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科学技術(その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、度重なる体制変更の求めに「改革疲れ」の大学 政権肝いり「国際卓越研究大学」に求める高い負荷、理研 大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉 中座し戻らぬ人事部長、「物理の天才」でもトレーラー運転手になるしかない…日本の研究者が"食えない職業"になった根本原因 政府主導の取り組みが、日本の研究力を殺いでいる)

科学技術については、2020年11月13日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、度重なる体制変更の求めに「改革疲れ」の大学 政権肝いり「国際卓越研究大学」に求める高い負荷、理研 大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉 中座し戻らぬ人事部長、「物理の天才」でもトレーラー運転手になるしかない…日本の研究者が"食えない職業"になった根本原因 政府主導の取り組みが、日本の研究力を殺いでいる)である。

先ずは、本年2月7日付けSorae「中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!」を紹介しよう。
https://sorae.info/space/20220206-artificial-sun.html
・『いわば「人工太陽」とも呼ぶべき核融合炉が完成すれば、人類は無限のクリーンエネルギーを手にすることができるかもしれません。 中国科学院等離子体物理研究所は、同研究所が開発・運用する全超伝導トカマク型核融合実験装置(EAST)が、摂氏約7千億度という高温のプラズマを1,056秒間持続することに成功したと発表しました。この持続時間は、トカマク型による高温プラズマの持続時間としては世界最長となります。EASTは2006年に運用が始まった実験装置で、2022年6月の運用終了までに1兆ドル以上の費用がかかると予想されています。 人工太陽とは、太陽など主系列星の内部で発生する核融合を人工的に再現する装置や施設のこと。核融合とは、水素など軽い原子の原子核同士が結合し、ヘリウムのような重い原子核を生成する反応を指します。 (【▲太陽の内部における水素の核融合反応を示した概念図(Credit: EUROfusion)】の図はリンク先参照) 核融合反応はエネルギーの発生を伴うので、このエネルギーを発電に利用するための研究が進められてきました。石炭や石油を燃やす火力発電とは異なり、核融合を利用する発電では温室効果ガスが放出されないため、クリーンなエネルギーだと考えられています。 ところが、地球の約33万倍もの質量を持つ太陽の内部のような核融合が起きる条件を地球上で人工的に模倣するのは難しく、約1,500万度ある太陽の中心部と比べて約6倍もの高温が必要だといいます。 原子核同士が核融合を起こす環境を人工的に再現したものとしては、ロシア(当時のソビエト連邦)の科学者Natan Yavlinsky氏が1958年に設計した「トカマク型」と呼ばれる型式の核融合炉「T-1」が知られています。トカマク型は強力な磁場をもつドーナツ状の核融合炉のなかで、プラズマを封じ込める仕組みになっているようです。 ロシアが開発した「T-1」以降も様々な核融合実験装置が作られましたが、装置を作動させるために費やされたエネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しませんでした』、冒頭に紹介された「全超伝導トカマク型核融合実験装置」では、エネルギー効率はどうなのだろう。
・『(【▲トカマク型核融合実験装置の概念図(Credit: EFDA-JET(現在のEUROfusion))】の図はリンク先参照) 中国が今回実施した実験は、南フランスで建設中の核融合実験炉ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)のための技術を検証するために実施された模様です。ITERはプラズマを閉じ込めるために地球磁場の約28万倍も強力な磁場を生成できるといいます。このプロジェクトには、EUやイギリス、中国、インド、米国など35ヵ国が共同で参加し、2025年に登場すると見込まれています。 一方、現在EASTで実験を実施した中国自身も、ITERとは別の核融合炉の開発を独自に行っているようです。磁場ではなく慣性によってプラズマを封じ込める「慣性核融合炉」の実験の実施計画や、別のトカマク型核融合炉の完成を2030年代初頭までに目指すなど、新たな核融合炉の開発を進めている模様です』、「核融合」技術は、実用化まではまだ相当の年月を要しそうだ。

次に、3月23日付け東洋経済Plus「度重なる体制変更の求めに「改革疲れ」の大学 政権肝いり「国際卓越研究大学」に求める高い負荷」を紹介しよう。
・『大学ファンドの資金が分配されるのは「国際卓越研究大学」に選ばれること。だが、そのハードルは高く、大学にさらなる改革を求める。現場の「改革疲れ」が研究力低下の一因にもなっている。 「大学改革などを大きく進める最大のチャンス到来と言える。(中略)ここから数年は日本が世界のトップ集団にい続けられるか否かの勝負の分かれ目になる」 大学ファンドの創設決定を受け、総合科学技術・イノベーション会議で国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長の橋本和仁委員はこう述べた』、次々に新しい制度が作られるが、これまでの「改革」の評価はどうなっているのだろう。
