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商社問題(その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学) [企業経営]

商社問題については、2021年1月24日に取上げた。今日は(その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学)である。

先ずは、本年5月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323295
・『三菱商事の2023年3月期連結決算は、初めて純利益が1兆円を超えた。実は海外には、日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように総合商社の事業領域は幅広く、資源や穀物を輸入に頼る日本ならではのビジネスモデルだ。一方で株価には割安感があり、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増してもいる』、興味深そうだ。
・『バフェットも見初めた日本の5大総合商社  三菱商事の2023年3月期の連結決算は、初めて純利益が1兆円台を上回り、2年連続で過去最高益を更新した。同社は2月に公表していた株主への価値還元も強化するという。 今年4月、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイCEO)は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価している。 三菱商事に関する今後の注目点の一つは、世界経済の環境変化にいかに対応するかだ。地政学リスクは、台湾問題の緊迫感や、ウクライナ紛争の今後の展開など見通しづらい要素が山積している。 また、脱炭素の動きも加速するだろう。洋上風力発電など、再生可能エネルギー由来の電力供給体制はいっそう強化されるはずだ。三菱商事はエネルギー分野での強みを発揮することで、収益獲得のさらなる機会につなげることができるかもしれない。大手商社の業務展開には、大いに期待を持って注視したい』、「著名な投資家ウォーレン・バフェット氏・・・は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価」、なるほど。
・『三菱商事はいかに純利益1兆円を突破したか  23年3月期の三菱商事の連結純利益は、前年度比25.9%増の1兆1807億円だった。従来の自社予想(1兆1500億円)も上回った。 純利益の増加によって、同社は1株当たりの配当金を前年度実績の150円から180円に増やした。自社株取得の上限金額も同700億円から3700億円へ拡充された。 現在、同社の事業ポートフォリオは10分野から構成されている。具体的に、天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンビニのローソンなどコンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発だ。 セグメントごとに決算内容を確認すると、9分野で純利益は増加した。増えなかった1分野は食品産業で、海外事業における固定資産からの減損の発生などが減少要因だ。 純利益1兆円突破の背景にはいくつかの要因がある。まず、円がドルなど主要な通貨に対して減価した(円安の進行)。22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている。日米の金融政策の違いなどによって円安が進んだ結果、同社の収益は上振れた。また、原油など世界的な資源価格の上昇も大きい。 そうした外的要因だけでなく、事業ポートフォリオの見直しと入れ替えの加速も好影響を与えた。具体的には、不動産運用会社や海外での発電事業の一部を売却し、投資資金を回収した。資金が再配分されている分野の一つが、脱炭素関連分野である。 異常気象や大気汚染などの問題に対応するために、脱炭素は急務と化している。主要先進国では、石炭などの火力発電を減らし、再生エネルギーを用いた発電が強化されている。世界的な「エネルギー・トランスフォーメーション(EX)」に対応しようと、事業分野を拡大した結果、純利益1兆円を突破したのだ』、「22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている」、とすると750億円の増益要因になる。
・『強みを見せつけた三菱商事の洋上風力発電コンペ EXの中でも注目を集めているのが洋上風力発電だ。三菱商事は、日本の電力関係者を驚かせる象徴的な出来事を成し遂げた。 さかのぼること20年11月、政府は秋田県沖と千葉県沖において、三つの洋上風力案件を公募した。原子力発電所の稼働が遅れるわが国にとって、再成可能エネルギーをいかに増やすかは、産業競争力、経済安全保障体制にかなりの影響を与える。 台湾海峡の緊迫感の高まりやウクライナ紛争の長期化懸念などを背景に、わが国に直接投資を増やす企業も増えている。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子は良い例だ。そうした海外企業が安心して長期に事業を運営するためにも、洋上風力を用いた発電体制の強化は、わが国のEXの切り札といっても過言ではない。 