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積水ハウス事件(その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) [企業経営]

積水ハウス事件については、2020年5月12日に取上げた。今日は、(その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回)である。

先ずは、10月7日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100703?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 この事件の取材の第一人者であるノンフィクション作家・森功氏がこのほど上梓した文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、知られざる数々の事実が記されている。今回、同文庫の内容を7回連続で公開する。 第1回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の『地面師詐欺』の語られなかった真相」 第2回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の『スター地面師』の正体」 第3回「不動産業者、銀行員、デベロッパー社員必読! 積水ハウスをだました地面師グループの詳細な手口」 第4回「積水ハウスはなぜ詐欺のターゲットにされたのか? 大物地面師2人の生々しい謀議を再現する」』、信じ難い事件で、興味深そうだ。
・『常務が「前倒し」した決済  4月20日、小山と生田が海喜館の売買条件について積水ハウス側の部長や部長代理と具体的な交渉に移る。そこで、60億円の売却金額で話が折り合い、契約の条件として、4日後の24日までに追加の手付金12億円を支払うことも決めた。残る48億円の支払いについては、7月末の決済とした。 なお、海喜館の購入代金はのちに70億円と公表されている。それは積水ハウス側がニセ海老澤佐妃子に対し、旅館売却後の住まい用などとして、自社のマンション購入を薦め、それらの取引額が含まれているからだ。さらに取引の過程で積水側は、70億円のうち63億円を先払いしたと発表したが、そこの疑問については後述する。 4月24日、西新宿のホウライビルにある積水ハウスの事業所で12億円の手付金が支払われた。紛れもない正式な取引だ。ビルの5階にある東京マンション事業部会議室に関係者全員が顔をそろえ、小山たちは海喜館の不動産権利証を用意した。海老澤佐妃子が半世紀も前に両親から譲り受けた書類だと前置きしたそれは、赤茶けていて、ところどころ破れかけていた。 「ほう、これはめずらしい。ずいぶん、古い権利証ですな」 積水ハウスの担当者は、前のめりになってそう漏らし、書類を本物だと思いこんだ。すぐに手付金として12億円の預金小切手を振り出し、ニセ佐妃子に手渡した。これにより売買予約の登記手続きができる。この時点で地面師グループの犯行は、50%以上進んだといえた。 だが、そこに思わぬ邪魔が入った』、「赤茶けていて、ところどころ破れかけていた」「不動産権利証」の真偽を、「前のめりになっ」た担当者が確認しなかったのは手落ちだ。
・『本社に届いた警告を「怪文書」扱い  〈積水は騙されている〉 そう記された内容証明郵便が5月10日、積水ハウス本社に届いた。差出人は海老澤佐妃子となっており、海喜館を連絡先としている。相手は佐妃子のなりすましなので取引を中止せよ、という内容だ。いわゆる警告文のような体裁である。さらに翌11日、似たような内容証明郵便が送り付けられ、文書は合計4通におよんだ。 ところが積水ハウスでは、これを怪文書扱いし、スルーした。先のニセ佐妃子、羽毛田の代理人弁護士が作成した〈事実経過報告〉には、関係者が集まり、文書に関する対処を検討している様が記されている。積水ハウス側の取引責任者は常務執行役の三谷和司だ。三谷たち積水ハウス側はとうぜんのごとく小山や羽毛田たちを呼び出した。羽毛田の弁護士による〈事実経過報告〉は、〈平成29年5月23日(火)午後3時 事務所会議室〉の出来事として、次のように書く。 〈三谷常務から海老澤と名乗る人物に対し、「積水ハウスに宛て去る4月24日の売買契約を締結したこともないし、それに基づく所有権移転請求権仮登記を承諾したこともないという海老澤佐妃子の、記名かつ佐妃子という印鑑を押印した怪文書的な通知書が4通ほど来ているが」と言ってその4通の通知書の写を机に提示し、「これはあなたが出したものではないのですね」と問い質すと、海老澤を名乗る人物は「私はこのようなものを出したことはありません」と答えた〉』、「本社に届いた警告」「4通」を「怪文書扱い」した「三谷常務」の取り扱いは問題だ。
・『現金はどこに流れたか?  そうして6月1日の決済日に備えて、手続きを進めていった。先の5月23日付のニセ海老澤側弁護士の〈報告〉にはこうもある。 〈海老澤を名乗る人物は、自分は5月21日日曜日に海喜館に入って残置物を点検したが、欲しいものはないので全て処分してもらっても構わないような話をした。この三谷常務執行役員とのセッティングは前日の昼過ぎ頃までに小山氏から、海老澤佐妃子と、積水ハウス株式会社との間で打ち合せをしたいので、会議室を貸してほしいし、T(原文では当該の弁護士の実名)も同席して欲しいという申し入れに基づいてなされたものであった〉 売買代金60億円のうち、手付金を差し引いた残金の48億円の処理については、次のように記している。 〈この確約書の差し入れを受け、積水ハウス側は4月24日の売買契約書に基づく決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった〉 一方、民事訴訟における生田側の準備書面によれば、残金である48億円の支払いの大半が預金小切手でなされていた、と詳細に記されている。小切手はぜんぶで5枚あったという。 一、海老澤佐妃子手元分 三六億七九二四万四〇〇〇円 二、弁護士費用 一〇〇〇万円 三、土地調査費用 七五万六〇〇〇円 四、解体工事代着手金 一〇〇〇万円 五、別途契約金 七億四九七〇万八〇〇〇円  最も大きな海老澤佐妃子への支払いについては、およそ37億円の支払いのうち、28億3884万4000円が銀行口座に入金されている。むろん入金先は地面師たちが偽造書類を使って新たに作成したニセ佐妃子の口座だ。その他、残りはさらに5000万円から3億3000万円までの範囲で6つに細かく分散されて入金されている。そこから、いったん地面師グループにおける「銀行屋」、つまり金融ブローカーが、積水ハウスの振り出した小切手を現金化する役割を担った。最終的にそれらの現金がどこに流れたか。それが捜査の焦点になる。 第6回につづく』、「決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった」、「決済時期」を早めるというのも、相手を混乱させる詐欺の手口なのかも知れない。

次に、10月8日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100779?imp=0
