エネルギー(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) [産業動向]
エネルギーについては、本年8月26日に取上げた。今日は、(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ)である。
先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328744
・『ガソリン補助金の延長が、岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開で決まった。しかし、合理的に考えれば、補助金はもう「やめ時」ではないか。その理由をお伝えする』、興味深そうだ。
・『いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」 ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。 補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。 政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか』、「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。
・『「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項 ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。 元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。 さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。 ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。 ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている』、「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。
・『新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ 制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。 新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。 「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。 ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。 トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう』、「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。
・『「価格への補助」はもうやめた方がいい 政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。 まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。 世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。 加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。 つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。 とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ』、「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。
・『金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか 高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。 また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。 もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。 街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。 経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい』、「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。
・『不合理が実現する合理的な理由 筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、 (1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、 (2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、 というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。 しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。 まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。 直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。 「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある』、「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。
次に、12月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/333393
・『水素で走る燃料電池電気自動車(FCV)の普及は進んでいないが、鉄道ではいずれ「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が構想を発表したのである。各社の取り組みと実現に向けた今後の計画とは』、興味深そうだ。
・『水素ステーションのネックは鉄道では問題にならない 子どものころ、未来の自動車は「水素」で動くようになると漠然と信じていた記憶がある。たぶん、自動車業界の最新動向を伝えるニュースでも見たのだろう。90年代初頭は大手自動車メーカーが燃料電池電気自動車(FCV)の開発を本格化した時代だった。 2000年代に入るとFCVのリース販売が限定的ながら始まり、2014年にトヨタが量産FCV「MIRAI」を、2016年にはホンダが「クラリティフューエルセル」を発売したが、それ以上の広がりは見えないのが実情だ。 充電時間と航続距離が課題のBEV(バッテリー式電気自動車)に対して、FCVの水素充填時間、航続距離はガソリン車と同等で、エンジン搭載車に近い感覚で利用できる利点がある。しかし、電気があればどこでも充電できるBEVですら普及が遅れている中で、水素ステーションなど専用インフラを必要とするFCVが主流になるのは難しいだろう。) 水素自動車が走り回る「未来」は実現しなさそうだが、もしかすると鉄道には「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が相次いで将来構想を発表したのである。 鉄道の環境性能は自動車より格段に優れているが、カーボンニュートラルが叫ばれる中、非電化路線を走る気動車(ディーゼル車)の排気ガスを無視できなくなった。ディーゼルエンジンで発電してモーターで走行するハイブリッド車も登場しているが、いずれは内燃機関自体が使えなくなる。 そこで注目されるのが自動車と同様、バッテリー式の電車だ。JR東日本とJR九州は、電化区間は架線から集電して走行と充電を行い、非電化区間ではバッテリーの電力で走行する電車を実用化している。 しかし、航続距離と充電時間がネックなのも同様で、実用的な走行距離は30キロメートル程度、速度も出せない。現状では電化された本線から分岐する非電化の短距離支線に、本線からの直通電車を走らせるのが限度である。 少なくとも現在の技術水準では、非電化ローカル幹線で高速、長距離運転を行う気動車を置き換えることは困難であるため、ディーゼルエンジンと同等以上の走行性能を持ち、航続距離も長いFC車両に注目が集まった。 自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている』、「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。
