イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) [世界情勢]
今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増)を取上げよう。
先ずは、本年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708392
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けた。イスラエルも応酬し、双方の死者は2000人を超えている。この衝突の背景に何があるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『「ホロコースト」を引き合いに出す事態 イスラエルの人々は今、自らが見舞われたばかりの出来事を必死に理解しようとしている。私たちはまず、今回の惨事を1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)と比べてみた。50年前、エジプト軍とシリア軍が奇襲攻撃を仕掛け、イスラエルを立て続けに打ち負かしたが、その後、イスラエル国防軍が態勢を立て直して主導権を奪い返し、形勢を逆転させた。 だが今度の出来事は、いくつものキブツや集落で起こった大虐殺の恐ろしいニュースや画像が続々と届くにつれ、ヨム・キプール戦争とは似ても似つかないものであることに私たちは気づいた。新聞やSNSや家庭で、人々はユダヤ民族にとって最悪の時代を引き合いに出している。例えば、ホロコーストでナチスのアインザッツグルッペン(移動虐殺部隊)が村落を包囲してユダヤ人を殺害したときや、ロシア帝国でユダヤ人の大虐殺が行なわれたときのことだ。 私自身も、ベエリとクファル・アザのキブツに親族や友人がおり、ぞっとするような話を多く耳にしてきた。ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった。) 私の99歳になる伯父と、その妻で89歳の伯母は、ベエリのキブツに住んでいる。そこがハマスの手に落ちて間もなく、まったく連絡がつかなくなった。2人は、何十人ものテロリストが暴れ回り、人々を惨殺している間、ずっと自宅で息を潜めていたそうだ。やがて私のもとに、2人が助かったという連絡があった。だが、多くの知人が人生で最悪の知らせを受け取った。 伯父夫妻はともに、たくましいユダヤ人だ。第1次世界大戦と第2次世界大戦の大戦間に東ヨーロッパで生まれ、ホロコーストですでに1つの世界を失っている。私たちは、身を守る術(すべ)のないユダヤ人たちが、ナチスの魔手を逃れるために戸棚の中や地下室に身を隠したが、誰も助けに来てくれなかったという話を聞いて育った。イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?』、「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。
・『イスラエルの機能不全の真の原因は「ポピュリズム」 ある意味で、イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 破壊された建物の外にいるパレスチナ人住民。 だからといって、イスラム原理主義組織ハマスによる残虐行為は正当化できない。そもそもハマスは、イスラエルと平和条約を締結する可能性を容認したためしがなく、オスロ合意に基づく和平の進展を、ありとあらゆる手を使って妨げてきた。平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った。 政府は、外部からの脅威が高まっているさなかに、政策がイスラエルを危険にさらし、抑止力を損なっていると、自国の治安部隊や無数の専門家から繰り返し警告されていた。それにもかかわらず、イスラエル国防軍の参謀総長が、政府の政策が及ぼす治安上の影響についてネタニヤフに警告するために会見を求めると、ネタニヤフは会うことを拒んだ。それでもヨアヴ・ガラント国防相が警鐘を鳴らすと、ネタニヤフは彼の更迭を決めた。その後それを撤回せざるをえなくなったが、それは民衆が激しい怒りを爆発させたからにすぎない。ネタニヤフがそのような行動を長年取り続けたせいで、イスラエルが惨禍に見舞われる状況を招いたのだ。 イスラエルや、イスラエル=パレスティナ紛争をどう考えていようと、ポピュリズムがイスラエルという国家を蝕(むしば)んだことを、世界中の他の民主主義国家は教訓として受け止めるべきだ』、「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。
・『依然として破局を防ぐことができる イスラエルは、自らが破局を迎えることを依然として防ぐことができる。イスラエルは、ハマスをはじめ、多くの敵たちに対して今なお軍事面で圧倒的な優位に立っている。ユダヤ民族の長い苦しみの歴史の記憶が、今、国民を奮い立たせている。イスラエル国防軍その他の国家機関は、当初の衝撃から立ち直りつつある。市民社会は、かつてないような形で立ち上がり、政府の機能障害が残した多くの隙間を埋めている。市民は長蛇の列を成して献血し、交戦地帯からの避難民を自宅に喜んで受け入れ、食物や衣料、その他の必需品を寄付している。 助けが必要な今このとき、私たちは世界中の友人たちにも支援を呼びかけている。これまでのイスラエルの振る舞いには、とがめるべきことが多々ある。過去を変えることはできないが、ハマスに勝利した暁には、イスラエルの人々は現政権に責任を取らせるだけではなく、ポピュリズムの陰謀論やメシア信仰の幻想も捨て去り、そして、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力をすることが願われてやまない。 (ユヴァル・ノア・ハラリ氏の略歴はリンク先参照)』、「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。
次に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/719481
・『イスラエル軍によるガザ攻撃が再開され、状況の悪化がさらに深刻になっているイスラエル・ハマス紛争は、収束の道がまったく見えない状況が続いている。 そんな中、主要国の間で「イスラエルとパレスチナ国家が平和共存する」という「二国家解決案」が活発に議論され始めた。激しい戦闘のさなかに、互いに相手を国家として認めるという現実離れした夢物語のような話がなぜ今、国際社会で取り上げられているのか』、興味深そうだ。
