詐欺(その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発) [司法]
今日は、詐欺(その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発)を取上げよう。
先ずは、昨年11月12日付け日刊ゲンダイ「「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/297304
・『「なんべん騙されても、スケベ心で騙されてしまいました」 「牛角」や「大戸屋」など多くの飲食ブランドを傘下におく外食大手チェーン「株式会社」コロワイド(神奈川県横浜市、東証一部上場)を一代で築いた蔵人金男会長(74)は、横浜地裁の法廷で後悔のありったけを率直に述べた。 蔵人会長が被害総額約31億円を騙し取られたいわゆる「M資金」詐欺事件の公判が11月11日、横浜地裁で開かれた。今年3月に始まった詐欺事件の公判で、ついに蔵人会長が証人として法廷に現れるということで、マスコミも注目していた。 この事件は2020年6月11日、マック青井こと武藤薫被告(67)、X、Yらが、神奈川県警捜査2課に逮捕されたことで公になり、一部上場企業の有名経営者が巨額の金を騙しとられたと世間に驚きを与えた。 しかし初公判前に、XとYは不起訴になり、武藤薫被告だけが起訴された。そのため本稿では不起訴になった2人の名前は伏せて報じる。 検察の主張によれば、この事件は武藤被告が蔵人会長に、存在しない太平洋戦争の戦勝国が管理している2800億円の資金(基幹産業育成資金、これがいわゆるM資金)が提供されると誤信させ、17年春頃から18年秋に計10回かけて、約31億円を振り込みさせたというもの。刑事事件とは別に、蔵人会長は武藤被告、X、Yの3人に約31億円の返還請求を求める民事裁判も起こしている』、コロワイドは給食大手シダックスに買収提案をしていたが、争奪戦でイメージ低下を恐れて、9月14日に提案を撤回した。なお、本件とは直接関連はない。
・『社長も”M資金”への振り込みを知っていた 今回の蔵人会長が証言で明らかにした新事実をいくつか紹介する。 蔵人会長は2013年に神奈川県・葉山町に住んでいる大学教授から、イギリス人だというマック青井(武藤被告)を紹介された。武藤被告は日本人が着ないようなスーツやネクタイをまとい、「MI6(英国の秘密情報部)に所属していた」と話したそうだ。武藤被告から2800億円の融資話の説明を受けた蔵人会長は、武藤被告と雑談をする中で融資話を信じていったという。 蔵人会長は融資を受けられないまま、武藤被告、XとYに保管料や倉庫代などさまざまな名目をつけられて、計10回、31億円以上をズルズルと振り込まされたが、一部は「賄賂」と認識して振り込んでいたという。 「(蔵人会長の対応が遅いため)いろんなところから文句が出ていて、賄賂を払わないといけないと(武藤被告が)言うので数億円を複数回、振り込んだ」と蔵人会長は証言した。 一連の振り込みについて、コロワイドの野尻公平社長と相談していたことも明らかになった。蔵人会長が振り込みをしようとするたびに、野尻社長からは「騙されていないか」と指摘されたという。蔵人会長は「ATMの前に立ったことも振り込んだこと(経験)もないので、誰かに頼まないとだめ(振込手続きができなかった)」だったため、会社関係者の助力が必要だった様子。そのため野尻社長から「騙されている」と100回は注意されたわけだが、それでも野尻社長は蔵人会長が金を振り込むのを止めることはできなかった。 このように、驚いたことに一連の行為を社長をはじめとする会社関係者が承知していたことだ。 過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった。そのため、事件化し表沙汰にすることはせず、泣き寝入りするのが常だった。今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケースといえる』、「過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった」、「今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケース」、確かに「珍しいケース」だ。
・『資金源は会長自身の株売却益 また、一度に28億円もの大金を振り込んだことがあるが、この資金源は蔵人会長自身の株売却益だったことも明らかになった。蔵人会長は株を売却する際、証券会社から何に使うのかと聞かれて言い訳が立たずに困ったそうだが、それでも結局売却したようで、「一挙に売ると大変な騒ぎになるからちょこちょこ売った」と話した。 法廷では、蔵人会長が時おり武藤被告をにらみつけるように見ていたが、武藤被告は目線を合わせることなく、具合が悪そうに終始深くうなだれていた。当然ながら、2800億円の融資は実行されず、振り込んだカネも返金されることはなかった。そのため、蔵人会長は3人を刑事告発し、民事裁判を起こしたというわけだ。 今回の詐欺事件で検察が告訴したのは武藤被告のみ。だが、公判後、記者らの直撃に応じた蔵人会長は、「XとYは証拠が希薄だから公判は維持できないと検察は言った。しかし、これだけ調書取って、なにが証拠が希薄だ、バカ野郎って警察官も怒っているよ」とぶちまけ、裁判所を後にした。 今後、蔵人会長への弁護側証人尋問、XとYに対する証人尋問が予定されている。まだまだ何が飛び出すかわからない』、「資金源は蔵人会長自身の株売却益だった」、オーナー経営者の保有株売却は、証券会社や当局への届け出が必要になるので、いつでも可能な訳ではない。「蔵人会長」は「詐欺」に引っかかったということで、社内での立場は多少悪くなる筈だ。
次に、6月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家、2億円マルチ詐欺の国税職員ら…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304553
