安倍政権では閣議で8月7日まで定年を半年間延長するという禁じ手を使った。おかげで黒川が検事総長に就任できる──。首相官邸がそんなシナリオを描いたとされる。 「官邸の守護神」と異名をとる黒川は、安倍内閣で法務省の官房長や事務次官を6年半以上も務め、政権と検察の橋渡し役を担ってきた。公文書の変造や背任容疑のかかった森友学園の国有地売買で大阪地検が捜査したときも、その存在が囁かれた。 実際に黒川がどのような動きをしたのかは明らかにはなっていない。だが、安倍政権では過去も官房長や事務次官人事に介入してきた。さまざまな不祥事に揺れる政権が守り神を検事総長に据えれば安泰、と考えたのではないか、そう勘繰られても仕方ないほど、今度の定年延長はあまりに酷い。 官邸主導の名の下、官僚たちは唇が寒く、政権で横行する不条理に声を上げない。しかし近畿財務局職員の死から2年、その遺志が検察の不起訴にした38人の財務省幹部たちを改めて民事の法廷に引きずり出す。崩れゆく霞が関から何が飛び出すだろうか。【プロフィール】(リンク先参照)』、「「官邸の守護神」と異名をとる黒川」への厚遇ぶりは確かに目に余る。これからも安部政権の多くの疑惑に蓋をしていくのだろう。これでは、近代国家とは程遠い醜い姿だ。
タグ:森功 Newsポストセブン 森友学園問題 文春オンライン (その20)(森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」、「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間、森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構) 「森友自殺“遺書公開” スクープ記者が明かした「私がNHKを辞めた理由」」 大阪日日新聞の記者である相澤冬樹氏 NHKを辞めるまでの経緯 著書「安倍官邸 vs. NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋) NHKを辞めた日の出来事 記者の仕事を続けるため、森友事件の取材を続けるため、私はNHKを辞めて大阪日日新聞に移った NHKに就職、阪神・淡路大震災に直面 震災半年で異動 東京社会部から徳島へ 歯科医師国家試験漏洩事件で漏洩源を特定する特ダネを出して 大阪ではJR福知山線脱線事故を取材 志願して記者に戻り、森友事件に出会う 「森友事件」は国と大阪府の事件である 「「なぜこのネタを出さないんですか!」森友問題“遺書”スクープ記者がNHKを見限った瞬間」 「私は聞いてない。なぜ出したんだ」 NHKの報道部門を束ねる小池英夫報道局長 大阪放送局のA報道部長 特ダネに報道局長が激怒 政治部畑を歩み、政治部長も経験した小池局長。安倍官邸中枢に太いパイプがあるのは知られたところだ 「あなたの将来はないと思えと言われちゃいました」 翌年6月の人事で私は記者を外され、考査部へ異動 原稿から削られた昭恵夫人の部分 小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任 「8億円値引き」 放送は関西のみ。全国放送は報じない 特ダネも書き換えられていく 「大阪地検特捜部もこの情報を把握して捜査している」という要素を付け足す 「大阪報道部を通さず、東京社会部から出した」 “口裏合わせ”のスクープが 理財局のZ課長補佐 記者の問いかけにやっと頷いたZ氏 「なぜこのネタを出さないんですか!」 民進党のO氏が『今日NHKが森友の特ダネを出すから見ろ』と言い回ってる 次の異動で考査部へ行って頂きます 5月半ばには、起訴が厳しいという雰囲気に変わってくる 文書改ざんは日曜日に始まった 日曜日にもかかわらず、本省理財局が近畿財務局の担当者に出勤を求めている。首相答弁や局長答弁によほど慌てたのだろう。 Bさんは「これはおかしい」と意見するタイプ 改ざんという不正に手を染めることが許せなかったのだろう 苦悩の末に自ら命を絶つ 森友事件は森友学園の事件ではない。国と大阪府の事件だ 「森友問題めぐる忖度人事続々 安倍政権が崩落させた官僚機構」 佐川より首相夫妻 自殺した元近畿財務局職員の手記を公表 (森友学園との)応接記録をはじめ、法律相談の記録等の内部検討資料は一切示さないこと、検査院への説明は「文書として保存していない」と説明するよう事前に本省から指示がありました 近畿財務局の職員たちは、無茶な土地取引があとで問題になることを予想し、自己保身のために証拠を残したかったのだろう。安倍政権にとって都合の悪いことに、森友側との応接記録や取引を決裁したときの行政文書などが、近畿財務局に公文書として保管されていた 元はすべて佐川(宣寿)理財局長の指示 遺族が佐川や財務省を相手取って提訴している民事の損害賠償請求の行方 森友火消しの四人 財務省の太田充 理財局総務課長の中村稔 菅は24日、あたかも決裁文書を見てくれ、と言わんばかりの会見を開いている 厳重注意の後、昇進 財務省に代わり、首相の側用人らが意のままに政策を動かしてきた 常に官邸のほうを見る 守り神を検事総長に 東京高検検事長の定年延長問題は、司法の独立という国の根幹を揺るがせている 「官邸の守護神」
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教育(その19)(「みんな仲良く」が子どもの苦しみを増やすワケ 心と行動は切り分けるべき、寺脇・前川両氏「子どもたちをよろしく」で描く社会の闇、「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは) [社会]

教育については、昨年11月21日に取上げた。今日は、(その19)(「みんな仲良く」が子どもの苦しみを増やすワケ 心と行動は切り分けるべき、寺脇・前川両氏「子どもたちをよろしく」で描く社会の闇、「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは)である。

先ずは、千代田区立麹町中学校長の工藤 勇一氏が昨年12月11日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「「みんな仲良く」が子どもの苦しみを増やすワケ 心と行動は切り分けるべき」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/31200
・『「自分には嫌いな子がいる」と悩む子に、どんな声をかければいいだろうか。麹町中学校の工藤勇一校長は「『みんな仲良く」という理想論を押し付けるより、心と行動は切り分けて行動をすることを伝えるべきだ」という——。 本稿は、工藤勇一『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『「みんな仲良く」が子どもを苦しめる  息子が幼稚園に通っていた頃、彼が「自分には嫌いな子がいる」と悩んでいることがありました。息子からすれば、大好きな母親はみんなと仲良くしているのに、同じようにみんなと仲良くできない自分が苦しかったのでしょう。 さらに、幼稚園では「みんな仲良く」と日常的に言われていたようですから「嫌いな子がいる自分は、だめな人間だ」と悩んだようなのです。幼稚園に行きたくないとまで言っていました。 そこで私は、五味太郎さんの『じょうぶな頭とかしこい体になるために』(ブロンズ新社)という本を使いながら、「お父さんにも嫌いな人がいるよ。お母さんにだって、嫌いな人がいるんだよ」と伝えたのです。 息子は目を大きく見開き絶句していました。私と話したあとに妻にも「お母さんにも嫌いな人がいるって本当?」と、確認しに行ったほどです。最初は信じられないという感じでしたが、そのうち安心できたようで、元気に幼稚園に通えるようになりました。 こんな小さな子でも「立派でいなければならない」という思いを背負って生きているということが、私には衝撃的でした。 この出来事以降、教師としてもこのような思いを生徒に背負わせてはいけないと改めて肝に銘じ、接し方がずいぶん変わりました。「こうでなくてはならない」ということが伝わってしまうような言葉は、使わないようにしたのです』、息子に諭す際に、適切な本をつかうとはさすがプロ教育者だ。「「みんな仲良く」が子どもを苦しめる」、確かにその通りなのかも知れない。
・『気持ちと行動を切り離す  普段から使う言葉を少し注意するだけで、子どもに伝わるメッセージは変わります。 たとえば「みんな仲良く」という言葉も「みんな仲良くしなければならない」ではなく、「人と仲良くすることは難しいものだけど、仲良くできたら素敵すてきだね」という言葉なら、子どもたちが受け取るメッセージはまったく違うはずです。 ちなみに、息子が悩んでいたとき、こんなことを付け加えました。「お父さんにも嫌いな人がいるけれど、だからといってその人に意地悪はしないよ。きちんと挨拶もするし、本人に嫌いだと言ったりはしないよ」 心と行動を切り分けることは大事なことだと、きちんと伝えておきたかったのです。 人は、差別をする心は消せないかもしれません。私だって聖人君子ではないですから、誰かを差別しそうな考え方が頭をよぎることもあれば、息子にも伝えたように嫌いな人だっています。 ただ、たとえそんな心は消せなくても、どんな言動が差別になるのかを知ることさえできれば、差別しない行動を取ったり、嫌いな人ともうまく人間関係を築いたりすることはできます。 脳科学の知見から考えてみると、人の「無意識」は同じ行動を繰り返すことによってつくられます。たとえ一度固定化された無意識(それが「心」と言えるでしょう)であっても、別の行動を繰り返すことによって書き換えられることがわかっています。 「みんな仲良く」という理想論を子どもに押し付けて苦しませるよりは、「心と行動は切り分けられる」ということ、そしてだからこそよい行動をするのだということを、伝えたいものです。▼まとめ 心と行動は切り分けて、「よい行動」をする』、「心と行動は切り分けて、「よい行動」をする」、大人の知恵のようなものだが、「子ども」にも理解してもらうのは、「理想論を子どもに押し付けて苦しませるよりは」、遥かによさそうだ。
・『嘘も大切なコミュニケーションスキル  子どもたちの周りには、心の教育に関する言葉があふれています。前述した「みんな仲良く」もそうですが、「心をひとつに」「嘘うそをつかない」など、挙げればキリがありません。そして、これらの言葉にとらわれている方が、とても多いと感じています。 子どもが小さいうちはたしかに心の教育も大切ですが、それを言葉で教えるのはなかなか難しいのではないかというのが私の実感です。そしてその言葉の中身についても、少し疑う必要があるのではないかと思うのです。 たとえば「思いやりを持ちなさい」という言葉。 この「思いやり」とは一体なんなのでしょうか。どのような行動のことを言うのか、とても曖昧な言葉です。 私は高校生くらいの頃から哲学が好きで、周りの友人とディスカッションをして夜を明かすことも少なくありませんでした。「思いやり」という言葉にも引っかかりがあり、自分なりにずいぶん考えてみましたが、考えれば考えるほど簡単には使えない言葉だと感じます。そして「嘘をつかない」という言葉。これは本当に大切なことでしょうか? たとえば、あなたが誰かからお土産をもらったとしましょう。それがあまり好きなものではなかったとき。あなたは「ああ、これ嫌いなんだよね」と言うでしょうか? また、誰かの家で夕飯をごちそうになり、あまり口にあわなかったときに「おいしくないです」と言いますか? そう考えると、嘘をつくことで人を幸せにすることもあるのではないでしょうか。 進んで子どもたちに伝えたことはありませんが、嘘をつくことも、コミュニケーションスキルの一つと言えると思います』、これは、「嘘も方便」との言葉があるように、その通りだ。
・『大人の理想論を押し付けない  「自分に嘘をつかないことが大切!」という言葉もよくわかりません。そもそも「自分」がどういう人間なのかもよくわからないですし、自分の欲求や気持ちに正直になることはそんなにいいことなのか疑問です。 少し辛つらいときや疲れているときに周りの人から「辛そうだけど大丈夫?」と聞かれ、「大丈夫」と自分に嘘をつくことは、大事な社会的な要素なのではないかと思うのです(もちろん、無理をしなさいということではなく、体調の変化には気を付けるべきです)。 嘘をついて人の物を盗ったり、自分のなかにある良心に背いたりするというのはほめられたことではありません。ただ、心の在り方よりも、実際にどんな行動をするかのほうが大切だということは、子どもたちに伝えていかなければなりません。 「困っている人を助けたいけれど、勇気がなくて実行できない人」と、「ずるい気持ちがきっかけかもしれないけれど、困っている人を助けた人」がいたら、私は後者のほうが価値があると思うのです。 ドラマやアニメの世界のなかのような、理想的すぎるほどの価値観を子どもに押し付ける大人は少なくありません。こういった価値観からくる言葉は、子どもにとっていいものだと思われるからでしょうか(大人だって、守れないのに……)。 そんな言葉を鵜呑うのみにして、苦しんでいる子どもがたくさんいます。耳障りのいい言葉こそ、それが子どもにどんな影響を与えるか考えてみる必要があるでしょう。▼まとめ ドラマやアニメの価値観はしょせん綺麗事』、大人の場合は、現実世界では理想論を棚に上げて、行動することに何ら躊躇しないが、子どもの場合はそうした使い分けが出来ないので、「大人の理想論を押し付けない」、のは確かに重要なようだ。
・『偽善者かどうか考えても無駄  人は、ときに自分の行動が周りからどう思われるかを気にします。中高生くらいだと、とくにその傾向が強く、よい行いをした生徒に対して周囲の人間が「偽善者」と揶揄やゆすることがあります。 しかし私はいつも「偽善者かどうかを考えることこそ無駄。そもそも、人によく思われたいって素敵なことでしょ」と伝えています。この「偽善」という言葉を紐解ひもといていくと、人間が「心の在り方」にいかにこだわっているかがわかります。 ここでまったく正反対の「偽悪」という言葉をご紹介します。この言葉は私が大学時代に読んだ絵本、『きつねのざんげ』(安野光雅・著/岩崎書店)のあとがきで知った言葉です。偽善と偽悪。一見、相反するように見えるこの2つの言葉ですが、実はまったく同じものなのではないかと私は思ったのです。 「偽善」というのは簡単に言えば「いい子ぶる」というようなイメージで、周りによく思われたくて善行をすることを意味します。それが周りから見たときに、その人の「本当の姿」と乖離かいりがあるために、「偽善者だ」と揶揄されるわけです。 「偽悪」は簡単に言えば悪ぶること。周り(とくに身近な仲間)に「いい子ぶってる人間だ」と思われたくないために、わざと悪いことをすることを言います』、確かに「中高生くらい」の頃には、「偽悪」ぶるのが恰好いいと思ったりするものだ。
・『大切なのはどんな行動をするか  いい子ぶるのも悪ぶるのも、中高生にはよく見られる行動ですが、どちらも自分の周りによく思われたいと思っているからに他なりません。 人からよく思われたくていいことをする「偽善」も、仲間から一目置かれたくて悪いことをする「偽悪」も、行動の中身は違いますが構図は同じです。「周りからどう思われるか」という他人の心のうちが気になり、行動ができなくなることは、誰にでも少なからず経験があるでしょう。 しかしこういった言葉に振り回されてはいけません。大切なことはどんな行動をするかです。人は行動の積み重ねでこそ評価されていくものだからです。最近はあまり使われなくなりましたが「お天道様は見ています」という言葉があります。 近くに誰もいなくてもお天道様は見ているのだから、どんなときも悪いことをしてはいけないということを言い聞かせるための言葉ですが、「自らを律して、しっかり生きていきなさい」という素敵なメッセージが込められています。子どもたちには、自分の心のなかの「お天道様」を意識し、歩んでほしいものです。▼まとめ 「人によく思われたい」は素敵なこと』、「お天道様は見ています」があまり使われなくなったのは、残念だが、首相が平然とウソをつくのが日常化したなかでは、無理もないことなのだろう。「子どもたちには、自分の心のなかの「お天道様」を意識し、歩んでほしいものです」、全く同感である。
・『「いじめ撲滅」がいじめを生み出す  「誰にでも優しくしなさい」という言葉はたしかに理想的な言葉かもしれませんが、人との距離感を教えるには妨げになってしまう気がします。子どもが人間関係の壁にぶつかるのは当たり前のことです。この壁にぶつかりながら、さまざまな経験を通して、人との距離感を学んでいくものだと思います。 いじめ撲滅の標語でよく使われている「いじめを絶対に許さない」という言葉について、みなさんはどう思われますか。一見、聞こえのいい言葉に感じるかもしれませんが、私はこの言葉は人に対してとても冷たい言葉のように感じます。 「いじめは絶対に許さない」ということは、謝っても許されない、反省しても許さないという言葉に聞こえてしまいます。そもそもいじめを起こさないために使われるようになった言葉ではありますが、こう言われる環境で育っている子どもたちからすると、はたして正直に「私、あの子をいじめてしまいました」と言えるでしょうか。 何が人を傷つける言動かということは、大人でも気が付かないことがあります。子どもだったらなおさらです。 言葉で「みんな仲良く」や「いじめを許さない」「いじめをゼロにする」などと言っても、いじめはなくなりません。ましてや、この多様性を排除する言葉がいじめを生み出す原因になったり、いじめを解決できなくする原因になったりするように、私は感じています。▼まとめ 多様性を認めることが、いじめのない社会への第一歩』、「いじめは絶対に許さない」が自白にブレーキになる副作用がある、というのは言われてみればその通りだ。「多様性を認めることが、いじめのない社会への第一歩」、同感だ。最後の頁の下に出ている筆者の工藤氏の略歴を見て驚いた。なんと東京理科大学理学部応用数学科卒業とは、教員には珍しい経歴だ。本質を突く姿勢が生まれた所以なのだろうか。

次に、本年2月21日付け日刊ゲンダイ「寺脇・前川両氏「子どもたちをよろしく」で描く社会の闇」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/269376
・『ギャンブル依存症の父と極貧生活を送る孤独な少年、男に依存する母、DVの継父、デリヘル嬢の姉と暮らす少年……地方都市の2つの家庭を交差させながらイジメ、貧困、性暴力、自殺など子どもたちを取り巻く現代社会の闇を鋭く描いた映画「子どもたちをよろしく」(隅田靖監督)が29日から公開される。企画、プロデュースは前川喜平元文科省事務次官と文科省官僚出身の寺脇研氏。映画評論家としても長く活躍する寺脇氏に話を聞いた。 高校生の時に雑誌「キネマ旬報」に投稿して採用されたのが映画評論家になるきっかけでした。文部省(現文科省)に入省した後も役人の傍ら映画評論を続けてきて50年近くになります。 私から見れば最近の日本映画は口当たりだけが良く、軽くチャラチャラ浮ついた映画が多くなったように思います。歯ごたえのある映画がなくなった。それは小泉元首相の新自由主義が喧伝された時代から顕著になったようです。 1960~70年代の日本映画は時に救いようのない現実を描き、「暗い」「汚い」「(映画館のトイレが)臭い」の「3K」といわれました』、「寺脇研」氏は文科省時代にはゆとり教育の広報を担当。現在は、京都造形芸術大学教授や映画評論家として活躍中。「最近の日本映画は口当たりだけが良く、軽くチャラチャラ浮ついた映画が多くなったように思います。歯ごたえのある映画がなくなった」、その通りなのだろう。
・『でも、それは日本の社会をそのまま反映したものであって、今のように不都合な現実を直視することをせず、見せかけの繁栄を謳歌するような映画とは違って、ずっしりと心に響いてきた。私が愛した日本映画はいったいどこへ行ったのか。 そんな思いから7年前に、戦争に翻弄された一組の男女の姿を「性」を通して描いた「戦争と一人の女」という映画をプロデュースしました。そのあと、斜陽のピンク映画界を描いた「バット・オンリー・ラヴ」、そして今回の映画で3本目です。 この作品は試写を見た人のほとんどが「救いがない」と言う。確かにハッピーエンドで終わる物語ではない。でも、大ヒットした「新聞記者」だって、きっちり現実と切り結びながら割り切れない痛みを伴うエンディングでしたよね。 子どもたちのいじめや自殺がどうすればなくなるのかを映画を通して問い直したい。映画・落語評論家、そして文科省官僚として子どもたちの教育に携わってきた私の人生の集大成だと思っています。ぜひ映画館へ足をお運びください。 「子どもたちをよろしく」は2月29日から渋谷のユーロスペース、横浜シネマ・ジャック&ベティなど全国順次上映』、「子どもたちのいじめや自殺がどうすればなくなるのかを映画を通して問い直したい」、2人が「企画、プロデュース」したのであれば、きっと観ごたえのある作品なのだろう。

第三に、フリーライターの吉岡 名保恵氏が3月26日付け東洋経済オンラインに掲載した「「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/339136
・『突然始まった休校に合わせ、家で過ごす子どもたちのため、良質なオンライン教材や動画、書籍の電子版などが官民問わず、さまざまな形で無料開放された。しかし子ども自身が喜んで利用するかどうかは個人差が大きく、SNSでは子どもが「やらない」「取り組まない」「興味を示さない」という保護者の悩みも目に付いた。 「学力を低下させたくない」「せっかくの休みを有効に使ってほしい」――。そんな親の願いどおりにはなかなかいかないものだ。では今回のような緊急時、子どもの学びを止めない方法はあるだろうか。「双方向」のコミュニケーションをキーワードに探ってみた』、興味深そうだ。
・『いつもの学校、いつもの先生  3月17日、午前9時。児童たちの姿がない休校中の校内で、あちこちから「おはようございます」の声が聞こえてくる。 埼玉県さいたま市、私立さとえ学園小学校。休校が始まった3月2日から私立さとえ学園小学校。 この日はZoom生活10日目。ガランとした教室でタブレットやノートパソコンに話しかける教員と、自宅にいる児童たちがオンラインでつながり、出欠を取ったり、日課の黙想をしたり。画面越しの児童たちは制服か体操服を着用し、普段と同じルーティーンで「朝の会」が開かれている。 同校では2018年から児童全員がiPadを所持し、学校や自宅での学習、連絡に活用。自宅にWi-Fi環境がなくても利用できるようセルラーモデル(注1)を導入しており、児童らは学校生活の中で当たり前にiPadを使っている。 休校要請が出された日の夜、Googleのメッセンジャーアプリ「ハングアウト」(注2)の教員グループに小野田正範校長がメッセージを発信した。それは、今後起こりうる課題は何かを洗い出そう、という呼びかけ。すでに21時を過ぎていたが、ICT部メンバーの教員らが即座にタスク管理ツール「Trello(トレロ)」でプロジェクトを立ち上げた。 普段から教員同士のコミュニケーションにはハングアウトを使っているが、過労働にならないよう勤務時間外には使用していない。しかし今回は緊急事態。帰宅していた教員たちがオンラインでつながり、夜のうちに課題検討が進んだ。 その中で新しい試みとして出てきたアイデアがZoomの利用だった。「最初は児童の顔を見て、健康観察ができれば、というぐらいの気持ち」(小野田校長)で、まずは9時からの朝の会と11時からの終わりの会をZoomで実施。午前中ずっとZoomを使うのではなく、各自で自宅学習に取り組むことを基本とした。 一方、教員それぞれが試行錯誤を重ねた結果、次第にZoomを使ってオンライン授業ができるようになっていく。子どもたちも操作に慣れ、挙手機能やチャットを使いこなせるようになった。 体育の授業で体操したり、生活科の授業で学校内の植物を撮影して観察したり。子どもたちにとっては画面越しであっても、いつもの学校、いつもの先生、いつもの友達と出会えることが何よりうれしかったのではないだろうか』、「教員それぞれが試行錯誤を重ねた結果、次第にZoomを使ってオンライン授業ができるようになっていく」、とは大したものだ。
(注1)セルラーモデルとは、SIMカードを挿して、3Gや4G、LTEの電波を使ってデータ通信ができるものです。 これがあればWi-Fiがない場所でもインターネットや電話を利用することが可能です。
(注2)ハングアウト:Googleが提供する統合メッセージングサービスである(Wikipedia)
・『公立でも取り入れられる仕組みづくり  家庭でWi-Fi環境が整っていないなど、Zoomへの接続が困難な場合もある。そのため朝の会や終わりの会も参加は強制ではなく、普段どおり連絡事項はGoogle Classroomで共有。オンライン授業は録画して専用サイトから閲覧できるようにするなど、フォロー体制も整えられた。 またZoomの利用について保護者からはオンラインでアンケートを回収。「朝の会の開始に合わせて規則正しい生活ができた」や、「最初は落ち込んでいた子どもも、友達の顔を見ると表情が明るくなった」など好意的な意見が多く聞かれた。 さとえ学園小学校の取り組みについて、「校内に水族館やプラネタリウムまである私立小だからできるんでしょう?」、そう揶揄する人もいるかもしれない。しかし意外にもICT化の方針は「公立校のモデルになるような取り組み」。そう語るのは、ICT・AL(アクティブラーニング)教育担当の山中昭岳先生だ。 山中先生は約20年前、和歌山県の旧熊野川町(現在の新宮市)で教員となり、山間部の小さい公立小でありながら当時、パソコン教室に1人1台を実現するなどIT化の指揮を執っていた。この経験から、ICTツールが子どもたちの可能性を大きく広げることを実感。そしてそのメリットは一部の子どものものではなく、すべての子どもが平等に享受できるものでなければ社会は変わらない、という信念を持ったという。 一方、さとえ学園小学校は体験型教育や複合型教育を重視し、学校の設備は非常に充実している。しかし山中先生が着任した数年前までは校内に十分なパソコンがなく、ICT化は出遅れていた。潤沢な予算もない中、一からICT化を整備するなら公立校のモデルになる取り組みにしようと教員間で意識を共有。 そのため教材費と同水準でiPadを導入できるようにし、基本的には無料で、学校外でも使えるアプリやツールを多用した。またICTリテラシーやスキルに応じてiPadの機能やアプリに制限をかける、独自の「レベルアップ型ルール」を考案。小学生でも自分自身をコントロールし、適切かつ効果的にiPadを使いこなせるようにした。 小中で児童生徒1人1台コンピューターを2023年度までに実現させるという政府の「GIGAスクール構想」は、今回の休校措置によって、今後さらに加速していくだろう。 「学校教育が充実していなければ、社会は衰退します。誰もが平等にICTツールを使えれば、すべての子どもたちが自分の学び、可能性を広げていけるようになるでしょう。今回の事態がいいきっかけになって教育のアップデートが進むことを願い、私たちのノウハウを広く伝えていきたい」(山中先生)』、「山間部の小さい公立小でありながら当時、パソコン教室に1人1台を実現するなどIT化の指揮を執っていた」「山中先生」の存在は、「さとえ学園小学校」でも大きいようだ。
・『学校ではない居場所もオンラインで  一方、学校外でも子どもの支援に取り組む企業や団体があった。このうち、政府から休校要請が出された翌日、急きょオンライン講座の立ち上げを宣言したのがミライLABO(東京都渋谷区)。普段は渋谷を拠点に認可外保育園のほか、主に小学生を対象にサードプレイス(学校でも塾でもない第三の居場所)として「コドモクリエイターズインク」を運営している。 このうち「コドモクリエイターズインク」は、小学生のための起業家教育として企業とコラボレーションしたり、さまざまな企画で多様性に触れる学びを実践したりしている。学校や塾ではできない体験、学びができる場としてニーズがあり、渋谷以外での開設希望が多く寄せられていた。 そのため4月から全国の誰でも参加できるオンライン講座(有料)の開設を目指し、準備を進めていたところ、突如、休校要請が出された。それならばと、3月に10日間、希望者20人に無料でオンライン講座を受けてもらえるよう計画を前倒し。SNSなどで参加者の募集情報は広がり、瞬く間に希望枠は埋まった。 反響の大きさに応えるため、その後、各日の参加者を100人にまで拡大。講座実施日も5日分、追加し、計15日間で開講した。 オンライン講座はZoomを使い、午前10時から午後3時まで日替わりで「言葉とオノマトペ」「SDGs」「宇宙」などさまざまなテーマで展開。プライバシーに配慮し、顔出しNGの場合はビデオオフで参加できる。画面に表示する名前も本名ではなく、ニックネームや下の名前だけにした。 期間中を通して講師を務めたのは、ミライLABO経営企画室の新居真由香さん。ほかにもSNSで講師を募集したところ、趣旨に賛同したアーティストや専門家の参加が実現した』、「小学生のための起業家教育」とは面白そうだ。
・『不登校の子どももビデオオフで参加  取材で訪れた日の講義は、「アート」がテーマ。午前中は新居さんが進行し、絵を見て物語を想像する課題に取り組んでいた。 最後は数人ずつのグループに分かれて、物語を発表。自分で描いた絵に物語をつける子もいて、実際に絵を見せ合いながらコミュニケーションが取れていた。引き続き、午後からは“楽描きエーター44”こと野上義史さんが講師を務め、「1人1人がアーティストになる」というテーマで作品づくりに取り組んだ。 双方向のコミュニケーションは子ども自身の参加意識を高めるとともに、講師の進行によって新しい知のキャッチアップにつながりやすい。ほかの日には企業とのコラボ企画も複数行われ、子どもたちの感性や表現力を養った。 講義中は講師や発言者以外、マイクをミュートにしているが、お昼休みや休憩時間はマイクをオンにして自由な会話を許可。連続して受講している子ども同士が仲良くなり、他愛もない話をしている姿も見られたという。 新居さんもオンラインのままお昼ご飯を食べるなどしつつ、子どもとおしゃべり。子どもを留守番させなければいけなかった家庭や、保護者が在宅していてもリモートワークや家事で忙しかった家庭にとっては、大きな助けとなったのではないだろうか。 また普段、学校に行けていないという子どもがビデオオフで参加し、楽しく取り組めたという例や、学校では発言が苦手だけれどオンライン講義なら発表できた、という声も寄せられた。新居さんは学校でも塾でもない、第三の「子どもの居場所」がオンラインでも作れることを実感したという。 「私たちのオンライン講義を通じて笑顔になってくれたお子さんが少しでもいてくれたのなら、本当にやってよかった」(新居さん) 外出が制限される緊急時でも、子どもたちの学びを止めない。そんな社会の実現に向け、試行錯誤が始まっている。先行きの見えない日々だが、この先にはどんな未来が待っているのか。今こそ、子どもたちの教育に希望を見いだしたい』、「コドモクリエイターズインク」はまだ緒についたばかりで、「学校ではない居場所」のほんの一例に過ぎない。ただ、こうした新たな取り組みが広がって、学校教育以外の選択肢が増えていくのは望ましいことだ。
タグ:教育 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ PRESIDENT ONLINE 工藤 勇一 (その19)(「みんな仲良く」が子どもの苦しみを増やすワケ 心と行動は切り分けるべき、寺脇・前川両氏「子どもたちをよろしく」で描く社会の闇、「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは) 「「みんな仲良く」が子どもの苦しみを増やすワケ 心と行動は切り分けるべき」 『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版) 「みんな仲良く」が子どもを苦しめる 「こうでなくてはならない」ということが伝わってしまうような言葉は、使わないようにしたのです 気持ちと行動を切り離す 心と行動は切り分けて、「よい行動」をする 理想論を子どもに押し付けて苦しませる 嘘も大切なコミュニケーションスキル 大人の理想論を押し付けない 偽善者かどうか考えても無駄 偽善と偽悪。一見、相反するように見えるこの2つの言葉ですが、実はまったく同じものなのではないかと私は思った 大切なのはどんな行動をするか 「人によく思われたい」は素敵なこと 「お天道様は見ています」 「いじめ撲滅」がいじめを生み出す 「いじめは絶対に許さない」ということは、謝っても許されない、反省しても許さないという言葉に聞こえてしまいます 多様性を認めることが、いじめのない社会への第一歩 「寺脇・前川両氏「子どもたちをよろしく」で描く社会の闇」 前川喜平元文科省事務次官 文科省官僚出身の寺脇研 最近の日本映画は口当たりだけが良く、軽くチャラチャラ浮ついた映画が多くなったように思います。歯ごたえのある映画がなくなった 「戦争と一人の女」という映画をプロデュース 「バット・オンリー・ラヴ」 今回の映画で3本目 「子どもたちをよろしく」 吉岡 名保恵 「「オンラインで授業」先生たちの試行錯誤の日々 突然の休校措置が切り拓く未来の教育とは」 いつもの学校、いつもの先生 私立さとえ学園小学校 自宅にWi-Fi環境がなくても利用できるようセルラーモデル(注1)を導入 Googleのメッセンジャーアプリ「ハングアウト」(注2)の教員グループに小野田正範校長がメッセージを発信 教員それぞれが試行錯誤を重ねた結果、次第にZoomを使ってオンライン授業ができるようになっていく。子どもたちも操作に慣れ、挙手機能やチャットを使いこなせるようになった 公立でも取り入れられる仕組みづくり 山中昭岳先生 山間部の小さい公立小でありながら当時、パソコン教室に1人1台を実現するなどIT化の指揮を執っていた 教材費と同水準でiPadを導入できるようにし、基本的には無料で、学校外でも使えるアプリやツールを多用した 学校ではない居場所もオンラインで ミライLABO 「コドモクリエイターズインク」は、小学生のための起業家教育として企業とコラボレーションしたり、さまざまな企画で多様性に触れる学びを実践 不登校の子どももビデオオフで参加
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幼児虐待(その6)(目黒事件3題:なぜ4歳女児は死んだのか?目黒事件「マスコミが報じなかった真相」 目黒女児虐待死事件の「真相」(1)、若き妻が 娘と自分に暴力をふるう夫から離れられなかった理由 目黒女児虐待死事件の「真相」(2)、立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで 目黒女児虐待死事件の「真相」(3)、野田事件:「私が殺されてもいいから止めたかった」被告に脅された心理司のトラウマ 元児相心理司が語る現場) [社会]

