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ネットビジネス(その12)(「不快なネット広告」が増加する理由 コンプレックスを刺激、怪しい効果…、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、前澤氏が去った後 激動の中で組織は変わった ZOZOが「最悪期」を這い上がった知られざる変貌) [イノベーション]

ネットビジネスについては、昨年10月29日に取上げた。今日は、(その12)(「不快なネット広告」が増加する理由 コンプレックスを刺激、怪しい効果…、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、前澤氏が去った後 激動の中で組織は変わった ZOZOが「最悪期」を這い上がった知られざる変貌)である。

先ずは、昨年11月3日付けダイヤモンド・オンライン「「不快なネット広告」が増加する理由、コンプレックスを刺激、怪しい効果…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284701
・『YouTubeを見ていれば多くの人が目にする広告。しかし、なかには真偽不明の効果をうたう商品や執拗(しつよう)に脱毛をせまる広告、陰謀論とおぼしき怪しいサイトの広告なども散見される。なぜプラットフォーム側はこのような不快かつ悪質な広告を取り締まれないのか。ITジャーナリストの三上洋氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『企業の広告費の低下で怪しい広告が増加  「毛穴の汚れゴッソリ」というキャッチフレーズとともに添えられる気持ちの悪い画像、「デブだからモテない……」と早口なナレーションでコンプレックスを刺激する漫画など、誰しもが一度はこのような不快なネット広告を見たことがあるだろう。 不快さだけではなく、真偽不明の痩せ薬、育毛剤や「世界の真実」などと書かれた怪しげな広告も目に余る。 サイバー・コミュニケーションズ(CCI)、D2C、電通、電通デジタルの4社が発表した『2020年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析』によれば、コロナ禍でもネット広告費は成長を続け、2兆2290億円を記録。これはテレビ、新聞、雑誌、ラジオを含めた「マスコミ四媒体広告費」の2兆2536億円に匹敵し、いまやネット広告は日本の広告費全体の36.2%を占めている。 このようにネット広告は一大市場となっているのだが、冒頭のような代物があふれ、質が低く品格のない広告も増加している。特にコロナ禍に入ってから、その傾向が目立ち始めたという声も多く、コンプレックスを刺激する広告をやめるよう請願する署名活動も行われた。コロナ禍で、このような露悪な広告が目立つようになった理由を三上氏は次のように話す。 「YouTubeも含め、ネット広告は基本的にオークション形式で配信されます。自動的に最も値段が高い広告を配信する仕組みとなっているため、当然予算規模が大きい企業が有利です。しかし、コロナによって各企業が広告費をカットもしくは広告自体を減少させていきました。となると、入札する企業の数や相場が下がり、今まで目立たなかった怪しい商品を扱う広告が安い単価で表示されやすくなったと思われます。このような広告は景品表示法、薬機法、消費者安全法、特商法に触れるものが少なくありません」 不快広告は急に現れたわけではない。古くはスパムメールから始まり、Webサイトを量産してSEO、SNSでのアフィリエイト投稿などを経て、現在のディスプレー広告へと主戦場を変えてきたのだ』、「コロナによって各企業が広告費をカットもしくは広告自体を減少させていきました。となると、入札する企業の数や相場が下がり、今まで目立たなかった怪しい商品を扱う広告が安い単価で表示されやすくなった」、困ったことだ。
・『多くの事業者が関わるネット広告配信の仕組み  三上氏によれば、無法状態の一因はアフィリエーターや広告代理店にあるという。 アフィリエーターは商品やサービスを紹介して、購入されたり会員登録が行われたりするとお金がもらえます。彼らの多くは個人や零細企業なので、一部ではガバナンスも効かないし、法律無視のやり方をして稼ぐ。売り上げを上げるために誇大な効果をうたい、痩せ薬などの記事広告をWebサイトに出していくのです。また広告代理店もクリック数を稼ぐために露骨な表現やインパクトのある画像を使った広告をそのまま配信する。悲しいことにそのような表現の方が人の目に留まるので、クリックされやすい側面もあるのです」) かつてスパムメールに書かれていた「1億円をもらってください」「火星人です」などという文言に不覚にも気を留めてしまった経験が筆者にもあるが、現在でも同じようなユーザー心理を利用しているのだ。そして、クリックされるほど、そのような広告が配信される仕組みになっている。 「クリックを誘発しやすい広告が最適化アルゴリズムによって掲載されやすいことも悪質広告がはびこる原因。そのような広告でもクリックされれば自動的に配信されやすくなり、どんどん目に留まっていきます」 どんなに興味をそそられても、このような悪質な広告は出来心でクリックしてはならないのである。 昨今はコンプライアンスなど企業倫理が求められているが、媒体やプラットフォーマーはなんでもあり状態の広告を垂れ流している。この状況に疑問を持つ人も多いだろう。しかし、三上氏は「媒体は事前にどんな広告が配信されるかはわからない」と話す。 「自動で広告が表示されていく仕組みなので、媒体側が内容を事前にチェックすることはほぼできません。そもそもネット広告配信は多数の事業者が介入しています。広告主から始まり、媒体までは広告枠の買い付けを行う事業者、広告枠の仕入れ販売を行う事業者、広告枠の仕入れ販売と買い付けの需給を調整する事業者など国内外のプレーヤーが複雑に存在する。彼らによって自動的に広告は表示されていくので、責任の所在が特定しにくいのです」 新聞やテレビであれば、媒体、広告代理店、広告主という3社程度で構成されるが、ネット広告はその比ではないほど複雑怪奇な仕組みなのである』、「媒体は事前にどんな広告が配信されるかはわからない」、「自動で広告が表示されていく仕組みなので、媒体側が内容を事前にチェックすることはほぼできません。そもそもネット広告配信は多数の事業者が介入しています。広告主から始まり、媒体までは広告枠の買い付けを行う事業者、広告枠の仕入れ販売を行う事業者、広告枠の仕入れ販売と買い付けの需給を調整する事業者など国内外のプレーヤーが複雑に存在する。彼らによって自動的に広告は表示されていくので、責任の所在が特定しにくいのです」、なるほど。 
・『報告ボタンで迷惑広告排除を  このような構造、かつ広告の量も膨大であるため媒体側が事前におかしな広告をストップさせるのは非常に困難だ。 こう聞くと対策は皆無のように思えるが、三上氏は地道な手法を進める。) 「我々の対策としては、不快で怪しい広告を見たら報告ボタンをガンガン押していくことです。媒体側は、事前審査は無理にしろ、せめて報告がされた広告は事後審査の徹底をすべき。悪質な広告を排除しなければ、媒体の信用度も落ちますし、結果的に収益低下にもつながりますから」 このような状況に政府も黙ってはいない。今年3月には、消費者庁が消費者安全法に基づき化粧品に関する虚偽・誇大アフィリエイト広告に初めて注意喚起を行い、同様の育毛剤広告には景品表示法に基づく措置命令も出した。6月からは同庁で「アフィリエイト広告等に関する検討会」が定期的に開かれ、不当表示の未然防止等のための取り組みを議論しているという。 「正直、消費者庁の検討会は実質的なプレーヤーが参加していないので、抜本的な解決につなげることは難しいでしょう。ただ、国も悪質な広告の規制にようやく乗り出したということです。コロナ禍が終わり、真っ当な企業の広告費が増えれば悪質広告が目立たなくなるかもしれません。しかし、完全になくなるわけではないので、ユーザーによる報告とプラットフォーム側の審査で地道に排除していくしかないのが現状です」 ユーザーにもリテラシーが求められる。安易にクリックしてはならない』、私もせめて「不快で怪しい広告を見たら報告ボタンをガンガン押してい」る。「消費者庁の検討会は実質的なプレーヤーが参加していないので、抜本的な解決につなげることは難しいでしょう」、とはいえ、「規制」に乗り出したのは好ましい。

次に、本年2月1日付けPRESIDENT Onlineが掲載した成蹊大学客員教授の高橋 暁子氏による「若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54218
・『ネットでの「飲食店の探し方」が変わりつつある。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「食べログなどのグルメサイトは利用者が多い一方、点数やランキングを疑う声も多い。とくに若者は、Google MapやInstagramを使った検索に移りつつある」という――』、興味深そうだ。
・『若者にとってグルメサイトの優先順位は低い  ネットでの「飲食店の探し方」が変わってきている。 ある50代男性は「新入社員がGoogle Mapで店を探していた」と驚いていた。 「先日、部署のみんなで食事に行ったんです。新入社員に店探しをお願いしたら、Google Mapで会社の近くの店を調べて、評判がいいところをさらにグルメサイトで調べていた。『点数が操作されてるって聞いたことがあるし、両方使うと便利なんで』というので驚きました」 筆者が講義を行う大学の受講生もこう話す。 「飲食店を選ぶときにはいつもInstagramで検索して、おいしそうなところを選ぶことが多い。それから店名で検索して評判を確認する。Google Mapも見るけど、最初にグルメサイトを見ることはない」 こうした大学生は、Instagramで「吉祥寺」「梅田」などの駅名、町名などで検索し、出てきたハッシュタグ(「#吉祥寺グルメ」「#梅田カフェ」)で検索している。投稿された写真の中からおいしそうなもの、食べたいものを探すというわけだ。 なぜ、このような“グルメサイト離れ”が起きているのだろうか』、何故だろう。
・『独禁法違反で食べログ運営会社が訴えられる  グルメサイトの点数やランキングは操作されているといううわさは根深い。 2020年5月、首都圏を中心に焼肉・韓国料理チェーンを運営する「韓流村」が、「食べログ」運営会社であるカカクコムを相手に訴訟を起こした。食べログが評価点を算出する方式「アルゴリズム」を変更した結果、直後からチェーン店の点数評価が軒並み3.50より下になり、1カ月の売上高が2500万円ほど急減。チェーン店を不当差別する独禁法違反行為として、損害賠償とアルゴリズム差し止めなどを求めたのだ。 食べログの点数・ランキングは、各ユーザーの影響度によって重み付けされた点数や評価をベースとして算出されている。点数は毎月第1火曜日と第3火曜日の月2回更新を行って算定するなど、随時変動する。4.00点以上は全体のトップ500前後、3.50点以上4.00点未満は全体のトップ約3%とされ、直接集客力につながるため、飲食店にとっては死活問題となる。 今年1月には、この裁判の過程でカカクコム側がアルゴリズムをチェーン側に初めて開示したことが判明し、話題となった。しかし、営業の秘密に当たるとして一般には公開されておらず、アルゴリズムは依然ベールに包まれている。 その強い影響力を重視し、食べログなど複数のグルメサイトについて実態調査を行ったのが公正取引委員会だ。運営事業者が優越的な地位を利用して参加店舗に対して割引を強要したり、他のグルメサイトとの契約を制限したりしていないか、グルメサイトと飲食店にアンケートと聞き取りを行った。 2020年3月発表の調査結果では、表示される順位や店舗の評価を決める重要な要素について「飲食店及び消費者に対して、可能な限り明らかにし、透明性を確保すること」を求めている』、確かに「食べログなど複数のグルメサイト」が、「優越的な地位を利用して参加店舗に対して割引を強要したり、他のグルメサイトとの契約を制限」、などの「独禁法違反」をしている可能性を否定できない。
・『26%が「グルメサイトを信頼していない」と回答  グルメサイトに対する信頼性の低下は、数字にも表れている。 全国の利用者と飲食店従業員を対象としたTableCheckの「グルメサイトに関するユーザー&飲食店意識調査」(2020年1月)によると、「グルメサイトでの点数・ランキング表示の信頼度」に対して、「あまり信頼していない」(21%)、「信頼していない」(5%)と、全体のなんと4分の1が信頼していないという結果になった。 続いて、飲食店を検索する際に頻繁に利用する手段について聞いたところ、最多は「グルメサイト(食べログ、ホットペッパーなど)」(78.9%)だったが、「Google検索」(48.3%)、「地図サービス(Google Map、Apple Mapなど」(30.2%)、「SNS(Facebook、Instagramなど)」(23.6%)が上位となった。 最も利用頻度の高いグルメサイトは「食べログ」と答えた人が約半数を占めた(48%)。食べログは、2020年3月には予約人数が累計1億人を超え、2022年1月時点の掲載店舗数は約81万件、口コミ投稿数は約4420万件に上る。業界最大手だけに、利用者からの批判のやり玉に挙がることが多い』、「Google検索」、「地図サービス(Google Map、Apple Mapなど」、「SNS(Facebook、Instagramなど)」などが健闘しているのに驚かされた。
・『たびたび浮上する疑惑を否定する運営会社  2012年には、食べログにおける「ステマ問題」が話題になった。しかし、あくまで「好意的な口コミを書いて点数を上げる」と持ちかける不正業者と、それに乗った飲食店が問題なだけであり、食べログは利用されただけだ。 しかしそれからも、「食べログから年会費を払えば店の評価を上げるという営業電話がかかってきた」という店舗関係者の話は何度も話題に上り、そのたびに非難を集め、時には炎上につながってきた。カカクコム側はこの疑惑を否定している(※)。 ※「食べログ、『年会費を払うと評価が上がる』疑惑 運営元は否定」 「食べログ『年会費を払えば店の評価が上がる』疑惑の真相…揺らぐ“評価の公平性”」 結論から言うと、点数やランキングはおそらく操作されていないとみられる。運営会社のカカクコムは上場しており、コンプライアンスやガバナンスの観点から、わざわざ操作するのは考えにくい。しかし、このような声はあまりに多く上がっており、「営業電話」がまったく存在しないとも考えにくい。 食べログの営業をかたる業者や、売り上げを上げたい代理店などがこのような電話をかけた可能性はあるだろう。しかし、カカクコム側の見解を見てもこの点はいつも真実が明らかにならないままであり、疑念が完全に払拭ふっしょくされない原因ともなっている』、「食べログの営業をかたる業者や、売り上げを上げたい代理店など」が暗躍する裏には、順位決定方式に関する不透明性があるのだろう。
・『口コミサイトなのに対象から広告料を取るビジネス  食べログの店舗会員向けページには、有料の食べログPRサービスに加入すると、食べログの検索結果(標準検索)で優先的に表示されること、アクセスと予約数が多いゴールデンタイムの検索結果(標準検索)で上位表示されることが明記されている。 売り上げに直結するこのような操作は楽天市場やAmazonなどでも行われていることだが、問題は食べログが口コミサイトという点だ。口コミサイトが対象から広告料を取れば、口コミ自体の信頼性が下がるのは自明の理だ。 先ほど紹介したTableCheckの調査結果では、飲食店がグルメサイトと有料契約するメリットとして「認知度向上による新規顧客の獲得」「店舗情報の掲載」「予約受付」が挙がったが、逆に契約しない理由は「月額の広告掲載料が高い」「掲載情報が信用できない」が上位を占めた』、「口コミサイトが対象から広告料を取れば、口コミ自体の信頼性が下がるのは自明の理だ」、利益相反行為の典型だ。
・『勝手に掲載・評価され、削除できない不条理  さらに食べログでは、店舗側が拒否していても店舗情報は掲載されるようになっている。不快な口コミを書き込まれても、基本的には削除してもらえない。無理やり掲載され、勝手に評価・ランキングされ、しかも有料サービスに加入しないと評価が下げられるうわさまであることで、飲食店側が不審を抱いても仕方がないだろう。 他方で、食べログ側は規約やガイドラインにのっとり、一定の条件を満たしていない口コミや表現に問題のある口コミは投稿者に修正を依頼するほか、内容や表現に問題が多い場合は削除などを行っていることは認めている。こうした対応の一貫性のなさが、一般ユーザーからの信頼性の低下にもつながっている。 食べログのPRサービスは「ライト」から「プレミアム10」までの4種類あり、月額固定で1万~10万円だが、標準検索優先表示などの露出を増やすためには月額2万5000円の「ベーシック」以上のプランに加入しなければならない。ネット予約サービスを利用する場合は、ランチで一人当たり100円、ディナーで一人当たり200円の従量課金制となる仕組みだ』、「食べログのPRサービス」の価格は決して安くなく、外食店にとっては負担が大きい。
・『有料サービスがコロナ禍の飲食店にのしかかっている  食べログ以外のグルメサイトでも、有料サービスに加入しないといけないプレッシャーが飲食店にかかっている。 たとえばぐるなびでは、店舗情報の掲載に、「スタートプラン」から「ベーシックプラン」まで3種類のプランが用意されている。スタートプランでのネット予約手数料は、ランチで一人当たり40円、ディナーで一人当たり200円などの従量課金制だ。さらにぐるなびでの露出を増やしたいと思えば「ライトプラン」以上の利用が必要となり、月額固定の基本加盟料は1万1000円~3万3000円かかってくる。 しかし、コロナ禍で続く外出自粛で飲食店が経営難となり、家賃と合わせて、このようなグルメサイトの手数料が重荷になっている。その結果、日経ビジネスによると、飲食店が食べログやぐるなびなどのグルメサイトに有料会員の解除や手数料の減額を求めているという。グルメサイト側も一時的に無料などの措置を取ったものの、会員数は減少し続けている(※)。 ※「新型コロナで加速するグルメサイト離れ、今こそ外食支援を」』、「グルメサイトの手数料が重荷になっている。・・・飲食店が食べログやぐるなびなどのグルメサイトに有料会員の解除や手数料の減額を求めている」、当然だ。
・『「もうGoogle MapとSNSだけでいいでのは」  ある飲食店経営者は「無料のGoogle Map経由での来店客が増えている。もうこれとSNSをやるだけでもいいのではと思って、食べログの有料サービス登録を解除した。こちらはコロナ禍で生き残れるかどうかの瀬戸際。固定料がかかるグルメサイトは厳しい」と話す。 Google Mapで検索した場合、自分のいる場所の近くにある店が見つけられ、そのままルート検索もできる点が特徴だ。口コミなども充実しており、混雑具合が確認できるのも便利だろう。 写真投稿に特化したInstagramでも、地名やジャンルをハッシュタグで検索すると飲食店が調べやすい。検索画面右上の地図アイコンをタップすると、地図上には付近の店舗が表示され、店舗公式アカウントや来店したユーザーが投稿した料理や店舗の写真を見ることもできる。 もちろん、食べログアプリでも現在地付近の店舗を調べることができる。店舗情報を調べたり予算などの条件を指定しての検索がしやすくなっており、利便性で劣るわけではない』、無料の「Google Map」や「Instagram」が有力な対抗馬になったようだ。
・『サービスの根幹部分で信頼を失っているのが問題  食べログなどのグルメサイトは、決して使われなくなっているわけではない。しかし、グーグルやInstagramなどの台頭を考えると、信頼性がこれ以上低下した場合、形勢が逆転する可能性さえある。 これまで述べてきたように、グルメサイトにとって課題は山積みだ。しかし中でも一番問題なのは、サービスの根幹を成す点数やランキング、口コミなどの信頼性が損なわれていることだ。今こそ、これまで浮上した数々の疑惑を完全に否定し、ランキングや点数などの透明性を高くしていく必要があるのではないのか。同時に、コロナ禍で困窮する飲食店に寄り添ったり、競合サービスの良いところを取り入れるなどの工夫も必要だろう。 消費者としては信頼できる使い勝手が良いサービスを利用していくだけのこと。コロナ禍もまだ終わりそうにない。グルメサイトは、これからが正念場なのだ』、「グルメサイト」が課題にどう対応してゆくのかに注目したい。

第三に、本年2月22日付け東洋経済Plus「前澤氏が去った後、激動の中で組織は変わった ZOZOが「最悪期」を這い上がった知られざる変貌」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29856
・『出店ブランドも市場関係者も疑心暗鬼だったカリスマ創業者からの世代交代。復活の裏側でどんな紆余曲折があったのか。 「1000万人というのはうれしいが、これを目標にしてきたわけではない」 1月末に開かれたZOZOの2021年度第3四半期決算会見。澤田宏太郎社長は、アナリストからの質問にそう静かに語った。 2021年12月、ZOZOが運営する国内最大のファッションEC(ネット通販)サイト「ゾゾタウン」の年間購入者数が1000万人に初めて到達した。過去1年以内に買い物をした会員とゲスト(会員未登録者)購入件数の合計は約1010万と、1年前から10.5%伸びた』、「前澤氏」が放り出した「ZOZO」をよくぞ立て直したものだ。
・『前澤時代より「今のほうが怖い」  大台を超えた心境を問われても冷静だったトップとは対照的に、最古参役員でもある栁澤孝旨副社長兼CFO(最高財務責任者)は「1つの目安だった数字を達成できたことは感慨深い」と胸の内を明かす。 「商品取扱高5000億円」――。創業者で前社長の前澤友作氏の下、ZOZOが約10年前に掲げた中長期ビジョンだ。会員の年間平均購入金額が5万円近くあった当時、社内では「1000万人に買ってもらえば達成できる」と話していた。2021年度の商品取扱高は4728億円を見込み、到達間近となった。 前澤氏が電撃退任したおよそ2年半前、ZOZOは新事業の失敗などにより収益力が大きく落ち込んだ。「前澤さんのときより、正攻法を着々と打つ今のほうが正直怖い」。あるECプラットフォーマーの幹部は、様変わりしたライバルをそう評する。実際、ZOZOは今期過去最高益を更新する見通しだ。 カリスマなきZOZOは、戦い方をどう変えたのか。 社長交代が行われた2019年は、ZOZOにとって辛抱の1年だった。「ゾゾスーツ」での自動採寸を基に、最適なサイズの商品を届けると打ち出した前澤氏肝いりのPB(プライベートブランド)事業が想定を下回り、巨額赤字を計上。会社設立以来、初の営業減益に陥った。 出店ブランドとの間でも“ゾゾ離れ”が生じて不協和音が高まった。直接のきっかけは、2018年末に開始した有料会員向けのサービス。一定の会費を支払うと、ゾゾタウンでの購入が常時10%割引される。割引分はZOZOが負担し、出店ブランドに直接の影響はないという内容だった。 しかし、あからさまな割引価格表示などによるブランド価値の毀損を懸念した一部のアパレル企業がゾゾタウン撤退を決め、サービスは5カ月で終了。当時はブランドが自社ECを強化し、Amazonや楽天もファッション領域の開拓に本腰を入れ始めた時期だった。拙速なサービス導入の裏には、集客の起爆剤にともくろんだPBが頓挫し、成長鈍化に対する焦りもあったとみられる』、「社長交代が行われた2019年は」、・・・、「前澤氏肝いりのPB・・・事業が想定を下回り、巨額赤字を計上。会社設立以来、初の営業減益に陥った」、よくぞ立て直したものだ。
・『ブランドも不安視した体制転換  苦境のさなかの2019年9月、前澤氏が社長を突如退任。前澤氏と親交のあった孫正義氏率いるソフトバンクグループ傘下のZホールディングス(当時ヤフー)がZOZOの子会社化を発表した。 後任に就いたのが、コンサル出身で2013年からZOZO取締役を務める澤田氏だ。就任後の決算会見では「トップダウンから組織型に変える」と意気込んだが、当時は業績も株価も低迷していた。プレッシャーは半端ではなく、栁澤副社長も「引き継いですぐは辛かった」と振り返る。 出店ブランドも新体制に懐疑的だった。退任直前の前澤氏の経営に批判はあったものの、世間を驚かせるようなサービスでサイトの認知を高め、ファッション業界のEC化をリードしてきたのは事実。多くの業界関係者は前澤氏が去ったZOZOを「つまらない会社になる」と危惧した。 実際、退任の前後は集客力の衰えに加えて現場の混乱も目立った。長年ゾゾタウンに出店する大手アパレルの幹部は「とくに前澤さんが辞めた直後は、以前のようなファッション好きのイメージが遠のき、売り上げばかり追うような社員が打合せに来ることもあった」と明かす。 だがそんな懸念はここに来て、過去のものとなりつつある。 コロナ禍でのEC需要の高まりを契機に、ゾゾタウンの集客力は徐々に回復。その波に乗るように2021年3月には大規模リニューアルを実施、新たなサービスも相次ぎ打ち出している。市場関係者の間では「通常だと創業社長からの世代交代は難しいが、うまく体制の転換ができた」との声が上がる。 「新しいものはすべて前澤さんがやっていた(世間の)イメージがあるが、実はそうでもない。『ゾゾグラス』や手指用の計測マットは今の体制下で情報共有しながら進め、着実に成果を出している」。ZOZOの山田貴康・計測プロジェクト本部長はそう手応えを語る。 ゾゾグラスとは、スマホを使って肌の色を自動測定し、自分に似合うファンデーションやリップなどを確認できるメガネ型のデバイス。2021年3月のリニューアルでは、ゾゾタウン内に化粧品専門モールを立ち上げた。同時にこのゾゾグラスを無料配布して、ECでの購買がアパレルほど浸透していない化粧品の販売拡大に一役買っている』、「コロナ禍でのEC需要の高まりを契機に、ゾゾタウンの集客力は徐々に回復。その波に乗るように・・・新たなサービスも相次ぎ打ち出している」、「コロナ禍でのEC需要の高まり」という神風が吹いたのもあるが、「新たなサービスも相次ぎ打ち出している」のは大したものだ。
・『プロジェクト管理をオープンに  山田本部長によれば、「いいことも悪いこともすべて共有しながら進めている点が、以前と大きく変わった」という。前澤氏のアイデアが企画化されることが多々あった時代、各プロジェクトの進行は限られたメンバーで内密に行われる傾向が強かった。 澤田体制では、そうした情報共有のあり方を抜本的に見直した。代表例が、およそ2週に1回開催しているプロジェクト進捗会議。進行中の各プロジェクトの担当社員や部長、全役員を含めた数十人がオンラインで集まり、約2時間にわたり進捗や課題を話し合う。 部署横断で情報連携する場を増やした結果、1つひとつの企画の精度が高まり、スケジュール管理の統率をとれるようになった。ゾゾスーツを筆頭に、過去にたびたび生じた新サービスの遅延は現在ほとんど起きていない。 2021年11月には、ゾゾタウンと出店ブランドの実店舗をつなぐサービス「ZOZOMO」を始動させた。ブランドの店舗別の在庫状況をゾゾタウン上で表示する機能で、ユナイテッドアローズやシップスなどが導入済みだ。プロジェクトを担った風間昭男・ブランドソリューション本部長は「コロナ禍でブランドのためにプラットフォーマーとしてできることは何かを考え、企画から1年弱で開発した」と話す。 2020年に入社した風間本部長も、この2年での社内の変化を体感している。「以前は『この打ち合わせは何のためなのか』とモヤモヤしたまま集まることもあった。それが今は会議の精度が上がり、話す内容が高度になっている」。 澤田体制では、サイトへのアクセス数や購入率など、KPIによる定量評価を精緻化させた。足元の変化を日々細かく追えば、社員がより自分の担当領域について課題認識を明確に持つようになる。 組織経営への移行に当たってZOZOが掲げた言葉は「社員が主役」だ。先述の進捗会議では、現場社員も役員の前で説明する機会がある。社員のアイデアを募るビジネスコンテストなどを定期的に行い、現場の責任感と発案力を引き上げている』、「会議の精度が上がり、話す内容が高度になっている」、組織的に仕事をする体制になったようだ。
・『熱狂が消えた市場の評価  前澤氏が得意とした派手なパフォーマンスは消えた。しかしプラットフォーマーとして必要とされる機能、サービスの増強を絶えず着実に行い、ブランドや顧客との関係性を強固にする。「今のZOZOのほうが怖い」と思われる理由がここにある。 もっとも、市場の評価にかつてのような熱狂はない。ZOZOの株価はPBのスーツ発売を大々的に発表した2018年の4875円をピークに、足元では3000円前後を推移する。 JPモルガン証券の村田大郎アナリストは「鈍化する局面にあった商品取扱高を(ヤフーが運営し、ゾゾタウンが2019年秋から出店する)ペイペイモールも加わり伸ばすことができ、いいタイミングでの交代だった」と分析。一方で「新規事業が今後の成長にどう寄与するのか、具体的なプランがまだ見えない」と指摘する。 東洋経済の推計では、国内のアパレルEC市場におけるZOZOのシェアは2019年度に微減へと転じた。その後はゾゾタウンの伸びやペイペイモールでの販売が加わったことにより、微増となっている。 機能や集客力で他のECモールと差別化できているとはいえ、各ブランドが自社ECを強化する流れは変わらない。コロナ禍での巣ごもり特需が消えた後も、市場シェアを上げ続けるハードルは高い。 ZOZOは単に商品取扱高を伸ばすのでなく、ZOZOMOなどを通じたサイトのトラフィック(消費者による訪問回数)の増加や、計測技術のライセンス販売などにより、収益源を多角化させる目標を打ち出す。ただ今は方針の提示にとどまり、これら新事業が目に見えた収益貢献にはつながっていない。 嵐の中で出航した新体制は、ようやく舵取りが板についてきた。さらに荒波が来ても巡航速度を保てるか。ZOZOの真価はここから問われることとなる』、地道に組織的に経営するようになったとはいえ、「収益源を多角化」などが本当に可能なのか、大いに注目される。
タグ:ネットビジネス (その12)(「不快なネット広告」が増加する理由 コンプレックスを刺激、怪しい効果…、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、若者の「食べログ離れ」が止まらない…信用をどんどん失いつつある"口コミビジネス"の正念場 4人に1人は「信用していない」、前澤氏が去った後 激動の中で組織は変わった ZOZOが「最悪期」を這い上がった知られざる変貌) ダイヤモンド・オンライン「「不快なネット広告」が増加する理由、コンプレックスを刺激、怪しい効果…」 「コロナによって各企業が広告費をカットもしくは広告自体を減少させていきました。となると、入札する企業の数や相場が下がり、今まで目立たなかった怪しい商品を扱う広告が安い単価で表示されやすくなった」、困ったことだ。 「媒体は事前にどんな広告が配信されるかはわからない」、「自動で広告が表示されていく仕組みなので、媒体側が内容を事前にチェックすることはほぼできません。そもそもネット広告配信は多数の事業者が介入しています。広告主から始まり、媒体までは広告枠の買い付けを行う事業者、広告枠の仕入れ販売を行う事業者、広告枠の仕入れ販売と買い付けの需給を調整する事業者など国内外のプレーヤーが複雑に存在する。彼らによって自動的に広告は表示されていくので、責任の所在が特定しにくいのです」、なるほど。 私もせめて「不快で怪しい広告を見たら報告ボタンをガンガン押してい」る。「消費者庁の検討会は実質的なプレーヤーが参加していないので、抜本的な解決につなげることは難しいでしょう」、とはいえ、「規制」に乗り出したのは好ましい。 PRESIDENT ONLINE 高橋暁子さんは「食べログなどのグルメサイトは利用者が多い一方、点数やランキングを疑う声も多い。とくに若者は、Google MapやInstagramを使った検索に移りつつある」という――』 確かに「食べログなど複数のグルメサイト」が、「優越的な地位を利用して参加店舗に対して割引を強要したり、他のグルメサイトとの契約を制限」、などの「独禁法違反」をしている可能性がある。 可能性を否定できない。 「Google検索」、「地図サービス(Google Map、Apple Mapなど」、「SNS(Facebook、Instagramなど)」などが健闘しているのに驚かされた。 「食べログの営業をかたる業者や、売り上げを上げたい代理店など」が暗躍する裏には、順位決定方式に関する不透明性があるのだろう。 「口コミサイトが対象から広告料を取れば、口コミ自体の信頼性が下がるのは自明の理だ」、利益相反行為の典型だ。 「食べログのPRサービス」の価格は決して安くなく、外食店にとっては負担が大きい。 「グルメサイトの手数料が重荷になっている。・・・飲食店が食べログやぐるなびなどのグルメサイトに有料会員の解除や手数料の減額を求めている」、当然だ。 無料の「Google Map」や「Instagram」が有力な対抗馬になったようだ。 「グルメサイト」が課題にどう対応してゆくのかに注目したい。 東洋経済Plus「前澤氏が去った後、激動の中で組織は変わった ZOZOが「最悪期」を這い上がった知られざる変貌」 「前澤氏」が放り出した「ZOZO」をよくぞ立て直したものだ。 「社長交代が行われた2019年は」、・・・、「前澤氏肝いりのPB・・・事業が想定を下回り、巨額赤字を計上。会社設立以来、初の営業減益に陥った」、よくぞ立て直したものだ。 「コロナ禍でのEC需要の高まりを契機に、ゾゾタウンの集客力は徐々に回復。その波に乗るように・・・新たなサービスも相次ぎ打ち出している」、「コロナ禍でのEC需要の高まり」という神風が吹いたのもあるが、「新たなサービスも相次ぎ打ち出している」のは大したものだ。 「会議の精度が上がり、話す内容が高度になっている」、組織的に仕事をする体制になったようだ。 地道に組織的に経営するようになったとはいえ、「収益源を多角化」などが本当に可能なのか、大いに注目される。
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GAFA(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」) [イノベーション]

GAFAについては、昨年9月11日に取上げた。今日は、(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」)である。

