日本の政治情勢(その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か) [国内政治]
日本の政治情勢については、11月30日に取上げたばかりだが、事態が急進展している今日は、(その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か)である。
先ずは、12月7日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120350?imp=0
・『常態化した裏ガネづくり 東京地検特捜部が自民党に、猛禽のように襲いかかっている。 臨時国会が閉会する12月13日以降は、派閥パーティー券の裏金疑惑で各派閥の会計責任者、会長・事務総長経験者、キックバックを受け取った所属議員、パーティー券を購入した側の政治団体幹部などの事情聴取が、いよいよ本格化する。 疑惑の中心は最大派閥の安倍派だ。所属議員に当選回数やポストに応じてパーティー券販売のノルマを与え、ノルマを超過した議員に対してはその分をキックバック。派閥も議員側も報告書に記載していないので完全な裏ガネだ。判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる。 そもそも摘発のきっかけは、5派閥が18~21年の収支報告書にパーティー券収入を約4000万円少なく記載していたとして昨年11月に『しんぶん赤旗』日曜版がスクープし、それを受けて調査した神戸学院大学の上脇博之教授による告発だった。 受理した特捜部の捜査によって、「常態化した裏ガネ作り」が判明。無申告の脱税事件でもあり過少記載から局面は変わった。 自民党に対する23年分の政党交付金は約159億円。国民にそれだけの負担をさせながら、なおも派閥ぐるみで裏ガネを捻出する自民党政治とは何なのか――。 検察は全国から応援検事を集めて捜査する体制を固めており、安倍派を中心に全派閥を捜査。証拠と供述によっては未公開株が政界を浸食したリクルート事件なみの展開となる可能性がある。それだけ自民党政治家は政治資金規正法をなめていた』、「判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる」、なるほど。
・『検事総長人事介入問題との関係 端緒を開いた上脇氏は、政治資金問題に粘り強く取り組んでおり、02年に市民団体「政治資金オンブズマン」を立ち上げて以降、これまでに100件を超える告発を行った。政治資金絡みの不正はそれだけ常態化していたわけだが、それを受けた特捜捜査が今回、深みを持つに至ったのは、別の事件が関係しているからだ。 「官邸vs検察」といわれた安倍晋三政権下における検事総長人事介入問題である。奇しくも、その余波ともいえる公判が12月1日、行われて当時、事務方トップの法務省事務次官でその後、仙台高検検事長を務めた辻裕教氏が法廷に立った。 この裁判の原告となったのも上脇氏で、20年に東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を半年間延長することを決めた閣議決定をめぐり、国が「法解釈を変更した関連文書を開示しないのは違法だ」として訴えた。 こうした行政文書の不開示決定取消訴訟において「天皇の認証官」である高検検事長が出廷するのは前代未聞。徳地淳裁判長ですら「辻さんというかなり上の方より実際の実務、実情を知る人が適切じゃないですか」といったほど。だが国は、「証人尋問の必要性はありません」と拒否し、その結果、大阪地裁は「辻尋問」を決めた。 この一連の過程に、検察が自民党派閥政治を壊しかねない捜査に踏み切った遠因がある。まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった』、「まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった」、思い出した。
・『「官邸の代弁者」をさらしものに その後、黒川氏は知り合いの記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚して検事長を辞職した。その結果、人事介入はなかったが、上脇氏は「法解釈を変更した経緯」にこだわった。 だが、出廷した辻氏は、「定年延長は黒川氏のために行ったわけではない」「文書決裁は特になかった」と、「官邸主導による解釈変更での黒川氏の定年延長」という見方を否定した。ただ、徳地裁判長も納得しなかったようで、最後にこう質問した。 「第三者的に観ると、2月8日の黒川氏の定年に合わせるように急いだと見えなくもない」 だが、辻氏はこう繰り返した。 「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である』、「「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である」、なるほど。
・『もはや忖度する幹部はいない 官邸は当時、黒川人事を正当化するように政府の裁量で検察首脳の定年を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法改正案を上程していた。これに検察OBらが反発、次のような意見書を政府に提出した。 <今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に添わない検察の動きを封じ込め、検察の力を削ぐことを意図していると考えられる> 世論も法改正に反発、「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターには、小泉今日子ら著名人を含めて1日で700万件もの投稿があった。マスメディアも反対の論陣を張るなか、官邸は検察庁法改正案の成立見送りを決めた。 ただ、安倍氏には一連の騒動を経ても、「検察人事」への不満は残ったままだった。ベストセラーとなった『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)には、検察OBらの人事介入批判について次のような苦言を呈している。 <検察OBは、政治が我々の領域に入ってくるな、と言いたかったんでしょ。役所のOBはどこも、人事は自分たちで決める、とはき違えていますから。そもそもトップの検事総長や最高検の次長検事、全国8カ所の高検検事長の任命権は、内閣が持っています> こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった』、「こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった」、今回の「パーティー券利用の裏ガネ作り」は「検察」にとって、「徹底解明すべき事案となった」、そんな因縁があったとは驚いた。
