SSブログ

メディア(その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり) [メディア]

メディアについては、5月13日に取上げた。今日は、(その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり)である。

先ずは、5月23日付け東洋経済オンラインが掲載した「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループFrontline Pressによる「「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/428939
・『グローバル化が一段と進んだ現在、海外のニュースも縦横に日本に届くようになり、日本人の国際理解も格段に増した……のだろうか? アメリカで起きた主な出来事はニュースで知っているだろう。イギリスやフランス、ドイツといった西欧での出来事も、少しは知っているかもしれない。では、アフリカの出来事は? 南米は? 私たちが普段見聞きしているニュースは、アメリカを中心とする一部の国に偏っている――。そうした構造をデータで検証する研究と活動を大阪大学大学院国際公共政策研究科のヴァージル・ホーキンス教授(47)が続けている。「ニッポンのすごい研究者」は今回、「報道されない世界」の解消に取り組むホーキンス教授を訪ねた(Qは聞き手の質問、Aはホーキンス教授の回答)』、興味深そうだ。
・『最初は通訳になりたいと思っていた  Q:研究者になるまで、どんな道をたどってきたのでしょうか。 A:僕は「国」というものが嫌いだから、(出身国は)絶対に書かないで。出身地を問われたら、僕はいつも「無所属です」「赤ちゃんだったので覚えてないけど、病院で生まれたと聞いています」などと答えているんです。人間ファーストでいきたいんですね。 高校のとき、歴史に興味を持ち、最初は通訳になりたいと思いました。 現代史の授業で冷戦を勉強し、夏休みの宿題が「新聞を切り抜いて冷戦に関するスクラップを作りなさい」だった。その記事の中で、ソ連のゴルバチョフとアメリカのブッシュが大笑いしている写真を見たんです。その両人の間に通訳が入っている。核兵器いっぱい持つこの2人を仲良く笑わせる通訳はすごいなあ、と。英語しかできなかったので、なにか外国語を学ばなければと思い、日本に来ました。 大阪大学大学院で、国際紛争や国連安保理の研究を手掛け、メディアの研究もやって博士号を取りました。研究者になる前は、特定非営利活動法人「AMDA」(本部・岡山)の職員でした。保健医療や貧困削減、開発系の仕事です。 カンボジアで約2年、ザンビアで約3年。いろんな世界を見ることができましたし、現場感覚を磨くことができましたが、壁も感じたんですね。) 当時は、コンゴ民主共和国で保険医療系のプロジェクトに取り組みたかった。どう考えても、そのプロジェクトのニーズは高い。調査で何度か現地入りもしました。 ところが、当たり前のことですが、資金が集まらないと、プロジェクトはできないわけです。 そのときにすごく思ったんですよ。誰も知らない状態で、資金が集まるわけがないだろう、と。政策を変えるためにも「現実を知る」ことがすごく大事だろう、と。それが、アフリカで現場を見て湧き上がった実感ですね。 僕自身がNGOに関わって現場に戻ることはないでしょう。その代わりに人の意識を変えたい。そのための仕事、研究を続けたいと考えています。 Q:研究の世界に入り、どんなテーマを手掛けてきたのでしょうか。 A:武力紛争とアフリカと報道。研究テーマはこの3つです。NGOでの経験をきっかけにして、「アフリカの紛争はなぜ報道されないのか」という疑問がありました。 私からすれば、明らかに報道は偏っている。日本で交通事故が起きれば、けが人1人だと報道されなくても、けが人が10人だと報道されるよね? しかし、アフリカで起こった紛争はそうじゃない。(犠牲者が何人になっても)報道されない』、「報道」の「偏り」をもたらしているのは、ニュース・バリューであって、「偏り」そのものには問題ないのではなかろうか。
・『コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず  いちばん印象に残っているのは、コンゴ民主共和国の紛争(内戦)です。540万人という犠牲者数は、死者でいえば、朝鮮戦争以、世界最多でしょう。ベトナム戦争よりも多い。はっきり言えば、その死者数も確かではありません。 そもそも、あの紛争は2008年までしか犠牲者を数えていない。その後も紛争はずっと続いているから、実際は朝鮮戦争より多く、ひょっとしたら第2次世界大戦以来の死者数を出しているかもしれません。 そうした紛争に対し、報道はどうだったか。周りの8カ国ぐらいを巻き込んだ「紛争」でありながら、日本のメディアは「コンゴ内戦」という言い方を続けました。