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日本の構造問題(その20)(「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ 給料が減って、経済成長も止まった、ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも、日本のリーダー「危機を語らず隠す」が招く大迷走 このコロナ対応を「失敗の本質」著者はどう見るか) [経済政治動向]

日本の構造問題については、5月19日に取上げた。今日は、(その20)(「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ 給料が減って、経済成長も止まった、ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも、日本のリーダー「危機を語らず隠す」が招く大迷走 このコロナ対応を「失敗の本質」著者はどう見るか)である。

先ずは、5月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの田原 総一朗氏と京都大学大学院工学研究科教授で元内閣官房の藤井 聡氏との対談「「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ 給料が減って、経済成長も止まった」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/46006
・『日本の財政は危機にあり、再建のためには消費税の増税が避けられないといわれている。それは本当なのか。京都大学大学院の藤井聡教授は「1997年の消費税増税がすべての間違い。失われた富は数千兆円規模になる」という。ジャーナリストの田原総一朗さんとの対談をお届けする――。(第3回/全4回) ※本稿は、田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『梶山官房長官は「俺は大蔵省にだまされた」と謝罪した  【田原】1997年に消費税増税があった。あの時、増税に反対した人はいなかったの? 【藤井】いました。橋本内閣の田中秀征しゅうせい経済企画庁長官は、鬼のように怒って反対したんです。経済企画庁には当時、マクロ経済がわかるエコノミスト、インテリが大勢いた。そのレクを受けていた田中・経企庁長官は「絶対やめろ」といった。ところが大蔵役人たちが橋本龍太郎さんのところに、「いや、絶対大丈夫です。増税してまったく問題ありません」とこぞって説明しにいった。 たとえば、官房長官だった梶山静六さんは当時を振り返って「大蔵省の説明を鵜呑みにした私たち政治家が(中略)財政再建に優先的に取り組むことを決断した」と語っています。 で、実際に増税したら経済がメチャクチャになった。それがわかってから、梶山さんは田中経済企画庁長官のところに行って、「俺は大蔵省にだまされた。この前はすまなかった。(消費税増税の確認をした)閣議のとき、あんたがいったとおりだった」と謝罪したという記録も残っています。 つまり、弱小官庁の経済企画庁エコノミストがダメだと口をそろえても、官庁の中の官庁、いちばん格上の役所の大蔵官僚が大丈夫だと請け合った。それでみんな「大蔵省のほうが正しいのだろう」と思って、“騙された”んです。それで増税した。 ところが、日本経済は1年でボロボロになった。1997年の消費税増税は日本の命運を分けました。太平洋戦争の命運が、ミッドウェー海戦の敗北で一気に尽きていったようなものだったんです』、1997年には消費税の他にも、社会保険料も引き上げ、さらに医療費自己負担増加も合わせ、合計9兆円もの国民負担増加をもたらし、アジア通貨危機、山一証券・北海道拓殖銀行の破綻を放置したことも相まって、日本経済は深刻な大不況に見舞われた。「大蔵官僚」の安請け合いが如何にいい加減であったかを如実に示した。
・『消費税5%から日本国民の“貧困化”が始まった  【藤井】1997年の消費税増税によって日本がダメになったことは、GDP成長率、家計消費、賃金などあらゆる尺度が実証的に示しています。 政府の資金供給量が急激に減って、実質賃金も激しく下落しました。つまり国民が“貧困化”してしまったんです。世帯所得が減ったこと、サラリーマン・サラリーウーマンの給与が減ったことを示すグラフをご覧ください(図表1、2)) 【田原】日本人の受け取り額は、絵に描いたように減り続けている。 【藤井】こうなることは、実証的のみならず理論的にも明白です。バブルが崩壊して成長が急速に鈍化した不況のとき増税すると、経済はさらに悪化してデフレーション、つまり経済規模の縮小が始まってしまう。 世の中でおカネがグルグル回って生産や消費をしているとき、貨幣循環のあらゆる局面でおカネを取ってしまうのが消費税。医療で体内にたまってしまった血・体液・うみなどを外に出すために入れる管や袋をドレーンといいますが、あれと同じです。あらゆる血管にドレーンをさして血を抜き続けていれば、そりゃ血も循環しなくなるでしょう。体力もどんどん弱くなっていく。 世帯所得は消費税増税の1997年から一本調子で下がっています。給与所得は消費税率を5%、8%、10%と上げるたびに、ガクガクと下がっています。 だから、デフレ脱却前には絶対に増税してはダメで大至急、消費税増税の凍結、つまり「消費税0%」を実現すべきだ、と申し上げています』、これまでの「消費税引き上げ」には問題があったとはいえ、これから「消費税0%」にするのには反対である。異次元緩和の下で、そこまでやると、日本売りとなって、円安、国債暴落が発生するリスクがあるためである。
