SSブログ

働き方改革(その33)(新時代の雇用制度 理想はジョブ型とメンバーシップ型の「ハイブリッド」だ、個人請負無法地帯シリーズ(働き方改革の「抜け道」になるおそれ あらゆる業種に広がる「無権利状態」、契約書はなく不明朗な天引きが横行 キャバクラ、知られざる「労働搾取」) [経済政策]

働き方改革については、4月29日に取上げた。今日は、(その33)(新時代の雇用制度 理想はジョブ型とメンバーシップ型の「ハイブリッド」だ、個人請負無法地帯シリーズ(働き方改革の「抜け道」になるおそれ あらゆる業種に広がる「無権利状態」、契約書はなく不明朗な天引きが横行 キャバクラ、知られざる「労働搾取」)である。

先ずは、5月20日付けダイヤモンド・オンライン「新時代の雇用制度、理想はジョブ型とメンバーシップ型の「ハイブリッド」だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/270970
・『ジョブ型とメンバーシップ型、どちらが自社に合っているのか――。メンバーシップ型の雇用制度の下で育ってきた経営者や人事責任者の中には、ジョブ型雇用の導入をポジティブに受け入れられない人もいることだろう。しかし、実のところ、欧米企業を含めた優れた企業は、ジョブ型とメンバーシップ型の良い部分を上手に取り入れ、「ハイブリッド型」の雇用制度を実現しているという』、興味深そうだ。
・『メンバーシップ型とジョブ型 優れた企業は「ハイブリッド型」  リモートワークが急増したこの1年で、職務内容などを明確に定義して人材を採用する「ジョブ型雇用」への関心が集まった。そして、これまで多くの日本企業が導入してきた新卒一括採用をベースにした年功序列の「メンバーシップ型雇用」を見直す機運が高まっている。 この議論が行われる際には、「メンバーシップ型とジョブ型、どちらがいいのか」といった二元論で語られることが多い。 それに対し、リクルートマネジメントソリューションズの研究・開発部門である組織行動研究所の古野庸一所長は、「そもそもメンバーシップ型とジョブ型は相反するものではなく、良い会社はどちらの要素も含んでいる」と語る。つまり、優れた企業は、メンバーシップ型とジョブ型の「ハイブリッド」なのだという。 ではハイブリッド型とは、具体的にどのようなものなのか。それを説明する前に、メンバーシップ型とジョブ型のそれぞれの弊害について、改めて確認しておこう。 ▽メンバーシップ型「4つの弊害」とジョブ型「5つの弊害」(昨今、日本企業でジョブ型への注目が集まる要因としては、ジョブ型が基本である欧米企業などとの整合性、AIやロボットなど専門人材獲得の必要性、多様な価値観・働き方の浸透、自律的なキャリア形成の必要性などが挙げられる。) さらに、メンバーシップ型の弊害が今の日本企業の競争力を低下させている点も、ジョブ型への関心を高めている理由だろう。メンバーシップ型の弊害として、古野所長は以下の4点を挙げる。 1.内集団バイアス……自分たちは優秀だ、よそものを評価しないという意識 2.集団的浅慮……異議が唱えにくい、オープンイノベーションが進まない 3.多様性への不寛容……中途採用者をよそもの扱い 4.フリーライドの許容…働かない人も高い給料、温情人事 これらの弊害に、思い当たる節のある読者も少なくないはずだ。それならジョブ型を導入すれば問題がすべて解決するのかといえば、「ジョブ型にも弊害はある」と古野所長は語る。以下に挙げる5つの点で、弊害の起こる可能性があるという。 1.協働……多くの仕事は一人で完結しない。チームビルディングを意識すべき 2.組織市民行動……仕事と仕事の間、組織と組織の間にある仕事を拾う人がいなくなる 3.カルチャーフィット……経験やスキルからジョブを担えても、仕事に向かうスタンスや仕事の仕方が合わないというケースも 4.適職……自分が向いている仕事を自分で理解していることが前提になるが、若手を中心に実際はやってみないとわからない場合も多く、機会を喪失する可能性も 5.育成……まったく新しい環境に適応する過程で人は成長するが、ジョブ型だと異動させにくいので育成の可能性をはばむことも』、「メンバーシップ型の弊害」、特に「1.内集団バイアス」、「2.集団的浅慮」は伝統的大企業に顕著だ。「ジョブ型」の「弊害」のうち、「1.協働」、「2.組織市民行動」、「4.適職」なども大いにありそうだ。 