幼児虐待については、昨年6月30日に取上げた。その後も、目黒や野田で悲惨な事件が発生していることを踏まえた今日は、(その6)(目黒事件3題:なぜ4歳女児は死んだのか?目黒事件「マスコミが報じなかった真相」 目黒女児虐待死事件の「真相」(1)、若き妻が 娘と自分に暴力をふるう夫から離れられなかった理由 目黒女児虐待死事件の「真相」(2)、立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで 目黒女児虐待死事件の「真相」(3)、野田事件:「私が殺されてもいいから止めたかった」被告に脅された心理司のトラウマ 元児相心理司が語る現場)である。なお、タイトルから(児童)は削除した。

先ずは、ノンフィクション作家の石井 光太氏が昨年10月27日付け現代ビジネスに掲載した「なぜ4歳女児は死んだのか?目黒事件「マスコミが報じなかった真相」 目黒女児虐待死事件の「真相」(1)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68057
・『「ままもう パパとママにいわれなくても しっかりと じぶんからきょうよりかもっともっとあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします もうおなじことはしません ゆるして」 2018年3月、東京都目黒区で、船戸結愛ちゃん(当時5歳)の虐待死事件が起きた。 親が毎日午前4時に起こして勉強を強いたり、感情にまかせて顔面を殴ったり、冷水を浴びせかけたりするといった凄惨な虐待の末に、栄養失調がもとで敗血症を起こすなどして死亡したのである。そんな結愛ちゃんが残したのが冒頭のメモだった。 2019年9月から10月にかけて行われた公判では、父親の雄大が、妻の優里にDVを行って精神的に支配し、実子が生まれた後に妻の連れ子だった結愛ちゃんを虐待したとされた。 だが、これはあくまで公判において示された図式であり、実際に一家の傍にいた友人ら関係者によれば、実像は大きく異なるという。本連載では、3回にわたって報道や裁判では明らかにされてこなかった真相をつたえたい』、「実像」はどうだったのだろう。
・『雄大が受けた壮絶な虐待  船戸雄大は、1985年2月に岡山県で長男として生まれた。妹とは8歳離れていたこともあって、一人っ子のように育てられた。 小学2年の夏、父親の仕事で一家は千葉県へ引っ越し、小学5年の夏には北海道へ移り住んだ。この体験によって雄大は人にどう見られているかを気にする性格になったと言われているが、裁判で触れられなかった重要な事実がある。この時期、父親から激しい暴力を受けていたのである。 大学時代の友人は語る。「雄大は父親から無茶苦茶な暴力を受けていたって言ってました。何かで一緒に風呂に入っていた時だったと思うんだけど、雄大が自分の頭を指さして『俺は頭蓋骨が変形するくらい親父に殴られて育ったんだ』って明かしたんです。虐待というより、しつけとして暴力をふるわれていたっていう感じでしたね」 これが事実であれば、雄大は親から壮絶な虐待を受けて育ったことになる。 思春期になってからはバスケットボールに熱を上げ、高校は北海道札幌白石高等学校へ進学した。バスケ部が有名で、新入部員だけで30名もいたという。 このバスケ部時代の友人によれば、雄大は非常にプライドが高く、自分を良く見せようとするタイプだったそうだ。自分より上だと思った相手にはヘコヘコするが、下だと思ったら横柄になり、必要以上に自分を良く見せようとしたりする。 同級生たちはそんな雄大を陰で笑い、「しゃみ将軍」とあだ名をつけた。北海道の言葉で「しゃみ=しょぼい」を意味していて、自尊心が高いくせに実態が伴っていないところからつけられたという。 雄大がバスケ部を辞めたのは、高校2年の時だった。見下していた同級生にレギュラー争いで負けたことがきっかけで、友人数名とともに去ったのだ。プライドの高い彼にとってレギュラーになれなかったことは屈辱だったのだろう。バスケを失った彼は、他校の不良たちと付き合うようになる』、「雄大は親から壮絶な虐待を受けて育った」、にも拘わらず、自分が親になったら虐待する側に回ってしまうというのは、恐ろしいことだ。
・『自尊心の高さ  帝京大学経済学部に進学後、雄大は再びバスケサークルに入り、バスケットボールをはじめる。 サークル内では群を抜いてうまく、周りからは一目置かれていたそうだ。それが楽しかったのだろう、彼は大学を卒業して就職してからもサークルのメンバーに高校のバスケ部の仲間を加えて、社会人バスケサークルを結成した。 メンバーの一人は語る。「他県のチームと闘うようなちゃんとしたサークルで、雄大はキャンプテンをしていました。あいつ、プライドは高いけど、そのぶんリーダー的な要素はあって、練習場とか飲み会の会場とか、全部自分で調べていましたね。付き合いもすごく良かったし、酒が飲めないのに合コンにも必ず来た。メンバーにとっては『いい奴』っていう印象だったと思います」 後の事件で、雄大は優里と結愛ちゃんに「ダイエット」という名の異常な減量を強いたが、この頃からモデルのような細身の女性が好きだったという。彼が大学時代に3年間付き合っていた女性は優里にそっくりだったらしい。雄大の好みは「細くて、気が弱く、意見を言わないタイプ」だったようだ。 友人の言葉である。「雄大は自分より弱い子を守ってあげたいみたいなヤツなんです。だからメンヘラみたいな弱い子が好きだった。北海道に帰った後のことですが、ある女性が小樽で自殺しようとしたんです。雄大はそれを聞きつけて札幌から車を飛ばして助けに行っていました。依存されるのも好きだったんだと思います」 雄大の自尊心の高さは、港区のレインボーブリッジやお台場の花火が見える高級マンションの10階に住んでいたことからもうかがえる。このマンションが自慢だったらしく、よく友人を呼んでは「今度は車を買うつもりだ」などと言っていたそうだ』、「社会人バスケサークルを結成・・・他県のチームと闘うようなちゃんとしたサークルで、雄大はキャンプテンをしていました」、よほど「バスケ」が好きだったようだ。「港区のレインボーブリッジやお台場の花火が見える高級マンションの10階に住んでいた」、親の仕送りなどがあったのだろう。
・『大麻や危険ドラッグの使用  2014年5月、30歳になった雄大は東京を離れ、両親の暮らしている札幌にもどることになる。公判では、会社の仕事に疲れてうつ気味になり、脱毛も激しくなって辞職したと語られていた。 だが、友人たちは真っ向から否定する。薄毛は大学時代からであり、毎月バスケの練習や試合には参加し、合コンにも来ていて、うつ病なんて一言も聞いたことがないそうだ。その代り、友人らが指摘するのは大麻や危険ドラッグの使用だ。 「雄大は大学2年の時に海外旅行で大麻を覚えて、ちょくちょくやってました。頻繁に見かけるようになったのは、社会人になったからですかね。家で大麻を大切そうに持ってましたし、脱法ハーブ(現・危険ドラッグ)はしょっちゅうやっていました。俺たちが家に行っても普通にやっている感じです。何が入ってるかわからないから止めろよ、と言ってもやりつづけていた。東京にいる最後の頃はちょっと変な感じになっていて、友人の結婚式をすっぽかすとかもありました」 さらに、東京から札幌へ帰った理由も公判の話とは大きく異なる。 友人らによれば、当時は、父親が北海道で別の仕事に手を出して母親と妹が大変な状況になっていた。雄大はそこから母親と妹を苦境から救うために、転勤願いを出して札幌の支部に異動させてもらったというのだ。つまり、自分を虐待した父親から、母親や妹を守るために北海道に帰ったというのである。 北海道にもどった後、雄大は家庭の問題を解決してから会社を辞め、札幌の歓楽街「すすきの」のキャバクラで黒服として働く。高校時代に付き合っていた不良たちがすすきのに出入りしていたことから、夜の世界に憧れを抱いたのだろうと友人らは推測している。 すすきので数ヵ月間働いた後、雄大は香川県へ移る。これは、ある女性の誘いがきっかけだった。東京にいた頃、大学時代の友人が香川県高松市のキャバクラでホステスをしていた女性を雄大に紹介したことがあった。ホステスは東京へ遊びに行く度に、雄大の港区のマンションに泊まらせてもらっていた。雄大は北海道に帰った後、そのホステスから、高松市内のあるキャバクラ店が人材不足で困っているという相談を受ける。それで雄大は店を助けるために香川県へ引っ越したのだ。 高松市にあるこのキャバクラ店で、雄大は黒服として働きはじめる。同じ店でホステスをしていたのが、後に妻となる優里だった』、「大麻や危険ドラッグの使用」で「友人の結婚式をすっぽかす」とはかなり重症だったようだ。「自分を虐待した父親から、母親や妹を守るために北海道に帰った」のはいいとしても、「家庭の問題を解決してから会社を辞め、札幌の歓楽街「すすきの」のキャバクラで黒服として働く」、以降は道を踏み外していたようだ。
・『母親に結婚を猛反対された  優里は香川県善通寺市で生まれ育った。4人きょうだいの末っ子だった。父親は自衛隊で働いていたが、近隣住民の話では親族が大麻で逮捕されていたり、交通刑務所に入っていたりするなど、決していい家庭環境ではなかったようだ。 高校卒業後、優里は19歳で結婚して結愛ちゃんを生んだ。だが、同い年の夫からのDVがあったことなどから22歳で離婚。シングルマザーとして結愛ちゃんを育てるため、キャバクラで働きはじめる。地方の小さな町には、高卒のシングルマザーに十分な収入を保障してくれるところはほとんどなかったのだ。彼女は23、4歳にして将来の見通しが立たない、暗い生活に迷い込んでいたと言えるだろう。 同僚の話では、優里は店に入ってから、何人かの黒服と関係を持ったという。寂しさや、異性にすがりつきたい気持ちもあったのかもしれない。そんな中で出会ったのが、8歳年上の雄大だった。 雄大は東京の大学を卒業し、全国的にも名の知れた企業に勤めていたことを自慢げに語っていた。実際に仕事もできて店長からの信頼も厚かった。折に触れて、海外旅行の話など知らないことを話してくれる。優里は雄大に対して「年上で幅広い知識を持っていていろいろと教えてもらいたい」と思うようになっていった。 二人を良く知る友人の言葉である。「優里は雄大にベタぼれで、『ドストライク』だって言ってました。彼女から猛アタックして付き合いがはじまったんです。雄大の方は、どちらかといえば年の離れた彼女の面倒をみてやっているみたいな感じでした」 雄大にとって、年下の優里は自尊心を高めてくれる相手だったにちがいない。雄大は結愛ちゃんのこともかわいがり、週末には公園やテーマパークへつれて行って肩車をするなどスキンシップをしてかわいがった。結愛ちゃんも雄大のことを「お兄ちゃん」と呼んで懐いていたという。 そんな中、優里が雄大の子を妊娠した。雄大は迷うことなく「責任」を取って結婚することを決める。この時、雄大は出産が終わって落ち着いたら、東京へ引っ越そうと話していたようだ。優里にしてみれば、大好きな相手と家庭を持てる上、地方の不安定な生活から抜け出せるという期待を抱いていただろう。 雄大は地元の食品会社へ転職して生活環境を整える。ところが、雄大にとって大きな誤算が起る。これは法廷でもメディアでも一切語られてこなかった事実だが、雄大は母親に結婚を猛反対されたのである。実家とも付き合いのある友人の話である。「雄大が北海道の母親に結婚することを話したら、猛反対されたそうです。年の離れたバツイチのホステスで、さらに連れ子までいるわけじゃないですか。そんな女との結婚は認めないみたいな感じになり、勘当寸前だったんです。それでも雄大は優里と結愛ちゃんとの結婚をした。そういう責任感はあるヤツでした」 2016年4月、雄大は反対を押し切って結婚をし、結愛ちゃんを養子として迎え入れる。 この時の彼には、「明るい理想的な家庭」をつくりたいという意気込みがあった。結婚に反対した母親を見返したいという気持ちもあったはずだ。逆に言えば、そうすることが母親との和解の道だった。 しかし、新婚生活は雄大の理想とはかけ離れたものだった。優里は若くして母親になったことも影響していたのか、日常生活から人付き合いにいたるまで様々なことに常識を欠いているように感じるところが多々あった。2歳の結愛ちゃんに好き放題甘いものを食べさせたり、ママ友と上手に付き合えないといったことだ。 友人は、一例として雄大一家とバーベキューをした時のことを語る。「優里の周りにいたのは変な女たちばかりでした。バーベキューに来たのは、みんなシングルマザーのキャバ嬢で酒飲んでべろべろに酔って、自分の子供に『うるせえんだよ、死ね』とか『黙れよ!』とか怒鳴るような感じ。優里自身はそこまでひどくなかったけど、雄大からすれば、そういう友達との付き合いや言動に不安を覚えたのは当然だったと思います」 雄大の理想と現実に大きな溝があったのである。 さらにこの頃、彼が気にしていたのは「養父」という自分の立場だ。結愛ちゃんを養子にする手続きをした際、書類に自分が「養父」と記されているのを見てショックを受けたのがきっかけだった。理想の家庭を目指していたからこそ、「養父の家庭」というふうに見られるのだけは耐えられなかった。 今の状況を改善したい。雄大のそういう考えが、「しつけ」という名の虐待のはじまりだった』、「優里が雄大の子を妊娠した。雄大は迷うことなく「責任」を取って結婚することを決める」、「母親に・・・猛反対された」が、「反対を押し切って結婚をし、結愛ちゃんを養子として迎え入れる」、責任感はあるようだ。「理想の家庭を目指していたからこそ、「養父の家庭」というふうに見られるのだけは耐えられなかった。 今の状況を改善したい。雄大のそういう考えが、「しつけ」という名の虐待のはじまりだった」、さすが石井氏の解説は深く鋭い。
・『「理想的な家族」をつくりたかった  入籍して間もなく、雄大はだんだんと優里に対して厳しくあたるようになる。仕事が終わってから毎日1時間、日によっては深夜まで、優里の日常の些細な言動や、結愛ちゃんに対する育児、それに性格のことまで執拗に注意するようになる。理詰めで追い込み、優里が言い訳をすると、こう言った。 「育児もできないくせに、口出ししてくるな!」 優里はもともと寡黙で、友人の家に遊びに行ってもまったくしゃべらないことさえあった。言葉のDVによる精神支配ということも加わって、雄大に反論するより、自分のために叱ってくれていると受け取り、説教の後は毎回LINEで「貴重な時間をつかって怒ってくれてありがとうございました」と送っていた。 時を同じくして、雄大は結愛ちゃんへのしつけも厳しくするようになった。生活の細かなことだけでなく、読み書きなどを教え込み、やる気がないと見れば声を荒げ、殴る蹴るの暴行を加えたり、家の外へ出したりすることもあった。さらに、優里にも「子ども扱いするな」と言って結愛ちゃんを甘やかしたり、抱きしめたりすることを禁じた。 9月、二人の間に長男が誕生するが、その後も雄大の妻子に対する厳しい態度はつづいた。これまでメディアの中には、雄大が実の子を授かったことで、連れ子である結愛ちゃんへの愛情を失って虐待をはじめたという論調で報じたところもあった。 だが、前後のことを踏まえれば、雄大は息子の誕生とは別に、雄大は結婚に反対した母親を見返すために「理想的な家族」をつくりたいという気持ちから、優里の生活習慣を注意したり、結愛ちゃんに勉強を強いたりしたと考えるのが自然だろう。 実際、友人たちによれば、この時期雄大は口癖のように「(家族の中で)まともなのは俺しかおらん」とか「優里がちゃんとしないから俺がやらなきゃダメだ」と語っていたという。自分の行為がDVや虐待であると認識しておらず、自分が家族を立て直さなければならないという思いを膨らましていたのだろう。 同情の余地はないが、雄大が自分のしていることをあくまでも「しつけ」だと思いつづけていた背景には、彼自身が父親から「頭蓋骨が変形するほどの暴力」を受けていたが影響していたと推測される。知らず知らずのうちに、父親同様に暴力で妻子を抑え込んでしまっていたのだろう。 こうした日々を送る一方で、雄大は度々岡山にある祖父母の家に家族をつれて遊びに行った。そして、結愛ちゃんがどれだけ勉強をできるか、礼儀正しく振舞えるかを自慢げに見せて、褒められると心から喜んでいた。北海道の母親の代わりに、祖父母に「理想的な家庭」を誇示していたのだろう。それが彼の身勝手な自尊心を満たす方法だったのではないか。 だが、雄大の行為はまぎれもない虐待であり、やがて児童相談所がそれを発見することになる。それについては次回詳しく述べたい』、「雄大は息子の誕生とは別に、雄大は結婚に反対した母親を見返すために「理想的な家族」をつくりたいという気持ちから、優里の生活習慣を注意したり、結愛ちゃんに勉強を強いたりしたと考えるのが自然だろう」、「知らず知らずのうちに、父親同様に暴力で妻子を抑え込んでしまっていたのだろう」、石井氏の深い読みには完全に脱帽だ。

次に、この続き、10月27日付け現代ビジネス「若き妻が、娘と自分に暴力をふるう夫から離れられなかった理由 目黒女児虐待死事件の「真相」(2)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68058
・『目黒区女児虐待死事件の連載第2回。前回につづいて、今回は虐待がはじまったところから話をつづけたい』。
・『「結愛が嘘をつく」  香川県で暮らしていた時、船戸雄大と優里の子供である結愛ちゃんは、2度にわたって児童相談所に保護されている。 最初の一時保護は、結婚から8ヵ月目の2016年のクリスマスだった。 この日、雄大は、結愛ちゃんが家にあったお菓子を勝手に食べすぎたことに激怒して手を上げて、外へ放り出した。真冬に4歳の子供が外に出されていれば、近隣住民が不審に思って通報するのは当然だ。やってきた警察が結愛ちゃんを保護したところ、父親に叩かれたという証言を得たので児相へ引き渡した。 児相は、優里と雄大を呼び出して事情を聞いた。当初、雄大は手を上げたことは認めたものの、虐待ではないと主張した。だが、担当の児童福祉司がくり返して子供への暴力は虐待になるのだと説明したところ、渋々「手を上げたことは悪かった」という言葉を発した。だが、反省の色はなく、このように言い訳をした。「結婚するまで(優里が結愛ちゃんに対する)しつけをしていなかったから、自分が(代わりにしつけを)やっている。ここまで結愛ができるようになったのは自分がしつけをしたからだ」 あくまで自分のしたことは正しかったという姿勢を崩さなかったのだ。児童福祉司が結愛ちゃんの何が問題なのかと尋ねると、雄大はこうつづけた。 「結愛が嘘をつく。何回注意しても直らない。それと食べることに執着して食べ過ぎてしまう」 結愛ちゃんにしてみれば、理不尽なことを押し付けられ、手を上げられるので、身を守るために嘘をついただけなのだろう。雄大はそれを理解しておらず、さらに結愛ちゃんが怯えて敬語をつかってくることにも距離を感じていら立ちを覚えていた。 児童福祉司はくり返し暴力をふるわないように説得した。雄大も優里も、それを受け入れなければ結愛ちゃんを返してもらえないことをわかっていたため、今後はやらないと約束をする。こうして児相は2月1日に一時保護を解除。結愛ちゃんを自宅に返し、その後はカンファレンスや家庭訪問で見守ることにした。 だが、雄大は自分のしたことをまったく悪いと思っておらず、帰ってきた結愛ちゃんに再び手を上げるようになった。ただ、雄大は雄大なりに、結愛ちゃんが思い通りにならないことに悩んでいたらしく、友人に度々悩みを打ち明けている。 友人の一人は語る。「雄大は育児に悩んでいて、『娘が全然言うこと聞かんのや』ってつぶやいていました。それで罰として家の外に出してるってことも言ってましたから、本人には虐待っていう意識はまるでなかったんだと思います。 ただ、結愛ちゃんは3、4歳ですよね。そもそもイヤイヤ期や、大人の言うことを聞かない年齢でしょ。そこにもって、本当の父親でもない男からあれこれ言われたら反抗するのは当然じゃないですか。雄大はそこらへんを理解してなくて、自分がちゃんとしなきゃという思いを募らせていったんだと思います」 雄大が悩んでいら立ちを募らせれば、間に立つ優里も結愛ちゃんに言うことを聞くように強いる。だが、結愛ちゃんも言われれば言われるほど反発したのだろう。優里も周りに「(結愛に)歯磨きをさせたいが言うことを聞かない」と相談するようになった。 理想的な家庭を目指して立派な父親になろうとする雄大、暴力を受け義父に懐けない結愛ちゃん、夫も娘も愛しながら適切な対処が取れない優里。このように親子三人の関係がバラバラになっていたのだ』、「イヤイヤ期」などは全く理解していなかったのでろうが、「児相」もどこまで無理なしつけの問題点を説明していたのだろう。
・『自分のしつけの正当性を信じていた  2度目の一時保護は、結愛ちゃんが家に帰ってからわずか1ヵ月半後の3月19日だった。 警察がパトロールをしていたところ、家の外に結愛ちゃんが出されているのを発見した。警察は前回のことがあったため、すぐに結愛ちゃんを児相に引き渡した。結愛ちゃんは雄大から虐待を受けていると話し、身体を調べると下唇とお腹にはアザが、両膝に擦過傷があった。 児相は再び7月30日まで結愛ちゃんを保護し、雄大や優里と面談を重ねる。この間、一時保護所が満員だったため、児童養護施設に預けられた。結愛ちゃんは施設の生活を「遊園地にいるみたい」と話して、他の子とも仲良くやっていた。雄大から離れられるのが嬉しかったのだろう。 雄大はそんな結愛ちゃんの態度が気に入らなかったようだ。施設で雄大と結愛ちゃんの面接が行われた際、こんなやり取りがあった。 雄大「家に帰りたいのか帰りたくないのか」 結愛「帰りたい」 雄大「なんで帰りたい」 結愛「オモチャがあるから」 雄大「この施設にもあるけど、どっちがいいんだ。本心なのか。本当はどう思うのか」 雄大は結愛ちゃんに「家に好きなお父さんとお母さんがいるから帰りたい」という答えを望んでいたと思われる。だからこそ、距離を置いて表面的な回答をする結愛ちゃんにいら立ちをぶつけるような言葉を投げつけたのだろう。 児相は結愛ちゃんを児童養護施設へ入れることも提案したが、雄大はそれを拒否して引き取ることを主張した。施設に入れれば月々の入所費用がかかるし(所得に応じて負担金が必要)、施設での生活がつづけば結愛ちゃんがよりだらしなくなると考えたのだ。この場に及んでも、自分のしつけの正当性を信じていたのである。) 児相は両親から同意を得られなかったことから、結愛ちゃんを家に帰す代わりに、次の五つの条件を守るようにつたえた。 (1)幼稚園へ通わせる。(2)週末を祖父母の家で過ごさせる。(3)病院の外来を受診させる。(4)定期的な結愛ちゃんの面接。(5)暴力の禁止  雄大は、このうち(1)と(2)を拒絶した。(1)については他の保護者も一時保護のことを知っているために優里のストレスになることと、来年には東京へ行くことが決まっていることを理由として挙げた。(2)については祖父母宅へ預けられれば余計に甘やかされると語った。後者は、連載第1回で述べたように、雄大にしてみれば優里の実家の家庭環境は決して良くないという考えが根底にあったものと思われる。 児相は、(1)(2)を諦める代わりに、(3)(4)(5)を守ることを約束させ、結愛ちゃんを自宅へ帰した』、ここまでの「児相」の対応はまずまずだ。
・『なぜ雄大は体重にこだわったのか  7月30日、雄大一家4人の生活が約3ヵ月半ぶりにスタートした。 優里は児相からの注意を受けて、自分が面倒をみるからと言って、雄大に結愛ちゃんと距離を置くように頼んだ。雄大も育児に手を焼いていたこともあって提案を受け入れ、優里に任せることにした。 優里は児相との約束通り、結愛ちゃんを連れて定期的に病院の外来を受診した。医師は虐待を専門にしている女医であり、結愛ちゃん、優里の双方から現状を聞きながら、生活上の問題点を改善しようとしていた。 女医によれば、結愛ちゃんは雄大を怯えていて「パパが怖い」「怒らないでほしい」などと言っていたものの、優里のことは大好きで甘えていたという。優里の方も結愛ちゃんをかわいがっていた。ただ、優里はしつけについて悩んでいたという。 女医が公判で述べた言葉である。「診察の最中に、(優里から)『食事は食べさせすぎか』『ごはんじゃなく、コンニャクを食べさせるべきか』と訊かれました。ご飯の量についてはかなり気にしていたようです。私からは子供に対して食事制限をする必要はないことを説明して、栄養士の指導を受けてもらいました」 優里が結愛ちゃんの食生活のことで悩んでいた背景には、雄大が家族に課していた食事制限のことがある。 入籍後、雄大は連日のように優里に対して生活上の注意をしていた。雄大が折に触れて口にしたのが、優里が太りすぎだということだった。優里は20代前半の女性としては、ごく普通の体型だが、雄大はそれでも太っていると考えており、ことあるごとに説教をした。そのせいで、彼女は夫の前ではキャベツしか食べられなくなり、隠れて炭水化物を取っては下剤を飲んだりしていたのだ。 雄大の食事制限は優里だけでなく、結愛ちゃんも及んでいた。結愛ちゃんが食べすぎると方々に悩みを打ち明け、家では厳しく制限をしていたのだ。そのため、優里は結愛ちゃんに何をどれくらい食べさせていいのかわからなくなっていたのである。 なぜ雄大はここまで体重にこだわったのか。友人らの話では、雄大が細身の女性を好きだったことはたしかだが、体格そのものに過剰なほどの執着があったわけではなく、「体重の増加=生活習慣がだらしない」という固定観念があり、そこについて言及することが多くなったのではないかということだ。 雄大のことが大好きで結婚した優里にしてみれば、女として体重のことを言われれば傷つき、過度なダイエットに取り組むのは当然だろう。そして、同じことを娘にも強いていたのだ。 なぜ優里は雄大の説教で摂食障害にまでなっているのに傍にいつづけたのだろうか。公判ではDVによって支配下に置かれていたという意見もあったが、当時一緒にいた友人は少しちがう意見を持っている。 友人の言葉である。「俺の知る限り、優里はずっと雄大のことをめちゃくちゃ愛していました。DVもあったんだと思いますよ。でも、それ以上に優里の女としての恋心みたいなものが大きかったというのもあった。だから、つらい状況になっても、やっぱり傍にいたいとなったんじゃないでしょうか」 大きな恋心に、DVによる精神的支配が加わったことで、優里は雄大の傍に留まりつづけたのだろう』、女医が「子供に対して食事制限をする必要はないことを説明して、栄養士の指導を受けてもらいました」、「優里」にではなく、「雄大」こそ対象にすべきだったのだろう。
・『東京に移住した理由  一家は秋になった頃から、本格的に東京への引っ越す準備をはじめる。一部のメディアでは、雄大は児相の監視から逃れるために東京に引っ越したというニュアンスで報じられていたが、これはまったく事実とは異なる。連載第1回で述べたように、二人は結婚する時にはすでに東京への移住を考えていたのだ。それは優里の願いでもあった。 とはいえ、まったく児相が関係ないわけではない。狭い町では、児相が結愛ちゃんを一時保護したという噂は広まっていた。そのため、近隣住民は家族に対して厳しい目を向けており、雄大たちは居心地の悪さを感じていた。こうしたことから、雄大は心機一転して新しい生活をはじめるために、前から考えていた東京移住を実現しようと思い立ったのである。 東京へ行くにあたって、雄大には頼る先があった。かつて世田谷区にあるダイニングバーに通っていた時に、仲良くなった知人である。東京へ行く前、知人からはこんな話をもらっていた。「芸能関係の人たちとは仲がいいから、もし東京で仕事がほしければ紹介してあげられるよ」 雄大はこの人物を頼って東京へ行き、芸能関係の仕事をして家族を養おうと考えていた。 4月から結愛ちゃんは小学校に進学することになる。ならば、その前に東京へ行って新しい仕事に就いて、入学準備を整えなければならなかった。 こうして雄大は勤めていた食品会社を辞め、12月に単身で東京の目黒区のハイムへと引っ越しをする。目黒区を選んだのは、このハイムから世田谷区のダイニングバーが近かったためだ。逆に言えば、それほどこの知人を頼りにしていたのだろう。 優里は結愛ちゃんと弟と1ヵ月香川県に残り、1月に東京にいる雄大のもとへ向かうことになっていた。この間、雄大がいなくなったことで、優里は解放されたように結愛ちゃんに対して肉、魚、炭水化物、それに好きなチーズなどをたくさん与えた。結愛ちゃん自身も、東京へ行くことを楽しみにしていたという。 だが、その東京へ引っ越したわずか1ヵ月半後、結愛ちゃんは5歳の短い人生を、虐待によって強制的に閉じられることになるのである――』、「優里は結愛ちゃんと弟と1ヵ月香川県に残り」、この1ヵ月は「結愛ちゃん」にとっては、天国のようなものだったろう。

