SSブログ

発達障害(その3)(発達障害は病気ではなく「脳の個性」 治すべきものではない、低年齢の「発達障害」、薬で隠される子どもの危機 独自調査でわかった「4歳以下」への投与実態、発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に) [生活]

発達障害については、昨年6月9日に取上げた。今日は、(その3)(発達障害は病気ではなく「脳の個性」 治すべきものではない、低年齢の「発達障害」、薬で隠される子どもの危機 独自調査でわかった「4歳以下」への投与実態、発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に)である。

先ずは、昨年10月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載したフリーランス編集者・ライターの黒坂 真由子氏による「発達障害は病気ではなく「脳の個性」 治すべきものではない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00369/092400001/
・『「発達障害」という言葉がよく使われるようになった。 「もしかして、うちの子も発達障害?」「あの同僚は、もしかして?」「もしかしたら私も?」――そんな思いが頭をよぎった経験のある方も少なくないのではないか。実は、本連載の取材、執筆を担当する私(黒坂真由子)も、発達障害(学習障害)の息子を育てる当事者家族である。 しかし、「発達障害」とは、そもそも何を指す言葉だろう? 「きちんと理解している」と自信を持って答えられる人は少ないはずだ。 本連載では、注目を集めながらも、定義すら流動的で理解しにくい「発達障害」の世界を、できるかぎり平易に、かつ正しく紹介していきたい。そのために、医師や研究者など専門家に取材する「外側の視点」と、発達障害を持ちながら生きる当事者に取材する「内側の視点」の2つを設定する。 初回は「外側の視点」から、岩波明氏にインタビューする。2015年より昭和大学附属烏山病院長として、ADHD専門外来を担当(昭和大学医学部精神医学講座主任教授と兼任)。日本で初めてADHD専門外来を立ち上げた医師として知られる(※発達障害の一類型である「ADHD」については、本文で詳述する)。 発達障害の増加には「システム化された社会」という時代背景が大きく働いている――岩波氏との対話からは、そんな構図も見えてくる。 Q:発達障害が急速に注目を集めるようになったのは、ここ10年ほどのことだと思います。何か理由があるのでしょうか? 岩波明氏(以下、岩波氏):まず何よりも「仕事の管理化」が進んでいるということが、理由として挙げられると思います。(岩波 明氏の略歴はリンク先参照)』、「発達障害が急速に注目を集めるようになった」背景には、「「仕事の管理化」が進んでいる」ことがある。なるほど。
・『「小さな自営業」が減ると、発達障害は増える  Q:会社では確かに、ある一定の基準から外れないように行動することが求められますし、その傾向は、昔より強まっているように感じます。ある意味、「普通」と認定されるための基準が上がっているのかもしれませんね。 岩波氏:そのために発達障害の人の存在が顕在化しやすくなっているということは、やはりあります。 会社の中に逃げ場がなくなっているということも重要です。以前だったら、例えば、対人関係が苦手だけど、事務処理能力は高いといった人などに向いた部署というのがあって、発達障害だったり、うつ病を発症したりしたような方々の受け皿になっていた気がします。しかし、現在ではアウトソーシングにより、そういった部署を持つ会社は減っています。 社会全体で見ても「仕事の管理化」は、進んでいます。例えば、小さな自営のお店が減っていますよね。小さなお店を切り盛りしたり、手伝ったりするのは、発達障害の人にとって比較的やりやすい仕事でした。 Q:自分の手が届く範囲を、自己流で管理できればいいというわけですね。 岩波氏:同じ「モノを売る」という仕事でも、自分のペースで働ける自営の店舗では問題にならなかったことが、マニュアルのあるチェーン店では問題になってしまう。発達障害の人が自由に働ける場所が、どんどん少なくなっていると感じています。 Q:つまり、発達障害が今、問題になっているのは、絶対的な人数が増えているというより、社会の変化によって、昔からあった「事象」が、新しい「問題」として顕在化しているという可能性も高いのですね。 そもそも発達障害とは、どのような事象を指すのでしょうか。先生の言葉でできるだけ簡単にご説明いただけますか。 岩波氏:多くの方が「発達障害」という言葉を、「糖尿病」や「胃がん」のような疾患名だと誤解しています。発達障害とは、あくまで「総称」なのです。では何の総称かというと、「生まれつきの脳機能の偏り」を持つ状態を示しています。脳機能に偏りがあるために、思考パターンや行動パターンが独特の特徴を持つようになります。 「脳機能の偏り」であって「疾患名」ではない』、「発達障害とは、」「生まれつきの脳機能の偏り」であって、「「疾患名」ではない」、私も「誤解」していた。
・『発達障害は「脳の個性」。「治すべきもの」ではない  岩波氏:「疾患名ではない」ということには、もう一つ意味があります。それは、発達障害は「病気」ではなく、従って「治すべきものではない」ということです。 仮に、うつ病を例にとれば、「生まれつきうつ病」という人はいません。しかし、発達障害は生まれつきのものです。ポジティブに表現すれば、「脳の個性」ということもできますが、個性ですから「治る」ことはありませんし、基本的な特性は変わることはないのです。 「発達障害」についてこれから学ぶ方には、まず「発達障害という疾患はない」ということを分かっていただけたらと思います。 Q:「発達障害」は疾患名ではなく総称であり、個性や特性である、と。それはあたかも「色」と総称されるものの中に、青があったり、赤があったり、黄色があったりするようなものだということですね。では具体的に、どのようなものが発達障害に含まれるのでしょうか。 岩波氏:主には、次の3つがあります。 ADHD:注意欠如・多動症(Attention—Deficit/Hyperactivity Disorder) ASD:自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder) LD:限局性学習症(Specific Learning Disorder) これら3つの他にも、症例は少ないものの、いくつかの疾患が発達障害の概念に含まれています。ちなみに、ASD(自閉スペクトラム症)に含まれる「スペクトラム」という言葉は「連続している」という意味です。症状に濃淡があると捉えていただいていいでしょう』、「ADHD」、「ASD」は有名だが、「LD」は初耳だ。
・『習障害児のIQは必ずしも低くない  「学習障害」という略称で知られるLD(限局性学習症)は「知的障害」とよく混同されるのですが、異なる概念です。知的障害の判断においてはIQ(知能指数)に代表される、知能検査の結果が重要な判断ポイントになりますが、学習障害では、知的機能全般には問題はなく、IQは必ずしも低くありません。ただ「読む」「書く」「計算する」など、特定の分野を苦手とします。「限局性」と付いているのはそのためです。 ただ、我々(編集部注:岩波氏が病院長を務める昭和大学附属烏山病院)が主に診ているのは思春期以降の成人の方たちで、成人になってからLDだと分かり、来院されるというケースはそれほど多くはないのです。) Q:「アスペルガー」という言葉をよく聞くのですが、発達障害のカテゴリーの1つではないのですか? 岩波氏:以前は、ASD的な特性はあるけれども知的障害や言語の遅れのないケース、いわゆる「高機能のASD」のケースは「アスペルガー症候群」と呼ばれていました。しかし、現在はASDに含まれる下位分類として扱われています』、なるほど。
・『「アスペルガーという名の天才」は「消えた」  Q:「アスペルガー症候群」というと「天才」のイメージもあります。例えば「シリコンバレーで活躍するエンジニアやプログラマーの大半は、アスペルガー症候群だ」などと、まことしやかに語られたりもしていました。 岩波氏:実は「アスペルガー症候群」という名称は、今ではあまり使われなくなっています。というのも、この名称を生んだハンス・アスペルガー医師がナチスの協力者だった可能性が指摘されたため、米国精神医学会の診断基準「DSM-5(*1)」からは、すでに削除されています。日本での診断もDSM-5に準拠していますから、これから先、この名称は使われなくなっていくでしょう。 したがって、大人の発達障害として主に扱うのは、ADHDとASDとなります。そして、症例数が多いのは、圧倒的にADHDです。 *1.DSM-5 米国精神医学会が作成する公式の精神疾患診断・統計マニュアルの第5版。精神障害診断のガイドラインとして用いる診断的分類表。DSMはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略称』、「「アスペルガー症候群」という名称は、今ではあまり使われなくなっています。というのも、この名称を生んだハンス・アスペルガー医師がナチスの協力者だった可能性が指摘されたため、米国精神医学会の診断基準・・・すでに削除」、こんなところでナチスの亡霊がいるとは驚いた。
・『「多動な子ども」とは「歩き回る」とは限らない  Q:ADHD(注意欠如・多動症)に、ASD(自閉スペクトラム症)、そしてLD(限局性学習症)……。略語がたくさん出てきて混乱してしまいそうです。 まずは、大人の発達障害の中で最も多いADHDについて、できるだけわかりやすく教えてください。 岩波氏:ADHDは「注意欠如・多動症」という日本語の名称の通りで、注意・集中力の障害と多動・衝動性が見られる疾患です。 「子どもの頃、忘れ物チャンピオンと言われていました」というような方が、ADHDの典型です。授業中、先生の話を全然聞かないでぼうっとしていたり、空想の世界に遊んでいたり、自由に絵を描いたりしていたというケースもよく見られます。 多動で落ち着かず、授業中におしゃべりをして怒られたりした経験がある方もいます。ただ、ここには誤解も多くて、「多動」というと皆さん、「席に座らないでうろうろしている」というイメージを持つのですが、そこまでの人はあまりいません。いつも体を揺らしているとか、椅子をガタガタさせているとか、その程度です。 Q:それは意外です。多動の子どもとは、「歩き回る子ども」のことだと思っていましたが、むしろ、そういう子は少ないということですね。 では、ASD(自閉スペクトラム症)とはどのようなものなのでしょうか?) 岩波氏:ASD(自閉スペクトラム症)には大きな特徴が2つあります。「空気が読めない」「場の雰囲気にそぐわない言動をしてしまう」などの対人関係やコミュニケーションの障害が第1の特徴です。親しい友人がいない、集団の仲間入りができないといった方もよく見られます。相手の表情や言葉のニュアンスをつかむのが苦手なので、孤立してしまい、学校や職場での活動が難しくなってしまうのです。 Q:「空気を読むこと」が求められる日本においては、苦労が多そうですね。 岩波氏:そうですね。ただ、この側面がクローズアップされ過ぎたために「コミュニケーションが苦手な人=ASD」と決めつける傾向が生まれてしまいました。しかし、この1つの特徴だけで、ASDだと判断することはできないのですよ。 2つ目の特徴がないと、ASDとは診断できません。 Q:2つ目の特徴とは、何でしょう? 岩波氏:それは「こだわりの強さ」です。例えば小さい子であれば、電車を1時間でも2時間でも見続ける、おかずを全部食べてからでないと絶対に白飯に手を着けない、野菜は絶対に食べないなど、物事や自分の行動パターンについて極端なこだわりを持っていることが、診断の基準になります』、「ASD」には、「空気が読めない」かつ「こだわりの強さ」、のが特徴のようだ。
