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共通テーマ:日記・雑感

イスラエル・パレスチナ(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、本年10月22日に取上げた。今日は、(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング)である。

先ずは、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710395
・『イスラエルはよく知られているように、欧米先進国並みの民主主義国であるとともに、世界に離散したユダヤ人が集まったユダヤ人の国である。1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている(2022年、IMF統計)。数字の上では堂々たる先進国である。 ところが、この「民主主義国」であると同時に「ユダヤ人の国家」であることは、イスラエルの場合、乗り越えがたい深刻な矛盾をはらんでいる。そして、それが今回のハマスによるイスラエル侵攻の最大の原因の1つになっているにじゅう』、「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。
・『2022年12月に発足した「最右翼」の連立政権  現在のイスラエルのネタニヤフ政権はイスラエル史上、最右翼の政権と言われている。首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ。 しかもこうした極右、宗教政党の党首が、占領地であるヨルダン川西岸やガザ地区の民生を担当する第2国防相、あるいはヨルダン川西岸の警察業務担当の国家安全保障相という重要な閣僚に就任し、パレスチナ人に対して厳しい政策を実施し始めたのである。) ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない』、「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほど。
・『司法制度改革が招いた政権批判がかき消えた  当然のことながら、政権の司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した。ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。) ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない』、「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。
・『民主国家から「ユダヤ人民族国家」に変質  イスラエルの「建国宣言」(1948年)や基本法の「人間の尊厳と自由」(1992年)には、すべての国民に開かれた「民主国家」「人間の尊厳と自由を守る」などと書かれている。それと比較すると、ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める。 ここ数年、大きな武力衝突がないことから、アメリカ国務省関係者らからは「こんなに静かな中東は久しぶりだ」などという声が出ていたが、一方で少なからぬ専門家が「大規模な軍事衝突はいつあってもおかしくない状況だ」と論じていた。 残念なことにその予想が当たり、10月7日に悲劇が起きてしまった。) ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版)が興味深い話を紹介している。イスラエルの初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地(ヨルダン川西岸とガザ地区)をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している』、「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。
・『占領地を併合すれば、ユダヤ人とパレスチナ人が半々に  イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている。 連立与党の極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった。) ところが「オスロ合意」をピークに和平に向けた動きは失速していった。 ラビン首相の暗殺以後、テロや武力衝突が繰り返され、市民の不安、不満が強まり寛容性は消えてしまった。それを受けてパレスチナに対する強硬論を訴える右派、タカ派が支持を増やす。 一方で、和平交渉を進めてきた左派勢力が衰退していく。その先に出現したのがネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ』、「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。
・『占領地の抑圧支配は続けられるのか  前述の『イスラエル』によると、ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない。しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある。特に戦闘員でもない一般市民を対象とした大量無差別殺人は徹底的に追及されるべきだ。ガザに住む200万人の命を、イスラエルに向けたロケット弾で守ることはできない。ハマスにはもはや統治者としての責任感は感じられない。 2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している』、「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。

次に、11月1日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/11/post-1331_1.php
・『<日本外交は歴史的に「宗教対立には関与しない」基本方針を貫いてきた> 現地時間10月7日に発生した、武装集団ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と、これを受けたイスラエルのハマスに対する宣戦布告により、両者は戦闘状態に入っています。米バイデン政権は、直ちにイスラエルへの強力な支持を表明、G7の中でイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダもほぼこれに同調しています。 その一方で、日本はG7諸国の中では唯一この問題に関しては冷静な立場を取っています。勿論、ハマスの人道を無視した乱射、殺人や誘拐などに対する非難は行っていますが、その一方でガザ地区への援助は継続しています。また、国連における決議等での行動も、イスラエルを全面的に支持するアメリカの投票行動とは少し異なった動きをしています。 今回は、上川外相がイスラエルを訪問しますが、前後してヨルダンを訪問、そして可能であればパレスチナ側要人とも会談して、双方に対する敬意を払う姿勢を見せています。つまり、この問題に関して、そして広い意味での中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由としては3つ挙げられると思います』、興味深そうだ。
・『中東産原油への依存  1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです。日本は資源がないだけでなく、先進国型のエネルギー消費をする人口が1億3000万と多く、また衰退したとは言え製造業もあります。そんな中で、原子力の平和利用については技術力があるものの、政財界が世論を説得する努力が不足しているために、どうしても化石燃料への依存が止められません。 歴史的にも、1970年代に中東戦争による第一次石油ショック、イラン革命による第二次石油ショックという2度の原油高により日本経済は大きく揺さぶられました。そして現在は、ロシアのウクライナ侵攻による原油高と円安に深く苦しんでいます。そんな中では、中東の産油国と良好な関係を保つことは、国益の生命線です。そのためには、パレスチナの人々の権利というアラブの大義に理解を示すことは避けて通れません。 2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要です。彼らとの信頼関係を維持するためにも、中東における中立ということは必要です。 3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であったということがあります。国際社会には様々な利害関係が渦巻いています。その中で宗教を軸とした対立というのは無視できない問題です。ですが、日本は歴史的に「宗教による対立には関わらない」ということ、裏返せば「宗教の対立には全方位で臨む」という姿勢を堅持してきました。これは、例えば戦後における度重なる安保理非常任理事国での貢献などで結果を出したことも加わって、日本の国際的信頼の基盤となっています。今回の中立政策も、その日本外交の「非宗教性」という国是に即したものと言えます。) では現在の情勢下、G7の中で、日本だけがこうした姿勢を取ることには問題があるのかというと、それは「ない」と考えられます。 何よりも、上記の3点は求められれば胸を張って説明できるし、アメリカを含むG7諸国はそれぞれに理解を示すと考えられるからです。特にアメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います。 日本の特に保守派の中には、日米同盟の堅持が安全保障の根幹だという認識から、軍事外交においては、アメリカに100%同調すべきという考え方が昔からありました。例えば湾岸戦争、あるいは21世紀初頭の反テロ戦争においては、可能な限りアメリカを支持する姿勢を見せることが、日本の安全を確保する上では「必要不可欠」だと思い詰めていたのです。ですが、現在の世界情勢は当時とは状況が違っており、現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます』、「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。

第三に、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕のポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-102984.php
・『<イスラエル軍がとった過去の軍事行動のパターンから見えてくるネタニヤフ首相の戦略的誤算がもたらす地上侵攻の末路とは?> 過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた。 そして今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。 今後を占うには歴史が参考になる。9.11同時多発テロの後で、アメリカは国際社会の強い支持を得た。アフガニスタンに侵攻すれば泥沼に陥ると警告する専門家もいたが、タリバンとの戦いは避けられないと国際社会は見なした。 だが、アメリカを含む連合軍はその20年後、混乱の中でアフガンから撤退した』、「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。
・『国連での孤立が鮮明に  地上戦の拡大に関して、イスラエルでは懸念の声が上がっている。軍部でもベンヤミン・ネタニヤフ政権内でも国民の間でも、今後の動向については意見が分かれる。 ロシア軍に包囲された東部マリウポリでウクライナ軍がアゾフスターリ製鉄所に籠城し、全長24キロの地下トンネルを駆使して3カ月近く持ちこたえたのはつい昨年のこと。ガザのトンネル網ははるかに広大で、ハマスが数カ月の戦闘に備えているのは確実だ。 10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた。 過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない』、「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」、「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になってほしいものだ。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」 「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。 「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほ ど。 「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエ ル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。 ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版) 「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。 「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・ 極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。 逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチ ナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。 「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテ ロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」 「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった ・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。 ポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」 「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた ・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。 「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」 「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になっ てほしいものだ。
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中国国内政治(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?) [世界情勢]

中国国内政治については、本年8月12日に取上げた。今日は、(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?)である。

先ずは、10月28日付けデイリー新潮「中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/10281200/?all=1
・『10月27日、中国の李克強・前首相が68歳の若さで死去した。2013年に首相に就任後、今年3月に退任するまで10年にわたり中国の経済政策を牽引してきた“功労者”に対し、中国の国営メディアは当初、その訃報を淡白に伝えるのみだった。その裏には「ライバルの死」によって独裁体制の完成を目指す、習近平・国家主席の企みがあるという。 【写真を見る】「えっ、これだけ!?」中国メディアのあっさり訃報と、故・安倍晋三元総理との貴重ツーショット 中国共産党機関紙「人民日報」によると、李前首相が死去したのは27日午前0時10分(中国時間)。上海で療養中だったが、突然の心臓発作に見舞われたという。しかし同紙が死去の一報を流したのは8時間以上経った、午前8時25分だった。 中国事情に詳しい、インフィニティ・チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。 「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません。たとえば22年11月、江沢民・元総書記が96歳で亡くなった時、習氏はその日に自身がトップとなる葬儀委員会を立ち上げ、天安門や人民大会堂で半旗を掲げただけでなく、官庁のホームページや検索サイトも白黒表示にするなどして追悼ムードを演出。結果的に当時、各地で盛り上がりを見せ始めていたゼロコロナ政策への抗議活動は一気に沈静化しました」 安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」(全国紙外信部記者)可能性などが取り沙汰されているという』、「「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません・・・安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」・・・可能性などが取り沙汰されている」、なるほど。
・『天安門事件も誘発  「他にも1989年、中国の改革開放の象徴で民主化にも理解を示していた胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」(田代氏) 人民日報など官製メディアが伝えた初報は短いものだったが、なかに「全力で救命に努めた」との一文が挿し込まれており、政権側の“配慮”の痕跡も窺えるという。 もともと李氏は習近平の「最大のライバル」であり、自身の地位を脅かしかねない「目の上のタンコブ」でもあったとされる。北京大学法学部卒の李氏は「共産党エリートの頂点」に位置し、その優秀さから習氏も“切るに切れない”存在だったと伝えられる。 「李氏は首相時代、睡眠時間は長くて4~5時間、日本でいう官庁の課長クラスの官僚にまで直接詳細な指示を出し、また災害が起これば直ちに視察と慰問のため現地へと飛んだ。そうした生活を10年間、毎日続けてきました。現地の報道などを見る限り、今回の死が突然だったのは本当のようで、激務の日々を長く過ごした“代償”と指摘する声もあります」(田代氏)』、「胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」、なるほど。
・『そして「イエスマン」だけが残った  中国では7月に秦剛・外相が、10月24日には李尚福・国防相が突如解任されるなど、不可解な更迭劇が続く。解任理由について政権側から正式な発表はないものの、習氏が「不要」と判断した部下を容赦なく切り、「独裁体制の強化が進んでいる」との声は絶えない。 「それだけでなく、昨年10月の中国共産党大会で一時期は“次の首相の大本命”と目されていた胡春華・副首相(当時)がヒラの中央委員に降格されました。胡氏は李氏と同じく、党員養成機関である共産主義青年団の幹部に選ばれてから輝かしい経歴を重ねたエリート中のエリートでした。李氏の退任や胡氏の降格によって、そうした党エリートが最高指導部から消え、代わって習氏が浙江省トップを務めていた時代の側近たちが脇を固めるようになりました。新しい指導体制のもと、中国が現在の難局をどう乗り切っていくのか――世界が固唾を飲んで注視しています」(田代氏) 優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト(債務不履行)に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない』、「優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト・・・に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない」、その通りだ。

次に、11月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由、中国政府が恐れることとは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331579
・『10月27日、中国の李克強前総理(以下、敬称略)が亡くなった。今年の3月まで中国政治のトップで活躍していた大物の突然の死に、中国国内もザワついている。自宅から遠い上海のプールで倒れたこともあり、まことしやかに毒殺説がささやかれているほどだ。政治のトップにいた10年間、李克強は何をしたのか。そして彼の死は中国の人たちにどのような意味をもたらしたのか?』、興味深そうだ。
・『3月の中国共産党大会で政治から引退した李克強 しかし胡錦濤退場“事件”のおかげでほぼ話題にならず  今年3月の政治大会で10年間務めた国務院(内閣に相当)総理を辞し、引退生活に入っていた、李克強が27日未明に急逝した。 さっさと憲法を改正して任期を延長し第3期に突入した習近平・国家主席とは対象的に、李克強は前任者の温家宝・元総理と同じようにすべての権力を手放し、それ以降完全に政治の表舞台から姿を消した。引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された。 李のきっぱりとした引退の裏には体調不良があると伝えたメディアもあったが、これまで彼がどんな病気を抱えているかは明らかにされていなかった。 特に3月の政府トップ交代の場では、久しぶりに公開の場に姿を現した胡錦濤の髪が真っ白になってめっきり老けており、さらに最も注目される採決の直前に職員によって議場から担ぎ出されるという、前代未聞の“事件”が起きた(参考:中国共産党大会「胡錦濤氏の強制退場」の衝撃、現地の大混乱に見る不穏な予感)。あまりに衝撃的な映像だったため、人々の関心は完全にこの件に集まり、同じ場で「裸退」(すべての権力を手放して退任すること)する李克強のことはあまり話題にならなかった。付け加えると、胡錦濤は実はアルツハイマーを患っており、担ぎ出されたのはそれが原因だったという。そのとき両脇を警備員に抱えられた胡錦濤が李の後ろを通りざまにその肩を叩き、李がそれになんとも言えない表情で応えている写真も、彼の死後ネットに流れている』、「引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された」、本当に潔い引き際だった。
・『なぜ上海のプールで? 早すぎる死に「毒殺説」まで流れる事態に  それにしても、まだ68歳での死はさすがに若すぎる。数年前には、国家指導者たちに毎年巨額をかけての健康診断が行われていることを証明する内部資料が暴露されたばかりだ。そのような中でなぜ李が急死したのか、それも通常の居住地ではなく、上海のプールで……と、人々のさまざまな懐疑心を呼び起こし、ネットではまことしやかに「李克強毒殺」手段まで分析されていた。 もし殺害となれば、その容疑は当然今の権力者に向けられることになる。だが、すでにきっぱりと「裸退」した李に今の権力者たちが手をかける必要があるかどうか、そしてなぜそれが今なのか……と考えると、その疑惑もまた度を越したものだと言わざるを得ないだろう。 しかし、日常の健康状態に触れないまま「心臓発作」という死因しか明らかにされなかったこと、また運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている。死亡を伝える正式報道も詳細が一切省かれているため、「殺害」を信じたい人たちの気持ちはしばらく落ち着かないはずだ』、「運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている」、まさか「中医(漢方医)病院」ということはないのではなかろうか。
・『胡錦濤と温家宝の二人に次期国家主席候補とみなされていた人物  李はもともと、前政権の胡錦濤と温家宝によって次期国家主席候補とみなされていた。そこに「紅二代」(中国共産党創設メンバーの子女)である習近平の存在が次期指導者として急浮上したが、それでも胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる。このあたりは、すでに日本でも多くの分析書籍が出ているのでそちらをご覧いただきたい。 ただ、李は出世街道を上る前に大学で経済学を収めていた。歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた(なお、他の指導者たちの経歴にも「博士」「修士」が並ぶが、それらはすべて李のように論文を書いて取得したわけではなく、「名誉」的な後付けばかりである)。その結果、就任当時にはすでに「世界第2の経済大国」となり、また「世界工場」の異名を取っていた中国の経済発展に注目する人たちに、その手腕を大きく期待された。李の発言は「克強経済学」(リコノミクス)などともてはやされた。 訃報の後にも、その当時を懐かしむ書き込みや切り取り動画がネットに多く流れた。たとえば、「中国はもう後戻りしない。開放の門は大きく開かれても閉じられることはない」と述べたニュース映像、就任直後に流れた「中国の統計数字は人工的に操作されている」、また昨年の「中国人の年間収入は平均にすると3万元(約63万円)だが、実際には6億の人口が毎月1000元(約2万円)の収入で暮らしている」という発言などが広くシェアされた。 これらはどれも発表当時、中国のトップリーダーによる思い切った発言だとして国際社会でも大きく取り沙汰されたものだ。もちろん、中国社会には自分たちの気持ちを代弁してくれたという思いが広がり、そのたびごとに「新しい政治」への期待が溢れた。人々が李の死に際して、あえてこれらの発言を発掘して流しているのは、当時の気持ちを思い出したからだろう。 李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる。朱鎔基こそいまだに中国経済人の中で人気の政治家だが、実際に李が総理を務めた10年間、中国では何が起きたか』、「胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる・・・歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた・・・李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる」、なるほど。
・『李克強が総理を務めた10年間 IT業界や予備校業界への締め付け、不動産業界の不調……  まず、「国進民退」が誰の目にも明らかとなった。これは「国有経済が成長し、民営経済がやせ細る」という意味だ。WTO加盟を受けて大きく民営企業が成長した2000年代に比べ、2010年代はそうやって成長した新たな経済が「国のシステム」に取り込まれる時代となり、「新たな制度作り」が急速に進んだ。 記憶に新しいところでは、IT業界の巨人「阿里巴巴 Alibaba」(以下、アリババ)の馬雲(ジャック・マー)会長(当時)による経済政策批判をきっかけに、大掛かりなIT業界の締め付けが始まり、さらに「子供と家族の負担を減らす」という理由で当時成長産業だった校外教育産業が潰された。これにより、高学歴の失業者が大量に出現。さらに新型コロナウイルスによる肺炎の大流行と行き過ぎた感染防止政策によって民間経済は停滞を余儀なくされ、10年どころか過去20年間に培われた新たな民間経済パワーは大きく挫折した。 コロナ対策解消後の今になって、中国政府はあわてて民営経済の育成や支援を口にするようになったが、当時見捨てられ、切り捨てられて痛い目に遭った民間の士気はまだまだ低い。特に、高学歴者や若い世代には面従腹背がまん延し、政府が求めるような「一致団結」には至らないままだ。 もちろん、そうした政策に李克強がどれほど主体的な役割を演じたかは分からない。習近平の一存によるものなのかもしれない。それでも李は間違いなくこの3月まで政府のトップ指導者の一人だったのである。特に、今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ』、「今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ」、その通りだ。
・『李の訃報を中国メディアはどう伝えたか 警戒態勢も、その理由は「偉大だったから」ではない  李の訃報後、日本を含めた海外メディアは、そのニュースを中国メディアがどう伝えるかに注目した。これは中国報道あるあるで、その取り扱われ方が現政権による旧指導者への評価とみなされるからだ。 ネットユーザーに日頃から「真理部」と呼ばれて皮肉られている共産党中央宣伝部は、27日のうちにメディアやネットプラットホーム運営各社に向けて、訃報を娯楽情報や商業活動と同じページや欄には載せないこと、さらに秋のイベントやカンフー映画などに関するすべての活動を中止するよう通達した。加えて「新華社、中央電視台、人民日報記事のみを転載すること」「ネットプラットホームのコメント欄をきちんと管理し、高すぎる評価を受けた言論には特に注意すること」などとする報道制限令を通知したことが分かっている。 またネットユーザーによると、台湾人歌手の梁静茹さんの「可惜不是你」(残念ながらあなたじゃなかった)という歌が再生できなくなっているという報告もあった(なお、この曲は昨年安倍首相が殺害された際にも、再生不能になっている)。 さらに、大学などにも、訃報についての学生たちの発言やネット書き込みに注目し、不当な発言は禁止、さらには集団で哀悼活動を行うなどの組織化、そうした活動への参加も制限するよう求める指令が下ったとされる。 ただ、こうした警戒体制が取られるのは李が「偉大だったから」ではない。 というのも、前述したように李が中国共産党の指導者の一人であったことは疑いなく、ここ10年間の失策の責任を負うべき立場にあることは間違いない。またそれ以前の1990年代終わりに李が河南省で党委員会書記を務めていた頃、同省で広がっていた、集団売血や輸血によるエイズ広域感染の実態を調べるように省の担当機関に命じた一方で、その事態を公にした研究者らを拘束した責任を問う声もある。 つまり、中国初の博士宰相であった李もまた間違いなく、中国共産党のシステムに従い、その中のルールを守って一歩一歩権力への道を登ってきた人間の一人だったのだから。 中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである。 李克強の突然の死が今の中国政治に与える影響はそれほどないだろう。だが、我々はこの事件を通じて、コロナゼロ対策以降の庶民の不満は決して収まっていないことを目の当たりにした』、「中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである」、大きな混乱なしに収まってほしいものだ。
タグ:中国国内政治(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?) デイリー新潮「中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身」 「「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません・・・安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。 「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」・・・可能性などが取り沙汰されている」、なるほど。 「胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」、なるほど。 「優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト・・・に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン ふるまいよしこ氏による「「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由、中国政府が恐れることとは?」 「引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された」、本当に潔い引き際だった。 「運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている」、まさか「中医(漢方医)病院」ということはないのではなかろうか。 「胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる・・・歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた ・・・李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる」、なるほど。 「今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ」、その通りだ。 「中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである」、大きな混乱なしに収まってほしいものだ。
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イーロン・マスク(その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、イーロン・マスク氏はなぜリスクを恐れない? 書籍著者「彼は普通の人より心が傷つくことに耐えられる」【モーサテ】、「テスラの創業者ではない」「はっきり言って経営には向いていない」…誤解されがちなイーロン・マスクの“正体”は 楠木建が『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン 著)を読む) [イノベーション]

イーロン・マスクについては、本年8月30日に取上げた。今日は、(その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、イーロン・マスク氏はなぜリスクを恐れない? 書籍著者「彼は普通の人より心が傷つくことに耐えられる」【モーサテ】、「テスラの創業者ではない」「はっきり言って経営には向いていない」…誤解されがちなイーロン・マスクの“正体”は 楠木建が『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン 著)を読む)である。

