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キシダノミクス(その6)(岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する、岸田首相の子ども関連予算“倍増”発言 わずか1日で修正に「一体何を倍増するの」と異論続出、岸田政権が「支持率急落」でも倒れないと言える理由 背景に“古い価値観”) [国内政治]

キシダノミクスについては、本年2月3日に取上げた。今日は、(その6)(岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する、岸田首相の子ども関連予算“倍増”発言 わずか1日で修正に「一体何を倍増するの」と異論続出、岸田政権が「支持率急落」でも倒れないと言える理由 背景に“古い価値観”)である。

先ずは、本年2月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「岸田首相は「改革後退」ばかりやっている…六本木ヒルズに集まった「規制改革マフィア」が抱く深刻な危機感 「制度・規制改革学会」発足の狙いを解説する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66530
・『岸田政権の経済政策にいら立ちがつのっている  岸田文雄内閣の「改革後退」にいら立った経済学者らが集まり、「制度・規制改革学会」という新しい学会が立ち上がった。 2月7日に東京・六本木ヒルズで開かれた設立総会では、これまで政府の規制改革に携わってきた八田達夫・大阪大学名誉教授と八代尚宏・昭和大学特命教授、竹中平蔵・慶應義塾大学名誉教授が理事に就任、八代教授が初代会長に選ばれた。 来賓としてあいさつした宮内義彦・元オリックス会長は「改革が動かない中で、学会を作るというのは複雑な気分だ。なぜ物事が動かないかという研究をするのでは意味がない。動かすための研究をしてほしい」と注文を付け、改革提言などを積極的に行う「行動する学会」になるよう求めた。 宮内氏は政府の規制改革関連会議の議長などを長年務めた日本の規制改革を主導した経営者の重鎮で、ソフトな語り口ながら、現状の改革停滞へのいら立ちを見せていた』、近年、影が薄くなった新自由主義陣営からの反撃の狼煙のようだ。
・『「規制改革が経済格差を拡大」は的外れ  学会の設立にあたっては理事3氏のほか、岩田規久男、岸博幸、久保利英明、小林慶一郎、鈴木亘、高橋洋一、永久寿夫、夏野剛、野村修也、原英史、福井秀夫、藤原豊、矢嶋康次、柳川範之(敬称略)ら約40人が発起人に名前を連ねた。総会会場には川本裕子人事院総裁や国会議員も多数顔を見せた。また、河野太郎デジタル改革担当相、小倉将信・少子化対策担当相がビデオメッセージを寄せた。 シンポジウムでは八代会長と八田達夫教授が規制改革の現状についてプレゼンテーションを行い、その後、竹中教授と、政府の規制改革会議議長を務める大槻奈那氏がパネラーとして議論に参加。イェール大学の成田悠輔氏がオンラインでコメンテーターとして加わった。 八田氏らは市場主義に基づく改革が「新自由主義」のレッテルを貼られて批判されることを「的外れ」であると強調、「規制改革が経済格差を拡大した」というのも当たらない、とした。八代氏も岸田内閣が行っている「数々の社会主義的政策」では問題は解決しないとし、物価上昇などに対して補助金を出すことで価格を抑制しようとしていることなどを批判していた』、メンバーはそうそうたる「新自由主義」提唱者たちだ。ただ、「岸田内閣が行っている「数々の社会主義的政策」では問題は解決しないとし、物価上昇などに対して補助金を出すことで価格を抑制しようとしていることなどを批判」、この点についてだけは、私も同感である。