「アフリカの第1次世界大戦」と呼ばれるほどだったのに、ほとんど報道すらされなかった。 日本だけではありません。研究を続けるうちにアフリカに関する報道だけでなく、世界全体について、そして、紛争だけでなく、あらゆる事象についても、同じ傾向があることがわかってきました。 日本の国際報道では、いったい、どんな偏りが生じているのか。報道されない世界とは、どのようなものなのか。それを検証するために、ホーキンス教授は「伝わっていない世界」の情報を分析し、伝えるメディア・プロジェクト「グローバル・ニュース・ビュー(Global News View:GNV)」を立ち上げた。2016年のことである。プロジェクトには、研究室の学生や大学院生らが多数関わっている。 GNVでは、読売、朝日、毎日の3紙(いずれも東京本社版の朝刊)やデータベースを材料としてほぼすべての国際ニュースをピックアップする。トピックごとに分類したり、記事の分量や扱いを細かに調べたり。報道の内容についても「ネガティブ」「ポジティブ」「中立」という3つの指標で色分けする。そうしたデータをもとにして、報道された地域、その量や傾向を分析し、国際報道の現状を浮き彫りにする試みだ。 その結果、逆に「報道されていない地域」が浮き彫りになる。日本にニュースが届かない国々では、実際にどんなニュースが流れているのか。GNVはそうした報道についても現地のニュースサイトをチェックするほか、英語資料も分析。その国について英語で書かれたものをピックアップして学生に送り、それを学生がわかりやすい形に変えて公表している。 Q:GNVでの活動や研究を通して、ホーキンス先生は「日本の国際報道には2つの問題点がある」と主張しています。具体的には、どういうことなのでしょうか。 A:量が乏しすぎる。そして、中身が偏りすぎている。この2点です。もちろん、外国の国際報道にも同様の傾向はあります。測り方の問題があるので簡単に比較はできないですが、アメリカのテレビ報道では国際ニュースが15~20%くらいです。日本の新聞は、ニュース全体の10%前後ですね。 これとは別に、以前、私が手掛けた調査では、欧米の国際報道でアフリカのニュースが占める割合は6~9%でした。これに対し、日本の新聞では2~3%です。 日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい。とはいえ。欧米の国際報道も決してモデルにすべきようなものではありません』、「コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず」、も日本にとってのニュース・バリューが小さいためではなかろうか。「日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい」、その通りだ。「GNV」では下記のように、ニュースは更新されているが、年間を通じた分析は2015-2017までのようだ。
https://globalnewsview.org/
・『ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きい  日本の国際報道が偏りすぎている原因については、ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きいと言えます。例えば、事故やテロがあれば、日本のメディアは「被害者に日本人がいるか」「その出来事と日本人にはどんな関わりがあるのか」といった点にばかり、まず目を向けます。 その次に来るのは、欧米メディアの目線です。日本の国際報道は、欧米メディアの報道を追いかけている。したがって、アメリカが着目するニュースに日本も着目します。アフリカの出来事を報道するにしても、しばしば、ニューヨークやワシントンから「アフリカのこの問題について、アメリカ当局はこういう見解を示している」といった伝え方をしています。 そのほかにも問題点はあります。まず低所得国と高所得国の間で生じている価値観の差。これは非常に大きい。要するに、貧困国であればあるほど、報道されません。これは鉄則です。 データを分析すると、報道されるかどうかの分かれ目はまだある。人種的な問題もその1つでしょう。まずは日本人かどうか、その次は白人かどうか。この差は本当に大きい。肌の色だけではありません。黒人であっても、アメリカに住んでいる黒人はまだ注目されます。だから、ブラック・ライブズ・マター運動は日本でも注目されました。 では、アフリカの黒人は? コンゴ民主共和国の紛争がそうだったように、アフリカでは多くの黒人が亡くなっても注目されません。 日本で報道された2016年の「国別報道量」。全国紙3紙の文字数をもとにGNVが作成した。水色が濃い国ほど報道量が多い。ブラジルに色が付いているのは、この年に開かれたリオデジャネイロ五輪の影響と思われる(出所:GNVのホームページ)』、日本との関係の深いほどその国への関心も深まる筈だ。