先ずは、9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家のジュリア・ガレフ氏と、ポッドキャスター・英日翻訳者の児島 修氏による「Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327732
・『Twitterを「X」に名称変更したイーロン・マスク。彼が成功に導いた電機自動車メーカーのテスラは、20年で時価総額世界第9位にまで成長した。しかし、彼は意外にも「自分の会社は失敗するのではないか」と考えていたという。成功の確率をわずか1割だと見積もったにもかかわらず、起業に踏み切った背景には、イーロン・マスク流の「価値ある賭け」への見極め方があった――。 ※本稿は、全世界17言語で翻訳されたジュリア・ガレフ著『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『“突拍子もない夢”を追い求めるイーロン・マスク  イーロン・マスクは、宇宙飛行会社を設立すると決意したとき、友人たちから頭がおかしくなったと思われた。 マスクは、自身が手がけた2番目の事業である「ペイパル」の売却によって手に入れたばかりの1億8000万ドルの多くを、後の「スペースX」となる会社に投じようとしていた。 「きっと失敗する。せっかくペイパルを売って稼いだ金が、ごっそり消えてしまうぞ」と周囲は忠告した。 ある友人は、ロケットが爆発する映像をつなぎあわせた動画を編集し、マスクに「頼むからこれを見てくれ。バカな真似はよせ」と伝えた。 ちまたによくある“突拍子もない夢”を追い求めた成功者の物語では、ここで「だが、彼は思いとどまったりはしなかった。心のなかで、自分を疑う人たちが間違っているのを知っているからだ――」という展開になるはずだ。 しかし、マスクの場合はそうはならなかった。友人たちから「きっと失敗する」と言われたときも、こう答えている。 「ああ、僕もそう思う。おそらく失敗するだろうね」 実際、マスクはスペースXの宇宙船が宇宙飛行を成功させる確率を、1割程度と見積もっていた。 2年後、マスクはペイパルを売却して得た残りの資金を、電動自動車の「テスラ」に投じると決めた。マスクはこのときも、成功の確率は1割程度と見積もっていた。 本人が自身のプロジェクトが成功する確率を低く見積もっていることに、周囲は首をかしげた。 2014年にテレビ番組の『60ミニッツ』に出演した際にも、そのロジックを理解しようとするインタビュアーのスコット・ペリーから、次のように尋ねられている。 マスク「テスラが成功するとは思っていませんでした。おそらく失敗するだろう、と」 ペリー「成功しないと見込んでいたのに、なぜ挑戦したんです?」 マスク「挑戦するだけの価値があるのなら、やってみるべきだと判断したからですよ」 マスクの成功に対する期待値の低さは、周りを困惑させた。 なぜなら、人は「誰かが何かに挑むのは、成功する可能性が高いから」と考えるからだ。 しかし、マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ。 簡単な例として、一般的な6面体のサイコロを振る賭けをする場合のことを考えてみよう。この賭けでは、6が出れば200ドルの賞金がもらえるが、それ以外の目が出た場合は10ドルを失うことになっている。 Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ 賭ける価値があるだろうか。 そう、これは賭ける価値があるといえる。 この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる。 期待値とは、その賭けを際限なく行った場合に平均的に得られる値のことだ。賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。  {(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう』、「賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。 {(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう」、なるほど。
・『「たとえ『テスラ』が失敗しても…」  とはいえ、起業のような対象を賭けにして正確な確率を導こうとするのは、より複雑で主観的な試みになる。 その価値には、お金以外のさまざまな要素も含まれている。 たとえば、「会社を経営することで、どれだけの楽しみが得られるか?」「たとえ失敗したとしても、その後で役に立つ人脈やスキルを手に入れられるか?」「自分の時間がどれだけ奪われるか?」「社会的な信用度(または汚名)はどれくらい得られるか?」といったことだ。 とはいえ、たいていの場合、大まかな見積もりをすることならできる。 これまで見てきたように、イーロン・マスクはテスラが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見積もっていた。) それでも、成功して得られる価値はとてつもなく大きいと思えた。電気自動車という(当時は)夢物語のような概念を実現することは、現代社会が化石燃料依存から脱却するための大きな一歩になる。 Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ マスクは、たとえ失敗したとしてもテスラは価値あることを少なくとも1つ成し遂げられる、と考えた。 「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている。 マスクがスペースXを立ち上げた理由もこれに似ている。 マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 「わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある」』、「テスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ」、なるほど。 
・『「就職、起業、投資、人間関係 あらゆることに応用可能」  全体としてみれば、テスラもスペースXも、失敗する可能性は高かったものの、マスクにとってはいい賭けだったようだ。 期待値は、その賭けを何度もくり返すことを想像することによってもとらえやすくなる。そのとき、成功によって得られる価値は、失敗によって失う価値を上回るだろうか? イーロン・マスクのようなスケールの大きな起業家なら、一生のうちにテスラやスペースXのような会社を10社はつくる時間と財力があるだろう。 もしその10社のうち9社が失敗するのだとすれば、最大の問題「1回の大きな成功と引き換えに、9回失敗する価値はあるか?」ということになる。) 現実的には、まったく同じ賭けを何度もくり返すことはめったにない。それでも、人生にさまざまな賭けをする機会があるのはたしかだ。 就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる』、「人生にさまざまな賭けをする機会があるのはたしかだ。 就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる」、なるほど。
・『覚悟のうえで、運命に任す  「自信があれば成功できる」という発想でモチベーションを高めようとする人たちは、失敗の可能性を認めれば、やる気が削がれ、リスクを取ろうとしなくなると見なす。 そして「絶対に失敗しない」と固く信じることが、最大限の努力をして成功を目指す秘訣だと考える。 だが現実には、それとは逆であることが多い。 書影『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』 つまり、事前に失敗の可能性を受け入れるからこそ、さまざまな縛りから解放されて、目標に向かって邁進できるようになるのだ。 「失敗する可能性だってある」とわかっているからこそ、臆病ではなく大胆になれる。必要なリスクを取る理由が得られる。 マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで』、「マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」、なるほど。

次に、9月14日付けテレ東BIZ「イーロン・マスク氏はなぜリスクを恐れない? 書籍著者「彼は普通の人より心が傷つくことに耐えられる」【モーサテ】」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/05c541726249202998f6057d2dd91f723f045378
・『アメリカの著名実業家、イーロン・マスク氏の半生を綴った書籍「イーロン・マスク」が発売されました。数々の事業を成功させる一方、世間を騒がす発言を繰り返すマスク氏。マスク氏の人生哲学について著者のウォルター・アイザックソン氏に聞きました。 伝記作家のアイザックソン氏はマスク氏を取材するため、2年間生活に密着しました。実は、アイザックソン氏は、以前タイム誌やCNNなど、大手メディアの要職を歴任。その後は作家となり、アップルの故スティーブ・ジョブス氏の伝記を書いたことでも知られています』、「伝記作家のアイザックソン氏はマスク氏を取材するため、2年間生活に密着」、凄いことだ。
・『今回なぜマスク氏に注目したのでしょうか?  「私は昔からイノベーターに興味がある。中でもマスク氏は今、最も重要な人物だ。電気自動車や宇宙旅行の分野で新境地を開いたほか、ツイッターを買収するなど人々を魅了してやまない」 マスク氏はこれまで、スペースXやテスラなど次世代技術でリードする会社を創業したほか、Xと改名したツイッターも去年買収。現在運営する企業は5社に上っています。 多様な事業への挑戦を可能とする原動力は何か。アイザックソン氏はマスク氏が幼少期に父親から受けた暴力が深く影響しているとみています。 「マスク氏は普通の人より心が傷つくことに耐えられる。だから尋常ではないリスクをとれる一方、他人に対して厳しく当たりがちだ。マスク氏がツイッターを買収する前、一緒に本社を訪問したことがある。ツイッターは当時、雰囲気が“優しい”会社だった。社員やユーザーの心が傷つかないようにあらゆる心理的な脅威を排除していた。ただマスク氏は不満を示した。『人は追い込まれないと何も成し遂げられない』『心の傷から人を守ることを私は好まない』と言っていた」』、「多様な事業への挑戦を可能とする原動力は何か。アイザックソン氏はマスク氏が幼少期に父親から受けた暴力が深く影響しているとみています。 「マスク氏は普通の人より心が傷つくことに耐えられる。だから尋常ではないリスクをとれる一方、他人に対して厳しく当たりがちだ。マスク氏がツイッターを買収する前、一緒に本社を訪問したことがある。ツイッターは当時、雰囲気が“優しい”会社だった。社員やユーザーの心が傷つかないようにあらゆる心理的な脅威を排除していた。ただマスク氏は不満を示した。『人は追い込まれないと何も成し遂げられない』『心の傷から人を守ることを私は好まない』と言っていた」、「マスク氏」は「雰囲気が“優しい”会社だった」「ツイッター」を、自分好みに変革したようだ。
・『伝記作家のウォルター・アイザックソン氏  ただ、リスクを好む姿勢は、波乱を呼び寄せる要因となることも。新技術の安全性などを巡り、規制当局との衝突を繰り返しているのです。 「マスク氏は規制やルール、他人にコントロールされることを嫌う。彼の行動原理のひとつに『あらゆる規則を疑え』がある。誰かが『規則だからこうしろ』と言えば、『その規則はなぜ存在するのか?』と返す」 「例えばテスラの自動運転機能。これは機械学習を通じて開発されている。テスラ車のカメラが捉えた数百万の映像をコンピュータが分析し、人間の運転方法を学習する。ただここで問題なのは『止まれ』の標識に遭遇した場合、(元データとなる)人間のほとんどが完全停止していないにも関わらず、規制当局は自動運転機能では法律通り完全停止すべきだと主張する。マスク氏は激怒し『誰が作った法律なのか』と相手を詰問する始末だ」 マスク氏はルールを嫌うあまり新型コロナの行動規制を無視するなど、世間のひんしゅくを買ってきた一面もあります。ただ、逆に世間こそルールに従うことに慣れきってしまっているのではと、アイザックソン氏は問いかけます。 「マスク氏は日本や欧米について、融通が利かず、物事を進めるのが困難な社会になったと考えている。特にアメリカは多大な危険を冒しながら海を越えた人々が作り上げた国で、『リスク』はDNAの一部だ。人類のほとんども同様だろう。失敗や訴訟を恐れるあまり、自らをルールで縛りつける現代人に対し、マスク氏は『反抗してみろ』と呼びかけている」 ※Newsモーニングサテライト』、「マスク氏は日本や欧米について、融通が利かず、物事を進めるのが困難な社会になったと考えている。特にアメリカは多大な危険を冒しながら海を越えた人々が作り上げた国で、『リスク』はDNAの一部だ。人類のほとんども同様だろう。失敗や訴訟を恐れるあまり、自らをルールで縛りつける現代人に対し、マスク氏は『反抗してみろ』と呼びかけている」、「失敗や訴訟を恐れるあまり、自らをルールで縛りつける現代人に対し、マスク氏は『反抗してみろ』と呼びかけている」、同感である。

第三に、11月6日付け文春オンラインが掲載した一橋大学大学院特任教授の楠木 建氏による「「テスラの創業者ではない」「はっきり言って経営には向いていない」…誤解されがちなイーロン・マスクの“正体”は 楠木建が『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン 著)を読む」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66789
・『当代きっての奇矯な人物の実像を描く評伝。イーロン・マスクという不思議な人物の面白さだけで読者を引っ張る。上下巻の大部を一気に読んだ。 南アフリカで生まれたマスクは父の精神的虐待から逃れるためにアメリカへ渡る。「アメリカはすごいことを可能にする国だ」――当時から「すごいこと」のテーマを「インターネット」「クリーン・エネルギー」「宇宙」の3つに定めていた。 インターネット黎明期の1995年に情報サービスのZip2を起業。これを売却して得た資金を元手にオンライン金融サービスのX.com(ペイパルの会社と後に合併)の共同設立者になる。当然のように他の創業メンバーと対立。追い出されたマスクは宇宙輸送ロケットのスペースXを起業し、CEOに就任。2004年には前年に設立されたテスラモーターズに出資する。 誤解されがちだが、マスクはテスラの創業者ではない。彼はエジソンのような発明家ではない。普通の意味での経営者でもない。その本質は起業家ですらない。起業家は実のところリスクを取るタイプではない。ペイパルのピーター・ティールのようなプロの起業家は、成功のためにリスクを最小化しようとする。ところが、マスクはリスクを大きくしようとする。船に自ら火をつけて逃げ道を遮断する。持っているものをオールインして賭け続ける。その中で当たったのがスペースXとテスラだった。 抜群に頭がいい。しかもガッツがある。数年前のテスラの「生産地獄」を乗り切った力量はとてつもない。しかし、その正体は冒険家だ。誰もが不可能と思うことにチャレンジする。リスクを欲し、リスクに溺れる。生か死かという状況でないと元気が出ない。衝動的野心に突き動かされて、無理難題に挑戦するプロセスにしか精神の昂揚を感じない。はっきり言って経営には向いていない。経営者としてはもちろん、起業家としてもまったく参考にならない。 いよいよ電気自動車業界が普通の競争に突入しようとしている今、X(旧ツイッター)などにかまけている場合ではないのではないか――誰もがそう思う。しかし、これこそマスクの本領発揮だ。もはや「普通の企業」となったテスラの経営は、冒険家にとっては退屈なのだろう。 一義的なモティベーションはフロンティアの追求――20世紀前半に「地球上の富の半分を持つ男」「世界でいちばん猛烈な男」と言われたハワード・ヒューズにそっくりだ。ヒューズの「航空」「映画」が、マスクにとっては「宇宙」「インターネット」「クリーン・エネルギー」だった。古いタイプのアメリカン資本主義者と言ってよい。 ヒューズは大暴れの挙句に隠遁生活に入った。この際、マスクには最後の最後までこの調子で行ってもらいたい。そこに何があるのかは分からない。本人にも分からないだろう。(Walter Isaacson氏、くすのきけん氏の略歴はリンク先参照)』、「南アフリカで生まれたマスクは父の精神的虐待から逃れるためにアメリカへ渡る。「アメリカはすごいことを可能にする国だ」――当時から「すごいこと」のテーマを「インターネット」「クリーン・エネルギー」「宇宙」の3つに定めていた。 インターネット黎明期の1995年に情報サービスのZip2を起業。これを売却して得た資金を元手にオンライン金融サービスのX.com・・・の共同設立者になる。当然のように他の創業メンバーと対立。追い出されたマスクは宇宙輸送ロケットのスペースXを起業し、CEOに就任。2004年には前年に設立されたテスラモーターズに出資する・・・抜群に頭がいい。しかもガッツがある。数年前のテスラの「生産地獄」を乗り切った力量はとてつもない。しかし、その正体は冒険家だ。誰もが不可能と思うことにチャレンジする。リスクを欲し、リスクに溺れる。生か死かという状況でないと元気が出ない。衝動的野心に突き動かされて、無理難題に挑戦するプロセスにしか精神の昂揚を感じない。はっきり言って経営には向いていない。経営者としてはもちろん、起業家としてもまったく参考にならない。 いよいよ電気自動車業界が普通の競争に突入しようとしている今、X(旧ツイッター)などにかまけている場合ではないのではないか――誰もがそう思う。しかし、これこそマスクの本領発揮だ。もはや「普通の企業」となったテスラの経営は、冒険家にとっては退屈なのだろう」、全く信じ難いほどエネルギッシュだ。次は何をするのだろう。
タグ:児島 修氏による「Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ」 ジュリア・ガレフ氏 ダイヤモンド・オンライン イーロン・マスク (その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、イーロン・マスク氏はなぜリスクを恐れない? 書籍著者「彼は普通の人より心が傷つくことに耐えられる」【モーサテ】、「テスラの創業者ではない」「はっきり言って経営には向いていない」…誤解されがちなイーロン・マスクの“正体”は 楠木建が『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン 著)を読む) 「賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。 {(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう」、なるほど。 「テスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ」、なるほど。 「人生にさまざまな賭けをする機会があるのはたしかだ。 就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる」、なるほど。 「マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」、なるほど。 テレ東BIZ「イーロン・マスク氏はなぜリスクを恐れない? 書籍著者「彼は普通の人より心が傷つくことに耐えられる」【モーサテ】」 「伝記作家のアイザックソン氏はマスク氏を取材するため、2年間生活に密着」、凄いことだ。 「多様な事業への挑戦を可能とする原動力は何か。アイザックソン氏はマスク氏が幼少期に父親から受けた暴力が深く影響しているとみています。 「マスク氏は普通の人より心が傷つくことに耐えられる。だから尋常ではないリスクをとれる一方、他人に対して厳しく当たりがちだ。マスク氏がツイッターを買収する前、一緒に本社を訪問したことがある。ツイッターは当時、雰囲気が“優しい”会社だった。社員やユーザーの心が傷つかないようにあらゆる心理的な脅威を排除していた。ただマスク氏は不満を示した。 『人は追い込まれないと何も成し遂げられない』『心の傷から人を守ることを私は好まない』と言っていた」、「マスク氏」は「雰囲気が“優しい”会社だった」「ツイッター」を、自分好みに変革したようだ。 「マスク氏は日本や欧米について、融通が利かず、物事を進めるのが困難な社会になったと考えている。特にアメリカは多大な危険を冒しながら海を越えた人々が作り上げた国で、『リスク』はDNAの一部だ。人類のほとんども同様だろう。失敗や訴訟を恐れるあまり、自らをルールで縛りつける現代人に対し、マスク氏は『反抗してみろ』と呼びかけている」、「失敗や訴訟を恐れるあまり、自らをルールで縛りつける現代人に対し、マスク氏は『反抗してみろ』と呼びかけている」、同感である。 文春オンライン 楠木 建氏による「「テスラの創業者ではない」「はっきり言って経営には向いていない」…誤解されがちなイーロン・マスクの“正体”は 楠木建が『イーロン・マスク』(ウォルター・アイザックソン 著)を読む」 「南アフリカで生まれたマスクは父の精神的虐待から逃れるためにアメリカへ渡る。「アメリカはすごいことを可能にする国だ」――当時から「すごいこと」のテーマを「インターネット」「クリーン・エネルギー」「宇宙」の3つに定めていた。 インターネット黎明期の1995年に情報サービスのZip2を起業。これを売却して得た資金を元手にオンライン金融サービスのX.com ・・・の共同設立者になる。当然のように他の創業メンバーと対立。追い出されたマスクは宇宙輸送ロケットのスペースXを起業し、CEOに就任。2004年には前年に設立されたテスラモーターズに出資する・・・抜群に頭がいい。しかもガッツがある。数年前のテスラの「生産地獄」を乗り切った力量はとてつもない。しかし、その正体は冒険家だ。誰もが不可能と思うことにチャレンジする。リスクを欲し、リスクに溺れる。生か死かという状況でないと元気が出ない。衝動的野心に突き動かされて、無理難題に挑戦するプロセスにしか精神の昂揚を感じない はっきり言って経営には向いていない。経営者としてはもちろん、起業家としてもまったく参考にならない。 いよいよ電気自動車業界が普通の競争に突入しようとしている今、X(旧ツイッター)などにかまけている場合ではないのではないか――誰もがそう思う。しかし、これこそマスクの本領発揮だ。もはや「普通の企業」となったテスラの経営は、冒険家にとっては退屈なのだろう」、全く信じ難いほどエネルギッシュだ。次は何をするのだろう。
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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) [世界情勢]

インドについては、本年6月13日に取上げた。今日は、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説)である。

先ずは、本年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456#:~:text=%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A%20%3E%E6%B5%B7%E5%A4%96-,%EF%BD%A2%E4%BB%8A%E4%B8%96%E7%B4%80%E6%9C%80%E6%82%AA%EF%BD%A3%E3%81%AE%E5%88%97%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A4%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E9%89%84%E9%81%93%E5%AE%89%E5%85%A8,%E8%A3%85%E7%BD%AE%E6%95%B4%E5%82%99%E3%81%AF%E9%80%B2%E3%81%BE%E3%81%9A&text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%9D%B1%E9%83%A8%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A3%E5%B7%9E,%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%81%8C%E3%80%81%E2%80%A6
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。

次に、9月26日付けNewsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/post-102711_1.php
・『<カナダ在住のシーク教独立運動指導者が殺害された事件で、インド政府の関与を疑うカナダ政府に対し、インドが猛反発。怒りの背景には、積年の恨みがあった> カナダ在住のシーク教指導者ハーディープ・シン・ニジェールが殺害された事件について、インド政府が関与した可能性があるとカナダのジャスティン・トルドー首相が発言したことで、インドとカナダの関係は外交的危機の瀬戸際に立たされている。背景にはこの事件や発言だけでなく、インドのシーク教徒の分離主義運動をカナダ政府が支援しているのではないか、という長年の疑心暗鬼が大きな流れとしてある。 この衝突を世界が注視するなか、インドは断固として暗殺との関わりを否定。カナダの特定の政治家や当局者が、独立国家カリスタンの創設を目指すシーク教徒の分離主義グループを間接的に支援している可能性を指摘して、それが両国関係を緊張させていると主張した。 カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった、というのだ。 トルドー首相は2023年7月、記者団に対し、カナダは「表現の自由」を支持しているに過ぎないと述べた。「この国は多様性が非常に豊かな国であり、われわれには表現の自由がある」 トルドーはこの危機について公然とインドを非難し、議会下院で、ニジェールの死についてインド政府のいかなる関与も「容認できない」と述べた。カナダのメラニー・ジョリー外相も、インドが関与しているという主張が事実であれば、それは「わが国の主権に対する重大な侵害」になると述べた』、「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。
・『カナダ野党も「造反」  この騒動で、カナダに駐在するインドの高官らは国外退去となった。インド政府も対抗してカナダの高等弁務官を召喚し、インドに駐在するカナダの外交官を国外追放すると伝えた。 インド外務省の声明によれば、「今回の決定は、カナダ外交官の内政干渉や反インド活動への関与に対するインド政府の懸念の高まりを反映したものである」。 トルドーにとってさらに事態を悪化させたのは、カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」 インド政府もシーク教徒の分離主義運動を取り締まらないカナダの姿勢を批判した。 「この問題に対するカナダ政府の不作為は、長年の懸念だった。カナダの政治家がこのような勢力に公然と同調を表明していることは、非常に重要な問題だ」 「カナダでは以前から、殺人、人身売買、組織犯罪など、さまざまな違法行為が容認されている。われわれは、インド政府とこのような動きを結びつけるいかなる試みも拒否する。われわれは、カナダ政府に対し、自国内で活動するすべての反インド勢力に対し、迅速かつ効果的な法的措置をとるよう求める」) その後、インドは正式な通達を出すことなく、突然カナダ市民へのビザ発行を中止した。カナダのビザ申請センターを運営するBLSインターナショナルは、カナダのウェブサイトに理由をあいまいにぼかした次のような告知を掲載した。「インド代表部からの重要なお知らせ。運営上の理由により、2023年9月21日より、インド・ビザサービスは追って通知するまで停止します」 インド外務省のアリンダム・バグチ報道官は、この措置の理由として、「カナダにあるインドの高等弁務官事務所や領事館の安全を脅かす事態が生じているため、通常の機能が停止している」と記者団に語った。 一方、ニューデリーの在インドのカナダ高等弁務団は、インド国内にいるカナダの外交スタッフがソーシャルメディア上で脅迫を受けたとして、すでに現地インド人職員に建物から避難するよう促している』、「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。
・『カナダで活動する過激派  ニジェールが殺されたのは、今年6月。ブリティッシュコロンビア州サレーにあるシーク教寺院の駐車場で射殺された。 インドの法執行機関によれば、1977年にパンジャブ州で生まれたニジェールは、武装組織カリスタン・タイガー・フォース(KTF)とつながりがあった。1990年代にインドで逮捕されたが、1997年には地下に潜り、身分を偽って逃亡した。 インド政府によれば、ニジェールが過激派組織とつながっている証拠は時間の経過とともに濃厚になっていった。その結果、彼の名前は、2018年に当時のパンジャブ州のアマリンダー・シン知事からトルドーに渡された最重要指名手配リストに含まれることになった。 過激派組織に対するカナダの姿勢は、カナダのインド人コミュニティーでも物議をかもしている。インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している、というのだ』、「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。