公募の結果、3区域のすべてで三菱商事を中心とする企業連合が事業者に選定された。日本には、洋上風力に必要な大型風車を生産するメーカーがない。だから三菱商事は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米Amazonなどの協力を取り付けた。 GEなどが製造する機器や設備を用いて洋上発電を行い、その電力をAmazonなどの顧客が消費する。川上から川下までをつなぐ事業体制を早期に確立できる計画に加えて、三菱商事は競合相手を引き離す低料金などを提示したのだった。 総合商社の強みは、世界中に情報網を張り巡らせていることだ。それをベースに、収益増加が見込まれる分野に経営資源を再配分して需給のマッチングを図れば、新しい技術や理論を導入して収益性を高めることができる。三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけているというわけだ』、「三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけている」、なるほど。
・『世界でまれなビジネスモデルと株価の割安感  三菱商事の24年3月期の業績見通しは、一転して、純利益は9200億円に減少すると予想している。市況の反落などが要因だという。ただそれでも、過去の純利益の推移で見れば、9000億円台は相応に高い水準だ。資産の売却、得られた資金の再配分によるデジタル化や脱炭素関連分野での事業運営体制の強化といった成長戦略に支えられ、業績は底堅く推移しそうだ。 世界各国の主要企業のビジネスモデルを比較すると、三菱商事など日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように、総合商社は経済活動の川上から川下までを広くカバーする。エネルギー資源や穀物などを輸入に頼るわが国経済が生み出した、独自性の高いビジネスモデルであるともいえる。 一方で株価には割安感がある。1990年代初頭にバブル経済が崩壊して以降、わが国経済の成長率は停滞した。ごく最近でこそ日経平均株価は好調なものの、世界的に見て、日本株は長らく割安感が強かった。 総合商社は複合的な事業ポートフォリオを持つため、これまで、ともすれば事業内容が分りにくいといった投資家の見方(コングロマリット・ディスカウント)が多かった。そうした事情もあり、総合商社株は割安に推移してきた。 5月15日時点で、三菱商事の株価純資産倍率(PBR)は0.95倍である。理論上、今すぐに企業が解散する場合、株主が受け取れる純資産の価値を下回る水準で株価は放置されている。他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい。それは、わが国経済の活力向上に大きく影響するはずだ。 【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。 11段落目:「1円の円安/円高が、年間40億円の増減益の要因」→「1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因」 (2023年5月29日16:10 ダイヤモンド編集部)』、「他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい」、なるほど。

次に、8月8日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/692943
・『伊藤忠商事が巨額投資に打って出る。 8月2日、連結子会社の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表したのだ。公開買い付け期間は9月14日まで。現在の出資比率は61.24%で、TOBが成立すればCTCは上場廃止となり完全子会社化される。 投じる資金は3876億円。中国政府系コングロマリットのCITIC(中国中信集団)への6000億円の出資(2015年)、5800億円を投じたファミリーマート完全子会社化(2020年)以来の規模となる』、投下資本は過去3番目の大きさだ。
・『記者会見は30分で打ち切られた  CTCの非公開化で企業改革に向けたさらなる経営資源投入、機動的な施策の実行が可能となり、当社およびCTCの収益拡大を実現できる」。会見で石井敬太社長は、CTC完全子会社化の意義をそう語った。 だが、これだけの大型案件にもかかわらず、記者会見は慌ただしくオンラインで開かれ、30分ほどで打ち切られた。 CTCへのTOBを巡っては、8月4日に開かれた第1四半期(4~6月期)決算説明会でも質問が集中した。冒頭、鉢村剛最高財務責任者(CFO)は「安いかどうかは別として、適正な価格で買えたと思っている」と言葉を濁した。) CTC株の買い付け価格は1株4325円。公表資料によれば、7月7日に伊藤忠が提示した買い付け価格は3800円(6日の終値比6.77%のプレミアム)だ。その後の交渉で、価格は4000円、4080円、4090円とじりじりと引き上げられ、7月31日には4200円(前営業日の終値比19.69%のプレミアム)を提案した。 それでも首を縦に振らないCTC側に対して、伊藤忠側は「これ以上引き上げるのは困難」といったん通知したものの、翌8月1日には4325円(7月31日終値から20.07%のプレミアム)を提示して「応諾」となった。 伊藤忠による子会社のTOBを巡っては現在、係争中の案件がある。2020年のファミリーマートへのTOBでは当初1株2600円を提示したものの、その後、コロナ禍による環境変化を理由に2000円まで引き下げ(特別委員会は2800円が適正価格と主張)、結局、2300円に引き上げた。 今年3月、元株主のファンドから買い取り価格決定の申し立てを受けた東京地方裁判所は1株2600円が妥当などとする判断を下し、ファミリーマートが東京高等裁判所に抗告している(「安すぎた」ファミマTOB、伊藤忠との攻防の全内幕)』、「伊藤忠」は総じて「買い取り価格」の引上げには慎重なようだ。