・『全ての環境が整った むろん検察が安倍派を返り討ちにした、というレベルの話ではない。今年1月、特捜部は政治資金パーティーの収入を虚偽記入していたとして、薗浦賢太郎元衆議院議員を政治資金規正法違反罪で略式起訴した。 虚偽記入の総額は自由民主党千葉県第5選挙区支部と薗浦元代議士の政治団体を合わせて約5000万円。こうした捜査を通じて、「パーティー券の闇」の認識は検察に蓄積されていた。 またパーティー券を大量に捌くことによって政界に食い込む政商の問題も指摘されており、こちらの水面下の捜査も進んでいる。 今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発、裏ガネ作りに疑問を感じない自民党代議士の感覚麻痺、政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである』、「今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発・・・政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである」、検察捜査のインパクトが極めて強い理由が理解できた。
次に、12月11日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で嘉悦大学教授の髙橋 洋一氏による「「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ、裏を引くのは結局「霞が関」なのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120577?imp=0
・『「キックバック」の背景にあるもの 自民党政権を揺るがす事態が起きているーー。 12月13日、臨時国会閉会後、東京地検特捜部による政治資金規正法の捜査が本格化するとみられている。政局に与える影響は計り知れない。 当初、自民党5派閥のパーティー券問題について、自民党の5派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入について2018~21年分の政治資金収支報告書に計約4000万円分を過少記載したとする告発状を受け、東京地検特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという程度だった。 しかし、12月になると、政治資金パーティー収入について議員へのキックバックが裏金化していた疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていると報じられている。 これまでの経緯は、先週12月4日付け本コラム「事実上の「キックバック」まで…自民党「政治資金パーティー問題」が勃発した「そもそもの理由」をご覧いただきたい。今回は、その政治的な背景について、考えたい。 この問題は、11月13日付け本コラム「岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ」に遡ってみないと全体像が見えてこない。 岸田首相が「増税メガネ」と呼ばれて所得税減税を謳い出し、岸田首相に「自我」が芽生えたために、財務省がハシゴ外しを目論んだというストーリーについて触れている。なお、減税を言い出したのは、党内では安倍派であるので、岸田首相に「自我をつけた」のは安倍派と財務省には見えただろう。 岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい』、「岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい」、その通りだ。
・『大蔵官僚だった筆者が思っていたこと 「増税メガネ」と言われたからとはいえ、首相が減税を言い出したのは、国民経済から見ればもまっとうであるが、財務省ファミリーとしては考えられないことだ。 財務省ファミリーならば、国民は「短期的な快楽」のために減税を求めるが、それは浪費であり、今の厳しい財政状況を考えると将来のためにならない、と真顔で語る。 かつて財務省ファミリーの一員だった筆者も、大蔵省入省当初はそう思っていた。 内心本当かと思っていたが、今から30年ほど前に、当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた。 本コラムでも、2015年12月28日付け「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…」や2018年10月15日付け「IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する それでも消費増税は必要ですか」をご覧いただきたい。 筆者の「高橋洋一チャンネル」は、登録者数104万人(2023年12月現在)であり、この話題を何度も取り上げているので、流石に筆者の周りでは「常識化」しつつある。) ▽官僚機構の中にある力学(また、政治家の中にもこれまで財務省の言う財政危機を信用してきたが、そうでないと思い始める人も多くなった。例えば、故安倍晋三首相はその一人だ。 元財務次官の矢野康治氏が、月刊文藝春秋2021年11月号で書いた財政論については、故安倍元首相は、月刊WiLL2021年12月号において会計論などで強烈に批判している。また、かの安倍晋三回顧録の中でも、同旨の批判をしている。 ここで書かれているように、100兆円コロナ対策でもそのための増税がないのは、正しいバランスシート論に基づくものだ。 率直にいえば、岸田首相が、安倍派からの提言でもあった減税を言い出さなければ、まだ財務省は岸田首相のハシゴを外さずに、それなりの政権支持率も維持できただろう。 ここにきて、検察も岸田政権の落ち目を見て動き出したのが「パーティー券騒動」だ。それが、安倍派の狙い撃ちになっているので、自民党内力学から言えば、岸田派には余裕でもある。野党が弱いので、所詮自民党内力学で政治が動いているとみれば、岸田派、麻生派、茂木派も、実質的には余裕だ。 財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ』、「当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた・・・財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ」、「大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている」、なるほど。