第三に、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授の伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329764
・『安倍晋三元総理は、民主主義国家である日米豪印(クアッド)の連携を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」戦略を提唱した。膨張の度を強める中国への牽制として、岸田総理も継承している国策だが、肝心のインドの態度が煮えきらない。「ヨガとカレーの国」から「グローバルサウスを牽引する新興大国」へと変貌したインドは、民主主義陣営からも専制国家陣営からも、何としても取り込みたい存在だが、「これほど食えない国はない」という声も多い。わが道を行く大国の実情とは?本稿は、伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『日米豪印によるクアッドは「アジア版NATO」か?  これからのインド太平洋秩序はどうなっていくのか?もちろん、われわれ自由民主主義陣営が望むのは、「自由で開かれた」インド太平洋秩序を維持することだろう。 2030~50年のインド太平洋地域の勢力図では、米中の、また日米豪自由民主主義陣営と中ロの権威主義陣営の力の差が、かぎりなく縮小し、ひょっとすると逆転してしまっているかもしれない。そうなると、そのとき、いまよりも大きな力をもっていると予測されるインドは、なんとしても取り込みたい、ということになる。 安倍晋三が2012年末に第2期政権を樹立する際に披歴した「セキュリティダイヤモンド構想」にはそうした思惑があった。安倍は国際NPOのプロジェクト・シンジケートに発表した英語論文のなかで、オーストラリア、インド、日本、米ハワイ州で四角形をつくり、中国の進出によって危機に晒されている海洋のコモンズ(共有地)を守らなければならない、と主張した。 しかし問題は、インドという国が、アメリカや日本、オーストラリアに、現状よりも接近するということがありうるのか、である。日米、米豪間にみられるような同盟を、自由民主主義陣営と結ぶようなことはあるのだろうか? 現時点で、インドはどの国とも同盟関係にはなく、アメリカとであれ、日本とであれ、オーストラリアとであれ、その他ヨーロッパ諸国とであれ、すべて、同盟国未満の「戦略的パートナーシップ」関係にとどめている。クアッドについても、同盟ではないという立場だ。 インドのジャイシャンカル外相は、クアッドを「数多くあるグループのひとつにすぎない」とし、「(インドは)柔軟性のない同盟は回避する」と主張してきた。この姿勢は、2020年の中国との軍事衝突を受けても変わることはなかった。「民主主義国同盟」を呼びかけるアメリカに対し、同外相は、アメリカは同盟思考を「乗り越える」必要がある、とはねつけた。相当、頑なである。 ということは、現状のままでは、インドがクアッドの同盟化を受け入れるはずはない。少なくともインドを取り巻く環境になにか劇的な変化がないかぎりは、インドが日米豪など西側に、よりいっそう傾斜を強めるというシナリオは起こりえない。 それでは、インドの態度を変えうる環境変化とはなんだろうか?それは、普通に考えれば、現状のままでは、インドの存立が成り立たないとインドが判断した場合ということになる。) 想定されるのは、なんといっても、中国の軍事的攻勢が、2020年のガルワン衝突(編集部注:印中がせめぎあうガルワン渓谷で、パトロール中のインドの部隊を中国側が石やこん棒で突然襲撃。インド兵はつぎつぎと谷底に突き落とされ、20名が殺された)レベル以上に本格化し、それにインドが耐えられなくなる事態だろう。要するに、このままでは、中国に侵略されてしまう、と本気で恐れるようになった時だ。 2050年までには、中国も、総合的な国力でインドからの猛追を受けている可能性が高い。だとすれば、中国としてはそれまでのうちに、インドをたたいてねじ伏せておきたいところだ。中国共産党指導部が、インドとの未解決の国境問題を武力で解決し、中国の秩序をインドに強制しようとしたとしても不思議ではない。 かつてインドは、中国の脅威に対して、自国の軍事力を増強するとともに、ソ連との連携を強化することで対処しようとした。将来も、同じ手法は通じないだろうか? まずは、自前の軍事力増強がどこまで可能かについてだ。CEBR(編集部注:イギリスを本拠とするシンクタンク、「ビジネス経済研究センター」)の予測によると、少なくとも2030年代までは、中国とインドのGDPの差はほとんど縮まらない。そうであれば当然、軍事費の差も、それほど縮小しないだろう。 それに、たとえそれ以降のGDPの伸びとともに、軍事費が増えたとしても、その成果が装備等を含めた軍事力として反映されるには時間を要する。つまり、中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い』、「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。
・『ロシアを頼れず中国とは緊張関係 それでもインドはアメリカ陣営を避ける  それでは、ソ連の後継国、ロシアというインドの伝統的パートナーとの関係は使えないのか? こちらのほうは、もっと心もとない。冷戦後のロシアの力は、かつて超大国としてアメリカと張り合ったソ連のものには遠く及ばない。 もともと、インドにとってのロシアの重要性は、相対的に低下傾向にあった。2022年にプーチン大統領がはじめたウクライナとの戦争のなかで、インドがロシアを非難せず、原油やガスの輸入を増やしたのはたしかだが、中長期的には、インドにとってのロシアの価値の低下に拍車がかかることになるだろう。) というのも、戦争の長期化と泥沼化によって、ロシアの国力低下と中国依存が加速することは避けられないと考えられるからだ。インドが、中国の脅威に対処するためにロシアを頼ろうとしたとしても、肝心のロシアが中国に依存するようになってしまっていては、まったく話にならない。 このようにみると、インドが、今後、日米豪の側に、より傾斜するということも、まったくありえないシナリオというわけではない。インド人研究者のなかにも、その可能性を指摘する者も、とくに若手のあいだに出てきている。戦略家として活躍するハルシュ・パントは、インドは民主主義陣営の側につくべきだと明言する。また、中国専門家で、対中警戒論者の筆頭ともいえるジャガンナート・パンダは、2022年の論文で、インドが、「アジア版NATO」を受け入れる可能性もあると期待感をもって論じた。しかしそうした見解はインドの外交・安全保障サークルの主流にはなっていない。インド国家安全保障顧問を務めた経験をもつM・K・ナラヤナン、シヴシャンカル・メノンらは、インドが西側につくことは得策ではなく、安易に中国叩きに乗るべきではないと警鐘を鳴らす。「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある。 このことからもわかるように、インドとしては、「どちらか」の陣営に属するという道ではなく、「どちらにも」関与する、という現状がつづくことが望ましいと考えている。どちらとも、うまく渡り合って「いいとこ取り」をしたいのだ。こうしたインド外交の特質に鑑みると、インドがアメリカを中心とした西側と同盟を構築するシナリオの蓋然性は、きわめて低いと推定される。) それでは、つぎに正反対の、おそらく、われわれにとっては最も望ましくないシナリオについて考えてみよう。インドが中国やロシアの側に傾斜し、印中ロのユーラシア連合、ないし同盟が形成される可能性だ。 じつはインドにとって、中ロとの連携は、日米豪とのそれよりも古くからのものだ。日米豪印によるクアッドの枠組みは、2007年に試みられたものの、その後しばらく立ち消えとなり、ふたたび現れたのは2017年のことだった。 クアッドに対し、ロシア、インド、中国の頭文字をとったRICと呼ばれる3カ国の枠組みは、もともと1998年にロシアのプリマコフ首相が訪印した際に提示したものといわれる。多くのロシア専門家は、ロシアには、対米牽制とともに、台頭する中国の影響力を薄めるために、ユーラシアのもうひとつの大国、インドを取り込みたいという思惑があることを指摘する。RICの枠組みは、2002年から非公式の外相会合として動き出し、2005年からは、3カ国が順番にホストを務めるかたちの会合が定例化された。定例化されてはいないが、最初の首脳会合も2006年には行われている。 この経緯をみれば、インドがどういう場合に、中国、ロシアとの連携に傾斜する可能性が出てくるのかがわかる。RICの本格化は、アメリカでブッシュJr.政権が、イラク戦争など、いわゆる単独行動主義的な傾向を強めた時期と符合する。このころのRIC外相会合後の共同声明文をみると、国際関係の民主化や公正な国際秩序の必要性、多極化を推進し、国連が役割を果たすことの重要性などが強調されている。 要するに、超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない』、「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない」、「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。 「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。 「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。 Newsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」 「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。 「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。 「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン 伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」 伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社) 「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。 「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。 さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という 「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。
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不登校(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) [社会]

不登校については、2021年6月14日に取上げた。今日は、(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法)である。

先ずは、本年10月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した清談社の吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329381
・『小中学生の不登校が24万5000人と過去最多を更新した。コロナ禍の影響なのか、それとも何か別の要因があるのか。自身の教師経験を元に描いた『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版)(以下『不登校日誌』)の著者、観世あみ氏に不登校急増の理由について話を聞いた』、興味深そうだ。
・『小中学生の不登校が初めて20万人超に  昨年発表された文部科学省の調査によると、小・中学生の不登校が全国で約24万5000人と過去最多を記録した。小学生が約8万人、中学生が約16万人にも上り、「不登校」が20万人を超えるのは初めてだという。この場合の「不登校」とは、1年間で学校を30日以上欠席した児童の数だが、ここに不登校傾向のある「隠れ不登校」の子どもも含めると、その総数はさらに多くなるだろう。 2010年の不登校児童数は約12万2000人。約10年間で不登校は倍以上に増えており、なかでも過去最多を記録した21年度は、前年度から約5万人増と急激な増加を見せている。 この急増の背景について、コロナ禍による臨時休校やさまざまな制約によって「生活リズムが乱れやすく、交友関係を築くことが難しくなり、登校意欲が湧きにくい状況だった」と文科省は推測している。急増の背景には、やはりコロナが大きく関係しているのだろうか。 「影響は少なからずあると思いますが、統計を見ると2020年以前から不登校は年々増え続けており、必ずしもコロナのせい、とも言い切れません。不登校になる動機も多様化、複雑化しています。それぞれの事例を見ると『勉強意欲の低下』や『部活や友人関係の悩み』『将来への不安』『倦怠(けんたい)感』など、いくつかの要因が重なっている場合が多いんです」 そう話すのは、不登校児童の実態を描いたコミックエッセイ『不登校日誌』の著者で、元教師の観世あみ氏だ。観世氏は自身の教師時代の経験を基に、子どもたちの間で広がっている「不登校問題」に向き合ってきた。 「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」』、「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。
・『不登校で最多の要因は本人の無気力  そんななか、不登校に至った理由を生徒本人ですらわかっていない場合も増えているという。 「不登校、となると、まず『いじめ』が原因と考える人もいると思うのですが、実は統計上、いじめが原因の不登校というのは意外と少ないんです。文科省の令和3年度不登校児童の実態調査によると、一番多い要因は『本人の無気力』。これは小学生、中学生どちらにも共通していて、無気力の背景にもいろいろな要素が絡み合い、複合的なストレスが不登校につながっていると考えられます」 生徒自身、明確な理由がわからないという「無気力不登校」。理由のハッキリしない不登校に子どもが陥ったとき、親はどのように対処すべきなのか。 「家庭内の空気、親御さんのメンタルを明るく穏やかに保つことは重要です。一番身近な大人の心をまず安定させて、過剰に焦ったり不安を感じたりしないようにしましょう。生活の基盤である家庭環境は子のメンタルにも大きく影響し、家庭が安心できる場所になっている場合、子のストレス耐性は強くなる傾向にあると感じます。教師時代の経験を振り返っても、環境の変化や家庭内のストレスが子どもの漠然とした不安・無気力感につながっているのでは、と考えられるケースがいくつかありました」 とはいえ、不登校=家庭に問題がある、と誤解してほしくないと観世氏は続ける。 「子どもが不登校になると、保護者の方も不安を抱えることになると思います。自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」』、「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。
・『「学校に行きなさい!」が子どもをさらに追い詰める  とはいえ、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは思い詰めず穏やかに…といっても限界がある。親として、子どもとどのような向き合い方をするのがベストなのか? 「まずは『話を聞いて、寄り添う』こと。不登校は本人がさほど気にしていないように見えても、実際すごくつらくストレスもかかるものです。休みを重ねれば気持ちは焦り、落ち込み、さらに不安感も強くなって動けなくなるという負のループに陥ります。そういう状態の子どもに『学校に行きなさい!』と頭ごなしに強制してもさらに追い詰めてしまうだけなので、まずは『不登校=子どもの心身のSOS』と捉え、共感的態度を意識してみましょう」 無理に家庭内のみで解決しようとせず、学校側や不登校児童のための適応指導教室、民間団体が運営するフリースクールなどの外部機関も頼り、風通しをよくすることも重要だ。 「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという。 「不登校生徒の保護者の方に話を聞くと『教育委員会に紹介されたスクールソーシャルワーカーを頼ったらお子さんと相性が良く、家でも明るく過ごせることが増えた』ということもあったようです。保護者と子どもと学校という三者だけでなく、子どもに合った支援方法を提示できるように、選択肢を増やしておくことは大切です」 具体的な解決策を模索するとともに、不登校のメリット・デメリットを知っておいた方がいいだろう。 「明確なデメリットとして学校の授業に相当する学習時間を自宅で確保するのは非常に難しく、多感な時期に不登校による心理的ストレスがかかることは見逃せません。とはいえ、多様な生き方が今は肯定されている時代であり、不登校になっても人生が終わるわけではない。不登校を乗り越えて活躍している方も多いです。不登校が悪いことだと考え込みすぎることが一番良くないことなのではないでしょうか」 昨今、SNS上では「学校に行かないこと」を肯定するインフルエンサーや著名人のエピソードも増えている。「不登校=悪」という前提自体が、変化のときを迎えているのかもしれない。 「これは『不登校日誌』にも書いたのですが、不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう』、「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。

次に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した同時通訳者でArt of Communication代表の田中慶子氏とノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」を紹介しよう。
・『同時通訳者として、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなど世界のトップリーダーと至近距離で仕事をしてきた田中慶子さん。「多様性とコミュニケーション」や「生きた英語」をテーマに、現代のコミュニケーションのあり方を考えていきます。今回は、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン氏に関する書籍を多数出版している、台湾在住のノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏と対談。「学校に行かない」という選択をしたオードリー氏の事例を発端に、学校へ行かずに勉強する「自主学習」というありかた、「不登校」という表現への違和感、従来の学校システムと多様性のバランス、自分でカリキュラムを組み立てて学習するオルタナティブスクールについて、日本と台湾の教育や文化の違いや親和性などを語り合った』、興味深そうだ。
・『台湾のオルタナティブ教育「自主学習」とは?  (田中慶子氏の略歴はリンク先参照) 田中慶子(以下、田中) 近藤さんは、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン(以下、オードリー)さんに関する本を多数出されていますね。来年には台湾の教育に関する本が出版される予定と聞きました。 近藤弥生子(以下、近藤) オードリーさんの母、リー・ヤーチン(以下、リー)さんが書いた、「自主学習」をするための、心得や経験をまとめた本の翻訳書です。 田中 「自主学習」とは何ですか? 近藤 日本語に合う言葉がないんです。オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立します。その一連の物語や課題、ノウハウなどを記した本で、同じ状況にある人や保護者の指南書でもあります。 ※現:「種の親子実験小学校」 田中 自主学習は、例えばどのようなことをするのでしょうか? 近藤 「1週間で何をどういうふうに勉強するか」をプランニングして実施するのですが、勉強の中には、哲学クラブへ通ったり、大学の授業を単発で受講したり、自由研究をしたり、ということも含まれます。 ですので、家にずっとこもって学習するわけではなく、外にも出ていきますし、誰かと一緒にWebサイトをつくってみるなど、他人とコラボレーションすることもあります。それが自主学習なんです。 田中 それはいいですね。リサーチ能力やプロジェクトマネジメントなどの技能が向上しますね。 近藤 オードリーさんはいわゆる「ギフテッド(※天才的な能力を持つ人)」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね。 最近、日本である学校の校長先生とお話したのですが、その校長先生は昔、ある生徒に「私が学校に適応できないのではなく、学校が私たちに適応していないだけでしょう」と言われて、ハッとしたと言っていました。 日本は、よほどのことがないと転校するのが難しいですよね。逃げ場が与えられていない、限られた場所だけでやっていかなければならないというのは、すごいプレッシャーだと思うんです。) 「学校に行かない子」は「勉強をやめた子」ではない  (近藤弥生子の略歴はリンク先参照) 田中 その通りだと思います。私も元不登校生でしたが、日本では「学校に行っていない」=「勉強をやめた子」という固定観念がものすごく強いんです。 今、日本は、不登校の生徒が24万人いて(※)、過去最多です。 ※2022年10月27日公表の文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度における小中学生の不登校数は24万4940人。毎年増加の傾向にある それだけいると、もはや珍しいケースとは言えませんよね。学校に行かなくても学んでいる子はたくさんいます。それなのにその規模の子どもたちを包括するようなオルタナティブとなる教育がありません。 ですから、台湾の自主学習のように、「既存のカリキュラムを学校で受けなくても、学ぶことは可能なんだ」という発想は、今の日本にこそ必要かもしれません。 日本の「不登校」という表現は、非常によくないですよね。学校に行かずに家で学ぶことを「ホームスクーリング(homeschooling)」と言うこともありますが、リーさんの言う自主学習ともやっぱり違う気がします。 日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか。 田中 なるほど。独学の機運の高まりは、これまでの日本の教育カリキュラムに限界がきていることの表れだと思うんです。そういう意味でも、やはり、自主学習という観点は、これからの日本の教育の参考になりそうです。 近藤さんが以前に書かれた『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」 自分、そして世界との和解』(KADOKAWA)内で、学校へ行かないという選択をしたオードリーさんに対し、「何で君だけが行かなくていいの? 僕だって本当は行きたくないのに」と周囲から責められるエピソードが紹介されていました。 おふたり 私も「みんな我慢して学校へ行っているのに、あなただけ行かなくていいなんて、ずるい」とよく言われました。その時に思ったのは、そして、今も思うのは、「みんなが我慢して通わなければならない学校は、なくてもいいのではないか」ということです。 現在の一般的な学校は、明治以後、日本が発展していく段階にあって、西洋から多くを学び、必死につくってきた学校システムの流れを汲んでいるのだと思います。みんなががんばり、そして日本を強くしたいという気持ちが、いつしか、「こうあらねばならぬ」と、それに従わない他人を許せない場になってしまった。 もちろん大多数の子どもたちはそこにフィットしているので、既存の学校は必要なものです。他方で、24万人の子どもたちが不登校という現実があり、我慢しながら学校へ行っている子たちも含めると、「今の学校が合わない」と感じている子どもは、もっといるはずです。社会で「ダイバーシティ」がうたわれているのに、教育業界ではなかなかダイバーシティが進んでいない印象です。 近藤 リーさんが、オードリーさんに合うような学校を探していた時に、ある児童哲学クラブで子どもたちと話していると、このような意見が出たんです』、「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。
・『転校を繰り返しても「教育に前向きだ」と思える社会の寛大さ  近藤 「自分たちで勉強の内容を決めさせてくれたら、僕はもっと上手に勉強できるのに。大人が全部決めてしまうからできないんだよ」と。 それをヒントに、リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです。 田中 「カリキュラムを自分で組み立てる」というのは、「自分たちで勉強の内容を決める」ということですものね。 近藤 日本のように平均的なカリキュラムを一斉に施すのではなく、選択肢を用意するんです。実験学校に通い始めたけれど合わなかったという場合は、ほかの実験学校へ容易に転校も可能ですし、公立の学校や私立の学校とも、比較的スムーズに行き来することができます。 学校の選択を誤って転校したとしても、後ろ指をさされることがない。むしろ、その子の良いところを伸ばすためにその子に合った学校を積極的に探している、教育に前向きだ、とさえ思われる。台湾社会もそのあたりに非常に寛大になってきています。 田中 日本でも少しずつ変わってきてはいますが、以前は、学校に行かなければそのまま「社会からドロップアウトした」というネガティブなイメージが付きまとい、本人の中にもそれがコンプレックスとして残っていた。そう考えると、台湾のその事例は、子どもたちにはもちろんのこと、会社や家庭以外のサードプレイスや、学ぶ場所、人とつながれる場所を求めている大人にも、参考になりますよね。 近藤 たとえオードリーさんのようなギフテッドでなくても、子どもにはひとりひとり、素敵な個性が備わっているはずで、その部分を伸ばしていきたい、と、現在、翻訳中のリーさんの本に書かれています。「お隣の台湾ではこうした教育方法が伸びてきている」ということを、日本の読者に伝えたいんです。原著は、20年近く前に出版されたものです。 今回、翻訳本を出すことになったのは、「今の日本にこそ、この本が必要だ」という、担当編集者さんの並々ならぬ熱意がありました。私は翻訳という立場で携わらせていただき、慶子さんの同時通訳もそうだと思いますが、こうした、異なる文化の価値観を伝えるという点に、「翻訳」の意味や醍醐味がある気がしています』、「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。
・『フォロワーとしては優秀かもしれないがリーダーシップを取ることができない  田中「日本人はリーダーシップを取れない」とよく言われますが、仕方がない面もあると思うんです。 日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。
・『ようやく手に入れた民主主義を守るため今の台湾は「人任せにしない」  近藤 そして、最近、日本と台湾との関係で思うのは、これまで、日本にとっての台湾の位置づけは、「日本の近くに台湾があるよね」「台湾って親日だよね」ぐらいな感じで、そこまで台湾の存在を強く意識していたわけではなく、大国・日本を慕ってくれている隣人、という、少し「上から目線」の雰囲気があったと思うんです。 以前、あるメディアで台湾について書いた原稿で、「日本が台湾から学ぶ点があるかもしれない」と記したところ、「それは読者に受け入れられないと思う」と、担当編集者さんに指摘されて、修正したことがありました。 でも、ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています。 田中 以前、仕事でオードリーさんの通訳をしたときに、台湾は、日本の統治下だったり、独裁政権下だったりしたので、ようやく手に入れた現在の民主主義をとても大事にしている、とおっしゃっていたことが印象的でした。 藤 そうなんです。今の台湾は、社会全体で「人任せにしない」という雰囲気があります。少しでも油断すると、今の民主主義が奪われて、独裁者の時代に逆戻りするのではという恐れの気持ちが強いんです。だからこそ、権力を持つ者から目を離さないですし、ブラックボックスを絶対に許さないんです。 田中 なるほど。オードリーさんは、人々から何か声が上がったときには、すぐに反応して、経緯や事情をきちんと開示し、透明性を持って対応するということが、いかに大事かを話されていました。 オードリーさんの活躍も含め、透明性の重要性を認識している社会、ダイバーシティを大切にする学校教育、半導体製造のTSMCといった企業の躍進など、日本側の台湾を見る目も変わらざるを得ない状況になってきているんですね』、「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。
・『年長者や専門家による定義から始めるな 社会を変える時こそ対話と多様性が重要  藤 台湾出身のジル・チャンさんのビジネス書『「静かな人」の戦略書』がヒットしたりもしていますね。これまで、台湾人が書いたビジネス書や自己啓発書が、日本で出版されたことはほとんどありませんでした。今回の自主学習の本の内容も、おそらく読者にとって新鮮だと思います。 田中 「人任せにしない社会」は重要ですね。そのような中、日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね。従来のシステムになじまない、あのようなすごい人がいるんだと、多様性を受け入れやすくなる。 近藤 おっしゃるとおりで、社会を変える時こそ、対話と多様性は重要だと思います。 日本では何かを始めるとき、「不登校とはこういうもので」とか「自主学習とはこういうもので」と、年長者や専門家による定義からスタートします。そうではなくて、「不登校ってそもそもどういうことだろう」とか「自主学習って何だろう」とかを、みんなで話し合って、粗々のオリジナルでいいから、どう定義できるかを、まずはその場で考えてみることに大きな意味があるのではないでしょうか。 田中 あくまでざっくりとした表現ですが、欧米では、意見が分かれるとロジカルに白黒はっきりさせようとする傾向が比較的強いように思えます。もちろん、ロジカルに話したり、ロジカルに決めたりすることも重要です。 一方で、日本を含めた東洋は、良くも悪くもあいまいにしたがります。それは、ネガティブ・ケイパビリティとでも言うべき、曖昧なものを曖昧なままで受け入れる能力で、それも必要だと思うんです。その意味では、日本は本来、多様性を受け入れることは得意なのではないかと思うんです。 近藤 そうですね。変化のきっかけさえあれば、その特性を良い方向へ一気に発揮することができるかもしれません。もちろん違うところもたくさんありますが、東アジア同士、共通する文化や歴史も多く、親和性が高いので、お互いに学び合うことができる。台湾の成功事例はとても参考になるのではないかと思います。 台湾人はもともと日本のことを好きな人が多いですが、日本でも「日本の近くに位置している国」というだけでなく、「日本の身近な国」として知ろうとする人が増えてきていて、とてもうれしいです。私ももっともっと台湾のことを勉強したいと思います』、「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。 
タグ:不登校 (その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) ダイヤモンド・オンライン 吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」 『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版) 「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。 「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。 「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。 不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。 それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。 田中慶子氏 近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」 「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」 ・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか 」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。 「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。 AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。 「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。  フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。 特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。 「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。 「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。 表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。
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発達障害(その4)(ベゾスやマスクが社会性は低いのに成功した理由 注目の発達障害「グレーゾーン」、「ADHDは薬が効くのに見逃されている」発達障害治療の第一人者が訴える大問題、「本当の天才」は東大理三に面接で落ちる…ホリエモン×和田秀樹が日本の教育を斬る!)