第三に、この続き、10月27日付け現代ビジネス「立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで 目黒女児虐待死事件の「真相」(3)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68059
・『目黒区女児虐待死事件の連載最終回。今回は、香川県から東京へ引っ越してきた一家の中で船戸結愛ちゃんが亡くなるまでの過程について述べたい』。
・『東京での新生活と虐待再開  1月23日、母親の船戸優里は、5歳の結愛ちゃんと一歳の長男をつれて新幹線に乗って東京へ向かった。行先は、1ヵ月前に東京へ引っ越した父親の雄大が待つ目黒区のハイムだった。 優里も結愛ちゃんも東京での新生活を楽しみにしており、香川県で通っていた病院の女医にもそのことを告げていた。東京には、香川県とちがって輝かしい生活が待っていると信じて疑わなかったのだろう。新幹線の車内で撮った写真が、結愛ちゃんにとって最後のものになるとは誰一人として想像していなかった。 目黒区のハイムは、築40年の2階建てだった。最寄り駅から徒歩15分。一家の暮らす部屋は2階の端にある2DKで、ダイニングキッチンの他に4畳と6畳の部屋、それにトイレ兼脱衣場の奥にバスルームがあった。不動産屋のホームページによれば、家賃は9万円前後となっている。 ハイムに引っ越してきた日、雄大は妻子を温かく迎えた。結愛ちゃんが自分に敬語をつかわずに、笑顔で明るくしゃべりかけてくれたことが嬉しかったという。 だが、すぐに雄大は虐待を再開させる。理由は、自分が家族から離れていた1ヵ月の間、優里が教育や食事制限をしっかりとしていなかったからだった。 引っ越しの翌日、雄大は家でじっとしていた優里にこう言う。 「家でゴロゴロしているのが信じられない。俺がいない間に、結愛が太った。俺の努力が水の泡だ。締め直す!」 そして香川にいた頃と同じように優里に長時間の説教をし、結愛ちゃんに対して勉強を強いたり、食事制限をしたりしたのである。 なぜ雄大はこんな些細なことに我慢できずに怒りを爆発させたのだろうか。実は、ここには彼なりの事情があった』、どんな「事情」なのだろう。
・『どんどん精神的に追いつめられ…  東京に来るにあたって、雄大はかつて世田谷のダイニングバーで知り合った人間に仕事を紹介してもらう手はずになっていた。連載第2回で書いたように、芸能関係の仕事を紹介してくれるという話だったのだ。 雄大はそれを当てにして東京にやってきてダイニングバーに近い目黒区に家を借りたのに、肝心の仕事を紹介してもらえなかった。知人に悪意があったのかはわからないが、少なくとも雄大にしてみれば梯子を外された状態になったのだ。 雄大が仕事を辞めてか2ヵ月目になっており、引っ越しでも多額の費用がかかっていたことからすれば、貯金はほとんどなかったと思われる。彼は慌てて別の仕事を探しはじめていたが、なかなか見つからなかった。そんな時に、妻と子供二人がやってきて一家を養わなければならなくなっていたのだ。雄大が小さなことで怒りを爆発させるほど焦燥感にかられていたことは想像に難くない。 東京に暮らす高校時代からの友人は語る。「雄大は東京に来てから事件を起こすまでずっと無職でしたが、友達から誘われれば普通に会って遊んでました。競馬、バスケのゲーム、飲み会などですかね。とはいっても、雄大は金づかいが荒いタイプじゃありません。むしろ牛丼を食べてから合コンへ行くくらいの節約家です。彼が金がないのに遊びに付き合ったのは、プライドがあったからだと思います。彼は昔からプライドが高いので、友人に誘われても『金がないからムリ』とは絶対に言えない。だから普通に金のあるふりをして付き合っていた。俺もそれをわかっていたから金のことは訊くに訊けませんでした」 雄大は金に困っていたにもかかわらず、プライドの高さから友人や家族に相談することができなかった。しかし、貯金はどんどん減っていき、4月からは結愛ちゃんを小学校に通わせなければならない。そうした状況が雄大の精神を追いつめ、今まで以上に余裕を失わせていた可能性は高い。 雄大はその焦りからか、就職活動の邪魔になるので息子をパソコンの傍に近づかせるなと言って、日中は優里に長男を連れて外出するように命じる。一方で、ハイムに残った彼はパソコンで職を探しながら、結愛ちゃんのしつけをすることになった。 この環境が、さらに状況を悪化させる。雄大は密室の中で思うようにいかないいら立ちをぶつけるように結愛ちゃんに次々と無理難題を押し付ける。 「朝4時に目覚ましをかけて自分で起きる」「息が苦しくなるまで運動をする」「九九を覚える」「『アメニモマケズ』の詩を暗記する」「16時には風呂掃除をする」……。密室で二人でいる時間が長かったために、より多くのことを強いることになったのだろうが、5歳の女の子にとっては虐待以外の何物でもなかった』、「芸能関係の仕事を紹介してくれるという話だった・・・それを当てにして東京にやってきてダイニングバーに近い目黒区に家を借りたのに、肝心の仕事を紹介してもらえなかった」、雄大はなんとも考えが甘いようだ。「雄大は金に困っていたにもかかわらず、プライドの高さから友人や家族に相談することができなかった。しかし、貯金はどんどん減っていき、4月からは結愛ちゃんを小学校に通わせなければならない。そうした状況が雄大の精神を追いつめ、今まで以上に余裕を失わせていた可能性は高い」、身から出たサビとはいえ、ここまで追い込まれたとは悲劇だ。
・『「パパのいないところに行きたい」  2月になってすぐ、優里にとってショッキングな出来事が起こる。 雄大は結愛ちゃんに時計の読み方の勉強を指示した。だが、結愛ちゃんは言うことを聞かず、布団を引っ張り出して寝てしまった。雄大は激怒し、彼女を浴室につれていって顔面を殴りつけ、さらに、シャワーで冷水を浴びせかけたのである。 優里は別の部屋で息子に授乳させている最中にそれを目撃したが、恐ろしくて何も言うことができなかった。 翌日、結愛ちゃんの目のあたりが青くなって大きく腫れていた。雄大はそれを見て「ボクサーみたいだな」とつぶやいた。優里が「(暴力を振るうのは)止めて」と言うと、雄大は「わかった」とだけ答えた。目のアザは、その後もアザとなって残りつづけた。 結愛ちゃんは優里にこう言う。「パパのいないところに行きたい」 優里は「頑張ろう」と答えたものの、心は揺らいでいた。東京へ来れば何かも変わると考えていたのに、現実は香川での生活と何一つ変わらない。それどころか、実家や友人と離れてしまった分、孤立していた。 傷害事件の日から3、4日後、優里は思い切って雄大に言った。 「離婚したい。結愛と二人で暮らしたい」 雄大が家族を一度に全員失うのを嫌がることは自明だった。ならば、結愛ちゃんだけでもつれて実家のある香川へもどりたいと言ったのだ。 雄大はその場にいた息子に目をやり、厭味ったらしく言った。「お前は母親に捨てられたんだな。かわいそうだな」 雄大はさらにこう言った。「離婚なんてヤクザみたいなこと言うな。おまえは苦しさから逃げているだけだ。おまえに(結愛ちゃんの)育児はできない。これから俺がする」 そして、この日から雄大が結愛ちゃんのことを見るようになり、優里は息子と過ごすことになったのだ。ここから結愛ちゃんにとって最後の1ヵ月が幕を開けるのである』、全てがまずい方向に行ってしまったようだ。
・『虐待は「しつけ」でしかなかった  雄大はしつけを自分がすべてすると宣言して以降、結愛ちゃんを六畳一間の部屋に閉じ込め、日常生活から勉強にいたるまで、より厳格なルールをかした。 特に厳しかったのが食事制限だった。肉や魚、それに炭水化物といったものを与えず、もずくや五目豆といったものを食べさせるだけで、それも日に1回だけということもあった。そして毎日体重計で体重を計り、それを記録させた。 これによって東京へ行く前の1月4日には16キロ以上あった体重が、死んだ時には12.2キロまで落ちるのである。成人の女性でいえば、48キロあった体重が、わずか2ヵ月(実質1ヵ月半)で36キロにまで落ちたのと同じである。結愛ちゃんの体が5歳児の未成熟なそれであったことを考えれば、肉体的にどれだけの負担がかかっていたか想像を絶する。 なぜここまで雄大は体重を減らすことに執着したのか。一部では雄大が結愛ちゃんを「モデルにしたかった」などと報じられてきた。だが、雄大自身はそれを否定した上で、「体型・体格というより、数字にしか着目していなくて、結愛が太っているという認識はなかった」と語っている。就職活動がうまくいかない焦燥感と、自分がしつけをしなければという思い込みで冷静な判断ができなくなり、ひたすら数字を下げることだけに執着していたのだろう。彼自身公判の中で「どうしていいかわからなくなっていた」とこの時の状況を説明している。 優里は、そんな結愛ちゃんを積極的に助けることはしなかった。雄大に隠れてチーズやチョコレートを少しだけ与えることはあったが、ハイムから連れ出したり、人に助けを求めたりすることはせず、むしろ雄大に怒られないようにと日々のルールを紙に書いて部屋中に貼った。〈何かをする時は終わった後に何分かかったか確認する〉〈勉強する前に「結愛は一生懸命やるぞ」と言う〉〈終わった時に「終わったぞ」と言う〉〈うそをつない、ごまかさない、あきらめない、にこにこ笑顔で〉……。このような貼り紙が余計に結愛ちゃんを追いつめることになった可能性はある。 こうした状況下においても、雄大は結愛ちゃんが死ぬとは微塵も思っていなかったという。それは就職活動がうまくいかずに経済的にも困っていた時期に、小学校の入学に備えて高価なランドセルを購入していたことからも裏付けられている。この場に及んでも、雄大にとって虐待は「しつけ」でしかなかったのだ』、「就職活動がうまくいかない焦燥感と、自分がしつけをしなければという思い込みで冷静な判断ができなくなり、ひたすら数字を下げることだけに執着していたのだろう」、「視野狭窄」の典型例だ。「この場に及んでも、雄大にとって虐待は「しつけ」でしかなかった」、「雄大にとって」も悲劇だ。
・『なぜ病院へ連れて行かなかったのか  そんな結愛ちゃんの容態が変わるのは、死の1週間前くらいからだった。2月25日前後から、結愛ちゃんは腹痛を訴えるようになり、少量の食事さえとることができなくなっていく。当初、雄大は「ダイエットにいい」と言っていたが、嘔吐するようになってからは危険を感じはじめ、バナナやおかゆを食べさせたが、いずれもすぐに吐いてしまった。 この時、優里は心配して結愛ちゃんを病院へつれていくことを提案したが、雄大は次のように答えた。「顔のアザが治ったらつれていく」 顔には雄大が殴った時についたアザが残っていて、病院へつれていけば虐待が発覚すると思っていたのである。そのため雄大はネットで対処法を調べ、経口補水液やブドウ糖の飴を薬局で買って与えるなどした。 公判で、雄大と優里は二人してこの場に及んでもなお「(結愛ちゃんが)死ぬとは思わなかった」と語っていた。だが、この時点でさすがにそれが真実とは考えにくい。結愛ちゃんの肌は土気色になり、顔から足の先まで枯れ枝のようにやせ細っていた。そんな中で嘔吐して食べ物を受け付けなければ、命の危険が迫っているのは明白だ。 私は二人が病院へ連れて行かなかったのは、大麻の問題が絡んでいるのではないかと推測する。雄大は事件後に自宅に2.4グラムの大麻を所持していたことで逮捕されている(大麻使用のための粉砕機や秤も押収)。公判で彼は四国へ行く前の東京に住んでいた時に入手したものと語ったが、友人はまったく異なる証言をする。友人の話である。「雄大はドラッグを大学2、3年の頃からやってましたね。初めは大麻。社会人になってからは、危険ドラッグに手を出してました。家で俺ら友達がいても普通にやる感じで、注意しても聞き流されました」 彼は香川にいた時も、東京へ引っ越してきた後も、大麻を使用していた。それを考えれば、ある程度の常習性があったと考えるのが普通だ。また、優里の親族はドラッグ関係の事件で逮捕されているし、彼女も雄大が大麻を吸っているのを見たことがあると語っている。 こうしたことからすれば、雄大が結愛ちゃんを病院へ連れて行かなかったのは、家宅捜索によって違法薬物の使用が見つかることを恐れていたという可能性が否めない。このように、両親が結愛ちゃんを死ぬまで自宅に閉じ込めていた背景には、虐待の発覚以外にも別の要因があると考えられるのである』、「家宅捜索によって違法薬物の使用が見つかることを恐れていた」、大いにあり得るシナリオだ。
・『消防の記録に残る雄大の声  結愛ちゃんの容態が急変したのは、3月2日の午後だった。 この日、結愛ちゃんは布団に横になってパソコンでアニメを見ていたが、体の動きが遅かった。優里がそれに気づいて、ストレスにならないようにと雄大に息子をつれて外出するよう頼み、声を掛けたりした。結愛ちゃんはトイレへ行きたがったが、足元がおぼつかず、優里が手を引いてあげなければならなかった。 優里は結愛ちゃんを病院へ連れていくわけでもなく、こう語りかけた。「ばあば、じいじが来ているよ。一緒にディズニーランド行こうね。小学校に上がったら、一緒に楽しもうね」 大好きな祖父母が遊びに来ていると嘘をついて励ましたのだ。結愛ちゃんは弱々しく「うん」と言っていたが、17時22分頃、突然口から液体を吐き出して、「お腹が痛い」と訴えた。そして、そのまま目を閉じて心肺停止の状態に陥ったのである。 優里が驚いて声を出したことから、外出先から帰ってきていた雄大が駆けつける。心臓が止まっていることを知り、慌てて119番した。 次は消防の記録に残る雄大の声である。「子供の心臓が止まったかもしれない! 目黒区×××。船戸です。もうすぐ6歳になる5歳児です。救急隊が来るまでどうしたらいいですか。数日前から嘔吐が止まらず、経口補水液を与えていました。救急隊が到着するまで心臓マッサージをした方がいいですか?」 救急車が到着した時、結愛ちゃんはすでにAED(自動体外式除細動器)が作動しない状態になっていた。そして運び込まれた病院で死亡が確認されたのである。死因は栄養失調からくる敗血症だった』、いくら病院に行ったら虐待が発覚するとはいえ、ここまで放っておいたというのは、楽観バイアスが働いていたのかも知れない。
・『「父親」になることを目指していた  これが目黒区女児虐待死事件の全容である。 発生当時、メディアは残忍な(注:「夫」が抜けている)が妻の連れ子である結愛ちゃんを愛せずに虐待死させたという論調で報じていたが、裁判だけでなく、一家の身近にいた知人らの証言を合わせていくと、また別の側面が見えてくるのも事実だ。 2019年10月に行われた公判において、雄大は結愛ちゃんへの気持ちを尋ねられ、号泣しながら次のように答えた。 「私が……親になろうとして、ごめんなさいという気持ちです」 この言葉は、雄大なりの本音だったのだろう。彼は彼なりに「父親」になることを目指していたのだ。 むろん、だからと言って、私は雄大の犯したことに同情すべき余地はないと思っている。雄大には懲役13年、優里には懲役8年の実刑が下されたが、虐待下に置かれて命を奪い取られた結愛ちゃんのことを考えれば、あまりに軽い刑罰だと考える人も少なくないはずだ。 ただし、判決が下された今、私たちがすべきなのは、雄大の残酷な犯罪を他人事として罵倒することではなく、同じような悲劇をくり返さないために事件の流れをきちんと理解して、個人として社会として何をすべきかを考えることではないか。 私はそれが事件の記録を社会に残す意味だと思っているし、結愛ちゃんが生きたことを社会として記憶することの意味だと思っている。 結愛ちゃんのご冥福を心から祈りたい』、表面的なマスコミ報道と違って、真相を探り出した石井氏の努力はさすがだ。多くの要素が悪い方向に傾いたことが悲劇をもたらしたのだろう。残念ながら簡単な解決策がないことは確かなようだ。

第四に、野田事件について、 心理カウンセラー・家族問題カウンセラーの山脇由貴子氏が本年3月3日付けYahooニュースに掲載した「「私が殺されてもいいから止めたかった」被告に脅された心理司のトラウマ 元児相心理司が語る現場」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamawakiyukiko/20200303-00165838/
・『児童心理司が証言  千葉県野田市で栗原 心愛ちゃんを虐待して死亡させたとして、傷害致死などに問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、当時勤務していた児童相談所の児童心理司が証言しました。 私も児童相談所で働いていた時は児童心理司でした。児童心理司というのは、児童相談所の中で働く心理の専門家であり、子どもに絵を描いてもらったり、様々な心理テストを行うことで、子どもの心の状態を判断します。そして子どもにとって、今後どのような環境で生活すべきか、どのような心のケアが必要か、児童相談所が方針を決定する際に意見を述べます。もちろん、親から離す必要があるか、家に帰して良いかどうかについても、心理の専門家の立場から、意見します。一番大事なのは子どもの心の状態であり、心愛ちゃんはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の疑いがある、と診断されたのですから、家に帰すべきではなかったのです』、野田市の事件も、3月19日に、地裁が 父に懲役16年判決」を下したようだ。
・『父勇一郎被告からの脅し  心理司は父から「心理の資格を持っているのか。証明書を見せろ」と問い詰められ、身分証の職員番号をメモされ「児相ではなく、職員個人として訴える」と脅された、と報じれられいます。児童相談所で心理として、心理テストの結果などを親に伝えると、その内容に不満を抱き、激怒する親はいます。心愛ちゃんのように「トラウマがある」と言われると、自分が虐待していた、と言われているように思えるからです。自分の虐待の事実を否認する為に、心理の結果に逆上するのです。そして、勇一郎被告のように、「個人として訴えてやる」と脅す親もいます。私自身も、「訴えてやる」と言われたり、大声で怒鳴られ、「つきまとって絶対不幸にしてやる」と言われたことがありました。 それでも、児童相談所の職員は、子どもの安全を最優先しなくてはなりません。心理司は、子どもの心の状態を直接みているのですから、その心の状態こそを、最優先しなくてはなりません。だからこそ、裁判で証言した心理司の方も、「私が殺されてもいいから止めたかった。今でも夢に見る」と泣きながら証言したのだと思います。心の底から悔やんでいるのだと思います。今も、苦しみ続けているのだと思います。 そして、児童相談所の職員は、親に対する発言も、業務として行っているのですから、個人で訴えられることに怯える必要はないのです。親が訴えられるのは児童相談所であって、仮に「態度が悪い」「発言が許せない」などの理由で、個人で訴えられたとしても、児童相談所という組織が、職員を守るべきなのです。 そうは言っても、「訴える」と言われれば、怖いのは事実です。千葉県野田市の教育委員会が父親の脅しに屈して、心愛ちゃんのアンケートを渡してしまったように、執拗に脅されれば、いう通りにしてしまいたくなります。子どもを守る児童相談所の職員が、脅しに対して恐怖心を抱いてしまうのは、組織の体制の問題です。私自身も、児童相談所勤務時代は、訴訟保険に入っていました。職員は全員入るように上司から勧められていました。訴訟保険に入って安心な部分もありましたが、逆に「結局最後は自分でどうにかするしかないのか」という思いも抱かざるを得ませんでした。「どんなに脅されても、仮に訴えられても、児童相談所の職員は、児童相談所という組織が絶対に守ります。だから皆さん、安心して働いてください。」と、日々、職員達に上司が伝え、実際に守る体制も作り、悪質な虐待者が出てきたら、担当に任せるのではなく、組織全体で対応する。そして、「訴える」と担当者が言われたら、上司が「どうぞ訴えて下さい」と言って、すぐに弁護士に依頼をする。そんな体制を整えていかなければ、職員は安心して働けず、脅しに対して屈してしまうかもしれないのです』、「児童相談所」が「守るべき」「職員」に「訴訟保険」に入るよう勧めているとは、驚かされた。「児童相談所」としての責任放棄以外の何物でもない。
・『児童心理司の意見は最終判断にはならないことも  そして児童相談所において、子どもの今後の方針を決定するのは、児童福祉司です。もちろん最終決定は所長を含めた全体の会議で決定されますが、所長などの管理職は子どもに実際に会うことはありませんので、担当の児童福祉司の判断が最終判断となることが多いのです。そこに、児童心理司の意見が反映されている場合もあります。けれど、児童心理司の意見が入ってない場合もあるのです。 それは、まだ日本の児童相談所では、「トラウマ」つまり心の傷が重要視されていないからです。児童相談所が子どもを保護し、家に帰さない基準は、目に見える身体や顔の傷・あざです。心の傷は目に見えないので、親に対する説明としても通りにくく、職員によっては、子どもの心の傷がどれだけ子どもを苦しめているのか、想像が出来ないからです。だから心理司の意見が今後の方針に反映されないことがあるのです。 本来ならば、自分を愛してくれ、守ってくれるはずの親から虐待されたことによって受けた子どもの心の傷は非常に深く、癒されるのにも長い時間がかかります。私の所には、小学生の時や中学生の時に児童相談所で会った子ども達が、大人になった今、20歳、30歳を過ぎても心の傷が癒えない為に、通って来ています。それだけの時間がかかるのです。 心愛ちゃんを司法解剖した医師は「我々の考えが及ばないほどの飢餓や強いストレスがあったのでは」と推測しています。子どもを死に至らしめるほどのストレス。これが心の傷です。心愛ちゃんの事件を通して、子どもの心の傷の重さ、その苦しみを児童相談所職員が学び、今後、心の傷を重要視していかなければ、同じような事件が起きてしまうかもしれません。それを防がなくては。児童相談所の抱える課題です』、「児童心理司の意見は最終判断にはならないことも」、「まだ日本の児童相談所では、「トラウマ」つまり心の傷が重要視されていない」、というのは驚くべき遅れだ。「児童相談所」のあり方自体を全面的に見直すべきだろう。
タグ:幼児虐待 イヤイヤ期 yahooニュース 児童相談所 視野狭窄 現代ビジネス 石井 光太 山脇由貴子 (その6)(目黒事件3題:なぜ4歳女児は死んだのか?目黒事件「マスコミが報じなかった真相」 目黒女児虐待死事件の「真相」(1)、若き妻が 娘と自分に暴力をふるう夫から離れられなかった理由 目黒女児虐待死事件の「真相」(2)、立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで 目黒女児虐待死事件の「真相」(3)、野田事件:「私が殺されてもいいから止めたかった」被告に脅された心理司のトラウマ 元児相心理司が語る現場) 「なぜ4歳女児は死んだのか?目黒事件「マスコミが報じなかった真相」 目黒女児虐待死事件の「真相」(1)」 雄大が受けた壮絶な虐待 『俺は頭蓋骨が変形するくらい親父に殴られて育ったんだ』 非常にプライドが高く、自分を良く見せようとするタイプ 自尊心の高さ 大学を卒業して就職してからもサークルのメンバーに高校のバスケ部の仲間を加えて、社会人バスケサークルを結成 キャンプテン 雄大の好みは「細くて、気が弱く、意見を言わないタイプ」 港区のレインボーブリッジやお台場の花火が見える高級マンションの10階に住んでいた 大麻や危険ドラッグの使用 大学2年の時に海外旅行で大麻を覚えて 友人の結婚式をすっぽかすとかもありました 自分を虐待した父親から、母親や妹を守るために北海道に帰った 家庭の問題を解決してから会社を辞め、札幌の歓楽街「すすきの」のキャバクラで黒服として働く 同じ店でホステスをしていたのが、後に妻となる優里 母親に結婚を猛反対された シングルマザーとして結愛ちゃんを育てるため、キャバクラで働きはじめる 優里は雄大にベタぼれで、『ドストライク』だって言ってました。彼女から猛アタックして付き合いがはじまった 優里が雄大の子を妊娠した。雄大は迷うことなく「責任」を取って結婚することを決める 雄大は母親に結婚を猛反対された 「明るい理想的な家庭」をつくりたいという意気込みがあった。結婚に反対した母親を見返したいという気持ちもあったはずだ。逆に言えば、そうすることが母親との和解の道だった 今の状況を改善したい。雄大のそういう考えが、「しつけ」という名の虐待のはじまりだった 「理想的な家族」をつくりたかった 雄大は息子の誕生とは別に、雄大は結婚に反対した母親を見返すために「理想的な家族」をつくりたいという気持ちから、優里の生活習慣を注意したり、結愛ちゃんに勉強を強いたりしたと考えるのが自然だろう 知らず知らずのうちに、父親同様に暴力で妻子を抑え込んでしまっていたのだろう 「若き妻が、娘と自分に暴力をふるう夫から離れられなかった理由 目黒女児虐待死事件の「真相」(2)」 「結愛が嘘をつく」 自分のしつけの正当性を信じていた なぜ雄大は体重にこだわったのか 私からは子供に対して食事制限をする必要はないことを説明して、栄養士の指導を受けてもらいました 東京に移住した理由 「立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで 目黒女児虐待死事件の「真相」(3)」 東京での新生活と虐待再開 どんどん精神的に追いつめられ… 芸能関係の仕事を紹介してくれるという話だったのだ。 雄大はそれを当てにして東京にやってきてダイニングバーに近い目黒区に家を借りたのに、肝心の仕事を紹介してもらえなかった 彼は慌てて別の仕事を探しはじめていたが、なかなか見つからなかった。そんな時に、妻と子供二人がやってきて一家を養わなければならなくなっていたのだ。雄大が小さなことで怒りを爆発させるほど焦燥感にかられていたことは想像に難くない 雄大は金に困っていたにもかかわらず、プライドの高さから友人や家族に相談することができなかった。しかし、貯金はどんどん減っていき、4月からは結愛ちゃんを小学校に通わせなければならない。そうした状況が雄大の精神を追いつめ、今まで以上に余裕を失わせていた可能性は高い 「パパのいないところに行きたい」 虐待は「しつけ」でしかなかった 就職活動がうまくいかない焦燥感と、自分がしつけをしなければという思い込みで冷静な判断ができなくなり、ひたすら数字を下げることだけに執着していたのだろう なぜ病院へ連れて行かなかったのか 家宅捜索によって違法薬物の使用が見つかることを恐れていた 消防の記録に残る雄大の声 「父親」になることを目指していた 彼は彼なりに「父親」になることを目指していた 雄大には懲役13年、優里には懲役8年の実刑 野田事件 「「私が殺されてもいいから止めたかった」被告に脅された心理司のトラウマ 元児相心理司が語る現場」 児童心理司が証言 父勇一郎被告からの脅し 「訴訟保険」に入るよう勧めている 児童心理司の意見は最終判断にはならないことも 児童心理司の意見が入ってない場合もある まだ日本の児童相談所では、「トラウマ」つまり心の傷が重要視されていないからです
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日本の政治情勢(その44)(東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑、安倍昭恵氏 花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた、「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター、小田嶋氏:言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事) [国内政治]

日本の政治情勢については、3月15日に取上げたばかりだが、事態の急転を受けた今日は、(その44)(東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑、安倍昭恵氏 花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた、「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター、小田嶋氏:言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事)である。

先ずは、3月25日付け日刊ゲンダイ「東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/270924
・『東京五輪の1年延期が確実となったことで、早期解散説が急浮上している。 国民民主党の榛葉賀津也参院幹事長は24日、早期解散説について「新型コロナウイルスの対策が終わらないのに、夏や秋に選挙だと言うのはいかがなものか」と早期解散を牽制。公明党の山口那津男代表も、「解散権を持っている人は世界が危機にひんしている状況にいろいろと配慮して賢明に対応していただきたい」とクギを刺した。 与野党の幹部がブレーキをかけるのは、早期解散説が強まっている裏返しだ』、「早期解散説が急浮上」、やはり危機に悪乗りするのかといった印象だ。
・『都知事選との「W選挙」も浮上  浮上しているのは、7月5日の都知事選とのダブル選挙や、秋解散だ。早期解散は安倍首相にとっていいことだらけなのだという。 一番の利点は、早期解散なら確実に勝利できるということだ。コロナ対策で前面に出ている安倍首相の支持率は上昇している。逆に野党は出番がなく、与党にコロナ対策で協力せざるを得ない。 自民党内の不満も抑えられるという。 「安倍首相が新型コロナ対策で一斉休校要請を突然打ち出し、党内からは『唐突』『独断』と不満が上がった。森友事件、検事長定年延長問題もくすぶっています。でも、解散をブチ上げ『選挙モード』にすれば、公認権を持つ首相の求心力は一気に上昇する。不満を払拭するには十分です」(永田町関係者) 早期解散で勝利すれば、首相退任後もキングメーカーとして実権を握れるという計算もあるらしい。 「来年9月の総裁任期満了の直前に五輪の旗を振り、“有終の美”を飾りたいようです。選挙の圧勝と五輪を成功に導いた実績をひっさげ、総裁選で“子分”の岸田文雄政調会長にポストを禅譲すれば、退いた後も強い影響力を残せる。今後もキングメーカーとして君臨する絵を描いているようです」(官邸事情通) 退陣後も裏で糸を引くつもりだ』、「早期解散で勝利すれば、首相退任後もキングメーカーとして実権を握れるという計算も」、「首相退任後」もシャシャリ出てのは、御免こうむりたい。

次に、3月26日付けNEWSポストセブン「安倍昭恵氏、花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20200326_1550908.html
・『満開を迎えようという桜、そして笑顔の男女──その中心にいるのは、安倍首相の妻・昭恵夫人だ。森友学園問題をめぐり自殺した近畿財務局職員の手記が報じられ、疑惑が改めて注目される中、渦中の昭恵夫人は私的な“桜を見る会”を楽しんでいた。 3月下旬の都内某所、ライトアップされた桜をバックに肩を寄せ合う13人。その中心に写っているのが昭恵夫人だ。写真を見た、参加者の知人はこう話す。 「この日の参加者は、昭恵さんと以前から交流があった人が中心だそうです。写真で昭恵夫人の隣にいるのは人気モデルの藤井リナさん。藤井さんは2014年にYouTubeで昭恵さんと対談するなど、もともと交友があったようです。他にもアイドルグループ・NEWSの手越祐也さんや音楽プロデューサーなど芸能関係者の姿もありました」 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、小池百合子・東京都知事が花見の宴会などの自粛を要請する中、この写真を世論はどう受け止めるだろうか。 週刊ポスト3月30日(月)発売号では、昭恵夫人および参加した芸能人らへの取材結果などを含めて詳報する』、国会で追及された安部首相は、公園ではなく、入ったレストランの敷地内だと強弁していたようだが、「宴会の自粛要請が出ている中での行動として適切か」との野党の主張の方に分がありそうだ。

第三に、元経産官僚の古賀茂明氏が3月28日付け日刊ゲンダイに掲載した「「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/271045
・『「権力行使は謙抑的に」という言葉。権力者への戒めだが、安倍晋三総理は、これとは逆に、自分が持つ権力は「限界まで」使う。 例えば、集団的自衛権を違憲だとする内閣法制局長官をクビにして、自分に協力する官僚にすげ替えた。法制局長官は内閣の「憲法の番人」としてその独立性が守られるという不文律を総理の権力で簡単に破ったのだ。 この人事は、安倍政権が官僚に対して、君たちの人事は好きにさせてもらうという宣言だった。こんな官僚支配術を編み出せるのは官僚しかいない。しかも、省益にとらわれる各省官僚にはできない。今井尚哉総理秘書官や長谷川栄一報道官(いずれも首相補佐官兼務の元経産省官僚)ら、官邸官僚の役割だ。 彼らの特徴は、権力を好き放題に行使するだけではない。政治をゲーム感覚で動かすことに喜びを感じ、時に精緻な仕掛けと大ウソを使って大胆なゲームチェンジに挑むことだ。批判承知であえて勝負に出ることも多い』、「「権力行使は謙抑的に」・・・安倍晋三総理は、これとは逆に、自分が持つ権力は「限界まで」使う」、「官邸官僚・・・政治をゲーム感覚で動かすことに喜びを感じ、時に精緻な仕掛けと大ウソを使って大胆なゲームチェンジに挑む」、まさにその通りなのだろう。
・『2013年9月のブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会では、彼らは福島の原発事故について「状況は、統御されています(アンダーコントロール)」という世紀の大ウソを準備した。安倍総理のこの大ウソによって各国の不安を取り除き、五輪招致に成功したのだ。その後の国内の批判が五輪招致フィーバーにかき消されたことも彼らの読み通りだった。 「桜を見る会」で土俵際に追い詰められていた安倍総理を救ったのも今井秘書官だ。アメリカの政治ドラマさながら、スキャンダルで追い詰められたら、別の「危機」をつくりだす。わざと大きな批判と論争を巻き起こし、前のスキャンダルをかすませるというやり口だ。 今回は、突然の一斉休校という荒業だった。閣僚の反対を押し切ったのは今井秘書官だ。現場大混乱で批判の嵐というのも全て計算ずく。野党を休校批判に誘い出し、国会論戦の焦点を桜からシフトさせた。その後も与野党協議などで野党に抱き付きながら、「コロナ国会」が続く。今井氏の狙い通りだ。 五輪延期への転換も官邸官僚の役割だ。狙いは来夏開催。来年9月の自民党総裁選前に五輪フィーバーを盛り上げ、安倍4選または安倍院政のオプションを用意する。全てお膳立てが整ったところで、安倍総理とバッハIOC会長の電撃電話会談を演出し、官邸クラブの記者に「急きょ総理から電話」と書かせた。 不正まみれの安倍政権を嘘で延命するモンスター官邸官僚たちの罪は重い。(おわり)』、「突然の一斉休校という荒業で・・・野党を休校批判に誘い出し、国会論戦の焦点を桜からシフトさせた」、「五輪延期への転換も・・・狙いは来夏開催。来年9月の自民党総裁選前に五輪フィーバーを盛り上げ、安倍4選または安倍院政のオプションを用意する」、「不正まみれの安倍政権を嘘で延命するモンスター官邸官僚たちの罪は重い」、「敵」ながらあっぱれな手際だ。それに乗せられているマスコミもだらしない限りだ。