・『欧米優良企業、日本の優良IT企業はすでに「ジョブ型+メンバーシップ型」  古野所長によると、社会心理学の観点から見ても「人はそもそもメンバーシップ型」なのだという。 「人は意識していないかもしれないが、愛国心や愛校心などを持っており、どこに属しているかが自分のアイデンティティを形成しているともいえる。また、幸福学においては、社会的なつながりや意味のある大きな組織への貢献が幸福の条件になっている」(古野所長) そうした人間心理を鑑みて、ジョブ型を基本としている欧米企業でも、メンバーシップ型では前提条件ともいえる「カルチャーフィット」を重視する動きが進んでいる。 例えば、セールスフォース・ドットコムでは、お互いを家族のように大切にする「Ohana(ハワイ語で家族)」というカルチャーがあり、これにフィットするかどうかを重視して採用活動を行っている。また、グーグルでは選考時に、あいまいで不明瞭な環境を楽しみつつ、解決方法を見つけられる自主性を持つ「グーグルらしさ(グーグリネス)」があるかどうかを重視しているという。 このように欧米の優良企業も、選考時から候補者の自社へのカルチャーフィットも大事にすることで、安心して働けるコミュニティを形成しようとしているわけだ。 そして実は日本でも、大手ITベンチャー企業を中心に、すでに同様の体制が整えられている企業が出てきているという。 「日本の優良ITベンチャーは、すでにジョブ型での採用と運用を行っていると同時に、メンバーシップ型でもある。こうした企業に、(ジョブ型とメンバーシップ型の)どちらがいいかという疑問を投げかけること自体、ナンセンスだろう」(古野所長)』、原始時代の集団生活を考えても、「人はそもそもメンバーシップ型」なのだろう。
・『メンバーシップ型の弊害がなければジョブ型導入の必要はない  「日本の大企業の人事担当者から、当社でもジョブ型を導入したほうがいいか?』などと尋ねられることがあるが、そもそも何が問題になっているのか、問い直すことが多い。例えば、年功序列型の人事で、働いていないのに高い給料をもらっている人がいる。つまり、先ほど挙げた、メンバーシップ型のフリーライド(温情人事)の問題だ。高い給料に見合った仕事を提供できれば、制度を変えなくても問題は解決できる。それでもうまくいかなければ、仕事に見合った報酬を提供できるような人事制度に改定すればいい。新たにジョブ型ということを持ち出す必要はない。 変化が著しい現代において、理想は個人がプロフェッショナルとして働きながらも、メンバーが協働すること。これからの時代に、メンバーがやりがいを持って仕事に没頭し、効果的に協働するためには、ジョブ型・メンバーシップ型のどちらも必要だ」(古野所長) プロスポーツ選手は、それぞれがプロとして役割を全うしながらも、チームのために協働することが求められている。これからのビジネスパーソンは同じような意識を持つことが重要であり、企業側には自社に合った形で、メンバーシップ型とジョブ型のちょうどいいハイブリッド型を模索することが求められている』、「企業側には自社に合った形で、メンバーシップ型とジョブ型のちょうどいいハイブリッド型を模索することが求められている」、企業によって、「メンバーシップ型とジョブ型」の比重は違ってくるのだろう。

次に、5月27日付け東洋経済Plusが掲載した個人請負無法地帯シリーズの第一回「働き方改革の「抜け道」になるおそれ あらゆる業種に広がる「無権利状態」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27648
・『柔軟な働き方の代表例である個人請負。無権利状態であるがゆえに予期せぬ事態に追い込まれる人たちがいる。 「月収45万円の求人チラシにひかれて働き始めたが、実際は月20万円を超えたことは一度もなかった」。個人請負の宅配ドライバーとして働いていた男性はそう振り返る。採用後に押印した契約書が、雇用契約書ではなく「業務委託確認書」だったことで、ガソリン代や自動車保険料など維持管理費はすべて自己負担を余儀なくされたためだ。 朝7時から夜10時まで働くような激務の末、胃潰瘍で倒れ離職を余儀なくされた。労災や失業保険給付がないどころか、逆に会社側から残る自動車購入代金の支払いを求められる羽目に陥った。「個人請負だとここまで守られないとは知らなかった」と男性は悔やむ』、「個人請負」だと健康が絶対条件になる。
