ミャンマー(その7)(人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも、ミャンマー情勢 日本外交の選択肢、ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク) [外交]
ミャンマーについては、2月17日に取上げた。今日は、(その7)(人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも、ミャンマー情勢 日本外交の選択肢、ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク)である。
先ずは、7月15日付け東洋経済オンライン「人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/603730
・『日本のODA(政府開発援助)を担う独立行政法人の国際協力機構(JICA)が、農業やインフラ整備などの技術協力に関わる専門家を7月中旬以降、ミャンマーに順次派遣する方針であることがわかった。JICAは人数を明らかにしていないが、数十人規模とみられる。 渡航要請を受けた専門家から、「安全が担保されていないのではないか」「専門家の本格的な派遣はクーデター政権の容認につながりかねない」との疑問の声が挙がっている』、軍事クーデター後、アウンサンスーチー氏を事実上拘束、民主派リーダー4人を死刑にするなど、軍政の暴挙が激化するなかでのJICA支援再開は、信じられない弱腰外交だ。
・『渡航制限を見直し、専門家を再派遣 ミャンマーでは2021年2月に軍事クーデターが発生し、それからしばらくしてJICAは専門家を一時帰国させていた。その後、ミャンマー国軍はクーデターに反対する市民への弾圧をエスカレートさせており、少数民族の居住地区への空爆や市民の逮捕・拘束や殺害も相次いでいる。 そうした中、JICAはミャンマーへの渡航制限を見直し、専門家を再び派遣する方針を6月に決定した。6月24日には専門家を対象としたオンライン形式での説明会が開かれ、専門家の再渡航を速やかに進めることが専門家に伝えられた。 同説明会でJICAが示した内容は、「任地は最大都市ヤンゴンに限定し、首都ネピドーでの業務は当面、短期滞在の出張で対応すること。また、地方への渡航は一部の地域を除いて原則として禁止し、不要不急の夜間外出を避けること」などだった。 JICAは4月中旬に日本から専門の調査団を派遣して現地の安全状況を調査している。しかし、6月24日の説明会では「派遣本格化の前提であるはずの治安や人権状況に関する詳しい説明はなかった」(参加者)という。) 他方、JICAミャンマー事務所が作成した「ミャンマー国内の安全対策と健康管理について」と題した2022年5月付の文書は、「外出に当たっては、特に爆発、銃撃事案等に巻き込まれるリスクを十分意識したうえで、身の回りの安全に十分注意して行動してください」と注意を促している。まさに安全が担保されているとは言いがたい状況にある。報道によれば、7月12日、専門家の赴任地であるヤンゴン市内では7件の爆発事件が発生。これまでに2人の死亡が確認されている。 では、JICAの要請を専門家が拒否した場合、どうなるのか。 JICAが6月に配付した文書では、「事情により再渡航を希望しない専門家については、任期短縮・要員交代や派遣形態の変更により対応する」と記されている。「専門家はJICAとの間で業務委託契約を締結しており、任期は2年程度。そのため、任期短縮は早晩、失職につながりかねない」と前出の関係者は危惧する。そのうえで「専門家の多くは家族を抱え、断りにくい状況にある」(同関係者)という』、「「専門家はJICAとの間で業務委託契約を締結しており、任期は2年程度。そのため、任期短縮は早晩、失職につながりかねない」と前出の関係者は危惧する。そのうえで「専門家の多くは家族を抱え、断りにくい状況」、そうした「断りにくい状況」を踏まえて危険な任務を押し付けるとは、「JICA」のやり方も汚い。
