少子化(その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由) [社会]
少子化については、2020年11月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由)である。
先ずは、昨年10月25日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/102400055/
・『「日本はいずれ存在しなくなる」──。少子化が深刻化するこの国への悲観と失望が広がる。仕事との両立に悩み、産むことをためらう人はなお少なくない。新型コロナウイルス禍でこうした傾向に一段と拍車がかかった。このまま国が縮めば、経済活動の足場は根底から揺らぐ。いかに若い世代の不安に応え、子育てへの希望を取り戻すか。国任せではいられない。人口減少の阻止へ企業が動く』、確かに企業にとっては存続がかかる問題なので、「国任せではいられない」、自ら取り組むべき課題だ。
・『連載ラインアップ ・少子化は企業が止める 出生数が激減、国任せではいられない(今回) ・伊藤忠、働き方改革で出生率2倍 生産性向上と子育ての意外な関係 ・「伊藤忠ショック」に意義 少子化を止めるカギは企業にある ・キリンは模擬体験、大成建設は夫にも研修… 育児支援に当事者目線 ・第5子出産に祝い金500万円 産み育てやすい職場が人材呼び込む ・出生率上げたフランス、スウェーデンに学ぶ 日本はまだやれる ・パパ育休は男女役割意識を破るか 「日本は子育てしやすい」4割のみ ・出生率2.95が示す「奇跡の町」の教え 「社会の宝」はこう増やす 5年に1度、日本で暮らす全員に実施される国勢調査。その始まりは大正時代の1920年まで遡る。当時の政府は人口という言葉を「国勢」と記した。人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた。 それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ。「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなる」。5月、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)がツイッターでこうつぶやくなど、日本の人口減少は海外から見ても深刻な事態となっている』、「国勢調査」は「人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた」、「それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ」、「日本はいずれ存在しなくなる」。「イーロン・マスク」に茶化されるようでは、落ちぶれたものだ。
・『コロナで少子化に拍車、悲観シナリオに迫る 政府は9月、2021年の出生数が81万1622人だったと発表した。前年から3万人近く減り、過去最少となった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も1.30と前年から0.03ポイント下がり、過去4番目の低さとなった。 この出生数を、国立社会保障・人口問題研究所がまとめた日本人の人口推計(最新は17年版)と照らし合わせると、少子化のスピードが想定以上だと分かる。人口推計の標準シナリオとされる中位推計では、21年の出生率は1.42で出生数は86万9000人とされていた。出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ。 出産可能な15~49歳の女性の数は1990年以降減少しており、現在約2400万人。減少傾向である上に晩産化も進んでいる。そんな彼女らが妊娠を延期すれば「加齢に伴う妊娠確率の低下や、年齢を理由に第2子の出産を諦める動きが起こりやすくなる」と、歴史人口学が専門の鬼頭宏・上智大学名誉教授は懸念する』、「出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ」、なるほど。
・『結婚離れも加速 「結婚離れ」も加速。かねて価値観の多様化や上がらない給料を背景に結婚しない人は増えていたが、コロナ禍で拍車がかかった。50歳時点で結婚していない人の割合は男性で28.25%、女性で17.81%に達する。 海外でもコロナで一時産み控えが起きた。だが北欧諸国や英国、フランスでは、21年には出生率が回復に転じた。こうした国々では、ロックダウン(都市封鎖)で家事・育児をしながら在宅勤務をしなければならない状況でも、男女が共に働き、一定の世帯収入が得られていた。 日本はどうか。東京都に住む派遣社員、村上明子さん(仮名、41)は、35歳で第1子を出産。もう1人産みたかったが、断念した。) IT(情報技術)企業のシステムエンジニアとして働く夫は仕事時間が不規則で、家事・育児への協力は得られない。明子さんは1人で保育園送迎や食事の用意といった「ワンオペ育児」に追われる毎日だった。 コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した。「子育てがこんなにつらいとは」』、「コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した」、同情を禁じ得ない。
・『「ワンオペ育児」「子育て罰」が不安を増幅 政府は15年、若い世代の結婚や出産の希望がかなった場合の出生率を「希望出生率」と定義し、1.8と想定した。1990年代以降、1.5を下回り続ける出生率を、まずは「産みたくても産めない人」が抱える課題を解消して、1.8まで高めようとしたのだ。 子どもを産んでも仕事を続けられるよう、育児休業の拡充や保育施設の整備、経済不安の解消につながる幼児教育の無償化、不妊治療費用の助成と、さまざまな政策が打ち出されたのは記憶に新しい。 しかし、出生率は1.8に近づくどころか低下する一方だ。村上さんのような仕事と出産・育児を一手に抱え込む女性が増え、「ワンオペ育児」「子育て罰」など、出産・育児にマイナスの印象を与える言葉が世の中にはあふれる。 何を変えなければならないのか。無論、子どもを産むか産まないかは、個々人の選択に委ねられるべきだ。だがこの国の屋台骨を揺るがす少子化への危機感は「自分ごと」として社会全体で共有しなければならない。そのためには国や自治体だけでなく、企業が率先して動く必要がある。 岸田文雄政権が設けた社会保障のあり方を見直す有識者会議「全世代型社会保障構築会議」が5月にまとめた中間整理では「男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援」こそが、少子化問題を考える上で重要な論点の1つと位置付けている。「『仕事か子育てか』の二者択一を迫られる状況が多く、早急に是正されるべきだ」とも指摘している。 この指摘は意外に思うかもしれない。なぜならこの10年、多くの企業では「働き方改革」を通じて、長時間労働の是正や、育児や介護中の社員でも無理なく働ける制度を導入してきたからだ。それでも「二者択一」にならざるを得ないのはなぜか。1日の多くを過ごす職場の中に、子育てを負担・不安に感じる要因が今なお存在するということである。 日本企業はいい意味でも悪い意味でも、働き手の価値観やライフスタイルに強い影響を与えてきた。ここで改めて子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない。 連載の2回目では、働き方改革が結果的に社内出生率の急上昇につながった伊藤忠商事の取り組みを紹介する』、「子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない」、同感である。