・『マスコミの後押しで これを政策論から見れば、財務省としても麻生派から、減税をしない首相が出ればいいだろう。時折、鈴木俊一財務相がポスト岸田で浮上するのは、財務省の野望でもあろう。鈴木財務相は、麻生派であるが、宏池会の鈴木善幸氏の息子であり、麻生太郎氏の義弟でもあるので、財務省としてはベストだろう。 自民党内派閥力学、財務省や検察の官僚機構の動きだけで十分だが、それを後押しするのが、反安倍のマスコミだ。安倍・菅の長期政権で、反アベのマスコミは出番がなかったが、ここにきてついに出番と意気込んでいる。 こうした動きの結果、岸田おろしになっても、大宏池会の中での政権回し、安倍派排除という形の政局に動くだろう。松野官房長官(安倍派)は既に交代が決定的で、その後任には加藤勝信(茂木派)、田村憲久(岸田派)らの名前が出ている。萩生田光一政調会長(安倍派)、西村康稔経産大臣(安倍派)の交代もありえる。 ただ、岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか』、「岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか」、さすが「髙橋 洋一氏」らしい説得力に富んだ鋭い分析だ。
第三に、12月12日付けNEWSポストセブン「【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで、裏の「票と金」に頼る黒歴史」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20231212_1926607.html?DETAIL
・『自民党の最大派閥「清和政策研究会(安倍派)」の裏金疑惑は、“令和のリクルート事件”と呼ばれて政権を揺るがしている。安倍派がこうして“裏金”に頼らなければならなかったのには訳がある。それは派閥の歴史を紐解いていくとわかる。保守傍流で業界団体などの利権を他派閥に奪われていた安倍派が編み出した“集金システム”の全貌とは──』、興味深そうだ。
・『最大派閥にもかかわらず弱い“集金力” 安倍派の裏金疑惑の捜査はいよいよ所属議員に及び、東京地検特捜部が秘書たちの事情聴取を開始すると、派内にはパニックが広がっている。同派中堅議員の秘書が焦った口調でこうぶちまけた。 「はっきり言って、うちは派閥から資金の面倒を見てもらっていない。毎年、上納する金のほうが多いくらいですよ」 所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ。 「派閥に納める会費は若手議員が年60万円、大臣経験者は120万円。さらに当選回数によってパーティー券の販売ノルマが若手は50枚(100万円)、ベテランになると100枚(200万円)などと決まっていて、売れなくてもその分の代金を上納しなければならない。会費とノルマで若手でも160万円を派閥に納めるから、盆暮れに合計100万円もらっても赤字になる」(同前)』、「所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ」、「安倍派」の「集金力は弱い」とは初めて知った。
・『“隙間”の業界が資金源 派閥の領袖は多くの議員を養うことで力を持つ。そのためにカネとポストの面倒を見る。どの派閥も、大臣を経験して資金力がついた幹部からは資金を上納させ、議員に配る仕組みをとってきた。 だが、安倍派は伝統的に自民党の主要派閥の中で資金基盤が弱く、議員を養うために無理をしてきたのだという。そのことが今回の裏金問題につながっている。 安倍派の歴史に詳しい政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。 自民党で保守本流と呼ばれる宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい。そこで新興企業など“隙間”の業界に資金源を求めたわけです。その一方で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との結びつきを強めることで弱い集票力をカバーしてきた」) 安倍長期政権下でも懐事情はあまり変わらなかった。 「安倍政権時代に多くの業界の陳情窓口となっていたのはもっぱら二階俊博・元幹事長だった。安倍派は最大派閥にはなったものの、多くは資金基盤の弱い安倍チルドレン。幹部にも業界を仕切れるような実力者はほとんどいない。近年の安倍派がらみのスキャンダルを見ても、森友学園問題、加計学園問題、五輪汚職など、安倍派が伝統的に影響力を持っていた文教・スポーツ関係が目立つ。他の業界には資金パイプが広がっていないのでしょう。 そのうえ、安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」(野上氏)』、「宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい・・・安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」、確かに説得力がある。
・『「秘密後援会」の手口 その過程で編み出されたのがキックバックという手法だとみられている。所属議員にノルマを課して派閥のパーティー券を売らせ、ノルマを超えた分の代金は議員に“裏金”として戻す。 パーティー券のキックバックの仕組みは他の派閥にもあるとされるが、安倍派の裏金の金額が突出しているのは、最大派閥で資金力のない若手議員を多く抱えているという事情があった。そのため、議員たちに「パー券販売」を競わせることで派閥資金を太らせるしかなかったのだ。 前出の安倍派中堅議員の秘書が言う。 「要するに領袖や幹部たちでは派閥を資金的に支えきれないから、氷代、モチ代は自分で稼げというわけです。いまや派閥は議員の互助会。それでも、ノルマを達成しないと、人事でいいポストをもらえないからパー券を売るしかない。営業力のある幹部たちは、ノルマ以上を売ってキックバックを稼ごうとする。最大派閥の実態は歩合制の『パー券営業マン』の集団になった」 こうした“裏金づくり”のスキームの原型を辿ると、本誌・週刊ポストが2006年に報じた安倍晋三・元首相の秘密後援会「安晋会」の手口に行き着く。 