発達障害については、昨年4月17日に取上げた。今日は、(その4)(ベゾスやマスクが社会性は低いのに成功した理由 注目の発達障害「グレーゾーン」、「ADHDは薬が効くのに見逃されている」発達障害治療の第一人者が訴える大問題、「本当の天才」は東大理三に面接で落ちる…ホリエモン×和田秀樹が日本の教育を斬る!)である。

先ずは、本年2月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医・作家・医学博士の岡田尊司氏による「ベゾスやマスクが社会性は低いのに成功した理由、注目の発達障害「グレーゾーン」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317753
・『発達障害という言葉が広く知られるようになり、自分もそうかもしれないと医療機関を訪れる人が増えている。そんな中で急増しているのが、徴候はあっても診断はおりない「グレーゾーン」。障害未満でありながら、ときに障害を抱えた人より深刻な困難になりやすいとされるが、時代の寵児であるジェフ・ベゾスやイーロン・マスクにもその気があったといわれる。彼らの抱えていた生きづらさについて、岡田尊司『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』より一部抜粋・編集し紹介する。 ▽ものごとを図式化し分析する“知覚統合”が強い人たち(世のなかには、知覚統合が突出して強いタイプの人がいる。 知覚統合は、ものごとを図式化し分析する能力や、状況を判断し、変化や未来を予測し、損害を避け、有利な選択をする能力でもあり、また、ものごとを客観的に達観して、冷静な判断をする能力にも通じている。数学や物理の能力のベースにある能力だが、哲学者や文学者にも、意外に優れた知覚統合が推測される人もいる。 イギリスの作家で、『息子と恋人』などの傑作を遺したD・H・ロレンスは、貧しい労働者階級の出身だったため、奨学金をもらってハイスクールに進んだが、彼がそこで優秀賞をとったのは、国語(英語)ではなく数学だった。ロレンスの文章は、細密な絵画のような自然描写でも卓越していたが、その優れた描写力は、彼のイメージする力と無縁ではないだろう。 作家の安部公房は、中学高校時代、数学が得意科目で、ドストエフスキーを愛読するとともに、高木貞治の『解析概論』を読み耽っていたという。安部は、フッサールの現象学にも傾倒し、彼の文学の手法の根底には現象学の考え方があった。東大医学部に進むも、医者にならず、文学者の道を選んだのは、彼の関心が、生身の人間よりも、もっと抽象的な概念やその土台にある構造にあったからだろうか。 もっとも、数学が苦手な文学者や作家のほうが、もっとたくさんいるのは言うまでもない。 優れた知覚統合は、客観化や図式化の能力によって、複雑な現実の状況を前にしても、冷静に最適解を導き出し、賢く対処することを助ける。 ただ、知覚統合が優れている人も、いいことばかりというわけにはいかない。知覚統合が高い人は、客観視の力によって、些細なことや感情的なことで悩まない傾向はあるのだが、何ごとも行きすぎると弊害が生じる。 客観視ばかりで、共感やコミットメント(関与)が不足して、いかにも他人ごとという冷ややかな態度が見え見えだったり、分析して説明してくれるものの、自分のことは自分でやってという突き放した姿勢で、優しさが欠けていたりするのだ。 知覚統合は、パターンや規則性を見つけ出して推理したり、新しいものを構成したりする能力にかかわる。地図を読むといったことも、単に視覚的な認知の能力というよりは、視覚情報が表している意味を読みとる能力だと言える。) さらには、ものごとの根底にある構造を見抜き、その構造から世界を理解し、目の前の見えない現象を推測することを可能にする。つまり、現象をその根底にあるシステムから理解する能力だとも言える。 自閉症研究の世界的な第一人者の一人であるバロン=コーエンは、人間の脳には、共感(empathy)を得意とするEタイプと、システム(system)思考を得意とするSタイプがあり、自閉症は極端なSタイプで、共感が極度に苦手であると考えた。 コーエンによると、ルールや同一性へのこだわりも、システムで考えるのを好み、同じ規則を求めようとするためだということになる。 システム思考を好み、ものごとを一つのルールや法則で理解したがる傾向は、グレーゾーンから健常レベルの人に至るまで、Sタイプに属する人たちの重要な特徴と言えるだろう』、「人間の脳には、共感(empathy)を得意とするEタイプと、システム(system)思考を得意とするSタイプがあり、自閉症は極端なSタイプで、共感が極度に苦手であると考えた・・・システム思考を好み、ものごとを一つのルールや法則で理解したがる傾向は、グレーゾーンから健常レベルの人に至るまで、Sタイプに属する人たちの重要な特徴と言えるだろう」、なるほど。
・『Sタイプのジェフ・ベゾスが祖母を泣かせた言葉  アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは、いまや世界一のビリオネアだが、その生い立ちは、波乱に富んだものだった。 じつの父親はサーカスの団員で、一輪車乗りを得意技としていた。高校時代の後輩で、まだ16歳だった女性とつき合う仲になり、妊娠して生まれたのがベゾスだった。 しかし、父親の仕事は不安定で、二人とも家庭をもつには若すぎたと言える。結局、2年で離婚し、母親は別の男性と再婚。ジェフはその男性の養子として育てられることになる。養父となった男性はキューバからの政治難民だったが、奨学金とアルバイトで大学も出て、大手の石油会社に勤めはじめていた。一方、じつの父親との連絡はその後途絶えてしまう。 何かに熱中するとほかのことが目に入らなくなる傾向は、幼稚園児だったころから顕著だったようだ。 公園の池に浮かんだ足こぎのボートに乗ったときも、ほかの子は母親に手を振っていたのに、ベゾスは、ボートが動く仕組みを知ろうと、そちらに夢中で、母親のほうなど一顧だにしなかった。何かをやり出すと、やめさせて次のことに切り換えさせるのが至難の業で、仕方なく幼稚園の先生は、椅子ごと彼を移動させていたという。 そんな彼は、宇宙飛行士と発明家になることを夢見るメカ好きの少年に育っていく。 ジェフ少年は、あるとき祖母を泣かせてしまったことがあった。喫煙による死亡率の上昇に警鐘を鳴らす公共広告を見ていたジェフは、自分で計算して、喫煙している祖母の寿命が9年短くなるという答えを導き出し、それを祖母に告げたのだ。祖母は泣き出したが、無理もなかった。祖母は肺ガンにかかってもう何年も闘病中だったのだ。) 彼の計算結果は正しかったかもしれないが、それが祖母を傷つけることには、彼は無頓着だった。ジェフ少年の悪意のない失言に対して、祖父は孫を優しくたしなめたという。「ジェフ。賢くあるよりも優しくあるほうが難しいと、いつかわかる日が来るよ」と。 高校では科学部とチェス部に籍を置き、さまざまな賞を獲得した。負けず嫌いなベゾスは、卒業生総代になるために首席の成績を修めると公言していたが、その通り実行した。プリンストン大学に進むと、電気工学とコンピュータサイエンスで学位を取得。そして、彼が卒業後に就職先として選んだのは、株式投資の世界だった。数学とコンピュータを駆使する金融工学の手法でウォールストリートを席巻する先駆けとなった投資会社で、ベゾスは頭角を現していく。 こうしたベゾスの経歴には、彼のシステムへのこだわりと嗜好が感じられる。プログラムに従って、コンピュータが自動的に取引を行っていく手法は、情緒的な関与を一切排して、定められたルールに従って淡々と取引を行うというものだった。 ベゾスのある部下は、彼の思考や行動が、極めて論理的で、「どのようなことでも体系的に(システマティックに)対処する」という特徴があることを指摘している。ベゾスは女性との出会いにさえ、「ウーマンフロー」(投資案件と出会う機会を表すディールフローに対して、女性との出会いの機会をそう呼んだ)を増やすという方法を実践していたという。 こうしたエピソードからも、システムでものごとを考え、制御しようとするSタイプの思考がはっきり見てとれると言えるだろう』、「何かに熱中するとほかのことが目に入らなくなる傾向は、幼稚園児だったころから顕著だったようだ。 公園の池に浮かんだ足こぎのボートに乗ったときも、ほかの子は母親に手を振っていたのに、ベゾスは、ボートが動く仕組みを知ろうと、そちらに夢中で、母親のほうなど一顧だにしなかった・・・ベゾスは女性との出会いにさえ、「ウーマンフロー」(投資案件と出会う機会を表すディールフローに対して、女性との出会いの機会をそう呼んだ)を増やすという方法を実践していたという」、なるほど。
・『1日10時間読書に没頭したイーロン・マスクの幼少期  ベゾスと並んで、驚異的な成功を成し遂げてきた時代の寵児に、イーロン・マスクがいる。電気自動車で世界をリードするテスラ社のみならず、夢物語と思われていた民間での宇宙事業に突破口を開いたスペースX社を創立し、一大企業に育て上げた型破りの人物だ。 歴史に匹敵する人物を探すとすれば、アレクサンダー大王やチンギス・ハンをもち出すしかないかもしれない。2人の英雄の事業は、軍事的な征服によるものだったが、マスクは、科学技術と経営力によって、誰も成し得なかったような事業を成し遂げようとしている。こうした偉業を可能にしたのは、いかなる情熱と能力だったのだろうか。 イーロン・マスクは南アフリカ共和国の首都プレトリアで生まれた。父親は電気や機械のエンジニア、母親は栄養士だったが、学校時代には理科や数学が得意な、いわゆるリケジョだった。両親ともに理系の能力に恵まれていたということになる。) 少年イーロンは、好奇心旺盛で、活発な子だったが、ときどき自分の世界に入ると、呼びかけてもまったく反応がなくなることがあった。両親は心配して、耳鼻科の医者に診てもらったこともあるが、別に聴力に異常は見つからなかった。 こうしたエピソードは、自閉的な傾向をもつ子どもで、ときに見られるものである。内的世界に没入し、自分の考えに過集中するため、外界からの声や物音がまったく耳に入らなくなってしまうのだ。外からはうかがい知れないことだったが、イーロンのなかでは、その後の彼の能力の源となるようなことが起きていた。イーロンはインタビューに答えてこう述べている。 「5~6歳のころ、外界と断絶して一つのことに全神経を集中させる術を身につけた」 「脳のなかには普通ならば、目から入ってきた視覚情報の処理にしか使われない部分があるが、その部分が思考プロセスに使われるような感じかな。とにかく、視覚情報を処理する機能の大部分がものごとを思考する過程に使われていた。いまはいろいろなことに注意を払わなければならない身なので、以前ほどではなくなったが、子ども時代は頻繁にハマっていた」 視覚情報を処理する脳の領域で思考すること、それは、まさしく視覚統合の働きにほかならない。イーロン少年は白昼夢に耽りながら、視覚統合の能力をフル活用するようになっていたのだ。視覚統合は、現実にはないものをイメージし、思考を展開する能力でもある。イーロンはこうも述べている。 「イメージとか数字の場合は、相互の関係や数学的な関連性を把握・処理できる。加速度とか運動量とか運動エネルギーなんかが物体にどういう影響を与えるのか、鮮明に浮かんでくるんだ」 彼はイメージによって思考する技を、子どものころから身につけていた。 そんなイーロンは、ただ空想に耽っているだけではなかった。彼が子どものころから熱中したもう一つのことは、読書だった。いつも片手に本をもっていたという。 弟の証言によると、1日10時間読書に没頭することも珍しくなかったし、週末には必ず2冊の本を1日で読破していたという。学校の図書館の本を読み尽くして、読むものがなくなったため、ブリタニカ百科事典を読み耽った。小学生の間に、2つのシリーズの百科事典を読破していたイーロンは、「歩く百科事典」と言われるほどのもの知り少年になっていた。) 一方、イーロン少年にも苦手なことがあった。それは社会性の面と運動だった。 イーロン少年は相手がどう思うかよりも、正しいかどうかを優先するところがあり、間違っていることを指摘せずにはいられなかったのだ。そのため、相手をいらだたせ、鬱陶しがられることも多かった。 友だちはおらず、いつもひとりぼっちだった。弟でさえ、兄と遊ぼうとしなかった。「お兄ちゃんと遊ぶの楽しくないんだもん」というわけだ。何年もいじめを受けたのも、そうした特性が関係していたのだろうか。  さらにイーロン少年を孤独にしたのは、両親の関係が悪化し、やがて離婚してしまったことだ。イーロンは最初母親と暮らしたが、そのとき、仕事で忙しい母親の代わりにイーロンの面倒を見てくれたのは祖母だった。学校の送り迎えも、ゲームの相手も祖母が務めたのだ。 数年後、父親と暮らすことを選ぶことになる。しかし、父親も相当な変わり者だったらしく、イーロンが期待したような愛情や優しさが与えられることはあまりなかった。 イーロンはやがて南アフリカを捨てて、アメリカを目指すが、父親と暮らしたころのことを振り返って、こう述べている。 「いいことがまったくなかったわけではないが、幸せではなかった。惨めというのかな。父は、人の人生を惨めにする特技の持ち主。それは確か。どんないい状況でも、ダメにしてしまう」 高い知覚統合の能力をもってしても、父親から受けた愛情のない仕打ちを乗り越えることは、イーロン・マスクにとっても容易ではなかったということだろうか。 しかし、その満たされない思いを、宇宙に対する野心へと昇華させたマスクは、大事業を着々と進めていくのである』、「1日10時間読書に没頭することも珍しくなかったし、週末には必ず2冊の本を1日で読破していたという。学校の図書館の本を読み尽くして、読むものがなくなったため、ブリタニカ百科事典を読み耽った。小学生の間に、2つのシリーズの百科事典を読破していたイーロンは、「歩く百科事典」と言われるほどのもの知り少年になっていた」、「2つのシリーズの百科事典を読破とは凄い。「イーロン少年は白昼夢に耽りながら、視覚統合の能力をフル活用するようになっていたのだ。視覚統合は、現実にはないものをイメージし、思考を展開する能力でもある。イーロンはこうも述べている。 「イメージとか数字の場合は、相互の関係や数学的な関連性を把握・処理できる。加速度とか運動量とか運動エネルギーなんかが物体にどういう影響を与えるのか、鮮明に浮かんでくるんだ・・・父親から受けた愛情のない仕打ちを乗り越えることは、イーロン・マスクにとっても容易ではなかったということだろうか。 しかし、その満たされない思いを、宇宙に対する野心へと昇華させたマスクは、大事業を着々と進めていくのである」、なるほど。

次に、3月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学烏山病院院長の岩波 明氏へのインタビュー「「ADHDは薬が効くのに見逃されている」発達障害治療の第一人者が訴える大問題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317899
・『ここ10数年ですっかり世に浸透した「発達障害」。しかし第一人者によれば、未だに適切な診断・治療が行われているとは言い難く「権威でも誤診するケースは多い」という。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#12では、昭和大学烏山病院の岩波明院長が、日本における発達障害治療の大問題を説く』、興味深そうだ。
・『ADHDで薬物治療が施されない裏に自閉症スぺクトラム障害との誤診  われわれ精神科領域では、臨床試験で有効性が認められている薬でも、いざ現場で患者さんに処方してみると効果がないケースが少なくありません。 例えばうつ病の場合、外来の患者さんで抗うつ剤が著効するケースは残念ながらその3~4割というのが、現場の精神科医の実感です。一方で、ADHD(注意欠如多動性障害)は、薬物療法が最も奏功する疾患の一つです。 しかし、誤診によって適切な投薬がされていないケースが数多く見られ、最も多いのは同じ発達障害の一種で、アスペルガー症候群などを含む「ASD(自閉症スぺクトラム障害)」と誤診されているケースです。』、「同じ発達障害の一種で、アスペルガー症候群などを含む「ASD(自閉症スぺクトラム障害)」と誤診されているケース」、それでは「適切な投薬がされていないケースが数多く見られ」るのは当然だ。
・『児童精神医療のメインは重度自閉症だった だからASDと結び付けがちになる  ASDには、抗不安薬や抗うつ剤を対症療法として使うことはありますが、対人関係の障害などの中核症状に有効な薬はありません。 当院の発達障害外来には、他の病院でASDと診断された方も多く来られますが、およそ3分の2は他の疾患です。その中にはADHDも多く見られますが、ASDと診断されていたということは、これまで必要な薬物治療は受けてこなかったことを意味します。 確かにADHDとASDには、横断面では、ミスや忘れ物が多い、衝動的で対人関係がうまくいかないなどの共通点があり(下図参照)、見分けるのは難しいのですが、実は“大家”といわれる医師でも、ADHDをASDと誤診してしまうケースが多々存在しています。 なぜ権威も間違うのか。これは、児童精神医療の分野が伝統として重度の自閉症をメインに扱ってきた歴史的背景から、診断にバイアスが生じ、発達障害に関連する症状があれば真っ先にASDを考える傾向があるためです。 特に、対人関係に問題が見られるとASDと結び付けられがちなのですが、学校で孤立して不登校になり、一見ASDのように見える子供が、ADHDの薬物治療を行うと見違えるように復活して、進学校や名門大学に合格するケースも複数見てきました。 だからこそ薬が効かない症例の多い精神科領域で、ADHDをしっかり診断して適切な投薬に導くことが極めて重要なのです。 現状の小児に対するガイドライン(『注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版』)の記載も問題です』、「確かにADHDとASDには、横断面では、ミスや忘れ物が多い、衝動的で対人関係がうまくいかないなどの共通点があり・・・、見分けるのは難しいのですが、実は“大家”といわれる医師でも、ADHDをASDと誤診してしまうケースが多々存在しています。 なぜ権威も間違うのか。これは、児童精神医療の分野が伝統として重度の自閉症をメインに扱ってきた歴史的背景から、診断にバイアスが生じ、発達障害に関連する症状があれば真っ先にASDを考える傾向があるためです」、「現状の小児に対するガイドライン(『注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版』)の記載も問題です」、どういうことなのだろう。
・『成人は薬物治療の必要性が高い 「ビバンセ」は成人に適応拡大を  ガイドラインでは「ADHDの治療・支援は環境調整に始まる多様な心理社会的治療から開始すべきであり、薬物療法ありきの治療姿勢を推奨しない」とされていますが、小児においても投薬は重要な治療法であり、成人であれば、なおさら薬物治療の必要性は高いものです。 「環境調整」といっても、成人の場合、職場や家庭など周囲の環境を変えることは極めて難しいのが現実ですから、薬に抵抗感が強くない限り、多くの場合、成人のADHDには薬物治療をお勧めしています。 個人的には、本邦で保険適用されているADHD治療薬4剤のうち、6歳以上18歳未満への処方に限られている「ビバンセ」(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)の適応を成人に拡大することが必要であると考えています。 覚醒剤に似た構造を持つため、厚生労働省が適応の拡大に後ろ向きのようですが、ビバンセは欧米では成人に対しても第一選択薬になっています。 日本で最も多く使われている「コンサータ」(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)より有効性が高いという報告も見られ、成人にも適応が拡大されれば、コンサータが効かない患者さんにとっては貴重な治療の選択肢になるでしょう。(談)』、「覚醒剤に似た構造を持つため、厚生労働省が適応の拡大に後ろ向きのようですが、ビバンセは欧米では成人に対しても第一選択薬になっています」、「厚生労働省」の余りに保守的な姿勢には驚かされる。

第三に、4月2日付け現代ビジネスが掲載した堀江 貴文氏と 和田 秀樹氏の対談「「本当の天才」は東大理三に面接で落ちる…ホリエモン×和田秀樹が日本の教育を斬る!」を紹介しよう。
・『経営者と医者──それぞれの視点から「医療と健康」について分析した書籍が話題を呼んでいる。堀江貴文の『不老不死の研究』と、2022年に最も売れた本となった和田秀樹の『80歳の壁』、そして今年1月に発売し、たちまち10万部を突破した『ぼけの壁』だ。 今回、「堀江貴文 ホリエモン」チャンネルにて、堀江氏と和田氏の特別対談が実現した。その模様を、一部編集のうえお届けする(第一回)。
https://gendai.media/articles/-/108096?imp=0
・『学校に行かなくても、自習でいい  堀江 僕は基本的に学校教育って、いまの時代には全く不適合だと思っているんですね。和田さん、小学校とか行きました? 和田 あ、僕ね、小学校は6回転校しているんです。 堀江 (笑) 和田 もともとADHDの気がすごく強くて「立ち歩き」したから、親がすごく心配して。授業を座って聞いていられない生徒でした。いまだったら、まず間違いなしにADHDで「特別支援学級にいきなさい」みたいになっていたかもしれないですけど。 堀江 でもね、別に学校行かなくても、学力という意味で言ったら自習でいいわけじゃないですか。自習をして、それこそメンター的な人に会えるようにしておけば、それでいい。 東大の先端科学技術研究センターには、変な奴らを集めたクラスみたいなのがあって。メンターとかにたまに会えて、「こういうことやったらいいよ」って言われるだけで「あとは学校なんか行かないよ」みたいな人たちがいるそうです。 俺はそういう人って、結構な人数いると思うんですよ。そういう人をのびのびと伸ばすだけでも全然違う。いまなんて学校に行ったら「給食の時にマスクして黙って食いなさい」みたいな感じですから。耐えられないと思うんですよね。 和田 いまの学校のシステムは、僕もおかしいと思う。僕なんか特に「発達障害」で、みんなと一緒にしてられない人たちだから。 堀江 僕はそれ、障害じゃないと思うんですけどね』、「和田 もともとADHDの気がすごく強くて「立ち歩き」したから、親がすごく心配して。授業を座って聞いていられない生徒でした。いまだったら、まず間違いなしにADHDで「特別支援学級にいきなさい」みたいになっていたかもしれないですけど」、「和田氏」が「ADHD」だとは初めて知った。「堀江 東大の先端科学技術研究センターには、変な奴らを集めたクラスみたいなのがあって。メンターとかにたまに会えて、「こういうことやったらいいよ」って言われるだけで「あとは学校なんか行かないよ」みたいな人たちがいるそうです。 俺はそういう人って、結構な人数いると思うんですよ」、なるほど。
・『「共感脳」と「システム化脳」  和田 おっしゃる通りですよ。名前は発達障害だけど、いまの考え方だとそれを「ダイバーシティ」だって言ってるわけだから。 人間の脳には「2つの脳」のパターンがあるとされています。1つが「共感脳」っていって、他人とうまくコミュニケーションをとったり、合わせたり、人の気持ちがわかるの。もう1つが「システム化脳」っていって、何かあったときに「システムがどんな風な仕組みになっているのか」ばかり興味を持ってしまう脳。 「共感脳」が全然ダメで、「システム化脳」がすごい人たちが自閉症になるらしいのね。でも、そういう人たちの方が天才として活躍する。両方の脳を持っている人もごく稀にいるんだけども、多くの人は「共感脳」で、言ってみれば日本的、文系的な人たちです。でも、「共感脳」ばかりが世の中を牛耳っているのはマズいんじゃないのって思うんです。 堀江 「共感脳」の人たちが(システム化脳の人のことを)わからないだけだと思うんですよ。だって、見た目は一緒じゃないですか。見た目が一緒だから、そんな考えになるってことが、まったく想定されていない。 和田 おっしゃる通りで、「共感脳」の人たちというのは、世の中の暗黙のルールみたいなものにわりと素直に順応できちゃう。「システム化脳」のとんがった考え方っていうか、「世の中にはこんな風な仕組みがあるはずだ」とか、「この考え方はおかしい」とかって思っている人のことを、わからないんだと思うんだけど』、「人間の脳には「2つの脳」のパターンがあるとされています。1つが「共感脳」っていって、他人とうまくコミュニケーションをとったり、合わせたり、人の気持ちがわかるの。もう1つが「システム化脳」っていって、何かあったときに「システムがどんな風な仕組みになっているのか」ばかり興味を持ってしまう脳」、第一の記事での「イーロン・マスク氏」は「システム化脳」が大きく進化しているのだろう。
・『「頭が固い医者」が生まれる理由  和田 だけど例えば全国に82の国公立の医学部があってね、医学部の中で「入試面接」をやらない学校がなくなっちゃったんですよ。そうすると医者でも、「共感脳」の人たちがすごい多くなるんですね。彼らはこれが正しいと決めたら「血圧下げろ」だの、「塩分摂るな」だの、何でもかんでも決めてかかってくる。 堀江 じゃあ、「システム化脳」の人たちどこに行ってるんですか? 和田 僕がYouTubeで見た限りでは、東大の理3の面接で落とされた子は、慶應に受かったって言っていましたね。 堀江 東大理3に面接で落とされるって結構辛いですね。 和田 辛いでしょう。(試験は)合格者の最低点の20点ぐらい上だったって、その子が言ってたけど。 堀江 それ超ヤバいっすね。 第二回『堀江貴文×和田秀樹が語る「情報との正しいつきあい方」…なぜ日本人は“まともじゃない医者”を信じるのか?』に続く…』、「医学部の中で「入試面接」をやらない学校がなくなっちゃったんですよ。そうすると医者でも、「共感脳」の人たちがすごい多くなるんですね・・・東大の理3の面接で落とされた子は、慶應に受かったって言っていましたね」、「慶應」がいながらにして上手い汁をすすったようだ。
タグ:堀江 貴文氏と 和田 秀樹氏の対談「「本当の天才」は東大理三に面接で落ちる…ホリエモン×和田秀樹が日本の教育を斬る!」 現代ビジネス 「覚醒剤に似た構造を持つため、厚生労働省が適応の拡大に後ろ向きのようですが、ビバンセは欧米では成人に対しても第一選択薬になっています」、「厚生労働省」の余りに保守的な姿勢には驚かされる。 「現状の小児に対するガイドライン(『注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン第4版』)の記載も問題です」、どういうことなのだろう。 「確かにADHDとASDには、横断面では、ミスや忘れ物が多い、衝動的で対人関係がうまくいかないなどの共通点があり・・・、見分けるのは難しいのですが、実は“大家”といわれる医師でも、ADHDをASDと誤診してしまうケースが多々存在しています。 なぜ権威も間違うのか。これは、児童精神医療の分野が伝統として重度の自閉症をメインに扱ってきた歴史的背景から、診断にバイアスが生じ、発達障害に関連する症状があれば真っ先にASDを考える傾向があるためです」、 「堀江 東大の先端科学技術研究センターには、変な奴らを集めたクラスみたいなのがあって。メンターとかにたまに会えて、「こういうことやったらいいよ」って言われるだけで「あとは学校なんか行かないよ」みたいな人たちがいるそうです。 俺はそういう人って、結構な人数いると思うんですよ」、なるほど。 「医学部の中で「入試面接」をやらない学校がなくなっちゃったんですよ。そうすると医者でも、「共感脳」の人たちがすごい多くなるんですね・・・東大の理3の面接で落とされた子は、慶應に受かったって言っていましたね」、「慶應」がいながらにして上手い汁をすすったようだ。 「同じ発達障害の一種で、アスペルガー症候群などを含む「ASD(自閉症スぺクトラム障害)」と誤診されているケース」、それでは「適切な投薬がされていないケースが数多く見られ」るのは当然だ。 「和田 もともとADHDの気がすごく強くて「立ち歩き」したから、親がすごく心配して。授業を座って聞いていられない生徒でした。いまだったら、まず間違いなしにADHDで「特別支援学級にいきなさい」みたいになっていたかもしれないですけど」、「和田氏」が「ADHD」だとは初めて知った。 岩波 明氏へのインタビュー「「ADHDは薬が効くのに見逃されている」発達障害治療の第一人者が訴える大問題」 宙に対する野心へと昇華させたマスクは、大事業を着々と進めていくのである」、なるほど。 (その4)(ベゾスやマスクが社会性は低いのに成功した理由 注目の発達障害「グレーゾーン」、「ADHDは薬が効くのに見逃されている」発達障害治療の第一人者が訴える大問題、「本当の天才」は東大理三に面接で落ちる…ホリエモン×和田秀樹が日本の教育を斬る!) 発達障害 「イーロン少年は白昼夢に耽りながら、視覚統合の能力をフル活用するようになっていたのだ。視覚統合は、現実にはないものをイメージし、思考を展開する能力でもある。イーロンはこうも述べている。 「イメージとか数字の場合は、相互の関係や数学的な関連性を把握・処理できる。加速度とか運動量とか運動エネルギーなんかが物体にどういう影響を与えるのか、鮮明に浮かんでくるんだ・・・父親から受けた愛情のない仕打ちを乗り越えることは、イーロン・マスクにとっても容易ではなかったということだろうか。 しかし、その満たされない思いを、宇 「人間の脳には「2つの脳」のパターンがあるとされています。1つが「共感脳」っていって、他人とうまくコミュニケーションをとったり、合わせたり、人の気持ちがわかるの。もう1つが「システム化脳」っていって、何かあったときに「システムがどんな風な仕組みになっているのか」ばかり興味を持ってしまう脳」、第一の記事での「イーロン・マスク氏」は「システム化脳」が大きく進化しているのだろう。 「1日10時間読書に没頭することも珍しくなかったし、週末には必ず2冊の本を1日で読破していたという。学校の図書館の本を読み尽くして、読むものがなくなったため、ブリタニカ百科事典を読み耽った。小学生の間に、2つのシリーズの百科事典を読破していたイーロンは、「歩く百科事典」と言われるほどのもの知り少年になっていた」、「2つのシリーズの百科事典を読破とは凄い。 「何かに熱中するとほかのことが目に入らなくなる傾向は、幼稚園児だったころから顕著だったようだ。 公園の池に浮かんだ足こぎのボートに乗ったときも、ほかの子は母親に手を振っていたのに、ベゾスは、ボートが動く仕組みを知ろうと、そちらに夢中で、母親のほうなど一顧だにしなかった・・・ベゾスは女性との出会いにさえ、「ウーマンフロー」(投資案件と出会う機会を表すディールフローに対して、女性との出会いの機会をそう呼んだ)を増やすという方法を実践していたという」、なるほど。 「人間の脳には、共感(empathy)を得意とするEタイプと、システム(system)思考を得意とするSタイプがあり、自閉症は極端なSタイプで、共感が極度に苦手であると考えた・・・システム思考を好み、ものごとを一つのルールや法則で理解したがる傾向は、グレーゾーンから健常レベルの人に至るまで、Sタイプに属する人たちの重要な特徴と言えるだろう」、なるほど。 岡田尊司氏による「ベゾスやマスクが社会性は低いのに成功した理由、注目の発達障害「グレーゾーン」」 ダイヤモンド・オンライン
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日本の構造問題(その30)(国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 日本など先進国を没落させる哲学なき政治家の罪、なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか)

