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政府財政問題(その8)(ガソリン補助金の価格抑制効果に疑問=小嶌正稔、「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑と重大な問題点を解説、国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車) [経済政策]

政府財政問題については、昨年3月18日に取上げた。今日は、(その8)(ガソリン補助金の価格抑制効果に疑問=小嶌正稔、「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑と重大な問題点を解説、国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車)である。

先ずは、昨年6月13日付けエコノミストOnlineが掲載した桃山学院大学教授の小嶌正稔氏による「ガソリン補助金の価格抑制効果に疑問=小嶌正稔」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220621/se1/00m/020/058000c
・『ガソリン  足元で高値が続いている原油価格。その対策として導入された補助金政策は実効性に疑問がある』、どういうことだろう。
・『政府の原油高騰対策は“石油業界の支援”策=小嶌正稔  2022年4月26日、政府は「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を発表した。これにより、時限的・緊急避難措置とされていた「原油価格高騰の激変緩和措置」は拡充され、「原油価格高騰対策」として、7月10日の参議院選挙後の9月末まで延長されることになった。原油価格高騰対策に投入される国費は、総合緊急対策全体の4分の1を占める1.5兆円にもなる。 原油価格高騰対策が動き出したのは21年11月。開始時は時限的・緊急避難的な激変緩和措置と位置付けられ、とにかく迅速な対策実施に重点が置かれた。このため民間企業(石油元売り会社)に国費(補助金)を支給するという、通常は考えられない政策が動き出した。 具体的には、レギュラーガソリンの全国平均小売価格1リットル当たり170円を基準価格とし、価格が上昇した分は、1リットル当たり5円を上限として、石油元売り会社に補助金を支給する。基準価格は4週間ごとに1円ずつ切り上げるとした。この段階的な切り上げは、対策終了時を意識した激変緩和の措置だ』、「原油価格高騰対策に投入される国費は・・・1.5兆円」、「民間企業・・・に国費(補助金)を支給するという、通常は考えられない政策」、その通りだ。
・『不可解な算定基準  対策は22年1月27日から実施されたが、原油価格の高騰は止まらず、2月21日には上限の5円を超えた。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、政府は3月10日から補助金支給の上限を25円に引き上げたほか、基準価格の算定方式を変えた。 3月7日までは原油価格の変動分を補助金の算定基準としてきたが、これに小売価格の変動分を追加した。このため、仮にガソリンスタンドが自社の経営状況によって小売価格を変更すれば、それが補助金の金額に反映される仕組みとなった。 表1に4月19日までの補助金支給額と価格抑制効果をまとめた。抑制効果の差額がマイナスになっているのは、補助金相当分まで価格が下がっていないことを意味している。 原油価格の変動のみを基準としていた1月31日~3月7日の補助金支給額の累計は1リットル当たり27.1円で、価格上昇抑制効果は同25.3円。差の1.8円は徐々に解消される程度の水準だった。 しかし、新たな算定基準後は、支給累計額が184.1円に増加したものの抑制効果は174.9円で、差は9.2円に拡大した。それを油種別に見ると、レギュラーガソリンが11円、軽油が10.8円、灯油は12.6円に拡大している。これらの合計34.4円が、支給額と抑制効果の差となる。これだけ差が拡大すれば「原油価格高騰対策ではなく、石油業界支援策だ」と見られても仕方がないのではないか。 石油元売り各社への補助金は、4月から支給上限額が1リットル=25円から35円に引き上げられた。さらに補助金の基準価格は、172円程度から168円程度に引き下げられ、基準価格を超えた分は2分の1を支援する仕組みとなった。 この変更は話題となっている「トリガー条項」と微妙に関係している。この場合の「トリガー条項」とは、揮発油税(ガソリン税)の暫定税率を一時的に停止する税制の条項で、総務省が毎月発表しているガソリンの全国平均小売価格が、3カ月連続で160円を超えた場合、暫定税率分=25.1円を停止し、原油高騰が一段落し、3カ月連続で130円を下回れば税率を元に戻すという施策だ。今までトリガー条項が発動されたことはない。 