・『厳しい要件をクリアする必要  大学ファンドは10兆円という巨額の資金を運用し、その運用益を大学支援に充てる目的で創設された。研究力低下の打開策として大学ファンドとそれに伴う大学改革への期待は大きい。しかし、大学ファンドからの支援を受けられるのは、世界に伍する研究大学として国が認める「国際卓越研究大学」になることだ。それに選定されるためには厳しい要件をクリアする必要がある。 2月1日には、総合科学技術・イノベーション会議で10兆円という超巨額の大学ファンドによる大学支援の最終案を決定した。2月25日には関連法案を閣議決定し、現在開かれている通常国会での法案成立を目指している。 2021年3月から12回にわたって開かれた総合科学技術・イノベーション会議内の「世界と伍する研究大学専門調査会」で「国際卓越研究大学」のガバナンスや研究環境のあり方などが議論されてきた。 国公立・私立問わずどの大学も「国際卓越研究大学」の選定対象になる。しかし、「国際卓越研究大学」に選定されるには高いハードルがある。「年3%の事業成長」のほか、国際的に卓越した研究成果の創出、合議体の設置などガバナンス体制の強化という3つの要件をクリアして初めて「国際卓越研究大学」として認定される。世界トップレベルの研究大学への変革を望む大学を支援するという観点から「国際卓越研究大学」として認定されるのは5~7校程度に絞られる予定だ。 ある国立大学の元教授は、とくに年3%の事業成長の部分に対して「大学に民間企業並みの成長を求めるのか」と憤る。 それぞれのハードルは高い。その「年3%の事業成長」だが、民間からの寄付収入や、企業などとの共同プロジェクトの助成金、協力金、受託研究費などで実現してもらうと国側は説明するが、過去、各大学がこうした資金を集めるのに苦労してきた経緯を考えれば一筋縄ではいかない。 2つめの研究成果の創出についてもどのように評価するのか、どのような研究もしくは環境整備が卓越した研究成果を生むのか定量的に評価することは難しいとの指摘もある。今後どのように評価していくのか、不透明だ。 そして3つめのガバナンスの改革も大学にとっては重荷だ。大学内部では経営執行の責任を負う大学の長とは別に研究環境の整備などを行う教学担当役員(プロボスト)や、財源の確保など財政基盤の強化にあたるCFO(最高財務責任者)を設置することを求めている。 加えて、大学からは独立した監督組織として過半数が経営などに専門性を持つ学外者で構成される合議体の導入が必須となる。また、合議体は組織的なコンプライアンスの確保など経営執行に関する監督機能や大学の長の選任も担う。 私立大学には理事会や評議員会などの合議体に相当する機関が存在するが、国立大学は2014年の法改正で学長の権限を強め、ガバナンス体制を強化してきた。ガバナンス体制をさらに拡充させ、経営方針決定に多様な観点が入ることは望ましいことだろう。しかし、こうした国主導の大学改革は、国立大学法人化に始まり、学長の権限強化や、指定国立大学の設置など絶え間なく行われてきた。大学の現場ではそうした変化や変更の対応にずっと追われてきた経緯があり、「改革疲れ」を指摘する声も少なくない。 財政投融資分科会で専門委員を務めるグローカル政策研究所代表理事の川村雄介氏は「大学の研究力が落ちたのは金だけの問題なのか。(国が国立大学に拠出する)運営費交付金の減額に加え、学内改革に伴う膨大な会議や書類申請などにより本来の研究に割く時間が減っている。大学ファンドをきっかけにそうした点を改めて考え直すべきなのではないか」と語る。 2021年12月には山中伸弥京大教授がiPS細胞研究所の所長を退任すると発表された。背景には所長として研究資金を得るための業務などに時間を割くのでなく、「自身の研究に注力」したいという思いがあったという。研究者が研究に打ち込めるよう多面的に支援しなければ研究力低迷の根本的な問題は解決されないだろう』、「国主導の大学改革は、国立大学法人化に始まり、学長の権限強化や、指定国立大学の設置など絶え間なく行われてきた」、「「大学の研究力が落ちたのは金だけの問題なのか。(国が国立大学に拠出する)運営費交付金の減額に加え、学内改革に伴う膨大な会議や書類申請などにより本来の研究に割く時間が減っている。大学ファンドをきっかけにそうした点を改めて考え直すべきなのではないか」、こういったマイナスの影響が出ているとすれば、大きな問題だ。
・『研究に割ける資金は減少、研究環境の悪化が続く  研究力の低下の原因はさまざまあるが、国立、公立、私立問わず基盤的経費に充てられる運営費交付金や私学助成金が減少し、研究費を得るために科学研究費補助金(科研費)など競争的資金に頼らざるをえない構図があることもその一つだ。 競争的資金獲得のためには各種基準の達成や、膨大な申請書執筆に時間を割く必要があるうえ、採択される割合も申請数の約2割と低い。書類準備に時間がかかるだけではなく、採択されるためには書き方や見せ方などのテクニックも必要になる。ある大学関係者は「科研費を獲得するために書類の書き方などを指導する『科研費屋』がいる。彼らにも報酬を支払わなければならない」と嘆く。 慢性的な資金不足、改革に伴う書類作成をはじめとする事務時間の増加など、研究者を取り巻く環境は悪化し続けている。 「国際卓越研究大学」に求める大学改革も、従来の改革の二の舞いになるのでは、と大学関係者はいぶかる。