日本の構造問題については、本年7月29日に取上げた。今日は、(その30)(国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 日本など先進国を没落させる哲学なき政治家の罪、なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか)である。

先ずは、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した哲学者・経済学者の的場 昭弘氏による「国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 日本など先進国を没落させる哲学なき政治家の罪」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/694294?display=b
・『2023年8月15日、また今年も終戦記念日がやってきた。戦後80年近くにもなろうとしている。もはや戦争を知る戦中世代のほとんどが鬼籍に入りつつある中で、形骸化した終戦記念日が伝統行事のように繰り返されている。 一方で豊かであったあの日本は風前の灯火で、日本の疲弊がはじまって久しい。それを衰退というか、堕落というか。表現はまちまちであろうが、いかに外見を繕ってみたところで、日本が今没落しつつあることは、残念ながらだれも否定できない事実である。 もちろん、これは日本だけに限らない。先進国といわれる国々は、どこも大同小異同じ運命を辿りつつあるのかもしれない』、興味深そうだ。
・『モンテスキューも嘆いた政治の堕落  2016年にフランスで、ニコラ・バベレという人の『ベナン人の手紙』という小説が出版された。その内容は2040年のフランスの話で、フランスは国家衰退の危機に瀕し、IMF(国際通貨基金)から派遣されたアフリカのベナン人が、その衰退したフランスの様子を妻に手紙で語るというものだ。 これは2040年という近未来の話で、その頃はアフリカの国々が勃興し、政治、経済、モラル、文化、あらゆる面で先進国となっていて、フランスは、すべての点で後進国になりさがっているというのである。 その冒頭に、フランスの哲学者であるモンテスキュー(1689~1755年)の『ペルシア人の手紙』(1721年)の154番目の手紙の一節が引用されている。その文章はこうである。 「君も御存じのように僕は長い間インドを歩きまわった。そのくにでは、私は一人の大臣の示した悪例のおかげで、生まれつき寛大な国民が一瞬のうちに最下級の国民から最上級の人たちまで堕落したのを実見に及んでいる。寛大、清廉、無邪気、信仰の徳が永年の間国民性となっていた国民が突然、最下等の国民になってしまった。つまり、弊風が伝搬し最も神聖な人たちさえそれに染まり、最も有徳の人が悪事を働き、ほかの連中もやっているとつまらぬ口実にかくれて、正義の第一原則を破って顧みなくなったのを私は見て来た」(『ペルシア人の手紙』大岩誠訳、岩波文庫下巻、200~201ページ)。 18世紀のモンテスキューも、フランス社会の危機を憂い、ペルシア人の名を借りて当時のフランス王政の堕落を批判したのである。一国の衰退は、政治の悪化で一気に進んでいくというのだ。政治の悪化が、国民のモラル低下を導き、だれもが悪徳の民となり、国は衰退の一途を辿るのである。) この後起こるフランス革命という嵐の中、フランスはその衰退を免れ、再び繁栄の基礎を築いたのだが、その代償はあまりにも大きなものであった。現在のフランスは、どうであろう。政治や経済の混迷とともに、あらゆるものが狂い始めている。今のところ、この衰退を救ってくれる白い騎士たるすぐれた政治家が現れていない。 そのフランスという西欧を範としてきた日本の衰退は、フランス以上に疲弊しているともいえる。政治のモラル低下や腐敗は、もはや事件として取り上げる気も起こらないほど頻繁化し、それとともに経済分野における日本の地盤沈下もとどまることを知らない。 その一方で、日本礼賛論が巷で横行し、国民は相変わらず経済成長日本の時代の夢から出ることができないでいる』、「政治のモラル低下や腐敗は、もはや事件として取り上げる気も起こらないほど頻繁化し、それとともに経済分野における日本の地盤沈下もとどまることを知らない」、なるほど。 「その一方で、日本礼賛論が巷で横行し、国民は相変わらず経済成長日本の時代の夢から出ることができないでいる」、嘆かわしい。
・『未来の世代を苦しめる国家の劣化  こうした衰退を、国家劣化ともいう。モンテスキューによれば、国家劣化は1人の悪徳政治家によって簡単に起こると述べているが、国家は人間と違い1つの世代で死に絶えるのではなく、その次の世代、またその次の世代とずっと受け継がれていくのであるから、ある世代による国家の衰退は次の世代の人々をずっと苦しめ続けるのである。 その意味で、ある世代のたった1人の政治家による悪行は、末代まで影響するといってよい。 ハーバード大学教授のニーアル・ファーガソンは『劣化国家』(櫻井祐子訳、東洋経済新報社、2013年)の中で、この世代間に継続される劣化した国家の問題を、やはり18世紀のイギリスの思想家エドマンド・バーク(1729~1797年)の『フランス革命についての省察』(1790年)の有名な言葉を使って、「世代間の協働事業(パートナーシップ)の崩壊」と述べている。 このバークの言葉とは、次のような言葉である。 「というのは国家は、ただひととき存在して滅んでいく(人間という)粗野な動物的存在だけに役立っているものではないからです。国家はすべての学問についての協働事業によって、すべての技芸についての協働事業によって、すべての徳とすべての完璧さについての協働事業によって作られるのです。こうした協働事業の目的は何世代続いても実現できないものなので、生きているひとびとだけが結ぶ協働事業ではすみません。それは生きているひとびととすでに死んだひとびととの間で、またこれから生まれてくるひとびとの間で結ばれる協働事業なのです」(エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』二木麻里訳、光文社古典新訳文庫165ページ。引用訳ではパートナーシップは協力協定となっているが、ここではあえて協働事業と訳しかえてある) なるほど、多額の赤字国債の発行や、国民の財産の多くを破壊する戦争などを、ある世代の政治家が気まぐれに行えば、そのツケは末代まで及ぶといってもよい。だからこそ、今のわれわれの世代だけに国家を劣化させる権利はないのである。すべての世代に豊かな世界をその後の世代に伝える義務が、すべての世代にあるのだ。 これと同じような趣旨のことを、日本を代表する経済学者の1人であった森嶋通夫(1923~2004年)も、『なぜ日本は没落するか』(岩波書店、1999年)と『なぜ日本は行き詰ったか』(同、2004年)という2つの書物で、われわれにすでに20年前に語ってくれていた。 森嶋は2004年に亡くなっているので、この2つの書物は彼のわれわれに残した遺書とも言うべきものである。戦中世代として、われわれ戦後世代に彼が伝えたかったことは、まさにこの「協働事業」という問題である。長い間イギリスで暮らしていた森嶋は、まさにバークの見解に似たことを述べている。 森嶋は、『なぜ日本は没落するか』の中で、2050年の日本を予想している。彼は当時の13歳から18歳の子供たちの様子を見て、50年後日本を背負っている彼らが日本をどう動かしているかという発想から、2050年の日本を予測しようというのだ。 国家は世代によって引き継がれていく。戦後は戦争を遂行した戦前世代が牽引し、そして戦中世代、戦後世代にバトンタッチしてきた。だから今の豊かさは前の世代の豊かさでの結果であり、今の世代は次の世代にその豊かさをバトンタッチしなければならない。こうして連綿と歴史は、世代間で引き継がれていく。 森嶋は、この戦後のバトンタッチこそ大きな問題点を含むものであったという。戦後アメリカによる教育改革は、戦前世代との断絶を生み出したと指摘する。アメリカによる急激なアメリカ流教育は、民主教育を非民主的な戦前、戦中世代が教えるというちぐはぐな問題を生み出した。 それによって戦後民主主義は形骸化し、また戦後世代はそれまであった日本の伝統的儒教的教育を受けられなかったことで、戦後世代はアジア的伝統とも断絶することになったという。戦後世代とは、私のような昭和20年代生まれの世代のことである。そして2050年を担う世代とは、その戦後世代の子供たちや孫の世代のことである』、「戦後アメリカによる教育改革は、戦前世代との断絶を生み出したと指摘する。アメリカによる急激なアメリカ流教育は、民主教育を非民主的な戦前、戦中世代が教えるというちぐはぐな問題を生み出した。 それによって戦後民主主義は形骸化し、また戦後世代はそれまであった日本の伝統的儒教的教育を受けられなかったことで、戦後世代はアジア的伝統とも断絶することになったという。戦後世代とは、私のような昭和20年代生まれの世代のことである。そして2050年を担う世代とは、その戦後世代の子供たちや孫の世代のことである」、なるほど。
・『国際的評価を得られない「哲学なき政治家」  菅義偉、安倍晋三、岸田文雄といった政治家はすべて戦後世代である。この戦後世代に欠けているものを、森嶋はエリート意識の欠如、または精神の崩壊といっている。価値判断をもたない無機的な人々を生み出したのは、この戦後の中途半端な教育にあったと述べているが、あながち間違いではない。それが顕著に現れるのは政治という舞台の上である。 政治家は国を代表し、対外折衝をするがゆえに、自ずと国際的評価の対象となる。しかし、日本の政治家の中にそうした国際的評価を得るレベルの政治家が少ないのも、事実である。 私はこうした政治家を「哲学なき政治家」と呼ぶ。森嶋は、政治、産業、教育、金融あらゆる部門にわたって、日本の荒廃を分析しているが、政治家の様子を見ただけでも、日本の荒廃のおよその検討はつく。 冒頭のモンテスキューの言葉が示す通り、1人の悪徳政治家が存在したおかげで、それまで続いた豊かな国家もたちどころに疲弊していったとすれば、そうした政治家にあふれている日本に豊かな未来はないであろう。森嶋は、こう結論づけている。 これは重い言葉だ。森嶋は教育者であり、こうした悲惨な未来を避けるために教育改革を盛んに訴えているが、それには私も賛成だ。 「政治が悪いから国民が無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままでおれるのだ。こういう状態は、今後50年は確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら、日本の没落である。政治が貧困であるということは、日本経済が経済外的利益を受けないと言うことである。それでも「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り狂うしか慰めがないとしたら、私たちの子供や孫や曾孫があまりにも可哀想だ」(『なぜ日本は没落するか』岩波現代文庫、146ページ)。 偏差値型ロボット教育(受験勉強)と価値判断を欠いた無機的教育(問題意識の欠落)を一刻もはやくなくさねばなるまい。とりわけ海外、欧米偏重ではないアジアとの交流をにらんだ教育体系の確立であろう。日本はアジアから孤立しているばかりではない。憧れている西欧からも利用しやすい愚かなアジアの国としてしか、相手にされていないのだ。 今後世界の中心となるアジア・アフリカの中で活路を見いださねば、未来はないであろう。次の世代のために今こそ立ち上がるべきときである』、「森嶋は、政治、産業、教育、金融あらゆる部門にわたって、日本の荒廃を分析しているが、政治家の様子を見ただけでも、日本の荒廃のおよその検討はつく・・・森嶋は、こう結論づけている。 これは重い言葉だ。森嶋は教育者であり、こうした悲惨な未来を避けるために教育改革を盛んに訴えているが、それには私も賛成だ。 「政治が悪いから国民が無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままでおれるのだ。こういう状態は、今後50年は確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら、日本の没落である。政治が貧困であるということは、日本経済が経済外的利益を受けないと言うことである。それでも「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り狂うしか慰めがないとしたら、私たちの子供や孫や曾孫があまりにも可哀想だ」、「日本はアジアから孤立しているばかりではない。憧れている西欧からも利用しやすい愚かなアジアの国としてしか、相手にされていないのだ。 今後世界の中心となるアジア・アフリカの中で活路を見いださねば、未来はないであろう。次の世代のために今こそ立ち上がるべきときである」、なるほど。

