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イスラエル・パレスチナ(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、11月9日に取上げた。今日は、(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」)である。

先ずは、11月14日付けNewsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103046_1.php
・『<病院への攻撃を世界や国際機関が非難するなか、イスラエルは「証拠」で「正当性」を誇示するが...。イスラエルを支持するバイデン大統領も苦しい立場に> イスラエル国防軍(IDF)は、ガザ市内にある小児病院の地下にハマス司令部が存在していた証拠を発見したと述べている。そこに人質が拘置されていた証拠も発見したという。 パレスチナのガザ地区における戦闘は、同地区を実効支配しているイスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している。 またイスラエルは、同地区最大のシファ病院を攻撃したとして、厳しい非難を浴びている。今回の戦闘を巡る厄介な問題は、病院に対する攻撃だ。病院の地下にハマス司令部が本当に存在しているのか否かによって、イスラエルは国際的な支持を失いかねない。 また、イスラエルを支持する米大統領ジョー・バイデンは、難しい立場に置かれる可能性がある。 IDF報道官のダニエル・ハガリ少将は11月13日、X(旧ツイッター)に動画を投稿した。ガザ市西部にあるランティシ小児病院の地下部分などを歩いて撮影したという動画だ。 ハガリ少将は動画のなかで、発見したものを示しながら、同病院がハマス司令部として使われていた証拠だと述べている。そうした証拠には、火器や手榴弾、爆弾が固定された自爆用ベルトといった軍装備品なども含まれている。 ハガリ少将は発見された装備品の横に立ちながら、「わかってほしい。こうした武器や装備品は、大がかりな戦闘のためのものだ」と語っている。そして、ハマスが拘束した人質がランティシ小児病院の地下室に収容されていた可能性がある証拠を指摘。 その証拠とは哺乳瓶やおむつ、シャワーやトイレ、また小さなキッチンなど「即席」で置かれており、ソファと椅子、レンガの壁に掛けられたカーテンを含む部屋である。 人質を撮影して動画撮影する目的がなければ、部屋にカーテンをかける理由はないと述べる。また、別の部屋ではアラビア語で書かれたリストも発見された。そこに「任務遂行中」と書かれていると、ハガリ少将は説明している。) 「これは監視者のリストで、テロリストが自分の名前を書くものだ。テロリストはみなシフトを組んで、ここに拘置されていた人々を監視していた」とハガリ少将は説明している。 動画にはさらに、病院の敷地近くで見つかったというトンネルの入り口も映っている。トンネルの深さはおよそ20メートルで、入り口は防弾ドアで守られている。これは、病院とトンネルがつながっている「動かぬ証拠、明らかな証拠に思える」とハガリ少将は話している。 イスラエルは以前から、ハマスが住居や病院、学校を戦闘員の盾として使っていると訴えてきた。そう主張するひとつの理由は、民間人の命が失われていることで、パレスチナ解放運動への同情と国際的な注目が集まることだ。 今回の動画は、イスラエル軍が、ガザ地区最大の医療機関シファ病院の包囲網を狭める中で投稿された』、「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。
・『【動画】まったく機能していないシファ病院の現在  2023年11月13日映像)を見る イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない。 また、シファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長はイスラエル側の主張を否定し、病院の地下に司令部はないと述べている。) イスラエルは11月13日の動画投稿に先立ち、地下軍事施設と疑われる位置を示した地図を公開している。 「ハマスのテロリストが病院から攻撃を仕かけていることを確認した場合、私たちはやるべきことをやる」。IDF報道官のリチャード・ヘクト中佐はAP通信に対してそう述べていた。 シファ病院内にいるガザ保健省の報道管理官アシュラフ・アル・キドラがロイターに対して述べたところによれば、同病院では電力が絶たれており、新生児を含む患者が死亡したいう。ニューヨーク・タイムズ紙は、多数の人が週末にシファ病院から避難したと報じている。 また、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11月13日、いまの状況は同病院の入院患者にとって「悲惨であり、非常に危険である」とXに投稿した。 米大統領バイデンは11月13日、大統領執務室で記者に対し、ガザにある病院は「保護されなければならない」とし、「病院に対する侵入的な行為が減ることを私は望んでいるし、そうなると期待している」と述べた』、「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。

次に、11月16日付け現代ビジネスが転載したThe Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」を紹介しよう。
・『ガザ地区に展開するイスラエル歩兵部隊の主勢力・ギバティ旅団の指揮官らは、小さな教室ほどの大きさの平屋の建物数棟の中で、ガザ内のイスラエル軍とパレスチナ勢力の位置をリアルタイムで表示する複数のスクリーンを確認することができる。 指揮官らはこの情報を使い、部隊や兵器の位置、また偵察機をチェスの駒のように移動させている。) ガザとの境界に近いこの場所は、広範に及ぶ軍の技術中枢部でもカギを握る中心であり、ドローンやジェット戦闘機、海軍艦艇、戦車、兵士らが集めた何千もの戦場データが集約されている。これらデータはイスラエル軍が3週間足らずの間に、兵士の死者数を50人未満に抑えながら、イスラム組織ハマスの拠点であるガザ市の大部分を一挙に占領することを可能にした。 イスラエル軍はハマスの広大な地下トンネル網を破壊し、そこに拠点を置く指導者らを打ち破り、ガザにおけるハマスの軍事力と統治力を壊滅させることに重点を置いている。イスラエル政府が戦闘をさらに精密な段階へ移行しようとする中、軍のこの指揮統制センターは今後数週間にわたってこれまでよりも重要な役割を果たすことになる。 イスラエルは戦闘のあらゆる段階で、ハマスに対する技術面および軍事面の圧倒的な優位性を示してきた。軍は数千回の空爆でハマスの能力をそぎ落とし、イスラエル軍の戦車や部隊が進軍できるよう障害物を取り除き、ガザ市での支配力を徐々に強めてきた。 イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている ギバティ旅団のこの指揮統制センターでは11日、指揮官らがガザ市内のアルランティシ病院からの退避の様子を監視。地上部隊や上空のドローン、また病院内の人々とのやり取りや交信内容を分析しながら、病院を出る約1000人の中に戦闘員が含まれていないか確認した。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供された退避の際の動画には、銃を肩から提げた数人の戦闘員らが、市民の群れに混じって病院を出ていく様子が映っていた。現場や指揮統制センターの指揮官らの間では、その場で戦闘員らと交戦するべきか、それを回避して逃がすべきか議論が続いたという。また狙撃手がこれら戦闘員らを排除できるとする意見もあったが、パニックを引き起こす懸念もあり、戦闘員らはそのまま病院を去った。 だがその際に病院から逃げた戦闘員の1人は、学校に潜伏中にドローンの空爆を受けて死亡。退避後もその行動が追跡されていたことが明らかになっている。 ギバティ旅団の指揮官らは指揮統制センターの中で、今後展開される地下での戦闘に注力。地上部隊はこれまでにトンネルへの入り口を160カ所確認しており、そのデータを利用してハマスの地下ネットワークをより詳細に把握しようと試みているという。 壁に設置された中型のテレビスクリーンで、指揮官らは市街地にズームインした高画質画像を見られる。また軍全体や戦闘現場にいる部隊から集めた情報や監視活動がスクリーンに映し出され、それは絶えず更新されている。 パレスチナの軍事目標を見つけると、イスラエル軍将校はそばで待機する武器専門家に指示し、適切な攻撃手段を選択する。恐らくは無人機(ドローン)で即座にピンポイント攻撃を行うか、ジェット戦闘機でビルを丸ごと破壊するかだ。彼らは付近の戦闘ヘリコプターを通じて現場の将校と直接連絡を取ることができる。 もし目標ゾーンの近くで民間人の存在を確認したら、情報担当将校は彼らに接触し、その場を離れるよう警告できる。またパレスチナの戦闘員グループが二つの異なる部隊の間を直進しているような状況では、味方への誤射を避けるため、指揮統制センターは両部隊の動きを誘導できる。地上の指揮官が上空の視点を必要とする場合、指揮統制センターの指揮官が最寄りのドローンを見つけて知らせる。 こうした手段があるとはいえ、イスラエルの空爆でパレスチナの民間人は大勢殺害されている。イスラエル当局者は、民間人の犠牲をできる限り少なくするよう努めているが、ハマスが彼らの軍事インフラをガザ地区の民間人インフラに潜り込ませているため、犠牲は避けられないと話している。 ドローンの戦時利用に反対する英NGO(非政府組織)「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した。 「IDF(イスラエル国防軍)は民間人が本来持つべき価値をはるかに低くする決定を下しているように見える」とコール氏は言う。「彼らのやっていることが違法なことに疑いの余地はない」』、「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 

第三に、11月16日付けNewsweek日本版が掲載した国際政治学者・ハーバード大学ケネディ行政大学院教授のスティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103056_1.php
・『<失われたアメリカの情報・判断力への信頼、民主主義国連合の亀裂。居直った中国とロシアがグローバルサウスを取り込み、世界の多極化を狙う> 今回のガザ戦争、その余波はどこまで広がるのだろう? 私見だが、悪しき地政学的展開が起きても、たいていは逆の好ましい力が働いて均衡を取り戻し、世界地図で見れば点のような場所で起きた出来事の余波が遠くまで広がることはない。危機や戦争が起きても、たいていは頭を冷やしたほうが勝つから、その影響は限定される。 だが例外はあり、今回のガザ戦争はそうした不幸な例外の1つかもしれない。 もちろん、第3次大戦の瀬戸際だと言うつもりはない。これが中東全域を巻き込む紛争に拡大するとも思っていない。 その可能性は排除できないものの、今のところ、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも、イランやロシア、トルコなどの周辺諸国も、直接的に首を突っ込もうとはしていない。 アメリカ政府も、局地的な紛争に抑え込もうと努力している。戦域が拡大すれば損害が大きくなり、危険も増す。だから私たちは、その努力が実ることを願う。 だが、たとえ戦闘がパレスチナ自治区ガザ地区に限定され、遠からず終結するとしても、その余波は世界中に広がる。 その影響はどんなものか。 答えを探るには、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃が始まる10月7日以前の地政学的状況に立ち戻る必要がある。 まずアメリカとNATO諸国はウクライナで、ロシアを相手に代理戦争を繰り広げていた。 目標はウクライナを支援し、ロシアが2022年2月24日以降に占領した土地を取り戻すこと。ロシアを弱体化し、二度と似たようなまねができないようにすることだ。 だが筋書きどおりにはいかなかった。 今夏の反転攻勢は行き詰まり、軍事面ではロシア側が徐々に勢いを取り戻しているようで、ウクライナ側が領土を取り戻す可能性は遠のいていた。 これに加えて、アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた。半導体やAI(人工知能)、量子コンピューターなどの先端技術で、中国が覇権を握るのを阻止する戦いだ』、「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。
・『対中政策の行き詰まり  アメリカ政府は中国を、最大の長期的ライバル(米国防用語では「基準となる脅威」)と見なしている。 ただしジョー・バイデン大統領率いる現政権は対中制裁の対象を絞り、「小さな庭に高い壁」を築くだけだとし、それ以外の分野では協力を維持したい意向を示していた。 だが現実には、小さな庭は大きくなるばかり。いくら高い障壁を設けても、一定の先端技術分野で中国が台頭するのを阻止するのは不可能という見方が強まっていた。) 中東政策はどうか。バイデン政権はサウジアラビアが中国に接近するのを防ぐため、イスラエルとの関係正常化を条件に、サウジアラビアに一定の安全保障を約束し、場合によっては核関連技術へのアクセスも認めようとしていた。 だが、そんな離れ業が決まる保証はなかった。 そもそもパレスチナの問題に目をつぶり、占領地でのイスラエル政府の蛮行に見て見ぬふりをしている限り、いずれ火を噴くのは避けられない。そういう批判があったのも事実だ。 そこへ10.7の奇襲があり、戦争が始まった。その地政学的な意味と、アメリカ外交への影響はいかなるものか。 まず、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けたアメリカ政府の努力は水泡に帰した(ある意味、ハマスの狙いどおりだ)。 むろん、これを永遠に阻止するのは無理だろう。関係正常化を促した事情は何も変わっていないからだ。しかし、行く手を阻む障害は増えた。 2点目。最近のアメリカは中東に費やす時間と労力を減らし、アジアに向ける時間とエネルギーを増やそうとしていたが、この戦争でそうはいかなくなった。 なにしろ時間は限られている。バイデン大統領やアントニー・ブリンケン国務長官が毎日のようにイスラエルや中東諸国に飛んでいたら、他の場所に十分な時間と関心を割くことはできない。 アジアの専門家であるカート・キャンベルを国務副長官に起用したことで状況はいくらか改善されるかもしれない。 それでも中東で火の手が上がった以上、アジアに割くことのできる外交的・軍事的能力が中短期的に低下することは間違いない。 しかも国務省内部では、政権の露骨にイスラエル寄りな対応に中堅幹部が反発しており、混乱が生じている。問題の解決は難しくなるばかりだ。 要するに、今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった。 今は米軍の空母2隻が地中海東部に派遣されており、アメリカ政府は中東から目を離せない。だからアジア情勢が一気に暗転した場合、アメリカが効果的に対応できるかどうかは疑わしい。 そして仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい』、「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。
・『EUトップの深刻な亀裂  3点目。ガザ地区の紛争はウクライナにとって最悪だ。メディアはガザ情勢一色に染まり、ウクライナ支援を支持する世論は後退している。 アメリカでは下院共和党が支援継続に難色を示している。10月4日から16日にかけて行われたギャラップの世論調査でも、アメリカ政府のウクライナ支援は過剰だと考える人が41%に上った(6月時点では29%にすぎなかった)。 もっと面倒な問題もある。ウクライナ戦争は激しい消耗戦となっており、いくら砲弾があっても足りない。 だがアメリカも同盟諸国も、ウクライナのニーズを満たすだけの兵器を生産できない。ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか。 EUにとっても頭の痛い問題だ。ロシアのウクライナ侵攻で、多少の軋轢はあったにせよ、欧州の結束は強まった。10月のポーランド総選挙で、極右政党「法と正義」が政権の座を追われたことも好ましい変化だった。 しかしガザ紛争で欧州の亀裂が再び表面化した。今はイスラエルを無条件で支持する国もあれば、パレスチナの大義に共感を示す国もある。 EUの大統領格であるウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長と、外相格のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表の間にも深刻な亀裂が生じている。 フォンデアライエンはイスラエル支持に偏りすぎている」と批判する書簡に、約800人のEU職員が署名したとも報じられている。 この戦争が長引けば長引くほど、こうした亀裂は広がっていく。 それはまた欧州外交の弱みを浮き彫りにし、世界の民主主義国を一つの強力な連合体にまとめるという壮大な目標に向かう動きを後退させかねない。 西側諸国にとっては最悪な展開だが、ロシアと中国には願ってもない朗報だ。 アメリカの目がウクライナや東アジアからそれるなら大歓迎。しかも中東なら、自分たちは高みの見物を決め込める。 一方で今回のガザ紛争は、アメリカの一極支配よりも多極的な世界秩序のほうが好ましい、という中ロ両国の長年の主張に一定の論拠を与える。) 1993年のオスロ合意以来、アメリカは一貫して中東情勢に大きな発言力を持ってきた。 だが、結果はどうだ。 イラクでは悲惨な戦争を招き、イランの核開発は止められず、イスラム過激派の台頭も許した。 イエメンでは内戦が激化し、リビアは無政府状態に陥った。そしてもちろん、オスロ合意は反故(ほご)になった──彼らはそう主張できる。 10月7日のハマスの奇襲を見ろ、アメリカは最も親密な同盟国すら守れないではないか、という主張もできる。 そういう主張に反論することは容易だが、くみする国も多いだろう。実際、中ロのメディアは今回のガザ紛争を機にアメリカ批判を強め、国際社会での支持を広げている。 今回の戦争とアメリカの対応がこの先も、アメリカ外交にとっては重い足かせとなるだろう。 既にウクライナ危機をめぐる欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ。もともとパレスチナの人々への共感は、欧米以外の国々のほうがはるかに強い。 その共感は紛争が長引けば長引くほど、またイスラエル軍に殺されるパレスチナの民間人が増えれば増えるほど強まるだろう。一方で欧米諸国は、歴史的な経緯もあってイスラエル側の肩を持たざるを得ない。 G7に属する某国の外交官が先頃、英紙フィナンシャル・タイムズで嘆いていた。 「これで私たちはグローバルサウスの獲得競争に敗れた。(ウクライナ支援で協力を取り付けようとした)今までの努力は水泡に帰した。......彼らは二度と、私たちの話に耳を傾けないだろう」』、「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。
・『漁夫の利を得る中国  それだけではない。 北大西洋両岸の快適な地域に属さない国々から見れば、欧米の関心はあまりに身勝手で恣意的だ。 中東で新たな戦争が起きた途端に、欧米のメディアはその話で埋め尽くされた。新聞もそうだし、ニュース専門のテレビ局もそうだ。政治家はせっせと自らの見解を述べ、どうすべきかを説く。 だが今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない。 だが、今までどおりにいくと思うのは間違いだ。人権だの法の支配だのという私たちの議論に、彼らはますます耳を貸さなくなる。そして中国とアメリカをてんびんにかけて、様子を見る国が今よりも増えることだろう。 付言すれば、今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる。 よその国がアメリカ政府の助言に従うのは、アメリカ政府には確かな情報と判断力と行動力があり、人権にも法の支配にも一定の配慮をしてくれると思えばこそだ。 その前提が崩れたら、誰もアメリカの助言など聞かなくなる』、「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。

第四に、11月17日付けデイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/11170609/?all=1
・『10月7日、イスラム組織ハマースの越境攻撃によって始まったイスラエル・パレスチナ紛争。今回のハマースによる攻撃は、1973年10月にエジプト軍がイスラエル軍の防衛体制の隙をついて奇襲を仕掛けて始まった「第4次中東戦争」を想起させる。 まるで時計の針が巻き戻ってしまったかのような事態だが、中東情勢に詳しい向きには、1916年にイギリスとフランスによって結ばれた「サイクス=ピコ協定」が、今日の混乱の原因として思い出されるのではないだろうか。オスマン帝国の崩壊を受け、西洋列強によって地図の上に勝手に国境線が引かれたという、悪名高い協定である』、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。
・『サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案  サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) しかし本当に「サイクス=ピコ協定」が問題の本質なのか。そもそも、それはどのような協定だったのか。 中東研究の第一人者である東京大学教授・池内恵氏は著書『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』で、複雑な事情をわかりやすく解きほぐしている。以下、同書から一部を再編集して紹介しよう。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない  1916年5月16日、イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた。 サイクス=ピコ協定は、現在のトルコ南東部と、シリアやイラク、パレスチナやヨルダンなどにかけての一帯を切り離し、英・仏の直接統治・支配圏に分けた。 サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた』、「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。
・『蘇る密約  (中東及び周辺諸国の地図はリンク先参照) 混乱の続く中東情勢。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) 百年の時を経て、中東は大変動の時代を迎えている。アラブ世界では多くの国家が崩壊するか、決定的に揺らいだ。政権が自らの国民に発砲し、樽爆弾で市場を無差別に爆撃する。内戦が果てしなく続き、武装集団が各地を支配する。テロが頻発し、過激主義が横行する。宗教的・民族的少数派が住処(すみか)を追われ、殺害され、奴隷化される。大量の難民が流出して彷徨(さまよ)い、その一部が欧州に達しただけで、EU(欧州連合)の結束は瓦解の縁(ふち)に立たされている。 現在の中東の大混乱は、百年前の、まさにサイクス=ピコ協定が結ばれた頃の状況に、次第に近づいてきている。 戦乱と国家の崩壊、武装集団の角逐(かくちく)、難民の流動、少数派の迫害・虐殺と奴隷化、これらはいずれも第1次世界大戦とその直後の中東に、大規模に生じた出来事だった。 現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である』、「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。
・『「イスラーム国」による批判  2014年に「イスラーム国」がイラクとシリアで支配領域を広げた時、その宣伝映像で「サイクス=ピコ協定の終わり」を喧伝(けんでん)した。「イスラーム国」は、サイクス=ピコ協定の秩序に代わる、より妥当な秩序を示してはいない。しかし「イスラーム国」が、サイクス=ピコ協定に基づく枠組みによって維持されてきた中東の国家や国際秩序に挑戦し、そのほころびに付け込んでいることは確かだろう。サイクス=ピコ協定に始まる一連の協定や条約の枠組みによって、中東の国家と社会と国際関係はどうにか維持されてきた。しかしその秩序は矛盾や脆弱性を孕(はら)んだものだった。 「イスラーム国」によるサイクス=ピコ協定の批判は特に目新しいものではない。シリアやイラク、エジプトなどアラブ諸国の民族主義的な政権は、サイクス=ピコ協定を植民地主義による中東の不当な分割を象徴するものとして非難し、その超克を主張してきた。そう主張しながらも、各国の政権はサイクス=ピコ協定の枠組みに依存し、利用し、権力の源としてきた。 アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう』、「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。
・『「協定」をなくせばいいのか  サイクス=ピコ協定ほど、批判と罵(ののし)りの対象となった外交文書も珍しいだろう。そもそもここまで一般に名前が知られている外交文書というものも、少ないだろう。 サイクス=ピコ協定は、ロシアにおいて革命で権力を掌握したボリシェビキ政権によってその存在が暴露されたことから、「列強の中東への不当な介入と分割」の象徴とされて批判の的となった。 日本では世界史の教科書や資料集で取り上げられ、さまざまな中東関連本でも必ずと言っていいほど言及される。そこから「サイクス=ピコ協定こそ中東問題の元凶」といった決まり文句が、一般向け解説でも、あるいは中東専門家が政治的な発言を行う時にも、しばしば見られるようになった。 しかしこのような批判が、現在の問題の理解と解決のために役立つかというと、疑問である。それではサイクス=ピコ協定をなくしてしまえば中東問題は解決するのか。もちろんそのようなことはない。サイクス=ピコ協定をなくしてそれ以前の状態に戻れるのか。もちろん戻れない。それ以前の状態にもし戻れたとして、そこに住む人々のどれだけが納得するのか。その多くは納得しないだろう。 サイクス=ピコ協定を無効とするならば、むしろ今と同様あるいはそれをも上回るような内戦や戦争が勃発し、少数派の迫害や奴隷化が国際社会の制約なく横行しかねない。難民の規模はさらに拡大するだろう。 サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう。 言うまでもなく、サイクス=ピコ協定が提示する「処方箋」は完璧にはほど遠いものであり、矛盾や欺瞞や不十分さを多く抱え込んでいた。しかしそれは、中東が抱えている問題の複雑さを反映したものだった。サイクス=ピコ協定は問題を解消する魔法の杖ではなく、問題の根深さ、解決策の不在を表現したものだった。 当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題である。 ※池内恵『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)から一部を再編集。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない』、「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 
タグ:「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。 「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。 サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。 「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。 ラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。 「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 ・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。 「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。 「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイス 「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない 現代ビジネス Newsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」 「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。 しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 Newsweek日本版 「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。 (その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) スティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」 、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。 The Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」 デイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」 「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。 「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。 イスラエル・パレスチナ
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保険(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) [金融]

保険については、本年5月15日に取上げた。今日は、(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断)である。

先ずは、7月20日付けデイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07201047/?all=1
・「『♪くーるまを売るな~らビッグモーター!の歌声も虚しい。7月18日、中古車販売大手ビッグモーターの兼重宏行社長(71)が、報酬の全額を1年間返上とする方針を固めた。車の修理代を損害保険各社に水増し請求していたことが特別調査委員会によって認定されてからおよそ2週間、社長をはじめ役員たちの報酬返上では済まないという声が……。 ビッグモーターは中古車の買取・販売のみならず、大半の店舗に隣接された整備工場をウリにしていた。そして“最先端設備でどこよりもキレイに素早く修理!”を謳っていたのだ。 ところが整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換、1台あたりの修理工賃が14万円前後のノルマ……とても修理とは呼べない工賃が上乗せされて、損保会社に請求されていたのだ。報告書には「コンプライアンス(法令遵守)意識の鈍麻」「経営陣に忖度するいびつな企業風土」といった批判も入っていた。大手損保の関係者は言う。 「ビッグモーターの良くない評判は今に始まったことではありません。この会社は保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。産経新聞の取材に同社は昨年12月、「会社と関係なく店長間で慣習的に行われていた。一切強制していない」と説明した。/しかし、昨年6月に全社員宛てに送られた兼重社長名での社内メールでは、「保険選手権大会に関して」とのタイトルで「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載されていた》(産経新聞:17年2月26日)』、「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。
・『一代で全国300店  「もともとビッグモーターは、76年に山口県岩国市に開店した兼重オートセンターが母体です。そこから兼重社長が一代で、本社を東京の六本木ヒルズに置き、北海道から沖縄まで全国300店舗に迫る出店をし、“買取台数6年連続日本一”を謳う会社に成長したんです。もちろんそこには、関西の中古車販売会社ハナテンを傘下に収めたことが大きいのですが、兼重社長は自衛隊出身と聞いたこともありますし、かなり無理をしてきたのでしょう」 今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 損保ジャパンは加わらなかったのか。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させたそうですから」 なぜ損保ジャパンは取引を復活させたのか』、「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」、「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。
・『強く出られなかった部分も  「太いパイプがあるのでしょうね。損保ジャパンはビッグモーターに社員を出向させていたそうです。これは勝手な想像ですが、損保ジャパンは旧安田火災の頃から大手損保に追いつけ追い越せで、ゆるい契約を結ぶ社風がありました。実際、損保ジャパンとなってからも、業務が営業偏重だと業務停止処分が下ったことがありました。ビッグモーターものし上がってきた会社ですから、似た部分があるのではないかと思います」 それにしても、損保に修理代を水増し請求したところで、それほど儲かるのだろうか。 「修理代は損保から支払われますから確実ですし、修理の工賃などの見積もりを増やせば余計に儲かります」 タイヤにネジを打ち込んで、わざとパンクさせていたという報道もあった。 「通常のパンクだけなら保険の対象外です。事故によるパンクや、タイヤだけでなくボディも傷つけられたのであれば、車両保険の対象となる可能性があります。いわば修理の水増しをしていたということでしょう」 そうした不正請求が損保にバレなかったということか。
「そういうことになります。ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です。修理代を損保が支払う分、等級が下がって保険料は割り増しとなったわけですから」 歴とした詐欺事件のように思われるが、 「正直言って、こんなことをやっていたら逮捕されます。少なくとも報酬を1年返上すれば責任を取ったことになるなんていう話ではありません」』、「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。