しかし文部科学省の担当者は「現場が改革疲れに陥っているのは重々承知しているが、今回の改革では大学の自由度があがる可能性を秘めている」と期待感を示す。) 総合科学技術・イノベーション会議の資料は「国際卓越研究大学」に3%の事業成長を求める背景を、大学の持続的成長に向け、自律的財政基盤を強化するためと説明する。 大学ファンドからの支援が終了した後も、大学が自主的にファンドを運用し、研究基盤などを整備できるよう変革を遂げてもらうことが最終目標だ。担当者は「大学だからこそ創出できる価値で事業成長を遂げてほしい。目先のことでいくら稼げるのかといったことを重視する大学を望むわけではない」と強調した。 世界最高水準の教育研究活動を実現できるガバナンスや、国からの巨額の支援を受けるにあたり国民の期待に応えられるガバナンスが必要とも同資料では記されている。「学長のリーダーシップを阻害するのではなく、学長が率先して経営を行えるように体制を変える」(文科省担当者)のが狙いだ。教学担当と財務担当の責任者を置き大学の長と連携することで、大学の長が大学運営により集中できる体制構築を目指す。 合議体を設置することで経営や教育に専門性を持つ構成員とともに大学の長が長期的な視点で経営戦略を議論・決定できるようにもする。文科省の担当者は、「大学の自律的な経営において課題となることを合議体の議論から吸い上げ、今後の制度設計の参考にするなど双方向型の環境を整備したい」とも語った。 認定要件の一つである国際的に卓越した研究成果の創出においても単純にAIといった先端領域の研究成果だけが求められるわけではなく、若手研究者の育成や研究者が活躍できる場の整備、グローバルに優秀な博士課程学生を獲得するなど、評価指標は多種多様だ。研究成果そのもの以上に研究環境の整備といった長期的な視点で研究力を測るという』、東工大と医科歯科大学の合併は「国際卓越研究大学」の認定をにらんだものと言われている。「「国際卓越研究大学」に3%の事業成長を求める背景を、大学の持続的成長に向け、自律的財政基盤を強化するためと説明する」、「大学」に「3%の事業成長を求める」のには違和感がある。
・『研究力低下の原因は資金不足だけなのか  大学ファンドの本来の目的は研究力強化だ。だが、資金援助をする代わりに改革を求める構図は従来の大学支援策と変わりがない。研究力の向上は資金だけでなく、研究に割ける時間や研究環境、研究に携わる、支援する人材などしっかりした基盤があってこそだが、大学ファンドが従来の改革とは異なる形で研究を支援できるのか疑問が残る。 大学ファンドの設立を機に自主ファンドの設立など自律的な成長を遂げる大学になってほしいと文科省は期待する。だが、大学が長年の政府や文科省主導の改革によって疲弊してきたことも研究力低下の一因だ。大学ファンドが、従来の改革と同様に「徒労の改革」で終われば、本末転倒にならざるをえない』、「大学が長年の政府や文科省主導の改革によって疲弊してきたことも研究力低下の一因だ。大学ファンドが、従来の改革と同様に「徒労の改革」で終われば、本末転倒にならざるをえない」、同感である。

第三に、10月1日付け東洋経済オンライン「理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉、中座し戻らぬ人事部長」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/622546
・『理研人事部長A氏「面接終わりました。雰囲気的に(労使交渉の席に)戻ったほうがいいですか?」 理研幹部B氏「戻らずに17:00で終わらせる方が、(会議を)長引かせないと思います」 理研幹部C氏「終わりましょう」 ※()内は編集で補足、他は原文ママ (研究員の苦境は本日配信の記事「迫る大量リストラ、理研研究者が募らせる危機感」に) 今春に発覚した、理化学研究所が有期雇用の研究者らを2023年3月末で大量にリストラする方針を巡り、撤回を求め続けている理研労組との秋の労使交渉が9月15日の夕方に行われた。開始から間もなくで2時間になる午後5時前ごろ。理研は組合が会議の続行を求めるのを遮り、「今日はこれで終わりにします」と打ち切った。 理研関係者によると、交渉はリモート会議で行われた。理研側の出席者は個別のアカウントで出席しつつ、裏ではグループチャットを使って連絡を取り合っていたという。東洋経済は理研関係者から、その時のグループチャットのスクリーンショットを入手した』、「交渉はリモート会議で行われた。理研側の出席者は個別のアカウントで出席しつつ、裏ではグループチャットを使って連絡を取り合っていた」、これは極めて悪質で、信義則違反だ。
・『理研の人事担当らが交渉中にしていたチャット  労組との交渉中、理研幹部らはチャットで「長引かせないで終わりにしましょう」などとやりとりしていた(画像の一部を加工。関係者提供) そこには、面接を理由に会議を早々に中座した後、会議に戻れたのに戻らなかった人事部長と、他の幹部の生々しいやり取りなどが記録されていた。その一部が冒頭の内容だ。 この事実に対し、交渉に出席していた組合幹部は「少しでも早く話し合いを進めるべきだが、理研側には誠実さがない」と憤る。3月末で契約の更新を打ち切られる研究者は、「私たちには残されている時間がないのに」と悲しみの表情を浮かべた』、「理研側」には初めから「話し合う」気はさらさらなかったのではあるまいか。