トリガー条項の160円は、10年当時の消費税5%を差し引くと本体152.38円で、これに現在の消費税10%を掛ければ167.6円となる。前述の基準価格を172円から168円に引き下げたのは、実はトリガー条項を発動することなく、これを適用した結果だ。補助金の35円への増額も同じで、4月4日の全国平均小売価格は、補助金がないと仮定すると、203円程度になる。これと168円との差は35円で、トリガー条項の基準がそのまま適用されているといえよう。 トリガー条項解除の要件の130円は、現在の税率に直すと136円で、原油をめぐる情勢を考えれば、当面の間は136円に戻るとは考えにくい。政府はトリガー条項を実質的に発動して、後のことは別途考えるという姿勢なのだろう』、「政府はトリガー条項を実質的に発動して、後のことは別途考えるという姿勢」、なるほど。
・『基準価格にも疑問  ただし、ここで注意が必要だ。トリガー条項と今回の緊急対策とでは、算定基準となる全国平均小売価格に根本的な違いがある。 トリガー条項の小売平均価格は、総務省の「小売物価統計調査」の価格であり、その価格は消費者が購入したフルサービスの現金ガソリン価格だ。現在は70%以上のガソリンがセルフサービスのガソリンスタンドで購入されていることを考えれば、時代遅れの規定ともいえる。この価格には、掛け売りや会員価格、価格割引の給油カードなどは含まれないため、消費者が購入する最も高い価格が基準となっている。ただし、この価格は消費者が実際に購入した価格の統計データだ。 一方、今回の緊急対策の全国平均小売価格は、あくまでガソリンスタンドの販売価格だ。ガソリンスタンドの価格は、現金価格、会員価格、カード会員価格など9種類の価格が存在し、看板にも複数の価格が掲示されている。緊急対策の全国平均小売価格は、小売業者が報告する報告価格であり、業者の価格意識が反映された価格のため、透明性は希薄だ。ドイツの価格表示は、基本的にそのガソリンスタンドで販売される最低価格が報告対象だ。政府は補助金を投入するならば最低限の価格を基準とするべきだろう。 ガソリンスタンドでの販売価格は、各ガソリンスタンドが決める。各店で小売価格に差があるのは、製油所や油槽所からの距離など、コスト面で違いがあるからといわれている。しかし、実際はこれでは説明できない。全国ベースで石油元売り会社からの卸売価格(22年3月時点)の差を見ると、最高で3.4円の開きがあるが、小売価格の差は12.9円もある(表3)。 表2は、製油所のある県の22年3月の小売価格、卸売価格、小売りマージンをまとめたものだ。製油所のある県同士の卸売価格の差は1.8円にとどまるが、小売価格差は10.7円もある。卸売価格が最低の大分県の小売価格は最も高く、大分県の平均マージンは25.8円で、マージン格差は43%もある。 さらに、消費者の購買データを集めた5月12日の民間調査会社のデータを見ると、最安値の愛知県が159.6円、最も高い高知県は178.2円で、18.6円も差がある。同じ愛知県内でも最安値は148円で、最高値は192円。差は44円もある。 すなわち、小売価格は小売市場の競争状況を強く反映するのであり、補助金を出すならば、原油価格の変動分を対象にすることでのみ、透明性を維持できるということだ』、「トリガー条項の小売平均価格は、総務省の「小売物価統計調査」の価格であり、その価格は消費者が購入したフルサービスの現金ガソリン価格だ。現在は70%以上のガソリンがセルフサービスのガソリンスタンドで購入されていることを考えれば、時代遅れの規定ともいえる」、「補助金を出すならば、原油価格の変動分を対象にすることでのみ、透明性を維持できる」、その通りだ。
・『整合性がない  政府の総合緊急対策では、物価高などに直面する生活困窮者への支援を打ち出しているが、ここでも原油価格高騰対策との整合性に疑問符がつく。 表4は、電気、ガス、灯油、ガソリンの支出に占める割合を所得分位別に見たものだが、地域別に大きな格差のある灯油を除けば、電気代は所得が低い第1分位の支出の割合が多く、ガソリン代は所得間格差が最も小さい。灯油は、最も支出の大きい青森市と最低の大阪市では約40倍も支出額が異なる。 灯油は地域間格差が大きいので、地域別に対策を実施すべき油種であり、全国一律に行う対策には適していない。 筆者は原油の価格高騰対策自体は否定していない。しかし、価格を通して製品の需給を調整する市場メカニズムをゆがめてはならない。ガソリン価格が高ければ節約することで需要が減少し、価格を引き下げる。また、消費者が少しでも安いガソリンスタンドで購入することで、価格は調整されていく。 だが、今回の緊急対策は、基準価格を引き下げることで消費を喚起した。施策を再検証の上で必要な見直しをする必要があろう』、「今回の緊急対策は、基準価格を引き下げることで消費を喚起した」、「施策を再検証の上で必要な見直しをする必要があろう」、当然だ。