・『悪化するミャンマーの人権状況 ミャンマーの人権状況は悪化している。ミャンマーの人権問題を担当する国連人権理事会のトーマス・アンドリュース特使は6月29日付の声明文で、「国軍による暴力はさらにひどくなっている。空爆で村を焼き払い、子どもまで殺害している。これは戦争犯罪に相当する」と非難している。 クーデターを起こした国軍は国家統治評議会を組織し、ミン・アウン・フライン国軍総司令官自らが暫定首相に就任。だが、日本政府はこのクーデター政権を正式に承認しておらず、クーデターを非難するとともに、新規のODA供与も見合わせている。 その一方で2022年5月、民間の経済協力団体である日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長とともに、日本政府の内閣官房内閣審議官がミャンマーを訪問し、クーデター政権の労働相などと会談していた事実がミャンマー国営紙によって報じられている。この件を問題視する日本や海外など110の市民団体は岸田文雄首相宛てに抗議文を送付し、同審議官の訪問の目的や対談相手、対談内容などを明らかにするように求めている。 そうしたさなかにJICAによる専門家のミャンマー派遣再開が明らかになったことで、その活動がクーデター政権に宣伝材料として悪用されるリスクも持ち上がっている。 東洋経済が入手したJICAの内部文書では、「(局長以上の現地関係者との)会合を開催する場合、国営メディア等で報道されないよう留意する」「JICAとカウンターパート(相手方)との共同活動が国軍のプロパガンダに活用される懸念がある」との記述もみられ、JICA自身がこうしたリスクを懸念していることがわかる。 JICAのホームページでは7月14日現在、専門家の派遣について何の情報も掲載されていない。東洋経済の取材に対し、JICA報道課は「安全に活動できるとの判断に基づいて専門家に現地での業務をお願いしている。専門家本人が不安を感じているのであれば、関係部署や現地事務所がいつでも相談に応じる」などと説明。 クーデター政権を利する恐れがあるとの懸念が持たれていることについては、「専門家にはできるだけ目立たないように活動してもらう」(同課)という。ただ、なぜ今、派遣しなければならないのかも含めてJICAの説明内容はあいまいだ。 国民の理解と支持が必要な開発協力には高い透明性が求められている。理由を含め十分な説明なしに人権侵害が横行している国にODAを担う専門家を派遣するやり方に問題はないのか。JICAはこの間のいきさつをきちんと明らかにすべきだ』、「東洋経済が入手したJICAの内部文書では、「(局長以上の現地関係者との)会合を開催する場合、国営メディア等で報道されないよう留意する」「JICAとカウンターパート(相手方)との共同活動が国軍のプロパガンダに活用される懸念がある」との記述もみられ、JICA自身がこうしたリスクを懸念していることがわかる」、「国民の理解と支持が必要な開発協力には高い透明性が求められている。理由を含め十分な説明なしに人権侵害が横行している国にODAを担う専門家を派遣するやり方に問題はないのか。JICAはこの間のいきさつをきちんと明らかにすべきだ」、その通りだ。
次に、8月3日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「ミャンマー情勢、日本外交の選択肢」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/08/post-1281_1.php
・『<国軍が独裁体制を強化し中ロに接近するなか、日本の外交政策は行き詰まっている> 2021年の2月に国軍が実権を掌握して、事実上の軍政に戻っているミャンマーでは、最大都市のヤンゴンで7月30日、日本人ジャーナリストが治安当局に拘束されました。この事件については、この間起きている一連の流れの中で理解する必要があると思います。 まず6月22日には、クーデター以来軟禁されていた、アウンサンスーチー氏がネピドーの自宅から、「刑務所敷地内に新築された施設」に移動させられています。事実上の収監と言えます。 7月2日には、中国の王毅外相がクーデター後、初の要人訪問として、ミャンマーを訪問し、国際会議に参加しています。 さらに、7月11日には、国軍の最高指導者である、ミンアウンフラインが、ロシアを訪問し、国防省の高官と会談しました。この会談について、ロシア国防省は12日になって声明を発表し「戦略的なパートナーシップの精神に基づき、軍事面や技術協力を深めていくことを再確認した」としています』、「中国」や「ロシア」とは既に強固な関係を築いているようだ。