・『「タイムカードを押し忘れる人」には2パターンある  Q:なるほど。ASDと診断するには、「コミュニケーション障害」に加えて「こだわりの強さ」という2つの条件が必要ということですね。 ADHDとASDは同じ発達障害というカテゴリーの中にあっても、症状は随分、違うようですね。見分けはつきやすそうです。 岩波氏:それが、そうでもないのです。このように「言葉で説明する」とかなり違うのですが、「表面上の言動を見る」と似てきてしまうのです。 例えば、タイムカードの打刻をよく忘れる人がいるとします。ADHDの人であれば「うっかり忘れる」ために「打刻を忘れる」のに対して、ASDの人は「打刻する意味が分からないから、やらない」という理由で「打刻をしない」のです。ASDの人には頑固なところがあり、自分の興味がないことはやらないという側面があるからです。 Q:そうなると、原因がADHDであれASDであれ、表面上は「またあの人、タイムカード押すのを忘れている」となるわけですか。 岩波氏:そうなんです。それがなかなか難しいところなのです。 あと、ADHDの人が、時間の経過とともにASDの人に似てきてしまうという面もあります。ADHDの人はもともと、どちらかというと外交的で友達も多いタイプです。しかし、思春期以降、どこかでメンタルダウンすることが起こりやすい。ミスが多かったり、約束を忘れてすっぽかしてしまったりして、怒られたりすることが続いて、落ち込んで自閉的になってしまうことがあるのです。そうなると、表面上は、ASDの人に似てくる。 実際、他の病院でASDと診断された人を、我々が詳しく調べてみるとADHDだということはよくあります。そういう表面上の見え方に引きずられず、その後ろにある本来の特性を見分けるというのは、専門医であってもなかなか難しいものです。 Q:では、どういったところで違いを判断されるのですか? 何かいい方法はあるのでしょうか? 岩波氏:そうですね、子ども時代を思い起こしていただくことが大きなヒントになります。 ADHDの方は、少なくとも小学校時代に孤立していることはありません。活発でクラスの中心でしたとか、友達も多かったとか、そういう人が多いのです。一方ASDの方は、小さい頃から集団の中に入れずに孤立していることが多いですね。 あとは、強いこだわりです。小学校低学年で漢和辞典を暗記していたとか、学校からは必ず同じ道順で帰っていたなど、興味や行動パターンの極端な偏りは、ASDと診断する要素になります。ただ最近は、当初から両方の症状を持っている人がいることも分かってきています。 Q:一般の人が軽々しく判断してはいけないということが、よく分かりました。 最近では、大人になってから「実は発達障害ではないか」と自覚し、診断を受ける方も多いですよね。こうした「大人の発達障害」において、特有のことはありますか?) 岩波氏:私の外来には、「発達障害になってしまいまして……」といって来院される方がいるのですが、発達障害が大人になってから「発症する」ということはありません。最初にお話ししたように、これは「生まれつきの脳の特性」を原因としているので、うつ病のように人生の途中でかかったり、治ったりということはないのです。 Q:ではなぜ、大人になってから診断を受ける方がいるのでしょうか?  岩波氏:大人になってから発達障害の診断を受ける方には、大きく分けて2つのパターンがあります。1つは職場での不適応から自覚が生まれるケースです。学歴を含めた「その人に本来あると周囲が期待する能力」と比較して、仕事のパフォーマンスが非常に低い。そのために上司から頻繁に叱責を受ける。そんな職場での問題がきっかけとなって、ADHDあるいはASDを疑うということがあります。もう1つは、仕事が続かないケースです。長続きしなくて、いろいろな職を転々とする。その結果、引きこもりになることも見られます。そういった方のベースにADHDやASDがあることがあります』、「ADHDの人が、時間の経過とともにASDの人に似てきてしまうという面もあります。ADHDの人はもともと、どちらかというと外交的で友達も多いタイプです。しかし、思春期以降、どこかでメンタルダウンすることが起こりやすい。ミスが多かったり、約束を忘れてすっぽかしてしまったりして、怒られたりすることが続いて、落ち込んで自閉的になってしまうことがあるのです。そうなると、表面上は、ASDの人に似てくる」、なかなか難しいもののようだ。
・『実は「高学歴」が多い、発達障害の人たち  Q:ということは、その方たちは、高校や大学までは大きな問題なく過ごせていたということですか? 岩波氏:子ども時代に顕著な症状がある方は、その時期に治療に入っているものです。ですから、大人になってから我々の外来に来る方の9割以上は、子ども時代に本格的な受診歴のない方です。学生時代までは、本人の努力もあると思いますが、なんとかやってこられた方たちですね。 今外来に来られているADHDやASDの方々には、知的能力の高い方が多いのですよ。我々はWAIS−Ⅳ(*2)などの知能検査を使ってテストをするのですが、IQベースで見ても平均よりも高い方が多い。また、大部分の方が4年制大学を出ています。有名大学を卒業している方も多数います。そのため、「あんないい大学を出ているのに、なんでこんなことができないのか」と言われてしまうわけです。大学までは地頭でそれなりにやってこられたのが、仕事においてはそうもいかなくなってしまうのですね。 そうなると、最初に戻って「仕事の管理化」「社会の管理化」の問題が、浮かび上がってきます。小規模な自営業のような受け皿が減っている中で、管理された職場や社会に対応できず、隠れていた「脳の個性」が、ネガティブな方向であらわになってしまう。それが「大人の発達障害」という新しい社会問題を生んでいるのです。 *2.WAIS-IV ウェクスラー式知能検査の成人版。言語テストと作業テストの双方を含み、知的能力や記憶・処理に関する能力を測る。 岩波先生のお話、次回も続きます』、「ADHDやASDの方々には、知的能力の高い方が多い」、「有名大学を卒業している方も多数います。そのため、「あんないい大学を出ているのに、なんでこんなことができないのか」と言われてしまうわけです。大学までは地頭でそれなりにやってこられたのが、仕事においてはそうもいかなくなってしまうのですね」、「小規模な自営業のような受け皿が減っている中で、管理された職場や社会に対応できず、隠れていた「脳の個性」が、ネガティブな方向であらわになってしまう。それが「大人の発達障害」という新しい社会問題を生んでいる」、なかなか難しい問題だ。

次に、3月8日付け東洋経済オンライン「低年齢の「発達障害」、薬で隠される子どもの危機 独自調査でわかった「4歳以下」への投与実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/535851
・『日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。 発達障害とされる児童数はなぜここまで増えているのか。そして、発達障害の早期発見、投薬は子どもたちを救っているのだろうか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第3回は「低年齢の発達障害、薬で隠される子どもの危機」。 第1回学校から薬を勧められる発達障害の子どもたち 第2回 子どもに「向精神薬」を飲ませた親の深い後悔 第4回 いじめを受けた発達障害の彼女が語る薬の闇 「発達障害の『グレーゾーン』と言われる子どもがあまりに増えています」 こう話すのは、岡山県倉敷市にあるNPO法人「ペアレント・サポートすてっぷ」代表の安藤希代子さんだ。自閉症の障害がある娘を育ててきた安藤さんは10年前から、障害児の保護者の相談支援や居場所づくりを行ってきた。 「今は学校、保育園、行政の子育て相談窓口などあらゆる場所で、『お子さんは発達障害の可能性があるから、病院に行ってみたら』と言われている。ここに相談に来る子どもを見ていると、どう見ても『障害』があるとは言えない子までもが、発達障害やそのグレーゾーンと指摘されています」 発達障害を疑われるきっかけは、些細なことだ。「1人遊びが多い」「叱られても、ほかの子と違う反応をする」。2~3歳でこうしたことを保育園や幼稚園で指摘され、受診を促される。 「程度の問題だが、発達障害の特性は小さい子どもの行動とかぶります。子どもの発達への無理解で、子どもらしい行動が発達障害の特性に見えてしまうのではないでしょうか」(安藤さん)』、「どう見ても『障害』があるとは言えない子までもが、発達障害やそのグレーゾーンと指摘されています」、恐ろしいことだ。
・『「入学前に薬を飲みましょう」  発達障害は原因が明らかでないため、血液検査や脳波などの数値で診断されるものではない。国際的な診断基準や知能検査などの尺度はあるが、最終的にはあくまで医師の問診で診断される。 家庭や学校での様子を家族から聞き、「衝動性」や「こだわりの強さ」といった特性がどの程度ならば発達障害なのか、それは医師の判断にゆだねられる。発達障害児を診療する獨協医科大学埼玉医療センター・こころの診療科の井原裕診療部長は、次のように説明する。 「発達障害が顕在化するか否かは状況に左右される。ADHD(注意欠陥・多動性障害)の場合、長時間座位を強いられると多動や不注意が目立ってくるが、活動を求められる状況だと持ち味だと思われる。授業中は『多動だ』とみなされる生徒も、放課後の部活では俊敏な名選手かもしれない。その程度の活動性を、あえてADHDと診断する必要はない」 だが、現実には親が子どもの困りごとを医師に伝えると、安易に薬を処方される。そんな例を前出の安藤さんはたくさん見てきた。 例えば、ある母親は、落ち着きがない子どもが小学校に入って椅子に座っていられないかもしれないと医師に相談すると、こう言われた。 「入学前に座れるように、年長の秋から薬を始めましょう」 発達障害児の診療を行っているある小児科医は、「癇癪を起こしたことをきっかけに、2歳のときから薬を飲まされている子どももいる」と話す。) 実際、発達障害の薬はより年齢の低い幼児へ広がっている。 2016年には、大人の統合失調症に使われる「エビリファイ」と「リスパダール」が、発達障害の一つである小児の自閉スペクトラム症の易刺激性(癇癪、攻撃性など)に対して使えるようになった。これらは脳の中枢神経に作用する抗精神病薬で、気持ちの高ぶりを抑えるといった効果がある。いずれも自閉症の根本的な治療ではない。 エビリファイの添付文書によると、服用は「原則6歳以上」と記されている。6歳未満については、薬の安全性と有効性を確かめる臨床試験(治験)が行われていない。にもかかわらず、厚生労働省が公開する医療機関の支払い明細データを集計すると、4歳以下への処方量が増加していることが分かった。 エビリファイはさまざまな用量(1㎎と3㎎)の錠剤があるため、用量で換算して合計した結果が上の図だ。2015年の9500mgに比べ、2019年にはその7.5倍の70000mg以上に膨れ上がっている。 エビリファイは錠剤だけでなく、子どもが飲みやすい液剤もある。特に増えているのが、この液剤の処方だ。リスパダールの4歳以下の処方量も、2014年の7400mgから2019年には25000mgに増加している』、「大人の統合失調症に使われる「エビリファイ」と「リスパダール」が、発達障害の一つである小児の自閉スペクトラム症の易刺激性(癇癪、攻撃性など)に対して使えるようになった。これらは脳の中枢神経に作用する抗精神病薬で、気持ちの高ぶりを抑えるといった効果がある。いずれも自閉症の根本的な治療ではない」、「エビリファイの添付文書によると、服用は「原則6歳以上」と記されている」、しかし、「4歳以下への処方量が増加」、恐ろしいことだ。
・『眠気で子どもの行動を鎮静  東洋経済が調べた結果について医師や薬剤師に意見を聞くと、一部からは「あまりのショックに呆然とした」と、驚きの声も出た。発達障害の子どもを診療している福島県立矢吹病院の井上祐紀副院長はこう話す。「エビリファイは副作用として眠気が出ることもある。そうした薬剤の効果を利用して子どもたちの行動自体を鎮静している可能性がある。4歳以下の治験のデータはないため、その年齢層の子どもに投与された場合の安全性が確立しているかはわからない。仮に処方するのなら、その事実を医師が親に伝えなければならないだろう」 抗精神病薬に詳しい、たかぎクリニックの高木俊介医師も次のように指摘する。 「抗精神病薬には中枢神経毒性があることはわかっている。成人で長期に使用した場合は遅発性ジスキネジアという不随意運動(本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きること)が3割以上の確率で起こる。エビリファイは遅発性ジスキネジアが起こりにくいといわれているが、経験的には長期に使用すればやはり起こる。それを4歳以下の心身の発達が本格化する前の子どもに投与するのは、理解できない」 子どもの行動の問題に対する安易な投薬は、安全性だけが問題ではない。(副作用や依存性についての詳細は、連載第2回「子どもに向精神薬を飲ませた親の深い後悔」を参照)。複数の医師や支援者が共通して問題視するのは、子どもの行動の裏側に隠されている家庭や学校でのトラブルが見えなくなることだ。) 「癇癪(かんしゃく)を起こした子どもは、なぜ起こしているのかを考える必要がある。イライラを子どもの脳が勝手に出している症状だと考えれば、薬しか手段がないように見えてしまう。だが、養育環境がその子に最適化されていないならば、その環境を調整するのが先だ」(井上医師) 井上医師は、「最後のやむなき手段であるはずの薬が、いつの間にか最初の手段になっているのが問題だ。苦しんでいる子どもたちが、かろうじて出したSOSサインとしての行動の問題に、薬物療法が選択されている」と指摘する。 前出の安藤さんは、子どもが発達障害といわれて相談に来たある母親について、次のように話す。 「実は父親から母親へのDV(家庭内暴力)があり、その問題が解決したらお子さんが安定しました。自分の子が発達障害と疑われ、泣きながら相談していたお母さんの悲しみは、いったい何だったのでしょうか」 安藤さんは、「薬物治療をすべて否定しているわけではない」と前置きしつつもこう話す。 その子は何が好きなのか。嫌がっているときにどうしたら落ち着くのか。周囲は、子どもについて知る時間が必要です。子どもの出す行動のサインを薬で抑えると、本来の子どもの姿がわからなくなります」』、「「最後のやむなき手段であるはずの薬が、いつの間にか最初の手段になっているのが問題だ。苦しんでいる子どもたちが、かろうじて出したSOSサインとしての行動の問題に、薬物療法が選択されている」、子どもにこんな強い薬を安易に処方する医師の良識を疑いたくなる。
・『子どもが抱える裏事情を考える  前出の井上医師も、複雑な要因が絡み合って生じた子どもの問題行動を医療だけで解決しようとする「医療化」を問題視する。 「いじめや虐待などさまざまな絡み合った問題が、子ども自身の問題に矮小化されてしまうこともある。本人が弱い立場であればあるほど、家庭や学校、地域の大人たちは子どもの行動の“裏事情”を考える習慣が必要だ」。 前出の小児科医は、「子どもの逃げ場はどこにもなくなっている」と危機感を募らせている。「学校の先生や医師、専門家が寄ってたかって、子どものSOSを脳の問題にすり替えている。本人たちは『善意』でやっているため、お母さんもそこに頼りたくなる」 服薬の可否を自分で選べない子どもへの処方は、最も慎重であるべきだ。安全性が確保されていないにもかかわらず、子どもの声に耳を傾けず、薬が優先されることは断じて許されない。 しかし、「薬を飲みたくない」と声を上げても、なおその声を押し殺される子どもがいる。 (第4回はこちら「いじめを受けた発達障害の彼女が語る薬の闇」)【情報提供のお願い】東洋経済では、発達障害に関連する課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております』、「服薬の可否を自分で選べない子どもへの処方は、最も慎重であるべきだ。安全性が確保されていないにもかかわらず、子どもの声に耳を傾けず、薬が優先されることは断じて許されない」、同感である。