・『パレスチナと認め合った30年前の「オスロ合意」 二国家解決案の歴史は古く、最初は1947年、独立を求めるユダヤ人とパレスチナ人の緊張が高まる中、国連が総会でこの地域を2つの国家に分割する案を採択した。 パレスチナは領土の半分以上を奪われる案だったために当然、反対したが、ユダヤ人はこの案を受け入れて翌年、イスラエルの独立を宣言した。ユダヤ人とパレスチナ人の緊張はここから一気に高まってしまった。 世界的に注目されたのは1993年の「オスロ合意」だった。 この合意でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫してしまった。 以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権と言われている』、「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。
・『ガザの非人道的状況を国際社会は放置できない 一方のパレスチナ側はヨルダン川西岸とガザ地区が分裂し、ガザはイスラエルの存在を否定するハマスが支配し、イスラエルに対する攻撃やテロを続けている。オスロ合意にかかわったPLOのアラファト議長も死去し彼を引き継ぐ有力な指導者は登場していない。 イスラエルとパレスチナの間で和平の動きは完全に消えてしまい、国際社会も次第にパレスチナ問題に対する関心を失っていった。そればかりか同じ民族でパレスチナを支持していたアラブ諸国からは、イスラエルとの国交を樹立する国も相次ぎ、パレスチナ側は孤立感を深めていた。 そうした空気が今回のハマスのイスラエル攻撃で一変した。イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している。 11月末には、スペインで開かれたアラブ・EU外相会合で、参加国は二国家解決案が必要という意見で一致した。さらに国連安保理の議論では、インドネシアやロシア、ガーナなども二国家解決案への支持を表明した。 多くの国が二国家解決論を唱えたからといって武力攻撃が止まるわけではない。にもかかわらずなぜ今、セピア色を帯びたような二国家解決案を持ち出したのだろうか』、「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。
・『イスラエルに対して手を打てない国際社会 最大の理由は、イスラエルの攻撃がガザ市民の危機的状況を生み出していることに対し、国際社会はなにかメッセージを出さざるをえないためだろう。どの国の指導者もネタニヤフ首相の軍事行動やハマスの攻撃を止めることができない。また歴史的経緯もあって欧米など多くの国はイスラエルをあからさまに非難することもできない。 そんな中でイスラエルもパレスチナも一度は合意した二国家解決案は、一見説得力を持っているように見える便利な方策なのだ。 残念なことにオスロ合意から30年たち、パレスチナ問題をめぐる状況は大きく変化しており、仮に現在の紛争が停戦にこぎつけたとしても二国家解決案は簡単に実現しそうにはない。 オスロ合意を実現したイスラエルのラビン首相は、1991年の湾岸戦争時にイランがイスラエルにミサイルを発射し若者が逃げ惑う状況を見て、「紛争は自分たちの代に終わらせなければならない」と強く思ったという。和平実現に対する強い意志と情熱を持ったラビン首相がPLOのアラファト議長を説得したことで合意することができた。 それに対し現在のネタニヤフ首相は「パレスチナ国家樹立を阻止できるのは自分だけだ」などと公言している正反対の政治家だ。) そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている』、「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。
・『新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか 仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。 つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。 またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。 今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。 統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。) さらにパレスチナ難民の扱いもある。近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう。 経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか。ウクライナ戦争などで顕在化した欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい』、「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。
・『ガザばかりでなくヨルダン川西岸でも目立つ弾圧 かつては現実的な解決策だった二国家解決案は、30年の時を経ていまや手の届かない「理想」に変質してしまったのである。にもかかわらず多くの国がこの案を持ち出すのは、建設的な姿勢を見せるための方便としか見えない。 ガザでは連日、多くの犠牲者が出ているが、同時にあまり注目されていないがヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人への弾圧が目立っている。相互不信、憎悪の極限状態にある両者に任せても状況は改善されず、永遠にテロと武力攻撃が続くだけだ。だからと言って妙案があるわけではない。 紛争をイスラエルとハマスの問題に封じ込めないで、深刻な国際問題と認識し、国連など国際機関や主要国が連携して本気で取り組む段階にきている。主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう』、「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。
第三に、12月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120433?imp=0
・『テロ攻撃を1年以上前から把握 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた』、「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。