・『財政を悪化させた真犯人は「消費税増税」  【田原】貧困化や格差の拡大を招いたのは、新自由主義をやった小泉純一郎・竹中平蔵コンビだという人が多いけど、これも違うね。小泉内閣は2001(平成13)年4月から2006(平成18)年9月までです。小泉時代は、むしろ下げかかったものの傾きを抑えているじゃないか。【藤井】まあ、それはたまたまアメリカが好景気で外需が伸びたからです。それはさておき、支えようとしていたので残念でなりませんが、実質賃金は第二次安倍晋三内閣のもとで激しく凋落しています。実質賃金を短期間でこれだけ低下させた内閣は、戦後においては安倍内閣以外にない。実質賃金が7%も減ってしまっています。 【田原】「貧すれば鈍する」というけれども、カネがなくなってくると、経済以外のものがダメになっていく。どうですか? 【藤井】おっしゃるとおりです。GDPが大きいのは、みんな所得が多く貧困が少ないということですから、国民に余裕が生まれ、芸術や文化もさらに発展していく。 あとで話が出ると思いますが、格段に強い外交力も発揮できる。研究開発投資も旺盛で、科学技術力も、もっと高まる。リニア新幹線も通っているし、都市開発も防災対策も進んでいる。ノーベル賞をもっとガンガン取れる国になっている。 【藤井】つまり、GDPが順調に成長していけば、日本はいまよりもはるかに経済大国、文化大国、生活大国になっていたはずです。ところが、現実は逆になった。1997年の消費税の増税が、そうしてしまった。みんながお金持ちになれば、税収も増えて、政府の財政もいまよりはるかにラクになったはずです』、その通りだ。
・『消費税増税でデフレ…日本だけが世界から取り残された  【藤井】「赤字国債」発行額の推移グラフを示しておきます(図表3)。日本は昔からガンガン赤字国債を出して、列島開発なんかをやったと思っている人がいるかもしれませんが、違います。 1997年までは10年間の平均でたった3兆円ちょっとしか出していません。それが増税してデフレになったことで、一気に10年平均で23兆円まで増えてしまった。したがって、財政を悪化させたのもまた消費税の増税なんです。いま国債発行額は30兆円から40兆円時代になっています。 【田原】日本がデフレで苦しんでいる間に、欧米はふつうに成長していたわけね。 【藤井】はい。日本だけが置いてけぼりになってしまった。日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、その他という五つに分けて、1985年から2015年まで30年間のGDPの推移を示したのが、下のグラフです(図表4)。 【図表】世界の中で日本だけが取り残された田原総一朗・藤井聡『こうすれば絶対よくなる!日本経済』(アスコム)より  まず目に付くのが、アメリカの一本調子の成長。そして2005年前後からの中国の急成長。これは6年前までのグラフですから、米中の差はさらに縮まっている。 【田原】アメリカは、何があってもへこまないんだ。すごいな。リーマンショックでも傾きが気持ち緩やかになっただけで、すぐ元通りになっている。 【藤井】その他は新興工業国や途上国で、2000年代になって急成長した。欧州と日本は、90年代後半に沈んだ点が似ていますが、その後、横ばいから下り坂は日本だけです。リーマンショック後の落ち込みも、欧州より日本のほうが激しい。 グラフの始まり時点で、日本のGDPの世界シェアは約20%でした。いまは6%以下。中国の半分以下で、アメリカの5分の1の国になってしまった』、GDP成長率の低さに加え、円安も大きく影響している。
・『「そんな国は日本だけ」過去20年でマイナス20%成長  【田原】消費税増税で、日本はここまでダメになった。 【藤井】はい。30年間で数千兆円規模というような大きな富を失った。税収も数百兆円規模で失った。日本のプレゼンスも著しく失われた。その結果、アメリカも中国もロシアも、日本を軽んじるようになってしまった。 最後にもう一つグラフを示します(図表5)。これはいま見た30年間のうしろ3分の2、20年間の各国のGDP成長率を、高い国から並べたものです。 世界平均は139%。中国は1400%というとんでもない成長をしていますが、当然ながら成熟国家は、それほど高い成長はしていません。先進国、とくにヨーロッパ各国は、だいたい世界平均より下に並んでいます。 【田原】南アジアやアフリカのように、国民が若くこれまで貧しかった国は当然、高成長する。高齢化が進んだ国は高成長しにくい。移民を受け入れるアメリカは、若く働き盛りの100万人くらいの集団が国内で毎年生まれるから成長する。 【藤井】この悲しいグラフでわかるように、世界でダントツに取り残されてしまった国がわが日本です。つぶれかけているんじゃないかといわれた南欧諸国すら、何十%か成長しています。いちばんダメな日本は、なんとマイナス20%成長なんです。 日本政府も財務省も、メディアも経済学者も、なぜこんなことになったのか説明すべきです。そして、日本の過去の経済政策が間違っていたことを認め、まともな政策に転換しなければなりません。 プライマリーバランス規律をはずしたうえでの「消費税0%」が、その大いなる一歩となる。日本は、いますぐそうすべきなんです』、前述の通り、異次元緩和という極めてリスキーな政策をやっているので、「消費税0%」はリスクが大き過ぎる。まずは、2%分を元に戻す程度で様子を見るべきだろ思う。

次に、5月30日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの岩崎 博充氏による「ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/430772