第三に、4月8日付け東洋経済オンライン「発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/579447
・『日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。 発達障害の子どもは、どうやったら学校で過ごしやすくなるのか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第8回は「発達障害の子どもを排除する厳格な『学校ルール』」。 子どもの特性や困りごとに応じて、学校側が環境を調整することを「合理的配慮」という。東京都公立小学校教員を務め、合理的配慮の実践事例集『つまり、「合理的配慮」って、こういうこと?!』の編集に携わる宮澤弘道教諭に、発達障害の子どもを取り巻く学校の課題を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは宮澤氏の回答)。 Q:発達障害の子どもは、なぜ増えているのでしょうか。 A:教師たちが当たり前のように思っている教室の環境が、一定の子どもを排除するルールになっていると感じています。2006年に改正された教育基本法では規律や規範が重視され、各学校で学力向上のための「学習スタンダード」が導入され始めました。「◯◯小学校スタンダード」などと、独自の細かい決まりごとを作る学校が増えています。 例えば、授業の前に「気をつけ。これから◯時間目の挨拶を始めます」と言ってから、担任教師の目を2秒間見るといったルール。この儀式が苦手な子がいると、いつまでも授業が始まらず、「あいつのせいでまた待たされている」と周りの子も思うようになります。授業に集中できない子どもがいても、教師の授業の組み立て方が悪い、とはなりません』、「2006年に改正された教育基本法では規律や規範が重視され、各学校で学力向上のための「学習スタンダード」が導入され始めました」、「授業の前に「気をつけ。これから◯時間目の挨拶を始めます」と言ってから、担任教師の目を2秒間見るといったルール。この儀式が苦手な子がいると、いつまでも授業が始まらず、「あいつのせいでまた待たされている」と周りの子も思うようになります」、こんな全体主義的な教育が行われているとは初めて知った。
・『ルールに収まらない子が増えるのは必然  私は挨拶なしで授業を始めますが、面白い授業をすればスタート段階で一斉にこちらを向くし、つまらない授業をすれば、いつまでもざわざわしています。それは子どもの責任というより、プロとして私がだめだということです。 整列や一斉に腰を下ろすといった集団行動も同じです。できない子がいて何度もやり直しさせていると、周りも次第にその子を否定的に見るようになります。 学校のルールがどんどん細かくなるので、そのルールに収まらない子が必然的に増えてくる。その結果、ひと昔前であれば「この子がなぜ?」という子どもが、特別支援学級に行くことが増えました。 Q:特別支援学級の児童生徒数は、この10年間で2倍に増えていますね。 A:周りの友達にすぐに手が出る。授業中にうるさくて周りの子が勉強できない。主にこの2つが通常の学級にいられなくなる原因になっています。) 担任の工夫や周りの子への理解を促すことで通常学級にいられる子が、特別支援学級に追いやられる事例も多く見てきました。その結果、通常学級は「普通に成長した子ども」しかいられない教室になりつつあります。 昔の通常学級は、いろいろな子どもが集まる1本の大木でしたが、今はどんどん枝分かれして、幹の部分が細くなっています。 Q:同じクラスで過ごすことで、周囲とトラブルにならないでしょうか。 A:一緒に過ごしていれば、喧嘩もするし、嫌なこともある。もちろん、暴力や暴言などで理不尽に嫌な思いをさせてしまった時は厳しく指導し、やられた子へのフォローが欠かせません。 (宮澤氏の略歴はリンク先参照) そうして周囲と接する中で、徐々に手をすぐに出さない接し方を学んでいきます。ある程度の年齢になると落ち着くことも多いので、その子の成長を待ってあげることが大切です。 子どもは優しくて、柔軟です。一緒の空間で過ごしていると、「あいつは授業で邪魔ばっかりするけど、忘れ物をした時は貸してくれて優しいんだよね」と、多面的に見るようになります。その子も一人の人間だということが理解できるんです。 しかし、自分の周囲で障害やハンディキャップのある人を知らないで育ち、あるとき突然出会ったら理解できるでしょうか。ともに育たない学校の現状は、社会をますます分断してしまうのではないかと危機感を感じています』、「特別支援学級の児童生徒数は、この10年間で2倍に増えています」、「通常学級は「普通に成長した子ども」しかいられない教室になりつつあります」、安易に「特別支援学級」へ入れる先生たちの姿勢は問題だ。
・『「この子は難しい」という担任の判断から  Q:特別支援学級に入る子どもは、どのようにして決められるのでしょうか。 A:担任の判断からです。担任が通常学級では難しいと判断したら、校内の生活指導担当やスクールカウンセラーにつなげます。彼らが教室の様子を見ると、先生が必死に対応してもどうにもならず、ほかの子どもたちからも邪険にされたり、避けられたりしている状況があります。そうすると「この子にとってこの環境はふさわしくない」という話になります。 まずは週に何時間か別の教室で指導を受ける通級指導、それでも改善が見られなければ特別支援学級に転籍するという流れです。転籍を検討する際には、担任教師や管理職、特別支援学級の教師らで判定会議を行います。 判定会議でも担任の判断は重いので、担任が「この子は難しい」と言っていたら、転籍が認められることが多い。もちろん、その前の段階で保護者との対話と納得は必須ですが、保護者は学校からさまざまな角度で説得されると、「前向きに」というより「諦めて」入級を受け入れるパターンも多いです。) Q:通常学級より、特別支援学級や特別支援学校を希望する保護者も増えているようです。特別な支援を受ける子どもが増えることはよいことのようにも思えますが。 A:保護者にとっては、特別支援学級・学校に行けば、専門性の高い教育を受けて子どもの可能性が広がるという希望があります。ただ、特別支援学級・学校は、保護者がイメージする専門的な学びとは違い、将来の就職につなげるための訓練に近い面があります。 一度、特別支援学級・学校のレールに乗ると、通常学級のレールに戻るのは難しいのが現実です。特別支援学校の高等部の卒業は、就職時に(「高卒」の要件として認められず)中学校卒業の扱いになります。特別支援学校では就職先を斡旋してくれますが、そこでうまくいかなければ、中卒資格で自活しなければいけません。 一方、保護者が学校でつらい思いをしていることは、痛いほどわかります。今の通常学級には問題のある子どもが少ないので、周囲に面倒をかける子どもの親は、いつも厳しい目にさらされています。 1人の教師ががんばって工夫をしても、担任が変われば辛い思いをしてしまう可能性がある。だから、保護者に「特別支援学級に行ったほうがよっぽど気持ちがいい」と言われてしまうと、教師も「通常学級でがんばりましょう」とは軽率に言えません。集団行動や規律を重視し過ぎる体制が変わらないことが、悩ましいですね。 Q:本人や親が通常学級を希望しても、学校側から拒否されるケースもありますか。 A:制度上は保護者が特別支援学級を希望しなければ、強制はできません。 以前、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と言われていた男児を受け持っていた時の話です。中学進学の際、関係機関から特別支援学級への入級を勧められました。特別支援学級のある学校は小学校の友達が進学する中学校とは違うため、人見知りをする本人は行きたくありませんでした。 男児の受け入れを懸念する中学校の校長に、親と一緒に会いに行き、改めて本人と親の思いを伝えました。結局、彼は周りの子と同じ通常学級に入りました。) 中学1年、2年はあまり学校に通えなかったのですが、3年生になってから行けるようになりました。彼が遊びに来た時に話を聞くと、「彼女ができた」と言います。彼女と一緒の高校に行くために、勉強をがんばったそうです。 小学校の時は、ずっと動いていて、周りの子に迷惑をかけている子でしたが、随分と落ち着いていました。高校までいけば、通信制や単位制、自由な校風の学校もあって選択肢が増えてきます。 Q:2013年に成立した「障害者差別解消法」では、同じ場で学ぶために、障害の特性に応じた環境の調整や工夫をする「合理的配慮」が公立学校に義務付けられました。ただ、教師は工夫をしたくても、忙しすぎるという声も聞こえます。 明日の授業、来週の行事につねに追われ、考える余裕がないという現実問題はあります。2000年以降、教師への人事評価制度が入ってからは評価が給料や昇給に跳ね返るので、管理職に物が言いづらくなりました。 東京都では職員会議で挙手での採決を禁止するなど、教員を抑圧する政策がこの20年間ばんばん打ち出されました。そうしているうちに教員自身が主体性を失い、思考停止してしまったところもあります。 ただ、考える時間が取れなかったとしても、担任に「この教室にいていいんだよ」という眼差しがあるだけでも、だいぶ違います』、「東京都では職員会議で挙手での採決を禁止するなど、教員を抑圧する政策がこの20年間ばんばん打ち出されました。そうしているうちに教員自身が主体性を失い、思考停止してしまったところもあります」、教員への管理強化が「教員自身が主体性を失い、思考停止」につながっているとすれば大いに問題だ。
・『教師も学校文化との板挟みに  Q:発達障害の子どもへの投薬についてはどう考えていますか。 A:「薬を飲んで落ち着けば成功体験ができ、子どもの自信になる」というのが、多くの教師の考え方だと思います。ただ、薬を飲んで成功する体験を積み重ねているだけなので、薬が手放せなくなりますよね。 クラスを受け持った時点で、大量に服薬している子もいます。薬を飲んでいる子どもの中には、たとえ調子が良い日でも「今日俺は薬飲んでないからどうせだめなんだ」「今日薬飲んでないから暴れるよ」と自分から言ってくる子もいます。 薬だけに頼らずに生活できるよう、この子にどういう環境が合っているかを考えることが、私たち教師の仕事だと思っています。 合理的配慮をしようと努力している教師もいますが、(さまざまなルールを設ける)学校文化が変わらない限り、それとの板挟みになります。その結果、環境の調整よりも投薬が優先される可能性もあります。集団行動が苦手な子がいたら、そもそも「なぜそのルールが必要なのか」を子どもにも考えてもらい、学校の文化そのものを見直していく必要があります。 【情報提供のお願い】東洋経済では、発達障害に関連する課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております』、私個人としては、薬漬けや「ルール漬け」からの脱却を真剣に検討すべき時だと思う。
タグ:(その3)(発達障害は病気ではなく「脳の個性」 治すべきものではない、低年齢の「発達障害」、薬で隠される子どもの危機 独自調査でわかった「4歳以下」への投与実態、発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に) 発達障害 日経ビジネスオンライン 黒坂 真由子氏による「発達障害は病気ではなく「脳の個性」 治すべきものではない」 「発達障害が急速に注目を集めるようになった」背景には、「「仕事の管理化」が進んでいる」ことがある。なるほど。 「発達障害とは、」「生まれつきの脳機能の偏り」であって、「「疾患名」ではない」、私も「誤解」していた。 「ADHD」、「ASD」は有名だが、「LD」は初耳だ。 「「アスペルガー症候群」という名称は、今ではあまり使われなくなっています。というのも、この名称を生んだハンス・アスペルガー医師がナチスの協力者だった可能性が指摘されたため、米国精神医学会の診断基準・・・すでに削除」、こんなところでナチスの亡霊がいるとは驚いた。 「ASD」には、「空気が読めない」かつ「こだわりの強さ」、のが特徴のようだ。 「ADHDの人が、時間の経過とともにASDの人に似てきてしまうという面もあります。ADHDの人はもともと、どちらかというと外交的で友達も多いタイプです。しかし、思春期以降、どこかでメンタルダウンすることが起こりやすい。ミスが多かったり、約束を忘れてすっぽかしてしまったりして、怒られたりすることが続いて、落ち込んで自閉的になってしまうことがあるのです。そうなると、表面上は、ASDの人に似てくる」、なかなか難しいもののようだ。 「ADHDやASDの方々には、知的能力の高い方が多い」、「有名大学を卒業している方も多数います。そのため、「あんないい大学を出ているのに、なんでこんなことができないのか」と言われてしまうわけです。大学までは地頭でそれなりにやってこられたのが、仕事においてはそうもいかなくなってしまうのですね」、「小規模な自営業のような受け皿が減っている中で、管理された職場や社会に対応できず、隠れていた「脳の個性」が、ネガティブな方向であらわになってしまう。それが「大人の発達障害」という新しい社会問題を生んでいる」、なかなか 東洋経済オンライン「低年齢の「発達障害」、薬で隠される子どもの危機 独自調査でわかった「4歳以下」への投与実態」 「どう見ても『障害』があるとは言えない子までもが、発達障害やそのグレーゾーンと指摘されています」、恐ろしいことだ。 