・『国から新型コロナウイルス対策の持続化給付金9億6000万円以上が詐取されたとみられる事件で、インドネシア当局は8日(日本時間)、グループ主犯格の谷口光弘容疑者(47)=詐欺容疑で指名手配=を不法滞在の疑いで逮捕した。近く日本へ移送され、警視庁捜査2課が全容解明を進める。持続化給付金を巡っては今月に入り、現職の国税局職員が絡む被害総額2億円の事件も発覚した。給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行。しかしここに来て、全国の警察が詐欺師たちを追い詰めている』、「給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行」、いくら「簡易な手続き」とは言ってもここまで不正を誘発うるとは「手続き」に問題がある。
・『虚偽申請数は約1800件セミナーなどで想定問答も指南 谷口容疑者の指名手配容疑は2020年6~8月、元妻の梨恵容疑者(45)や長男の大祈容疑者(22)、次男(21)=当時19歳のため氏名非公表=と共謀。兵庫県の50代男性会社員ら3人に受給資格がないのに申請させ、計300万円をだまし取ったとされる。 全国紙社会部デスクによると、谷口一家を中心にした詐欺グループは同5~9月、36都道府県で1800件近くの虚偽申請をし、総額9億6000万円以上をだまし取ったとされる。事件に関与したメンバーは、少なくとも十数人いるとみられる。 谷口容疑者らはSNSやセミナーを開いて虚偽の申請者を募集し、手続きを代行。メールやインターネットで「収入がゼロになった」などとうそを申告し、1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた。 申請者には「中小企業庁から『確定申告は自分で提出したか』という確認の連絡が来たら『そうだ』と答える」「事業所の場所を聞かれたら『自宅』と答える」などと、想定問答を指南していたという』、「手続きを代行」、「1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた」、割のいいビジネスだ。
・『ずさんな手口に事務局が違和感 警察に情報提供 しかし次第に、給付金の申請時に記載する確定申告書の収入額で同じ金額を使い回すように。申請が増え、対応がずさんになっていったとみられる。違和感を覚えた持続化給付金事務局が20年8月、警視庁に情報提供していた。 谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあったという。前述のデスクは「ほかの事業でもトラブルを抱え、資金繰りに困っていたらしい。詐欺に手を染めた理由は、そこではないか」と推測した。 谷口容疑者は同10月に出国後、インドネシアの首都ジャカルタなどを拠点に活動。23年6月までの就労許可を取っていたが、事件を受けて日本政府がパスポートを失効させ、インドネシア側も就労許可を取り消していた。 逮捕されたのはスマトラ島の山村で、1人で何度か訪問。現地の住民に対し、川魚の養殖事業に投資を約束していたという。日本側の要請を受けたインドネシア入管当局が捜査し、この村にいるとの目撃情報を得て、警察と合同で逮捕した。 ただし、容疑は「同国に滞在資格がない」というもので、日本で言う入管難民法違反になり、詐欺ではないことをお断りしておく』、「谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあった」、もともと山っ気があったようだ。
・『投資名目で不正受給に勧誘 マルチ的手法で被害拡大 もう一つ注目されたのは、警視庁少年事件課が東京国税局鶴見税務署職員の塚本晃平容疑者(24)=逮捕は1日付=ら計9人を摘発していた事件だ。 ほかに摘発されたのは、塚本容疑者と熊本の小中学校の同級生で、東京の簿記専門学校や税務大学校でも同期だった元東京国税局職員の中村上総被告(24)=起訴済み=、元証券会社社員の中峯竜晟被告(27)=同=ら。塚本容疑者と中村被告が税務の知識を悪用していたのは言うまでもない。 塚本容疑者の逮捕容疑は20年8月、当時17歳だった男性(19)=詐欺容疑で書類送検=を個人事業主と偽り、給付金100万円をだまし取った疑いだ。9人は高校生や大学生に「投資すれば『個人事業主』になるから、給付金を申請できる」などとうそをついて、不正受給に勧誘。 2割を手数料として徴収し、残る8割を「200%の利益が出る」などと言って、給付金を暗号資産(仮想通貨)関連事業への投資名目で預かっていた。さらには「会員を増やせば別にボーナスを出す」と誘い、マルチ的手法で規模を拡大。計約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上るとみられる。 このうち約4000万円は中峯被告やアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに出国した30代の男ら主犯格の4人で分配し、残りは30代男が投資名目で受領していたという。実際に投資に使われたのかは不明で、持ち逃げした可能性もある』、「約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上る」、かなりの規模だ。
・『「国をだました詐欺事件」として全国の警察が摘発に総力 そもそも持続化給付金制度はコロナ禍を受けた経済対策で、緊急性から中小企業へのスピード支給を優先。中小企業庁は424万件、総額約5兆5000億円を支給したが、申請方法や審査が甘い「性善説」の制度で、不正が相次いだと指摘されている。 二つの事件以外にも摘発が相次ぎ、警察庁によると5月末現在、全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る。これは「国をだました詐欺事件」という点で悪質であり、最優先事項と位置付けて全国の警察が摘発に総力を挙げているからだ。 知能犯罪と言えば「捜査第2課」をイメージされると思うが、前述した通り、国税局職員らが立件された事件は「少年事件課」が担当した。これは逮捕容疑になった不正な申請が「当時17歳」など、多くが少年だったためとみられるが、こうした組織的かつ大規模な詐欺事件に捜査2課以外が着手するのは異例だ。 詳しくは確認できていないが、谷口容疑者らの事件では1800件近い虚偽申請が確認されており、捜査2課と手分けしたのかもしれない。 昨年4月、警察庁は「オレオレ」など特殊詐欺を担当する部署を、これまでの刑事局捜査2課から同局組織犯罪対策部暴力団対策課に移管。これは組織犯罪に効果的に対処する意図だったが、同じようにシフトした全国の警察本部の捜査2課が、給付金詐欺に集中できているという側面もあるようだ』、「全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る」、「「国をだました詐欺事件」という点で悪質」、その通りだ。
