リニア新幹線(その9)(静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている、リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)、リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず、「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」) [産業動向]
リニア新幹線については、昨年12月23日に取り上げた。今日は、(その9)(静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている、リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)、リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず、「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」)である。
先ずは、本年1月2日付け現代ビジネスが掲載したイトモス研究所所長の小倉 健一氏による「静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104250?imp=0
・『リニア新幹線を巡る「攻防」 リニア新幹線建設を巡り、JR東海と川勝平太静岡県知事の対立が泥試合の様相を呈している。泥試合を仕掛けているのは、川勝知事だ。静岡県内における建設着工を防ぐために、ありとあらゆる難癖をつけて妨害を続けている。 2020年6月10日、JR東海の金子慎社長は(当初計画していた)2027年の開業について「ギリギリで難しい工程」と述べていた。あれから2年と半年が過ぎたが、静岡県との協議は一歩も前へ進んでいない。下手すると、2030年まで開業を後ろ倒ししなくてはいけない可能性がある。 一民間企業であるJR東海の事業を、権力者が徹底的に妨害する様は、徳川家康が豊臣秀頼・淀君にもつけた難癖に近い。もはやイジメだろう。経営体力のあるJR東海だから大人の対応をしているが、これが他のJRだったら万事休すとなっていてもおかしくない。徳川家康には、「自分の目の黒いうちに豊臣家を滅ぼしておく」という目的があったが、川勝知事にある「大義」とはいったいなんなのだろうか。 かつて川勝知事は、「静岡空港直下への東海道新幹線新駅設置構想」なるものを太田昭宏国土交通相(当時)に提案している。「新幹線静岡空港駅」構想だ。この提案に対してJR東海は「明らかに短い区間にたくさん駅を作れば列車本数が入らなくなり、東海道新幹線の輸送力が傷んでしまう」(2013年12月11日・JR東海社長定例会見での発言)として拒否。リニア建設において、JR東海へ嫌がらせをすることで、新幹線静岡空港駅の譲歩を引き出そうとしたのではないかとされている』、「かつて川勝知事は、「静岡空港直下への東海道新幹線新駅設置構想」なるものを太田昭宏国土交通相(当時)に提案」、「JR東海」が「拒否」したことで、「JR東海へ嫌がらせをすることで、新幹線静岡空港駅の譲歩を引き出そうとしたのではないかとされている」、「川勝知事」の「拒否」の背景が初めて理解できた。
・『過剰な数の駅数 川勝知事が主張するように、静岡空港に新幹線の駅をつくることは物理的には可能なのであろうが、静岡県にはすでに熱海駅、三島駅、新富士駅、静岡駅、掛川駅、浜松駅と6つも新幹線の駅(さらに神奈川県との県境には小田原駅、愛知県との県境には豊橋駅という新幹線駅)がある。 1日の平均乗車人員(平成30年度・コロナ前) 東京:104,451人 品川:37,200人 新横浜:34,095人 小田原:11,245人 熱海:4,825人 三島:15,319人 新富士:4,874人 静岡:21,207人 掛川:4,379人 浜松:13,731人 豊橋:8,934人 三河安城:1,865人 名古屋:73,747人 岐阜羽島:2,955人 米原:7,240人 京都:39,229人 新大阪:84,467人 この1日の乗車人員(2倍にすると乗降人員になる)を考えると、三島と静岡以外、JR東海にとって駅を存続させるメリットは薄そうだ。この数字を見る限り、JR東海がやるべきは、静岡空港に駅をつくることではない。静岡県の新幹線駅を減らすことだろう。人口減少社会を迎える公共交通において、経営のお荷物は極力無くしていったほうがよい。 東海道・山陽新幹線において静岡県は最多の駅数で、すでに人口規模(376万人、全国で10番目)から言って過剰な数の駅数である。「のぞみ」が全然止まらないのは、静岡県が栄えていないか、クルマ社会であるということだ。川勝県政下で過去10年、ずっと右肩下がりで人口が減り続けている静岡県に新駅をつくるなど、民間企業としてはデメリットばかりの過剰な投資でありリスクしかない』、「過去10年、ずっと右肩下がりで人口が減り続けている静岡県に新駅をつくるなど、民間企業としてはデメリットばかりの過剰な投資でありリスクしかない」、その通りだ。
・『唐突な論点のすり替え 静岡空港へのアクセスについては、たしかに現状クルマやバスでしかいけないという不便な面はあるものの、工業製品や魚介を海外へ輸出したいのであれば、トラックで運べばいい。観光客やビジネスパーソンが、絶対に鉄道を使ってでしか空港へ行きたくないと言うのであれば、セントレア(中部国際空港)という鉄道が直結する立派な空港が静岡県のすぐ近くにある。 JR東海側の計画によれば、リニア新幹線が開業すると、これまでの東海道新幹線の運転本数のうち、「のぞみ」の割合が減り、「ひかり+こだま」の割合が増えることになる。「のぞみ」は静岡県に止まることはないが、「ひかり+こだま」ならたくさん止まる。静岡県民の利便性は向上することになる。さっさとリニアを通したほうが、静岡県民のためになるのだ。 川勝知事は、これまで「リニアを引き合いに静岡空港新幹線新駅の実現を迫る」(2016年9月の定例会)答弁を強行し、新駅容認派の学者を集めたシンポジウムでは「駅を造らないといけないという保証をいただいた。JR東海には意識改革を求めたい」(2017年2月)と迫り、2019年6月の定例記者会見・トンネル関連工事の視察の際には「地域貢献を金額に直すと(中間駅のある)4県の(駅整備額の)平均がめどになる」などとJR東海に露骨に金銭を要求してきた経緯がある。この下品極まりないやり方には、自民党の族議員も真っ青だろう。 川勝知事がアクロバチックに繰り出した最大の難癖が「命の水を守れ」キャンペーンだ。「大井川流域が水不足に悩んでいる」という「虚偽の前提」から始まった一連のキャンペーンは、川勝知事の再選に大きな役割を果たしたようだ。 川勝知事は、水不足になっていない現実が知られてくると、今度は「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」「リニアという国策のために自然を破壊しかねない」(2021年6月3日)と、「水質保全・自然破壊防止」という論点にすり替えを行った。自然破壊をせずに済むトンネル工事などほぼないだろう。川勝知事の言った通りにすると、絶対にリニア建設などムリなことは明白だ』、「「大井川流域が水不足に悩んでいる」という「虚偽の前提」から始まった一連のキャンペーンは、川勝知事の再選に大きな役割を果たしたようだ。 川勝知事は、水不足になっていない現実が知られてくると、今度は「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」「リニアという国策のために自然を破壊しかねない」・・・と、「水質保全・自然破壊防止」という論点にすり替えを行った」、「論点」の「すり替え」は巧みだ。
・『「堪忍袋の尾が切れました」 先述の新幹線駅と静岡空港の話に戻るが、遠くない距離にセントレア(もしくは羽田空港)がある現状を考えれば、赤字(県と空港会社の収支合算)を垂れ流し続ける静岡空港は、新幹線駅をつくるどころか、廃止するという考えに立ってもおかしくない。 静岡空港は、川勝知事が大事にしていると主張する自然を破壊した上で建設されたものだ。日本有数のお茶の産地を総事業費約1900億円かけてぶっ潰したわけである。そんなに自然が大事なら空港は更地にして、茶畑に戻すべきだろう。 丁寧に論点を整理し、できることから着々と進めるJR東海に対し、川勝知事は「そもそも極めて傲慢な態度で臨まれているという認識を持っております。あたかも水は一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという、そもそも極めて傲慢な態度で臨まれている。そういった態度であり、私の堪忍袋の緒が切れました」と述べている。 水の質が問題だと難癖をつけられたから、「水をそのまま戻します」と妥協案を示したJR東海が、「極めて傲慢な態度」だというのだから、子どもの頃に歌った童謡ではないが「川勝さん家の平太くん、このごろ少し変よ。どうしたのかな」と呆れるほかない』、「川勝知事」の「抵抗」は確かに整合性が取れていない。「川勝知事」に名誉ある撤退っせる妙案はないのだろうか。