「大人の統合失調症に使われる「エビリファイ」と「リスパダール」が、発達障害の一つである小児の自閉スペクトラム症の易刺激性(癇癪、攻撃性など)に対して使えるようになった。これらは脳の中枢神経に作用する抗精神病薬で、気持ちの高ぶりを抑えるといった効果がある。いずれも自閉症の根本的な治療ではない」、「エビリファイの添付文書によると、服用は「原則6歳以上」と記されている」、しかし、「4歳以下への処方量が増加」、恐ろしいことだ。 「「最後のやむなき手段であるはずの薬が、いつの間にか最初の手段になっているのが問題だ。苦しんでいる子どもたちが、かろうじて出したSOSサインとしての行動の問題に、薬物療法が選択されている」、子どもにこんな強い薬を安易に処方する医師の良識を疑いたくなる。 「服薬の可否を自分で選べない子どもへの処方は、最も慎重であるべきだ。安全性が確保されていないにもかかわらず、子どもの声に耳を傾けず、薬が優先されることは断じて許されない」、同感である。 東洋経済オンライン「発達障害の子どもを排除する厳格な「学校ルール」 「普通に成長した子」しかいられない通常学級に」 「2006年に改正された教育基本法では規律や規範が重視され、各学校で学力向上のための「学習スタンダード」が導入され始めました」、「授業の前に「気をつけ。これから◯時間目の挨拶を始めます」と言ってから、担任教師の目を2秒間見るといったルール。この儀式が苦手な子がいると、いつまでも授業が始まらず、「あいつのせいでまた待たされている」と周りの子も思うようになります」、こんな全体主義的な教育が行われているとは初めて知った。 「特別支援学級の児童生徒数は、この10年間で2倍に増えています」、「通常学級は「普通に成長した子ども」しかいられない教室になりつつあります」、安易に「特別支援学級」へ入れる先生たちの姿勢は問題だ。 「東京都では職員会議で挙手での採決を禁止するなど、教員を抑圧する政策がこの20年間ばんばん打ち出されました。そうしているうちに教員自身が主体性を失い、思考停止してしまったところもあります」、教員への管理強化が「教員自身が主体性を失い、思考停止」につながっているとすれば大いに問題だ。 私個人としては、薬漬けや「ルール漬け」からの脱却を真剣に検討すべき時だと思う。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

健康(その20)(「糖質制限」をがんばる人が結局やせないワケ やせたいなら糖質は量ではなく「質」に着目する、和田秀樹氏2題(70代が「老い」の分かれ道 その後の人生を救う習慣とは、70代で運転免許を決して返納してはいけない理由)) [生活]

健康については、3月2日に取上げた。今日は、(その20)(「糖質制限」をがんばる人が結局やせないワケ やせたいなら糖質は量ではなく「質」に着目する、和田秀樹氏2題(70代が「老い」の分かれ道 その後の人生を救う習慣とは、70代で運転免許を決して返納してはいけない理由))である。

先ずは、4月10日付け東洋経済オンラインが掲載した内科医・糖尿病内科医・漢方医の工藤 孝文氏による「「糖質制限」をがんばる人が結局やせないワケ やせたいなら糖質は量ではなく「質」に着目する」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/579471
・『あまいものは太る。コクがあって味が濃いものは太る。だから、「やせるためには、ガマン、ガマン」と遠ざける。ダイエットのよくある風景ですよね。でも、このガマンがなかなか続かない。「あ~たまには、あまいゼリーが食べたい」「生クリームたっぷりのパフェとか……」そんな思いで頭がいっぱいになり、「ちょっとだけなら」が重なり、結局リバウンド。 これ、意思が弱いからではなく、人間の脳の仕組みからして仕方がないことだと言うのは、これまで10万人のダイエットをサポートしてきた医師の工藤孝文氏。でもだからといって、あまいものをバクバク食べてもやせるわけがない。では、どうすれば、リバウンドせずにやせられるのか。同氏の著書『コクあま幸せダイエット』より一部抜粋・再構成してお届けします』、興味深そうだ。
・『リバウンドの原因は「あまいもの断ち」  食事制限をして頑張ってやせたけど、1年後リバウンドして、その努力が無駄になる。ダイエット頑張ろうと思ったけど、3日坊主で終わってしまった。これは、本当によく聞く話です。実際、クリニックに訪れる患者さんは、ほぼ全員がリバウンド経験者です。 リバウンドしてしまうのは、意思が弱いから。そう感じているからか、リバウンドしたことを告げる方はどこか申し訳なさそうな顔を浮かべていますが、「意思の弱さ」というよりも、あまいものを極端に制限しすぎて、脳内が「セロトニン不足」に陥ったことが原因となっているケースが非常に多いように感じています。 セロトニンは、分泌されると幸福感に包まれ、ストレスを和らげてくれる脳内物質で、別名「幸せホルモン」とも呼ばれています。 逆にセロトニンが足りなくなると、脳は不安でいっぱいになってしまいます。するとその不安からくるストレスを解消しようと「あまいもの」を欲して、セロトニンを補充しようとします。だからあまいものをガマンすればするほど、セロトニン不足になり、もっとあまいものが欲しくなってしまうのです。そしてあまいものをドカ食いしてしまうという現象が起きます。) 「あまいものをやめられない」この中毒症状にも似た症状は、あま味を感じると分泌される「β?エンドルフィン」というホルモンも関係しています。このホルモンは、分泌されると別の幸せホルモン・ドーパミンの約20倍も幸福感を得られるといいます。この多幸感が中毒性につながり、やめられないというわけです。 ここで逆転の発想です。やめられないということは=継続できるということにつながります。つまり、あまくてダイエット効果があるものを使ってダイエットをすれば、やり忘れや挫折が少なくなり、リバウンドしにくいダイエット法になるというわけです。 あまくてなおかつダイエット効果があるもの、それが今回「コクあま幸せダイエット」でおすすめしている新しい糖質、「フラクトオリゴ糖」です』、「セロトニンが足りなくなると、脳は不安でいっぱいになってしまいます。するとその不安からくるストレスを解消しようと「あまいもの」を欲して、セロトニンを補充しようとします。だからあまいものをガマンすればするほど、セロトニン不足になり、もっとあまいものが欲しくなってしまうのです。そしてあまいものをドカ食いしてしまうという現象が起きます。「あまいものをやめられない」この中毒症状にも似た症状は、あま味を感じると分泌される「β?エンドルフィン」というホルモンも関係。このホルモンは、分泌されると別の幸せホルモン・ドーパミンの約20倍も幸福感を得られる」、「セロトニン」や「「β?エンドルフィン」というホルモンも関係」、これではヤセ我慢しても勝負にならないようだ。
・『砂糖を「フラクトオリゴ糖」に置き換える  フラクトオリゴ糖は、サトウキビなどから作られた天然の甘味料です。いま、その機能が注目されて、スーパーやネットショップなどで購入できるようになってきました。「コクあま幸せダイエット」は、コーヒーなどの飲料、料理に、スイーツに、いつも使っている砂糖をこのフラクトオリゴ糖に置き換えるだけというとても簡単なもの。いつもは太るはずのあまいものが太りにくいダイエット食へと変身するのです。 フラクトオリゴ糖の天然由来の味質は、砂糖に近いさわやかなあまさ。砂糖と比べると、あまさは穏やかですが、後味のきれが砂糖にとても近いところが特徴です。いつもの味とあまり変わらないので、違和感を覚えず取り入れられるのではないでしょうか。 それでは、フラクトオリゴ糖はどのようなダイエット効果があるのでしょうか。 まず、フラクトオリゴ糖は太りにくい甘味料です。 単糖類がいくつも結合している構造のため、人の消化器官では、糖として、消化・吸収されずに大腸までたどりつきます。消化・吸収されにくいということは、カロリーとして蓄積されにくい=低カロリーということになります。そのカロリーは、砂糖の約半分ほど。大さじ1杯で18kcalほどです。また、糖として血液中に吸収されないということは、フラクトオリゴ糖自体で食後の血糖値があがりにくいということです。これが太る、太らないに大きくかかわってきます。食後の血糖値が急激に上昇すると、インスリンが大量に分泌されます。大量に分泌されたインスリンは、余分な糖を中性脂肪に変えてしまいます。 つまり、食後血糖値がほぼ上がらない糖質であるフラクトオリゴ糖は、太りにくい糖質といえるのです。) また、フラクトオリゴ糖は太りにくいというだけでなく、やせやすい体づくりにも寄与してくれます。やせやすい体になるためには、腸内にいるビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌を腸内で増やし元気に活動してもらうことが必要です。なぜなら、それらは体をやせやすくする「やせ菌」だからです。 善玉菌は「短鎖脂肪酸」を作り出します。「短鎖脂肪酸」は、脂肪細胞の蓄積をストップさせたり、脂肪の燃焼を助けたり、ダイエットにうれしい活躍をしてくれます。つまり、「短鎖脂肪酸」が腸内で生成されることによって、やせやすい体になるのです。 この「短鎖脂肪酸」を生み出すには善玉菌に大好物のエサを与えて元気に活動させ、エサを短鎖脂肪酸に変えるという、ある種の発酵を腸内で引き起こすことが大切です。この腸内での発酵を私は「内部発酵」と呼んでいます。 つまり、すでに体外で発酵されたヨーグルトなどの発酵食品、いうなれば「外部発酵」の食品を食べて善玉菌を増やすだけでなく、プラスして「内部発酵」に必要な食品を取り入れるのが、やせる体を作る黄金の方程式だと私は考えます。 そして、先ほどフラクトオリゴ糖は消化吸収されずに腸に届くといいましたが、腸に届いたフラクトオリゴ糖は、この内部発酵を引き起こす最高のエサになって短鎖脂肪酸を生み出し、やせやすい体になる助けをしてくれるのです』、「フラクトオリゴ糖は」、「人の消化器官では、糖として、消化・吸収されずに大腸までたどりつきます・・・そのカロリーは、砂糖の約半分ほど。大さじ1杯で18kcalほどです。また、糖として血液中に吸収されないということは、フラクトオリゴ糖自体で食後の血糖値があがりにくいということです」、「やせやすい体づくりにも寄与してくれます。やせやすい体になるためには、腸内にいるビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌を腸内で増やし元気に活動してもらうことが必要です・・・善玉菌は「短鎖脂肪酸」を作り出します。「短鎖脂肪酸」は、脂肪細胞の蓄積をストップさせたり、脂肪の燃焼を助けたり、ダイエットにうれしい活躍をしてくれます。つまり、「短鎖脂肪酸」が腸内で生成されることによって、やせやすい体になるのです」、「フラクトオリゴ糖は」いいことだらけの有難い成分のようだ。
・『「ダイエットの目的は糖質を減らすこと?  いま、「糖質制限」ダイエットに取り組むかたも多くいらっしゃいます。別にそれ自体を否定するつもりはありません。ですが、糖質、あまいものを悪者みたいに扱うのは、少し違うのではないかと思うのです。 そもそもダイエットの目的は何ですか? やせることで自分の容姿を好きになれたり、健康的な体になったり、幸せな人生を送ることが目的のはずです。糖質を減らすことが目的ではないですよね?糖質制限する間は、あまいものを食べる機会が減るわけですから、セロトニンはでにくく、幸福度はどうしても低くなります。でも、ダイエット中も限りある人生の貴重な時間は過ぎていきます。 だったら、ダイエット中もできる限り幸せな時間を過ごしたいじゃないですか。だからこそ、続けられる。ダイエットが続かなくて、リバウンドする危険性はぐっと下がるはずです。ぜひみなさまも、あまいもの=「糖質」を食べながらダイエットできるフラクトオリゴ糖を使った「コクあま幸せダイエット」を試してみてください』、早速、試してみたい。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医の和田秀樹氏による「70代が「老い」の分かれ道、その後の人生を救う習慣とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298261
・『人生100年時代。現在の70代の日本人はかつての70代とは違います。若々しく、健康になった70代の10年間は、人生における「最後の活動期」とも言えます。70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めると言っても過言ではありません。要介護状態を遠ざけ、自立した80代以降の老いを迎えるためには、どう過ごせばいいしょうか。70代には、体力の低下、意欲の低下から始まる、さまざまなリスクがあると言います。前回に続き、精神科医の和田秀樹さんの『70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(詩想社新書)から抜粋します』、後期高齢者になった筆者にとっても、「70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めると言っても過言ではありません」、気持ちが引き締まった。
・『70代は老いと闘える最後のチャンス  長い老いの期間を健やかに過ごすためには、まず、脳の機能をいかに80代以降も保つかが重要です。あわせて、70代のときにもっている運動機能を、いかに長持ちさせるかということも大切になってきます。 カギとなるのが、70代の過ごし方です。70代前半までであれば、認知症や要介護となっている人は、まだ1割もいません。けがをしたり、大病を患ったりしていなければ、中高年時代のように、たいていのことはできるはずです。 この人生終盤の活動期に努力して過ごすことで、身体も脳も、若さを保つことができますし、その後、要介護となる時期を遅らせることも可能になるのです。元気な80代へとソフトランディングしていくためには、とても大切な時期と言えます』、「元気な80代へとソフトランディングしていくためには、とても大切な時期と言えます」、なるほど。