・『国内の報道ですら、存在が脅かされている  G7を構成する日本のような国で、国際報道の少なさは世界のためにならず、回り回って日本のためにもならない、とホーキンス教授は強調する。地理的な状況から、国際報道にある程度の偏りが生じることは当然としても、「日本人か日本人以外か」「先進国か後進国か」といった程度の判断でニュースが選択されているとしたら、日本の国際化などまったくおぼつかない。 Q:この現状をどう変えたらいいでしょうか。方法は見えていますか。 A:すごく難しい質問です。そして今後はますます、解決が難しくなっていくでしょう。残念ながら、この場での具体的な提言は無理ですね。報道のビジネスモデル自体が崩れているからです。 同時に若者のニュース離れです。SNSが発達する以前から、ネットの世界では「ニュースはタダで見るものだ」という考えが社会に定着してしまい、報道のビジネスモデルは崩れていきました。国際報道どころか、普通の真面目な国内のストレートニュースですら消えていっているじゃないですか。日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう。そして、そうした環境下でグローバル化に拍車がかかっているわけです。国際ニュースの量的な乏しさ、質的・地理的な偏りは、本当はますます日本の重要課題になっているはずなんですが・……。 Q:GNVの成果と課題について教えてください。 A:どうやって、少しでも多くの人に見てもらうか。それが大きな課題ですね。もう1つは、複雑さを大切にしていく、ということです。シンプルに、わかりやすく、ひと言で何かを言い表せば、「なるほど」と思う人はいるでしょう。池上彰さんのように。 しかし、国際社会で起きている出来事は、そんなに単純ではありません。GNVの編集原則の1つは「複雑さを犠牲にせずに分かりやすく書く」ということです。難しさや複雑さを犠牲にしたら意味がありません。それどころか、事実と違うものが認識されてしまう可能性があります。 GNVのニュースサイトで扱う記事は、人に知られていないものです。すでに知られているニュースは取り上げません。だから、アメリカなどに関する記事は書きません。中国や朝鮮半島に関する記事も出ていません。 その代わり、日本ではまったく知られていないニュースを出します。例えば、エチオピアでは2018年4月に政権交代があり、アビー首相が就任しました。アビー政権は国内で政治犯釈放などを断行して大改革を進める一方、隣国のエリトリアと和平合意も結んだ。それについて、GNVは2018年9月に記事を出しました』、「日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう」、その通りだ。
・『GNVが不要になるのがいちばんいい  私たちは毎年、「潜んだ世界の重大ニューストップ10」というのも作っているんですね。注目されていないけど、これこそが大事だというニュース。エチオピアの政権交代はその意味で大ニュースでした。 実際、アビー首相は1年後にノーベル平和賞を取り、日本でもようやくエチオピアの改革に目が向きました。アゼルバイジャンとアルメニアの紛争もそう。昨年、紛争が再発しましたが、その3年前の時点でGNVは両国の緊張が増していることを伝えました 今は必要とは思えなくても、いつか必要になる。そういうニュースは必ずあります。だから、ニュースの空白をつくらず、報道されないことを報道することが重要になってくる。メディアの偏りを解消することは、すごく難しい。 本当は、GNVが不要になるのがいちばんいい。要するに、読売新聞とか、朝日新聞とか、NHKとか、大メディアがきちんと、本当の意味での世界を報道すればいいわけです。われわれの仕事は、それまでの穴埋めです』、「潜んだ世界の重大ニューストップ10」は検索しても表示されなかった。「GNV」の取り組み自体は結構なことだ。

次に、6月16日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/290387
・『「株式会社・日本」の”社内報”と私がヤユする日本経済新聞社で、社長解任クーデターという反逆の狼煙があがったのは2003年だった。日本新聞協会賞を受賞した敏腕記者で現役の部長だった大塚将司が内部告発をしたのである。日経はオーナーがいなくて、株は社員やOBが持っている。大塚は社員株主として、子会社の不正経理問題や社長の鶴田卓彦の女性スキャンダルを指弾する文書を社員らに送付し、鶴田の取締役解任決議を求める議案を提出した。 すると鶴田は大塚を名誉毀損で東京地検に告訴し、株主総会の直前に一方的に懲戒解雇したのである。 それに対して大塚は鶴田らを相手どり、子会社の不正経理により生じた損失分の94億円を日経に賠償するよう求める株主代表訴訟と、自身の解雇無効確認訴訟を東京地裁に起こすことで対抗する。 その株主総会では鶴田の解任案は否決され、鶴田は代表権のある会長から相談役となって院政を敷いた。 雑誌『創』は2004年の1、2月合併号で、日経OBを対象に実施したアンケート結果を載せている。