・『2030年の実用化を目指すJR東日本 JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」だ。屋根上に設置した水素タンクから床下の燃料電池に水素を供給し、電池に充電。直接的には電池でモーターを回す仕組みだ。搭載するFCスタックは、燃料電池バス「SORA」やMIRAIに使われているトヨタ製のものを流用している。 MIRAIは3本のタンクに計141リットル(充填圧力70MPa、以下同)の水素を搭載し、800キロ程度走行可能なので燃費は5.6km/L。一方、HYBARIは2両編成に20本のタンクを設置し、計1020リットルの水素で最大140キロ走行可能なので0.13km/Lとなる。) ちなみにSORAはタンク10本計600リットルで約200キロなので0.3km/Lだ。当然ながら車体が大きいほど燃費は悪くなるが、定員はMIRAIが5人、SORAが79人、HYBARIが約250人だ。相応の輸送需要があれば効率的だが、閑散区間ではMIRAIを走らせた方が経済的になってしまう。全ての気動車をFC車両で更新するにはまだまだコストの壁が高いと言わざるを得ない。 もうひとつの問題、水素供給体制については2022年5月、ENEOSと鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定を締結。2030年までにFC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ。こうした条件から、JR東日本はまず川崎を拠点に水素利用拡大を進めることになる』、「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。
・『JR西日本は関西電力などとインフラ整備構想で合意 JR西日本は今年4月、環境長期目標「JR西日本グループゼロカーボン2050」の達成に向けて鉄道資産を活用した水素利活用の検討を開始し、燃料電池列車の開発と将来的な気動車の置き換えを進めると発表した。 貨物駅などに総合水素ステーションを設置し、燃料電池列車やバス、トラック、乗用車に対する水素供給と、JR貨物による水素輸送の拠点として活用。自治体や企業と連携して、グリーンで持続可能な交通ネットワークを実現するとともに、JR西日本が水素の利用・供給・輸送に関与するプラットフォーマーになろうという意欲的なビジョンだ。 これを具体化したのが11月21日、「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について関西電力、JR貨物、NTT、パナソニックなどと基本合意したとの発表だ。 4月の発表は鉄道の脱炭素化を強調した内容だったが、今回はFC車両開発の具体化を待たず、関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意というのが興味深い。もっとも2030年代の社会実装を目指して今後「実現可能性を調査」するというから、見切り発車感は否めないが、構想の具体化に期待したい』、「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。
・『水素エンジンの開発に乗り出すJR東海 異なるアプローチで水素活用を検討しているのがJR東海だ。11月16日、既に開発を進めているFC車両に加え、水素を燃料とする「水素エンジン」の開発に着手すると発表したのだ。 水素エンジンといえば、トヨタが開発するガソリンエンジンをベースにした乗用車用のものが有名だが、こちらは既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する。 二正面作戦の理由は、燃料電池と水素エンジンは出力やエネルギー効率など特性が異なるため、山間部を長距離走行するJR東海の非電化路線への適合性を検証するのが目的とのこと。2024年度以降、走行条件を再現可能な研究施設で水素エンジンの模擬走行試験を実施する計画だ。なお将来の水素供給体制はENEOSと協力する。 水素を脱炭素の有力な選択肢と考える政府は、水素の導入量を2040年までに現状の6倍に引き上げる目標を掲げるが、現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい』、「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328744
・『ガソリン補助金の延長が、岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開で決まった。しかし、合理的に考えれば、補助金はもう「やめ時」ではないか。その理由をお伝えする』、興味深そうだ。
・『いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」 ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。 補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。 政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか』、「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。
・『「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項 ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。 元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。 さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。 ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。 ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている』、「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。
・『新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ 制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。 新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。 「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。 ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。 トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう』、「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。
・『「価格への補助」はもうやめた方がいい 政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。 まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。 世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。 加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。 つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。 とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ』、「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。
・『金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか 高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。 また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。 もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。 街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。 経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい』、「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。
・『不合理が実現する合理的な理由 筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、 (1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、 (2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、 というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。 しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。 まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。 直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。 「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある』、「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。