・『70代と80代では違う 老いを2つの時期で考える  ただ、みなさんにわかってほしいのは、私は一生、老いに抵抗したり、闘い続けることをお勧めしているわけではないということです。 たしかに現在のアンチエイジング医療の進歩は目覚ましいものがあり、外見においても、70代くらいまでは現役時代とさほど変化がない状態を保つことができるようになってきています。 しかし結局、それが可能なのも、80代くらいまでのことでしょう。80代を過ぎれば、必ずみな老いていきます。老いを完全に止めることはできないのです。「人生100年時代」が目前に迫った私たちは、今後は、「老い」を2つの時期に分けて考えることが求められていると私は考えています。 それは70代の「老いと闘う時期」と、80代以降の「老いを受け入れる時期」の2つです。 どんなに抗(あらがお)うと、老いを受け入れざるを得ない時期が、80代以降に必ずやってきます。それなのに、いつまでも若さを求めて老いと闘っていては、結局、挫折感しかもたらさないのではないでしょうか。80代になり、85歳を過ぎたくらいからは、誰かの手を借りることも多くなってきます。そのときこそ、ありのままの自分の老いを、受け入れる時期と考えたほうがいいでしょう。そうでなければ、その後の15~20年ほどに延長した「老いの期間」を生きていくことはとてもつらいものになってしまいます。 寿命が100歳近くにまで延びていくと、寝たきりで老衰で亡くなるというケースが一般的になっていきます。誰もが高い確率でそのような晩年を迎えるのですから、「老い」を忌避して生きていくことのほうが不自然なことです。 80歳を過ぎて老いた自分に失望したり、「老い」を嫌悪したりする必要はないのです。むしろ、大病で命を落とすこともなく、事故にあうこともなく、天寿をまっとうしているからこそ、老いに直面していると考えてもいいのではないでしょうか。80歳を過ぎたら、老いていく自然の成り行きを受け入れる時期と言えるでしょう。 その一方で、70代においては、人々はより元気になり、まだまだ老いと闘うことのできる時期と言えるでしょう。元気でいようと努力することは、70代においては効果もありますし、意味があることだと私は考えています。「老い」の受け止め方は人それぞれですし、若々しくいたいなどとは思わない。ありのまま自然に老いていくことがいちばんだと考える人ももちろんいます。老いの過ごし方、受け止め方に、正解などありませんし、人それぞれ自由でいいわけです。) ただ、80代になっても元気さを長く保ちたい、生活の質を維持したい、身体もある程度動けるほうがいいし、頭もはっきりしているほうがいいと考えるなら、70代はまだまだ老いと闘える最後のチャンスだということです。このときの日々の努力が、その後の80代のあり方を大きく左右するものとなっていくのです』、「70代の「老いと闘う時期」と、80代以降の「老いを受け入れる時期」」、まだ私は「老いと闘」わねばならないようだ。
・『努力したかどうかが、あとあと大きな差になる  今後、訪れるであろう超長寿社会は、少子化も相まって、高齢者が社会のマジョリティとなる社会です。たとえば、2060年には、日本国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。 これを、年寄りばかりの「単一的」な社会とイメージするかもしれませんが、実際は、いまよりもより多様性に満ちた社会となるはずです。高齢者が増えるということは、それ以外の年代の人たちが多い社会と比べて、多様なものにならざるを得ないのです。 たとえば、普通の小学生を例にみてみましょう。一般的な小学校であれば、超優等生と超劣等生とのIQの差があったとしても、せいぜい80から120くらいの幅に収まるでしょう。50メートル走をやっても、速い子で6秒とか7秒、遅い子でも、15秒あれば走れるでしょう。それぞれの能力の差といっても、高齢者でなければ、その程度のものなのです。 しかし、高齢者の現実は、80歳で認知症が進んで会話がままならない人がいる一方で、それなりにこれまでの仕事や知的な活動を続けられる人がいたり、ノーベル賞をもらって立派なスピーチができる人さえいます。 寝たきりになってしまったり、日常の介助の必要な人もいますが、毎日、散歩ができたり、水泳やゴルフなどスポーツを楽しめる80歳の人もいます。 つまり、高齢者のほうが、身体能力や脳機能において、個人差が格段に広がっているのです。その高齢者が大多数となっていくこれからの社会は、まさに多様性に満ちた社会となるはずです。このような「健康格差」が生じるということが、これからの社会の特徴となります。 若い人であれば、10日間ほど病気で寝込んだとしても、治ったあとは、すぐに元の生活に戻っていくことができるはずです。 しかし、高齢者ともなると、そうはいきません。10日間も寝込んでしまえば、運動機能は一気に衰えます。脳の機能も、ずっとベッドの中にいては、急速に衰えてしまいます。 それほど高齢者にとっては、脳機能、運動機能を維持するために、「使い続ける」ということが重要なのです。) 個々の能力差が大きくなっていく超長寿社会においては、その維持するための努力をしたかどうかが、その後の大きな差となって現れてきます。使い続けようという意識や心がけが、誰にとってもますます重要となってくると言えます』、「高齢者のほうが、身体能力や脳機能において、個人差が格段に広がっているのです。その高齢者が大多数となっていくこれからの社会は、まさに多様性に満ちた社会となるはずです。このような「健康格差」が生じるということが、これからの社会の特徴となります」、確かに「高齢者」での「健康格差」は大きくなりそうだ。
・『一気に老け込まないために、いちばん必要なもの  いまの70代は若々しくなってきたとはいえ、この年代ならではのリスクもたくさん抱えています。その最たるものが、「意欲の低下」です。 脳機能、運動機能の維持には、「使い続ける」ことが重要であるとは前述しました。たとえば、40代、50代の人が何もせずゴロゴロと生活したとしても、足腰や脳機能が衰えることはまずありませんが、70代の人がそれをやるとすぐに運動機能、脳機能は衰えてしまいます。 70代というのは、意欲的に身体を動かしたり、頭を使ったりしないと、すぐに要介護になってしまうというリスクがあるのです。 これは多くの高齢者自身もわかっていることではありますが、実際に、「使い続ける」ことを実践できる人はそう多くありません。 なぜなら、頭では理解していても、70代になってくると、意欲の低下が進み、活動のレベルが低下してくるからです。何事にもやる気がわかず、興味がもてなくなって、人に会うこともおっくうになり、出不精になる傾向も出てきます。 こういった「意欲の低下」は、脳の前頭葉の老化と、男性ホルモンの減少が主な原因となって引き起こされます。前頭葉の萎縮については、実は40代からすでに始まっていて、それが70代ともなると本格化してきます。そこに男性の場合は、男性ホルモンの減少も進んできますので、それが行動意欲の低下となって現れてきます。 実は、この「意欲の低下」こそが、老化でいちばん怖いことなのです。病気やケガをきっかけに老ふけ込んでいくということもありますが、加齢とともに老け込んでいくというときは、意欲の減退が要因となって一気に年老いていくのです。 結局、どんなに身体を動かそう、脳機能を使おうと思っても、意欲がついてこないから、いろいろな活動をすることがおっくうで不活発になり、もっている機能が維持できなくなってくるのです。 こうした「意欲の低下」が顕著となってくるのが、まさに70代と言えます。つまり、70代から80代に向けて元気に過ごすことができるかどうかは、70代においていかに「意欲の低下」を防ぐかにかかっています。「意欲の低下」を防ぐには、日々の生活のなかで、前頭葉の機能と、男性ホルモンを活性化させることがとても重要になってきます。) 前頭葉とは、大脳の前方部分のことで、意欲や思考、創造などにかかわっている部分です。また、男性ホルモンも、性機能だけではなく、他者への関心や意欲にもかかわっています。この2つの要素が、若いときのように維持できていると、日常の活動レベルを保つことができ、老化を遅らせて、若々しくいることができるのです。 どういった生活を送れば、前頭葉と男性ホルモンが活性化できるのかは、本書の第2章で具体的に述べていきます』、「70代から80代に向けて元気に過ごすことができるかどうかは、70代においていかに「意欲の低下」を防ぐかにかかっています。「意欲の低下」を防ぐには、日々の生活のなかで、前頭葉の機能と、男性ホルモンを活性化させることがとても重要になってきます」、「男性ホルモンも、性機能だけではなく、他者への関心や意欲にもかかわっています」、なるほど。
・『70代にはさまざまなリスクがある  「意欲の低下」以外にも、70代を襲うリスクにはさまざまなものがあります。もっともわかりやすいのは、病気やケガなどの健康上の問題です。大きな病気や、転倒によるケガなどから、70代の人が一気に老け込んでしまうということはよくあることです。 がんや脳梗塞などの人もこの年代は増えてきますので、そういった病気にどう対処するかが重要になってきます。 手術をするか、しないか。どういった検査をするか、どういった治療をするかといった、医療とのかかわり方において、重大な決断を迫られることもでてきます。本書でも第3章で、70代にとっての医療とのかかわり方、病気とのかかわり方を述べています。 意外に知られてはいませんが、うつ病も70代の大きなリスクです。うつになると、如実に身体を動かすことがおっくうになり、外にも出なくなります。たとえば、以前は頻繁に参加していた趣味の集まりや、顔見知りが集まる高齢者の「いこいの家」のような場所にいくら誘っても、絶対に行かないというようなことも起こってきます。 食欲も確実に落ちるので、みるみるやせてしまいます。それも脂肪が落ちるのではなく、筋肉から落ちるという最悪の状況をたどるので、うつになると一気に老け込んでしまうのです。 女性の場合は、女性ホルモンが減少してきますので、さらに骨粗しょう症の人も増えてきます。 なんらかの持病がある人が70代では増えてきますので、医療とのかかわり方がその後の80代を左右する大きなポイントとなってきます。 健康問題だけでなく、日々の生活面でも、70代は多くのリスクに囲まれています。長寿社会が進んだことで、これまで60代で迎えていた仕事からのリタイアも、今後は70代でリタイアする人が増えてくるはずです。) 介護についても、70代の子が親を介護するケースや、70歳を過ぎて、親との死別を経験するということも多くなるでしょう。 長寿化によって、これまでは60代で迎えていたような人生のさまざまな節目を、70代になってから経験するケースが増えるはずです。これらの節目は、生活環境が一変する可能性があるという意味で、その後の老い方を大きく左右する危険性をはらんでいます。 人生の節目をどう乗り越えていくかという意味でも、70代をどのように過ごすかが大事になってきていると言えます』、「意外に知られてはいませんが、うつ病も70代の大きなリスクです。うつになると、如実に身体を動かすことがおっくうになり、外にも出なくなります。たとえば、以前は頻繁に参加していた趣味の集まりや、顔見知りが集まる高齢者の「いこいの家」のような場所にいくら誘っても、絶対に行かないというようなことも起こってきます。 食欲も確実に落ちるので、みるみるやせてしまいます。それも脂肪が落ちるのではなく、筋肉から落ちるという最悪の状況をたどるので、うつになると一気に老け込んでしまうのです」、「うつ病」には気をつける必要がありそうだ。
・『70代に身につける「習慣」が、その後の人生を救う  これまで述べてきたとおり、70代にとって重要なのは、身体機能も脳機能もいまもっているものを使い続けることです。70代の時期に意図的に使い続けていれば、80代、90代になって要介護となる時期を遅らせることができます。 まずは、活動レベルを落とさないよう、「意欲の低下」を避け、前頭葉と男性ホルモンの活性化を促す必要があります。 そして、意欲レベルの維持と同時に、70代にとっては、使い続ける「習慣づくり」が大切になります。 なぜ70代にとって「習慣づくり」が大事かというと、多くの人が70代前後で仕事からリタイアするからです。 働いているときであれば、ルーティンがあるので、必然的に活動せざるを得ませんが、リタイアをしてしまうと、これといって身体を動かしたり、頭を使ったりする理由がなくなってしまいます。 つまり、この時期から、意図的に身体を動かそう、脳を使おうと習慣化しないと、運動機能も脳機能も使い続けることはできないということです。 また、もう1つ、70代の習慣づくりが大事な理由があります。それは、70代で始めた習慣は80代以降も生涯にわたって続くということです。 たとえば、70代で日ごろから歩こうと心がけて、散歩の習慣がついた人は、それを80歳になっても続けるものです。) 水泳をしよう、山登りをしようと70代のときに決めて習慣化した人は、80歳になっても、体力のある限りは続けるでしょう。山登りができなくなっても、それに代わる何かをやって、身体を動かそうという心がけだけは生涯続くに違いありません。 運動だけでなく、観劇や絵画、囲碁将棋、俳句などの趣味の活動でも、70代で習慣化しているものは、80代になってそれをやめるということはなかなかありません。 つまり、70代でつくった運動機能や脳機能を維持することに役立つ習慣は、一生涯にわたって続くことが多いのです。だから、70代で意図的によい習慣をつけることが大事なのです』、「70代でつくった運動機能や脳機能を維持することに役立つ習慣は、一生涯にわたって続くことが多いのです。だから、70代で意図的によい習慣をつけることが大事なのです」、なるほど。