そこには痛憤の直言が並ぶ。 同誌編集長の篠田博之は「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」と指摘しているが、その通りだろう。 大塚が「鶴田解任」の株主提案をしたことについては、71%のOBが「意義ある提起だ」とし、鶴田前会長の辞任は「表面的な糊塗策で何の解決にもなっていない」という答えが55%、「鶴田体制を支えてきた役員は総退陣すべき」という声も48%で半数近かった。この体質は現在も改まってはいない。(敬称略)、「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」、至言である。なお、日経との法廷闘争では、不当な懲戒解雇撤回に成功。日本経済研究センター研究開発部主任研究員に復帰、その後、退職(Wikipedia)

第三に、6月15日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストのマーティン・ファクラー氏による「マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの  だから、似たようなニュースばかり」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84006?imp=0
・『アメリカ出身のジャーナリスト、マーティン・ファクラー氏の新刊『日本人の愛国』は、外国人の目から見た日本の「愛国」について論じている。そんな氏の視線は、同質な大手マスコミ記者が集まる「記者クラブ」にも向けられている。同書から、筆者が上皇のパラオ訪問時に感じた記者クラブの閉鎖性について、一部編集のうえ紹介したい』、興味深そうだ。
・『天皇夫妻のパラオ訪問に同行  ペリリュー島への行程はとても厳しいものだった。そもそもペリリュー島には、2人と宮内庁職員などの随員を含めた一行を乗せる旅客機が離着陸できる飛行場がない。 宮内庁が立てた計画は、パラオ国際空港があるバベルダオブ島からコロール島まで橋をわたり陸路で移動。パラオ主催の歓迎レセプションおよび晩餐会の後にパラオ国際空港へ戻り、海上保安庁のヘリコプターで同庁の巡視船あきつしまへ移動して宿泊。翌日に再びヘリコプターでペリリュー島へわたるというものだった。 安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった。急傾斜の階段が少なくない船内には急きょ手すりなどが設けられたが、快適とはいえない環境だった。 明仁天皇は2003年に前立腺がんの、12年には狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行された。ペリリュー島への訪問を強く望んでいたことが伝わってくる。 おりしも15年4月29日に、安倍首相がアメリカ連邦議会で日本の内閣総理大臣として初めて演説することが決まっていた。ペリリュー島とワシントンとで、日本の2人の指導者は、70年を迎えていた戦争をどう語るか。そして、戦後の未曾有の変化に直面している日本や日本国民に、どのようなビジョンの国家像を訴えるのか。 特に戦場だったペリリュー島での明仁天皇の様子を紙面でアメリカ国民に伝えることは意義のあることだと思い、当時、ニューヨーク・タイムズ紙の東京支局で働いていた私は、天皇・皇后のパラオ訪問の同行取材を宮内庁へ申し入れた』、「安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった」、「前立腺がんの・・・狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行」、「天皇」の「訪問を強く望」む姿勢には頭が下がる。
・『記者クラブから締め出しを食らう  宮内庁は私の取材申請を快諾してくれた。しかし、別の問題が発生した。宮内記者会の存在だ。少し余談めいているが記しておきたい。 当時、パラオの空の玄関口、パラオ国際空港へは、成田空港からデルタ航空が週2便を就航させていた。フライト時間は約4時間半。宮内記者会に所属する大手メディアの記者たちは、チャーター便で行ったが、私はパラオに長く滞在したかったので、デルタ航空の普通の便を使い、空港からはレンタカーを借りて、コロールまで移動した。 ホテルは、宮内記者会に所属するメディアと同じだったから、そのあとは一緒に移動できると考えていた。 ところが私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった。経費面を負担すると提案しても、状況は変わらなかった。 日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかったが、想定していた事態でもあった。これまでに何度も、日本の記者クラブ特有の閉鎖的な体質に、辟易とさせられてきたからだ。 ほんの一例を示そう。ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局の特派員として、日本銀行を担当していたときのことだ。就任したばかりの日本銀行の福井俊彦総裁の記者会見への出席をめぐってひと悶着あった。 日本銀行の広報部へ申請すると、「私どもではなく、記者クラブの許可を取ってください」と言われた。当時の幹事社だった日本経済新聞の担当記者に連絡を入れると、記者クラブ加盟社ではないという理由で断られた。 食い下がった私に対して、「福井総裁へ質問をしないのならばOK」と条件をつけられ、閉口するしかなかった。質疑応答に加わることなく、ただ傍聴しているだけの記者会見にいったい、何の意味があるのだろう。日本銀行の広報に再び問い合わせたが状況は変わらず、結局、私は記者会見への出席を諦めた。 外国人記者だけではなく、日本人の雑誌やネットメディア、小さい地方紙、フリーランスなどの記者たちはみな経験していることである。ただ、私の取材手法は日本のメディアでは主流の権力者からの情報を元にしたものではなく、調査報道が基本だ。記者クラブから締め出されても特に困ることもなかった。 念のために言うと、アメリカにも記者クラブのようなものは存在する。一番似ている組織は、大統領を取材するホワイトハウス記者協会。1914年に設立され、記者会見室の席順も演台に向かって一列目は左からNBC、FOXニュース、CBSニュース、AP通信、ABCニュース、ロイター、CNNの記者が座ることがあらかじめ決められている。 とはいえ、ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される。 バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない。 同様のバブルが日本の宮内記者会内にも存在していた。そして、記者たちはそのバブルをそのままパラオに持ってきた。そのバブルに入っていなかった私は、宮内記者会の船に乗るのを拒否され、自分で漁船をチャーターしてペリリュー島へ向かわざるを得なかった。 この費用は日本円で1日5万円ほどだった。週刊誌の記者が同行したいと希望してきたので費用を折半した。月刊誌の記者は独自の取材を行うという理由で別行動だった。 このとき宮内記者会の記者たちはわずか1泊2日で帰国した。しかし、その後も私はパラオに残り、今度は1人で漁船をチャーターしてペリリュー島へもう一度わたった。島内に今なお残る戦争の爪痕を自分の目で見たいと思ったのだ』、「私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった・・・日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかった」、海外でまで「記者会」の論理を振り回すとは恐れ入る。「ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される」、「バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない」、日本の記者クラブと同じようだ。
・『忘れられていた南の島での激戦  話を戻そう。コロールから南方にあるペリリュー島への所要時間は船で1時間ほど。緑豊かな無人島の合間に紺碧の浅瀬が広がるロックアイランドと呼ばれるエリアを進む。世界遺産にも登録されている美しい風景の中に突然、墜落した零戦のプロペラ部分が海面から姿を現した。その光景の落差には感じ入るものがあった。 ペリリュー島へ到着した明仁天皇と美智子皇后が最初に向かった、島の最南端にある西太平洋戦没者の碑へ急いだ。赤道直下にあるペリリュー島の気温は、4月なのに30度を超えていただろうか。ぬぐってもぬぐっても汗がにじみ出てくる。 白いワイシャツ姿の明仁天皇、白いスーツ姿の美智子皇后を乗せたヘリコプターは、旧帝国陸軍が作った滑走路の上に着陸。用意されていたバスで島内を移動し、パラオ共和国とともに太平洋戦争の戦地となったミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の大統領夫妻とともに西太平洋戦没者の碑を訪れた。 日本政府によって1985年に建立された西太平洋戦没者の碑は、日本列島がある方角を向いている。白い菊の花を供花台に供え、深くこうべを垂れた二人は、美しい海をはさんで10キロ先に浮かぶアンガウル島へも拝礼した。 人口わずか170人ほどの小島でも日本軍とアメリカ軍が戦火をまじえ、日本側で1200人、アメリカ側で260人の戦没者を出していた。 ペリリュー島の戦いに関する資料は、実は日本国内にほとんど存在しておらず、いつしか「忘れられた島」と呼ばれるようになった。 西太平洋戦没者の碑があるペリリュー平和公園には、ペリリュー島の戦いから生還した土田喜代一さんをはじめとする元日本兵や戦没者の遺族ら、多くの関係者も訪れていた。