次に、本年1月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」、子育て世代に責任転嫁の絶望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316346
・『また自民党議員が少子化について、失言した。1月15日に少子化の最大の要因を「女性の年齢が高齢化しているから」と説明して「体力的な問題があるのかもしれない」と分析して見せたのは82歳の麻生太郎氏。彼らはなぜ、子育て世代の経済的不安から目をそらし続けるのだろうか』、興味深そうだ。
・『全て女性のせい? 何度たたかれてもやめない失言 「(少子化の)一番大きな理由は出産するときの女性の年齢が高齢化しているからです」 「(複数の子どもを出産するには)体力的な問題があるかもしれない」 1月15日に報道されたのはこんな発言。 自民党の麻生太郎副総裁が、福岡県で講演した際に出た発言だという。これが報道されると、たちまちSNS上では批判の声が相次いだ。 麻生氏の発言は、政治家の責任を国民に押し付けているかのように聞こえるだけではなく、停滞する日本経済の中で明るい展望を描きづらい若者や子育て世代の不安をまったく斟酌(しんしゃく)していないように見える。 女性自身の記事「麻生副総裁『少子化最大の要因は女性の晩婚化』発言に女性からブーイングの嵐」では、内閣府の令和4年版「少子化社会対策白書」が引かれ、「夫婦が理想の子供の数を持てない理由として『子育てや教育にお金がかかりすぎるから』が56.3%で最多となっている」ことを指摘。さらに2020年「少子化関連指標の国際比較」で、日本人の平均初婚年齢(29.4歳)は、OECD加盟国の中でも出生率の高いスウェーデン(平均初婚年齢34歳)やフランス(同32.8歳)よりもむしろ低いことが指摘されている。 週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない』、「週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない」、懲りない面々だ。
・『繰り返されてきた「少子化」失言 過去には「産まないほうが問題」 多くの人が麻生氏の失言に怒りや失望の声を上げているのは、このような発言が今回が初めてではないからだ。政治の責任を棚に上げ、個人の頑張りが足らないから少子化が進むのだと言いたげな発言はこれまでも繰り返されてきた(以下、肩書はすべて当時)。 「独身者に『おまえ、結婚は夢があるぞ』と堂々と語っている先輩の人はほとんど聞いたことがない。結婚だけはやめとけ、大変だぞ、とみんな言うから。結婚は夢がある、子どもを育てるのはおもしろいって話がもっと世の中に出てこないと、なかなか(子どもが増えるという)動きにならないんじゃないかというのが正直な実感」(2020年11月、麻生太郎財務相の発言) 結婚には夢があり、子どもを育てるのはおもしろいという話が聞かれる社会にするのが政治の役目ではないのか。 年を取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違い。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」(2019年2月、麻生太郎副総理兼財務相の発言/翌日に撤回) さまざまな理由で子どもを望まない、あるいは望んでもかなわない人がいることへの想像力の欠如は言うまでもないが、政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない』、「政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない」、その通りだ。
・『「3人くらい産むようにお願い」「ひとさまの税金で老人ホーム」 もちろん麻生氏以外にも、失言はまだ山ほどある。 「結婚しなくていいという女の人が増えている。お子さん、お孫さんには子供を最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」(2019年5月、桜田義孝前五輪相) お願いで少子化が改善するなら政治はいらない。 「結婚すれば、必然的に、必ずと言っていいほど子どもが誕生する。日本の国の礎は子どもだと考えており、新郎新婦には必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」「若いお嬢さんを捕まえて『まもなく結婚するんですね』と聞くと、たいがい『はい』と返事が返ってくるが、たまに『私はしません』という人がいる。『結婚しなければ子どもが生まれないわけだから、ひとさまの子どもの税金で老人ホームに行くことになりますよ』と言うと、はっと気付いたような顔をする」(2018年5月、加藤寛治衆議院議員/当日に謝罪して撤回) 「日本の国の礎は子ども」と言うのであれば、子どもの相対的貧困率が上昇傾向にある現状を変えるべきだ。「ひとさまの子どもの税金で老人ホーム」とは、まるで脅しである。 これ以外にも「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」(2017年11月、山東昭子元参院副議長)、「(人気芸能人の結婚について聞かれ)この結婚を機にですね、やはりママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』といった形で国家に貢献してくれればいい」(2015年10月、菅義偉官房長官)といった失言からは、妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方のように見えてならない』、「妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方」、確かに矛盾している。
・『「日本の女がちゃぶ台バーン」を無視する政治家たち 冒頭で示したように、子育て世代が理想の子どもの数を持てない最たる要因は経済的な不安である。しかし、このことから目を逸らし続け、若者のワガママ、あるいは女性のワガママかのように思っている節が自民党政治家の失言からはうかがえる。 2022年7月の「男の人は結婚したがっているんですけど、女の人は、無理して結婚しなくていいという人が、最近増えちゃっているんですよね。嘆かわしいことですけどもね。女性も、もっともっと、男の人に寛大になっていただけたらありがたいなと思っている」(2022年7月、桜田義孝元五輪相)という失言は、とてもわかりやすく少子化、未婚化の原因を「女性の考え方」に押し付けている。 ツイッター上でたびたび話題になる、漫画家・秋月りすさんの4コマ漫画がある。人気シリーズ『OL進化論』の1作品で、「子供は最低二人産んでねー」「労働力も必要だから仕事も続けてねー」「男より給料安いけどねー」「育児休暇?男は取れないよ」「保育園?家事?自分の才覚でがんばってよ」と言われ、沈黙する女性の後で、少子化のニュースが載る新聞を広げながら「OL」の一人が「日本の女がーちゃぶ台バーン」「それが少子化なのー」と歌っている。 これは2000年代後半に描かれた作品だ。今から10年以上も前から、今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ』、「今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ」、その通りだ。