次に、7月26日付け日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326532
・『「天地神明に誓って知らなかった」 25日、保険金の不正請求問題で揺れる中古車販売大手「ビッグモーター」の兼重宏行社長が記者会見を行い、26日付で自身と会見に姿を見せなかった息子の宏一副社長の辞任を発表した。 同社は客が持ち込んだ故障車両に「ドライバーで傷つける」「ゴルフボールを入れた靴下を振り回して叩く」「サンドペーパーで塗装をはがす」「ヘッドライトのカバーを割る」などの不正行為を行い、修理費用を水増ししたうえで保険金を請求していたことが明らかになっている。 兼重社長は会見で「個々の工場長が指示してやったんじゃないか。事実確認が取れていませんけれども、それでないとこういうことは起きない」と、不正への組織ぐるみの関与を否定。 外部専門家からなる特別調査委員会の調査報告書によると、同社は修理車両1台あたり14万円前後の粗利をノルマとして設定していたという。 本来、車両の損傷状況に応じて施される修理に収益目標を設定するなど、売り上げ至上主義が現場に無理を強いていた可能性が高いが、兼重社長は不正の原因について、「不合理な目標設定。それが目標ではなく、ノルマになって、(板金塗装の幹部が)達成させるために強くプレッシャーをかけた。それが原因で今回の不正が起きたと考えられますので、組織的と思われてもこれは致し方ないんですけども、決してそんなことはありません」と述べている。 「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます。 ほかにも“環境整備点検”といって、幹部が月一で店舗を巡回し、掃除や整理整頓がきちんと行われているかなどを厳しくチェックする作業を深夜や朝方まで強いられていたようです。こうした会社のブラックな体質を嫌い、離職者が多いことでも知られていました」(中古車業界関係者) 特別調査委員会の調査報告書は、ビッグモーターの「環境整備点検」についてこう厳しく批判している。 “環境整備点検は、スーツを着たお偉方が上から目線で難癖をつけるだけのイベントになっていたのであり、そのような状況下で経営陣に現場の声が上がってくるはずがない』、歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。
・『■「儲かる仕組み」を会員企業に指導  この環境整備点検を指導したとされるのが、経営コンサルタントの小山昇氏(75)が率いる株式会社武蔵野で、ダスキンのフランチャイズ事業のほか、中小企業への経営コンサルティング事業で知られている。 同社は18年連続増収を謳い、小山氏が編み出したとされる「儲かる仕組み」を会員企業に指南。武蔵野から経営指導を受けた750社のうち、400社以上が過去最高益を達成しているという。その会員企業の一つが、今回の不正が発覚したビッグモーターだ。 小山氏は、2014年9月12日配信のダイヤモンドオンラインの記事「【第1回】日本初「日本経営品質賞」2度受賞の秘密!「朝一番の掃除」7つのメリットとは?」で、ビッグモーターについてこう記している。 《山口県岩国市に本社がある自動車販売会社、株式会社ビッグモーター(兼重宏行社長)は、記録的台風(2005年9月6~7日)の影響により、展示車両が全滅。一瞬にして2億円の損害を受けてしまいます。 ところが「ビッグモーター」は、3日後には営業再開し、いまや中古車販売台数で「業界日本一」になりました》 小山氏によると、ビッグモーターが壊滅的状況から這い上がれた唯一の解が、掃除をはじめとする「環境整備」にあるという。 《人材を鍛え、組織を改善し、高収益体質をつくるうえで、「環境整備」ほど効果的なしくみはありません》 ほかにも、毎年社員に配る「経営計画書」なるものがビッグモーターには存在する。 「3.強烈な願望を心に抱く」「4.誰にも負けない努力をする」「5.売り上げを最大限に、経費は最小限に」「8.燃える闘魂」といった自己啓発書顔負けの項目が並び、社員は毎朝唱和させられていたという』、安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。
・『「幹部には目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」  「組織や人事に関して、『社長の意図が素早く実行されるフラットな組織にする』『会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください』『経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える』といった文言が並び、これらビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」(経済誌記者) 小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる。企業にとって清掃や整理整頓、従業員の士気向上は必要ではあるものの、現場に不正行為をさせるような行き過ぎた経営指導はなかったのか。 武蔵野に質問を送ったところ、次のような回答があった(qは質問、Aは回答)。 Q:貴社がビッグモーターに経営指導していたのは事実ですか? A:「弊社の経営サポート会員企業様であり、弊社主催の研修・セミナーにご参加頂いたことはございます」 Q:「環境整備点検」「経営計画書」などの仕組みは、貴社の経営指導の一環ですか? A:「そのような仕組みの導入を推奨していたのは事実ですが、過度な経費削減、無理な努力目標や自己啓発を強いるよう指導する事はございません。ましてや、パワハラまがいの行為を誘発するようなことは、あってはならないものと考えております」 Q:ビッグモーターへの経営指導はいつから開始されましたか? 現在も継続中でしょうか? A:「個別の顧客情報に関しましては、お答えいたしかねます」 Q:特別調査委員会の報告書にも、無理な努力目標や自己啓発を強いられ、パワハラまがいの行為があったと指摘されていますが、このあたりも貴社が指導してきたということで間違いないでしょうか? 見解を聞かせてください。 A:「前述のように全くの間違いであります。そのような指導はしておりません」 ビッグモーターの経営指導には関わっていたものの、不正行為に至る無理な指導は決して行っていないという。 ホームページに掲載されている武蔵野の60期経営計画についての、小山氏による次のような記述がある。 《この経営計画書は家族の期待と責任を一身に背負っている社員が、安定した生活を築くため、昨年の過ちを正し、お客様に愛され支持される会社を実現するために、数字による目標と方針を明確にし、何をしなければならないか、又、何をしてはいけないかを、全身全霊、精魂を込めて書き上げたものです》 ビッグモーターは社長、副社長の辞任で創業家が全役職から退任したことになるが、大株主として引き続き同社への関与、影響力が指摘されている。ビッグモーターは不正という“過ち”を正し、客を裏切らない企業として再出発できるのか』、「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。

第三に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが記載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326768
・『連日報じられるビッグモーターの不正事件。これは「ビッグモーター1社の凋落(ちょうらく)」だけでは終わらないでしょう。私は、中古車業界・他業界まで波及する影響があると予測します。今後、何が起こるのか? 平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちも、このままではいられないかもしれません』、興味深そうだ。
・『ビッグモーターの不正事件は「1社の凋落」では終わらない  ビッグモーターの不正事件が大きく動き出しました。不正は2021年秋から断続的にメディアに報道されてきたのですが、ビッグモーターという大企業の特殊性から、これまで2年にわたってそれほど大きな事件とはなっていなかったのです。 ビッグモーターは未上場企業であるために情報の開示義務がないことが、この事件の特異な状況を作り出していました。さらに内部告発やリークから不正を疑う報道が出るたびに会社がそれを黙殺したことで、後追い報道も出づらかったのです。 今月、事態が大きく動いたのは第三者委員会の報告書が明らかになったからなのですが、実はこの報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展しました。 今回の記事では未来予測の専門家の立場から「これから何が起きるのか」にフォーカスして、ビッグモーターを取り巻く今後について予測していきます。) 上記の事情から、記事中の記述はメディアがこれまで報道してきた内容に依拠している点をご容赦ください。 これから起きると予測されることは、以下の三つです。 (1)中古車相場の暴落 (2)損保ジャパンへの飛び火 (3)ビッグモーター自体の凋落(ちょうらく) それぞれ、これから起きることを整理していきましょう』、「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。
・『(1)中古車価格は確実に暴落する  今回の報道で「これから間違いなく起きる」と断言できることは、ビッグモーターから車を買う人がいなくなり、ビッグモーターで自分の車を修理をする人がいなくなることです。過去の不祥事から類推するに、売り上げは8割から9割減少するでしょう。 ビッグモーターは情報非開示企業ですが、従業員数6000人、全国300店舗以上を展開していて「買取台数6年連続日本一」をうたう、まさに中古車販売業界のリーダー企業といえる存在です。 その会社が修理の際に、「ヘッドライトのカバーを割る」「ドライバーで車体に傷をつける」「ゴルフボールを靴下に入れたもので車をたたいて、傷を拡大させる」といった修理代金の水増しを行っていたことが分かりました。 そのことがこれだけの規模で、ワイドショーなどで報道され続けたわけですから、ビッグモーターを使おうという消費者は、事件を知らない人以外いなくなると考えるのが普通です。 それで何が起きるかというと、売り上げが9割減っても6000人の従業員がいて300店舗が営業している以上、現金が枯渇します。銀行からは追加の借り入れができるどころか、むしろ借入金の返済を求められることになります。 そこで経営陣ができることは、在庫の中古車を投げ売りすることです。店頭では大幅な値引きセールが行われるでしょうけれども、問題は中古車の品質を消費者がどう考えるかです。 「きちんとメンテナンスされていないのでは?」「不具合が隠されているんじゃないだろうか?」 そう考えて、大幅な値引きをされた中古車をビッグモーターから買うことも消費者は躊躇(ちゅうちょ)することになるでしょう。 そうなると、経営としては中古車在庫をオークションで換金売りするようになります。 実は、昨年の夏までは中古車市場は空前の高値をつけていました。コロナ禍や上海ロックダウンのあおりを受けた部品の供給遅れや半導体不足で新車の納車が1年待ちといった状況となり、人気車種の中古価格が新車価格を上回っていたのです。 その半導体不足が解消され始めたことや、大きな買い手であるロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきたわけです。これまで供給不足から高値になっていた中古自動車が、今回の事件によりビッグモーターが在庫を放出すれば、逆に供給過多に転じてしまう。そのため、中古車価格の暴落が起きる可能性が高まってきたのです。 業界にとってはとんだとばっちりになりますが、この先、中古車市場は大いに冷え込むことになるでしょう』、「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。
・『(2)損保ジャパンは説明責任を強く問われるだろう  さて、7月25日のビッグモーターの記者会見で非常に興味深いやり取りがありました。 同社の兼重宏行前社長が途中まで不正に関与した社員について「刑事告発する」と主張していたのですが、会見の最後に「先ほど刑事告発の話をしましたが、質問を受けて考えてみると、その責任も私にあるなと。そこまでする必要はないなと考え直しましたので、訂正します」と発言を修正したのです。 刑事告発をすれば当然社内に捜査の手が入りますし、裁判を通じて事実関係が明らかになります。刑事告発をしないことにすればそれがなくなります。 これは私の視点ですが、現在被害者の立場にある損保ジャパンがビッグモーターを刑事告発をするかしないかが、この事件の試金石になるでしょう。予測としてはこの先、損保ジャパンは今回の事件についての説明責任を強く求められるようになります。 被害者である損保ジャパンの白川儀一社長は今回の事件について、「会社全体としてビッグモーターの不正行為を見抜けなかった」と陳謝しています。一方で、この謝罪について疑念を向ける報道があります。) 前述の通り、ビッグモーターは未公開会社です。しかし、2015年に中古車売買を行っていた公開会社のハナテンを買収した際に、株主構成が公開されています。その時点では、損保ジャパンが持ち株比率6.88%で兼重前社長に次ぐ第2位の株主になっていることが判明しています。 他の保険会社2社の出向者がそれぞれ3名のレベルであるのとは違い、損保ジャパンが37人という突出した出向者を出していることはこの資本関係から説明がつきます。 2021年秋に内部告発で水増し請求が表面化して、翌2月には損保3社がサンプル調査を行い多数の工場で水増し請求が起きていたことが発覚しました。結果を受けて3社ともビッグモーターとの取引を停止したのですが、損保ジャパンだけは22年7月に「組織的な不正の指示がなかったことを確認できたため」という理由で、受け入れを一時再開します。 一方で、損保ジャパンの白川社長によれば、同社の経営陣が今回の不正の内部告発の情報を知ったのは2022年の夏だといいます。損保ジャパンが弁護士を含めた調査委員会を立ち上げることを表明するのはそのずっと後の2023年7月、つまり事件が完全に表面化するまでの10カ月以上なぜか調査を始めていないのです。 ビッグモーターの記者会見で現場のことは知らないとしていた兼重前社長が、損保ジャパンの出向社員は関与していないことだけは知っていると強調していたのも印象的でした。 実は損保ジャパンは2019年に、ビッグモーターに関して「完全査定レス」の仕組みを導入しています。それまではビッグモーターが修理の見積もりを作成したら、損保ジャパンの損害査定人(アジャスター)がその見積もりをチェックしてから修理に着手していました。これは保険の一般的なワークフローです。 しかし、ビッグモーターではそのチェック工程を完全に省略して保険金を支払う形に変えたのです。 損保ジャパンの出向者は不正の現場に立ち会っていないということですが、工場長会議には出ていたという報道がありますし、ビッグモーターが修理1件当たりの工賃にノルマを設定していたことも知っていたという報道もあります。 そもそも、修理1件当たりの工賃にノルマがあるということ自体がいろいろと不可解です。工賃は一定ではなく車の状態によって変動するため、修理の程度が軽微であれば、ノルマを達成できないことだってあるはずです。 そしてよく考えてみると、損保ジャパンはそれほど大きな被害は受けていないかもしれません。 ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます。 邪推すれば、全体での収支は維持できている可能性があるのです。 いずれにしてもこれから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになるということだけは間違いないでしょう』、「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。
・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がついてしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 中古車業界の他社から見れば、ビッグモーターのブランドは「絶対に要らないブランド」でしょう。 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。)不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。

第四に、11月17日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/716001
・『自動車保険金の不正請求問題をきっかけに経営難に陥った中古車販売大手ビッグモーターに思わぬ援軍候補が現れた。 大手総合商社の伊藤忠商事は11月17日午後、「ビッグモーター社が運営する事業について再建の可能性を検証するために、これよりデューデリジェンスを開始する」と発表した。 伊藤忠商事のほか、子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社がビッグモーターと資産査定(デューデリジェンス)の独占契約を結び、来春までに買収の可否を判断する。 現在、ビッグモーター株の100%を握る兼重宏行・前社長ら創業家が経営に一切関与しないことが条件になる』、興味深そうだ。
・『市場は買収検討を「買い」と判断  ビッグモーター側も同時にリリースを発表し、伊藤忠商事について「自動車関連事業におけるハンズオン経営の実績も有し、オペレーション効率化、成長戦略の立案等にも強みを持っている」と評価した。 17日、午前中から上昇基調だった伊藤忠商事の株価は、午後1時に日本経済新聞が「買収検討」の速報を流した後も上がり続け、終値は前日比2.3%高い6132円をつけた。市場は買収検討を「買い」と判断した。) 一連の不正を受け、国土交通省は10月、ビッグモーターの34事業所を道路運送車両法に基づいて事業停止とした。さらに金融庁は保険業法に基づき、同社の保険代理店登録を11月30日付で取り消す方針だ。 伊藤忠商事はなぜ、そんな火中の栗を拾おうとするのだろうか』、大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。
・『「見送る可能性も十分ある」(同社関係者は、「今回の買収検討は創業家支援ではない。厳格なデューデリの結果、案件を見送る可能性も十分ある」と強調する。 JWPとの意見交換の中で今回の案件が浮上し、ビッグモーターのファイナンシャルアドバイザーを務めるデロイトトーマツから開示された資料を基に検証した。その結果、より詳しいデューデリを行う価値があると判断したようだ。 伊藤忠商事とビッグモーターには、これまで取引関係はない。だが、伊藤忠グループでは、中古車販売のほか、自動車整備、保険やローンの販売も行うなど、自動車ビジネスとの関係は深い。 イギリス最大手のタイヤ小売りであるクイックフィットも傘下に持つ。2023年8月には全国の整備工場1万1500カ所の自動車整備工場とネットワークを持つリース車両整備受託会社「ナルネットコミュニケーションズ」への出資参画を表明したばかりだった。 「商社が中古車業界に興味を持っているという話は以前からあった。伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い。(今回の基本合意に)違和感はない」と中古車業界の関係者は話す。) 一方、ビッグモーターはほぼ全国に店舗を持ち顧客との接点も多い。整備工場の設備も比較的新しい。ビッグモーターの事業と伊藤忠グループの自動車関連事業は親和性が高く、シナジー(相乗効果)がそれなりに見込めると伊藤忠側は判断したようだ。 伊藤忠商事をはじめとする総合商社は資源市況の高止まりや円安効果により業績は好調、2024年3月期の業績予想も上方修正が相次いでいた。伊藤忠商事も11月6日に通期純利益予想を7800億円から8000億円に引き上げたばかりだった。潤沢な資金を背景に、各社は有望な成長投資先を模索している。 ただ、伊藤忠には厳しい投資基準があり、投資額に見合う成長が厳格に求められる。今年8月に発表した、子会社・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の完全子会社化案件ですら「浮かんでは消え、消えては浮かんだ案件」(鉢村剛CFO)だったという』、「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。
・『買収価格は極めて厳しいものになる  急転直下で浮上した今回の案件は相乗効果がわかりやすい一方、伊藤忠商事から提示される買収価格はビッグモーターにとって、極めて厳しいものになるだろう。 前述のように伊藤忠側は、創業家からの経営切り離しを支援の条件としており、創業家がビッグモーター株の100%を握る資本構成も今後、大きな論点になる。会社分割でビッグモーターを解体し、創業家から切り離された優良資産だけ伊藤忠が買い取っていく可能性もある。 ビッグモーター再建の道筋は、新たな局面に入った』、「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 
タグ:(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) 保険 「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。 安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。 「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。 歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。 日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」 「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。 「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。 ・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がつい 「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、 「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。 「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。 鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」 ダイヤモンド・オンライン 遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。 「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。 大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。 東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」 思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 )不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。 てしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 デイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」
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ネットビジネス(その14)(旅行サイト最大手の「入金遅延」、集団訴訟に発展! ブッキングドットコムに旅館オーナー怒りの声、ブッキング・ドットコムの未払いトラブル 今起きていること 宿泊施設が考えるべきことを整理した【コラム】、ついに逮捕された“私人逮捕系”ユーチューバー「煉獄コロアキ」…「借金1億円」「家賃踏み倒し」「反ワク活動」の呆れた履歴書) [イノベーション]

ネットビジネスについては、本年9月27日に取上げた。今日は、(その14)(旅行サイト最大手の「入金遅延」、集団訴訟に発展! ブッキングドットコムに旅館オーナー怒りの声、ブッキング・ドットコムの未払いトラブル 今起きていること 宿泊施設が考えるべきことを整理した【コラム】、ついに逮捕された“私人逮捕系”ユーチューバー「煉獄コロアキ」…「借金1億円」「家賃踏み倒し」「反ワク活動」の呆れた履歴書)である。

先ずは、本年10月19日付け東洋経済オンライン「旅行サイト最大手の「入金遅延」、集団訴訟に発展! ブッキングドットコムに旅館オーナー怒りの声」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/709134
・『オンライン旅行予約サイト(OTA)世界最大手、Booking.com(ブッキングドットコム)の「入金遅延問題」に複数の宿泊施設のオーナーが怒りの声を上げている。ブッキングドットコムでは、システム更新に伴い今年6月から一部の宿泊施設への入金遅延が相次いでいる。これにより経営の打撃を受けている宿泊施設が、オランダのブッキングドットコムと日本法人であるブッキングドットコムジャパンを相手取り、近く集団提訴を起こすというのだ』、「旅行予約サイト・・・世界最大手」での「入金遅延」とはどうしたのだろう。
・『10月20日にも集団提訴に踏み切る  宿泊施設側の代理人である加藤博太郎弁護士によれば、10月19日を期日として、ブッキングドットコム側に遅延金の支払いを求めている。解消されなければ、10月20日にも集団提訴に踏み切る。10軒以上が名を連ね、被害総額は最低でも数千万円になる見込みだ。 岐阜県や奈良県などで複数の宿泊施設を運営している風屋グループの松尾政彦代表も集団提訴の原告の1人として名を連ねる予定だ。) 同社が運営する施設の一部では、予約の9割以上をブッキングドットコムに依存している。9月分の売り上げ600万円が計上されているにもかかわらず、ブッキングドットコムからの入金はない。 松尾氏の頭を悩ませているのが、年金事務所とのやりとりだ。年金事務所に事情を説明しているものの、理解はされず、「支払ってもらえないのであれば、(土地や施設などを)差し押さえる」という旨の連絡があったそうだ。こうした支払い遅延への圧力をストレスに感じ、閉館を決めた宿泊施設もあるという。 「私は賠償金がほしいわけではない。提訴を通じて、ブッキングドットコムがわれわれのような小さな宿泊施設にも支えられていることを知ってほしい」と松尾氏は訴える。 岐阜県や奈良県などで複数の宿泊施設を運営している風屋グループ。一部施設は予約の9割以上をブッキングドットコムに依存しているが、入金が行われていない(写真:風屋グループ) ブッキングドットコムによる宿泊料金の支払い遅延が始まったのは、今年の6月から。引き金となったのは、アムステルダム(オランダ)の本社で行われた決済システムの更新だ。 会社側の説明によれば、現在ではシステム改修は終了しており、「大半の支払いは再開されたが、予期せぬ技術的な問題のため一部には遅れが生じているのは事実」と認めている』、「同社が運営する施設の一部では、予約の9割以上をブッキングドットコムに依存している」、「頭を悩ませているのが、年金事務所とのやりとりだ。年金事務所に事情を説明しているものの、理解はされず、「支払ってもらえないのであれば、(土地や施設などを)差し押さえる」という旨の連絡があったそうだ。こうした支払い遅延への圧力をストレスに感じ、閉館を決めた宿泊施設もあるという」、確かに余りに特殊要因過ぎて、「年金事務所」が特例よして対応するのは難しそうだ。
・『中小規模の旅館は財務基盤が脆弱  システム改修は終わっているのに、なぜ宿泊料金の入金処理がここまで長引いているのか。その原因として、「海外と日本の銀行間送金でエラー」が発生していることや、「登録している(宿泊施設の)銀行口座の照合に時間がかかる」ことを同社は挙げている。 入金の遅延となると経営難が想起されるが、「財政困難は発生していない」と説明する。実際、ブッキングドットコムを運営するブッキングホールディングスの決算資料を見ると、2023年6月末の現預金は146億ドル(約2兆1900億円)と潤沢で、1~6月の業績も売上高は92億ドル(約1兆3850億円)、純利益は15億ドル(約2300億円)と業績も好調だ。 一方、入金遅延により大きな打撃を受けているのが、ブッキングドットコムからの予約比率が高い国内の零細宿泊施設だ。中小規模の旅館などは大手ホテルと比較すると財務基盤が脆弱で、月々の入金が遅れるだけで資金繰り悪化に直結しかねない。) 前出の松尾氏は、「ブッキングドットコムからの支払い遅延によって、従業員への給与や(食品やアメニティなど)仕入れ業者への支払いが遅れている宿泊施設もある」と語る。 現在、松尾氏が最も不満を持っているのは、ブッキングドットコム側の対応だ。入金遅延について松尾氏は、8月以降ブッキングドットコムのサポートセンターに連絡しているが、「財務部に問い合わせる」と返事があったのみだった。 その後、支払いの遅延についてブッキングドットコム側へ内容証明郵便を送付すると、大阪の担当者から「直接会って、事情の説明とお詫びをしたい」と連絡があったという。だがこれも先方の都合によりオンラインへと変更になった。 「支払いの遅延が発生しているのであれば、担当の取締役や社長などが宿泊施設側へ事情の説明と謝罪をするべき」と松尾氏は憤慨する』、世界的に展開している「ブッキングドットコム」にしてみれば、極東の小さな国での「支払い遅延」などとるに足らないのだろう。
・『ブッキングドットコムに頼らざるを得ない事情  これほどの入金遅延が起きているブッキングドットコムだが、これを機に宿泊施設の離反が起きるかというと、話はそう簡単ではない。「ブッキングドットコムの予約比率は他の海外OTAと比べても高く、集客力も高い」。インバウンドに特化したホテル関係者はこう指摘する。 自社HPからインバウンド集客を募るには、海外でのPR活動などが必要になる。だが、中小宿泊施設にそうした宣伝活動を行う余力や資金はなく、ブッキングドットコムに頼らざるを得ないというのが現状だ。コロナ禍が一巡し、インバウンドの回復が続く中、ブッキングドットコムの存在感はさらに高まっていくことも考えられる。 「われわれのような宿泊施設があってこそ、ブッキングドットコムの競争優位性がある。今回の件を通じてより良い協力関係を築けるようにしたい。それが提訴で得られる一番の利益だと思う」。松尾氏はそう思いを打ち明ける。 ブッキングドットコムはこうした声に耳を傾ける必要がある』、「自社HPからインバウンド集客を募るには、海外でのPR活動などが必要になる。だが、中小宿泊施設にそうした宣伝活動を行う余力や資金はなく、ブッキングドットコムに頼らざるを得ないというのが現状だ。コロナ禍が一巡し、インバウンドの回復が続く中、ブッキングドットコムの存在感はさらに高まっていくことも考えられる」、やむを得ないようだ。

次に、11月14日付けトラベルボイスが掲載した下電ホテルグループ代表/元全旅連青年部長/日本旅館協会政策委員の永山久徳氏による「ブッキング・ドットコムの未払いトラブル、今起きていること、宿泊施設が考えるべきことを整理した【コラム】」を紹介しよう。
https://www.travelvoice.jp/20231104-154539
・『旅館経営者の永山久徳です。 今年夏頃から、世界大手オンライン旅行会社ブッキング・ドットコム(Booking.com)による宿泊事業者への支払い遅れの問題が表面化しています。日本では、とうとう宿泊事業者が集団訴訟を起こす事態にまで発展してしまいました』、「宿泊事業者への支払い遅れの問題が表面化」、これを詳しくみたものである。
・『そもそも、何が起きているのか?  今回の件は、日本の旅行業法が適用されない外資系のオンライン旅行会社(海外OTA)と日本の宿泊事業者の間でおきているBtoB取り引きでのトラブルです。宿泊施設がブッキング・ドットコムを介して旅行者に客室を販売し、宿泊サービス提供後にブッキング・ドットコムから支払われるはずの宿泊代金の入金が大幅に遅れているという事態です。 今年夏頃から宿泊事業者から入金遅延の声が聞こえ始め、9月になるとテレビなど大手メディアが報じ始めました。10月10日には、ブッキング・ドットコムが正式に取引先に対して謝罪。今回の入金遅延の理由と経緯を説明しました。 その謝罪文によると、今回の支払いの滞りはオンライン上の安全性とセキュリティを確保するための新たな決済プラットフォームに移行する過程で発生したものだといいます。大半の支払い作業はすでに再開されているものの、予期せぬ技術的な問題が発生したために、一部のパートナーへの支払いが遅延していると説明しました。 ブッキング・ドットコムは、取引先に直接連絡窓口を設けて対応しましたが、事態は収束せず、10月20日には「一部報道について」という文書を公表し、再度、謝罪と経緯の説明をするに至りました。その文書には、以下のような一文があります。 「ブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社は、Booking.com B.V.をサポートする会社として存在しています。法人機能の中ではBooking.comプラットフォームでの決済の運営や管理には関与していません。」 同社の日本支社は、オランダ本社をサポートする存在であって、トラブル解決のための決済運営や管理はオランダ本社が行っているということです。 そもそも、日本には旅行者を保護するために、旅行業者を監督する法律として旅行業法があります。日本で旅行業を営むためには、旅行業法で定められた旅行業登録を行う必要があります。日本で知名度の高いOTAの中にも、「旅行商品の販売サイトではなく宿泊施設と利用者の仲介システムに過ぎない」という理屈からこの旅行業登録を行っていない事業者が存在します。海外OTAには、特にこのケースが多いのです。 つまり、日本で旅行業登録を行っていない海外OTAは、旅行業法の対象外となります。本拠地の法に依るべきという原則もありますが、そもそも旅行業法では海外OTAを日本人が利用することを想定されておらず、海外OTAとのトラブルから消費者を守るという概念が薄いのです。もっと言えばこの旅行業法は、事業者間のトラブルを解決したり仲裁したりするものでもありませんが、運用にあたって所属団体への供託金制度などもあり、万一の場合の救済機能は果たしていました。 ブッキング・ドットコムは、日本国内では旅行業と呼ぶことができず、法で守られていない以上、利用者も自己責任で利用することが求められる一方、事業者においても商取引ではより慎重であるべきでした』、「日本で旅行業登録を行っていない海外OTAは、旅行業法の対象外となります。本拠地の法に依るべきという原則もありますが、そもそも旅行業法では海外OTAを日本人が利用することを想定されておらず、海外OTAとのトラブルから消費者を守るという概念が薄いのです。もっと言えばこの旅行業法は、事業者間のトラブルを解決したり仲裁したりするものでもありませんが、運用にあたって所属団体への供託金制度などもあり、万一の場合の救済機能は果たしていました」、なるほど。
・『入金遅延の発生時、とるべき対処は?  今回、集団訴訟に踏み切った宿泊施設の中には、3か月分の入金が無いケースや、遅延額が数千万円に上る事例があるようです。こうした事態は、同業者として確かに大変なことだと思います。宿泊施設の経営に影響を及ぼす重大な事態です。 しかし、なぜそこまで傷が広がってしまったのでしょうか。世界大手といわれる企業を信頼しすぎてしまったからでしょうか?振り返ってみて傷が広がる前にできることはなかったでしょうか。 例えば、私が海外出張などでユーザーとして海外OTAを利用する時、稀に「宿泊施設の事情により予約を取り消します」との通知が来ることがあります。ブッキング・ドットコムの規約を検証してみる必要がありますが、すでに入っている予約を宿泊施設側から断ることは可能なのではないでしょうか。つまり、入金が予定通り実行されていないと認識した時点で、その後の予約を宿泊施設側からキャンセルするアクションがとれなかったのか振り返る必要があると思います。もし危険だと感じたのであれば、先々の販売を止める必要があったと考えられます。それによって、支払い遅延の金額を低くできた可能性があるからです。 一般的な物品を販売・納品する業者であれば、取り引き相手からの支払い遅延が一回でも発生すれば即要注意先として扱うでしょう。相手に電話してもサポートセンターなどを経由してうまく伝わらない、納得できる回答が得られない場合であればなおさらです。有名企業だから、大企業だから、何かの間違いだろう、そのうち何とかなるだろうと過信してしまう気持ちは誰にもありますが、経営に影響するくらいの遅延を自衛できなかったとすれば警戒心の薄さもトラブルを引き起こした遠因かも知れません』、「経営に影響するくらいの遅延を自衛できなかったとすれば警戒心の薄さもトラブルを引き起こした遠因かも知れません」、その通りだ。
・『販売チャネルの分散化、ポートフォリオは永遠の課題  宿泊施設にとって、販売チャネルの分散化は永遠の課題となっています。過去には、旅行会社1社に送客を依存していた宿泊施設が、その旅行会社との関係が悪化したことによりあっという間に窮状に陥ったケースがいくつもありました。 また、宿泊販売の主戦場がリアルからOTAにシフトした後も、売りやすい数社に販売を集中させたことで、力を付けたOTAから従前より不利な契約内容に変更を迫られるなど、宿泊施設は何度も苦い経験をしてきました。 例えば発電方法にしても、工場における部品の供給元にしても、一つにまとめれば経営効率は上がりますが、あえて分散させることでリスクが軽減されることは理解できるはずです。海外サイトはその管理も手間がかかるため、売れるサイトに集中することは一見効率的で成果も出やすいですが、今回のようなトラブル発生時には一気に危機に変わります。私も、旅館経営者として他人ごとではありません。再度、足元を見つめなおすべきだと思っています』、「例えば発電方法にしても、工場における部品の供給元にしても、一つにまとめれば経営効率は上がりますが、あえて分散させることでリスクが軽減されることは理解できるはずです。海外サイトはその管理も手間がかかるため、売れるサイトに集中することは一見効率的で成果も出やすいですが、今回のようなトラブル発生時には一気に危機に変わります」、その通りだ。
・『インバウンド急増の今こそ、考えておきたいこと  コロナ後のインバウンド急増で、再び宿泊事業への参入が増えてきました。多くの外国人が日本を目指して来る中、商機を掴みたい気持ちはわかります。しかし、ほんの1年前まで、インバウンドに頼っていた宿泊施設は青色吐息でした。 それ以前、韓国や中国との関係悪化や、SARSなどの感染症発生、インバウンドの環境は目まぐるしく変化してきました。地政学的リスクや為替や経済環境も含めて、海外の需要を的確に判断することは、どんな識者にも難しいことといえます。新規参入は、そのリスクを理解した上でのチャレンジであるべきだと思います。 今回のブッキング・ドットコムのトラブルに関しても、訴訟にかかるコスト、オランダ本社との折衝にかかる時間や手間を考えると、基本的にはブッキング・ドットコムを信じて待つしかありません。訴訟に勝ったところで、支払いをするかしないかは実質的に先方の判断となるのは変わらないのが現実です。 今後も外国人旅行者にとってブッキング・ドットコムは、旅行予約で欠かせないOTAであり続けるでしょう。今回のトラブルを忘れずに、宿泊施設は海外OTAとの取り引きについてメリットとリスクを見極めながらお付き合いしていくべきです。一日も早く解決するよう注視します』、「今後も外国人旅行者にとってブッキング・ドットコムは、旅行予約で欠かせないOTAであり続けるでしょう。今回のトラブルを忘れずに、宿泊施設は海外OTAとの取り引きについてメリットとリスクを見極めながらお付き合いしていくべきです」、同感である。