・『不正受給発覚は時間の問題 身に覚えあれば自主的申告を 一般的に詐欺事件は、「だまし取る意図」という目に見えないものを立証しなければならないが、給付金詐欺は複雑なスキームを駆使した手口ではなく、確定申告書という住所や氏名など個人情報も満載された「詐欺の証拠」をご丁寧に提出しているわけだ。 筆者は現役の社会部記者時代、経済事件などの取材が多かったこともあり、法人名さえ特定できれば事業の実態があるのか、それともダミー会社かは、それほど苦労せずに調べることはできた。 詐欺事件のエキスパートである捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい。 経済産業省のホームページには「不正受給及び自主返還について」と銘打って「現在、不正受給の調査を行っております。不正は絶対に許しません」と警告。 一方「給付要件を満たさないにもかかわらず、誤って申請を行い、受給してしまった場合などについては、自主的な返還を受け付けています」とも呼びかけ、自ら申し出れば刑事告発などはしない方針だ。 詐欺罪の時効は7年。逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい』、「捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい」、「逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい」、同感である。
第三に、6月20日付け文春オンライン「〈証拠文書、LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55304
・『「皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」 6月15日、突如として開いた会見で深々と頭を下げたのは、石川県加賀市・山代温泉で旅館「瑠璃光」「葉渡莉」を経営する「よろづや観光」の3代目・萬谷浩幸社長だ。 「コロナ禍の約15カ月にわたる休業期間中、受給した雇用調整助成金のうち約2000万円が不正受給に当たると労働局から指摘を受けた。故意ではない。すみやかに返還し、再発防止に努めたい」 「不正受給の認識はなかった」と強調する社長。実はその3日前、「週刊文春」は社長を直撃していた。取材から浮かび上がるのは、社長の“公式見解”とはかけ離れた、“巨額不正”だった。 「よろづや観光」は、約250人の従業員を抱え、来秋公開の小芝風花主演の映画『レディ・カガ』のロケ地にもなるほど、加賀を代表する名門旅館の一つだ。そんな名宿による”不正受給”は、内部告発によって、露見することになった。今春、現役社員たちが石川労働局に告発したのだ。幹部のA氏が語る』、「約250人の従業員を抱え」、「加賀を代表する名門旅館の一つ」で「雇用調整助成金のうち」「不正受給」が「2000万円」以上、とは酷い事件だ。
・『「タイムカードを押さぬよう徹底されていた」 「コロナ禍で約15カ月の休館期間中も、約20名いる幹部は補助金申請や通販業務、館内整備等に追われていた。月の出勤日数はコロナ以前並の22日前後でした。しかし、そのほとんどが“休業日”としてタイムカードを押さぬよう徹底されていたのです。中には会社の指示を無視してタイムカードを押し続けた社員もいたため、会社が作成した時間外申請書と齟齬が生じ、労働局にとって動かぬ証拠となった。ただ、これは氷山の一角。不正の総額は2000万円どころではないのです」 発端は2020年5月、幹部会議で示された萬谷社長の方針にあった。社長は、「お金は雇調金が支給されるわけだから、休んでいても仕事しても同じ。ならぼんやり休んでいることないよね」 と、明言。さらに「休業中も精力的に取り組め」と付け加えたという。何が問題なのか。雇調金を所管する厚労省の担当者に聞いた。 「雇調金は、コロナ等で休業を余儀なくされた場合、安易な解雇に走らず雇用維持してもらうため、休業手当の負担を国が助成する制度です。旅館が休館していても従業員が他の業務に従事していれば当然『休業』ではないので『不正受給』となります。仮に助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断です」 従業員に“休業出勤”を指示する一方、コロナが徐々に落ち着き旅館が再開すると、今度は現場の過剰な負担が浮き彫りとなった。同社社員のB氏が語る』、「助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断」、極めて悪質だ。