・『なぜ日本は「魅力的な可能性」を眠らせているのか  「規制改革が格差を拡大させた」という批判について、八田氏は「競争と再分配は両立できる」強調。新古典派経済学の政策理念としての「現代市場主義」は既得権の保護よりも効率化を追求する点では立場が同じだが、より「平等」を求めるか「不平等」を容認するかは立場が分かれると解説。一般に「新自由主義」として批判されるのは米国のレーガン時代やトランプ時代のような「格差拡大容認主義」であるとした。 本来、「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」は同一ではないにもかかわらず、「新自由主義」のレッテルの下に同一視されたのが日本の現状だとした。まだまだ規制を改革することで経済を効率化し成長路線に乗せていくことは可能だというわけだ。 竹中氏からは1月に行われたダボス会議で「日本はスリーピング・ビューティー(眠れる森の美女)だと評された」という紹介があり、「ビューティーかどうかは分からないが、眠っているのは確かだ」と答えたと話していた』、「本来、「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」は同一ではないにもかかわらず、「新自由主義」のレッテルの下に同一視されたのが日本の現状だとした」、私は「「現代市場主義」と「格差拡大容認主義」」は事実上、「同一」だと思う。
・『成田悠輔氏「規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んだ」  海外からは、日本には魅力的な可能性があるにもかかわらず、改革を行わずにいると見られているということだ。「日本は政策的失敗だ」という声も多く聞いたと話していた。 その上で、「ベーシック・インカム」的な制度の導入によって規制改革と弱者支援は両立できるとした。 大槻氏からは現在、規制改革会議で行っている改革の中身などについて説明があったが、会場からは「規制改革会議は役割を終えたのではないか、何も改革できていない」と言った厳しい声も出ていた。 成田氏からは「今回のメンバーを見て、規制改革マフィアのど真ん中に迷い込んでしまった」というジョークが浴びせられたが、竹中氏は「(権益を持つ)マフィアではなく、(既得権と闘う)十字軍だ」と切り返して笑いを誘っていた』、「規制改革と弱者支援は両立できる」、はあくまで「「ベーシック・インカム」的な制度の導入」した場合だけだ。
・『「新しい資本主義」は社会主義ではないのか  パネラーのほか、多くの参加者から挙がっていたのが、「世代交代」。日本の経済成長が止まった1990年代以降、経済構造改革や規制改革の動きが強まっていたが、それを担ってきた学者、経営者は高齢化し、一線を退こうとしている。八代氏は「長年、規制改革を主導してこられた宮内義彦さんのような人たちの規制改革に向けた思いや知見を次世代につないでいきたい。次の若い世代の人たちに、私たちの経験から得た知恵を伝えていく、それがこの学会の大きな役割だ」と語っていた。 岸田首相は就任時に分配政策を中心とする「新しい資本主義」を掲げ、「新自由主義的政策は取らない」と明言した。さらに、安倍晋三元首相が推し進めた「アベノミクス」によって格差が拡大したと主張している。一部の経営者からは「新しい資本主義は社会主義だ」といった批判を浴び修正する気配を見せたが、その後、打ち出されている数々の政策は、補助金などによって市場をコントロールしようとするものになっている』、「打ち出されている数々の政策は、補助金などによって市場をコントロールしようとするものになっている」、これは「新自由主義的政策」か否かによらず、インセンティブ付けのため必要な施策だ。
・『結局は「補助金支給」などの財政拡大が止まらない  市中でのガソリン価格の上昇を抑えるために、一定価格以上にならないよう石油元売会社に補助金を出す制度を2022年1月以来続けているが、これには巨額の財政支出を必要としている。さらに、小麦の小売り価格を抑えるための製粉会社への売り渡し価格の抑制や、電力・ガス料金を抑えるための電力会社などへの補助金の支給など財政拡大が止まらない。今年年頭に「最大の重要課題」として打ち出した少子化対策も、結局は児童手当の所得制限撤廃や拡充などが焦点になっている。 安倍首相(当時)は「規制改革がアベノミクスの一丁目一番地」だとし、農協改革や医療改革、労働規制改革といった「岩盤」に切り込む姿勢を強調していたが、岸田内閣では「規制改革」はほとんど姿を消した。ここへきて、八田氏や竹中氏らは長年務めていた政府の規制改革会議などから外れていて、政権が従来の規制改革路線を大きく転換した象徴だと捉えられている。 「岸田政権になって規制改革はむしろ逆行し、何でも国に頼る、社会主義的な政策になっている」と八代氏が言うように、今回の学会設立は、そうした「改革後退」への危機感が背景にある』、価格上昇を抑えるための「補助金」支給は財政資金の完全な無駄遣いで、私も反対だ。