第三に、11月14日付けデイリー新潮「ついに逮捕された“私人逮捕系”ユーチューバー「煉獄コロアキ」…「借金1億円」「家賃踏み倒し」「反ワク活動」の呆れた履歴書」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/11140602/?all=1
・『“私人逮捕系”ユーチューバーと呼ばれ、「煉獄コロアキ」名で活動していた杉田一明容疑者(40)が13日、名誉棄損容疑で警視庁に逮捕された。一方的に相手を「犯罪者」と決めつけ、吊るし上げる様子をモザイクもかけずにYouTubeに投稿していた杉田容疑者に対し、警視庁は余罪も含めて捜査中だ。実はこの男、今回の一件に限らず“トラブル”まみれの半生を送ってきたという。 【写真を見る】「大麻合法」「靖国神社参拝」「パトカー“ジャック”」…煉獄コロアキの“やりたい放題”画像 逮捕容疑は今年9月、都内の帝国劇場にいた18歳の女性を付け回して撮影し、「転売ヤー」「パパ活女子」などのテロップとともにその様子を動画投稿。しかし捜査関係者によれば「女性が不正転売に関わった事実は確認されていない」という。 杉田容疑者は取り調べに対し、「理解しました」などと話しているというが、SNS界隈では「新手の“迷惑系ユーチューバー”として、コロアキはここ1~2年で急速に知名度を上げた一人だった」という。 一体どういう人物なのか。親交のあったジャーナリストの草下シンヤ氏がこう話す。 「もともと福岡県北九州の出身で、22歳の頃に初めて上京してきたといいます。地元の高校を中退後はガソリンスタンドや土方などのバイトをしてカネを貯め、デイトレードを始めたと言っていました。トレーダーとして30代前半の時、3億円という最高収益を上げますが、その後は負けが込み、いまも1億円以上の借金を抱えています」 正味の借金額は証券会社に対する2000~3000万円程度だが、返済を一切していないため、利息が雪ダルマ式に膨らんでいったという。さらに家賃の踏み倒しの常習犯でもあり、裁判所から強制執行を受けた過去が何度もあるという』、「福岡県北九州の出身で、22歳の頃に初めて上京してきたといいます。地元の高校を中退後はガソリンスタンドや土方などのバイトをしてカネを貯め、デイトレードを始めたと言っていました。トレーダーとして30代前半の時、3億円という最高収益を上げますが、その後は負けが込み、いまも1億円以上の借金を抱えています」 正味の借金額は証券会社に対する2000~3000万円程度だが、返済を一切していないため、利息が雪ダルマ式に膨らんでいったという。さらに家賃の踏み倒しの常習犯でもあり、裁判所から強制執行を受けた過去が何度もある」、実に「華麗」なるキャリアだ。
・『「自己破産したい」  「昨年2月、同棲中の彼女の貯金から650万円を勝手に引き出し、デイトレードに注ぎ込んで大負け。それを機にトレーダーは引退したと宣言していました。その後は、自身のTwitterで“寄付”などを受けながら食いつないでいたようですが、当時、『借金はさすがに返せないから、自己破産したい』と漏らしていました」(草下氏) 21年10月頃からは「反ワク(コロナワクチン反対)」活動にも手を染めるが、その理由を「売名目的だった」と草下氏らに明かしていたという。 「昨年は“レンタルコロアキ”と称して、SNS上で声が掛かれば一緒に飲みに行ってギャラをもらうという活動をしていました。その他にも格闘技イベントに出たり、今年4月には東京都の武蔵野市議選に立候補(落選)したりするなど、目立つためなら何でもやっていた印象です」(草下氏) そんななか、もっと注目を浴びようと目を付けたのが「私人逮捕」の動画投稿だったという』、「目立つためなら何でもやっていた印象です」、なるほど。
・『YouTube収益も差し押さえ  「都内の大久保公園で“買春”している人たちに突撃して、ホテルに入るのを阻止する様子を撮影。当初、女性の顔にモザイクをかけないで配信していたところ、『やりすぎだ』との声が上がり、途中からモザイクをかけるようにしたそうです」(草下氏) その後に投稿したのが「チケット不正転売撲滅」を謳った、今回の逮捕容疑ともなった一件だ。逮捕直前の10日、杉田容疑者は自身のSNSにYouTubeアカウントが8日に停止されたことを報告し、〈俺様の月150万~200万の不労所得がなくなったぜ マジでふざけんじゃねえ〉と怒りをぶちまけた。 「コロアキ氏のYouTube収益がそれほど多額だったはずがなく、私が『そんなに稼いでいないでしょう』と訊いた時も、本人は『ウソです』とアッサリ認めていました。借金のせいで口座に収益が入金されてもすぐに差し押さえに遭うとも言っていた。“私人逮捕系”の動画に関しては以前から『気を付けたほうがいい』と忠告していましたが、本人は大して気にも留めていなかったようです。注目を浴びることに“中毒”になっていて、逮捕のリスクなどは見えていなかったのかもしれません」(草下氏) すべては自業自得だが、逮捕によって被害者の名誉回復が完全に果たされるわけではない。それでも行き過ぎたユーチューバーの行為に歯止めのかかることが期待され、他の私人逮捕系ユーチューバーにも捜査の手が伸びる日は近いと囁かれている』、「逮捕によって被害者の名誉回復が完全に果たされるわけではない。それでも行き過ぎたユーチューバーの行為に歯止めのかかることが期待され、他の私人逮捕系ユーチューバーにも捜査の手が伸びる日は近いと囁かれている」、「他の私人逮捕系ユーチューバー」も違法性のある活動をしているのであれば、「捜査」すべきだ。
タグ:」、実に「華麗」なるキャリアだ。 「逮捕によって被害者の名誉回復が完全に果たされるわけではない。それでも行き過ぎたユーチューバーの行為に歯止めのかかることが期待され、他の私人逮捕系ユーチューバーにも捜査の手が伸びる日は近いと囁かれている」、「他の私人逮捕系ユーチューバー」も違法性のある活動をしているのであれば、「捜査」すべきだ。 「目立つためなら何でもやっていた印象です」、なるほど。 「福岡県北九州の出身で、22歳の頃に初めて上京してきたといいます。地元の高校を中退後はガソリンスタンドや土方などのバイトをしてカネを貯め、デイトレードを始めたと言っていました。トレーダーとして30代前半の時、3億円という最高収益を上げますが、その後は負けが込み、いまも1億円以上の借金を抱えています」 正味の借金額は証券会社に対する2000~3000万円程度だが、返済を一切していないため、利息が雪ダルマ式に膨らんでいったという。さらに家賃の踏み倒しの常習犯でもあり、裁判所から強制執行を受けた過去が何度もある デイリー新潮「ついに逮捕された“私人逮捕系”ユーチューバー「煉獄コロアキ」…「借金1億円」「家賃踏み倒し」「反ワク活動」の呆れた履歴書」 「今後も外国人旅行者にとってブッキング・ドットコムは、旅行予約で欠かせないOTAであり続けるでしょう。今回のトラブルを忘れずに、宿泊施設は海外OTAとの取り引きについてメリットとリスクを見極めながらお付き合いしていくべきです」、同感である。 「例えば発電方法にしても、工場における部品の供給元にしても、一つにまとめれば経営効率は上がりますが、あえて分散させることでリスクが軽減されることは理解できるはずです。海外サイトはその管理も手間がかかるため、売れるサイトに集中することは一見効率的で成果も出やすいですが、今回のようなトラブル発生時には一気に危機に変わります」、その通りだ。 「経営に影響するくらいの遅延を自衛できなかったとすれば警戒心の薄さもトラブルを引き起こした遠因かも知れません」、その通りだ。 「日本で旅行業登録を行っていない海外OTAは、旅行業法の対象外となります。本拠地の法に依るべきという原則もありますが、そもそも旅行業法では海外OTAを日本人が利用することを想定されておらず、海外OTAとのトラブルから消費者を守るという概念が薄いのです。もっと言えばこの旅行業法は、事業者間のトラブルを解決したり仲裁したりするものでもありませんが、運用にあたって所属団体への供託金制度などもあり、万一の場合の救済機能は果たしていました」、なるほど。 「宿泊事業者への支払い遅れの問題が表面化」、これを詳しくみたものである。 永山久徳氏による「ブッキング・ドットコムの未払いトラブル、今起きていること、宿泊施設が考えるべきことを整理した【コラム】」 トラベルボイス 「自社HPからインバウンド集客を募るには、海外でのPR活動などが必要になる。だが、中小宿泊施設にそうした宣伝活動を行う余力や資金はなく、ブッキングドットコムに頼らざるを得ないというのが現状だ。コロナ禍が一巡し、インバウンドの回復が続く中、ブッキングドットコムの存在感はさらに高まっていくことも考えられる」、やむを得ないようだ。 世界的に展開している「ブッキングドットコム」にしてみれば、極東の小さな国での「支払い遅延」などとるに足らないのだろう。 「同社が運営する施設の一部では、予約の9割以上をブッキングドットコムに依存している」、「頭を悩ませているのが、年金事務所とのやりとりだ。年金事務所に事情を説明しているものの、理解はされず、「支払ってもらえないのであれば、(土地や施設などを)差し押さえる」という旨の連絡があったそうだ。こうした支払い遅延への圧力をストレスに感じ、閉館を決めた宿泊施設もあるという」、確かに余りに特殊要因過ぎて、「年金事務所」が特例よして対応するのは難しそうだ。 「旅行予約サイト・・・世界最大手」での「入金遅延」とはどうしたのだろう。 東洋経済オンライン「旅行サイト最大手の「入金遅延」、集団訴訟に発展! ブッキングドットコムに旅館オーナー怒りの声」 (その14)(旅行サイト最大手の「入金遅延」、集団訴訟に発展! ブッキングドットコムに旅館オーナー怒りの声、ブッキング・ドットコムの未払いトラブル 今起きていること 宿泊施設が考えるべきことを整理した【コラム】、ついに逮捕された“私人逮捕系”ユーチューバー「煉獄コロアキ」…「借金1億円」「家賃踏み倒し」「反ワク活動」の呆れた履歴書) ネットビジネス
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中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化) [世界情勢]

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)については、本年4月7日に取上げた。今日は、(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)である。

先ずは、4月28日付けJBPressが掲載した国際ジャーナリストの山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74986
・『実はいま、日本の“スパイ史”に残るような大変な出来事が起きている。 2022年10月、中国と日本の架け橋として活動していた「日中青年交流協会」の元理事長である鈴木英司氏が、中国でスパイ活動の罪で6年間投獄された後に解放され、帰国した。鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だったという。その鈴木氏が『中国拘束2279日』(毎日新聞出版社)という本を上梓した。中国当局から「日本の公安調査庁のスパイ」と認定されて有罪判決を受けた鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判している。 その鈴木氏の帰国とその著書が、いま日本のインテリジェンスに携わる人々の間で大きな波紋を呼んでいるのだ。 例えば、著書で鈴木氏はある「疑惑」を主張している。その疑惑とは、本の帯にも書かれている「公安調査庁に中国のスパイがいる」というものだ。事実であれば日本の情報機関である公安調査庁にとっては一大事であり、その存続すら揺るがしかねない大スキャンダルとなる。 そこで、本稿では次の2点について、筆者の取材からの情報も合わせて考察してみたい』、「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。
・『日中友好活動に長年携わってきたのに  1つ目は、鈴木氏が、日本のために働いたスパイだったのかどうかだ。もう1つは、先に述べた公安調査庁の内部に中国のために働く「二重スパイ」がいるのかどうか、である。 まず簡単に、鈴木氏の来歴を見ていきたい。 著書によれば、鈴木氏は大学卒業後に労働組合職員となる。少年時代から中国に対する関心を持っていたところ、上部団体の日本労働組合総評議会(総評)が中国の労働組合のナショナルセンター・中華全国総工会と交流を開始したことで、その事務局を担当。それを機に度々訪中するようになる。社会党の竹内猛衆議院議員(当時)の秘書を務めた時期もある。また竹内氏の秘書になる前から、社会党の土井たか子衆議院議員(当時)とも親しく、土井事務所が発行した通行証で国会にも通っていたという。) 2016年、日中青年交流協会の理事長として日中交流イベントの打ち合わせのために北京を訪問したところ、帰国直前になって、中国の情報・防諜機関である北京市国家公安局に拘束された。 そして裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない』、「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。
・『公安調査庁はスパイ組織か  本から抜粋すると、有罪になった罪状はこうだ。 (1)中国政府が「スパイ組織」と認定する公安調査庁から、鈴木氏が「任務」を請け負い情報を収集し報酬を得ていた (2)2013年12月4日、鈴木氏が北京で湯本淵(タン・ベンヤン)さん(在日中国大使館の元公使参事官で、すでに中国に帰国)と会食した際、湯さんから北朝鮮関係の情報を聞き、その内容を公安調査庁に提供した (3)提供した内容は「情報」であると中華人民共和国国家保密局に認定された  ここからわかるように、中国当局は鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」と認定している。念のために公安調査庁について説明すれば、法務省の外局で国内外の情報を収集・分析している“スパイ機関”だ。アメリカのCIA(中央情報局)からは、日本側のカウンターパートの一つと認識されている。事実、公安調査庁の職員はCIAで情報収集研修をするなど関係は近い。 公安調査庁は、基本的には対外情報活動はしていないことになっているが、実際は中国などで情報活動を行ってきた。事実、これまで中国当局に逮捕されてきた邦人の中にも、「公安調査庁のスパイ」だった人物が存在する。 ところが鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)。
) 鈴木氏は著書でこう述べている。「『公安調査庁はスパイ組織でもなければ、謀略機関でもない。CIAとはまったく違う』と主張したが、どうやら中国政府は公安調査庁をスパイ機関と認定しているようだった」 残念ながら、この言い分は世界的には通用しない。他国から見れば公安調査庁は、れっきとした日本の情報機関=スパイ機関である。 鈴木氏は、その公安調査庁の職員らと情報交換をしていたことは認めている。しかも、中国での取り調べの際に、公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられて、そのうち4人は知り合いであると答えている(なぜ中国当局が写真を持っていたのかの疑問はまた後に触れる)。 それだけ公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか。筆者は中国の肩を持つ気はないが、いくら鈴木氏が「公安調査庁が情報機関だとは知らなかった」と抗弁しても、それだけでは中国当局を納得させられないだろう』、「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。
・『長年にわたって監視されていた鈴木氏  さらに、(2)については、2013年12月に、北京で在日中国大使館にも勤務していた中国人外交官である湯本淵氏と食事をしているときに、鈴木氏は北朝鮮情勢について質問したという。その質問が、スパイ活動の一環で、その情報を公安調査庁に提供したと認定されている。 実はこの会食の場には、毎日新聞の政治部副部長(当時)も同席していたと、鈴木氏は明らかにしている。そういう縁から、今回の本も毎日新聞出版社から出版されたのかも知れない。) この食事の席で湯氏から聞いた内容が公安調査庁に伝わったのか否か、あるいは伝わっていたとしたらどう伝わったのかは明らかになっていない。ただ、もし何かしらの形で伝わっていたのなら言い訳は難しいだろう。ちなみに判決文によれば、中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという。目をつけられていたということだ』、「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。
・『公安調査庁との間で金銭授受は本当になかったのか  筆者は、鈴木氏が解放され帰国してから、政府関係者や公安関係者、警察などに取材を続けてきた。ある公安関係者は、匿名を条件にこう語っている。 「中国に利することになるのであまり言いたくはないですが、鈴木さんは公安調査庁から金銭を受け取っていました。さらに中国で捕まっている間も、鈴木氏側に(政府から)補償がなされていたと認識している」 この“証言”だけでは断定はできないだろうが、事実とすれば鈴木氏は公安調査庁のエージェントとして中国で活動していたことが疑われる。 この点について、鈴木氏はどう答えるのか。筆者はそれを確認すべく、鈴木氏へのインタビュー申請をしたが断られた。 もっとも鈴木氏は著書の中で、「私は公安調査庁から任務を言い渡されたこともなければ、報酬を受け取ったこともない」「もし公安調査庁がスパイ組織だと知っていたら、そもそも私は同庁の職員とは付き合わない。任務ももちろん帯びていない。任務だとすれば、私の旅費、ホテル代を公安調査庁が支払い、何々について調べろと命じられ、私がそれに応え、さらにレポートにして出すだろう」と否定してはいる。) ただ別の公安関係者たちからはこんな声も聞かれる。 「日本政府は、海外で情報活動していることを建前上、認めていないので、政府は鈴木氏の(公安調査庁から依頼を受けたことはないとの)発言を否定することはできません」 もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である。もちろん愛国的に、情報提供に金銭を受け取らない協力者もいるが……。この点についての真偽は、今後も取材していきたい』、「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。
・『中国情報当局は公安調査庁関係者の写真を撮りまくっている  本稿で考察する2点目は、鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない。 鈴木氏は、取り調べで公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられたとし、そんな写真を持っている中国当局は、公安調査庁に協力者がいるのではないかと指摘している。 もちろん、その指摘が事実である可能性がある。 ただこの話を聞いて思い出したのが、筆者が5年ほど前に、公安調査庁職員から聞いた話だ。 その当時、公安調査庁は、中国の関係者が日本国内の公安調査庁の関係施設に出入りする人たちの顔写真を望遠レンズを使ったりしながら撮影していることを把握していると言っていた。それについては、2020年に出版した拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』にも書いている。であれば、公安調査庁職員の顔写真を豊富に持っていても不思議はない。) さらに、鈴木氏は著書の中で、裁判所に向かう護送車に乗り込んで座ると、なんとその向かい側の席にやはり当局に拘束されて手錠をはめられて座っている湯本淵氏とバッタリ再会したと書いている。そして護送車の中で、スパイ容疑の被告である鈴木氏に、中国人容疑者である湯本淵氏がこう語りかけたという。 「日本の公安調査庁の中にはね、大物のスパイがいますよ。ただのスパイじゃない。相当な大物のスパイですよ。私が公安調査庁に話したことが、中国に筒抜けでしたから。大変なことです」 「日本に帰ったら必ず公表してください」 筆者はこのやり取りにも違和感を抱いている。こんな偶然を、果たして中国当局が許すのだろうか。普通に考えれば、当事者同士で会話をさせれば、口裏を合わせられる可能性もある。結果的に、鈴木氏は湯本淵氏との約束をメディアでの活動や今回の出版で果たしている』、「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。
・『これを機に日本のインテリジェンス体制を見直すべき  また鈴木氏の出版やメディアでの活動は、日本の情報機関の活動に大きな影響を及ぼしている。公安調査庁では、まず中国国内の情報活動を停止することになったという。「公安調査庁内部に中国のスパイがいる」と大々的にぶち上げられたのだから致し方あるまい。そして、本当に中国人スパイが紛れ込んでいるかどうかは別として、これが日本のインテリジェンスにとっては大打撃であるのも間違いない。 逆に言えば、鈴木氏が本当に公安調査庁のスパイだったのか否かはともかく、中国当局としては日本の情報活動を強く牽制することができたことになる。 日本は、世界各国が当たり前のようにやっているサイバー攻撃やハッキングによるサイバースパイ工作も他国に対して仕掛けることができないし、海外でのインテリジェンス活動も“表向き”は行っていないことになっている。その上、今回の件で重要なライバルである中国からの情報もこれまで以上に得られなくなる。少し前には、ロシアのウラジオストクでも日本人領事がスパイ容疑で一時拘束されたこともあり、ロシアにおける情報活動の動きも鈍っている。 果たしてこのままで日本の安全保障や経済安保は大丈夫なのだろうか。むしろ、いま日本のインテリジェンス分野は重大な岐路に差し掛かっていると認識すべきなのではないだろうか。 筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう。 いま動かなければ、鈴木氏のように中国でスパイとして拘束されてしまう邦人(もちろん日本の情報機関の協力者ではない人も含む)は今後も後を絶たないだろう』、「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。

次に、10月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330547
・『日本と中国は政治的な溝だけでなく、ビジネス間の溝も深まっている。「政治、外交がダメでもせめてビジネスでは」――と期待する日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ。今年7月の導入から3カ月あまりがたつが、互いを疑心暗鬼にさせる同法は、日中の経済交流にますます深刻な影響を及ぼしそうだ。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏」、「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。
・『中国の社会システムからはじき出される日本人  この夏中国へ渡航した日本からの出張者が続々と帰国した。現地事情についての情報交換が行われる中、長年にわたり日中間を往来する出張者が異口同音に語るのは「中国の現状は想像を超えていた」ということだ。 北京に出張した人は、北京五輪当時、急ピッチで新設された北京首都国際空港のターミナルについて「ほこりまみれで劣化が激しい」と驚いた。また、上海に出張した人は、宿泊先の老舗ホテルについて「コロナ禍の消毒液の影響で壁やエレベーターのボタンがボロボロ」と、痛ましい変化に眉をひそめる。今や住人がいなくなった「幽霊マンション」はどこにでもあり、企業倒産も珍しくない。 出張した日本のビジネスパーソンたちが問題にしたのは、景気の悪化だけでなかった。 2010年代に上海の現地法人で総経理を務めた経験のあるA氏は、「中国はもう外国人が生活できる場所ではありません。現地に信頼できる中国人がいなければ、外国人は“行き倒れ”になるリスクさえあります」と、中国出張を振り返る。 「コロナ前まで、私は中国の決済アプリでキャッシュレス決済を行っていましたが、今回の渡航では銀行認証が厳格化されて使えませんでした。訪問先の中国東北部でも現金はほとんど使えず、必要なものは友人の中国人のスマホで立て替えて買ってもらいました」 買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという。 「外国人が強いられる不便さ」はすでにビザ申請の時点から始まっていた。福岡県在住のB氏は「ビザ申請書には昔の職場の上司の連絡先どころか、他界した親の情報まで記入させられ、申請書を提出してからは3回も修正させられました」とあきれる。複雑な申請は外国人を遠ざけるには効果的だ』、「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。
・『「反スパイ法」の裏に“外国人アレルギー”  19世紀の半植民地化を経験し、20世紀の東西冷戦では「竹のカーテン」で閉ざされた中国だが、ここに来て“外国人アレルギー”はますます高まっている。 そのきっかけの一つが、今年7月に施行された中国の改正反スパイ法だ。同法はスパイ行為の定義を拡大したもので、「国家機密または国家情報、そのほかの国家の安全と利益に関する文書、データ、情報および物品の窃取、偵察、買収、または不法に提供する活動等」といった文言などが盛り込まれた。 中国では国家安全部による「怪しい活動をしている人物がいればただちに当局に通報せよ」とする文書がネット上に掲載され、7月以降、国民を動員しての“スパイ封じ込め”が一段と強化されるようになった。 浮き彫りになるのは外国人への警戒だ。中国政府は「外国には、中国の社会主義制度を転覆し、台頭を阻止したい勢力が存在する」という認識を持ち、スパイは外国から送られてくることを想定している。 実際、近年中国では、全く知らない外国人がメールやSNSを使って中国人に接触し、中国の軍事機密を調べさせる「スパイ行為」が後を絶たないと中国メディアが報じている。 “外国のスパイ”が狙うのは、政治、経済、国防、最先端技術などを専門にする大学生が多いといい、9月の新学期には中国の各大学で、スパイを見つけた場合の通報方法、国家の安全を脅かす行為を特定する方法などを教える特別講座が設けられた。 大学生は「金欲しさ」に機密を売り渡してしまう傾向があるというが、最近の就職難や経済難を思えば、報酬目当ての情報売却の増加は容易に想像がつく。 国家安全保障に詳しい中国人専門家の投稿記事によると「中国人に対する外国のスパイの要求は、最初は『市内の風景を撮影してほしい』という簡単なものから始まり、次第に港や造船所を撮影してほしいとエスカレートを見せ、与える報酬も多額なものになる」という。 中国当局による取り締まりは強化されている。今年8月、国家安全部は、中国で軍事機密プロジェクトに従事していた女性を、海外でスパイ活動を行っていた容疑で逮捕した。女性は渡航先のイタリアで米国の駐イタリア大使館員と食事などを通して緊密になり、米国移住と引き換えに軍事機密情報を売り渡したという。大使館員はCIAの職員だった。 3月には日本の製薬会社の中国駐在員が反スパイ法違反で拘束され、4月には中国共産党系の新聞「光明日報」の幹部が、北京で日本大使館の職員と面会した直後に中国当局に拘束されるなど、物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる』、「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。
・『会社員を装って中国で情報収集…?日本人に向けられる疑心暗鬼  中国のネット記事に「日本人は戦前から会社員を装って中国に入国し情報を収集しており、いまなお日本人のスパイは中国社会のあらゆる領域に深く浸透している」とするくだりがあった。 まさに先頃話題になったテレビドラマ「VIVANT」に登場する「別班(べっぱん)」を想起させるが、これは先述した詳細な記述を要求するビザ申請と符合する。とりわけ「過去の職歴と当時の上司」を詳細にわたり書かせるのは、「公務員職を一時的に離れ、民間企業の職員となり中国に入国する日本人がいるからではないか」と推測する向きもある。 もっともスパイを疑われているのは会社員だけではない。中国当局は駐在員の身分で滞在する会社員の活動のみならず、研究者などの学術交流についても警戒している。 現代中国を研究する私大教授C氏は、「日常のメールのやりとりでさえも中国側の相手は警戒し、余計な描写は避け、非常に短い一文しか戻ってこなくなりました」と変化を物語るが、こうしたコメントからも中国側の関係者がかなり用心深くなっていることがうかがえる。 「車の中からは風景の撮影をしないようにお願いします。これから港を見学しますが、カメラやスマホは持参しないでください」――中国を視察で訪れた日本人のD氏は、現地のガイド役の中国人からこう指示されたという。D氏にとって4年ぶりの中国訪問は緊張の連続だった。 前出のA氏もいくつかの異変を感じ取っている。山東省青島市を訪れた印象について、「あれほど外国人でにぎわっていた青島でしたが、その数は激減し、欧米人に至ってはほとんど姿を見ることはありませんでした」と率直な印象を述べている。 そのA氏が国際線で羽田空港に向かう帰途に就いたときのことだ。離陸直前の機内で、乗客はすべての窓のシェードを閉めるようアナウンスが流れた。「中国往来は15年近くなりますが、こんなことは初めてです。滑走路には外国人に見せたくないものがあるのでしょうか。不気味さを感じました」と漏らす。 E氏にも長い中国歴があるが、今夏出張の際に中国の銀行口座と携帯番号を解約した。中国との往来を持つ日本人はE氏のように現地の銀行口座と携帯番号を持つのが通例だが、筆者の周辺では中国から距離を置くためのこのような選択が散見されるようになった。 「スパイはどこにでもいる」と中国当局が警戒を強める中、この「反スパイ法」は間違いなく日中間の交流の分断を招くだろう。互いに「あの人はスパイかもしれない」と疑心暗鬼になり、痛くもない腹を探り合う、そんな嫌な世の中の到来を予感させる。 山崎豊子氏の小説「大地の子」では、主人公の残留日本人・陸一心が文革中に「日本人である」という理由で無実の罪を着せられ、文化大革命の嵐の中、僻地の労働改造所に送り込まれるシーンがある。 何がどう災いするかわからない、あの混沌とした社会への逆戻りは止まらないのだろうか。少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている』、「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。