2018年に98歳で死去した土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験をもっていた。 パラオ訪問に先立って、土田さんを含めた生還兵は皇居に招かれ、懇談していた。ペリリュー島で再会した美智子皇后から「お参りさせていただきました」と、明仁天皇からは「どうぞ元気でね」とお言葉をかけられた土田さんは、そのときの思いをこんな言葉で表した。 「今回の訪問で、ペリリュー島とはこういう戦いの島であったということが、世の中に知られたことが私たちには非常にうれしい」 2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった。 上皇夫妻がパラオを訪問した同月、安倍前首相はアメリカ連邦議会で演説を行った。しかしそこで示された姿勢は、筆者がパラオ訪問で感じたものとまったく対照的だったという。はたして、日本人にとって「愛国」とはどのような態度を指すのか? 新刊『日本人と愛国』は全国の書店、ネット書店にて好評発売中!』、「土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験」、フィリピンの小野田少尉の「ペリリュー島」版のようだ。「2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった」、大いに意義ある訪問だった。 
タグ:メディア 東洋経済オンライン 佐高信 日刊ゲンダイ 現代ビジネス マーティン・ファクラー Frontline Press (その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり) 「「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点」 「報道」の「偏り」をもたらしているのは、ニュース・バリューであって、「偏り」そのものには問題ないのではなかろうか。 「コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず」、も日本にとってのニュース・バリューが小さいためではなかろうか。「日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい」、その通りだ 「GNV」では下記のように、ニュースは更新されているが、年間を通じた分析は2015-2017までのようだ。 https://globalnewsview.org/ 日本との関係の深いほどその国への関心も深まる筈だ。 「日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう」、その通りだ。 「潜んだ世界の重大ニューストップ10」は検索しても表示されなかった。「GNV」の取り組み自体は結構なことだ。 「日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター」 「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」、至言である なお、日経との法廷闘争では、不当な懲戒解雇撤回に成功。日本経済研究センター研究開発部主任研究員に復帰、その後、退職(Wikipedia) 「マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの  だから、似たようなニュースばかり」 「安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった」、「前立腺がんの・・・狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行」、「天皇」の「訪問を強く望」む姿勢には頭が下がる。 「私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった・・・日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかった」、海外でまで「記者会」の論理を振り回すとは恐れ入る。 「ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される」、「バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない」、日本の記者クラブと同じようだ。 「土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験」、フィリピンの小野田少尉の「ペリリュー島」版のようだ。 「2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった」、大いに意義ある訪問だった。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感