次に、9月30日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/705360
・『経済学者と政治家は、いつからこんなにバカになってしまったのだろうか。それは、世界的にも第2次世界大戦後、徐々に進んでいる現象だ。日本ではとくに、高度経済成長が終わり、1980年代のバブルで加速化し、アベノミクスによって決定的に壊滅した』、興味深そうだ。
・『バブルにまったくこりていない世界と日本  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら 今回は日本に関しての議論が中心になるが、世界でも同じである。 アメリカでは、2000年には「ITの発達で景気循環がなくなり、リスクが低いニューエコノミーとなって、株価は新たな高みに行く」といわれた瞬間にITバブル(テックバブル)が崩壊し、さらに2001年のエンロン事件、同時多発テロによって、株価も経済も混乱、低迷した。 それにもかかわらず、バブルにまったくこりずに、1930年代の大恐慌の経験をねじ曲げて解釈し、「悪かったのは中央銀行が金融を早く引き締めすぎたからだ。バブルは潰してはいけない。崩壊してから、その後の混乱を大規模金融緩和で処理すればよい」という「FED VIEW」(中央銀行の見解)なるものが確立していた。 だが、2008年のリーマンショックで、それはまったくの間違いであることが判明した。つまり、100年かけて「進歩ゼロ」だった。 さらに、1990年代から2000年にかけては、日本が先進国では珍しいデフレに陥り、ゼロ金利に追い込まれ、苦肉の策として量的緩和なるものが発明された。このときも「ジャパナイゼーション」と呼んで、日本と日本銀行をバカにし、「俺たちはそんな間抜けなことはしないもんね、デフレもゼロ金利にもならないようにちゃんとするから」と言っていた。) だが、リーマンショック後、欧米諸国はみなゼロ金利で量的緩和を行い、欧州に至ってはマイナス金利幅を拡大していった。日本の経験からも学ばず、量的緩和をQEと呼んでバカにしていたが、FEDも結局QE3と呼ばれたように、3回も量的緩和を実施する羽目になった。 この経験によって「21世紀はデフレの時代だ。もはやインフレは問題となりようがないから、インフレターゲットなどを2%よりも高くして、3~4%に目標を引き上げて、21世紀の長期停滞に対処すべき」とまじめに議論した瞬間に、コロナ危機となった。 終わってみると、とてつもないインフレが加速し、ゼロ金利から一気に5%以上まで金利を引き上げるという大不始末をしでかした。しかも、インフレが急速に高まってから1年以上も放置して「これは一時的だから心配ない」と言い続けたあとに、「インフレ抑制が最優先、景気がどうなろうとまずインフレを抑え込むことが必要だ。インフレ抑制こそが中央銀行の最大の使命」などと、1年前とは180度違うことを声高に叫ぶという、とてつもない恥辱の政策転換を行った』、「バブルは潰してはいけない。崩壊してから、その後の混乱を大規模金融緩和で処理すればよい」という「FED VIEW」・・・なるものが確立していた。 だが、2008年のリーマンショックで、それはまったくの間違いであることが判明」、「1990年代から2000年にかけては、日本が先進国では珍しいデフレに陥り、ゼロ金利に追い込まれ、苦肉の策として量的緩和なるものが発明された。このときも「ジャパナイゼーション」と呼んで、日本と日本銀行をバカにし、「俺たちはそんな間抜けなことはしないもんね、デフレもゼロ金利にもならないようにちゃんとするから」と言っていた。) だが、リーマンショック後、欧米諸国はみなゼロ金利で量的緩和を行い、欧州に至ってはマイナス金利幅を拡大していった。日本の経験からも学ばず、量的緩和をQEと呼んでバカにしていたが、FEDも結局QE3と呼ばれたように、3回も量的緩和を実施する羽目になった」、節操のなさもここまでくると目も当てられない。
・『経済学はいまだ未熟な学問  なぜ、こんなに間違ってしまったのか。要は、経済学には、いまだに経済が全体のシステムとしてどうなっているかがわかっていないからだ。 それなのに、1968年にノーベル賞に経済学が追加され、実力以上に世の中で偉くなってしまい、また自分たちも偉いと思ってしまったからである。さらに、1970年代からは合理的期待仮説旋風が吹き荒れ、経済主体が合理的に将来を予想しているとされてしまった。この数学的モデル化が便利な魔法のツールを武器に、経済学は数学的モデルと統計的にテクニカルな実証分析の学問となってしまった。 少なくとも第2次大戦前までは、どの経済学者も自分自身の経済システムへの見方があり、「リカード体系」「ワルラス体系」「ケインズ体系」などがあった。だが、こうした体系への理解も情熱も1970年以降は失われ、モデルの数学的精緻化、統計的な有意性の検証に明け暮れてしまった。 また、経済学が偉くなったことにより、業績争いが加速し、その結果、論文による業績競争となり、これを公平に評価するという名の下に、細部の厳密性を執拗にほじくり返されるために、経済学の論文はすべて部分的な限定的な非常に狭いトピックをそれぞれ検証するようになった。 とりわけミクロ経済学系統では、ヴィジョン(全体像の把握や展望)がまったく失われてしまった。一方、世間の人々や政治家たちは経済学への期待を高め(あるいはそうしたふりをして)、「著名な経済学者のお墨付きをもらった」などと言って自分たちの望ましい政策の正当性を主張するようになった。ここに、世論も政治家も、経済学の中身を理解しないまま悪用を、たとえ無意識にせよ、行うようになってしまった。 経済学者は、「手元にある道具」をより研ぎ澄まして、細分化によって、より適する鋭利な刃物を仕上げていったが、全体像を把握するのとは逆方向にどんどん進んでいった。21世紀になると、この傾向は加速度的に強まり、経済も経済学も世の中も、ただ混乱してきているのである。) 日本は、さらにひどい。1980年代のバブル期には「日本の不動産価格、株価はバブルではない」ということを、無理やり経済理論モデルで説明しようとしていた。流通などの非効率性も、長期的な関係を、ゲーム理論などを用いながら必死に「つじつまが合う」と主張してきた』、「経済学者は、「手元にある道具」をより研ぎ澄まして、細分化によって、より適する鋭利な刃物を仕上げていったが、全体像を把握するのとは逆方向にどんどん進んでいった。21世紀になると、この傾向は加速度的に強まり、経済も経済学も世の中も、ただ混乱してきているのである。) 日本は、さらにひどい。1980年代のバブル期には「日本の不動産価格、株価はバブルではない」ということを、無理やり経済理論モデルで説明しようとしていた」、なるほど。
・『日本の混迷を決定づけたのは「リフレ派」  結局、これらは1990年代末から膨大なコストをかけて処理していくことになった。21世紀になると、日本の経済停滞を、アメリカのポール・クルーグマン氏(現ニューヨーク市立大学大学院センター教授)が、日本の現実をまったく知らないままに(知ろうともせずに)たまたま思いついた「トイモデル」(おもちゃのような理論モデル)で自慢げに分析してみせた。 アメリカの有名経済学者についていくことが最も進んだ経済学者の証しだと思い込んでいる同国コンプレックスの多くのマクロ経済学者は、これを絶賛し、日本政府の政策を責めたてた。 政治家も世論も自分では何も確かめようともせずに、有名経済学者の話を鵜呑みにし、現在でも、そのときの常識がそのまま残ってしまって、それを土台に議論が行われている。 日本の経済問題の核心は、人口減少や地方の衰退などの構造的な問題であることは明らかなのに、すべてはデフレ、緩やかな価格下落、あるいは価格が上がらないこと、つまりインフレにならないことが諸悪の根源とされた。いまだに、日本国中を挙げて、これをなんとか変えようとしている。 日本でも、前述のアメリカの経済学の混迷と同じ構造が根底にはあるが、この経済学と政治による経済政策の大混乱を決定づけたのは、アベノミクスであり、その元はリフレ派という謎の理論であった。 これは拙著『リフレはヤバい』でも解説したのだが、日本では世論も政治家も皆ぐうたらで、めんどくさがりである。したがって「日本経済はもう終わりだ」などと悲壮な叫びを上げながら、これを解決するために一発大逆転を望むのだ。 難しい議論はいやなので、単純な1つの理屈で一挙にすべてを解決する政策しか望まれないのである。この「一挙解決願望症候群」が政治家も世論をも覆っており、まじめに丁寧に問題を解きほぐす論者や理論は政策マーケットから駆逐される(というより無視される)。「これが問題だから、これをぶっ壊せばすべて解決」という主張しか生き残らなかったのである。) 政治家が好きな「ガラガラポン」というふざけた言葉が国会の論戦でも頻出し、「もうガラガラポンするしかない」とまじめ腐った顔で語り、すぐに平成維新とか、ゼロクリアの革命を求める議論やネーミングが流行るのである。 「すべて財務省が悪い」というのが昭和や平成の前半に使われた論理だが、平成の後半と令和においては、スケープゴート(贖罪の山羊)は日本銀行となっている。そして、リフレ派は「インフレになれば、すべての停滞が一気に解決する」と主張し、そのためには「ただマネーをばらまけばよい」と主張したのである。 政治的には「デフレ脱却」「デフレマインド脱却」がキラーフレーズ(殺し文句)となり、とにかくインフレにすればすべてが解決するということになってしまった。そして、こともあろうに、日銀自身までが「悲願の物価上昇率2%達成が目前」とまで言い出す始末となっている。 つまり、似非(えせ)エコノミストだけでなく、まともなマクロ経済学者、マクロ金融学者、日銀エコノミストまでが、物価上昇がすべてという議論にはまってしまっているのである』、「21世紀になると、日本の経済停滞を、アメリカのポール・クルーグマン氏・・・が、日本の現実をまったく知らないままに(知ろうともせずに)たまたま思いついた「トイモデル」・・・で自慢げに分析してみせた。 アメリカの有名経済学者についていくことが最も進んだ経済学者の証しだと思い込んでいる同国コンプレックスの多くのマクロ経済学者は、これを絶賛し、日本政府の政策を責めたてた。 政治家も世論も自分では何も確かめようともせずに、有名経済学者の話を鵜呑みにし、現在でも、そのときの常識がそのまま残ってしまって、それを土台に議論が行われている。 日本の経済問題の核心は、人口減少や地方の衰退などの構造的な問題であることは明らかなのに、すべてはデフレ、緩やかな価格下落、あるいは価格が上がらないこと、つまりインフレにならないことが諸悪の根源とされた。いまだに、日本国中を挙げて、これをなんとか変えようとしている・・・リフレ派は「インフレになれば、すべての停滞が一気に解決する」と主張し、そのためには「ただマネーをばらまけばよい」と主張したのである。 政治的には「デフレ脱却」「デフレマインド脱却」がキラーフレーズ(殺し文句)となり、とにかくインフレにすればすべてが解決するということになってしまった。そして、こともあろうに、日銀自身までが「悲願の物価上昇率2%達成が目前」とまで言い出す始末となっている。 つまり、似非(えせ)エコノミストだけでなく、まともなマクロ経済学者、マクロ金融学者、日銀エコノミストまでが、物価上昇がすべてという議論にはまってしまっているのである」、なるほど。
・『「証拠に基づく政策立案」による改善効果は?  一方、ミクロの経済学者はどうしていたのか。彼らは、この乱暴な「政策マーケット」の議論に腹を立て、エビデンスベースの政策決定を声高に主張した。EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)というやつである。この結果、今度は「詳細なミクロデータがある政策だけが正しい」という風潮が高まった。 その結果、どうなったか。昔から繰り返し行われている政策については、多少の改善が見られた。エビデンスなしに、なんとなくイメージで効果があると思われていた政策の一部が「効果が薄い」として縮小していったのである。 これ自体はすばらしいことである。しかし、それは政策全体の1%未満の領域での改善にすぎない。なぜなら、多くの政策は、効果があるかどうかではなく、政治家あるいは利害関係者がやりたい政策を行っているだけであるから「効果が薄い」といわれても、意に介さない。「マイナスではない」「これで助かっている国民が1人でもいる以上、廃止するわけにいかない」という論理で、多くの予算が割かれているものについては何の改善も見られなかった。) しかし、本当の害悪は、まじめなミクロ経済学者たちがその視野の狭さにより、自分の領域におけるエビデンス立証だけに夢中になり、世の中全体で起きている最も重要なイシュー(課題や論点)を無視してしまったということである』、「本当の害悪は、まじめなミクロ経済学者たちがその視野の狭さにより、自分の領域におけるエビデンス立証だけに夢中になり、世の中全体で起きている最も重要なイシュー(課題や論点)を無視してしまったということである」、なるほど。
・『「常識による政策の不在」で日本は静かに衰退し続ける  世の中で最も重要なことは、今までにない問題が起きたとき、どう解決するかである。現在の経済は変化も激しいし、複雑で、次から次へと今までに経験しなかった問題が起こる。これに対処するのにも、エビデンスの有無、学問的、実証分析的論拠を求めたため、自ら発言する力を失ってしまったのである。 未体験ゾーンには、エビデンスなど原理的に存在しない。そこにどうやって立ち向かうか。丁寧で視野の広い観察を先入観なく行い、それに論理と常識を当てはめることで、何とか道を見出すという努力が必要なのに、その努力さえも行わなくなってしまったのである。 つまり、前出の政治家や世論の乱暴な一挙解決願望、具体的に言えば、コロナ対策やインフレ対策の給付金などである。これらも丁寧な仕組みの構築と手間を惜しんで、「とにかくパッーと一気にばらまくしかないだろう」という議論をしてしまう。 こうした乱暴な議論と、その一方で、これまた極端な詳細なエビデンスを求める、まじめな視野の狭い学者先生たち。この極端な二極化により、常識による政策が不在になってしまったのである。この結果、思考停止となり、政治家も経済学者も阿呆にしか見えない行動をとり続け、日本の経済は政策無策で、静かに衰退し続けているのである。) では最後に、私が常識による政策を提示しよう。 まず、インフレ。インフレになれば、手持ちの貯金、給料の価値は目減りする。だから、消費を控え、節約するしかない。悪いのはインフレである。物価が上がらないのは、むしろ生活者にとって望ましいことである。 デフレスパイラルという、物の値段が際限なく下落していく世界は恐怖である。だが、大恐慌のときと違って、今は街に失業者もあふれていないし、物価は上がらなかっただけで、暴落したわけではないのだ』、「悪いのはインフレである。物価が上がらないのは、むしろ生活者にとって望ましいことである。 デフレスパイラルという、物の値段が際限なく下落していく世界は恐怖である。だが、大恐慌のときと違って、今は街に失業者もあふれていないし、物価は上がらなかっただけで、暴落したわけではないのだ」、その通りだ。
・『円安を止めれば、ほとんどの問題は解決する  では、円安はどうか。海外旅行に行けない。海外の投資家に大事な土地も企業も人材も買い尽くされて奪われてしまう。しかも、日本は貧しくなる。 韓国よりも所得が低いのは、円安だけのせいだ。そして、現在起きているインフレも、半分以上は円安が原因だ。だから、過度な円安を解決し、妥当といわれる1ドル=90円前後まで円が戻れば、ほとんどの問題は解決してしまう。 景気はどうか。日本の景気はよい。デフレギャップすら存在しない(そもそもデフレギャップは、つねに存在する方向にバイアスがかかっているデータである)。失業率はきわめて低い。誰もが、人手不足で困っている。鹿児島でも、青森でも、大都市だけでなく、日本中で働き手が消えている。 景気は問題でない。景気対策は一切要らない。需要も消費も喚起する必要はない。問題は実質所得の目減りであり、それは円安を止めれば、インフレも軽減され、問題は解決する。 物価と賃金の好循環はどうか。そういうものは存在しない。世界中の経済の歴史において、物価主導で賃金がそれを上回って上昇し、経済がよくなったことは一度もない。ありえない。いちばんよくてスタグフレーション(景気低迷下の物価上昇)である。 そもそも勤労所得のない消費者が、日本国民の半分である。物価が上がれば、国民全員が困る。賃金は転職などにより交渉により企業からもぎ取るものである。インフレが賃金上昇をもたらす理由は、交渉なしでは1つもない。インフレだから、という交渉材料がふえるだけのことだ。) もちろん、ただでさえ原料高に苦しんでいる企業は、賃金を上げるとさらにコスト高になる。だから、物価上昇率以上の賃金上昇が経済全体で起こる理由はゼロである。逆だ。必ず、実質賃金は下落する』、「景気は問題でない。景気対策は一切要らない。需要も消費も喚起する必要はない。問題は実質所得の目減りであり、それは円安を止めれば、インフレも軽減され、問題は解決する。 物価と賃金の好循環はどうか。そういうものは存在しない。世界中の経済の歴史において、物価主導で賃金がそれを上回って上昇し、経済がよくなったことは一度もない」、なるほど。
・『インフレを抑制、実質賃金を上げるには?  実際、現在の日本は、インフレが始まってから、実質賃金は16カ月連続で下落し、下落幅は拡大している。実質賃金を上昇するためには、インフレをなくすしかない。そのうえで生産性を上げることが個々の労働者にできれば、賃金は上がる。だから、インフレを止めること、物価を下げることが実質賃金上昇への唯一の道なのである。 現実世界を見れば一目瞭然だが、アメリカ、さらに悪いのは欧州である。中でも英国は、物価上昇からの賃金上昇は最悪の悪循環で、これを断ち切るために死に物狂いになっている。もちろん賃金はどこでも物価に追いつかないし、好循環だという人はひとりもいない。それどころか、最強の悪循環だという認識を全員がもっている。 最後に日銀の金融政策はどうか。マイナス金利終了、イールドカーブコントロール(長短金利操作)終了。この2つを直ちに行うべきだ。 円安の原因の1つは日銀の異常な緩和策による。だから、やめるべきだ。だが、「金融政策は為替に影響を与えてはいけない、だから円安を理由に政策変更すべきでない」と、大真面目に言う優秀な経済学者がいる。 わかっていない。現実を見よ。日銀の金融政策があまりに異常であるため円安が起きているのであり、金融政策が為替市場を歪めているのである。それこそ中央銀行が最もやってはいけないことだ。中央銀行の金融政策が為替を歪めていれば、それを普通に戻すのは当然どころか、義務だ。 まあ、きりがないので、これでやめておこう。(本編はここで終了です。このあとは競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースの予想をするコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「インフレを止めること、物価を下げることが実質賃金上昇への唯一の道なのである。 現実世界を見れば一目瞭然だが、アメリカ、さらに悪いのは欧州である。中でも英国は、物価上昇からの賃金上昇は最悪の悪循環で、これを断ち切るために死に物狂いになっている。もちろん賃金はどこでも物価に追いつかないし、好循環だという人はひとりもいない。それどころか、最強の悪循環だという認識を全員がもっている・・・最後に日銀の金融政策はどうか。マイナス金利終了、イールドカーブコントロール(長短金利操作)終了。この2つを直ちに行うべきだ。 円安の原因の1つは日銀の異常な緩和策による。だから、やめるべきだ。だが、「金融政策は為替に影響を与えてはいけない、だから円安を理由に政策変更すべきでない」と、大真面目に言う優秀な経済学者がいる。 わかっていない。現実を見よ。日銀の金融政策があまりに異常であるため円安が起きているのであり、金融政策が為替市場を歪めているのである。それこそ中央銀行が最もやってはいけないことだ。中央銀行の金融政策が為替を歪めていれば、それを普通に戻すのは当然どころか、義務だ」、植田総裁のYCCの一層の弾力化は市場を失望させたようだ。もっと踏み込んだ手直しが求められているようだ。
タグ:小幡 績氏による「なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか」 今後世界の中心となるアジア・アフリカの中で活路を見いださねば、未来はないであろう。次の世代のために今こそ立ち上がるべきときである」、なるほど。 こういう状態は、今後50年は確実に続くであろう。そのことから私たちが引き出さねばならない結論は、残念ながら、日本の没落である。政治が貧困であるということは、日本経済が経済外的利益を受けないと言うことである。それでも「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り狂うしか慰めがないとしたら、私たちの子供や孫や曾孫があまりにも可哀想だ」、「日本はアジアから孤立しているばかりではない。憧れている西欧からも利用しやすい愚かなアジアの国としてしか、相手にされていないのだ。 「森嶋は、政治、産業、教育、金融あらゆる部門にわたって、日本の荒廃を分析しているが、政治家の様子を見ただけでも、日本の荒廃のおよその検討はつく・・・森嶋は、こう結論づけている。 これは重い言葉だ。森嶋は教育者であり、こうした悲惨な未来を避けるために教育改革を盛んに訴えているが、それには私も賛成だ。 「政治が悪いから国民が無気力であり、国民が無気力だから政治は悪いままでおれるのだ。 戦後世代とは、私のような昭和20年代生まれの世代のことである。そして2050年を担う世代とは、その戦後世代の子供たちや孫の世代のことである」、なるほど。 「戦後アメリカによる教育改革は、戦前世代との断絶を生み出したと指摘する。アメリカによる急激なアメリカ流教育は、民主教育を非民主的な戦前、戦中世代が教えるというちぐはぐな問題を生み出した。 それによって戦後民主主義は形骸化し、また戦後世代はそれまであった日本の伝統的儒教的教育を受けられなかったことで、戦後世代はアジア的伝統とも断絶することになったという。 「政治のモラル低下や腐敗は、もはや事件として取り上げる気も起こらないほど頻繁化し、それとともに経済分野における日本の地盤沈下もとどまることを知らない」、なるほど。 「その一方で、日本礼賛論が巷で横行し、国民は相変わらず経済成長日本の時代の夢から出ることができないでいる」、嘆かわしい。 的場 昭弘氏による「国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 日本など先進国を没落させる哲学なき政治家の罪」 東洋経済オンライン (その30)(国家の劣化はたった1人の政治家が引き起こす 日本など先進国を没落させる哲学なき政治家の罪、なぜ経済学者も政治家もバカになったのか? 今、日本に本当に必要な経済政策とは何なのか) 日本の構造問題 「バブルは潰してはいけない。崩壊してから、その後の混乱を大規模金融緩和で処理すればよい」という「FED VIEW」・・・なるものが確立していた。 だが、2008年のリーマンショックで、それはまったくの間違いであることが判明」、「1990年代から2000年にかけては、日本が先進国では珍しいデフレに陥り、ゼロ金利に追い込まれ、苦肉の策として量的緩和なるものが発明された。 このときも「ジャパナイゼーション」と呼んで、日本と日本銀行をバカにし、「俺たちはそんな間抜けなことはしないもんね、デフレもゼロ金利にもならないようにちゃんとするから」と言っていた。) だが、リーマンショック後、欧米諸国はみなゼロ金利で量的緩和を行い、欧州に至ってはマイナス金利幅を拡大していった。日本の経験からも学ばず、量的緩和をQEと呼んでバカにしていたが、FEDも結局QE3と呼ばれたように、3回も量的緩和を実施する羽目になった」、節操のなさもここまでくると目も当てられない。 「経済学者は、「手元にある道具」をより研ぎ澄まして、細分化によって、より適する鋭利な刃物を仕上げていったが、全体像を把握するのとは逆方向にどんどん進んでいった。21世紀になると、この傾向は加速度的に強まり、経済も経済学も世の中も、ただ混乱してきているのである。) 日本は、さらにひどい。1980年代のバブル期には「日本の不動産価格、株価はバブルではない」ということを、無理やり経済理論モデルで説明しようとしていた」、なるほど。 「21世紀になると、日本の経済停滞を、アメリカのポール・クルーグマン氏・・・が、日本の現実をまったく知らないままに(知ろうともせずに)たまたま思いついた「トイモデル」・・・で自慢げに分析してみせた。 アメリカの有名経済学者についていくことが最も進んだ経済学者の証しだと思い込んでいる同国コンプレックスの多くのマクロ経済学者は、これを絶賛し、日本政府の政策を責めたてた。 政治家も世論も自分では何も確かめようともせずに、有名経済学者の話を鵜呑みにし、現在でも、そのときの常識がそのまま残ってしまって、それを土台に議論が行われている。 日本の経済問題の核心は、人口減少や地方の衰退などの構造的な問題であることは明らかなのに、すべてはデフレ、緩やかな価格下落、あるいは価格が上がらないこと、つまりインフレにならないことが諸悪の根源とされた。いまだに、日本国中を挙げて、これをなんとか変えようとしている ・・・リフレ派は「インフレになれば、すべての停滞が一気に解決する」と主張し、そのためには「ただマネーをばらまけばよい」と主張したのである。 政治的には「デフレ脱却」「デフレマインド脱却」がキラーフレーズ(殺し文句)となり、とにかくインフレにすればすべてが解決するということになってしまった。そして、こともあろうに、日銀自身までが「悲願の物価上昇率2%達成が目前」とまで言い出す始末となっている。 つまり、似非(えせ)エコノミストだけでなく、まともなマクロ経済学者、マクロ金融学者、日銀エコノミストまでが、物価上 昇がすべてという議論にはまってしまっているのである」、なるほど。 「本当の害悪は、まじめなミクロ経済学者たちがその視野の狭さにより、自分の領域におけるエビデンス立証だけに夢中になり、世の中全体で起きている最も重要なイシュー(課題や論点)を無視してしまったということである」、なるほど。 「悪いのはインフレである。物価が上がらないのは、むしろ生活者にとって望ましいことである。 デフレスパイラルという、物の値段が際限なく下落していく世界は恐怖である。だが、大恐慌のときと違って、今は街に失業者もあふれていないし、物価は上がらなかっただけで、暴落したわけではないのだ」、その通りだ。 「景気は問題でない。景気対策は一切要らない。需要も消費も喚起する必要はない。問題は実質所得の目減りであり、それは円安を止めれば、インフレも軽減され、問題は解決する。 物価と賃金の好循環はどうか。そういうものは存在しない。世界中の経済の歴史において、物価主導で賃金がそれを上回って上昇し、経済がよくなったことは一度もない」、なるほど。 「インフレを止めること、物価を下げることが実質賃金上昇への唯一の道なのである。 現実世界を見れば一目瞭然だが、アメリカ、さらに悪いのは欧州である。中でも英国は、物価上昇からの賃金上昇は最悪の悪循環で、これを断ち切るために死に物狂いになっている。もちろん賃金はどこでも物価に追いつかないし、好循環だという人はひとりもいない。それどころか、最強の悪循環だという認識を全員がもっている ・・・最後に日銀の金融政策はどうか。マイナス金利終了、イールドカーブコントロール(長短金利操作)終了。この2つを直ちに行うべきだ。 円安の原因の1つは日銀の異常な緩和策による。だから、やめるべきだ。だが、「金融政策は為替に影響を与えてはいけない、だから円安を理由に政策変更すべきでない」と、大真面目に言う優秀な経済学者がいる。 わかっていない。現実を見よ。日銀の金融政策があまりに異常であるため円安が起きているのであり、金融政策が為替市場を歪めているのである。それこそ中央銀行が最もやってはいけないことだ。中央 銀行の金融政策が為替を歪めていれば、それを普通に戻すのは当然どころか、義務だ」、植田総裁のYCCの一層の弾力化は市場を失望させたようだ。もっと踏み込んだ手直しが求められているようだ。
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キシダノミクス(その10)(岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか、上がり続ける日本の物価 政府は減税策の前に金利上昇のリスクに備えよ、「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 乾坤一擲の年末解散総選挙のはずが相次ぐ醜聞で岸田降ろしに) [国内政治]

キシダノミクスについては、10月17日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか、上がり続ける日本の物価 政府は減税策の前に金利上昇のリスクに備えよ、「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 乾坤一擲の年末解散総選挙のはずが相次ぐ醜聞で岸田降ろしに)である。