・『「考え方の開きはずいぶんあった」  今回、「引き上げ困難」の通知からわずか1日でCTCの買い付け価格が引き上げられた背景について伊藤忠は「交渉上の判断」(広報部)とだけ回答。鉢村CFOは説明会で、「CTCとわれわれのCAGR(年平均成長率)に対する考え方の開きはずいぶんあった」と明かしたうえで、「最終的に合意した4325円は、今後の(CTCの)成長と合致する計算にはなっている」と述べた。 買い付け価格については伊藤忠側が折れた形となったが、ではなぜ、そこまでして伊藤忠はCTCの非公開化にこだわったのか。 鉢村CFOは「情報産業分野の大きな成長率、市場の評価、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の高さを伊藤忠に取り込んでいく」と話した。CTCの完全子会社化は、5~6年前から議論を続けてきた案件だったが、「IT分野は2024~2027年にかけて成長率が大きく伸びる」(鉢村氏)という見通しが背中を押したようだ。) だが、CTCの企業価値最大化のために伊藤忠から資金や人材を投入しても、出資比率が現状の6割程度では利益が少数株主に外部流出していく。 「こうした外部流出を考えると意思決定のスピードが遅くなる」(情報・金融カンパニープレジデントの新宮達史氏)という課題を抱えていた。完全子会社化で、迅速な意思決定が可能になり、思い切った経営資源の投入が可能になるというわけだ。 CTCを取り巻く競争環境の変化もTOBを後押しした大きな要因と言える。 CTCの歴史は1958年、伊藤忠などが設立した東京電子計算サービスにさかのぼる。当時ではまだ珍しかったコンピュータの輸入販売、計算機センターの運営事業を始めた。その後、事業再編を続けながら電子機器の販売、保守点検を収益柱に成長し、1999年に東証一部に上場(当時は伊藤忠テクノサイエンス)。初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた』、「初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた」、異常な買い人気だったようだ。
・『クラウド化が進むにつれ強力なライバル登場  当時の佐武広夫社長は、日刊工業新聞のインタビューに、「一部上場による知名度の向上で人材確保の幅が広がる。日本はこれから本格的なウェブ活用時代に突入するので、これに対応する商品の先行開発が必要だ」と語っていた。 インターネット時代をリードし、伊藤忠グループのIT部門の中核として機能し続けたCTCだったが、クラウド化が進むにつれ、最新機器を販売する「プロダクトアウト」の発想から、顧客が求めるサービスを提供する「マーケットイン」への転換を迫られている。 IT業界では、川上の戦略コンサルから川下のシステム運用や業務受託まで請け負うアクセンチュアなど強力なライバルが現れ、「CTCが気づいた時にはもう案件を取られているケースが多発している」(伊藤忠の情報・通信部門幹部)。しかも、アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ。 しかし、新宮氏は「従来のビジネスモデルとサービス範囲で持続的に成長していくことは難しい。伊藤忠グループの海外ネットワーク、ビジネスノウハウ、経営資源をこれまで以上に活用した事業投資、ビジネスモデルの変革、事業領域、提供機能の大幅な拡充が必要」と危機感をあらわにする』、「アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ」、なるほど。
・『修正を迫られる伊藤忠の「群戦略」  今後、CTC自体も海外展開を積極化し、コンサルやデータ分析機能を強化して素早く顧客ニーズに応えていく必要がある。「CTCにお金を突っ込んで、今の状況よりさらに企業価値を上げていかなければ乗り遅れてしまう」(鉢村氏)。「緩やかな群戦略」は、修正を迫られている。 CTCと並び、伊藤忠のIT企業群の中核となるコールセンター最大手「ベルシステム24」へのテコ入れも必須だろう。最下流のBPO(業務委託)の分野でカギとなる企業で、伊藤忠は40%超を出資している。 コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している』、「コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している」、「伊藤忠」の出方が要注目だ。

第三に、12月9日付けForbes「「三方よし資本主義」を標榜。伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/67762