先ずは、本年1月6日付け東洋経済オンラインが掲載した京都大学大学院特任准教授の山本 康正氏による「日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/478994
・『GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」「ビジネス書大賞2019 読者賞」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。 その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage四騎士+Xの次なる支配戦略』がついに刊行され、発売3日で6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAと、この4社に匹敵する権威を持つようになる「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。 本書を「コロナで起きた変化を再点検し、何をすべきか考える本として意味がある」と語るのが、日米のスタートアップに投資をし、京都大学大学院で教鞭をとる山本康正氏だ。「日本はビッグテックに『後回し』にされている」という危機感とともに、解説してもらった』、「日本にGAFAという言葉を定着させた。その著者」の新刊とは興味深そうだ。
・『日本は「後回し」にされている  『GAFA next stage』は、今のタイミングに出版されるからこそ意味があります。今後、コロナが収束した後、「元にもどるから安全だ」と考えるのではなく、この2年間で何が起きたのかを再点検し、それに対して何をすべきかを考えておかなければなりません。 本書には、パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きたと書かれています。eコマースに限らず、似たような激変がさまざまな分野で起こっています。しかし日本の普通の大企業に勤めていると、怖いほど、この変化に気づくことができません。 それでも、その変化がソフトウェアの分野なら、すぐに日本にもやってきます。例えば時価総額20兆円超えと報道されるバイトダンスが運営する「TikTok」は、日本の10代の間ではフェイスブックよりも人気です。 同じように「Clubhouse」も、アメリカで流行して、少し低迷したもののドイツで火がつき、その2週間後には日本で大流行していました。海外との時差はほとんどありません。 しかしソフトフェア以外の分野では、日本への波及には時間がかかります。それはつまり、気づいたら海外から取り残されてしまうことを意味します。 かつては、国際市場では「日本を狙え」と言われていましたが、悲しいことに、日本はいま後回しです。それよりも、中国で売ったほうがいいということで、テスラも中国に工場を持っています。日本で購入すれば、おそらく中国の工場から運ばれてくるでしょう。日本は、優先的な市場ではなくなっているのです。 その理由の1つに、日本の規制があります。たとえばテスラの自動運転の機能などは、日本国内での認可については制限されているようです。あえて遅らせて、日本に入りづらくしているわけです』、「パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きた」、そんなことが起きていたとは驚かされた。
・『やがて日本にもディスラプションの波はやってくる  しかし、これはただ参入が遅くなるというだけで、いずれ必ず日本にも進出してきます。そのときになって慌てるのではなく、いまから海外の情勢を見極め、先手を打っておiPhoneを思い出してください。初代の機種は2Gでした。あのときは、各国の2Gの仕様が統一されておらず、規格の合っている地域では、一気に初代機種が発売されていました。日本はその年には出ませんでしたが、3Gで世界共通化されたことで1年のタイムラグを経てやってきたわけです。 ただ、当初は「おサイフケータイ」などの機能がなく、充電も長持ちしないなど制約があり、ヒットにはなりましたが、爆発的に売れたのは3GSになって以降です。 要するに、規格の問題で参入タイミングが左右されています。向こうもそれがわかっていますから、「日本にはこのタイミングでこれを出そう」という計画をしています。 iPhone以前は、ガラケーが世界最先端でしたが、わずか3年でひっくり返されました。車については、買い替え年数が長く、スマートフォンより時間はかかりますが、それでも一巡したとき、それが本当に良いものであれば、一気に取って変わられます。 アメリカ自動車大手GMや日本のホンダが資本参加した自動運転ベンチャーのクルーズは実際、2021年11月の初めから、一部の従業員向けに自動運転での送迎を開始しています。法律上、運賃を徴収してロボットタクシーを走らせるということはできていません。従業員を無料で乗せて、サンフランシスコの街を走っているわけです。 つまり、自動運転は、できる、できないではなく、もうできている。あとは、浸透速度をどうするか、そして、法律など規制の問題です。GMクルーズは、2030年までに100万台を投入すると宣言しています。 アメリカでは今、そういったディスラプター(改革を目指す破壊的企業)が続々と生まれています。自分の業界もいずれ食われるかもしれないという危機感は持ったほうがいいでしょう。 保守的な規制が多いために、逆に損をして、危機に気がつけない。これは非常に怖いことです。「まだ来ないから大丈夫」と思っていたのでは、相手の思うツボでしょう。) では、具体的にどんな業界にディスラプションの波が押し寄せるのでしょうか。 『GAFA next stage』では、勃興するディスラプターとして、エアビーアンドビー、レモネード、ネットフリックス、ロビンフッド、スポティファイ、テスラ、ウーバーなどが紹介されています。 単純に投資のリターンを考えれば、そこまで大きくはない企業も出てきます。例えば、スポティファイはアップルミュージックなどの競合との競争激化から、株価の伸びでも顕著とは言えません。著者のスコット・ギャロウェイさんご本人が、ニューヨーク大学のマーケティング畑の方ですから、ブランドストーリーがしっかりとしていて、マーケティングに関して際立つ企業を並べたのかもしれません。 ここからは、私が投資家の視点で注目しているディスラプターをご紹介しましょう。いま盛り上がりを見せているのは、決済・フィンテックです。 私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう』、「私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう」、なるほど。
・『ハイブリッドでは無理、世界はEVへ  ほかにホットなテーマと言えば、エネルギーですね。 最近は、EVのリビアンの話題が大きくなっています。リビアンは、アマゾンが支援するアメリカで人気のピックアップトラックのEVメーカーとして、2021年11月に上場しました。いきなり時価総額8兆円、一時期は10兆円を超えて話題になりました。 トヨタが30兆円、ホンダで7兆円ほどですから、それに匹敵するものがいきなり登場するという、とんでもないことが起きたわけです。リビアンには、日本企業からは住友商事が投資していて先見性を窺うことができます。一方で、ある意味、バブルではないかと言われるほどの過熱を見せています。 脱炭素に関する話は、世界でも頻繁に語られていて、もはや「ハイブリッドでは無理だ」というのが海外におけるコンセンサスです。日本国内では、基幹産業への配慮をしなければならず、言えないところがあるようですが、海外では真っ向からEVです。 電動トラックはリビアンが出していますし、テスラも、2022~23年にはサイバートラックを出すようです。次のモビリティがどうなるのかという点は、いま最大テーマです。 モビリティとエネルギーについては、パイが大きいために期待も膨らんでいます。それもあって、テスラの時価総額は一時100兆円を超えました。 本書では、資本主義の過熱が起きていると指摘されていますが、これは実際に起きていると言えます。スタートアップ業界は、IPOラッシュですが、必ずしも投資リターンに厳しくない事業会社が上場直前のステージで投資をすることによって時価総額を上げており、本来ならば、まだ上場を待ったほうがいい段階でも上場してしまい、上場後に株価が低迷してしまうこともあります。 海外マーケットで頑張る日本企業としては、次世代型電動車椅子のウィルが挙げられます。 ただの車椅子と思いがちですが、例えば、メガネは「目が悪い人がかける」というものから、今は「かけてカッコよくなる、頭が良さそうに見せる」というイメージに変化しましたよね。この発想を狙ったものなのです。 日本よりも海外のほうが売り上げが大きいと推測されるため、時価総額ランキングなどのメディアにはあまり出てきませんが、まだまだ骨があると思います。あまり余計なマーケティングはせずに、プロダクトで勝負しており、彼らの車椅子は、アップルの発表会などにシレッと登場します。 本書にも、プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらないと書かれていますが、その路線です。 実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加します。 ほかに、海外で頑張っている日本企業と言えば、スマートニュースです。海外では今のところ、積極的に攻めている日本企業の1つです。 他社にタダ乗りして、いろんな情報を吸い取るサービスはたくさんありますが、スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています。いわゆる、パーパス経営をしているわけです。自分たちは何者であるのかを考えながらサービスを提供しているところに、まだまだこれからも伸びしろがあると感じます』、「プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらない・・・実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加」、「次世代型電動車椅子のウィル」、「スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています」、この2社も注目だ。
・『今後の世界を考えるための一冊  日本企業にいると、どうしても変化や危機に気づかなくなってしまいます。本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう。 たとえば本書ではテスラについて非常に厳しい見方をしていますが、原著刊行後の2021年11月までに急激に株価が伸びました。もしも原著を信じて株をショート(売り持ち)していたら、大変なことになっていたはずです(笑)。技術の解説もあまり触れられないので、あくまで技術や投資ではなくマーケティングの人として言葉を聞かなければなりません。 この世代や、非技術畑の人はそう思い込みやすい、そういったストーリーが耳に心地よさそうなのだなという参考になります。その点には注意して読むことをおすすめします』、「本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう」、欠点も正直に指摘しているので、安心して読めそうだ。

次に、1月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293912
・『マイクロソフトの巨大買収は世界一に返り咲くための戦略  めちゃくちゃ大きな経済ニュースが飛び込んできました。この記事を読み終えていただければ分かると思いますが「グーグルがYouTubeを買収して動画配信時代が来た」とか「アマゾンがホールフーズを買収してリアルな小売業に進出した」ぐらいのレベルの事件です。 米マイクロソフトが18日、米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表しました。 数字をまるめて日本のメディアでは「8兆円買収」と呼ばれているとおり、マイクロソフトにとって過去最大のM&A(合併・買収)です。もし買収が成立すればマイクロソフトのゲーム事業売上高は中国のテンセント(騰訊)、日本のソニーグループに次いで第3位になります。 しかし、「とはいえ」なのです。アクティビジョン・ブリザード社がいかにゲーム大手とはいえ売上高は約91億ドル(約1兆4000億円、直近12カ月、以下同じ)、純利益26億ドル(約3000億円)の企業を買収して、マイクロソフトが業界第三位(!)になることが、「なぜそれほどの大ニュースになるのか?」と疑問が湧くかもしれません。 実はこのニュースは、マイクロソフトが業界3位になるという視点ではなく、「マイクロソフトがGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)や中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」という視点でこそ捉えるべき話なのです』、「「マイクロソフトがGAFA・・・や中国のBATH・・・をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」、どういうことだろう。
・『米マイクロソフトが巨大買収で手に入れるものとザッカーバーグの「やられた感」  たぶん今回のニュースを目にして一番頭を抱えているのは、メタ(フェイスブック)のCEOのマーク・ザッカーバーグでしょう。アクティビジョン・ブリザードの買収でマイクロソフトが手に入れる三つのもののリストを眺めればザッカーバーグのやられた感が伝わってきます。 (1)「コール オブ デューティ」「オーバーウォッチ」をはじめとするアクティビジョン・ブリザードの人気ゲームタイトル
(2)月間4億人といわれる同社のオンラインゲームユーザー (3)エンジニアを中心とした約1万人のオンラインゲーム開発人材 この三つのアセット(資産)が手に入ることでマイクロソフトの未来に向けたロードマップの先に開けるものが何かというと、それがメタバースです。 フェイスブックが正式社名をメタ・プラットフォームズに変更した戦略意図も同じで、「これからはSNSではなくメタバースにIT企業の主戦場が変わる」ということを意識してのことです。 そして、フェイスブック以外のGAFAもBATHもそのことについては強く意識はしている。しかし今回のニュースで分かったことは、その中でマイクロソフトだけは意識しているだけではなく、メタバースに向けて強烈な一手を打ってきたということです。 さて、ここまでお読みいただいて、「分からない。正直もう無理」とお感じの方、悪いことは言わないので嫌いな野菜を食べるつもりでもう少し先まで読んでみてください。 今回の記事では世界経済がこれからどう動くのか、一番基本的な部分についてできるだけ分かりやすく説明させていただきます』、なるほど。
・『そもそも「メタバース」とは? 概要をざっくり説明  メタバースというのは現実世界とは別の生活を送ることができる仮想空間のことです。アニメが好きな方は細田守監督が『サマーウォーズ』や『竜とそばかすの姫』などの映画作品でメタバースを題材にしているので、それを思い出せばある程度、未来についてのイメージが湧くかもしれません。 自分とは違う人格やキャラとして、この世界とはまるで違う空想世界で暮らし、そこで友人がたくさんでき、おそらく敵もたくさんいて、現実世界よりもずっとエキサイティングな日々を送ることができる仮想空間です。 メタバースでは鎌倉のシェアハウスで海を見ながら、新しい仲間たちと共同生活を始めるような別の生活が楽しめるでしょう。それだけでなく、イベントではジャニーズやK-POPアイドルのコンサートのステージに一緒に上がってダンスしながらライブを楽しめるかもしれません。ビジネスでは、副業でまったく異業種の企業の商品開発会議に出席して、アイデアを提供する仕事につくようになるかもしれない。 「現実社会ではもう自分のこれからの人生の先々が見えてしまった」という残念な感覚と比較すれば、仮想世界にもう一つの人生を期待する莫大なユーザーニーズが存在することは間違いありませんし、それがイベント、旅行、リアルなビジネスなどさまざまなエリアで経済圏を拡大する未来が予想されています。 概念的には1980年代から提唱されてきたそのメタバースが今、バズワードになっている理由は、技術が追い付いてきたことに加えて、現実にメタバースができはじめていることです。 日本で一番有名な(?)メタバースが何かご存じですか?定義にもよると思いますが、読者のみなさんに一番ポピュラーな存在は任天堂の「あつまれ どうぶつの森」でしょう。これまでの累計販売本数は3000万本を超え、結構な数のユーザーが「あつまれ どうぶつの森」の世界で生活をしています。 「あつまれ どうぶつの森」が発展したことで、実はいろいろな社会問題が起きるようになります。たとえばリアルマネートレードといってゲーム内で手に入れたレアアイテム、ないしはアカウントまるごとを現実の金銭で売買するケースが問題視されるようになりました。 アメリカの大統領選挙では、バイデン候補が「あつまれ どうぶつの森」の中に選挙本部を開設しました。そこまではOKだったのですが、政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです。 任天堂の現在の規約ではリアルマネートレードも禁止されているのですが、ここはメタバース経済の未来のビジネスモデルにあたって、大きな論点となるでしょう。 参加者の持つ土地やキャラ、アイテムは成功したメタバース経済では億単位の経済価値を持つようになります。そしてそのようなマネーの魅力が、メタバースを広げるための誘因になることも間違いありません。 つまり、ゲームだと考えれば禁止される行為も、メタバースだと考えたら将来的には逆のルールができていくのではないかと私は思います』、「日本で一番有名な・・・メタバース」は「任天堂の「あつまれ どうぶつの森」、なんだ。「政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです」、さすが「石破茂」、目のつけどころがいい。
・『ゲーム業界で「一大M&A時代」が始まる  いずれにしても、オンラインゲームが現時点で一番有力なメタバースになっています。そして、今回のマイクロソフトによる買収劇は、そのメタバースとしてのオンラインゲームの経営資産を一気に手に入れるという打ち手だったことになります。 さて、そうだとしたら、「ひょっとすると日本のゲーム会社は、これから続々と数兆円単位で買収されていくんじゃないの?」と思われるかもしれません。 確かに19日の株式市場でカプコンの株価が+4.6%、スクウェア・エニックスの株価が+3.7%も値上がりしたのは、この類推からではないかと思われます。しかし、この話はそう簡単ではないのです。 日本人がメタバースとしてイメージするのはソニーのプレイステーション5上で展開される高画質なコンピューターグラフィックの世界ではないでしょうか。 カプコンのモンスターハンターのように「仲間を募ってモンスターを狩りに出かける」、ないしはスクウェア・エニックスのファイナルファンタジーのように「パーティーで冒険を繰り広げる」というのはまさに仮想現実であり、もう一つの新しい人生体験と言えるかもしれません。 しかし、問題はユーザー数であり、ハードウエアの普及台数です。ミリオンセラーとして知られるモンハン(モンスターハンター)の最新作の販売本数は世界で800万本を突破。ファイナルファンタジーは、シリーズによっては世界1000万本を超えています。それはそれですごいのですが、これらの日本製のゲームは「億ゲー」ではないのも事実です。 「億ゲー」とは月間のユーザー数が全世界で1億人を超えるオンラインゲームタイトルで、現時点で世界では10本のソフトが億ゲーを達成したとされています。 そして、今回マイクロソフトが手に入れることになる「コール・オブ・デューティ」はその億ゲーの一角を占めている。ここが今回の8兆円買収の最大の根拠だと私は考えます。 そして興味深いのは今回買収される側のアクティビジョン・ブリザード社のコティックCEOが「われわれの野望を実現するにはパートナーが必要だと気付いた」と言っているという事実です。 億ゲーを達成し、一時的に世界最大級のメタバースを所有することになった会社のCEOが、ここから先はもっと巨大な企業と組まないとメタバースのトップにはなれないと考えているのです。 今、ゲーム機のインフラとして最大なのは、任天堂スイッチでもソニーのPS5でもなく、スマートフォンです。そしてスマートフォンの世界ではアップルとグーグルの2大プラットフォームが流通を抑え、さらにはさまざまな規約でゲーム会社の行動やビジネスモデルアイデアに網をかけています。 フェイスブックのザッカーバーグCEOですら、アップルとグーグルの度重なるルール変更に疲弊して、自社のビジネスモデルがプラットフォーム企業に依存していることに落胆したぐらいです。フェイスブックが社名変更で新しい会社名をメタ・プラットフォームズとしたのは、「メタバースの時代には今度こそプラットフォームの立場を手に入れる」という意気込みが込められているといいます。 期せずしてアクティビジョン・ブリザードも同じ壁にぶち当たり、同じくその解決策を模索した。その解が、メタバースの時代にプラットフォームになりうる怪物企業としてのマイクロソフトの中に収まることだったわけです。 今はスマホが有力なプラットフォームだとしても、将来的にVRゴーグル、ウェアラブルツールや大画面モニター、タブレット端末を統合するような新しいプラットフォームが登場するでしょう。そのOSに相当する部分がアンドロイドやiOSから新しい何かに変わるはず。そこを握りにいくためにアクティビジョン・ブリザードはマイクロソフトという船に乗ることを決断したのです。 日本企業でいえば任天堂にはラブコールが殺到するでしょう。もし距離の近いグーグルと何らかの共同声明など出されれば、メタのザッカーバーグは頭をかかえてもだえ苦しむかもしれません。ないしはそれを超える買収にむけて突っ走ることでしょう。 現在、メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています。メタバースの未来という視点でいえば、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、そう考えるべきです。そしてその時代の号砲となったのが今回のニュースだったというわけなのです』、「メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています」、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、なにか大変な時代に突入したことは確かなようだ。

第三に、1月20日付けNewsweek日本版が掲載したコロンビア大学法科大学院教授のアヌ・ブラッドフォード氏による「「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日」を紹介しよう。
・『<EU、アメリカ、そして中国──反トラスト法などを武器に、テック企業への本格規制に乗り出す各国政府のアプローチと課題とは> 今日の地政学的環境では、世界の政治リーダーたちの足並みがそろうことはほとんどない。しかし、巨大テクノロジー企業に対する規制を強化すべきだという点では、ほぼ意見が一致し始めている。 その背景には、テクノロジー企業が大きくなりすぎたという現実がある。巨大テクノロジー企業は、自社のオンラインマーケットで自社製品・サービスを優遇しているとか、消費者データを不適切に利用して競争を有利に進めているとか、脅威になりそうな会社をことごとく買収することで競争を阻害しているといった批判を浴びてきた。 このような行為は、実質的に消費者の選択肢を奪うものに等しい。今日の消費者は、一握りのテクノロジー企業の製品やサービスに大きく依存しているからだ。 巨大テクノロジー企業への規制強化の動きで先頭を走るのはEUだ。この10年間に、EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金を科している。 EUの行政執行機関である欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている。 欧州委員会は欧州議会と加盟国政府に対して、「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案している。これは、巨大テクノロジー企業に対する規制の権限を強化することを目的とするものだ。 新しい法律が実施されれば、影響は世界中に及ぶだろう。巨大多国籍企業はしばしば、EUの規制に対処する措置を全世界の事業活動に拡大してきたからだ。この現象は「ブリュッセル効果」と呼ばれる(ベルギーの首都ブリュッセルはEU本部の所在地)。 アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観していた。しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴している』、「EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金」、「欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている」、「欧州委員会は・・・「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案」、「アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観」、「しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴」、日本は残念ながら話題にもならないようだ。
・『中国政府も脱放任主義へ  バイデン政権も、こうした政策転換を強く支持している。テクノロジー企業への厳しい姿勢で知られる人物を相次いで要職に指名しているのはその表れだ。2021年7月には「米経済の競争促進」を目指す野心的な大統領令に署名。巨大テクノロジー企業などの独占的行為に厳しく対処する姿勢を鮮明にした。) ここにきて中国も巨大テクノロジー企業への姿勢を転換させ始めている。中国共産党は長年、国内のテクノロジー企業を厳しく規制することを避けてきた。自国のテクノロジー産業を成長させ、国際的優位を確立するためだった。中国のテクノロジー産業は、それと引き換えに、ネット検閲への協力など、共産党の求めに応じてきた。 しかし、中国政府は最近、国内の格差を問題視し、自国のテクノロジー企業が国家よりも強大な存在に成長しつつあるのではないかという懸念も強めている。こうした新しい状況の下、中国指導部は、テクノロジー企業に厳しい姿勢で臨むようになっている。 中国当局は21年4月、競争を阻害するビジネス慣行を理由に、電子商取引大手のアリババに28億ドル相当の制裁金を科した。当局は、インターネットサービス大手のテンセント(騰訊)にも制裁金を科し、世界の有力音楽レーベルとの契約により獲得していた独占的な権利を手放すよう命じ、子会社である2つのゲーム動画配信会社を合併させる計画に待ったをかけた。 今後の展開が最も予想しやすいのはEUだ。デジタル市場法が実施されれば、欧州委員会は数々の反トラスト法関連の捜査を進めやすくなる。 不透明なのはアメリカの動向だ。最近の動向を見ると、アメリカの保守的な裁判所は、フェイスブック(現メタ)やアマゾンが独占企業だという主張を簡単に受け入れるつもりはなさそうだ。それに、党派対立の激しい米議会が意見を擦り合わせて有意義な法律を作れるかも分からない。 皮肉なことに、中国政府の規制強化がアメリカでの規制強化に道を開く可能性がある。中国で規制が強化されれば、アメリカの規制強化がアメリカのテクノロジー企業の国際競争力を奪うという主張が論拠を失うからだ。 中国政府がテクノロジー企業への締め付けを強めることは間違いない。問題は、どれくらい規制が強化されるかだ。中国が世界のテクノロジー超大国になるためには、自国のテクノロジー産業を力強く繁栄させる必要がある。しかし、中国政府はそれ以上に、社会の調和も実現したい。 この2つの要素のバランスをどのように取るかは、今後長きにわたって中国当局の重要な課題になるだろう。 いずれにせよ間違いないのは、テクノロジー企業への規制強化の動きが世界の新しいコンセンサスになりつつあることだ。EU、アメリカ、中国だけでなく、オーストラリア、インド、日本、ロシア、韓国、イギリスといった有力国も相次いで規制強化に向かって動いている。 巨大テクノロジー企業と政府の戦いは、長く続きそうだ。そして、その戦いの帰趨は全ての国に影響を及ぼす。 (筆者の専門は、国際・比較法学。EU法、国際通商法、反トラスト法に詳しい。著書に『The Brussels Effect 』〔未訳〕がある)』、「テクノロジー企業への」「主要国の」「規制強化の動き」を今後も注目したい。

第四に、2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したアレックス社長/グーグル日本法人元社長の辻野 晃一郎氏による「グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/508797
・『GAFAの強さの秘密を明かし、その危険性を警告した書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は日本だけで15万部のベストセラーになり、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」「ビジネス書大賞2019 読者賞」の2冠を達成、日本にGAFAという言葉を定着させた。 その著者スコット・ギャロウェイ教授の最新作『GAFA next stage四騎士+Xの次なる支配戦略』が刊行され、発売3日で6万部のベストセラーになっている。本書では、コロナ禍でますます肥大化したGAFAとこの4社に匹敵する権威を持つようになる「+X」の巨大テック企業が再び、世界をどのように創り変えていくかを予言している。 本稿ではグーグル日本法人元社長の辻野晃一郎氏に、「なぜ日本からGAFA+Xが生まれないのか」を聞いた』、「日本からGAFA+Xが生まれない」のは寂しい限りだが、その理由は何なのだろう。
・『不可逆的変化の時代  民主主義や資本主義など、比較的良い仕組みであろうと考えられ、世界の発展のベースにもなってきたものが、いま瓦解しつつあるという危機意識が、世界共通の認識として高まっています。 スコット・ギャロウェイ氏は、『GAFA next stage』の中で、巨大プラットフォーマーや一部の超富裕層の存在が、政治や世の中をどう歪めているのかという点にフォーカスを当て、コロナとも絡めて、現状を整理し、かなり網羅的に書いています。 内容はアメリカの話ですが、日本も似た状況と言えます。特に、政治に対する信頼は地に堕ちています。長期政権の結果、官邸の独断で縁故主義に基づいた悪しきルールブレイクが行われ、森友問題をはじめ、多くの未解決事件が棚上げになっています。コロナ対策も後手後手の対応が目立ちます。 ところが、日本人は、政治に対してなんとなくの現状維持派が多いのか、あきらめているのか、それとも無関心な人が多いのか、先の衆院選の投票率は、史上3番目の低さでした。アメリカ人は、社会問題や政治問題を自分事として考える人が多いのですが、日本人は、どこか他人事で受け身、あまり深く掘り下げて考えようとしません。 今は、不可逆的な変化が続いている時代です。インターネット以前なら10年かけて起きていた変化が1年で起きるようになりました。ギャロウェイ氏も、コロナ禍で変化のスピードがさらに加速して、数年かかる変化が数日~数カ月で起きたとも書いていますが、実際そのとおりです。 変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます』、「変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます」、同感である。
・『日本から「GAFA+X」が出ない理由  ソニーがEVへの参入を、トヨタがスマートシティや車載OSの開発を発表しています。しかし、日本から本書の言う「GAFA+X」が生まれるのかというと、このままではそれは考えにくいと私は思います。 GAFAの時価総額は、4社でおよそ800兆円、マイクロソフトも300兆円規模、テスラは100兆円規模です。一方、ソニーは十数兆円、トヨタでもピークで40兆円程度です。GAFAやマイクロソフト、テスラなどはすべてクラウドとの連携が得意な企業で、基盤とするユーザーベースが桁違いであるとともに、未来へのストーリーを明確に描いています。 イーロン・マスクは、現時点では、すべてがチャレンジの途中で、まだ真に成功させたといえる事業はありません。しかし、世界中から巨大なマネーを引き付ける魅力があります。彼に匹敵する集金力を持つ人物がそうそういるわけではありませんが、ソニーやトヨタにも時価総額を大きく上げるような夢やビジョンを発信してほしいものです。その昔、ソニーはスティーブ・ジョブズがあこがれた企業でもあったわけですから。 私は、グーグルに入る前はソニーにいました。私が知るソニーは、人がやらないことをやる企業でした。トランジスタが発明されて間もないころ、いち早く個人用のトランジスタラジオを発売し、世間をあっと言わせました。今では、スマホで音楽を聴きながら歩くことは当たり前ですが、そのようなライフスタイルは、ソニーの「ウォークマン」から始まりました。一般ユーザーが気づきもしないような潜在ニーズを掘り起こし、他人がこれまで作ったこともないようなものをゼロから作ってきたのがソニーなのです。 ところが、EVは、すでにみんながやっています。自動走行、コネクテッドカー、クリーンエネルギーなどで自動車産業は大変革期を迎えています。アップルも参入するといわれていますし、今後は、中国勢なども圧倒的な存在になっていくでしょう。その中で、ソニーがどこに勝機を見出そうとしているのかは、今のところ私にはわかりません。 発表を見たところ、「車内をエンターテインメント空間にする」という話です。しかし、車のような移動手段にとって最も重要なことは、人を目的地にできるだけ迅速かつ安全に届ける、ということです。車内を本格的なエンターテインメント空間にするのであれば、完全自動運転も前提になるでしょう。 人の命を預かる工業製品を手掛けるということは、もとよりそれだけの覚悟が求められるということでもありますし、もともとソニーが強みとしてきた領域以外のところに多くのチャレンジがあることは間違いありません。) 日本勢は、「いいデバイスを作れば勝てる」という発想に流れがちです。しかし、もうそこは勝負どころではありません。すべてがつながるデジタルの時代は、車だけを見ていてもダメなのです。もはや車も、スマホやパソコンと同じで、クラウドとつながり、他の車とも交信し、ソフトウェアをバージョンアップしながら進化する工業製品へと変化していきます。 車単体でどんなにイケてる斬新な車を作っても、事故を起こしたり渋滞にハマったりでは進歩がありません。デジタル社会全体を大きく俯瞰して、事故や渋滞から解放されたデジタル交通システムの中の1つの構成要素として車を位置づけていくような発想が必要です。そういう意味では、トヨタがスマートシティをやりはじめたことは、間違ってはいないと思います。 現在、地球上にはまだインターネットにつながっていない人々が半分ぐらいいますが、今後、インターネットにつながることは人権のひとつと解釈されるようになるでしょう。 イーロン・マスクやジェフ・ベゾスは、そのような時代を先読みしているかのごとく、宇宙に何千・何万もの小型通信衛星を打ち上げて、全地球をカバーする通信網を作ろうとしています。 一方、日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません』、「日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません」、同感である。
・『GAFAは競合ではなく「インフラ的存在」と割り切る  日本企業がGAFAやイーロン・マスクとまともに勝負しても、とても勝ち目はありません。GAFAは公共インフラとでも捉えて、彼らの裏の顔に警戒しつつもうまく使い倒すのが、今を生き抜いていくためには大切なことでしょう。 現状、GAFAが強くなりすぎて、彼らを脅かすスタートアップが生まれにくいという問題も起きています。投資家も「GAFAに対抗するなんて無理だ」と考え、GAFA対抗のようなベンチャーには投資しなくなっていますからね。 これまで、GAFAは、自分たちでイノベーションに積極投資してきました。私がいた頃のグーグルもそうでした。GAFAはイノベーションの巣窟であり、世界を変えてきたわけです。 しかし、ギャロウェイ氏が指摘するように、あまりにも強大になりすぎると、その力を維持することのほうにエネルギーを使うようになります。守りに入るわけですね。しかしそれは衰退への道です。 今後、政治的な圧力で、グーグルとユーチューブを分割するなどの動きが起きれば、競争が促進されることはあるでしょう。現在のバランスが崩れたとき、GAFAの寝首を?く企業が現れるかもしれません。ただ、それが日本から出るかというと、やはり難しいように思います。) 日本から世界を変えるイノベーションを起こそうとするのなら、国家としての構想が必要です。短期的なことばかり考える、今の政府のやり方ではダメです。「国家百年の計」と言いますが、どんな国にしていくのか、何で飯を食う国にするのか、広く国民を巻き込んで長期ビジョンを打ち立てて、未来を真剣に考えなければなりません。 いうまでもなく、もっと科学技術に力を入れねばなりません。今は、人工知能も含めたDXや、クリーンエネルギーの分野が特にフォーカスされていますが、それ以外にも医療や防災産業など、さまざまなアイデアがあるでしょう。 民間のムードも盛り上がらねばなりません。しかし、日本人は、小さい頃から受け身体質が染みついてしまっており、周囲を気にして、あまり自分の意見を言いたがりません。為政者にとってはとても御しやすい国民だと思いますね。 教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません』、「教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません」、百年河清を待つようなものだ。アメリカには「国家百年の計」などなくても、個々の企業が「国家」とは離れて独自にやっている。国頼みからは脱却すべきだ。
・『「日本から”次のGAFA”が出るべき」という常識を疑う  「日本もGAFAのような企業を生み出さなければならない」という考え方そのものが正しいのかどうか、という視点もあります。GAFAは、アメリカから出てきたものなのですから、日本は、それをうまく利用させてもらう立場でいればよいとも言えるのです。 アメリカや中国のやり方に追従するのでなく、じゃあ日本はどうしようか、と考えることが大切です。例えば、日本には社歴の長い中小企業が多いですが、「売上1兆円規模の企業を作る」ための政策よりも「100億円企業を100社育てる」ための政策のほうが、無理がないかもしれません。 日本人には根深い劣等感があります。日本の近代史には、2つの断層があります。1つは明治維新です。黒船ショックというか、江戸時代までは遅れていた国だと自らをみなし、欧米にならって早く「一等国」にならねばならないと考えるようになりました。 しかし、日本には、日本独特の歴史があり、決して江戸時代がすべての面で劣っていたわけでもありません。なにより平和が300年近くも続いた時代ですし、精神性や文化の面で、欧米よりも優れたものをたくさん育んでいた時代ともいえます。ところが、それらの過去を全否定してしまいました。 もう1つが太平洋戦争です。敗戦でボロボロになって、そこから這い上がり、再び「一等国」になったわけですが、高度経済成長を遂げた後、ずっと沈滞しています。 日本が、アメリカやフランスとは異なる歴史を持ち、2つの歴史の断層を経て今があるということをどう捉えるかです。日本は、アメリカなど新興国にはない、長い歴史が背景にある国です。その時代のつながりの中で育まれてきた日本人の末裔として、歴史への考察を深めたうえで未来を考えることが大切でしょう。 災害大国であることによる学びから世界に貢献することもできるでしょうし、長寿先進国としてもできることがあるでしょう。また、アフガンで殺害されてしまった中村哲さんのように、半生を途上国に捧げ、現地の人々から非常に感謝されている日本人も多くいます。日本人が、グローバルに通用する才能や資質を持っていないわけではないのです。 自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です』、「自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です」、総論としては賛成だが、各論になれば、甲論乙駁になるだろう。
タグ:(その6)(日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業、米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」、「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日、グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ 警戒しながらうまく使え」) GAFA 東洋経済オンライン 山本 康正氏による「日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業」 「日本にGAFAという言葉を定着させた。その著者」の新刊とは興味深そうだ。 「パンデミックによって2カ月でeコマースの10年分の成長が起きた」、そんなことが起きていたとは驚かされた。 「私が注目している企業として、金融ディスラプターのストライプがあります。すごい勢いで成長している、とんでもない化け物企業です。ほかに、後払い決済のアファーム、バイナウペイレーターなども急激に伸びています。 これらのディスラプターによって、VISAやMASTERがやられるかもしれないという状況が見えてきていますから、「既存の巨人を倒す」という意味において、注目してよいでしょう」、なるほど。 「プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらない・・・実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加」、「次世代型電動車椅子のウィル」、「スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています」、この2社も注目だ。 「本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。 ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう」、欠点も正直に指摘しているので、安心して読めそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「米マイクロソフトの巨大買収にみる、ザッカーバーグの「やられた感」」 「「マイクロソフトがGAFA・・・や中国のBATH・・・をはるか下に見る、圧倒的世界一位に返り咲くための戦略が始まった」、どういうことだろう。 「日本で一番有名な・・・メタバース」は「任天堂の「あつまれ どうぶつの森」、なんだ。「政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです」、さすが「石破茂」、目のつけどころがいい。 「メタバースをめぐっては100を超える新興ベンチャー企業がしのぎを削って市場開拓を進めています」、「これから先はGAFAとBATH、そしてマイクロソフトがそれら100社を奪い合う、一大M&A時代が始まった」、なにか大変な時代に突入したことは確かなようだ。 Newsweek日本版 アヌ・ブラッドフォード氏による「「巨大テック企業を取り締まる」が世界のコンセンサスになる日」 「EUは反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでグーグルに100億ドル近くの制裁金」、「欧州委員会は現在、グーグルの広告テクノロジーとデータ収集の手法、アップルのアップストアとモバイル決済システム、フェイスブックのデータ収集とデジタル広告モデル、アマゾンのオンラインマーケット運営の在り方について捜査を進めている」、「欧州委員会は・・・「デジタル市場法」という新しい法律の制定を提案」、「アメリカは比較的最近まで、EUが反トラスト法を駆使してアメリカのテクノロジー企業への締め付けを強めるのを傍観」、 「しかし、風向きが変わり始めた。米議会の下院は、巨大テクノロジー企業の幹部たちをたびたび公聴会に呼び出している。近年、司法省はグーグルを、連邦取引委員会(FTC)はフェイスブックを反トラスト法違反で提訴」、日本は残念ながら話題にもならないようだ。 「テクノロジー企業への」「主要国の」「規制強化の動き」を今後も注目したい。 辻野 晃一郎氏による「グーグル日本元社長「日本からGAFAは生まれない」 「GAFAはインフラ、警戒しながらうまく使え」」 「日本からGAFA+Xが生まれない」のは寂しい限りだが、その理由は何なのだろう。 「変化する世界の最先端にいるのがGAFAです。彼らの力があまりにも強大になり、社会のいろいろな仕組みにひずみが発生し、結果的に格差や分断を助長しているのは否めません。 本来そのひずみを解消していくのが政治の役割なのですが、今は逆に政治もひずみを大きくする方向で機能してしまっています。こういった危機に、もっと多くの人が気づき、行動を起こさなければならないのですが、日本人は、その意識が低いために、問題がより深刻であると感じます」、同感である。 「日本では、政治が介入して各携帯会社に値下げ合戦を強要しました。国内で携帯料金の値下げによるユーザー獲得合戦をやったところで、携帯大手4社で均等割りしてせいぜい3000万ユーザーです。地球上の79億人を全員インターネットにつなげようとしているイーロン・マスクやジェフ・ベゾスのスケール感とは比べようもありません」、同感である。 「教育から変えて、もっとアグレッシブで、能動的な人材を多く育てなければなりません」、百年河清を待つようなものだ。アメリカには「国家百年の計」などなくても、個々の企業が「国家」とは離れて独自にやっている。国頼みからは脱却すべきだ。 「自分たちの資質や才能をしっかりと棚卸しして、それをどう伸ばし、どの方向を向いて、世界をより良い場にしていくのか。それを考え抜くことが重要です」、総論としては賛成だが、各論になれば、甲論乙駁になるだろう
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メタバース(仮想空間)(その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容) [イノベーション]