・『民主活動家処刑の衝撃 7月25日には、民主活動家4人に対する死刑が執行され世界を震撼させました。罪状はテロ行為に関わったなどというもので、ミャンマーでは久々の死刑執行でした。死刑が執行されたのはNLD(国民民主連盟)の元国会議員で、スーチー氏の側近だったピョーゼヤートー氏や、民主活動家として有名なチョーミンユ氏など4人だということです。 つまり、この1カ月間に、フライン体制の国軍は、より独裁的な性格を強め、とりわけスーチー氏率いるNLDへの弾圧を強めています。また、同時に中国とロシアに接近しているようです。 日本としては、今後のミャンマー外交をどうしたらいいのか、非常に難しい選択となってきました。ミャンマーに対する日本外交は、どう考えても行き詰まっているからです。NLDと国軍が和解したことで2015年に民主体制が確立して以来、日本からは多くの企業がミャンマーに進出しました。現在でも数百社という日本企業が残っています。事実上、内戦状態となった現在、その経済的な活動は非常に限定されています。 また、民主化後に投資が増えたとはいえ、それ以前から日本政府はミャンマー国軍とは関係を築いており、21年のクーデターで民主制が壊された後も、国軍との関係を保っているのは事実です。一方で、国軍からもNLDからも「ミャンマー人ではない」とされて厳しい差別を受けているロヒンギャの人々に対する人道支援については、日本はこの間ずっと模索を続けてきましたが事態は改善していません。) そんななかで、今回の死刑執行やスーチー氏収監、日本人拘束、そして中ロ接近という一連の事件で、流れはますます悪化しているように見えます。今後の日本外交の方向性についても、方向性を見極めるのは難しくなっています。 まず、このような軍政と内戦が続くのであれば、日本の進出企業は総撤退、ビジネスチャンスを求めてミャンマーに渡航した日本の人々も一斉に引き揚げというのが合理的なように思えます。 ですが、仮に日本の経済プレゼンスが消えてしまえば、ミャンマーは中国とロシアの陣営により傾斜していくと思います。そうなれば、ベンガル湾にロシアの海軍基地が建設されるなど、地政学的なバランスは一変してしまいます。それこそ安全なインド太平洋などという戦略は大きく揺さぶられることになります。また、日本が総撤退してしまうと、ミャンマー経済が民主化以前の貧困状態に戻ってしまうことも考えられます』、「仮に日本の経済プレゼンスが消えてしまえば、ミャンマーは中国とロシアの陣営により傾斜していくと思います。そうなれば、ベンガル湾にロシアの海軍基地が建設されるなど、地政学的なバランスは一変してしまいます。それこそ安全なインド太平洋などという戦略は大きく揺さぶられることに」、確かにこのシナリオは是非避けたいものだ。
・『軍政との関係維持の理由 ロヒンギャの人々の問題も難題です。彼らに対しては、民主派のNLDも軍政も同じように差別と弾圧を加える側です。かといって、隣国バングラデシュには彼らを支える力はありません。そんな中で、日本が全ての努力を放棄してしまうと、より深刻な人道危機が発生する可能性があります。 このように、日本外交が現在取っている方向性には、一応の理屈はあるわけです。国際的な非難を浴びている軍政に対して、一定の2国間関係を維持しているということにも、それなりの背景があるという見方も可能です。 そうではあるのですが、問題はそろそろ全体的に行き詰まりに来ていることです。今後のミャンマー外交をどうするのか、この辺りで総括をして国会などで包括的な審議を行なうべきです。安倍政権で外相を務めていた岸田首相は、この間のミャンマー外交について、当事者として深い理解をしているはずです。総理は、少なくともその全体像を世論に説明をする必要があると思います』、「総理は、少なくともその全体像を世論に説明をする必要がある」、その通りだ。
第三に、10月2日付け日刊ゲンダイ「ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/312211
・『何とも後味が悪い。日本政府は安倍元首相の国葬に、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーを招待。軍事政権に“お墨付き”を与えた愚行には、国外から厳しい批判が寄せられている。国軍下のミャンマー外務省は早速、国葬参列を国内外に周知して正当性のアピールに余念がない。 ミャンマーからは、ソー・ハン駐日大使夫妻が参列。駐日大使といえど、国軍支配下の政府代表である。国葬後に、ミャンマー外務省が公式ホームページとフェイスブックに、祭壇や大使夫妻の写真を添えて〈ミャンマー政府を代表して出席した〉などと掲載。 日本政府はミャンマーの参列を認めたことにより、軍事政権に「公式の政府」としての正当性を国際社会へアピールする機会を与えてしまった格好だ。 