・『政治家は自分の観測範囲でしか語らない 筆者の周りの声との違い 政治家たちは、しばしば自分の観測範囲で捉えられた事情だけでものを言う。 政治家がエビデンスに基づかずに見聞きした範囲内で少子化の原因を決めつけてしまうのであれば、筆者も見聞きした範囲の「少子化の原因」をここに書いていいだろう。 20〜40代の子育て世代から聞こえてくるのは、例えばこんな声である。 「子ども2人が10代になってから3人目の子どもができたが、中絶した。体力的な事情もあるが、上の2人の学費がかかる時期でもあり経済的な不安が一番大きかった」(30代後半) 「女性は専業主婦になりたがると言われるが、周囲で専業主婦になった女性は夫の転勤についていくためや、不妊治療のためにやむを得ずという人ばかり。出産後の女性が正規で仕事を続けづらいことが、『子どもはぜいたく品』という考え方の要因のひとつ」(40代前半) 「高齢世代から『昔は貧しくても子どもを産んで育てたのに』と言われることがあるが、昔は日本の経済が右肩上がりで夢を見ることができた。賃金が上がらないのに奨学金を返して、ローンで家を買って、子どもを育てて……というのでは、よっぽど実家が太い人でないと3人以上は難しい。芸能人やスポーツ選手が3人目、4人目を授かったというニュースのコメント欄に『お金のある人はぜひたくさん育ててほしい』という書き込みが見られるのは、経済的事情が許せばもう1人、2人欲しいと思っている人がいるということだと思う」(20代後半) 「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う。自分はよっぽど価値観の合う相手が見つからない限り、結婚も子育てもしたくないと思っている」(30代後半) 「少子化失言」をし続ける政治家たちの耳に、このような声は届いているだろうか』、「「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う」、「「少子化失言」をし続ける政治家たち」は実態を少しは勉強すべきだ。
第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水克彦氏による「「異次元の少子化対策」2つの問題点と、“韓国の失敗”から学ぶべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316605
・『永田町をざわつかせる菅義偉前首相の岸田批判 1月23日に通常国会が召集され、与野党の論戦が本格化している。当面は、来年度予算案の審議が軸だが、その焦点となるのが、岸田文雄首相が「異次元」と位置付けている少子化対策と防衛費の増額問題だ。 これらは、増税という形で国民の暮らしに直結する可能性があるのと同時に、岸田政権の今後を大きく左右するからである。 こうした中、今なお永田町をざわつかせているのが、菅前首相による岸田首相批判だ。) 「岸田首相が派閥に居続けることが、派閥政治を引きずっているというメッセージになる」(1月10日発売の月刊「文藝春秋」) 「少子化対策は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは、(私自身は)全く考えていない」(1月13日、訪問先のベトナムで) 「(防衛増税の話は)突然だったんじゃないか。議論がなさすぎたんじゃないか」(1月18日、ラジオ日本の番組で) 筆者自身は、その中身はともかく、岸田首相が「異次元」の少子化対策をぶち上げ、国会審議の前に、アメリカのバイデン大統領に防衛費増額の詳細を説明してきたことは、何ら問題ないと思っている。 先にアジェンダ(課題)を設定したまでのことだ。首相であればそれくらいの牽引力があっていい。改善点や修正点があるなら、それを国会で議論すればいいだけの話である。 とはいえ、これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ。 その意味では、政局色の強い発言ともいえるが、では、焦点の一つ、「異次元」の少子化対策と財源確保のための増税はどこが問題なのか見ていこう』、「これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ」、その通りだ。
・『少子化こそが日本最大の有事 少子化は日本にとって最大の有事だ。それはOECD加盟38カ国の中で最も早く少子化が進んでいる韓国を見ればよくわかる。 韓国統計庁によれば、2021年の出生率は0.81。首都ソウルで言えば0.63だ。これは日本の1.30(首都・東京は1.08)よりはるかに低い。このまま推移すれば、5100万人ほどいる韓国の人口は、2100年には半分近くにまで減少する。 「韓国の女性、特にソウルの若い女性は、日本の女性より所得が高く自立してますよね。結婚しなくても生きていけますし、出産しないほうが第一線で働けますしね」 筆者の問いに語るのは、ソウル大学研究員の吉方べき氏である。 確かにその通りだが、韓国の人口減少に関しては、2006年の段階で、オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう。 先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」(制度が整備されないうちに老いてしまう)が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる。 OECD加盟国の中で、4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい』、「オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう」、「先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」・・・が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる」、「4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい」、その通りだ。