・『日本のワクチン接種が他国に比べて遅れている。先進国どころか、世界全体で見ても大きく遅れていると指摘されている。メディアは連日、ワクチン接種率が世界的に見てどん底に近いと報道し続けている。 実際にNHKの報道によると、世界のワクチン接種回数は累計で、中国の約4億5000万回(5月21日現在)を筆頭に、アメリカが2億7000万回、インドが1億8000万回なのに対して、日本は750万回と2桁も違うのが現実になっている。 こうしたワクチン接種の遅れを、メディアはさまざまな角度からさまざま方法で分析しているが、その大半が「国内ワクチン開発の遅れ」や「ワクチン接種の準備不足」「ワクチン接種の現場での混乱」「東京五輪を優先した弊害……」といったアプローチでの分析となっている。 とりわけ、メディアの格好の取材対象となっているのが、各自治体でのワクチン接種の混乱ぶりだ。余ったワクチンを捨ててしまう、行政のトップが医療関係者と称して先に接種するといった話題が、日々機関銃のように報道されている。 しかし、日本のワクチン接種の遅れは、もっと奥深いところ、根源的な部分にあるのではないだろうか……。一部メディアでは「日本人の完璧主義による弊害」や「法律の不備」といった曖昧な部分での指摘も相次ぐ。毎日毎日、同じニュースを流し続けるテレビや新聞に対する弊害を指摘する人もいる。 なぜ、「日本のワクチン接種は遅れたのか……」。今回のパンデミックによって、日本政府はむろんのこと、日本国民全体でも「リスク管理」がきちんとできていなかったことは間違いない。とはいえ、日本人全体が能天気に平和ボケしてきたわけでもない。現場は、いまでも24時間体制でコロナと戦い続けている。なぜ、こんな状況になったのを正しく分析することで、次の「有事」の糧としなければならないだろう』、興味深そうだ。
・『日本のワクチン接種が遅れた4つの要素  すでにさまざまなメディアで報道されているように、日本の新型コロナウイルスのワクチン接種が遅れた理由は、数多くが指摘されている。ざっとその内容を整理してみると、その本質が見えてくるはずだ。 ①ワクチンが調達できなかった ②ワクチン接種の準備が遅れた ③ワクチン接種で混乱が起きた ④ワクチン接種のロードマップが見えない 簡単に整理すると、こんなところだろうか。順番に見ていこう。 ワクチンが調達できなかった点について、大きく分けて日本には2つの問題がある。ひとつは、国内の製薬会社がいまだにワクチン開発に手こずっていること。これは、「日本のワクチン開発が企業任せで政府の後押しがなかったため」という一言で説明できる、という報道が多い。 ワクチンは「安全保障の切り札」にもかかわらず、政治家や行政に安全保障の認識が欠けていた、という視点だ。日経新聞によると、アメリカはトランプ政権が「ワープ・スピード作戦」と称して、バイオ医薬品開発の「ノババックス」に16億ドル(約1720億円)の助成金を出している。モデルナも、アメリカ生物医学先端研究開発機構(BARDA)から最大で4億8300憶ドル(約520億円)の助成金を受け取ることで合意したとウォール・ストリート・ジャーナルが報道している。 アメリカ政府が、ワクチン開発に補助金を出した金額はBARDAを通したものだけでも192億8300万ドル(2兆0825億円、2021年3月2日時点)に上ると、アメリカ議会予算局が公表した資料で報告されている。 イギリスも、2020年5月にオックスフォード大学に対してワクチン開発のために6億5500万ポンド(約1000億円)を支援すると発表している。ちなみに、ファイザーはトランプ政権から資金を受け取らなかったことはあまり知られていない。科学者を政治的な圧力から守るためにアメリカ政府の補助金を受け取らずに、研究開発費は全額自前で賄ったとニューズウィークが伝えている』、「ファイザーはトランプ政権から資金を受け取らなかった」、とは初めて知ったが、立派な心がけだ。
・『日本政府も補助金は出しているが…  一方、日本の厚生労働省はどうか。定期的に「新型コロナワクチンの開発状況について」というレポートを発表しているが、この3月22日の更新情報によると日本の国内ワクチン開発は、塩野義製薬、第一三共、アンジェス、kmバイオロジクスなどの各グループが開発を急いでいるが、いまだに実用化のめどは立っていないそうだ。日本最大の製薬会社である武田薬品はノババックスと委託業務契約を結び、今年の下半期から年間2億5000万回分以上のワクチン供給を実施する予定と報道されている。 塩野義製薬のグループには、生産体制等緊急整備事業から223億円が援助され、第一三共グループにも同じく60億3000万円の補助が行われている。アンジェスのグループは同93億8000万円、KMバイオロジクスは同60億9000万円が補助されている。日本政府も補助金は出してはいるものの、桁が1つ違う印象を受ける。NHKでは、こうした政府の対応を「平時対応」という言葉で、東大医科学研究所教授の言葉として取り上げている。 もっとも、本来製薬開発で日本は世界的に見ても、スイスと並んで優れた技術を持っているといわれる。にもかかわらず、スイスと日本はコロナのワクチン開発には揃って手こずった。今回のコロナのワクチン接種では、最速で開発したファイザーも、2番目となったモデルナも遺伝子分析による開発技術を使った「mRNA」ワクチンで成功した。日本の第一三共やアンジェスも、mRNAによる開発を試みているが、もともと日本は官民を挙げてワクチン開発には消極的だったと指摘・分析する見方も多い』、「本来製薬開発で日本は世界的に見ても、スイスと並んで優れた技術を持っているといわれる。にもかかわらず、スイスと日本はコロナのワクチン開発には揃って手こずった」、驕りが邪魔をしたのだろうか。
・『日本独自の薬事検査で2カ月の出遅れ?  日本には、1970年代に天然痘による副作用をめぐる集団訴訟があり、天然痘は絶滅に至るものの、政府自身が予防接種に消極的になったという経緯がある。 1990年代には、麻疹、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチンが、小児無菌性髄膜炎の原因と指摘されて任意接種に切り替えた。さらに、子宮頚がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンも、海外ではその有効性が高く評価されているのに、現在の日本では集団訴訟に発展したために、積極的な摂取推奨を取り下げている。 ようするに、厚生労働省や政府は、訴訟のリスクを重視して、全体の利益=予防接種の方針を曲げてしまう。今回のコロナワクチンでも、なぜか日本は独自の薬事審査にこだわった。たとえば、ファイザーのワクチンに関しては、アメリカでは昨年12月10日にFDA(食品医薬品局)は、緊急使用の許可を出している。 イギリスでも2020年10月に承認申請が行われ、12月2日には承認が下りている。