第四に、コラムニストの小田嶋 隆氏が3月27日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00063/?P=1
・『10日ほど前から、あらゆる事態がものすごいスピードで変化している。 世界を動かしているCPUのクロックが暴走したのかもしれない。そうとでも考えないと説明がつかない。それほど、身の回りのすべての出来事が急展開している。 この1週間ほどの展開は、いくらなんでも、ニュースソースの無駄遣いだと思う。 普通の状況だったら、新聞社のデスク諸氏は、五輪延期まわりの話題をいじくりまわすことだけで、1週間は楽に暮らせたはずだ。 週刊文春がスクープした財務局職員の遺書の話題にしたところで、状況が状況なら半月はイケるネタだ。 それが、たったの3日で「過去の話」になっている。 「いまさらそんな古いネタ蒸し返しても仕方がないだろ?」的な、地層の下の化石みたいな話題になってしまっている。 こんなバカなことがあるだろうか。 しかし、現実に、事態はそんな調子で進行している。 ニュースは、オーバーシュートしている。 で、われわれの理解力はロックダウンし、事態を追う人々は呼吸困難に陥っている。 正直なところを申し上げるに、私は、現今の状況の変化に追随できていない。 ようやくのことで事態を把握したと思う間もなく、その私の現実認識は、半日後にはすっかり陳腐化している。そういうことが毎日のように繰り返されている。時事コラムを書く人間は、3時間ごとに現状認識を更新しなければならない。そんなことは不可能だ。なので、この1週間ほど、私は最新情報をウォッチする作業を断念している。理由は、たいして性能の良くない頭脳をこれ以上酷使したところで、疲労が蓄積するだけだからだ。 前回は、休日の関係で休載させてもらった。その決断をしたのは、実は当日だった。 というのも、新刊を2冊出したばかりということもあって、当初は、掲載日を1日前倒しにして、木曜日更新の形で原稿を書くつもりでいたからだ。ええ、私もこう見えてわりと商売熱心なのです。 ところが、いざ執筆日がやってきてみると、これが、どうやっても意欲がわかない。書くべきネタが見つからなかったのではない。むしろ、あまりにもネタが多すぎて、話題が絞りきれなかったという方が実態に近い。それ以上に、私は、世界で起こっている様々な事態の進行のスピードにキャッチアップできなくなっていた。簡単に言えば、変化のめまぐるしさが、こちらの思考速度を凌駕していたわけで、それゆえ、私は、自分のアタマの中にある言葉を文章の形で定着させることに困難を感じていたのだ。あるいは、私は、せっかく苦労して書いた原稿が、3日で無意味になってしまう予感を抱いていて、そのあらかじめの徒労感のために執筆忌避に陥っていたのかもしれない。 「こんな調子で2時間ごとに一面トップの大ニュースが飛び込んで来る状況で、オレはいったい何を書いたらいいんだ?」と思うと、コラムニストの執筆意欲はその時点で枯渇する。 そういう時は自粛要請の如何にかかわらず、休んだ方が良い。 そもそも、自粛は他人に要請されるべきものではない。他人に要請して良いものでもない。 あたりまえだ。 「自粛」は、あくまでも本人が自分の意思で自分の行動を差し控えることだ』、「10日ほど前から、あらゆる事態がものすごいスピードで変化している」、「ニュースは、オーバーシュートしている。 で、われわれの理解力はロックダウンし、事態を追う人々は呼吸困難に陥っている」、誠に的確な世相描写だ。
・『世間の空気を忖度したり、他者からの圧力に屈して活動範囲を狭めたりする反応は「萎縮」と呼ばれるべきだし、自分以外の人間や集団に自粛を求める態度は「恫喝」ないしは「強要」と名付けられなければならない。 さて、今回は、あえて個別の事件や出来事に焦点を当てることを避けて、この半月ほどの間に私が「政治家の言葉」について考えたことを書いてみようと思っている。 このテーマを選んだ理由は、ドイツのメルケル首相が3月18日(現地時間)の夜に発信したテレビ演説に感銘を受けたからだ。 私は基本的に「感動」という言葉は使わないことにしているのだが、今回のテレビ演説に関しては、その言葉を使ってもかまわないと思った。それほど強く心を打たれた。 全文の日本語訳は、こちらのサイトで読むことができる。 冒頭で書いた通り、3月にはいってからというもの、あらゆる事態がとんでもない勢いで動いている。そして、この状況を受けて、世界中の政治家たちが、それぞれに強いメッセージを発信している。私は、先日来、危機的な状況を前に立ち上がった世界の政治家たちの言葉に耳を傾けながら、政治家が言葉を扱う仕事なのだということを、あらためて思い知らされている次第だ。 そうなのである。政治家は、一も二もなく、言葉で説明することの専門家であったはずなのだ。 ちなみに、政治家が言葉の専門家であるという旨のこのお話は、ずっと以前から、専修大学の岡田憲治先生が繰り返し強調しているテーマだ。私も、直接お会いした機会に、いくたびか詳しくお話をうかがっている。 より詳しいところは、『言葉が足りないとサルになる』あたりの著作に詳しい。ぜひ一読してみてほしい。 コラムニストも、言葉を扱う仕事に従事する人間ではある。 ただ、文筆業者の仕事は、文字をいじくりまわすことでなにがしかの表現をたくらむ言語玩弄者としての側面をより多く含んでいる。それゆえ、言葉への誠実さにおいて、政治家にはかなわないと思っている。 まあ、このあたりの事柄についての見解は、人それぞれ、立場によって、まるで違っていたりもするはずだ。なので、これ以上突き詰めることはしない。ここでは、私がそんなふうに思っているということを簡単に受け止めていただければ十分だ。話を先に進めることにする。 さて、私が感心したのは、メルケルさんの演説だけではなかった。 イギリスのボリス・ジョンソン首相のテレビ演説も、メルケル首相の演説とは別の意味で見事な出来栄えだったと思っている』、「コラムニスト・・・の仕事は、文字をいじくりまわすことでなにがしかの表現をたくらむ言語玩弄者としての側面をより多く含んでいる。それゆえ、言葉への誠実さにおいて、政治家にはかなわないと思っている」、自虐的で、メルケル首相の場合には当てはまるが、少なくとも安部首相には全く当てはまらないようだ。
・『「別の意味」というのは、ジョンソン首相が、23日に英国民に向けて語った外出禁止令を含む思い切った内容の演説原稿が、それ以前に、英国政府が示していた方針と、かなりの部分で矛盾するものだったからだ。つまり「一貫性」という観点からすると、23日のジョンソン首相の演説は、支離滅裂だったと言っても良い。「裏切り」という言葉を使うことさえできるかもしれない。 ただ、重要なのは、ジョンソン氏が、状況の変化に応じて、最新の事態に適応した政策転換を悪びれることなく実行してみせたことと、その自分の前言撤回(あるいは「朝令暮改」)を、率直に、わかりやすい言葉で国民に向かって語った点だ。 この点において、彼の説明はいちいち出色だった。 イギリス国民は、前後の経緯はともかくとして、あの日の演説には納得したはずだ。 個人的には、これまで、ジョンソン首相について、その振る舞い方や選ぶ言葉のエキセントリックさから 「軽薄」で 「お調子者」で 「受け狙い」の 「ポピュリズム」丸出し の政治家だというふうに評価していた。 それが、23日の演説を聴いて、見方をあらためた。 「なーんだ。やればできるんじゃないか」と、大いに見直した。 ふだんはお行儀の悪い軽薄才子みたいに振る舞っていても、いざ国難という場面では、にわかに引き締まった言葉でシンプルなメッセージを発信することができるわけで、なるほど、政治家の評価は危機に直面してみないと定められないものなのかもしれない。 同じことは、トランプ氏についてもある程度言える。 この人について、私はずいぶん前から「問題外」の政治家だというふうに判断している。あらゆる点で、ほとんどまったくポジティブな評価ができない人間だとも思っている。しかしながら、今回の新型コロナ対応に伴うテレビ演説に限って言うなら、まことにトランプさんらしい率直な言葉で、米国民に語りかけている。この点は評価しないわけにはいかない。 もちろん、いつまでたっても「チャイナウイルス」という言い方を引っ込めないところや、必要のないところで野党やメディアの悪口を並べ立てる悪癖は相変わらず健在なのだが、国民に向けてのテレビ演説では、さすがの芸達者ぶりというのか、あれだけの選挙戦を勝ち抜いた政治家ならではの説得力を発揮している。 ついでに申せば、7000億ドルという前代未聞の巨額を投じる経済政策の打ち出し方も見事だった。 この点は、ドイツもすごい。報道によれば、7500億ユーロ(約89兆円)規模の財政パッケージを承認したという。 これも、これまでのドイツ政府の態度からは想像できない思い切った決断だ。 国民に覚悟と忍耐を求める以上、国としては、それだけの裏付けのある数字を示さなければならない。 これは、言葉の使いかたそのものとは別の話だが、言葉に説得力を与える意味で、不可欠なことでもある』、これまでの「ジョンソン首相」や「トランプ氏」については、私も嫌いな方だったが、新型ウィルス危機への対応は確かに立派だ。「ドイツ」の「7500億ユーロ(約89兆円)規模の財政パッケージ」には私も驚いた。
・『引き比べて、わが国のリーダーは、国民の前にほぼ顔を出さない。 これは、どれほど嘆いても嘆き足りないことだ。 メルケル首相は、ドイツ国民一人ひとりに向けて、さらにはドイツにいる外国人や底辺の労働者にも目を配りながら、新型コロナウイルスとの長く苦しい戦いに臨む覚悟を求める歴史的な演説を披露した。 ジョンソン首相も、いつもとは違う真剣な表情と言葉で、丁寧に政府の施策を説明し、国民に理解を求めている。 トランプ大統領も、いつものウケ狙いのスベったジョークや底意地の悪い罵詈雑言とはまるで違う口調で、米国民に自覚と希望を持ち続けることの大切さを訴えている。 彼らは、いずれも未曽有の危機に当たって、政治家の本領を遺憾なく発揮してみせたと言って良い。 一方、うちの国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。 記者会見では質問を打ち切るし、そもそも、臨機応変な記者との受け答え自体を、あらかじめ拒絶している。 こんな態度で、国民に政策を説明できる道理がないではないか。 ふだんの日常的な政策は、官僚に説明させればそれで足りるのだろうし、施策の細部について言うなら、担当官庁の役人の方が詳しいのだろうからして、彼らに説明を委ねることは、むしろ適切でもあるのだろう。 しかし、危機への対応は別だ。 文字通りの「国難」に対処する場面では、選挙で選ばれた政治のリーダーが、自分の言葉で国民に直接語りかけることが絶対に必要なはずだ。 が、そのことがこの国ではおこなわれていない。 なんという損失だろうか。 一説には、危機に直面する場面で国民の前に顔を晒すことで、失敗の責任を取らされることを避ける深謀遠慮だという見方もある。 まさかそんなことはないと思うのだが、そうでないにしても、言葉が少ない。 少ないだけならまだしも、出てくる言葉があまりにも空疎だ』、「うちの国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。 記者会見では質問を打ち切るし、そもそも、臨機応変な記者との受け答え自体を、あらかじめ拒絶している」、安部首相の記者会見は見るに耐えないが、首相のお気に入りのNHKの岩田解説委員だけは常に首相を絶賛するのも、見るに耐えない。
・『報道によれば、麻生太郎財務相兼副総理は、3月24日の午前、記者団に対して次のように語ったとされる。 《―略― 一律(給付)でやった場合、現金でやった場合は、それが貯金に回らず投資に回る保証は? 例えば、まあ色々な形で何か買ったら(一定割合や金額を)引きますとか、商品券とかいうものは貯金には(お金が)あまりいかないんだよね。意味、分かります? リーマン(・ショック)の時と違うんだよ。リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。今回はどこにそういう状態があるの? みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題なんだから。(24日、記者会見で)》 なんというのか、記者を子供扱いにするものの言い方からして、記者の向こう側にいるはずの国民に、マトモに説明する気持ちを持っていないとしか思えない。 察するに麻生さんは、現金の給付には乗り気ではなくて、その理由は、現金が貯蓄に回るなどして、必ずしも景気浮揚につながらないからということのようだ。 実際に現金を配布した場合、一定数の国民はその現金をすぐには使わず、貯蓄に回すだろう。その点は、麻生さんのおっしゃる通りだ。 が、国民が、現金を貯蓄に回す理由は、必ずしも現金が不要だからではない。むしろ、多くの国民は、将来が不安だから貯金をしている。そう考えれば、現金は、安心料として必要なものだし、多くの国民の不安を取り除くためにも、現金を支給することには大きな意義がある。 この記事を読んですぐ、私は以下のようなツイートを発信した。 《政府が現金じゃなくて商品券を配りたがるのは「カネはやるけど、使いみちはオレが決める」「援助はするが、援助の方法はオレの一存で決める」「食べさせてやるけど、何を食べるのかはオレが決める」「オレの推奨する消費先以外にカネを使うことは許したくないから現金は渡せない」ということだよね。》2020年3月25日-17:03 《貧しい人間が現金をほしがるのは、生活に困窮しているからでもあるが、それ以上にカネが無いことで行動が制限されているからだ。その意味で、生活困窮者が本当に必要としているのは、現金で買える「モノ」ではなくて、現金と引き換えに手にはいる「自由」なのだよ。麻生さんにはわからないだろうが。》2020年3月25日-18:09 《メシを食うカネにも困っている人間がパチンコや酒にカネを使ったり、風俗だのゲーセンだのになけなしの現金をつぎ込むのは、それこそが「自由」だからだ。「オレはオレの時間をオレの好きなように過ごす」という実感が欲しくて人は時に愚行に走る。商品券では自由が買えない。ここがポイントだぞ。》2020年3月25日-18:14 もうひとつ付け加えれば、政府が、現金でなく商品券を配りたがるのは、貧窮する国民の暮らしを支えることや、近未来に不安を抱いている国民に一定の安心感を与えることよりも、彼らの購買行動を促して経済を回すことをより重視しているからでもあれば、特定の業界(つまり商品券が指し示しているところの「商品」の生産者たち)への利益誘導をはかりたいからでもある。 こんなことでは、到底国民の支持は得られない。 もしかしたら、安倍さんや麻生さんが、テレビ演説で直接国民に語りかけようとしないのは、自分たちの打ち出す政策が、筋の通った言葉で説明できない筋の通らない政策だからなんではなかろうか。 政治家の言葉は、巧みでなくても、誠実であれば十分に伝わるはずのものだ。 せめて、正直に、自分の言葉で、まっすぐに語りかけてほしい。 安倍総理が、和牛券やお魚券や旅行クーポン券を配布する理由について、万民を納得させるだけの言葉を持っているのなら、ぜひその言葉を披露してもらいたい。 もし仮に、現政権が、説明をしないリーダーに追随する国民を作ることに成功していたのだとすればこれはもうわれわれの負けだ。好きにしてくださってけっこうだ。私は非国民の道を選ぶだろう』、「麻生太郎財務相兼副総理」の「リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。今回はどこにそういう状態があるの? みんな銀行にお金が余っているじゃん。だから、お金があるんですよ。要はそのお金が動かない、回らないのが問題なんだから」、には余りのお粗末さに心底驚かされた。「リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなった」のは、米国の金融市場が疑心暗鬼になって機能しなくなったのは事実だが、「今回は・・・みんな銀行にお金が余っているじゃん」は日本の銀行の話で、「リーマンの時」も同様だった。新聞記者もおかしいと思いながら、「麻生」に忖度して誰も指摘しなかったのだろう。「私は非国民の道を選ぶだろう」との締めは、最大限に皮肉が利いていて痛快だ。
タグ:日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン コラムニスト 古賀茂明 Newsポストセブン 日本の政治情勢 小田嶋 隆 (その44)(東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑、安倍昭恵氏 花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた、「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター、小田嶋氏:言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事) 「東京五輪延期で“解散”機運急上昇 安倍首相が描く黒い思惑」 都知事選との「W選挙」も浮上 早期解散で勝利すれば、首相退任後もキングメーカーとして実権を握れるという計算も 「安倍昭恵氏、花見自粛要請の中で私的「桜を見る会」していた」 「「官邸官僚」の嘘と罪 ゲーム感覚で権力振るうモンスター」 「権力行使は謙抑的に」 安倍晋三総理は、これとは逆に、自分が持つ権力は「限界まで」使う 官邸官僚 政治をゲーム感覚で動かすことに喜びを感じ、時に精緻な仕掛けと大ウソを使って大胆なゲームチェンジに挑む スキャンダルで追い詰められたら、別の「危機」をつくりだす 今回は、突然の一斉休校という荒業 野党を休校批判に誘い出し、国会論戦の焦点を桜からシフトさせた 五輪延期への転換も官邸官僚の役割 来年9月の自民党総裁選前に五輪フィーバーを盛り上げ、安倍4選または安倍院政のオプションを用意する 不正まみれの安倍政権を嘘で延命するモンスター官邸官僚たちの罪は重い 「言葉を扱うはずの「政治家」というお仕事」 10日ほど前から、あらゆる事態がものすごいスピードで変化している ニュースは、オーバーシュートしている。 で、われわれの理解力はロックダウンし、事態を追う人々は呼吸困難に陥っている の仕事は、文字をいじくりまわすことでなにがしかの表現をたくらむ言語玩弄者としての側面をより多く含んでいる。それゆえ、言葉への誠実さにおいて、政治家にはかなわないと思っている うちの国の政府の人間は、テレビの画面に出ることを極力避けようとしている。 記者会見では質問を打ち切るし、そもそも、臨機応変な記者との受け答え自体を、あらかじめ拒絶している 麻生太郎財務相兼副総理 リーマン(・ショック)の時と違うんだよ。リーマンの時、マーケットにキャッシュがなくなったんだから。今回はどこにそういう状態があるの? みんな銀行にお金が余っているじゃん もし仮に、現政権が、説明をしないリーダーに追随する国民を作ることに成功していたのだとすればこれはもうわれわれの負けだ。好きにしてくださってけっこうだ。私は非国民の道を選ぶだろう
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M&A(ライザップ)(その2)(【大前研一のニュース時評】赤字193億円…「RIZAP」は本業に“コミット”せよ! 急速なM&Aでの事業拡大に損失膨らむ、ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲 本業「ボディメイク」を脅かすゴルフの赤字、ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し) [企業経営]

M&A(ライザップ)については、昨年5月31日に取上げた。今日は、(その2)(【大前研一のニュース時評】赤字193億円…「RIZAP」は本業に“コミット”せよ! 急速なM&Aでの事業拡大に損失膨らむ、ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲 本業「ボディメイク」を脅かすゴルフの赤字、ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し)である。

先ずは、昨年6月1日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】赤字193億円…「RIZAP」は本業に“コミット”せよ! 急速なM&Aでの事業拡大に損失膨らむ」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/190601/ecn1906010001-n1.html
・『フィットネスジムなどを展開するRIZAP(ライザップ)グループが15日発表した2019年3月期の連結決算は、純損益が193億円の赤字だった。前年は90億円の黒字だったが、急速なM&A(合併・買収)で抱えた子会社の業績不振とその構造改革に絡む損失が膨らんだ。 ここ2~3年、RIZAPは美容ヘルスケア分野以外にも、アパレル、インテリア、雑貨、音響機器、出版、ゴルフ、英会話、料理教室などのライフスタイル分野、プラットフォーム分野のさまざまな業種の企業を積極的に買収した。昨年4月からはサッカーチームの湘南ベルマーレの運営にも乗り出している。 しかし、傘下に収めたCD販売のワンダーコーポレーションなどの再建に手間取り、業績が低迷した。 実質的に儲かっているのは、「結果にコミットする」のキャッチフレーズでおなじみ、大幅な体重減と体形改善を実現させる本業のフィットネス事業だけ。この中心的な事業の儲けで気が大きくなって、M&Aで事業規模を急拡大させたものの、これだけの事業をマネージしていく能力がRIZAPの中核部隊にはなかったことが露呈したのだ。 この会社は基本的に、美容ヘルスケア商品の販売などトレーニング関連だけにコミットすればよかったと思う。また、ゴルフ事業の場合、AI(人工知能)を駆使し、グリップからスイングまで細かく教えられると思うが、逆に、そのノウハウを真似するのも簡単なので株式市場はリスク事業と見るだろう』、よくぞここまでボロ会社を買収したものだ。
・『同社は昨年秋に新規のM&Aを凍結し、不振子会社の売却、店舗閉鎖など構造改革を行ってきた。さらに、この4月1日付でグループを再編し、中核子会社10社を選んで、その傘下に他の子会社を据える体制に移行した。 これにより、瀬戸健社長は「緊急性の高い構造改革は完遂し、膿は出しきった。今期は成長事業へ経営資源を集中して黒字化し、来期にはV字回復させたい」と強調している。しかし、私にはまだまだのような気がする。 というのも、本業である“減量”事業についても、心配なことがあるからだ。この事業はまだノウハウが確立していない。優秀なインストラクターがいたときには効果が出るものの、その優秀なインストラクターはやはり給料に対する不満が出てくるはずだ。その人たちが出ていくと、客も一緒についていってしまう可能性が高い。 もしノウハウが確立して、どんなインストラクターでもできることになると、今度はそのノウハウが同業他社にパクられてしまうだろう。非常に悩ましい事業なのだ。 某氏と某氏を「結果にコミット」させておなかを引っ込めさせたが、その後、2人ともリバウンドしたといわれる。そういう点も考えると、本業そのものが、いまのようなやり方で持続できるのか、心配になってくる。 私は本業を守ることができただけでも、素晴らしいことだと思う。そっちのほうの「結果にコミット」させたほうがいい』、「本業である“減量”事業についても・・・まだノウハウが確立していない。優秀なインストラクターがいたときには効果が出るものの、その優秀なインストラクターはやはり給料に対する不満が出てくるはずだ。その人たちが出ていくと、客も一緒についていってしまう可能性が高い。 もしノウハウが確立して、どんなインストラクターでもできることになると、今度はそのノウハウが同業他社にパクられてしまうだろう。非常に悩ましい事業』、さすがコンサルティングの草分けの大前氏らしい鋭い指摘だ。かってCMで使っていた「2人ともリバウンドした」、化けの皮が剥がれてきたようだ。

次に、本年3月5日付け東洋経済オンライン「ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲 本業「ボディメイク」を脅かすゴルフの赤字」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/334304
・『行きすぎたM&A(合併・買収)攻勢が行き詰まり、2019年3月期の決算で193億円の最終赤字に転落したRIZAPグループ(以下、ライザップ)。 大赤字にもかかわらず、個人を中心とする同社株主がその復活を信じているのは、買収した子会社が業績不振でも、ボディメイクジムを中心とした本業が順調だと思っているからだ。 ところが、ここにきて「本業は稼いでいる」という、その前提が揺らごうとしている』、それが本当であれば大変だ。
・『子会社「ライザップ」の利益見通しは厳しい  2月13日に発表された2019年4~12月期決算(IFRS)。税引前利益は23億円の黒字だったが、最終利益は4.8億円の赤字となった。 決算短信ではその原因の1つに、「グループ会社における繰延税金資産の取り崩しによる法人所得税費用の増加」を挙げている。繰延税金資産は、将来の利益計上を前提に税金の前払い分を資産としてみなす会計処理法だ。その意味は至ってシンプルで、足元の子会社の状況を鑑みると、これまで想定していたほどの利益を今後上げられそうにないと判断したということだ。 繰延税金資産を取り崩したグループ会社とは、ジムやゴルフスクール「ライザップゴルフ」を運営する中核子会社・RIZAP(以下、「子会社ライザップ」)である。取り崩し額は10億円程度で、これさえなければ、最終黒字だった計算だ。 2年前までの子会社ライザップは健康体だった。2018年3月期の売上高は254億円。営業利益は23億円、最終利益も13億円と黒字だった。ところが前2019年3月期は一変。売上高は伸びた反面、営業利益は1億円、最終利益も4億円のそれぞれ赤字に転落した。 2019年3月末、子会社ライザップは別法人だったライザップゴルフの運営会社を吸収合併していた。スコアアップへのコミットをうたったライザップゴルフは2015年9月に事業を開始。全国に29店舗を展開し、累計会員は1万3000人を突破したが、現在も赤字が続いている。 そのゴルフでの損失がボディメイクからあがる利益を相殺し、合併後の子会社ライザップの利益を押し下げたようだ』、「スコアアップへのコミットをうたったライザップゴルフ」、体重よりも「コミット」には不確実性が大きく、あとあとトラブルの種になりかねないリスクを抱えている。
・『経営指導料を吸い上げ、子会社赤字に  今回、繰延税金資産を取り崩したことからして、子会社ライザップの業績は先行きも含めて厳しいと見られる。 子会社ライザップは未上場会社で、決算の詳細は開示されていない。そこで、こうした事情や背景について瀬戸健社長に直接尋ねると、瀬戸社長は言葉選びつつ次のように答えた。 まず、子会社ライザップの利益が低水準なのは、「経営指導料や商標権の使用料などを(親会社である)ライザップ本体が吸い上げているため」と説明した。経営指導料はジムやゴルフなどの運営に関して行ったアドバイスの対価だ。その経営指導料を「要は取りすぎていた」(瀬戸社長)という。 ただ、話を聞いていくと、問題はそれだけではないようだ。子会社ライザップは拡大路線の反動にあったのだ。 ライザップは2018年11月に新規M&Aの凍結を発表、2019年3月期決算が赤字に転落するとの見通しを発表した。そのニュースが大きく報道されたことでライザップの経営状態を不安視したためか、ジムやゴルフの新規申し込み客が鈍ったという。 広告の反応が弱くなったことで費用対効果の観点から広告費を絞った。だが、「過剰に絞りすぎてしまった」と瀬戸社長は振り返る。広告費を減らしたことで短期的には採算がよくなったが、結局は売り上げが落ちた。そうなると、今度は人件費などの固定費が重荷となり、利益が落ち込んだ。 ゴルフなどの事業が拡大することを前提に、子会社ライザップはこの2年ほど人員を増やしていた。「タガが緩んでいたというか、人の採用が加速しすぎていたのは否めない」(瀬戸社長)』、本業でもいまだに試行錯誤を繰り返しているようだ。
・『ゴルフは3月に単月黒字化の見通しだが…  本業である子会社ライザップの苦戦について瀬戸社長は、2019年11月以降はジムやゴルフの広告宣伝を強化したことで2020年3月末までには挽回できる、と自信をみせる。増えた人員も、市場開拓中の法人向けサービスに振り向けるなど配置転換を図っているという。 事業開始から4年を経ても赤字が続いているゴルフについては、店舗設備などの減損リスクが懸念される。減損額は1店当たりの投資額から推計すると18億円程度と小さくない。しかし、3月にもゴルフは単月黒字化する見通しで「減損はたぶんない」(瀬戸社長)と述べた。 そんな瀬戸社長率いるライザップに暗雲を投げかけるのが、新型コロナウイルスの影響だ。 厚生労働省は、感染拡大のリスクが高い場所の1つとしてスポーツジムを挙げた。ライザップは1対1のパーソナルトレーニングジムであるためか、足元では予約されたトレーニングのキャンセルは発生していないという。とはいえ、新規の客足が鈍るなどの影響は避けられないだろう。ゴルフも同様だ。 2019年6月のライザップ株主総会。瀬戸社長は株主を前に、「今期(2020年3月期)の赤字は絶対にありえないという自信と確信を持っている。黒字にならなかったらこの場にはいない」と語った。ただ、ゴルフでの減損処理を迫られるなどすれば、そのコミットは撤回せざるをえない』、「新型コロナウイルスの影響」は大きい筈で、「そのコミットは撤回せざるをえない」、のは確かなようだ。

第三に、3月26日付け東洋経済オンライン「ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/339777
・『外部より招聘した経営指南役が在任期間1年足らずで会社に三くだり半を突きつけた。しかも2人同時に――。 そんな異例の事態がRIZAPグループ(ライザップ)で進行している。 ライザップは6月末の定時株主総会後に予定する新経営体制を3月19日に発表した。同社は2016年ごろから加速させたM&A(合併・買収)攻勢が行き詰まり、買収した子会社群の再建を中心とする構造改革に2018年11月から着手。新しい経営体制のもと、今年4月以降を「構造改革の最終段階」にして成長路線に舵を切っていく考えだ』、「経営指南役」「2人」が「会社に三くだり半」とは容易ならざる事態だ。
・『社外取締役2人の名前はなかった  だが、新経営陣のリストの中に社外取締役の中井戸信英氏(73歳)と望月愛子氏(40歳)の名前はない。2人は2019年6月に同社の社外取締役に就任したが、発表文には「3月13日付で(2人から)当社取締役を辞任したい旨の申し出があり、同日付けでこれらの申し出を受理いたしました」とだけ記されている。 中井戸氏は、住友商事で副社長を務めた後にシステム開発会社のSCSKで社長・会長を歴任し、同社の働き方改革を進めたことで知られる。一方の望月氏は、経営コンサルティング会社「経営共創基盤」のマネージングディレクターで、企業再建などに関わってきた経験を持つ。 2人が6月の取締役の任期満了を待たずに辞任したのなぜか。ライザップ広報部は「構造改革の進め方で(創業者である瀬戸健社長(41歳)をはじめとする経営陣と)意見の相違が起きていた」と説明する。 辞任の理由となった「構造改革の進め方」とは何なのか。ライザップは「戦略上の問題で詳細は申し上げられない」としつつ、次のように回答した。 「従来の取締役会の構成では、社外と社内の取締役のバランスが悪いため意思決定のスピードが遅れるという側面もあり、コロナショックという非常事態の中、足元で緊急的に対応すべき経営判断についての意見のやり取りの中で見解の相違も生まれた」』、会社側の言い分は実態とはかけ離れている可能性がある。
・『望月氏は「会社側の説明は事実ではない」  コメントにある「社外と社内の取締役のバランス」とは、次のようなことを指す。 ライザップは2019年6月、監督機能の強化を理由に12人だった取締役の数を6人に減らした。これに伴い、社内取締役と社外取締役の比率は、従前の「社内9、社外3」から「社内1、社外5」に大きく変わった。 しかし、社外取締役比率が高まることで意思決定のスピードが遅れるのは、ある意味当然のこと。となると、会社側が説明する辞任理由は「新型コロナウイルスが感染拡大するという経営環境下で見解の相違が生まれたからだ」と要約できる。 東洋経済の取材に対し、3月25日までに中井戸氏からの回答はなかったが、望月氏は「会社側の説明は事実ではない」と完全否定。「私の辞任理由については、辞任届に記載して会社(ライザップ)に提出しておりますので、会社にご確認ください」とコメントした。 これに対し、ライザップは「辞任届の内容は非開示。望月氏とは認識の違いが生じている」とだけ述べた。 まさに真相はやぶの中だが、コロナショックとは関係なく、「対応すべき経営判断」をめぐって、瀬戸社長と社外取締役2人の間で意見の相違が起きていた可能性は指摘できる。 『ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲』で報じたように、現在の同社はボディメイクジムやゴルフスクールなどの本業が芳しくなく、銀行借り入れの返済原資となるキャッシュの創出力が鈍っている。サンケイリビング新聞社など未上場子会社での赤字も続いている。 そのため不振事業や赤字子会社の整理、さらには子会社が保有する有価証券などの換金売りを銀行から迫られている。2人の社外取締役はそれらの早期売却を促していたとみられる一方、瀬戸社長は赤字子会社を売るにしても売却益を出すことに固執していたようだ』、「赤字子会社を売るにしても売却益を出すことに固執」、とは「瀬戸社長」はいまだに危機感に乏しいようだ。
・『中井戸氏の「三くだり半」をどう受け止めるか  振り返れば、2019年6月の中井戸氏と望月氏の就任時、入れ替わるように在任1年で取締役を退任したのが元カルビー会長兼CEOの松本晃氏だった。 松本氏は、ライザップの買収戦略の問題点を看破し新規買収をなお進めようとしていた瀬戸社長にストップをかけた功績がある。 社内取締役にもかかわらず評論家然とした態度だった点については賛否両論あるが、ライザップの経営から一定の距離感を保っていたからこそ、取締役退任後にライザップの特別顧問に納まり、「別れた後もよい関係」をアピールできた。 一方、同じ経営者出身の中井戸氏は、社外取締役ではあったものの「ガバナンスの監督機能を生かすには業務の執行はしなくても、その会社の業務を肌感覚で理解していないといけない」という持論を持っていた。そこで週3回は出社して取締役会議長も務めるなど、「準常勤」の立場でライザップに関わり、経営中枢の実態を見た。 その中井戸氏が今回、ライザップに事実上の「三くだり半」を突きつけた。この事実はライザップにとって決して軽くはない影響を与えるはずだ』、RIZAPグループの本日の株価は、174円と、ピークの1500円には遠く及ばないばかりか、既に破綻寸前の水準にある。追い込まれた「瀬戸社長」の手綱さばきや如何に。
タグ:東洋経済オンライン M&A ZAKZAK (ライザップ) (その2)(【大前研一のニュース時評】赤字193億円…「RIZAP」は本業に“コミット”せよ! 急速なM&Aでの事業拡大に損失膨らむ、ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲 本業「ボディメイク」を脅かすゴルフの赤字、ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し) 「【大前研一のニュース時評】赤字193億円…「RIZAP」は本業に“コミット”せよ! 急速なM&Aでの事業拡大に損失膨らむ」 ここ2~3年、RIZAPは美容ヘルスケア分野以外にも、アパレル、インテリア、雑貨、音響機器、出版、ゴルフ、英会話、料理教室などのライフスタイル分野、プラットフォーム分野のさまざまな業種の企業を積極的に買収した これだけの事業をマネージしていく能力がRIZAPの中核部隊にはなかったことが露呈 昨年秋に新規のM&Aを凍結し、不振子会社の売却、店舗閉鎖など構造改革を行ってきた 本業である“減量”事業についても この事業はまだノウハウが確立していない。優秀なインストラクターがいたときには効果が出るものの、その優秀なインストラクターはやはり給料に対する不満が出てくるはずだ。その人たちが出ていくと、客も一緒についていってしまう可能性が高い もしノウハウが確立して、どんなインストラクターでもできることになると、今度はそのノウハウが同業他社にパクられてしまうだろう 2人ともリバウンドした 「ライザップ、新型肺炎で「経営再建」に漂う暗雲 本業「ボディメイク」を脅かすゴルフの赤字」 ここにきて「本業は稼いでいる」という、その前提が揺らごうとしている 子会社「ライザップ」の利益見通しは厳しい 「ライザップゴルフ」 スコアアップへのコミットをうたったライザップゴルフ 経営指導料を吸い上げ、子会社赤字に ゴルフは3月に単月黒字化の見通しだが… 新型コロナウイルスの影響だ 「ライザップ社外取締役2人はなぜ辞任したのか 経営再建の最終段階を前に「波乱」の兆し」 経営指南役が在任期間1年足らずで会社に三くだり半を突きつけた。しかも2人同時に 社外取締役2人の名前はなかった 中井戸信英 望月愛子 望月氏は「会社側の説明は事実ではない」 赤字子会社を売るにしても売却益を出すことに固執 中井戸氏の「三くだり半」をどう受け止めるか RIZAPグループの本日の株価は、174円
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物流問題(その7)(「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本、宅配業者がドライバーの「独立支援」を急ぐ事情 佐川 ヤマトからドライバー流出のケースも、コロナが追い打ち 路線トラックを襲う三重苦 運賃の値上げで進む「路線トラック離れ」) [産業動向]