林外相は9月30日、ミャンマー国軍関係者の参列について「さまざまな意見があることは承知している」「(国葬という)行事の性質に鑑み、外交関係を有する国にはすべて通報を行った」などと釈明。「クーデターの正当性を認めないというわが国の立場は、駐日大使の参列によって変わるものではない」と説明したが、そんな理屈は国際社会に通用しない。 「たとえ日本側が公式に承認していない未承認の国であっても、その代表を自国の行事に招いたり、親書を送ったりすれば、外交上は『黙示の承認』を行ったことになります。つまり、林外相が『わが国の立場は変わらない』と言い張ったところで、国際社会からは『日本は事実上、軍事政権を承認した』とみなされるわけです。軍事政権にとって宣伝効果を生む行為は厳に慎まねばならなかったのに、まったくもって外交上の配慮に欠けていました。軍事政権が正当性を訴えるプロパガンダに、日本政府がくみしているとみなされても仕方ありません」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)』、「「たとえ日本側が公式に承認していない未承認の国であっても、その代表を自国の行事に招いたり、親書を送ったりすれば、外交上は『黙示の承認』を行ったことになります。つまり、林外相が『わが国の立場は変わらない』と言い張ったところで、国際社会からは『日本は事実上、軍事政権を承認した』とみなされるわけです。軍事政権にとって宣伝効果を生む行為は厳に慎まねばならなかったのに、まったくもって外交上の配慮に欠けていました。軍事政権が正当性を訴えるプロパガンダに、日本政府がくみしているとみなされても仕方ありません」、お粗末極まりない。
・『「人権意識の低さ、外交オンチぶりを露呈した」 村の焼き打ちや空爆を繰り返すミャンマー国軍の非人道ぶりを黙認するかのような日本政府の姿勢に、SNS上は大荒れ。特に国外のアカウントから、怒りの声が続出している。英語のツイートを訳してみる。 〈違法なミャンマー軍事政権の代表者を安倍元首相の国葬に招いた日本政府は恥を知れ。軍事政権は残虐行為を犯しているのに、罰せられない。彼らに正当性を与えることは、非人道行為を助長することになる〉) 〈在日ミャンマー人や人権団体の抗議があったにもかかわらず、軍事政権のソー・ハン駐日大使が国葬に出席した〉 米シンクタンクの研究員のツイッターを訳すと、〈日本政府のミャンマー軍事政権への接し方を鑑みれば、(国葬招待は)驚くことではない。1988年にミャンマー国軍がクーデターを起こした直後、軍政を公式に承認した最初の国が日本だからだ〉と皮肉交じりに投稿していた。まさに世界中から大ヒンシュクを買っている状況だ。 「岸田政権は人権意識の低さ、外交オンチぶりを国内外に露呈してしまいました。外交上の立ち振る舞いがどんな意味を持つのか、もっと真剣に考えてほしいものです」(五野井郁夫氏) 岸田首相は安倍国葬の意義について、「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」と意気込んでいた。ただでさえ決断力に欠ける岸田首相だが、その「決意」とやらも薄っぺらである』、「まさに世界中から大ヒンシュクを買っている状況だ。 「岸田政権は人権意識の低さ、外交オンチぶりを国内外に露呈してしまいました。外交上の立ち振る舞いがどんな意味を持つのか、もっと真剣に考えてほしいものです」、同感である。
先ずは、7月15日付け東洋経済オンライン「人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/603730
・『日本のODA(政府開発援助)を担う独立行政法人の国際協力機構(JICA)が、農業やインフラ整備などの技術協力に関わる専門家を7月中旬以降、ミャンマーに順次派遣する方針であることがわかった。JICAは人数を明らかにしていないが、数十人規模とみられる。 渡航要請を受けた専門家から、「安全が担保されていないのではないか」「専門家の本格的な派遣はクーデター政権の容認につながりかねない」との疑問の声が挙がっている』、軍事クーデター後、アウンサンスーチー氏を事実上拘束、民主派リーダー4人を死刑にするなど、軍政の暴挙が激化するなかでのJICA支援再開は、信じられない弱腰外交だ。