・『3月31日、大量の研究者が雇い止めに  理研は、2023年4月1日で有期雇用の通算期間が10年を超える研究者の雇用契約を、1日前の2023年3月31日で終了するとしている。 組合によると今春の段階では、研究者の雇い止めで波及的な影響を受けるスタッフらを含め、約600人が職を失う見通しだった。その後、雇い止めを待たずに理研を去った人がいるため、現時点では約400人がリストラの危機にある状況だ。 2013年4月1日に施行された改正労働契約法で、通算の有期雇用の期間が一般の会社員の場合は5年、研究者など一部の専門職の場合は10年を1日でも超えれば、労働者側は無期転換申込権を得られるようになった。雇用者側に拒む権利はない。 無期転換申込権の発生に先立ち、理研は2つの手を打っている。1つ目が、2016年4月に施行した就業規則の改定だ。理研は有期雇用の研究者の雇用上限は最大で通算10年までとすることを決め、2018年には起算日を2013年4月1日に遡ることを新たに定めた。 2つ目が、2017年2月頃に有期雇用の研究者らに書かせた「従事業務確認書」だ。この確認書では、毎年1年ごとの有期雇用の更新上限が2023年3月31日であることを記し、2023年4月1日に有期雇用の期間が10年を超える研究者らにサインさせた。翌年度以降の有期雇用の契約書にも毎回、2023年3月31日までしか更新しない旨を記している。 複数の研究者らによると、この従事業務確認書は人事部から直接説明を受けて書いたものではない。研究室の上司にあたるPI(研究主催者)から「契約更新に必要な書類だから書いておいて」と言われたパターンが大半という。ある研究者は更新上限の内容に不安を感じてPIに意味を質問すると、「ただの形式的なものだから」と言われたという。 研究者らは「PIは毎年の契約更新の判断権を持っている。逆らって関係を悪化させたくない。PIも、私たちにサインさせなければ理研から睨まれ、研究の予算を減らされる懸念があるのだろう」と語る。そのうえで、「理研から従事業務確認書を根拠に、『2023年3月末の更新上限に同意した』と言われるのは、だまし討ちされた気分だ」と訴える。 背景はともかく、外形的に見れば、理研側は2023年3月31日で有期雇用が通算10年になる研究者らの契約更新を打ち切るうえで、上記の2つの理由を保持していることになる』、「この従事業務確認書は人事部から直接説明を受けて書いたものではない。研究室の上司にあたるPI(研究主催者)から「契約更新に必要な書類だから書いておいて」と言われたパターンが大半という。ある研究者は更新上限の内容に不安を感じてPIに意味を質問すると、「ただの形式的なものだから」と言われたという。 研究者らは「PIは毎年の契約更新の判断権を持っている。逆らって関係を悪化させたくない。PIも、私たちにサインさせなければ理研から睨まれ、研究の予算を減らされる懸念があるのだろう」と語る」、なるほど。
・『ルール撤廃は雇い止め翌日から  そのような中、新たに大きな動きがあった。理研は7月末、組合側に、就業規則の「有期雇用上限10年ルール」を2023年4月1日に撤廃する方針を伝えたのだ。この日以降に雇用されている有期雇用の研究者は、10年の上限を超えて理研での勤務が可能になる。 理研は上限撤廃の理由について、「通算契約期間の上限があることで、来年度以降の新たな有期プロジェクトへの応募資格がなかった方々に対し、その規制を撤廃し応募の機会を提供するため」などとしている。 ただ問題は、その前日の3月31日で雇い止めになる多くの研究者がいることだ。4月1日から有期雇用上限10年ルールを撤廃しても、そうした研究者の契約打ち切りには効力が及ばない。そのため、組合側は「就業規則の廃止は、3月31日までにするべきだ」と迫り、9月の労使交渉でも説明を求めている。 理研は、労使交渉で合意しなくても4月1日からの撤廃で押し切る方針だ。 撤廃は3月31日か、4月1日か。1日を巡る攻防は、果たしてどのような意味を持つのか。 3月31日で雇い止めとなる研究者が4月1日以降に再び理研に採用されることは理論上可能だ。しかし、組合側は「雇い止め対象の研究者が4月1日以降の契約のポストに申し込んでも、理研がもし採用すれば有期雇用の通算が10年を超えて無期転換申込権を得るため、選考で不利な扱いを受けるのではないか」と疑義を呈する。 理研が4月1日以降の雇用契約で、3月31日に雇い止めした研究者からはわずかな人数だけ採用してアリバイづくりにするのではないか―。研究者らは、そんな強い懸念も抱いている。 一方の理研側は「(従事業務契約書などでの)最終年度契約があるので、3月31日までに就業規則の有期雇用10年上限ルールを撤廃しても、2023年3月31日での契約終了は有効だと思っている。ただ、変に期待をさせたり混乱を招いたりしないために、撤廃は4月1日からにする」「4月1日以降の雇用契約の募集で、不利益な扱いをしないように周知徹底する」などと主張し、一歩も譲る気配はない』、「3月31日で雇い止めとなる研究者が4月1日以降に再び理研に採用されることは理論上可能だ。しかし、組合側は「雇い止め対象の研究者が4月1日以降の契約のポストに申し込んでも、理研がもし採用すれば有期雇用の通算が10年を超えて無期転換申込権を得るため、選考で不利な扱いを受けるのではないか」と疑義を呈する」、なるほど。