・『コストカットは“温泉”にも… 「会社は雇調金を少しでも多く受け取るため、今度はなるべく多くの社員に休業を割り当てて出社人数を制限したのです。例えば清掃は1部屋を複数人で30分かけていたが、1人で15分以内となった。チェックインまで休憩は無く、消毒作業をしたら間に合わないので、消毒液を清掃作業には持ち込まず、消毒は省いています」 名宿のコストカットは、旅館の生命線である温泉にも及んだ。 「人件費を抑えようと出勤人数を減らしているので、現場はいつも人手不足。温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い。今年1月、保健所の指導を受けても改善されませんでした」(B氏) そうして積み上げた不正受給額は、相当な額にのぼるという。 「幹部の“休業出勤”による不正受給だけでも3000万円は下らない。それ以外にも一般社員による“休業出勤”やパート・アルバイトへの休業手当未払い分もある。不正が認定された場合の返還額には不正以降の支給額全額に、不正受給額の2割に相当する違約金も加わります。また、他の助成金も5年間は取得できない」(同社社員のC氏) 告発者は労働局の担当者にこう念を押されたという。 「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」 今回、従業員たちが告発を決意した背景には、社長への根深い不信感があった。 「有給休暇は長年取得できない状況が続き、残業代の未払いも横行していた。昨年、数回にわたり労働基準監督署が是正を求め、やっと5日の法定有給が確保されました。ただその後も社長は、5日を超える有給は『安易に与えるな』と発言し、有給の承認は社長の決裁を経るよう幹部に指示していました。労働契約書に記載されているはずの賞与も、私が知る限り支給されたことは一度もない。毎年15人程採用する新入社員も、3年後には5名程しか残りません。他にも、調理場でセクハラ被害に遭った社員が民事訴訟を検討しているなど、従業員を塵芥のようにしか考えていない社長に対する不満は頂点に達しているのです」(前出のA氏) 6月12日、一連の疑惑を萬谷社長に直撃した。(Qは聞き手の質問、Aは社長の回答)』、「温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い」「保健所の指導を受けても改善されませんでした」、肝心の「温泉」でも不正とは恐れ入る。「告発者は労働局の担当者に・・・「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」、「返還額は億単位」とは本当に巨額だ。
・『「反省もあって…」 Q:休業中の社員を出社させていたと聞いている。 A:「それはない。あの……調査中です」 Q:休館中も幹部社員は通常通り働いていましたよね。 A:「そういう認識はないです」 Q:ではなぜ労働局が調査しているのか。 A:「会社側の認識とちょっとズレがあるので」 Q:十分なサービスもできないと社員が嘆いている。 A:「GoToの時に人手が足りなくなって、反省もあって、人数を増やしている」 会社に改めて質問状を送ると、一部回答を翻し、概ね次のように答えた。 「不正受給を行った認識はないが、タイムカードと時間外申請書との不一致により受給した金額(2000万円程度)があることは事実。返還したい。(課長以上が出勤していた件は)休業日には出勤しないというルールの徹底不足であり深く反省しています。(清掃業務は)除菌作業を行えないような状況とは考えていません。(有休は)全社員取得出来ている。賞与は赤字のため支給出来ていません」 あくまで「不正」ではないと言い張っていた社長。C氏は嘆息する。 「そもそも、タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」 「お客さんの笑顔が見たい」とよろづやに就職したというB氏は続ける』、「社長」の主張は余りに酷い。「タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」、ここまで大規模な不正がよくぞ行われたものだ。
・『「悪いという認識はありました。ですが…」 「入社した頃は親孝行で家族を招待しようと思っていたのですが、今は、絶対に泊まらせたくない……。笑顔どころかお客さんの怒った顔や悲しい顔を見るのが本当に辛いんです。社長はCMや映画に注力していますが、見栄えにしか興味がない。『質より効率を重視しろ』が口癖です。きちんとしたサービスもさせてもらえず、不正を繰り返す。このままでは誇りを失ってしまう。社長にはきちんと責任を取って頂きたい」 別の幹部社員のD氏も付言する。 「悪いことは悪いという認識はありました。ですが本当にワンマンの会社なので、社長がこれでいいんだといえば、これでいいんですねと……。社長をずっと見てきましたけど、たぶん今回も反省しないのではないか」 従業員たちの告発に対して、会見でも「故意ではなかった」と繰り返した社長。労働局は、既に証拠資料の押収と従業員の聴取を終えている。聴取では複数の従業員が不正受給を認める供述をしており、労働局がどう対応するのか注目される』、社長側は政治家ルートなどを通じて「労働局」などに働きかけているのだろうが、日本は法治国家である以上、こんな大規模な不正はきちんと指摘して是正させるべきだろう。
先ずは、昨年11月12日付け日刊ゲンダイ「「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/297304
・『「なんべん騙されても、スケベ心で騙されてしまいました」 「牛角」や「大戸屋」など多くの飲食ブランドを傘下におく外食大手チェーン「株式会社」コロワイド(神奈川県横浜市、東証一部上場)を一代で築いた蔵人金男会長(74)は、横浜地裁の法廷で後悔のありったけを率直に述べた。 蔵人会長が被害総額約31億円を騙し取られたいわゆる「M資金」詐欺事件の公判が11月11日、横浜地裁で開かれた。今年3月に始まった詐欺事件の公判で、ついに蔵人会長が証人として法廷に現れるということで、マスコミも注目していた。 この事件は2020年6月11日、マック青井こと武藤薫被告(67)、X、Yらが、神奈川県警捜査2課に逮捕されたことで公になり、一部上場企業の有名経営者が巨額の金を騙しとられたと世間に驚きを与えた。 しかし初公判前に、XとYは不起訴になり、武藤薫被告だけが起訴された。そのため本稿では不起訴になった2人の名前は伏せて報じる。 検察の主張によれば、この事件は武藤被告が蔵人会長に、存在しない太平洋戦争の戦勝国が管理している2800億円の資金(基幹産業育成資金、これがいわゆるM資金)が提供されると誤信させ、17年春頃から18年秋に計10回かけて、約31億円を振り込みさせたというもの。刑事事件とは別に、蔵人会長は武藤被告、X、Yの3人に約31億円の返還請求を求める民事裁判も起こしている』、コロワイドは給食大手シダックスに買収提案をしていたが、争奪戦でイメージ低下を恐れて、9月14日に提案を撤回した。なお、本件とは直接関連はない。