次に、1月3日付け日経ビジネスが掲載した「リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00148/111700088/
・『鉄道ビジネスの停滞感が顕著になるなか、次代を担うブレイクスルーは何なのか。そう考えたとき、やはり筆頭に上がるのは「超電導リニア」だろう。技術は確立済みで、リニア中央新幹線の建設も各地で進むが、静岡県の反対が2027年を目指していた開業を阻んでいる。いくら「国家プロジェクト」だと訴えても、結局のところ、地域と真剣に向き合うことを宿命づけられているのが鉄道というビジネスだ。 22年10月にJR東海の山梨リニア実験線に試乗する機会を得た。実は超電導リニアに乗るのは5年ぶり2度目。鉄道を取材している記者としての完全な役得である。 とはいえ、正直に言って、2度目の試乗に心ときめいていたわけではない。5年前に乗ったときの印象がそれほど良くなかったからだ。 超電導リニアは鉄道のような車輪ではなく、浮上して走行することはよく知られている。レールのつなぎ目はないし、地面に接していないのならさぞ滑らかに走るのだろう……。そう期待して乗ったら、見事に裏切られた。発車時の急加速はまるで飛行機のように荒々しく、浮上走行時も小刻みな揺れがあって、コップの水がこぼれないことを売りにしている新幹線の滑らかな乗り心地とはほど遠い。そして時速150キロメートル程度まで減速するとタイヤ走行に切り替わるのだが、その際もガタンという衝撃があり、飛行機が着陸するような感覚だった。総じて鉄道というよりは飛行機に近く、快適性では鉄道に一日の長があると感じた。 さて、今回はどうだろうか。 現地で超電導リニアと対面して気づいたのだが、5年前とは車両の一部が変わっていた。20年春に7両編成のうち先頭車両とその隣の中間車両の2両が「L0系改良型試験車」に置き換えられたという。今回はその改良型に乗り込むことになった。 5年前に乗った超電導リニアの車内は、JR東海の東海道新幹線N700系と似た印象だった。しかし改良型は、だいぶ雰囲気が変わっていた。椅子の軽量化に腐心したのだろうか。細いパイプで支えられていて、足元に荷物を入れるスペースがあるなど、飛行機の椅子に近い。前席背面の大型テーブルがなくなり、肘掛けに収納された小さなテーブルだけになったのは、東京-名古屋間で最速40分、東京-大阪間で同67分という所要時間を考慮したのだろう。確かにその程度の所要時間なら、弁当を食べたり、パソコンを開いて仕事をしたりするほどのこともない。 天井は編み込まれた繊維のようなもので覆われていて、聞けば吸音効果があるという。 さて、いよいよ出発だ。山梨リニア実験線は全長42.8キロメートル。将来はリニア中央新幹線の一部となる。出発地点からはまず実験線の東端に向かい、そこから折り返して最高時速500キロメートルで全線を走行。西端で折り返して出発地点へと戻る。都合3回ずつ、加速と減速を体験した。 変わっていなかったのは、急加速と、停車前に浮上走行からタイヤ走行に切り替わるときの衝撃。これはやはり飛行機に近く、鉄道と超電導リニアは違う乗り物だと再認識した。 一方、浮上走行中の揺れについては、前回の試乗時ほど強い印象は受けなかった。 もしかしたら個人的な「慣れ」によるものかもしれないと思ってJR東海に確認してみたところ、改良型では先頭形状を変更して空気抵抗を約13%低下させたことや、車内の騒音を低減したことが影響しているかもしれないとのことだった』、「山梨リニア実験線」での「実験」では、「前回の「実験」と、「変わっていなかったのは、急加速と、停車前に浮上走行からタイヤ走行に切り替わるときの衝撃。これはやはり飛行機に近く、鉄道と超電導リニアは違う乗り物だと再認識した」、なるほど。
・『天井は吸音効果がある素材に覆われている 乗り心地の滑らかさでは、まだ新幹線のレベルには到達していない。しかし飛行機ほどの揺れはなく、1時間程度の乗車であれば、さほど気にならないと感じた。国土交通省が技術開発は完了したとお墨付きを与えているのもうなずける。 長年「夢の乗り物」の域を脱せなかった超電導リニアだが、1962年の研究開発から60年の時を経て、ようやく現実のものになろうとしている。 その姿を一番実感できるのは、名古屋駅周辺だろう。リニア中央新幹線の名古屋駅は、南北方向に走る東海道新幹線・東海道線などと交差、すなわち東西方向に延びる形で設置される。地下駅となるが、地表から掘り進む開削工法で建設されるため、駅周辺ではビルの立ち退き・解体が進んでいる。 現在は解体した建物の地下部分など支障物を撤去する準備工事段階だが、更地になった部分から、将来の駅のスペースが手に取るように分かる。 リニアの名古屋駅建設現場。手前から奥へと細長く用地が延びていることが分かる 首都圏側ではJRと京王電鉄が乗り入れる橋本駅(相模原市)の駅前で、神奈川県駅(仮称)の掘削工事が進む。移転した神奈川県立相原高校の広大な跡地を工事ヤードとして活用し、国内では珍しい露天掘りが行われている。この迫力ある工事現場が、10月1~4日の4日間、周辺住民をはじめとする一般客に公開された。掘削現場ののり面にプロジェクションマッピングを投映する「さがみはらリニアビジョン」というイベントで、事前申し込みした約2000人が参加した。 イベントでは工事現場でプロジェクションマッピングが投映された(点灯セレモニーには、JR東海の金子慎社長や神奈川県の黒岩祐治知事が登壇。黒岩知事は「2027年の開業に向け、国家プロジェクトとして進めていく」「国家プロジェクトを盛り上げていく機運が高まってきた」「住民の皆さんが国家プロジェクトに協力してくれている」などと、何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した』、「黒岩知事」が「何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した」、JR東海のプロジェクトに過ぎないのを、「国家プロジェクト」と強弁するのには違和感がある。
・『着工のめどが立たない約10キロメートル 実はその1週間ほど前、静岡県の川勝平太知事が「神奈川県が完全に27年の開業を不可能にしたと思う」と発言し、物議を醸していた。 東京から名古屋の間で工事が着々と進むなか、静岡県の大井川上流部をかすめるようにトンネルで通過する、わずか約10キロメートルの着工のめどが立っていない。建設残土の処理や大井川の水資源の保全を巡り、静岡県の理解を得られていないためだ。国交省を交えて協議を行っているが、膠着状態は3年以上続いている。JR東海は静岡工区に着手できないことを理由に「27年の開業は困難」としている。 川勝知事の発言は、静岡工区以外にも開業遅れの理由はあるという主張だった。具体的には、相模原市に設けられる車両基地の用地取得が遅れていることに触れ、取得交渉の実務を担当している神奈川県をやり玉に挙げたのだ。これに対して神奈川県の黒岩知事は「セレモニーの前に現地をきちんと見てきた。外から見ただけでは分からないが、住宅が建っているところでは8割が(用地売却を)了承されている。27年の開業に向けて進んでいけると実感した」と反論した。) 黒岩知事が執拗に「国家プロジェクト」と強調したのは、静岡県だけがリニアの着工を認めないことへのけん制のようにも取れる。西九州新幹線の未整備区間を巡り、佐賀県がフル規格新幹線での整備に慎重な姿勢を示しているのと同様、国全体の便益と地域の利益のどちらを優先すべきなのか、対立が生じている。 リニア中央新幹線は西九州新幹線と同じく「全国新幹線鉄道整備法」に基づく路線だが、JR東海が建設費の全額を負担するため、国や沿線自治体の費用負担は発生しない。沿線自治体との交渉の矢面に立つのも国交省ではなく、JR東海自身だ。 JR東海の関係者からは「静岡県が懸念する水資源問題の解決策を提示しても、新たな問題が提示される。ゴールポストを変えられるようなもので、終わりが見えない」とため息交じりの声が聞かれる。 リニアのトンネル内に湧き出る水は導水路トンネルを建設して大井川に戻すことで、中下流域の水量は変わらないと国交省の有識者会議も評価している。新たに焦点となっているのは、トンネル掘削時の約10カ月間、一時的に山梨県側に湧水が流出するという問題。突発湧水の危険性があり、安全確保のためには山梨県側から上向きに掘削せざるを得ないためだ。 この問題に対してJR東海は、ウルトラCとも言える方策をひねり出した。大井川上流にある田代ダムでは、東京電力リニューアブルパワーが水力発電用に取水。山梨県側に送っている。そこで同社に協力を仰ぎ、工事期間だけ取水を制限するという案だ。こうすれば中下流域の水量は実質的に変わらない計算になる。 JR東海の宇野護副社長は「大井川流域の市町からは分かりやすい対策という声をいただいている」と話す。しかし静岡県の川勝知事は「広い意味での地域貢献になる」と歓迎しつつも「(静岡県が求めている、県外に流出する水の)全量戻しには当たらない」との立場。解決の糸口が見いだせない状況だ。 はたから見れば、無理難題を押しつけているようにも見える。その背景について、静岡県の幹部は「静岡県や沿線自治体には、JR東海の営業エリアでありながら、長年軽視されてきたという思いがある。JR東海に対する不信感が根本にある」と解説する』、「静岡県の幹部は「静岡県や沿線自治体には、JR東海の営業エリアでありながら、長年軽視されてきたという思いがある。JR東海に対する不信感が根本にある」と解説」、こうした歴史的経緯があると、ややこしい。