・『70代は何もせず放っておけばすぐに老けこんでしまう  もし、70代のうちに何もしなかったら、80代になってから新たな習慣をつくることは、かなり難しいと思います。身体機能は70代のころよりも落ちていますし、新しいことを始めようという意欲の面でも減退しているからです。 だからこそ、現役時代に近い身体機能や意欲のある70代のうちに、よい習慣をつけることが大切なのです。 よく、会社勤めをしていたときはゴルフをしていたが、定年をしたら自腹では行けないのでやめようと考えている人もいますが、そういった身体を動かすよい習慣がすでにあるのなら、それは70代になってもできるだけ続けたほうがいいのです。いまならゴルフ場でも価格破壊が起こっていますから、平日であれば、かなり安くプレーすることもできるでしょう。 70代の人たちは、放っておけば何もせず、すぐに老け込んでいく危険性をもっています。だからこそ、機能維持のために意図的に振る舞うことが大切になってきます。このタイミングで、意識してよい習慣をつけることで、80代も元気さを保つことができるのです。 次回は、「運転免許を返納してはいけない」「実は、高齢ドライバーは危なくない」について紹介します(4月1日(金)公開予定)。 なお本書では、肉を食べる習慣が「老い」を遠ざける、運動習慣などの「老いを遅らせる70代の生活」、70代の人のかしこい医師の選び方などの「知らないと寿命を縮める70代の医療との付き合い方」、趣味を働いているうちにつくろう、高齢者の「うつ」の見分け方などの「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」について紹介しています。 >>続編『70代で運転免許を決して返納してはいけない理由』を読む』、「70代の人たちは、放っておけば何もせず、すぐに老け込んでいく危険性をもっています。だからこそ、機能維持のために意図的に振る舞うことが大切になってきます。このタイミングで、意識してよい習慣をつけることで、80代も元気さを保つことができるのです」、同感である。

第三に、この続きを、4月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医の和田秀樹氏による「70代で運転免許を決して返納してはいけない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298531
・『人生100年時代。現在の70代の日本人はかつての70代とは違います。若々しく、健康になった70代の10年間は、人生における「最後の活動期」とも言えます。70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めると言っても過言ではありません。長年高齢者と接している精神科医の和田秀樹さんは、仕事のリタイアや運転免許の返納など、何事においても「引退」をしてはいけないと言います。『70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(詩想社新書)より抜粋します』、興味深そうだ。
・『何事においても、「引退」などしてはいけない  要介護となる時期をなるべく遅らせて、80代以降も元気に過ごすためには、最後の活動期である70代の過ごし方がカギになります。この章では、70代の人がどのような生活を心がければいいのかをみていきましょう。 定年延長や定年後の再雇用など、高齢になっても働く環境が整備されつつありますが、それでも、70代ともなれば、いままで勤めていた会社を退職している人が多いのではないでしょうか。 70代に一気に老け込む人の典型は、仕事をリタイアしたときから、一切の活動をいっぺんにやめてしまうというケースです。これまで懸命に働いてきたのだから、退職したらもう何もせず家でゴロゴロ過ごしたいと、指折り退職の日を待っている人もいます。) しかし、70歳まで現役で仕事をしていた人が、退職後の生活に何をやるのかを考えることもなくリタイアすると、一気に老け込んでしまうことが多いのです。 働いているときは、デスクワークのような仕事であっても、通勤などで思っている以上に身体を使っているものです。それなのに、退職してから家にこもりがちになってしまうと、70代の人なら1ヵ月もすれば、運動機能はずいぶんと落ちてしまいます。 また、脳機能の面でも、働いていれば、日々、それなりの知的活動や他者とのコミュニケーションがあり、さまざまな出来事にも遭遇することになりますが、ただ家で過ごしているだけでは、そういった脳の活動はなくなり、認知症のリスクが高まっていきます。 特に、前頭葉の老化が一気に進んでしまいます。前頭葉とは、創造性や他者への共感、想定外のことに対処するといった機能をもつ部分です。ここが老化していくと、何事にも意欲がなくなり、活動することがおっくうになって、運動機能の低下と脳の老化にさらに拍車がかかります。見た目の印象でも、はつらつとしたところが失われた、元気のない老人に変貌してしまうのです。 そうならないためにも、退職を迎えたら、これまでの仕事の代わりに次に何をやるのか、準備をしておくことが大切です。退職して、しばらくゆっくりしてから次のことは考えようなどと思っていると、いつの間にか、ダラダラと過ごす生活に流されて、それが習慣になってしまうということもあります。 70代は元気とはいえ、前頭葉の老化はすでに40代から進んでいます。歳をとるほど、意欲が低下していくのは自然のことで、そもそも70代になれば意欲が若いころより低下していることが普通です。家にこもるような不活発な生活スタイルを自然にしがちな年齢でもありますので、意識して退職後の活動を決めておくことが大切です』、「70代になれば意欲が若いころより低下していることが普通です。家にこもるような不活発な生活スタイルを自然にしがちな年齢でもありますので、意識して退職後の活動を決めておくことが大切です」、私の場合は、大学での非常勤講師の活動を退職後続けていたので、助かった。
・『「歳をとったら隠居生活」は脳機能、運動機能を老化させる  現在は年金も少ないですから、何か新しい仕事を始めるということも、ひとつの選択肢でしょう。金銭的な面だけでなく、老化を遅らせるという面からみても、退職後に、また新たな職場で働き始めるということはとてもいいことです。 歳をとったら隠居生活もいいものだ、と考えている人ももちろんいるでしょう。しかし、70歳を過ぎてそのような生活に入ってしまうと、一気に脳機能、運動機能を老化させてしまうリスクがあることを十分に理解しておいてください。) 寿命が延びて、90歳、100歳まで生きるようなこれからの時代は、歳をとったので「引退する」という考え方自体が、老後生活のリスクになります。引退などと考えず、いつまでも現役の市民であろうとすることが、老化を遅らせて、長い晩年を元気に過ごす秘訣です。 たとえば、何かの商店主をやっている人、建築士や税理士など資格をもって70代まで仕事をやってきたような人が、「○○歳を機に仕事を辞める」というようなことがありますが、そのような選択はけっして得策ではありません。 農業や漁業、職人のような仕事もそうですが、自分が辞めると決めない限り、続けられるような仕事であるなら、身体がもつ限り、できる範囲で一生続けることが老化を遅らせるいい方法です。 勤め人であっても、役職からは年齢によって外されることもあるかもしれませんが、「働く」ということからは、引退する必要などありません。アルバイトや契約社員など、どのような形態であっても、「仕事」を通して社会とのかかわりをもち続けることが、活動レベルを落とさず、若々しくいる秘訣だと私は思います。 退職後も社会とかかわっていくという意味では、もちろん「仕事」がすべてではありません。町内会の役員や、マンションの管理組合の役員、趣味の集まりの役職などでもいいのです。ボランティア活動も、退職後の社会参加としてはひとつの選択肢です。 誰かと協働し、誰かの役に立ったり、誰かに必要とされていると感じることは、いつまでも現役意識を維持することに大いに役立つはずです。 70代になったら、ことさら「引退」などということは考えず、現役の意識を維持することが大切です。それが、一気に老け込むことを防いでくれます』、「70代になったら、ことさら「引退」などということは考えず、現役の意識を維持することが大切です。それが、一気に老け込むことを防いでくれます」、その通りだろう。
・『運転免許は返納してはいけない  70代になったら、「引退」など考えてはいけないと前述しました。どのようなものであっても「引退」には、生活環境の変化がともなうものです。高齢者にとっては、生活環境がガラッと変わることは大きなリスクになってきます。 環境の変化が、これまでの元気な生活を支えていたルーティンを破壊し、日々の活動レベルを低下させることが往々にして起こるのです。この活動レベルの低下が、これまで機能していた運動能力や脳の働きを廃(すた)れさせてしまいます。 自動車の運転においても、引退などしてはいけません。最近は、高齢者の運転に対して、危険であるかのような風潮が広がっていて、免許の自主返納などといったことまで始まっています。 しかし、高齢になっても運転をやめたりしないことが、元気な高齢者でいるためには大切なことです。 交通の便がいい都会に住んでいる人なら、自動車の運転をやめたとしても、他の移動手段があると思います。 しかし、地方にいて、外出の際には常に車を運転していたような人が運転免許を返してしまうと、ほとんど外に出ることができなくなってしまい、2~3年で要介護状態になったり、認知症のような状態になったりする可能性が高まります』、「地方にいて、外出の際には常に車を運転していたような人が運転免許を返してしまうと、ほとんど外に出ることができなくなってしまい、2~3年で要介護状態になったり、認知症のような状態になったりする可能性が高まります」、なるほど。
・『運転できず外出機会が減ると運動機能も認知機能も簡単に衰える  車が運転できれば、ちょっとしたことでも外出する機会は確実に増えます。最近では地方にもショッピングモールや大型スーパーが進出していますので、買い物に車で行っても施設内をかなり歩くので、いい運動になります。 そういったお店には近隣住民が集まりますので、知り合いに出会って話し込むこともあるでしょう。フードコートに行けば、いろいろなメニューが用意されていて、バリエーション豊かな食事ができます。 それが運転免許を返してしまって、家にこもり、誰とも会わず過ごすような生活になってしまうと、運動機能も脳機能も簡単に衰えてしまいます。 筑波大学などの研究チームが2019年に公表した調査結果でも、そのことは裏づけられています。 この研究チームは、愛知県の65歳以上の男女2800人を追跡調査しました。2006~2007年時点で要介護認定を受けておらず、運転をしている人に10年8月の時点で運転を続けているかあらためて聞き、認知機能を含めた健康状態を調べ、さらに16年11月まで追跡して、運転継続と要介護認定との関係を分析したのです。 病気になったり、認知機能が落ちたりして運転ができなくなった例は除いて、統計学的に調整して分析をしました。) その結果、10年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて、16年には要介護となるリスクが2.09倍にもなったのです。 この調査結果では、運転をやめてからは移動に電車やバス、自転車を利用していたという人の要介護リスクも調べていますが、その人たちでも、運転を続けた人に比べて1.69倍の要介護リスクとなっています。 他の移動手段を使っていたという人でさえ、運転をやめたことの生活へのダメージは大きく、活動量は落ちてしまったのだと思います。運転免許を取り上げられると、活動しようという積極性や意欲の面でも萎えさせてしまうのです。 たかだか車の運転と思われるかもしれませんが、それをやめたことの影響で要介護リスクが2倍も変わるくらい、高齢者の人たちは脆弱なのです。70代ともなれば、その傾向はさらに強くなります。 アクティブに生きていたらそのように生活ができますが、いったんそれをやめてしまうとすぐに要介護状態に陥ってしまう。それが70代の危うさだと理解してください』、「筑波大学などの研究チームが2019年に公表した調査結果」では、「10年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて、16年には要介護となるリスクが2.09倍にもなった」、「運転をやめてからは移動に電車やバス、自転車を利用していたという人の要介護リスクも調べていますが、その人たちでも、運転を続けた人に比べて1.69倍の要介護リスクとなっています。 他の移動手段を使っていたという人でさえ、運転をやめたことの生活へのダメージは大きく、活動量は落ちてしまったのだと思います」、やはり「返納」はリスクが大きいようだ。
・『実は、高齢ドライバーは危なくない  運転は続けるべきだと述べましたが、いくらそのように言われても、「でも、高齢になっても運転を続けるのは危ないのではないか」、「事故を起こしてまわりに迷惑をかけるのではないか」などと不安になる高齢者やそのご家族の方もいると思います。 認知機能の落ちている高齢者が運転操作をもし、交通事故を減らそうと考えるのなら、圧倒的に多く事故を起こしている若年ドライバーの運転になんらかの手を打つほうが効果的です。 それなのにメディアは、人々の耳目を引くからといって、高齢ドライバーが暴走した事件を盛んに取り上げます。そういった報道に触れるたびに、世間には、「高齢ドライバーは事故を起こしやすい」、「危ないから免許を取り上げられても仕方ない」といった風潮が広がってしまいました。 データをもとに合理的に考えるなら、高齢者から免許を取り上げるなどということに、正当性はまったくありません。お上に従う気質が染み付いている日本社会では、このようなことを行政が推進しても騒ぎが起こりませんが、人権意識が確立されている欧米社会では、高齢者に対する差別と言われかねないでしょう』、「データをもとに合理的に考えるなら、高齢者から免許を取り上げるなどということに、正当性はまったくありません」、高齢者の精神医療の専門家の言葉だけに重い。「人権意識が確立されている欧米社会では、高齢者に対する差別と言われかねないでしょう」、同感である。