次に、2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑と重大な問題点を解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317747
・『いわゆる「財源確保法案」を立案し、今国会に提出することとされた。正式名称は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」というこの法案は大いに問題があると言わざるを得ない。何がどう問題なのか、問題となり得るのか、について解説していく』、興味深そうだ。
・『「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑  去る1月23日、第211回国会(常会)が開会した。6月21日の会期末まで、来年度予算案やさまざまな法案の審議が行われる。今国会における岸田政権の懸案事項の一つといえば、昨年末より議論が続いている防衛費増額のための財源問題である。 この件については、財源は増税によることで決着がついた、と一般には認識されていることが多いようであるが、実際にはその一部を税によることとする方向性が決まっただけであって、具体的な時期等まで決まったわけではない。税以外の部分については、特別会計の剰余金等の一部の繰り入れや独立行政法人の積立金等の一部の国庫返納、そして歳出改革によることとされ、防衛関係経費をプールしておくために防衛力強化資金を設置することとしている。それらを実施するための法的根拠として、財源確保法案なるものを立案し、今国会に提出することとされた。その法案、正式名称は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」である。 そしてこの法案、大いに問題ある法案であるのだが、全くと言っていいほど詳しく報じられたり、解説されたりすることがない。そこで、本稿において、筆者として気づいた点を中心に、何がどう問題なのか、問題となり得るのかについて解説することとしたい』、「財源確保法案」は、「大いに問題ある法案であるのだが、全くと言っていいほど詳しく報じられたり、解説されたりすることがない。そこで、本稿において、筆者として気づいた点を中心に、何がどう問題なのか、問題となり得るのかについて解説」、マスコミは何をやっているのだろう。
・『第1条から早速問題だらけ  まず、本法案は、「令和五年度以降における我が国の防衛力の抜本的な強化及び抜本的に強化された防衛力の安定的な維持に必要な財源を確保するための特別措置」を講ずることを目的として、令和5年度以降の各年度の防衛力整備計画対象経費のうち、令和4年度当初予算に計上された防衛力整備計画対象経費の額を上回る部分について、(1)財政投融資特別会計財政融資資金勘定および外国為替資金特別会計からの一般会計への繰入金、(2)独立行政法人国立病院機構および独立行政法人地域医療機能推進機構の国庫納付金、(3)国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入(「防衛力強化税外収入」)を充当し、(4)必要な経費をプールするための防衛力強化資金を設けるために立案されたものである。 しかし、第1条から問題がある。以下条文を追って解説していく。 その第1条、第3項において防衛力整備計画対象経費の定義が規定されているのだが、我が国の防衛力の強化のための防衛費増額のはずなのに、在日米軍関係経費や沖縄の米軍基地等再編経費までその対象に含まれている。これは極めておかしな話であり、それらの経費は別物として切り分けて処理すべきはずである。予算を増やしたくない、できれば減らしたいと考える財務省がシレッと潜り込ませたのだろう。 第2条および第3条は先に挙げた特別会計からの繰り入れについて規定しているが、これはそれに続く第4条および第5条の独法の積立金の一部の国庫納付についての規定との比較で解説するが、前者は「一般会計の歳入に繰り入れることができる」とされているのに対し、後者は「納付しなければならない」とされている。 つまり、特別会計からの繰り入れはやらないことも可能であるが、後者は絶対にやらなければならないこととされている、ということである。これは以前から財務省が独立行政法人の積立金や基金を「無駄」と難癖をつけて返納させようともくろんでいたところ、防衛費増額を大義名分として穴を空けようという魂胆に見える。その先に懸念されるのは、独立行政法人の積立金等の国庫返納の対象の拡大である。そうなれば多くの独法が政策的機能を十全に果たせなくなってしまいかねない。 そもそも、なぜこれら二つの独法がこの段階で対象になっているのかも不可思議である。おそらく、これら独法の新型コロナ対応の予算が余っていたことが明らかになり、批判の的となったことがあったところ、格好の人身御供とされたといったところだろう。両独法ともいざというときの対応のために存在するわけであり、今回のようなパンデミックが再び起きたときに、予算がないので、予算がなかったから準備ができなかったので対応できないでは済まされない。