今日は、メタバース(仮想空間)(その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容)を取上げよう。

先ずは、昨年12月26日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90424?imp=0
・『世界のさまざまな企業が、メタバース構築に向けて走り出した。NFT(非代替性トークン)というブロックチェーンの新しい技術を用いると、メタバース内のデジタル創作物を売買することができる』、興味深そうだ。
・『世界の企業がつぎつぎにメタバース計画に参入  フェイスブックは、2021年8月、仮想空間サービス「Horizon Workrooms」を始めた。利用者が自分のアバターを作り、「メタバース」と呼ばれる仮想空間のなかで人々と交流したり、会議をしたり、買い物をしたりする。 同社は、社名をメタと変え、メタバースの企業になると宣言した。そして、このプロジェクトに100億ドル(約1兆1400億円)という巨額の資金を投入する。開発を加速させるため、今後5年間でIT人材を1万人採用するとしている。 メタバース計画を進めているのは、メタだけではない。 マイクロソフトは「チームズ」に仮想空間で会議などができる機能を加えるとしている。 ドイツのシーメンス・エナジーやスウェーデンのエリクソンは、GPU(画像処理半導体)のトップメーカーである米エヌビディアとメタバースを構築している。 移動体通信技術と半導体の設計・開発を行なうクアルコムは、スナップドラゴン・スペイシーズというAR(拡張現実)開発のプラットフォームを提供し、次世代のヘッドセットやゲーム端末に向けたARアプリの開発をサポートする。 ウォルト・ディズニー、ナイキなども参入の計画だ。 日本では、KDDIが「渋谷区公認バーチャル渋谷」という仮想空間を作っている。20年5月に公開され、これまでクリスマスやハロウィーンの催しが行なわれた。ユーザーが物販やイベントをできる。 このように、多くの人や企業が、メタバースに向けて走り出している。 カナダの調査会社エマージェン・リサーチは、メタバース関連の世界市場は、20年の477億ドル(約5兆5千億円)から年平均43%で伸び、28年には8290億ドル(約95兆円)になると予測している。 メタバースは、昔からあった。2003年にスタートした「セカンドライフ」がそれだ。2007年頃が人気のピークだった。リンデンドルという仮想通貨も発行され、仮想世界の中で使われた。しかし、その後ユーザー数が減少し、いまは忘れられた存在になっている。 任天堂から2020年に発売された『あつまれ どうぶつの森』も、メタバースの一種だとされることがある』、「メタバース計画に参入」は確かにすごいブームだ。
・『75億円の取引例-NFTでデジタルアーツが売買可能に  多くの企業がメタバースに関心を寄せる大きな理由は、仮想空間で経済取引が可能になるだろうという期待だ。 これは、NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)というブロックチェーン技術を活用するものだ。 ブロックチェーンに取引情報を改竄不可能な形で記録していくことによって、インターネットを通じて経済的な価値を送ることができる。この技術は、すでにビットコインなどの仮想通貨で実証されている。 ところで、仮想通貨の場合には、Aさんの持っている仮想通貨とBさんの持っている通貨は同じものだ(これをFungibleという)。それに対して、NFTでは、一つ一つの個別的な対象を区別して、取引を記録していく。これは、物流管理についてすでに提供されているブロックチェーンサービスだ。 ダイヤモンドについては、2015年に設立されたエバーレッジャー社によって、サービスが提供されている。現在では、食料品などのサプライチェーンにも用いられている。 NFTは、デジタル創作物に、この技術を応用するものだ。売買する時、データと持ち主を、第三者に頼らずに検証できる。これによって、メタバースの仮想空間に作られたデジタル創作物(建物や衣装など)の売買が可能になると期待されている。 NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている。 デジタルアート作家「Beeple(ビープル)」ことマイク・ウィンケルマン氏のデジタル作品「Everydays - The First 5000 Days」が約75億3000万円で落札された。 また、Twitterの共同創業者ジャック・ドーシー氏の初めてのツイートが約3億1600万円で落札された。 日本でも、小学3年生が夏休みの自由研究として作ったドット絵が約80万円で取引された』、「NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている」、「ブロックチェーン技術を活用」することで、多重譲渡を防止する歯止めになるのだろうか。
・『コピーができるのに「唯一のオリジナル」とは?  ところで、ブロックチェーンに記入してあるのは取り引きの情報だ。デジタルな作品自体は、ブロックチェーンの外に保管されている。そして、NFTにはその作品のコピーを防止する機能はない。だから、簡単にコピーできる。 実際、上で述べた作品もウェブで簡単に見ることができる。「初めてのツイート」に至っては、単なる文章に過ぎないので、誰でも簡単に複製できる。 しばしば、「NFTは、デジタル作品が唯一のオリジナルなものであることを証明する仕組みだ」と解説される。しかし、「唯一」とか「オリジナル」ということの意味については、注意が必要だ。 リアルな絵画であれば、オリジナルな作品とその模写とは、詳細に調べれば、違いを見いだすことができるだろう。しかし、デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのことである。 今後は、コンテンツ自体の複製を不可能にするための方法が開発されるかもしれない。しかし、そうしたことがない現状であっても、上記のように巨額の取引が行なわれているのだ』、「デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのこと」、見分けは確かに困難だ。
・『ではなぜデジタル作品を買うのか?  デジタル絵画を見て楽しむだけなら、ウエブでタダでできる。それなのに、なぜ75億円もの巨額な支払いをするのか? 2つの理由が考えられる。 第1は、創作者からの正しい手続きを経て権利を獲得したという自覚を持てることだ。それは、「虚栄心を満足させているに過ぎない」といってもよい。 第2は、購入価格よりさらに高値で転売できる可能性があるという期待だ。その意味では、デジタルアーツの価格はバブルであると言える。 現在はもの珍しさで多くの人が参加しているが、そのうちに飽きてしまって、転売が不可能になり、価値がゼロになってしまう可能性も否定できない』、「デジタルアーツの価格はバブルであると言える」、やはりそうかというのが正直な感想だ。
・『新しい法規制を探る  経済産業省は、2021年7月、企業などがメタバース事業に参入する際の法的論点をまとめたリポート「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」を公表した。 仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの整備が課題になるとしている。異なる国の利用者間でトラブルが起きた場合の解決法、詐欺への対応、セキュリティー対策などを含む「メタバース新法」が必要だとしている。 仮想空間における取引が盛んになるのは、望ましいことだろう。しかし、人々が仮想空間で過ごせる時間には限りがある。 そしてわれわれは、リアルの世界から逃げ出すことはできない。人間は、仮想空間だけで生活できるわけではない。 現実の世界を住みよく快適で安全なものにするのは、もっと重要なことだ。そのことを忘れてはならないと思う』、まだ発展途上の技術に対しては、法規制の適用は慎重であるべきだ。

次に、1月13日付け東洋経済Plus「「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29433
・『あっという間に衰退してしまったセカンドライフの時代と現在とでは、いったい何が違うのか。技術や価値観など、さまざまな面から考察した。 にわかに沸騰するメタバース市場。VRデバイスやスマートフォンを通じ、人々が気軽に交流できるようになった仮想世界で今、世界中の種々雑多な企業が新規事業立ち上げや巨額投資に勤しんでいる(詳細は前回記事:熱狂メタバースに突き進む企業それぞれの皮算用)。 もっとも、メタバースブームは今回が初めてではない。 過去のブームの象徴的な存在が、アメリカのリンデンラボが2003年から運営する「セカンドライフ」だ。日本でも一般の個人はもちろん、サントリー、ソフトバンクモバイル(当時)、電通、三越などの大手企業が続々参画。セカンドライフ内に仮想店舗を出したり、マーケティング活動を行ったりと、2000年代初頭から一大ブームとなった。 リンデンラボは自社サービスを指すものとして、当時から「メタバース」という言葉も用いている。さらに空間内ではリンデンドル(空間内の通貨)での取引や、リンデンスクリプト(空間内で創造物を作るための簡易プログラミング言語)を使ったクリエーターの呼び込み・空間の拡張も行っていた。 ところが2007年をピークに、アクティブユーザー数は減少に転じる。セカンドライフ自体は現在も稼働しているものの、企業は相次いで撤退。あっという間に”オワコン”と化した。 今回のメタバースブームも、一時的なものにすぎないのではないか。セカンドライフの時代と現在とでは、何が違うのか。取材を重ねる中で見えてきたのは、当時から大きく事情が変化した3つの点だ』、興味深そうだ。
・『デバイスの発展で「大衆化」  1つ目は、デバイスやネットワークの劇的な進化だ。当時はまだ初代iPhone(2007年発売)の普及前で、メタバースに参加できたのはハイスペックなパソコンなどを所有する一部の消費者のみだった。その状況が、スマホやそれに対応するアプリの普及で一変。若年層も含め、誰もが簡単にメタバースにアクセスできるようになった。 さらに、2020年10月にメタ(当時の社名はフェイスブック)が発売したヘッドセット型のVRデバイス「オキュラス・クエスト2」も、市場拡大の下地をつくるのに一役買っていそうだ。販売実数は公表していないが、「売れ行きも非常に好調」(フェイスブックジャパンの味澤将宏代表)だという。 先代機に比べ処理速度・操作性を改良した一方、価格は下げた(先代機は4万9800円~、新型機は3万3800円~)。「メタバースは没入感のある仮想世界を実際に体験してもらわないと(面白さや利便性が)わからない。オキュラス・クエスト2はそのミッションの達成に向けて、非常にいいスタートを切れている」(味澤氏)。 2つ目の変化は、スマホの普及にも後押しされる形で醸成されたデジタル文化だ。SNSが一般化したことで、人々がリアルと必ずしも同一でないバーチャルのアイデンティティを持つことが当たり前化した。 「女子高生にインタビューすると、学歴よりもインスタグラムのフォロワーがほしいという声をよく聞く。彼女たちにとっては、デジタル世界のアイデンティティがリアル世界のそれより勝るということ。この価値観はアバター(自身の分身となるキャラクター)を介して仮想空間で他人と交流するメタバースと非常に相性がいい」 ブロックチェーン技術を用いたコミュニティサービスなどを展開するベンチャー・ガウディの石川裕也CEOはそう分析する。 「技術やサービスがより洗練されていくことで、あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」 そう展望するのは、VRゲームを皮切りにメタバース事業の拡大を志向するベンチャー・サードバースのCEOで、業界を長年眺めてきたgumi創業者の國光宏尚氏。このような価値観の変化も、メタバースの発展に影響しそうだ』、「あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」、「バーチャル上の個性や生活が主」というのは私には想像もつかない。
・『個人が「稼げる」新しい仕組み  3点目で最も大きい変化が、ユーザーや企業が「稼げる」機会の拡大だ。セカンドライフの時代には、インターネット上で決済すること自体がまだ一般消費者層まで定着していなかった。が、EC(ネット通販)やサブスクリプションサービスの普及で、スマホやPCでデジタルにお金を払うことは日常化した。 加えて、メタバースを取り巻く経済圏をさらに強力にするのがNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)だ。これまでは”コピー上等”だったネットの世界に、「本物・偽物」「所有」「資産化」といった、フィジカルなものの価値を保証するのと同じ概念が根付き始めている。 【キーワード解説】NFT Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。その作品が唯一無二のものであることを証明する。第三者への転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる。 実際、世界中の企業がメタバース上でのNFTビジネスに動き始めている。 アメリカのナイキはブロックチェーン技術を用いるバーチャルスニーカー販売の企業を2021年12月に買収。またアメリカでメキシコ料理チェーンを展開するチポトレは、メタバースプラットフォーム「ロブロックス」内に出店。リアル店舗でブリトーと引き換えられる限定コードを配布するなど、リアル・バーチャル横断の取り組みを行っている。 デジタル上の資産を個人でスムーズに売買できるシステムも整い始めた。例えば世界最大のNFTマーケットプレイス「オープンシー」では、ブロックチェーンゲームのアイテムやデジタルアートが、イーサリアムなどの暗号資産を用いて取引されている。 ブロックチェーンを使ったゲームなら、ゲーム内で創造した成果物などに金銭的価値をつけられる。「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう。人々はメタバースを通じて、学歴や資格などで決まってきたリアル世界のヒエラルキーから解放されるかもしれない」(サードバースの國光氏)。 リアル世界と遜色ないような稼ぎ口が発展すれば、そこで活躍したいと考える個人や企業がよりメタバースに集まりやすくなるだろう』、「「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう」、とあるが、「メタバース内で家など」を購入することにどういう意味があるのだろう。全く理解できない。
・『参入各社の「同床異夢」  セカンドライフ時代との技術や価値観の違いは、確かにありそうだ。ただ、メタバースがマスに定着するかを占ううえでは、拭えない懸念もある。 その1つは、デバイスやVR制作の技術が、かつてより進化したとはいえ未熟だという点だ。またそれらを使う側の企業も、技術の特性や現時点での限界を深く理解しないまま踏み込んでいるケースが少なくない。 法人向けにメタバース関連のコンサルティングや制作支援を行うSynamon(シナモン)の武井勇樹COO(最高執行責任者)は、「顧客企業のアイデアの中には、そのまま実装するとユーザーがVR内で酔ってしまうようなものもある」と話す。 「そういう場合には軌道修正を提案している。細かな調整を怠ると、せっかく時間とお金をかけて行ったイベントなのにユーザー離れを起こしてしまったり、VRそのものに”がっかり感”を持たれてしまう危険もある」(武井氏) もう1つの懸念は、業界内が決して”一枚岩”ではないという点だ。2021年12月には技術・サービスの普及などを目指す業界団体・日本メタバース協会が設立されたが、暗号資産系企業4社が音頭を取る組織構成に対し、業界内外から「当事者不在では」と疑問の声が上がった。 「メタバース=NFTではない。声の大きい人が『これがメタバースの定義だ』と言うと、(一般の理解が)その通りになってしまう。それは業界の健全な発展にとっていいことなのか」(メタバース関連企業幹部) 参入企業が急増しているだけに、メタバースで成し遂げたいビジネスがバラバラになるのはある程度仕方がない。互いの差異に折り合いをつけつつ協力関係を築けるかが、今後の業界発展のカギになるかもしれない』、技術革新が速い業界では、「業界内が決して”一枚岩”ではない」のはやむを得ないとしても、「一般」が理解できない対立は避けてほしいものだ。

第三に、1月18日付け東洋経済Plus「先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29476
・『コロナ禍が収束してもなお、メタバースの熱狂は収まらないのか。「バーチャル渋谷」で55万人の集客実績を持つベンチャーのCEOを直撃した。 2017年にリリースされたメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」。スマートフォンやパソコン、ヘッドセット型のVRデバイスを通じ、バーチャル上で音楽ライブなどのイベントに参加したり、ユーザー自ら制作した空間で友人と遊んだりできる。運営主体はサービスと同名の国内ベンチャー、クラスターだ。 イベントや空間活用の支援を行う法人向け事業も展開し、コロナ禍のハロウィーンイベントに数日間で55万人を集めた渋谷区公認の「バーチャル渋谷」など実績は豊富だ。直近で公開している2020年のイベント数は1500件超と、前年の4.5倍だ。2021年はこれをさらに上回った。 クラスター内に「”住み着いている”人もいる」と表現する加藤直人CEO。ユーザーや企業は、クラスターをどう活用しているのか。急速に熱を帯びるメタバース市場で、どんな成長を描くのか。本人にじっくり聞いた(Qは聞き手の質問、Aは加藤氏の回答)』、興味深そうだ。
・『非リアルでもライブチケットは6000円  Q:2017年からサービスを展開する中で、メタバースに興味を持ったり、クラスターに案件を依頼してくる企業の数や属性に変化はありますか? A:最初はやはりエンタメ、とくに音楽ライブで使われることが多かった。 2018年ごろからバーチャルユーチューバーが流行し、彼らの活用法を見たリアルのアーティストもこの市場にやってくるようになった。ライブ需要は今も大きく、お客さんの側も、5000~6000円とか、リアルのライブと遜色ない価格のチケットを買って参加してくれている。 2020年からはコロナ禍に突入し、現実世界ではイベントと名のつくものが全部できなくなった。それらがクラスターに全部入ってきて、ピーク時は半年で1000件以上問い合わせがあった。2021年もイベント数はさらに増え、売り上げは2020年の倍になっている。 最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ。 Q:こうした法人需要は、コロナ禍の収束後も残るでしょうか。 A:そう思う。なぜなら、リアル開催より圧倒的にコストが安いから。店舗や支店を多く持つ大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした利便性から、導入企業の中にはリピーターも多い。 (加藤氏の略歴はリンク先参照) これらの利点はエンタメ系のイベントにも通じる。なんのためにイベントをやるかというと、IP(キャラクターなどの知的財産)の価値向上、つまりもっとファンになってもらうため。公式サイトでの情報発信などで足りない部分を、これまではリアルイベントが担っていた。 でもそれはそれで、運営などのコストが大きい。にもかかわらず、開催地の近郊の人しか来られない。バーチャルなら全国、全世界から人を集めて熱量の高いイベントを行えるし、物理的には実現しにくいギミック(仕掛け)を入れ込むこともできる』、「最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ」、「大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした利便性から、導入企業の中にはリピーターも多い」、なるほど。
・『空間が民主化されてこそメタバース  Q:急激に勃興してきただけに、「メタバース」そのものの定義はまだあやふやな面もあります。加藤さんはどう考えますか。 A:最も重要な要素は、個人のクリエーターが空間作りに参加していること。1社が全部デザインして作った世界じゃなくて、そこにやってきたクリエーターたちの創造物で構成されている世界だ。 われわれも3DCG(コンピューターグラフィックス)を作れるキットを提供していて、開始から約1年で5000以上の創造物がアップロードされた。ユーザーはカフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる。 今までだって3D空間で遊ぶオンラインゲームはあったけど、空間が民主化されていて、クリエーターによって提供事業者側とは全然発想の違う物がばんばん出てくる、そういうものこそがメタバースだと思っている。 Q:2000年代にも「セカンドライフ」登場によるメタバースブームがありましたが、あっという間に廃れました。今回は何が違うのでしょうか。 まず、一般消費者の参加ハードルがめちゃくちゃ下がった。当時はそこそこ優秀なパソコンを持っていないと入れなかったので、大衆化へのキャズム(溝)を超えられなかった。それが今は、スマホで3Dがぐりぐり動くようになった。クラスターにもパソコンなんて持っていないような女子高生や小学生が、自分のスマホや親のタブレット端末で遊びに来ている。 クリエイティブツールのハードルが下がったのも大きい。当時はアバターや空間を作るツールがこなれていなかった。ほかにも通信容量やチップの性能など、当時と大きく変わった部分はさまざまある。 もう一つ重要なのが、メタバース上での消費が生まれるようになったこと。以前のブームも(バーチャル店舗を出す、マーケティングに活用するなどの形で)企業のお金は飛び交っていたけど、消費者のお金は流れ込んでいなかった』、「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる」、比喩としても驚かされた。
・『エピックゲームズはもはやアパレル大手?  Q:確かに、デジタル上でお金を払うことは今や当たり前になりました。 A:EC(ネット通販)やデジタルコンテンツ課金の普及で、技術的にも心理的にもハードルが下がった。(メタバースの代表格でもある)エピックゲームズのフォートナイトでは、「スキン」(アバターのコスチューム)が年間30億~40億ドル売れていると言われている。ある意味、世界で最もたくさん服を売っているアパレル企業でもあるわけだ。 加えて、今後はプロが作った物だけでなく、個人クリエーターや、そういう自覚がないような一般の人の作品も消費の対象として台頭してくるだろう。動画の世界で、テレビ番組や映画だけでなくユーチューバーの作品が人気を集めるようになったのと同じだ。 クラスターはまだ、作ったゲームアイテムを売れるような仕組みを備えていないので、このあたりは今後増強していく。世界的にもそこが焦点になるかなと思う。一部のメタバースプラットフォームにはそういう機能が実装されているが、より簡単で便利なサービスを作れるかの勝負はこれからだ。 Q:メタバース上での消費拡大について展望するとき、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)とセットで語られることが多いですね。 A:NFTはまた別で成長している概念で、メタバースの発展に必要不可欠かというとそうではない。もちろん絡む部分はある。ただ今のところ、NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々、それぞれにコミュニティがあって、まだクロスしていない印象だ。 まずは今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか。フォートナイトでのスキンのバカ売れもこの文脈だ。 「NFTあってのメタバースだ!」と主張するのは、事業上、NFTを売りたい人たちなんだろう。かといって「メタバースにNFTは絶対必要ない!」という主張も、あまりに原理主義的だなと感じる。クラスターにもNFTとして購入したアバターで入ってくる人が増えた。メタバース×NFTの面白い体験が、今後いっぱい出てくるはずだ』、私には理解不能な世界だが、「NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々」、とも「まだクロスしていない印象だ」。「今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか」、なるほど。
タグ:「デジタルな作品の場合は、オリジナルとコピーに違いは何もない。違いは、創作者が認めた正当な取引を通じて手に入れたというだけのこと」、見分けは確かに困難だ。 「NFTを用いたデジタル創作物の取引は、現実の世界ですでに行なわれている」、「ブロックチェーン技術を活用」することで、多重譲渡を防止する歯止めになるのだろうか。 「メタバース計画に参入」は確かにすごいブームだ。 野口 悠紀雄氏による「メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは」 (その1)(メタバースが「デジタル創作物」のマーケットを作りだそうとしている NFT=非代替性トークンの威力とは、「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点、先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容) メタバース(仮想空間) 「デジタルアーツの価格はバブルであると言える」、やはりそうかというのが正直な感想だ。 まだ発展途上の技術に対しては、法規制の適用は慎重であるべきだ。 現代ビジネス 東洋経済Plus「「セカンドライフ」の二の舞は避けられるのか メタバース沸騰が「過去のブーム」とまるで違う点」 「あくまでリアルが主でバーチャルが従だったこれまでの価値観が薄れ、バーチャル上の個性や生活が主という時代が来るかもしれない」、「バーチャル上の個性や生活が主」というのは私には想像もつかない。 「「数年内にはメタバース内で家などを建ててNFTとして販売し、親より稼ぐようになる子どもが続出するだろう」、とあるが、「メタバース内で家など」を購入することにどういう意味があるのだろう。全く理解できない。 技術革新が速い業界では、「業界内が決して”一枚岩”ではない」のはやむを得ないとしても、「一般」が理解できない対立は避けてほしいものだ。 東洋経済Plus「先駆者clusterが普及に自信を抱く合理的根拠 和製メタバースで「暮らす」「稼ぐ」人と企業の全容」 「最近の傾向としては、エンタメとは別の需要が勃興している。企業が顧客向けに行うカンファレンスや全社会議、内定者研修など、厳かな雰囲気のイベントだ」、「大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費、会場費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、参加者が50~100人を超えてくると、どうしても虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。 バーチャル空間で開催すると、お互いのアバターが見えるし、反応も見えるし、集まっている感じがある。空間内で、小さいグループになってしゃべることもできる。こうした 「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”人々もいる」、比喩としても驚かされた。 私には理解不能な世界だが、「NFT界隈の人々とバーチャル世界に”暮らす”人々」、とも「まだクロスしていない印象だ」。「今あるデジタル課金の仕組みで、メタバース上の消費が十分盛り上がっていくのではないか」、なるほど。
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ブロックチェーン(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用) [イノベーション]

今日は、仮想通貨などで使われる基盤技術として注目される「ブロックチェーン(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用)を取上げよう。

先ずは、昨年7月7日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84704?imp=0
・『DeFi(Decentralized Finance:分散型金融:ディーファイ)は、ブロックチェーンを用いて、金融機関を介さず、無人で金融取引を行なう仕組みだ。仮想通貨の取引所や、融資を仲介するサービスが提供されている。DeFiは、信用履歴審査や本人確認なしに、誰でも使えるサービスだ。 まったく新しい金融の仕組みを作る可能性があるが、現在では、これに投資するのは極めてリスクが高い。値上がり期待だけでなく、新しいDeFiサービスを作る動きが日本にも出てくることを望みたい』、興味深そうだ。
・『DeFiは、無人の金融取引  新しい金融の仕組み、DeFiが注目を集めている。これは、ブロックチェーンを用いて、決済、融資、証券、保険、デリバティブなどの金融取引を行なう仕組みだ。 「スマートコントラクト」というプログラムを用いて無人で運用される。したがって、銀行などの中央集権的な管理者が必要ない。安い手数料で迅速な取引が可能だ。 2020年には多くのDeFiサービスが開発され、成長した。2021年6月時点で提供されている分散金融のサービスは、240種類を超えている。 5月には、ビットコインなどの仮想通貨の価格が急落した。しかし、DeFiサービスの利用者は増え続け、前月比3割増の270万人となった。 DeFiに流入した資産総額は、2020年初めには7億ドル弱だったが、2021年5月には約860億ドルになった。その後、仮想通貨価格の下落で価値が減少したが、それでも600億ドル程度だ』、「DeFiに流入した資産総額は」、「600億ドル程度」とはかなりの規模だ。
・『DEX:分散型取引所  DeFiには、いくつかのサービスがある。その1つが、取引の仲介だ。 仮想通貨を売買する場合、現在では、仮想通貨交換業者が管理する取引所を使う。取引所は中央集権型の組織であり、手数料が高い。この問題を、DEX(分散型取引所)が解決した。 DEXの代表が、Uniswapだ。ある仮想通貨を他の仮想通貨に交換したい場合、Uniswapに一定量の仮想通貨を拠出すると、アルゴリズムで計算された量の他の仮想通貨を得ることができる。 Uniswapの場合、5月の取引額は約9兆円だ。これは、日本の大手交換所であるビットフライヤーの1兆8000億円を大きく上回る。 DEXは、以前から画期的なシステムとして注目されていたが、流動性が低いという問題を抱えていた。これに対処するため、プールという仕組みが採用された。 流動性の供給者になりたい人は、誰でも任意の量の仮想通貨をプールに預ける。プールしておくだけで収益を得ることができる。この仕組みによってDEXの資金量が増加し、流動性の問題や取り扱い銘柄が少ないという問題が解決された。 主要なDEXとしては、Uniswapの他に、MDEX、PancakeSwapなどがある』、「プールに預け」た「仮想通貨」が戻ってこないリスクはあるのだろうか。
・『レンディングプラットフォーム  DeFiのもう一つの主要なサービスは、レンディングプラットフォームだ。これは、仮想通貨の融資を仲介するサービスだ。 これを始めたのは、Compoundだ。Compoundでは、ユーザーがウォレットを経由して、自分が保有している仮想通貨を預け入れたり、仮想通貨を借り入れたりすることができる。借りる場合には、借り入れ額の150%を担保にしなければならない。 利率は通貨ごとに異なる。また、需給バランスに応じて変動する。年利6%以上を提供している通貨もある。場合によっては年利が20%になる。このように、通常の金融商品に比べて収益性が高い。 Compoundでもプールの仕組みが使われる。すなわち、貸し手と借り手を直接マッチングさせるのではなく、プールに資金をため込む。この資金は、Compoundが預かるのではなく、ブロックチェーン上にロックされる。ロックされた仮想通貨は、ブロックチェーン上のプログラムで管理される。借りたい人はそこから借りていく。これによって流動性不足の問題が解消された。 Compoundのプールに資金を供給すると、対価として「cToken」というものが付与される。これは、「債権トークン」とも呼ばれる。cTokenには、一定の利率が付与され、引き出すときには、利子が上乗せされて戻ってくる。cTokenを取引所で売却することもできる 。2021年5月時点でCompoundにロックされている資金は約81.5億ドルだ。 DeFiのレンディングプラットフォームには、この他に、Aave(アーベ)などがある。大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた。 ただし、これを日本の金融機関と比べると、三菱UFJ銀行の貸出金残高が107兆円だから、問題にならないほど少ない』、「大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた」、順調に増加しているようだ。
・『「誰でも使える」ことの意味は大きい  DeFiは、始まったばかりの新しいサービスなので、「一部のITマニアにしか使えないもの」と見られることが多い。しかし、事実は全く逆だ。 DeFi の利用にあたって、国籍は関係ない。スマートフォンとインターネットさえあれば、金融機能が十分でない国や地域でも、利用できる。 世界には、銀行口座を持ていない人が大勢おり、融資などの金融サービスを受けられないでいる。それに対して、DeFiでは、信用履歴の審査もなく、氏名などの個人情報も求められない。 従来は金融サービスを受けられなかった人々が金融サービスにアクセスできるようになることを、「金融包摂」(Financial Inclusion)」と言う。DeFiはまさにそれを実現するのだ』、マネーロンダリングに使われる懸念を別にすれば、「金融包摂」は望ましいことだ。
・『仮想通貨の原点に戻る動きと解釈できる  ビットコインて、秘密鍵の取得に際して、本人確認は行なわれない。その後、中央集権的組織である取引所が登場して、仕組みが大きく変わった。 DeFiにおけるDEXは、仮想通貨のもともとの仕組みへの「先祖帰り」だと考えることができる。 ところが、ビットコインなどの仮想通貨のシステムでは、送金だけが可能であり、融資などのサービスはなかった。 一方、スマートコントラクトを用いることによって契約の自動化が可能であることは、広く認識されており、これを用いて無人の事業者運営ができると考えられていた。DeFiは、それを実現しつつあると言える。 DeFiによってさまざまなサービスが提供されることになれば、仮想通貨だけですべての金融取引を行なう世界を作ることが可能だ。その意味で、大きな可能性を持つものだ。 ただし、現在のところ、利用者が増えたとはいえ270万人では、社会のごく一部といわざるをえない。相手がこのシステムを受け入れないと決済はできないから、利用価値は少ない。 これが、今後拡大するのか、あるいは一部の人々のものに終わってしまうのか、現在では何とも分からない』、「仮想通貨だけですべての金融取引を行なう世界を作ることが可能だ」、本当に可能なのかは別としても、今後の展開を注視したい。
・『DeFiの可能性と危険性  DeFiでは本人確認が行われないため、マネーロンダリング、不正蓄積資金やテロ資金の取引などの問題がついてまわる。 また 詐欺的なものも出始めているが、利用者保護の仕組みは不十分だ。 金融安定理事会(FSB)は、2019年に分散化金融技術に関する報告書を公表し、「金融システムの分散化は競争の拡大と多様性をもらたす可能性がある」と指摘する一方で、「法的責任の曖昧さや消費者保護に関する不確実性」に言及した。 日本でも、一部でDeFiが注目されているが、それは高い収益性を狙うことができるからだ。ウエブにあるDeFi関連の記事は、「DeFiでどう稼ぐか」といったものが多い。 上で述べたように、DeFiが新しい世界を作る可能性はあるものの、現時点でDeFi が提供するサービスは、DeFi の世界にとどまっており、現実の経済活動とリンクしていない。だから、現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる。 そうした条件下でDeFi取引に参加するのは、リスクが非常に大きいことに留意すべきだ。 私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?』、「現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる」、「私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?」、確かに「日本発のDeFiプロジェクト」が出てきてほしいものだ。

次に、9月21日付け日経新聞が転載したThe Economist「分散型金融、法規制で安定を」を紹介しよう。「分散型金融、法規制で安定を」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM190FU0Z10C21A9000000/
・『懐疑派にとって、批判材料は尽きない。最初の暗号資産(仮想通貨)ビットコインは初期の段階で違法ドラッグの支払いに使われた。最近のハッカーは身代金を仮想通貨で支払うよう要求する。今年、別の仮想通貨イーサのコードにバグを見つけたハッカー集団は数億ドルを盗んだ。世界中の「信者」が一獲千金を狙って取引する仮想通貨の時価総額は2兆2000億ドル(約240兆円)にのぼる。 15年に誕生したブロックチェーンネットワーク「イーサリアム」の利用が急速に広がっている。分散型金融の仕組みが従来の金融システムを大きく変える可能性がある=ロイター なかには狂信的な者もいる。エルサルバドルがビットコインを法定通貨にする取り組みに関わった起業家は、6月の発表の際に壇上で泣きながら、この国を救う決断だと主張した。 犯罪者、愚者、信仰の押しつけとなれば不快感は禁じ得ない。だが、分散型金融(DeFi、ディーファイ)と呼ばれる金融サービスの台頭は熟慮に値する。期待と危険を伴いつつも、金融システムの仕組みを再構築する力を秘めている。分散型金融のイノベーション(技術革新)の急速な拡大には、ウェブの発明初期の熱気に通じるものがある。人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある。 DeFiは金融に創造的破壊をもたらしている3つのテックトレンドの一つだ。巨大テック企業に代表される「プラットフォーマー」は決済分野や銀行業界に割って入り、各国は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)に着手している。DeFiは権限を集中させるのではなく、分散する新たな道を切り開く。 その仕組みを理解するにはまず、ブロックチェーンを知る必要がある。コンピューターの巨大なネットワークが、改ざんできない記録を保持して共有する仕組みだ。中央機関はなく、そのデータは自動的に更新される』、「人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある」、その通りだ。
・『イーサリアム、透明性と低コストで急速に普及  2009年に登場した初の大規模なブロックチェーンであるビットコインは話題に事欠かない。だが、今最も注目すべきは15年に誕生したブロックチェーンネットワーク「イーサリアム」だ。一気に普及が進む段階に達しつつある。分散型金融のアプリケーションの大半がイーサリアム上に構築されており、イーサリアムの開発者は金融分野を大きな収益機会をもたらすターゲットとみている。 旧来の銀行は清算機関、コンプライアンス(法令順守)、資本規制、訴訟など、見知らぬ人の間で信用を維持するために巨大なインフラを必要とする。コストが高く、それが内部の者に握られている。クレジットカードの手数料や、大金融機関の幹部が所有するクルーザーを思い浮かべればわかるだろう。それに比べて、ブロックチェーン上の取引は少なくとも理論上は信頼性や透明性が高く、低コストで迅速だ。 使われる専門用語には近寄りがたい感はある。手数料は「ガス」、その通貨は「イーサ」、デジタル資産の権利証書は「非代替性トークン(NFT)」などと呼ばれる。だが、分散型金融の世界での基本的な活動は身近なことだ。例えば、交換所での取引、融資の実行、契約を自動的に実行する「スマートコントラクト」による預金の受け入れなどだ。 活動の目印となる担保として使われているデジタル商品の価値は18年初めはゼロに等しかったが、今では900億ドルに達する。21年4~6月期にイーサリアムが承認した取引の額は2兆5000億ドルに上った。これは米カード決済大手ビザの決済処理額に匹敵し、米ナスダック市場の取引高の6分の1にあたる。 分散型で摩擦の少ない金融システムを構築するという夢はまだ始まったばかりだ。DeFiはさらに挑戦的な分野に広がっている。仮想通貨のウォレット(電子財布)「メタマスク」は、1000万人にのぼる利用者のデジタルIDとして機能している。分散型の仮想空間「メタバース」に入り、メタマスクの利用者が営む店を利用するためには、自分の分身であるアバターに電子財布をリンクさせる。 消費のオンラインシフトが進むなかで、こうしたデジタル世界の覇権争いは激しさを増すだろう。巨大テックがこの世界に重税を課す可能性もある。アップストアで米アップルが取り立てる手数料や米フェイスブックがアバターの個人情報を売ったりする状況を想像してみてほしい。分散型金融なら利用者同士が互いに運営し合うかたちで必要な機能を提供でき、より優れているといえるかもしれない。決済サービスや財産権を提供することもできる。 仮想通貨マニアはここに理想郷を見いだすだろう。だが分散型金融が米銀大手JPモルガン・チェースや米決済大手ペイパルのような信頼を得る道のりは遠い。問題のなかには単純なものもある。ブロックチェーンのプラットフォームは機能の拡張が難しく、コンピューターの使用で大量の電力を浪費しているとしばしば批判される。だが、イーサリアムには自己改善の仕組みがある。需要が高まれば承認作業の手数料が上がり、開発者に利用を抑えるよう促す。イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定だが、いずれは他のより優れたブロックチェーンが取って代わる可能性もある』、「イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定」、使い勝手はどんなによくなるのだろうか。
・『仮想経済にも現実世界とのつながりが不可欠  分散型金融については、独自の基準を持つ仮想経済が現実の世界とどう関わっていくかが問題になる。懸念の一つは価値を支える外部の後ろ盾がない点だ。仮想通貨は、人々がその有用性に共通の期待を抱くことに依拠しているという点では、米ドルと変わりはない。 だが、従来の通貨は権力を独占する国家と、最後の貸し手である中央銀行の支えがある。分散型にはこうした後ろ盾がないため、パニックに弱い。仮想世界の外での契約の実行にも懸念が残る。ブロックチェーンの契約で家の所有権があるといっても、立ち退きを執行するには警察が必要になる。 DeFiのガバナンスと説明責任は発展途上だ。コードを書くうえでのミスが避けられないため、取り消しがきかず人の手で上書きできない大型取引の連鎖には危険が伴う。イーサリアムと金融システムの境界のグレーゾーンでは統治が行き届かず、マネーロンダリング(資金洗浄)が横行している。分散型とうたいつつも、大きな影響力を握るプログラマーやアプリ所有者もいる。悪意を持つ者がブロックチェーンを運営するコンピューターの大半を乗っ取る事態が起きる危険もある。 デジタル自由主義者はDeFiの自治体制を維持することを望むだろう。不完全でも、純粋だからだ。だが分散型金融が成功するためには、従来の金融システムや法制度との統合が不可欠だ。仮想通貨に詳しい米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が指摘したように、DeFiのアプリケーションの多くは、分散型の組織に運営され、ルールを決められている。こうした組織を法規制の対象にしなくてはならない。各国の中銀が参加する国際決済銀行(BIS)は、仕組みに安定性を持たせるために、DeFiアプリで国が発行するデジタル通貨を使えるようにすることも提案している。 金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った。それぞれに技術体系があり、経済運営のあり方について独自のビジョンを具現化している。1990年代のインターネット勃興期と同様に、この変化の行方は誰にもわからない。だが、この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている』、「金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った」、「この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている」、今後の展開は要注目だ。