・『「のぞみ通行税」に込めた不満 古くは02年、石川嘉延前知事が「のぞみ通行税」を持ち出したことがある。東海道新幹線の主力であるのぞみは、東名阪をいかに速く移動できるかを重視しているため、静岡県は素通り。静岡駅や浜松駅に停車する「ひかり」「こだま」の本数が限られていることに不満を示した。 また、前出の県幹部は「東海道線の沿線自治体が柔軟な運行ダイヤ変更などを要望しても、東海道新幹線との接続を優先しなければいけないといった理由でなかなか認められない」とも話す。 目下の懸案は、東海道新幹線の「静岡空港駅」新設問題だ。石川前知事時代から静岡~掛川間の富士山静岡空港近くに新駅を建設し、空港アクセスの利便性を向上させたいとしている。しかし、JR東海は一貫して難色を示している。隣の掛川駅との駅間距離が短く、高速鉄道としての特性を損なうという理由からだ。 静岡県は22年7月、リニア中央新幹線沿線の都道府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に加盟した。 建設促進期成同盟会はその名の通り、リニア中央新幹線の建設促進を目的としている。川勝知事は一時期、リニアそのものへの懐疑的な発言が目立っていたが、これで建設自体は否定しない立場が明確になった。 そしてこの組織にはもう1つの顔がある。各県内に停車駅の設置を実現させるというものだ。JR東海がリニア中央新幹線を建設する主眼は東名阪の所要時間短縮と東海道新幹線の老朽化や地震災害に備えた輸送の二重系化だ。しかし山梨県、長野県、岐阜県といった沿線自治体は、建設に協力することで中間駅の設置を勝ち取り、地域振興の起爆剤として期待する。 ただ、リニア中央新幹線は静岡県内は南アルプスの山奥を通過するだけなので、静岡県にとって駅を設置するメリットは皆無。仮に新駅を求めるとすれば、静岡空港駅になるのではないか』、「静岡県は22年7月、リニア中央新幹線沿線の都道府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に加盟した。・・・川勝知事は一時期、リニアそのものへの懐疑的な発言が目立っていたが、これで建設自体は否定しない立場が明確になった」、「リニア中央新幹線は静岡県内は南アルプスの山奥を通過するだけなので、静岡県にとって駅を設置するメリットは皆無。仮に新駅を求めるとすれば、静岡空港駅になるのではないか」、なるほど。
・『JR東海も地元との対話を強化 実際、静岡県が建設期成同盟会に加盟した後、山梨県の長崎幸太郎知事などが静岡空港駅の建設要望について議題に取り上げたい考えを示している。 静岡県の川勝知事は大井川の水資源問題解決を公約に掲げて県知事選を制した手前、自ら静岡空港駅の設置を持ち出して、振り上げた拳を簡単に下ろすのは難しいだろう。周辺から議論の機運を醸成していくしかない。 JR東海も遅ればせながら、地元との対話を強化しようとしている。22年3月に、静岡支社に新たに副支社長ポストを設置した。7月からは県内の駅に大井川の水資源に関する取り組みを紹介するパンフレットを置き、利用客へアピールするとともに、意見や質問などを受け付けている。3カ月間で200件近い意見や質問が集まり、これに対する回答を公開したところだ。 旅客収入の9割近くを東海道新幹線で稼ぐJR東海は、経済合理性だけを考えれば東名阪の移動需要を重視すればいい。日本を支える大動脈を運営し、国家プロジェクトの一翼を担う自負もあるだろう。しかし実際には他のJR各社と同様、営業エリアである中部地方から逃れられない宿命を帯びている。地域の課題と向き合っていくことが、結果的にリニアの早期開業につながるのではないだろうか』、「旅客収入の9割近くを東海道新幹線で稼ぐJR東海は、経済合理性だけを考えれば東名阪の移動需要を重視すればいい」、「しかし実際には他のJR各社と同様、営業エリアである中部地方から逃れられない宿命を帯びている。地域の課題と向き合っていくことが、結果的にリニアの早期開業につながるのではないだろうか」、その通りだ。
第三に、 1月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの小林 一哉氏による「リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104421?imp=0
・『知事と副知事の「食い違い」 2023年を迎えたが、2022年に引き続き、「リニア静岡問題」解決はお先真っ暗の状態である。2018年夏から、静岡県とJR東海はリニア問題を解決するための議論を続けているが、何ら進展は見られない。 河川法の許可権限を盾に、川勝知事がさまざまな言い掛かりをつけ、リニア議論を妨害するからである。このままではリニア開業を大幅に遅らせた最大の責任者として、川勝知事の“悪名”が歴史にしっかりと刻まれることになるだろう。 2022年の最後となる12月27日の定例会見で、川勝知事は「『リニアは存亡の危機にある』という認識を持っている」などと報道各社に向かって、従来通りの挑発的な発言を行った。いくつかの地元テレビ局は川勝知事の挑発発言を鵜呑みにして、そのまま報道していた。 ところが、実際の会見では、川勝知事と森貴志副知事の主張の食い違いが問題となり、緊迫したやり取りが続いていたのである。 12月4日に開かれた県地質構造・水資源専門部会終了後の囲み取材で、筆者は以下のような質問をした。 「今回の会議で、田代ダム取水抑制案が全量戻しに有効であることが確認された。ところが、知事は何度も『田代ダム取水抑制案は全量戻し策にならない』と発言してきた。知事が田代ダム取水抑制案を認めないならば、県専門部会の議論そのものがムダになる。リニア問題を議論する県の責任者として見解を示してほしい」 すると森副知事は「田代ダム取水抑制案がJR東海の工事中の全量戻しに有効であると川勝知事も認識している」と発言した。 それにも関わらず、川勝知事は12月16日の会見で「田代ダム取水抑制案は別の事柄。(JR東海の)南アルプス工事と結びつくものではない」などと繰り返し否定してしまい、静岡県庁の「機能不全」が深刻化していることを明らかにしてしまった』、「森副知事は「田代ダム取水抑制案がJR東海の工事中の全量戻しに有効であると川勝知事も認識している」と発言した。 それにも関わらず、川勝知事は12月16日の会見で「田代ダム取水抑制案は別の事柄。(JR東海の)南アルプス工事と結びつくものではない」などと繰り返し否定してしまい、静岡県庁の「機能不全」が深刻化していることを明らかに」、お粗末だ。
・『副知事の発言を「ちゃぶ台返し」 県政記者らは16日の知事会見後に、あらためて森副知事に確認した。その後、川勝知事と協議をしたとする森副知事は、「知事も検討の余地があると認識している。誤解を生じさせた」などと、知事発言の訂正を行った。 このため、27日の会見で読売新聞の記者が「田代ダム取水抑制案は静岡県が求める全量戻しに相当する案として認められるのか、それとも全く認められないのか」と知事の姿勢をただした。 この質問に、川勝知事が「JR東海は県専門部会で説明責任を果たさなければならない」など脈絡のない回答に終始したため、読売記者は「事務方はリニアと田代ダム取水抑制案は関係があると明言している。知事はそれと同じことを言えないのか」と厳しく追及した。 この追及に対して、川勝知事は「全量戻しとは掘削中に出る水をすべて戻すことであり、田代ダム取水抑制案は全量戻しとは違うという認識を持っている」などと12月16日と全く同じ回答をして、再び森副知事の発言を“ちゃぶ台返し”してしまった。 森副知事と食い違う川勝知事の回答に、業を煮やしたテレビ静岡の記者が、事務方のリニア担当部局へ説明を求めた。責任者の渡邉光喜参事は隣にいる知事の顔色をうかがって、全く見当外れの説明に終始した』、お粗末極まる。