第三に、11月13日付け東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/714009
・『李克強前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など不吉なニュースが続く中国。経済成長が鈍化し、直接投資が初のマイナスになった「世界の市場」から企業が逃げ始めた。 『週刊東洋経済』11月18日号の第1特集は「絶望の中国ビジネス」。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は中国をどう変えていくのか?日本企業のビジネスへの影響は?匿名座談会や特別対談など、豊富な記事でその答えをお届けする。 反スパイ法や電子データの移動に制限を課すデータ3法など、中国では情報統制が強化されている。現地駐在員や中国ビジネスに関わる会社員に監視社会のリアルや中国ビジネスの現状を聞いた(Qは聞き手の質問)。 [参加者PROFILE] Aさん40代男性・IT営業職 Bさん50代男性・企画部門 Cさん30代男性・営業職 Dさん40代男性・営業職』、興味深そうだ。 
・『Q:反スパイ法やデータ3法はビジネスに影響はありますか。 Aデータ3法関連の仕事が増えていたが、9月末に新たなパブリックコメント案(編集部注:1年間で国外へ提供する個人情報が少ない場合、手続きが簡素化される)が発表され、対象企業が大幅に減った。危機感をあおって仕事を取っていた競合企業は、契約解除などの話が増えるだろう。われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている』、「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。
・『もはや読む意味はない  B以前、リポートをウィーチャットで送信したところ、相手先に届かないことがあった。おそらく政府要人の名前などが入っていたためブロックされたのだろう。スパイと疑われる可能性があるため、政府関係者とのコンタクトも難しくなった。だから中国発のリポートは機微に触れる情報がなくなり、もはや読む意味はないだろう。 情報をやり取りする仕事は政府から監視されており、気苦労が多い。中国政府が厳しくなったのは、2013年のスノーデン事件(米国のスノーデン氏によって世界各国の機密情報などが暴露された)がきっかけだと思う。あれで米国の諜報活動の実態がよくわかり、中国は防諜の必要性を改めて認識したのではないか。 C直接的な影響はないが、ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう。 D私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている』、「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。
・『原発処理水の問題は注意  Q:10月には中国で日本人がスパイ容疑で逮捕されました。 Aアステラス製薬社員が拘束された直後は、駐在している日本人の間での緊張が高まった。医療分野や半導体など中国政府が注力をしている業界の関係者は注意が必要だと思う。ただ地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ。 Cわれわれのような、若手・中堅はあまり関係のない話だと思っている。だが、原発処理水の問題は注意が必要だ。日本の報道を引用し処理水は科学的に問題ないというような発信をすると、当局から目をつけられると聞いた。) B拘束されやすい人には特徴がある。中国駐在歴が長い人、そして語学力が高く、中国人と突っ込んだやり取りができる人だ。まあ、現実にはそんな人材はごく少数だから、普通の駐在員は心配しなくていいともいえる。これまでに捕まった人の多くは日本の公安調査庁と接点があったといわれている。そういう背景がなければ、過度に心配する必要はないだろう。 中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う。 D消費財は政府にとって位置づけが低く、拘束されることはないと思っている。一方でブランドを潰される可能性はあるだろう。有名消費財ブランドの担当者でハニートラップに引っかかっている人がいる。いかがわしい接待を受けていることがSNSで拡散されれば、ブランドのイメージは崩壊し、不買運動につながりかねない。業界を見渡すと、もう少し考えて行動したほうがいい人がいる』、「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。
・『中国企業のアプリは使わない  Q:情報流出について気をつけていることはありますか。 C中国政府にとって敏感な内容はウィーチャットで連絡を取らない。例えば10月に李克強前首相が亡くなったが、そのときはLINE(ライン)を使った。 A業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN(=仮想専用線。通信を暗号化でき安全性が高い)を使っている。ただ、現地スタッフはウィーチャットで仕事をしていると思う。すべて徹底するのは難しい。) D基本的に情報はすべて流出していると考えている。信頼できる取引先であれば情報はすべて開示している。隠すより中国企業に追いつくことのほうが大事だ。 B中国当局はスマホを勝手に起動して盗聴器に仕立てる技術を持っているという噂がある。正しいかどうかわからないが、用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた』、「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。
・『日本が貧しくなった  Q:明るい話がないですね。 B円安や物価高で飲みに行く機会もめっきり減った。接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる。 A明るい話といえば、新型コロナがひどかった時期と比べると徐々に日本人が増えてきたと思う。子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。ただ、ビザの関係などで本格回復には程遠い。往来が戻ってくれないと商機が増えないので、日中関係が改善して出張や駐在が活発になってほしい。 C最近は大手企業の中国撤退などもあったが、日本勢が戦える分野もまだある。例えば自動車では東北部にはEVは定着しないと思う。冬は寒いのでつねにヒーターをつける必要がある。消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている』、「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。
タグ:私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。 中国での日本人拘束問題 スパイ(?) 「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・ 「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。 「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、 「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。 日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。 「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。 「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。 「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。 東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」 「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。 「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。 「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。 姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」 ダイヤモンド・オンライン で、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。 「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めること 「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。 「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。 「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。 「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。 「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。 「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。 山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」 JBPRESS (その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)
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医療問題(その40)(すい臓がん「手術だけが根治の道」はミスリード 専門医が指摘する“言葉のトリック”とは?、後期研修医が大学病院にとって「都合がいい」理由 勤務時間減では解決しない「医師の働き方」改革)

医療問題については、本年8月2日に取上げた。今日は、(その40)(すい臓がん「手術だけが根治の道」はミスリード 専門医が指摘する“言葉のトリック”とは?、後期研修医が大学病院にとって「都合がいい」理由 勤務時間減では解決しない「医師の働き方」改革)である。

先ずは、10月24日ダイヤモンド・オンラインが掲載した東京女子医科大学消化器・一般外科教授の本田五郎氏による「すい臓がん「手術だけが根治の道」はミスリード、専門医が指摘する“言葉のトリック”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330103
・『5年生存率が8.5%と低く、他のがんと比べても特にタチが悪いと知られる膵臓がん。よく見かける「膵臓がんは手術療法だけが根治のための唯一の道」という言葉を鵜呑みにしてはいけない理由を、膵臓がんのエキスパートがわかりやすく解説する。本稿は、本田五郎『膵臓がんの何が怖いのか』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『「膵臓がんは手術だけが唯一の根治的治療」を鵜呑みにしてはいけない  よく膵臓がんの専門医療機関のホームページを開くと「膵臓がんは手術療法だけが根治のための唯一の道です」といった案内が書いてあります。膵臓がんに関する一般向けの本やサイトにも、しばしば同じようなことが書いてあります。外科医である私が言うと少々違和感があるかもしれませんが、このフレーズを鵜呑みにしてはいけません。巧妙に言葉のトリックが仕組まれています。 「膵臓がんを根治するために、何とかして手術ができる状況にこぎつけて、とにかく手術をしましょう。そうすれば助かります」という意味に解釈する人も結構いるのではないでしょうか。 2012年に集計された日本膵臓学会の過去27年間の全国調査データでは、ステージ1の5年生存率がだいたい60~70%、そして、ステージ2だと15~30%くらいに一気に下がります。この全国調査データに登録されたステージ1や2の患者さんのほとんどが手術を受けていますので、これは手術でどのくらい治ったのかを示したデータと理解してよいと思います。 このデータをもう一度よく見てみましょう。裏を返すと手術で膵臓がんを切除できてもステージ1では30~40%、ステージ2では70~85%の患者さんが根治できていない、つまり手術後に膵臓がんが「再発」して、膵臓がんが原因で亡くなっていることになります。 最近は膵臓がんに有効な抗がん剤が複数使えるようになり、膵臓がんの5年生存率はもう少しよくなっていると思います。しかし、抗がん剤だけで膵臓がんを根治するところまで行けることは、いまでもほとんどありません。放射線治療と抗がん剤を合わせた治療も有効ではありますが、やはり根治するところまで行けることはめったにありません。 たしかに「膵臓がんは手術療法だけが根治のための唯一の道です」というのは間違いではありません。しかし、これは決して「手術さえすれば膵臓がんは根治できる」という意味ではなく、「手術ができた人の中にだけ根治できる人がいる」というのが正しい意味なのです。どうでしょう、言葉の「トリック」に気づかれたでしょうか。 手術をして根治できる膵臓がんと手術をしても根治できない膵臓がんがあって、しかも現時点では後者のほうがかなり多いのですが、「膵臓がんは手術療法だけが根治のための唯一の道です」という言葉で魔法をかけられた患者さんは、とにかく手術を受けて、膵臓がんを克服することを願ってしまう。時には、神の手と呼ばれる外科医のもとに出向いて、無理やりにでも取ってもらおうとします。) ステージ0の膵臓がんは別として、ステージ1以上であれば、「手術可能な膵臓がん」であっても、その多くが手術だけでは治らないのです。焦って手術をするとむしろ抗がん剤治療が十分にできないために、本来根治できるはずだったものさえ根治できなかったり、根治できない場合でも、抗がん剤の効果で長く元気でいられたはずの時間が短くなったりします。 膵臓がんの治療は決して手術ありきではないことを強調しておきたいと思います。 もっとも、みなさんの中には納得できずに妙な顔をされている方もいらっしゃるかもしれませんね。無理もありません。一般の方からすれば、「がんがあるんだから、早く取らなきゃ」と考えるのが普通でしょうし、「手術を先延ばしにしているうちに、がんがどんどん大きくなってしまったらどうするんだ」と不安になるのも当然でしょう。 われわれ外科医は、外科医である前に医師であり、医師である前に人である以上、それぞれの患者さんにベストの治療を提示して提供するのが人の道、「大義」です。しかし外科医に限らずいえることですが、世の中に常に大義を通して生きている人はどれほどいるでしょうか。外科医も人間ですから、腕を振るいたいという下心から、どうしても手術を優先して提示することがあるのも事実です。だからトリックを使っているのだとは言いませんが、外科医自身も自分のやっているトリックに気づきにくいのだと、私は思います。 繰り返しになりますが、ステージ1以上の膵臓がんは早く取ればよいというものではありません。他の治療法を組み合わせながら、じっくり時間をかけて、そして相手がどういう態度を示すのか見極めながら治していくことで、根治できる可能性、長く元気でいられる可能性を上げるのが賢明なのです』、「ステージ1以上の膵臓がんは早く取ればよいというものではありません。他の治療法を組み合わせながら、じっくり時間をかけて、そして相手がどういう態度を示すのか見極めながら治していくことで、根治できる可能性、長く元気でいられる可能性を上げるのが賢明なのです」、なるほど。
・『遠隔転移がある場合は「手術」よりも「抗がん剤治療」のほうが優先される  では、いったい手術以外にどんな方法を組み合わせていくのか。 それは、「抗がん剤を用いた化学療法」や「放射線療法」です。とくに抗がん剤を用いた化学療法は、ステージ1でも遠隔転移が潜んでいることの多い膵臓がんにおいては絶対に欠かせません。 手術や放射線治療は膵臓がんの本体とその周辺(局所)のみに限定して手を下す治療法であるため、「局所治療」に分類されます。放射線治療も、体全体に放射線をあてるわけではなく、患部とその周辺の一部を含む程度の限定した範囲にあてるのが基本ですので局所治療です。) 一方、抗がん剤は点滴で投与すると血液内に入り、血液の循環に乗って全身のすみずみまで流れていきますし、内服薬も胃腸で吸収されるとやはり血液内に入って全身に流れていきます。そのためこちらは「全身治療」に分類されます。 上皮内がんや、ステージ1の浸潤がんでもまだ小さくて遠隔転移のないものなら、局所治療(切除もしくは放射線照射)だけで治せる可能性があります。しかし、遠隔転移がある場合は局所治療よりも全身治療のほうが優先されます。 不良細胞にたとえて話をいたしますと、教室の壁や窓を壊さないちょい悪の不良や本物の不良はもちろんですが、教室の壁や窓を壊しても校舎の外には出て行っていないチンピラくらいまでなら、校舎ごと撤去するか焼き払うことで完全に退治できます。ここでは校舎ごと撤去するか焼き払うまでが「局所治療」ということになります。 ところが、膵臓がんはいったんチンピラになると早々にやくざになって、さらに広域暴力団や国際マフィアになっていきます。いったん広域に活動し始めて、各地で新たに組事務所を構えればすぐに見つかりますが、閑静な住宅地の一軒家にひっそりと住んでいたり、スラム街の中で屋根裏部屋をアジトにしていると、一人ずつ見つけてつかまえるのは至難の業ですし、見つけたとしても、ひとつひとつをしらみつぶしに撤去して「局所治療」を繰り返すのは非常に困難です。 そこで、チンピラややくざが好んで食べる毒物を日本中、世界中に大量にばらまく方法で対抗することになります。つまり「全身治療」です。ここでたとえた「チンピラややくざが好んで食べる毒物」というのが「抗がん剤」のことになります。抗がん剤について、もう少し説明しましょう。 がん細胞の、特徴的でもっとも厄介な行動は次々にクローンをつくること、すなわち「細胞分裂」です。細胞分裂の際にはいろんな工具や原料が必要となるのですが、その工具や原料を壊したり偽物として紛れ込んだりして細胞分裂の邪魔をするのが抗がん剤です。 ちなみに、正常な細胞も日々細胞分裂を行なっています。そのため、細胞分裂の盛んな組織や臓器ほど抗がん剤の影響を受けて副作用が起きやすくなります。典型的なのは白血球や皮膚、粘膜などです。) 2000年代に入って、ようやく膵臓がんに有効な複数の抗がん剤が開発されて使用できるようになってきました。副作用が比較的軽く済むものもあり、患者さんが通常の生活を維持しながら、長期間にわたって抗がん剤治療を受けることも可能になってきました。 そのため、全体の5年生存率も徐々に高くなってきています』、「2000年代に入って、ようやく膵臓がんに有効な複数の抗がん剤が開発されて使用できるようになってきました。副作用が比較的軽く済むものもあり、患者さんが通常の生活を維持しながら、長期間にわたって抗がん剤治療を受けることも可能になってきました。 そのため、全体の5年生存率も徐々に高くなってきています」、有難いことだ。
・『隠れているがん細胞を徹底的にやっつけておく  仮に、膵臓手術を手掛ける外科医が、ステージ1の膵臓がんの切除後に再発を起こした患者さんから詰問口調でこう問われたとしましょう。 「先生、前に手術したとき、がんを根治的に取ったんですよね。それなのに、どうして再発するんですか」 その外科医が、事実を正しく説明しようとするなら、こう答えるでしょう。 「それは、目に見えないがん細胞が、他の離れたところに飛んでいって隠れていたからなんです。その隠れていたやつらが再び暴れ出して再発してしまったんです」──と。 しかし、科学的マインドを持った患者さんなら、こう言い返すかもしれません。 「それじゃあ、根治的に取ったっていうのは、先生の勘違いだったんですね」 そうなんです。まさしく外科医の勘違いです。 手術で膵臓がんを切除できてもステージ1では30~40%、ステージ2では70~85%の患者さんが「再発」しているというのが事実です。にもかかわらず、見た目で膵臓がんを全部取りきったから、「根治」できたと思うのは、勘違いとしか言いようがないと、私は思います。もしも、手術直後に「根治的に取れた可能性が高いです」とやや控えめに説明していれば、勘違いではなく、「読み違いでした」くらいの言い訳はできるかもしれません。 いずれにしても、手術で痛い思いをする患者さんにしてみれば、少しでも根治できる確率が高い状態で手術を受ける方法があるのなら、そうしてほしいはずです。 先にも述べたように、ステージ1以上の膵臓がんは早く取ればよいというものではありません。抗がん剤をはじめとした他の治療法を組み合わせながら、じっくり時間をかけて相手がどういう態度を示すのか見極めながら治していくことで、根治できる可能性を上げるのが賢い方法なのです。) 実は、切除可能な膵臓がんに対しても、先に抗がん剤治療を行なってから手術をするほうが予後がよくなることが分かっています。日本全国の膵臓がん治療を専門的に行なう医療機関が共同で行なった臨床研究によって、「術前に抗がん剤治療を行なうほうが手術後の生存率が上がる」ということが証明されています。そのため今、日本では膵臓がん治療を専門的に行なう医療機関のほとんどが、術前化学療法(手術をする前に行なう抗がん剤治療)を取り入れています。 にしても、いったいなぜ、術前化学療法が有効なのでしょうか。その答えはいくつかあります。 ひとつ目の答えは、「抗がん剤の力で転移・再発を防ぐ効果をより高く得られる」ことです。がん細胞が、本拠地を離れて閑静な住宅地の一軒家にひっそりと住んでいたり、スラム街の中で屋根裏部屋をアジトにして暮らしたりしている状況で、急いで本拠地を撤去しても、かくれ潜んでいたがん細胞が生き残って、いずれはそれらがクローンを増やして各地で徒党を組みます。つまり転移・再発が起きるわけです。 そこで手術をする前に、これらの目に見えない、あるいは検査画像に映らないような小さな転移を全身治療でやっつけておくのです。膵臓の切除手術をすると、通常は最低でも1カ月間くらいは抗がん剤治療ができなくなりますが、手術後に体調がなかなかよくならず、2~3カ月間抗がん剤治療ができない場合もあります。抗がん剤治療ができない間、目に見えないあるいは検査画像に映らないような小さな転移は野放し状態になります。手術の影響で体力が落ちる前に、抗がん剤をしっかりと使ってこれらを叩いておくことで、野放し状態を回避しようというわけです。 いやいや、「抗がん剤がよく効くと膵臓がんの本体が小さくなって取りやすくなるんじゃないのか?」と、思う人もおられるでしょう。たしかに、がんの塊が小さくなったり、時にはがん細胞がほとんど消え去ってしまうこともあります。しかし、浸潤してきた膵臓がんにいったん占領された場所では、通常は正常な組織が破壊されます。そして、ほとんどの部位で線維化が起きるため、セメントで塗り固められたような状態になっていて、正常な構造には戻りません。 そのため、一度膵臓がんの浸潤を受けた場所は、がん細胞が残っていようといまいと、結局はがんの本体と一緒に切除してしまわなければ収拾がつかないことが多く、術前化学療法で膵臓がんが小さくなったとしても、手術で取りやすくなるとは限らないのです』、「手術で膵臓がんを切除できてもステージ1では30~40%、ステージ2では70~85%の患者さんが「再発」しているというのが事実です。にもかかわらず、見た目で膵臓がんを全部取りきったから、「根治」できたと思うのは、勘違いとしか言いようがないと、私は思います。もしも、手術直後に「根治的に取れた可能性が高いです」とやや控えめに説明していれば、勘違いではなく、「読み違いでした」くらいの言い訳はできるかもしれません・・・手術をする前に、これらの目に見えない、あるいは検査画像に映らないような小さな転移を全身治療でやっつけておくのです。膵臓の切除手術をすると、通常は最低でも1カ月間くらいは抗がん剤治療ができなくなりますが、手術後に体調がなかなかよくならず、2~3カ月間抗がん剤治療ができない場合もあります。抗がん剤治療ができない間、目に見えないあるいは検査画像に映らないような小さな転移は野放し状態になります。手術の影響で体力が落ちる前に、抗がん剤をしっかりと使ってこれらを叩いておくことで、野放し状態を回避しようというわけです」、なるほど。

次に、11月2日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「後期研修医が大学病院にとって「都合がいい」理由 勤務時間減では解決しない「医師の働き方」改革」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/711862
・『2024年4月から医師の働き方改革の新制度が実施される。原則として、医師の年間の時間外・休日労働時間が960時間以内、月100時間未満に制限される。ただ、医師不足の地域で緊急性の高い医療行為に従事する医師や、初期・後期研修医に限り、最大1860時間、月100時間までの残業が認められる』、興味深そうだ。
・『「週に100時間以上」の激務  このような規制が設けられたのは、医師の過剰残業が常態化しているからだ。谷川武順天堂大学教授(公衆衛生学)らが発表した「令和元年医師の勤務実態調査」によれば、調査に協力した病院勤務医8937人の8.5%が週に80時間以上、1.2%が100時間以上働いていた。) 厚生労働省は過労死の基準として、「発症前1カ月間に100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月にわたって1カ月あたり80時間を超える時間外・休日労働」という数字を示している。谷川教授の報告から筆者が算出すると、前者の場合、月の残業時間は160時間、後者は240時間だ。医師の過労死が相次ぐのももっともだ。 悲惨なケースもある。2022年5月、神戸市の甲南医療センターに勤務する26歳の内科医が自殺した。労働基準監督署は、月に200時間を超えた時間外労働による精神疾患が原因と認定した。 このような事情を知れば、医師の働き方改革は時宜を得た対応とお考えの読者も多いだろう。 だが、筆者の考えは違う。このような対応は、長期的には医師のためにも国民のためにもならない。下手をすると日本の医療を崩壊させかねない』、「厚生労働省は過労死の基準として、「発症前1カ月間に100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月にわたって1カ月あたり80時間を超える時間外・休日労働」という数字を示している。谷川教授の報告から筆者が算出すると、前者の場合、月の残業時間は160時間、後者は240時間だ。医師の過労死が相次ぐのももっともだ・・・医師の働き方改革は時宜を得た対応とお考えの読者も多いだろう。 だが、筆者の考えは違う。このような対応は、長期的には医師のためにも国民のためにもならない。下手をすると日本の医療を崩壊させかねない」、ではどう考えればいいのだろう。
・『医師は個人事業主が向いている  では、どうすればいいのか。結論から言おう。筆者は医師の労働時間を規制するのではなく、病院と医師の契約関係を見直すべきと考えている。具体的には、病院と医師が雇用契約を結ぶ勤務医という形態を見直し、医師が病院と業務委託の形で契約する個人事業主としての形態を認めるべきだ。 なぜ、勤務医ではなく個人事業主として働くべきなのか。それはそのほうが医師にとっては合理的だからだ。また、高齢化が進むわが国では、個人事業主のほうが国民のニーズの変化に柔軟に対応できる。 今後、わが国では人口構成の変化とともに、求められる医療の内容が変わる。令和5年版『高齢社会白書』によれば、わが国の15~64歳の人口は1995年をピークに減少を続け、2022年は14.9%減の7421万人に。前期高齢者(65~74歳)も2015年をピークに、2022年は1687万人(3.7%減)となっている。これらの世代は今後も減り続け、2050年にはそれぞれ5540万(2022年と比べ25.3%減)、1455万人(同13.8%減)となる。 一方で、増えるのは75才以上の後期高齢者だ。2022年の1936万人が2050年には2433万人(25.7%増)になる。 前期高齢者までと後期高齢者は必要とされる医療が違う。前者はまだ体力があり、外科手術や集中治療により治癒や延命が期待できる。 後者はそのような負担が大きい治療に耐えられず、近年開発された副作用が軽い薬物療法、負担が小さい内視鏡治療やカテーテル治療に頼るしかない。患者のなかには入院や治療を望まず、在宅での看取りを希望する人もいるだろう。 その結果、大学病院などが提供してきた高度医療を必要とする患者は、急速に減少し、その傾向は、すでにさまざまな医療分野で確認されている。 厚労省が3年ごとに実施する「医療施設調査」によれば、2000年代に入り、年平均で5%増加していた手術数が、2017年には2.1%増にペースを緩め、2020年には減少に転じた。 病院の経営者は生き残りに懸命だ。病院の収入は診療報酬単価と患者数の掛け算で決まる。診療報酬は厚労省が統制しており、財政難のわが国では横ばいが続いている。一方、急性期の治療が必要な患者は減るのだから、このような病院の売り上げは減少する。 前出の甲南医療センターを経営する公益財団法人甲南会の財務諸表によれば、2022年度の医業関連収益は約192億円。経常費用は約205億円で、医業収益だけなら13億円の赤字。2022年度は約32億円の補助金を受け取っており約8億円の黒字となっているが、補助金の多くはコロナ関連だろう。 病院が生き延びるためには、コストを下げなければならない。理想は安くてよく働く医師を確保することだ。 経営者にとって使い勝手がいいのが後期研修医だ。今回、自殺した若手医師は後期研修医だった。医学部を卒業後、2年間の初期研修を終えているため、一通りの診療行為はできるし、若くて体力があり、激務にも耐えられる。おまけに給料も安く、残業代も十分に払わずに済む。甲南医療センターの卒後3年目の後期研修医は650万円の年俸制で、時間外手当は「月30時間を超える場合に、超えた時間分を支給」とある』、「診療報酬は厚労省が統制しており、財政難のわが国では横ばいが続いている。一方、急性期の治療が必要な患者は減るのだから、このような病院の売り上げは減少する。 前出の甲南医療センターを経営する公益財団法人甲南会の財務諸表によれば、2022年度の医業関連収益は約192億円。経常費用は約205億円で、医業収益だけなら13億円の赤字。2022年度は約32億円の補助金を受け取っており約8億円の黒字となっているが、補助金の多くはコロナ関連だろう。 病院が生き延びるためには、コストを下げなければならない。理想は安くてよく働く医師を確保することだ。 経営者にとって使い勝手がいいのが後期研修医だ」、なるほど。
・『後期研修医が病院を辞めない理由  日本は深刻な医師不足だ。働く場所はいくらでもある。なぜ、後期研修医は待遇の悪い病院を辞めないのだろう。それは指定病院で一定期間、診療しないと専門医資格を得られないからだ。医師の世界で専門医資格は重要だ。だから、どんなに待遇が悪くても途中で辞めるわけにはいかない。 実際 、2023年度に研修プログラムに参加した医師は9325人。2021年の医師国家試験合格者は9058人だから、初期研修を終えた医学部卒業後3年目の医師のほぼ全員が参加していることになる。 このロジックがおかしいのは、本来、専門医資格は医師の実力や実績に対して付与されるべきものなのに、研修先の病院が決まっているからだ。 このような制度ができたのは、最近だ。2018年に新専門医制度が始まり、日本専門医機構が認定する病院での勤務が義務付けられた。同機構は日本内科学会や日本外科学会などの医学会の連合体で、理事の多くは大学教授や有名病院の部長が占める。 実は、同機構にはガバナンス上の構造的欠陥がある。それは、この組織が一般社団法人の形態をとっている点だ。独立行政法人は国会や官邸、NPO法人は都道府県、公益法人は内閣府の監督を受けるが、一般社団法人には法的枠組みはない。 このような組織が、専門医資格の付与と引き換えに、若手医師の勤務先を決めることは、独占禁止法に違反すると言われても仕方ない。この問題には厚労省が介入すべきだが、厚労省にそのつもりはなく、むしろ同機構を後押しし、毎年1億円程度の補助金を出している。 後期研修病院に認定されれば、労せずして低賃金で若手医師を確保できる。プログラムを離脱すれば、専門医の資格を得られないのだから、若手医師が退職する心配もない。これが筆者の考察する甲南医療センターでの若手医師の自殺の背景だ。) わが国では「後期研修病院」と名乗って若手医師を募集している病院で、こんな無法が許されている。この状況で、2024年から労働時間規制が導入されれば、さらに事態は悪化しかねない。それは、厚労省が大学の関連病院の労働時間も時間外労働に含めるよう通知しているからだ。このスキームでは、医師が所属する大学病院の許可が得られた場合にのみ、外来診療や夜間当直などのアルバイトが認められる。 どの病院へ出向するかの判断は、病院や医局の教授に委ねられ、若手医師を抱える病院の立場が強くなる。この制度が運用されれば、地域の医師不足はさらに悪化していくだろう。 まずやるべきは、厚労省と同機構の関係を見直し、補助金を止めることだ。「厚労省のお墨付き」の影響は大きい。法的根拠を持たない、つまり誰からもチェックされない独占組織は廃止、あるいは分割するのがいい。 厚労省が医療法などを改正し、医師が業務委託契約で診療するのを認めることも必要だ。現行では医師の派遣業務は禁じられており、常勤であれ、非常勤であれ、病院と医師の雇用契約が求められる。 これは生涯にわたり自己研鑽が求められる医師にとって都合の良い働き方ではない。甲南医療センターで問題となったように、学会発表の準備が業務なのかプライベートなのかで問題となるのは、勤務医として病院と雇用契約を結んでいるからだ。医師は勤務医という名前の「労働者」として扱われ、病院はコストとなる自己研鑽を業務とは認めたがらない。 このような問題は独立事業者には存在しない。勉強のための教科書の購入や学会参加費も経費に計上できる』、「なぜ、後期研修医は待遇の悪い病院を辞めないのだろう。それは指定病院で一定期間、診療しないと専門医資格を得られないからだ。医師の世界で専門医資格は重要だ。だから、どんなに待遇が悪くても途中で辞めるわけにはいかない・・・これは生涯にわたり自己研鑽が求められる医師にとって都合の良い働き方ではない。甲南医療センターで問題となったように、学会発表の準備が業務なのかプライベートなのかで問題となるのは、勤務医として病院と雇用契約を結んでいるからだ。医師は勤務医という名前の「労働者」として扱われ、病院はコストとなる自己研鑽を業務とは認めたがらない。 このような問題は独立事業者には存在しない。勉強のための教科書の購入や学会参加費も経費に計上できる」、確かにその通りだ。上野氏の提言はパンデミック問題でも革命的で、面白く、大いに検討する価値がある。
・『若手医師を囲い込む大学病院  古今東西、医師は個人事業者としての性格が強い。その組織体はパートナー制だ。若いうちは先輩の指導を仰ぎ、やがて独立する。共同でオフィスを構え、秘書を雇う。かつて自分がやってもらったように若手医師を雇用し、指導することもできる。 権威主義的な傾向はあるものの、かつての大学医局はこのような側面が強かった。国からの補助金が多く、大学病院の経営状態が良好だったため、多くの医局員を関連病院に出向させたり、研究に従事させたりすることができた。 ところが、近年、経営が悪化した大学病院は、少しでも収益を上げるために若手医師を囲い込むようになった。これが医学部の定員を増員しても、いっこうに地域の医師不足が解消されない原因だ。これは若手医師にとっても患者にとっても不幸だ。その犠牲者の1人が、自殺した甲南医療センターの元後期研修医ともいえる。 日本の医療提供体制は崩壊の危機にある。厚労省や医療提供者の都合でなく、患者視点での議論が必要だ』、「医療提供体制」の問題点はパンデミック時にも明らかになったが、この際に、抜本的に見直すべきだろう。
タグ:「2000年代に入って、ようやく膵臓がんに有効な複数の抗がん剤が開発されて使用できるようになってきました。副作用が比較的軽く済むものもあり、患者さんが通常の生活を維持しながら、長期間にわたって抗がん剤治療を受けることも可能になってきました。 そのため、全体の5年生存率も徐々に高くなってきています」、有難いことだ。 「診療報酬は厚労省が統制しており、財政難のわが国では横ばいが続いている。一方、急性期の治療が必要な患者は減るのだから、このような病院の売り上げは減少する。 前出の甲南医療センターを経営する公益財団法人甲南会の財務諸表によれば、2022年度の医業関連収益は約192億円。経常費用は約205億円で、医業収益だけなら13億円の赤字。2022年度は約32億円の補助金を受け取っており約8億円の黒字となっているが、補助金の多くはコロナ関連だろう。 どう考えればいいのだろう。 「厚生労働省は過労死の基準として、「発症前1カ月間に100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月にわたって1カ月あたり80時間を超える時間外・休日労働」という数字を示している。谷川教授の報告から筆者が算出すると、前者の場合、月の残業時間は160時間、後者は240時間だ。医師の過労死が相次ぐのももっともだ・・・医師の働き方改革は時宜を得た対応とお考えの読者も多いだろう。 だが、筆者の考えは違う。このような対応は、長期的には医師のためにも国民のためにもならない。下手をすると日本の医療を崩壊させかねない」、では 上 昌広氏による「後期研修医が大学病院にとって「都合がいい」理由 勤務時間減では解決しない「医師の働き方」改革」 東洋経済オンライン 「医療提供体制」の問題点はパンデミック時にも明らかになったが、この際に、抜本的に見直すべきだろう。 医師は勤務医という名前の「労働者」として扱われ、病院はコストとなる自己研鑽を業務とは認めたがらない。 このような問題は独立事業者には存在しない。勉強のための教科書の購入や学会参加費も経費に計上できる」、確かにその通りだ。上野氏の提言はパンデミック問題でも革命的で、面白く、大いに検討する価値がある。 「なぜ、後期研修医は待遇の悪い病院を辞めないのだろう。それは指定病院で一定期間、診療しないと専門医資格を得られないからだ。医師の世界で専門医資格は重要だ。だから、どんなに待遇が悪くても途中で辞めるわけにはいかない・・・これは生涯にわたり自己研鑽が求められる医師にとって都合の良い働き方ではない。甲南医療センターで問題となったように、学会発表の準備が業務なのかプライベートなのかで問題となるのは、勤務医として病院と雇用契約を結んでいるからだ 病院が生き延びるためには、コストを下げなければならない。理想は安くてよく働く医師を確保することだ。 経営者にとって使い勝手がいいのが後期研修医だ」、なるほど。 手術をする前に、これらの目に見えない、あるいは検査画像に映らないような小さな転移を全身治療でやっつけておくのです。膵臓の切除手術をすると、通常は最低でも1カ月間くらいは抗がん剤治療ができなくなりますが、手術後に体調がなかなかよくならず、2~3カ月間抗がん剤治療ができない場合もあります。抗がん剤治療ができない間、目に見えないあるいは検査画像に映らないような小さな転移は野放し状態になります。手術の影響で体力が落ちる前に、抗がん剤をしっかりと使ってこれらを叩いておくことで、野放し状態を回避しようというわけです」 「手術で膵臓がんを切除できてもステージ1では30~40%、ステージ2では70~85%の患者さんが「再発」しているというのが事実です。にもかかわらず、見た目で膵臓がんを全部取りきったから、「根治」できたと思うのは、勘違いとしか言いようがないと、私は思います。もしも、手術直後に「根治的に取れた可能性が高いです」とやや控えめに説明していれば、勘違いではなく、「読み違いでした」くらいの言い訳はできるかもしれません・・・ (その40)(すい臓がん「手術だけが根治の道」はミスリード 専門医が指摘する“言葉のトリック”とは?、後期研修医が大学病院にとって「都合がいい」理由 勤務時間減では解決しない「医師の働き方」改革) 医療問題 「ステージ1以上の膵臓がんは早く取ればよいというものではありません。他の治療法を組み合わせながら、じっくり時間をかけて、そして相手がどういう態度を示すのか見極めながら治していくことで、根治できる可能性、長く元気でいられる可能性を上げるのが賢明なのです」、なるほど。 本田五郎『膵臓がんの何が怖いのか』(幻冬舎)の 本田五郎氏による「すい臓がん「手術だけが根治の道」はミスリード、専門医が指摘する“言葉のトリック”とは?」 ダイヤモンド・オンライン
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資本市場(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す) [金融]