そうした事態に陥らないように普段から十分な予算を配分して体制を整えておくべきところ、単年度思考、短期思考の財務省がそうさせないようにしているとしか言いようがない』、「以前から財務省が独立行政法人の積立金や基金を「無駄」と難癖をつけて返納させようともくろんでいたところ、防衛費増額を大義名分として穴を空けようという魂胆に見える。その先に懸念されるのは、独立行政法人の積立金等の国庫返納の対象の拡大である。そうなれば多くの独法が政策的機能を十全に果たせなくなってしまいかねない」、「普段から十分な予算を配分して体制を整えておくべきところ、単年度思考、短期思考の財務省がそうさせないようにしているとしか言いようがない」、「財務省」の言いなりになっては、政府機関としての役割を果たせなくなってしまう。
・『なぜ、防衛省ではなく財務省の管理なのか  さて、先述の通り、本法案により防衛力強化資金が設置されるが、この資金は一般会計に置くので財務省管理とされている。防衛力強化のためのものなのだから、特別会計的に防衛省の管理とすべきではないかと思われるが、なぜそうなっているのかについては、本則の後ろに規定されている附則を見ると分かる。 なんと附則の第4条において、財務省の所掌事務として「防衛力強化資金の管理に関すること」が追加されているのである。理解しづらいかもしれないが、各府省の所掌事務を新たに追加するというのは非常に重たい話、かつ他の府省からの反発もあり得る話であり、かつ、一度規定してしまうとそれをなくすことは、新たな行政機関の設置や、省庁再編のようなものでもなければあり得ない。したがって、既存の所掌事務の範囲内で「読む」ということがよく行われるのであるが、今回新たに所掌事務を追加するというのは、財務省がコントロールできる新たな「財布」を財務省のために設けるため、そして、財務省の手を離れてしまう特別会計的なものは是が非でも設けたくないという財務省の姑息な魂胆によるものなのではないか。 さらに、第10条において、防衛力強化資金のお金を財政融資資金に預託することができることとされている。財政投融資資金とは、財投債の発行等により調達された資金を財源として、大規模・超長期プロジェクト等に融資を行う政策金融機関、官民ファンド等に融資を行うために設置されているもの。直近の防衛力強化のため、本法案によって新たな資金まで設置して特別会計や独法の積立金からお金を集めてきているというのに、超長期プロジェクトへの資金供給のための原資に充当するというのに等しく、本来の目的を逸脱しているとしか言いようがない。 の見方をすれば、要するに「余裕金を長期的に運用します」ということになるので、そもそも防衛力強化資金はおろか、本法案が不要ということまでいえてしまうのではないか。) また、第12条において、防衛力強化資金の受け払いは歳出歳入外とされている。歳出歳入外とは、要するにすぐに出し入れできるお金ということであり、具体的には選挙の供託金や入札の保証金等がこれに当たるが、なぜ防衛力強化資金をそうしたものと同じ扱いにするのか。防衛費ではなく何か別の目的に使用しようとしているのではないかと思われてならない。 そして、第14条、第2項に「令和五年度以降の各年度において、国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入であって国会の議決を経た範囲に属するものは、防衛力整備計画対象経費の財源又は資金への繰入れの財源に充てるものとする」との規定があるが、これは端的に、本法案に規定された特別会計からの繰り入れや独法の積立金の一部の国庫返納のみならず、歳出改革と称した緊縮・予算削減によっても防衛費増額の財源を捻出するためのものである。しかも、防衛力強化資金の運用についてこれまで指摘してきたような問題があるところ、単なる予算削減の根拠ともなりかねない、極めて危険な規定となる可能性がある。 なお、「租税収入以外の収入であって国会の議決を経た範囲に属するもの」については、これは国債発行による収入を指すとする見解もあるが、確かにこの表現は財務省が国債について使用するものではあるが、法的に意味が確定したものではなく、その前に「国有財産の処分による~」と付いていることも考えると、国債のみを指すと考えるのは少々お人よしすぎるように思われる』、「本法案により防衛力強化資金が設置されるが、この資金は一般会計に置くので財務省管理とされている。防衛力強化のためのものなのだから、特別会計的に防衛省の管理とすべきではないかと思われるが、なぜそうなっているのかについては、本則の後ろに規定されている附則を見ると分かる。 なんと附則の第4条において、財務省の所掌事務として「防衛力強化資金の管理に関すること」が追加されているのである。理解しづらいかもしれないが、各府省の所掌事務を新たに追加するというのは非常に重たい話、かつ他の府省からの反発もあり得る話であり、かつ、一度規定してしまうとそれをなくすことは、新たな行政機関の設置や、省庁再編のようなものでもなければあり得ない。したがって、既存の所掌事務の範囲内で「読む」ということがよく行われるのであるが、今回新たに所掌事務を追加するというのは、財務省がコントロールできる新たな「財布」を財務省のために設けるため、そして、財務省の手を離れてしまう特別会計的なものは是が非でも設けたくないという財務省の姑息な魂胆によるもの」、「財務省」はこういうところで、ちっかりと省益につながる措置を潜り込ませている。
