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インド(その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る) [世界情勢]

インドについては、昨年8月13日に取上げた。今日は、(その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る)である。

先ずは、本年3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員の笠井 亮平氏による「インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係」を紹介しよう。
・『2022年2月24日、国連安全保障理事会に提出されたロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案は、ロシアの拒否権発動によって葬り去られた。棄権した国も3つあった——中国、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドである』、「QUAD」の一角を占めるのに、「ウクライナ侵攻を非難する決議案」に「棄権」とはどういうことなのだろう。
・『軍事面で不可欠なパートナー  この3カ国は、国連総会の緊急特別会合開催を求める採決でも棄権に回った(ロシアも反対したが、手続き事項に関しては拒否権の対象とならないため、賛成多数で採択された)。民主主義国であり、近年は「自由で開かれたインド太平洋」構想に参加し、日本、アメリカ、オーストラリアとともに「QUAD(クアッド)」の一角を占めるインドがなぜロシアの軍事侵攻を非難しないのか。 その最大の理由は、インドがロシアに対して軍事面で不可欠なパートナーであることだ。金額ベースで見ると、2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め、2021年11月には実際に供給が始まった。近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない。 インドは隣国との間で国境問題や領土問題を抱えており、防衛力の整備をおろそかにするわけにはいかないという事情がある。北の中国とは2020年に国境で軍事衝突が発生し、双方に死者が出る事態にまで発展した。西のパキスタンとは、過去3度にわたり戦火を交えてきたほか、カシミール地方をめぐり対立が続いており、過激派によるテロにも悩まされている。中国のインド洋進出を受けて、海軍力の増強も進めている。インドも今回のウクライナ情勢を憂慮しているものの、自国の安全保障を考えればロシアとの良好な関係を損なうわけにはいかないのだ。) インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる。「非同盟」を掲げてきたインドだが、米中接近や中国・パキスタン関係の強化という事態を受けて、1971年には当時のソ連との間で軍事同盟的性格の強い「平和友好協力条約」を結んだ。1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻した際には、翌1980年1月に開かれた国連総会の緊急特別会合でソ連を事実上支持するという、今回の先例とも言える立場をとったこともあった。カシミール問題でインドに不利な決議案が安保理に提出された際、拒否権を発動して不採択に導いたのはソ連だった。 この関係はソ連が崩壊してロシアになってからも続き、両国は軍事以外にもエネルギー(原発)、科学技術、宇宙開発といった分野で協力を進めてきた。インドは日本と「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を構築しているが、ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけている。BRICSやインド・中国・ロシア3カ国会議、上海協力機構(SCO)といった多国間の枠組みでの協力もある』、「2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め・・・近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない」、「インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる」、「ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけ」、ここまで強固なつながりがあるとは・・・。