・『ステークホルダー資本主義ランキング2位、自然資本ランキングでは1位を獲得した伊藤忠商事。「万年4位」から脱却、時価総額を約5倍に引き上げた会長 CEO・岡藤正広に見る「三方よし」の経営戦略。 伊藤忠商事には「社友会」というOB・OG組織がある。会長CEOの岡藤正広は、社友会メンバーからの手紙を楽しみにしている。これまでに多数の人から、「いい会社にしてくれてありがとう」という感謝がつづられていたことがあったからだ。 「大学時代の友人でほかの商社で働いていた人から『伊藤忠は変わった』と褒められて、自分は鼻が高いという話でした。これはうれしいわな。業績を良くしたり時価総額で上を目指すのも、“ええ会社”と言われたくてやってますから」 岡藤がいい会社と評価されて喜ぶのは、かつてはそうではなかったことの裏返しでもある。社長就任は2010年。当時は商社の中で万年4位。ある取引先に社長就任のあいさつに行くと、待たされたあげく、相手の社長は腰を下ろすことなく立ち話で済ませて帰っていったという。 あれから13年。伊藤忠は21年3月期決算で、株価、時価総額、純利益の3つで五大商社トップとなる「3冠」を初めて達成した。資源高の影響で、非資源の割合が大きい伊藤忠はその後2年は首位を明け渡しているが、それぞれの指標は3冠達成時より伸びている。投資の神様ウォーレン・バフェットが日本の五大商社の株を取得して話題になったが、23年4月の来日時、真っ先に会ったのが岡藤だった。堂々の“ええ会社”である。 ただし、株価などの指標は、いい会社の一面に過ぎない。岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない」 実際、ビジネスは変わりつつある。今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる』、「岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない・・・今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる」。なるほど。
・『「ロイヤルティをもて」は通用しない  岡藤が考えるいい会社をさらに掘り下げてみよう。人的資本経営が注目を集めているが、岡藤は「社員がロイヤルティをもってくれる会社がいい会社」と言う。 「もちろん会社が一方的に社員に『ロイヤルティをもて』と言うだけでは愛情をもってくれません。まずは会社が社員に対して、ほかの会社よりうちがいいと思われるような動きをしないといけない」 社員にロイヤルティをもってもらうために力を入れてきた施策がふたつある。ひとつは健康経営。がんで闘病していた社員の死をきっかけに、がんの特別検診や、がんと仕事の両立支援制度を導入した。 もうひとつは、朝型勤務だ。昔はモーレツに働くことが商社の誇りだったが、今は長時間勤務が忌避される。ただ、単に時短にするだけでは稼げなくなる。生産性を高めるために13年に導入したのが朝型勤務だった。 「最初は不評でしたよ。フレックスで10時に来て、新聞を30分読んで、『そろそろランチか。食堂行こ』と言うとる社員もおったから。文句たらたらの匿名メールもたくさん来ました。朝だと食事の準備が大変だし、残業代で生活してたから困るというわけです。だから朝来たら残業代は1.5倍にして、食事の提供も始めた。すると、早ければ3時に『お先に』と帰れる。今はもう、元には戻れないという社員ばかりです」 早く帰れば家族と過ごしたり自己研さんに充てたりと、一人ひとりが自分の人生を充実させるために時間を使える。朝型勤務は多様な働き方が求められる時代にふさわしい制度だ。 一方で、リモートワークに懐疑的なのは岡藤らしい。コロナ禍ではリモートワークを導入したが、感染が収束するといち早く原則出社の方針を打ち出した。「在宅は生産効率が落ちまっせ。画面の下はみんなパジャマでしょ。なかには画面切った途端に横になって、横に子どもがいたら遊んでしまうこともありますわな。そうなると効率は7掛けくらいですわ。そもそも商社は人に会わないとダメ。スクリーン越しだと肌感覚がいまひとつわからへん」 副業に対する考え方も独特だ。伊藤忠は22年10月からバーチャルオフィス制度をトライアル導入した。希望する社員はオンラインで週5時間、本業以外の案件に従事できる社内兼業制度で、トライアル時には40人、23年4月の本格導入後は約80人が制度を利用している。フェムテックビジネスの取り組みが始まるなど、バーチャルオフィスからの新規事業創出に期待がかかる。 「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう』、「「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう」、「バーチャルオフィス」がお勧めのようだ。