・『必要なのはバラマキではなく旧制度の見直し  「学会」という形を取ったことについて会長の八代氏は、学者の役割に対する反省があるとしている。 日本では、立法は霞が関の省庁が事実上担ってきたことで、行政が強い権限を持って、裁量的に運用していける形になっている。学者は法解釈が主流で、立法論に重きが置かれてこなかった。八代氏は「経済学は、本来、現実の社会問題解決のための道具だ」と言う。にもかかわらず、新しい時代に合わせて経済合理的なルールに変えていく役割を学者が担ってこなかった、というわけだ。 新学会では、「具体的な生産性向上につながる規制改革の提案を最優先する」(八代氏)という。例えば、「少子化対策が今年の最重点課題だと岸田首相は言っているが、カネをばらまくだけでなく、古い制度の見直しが必要だ」(八代氏)として、制度面の改革の必要性などを早い段階で提言していく方針だという。 岸田内閣の「新しい資本主義」では、リスキリングを通じた労働移動の促進による賃上げの実現を掲げている。一方で、雇用調整助成金の特例を延長し続けて企業に余剰人員を抱えさせる政策を取り続けてきた。企業を守ることを通じて個人を守るという伝統的な日本の政策が、持続不可能になってきた今、企業ではなく個人を守るための制度や規制の改革が重要というわけだ。 新学会には、ジャーナリストや経営者、弁護士やエコノミストといった専門家などに幅広く会員として参加することを呼びかけている』、「リスキリングを通じた労働移動の促進による賃上げの実現」はいいが、「雇用調整助成金の特例を延長し続けて企業に余剰人員を抱えさせる政策」、はそろそろ止めるべきだろう。「企業ではなく個人を守るための制度や規制の改革が重要」、その通りだ。

次に、2月16日付け日刊ゲンダイ「岸田首相の子ども関連予算“倍増”発言 わずか1日で修正に「一体何を倍増するの」と異論続出」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318857
・『《「こんなこといいな できたらいいな」ってか。ドラえもんより酷いよ》 15日の衆院予算委員会で、「家族関係社会支出は2020年度でGDP比2%を実現した。さらに倍増しようと申し上げている」と明言した岸田文雄首相(65)に対し、ネット上でこんな皮肉の声が広がっている。 国や地方自治体などが負担している児童手当などの「家族関係社会支出」。岸田首相は20年度にGDP比2%で10兆円規模だったこの支出の割合を「さらに倍増」と断言していたため、SNS上では《ということは20兆円を目指すと。異次元の少子化対策とはこれだったのか》、《岸田さんが言っていた、「将来的な子ども・子育て予算倍増」の意味は、こういうことだったのね》などと期待が膨らんでいたのだが、風向きが変わったのは16日だ。 磯崎仁彦官房副長官(65)が会見で、前日の岸田首相の国会答弁について「将来的な倍増を考える上でのベースとしてGDP比に言及したわけではない」と修正したことから、異論の声が相次いだのだ。 《ん? 一体なんだ。じゃあ、何を倍増するの。GDP比じゃない? なら、GDPそのものを倍増といったのか。言葉の意味が全く分からない》) 《GDP比で4%を目指すのではないの。将来のベースとは、つまり、やりたいなという願望を答弁したのか》 岸田首相といえば総裁選などで「所得倍増」と強く訴えていたにもかかわらず、いつのまにか「資産所得倍増」に変わった経緯がある。このため、SNS上では、《子ども・子育て予算倍増も、子ども・子育て予算倍増を検討する時間の倍増に変わるだろう》といった指摘も出ている』、「磯崎仁彦官房副長官」は「岸田首相の国会答弁」がその後の制約にならないように、骨を抜いて無味乾燥にしているようだ。

第三に、2月21日付けダイモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「岸田政権が「支持率急落」でも倒れないと言える理由、背景に“古い価値観”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318074