物流問題については、昨年12月2日に取上げた。今日は、(その7)(「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本、宅配業者がドライバーの「独立支援」を急ぐ事情 佐川 ヤマトからドライバー流出のケースも、コロナが追い打ち 路線トラックを襲う三重苦 運賃の値上げで進む「路線トラック離れ」)である。

先ずは、監査法人トーマツなどを経て会計コンサルタントの川口宏之氏が本年1月14日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/225439
・『電通vs博報堂。ヤマト運輸vs佐川急便。アップルvsアマゾンetc. 有名企業の決算書を徹底分析!「儲かっている」のはどっちだ? 本連載は、誰もが知っている有名企業の決算書を対比させることで、「実務に使える会計知識」と「経営分析の基本」を一気に学ぶものだ。著者は、「監査法人」「証券会社」「ベンチャー企業」「会計コンサル」、4つの立場で「会計」に携わった経験を持つ川口宏之氏。近著に『経営や会計のことはよくわかりませんが、 儲かっている会社を教えてください!』がある。 楽天市場やアマゾンなど、ネット通販で買い物することが日常的になった今、宅配業は必要不可欠なインフラ産業です。 本日は、宅配業大手のヤマト運輸と佐川急便を比較します。それぞれの会社を傘下に持つ持株会社(上場会社)のヤマトホールディングスとSGホールディングスが対象です。決算書を見てみましょう。下記の画像を見てください。 営業利益率を用いて、分析します。 営業利益率 (%) = 営業利益 ÷ 売上高 ×100 ※ ヤマトホールディングスとSGホールディングスは、売上高のことを「営業収益」と表示しているため、「営業利益÷営業収益」で計算しています。 営業利益率 ヤマトホールディングス3.6% SGホールディングス6.3% 営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合です。高ければ高いほど会社の本業での稼ぐ力が高いことを意味します。下記のイメージ画像を見てください。 業種により異なりますが、おおむね4~5%(日本の上場企業の全業種平均)がひとつの目安となります。 ヤマトホールディングスの営業利益率が3.6%であるのに対して、SGホールディングスは6.3%と大きくリードしています。したがって、稼ぐ力はSGホールディングスのほうが上です。 しかし営業収益(売上高)では、ヤマトホールディングスが1兆6000億円なのに対して、SGホールディングスは1兆1000億円。ヤマトホールディングスのほうが1.5倍ほど高い状況です。下記の画像を見てください。 ヤマトホールディングスは、ネット通販による旺盛な宅配需要をとり込み、売上を拡大していきました。これに対してSGホールディングスの売上高の伸びはそれほどでもありません。2014年や2017年3月期は、売上高が前年に比べ若干減少しているぐらいです』、「ネット通販による宅配」は単価が低いためではなかろうか。
・『ヤマトの営業利益率はなぜ低いのか?  このようにヤマトホールディングスは企業規模が大きい会社で、今や売上高は業界ナンバーワンです。であるにもかかわらず、稼ぐ力(営業利益)が低いのはなぜでしょうか。 そもそも宅配業は、一定規模の宅配個数を請け負わないことには、配送効率が悪くなるため、利益が出にくいビジネスです。 例えば、大阪から東京までの荷物の配送をイメージすればわかりやすいでしょう。 1個の荷物を運ぶのと10個の荷物をまとめて運ぶのとでは、売上は10倍違いますが、配送に要するコストはほぼ同じです。下記のイメージ画像を見てください。 そのため、多くの顧客から宅配の依頼を受ける大規模な宅配業者のほうがスケールメリットを享受できるため、利益は出やすくなります。 実は、2013年3月期までは、ヤマトホールディングスのほうが営業利益率は高かったのです。 ところがその後、SGホールディングスが右肩上がりで営業利益率を伸ばし、あっという間に逆転しました。右肩下がりのヤマトホールディングスとは対照的です。下記の画像を見てください。 直近の2019年3月期は、宅配料金の値上げでやや持ち直したものの、SGホールディングスには遠く及びません。 SGホールディングスによる営業利益率の逆転劇は、業界の常識とは逆張りの戦略の結果といえます。 「規模を追い求めることで利益を増やす」という宅配業における常套手段をとらず、配送単価の見直しとそれに伴う顧客の選別をすることで、稼ぐ力を高めていったのです。 具体的には、アマゾンからの撤退が最も大きな要因です』、「SGホールディングス」が「アマゾンからの撤退が最も大きな要因」、とは痛快で、その慧眼に驚かされた。
・『佐川がアマゾンから撤退した「合理的」な理由  アマゾンで買い物をするのは個人客が中心です。個人宅への宅配は、不在時の再配達などが一定割合で発生してしまうため、非常に手間がかかります。 特に近年は、核家族化、共働き世帯の増加により、日中の不在割合も増加しています。手間がかかれば、人件費も余分に発生してしまいます。 アマゾンからの配送依頼は圧倒的な数です。宅配業者にとってアマゾンはたくさんの仕事をくれる上顧客といえます。上顧客からの要求をむげに断れないのは世の常。手間がかかるとしても宅配料金はなかなか上げられず、逆に、圧倒的な依頼数量を交渉材料に、宅配料金の値下げを迫られてしまうのです。 SGホールディングスは、宅配料金の折り合いがつかなかったため、アマゾンとの取引を解消しました。巨額の売上をあえて手放したのです。苦渋の決断だったと思いますが、この勇気ある意思決定が営業利益率を伸ばすきっかけになりました。 アマゾンからの撤退は2013年。ちょうど両社の営業利益率が逆転した時期と重なります。SGホールディングスは効率がいい企業間配送に注力し、営業利益率を伸ばしていったのです。 一方、ヤマトホールディングスは、SGホールディングスのアマゾン撤退の受け皿となり、売上が飛躍的に拡大していきました。ところが、ヤマトホールディングスは自社の宅配ドライバーだけでは大量の荷物をさばききれず、外部の運送業者に再委託せざるを得ない状況に陥りました。 外部業者に委託すると、外部業者のマージン(儲け)が乗った配送料を請求されるため、自前の配送より余計にコストがかかり、利益が圧迫されます。 さらに、従業員への未払い残業問題や、引っ越しサービスでの水増し請求問題など、コンプライアンス上の問題が次々に明るみに出ました。 過度な業務受け入れで現場の負担が増大し、業績が落ち込み、そして、業績回復のプレッシャーで不正に手を染めるという、負のスパイラルにはまってしまったのです。下記の画像を見てください。 今や営業利益率だけでなく、営業利益の金額もSGホールディングスがヤマトホールディングスを上回っています(ヤマトホールディングス:583億円、SGホールディングス:704億円)』、「ヤマトホールディングス」も、「アマゾン」からの受託を「自社の宅配ドライバー」に見合った水準に止めるべきだが、交渉は難しいのだろう。

次に、3月8日付け東洋経済オンライン「宅配業者がドライバーの「独立支援」を急ぐ事情 佐川、ヤマトからドライバー流出のケースも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/334691
・『EC(ネット通販)市場が急成長を続ける中、その荷物を運ぶ中堅運送会社が委託ドライバーの囲い込みを急いでいる。EC最大手のアマゾンから配送受託するデリバリープロバイダと呼ばれるSBS即配サポートと丸和運輸機関は、ドライバーの確保を急ピッチで進めている。 首都圏でのBtoB向け配送を中核事業とするSBS即配サポートは、約1000台の車両を稼働させ、3000を超える企業と取引がある。工業用備品をECで展開するMonotaRO(モノタロウ)などからも配送受託している。 SBS即配サポートが新たな宅配の担い手を確保するため、2年半前から始めたのが「独立開業支援」だ。この制度では、配送に使う軽車両のリースや車両保険・車検などが入った「メンテナンスパック」などを展開し、配送業務が未経験の人でもすぐに働けるようにした。ドライバーはロイヤルティなどを支払うことなく、委託ドライバーとしてSBS即配サポートから配送を受託することができる』、「独立開業支援」とは面白い試みだが、質の維持はどうするのだろう。
・『委託ドライバーに応募が殺到  委託ドライバーを志望する8割の人は未経験者だ。SBS即配サポートの宅配事業を統括する前田光治執行役員は、「これまでに6000人を超える応募があり、600人弱の委託ドライバーを確保できた。応募者数は社員求人の約10倍で、想定を大きく上回っている」と語る。直近1カ月でも約250人の応募があり、そのうち1割と契約をした。 報酬は完全出来高制で、配送完了した荷物の数に応じて支払われる。「1日に委託ドライバーが届ける荷物は、BtoC向け配送で平均100個、BtoB向け配送だと平均して120~150個ほど。委託ドライバーは平均して、1日1万5000円~2万5000円くらい稼いでいる」(前田執行役員)。委託ドライバーとして活動する20代後半の男性は、「月収はおよそ50万円。安定して仕事をもらえるのがいい」と話す。 SBS即配サポートがドライバーの独立支援制度を整備することには、柔軟な働き方を求める若い層を取り込む狙いがある。「当初は委託ドライバーのほとんどは早期退職者のシニア層だったが、配送現場やネットなどの口コミで認知度が上がり、若年層からの応募が増えた」と、SBS即配サポートの佐伯禎泰取締役は言う。 SBS即配サポートの独立制度を利用すれば、社員ドライバーと月収がほぼ変わらないうえに、社則などに縛られず自由度が比較的高い働き方ができる。また、普通自動車運転免許さえあれば軽車両での配送ができることや、「BtoC向けEC配送は軽くてきれいな荷物が多い」との印象があることも、応募が増えている要因になっているようだ。 アマゾン向け配送で急成長する丸和運輸機関も、委託ドライバーの支援を強化している。2017年9月頃から始めた「Momotaro・Quick Ace(桃太郎クイックエース)」と呼ばれる独立支援制度では、委託ドライバーの所得の約6割を補償する「所得補償保険」を2019年4月に導入した。 委託ドライバーはケガや病気などで働くことができないと収入がゼロになってしまうリスクがあるが、その際に一定期間、月収の約6割を丸和運輸機関が補填する。「保険でリスクをカバーすることで、ドライバーが安心して働ける環境を作りたい」と、丸和運輸機関の和佐見勝社長は強調する。 丸和運輸機関では、現在400~500人ほどが委託ドライバーとして就業しており、その多くは20~30代のドライバーだ。平均年収は720万円だという。丸和運輸機関では2023年3月期までに5000人の委託ドライバー確保と、意欲的な目標を掲げている』、「20代後半の男性は、「月収はおよそ50万円」」、若者が応募に殺到するのも納得できる。
・『起業して運送会社の社長に  独立支援制度を通じて、法人を立ち上げたドライバーもいる。丸和運輸機関の委託ドライバーとして7カ月間活動した奥住亨介氏は、2017年12月に自身の運送会社である合同会社FIVE STARSを立ち上げた。現在、同社の年商は1億円を超えており、25人のドライバーを抱える。委託ドライバーとして働いた経験について奥住氏は、「1日に平均して120~150個ほど配送した。独立支援制度を通じて、十分な開業資金を貯めることができた」と話す。 今後も市場拡大が見込まれるEC向け荷物は、大手宅配会社も確保したい思いがある。ただ、軽車両で運ぶことができるEC向け配送は、宅配業者の参入障壁が低く競争も激しい。できるだけ配送料を抑えたいEC事業者の意向もあり、そういった荷物を獲得するには配送単価が低くなりがちだ。 日本郵便の衣川和秀社長は、2月に行われた共同インタビューの場で「荷物の小型化が進む中、ゆうパケットの取扱個数を伸ばしていきたいものの、デリバリープロバイダなどはわれわれにはできないような低価格で荷物を引き受けているようだ」と語っている。 多くの自社ドライバーと物流拠点を抱え全国配送網を構築する大手宅配は、その維持に莫大なコストがかかる。そのため、配送単価を引き下げて荷物を確保することは難しい。 ヤマトホールディングスは4月から提供を始めるEC事業者向け配送サービスについて、「低価格で配送を請け負うのではなく、あくまで適正なプライシングでサービスを提供していきたい」(ヤマトホールディングスの長尾裕社長)とする。大手宅配は配送単価を下げないためにも、接客面やサービス面での差別化を図るが、確たる強みとなるものはまだ打ち出せていない。 大手宅配が利益確保に躍起になるあまり、委託ドライバーを支援するどころか、ドライバーに支払う配送単価を引き下げる動きもあるようだ。以前は大手宅配会社の委託ドライバーだったある男性は、2019年初めに配送単価を引き下げられたことをきっかけに中堅運送会社の支援制度に応募した。「大手宅配の配送受託は単価や荷物量が安定しないため、安心して働きにくい」と、男性は強調する』、「軽車両で運ぶことができるEC向け配送は、宅配業者の参入障壁が低く競争も激しい。できるだけ配送料を抑えたいEC事業者の意向もあり、そういった荷物を獲得するには配送単価が低くなりがちだ」、前述の「20代後半の男性は、「月収はおよそ50万円」」という好条件も、今後は悪化していくのだろう。
・『大手宅配から人材流出の動きも  最近は、大手宅配から流出する委託ドライバーも出てきている。丸和運輸機関の藤田勉取締役は、「当社が契約している委託ドライバーの半数以上は、大手宅配の業務委託経験者だ。大手宅配で配送単価引き下げや『外注切り』があると、当社の独立開業支援への応募者が急増する」と明かす。 中堅運送会社は配送効率のよい都市部に限って配送サービスを提供し、大手宅配会社よりもコストを抑えてきた。より多くの荷物を獲得するための取り組みも着々と進めている。SBS即配サポートは2月から一部エリアで、BtoBとBtoCのどちらの荷物も運ぶ混載配送を開始し、中小EC事業者の小ロット荷物の獲得を狙う。丸和運輸機関はこれまで強みとしてきた北関東エリアだけでなく、神奈川県など南関東エリアでの展開も見据える。 両社ともに価格競争力を武器に、今後さらに攻勢をかけていくようだ。ただ、ドライバー確保の競争が激化する状況で、手厚い支援で囲い込み続けるにはコストも増え続けることになる。十分な採算性を維持したまま成長していくことができるのか。勝負が本格化するのはこれからだ』、物流業界では競争激化が進み、混沌とした状態がまだ続きそうだ。

第三に、3月26日付け東洋経済オンライン「コロナが追い打ち、路線トラックを襲う三重苦 運賃の値上げで進む「路線トラック離れ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/339475
・『不特定多数の荷主から集めた荷物を中長距離で運ぶ路線トラック各社の業績下方修正が相次いでいる。 最大手のセイノーホールディングス(セイノーHD)は2月、それまで売上高6360億円(前期比2.8%増)、営業利益328億円(同5.1%増)としていた2020年3月期の通期業績予想を、それぞれ6260億円(前期比1.2%増)、296億円(前期比5.2%減)に下方修正した。例年、繁忙期である10~12月の積載率(最大積載重量に対する実際に積載した重量の割合)は94~96%程度だが、2019年10~12月の積載率は9割を割ったという。2019年12月の荷物量も前年同月比約6%減と、想定を大きく下回った』、「2019年10~12月の積載率は9割を割った」、のは景気悪化の影響だろう。
・『コロナ対策で荷動きが急減  路線トラック中堅の名鉄運輸も2月に業績予想を下方修正した。2020年3月期の売上高は1170億円(前期比0.9%増)と期初予想を据え置く一方で、営業利益を期初の49億円(前期比0.1%増)から44億円(前期比10.1%減)へ引き下げた。 2月時点では荷物量がやや回復傾向にあり、「消費者による買いだめでレトルトカレーのような加工食品などの輸送が増えた」(セイノーHD)、「マスクやトイレットペーパーなどの荷物量が急増した」(福山通運)という。 3月に入ってもこの勢いは変わらず、ユニチャームなどの日用雑貨を請け負う中小の路線トラック会社は、2週間分の荷物をわずか2日間で店舗に向けて配送したという。 しかし、新型コロナウイルス対策で外出などを自粛するムードが広がったことを背景に、「3月の途中から日用品に加えてアパレルの荷物量も落ちたため、再び荷動きが鈍化した」(福山通運)。百貨店などの販売が急減した影響を受け、上げ潮モードは一気に沈静化した。 路線トラック各社はそもそも、2019年10月に実施された消費増税の影響を受けて厳しい局面に立たされていた。消費増税後の個人消費の落ち込みを受け、荷物の輸送量も急減。国土交通省によると、2019年10~12月期の路線トラックの荷物量は前年同期比で5.4%減となった。 日本経済と荷物量の分析・予測を専門とする日通総合研究所の佐藤信洋プリンシパルコンサルタントは、「消費増税で日本経済全体が景気後退入りした。路線トラックの荷物量は、2011年の東日本大震災直後以上の落ち方をしている」と指摘する』、「2019年10~12月期の路線トラックの荷物量は前年同期比で5.4%減」、景気悪化の影響が如実に表れているようだ。
・『3PLに活路求める  大手路線トラック4社のうち、トナミ運輸の親会社であるトナミホールディングスと福山通運は業績予想を変えていない。福山通運は2020年3月期の営業利益は202億円(前期比3.7%増)と増益を見込んでいる。だが、同社の桑本聡常務執行役員は「消費税増税と暖冬で荷動きが想像以上に悪く、2021年3月期の上期までは苦しい局面が続きそうだ」と危機感をあらわにする。 顧客の流出が進む中、路線トラック各社は3PL(サードパーティーロジスティクス、物流の一括受託)事業の強化に活路を求めている。在庫保管などの物流業務を委託する荷主が増えており、倉庫一体型の拠点を増やすことで旺盛な需要を取り込む狙いだ。 ロジスティックス専門誌ライノス・パブリケーションズによれば、国内の3PL市場規模は3兆円を超えており(2018年度)、2010年度から右肩上がりで伸び続けている。 セイノーHDは、トラックターミナルを併設した倉庫拠点を拡充。東京・深川支店(2021年2月竣工予定)と茨城・龍ケ崎支店(2022年1月竣工予定)を建設する。中長期的には新たに13拠点を開設する計画で、用地交渉中のものも含めると投資額は総額619億円にのぼる。 福山通運も倉庫一体型拠点の開設を進め、2020年1月に静岡・浜松市で拠点を開設したほか、3月下旬には愛知・一宮市の新拠点が竣工する予定だ。2021年3月期には関東などのシェアの低いエリアで4拠点を新設する。 ただ、こうした拠点が本格稼働して各社の収益に寄与するには時間がかかる。日通総研の佐藤氏は、「少なくとも今後1年はプラス材料が少なく、路線トラック各社は荷動きが厳しい状況が続きそうだ」と分析する。 路線トラック各社の業績は2017年ごろからしばらくの間、好調だった。ドライバー不足に伴う人件費や外注費の上昇を受けて、1割以上の運賃値上げを進めてきたからだ。例えば、2019年3月期の運賃(キログラムあたり単価)は、セイノーHDが前期比6.9%、福山通運も同7.9%引き上げ、値上げが業績を底上げしてきた』、「3PL」が「本格稼働して各社の収益に寄与するには時間がかかる・・・「少なくとも今後1年はプラス材料が少なく、路線トラック各社は荷動きが厳しい状況が続きそうだ」」、「本格稼働」した時には、「荷動きが」さらに減少し、供給能力超過となる懸念もあるのではなかろうか。
・『荷主の路線トラック離れが起きている  路線トラック各社が担っている中長距離の輸送は、全国に配送網を持つ大手宅配各社も自社でまかなえず、ヤマト運輸や佐川急便は中長距離輸送のほとんどをセイノーHDや福山通運などに委託している。中長距離輸送を担える事業者が限られるため、「運賃を15~20%値上げしてきたとしても、荷主側は受け入れざるをえなかった」とある業界関係者は明かす。 ところが、運賃値上げを進めたことで、2018年ごろから荷主の路線トラックではなく、中小運送業者に配送委託を始めた。そうした中、2019年10月以降は値上げ以上に荷物量が落ち込んでしまった。船井総研ロジの赤峰誠司取締役は、「地場の中小運送事業者でも対応可能な近距離の荷物を中心に、荷主の間では『路線トラック離れ』が起きている」と指摘する。 路線トラック離れに消費税増税が重なったところへ、コロナショックが追い打ちをかけた。路線トラック各社はこの「三重苦」を乗り越えることができるのだろうか』、さらに、「長距離の輸送」ではコンテナを使った鉄道輸送も増えているようだ。先にみた宅配業界だけでなく、「路線トラック」業界でも大きな構造変化が起きつつあるようだ。
タグ:東洋経済オンライン セイノーHD 福山通運 ダイヤモンド・オンライン 物流問題 丸和運輸機関 川口宏之 (その7)(「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本、宅配業者がドライバーの「独立支援」を急ぐ事情 佐川 ヤマトからドライバー流出のケースも、コロナが追い打ち 路線トラックを襲う三重苦 運賃の値上げで進む「路線トラック離れ」) 「「ヤマトより佐川のほうが儲かっている」宅配戦争に学ぶ経営の基本」 宅配業大手のヤマト運輸と佐川急便を比較 営業利益率 ヤマトホールディングス3.6% SGホールディングス6.3% ヤマトホールディングスは、ネット通販による旺盛な宅配需要をとり込み、売上を拡大 SGホールディングスの売上高の伸びはそれほどでもありません ヤマトの営業利益率はなぜ低いのか? SGホールディングスによる営業利益率の逆転劇 「規模を追い求めることで利益を増やす」という宅配業における常套手段をとらず、配送単価の見直しとそれに伴う顧客の選別をすることで、稼ぐ力を高めていった アマゾンからの撤退が最も大きな要因 佐川がアマゾンから撤退した「合理的」な理由 SGホールディングスは、宅配料金の折り合いがつかなかったため、アマゾンとの取引を解消 ヤマトホールディングスは、SGホールディングスのアマゾン撤退の受け皿となり、売上が飛躍的に拡大 ヤマトホールディングスは、SGホールディングスのアマゾン撤退の受け皿となり、売上が飛躍的に拡大していきました。ところが、ヤマトホールディングスは自社の宅配ドライバーだけでは大量の荷物をさばききれず、外部の運送業者に再委託せざるを得ない状況に陥りました。 外部業者に委託すると、外部業者のマージン(儲け)が乗った配送料を請求されるため、自前の配送より余計にコストがかかり、利益が圧迫されます 従業員への未払い残業問題 引っ越しサービスでの水増し請求問題 コンプライアンス上の問題が次々に明るみに出ました 負のスパイラルにはまってしまった 「宅配業者がドライバーの「独立支援」を急ぐ事情 佐川、ヤマトからドライバー流出のケースも」 アマゾンから配送受託するデリバリープロバイダと呼ばれるSBS即配サポートと丸和運輸機関 「独立開業支援」 委託ドライバーに応募が殺到 20代後半の男性は、「月収はおよそ50万円 「所得補償保険」を2019年4月に導入 起業して運送会社の社長に 大手宅配が利益確保に躍起になるあまり、委託ドライバーを支援するどころか、ドライバーに支払う配送単価を引き下げる動きも 軽車両で運ぶことができるEC向け配送は、宅配業者の参入障壁が低く競争も激しい。できるだけ配送料を抑えたいEC事業者の意向もあり、そういった荷物を獲得するには配送単価が低くなりがちだ 大手宅配から人材流出の動きも 大手宅配から流出する委託ドライバーも 「コロナが追い打ち、路線トラックを襲う三重苦 運賃の値上げで進む「路線トラック離れ」」 コロナ対策で荷動きが急減 2019年10~12月期の路線トラックの荷物量は前年同期比で5.4%減 3PLに活路求める トナミホールディングス サードパーティーロジスティクス こうした拠点が本格稼働して各社の収益に寄与するには時間がかかる 荷主の路線トラック離れが起きている 地場の中小運送事業者でも対応可能な近距離の荷物を中心に、荷主の間では『路線トラック離れ』が起きている 路線トラック離れに消費税増税が重なったところへ、コロナショックが追い打ちをかけた。路線トラック各社はこの「三重苦」を乗り越えることができるのだろうか
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ゴーン逃亡問題(その2)(日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索、ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限、ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定 司法は刑事責任を問えるか) [司法]

ゴーン逃亡問題については、1月27日に取上げた。今日は、(その2)(日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索、ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限、ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定 司法は刑事責任を問えるか)である。

先ずは、2月5日付け東洋経済オンライン「日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/328841
・『その談話は怒りに満ちていた。「検察官らは、無断で裏口から同(原文)法律事務所に立ち入った」「再三の退去要請を無視して長時間にわたり滞留した」「ドアの鍵を破壊し、事件記録等が置かれている弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどした」――。1月31日、日本弁護士連合会の菊地裕太郎会長が東京地方検察庁の捜索を批判する異例の談話を発表した。 談話は「1月29日、東京地方検察庁の検察官らが、刑事被疑事件について、関連事件を担当した弁護士らの法律事務所の捜索を行った」と具体名を伏せているが、東京・麹町にある「法律事務所ヒロナカ」を指していることは明らかだ。同事務所の代表の弘中惇一郎弁護士は日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の弁護団の1人。1月29日に東京地検が同事務所の家宅捜索を行った』、東京地検は「ゴーン被告の国外逃亡」で怒り心頭に達しているとはいえ、「担当した弁護士らの法律事務所の捜索」したとは暴挙だ。
・『狙いはゴーン被告が使ったパソコン  ゴーン被告の国外逃亡に伴い、弘中弁護士は1月16日にゴーン被告の代理人を辞任している。だが、ゴーン被告が事務所内で使用していたパソコンはまだ事務所内にあるとみられている。これはゴーン被告のものではなく、法律事務所の所有物だからだ。 東京地検はゴーン被告が海外に逃亡して以降、弘中弁護士にパソコンの任意提出を求めてきた。海外逃亡の計画を記した記録があるとみているためだ。しかし、弘中弁護士は「押収拒絶権」を行使し、その求めには応じず、今回の捜索でもパソコンの提出を拒絶した。 この押収拒絶権とは刑事訴訟法に定められた権利だ。同法105条は、医師や弁護士などは、「保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる」と定めている。菊地会長の談話では、「押収拒絶権が行使され、立入りを拒まれているにもかかわらず、検察官らが、裏口から法律事務所に侵入し、要請を受けても退去せず、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、執務室内をビデオ撮影するなどしたことは、正当化の余地のない違法行為である」と断じている。 法律事務所ヒロナカを捜索した翌日、東京地検の斎藤隆博次席検事は記者会見を行った。斎藤次席検事は、ゴーン被告の逃亡を主導したと疑われているマイケル・テイラー被疑者(59歳・米国籍)の息子ピーター・テイラー被疑者(26歳・米国籍)が、法律事務所ヒロナカを2019年7月と8月に計4回訪問し、ゴーン氏と面会していたと指摘。「ピーター被疑者の来日目的は逃亡の相談以外に考えられない」と、計画が法律事務所で話し合われたと言わんばかりだった。このテイラー親子はゴーン氏の逃亡を手助けした容疑で逮捕状が出ている。) また、「ゴーン被告と面会した人物の確認はいっさい行っていない、という(事務所側の)説明だった」(斎藤次席検事)と弁護人の管理を暗に批判した。保釈条件では、面会者の氏名と面会日時の記録は義務づけていたが、どんな人物かを確認することを義務づけていない。だが、斎藤次席検事は「弁護団は『保釈中のゴーン被告を指導・監督する』と裁判所に約束していた。その中には当然、面会者がどんな人物かを確認する責任があった」と述べている。 弘中弁護士は家宅捜索のあった1月29日、記者団に対して「事務所で逃亡を謀議したことを裏付ける証拠はない。不愉快だ」と怒りをあらわにした。 法律事務所で鍵を壊したことについて、斎藤次席検事は1月30日の会見で、「弁護人に押収拒絶権があることは認識し、できる限り尊重するということで事務所に向かった。ただ、パソコンの中には拒絶権が及ばないものがある可能性があるので捜索を行いたいと説明した。1時間以上、丁寧に説明した。それでもなお『(ゴーン被告の使用したパソコンが置いてある部屋への)入室を拒む』ということだったので、必要な処分として鍵を解錠した」と説明した』、「菊地会長の談話では、「押収拒絶権が行使され、立入りを拒まれているにもかかわらず、検察官らが、裏口から法律事務所に侵入し、要請を受けても退去せず、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、執務室内をビデオ撮影するなどしたことは、正当化の余地のない違法行為である」と断じている」、その通りだ。
・『結局パソコンは押収せず  また、検察が鍵を壊したことが違法ではない理由の1つとして刑事訴訟法111条を挙げた。ここには「差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる」と定めている。 もっとも、室内の鍵を壊したものの、”目的”とするパソコンは押収しなかった。「パソコンの中のデータのうち、秘密と認められるものとそうでないものとに切り分けて提出を求めたが、『応じられない』と言われたのでパソコンの押収は控えた」(斎藤次席検事)。 では、何を押収したのか。斎藤次席検事は面会記録を押収したことを認めた一方、それ以外について「1個1個、細かくお答えするわけにはいかない」とした。菊地会長の談話によれば「検察官らが押収に至った物は、弁護士らが捜索の始まる前に任意に呈示していた書面等1袋のみ」である。 面会記録は東京地方裁判所にその写しを弘中弁護士が定期的に提出していたもの。家宅捜索をしてまで押収するほどなのかは疑問だが、斎藤次席検事は「裁判所から入手できるが、それが正しいかどうか確認する必要があった。提出しているもの以外の面会記録があるかもしれないので、それを確認したかった」と主張した。 菊地会長は「違法な令状執行に抗議するとともに、同様の行為を二度と繰り返すことのないよう求める」と談話を締めくくっている。2018年11月のカルロス・ゴーンの逮捕から密出国という事態に発展した今回の事件。前代未聞のケースとはいえ、令状執行と刑事訴訟法111条を盾に、逃亡の証拠探しに強引な手法を使ってもよいことにはならない。日弁連は「刑事司法の公正さを著しく害するもの」としており、東京地検は今回の捜索の正当性を改めて説明すべきだろう』、「結局パソコンは押収せず」、何のための「家宅捜索」だったのか、よく理解できない暴挙だ。法律を駆使して抵抗した「弘中弁護士」はさすがだ。