・『渡航制限を見直し、専門家を再派遣 ミャンマーでは2021年2月に軍事クーデターが発生し、それからしばらくしてJICAは専門家を一時帰国させていた。その後、ミャンマー国軍はクーデターに反対する市民への弾圧をエスカレートさせており、少数民族の居住地区への空爆や市民の逮捕・拘束や殺害も相次いでいる。 そうした中、JICAはミャンマーへの渡航制限を見直し、専門家を再び派遣する方針を6月に決定した。6月24日には専門家を対象としたオンライン形式での説明会が開かれ、専門家の再渡航を速やかに進めることが専門家に伝えられた。 同説明会でJICAが示した内容は、「任地は最大都市ヤンゴンに限定し、首都ネピドーでの業務は当面、短期滞在の出張で対応すること。また、地方への渡航は一部の地域を除いて原則として禁止し、不要不急の夜間外出を避けること」などだった。 JICAは4月中旬に日本から専門の調査団を派遣して現地の安全状況を調査している。しかし、6月24日の説明会では「派遣本格化の前提であるはずの治安や人権状況に関する詳しい説明はなかった」(参加者)という。) 他方、JICAミャンマー事務所が作成した「ミャンマー国内の安全対策と健康管理について」と題した2022年5月付の文書は、「外出に当たっては、特に爆発、銃撃事案等に巻き込まれるリスクを十分意識したうえで、身の回りの安全に十分注意して行動してください」と注意を促している。まさに安全が担保されているとは言いがたい状況にある。報道によれば、7月12日、専門家の赴任地であるヤンゴン市内では7件の爆発事件が発生。これまでに2人の死亡が確認されている。 では、JICAの要請を専門家が拒否した場合、どうなるのか。 JICAが6月に配付した文書では、「事情により再渡航を希望しない専門家については、任期短縮・要員交代や派遣形態の変更により対応する」と記されている。「専門家はJICAとの間で業務委託契約を締結しており、任期は2年程度。そのため、任期短縮は早晩、失職につながりかねない」と前出の関係者は危惧する。そのうえで「専門家の多くは家族を抱え、断りにくい状況にある」(同関係者)という』、「「専門家はJICAとの間で業務委託契約を締結しており、任期は2年程度。そのため、任期短縮は早晩、失職につながりかねない」と前出の関係者は危惧する。そのうえで「専門家の多くは家族を抱え、断りにくい状況」、そうした「断りにくい状況」を踏まえて危険な任務を押し付けるとは、「JICA」のやり方も汚い。
・『悪化するミャンマーの人権状況 ミャンマーの人権状況は悪化している。ミャンマーの人権問題を担当する国連人権理事会のトーマス・アンドリュース特使は6月29日付の声明文で、「国軍による暴力はさらにひどくなっている。空爆で村を焼き払い、子どもまで殺害している。これは戦争犯罪に相当する」と非難している。 クーデターを起こした国軍は国家統治評議会を組織し、ミン・アウン・フライン国軍総司令官自らが暫定首相に就任。だが、日本政府はこのクーデター政権を正式に承認しておらず、クーデターを非難するとともに、新規のODA供与も見合わせている。 その一方で2022年5月、民間の経済協力団体である日本ミャンマー協会の渡邉秀央会長とともに、日本政府の内閣官房内閣審議官がミャンマーを訪問し、クーデター政権の労働相などと会談していた事実がミャンマー国営紙によって報じられている。この件を問題視する日本や海外など110の市民団体は岸田文雄首相宛てに抗議文を送付し、同審議官の訪問の目的や対談相手、対談内容などを明らかにするように求めている。 そうしたさなかにJICAによる専門家のミャンマー派遣再開が明らかになったことで、その活動がクーデター政権に宣伝材料として悪用されるリスクも持ち上がっている。 東洋経済が入手したJICAの内部文書では、「(局長以上の現地関係者との)会合を開催する場合、国営メディア等で報道されないよう留意する」「JICAとカウンターパート(相手方)との共同活動が国軍のプロパガンダに活用される懸念がある」との記述もみられ、JICA自身がこうしたリスクを懸念していることがわかる。 JICAのホームページでは7月14日現在、専門家の派遣について何の情報も掲載されていない。東洋経済の取材に対し、JICA報道課は「安全に活動できるとの判断に基づいて専門家に現地での業務をお願いしている。専門家本人が不安を感じているのであれば、関係部署や現地事務所がいつでも相談に応じる」などと説明。 クーデター政権を利する恐れがあるとの懸念が持たれていることについては、「専門家にはできるだけ目立たないように活動してもらう」(同課)という。ただ、なぜ今、派遣しなければならないのかも含めてJICAの説明内容はあいまいだ。 国民の理解と支持が必要な開発協力には高い透明性が求められている。理由を含め十分な説明なしに人権侵害が横行している国にODAを担う専門家を派遣するやり方に問題はないのか。JICAはこの間のいきさつをきちんと明らかにすべきだ』、「東洋経済が入手したJICAの内部文書では、「(局長以上の現地関係者との)会合を開催する場合、国営メディア等で報道されないよう留意する」「JICAとカウンターパート(相手方)との共同活動が国軍のプロパガンダに活用される懸念がある」との記述もみられ、JICA自身がこうしたリスクを懸念していることがわかる」、「国民の理解と支持が必要な開発協力には高い透明性が求められている。理由を含め十分な説明なしに人権侵害が横行している国にODAを担う専門家を派遣するやり方に問題はないのか。JICAはこの間のいきさつをきちんと明らかにすべきだ」、その通りだ。