第三に、1月13日付け東洋経済Plus「大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29432/?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=502434&login=Y&_ga=2.65615598.1595207122.1641535678-441898887.1641535678#tkol-cont
・『IT・ネットにエンタメ・ゲーム、製造業まで、参入企業の顔ぶれは多種多様だ。何が彼らをメタバースに駆り立てるのか。 雷門から仲見世通りを抜けると、浅草寺の本堂が見えてくる。脇にそびえる五重塔を上れば、眼下の景色を見下ろすこともできる――。 仮想空間上で独自の世界を作ったり、散策したりできるアメリカ発のメタバースサービス「ザ・サンドボックス」。ここに「MetaAsakusa(メタアサクサ)」を構築中なのが、普段はカメラマンとして活動する武藤裕也さんだ。 コンピューターグラフィックス(CG)制作についてはまったくの素人。メタバースやブロックチェーン技術には以前から興味があり、仮想世界に浅草寺周辺の風景を再現するプロジェクトを発足しツイッターなどで呼びかけたところ、多くの個人クリエーターの協力を得ることができた。 「協力者の皆さんの熱量がものすごく、メタバースという新しい市場の可能性を感じる」(武藤さん)。メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ。 【キーワード解説】NFT Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。「電子証明書」のようなもので、改ざんが難しいブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムなどのデジタルデータに作者の情報などを記載。その作品が唯一無二のものであることを証明する。第三者への転売も可能で、売買金額の一定割合を原作者に還元するプログラムを書き込むこともできる』、「メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ」、ずいぶん使い勝手がよくなるようだ。
・『”住み着いている”ユーザーも  メタバースとは、インターネット上の仮想空間のこと。アメリカのSF作家、ニール・スティーヴンスンが著書の中で仮想世界の名称として使用し、近年、IT・ネット業界でこの言葉がさかんに飛び交うようになった。 ユーザーは自身のアバター(分身となるキャラクター)を介し、メタバース上で行動したり、ほかの人々と交流したりする。ヘッドセット型のVR(仮想現実)デバイスのほか、パソコンやスマートフォンの画面で楽しめるものも多い。新型コロナウイルスの感染拡大でリアル空間に大人数で集まることが困難になり、その代替としても熱狂度を高めている。 冒頭のメタアサクサのように、企業が提供するプラットフォーム上でユーザーが自由に空間や過ごし方を発展させられるのもメタバースの醍醐味だ。 2017年からメタバースサービスを提供するクラスターでも、ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」。クラスターの加藤直人CEOはそう話す。 仮想空間でお金を稼ぐ人々も出現している。先述のサンドボックスの仮想空間には広大な土地があり、運営会社が定期的に土地をNFTとして売り出すが、毎回ものの数秒で売り切れる人気ぶりだ。アディダスなどの有名企業や著名アーティストも土地を所有しており、その隣接地などのNFTは「オープンシー」といった取引所で高値で売買されている。 昨年の夏頃にサンドボックスの土地を購入したAさんは、IT企業勤務の30代男性。ほかの類似のゲームも合わせると、数千万円の含み益が出ているという。「サンドボックスは著名人とコラボした土地の販売で話題を集めるのがうまい。用途がまだ不透明な中で、これだけ(売買が)盛り上がっているのには驚く」とAさんは話す』、「ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」」、セミプロのような人物も出てきているようだ。
・『猛攻のメタ、グリーも巨額投資  急過熱するメタバース市場に、世界の名だたる企業も次々と参戦している。 号砲を鳴らしたのが、フェイスブックから社名を改めたメタだ。2021年10月に行った発表会では社名変更のほか、メタバース関連事業の開発などにあたる人材を今後1万人雇用することを発表。すでにメタバース領域に年間約1兆円を投じている。 同12月にはメタバースアプリ「ホライズン・ワールド」をアメリカとカナダで一般公開した。ユーザーはメタが開発するVRデバイス「オキュラス・クエスト 2」を用い、会議などを行える仮想オフィス空間「ホライズン・ワークルームズ」や、外部企業が開発したVRゲームなどを利用できる。 「イマ―シブル(没入感)とインターオペラビリティ(相互運用性)を追求すれば、(友人や同僚など)人と人との距離感をより近くできる。これは当社が既存のサービスを通じても目指してきたことだ。現実世界と仮想世界を行き来できるようなメタバースを目指していく」。フェイスブックジャパンの味澤将宏代表はそう話す。 メタバースの可能性を世に知らしめたのは、アメリカのエピックゲームズが2017年に開始した「フォートナイト」だ。数十~100人単位が同時にプレーできる対戦型オンラインゲームとして誕生し、現在世界中で数億人のユーザーを抱える。ゲームのほか、仮想空間内で音楽ライブなどを開催できるパーティーロイヤルモード、ユーザー自らが作った建物などで遊べるクリエイティブモードも備えるのが特徴だ。 とくに音楽ライブとは相性がいい。会場の収容人数という制約がないうえ、コロナ禍でリアルの開催が難しいことも相まって、1度に1200万人以上を動員するケースも出ている。2020年には米津玄師が、2021年には星野源などがフォートナイト内でバーチャルライブを開催するなど、日本のアーティストによる活用も進む。 日本勢でも猛攻を仕掛ける企業はある。その1つがグリーだ。 2021年8月にメタバースへの参入を発表。子会社のリアリティが運営する2次元バーチャル配信アプリを発展させる形での事業拡大を狙う。現在、同社の利益の大半を稼ぐのはスマホゲームだが、ヒット作の有無に左右されやすい。今後2、3年でメタバースに約100億円を投じ、成長を牽引する次の柱に育成したい考えだ。 直近ではバンダイナムコやセガなど、強力なIP(ゲームキャラクターなどの知的財産)を持つ企業も関連市場へ踏み出している。ゲームやキャラクターの持つ世界観を仮想空間で表現しファンを呼び込むことで新たな商機をつかもうとする動きは活発で、アメリカのディズニーも2021年11月の決算発表時に名乗りを上げた。 漫画のIPを保有する出版社を顧客に抱える国内印刷大手の大日本印刷(DNP)も、独自のメタバース構想を発表している。これまでも街頭サイネージ、商品パッケージを活用したキャンペーンなど、リアルとデジタルを横断する取り組みを多く手がけており、それらのノウハウを生かす。 「メタバースが普及しても、リアルな場所やグッズへの需要が消えるわけではない。両者をつなぐようなビジネスでは、当社にしかできない役割があると思う」(DNPのコンテンツコミュニケーション本部XRコミュニケーション事業開発部企画・開発課の上田哲也課長) 足元では企画展・物販などを行う渋谷の自社拠点「東京アニメセンターin DNP PLAZA SHIBUYA」を活用し、リアル・バーチャルの両軸で開催するファンイベントなどを展開している』、「急過熱するメタバース市場に」、内外の「名だたる企業も次々と参戦している」。
・『「手取り足取りの支援」に商機  メタバースを活用したい企業の支援で稼ぐベンチャーも台頭している。 前出のクラスターは個人向けサービスの傍ら、法人向けにメタバースの企画制作や開発を行う。かつてはエンタメ企業の依頼が多かったが、2020年以降は社内外のカンファレンスに使いたいといった要望が増えたという。不特定多数のユーザーが自由に参加できるメタバースとは、また違った用途だ。 「店舗や支店を多く持つ大企業だと、全社会議を行うのに膨大な交通費や宿泊費がかかる。ビデオ会議を使うケースも多いが、大人数だと虚空に向かって話している感じが否めず一体感が出ない。メタバースを使う利点はコロナ後も残り続けるだろう」(クラスターの加藤CEO)。配信当日のディレクションも含めトータルに支援することで、不慣れな企業からの需要を取り込んでいる。 一方、法人向け支援に特化するSynamon(シナモン)は小規模なイベントや会合の作り込みを売りにする。例えば、三井住友海上向けには事故車を精査する人員の研修用の仮想空間を提供。以前は研修所に出向いてもらい実物を前に行っていたものを、大幅に簡便化できた。 空間内では仮想の事故車をあらゆる角度から観察したり、メジャーを使ってきずのサイズを測ったりと、現地研修と同様のリアルな体験ができる。 シナモンはこれ以外にも、小売り企業向けのVRショールームなどさまざまな案件を手がける。「(メタバース活用に)興味はあるが、アイデアや技術がないという会社は多い。初期段階のコンサルティングから一気通貫で担い、目的に合った活用になるよう支援している」(シナモンの武井勇樹COO〈最高執行責任者〉)。 大手企業もこれらのベンチャーに目をつける。とくに熱心なのは通信各社だ。 NTTドコモは2021年11月、世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営する日本のベンチャー・ヒッキーに65億円を出資。発表のリリースで「XR(VR・AR〈拡張現実〉などの総称)が“ポストスマホ”として日常・非日常を問わず利用される世界を実現する」と意気込みを表明している。KDDIも前出のクラスター、シナモンにそれぞれ出資している。 まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース。市場全体は今後ますます拡大するとみられるが、この領域の事業で飛躍できる企業は限られるだろう。ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される』、「まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース」、「ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される」、今後の展開が見ものだ。
タグ:(その1)(「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性、The Economist:分散型金融 法規制で安定を、大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用) 「「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…? 始まったブロックチェーン金融の可能性」 「メタアサクサには今後、お賽銭ができる機能や、NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)を用いたアート作品の展示・販売を行える仕組みなども実装していきたい考えだ」、ずいぶん使い勝手がよくなるようだ。 「まさに「ネコもしゃくしも」状態に突入したメタバース」、「ブームに埋もれず成功をつかめるか、各社の腕が試される」、今後の展開が見ものだ。 The Economist 「大手3サービスのローン残高は約160億ドル(約1兆8000億円)であり、年初から4.5倍に増えた」、順調に増加しているようだ 「金融は大テックプラットフォーム、大きな政府、そして分散型金融の3者の革新性と欠陥を伴ったビジョンが競いつつ融合する新たな時代に入った」、「この動きは通貨の機能を変える可能性があると同時に、デジタル世界全体を変える力も秘めている」、今後の展開は要注目だ。 東洋経済Plus 「急過熱するメタバース市場に」、内外の「名だたる企業も次々と参戦している」。 本当に可能なのかは別としても、今後の展開を注視したい。 「ユーザーは同社のCG制作キットを用い、カフェを作って”飲み会”を開催したり、競馬場を作ってゲームに興じたりしている。「1日10時間以上滞在するなど、ここに”住み着いている”ユーザーもいる」」、セミプロのような人物も出てきているようだ。 日経新聞 「分散型金融、法規制で安定を」 ブロックチェーン 「人の生活のオンライン化がかつてなく進む中で、この暗号革命はデジタル経済の構造を抜本的に変える可能性すらある」、その通りだ。 「プールに預け」た「仮想通貨」が戻ってこないリスクはあるのだろうか。 現代ビジネス 野口 悠紀雄 「イーサリアムは近く改善版がリリースされる予定」、使い勝手はどんなによくなるのだろうか。 「現在、DeFiへの投資で高い収益率を挙げられるのは、資金が流入し続けているからだ。その意味ではバブルと言うことができる」、「私が残念に思うのは、日本発のDeFiプロジェクトがほとんどないことだ。上で述べたように、DeFiは将来の金融として大きな可能性を持っている。 それを、投機の対象としてしか見ないのでは、将来の可能性を捨て去ることになる。日本でも、建設的な動きが生じないものだろうか?」、確かに「日本発のDeFiプロジェクト」が出てきてほしいものだ。 「DeFiに流入した資産総額は」、「600億ドル程度」とはかなりの規模だ。 マネーロンダリングに使われる懸念を別にすれば、「金融包摂」は望ましいことだ。 「大手からベンチャーまでが魅せられる新経済圏 熱狂メタバースに突き進む「あの企業」の皮算用」を
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電気自動車(EV)(その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト) [イノベーション]

電気自動車(EV)については、8月18日に取上げた。今日は(その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト)である。

先ずは、9月15日付け日経ビジネスオンライン「EV電池の中国CATLを見て、日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/091400093/
・『欧州委員会が電池産業の育成を明確にし、欧州各社が巨大な電池工場の建設計画を打ち出しています。官民一体で自動車の電動化に突き進む欧州の動向をどのように捉えるべきでしょうか。日経ビジネスは、専門家が解説する日経ビジネスLIVE(オンラインセミナー)「電気自動車で日本は勝てるのか~欧州の野望を読み解く」を9月15日(水)16:00~17:00に開催します(事前登録制、日経ビジネス電子版有料読者は受講料無料です)。詳細についてはこちらをご覧ください。今回は登壇するZFジャパン社長の多田直純氏のインタビューの一部をお届けします(Qは聞き手の質問)。 多田さんはドイツのボッシュや中国の寧徳時代新能源科技(CATL)でマネジメント経験があり、現在はZFジャパン社長として自動車サプライヤーに精通しています。Q:今のEV市場の状況をどのように見ていますか。 ZFジャパン社長の多田直純氏(以下、多田氏):中国では、今年から来年にかけて電池の生産量が急激に伸びていきそうな勢いです。それから考えると市場にEVが出始めるのが、2022年や23年ぐらいになりそうです。おそらく3〜4年前の17年や18年ぐらいに生産設備への投資計画を考え始めたと思います。 その頃の17年に私はCATLに入りました。そのときは欧州や日本の自動車メーカーが、CATLに何度も足を運んでいたときです。CATLの本社がある寧徳(ニンドゥ)にあるワンダプラザホテルにいつも泊まっていたんですけど、そこには欧州の自動車メーカーの人たちが毎日いましたね。 Q:そのときには実際、自動車メーカーとCATLはどのような交渉をしていたのですか。 多田氏:日本の自動車メーカーは、電池の供給量の約束をしてほしかった。生産量の確保のために動いていましたね。当時、日本の自動車メーカーは日本の電池メーカーと距離を取り始めていました。 (多田 直純氏の略歴はリンク先参照」 Q:その頃には技術面や品質面の課題はクリアになっていたのですか。 多田氏:当時、日本の自動車メーカーは自分たちの基準を製品に反映しようとしていました。プラットホーム(車台)の開発に5年以上かかるような話を持ってくるのに対し、中国は非常に短い開発期間で対応するという話をしました。逆にCATLの方に日本の自動車メーカーの品質の高さやノウハウを植え付けるような話をしながら、ウイン・ウインの関係を築くようにしました。 Q:欧州勢と日本勢のアプローチの仕方は違ったのですか。 多田氏:違いますね。欧州の顧客たちは切り替えが早かったです。というのは、欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強していきました。その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました』、「欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強」、「その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました」、「中国限定」でやるとは急いでやるのは上手いやり方だ。
・『日本と欧州の自動車メーカーで2年ぐらいのギャップがあった  ドイツ勢はいち早くEVを商品化することを目的とし、CATLと付き合っていたのでしょうか。 多田氏:日本の顧客は、中国における電池の開発能力の高さや開発者の質、開発スピードの速さなどを見て、CATLと組まないと自分たちは中国で成功しないということに気付いたんだと思います。欧州の自動車メーカーは、もっと早いうちにそれが分かっていたのかもしれません。欧州の自動車メーカーと日本の自動車メーカーでは電池の使いこなしという点で、当時は2年ぐらいのギャップがあったように感じていました。 Q:そもそも多田さんはどのような経緯で、CATLの日本法人トップになったのですか。 多田氏:前の会社を辞めた後にヘッドハンターから電話がかかってきて、それで「来いひんか」という話があり、何回かCATLの幹部の人と電話でやりとりした後に本社に行きました。 今はCATL本社としてすごい立派なビルがあるんですけど、それもできていない頃です。小さなオフィスを借りてみんなが頑張ってやってはったときだったんですよ。まあ、こんなにみんな一生懸命やってエネルギーに満ちた会社を久しぶりに見たなと思って。 ロビンという創業者兼CEO(最高経営責任者)とも話をしたら、本当にどうやって日本のお客さんと仕事ができるやろう、どうやって教えてもらえるやろうとか言ってくれて、エネルギーに満ちた会社と幹部の人たちの気持ちとか熱意とかに感動して、入社を決めました。 Q:それがCATLの成長の原動力だったのですね。 多田氏:そうです。僕は中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ』、「中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ」、なるほど。
・『欧州と中国は似ている面がある  欧州はムービングゴールポストというか、勝手にゴールポストをつくるとか、ルールづくりで勝つ意識が強いように感じます。多田さんは欧州のルールづくりの在り方とか目標設定をどう受け止めていますか。 多田氏:あまり僕も詳しいことは分からないんですけど、最近の報道なんかを見ていたり、読んだりしていると、以前の中国と似ているなと思いました。以前、中国では自動車に関していろいろな規制を発表したり、優遇措置を出したりなど、本当に1週間ごとぐらいに新しいニュースが入ってくるような時期がありました。今は欧州がそんな感じがしますよね。ですので、印象としては欧州も中国と同じようになってきたというイメージを持っています。 欧州と中国は人権意識などで大きな違いがある一方で、意外に共通点があると感じます。米国はどちらかというと民間がイノベーションの主体になりますが、欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます。 多田氏:まさにそんな感じですね。あるいは逆に中国の市場を見据えた欧州自動車メーカーの電動化への動きということから考えると、欧州の政府と自動車メーカーは一緒に考えている印象も受けます。独ミュンヘン国際自動車ショーでもメルケル独首相が、ZFのブースを訪問し、弊社CEOのシャイダーと次世代のモビリティのソリューションについて議論されていました。(続きは、9月15日の日経ビジネスLIVE「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」をご視聴ください)』、「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」は、セミナーのPRなので紹介は省略。「欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます」、というのは「中国」のやり方に近い。このままでは、「CATL」と日本の自動車メーカーの格差は開く一方だ。

次に、10月10日付け東洋経済オンライン「課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461216
・『2050年のカーボンニュートラル  二酸化炭素排出量の実質ゼロ)に向けて、自動車業界も対応を迫られている。その主役と目されるのはEV(電気自動車)だが、普及に向けた課題もある。『週刊東洋経済』10月9日号は「EV産業革命」を特集。欧州を震源に巻き起こるカーボンニュートラルの動きに、トヨタ自動車を筆頭とした日本の自動車産業はどう対応していくのか。EMS(電子機器の受託製造サービス会社)世界最大手の台湾・鴻海精密工業や中国・ファーウェイといった異業種の参入により、車づくりはどう変わっていくのか。激動の自動車産業に迫る。 EVの価格の高さや品ぞろえの少なさ、充電インフラの不足などから日本でのEV普及は遅れている。また、日本は7割を火力発電に依存しているため、EVによるCO2削減効果への疑問やEV普及によって増える電力量を心配する声もある。こうしたEVに対する疑問や、普及に伴うさまざまな課題をどう解消していけばよいのだろうか。 脱炭素化を研究する櫻井啓一郎氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは櫻井氏の回答)』、興味深そうだ。
・『電力不足に対応する時間は十分にある  Q:EVが普及すれば、電力不足になると心配する声があります。日本自動車工業会の会見で、豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が「国内の乗用車がすべてEV化したら、夏の電力使用のピーク時に電力不足になる。解消には発電能力を10~15%増強しないといけない。これは原子力発電で10基、火力発電なら20基に相当する」と述べています。 A:国内の乗用車総保有台数約6200万台が全部EVに置き換わったとして、1年間に必要な電力を試算すると現在の日本の年間総発電量の約1割となる。 だが、問題はEVの普及によって増える電力量よりも、充電するタイミングが重なることだ。豊田会長の試算は、それを念頭に置いているのではないかと思う。 Q:約1割増える電力はまかなうことができる、と。 A:今すぐに新車販売をすべてEVに切り替えたとしても、約6200万台の乗用車をすべてEVに置き換えるのに15年かかる。その前に新車販売をすべてEVにするにも何年もかかる。対処する時間は十分にあるはずだ。 Q:そもそも日本は電力の約7割が火力発電由来です。EVに切り替えてCO2排出量は減るのでしょうか。 A:今の日本の電力構成を前提に見積もると、送電と充電のロスを考慮しても、EVのライフサイクル(製造時から廃棄時まで)全体でのCO2排出量はハイブリッド車(HV)と同程度になる。 ただ、日本が今後(再生エネルギーの比率を増やすなど)電力の(CO2の)低排出化を進めていけば、販売済みのEVのCO2排出量も減少していく。欧州やアメリカのカリフォルニアのようにすでに電力の低排出化が進んでいる地域では、現時点でもHVよりEVのほうが何割も低排出になっている。) Q:再エネは太陽光にしろ、風力にしろ、稼働が不安定という問題があります。 櫻井氏の略歴はリンク先参照) A:EVの蓄電能力を利用することで太陽光や風力を有効に活用できる。現時点でも太陽光による電力が余ることがある。今はその余った電力を捨てている。 一方、EVは大容量の電池を積んでいるが、どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる。 そうすれば再エネ事業者の採算性が改善して需要ピーク時の電力コストを抑えられるため、EVを持たないユーザーにとってもプラスになる。何より国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる。 EVと家とで電力を融通し合うV2H(ビークル・トゥー・ホーム)や、EVを電力系統全体で有効活用するV2G(ビークル・トゥー・グリッド)と呼ばれるシステムも期待できる。現在は高価だが、EV用の車載インバーター(モーターの回転速度を制御する装置)の活用で安価にできる余地がある』、「どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる」、「国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる」、なるほど。
・『カギは充電タイミングの分散  Q:充電のタイミングが集中する問題に対応できますか。電力逼迫時に一斉にEVが充電をすれば、停電が起きる懸念もあります。 A:ユーザーがEVを充電するタイミングについて何も対策をしないと、電力需要のピーク時に充電も集中し、必要な発電容量が増えてしまう。だが、EVの機能をフルに活用すれば、ピーク時の電力需要を下げることが可能だ。 例えば、夕方帰宅してすぐに自宅でEVを充電しようとすれば、住宅での電力需要が増えるタイミングと重なるのでよくない。帰宅してEVをコンセントにつないでもすぐに充電が開始されるのではなく、夜中に電力需要が下がってから自動的に充電を始められるようにしなくてはいけない。 実は、EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる。こうした機能があることは、EVの保有者にもあまり知られていない。販売時点でこの機能をオンにしておくようにすると、充電の需要が集中するリスクの回避に有効だろう。 Q:消費者がEVの購入に消極的な理由として、充電インフラの不足もあります。 A:自宅での基礎充電と外出先での急速充電――この2つのインフラを整えなくてはいけない。ただし国全体の電力需給の観点からは、日常では基礎充電を使うようにして急速充電の利用は遠出をする際に絞るなど、補完的な位置づけにすべきだ。 基礎充電は先ほど述べたV2Hでメリットを出していく。職場には充電できる環境がまだ少ないので、その整備も必要になる。) Q:急速充電は補完的な位置づけだとしても、国内の急速充電器はまだ少なく、ガソリンの給油に比べると時間がかかります。EVが普及すれば、充電待ちの行列ができるのではないでしょうか。 A:海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置されていない。基数も少なく、充電待ちも長くなりがちだ。 ただ、EVの充電はガソリン車の給油よりも便利な点がある。EVならコンセントにつないでから、その場を離れて用事を済ませることができる。トイレに行ってもいいし、食事をしてもいい。タバコだって吸える。夏場ならエアコンをかけて車内で待っていてもいい。ガソリン車は給油中に車を離れにくいので、用事を済ませてから給油しないといけない。 また、急速充電器そのものが進化しているため充電時間は短くなっている。ガソリンなら給油にかかるのが約3分としても、代金を払ったりしていればトータルでは5分くらいはかかるものだ。EVの充電なら充電の終了と同時に支払いまで自動でできる。さらに急速充電が進化すれば、充電時間の長さはそこまで気にならなくなるのではないか。 業務用の車両などでは無線充電の利用も考えられており、すでに規格化も済んでいる。) Q:こうしたインフラ整備には多額のコストがかかり、一方で収入は限られます。民間企業がきちんとしたビジネスモデルを描けるのでしょうか。 A:EVは猛烈な勢いで価格低下が進んでいるため、車単体で儲けるのは難しくなるかもしれない。安くなったEVを活用してどんなビジネスを展開するかが重要になるのではないか。 EVと自動運転を組み合わせた運送業、家の電力とEVを組み合わせたV2Hのサービスなど、EVを活用して業界の垣根を超えたサービスを考えていくことになる。 急速充電器はこうした新しいビジネス候補の1つになるだろう。実際、テスラは自前で急速充電器「スーパーチャージャー」を整備して顧客サービスの強みにしている。最近は他メーカーに充電網を開放するという話もあるが、その場合はテスラに巨額の収入をもたらすとも言われている』、「EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる」、便利になったものだ。「海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置」、日本でも「高出力な充電器」を設置すべきだ。
・『欧州は充電網に対する民間投資を呼び込めている  欧州では先を争うように事業者が急速充電器を整備している。ユーザーは契約している事業者なら安く充電できるが、契約外の事業者だと高い。事業者は携帯電話のローミングにも似たこの商売で競っており、よい充電器の設置場所は取り合いになっている。充電網に対する民間投資を呼び込めているといえる。 EVの電力が余っているときに系統につないで電力会社に売るといった商売もあるかもしれない。周辺サービスを含めて今から取り組んでいくことが大事ではないか。 Q:EVシフトが進むと、雇用への打撃は避けられません。 A:今後EVの価格が安くなって充電環境も整うと、EVがメジャーになると見られている。すでに、ノルウェーなどの国では実証されていることだ。 ただ、EVは部品点数が少ないうえに車両価格も下がっていくため、生産台数あたりの雇用も減ると見られている。 しかも、各国が巨額の支援を行い、コスト・規模・技術のすべてにおいて激しく競い合っている。欧州は中国などへの対抗を念頭に、域内での生産・雇用を確保するように動いている。アメリカも同じ。EVをあきらめることは、自動車産業をあきらめると同義だと捉えられている。 EVが普及すると、どのみち産業構造も変わらざるをえず、その変化の規模も大きくなるはずだ。それが日本も含め、各国の自動車業界が政府への支援を求める理由になっている。国全体でこの課題を認識しておく必要があるのではないか』、「政府の支援」は何らかの形で必要なのだろうが、「支援」は最小限に留めるべきだろう。
・『課題を解決することがビジネスチャンスになる  Q:急速充電が進化すれば、短時間に大量の電力が必要です。電力システムへの負荷が大きく、対応するには多額の設備投資が必要になります。 A:そのとおり。例えば、東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない。高速道路事業者がそこまで投資をするのは難しいだろう。 サービスエリアでも電力需給が逼迫する時間、急速充電が混雑する時間などで充電料金を高くすることが考えられる。ただ、サービスエリアに太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる。投資額は増えるが非常用の電源にもなり、災害対策としても意味がある。いずれにしろ課題があれば、それを解決することがビジネスチャンスになる』、「東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない」、「太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる」、充電ネットワークの設計も重要なようだ。

第三に、11月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える、侮れないインパクト」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288400
・『いす電動ゞが化関連技術の開発に加え、販売戦略を強化して、よりスピーディーに電気自動車(EV)トラックの創出に取り組むことを期待したい。口で言うほど容易なことではないが、いすゞが進めるEVトラック戦略がわが国の自動車産業と経済に与える潜在的なインパクトは大きいはずだ』、「EVトラック」とは興味深そうだ。
・『いすゞのEVトラックが自動車産業の巻き返しにつながる  現在、トラック・バスメーカーのいすゞ自動車は、電気自動車(EV)のトラックの量産を目指している。いすゞは、航続距離の短さというEVトラックの課題を克服する技術的なブレークスルーの実現にめどをつけたようだ。それは、ハイブリッド車(HV)技術を重視し、結果としてEVシフトへの対応が遅れたわが国自動車産業の巻き返しにつながる可能性を秘めている。 わが国にとって、自動車産業は経済成長を支える最重要の産業だ。言い換えれば、日本経済の自動車依存度は高い。今夏に東南アジアで新型コロナウイルス感染が再拡大したことで、車載半導体の生産が減少した。その結果、9~10月にかけてわが国の自動車生産と販売は大きく減少した。それは7~9月期のわが国GDP(国内総生産)がマイナス成長に陥った主たる要因だ。 世界全体で今後、商用車と乗用車の両分野でEV化は加速するだろう。わが国の自動車産業は、EVシフトの加速という世界経済の環境変化に、より高い集中力を持って対応しなければならない。EVトラック分野でのいすゞの新しい取り組みは、わが国自動車産業、さらに経済の成長を支える重要な要素といえる』、その通りだ。
・『EVトラック製造技術のブレークスルーへの期待  2022年からいすゞはEVトラックの量産を開始する模様だ。背景には、航続距離や積載量を向上させる技術的なブレークスルーを実現したことがあるはずだ。 EVトラックには、航続距離が短いという致命的な欠点がある。今年に入って物流業界では、国内のスタートアップ企業が設計と開発を行い、中国のEVメーカーが受託生産を行う小型トラックの導入が発表された。それらは1回の充電で200~300キロメートル走行する。積載量も小さい。 つまり、物流の集配拠点から最終配達先までの「ラストワンマイル」を埋めるための、近距離移動を念頭に開発されている。逆に言えば、EVトラック分野で低価格と、航続距離や積載量を引き上げる「両立」が難しい。 EVトラックの課題を克服するために、各国自動車メーカーは事業運営体制の強化を一段と重視し始めた。独ダイムラーはトラック部門(ダイムラー・トラック)を分離して上場させる予定だ。ダイムラー・トラックは経営体力を強化して、より効率的にEVトラック関連技術の開発と向上に集中する意向だ。 米国では11月10日、EVピックアップトラックを生産するリヴィアンが米ナスダック市場に上場し、当日の終値ベースの時価総額はGMと肩を並べた。 競争が激化する中でいすゞは2~3トンクラスのEVトラック量産を目指す。物流に加えて引っ越しでの利用も想定しているという。 引っ越しは短距離移動ばかりとは限らない。詳細は今後の展開を確認する必要があるが、いすゞは中国メーカーが手掛ける低価格、近距離での利用目的とは異なり、ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い。 さらに、報道によると、1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発された。かなりのスピード感を持って、いすゞはこれまでになかったEVトラックの量産体制を確立しつつあるとみてよいだろう』、「ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い・・・1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発」、かなり本格的な「トラック」のようだ。
・『EVで後塵を拝す状況が続けば自動車産業の国際競争力は低下  いすゞのEVトラック生産は、わが国経済にとって重要だ。産業構造面から見た場合、わが国の経済は「自動車一本足打法」とやゆされるほど自動車に依存している。 1990年代初頭の資産バブル崩壊後、わが国経済は長期停滞に陥った。その中で経済を下支えしたのが自動車産業だった。特に、ハイブリッド自動車(HV)のイノベーションはわが国自動車産業を世界トップの地位に押し上げる原動力だった。 しかし、HVに続く新しい商品が創出できなかった。自動車産業への経済的依存度は高まった。2021年7~9月期、米国とユーロ圏の実質GDP成長率がプラスだったのに対して、わが国の成長率は前期比年率で3.0%のマイナスだった。国内の感染再拡大に加え、東南アジアでの感染再拡大が自動車部品の供給を制約し、自動車生産と販売が減少した影響は大きい。 また、わが国自動車産業のEVシフトへの対応は遅れている。企業が本拠地を置く国ごとにEV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる。企業別に見ると、EV販売トップはテスラであり、わが国の自動車メーカーはトップ10にランクインしていない。本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強い。 中長期で考えると、EVで後塵を拝す状況が続けば自動車産業の国際競争力は低下し、経済にも打撃だ。わが国自動車メーカーが高いシェアを維持してきたインドネシアなどの東南アジア新興国地域では、脱炭素と経済成長の加速のために国策としてEV生産の強化が重視され、韓国、台湾、中国、ドイツなどの企業が直接投資を増やしている。東南アジアの自動車市場で日系自動車メーカーのシェアが低下する可能性は軽視できない。 わが国では自動車に続く移動手段として、国を挙げて取り組んだ旅客航空機の開発も凍結された。米国などでは航空機技術と自動車技術を結合して新しいモビリティーの創造を目指している。いすゞのEVトラック技術は、わが国経済の成長力強化に欠かせない』、「EV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる」、確かに「日本」の低さが目立つ。
・『潜在的なインパクトは大きい! いすゞ、フロントランナーへの期待  今後、いすゞには世界のEVトラック、バス市場のフロントランナーになってもらいたい。いすゞが競合相手に先駆けてより航続距離の長いEVトラック、バスなどの製造技術を創出することは、わが国自動車産業がEV分野での出遅れを取り戻すために不可欠な要素だ。 いすゞはトヨタを中心とする商用車のコンソーシアムに加わっている。その中で、よりオープンな姿勢でいすゞが新しい取り組みを増やすことは、わが国自動車産業全体の成長に寄与するだろう。 例えば、いすゞのEVトラック技術がコンソーシアム内の企業が持つ技術と新たに結合して、より航続距離の長いEV開発につながる可能性がある。航続距離の長いEVトラックやトレーラーの開発が加速すれば、商用車分野での自動運転技術などCASEへの取り組みも加速するはずだ。 それは自動車メーカーとITや高速通信、半導体など成長期待の先端分野の企業との連携の強化、それによる新しい需要創出につながる可能性を秘める。他方で、世界経済全体で脱炭素への取り組みは加速し、EVの生産工程で排出される温室効果ガスの削減や部品の再利用を支える技術の重要性も格段に高まる。 このように中長期的な展開を考えると、EVシフトが世界経済にもたらす波及需要創出への期待は高い。いすゞのEVトラック量産は、そうした需要をわが国の自動車産業が取り込む重要なステップになり得る。自動車という完成品レベルでの新しい取り組みは、わが国の素材や機械産業などにも新しい製造技術の実現をより強く促す。それは経済全体での新陳代謝の向上に欠かせない。 それくらいの展望を描きつつ、いすゞが電動化関連技術の開発に加え、販売戦略を強化して、よりスピーディーに新しいトラックの創出に取り組むことを期待したい。口で言うほど容易なことではないが、いすゞが進めるEVトラック戦略がわが国の自動車産業と経済に与える潜在的なインパクトは大きいはずだ』、私も「いすず」の「EVトラック戦略」に大いに期待したい。
タグ:電気自動車(EV) (その11)(EV電池の中国CATLを見て 日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)、課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる、いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える 侮れないインパクト) 日経ビジネスオンライン 「EV電池の中国CATLを見て、日本の自動車産業の将来に危機感 沸騰・欧州EV(15)」 「欧州顧客の最初の新エネルギー車(NEV)は、中国限定だったのですよ。スペックも中国限定とし、そのときに欧州の顧客が開発プロセスや品質プロセスをCATLに教えて、CATLはそれを勉強」、「その後、中国のスペックからグローバルのスペックに持っていく過程には時間をかけていました」、「中国限定」でやるとは急いでやるのは上手いやり方だ。 「中国の若いエンジニアたちのすごいエネルギーと向上心、まじめな勤務態度とか、それから多大な資本というのを見たときに、日本は負けると思いました。だからCATLにいたとき頭の中にずっとあったのは、このCATLと日本の自動車メーカーをつながないと、将来日本の自動車メーカーはえらいことになるんじゃないかということなんですよ」、なるほど。 「電気自動車で日本は勝てるのか〜欧州の野望を読み解く」は、セミナーのPRなので紹介は省略。「欧州はむしろ規制ベースで枠をはめてイノベーションを起こすという仕組みがあるように感じます」、というのは「中国」のやり方に近い。このままでは、「CATL」と日本の自動車メーカーの格差は開く一方だ。 東洋経済オンライン「課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠電 力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる」 「どの時間帯でも約9割の車両は駐車されている。電力が余る時間帯に安くEVを充電し、電力需要が高いときにEVにためておいた電気を使うことで、捨てられるはずだった再エネ電力を有効活用できる」、「国全体で再エネ電力を増やし、カーボンニュートラルへと近づくことができる」、なるほど。 「EVの多くには充電のタイミングをコントロールする機能が搭載されている。朝の7時に充電を終えるようにセットしておけば、残量から逆算して(電力需要の少ない)夜中に自動で充電を開始してくれる」、便利になったものだ。「海外では150~400キロワットと高出力な充電器を多数設置するインフラ整備が進められており、休憩時間中に充電するだけで遠出が可能になりつつある。対して、日本の高速道路には出力が最大90キロワットまでの充電器しか設置」、日本でも「高出力な充電器」を設置すべきだ。 「政府の支援」は何らかの形で必要なのだろうが、「支援」は最小限に留めるべきだろう。 「東名高速道路の海老名サービスエリアには現在、上り下りのそれぞれにガソリンの給油機が9台ある。そこで1時間に給油する台数や給油量と同じだけEVを急速充電しようとすれば、おそらく鉄塔を使うような送電線を追加しないといけない」、「太陽光発電や蓄電池を設置すれば、送電線の容量を減らすことができる」、充電ネットワークの設計も重要なようだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「いすゞのEVトラックが自動車産業と日本経済に与える、侮れないインパクト」 「EVトラック」とは興味深そうだ。 「ある程度の長い距離を相応の量のモノを積んで走ることのできるEVトラック技術の実用化にめどをつけた可能性が高い・・・1500種類の用途に対応できるプラットフォーム(車体)も開発」、かなり本格的な「トラック」のようだ。 「EV販売シェアを見ると、ドイツが28%、中国が27%、米国が20%程度であるのに対して、わが国は約5%にとどまる」、確かに「日本」の低さが目立つ。 私も「いすず」の「EVトラック戦略」に大いに期待したい。
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電池(その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている)  [イノベーション]