・『時限立法ではないと考えるべき  一方で、本法案の原案には、附則の第2条として、歳出改革を継続するよう努めること等を内容とする規定が置かれていたが、まさに歳出改革と称して各府省の予算の一律削減につながりかねないものであった。それが、責任ある積極財政推進議連の会員議員の尽力により、自民党内議論の段階で、最終案からは削除されるに至った。これは非常に大きな成果であるといえる。 本法案は特別措置法案と称しながら、時限立法ではなく、財務省が新たな所掌事務を追加したことからも分かるように、特段の事情のない限り、ずっと存続させるものであることは明らかである。加えて、「防衛費が足りなくなった」と称して、累次の改正により積立金の国庫返納の対象が際限なく拡大されていく可能性もある。 今後の国会審議において本稿において解説した問題点等をしっかりと指摘し、不明な点は明らかにし、少なくともこのまま可決・成立するようなことはないように、関係議員諸氏には尽力願いたいし、国民各位におかれても問題ありとして声を上げるなり、少なくとも問題意識は持っていただきたいところである』、「財務省」を敵に回すような気概のある野党議員がいてほしいが、現実にはいないのではなかろうか。

第三に、3月7日付け東洋経済オンラインが掲載した評論家・著述家の真鍋 厚氏による「国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/657164
・『さきごろ「国民負担率」が大きな話題になった。国民負担率とは国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担割合のことだが、財務省は今年度(2022年度)にそれが47.5%となる見込みだと発表したのだ。 Twitterでは、江戸時代に農民が領主に納める年貢割合を表現した「五公五民」がトレンド入りした。ただでさえ、円安と資源価格の高騰による光熱費や物価の上昇に身を削って対処している国民にとって、これ以上の負担増は生きるか死ぬかの問題に直結しかねない危険水域に突入することを意味する』、「国民負担率」が「今年度(2022年度)にそれが47.5%となる見込み」、「1979年度に30%台」から比べるとずいぶん重くなったものだ。
・『「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」  日本の国民負担率は、1979年度に30%台となり、1994~2004年度までは34~36%台で推移していた。しかし、高齢化による社会保険料の増加などにより2013年度から40%台になり、2020年度に初めて47%を超えた。しかも「失われた30年」と呼ばれる期間、経済成長は鈍化。実質賃金は低迷し続け、中間層は衰退していった。収入が上がらず、非正規雇用や個人請負化が拡大し、生活不安が増大する状況下で、到来しつつあるのは「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」である。 (国民負担率の推移のグラフはリンク先参照) 岸田文雄政権が昨年11月に正式決定した看板政策「資産所得倍増プラン」がそれだ。その趣旨は、「中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大することができる。また、家計の資金が企業の成長投資の原資となれば、企業の成長が促進され、企業価値が向上する。企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得はさらに拡大し、『成長と資産所得の好循環』が実現する」(資産所得倍増プラン(案)/内閣官房)ということらしい。だが、そのような資金のある人々がいったいどれだけいるのか。 金融資産を保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」はここ10年で「2人以上世帯」では20.6%から31.2%に、「単身世帯」では29.9%から46.4%に上昇している(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」、2007年と2017年との比較、2018年以降は設問内容が見直され、データが不連続のため省いた)。金融庁も2019年に「現役世代については、収入が減少傾向。金融資産額は、30代・40代の家計を中心に減少しており、資産形成が十分に行えていない」と指摘している(人生100年時代における資産形成/金融庁/2019年4月12日)。) 