・『そもそも効力の薄い上限ルール  では、法的な面から「10年上限ルール」と従事業務確認書の妥当性を評価するとどうか。 労働法に詳しい法政大学法学部教授の沼田雅之氏は「まず、そもそも従事業務確認書にサインしたからと言って、更新上限に同意したことにはならない。サインしなければ契約更新することが難しい状況であれば、本人の自由意思によるものとは言えないからだ。判例でも、博報堂が不更新条項を理由に行った雇い止めを無効としている」と話す。 さらに、沼田氏は理研が2016年に改正・施行した就業規則の有期雇用上限10年ルールについても、「労働者にとっては不利益変更にあたる。労働契約法10条では、合理性がない限りは不利益変更を認めていない。起算日を2013年4月1日に遡及している点も大いに問題だ。不利益を遡及すると、法的安定性を害する」と指摘する。 しかも、理研は東洋経済の取材に対し、「(有期雇用10年上限の)通算契約期間の起点については、改正労働契約法を参考に2013年4月とした」と回答した。これでは、無期雇用転換逃れが目的であると自白しているのに等しい』、「理研が2016年に改正・施行した就業規則の有期雇用上限10年ルールについても、「労働者にとっては不利益変更にあたる。労働契約法10条では、合理性がない限りは不利益変更を認めていない。起算日を2013年4月1日に遡及している点も大いに問題だ。不利益を遡及すると、法的安定性を害する」と指摘する」、その通りだ。
・『理研の研究者雇い止めに関連する主な動き  タイムリミットの3月末までもう半年しかない。労使間の話し合いが双方納得する形で折り合う可能性は、今のところ極めて低い雰囲気だ。 どのような結末になるにせよ、人事部長が労使交渉を早々に抜けたうえで、会議を早く終わらせるために戻らないような理研の姿勢からは、研究者1人ひとりの人生やキャリアに向き合う真摯さは感じられない。 理研には、旬な研究をやる人材が座る席を確保するために流動性を確保したいという事情や、そもそも国から割り当てられる固定の人件費自体が、有期雇用者の無期転換に対応できる形では増えていないという事情もある。 だが、理研が、「出口」において丁寧なプロセスを経ることなく多数の研究者を追い出す行為は今後、「入口」に影響し、有望な志望者の減少へと跳ね返る恐れがある。そうなれば、岸田文雄政権が掲げる科学技術立国がますます遠のく。割を食うのは国民だ』、「理研が、「出口」において丁寧なプロセスを経ることなく多数の研究者を追い出す行為は今後、「入口」に影響し、有望な志望者の減少へと跳ね返る恐れがある。そうなれば、岸田文雄政権が掲げる科学技術立国がますます遠のく。割を食うのは国民だ」、同感である。

第四に、10月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの知野 恵子氏による「「物理の天才」でもトレーラー運転手になるしかない…日本の研究者が"食えない職業"になった根本原因 政府主導の取り組みが、日本の研究力を殺いでいる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/62289
・『日本の研究力が下がっている。約20年前まで、日本は「影響力が大きい論文数」で世界4位だったが、今や10位に落ちた。ジャーナリストの知野恵子さんは「研究力を上げようとする政府主導の取り組みが、逆に日本の研究力の低下を招いている」という――』、逆説的だが、どういうことなのだろう。
・『天才大学生はなぜ研究者を諦めたのか  9月15日にプレジデントオンラインが公開した「全国初の『17歳の大学生』になったが…早熟だった『物理の天才』が、いまトレーラー運転手として働くワケ」は、多数のアクセスと共感を呼んだ。千葉大学に飛び入学した1期生・佐藤和俊さんの半生を追った記事で、読売新聞の連載企画を『人生はそれでも続く』(新潮新書)というタイトルで書籍化し、その中から佐藤さんのエピソードが配信された。 飛び入学は、千葉大が「日本の受験制度に風穴をあけたい」と1998年から始めた。高校3年を経ずに大学入試を受けられる制度で、研究者としての将来を嘱望された佐藤さんは、大学院に進学後、研究機関に就職した。 だが、手取りは15万円。生活は苦しい。その後、母校・千葉大の非常勤講師となり、予備校講師もかけもちする。1年ごとに契約を更新する千葉大からは、30歳を超えてから契約を打ち切られた。 そこで、佐藤さんは研究者の仕事に見切りをつける。運送会社に転職し、大型トレーラーの運転手になった。今も物理が好きで、知人の子供の家庭教師をしているという。 不安定な仕事、落ち着いて研究できない環境。佐藤さんだけでなく、科学研究の現場のあちらこちらで耳にする問題だ』、「飛び入学」で「千葉大」に入学。卒業後は、「母校・千葉大の非常勤講師」の職を、「30歳を超えてから契約を打ち切られた」のを機に、「研究者の仕事に見切りをつける。運送会社に転職し、大型トレーラーの運転手になった」、「不安定な仕事、落ち着いて研究できない環境。佐藤さんだけでなく、科学研究の現場のあちらこちらで耳にする問題だ」、その通りだ。
・『国の政策で研究力が落ちている皮肉な事実  「自然科学(理系)分野の学生の割合を現在の35%から、5割程度を目指す」――政府の「教育未来創造会議」(議長・岸田首相)が5月にまとめた第一次提言は、こんな目標を掲げた。現在7%しかいない理工系女性を男子学生と同等の28%程度に高めていくことも打ち出した。 この方針を受けて、文部科学省は来年度予算に、理工系学部拡充のための基金創設などで100億円を要求した。 理工系に力を入れること自体は間違っていない。デジタル化、脱炭素化など、経済や社会は、理工系の知識を必要とする時代へと移っている。 女性を増やすことも同じだ。理工系といえば男性、という先入観が、女性の進路選択を狭めてきた。そのため、女性の視点や意見が、製品開発やモノづくりになかなか反映されずにいた。いつまでもそれでいいはずがない。4月には女子大初の工学部が奈良女子大に誕生。2024年にはお茶の水女子大も工学部を発足させる予定で、理工系拡充は続きそうだ。 政府がこうした動きを進めるのは、理工系の研究成果をもとに、産業や経済を活性化させようとしているためだ。だが、狙い通りにいくかどうか、危うさと不安も伴う。 ここ4半世紀にわたって政府は、この政策を掲げて科学技術を推進したが、逆に研究力の低下を招いた、という苦い体験があるためだ』、「狙い通りにいくかどうか、危うさと不安も伴う。 ここ4半世紀にわたって政府は、この政策を掲げて科学技術を推進したが、逆に研究力の低下を招いた、という苦い体験があるためだ」、当然の懸念材料だ。