安晋会は2003年、有力なベンチャー企業経営者などを集めて盛大な安倍氏の幹事長就任パーティーなどを開催していた団体で、その一部を安倍氏に“キックバック”していたとされる。ところが、安倍氏の関連政治団体として届けられておらず、本来は政治資金パーティーを開催できない任意団体だった。) 安晋会代表幹事の会社経営者S氏が別に設立した政治団体から安倍氏の資金管理団体「晋和会」への寄附が、キックバックの一部だったとされるが、S氏の政治団体は1度も政治資金収支報告書を提出していなかった。 安晋会が集めたパーティー券収入は幹事長就任パーティーだけで少なくとも1000万円以上とみられていたが、どこに流れたか不明なまま完全に闇に消えた。 政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ。 ※週刊ポスト2023年12月22日号』、「政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ」、国会が閉会された後は「検察」はスピード感をもって、捜査し、酷いケースでは起訴すべきだろう。
第四に、12月12日付け日刊ゲンダイ「岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も、後任打診にNO続出か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/333261
・『15人の穴を埋められるのか。はたして、まともにメンバーを集められるのか──。 自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティー裏金疑惑を巡り、岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った。一斉にクビを切られる安倍派内では、どよめきが広がっている。 「総理は本気で15人全員を交代させる気なのか。少なくとも、総務大臣の鈴木淳司さんは『キックバックを受けていない』と明言している。なのに、なぜ切るのか。皆、怒っていますよ。これでは、安倍派というだけで白い目で見られてしまう。総理は、安倍派99人を敵に回したも同然です」(安倍派関係者) 岸田首相は国会が閉会した後の13日にも人事を行うとみられている。しかし、15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない。 実際、ロクでもない議員まで重要閣僚候補として名前が挙がっている。菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信衆院議員、田村憲久元厚労相、小泉進次郎元環境相の3人に加え、コロナ禍に官邸で昼食会を開いて批判を浴びた坂井学元官房副長官まで、官房長官への起用が囁かれている。浜田前防衛相と梶山幹事長代行の名前も浮上している。 「今回、安倍派が派閥ぐるみで裏金づくりに手を染めていたことで『派閥政治』への批判が高まっています。だから、総理周辺は政治資金パーティーとは無縁の無派閥議員を中心に起用すべきと考えているようです」(官邸事情通)』、「岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った・・・15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない」、なるほど。
・『「打診が来ないことを願うしかない」 しかし、ただでさえ内閣支持率がボロボロで、岸田内閣は“泥舟”状態。政務三役や党幹部に手を挙げる無派閥議員がいるのか。ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね。それに、無派閥の中には総理の“政敵”である菅前首相に近い議員も多い。菅さんに相談して『入閣はやめとけ』と言われたら、打診を断る議員もいるでしょう。結局、総理は15人のクビを切ると言いながら、軒並み断られて、何人かは留任させることになるんじゃないですかね」 このままでは、岸田首相は立ち往生しかねない。身内の岸田派で固めるしかなくなる可能性がある。 「岸田派からは、小野寺元防衛相や根本元復興相の名前が挙がっている。ただ、国民にとって目新しさはないでしょう」(官邸事情通=前出) 支持率回復など夢のまた夢だ』、「ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね」、泥船にはあえて乗ろうとしない議員も多いようで、やはり岸田政権は末期症状のようだ。
先ずは、12月7日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120350?imp=0
・『常態化した裏ガネづくり 東京地検特捜部が自民党に、猛禽のように襲いかかっている。 臨時国会が閉会する12月13日以降は、派閥パーティー券の裏金疑惑で各派閥の会計責任者、会長・事務総長経験者、キックバックを受け取った所属議員、パーティー券を購入した側の政治団体幹部などの事情聴取が、いよいよ本格化する。 疑惑の中心は最大派閥の安倍派だ。所属議員に当選回数やポストに応じてパーティー券販売のノルマを与え、ノルマを超過した議員に対してはその分をキックバック。派閥も議員側も報告書に記載していないので完全な裏ガネだ。判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる。 そもそも摘発のきっかけは、5派閥が18~21年の収支報告書にパーティー券収入を約4000万円少なく記載していたとして昨年11月に『しんぶん赤旗』日曜版がスクープし、それを受けて調査した神戸学院大学の上脇博之教授による告発だった。 受理した特捜部の捜査によって、「常態化した裏ガネ作り」が判明。無申告の脱税事件でもあり過少記載から局面は変わった。 自民党に対する23年分の政党交付金は約159億円。国民にそれだけの負担をさせながら、なおも派閥ぐるみで裏ガネを捻出する自民党政治とは何なのか――。 検察は全国から応援検事を集めて捜査する体制を固めており、安倍派を中心に全派閥を捜査。証拠と供述によっては未公開株が政界を浸食したリクルート事件なみの展開となる可能性がある。それだけ自民党政治家は政治資金規正法をなめていた』、「判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる」、なるほど。