資本市場については、本年8月17日に取上げた。今日は、(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)である。

先ずは、9月4日付け東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699113
・『「いよいよ来たか」。あるネット証券関係者は業界大手2社の発表を聞きつぶやいた。それはネット証券の地殻変動の号砲となるものだった。 最大手のSBI証券は8月31日、オンラインでの国内株式売買の手数料を9月30日発注分から無料にすると発表した。取引報告書などの各種交付書面を電子交付にすることが条件だが、ほとんどの利用者が手数料ゼロで日本株取引をできるようになる。 対抗するように同日、2位の楽天証券も10月2日約定分から国内株式の取引手数料無料コースを新設すると発表した。ネット証券の上位2社がそろって手数料無料化に踏み込んだことで、顧客の囲い込み競争は一層熱をおびることは間違いない』、「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。
・『楽天証券の追随には驚き  SBI証券の親会社であるSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長は、2022年11月の決算説明会で「来年度(2023年度)の上半期にはオンラインの国内株式取引の売買手数料無料化を図る」と、発言していた。 それ以来、予定通りの無料化は可能なのか、関係者は固唾をのんで見守っていた。結局、公約通りの時期に無料化を実施することになった。 1年前の段階で、無料化方針を打ち出したにもかかわらず、具体的なプランの発表は実施1カ月前にずれ込んだ。その理由を広報担当は、「大量の顧客増が見込まれ、システム対応などを万全にするよう準備した結果」と説明する。 衝撃を与えたのは、ライバルである楽天証券も同じタイミングで無料化に踏み込んだことだ。楽天グループの傘下にあり、楽天証券や楽天投信投資顧問などを抱える楽天証券HDは7月に東証へ上場申請をしている。) 「この時期に無料化という大きな方針転換はできないのではないか」(大手証券幹部)という見方もあった。楠雄治社長は直前まで「検討はしているが、決まったことは何もない」と説明していたが、内部では着々と準備に動いていた。 個人の株取引において、2社の存在感は圧倒的だ。東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある(ETFやREIT含む)。この売買にかかる手数料が無料になれば日本市場の活性化にもつながる可能性がある。 折しも岸田政権が「資産運用立国」を掲げ、2024年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど、個人の株式投資活発化に対する期待は高い。 SBI証券は8月31日のリリースで「『ゼロ革命』(国内株式売買手数料無料化)の意義は、『証券投資の大衆化』にあります」と説明。「『貯蓄から投資へ』の流れを加速し、広く国民一般の証券市場への積極的な参加を促進できるものと期待」すると謳った』、「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。
・『路線修正を迫られた松井証券  こうした動きに対し、ほかのネット証券各社もすぐさま反応した。ある関係者は「黙って指をくわえて見ているわけにはいかない」と話す。 SBI証券、楽天証券に次ぐ規模を誇る松井証券は来年始まる新NISAでの日本株、米国株、投資信託の売買手数料を無料化すると発表した。 和里田聰社長はかねて「無料化には追随しない」と宣言。独自の情報提供やサポート体制を充実することで顧客をつなぎ止めることに注力してきた。しかし、路線の修正を迫られた。 松井証券は営業収益に占める株式委託手数料の割合が46%(2023年4~6月期)と高い。すべての手数料を無料にはできないものの、SBIの動きを看過できないという姿勢をにじませた。 マネックス証券もNISA対象の国内株売買手数料の無料化など現在行っている施策を今後も継続することや、米国株取引のサービス強化などをアピールするリリースを発表。現時点で手数料無料化に追随するとはしなかったものの、今後の検討課題になっている。 手数料無料化が経営に与える影響は重大だ。株取引の委託手数料は証券会社の収益にとって最も重要な柱のひとつでもある。) SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた。さらには親会社であるSBIHDが銀行や資産運用など多くの事業を抱えている。 こうしたことから、本来ならば痛手となる「無料化」に踏み切れた。実際、SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ』、「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。
・『楽天証券HDの公開価格に影響懸念  一方の楽天証券。同様に収益源の多様化を進めており、2023年1~6月期の収益に占める国内株式委託手数料は17.4%。 具体的な金額は非開示だが、この間の営業収益が540億円なので約94億円程度、年間の手数料収入は190億円程度になる計算だ。プラン選択により、一部手数料収入が残るが、その多くが無料化でゼロになる。 (SBI証券の委託手数料収入の比率、楽天証券の委託手数料収入の比率はリンク先参照) さらに楽天証券は悩ましい固有の事情を抱えている。先述したように、楽天証券HDが東証への上場手続きの真っ最中である点だ。「楽天証券として大きな減収が避けられない中、思うような株価で上場できないのではないか」。ある業界関係者はそう分析する。 親会社の楽天グループは、上場にあたって 放出する楽天証券HD株に一定水準の株価がつくことを期待している。楽天証券の手数料無料化による業績影響を織り込んで、株価が期待より低くなれば、楽天グループが手にする資金はその分だけ減る。 「モバイル事業に是が非でも資金を手にしたい楽天グループにとっては痛手になるはずだ」。前出の関係者はそう語る。 また、楽天証券にはみずほ証券が2022年11月、800億円で約20%出資している。楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない』、「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。

次に、9月24日付け東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/703707
・『営業員と話した内容を覚えていないととれる発言を繰り返す。勧誘内容とはまったく関係のない話を繰り返す。過去の担当者のことを突然話し始める。直前の会話を覚えていないために何度も同じ問答を繰り返す――。 そのような会話の成立しない高齢者に外国株の取引を行わせ、取引手数料を稼いでいた証券会社があった。 証券取引等監視委員会は9月15日、関東を地盤に活動する三木証券が不適切な営業を行っていたとして行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令などの行政処分を検討する』、「行政処分」は次の記事で紹介する。
・『80歳~90歳代の客に不適切営業  監視委によると、三木証券は2020年4月以降、80歳~90歳代の顧客18人に、リスクを十分に理解させることなくアメリカのIT銘柄など外国株の取引を行わせていた。 ある顧客は8カ月で33回の売り買いをしていた。支払った手数料は、最も多い人で1460万円程度。数百万円を払った顧客も複数いた。ほかにも、新興国のテクノロジー関連企業に投資する投資信託の勧誘でも不適切な取り扱いがあった。 認知能力の衰えた高齢者に向けて、このような営業活動を行うよう、三木証券内部で組織的な指示があったわけではないという。一方で、多くの営業員が関わっており、事態の深刻さを物語っている。) 証券業界全体で顧客本位の業務運営が叫ばれている。それに逆行する三木証券の営業姿勢に驚きが広がった。 金融商品取引法は、顧客の知識や経験に照らして不適切な勧誘を行い、投資者の保護に欠けるおそれのある業務を行ってはならないとしている。これを「適合性の原則」という。 今回はこの適合性の原則に反した営業活動だったと、監視委は認定した。適合性原則違反での勧告は、今年6月のちばぎん証券に対するものに続く。 相次ぐ証券営業での不祥事に対し、日本証券業協会(日証協)の森田敏夫会長は、9月20日の会見で「非常に残念。報告書を見てきちんと対応を考えたい」とコメントした』、いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。
・『「極端な収益至上主義」  ただ、こうした姿勢を改めるには一筋縄ではいかなさそうだ。 監視委は、無理な営業が横行した背景として「経営陣による極端な収益至上主義への転換」を挙げる。 顧客の高齢化により口座数が減少傾向にあったことなどで、三木証券は2016年度から4期連続の営業赤字に陥った。経営改善が喫緊の課題になっていた。そこで2020年4月以降、経営陣主導の下、主にアメリカ株への販売に注力した。 (三木証券の業績推移のグラフはリンク先参照) 経営資源が限られている中、販売商品を絞り込むことはほかの会社でもよくあることだ。アメリカ株販売の強化で三木証券は2020年度に営業黒字化を果たす。ところがこの黒字は、経営陣が率先してコンプライアンスを軽視したことにより実現したものだった。) 2019年6月に営業員評価制度を見直し、手数料収入実績を評価に直接反映するようにした。2022年1月には法令違反行為などを行った営業員の評価を下げる仕組みを撤廃。手数料収入に偏った不適切な営業を助長するような評価体制に移行していった。 こうした制度変更に批判的な社員に対するパワハラまがいの行為も横行していたという。営業車の使用を禁じ営業成績が下がったところで、降格処分をしていた。 外部からの指摘にも耳を傾けなかった。2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた。 結果、日証協の高齢顧客ガイドラインで定められた確認事項も十分に確かめることなく「承認手続きは形骸化していた」(監視委勧告)』、「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。
・『顧客説明は正式処分後に  こうした状況に、日証協幹部もため息をつく。「顧客からの信頼がすべての地場証券でこんな営業をしていると広まったら、顧客はすぐに逃げていく。なぜここまでひどいことになったんだ」。 裏を返せば、背に腹を変えられないほど追い詰められていたのだろうか。 三木証券は、監視委が勧告を出した9月15日に「厳粛に受け止め、深く反省し、根本的な原因分析とその改善を図り、(中略)再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。 ただ、コンプライアンス体制の見直しや顧客への説明といった具体的な対応は、金融庁からの処分を待ってから行う予定だ。 過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい』、「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。

第三に、行政処分について、11月15日付けNHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231115/k10014258721000.html
・『リスクを判断する能力がない高齢者に対して、十分な説明をせずに外国の株式を販売したとして行政処分を受けた東京の証券会社「三木証券」に対し、日本証券業協会は、15日、8000万円の過怠金の支払いなどを命じる処分を出しました。 東京 中央区に本店がある三木証券は、数分前の会話を覚えていないといった顧客の様子からリスクを判断する能力がないと認識していながら、少なくとも18人の高齢者に対しリスクを十分に説明せずに外国の株式を販売したとして先月、関東財務局から一部の業務の停止を命じられるなどの行政処分を受けました。 これについて日本証券業協会は、この会社が手数料収入に偏った不適切な勧誘行為を助長する評価や報酬の仕組みを導入していたほか、顧客の利益を軽視した極端な営業優先の企業風土が形成されていたなどと指摘しました。 その上で、顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘を行ったことは投資家の保護に欠け、金融商品取引法に反するとして、三木証券に対し、8000万円の過怠金を支払うよう命じました。 さらに再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画を実施し、その状況を書面で報告するよう勧告しました』、「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。

第四に、11月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331654
・『上場企業の「PBR1倍割れ」が取り沙汰されて久しい。企業価値向上が経営者の努めであることは論をまたず、1を超えて事足れりではむろんない。では、何が問題か。どう対処すべきか。早稲田大学経営管理研究科の西山茂教授、デュポン元CFOの橋本勝則氏、オムロン元執行役員グローバル理財本部長の大上高充氏と、当代きっての企業財務の論客が、CFO協会シニア・エグゼクティブの日置圭介氏のモデレートのもと、PBR1倍割れ問題を起点に、日本企業の構造的な経営課題、成長性を阻害する要因について語り合った。2回に分けてレポートする前編では、成長手段としての新規事業創出やM&A活用における桎梏、IR(投資家向け広報)での課題を分析し、それぞれの経験を踏まえた解決策を提示する。明日公開の後編では、コングロマリット・ディスカウントをどう考え、事業整理はどうすべきかの具体論から、日本全体としての経済成長論へと広がった議論の詳細をお伝えする』、興味深そうだ。
・『PBR1倍割れ問題の本質は何か  日置 東京証券取引所が今年3月、PBR(時価総額÷自己資本)1倍割れ等に関して上場企業への対応を要請して以来、この問題が投資家や経営者の間でよく取り沙汰されます。「1倍割れ=悪」との論調が大勢です。確かにコーポレートファイナンスの観点では、1倍割れは企業価値を毀損しているのでよくないことではあります。ただ、だからといって数値を上げるためだけに配当を上げるとか、自社株買いをするというのはあまりにも短絡的です。根本には、日本企業や産業の構造的な問題があると考えますが、いかがでしょうか。 西山 PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE(純利益÷自己資本)とPER(時価総額÷純利益)の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要だと思います。 (西山 茂 教授の略歴はリンク先参照) 橋本 対症療法として1倍以上にするのではなく、実質的な成長が伴うように体質改善すべきです。また、株価形成に際しては、経営者がIRを通じてそのメッセージやストーリーをマーケットにしっかりと伝え、評価してもらう努力が必要です。その際、実現可能性のないストーリーを語って大風呂敷を広げるのではなく、確固たるビジネスプランがあることが大切です。アナリストには、そこをしっかり見極める目を持ってほしい。 大上 PBRの分子、すなわち企業価値そのものをいかにあげていくかが大切です。企業価値は将来のキャッシュフローを現在に割り戻した現在価値ですから、そのシナリオがきちんと描けているかどうかが本質ですね。 橋本 1.0は合格ラインでもなんでもない。PBRが1.1だったらセーフなどと考えている経営者はさすがにいないとは思いますが(笑)』、「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。
・『新規事業はイシュー・ドリブンで  日置 小手先の数値ではなく、企業価値を本質的に上げようとする場合、その手段として、オーガニック成長とM&Aという二つがあると思います。いずれにしても、橋本さんがおっしゃったように、新しい成長のストーリーをうち出していく必要があるが、日本企業はそれがない。 PBRの分子を大きくする、すなわち成長を考えるに当たっての新規事業に関してですが、日本の大企業の構造問題のひとつとして、新規事業が生まれにくいということがあります。大上さんは、実際オムロンの中でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)なども関わった経験がおありで、そのあたりはどうご覧になりますか。 大上 スタートアップに関わる仕事をしていますが、今の時代は、社会・経済システムの移行期にあり、新旧の価値観がぶつかり合ってさまざまな社会課題が噴出して、新しい事業のネタは豊富です。ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))、とりわけ環境に関する問題には、多くのスタートアップが様々な手段で社会課題の解決にチャレンジしています。 大手企業でも新規事業に取り組まれていますが、どのように経営資源をマネジメントするかが、企業の成長にとって重要になってきます。高い技術を持ちながらも、技術を事業化していくところが、日本企業が下手な部分であると思います。 大上 高充氏の略歴はリンク先参照) 日置 その原因をどのように見ていますか。 大上 起点が社会課題でなく、自社の強みが先に立ってしまいがちなところではないでしょうか。まず、解決したい大きな社会的課題を採り上げ、それに対して、どのように自社の資産を生かしていくかという、逆方向の発想が必要ではないかと思います。 日置 テクノロジー・ドリブンではなく、イシュー・ドリブンということですね。たとえば、橋本さんがいらしたデュポンは、2002年に200周年を迎えたタイミングで、300周年を迎えるときにはどういう会社でありたいかを検討した際にメガトレンド分析をして、自社が取り組むべき社会課題を特定。その後はそれに照らしながら、大きく既存事業を外しながら、小さく新規事業を興してという形で、事業の入れ替えを盛んにやってきていますね。どういうメカニズムで行われていたのですか。 橋本 新規事業開発(ニュー・ビジネス・デベロップメント)みたいなイニシアチブに、その仕組みがありました。日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい。 橋本 勝則氏の略歴はリンク先参照) 日置 一人の社員が併せ持っていないなら、そこは組織として両方の側の人材を担保するという作り込みが必要ですね。 橋本 デュポンでは開発チームの中に、ビジネスマインドを持った人物が早い段階で入ります。R&D部門付きのFP&A(Financial Planning & Analysis。財務や会計の知識をもとに企業戦略のアドバイスを行う職種)のような、ファイナンスの担当者が必ずいます。そこが日本企業の開発部門との大きな違いですね。デュポンではその担当者をビジネス・ファイナンスという言い方をしていました。 日置 IBMのファイナンスも同様の動きをしていると聞きました。ファイナンスの担当者は事業部門に対して統制もするけれど、事業部門にやりたいことがあるときは、やらせてあげられるようリソース調整を試みる。そうしないと、ファイナンス部門の言うことを聞いてくれなくなるから。そこはうまくバランスをとりながらやっていると。 大上 ある意味、その構図はスタートアップとVC(ベンチャーキャピタル)の構図に通じるところがあると思います。スタートアップのディープテック(研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術)に対して、トータルでのリスクとリターンというファイナンス的な価値思考で、出資を判断し、場合によっては支援します。 西山 日本企業の新規事業の探索や立ち上げに関する難しさを考えるとき、三つほどポイントがあると思います。第一に、企業側が社会や顧客のニーズからというよりも、既存のビジネスから発想しがちなこと。第二に、従来と発想を変えるためには、内部の人材だけでは限界があること。第三に、「3年で成果を出しなさい」といった評価軸の問題があること。一つ目と二つ目については、オープンイノベーションなども試みていると思いますが、もっと外部との連携をうまくやっていくことが必要だと思います。最近は、優秀な若手で新規事業やスタートアップをやりたい人も多いですから。 日置 オープンイノベーションが下手な企業は、外部に何かを探しに行ってしまう。それこそオープンに(笑)。もちろん「飛び地」みたいな話もあるかもしれませんが、単に飛び地を求めただけでは、そこからビジネスに仕立て上げることは到底できませんよね。さきほどから話に出ているようにビジネスとしてのストーリーがあり、その中でうまく発展させていく視点がないとダメですね。 橋本 評価のお話が出ましたが、一般論として、そもそも大企業は多くの人が安定を求めて入社している。新規事業では、多少山っ気があって博打をうてるくらいの人がいないと(笑)。なおかつ人事考課が減点方式なので、どちらかというと、何もしないでじっとしていたほうが減点されずに相対的に評価が高くなってしまう。 日置 そうしたときに、問題になるのが多様性です。多様性と言うと、日本企業の場合、まだまだ管理職の男女比率などデモグラフィー型で、かつ数値的なことに注力しがちですが、ダイバーシティを考える時にはタスク型の発想が大事です。中途採用は拡大していますが、新卒一括採用のあり方についても本気で再考すべきですね。 大上さんが指摘されたようなVCの役割は、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーションの理論でも、銀行の役割の大切さが論じられています。いかにリスクをとって、きちんとレバレッジがかけられるかを含めたファイナンス感覚を、組織の基本動作の中に収めておくことが大事だなと感じます。 大上 いまや電池などハードの開発にも必ずAIが関わってくる。そうすると、まったく分野の違う技術者同士が混ざらないとやっていけない。シリコンバレーはそうしたエコシステムもよくできています。異質な人同士が出会う「場づくり」のようなこと、異質な研究者同士をつなぐ役割もVCが担っているところがある。もっと幅広く、交わるというか、多様性をつくっていかなければこれからの競争に負けてしまうという危機感があります。 日置 新規事業には、図のような「シックスパック」が必要だと考えています。きちんと腹筋が鍛えられてないと代謝を高めたりまともな運動ができなかったりというように、「いくらイノベーションの掛け声を上げたところで、企業の体質が整っていないと強い新規事業を生み出すことはできないでしょう?」という意味です。 図表の「ならではの眼差し」は、メガトレンドなど長期的な社会動向を追いかけること自体はよいのですが、コンサルや調査会社からやみくもに情報を集め、それを整理整頓するだけでは差別化を生み出すためのインプットにはなりません。自社で持つリレーションを最大限活用して一次情報に当たるとか、これまでの経営のコンテクストの中で培ってきたものの見方などによって、独自の知見やインテリジェンスとして積み上げられるかが問われます。 「小さく起こし、大きくたたむ」は、デュポンがまさにそうですが、新陳代謝を絶えず起こして、リソースをきちんとシフトする。例えば、新しい事業のためのリソースは、既存の事業の売却により調達するといった企業行動です。 「共通言語」は、難しいリソース配分の判断をブラさないように、各事業の持つキャッシュ創出力や成長率などをきちんと数字で表し、各事業の位置付けに関して共通認識を持てるようにするということです。ただし、全てを数字で表現できるわけでもありません。新規事業に限らず全ての経営判断のベースとなる自社の価値観や、自社の保有する技術やビジネモデルなどの強みやその裏にある弱みも共通言語として重要です。現実の判断は数字というハードと価値観のようなソフト、両方の共通言語を加味して行われます。 「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません。 「キャッシュ思考」は、単年のPL思考ではなく、キャッシュで物事を考えて、この企業が将来どうなるかというビジョンを持つ。 また、評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね』、「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね」、なるほど。
・『M&A成功の肝はコア・バリューの浸透  日置 続いて、成長のための、もう一つの手段としてのM&Aについて、日本企業の構造的な問題について議論したいと思います。デュポンから学べるところをまずお聞きしたいのですが。 橋本 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています。 大上 コア・バリューの浸透はとても大事だと思います。もうひとつ、買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます。「投資先の企業価値をわれわれは上げることができるのか」、を問わなければならない」、その通りだ。「CVCが出資する場合、最初から大企業の論理で、自分たちに取り込むという考え方をしているとうまくいかない。スタートアップファーストで考えて、お金だけでなく、大企業が持つチームとか技術などの無形資産を活用して、買収先のスタートアップ企業の価値をいかに上げていくかという発想が要る。社会課題解決を目的に、キャピタルゲイン最大化をKPIとして投資をしていく会社も少しずつ出てきているかなと思います。 日置 大企業側はシーズを探しているし、スタートアップ側はリソース、キャパシティを探しているので、そこのマッチングをすることで、よりお互いに入り込んだ議論ができて、ビジネス展開も進みそうですね。 橋本 デュポンの経験でいうと、シナジーでこれだけ見込めるということを、M&Aの際に必ず算出しますが、それは決して安直な数字ではありません。1項目ずつリスト化されたものを足し上げたものです。それを内部監査が入ってチェックするプロセスがあります。バリデーション(validation)ですね。 日置 ダウ・ケミカルと統合したときも、そこは相当やっていたという印象があります。アップサイドとダウンサイド、成功シナリオと失敗シナリオの数字が出ていましたね」、作成するのは大変そうだ。 「「M&A人口は多いけど、M&A人材は少ないのではないか」ということをよく話します。社内のスプレッドシートに数字を入力して、投資承認が通るか通らないか、それこそゲームのようなことをしておしまい。その会社を買って、それをどのように事業として育て上げるのかとか、エグジットとしてどうするのかというところまで、一貫して責任を持ってやっている感じがしないM&Aが時々ある。投資銀行ならそれでもいいのかもしれませんが、事業会社では問題ですね。 (日置 圭介氏の略歴はリンク先参照) 大上 日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね」、なるほど。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています・・・買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。
・『自社のスタンスを市場に明確に伝える  日置 ここまでは実際に成長するための手段の話でしたが、ではそれをどうやってアピールしていくかという観点で、マーケットとの対話について考えてみたいと思います。これはオムロンが日本企業のなかでは早い段階から意識的にしてきたことで、学べる教訓がたくさんあると思います。 大上 オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います。 日置 受け身だと、アナリストや株主から追い込まれる一方になりますよね。投資家との対話もなんだかちぐはぐで、comply しているのにさらにexplainしている会社もあったりする(笑)」。「「Comply or Explain(」をきちんとしているとはたいしたものだ。「海外のアナリストの場合、自分の予想が外れると、自分の予測モデルの問題にも関わってくるので、日本に比べて「ツッコミ」が激しい。それで必要に迫られて上手にならざるを得ないという感じですね。 一度、苦い経験があって、四半期決算発表日の2、3日前に業績が予想レンジから外れてしまうという開示をしたところ、アナリストから、「なぜもっと早い段階で市場に伝えられなかったのか?」と業績の下方修正もさることながら、適時に業績を把握できているのかという経営陣の手腕を随分たたかれました。アナリストは予想がぶれれば、いち早くマーケットに伝えるということが求められていますので。そういう意味で、経営者に対するアナリストを中心としたマーケットの見方は本当に厳しいものがあります。 もう一点、海外は、前年の4~6月と今年の4~6月、前年の7~9月と今年の7~9月という形で、純粋に四半期の結果を見比べますが、日本は四半期ごとに累計されて、第3四半期なら、4月〜12月までを見る。 日置 累計で比べると、以前に開示した時の差分に今期間の差分が相まって要因分析が分かりにくくなりそうですね。一方で、長期のビジネスの方向感というのも投資家とのコミュニケーションに必要だと思うのですが、この点はどうですか。 橋本 デュポンでは、ビジネスセグメントごとに、翌年の単年はもちろん、向こう3年ぐらいについても、成長率や、収益のトップラインとボトムラインの両方を公表します。社内の業績管理では、3×6=18カ月の6クオーターのローリング予測数字を出すのです。この数字の根拠はまず、いわゆるS&OP(販売・生産計画)があり、その延長が18カ月まで延びているイメージです。オペレーションと計画が一気通貫になっているので、日本企業のように、業績数字と関連のない中計の数字が浮いているということはない。 大上 オムロンでは10年ごとに長期ビジョンを策定していますが、世の中がどのように変わっていくかということを予測し、その中で自分たちの目指す姿を描き、そこからバックキャストで自分たちがやるべきことを示します。根底にある投資家との対話の共通言語はファイナンスの考え方や企業価値そのものです。 たとえば、資本コスト8%、つまり期待収益率8%といった時、10年間経つと、株価上昇+配当を合わせた累計でだいたい当初の投資額の2倍くらいになりますよね。 西山 利回りを複利で積み重ねれば、だいたい10年で投資額の2倍+αぐらいになる感じですね。 大上 それが共通言語として根底にあって、ここを意識して投資家と対話をするということですね。企業価値の向上ということを掲げている会社は多いですが、具体的に資本コストを意識してできているかが重要です。 橋本 それをキャッシュフローで。 大上 ええ。その水準まで企業価値を上げられていないのなら、配当や自己株取得という形のリターンで報いていくということも選択肢としてあるわけです。 日置 日本企業は投資家に話すときに、客観的な視点が足りない気がします。投資家に話しているのに、自分たちの目標の話に終始している。投資家にしてみれば、その企業は同じ業種の中での選択肢の一つでしかないのに、企業側は同業間で比べられた時、自社がどう見られているのかという想像が足りない。統合報告書のボリュームがどんどん増えていることも気になっているのですが、投資家から「どこも社会課題を掲げ、新規事業もやっているが、皆、同じテーマを掲げていて特徴がない」と見えてしまう。目線は広げつつも、少しメッセージを絞る、それだけで違う風景が見えてくると思うのですが。 橋本 かつて経営者の中に、「短期の投資家のために、なぜ手間をかけて四半期決算の開示をしなくてはならないのか」と不満気だった人がいましたが、不思議なことを言うなと思いました。「最低限、四半期で業績を互いに開示することで、同業の中での位置づけがわかる。他社の結果がわからなくて、どういう戦略を立てるのですか」と言いたくなりました(笑)。 自社の数字を出し、同業の競争相手の数字を見て、万一下回っているなら、競合に勝つ戦略を立てなくてはいけない。そういう見方がなかなかできていないですね。先程のお話の通り、投資家から見れば同じセグメントの中で競合他社のA社に張るのか、自社に張るのか、どちらをオーバーウェイトするかの判断材料になるわけですから、そうした舞台裏をもっと意識しながら戦略を立てるべきです。 西山 私も、日本企業のIRはやや受け身の傾向が強いように感じます。また、CEOやCFOと、他の役員との間にIRに対する温度差もあるように感じています。 橋本 日本企業の多くは投資家説明会にCFOとせいぜいその下にいるコントローラー(経営管理担当者)ぐらいしか出席しない。デュポンでは、CEOとCFOが必ず出て、加えてそのときどきでトピックスのある事業部のリーダーとスタッフが出席します。 日置 市場が評価する企業価値は、企業への期待値ということであるので、その期待値をどうつくっていくか。根拠を持った上で、客観的に自社を評価し、しっかりアピールすることが大事ですね。 →後編は11月10日に公開いたします』、「オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。
タグ:資本市場 経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」 ダイヤモンド・オンライン 「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。 時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 種の名誉ですね」、なるほど。 両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一 「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。 「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、 「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。 NHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」 「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。 「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。 いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。 「行政処分」は次の記事で紹介する。 東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」 「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。 「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。 「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。 「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。 東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」 (その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)
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タウン情報・街並み(その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳) [文化]

今日は、タウン情報・街並み(その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳)を取上げよう。

先ずは、昨年3月4日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーランスライターの小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/535493
・『今年2月、西武グループの持ち株会社である西武ホールディングスは、プリンスホテルなど国内31の保有施設を売却すると発表した。同時期、セブン&アイホールディングスは西武池袋本店などを含む傘下の百貨店「そごう・西武」の売却に向けて調整に入ったと報じられた。 昭和初期から平成にかけて、西武は池袋駅を牙城にして発展してきた。1964年に西武の総帥・堤康次郎が没した後、鉄道事業などは堤義明へ、百貨店事業などは堤清二が率いる西武流通(後のセゾン)グループへと引き継がれた。歳月とともに両者は独立性を強めていくが、池袋駅東口には旗艦店となる西武百貨店と西武鉄道の駅が並び、“西武”を冠する両者は端から見れば同じグループであるように映った。 池袋駅や街の発展は、西武鉄道と西武百貨店の存在を抜きに語ることはできないが、そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかったが、それが街を発展させてきた』、「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかったが、それが街を発展させてきた」、ターミナル駅としては珍しい由来だ。
・『板橋や目白よりも遅かった開業  池袋駅を開設したのは、現在のJR東北本線や高崎線・常磐線などを建設した私鉄の日本鉄道だった。上野駅をターミナルに北関東や東北へと路線を広げる日本鉄道は、群馬県の富岡製糸場で生産される生糸を横浜港まで迅速に運搬することを主目的にしていた。 当時、上野駅と新橋(後の汐留)駅は一本の線路でつながっていない。そのため、上野駅で荷下ろしし、新橋駅で再び積み直すという手間が生じた。輸送効率を上げるべく、日本鉄道は赤羽駅から線路を分岐させて品川駅までを結ぶ短絡線を建設。これは品川線と呼ばれる路線だが、現在の埼京線に相当する。 品川線には、中間駅として板橋駅・新宿駅・渋谷駅が開設されたが、この時点で池袋駅は開設どころか計画すら浮上していない。品川線の開業と同年には目白駅や目黒駅が、1901年には大崎駅が開設されたが、この時点でも池袋駅は開設されなかった。) その後も日本鉄道は路線網を広げていき、現在の常磐線にあたる区間を1898年に開業。常磐地方の石炭を輸送するという貨物輸送の役割が強かった同線は、繁華街にある上野ではなく田端駅をターミナルにした。田端駅には、太平洋沿岸で採掘される石炭などが多く運び込まれるようになる。 当時の日本は、工業化の進展とともに東京湾臨海部に工場が続々と誕生。田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される。 豊島線は、田端駅と目白駅の間に駒込・巣鴨・大塚などの駅を開設し、大塚駅からは南西へと線路を建設して一直線に目白駅を目指す構想だった。しかし、目白駅の拡張は地形的な理由から難しく、さらに一直線で線路を建設すると、巣鴨監獄に線路を通すことになる。 巣鴨監獄は戦後にGHQが接収し、A級戦犯が収監された「巣鴨プリズン」の名で知られる。明治新政府は国家の人権意識が高いことを諸外国に示すため、巣鴨監獄の前身である警視庁監獄巣鴨支署を1895年に開設した』、「日本鉄道は赤羽駅から線路を分岐させて品川駅までを結ぶ短絡線を建設。これは品川線と呼ばれる路線だが、現在の埼京線に相当する。 品川線には、中間駅として板橋駅・新宿駅・渋谷駅が開設されたが、この時点で池袋駅は開設どころか計画すら浮上していない・・・田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される。 豊島線は、田端駅と目白駅の間に駒込・巣鴨・大塚などの駅を開設し、大塚駅からは南西へと線路を建設して一直線に目白駅を目指す構想だった。しかし、目白駅の拡張は地形的な理由から難しく、さらに一直線で線路を建設すると、巣鴨監獄に線路を通すことになる」、なるほど。
・『「監獄」を避けた線路  なぜ、政府が諸外国に対して人権意識の高さを示さなければならなかったのか。それは、諸外国が不平等条約を改正する条件に「日本が一等国である」ことを盛り込んでいたからだ。当時、西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた。政府はこれまでの囚人の扱いを改め、人権意識の高い国であることを示そうとした。 こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる。こうして豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された。 工業化が進展していた日本では、鉄道の貨物輸送量が年を経るごとに増加していた。日本鉄道は列車の運行本数を増やすべく、翌1904年に新宿駅―池袋駅間を複線化。日露戦争に勝利すると、政府はさらなる強国へと成長するべく軍事輸送の強化に乗り出す。1906年には「鉄道国有法」を施行し、品川線・豊島線などを含む多くの幹線を国有化。これにより、貨物輸送は政府の思惑が強く反映されることになる。 その後、現在の山手線にあたる区間の複線化が進められると同時に、1909年には電化にも着手。こうして現在の山手線の骨格が少しずつ組み上がっていく。) 池袋駅は貨物駅として存在感を強めていたものの、旅客駅としての利用者は決して多くなかった。むしろ1駅隣にある大塚駅のほうが乗降客数は多く、その数は1917年に年間100万人に達していた。それは池袋にターミナルを据える東武東上線、西武池袋線の前身が会社を立ち上げたときの計画からも読み取れる。 東武東上線の前身である東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町(現・東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅付近)へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した。 しかし、それでも街のにぎわいは大塚駅のほうが一枚上だった。この時期、東京大宮電気鉄道や東京日光電気鉄道といった、東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた』、「こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった・・・豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された・・・池袋駅は貨物駅として存在感を強めていたものの、旅客駅としての利用者は決して多くなかった。むしろ1駅隣にある大塚駅のほうが乗降客数は多く、その数は1917年に年間100万人に達していた。それは池袋にターミナルを据える東武東上線、西武池袋線の前身が会社を立ち上げたときの計画からも読み取れる。 東武東上線の前身である東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町(現・東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅付近)へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した」、ずいぶん回り道をしたものだ。
・『豊島区発足、東口がにぎわいの中心に  時代が昭和に移ると、東京市は市域の拡張を検討。1932年、北豊島郡に属する巣鴨町・西巣鴨町・高田町・長崎町が合併して豊島区が発足する。新区名は古くから栄える目白を採用して目白区とする案が有力で、将来性を考慮して池袋区とする案も出されたが、折衷案として郡名から豊島区に決まった。 新たな区役所は交通の便が考慮され、池袋駅付近に開庁することが異論なく決まった。区名になることは逃したものの、区役所が設けられたことで池袋は豊島区の中心的な街へと姿を変えていく。 それまでの池袋は、武蔵野鉄道や東武東上線など郊外へと通じる鉄道路線は開設されていたものの、都心部へと直結する鉄道網がなかった。 しかし、都心へとつながる路線がまったく計画されていなかったわけではない。武蔵野鉄道は1925年に池袋―護国寺間の路線免許を取得。昭和初期に立て続けに恐慌が発生していたこともあり未着工のままになっていた。同免許は東京市へ譲渡され、それが転用される形で1939年に市電の池袋線が開通。市電が都心部と直結したことで、池袋駅は東口ににぎわいが生まれていった。 東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる。 池袋駅東口は1944年の建物疎開により多くの家屋が移転・撤去させられたが、戦火が激しかったこともあり、戦後は焼け野原と化した。それは武蔵野デパートも例外ではなく、荒廃した池袋駅や百貨店の場所には闇市が立ち並んだ。) 武蔵野鉄道や東武東上線の沿線は農地が多く、終戦直後は多くの農家が池袋の闇市に食料を持ち込み、それを生活資金に換えていた。農家が持ち込む米や野菜を目当てに買い物へ来る客は多く、闇市が池袋に活況を与えた。 終戦直後の混乱期、闇市は黙認されていた。しかし、戦後のほとぼりが冷める頃から行政・警察当局による取り締まりが厳格化していく。とはいえ、やみくもに取り締まれば食料流通は停滞し、それは人々の日常生活に混乱を与える。 そこで、東京都は池袋駅東口から南東へと延びる大型道路(現・グリーン大通り)の南側一帯に着目。戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった。こうして東口に商店が立ち並んでいく。 池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった』、「「東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる。 池袋駅東口は1944年の建物疎開により多くの家屋が移転・撤去させられたが、戦火が激しかったこともあり、戦後は焼け野原と化した。それは武蔵野デパートも例外ではなく、荒廃した池袋駅や百貨店の場所には闇市が立ち並んだ・・・東京都は池袋駅東口から南東へと延びる大型道路(現・グリーン大通り)の南側一帯に着目。戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった。こうして東口に商店が立ち並んでいく。 池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、「東口」の方が「西口」より先に発展したようだ。
・『地下鉄開通でさらに発展  これらの動きと連動するように、1949年には池袋駅―神田駅間の地下鉄建設計画が決定。後に神田駅から御茶ノ水駅へとルート変更し、1954年に開業する。これが丸ノ内線の始まりだ。その後も同線は延伸された。 丸ノ内線の輸送能力が限界に達すると、それを補完する有楽町線の池袋駅―銀座一丁目駅間が1974年に開業。地下鉄も集積したことで、池袋は新宿・渋谷と比肩する繁華街へと変貌した。 実のところ、池袋駅の伸長は1960年代から兆しが現れていた。それを端的に表すのが、1964年に新宿・渋谷と池袋の商店街・行政・私鉄などによって結成された三副都心連絡協議会だ。同協議会は、明治通りの下に渋谷・新宿・池袋を結ぶ地下鉄を建設するように東京都へ働きかけている。 しかし、東京都は工費が莫大になることを理由に拒否。代替案として工費を10分の1に抑えられるモノレール構想が打診されたものの、こちらも実現することはなかった。東京都と帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)という事業主体は異なるものの、1960年代から副都心線の萌芽ともいえる計画が持ち上がっていたことは注目に値する。 駅西口に目を移すと、運輸(現・国土交通)省が戦災復興で民衆駅を提案したことから戦後の駅前整備が始まっている。民衆駅とは民間資本によって駅舎を整備する資金調達スキームで、池袋駅西口はそのトップバッターに選ばれた。) 民衆駅計画は1947年に策定されたが、西口は権利関係が複雑で、なおかつ東口の根津山のような代替地がなかった。 国鉄や行政の意思だけでは整備ができず、西口に民衆駅を整備するには東武との調整が不可欠だった。闇市を移転する代替地もなかったことから民衆駅の計画は遅々として進まず、竣工に漕ぎ着けたのは1950年になってからだった。それらの影響もあり、民衆駅第1号の名誉はタッチの差で愛知県の豊橋駅となる。 ちなみに、ビックカメラのCMソングに歌われる、東口に西武、西口に東武の構図はこの時点で固まっていない。それどころか、1950年には東横百貨店(現・東急百貨店)が西口に出店。つまり、「東は西武で、西、東急」の時代があった。 1924年から1954年まで、池袋駅西口には鉄道育英会が開設した東京鉄道中学校が立地していた。同校は何度かの変遷を経て芝浦工業大学高等学校になった。 東横が開店した同年、東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした。 東武会館が着工された頃から、それまで停滞していた西口の戦災復興は進み始めた。そして、西口の開発は現在に至るまで繰り返し実施されて街の移り変わりは激しい』、「東横が開店した同年、東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、「東武」には「地元商店街の反対」があったので、「アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、初めて知った。
・『2023年に開業120周年  池袋駅は、その後も鉄道によって多くの人を引きつけていく。1985年には池袋駅―赤羽駅間を往復していた赤羽線が発展的に埼京線へと姿を変え、埼玉都民と呼ばれる通勤者の流入を促した。 東上線沿線ではニュータウン開発が盛んになり、沿線人口は増加。住民の多くが東京へと通勤するサラリーマンだったことから東上線の混雑は年を追うごとに激化した。 混雑緩和を目的に、1987年には東上線の和光市駅―志木駅間を複々線化。有楽町線にも乗り入れを開始し、有楽町線と東上線が直通運転することで混雑の分散を図った。それでも池袋駅から山手線へと乗り継ぐ利用者が多く、山手線の混雑率が高止まりしていることから、山手線のバイパス機能を担う副都心線が2008年に開業することになった。 来年2023年、池袋駅は開業120年を迎える。地元の豊島区は2014年から池袋駅周辺の整備に着手し、歩行者主体のまちづくりへと舵を切った。これは2032年の豊島区誕生100年を意識した長期的な取り組みだ。 コロナ禍で鉄道を取り巻く環境や存在意義も改めて問われている。飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか』、「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか」、「西武線」や「東上線」が池袋を通らずに都心に地下鉄で結ばれたことで、ターミナルの乗降客はどの程度減ったのだろう。

次に、本年11月2日付け東洋経済オンラインが掲載した東京情報堂代表の中川 寛子氏によう「おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/712158
・『特に1980年代には1970年代創刊の「anan」「nonno」「JJ」などといった女性誌にファッションの街、雑貨の街として頻繁に取り上げられた。ロケ地としてテレビドラマに登場することも増え、全国的に知られるようにもなった。同時期には人気絶頂だった松田聖子や俳優の津川雅彦が店長を務める店なども誕生、街中には行列ができたものである。 その後、2003年に自由が丘スィーツフォレストが誕生。スイーツの街としても知られるようになり、現在は美容室が100軒以上、それ以外にネイルやエステのサロンも集積する街になるなど、新しい顔を見せるようにもなっている。 スィーツのまちとしての自由が丘の名を高めたスィーツフォレスト』、「スイーツの街としても知られるようになり、現在は美容室が100軒以上、それ以外にネイルやエステのサロンも集積する街になるなど、新しい顔を見せるようにもなっている」、よくぞこんなにも変貌したものだ。
・『新宿や池袋、二子玉川、武蔵小杉との競争  だが、ここ10~15年、このままでいいのかという議論が起こってきたと、自由が丘のまちづくり会社で都市再生推進法人であるジェイ・スピリットの岡田一弥氏は言う。 きっかけは東急線の相互直通運転だった。新宿や池袋など他の魅力的な商業地域とダイレクトにつながることになり、これまで並び称されてきた代官山、下北沢などとは異なる、より広範な地域間での競争を意識せざるをえなくなったのである。 加えて二子玉川や武蔵小杉の変貌もあった。「自由が丘は鉄道、道路といったインフラが整備されないままにきた街。課題である迷路のような細街路の魅力を武器に専門店の集積として発展してきましたが、一方で諦めてしまったものもあります」と岡田氏。 「かつて6館あった映画館は今はゼロ。大きな床がないのでホテルも、オフィスもありません。駐車場、駐輪場も足りない。生鮮三品を扱う店も以前からの店はほぼ死滅している状態。対して二子玉川や武蔵小杉にはそうしたものが全部揃っています」 周囲の変化に対する危機感に加え、この10年ほどは建物の老朽化が進んでもいた。建て替えを考えても駅前では交通を遮断するわけにいかないため、単独建替えは難しい。さらにいつ始まるかわからない都市計画道路工事もある。そうした諸問題を解消、建物を更新するためには共同で建替えるしかないという声が出ていた。) その結果が現在進んでいる再開発である。再開発はデベロッパーや自治体から地元に声がかかり、彼ら主導で進んでいくことが多い。だが、自由が丘では主体は地権者。このままではまずいという1人の意見に徐々に地域の人たちが賛同、みんなで解決策を模索した結果、自分たちで開発を決めたのである。 再開発と言いながら、実態は共同建替えに近く、自分たちが所有している土地を鑑定、その評価分を再開発後の床と交換すると考えると等価交換とも近いと岡田氏。かなりの商店主が新築後の建物で商売を再開する予定になってもいる。 地元で声が上がり、それで地域がまとまるという流れが生まれた背景には自由が丘の商店街の立地と歴史がある。 自由が丘はターミナル駅ではあるもの、世田谷区との区境近くにあり、自治体が何か施設を作ることもなければ、大手資本が進出することもなく、街の繁栄は商店街にかかっていた。自分たちでやるしかないということである』、「再開発と言いながら、実態は共同建替えに近く、自分たちが所有している土地を鑑定、その評価分を再開発後の床と交換すると考えると等価交換とも近いと岡田氏。かなりの商店主が新築後の建物で商売を再開する予定になってもいる。 地元で声が上がり、それで地域がまとまるという流れが生まれた背景には自由が丘の商店街の立地と歴史がある」、なるほど。
・『12の商店街が「団結」  その結果、自由が丘の商店街は団結した。現在、自由が丘には最少10人、最多380人という12の商店街があり、それを束ねる形で自由が丘商店街振興組合がある。会員数はコロナ禍で少し減ったものの1250人ほどでおそらく日本でも最大級の商店街振興組合である。 それだけの商店街がまとまって動けばインパクトは大きい。たとえば自由が丘では季節に応じて8つのイベントが開催されているが、そのうちでも最大規模の「自由が丘女神まつり」の来場者数は約50万人以上とも言われるほど。隣り合う商店街はたいていの場合、仲が悪いものだが、自由が丘では一緒になって街を盛り上げ、それで成功してきた。一体感がある街なのである。 イベント、祭り以外にも夜間のゴミ収集事業、個店の煩雑なカード決済業務を引き受けるカードビジネス、その他、商店街振興組合はさまざまな事業を行っており、前述のまちづくり会社も商店街発。2002年から商店街が行政、鉄道会社その他地域の関係者と連携、まちづくりを先導してきた。自らの発意による再開発もその流れなのである。) そのため、再開発で生まれるビルには、駐車場、駐輪場、共同荷捌き所、無電柱化を進めるための電力システムなど、今自由が丘に足りていないものを備えるという。加えて、細街路に個店が並ぶ、いかにもこの街らしい自由が丘サンセットエリアへの人の流れを促すよう、建物内を貫通する通りも作られる。足元には幅4.5mほどの歩道空間も生まれる予定だ。 低層階には商業、業務機能を入れ、7階以上を賃貸住宅に充てるというのも他の再開発にはない点だ。自由が丘の大きな顧客である隣接地、田園調布では高齢化が進んでおり、165㎡という住宅の最低敷地面積の制限もあって若い人の流入がそれほど多くは見込めない。だが、自由が丘駅前の賃貸住宅であればこれまでと違う層の流入が期待できる。 また、賃貸にするということは売りきっておしまいにするという、よくある再開発のやり方ではないという意味でもある。地権者、事業協力者も含め、この土地に関わり続けざるをえないのである』、「自由が丘駅前の賃貸住宅であればこれまでと違う層の流入が期待できる。 また、賃貸にするということは売りきっておしまいにするという、よくある再開発のやり方ではないという意味でもある。地権者、事業協力者も含め、この土地に関わり続けざるをえないのである」、なるほど。
・『さらなる再開発もありえるか  開発が進む地域と道路を挟んで西側、東急東横線を挟んで東側でもすでに市街地再開発準備組合が設立されている。現在のところ、どのような開発になるかはわかっていないが、内容次第では現在、自由が丘に足りていない機能が新たに付加されるかもしれない。 2004年度に自由が丘周辺の東急2路線が東京都の「踏切対策基本方針」の検討対象区間に位置づけられて以降、鉄道施設の更新についても検討が行われてきた。2023年には目黒区が自由が丘駅周辺地区都市基盤整備構想を策定。建物の更新よりは時間はかかるかもしれないが、確実に鉄道インフラの更新への道は敷かれつつある。 東急東横線沿いには戦後の闇市に由来する商業施設・自由が丘デパート、ひかり街、サンリキ会があるが、こちらでも街づくり勉強会が始まった。ただ、これらのビルは線路と非常に近く、建物だけ、鉄道だけでの更新は難しいように思われる。鉄道の更新同様時間をかけて検討するということになるのではなかろうか。) 駅周辺のあちこちでさまざまな動きがあるわけだが、気になるのは自由が丘らしさはどうなるか。 「サンセットエリア、南口地区はこれまでと変わらないので自由が丘らしさは周辺に残ります。逆に駅近くの商業施設の集客力が増えることでそこからのシャワー効果で周辺部にも人が増え、結果として街が面的に大きくなるのではないかと見込んでいます」(岡田氏) ジェイ・スピリットと目黒区が連携して作った「自由が丘未来ビジョン」によると再開発エリアを含む駅周辺の商業地域は歩行者中心の「楽歩地区(らっぽちく)」とされており、できるだけ多くの歩行者空間、日本一多い座れる場を創り出すことが目指されている。 九品仏川緑道に匹敵するようなオープンスペースの整備計画もある。再開発建物内に平面、立面の細街路を作ることも構想されており、それを見る限り、自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない。それが現在、開発に関わっている人たちの思いであるようだ』、「自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない」、これを大切にしてほしいものだ。「開発が進む地域と道路を挟んで西側、東急東横線を挟んで東側でもすでに市街地再開発準備組合が設立されている。現在のところ、どのような開発になるかはわかっていないが、内容次第では現在、自由が丘に足りていない機能が新たに付加されるかもしれない・・・鉄道施設の更新についても検討が行われてきた。2023年には目黒区が自由が丘駅周辺地区都市基盤整備構想を策定。建物の更新よりは時間はかかるかもしれないが、確実に鉄道インフラの更新への道は敷かれつつある。 東急東横線沿いには戦後の闇市に由来する商業施設・自由が丘デパート、ひかり街、サンリキ会があるが、こちらでも街づくり勉強会が始まった。ただ、これらのビルは線路と非常に近く、建物だけ、鉄道だけでの更新は難しいように思われる。鉄道の更新同様時間をかけて検討するということになるのではなかろうか・・・九品仏川緑道に匹敵するようなオープンスペースの整備計画もある。再開発建物内に平面、立面の細街路を作ることも構想されており、それを見る限り、自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない。それが現在、開発に関わっている人たちの思いであるようだ」、なるほど。「自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている」、一安心だ。
・『従来とは違うイオンモールも誕生  このほか、2021年に閉店し、自由が丘周辺住民に多大なショックを与えたスーパー、大丸ピーコックの跡地はイオンモールの商業施設「JIYUGAOKAde aone(自由が丘デュアオーネ)」として2023年10月に開業した。従来のイオンモールを想像した人たちからは自由が丘にそぐわないのではないかという声も聞かれたが、実際にはデッキ、緑の多い開放的で自由が丘らしい建物になっている。 これは建物背後が規制の厳しい第一種低層住居専用地域で斜線制限などがあるため、セットバックの多い建物にならざるをえなかった結果。とはいえ、商店街にも相談、逐次報告があったそうで、商店街が大事にする自由が丘らしさもおおいに考慮されたのではないかと思うのだが、どうだろう。 参考資料/「自由が丘」ブランド自由が丘商店街の挑戦史岡田一弥・阿古真理著産業能率大学出版部2016年』、「イオンモールの商業施設「JIYUGAOKAde aone・・・」として2023年10月に開業した。従来のイオンモールを想像した人たちからは自由が丘にそぐわないのではないかという声も聞かれたが、実際にはデッキ、緑の多い開放的で自由が丘らしい建物になっている」、「自由が丘らしさ」は大切にしたとは「イオン」もやるものだ。
タグ:・・・池袋駅は貨物駅として存在感を強めていたものの、旅客駅としての利用者は決して多くなかった。むしろ1駅隣にある大塚駅のほうが乗降客数は多く、その数は1917年に年間100万人に達していた。それは池袋にターミナルを据える東武東上線、西武池袋線の前身が会社を立ち上げたときの計画からも読み取れる。 東武東上線の前身である東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町(現・東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅付近)へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野 「スイーツの街としても知られるようになり、現在は美容室が100軒以上、それ以外にネイルやエステのサロンも集積する街になるなど、新しい顔を見せるようにもなっている」、よくぞこんなにも変貌したものだ。 「こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった・・・豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された 田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される。 豊島線は、田端駅と目白駅の間に駒込・巣鴨・大塚などの駅を開設し、大塚駅からは南西へと線路を建設して一直線に目白駅を目指す構想だった。しかし、目白駅の拡張は地形的な理由から難しく、さらに一直線で線路を建設すると、巣鴨監獄に線路を通すことになる」、なるほど。 「日本鉄道は赤羽駅から線路を分岐させて品川駅までを結ぶ短絡線を建設。これは品川線と呼ばれる路線だが、現在の埼京線に相当する。 品川線には、中間駅として板橋駅・新宿駅・渋谷駅が開設されたが、この時点で池袋駅は開設どころか計画すら浮上していない・・・ 「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかったが、それが街を発展させてきた」、ターミナル駅としては珍しい由来だ。 小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」 東洋経済オンライン 「イオンモールの商業施設「JIYUGAOKAde aone・・・」として2023年10月に開業した。従来のイオンモールを想像した人たちからは自由が丘にそぐわないのではないかという声も聞かれたが、実際にはデッキ、緑の多い開放的で自由が丘らしい建物になっている」、「自由が丘らしさ」は大切にしたとは「イオン」もやるものだ。 九品仏川緑道に匹敵するようなオープンスペースの整備計画もある。再開発建物内に平面、立面の細街路を作ることも構想されており、それを見る限り、自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない。それが現在、開発に関わっている人たちの思いであるようだ」、なるほど。「自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている」、一安心だ。 2023年には目黒区が自由が丘駅周辺地区都市基盤整備構想を策定。建物の更新よりは時間はかかるかもしれないが、確実に鉄道インフラの更新への道は敷かれつつある。 東急東横線沿いには戦後の闇市に由来する商業施設・自由が丘デパート、ひかり街、サンリキ会があるが、こちらでも街づくり勉強会が始まった。ただ、これらのビルは線路と非常に近く、建物だけ、鉄道だけでの更新は難しいように思われる。鉄道の更新同様時間をかけて検討するということになるのではなかろうか・・・ 「開発が進む地域と道路を挟んで西側、東急東横線を挟んで東側でもすでに市街地再開発準備組合が設立されている。現在のところ、どのような開発になるかはわかっていないが、内容次第では現在、自由が丘に足りていない機能が新たに付加されるかもしれない・・・鉄道施設の更新についても検討が行われてきた。 「自由が丘らしさは形を変えつつも最大限に尊重されている。駅前の風景は変えるとしてもこの街らしさは変えない」、これを大切にしてほしいものだ。 「自由が丘駅前の賃貸住宅であればこれまでと違う層の流入が期待できる。 また、賃貸にするということは売りきっておしまいにするという、よくある再開発のやり方ではないという意味でもある。地権者、事業協力者も含め、この土地に関わり続けざるをえないのである」、なるほど。 「再開発と言いながら、実態は共同建替えに近く、自分たちが所有している土地を鑑定、その評価分を再開発後の床と交換すると考えると等価交換とも近いと岡田氏。かなりの商店主が新築後の建物で商売を再開する予定になってもいる。 地元で声が上がり、それで地域がまとまるという流れが生まれた背景には自由が丘の商店街の立地と歴史がある」、なるほど。 中川 寛子氏によう「おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳」 「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか」、「西武線」や「東上線」が池袋を通らずに都心に地下鉄で結ばれたことで、ターミナルの乗降客はどの程度減ったのだろう。 「東横が開店した同年、東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした」、「東武」には「地元商店街の反対」があったので、「アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、初めて知った。 口」の方が「西口」より先に発展したようだ。 東京都は池袋駅東口から南東へと延びる大型道路(現・グリーン大通り)の南側一帯に着目。戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった。こうして東口に商店が立ち並んでいく。 池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、「東 「「東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる。 池袋駅東口は1944年の建物疎開により多くの家屋が移転・撤去させられたが、戦火が激しかったこともあり、戦後は焼け野原と化した。それは武蔵野デパートも例外ではなく、荒廃した池袋駅や百貨店の場所には闇市が立ち並んだ・・・ 鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した」、ずいぶん回り道をしたものだ。 (その1)(池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった、おしゃれな街「自由が丘」密かに抱いていた危機感 高層ビルなかった街が大型再開発に踏み切る訳) タウン情報・街並み
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金融業界(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) [金融]