・『軍事情報機関研究部門の責任者が暴露 男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。 記事は反響を呼んだ。 米メディア、ポリティカ欧州版は翌21日、ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた。イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は、実名でハアレツの取材に応じて「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」と暴露した。 彼は、ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ。 11月24日には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊、8200部隊の下士官も、内部告発に加わった。彼女はハアレツに匿名で「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」と訴えた。こうした流れのなかで、冒頭に紹介した「イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていた」という特ダネが出てきたのだ。これも内部告発に基づく情報とみていいだろう。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない』、「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。
・『ハマスを支援していたネタニヤフ政権 ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していたのである。それは、テロ攻撃の前から指摘されていた。たとえば、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は2021年5月16日のコラムで、こう書いている。 〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉 つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。 こうした分析は、いまや広く世界で共有されている。歴史家のアダム・ラズ氏は10月20日、ハアレツ紙上でこう指摘した。 〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉 〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉 〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉』、「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。
・『退場のときが近づく 10月20日付の英ガーディアンは、ネタニヤフ氏が2019年3月、自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している。彼は、こう演説していた。 〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉 政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た。先に触れた11月21日付のポリティコは、イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介している。 〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう。 12月6日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「自民党の政治資金問題」について解説しました。 7日には「カナダに出国した香港の周庭は安全か」を、同じく1人語りで配信しました。 8日には、ニコ生番組「長谷川幸洋Tonight」で、イスラエル情勢などについて解説します』、「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。
第四に、12月8日付けNewsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103169.php
・『<イスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから、悪夢の歴史を持つドイツで「反ユダヤ」的な事件が頻発するように。過激な事件も起きている> イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲と、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を受けて、ホロコーストの過去を持つドイツが揺れている。 政府は全面的なイスラエル支持を表明しているが、国内では反ユダヤ主義的な事件が急増。反ユダヤ主義調査情報センター(RIAS)によれば、衝突が始まった10月7日から11月9日にかけて、ドイツで起きた反ユダヤ主義的事件は994件。1日平均29件に達し、昨年同時期の320%増となっている。 その多くは攻撃的な言動などのレベルにとどまるが、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に火炎瓶が投げ付けられるなど一部で過激な事件も発生している。 +994件(10月7日から11月9日にかけてドイツ国内で発生した反ユダヤ主義的事件の件数) +29件(事件の1日当たりの平均件数) +320%増(昨年同時期との比較)』、「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。
先ずは、本年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708392
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けた。イスラエルも応酬し、双方の死者は2000人を超えている。この衝突の背景に何があるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『「ホロコースト」を引き合いに出す事態 イスラエルの人々は今、自らが見舞われたばかりの出来事を必死に理解しようとしている。私たちはまず、今回の惨事を1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)と比べてみた。50年前、エジプト軍とシリア軍が奇襲攻撃を仕掛け、イスラエルを立て続けに打ち負かしたが、その後、イスラエル国防軍が態勢を立て直して主導権を奪い返し、形勢を逆転させた。 だが今度の出来事は、いくつものキブツや集落で起こった大虐殺の恐ろしいニュースや画像が続々と届くにつれ、ヨム・キプール戦争とは似ても似つかないものであることに私たちは気づいた。新聞やSNSや家庭で、人々はユダヤ民族にとって最悪の時代を引き合いに出している。例えば、ホロコーストでナチスのアインザッツグルッペン(移動虐殺部隊)が村落を包囲してユダヤ人を殺害したときや、ロシア帝国でユダヤ人の大虐殺が行なわれたときのことだ。 