・『「異次元」の少子化対策で指摘すべき2つの問題点 そんな中、1月19日、内閣府では「異次元」の少子化対策に向けた関係府省会議の初会合が開催された。 座長は、小倉将信こども政策担当相。会議には、内閣官房、内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省の局長級が集まったところを見ると、「異次元」と銘打つだけあって、政府を挙げて取り組む姿勢だけはうかがえた。 しかし、その中身がふに落ちないのだ。岸田首相が小倉担当相に示した基本的な方向は、 (1)児童手当などの経済的支援強化 (2)保育士の処遇改善や産前・産後のケアなど、幼児教育や保育のサービス拡充 (3)働き方改革の推進 これら3つが柱となっている。このうち(2)には何ら文句はないが、(1)と(3)には問題がある。 まず、(1)の児童手当などの経済的支援強化である。 現在、子どもが生まれれば、出産費用は健康保険対象外のため40万~50万円程度かかるが、42万円が出産一時金として給付される。この額は今年4月から50万円に拡充される。このため出産費用の心配はそれほどない。 子どもができればもらえるのが児童手当だ。現在は2歳までが1人当たり月額1万5000円、3歳から小学生までが月額1万円(第3子以降は1万5000円)で、中学生も1万円がもらえる。 所得制限はあるものの、子どもが生まれ中学校を卒業するまでに1人当たり合計200万円近くもらえる計算になる。出生率が低い東京都は、来年にも1人当たり月額5000円給付を始める見込みだ。 他にも、3~5歳までは幼保無償化の恩恵で保育園や幼稚園は無料、医療費も多くの自治体で15歳までは無料だ。加えて、所得によって異なるものの、高校無償化により公立高では授業料が実質無料、私立高でも授業料の補助が手厚くなった。 筆者を含め多くの親は、聞かれれば、「子育ての費用? いくらあっても足りませんよ。もう家計は火の車ですよ」などと答えるものだ。 しかし実態は、習い事や塾にかかる費用を除き、子育ての基本費用だけを見れば、思ったほど家計の負担にはなっていないのである。 それにもかかわらず、児童手当を拡充する(第2子に月額3万円、第3子に月額6万円。対象を18歳まで拡大など)という。そうなればこれまでの2兆円に加え、さらに2.5兆円規模の予算が必要になる。「こどもは社会全体で育てるもの」と言えば聞こえは良いが、特段、必要のないものに増税で対処すると言われれば、「ちょっと待て」と言わざるを得ない。 (3)の働き方改革も現状では絵に描いた餅のようなものだ。厚生労働省によれば、2021年度の男性の育児休暇の取得率は約14%にとどまっている。去年10月から始まった「産後パパ育休」(出生時育児休業)の成果はまだ明らかではないが、企業に「休んでも昇進に影響を与えない」ことなどを確約させ、育休中に雇用保険から支給される「育児休業給付金」の給付率も引き上げなければ取得率の向上にはつながるまい。 政府は、自営業者や非正規労働者を対象とした子育て支援の新給付制度を創設することも検討している。これ自体は悪いことではないが、それらの実現には、年間で最大1兆円程度の安定財源を確保する必要がある。それを「広く国民負担で」となれば、過去のさまざまな給付の成果を検証し、消費者物価が高騰する中、増税しただけの効果があるかどうかを慎重に見極める必要がある。 筆者は、岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている。 出産は結婚が前提という日韓の慣習、若者が直面する低賃金と将来不安、社会進出する女性の多さと自立などの側面から、財政支出だけでなく何が必要なのかを導き出してほしいものだ』、「岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている」、賛成だ。
・『国会論戦の焦点となる「2つの有事」への対応 通常国会のもう一つの焦点、防衛費増額と増税問題はどうだろうか。 政府は去年12月、2023年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とする方針を決定した。この水準を維持するとなると、2027年度以降、4兆円が不足し、このうち歳出削減などでは賄えない1兆円分を増税で賄う案が取り沙汰されている。 増税といっても、法人税、たばこ税、復興特別所得税(一部付け替え)、そして消費税などが考えられる。どれも「防衛費のために」となるとなじまない。 ただ、冷静に考えて、年々高まる中国による台湾有事のリスク、そして北朝鮮によるミサイル開発の現状を思えば、国土の防衛を「広く浅く」国民が負担するのはやむを得ないことのように感じる。 自民党外交部前会長で自衛隊出身の佐藤正久参議院議員は語る。 「中国が台湾に侵攻するとなると浅瀬が多い台湾海峡は使いにくい。台湾本島の大部分が天然の要害なので、攻めるとすれば島の東側になる」 だとすれば、与那国島など八重山諸島はいやが上にも巻き込まれる。当然、中国は在日アメリカ軍基地なども標的にするため、台湾有事=日本有事になってしまう。 個人的には、防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思うが、これまで日本の防衛費の国民負担が1人当たり年間4万円(韓国12万円、英仏10万円)に抑えられてきたことを思えば、それこそ復興特別所得税(年収600万円の人で年間約1万円)程度の負担は仕方がないと考える時代に来ているのではないだろうか。 日本にとって少子化は、放置すれば国家の衰退につながる「静かなる有事」であり、中国による台湾への軍事侵攻は「騒々しい有事」である。これら2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦、「政治には関心がない」という方も、ぜひ注目していただきたいと思っている』、「防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思う」、しかし橋や道路などに比べ、耐用年数が短い防衛装備品は一般の赤字国債で賄うべきだ。「2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦」、は大いに注目したい。
先ずは、昨年10月25日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/102400055/
・『「日本はいずれ存在しなくなる」──。少子化が深刻化するこの国への悲観と失望が広がる。仕事との両立に悩み、産むことをためらう人はなお少なくない。新型コロナウイルス禍でこうした傾向に一段と拍車がかかった。このまま国が縮めば、経済活動の足場は根底から揺らぐ。いかに若い世代の不安に応え、子育てへの希望を取り戻すか。国任せではいられない。人口減少の阻止へ企業が動く』、確かに企業にとっては存続がかかる問題なので、「国任せではいられない」、自ら取り組むべき課題だ。
・『連載ラインアップ ・少子化は企業が止める 出生数が激減、国任せではいられない(今回) ・伊藤忠、働き方改革で出生率2倍 生産性向上と子育ての意外な関係 ・「伊藤忠ショック」に意義 少子化を止めるカギは企業にある ・キリンは模擬体験、大成建設は夫にも研修… 育児支援に当事者目線 ・第5子出産に祝い金500万円 産み育てやすい職場が人材呼び込む ・出生率上げたフランス、スウェーデンに学ぶ 日本はまだやれる ・パパ育休は男女役割意識を破るか 「日本は子育てしやすい」4割のみ ・出生率2.95が示す「奇跡の町」の教え 「社会の宝」はこう増やす 5年に1度、日本で暮らす全員に実施される国勢調査。その始まりは大正時代の1920年まで遡る。当時の政府は人口という言葉を「国勢」と記した。人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた。 それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ。「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなる」。5月、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)がツイッターでこうつぶやくなど、日本の人口減少は海外から見ても深刻な事態となっている』、「国勢調査」は「人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた」、「それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ」、「日本はいずれ存在しなくなる」。「イーロン・マスク」に茶化されるようでは、落ちぶれたものだ。