2カ月弱で承認申請にこぎつけたということだ。 日本はどうかというと、2020年12月18日に承認申請が行われたものの、ファイザー製ワクチンが正式に承認されたのは2021年2月14日となった。なぜイギリスで12月に承認が下りている同じ薬が、日本では2月になってしまったのかということだ。これについては、欧米とは違う基準での審査を日本でも行わなければならず、独自の審査が行われたとの報道がなされている。 通常、ワクチン開発の臨床実験では第1相から第3相までの段階に分かれて、それぞれ100人未満、数百人単位、数千人単位と段階を踏んでいくのだが、今回の審査では日本独自の審査として160人に対して臨床実験を行い安全性や有効性に関するデータを揃えたといわれる。 筆者は医療の専門家ではないことをまず断る。そのうえで、160人という数字が「とりあえず審査はやった」というアリバイ作りにしか思えないのは筆者だけだろうか。政府主導で、早期に積極的なワクチン接種を実施していれば、また違った展開になったはずだ。 もともとワクチンの有効性についての審査は、副反応の分も含めて数万人単位で実施してみてはじめてその実態がわかるものだ。後でなんらかの副反応がある可能性は高く、アストラゼネカのように100万人当たり4人に血栓ができるといった指摘も出てくる。 よく自国でワクチン開発ができなかったために、日本は遅れたという指摘を耳にするが、イタリアやフランス、スペインでも自国でワクチン開発はできていない。にもかかわらず、日本のワクチン接種率を大きく上回っている。それが、この2021年1~3月期のGDP成長率にも現れている。ワクチン接種が進んでいるアメリカや欧州は、大きくプラスに転じているにもかかわらず、日本はいまだに前年同期比で-5.1%とリーマンショックを下回る経済成長率しかない』、「今回のコロナワクチンでも、なぜか日本は独自の薬事審査にこだわった」、「イタリアやフランス、スペインでも自国でワクチン開発はできていない。にもかかわらず、日本のワクチン接種率を大きく上回っている」、厚労省の責任だ。
・『ワクチン接種の準備が遅かった  イギリスのオックスフォード大学などのグループが集計しているデータによると、5月10日時点で人口に占める1回目の接種を終えた人の割合は、イスラエル63%(NHKホームページより、以下同)、イギリス52%、アメリカ46%。日本はわずか2.91%で、世界で131番目となっている。発展途上国にも大きく遅れをとっているのが現状だ。 なぜ、これほどワクチン接種の開始が遅れたのか……。たとえば、イギリスは、昨年の夏にはワクチン接種の準備に取り掛かっていたと報道されている。菅政権の支持率がこうした報道で大きく下げたのはやむをえないにしても、8年も続いた安倍政権が、ほとんど何の準備もしなかったことが大きかったのではないか。他の国が、ワクチン接種に取り掛かっているときに、日本では呑気に「Go To トラベルキャンペーン」の準備にかかりきりだったとも言える。 海外で承認されたワクチンだからといってすぐに国内で認可されるものではない――という発想は、いってみれば「平時の発想」だ。しかし現在はコロナという「バンデミック=戦時下」にある。日本政府にはこうした「有事」の発想がなかったのかもしれない。「最悪の事態を想定して行動する」という有事の発想があれば、また違った展開があったはずだ。 ワクチン接種の準備が遅れたのはセキュリティーに対する意識が低かったといわれても仕方がないが、その後のワクチン接種のスタートでもさまざまな問題があった。予想された「混乱」や「トラブル」は、メディアも加担して大混乱となった。 自衛隊による大規模集団接種が始まった5月24日の新聞報道を見てみると、朝日新聞は「ワクチン予約サイト、プロが示す『最悪シナリオ』対処法」の中でワクチンの予約サイトがITのセキュリティーが弱く混乱に拍車をかけている。さらにサイバー攻撃の標的にされるのではないかと懸念も示している。) 日本経済新聞も「都市部で接種予約停滞計画前倒し、対応難しく」(2021年5月24日)の中で、政府は高齢者向けのワクチンを7月4日までに配送完了する計画を立てたといわれているが、大都市圏では滞りが目立っており、まだ接種券も届いていないというところが多い。なかには9月までかかると答えた自治体もあるといわれている。自治体が主催する大規模接種会場の進捗状況次第ではこれからも混乱が予想されるかもしれない。 なぜこれほどまでに、ワクチン接種が遅れ、しかも混乱しているのかと言えば、一言でいえば政府がすべてを「自治体任せ」にしたことに尽きるのではないか。厚生労働省全体の問題なのか、それともワクチン接種チームのせいなのか、はっきりはしないが、自治体任せにして一元的に管理するシステムが構築されていなかったことが大きい。 総務省が莫大な税金を使って進めてきた「マイナンバーカード」はなぜ使えなかったのか。厚生労働省と総務省という「タテ割り行政」の弊害に見えるが、いまだに日本政府はこんなに無駄なことを既得権を守るためにやっているのかと思うと、かなり情けない気持ちになる。 そもそも、自治体任せにするということで、国家公務員や政治家は、自分たちの責任を回避したように思えてならない。せめて混乱を避けて平等性を保つためには、国が強いリーダーシップを発揮して、ワクチン接種の「全国統一のプロセス」を示すことが必要だったと言える。 新潟県の上越市が実施して高い評価を得た方法のように、高齢者の自宅に「×月●何日14時、A会場」というように、時間と場所をあらかじめ指定すれば、そこにいけない人だけが、決められた連絡先にアクセスすることになり、少なくとも大混乱は避けられたように思えてならない』、「8年も続いた安倍政権が、ほとんど何の準備もしなかったことが大きかったのではないか。他の国が、ワクチン接種に取り掛かっているときに、日本では呑気に「Go To トラベルキャンペーン」の準備にかかりきりだったとも言える」、「自治体任せにするということで、国家公務員や政治家は、自分たちの責任を回避したように思えてならない」、その通りだ。