今日は、電池(その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている)を取上げよう。なお、関連したテーマでは、電気自動車(EV)を8月18日に取上げた。

先ずは、4月22日付け東洋経済オンライン「次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/423933
・『カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量の実質ゼロ)実現のキーテクノロジーの1つが蓄電池だ。特に電気自動車(EV)の普及には現在主流のリチウムイオン電池を超えることが求められており、次世代電池の有力候補とされるのが全固体電池だ。電池は正極材、負極材と電解質で構成されるが、液体の電解質(電解液)を使うリチウムイオン電池に対し、全固体電池は文字通り、固体の電解質を使う。 全固体電池はリチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待されている。一方、そうした優位性を本当に実現できるのか疑問の声もある。全固体電池の材料研究で最前線に立つ東京工業大学・菅野了次教授に、全固体電池の開発の現状、課題などを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは菅野氏の回答)』、「リチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待」、興味深そうだ。
・『リチウムイオン電池を超えるのに四苦八苦  Q:全固体電池になればEVは航続距離が飛躍的に延びる、充電時間が短縮されるなどと言われています。さらに全固体電池を搭載したEVを2022年にも市場投入すると発表したメーカーもあります。一方、全固体電池が現行のリチウムイオン電池を大きく上回る性能を実用できるか疑問の声もあります。全固体電池で飛躍的な性能向上は可能なのでしょうか。また研究室レベルではどこまで「見えている」のでしょうか。 A:明確に答えるのは難しい質問だが、材料の基礎研究の立場から説明したい。 まず、電池というのは正極と負極と電解質の組み合わせでできている。正極と負極でエネルギーが決まり、電解質が抵抗になる。電池は発明されてから長い期間、電解質には水溶液を使っていた。それが有機溶媒系に変わったのがリチウムイオン電池だ。これで使える電圧が一気に上がり、エネルギー密度(体積や重量あたりの容量)は格段に高まった。リチウムイオン電池は本当に革新的な電池だ。 次のステップとして、多くの人々がリチウムイオン電池を超える電池を作ろうと試みており、1つの可能性として固体電池がある。しかし、リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している。 Q:電解質を固体にすれば性能が大きく向上するのではないのですか。 A:エネルギー密度は基本的に正極と負極で決まるので、電解質が固体になったからといって、基本的にそんなに変わるわけではない。固体電池を研究してきたわれわれは固体電池にメリットがあると言ってきたが、なかなか示すことができていないのが実情だ。) Q:あまりメリットがないのですか……。 A:(電解質を)固体にするメリットとして期待されたのは、まず液漏れがしないことだ。有機溶媒は液漏れすると揮発性で着火して危険なので、それがなくれば電池がバッと燃えることもなくなるだろう、と考えられる。 さらに積層が可能になる。正極と負極の間の電解質が液体だと積層できない。固体にすると積み重ねることができるので、パッケージにした場合にエネルギー密度が上がるというメリットが考えられる。 電池に電流が流れる際には、電解質を介して正極と負極の間をリチウムイオンが移動する。液体の電解液ではマイナスイオンとプラスイオンの両方が動くのでリチウムイオンが実際に動いている量はそれほど大きくない。 なおかつ、電解質が液体の場合、リチウムイオンの電極と電解質の界面(境界面)での移動時の抵抗が大きい。リチウムイオンが分厚いコートを着ており、反応時にはこのコートを脱がないといけないといったことをイメージするといい。そのコートを脱ぐときの抵抗が非常に大きい。 電解質が固体になると、このコートがいらないのでリチウムイオンが速く動き、大きな電流を取れる、すなわちパワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、「リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している」、「パワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、研究者らしく正直だ。
・『研究室ではリチウムイオン電池を超える可性  ただ、リチウムイオン電池に使われている電解液と同等もしくはそれより低い抵抗の固体の電解質が見つかっている。そういう抵抗の低い物質を用いると、固体電池がリチウムイオン電池以上の特性を持つことができるかもしれないという状況まできた。それが現状だ。研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている。 Q:固体にしたからエネルギー密度が上がるわけではなく、固体によって液体の欠陥を回避できるのでエネルギー密度を上げることができる、と理解すればよいのですか。 A:電池が固体になるメリットとしてはまず大きな電流が取れる。ただし、それはプロセスがそれなりに進展した場合。パワーを上げることができ、充電時間が短くなる。 また、低温や高温に強くなる。リチウムイオン電池はマイナス30度で凍るが固体なら凍らない。リチウムイオン電池は基本的には60度以上の場合は冷却装置がいるが、固体電池なら冷却装置がいらなくなる。100度でも150度でも大丈夫だ。 さらに、電解質がもう少し改善されればエネルギー密度そのものも上げられるのではないかと考えている。リチウムイオン電池では電解液の抵抗が大きいために正極と負極を薄いシートにして電極内の抵抗を減らしている。固体電池であれば電極を厚くできる可能性がある。ただし、これはまだ可能性の話だ。 正極と負極と電解質の材料の組み合わせで電池の性能は決まる。リチウムイオン電池は基礎研究段階で、ほぼすべての組み合わせは出尽くした感がある。 一方、固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている。現在は液体の製造プロセスと似たプロセスで固体電池を作るのが主流だが、固体電池に最適化した製造プロセスを見つけることでもっと高い性能を目指せるかもしれない。そこは製造技術の開発の課題になってくる』、「研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている」、「固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている」、大いに頑張ってもらいたいものだ。
・『試験電池では約3倍のエネルギー密度も  Q:リチウムイオン電池は限界に近づいているが、固体電池にはまだ可能性がある、ということですね。今見えている範囲でエネルギー密度や充電時間(の短縮)がどこまで可能と感じていますか。 A:材料に関しては、2016年に正極材料当たりの重量で比較してリチウムイオン電池よりも2倍以上の出力が可能になることを実験で示した。試験電池ではエネルギー密度が約3倍、充電性能が約1.6倍といった性能が出ている。これらは車載用を想定したもので、車載用以外でもいろいろな研究成果が出ている。 Q:研究室レベルではリチウムイオン電池の性能を上回る結果が出ている、と。 A:国家プロジェクトではリチウムイオン電池よりはるかに高い目標を打ち出している。死に物狂いでやっており、多分数年後に達成できる。ただ、それを実用の電池に展開していくには別の課題がある。 Q:別の課題とは? A:まずプロセス、製造技術の問題がある。安全性の問題もある。いったん、電池ができても実用化までにはさまざまな課題をクリアする必要がある。 Q:電解質が固体になれば安全になるのではないのですか。 A:「安全だ」と言いたいところだが、電池はエネルギーの缶詰であり、気をつけて使わないといけない。固体電池でEV用に期待されているのは硫化物系の電解質だが、硫化水素の問題もあり安全性に気を配る必要がある。 ある程度の危険は当然ある中で、材料や電池の構成などで危険を最小化する技術開発が行われている。コストをかければ解決できる問題がほとんどだと考えるが、市場で許容されるコストで安全性をクリアできるかは実用化する企業の判断になる。 リチウムイオン電池にも安全性の規格があるが、固体電池でも安全性の規格作りが必要だ。固体電池なら温度特性など安全性の基準を少し緩くできるかな、とは思う。それは期待であり、実際に大きな電池を作って危険性を潰してみないとわからない。リチウムイオン電池も、今の安全性の規格ができあがるまでにさまざまな取り組みをしてきた。 つまり、電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない。電池は内部短絡(電池内部で正極と負極が接触すること)がいちばん恐ろしい。内部短絡が起こると破損や発火が起きやすい。固体電池では内部短絡の反応がマシになってほしい』、「試験電池では約3倍のエネルギー密度も」、「電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない」、なるほど。
・『エネルギーの缶詰。ある程度の危険はある  Q:「全固体ならば安全」と安易に取り扱ってはいけないということですね。 その通りだ。電池はエネルギーの缶詰である以上、乾電池でも鉛蓄電池でも使い方次第では危険になる。それでも電池を使うメリットは非常に大きい。全固体電池はリチウムイオン電池より性能が非常によくなる可能性がある。安全性もその1つだ。ただし、確立するには時間がかかる。 リチウムイオン電池が実用化されたのは1991年。最初はビデオカメラに入った。その後、いろいろな製品に使われて現在は自動車にも使われるようになった。ここまでに20年から30年かかった。この間にいろいろな経験をしてきた。リチウムイオン電池はすばらしい電池だがまだ課題がある。 材料の開発は1991年からもっと前にさかのぼる。ノーベル化学賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム氏の研究は1976年の成果。同じくノーベル化学賞受賞の吉野彰さんたちの研究は1980年代のものだ。材料研究の期間が20年から25年。世の中に出てからさらに20年から30年かけて自動車にまで使われるようになった。電池はそれくらい進化のスピードが遅い。使い続けながらいろんな危険性を潰して安心して使えるようにしていくデバイスだ。 固体電池も似たような道をたどるだろう。リチウムイオン電池は素晴らしい電池だがこの先50年、100年を支える電池なのか。そうは思わない。では、次は何になるかというとさしあたり全固体電池に期待がある。 Q:リチウムイオン電池の時間軸に当てはめると、全固体電池の材料開発はどのあたりにあるのでしょうか? A:リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう。 Q:中国のNIOは近いうちに固体電池を搭載し飛躍的に性能が向上したEVを出すと言っています。 A:航続距離を延ばすなら電池を多く積めばいい。発想の転換をすれば基準はいくらでも変わる。それに、固体といっても、液体から固体の間にいろんなレベルがあるので、その中間状態の電池を含めて固体と呼ぶこともできる。デバイス側、EVの性能要求を満たすならそういう電池もアリだろう。 Q:全固体電池の実用化に向けては、電極と電解質をどう接合するかが難問といわれます。 研究室レベルの電池の動作ではあまり問題になっていない。だが、実用化に当たっては大きな問題だと認識している。結局、電極と電解質の境界面、界面の問題だ。電池の電気化学反応は界面で起こるので、まず電極と電解質をきちんと接合させる必要がある。そのうえで、界面で高速に反応させなければならない、という2つ課題がある』、「リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう」、「5年以内には実用化できるだろう」とは嬉しい話だ。
・『20年代後半に市場の主流を目指す  われわれ基礎研究者が注目しているのは、接合した後、いかにそこを高速でイオンを動かすか。電極表面に別の物質をコートするなどして、電極と電解質の界面でリチウムイオンを高速で動かすことで「解決できるだろう」と主張している。 もう1つ、界面の接合をいかにうまくとるか、という工学的な課題がある。これはなかなか難しい。われわれ基礎研究者は「柔らかい材料を使って押さえつけたらいけるだろう」と考える。硫化物の場合、幸い柔らかいので少しの圧力でもうまく接合できる。ただ、工学の研究者は実際の製品を作る場合や、何十年も使い続ける際に課題が生じるので、「そんなにうまくいくわけがない。何とかしてくれ」と言う。 完全に問題を解決するのは難しいが、電極と電解質の材料の最適な組み合わせによって一定程度は解決していけると考えている。 Q:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の全固体電池のプロジェクトでは第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定しています。開発の現状からすると、市場で主流になるにはまだまだ時間がかかるのではないでしょうか? それはNEDOに聞いていただきたいが、スケジュールどおり粛々と進んでいる。目標は変わっていない』、「「NEDO」が「第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定」、しているのは、学者の見方というより政治的なメッセージのようだ。

次に、11月13日付け東洋経済Plus「トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28791
・『「次世代電池」の筆頭格、全固体電池。現在のリチウムイオン電池の性能を飛躍的に向上させることが期待されているが、現時点でどこまで実現できているのか。 EV(電気自動車)の競争力を飛躍的に高める、“夢の電池”――。 そう期待されてきた次世代電池の筆頭格が、全固体のリチウムイオン電池だ。 全固体電池とは、電池の正極と負極の間にあり、リチウムイオンが移動して電気を流す「電解質」に、現在使われている液体ではなく固体の材料を用いたものだ。 研究機関などの実験では、全固体電池は液系の電池と比べて複数のメリットがあることが分かっている。電解質が固体であることにより重量や体積あたりのエネルギー量(エネルギー密度)を高められるため航続距離を長くでき、燃えにくい。EVの充電時間が短くなり、寿命も長い。さらに、電池が高温になっても耐えられるため、車載電池の劣化を防ぐために必要な冷却機構も不要になる。 これが実用化されればEVの抱える課題の解決につながるとあって、開発競争はここ数年激しさを増してきた。電池メーカーや自動車メーカーに加え、素材メーカーやスタートアップも相次ぎ参入している。関連特許の出願数などで先頭集団を走っているのは、日本のトヨタ自動車』、「トヨタ」と提携した「パナソニック」はこれには参加しないようだ。
・『トヨタ「EVへの投入には課題」  が、そのトヨタから衝撃的な発表があった。 「現時点では、全固体電池をハイブリッド車(HV)に活用することが性能的には一番近道だ」 今年9月にトヨタ自動車が開催した電池戦略の説明会。登壇した開発トップの前田昌彦チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)は、トヨタが2020年代前半の実用化を目指す全固体電池を、EVではなくまずHV向けに投入する方針であることを明らかにした。全固体電池はイオンの動きが速く充電と放電を早くできることから、HV向けの電池として適している、というのがその理由だ。 一方で、全固体電池のEVへの投入については「技術課題がかなりある」(前田CTO)とし、早期の実用化には慎重な姿勢を示した。 課題は大きく2つ。EVに搭載するにはエネルギー密度がまだ十分でないこと。そしてもう1つが、電池の寿命に問題があることだ。 だがそもそも、全固体電池は長寿命なのがメリットとされていたはずだ。それにもかかわらず、寿命に問題があるとはどういうことなのか。 原因は、電池の充放電を繰り返すことで固体の電解質が収縮し、電極に用いられる材料との間にすき間が生じてしまう点にある。すると、イオンが正極と負極の間を通りにくくなってしまい、電池の劣化が進む。 この課題解決に向けて、トヨタはすき間の発生を抑える材料を開発中だ。前田CTOは「新材料を見つけられれば(実用化が)すごく早まる可能性があるし、見つからなければ時間がかかる。正直、楽観できる状況ではない」と話す。 全固体電池の開発でトップを走るトヨタですら難儀するところに、この技術の難しさが透けて見える。 全固体電池をHVから採用するというトヨタの判断について、車載電池に詳しい名古屋大学の佐藤登・客員教授は「HVでは搭載されている電池容量の40~60%の中央部分で小刻みに充放電を行うので、電池容量を広範囲で使うEV用と比べて電池の膨張収縮が緩和される。結果として電池の劣化が抑制されることになり、合理的な判断だ」と話す。 経営コンサルティング会社のアーサー・ディ・リトル(ADL)・ジャパンの粟生真行プリンシパルも「全固体電池の市場実績を積むという点で、HVから投入することは手堅い」と評価する。 走行中にもし全固体電池の機能に問題が生じても、HVであればエンジンで走り続けることができる。一方、EVに搭載してもしトラブルが起これば、ブランドの毀損も含めてダメージが大きいからだ』、「全固体電池」をまずは「HV」に利用するというのは、確かに合理的な選択だ。
・『高い実用化のハードル  実用化に向けた課題は、エネルギー密度や寿命の短さだ「けではない。 全固体電池の開発を支援する国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」によれば、全固体電池のメリットとして指摘される燃えにくさや出力性能の高さなども、実際の電池で実現できるかは検証中の段階だという。航続距離の長さにつながるエネルギー密度も、今のところは現行のリチウムイオン電池と変わらない。 現時点で実証が済んでいるのは、「高温で劣化しにくい」(NEDOの古川善規スマートコミュニティ・エネルギーシステム部部長)という点だけだという。 製造技術にも難しい課題がある。全固体電池に用いられている硫化物系の電解質は、水と結合すると有害な物質である硫化水素が発生する。そのため、製造設備では空気中の水分と反応しないよう厳密に湿度を管理する必要があり、コストがかさむ。 NEDOの古川氏は「全固体電池はゲームチェンジにつながる技術ではあるが、量産効果でコストを下げて、徐々に現在の電池を置き換えていくシナリオにならざるをえない」と語る。 NEDOでは、市場シェアにおいて2020年代半ば以降に現行の電池から全固体電池にシフトするというロードマップを掲げてきたが、「今のところ遅れ気味だ」(古川氏)。 100億円の予算をつけたNEDOのプロジェクトでは、リチウムイオン電池の研究を行うLIBTEC(リブテック)を中心に行われている開発に、トヨタのほか、2020年代後半に全固体電池の実用化を目指す日産自動車やホンダも参画している。 トヨタが目下直面する、電池の劣化を招くすき間の問題をはじめ、電池の基礎的な構造の開発はプロジェクトに参加する各社が協調して行う。一方、電池の最終性能に直結する部分は、各社が独自に進める競争領域だ。 プロジェクトの最終年度は2022年度で、足元では開発された第1世代の試作品の性能を評価中だという。 目指すのは、重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる。たとえば、50kWh(キロワット時)の電池であればこれまで250kg搭載する必要があったところを、125kgに減らせる計算だ。 製造コストは2030年時点で1kWhあたり1万円を目指しており、現行のリチウムイオン電池とほぼ変わらない。ただ計画通り高いエネルギー密度を実現できれば車両の重さを軽くすることができ、電費面などでのメリットは大きい』、「NEDOのプロジェクト」の進捗は「今のところ遅れ気味だ」。「重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる」、大きなメリットだ。
・『中国・NIOの全固体電池はホンモノか  海外でも、全固体電池の実用化に向けた動きは活発だ。 いち早く、2022年の10〜12月期にも全固体電池を搭載したEVを投入すると発表しているのが中国の上海蔚来汽車(NIO)だ。同社は、フラッグシップモデル「ET7」で150kWhの電池を搭載したモデルを発売する計画だ。航続距離は1000km超と、ガソリン車に負けない長距離を走れる。ただ、NIOが開発している全固体電池について日本の電池技術者たちは「全固体というよりは、電解質がゲル状の『半固体電池』なのではないか」と口をそろえる。 欧米の自動車メーカーも、勃興する全固体電池のスタートアップ企業へ出資し共同で実用化を狙っている。 ドイツのBMWやアメリカのフォード・モーターは、アメリカのスタートアップ企業で全固体電池を開発するソリッドパワーに出資し、供給を受ける計画だ。 独フォルクスワーゲン(VW)も、アメリカの新興勢・クアンタムスケープとともに2024年にも全固体電池の商用生産を始め、2025年以降に量産型のEVを発売する予定だ。 両社は年内にも全固体電池の試験生産ラインの建設場所を決定する方針で、ドイツ北部が有力候補だ。生産能力は当初は年間1GWhから始め、20GWhを追加する計画。EVに必要な台数に換算すると、数十万台分を賄える生産能力だ。 クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す。VWによれば、自社のEVに搭載すれば、航続距離を3割延ばせ、450km分を充電するのに必要な時間は現在の半分以下の12分に減らせるという。 VWで電池開発を率いるフランク・ブローメ氏は「全固体電池はリチウムイオン電池開発の最終決戦だ」と言い切る』、「クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す」、日本よりずいぶん進んでいるようだ。
・『焦点はコスト  焦点となるのが、全固体電池のコストを現行の電池と比べてどこまで引き下げられるかだ。 VWの場合は、液系リチウムイオン電池の低コスト化を進めており、2030年までに現行比で半減を目指している。EV販売世界首位のテスラもコストの半減を目指し、新型電池「4680」の開発を進めている。 前出のADLジャパンの粟生氏は「リチウムイオン電池も進化する中、全固体電池のEV向け投入は、コスト・性能等で大きな優位性がない限り市場の訴求力が弱く、現時点では難しい」と指摘する。 全固体電池が車載電池の真のゲームチェンジャーになるためには、現在のリチウムイオン電池を圧倒的に凌ぐ性能と価格競争力が求められそうだ』、世界的に激化している「全固体電池」開発競争が車載電池の真のゲームチェンジャーになるため」の「焦点はコスト」のようだ。

第三に、10月29日付け東洋経済Plus「アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28660#:~:text=%E3%80%8C%E4%B8%A1%E7%A4%BE%E3%81%A7%E7%B5%84%E3%82%80%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C,%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%8C%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%88%E9%9A%A0%E3%82%8C%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E6%98%A8%E5%B9%B4%E3%80%81%E5%90%88%E5%BC%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%BB%8A%E8%BC%89%E9%9B%BB%E6%B1%A0,%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
・『「両社で組むことが最善の選択」として電池の合弁会社を立ち上げたが、方針のすれ違いが見え隠れする。 よそよそしい。昨年、合弁による車載電池の新会社を始動させたトヨタ自動車とパナソニックが、だ。 10月18日、トヨタはアメリカに電池工場を初めて建設すると発表した。9月には、2030年までに電池関連で設備に1兆円、開発に5000億円を投じる計画を発表しており、その一環でアメリカにおける車載電池生産に約3800億円を振り向ける。 新工場の運営を担う新会社にはトヨタが90%、豊田通商が10%出資し、トヨタグループが単独で運営する形を取る。2025年からの稼働を目指す(建設場所や生産能力は非公表)。 この計画には1つの疑問が残る。車載電池の開発・製造を行うトヨタとパナソニックの合弁企業、プライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES)の名前がないからだ。同社は、トヨタが51%、パナソニックが49%を出資している。 当時、パナソニックはEV専業メーカーのテスラ向け事業での巨額投資を回収できておらず、単独で大規模な設備投資を続けることは難しいと判断。一方、トヨタは電動車の需要拡大を見据え、実質的な内製化で競争力を高める狙いがあり、PPESの設立に至った。 合弁会社にはパナソニックが持っていた国内3工場と中国・大連市の工場が移管されたが、アメリカに拠点はない。アメリカでの電池供給でも一定の役割を担うはずだったPPESが関与していないことについて、トヨタ幹部は「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり、51対49の資本関係で期待する投資の規模感やスピード感に賛同してもらえなかった」と話す』、「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり」、とはいえ、参加を見送ったのは解せない。
・『「アメリカはトヨタの戦略」  トヨタにとって北米は年間約280万台を販売する最重要市場。すでに約25%はハイブリッド車(HV)中心の電動車だが、30年には70%(15%が電気EVと燃料電池車、55%がHVとプラグインHV)に増えると想定している。 EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る。 北米では米系自動車メーカーが韓国系電池メーカーと組み大型電池工場を建設する動きが加速している。ゼネラル・モーターズはLGエナジーソリューション、フォードモーターはSKイノベーションと提携。欧米系のステランティスはLG、サムスンSDIとそれぞれ組む。米中デカップリング(分断)で中国系電池メーカーのアメリカ進出が難しい中、韓国系電池メーカーが勢いづいている。 そうした動きをトヨタも警戒している。一般に電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは2025年頃から電池の生産能力増強のペースを上げる計画だ。周回遅れとならないよう、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ。 パナソニックで電池事業を担うエナジー社が10月25日に開いた事業説明会で、只信一生社長CEOにトヨタのアメリカの電池工場建設について聞くと、「トヨタの戦略なので、コメントする立場にない」と述べるにとどまった。 前出のトヨタ幹部が「パナソニックはいろんな企業と組んでいるから」と述べたその代表格がテスラだ。パナソニックはPPES設立後もテスラ向けの円筒形電池事業を自社に残し継続している。パナソニックは2021年にテスラと共同運営するネバダ州の電池工場の生産能力を100億円投じて1割引き上げた。 欧州でも電池工場の新設を検討中だ。テスラが年内の稼働を予定するドイツ工場向けの供給が念頭にある。テスラはアメリカのテキサス州にも新工場を建設中で、パナソニックにも協力を求めている。 もともとパナソニックはテスラに電池を独占供給するパートナーだったが、テスラが近年、車載電池世界首位の中国・CATL(寧徳時代新能源科技)や2位のLGエナジーソリューションとも提携したことで状況は一変。現状、CATLやLGは電池をテスラの中国・上海工場向けに供給するが、ほかの地域でも供給を始める可能性は十分ある。 パナソニックでテスラ事業を担当する佐藤基嗣副社長は「(投資の)優先順位は北米が1番で、次が欧州」とかねて話している。電池事業は、順調に販売台数を伸ばすテスラ向けを最優先するとなれば、PPESでの展開には慎重にならざるをえない。そうした事情が、投資を急ぎたいトヨタの不満を招いたのではないか。 新会社設立を発表した2019年、トヨタの好田博昭氏(現PPES社長)は「電池の性能を高めながら量を拡大するうえでは両社で組むことが最善の選択肢」と語っていた。が、すき間風が吹いたアメリカの電池工場投資の一件で、合弁会社の期待値は急速にしぼんでしまったようにみえる』、「EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る」、「電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは・・・周回遅れとならないよう。、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ」、他方、「パナソニック」は「順調に販売台数を伸ばすテスラ向けを最優先するとなれば、PPESでの展開には慎重にならざるをえない」、なるほどスレ違いも生じるワケだ。
タグ:電池 (その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている) 東洋経済オンライン 「次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道」 「リチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待」、興味深そうだ。 「リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している」、「パワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、研究者らしく正直だ。 「研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている」、「固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 「試験電池では約3倍のエネルギー密度も」、「電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない」、なるほど。 「リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう」、「5年以内には実用化できるだろう」とは嬉しい話だ。 「「NEDO」が「第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定」、しているのは、学者の見方というより政治的なメッセージのようだ。 東洋経済Plus 「トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか」 「トヨタ」と提携した「パナソニック」はこれには参加しないようだ。 「全固体電池」をまずは「HV」に利用するというのは、確かに合理的な選択だ。 「NEDOのプロジェクト」の進捗は「今のところ遅れ気味だ」。「重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる」、大きなメリットだ。 「クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す」、日本よりずいぶん進んでいるようだ。 、世界的に激化している「全固体電池」開発競争が車載電池の真のゲームチェンジャーになるため」の「焦点はコスト」のようだ。 「アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている」 「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり」、とはいえ、参加を見送ったのは解せない。 「EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る」、「電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは・・・周回遅れとならないよう。、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ」、他方、「
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ネットビジネス(その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇https://blog.ss-blog.jp/_pages/user/auth/article/index?blog_name=keiwasaki&id=114849694動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ) [イノベーション]

ネットビジネスについては、2月18日に取上げた。今日は、(その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ)である。

先ずは、2月22日付け東洋経済オンラインが掲載したメンタリストでジェネシスヘルスケア顧問、新潟リハビリテーション大学特任教授の DaiGo氏による「 「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/410452
・『インフルエンサーという言葉が定着し、企業も個人もどうすれば人を動かすことができるか試行錯誤する昨今。人の心を読み解き、著書累計330万部超、YouTube登録者数232万人超の影響力を持つまでに至っているのが、メンタリストDaiGo氏だ。 最初まったくの無名だったというDaiGo氏は、どのようにして今のポジションを築くに至ったのか?社会を巻き込むトレンドの生み出し方から、会社・家庭・恋愛・就活といった目の前の人の動かし方までをまとめた書籍『超影響力~歴史を変えたインフルエンサーに学ぶ人の動かし方』より一部を抜粋してお届けします』、興味深そうだ。
・『群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る  「説得力と影響力を組み合わせ、人々の行動を促す技術」として研ぎ澄まされていった大衆扇動の手法の中には、人々の欲望や恐怖心、無知や誤解を利用して心を動かす悪用厳禁とも言える黒いテクニックがいくつもあります。 歴史に名を残すような政治家、独裁者、経営者、宗教指導者たちも要所要所で黒いテクニックを活用し、国民、大衆、社員、消費者、信者たちを彼らの望む方向へと動かしていきました。 本稿では、そうした単純な仕掛けでありながら、強力な説得力、影響力を発揮する「7つの黒いテクニック」のうち、本から抜粋して「ハイピング」(注:後述)について紹介します。あなたが悪意による扇動に踊らされないために役に立つはずです。 「毒は薬にもなる」という言葉があるように、大衆扇動に関する黒いテクニックについて知っておくことは、権力を握っている人たちやメディアなどが発信する情報に仕掛けられた、巧妙な罠を見抜くヒントとなります。 多くの人たちが扇動されてしまっているとき、あなただけは冷静に状況を見極め、群集心理に惑わされることなく行動できるはずです。そして、その知識によって大切な人たちを手助けすることもできるでしょう。 例えば、株価が乱高下するとき、多くの投資家が損を回避したいという恐怖心によって衝動的な選択をしてしまいます。しかし、その恐怖の原因となった情報は本当に公平で、正しいものだったのでしょうか?) 経済の動き、社会の変化、流行の始まりと終わり。すべてのことは、人々の心理と深く関係しています。権力者やメディアが群集心理をコントロールするために使うテクニックのからくりを学ぶことで、あなたは彼らが望んでいる群集心理の向かう方向を予測し、冷静で客観的な判断が下せるようになるのです』、「群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る」ことが出来るようになるとは、有難い。
・『事実を捻じ曲げる「ハイピング」  「ハイピング」とは、「うそをつくこと」です。 私たちは子どもの頃から「うそはつくのはいけないこと」「うそはいつかバレる」と教わってきました。しかし、プロパガンダ分析研究所のデータによると、プロパガンディストたちは多種多様のうそをつき、ハイピングによって人々を動かしてきたのです。 「うそはいつかバレる」と言われますが、心理学の研究によると表情の変化を見抜く訓練など、特殊なトレーニングを積んでいない一般の人が相手のうそを見抜ける確率は54%だという結果が出ています。つまり、話し手がつくうその半分は見抜かれることなく、聞き手に伝わっていくわけです。 プロパガンディストたちが使うハイピングは、この認知の性質を利用し、事実の中の一部をねじ曲げる、誇張する、有利な証言だけを強調するなどして、人々を動かしてしまうダークなテクニック。彼らが巧妙なのは、聞き手が聞きたいと願っている情報を事実の中に紛れ込ませていくところです。 というのも、プロパガンディストたちは「人には自分の信じたいものを事実だと思い込む傾向」があることも知っています。ですから、相手の求めているうそを事実に紛れ込ませることで、仮に聞き手が「これはうそかもしれない」と感じても、「いや、信じたい、信じられる」と考えることを見越しているのです。 こうして意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」。事実の一部を省略し、強調したい情報を際立たせる手法です。 例えば、新型コロナウイルスに関するニュースでは、回復して退院した患者数よりも、1日で新たに増えた感染者数の発表がクローズアップされてきました。とくに民放の情報番組やワイドショーでは、感染者数の増加と症状の危険性を伝える場面が目立っています。 もちろん、感染の広がりを抑制するための報道であることはわかります。しかし、新規の感染者数ばかりを強調する一方で、回復した人数などの情報を省略するような伝え方には、メディアのオミッションを感じずにはいられません』、「意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」」、気を付けたい。
・『訓練を積んだ専門家でも、うそを完全には見抜けない  かつては私自身、ビジネスの交渉の場でハイピングを受けることがありました。 こちらにとってマイナスになる情報は割愛され、興味を引く部分だけを強調。そのうえで、不利な契約を結ばせようとしてくるのです。 うそを見抜ける確率は54%という数字を出しましたが、これは経験と知識によって上昇します。例えば、うそについての研究をしている心理学者は70%、要人警護を担ってつねに周囲を警戒しているシークレットサービスのベテランは80%以上の確率でうそを見抜けるというデータもあります。 それに準じて言えば、私も人間の心理を見抜くメンタリストですから一般の人よりも高い確率でうそに気づくことができます。ただ、それでも2割から3割の穴はあり、騙されるときは騙されてしまうのです。 そこで、私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです。 すると、業界の平均とは違う数字が出ていたり、伝えられたデータは全体の一部分を都合に合わせて加工したものであったり、といったケースに気づきます。つまり、相手は重要な部分をオミッションし、ハイピングを仕掛けていたわけです。 事実は都合のいいようにねじ曲げることができます。でも、ねじ曲げられていることに気づければ、そんな相手は信用しなければいいだけです。 そこで、あなたがハイピングを仕掛けられたとき、その被害を回避できるよう、うそを見抜くためのポイントを紹介します』、「私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです」、上手いやり方だ。
・『うそをついた相手が発している6つのサイン  人はハイピングを仕掛けるとき、説得行動と回避行動が増えます。ここで言う説得行動、回避行動とは、聞き手を言いくるめるために出てしまう話し方の変化です。 【説得行動】1. 前置きが増える 2. いつもよりも細かい内容を話す 3. いつもよりも話が長くなる 4. ポジティブな単語が増える これらはうそに気づかれず、相手を説得したい気持ちの表れです。 まず、「実はね……」「正直に言うと……」「ここだけの話……」「驚くかもしれないけど……」など、前置きが増えます。これは前置きを増やすことで自分を落ち着かせ、ハイピングがスムーズに進むストーリーを練っているからです。 そして、信憑性を高めるために詳細なエピソードが入るので、結果的に話が長くなります。加えて、「本当にすごい儲け話なんだよ」「今しかないよい話だと思うよ」「俺も初めて聞いたときはめちゃくちゃ興奮した」など、ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです』、「ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです」、なるほど、気を付けたいものだ。
・『【回避行動】5. 曖昧な言葉遣いが増える 6. 一人称が少なくなる 聞き手が疑問に思ったことを質問したとき、「こう思うんだよね」「……かもしれない」「だったはず」といった曖昧な言葉遣いが増えます。 また、「私が」「僕が」など、一人称が少なくなる傾向も。これはハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです。 交渉相手と話していて、ここに挙げたような説得行動、回避行動が出ていると感じたら要注意。この話には「うそがある」と疑っていきましょう。 その場で決断しないこと。話し手の勢いに押し流されないことが大切です』、「ハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです」、「ハイピングを仕掛ける側にも」、一定の良心はあるようだ。この記事を読んだことで、「ハイピング」への免疫が出てほしいものだ。