次に、8月3日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「ミャンマー情勢、日本外交の選択肢」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/08/post-1281_1.php
・『<国軍が独裁体制を強化し中ロに接近するなか、日本の外交政策は行き詰まっている> 2021年の2月に国軍が実権を掌握して、事実上の軍政に戻っているミャンマーでは、最大都市のヤンゴンで7月30日、日本人ジャーナリストが治安当局に拘束されました。この事件については、この間起きている一連の流れの中で理解する必要があると思います。 まず6月22日には、クーデター以来軟禁されていた、アウンサンスーチー氏がネピドーの自宅から、「刑務所敷地内に新築された施設」に移動させられています。事実上の収監と言えます。 7月2日には、中国の王毅外相がクーデター後、初の要人訪問として、ミャンマーを訪問し、国際会議に参加しています。 さらに、7月11日には、国軍の最高指導者である、ミンアウンフラインが、ロシアを訪問し、国防省の高官と会談しました。この会談について、ロシア国防省は12日になって声明を発表し「戦略的なパートナーシップの精神に基づき、軍事面や技術協力を深めていくことを再確認した」としています』、「中国」や「ロシア」とは既に強固な関係を築いているようだ。
・『民主活動家処刑の衝撃 7月25日には、民主活動家4人に対する死刑が執行され世界を震撼させました。罪状はテロ行為に関わったなどというもので、ミャンマーでは久々の死刑執行でした。死刑が執行されたのはNLD(国民民主連盟)の元国会議員で、スーチー氏の側近だったピョーゼヤートー氏や、民主活動家として有名なチョーミンユ氏など4人だということです。 つまり、この1カ月間に、フライン体制の国軍は、より独裁的な性格を強め、とりわけスーチー氏率いるNLDへの弾圧を強めています。また、同時に中国とロシアに接近しているようです。 日本としては、今後のミャンマー外交をどうしたらいいのか、非常に難しい選択となってきました。ミャンマーに対する日本外交は、どう考えても行き詰まっているからです。NLDと国軍が和解したことで2015年に民主体制が確立して以来、日本からは多くの企業がミャンマーに進出しました。現在でも数百社という日本企業が残っています。事実上、内戦状態となった現在、その経済的な活動は非常に限定されています。 また、民主化後に投資が増えたとはいえ、それ以前から日本政府はミャンマー国軍とは関係を築いており、21年のクーデターで民主制が壊された後も、国軍との関係を保っているのは事実です。一方で、国軍からもNLDからも「ミャンマー人ではない」とされて厳しい差別を受けているロヒンギャの人々に対する人道支援については、日本はこの間ずっと模索を続けてきましたが事態は改善していません。) そんななかで、今回の死刑執行やスーチー氏収監、日本人拘束、そして中ロ接近という一連の事件で、流れはますます悪化しているように見えます。今後の日本外交の方向性についても、方向性を見極めるのは難しくなっています。 まず、このような軍政と内戦が続くのであれば、日本の進出企業は総撤退、ビジネスチャンスを求めてミャンマーに渡航した日本の人々も一斉に引き揚げというのが合理的なように思えます。 ですが、仮に日本の経済プレゼンスが消えてしまえば、ミャンマーは中国とロシアの陣営により傾斜していくと思います。そうなれば、ベンガル湾にロシアの海軍基地が建設されるなど、地政学的なバランスは一変してしまいます。それこそ安全なインド太平洋などという戦略は大きく揺さぶられることになります。また、日本が総撤退してしまうと、ミャンマー経済が民主化以前の貧困状態に戻ってしまうことも考えられます』、「仮に日本の経済プレゼンスが消えてしまえば、ミャンマーは中国とロシアの陣営により傾斜していくと思います。そうなれば、ベンガル湾にロシアの海軍基地が建設されるなど、地政学的なバランスは一変してしまいます。それこそ安全なインド太平洋などという戦略は大きく揺さぶられることに」、確かにこのシナリオは是非避けたいものだ。