次に、『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏が2月17日付け東洋経済オンラインに掲載した「ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/330145
・『カルロス・ゴーン元日産会長が、自らの「母国」に逃亡してから約2カ月。ゴーンは、2022年ごろ引退した後、コンサルタントとして世界中の裕福な顧客を相手に商売する未来を思い描いていたが、そううまくいきそうもない。それどころか、実際には四国の半分程度の大きさしかない国を出られないまま一生を終える可能性もある。 しかも、目下レバノンはまさに崖っぷち状態にある。レバノンに住むエコノミストで弁護士のカリム・ダーハーに言わせると、「デフォルトまで秒読み状態」だ。レバノンは3月9日までに返済期限を迎える債務12億ドルを抱えており、目下の焦点は求められている利息を無事に返済できるかどうか。大手格付機関は債務不履行の可能性も鑑みて、相次いでレバノンの国債格付けを引き下げている。 一部ではロシアによる救済も取り沙汰されているが、レバノンの有力シンクタンクの1つクルナ・イラダは、レバノンの財政はもはや壊滅的で一刻も早く債務不履行を経て、一大リストラを敢行しなければいけない状況にある、と訴えている。 「多くのエコノミストは口をそろえて、レバノンの現在の状況は過去に債務不履行に陥ったアルゼンチンやギリシャ、アイスランドなどと比べてもはるかにひどいと言っている」と、レバノンの有力シンクタンク、クルナ・イラダのポリシーディレクター、シビル・リスク氏は話す。「この国は今すぐにも債務不履行に陥るかもしれないうえ、ベネズエラのように貨幣価値が急落してハイパーインフレに襲われ、失業者があふれ、預金封鎖に至るかもしれない」。 「いずれにせよレバノンは、年内に債務の金利40億ドルを支払わなければならないのに、ドル建ての外貨準備高は100億ドルしかない。この外貨準備はレバノンの生命線だ。レバノンは製造業も輸出も盛んでない一方、輸入額は大きい。ドルが底をつけば、即座に食料や衣料品が不足することになる」(リスク氏)』、2月19日付け日経新聞は「レバノン、デフォルト危機 迫る国債償還 IMFに支援要請」と報じた。IMFが支援する場合には、様々な厳しい条件を付けるので、「レバノン」経済社会の混乱は必至だ。「ゴーン氏」の場合、財産はタックスヘイブンに預けているのだろうから、「デフォルト」の直接の影響は及ばないだろうが、「レバノン」国民の反感が強まることは必至だろう。
・『かつては「中東のパリ」と呼ばれたが…  「中東のパリ」と呼ばれるレバノンはかつて活気にあふれていた。が、いまでは人々が夜な夜な集まったクラブやレストランには誰もいない。昼間にもかかわらず、通りにも人はまばらだ。国立競技場を当初デザインしたザハ・ハディット氏がデザインした高級ショッピングモールにいたっては恐ろしいほどガラガラである。 長年の失策と縁故主義による癒着もあり、公的債務額はGDPの152%に上るなど、レバノン経済は厳しい状況にある。カーネギー研究所の最近の調査によると、レバノンの人口の40%以上が間もなく貧困ラインを下回り、多くの人が中流階級から転落する可能性があるという。ダーハーによると、「法学生の40%が今年授業料を支払うことができない状態」だ。 レバノン人のディアスポラはかつて、海外で稼いだお金をレバノンに送金した。外国人投資家は、レバノン中央銀行が提示する非常に高い金利や、ベイルートで加熱する不動産市場における不動産価格の上昇を享受することができた。 しかし現在、こうしてレバノン経済を「支援」してきた人たちが次々と、自らのドルを引き出している。国の経済状態、シリアの内戦の影響、イランとアメリカとの間の戦争のリスクを恐れ、海外に住んでいるレバノン人は自らのドルは母国ではもはや安全ではないと考えているのだ。そのため、国の外貨準備は縮小している。 レバノン・リラも急落している。銀行は1500レバノン・リラを1ドルで両替しているが、街の両替商のレートは2300レバノン・リラで1ドルだ。ドルが非常に不足しており、ほとんどの銀行は1週間の引き出し上限を200ドルに制限している。 こうした行為は、財産権の侵害にあたる。「銀行がやっていることは違法だ。第一に、裁判所はレバノンの人々が預けたドルを返還するように銀行に命じることができる。そうなると、銀行は破綻を余儀なくされる。しかし、裁判所はそうしない。これによって銀行ではなく、人々が破産に追い込まれている」と、アラブ経済学者協会の会長サミル・アイタは説明する。 他国政府や金融機関は、NGOトランスペアレンシー・インターナショナルによる腐敗指数で138位のレバノンを財政的に支援することにうんざりしている。 「レバノンの政治家がプライベートジェットでパリに到着後、経済的支援を求めるのを見ると、少しうんざりする」とそっけなくコメントするのは、フランスとレバノンの外交関係者であるフランスの官僚だ。 レバノン政府は昨年9月30日、ドルでの輸入を石油、小麦、医薬品に制限することを決定した。これは、国が現在輸入する品目を必需品に制限しているからであり、必需品以外は輸入できないことを意味する。車を輸入するだけでも困難になっている。 レバノンが経済的地獄へと転落したことは、同国の銀行システムを使用して必需品を輸入してきた隣国のシリアの状況が劇的に変化していることも意味する。「シリアでは間もなく飢餓も起こるかもしれない」と、アイタは警告する』、「レバノンの政治家がプライベートジェットでパリに到着後、経済的支援を求めるのを見ると、少しうんざりする」、確かにこれでは、「経済的支援」をする気がしなくなるだろう。
・『国民にとってゴーンは「腐敗の象徴」  経済の急速な悪化は、レバノン人にとって恐ろしいものだ。レバノン人は、歴史上何度も極度の貧困に苦しんできた。20世紀初頭にゴーンの祖父であるビシャラ・ゴーンがブラジルに逃亡せざるをえなくなったのも貧困が原因だ。ベイルートから車で30分のところにある彼の出身地、マウント・レバノンは、これまで人類史上最悪の飢餓の1つを経験している。 1975年に内戦に入ったとき、レバノンは再び困窮した。当時、ゴーンは21歳。「1975年の内戦は基本的に、非常に裕福なキリスト教徒と、パレスチナ人を含む非常に貧しいアラブ人との間の格差が原因で起こった。若く裕福な私の元妻が馬に乗っていると、彼女が馬に与えようとしている砂糖を掴み取ろうと子供たちが彼女に向かって走ってきたそうだ」と、アイタは打ち明ける。 当時も今も、ゴーンの出身地である裕福なマロナイト派キリスト教徒の社会と、貧しいイスラム教徒のアラブ社会の間には、同じ敵意が深く横たわっている。「口座保有者の1%がレバノンの預金の60%を保有している」と、アイタは主張する。 レバノンでは、人口約600万人に対し、受け入れた難民の数は100万人以上に上る。こうした中、ゴーンはエリート層の腐敗の象徴と目されている。彼が住む家から800メートル離れた殉教者広場に集まるデモ隊は、ゴーンについて意見を求められると、「彼は泥棒だ」と答える。ゴーンが“余生”を送ることになったレバノンは、ゴーン同様これから何が起こるかわからない』、超格差社会で、「国民にとってゴーンは「腐敗の象徴」」というのでは、気楽に外出することなど夢のまた夢だろう。ガードマンに囲まれた暮らしを死ぬまで余儀なくされそうだ。

第三に、事件ジャーナリストの戸田一法氏が3月23日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定、司法は刑事責任を問えるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/232362
・『「私はいまレバノンにいる」――。無罪を主張しつつ、正々堂々と法廷で争うことなく日本から逃亡した元日産会長カルロス・ゴーン被告(66)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの罪で起訴=。日本政府は国際刑事警察機構(ICPO)を通じレバノンに身柄拘束を要請しているが、レバノン側は否定的な姿勢で、日本で公判が開かれる見通しは立っていない。一方で主役不在ながら、行政処分は既にゴーン被告の不法行為を認定し、司法も脇役(共犯)の公判で有罪を追認する可能性がある』、「司法」側の対応とは興味深そうだ。
・『日産の課徴金命令受け入れで不法行為認定  大きく報道されていないので気付かなかった読者の方も多いと思うが、金融庁は2月27日、ゴーン被告らの役員報酬を過少に偽って有価証券報告書(有報)に記載した金融商品取引法違反があったとして、法人としての日産に約24億円の課徴金の納付を命令した。 これに先立って昨年12月、証券取引等監視委員会(SEC)は同額の課徴金を納付させるよう金融庁に勧告していた。 SECは東京地検特捜部とともに事件を捜査(SECは行政機関なので正しくは調査)して同法違反容疑で地検に告発した、金融庁に属する「審議会等」の一つだ。そして、法令違反が認められた場合、行政処分を勧告するのもSECの役割だ。 もっとも、同法違反容疑で地検に告発した機関だから、告発した容疑内容に基づき勧告するのは当然の流れだったとは言える。 ゴーン被告と法人としての日産、共犯とされた前代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)の起訴内容は、ゴーン被告の2011年3月期~18年3月期の役員報酬が計約170億円だったのに、約78億円と記載した有報を提出したとされる。 日産の命令対象はこのうち、15年3月期~18年3月期の4年分。検査前は起訴内容を違反事実として課徴金は約40億円に上る見込みだったが、日産側が違反事実を報告して減額申請し、SECが認めていた。 日産は命令を受け「決定を真摯(しんし)に受け止める。告知書に従い国庫に納付する」とするコメントを発表していた。 つまり「市場の番人」であるSECの勧告を受け、金融庁も追認して日産に課徴金を命令。日産も受け入れたことで、行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定されたわけだ』、「行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定」、当然のことだ。
・『脇役の公判で刑事責任明らかに  では、ゴーン被告の刑事責任はどうなるのか。 昨年末まで1カ月に1回の割合で公判前整理手続きが開かれていたが、ゴーン被告の逃亡で一時停止された。 一方、日産とケリー被告は分離公判になることが決まった。初公判は4月21日に開かれる予定だったが、3月6日の公判前整理手続きで、尋問する証人や時間配分の調整に時間がかかるため、5月以降に延期されることになった。 東京地裁は初公判が開かれる予定だった4月21日を公判前整理手続きの期日に指定し、争点をさらに詳細に絞り込む方針だ。 冒頭、「主役不在」と書いたが、刑事訴訟法第83条第3項の規定で、被告と弁護人の法廷への出席を開廷の原則としている。 これは日本国憲法32条「裁判を受ける権利」で規定されているためだ。当事者や弁護人が出席しないで意見を述べる機会が奪われる「欠席裁判」はNGということだ。 だから、ゴーン被告不在でゴーン被告の公判を開くことはできないのだが、分離公判という形で日産とケリー被告の公判を開くことは可能だ。 主役は不在だが、脇役の公判を通じて判決が言い渡され、犯罪事実が認定されるケースは過去にもある。イレギュラーではあるが、こうした形でゴーン被告が有罪か無罪か、刑事責任が明らかになるというわけだ』、「脇役の公判を通じて・・・ゴーン被告が有罪か無罪か、刑事責任が明らかになる」、これでは興冷めだ。
・『起訴で有罪率99%以上の理由  それでは、日産とケリー被告の公判の行方はどうなるのか。 ゴーン被告は逃亡前、日本の刑事裁判で有罪率が99%以上であることを理由に「有罪が前提で基本的人権が否定されている」「公正な裁判は期待できない」などと日本の刑事司法制度を批判していた。 これは当たっている面もあるが、的外れな面もある。 というのは、起訴されると99%以上の確率で有罪という点はその通りだが、それは検察側が証拠を精査し、確実に有罪が見込める事件しか起訴しないから高い有罪率になっているにすぎない。 検察官が扱った事件のうち、起訴する割合は年々減少している。1985年は約6割だったが、05年には半分以下に。18年は約37%だった。 これは被告人になると公開の法廷に立たされ、公判の準備で相当な時間を費やすため、精神的・経済的な負担が大きく、無罪の可能性がある人にこうした負担を強いるべきではないというのが検察側のスタンスだからだ。 だが、それが行き過ぎてしまうと起訴すべき事件も不起訴にしてしまうという弊害もありうる。 最近では学校法人「森友学園」を巡る一連の疑惑で、刑事告発された佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員らが不起訴となって捜査は終結した。 誰の目にも不正は明らかだったのに、集めた証拠や証言は法廷で公開されることもなかった。ネットでは「官僚に忖度(そんたく)」「上級国民はおとがめなしか」と批判が噴出していた』、「起訴で有罪率99%以上の理由」の1つに、「検察官が扱った事件のうち、起訴する割合は年々減少している。1985年は約6割だったが、05年には半分以下に。18年は約37%」、があったとは初めて知った。
・『裁判官の判断、分かれる可能性  それでは、起訴されたゴーン被告は逃亡しなければ99%以上の確率で有罪になっていたのだろうか。 実は、そうでもないようだ(以前の記事『ゴーン被告の海外逃亡に、検察が「ほっとしている」かもしれない理由』参照)。 「これまで(金商法違反の)虚偽記載で立件されたのはライブドア事件など粉飾決算が主で、報酬の虚偽記載が刑事罰として問われた例はない」(SECに出向経験がある公認会計士)ため、判例もないのだ。 SECを担当したこともある全国紙社会部デスクも「別に起訴された会社法違反(特別背任)の罪は明々白々な公私混同だから、こちらの有罪は堅かったと思う。だが、今回のケースは裁判官の判断も分かれるのではないか」との見解を示した。 日産は起訴内容を認める方針だが、ケリー被告は「報告書に記載すべき『確定した報酬』ではなかった」と無罪を主張。検察側が主張する共謀についても「ゴーン被告がサインした報酬の書面作成に関わっていない」と成立を否認している。 全国紙社会部デスクは「退任後の報酬受領は取締役会に諮り、株主総会での承認が必要だ。その手続きがなされていないのに、報酬が確定したと言い切れるのか」と疑問視した。 検察側が主張するこの点が否定されると、ゴーン被告はおろか、ケリー被告、罪を認める方針の日産も有罪にはならない。 共謀を巡るケリー被告の主張が容認されると、ケリー被告は無罪、ゴーン被告と日産が有罪となる公算が大きい。 もちろん、ケリー被告、日産ともに有罪ならば、自動的にゴーン被告の有罪も認定されるのは言うまでもない。 全国紙社会部デスクが「公私混同」と表現した特別背任は、日産の資金を私的に流用して損失を与えたとされる事件だ。 こちらの事件で日産は被害者であり、ケリー被告にも共謀の起訴事実はない。あくまでゴーン被告の事件だから、日本に戻らない限り公判が開かれる可能性はない。 日産とケリー被告の公判がどう決着するのか、行方が注目される』、無理がありそうな「(金商法違反の)虚偽記載」を裁判所がどう判断するか、1つの注目点だ。
タグ:東洋経済オンライン 日経新聞 ダイヤモンド・オンライン レジス・アルノー 戸田一法 ゴーン逃亡問題 (その2)(日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索、ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限、ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定 司法は刑事責任を問えるか) 「日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索」 「検察官らは、無断で裏口から同(原文)法律事務所に立ち入った」「再三の退去要請を無視して長時間にわたり滞留した」「ドアの鍵を破壊し、事件記録等が置かれている弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどした」 日本弁護士連合会の菊地裕太郎会長が東京地方検察庁の捜索を批判する異例の談話 狙いはゴーン被告が使ったパソコン 押収拒絶権 菊地会長の談話では、「押収拒絶権が行使され、立入りを拒まれているにもかかわらず、検察官らが、裏口から法律事務所に侵入し、要請を受けても退去せず、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、執務室内をビデオ撮影するなどしたことは、正当化の余地のない違法行為である」と断じている 結局パソコンは押収せず 「ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限」 レバノンの財政はもはや壊滅的で一刻も早く債務不履行を経て、一大リストラを敢行しなければいけない状況にある 「レバノン、デフォルト危機 迫る国債償還 IMFに支援要請」 かつては「中東のパリ」と呼ばれたが… 海外に住んでいるレバノン人は自らのドルは母国ではもはや安全ではないと考えているのだ。そのため、国の外貨準備は縮小 レバノン・リラも急落 「レバノンの政治家がプライベートジェットでパリに到着後、経済的支援を求めるのを見ると、少しうんざりする」 国民にとってゴーンは「腐敗の象徴」 「ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定、司法は刑事責任を問えるか」 日産の課徴金命令受け入れで不法行為認定 行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定 脇役の公判で刑事責任明らかに 脇役の公判を通じて判決が言い渡され ゴーン被告が有罪か無罪か、刑事責任が明らかになる 起訴で有罪率99%以上の理由 検察官が扱った事件のうち、起訴する割合は年々減少している。1985年は約6割だったが、05年には半分以下に。18年は約37%だった 裁判官の判断、分かれる可能性 (金商法違反の)虚偽記載 「退任後の報酬受領は取締役会に諮り、株主総会での承認が必要だ。その手続きがなされていないのに、報酬が確定したと言い切れるのか」と疑問視
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ネットビジネス(その8)(グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に、食べログ「高評価はカネ次第」疑惑勃発 騒動の原因はどこに?、公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」) [産業動向]

ネットビジネスについては、昨年11月24日に取上げた。今日は、(その8)(グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に、食べログ「高評価はカネ次第」疑惑勃発 騒動の原因はどこに?、公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」)である。

先ずは、本年1月17日付け東洋経済オンライン「グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325063
・『ネット広告業界に大きな衝撃が広がった。 グーグルは1月14日、世界シェア約6割を占める同社のウェブブラウザ「Chrome(クローム)」で、「クッキー」と呼ばれるユーザーのネット閲覧履歴のデータが第三者のネット広告企業などに提供される仕組みを停止すると発表した。2022年までに段階的に実施する方針だ。 クッキーを制限する動きはアップルが先んじていた。アップルのブラウザー「Safari(サファリ)」では2017年以降、段階的に制限の度合いを拡大。現在は実質的に、広告用にクッキーが使えない。 端末メーカーとしてユーザーのプライバシー保護の姿勢を強調していたアップルに、グーグルが追随した格好だ。「アップル対グーグルという、ネット上のエコシステムの争いが激しくなっている」(広告や検索のコンサルティングを手がけるプリンシプルの中村研太常務)』、「アップル」に続いて「グーグル」までもが、「第三者のネット広告企業などに提供される仕組みを停止」するとは思い切った措置に踏み切ったものだ。
・『クッキーは何に使われているのか  クッキーは1994年に考案された仕組みで、ウェブサイトが発行し、ブラウザ側に保存されるユーザーの閲覧履歴データだ。ネット通販サイトやSNSなどで、ほかのサイトに移動したり、ブラウザを閉じたりしても、ログイン状態や買い物途中のカートの中身を維持するといった目的で使われてきた。 その後、ユーザーの興味や関心、属性を分析するためにクッキーが活用され、いわゆる「ターゲティング広告」の配信が盛んになった。1人ひとりの閲覧履歴がわかるため、ある企業のウェブサイトに一度訪問したユーザーに対し、その企業が繰り返し広告を配信する「リターゲティング」も可能になった。その効果の高さから、「広告主は皆リターゲティングをやりたがる」(国内ネット広告事業者幹部)。 ログインの維持などのために、表示しているウェブサイトが発行するクッキーを「ファーストパーティクッキー」、広告配信業者がウェブサイトにタグを埋め込んで収集するのが「サードパーティクッキー」と呼ばれる。今回クロームで利用できなくなるのは、サードパーティクッキーだ。 このクッキーが活用できなくなれば、ネット上の行動を監視されているとユーザーが感じる場面は減る一方、ターゲティング広告の精度は落ち、自分の関心からかけ離れた広告が頻出する可能性がある。 クッキーを活用した広告配信プラットフォームを手がける企業は打撃を受けそうだ。「サードパーティクッキーが使えなくなると、1人ひとりのユーザーをピンポイントで特定することはできない。リターゲティングが難しくなる」。広告配信を手がけるマイクロアドの松田佑樹執行役員はそう話す。 リターゲティングビジネスで成長してきたフランスの広告大手クリテオの株価はグーグルの発表後、前日比約16%安と急落した。同社は急きょ、「グーグルの発表は全面的に支持する。個人識別のソリューションはクッキー以外にも広げている」とするコメントを発表した。 マイクロアドはクッキー活用が困難になることを見据え、近年リターゲティングビジネスを縮小。興味・関心が似たユーザーを集団でまとめ、ターゲティングする方式を拡大しているという。 一方で、広告やプライバシー問題に詳しい一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの寺田眞治常務理事は、「日本のアドテク(広告技術)業界はまだまだサードパーティクッキーに依存したまま。ブラウザで使えないとなると対応せざるを得なくなるが、代替するソリューションをすでに提供している海外企業に顧客を奪われる可能性がある」と指摘する』、「ターゲティング広告」のしつこさから解放される一方で、「自分の関心からかけ離れた広告が頻出する可能性がある」、のはやむを得ない代償なのだろう。「代替するソリューションをすでに提供している海外企業に顧客を奪われる可能性がある」、難し過ぎて私の理解力を超えているようだ。
・『それでもグーグルの地位は不変か  もっとも、広告が売上高の8割を占めるグーグル自身への影響は限定的とみられる。検索やEメール、地図、動画など、自社サービスのユーザーアカウントから多くのデータを集めている。フェイスブックも同様だ。「自社でデータを集めているプラットフォーマーはやはり強い」(前出のプリンシプル中村常務)。 グーグルは現在、クッキーに代わるターゲティングや効果測定の機能を広告事業者向けに開発中で、集団単位でのターゲティングに注力するとみられる。この機能を広告配信における業界標準にする取り組みも進める。 アップルのサファリなどのブラウザはクッキーを一元的に禁止する措置を講じているが、広告ビジネスが主であるグーグルは、ウェブサイト運営者が広告で稼げる枠組みを維持したい考えだ。 クッキーを使わず、個人を特定しない形のターゲティングは徐々に広がりつつある。閲覧中のウェブサイト内の画像をAI(人工知能)が分析し、関連する広告を表示したり、コンテンツのテキスト情報とマッチングした広告を見せたり、といった仕組みも登場している。 欧州の一般データ保護規則(GDPR)や、今年1月に施行したアメリカ・カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)など、個人情報保護をとりまく規制は各国で厳しくなる一方だ。日本の個人情報保護委員会も、クッキーに関する規制を今後強化する方針。広告業界は今後変革を迫られる場面が増えそうだ』、「日本」でも「クッキーに関する規制」を早急に強化してほしいものだ。

次に、2月18日付けダイヤモンド・オンライン「食べログ「高評価はカネ次第」疑惑勃発、騒動の原因はどこに?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228838
・『「食べログから、年会費を払えば店の評価を上げるという営業電話がかかってきた」――。そんな投稿が昨年10月5日ごろからTwitterで注目を集め、グルメ情報サイト「食べログ」に批判が集まっている。以前からの「やらせレビュー疑惑」などもあり、なにかと信用度に疑問符が付きがちな食べログについてITジャーナリストの三上洋氏に聞いた』、本当のところはどうなのだろう。
・『評価基準がまったくわからない  不特定多数の「素人」が飲食店の評価付けをするサイトとして知られる食べログ。これまでも、やらせレビューや検索結果の操作疑惑などを引き起こしてきたが、またもや騒動が発生した。 きっかけは昨年10月、飲食店がTwitterに投稿した「食べログの評価3.8以上は年会費を払わなければ3.6に下げられる」という疑惑。この投稿を発端に、複数の飲食店からも「同様のことがあった」と声が上がりはじめたのだ。 食べログを運営するカカクコムは「『食べログ』に関する一部報道について」という声明文を発表。「食べログとの何らかのお取引によって、お店の点数やランキングが変動するということは一切ない」と、疑惑を否定したが、ユーザーの不信感は拭えないまま。三上氏も「正確な調査をすべきだ」と話す。 「これだけ不正が疑われているならば、しっかりと食べログ側が事態を調査して、その内容も公開すべきです。あまりにも評価基準がブラックボックスなので、ユーザーや飲食店の信頼はなくなる一方です」 では、なぜ今回のような評価の操作疑惑が起こってしまったのか』、実態はどうなのだろう。
・『セールストークとアルゴリズムの仕様変更が重なった?  三上氏は「結論を先に言えば、食べログ自身が操作している可能性は極めて低いと思う」と前置きしたうえで、騒動の原因についてこう推測する。 「考えられる可能性は2つ。まずは、正規の代理店がセールストークで言ったパターンです。契約を取るために、食べログ本部に黙って、『点数を上げるためには有料会員にならないとだめですよ』と、セールストークをした可能性があります。ただ、これは代理店と直接契約している食べログの責任も発生するので、双方にリスクが高く、可能性は低いと思います」 食べログは40社ほどの代理店を抱えており、彼らの契約件数は有料店舗の7割を占めている。 もうひとつの可能性は、やらせレビュワーを派遣する代理店が関係しているパターンだ。 「彼らはレビュワーを抱えていて、お店から依頼料をもらい、実績のあるレビュワーを派遣する。その後、いいレビューを投稿し、店の評価を上げようとするのです。複数の飲食店関係者からこのようなレビュワー派遣は実際にあると聞いています。彼らが営業のトークで似たようなことを言ったのかもしれません」 食べログの点数評価は、単純にレビューの平均点ではなく、ユーザーのレビュー実績などさまざまなものに重み付けがされている。そのアルゴリズムによって点数がはじき出されるわけだ。また、そのアルゴリズムも頻繁に仕様が変わり、それによって点数も随時変化する。 三上氏は、今回の騒動は「セールストークとアルゴリズムの変更による点数変化がバッティングした可能性がある。セールストークとアルゴリズム変更による点数変化が連動したように見えてしまったのかもしれない」と推測した』、「やらせレビュワーを派遣する代理店」が存在するとは驚いた。競争激化もここに極まれりだ。
・『口コミによる評価は限界を迎えている  ただし、今回は1軒だけではなく複数の飲食店が同様の告発をしており、偶然が重なりすぎている面もある。「運営側がしっかりと調査すべきだ」と三上氏が話すように、オープンな調査結果が求められるだろう。 今回の騒動について記者は食べログを運営するカカクコムへ、メールで質問を送った。以下、回答を要約する(Qは聞き手の質問、Aは食べログの回答)。 Q:今回の騒動について調査や対策は行っているのでしょうか。 A:「飲食店向け有料サービスを含む食べログとの何らかのお取引によって、お店の点数やランキングが変動するということは一切ございません。 弊社の営業関係者には、飲食店向け有料サービスと点数・ランキングが関係あるかのように誤解を与えるような営業行為は固く禁じております。また、弊社の営業代理店に関しても、同様の営業ルールを記載した契約書を締結した上で、営業活動を行っていただいております。食べログのサイト、営業のパンフレットなどに営業に関する問い合わせ先を明示しており、飲食店からのご相談をお受けする体制を整えております」 Q:評価方法の説明は飲食店に行っているんですか? A:「食べログでは、各ユーザーの影響度によって重み付けされた評価をベースとして、お店ごとの点数を算出しています。各ユーザーの影響度は、食べログでの各種実績等から算出しています。点数の算出方法については、不正な点数操作を排除する必要があることから、詳細は非公開とさせていただいております」 以上がカカクコムからの回答である。食べログでは操作は一切しておらず、過剰なセールストークも禁止しているようだが、ではなぜ複数の飲食店から声が上がっているのだろうか。これだけでは疑惑は晴れないだろう。最後に三上氏は口コミの限界を指摘する。 「口コミによって評価付けを行う限り、不正や疑惑はなくならないでしょう。Amazonレビューや映画レビューでも同様の事態が起きており、今や口コミの信頼度は失墜しています。今後は、信頼できる身近な人や有名人の評価を気にするという、かつてのスタイルに人々は回帰していくんじゃないでしょうか」 食べログに限らず、これからも口コミや評価に関する同様の騒動は後を絶たないだろう。われわれは口コミ評価ビジネスを転換するフェーズに入っているのかもしれない』、「点数の算出方法については、不正な点数操作を排除する必要があることから、詳細は非公開」、というのは、グーグルなどの検索エンジンの順位づけでも同様で、やむを得ないようだ。「口コミによる評価は限界を迎えている」のは確かなようだ。

第三に、3月19日付け日経ビジネスオンライン「公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00131/031900006/?P=1
・『公正取引委員会は3月18日、グルメサイトと外食店の取引実態に関する調査報告書を発表した。これまで本連載で取り上げてきた店舗の評価・点数や、インターネット予約システムなどについて外食店が抱く不満の構造を明らかにし、「飲食店に対し優越的地位にあるグルメサイトが存在する可能性は高い」と指摘した。 調査は2019年4月~20年3月にかけて、グルメサイトの運営会社や全国の外食店約1600店、一般消費者約1万人などに対して実施した。独占禁止法違反となる恐れがある事例をまとめることで、グルメサイト業界に自主的な改善を促す狙いがある。 日経ビジネス電子版「グルメサイトという幻」で指摘してきたように、外食店はユーザーが店舗を検索した際に表示される順位や、食べログに代表される点数に対し、不満を抱いている。表示順位は外食店が林立する繁華街では、高額の掲載料を払っても上位に表示されるか分からない不透明性があり、店舗の点数や評価については算出する詳細な基準が明らかにされないまま、点数を上げようとすることに疲れた外食店が出てきている。 報告書によると、多くのグルメサイトでは、高額な掲載料を支払っている外食店が検索の上位に表示される。同じ料金プランの場合は、インターネット予約の空席数や閲覧者数、ポイント・プログラムへの参加の有無などで決まる。グルメサイトは外食店向けの広告媒体という性質を持っており、料金次第で掲載順位が変わるのは当然とも言えるが、「グルメサイトから集客のために表示順位を上げなければならないと言われると、高額プランを契約せざるを得ない」(外食店)ケースがあり、公取委は「優越的地位の乱用となる恐れがある」とした。 店舗の点数や評価についても、「飲食店が支払う手数料の有無は影響しない。不正を排除するため算出アルゴリズムの詳細は開示できない」とのグルメサイト側の主張に対し、「有料加盟店をやめたら大きく点数が下がり、再び有料に戻したら点数が戻った」など外食店の不満を例示しつつ、「有力な地位を占めるグルメサイトが特定店舗の評価を落とせば、差別取り扱いとなる恐れがある」とした。 公取委のアンケートでは、外食店の約3割が表示順位や点数に疑問や不満を感じ、ユーザーの約9割が決定アルゴリズムを知らないサイトがあると答えている。公取委の担当者は、「アルゴリズムが不透明だと、外食店は理由も分からず順位や点数が下がってしまって、不利益を被るのではないかと懸念がつきまとう。ユーザーも順位や点数が決まる背景が分かった上で、グルメサイトを店選びに活用できる方が望ましい」と話す。 スマートフォンの普及でインターネット予約が広まると、グルメサイトもネット予約に参入。外食店は予約客1人に対し、50~200円程度の送客手数料を払うようになった。予約客にポイントを付与するようになると、こちらも外食店が払う手数料が原資となった。このようにグルメサイトと外食店の契約関係は、変更を重ねてきた。報告書は約11%の外食店が「グルメサイトから一方的な契約内容の変更を受けたことがある」と答えたとし、「十分な意見の聞き取りが望ましい」と注意を促した』、「公取委」の「調査」は遅きに失したきらいがあるとはいえ、今後は厳しい姿勢で臨んでもらいたいものだ。
・『転換点になりうる  また、複数のグルメサイトを併用する外食店は、予約管理の業務を便利にするため、サイトの予約情報を収集してまとめる「予約台帳サービス」を使うケースが増えている。サービスを利用したことのある外食店の約13%が「サイトから予約管理システムの利用を控えるように求められた」と回答。公取委は、「グルメサイトから接続を遮断されれば、予約管理システム業者は競争上不利になる。また、外食店の予約管理業務の負担が重くなり、多くのグルメサイトと取引がしづらくなる」とし、独占禁止法上の問題(取引妨害)となる恐れがあるとした。 今回の報告書に対し、関係者からは外食店がグルメサイトに集客を依存する現状の転換点になり得ると評価する声があがった。予約台帳サービスを提供するテーブルチェック(東京・中央)の谷口優CEO(最高経営責任者)は「今回の報告書は広範囲に業界の問題点を取り上げてくれた。飲食店と消費者の間にいる中間業者(グルメサイト)が過剰に利益を得ている状況が、飲食店や消費者に不利益を与える。プラットフォーマーになり得る企業は透明性を高めることが必須だ」と話した。 別の飲食系ベンチャーは報告書を歓迎しつつ、「ユーザーがグーグルなど検索エンジンを使ってお店を検索したのに、結局グルメサイトの集客実績として積み上がってしまう問題にも触れて欲しかった」と話した。 今回の報告書は、店選びに欠かせない存在になったグルメサイトが、外食店に対して優越的地位を持ち、独禁法違反になりうると警鐘を鳴らした。ただ、この優越性は、グーグルマップやインスタグラムなどSNSで店探しをするユーザーの増加で、弱まっている。 報告書では、約85%のユーザーがグーグルなど一般的な検索エンジンを使って、飲食店の情報にたどり着いているとし、「検索エンジン事業者が、グルメサイトの競争者と評価できる場合は、本調査の考え方を適用する余地がある」とし、今後もグルメサイト業界の競争環境を注視するとした。グルメサイトからは「(グーグルなど)検索エンジンが、自社サービスの検索結果を優先表示されると困る」という不安の声も上がっている。 グルメサイトはグーグルなどの台頭を受けて、インターネット予約した来店客にポイントを付与することで、サイトパワー(集客力)を維持しようと腐心している。外食コンサルティング会社の幹部からは、「ポイントに魅力を感じるユーザーは今後もサイトを利用し続けるから、今回の報告書でサイトの運営が大きく変わることはないだろう。報告書は踏み込みが甘いところも感じる」と冷めた意見もあった。 日経ビジネス電子版は3月13日から、外食業界とグルメサイトの関係の変化を追う連載記事「グルメサイトという幻」を掲載しました。以下のリンクから記事をご覧ください。(リンク省略)』、「グルメサイト」の「優越性は、グーグルマップやインスタグラムなどSNSで店探しをするユーザーの増加で、弱まっている」、こうした分野での競争はまだまだ流動的なようだが、少なくとも「飲食店」に優越的地位を振りかざすようなことは、厳しく取り締まってほしいものだ。
タグ:公正取引委員会 ネットビジネス グーグル 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 一般データ保護規則(GDPR) (その8)(グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に、食べログ「高評価はカネ次第」疑惑勃発 騒動の原因はどこに?、公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」) 「グーグル「閲覧データ」提供停止に広がる波紋 ユーザーごとの「ターゲティング広告」困難に」 「クッキー」と呼ばれるユーザーのネット閲覧履歴のデータが第三者のネット広告企業などに提供される仕組みを停止 クッキーは何に使われているのか サードパーティクッキー このクッキーが活用できなくなれば、ネット上の行動を監視されているとユーザーが感じる場面は減る ターゲティング広告の精度は落ち、自分の関心からかけ離れた広告が頻出する可能性 代替するソリューションをすでに提供している海外企業に顧客を奪われる可能性がある それでもグーグルの地位は不変か アメリカ・カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA) 「食べログ「高評価はカネ次第」疑惑勃発、騒動の原因はどこに?」 「やらせレビュー疑惑」 評価基準がまったくわからない セールストークとアルゴリズムの仕様変更が重なった? やらせレビュワーを派遣する代理店が関係しているパターン 口コミによる評価は限界を迎えている 点数の算出方法については、不正な点数操作を排除する必要があることから、詳細は非公開 「公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」」 グルメサイトと外食店の取引実態に関する調査報告書を発表 飲食店に対し優越的地位にあるグルメサイトが存在する可能性は高い 転換点になりうる 優越性は、グーグルマップやインスタグラムなどSNSで店探しをするユーザーの増加で、弱まっている
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歴史(1)(塩野七生『新しき力』刊行記念インタビュー前編「私は二千五百年を生きた」、「私は惚れる相手 選ぶ男には自信がある」インタビュー後編、「恐怖の大魔王」チンギス・ハンの戦わない戦略 "プロパガンダ"を徹底して使い倒した) [文化]