・『プーチン「インドの外交哲学はロシアと似ている」  ロシア側もインドを重視してきた。プーチン大統領は2021年11月の外交演説でインドを「多極世界のなかで独立し、強固な中心のひとつ」であり、「(ロシアと)よく似た外交における哲学とプライオリティを持っている」と評した。コロナ禍によって各国の首脳外交は激減するなか、2020年2月からの2年間でプーチン大統領が外国に出たのは3回。スイス(2021年6月のバイデン米大統領との会談)と中国(2022年2月の北京冬季五輪開会式出席)、そしてインド(2021年12月)だった。 このときの訪問では、印ロ間の防衛協力推進がうたわれ、ロシアのカラシニコフ社製自動小銃AK-203をインド国内の工場で60万挺生産する契約がまとまったと報じられた。ロシアとしては、日米豪印のうちもっとも友好的なインドと関係強化を図ることで、「クアッド」にくさびを打ちたいという狙いもあったのだろう。 では、インドは今後もロシア寄りの姿勢を続けるのか。前述したとおり、軍事面の依存を考えれば全面的に対ロ非難に転換することは考えにくい。だが、ロシア軍侵攻によってウクライナの状況がさらに悪化し、国際的非難が一層高まることになれば、対応の再考を迫られることになるかもしれない。) インド有力英字紙『ヒンドゥー』は2022年2月28日付の社説で、安保理での棄権は「既定路線」としながらも、「インド政府は世界の安全を脅かす紛争に対して毅然とした態度をとることなく、自国が『大国』になれるか考える必要がある」「曖昧な立場は強者が弱者を武力で侵略することに対する肯定と受け止められてしまうが、インドは自らの周辺地域でそうした行為に抗議してきたのではないか」と指摘した。 また、2014年まで長く政権与党の座にあった最大野党・インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している』、「インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している」、「インド」も「安保理常任理事国入りを目指」しているとは初めて知った。
・『インドこそ解決への仲介役に適役  インドはロシアと密接な関係にあるが、そのインドだからこそ担いうる役割がある。ロシアと国際社会の仲介役だ。ロシア軍の侵攻が始まった2022年2月24日、モディ首相はプーチン大統領と電話会談を行い、ロシアとNATO(北大西洋条約機構)の対立を解決する唯一の方途は対話だと主張するとともに、暴力の即時停止を求めた。 その訴えは実らなかったが、インドとロシア首脳のパイプが生きていることを印象づけた。ロシアとしても、戦況が思うように進まず、事態が長期化する事態になれば、いずれ「落としどころ」を模索することになるだろう。その際にインドが米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる。 日本もインドに対してこの点を提起すべきだ。ウクライナ情勢次第だが、岸田文雄首相は2022年3月中に訪印を予定していると報じられている。モディ首相に対しロシアへの働きかけを促すことこそ、最優先で取り組むことではないだろうか。そうすることで、インドの立場を損なうことなく、日米豪印によるクアッドとしての結束を維持していけるはずだ。(本稿は筆者個人の見解であり、所属先との見解を表すものではありません』、「インドが」ウクライナ問題で「米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる」、現実には、「ウクライナ問題」での「米欧との橋渡し」はむしろトルコの方が適しているかも知れず、「インド」には多くを期待できないのではなかろうか。

次に、9月5日付けNewsweek日本版「時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2022/09/post-99545_1.php
・『インドのヒンドゥー語映画産業「ボリウッド」は壊れているかもれしれない。彼ら自身がそのことを認識している。 大スクリーンで全編にわたって素晴らしい歌とダンスが繰り広げられるボリウッド映画は厳しい現実から逃れられる娯楽として、インド国民や世界中の人々を長らく魅了してきたが、最近は興行面で不振が続いている。 兄と妹たちのきずなを描いた新作「ラクシャバンダン」の興行成績がさっぱりだったことを受け、ボリウッドの大スターで主演を務めたアクシャイ・クマールさんは先月記者団に「映画がうまくいっていない。これはわれわれ、そして私の責任だ。私はいろいろと変えなければならないし、観客が何を望んでいるか理解する必要がある。私の映画はこうあるべきという概念をたたき壊したい」と胸の内を語った。 実際、インド現代文化の1つの柱だったボリウッドは曲がり角を迎え、その輝きは色あせつつある。 特に若い世代は多くのボリウッド映画を時代遅れで「格好悪い」とみている。そこに折あしく登場してきたのがネットフリックスやアマゾン・プライムといった動画配信サービスだ。 業界データを分析するウェブサイト「コイモイ」によると、今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった。 ボリウッドの拠点ムンバイで暮らす女性で、2人の10代の娘を持つクリスティナ・スンダレサンさん(40)はパンデミック発生前まで、最低でも週に1回は映画館でボリウッド映画を楽しんでいたにもかかわらず、今は滅多には足を向けない。