・『日本全体が「責任回避社会」に  日本全体が「責任回避社会」になっているとも言える。まさに、日本では「責任を持って物事を決めていくリーダーシップ」を発揮できる人材が、決定的に不足しているのではないか。 もっとも日本国民もそういう政治体制を支持してきたのだから責任は国民にもある。 こうした一連のワクチン接種が遅れた状況について、さまざまな分析が行われているが、その中に「ひとつのミスも許されない完璧主義」という雰囲気が日本のワクチン接種を遅らせたのではないか、という指摘があった。ある意味で当たっているのかもしれないが、完璧主義であるかどうかはかなり疑問だ。 ひとつのミスも許されない、という雰囲気になってしまっているのは、日本の場合はテレビや新聞、そして週刊誌に至るまで、同じ報道を繰り返し、繰り返し報道する傾向が指摘されるからだ。政治家や行政の失敗を批判するニュースが目立つ。それも通常のニュースだけではなく、「ニュースショー」と称するバラエティー番組で繰り返し、細かな点にまでミスをついてしまう傾向が強い。 ワクチン接種について、日本政府が消極的なのも、メディアが長年にわたってワクチンによる副反応をことさら強調する報道を繰り返してしまったのもひとつの要因といっていいのかもしれない。日本のメディアは、記者クラブ制があって、すべて横並びで報道するため、きちんとしたエビデンスや調査に基づく報道が弱い。感情的な報道をしたほうが視聴者や読者にも受けて収益も上がる。 こうした報道ができるのは、資金面で余裕のある大手メディアしかないのだが、残念ながら日本ではその大手メディアほど記者クラブで得た情報をだらだらと報道する傾向が高い。こうした傾向は日本だけの問題ではないが、日本のコロナ対策が後手に回っている要因のひとつといっていい』、「日本ではその大手メディアほど記者クラブで得た情報をだらだらと報道する傾向が高い」、確かに「メディア」の姿勢も問題だ。
・『ミスをした人間を容赦しない日本のメディア  そもそも、日本にはメディアに一度叩かれたらとことんやられてしまう、という恐怖心が官僚や公務員、政治家、そして一般の国民にあるのも事実だ。日本のメディアはとりわけ、ミスをした人間を容赦しない。タレントであろうが政治家であろうが一般人であろうが、どことなく許せないという雰囲気を作ってしまう。 こうしたメディアの姿勢が、パンデミックのような状況には大きな負の要因になってしまった傾向がある。日本は太平洋戦争のときにメディアも揃って政府・軍部の言いなりとなって、一直線に戦争に進んでしまった経緯がある。これと似たような状況が、現在のメディアには見え隠れする。 これは、ある意味でメディアの驕りなのだが、スポンサーである企業や視聴者である国民にもその責任の一端があるのではないか。感染症という病気と闘う以前の日本全体の雰囲気に原因があるような気がしてならない。日本の教育制度は、ある一定の枠の中に人間の個性を封じ込めて集団行動させることに大きな意味を見いだしている。個性を伸ばす教育が不足している。ある意味で、第2次世界大戦前の教育の方向性が本質的なところでは変わっていないと言ってもよい。そして、企業も個性を捨てた人間の集団をつくり続けている。 パンデミックという「有事」に巻き込まれている今、日本はこうした根源的な部分でももう一度立ち返ってみる必要があるのかもしれない』、同感である。
・『法的整備の不備は政治家の怠慢?  そして、もうひとつ忘れてならないのは、法律がないからという理由で何もしなかった政治の怠慢がある。法律がなかったのはどこの国もほとんど同じだ。しかし、イギリスではすぐに新しい法律を作って対応した。 日本では、そもそも議員立法という概念が希薄で、ほとんどの政治家がパンデミックの中で結局何もしなかった、といっても過言ではない。せっかく莫大な予算を使って立法府のシステムがあるのに、なぜ日本の政治家は法律を作らないのか……。ここにも制度上の欠陥がありそうだ。 そもそも、日本には「通達行政」という便利な制度がある。法律など改正しなくても、通達1本で国民の生活スタイルを変えてしまうことが何度かあった。官庁相手のみならず、民間企業である私立大学への通達などはそのいい例だ。 そして、最後に東京五輪の存在だ。オリンピック開催にこだわったことが、コロナ対策に大きな影響を与えた。政府与党が東京五輪開催によって、総選挙を有利に導こうとしていることは明らかだし、逆に総選挙で政権を明け渡すようなことだけは避けたいと考えている。“日本売り”が始まり、株式や円、国債をも売られることになるはずだ。 日本のワクチン接種が遅れた原因は日本が固有に抱えるさまざまな問題点を浮き彫りにした。政治家や行政だけではなく、国民自身も省みなければならない』、「国民自身も省みなければならない」というのは戦争責任の1億総懺悔のようで、違和感がある。やはり主因となる政府、マスコミの責任を追及すべきだ。

第三に、6月1日付け東洋経済オンラインが掲載した朝日新聞出身で アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長の船橋 洋一 氏と:、『失敗の本質』で旧日本軍の失敗を分析した戸部良一氏の対談「日本のリーダー「危機を語らず隠す」が招く大迷走 このコロナ対応を「失敗の本質」著者はどう見るか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/431595
・『コロナ禍の対応で日本が迷走している。PCR検査体制、医療体制、ワクチン接種体制、緊急事態宣言など、どれをとっても政府・自治体の対応は後手を踏み、長期にわたる行動制限が我慢の限界に達しつつある民心には政府への不信が募っている。未曽有の危機に直面する日本の今に、何が求められ、何が足りないのか――。 約40年にわたり読み継がれている名著『失敗の本質』で旧日本軍の失敗を分析した戸部良一氏と、独立系シンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ」(API)を率い、福島原発事故と新型コロナウイルス感染症対策の民間調査を実施した船橋洋一氏が、日本の課題を4回にわたって話し合う』、興味深そうだ。