次に、10月20日付け文春オンライン「食べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/49448
・『「食べログにおいてアルゴリズムの変更で評点が急落したのは、飲食店の公正な競争に悪影響を及ぼし、独占禁止法に違反する」として、韓国料理チェーン「KollaBo」の運営会社・韓流村が食べログの運営会社・カカクコムを訴えている裁判で、公正取引委員会が異例の意見書を出していたことが「週刊文春」の取材でわかった。 食べログの点数が急落したのは2019年5月21日のこと。韓流村の任和彬(イムファビン)社長が言う。 (19年5月21日の前(上)と後(下)で点数が大幅変化 の図はリンク先参照)(「食べログ」公式HPより)』、興味深そうだ。
・『カカクコムはアルゴリズムを変更したことを認める  悪い口コミが増えたわけでもないのに、当社の店舗では、平均で0・2点、最大で0・45点も急に点数が下がったのです。他にも焼肉トラジ、一蘭、天一なども下がっていました。共通するのはみなチェーン店だということです。点数が下がったことで、当社の売上は月平均で約2500万円も落ち込みました」 そこで任社長は2020年5月、点数を下げる“チェーン店ディスカウント”で損害を負ったとして、訴訟に踏み切った。任社長が語る。 「カカクコム側はアルゴリズムを変更したことは認めたものの、『公平公正にやっている』と言うばかり。また、ぐるなびなどの競合他社も存在するから優越的地位にないと主張。最大の争点である点数については、『非会員など食べログと取引をしていない店舗にも用いられる指標で、韓流村との取引には当たらない』、だから不公正な取引方法を行った事業者を処罰する独禁法違反にはならないと、言い続けたのです」』、「カカクコム側」が点数が下がった理由を説明せず、「『公平公正にやっている』と言うばかり」とは酷いものだ。
・『食べログ側が優越的地位にあるかどうかも考慮要素  だが今年6月、裁判体が独禁法などの訴訟を中心に扱う民事第8部に変更になると、裁判官が公取に見解を求める。そして9月19日、公取から「公審第650号」と題された意見書が出されたのだ。 そこでは、カカクコム側の「取引には当たらない」との主張に対して、「点数」表示のサービスは〈「取引の条件又は実施」に当たると考えられる〉と否定。さらに今後の裁判において、食べログが優越的地位にあるかどうか、そしてアルゴリズムの設定・運営が恣意的になされたか否かについても、裁判の〈考慮要素となる〉と述べているのである。 独禁法に詳しい平山賢太郎弁護士は、「裁判所が公取に独禁法解釈の意見を聞くこと自体、異例のことです」と驚く』、「裁判所」が真剣に取り組みだした証で、喜ばしい。
・『意見書に関する見解を尋ねると…  「この意見書は、争点である点数について『取引』だと認めたことに意義があります。また、食べログ側が優越的地位にあるかどうかも考慮要素とされました。今後、明確な道筋に沿って、審議は進んでいくでしょう」 カカクコムに意見書に関する見解を尋ねると、広報担当者は「係属中の訴訟に関する内容のためコメントは控えさせて頂きます」と答えた。 一体なぜチェーン店の点数が下がったのか、食べログの会員になるとどのような特典があるのか、裁判の流れを変えた元公取の大物の意見書の中身、公取の意見書が出された後の裁判でのカカクコム側の反応など、詳しくは10月20日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び10月21日(木)発売の「週刊文春」が報じている』、「裁判」の行方を注目したい。

第三に、10月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した成蹊大学客員教授の高橋 暁子氏による「「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/51198
・『ネット通販では一部の企業が悪質な「やらせレビュー」を大量発生させている。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「こうした行為はレビューに対する信頼を傷つけ、消費者にも企業にもマイナスになる。欧米では違法化が進んでおり、日本でも早急に規制を強化すべきだ」という――』、「欧米では違法化が進んでおり」、またしても取り残されるとはみっともない。
・『アマゾンに投稿された4割超が不正レビュー  ネット通販では、商品に「レビュー」をつけられるサイトが多い。ただ、その内容には注意が必要だ。ある40代男性は「アマゾンのレビューは信頼できない。日本語として怪しいものも多いし、極端に点数が高いときは業者のやらせレビューではないか確認してから買うようにしている」と話す。同じように考える人は多いかもしれない。 2021年5月、セキュリティ製品のレビューサイトSafetyDetevtivesが、アマゾンで不正レビューを行う組織のデータベースを発見した。レビュー投稿を依頼する業者と顧客のやり取りのほか、20万人以上のメールアドレス、報酬の支払いに利用するPayPalアカウントなどが含まれていた。その直後、アマゾンから600以上の中国ブランドが削除された。いずれも不正レビューにかかわっていたとみられている。 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でネット通販利用が伸びたことで、ステルスマーケティング(ステマ。中立な評価を装った広告)は増加傾向にある。不正レビューを判定するChrome拡張機能を提供するFakespotによると、コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占めるという。なぜこのような事態となっているのだろうか』、「コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占める」、とは驚かされた。
・『「悪質市場」批判で、不正レビューは削除したが…  アマゾンは、米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定されている。 アマゾンは対処していないわけではない。カスタマーレビューについては規約で「他のお客様からの商品に対する率直な評価を反映したものである必要があります。その一方で、レビューが宣伝や販促の目的で利用されることのないよう、防止に努めています。販促目的でレビューを書くことは厳しく禁じられています。」と明記している。 2016年には、出品者が自身の商品や競合他社など金銭的利害関係を持つ商品に対してレビューを投稿する行為、また対価と引き換えに他人にレビューを依頼したり、レビューの変更・削除を求める行為を明確に禁止した。 また、詐欺や不正出品を防止するため、7億円以上の投資をして1万人以上を雇用。その結果100億件以上の商品の出品を防ぎ、2021年5月には小売業者らが同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分もしている。同時に、パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている』、「アマゾン」が「米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定」、「同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分」、「パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている」、一応、企業努力もしているようだ。
・『売上目当ての悪徳業者とのイタチごっこ  しかし、実態はまだまだステマに当たる不正レビューがあふれている状態だ。これは、SNSなどアマゾンの監視の目が届かないプラットフォーム上でステマレビュー募集などの不正行為が横行しており、完全に排除することが難しいためと考えられる。 事実、FacebookやInstagramでは「ベスト1000レビュアーを募集中」「注文で半額返金し、レビューで全額返金」「PayPalで返金」といったステマレビューの取引行為が相次いでいる。自動で発見、削除したり、新規投稿を禁止するなど対処しているというが、執筆時点でまだまだ多くのレビュー募集が見られる。 つまりアマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっているのだ』、「ステマレビューの取引行為が相次いでいる」、「アマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっている」、よほど儲かるのだろう。
・『米英独は違法化で消費者を守っている  ステマレビューによって被害を受けるのは、高評価を信じて時に粗悪品を購入してしまう消費者だ。アマゾンに限らず、ネット上にあふれているステマは規制されないのだろうか。 ステマ対策は国ごとに異なっている。たとえば米国では、2009年に「広告における推奨及び証言の利用に関する指導」が改訂され、ステマは違法と規定された。PR活動において、広告主との関係や金銭授受の有無を公開することが義務付けられているのだ。 ヨーロッパでも、英国では2008年に不正取引からの消費者保護に関する規制法が施行され、ステマは違法と規定されているなど、違法とされることが多い。これはドイツでも同様で、消費者に広告と気づかせない方法で商品紹介サイトへ誘導する行為は違法とされる。違法となることで、ステマ投稿が減ることは間違いないだろう。 一方日本では、景品表示法や軽犯罪法に該当すれば違反とされるものの、ステマ自体を規制する法律は存在しない。WOMマーケティング協議会のガイドラインにより、広告主とインフルエンサーの関係を明示することとされているのみだ。投稿内に「#PR」「#タイアップ」など明記する必要があるとされるが、あくまで自主規制であり、ガイドラインに違反しても罰せられるわけではない。 ▽ディズニー作品でもステマが常態化か(執筆現在、検索サイトで「ステマ」と検索すると、関連キーワードとして「ディズニー」「フジ」「アナウンサー」などが表示される。 ディズニーとは、2019年末の「アナと雪の女王2」に関するステマ事件を指すと考えられる。ほぼ同時刻にTwitterで複数の漫画家によってレビュー漫画が投稿されたが、広告という表記がなかったため、ステマと疑われたのだ。その後漫画家らは、投稿が企業から依頼されたPR広告だった旨を説明のうえで謝罪している。 「フジ」「アナウンサー」とは、今年4月、フジテレビの女子アナたちのInstagramにおける美容室に関する投稿がステマだった疑惑を指すと見られる。当事者として名前が挙がった女子アナたち9人は後日、謝罪している。 さらにディズニーを巡っては、過去にアベンジャーズやキャプテン・マーベルでも同様に同時刻に複数の漫画レビューが投稿されていたことが明らかになるなど、ステマが常態化していたらしいこともわかっている』、「米英独は違法化で消費者を守っている」のに、「日本」が殆ど何もしてないとは情けない。業界関係者は猛省すべきだ。
・『消費者がレビューを信用できるようになるには  SNSを使ったPRは、投稿する人によっては高い宣伝効果が期待できる。しかし、ステマは信頼性を逆手に取って消費者を裏切る行為だ。 このインターネット時代、ステマが疑われれば誰でも簡単に検証可能だ。アナ雪のケースのように、同じ内容を一斉に投稿すればすぐに検索で「共犯者」が見つかる。ステマをしても罰せられることこそないが、信頼性を損ない、疑いの目で見られ続けることになることを考えると、長期的に見ればマイナスでしかないだろう。 現状、SNSなどで高評価をする場合、「ステマではないです」と断り書きを書かねばならなくなっている。またYouTubeでも、インフルエンサーらが企業から依頼されて商品を紹介する動画には「プロモーションを含みます」といったテロップが入る。 それだけステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき時期がきていると言える』、「ステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき」、同感である。
タグ:ネットビジネス (その11)(「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇https://blog.ss-blog.jp/_pages/user/auth/article/index?blog_name=keiwasaki&id=114849694動情報」から自分を守るために必要な知識、べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書、「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ) 東洋経済オンライン DAIGO 「 「黒いインフルエンサー」が使う超典型的な技術 「扇動情報」から自分を守るために必要な知識」 群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る 「7つの黒いテクニック」のうち、本から抜粋して「ハイピング」 「群集心理を扇動する権力者の黒いテクニックを見破る」ことが出来るようになるとは、有難い。 「意図的に練り上げられたうそはほとんどの場合、バレません。 そこで、よく使われる情報発信の仕方の1つが、「オミッション」」、気を付けたい。 「私はハイピングやオミッションの対策として、相手の話に出てくる数字、データについてしっかりとメモを取るようにしてきました。 そして、交渉の場で即断即決しないよう心がけていました。 なぜなら、その場を離れたあとに相手の示した数字やデータの裏づけを取るからです」、上手いやり方だ。 「ポジティブな感情をアピールする単語が増えます。これはうそに気づかれたくない気持ち、勢いで相手を押し切ろうという焦りがあるからです」、なるほど、気を付けたいものだ。 「ハイピングを仕掛ける側にも、根底には「できれば正直でいたい」「うそはつきたくない」という思いがあるため、一歩引いた視点からストーリーを語ろうとするから。曖昧な言葉遣いと合わせて、責任を逃れたい気持ちの表れです」、「ハイピングを仕掛ける側にも」、一定の良心はあるようだ。この記事を読んだことで、「ハイピング」への免疫が出てほしいものだ。 文春オンライン 「食べログ“チェーン店点数急落訴訟”で公正取引委員会が異例の意見書」 「カカクコム側」が点数が下がった理由を説明せず、「『公平公正にやっている』と言うばかり」とは酷いものだ。 「裁判所」が真剣に取り組みだした証で、喜ばしい。 「裁判」の行方を注目したい。 PRESIDENT ONLINE 高橋 暁子 「「レビューの4割超がやらせ」アマゾンから怪しい日本語の感想がなくならない本当の理由 ステマ業者は法律で規制するべきだ」 「欧米では違法化が進んでおり」、またしても取り残されるとはみっともない。 「コロナ禍でアマゾンの不正レビュー件数は急増し、投稿された7億2000万件のうち42%を占める」、とは驚かされた。 「アマゾン」が「米通商代表部(USTR)から偽ブランドや偽造品などを販売または販売の手助けをしているとして、2019年と20年の2年連続で「悪質市場」に指定」、「同社の物流拠点に送ってきた商品のうち偽造が疑われる200万点以上を破壊処分」、「パトロールと機械学習システムによって不正レビューの削除も行っている」、一応、企業努力もしているようだ。 「ステマレビューの取引行為が相次いでいる」、「アマゾンがいくら対策をしても、次々と投稿を繰り返す業者との間で、イタチごっこになっている」、よほど儲かるのだろう。 「米英独は違法化で消費者を守っている」のに、「日本」が殆ど何もしてないとは情けない。業界関係者は猛省すべきだ。 「ステマが蔓延し、レビューが疑いの目で見られるようになっているということだ。これは消費者にとっても、SNSをマーケティングに活用したいすべての企業にとっても大きなマイナスであり、ステマを減らすことは双方のメリットにつながる。 失なわれたレビューへの信頼性を取り戻すために、法制化を含めて規制強化を検討すべき」、同感である
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半導体産業(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) [イノベーション]

半導体産業については、5月25日に取上げた。今日は、(その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編))である。

先ずは、6月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/272934
・『気合入りまくり!政治主導で日本の半導体復活…!?   「日本はこんなもんじゃない。『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』を目指して先陣を切っていきたい」 先月21日、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」設立総会で、甘利明会長は気を吐いた。 今や半導体は世界で奪い合う「戦略物資」となっており、「半導体を制するものが世界を制する」という言葉さえあるほどだが、「日の丸半導体」はひいき目で見ても、世界を制する兆しは見えない。 白物家電と同じく80年代には世界市場シェア50%を占めていたが、韓国や台湾に次々と追い抜かれ、今や2021年第1四半期の売上高ランキングにおいても、日本企業は15位にキオクシアが入るのみ。全体的に存在感が薄いのだ。 そこで、「経済安全保障」の重要性を強く主張している甘利氏がトップとなって、米中経済戦争の中で「1人負け」しないよう、政治主導で半導体産業を強くしておこうというわけだ。 その気合の入りっぷりは、「ポスト菅」のチョイスに影響力アリアリの安倍晋三元首相と麻生太郎副総理兼財務大臣が最高顧問として名を連ねていることからもうかがえよう。 アメリカでも韓国でも台湾でも、そして中国でも半導体ビジネスの支援は今や「国策」となっている。そのような意味では、ぜひとも頑張っていただきたいところなのだが、正直あまり期待はできないのではないかと思っている。 甘利氏のかけ声は勇ましいが、その一方で経済産業省(経産省)は「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン」や「経済安全保障」という方向性とは、真逆の半導体産業支援政策を進めているからだ。 それは端的にいうと、「台湾の半導体大手・TSMCと連携して日の丸半導体復活」という構想、いや「官僚の妄想」とも言っていい青写真である』、「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。
・『台湾・大手と連携強めるほど、日本の競争力は低下  自民党・半導体議連設立の10日後、経産省は、半導体受託製造で世界最大手の台湾企業TSMCが日本で実施する先端半導体の研究開発を支援し、5年間で190億円を拠出すると発表した。この研究は、国内半導体関連企業約20社が共同で行うそうで、「世界的に半導体の開発競争が激化する中、最先端の技術を持つTSMCとの連携で国際競争力を高めるのが狙い」(時事通信5月31日)だという。 「狙う」のは自由だが、残念ながらTSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがあるのだ。 「中国企業ならいざ知らず、友好国・台湾の企業と手を組んでそんなことになるはずがないのでは…」と思う人も多いだろう。 しかし、このような危険性を指摘する声は、経産省主導の半導体支援がことごとく失敗してきたことを間近に見てきた半導体業界から多く上がっている。その中でも、服部コンサルティングインターナショナルの服部毅氏の指摘が非常にわかりやすいので、引用させていただく。 「韓中両国の大手半導体メーカーのR&D拠点、さらには米国DRAMメーカーの製造拠点が日本に以前から置かれているが、これらにより日本の半導体産業全体の復興が実現しているだろうか。TSMCだけは他社とは違うとでもいうのだろうか。台湾出張もままならぬ弱小サプライヤーが自社製品を売り込むチャンスにはなるかもしれないし、日本の半導体メーカーに見切りをつけて(あるいは無理やりリストラされて)TSMCへ転職したい技術者にはチャンス到来かもしれない。しかし、日本の半導体産業全体の復興につながるような話ではないだろう」(日経クロステック) 服部氏も指摘しているように、海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない。 なぜか。答えは簡単だ』、「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ「海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない」、なるほど。
・『日本の競争力は奪われるばかり 海外勢はボランティアで連携するのではない!  海外の半導体企業が日本に研究拠点をつくるのは、何も「日本の国際競争力を高めてやろう」などというボランティア精神からではなく、シンプルに「自社の競争力向上のため」だ。だから、連携したからといって、日本企業に海外の技術力が簡単に奪われ吸収されるはずもない。 そのあたりも前出・服部氏がズバリ指摘しているので引用させていただく。 「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集(あるいは少額の研究資金を提供した協業)、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」(日経クロステック) このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ。 江戸末期、日本のエリートは「外国人を呼んで技術を教えてもらう」という発想で近代化を進めたが、官僚の頭の中はそこから時計の針が止まっているということなのかもしれない』、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。
・『TSMCの八方美人ぶり  こんなに嫌味を言うと、愛国心溢れる方たちの間から、「世界的企業なのだからそれくらいの打算があることは当然だが、互いに中国の脅威に立ち向かうために協力するしかないのだ」というようなご意見が出るかもしれない。 たしかに、米中経済戦争の中で、一部中国企業への製品供給停止を発表し、米国寄りの姿勢を見せたTSMCとしても、日本という「同志」と手を組む必要がある。だから、逆に日本も国益のためと割り切って、TSMCをしたたかに利用すればいい…という考え方はできる。 しかし、そういう壮大な計画に水を差すようで恐縮だが、TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている。対中国を念頭に、日本とそこまで強固な同盟関係を結ぶ必要もないのだ。 今年4月、TSMCはバイデン政権への配慮から、一部中国企業への製品供給停止を発表している。 しかし、その発表からほどなくした4月26日、日本経済新聞が、TSMCが現在フル稼働中の中国・南京市のファウンドリー(TSMC Fab16)に新ラインを設置し、28億8700万ドル(約3100億円)を投じ、車向け半導体などを増産すると報じている。日本政府の「5年間で190億」が霞んで見える投資だ』、「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。
・『鴻海に学ぶ、米中の狭間で巧みに泳ぐ処世術  5月25日、日本の自動車産業を長く取材し続けて、近年は「経済安全保障」の重要性を唱えているジャーナリストの井上久男氏が「サイバースパイが日本を破壊する」(ビジネス社)を上梓した。 その中で、米中が激しく対立をする中で、グローバルでビジネスをしている企業が取るべきスタンスを端的に述べている。 『「米中経済戦争」の中で、どちらかの国に近い企業か、色付けされるのは得策ではない。』(第7章 企業が取るべき道と覚悟、P.195) そして、この「色付け」を絶妙なバランス感覚で避ける企業の事例として、TSMCと同様、台湾を代表するEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業(鴻海)を挙げている。その理由をとして、井上氏は以下のような指摘をしている。 鴻海は台湾メーカーの中では「中国寄り」とされているが、EV事業では中国と米国の2箇所に工場を建設すると発表、さらに1200社に及ぶサプライヤーには、日本電産や村田製作所、NTTなどの日本企業だけではなく、アメリカのマイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や、ドイツのインフィニオンテクノロジーズなどグローバルサプライヤーとの連携を強化している。 このようなサプライチェーンのデカップリング(分離)によって「中国色」を薄めているのだ。こうした絶妙のバランス感覚について、井上氏は「この鴻海ほど米中の狭間で巧みに泳いできた企業はない」と述べている。 今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じるのは筆者だけか。 つまり、「アメリカ寄り」という基本スタンスをとりながらも一方で、巨大市場である中国への取り組みを強化するという立ち回りである。そう考えると、大したメリットもない日本への研究拠点設置には、アメリカ側への「忠誠」をアピールするという狙いもあるかもしれない。 そこに加えて、税金ももらえるし、日本企業の技術に対して情報収集やリクルートもできる。うまくいけば、鴻海がシャープを傘下にしたように、技術力がありながらも経営に苦しむような日本企業を手中におさめることができるかもしれない。韓国としのぎを削るTSMCにとって何かしらのメリットがあると判断したということだ。いずれにせよ、彼らの頭には、「日本の半導体の国際競争力を高めてやろう」なんて発想が1ミリもないことは間違いない』、「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。
・『米国の「属国」・日本は隙だらけ 根本的に日本の政治システムがまずい  日本はどうしても米国の「属国」感が強いので、鴻海やTSMCのような大国の間をしたたかに立ち回る企業カルチャーがなかなか育たない。巨大な中国市場でガッツリと稼いでおきながら、アメリカに何か言われると官僚に呼び出されてシュンとなる。そういう露骨な態度がまた中国につけ込まれる。 経済政策でリーダーシップを取るはずの政治家も「保守」と言いながらも、アメリカに弱い。世界では「保守系政治家」は国益や国内企業の保護がまず第一なので、アメリカなど大国からの介入を嫌うのが普通だが、日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる。 井上氏も米中経済戦争によって日本政府、日本企業に対して、「些細なことでも安全保障と絡むリスクと考えるようにしなければ、両国に押しつぶされてしまいかねない」と警鐘を鳴らしている。 まったく同感だ。われわれは「経済安全保障」と絡むリスクをもっと日本全体で真剣に議論していかなければいけない。 では、半導体の経済安全保障を進めるうえで何が必要かというと、やはり「投資」という意見が多い。アメリカは半導体の国内生産回帰の実現に向けて500億ドル(約5.5兆円)を出す。EUも半導体を含むデジタル投資に2~3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資するという。かたや日本は、国内メーカー20社を集めた新技術開発に「5年で190億」、ポスト5G基金も2000億。その差は歴然だ。 ただ、これも大事だが、本当に必要なことは別にあるのではないか、と個人的には思う。 これまで日本が半導体産業にやってきたことや、コロナのワクチン政策を見れば明白だが、「やることなすこと日本を衰退させていく政策」が量産されていくという今の政治システムを変える必要がある。 これだけ医療崩壊だなんだと大騒ぎをしているのに不思議と「国民皆保険を含めて現行の医療制度を危機に強くするように見直すべきではないか」「パンデミックに機能しない民間病院のあり方を考えるべきでは」と叫ぶ政治家は少ない。自民党はもちろん、野党議員の多くが全国津々浦々の選挙で医師会の世話になっているからだ。 日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる。 最近、政治家の皆さんは口を開ければ、「経済安全保障は大事だ」と勇ましく口にするが、まずは実は自分たちこそが最大の経済安全保障的なリスクだということを認めないことには、議論もへったくれもないのではないのか』、「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。

次に、9月22日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456631
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表している。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。なぜ日本の半導体が成功し、なぜダメになったのか。そして、復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた(Qは聞き手への質問、Aは藤井氏の回答)。今回はその前編。 Q:そもそも半導体産業の黎明期に日本はなぜ勝てたのですか。 A:1940年代後半に半導体を発明したのはアメリカだ。1980年代にそのアメリカに日本は半導体の製造で勝った。それは、1970年代に日本が新しい技術を作ったからだ。 たとえばクリーンルームという概念を生み出した。アメリカでは製造現場に靴で入っていたが、日本では清浄な環境で造らないと不良が出る、とクリーンルームを作った。半導体の基本特許はアメリカ発かもしれないが、LSI(大規模集積回路)にしたのも日本だ。私たちの先輩がゼロから切磋琢磨しながらやった』、「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。
・『市場がパソコン中心になって「安さ」優先に  もう1つ大事なことがある。マーケットがあったことだ。当時、日本の大手電機はみんなNTTファミリーで通信機器やコンピュータを造っていた。半導体は自社の通信機器やコンピュータの部門が大口顧客だった。自社のハードを強くするために強い半導体がいる。通信機器部門やコンピュータ部門にとって、自社で半導体部門を持つメリットがあった。 各社がよりよいコンピュータを作ろうと競い合った。自社の大口顧客に応えるために、半導体部門も開発に力を注いだ。半導体を利用する顧客が近くにいることでよいものができた。それを外に売れば十分に勝てた。1980年代から90年代の初頭まではね。 Q:そうした成功方程式はなぜ崩れたのでしょう。 A:マーケットが通信機器と大型コンピュータからパソコンに変わったからだ。当初は各社独自のパソコンだったが、IBMの標準機になった。半導体も同じものをいかに安く作るかの競争になった。 NTT仕様の自社の通信機器向け半導体は35年保証の世界。設計、プロセス、品質管理もその水準でやっていた。それをパソコン向けにも展開したが、必要とされたのは品質より安さだった。パソコンは数年もてばいい。 そこに出てきたのが韓国勢だ。当時、富士通の半導体の断面は神様が切ったようにきれいだったが、韓国メーカー製はガタガタ。でも動く。何より安かった。 Q:過剰品質の問題に気がつかなかったのですか。 A:当然認識していたから、同じ設備でもアウトプットを2倍にするような設計やプロセスを採用して(高品質製品と)ブランドを分ける議論を散々やった。だが、分けられなかった。同じラインで2つの違う製品を流してもコスト削減効果はあまりないからだ。むしろ、2重のコストがかかる。 Q:依然として高品質を求める顧客もいます。 A:たとえば自動車がそうだ。トヨタさんからは「クラウンが動いている限り半導体を供給しろ」と求められる。自動車用半導体に障害が起きたときの対応コストは膨大になるから、品質を上げてくれというのは当然の要求だ。それは通信も同じ。半導体の故障で海底ケーブルを引き上げたら何億円もかかる。 ただし、今の半導体の設備投資や技術を引っ張っているのは大型コンピュータでも海底ケーブルでも自動車でもない。パソコンですらなく、スマートフォンだ。スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は技術開発でスマホにフォーカスしている』、「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。
・『半導体を知らない本社主導の弊害  Q:半導体産業振興のために国によるプロジェクト(国プロ)が数多くありました。初期の国プロは成功しましたが、それ以降はうまくいったものはありません。 A:国プロでは1970年代の超LSI技術研究組合はうまくいった。しかし、その後のさまざまな国プロが成功したとは思えない。その理由はいくつもある。たとえば、国プロに参加した人材は研究者としてはトップクラスも多かったが、成果を持ち帰って事業を興そうと考えた人材はほとんどいなかった。一方、欧米の国プロでは関わった技術者がその後に会社を作った。 また、国プロに参加した企業、東芝や富士通、NECは総合電機で、半導体は1部門でしかない。(経営的な)決定権を持っていない人材が集まっていた。 半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる。 欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウトした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクトロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった』、「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。
・『技術も人材も海外へ流出  Q:10年の遅れはどういう意味を持ちますか。 A:その10年間で工場を1つ作る費用が500億円から5000億円という世界になった。全社の投資額が年間3000億円のところ、半導体に5000億円の投資はできない。富士通だけではなくNECも日立(製作所)も同じだ。対して、(韓国の)サムスン(電子)やTSMCはそれができた。 10年遅れて半導体事業を切り離す決断をしたが、日本の総合電機は半導体の業績や市況が悪いときに捨ててしまった。事業を売る判断も本社。総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ。 Q:海外企業に売却された案件をどのように評価していますか。 ほぼ全員アンハッピー。技術も残っていないし、人材も散ってしまった。事業の撤退や再編で会社から捨てられて国内ではどうしようもない。多くは中国でメシを食っているはずだ。 Q:韓国の半導体産業は日本の技術者が立ち上げたと言われています。 A:サムスンや現代(現SKハイニックス)の半導体事業は、当時の日本の技術者が週末に韓国へ行って指導して立ち上げた。ただ、中国に関しては早期退職でクビになった日本の技術者が現地に渡って立ち上げた。そうした構図は液晶もプラズマ(ディスプレイ)も同じ、エレクトロニクス全般に当てはまる。) Q:近年は技術流出が問題視されていますが。 A:技術者をどう処遇するか、という問題だ。彼らが持つノウハウを将来にわたって国がどうキープするかは労務政策であり、産業政策でもある。日本はそれを各社に任せてきた。そして各社は年寄りの技術者をいらないと捨ててきた。 TSMCの(創業者)モーリス・チャン氏は新技術を立ち上げるために、IBMや日立などからキーマンを大金で一本釣りした。日本以外の企業ではトップ人材をヘッドハントするのは当たり前だ。 日本はそうしたスカウトをやらなかった。半導体産業の初期にアメリカ企業から正式に技術導入したり、自社で技術開発をしたりしてきたので人材の裾野は広かった。だが、全員を食わせられなくなって捨てた。そうした人材が韓国や中国に渡った。中国も韓国も、優秀な技術者の待遇はすばらしい。中国では5年間免税などもあると聞いている』、「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。
・『賃金の平等主義が競争力を落とした  Q:日本メーカーは自前で技術を開発したというと聞こえはよいですが、外からトップ人材を採用して、相応の処遇をすることができなかっただけでは。 A:そうかもしれない。優秀な人材に何億円も出すという大リーガー方式を採るのか、みんなで同じ給料の社会人野球をやるか。社会人野球に大リーガーは来ないだろう。 日本は労働者の流動性がないので全体の賃金が抑えられるが、トップ人材も雇えない。結果、エレクトロニクス分野では日本は三等国になってしまった。復活を目指すなら労務政策を変えないといけないが、平等主義を変える覚悟が日本にあるか。ないだろう。 Q:2000年代などには日本企業の経営者は口を開けば従業員の賃金が高いと文句を言っていました。 A:今はもう高くない。とくにエリートに関しては全然高くない。一般従業員でも高くない。上海と比較しても変わらない。ただし、それは東京の話。日本でも、地方の工場従業員の賃金は高い。 富士通時代、会津や三重の工場の駐車場にはBMWが並んでいた。東京からの転勤者が乗っているのはマーチ(日産)だった。東京と地方では物価が違うのに給料水準は同じ。労働組合は全国で共通だったからだ。 地方の半導体工場は子会社ではなかったから、東京で本社のSEの給料を上げたら半導体工場の労務費も上がってしまった。地場の賃金水準の2倍以上になった。それでよく戦っていたと思う。 日本メーカーの東京在住の技術者の給料は、国際的に見て低いから優秀な人材が奪われてしまう。日本だけの争いなら同じ競争環境だから戦えるが、グローバルな戦いになった瞬間にその弱点がモロに出てしまった。それがエレクトロニクスの敗北の大きな理由だと思う。 Q:半導体産業は設計から生産まで一貫して手掛ける垂直統合型から、設計はファブレス、製造はファウンドリーが請け負う水平統合型に変わりました。日本ではファブレス、ファウンドリーとも有力企業が育ちませんでした。富士通時代にシステムLSIの製造受託ビジネスを経験され、独立後はファブレスを経営している経験から、その理由をどう見ていますか。 A:通信のモデムを例に説明しよう。1970年代から80年代には富士通やIBMが売っていたのは弁当箱くらいの大きさのモデムで、富士通では通信部隊が作っていた。半導体部隊はモデムに使われるデジタル信号処理用半導体などを作っていた。 1990年代になるとモデムは弁当箱からカードになり、1990年代後半にはモデムチップとしてパソコンに取り込まれた。さらにインテルのチップセットにモデム機能が吸収されたため、モデムチップが消えてしまった。 各社のモデムの設計者がどうなったか。アメリカではカードになったときにモデム設計者の多くがクビになった。クビになった設計者がモデムカードのスタートアップを作ったり、モデムチップの設計会社、ファブレスを興したりした。ところが、日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった。 また、アメリカには起業した人間に投資するエンジェルがいる。そして成功した人間がまたカネを出す。技術だけでなくカネも循環している。技術者が大成功できる。かつ、カネを出している連中がCEOやCFOを送り込んで儲けている』、「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。
・『ファンドが差配するアメリカの強み  Q:日本でファブレスが出てこなかった理由はわかりました。ファウンドリーが成功しなかったのはなぜでしょう。富士通も含めてチャレンジはしていました。 A:僕がカスタムLSIを作るビジネスをしていたとき、そうしたスピンアウトをしたベンチャーが客だった。1990年後半頃から彼らがTSMCに製造を切り替える動きがあった。理由を調べてみたら、ベンチャーにカネを出しているファンドがTSMCにも多額の出資をしていた。 ファンドがファブレスにもファウンドリーのTSMCにも資金を出して、両方の取締役会に人を送り込んでいた。調達や購買の人間は「富士通の製造技術はすばらしい」と言っても、資本の論理が別にあった。 サンノゼの高級ホテルの最上階にファブレスやTSMCにカネを出しているファンドの連中が集まって、「もっと安くしろ」とか「この時期に(発注を)出せ」とやって決まっていた。富士通の営業がファブレスの購買と話をしても受注が決まらない。大型案件では経営者や資本家が介入してくる。負けたのはF(富士通)だけではない。NTH(NEC、東芝、日立)もみんなやられた』、「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。