・『内閣支持率が急落しても、岸田文雄首相に動じる様子はない。その泰然自若とした姿は、支持率低下が必ずしも政権交代に直結しなかった「中選挙区制時代」の宰相に通じている。防衛増税のように「不人気だが必要」といえる政策を打ち出せる胆力は、古いタイプの政治家ならではの強みだ。一方で、その「古さ」は、息子を首相秘書官に登用して批判を買う、同性婚を巡る答弁で“炎上”するといった弱点にも通じている。そんな岸田氏率いる政権は、これからどこへ向かうのか』、「その泰然自若とした姿は、支持率低下が必ずしも政権交代に直結しなかった「中選挙区制時代」の宰相に通じている。防衛増税のように「不人気だが必要」といえる政策を打ち出せる胆力は、古いタイプの政治家ならではの強みだ。一方で、その「古さ」は、息子を首相秘書官に登用して批判を買う、同性婚を巡る答弁で“炎上”するといった弱点にも通じている」、「古いタイプの政治家」、とは言われてみれば、確かにその通りだ。
・『内閣支持率が急落でも岸田首相は動じず  岸田文雄政権の支持率低迷が続いている。各種世論調査における支持率は20~30%台に落ち込み、不支持率が50~60%を超えたとする調査もある。 岸田政権は2021年10月末の衆議院議員総選挙、22年7月の参議院議員選挙に連勝し、盤石な政権運営を行う流れができたはずだった。 ところが、参院選投票日直前に起きた安倍晋三元首相暗殺事件をきっかけに、その流れは逆転。さまざまな問題が発覚し、岸田政権の支持率の低迷が始まった。不祥事の代表例はもちろん、旧統一教会と政治の関係が露呈したことである(本連載第312回)。 教団との関係が発覚したほか、「政治とカネ」の問題や失言なども重なり、22年秋には閣僚が次々と辞任した(第318回)。 苦境にある中、岸田首相は「防衛増税」を打ち出した(第320回)。相手のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」を保有するほか、23~27年度の5年間で防衛費を総額43兆円(現行計画の約1.5倍)に増やし、その財源を確保するための増税を行う施策である。 この増税の財源には、安定財源でありながら国民の反発を買う消費税を含まず、国民の理解を比較的得やすい「法人」「所得」「たばこ」の3税を充てた。増税の実施時期は早い段階ではなく「24年以降の適切な時期」とした。 国民に歩み寄りながら「防衛増税」を打ち出すという難しいかじ取りに挑んだ岸田政権だが、その支持率は落ち続けている。昨今はウクライナ戦争の影響などによる世界的なインフレが進み、国民は物価高騰に苦しんでいる。「増税を理解せよ」と説いても賛同を得るのは難しいのだろう。 しかし岸田首相は、支持率低下に動揺しているようには見えない。それはなぜだろうか。 筆者は岸田首相の言動や考え方をウオッチする中で、一つの答えにたどり着いた。それは、政治家としての「価値観や感覚の古さ」を持っていることである』、「岸田首相は、支持率低下に動揺しているようには見えない」のは、「政治家としての「価値観や感覚の古さ」を持っていることである」、もうすこし後に詳しい説明があるようだ。
・『息子を首相秘書官に登用 「世襲人事」に非難殺到  岸田首相は、22年10月に息子の翔太郎氏を首相秘書官に起用した。この人事については野党などから「時代錯誤」だと厳しい世襲批判が巻き起こったが、首相はどこ吹く風だ。それどころか、23年1月の欧米5カ国訪問には翔太郎氏を同行させた。 この際、翔太郎氏が公用車でパリやロンドンを観光しただけでなく、カナダのジャスティン・トルドー首相に記念撮影を申し込み、周囲のひんしゅくを買ったと週刊誌が報じた。 いわば、仕事ではなく「物見遊山」気分だったというわけだ。言わずもがなだが、翔太郎氏の行動は、首相の息子という「特権」を利用していると批判された。 衆議院・予算委員会では、野党から「この人事は適切か」と問われる一幕もあった。この際、岸田首相は翔太郎氏のことを「政治家としての活動をよりよく知る人間」と高評価し、彼の政務秘書官採用には「大変、大きな意味がある」と言ってのけたのだ。 答弁における岸田首相の表情からは「一体何が悪いのかわからない」という戸惑いが見えた。政治家を「家業」と考えて、息子に「世襲」することにまったく疑いがないように思えた。 岸田首相は、祖父・父親が国会議員の「3世議員」だ。岸田家代々の地元・広島ではなく東京で生まれ育ち、開成高校卒業後は東京大学を目指した。だが受験に失敗し、2浪の末に早稲田大学に進学。卒業後、日本長期信用銀行勤務を経て、衆院議員だった父・文武氏の秘書となった。 いわば、非常に恵まれた家系に生まれたわけだ。だが、岸田首相にとって、そのことが「当たり前」になっているのではと勘繰りたくなる場面がしばしばある。 例えば、21年9月の「文春オンライン」の記事によると、岸田首相は「東大に三回落ちた。私は決して線の細いエリートではない」と述べていたという。 