・『「敗戦」とは呼びたくない  船橋 洋一(以下、船橋):今年の3月で東日本大震災と福島の原発事故から10年の節目を迎えましたが、今、日本だけでなく世界は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの渦中にあります。先の戦争とフクシマ、そして今回のパンデミックはさまざまな意味において、私たちが経験した大きな危機ですが、私はまだ、日本のコロナとの戦いを「敗戦」とは呼びたくないと思っています。 今後、局面がどう変わるかまだ予断を許しません。この1年半、それこそオセロゲームのように、中国、イタリア、イギリス、アメリカ、ブラジルなど感染爆発の局面はその都度、変わり、今はインドが大変な状況に陥っています。 また、世界的に接種が進んだとしても、インド株をはじめとする変異株に対して今のワクチンの有効性はいつまで、どこまで持続するのかという問題も浮上しています。ワクチンはパンデミック収束の切り札とはならず、変異株とワクチン開発のいたちごっこになる可能性すらあります。ですから、そのような状況で、結論を出すのはまだ早いと思うのです。 しかし、これまでの日本政府の対応を見ていると、例えば、デジタル活用では後れを取ったと感じます。中国が感染対策にICT技術やAI技術を駆使したのに対し、日本ではトラッキング、隔離、通知・警告、データ収集・分析のいずれの分野でもデジタル技術のイノベーションを使いきれなかった。「デジタル敗戦」は否定できない。 また、残念ながらワクチンに関しても、開発・生産体制、承認体制、接種体制のいずれを見ても、「三周半遅れ」(民間臨調報告書)で喘いでいる。「ワクチン敗戦」と言われてもしょうがない。世界の日本を見る目もすっかり変わってしまっています。 1990年代の金融危機、2011年の福島原発危機、そして今回のコロナ危機と、国家的危機に対して政府が対応に失敗するたびに、読み返すのが『失敗の本質』です。この本は、戸部さんや野中郁次郎さんをはじめとする各分野の研究者の共同研究の成果です。1984年にダイヤモンド社から刊行された、日本軍の失敗を研究した名著ですが、その後、中央公論新社で文庫化され実に70刷を刻んでいます。 コロナ危機はまだ進行形ですが、フクシマの経験も含め、日本の危機対応について、戦前の日本軍の失敗に照らして、何が問われているのか。さまざまな観点から日本の課題について伺いたいと思います。 戸部 良一(以下、戸部):『失敗の本質』は40年近く前に出版した本ですが、実は福島の原発事故の際にもよく読まれました。そして、今回も思い出していただいたということで、著者の1人としては大変うれしいことなのですが、これほど多くの方々に読んでいただいているにもかかわらず、同じことが繰り返されているとすれば、こんなに悲しいことはないとも思います。 コロナやフクシマの話に入る前に、前もって申し上げておきますと、『失敗の本質』で取り上げているのは「目に見える」敵との戦いです。が、フクシマの場合も、コロナの場合も敵は目に見えません。もっとはっきり申し上げると、意志を持たない敵との戦いです。そこは、切り分けて考えなくてはならないと思います。 (戸部良一氏略歴はリンク先参照) 戦争の場合には相手も意志を持っていますから、ある程度、予想や予測を立てることができます。もちろん、相手に予想を裏切られる場合もありますが、相手の文脈で考えることができれば予想は立てられます。 しかし、意志を持たない敵の行動を予測することは難しいと思います。科学的な知見の蓄積で、ある程度は根拠を持って予想できるところもあるとは思いますが、ここが目に見える敵との戦いとは違うということは、前提として理解しておかなければなりません。 もう1つ、顕著な違いがあります。『失敗の本質』では6つのケースを扱っていますが、そのうち、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦の5つは自ら攻めていった戦いで、相手から攻められたケースは沖縄戦だけです。つまり、私たちが分析した日本軍の戦いの大半は自ら攻めた戦いです。 一方、コロナもフクシマも、ある意味で、攻められている戦いで、その違いはあるのだと思います。だからどうした、と問われると、それに対する回答を持ち合わせているわけではありませんが、違いがあることは考えておく必要があると思います』、『失敗の本質』の著者の1人との対談とは面白い企画だ。
・『官僚制の本質は戦前から変わっていない  船橋:私どものシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ=API」(当時、日本再建イニシアティブ=RJIF)は福島の原発事故の際に、民間事故調査委員会を立ち上げ、調査・検証し、報告書を作成しました。それとは別に私自身、その後も取材を続け、危機の現場の様々な姿を拙著『フクシマ戦記』(文芸春秋社刊)で描き、今年刊行しました。 そこで痛感したのは、日本のガバナンスには深刻な問題があるということでした。とくに、リスク評価とリスク管理のギャップ、各省庁の司司のタコツボ・縄張り、そしてリスクを引き受け、ガバナンスを効かすリーダーシップの不在といった問題です。戸部さんがご覧になって、どこに問題があるとお考えですか。 戸部:『フクシマ戦記』を拝読して、最も興味深かったのは「戦記」と表現されていたことです。確かにそうだな、という思いを強くしました。私の問題意識に添って申し上げると、最も関心を持ったのは、官僚制とリーダーシップの問題です。船橋さんも『フクシマ戦記』で言及しておられますが、官僚制の本質は戦前の日本軍の時代から変わっておらず、そこに問題があるということだろうと思います。) ただ、官僚制の弊害は、日本だけではなくどの国の官僚制にも付きまとう問題で、いわば官僚制の逆機能として発現するものだと思います。それが日本の場合、危機が最高潮に達している最も大切な場面で出てしまうという特徴があり、その原因を考えることが課題だろうと思います。 