私自身も、ベエリとクファル・アザのキブツに親族や友人がおり、ぞっとするような話を多く耳にしてきた。ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった。) 私の99歳になる伯父と、その妻で89歳の伯母は、ベエリのキブツに住んでいる。そこがハマスの手に落ちて間もなく、まったく連絡がつかなくなった。2人は、何十人ものテロリストが暴れ回り、人々を惨殺している間、ずっと自宅で息を潜めていたそうだ。やがて私のもとに、2人が助かったという連絡があった。だが、多くの知人が人生で最悪の知らせを受け取った。 伯父夫妻はともに、たくましいユダヤ人だ。第1次世界大戦と第2次世界大戦の大戦間に東ヨーロッパで生まれ、ホロコーストですでに1つの世界を失っている。私たちは、身を守る術(すべ)のないユダヤ人たちが、ナチスの魔手を逃れるために戸棚の中や地下室に身を隠したが、誰も助けに来てくれなかったという話を聞いて育った。イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?』、「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。
・『イスラエルの機能不全の真の原因は「ポピュリズム」 ある意味で、イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 破壊された建物の外にいるパレスチナ人住民。 だからといって、イスラム原理主義組織ハマスによる残虐行為は正当化できない。そもそもハマスは、イスラエルと平和条約を締結する可能性を容認したためしがなく、オスロ合意に基づく和平の進展を、ありとあらゆる手を使って妨げてきた。平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った。 政府は、外部からの脅威が高まっているさなかに、政策がイスラエルを危険にさらし、抑止力を損なっていると、自国の治安部隊や無数の専門家から繰り返し警告されていた。それにもかかわらず、イスラエル国防軍の参謀総長が、政府の政策が及ぼす治安上の影響についてネタニヤフに警告するために会見を求めると、ネタニヤフは会うことを拒んだ。それでもヨアヴ・ガラント国防相が警鐘を鳴らすと、ネタニヤフは彼の更迭を決めた。その後それを撤回せざるをえなくなったが、それは民衆が激しい怒りを爆発させたからにすぎない。ネタニヤフがそのような行動を長年取り続けたせいで、イスラエルが惨禍に見舞われる状況を招いたのだ。 イスラエルや、イスラエル=パレスティナ紛争をどう考えていようと、ポピュリズムがイスラエルという国家を蝕(むしば)んだことを、世界中の他の民主主義国家は教訓として受け止めるべきだ』、「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。
・『依然として破局を防ぐことができる イスラエルは、自らが破局を迎えることを依然として防ぐことができる。イスラエルは、ハマスをはじめ、多くの敵たちに対して今なお軍事面で圧倒的な優位に立っている。ユダヤ民族の長い苦しみの歴史の記憶が、今、国民を奮い立たせている。イスラエル国防軍その他の国家機関は、当初の衝撃から立ち直りつつある。市民社会は、かつてないような形で立ち上がり、政府の機能障害が残した多くの隙間を埋めている。市民は長蛇の列を成して献血し、交戦地帯からの避難民を自宅に喜んで受け入れ、食物や衣料、その他の必需品を寄付している。 助けが必要な今このとき、私たちは世界中の友人たちにも支援を呼びかけている。これまでのイスラエルの振る舞いには、とがめるべきことが多々ある。過去を変えることはできないが、ハマスに勝利した暁には、イスラエルの人々は現政権に責任を取らせるだけではなく、ポピュリズムの陰謀論やメシア信仰の幻想も捨て去り、そして、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力をすることが願われてやまない。 (ユヴァル・ノア・ハラリ氏の略歴はリンク先参照)』、「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。
次に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/719481
・『イスラエル軍によるガザ攻撃が再開され、状況の悪化がさらに深刻になっているイスラエル・ハマス紛争は、収束の道がまったく見えない状況が続いている。 そんな中、主要国の間で「イスラエルとパレスチナ国家が平和共存する」という「二国家解決案」が活発に議論され始めた。激しい戦闘のさなかに、互いに相手を国家として認めるという現実離れした夢物語のような話がなぜ今、国際社会で取り上げられているのか』、興味深そうだ。
・『パレスチナと認め合った30年前の「オスロ合意」 二国家解決案の歴史は古く、最初は1947年、独立を求めるユダヤ人とパレスチナ人の緊張が高まる中、国連が総会でこの地域を2つの国家に分割する案を採択した。 パレスチナは領土の半分以上を奪われる案だったために当然、反対したが、ユダヤ人はこの案を受け入れて翌年、イスラエルの独立を宣言した。ユダヤ人とパレスチナ人の緊張はここから一気に高まってしまった。 世界的に注目されたのは1993年の「オスロ合意」だった。 この合意でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫してしまった。 以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権と言われている』、「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。
・『ガザの非人道的状況を国際社会は放置できない 一方のパレスチナ側はヨルダン川西岸とガザ地区が分裂し、ガザはイスラエルの存在を否定するハマスが支配し、イスラエルに対する攻撃やテロを続けている。オスロ合意にかかわったPLOのアラファト議長も死去し彼を引き継ぐ有力な指導者は登場していない。 イスラエルとパレスチナの間で和平の動きは完全に消えてしまい、国際社会も次第にパレスチナ問題に対する関心を失っていった。そればかりか同じ民族でパレスチナを支持していたアラブ諸国からは、イスラエルとの国交を樹立する国も相次ぎ、パレスチナ側は孤立感を深めていた。 そうした空気が今回のハマスのイスラエル攻撃で一変した。イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している。 11月末には、スペインで開かれたアラブ・EU外相会合で、参加国は二国家解決案が必要という意見で一致した。さらに国連安保理の議論では、インドネシアやロシア、ガーナなども二国家解決案への支持を表明した。 多くの国が二国家解決論を唱えたからといって武力攻撃が止まるわけではない。にもかかわらずなぜ今、セピア色を帯びたような二国家解決案を持ち出したのだろうか』、「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。