・『「稼げる大学になれ」とさかんに言われてきたが…  経済が停滞すると、経済界、政界、行政から必ず、あることが叫ばれる。「大学改革」だ。 例えば、 <日本経済が振るわないのは、イノベーションの源泉である大学が、蛸壺たこつぼのような専門、論文至上主義などの狭い世界に閉じこもり、実用的な成果を生み出す研究をしていないからだ> <米国の大学は、1980年代から研究成果を特許にしたり、産業界と連携したり、研究成果をもとにベンチャー起業したりするなど、さかんに経済活動をしている。日本も見習うべきだ> 一言でいえば稼げる大学へ早く転換せよ、ということだ。日本では1990年代後半からこうした政策がさかんに進められた。 特に国立大学への風当たりは強かった。かつて大蔵省(現・財務省)による銀行の横並び経営「護送船団」方式が問題になったが、国立大も同じことが指摘された。 文部省(現・文部科学省)が、「箸の上げ下ろし」まで事細かに指示する一方、大学に安定的に予算を配っている。その結果、経営力のない銀行が生き延びていたのと同様、個性や実力のない大学も生き延びている、と』、「稼げる大学へ早く転換せよ、ということだ。日本では1990年代後半からこうした政策がさかんに進められた。 特に国立大学への風当たりは強かった」、その通りだ。
・『結果、論文ランキングは世界4位→10位に  そこで政府は、国立大学に配っていた基盤的な経費を削減する一方、すぐに役立つ研究や産業に直結する研究を重視し、政策に沿ったところへ手厚く予算を分配するなどの改革に乗り出した。 それまでの終身雇用制が研究者のやる気を阻害するとして、若手研究者には期間を限って雇用する任期制度も導入した。「さまざまな大学や研究所で武者修行をすることで、能力が向上する」という説明だった。 だが、日本の研究力は段々下がる。この8月に文科省の科学技術・学術政策研究所が公表した指標では、日本は約20年前までは、影響力が大きい論文数で世界4位だったが、今や10位に落ちた。長年1位だった米国を追い抜いて中国が1位になったことも、日本にショックを与えた』、「国立大学に配っていた基盤的な経費を削減する一方、すぐに役立つ研究や産業に直結する研究を重視し、政策に沿ったところへ手厚く予算を分配するなどの改革に乗り出した」、「終身雇用制が研究者のやる気を阻害するとして、若手研究者には期間を限って雇用する任期制度も導入」、その結果、「日本は約20年前までは、影響力が大きい論文数で世界4位だったが、今や10位に落ちた」、著しい「日本の研究力」の低下だ。
・『現場の現実にそぐわない数値目標を優先させている  なぜ国が力を入れても成果が出ないのか。政治、行政、産業界が、研究現場の現実を踏まえて方策を検討するのではなく、「こうあるべき」という考えと、そのための枠組みや制度、数値目標などを優先させることがあるだろう。 不慣れな目標を提示された研究者が、ピントはずれの「大学商法」を進め、自らの力を弱めた面もある。そして、政治も行政も産業界も、進めてきたことの検証や統括をしないまま、次の方策へと突き進んでいく。 国立大学を所管する文科省の元幹部は「経済が上向かないと、『やはり大学は役に立たない』と言われる」。効果が出るまで、次々と新たな方策を生み出さざるをえない事情を話す。 一方、「武士の商法」ならぬ「大学商法」は、すぐにはうまくいかない。例えば「稼げる大学」の指標のひとつの特許を見てみよう』、「不慣れな目標を提示された研究者が、ピントはずれの「大学商法」を進め、自らの力を弱めた面もある。そして、政治も行政も産業界も、進めてきたことの検証や統括をしないまま、次の方策へと突き進んでいく」、これは日本の構造的悪弊だ。
・『「特許を出すようさかんに言われたのに…」  大学研究者の成果は論文や学会発表で評価されていた。だが、2000年代に入ると、特許も重視される。経産省は2001年に「特許取得件数を10年間で15倍にする」数値目標を掲げ、文科省も大学の出願ランキングを公表した。 当初は、特許を取得するだけで研究者は評価された。出願や維持にお金がかかることは、あまり念頭に置かれていなかった。だが特許は利用されないと、お金を生み出さない。 ある地方国立大の研究者は戸惑った体験を持つ。「大学から特許を出すようにとさかんに言われていたのに、今度はできるだけ出すなと言われた」 文科省の調査によると、特許収入では、東大、京大、大阪大、九州大、東北大など、旧帝大系が圧倒的な強さを見せる。それでも、大学が保有する特許が使われたのは、東大と京大が36%で、それ以外は10%台にとどまる。企業の49%に比べると差が大きい。 産学連携による共同研究で、企業側がひいてしまうケースもある。ある企業幹部は、「大学はわれわれよりも短期視点で考え、すぐにお金のことを口にする」と言う。世事に疎うとく、企業との付き合いが苦手な研究者もいる。研究者個人との契約で生じた面もあり、最近では組織対組織で契約を結ぶところが増えている』、「大学から特許を出すようにとさかんに言われていたのに、今度はできるだけ出すなと言われた」、「当初は、特許を取得するだけで研究者は評価された。出願や維持にお金がかかることは、あまり念頭に置かれていなかった。だが特許は利用されないと、お金を生み出さない」、素人でも分かるお粗末な政策だったようだ。