また、首相秘書官だった荒井勝喜氏が性的少数者を巡る差別発言を行い、岸田首相自身も「ダイバーシティへの理解不足」を指摘された際、岸田氏は次のように反論したという。 「私自身もニューヨークで小学校時代、マイノリティーとして過ごした経験がある」 あくまで報道から受ける印象にすぎないが、筆者はこうした発言を見た際、「2年間の浪人生活が許されること」や「ニューヨークの小学校に通えること」がどれほど恵まれているかに思いが至らないのではないかと感じた。 首相でありながら、こうした「世間とのズレ」を往々にして露呈している点に、筆者は「価値観や感覚の古さ」を感じたわけだ』、「岸田首相は翔太郎氏のことを「政治家としての活動をよりよく知る人間」と高評価し、彼の政務秘書官採用には「大変、大きな意味がある」と言ってのけたのだ。 答弁における岸田首相の表情からは「一体何が悪いのかわからない」という戸惑いが見えた。政治家を「家業」と考えて、息子に「世襲」することにまったく疑いがないように思えた」、「「2年間の浪人生活が許されること」や「ニューヨークの小学校に通えること」がどれほど恵まれているかに思いが至らないのではないかと感じた。 首相でありながら、こうした「世間とのズレ」を往々にして露呈している点に、筆者は「価値観や感覚の古さ」を感じたわけだ」、「価値観や感覚の古さ」とは言い得て妙だ。
・『「女性活躍」の機運とは対照的に「男性ばかり」の側近たち  さらに、岸田首相は同性婚を巡る国会答弁で、同性婚の制度化について「社会が変わってしまう」と発言。これが批判されると、慌てて釈明した。 この岸田首相の答弁は、法務省が用意した文案にはなく、自らの言葉だったという。つまり「本音」が出たのだ。 そんな岸田首相を支えているのは「男子校」である母校・開成高校出身の政治家・官僚だ。 17年に発足した「永霞会(えいかかい)」という同窓組織には、開成出身の官僚や政治家約600人が参加。岸田氏を首相にすることを目的に活動してきた。首相就任後も、岸田氏の有力な人脈となっている。 また、岸田政権の首相秘書官には、翔太郎氏に加えて主要省庁出身の官僚が7人いる。その8人全員が男性だ。内閣広報官も男性の四方敬之氏が務めている。 過去を振り返ると、第2次安倍晋三政権では、山田真貴子氏が女性初の首相秘書官として起用された。山田氏は菅義偉政権下で女性初の内閣広報官も務めた。 この山田氏が、菅元首相の息子が勤務する放送関連会社による「接待問題」で辞任した影響かもしれないが、岸田首相は女性登用の流れを断ち切った。現状、首相秘書官・内閣広報官は男性で固められている。 男性ばかりの首相秘書官の一人だった荒井氏が、性的少数者に対する差別発言で更迭されたことは示唆に富んでいる。 荒井氏は同性婚などについて「秘書官室もみんな反対する」という趣旨の発言をしたという。このエピソードは、荒井氏だけでなく、岸田首相本人や側近が同様の考えを持っていることを表しているように思えてならない。 余談だが、作家・評論家の佐高信氏が株式関連情報サイト「みんかぶ」に寄稿した記事によると、岸田首相は早稲田大学法学部出身の記者から「後輩だ」とあいさつされた際、「私は開成高校なので」と返したという。 その発言の是非はともかく、同窓組織「永霞会」から側近の面々に至るまで、岸田首相の周りが「女性活躍」の機運とは対照的に「男性一色」なのは事実だ』、「「永霞会・・・」という同窓組織には、開成出身の官僚や政治家約600人が参加。岸田氏を首相にすることを目的に活動してきた。首相就任後も、岸田氏の有力な人脈となっている」、初めて知った。「岸田首相は早稲田大学法学部出身の記者から「後輩だ」とあいさつされた際、「私は開成高校なので」と返した」、「早稲田大学法学部」よりも「開成高校」に強いアイデンティティを持っているのだろう。
・『歴代首相とは異なり首相就任後も派閥のトップを継続  さらに言えば、岸田首相は首相就任後も岸田派(宏池会)の会長職を続けている。一方で、歴代首相の多くは首相就任に当たって派閥のトップから降り、派閥から離脱してきた。 岸田首相の対応は異例である。菅前首相や石破茂元幹事長などが、現首相の「派閥主義」に批判を展開したこともある。だが、岸田首相はこうした指摘も気にしているようには見えない。 一連の事象からは、岸田首相が「世襲」「男性社会」「派閥・学閥」を当たり前とする文化の中で生きてきたことがうかがえる。繰り返しになるが、これらは20~30年前から批判されてきた「古い価値観」である。 