「笑いが必要な時にボリウッド映画は向いているけれど、もうわざわざ映画館に鑑賞には行かない。昔はどの映画にも一緒についてきた娘たちも、動画配信プラットフォームで韓国のショーやドラマにはまっている」という。 海外の動画配信サービスに流れたのは彼女らだけではない。ネットフリックスとアマゾン・プライムがインドでサービスを開始したのは2016年と比較的最近だが、欧米やインド、その他アジアで制作された「パラサイト 半地下の家族」「アベンジャーズ」「イカゲーム」などさまざまな人気作品を提供している。 市場データ会社スタティスタの分析では、19年にインド国民14億人の約12%だった動画サービス利用者は足元で25%に増加している。この比率は27年までに31%する見通しで、さらに上振れる余地もある。例えば北米では利用率はおよそ80%に達しているからだ』、「今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった」、「パンデミック」は予想外に幅広い影響をもたらしたようだが、原因は嗜好の変化など他にもありそうだ。
・『時代への順応必要  インドの映画興行収入はでは19年まで毎年着実に増加し、同年には20億ドル前後に達した。その後パンデミックで落ち込み、現在も持ち直す気配は乏しい。 今年3月以降、興行成績は毎月悪化し続けている。投資銀行エララ・キャピタルの調査に基づくと、特にボリウッド映画は7-9月期に45%の減収が予想される。 ロイターが複数の映画ファンやプロデューサー、配給会社、映画館運営会社などの業界関係者に取材したところ、ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならないと訴えた。 4人の業界幹部は、業界内に広がる混乱や不安の背景をこう描写する。各製作会社はパンデミック前の市場であればヒットしたであろう作品を公開している一方、消費者の好みは動画配信、すなわちインターネット回線で提供されるコンテンツサービス(OTT)の台頭とともに変化が起き、そこにずれが生まれている、と。 インド第2位のシネマコンプレックス運営企業INOX幹部のシン・ジアラ氏は、製作サイドとのやり取りを踏まえ、プロデューサーは脚本の練り直しを急ぎ、俳優への出演料を前払いではなく興行成績と連動する形に切り替えることを検討していると明かした。 一方でジアラ氏は「本当の問題が何なのか誰も分かっていない。パンデミック期間中は映画が1本も公開されず、人々はOTTでさまざまな種類のコンテンツを視聴する時間がたっぷりあった。だから2年前に成功していたコンテンツはそれが何であれ、今ではもう全く価値がない」と話す。 ともかくも業界はすぐさま現実に適応しなければならない。 ある大学の研究によると、ボリウッド映画は収入の75%近くを映画館の興行収入に依存していることが分かった。米国映画協会のデータによると、世界全体では映画の興行収入への依存度は50%未満だ』、「ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならない」、「本当の問題が何なのか誰も分かっていない」、何やら頼りない感じだ。
・『見えない正解  ボリウッド映画のファンからは、進化を遂げて存在感を維持することはできるとエールも送られている。例えば最近の社会情勢をより適切に反映させるために、ゲイの人たちの関係や性転換した人物を作品に取り入れることはそうした進化の1つとみなされる。 ニューデリーの大学生は「話の展開が問題で、過去2年間に視聴者は非常に多くの新しいテーマにさらされ、新しい考え方を提示されてきた。それこそボリウッドに欠けている分野ではないかと思う」と自身の見解を披露した。 先月はクマールさんのラクシャバンダンだけでなく、別のボリウッド大物俳優アーミル・カーンさんが主演した「ラール・シン・チャッダー」も「大コケ」し、まさにボリウッドのたそがれが鮮明になっている。ラール・シン・チャッダーは、米ハリウッドの人気映画「フォレストガンプ」のリメーク版で、祝祭の連休入り前日だった8月11日に公開されたにもかかわらず、興行収入は5億6000万ルピーと投入予算の4分の1程度に過ぎなかった。 INOXのジアラ氏は、あまりの不振ぶりに運営するシネコンでラール・シン・チャッダーの上映回数を25%減らしたと述べた。 今後公開予定で巨額予算を投じた映画2本を抱えるボリウッドのある有力プロデューサーはロイターに、各プロデューサーは新しい映画の製作に当たり、予算から脚本、出演者まで何もかも再調整していると語り、視聴者の求めるものに寄り添っていかなければならないと強調しつつも、「その正解はもう持ち合わせていない」と不安を打ち明けた』、「視聴者の求めるもの」、「その正解はもう持ち合わせていない」とは本当に頼りない限りだ。