・『静岡県庁の「機能不全」 さらに、渡邉氏がJR東海への責任転嫁を始めたことに、テレビ静岡の記者は「それでは森副知事が嘘をついているんですね。我々の前ではそうは言っていない。はっきりと録画も録音も残っている。そういう不誠実なことはやめたほうがいい」などと県のごまかしを許さない毅然とした対応をした。 再び渡邉参事から代わった川勝知事は「私は(森副知事と)見解がずれているとは思わない。残念ながら森副知事は東京に出張しており、見解への説明は今できない」などと言い繕い、ごまかそうともしている。 これに対して、中日新聞の記者は「田代ダム取水抑制案は県専門部会の森下(祐一)部会長も『有力な案』と見ている。森副知事は『田代ダム取水抑制案として検討するに値する』と発言した。知事と事務方と同じ見方なのかどうかと質問している」と知事のごまかしを許さなかった。 さまざまな前置きをした上で、最後に川勝知事は「検討の余地がある」と述べて折れた形となり、今回の知事会見は時間切れとなった。 川勝知事の嘘やごまかしに、記者たちは我慢できないようになっている。一触即発の剣呑な雰囲気となったが、記者たちは追及の手を緩めなかった。“裸の王様”川勝知事によって、静岡県庁の「機能不全」が最悪の状態に向かいつつあることを明らかにしたのだ。 後編「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」では、これまで何度も川勝知事が唱えてきた「大井川流域62万人の『命の水』を守る」発言の嘘をただした桜井勝郎県議(無所属、島田市・大井川町選出)、野崎正蔵県議(自民党、磐田市選出)らの追及の詳細と、川勝知事の苦しい対応について報じる』、「“裸の王様”川勝知事によって、静岡県庁の「機能不全」が最悪の状態に向かいつつあることを明らかにした」、大混乱のようだ。
第四に、1月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの小林 一哉氏による「「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」」を紹介しよう。
・『2023年を迎えたが、2022年に引き続き、「リニア静岡問題」解決はお先真っ暗の状態である。2018年夏から、静岡県とJR東海はリニア問題を解決するための議論を続けているが、何ら進展は見られない。 河川法の許可権限を盾に、川勝知事がさまざまな言い掛かりをつけ、リニア議論を妨害するからである。このままではリニア開業を大幅に遅らせた最大の責任者として、川勝知事の“悪名”が歴史にしっかりと刻まれることになるだろう。 前編記事『リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず』で、2022年12月の記者会見で川勝知事が記者たちに厳しい追及をされた経緯について詳報した。後編では知事の嘘を追求する県議たちと知事のやりとりについて報じる』、興味深そうだ。
・『JR東海に「責任転嫁」 2022年12月県議会で、桜井勝郎県議(無所属、島田市・大井川町選出)、野崎正蔵県議(自民党、磐田市選出)が、これまで何度も川勝知事が唱えてきた「大井川流域62万人の『命の水』を守る」発言の嘘をただした(筆者の近著『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』飛鳥新社でその内容を詳しく紹介した)。 特に、元島田市長の桜井県議は大井川広域水道の役割を十分に承知しているだけに、現在、県地質構造・水資源専門部会で議論になっているリニアトンネル工事中(約10カ月間)に山梨県へ流出する最大約500万トンの湧水問題について厳しく追及した。 川勝知事の「命の水」の嘘を明らかにした上で、桜井県議は「静岡県から県外流出する量は、最大毎秒0・21トンに過ぎない。現在、大井川広域水道事業団の余った水は毎秒0・9トンもあり、川勝知事が言う“命の水”は十分に足りている。農業用水、工業用水にもしわ寄せがいかない。何の影響もないどころか、使われない水はそのまま大井川に流され、海に捨てられてしまう。その量は、年間に直せば、約2838万トンにも上っている。一滴たりとも県外に渡さないという“命の水”が実際は捨てられている。これについて知事はどのような所見を持つのか」などと述べて、現在、行われている県専門部会の議論そのものが不毛であることまで明らかにした。 川勝知事は「JR東海が県外流出量を算出した係数の値がひとけた違えば、流出する量は大幅に増える」などと国の有識者会議の結論などを無視して、無責任な回答でごまかした。さらに、森副知事は「62万人の『命の水』とは、大井川広域水道だけでなく、各市町で使う自前の水も合わせた量だ」などと頓珍漢な回答でお茶を濁した』、「元島田市長の桜井県議は大井川広域水道の役割を十分に承知しているだけに・・・川勝知事の「命の水」の嘘を明らかにした上で、桜井県議は「静岡県から県外流出する量は、最大毎秒0・21トンに過ぎない。現在、大井川広域水道事業団の余った水は毎秒0・9トンもあり、川勝知事が言う“命の水”は十分に足りている。農業用水、工業用水にもしわ寄せがいかない。何の影響もないどころか、使われない水はそのまま大井川に流され、海に捨てられてしまう。その量は、年間に直せば、約2838万トンにも上っている」、やれやれ「川勝知事」の言い分はどうも当てにならないようだ。
・『「静岡県がリニア開業を遅らせている」は風評? 「命の水」の嘘について、川勝知事は必死で逃げ回るしかないようだ。だから、国交省、JR東海へ責任転嫁を図るような質問や意見書を送り続けている。 まず、2022年11月25日付で川勝知事は、金子慎JR東海社長宛にリニア工事の関係都県の進捗状況等(用地取得率、工事進捗率など)を出すよう求め、この件でJR東海を指導するよう求める文書を水嶋智・国土交通審議官に送った。 金子社長は、12月11日付で「全線における用地取得、工事の契約及び工事の状況等については当社のホームページで公表している」などという回答とともに、難工事となる南アルプストンネル静岡工区の早期着工に向けて、理解と協力を要請した。金子社長の回答に川勝知事は激怒、12月23日付であらためて「用地取得などの公表についてJR東海を強く指導するよう要請する」という文書を水嶋審議官宛に送りつけた。 この文書の背景には、川勝知事が2022年9月、神奈川県駅などの建設現場を視察した際、関東車両基地の現場を通ったところ、「(整備予定地の)道の両側に数多くの人家があり、地域住民が普通の生活をしていたことから、(関東車両基地)用地取得が滞っている」という“事実”に驚いたことに端を発する。 その後の会見で、川勝知事は「2027年開業が、静岡県の工事拒否によってできないとJR東海が広報しているが、神奈川県の現状を見れば、静岡県がリニア開業を遅らせているというのはJR東海がつくった風評だ」と怒りをぶちまけた。 つまり、神奈川県内の用地取得などが遅れていることをJR東海に公表させて、2027年開業が無理なのは静岡県の責任ではないことを世間に知らしめたいのだ。 ただ、2022年12月に始まった県議会や記者らの厳しい追及で、今後、川勝知事の「嘘」が明白となってしまえば、リニアトンネル静岡工区の着工許可を出さず、リニア開業を遅らせた責任を問われることになる。リニア開業を遅らせた張本人として歴史的な汚名を被ることを川勝知事は恐れているのだろう。 2022年を象徴する1字に、川勝知事は「水」と書いた。「命の水」の嘘を2022年中に水に流してしまいたいから、「水」を選んだのだろうか? お先真っ暗なリニア問題の現状を変えることができるのは、世論の力しかない』、「お先真っ暗なリニア問題の現状を変えることができるのは、世論の力しかない」、どうも「川勝知事」の分は悪そうだ。ただ、「リニア問題」そのものについては、私は現在の新幹線との競合から反対である点は以前から変わらない。
先ずは、本年1月2日付け現代ビジネスが掲載したイトモス研究所所長の小倉 健一氏による「静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104250?imp=0
・『リニア新幹線を巡る「攻防」 リニア新幹線建設を巡り、JR東海と川勝平太静岡県知事の対立が泥試合の様相を呈している。泥試合を仕掛けているのは、川勝知事だ。静岡県内における建設着工を防ぐために、ありとあらゆる難癖をつけて妨害を続けている。 2020年6月10日、JR東海の金子慎社長は(当初計画していた)2027年の開業について「ギリギリで難しい工程」と述べていた。あれから2年と半年が過ぎたが、静岡県との協議は一歩も前へ進んでいない。下手すると、2030年まで開業を後ろ倒ししなくてはいけない可能性がある。 一民間企業であるJR東海の事業を、権力者が徹底的に妨害する様は、徳川家康が豊臣秀頼・淀君にもつけた難癖に近い。もはやイジメだろう。経営体力のあるJR東海だから大人の対応をしているが、これが他のJRだったら万事休すとなっていてもおかしくない。徳川家康には、「自分の目の黒いうちに豊臣家を滅ぼしておく」という目的があったが、川勝知事にある「大義」とはいったいなんなのだろうか。 かつて川勝知事は、「静岡空港直下への東海道新幹線新駅設置構想」なるものを太田昭宏国土交通相(当時)に提案している。「新幹線静岡空港駅」構想だ。この提案に対してJR東海は「明らかに短い区間にたくさん駅を作れば列車本数が入らなくなり、東海道新幹線の輸送力が傷んでしまう」(2013年12月11日・JR東海社長定例会見での発言)として拒否。リニア建設において、JR東海へ嫌がらせをすることで、新幹線静岡空港駅の譲歩を引き出そうとしたのではないかとされている』、「かつて川勝知事は、「静岡空港直下への東海道新幹線新駅設置構想」なるものを太田昭宏国土交通相(当時)に提案」、「JR東海」が「拒否」したことで、「JR東海へ嫌がらせをすることで、新幹線静岡空港駅の譲歩を引き出そうとしたのではないかとされている」、「川勝知事」の「拒否」の背景が初めて理解できた。