金融業界については、本年9月3日に取上げた。今日は、(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル)である。

先ずは、10月9日付け東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707119
・『「わが国におけるエポックメーキングになる出来事。ドコモという巨人と、起業家精神あふれる個人の集合体であるマネックスが手を組むことは、非常にエキサイティングだ」 ネット証券大手・マネックスグループの会長で創業者でもある松本大氏は、10月4日の記者会見でそう語った。 マネックスグループは同日、NTTドコモと資本業務提携を結び、祖業でグループ中核のマネックス証券がドコモの連結子会社になると発表した。提携は次のようなスキームで行われる』、興味深そうだ。
・『独立系証券の旗を降ろすことに  まず中間持ち株会社を設立し、その新会社にマネックス証券の全株式を取得させる。そのうえで新会社の株式の一部をドコモに売却、同時に新会社がドコモを割当先とした第三者割当増資を行う。 一連の取引は2024年1月に完了する予定だ。新会社の株式は約51%をマネックスグループ、約49%をドコモがそれぞれ所有する。現在マネックスグループの100%子会社であるマネックス証券は、ドコモの子会社になる。 新会社の取締役の過半はドコモが選任する。そのため、実質支配力基準に基づき、新会社とマネックス証券はドコモの連結子会社になり、マネックスグループにとっては持分法適用会社となる。 1999年の設立から四半世紀を転機に、マネックス証券は独立系の旗を降ろすことになった。) マネックスグループの連結から外れるが、マネックス証券の社名は変更しない。社長も現任の清明祐子氏が務めるなど、マネックスのブランドは維持する方向だ。 松本氏は提携に至った理由を、「ネット証券が生き残っていくうえで、プラットフォームとの提携は避けられない」と説明する。 松本大氏は今回の提携について「最高のタイミングと最良の相手」と話した(撮影:尾形文繁)』、「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。
・『競争が激化するネット証券業界  2024年1月から始まる新NISAを初めとして、「貯蓄から投資へ」の流れが加速している。一方、今年10月からはSBI証券と楽天証券が国内株の取引手数料無料化に踏み切るなど、ネット証券業界の競争が激化している。 こういった状況下、マネックスグループはドコモと協業することで顧客基盤を強化する。9600万人の会員を持つ「dポイント」や決済サービス「d払い」、電子マネー「iD」などドコモのサービスと連携、比較的金融リテラシーの高い個人が多かった顧客層の裾野を広げていく。 業績への影響はどうか。マネックスグループの2023年3月期の営業収益793億円(IFRS)に対し、マネックス証券単体の営業収益は310億円だった。 持分法適用会社となることで、マネックス証券の営業収益と営業利益はグループ連結に反映されなくなる。見かけ上、マネックスグループの事業規模は大きく縮む。51%の持分に応じた当期利益への反映はあるものの、マネックス証券の上げた利益の半分はドコモのものになってしまう。 それでも、提携効果によってマネックス証券が大きく成長することで利益規模は早期に回復すると、マネックスグループは見通す。 マネックス証券は2023年9月現在、223万口座、預かり資産残高7兆円を抱える。これまでは2026年度に300万口座、預かり資産残高10兆円を目標としてきた。この目標をそれぞれ500万口座、15兆円に引き上げる。 「dポイント経済圏とのシナジーにより、非連続的な成長を達成する」と、マネックス証券の清明社長は力を込める。) ドコモにとっても、マネックスグループとの提携への期待は大きい。ドコモの井伊基之社長は、「初めての人でも、手軽で簡単に資産形成できるサービスを提供する」と意気込む。会見では、「家族」という言葉を何度も使い、「身近なサービスを展開する」と強調した。 ドコモのライバルである通信各社が「auカブコム証券」(au)、「PayPay証券」(ソフトバンク)、「楽天証券」(楽天)という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった』、「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。
・『SBIの「1強体制」をどう崩すのか  どこと組むのかは、証券業界でも注目を集めていた。「ドコモが組むとしたら、マネックス証券か松井証券だと思っていた」。ある業界関係者はそう話す。 ドコモの江藤俊弘スマートライフカンパニー統括長は会見後の囲み取材で、「ドコモがせっかくやるのであれば、マネックス証券は数百万口座では物足りない。時期は未定だが、1000万口座を目指したい」と鼻息荒く語った。 ただ、ドコモやマネックスグループのもくろみどおり、マネックス証券が成長できるかどうかは疑問符がつく。 ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた。 手数料無料化の荒波にもさらされている。ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった。 手数料収入に依存しないビジネスモデルを着々と準備したSBI証券の「1強体制」をどう崩すか。対抗策は見当たらない。) マネックス証券の純資産額は2023年3月末で487億円。それに対して今回、中間持ち株会社の株式価値は970億円とした。つまりマネックス証券にはそれだけの企業価値があると、ドコモが認めたわけだ。 ある証券会社幹部はこの金額が「高めだ」と指摘。「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」(同)というわけだ』、「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」、なるほど。
・『今後は「何業」の会社に?  マネックスグループはさしあたり株売却で入ってくる資金を元手に、成長領域とするアセットマネジメントビジネスを中心に投資を進める。競争が激化する証券ビジネスから距離を置き、事業ポートフォリオの再編成に乗り出すとの見方もある。 気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ。暗号資産(仮想通貨)交換所の「コインチェック」やアメリカの証券会社「トレードステーション」、資産運用を扱う「マネックス・アセットマネジメント」が残るが、この先は何を中核事業とするかに関心が集まる』、「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。
・『マネックス松本氏とソニー出井氏  写真は1999年8月、マネックス証券の誕生を支援したのが当時ソニー社長だった出井伸之氏(右)。「出井さんなくしてマネックスは生まれませんでした」と松本氏は述べている・・・「マネックスは『何業』の会社になるのか」。10月4日に行われたアナリスト向け説明会では、このような質問も出た。松本氏は「個人の生涯バランスシートの最適化というビジョンに向かって事業を行っている。何業かと言われると難しい」と答えた。 この答弁に表れているように、マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない。 先だって9月4日に開いた事業戦略説明会では、グループ戦略の説明を清明氏に任せ、自身は医療分野の新規事業について説明しただけだった。金融業への興味が薄れたかのようにもみえるが、東洋経済の問いに松本氏は「金融への情熱は失われていない」と断言した。 ドコモとの提携発表翌日の10月5日、マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新した。配当の下限をこれまでの2倍となる30円に引き上げると発表したことも影響しているが、今後の成長への期待の表れでもある。 この先、どういった方向性を打ち出すのか。マネックスグループの「次の一手」が問われる』、「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/118400?imp=0
・『ガザを巡る抗争(10月24日、第7回未来投資イニシアチブ(Future Investment Initiative=FII) がサウジアラビアの首都リヤドのリッツ・カールトン・ホテルで開幕した。因みに日本経済新聞(25日付朝刊)はFIIを「国際投資会議」と表記するが、「未来投資イニシアチブ」の方が実態に適っている。 同国の実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の肝いりでスタートしたFIIは金融関係者の間で「砂漠のダボス会議」と呼ばれる。同皇太子が推進する石油依存経済からの脱却の中核を担うのが運用資産7780億ドル(約117兆円)のサウジ政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(Public Investment Fund=PIF=ヤセル・ルマイヤン総裁)である。 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの激烈な戦闘が続くことを念頭にルマイヤン総裁は開幕式冒頭に、「現在の世界は不確かなものに見えるが、我々はより強い社会を構築しなければならない」と述べた。ガザを巡る抗争がエスカレートするリスクを認めたに等しい。 そうした緊迫する中東情勢のなか注目すべきは、このFIIに米ウォール街の金融業界トップが揃い踏みで参加したことである。世界有数の金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)、グローバル金融最大手ゴールドマン・サックス(GS)のデービッド・ソロモンCEO、資産運用最大手ブラックロックのラリー・フィンクCEO、大手金融機関シティグループのジェーン・フレーザーCEO、投資大手カーライル・グループのハービー・シュワルツCEO、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ創業者らが蝟集した。 何もFIIに参加したのは金融業界の超大物だけではない。米石油メジャーの大物を始め世界各国から石油・ガス業界のトップも馳せ参じた。石油メジャー最大手のエクソン・モービルのダレン・ウッズCEO、フランスの総合エネルギー企業トタル・エナジーズのパトリック・プヤンヌCEOらも会議の合間を縫って、激動の中東情勢に関する意見交換や原油価格についてサウジのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相や国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセルCEOと協議している』、さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。
・『勢力図の変貌  筆者がサウジ主催の未来投資イニシアチブ(FII)年次会議の報道(ロイター通信、米ブルームバーグ及び日経新聞)に接し、その背景を深掘りして得たポイントは唯一つ。 先ず指摘すべきは、この間、米金融機関の勢力図が大きく変貌したということである。際立つのは金融大手のゴールドマン・サックスの業績不振だ。年初の1月17日、GSのソロモンCEOは22年12月期決算を発表したが、純利益が前期比48%減の112億ドル(約1兆4000億円)だった。 今年になっても不振は続き、7~9月期純利益は33%減の20億ドル(約3000憶円)と21年10~12月期から8四半期連続の2桁減益となった。主力の投資銀行ビジネスの不調と得意とするM&A(合併・買収)助言の低調が大きい。GSに「金融界の巨人」という往年の面影はない。 一方、JPモルガンは7~9月期が35%増益の131億ドル(約1兆9500億円)に達し、GSの6倍超である。今年に入ってからの金利上昇で融資などから生じる純金利収入の伸びが著しい。ブラックロックと共にJPモルガンの好調は、米金融界の関心を集めている。 そのJPモルガン・アセット・マネジメントの広告「アメリカ成長株ファンド・アメリカの星」(全面3分の1段)が日本経済新聞(10月26日付朝刊)の最終面(48面)に掲載された。9月25日、10月12日に続く3回目だ(昨年は7月4日を含め4回掲載)。米国株推奨のキャンペーンである。 この彼我の差はどこから来るのか。もちろん、個人向け(リテール)事業の規模の差もある。何よりもそれは一に懸かってJPモルガンのダイモン氏の頭抜けた経営手腕に負うものだ。同氏の複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する。果たして「投資される日本」を目指す岸田文雄首相はその期待に応えられるのか』、「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。

第三に、11月9日付け東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/713549
・『「まるで“政商”といった感じですよね」——。 ある半導体関連企業の関係者がそう評したのは、総合金融業を展開するSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長だ。理由はここぞとばかりにぶち上げた半導体事業参入でみせる北尾会長の立ち回りのうまさにある。 台湾の半導体製造受託企業(ファウンドリー)であるパワーチップと新会社を設立し、日本でファウンドリー事業を立ち上げるとSBIが公表したのは7月初めのことだった。それから約4カ月。10月31日に行われた会見で、全容が明らかになった。 宮城県大衡村にある工業団地に新工場を建設し、2027年の稼働を目指す。必要となる資金は、この第1期投資だけでも約4200億円、2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしているという』、初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。
・『「補助金なしにはやらない」と明言  いくら有望産業の半導体とはいえ、8000億円もの巨額資金を調達することは容易ではない。それでもSBIが参入を決めた理由は、無尽蔵とも言える政府支援の存在だ。 「政府からの補助金が前提。補助金が出なければこの事業をやるつもりはない」。北尾会長は会見でそう言いきった。関係者によると、経済産業省との議論が水面下で進んでいるという。会見の場であえて見得を切ったのは、北尾流交渉術なのかもしれない。 半導体産業の強化はいまや国策だ。世界中でサプライチェーンの再構築が行われ、各国が自国域内での製造を強化している。日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ。「北尾会長は補助金があれば絶対に勝てるビジネスと踏んだのだろう」。金融業界関係者はそう舌を巻く。 そんなSBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった。 SBIが7月に半導体事業参入を発表して以降、北海道から九州まで31の候補地から誘致があったという。「多くの知事や副知事、地方銀行のトップがみんな(SBI本社に)お見えになった」(北尾会長)。 建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ。 「半導体工場の建設が決まっている千歳と遠くなく、新幹線整備に伴い街が活性化している札幌に比べて、仙台地区はニュースが少なく焦りを感じていた」(地元財界関係者) ファウンドリー世界最大手の台湾TSMCが工場を建設している熊本や、ニッポン半導体復活のため次世代の最先端半導体の量産を目指すラピダスが工場建設をスタートさせた千歳市。ともに地元の期待は高まっている。宮城が歓迎一色ムードなのも理解できる』、「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。
・『関係の深い仙台銀行にも恩恵  会見では、北尾会長から興味深い発言も飛び出した。「地元にはわれわれと関係の深い仙台銀行がある。できるだけプラスになるようにしたい」というものだ。 SBIは仙台銀の親会社であるじもとホールディングスに17%を出資する筆頭株主。コロナ禍の際に行った実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し融資先の経営が悪化するなど、地方銀行は苦しい環境下にある。安定した融資先を確保できる半導体工場建設は渡りに舟だ。 仙台銀は早速プロジェクトチームを発足させる予定だ。仙台銀幹部は「SBIとしては、宮城の足がかりは仙台銀と考えていると思う。できる限りの協力をしたい」と意気込む。) SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある。 ただ、半導体は多額の設備投資が必要なだけでなく、市況の浮き沈みの激しい産業だ。ビジネスとしての勝算はあるのだろうか。受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ』、「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。
・『車載半導体のストライクゾーンを狙う  半導体のプロセスノード(回路線幅)の単位はナノ(ナノは10億分の1)メートル。新会社で製造するのは55ナノ、40ナノ、28ナノの3つの世代となる。 半導体は世代を表すプロセスノードの数字が小さくなるほどに高性能になっていく。現在量産されている最先端品はiPhoneの最新世代に搭載されている3ナノ。28ナノは10年以上前の世代だ。 だが、イギリスの調査会社・オムディアのコンサルティングディレクターである杉山和弘氏によると、「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ』、「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。
・『SBIが参入で狙う半導体のプロセスノード  というのも、現在日本で製造できるのはルネサスエレクトロニクスの40ナノ品まで。一方で同社は、最低限の自社工場しか持たない「ファブライト」の方針を掲げており、供給量は十分ではない。2024年の稼働を見込むTSMC熊本工場は28〜12ナノの製造を行うが、こちらは合弁相手のソニーがほぼ全量を自社のイメージセンサー向けに使用するとみられている。 パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない』、「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
タグ:東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」 金融業界 (その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) 「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。 「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。 「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた ・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまく いった取引」、なるほど。 「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。 「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。 現代ビジネス 歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」 さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。 「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。 東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」 初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。 「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった ・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。 「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。 「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。 「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
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インバウンド動向(その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?) [経済政策]

インバウンド動向については、本年7月28日に取上げた。今日は、(その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?)である。なお、タイトルの「戦略」は「動向」に変更した。

先ずは、8月3日付け日刊SPA!「「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1924103
・『日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち  商業的なコリアンタウンだが、「住民の生活があることを韓流好き女性たちにも知ってほしい」とBさんは語る 「新大久保はゲロの街になりましたよ」 そう嘆くのはこの街に住んで6年になるというBさん。 「週末の夜になると、女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」』、「女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」、世も末だ。
・『狭い歩道が満員電車状態、食べ歩きによるゴミ捨ても  韓国料理店や韓流アイドルショップが密集し、大人気の観光地となった新大久保だが、このところ目立つのはハメを外しすぎる日本人女性たち。 「24時間営業の韓国居酒屋やクラブの周辺で大騒ぎする若いコが増えた。すると彼女たち目当てなのか、ガラの悪い日本人の男たちもやってくるようになりました」 さらに土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという。自戒を促される事例だ。) 観光客の迷惑行為は全国で報告されているが、受け入れる日本側にも問題がないとは言えない。インバウンド評論家の中村正人氏は次のように指摘する。 「日本社会自体が疲弊しているなかで政府のインバウンド政策が誘致一辺倒な上、観光客が大都市に集中しているのが現状です。インバウンドはむしろ地域活性化のためにあるという原点に立ち返るべきです。また、コロナで観光産業から離職した人員が復帰していないことによる現場の混乱も要因でしょう」 実際に帝国データバンクによると、業種別正社員の人手不足割合において「旅館・ホテル」が6か月連続でトップとなっている。 その上で中村氏は、罰則の強化を対策に挙げる。 「例えば迷惑行為のあったツアーの主催社は数か月営業停止にするなどのペナルティを与えることも抑止力になる」 日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね」 航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう」 日本も手遅れにならないようにしたいところだ』、「土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという・・・日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね・・・航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう 日本も手遅れにならないようにしたいところだ」、なるほど。 

次に、9月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328448
・『8月10日、中国政府は日本を含む海外への団体旅行をついに解禁した。コロナ前のように中国人観光客が大勢やってきて、“爆買い”が復活するのではないかとインバウンド効果に期待する声は大きい。しかし、中国からの来客や視察ツアーをよくアテンドし、買い物の同行もしている筆者は「団体旅行客が急増することはないし、爆買いも復活しないだろう」と予想する。その理由とは?』、興味深そうだ。
・『銀座のデパートからニトリへ 日本を訪れる中国人富裕層の財布のひもが固くなっている  今年の夏は暑い。できることならどこにも出かけたくない、クーラーが効いている室内でずっと過ごしたい思いだが、今年の7月から8月にかけて、夏休みを利用して、たくさんの中国の友人たちが家族連れで来日した。彼らに会うため頻繁に外に出かけなければならなかったが、顔を見ると約4年ぶりの再会の喜びは大きく、延々と話が尽きることがなかった。 上海の友人Aさん(女性、40代後半)は、子ども2人を連れて、この夏2週間以上東京に滞在した。上の娘さんが今秋から日本の大学に留学するので、彼女のためにマンションを借り、家財道具一式をそろえるための滞在だった。 もう一組の友人夫婦は、既に日本で留学している娘さんと、今後の留学生活について親子で話し合うための来日だった。そのほかにも、北京や上海などからやってきた、日本の介護ビジネス視察の団体をアテンドした。 このように中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ。 上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた。) 「もうお金がない」――Aさんの口から発せられた言葉とは思えず、耳を疑った。これまでの彼女の経済状況を知っていたからだ。 Aさん夫婦は、上海の一等地で何店舗もの上海料理の高級レストランや、食品開発の会社を経営していた。レストランは、レトロな上海の雰囲気の内装で、上海の家庭料理を高級にした料理を出す店で、有名人もよく訪れる人気の店だった。しかし、コロナ禍でお客さんの姿が消え、加えて上海のロックダウンで大きなダメージを受けた。中国には、日本が行ったような飲食店に対する休業補償金がなかったので、レストランは一軒、また一軒と潰れていった。さらに昨年末、食品開発の会社も倒産。「今は、もう事業が何も残っていない。生活費は、貯蓄の資産運用で得た利息を充てている。その利回りもこれまで10%以上あったが、今はその半分もない」とため息をつく。「だからもう、以前のような暮らしはできない」と、Aさんは曇った表情で話していた。 Aさんはこれまでも度々日本を訪れている。日本で買い物をする場所は決まって伊勢丹や高島屋などのデパート、銀座のデパートや高級ブランドショップだった。買い方も豪快というか、値段をまったく気にする様子もなく好きなだけショッピングを楽しむので、買い物に付き合った筆者までその後しばらくは金銭感覚が狂っていたほどだ。ところが、今回彼女が足を運んだのは、新宿高島屋の隣にあるニトリ、そして中古品店だった』、「中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ・・・上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた」、なるほど。
・『高級マンション暮らし+仕送り40万円 都内の有名私立大学で留学していたが……  もう一組の夫婦は、現在東京の有名私立大学で留学中の娘に会いに来た。今まで、娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた。彼女はその豊富な資金で日本での留学生活をエンジョイしていた。移動はタクシーを利用することが多かったし、好きなアイドルを追いかけて、日本国内だけでなく海外にも度々行っている。 何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった。 友人らは中国の高度経済成長の波に乗って富を築いてきた、いわゆる富裕層である。しかし、この数年で事業も金も失った。彼らの凋落ぶりを通して、中国経済の実態が垣間見える。富裕層の彼らでさえ、懐具合が寂しくなり、財布のひもが固くなっているのだ。中間層やそれ以下の国民の消費意識も同様に変わり、出費を抑えるだろうことは容易に想像がつく』、「娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた・・・何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった」、なるほど。
・『「仕事以外の時間は買い物」だったはずが…… 団体で日本に来た中国人の行動が変わった  折しも、中国政府は、8月10日に日本や韓国など78カ国への団体旅行を解禁した。日本のメディアの報道を見ると、百貨店やホテル業界など、インバウンドが増え、また“爆買い”が復活するのではないかと期待が高まっている様子がうかがえる。しかし、本当に中国から団体旅行者が大勢やってくるのか、コロナ前のように爆買いが復活するのか? 筆者は、その期待は裏切られる可能性がきわめて高いと考えている。 最近、何回か、中国の各地からの参加者で構成された来日ビジネス視察団体と一緒に仕事をした。参加者は、デベロッパーやIT関連、医療介護などの企業幹部や社員たちで、20~40代までと比較的若い人がほとんどだった。こうした団体の参加者たちは、コロナ前には皆、仕事以外の時間を目いっぱい買い物に使い、お土産リストを手に、買い物に没頭していた。「日本は閉店時間が早すぎる。中国なら夜の11時とか0時まで開いているのが普通なのに」と文句を言われたことも度々あった。しかし、今回は明らかに様子が違う。みな夕食が終わるとさっさとホテルに戻り、部屋やロビーでスマホをいじって過ごしている。 「買い物はしないのですか?」と尋ねると、「普段から中国でよくECを利用しているから。もう何でもECで手に入るよ」と答え、苦笑しながら「今は懐が寒い」と付け加えた。 その後、この団体を引率した人とお茶をする機会があったのでこの話をしてみると、「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈(https://diamond.jp/articles/-/325165)。こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇(ちゅうちょ)しているんだ」と声を潜めて話していた』、「「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈・・・こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇・・・しているんだ」、なるほど。
・『コロナ禍を経て、中国人の旅行スタイルが変化している 日本もタイと似たような状況になるのでは  北京で旅行会社を営む知人に聞くと、「日本への団体旅行が解禁された後、一時は問い合わせが多かったが、実際に成約に至ったのはそれほど多くない。なぜなら、富裕層は団体旅行をしない。中間層以下は収入が減り、海外旅行なんかする余裕がないからね。コロナの3年間で行動制限された反動で、今、国内の観光地はどこも大盛況だ。しかしフタを開けてみると、一人当たりの平均消費額が非常に少ない」と教えてくれた。 さらに「今年1月、ゼロコロナ政策が解除され、中国の観光客がタイへ殺到した。タイの副首相や観光局長が自ら空港で出迎えて、『熱烈歓迎』と書いてある横断幕を掲げて、中国のインバウンドに期待していた。これは今の日本とよく似た状況ではないか?」と話す。結果はどうだったか。タイ観光庁の統計を見ると、今年6月までの半年間で、中国の観光客はわずか140万人だった。予想していた700万~1000万人のたった20%しかいなかったのだ。 このように、中国の国内の政治・経済事情は、コロナ前と今とで大きく変わった。一つだけ日本への旅行者が増え、“爆買い”が期待できる要因があるとすれば、為替レートが円安・元高なことだろう。中国人から見れば、円安な日本でお金を使えば、何を買っても食べても割安でお得感があるからだ。中国を含め世界中でインフレが起こり、物価が大きく上昇している中で、日本の物価はまだまだ安い。収入が減り、節約志向を強めている中で、“安いもの”を狙っての買い物はあるかもしれない。しかしこれは、コロナ前の買い物、いわゆる爆買いとは、本質も目的もまるで違う。 このように、筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している。さらには、8月24日に始まった福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている(参考記事)。日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえあるのだ』、「筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している・・・福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている・・・日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえある」、インバウンドでは「中国」には、残念ながら殆ど期待できないようだ。