・『労働法規がいっさい適用されない  フリーランス、個人事業主などと呼ばれ、請負や委託の契約による「個人請負」で働く人は、近年急増している。フリーランスの実態を調べた政府の各種調査によれば、その規模は約340万人から約470万人とされている。これは全就業者の5%~7%にあたる。 その業種は多種多様で、販売員やメンテナンス担当者、物流や建設業界などで広まっているが、最近では「ウーバーイーツ」のような、インターネットのプラットフォームを介してやり取りされる、短期単発の仕事、「ギグ・エコノミー」でも活用されている。 政府が働き方改革で掲げる「柔軟な働き方」の代表例である個人請負。一社専属で他の社員と同様に働いていることも多く契約社員などと混同されがちだが、身分は自営業者なので労働基準法など労働法規がいっさい適用されない。 あくまで委託された業務に対する報酬が支払われるため、時間外、休日、深夜労働手当などはつかない。最低賃金保障や解雇規制はなく、職を失っても失業保険が使えない。年金、健康保険は全額自己負担で国民健康保険、国民年金に加入することになる。 つまり、個人請負には守られる法律が何もない。契約・パート社員、派遣労働者といった非正社員よりも不安定な状態に置かれている。実際、無権利状態のために、予期せぬ事態に追い込まれる人たちがいる』、「個人請負には守られる法律が何もない。契約・パート社員、派遣労働者といった非正社員よりも不安定な状態に置かれている」、といった実態をよく把握したうえで、仕事に飛び込むべきだが、リスクを理解しないまま仕事に飛び込む向きも多いと思われる。
・『組合結成したら一方的に契約打ち切り  「突然、紙切れ一枚で切られた」。 長年にわたり東京都内で電気メーターの交換工事を続けてきた40代男性はそう憤る。 都内の各家庭や事業所などに設置される電気メーターの付け替えは、東京電力グループの関連企業が担ってきた。この関連企業の1社と請負契約を結び作業してきたのが男性ら個人事業主たちだ。 今春、関連企業からこの男性らに、「2021年度以降の契約対象者は法人と致します」と書かれた一枚の紙が届いた。つまり、個人事業主との契約は今後行わないということだった。 2018年に男性ら個人事業主約40人は労働組合を結成し団体交渉を申し入れたが、会社側は個人事業主は労働者ではなく団交に応じる義務はないとして、これを拒否。東京都労働委員会は2020年2月、団交拒否は不当労働行為と認め応じるように命令したものの、いまだ拒否を続けている。 そうした中、紙一枚の通知で一方的な契約の打ち切りとなった。「こんな露骨な組合いじめが許されたら、会社に何もモノを言えなくなる」(男性)』、確かに「露骨な組合いじめ」だ。
・『ハードル高い「労働基準法上の労働者性」  この間の労働契約法改正による有期雇用規制(有期雇用が5年を超えたとき、労働者の申込みで無期雇用に転換できるルール)や、働き方改革による同一労働同一賃金の導入で、非正社員の待遇改善は進んだ。しかし、個人請負のような「非雇用」がその抜け道となってしまっては、すべての取り組みが水泡に帰しかねない。 ただし、無権利状態が簡単に是認されるわけではない。裁判所や労働委員会で争われれば、当事者がどんな契約形式・合意をしていても、実態に基づいて「労働者性」があると認められれば、労働法の適用対象となる。 中でも労働組合を組織して団交を行う権利が保障される「労働組合法上の労働者性」は、経済的に従属していることなどを要件に緩やかに認められている。 2011年、2012年に最高裁判所が相次いで労組法上の労働者概念を広く捉える積極的判断を占めたことは注目を集めた。先に触れた東電グループの関連企業に団交に応じるよう東京都労働委員会が命じたのもそうした流れにある。 他方で残業代や労災補償、失業給付などの対象となる「労働基準法上の労働者性」はハードルが高い。 