・『社長も”M資金”への振り込みを知っていた 今回の蔵人会長が証言で明らかにした新事実をいくつか紹介する。 蔵人会長は2013年に神奈川県・葉山町に住んでいる大学教授から、イギリス人だというマック青井(武藤被告)を紹介された。武藤被告は日本人が着ないようなスーツやネクタイをまとい、「MI6(英国の秘密情報部)に所属していた」と話したそうだ。武藤被告から2800億円の融資話の説明を受けた蔵人会長は、武藤被告と雑談をする中で融資話を信じていったという。 蔵人会長は融資を受けられないまま、武藤被告、XとYに保管料や倉庫代などさまざまな名目をつけられて、計10回、31億円以上をズルズルと振り込まされたが、一部は「賄賂」と認識して振り込んでいたという。 「(蔵人会長の対応が遅いため)いろんなところから文句が出ていて、賄賂を払わないといけないと(武藤被告が)言うので数億円を複数回、振り込んだ」と蔵人会長は証言した。 一連の振り込みについて、コロワイドの野尻公平社長と相談していたことも明らかになった。蔵人会長が振り込みをしようとするたびに、野尻社長からは「騙されていないか」と指摘されたという。蔵人会長は「ATMの前に立ったことも振り込んだこと(経験)もないので、誰かに頼まないとだめ(振込手続きができなかった)」だったため、会社関係者の助力が必要だった様子。そのため野尻社長から「騙されている」と100回は注意されたわけだが、それでも野尻社長は蔵人会長が金を振り込むのを止めることはできなかった。 このように、驚いたことに一連の行為を社長をはじめとする会社関係者が承知していたことだ。 過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった。そのため、事件化し表沙汰にすることはせず、泣き寝入りするのが常だった。今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケースといえる』、「過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった」、「今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケース」、確かに「珍しいケース」だ。
・『資金源は会長自身の株売却益 また、一度に28億円もの大金を振り込んだことがあるが、この資金源は蔵人会長自身の株売却益だったことも明らかになった。蔵人会長は株を売却する際、証券会社から何に使うのかと聞かれて言い訳が立たずに困ったそうだが、それでも結局売却したようで、「一挙に売ると大変な騒ぎになるからちょこちょこ売った」と話した。 法廷では、蔵人会長が時おり武藤被告をにらみつけるように見ていたが、武藤被告は目線を合わせることなく、具合が悪そうに終始深くうなだれていた。当然ながら、2800億円の融資は実行されず、振り込んだカネも返金されることはなかった。そのため、蔵人会長は3人を刑事告発し、民事裁判を起こしたというわけだ。 今回の詐欺事件で検察が告訴したのは武藤被告のみ。だが、公判後、記者らの直撃に応じた蔵人会長は、「XとYは証拠が希薄だから公判は維持できないと検察は言った。しかし、これだけ調書取って、なにが証拠が希薄だ、バカ野郎って警察官も怒っているよ」とぶちまけ、裁判所を後にした。 今後、蔵人会長への弁護側証人尋問、XとYに対する証人尋問が予定されている。まだまだ何が飛び出すかわからない』、「資金源は蔵人会長自身の株売却益だった」、オーナー経営者の保有株売却は、証券会社や当局への届け出が必要になるので、いつでも可能な訳ではない。「蔵人会長」は「詐欺」に引っかかったということで、社内での立場は多少悪くなる筈だ。
次に、6月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家、2億円マルチ詐欺の国税職員ら…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304553
・『国から新型コロナウイルス対策の持続化給付金9億6000万円以上が詐取されたとみられる事件で、インドネシア当局は8日(日本時間)、グループ主犯格の谷口光弘容疑者(47)=詐欺容疑で指名手配=を不法滞在の疑いで逮捕した。近く日本へ移送され、警視庁捜査2課が全容解明を進める。持続化給付金を巡っては今月に入り、現職の国税局職員が絡む被害総額2億円の事件も発覚した。給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行。しかしここに来て、全国の警察が詐欺師たちを追い詰めている』、「給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行」、いくら「簡易な手続き」とは言ってもここまで不正を誘発うるとは「手続き」に問題がある。
・『虚偽申請数は約1800件セミナーなどで想定問答も指南 谷口容疑者の指名手配容疑は2020年6~8月、元妻の梨恵容疑者(45)や長男の大祈容疑者(22)、次男(21)=当時19歳のため氏名非公表=と共謀。兵庫県の50代男性会社員ら3人に受給資格がないのに申請させ、計300万円をだまし取ったとされる。 全国紙社会部デスクによると、谷口一家を中心にした詐欺グループは同5~9月、36都道府県で1800件近くの虚偽申請をし、総額9億6000万円以上をだまし取ったとされる。事件に関与したメンバーは、少なくとも十数人いるとみられる。 谷口容疑者らはSNSやセミナーを開いて虚偽の申請者を募集し、手続きを代行。メールやインターネットで「収入がゼロになった」などとうそを申告し、1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた。 申請者には「中小企業庁から『確定申告は自分で提出したか』という確認の連絡が来たら『そうだ』と答える」「事業所の場所を聞かれたら『自宅』と答える」などと、想定問答を指南していたという』、「手続きを代行」、「1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた」、割のいいビジネスだ。