・『検事総長人事介入問題との関係 端緒を開いた上脇氏は、政治資金問題に粘り強く取り組んでおり、02年に市民団体「政治資金オンブズマン」を立ち上げて以降、これまでに100件を超える告発を行った。政治資金絡みの不正はそれだけ常態化していたわけだが、それを受けた特捜捜査が今回、深みを持つに至ったのは、別の事件が関係しているからだ。 「官邸vs検察」といわれた安倍晋三政権下における検事総長人事介入問題である。奇しくも、その余波ともいえる公判が12月1日、行われて当時、事務方トップの法務省事務次官でその後、仙台高検検事長を務めた辻裕教氏が法廷に立った。 この裁判の原告となったのも上脇氏で、20年に東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を半年間延長することを決めた閣議決定をめぐり、国が「法解釈を変更した関連文書を開示しないのは違法だ」として訴えた。 こうした行政文書の不開示決定取消訴訟において「天皇の認証官」である高検検事長が出廷するのは前代未聞。徳地淳裁判長ですら「辻さんというかなり上の方より実際の実務、実情を知る人が適切じゃないですか」といったほど。だが国は、「証人尋問の必要性はありません」と拒否し、その結果、大阪地裁は「辻尋問」を決めた。 この一連の過程に、検察が自民党派閥政治を壊しかねない捜査に踏み切った遠因がある。まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった』、「まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった」、思い出した。
・『「官邸の代弁者」をさらしものに その後、黒川氏は知り合いの記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚して検事長を辞職した。その結果、人事介入はなかったが、上脇氏は「法解釈を変更した経緯」にこだわった。 だが、出廷した辻氏は、「定年延長は黒川氏のために行ったわけではない」「文書決裁は特になかった」と、「官邸主導による解釈変更での黒川氏の定年延長」という見方を否定した。ただ、徳地裁判長も納得しなかったようで、最後にこう質問した。 「第三者的に観ると、2月8日の黒川氏の定年に合わせるように急いだと見えなくもない」 だが、辻氏はこう繰り返した。 「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である』、「「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である」、なるほど。
・『もはや忖度する幹部はいない 官邸は当時、黒川人事を正当化するように政府の裁量で検察首脳の定年を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法改正案を上程していた。これに検察OBらが反発、次のような意見書を政府に提出した。 <今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に添わない検察の動きを封じ込め、検察の力を削ぐことを意図していると考えられる> 世論も法改正に反発、「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターには、小泉今日子ら著名人を含めて1日で700万件もの投稿があった。マスメディアも反対の論陣を張るなか、官邸は検察庁法改正案の成立見送りを決めた。 ただ、安倍氏には一連の騒動を経ても、「検察人事」への不満は残ったままだった。ベストセラーとなった『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)には、検察OBらの人事介入批判について次のような苦言を呈している。 <検察OBは、政治が我々の領域に入ってくるな、と言いたかったんでしょ。役所のOBはどこも、人事は自分たちで決める、とはき違えていますから。そもそもトップの検事総長や最高検の次長検事、全国8カ所の高検検事長の任命権は、内閣が持っています> こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった』、「こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった」、今回の「パーティー券利用の裏ガネ作り」は「検察」にとって、「徹底解明すべき事案となった」、そんな因縁があったとは驚いた。
・『全ての環境が整った むろん検察が安倍派を返り討ちにした、というレベルの話ではない。今年1月、特捜部は政治資金パーティーの収入を虚偽記入していたとして、薗浦賢太郎元衆議院議員を政治資金規正法違反罪で略式起訴した。 虚偽記入の総額は自由民主党千葉県第5選挙区支部と薗浦元代議士の政治団体を合わせて約5000万円。こうした捜査を通じて、「パーティー券の闇」の認識は検察に蓄積されていた。 またパーティー券を大量に捌くことによって政界に食い込む政商の問題も指摘されており、こちらの水面下の捜査も進んでいる。 今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発、裏ガネ作りに疑問を感じない自民党代議士の感覚麻痺、政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである』、「今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発・・・政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである」、検察捜査のインパクトが極めて強い理由が理解できた。
次に、12月11日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で嘉悦大学教授の髙橋 洋一氏による「「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ、裏を引くのは結局「霞が関」なのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120577?imp=0