仕事の諾否の自由、指揮監督、拘束性の有無、報酬の労働対償性などから使用従属性の有無を総合的に判断するとされるが、内勤の正社員を典型として労働者性を判断する傾向が強く、裁判上での争いでも労働者性が認められることは少ない。 だが新型コロナウイルスの感染拡大による雇用不安に真っ先に直面しているのが、個人請負で働く人たちだ』、「労働組合法上の労働者性」は認められても、「「労働基準法上の労働者性」はハードルが高い」、「内勤の正社員を典型として労働者性を判断する傾向が強く、裁判上での争いでも労働者性が認められることは少ない」、困ったことだ。
・『フリーランスのガイドラインを策定  そうした中、政府は2020年12月末、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」案を提示し、今年4月から施行された。 ガイドライン案の「基本的な考え方」で、「フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上『雇用』に該当 する場合には、労働関係法令が適用される」と明記された。 こうした大原則の明記は評価すべきだが、肝心の労働基準法上の労働者性の判断基準のハードルの高さは変わらないままだ。また2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法には、65歳~70歳までの就業確保措置の一つとして業務委託契約が含まれるなど、むしろ個人請負化の流れは加速する見通しが大きい。 コロナ禍で明確に浮かび上がった、労働者と同じ業務をはるかに不利な条件で担うことが多い個人請負。その待遇改善に向けて、従来以上に踏み込んだ施策の実施が望まれる』、「コロナ禍で明確に浮かび上がった、労働者と同じ業務をはるかに不利な条件で担うことが多い個人請負。その待遇改善に向けて、従来以上に踏み込んだ施策の実施が望まれる』、その通りだ。

第三に、この続きを、5月29日付け東洋経済Plusが掲載した個人請負無法地帯シリーズの第二回:「契約書はなく不明朗な天引きが横行 キャバクラ、知られざる「労働搾取」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27646
・『本人が知らないまま「個人請負」にさせられ、予期せぬ事態に直面する人たちがいる。 キャバクラやクラブ、ガールズバーなどで酒を提供しながら、接客を行う「キャスト」と呼ばれる女性たち。他の飲食店と同様に求人広告などで募集されており、各店に雇われて働いているように見える。 だが実際は、本人が知らないまま店側に都合よく「個人請負」にさせられ、雇われていれば受けられるはずの法的な保護や補償がない状況に陥る事態が多発している。 店はキャストと契約書を交わさないことが多く、どのような雇用形態になっているかが本人にもわからないことがほとんどだ。給与明細には合計金額の記載しかないが、さまざまな名目で店から月の給料の10%以上が天引きされているケースもある。 後から不当な扱いに気がついたとしても、「夜の仕事ではこれが常識」と言いくるめられたり、「明日から来なくていいから」とその場でクビになったりもする。ほとんどの女性は黙って別の店に移るため、実態が見えづらい』、水商売では、「個人請負」のマイナス面が出易そうだ。
・『天引き、罰金は当たり前  「この業界はそういうものだとずっと思っていました」。キャバクラでの不当な労働環境について、そう話すのはAさん(30)だ。 Aさんは現在もキャストとして働きながら、同じような経験をしているキャストたちを守る「キャバ&アルバイトユニオンOWLs」を2018年に立ち上げた。キャバクラで働き始めて10年ほどになるが、これまで働いてきた店のほとんどが「普通の仕事ではありえないような天引き」を当然のように行っていたという。 例えば、過去に勤務していた店では、客が使うトイレットペーパー代やグラス代が含まれている「厚生費」、終電がなくなった後に車で帰宅する際の「送り代」、ヘアメイク代、ロッカー使用代などが、毎月の給料から引かれていた。それぞれ総支給額の5%や出勤1回につき1000円などと決まっており、加えて「所得税」という名目で総支給額の10%の金額も天引きされたという。 