・『過剰な数の駅数 川勝知事が主張するように、静岡空港に新幹線の駅をつくることは物理的には可能なのであろうが、静岡県にはすでに熱海駅、三島駅、新富士駅、静岡駅、掛川駅、浜松駅と6つも新幹線の駅(さらに神奈川県との県境には小田原駅、愛知県との県境には豊橋駅という新幹線駅)がある。 1日の平均乗車人員(平成30年度・コロナ前) 東京:104,451人 品川:37,200人 新横浜:34,095人 小田原:11,245人 熱海:4,825人 三島:15,319人 新富士:4,874人 静岡:21,207人 掛川:4,379人 浜松:13,731人 豊橋:8,934人 三河安城:1,865人 名古屋:73,747人 岐阜羽島:2,955人 米原:7,240人 京都:39,229人 新大阪:84,467人 この1日の乗車人員(2倍にすると乗降人員になる)を考えると、三島と静岡以外、JR東海にとって駅を存続させるメリットは薄そうだ。この数字を見る限り、JR東海がやるべきは、静岡空港に駅をつくることではない。静岡県の新幹線駅を減らすことだろう。人口減少社会を迎える公共交通において、経営のお荷物は極力無くしていったほうがよい。 東海道・山陽新幹線において静岡県は最多の駅数で、すでに人口規模(376万人、全国で10番目)から言って過剰な数の駅数である。「のぞみ」が全然止まらないのは、静岡県が栄えていないか、クルマ社会であるということだ。川勝県政下で過去10年、ずっと右肩下がりで人口が減り続けている静岡県に新駅をつくるなど、民間企業としてはデメリットばかりの過剰な投資でありリスクしかない』、「過去10年、ずっと右肩下がりで人口が減り続けている静岡県に新駅をつくるなど、民間企業としてはデメリットばかりの過剰な投資でありリスクしかない」、その通りだ。
・『唐突な論点のすり替え 静岡空港へのアクセスについては、たしかに現状クルマやバスでしかいけないという不便な面はあるものの、工業製品や魚介を海外へ輸出したいのであれば、トラックで運べばいい。観光客やビジネスパーソンが、絶対に鉄道を使ってでしか空港へ行きたくないと言うのであれば、セントレア(中部国際空港)という鉄道が直結する立派な空港が静岡県のすぐ近くにある。 JR東海側の計画によれば、リニア新幹線が開業すると、これまでの東海道新幹線の運転本数のうち、「のぞみ」の割合が減り、「ひかり+こだま」の割合が増えることになる。「のぞみ」は静岡県に止まることはないが、「ひかり+こだま」ならたくさん止まる。静岡県民の利便性は向上することになる。さっさとリニアを通したほうが、静岡県民のためになるのだ。 川勝知事は、これまで「リニアを引き合いに静岡空港新幹線新駅の実現を迫る」(2016年9月の定例会)答弁を強行し、新駅容認派の学者を集めたシンポジウムでは「駅を造らないといけないという保証をいただいた。JR東海には意識改革を求めたい」(2017年2月)と迫り、2019年6月の定例記者会見・トンネル関連工事の視察の際には「地域貢献を金額に直すと(中間駅のある)4県の(駅整備額の)平均がめどになる」などとJR東海に露骨に金銭を要求してきた経緯がある。この下品極まりないやり方には、自民党の族議員も真っ青だろう。 川勝知事がアクロバチックに繰り出した最大の難癖が「命の水を守れ」キャンペーンだ。「大井川流域が水不足に悩んでいる」という「虚偽の前提」から始まった一連のキャンペーンは、川勝知事の再選に大きな役割を果たしたようだ。 川勝知事は、水不足になっていない現実が知られてくると、今度は「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」「リニアという国策のために自然を破壊しかねない」(2021年6月3日)と、「水質保全・自然破壊防止」という論点にすり替えを行った。自然破壊をせずに済むトンネル工事などほぼないだろう。川勝知事の言った通りにすると、絶対にリニア建設などムリなことは明白だ』、「「大井川流域が水不足に悩んでいる」という「虚偽の前提」から始まった一連のキャンペーンは、川勝知事の再選に大きな役割を果たしたようだ。 川勝知事は、水不足になっていない現実が知られてくると、今度は「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」「リニアという国策のために自然を破壊しかねない」・・・と、「水質保全・自然破壊防止」という論点にすり替えを行った」、「論点」の「すり替え」は巧みだ。
・『「堪忍袋の尾が切れました」 先述の新幹線駅と静岡空港の話に戻るが、遠くない距離にセントレア(もしくは羽田空港)がある現状を考えれば、赤字(県と空港会社の収支合算)を垂れ流し続ける静岡空港は、新幹線駅をつくるどころか、廃止するという考えに立ってもおかしくない。 静岡空港は、川勝知事が大事にしていると主張する自然を破壊した上で建設されたものだ。日本有数のお茶の産地を総事業費約1900億円かけてぶっ潰したわけである。そんなに自然が大事なら空港は更地にして、茶畑に戻すべきだろう。 丁寧に論点を整理し、できることから着々と進めるJR東海に対し、川勝知事は「そもそも極めて傲慢な態度で臨まれているという認識を持っております。あたかも水は一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという、そもそも極めて傲慢な態度で臨まれている。そういった態度であり、私の堪忍袋の緒が切れました」と述べている。 水の質が問題だと難癖をつけられたから、「水をそのまま戻します」と妥協案を示したJR東海が、「極めて傲慢な態度」だというのだから、子どもの頃に歌った童謡ではないが「川勝さん家の平太くん、このごろ少し変よ。どうしたのかな」と呆れるほかない』、「川勝知事」の「抵抗」は確かに整合性が取れていない。「川勝知事」に名誉ある撤退っせる妙案はないのだろうか。
次に、1月3日付け日経ビジネスが掲載した「リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00148/111700088/
・『鉄道ビジネスの停滞感が顕著になるなか、次代を担うブレイクスルーは何なのか。そう考えたとき、やはり筆頭に上がるのは「超電導リニア」だろう。技術は確立済みで、リニア中央新幹線の建設も各地で進むが、静岡県の反対が2027年を目指していた開業を阻んでいる。いくら「国家プロジェクト」だと訴えても、結局のところ、地域と真剣に向き合うことを宿命づけられているのが鉄道というビジネスだ。 22年10月にJR東海の山梨リニア実験線に試乗する機会を得た。実は超電導リニアに乗るのは5年ぶり2度目。鉄道を取材している記者としての完全な役得である。 とはいえ、正直に言って、2度目の試乗に心ときめいていたわけではない。5年前に乗ったときの印象がそれほど良くなかったからだ。 超電導リニアは鉄道のような車輪ではなく、浮上して走行することはよく知られている。レールのつなぎ目はないし、地面に接していないのならさぞ滑らかに走るのだろう……。そう期待して乗ったら、見事に裏切られた。発車時の急加速はまるで飛行機のように荒々しく、浮上走行時も小刻みな揺れがあって、コップの水がこぼれないことを売りにしている新幹線の滑らかな乗り心地とはほど遠い。そして時速150キロメートル程度まで減速するとタイヤ走行に切り替わるのだが、その際もガタンという衝撃があり、飛行機が着陸するような感覚だった。総じて鉄道というよりは飛行機に近く、快適性では鉄道に一日の長があると感じた。 さて、今回はどうだろうか。 現地で超電導リニアと対面して気づいたのだが、5年前とは車両の一部が変わっていた。20年春に7両編成のうち先頭車両とその隣の中間車両の2両が「L0系改良型試験車」に置き換えられたという。今回はその改良型に乗り込むことになった。 5年前に乗った超電導リニアの車内は、JR東海の東海道新幹線N700系と似た印象だった。しかし改良型は、だいぶ雰囲気が変わっていた。椅子の軽量化に腐心したのだろうか。細いパイプで支えられていて、足元に荷物を入れるスペースがあるなど、飛行機の椅子に近い。前席背面の大型テーブルがなくなり、肘掛けに収納された小さなテーブルだけになったのは、東京-名古屋間で最速40分、東京-大阪間で同67分という所要時間を考慮したのだろう。確かにその程度の所要時間なら、弁当を食べたり、パソコンを開いて仕事をしたりするほどのこともない。 天井は編み込まれた繊維のようなもので覆われていて、聞けば吸音効果があるという。 さて、いよいよ出発だ。山梨リニア実験線は全長42.8キロメートル。将来はリニア中央新幹線の一部となる。出発地点からはまず実験線の東端に向かい、そこから折り返して最高時速500キロメートルで全線を走行。西端で折り返して出発地点へと戻る。都合3回ずつ、加速と減速を体験した。 変わっていなかったのは、急加速と、停車前に浮上走行からタイヤ走行に切り替わるときの衝撃。これはやはり飛行機に近く、鉄道と超電導リニアは違う乗り物だと再認識した。 一方、浮上走行中の揺れについては、前回の試乗時ほど強い印象は受けなかった。 もしかしたら個人的な「慣れ」によるものかもしれないと思ってJR東海に確認してみたところ、改良型では先頭形状を変更して空気抵抗を約13%低下させたことや、車内の騒音を低減したことが影響しているかもしれないとのことだった』、「山梨リニア実験線」での「実験」では、「前回の「実験」と、「変わっていなかったのは、急加速と、停車前に浮上走行からタイヤ走行に切り替わるときの衝撃。これはやはり飛行機に近く、鉄道と超電導リニアは違う乗り物だと再認識した」、なるほど。