2024年から株式などの運用益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)の恒久化、非課税投資額の大幅引き上げ(1人当たり800万円から1800万円に)、非課税保有期間の無期限化を盛り込んだ新NISAがスタートする。1億総株主、1億総投資家への布石であり、たとえ少ない所得であっても、投資で「倍増」も夢ではないという甘言である。と同時に、将来的に破綻する可能性がある社会保障に期待することなく、「自分の身は自分で守れ」という身もふたもないメッセージでもあるのだ』、「「失われた30年」と呼ばれる期間、経済成長は鈍化。実質賃金は低迷し続け、中間層は衰退していった。収入が上がらず、非正規雇用や個人請負化が拡大し、生活不安が増大する状況下で、到来しつつあるのは「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」である」、「新しい自己責任」が「到来しつつある」というのは、嫌なことだ。「「資産所得倍増プラン」・・・の趣旨は、「中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大することができる。また、家計の資金が企業の成長投資の原資となれば、企業の成長が促進され、企業価値が向上する。企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得はさらに拡大し、『成長と資産所得の好循環』が実現する」・・・ということらしい。だが、そのような資金のある人々がいったいどれだけいるのか。 金融資産を保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」はここ10年で「2人以上世帯」では20.6%から31.2%に、「単身世帯」では29.9%から46.4%に上昇」、「新NISAがスタートする。1億総株主、1億総投資家への布石であり、たとえ少ない所得であっても、投資で「倍増」も夢ではないという甘言である。と同時に、将来的に破綻する可能性がある社会保障に期待することなく、「自分の身は自分で守れ」という身もふたもないメッセージでもある」、嫌な世の中になりそうだ。
・『年金で賄えないなら「自助」で増やせ?  これは根拠のない話ではない。2019年の大きなトピックに「老後資金2000万円問題」というのがあった。金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループによる報告書で、「老後30年間で約2000万円が必要になる」という試算が独り歩きしたもので、テレビや新聞で盛んに取り上げられていたため覚えている人も多いだろう。報告書には、年金で賄えない分は「自助」で金融資産を増やすことが提起されており、NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)が推奨されていたのである。 <公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている。こうした状況を踏まえ、今後は年金受給額を含めて自分自身の状況を「見える化」して、自らの望む生活水準に照らして必要となる資産や収入が足りないと思われるのであれば、各々の状況に応じて、就労継続の模索、自らの支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった「自助」の充実を行っていく必要があるといえる。(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」/金融庁/2019年6月3日)> 報告書では、「自助」「自助努力」「自助の精神」という言葉が頻出し、「金融サービスのあり方」では、「『自助』充実のニーズ増に応じ、資産形成・管理やコンサルティング機能の強化」という奇妙な表現もある。) はたして「自助」充実ニーズとは何のことなのだろうか。コロナ禍で盛んに用いられた「自粛要請」と響きがよく似ているのは偶然ではないだろう。そこには、自ら進んで行うよう国民を“善導”するニュアンスが潜んでいる。今後の経済的な困難を生き残れるかどうかは「自助」次第と言っているのだ。 そもそも岸田首相は2021年の自民党総裁選で「令和版所得倍増」を掲げていたが、いつの間にか「所得」が「資産所得」へと修正された経緯がある。「成長と分配の好循環」をコンセプトにした「新しい資本主義」の実行計画は成長に軸足を置かれ、分配重視という当初の目論見は後退した。いや「分配」の内には「投資のリターン」が含まれていると言うかもしれない。だが、投資には一定のリテラシーが必要で、元本割れのリスクがつねに付いて回る。いずれにせよ、格差是正の道具立ては整えたというわけだ』、「投資」は高所得層がより多くするので、格差拡大になりこおすれ、「格差是正」になる筈はない。