第三に、この続きを、9月23日付け東洋経済オンライン「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/456632
・『半導体の重要性が再認識されている。アメリカや中国は経済安保の観点からも兆円単位の国家支援を打ち出し、日本でも、経済産業省が「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。ただ、かつて世界に覇を唱えた日本の半導体産業はすっかり凋落してしまった。復活には何が必要か。富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に聞く(Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答)。前編「『日の丸半導体』が凋落したこれだけの根本原因」に続く、後編。 Q:経済安全保障の観点から最先端の半導体工場を日本でも持とうという動きがあります。国がTSMCの工場誘致を探る動きもありますが、日本勢でやることは可能ですか。 A:これまで自動車向けには枯れた技術の半導体が使われていた。が、電動化や自動化で先端半導体も使うようになる。日本の自動車メーカーの半導体調達における地政学リスクをヘッジするなら、TSMCと同じくらいの最先端工場を日本に造らないといけない。 国が支援するとしたら2000億円規模では話にならない。国が年間5000億円を10年間出すと言えば、どこかが名乗りを上げるかもしれない。ただ、経済産業省が資金を出すと言っても、実際は大企業に「裏書きしろ」と言ってくる。それでは無理だ。5000億円を10年間、5兆円をドブに捨てる覚悟で誰かに賭けるしかない。 Q:資金力はともかく先端半導体を製造する技術を持つ企業は日本に残っていますか。 A:残っていない。個別で人材を集めるしかない。日本人だけではなくグローバルにだ。アメリカはサムスンやTSMCに工場を造らせようとしている。アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない。同じものを大量に作るという顧客がいない。スマホもない。だから誰も工場を造らない』、「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。
・『ファブレスで勝てない日本の弱点  Q:ファウンドリーのような製造での最先端が難しければ、設計専門のファブレスで強い企業を育成することはできませんか。 A:ファブレスの場合は、人材に加えてEDAツールも問題になる。 EDAツールとは半導体などの回路設計を自動化し支援するソフトとハードウェアだ。昔は各社で内製ツールを使っていた。このEDAツールの問題を当初イージーに考えていた。当時の富士通は先端だったから設計ルールも作っていた。 カスタムLSIのビジネスでは、顧客にある程度は設計してもらわないといけない。とくに海外の顧客の場合、自社でサポートする余力がない。ちょうどアメリカ西海岸で出始めていたEDAツール会社をお願いした。それでシノプシスやケイデンスといったEDAツール企業を育ててしまった。 そのときに富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ。そうこうしているうちに半導体が高度化し、第三者、専門メーカーのEDAツールを使わざるをえなくなった。それが1990年代から2000年代頭の話だ。 結果、現在何が起きているか。ファブレスとしてTSMCやサムスンに最先端のプロセスでの製造を依頼するには彼らが指定するEDAツールを使う必要がある。ファブレスはそのEDAツールのルールに従って回路を設計しないといけない』、「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。
・『他社のルールに従わざるをえないことの問題  Q:ルールに従ってはダメなのですか。 A:たとえば、熱や帯電を逃がすために回路の線と線にこれくらいの距離を開けるといったルールがある。ファウンドリーは歩留まり悪化の責任を取りたくないのでルールを守るよう要求する。だが、ルール通りにやったらマージンばかりで競争力のない商品になる。昔は自分たちでルールを決めていたから、ここはサボればいいというのがわかった。今は見極めができなくなった。 10年くらい前まではTSMCに行って「このルールはなぜ必要なのか」と尋ねたら答えてくれた。「ここはマージンを取り過ぎている」と言えばルール破りも許容してくれた。日本へのリスペクトがあったから。今はダメだ。 もう日本勢は設計でも世界を追随できなくなった。先端工場のそばでしか先端のルールはできない。日本では何もできない。日本勢がTSMCの5ナノや3ナノのプロセスを使おうとしたら、それが使えるケイデンスかシノプシスのEDAツールを買ってきて、言われた通りに設計するしかない。それでは本当に高い競争力を持つ製品はできない。 Q:アメリカのファブレスも同じ悩みを持っているのですか。 A:アメリカは違う。最初の話に戻るが、アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている。 日本でもファブレスはあるが、生産プロセスがわかる技術者やパッケージがわかる技術者はいたとしても数人。そうするとファウンドリーの言いなりになるしかない。 しかも、アメリカのクアルコムやアップルはTSMCのファーストティアだ。TSMCが2ナノの製造装置を選別するときには彼らから承認をもらう。クアルコムは「この装置じゃダメだ。ASMLのこの装置を使え、設計基準はこうしろ」とTSMCに要求できる。 ファーストティアの顧客はTSMCに対して指導力を発揮して投資方針も変更できる。ルールも決められる。そうして開発した技術をTSMCはセカンドティアの顧客に展開する。そのときはTSMCが自分のルールでやる。日本企業はセカンドティアにも入れていない』、「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。それがTSMCとの交渉力になるし、TSMCもそれに応えてレベルアップしてきた。人の流動性とエコシステムができている」、ここまで違うとシャッポを脱ぐしかなさそうだ。
・『金融庁が日本の半導体を殺した!?  Q:ほかに日本の半導体が負けた理由はありますか。 A:金融庁の指導で100%子会社も含めて経理システムを一本化した影響が大きかった。富士通の場合、それまでは半導体部門の減価償却は定率法だったが、本社で統一するときに定額法になった。変更した瞬間は利益が出るが、その後は償却負担が重くて死んでしまう。 韓国や台湾は半導体産業に対して、減価償却と税制で手厚い優遇措置が整っている。日本はもともと減価償却の自由度が少ないところに、総合電機のようにビジネスモデルが違う事業の経理システムを統一してしまった。そうすると同じ中身でも利益が出ていないように見えるので投資もできず、捨てられてしまう。利益が出たら出たで税金で取られてしまう。) インフラコストや税金も高い。国内で半導体工場を造ろうとして水代や電気代を見るとビックリする。法人税も固定資産税も高い。戦略的に産業を伸ばそうとしたら、そういうところも直さないといけない。 Q:日本の半導体産業の復権は不可能に思えてきます。とはいえ、産業競争力の観点からも、経済安保の観点からも半導体は重要です。国はこれまでにない支援の姿勢を示していますが。 A:半導体復権を国がやるなら、日本株式会社でやらないと無理だろう。アメリカもそうしている。中国なんて完全に中央政府の統制でやっていて利益の分配も自在だし、労働争議も起きない。 ただ、国が資金を投じたから勝てるかと言われたら、苦しい。でも、やらなければ勝てはしない』、やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
タグ:半導体産業 (その4)(台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が 日本の衰退を早める理由、「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)、「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「台湾TSMCを巻き込む「日の丸半導体復活」構想が、日本の衰退を早める理由」 「自民党の「半導体戦略推進議員連盟」」は『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン・アゲイン』」と「かけ声は勇ましい」。他方で、「経産省」は「「官僚の妄想」とも言っていい青写真」、やれやれだ。 「TSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがある」、「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金 「「日本で研究を行う建前になってはいるが、実際の目的は、日本国内の企業や大学研究室からの技術情報収集・・・、装置・材料の調達、日本企業に勤務する技術者のリクルートのいずれかあるいはすべてだろう」、「このような意図を持つであろう台湾企業を平身低頭で日本に呼び寄せて、税金までくれてやるというわけだ」、全く馬鹿げた話だ。 「TSMCは別にそこまで深刻に中国に背を向けているわけではないのだ。客観的に見れば、米中どちらにもいい顔をして非常にうまく立ち回っている」、当然だろう。 「今回の一連のTSMCの動きを見る限り、鴻海と似たものを感じる」、確かに巧みに泳ぎ回る様子はさすがだ。 「日本では「親米保守」という、愛国なんだか売国なんだかよくわからない人々が政治を動かしている。 そうなると当然そのしわ寄せは経済、つまり民間企業に押しつけられる」、「日本の経済安全保障的にも大きなリスクをもたらしている「日本の医療偏在」が放置されている原因をたどっていくと、落選を恐れる政治家の皆さんの「自己保身」に突き当たる」、同感である。 東洋経済オンライン 「「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因 富士通・元半導体部門トップが直言(前編)」 富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏に話を聞いた 「クリーンルーム」は日本発の「概念」とは、言われてみれば納得する。 「スマホ用はパソコン以上に品質を求められない。そのスマホ向けが技術的には最先端で、台湾のTSMC・・・は技術開発でスマホにフォーカスしている」、なるほど。 「半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロが成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しかも、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、損をしたときは(事業を)止めろと言われる」、「半導体事業が総合電機からスピンアウト」の「意思決定が10年以上遅かった」、「総合電機」のコングロマリットの問題点が如実に表れたようだ。 「総合電機のトップは半導体出身ではなく、半導体を調達先としてしか考えていなかった。彼らから見ると半導体は金食い虫で早く手を切りたかった。 エルピーダも同じだ。こちらは銀行が耐えられなかった。結果論だが、あと半年耐えられたら状況は変わっていた。市況がよくなって儲かるようになった。誰が儲けたか。倒産したエルピーダを買ったアメリカのマイクロンだ」、「エルピーダ」はもったいないことをしたものだ。 「日本企業では商売がなくなった技術者は起業するのではなく、社内の別の業務に移った。培ってきた技術は全部消えてしまい、ファブレスも誕生しなかった」、日本的雇用調整のマイナス面が表れた形だ。 「日本」が「ファンド」ビジネスで立ち遅れていたのは確かだ。 「「日の丸半導体」復活には5兆円投じる覚悟必要 富士通・元半導体部門トップが直言(後編)」 「アメリカには先端半導体のマーケットがあるが、日本にはない」、寂しい限りだ。 「富士通の設計ルールをあっけらかんと社外のEDAツール会社に出してしまった。今から思うと犯罪的なノウハウの流出だ」、その価値を見抜けなかったので、「富士通」の完全なミスだ。 「アメリカでは大手電機が半導体をやめたり、半導体メーカーが潰れたりした場合、プロセス技術者が外に出る。多くがファブレスに移る。プロセス技術がわかる彼らが、客(ファウンドリー)の立場で工場に対して「なぜこのルールがあるのか」「なぜこの製造装置を使うのか」といじめに来る。最もいじめられたのがTSMCだ。 工場側の手の内がわかっている技術者を多く抱えているのがアメリカのファブレス。だから交渉力がある。歩留まりが悪かったら解析する能力を持つ人材が何人もいる。ファンドがそうした優秀な技術者をファブレスに紹介する。そ やはり、「日本」には「半導体復権」は夢のまた夢のようだ。
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自動運転(その5)(2025年「自動運転レベル4」に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは「社会需要性」にある、自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ、トヨタの自動運転車が選手村でパラ日本人選手と接触事故 豊田章男社長が謝罪、トヨタ自動運転車事故 目の前に叩きつけられた厳しい現実 「自動運転技術で事故撲滅」までの遠い道のり) [イノベーション]

自動運転については、2020年3月5日に取上げた。今日は、(その5)(2025年「自動運転レベル4」に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは「社会需要性」にある、自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ、トヨタの自動運転車が選手村でパラ日本人選手と接触事故 豊田章男社長が謝罪、トヨタ自動運転車事故 目の前に叩きつけられた厳しい現実 「自動運転技術で事故撲滅」までの遠い道のり)である。

先ずは、3月25日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの桃田 健史氏による「2025年「自動運転レベル4」に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは「社会需要性」にある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/418070
・『2021年3月4日、ホンダが世界初の自動運転レベル3量産車「レジェンド」を発表した。 このクルマに搭載される「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」では、高速道路の渋滞中に運転者が車載器でDVD視聴等が可能となるため、「ついに本格的な自動運転時代の幕開け」といった切り口でテレビやネットで大きな話題となったので知っている人も多いだろう。 自動運転について政府は、今から4年後の2025年をめどに高速道路を走行する乗用車でレベル3よりさらに高度なレベル4を実現させるとしている。 では2025年、本当に日本の道路で自動運転が登場しているのだろうか』、興味深そうだ。
・『N-BOXにレベル3が搭載される日  自動運転レベルは、アメリカの自動車技術会(SAE)が基準として提案したものがその後に国際的な合意となり、その表示は0から5までの6段階となっている。 レベル1~2は「高度運転支援システム」として運転の主体が運転者だが、レベル3~5になると運転の主体がクルマのシステムに移るため「レベル3以上が自動運転」(ホンダ関係者)という解釈だ。 レベル3では、気象状況などによりシステムが自動運転の継続ができないと判断したり高速道路から一般道に降りたりするなど、レベル3に合致する走行条件から抜けると判断すると、運転者に対して運転の移譲を要請してくる。 車内での表示、音声、またシートベルト等での振動を通じて行うこうした行為を、TOR(テイク・オーバー・リクエスト)という。レジェンドでもメーター表示や音声、インジケーターの色の変化によって、TORを発する。 なお、ホンダが採用したレベル3では、高速道路を走行中にシステムが周囲の状況を判断し自動で追い越しを行う「ハンズオフ機能付き高度車線変更支援機能」も搭載される。 今回、発表されたレジェンドの価格は、レベル3非搭載車よりも375万円も高い1100万円と高額だが、今後は自動運転レベル3に関連する機器や技術の量産効果で自動運転システム全体の価格は下がってくる。 アダプティブ・クルーズ・コントロールが軽自動車の「N-BOX」や「N-ONE」などにも搭載されたように、レベル3が多くのホンダ車に採用される人(注:正しくは「日」)がくるだろう。では、それはいつのことなのか。 レベル3に関するオンライン記者発表会に、筆者は所有車であるN-BOXの車内からリモートで参加した。 質疑応答の際、ホンダの自動運転開発担当者に「このN-BOXがレベル3になるのはいつごろか?」と聞いたところ、「10年、いや20年先……」と現時点で将来を予測することは極めて難しいとの表情を見せ、そのうえで販売店やユーザーなど市場でのレベル3に対する「社会受容性を精査していきたい」という姿勢を示した。 筆者は2000年代中盤からこれまで、自動運転について世界各地で自動車メーカーや自動車部品メーカー、IT関連企業、研究機関や大学、そして国や地方自治体への取材や意見交換を定常的に行ってきた。 また、国道交通省と経済産業省による中山間地域でのラストワンマイル自動走行実証試験では、その現場となる福井県永平寺町で2018年から一軒家を借り、街の政策に対して議論する永平寺町エボリューション大使に就任。各方面から永平寺町実証への視察対応なども行ってきた。 そうした中で「社会受容性」という視点が、自動運転の普及に向けた大きな課題であると強く感じている』、「レジェンドの価格は、レベル3非搭載車よりも375万円も高い1100万円と高額」、も「社会受容性」に影響を与える要素だ。それにしても、レベル3の自動運転中に「TOR」が鳴った時に、居眠りなどしていたらどうなるのだろう。
・『「社会受容性」の本質を問う  自動運転の社会受容性に対して、国や自動車メーカーが直近の考え方を示す機会が2021年3月15日にあった。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムにおける自動運転プロジェクト(通称SIP-adus)に関する、オンラインワークショップでのことだ。 国土交通省 自動車局 技術・環境政策課の多田善隆氏が「自動運転車の技術基準策定のポイント」として、道路運送車両法と道路交通法におけるレベル2とレベル3の解釈の違い、国際基準策定の取組などを説明していたのだが、その中で、自動運転車の普及には「技術開発を阻害しないように、技術の進展と普及活動に応じた段階的な施策が重要だ」と指摘していた。 そして、具体的に以下の4つのフェーズにおける施策例を挙げた。 (1)技術開発期:技術ガイドラインや保安基準〔任意規格〕の策定 (2)技術競争期:自動車アセスメント (3)普及拡大期:サポカー補助金や税全優遇措置 (4)標準搭載期:保安基準〔強制規格〕の策定 そして多田氏は、現状での自動運転は(1)の「技術開発期にあると思う」と個人的な見解を述べ、社会受容性については、ユーザーの自動運転機能に対する過信を問題視した。 現状のレベル2(実質的には高度運転支援システム)に関しても、逆光や悪天候などが理由で年間100件ほどの不具合事案が国交省に報告されているという。そのため「レベル2を含めて、レベル3でもユーザーに対する機能への過信を防止するよう、技術の特性をしっかりと伝えることが必要だ」と強調する。 国交省に次いで、一般社団法人 日本自動車工業会の自動運転部会長 横山利夫氏が「自動運転の実用化に向けた日本自動車工業会の取り組み」を発表した。 そこでは「技術基準と標準」「道路交通ルール」への対応という大きく2つの方向で、国内外の関係各部門と連携して基準化と標準化を進めていることを紹介するとともに、自動運転部会傘下のユースケース、ヒューマンファクター、AD安全性評価など6つの分科会の活用内容も示した。 さらに質疑応答では、社会受容性について大きく3つのポイントがあると指摘した。 (1)適切な安全性を社会が需要できるかどうか (2)メーカーやメディアが自動運転に対してミスリードしないような仕組みをつくること (2)(注:正しくは(3))自動運転がメーカーによるプロダクトアウトの商品であること 横山氏は、「自動運転は、メーカーが交通事故の減少などを目指したプロダクトアウト(の商品)である。消費に対する魅力がどういった反響が(社会から)あるのか。(販売)コストを含めて、ステップバイステップで進めていくべき」との考えを示す。 この「プロダクトアウト」という視点こそ、自動運転における社会受容性の議論で重要な点だと筆者は思う。ユーザーや販売店から「できるだけ早く(レベル3以上の本格的な)自動運転のクルマが欲しい」といった、マーケットイン型の要望が強くあるわけではないからだ』、私も渋滞区間はともかく、通常の区間で「自動運転」してもらいたいとは思わない。
・『自動運転への需要は本当にあるのか?  自動運転は、あくまでも自動車メーカーやIT企業が「交通事故ゼロを目指す」という社会的な責任を踏まえたうえでの新規事業として開発しているにすぎない。そのため、実現には法整備や安全性の確保など、これまでの自動車開発と比べるとさまざまな点で実用化へのハードルが高く、どうしても研究開発や法務対策が優先される。 そして、そうした対応にある程度のめどがついた状態で“実証試験”として世に出し、社会からどう見られるかを“後付け”で考えている。これを「社会受容性」と呼んでいるというのが実情だ。 そのため、社会からの本質的な需要と、自動車メーカーや研究機関が想定している需要に差異が生じる場合もある。さらにいえば、実質的に社会から自動運転に対する具体的な要求があまりない状態で、需要の創出を仮想しながら社会受容性を議論しているようにも思える。 これは、国や自動車メーカーが自動運転を議論する際に用いる、オーナーカー(乗用車)とサービスカー(公共交通機関に近い存在)のどちらにもいえることだ。今、“オーナーカーのレベル3”がホンダによって世に出たことで、ユーザー、販売店、そして社会全体から自動運転全般に対して、厳しい評価の目が向けられることになる』、「ホンダ」の「レベル3”」はどのような「評価」を受けるのだろうか。

次に、この続きを、4月5日付け東洋経済オンライン「自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/420632
・『自動運転は、乗用車や商用車を中心とした「オーナーカー」と、バスやタクシーなど公共性がある交通機関「サービスカー」という2つの領域で、日本を含めた世界の国や地域で、自動車メーカーや自動車部品メーカー、そしてアップル、グーグル、中国のバイドゥなどといったIT系企業が、継続的な事業化について戦略を練っている段階である。 こうしたオーナーカーとサービスカー、どちらについても本格的な普及に対する課題は、社会受容性とそれに見合うコスト管理にある。社会受容性については、「2025年『自動運転レベル4』に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは『社会受容性』にある」にて紹介した。 今回はコスト管理について、筆者がエボリューション(注)大使として町の政策に参画している、福井県吉田郡永平寺町の事例を軸足として話を進める』、興味深そうだ。
(注)エボリューション:進化(Wikipedia)
・『ゴルフカートベースの実験車両  2021年3月25日、サービスカーとして日本初の1:3(1人が3台を同時監視する)の遠隔型自動走行車両による自動運転レベル3実用化を記念した出発式が行われ、福井県の杉本達治知事や永平寺町の河合永充町長、そして関係省庁と地元の交通事業者や商工関係者らが参加した。 運行管理を町が出資するまちづくり会社ZENコネクトが行い、永平寺町の門前に近い2km区間で、遠隔管理室にいる1人が3台を同時に監視して無人走行させる。運賃は大人100円、子どもが50円。 自動運転車両は、ヤマハが製造開発し、全国各地のゴルフ場や遊興施設などで数多く使われている電磁誘導方式のゴルフカートをベースに、国の産業総合技術研究所が一部を改良したものだ。 地中に埋設した誘導線の磁力線を車両下にある3つのガイドセンサーが検知し、設定されたルートを走るというのが、基本的な走行システム。地中に埋設したマグネットの上を走行すると、車両のマグネットセンサーによる電圧発生で車両位置を検知し、得られた信号をコンピューターが解析して車両の動作を制御する。 電磁誘導方式は事実上の軌道交通であり、運用の自由度はあまり高くないという見方もある。一方で、走行ルートから外れて暴走しないこと、積雪や落ち葉などの路面環境の変化に強いこと、10年以上とされる耐久性の高さや、月額数千円程度の電気代で済むという経済性が、メリットとして挙げられる。 また、明確な金額は公開されていないが、車両本体はベースとなるヤマハ製ゴルフカートの販売価から数百万円程度と考えられる。 さらに、遠隔管理は運行管理の人件費を抑制するためでもあるが、永平寺町の事例は専用空間を走行するため、遠隔管理者の精神的な負担も比較的少なくできるメリットもある』、いくら電気を「電磁誘導方式」で取り込むとはいっても、たかが「ゴルフカート」に毛が生えた程度なのに、1台「数百万円程度」とはいささか高過ぎる印象だ。
・『“身の丈”を考えた“現実解“として  この地が、「専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」として国に認定されたのは、今から4年前の2017年3月だった。 同年4月には、京福電鉄の廃線跡を利用した遊歩道に、自動運転を行うための電磁誘導線などの付帯設備の工事が行われ、同年5月より産業技術総合研究所などによる試験走行が開始された。なお、工事費用には、地方創生拠点整備交付金(国:6000万円、県:3000万円、町:3000万円、合計1億2000万円)が投じられている。 2019年4月から5月の大型連休にかけては、車両10台を使った1カ月実証が実施され、同年6月から12月までは当時、日本で最長期間となる6カ月連続実証が、さらに2020年7月からは車内無人でのレベル3の実証などが行われてきた。 こうした各種実証には、全国各地の自治体、民間企業、大学などの教育機関の担当者が現地視察に訪れ、筆者も参加し、永平寺町の社会実情と自動運転の社会実装に対する可能性について意見交換してきた。 その中で、町側からは「継続的な運用に向けたコスト抑制」が強調された。グーグルカーやアップルカー、またはヨーロッパのベンチャー企業などが実用化を目指す、走行場所の制約をあまり受けずに走行可能な高級な自動運転車両の導入は、町の財政状況を考えると難しく、国や県と連携した永平寺町としての“身の丈”を考えた“現実解”として、自動運転の実用化を考えるというものだ。 永平寺町では、もう1つ“身の丈”交通がある。約1年間の試走を経て2020年10月に実用化した、オンデマンド型交通システムの「近助(きんじょ)タクシー」だ。 福井県内の全トヨタ販売企業が共同で車両のサポートをする体制を敷き、地元住民がミニバンを運転して、高齢者の通院や買い物、小学生の通学などを支援するものだ。 また、経済産業省の支援事業として、近助タクシーのドライバーがゆうパックの配送を行う日本初の貨客混載の実証も2021年2月に行われた。 自家用有償旅客運送は全国各地で実用化されている手法だが、国は2020年2月に地域公共交通の活性化とそのための法改正を行っており、近助タクシーのような新たな事業の実現に向けて国土交通省が後押しする体制が整ってきている。 全国各地から永平寺町への視察では、自動運転と近助タクシーの現場に案内し、それぞれの長所と短所を実感してもらう。その中でよく出る話題は、コミュニティバスから自動運転車両への転換だ。 コミュニティバスは、路線バスより車両がこぶりで、集落の中の比較的細い道まで路線がある地方自治体が運用し、地元のバス会社やタクシー会社に運行管理を委託する公共交通機関として全国各地に広まっている』、なるほど。
・『自動運転車を赤字でも続ける理由  コミュニティバス発祥の地とされる東京都武蔵野市役所にもうかがい、同地における公共交通会議の活発な議論について市職員から話を聞いたが、年間で1億円を超える収入があっても収支は若干の赤字であるという。 一方、永平寺町のコミュニティバスは年間4000万円強の財源を要して、年間収入は数十万円程度である。それでも、コミュニティバスは住民サービスであり、また住民に対するセーフティネットという観点から、赤字体質でも事業を継続することに住民が反対するケースは少ない。永平寺町を含めて、全国各地のコミュニティバス事業を実際に取材すると、そうした声が多い。 一方でバスやタクシーのドライバーの高齢化と、ドライバーのなり手不足という課題も全国共通にある。そこで、「コミュニティバスから自動運転車への転換」という発想が生まれるのだが、多くの場合は“絵にかいた餅”で終わる。 なぜかといえば、自治体の財政状況によらず「どこで」「誰が」「いつ」「どのように利用し」「コスト管理をどうするのか」という出口戦略の詰めが甘いからだ。 実際、自動運転と自家用有償旅客運送の2つをやっと実現した永平寺町の事例についても、筆者の立場として言えば、自動運転事業の継続はサービス事業として数多くの課題があり、解決に向けた議論は今度さらに難しさを増すと感じている。 それでも、「小さな歩みを続けていこう」と地元の皆さんと交流を深める中で、自らの気持ちを整理している。地域交通をよりよい形にするのは、並大抵のことではない』、高齢化が進むなかでは「地域交通をよりよい形にする」のは、喫緊の課題だ。大いに頑張ってほしい。

第三に、8月28日付けNewsweek日本版が転載したロイター「トヨタの自動運転車が選手村でパラ日本人選手と接触事故 豊田章男社長が謝罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/08/post-96996.php
・『東京・中央区の東京パラリンピック選手村を巡回する自動運転車に選手が接触した事故を受け、車両を提供・運営するトヨタ自動車の豊田章男社長が27日夜、自社のオンラインサイトで「多くの方々にご心配をおかけし、大変申し訳ない」と謝罪した。事故の原因は調査中とした。 事故は26日午後に発生。右折しようとした自動運転車が、柔道(視覚障害)男子81キロ級日本代表の北薗新光選手(30)に接触した。北薗選手は転倒し、頭などに全治2週間のけがをした。NHKなど国内メディアによると、北薗選手は28日に出場予定だった試合を欠場する。 豊田社長は、車両に搭載された自動運転技術について、「パラリンピックという特殊な環境の中で、目の見えない方もおられれば、いろいろと不自由な方もおられる。そこまでの環境に対応できなかった」と説明。「普通の道を普通に走るのはまだ現実を帯びていない」と語った。 豊田社長によると、事故は車両がT字路を右折する際に起きた。曲がる前の直進は自動運転で走行し、横断歩道前でいったん停止。その後、乗車していたオペレーターのマニュアル操作で再スタートした瞬間に接触したという。「スピードにして(時速)1、2キロ。時間にして1、2秒の間に接触が起こった」と語った。 事故の原因はまだ不明だが、車両は電気自動車(EV)で、ガソリンエンジン車と異なり接近時の音が静かなため、接近を知らせる音量をこれまでの2倍にするなどの対策を講じるとしている。現在、車両は運行を停止している』、「マニュアル操作で再スタートした瞬間に接触」、厳密には「自動運転」中の事故とはいえないのかも知れないが、被害者は「全治2週間のけがをした・・・28日に出場予定だった試合を欠場」、というのはやはり深刻だ。次の記事でもこの問題を取上げる。

第四に、この続きを、9月1日付けJBPressが掲載したジャーナリストの桃田 健史氏による「トヨタ自動運転車事故、目の前に叩きつけられた厳しい現実 「自動運転技術で事故撲滅」までの遠い道のり」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66744
・『2021年8月26日、東京パラリンピック選手村内でトヨタ自動車製の自動運転車「eパレット(e-Pallet)」とパラリンピック出場選手との接触事故が発生した。その影響でトヨタはeパレットの運行を同日から停止していたが、8月31日15時に運行再開することを大会組織委員会が決定した。 トヨタはオウンドメディア「トヨタイムズ放送部」で事故の発生状況と対策内容を示し、豊田章男社長が「この度接触した方の一日も早い回復をお祈りしている。(自動運転の)モビリティの運行停止で選手村の方々にご不便をおかけしたことを申し訳なく思う」と謝意を表明した』、なるほど。
・『事故再発を防ぐトヨタの対策  トヨタの発表内容から事故の発生状況を振り返ってみたい。 歩行者は視覚障害者で、信号機のない交差点を単独で渡ろうとしていたところ、車両が交差点を右折して接近し、車両は歩行者の動きを検知して停止した。その後、車内のオペレータが安全を確認して再度発進したうえで、交差点内の状況を確認して手動で減速を始めたが、道路を横断してきた歩行者を車両のセンサーが検知して自動ブレーキが作動した。それと並行してオペレータが緊急ブレーキを作動させたが、接触事故が発生した。 接触事故の発生時、交差点内に誘導員が2人いたが、パラリンピックのように多様な人がいる状況で、誘導員が複数の方向からの歩行者や車両の動向を確認できる環境ではなかった。誘導員とオペレータとの連携の仕組みが十分ではなかったという認識もあるという。 今後の対策としては、歩行者に対しては組織委員会が選手団長会議などで移動のルールなどを改めて周知し、車両については、自動運転ではなくマニュアルでの加速・減速・停止を行う。さらに、接近通報音の音量を上げ、搭乗員を増員することを決めた。 そのほか、交差点の誘導員を現在の6人から20人に増員し、車両担当と歩行者担当に分離して専業化する。同時に、信号の代わりとなって車両と歩行者を安全に誘導できる体制を構築するとした。 要するに、東京パラリンピック選手村においてeパレットはもはや自動運転車としての運用ではなく、高度な運転支援システムを持った小型電動バスという位置付けになったと言える。 これはあくまでも選手村が閉村するまでの期間、大会関係者が選手村内での移動に困らないような応急措置としており、その中でトヨタがより安全な自動運転車のあり方を検証していくことになる』、「トヨタ」としては、「安全な自動運転車」のPRをする筈だったのが、飛んだハプニングになったものだ。
・『コスト削減と安心・安全の両立が課題  では、トヨタの自動運転モビリティは今後どのような改善が可能なのか? 筆者がサポーター(永平寺町エボリューション大使)として参加している福井県永平寺町での自動運転実証試験(国土交通省、経済産業省、産業総合研究所が共同で実施)での現場の状況、さらに筆者がこれまで現場で取材してきた各種の自動運転車の状況を踏まえて考えてみたい。 国が自動車メーカーなどと協議して決めた自動運転に関する指針では、自家用車や商用車などを「オーナーカー」、公共交通を主体とした乗り物を「サービスカー」と定義している。東京オリンピック・パラリンピック選手村でトヨタが運行するモビリティはサービスカーである。自動運転サービスカーが目指すのは、「運行コスト削減」と「安心・安全」の両立だ。 全国各地で近年、路線バスやタクシーの運転手の高齢化が進み、新たな成り手を見つけることも難しくなってきた。また、自家用車の普及によって路線バス乗車客数が減る中、バス運行会社が運行ダイヤを見直して減便するケースも少なくない。地方自治体の中には、路線バス継続のためにバス運行会社に補助金を交付したり、コミュニティバスの費用を負担しているところもあるが、財政への負担が大きく、コミュニティバスの減便や廃止を検討せざるを得ない状況もある。 こうした状況を打開するため、搭乗員がいない自動運転バスや自動運転タクシーへの期待が高まっている。国と自動車産業界は、永平寺町や東京オリンピック・パラリンピックでの実証実験を国内外に向けたショーケースとして、サービスカーの自動運転化を検討してきた。 だが現状では、今回の選手村での接触事故への対策に見られるように、安心・安全を確保するためには、まだまだ人によるサポートが欠かせないことが分かる。実証試験では、事故が起こらなければ自動運転運行に関わる人の数を段階的に減らしていく。だが、一度でも事故が起こると、そうした流れが一気に逆戻りしてしまう。そんな厳しい現実を目の前に叩きつけられたような思いがする』、安全に関することでは当然だ。
・『自動運転技術は確かに必要だが  トヨタを含めた自動車産業界には、「死亡事故ゼロを実現するためには自動運転技術が欠かせない」という認識が存在する。そこには、死亡事故の多くが運転者の運転判断ミスや運転操作ミスによるものだという大前提がある。 確かに、完全自動運転まで至らなくても、自動運転技術を活用した高度な運転支援システムが事故発生を軽減しているとのエビデンスもある。今回のパラリンピック選手村内での接触事故においても、自動ブレーキが作動したことで接触時の速度が抑制されたことは事実だ。自動ブレーキの作動によって、接触した歩行者の負傷の度合いが抑えられた可能性もある。 これまでの自動運転技術の進化を俯瞰してみると、2010年代中盤以降、AI(人工知能)に関する研究開発が進むのと並行するように、一気に量産化に向けた動きが加速してきた。筆者は公道で一般車両と混流して走る実証試験車にも体験乗車する機会があるが、その技術進化の速さに驚かされることが多い。 その上で今回の接触事故を踏まえて、単なる技術論だけではなく、自動運転の社会との関係があるべき姿について、関係者はいま一度深く考えるべき時期ではないだろうか』、「自動運転の社会との関係があるべき姿について、関係者はいま一度深く考えるべき時期」、同感である。
タグ:自動運転 (その5)(2025年「自動運転レベル4」に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは「社会需要性」にある、自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ、トヨタの自動運転車が選手村でパラ日本人選手と接触事故 豊田章男社長が謝罪、トヨタ自動運転車事故 目の前に叩きつけられた厳しい現実 「自動運転技術で事故撲滅」までの遠い道のり) 東洋経済オンライン 桃田 健史 「2025年「自動運転レベル4」に立ちはだかる壁 自動運転普及のカギは「社会需要性」にある」 「レジェンドの価格は、レベル3非搭載車よりも375万円も高い1100万円と高額」、も「社会受容性」に影響を与える要素だ。それにしても、レベル3の自動運転中に「TOR」が鳴った時に、居眠りなどしていたらどうなるのだろう。 私も渋滞区間はともかく、通常の区間で「自動運転」してもらいたいとは思わない。 「ホンダ」の「レベル3”」はどのような「評価」を受けるのだろうか。 「自動運転バスが“絵にかいた餅"で終わる理由 永平寺町の実用化現場で感じた普及の難しさ」 いくら電気を「電磁誘導方式」で取り込むとはいっても、たかが「ゴルフカート」に毛が生えた程度なのに、1台「数百万円程度」とはいささか高過ぎる印象だ。 高齢化が進むなかでは「地域交通をよりよい形にする」のは、喫緊の課題だ。大いに頑張ってほしい。 Newsweek日本版 ロイター 「トヨタの自動運転車が選手村でパラ日本人選手と接触事故 豊田章男社長が謝罪」 「マニュアル操作で再スタートした瞬間に接触」、厳密には「自動運転」中の事故とはいえないのかも知れないが、被害者は「全治2週間のけがをした・・・28日に出場予定だった試合を欠場」、というのはやはり深刻だ。次の記事でもこの問題を取上げる。 JBPRESS 「トヨタ自動運転車事故、目の前に叩きつけられた厳しい現実 「自動運転技術で事故撲滅」までの遠い道のり」 「トヨタ」としては、「安全な自動運転車」のPRをする筈だったのが、飛んだハプニングになったものだ。 安全に関することでは当然だ。 「自動運転の社会との関係があるべき姿について、関係者はいま一度深く考えるべき時期」、同感である。
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人工知能(AI)(その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編) [イノベーション]

人工知能(AI)については、4月5日に取上げた。今日は、(その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編)である。