・『天井は吸音効果がある素材に覆われている 乗り心地の滑らかさでは、まだ新幹線のレベルには到達していない。しかし飛行機ほどの揺れはなく、1時間程度の乗車であれば、さほど気にならないと感じた。国土交通省が技術開発は完了したとお墨付きを与えているのもうなずける。 長年「夢の乗り物」の域を脱せなかった超電導リニアだが、1962年の研究開発から60年の時を経て、ようやく現実のものになろうとしている。 その姿を一番実感できるのは、名古屋駅周辺だろう。リニア中央新幹線の名古屋駅は、南北方向に走る東海道新幹線・東海道線などと交差、すなわち東西方向に延びる形で設置される。地下駅となるが、地表から掘り進む開削工法で建設されるため、駅周辺ではビルの立ち退き・解体が進んでいる。 現在は解体した建物の地下部分など支障物を撤去する準備工事段階だが、更地になった部分から、将来の駅のスペースが手に取るように分かる。 リニアの名古屋駅建設現場。手前から奥へと細長く用地が延びていることが分かる 首都圏側ではJRと京王電鉄が乗り入れる橋本駅(相模原市)の駅前で、神奈川県駅(仮称)の掘削工事が進む。移転した神奈川県立相原高校の広大な跡地を工事ヤードとして活用し、国内では珍しい露天掘りが行われている。この迫力ある工事現場が、10月1~4日の4日間、周辺住民をはじめとする一般客に公開された。掘削現場ののり面にプロジェクションマッピングを投映する「さがみはらリニアビジョン」というイベントで、事前申し込みした約2000人が参加した。 イベントでは工事現場でプロジェクションマッピングが投映された(点灯セレモニーには、JR東海の金子慎社長や神奈川県の黒岩祐治知事が登壇。黒岩知事は「2027年の開業に向け、国家プロジェクトとして進めていく」「国家プロジェクトを盛り上げていく機運が高まってきた」「住民の皆さんが国家プロジェクトに協力してくれている」などと、何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した』、「黒岩知事」が「何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した」、JR東海のプロジェクトに過ぎないのを、「国家プロジェクト」と強弁するのには違和感がある。
・『着工のめどが立たない約10キロメートル 実はその1週間ほど前、静岡県の川勝平太知事が「神奈川県が完全に27年の開業を不可能にしたと思う」と発言し、物議を醸していた。 東京から名古屋の間で工事が着々と進むなか、静岡県の大井川上流部をかすめるようにトンネルで通過する、わずか約10キロメートルの着工のめどが立っていない。建設残土の処理や大井川の水資源の保全を巡り、静岡県の理解を得られていないためだ。国交省を交えて協議を行っているが、膠着状態は3年以上続いている。JR東海は静岡工区に着手できないことを理由に「27年の開業は困難」としている。 川勝知事の発言は、静岡工区以外にも開業遅れの理由はあるという主張だった。具体的には、相模原市に設けられる車両基地の用地取得が遅れていることに触れ、取得交渉の実務を担当している神奈川県をやり玉に挙げたのだ。これに対して神奈川県の黒岩知事は「セレモニーの前に現地をきちんと見てきた。外から見ただけでは分からないが、住宅が建っているところでは8割が(用地売却を)了承されている。27年の開業に向けて進んでいけると実感した」と反論した。) 黒岩知事が執拗に「国家プロジェクト」と強調したのは、静岡県だけがリニアの着工を認めないことへのけん制のようにも取れる。西九州新幹線の未整備区間を巡り、佐賀県がフル規格新幹線での整備に慎重な姿勢を示しているのと同様、国全体の便益と地域の利益のどちらを優先すべきなのか、対立が生じている。 リニア中央新幹線は西九州新幹線と同じく「全国新幹線鉄道整備法」に基づく路線だが、JR東海が建設費の全額を負担するため、国や沿線自治体の費用負担は発生しない。沿線自治体との交渉の矢面に立つのも国交省ではなく、JR東海自身だ。 JR東海の関係者からは「静岡県が懸念する水資源問題の解決策を提示しても、新たな問題が提示される。ゴールポストを変えられるようなもので、終わりが見えない」とため息交じりの声が聞かれる。 リニアのトンネル内に湧き出る水は導水路トンネルを建設して大井川に戻すことで、中下流域の水量は変わらないと国交省の有識者会議も評価している。新たに焦点となっているのは、トンネル掘削時の約10カ月間、一時的に山梨県側に湧水が流出するという問題。突発湧水の危険性があり、安全確保のためには山梨県側から上向きに掘削せざるを得ないためだ。 この問題に対してJR東海は、ウルトラCとも言える方策をひねり出した。大井川上流にある田代ダムでは、東京電力リニューアブルパワーが水力発電用に取水。山梨県側に送っている。そこで同社に協力を仰ぎ、工事期間だけ取水を制限するという案だ。こうすれば中下流域の水量は実質的に変わらない計算になる。 JR東海の宇野護副社長は「大井川流域の市町からは分かりやすい対策という声をいただいている」と話す。しかし静岡県の川勝知事は「広い意味での地域貢献になる」と歓迎しつつも「(静岡県が求めている、県外に流出する水の)全量戻しには当たらない」との立場。解決の糸口が見いだせない状況だ。 はたから見れば、無理難題を押しつけているようにも見える。その背景について、静岡県の幹部は「静岡県や沿線自治体には、JR東海の営業エリアでありながら、長年軽視されてきたという思いがある。JR東海に対する不信感が根本にある」と解説する』、「静岡県の幹部は「静岡県や沿線自治体には、JR東海の営業エリアでありながら、長年軽視されてきたという思いがある。JR東海に対する不信感が根本にある」と解説」、こうした歴史的経緯があると、ややこしい。
・『「のぞみ通行税」に込めた不満 古くは02年、石川嘉延前知事が「のぞみ通行税」を持ち出したことがある。東海道新幹線の主力であるのぞみは、東名阪をいかに速く移動できるかを重視しているため、静岡県は素通り。静岡駅や浜松駅に停車する「ひかり」「こだま」の本数が限られていることに不満を示した。 また、前出の県幹部は「東海道線の沿線自治体が柔軟な運行ダイヤ変更などを要望しても、東海道新幹線との接続を優先しなければいけないといった理由でなかなか認められない」とも話す。 目下の懸案は、東海道新幹線の「静岡空港駅」新設問題だ。石川前知事時代から静岡~掛川間の富士山静岡空港近くに新駅を建設し、空港アクセスの利便性を向上させたいとしている。しかし、JR東海は一貫して難色を示している。隣の掛川駅との駅間距離が短く、高速鉄道としての特性を損なうという理由からだ。 静岡県は22年7月、リニア中央新幹線沿線の都道府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に加盟した。 建設促進期成同盟会はその名の通り、リニア中央新幹線の建設促進を目的としている。川勝知事は一時期、リニアそのものへの懐疑的な発言が目立っていたが、これで建設自体は否定しない立場が明確になった。 そしてこの組織にはもう1つの顔がある。各県内に停車駅の設置を実現させるというものだ。JR東海がリニア中央新幹線を建設する主眼は東名阪の所要時間短縮と東海道新幹線の老朽化や地震災害に備えた輸送の二重系化だ。しかし山梨県、長野県、岐阜県といった沿線自治体は、建設に協力することで中間駅の設置を勝ち取り、地域振興の起爆剤として期待する。 ただ、リニア中央新幹線は静岡県内は南アルプスの山奥を通過するだけなので、静岡県にとって駅を設置するメリットは皆無。仮に新駅を求めるとすれば、静岡空港駅になるのではないか』、「静岡県は22年7月、リニア中央新幹線沿線の都道府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に加盟した。・・・川勝知事は一時期、リニアそのものへの懐疑的な発言が目立っていたが、これで建設自体は否定しない立場が明確になった」、「リニア中央新幹線は静岡県内は南アルプスの山奥を通過するだけなので、静岡県にとって駅を設置するメリットは皆無。仮に新駅を求めるとすれば、静岡空港駅になるのではないか」、なるほど。