・『イスラエルに対して手を打てない国際社会 最大の理由は、イスラエルの攻撃がガザ市民の危機的状況を生み出していることに対し、国際社会はなにかメッセージを出さざるをえないためだろう。どの国の指導者もネタニヤフ首相の軍事行動やハマスの攻撃を止めることができない。また歴史的経緯もあって欧米など多くの国はイスラエルをあからさまに非難することもできない。 そんな中でイスラエルもパレスチナも一度は合意した二国家解決案は、一見説得力を持っているように見える便利な方策なのだ。 残念なことにオスロ合意から30年たち、パレスチナ問題をめぐる状況は大きく変化しており、仮に現在の紛争が停戦にこぎつけたとしても二国家解決案は簡単に実現しそうにはない。 オスロ合意を実現したイスラエルのラビン首相は、1991年の湾岸戦争時にイランがイスラエルにミサイルを発射し若者が逃げ惑う状況を見て、「紛争は自分たちの代に終わらせなければならない」と強く思ったという。和平実現に対する強い意志と情熱を持ったラビン首相がPLOのアラファト議長を説得したことで合意することができた。 それに対し現在のネタニヤフ首相は「パレスチナ国家樹立を阻止できるのは自分だけだ」などと公言している正反対の政治家だ。) そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている』、「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。
・『新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか 仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。 つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。 またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。 今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。 統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。) さらにパレスチナ難民の扱いもある。近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう。 経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか。ウクライナ戦争などで顕在化した欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい』、「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。
・『ガザばかりでなくヨルダン川西岸でも目立つ弾圧 かつては現実的な解決策だった二国家解決案は、30年の時を経ていまや手の届かない「理想」に変質してしまったのである。にもかかわらず多くの国がこの案を持ち出すのは、建設的な姿勢を見せるための方便としか見えない。 ガザでは連日、多くの犠牲者が出ているが、同時にあまり注目されていないがヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人への弾圧が目立っている。相互不信、憎悪の極限状態にある両者に任せても状況は改善されず、永遠にテロと武力攻撃が続くだけだ。だからと言って妙案があるわけではない。 紛争をイスラエルとハマスの問題に封じ込めないで、深刻な国際問題と認識し、国連など国際機関や主要国が連携して本気で取り組む段階にきている。主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう』、「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。
第三に、12月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120433?imp=0
・『テロ攻撃を1年以上前から把握 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた』、「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。
・『軍事情報機関研究部門の責任者が暴露 男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。 記事は反響を呼んだ。 米メディア、ポリティカ欧州版は翌21日、ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた。イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は、実名でハアレツの取材に応じて「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」と暴露した。 彼は、ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ。 11月24日には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊、8200部隊の下士官も、内部告発に加わった。彼女はハアレツに匿名で「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」と訴えた。こうした流れのなかで、冒頭に紹介した「イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていた」という特ダネが出てきたのだ。これも内部告発に基づく情報とみていいだろう。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない』、「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。
・『ハマスを支援していたネタニヤフ政権 ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していたのである。それは、テロ攻撃の前から指摘されていた。たとえば、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は2021年5月16日のコラムで、こう書いている。 〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉 つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。 こうした分析は、いまや広く世界で共有されている。歴史家のアダム・ラズ氏は10月20日、ハアレツ紙上でこう指摘した。 〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉 〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉 〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉』、「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。