先ずは、4月29日付けダイヤモンド・オンライン「「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269476
・『シナモンAI共同創業者として、多くの企業にAIソリューションを提供して、日本のDXを推進する堀田創さんと、『アフターデジタル』『ネットビジネス進化論』をはじめ、数々のベストセラーでIT業界を牽引する尾原和啓さんがタッグを組んだ『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社)が刊行された。「このままでは日本はデジタル後進国になってしまう」「日本をAI先進国にしたい」という強い思いでまとめられた同書は、発売直後にAmazonビジネス書第1位を獲得し、さまざまな業界のトップランナーたちからも大絶賛を集めているという。 データを育てて収穫する「ハーベストループ」とは何か。それを二重(ダブル)で回すとはどういうことか。IT業界の最長老を自認するドワンゴ代表の夏野剛さんをゲストにお招きして、AIを使ってDXを全社的に進めるときの心得や、乗り越えるべきハードル、間違いやすいポイントについて、シナモンAI代表の平野未来さんとともに聞いた(構成:田中幸宏)』、興味深そうだ。
・『「業務の生態系」ごとデザインしないと、AIが役に立つようにはならない(堀田創(以下、堀田):『ダブルハーベスト』刊行を記念し、夏野剛さんをお招きさせていただきました。シナモンAI代表の平野さんと一緒に、いろいろお話をうかがいたいと思います。本日はよろしくお願いします。 夏野剛(以下、夏野):夏野です。もう25年くらいIT業界にいて、最長老に近いと思いますが、ここ数年で大きく変わったのは、コンピューティングパワーとネットワークの能力が上がって、本格的なクラウド時代が到来したことですね。それがAI(人工知能)にとっても、ものすごく追い風になっています。 (夏野剛(なつの・たけし) 株式会社ドワンゴ 代表取締役社長/慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 早稲田大学政治経済学部卒、東京ガス入社。ペンシルバニア大学経営大学院(ウォートンスクール)卒。ベンチャー企業副社長を経て、NTTドコモへ。「iモード」「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げ、ドコモ執行役員を務めた。現在は慶應大学の特別招聘教授のほか、株式会社ドワンゴ代表取締役社長、株式会社ムービーウォーカー代表取締役会長、そして、KADOKAWA、トランスコスモス、セガサミーホールディングス、グリー、USEN-NEXT HOLDINGS、日本オラクルの取締役を兼任。このほか経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与、内閣官房規制改革推進会議委員も務める。) ただ、日本は通信ネットワークも充実しているし、アプリケーションもたくさんあるにもかかわらず、世界から見ると、1周、2周、もしかしたら3周くらい遅れている。その中で、AIをどれだけ本気で活用できるかに、日本の未来はかかっています。私も政府の委員会や企業経営などをやっていますが、いろんな場面でテクノロジーのさらなる活用を人生のミッションとしてがんばっています。 平野未来(以下、平野):シナモンAI代表の平野です。私自身は15年以上前からAIの研究をしていて、学生時代にAIで起業したんですけれども、当時はまだ誰もAIに興味がないという時代で、すぐに失敗してしまいました。そうした経験があるので、いまAIが注目され、世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)がブームになっているのは驚くばかりです。 その一方で、AIやDXが盛り上がっているとはいっても、ほとんどの議論が「コスト削減」どまりになっていて、その先を見通せていない現状を考えると、もっともっと変えていかなければいけない。なので、今回『ダブルハーベスト』が大きな反響を呼んでいることをとてもうれしく思っています。 堀田:今回、IT批評家の尾原和啓さんと『ダブルハーベスト』を書かせていただいたのは、私たちAI技術者の立場からすると、AIを使って働き方や会社のあり方そのものを変えていくという発想から遠いところで、AIをちょこっと使っただけで「AIってこの程度だよね」と見限ってしまったり、それ以前に「AIはまだ早い」「うちには関係ない」という方々もたくさんいて、さすがにこのままではマズいだろうという思いがあったからです。 そこで、AIをビジネスの中にどう組み込んでいくかを体系的にまとめた本を出版したわけですが、大きなメッセージとして、「すでにあるデータをどうやって活用するか」という発想ではなく、日常業務の中でAIが学習するためのデータを取り込み、それによってAIを進化させ、そのAIを使うことでさらに別のデータをためていくという循環構造、ハーベストループをつくることを提唱しています。 (平野未来(ひらの・みく) シナモンAI代表 シリアル・アントレプレナー。東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリング等の研究に従事。2005年、2006年にはIPA未踏ソフトウェア創造事業に2度採択された。在学中にネイキッドテクノロジーを創業。iOS/Android/ガラケーでアプリを開発できるミドルウェアを開発・運営。2011年に同社をミクシィに売却。ST.GALLEN SYMPOSIUM LEADERS OF TOMORROW、FORBES JAPAN「起業家ランキング2020」BEST10、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019イノベーティブ起業家賞、VEUVE CLICQUOT BUSINESS WOMAN AWARD 2019 NEW GENERATION AWARDなど、国内外での受賞多数。また、AWS SUMMIT 2019 基調講演、ミルケン・インスティテュートジャパン・シンポジウム、第45回日本・ASEAN経営者会議、ブルームバーグTHE YEAR AHEAD サミット2019などへ登壇。2020年より内閣官房IT戦略室本部員および内閣府税制調査会特別委員に就任。2021年より内閣府経済財政諮問会議専門委員に就任。プライベートでは2児の母。) 夏野:僕もAI関係のプロジェクトをいくつかやっていて、そこで感じるのは、AIは1つの「生態系」みたいなものだということです。AIはつくってすぐに効果が出るものではなく、グルグル回していく中でだんだん精度が上がっていく。そして新しい状況が発生したときにそれに適応していく。その意味で、AIのシステムをいかに日常業務の中に組み込んでいくかが大事だと思っています。 たまっているデータを分析して結果を導き出して終わり、ではなく、ふだんの業務フローの中で、あるいはユーザーが我々のサービスを使った結果、生み出されるデータから新しい分析が行われ、それによって打ち手が変わっていく。その流れの中にAIを組み込むというのは、まさにハーベストループの考え方そのもので、とてもしっくりきます。 いままではシステム開発をする人も発注する側も、どうしても何か成果物を受け取って終わり、みたいな考え方が根付いているので、走りながらだんだん精度を上げていくという開発の手法がなかなかなじまないのでしょうね。 堀田:いままでと開発のしかたが違ってくるので、経営者も社員も大きく考え方を変えていく必要がありますね。 夏野:いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです。 実はいま、経営に携わっているKADOKAWAやドワンゴでもループをつくろうとしています。そのときにも、部署ごと、ドメインごとの成果だけで判断するのではなく、トータルで均したときにどういう成果がどういう形で、グループ全体にどういう影響をもたらすのか、大局的な観点からどうなのかを見るようにしています。 堀田:すばらしい。事業レイヤーだけでなく、経営全体としてのループ化まで意識されていらっしゃるのはさすがです』、「いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです」、なるほど。
・『「うちにはデータがないから、AIは使えない……」と諦めなくていい 夏野:でも、APIでデータを出せるようにして、それがきちんと回り始めるまでには、やっぱり時間がかかるんです。正直、3年はかかるなという実感ですね。最近ようやく成果も出てきて、プロジェクトに参加している人たちの意識も変わってきました。あとは、基本設計もフレキシブルに変えていく。これがすごく大事だなというのが、いまのところの学びです。 (堀田創(ほった・はじめ) 株式会社シナモン 執行役員/フューチャリスト 1982年生まれ。学生時代より一貫して、ニューラルネットワークなどの人工知能研究に従事し、25歳で慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。2005・2006年、「IPA未踏ソフトウェア創造事業」に採択。2005年よりシリウステクノロジーズに参画し、位置連動型広告配信システムAdLocalの開発を担当。在学中にネイキッドテクノロジーを創業したのち、同社をmixiに売却。さらに、AI-OCR・音声認識・自然言語処理(NLP)など、人工知能のビジネスソリューションを提供する最注目のAIスタートアップ「シナモンAI」を共同創業。現在は同社のフューチャリストとして活躍し、東南アジアの優秀なエンジニアたちをリードする立場にある。また、「イノベーターの味方であり続けること」を信条に、経営者・リーダー層向けのアドバイザリーやコーチングセッションも実施中。認知科学の知見を参照しながら、人・組織のエフィカシーを高める方法論を探究している。マレーシア在住。『ダブルハーベスト』が初の著書となる。) 堀田:ハーベストループの実装には、3年とか5年とかの長いスパンでビジョンをもってやっていくことが不可欠だと私も思います。 平野:『ダブルハーベスト』でいちばん気に入っているのが、「データはあとからでもいい」という考え方です。ありがちなのは、「いまあるデータをどうやって使おうか」という発想ですが、そうすると、「そのデータがないから何もできません」という話になりかねません。もう1つは、AIには取りかかるのが大変というイメージがあるけれども、「最初は小さく始められる」というところも好きですね。 身近な例でいうと、フェイスブックのMessengerで音声通話をすると、話が終わったあとに通話に問題がなかったかを尋ねるポップアップが出てきます。フェイスブックはその回答データをためていて、どういう環境だと通話のクオリティが悪くなるかがわかる。そういうループが回っているからこそ、ユーザーに対してよりよいUX(ユーザー体験)を提供できるわけです。 シナモンAIでも、お客様に対してハーベストループを描いてAIソリューションを提供させていただいています。たとえば、物流商社さんにとっては、お客様がほしいと思ったらすぐに商品が届くというのが実現したい世界観です。そこで、需要予測や倉庫内の配置、なるべく多くの商品を取り扱うにはどうするかといったところでAIを使っていただいています。これは、三重にループが回っているケースですね。 ほかにもたとえばメーカーさんで、お客様の声はあるんだけれども、それが商品設計まで生かされていなかった。そこにハーベストループを回してすぐに伝達される仕組みをつくってあげると、よりお客様のニーズに合った商品づくりができるようになるわけです。そういう事例も出てきました。 堀田:「循環構造をつくることが大事」という意識が広がっているのは私も実感していますね。他方で、いまDXに注目が集まっていますが、日本のDXの現状について、夏野さんはどのように見ていらっしゃいますか? 夏野:「とにかくDXをしろ」とか「DXが重要だ」という経営者は多いですけれども、DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない。 その意味では、いまのコロナ禍の状況は追い風というか、根本から考え直すいい転機になっています。そもそもリモートワーク自体が仕事のやり方を変換しているわけで、そのためにはデジタルツールを使わざるを得ない。DXの名の下に、いままでやったことのない働き方を試してみるということがふつうに起こっていて、その中でどれがうまくいったかという知見がたまっていっています。それはとてもいいことです』、「DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない」、その通りだろう。
・『DXを理解していない経営者ほど、「部門予算」で済ませようとする  夏野:ただ、そうした変化を定着させるには、トップの理解が欠かせません。たとえば、予算措置をとってみても、AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です。 経営者がDXの本質を理解していればできると思いますが、理解していない経営者には、そういった決断ができない。できないということは、まだまだ理解していない経営者が多いということではないかと思います。 堀田:DXは手段であって、最終的に何を目指すのか、いわゆるパーパス(Purpose)はまた別の問題ですよね。たとえば、「顧客体験を劇的に向上させる」というパーパスがしっかりあれば、そこから一貫したメッセージを届けることができます。 逆に、パーパスが見えていない・浸透していない企業にハーベストループをご提案しても、どこかで食い違うという体験を何度かしています。DXにしろAIを活用したループにしろ、やはりパーパスがカギになるんでしょうね。(後編に続く)) (P3は本の「ダブルハーベスト」の紹介なので省略)』、「AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です」、「部門予算」ではなく、「経営者予算」でやれとの主張は理解はできるが、予算統制上の問題も出てきそうだ。

次に、この続きを、5月6日付けダイヤモンド・オンライン「DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269477
・『シナモンAI共同創業者として、多くの企業にAIソリューションを提供して、日本のDXを推進する堀田創さんと、『アフターデジタル』『ネットビジネス進化論』をはじめ、数々のベストセラーでIT業界を牽引する尾原和啓さんがタッグを組んだ『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ダイヤモンド社)が刊行された。「このままでは日本はデジタル後進国になってしまう」「日本をAI先進国にしたい」という強い思いでまとめられた同書は、発売直後にAmazonビジネス書第1位を獲得し、さまざまな業界のトップランナーたちからも大絶賛を集めているという。 データを育てて収穫する「ハーベストループ」とは何か。それを二重(ダブル)で回すとはどういうことか。IT業界の最長老を自認するドワンゴ代表の夏野剛さんをゲストにお招きして、AIを使ってDXを全社的に進めるときの心得や、乗り越えるべきハードル、間違いやすいポイントについて、シナモンAI代表の平野未来さんとともに聞いた(構成:田中幸宏)』、興味深そうだ。
・『いまだに消えない「AI担当=情報システム部署」という誤解  堀田創(以下、堀田) 日本の産業を見たときに、なかなかDX(デジタルトランスフォーメーション)の波にうまく乗り切れていないように思うのですが、このチャンスを活かすときにはどんな発想が大事になるとお考えですか?  (夏野 剛氏の略歴は省略) 夏野剛(以下、夏野) DXはすべての産業に当てはまると思っています。大前提として、日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく。『ダブルハーベスト』の中でも、「我々の仕事のフローそのものがAIのループの中に組み込まれる」という考え方が紹介されていましたが、非常に共感しました。 平野未来(以下、平野) 「ヒューマン・イン・ザ・ループ」や「エキスパート・イン・ザ・ループ」の考え方ですね。おっしゃるとおり、AIと人間が同じループの中に自然な形で入っているというのがすごく重要です。人間が通常の仕事をするだけで、いつのまにかAI向けの学習データが生み出され、AIがどんどん改善されていく。そういうループをつくれるかどうかです。 メディアでは「AIが人間の仕事を奪う」という文脈ばかりが強調されますが、実際には「AIと人が一緒に働く世の中」がやってくるんでしょうね。 夏野 そうですね。AIには子どもみたいなところがあって、最初はたいして成果は出ないけれども、ちゃんと教育していくことによって、だんだん使い物になっていく。それもあって、いまからやっておかないと、すべての産業で人手が足りなくなります。すべての産業がもっと効率化しないと、いまある日本を維持することすらできないわけです。 ところが、企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効率的に、素早くやってくれるようになる。人間とAIが一体となって、堀田さんのいうパーパス(会社が実現したい未来)に向かうことが重要なので、すべての産業がいますぐにやるべきだと思っています。 平野未来氏の略歴も省略) 平野 日本のDXという観点でいうと、1つよかったのは、コロナによっていろいろなものがデジタル化されたということです。アナログなまますべてが完結していると、なかなかAIの導入は難しいので、デジタル化が進んだのはよかったと思います。 たしかに、いま起きていることのほとんどは、あくまでも「デジタル化」にすぎないので、「DXごっこをしているだけ」などと揶揄されてしまうこともあるんですが、いまの時点では「DXごっこ」でもいいのかなと思っています。 というのも、いまDXに成功している会社の数年前の姿を思い出すと、彼らもAIの戦略的側面なんて全然考えないまま、単なるコスト削減に取り組んでいたわけですから。ですけど、わからないなりにとにかくやってみて、失敗しながら知見を積み上げてきた。そういう時期があったからこそ、いま、DXがうまくいっているわけです。なので、DXごっこでもかまわないので、まずはやってみる。そこからハーベストループを描く形になっていければいいと考えています』、「日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく」、「企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効率的に、素早くやってくれるようになる。人間とAIが一体となって、堀田さんのいうパーパス(会社が実現したい未来)に向かうことが重要なので、すべての産業がいますぐにやるべきだと思っています」、その通りだ。
・『「DXの本質を理解できていない経営者は去ったほうがいい」  堀田 DXを推進するにあたって、とくに大企業では、組織の動かし方とか、全体戦略と個別の施策をどうやってつなげていくかというところで悩んでいる方が多い印象があります。前回、夏野さんがおっしゃっていたように、DXをうまくいかせるには、トップダウンでの差配が重要なりますから、トップがしっかりしていないと、なかなかDXが実現しないんですよね。だから、事業の責任者が「DXを推進しよう!」と思っても、壁にぶつかってしまう。この壁を乗り越えるうまいやり方はありますか? 夏野 僕自身は、経営陣がハッパをかけてでもDXを進めないと次の時代に行けないと思っているので、予算を個別の部局につけることをせずに、こちらで責任をもって進めています。ですが、上層部がなかなかそういう判断をしてくれない、あるいは、もともとそういう判断をする文化がないという大企業は少なくないでしょうね。 そういう中で、DX、中でもAIのように時間がかかるものについて上層部の理解を得るには、現場にいる人たちが実際に「小さなループ」をつくって回すことが大事だと思います。ただ、これは常道ではありません。正直、ここにきてDXの本質を理解できない経営者は去ったほうがいいと思っています。でも、実際にそういう経営者がたくさんいる日本の現状を見たときに、現場の人たちがループを回して、それを実際に見てもらうことには意味があります。 (堀田創氏の略歴は省略) 「こういうデータをこう分析すると、こういう結果が出てくるので、それを応用してこうすれば、こういう効果が出ます」といくら説明しても、「そんなにうまくいくはずない」と言い出す人はいます。だから、実際にやってみて、まずは小さな成功体験を見てもらう。そのうえで、「もしこれを全社展開したら、もっとすごいことになりませんか?」と説得するわけです。概念が理解できていない、あるいは、理解できても確信がもてないという経営者に対して、確信をもって「いける!」と思わせるような証拠をつくって見せることが重要です。 堀田 ハーベストループはダブル、トリプルどころか、超並列処理的に100個のループを同時に回すこともできるはずで、いったん回り出すとどんどん加速していきます。でも、最初の1ループをちゃんと回すには時間がかかって、1カ月で成果を出すのは難しい。小さいループでも大きいループでも2年くらいかけないと、成果を出し切ることはできないという面があります。 いまから2年かけて小さいループを仕込んだあとに、もう1回、2年仕込んでそれを全社展開するとなると、そこまで待てるかどうかというのがハードルになりそうです。 夏野 ただ、小さなループであれば、部署の予算内で実現できるかもしれません。大きなループは大量のデータを要するので、どうしても予算規模が大きくなる。そうすると、会社に隠れてこっそりやるというわけにはいかないんですよね。まずは小さな規模でいいから、1ループつくってみるというのはすごく大事です。 堀田 どうしても動きが鈍い大企業の中だと、まず自分たちで先駆的に小さなループを回して、それがうまくいったというところまでいけば、社内でヒーローになれる可能性があるということですね。 平野 DXがうまくいくかどうかは、パーパス次第というところがあります。自分たちが目指したい未来像がはっきりしている企業さんは、ハーベストループも描きやすい。個別施策と全体感がズレることもありません。でも、自社サイトに経営理念やビジョンを出してすらいなくて、パーパスがはっきりしていないような企業では、アイデアが散発的になってしまいがちで、どこから手をつければいいかが見えてきません。なので、まずはパーパスを明確にし、それを全社に浸透させる必要があります。 組織的には、トップのコミットメントは絶対に必要です。最近では富士通の時田隆仁社長のように、社長兼CDXO(最高デジタル変革責任者)を名乗る方も出てきて、すばらしいと思います。トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います』、「トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います」、なるほど。
・『中小・ベンチャーのAI&DXは?──「お金がないからできない」は言い訳  堀田 大企業の場合は、パーパスの実現に向けて全社的なうねりをつくっていくのが肝になりそうです。一方、ベンチャーや中小企業の場合は、AIとどういうふうに向き合うべきなのか。率直なところをうかがいたいと思います。 私自身はAIベンチャーを創業した身でもありますし、当然AIは必要だという立場ですが、一方で、ハーベストループがきちんと成果を出すまでは持ち出しが続くわけで、資金力のないベンチャーがどこまで先行投資に耐えられるかという切実な問題があります。夏野さんはベンチャー投資もされているとお聞きしていますが、ベンチャーや中小企業にとってのAIについては、どうお考えですか? 夏野 ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです。 これを武器にできないのであれば、ベンチャーをやめたほうがいいと思います。イニシャルの投資に耐えられるかという話はありますが、ベンチャーを起業した時点で、その覚悟はできているはずなんです。ベンチャーにとっての問題は、むしろ、人のアサインが間に合わないことです。成長するベンチャーほど、人材が絶対に不足する。そうなると、大企業と同じような生産性でやっている限り、絶対に勝てません。だから、テクノロジーをフル活用して、一人あたりの生産性を極限まで高めて切り込んでいかなければ勝負にならないんです。そのためには、最先端の武器が不可欠です。その武器がない状態で事業をやるなら、最初からやらないほうがいいと思います。 それに、いまほどベンチャーとか中小企業が資金調達しやすい環境なんて、ほとんどないはずです。お金が余っているからです。なので、いまは、ゲームプランを描き、リスクをとったうえで、一気に切り込んでいく大きなチャンスです。これを逃す手はない。 平野 私も同じ意見で、『ダブルハーベスト』の中でも紹介されているアメリカの損害保険会社「レモネード」はいい事例です。彼らは設立6年足らずで時価総額5000億円を超えています(2021年4月時点)。創業5年目でここまで大きくなったのはすごいことで、彼らは従来の保険会社とはまったく違うサービスをつくっています。 チャットボットと90秒ほど話をするだけで保険に加入できて、何か事故があったときには数分でお金が振り込まれる。そういうUX(ユーザー体験)をAIによって実現しています。既存の保険会社が同じことをやろうと思っても、従来のオペレーションと矛盾することが出てきてしまったりして、なかなかできません。しがらみのないスタートアップだからこそ実現できたサービスです。 レモネードは、チャットボットのやりとりで得られたデータを使って、よりよいUXを提供するというループを回しているだけではなく、不正請求を見破ったりするためのループなど、複数のループを同時に回しています。彼らにできたのですから、我々日本のスタートアップもそういう事例をどんどんつくっていかなければ、と思っています。 堀田 私も夏野さんに同意します。いまはAIをはじめ、いくつかの技術が同時多発的に出てきて、それを使えない状態で勝負するのがだんだん難しくなってきています。それに、いくら動きが鈍いとはいっても、大企業も5年くらいのスパンでは確実にキャッチアップしてくる。機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね。 夏野さんには『ダブルハーベスト』にすばらしい推薦コメントをいただきましたし、われわれとしては日本企業のAI実装を後押しするお手伝いを、これからもどんどん加速し(きたいと思っています。本日はお時間をいただき、ありがとうございました! (鼎談おわり)(P3は本の「ダブルハーベスト」の紹介なので省略)』、「ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです」、「機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね」、「ベンチャー」や「中小企業」に頑張ってもらいたいとは思うが、果たしてそれが可能なのだろうか。

第三に、9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの粟野仁雄氏による「藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280494
・『藤井聡太二冠(棋聖・王位)は7月3日に静岡県沼津市で行われた渡辺明三冠(名人・王将・棋王)との棋聖位の防衛戦で、最年少九段(18歳11カ月)と最年少タイトル防衛を達成した。8月25日には挑戦者の豊島将之二冠(竜王・叡王)を破り、4勝1敗で王位も防衛。その豊島二冠と2勝2敗になっている叡王戦五番勝負の最終局(9月13日)に「史上最年少三冠」がかかっているが、8月30日には竜王戦の挑戦者決定三番勝負で永瀬拓矢王座(28)を下して豊島竜王への挑戦権を獲得したため、年内に四冠達成の可能性も出てきている。中学生でプロ棋士(四段)デビュー、破竹の勢いで勝ち星を重ねる藤井二冠について、同じく中学生でプロデビューし、日本将棋連盟の前会長、十七世名人資格者・谷川浩司九段はどう見ているのか。(本文敬称略)』、「谷川浩司九段はどう見ているのか」とは興味深い切り口だ。
・『二人の天才  藤井聡太は2002年、愛知県瀬戸市出身。2016年、史上最年少の14歳でプロ入り(奨励会で四段昇段)。デビュー戦で元名人の加藤一二三九段(後に引退)を破ったのを皮切りに、29連勝という新記録を打ち立てる。 2018年には全棋士とアマの強豪、女流棋士が参加する朝日杯将棋オープンで初優勝、この時は準決勝で羽生善治(永世七冠資格)を破り、決勝で広瀬章人(後に竜王)を破った。翌年も連覇。今年は渡辺らを破って三度目の優勝をした。2020年7月には渡辺棋聖を3勝1敗で破り、史上最年少でタイトル獲得。8月には木村一基王位に4-0のストレート勝ちしてすぐに二冠を達成した。トップ級棋士も参加する「詰将棋解答選手権」では小学校6年から優勝し続けている(昨年と今年はコロナ禍で中止)。 今年は渡辺を退けて棋聖を初防衛し、史上最年少の九段を達成した。すでに王位の防衛戦が始まっており、三冠目を狙い叡王戦にも挑戦中だ。今春、卒業寸前で高校を中退し、棋士に専念している。 実は、中学生でプロデビューした棋士は藤井を含め歴代で5人しかいない。しかも全員将棋史に名を残す超一流の棋士ばかりだ。そのうちの一人が、『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社+α新書)を上梓した谷川浩司九段である。) 谷川は1962年、神戸市出身。1976年にプロ入り。名人戦順位戦の最初の1期だけ2年在籍したが、その後は毎年度昇級し、1983年度に最高成績で挑戦権を得て、名人戦で6月に加藤一二三を破り、史上最年少の21歳2カ月で名人となった。この記録は今も破られていない。詰将棋力を生かした終盤の寄せの鋭さから「光速の寄せ」の異名を持つ。十七世名人資格者。名人5期、竜王4期などタイトル歴の通算は27期で歴代5位。日本将棋連盟の前会長で紫綬褒章を受章している』、「谷川」氏がこんなにもすごい経歴とは初めて知った。
・『相手と戦うのではなく、将棋盤と対峙している  子ども時代の藤井聡太は負けると将棋盤にしがみついて激しく泣いた。「引きはがすのに苦労した」という瀬戸市の「ふみもと子供将棋教室」の文本力雄は「将棋を始めると何も見えない。すさまじい盤面集中だった」と振り返る。将棋を考えながら歩いていて、溝に落ちた逸話も有名だ。 谷川は語る。「彼は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう。普通は1時間も考えていたら、考えるのを休みたくなりますが、彼は公式戦でも相手の手番の時間帯も休まず考え続けます」。 藤井は対局中、ほとんど相手を見ない。相手が羽生であれ、誰であれ関係ない印象だ。ある意味、社会体験が少ないから萎縮しないで済むのでは?とも思うが、谷川の見方は異なる。 「社会体験の多寡より、彼は強い相手と将棋ができることが純粋にうれしいのでしょう。将棋の真理を追究することを実現するためには相手が強ければ強いほどいい。きっと初防衛戦で渡辺さんと豊島(将之。竜王・叡王)さんが挑戦者になったことさえも喜んでいると思います。普通は『大変なことになったな』と思うものですが」と驚くのだ』、「彼(藤井氏)は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう」、なるほど。
・『驚異の逆転力は「意図せぬ難局面への誘導」と、詰将棋力  昨年7月、札幌での王位戦の第2局、絶体絶命から木村一基王位に大逆転した。藤井の数々の逆転は将棋界を驚かせてきた。逆転力について谷川は「最近は逆転勝ちも減り、序盤からのリードを守ることが増えました。とはいえ逆転力は藤井将棋の魅力の一つですね。劣勢でも相手にぴったりと肉薄して複雑な局面に持ち込んでゆき、相手がなかなか最善手にたどり着けないような局面に誘導していく。本人には罠をかけているつもりはなく、意図せず自然にできる能力がありますね」と分析する。 藤井と谷川、40歳違いの天才には“詰将棋の強さ”という共通点もある。二人とも詰将棋を好み、難解な詰将棋問題を創作するのだ。これが彼らの終盤の逆転力に生きている。詰将棋について谷川はこう語る。「私が子どもの頃は詰将棋を解くというのが勉強で大きかったのですが、今の棋士の研究ではAIの活用が第一で、研究の半分の時間を占めるともいわれています。他の研究方法の重要度が落ち、詰将棋を解くことは研究の順位として下がりました。とはいっても、トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」。なるほど、この差は大きいはずだ。 2年前の朝日杯の準決勝で藤井に敗れた行方尚史九段が「真綿で首を絞められるようで、いつの間にか息ができなかった」と話し、「一番強い勝ち方では」と感じた。 谷川は「藤井さんは四段(プロ)になって1年くらいは逆転勝ちが多かったのですが、3年目くらいから序盤の精度が高くなってきた。作戦負けもなくなり、作戦勝ちから有利優勢のまま差を広げていく勝ち方ができるようになりました。その頃からですね」と振り返る。 「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ。藤井はAIについて「序盤で定跡とされてきた指し手以外にもいろいろあると分かってきて、自由度が高まっていると感じています」と語っている』、「トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」、「「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ」、初めて知った。
・『AIの常識外の一手  そんな藤井の言葉を象徴するような「事件」があった。2017年5月、現役名人だった佐藤天彦九段と対戦したAI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ。 佐藤は体を真横に折り曲げて悩んだが、この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった。これについて谷川は「将棋の初手は30通りの選択肢があり、普通は角道を開く7六歩とか飛車の前の歩を進める2六歩、さらには真ん中の歩を進める5六歩の3通りが圧倒的です。それ以外を指されたらそこで考えるしかない。人間は何百手とかは読めても何万手とかまでは読めません。AIと違い、直感で多くの手は捨てて、残りだけで考えます。3八金なんていう手を指されることを考えませんが、序盤なのでそれで形勢を損ねるわけでもない。これからもAIの長所、人間の長所をうまく組み合わせて(将棋以外でも)すべての分野でAIとうまく付き合うしかないと思います」』、「AI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ・・・この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった」、さすがAIだ。
・『AIの登場により、将棋は新しい時代に入った  藤井はAIについて「数年前は棋士とソフトの対局が大きな話題になりました。今は対決の時代を超えて共存という時代に入ったのかなと思います」と語っている。言葉通り、「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった。 「AI研究を始めるのは比較的遅かった」という谷川は、藤井について「AIを非常にうまく取り入れることに成功した」とみる。「AIで事前の研究と対局後の研究がやりやすくなりました。戦略としての事前研究が大事になってきて、次の対局に向けて相手が知らないような指し方を自分だけが知っていれば、そこに引っ張り込んで戦えれば有利にもなります。以前はどこが敗着か分からないことが多かったのが、今はデータを打ち込めば分かる。負けた将棋を研究し次に生かせる。対局では直後に感想戦もしますが、その検討が正しいかどうかは何ともいえない。どの手が疑問手だったかとか、対局で感じていた優勢、劣勢が本当はどうだったのかなどもAIと人間の感覚が違うことはあります」(谷川) 名古屋には将棋会館がないため、藤井は東京か大阪に始終通わねばならないハンディがある。こうした中、多くの研究が自宅でできるAIがハンディをカバーしている面もあるのではないだろうか』、「「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった」、対決ではなく、協働の時代に入ったようだ。
・『AIと本質的な棋力は関係がない  藤井にとって「天敵」ともいえる存在が、豊島将之二冠だった。今年の6月時点での成績は1勝6敗と大きく負け越していたが、その後、王位戦では4勝1敗で豊島を退けるなど、今年に入ってからは7勝3敗。早くも天敵とは言えなくなっている。豊島は一時期、対人研究を封じてAI研究に没頭した。藤井に勝つには、人間相手よりもAIを使った研究のほうが良いのだろうか? しかし、谷川はAIが「藤井キラー」になっている要因ではないとみる。 「豊島さんは棋士になるのも早かったし、20歳でタイトル挑戦もしていた。本来、もっと前から今のような活躍ができた棋士です。だから藤井さんに勝つことは全く不思議ではないのですよ。ただ以前、電王戦(人間対AIの団体戦)の第3回で、トップ棋士の中で彼だけが勝利したことは、AIに没頭するきっかけになったかもしれません。20代半ばで何度かタイトル戦に挑戦して跳ね返され続けて試行錯誤する中で、ソフトの研究に時間を費やしたのでしょう」 藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している。谷川は著書で「藤井さんの強さは、最善手を求める探求心と集中力、詰将棋で培った終盤力とひらめき、局面の急所を捉える力、何事にも動じない平常心と勝負術など極めてアナログ的なもの。将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」としている』、「藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している」、「将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」、なるほど。
・『成るか、至難の最年少名人  藤井二冠はタイトル獲得の最年少記録や今年のタイトル防衛の最年少記録を達成した対局が誕生日の直前にあるなど、記録に花を添える「運」も持っている。 谷川は彼の運について「14歳のデビュー戦で藤井さんは加藤一二三九段と対局して勝ち、29連勝へのスタートとなりました。加藤さんはまもなく引退されたので、あの時でなければ『62歳差の公式戦対局』は実現しませんでした。タイトル戦もコロナ禍で、将棋連盟の手合課が苦労して対局予定を組み、藤井さんはそれに応えました。結果的には幸運に見えても、彼は自分の力で運を呼び寄せているのです」と語る。谷川自身は早くから目をかけてくれた芹沢博文九段(故人)に「お前は運がいい。運を大事にしろ」と言われ、いつも自分は運がいいと思うようにしているそうだ。 さて、藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」(21歳2カ月)だ。 名人になるには「鬼の棲家(すみか)」と言われるつわものぞろいの今期のB1を1期抜けして来期にAクラスに上がり、総当たり戦で最優秀成績を収めて挑戦者になり、現役名人を七番勝負で破らなくてはならない。 谷川は「大変ですが、彼のことですから乗り越えるかなという気持ちもありますね。楽しみですが、私にとって残る(最年少)記録は名人獲得だけなので、抜かれたらちょっと寂しい気持ちになるかもしれませんね」とほほえんだ。 >>後編「AIは将棋をどう変えたのか?谷川浩司九段が語る棋士の未来」に続く)』、「藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」」、どうなるのだろうか。なお、「後編」の紹介は省略。
タグ:人工知能 (AI) (その12)(「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)、DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)、藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編) ダイヤモンド 「「部門予算」でDXをやる会社が、3年後に後悔すること【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(前編)」 「いろいろなプロジェクトを見ていて思うのは、AIに短期的な効用を求める人が結構いるということです。やってみたらここがダメとか、全然使えないという判断をすぐに下してしまう人が多い。状況に応じてつねにチューニングをしながらループをつくっていくという発想が、いままでのシステム開発と全然違うので、人間の側が適応できていないわけです」、なるほど。 「DXは単なる手段であって目的ではありません。そこを見えていない方が多いですね。大事なのは、デジタライゼーションが起こった結果、人の仕事のフローがどう変わるか、人の組織設計がどう変わるか、ということであって、思考がそこに至らないままテクノロジーだけ導入しても、結局何も変わらない」、その通りだろう。 「AIを使って根本的に業務改革をしようというときに、ループがちゃんと回るということが証明されるまでには、それなりに時間がかかるわけです。 ところが、その間の開発費を特定の部局の予算につけてしまうと、単純にコストが増えるので、現場は動きたくなくなる。だから、それは社長予算でやる必要があります。現場に「経営者予算だから支出は気にしなくていい。エンジニア人員をしっかり割いてくれ」といえるかどうかがすごく重要です」、「部門予算」ではなく、「経営者予算」でやれとの主張は理解はできるが、予算統制上の問題も出てきそうだ 「DXがわからない経営者・AIを使えないベンチャーは去ったほうがいい【ゲスト:夏野剛さん】[『ダブルハーベスト』トーク]夏野剛+平野未来+堀田創(後編)」 「日本はこれから人口が減っていくので、「AI(人工知能)にやってもらえること」と「人の業務」との分担をつねに見直していくことがすごく大事です。そのなかで、「人間がやらなくていいこと」をできる限り増やしていく」、「企業の方にAIの話をすると、どうしてもデータシステムのことだと思い込んで、「情報システム部がやればいい」という話になりがちなんですよね。だけど、実際にはこれからすべての業務の中にAIが組み込まれていくわけです。そこにデータを流してあげると、AIが勝手に判断して、いままで人がやってきたことを、より効 「トップのコミットメントと同時に、現場レベルでも、いろんな部門を渡り歩いてきて全体感が見えているような優秀な人がいると強い。トップと現場、上と下の両方がそろっていると、DXは進めやすいと思います」、なるほど。 「ベンチャーも中小企業も、大企業と戦っていく、あるいは、大企業がもっている市場に切り込んでいくときの切り口は、テクノロジーしかないんです。テクノロジーという観点でいうと、いまいちばんホットな武器、最先端で切れ味のいい武器はAIです。大企業がまだ活用しきれていないからです」、「機動力の高いベンチャーや中小企業は、いまこそAIを活用して先行者利益を追求すべきタイミングだと思いますね」、「ベンチャー」や「中小企業」に頑張ってもらいたいとは思うが、果たしてそれが可能なのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 粟野仁雄 「藤井聡太はなぜこんなに強いのか?将棋のレジェンド・谷川浩司の「天才論」 谷川浩司九段に聞く・前編」 「谷川浩司九段はどう見ているのか」とは興味深い切り口だ。 「谷川」氏がこんなにもすごい経歴とは初めて知った。 「彼(藤井氏)は相手によって作戦を変えることはなく、相手の得意戦法を外すこともしません。対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです。子ども時代の将棋教室で培われた集中力と長時間考え続けられる力から来たのでしょう」、なるほど。 「トップ同士が互いに時間がなくなってからの戦いでは、詰将棋経験が豊富な棋士は『これは見た形だ』として考えずに指せる。(詰将棋を)やっていない人なら30秒かかるところを、やっている人なら1秒で分かることもあります」、「「AIの申し子」と言われる藤井二冠だが、実際にAIを取り入れたのはプロ入りの少し前からだ」、初めて知った。 「AI「ポナンザ」の初手は常識外れの「3八金」。棋士の公式戦では出現したことがない、つまり人間ならまず指さない手だ・・・この勝負を制したAIだった。羽生は「我々がやってきた将棋は、将棋の一部でしかなかったのでは」とうなった」、さすがAIだ。 「「人間対AI」の時代は短期間で終わり、棋士たちは研究に使うようになった」、対決ではなく、協働の時代に入ったようだ。 「藤井自身、AIについて「序中盤の形勢判断などで力になった部分は大きいとは思いますが、考える候補手、拾う手が若干増えたかなという印象はあります。ただ、はっきりと違いを感じるものではないです」と話している」、「将棋ソフトを使い始めたのはプロデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」、なるほど。 「藤井にとって最も難しい最短記録が、谷川の持つ「最年少名人」」、どうなるのだろうか。なお、「後編」の紹介は省略。
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