・『JR東海も地元との対話を強化 実際、静岡県が建設期成同盟会に加盟した後、山梨県の長崎幸太郎知事などが静岡空港駅の建設要望について議題に取り上げたい考えを示している。 静岡県の川勝知事は大井川の水資源問題解決を公約に掲げて県知事選を制した手前、自ら静岡空港駅の設置を持ち出して、振り上げた拳を簡単に下ろすのは難しいだろう。周辺から議論の機運を醸成していくしかない。 JR東海も遅ればせながら、地元との対話を強化しようとしている。22年3月に、静岡支社に新たに副支社長ポストを設置した。7月からは県内の駅に大井川の水資源に関する取り組みを紹介するパンフレットを置き、利用客へアピールするとともに、意見や質問などを受け付けている。3カ月間で200件近い意見や質問が集まり、これに対する回答を公開したところだ。 旅客収入の9割近くを東海道新幹線で稼ぐJR東海は、経済合理性だけを考えれば東名阪の移動需要を重視すればいい。日本を支える大動脈を運営し、国家プロジェクトの一翼を担う自負もあるだろう。しかし実際には他のJR各社と同様、営業エリアである中部地方から逃れられない宿命を帯びている。地域の課題と向き合っていくことが、結果的にリニアの早期開業につながるのではないだろうか』、「旅客収入の9割近くを東海道新幹線で稼ぐJR東海は、経済合理性だけを考えれば東名阪の移動需要を重視すればいい」、「しかし実際には他のJR各社と同様、営業エリアである中部地方から逃れられない宿命を帯びている。地域の課題と向き合っていくことが、結果的にリニアの早期開業につながるのではないだろうか」、その通りだ。
第三に、 1月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの小林 一哉氏による「リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/104421?imp=0
・『知事と副知事の「食い違い」 2023年を迎えたが、2022年に引き続き、「リニア静岡問題」解決はお先真っ暗の状態である。2018年夏から、静岡県とJR東海はリニア問題を解決するための議論を続けているが、何ら進展は見られない。 河川法の許可権限を盾に、川勝知事がさまざまな言い掛かりをつけ、リニア議論を妨害するからである。このままではリニア開業を大幅に遅らせた最大の責任者として、川勝知事の“悪名”が歴史にしっかりと刻まれることになるだろう。 2022年の最後となる12月27日の定例会見で、川勝知事は「『リニアは存亡の危機にある』という認識を持っている」などと報道各社に向かって、従来通りの挑発的な発言を行った。いくつかの地元テレビ局は川勝知事の挑発発言を鵜呑みにして、そのまま報道していた。 ところが、実際の会見では、川勝知事と森貴志副知事の主張の食い違いが問題となり、緊迫したやり取りが続いていたのである。 12月4日に開かれた県地質構造・水資源専門部会終了後の囲み取材で、筆者は以下のような質問をした。 「今回の会議で、田代ダム取水抑制案が全量戻しに有効であることが確認された。ところが、知事は何度も『田代ダム取水抑制案は全量戻し策にならない』と発言してきた。知事が田代ダム取水抑制案を認めないならば、県専門部会の議論そのものがムダになる。リニア問題を議論する県の責任者として見解を示してほしい」 すると森副知事は「田代ダム取水抑制案がJR東海の工事中の全量戻しに有効であると川勝知事も認識している」と発言した。 それにも関わらず、川勝知事は12月16日の会見で「田代ダム取水抑制案は別の事柄。(JR東海の)南アルプス工事と結びつくものではない」などと繰り返し否定してしまい、静岡県庁の「機能不全」が深刻化していることを明らかにしてしまった』、「森副知事は「田代ダム取水抑制案がJR東海の工事中の全量戻しに有効であると川勝知事も認識している」と発言した。 それにも関わらず、川勝知事は12月16日の会見で「田代ダム取水抑制案は別の事柄。(JR東海の)南アルプス工事と結びつくものではない」などと繰り返し否定してしまい、静岡県庁の「機能不全」が深刻化していることを明らかに」、お粗末だ。
・『副知事の発言を「ちゃぶ台返し」 県政記者らは16日の知事会見後に、あらためて森副知事に確認した。その後、川勝知事と協議をしたとする森副知事は、「知事も検討の余地があると認識している。誤解を生じさせた」などと、知事発言の訂正を行った。 このため、27日の会見で読売新聞の記者が「田代ダム取水抑制案は静岡県が求める全量戻しに相当する案として認められるのか、それとも全く認められないのか」と知事の姿勢をただした。 この質問に、川勝知事が「JR東海は県専門部会で説明責任を果たさなければならない」など脈絡のない回答に終始したため、読売記者は「事務方はリニアと田代ダム取水抑制案は関係があると明言している。知事はそれと同じことを言えないのか」と厳しく追及した。 この追及に対して、川勝知事は「全量戻しとは掘削中に出る水をすべて戻すことであり、田代ダム取水抑制案は全量戻しとは違うという認識を持っている」などと12月16日と全く同じ回答をして、再び森副知事の発言を“ちゃぶ台返し”してしまった。 森副知事と食い違う川勝知事の回答に、業を煮やしたテレビ静岡の記者が、事務方のリニア担当部局へ説明を求めた。責任者の渡邉光喜参事は隣にいる知事の顔色をうかがって、全く見当外れの説明に終始した』、お粗末極まる。
・『静岡県庁の「機能不全」 さらに、渡邉氏がJR東海への責任転嫁を始めたことに、テレビ静岡の記者は「それでは森副知事が嘘をついているんですね。我々の前ではそうは言っていない。はっきりと録画も録音も残っている。そういう不誠実なことはやめたほうがいい」などと県のごまかしを許さない毅然とした対応をした。 再び渡邉参事から代わった川勝知事は「私は(森副知事と)見解がずれているとは思わない。残念ながら森副知事は東京に出張しており、見解への説明は今できない」などと言い繕い、ごまかそうともしている。 これに対して、中日新聞の記者は「田代ダム取水抑制案は県専門部会の森下(祐一)部会長も『有力な案』と見ている。森副知事は『田代ダム取水抑制案として検討するに値する』と発言した。知事と事務方と同じ見方なのかどうかと質問している」と知事のごまかしを許さなかった。 さまざまな前置きをした上で、最後に川勝知事は「検討の余地がある」と述べて折れた形となり、今回の知事会見は時間切れとなった。 川勝知事の嘘やごまかしに、記者たちは我慢できないようになっている。一触即発の剣呑な雰囲気となったが、記者たちは追及の手を緩めなかった。“裸の王様”川勝知事によって、静岡県庁の「機能不全」が最悪の状態に向かいつつあることを明らかにしたのだ。 後編「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」では、これまで何度も川勝知事が唱えてきた「大井川流域62万人の『命の水』を守る」発言の嘘をただした桜井勝郎県議(無所属、島田市・大井川町選出)、野崎正蔵県議(自民党、磐田市選出)らの追及の詳細と、川勝知事の苦しい対応について報じる』、「“裸の王様”川勝知事によって、静岡県庁の「機能不全」が最悪の状態に向かいつつあることを明らかにした」、大混乱のようだ。
第四に、1月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの小林 一哉氏による「「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」」を紹介しよう。
・『2023年を迎えたが、2022年に引き続き、「リニア静岡問題」解決はお先真っ暗の状態である。2018年夏から、静岡県とJR東海はリニア問題を解決するための議論を続けているが、何ら進展は見られない。 河川法の許可権限を盾に、川勝知事がさまざまな言い掛かりをつけ、リニア議論を妨害するからである。このままではリニア開業を大幅に遅らせた最大の責任者として、川勝知事の“悪名”が歴史にしっかりと刻まれることになるだろう。 前編記事『リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず』で、2022年12月の記者会見で川勝知事が記者たちに厳しい追及をされた経緯について詳報した。後編では知事の嘘を追求する県議たちと知事のやりとりについて報じる』、興味深そうだ。