・『退場のときが近づく 10月20日付の英ガーディアンは、ネタニヤフ氏が2019年3月、自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している。彼は、こう演説していた。 〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉 政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た。先に触れた11月21日付のポリティコは、イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介している。 〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう。 12月6日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「自民党の政治資金問題」について解説しました。 7日には「カナダに出国した香港の周庭は安全か」を、同じく1人語りで配信しました。 8日には、ニコ生番組「長谷川幸洋Tonight」で、イスラエル情勢などについて解説します』、「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。
第四に、12月8日付けNewsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103169.php
・『<イスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから、悪夢の歴史を持つドイツで「反ユダヤ」的な事件が頻発するように。過激な事件も起きている> イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲と、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を受けて、ホロコーストの過去を持つドイツが揺れている。 政府は全面的なイスラエル支持を表明しているが、国内では反ユダヤ主義的な事件が急増。反ユダヤ主義調査情報センター(RIAS)によれば、衝突が始まった10月7日から11月9日にかけて、ドイツで起きた反ユダヤ主義的事件は994件。1日平均29件に達し、昨年同時期の320%増となっている。 その多くは攻撃的な言動などのレベルにとどまるが、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に火炎瓶が投げ付けられるなど一部で過激な事件も発生している。 +994件(10月7日から11月9日にかけてドイツ国内で発生した反ユダヤ主義的事件の件数) +29件(事件の1日当たりの平均件数) +320%増(昨年同時期との比較)』、「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。
タグ:「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 Newsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」 いている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。 「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づ そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。 「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。 「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ 「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。 長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」 現代ビジネス 「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。 「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。 「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、 「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。 「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、 「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。 宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や 「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。 薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」 恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。 何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無 「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。 「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 ・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。 「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」 東洋経済オンライン (その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) イスラエル・パレスチナ