・『「大学を下請けのように見ている」日本企業の体質  こうした改革の結果、じっくりと腰を落ち着けた研究がしにくくなったことや、ノーベル賞受賞者がこれまでのようには出なくなる懸念などが、研究者から何度も指摘されている。だが、政府は顧みない。 科学技術政策を検討する政府の有識者会議のメンバーの1人はこう言い切る。「ノーベル賞受賞者を増やすことや、スター研究者を育てることに興味はない。経済や安全保障に役立つ研究を促進するのがわれわれの目的だ」 研究がうまくいったとしても、新たな難関が待ち受ける。それは日本企業の体質だ。 旧帝大系国立大学のある研究者は嘆く。彼の研究成果が新聞やネットで報じられると、すぐに電話やメールで接触してくるのは米国、韓国などの企業。日本企業は1カ月後ぐらいだという。 「担当者だけで判断できず、社内の根回しや会議に時間を費やしているのだろう」と彼は言う。スピード感の欠如が、日本の知的成果の海外流出を招きかねない状況だという。 そして「日本企業は大学を下請けのように見ている」と指摘する。米国企業などは、「あなたのこの成果を使って、どういうことができるか教えてほしい」と、研究者のプライドをくすぐりながら、話を持ち掛けてくる。一方、日本企業は「こういう製品を作りたいので役立つものを出してほしい」と、上から目線の発言が目立つという』、「こうした改革の結果、じっくりと腰を落ち着けた研究がしにくくなったことや、ノーベル賞受賞者がこれまでのようには出なくなる懸念などが、研究者から何度も指摘されている。だが、政府は顧みない」、「日本企業」は「研究成果」の報道への反応が米・韓企業より遅い、「日本企業は大学を下請けのように見ている」、やはり。「日本企業」の姿勢には根本的な問題があるようだ。
・『「17歳の大学生」は名研究者になったかもしれない  政府が産学連携を推奨していることもあり、東大などには、企業から大型研究費が提供されている。ただ、企業は日本の大学よりも、米大学との共同研究を好み、多額の資金も提供する。彼はこう指摘する。「研究そのものより、人間関係構築や、米有名大学と共同研究しているという宣伝効果に利点を見出している」 理工系の知識や技術だけでは、経済発展につながらないことを、日本はこれまでも体験してきた。デジタル敗戦を重ねた日本企業だが、ネット検索エンジン開発では、進んでいた。だが、経営者が「他人のコンピューターを勝手に検索していいのか」として許可をしなかった。技術はあってもビジネスで負ける。 東大工学部卒業後、大手メーカーに勤務する技術者は指摘する。「石橋をたたいて渡るのではなく、たたいて壊してしまうのが日本企業だ」。こうした体質も変革する必要がある。 政府の「教育未来創造会議」は理工系拡充とともに、理系文系の枠にとどまらず横断的に学ぶ「総合知」を研究や企業活動に生かすことを挙げた。それが本筋のはずだが、理工系学部の新設などの拡充策で突っ走るところに、この4半世紀のやり方と似たものを感じてしまう。 冒頭で取り上げた、全国初の17歳の大学生・佐藤さんも、研究現場がもっと若手を育てる仕組みを手厚くしていれば、また違う結果になったかもしれない。研究の現場の声を聞き、制度を描くことが必要だ。そうでないと再びこの4半世紀を繰り返すことになりかねない』、「ネット検索エンジン開発では、進んでいた。だが、経営者が「他人のコンピューターを勝手に検索していいのか」として許可をしなかった。技術はあってもビジネスで負ける」、「日本企業」の典型的な弱点だ。「研究の現場の声を聞き、制度を描くことが必要だ。そうでないと再びこの4半世紀を繰り返すことになりかねない」、強く同意する。
タグ:科学技術 (その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、度重なる体制変更の求めに「改革疲れ」の大学 政権肝いり「国際卓越研究大学」に求める高い負荷、理研 大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉 中座し戻らぬ人事部長、「物理の天才」でもトレーラー運転手になるしかない…日本の研究者が"食えない職業"になった根本原因 政府主導の取り組みが、日本の研究力を殺いでいる) Sorae「中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!」 冒頭に紹介された「全超伝導トカマク型核融合実験装置」では、エネルギー効率はどうなのだろう。 「核融合」技術は、実用化まではまだ相当の年月を要しそうだ。 東洋経済Plus「度重なる体制変更の求めに「改革疲れ」の大学 政権肝いり「国際卓越研究大学」に求める高い負荷」 次々に新しい制度が作られるが、これまでの「改革」の評価はどうなっているのだろう。 「国主導の大学改革は、国立大学法人化に始まり、学長の権限強化や、指定国立大学の設置など絶え間なく行われてきた」、「「大学の研究力が落ちたのは金だけの問題なのか。(国が国立大学に拠出する)運営費交付金の減額に加え、学内改革に伴う膨大な会議や書類申請などにより本来の研究に割く時間が減っている。大学ファンドをきっかけにそうした点を改めて考え直すべきなのではないか」、こういったマイナスの影響が出ているとすれば、大きな問題だ。 