・『コロナで少子化に拍車、悲観シナリオに迫る 政府は9月、2021年の出生数が81万1622人だったと発表した。前年から3万人近く減り、過去最少となった。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率も1.30と前年から0.03ポイント下がり、過去4番目の低さとなった。 この出生数を、国立社会保障・人口問題研究所がまとめた日本人の人口推計(最新は17年版)と照らし合わせると、少子化のスピードが想定以上だと分かる。人口推計の標準シナリオとされる中位推計では、21年の出生率は1.42で出生数は86万9000人とされていた。出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ。 出産可能な15~49歳の女性の数は1990年以降減少しており、現在約2400万人。減少傾向である上に晩産化も進んでいる。そんな彼女らが妊娠を延期すれば「加齢に伴う妊娠確率の低下や、年齢を理由に第2子の出産を諦める動きが起こりやすくなる」と、歴史人口学が専門の鬼頭宏・上智大学名誉教授は懸念する』、「出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ」、なるほど。
・『結婚離れも加速 「結婚離れ」も加速。かねて価値観の多様化や上がらない給料を背景に結婚しない人は増えていたが、コロナ禍で拍車がかかった。50歳時点で結婚していない人の割合は男性で28.25%、女性で17.81%に達する。 海外でもコロナで一時産み控えが起きた。だが北欧諸国や英国、フランスでは、21年には出生率が回復に転じた。こうした国々では、ロックダウン(都市封鎖)で家事・育児をしながら在宅勤務をしなければならない状況でも、男女が共に働き、一定の世帯収入が得られていた。 日本はどうか。東京都に住む派遣社員、村上明子さん(仮名、41)は、35歳で第1子を出産。もう1人産みたかったが、断念した。) IT(情報技術)企業のシステムエンジニアとして働く夫は仕事時間が不規則で、家事・育児への協力は得られない。明子さんは1人で保育園送迎や食事の用意といった「ワンオペ育児」に追われる毎日だった。 コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した。「子育てがこんなにつらいとは」』、「コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した」、同情を禁じ得ない。
・『「ワンオペ育児」「子育て罰」が不安を増幅 政府は15年、若い世代の結婚や出産の希望がかなった場合の出生率を「希望出生率」と定義し、1.8と想定した。1990年代以降、1.5を下回り続ける出生率を、まずは「産みたくても産めない人」が抱える課題を解消して、1.8まで高めようとしたのだ。 子どもを産んでも仕事を続けられるよう、育児休業の拡充や保育施設の整備、経済不安の解消につながる幼児教育の無償化、不妊治療費用の助成と、さまざまな政策が打ち出されたのは記憶に新しい。 しかし、出生率は1.8に近づくどころか低下する一方だ。村上さんのような仕事と出産・育児を一手に抱え込む女性が増え、「ワンオペ育児」「子育て罰」など、出産・育児にマイナスの印象を与える言葉が世の中にはあふれる。 何を変えなければならないのか。無論、子どもを産むか産まないかは、個々人の選択に委ねられるべきだ。だがこの国の屋台骨を揺るがす少子化への危機感は「自分ごと」として社会全体で共有しなければならない。そのためには国や自治体だけでなく、企業が率先して動く必要がある。 岸田文雄政権が設けた社会保障のあり方を見直す有識者会議「全世代型社会保障構築会議」が5月にまとめた中間整理では「男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援」こそが、少子化問題を考える上で重要な論点の1つと位置付けている。「『仕事か子育てか』の二者択一を迫られる状況が多く、早急に是正されるべきだ」とも指摘している。 この指摘は意外に思うかもしれない。なぜならこの10年、多くの企業では「働き方改革」を通じて、長時間労働の是正や、育児や介護中の社員でも無理なく働ける制度を導入してきたからだ。それでも「二者択一」にならざるを得ないのはなぜか。1日の多くを過ごす職場の中に、子育てを負担・不安に感じる要因が今なお存在するということである。 日本企業はいい意味でも悪い意味でも、働き手の価値観やライフスタイルに強い影響を与えてきた。ここで改めて子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない。 連載の2回目では、働き方改革が結果的に社内出生率の急上昇につながった伊藤忠商事の取り組みを紹介する』、「子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない」、同感である。
次に、本年1月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」、子育て世代に責任転嫁の絶望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316346
・『また自民党議員が少子化について、失言した。1月15日に少子化の最大の要因を「女性の年齢が高齢化しているから」と説明して「体力的な問題があるのかもしれない」と分析して見せたのは82歳の麻生太郎氏。彼らはなぜ、子育て世代の経済的不安から目をそらし続けるのだろうか』、興味深そうだ。
・『全て女性のせい? 何度たたかれてもやめない失言 「(少子化の)一番大きな理由は出産するときの女性の年齢が高齢化しているからです」 「(複数の子どもを出産するには)体力的な問題があるかもしれない」 1月15日に報道されたのはこんな発言。 自民党の麻生太郎副総裁が、福岡県で講演した際に出た発言だという。これが報道されると、たちまちSNS上では批判の声が相次いだ。 麻生氏の発言は、政治家の責任を国民に押し付けているかのように聞こえるだけではなく、停滞する日本経済の中で明るい展望を描きづらい若者や子育て世代の不安をまったく斟酌(しんしゃく)していないように見える。 女性自身の記事「麻生副総裁『少子化最大の要因は女性の晩婚化』発言に女性からブーイングの嵐」では、内閣府の令和4年版「少子化社会対策白書」が引かれ、「夫婦が理想の子供の数を持てない理由として『子育てや教育にお金がかかりすぎるから』が56.3%で最多となっている」ことを指摘。さらに2020年「少子化関連指標の国際比較」で、日本人の平均初婚年齢(29.4歳)は、OECD加盟国の中でも出生率の高いスウェーデン(平均初婚年齢34歳)やフランス(同32.8歳)よりもむしろ低いことが指摘されている。 週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない』、「週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない」、懲りない面々だ。