キャバクラやガールズバーの求人広告に書かれている時給は2000円~5000円程度が相場で、通常のアルバイトの時給よりも高い。ここに客からの指名料やドリンク代金、客と食事をしてから一緒に出勤する「同伴」などが、キャストに対する報酬として還元されるシステムを採用している。 しかし、実際には高い時給がそのまま受け取れるのではなく、前述のとおり店の備品や管理に関わる費用を、キャストの給与から差し引いているのが実態だ。都内のあるクラブの場合、求人で「時給5500円」とうたっているが、実際にはそこから税金の名目で10%分と、「共済費」などとして1回の出勤あたり1300円を差し引いている。 当日に仕事を休んだ際には「罰金」を課す店もある。別の元キャストは、「罰金は、1日あたり2万~5万程度の場合が多い。これは1日働いても稼げる額ではありません」と話した。一方、シフト制で決められた勤務時間内であっても客が来ない場合は帰される「早上げ」もある。店の指示での早上げにもかかわらず、働く予定だった分の給料は支払われない』、「店の指示での早上げにもかかわらず、働く予定だった分の給料は支払われない」、酷い話だ。
・『「委託」であって「雇用」ではない  2019年、Aさんは自身が過去に在籍していた店に対し、組合として団体交渉を行った。その際、以下の未払い賃金を返還するよう求めた。 ①店の都合による早上げ分の未払い賃金 ②22時以降の深夜帯における深夜割増賃金 ③着替え・ヘアメイクのために指示されていた30分前出勤の分の賃金 ④店が客から「同伴料」をとり、同伴接客を行った時間分の賃金 ⑤従業員から「申請はできない」と言われた未消化の有給休暇23日分 ⑥店長の指示で出勤を命じられたものの、客が入らないとの理由で出勤を取り消された休業日の賃金 ⑦1日出勤するごとに差し引かれていた厚生費、送り代、修繕費、所得税などの違法控除 店を運営する会社側は当初この要求をほとんど受け入れ、支払うことで合意した。だが期日を過ぎても、未払い分の賃金は支払われなかった。その後、会社の社長がAさん側に電話で伝えたのは「Aさんとの契約は(個人事業主への)委任であって、雇用ではない」という主張だった。 会社に雇われた労働者でなければ、労働基準法が適用されない。すると、深夜割増賃金の適用や給料からの控除の禁止を定めた法律の規定が適用されなくなる。 Aさんはこれまで、当然自分は労働者だと思っていたため、驚いた。これまで店や会社から個人請負契約であると聞かされたことは一度もなかったからだ。 会社側は「委任契約であると認めるなら解決金を支払う」とも持ちかけてきたが、未払い賃金の返還を求めた団体交渉の申し入れは拒否し続けたため、裁判で争うことになった。Aさんの担当弁護士は、会社側が突如個人請負だとしたことについて、「未払い賃金の支払いを逃れるための言い訳であることは明確だ」と語る。 訴訟では、労働者であるかどうかは契約内容ではなく、実際にどのような環境や条件で働いていたかという実態を基に判断される。担当弁護士は、Aさんの勤務実態からして十分、労働者にあたるのではないかとみている。 というのもAさんの場合、決められた日時に出勤し、接客を拒否することなどはできず、店長の指示に従って客の酒の相手をしていた。また店が指定する衣装を着用することが義務付けられたり、店長からは「あそこの席を盛り上げて」「ドリンクがまだ出てないから頑張れ」と、接客に関する指示を受けたりしており、明確に指揮監督下で働いていた。 また、基本的に時給と働いた分の時間でAさんの報酬が決まっていた。ほかの客から指名を受けたときにはインセンティブ賃金が支払われるが、報酬に占めるその割合は2割程度。これは通常の雇用契約関係におけるインセンティブとしても違和感はない。 会社側はこの間、団体交渉でのやり取りに対して「職員が話を聞いただけ」と合意を取り消したり、ある一定期間の経営を当時の店長であるX氏に委託していたために「(会社側に)その期間の支払い責任はない」といった主張を展開。裁判は現在も続いている』、「Aさんの場合、決められた日時に出勤し、接客を拒否することなどはできず、店長の指示に従って客の酒の相手をしていた。また店が指定する衣装を着用することが義務付けられたり、店長からは「あそこの席を盛り上げて」「ドリンクがまだ出てないから頑張れ」と、接客に関する指示を受けたりしており、明確に指揮監督下で働いていた」、これではどう考えても「労働者にあたる」ようだ。