・『ずさんな手口に事務局が違和感 警察に情報提供 しかし次第に、給付金の申請時に記載する確定申告書の収入額で同じ金額を使い回すように。申請が増え、対応がずさんになっていったとみられる。違和感を覚えた持続化給付金事務局が20年8月、警視庁に情報提供していた。 谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあったという。前述のデスクは「ほかの事業でもトラブルを抱え、資金繰りに困っていたらしい。詐欺に手を染めた理由は、そこではないか」と推測した。 谷口容疑者は同10月に出国後、インドネシアの首都ジャカルタなどを拠点に活動。23年6月までの就労許可を取っていたが、事件を受けて日本政府がパスポートを失効させ、インドネシア側も就労許可を取り消していた。 逮捕されたのはスマトラ島の山村で、1人で何度か訪問。現地の住民に対し、川魚の養殖事業に投資を約束していたという。日本側の要請を受けたインドネシア入管当局が捜査し、この村にいるとの目撃情報を得て、警察と合同で逮捕した。 ただし、容疑は「同国に滞在資格がない」というもので、日本で言う入管難民法違反になり、詐欺ではないことをお断りしておく』、「谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあった」、もともと山っ気があったようだ。
・『投資名目で不正受給に勧誘 マルチ的手法で被害拡大 もう一つ注目されたのは、警視庁少年事件課が東京国税局鶴見税務署職員の塚本晃平容疑者(24)=逮捕は1日付=ら計9人を摘発していた事件だ。 ほかに摘発されたのは、塚本容疑者と熊本の小中学校の同級生で、東京の簿記専門学校や税務大学校でも同期だった元東京国税局職員の中村上総被告(24)=起訴済み=、元証券会社社員の中峯竜晟被告(27)=同=ら。塚本容疑者と中村被告が税務の知識を悪用していたのは言うまでもない。 塚本容疑者の逮捕容疑は20年8月、当時17歳だった男性(19)=詐欺容疑で書類送検=を個人事業主と偽り、給付金100万円をだまし取った疑いだ。9人は高校生や大学生に「投資すれば『個人事業主』になるから、給付金を申請できる」などとうそをついて、不正受給に勧誘。 2割を手数料として徴収し、残る8割を「200%の利益が出る」などと言って、給付金を暗号資産(仮想通貨)関連事業への投資名目で預かっていた。さらには「会員を増やせば別にボーナスを出す」と誘い、マルチ的手法で規模を拡大。計約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上るとみられる。 このうち約4000万円は中峯被告やアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに出国した30代の男ら主犯格の4人で分配し、残りは30代男が投資名目で受領していたという。実際に投資に使われたのかは不明で、持ち逃げした可能性もある』、「約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上る」、かなりの規模だ。
・『「国をだました詐欺事件」として全国の警察が摘発に総力 そもそも持続化給付金制度はコロナ禍を受けた経済対策で、緊急性から中小企業へのスピード支給を優先。中小企業庁は424万件、総額約5兆5000億円を支給したが、申請方法や審査が甘い「性善説」の制度で、不正が相次いだと指摘されている。 二つの事件以外にも摘発が相次ぎ、警察庁によると5月末現在、全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る。これは「国をだました詐欺事件」という点で悪質であり、最優先事項と位置付けて全国の警察が摘発に総力を挙げているからだ。 知能犯罪と言えば「捜査第2課」をイメージされると思うが、前述した通り、国税局職員らが立件された事件は「少年事件課」が担当した。これは逮捕容疑になった不正な申請が「当時17歳」など、多くが少年だったためとみられるが、こうした組織的かつ大規模な詐欺事件に捜査2課以外が着手するのは異例だ。 詳しくは確認できていないが、谷口容疑者らの事件では1800件近い虚偽申請が確認されており、捜査2課と手分けしたのかもしれない。 昨年4月、警察庁は「オレオレ」など特殊詐欺を担当する部署を、これまでの刑事局捜査2課から同局組織犯罪対策部暴力団対策課に移管。これは組織犯罪に効果的に対処する意図だったが、同じようにシフトした全国の警察本部の捜査2課が、給付金詐欺に集中できているという側面もあるようだ』、「全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る」、「「国をだました詐欺事件」という点で悪質」、その通りだ。
・『不正受給発覚は時間の問題 身に覚えあれば自主的申告を 一般的に詐欺事件は、「だまし取る意図」という目に見えないものを立証しなければならないが、給付金詐欺は複雑なスキームを駆使した手口ではなく、確定申告書という住所や氏名など個人情報も満載された「詐欺の証拠」をご丁寧に提出しているわけだ。 筆者は現役の社会部記者時代、経済事件などの取材が多かったこともあり、法人名さえ特定できれば事業の実態があるのか、それともダミー会社かは、それほど苦労せずに調べることはできた。 詐欺事件のエキスパートである捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい。 経済産業省のホームページには「不正受給及び自主返還について」と銘打って「現在、不正受給の調査を行っております。不正は絶対に許しません」と警告。 一方「給付要件を満たさないにもかかわらず、誤って申請を行い、受給してしまった場合などについては、自主的な返還を受け付けています」とも呼びかけ、自ら申し出れば刑事告発などはしない方針だ。 詐欺罪の時効は7年。逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい』、「捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい」、「逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい」、同感である。