・『「キックバック」の背景にあるもの 自民党政権を揺るがす事態が起きているーー。 12月13日、臨時国会閉会後、東京地検特捜部による政治資金規正法の捜査が本格化するとみられている。政局に与える影響は計り知れない。 当初、自民党5派閥のパーティー券問題について、自民党の5派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入について2018~21年分の政治資金収支報告書に計約4000万円分を過少記載したとする告発状を受け、東京地検特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという程度だった。 しかし、12月になると、政治資金パーティー収入について議員へのキックバックが裏金化していた疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていると報じられている。 これまでの経緯は、先週12月4日付け本コラム「事実上の「キックバック」まで…自民党「政治資金パーティー問題」が勃発した「そもそもの理由」をご覧いただきたい。今回は、その政治的な背景について、考えたい。 この問題は、11月13日付け本コラム「岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ」に遡ってみないと全体像が見えてこない。 岸田首相が「増税メガネ」と呼ばれて所得税減税を謳い出し、岸田首相に「自我」が芽生えたために、財務省がハシゴ外しを目論んだというストーリーについて触れている。なお、減税を言い出したのは、党内では安倍派であるので、岸田首相に「自我をつけた」のは安倍派と財務省には見えただろう。 岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい』、「岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい」、その通りだ。
・『大蔵官僚だった筆者が思っていたこと 「増税メガネ」と言われたからとはいえ、首相が減税を言い出したのは、国民経済から見ればもまっとうであるが、財務省ファミリーとしては考えられないことだ。 財務省ファミリーならば、国民は「短期的な快楽」のために減税を求めるが、それは浪費であり、今の厳しい財政状況を考えると将来のためにならない、と真顔で語る。 かつて財務省ファミリーの一員だった筆者も、大蔵省入省当初はそう思っていた。 内心本当かと思っていたが、今から30年ほど前に、当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた。 本コラムでも、2015年12月28日付け「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…」や2018年10月15日付け「IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する それでも消費増税は必要ですか」をご覧いただきたい。 筆者の「高橋洋一チャンネル」は、登録者数104万人(2023年12月現在)であり、この話題を何度も取り上げているので、流石に筆者の周りでは「常識化」しつつある。) ▽官僚機構の中にある力学(また、政治家の中にもこれまで財務省の言う財政危機を信用してきたが、そうでないと思い始める人も多くなった。例えば、故安倍晋三首相はその一人だ。 元財務次官の矢野康治氏が、月刊文藝春秋2021年11月号で書いた財政論については、故安倍元首相は、月刊WiLL2021年12月号において会計論などで強烈に批判している。また、かの安倍晋三回顧録の中でも、同旨の批判をしている。 ここで書かれているように、100兆円コロナ対策でもそのための増税がないのは、正しいバランスシート論に基づくものだ。 率直にいえば、岸田首相が、安倍派からの提言でもあった減税を言い出さなければ、まだ財務省は岸田首相のハシゴを外さずに、それなりの政権支持率も維持できただろう。 ここにきて、検察も岸田政権の落ち目を見て動き出したのが「パーティー券騒動」だ。それが、安倍派の狙い撃ちになっているので、自民党内力学から言えば、岸田派には余裕でもある。野党が弱いので、所詮自民党内力学で政治が動いているとみれば、岸田派、麻生派、茂木派も、実質的には余裕だ。 財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ』、「当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた・・・財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ」、「大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている」、なるほど。
・『マスコミの後押しで これを政策論から見れば、財務省としても麻生派から、減税をしない首相が出ればいいだろう。時折、鈴木俊一財務相がポスト岸田で浮上するのは、財務省の野望でもあろう。鈴木財務相は、麻生派であるが、宏池会の鈴木善幸氏の息子であり、麻生太郎氏の義弟でもあるので、財務省としてはベストだろう。 自民党内派閥力学、財務省や検察の官僚機構の動きだけで十分だが、それを後押しするのが、反安倍のマスコミだ。安倍・菅の長期政権で、反アベのマスコミは出番がなかったが、ここにきてついに出番と意気込んでいる。 こうした動きの結果、岸田おろしになっても、大宏池会の中での政権回し、安倍派排除という形の政局に動くだろう。松野官房長官(安倍派)は既に交代が決定的で、その後任には加藤勝信(茂木派)、田村憲久(岸田派)らの名前が出ている。萩生田光一政調会長(安倍派)、西村康稔経産大臣(安倍派)の交代もありえる。 ただ、岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか』、「岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか」、さすが「髙橋 洋一氏」らしい説得力に富んだ鋭い分析だ。
第三に、12月12日付けNEWSポストセブン「【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで、裏の「票と金」に頼る黒歴史」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20231212_1926607.html?DETAIL
・『自民党の最大派閥「清和政策研究会(安倍派)」の裏金疑惑は、“令和のリクルート事件”と呼ばれて政権を揺るがしている。安倍派がこうして“裏金”に頼らなければならなかったのには訳がある。それは派閥の歴史を紐解いていくとわかる。保守傍流で業界団体などの利権を他派閥に奪われていた安倍派が編み出した“集金システム”の全貌とは──』、興味深そうだ。