東工大と医科歯科大学の合併は「国際卓越研究大学」の認定をにらんだものと言われている。「「国際卓越研究大学」に3%の事業成長を求める背景を、大学の持続的成長に向け、自律的財政基盤を強化するためと説明する」、「大学」に「3%の事業成長を求める」のには違和感がある。 「大学が長年の政府や文科省主導の改革によって疲弊してきたことも研究力低下の一因だ。大学ファンドが、従来の改革と同様に「徒労の改革」で終われば、本末転倒にならざるをえない」、同感である。 東洋経済オンライン「理研、大量リストラまで半年「4月1日」巡る攻防 切迫の労使交渉、中座し戻らぬ人事部長」 「交渉はリモート会議で行われた。理研側の出席者は個別のアカウントで出席しつつ、裏ではグループチャットを使って連絡を取り合っていた」、これは極めて悪質で、信義則違反だ。 「この従事業務確認書は人事部から直接説明を受けて書いたものではない。研究室の上司にあたるPI(研究主催者)から「契約更新に必要な書類だから書いておいて」と言われたパターンが大半という。ある研究者は更新上限の内容に不安を感じてPIに意味を質問すると、「ただの形式的なものだから」と言われたという。 研究者らは「PIは毎年の契約更新の判断権を持っている。逆らって関係を悪化させたくない。PIも、私たちにサインさせなければ理研から睨まれ、研究の予算を減らされる懸念があるのだろう」と語る」、なるほど。 「3月31日で雇い止めとなる研究者が4月1日以降に再び理研に採用されることは理論上可能だ。しかし、組合側は「雇い止め対象の研究者が4月1日以降の契約のポストに申し込んでも、理研がもし採用すれば有期雇用の通算が10年を超えて無期転換申込権を得るため、選考で不利な扱いを受けるのではないか」と疑義を呈する」、なるほど。 「理研が2016年に改正・施行した就業規則の有期雇用上限10年ルールについても、「労働者にとっては不利益変更にあたる。労働契約法10条では、合理性がない限りは不利益変更を認めていない。起算日を2013年4月1日に遡及している点も大いに問題だ。不利益を遡及すると、法的安定性を害する」と指摘する」、その通りだ。 「理研が、「出口」において丁寧なプロセスを経ることなく多数の研究者を追い出す行為は今後、「入口」に影響し、有望な志望者の減少へと跳ね返る恐れがある。そうなれば、岸田文雄政権が掲げる科学技術立国がますます遠のく。割を食うのは国民だ」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 知野 恵子氏による「「物理の天才」でもトレーラー運転手になるしかない…日本の研究者が"食えない職業"になった根本原因 政府主導の取り組みが、日本の研究力を殺いでいる」 逆説的だが、どういうことなのだろう。 「飛び入学」で「千葉大」に入学。卒業後は、「母校・千葉大の非常勤講師」の職を、「30歳を超えてから契約を打ち切られた」のを機に、「研究者の仕事に見切りをつける。運送会社に転職し、大型トレーラーの運転手になった」、「不安定な仕事、落ち着いて研究できない環境。佐藤さんだけでなく、科学研究の現場のあちらこちらで耳にする問題だ」、その通りだ。 「狙い通りにいくかどうか、危うさと不安も伴う。 ここ4半世紀にわたって政府は、この政策を掲げて科学技術を推進したが、逆に研究力の低下を招いた、という苦い体験があるためだ」、当然の懸念材料だ。 「稼げる大学へ早く転換せよ、ということだ。日本では1990年代後半からこうした政策がさかんに進められた。 特に国立大学への風当たりは強かった」、その通りだ。 「国立大学に配っていた基盤的な経費を削減する一方、すぐに役立つ研究や産業に直結する研究を重視し、政策に沿ったところへ手厚く予算を分配するなどの改革に乗り出した」、「終身雇用制が研究者のやる気を阻害するとして、若手研究者には期間を限って雇用する任期制度も導入」、その結果、「日本は約20年前までは、影響力が大きい論文数で世界4位だったが、今や10位に落ちた」、著しい「日本の研究力」の低下だ。 「不慣れな目標を提示された研究者が、ピントはずれの「大学商法」を進め、自らの力を弱めた面もある。そして、政治も行政も産業界も、進めてきたことの検証や統括をしないまま、次の方策へと突き進んでいく」、これは日本の構造的悪弊だ。 「大学から特許を出すようにとさかんに言われていたのに、今度はできるだけ出すなと言われた」、「当初は、特許を取得するだけで研究者は評価された。出願や維持にお金がかかることは、あまり念頭に置かれていなかった。だが特許は利用されないと、お金を生み出さない」、素人でも分かるお粗末な政策だったようだ。 「こうした改革の結果、じっくりと腰を落ち着けた研究がしにくくなったことや、ノーベル賞受賞者がこれまでのようには出なくなる懸念などが、研究者から何度も指摘されている。だが、政府は顧みない」、「日本企業」は「研究成果」の報道への反応が米・韓企業より遅い、「日本企業は大学を下請けのように見ている」、やはり。「日本企業」の姿勢には根本的な問題があるようだ。 「ネット検索エンジン開発では、進んでいた。だが、経営者が「他人のコンピューターを勝手に検索していいのか」として許可をしなかった。技術はあってもビジネスで負ける」、「日本企業」の典型的な弱点だ。「研究の現場の声を聞き、制度を描くことが必要だ。そうでないと再びこの4半世紀を繰り返すことになりかねない」、強く同意する。
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