・『軍政との関係維持の理由 ロヒンギャの人々の問題も難題です。彼らに対しては、民主派のNLDも軍政も同じように差別と弾圧を加える側です。かといって、隣国バングラデシュには彼らを支える力はありません。そんな中で、日本が全ての努力を放棄してしまうと、より深刻な人道危機が発生する可能性があります。 このように、日本外交が現在取っている方向性には、一応の理屈はあるわけです。国際的な非難を浴びている軍政に対して、一定の2国間関係を維持しているということにも、それなりの背景があるという見方も可能です。 そうではあるのですが、問題はそろそろ全体的に行き詰まりに来ていることです。今後のミャンマー外交をどうするのか、この辺りで総括をして国会などで包括的な審議を行なうべきです。安倍政権で外相を務めていた岸田首相は、この間のミャンマー外交について、当事者として深い理解をしているはずです。総理は、少なくともその全体像を世論に説明をする必要があると思います』、「総理は、少なくともその全体像を世論に説明をする必要がある」、その通りだ。
第三に、10月2日付け日刊ゲンダイ「ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/312211
・『何とも後味が悪い。日本政府は安倍元首相の国葬に、国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーを招待。軍事政権に“お墨付き”を与えた愚行には、国外から厳しい批判が寄せられている。国軍下のミャンマー外務省は早速、国葬参列を国内外に周知して正当性のアピールに余念がない。 ミャンマーからは、ソー・ハン駐日大使夫妻が参列。駐日大使といえど、国軍支配下の政府代表である。国葬後に、ミャンマー外務省が公式ホームページとフェイスブックに、祭壇や大使夫妻の写真を添えて〈ミャンマー政府を代表して出席した〉などと掲載。 日本政府はミャンマーの参列を認めたことにより、軍事政権に「公式の政府」としての正当性を国際社会へアピールする機会を与えてしまった格好だ。 林外相は9月30日、ミャンマー国軍関係者の参列について「さまざまな意見があることは承知している」「(国葬という)行事の性質に鑑み、外交関係を有する国にはすべて通報を行った」などと釈明。「クーデターの正当性を認めないというわが国の立場は、駐日大使の参列によって変わるものではない」と説明したが、そんな理屈は国際社会に通用しない。 「たとえ日本側が公式に承認していない未承認の国であっても、その代表を自国の行事に招いたり、親書を送ったりすれば、外交上は『黙示の承認』を行ったことになります。つまり、林外相が『わが国の立場は変わらない』と言い張ったところで、国際社会からは『日本は事実上、軍事政権を承認した』とみなされるわけです。軍事政権にとって宣伝効果を生む行為は厳に慎まねばならなかったのに、まったくもって外交上の配慮に欠けていました。軍事政権が正当性を訴えるプロパガンダに、日本政府がくみしているとみなされても仕方ありません」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)』、「「たとえ日本側が公式に承認していない未承認の国であっても、その代表を自国の行事に招いたり、親書を送ったりすれば、外交上は『黙示の承認』を行ったことになります。つまり、林外相が『わが国の立場は変わらない』と言い張ったところで、国際社会からは『日本は事実上、軍事政権を承認した』とみなされるわけです。軍事政権にとって宣伝効果を生む行為は厳に慎まねばならなかったのに、まったくもって外交上の配慮に欠けていました。軍事政権が正当性を訴えるプロパガンダに、日本政府がくみしているとみなされても仕方ありません」、お粗末極まりない。