リーダーシップ論については、『フクシマ戦記』で当時の民主党政権の菅直人首相を厳しく批判しながらも、「彼がいたから持った」と指摘されているところが意外で、ちょっと菅さんを見直したというところがありました。 (船橋洋一氏の略歴はリンク先参照) もう1つ、余計なことかもしれませんが、日本の問題を考える際、文化論に落とし込むことの危険性を指摘しておきたいと思います。私は防衛大学校の国際関係学科で教鞭をとっていましたが、それは当時から学生に口を酸っぱくして指導していたことです。さまざまなケースを分析した後に、その原因を日本的な文化やその欠陥に求めたのでは、実は何も言っていないことと同じで、その結論は逃げでしかありません。 ところが、その後に国際日本文化研究センターに身を移しましたが、そこには、多くの研究者が「日本独特なもの」と口を揃える“文化”がありまして、大変なところに来てしまったと思いましたが、やはり、「日本的」「日本の文化」というところに逃げずに、問題の本質を突き詰めることが必要だと思います。 船橋さんも、『原発敗戦』(文春新書)で、文化決定論は無責任と敗北主義をもたらすだけだと警鐘を鳴らされていたと記憶しています』、「「日本的」「日本の文化」というところに逃げずに、問題の本質を突き詰めることが必要だと思います」、同感である。
・『文化に流し込むと教訓を得るのが難しい  船橋:以前に、昭和史家の半藤利一さんと『原発敗戦』について対談したことがあるんですが、私が失敗の本質は文化ではないと主張したのに対して、半藤さんは「いや、それでも日本の問題は、最後は文化だ」だとおっしゃっていましたね。私は、危機に当たってのガバナンスは、当事者と担当者の個々人の判断、役割、責任が重要で、それを文化のせいとするのは個人の役割や責任をあいまいにする危険があると思います。 どこの、どいつが、どうしたことが問題だった、ということを突き止めることが重要だと思います。文化に流しこむと、教訓を得るのが難しい。学習の芽を摘んでしまう危険がある。もちろん、組織としての対応の可否を問うときに組織文化の問題はあると思います。ただ、その場合も、人事制度、昇進制度、報奨制度、コンプライアンス制度、法制度、判例、メディアの取り上げ方などの組織文化を成り立たせる構造と状況があります。むしろ、そちらを分析することが重要だと思っています。 船橋:ここで、官僚制とリーダーシップという問題提起をいただきました。それに関連して、まず、コロナとの戦いについて伺います。 菅政権は7月末までに高齢者全員に対してワクチンの2回接種を終えると、大見得を切りました。1日、100万回の接種という大号令です。ただ、これまで1年間のPCR等検査の実施状況を見ても、こんな数字本当に達成できるのか、と国民も半信半疑なのではないでしょうか。私も高齢者の1人で、住まいは横浜の鶴見区ですが、接種券は届いたものの昨日(5月10日)50回ほど電話してもつながらない状態です。 そんな状況にもかかわらず、誰も菅首相に「総理、それは無理です」と言わなくなっているんじゃないか、「数合わせ」と「忖度」の危機管理になってしまっているのではないか、と危惧しています。 もう1つ、対策に優先順位が付けられていないのではないかとも感じます。PCR等検査とワクチンは最大限、必要な資源を投入して、断行する最優先順位課題ではなかったのか。またしても、「逐次投入、小出し」の様相を呈しているようです。この辺りは、どうご覧になっていますか』、「文化に流し込むと教訓を得るのが難しい」、同感である。
・『リーダーは危機を率直に語るべき  戸部:私は昔のことしかわかりませんので、その辺をわきまえて申し上げますが、今はテレビがあり、SNSがありということで、指導者は頻繁に国民の目にさらされています。戦前は、日本だけでなくどの国でもそんなことはありませんでした。せいぜいラジオがあったぐらいです。 で、議会の場やラジオを使って国民を説得するわけですが、例えば、チャーチルやルーズベルトの演説を文字で読む限り、指導者は数字を出して細かいことは言っていません。むしろ、今の状況がどれほど逼迫しているかということをストレートに話して、打ち克つために何をすべきかを端的に訴えています。その違いだと思います。 「血と涙と汗しか提供できるものはない」というチャーチルの有名な演説がありますが、そのときも、ドイツ軍は強いと言って、いかにイギリスが危機的な状況にあるかを率直に述べています。 船橋:「数字を出して細かいことは言わない」ですか。危機の時、リーダーが国民に伝えるべきは数字でもない、細部ではない、ということですね。 戸部:きちっと危機の状況を言わないと結局、説得力がないのではないでしょうか。数字は専門家が言えばいいのであって、リーダーは率直に危機について語るべきです。) 船橋:これは、リスク評価とリスク管理に関わるテーマですが、フクシマでもコロナでも、今は大変な状況なのだということを言うと、国民がパニックになるのではないかと恐れて、リーダーは危機の実体と有事の対応策を真正面から言うことをためらう傾向があります。福島原発事故前までの原子力安全規制側の決まり文句は「住民に不必要な不安と誤解を与える」ようなことはしない、というものでした。 戦中の大本営発表と同じだとまでは言いませんが、国民が不安になるようなことを言うのはできるだけ避け、「いい知らせ」だけを伝えようとする。国民に安全と安心を保証する政治は間違ってはいませんが、ややもすれば安心を優先させその結果安全を犠牲にしてしまっているということがあるのではないでしょうか』、「数字は専門家が言えばいいのであって、リーダーは率直に危機について語るべきです」、なるほど。