・『JR東海に「責任転嫁」 2022年12月県議会で、桜井勝郎県議(無所属、島田市・大井川町選出)、野崎正蔵県議(自民党、磐田市選出)が、これまで何度も川勝知事が唱えてきた「大井川流域62万人の『命の水』を守る」発言の嘘をただした(筆者の近著『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』飛鳥新社でその内容を詳しく紹介した)。 特に、元島田市長の桜井県議は大井川広域水道の役割を十分に承知しているだけに、現在、県地質構造・水資源専門部会で議論になっているリニアトンネル工事中(約10カ月間)に山梨県へ流出する最大約500万トンの湧水問題について厳しく追及した。 川勝知事の「命の水」の嘘を明らかにした上で、桜井県議は「静岡県から県外流出する量は、最大毎秒0・21トンに過ぎない。現在、大井川広域水道事業団の余った水は毎秒0・9トンもあり、川勝知事が言う“命の水”は十分に足りている。農業用水、工業用水にもしわ寄せがいかない。何の影響もないどころか、使われない水はそのまま大井川に流され、海に捨てられてしまう。その量は、年間に直せば、約2838万トンにも上っている。一滴たりとも県外に渡さないという“命の水”が実際は捨てられている。これについて知事はどのような所見を持つのか」などと述べて、現在、行われている県専門部会の議論そのものが不毛であることまで明らかにした。 川勝知事は「JR東海が県外流出量を算出した係数の値がひとけた違えば、流出する量は大幅に増える」などと国の有識者会議の結論などを無視して、無責任な回答でごまかした。さらに、森副知事は「62万人の『命の水』とは、大井川広域水道だけでなく、各市町で使う自前の水も合わせた量だ」などと頓珍漢な回答でお茶を濁した』、「元島田市長の桜井県議は大井川広域水道の役割を十分に承知しているだけに・・・川勝知事の「命の水」の嘘を明らかにした上で、桜井県議は「静岡県から県外流出する量は、最大毎秒0・21トンに過ぎない。現在、大井川広域水道事業団の余った水は毎秒0・9トンもあり、川勝知事が言う“命の水”は十分に足りている。農業用水、工業用水にもしわ寄せがいかない。何の影響もないどころか、使われない水はそのまま大井川に流され、海に捨てられてしまう。その量は、年間に直せば、約2838万トンにも上っている」、やれやれ「川勝知事」の言い分はどうも当てにならないようだ。
・『「静岡県がリニア開業を遅らせている」は風評? 「命の水」の嘘について、川勝知事は必死で逃げ回るしかないようだ。だから、国交省、JR東海へ責任転嫁を図るような質問や意見書を送り続けている。 まず、2022年11月25日付で川勝知事は、金子慎JR東海社長宛にリニア工事の関係都県の進捗状況等(用地取得率、工事進捗率など)を出すよう求め、この件でJR東海を指導するよう求める文書を水嶋智・国土交通審議官に送った。 金子社長は、12月11日付で「全線における用地取得、工事の契約及び工事の状況等については当社のホームページで公表している」などという回答とともに、難工事となる南アルプストンネル静岡工区の早期着工に向けて、理解と協力を要請した。金子社長の回答に川勝知事は激怒、12月23日付であらためて「用地取得などの公表についてJR東海を強く指導するよう要請する」という文書を水嶋審議官宛に送りつけた。 この文書の背景には、川勝知事が2022年9月、神奈川県駅などの建設現場を視察した際、関東車両基地の現場を通ったところ、「(整備予定地の)道の両側に数多くの人家があり、地域住民が普通の生活をしていたことから、(関東車両基地)用地取得が滞っている」という“事実”に驚いたことに端を発する。 その後の会見で、川勝知事は「2027年開業が、静岡県の工事拒否によってできないとJR東海が広報しているが、神奈川県の現状を見れば、静岡県がリニア開業を遅らせているというのはJR東海がつくった風評だ」と怒りをぶちまけた。 つまり、神奈川県内の用地取得などが遅れていることをJR東海に公表させて、2027年開業が無理なのは静岡県の責任ではないことを世間に知らしめたいのだ。 ただ、2022年12月に始まった県議会や記者らの厳しい追及で、今後、川勝知事の「嘘」が明白となってしまえば、リニアトンネル静岡工区の着工許可を出さず、リニア開業を遅らせた責任を問われることになる。リニア開業を遅らせた張本人として歴史的な汚名を被ることを川勝知事は恐れているのだろう。 2022年を象徴する1字に、川勝知事は「水」と書いた。「命の水」の嘘を2022年中に水に流してしまいたいから、「水」を選んだのだろうか? お先真っ暗なリニア問題の現状を変えることができるのは、世論の力しかない』、「お先真っ暗なリニア問題の現状を変えることができるのは、世論の力しかない」、どうも「川勝知事」の分は悪そうだ。ただ、「リニア問題」そのものについては、私は現在の新幹線との競合から反対である点は以前から変わらない。
タグ:「黒岩知事」が「何度も「国家プロジェクト」という言葉を持ち出した」、JR東海のプロジェクトに過ぎないのを、「国家プロジェクト」と強弁するのには違和感がある。 「お先真っ暗なリニア問題の現状を変えることができるのは、世論の力しかない」、どうも「川勝知事」の分は悪そうだ。ただ、「リニア問題」そのものについては、私は現在の新幹線との競合から反対である点は以前から変わらない。 何の影響もないどころか、使われない水はそのまま大井川に流され、海に捨てられてしまう。その量は、年間に直せば、約2838万トンにも上っている」、やれやれ「川勝知事」の言い分はどうも当てにならないようだ。 「元島田市長の桜井県議は大井川広域水道の役割を十分に承知しているだけに・・・川勝知事の「命の水」の嘘を明らかにした上で、桜井県議は「静岡県から県外流出する量は、最大毎秒0・21トンに過ぎない。現在、大井川広域水道事業団の余った水は毎秒0・9トンもあり、川勝知事が言う“命の水”は十分に足りている。農業用水、工業用水にもしわ寄せがいかない。 小林 一哉氏による「「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」」 「“裸の王様”川勝知事によって、静岡県庁の「機能不全」が最悪の状態に向かいつつあることを明らかにした」、大混乱のようだ。 お粗末極まる。 「森副知事は「田代ダム取水抑制案がJR東海の工事中の全量戻しに有効であると川勝知事も認識している」と発言した。 それにも関わらず、川勝知事は12月16日の会見で「田代ダム取水抑制案は別の事柄。(JR東海の)南アルプス工事と結びつくものではない」などと繰り返し否定してしまい、静岡県庁の「機能不全」が深刻化していることを明らかに」、お粗末だ。 小林 一哉氏による「リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず」 「旅客収入の9割近くを東海道新幹線で稼ぐJR東海は、経済合理性だけを考えれば東名阪の移動需要を重視すればいい」、「しかし実際には他のJR各社と同様、営業エリアである中部地方から逃れられない宿命を帯びている。地域の課題と向き合っていくことが、結果的にリニアの早期開業につながるのではないだろうか」、その通りだ。 「静岡県は22年7月、リニア中央新幹線沿線の都道府県で構成する「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」に加盟した。・・・川勝知事は一時期、リニアそのものへの懐疑的な発言が目立っていたが、これで建設自体は否定しない立場が明確になった」、「リニア中央新幹線は静岡県内は南アルプスの山奥を通過するだけなので、静岡県にとって駅を設置するメリットは皆無。仮に新駅を求めるとすれば、静岡空港駅になるのではないか」、なるほど。 「静岡県の幹部は「静岡県や沿線自治体には、JR東海の営業エリアでありながら、長年軽視されてきたという思いがある。JR東海に対する不信感が根本にある」と解説」、こうした歴史的経緯があると、ややこしい。 「山梨リニア実験線」での「実験」では、「前回の「実験」と、「変わっていなかったのは、急加速と、停車前に浮上走行からタイヤ走行に切り替わるときの衝撃。これはやはり飛行機に近く、鉄道と超電導リニアは違う乗り物だと再認識した」、なるほど。 日経ビジネスが掲載した「リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)」 「川勝知事」の「抵抗」は確かに整合性が取れていない。「川勝知事」に名誉ある撤退っせる妙案はないのだろうか。 「「大井川流域が水不足に悩んでいる」という「虚偽の前提」から始まった一連のキャンペーンは、川勝知事の再選に大きな役割を果たしたようだ。 川勝知事は、水不足になっていない現実が知られてくると、今度は「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」「リニアという国策のために自然を破壊しかねない」・・・と、「水質保全・自然破壊防止」という論点にすり替えを行った」、「論点」の「すり替え」は巧みだ。 「過去10年、ずっと右肩下がりで人口が減り続けている静岡県に新駅をつくるなど、民間企業としてはデメリットばかりの過剰な投資でありリスクしかない」、その通りだ。 「かつて川勝知事は、「静岡空港直下への東海道新幹線新駅設置構想」なるものを太田昭宏国土交通相(当時)に提案」、「JR東海」が「拒否」したことで、「JR東海へ嫌がらせをすることで、新幹線静岡空港駅の譲歩を引き出そうとしたのではないかとされている」、「川勝知事」の「拒否」の背景が初めて理解できた。 小倉 健一氏による「静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている」 現代ビジネス (その9)(静岡県知事・川勝平太氏の「下品極まりない手口」…JR東海が「リニア問題」で困り果てている、リニアを阻む「静岡問題」の解決で欠かせない地元目線 鉄道の岐路(12)、リニア工事延期を通して露呈した川勝知事と静岡県庁の「機能不全」…記者たちの追及やまず、「大井川『命の水』を守る」発言の嘘を見破った2人の静岡県議と「川勝知事が嘘を決して認められないワケ」) リニア新幹線