・『負担感大きい映画料金  インドは他のほとんどの国・地域と同じく、人々が生活費高騰と苦闘している。それだけに映画ファンや業界関係者は、映画館で鑑賞するのに結構なお金がかかるというのも重大な問題だと指摘する。 大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない。 映画プロダクションと配給会社を所有し、ボリウッド女優と結婚しているアニル・タダニ氏は「どこかで調整が必要になる。予算を組み直し、映画館に行く費用を下げなければならない。ヒンドゥー語映画産業は一般大衆からかい離しつつある。国民の大部分はこれらの映画と一体感を持たなくなっている」と危機感をあらわにした。 スンダレサンさんもタダニ氏と同じ感覚を持っている。「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」と話す』、「大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない」、「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」、興行収入の伸び悩みには、こうした「映画館」の「料金」、「OTTで視聴」というライバルの登場、などの問題もあるようだ。

第三に、10月3日付け東洋経済オンライン「日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/622982
・『カーボンニュートラルの要請が強まるタイミングで、なぜ二酸化炭素の排出が多い「高炉」を新設するのか。 日本製鉄のインド拠点  国内拠点のリストラを進めてきた日本製鉄が、今度は「量の拡大」に向けて海外でアクセルを踏み込み始めた。 9月28日、日本製鉄は4割を出資するインド合弁会社「アルセロール ミタル ニッポンスチールインディア(AMNSI)」が約1兆円の投資に踏み切ると発表した。 AMNSIは2019年に欧州アルセロール・ミタル(AM)と共同で買収したインド5位の鉄鋼メーカーだ。7300億円を投じて高炉2基を含む各種生産設備を増強するほか、3400億円を投じて港湾や電力などのインフラを買収する。総投資額1兆0700億円は、AMNSIが自己資金と借入金でまかなう。借入金額は未定だが、必要に応じて、AMと日本製鉄が出資比率に従い債務保証を行う予定。 2基目の高炉が稼働する2026年にはAMNSIの粗鋼生産能力(年間)は現在の900万トンから1500万トンに拡大する。港湾などはAMNSIの製鉄事業に不可欠なインフラばかりだが、買収時には対象外だった。自社保有とすることでこれまで払ってきた使用料が不要になる上、今後の能力拡張にも対応しやすくなる』、なるほど。
・『インドは鉄鋼需要が飛躍的に伸びる  AMNSIを通じてインドで積極投資するのは、成長が確実視されている市場であるからだ。「インドは人口構成が若く、発展が期待でき、人口もさらに伸びていく。鋼材需要も飛躍的に伸びる。能力を拡張して成長市場を捕捉する」と森高弘副社長は9月28日の会見で力を込めた。 2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない。 経済成長に伴って1人当たり使用量は2030年に倍増すると見込まれている。加えて、人口は増加が続いており、2023年には中国を抜いて世界一となる見通し。 インドの粗鋼生産量は1億1820万トン。輸入規制もあって国内でほぼ完結している。9633万トンを生産し、約4割を輸出する日本と市場構造が対照的だ。 つまり、今後のインド国内の需要増に対応するには、現地での生産能力拡大は必須となる。ただ、インドのカントリーリスクが高いため、AMとの共同歩調を取ることで、リスクをコントロールしながらインドの成長を取り込むスタンスだ。) AMNSIには新たな製鉄所を建設するなど、さらなる能力増強の構想もある。「2030年に3000万トンを(目標として)考えていきたい」(森副社長)。 日本製鉄は将来ビジョンとしてグローバルで1億トンの粗鋼生産能力を掲げている。今回の増強が完了する2026年には7000万トンに到達する。さらにインドを3000万トンに増強すれば、トータルで8500万トンとなる。 1億トンまでの残り1500万トンについては「インドでさらに(の可能性も)あるし、米国は市場が大きく高級鋼の需要もある。ASEANも強い」(森副社長)と、海外に視線を向ける。反面、国内は需要が減退していくので能力拡張はない。日本国内は現状4700万トンの能力があるが、2025年に鹿島の高炉を休止することで4400万トンまで減らすことが決まっている。 鉄鋼業の収益構造を考えると、利益を増やすにはトン当たりの付加価値を上げるか、量を拡大するしかない。2021年以降、大口顧客に対する値上げを実施して付加価値を引き上げてきた。今度は量の拡大にアクセルを踏み込む。市場の成長期待がもっとも高いインドに賭けることに不思議はない』、「2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない」、特に「国民1人当たり」では成長余地が大きそうだ。