・『繰り返されてきた「少子化」失言 過去には「産まないほうが問題」 多くの人が麻生氏の失言に怒りや失望の声を上げているのは、このような発言が今回が初めてではないからだ。政治の責任を棚に上げ、個人の頑張りが足らないから少子化が進むのだと言いたげな発言はこれまでも繰り返されてきた(以下、肩書はすべて当時)。 「独身者に『おまえ、結婚は夢があるぞ』と堂々と語っている先輩の人はほとんど聞いたことがない。結婚だけはやめとけ、大変だぞ、とみんな言うから。結婚は夢がある、子どもを育てるのはおもしろいって話がもっと世の中に出てこないと、なかなか(子どもが増えるという)動きにならないんじゃないかというのが正直な実感」(2020年11月、麻生太郎財務相の発言) 結婚には夢があり、子どもを育てるのはおもしろいという話が聞かれる社会にするのが政治の役目ではないのか。 年を取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違い。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」(2019年2月、麻生太郎副総理兼財務相の発言/翌日に撤回) さまざまな理由で子どもを望まない、あるいは望んでもかなわない人がいることへの想像力の欠如は言うまでもないが、政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない』、「政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない」、その通りだ。
・『「3人くらい産むようにお願い」「ひとさまの税金で老人ホーム」 もちろん麻生氏以外にも、失言はまだ山ほどある。 「結婚しなくていいという女の人が増えている。お子さん、お孫さんには子供を最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」(2019年5月、桜田義孝前五輪相) お願いで少子化が改善するなら政治はいらない。 「結婚すれば、必然的に、必ずと言っていいほど子どもが誕生する。日本の国の礎は子どもだと考えており、新郎新婦には必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい」「若いお嬢さんを捕まえて『まもなく結婚するんですね』と聞くと、たいがい『はい』と返事が返ってくるが、たまに『私はしません』という人がいる。『結婚しなければ子どもが生まれないわけだから、ひとさまの子どもの税金で老人ホームに行くことになりますよ』と言うと、はっと気付いたような顔をする」(2018年5月、加藤寛治衆議院議員/当日に謝罪して撤回) 「日本の国の礎は子ども」と言うのであれば、子どもの相対的貧困率が上昇傾向にある現状を変えるべきだ。「ひとさまの子どもの税金で老人ホーム」とは、まるで脅しである。 これ以外にも「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」(2017年11月、山東昭子元参院副議長)、「(人気芸能人の結婚について聞かれ)この結婚を機にですね、やはりママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』といった形で国家に貢献してくれればいい」(2015年10月、菅義偉官房長官)といった失言からは、妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方のように見えてならない』、「妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方」、確かに矛盾している。
・『「日本の女がちゃぶ台バーン」を無視する政治家たち 冒頭で示したように、子育て世代が理想の子どもの数を持てない最たる要因は経済的な不安である。しかし、このことから目を逸らし続け、若者のワガママ、あるいは女性のワガママかのように思っている節が自民党政治家の失言からはうかがえる。 2022年7月の「男の人は結婚したがっているんですけど、女の人は、無理して結婚しなくていいという人が、最近増えちゃっているんですよね。嘆かわしいことですけどもね。女性も、もっともっと、男の人に寛大になっていただけたらありがたいなと思っている」(2022年7月、桜田義孝元五輪相)という失言は、とてもわかりやすく少子化、未婚化の原因を「女性の考え方」に押し付けている。 ツイッター上でたびたび話題になる、漫画家・秋月りすさんの4コマ漫画がある。人気シリーズ『OL進化論』の1作品で、「子供は最低二人産んでねー」「労働力も必要だから仕事も続けてねー」「男より給料安いけどねー」「育児休暇?男は取れないよ」「保育園?家事?自分の才覚でがんばってよ」と言われ、沈黙する女性の後で、少子化のニュースが載る新聞を広げながら「OL」の一人が「日本の女がーちゃぶ台バーン」「それが少子化なのー」と歌っている。 これは2000年代後半に描かれた作品だ。今から10年以上も前から、今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ』、「今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ」、その通りだ。
・『政治家は自分の観測範囲でしか語らない 筆者の周りの声との違い 政治家たちは、しばしば自分の観測範囲で捉えられた事情だけでものを言う。 政治家がエビデンスに基づかずに見聞きした範囲内で少子化の原因を決めつけてしまうのであれば、筆者も見聞きした範囲の「少子化の原因」をここに書いていいだろう。 20〜40代の子育て世代から聞こえてくるのは、例えばこんな声である。 「子ども2人が10代になってから3人目の子どもができたが、中絶した。体力的な事情もあるが、上の2人の学費がかかる時期でもあり経済的な不安が一番大きかった」(30代後半) 「女性は専業主婦になりたがると言われるが、周囲で専業主婦になった女性は夫の転勤についていくためや、不妊治療のためにやむを得ずという人ばかり。出産後の女性が正規で仕事を続けづらいことが、『子どもはぜいたく品』という考え方の要因のひとつ」(40代前半) 「高齢世代から『昔は貧しくても子どもを産んで育てたのに』と言われることがあるが、昔は日本の経済が右肩上がりで夢を見ることができた。賃金が上がらないのに奨学金を返して、ローンで家を買って、子どもを育てて……というのでは、よっぽど実家が太い人でないと3人以上は難しい。芸能人やスポーツ選手が3人目、4人目を授かったというニュースのコメント欄に『お金のある人はぜひたくさん育ててほしい』という書き込みが見られるのは、経済的事情が許せばもう1人、2人欲しいと思っている人がいるということだと思う」(20代後半) 「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う。自分はよっぽど価値観の合う相手が見つからない限り、結婚も子育てもしたくないと思っている」(30代後半) 「少子化失言」をし続ける政治家たちの耳に、このような声は届いているだろうか』、「「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う」、「「少子化失言」をし続ける政治家たち」は実態を少しは勉強すべきだ。
第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水克彦氏による「「異次元の少子化対策」2つの問題点と、“韓国の失敗”から学ぶべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/316605