・『最大派閥にもかかわらず弱い“集金力” 安倍派の裏金疑惑の捜査はいよいよ所属議員に及び、東京地検特捜部が秘書たちの事情聴取を開始すると、派内にはパニックが広がっている。同派中堅議員の秘書が焦った口調でこうぶちまけた。 「はっきり言って、うちは派閥から資金の面倒を見てもらっていない。毎年、上納する金のほうが多いくらいですよ」 所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ。 「派閥に納める会費は若手議員が年60万円、大臣経験者は120万円。さらに当選回数によってパーティー券の販売ノルマが若手は50枚(100万円)、ベテランになると100枚(200万円)などと決まっていて、売れなくてもその分の代金を上納しなければならない。会費とノルマで若手でも160万円を派閥に納めるから、盆暮れに合計100万円もらっても赤字になる」(同前)』、「所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ」、「安倍派」の「集金力は弱い」とは初めて知った。
・『“隙間”の業界が資金源 派閥の領袖は多くの議員を養うことで力を持つ。そのためにカネとポストの面倒を見る。どの派閥も、大臣を経験して資金力がついた幹部からは資金を上納させ、議員に配る仕組みをとってきた。 だが、安倍派は伝統的に自民党の主要派閥の中で資金基盤が弱く、議員を養うために無理をしてきたのだという。そのことが今回の裏金問題につながっている。 安倍派の歴史に詳しい政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。 自民党で保守本流と呼ばれる宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい。そこで新興企業など“隙間”の業界に資金源を求めたわけです。その一方で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との結びつきを強めることで弱い集票力をカバーしてきた」) 安倍長期政権下でも懐事情はあまり変わらなかった。 「安倍政権時代に多くの業界の陳情窓口となっていたのはもっぱら二階俊博・元幹事長だった。安倍派は最大派閥にはなったものの、多くは資金基盤の弱い安倍チルドレン。幹部にも業界を仕切れるような実力者はほとんどいない。近年の安倍派がらみのスキャンダルを見ても、森友学園問題、加計学園問題、五輪汚職など、安倍派が伝統的に影響力を持っていた文教・スポーツ関係が目立つ。他の業界には資金パイプが広がっていないのでしょう。 そのうえ、安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」(野上氏)』、「宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい・・・安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」、確かに説得力がある。
・『「秘密後援会」の手口 その過程で編み出されたのがキックバックという手法だとみられている。所属議員にノルマを課して派閥のパーティー券を売らせ、ノルマを超えた分の代金は議員に“裏金”として戻す。 パーティー券のキックバックの仕組みは他の派閥にもあるとされるが、安倍派の裏金の金額が突出しているのは、最大派閥で資金力のない若手議員を多く抱えているという事情があった。そのため、議員たちに「パー券販売」を競わせることで派閥資金を太らせるしかなかったのだ。 前出の安倍派中堅議員の秘書が言う。 「要するに領袖や幹部たちでは派閥を資金的に支えきれないから、氷代、モチ代は自分で稼げというわけです。いまや派閥は議員の互助会。それでも、ノルマを達成しないと、人事でいいポストをもらえないからパー券を売るしかない。営業力のある幹部たちは、ノルマ以上を売ってキックバックを稼ごうとする。最大派閥の実態は歩合制の『パー券営業マン』の集団になった」 こうした“裏金づくり”のスキームの原型を辿ると、本誌・週刊ポストが2006年に報じた安倍晋三・元首相の秘密後援会「安晋会」の手口に行き着く。 安晋会は2003年、有力なベンチャー企業経営者などを集めて盛大な安倍氏の幹事長就任パーティーなどを開催していた団体で、その一部を安倍氏に“キックバック”していたとされる。ところが、安倍氏の関連政治団体として届けられておらず、本来は政治資金パーティーを開催できない任意団体だった。) 安晋会代表幹事の会社経営者S氏が別に設立した政治団体から安倍氏の資金管理団体「晋和会」への寄附が、キックバックの一部だったとされるが、S氏の政治団体は1度も政治資金収支報告書を提出していなかった。 安晋会が集めたパーティー券収入は幹事長就任パーティーだけで少なくとも1000万円以上とみられていたが、どこに流れたか不明なまま完全に闇に消えた。 政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ。 ※週刊ポスト2023年12月22日号』、「政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ」、国会が閉会された後は「検察」はスピード感をもって、捜査し、酷いケースでは起訴すべきだろう。
第四に、12月12日付け日刊ゲンダイ「岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も、後任打診にNO続出か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/333261