・『「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」は認知症が原因ではない  高齢者の事故では、「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」という証言が報道されることがよくあります。こういった情報も、「ブレーキとアクセルを間違えるなんて、よほど運転者はボケている高齢者なのだろう」といった誤解を生んでいます。 しかし、高齢者専門の精神科医の立場から言わせていただくと、認知症が原因で、ブレーキとアクセルを間違えるなどということは、ほぼあり得ません。数分前のことを忘れてしまうような中等度の認知症患者でも、スプーンと箸の区別がつかなくなる人はいないのです。 もし、スプーンと箸の区別がつかないかなり進んだ認知症の人だと、車の運転そのものができないはずです。 車の運転ができるような人であれば、軽度の認知症でも、ブレーキとアクセルの区別がつかなくなるということは確率的にゼロに近いはずです。 つまり、踏み間違えたのは、ペダルの区別がつかないからではなく、うっかりしたり、慌てたからなのです。これは、高齢者だけではなく、若い人でも起こすミスです。 確かに高齢になると、動体視力や反射神経が衰えるので、一瞬の判断が遅れることもあります。ペダルの踏み間違えによる事故も、増える傾向がありますが、ただ、このような事故はすべての年代で起こっている事故でもあります。そして、全事故に占める割合は、たった1%ほどしかないのです。) ▽高齢ドライバーの逆走や暴走は運動機能の低下が原因ではない(ペダルの踏み間違え以外にも、高齢ドライバーの起こす事故には、まれに逆走や暴走といった、明らかに不自然なものもあります。これらは、高齢による運転技能の低下によって引き起こされたものではけっしてありません。ほとんどが、薬による意識障害が原因ではないかと私は考えています。薬害と言ってもいいくらいでしょう。 高齢者になると、複数の薬を常用している人が多くなります。また、高齢者は代謝も落ちていますから、薬の副作用が出やすいこともあります。それによって、低血糖や低血圧、低ナトリウム血症などで、意識障害を起こしやすいのです。 暴走事故を起こした高齢ドライバーが、当時の状況を「よく覚えていない」などと言うことがありますが、これは明らかに意識障害を疑っていい証言です。今後は、薬を飲んでいる高齢者においては、意識障害を起こすリスクがあるのかどうかを慎重に判断して、運転を続けるかどうか決めることは必要かもしれません。 しかし、繰り返しますが、高齢者が事故を起こす割合はけっして高くないのです。それなのに、年齢で一律に区切って、運転免許の更新において制約を課したり、高齢になれば免許は返納すべきといった風潮がつくられていることに私は憤りを感じています。 運転免許を取り上げられることが、死活問題となる高齢者の人もたくさんいるのです。ご自身が運転をしたくないというのであれば話は別ですが、運転する必要性があり、それを希望しているのであれば、運転免許は返納などけっしてしてはいけません。運転からの引退は、老化を加速させる結果をもたらしてしまうからです。 本書では、今回紹介しきれなかった、肉を食べる習慣が「老い」を遠ざける、運動習慣などの「老いを遅らせる70代の生活」、70代の人のかしこい医師の選び方などの「知らないと寿命を縮める70代の医療との付き合い方」、趣味を働いているうちにつくろう、高齢者の「うつ」の見分け方などの「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」について紹介しています』、「車の運転ができるような人であれば、軽度の認知症でも、ブレーキとアクセルの区別がつかなくなるということは確率的にゼロに近いはずです。 つまり、踏み間違えたのは、ペダルの区別がつかないからではなく、うっかりしたり、慌てたからなのです。これは、高齢者だけではなく、若い人でも起こすミスです」、最近は「踏み間違い」が起きにくいようなアクセルも開発されている。「ご自身が運転をしたくないというのであれば話は別ですが、運転する必要性があり、それを希望しているのであれば、運転免許は返納などけっしてしてはいけません。運転からの引退は、老化を加速させる結果をもたらしてしまうからです」、同感である。
タグ:「高齢者のほうが、身体能力や脳機能において、個人差が格段に広がっているのです。その高齢者が大多数となっていくこれからの社会は、まさに多様性に満ちた社会となるはずです。このような「健康格差」が生じるということが、これからの社会の特徴となります」、確かに「高齢者」での「健康格差」は大きくなりそうだ。 「70代の「老いと闘う時期」と、80代以降の「老いを受け入れる時期」」、まだ私は「老いと闘」わねばならないようだ。 「元気な80代へとソフトランディングしていくためには、とても大切な時期と言えます」、なるほど。 後期高齢者になった筆者にとっても、「70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めると言っても過言ではありません」、気持ちが引き締まった。 和田秀樹氏による「70代が「老い」の分かれ道、その後の人生を救う習慣とは」 ダイヤモンド・オンライン ぜひみなさまも、あまいもの=「糖質」を食べながらダイエットできるフラクトオリゴ糖を使った「コクあま幸せダイエット」を試してみてください』、早速、試してみたい。 「フラクトオリゴ糖は」、「人の消化器官では、糖として、消化・吸収されずに大腸までたどりつきます・・・そのカロリーは、砂糖の約半分ほど。大さじ1杯で18kcalほどです。また、糖として血液中に吸収されないということは、フラクトオリゴ糖自体で食後の血糖値があがりにくいということです」、「やせやすい体づくりにも寄与してくれます。やせやすい体になるためには、腸内にいるビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌を腸内で増やし元気に活動してもらうことが必要です・・・善玉菌は「短鎖脂肪酸」を作り出します。「短鎖脂肪酸」は、脂肪細 「セロトニンが足りなくなると、脳は不安でいっぱいになってしまいます。するとその不安からくるストレスを解消しようと「あまいもの」を欲して、セロトニンを補充しようとします。だからあまいものをガマンすればするほど、セロトニン不足になり、もっとあまいものが欲しくなってしまうのです。そしてあまいものをドカ食いしてしまうという現象が起きます。「あまいものをやめられない」この中毒症状にも似た症状は、あま味を感じると分泌される「β?エンドルフィン」というホルモンも関係。このホルモンは、分泌されると別の幸せホルモン・ドーパ 工藤 孝文氏による「「糖質制限」をがんばる人が結局やせないワケ やせたいなら糖質は量ではなく「質」に着目する」 東洋経済オンライン 「70代でつくった運動機能や脳機能を維持することに役立つ習慣は、一生涯にわたって続くことが多いのです。だから、70代で意図的によい習慣をつけることが大事なのです」、なるほど。 「意外に知られてはいませんが、うつ病も70代の大きなリスクです。うつになると、如実に身体を動かすことがおっくうになり、外にも出なくなります。たとえば、以前は頻繁に参加していた趣味の集まりや、顔見知りが集まる高齢者の「いこいの家」のような場所にいくら誘っても、絶対に行かないというようなことも起こってきます。 食欲も確実に落ちるので、みるみるやせてしまいます。それも脂肪が落ちるのではなく、筋肉から落ちるという最悪の状況をたどるので、うつになると一気に老け込んでしまうのです」、「うつ病」には気をつける必要があり 「70代から80代に向けて元気に過ごすことができるかどうかは、70代においていかに「意欲の低下」を防ぐかにかかっています。「意欲の低下」を防ぐには、日々の生活のなかで、前頭葉の機能と、男性ホルモンを活性化させることがとても重要になってきます」、「男性ホルモンも、性機能だけではなく、他者への関心や意欲にもかかわっています」、なるほど。 健康 (その20)(「糖質制限」をがんばる人が結局やせないワケ やせたいなら糖質は量ではなく「質」に着目する、和田秀樹氏2題(70代が「老い」の分かれ道 その後の人生を救う習慣とは、70代で運転免許を決して返納してはいけない理由)) 「70代の人たちは、放っておけば何もせず、すぐに老け込んでいく危険性をもっています。だからこそ、機能維持のために意図的に振る舞うことが大切になってきます。このタイミングで、意識してよい習慣をつけることで、80代も元気さを保つことができるのです」、同感である。 和田秀樹氏による「70代で運転免許を決して返納してはいけない理由」 「70代になれば意欲が若いころより低下していることが普通です。家にこもるような不活発な生活スタイルを自然にしがちな年齢でもありますので、意識して退職後の活動を決めておくことが大切です」、私の場合は、大学での非常勤講師の活動を退職後続けていたので、助かった。 「70代になったら、ことさら「引退」などということは考えず、現役の意識を維持することが大切です。それが、一気に老け込むことを防いでくれます」、その通りだろう。 「地方にいて、外出の際には常に車を運転していたような人が運転免許を返してしまうと、ほとんど外に出ることができなくなってしまい、2~3年で要介護状態になったり、認知症のような状態になったりする可能性が高まります」、なるほど。 「筑波大学などの研究チームが2019年に公表した調査結果」では、「10年時点で運転をやめていた人は、運転を続けた人に比べて、16年には要介護となるリスクが2.09倍にもなった」、「運転をやめてからは移動に電車やバス、自転車を利用していたという人の要介護リスクも調べていますが、その人たちでも、運転を続けた人に比べて1.69倍の要介護リスクとなっています。 他の移動手段を使っていたという人でさえ、運転をやめたことの生活へのダメージは大きく、活動量は落ちてしまったのだと思います」、やはり「返納」はリスクが大きい 「データをもとに合理的に考えるなら、高齢者から免許を取り上げるなどということに、正当性はまったくありません」、「人権意識が確立されている欧米社会では、高齢者に対する差別と言われかねないでしょう」、同感である。 「車の運転ができるような人であれば、軽度の認知症でも、ブレーキとアクセルの区別がつかなくなるということは確率的にゼロに近いはずです。 つまり、踏み間違えたのは、ペダルの区別がつかないからではなく、うっかりしたり、慌てたからなのです。これは、高齢者だけではなく、若い人でも起こすミスです」、最近は「踏み間違い」が起きにくいようなアクセルも開発されている。「ご自身が運転をしたくないというのであれば話は別ですが、運転する必要性があり、それを希望しているのであれば、運転免許は返納などけっしてしてはいけません。運転か
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

健康(その19)(アレルギーになる原因は「皮膚」にある? 最新研究が明かす真実、ダイエットにはズボラが最強!? 「だらだら食べ、食後にちょこちょこ動く」で痩せる理由、「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ 唐揚げ、豚カツ、コロッケ、フライ…) [生活]

健康については、本年2月2日に取上げた。今日は、(その19)(アレルギーになる原因は「皮膚」にある? 最新研究が明かす真実、ダイエットにはズボラが最強!? 「だらだら食べ、食後にちょこちょこ動く」で痩せる理由、「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ 唐揚げ、豚カツ、コロッケ、フライ…)である。

先ずは、2月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したUCLA助教授の津川友介氏による「アレルギーになる原因は「皮膚」にある? 最新研究が明かす真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295759
・『食物アレルギーに悩まされている人は多い。 しかしなぜ人はアレルギーになってしまうのか疑問に思ったことはないだろうか。 ちまたにはアレルギーの原因に関する様々な俗説があるが、科学的根拠の全くないものもたくさんある。アレルギーに関しては間違った情報により、間違った治療法を選択し、苦しんでいる患者さんも多い。 近年、アレルギーの研究が進み、徐々に発症の仕組みが分かってきた。 『HEALTH RULES(ヘルス・ルールズ) 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』を上梓した、医師でUCLA准教授の津川友介氏が、最新の研究をもとに解説する』、興味深そうだ。
・『免疫が間違ってしまう  新型コロナウイルスの影響もあり、「免疫」という言葉をよく聞くようになった。 免疫とは、人間の身体を異物から守るための機能のことである。免疫は、細菌やウイルスに対して感染を予防したり、感染してしまったときに体内からこれらを排除するという有益な役割を持っている。 しかし、残念なことに免疫は万能ではなく、必ずしも有害な異物にのみ反応するわけではない。私たちの身体にとって無害であるはずの食物や花粉などの異物が体内に侵入したときに、免疫機能が過剰に反応してしまい、その結果として、様々な症状を発症してしまうことがある。この現象を「アレルギー」と呼ぶ。 それでは、なぜ人はアレルギーを発症してしまうのだろうか』、「アレルギーを発症」についてよく知りたい。