・『「簡単に言えばアルバイトみたいな感じ」  実態としてはキャストを労働者として雇用しているにもかかわらず、個人請負を装って労働基準法で定められたルールを守らないキャバクラ店は、他にもあるのか。また多くのキャストが働く店を探しているネットの求人サイトの情報は、実際に働く時の条件をきちんと掲載しているのか。 記者は関東圏内のキャバクラやクラブ、ガールズバーなど複数の店舗に対して電話で話を聞いた。すべての店が、アルバイト募集サイトに求人広告が掲載され、雇用形態は「アルバイト」と表記されている。賃金は時給、労働時間はシフト制で管理されており、Aさんの労働実態とも条件が近い。 ある求人サイトの会員制クラブの広告。 取材に応じた全店舗が、「キャストは個人事業主(個人請負)である」と答えた。さらに求人広告に記載されている時給から、実際の支払いの際には何らかの名目で10%程度の控除を行っていたり、深夜の割り増し賃金が適用されていなかったりするケースも多くあった。 中には応募者は個人請負とアルバイトの違いなど知らないとみたのか、こんな回答をする店さえあった。 「キャストとして働く場合は形的には個人事業主として、お店と契約するような形になるが、まあ、簡単に言えばアルバイトみたいな感じですね」(都内のクラブ担当者)。 別のキャバクラ店に深夜割り増し賃金があるかと尋ねると、「そういうものは特にないです。それも含めて時給に入っています」と答えた。 実際は個人請負として契約するのに、求人広告でアルバイトと偽ることは、応募者を騙していることになるはずだ。Aさんによれば、「求人に載っている情報は基本信じられない。時給が高く設定しているところは、実際にはかなりの額を天引きしている」という。 では、求人広告の掲載元は、多くの店が「慣例的に」違法な労働搾取を行っていることを知らないのだろうか。 アルバイトの求人を掲載する大手の人材サービス会社に聞くと、担当者は「求職者を混乱させる書き方をしないなど、一定の規定はある」としたうえで、「広告主に取材をした内容をもとに作成しており、十数万件ある求人広告を個別に精査することは難しい」と、実質的には雇う側からの情報を鵜呑みにするしかない状況を明かした』、「実際は個人請負として契約するのに、求人広告でアルバイトと偽ることは、応募者を騙していることになるはずだ」、ここまでの違法行為が堂々と行われているとは驚かされた。
・『泣き寝入りするしかなかった  かつて高級クラブな「どでは自分で顧客や収益を管理し、いわゆる「一人社長」として実力で売り上げを獲得するプロのホステスたちがいた。現在もそうしたホステスやキャストも一部存在するが、大方は昼間も働く派遣社員や福祉職、学生だという。 OWLsのメンバーでキャスト経験のあるBさんも、「精神的・身体的に問題を抱えていたりすることで、日中は働けない女の子もいます。すると、おかしな扱いを受けたとしても、お店を転々としながら安定しない働き方を続けるしかありません」と、水商売の業界で働く女性の立場の不安定さを語った。 この業界特有の事情もある。店で働くキャスト同士は客からの指名や人気次第で、報酬が大きく変わる。ライバル関係であるため、相談しあったり団結したりすることはほとんどない。多くがキャバクラで働いていることを人には隠しており、周囲にばれることをおそれて、声を上げることができない女性もいる。 もし異議をとなえたら店にはむかったと思われ、「何かされるのではないか」という怖さもある。実際にユニオンで相談に乗っていたケースで、団体交渉を行った後に店長がキャストの自宅に押しかけてきたことがあったという。ほとんどの場合、団交などに踏み切れるのは店での勤めを辞めた後だ。 行政にも頼れない。OWLsでAさんと共同代表を務めるCさんは、キャバクラで働いていたときに即日解雇や給料未払いの憂き目に遭った。その際、労働基準監督署や弁護士等が法律相談を行う「法テラス」にも行ったが、真摯に対応してくれたところはなく、途方にくれたという。 