・『二酸化炭素排出の多い高炉を選択する事情  他方、カーボンニュートラル(CN)の要請が強まるタイミングでなぜ高炉を新設するのか。 鉄鉱石から鉄を造り出す最上流工程で、世界でもっとも活用されているのが高炉法。高品質の鉄を大量・高効率に造ることに優れており、日本は粗鋼生産の75%が高炉によるもの。一方、鉄鉱石に含まれる酸素を石炭に含まれる炭素で取り除く(還元)ため、原理的に二酸化炭素(CO2)の排出が多い欠点がある。 鉄鋼業は日本全体のCO2排出量の13%、産業全体でも4割を占める。その8割は高炉を中心とする上工程から出ている。このため近年、CO2排出を減らすために電炉を活用する動きが出てきた。9月初頭にJFEホールディングスが国内で高炉1基を休止し、電炉に置き換えると発表したのはこの流れにある。 還元済みの鉄スクラップを電気の熱で溶かして鉄を造る電炉のCO2排出量は高炉の4分の1と低い。使用電気をCN電力に切り替えれば、理論上はCNスチールの実現も可能である。 しかし、日本製鉄は電炉ではなく、高炉を選んだ。「機会損失をできるだけなくす。自動車を始めとする高級鋼需要にも対応するなら、高炉法が一番だからだ」と森副社長は説明する。 不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない。品質が均一な加工くずのスクラップを使えば造ることは可能だが必要量の確保が難しい。 そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない。現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス炉」が主力だ。 ミドレックスは天然ガスに含まれる炭素と水素で還元するため、電炉と組み合わせても高炉法よりもCO2排出量が少ない。「電炉やミドレックスが環境負荷やCO2排出だけなら少ないのは明らか」(森副社長)。 スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ』、「不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない」、「そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない」、「現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス炉」が主力だ」、「スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ」、しかし「高炉」を選択した理由は以下の通りだ。
・『高炉の選択が示すカーボンニュートラルの難題  だが、ミドレックス+電炉は生産性で高炉に劣る。完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的といえる。 インドは2070年のCNを目標としており、2050年のCNを目標にしている先進国より20年余裕があることも大きい。だからといって大量のCO2排出が許されるわけではない。新しく建設する高炉は、日本製鉄やAMが開発中の低炭素化技術を導入することが前提。高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS(CO2の回収・利用・貯蔵)も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難しいかを示している』、「完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、「高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS・・・も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難しいかを示している」、「今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、今後「厳密なCNを求められる時期が来た時」、どうするのかはその時点での「鋼材需要」などの不確定な条件によって決まるようだ。
タグ:インド (その2)(インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係、時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振、日本製鉄 あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る) 東洋経済オンライン 笠井 亮平氏による「インドがウクライナ侵攻に「NO」と言えない事情 安全保障環境ゆえに軍事面でロシアと深い関係」 「QUAD」の一角を占めるのに、「ウクライナ侵攻を非難する決議案」に「棄権」とはどういうことなのだろう。 「2000年から2020年にかけてインドが外国から輸入した兵器のうち66.5%がロシア製だった。インド軍の超音速巡航ミサイル「ブラーモス」はロシアと共同開発したものだし、インド海軍唯一の空母「ヴィクラマディティヤ」はロシア海軍の空母だったものを購入して改装したものだ。 