・『安心ポピュリズム  私はそれを「安心ポピュリズム」と名付けているのですが、与党も野党もメディアも、そしてほかならぬ国民も安心を要求します。そしてその結果、人々を不安にしかねない「リスク評価」、そうした「想定外」を織り込んだ訓練、有事に備えた法制度改正、「最悪のシナリオ」策定などのタフな案件は敬遠されるのです。この「安心ポピュリズム」、戦前はどうだったのでしょうか。 戸部:それは大変難しい問題ですが、恐らく、指導者が国民をどの程度信用しているかということに関係しています。船橋さんご指摘の「安心ポピュリズム」は、ある種の愚民観によって立っているのだと思います。国民を信用していれば、政府や指導者が持つ正確な情報をストレートに伝えるはずです。 私は、多くの国民は理解する、と楽観的に思うのですが、政府が正確に情報を伝え、国民が冷静にそれを受け止めるということを繰り返し、慣れていかなければ、何時まで経っても、政府が本当のことは隠すという状況は続くのだと思います。 またチャーチルの話になりますが、ドイツとの交戦中、ロンドンに夜間の爆撃が集中していったときのことです。このとき、ドイツの侵攻を食い止めるため、イギリス軍は航空機とパイロットを温存する必要があり、夜間の爆撃には全力で反撃していませんでした。 ある評伝によると、チャーチルが爆撃を受けた町を翌朝、慰問に訪れたとき、そこで多くの住民に囲まれてしまいました。チャーチルは一瞬、危険を感じましたが、住民は怒って首相を囲んだのではなく共感を示すために集まってきたというのです。帰りの車中でチャーチルは感涙したとも伝えられています。 このエピソードがどこまで事実なのかはわかりませんが、指導者が率直に状況を語ることの重要性をよく示していると思います。指導者が真実を率直に語っているからこそ、国民も状況を理解し受け容れたのではないでしょうか』、「安心ポピュリズム」とは、「ある種の愚民観によって立っているのだと思います」、「政府が正確に情報を伝え、国民が冷静にそれを受け止めるということを繰り返し、慣れていかなければ、何時まで経っても、政府が本当のことは隠すという状況は続くのだと思います」、その通りだろう。官首相も肩の力を抜いて、もっとフランクに思いや悩みを打ち明けてはどうだろう。
タグ:日本の構造問題 (その20)(「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ 給料が減って、経済成長も止まった、ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも、日本のリーダー「危機を語らず隠す」が招く大迷走 このコロナ対応を「失敗の本質」著者はどう見るか) PRESIDENT ONLINE 田原 総一朗 藤井 聡 「「消費税の増税がなければ日本は豊かなままだった」京大教授がそう嘆くワケ 給料が減って、経済成長も止まった」 1997年には消費税の他にも、社会保険料も引き上げ、さらに医療費自己負担増加も合わせ、合計9兆円もの国民負担増加をもたらし、アジア通貨危機、山一証券・北海道拓殖銀行の破綻を放置したことも相まって、日本経済は深刻な大不況に見舞われた。「大蔵官僚」の安請け合いが如何にいい加減であったかを如実に示した これまでの「消費税引き上げ」には問題があったとはいえ、これから「消費税0%」にするのには反対である。異次元緩和の下で、そこまでやると、日本売りとなって、円安、国債暴落が発生するリスクがあるためである GDP成長率の低さに加え、円安も大きく影響している。 前述の通り、異次元緩和という極めてリスキーな政策をやっているので、「消費税0%」はリスクが大き過ぎる。まずは、2%分を元に戻す程度で様子を見るべきだろ思う。 東洋経済オンライン 岩崎 博充 「ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも」 なぜ、こんな状況になったのを正しく分析することで、次の「有事」の糧としなければならないだろう』、興味深そうだ 日本のワクチン接種が遅れた4つの要素 ①ワクチンが調達できなかった ②ワクチン接種の準備が遅れた ③ワクチン接種で混乱が起きた ④ワクチン接種のロードマップが見えない 「ファイザーはトランプ政権から資金を受け取らなかった」、とは初めて知ったが、立派な心がけだ 「本来製薬開発で日本は世界的に見ても、スイスと並んで優れた技術を持っているといわれる。にもかかわらず、スイスと日本はコロナのワクチン開発には揃って手こずった」、驕りが邪魔をしたのだろうか。 「イタリアやフランス、スペインでも自国でワクチン開発はできていない。にもかかわらず、日本のワクチン接種率を大きく上回っている」、厚労省の責任だ。 「8年も続いた安倍政権が、ほとんど何の準備もしなかったことが大きかったのではないか。他の国が、ワクチン接種に取り掛かっているときに、日本では呑気に「Go To トラベルキャンペーン」の準備にかかりきりだったとも言える」、「自治体任せにするということで、国家公務員や政治家は、自分たちの責任を回避したように思えてならない」、その通りだ 「日本ではその大手メディアほど記者クラブで得た情報をだらだらと報道する傾向が高い」、確かに「メディア」の姿勢も問題だ。 パンデミックという「有事」に巻き込まれている今、日本はこうした根源的な部分でももう一度立ち返ってみる必要があるのかもしれない』、同感である。 「国民自身も省みなければならない」というのは戦争責任の1億総懺悔のようで、違和感がある。やはり主因となる政府、マスコミの責任を追及すべきだ。 船橋 洋一 戸部良一 「日本のリーダー「危機を語らず隠す」が招く大迷走 このコロナ対応を「失敗の本質」著者はどう見るか」 『失敗の本質』の著者の1人との対談とは面白い企画だ。 「「日本的」「日本の文化」というところに逃げずに、問題の本質を突き詰めることが必要だと思います」、同感である。 「文化に流し込むと教訓を得るのが難しい」、同感である。 「数字は専門家が言えばいいのであって、リーダーは率直に危機について語るべきです」、なるほど。 「安心ポピュリズム」とは、「ある種の愚民観によって立っているのだと思います」、「政府が正確に情報を伝え、国民が冷静にそれを受け止めるということを繰り返し、慣れていかなければ、何時まで経っても、政府が本当のことは隠すという状況は続くのだと思います」、その通りだろう。官首相も肩の力を抜いて、もっとフランクに思いや悩みを打ち明けてはどうだろう。
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