・『あるべき論は誰でも言える  いい会社には業績や社会貢献、社員のロイヤルティなどさまざまな要素があるが、岡藤は「たくさん言いすぎるとピンとこない。簡潔に言うと、親、兄弟、親戚が『誰々ちゃんがあそこに入ったよ』と誇りに思える会社がいい会社。それを目指せばいい」と説明する。 その意味で特に気にしている指標がある。学生の就職人気企業ランキングだ。) 「学生さんは会社や社会のことを知らないなかで真剣に就職先を選びます。となると、親、友達、先生などまわりの人の評価を参考にするしかない。就職ランキングは、いい会社かどうかの世間の評価がそのまま投影されていると思えばいい」 実際に、伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握する。後任のリーダー像についてはどう考えているのか。 「社長になったら本当に毎日細かい判断をせなあかん。そのときトンチンカンな答えをしていたら会社は大変なことになる。商社はまず稼がなあかんから、営業感覚のない人はダメでしょうね」 リーダーの役割は大局観をもって方向性を指し示すことだと考える人も多いが、そうした見方を一蹴する。 「伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ。 原点は大阪の繊維部門で生地売りをしていたころだ。当時から、会社でみんなが話していることと客先で聞く話にズレがあることが気になっていた。東京出張のとき、代理店の人に「明日、帝国ホテルで展示会がある」と誘われた。もともとの予定にはなく、着替えももってきていない。しかし、現場に答えがあると気づき始めていた岡藤は大阪に帰らずに展示会に行った。 「ここがターニングポイントでした。展示会に行くと、旦那さんは営業と話していて、実際に生地を選んでるのは奥さんか娘さんでした。それを見て、英国のお堅いブランドじゃなく、女性が知ってるブランドにしたら目立つんとちゃうかと。それでイブ・サンローランと交渉して名前をつけたら、ものすごく売れた。あのとき大阪に帰っていたら今の僕はない」 経営者が「いい会社像」を語ると、どうもきれいごとに響くことがある。だが、岡藤の語る“ええ会社”に建前がもつ空虚さはない。そこには常に足元から考える岡藤の哲学が反映されているに違いない。 (岡藤正広氏の略歴、伊藤忠商事の概要はリンク先参照)』、「伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握・・・伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ」、「伊藤忠」の2つの「失敗」については、初めて知った。「現場感覚を重視する岡藤のスタイル」は手堅そうだ。
タグ:真壁昭夫氏による「三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは」 ダイヤモンド・オンライン 「初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた」、異常な買い人気だったようだ。 「伊藤忠」は総じて「買い取り価格」の引上げには慎重なようだ。 商社問題 (その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学) Forbes「「三方よし資本主義」を標榜。伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学」 「コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している」、「伊藤忠」の出方が要注目だ。 「アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ」、なるほど。 投下資本は過去3番目の大きさだ。 東洋経済オンライン「伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変」 「他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい」、なるほど。 「三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけている」、なるほど。 「22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている」、とすると750億円の増益要因になる。 「著名な投資家ウォーレン・バフェット氏・・・は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価」、なるほど。 「岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不 得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない・・・ 今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる」。なるほど。 「「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊 藤忠は居心地のいい会社だろう」、「バーチャルオフィス」がお勧めのようだ。 「伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標がで できると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握・・・伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。 国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ」、「伊藤忠」の2つの「失敗」については、初めて知った。「現場感覚を重視する岡藤のスタイル」は手堅そうだ。
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