・『永田町をざわつかせる菅義偉前首相の岸田批判 1月23日に通常国会が召集され、与野党の論戦が本格化している。当面は、来年度予算案の審議が軸だが、その焦点となるのが、岸田文雄首相が「異次元」と位置付けている少子化対策と防衛費の増額問題だ。 これらは、増税という形で国民の暮らしに直結する可能性があるのと同時に、岸田政権の今後を大きく左右するからである。 こうした中、今なお永田町をざわつかせているのが、菅前首相による岸田首相批判だ。) 「岸田首相が派閥に居続けることが、派閥政治を引きずっているというメッセージになる」(1月10日発売の月刊「文藝春秋」) 「少子化対策は極めて重要だと思うが、消費税を増税してやるということは、(私自身は)全く考えていない」(1月13日、訪問先のベトナムで) 「(防衛増税の話は)突然だったんじゃないか。議論がなさすぎたんじゃないか」(1月18日、ラジオ日本の番組で) 筆者自身は、その中身はともかく、岸田首相が「異次元」の少子化対策をぶち上げ、国会審議の前に、アメリカのバイデン大統領に防衛費増額の詳細を説明してきたことは、何ら問題ないと思っている。 先にアジェンダ(課題)を設定したまでのことだ。首相であればそれくらいの牽引力があっていい。改善点や修正点があるなら、それを国会で議論すればいいだけの話である。 とはいえ、これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ。 その意味では、政局色の強い発言ともいえるが、では、焦点の一つ、「異次元」の少子化対策と財源確保のための増税はどこが問題なのか見ていこう』、「これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ」、その通りだ。
・『少子化こそが日本最大の有事 少子化は日本にとって最大の有事だ。それはOECD加盟38カ国の中で最も早く少子化が進んでいる韓国を見ればよくわかる。 韓国統計庁によれば、2021年の出生率は0.81。首都ソウルで言えば0.63だ。これは日本の1.30(首都・東京は1.08)よりはるかに低い。このまま推移すれば、5100万人ほどいる韓国の人口は、2100年には半分近くにまで減少する。 「韓国の女性、特にソウルの若い女性は、日本の女性より所得が高く自立してますよね。結婚しなくても生きていけますし、出産しないほうが第一線で働けますしね」 筆者の問いに語るのは、ソウル大学研究員の吉方べき氏である。 確かにその通りだが、韓国の人口減少に関しては、2006年の段階で、オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう。 先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」(制度が整備されないうちに老いてしまう)が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる。 OECD加盟国の中で、4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい』、「オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう」、「先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」・・・が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる」、「4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい」、その通りだ。
・『「異次元」の少子化対策で指摘すべき2つの問題点 そんな中、1月19日、内閣府では「異次元」の少子化対策に向けた関係府省会議の初会合が開催された。 座長は、小倉将信こども政策担当相。会議には、内閣官房、内閣府、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省の局長級が集まったところを見ると、「異次元」と銘打つだけあって、政府を挙げて取り組む姿勢だけはうかがえた。 しかし、その中身がふに落ちないのだ。岸田首相が小倉担当相に示した基本的な方向は、 (1)児童手当などの経済的支援強化 (2)保育士の処遇改善や産前・産後のケアなど、幼児教育や保育のサービス拡充 (3)働き方改革の推進 これら3つが柱となっている。このうち(2)には何ら文句はないが、(1)と(3)には問題がある。 まず、(1)の児童手当などの経済的支援強化である。 現在、子どもが生まれれば、出産費用は健康保険対象外のため40万~50万円程度かかるが、42万円が出産一時金として給付される。この額は今年4月から50万円に拡充される。このため出産費用の心配はそれほどない。 子どもができればもらえるのが児童手当だ。現在は2歳までが1人当たり月額1万5000円、3歳から小学生までが月額1万円(第3子以降は1万5000円)で、中学生も1万円がもらえる。 所得制限はあるものの、子どもが生まれ中学校を卒業するまでに1人当たり合計200万円近くもらえる計算になる。出生率が低い東京都は、来年にも1人当たり月額5000円給付を始める見込みだ。 他にも、3~5歳までは幼保無償化の恩恵で保育園や幼稚園は無料、医療費も多くの自治体で15歳までは無料だ。加えて、所得によって異なるものの、高校無償化により公立高では授業料が実質無料、私立高でも授業料の補助が手厚くなった。 筆者を含め多くの親は、聞かれれば、「子育ての費用? いくらあっても足りませんよ。もう家計は火の車ですよ」などと答えるものだ。 しかし実態は、習い事や塾にかかる費用を除き、子育ての基本費用だけを見れば、思ったほど家計の負担にはなっていないのである。 それにもかかわらず、児童手当を拡充する(第2子に月額3万円、第3子に月額6万円。対象を18歳まで拡大など)という。そうなればこれまでの2兆円に加え、さらに2.5兆円規模の予算が必要になる。「こどもは社会全体で育てるもの」と言えば聞こえは良いが、特段、必要のないものに増税で対処すると言われれば、「ちょっと待て」と言わざるを得ない。 (3)の働き方改革も現状では絵に描いた餅のようなものだ。厚生労働省によれば、2021年度の男性の育児休暇の取得率は約14%にとどまっている。去年10月から始まった「産後パパ育休」(出生時育児休業)の成果はまだ明らかではないが、企業に「休んでも昇進に影響を与えない」ことなどを確約させ、育休中に雇用保険から支給される「育児休業給付金」の給付率も引き上げなければ取得率の向上にはつながるまい。 政府は、自営業者や非正規労働者を対象とした子育て支援の新給付制度を創設することも検討している。これ自体は悪いことではないが、それらの実現には、年間で最大1兆円程度の安定財源を確保する必要がある。それを「広く国民負担で」となれば、過去のさまざまな給付の成果を検証し、消費者物価が高騰する中、増税しただけの効果があるかどうかを慎重に見極める必要がある。 筆者は、岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている。 出産は結婚が前提という日韓の慣習、若者が直面する低賃金と将来不安、社会進出する女性の多さと自立などの側面から、財政支出だけでなく何が必要なのかを導き出してほしいものだ』、「岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている」、賛成だ。