・『「人権意識の低さ、外交オンチぶりを露呈した」 村の焼き打ちや空爆を繰り返すミャンマー国軍の非人道ぶりを黙認するかのような日本政府の姿勢に、SNS上は大荒れ。特に国外のアカウントから、怒りの声が続出している。英語のツイートを訳してみる。 〈違法なミャンマー軍事政権の代表者を安倍元首相の国葬に招いた日本政府は恥を知れ。軍事政権は残虐行為を犯しているのに、罰せられない。彼らに正当性を与えることは、非人道行為を助長することになる〉) 〈在日ミャンマー人や人権団体の抗議があったにもかかわらず、軍事政権のソー・ハン駐日大使が国葬に出席した〉 米シンクタンクの研究員のツイッターを訳すと、〈日本政府のミャンマー軍事政権への接し方を鑑みれば、(国葬招待は)驚くことではない。1988年にミャンマー国軍がクーデターを起こした直後、軍政を公式に承認した最初の国が日本だからだ〉と皮肉交じりに投稿していた。まさに世界中から大ヒンシュクを買っている状況だ。 「岸田政権は人権意識の低さ、外交オンチぶりを国内外に露呈してしまいました。外交上の立ち振る舞いがどんな意味を持つのか、もっと真剣に考えてほしいものです」(五野井郁夫氏) 岸田首相は安倍国葬の意義について、「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」と意気込んでいた。ただでさえ決断力に欠ける岸田首相だが、その「決意」とやらも薄っぺらである』、「まさに世界中から大ヒンシュクを買っている状況だ。 「岸田政権は人権意識の低さ、外交オンチぶりを国内外に露呈してしまいました。外交上の立ち振る舞いがどんな意味を持つのか、もっと真剣に考えてほしいものです」、同感である。
タグ:ミャンマー (その7)(人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも、ミャンマー情勢 日本外交の選択肢、ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク) 東洋経済オンライン「人権弾圧のミャンマーにJICA専門家派遣の是非 内部文書で判明、国軍の宣伝に悪用の恐れも」 軍事クーデター後、アウンサンスーチー氏を事実上拘束、民主派リーダー4人を死刑にするなど、軍政の暴挙が激化するなかでのJICA支援再開は、信じられない弱腰外交だ。 「「専門家はJICAとの間で業務委託契約を締結しており、任期は2年程度。そのため、任期短縮は早晩、失職につながりかねない」と前出の関係者は危惧する。そのうえで「専門家の多くは家族を抱え、断りにくい状況」、そうした「断りにくい状況」を踏まえて危険な任務を押し付けるとは、「JICA」のやり方も汚い。 「東洋経済が入手したJICAの内部文書では、「(局長以上の現地関係者との)会合を開催する場合、国営メディア等で報道されないよう留意する」「JICAとカウンターパート(相手方)との共同活動が国軍のプロパガンダに活用される懸念がある」との記述もみられ、JICA自身がこうしたリスクを懸念していることがわかる」、 「国民の理解と支持が必要な開発協力には高い透明性が求められている。理由を含め十分な説明なしに人権侵害が横行している国にODAを担う専門家を派遣するやり方に問題はないのか。JICAはこの間のいきさつをきちんと明らかにすべきだ」、その通りだ。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「ミャンマー情勢、日本外交の選択肢」 「中国」や「ロシア」とは既に強固な関係を築いているようだ。 「仮に日本の経済プレゼンスが消えてしまえば、ミャンマーは中国とロシアの陣営により傾斜していくと思います。そうなれば、ベンガル湾にロシアの海軍基地が建設されるなど、地政学的なバランスは一変してしまいます。それこそ安全なインド太平洋などという戦略は大きく揺さぶられることに」、確かにこのシナリオは是非避けたいものだ。 「総理は、少なくともその全体像を世論に説明をする必要がある」、その通りだ。 日刊ゲンダイ「ミャンマー軍事政権が安倍氏国葬に参列…岸田政権に「恥を知れ!」と世界から大ヒンシュク」 「「たとえ日本側が公式に承認していない未承認の国であっても、その代表を自国の行事に招いたり、親書を送ったりすれば、外交上は『黙示の承認』を行ったことになります。つまり、林外相が『わが国の立場は変わらない』と言い張ったところで、国際社会からは『日本は事実上、軍事政権を承認した』とみなされるわけです。軍事政権にとって宣伝効果を生む行為は厳に慎まねばならなかったのに、まったくもって外交上の配慮に欠けていました。軍事政権が正当性を訴えるプロパガンダに、日本政府がくみしているとみなされても仕方ありません」、お粗末極 まりない。 「まさに世界中から大ヒンシュクを買っている状況だ。 「岸田政権は人権意識の低さ、外交オンチぶりを国内外に露呈してしまいました。外交上の立ち振る舞いがどんな意味を持つのか、もっと真剣に考えてほしいものです」、同感である。