・『15人の穴を埋められるのか。はたして、まともにメンバーを集められるのか──。 自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティー裏金疑惑を巡り、岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った。一斉にクビを切られる安倍派内では、どよめきが広がっている。 「総理は本気で15人全員を交代させる気なのか。少なくとも、総務大臣の鈴木淳司さんは『キックバックを受けていない』と明言している。なのに、なぜ切るのか。皆、怒っていますよ。これでは、安倍派というだけで白い目で見られてしまう。総理は、安倍派99人を敵に回したも同然です」(安倍派関係者) 岸田首相は国会が閉会した後の13日にも人事を行うとみられている。しかし、15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない。 実際、ロクでもない議員まで重要閣僚候補として名前が挙がっている。菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信衆院議員、田村憲久元厚労相、小泉進次郎元環境相の3人に加え、コロナ禍に官邸で昼食会を開いて批判を浴びた坂井学元官房副長官まで、官房長官への起用が囁かれている。浜田前防衛相と梶山幹事長代行の名前も浮上している。 「今回、安倍派が派閥ぐるみで裏金づくりに手を染めていたことで『派閥政治』への批判が高まっています。だから、総理周辺は政治資金パーティーとは無縁の無派閥議員を中心に起用すべきと考えているようです」(官邸事情通)』、「岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った・・・15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない」、なるほど。
・『「打診が来ないことを願うしかない」 しかし、ただでさえ内閣支持率がボロボロで、岸田内閣は“泥舟”状態。政務三役や党幹部に手を挙げる無派閥議員がいるのか。ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね。それに、無派閥の中には総理の“政敵”である菅前首相に近い議員も多い。菅さんに相談して『入閣はやめとけ』と言われたら、打診を断る議員もいるでしょう。結局、総理は15人のクビを切ると言いながら、軒並み断られて、何人かは留任させることになるんじゃないですかね」 このままでは、岸田首相は立ち往生しかねない。身内の岸田派で固めるしかなくなる可能性がある。 「岸田派からは、小野寺元防衛相や根本元復興相の名前が挙がっている。ただ、国民にとって目新しさはないでしょう」(官邸事情通=前出) 支持率回復など夢のまた夢だ』、「ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね」、泥船にはあえて乗ろうとしない議員も多いようで、やはり岸田政権は末期症状のようだ。
タグ:「まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 「判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる」、なるほど。 伊藤 博敏氏による「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」 現代ビジネス (その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か) 日本の政治情勢 「今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発・・・政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである」、検察捜査のインパクトが極めて強い理由が理解できた。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった」、今回の「パーティー券利用の裏ガネ作り」は「検察」にとって、「徹底解明すべき事案となった」、そんな因縁があったとは驚いた。 「こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 「「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である」、なるほど。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった」、思い出した。 髙橋 洋一氏による「「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ、裏を引くのは結局「霞が関」なのか」 「岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい」、その通りだ。 「当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた・・・財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。 また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ」、「大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている」、なるほど。 「岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか」、さすが「髙橋 洋一氏」らしい説得力に富んだ鋭い分析だ。 NEWSポストセブン「【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで、裏の「票と金」に頼る黒歴史」 「所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ」、「安倍派」の「集金力は弱い」とは初めて知った。 「宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい・・・安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬ カネ集めをする必要があったのではないか」、確かに説得力がある。 「政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ」、国会が閉会された後は「検察」はスピード感をもって、捜査し、酷いケースでは起訴すべきだろう。 日刊ゲンダイ「岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も、後任打診にNO続出か」 「岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った・・・15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない」、なるほど。 「ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね」、泥船にはあえて乗ろうとしない議員も多いようで、やはり岸田政権は末期症状のようだ。