今日は、歴史(1)(塩野七生『新しき力』刊行記念インタビュー前編「私は二千五百年を生きた」、「私は惚れる相手 選ぶ男には自信がある」インタビュー後編、「恐怖の大魔王」チンギス・ハンの戦わない戦略 "プロパガンダ"を徹底して使い倒した)を取上げよう。

先ずは、2018年1月27日付けBookBang: 新潮社「塩野七生『新しき力』刊行記念インタビュー前編「私は二千五百年を生きた」」を紹介しよう。
https://www.bookbang.jp/review/article/544523
・『「最後の歴史エッセイ」と決めて書いた作品が刊行されたばかりの塩野七生さん。選ばれた題材は、弱冠二十歳でマケドニアの王となり、三十二歳で夢のように消え去ってしまったアレクサンダー大王。なぜアレクサンダーを選んだのか、歴史を書く喜び、読む愉しみについて聞いた(Qは聞き手、編集者の伊藤幸人氏の質問)』、「塩野七生」の大ファンである私には、早く読みたくて気もそぞろだ。
・『Q:塩野さんが書いた文章がはじめて雑誌「中央公論」に掲載されたのが一九六八年。来年でデビュー五十年ということになります。今日はこの間のことをいろいろとお聞かせいただければと思っています。私がはじめて塩野さんと仕事をしたのは二十八歳のとき、三十五年前ということになります。 塩野 聞き手があなたでなければ言葉を選ぶところですが、今日はちょっとしゃべりすぎちゃうかもね。それにしても三十五年ですか。ずいぶんうまいこと続いたわね。喧嘩もせずに。 Q:どうしてでしょうね。私も至らないことがずいぶんありましたが。 塩野 私が外国にいたからよ。あんまり会わなかったっていうだけ(笑)。喧嘩もせず、非常にいい距離感で仕事をしながら、この三十五年を過ごしてきたわけです。 Q:歴史エッセイ、つまり塩野さんの定義するところの「調べて、考えて、歴史を再構築する作品」としては最後と決めてお書きになりました。 塩野 そう。これでおしまい。作家生命の終わりってわけ(笑)』、「歴史エッセイ」としては「これでおしまい」、冗談だろうが、「来年でデビュー五十年」、とはすごいエネルギーだ。
・『二十二年間、愛撫してきた  Q:最後の歴史エッセイ、編集作業を終えていかがですか。 塩野 これまでも一作ごと、「やった!」という感じで書いてきましたけれど、今度も「終わった!」という、ただそれだけです。あんまり私、過去は振り返らないので。振り返るほどの過去でもないし……。 Q:長大なマラソンを走り続けてきたみたいなものですよ。 塩野 まあ、そうかもしれません。誰も走らない道を。 Q:最後の作品をアレクサンダーでいくということは、ずいぶん前から伺っていました。一番最後に一番若い男を書く、と。有言実行ですね。先に宣言してしまって、それに向けて自分を追い込んできたということですか。 塩野 そんな格好のいいものじゃないんです。そんな真面目に考えていたら五十年も続かない。ただ書きたいなと、ずっとそう思っていたというだけ。イタリア語で「アカレツァーレ」っていうんです。「愛撫する」という意味。「書こうかな、書きたいな」という想いを愛撫し続けてきた。時にはコラムか何かでちょっと書いてみて、自分の気持ちを確かめたりして。そして、これ以上はもう待てないというところまで持っていくわけ。カエサルについて書こうかなと思っていたときなんて、カエサルの名前を耳にするだけで気分が昂ぶりました。そこまで行って、ようやく書ける。ずいぶん時間はかかりましたけれど、それでもきちんと書いたでしょう? 私、自分の人生はね、あんまりオーガナイズできないの。なんだか散らかった人生です。でも仕事はオーガナイズする。もう二十数年前のことだと思いますが、アレクサンダーを「書ける!」と思って、それからアカレツァーレ、愛撫してきた。愛撫はするけれども、ベッドインまではしていないという感じでね(笑)。 Q:ベッドインするまでに二十数年もかけたわけですね。 塩野 こんなこと言っちゃっていいのかしら、私。「波」の生真面目な読者には刺激的過ぎるかな。 Q:塩野さんらしい比喩です(笑)。 塩野 もともとアレクサンダーのことは、それほど好きではなかった。誰かの書いたものを読んで、なんだか優等生みたいなことばかり言うなという印象だった。しかしある時――『ローマ人の物語』の第四巻と第五巻でユリウス・カエサルを書き終えた直後の頃だと思いますが――大英博物館が企画したアレクサンダー展がローマに巡回してきて、それを昼下がりに見たんです。「イッソスの会戦」に代表される有名な戦闘を再現したミニチュアなんかを見ていて、「書ける!」と思った。「書きたい!」と。カエサルは「成熟した天才」でした。そのカエサルを書き終えた時だからこそ、「未完の大器」だった男を書きたい、書けると思ったんです。 Q:カエサルを書き終えた頃となると二十二年前ですね。 塩野 アレクサンダーという男は西洋史最大のスターの一人です。ヨーロッパ人であれば誰でも彼のことを知っている。それは彼が「永遠の青春」、その象徴だから。だけどおかしな話でね。『ローマ人の物語』だってはじめからローマの通史を書こうと思ってたんじゃないんです。ただカエサルが書きたかった。これは歴史家ブルクハルトの言葉ですけれど、歴史上にはなぜか過去がすべてその一人の人物の中に注ぎ込み、そのあとにやってくる時代のすべてがその一人の人間から流れ出すような、そういう人間がいるんです。 Q:カエサルがそうだったわけですね。 塩野 ソクラテスもそうかもしれない。イエス・キリストもそうです。卑近な例を挙げればエルヴィス・プレスリーもそう。黒人音楽やカントリー・ミュージック、ヒスパニックの音楽まで、何から何までもが彼に流れ込み、その後はすべて彼から始まる。ビートルズやローリング・ストーンズ――。だからカエサルを書こうと思ったら、彼の前の時代のローマを書かなければ話にならないと思ったし、彼のあとのローマも書かなきゃってことで、それであんな十五巻もの長い作品になったんですね。アレクサンダーも同じことです。うちの息子には「ママ、アレクサンダーだけを書くって話だったんじゃないの?」って言われましたけれど。いろいろとお勉強をしてみると、この人はマケドニア王ではあるけれど、やっぱり「ギリシア人」だと。となれば、ギリシア人の歴史すべてを書かないといけない。 Q:それで全三巻になったわけですね。 塩野 一巻のはずが三巻に増えちゃった(笑)』、「カエサルは「成熟した天才」でした。そのカエサルを書き終えた時だからこそ、「未完の大器」だった男を書きたい、書けると思ったんです」、「カエサルは「成熟した天才」でした。そのカエサルを書き終えた時だからこそ、「未完の大器」だった男を書きたい、書けると思ったんです」、長い年月、温めてきた上で、いよいよ著作になったのであれば、ますます読んでみたくなる。
・『ボーダーレスな生き方  Q:塩野さんは、単に「若い男」というよりは「精神が若い人」が好きですよね。つまり、若々しい精神。 塩野 粕谷一希(中央公論社の編集者。塩野さんのデビューのきっかけを作った)が言ったことだったかな。私の好きな男にはタイプがあるんですって。まずもってエリートであること。それでいて偏見から自由な男。つまり「ボーダーレス」な男が好きなんです。 Q:境界を越える男。アレクサンダーもその一人ですね。 塩野 通史を書く以上は、ボーダーを越えられなくてウジウジする男たちのことも書かなきゃならない場合もありますが、中心的な人物は必ずそういうタイプだった。神聖ローマ皇帝だったフリードリッヒ二世だってその典型ですよ。彼はドイツとイタリアのハーフですしね。 Q:逆に「純血主義」とか「頑迷固陋」とか、柔軟性の欠如した人々は許し難いともお考えですよね。 塩野 私が一番嫌いなのは、「狂信的」な人。なにしろ私自身がボーダーレスなんです。普通ならばお見合いして結婚するのが私の卒業した学習院大学の女の子の伝統なのに、ヨーロッパに行って、イタリア男と結婚し、子どもまで作っちゃった。これだけでも相当に型破りだったんです。今でも覚えています。最初にヨーロッパに向けて発ったとき、飛行機の座席に座って、「もう後戻りはできない。お見合いして、妥当に結婚するという道は、もはやない」と思った。当時はね、イタリア男は「ラテン・ラバー」とかって言われて、いたく悪名高くてね。そういう国に娘を送ることになったんだから、うちの両親もちょっとばかりは心配したかもしれない。 Q:それはご心配だったでしょう。 塩野 帰国して、お見合いしたとしても、「イタリアに一年いました」っていうだけで、なんというか、「傷がついてる」とまでは言わないけどね(笑)。そう思われたでしょう。しかし普通の道から外れることを、私は選んだ。だから境界を悠然と越える男たちが好きなんですよ。それにもう一つ、私はリスクを負う男が好きなんです。「一人で全責任を負う」という男が好き。 Q:アレクサンダーはまさにその典型ですね。今度の作品の中で僕らがもっとも魅了されるのは、常に戦闘の最前線に立つという点ですね。「ダイヤの切っ先」という比喩をお使いになっていましたけれど。 塩野 彼は部下たち、つまり兵士たちに愛されたんです。だって、いつだって誰よりも先にリスクを負って飛び出すのだから。人間ってみんな、そうじゃないかと思うんですね。リスクを負う人間を愛するんです。 Q:リーダーにとって絶対に必要な条件ですよね。リスクを取らないリーダー、常に自分の身の安全を図ろうとするリーダーには誰もついていかない。 塩野 アレクサンダーを書くということは、私自身がリスクを負うということでもあったんです。何しろこちらは八十歳で、二十代の男を書こうというのだから。最後まで安全な人生は選ばなかったつもりです。だから書き終えた今は少しくらい休んでもいいんじゃないのかなという気分です(笑)。うちの息子は信じませんけれど。「ママは書いているから生きてんだ」って言ってます。それで、あなたはこの作品はどうでした? 面白かった? Q:面白かった。胸がすく思いがしましたね。若さゆえに成し得た大偉業、若さゆえに駆け抜けた。まさに「永遠の青春」ですね。 塩野 私はもう老いぼれだけど、老いぼれた作家が老いぼれた主人公を書くというのはリスクを負っていないということになると思うんです。だってそれはごくごく自然なことじゃないですか。書評家たちは褒めてくれるかもしれないけれど。「ついに塩野七生も老境を書いた、枯淡の域に達した」とかいってね。でも私が最後の作品で背負うことができるリスクというのは何かといったらね、三十二歳で燃え尽きるように死んでしまったこの若い男を、八十歳になったこの私が書くということですよ』、「普通の道から外れることを、私は選んだ。だから境界を悠然と越える男たちが好きなんですよ。それにもう一つ、私はリスクを負う男が好きなんです」、なるほど。「私が最後の作品で背負うことができるリスクというのは何かといったらね、三十二歳で燃え尽きるように死んでしまったこの若い男を、八十歳になったこの私が書くということですよ」、ますます読みたくなった。
・『歴史を書く喜び、読む愉しみ  塩野 私は独自性とかオリジナリティなんて考えたこともないんです。かのアインシュタインが「われわれの仕事の成果は九十五パーセント以上、先人の業績に負っている」と言うんだから、私のような凡人は百パーセント近く先人の業績に負っているわけです。私はアレクサンダーを書きたいんであって、塩野七生を書きたいということではない。塩野七生の独自性がどこにあるかといえば、このアレクサンダーという人間を選んだという、それだけのことです。 Q:しかしこれで、古代・中世・ルネサンスと、地中海が西洋史の中心だった時代をすべて一人で書きましたね。 塩野 神話のような時代を含めれば二千五百年くらいですか。この仕事を始めた頃から数えれば五十年くらい生きてきたわけですが、しかし歴史を書くということは、その二千五百年を生きたということなんです。そしてそれは読者も同じことです。二千五百年を読むことで、二千五百年を生きることができる。これが歴史を書き、読む愉しみなの。私は読者にもそれを体験してもらいたいんです。 Q:塩野さんの後を追いかけて、歴史を追体験するようなものですからね。 塩野 私は「現代ビジネスマンのための世界史」というような本は死んでも書きたくありません。なぜなら、ビジネスマンのためになる史実、歴史だけをピックアップすることになってしまう。 Q:あとは捨象しちゃうことになります。 塩野 そう。それでは歴史を書いたことにはならない。それにもう一つ。作家としてはちょっとばかり打算的な計算もあるわけだ。 Q:打算的? 塩野 だって現代人のためだけに書いていたら、時代が変わってしまったときに困るじゃない。売れなくなっちゃうもの(笑)。そういうものって、必ずしも経済的に見ても利口なやり方ではないのではないですか? 時代に合ったものって、非常に早く時代遅れになりますから。 Q:しかし現代人のために加工した歴史は書かないとなると、読者に求める水準が高いとも言えませんか。 塩野 その通り。筋肉だってちょっと無理しないと強くならないじゃないですか。いつもできることばかりやっていたら筋肉は鍛えられない。頭脳もまったく同じなんです。 Q:でも塩野さんご自身は非常にビジネスマン的でもありますよね。 塩野 だってあなた、全力投球して書いた作品ですよ。いかに長い命を持たせるか考えるなんて、当たり前のことじゃないですか』、「二千五百年を読むことで、二千五百年を生きることができる。これが歴史を書き、読む愉しみなの。私は読者にもそれを体験してもらいたいんです」、「歴史エッセイ」を通して読む必要もありそうだ。
・『オープンな精神を持った人々に支えられてきた  塩野 といって私だって商売のことばかり考えているわけでもないんです。『アマデウス』という映画をご覧になりましたか。主人公のモーツァルトがお姑さんに何だか文句を言われているシーン。彼はそれをてきとうに聞き流しているわけですが、そんな時にあの『魔笛』の「夜の女王のアリア」のメロディが生まれる。ふっと……テイクオフするみたいに。「善悪の彼岸を超える瞬間」といってもいい。 Q:離陸する感じですか。ふっと。 塩野 いつまでも飛行場に留まっていては、私にとっては書く意味がない。テイクオフする瞬間がなければ、作家とは言えない。私の読者はみんなその瞬間を待ってくれているのですから。私の読者ってね、この五十年の経験から言えば、まずもって男女の別がない。年齢の別もない。地位の別もありません。大会社の社長がいるかと思うと看護婦さんがいたり、小さい町の町長さんもいるし、公務員もいれば、学者、学生もいる。もちろん主婦もいる。でも彼ら彼女らに共通するのは、自分の世界に安住しない人だということなんです。自分の知らない世界へとテイクオフする勇気を持っている人々。オープンな精神を持った人。そういう読者に私は支えられてきましたね。 Q:狂信的とは真逆の人々ですね。 塩野 私はこの五十年間、ボーダーを越える勇気を持った人々に支えられて書いてきたのです。(次号に続く/2018年1月27日頃配信)』、幅広い「読者」に「支えられて書いてきた」とは、小説家冥利に尽きるようだ。

次に、この続き、2018年2月5日付けBookBang: 新潮社「塩野七生「私は惚れる相手、選ぶ男には自信がある」――『新しき力』刊行記念インタビュー後編」を紹介しよう。
https://www.bookbang.jp/review/article/546156?all=1
・『50年もの長きにわたって作家生活を送ってきた塩野七生さん。歴史を書く上でもっとも大切なこととは何だったのか――。また、仕事をともにしてきた、忘れられぬ人々の横顔を語ってもらった。 Q:今作のあとがきにも書いておられますが、塩野さんは「中央公論」の編集長・粕谷一希さんと花形編集者だった塙嘉彦さんに見出される形でデビューを果たしたわけですが、お二人だけではなく、文藝春秋であれば社長にもなった田中健五さん、そして新潮社でいえば常務・新田敞(ひろし)という、私にとっては仰ぎ見るような大先輩と、塩野さんは仕事をしてきました。 塩野 彼らに加えて新潮社の先代の社長(佐藤亮一)ね。彼らはみんな私の年上なんです。だからちょっと甘ったれて付き合えるような感じがあった。新田さんに「売れない」ってボヤいたら、「だいたい君は売れるように書いているのか」なんて言い返されました。「いや、そういうわけでもないです」としか答えられなかった(笑)。「そのうち売れますよ」なんていなされましたね。粕谷さんにもよくお説教されました。デビュー作である『ルネサンスの女たち』には四人の女が登場するわけですが、その三人目「カテリーナ・スフォルツァ」の原稿を編集部に渡したところ、長いというので粕谷さんが二回に分けて掲載した。それで私が「あれは分断されたら困る」と抗議したら、「『中央公論』は原稿用紙にすれば全部で一千五百枚ぐらいだが、君の一篇は百五十枚もある。君に雑誌の十分の一をやるわけにはいかない。自分を中心にして世界が回っていると思ってはいけないよ」なんて叱られました。はじめはそういう編集者たちと仕事をしていた。そしたら、その人たちが全員なぜか同じ時期に社長になったり、偉くなったりしたものだから、各社とも若いのが担当になったというわけ。その中の一人があなたなんだけれど、困っちゃったわよね。 Q:そうでしょうね。まだ右も左もわからない若僧でしたから。前回も少し触れましたが、塩野さんとのお付き合いももう三十五年。私が二十八歳の時以来です。少し思い出話をさせて下さい』、ずいぶん優秀な編集者に囲まれていたのには驚いた。
・『編集者との悪戯  塩野 担当になった時、あなたはずいぶん年下でね。そのときに思ったのは、若い叔母さんと甥は何でも話せる仲だというけれど、その線でいくしかないと思いました。いまだにあなたのことを、クン付けで呼んでしまうのはそのせいね。あなたはいまや重役でもあるわけだけれど、まあ一人くらいはクン付けで呼ぶ人がいたっていいじゃないですか。 Q:親子というほどには離れていないし、弟にしては離れている年齢という間柄です。編集者とはいかにあるべきかをずいぶん教えられたと思います。当時は「新潮45+」という雑誌の編集部にいたのですが、初めて受け持ったのが塩野さんの「サイレント・マイノリティ」という連載コラム(現在は新潮文庫刊)。この連載で私は大ミステイクをしているんです。一九八三年三月のことですが。覚えていらっしゃいますか。 塩野 そんなこともあったわね。 Q:受け取った原稿に「凡なる一将は、非凡なる二将に優る」という言葉があったんです。ナポレオンの言葉ですが、指揮系統の一本化はそのくらい大事なことなんだと、ナポレオンは言いたかったわけです。ところが私は何を勘違いしたのか、変だなと思ってしまった。 塩野 それで、あなた、直したのよね。私に断らずに。「非凡なる一将は、凡なる二将に優る」と。 Q:その直後に「非凡なる一将は、凡なる二将に優る」とも書いておられるし、つい何かの書き損じかなと思ってしまったんですね。常識的に考えれば、この方が正しいに違いないと思いこんでしまったのです。国際電話をかければいいんだけれど、通信事情が今ほどよくない時代のことです。塩野さんも国際郵便で原稿を送ってくれていた。ファックスさえもまだない。 塩野 「凡なる頭脳で非凡なる文章を直すな」って怒ったわね(笑)。でも喧嘩は一度もしなかった。 Q:そうなんです。塩野さんはあまり怒りが長続きしない方なので(笑)、その大失敗をした後にも、いろいろと面白い仕事をしていただきました。まずは中曽根内閣の官房長官だった後藤田正晴氏に二人で会いに行って単独インタビューをしているんですね。後藤田さんは新聞の記者会見には応じるけれど、個別の対談やインタビューには一切応じない人で、ベールに包まれていた。 塩野 たしかイタリアから一時帰国している最中で、連載を休ませてほしいって言ったのよね。そしたらあなたが「それは困る」というから、「じゃあ対談ぐらいならばする」と。で、「じゃ、誰とやりましょう」とあなたが言うから、「うーん、そうね、後藤田さんあたりはどう?」って。 Q:ますます困ったのを覚えています。なにしろ個別取材には応じない恐い官房長官だというので有名でしたから。「そんな非現実的なこと言わないでください」って。 塩野 そうそう。でも会ってみるとけっこういろいろ話してくれたじゃない。 Q:後藤田さんがこんなに自分自身のことをあけすけに語ったのは珍しいと思います。 塩野 「新潮45+」ではほかにも対談をしたと思うんですが。 Q:そうです。当時の市民運動のプリンスだった江田五月氏と共産党の法律顧問だった弁護士の石島泰(ゆたか)氏。 塩野 石島氏の時はね、われわれはちょっとばかり策を練ったわけ。相手は共産党だと。よし、ならば舞台装置はブルジョアでいこうと。 Q:対談場所としてホテルオークラの部屋を用意しました。 塩野 シャンパンも用意しなさいって言ったんだったわね。 Q:なぜこの弁護士が注目を浴びたかというと、左派の弁護士にもかかわらず、田中角栄のロッキード裁判を批判したんです。ゴリゴリの共産党シンパが「田中角栄裁判というのは問題だ」と。実際あの裁判は確かに検察が無理をしているところがあった。で、その人に好きなように語らせたんですね。そしたら、しゃべり過ぎちゃったんです。共産党関係者としてはまずいことも、いろいろと。 塩野 そうだったわね。 Q:もう塩野さんに乗せられて、どんどんしゃべる。で、原稿ができて見せにいったら、ほとんどどこも使うな、ボツだって言い始めた。だけど、それはダメですと。実際にしゃべっているんだから。そんなのダメだと言って、載せました。 塩野 あのときは新田さんが英断を下したんですよね。「いや、このまま載せましょう」って。あれで当時の共産主義者の化けの皮を剥いだわよね(笑)』、「後藤田正晴」「官房長官」が初めて「単独インタビュー」に応じたり、「共産党の法律顧問だった弁護士の石島泰氏」が「しゃべり過ぎちゃった」、のも塩野氏の魅力のなせる技だろう。
・『仕事仲間に求めること  Q:私がまだ三十五歳で、編集長として「フォーサイト」という雑誌を創刊することになったときのことです。不安でいっぱいだったんですが、相談すると塩野さんは「あなた、部下を選んではいけない」とおっしゃった。で、その先がすごい。カエサルはまさにルビコンを越えんとするとき、彼がもっとも信頼する子飼いであるはずの第十軍団が来ていなかった。彼らを引き連れてルビコンを渡り、ローマに侵攻しようと考えていたんだけれど、現実には子飼いではない第十三軍団しかいない。しかし、もう時、満ちたりと。それで例の「賽は投げられた」となるわけです。ポンペイウスを中心にした反カエサル包囲網が作られていて、一刻もはやくローマに行かなければならないという状況ですから、カエサルは迷わず第十三軍団とともにルビコンを渡ったというんです。だからあなたも、部下を選んではいけない、と。この壮大な比喩には痺れましたね。塩野さんは若い人間へのアドバイスが本当にお上手です。 塩野 そんなことないですよ。私も楽しく仕事をしているわけだから、私の仕事に協力してくれる人たちにも楽しんでほしいと願っているだけのことです。楽しく、面白がって仕事をしていると、意外に成功しちゃうものですから。私もこうして五十年もこの仕事を続けられたのは、真面目なことばかりやってきたわけではないからかもね。 Q:相当な悪戯もしてきました。 塩野 編集者たちには悪いなとも思うのよ。なにしろこちらの頭がまだ整理されていないときに、長電話に付き合わせるでしょう? しかも長電話で話していたことが原稿になったときは、まったく違った形になっていることさえある。 Q:原稿にならないことだってありますしね。 塩野 でもね、対話っていうのはすごいものなんですよ。私があなたに話すわね。そして意が相手に通じる、それだけじゃないんです。自分の中で整理していくわけ、話しながら。司馬遼太郎先生はすごくおしゃべりだったと聞きますけれど、きっとご自分の中で考えを固めていったんじゃないかしら。黒澤明もおしゃべりだった。話しながら整理しているんだと思うんです。 Q:われわれは時には二時間、三時間と長電話することもありますね。 塩野 編集者はやっぱり原稿を書く上ではもっとも重要な協力者ですから。まだまだ粗の多い草稿を送った時なんかは、あなた方も文句があるでしょうけれど。でもいちいち粗探しをされるとゲンナリしちゃうわけ。だけど、パッと一つだけ何かいいことを言ってくれるだけでね、頑張ろうという気持ちになる。今でも覚えています。中央公論の塙さんの言葉ですが、「われわれは君が書いてる史実の結末を知っている。しかし、それでも読んでるうちに、サスペンスを感じる」と。そういうようなことを言われるとね、なんだか水をつけられたって感じで、お餅をつく手が元気づくのです。私にとっての一番いい編集者はそれです。餅つきの合いの手を入れてくれる人』、「カエサル・・・ルビコンを渡った」のにそんなエピソードがあったとは初めて知った。「われわれは時には二時間、三時間と長電話することもありますね・・・編集者はやっぱり原稿を書く上ではもっとも重要な協力者ですから・・・パッと一つだけ何かいいことを言ってくれるだけでね、頑張ろうという気持ちになる」、「編集者」の仕事は大変だが、重要なようだ。
・『完璧な白紙になる  Q:『ギリシア人の物語』に話を戻しましょうか。 塩野 最近思うことですが、理論的に言えばウィキペディアとAI(人工知能)を組み合わせればローマ史もギリシア史も書けるかもしれません。しかし、実際は書けないでしょう。というのは、ある資料をどう読み込み、解釈するかというのは、やっぱり書く人間次第なんです。なにしろ古代に関していえば資料というのはだいたいもう出揃っていて、上限は決まっている。つまり、決めるのはデータの量ではない。学者が書く歴史よりも作家が書く歴史が面白い理由はね、両者とも勉強することでは同じなんですが、学者たちはその過去のデータに囚われるからです。それに対して作家というのは過去のデータ、つまり資料の一行をどう読み込むかに自分の全精神、生命をかけるわけです。 A:学者でも作家でも人工知能でも、取り扱う資料データは一緒ですよね。公開されている情報です。 塩野 ええ。でも集めただけではダメ。読み込む必要がある。そして作家にとって一番面白い対象は人間です。でも学者はそうではない。人間に対して感情移入してはいけないことになっている。歴史の教科書から坂本龍馬だとかハンニバルが消されそうだと聞きますけれど、どうかしていると思います。歴史はやはり人です。 A:ハンニバルでいえば、彼は戦地で野営するときに、ほかの兵士たちとともに地べたで眠り、兵士たちがそっと彼に毛布をかけたという話が『ローマ人の物語』に登場します。これは公開資料に書かれていることですよね。学者は注目しないけれども、作家はそこからするどく何かを持ってくる。 塩野 佐藤優さんが言っていたことだと思うんだけれど、インテリジェンスも結局は公開資料がもっとも大事な情報源だって。歴史も同じです。 Q:大事なのは公開資料をどう読み込むかですね。 塩野 将棋の羽生善治さんがどこかで言っていましたが、われわれの頭脳と人工知能のどこが違うかというと、「汎用性」という言葉を彼は使っていました。つまりデータや資料が、誰にでもアクセスできる状態で、ある。しかし、そこに変なものをつなげたり、思いもよらないものと組み合わせることができるのが、われわれの頭脳だということなんです。歴史を書くときも同じです。大事なのは書く人間がどう公開資料を解釈し、組み合わせるかということです。 Q:なるほど。 塩野 とはいえ解釈ありきで資料そのものはないがしろにしていいということではありません。解釈を過信してはいけません。歴史や史実に対しては常に謙虚でなくてはいけない。「蟹は自分の甲羅に似せて穴を掘る」という言葉があります。つまり、塩野七生なんてつまらない女なのだから、私に合った穴を掘っていたら、小型の蟹しか入ってこないことになっちゃうでしょう。だから私は、この男を書くということだけ決めたら、あとは白紙なんです。書きたい対象を前にして、私は完璧な白紙になるの。だから、塩野七生のオリジナリティだとか、塩野七生の文体とか、そんなことは知ったことではない。自分の独自性を発揮しなきゃと思うと、本当に苦労すると思います。 Q:若い作家が陥りがちなところかもしれません。 塩野 現代の美術はパワーがないと私は思っていますが、それは独自性を求め過ぎだからだと思います。私はすべてのものは独自性を求めたときに、純なるパワーが失われると思ってます。少しばかり刺激的な比喩を持ち出しますが、男と恋愛するのが嫌、ベッドインするのが嫌だっていう女性がいますよね。彼女たちの言い分は、そういう関係になると主導権を失って、自分の個性が損なわれるからということなんだと思うんですが、私から言わせたら、そんなことで損なわれるような個性は個性ではない。愛した男の前で白紙になることを畏(おそ)れてはいけません。それにね、「死んで生きる」という考え方があると思うんです。 Q:死んでこそ、生きるということですか。 塩野 ええ。死んでこそ生きる。私は自分、塩野七生を捨てるわけですよ、書くたびごとに。 Q:そうすることで対象が生きる。生かす。 塩野 そう。そしてその対象を生かすことによって、私がまた生き返るわけ。塩野七生なんてたいした女ではないけれども、惚れる相手、選ぶ男には少しばかり自信があります。だから、今度の男アレクサンダーも魅力的なはずですよ』、「塩野七生なんてつまらない女なのだから、私に合った穴を掘っていたら、小型の蟹しか入ってこないことになっちゃうでしょう。だから私は、この男を書くということだけ決めたら、あとは白紙なんです。書きたい対象を前にして、私は完璧な白紙になるの。だから、塩野七生のオリジナリティだとか、塩野七生の文体とか、そんなことは知ったことではない」、凄い覚悟で創作に臨んでいることを知って、改めて「塩野」氏の偉大さを再認識した。さあ、読んでみよう。