第三に、10月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331400
・『日本には春にゴールデンウイークがあるが、中国には9月末から10月頭にかけて「黄金週」がある。行動制限が解けた大型連休となれば、旅行に行きたいと思うのは当然。しかし今年の黄金週は、コロナ前のそれとは大分様子が違ったという。なぜか日本メディアを非難し始めた「環球時報」や「北京日報」、そして日本にやってきた中国人観光客の「見えない旅」とは……』、興味深そうだ。
・『中国版“秋のゴールデンウイーク” 2023年は旅行した人が多かったが、コロナ前との違いが……   ちょっと前の話になるが、今年の中国国慶節(建国記念日、今年は10月1日)は土、日を挟んで中秋節(中秋の名月)と連なったため、多くの人が9月29日から10月6日までの8連休という豪華版となった。加えて自身が会社の経営者だったり、潤沢な有給休暇が取れたりする人の中には、10連休や15連休にしてしまった人もいたらしい。 最低でも8連休となると、連休の過ごし方が「旅行でしょ!」となるのは、どこの国でも同じである。特にコロナの行動制限から解放されて初めての秋の連休だし、8日間丸々の旅行は難しくても気候的にも爽やかなこの時期に、「ちょっと出かけてみようか」となるのは至極当然。おかげで中国政府の統計によると、この「黄金週」(ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから。コロナ前までは「黄金週」といえば、大渋滞、大混雑で、「風景を見に出かけたのに目に入るのは人の波」とか、「ぼったくりなどに遭って、ヘトヘトになった」という話がよく流れていた。だが人々は3年間の「自宅待機」を経て、そんな旅を反省したらしい。今年は年初めから、「勢いに任せた、盛りだくさんの旅をしなくなった」とあちこちから報告されていた。 同時に、人々が旅の予算をきちんと組み始めたことも消費額に直接影響したようだ。今回の連休旅行の特徴として、これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという。 連休後半には旅行ムードが勢いを失い始めて、国内航空券の値下がりが始まり、ホテルや民泊は宿泊率を上げるために価格を引き下げるという手段を取ったところもあった。これまでのように、「連休だから当然高い」とか、「繁忙期は売り手優先」という感じではなくなってしまったのである』、「ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから・・・これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという」、手堅くなったようだ。
・『日本への団体旅行も増えるかと思ったところで福島第一原発の処理水問題が起きた  とはいえ、10連休や15連休を取った人たちはプチ旅行で済むはずもなく、渡航先に海外を選んだ人も多かったようだ。「ようだ」というのは、政府統計局が海外に出かけた人たちの統計数を出していないから。メディアもあえて海外旅行についての話題を避けているようだった。「消費はまず国内から」、そんなムードが業界に流れていたのかもしれなかった。 それでも、さまざまな情報から海外旅行を心待ちにしていた人たちの存在が伝わってきた。タイはすでに今年9月に、来年2月までの中国人観光客のビザ免除措置を発表していた。また今年8月にはアメリカ、イギリス、日本、オーストラリア、韓国など、コロナ以降中止されていた団体旅行も解禁され、国慶節連休の海外旅行ムード復活に一役買っていた。 そのうち、特に日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ。 以前、2012年9月の尖閣諸島の国有化によって反日デモが巻き起こった際に、旅行を管轄する政府当局が日本渡航ビザ申請を代行する国内旅行会社に圧力をかけたが、今回も同様のことが起きたらしい。ただ、あれから10年以上がたち、中国人の中にはそんな旅行社を通じて観光ビザを申請しなくても、すでにビジネスビザや個人ビザを取得済みの人たちも多く、政府もそんな彼らを押しとどめることはできなかった。 実際、団体旅行の需要は減ったものの、日本行きの人気はそれほど下がらなかった。 ブルームバーグが日本語でまとめた「中国の大型連休、2100万人強が飛行機を利用か―人気旅行先には東京も」という記事によると、「黄金週」初日の9月29日から10月6日までに予約された海外旅行航空券数のランキングでは、トップこそ上海発韓国ソウル便だが、2位が東京発上海便、3位が北京発東京便、4位は杭州発大阪便、5位に再び北京発ソウル便となった後、6位が上海発東京便と、日本と韓国でトップ6位を占拠している。2位の東京発上海便の人気は、国慶節期間中に日本から里帰りした人も多かったということだろう。実際に日本の空港で待ち構えていた日本メディアの問いかけに、到着客が「機内はほぼ満席だった」と答えている姿をご覧になった方もおられるはずだ』、「日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ」、なるほど。
・『「日本旅行が人気だとあおっている」「誤解を誘導している」 環球時報や北京日報が日本メディアを名指しで批判  だが、この「事実」が、中国当局関係者の神経を刺激したようだ。 10月3日、中国共産党中央委員会機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」に、「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された。 これを受けた形で、やはり中国政府直轄のメディア「北京日報」でも、日本メディアの中国人観光客報道を批判する記事が流れた。国慶節の日本旅行人気に対抗して「プチ反日キャンペーン」ということだろうか。だが、そこに「日本メディアが2000万人の中国人が日本にやってくると伝えている」という記述があり、それを読んで筆者もさすがにびっくりした。 国慶節期間中に2000万人がやってくる?2000万人といえば、日本の総人口の約6分の1に当たる数だ。また、2019年に過去最高となった訪日観光客総数が3188万人であり、わずか1週間ちょっとの国慶節休み中にその3分の2が中国から押し寄せてくるなんて、ポストコロナのリベンジだとしてもさすがに多すぎる。もしそうなれば、日本の観光業はウハウハどころかパンクしてしまうはずである。 いったいどこの日本メディアがそんなむちゃくちゃな試算をしたのだ?と調べてみたのだが、「北京日報」は「日本メディア」と書いているだけで具体的なソースがない。ならばと、先の「環球時報」記事が名指ししたいくつかのメディアの過去報道を調べてもそんな数字は出てこない。 そうやってあれやこれやと「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう』、「「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された・・・「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう」、なるほど。
・『「2000万人の中国人が日本に」はもしかすると中国メディアの誤訳・読み違い?  ……と、その記事を読み続けていて、前掲のブルームバーグ日本語版記事のタイトル「中国の大型連休、2100万人強が飛行機を利用か――人気旅行先には東京も」(原文ママ)を中国語化するための機械翻訳にかけたらしい画面キャプチャが貼られているのを目にした。その翻訳の結果を日本語に直訳し直すと、「中国の大型連休、2100万人余りが飛行機を利用――人気旅行地東京」になっている。ブルームバーグ日本語版の「東京も」の「も」が抜けている……もしかして、根拠はこれだろうか? 確かにこの機械翻訳文なら、「2100万人余りが飛行機に乗って人気の東京へ」と読めないこともない(それでも間違っているが)。 だが、中国共産党北京市委員会の機関紙「北京日報」ともあろうメディアが、米国の通信社ブルームバーグの日本語タイトルを機械翻訳にかけた上で誤読して、「日本メディアがでっち上げ」と大騒ぎするとは……連休中で人手が限られていたのかもしれないが、中国の政府メディアの質もここまで落ちたのか、とさすがにあきれてしまった。 この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった』、「この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった」、なるほど。
・『SNSに書くと非難される! 訪日した中国人観光客たちの「見えない日本旅行」  こんなムードの最中に、実際に日本を旅していた中国人観光客たちはどんなふうに過ごしていたのだろう? それについて、山東省の中国共産党済南市委員会機関紙傘下の「経済観察報」が「見えない日本旅行」というタイトルで伝えていた。 記事によると、団体旅行キャンセル続出で日本行き航空券が安くなったことが、すでにビザを持っている個人旅行客の背中を押したらしい。9月に入ると、深センから日本行きの航空券は約2000元(約4万円)まで下落したというから、通常時のディスカウント航空券並みの価格である。 さらに京都などの人気観光地はさすがに人出が多かったものの、「以前はどこにいっても中国人観光客だらけだった」のが、今年は中国語よりも韓国語をよく耳にしたとも紹介されていた。また、日頃から訪日者の空港出迎えアルバイトをしている中国人留学生も、国慶節連休中は大忙しだったと証言している。 一方で、そんな観光客たちも国内のムードをおもんぱかり、「(広範な人の目に触れる)SNSのタイムラインには日本での見聞を流さないようにした」と述べている。実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである』、「実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである」、「流せない話題」があるとは「中国」とは全く変な国だ。付き合いも高度なテクニックが必要なようだ。 
タグ:学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた」、なるほど。 「中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ・・・上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。 王 青氏による「中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由」 ダイヤモンド・オンライン 退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう 日本も手遅れにならないようにしたいところだ」、なるほど。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね・・・航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を 「土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという・・・日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」、世も末だ。 日刊SPA!「「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち」 (その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?) インバウンド動向 「「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された・・・「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難 日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ」、なるほど。 「日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという」、手堅くなったようだ。 「ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから・・・これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 ふるまいよしこ氏による「中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?」 「筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している・・・福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている・・・日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえある」、インバウンドでは「中国」には、残念ながら殆ど期待できないようだ。 「「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈・・・こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇・・・しているんだ」、なるほど。 「娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた・・・何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった」、なるほど。 そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである」、「流せない話題」があるとは「中国」とは全く変な国だ。付き合いも高度なテクニックが必要なようだ。 「実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。 「この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった」、なるほど。 する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう」、なるほど。
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個人債務問題(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) [金融]

個人債務問題については、2021年2月5日に取上げた。今日は、(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口)である。

先ずは、2022年4月7日付け週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」を紹介しよう。
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2022/04/07/news-124/
・『日本学生支援機構による〝違法回収〟の実態が明らかになりつつある。利用者への「最終通知」内容が情報公開請求で発覚。そしてついに国会でも取り上げられた。〈重要/必ずお読みください!/今回お送りした「支払督促申立予告」は、あなたへの最終通知です。〉(傍線は原文ママ) 日本学生支援機構が奨学金ローンの利用者らに送付する「最終通知」。 A4判の紙に赤色の大文字をまじえてそんな文句が書かれている。作成者は闇金融でもなければ貸金業者でもない。独立行政法人日本学生支援機構(以下、支援機構)である。特殊詐欺と疑われてもやむを得ないほど威圧感のある取り立て文書を、奨学金ローンの返還困難に陥った利用者や保証人に対して送りつけていたのだ。 「最終通知」は情報公開請求に対して支援機構が開示したものだが、その意味は重大だ。違法性が疑われる繰り上げ一括請求を実行するために作成された「違法回収の証拠」だからだ。 奨学金ローンは20年以内に月賦または年賦などで返還する仕組みだ。それを、返済が滞ると将来払う予定のものまで前倒しで一括弁済をと迫る。200万円であろうが300万円であろうが、耳を揃えて即座に払えというのが繰り上げ一括請求である。根拠は日本学生支援機構法施行令5条5項とされる。 さて、最終通知をさらに読むと、赤色や下線、傍点で強調した大文字でこうある。 予告書の内容をお読みいただき、一括返還が困難なときは、必ず「○月末日までに」日本学生支援機構に連絡し、分割返還や返還期限猶予手続等について相談してください。/連絡がないときは、裁判所に支払督促申立を行います。〉(傍線、傍点は原文ママ) 【差出人は元武富士代理人】 強い調子の文面の中に「予告書」という言葉が出てくる。「返還未済奨学金の一括返還請求(支払督促申立予告)」という文書のことだ。やはり情報公開請求で開示された。最終通知といっしょに送っているらしい。 その予告書(A4判)を見ると、こちらは平凡な事務文書の体裁で赤色や大文字は使われていないものの、やはり内容はおどろおどろしい。 〈あなたは、日本学生支援機構(旧日本育英会)からの貸与を受けた奨学金の返還について、再三の督促を受けながら、長期にわたり返還がなされていません。/ついては、独立行政法人日本学生支援機構法施行令(日本育英会奨学規程)により、下記の返還未済額の全部を、下記の返還期限までに一括して返還されますよう請求します。/もし、この期限までに返還されず、また、然るべき対応もなされないときは、やむなく返還未済額の全部、および内訳記載以後の延滞金について、上記規程に定める返還強制の手続きをとることになりますので、ご承知おきください。(略) 返還未済額○円(内訳は下記のとおり)/返還期限○年○月○日 (略) 1 返還期日が到来し、滞納となっている額 ○円 2 約定返還期日未到来であるが、奨学規程により繰上げ返還すべき額 ○円〉(傍線は原文ママ)  差出人は支援機構の吉岡知哉理事長。その下には「顧問弁護士・熊谷信太郎」の名があり、文面に迫力を与えている。熊谷氏はサラ金最大手・武富士(2010年に経営破綻)元代理人の経歴を持つ支援機構の看板弁護士だ。 「奨学金」の利用者や保証人がこれらの文書を受け取れば、ほとんどの人は「滞納した方が悪い。全額払わなければいけない」と思い、動揺するにちがいない。 だが、本連載でたびたび指摘してきたとおり、支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている。  この問題意識をもって最終通知や予告書をみれば強い違和感を覚える。一括請求は「支払能力がある」場合にしかできない旨明記した施行令の内容が、文書のどこにも説明されていない。 支援機構は意図的に施行令を歪めているのではないか。そう疑いたくなる』、「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。
・『【衆院文科委での応酬】  3月2日、衆議院文部科学委員会で宮本岳志議員(共産)が繰り上げ一括請求問題に関する質問で「施行令歪曲疑惑」を取り上げた。答弁者は増子宏・文部科学省高等教育局長だ。 宮本 施行令5条5項ですね。「支払能力があるにもかかわらず」これが一つ。二つめ、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは」。(期限の利益喪失は)この二つの条件となっているわけです。(略)。しかしここ(返還開始時に配付する「返還のてびき」)には「督促しても返還しない場合は」という言葉はありますけれども、「支払能力があるにもかかわらず」という肝心の条件は書かれておりません。(略)返還が始まるまでの間に日本学生支援機構はこの施行令5条5項を明記した文書を、貸与を受ける奨学生に対して示しておりますか? 増子 奨学生に採用された際に配付しております「貸与奨学生のしおり」というものがございます。この103ページにおいて明示はしております。 「明示はしております」という増子局長の答弁の意味が、続く宮本議員の質問で明らかになる。 宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと』、「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。
・『【「欺く趣旨ではない」】  何のことはない。増子局長の言う「明示」とは「しおり」の中の資料のことだった。宮本議員はさらに、法的手続きの際に裁判所に対しても「支払能力」を説明していない点を指摘して、是正を要するのではないかと質す。 宮本 (支援機構が起こした債権回収訴訟の訴状においても)施行令5条5項が定める「支払能力があるにもかかわらず」、この文言がありません。まるで施行令が、支払能力の有無とは無関係に、割賦金の返還を著しく怠っただけで一括請求を許しているかのように説明しております。これは裁判所を欺こうということですか? 増子 決して、裁判所を欺くとかそういう趣旨ではございません。この第5条5項においては、返済者に支払能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認めるときに、返済未済額の全部の返済義務を負うというふうに考えているところでございます。 宮本 支払能力があるかどうかはきわめて重大な条件なんですね。(略)少なくとも日本学生支援機構は、この施行令5条5項に明記された文章、すなわち「支払能力があるにもかかわらず」「割賦金の返還を著しく怠ったと認めるときは」という二つの条件をあらかじめ丁寧に貸与を受ける者に説明しなければならない。またその説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのはあまりにも不誠実だと思います。大臣、是非とも改善、せめて検討を。 答弁を求められた末松信介文科大臣は、こう答えた。 「わかりやすい通知文書となるように努めたい。やはりわかってもらうことが一番大事ですので、基本の『き』のところということでございますから、その点よく念頭におきます」 一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない。(つづく)』、「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。

次に、7月28日付けYahooニュースが転載したテレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e9688fe31dd637cc3dfb83959edfd967cc71ff3?page=1
・『不動産価格の高騰などを受け、今、数千万円に上るローンを借りて不動産投資を始める若い人が増えています。しかし、このローンをめぐって「ある落とし穴」にはまり、中には自己破産に追い込まれるケースも多発しています。その実態を取材しました。 7月22日、都内で開かれたJKAS主催の「不動産トラブル『救済』セミナー」。100人以上が参加しました。参加者の1人が佐藤さん(仮名・30歳)。5年前、投資用にマンションを購入しました。 佐藤さんが購入した物件は、都心の最寄り駅から徒歩1分の1LDK(約45平方メートル)。築15年(購入時)で4900万円でした。 物件自体に問題はありませんでしたが、「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます。 投資物件では利用できない「フラット35」  「フラット35」は、最長35年間、一定の金利で借りられる住宅ローン。 問題は、このローンを利用できるのは、本人や親族が住むための物件を購入する場合に限られていることです。佐藤さんのように、投資用物件で使うと、不正利用にあたります。 購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした。 不動産会社に手紙が来たということを言ったときに、アンケートのようなものだから答えなくていいと言われ、私もそういうものなのかと楽観的に捉えてしまった」(佐藤さん) 最終的に居住実態がないことが確認され、佐藤さんは住宅支援機構から残ったローンの一括返済を求められました。その後、物件を販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなったといいます。 「不動産のプロは詐欺のようなことはしないだろうと思っていた。後悔している」(佐藤さん) 実は今、佐藤さんのように、知らずにフラット35の不正利用をしてしまう事例が相次いでいます。住宅金融支援機構の調査によると、その不正利用のうち84%が20代から30代前半の購入者でした。』、「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。
・『壁もボロボロ、資料も改ざん  田中さんが購入した物件には、壁に複数の穴が開いていた 取材を進めると、さらに悪質な不動産会社の存在が見えてきました。 5年前に、不動産投資を始めた田中さん(仮名・29歳)。4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです。今年1月に入居者が出て行き、初めて物件を確認したといいます。 田中さんが購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました。 「不動産会社に相談しても、ろくな回答がもらえなかった。先輩に相談したときに、もう自己破産するしかないと言われた」(田中さん) 田中さんが提出した資料と開示された資料を比べると月収が10万円ほど上乗せされている 不動産会社が金融機関に提出していた書類を入手したところ、月収が10万円ほど上乗せされ、年収にすると100万円近く水増しされていました。ローンの審査を通すために源泉徴収票など多くの書類が書き換えられていたのです。 「本当に腹立たしい気持ちでいっぱいです」(田中さん) 田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした。 不動産会社に電話し、「融資を通す上で提出された書類と違うものが、ローン会社に提出されていたというが事実か」 と質問すると、受話器の向こうから返ってきた返事は、「わからない。私はこの場でなにも判断する権限がない」。その後、何度電話をしても、回答は得られませんでした。 不動産トラブルに詳しい銀座第一法律事務所の大谷郁夫弁護士は、「事務所に行っても誰もいないというケースはある。そうすると、もう打つ手がない」といいます。 その上でトラブルに巻き込まれないために注意すべきことについて、大谷弁護士は「言われるがままハンコを押して儲かる不動産はまずない。投資をするならその対象について、それなりに勉強してほしい。それからいろいろな書類にハンコを押すときは必ず読んでほしい」と話しました。 ※ワールドビジネスサテライト』、「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。

第三に、11月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京情報大学 総合情報学部 教授の堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331819
・『10月25日に神奈川県警が新たなヤミ金を逮捕した。金券買い取りを偽装して資金を提供する「ギフト券買い取り商法」と呼ばれる新種のヤミ金であり、全国で初めての摘発となる。一昔前と違い、近年のヤミ金は単純な金銭貸借の形を取らず、法律の抜け道をくぐるような狡猾な手口を次々と編み出している。邪智深く進歩するヤミ金と、執念を燃やして追いかける警察の戦いが続いている』、興味深そうだ。
・『フリマサイトを装った新種のヤミ金を摘発  「ギフト券買い取り商法」を展開するヤミ金は、金銭を貸す代わりに、ギフト券など金券を媒介しているのが特徴だ。まず、ヤミ金はネット上で金券を買い取るフリーマーケットサイトを装って資金需要のある申込者(実態としては債務者)を誘い込む。たとえば2万円分の金券を申込者が出品するとしよう。しかし、額面通りの金額では売れず、1万5000円などといったディスカウント価格で出品する。そして、ヤミ金がこれを買い取り、1万5000円を申込者に振り込む。 通常の金券売買なら、代金が振り込まれた時点で即座に金券が発送されるところだが、このサイトでは翌月の給与日まで発送を猶予してもらえる。 そして、翌月の給与日には2万円分の金券をヤミ金に郵送しなければならない。つまり、1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる。 現在、同様の業者はネット上でも流行りつつあり、警察も時間との戦いに迫られながらの捜査を強いられたものと推察される』、「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。
・『巨大化するヤミ金組織と暗号資産化で見えない収益の行方  警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない背景には、いくつもの理由がある。 まず一つ目が、ヤミ金の規模が大きくなっている点である。近年、暗躍するヤミ金の組織規模が大きくなっている。当然、被害規模も一段と巨額化しているはずだ。しかも、収益の相当額が暗号資産などを通してフィリピンなど海外の銀行口座に流出し、全容解明が困難となってきている。 そして、二つ目の点として挙げられるのが、ヤミ金が考え付くスキームの巧妙さである。背後には悪徳弁護士のネットワークの存在も囁かれている。一昔前のように、単純な高利貸しはなりをひそめ、一見してヤミ金とはわからないようなスキームで、摘発にも時間がかかるようになってきた。 つまり、ヤミ金被害は拡大しているのに、その実態が掴みにくい。こうした構図に業を煮やした警察は、ヤミ金摘発に力を入れるようになってきた。 このような警察とヤミ金の暗闘は、2018年頃から隆盛を誇るようになったヤミ金である「給与ファクタリング商法」の摘発に遡れる。 当時、肥大化した銀行カードローンは、杜撰な審査により数多くの返済困難者を発生させていた。社会でも銀行カードローンへの批判が強まり、慌てた全国銀行協会(全銀協)は2017年にカードローン審査の厳格化に向けた申し合わせを公表した。この自主規制により市場の膨張に急ブレーキがかかり、社会的な批判も沈静化していった。一方で、急な信用収縮は銀行カードローン市場からの借入困難者を発生させる事態を招いた。 こうした借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる。) 当時、「ファクタリング業を偽装した新種のヤミ金」と批判されつつも、利息制限法を含めた法的適用性を巡る議論に余地が残されていた。このため、警察もその摘発に慎重にならざるを得なかった。いくら実態がヤミ金そのものだからといって、法的根拠なくして逮捕はできないからだ。 こうして野放しで成長していった給与ファクタリング問題が社会でもクローズアップされるようになった頃、ようやく重い腰を上げた金融庁は2020年3月にノンアクションレターを通して、このスキームが貸金業に当たるとの見解を示した。これにより、法的な根拠を得た警察は一斉に給与ファクタリング業者の摘発を進めたのだ。 警察が動き出したことに加えて、コロナショックが始まり、資金需要が大きく落ち込む局面でもあったことから、給与ファクタリング業者の多くは市場からの撤退を進めた。 しかしながら、経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた』、「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた」、なるほど。
・『次々に誕生するヤミ金の新手口 警察がなかなか動けないのはなぜか?  後払い現金化のスキームを説明しよう。まずヤミ金が提供する無価値な商品やサービス(スマホで撮った風景写真、複写のアート画像など)を購入する申し込みを行う。ヤミ金は申込者(債務者)を与信判断した上で、無価値な商品やサービスを提供する。商品やサービスを受領した申込者は、口コミや評価点をネット上で記載することでヤミ金からキャッシュバックという名目で現金(「元本」に相当)を受け取る。 その後、申込者は次の給料日にヤミ金へ、購入した商品やサービスの代金(「元本」+「利息」に相当)を後払いするという仕組みである。 このように、さまざまに手口を変えながら拡大していくのが、ヤミ金の狡猾なところである。そして、この時も金融庁は法解釈の難しさから、後払い現金化商法が貸金業に相当するか否かの見解を示さなかった。その理由は後述する。) 金融庁が沈黙し、警察が動けない中、後払い現金化業者がネット上で堂々と営業を続ける日々が続いたが、2021年9月に北海道警は抜かりない捜査の末、後払い現金化商法でヤミ金を営んだとして、情報商材販売会社「OSGS」(札幌)の代表らを逮捕した。 報道によると、同社はネット上で「ゲーム攻略法」などの情報商材を後払いで販売し、そして購入者に最大5万円をキャッシュバックするという名目で顧客に送金し、後日、情報商材の購入代金として最大8万円を回収していた。さらに2022年9月には、警視庁生活経済課と広島県警の合同捜査本部は規模が一段と大きい別の現金買い取り業者を逮捕した。 ただし、摘発されたスキーム自体を見ると、この商法が貸金業に該当すると単純に見ることはできない。貸金業法第二条第一項三号には「物品の売買(中略)を業とする者がその取引に付随して行う」金銭授受は貸金業に当たらないと規定されている。つまり、摘発された販売業者が行った金銭の授受は情報商材という取引に伴って発生したものであり、貸金業に相当するとは必ずしも言えない。 しかし、これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された』、「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。
・『茨城県警が執念の摘発!「先払い買い取り商法」とは  警察による一連の後払い現金化商法の逮捕が続いた結果、今度は「先払い買い取り商法」と呼ばれる新たな業態が誕生し、瞬く間に広がっていった。後払い現金化商法が出現した時と同様に、先払い買い取り業者の大半は給与ファクタリングや後払い現金化からの転業組であったと容易に推測できる。 そのスキームについて説明する。資金需要者は買主であるヤミ金(多くは古物商として偽装)の指定するスマホやゲーム機器といった中古品や未使用品を売却する申し込みを行う。業者は申込者(売主)を与信判断した上で、その審査が通った申込者とのみ買い取り契約を交わす。) そして業者は商品を受領する前に、売主に代金(「元本」に相当)を支払う。その後、業者は売主に買い取り契約をキャンセルさせた上で、1か月後の給料日を期限に高額なキャンセル料(「元本」+「利息」に相当)をキャンセル申出者(資金需要者)から回収する。先払い買い取り商法のスキームは審査や回収の知識という点で給与ファクタリングと本質的に同一であり、その派生形と捉えられる。 身近な中古商品がネットを介して売買される取引は一般化しつつあり、多様な商品の買い取り業者が社会に存在する。こうした状況下で、金銭交付を目的とした取引と実需を伴う取引を線引きすることは極めて難しい。しかしながら、2023年1月に全国で初めて茨城県警が先払い買い取り業者を摘発した。利用者(被害者)は1万2800人、貸し付け利益は約4億円にのぼる。警察の執念ともいえる捜査の結果であろう。そして、多くのヤミ金は「先払い買い取り商法」から、今回神奈川県警が逮捕した「ギフト券買い取り商法」へ転業していった。 しかし、これらの摘発で一件落着かというと、そう甘くはない。ここまで見てきたように、新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した。ただし、この裁判ではファクタリング業者による「回収リスクの負担」という観点で金融庁の見解に反駁の余地が残されている可能性を示唆した』、「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。
・『警察がヤミ金摘発に本気になる本当の理由  そして、警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない三つ目の理由として、ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ。この点については改めて解説する』、「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。 
タグ:個人債務問題 (その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) 週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」 「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。 「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。 「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。 Yahooニュースが転載 テレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」 「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。 「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。 「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」 「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。 「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であっ た事例をいくつも確認できた」、なるほど。 「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。 「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。 「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。
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