・『60億円の行方  とどのつまり60億円あまりを手にしたのは誰か。 そこが事件解明の焦点になる。事件はこれで終わらない。「調査対策委員会」の事件の経緯概要はこう続く。 〈売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は、直ちにA氏との間での留保金の相殺手続を実施し、実質的被害額は約55億5千万円となりました〉 そもそも積水ハウスが17年8月に公表した詐欺の被害額は63億円だった。総額70億円の取引総額からすると、7億円も少ない。さらに次の調査委員会で特定した〈実質的被害額〉となると、そこからさらに8億円近く減り、55億5000万円としている。その分、積水ハウスが被害を免れていることになるが、実質的な被害とは何を意味するのか。そこには妙なカラクリがある。 前述したように、積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしているのである』、「海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンション」、不思議だ。
・『金額の誤差が意味するもの  積水ハウスでは63億円を払い込み総額とし、手付金を14億円として残りの49億円を契約当日の2017年6月1日に払ったとする。その金額が先の民事訴訟や〈事実経過報告〉のそれと微妙にずれている。民事訴訟では売買代金を60億円、手付金を12億円としてきた。 一方、積水側は払い込んだ63億円からニセ佐妃子に売ったマンションの売買代金を差し引いた金額の55億5000万円について、実質的な詐欺の被害額として発表している。これらの誤差は何を意味するのか。先の不動産業者が指摘する。 「マンションの売買を担当したのは、東京マンション事業部であり、その際、ニセの海老澤佐妃子が担当者と直接契約しています。つまりニセモノが積水ハウスに何度も足を運んでいて、なりすましに気づいていないということになる。そんな話がありえるでしょうか。積水ハウスが発表した第三者委員会の調査報告書ではこの点がすっぽり隠されています。それは隠さなければならない事情があったからではないか」 積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない』、「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、なるほど。
・『不自然な取引の理由とは...  ニセ地主を仕立て上げる地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道である。 理由はニセモノだとバレないようにするためだ。ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか。 事件は日本を代表する住宅建設会社の経営を揺らした。騙されたその責任をめぐり、会社のツートップが反目し、あげくにクーデター騒動に発展する。第7回につづく』、「地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道」、「ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである」、「不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、どんな「理由」なのだろうか。

第三に、この続きを、10月9日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100815?imp=0
・▽会長追い落としクーデターの「舞台裏」  それは、事件から半年あまり経った2018年1月24日の出来事だった。 「ではこれより取締役会を開催します」 午後2時ちょうど、大阪市北区の積水ハウス本社で、会長の和田勇が議長として、重役会の開催宣言をした。76歳(取締役会当時。以下同)の和田は細身の身体に似合わないハリのある声をしている。取締役会のメインテーマが、東京・五反田の海喜館をめぐる地面師詐欺なのは言うまでもない。和田はすぐにその議題に入った。 「本日、調査対策委員会が進めてきた調査報告書が提出されました。執行の責任者には極めて重い責任があります」 積水ハウスでは事件を公表したひと月後の9月、社外監査役と社外取締役らで調査対策委員会を立ち上げ、事件の経緯を調べてきた。その調査結果の報告がなされたのが、この日だったのである。和田を含めた9人の社内役員に加え、2人の社外取締役を加えた11人の内外の重役が会議に参加していた。 「したがって最初に、最も重い責任者である阿部俊則社長の退任を求めます」 和田はそう切り出した。社長解任の緊急動議である。戸建て住宅のハウスメーカーとしてスタートした積水ハウスは、近年のマンションやリゾート施設の開発、さらには海外事業も手掛け、業績を伸ばしてきた。 その立て役者が和田であり、実力会長として業界に名を馳せてきた。10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる。それほど事件の衝撃は大きかった』、「和田」「会長」は、「弟分の社長をばっさり切り捨てようとした」。
・『阿部社長の「反撃」  半面、実は社長の解任については、本番の前に開かれた社外取締役会でも諮られていたので、すでに情報が漏れ伝わっていた。そのため出席した重役たちのあいだにはさほどの驚きも、混乱もない。 まるで予定されていた行事であるかのように、採決へと進んだ。事前におこなわれた社外取締役2人の協議では、阿部の退任に異論はなく、和田の申し出が了承されていたからでもある。解任動議の当事者である阿部は、ひとり会議室をあとにし、10人の重役による社長退任の決議が粛々とおこなわれた。 しかしその緊急動議の採決は予想外の結果に終わった。賛成5に対して反対も5――。数だけでみると真っ二つに割れているように思えるが、阿部を外した10人の出席者の内実は、社外の2人と会長である和田以外に2人の賛成しか取り付けられなかったことになる。むろん過半数にも達していない。そのため、社長の解任動議は流れてしまう。 すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た。 「私は混乱を招いた(取締役会の)議長解任を提案します。新たな議長として、稲垣士郎副社長を提案します」 すでにこの時点で勝敗は、決していたともいえる。単純に計算すると、内外11人の全取締役のうち、和田派は5人、一方の阿部派は本人を入れると6人だ。その計算どおり、議長交代が6対5で可決された。そして返す刀で阿部が立ちあがって告げた。 「ここで、会長である和田氏の解任を提案します」 こうなると、退席した和田の一票が減る。そうして10人の重役の投票により、会長の解任動議が6対4で可決されたのである。 社長の阿部は、もとよりこの日のクーデターを想定して動いてきたに違いない。08年に社長の座に就いて以来10年ものあいだ、会長の和田の顔色をうかがいながら、経営にあたってきた。とりわけ東京の不動産ブームに乗り、マンション事業を推し進めてきたが、まさにそこで躓いたのである。 危機感を抱いた阿部は取締役会に先立つ17年12月には、マンション事業部本部長を務めてきた常務執行役の三谷和司に詰め腹を切らせた。東京シャーメゾン事業本部長で同じ常務の堀内容介にマンション事業を兼務させ、法務部長や不動産部長の部長職を解くといった更迭人事に手を付けていった。 そうしておいて自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた。 「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、「社長の解任動議は流れてしまう」、「すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た」、「「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、凄いドロドロした「クーデター」騒ぎだ。