次に、12月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/333393
・『水素で走る燃料電池電気自動車(FCV)の普及は進んでいないが、鉄道ではいずれ「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が構想を発表したのである。各社の取り組みと実現に向けた今後の計画とは』、興味深そうだ。
・『水素ステーションのネックは鉄道では問題にならない 子どものころ、未来の自動車は「水素」で動くようになると漠然と信じていた記憶がある。たぶん、自動車業界の最新動向を伝えるニュースでも見たのだろう。90年代初頭は大手自動車メーカーが燃料電池電気自動車(FCV)の開発を本格化した時代だった。 2000年代に入るとFCVのリース販売が限定的ながら始まり、2014年にトヨタが量産FCV「MIRAI」を、2016年にはホンダが「クラリティフューエルセル」を発売したが、それ以上の広がりは見えないのが実情だ。 充電時間と航続距離が課題のBEV(バッテリー式電気自動車)に対して、FCVの水素充填時間、航続距離はガソリン車と同等で、エンジン搭載車に近い感覚で利用できる利点がある。しかし、電気があればどこでも充電できるBEVですら普及が遅れている中で、水素ステーションなど専用インフラを必要とするFCVが主流になるのは難しいだろう。) 水素自動車が走り回る「未来」は実現しなさそうだが、もしかすると鉄道には「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が相次いで将来構想を発表したのである。 鉄道の環境性能は自動車より格段に優れているが、カーボンニュートラルが叫ばれる中、非電化路線を走る気動車(ディーゼル車)の排気ガスを無視できなくなった。ディーゼルエンジンで発電してモーターで走行するハイブリッド車も登場しているが、いずれは内燃機関自体が使えなくなる。 そこで注目されるのが自動車と同様、バッテリー式の電車だ。JR東日本とJR九州は、電化区間は架線から集電して走行と充電を行い、非電化区間ではバッテリーの電力で走行する電車を実用化している。 しかし、航続距離と充電時間がネックなのも同様で、実用的な走行距離は30キロメートル程度、速度も出せない。現状では電化された本線から分岐する非電化の短距離支線に、本線からの直通電車を走らせるのが限度である。 少なくとも現在の技術水準では、非電化ローカル幹線で高速、長距離運転を行う気動車を置き換えることは困難であるため、ディーゼルエンジンと同等以上の走行性能を持ち、航続距離も長いFC車両に注目が集まった。 自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている』、「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。
・『2030年の実用化を目指すJR東日本 JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」だ。屋根上に設置した水素タンクから床下の燃料電池に水素を供給し、電池に充電。直接的には電池でモーターを回す仕組みだ。搭載するFCスタックは、燃料電池バス「SORA」やMIRAIに使われているトヨタ製のものを流用している。 MIRAIは3本のタンクに計141リットル(充填圧力70MPa、以下同)の水素を搭載し、800キロ程度走行可能なので燃費は5.6km/L。一方、HYBARIは2両編成に20本のタンクを設置し、計1020リットルの水素で最大140キロ走行可能なので0.13km/Lとなる。) ちなみにSORAはタンク10本計600リットルで約200キロなので0.3km/Lだ。当然ながら車体が大きいほど燃費は悪くなるが、定員はMIRAIが5人、SORAが79人、HYBARIが約250人だ。相応の輸送需要があれば効率的だが、閑散区間ではMIRAIを走らせた方が経済的になってしまう。全ての気動車をFC車両で更新するにはまだまだコストの壁が高いと言わざるを得ない。 もうひとつの問題、水素供給体制については2022年5月、ENEOSと鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定を締結。2030年までにFC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ。こうした条件から、JR東日本はまず川崎を拠点に水素利用拡大を進めることになる』、「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。
・『JR西日本は関西電力などとインフラ整備構想で合意 JR西日本は今年4月、環境長期目標「JR西日本グループゼロカーボン2050」の達成に向けて鉄道資産を活用した水素利活用の検討を開始し、燃料電池列車の開発と将来的な気動車の置き換えを進めると発表した。 貨物駅などに総合水素ステーションを設置し、燃料電池列車やバス、トラック、乗用車に対する水素供給と、JR貨物による水素輸送の拠点として活用。自治体や企業と連携して、グリーンで持続可能な交通ネットワークを実現するとともに、JR西日本が水素の利用・供給・輸送に関与するプラットフォーマーになろうという意欲的なビジョンだ。 これを具体化したのが11月21日、「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について関西電力、JR貨物、NTT、パナソニックなどと基本合意したとの発表だ。 4月の発表は鉄道の脱炭素化を強調した内容だったが、今回はFC車両開発の具体化を待たず、関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意というのが興味深い。もっとも2030年代の社会実装を目指して今後「実現可能性を調査」するというから、見切り発車感は否めないが、構想の具体化に期待したい』、「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。
・『水素エンジンの開発に乗り出すJR東海 異なるアプローチで水素活用を検討しているのがJR東海だ。11月16日、既に開発を進めているFC車両に加え、水素を燃料とする「水素エンジン」の開発に着手すると発表したのだ。 水素エンジンといえば、トヨタが開発するガソリンエンジンをベースにした乗用車用のものが有名だが、こちらは既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する。 二正面作戦の理由は、燃料電池と水素エンジンは出力やエネルギー効率など特性が異なるため、山間部を長距離走行するJR東海の非電化路線への適合性を検証するのが目的とのこと。2024年度以降、走行条件を再現可能な研究施設で水素エンジンの模擬走行試験を実施する計画だ。なお将来の水素供給体制はENEOSと協力する。 水素を脱炭素の有力な選択肢と考える政府は、水素の導入量を2040年までに現状の6倍に引き上げる目標を掲げるが、現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい』、「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
タグ:エネルギー (その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」 「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。 「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。 「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。 「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。 「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。 「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。 枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」 「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。 「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。 「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。 「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。