第三に、6月20日付け文春オンライン「〈証拠文書、LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55304
・『「皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」 6月15日、突如として開いた会見で深々と頭を下げたのは、石川県加賀市・山代温泉で旅館「瑠璃光」「葉渡莉」を経営する「よろづや観光」の3代目・萬谷浩幸社長だ。 「コロナ禍の約15カ月にわたる休業期間中、受給した雇用調整助成金のうち約2000万円が不正受給に当たると労働局から指摘を受けた。故意ではない。すみやかに返還し、再発防止に努めたい」 「不正受給の認識はなかった」と強調する社長。実はその3日前、「週刊文春」は社長を直撃していた。取材から浮かび上がるのは、社長の“公式見解”とはかけ離れた、“巨額不正”だった。 「よろづや観光」は、約250人の従業員を抱え、来秋公開の小芝風花主演の映画『レディ・カガ』のロケ地にもなるほど、加賀を代表する名門旅館の一つだ。そんな名宿による”不正受給”は、内部告発によって、露見することになった。今春、現役社員たちが石川労働局に告発したのだ。幹部のA氏が語る』、「約250人の従業員を抱え」、「加賀を代表する名門旅館の一つ」で「雇用調整助成金のうち」「不正受給」が「2000万円」以上、とは酷い事件だ。
・『「タイムカードを押さぬよう徹底されていた」 「コロナ禍で約15カ月の休館期間中も、約20名いる幹部は補助金申請や通販業務、館内整備等に追われていた。月の出勤日数はコロナ以前並の22日前後でした。しかし、そのほとんどが“休業日”としてタイムカードを押さぬよう徹底されていたのです。中には会社の指示を無視してタイムカードを押し続けた社員もいたため、会社が作成した時間外申請書と齟齬が生じ、労働局にとって動かぬ証拠となった。ただ、これは氷山の一角。不正の総額は2000万円どころではないのです」 発端は2020年5月、幹部会議で示された萬谷社長の方針にあった。社長は、「お金は雇調金が支給されるわけだから、休んでいても仕事しても同じ。ならぼんやり休んでいることないよね」 と、明言。さらに「休業中も精力的に取り組め」と付け加えたという。何が問題なのか。雇調金を所管する厚労省の担当者に聞いた。 「雇調金は、コロナ等で休業を余儀なくされた場合、安易な解雇に走らず雇用維持してもらうため、休業手当の負担を国が助成する制度です。旅館が休館していても従業員が他の業務に従事していれば当然『休業』ではないので『不正受給』となります。仮に助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断です」 従業員に“休業出勤”を指示する一方、コロナが徐々に落ち着き旅館が再開すると、今度は現場の過剰な負担が浮き彫りとなった。同社社員のB氏が語る』、「助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断」、極めて悪質だ。
・『コストカットは“温泉”にも… 「会社は雇調金を少しでも多く受け取るため、今度はなるべく多くの社員に休業を割り当てて出社人数を制限したのです。例えば清掃は1部屋を複数人で30分かけていたが、1人で15分以内となった。チェックインまで休憩は無く、消毒作業をしたら間に合わないので、消毒液を清掃作業には持ち込まず、消毒は省いています」 名宿のコストカットは、旅館の生命線である温泉にも及んだ。 「人件費を抑えようと出勤人数を減らしているので、現場はいつも人手不足。温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い。今年1月、保健所の指導を受けても改善されませんでした」(B氏) そうして積み上げた不正受給額は、相当な額にのぼるという。 「幹部の“休業出勤”による不正受給だけでも3000万円は下らない。それ以外にも一般社員による“休業出勤”やパート・アルバイトへの休業手当未払い分もある。不正が認定された場合の返還額には不正以降の支給額全額に、不正受給額の2割に相当する違約金も加わります。また、他の助成金も5年間は取得できない」(同社社員のC氏) 告発者は労働局の担当者にこう念を押されたという。 「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」 今回、従業員たちが告発を決意した背景には、社長への根深い不信感があった。 「有給休暇は長年取得できない状況が続き、残業代の未払いも横行していた。昨年、数回にわたり労働基準監督署が是正を求め、やっと5日の法定有給が確保されました。ただその後も社長は、5日を超える有給は『安易に与えるな』と発言し、有給の承認は社長の決裁を経るよう幹部に指示していました。労働契約書に記載されているはずの賞与も、私が知る限り支給されたことは一度もない。毎年15人程採用する新入社員も、3年後には5名程しか残りません。他にも、調理場でセクハラ被害に遭った社員が民事訴訟を検討しているなど、従業員を塵芥のようにしか考えていない社長に対する不満は頂点に達しているのです」(前出のA氏) 6月12日、一連の疑惑を萬谷社長に直撃した。(Qは聞き手の質問、Aは社長の回答)』、「温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い」「保健所の指導を受けても改善されませんでした」、肝心の「温泉」でも不正とは恐れ入る。「告発者は労働局の担当者に・・・「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」、「返還額は億単位」とは本当に巨額だ。