・『国会論戦の焦点となる「2つの有事」への対応 通常国会のもう一つの焦点、防衛費増額と増税問題はどうだろうか。 政府は去年12月、2023年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とする方針を決定した。この水準を維持するとなると、2027年度以降、4兆円が不足し、このうち歳出削減などでは賄えない1兆円分を増税で賄う案が取り沙汰されている。 増税といっても、法人税、たばこ税、復興特別所得税(一部付け替え)、そして消費税などが考えられる。どれも「防衛費のために」となるとなじまない。 ただ、冷静に考えて、年々高まる中国による台湾有事のリスク、そして北朝鮮によるミサイル開発の現状を思えば、国土の防衛を「広く浅く」国民が負担するのはやむを得ないことのように感じる。 自民党外交部前会長で自衛隊出身の佐藤正久参議院議員は語る。 「中国が台湾に侵攻するとなると浅瀬が多い台湾海峡は使いにくい。台湾本島の大部分が天然の要害なので、攻めるとすれば島の東側になる」 だとすれば、与那国島など八重山諸島はいやが上にも巻き込まれる。当然、中国は在日アメリカ軍基地なども標的にするため、台湾有事=日本有事になってしまう。 個人的には、防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思うが、これまで日本の防衛費の国民負担が1人当たり年間4万円(韓国12万円、英仏10万円)に抑えられてきたことを思えば、それこそ復興特別所得税(年収600万円の人で年間約1万円)程度の負担は仕方がないと考える時代に来ているのではないだろうか。 日本にとって少子化は、放置すれば国家の衰退につながる「静かなる有事」であり、中国による台湾への軍事侵攻は「騒々しい有事」である。これら2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦、「政治には関心がない」という方も、ぜひ注目していただきたいと思っている』、「防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思う」、しかし橋や道路などに比べ、耐用年数が短い防衛装備品は一般の赤字国債で賄うべきだ。「2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦」、は大いに注目したい。
タグ:少子化 (その3)(少子化は企業が止める 出生数激減 国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)、麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」 子育て世代に責任転嫁の絶望、「異次元の少子化対策」2つの問題点と “韓国の失敗”から学ぶべき理由) 日経ビジネスオンライン「[新連載]少子化は企業が止める 出生数激減、国任せではいられない 少子化は企業が止める(1)」 確かに企業にとっては存続がかかる問題なので、「国任せではいられない」、自ら取り組むべき課題だ。 「国勢調査」は「人口は国の勢いを示すもの、すなわち国力であるという考えがこの言葉には込められていた」、「それから100年の時がたち、日本の人口は「国勢」と呼ぶにはほど遠い状態だ」、「日本はいずれ存在しなくなる」。「イーロン・マスク」に茶化されるようでは、落ちぶれたものだ。 「出生数が81万人まで減少するのは27年のはずだった。だがその時は6年も早くやってきた。 足元の81万人という出生数は悲観シナリオとされる低位推計に近づきつつあり、22年の「出生数80万人割れ」も現実味を帯びる。理由ははっきりしている。新型コロナウイルス禍による先行き不安で妊娠・出産の先送りが起きたからだ」、なるほど。 「コロナ禍になると保育園休園への対応などを迫られ、派遣先との契約を打ち切らざるを得なくなった。子どもの面倒を見ながら在宅勤務できる派遣先を探す生活に嫌気が差した」、同情を禁じ得ない。 「子育てしながら働く社員が抱える問題が何なのか、捉え直してみてはどうか。それが少子化問題に関し企業ができる貢献であり、冒頭の悲観シナリオを回避するきっかけにつながるかもしれない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 鎌田和歌氏による「麻生太郎氏また失言「出産女性の高齢化で少子化」、子育て世代に責任転嫁の絶望」 「週刊誌にあっという間に論破されても、特に高齢の政治家たちはこのような失言をやめようとしない」、懲りない面々だ。 「政治課題である少子高齢化を、高齢者対子育て世代(若年層)の問題かのようにすり替えるのはいただけない」、その通りだ。 「妊娠・出産は個人のものではなく、国家のために行われるものであるという意識がうかがえる。 そのくせ、出産や子育ての負担やリスクは自己責任と突き放すのが、現在の政治に色濃い考え方」、確かに矛盾している。 「今の社会で子どもを産むことが女性側にどれだけ負担があることか語られ、一定の共感を得てきている。その点から目を背け続け、子育て世代を「叱咤(しった)激励」すれば少子化が解消するかのような失言だけを繰り返しているのが、自民党の高齢の政治家たちだ」、その通りだ。 「「自己責任と言われ続けた世代が、自己責任だから子どもを持つリスクを取らない、という選択をするのは当然だと思う」、「「少子化失言」をし続ける政治家たち」は実態を少しは勉強すべきだ。 清水克彦氏による「「異次元の少子化対策」2つの問題点と、“韓国の失敗”から学ぶべき理由」 「これまで政権批判を控えてきた菅前首相が、岸田首相個人や岸田政権の重要施策を、何度も公然と批判したことの意味は大きい。すでにさまざまなメディアで報じられている通り、これらの発言は、自民党内でくすぶる岸田首相への不満を代弁したもの、もっと言えば、「反岸田勢力」結集に向けたのろしとも受け止めることができるからだ」、その通りだ。 「オックスフォード人口問題研究所の教授、デービッド・コールマンが「韓国は世界で最初に地球から消滅する」と予測している。 人口が減れば経済が衰退するだけでなく、電気・ガス・水道・交通といった社会インフラが崩壊する。国防や治安維持どころではなくなり、国家としての体をなさなくなってしまう」、 「先頃、人口減少が報じられた中国でも、今では、「未備先老」・・・が流行語となっている。建国100年の節目を迎える2049年頃には60歳以上が5億人前後に達する(ということは2060年頃には5億人前後が70歳以上になる)、とんでもない規模の老人大国が完成することになる」、「4番目に出生率が低い日本にも同じことがいえる。その意味では、岸田首相が1月23日に行った施政方針演説で、「わが国は社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際に置かれている」と述べた認識は正しい」、その通りだ。 「岸田政権が少子化対策を「異次元」とうたうのであれば、日本より深刻な韓国を参考に、晩婚化や未婚化など出産に関わるさまざまな事情を改めて検証すべきだと思っている」、賛成だ。 「防衛費増額に伴う不足分は、後に国民の資産となる建設国債で賄うべきだとは思う」、しかし橋や道路などに比べ、耐用年数が短い防衛装備品は一般の赤字国債で賄うべきだ。「2つの有事への対応が大きな焦点になる国会論戦」、は大いに注目したい。