「役所に相談に行っても説明が難しかったり、『契約書がなければ店に注意できない』と突き返されてあきらめてしまう女の子もいる。もっとひどい場合がには、『そんな仕事をしているのが悪い』と言われたこともありました」(Cさん)。 それだけに、水商売での「労働者性」を争った裁判事例はまだ数が少ない。多くの場合、店で理不尽な対応をされても、女性たちは別の店に移るなどして泣き寝入りするしかなく、実態も表に出てこない。 Aさんは自らの裁判での判決が、「同じようにひどい目に遭っている女の子たちも、おかしいことにはおかしいと声を上げてもいいんだと思えるようなきっかけになったら」と話す。 コロナ禍では店が休業しても補償金が支払われず、困窮する女性も多くいる。水面下で続くキャストたちへの不当な扱いはそうした厳しい環境もあり少しずつ露呈しており、根本的な解決が必要な段階に来ている』、「「法テラス」にも行ったが、真摯に対応してくれたところはなく、途方にくれたという」、「法テラス」に「真摯に対応」してもらうことが先決だ。
タグ:働き方改革 (その33)(新時代の雇用制度 理想はジョブ型とメンバーシップ型の「ハイブリッド」だ、個人請負無法地帯シリーズ(働き方改革の「抜け道」になるおそれ あらゆる業種に広がる「無権利状態」、契約書はなく不明朗な天引きが横行 キャバクラ、知られざる「労働搾取」) ダイヤモンド・オンライン 「新時代の雇用制度、理想はジョブ型とメンバーシップ型の「ハイブリッド」だ」 「メンバーシップ型の弊害」、特に「1.内集団バイアス」、「2.集団的浅慮」は伝統的大企業に顕著だ。「ジョブ型」の「弊害」のうち、「1.協働」、「2.組織市民行動」、「4.適職」なども大いにありそうだ。 原始時代の集団生活を考えても、「人はそもそもメンバーシップ型」なのだろう。 「企業側には自社に合った形で、メンバーシップ型とジョブ型のちょうどいいハイブリッド型を模索することが求められている」、企業によって、「メンバーシップ型とジョブ型」の比重は違ってくるのだろう。 東洋経済Plus 個人請負無法地帯シリーズ 「働き方改革の「抜け道」になるおそれ あらゆる業種に広がる「無権利状態」」 「個人請負」だと健康が絶対条件になる。 「個人請負には守られる法律が何もない。契約・パート社員、派遣労働者といった非正社員よりも不安定な状態に置かれている」、といった実態をよく把握したうえで、仕事に飛び込むべきだが、リスクを理解しないまま仕事に飛び込む向きも多いと思われる。 確かに「露骨な組合いじめ」だ。 「労働組合法上の労働者性」は認められても、「「労働基準法上の労働者性」はハードルが高い」、「内勤の正社員を典型として労働者性を判断する傾向が強く、裁判上での争いでも労働者性が認められることは少ない」、困ったことだ。 「コロナ禍で明確に浮かび上がった、労働者と同じ業務をはるかに不利な条件で担うことが多い個人請負。その待遇改善に向けて、従来以上に踏み込んだ施策の実施が望まれる』、その通りだ。 「契約書はなく不明朗な天引きが横行 キャバクラ、知られざる「労働搾取」」 水商売では、「個人請負」のマイナス面が出易そうだ。 「店の指示での早上げにもかかわらず、働く予定だった分の給料は支払われない」、酷い話だ。 「Aさんの場合、決められた日時に出勤し、接客を拒否することなどはできず、店長の指示に従って客の酒の相手をしていた。また店が指定する衣装を着用することが義務付けられたり、店長からは「あそこの席を盛り上げて」「ドリンクがまだ出てないから頑張れ」と、接客に関する指示を受けたりしており、明確に指揮監督下で働いていた」、これではどう考えても「労働者にあたる」ようだ。 「実際は個人請負として契約するのに、求人広告でアルバイトと偽ることは、応募者を騙していることになるはずだ」、ここまでの違法行為が堂々と行われているとは驚かされた。 「「法テラス」にも行ったが、真摯に対応してくれたところはなく、途方にくれたという」、「法テラス」に「真摯に対応」してもらうことが先決だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感