先ずは、10月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330773
・『岸田文雄首相が「増税メガネ」というあだ名で呼ばれているのを記事やSNSで見かける機会が増えてきた。岸田首相本人がまだ増税したわけではないのに、なぜ「増税」をあだ名にされるのか。そして、愛情やユーモアが一切感じられない冷たい印象を与える「メガネ」と、なぜ組み合わさったのか。「単なる悪意」とは片付けられない、実は考えてみる価値があるテーマなので、ぜひお付き合いいただきたい』、興味深そうだ。
・『「増税メガネ」で定着? あだ名の功罪  主にネット界隈でだが、岸田文雄首相のあだ名が「増税メガネ」で定着しそうだ。そして、ご本人はこのことを大変気にしているらしいと風の噂に聞く。 これをどう考えたらいいのか? なぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか? 岸田首相側に対策はあるのか? まず、あだ名があることについては少しだけポジティブな面がある。あだ名が付くほどの在任期間が経過したということだ。時代の近い首相歴任者では、菅義偉前首相や、麻生太郎元首相は、あだ名を付けやすい風貌をしていたように思うのだが、在任中に明確なあだ名が付かなかった。この点、岸田首相は、もう少し長持ちしているので、あだ名を付けてもらえた。 しかし、前々任の故安倍晋三首相は、在任期間が大変長かったにもかかわらず、あだ名が付かなかった。それなりに個性的な人相でエピソードも豊富だったが、あだ名を付ける側から見たポイントを絞らせなかった。妙なところで、さすがだ。 この点、ネット民から見て岸田首相の個性は絞り込みやすいのだろう。「増税したがっている人」という以外に注目すべき特色がないからだ。) だが、「増税メガネ」というあだ名はいささか特異だ。本人の容姿風体や行動の特徴ではなく、メガネが注目されて、あだ名となっている。 今や、政治家であっても他人の容姿を論じること自体が問題視される可能性があるが、思い切って容姿を論じるなら、岸田首相は大きな欠点のない端整な顔立ちだ。背が高いし、太ってもいない。国際会議などでの写真映りは悪くない。顔や身体にあだ名にしやすい特徴がないから、メガネが注目されたと考えることはできる。 だが、愛情やユーモアが一切感じられない、驚くほど冷たい印象のあだ名だ。 例えば、電車の中で、見知らぬ同士の2人の一方が他方に、いきなり「おい、そこのメガネ」と声を掛けたとしよう。かなり険悪な雰囲気になるだろう。声を掛けられた側は、人格を一切無視して雑に扱われたという気持ちになるからだ。 岸田首相が「メガネ」と呼ばれることに対して、自分は少なくとも愛されていないし、人間として雑に扱われていると感じて心が痛んでいるのだとすると、それは正常な反応だ』、「故安倍晋三首相は、在任期間が大変長かったにもかかわらず、あだ名が付かなかった。それなりに個性的な人相でエピソードも豊富だったが、あだ名を付ける側から見たポイントを絞らせなかった」、「ネット民から見て岸田首相の個性は絞り込みやすいのだろう。「増税したがっている人」という以外に注目すべき特色がないからだ。) だが、「増税メガネ」というあだ名はいささか特異だ。本人の容姿風体や行動の特徴ではなく、メガネが注目されて、あだ名となっている・・・顔や身体にあだ名にしやすい特徴がないから、メガネが注目されたと考えることはできる。 だが、愛情やユーモアが一切感じられない、驚くほど冷たい印象のあだ名だ」、なるほど。
・『まだ実行していないのになぜ「増税」が見透かされるか  しかも、「増税メガネ」というあだ名の特異な点は、岸田首相本人がまだ増税を行ったわけではないのに、「どうせ増税したいのだろう」と見透かして確信したかのように「増税」をあだ名にされていることだ。 これは、かなり悪意のこもったあだ名の付け方だともいえるが、まだやっていないことにこれだけ焦点を絞られるのはなぜかを考える価値がある。 話は、前々回の自由民主党の総裁選挙、前回の総裁選、そして岸田氏の首相就任直後にさかのぼる。 当時の安倍首相からの禅譲期待が外れて菅義偉氏に敗れた前々回の総裁選で、岸田氏はいわゆるアベノミクスに対して批判的だったし、財政再建を強調した。また、前回の総裁選では、安倍派の支持を得るためにリフレ政策に反する緊縮財政的な主張を封印したが、総裁の椅子を争った河野太郎、高市早苗の両氏と比較すると財政再建論寄りの印象は否めなかった。) また、小さいが独自の主張として特色を出そうとした「再分配」の重視にあって、「1億円の壁」問題を引きながら、手段として金融所得課税の強化を打ち出した。 金融所得課税の強化は、株式などへの投資の所得に対する増税なので、特に株式市場関係者に嫌われた。長く続く大きな下げにはならなかったが、岸田氏の首相就任後に株価が一時的に下落する「岸田ショック」と呼ばれる局面が出現した。 2018年のつみたてNISA(少額投資非課税制度)のスタートなどを期に増えた若い年齢層の投資家は、岸田首相が投資や株式市場に対して好意的でない印象を持った。彼らの何パーセントかを敵に回したことは、今回のあだ名に対しても影響力を持っているように思う。 また、金融所得課税強化は、それ自体が大いに疑問のある政策だし、「1億円の壁」の対象者はたいした人数でもないのだが、このアイデアは増税の実現を手柄と考える「増税マニア」たちの間に根強く存在したものだ。岸田氏はその代弁に利用された格好に見えた。 こうした一連の流れから、岸田氏は「財政再建派である」「財務省の影響下にある」「増税勢力に簡単に利用される男だ」といった印象がもともと浸透していた。 一方、考えてみるに、これまで実際にやったことは、規模と自由度の両面で投資を税制面で大いに優遇する新NISAであったことを思うと、いささかかわいそうな面がある。しかも、画像をよく見ると彼のメガネはフレームの細いメガネとしての主張が強くないデザインのものではないか。 しかし、彼の「底意」を多くの人が増税の実現だと思っており、岸田氏は「増税したがっている男」だとのレッテル貼りが違和感なく通用している。大衆はよく人を見ている』、「岸田氏は「財政再建派である」「財務省の影響下にある」「増税勢力に簡単に利用される男だ」といった印象がもともと浸透していた・・・彼の「底意」を多くの人が増税の実現だと思っており、岸田氏は「増税したがっている男」だとのレッテル貼りが違和感なく通用している。大衆はよく人を見ている」、なるほど。 
・防衛費、少子化対策 続けざまの財源議論が決定打  政権の樹立以来これまでの推移をたどると、「岸田首相は、増税を考えている」と多くの人が推測するような政策論議が二つあった。 一つには、防衛費の対国内総生産(GDP)比を2%に引き上げる方針を短期間に決めた一連の動きだ。) 率直に言って米国追従を前のめりでやり過ぎて、カードを早く切り過ぎたように見えたが、ウクライナで戦争が始まり、日本周辺でも地政学的な緊張が高まっているとして、防衛費の増額を決めた。その財源の論議にあって、「使途が防衛費なら増税もやむを得ない」という理屈に期待して、増税も選択肢だという点を譲ろうとしなかったので、岸田氏は増税勢力の代弁者に見えた。 もう一つは、岸田氏が「異次元の少子化対策」と名付けた政策の財源論議だ。これは、「ただでさえ防衛費で財源が要るところに、少子化対策は社会保障的な政策なので、消費税の増税もやむを得ない」という世論を形成して、消費増税を一歩進めようとしているかのように見えた。 過去に消費税率引き上げを決める際に「社会保障の財源だ」という、よく考えるとほとんど意味のない議論に(お金に色は着いていないのだから)引っ掛かった記憶が国民にはあるので、「社会保障の財源」と来ると次の消費増税への前振りだなという連想が働くのだ』、「防衛費の増額を決めた。その財源の論議にあって、「使途が防衛費なら増税もやむを得ない」という理屈に期待して、増税も選択肢だという点を譲ろうとしなかったので、岸田氏は増税勢力の代弁者に見えた。 もう一つは、岸田氏が「異次元の少子化対策」と名付けた政策の財源論議だ。これは、「ただでさえ防衛費で財源が要るところに、少子化対策は社会保障的な政策なので、消費税の増税もやむを得ない」という世論を形成して、消費増税を一歩進めようとしているかのように見えた」、これでは「増税メガネ」もやむを得ない。
・『岸田首相は首相でいたいだけの人  こうして、ここまでの流れを振り返ると、「増税」の方だけでなく「メガネ」の理由も見えてくる。 巷間よく言われるように、政治家には、首相になって何かをやりたい人と、首相になりたいだけの人、の2種類がいる。 岸田氏は、明らかに首相になりたいだけの人で、かつ首相でいたいだけの人だ。政権のキャッチフレーズとして掲げた「新しい資本主義」に、その中身が全くなかったことが動かぬ証拠である。検討会議をつくって、中身はこれから考えましょうという、何ともひどい話だった。彼の本質は「空箱」なのだ。利用する側から見ると、代弁者として使いやすい人物だ。 あえて推測すると、岸田氏本人は増税したいと思っていないかもしれない。しかし、首相で居続けるためには、一つには米国に気に入られることが大事だし、もう一つには財務省を敵に回さないことが大事だと理解しているらしい。これは、そう間違っていない理解かもしれない。 故安倍氏の回顧録には、本気で政権を倒そうとすることもある財務省の恐ろしさが書かれている。岸田氏が、どんな思いであの本を読んだかは知るよしもないが、財務省を敵に回したくないという意識は強くあるのだろう。) 岸田氏の言動は、自分が首相で居続けるために、米国と財務省に対して過剰なまでに融和的に最適化されている。それ以外に、独自の考えはない。 だから、岸田首相の演説は心がこもっていないように聞こえる。スピーチ原稿を読む代弁者の声にしか聞こえない。 率直に言って、岸田氏は「しゃべる空箱」のようだ。心から話しているように聞こえないので、表情にも注目がいかない。箱が音を発しているだけなので、「人間の顔」が国民には見えていない。「目力(めぢから)」などゼロだ。 言葉に力がないと、表情に注目する気にならず、やがて顔そのものが見えなくなって、メガネだけが残る。自然な論理ではないか。 つまり、メガネしか見えないので、岸田氏を「増税メガネ」と呼ぶことに多くの人が違和感を感じないのである』、「岸田氏は、明らかに首相になりたいだけの人で、かつ首相でいたいだけの人だ。政権のキャッチフレーズとして掲げた「新しい資本主義」に、その中身が全くなかったことが動かぬ証拠である。検討会議をつくって、中身はこれから考えましょうという、何ともひどい話だった。彼の本質は「空箱」なのだ。・・・岸田氏の言動は、自分が首相で居続けるために、米国と財務省に対して過剰なまでに融和的に最適化されている。それ以外に、独自の考えはない。 だから、岸田首相の演説は心がこもっていないように聞こえる。スピーチ原稿を読む代弁者の声にしか聞こえない。 率直に言って、岸田氏は「しゃべる空箱」のようだ」、「しゃべる空箱」とは言い得て妙だ。
・『「増税メガネ」を返上したいなら対策は簡単だ  岸田氏が「増税メガネ」というあだ名を返上するための手段は簡単だ。 消費税を対象にするのが一番いいと思うが、例えば、「岸田の首相在任中は、消費税率を引き下げることはあり得ても、いかなる場合も引き上げることはあり得ない」と、一切の留保条件を付けずに言い切ってしまうことだ。 ここにきて、税収が予定よりも大幅に上振れしている。増税の必要性を演出するためにだろうと思われるが、財務省は税収を過小に推計していた。一方、普通に考えて、税収は名目GDPの伸び率と同等あるいはそれ以上に拡大するはずなのだ。しばしインフレが続くとするなら、財務省予算に対する現実の税収の上振れは半ば構造的だ。 財務省は上振れ分の「還元」を行うに当たって、一時的な給付金のような形でお茶を濁したいようだ。しかし、税収の上振れは一時的なものではなさそうだ。この際、還元を理由に消費税率を引き下げてしまうとどうだろうか。 それだけで、おそらく選挙では負けようがない。選挙で勝てば、政権は強化されるのが政治的なセオリーだ。首相でいたいだけが目的なら、合理的な手段になる。この目的のためなら、空箱に魂が入るかもしれない。スイッチオン。代弁でない、本当の言葉が出てくる。 財務省が本当に恐ろしいのかどうかは知らない。場合によっては、倒閣運動を仕掛けられることがあり得るのかもしれないが、そのときはそのときだ。国民が味方に付いている可能性もある。しかも、さらに景気が良くなって、税収がもっと上振れする可能性さえある。 この際、「この岸田の目の玉が黒いうちは、消費税の増税はさせない」というぐらい大げさなセリフを言ってみるのもいいかもしれない。政治的なレトリックとして許される範囲内だろう。 国民が、岸田氏のメガネの奥に、実は黒い「生きた」目の玉があったことに気づくようになるかもしれない』、「「増税メガネ」というあだ名を返上するための手段は簡単だ。 消費税を対象にするのが一番いいと思うが、例えば、「岸田の首相在任中は、消費税率を引き下げることはあり得ても、いかなる場合も引き上げることはあり得ない」と、一切の留保条件を付けずに言い切ってしまうことだ・・・税収の上振れは一時的なものではなさそうだ。この際、還元を理由に消費税率を引き下げてしまうとどうだろうか。 それだけで、おそらく選挙では負けようがない。選挙で勝てば、政権は強化されるのが政治的なセオリーだ。首相でいたいだけが目的なら、合理的な手段になる。この目的のためなら、空箱に魂が入るかもしれない。スイッチオン。代弁でない、本当の言葉が出てくる・・・この際、「この岸田の目の玉が黒いうちは、消費税の増税はさせない」というぐらい大げさなセリフを言ってみるのもいいかもしれない。政治的なレトリックとして許される範囲内だろう。 国民が、岸田氏のメガネの奥に、実は黒い「生きた」目の玉があったことに気づくようになるかもしれない」、山崎氏の夢物語のようだが、仮に正夢になれば、面白い。

次に、10月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学教授の小黒一正氏による「上がり続ける日本の物価、政府は減税策の前に金利上昇のリスクに備えよ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331403
・『政府債務(対GDP比)が約250%から350%に膨張したときの長期金利の上昇幅  政府債務(対GDP比)が約250%から350%に膨張したときの長期金利の上昇幅 *筆者推計 国内物価の上昇や円安が続く中、日本銀行は今年7月、イールドカーブ・コントロール(YCC)を修正した。事実上、長期金利の上限を0.5%から1%に変更する内容だ。 約3カ月が経過した今、長期金利は0.8%程度まで上昇し、上限の1%に近づきつつある。背景には、物価やドル円レート、米国の長期金利の影響が主にある。 まず物価の動向だが、今年9月の消費者物価指数(CPI)総合の前年同月比は+2.8%と、2%超で高止まりしている。 また、ドル円も再び円安が進んでいる。昨年の10月下旬に一時1ドル150円を突破した後、財務省の為替介入もあり、今年1月には1ドル130円を割る水準まで円安は是正された。だが、その後は米国の長期金利の上昇ショックなどを経て、今年の10月3日には、再びドル円レートが1ドル150円を突破した。円安の基調は依然衰えていない。) インフレ率2%超が続けば、長期金利が2%になっても不思議ではない。そして、未来永劫、日銀が長期金利を1%以下に抑制できるとは限らない。日銀の出口戦略で長期金利が何パーセントになる可能性があるのか、大まかにデータで分析する価値はあるだろう。 筆者が2000年1月から23年5月までの日銀等の月次データを用いて、日本の長期金利モデルで簡易推計したところ、(1)米国の長期金利が1%ポイント上昇すると、日本の長期金利が0.26%ポイント上昇する可能性や、(2)ドル円レートで20円の円安が進むと、日本の長期金利が0.14%ポイント上昇する可能性などが分かった。 また、(3)米国の長期金利が5%の前提で、日本の政府債務(対GDP比)が現在の約250%から350%に膨らむと、日本の長期金利が1.5%ポイントも上昇する可能性が確認できた。債務膨張が続けば、長期金利が2%を超えることは確実と思われる。 最近では、政権内部から減税策が浮上している。減税は財政赤字を拡大させ、インフレ圧力を高めるリスクがある。金利上昇が本格化する前に、強靱な財政構造を構築する努力も忘れてはいけない』、「政権内部から減税策が浮上している。減税は財政赤字を拡大させ、インフレ圧力を高めるリスクがある。金利上昇が本格化する前に、強靱な財政構造を構築する努力も忘れてはいけない」、正論で同感である。

第三に、11月2日付け文春オンライン「「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 乾坤一擲の年末解散総選挙のはずが相次ぐ醜聞で岸田降ろしに」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66774
・『岸田文雄さんが年末に向けた解散総選挙を見込んで断行した内閣改造人事。赤絨毯の上には、今回辞任に追い込まれた法務副大臣・柿沢未途さんの姿もありました』、これは本当に締まらない話だ。
・『騒ぎを拡大させてしまった記者会見  辞任の理由は、今年4月の江東区長選挙で勝利した木村弥生さんに公職選挙法違反となる選挙期間中のネット広告配信を柿沢未途さんがお薦めしたことでした。違法やがな。しかもわざわざ自分から「木村選対に有料広告を提案したけど違法性の認識は無かった」と記者会見をし、騒ぎが拡大してしまいました。 木村弥生さんは自民党大物政治家・木村勉さんのご息女で、1年前まで京都府選出の衆議院議員(ただし比例復活)として公職選挙法を所管する総務省の大臣政務官を務めておられました。分かりづらい公職選挙法の中でも、珍しく分かりやすい形で「やってはいけません」という禁則をそのまんまやらかした木村弥生さんの蛮勇が許されるはずもなく、起訴され有罪となって失職する前に自ら江東区長辞任に追い込まれてしまいます。そのきっかけを作ったのが柿沢未途さんである以上、引責するのも仕方がないと言えます。何してんだよ。 もっとも、本来ならば公職選挙法違反は警視庁が担当するべきところ、わざわざ江東区庁舎や木村さんの自宅にまで家宅捜索に入ったのが東京地検特捜部であったことを考えれば、本来の狙いは木村さんではなくて柿沢さんなんじゃないのという推測が乱舞するのも当然の成り行きと言えます。 そんなのはまあみんな分かっておって、江東区と言えば俺たちの安倍晋三さんが立ち上げみんなの菅義偉さんが無観客での開催を強行した東京オリンピック開催地の地元・江東区と湾岸地域のあれこれで柿沢さんが何をしてきたのかを少しでも掴んでいれば、絶対に副大臣で入閣なんて話にはなりません。と申しますか、柿沢未途さんに副大臣なんて、誰が見てもマズいと思うんですけどね。 そもそも、麻布中高で先輩後輩の仲であることをテコに勇退された谷垣禎一さんのルートから自民党に入ってしまう柿沢未途さんは、東京15区での出馬のいきさつも含めて入党を拒否しなければならなかったのは自明でしょう。 「週刊現代」で、柿沢未途さんが東京15区で無所属なのに自民党推薦を得てしまい、東京都連会長である萩生田光一さんがブチ切れている一部始終を小川匡則さんが書いておられますが、これはすべて事実です』、「柿沢未途」氏は法務副大臣であるにも拘らず、「公職選挙法違反」となるアドバイスをしたなど、信じ難い不手際だ。
・『「増税メガネ」を気にして? 1年限りの減税を発動  また、「週刊文春」が文部科学省の政務官であった山田太郎さんの不倫報道を敢行したのを受けて、こっちはこっちで事実関係を認めて政務官を辞任してしまいました。どうなっているのだ岸田文雄政権、ということで、解散総選挙に向けての支持率アップのはずの内閣改造が身体検査の不全によってあっという間に支持率急落のトリガーとなってしまったのは非常に残念なことです。 《有村架純似の色白美女と》山田太郎文部科学政務官が国会開幕前夜に「ラブホ不倫」写真  山田氏は「約5年前に出会い、自然と男女の仲になりました」 そして、ネットではTikTokやYouTubeなどを中心に、生活苦などを理由にした岸田文雄さんに対する揶揄の総称とも言える『増税メガネ』が連日トレンド入り。うっかりそれが岸田さんの耳に届いてしまい、岸田官邸周辺からも「岸田さんが『増税クソメガネ』と酷評されていることを、非常に気にしている」と伝わってきていました。あーあ。そうかと思ったら、突然岸田さん特有のこだわりが発動し、なぜか4万円程度の1年限りの減税という、国民としてはあんまり嬉しくない感じのばら撒き発動になってしまいました』、「4万円程度の1年限りの減税という、国民としてはあんまり嬉しくない感じのばら撒き発動」、で『増税メガネ』を打ち消そうとするのは滑稽ですらある。
・『世界から「インフレを政策で抑え込めた珍しい国」と評価される  ただ、岸田さんが『増税ばら撒きメガネ』と揶揄されていることに怒っているのは単純に「別に岸田さんが決定して増税したものはなにひとつない」からであって、だいたいが社会保険料の一部引き上げや期限付きだった各種控除の廃止など岸田さんとは無関係にすでに決まっていたことばかりです。それに対して、実際にはガソリン代や電気代、小麦なども含めて、岸田政権は「とっくに6兆円以上、価格統制で国民にばら撒いている」というのが実際なんですよ。 ロシアによるウクライナ侵略や今回のパレスチナ・ガザ地区からのイスラエルへの攻撃とイスラエルの苛烈な反撃などの不安定イベントがある中で世界的な資源高になっています。岸田文雄さんや岸田官邸の嶋田隆さんらの主導によって、日本はトリガー条項ほかいろんな政策手段を出動させ、とりあえずガソリン価格、電力価格と小麦に絞って大規模な経済支援をした結果、世界でも「インフレを政策で抑え込めた珍しい国」と評価され、アメリカや欧州だけでなく発展途上国(グローバルサウス)などでも岸田政権を見習えっていう話が出ています。 物価高失業政策に失敗した22年経済悲惨指数ランキングでは、日本はスイス、クウェート、アイルランドに次いで4番目に価格統制に成功し国民経済を守った国になっています。ありがとう、岸田文雄』、「日本はスイス、クウェート、アイルランドに次いで4番目に価格統制に成功し国民経済を守った国」、デフレと紙一重の差でしかない。
・『上手くやってきたはずなのに…なぜ…  たぶん、23年度版ではその後物価統制に失敗したクウェートやアイルランドを抜いて、スイスに次いで日本の岸田政権は世界的に輝かしい物価統制に成功した国と扱われることになります。 なんせ、日本ではガソリン価格がリットル188円になって、2年前128円の五割増しになったと騒いでいるところですが、 イギリスでは315円(2.08USドル)、香港635円(4.20USドル)になったりしていて、日本は実は非産油国にもかかわらず世界的に安くエネルギー代金が据え置かれている国なのです。 この辺、コロナウイルスの騒動では、医療関係者や政策担当者、地方自治体もかなり頑張って感染症対策を進め日本はかなり成功してきたのに、なぜか反ワクチンや反マスク界隈から、対策に失敗してきたはずの海外を見習え、普通の生活に戻せと防御を下げる方向に政策誘導が進み、コロナウイルスだけでなくインフルエンザやRSウイルスまで蔓延させてしまい学級閉鎖が続発して子どもに健康被害が多発した例と似ています。野党も「トリガー条項ほか生活防衛面では岸田政権は上手くやっている」と評価することはまずありませんし、マスコミも「岸田は無能」という線で報じますから、上手くやって来たのに支持率が伸び悩むのも当然と言えます。 もっとも、そのような政策を実現できたのは、この価格統制のために空前の円安状況であるにもかかわらず累計6兆円を超える国富が突っ込まれ続けてきたからに他なりません。別の言い方をすれば、ガソリンを使うクルマ社会である地方経済は特に、すでに岸田文雄さんから『増税メガネ』どころかとんでもないプレゼントをもらい続けてきているわけですよ』、「ガソリン価格」は政府の膨大な補助金で低く据え置かれているだけで、自慢できる話ではない。
・『みんな“はけ口”を欲しがっている?  さらに、岸田政権下になってから雇用が順調で、大卒の内定者の割合は00年代以降過去最高、高卒・専門学校卒もおそらくは最高の内定率を記録すると見られています。物価高に伴う賃上げが追いついていない問題はあり、また、人口減少による人手不足は顕著であるとはいえ、えり好みしなければちゃんと仕事はあるというのは大事なことです。労働人口が減少しているのに失業率が下がらない国はたくさんありますから。 岸田さんは政権運営単体で見れば「まあまあ上手くやっている」はずなのですが、アピールが下手過ぎてみんな生活苦のはけ口を『増税メガネ』にぶん投げていることになります。そして、労働世帯の生活苦の実際は増税(税金)よりも社会保険料の負担増であり、年金世帯の生活苦は物価高に比べてもらえる年金が少なくて生活を維持するにはどうにかして働かないといけないところに問題があります』、「人手不足は顕著であるとはいえ、えり好みしなければちゃんと仕事はあるというのは大事なことです」、派遣など非正規雇用で吸収しちるだけだ。
・『問題のほとんどは「あの人」が残した“負の遺産”  シンプルに物価高は基本的に日本円が安いことで輸入物価が上がっていることが原因のひとつで、通貨安ドリブンだから金利上げようぜって話を岸田さんがリーダーシップを取らない限り解決しない面はあります。ただ、うっかり金利を上げると頑張って背伸びしてカネを借りて都内で新築マンションを買ったパワーカップルなどはせっかく実現したマイホームとバイバイすることになりかねませんし、金利が上がると証券で運用してきた俺たちのGPIFが痛むこともあるでしょうし、この辺はトレードオフと言いますか、何を捨て、何を取るかという政策にならざるを得ないのですよ。 このあたりは、ほとんどの経済現象が安倍晋三政権が長年に渡って積み重ねてきた「アベノミクス」の弊害の部分と言えます。要は、低金利で安い国に日本を誘導することで、とりあえず生活できるよう金融緩和をジャブジャブにやって、みんな仕事があって、何とかなってきたという話です。 そういう「アベノミクス」が聳え立つ負の遺産を岸田さんがまとめて背負ってどうにかしなければならないことを考えれば、岸田さんはどうにかしてその「アベノミクス」を超える何かすごい政策テーマや経済政策をでっち上げて、国民にこれをやるからお前ら協力しろという話をしなければならなかったはずです。裏を返せば、別に増税してもいいから国民経済の安定や成長に繋がるこういう新しい試みをやりますよという風呂敷が広がっていれば、無理矢理1年限りの減税とかやらんでも一定の支持は得られたのではないかと思うんですよね』、「「アベノミクス」が聳え立つ負の遺産」を安倍派に遠慮して、整理に踏み切れなかったことは、植田日銀総裁と並んで残念だ。
・『このままだとレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでは  この「岸田さんは頑張ってるんだけど、何をしようとしているのかよく分からない」からテーマ性やメッセージ力不足と判断されて、酷評され、支持を失って迷走し、総合経済対策では最終的に減税までやろうとし、内閣改造と旧統一教会解散命令請求とセットで解散総選挙に打って出ようにもどうにもならなくなってしまった、というのが実際なのではないかと思います。 このままだと岸田さんは来年の総裁任期満了までずるずると政権を引っ張り、しかし選挙の顔としては選挙互助会自民党では無理と判断され総裁選再選に向けて出馬も禅譲・後継指名も出来ず退陣という流れになってしまいかねません。 外交では岸田さんはG7広島サミットが歴史的な大成功に終わり、最近の中国大使・垂秀夫さんから金杉憲治さんへのスイッチ、ガザ地区とイスラエルの問題では米欧とは一線を画した対応をきちんと取るなど優れた手腕を発揮しているのも事実です。大統領としては偉大にはなれなかったけど元大統領として外交面で存在感を示すレーガンみたいな立ち位置になってしまうのでしょうか。 個人的には、繰り返しになりますが「岸田政権が取り組んできて上手くやってきたことのアピール」と、「これから岸田政権がテーマとして全力で取り組み国民生活がこういう感じで良くなるようにしていきますよ」という話とをパッケージにしてきちんと打ち出し直すところからスタートなんじゃないかと、常々思っております。はい』、全体として「岸田政権」支持色が強過ぎる印象で、全く同意できない。
タグ:ダイヤモンド・オンライン (その10)(岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか、上がり続ける日本の物価 政府は減税策の前に金利上昇のリスクに備えよ、「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 乾坤一擲の年末解散総選挙のはずが相次ぐ醜聞で岸田降ろしに) キシダノミクス 山崎 元氏による「岸田首相はなぜ「増税メガネ」と呼ばれるのか」 「故安倍晋三首相は、在任期間が大変長かったにもかかわらず、あだ名が付かなかった。それなりに個性的な人相でエピソードも豊富だったが、あだ名を付ける側から見たポイントを絞らせなかった」、「ネット民から見て岸田首相の個性は絞り込みやすいのだろう。「増税したがっている人」という以外に注目すべき特色がないからだ。) だが、「増税メガネ」というあだ名はいささか特異だ。本人の容姿風体や行動の特徴ではなく、メガネが注目されて、あだ名となっている ・・・顔や身体にあだ名にしやすい特徴がないから、メガネが注目されたと考えることはできる。 だが、愛情やユーモアが一切感じられない、驚くほど冷たい印象のあだ名だ」、なるほど。 「岸田氏は「財政再建派である」「財務省の影響下にある」「増税勢力に簡単に利用される男だ」といった印象がもともと浸透していた・・・彼の「底意」を多くの人が増税の実現だと思っており、岸田氏は「増税したがっている男」だとのレッテル貼りが違和感なく通用している。大衆はよく人を見ている」、なるほど。 「防衛費の増額を決めた。その財源の論議にあって、「使途が防衛費なら増税もやむを得ない」という理屈に期待して、増税も選択肢だという点を譲ろうとしなかったので、岸田氏は増税勢力の代弁者に見えた。 もう一つは、岸田氏が「異次元の少子化対策」と名付けた政策の財源論議だ。これは、「ただでさえ防衛費で財源が要るところに、少子化対策は社会保障的な政策なので、消費税の増税もやむを得ない」という世論を形成して、消費増税を一歩進めようとしているかのように見えた」、これでは「増税メガネ」もやむを得ない。 「岸田氏は、明らかに首相になりたいだけの人で、かつ首相でいたいだけの人だ。政権のキャッチフレーズとして掲げた「新しい資本主義」に、その中身が全くなかったことが動かぬ証拠である。検討会議をつくって、中身はこれから考えましょうという、何ともひどい話だった。彼の本質は「空箱」なのだ。・・・岸田氏の言動は、自分が首相で居続けるために、米国と財務省に対して過剰なまでに融和的に最適化されている。それ以外に、独自の考えはない。 だから、岸田首相の演説は心がこもっていないように聞こえる。スピーチ原稿を読む代弁者の声にしか 聞こえない。 率直に言って、岸田氏は「しゃべる空箱」のようだ」、「しゃべる空箱」とは言い得て妙だ。 「「増税メガネ」というあだ名を返上するための手段は簡単だ。 消費税を対象にするのが一番いいと思うが、例えば、「岸田の首相在任中は、消費税率を引き下げることはあり得ても、いかなる場合も引き上げることはあり得ない」と、一切の留保条件を付けずに言い切ってしまうことだ・・・税収の上振れは一時的なものではなさそうだ。この際、還元を理由に消費税率を引き下げてしまうとどうだろうか。 それだけで、おそらく選挙では負けようがない。選挙で勝てば、政権は強化されるのが政治的なセオリーだ。首相でいたいだけが目的なら、合理的な手段になる。この目的のためなら、空箱に魂が入るかもしれない。スイッチオン。代弁でない、本当の言葉が出てくる・・・この際、「この岸田の目の玉が黒いうちは、消費税の増税はさせない」というぐらい大げさなセリフを言ってみるのもいいかもしれない。政治的なレトリックとして許される範囲内だろう。 国民が、岸田氏のメガネの奥に、実は黒い「生きた」目の玉があったことに気づくようになるかもしれない」、山崎氏の夢物語のようだが、仮に正夢になれば、面白い。 小黒一正氏による「上がり続ける日本の物価、政府は減税策の前に金利上昇のリスクに備えよ」 「政権内部から減税策が浮上している。減税は財政赤字を拡大させ、インフレ圧力を高めるリスクがある。金利上昇が本格化する前に、強靱な財政構造を構築する努力も忘れてはいけない」、正論で同感である。 文春オンライン「「アベノミクスの負の遺産」に振り回される岸田文雄総理 乾坤一擲の年末解散総選挙のはずが相次ぐ醜聞で岸田降ろしに」 これは本当に締まらない話だ。 「柿沢未途」氏は法務副大臣であるにも拘らず、「公職選挙法違反」となるアドバイスをしたなど、信じ難い不手際だ。 「4万円程度の1年限りの減税という、国民としてはあんまり嬉しくない感じのばら撒き発動」、で『増税メガネ』を打ち消そうとするのは滑稽ですらある。 「日本はスイス、クウェート、アイルランドに次いで4番目に価格統制に成功し国民経済を守った国」、デフレと紙一重の差でしかない。 「ガソリン価格」は政府の膨大な補助金で低く据え置かれているだけで、自慢できる話ではない。 「人手不足は顕著であるとはいえ、えり好みしなければちゃんと仕事はあるというのは大事なことです」、派遣など非正規雇用で吸収しちるだけだ。 「「アベノミクス」が聳え立つ負の遺産」を安倍派に遠慮して、整理に踏み切れなかったことは、植田日銀総裁と並んで残念だ。 全体として「岸田政権」支持色が強過ぎる印象で、全く同意できない。
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村上ファンド関連(その4)(村上ファンド系が専門商社リューサン株を大量取得…不可解な買い占めに飛び交う憶測、SBI新生銀行の非上場化前に大株主として村上世彰氏登場 波乱を呼ぶ“化かし合い合戦”の行方、コスモ 「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決) [企業経営]