岸田首相は国のトップとして「国民の声を聞く」ことに注力しているのかもしれないが、筆者の目には「古い価値観」から今一つ脱却しきれていないように映る。 そんな岸田首相および岸田政権の今後はどうなるのか。もしかすると、さらなる支持率低下によって政権基盤が不安定化し、「倒閣」の動きが出てくると予想する人が多いかもしれない。 だが、これまでの批判とは矛盾するようだが、筆者はそれとは逆のことを考えている。 岸田首相が持つ、ある種の「古さ」が強みとなり、野党や与党内の反主流派といった「政敵」に難しい状況をもたらす可能性があるのだ。 筆者は本稿の冒頭で、岸田首相が支持率低下に動揺していないと指摘した。それは、まさに首相が「古いタイプの自民党政治家」だからなのである。 小泉純一郎政権以降、自民党政権は内閣支持率の推移にデリケートに対応するようになった。それは、90年代の政治改革による「小選挙区比例代表並立制」の導入が背景にある(第1回)。 中選挙区制の時代、自民党だけが1つの選挙区に複数の候補者を立てることができた。そのため、政権交代が極めて起こりづらく、自民党の候補者同士が「政策」ではなく「利益誘導」を争った。 この時代の自民党政権は、現在ほど内閣支持率を気にすることなく「消費税導入」などの「不人気だが必要」といえる政策を実現していった。 一方、小選挙区制が導入されると、選挙は「利益誘導」から「政策」中心に次第に変わっていった。自民党も「一つの選挙区に立てられる候補者は一人のみ」となり、自民党の一党優位が崩れ、支持率の低下が政権交代に直結するリスクに直面した。 そうした中で、第2次安倍政権が、持論を押し通して壊滅した第1次政権の反省を踏まえ、内閣支持率の推移に極めて敏感な政権運営を行ったことは記憶に新しい(第308回)』、「小泉純一郎政権以降、自民党政権は内閣支持率の推移にデリケートに対応するようになった。それは、90年代の政治改革による「小選挙区比例代表並立制」の導入が背景にある」、なるほど。
・『「不人気だが必要」な政策を断行しても政敵は何もできない  だが、安倍政権が支持率に敏感に対応し、国政選挙に連勝を重ねたことで野党は弱体化した。自民党は小選挙区制ながら、衆参両院で圧倒的多数を確保している。現在の自民党は、中選挙区制の時代以上に「一党優位」の状況だといっても過言ではない、 その状況下で、岸田首相という「古さ」を感じさせる首相が現れた。支持率低下に動じない「古い自民党」の価値観を持つ彼が、政権交代の危機感がない「一党優位」の状況下で政権運営を行うとどうなるか。 防衛増税のように「不人気だが必要」といえる政策を断行し、さらに支持率が低下したとしても、自民党の優位は揺るがない。政敵は支持率低下に付け込めず、手の出しようがないのだ。 岸田首相はただでさえ、解散権を行使しなければ3年間にわたって国政選挙がない「黄金の3年間」を手にしている。まさしく政敵は何もできない状況だ。 なお、今国会で審議が予定される課題は、防衛増税に加えて以下の3つである。 ・原発の60年超の運転を可能にする新規制制度を盛り込んだ「原子炉等規制法(炉規法)の改正案」 ・不法残留する外国人の迅速な送還や、入管施設での長期収容の解消を目的とした「入管難民法の改正案」 ・相対的に所得の高い75歳以上の医療保険料を24年度から段階的に引き上げることが柱の「健康保険法等の改正案」 いずれも、まるで「55年体制」を思い出させる、与野党が完全に激突するような政治課題だ。声の大きな野党の反対で、内閣支持率のさらなる低下が懸念される。 だが、それゆえに、岸田首相の「古い政治家」としての持ち味が発揮されるかもしれない。岸田首相が支持率の推移に一喜一憂せず、淡々と「不人気だが必要」な法案を可決していく可能性は大いにある。 そのとき、政敵は何ができるのだろうか。 通常国会の論戦が本格化していく中、「岸田内閣の支持率がさらに下がり、『岸田降ろし』が始まる」という一般的な論調とは別の見方をしてみると、政局を見通す上での幅が広がるはずだ』、「岸田首相が支持率の推移に一喜一憂せず、淡々と「不人気だが必要」な法案を可決していく可能性は大いにある。 そのとき、政敵は何ができるのだろうか」、確かに「政敵は支持率低下に付け込めず、手の出しようがない」、「淡々と「不人気だが必要」な法案を可決していく可能性は大いにある」、面白い見方だ。ひょっとすると、大宰相の出現なのかも知れない。
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