・『目を覚ました預貯金がどうなろうと  ただし、格差是正を行う主体は政府ではない。「あなた」自身が自らの責任において行わなければならないのだ。もちろん、それでなけなしのお金が溶けてしまっても政府には何のとがもない。もとより政府はわたしたち国民が優秀なトレーダーになることを望んではいない。岸田首相がロンドンで投資家向けに行った基調講演の言葉を借りれば、「眠り続けてきた1000兆円単位の預貯金をたたき起こす」ことが目的だからだ(ギルドホールにおける岸田総理基調講演/首相官邸/更新日:2022年5月5日)。究極的には目を覚ました預貯金がどうなろうと知ったことではないのだろう。 このような時流を反映してか、書店には投資関連の書籍が山積みだ。射幸心をあおる売り文句が並び、新NISAの時代に便乗している。「年間100万円の配当金が入ってくる」「30万円で始めて、5年で1000万円」「月20万円の不労所得を手に入れる」……。 出版書誌データベースによると、タイトル・副題に投資を含む本は、2019年は141点だったが、2021年は177点、2022年は 188点と増加傾向にある。出版関係者に聞くと、最近は生き方本でもお金を増やす資産運用の要素が入ったものが売れるという。) インスタグラムやYouTubeなどにおける投資系インフルエンサーの影響力も増している。低所得者向けのFIRE(経済的自立と早期リタイア)までが登場し、金銭的な自己防衛とサバイバルを促す空気が醸成されている。 もはやそこには社会保障を軽んじる政府に対する批判といったものはなく、賢く投資して逃げ切れという先の報告書と変わらない精神があるだけだ。これは社会課題を個人レベルで解決することを推奨する考え方であり、若年者の貧困や老後破産は本人の責任という見方を強めていくことだろう。 2月28日、厚生労働省の人口動態統計の速報値が公表され、2022年の出生数が過去最少の79万9728人となり、統計開始以来初めて80万人を割り込んだことが話題になったが、経済的な災厄を考えれば当然の帰結でしかない』、「これは社会課題を個人レベルで解決することを推奨する考え方であり、若年者の貧困や老後破産は本人の責任という見方を強めていくことだろう」、マクロ的には極めて不健全な考え方だ。
・『「異次元の少子化促進」をずっとやってきた  社会学者の山田昌弘は、少子化の日本的特徴として、日本人は「生活リスク」を大変嫌うと述べ、「子どもに豊かな生活や十分な教育を保障したいから、それが実現しないリスクが高いと思えば、結婚しない、子どもをもたない、子ども数を少なくするという選択がとられる」と主張した(「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか」-コロナ後の家族は変わるのか?-/人口動態と経済社会の変化に関する研究会第一回報告/財務省財務総合政策研究所/2020年10月20日)。 日本では、まさに不作為という名の「異次元の少子化促進」をずっとやってきたのである。経済的な困窮や雇用の不安定化がコロナ禍で進行したが、次は恐ろしいことに血も涙もない「大増税」が待ち構えている。 多くの国民は糊口をしのぐのが精一杯で、資産運用に注力する余裕などないだろう。そこで持てる者と持たざる者の差がさらに開く「超格差化」に拍車が掛かるのは目に見えている。わたしたちは、唯一の希望は投資しかないと言いくるめられ、いまだ経験したことのない地獄に向かって突き進んでいる』、「日本では、まさに不作為という名の「異次元の少子化促進」をずっとやってきた」、とは言い得て妙だ。「わたしたちは、唯一の希望は投資しかないと言いくるめられ、いまだ経験したことのない地獄に向かって突き進んでいる」、というのは腹立たしいが、同感である。 
タグ:政府財政問題 (その8)(ガソリン補助金の価格抑制効果に疑問=小嶌正稔、「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑と重大な問題点を解説、国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車) エコノミストOnline 小嶌正稔氏による「ガソリン補助金の価格抑制効果に疑問=小嶌正稔」 「原油価格高騰対策に投入される国費は・・・1.5兆円」、「民間企業・・・に国費(補助金)を支給するという、通常は考えられない政策」、その通りだ。 「政府はトリガー条項を実質的に発動して、後のことは別途考えるという姿勢」、なるほど。 「トリガー条項の小売平均価格は、総務省の「小売物価統計調査」の価格であり、その価格は消費者が購入したフルサービスの現金ガソリン価格だ。現在は70%以上のガソリンがセルフサービスのガソリンスタンドで購入されていることを考えれば、時代遅れの規定ともいえる」、「補助金を出すならば、原油価格の変動分を対象にすることでのみ、透明性を維持できる」、その通りだ。 