村上ファンド関連については、2017年7月3日に取上げた。今日は、(その4)(村上ファンド系が専門商社リューサン株を大量取得…不可解な買い占めに飛び交う憶測、SBI新生銀行の非上場化前に大株主として村上世彰氏登場 波乱を呼ぶ“化かし合い合戦”の行方、コスモ 「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決)である。

先ずは、7月20日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「村上ファンド系が専門商社リュ(注:正しくはョ)ーサン株を大量取得…不可解な買い占めに飛び交う憶測」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326208
・『約3年半前の“悪夢”を想起させられている業界関係者も少なくあるまい。旧村上ファンドが今度は東証プライム上場のエレクトロニクス専門商社、リョーサンに食いついた。 買収防衛策導入への賛否を巡り一敗地にまみれた形となったコスモエネルギーホールディングスの株主総会からわずか5日後の6月27日、関東財務局に大量保有報告書を提出。傘下の投資会社による発行済みリョーサン株5.29%の保有を明らかにするや、矢継ぎ早に株式を買い増し、同月末までに7.53%を握ったのだ。 エクセル解体劇──。村上氏とエレ商社の関係性といえば、何と言っても因縁深いのはこの「事件」だろう。当時の東証1部上場だったエクセル株の4割弱を買い集めた上、現金対価による株式交換でいったん傘下企業を完全子会社化。事業用資産以外を現物配当で吸い上げた末、事業そのものは2020年4月、同業の加賀電子に売り飛ばしてしまった一件だ。 リョーサンにも先行きこうした「悲惨な運命が待ち構えているのではないか」と半導体系商社幹部の一人は首をすくめる。) もっとも今回の村上氏側の動きはやや不可解で腑に落ちない。というのもリョーサンは村上氏が株を買い漁る前の今年5月中旬、同業の菱洋エレクトロと2024年4月をメドとした経営統合で基本合意しているからだ。 しかも菱洋エレクトロはこれに先立ち今年2月から3月にかけて市場などでリョーサン株を買い集め20.08%を取得。持ち分法適用会社化している。そのうえ統合の中身の詰めは現在進行形で、統合の形態も決まってなければ、統合比率も決まっていない。統合比率の算定に当たって仮にリョーサンの企業価値が低く見積もられるようなことになれば村上氏側には損失が生じるか割を食うリスクも潜んでいることになる。 「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行うこと」。大量保有報告書の中で村上氏側はリョーサン株の保有目的をこう記している。「経営統合」を上回るような重要提案がそうそうあるとは考えにくいが、一癖も二癖もある村上氏のこと、「何かとんでもない隠し玉があるのでは」というのが市場関係者らの見立てだ』、「リョーサンは村上氏が株を買い漁る前の今年5月中旬、同業の菱洋エレクトロと2024年4月をメドとした経営統合で基本合意・・・菱洋エレクトロはこれに先立ち今年2月から3月にかけて市場などでリョーサン株を買い集め20.08%を取得。持ち分法適用会社化・・・そのうえ統合の中身の詰めは現在進行形で、統合の形態も決まってなければ、統合比率も決まっていない・・・統合比率の算定に当たって仮にリョーサンの企業価値が低く見積もられるようなことになれば村上氏側には損失が生じるか割を食うリスクも潜んでいる」、なるほど。

次に、10月5日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「SBI新生銀行の非上場化前に大株主として村上世彰氏登場 波乱を呼ぶ“化かし合い合戦”の行方」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/330083
・『「キツネとタヌキの化かし合いのようなものでは」。金融関係者らの間ではこんな皮肉も漏れる。 公的資金の完済に向けてSBI新生銀行の非上場化という“奇策”に打って出たネット金融大手、SBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長。これに対し旧村上ファンド代表の村上世彰氏が一本のくさびを打ち込んだ。 SBI新生銀が上場廃止となる直前になって同行株を一挙に大量取得。発行株の9.75%、2000万株を握る大株主として登場してきたのだ。 SBI新生銀株は9月1日の同行臨時株主総会で株式併合が承認され、今月2日付でそれが実施されている。2000万株を1株に併合するもので、2億株を超えていた発行株数は10株に収斂された。株主をSBIHDと国(預金保険機構と整理回収機構)の2者に絞り込むことで経営の自由度を高めるとともに、両者間のみの協議で公的資金の具体的な返済方法を策定。完済に道筋をつけるのが狙いだった。 だが村上氏が2000万株を握ったことで、株式併合後も村上氏がSBI新生銀1株を保有する株主として残ったことになる。「村上氏がどんなリターンを期待しているのかは不明だが、公的資金の早期返済とSBI新生銀の企業価値向上を進めていく上で一つの波乱要素となりかねない」。SBIHD関係者の一人は警戒感を募らせる。) 村上氏による株式取得は同氏の傘下にあるエスグラントコーポレーション(東京・渋谷)を通じて展開された。9月21日に市場外で1855万株を、株式併合に伴う「端株」の強制買い取り価格と同額の1株当たり2800円で買い付け。総額519億円余りを投じた計算になる。 保有目的はエスグラント社が提出した大量保有報告書によれば「投資及び状況に応じて経営陣に助言、重要提案行為を行うこと」。再編のにおいでも嗅ぎつけたのではないか──というのが金融筋の見立てだ。 公的資金の返済スキームの一つとしてM&Aを駆使する案も検討されているとみられているためだ。銀行株はどこも割安。これを買収して純資産と買収額の差額である「負ののれん益」を稼ぎ出し、返済原資に充てる作戦だ』、「SBI新生銀株は9月1日の同行臨時株主総会で株式併合が承認され、今月2日付でそれが実施されている。2000万株を1株に併合するもので、2億株を超えていた発行株数は10株に収斂された。株主をSBIHDと国(預金保険機構と整理回収機構)の2者に絞り込むことで経営の自由度を高めるとともに、両者間のみの協議で公的資金の具体的な返済方法を策定。完済に道筋をつけるのが狙いだった。 だが村上氏が2000万株を握ったことで、株式併合後も村上氏がSBI新生銀1株を保有する株主として残ったことになる・・・公的資金の早期返済とSBI新生銀の企業価値向上を進めていく上で一つの波乱要素となりかねない・・・銀行株はどこも割安。これを買収して純資産と買収額の差額である「負ののれん益」を稼ぎ出し、返済原資に充てる作戦だ」、どうなるのだろう。

第三に、10月30日付け東洋経済オンライン「コスモ、「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/711165
・『バトル第2幕の火ぶたが切って落とされる。 石油大手のコスモエネルギーホールディングス(以下、コスモ)は10月24日、村上世彰氏の影響下にある旧村上ファンドに対抗して買収防衛策を発動するための臨時株主総会を12月14日に開くと発表した。 村上氏側はコスモ株を約20%保有し、さらに特別決議(議決権の3分の1)の拒否権に迫る24.56%までコスモ株を買い増す意向を示している』、興味深そうだ。
・『取締役9人全員が村上氏側の買い増しに「否」  臨時株主総会で「発動議案」が可決されると、村上氏側が実際に市場内で株を買い進めた場合に、取締役会の決議を経て新株予約権を一般株主に無償で割り当てることができる。新株予約権が行使されれば、村上氏側の持ち株比率が引き下げられることになる。 7月27日に村上氏側は株の買い増しを表明し、その大規模買付行為等趣旨説明書を提出した。その後、コスモ側と村上氏側で書面による質疑応答の応酬が続いた。 買収防衛策の対応方針では、趣旨説明書を受け取って60営業日以内に取締役会が買い増しに関する評価をするよう定められている。期限を迎えた10月24日の取締役会ではコスモの取締役9人全員が村上氏側の買い増しに「否」の判断を下し、株主の意思を問う臨時総会の開催が決まった。) 村上氏側はこれまでに再生可能エネルギー事業の独立や製油所の閉鎖統合、ENEOSや出光興産の傘下入りの提案などを示唆してきた。旧村上ファンドのシティインデックスイレブンスのリリースによると、6月29日に企業価値向上のための「ある提案」をコスモ側に行ったが、その後進展がなく、趣旨説明書の提出に至ったという。 「ある提案」の内容について村上氏側もコスモ側も明らかにしてない。コスモ関係者は「村上世彰氏が事業再編に関する独自案を持ち込み、受け入れなければ株を買い増すとのことだったが、(村上氏)本人が絡むような提案でコスモが受け入れるのは難しかった」と話す。 一方、コスモ幹部は「石油事業や石油開発事業は非常に収益力が高まっている。製油所の統合や事業譲渡が行われると、一般株主は『収益力のないコスモ』の株主になってしまう。どちらの言うことが株主にとって利益になるか、判断してもらう」と話し、対決姿勢を鮮明にする』、「「ある提案」の内容について村上氏側もコスモ側も明らかにしてない。コスモ関係者は「村上世彰氏が事業再編に関する独自案を持ち込み、受け入れなければ株を買い増すとのことだったが、(村上氏)本人が絡むような提案でコスモが受け入れるのは難しかった」と話す。 一方、コスモ幹部は「石油事業や石油開発事業は非常に収益力が高まっている。製油所の統合や事業譲渡が行われると、一般株主は『収益力のないコスモ』の株主になってしまう。どちらの言うことが株主にとって利益になるか、判断してもらう」と話し、対決姿勢を鮮明にする」、なるほど。
・『株主から「MOMはやりすぎ」の声も臨時株主総会開催は規定路線で、焦点はむしろ、臨時総会での採決方法だった。 6月の定時株主総会で買収防衛策の「是非」を諮った際は、「村上氏側が市場内で急速にコスモ株を買い進める蓋然性が高く、一般株主が意図せず株を売り急ぐ『強圧性』が生じる」として、村上氏側の議決権を除外する奇策を導入した。 少数株主の権利を守るため大株主を除いて賛否を問う「MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)」という手法だが、これは株主平等の原則を脅かしかねない「伝家の宝刀」(証券市場関係者)でもある。 2021年に東京機械製作所が買収防衛策の決議で導入し、その是非が最高裁判所まで争われ認められた経緯がある。経済産業省の「企業買収における行動指針」では、MOM決議は「例外的かつ限定的な場合に限られる」とする。 実際、6月には株主から「MOMはやりすぎ」「今後どんなにいい株主提案も、経営側が気に入らなければMOM決議を採用されてしまう」などの声が相次いだ。) MOM決議による議案への賛成率は59.54%で可決された。だが、仮にMOM決議で除かれたシティ側の議決権を反対票に、コスモ側の役員持ち株会などの議決権を賛成票に加えると、賛成比率は約45.89%にとどまり否決されていたことになる(旧村上ファンドの推計)。村上氏側は「買収防衛策の決議は実質的に否決だったと評価すべき」とした。 こうした経緯から12月の臨時総会でコスモが再びMOMを導入するのかが注目されていた。だが、今回、コスモはMOMを導入せず、普通決議で採決を行うことを明らかにした。 「6月はシティが所定の手続きに従わずに買い増しを進めた場合、強圧性にさらされるということでMOM決議にした。今回は(村上氏側が)手続きを踏んで趣旨説明書を出していることを含め総合的に勘案して普通決議にした」(コスモ幹部) 株主の売り急ぎを誘発する「強圧性」には、一般株主が十分な検討ができないほど短期で買い上げる「時間的切迫性」のほか、「過少な情報」「市場内での買い上がり」「部分買い付けであること」や「実施主体の不透明さ」などがあげられる』、「MOM決議による議案への賛成率は59.54%で可決された。だが、仮にMOM決議で除かれたシティ側の議決権を反対票に、コスモ側の役員持ち株会などの議決権を賛成票に加えると、賛成比率は約45.89%にとどまり否決されていたことになる(旧村上ファンドの推計)。村上氏側は「買収防衛策の決議は実質的に否決だったと評価すべき」とした」、確かに厳密に分析すると、「決議は実質的に否決だった」というのも筋が通る。 「こうした経緯から12月の臨時総会でコスモが再びMOMを導入するのかが注目されていた。だが、今回、コスモはMOMを導入せず、普通決議で採決を行うことを明らかにした。 「6月はシティが所定の手続きに従わずに買い増しを進めた場合、強圧性にさらされるということでMOM決議にした。今回は(村上氏側が)手続きを踏んで趣旨説明書を出していることを含め総合的に勘案して普通決議にした」(コスモ幹部) 株主の売り急ぎを誘発する「強圧性」には、一般株主が十分な検討ができないほど短期で買い上げる「時間的切迫性」のほか、「過少な情報」「市場内での買い上がり」「部分買い付けであること」や「実施主体の不透明さ」などがあげられる」、「今回は」「普通決議にした」、大丈夫なのだろうか。
・『村上氏側「コスモ社は当然の判断をしたにすぎない」  村上氏側は2024年7月までに約5%買い増すことを表明していて、時間的切迫性は遠のいている。ただ、「情報開示は依然不十分で、村上氏らの属性、市場買い上がりであることなどの問題は残る。理屈上はMOMを使うことは十分できる状況だ」(コスモ関係者)という。 コスモ幹部は、「前回は『MOM決議を行うことに反対』という株主が一定数いた。MOMでなければ議案(の性質)が違う。当然普通決議で勝てると思って議案をかけている」と自信をのぞかせる。 村上氏側は10月24日、「コスモ社が本総会においてMOM決議を強行した場合は経済産業省の指針に反することが明らかであって、MOM決議としなかったことについて、コスモ社は当然の判断をしたにすぎない」とするコメントを発表。そのうえで、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの是正を促すなど、対立姿勢を鮮明にしている 村上氏側は「(買収防衛策発動議案が)普通決議で可決された場合は、買い付けは行わない」とする。コスモの企業価値を上げるのは現経営陣か、村上氏側か。決着は真っ向勝負でつけられる』、「村上氏側は「(買収防衛策発動議案が)普通決議で可決された場合は、買い付けは行わない」とする。コスモの企業価値を上げるのは現経営陣か、村上氏側か。決着は真っ向勝負でつけられる」、軍配はどちらに上がるのだろうか。
タグ:「「ある提案」の内容について村上氏側もコスモ側も明らかにしてない。コスモ関係者は「村上世彰氏が事業再編に関する独自案を持ち込み、受け入れなければ株を買い増すとのことだったが、(村上氏)本人が絡むような提案でコスモが受け入れるのは難しかった」と話す。 一方、コスモ幹部は「石油事業や石油開発事業は非常に収益力が高まっている。製油所の統合や事業譲渡が行われると、一般株主は『収益力のないコスモ』の株主になってしまう。どちらの言うことが株主にとって利益になるか、判断してもらう」と話し、対決姿勢を鮮明にする」、なるほ 日刊ゲンダイ 東洋経済オンライン「コスモ、「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決」 ・・・公的資金の早期返済とSBI新生銀の企業価値向上を進めていく上で一つの波乱要素となりかねない・・・銀行株はどこも割安。これを買収して純資産と買収額の差額である「負ののれん益」を稼ぎ出し、返済原資に充てる作戦だ」、どうなるのだろう。 「SBI新生銀株は9月1日の同行臨時株主総会で株式併合が承認され、今月2日付でそれが実施されている。2000万株を1株に併合するもので、2億株を超えていた発行株数は10株に収斂された。株主をSBIHDと国(預金保険機構と整理回収機構)の2者に絞り込むことで経営の自由度を高めるとともに、両者間のみの協議で公的資金の具体的な返済方法を策定。完済に道筋をつけるのが狙いだった。 だが村上氏が2000万株を握ったことで、株式併合後も村上氏がSBI新生銀1株を保有する株主として残ったことになる (その4)(村上ファンド系が専門商社リューサン株を大量取得…不可解な買い占めに飛び交う憶測、SBI新生銀行の非上場化前に大株主として村上世彰氏登場 波乱を呼ぶ“化かし合い合戦”の行方、コスモ 「伝家の宝刀」封印し村上氏とバトル2幕へ 「MOM決議」でなく「普通決議」で12月14日に対決) 「村上氏側は「(買収防衛策発動議案が)普通決議で可決された場合は、買い付けは行わない」とする。コスモの企業価値を上げるのは現経営陣か、村上氏側か。決着は真っ向勝負でつけられる」、軍配はどちらに上がるのだろうか。 村上ファンド関連 重道武司氏による「SBI新生銀行の非上場化前に大株主として村上世彰氏登場 波乱を呼ぶ“化かし合い合戦”の行方」 」「普通決議にした」、大丈夫なのだろうか。 「リョーサンは村上氏が株を買い漁る前の今年5月中旬、同業の菱洋エレクトロと2024年4月をメドとした経営統合で基本合意・・・菱洋エレクトロはこれに先立ち今年2月から3月にかけて市場などでリョーサン株を買い集め20.08%を取得。持ち分法適用会社化・・・そのうえ統合の中身の詰めは現在進行形で、統合の形態も決まってなければ、統合比率も決まっていない・・・統合比率の算定に当たって仮にリョーサンの企業価値が低く見積もられるようなことになれば村上氏側には損失が生じるか割を食うリスクも潜んでいる」、なるほど。 重道武司氏による「村上ファンド系が専門商社リュ(注:正しくはョ)ーサン株を大量取得…不可解な買い占めに飛び交う憶測」 OMを導入せず、普通決議で採決を行うことを明らかにした。 「6月はシティが所定の手続きに従わずに買い増しを進めた場合、強圧性にさらされるということでMOM決議にした。今回は(村上氏側が)手続きを踏んで趣旨説明書を出していることを含め総合的に勘案して普通決議にした」(コスモ幹部) 株主の売り急ぎを誘発する「強圧性」には、一般株主が十分な検討ができないほど短期で買い上げる「時間的切迫性」のほか、「過少な情報」「市場内での買い上がり」「部分買い付けであること」や「実施主体の不透明さ」などがあげられる」、「今回は 「MOM決議による議案への賛成率は59.54%で可決された。だが、仮にMOM決議で除かれたシティ側の議決権を反対票に、コスモ側の役員持ち株会などの議決権を賛成票に加えると、賛成比率は約45.89%にとどまり否決されていたことになる(旧村上ファンドの推計)。村上氏側は「買収防衛策の決議は実質的に否決だったと評価すべき」とした」、確かに厳密に分析すると、「決議は実質的に否決だった」というのも筋が通る。 「こうした経緯から12月の臨時総会でコスモが再びMOMを導入するのかが注目されていた。だが、今回、コスモはM ど。
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