・『「反省もあって…」 Q:休業中の社員を出社させていたと聞いている。 A:「それはない。あの……調査中です」 Q:休館中も幹部社員は通常通り働いていましたよね。 A:「そういう認識はないです」 Q:ではなぜ労働局が調査しているのか。 A:「会社側の認識とちょっとズレがあるので」 Q:十分なサービスもできないと社員が嘆いている。 A:「GoToの時に人手が足りなくなって、反省もあって、人数を増やしている」 会社に改めて質問状を送ると、一部回答を翻し、概ね次のように答えた。 「不正受給を行った認識はないが、タイムカードと時間外申請書との不一致により受給した金額(2000万円程度)があることは事実。返還したい。(課長以上が出勤していた件は)休業日には出勤しないというルールの徹底不足であり深く反省しています。(清掃業務は)除菌作業を行えないような状況とは考えていません。(有休は)全社員取得出来ている。賞与は赤字のため支給出来ていません」 あくまで「不正」ではないと言い張っていた社長。C氏は嘆息する。 「そもそも、タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」 「お客さんの笑顔が見たい」とよろづやに就職したというB氏は続ける』、「社長」の主張は余りに酷い。「タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」、ここまで大規模な不正がよくぞ行われたものだ。
・『「悪いという認識はありました。ですが…」 「入社した頃は親孝行で家族を招待しようと思っていたのですが、今は、絶対に泊まらせたくない……。笑顔どころかお客さんの怒った顔や悲しい顔を見るのが本当に辛いんです。社長はCMや映画に注力していますが、見栄えにしか興味がない。『質より効率を重視しろ』が口癖です。きちんとしたサービスもさせてもらえず、不正を繰り返す。このままでは誇りを失ってしまう。社長にはきちんと責任を取って頂きたい」 別の幹部社員のD氏も付言する。 「悪いことは悪いという認識はありました。ですが本当にワンマンの会社なので、社長がこれでいいんだといえば、これでいいんですねと……。社長をずっと見てきましたけど、たぶん今回も反省しないのではないか」 従業員たちの告発に対して、会見でも「故意ではなかった」と繰り返した社長。労働局は、既に証拠資料の押収と従業員の聴取を終えている。聴取では複数の従業員が不正受給を認める供述をしており、労働局がどう対応するのか注目される』、社長側は政治家ルートなどを通じて「労働局」などに働きかけているのだろうが、日本は法治国家である以上、こんな大規模な不正はきちんと指摘して是正させるべきだろう。
タグ:「社長」の主張は余りに酷い。「タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」、ここまで大規模な不正がよくぞ行われたものだ。 肝心の「温泉」でも不正とは恐れ入る。「告発者は労働局の担当者に・・・「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」、「返還額は億単位」とは本当に巨額だ。 「助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断」、極めて悪質だ。 「捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい」、「逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい」、同感である。 「全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る」、「「国をだました詐欺事件」という点で悪質」、その通りだ。 「約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上る」、かなりの規模だ。 「谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあった」、もともと山っ気があったようだ。 「手続きを代行」、「1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた」、割のいいビジネスだ。 「給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行」、いくら「簡易な手続き」とは言ってもここまで不正を誘発うるとは「手続き」に問題がある。 戸田一法氏による「「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家、2億円マルチ詐欺の国税職員ら…」 ダイヤモンド・オンライン 「資金源は蔵人会長自身の株売却益だった」、オーナー経営者の保有株売却は、証券会社や当局への届け出が必要になるので、いつでも可能な訳ではない。「蔵人会長」は「詐欺」に引っかかったということで、社内での立場は多少悪くなる筈だ。 「過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった」、「今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケース」、確かに「珍しいケース」だ。 コロワイドは給食大手シダックスに買収提案をしていたが、争奪戦でイメージ低下を恐れて、9月14日に提案を撤回した。なお、本件とは直接関連はない。 社長側は政治家ルートなどを通じて「労働局」などに働きかけているのだろうが、日本は法治国家である以上、こんな大規模な不正はきちんと指摘して是正させるべきだろう。 「約250人の従業員を抱え」、「加賀を代表する名門旅館の一つ」で「雇用調整助成金のうち」「不正受給」が「2000万円」以上、とは酷い事件だ。 文春オンライン「〈証拠文書、LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発」 詐欺 日刊ゲンダイ「「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実」 (その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発)