2018年にはアメリカの懸念をよそにロシア製地対空ミサイル「S400」の導入を決め・・・近年インドは兵器調達先の多様化を進めており、米欧やイスラエル製も増えているものの、既存の兵器のメンテナンスや弾薬・各種部品調達の必要性を踏まえれば、ロシア頼みの状況を変えることは容易ではない」、「インドとロシアの密接な関係は冷戦期にまでさかのぼる」、「ロシアとは「特別かつ特恵的(privileged)な戦略的パートナーシップ」とさらに踏み込んだ関係と位置づけ」、ここまで強固なつながりがあるとは・・・。 「インド国民会議派のなかでも、元国連事務次長で現在は下院議員を務めるシャシ・タルールが「安保理常任理事国入りを目指すインドが、国際的に認められている原則に対して沈黙することはいかがなものか」と疑義を呈している」、「インド」も「安保理常任理事国入りを目指」しているとは初めて知った。 「インドが」ウクライナ問題で「米欧との橋渡しをできれば、事態の解決に貢献することができる。ウクライナには約2万人のインド人(多くは医学生)がおり、自国民保護の観点からも早期解決はプラスになる」、現実には、「ウクライナ問題」での「米欧との橋渡し」はむしろトルコの方が適しているかも知れず、「インド」には多くを期待できないのではなかろうか。 Newsweek日本版「時代遅れになるボリウッド コロナ禍と動画配信の台頭で興行不振」 「今年公開されたボリウッド映画26本のうち何と20本(77%)は、収入が投資額の5割かそれ以下にとどまった「失敗作」になった。2019年の失敗作の比率はその半分程度だったが、新型コロナウイルスのパンデミックによって社会が一変し、何十年もボリウッド映画の主な収入源だった映画館から人々が遠ざかってしまった」、「パンデミック」は予想外に幅広い影響をもたらしたようだが、原因は嗜好の変化など他にもありそうだ。 「ボリウッドはもはや黙っていても観客が見込めると考えてはならず、生き残って再び隆盛期を迎えたいならば時代に順応しなければならない」、「本当の問題が何なのか誰も分かっていない」、何やら頼りない感じだ。 「視聴者の求めるもの」、「その正解はもう持ち合わせていない」とは本当に頼りない限りだ。 「大スクリーンを持つ映画館に4人家族で行けば、通常は3000─5000ルピー(35─60ドル)の出費。多くの国民が貧困にあえぎ、平均年収が約16万ルピーにとどまるインドでは高額だ。対照的にネットフリックスなどの動画配信サービスの月額はおよそ150ルピーでしかない」、「映画館に行ってずっと座りっぱなしで、自分のペースで鑑賞できないというのは時間の浪費に思われる。OTTで視聴した方がメリットは多い」、興行収入の伸び悩みには、こうした「映画館」の「料金」、「OTTで視聴」というライバルの登場、などの問題もあるよ うだ。 東洋経済オンライン「日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情 インドで合弁会社が1兆円の投資に踏み切る」 「2021年のインド国内の鋼材使用量は1億0610万トン。9億5200万トン中国に続く世界2位で、5750万トンの日本を大きく上回る。他方、国民1人当たりでは76キログラムと、456キログラムの日本や、666キログラムの中国に比べるとまだまだ少ない」、特に「国民1人当たり」では成長余地が大きそうだ。 「不純物が含まれるスクラップを原料に使う電炉では電磁鋼板や高張力鋼板といった高級鋼は造れない」、「そもそもスクラップは発生量が限られている。急増する鋼材需要をまかなうには鉄鉱石に頼るほかない」、「現時点で高級鋼を大量・高効率に生産するのは高炉がベストなことは間違いない。 ただ、もう一つの道がある。気体のガスで鉄鉱石を還元する「直接還元」という手法だ。溶けた鉄が造る高炉と異なり、固形の鉄(直接還元鉄)ができるため、電炉と組み合わせるのが基本。実はAMNSIは、直接還元法の一つで、天然ガスを使う「ミドレックス 炉」が主力だ」、 「スクラップを使う電炉よりは高級鋼は造りやすい。CO2を出さない完全水素還元はミドレックスがベースになる可能性が高い。将来のCNをにらめばミドレックス+電炉という選択肢はあったはずだ」、しかし「高炉」を選択した理由は以下の通りだ。 「完全水素還元の技術は確立できておらず、確立できたとして大量のCN水素を調達する見通しも立っていない。今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、「高炉として低炭素化し、将来的にはCCUS・・・も組み合わせてさらなるCO2排出削減を追求する考えだ。 低炭素化しても高炉が出すCO2はやはり多く、CCUS活用でもおそらくニュートラルには届かない。厳密なCNを求められる時期が来た時、高炉を捨てるのか。高炉を捨てて鋼材需要を満たせるかはわからない。このタイミングでの高炉という選択は、CN実現がいかに難し いかを示している」、「今の段階で高炉を選んだ日本製鉄の決断は極めて現実的」、今後「厳密なCNを求められる時期が来た時」、どうするのかはその時点での「鋼材需要」などの不確定な条件によって決まるようだ。
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