・『主犯格を取り逃がす  こうして和田退任のレールを敷いた上で臨んだのが、先の取締役会だったのである。阿部会長、仲井社長という新たな布陣を決めた重役会のあと、阿部が会見に臨んだ。 「五反田の件の責任はどうなるのですか。今度の社長人事はその結果でしょうか」 そう尋ねる質問が相次いだ。それは無理もない。五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」 3月5日には、個人株主が阿部を善管注意義務違反などで訴え、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求をおこなった。そのあたりから、警視庁による本格的な捜査が始まる。「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」 取材してきた記者のあいだではそう事件の早期解明が囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。 「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」 「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」 そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに警視庁は10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。 これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。 事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。 警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された4日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。 だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている』、「記者会見」での「質問」に対し、「五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」、よくぞこんな答弁で乗り切ったものだ。「警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」、情けない限りだ。
・『なぜ取り逃がしたのか  第一陣検挙の3日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。 「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。しかし、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」 関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。 記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。 「そのせいで、犯行グループに内通している警視庁OBがいたのではないか、とも囁かれています」(事情通) むろん小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。 入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。 なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい』、「小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている」、これだと「積水ハウス」は被害者ということになるが、「阿部」会長は本当に潔白なのだろうか。表向き一件落着のように見えるが、今後も注目していきたい。
タグ:森 功氏による「【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回」 現代ビジネス 積水ハウス事件 (その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) 信じ難い事件で、興味深そうだ。 「赤茶けていて、ところどころ破れかけていた」「不動産権利証」の真偽を、「前のめりになっ」た担当者が確認しなかったのは手落ちだ。 「本社に届いた警告」「4通」を「怪文書扱い」した「三谷常務」の取り扱いは問題だ。 「決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった」、「決済時期」を早めるというのも、相手を混乱させる詐欺の手口なのかも知れない。 森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」 「海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンション」、不思議だ。 「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、なるほど。 「地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道」、「ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである」、「不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、どんな「理由」なのだろうか。 森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」 「和田」「会長」は、「弟分の社長をばっさり切り捨てようとした」。 凄いドロドロした「クーデター」騒ぎだ。 「記者会見」での「質問」に対し、「五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」、よくぞこんな答弁で乗り切ったものだ。「警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」、情けない限りだ。 「小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。 それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている」、これだと「積水ハウス」は被害者ということになるが、「阿部」会長は本当に潔白なのだろうか。表向き一件落着のように見えるが、今後も注目していきたい。
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