「今回の緊急対策は、基準価格を引き下げることで消費を喚起した」、「施策を再検証の上で必要な見直しをする必要があろう」、当然だ。 ダイヤモンド・オンライン 室伏謙一氏による「「財源確保法案」に透けて見える財務省の思惑と重大な問題点を解説」 「財源確保法案」は、「大いに問題ある法案であるのだが、全くと言っていいほど詳しく報じられたり、解説されたりすることがない。そこで、本稿において、筆者として気づいた点を中心に、何がどう問題なのか、問題となり得るのかについて解説」、マスコミは何をやっているのだろう。 「以前から財務省が独立行政法人の積立金や基金を「無駄」と難癖をつけて返納させようともくろんでいたところ、防衛費増額を大義名分として穴を空けようという魂胆に見える。その先に懸念されるのは、独立行政法人の積立金等の国庫返納の対象の拡大である。そうなれば多くの独法が政策的機能を十全に果たせなくなってしまいかねない」、 「普段から十分な予算を配分して体制を整えておくべきところ、単年度思考、短期思考の財務省がそうさせないようにしているとしか言いようがない」、「財務省」の言いなりになっては、政府機関としての役割を果たせなくなってしまう。 「本法案により防衛力強化資金が設置されるが、この資金は一般会計に置くので財務省管理とされている。防衛力強化のためのものなのだから、特別会計的に防衛省の管理とすべきではないかと思われるが、なぜそうなっているのかについては、本則の後ろに規定されている附則を見ると分かる。 なんと附則の第4条において、財務省の所掌事務として「防衛力強化資金の管理に関すること」が追加されているのである。理解しづらいかもしれないが、各府省の所掌事務を新たに追加するというのは非常に重たい話、かつ他の府省からの反発もあり得る話であり、かつ、一度規定してしまうとそれをなくすことは、新たな行政機関の設置や、省庁再編のようなものでもなければあり得ない。したがって、既存の所掌事務の範囲内で「読む」ということがよく行われるのであるが、今回新たに所掌事務を追加するというのは、財務省がコントロールできる新たな「財 布」を財務省のために設けるため、そして、財務省の手を離れてしまう特別会計的なものは是が非でも設けたくないという財務省の姑息な魂胆によるもの」、「財務省」はこういうところで、ちっかりと省益につながる措置を潜り込ませている。 「財務省」を敵に回すような気概のある野党議員がいてほしいが、現実にはいないのではなかろうか。 東洋経済オンライン 真鍋 厚氏による「国民負担率47.5%の先に待つ日本の最悪シナリオ 大増税時代「唯一の希望は投資」超格差化に拍車」 「国民負担率」が「今年度(2022年度)にそれが47.5%となる見込み」、「1979年度に30%台」から比べるとずいぶん重くなったものだ。 「「失われた30年」と呼ばれる期間、経済成長は鈍化。実質賃金は低迷し続け、中間層は衰退していった。収入が上がらず、非正規雇用や個人請負化が拡大し、生活不安が増大する状況下で、到来しつつあるのは「新しい資本主義」ではなく「新しい自己責任」である」、「新しい自己責任」が「到来しつつある」というのは、嫌なことだ。 「「資産所得倍増プラン」・・・の趣旨は、「中間層がリターンの大きい資産に投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大することができる。また、家計の資金が企業の成長投資の原資となれば、企業の成長が促進され、企業価値が向上する。企業価値が拡大すれば、家計の金融資産所得はさらに拡大し、『成長と資産所得の好循環』が実現する」・・・ということらしい。だが、そのような資金のある人々がいったいどれだけいるのか。 金融資産を保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ世帯」はここ10年で「2人以上世帯」では20.6%から 31.2%に、「単身世帯」では29.9%から46.4%に上昇」、「新NISAがスタートする。1億総株主、1億総投資家への布石であり、たとえ少ない所得であっても、投資で「倍増」も夢ではないという甘言である。と同時に、将来的に破綻する可能性がある社会保障に期待することなく、「自分の身は自分で守れ」という身もふたもないメッセージでもある」、嫌な世の中になりそうだ。 「投資」は高所得層がより多くするので、格差拡大になりこおすれ、「格差是正」になる筈はない。 「これは社会課題を個人レベルで解決することを推奨する考え方であり、若年者の貧困や老後破産は本人の責任という見方を強めていくことだろう」、マクロ的には極めて不健全な考え方だ。 「日本では、まさに不作為という名の「異次元の少子化促進」をずっとやってきた」、とは言い得て妙だ。「わたしたちは、唯一の希望は投資しかないと言いくるめられ、いまだ経験したことのない地獄に向かって突き進んでいる」、というのは腹立たしいが、同感である。
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