第三に、歴史キュレーターの尾登 雄平氏が本年1月4日付け東洋経済オンラインに掲載した「「恐怖の大魔王」チンギス・ハンの戦わない戦略 "プロパガンダ"を徹底して使い倒した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/321139
・『「勝つためには手段を選ばない」「敵対する者は全員容赦なく抹殺する」と噂され、11世紀に「最強で最も血に飢えた征服者」として名を馳せたチンギス・ハン。しかし実は、彼は「戦わずして勝つ」という戦略を積極的に用いて、大モンゴル帝国を築き上げていました。 戦いの天才とも言われたチンギス・ハンの「戦う前に勝利する」方法。ビジネスマンの教養として知っておいて損はありません。『あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史』より抜粋してご紹介します』、「戦わずして勝つ」とは実に巧妙な戦略だ。
・『軍事力で支配を拡大する遊牧民族  東はモンゴル高原から西は西北ユーラシア草原(キプチャク草原)にいたるまで、ユーラシア大陸には広大な乾燥地帯が広がっています。うっすらと草が生えているものの全体的には乾燥し、樹木があまり生えない地帯です。この広大な草原地帯で活躍したのは、匈奴(きょうど)や突厥(とっけつ)、ウイグル、タタール、モンゴルといった遊牧民族でした。 遊牧という生き方は半砂漠地帯で必要最小限の生産力で人間生活を営むもので、馬や羊といった家畜が生み出す富に頼った経済的には非常に不安定な社会です。そのため、ひとたび野火や旱害によって草原が消滅したり、大雪や寒波が到来したりして食料が得られなくなると、一族を食わせるために農耕民が定住する村を襲って食料を調達してくる必要が生じます。 遊牧民は狩りや牧畜、そして掠奪が生活の一部だったので、そのまま個々が優秀な戦士でした。子どもの頃から馬を乗りこなし正確に矢を射る戦士と、しょうがなく鍬から槍や矛に持ち替えた農民兵の対決だと初めから勝負になりません。遊牧民は軍事的には農耕民族に対して圧倒的に優位な立場に立っていました。 一方で富は農耕民族が住む地帯から乾燥地帯にもたらされます。この二者は歴史的に、対決しつつも相互に依存する関係を成り立たせました。 初めて遊牧民を国家として統合したのは、紀元前8世紀頃に黒海北岸の南ロシア草原一帯を本拠地にしたスキタイです。スキタイは遊牧民族スキタイ人を支配者にして、農村や都市を含んだ地域連合国家でした。遊牧民だけで構成されるのではなく、遊牧民が国家に必要な農業生産機能や交易機能、物産生産機能を支配することで成り立つ遊牧国家の基本形をスキタイは作ったのでした。 ところ変わって、草原地帯の東方であるモンゴル高原で初めて成立した遊牧国家は匈奴です。匈奴が出現したのは、中国で秦の始皇帝が6国を制圧して初めて統一国家を作った時代。急速に軍事化する遊牧民族の脅威に対抗し、始皇帝は将軍の蒙恬(もうてん)を主将とする軍を草原地帯に派遣し匈奴を追いました。蒙恬は陰山山脈沿いに遊牧民族の中原への侵入を防ぐ長城を築いて帰還します。これがいわゆる「万里の長城」です。 その後、秦が滅びて漢の時代になり、冒頓単于(ぼくとつ・ぜんう)の下で匈奴は統一して強大化。漢と匈奴の戦争の結果、漢は匈奴に貢物を毎年納めることで和平を得ることになります。漢は匈奴の属国となったわけです。漢は匈奴の軍事力に頼り、匈奴は漢の経済力に頼るという体制が確立し、これは漢が滅び匈奴が分裂するまで続きます。 これはまさに、スキタイが作った「遊牧民の軍事力と農耕民の経済力が相互に依存する」という体制にほかなりません。 匈奴が分裂した後、モンゴル高原は鮮卑(せんぴ) 、柔然(じゅうぜん)、突厥といた遊牧民族が支配します。 その中で台頭していったのがテュルク系遊牧民族で、10世紀にアフガニスタンから北インドを押さえるガズナ朝を成立させ、カラ・ハン朝は西トルキスタンを支配下に収め、11世紀以降にはさらに西進して西アジアの中心都市バクダードを制圧。セルジューク朝を成立させました。遊牧民族の世界は中央アジアから西アジア世界まで広がっていったのです。 そんな中でユーラシア乾燥地帯の大統合を果たしたのがモンゴルでした』、「漢は匈奴の属国となった」、とは初めて知った。「スキタイが作った「遊牧民の軍事力と農耕民の経済力が相互に依存する」という体制にほかなりません」、なるほど。
・『遊牧世界を統合した「恐怖の大魔王」チンギス・ハン  13世紀の初めに東方草原に突如出現したモンゴルは、わずかな時間で東はサハリンから西はドナウ河口までを支配下に収め、ユーラシア大陸の政治・経済の大部分を手に入れました。これまで遊牧民族が駆け抜けた地帯をたどる形で、モンゴルは各地の既存の支配者・既得権益者を容赦なく滅ぼし、その上にユーラシア大陸全体がつながる巨大な経済圏を築き上げたのです。「パクス・モンゴリカ(モンゴルによる平和)」の時代の到来です。 モンゴル軍が破竹の勢いでユーラシア大陸を席巻できた理由は、もちろんモンゴル軍が強かったためです。騎馬を用いた機動力の高さ、最新テクノロジー兵器の導入、個々の兵の質の高さ、そして勝ち負けにこだわる遊牧民の気質にあります。 遊牧民は戦い方に恥という概念を持ちませんでした。前進して勝とうが退却して勝とうが不意打ちをして勝とうが勝ちは勝ち。逆に敗北することは恥となります。負けたが立派に戦った、という考えはありません。勝たねば意味がないわけです。 さらにもう1つモンゴル軍の強さの秘密が、徹底した情報戦にありました。モンゴル軍は次に攻略する都市に侵攻する前に、事前に使者を派遣し、いかにチンギス・ハンとその配下の兵たちが人間離れした連中かを宣伝させました。 「1人のモンゴル兵が大勢の住民がいる街に入り、街の住民を殺していくが誰も手出しができなかった!」 このような荒唐無稽な話を語らせることで降伏を求めるのです。そして素直に降伏した者は公正に扱うが、それでもなお抵抗した者は徹底的に殺戮します。大部分の者は殺し、すべての富を奪った後、一部の者は次の都市に送り出し、いかにモンゴル兵が恐ろしいか語らせるのです。) チンギス・ハンは「ペンは剣よりも強し」を経験から学んでおり、自分が恐怖の大王であることを宣伝し広めることで敵に恐慌を起こし、攻める前から士気を下げることに努めました。 例えばイスラムの年代記編者は、チンギス・ハンはこのように語ったと伝えています。 「男が味わえる最大の喜びは、敵を征服して自分の前に引きずりだすことである。敵の馬に乗り、敵の所有物を奪うこと。敵が愛する者たちの目を涙でぬらすこと。そして敵の妻や娘を、自分の腕にかたく抱きしめることだ」 チンギス・ハンはこの種の言説を、自分の品位を傷つけるとは考えずにむしろ奨励し、言葉や文字によって伝聞させる戦略を採りました。 このようなプロパガンダは後の世にも語り継がれ、「モンゴル兵=暴力・破壊・残虐・無知・野蛮」というイメージが、現在に至るまで染み付くことになってしまうのです。このような恐怖のイメージがつきまとう一方、モンゴル帝国はかつてない巨大な経済圏をユーラシア大陸全体に作り上げ、経済でもって世界を支配しようとしました』、「自分が恐怖の大王であることを宣伝し広めることで敵に恐慌を起こし、攻める前から士気を下げることに努めました」、確かに世界帝国を築く上で、誠に巧みな戦略だ。
・『次の大国の礎となって消えたモンゴル帝国  モンゴル帝国は大都(現北京)を都とする大元(だいげん)ウルスを中心に、中央アジアを支配するチャガタイ・ウルス(通称チャガタイ・ハン国)、イラン高原を支配するフレグ・ウルス(通称イル・ハン国)、ユーラシア西北草原を支配するジョチ・ウルス(通称キプチャク・ハン国)により構成された緩やかな形の連邦国家を構成し、陸上と海上の流通を掌握して世界交易圏を確立しました。 モンゴル帝国はユーラシア各地に都市・港湾・運河・道路を建設して流通網の整備を図り、銀を基本とする通貨体制を確立させて自由経済と通商振興策を採り、税率はほぼ一律に3.3%に抑えられました。 統治の面では宗教や社会など在地の勢力を単位にしてそれぞれ自治にゆだねモンゴルの慣習を強制することはありませんでした。宗教面でもモンゴル帝国は大変寛容で、キリスト教、仏教、イスラム教、その他諸々の宗教を人々は自由に信仰できました。モンゴル帝国は民衆の生活を保障するような統治はしませんでしたが、一方で生活にも干渉をせず、多文化・多人種・多宗教・多言語がそのまま帝国内にあることを認める社会体制でした。 初めて1つの経済圏として結び付けられたユーラシア大陸は、1310年から1380年まで続く長期の異常気象に襲われます。地震や洪水、疫病などの厄災が帝国各地を襲い、土台である経済が破綻し、次第に帝国は解体していくことになります。 大元ウルスは1368年に中原からモンゴル高原に戻って「北元(ほくげん)」として、明清帝国と並立することになります。フレグ・ウルスからはアク・コユンル(白羊朝)、カラ・コユンル(黒羊朝)、サファヴィー朝、そしてオスマン帝国が生まれていきます。 ジョチ・ウルスからはウズベク国家やカザフ遊牧国家、カザン・ハン国やクリム・ハン国、そして彼らと戦う中で力をつけてやがてシベリア一帯をのみ込んでいくロシア帝国が生まれていくことになるのです』、「生活にも干渉をせず、多文化・多人種・多宗教・多言語がそのまま帝国内にあることを認める社会体制」、世界帝国にふさわしい柔軟な体制だったようだ。「オスマン帝国」や「ロシア帝国」など「次の大国の礎となって消えたモンゴル帝国」だが、ロシアではいまだに「タタールのくびき」として、屈辱の歴史となっているようだ(Wikipedia)。
タグ:歴史 東洋経済オンライン オスマン帝国 ロシア帝国 (1)(塩野七生『新しき力』刊行記念インタビュー前編「私は二千五百年を生きた」、「私は惚れる相手 選ぶ男には自信がある」インタビュー後編、「恐怖の大魔王」チンギス・ハンの戦わない戦略 "プロパガンダ"を徹底して使い倒した) BookBang 「塩野七生『新しき力』刊行記念インタビュー前編「私は二千五百年を生きた」」 「最後の歴史エッセイ」 来年でデビュー五十年 カエサルは「成熟した天才」でした。そのカエサルを書き終えた時だからこそ、「未完の大器」だった男を書きたい、書けると思ったんです ボーダーレスな生き方 普通の道から外れることを、私は選んだ。だから境界を悠然と越える男たちが好きなんですよ。それにもう一つ、私はリスクを負う男が好きなんです 私が最後の作品で背負うことができるリスクというのは何かといったらね、三十二歳で燃え尽きるように死んでしまったこの若い男を、八十歳になったこの私が書くということですよ 歴史を書く喜び、読む愉しみ 二千五百年を読むことで、二千五百年を生きることができる。これが歴史を書き、読む愉しみなの。私は読者にもそれを体験してもらいたいんです オープンな精神を持った人々に支えられてきた 「塩野七生「私は惚れる相手、選ぶ男には自信がある」――『新しき力』刊行記念インタビュー後編」 編集者との悪戯 後藤田正晴氏に二人で会いに行って単独インタビュー 共産党の法律顧問だった弁護士の石島泰 しゃべり過ぎちゃった 仕事仲間に求めること カエサルはまさにルビコンを越えんとするとき、彼がもっとも信頼する子飼いであるはずの第十軍団が来ていなかった 「賽は投げられた」 カエサルは迷わず第十三軍団とともにルビコンを渡った われわれは時には二時間、三時間と長電話することもありますね・・・編集者はやっぱり原稿を書く上ではもっとも重要な協力者ですから パッと一つだけ何かいいことを言ってくれるだけでね、頑張ろうという気持ちになる 完璧な白紙になる 塩野七生なんてつまらない女なのだから、私に合った穴を掘っていたら、小型の蟹しか入ってこないことになっちゃうでしょう。だから私は、この男を書くということだけ決めたら、あとは白紙なんです。書きたい対象を前にして、私は完璧な白紙になるの。だから、塩野七生のオリジナリティだとか、塩野七生の文体とか、そんなことは知ったことではない 尾登 雄平 「「恐怖の大魔王」チンギス・ハンの戦わない戦略 "プロパガンダ"を徹底して使い倒した」 「最強で最も血に飢えた征服者」として名を馳せたチンギス・ハン 「戦わずして勝つ」 『あなたの教養レベルを劇的に上げる 驚きの世界史』 軍事力で支配を拡大する遊牧民族 漢は匈奴の属国となった スキタイが作った「遊牧民の軍事力と農耕民の経済力が相互に依存する」という体制にほかなりません 遊牧世界を統合した「恐怖の大魔王」チンギス・ハン ユーラシア大陸全体がつながる巨大な経済圏 パクス・モンゴリカ 徹底した情報戦 自分が恐怖の大王であることを宣伝し広めることで敵に恐慌を起こし、攻める前から士気を下げることに努めました 次の大国の礎となって消えたモンゴル帝国 タタールのくびき
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民主主義(その6)(「Siri デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状 議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か?【橘玲の日々刻々】、ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代 その本当の恐ろしさとは、堀潤氏「分断」テーマに映画 重要なのは“小さな主語”目線) [政治]

民主主義については、昨年3月11日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(「Siri デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状 議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か?【橘玲の日々刻々】、ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代 その本当の恐ろしさとは、堀潤氏「分断」テーマに映画 重要なのは“小さな主語”目線)である。

先ずは、作家の橘玲氏が昨年10月7日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「Siri、デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状。議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か?【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/216893
・『ブレグジット(EUからの離脱)をめぐるイギリスの混乱が収まりません。ボリス・ジョンソン首相は「合意なき離脱」も辞さない覚悟でEUとの交渉に臨もうとしましたが、経済への深刻な打撃を懸念した議会は離脱延期をEUと交渉するよう義務づける新法を可決しました。国民に信を問う前倒しの総選挙も否決されたジョンソン首相は進退窮まり、「(離脱延期を求めるくらいなら)野垂れ死んだ方がましだ」とまで口走っています。 それ以前にジョンソン首相は、EU離脱をめぐる審議を嫌って長期間にわたって議会を閉鎖するという奇策に出ました。この暴挙はEU残留を求める「リベラル」なひとたちに大きな衝撃を与えましたが、それは怒りというより困惑に近いものでした。議会閉鎖に抗議する集会のプラカードに、「Siri, What is Democracy?(Siri、デモクラシーって何?)」と書かれていたのが彼らの心境を象徴しています。SiriはiPhoneに搭載されているAI(人工知能)で、イギリス社会の現状を理解することも、これからどうすべきかを決めるのも、もはや機械に訊かなくてはわからなくなっているのです』、この記事のあと12月13日に保守党は総選挙で過半数を獲得して勝利し、本年1月末で離脱。EUとの通商交渉に臨むことになった。
・『戦後ずっと、日本人にとって米英の政治こそが理想でした。政治学者のような知識人は、「日本の政治が機能しないのは共和党と民主党、保守党と労働党のような二大政党制になっていないからだ」と決めつけ、強引なやり方で小選挙区制を導入しました。これによってたしかに自民党の派閥政治は解体されましたが、民主党の「政権奪還」の失敗後に実現したのは「一強他弱」であり「“戦後最長”の安倍政権」でした。 日本の政治が衆参のねじれで機能しなくなったとき、アメリカのような強力な大統領制を待望する論者がたくさんいました。ところが皮肉なことにそのアメリカで、ポピュリズムの権化のようなトランプ大統領が登場したことで、「(愚かな)国民が直接投票で最高権力者を選ぶ大統領制より、イギリスや日本のような議員内閣制の方がマシ」との主張が出てきました。隣国の大統領の存在もあるのでしょうが、いまや日本でも「大統領制が素晴らしい」という論者はすっかり影を潜めました。 しかし、「相対的にマシ」とされた議院内閣制でも、イギリス政治はブレグジットの大混乱で、イタリアでは右と左のポピュリスト政党が連立内閣をつくったものの、たちまち仲たがいしてさらなる混乱を招いています。 大統領制も議院内閣制も機能しないとなると、あとは独裁制ということになりますが、プーチンのロシアや共産党独裁の中国を見て、「あんな社会になりたい!」というひとはほとんどいないでしょう。これでは「なにをやってもムダ」で、「デモクラシーって何?」と訊いてみたくなるのもわかります。 いまはまだ「あきらめ半分」でも、イギリスがEUから強硬離脱し、来年の大統領選でトランプが再選されるようなことになれば、英米のリベラルは自国の政治や社会にかかわることをかんぜんにあきらめてしまうのではないでしょうか。 そんな絶望したエリートたちは、AIに悩みを訴えるのではなく、AI=機械による統治を求めるようになるのかもしれません』、「議院内閣制」が「一強他弱」で機能しなくなったのには、与党内が独裁制になってしまいがちな小選挙区制に負う部分も大きいと思う。中選挙区制を復活させ、まずは党内民主主義を回復させるべきなのではなかろうか。

次に、11月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した舛添要一氏へのインタビュー「ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代、その本当の恐ろしさとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221931
・『前東京都知事の舛添要一氏が『ヒトラーの正体』 (小学館新書)を出版した。自身の経験も織り交ぜながら、明快な文章で独裁者ヒトラーの実像に迫る入門書だ。長年にわたりヒトラーを研究し続けてきた舛添要一氏に、なぜヒトラーについて知らなければならないのか語ってもらった』、面白そうだ。
・『ヒトラー研究は政治学者の原点だった  ヒトラーについて「独裁者」「ユダヤ人の大虐殺」「親衛隊」など、断片的なワードを知っている人は多い。しかし全体像を把握できている人は意外に少ないのではないか。実は舛添氏も、かつてはそうだったという。 「初めてヒトラーに興味を持ったのは1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』。オーストリアの退役軍人の家族がナチスから逃れるために、徒歩で山を越えてスイスに亡命するストーリーです。主演ジュリー・アンドリュースの美声と豊かなアルプスの自然に魅せられ、ヨーロッパへ留学するきっかけにもなりました。多感な高校生のときに見たこともあり、ヒトラーが憎くてしょうがなかったですね」(舛添氏、以下同) ところが30歳手前の頃、留学先のミュンヘンで下宿屋のおじさんから「ヒトラーの時代が一番よかった」と告げられた。 「下宿はアメリカの研究者が多く、日本人は私だけでした。70歳ぐらいのおやじは『ヤパーナー(日本人)、ちょっと来い』と、私をお茶に誘ってくれる。日本とドイツは同じ枢軸国だったので気に入ってくれたみたいで、古いアルバムを開いて、『俺の人生の中で、ヒトラーの時代が一番よかった』とうれしそうに話をしてくれたんです。ミュンヘン郊外にはダッハウ収容所跡があり、見学するたびに、あまりにも悲惨なユダヤ人虐殺の歴史を教えてくれました。それなのに下宿に戻れば、おやじはヒトラーがよかったという。このギャップがずっと頭から離れませんでした」 それから50年間近くヒトラーの研究を続けてきた舛添氏だが、なぜ今になって、専門書ではなく入門書というかたちで発表したのだろうか。 「子どもが大学生と高校生になりました。父として、子どもたちが社会に出る前に、どうしてもヒトラーのことを語り聞かせたかった。民主主義の対極は独裁です。それなのに民主主義から独裁者が生まれてしまった。この歴史を知らなければ、民主主義は守れません。現代はトランプ大統領の誕生、ブレグジット、移民排斥を主張する極右政党の躍進など、世界中でポピュリズムが広がっている。ヒトラーが誕生した時代に似てきています」』、「初めてヒトラーに興味を持ったのは1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』、舛添氏にもそんな時代があったとかと、微笑んでしまった。「現代はトランプ大統領の誕生・・・世界中でポピュリズムが広がっている。ヒトラーが誕生した時代に似てきています」、とは不吉な予言だ。
・『なぜヒトラーがノーベル平和賞候補になったのか  もしヒトラーが第2次世界大戦前に死んでいたら、「ドイツ史上もっとも偉大な宰相になっていた」と舛添氏は分析する。 「ナチスの正式名称は、『国家社会主義ドイツ労働者党』です。ヒトラーの率いたナチスは右翼政党と思われていますが、政治手法は左翼のポピュリズムそのもの。労働者のための政策を次々と打ち出し、熱烈な支持を受けました」 第1次世界大戦に敗れたドイツは、国内総生産(GDP)の約20倍に及ぶ賠償金に苦しめられる。そこに1929年のウォール街大暴落に端を発した世界恐慌が重なり、1933年にヒトラーが政権をとる頃には、ドイツ全土に大量の失業者があふれかえっていた。 「ヒトラーはアウトバーンと呼ばれる高速道路などの公共事業を推進し、わずか3年で600万人いた失業者を完全雇用状態にしました。天文学的だったインフレの抑制にも成功し、経済は安定します。今で言う働き方改革も行い、労働時間を8時間に制限し、長期休暇も取得しやすくした。財形貯蓄の制度を整え、大型客船で労働者を海外旅行にも連れていったのです」 外交でもヒトラーは手腕を発揮する。 「ヒトラーは戦争で失った土地を外交と国民投票で次々と取り戻しました。自信と誇りを回復した国民はさらに熱狂します。そして1938年のミュンヘン会談では、これ以上の領土は求めないと声明を出し、戦争を回避したとノーベル平和賞の候補にもなったんです。もっとも、この声明はイギリス、フランスを欺いたもの。つまり、ヒトラーは約束を守るつもりはなかったのですが」 着々と積み上げる業績の裏で、ヒトラーは独裁体制の強化と戦争の準備を進め、ユダヤ人や障害者、同性愛者などへの激しい迫害も徹底して行うようになったのだ』、「ミュンヘン会談では、これ以上の領土は求めないと声明を出し、戦争を回避したとノーベル平和賞の候補にもなった」、初めて知ったが、「ノーベル平和賞」の政治性を再認識させられた。
・『トランプ大統領、ブレグジット… 世界各地のミニ・ヒトラー現象  舛添氏は、現在の国際情勢はヒトラーが誕生したドイツに似ていると危機感を募らせる。 「ベルリンの壁が崩壊して30年。ライバルがいなくなった資本主義は、リーマンショック、タックスヘイブンとやりたい放題で、格差も広がっていくばかりです。かつてのドイツのように職が見つからない、働いても報われないと、世界各地で人々が自信を失い、自国第一主義、移民排斥を主張する“ミニ・ヒトラー”に投票する。そして、そんな大衆の不満のはけ口に利用されるのが移民です。ユダヤ人がスケープゴートにされたのと同じ構造ですよ」 さらにヒトラーの編み出した宣伝活動は、SNSの登場でより効果的になっている。 「ヒトラーは、『真実でなくても、自分だけを一方的に褒め、責任は敵に負わせること』が宣伝の主眼だと述べています。まさにトランプ大統領がSNSでフェイクニュースを拡散させる手法です。『パンとサーカス』を求める大衆も真実かどうかは気にせず、面白いものなら受け入れてしまう。『うそは大きければ大きいほどいい』とも、ヒトラーは言っています。日本でも、『NHKをぶっ壊す』や『消費税廃止』としか言っていない政治家に、面白そうだと思って投票した人が相当数いたのではないでしょうか」 舛添氏は「ヒトラーを正しく知らなければ、再びヒトラーのような独裁者が現れたとしても恐れることもできない」と、ヒトラーの本当の恐ろしさを訴える』、「世界各地で人々が自信を失い、自国第一主義、移民排斥を主張する“ミニ・ヒトラー”に投票する。そして、そんな大衆の不満のはけ口に利用されるのが移民です。ユダヤ人がスケープゴートにされたのと同じ構造」、恐ろしいことだ。「「ヒトラーを正しく知らなければ、再びヒトラーのような独裁者が現れたとしても恐れることもできない」、その通りだ。早速、本を読んでみたい。

第三に、本年2月17日付け日刊ゲンダイが掲載した元NHKアナウンサーの堀潤氏へのインタビュー「堀潤氏「分断」テーマに映画 重要なのは“小さな主語”目線」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/269002
・『与党か野党か、賛成か反対か、右か左か――。自国中心主義に傾斜するトランプ米国やEU離脱を決めた英国など、世界各国で「分断」が深刻化している。賛否が割れる原発政策や米軍基地問題を抱える日本も例外ではない。そんな「分断」について、多くの現場を取材してきたのがこの人。来月7日にはドキュメンタリー映画の公開も控える。なぜ「分断」は生まれるのか。話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは堀潤氏の回答)』、興味深そうだ。
・『Q:「分断」をテーマに映画を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょう。 A:2020年は東京五輪・パラリンピックが開催される年ですが、一方で11年の原発事故から10年目の節目でもあります。僕は原発事故現場の取材を継続していますが、時間が経てば経つほど、現場でもさまざまな分断が深まってきていると感じます。例えば、被災した方と、していない方、賠償金をもらった方と、もらっていない方。賠償金をもらっている方の中でも、額の大小の差がある。被災した当事者から離れれば離れるほど、意識の感度も低くなります。そういう分断を私たちはどうやって迎え入れるべきか。何かできることがあるのではと思ったのです。 Q:被災地以外にも分断は存在していますね。 A:「分断」というキーワードで世界を見ると、米国のトランプ現象しかり、英国のブレグジットもそう。右か左か、移民排斥か多様性か、いわゆる中道というのがなくて、極右か極左か。極端なイデオロギーのぶつかり合いが起きているように見えます。私は北朝鮮の平壌にも取材に行きましたが、そもそも北朝鮮と日本との間には大きな分断がある。イスラエルとパレスチナの緊張が続く中で、ガザ地区という壁やフェンスで囲われた地域は、まさに究極の分断が起きていますよね』、確かに「分断」は、日本だけでなく、世界全体にも当てはまるキーワードだ。
・『「経済発展のためなら少数派切り捨ては仕方ない」という風潮  Q:「分断」の背景には何があるのでしょう。 A:ベースにあるのは、経済的に発展できるのであれば、「ある程度の少数派が切り捨てられてもしょうがない」という風潮。原発事故の現場でもそうでした。まだ震災や事故から救済されていない人の声が、「エネルギーや環境問題、経済対策を考えれば原発は必要だよね」という声にかき消されてしまう。中国の一帯一路構想の現場であるカンボジアなどでは、中国資本によって土地が強制収奪されています。香港で起きている大規模デモも、逃亡犯条例に若者たちが反発していると語られがちでしたが、その実、香港に対して中国の経済的覇権が強まっていったことへの危機感が背景にありました。 Q:経済的な格差が大きく影響しているのですね。 A:より大きいのは「経済システム」かもしれない。経済的豊かさの恩恵にあずかれない人たちは、イデオロギー以前に「目の前の生活がよくなるのであれば仕方がない」と考えざるを得ない。誰だって、自らの生活を成り立たせなければいけないわけですから。しかし、その先がどうなるのか、想像力が働かなくなっているように見えます。生活が支配されてしまっていると感じます』、「「分断」の背景には・・・経済的に発展できるのであれば、「ある程度の少数派が切り捨てられてもしょうがない」という風潮」、その通りなのかも知れない。
・『Q:映画で印象に残っているのは、堀さんが「大きい主語」を問題視していたことです。 A:これは僕自身が大反省しながら取材してきたポイントなんです。例えば、「震災から10年近く経過。被災地では今でも多くの方が苦しんでいます」と言ったとしましょう。すると、「堀さんよく言ってくれました。私はまだ古里に戻れず、復興住宅での暮らしなんです」「もう皆忘れちゃってるかもしれないから、どんどん言って欲しい」と拍手を送ってくれる人がいる一方、「堀さん、まだ被災地のレッテルを貼るのかい」「この10年間、どんな思いで風評被害と闘ってきたか分かるだろ」と言う人もいる。これは「被災地は」という主語が大きすぎるからなんですね。 Q:「被災地」とひとくくりにしても、いろいろな思いを持った人がいると。 A:じゃあ「福島」という主語はどうか。「福島は今も苦しんでいる」。これも違いますよね。福島には浜通りや中通り、他にも会津などがある。ひとくくりに「今も苦しんでいる」というのは誤りです。一部地域では帰還が始まっていたり、帰還が困難でも復旧復興に向かって何かしらの取り組みがあったり。一方で、先行きが見通せない地域もある。「大きな主語」を用いることは分断を招きます。 Q:「小さな主語」で語ることが重要であると。 A:例えば「○駅前で中華料理店を営んできた△さんは、震災から×年経った今も、元の場所で営業が再開できていません。夜、眠れない時があるといいます」――。こういう小さい主語で語ると、それは正しい正しくないではなく、「あ、そうなんだ」となりますよね。 Q:「事実」ということですね。 A:例えば、今蔓延している新型コロナウイルスの話なら、「中国人は」と言った瞬間に、いろんな中国の人たちを一緒くたにしてしまいますよね。逆に、「日本人はこうだ」「日本はこういう状況だ」と言われた時に、「どこの誰のことを言っているんだ」「私は違いますけど」と思わず反論したくなることもありますよね。一緒くたにしてしまうから、差別的な表現と捉えられてしまう。主語の置き方は丁寧に考えていかないといけないと思います。「香港人は」「北朝鮮人は」と大きな主語で語ることは、怖いことだと思いますね』、ただ、「小さな主語」で語ると、パンチが弱くなることもあるのではなかろうか。
・『デモ隊の抗議に涙を浮かべた香港の警官  Q:香港のデモ隊と警察が向き合う場面は銃撃もあり、緊迫感が伝わってきました。堀さんは「取り締まる側もまた香港人である」とナレーションしていますが、ここにも「香港人は」という「大きな主語」の弊害がありそうですね。 A:僕はどちらかというと、デモ隊の若者たちを撮ろうとカメラを構えていた。デモ隊の中で向き合った警官の目元をアップでのぞいていると、ある隊員は激しく抗議されたことにくやしい思いがあったのか、涙を浮かべていました。目頭を押さえて、何も言えなくなった同僚に「おまえはもういいから下がっとけ」と声をかける警官もいた。普段は暴力的な彼らのそういう姿を見て、「誰がそうさせたのか」「背景にある仕掛けは何だろう」と想像する気になれた。そう思えるからこそ、「小さい主語」目線は重要だと思います』、この場合は、確かに「「小さい主語」目線は重要だ」。
・『政治家の「分かりやすい言葉」に要注意  Q:取り締まる側と、取り締まられる側と2つに分けてしまうと、そこから先にある事実に、目が向かなくなってしまうと。 A:2つに分けて語るのは、シンプルで分かりやすいですよね。ただ、その分かりやすさで、自らの陣営を一気に広げていこうとするのは、政治的プロパガンダのセオリー。それに乗っていいのか、僕がそれを助長する装置になっていいのか、と思うんです。今はスマホやSNSが普及し、誰もがメディアになれる時代です。一国の大統領がSNSで人々の心を揺さぶる世の中ですから、注意深さは体得したいと思っています。 Q:日本の政治家はどうでしょう。 A:この間、討論番組で与野党の若手国会議員と一緒に議論したんですが、出てくる言葉は「大きな主語」のオンパレードでした。「社会はこうあるべき」「男性社会はこうで、女性社会はこうあるべき」とか、「政治は」「官僚っていうのは」とか……。僕は「皆さんちょっと各論で話しましょう」と持ちかけ、「こういう個別のケースがあった。他にも類似のケースがあった。どう手当てしていけばいいんですか」と聞くと、具体的な答えが返ってこない。これが国民が抱く政治への不信感のひとつかもしれません。 Q:政治に関心が薄いといわれる「若者」たちにとっても、「大きな主語」は分かりやすいのでしょうね。 A:今、ご指摘の「若者」というのが大きな主語になってますよ(笑い)。 Q:つい、使ってしまいました……。 A:いえいえ、僕自身もよくやっちゃうんです。「我々は」とか。いずれにせよ、「大きな主語」の先には、与野党問わず「選挙戦略」や「政治闘争への勝利」があるのでしょう。大きなビジョンへ向かっていくための「装置」かもしれない。そこをキチンと見極められる目を持ちたいですね。(堀氏の略歴はリンク先参照)』、「政治家」にとっては、「各論」(「小さな主語」)では賛成者が少なくなってしまうので、最大公約数的な「総論」(「大きな主語」)で賛成者を多くしようとするのは当然だろう。無論、「メディア」は自分なりの「主語」を選んでいけばいいのではなかろうか。
タグ:民主主義 橘玲 舛添要一 日刊ゲンダイ 小選挙区制 ダイヤモンド・オンライン (その6)(「Siri デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状 議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か?【橘玲の日々刻々】、ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代 その本当の恐ろしさとは、堀潤氏「分断」テーマに映画 重要なのは“小さな主語”目線) 「「Siri、デモクラシーって何?」と問いたくなるイギリスの現状。議院内閣制か独裁制か? あるいはAIによる統治か?【橘玲の日々刻々】」 Siri, What is Democracy? 戦後ずっと、日本人にとって米英の政治こそが理想 民主党の「政権奪還」の失敗後に実現したのは「一強他弱」であり「“戦後最長”の安倍政権」 日本でも「大統領制が素晴らしい」という論者はすっかり影を潜めました 大統領制も議院内閣制も機能しない 中選挙区制を復活 「ヒトラーが台頭した時代と酷似する現代、その本当の恐ろしさとは」 『ヒトラーの正体』 (小学館新書) ヒトラー研究は政治学者の原点だった 民主主義の対極は独裁です。それなのに民主主義から独裁者が生まれてしまった。この歴史を知らなければ、民主主義は守れません 現代はトランプ大統領の誕生、ブレグジット、移民排斥を主張する極右政党の躍進など、世界中でポピュリズムが広がっている。ヒトラーが誕生した時代に似てきています なぜヒトラーがノーベル平和賞候補になったのか ミュンヘン会談 トランプ大統領、ブレグジット… 世界各地のミニ・ヒトラー現象 世界各地で人々が自信を失い、自国第一主義、移民排斥を主張する“ミニ・ヒトラー”に投票する。そして、そんな大衆の不満のはけ口に利用されるのが移民です ユダヤ人がスケープゴートにされたのと同じ構造 「堀潤氏「分断」テーマに映画 重要なのは“小さな主語”目線」 世界各国で「分断」が深刻化 「分断」というキーワードで世界を見ると、米国のトランプ現象しかり、英国のブレグジットもそう。右か左か、移民排斥か多様性か、いわゆる中道というのがなくて、極右か極左か。極端なイデオロギーのぶつかり合いが起きているように見えます 「経済発展のためなら少数派切り捨ては仕方ない」という風潮 「大きい主語」を問題視 デモ隊の抗議に涙を浮かべた香港の警官 政治家の「分かりやすい言葉」に要注意
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