・『乳幼児期にピーナッツを食べるとアレルギーになる?  食物アレルギーは乳幼児に多いことから、これまでは消化機能が未熟なうちに食べることでアレルギーになってしまうと考えられていた。 このような考えから、母乳や胎盤を介したアレルゲンへの曝露を防ぐ目的で、米国小児科学会は2000年に「妊娠・授乳期の母親は食物アレルギーの原因となりやすい卵やピーナッツなどの食物の摂取を制限し、乳幼児に対しては乳製品、卵、ナッツ類、魚の摂取開始時期をできるだけ遅らせるべきである」という声明を出した。 これを受けて、日本でも予防的にこれらの食物の摂取開始を遅らせる指導が普及した。 しかし、このような指導にもかかわらず、ピーナッツアレルギーを持つ子どもの数は減らなかった。それどころか、その後も年々増え続けたのである』、「米国小児科学会」も間違った「声明」を出したというのは驚きだ。
・『アレルギーを引き起こす真の原因  2003年、世界的に権威のある医学雑誌である『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に驚くべき研究結果[*3]が報告された。1万3971人のイギリス在住の就学前の子どものデータを解析した結果、ピーナッツオイルを含む保湿剤を肌に塗布していた乳幼児のピーナッツアレルギーになる確率が、そうでない乳幼児より高かったのである。 一方で、妊娠・授乳期の母親の食事内容は、子どものピーナッツアレルギーのリスクと関係がなかった。食べ物ではなく、皮膚への曝露が食物アレルギーの原因になる可能性を示唆しているということで、驚きをもって受け入れられた。 ピーナッツアレルギーのある子どもの91%がピーナッツオイルを含む保湿剤を使用していたのに対して、ピーナッツアレルギーのない子どもの中でそのような保湿剤を使用していたのは53~59%にとどまった。 一方で、ピーナッツオイルを含まない保湿剤の使用率に関しては、ピーナッツアレルギーのある子どもとない子どもで差はなかった。 保湿剤は、乳児湿疹などで赤ちゃんの肌が荒れているときに、それを改善させる目的で使われていた。そこから、肌荒れなどでダメージがある皮膚から異物が侵入することで、食物アレルギーが引き起こされるのではないかという考え方が生まれたのだ』、「肌荒れなどでダメージがある皮膚から異物が侵入することで、食物アレルギーが引き起こされるのではないかという考え方が生まれた」、素人的にも筋が通った考え方だ。
・『気をつけるべき「経皮感作」とは?  皮膚が正常な場合には、肌に異物が触れてもバリアがきちんと機能しているので問題ない。 一方で、皮膚がダメージを受け、バリアが破れた状態で異物にさらされると、その異物が肌から体内に侵入してしまう[*4]。その異物にランゲルハンス細胞などの免疫担当細胞が反応し、アレルギーを起こす状態になる(これを感作と呼ぶ)。その結果、その異物に対する食物アレルギーを発症すると現在では考えられている。このように皮膚から異物が侵入することでアレルギーになってしまうことを特に「経皮感作」と呼ぶ』、「皮膚から異物が侵入することでアレルギーになってしまうことを特に「経皮感作」と呼ぶ」、なるほど。
・『アトピーになる原因  また、経皮感作することで引き起こされるのは、食物アレルギーだけではない。アトピー性皮膚炎も、経皮感作が発症に関わっていると考えられるようになっている。皮膚を健康に保ち、バリア機能を維持することで、アトピー性皮膚炎の発症を抑えることができるというエビデンスが出てきているのである。 例えば、堀向健太氏らが行った研究[*5]では、アトピー性皮膚炎の発症リスクが高い新生児118人を、1日1回全身に保湿剤(商品名2e[ドゥーエ])を塗布するグループと、乾燥した部分のみにワセリンを塗るグループに無作為に割り付けた実験を実施した。その結果、保湿剤の全身塗布によってアトピー性皮膚炎の発症率が低下することが示された(図4)。 この研究の追試ともいえる研究[*6]が、2020年に発表されたBEEP(Barrier Enhancement for Eczema Prevention)研究と呼ばれるものである。英国で行われたハイリスクな新生児1394人を対象としたこの研究の結果、新生児期に保湿剤を積極的に利用したグループと、標準的なスキンケアをしたグループで、2歳時点でのアトピー性皮膚炎の発症率に統計的に有意な差を認めなかった。 しかしこの研究ではいくつかの限界点も指摘されている[*7]。前述の日本の研究では保湿成分が含まれる保湿剤が使われたのに対して、BEEP研究ではエモリエントと呼ばれる保湿成分の含まれない保湿剤が使われたという違いがあった。 その他にも、標準的なスキンケアをしたグループもそれなりにきちんと保湿していたことで、差が見られなくなったなどの可能性も考えられている。保湿がアトピー性皮膚炎の予防に本当に有効かに関しては今後の研究が待たれるところであるが、子どもの皮膚をしっかり保湿することに対するデメリットはないので、ぜひしっかり保湿してあげてほしいと筆者は考えている。 また、このような経皮感作は子どもだけでなく、大人でも起こる可能性がある。 日本では、化粧品会社「悠香」(福岡県)が製造販売する「茶のしずく石鹸」を使用していた人が、小麦に対する食物アレルギーを発症した事件が有名である。合計2111人が食物アレルギーを発症し、25%がアナフィラキシーショック、43%が呼吸困難を経験するなど重篤例も多く含まれていた。[*8] この石鹸には、加水分解された小麦のたんぱく質である「加水分解コムギ」(グルパール19S)が含まれており、繰り返し石鹸を使うことで経皮感作を引き起こし、結果として小麦に対する食物アレルギーになってしまったと考えられている。 アレルギー予防の観点からみると、皮膚に湿疹や傷があるなどバリア機能が失われている状態で異物に触れることは、極力避けたほうが良いと言える。 またバリア機能を保つためにも、日ごろから保湿などのケアはしっかりしてほしい。また皮膚に異常が場合はインターネットや本で自分で調べるのではなく、ぜひ皮膚科の先生に相談してほしい。 (参考文献、著者略歴はリンク先参照)』、「経皮感作は子どもだけでなく、大人でも起こる可能性がある」、「大人でも起こる可能性がある」とは驚いた。「アレルギー予防の観点からみると、皮膚に湿疹や傷があるなどバリア機能が失われている状態で異物に触れることは、極力避けたほうが良いと言える。 またバリア機能を保つためにも、日ごろから保湿などのケアはしっかりしてほしい」、大いに気を付けたい。

次に、2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した総合内科医の益江 毅氏による「ダイエットにはズボラが最強!? 「だらだら食べ、食後にちょこちょこ動く」で痩せる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/296039
・『早く痩せたくて激しい運動をしているけれど、全然痩せない――。そんな経験をした人は少なくないはず。産業医として年間5万人の健康指導をする総合内科専門医の益江毅医師は、著書『やせたい人はカロリー制限をやめなさい』の中で「少しばかり運動をしても、実際には脂肪はほとんど燃えない」と指摘する。むしろ、「運動とは言えない程度の軽作業」でも、タイミングを考えて実行することで、非常に効率よくダイエットを行うことができるのだという』、興味深そうだ。
・『運動は意外とエネルギーを消費しない!  ダイエットに挑戦するとき、結果を急ぐ人ほど、急にジョギングを始める、スポーツジムで激しくトレーニングする、といったハードな運動から始めがちです。この考えの根本には、エネルギーバランスモデルの考え方があります。肥満の原因は、消費エネルギーが足りないためであり、消費エネルギーを増やすためには運動が必要だと考えてしまうのです。 エネルギーバランスモデルの考え方だと、エネルギー摂取量とエネルギー消費量がつりあっていれば体重は変わらない、つまり体重は減らないということになります。体重を減らすには、摂取エネルギーと消費エネルギーの差をマイナスにしなければなりません。このためには、強力な食事制限(カロリー制限)を実施して摂取エネルギーを極限まで抑えつつ、消費エネルギーを最大まで増やすために、ハードな運動をすることが要求されます。こんなことができるのは、強靭な意志を持ったごく限られた人だけです。 でも、果たして本当にそうでしょうか。人間の体は、ガソリンを入れて走る車よりもはるかに複雑なメカニズムでできています。単純に、物理学の法則に当てはまるものではありません。 脂肪の蓄積には、体内の複数のホルモンがかかわっています。中でも強力に働くのが、すい臓から分泌されるインスリンです。インスリンは、血液中の糖を脂肪に変換して内臓脂肪に変える働きを持ちます。このホルモンの量をコントロールすることで、内臓脂肪もコントロールすることができるのです』、「インスリン」「の量をコントロールすることで、内臓脂肪もコントロールすることができる」、なるほど。
・『食後血糖値を抑える運動タイミングとは?  消費カロリーをいかに増やすかではなく、血糖値の上昇を抑えることに発想を転換して運動の方法を改めて見直してみると、食後15分以内に運動を始めることで効果的に血糖値を下げることができることに気づきました。消費エネルギーを増やそうと毎日ハードな運動をするよりも、タイミングを考えて実行することで、運動とは言えない軽作業でも非常に効率良くダイエットを行うことができるのです。 このタイミングを誤って、食前に運動をしても、食後の血糖値の上昇を抑える効果は全くないどころか、むしろ運動することによって食欲が増して食べすぎてしまう危険すらあります。 血糖値が上がるのを抑えるためには、食べ方とともに、食後すぐに体を動かすことも有効です。そのメカニズムを解説しましょう。 食事で糖をとり、インスリンが分泌されると、筋肉細胞の表面にある「インスリン受容体」に結合します。すると、インスリン受容体が活性化し、血液中にある糖を筋肉細胞内にとり込みます。筋肉への糖のとり込みにはもう一つ、ルートがあります。運動をして筋肉が収縮すると、細胞のエネルギー源である「ATP」が消費され、その結果、AMPキナーゼという酵素が活性化し、糖がとり込まれ、食後の血糖値が下がるのです。 このような運動による筋肉への糖のとり込みの仕組みをしっかり活かすのであれば「血糖値が上がり、血液中に糖があるタイミング、つまり食後に運動する」のが最も効果的であることを理解いただけるでしょう』、「「血糖値が上がり、血液中に糖があるタイミング、つまり食後に運動する」のが最も効果的」、かつては「食後」はゆっくり」と言われていたが、そんなことをしては駄目なようだ。
・『だらだら食べて、ちょこちょこ動く  しかし、そのためにわざわざ運動をする時間はとれないというのが忙しい皆さんの実感かもしれません。私は忙しい人にアドバイスをするときには「だらだら食べて、食後はすぐにちょこちょこ動きましょう」とお話ししています。食事はゆっくりと時間をかけることで、満腹中枢に「食べた」という信号が伝わり、最後にとる主食も食べすぎずにすみます。ゆっくり食べることで血糖値の上昇も緩やかになります。そして、食後はだらだらせずに「ちょこちょこ動き」ましょう。 なにも食後にジョギングをしましょうと言っているのではありません。わざわざ走りにいかなくても、食器を洗い、食卓を拭き、掃除機をかけるだけでいいのです。普段日常的にやっている家事を食事のあとに行うだけでダイエットが手軽にできるのです。 がまんして摂取カロリーを減らしたり、ハードな運動をして自分を追い込まなくても、このような「ちょっとした裏技」はたくさんあります。これらをなるべく多く日常生活に導入することで、苦労せずにダイエットに成功することができるのです』、「だらだら食べて、食後はすぐにちょこちょこ動きましょう」というのは、面白い、早速、実践してみよう。
・『【著者からのメッセージ】  半年で16キロ減、その後リバウンドなしのダイエット(本書でお伝えするダイエットは、私が実際に半年間で16キロの減量に成功し、その後リバウンドすることなく、今も体重を維持できている方法でもあります。 私が「インスリンを節約する」という食事のとり方を始めて、今年で約20年になります。当時、私は理想体重より実に20キロ近くもオーバーしていました。朝食もほとんど食べず、食事の量にも質にもあまり注意を払っていませんでした。 心臓病を発症したのを機に、減量に取り組む決心をした私は、医師の立場から効果がありそうだと思える様々な文献に目を通し、自ら試みては効果を確認し、試行錯誤の上に、ついにカロリー制限に頼らない現在のダイエット法にたどり着いたのです。 リバウンドをしないダイエットのカギを握るのはホルモンの働き。特に脂肪の蓄積と密接に関係のあるインスリンに着目しました。そして、糖質を摂取する際に脂質やタンパク質と合わせて摂取することで、極端に糖質を制限しなくても血糖値のコントロールが容易に行えるようになります。カロリー制限の呪縛から解放されることで、リバウンドせずに長期的に継続できるダイエットが可能となります。 また、様々な文献を調べても、たった一つの方法だけで劇的にダイエットできる方法を見つけることができませんでした。しかし、たとえ単独で大きな効果がなくとも、複数の方法を組み合わせることにより、大きな減量効果が得られることも発見しました。本書で紹介する複数の方法を全て実行していただく必要はありません。自分のライフスタイルに合った方法を選んでいただき、それらを組み合わせて自分だけのオリジナルのダイエット法を作り上げていただければ良いのです。「やせたい人はカロリー制限をやめなさい」目次(リンク先参照)』、「リバウンドをしないダイエットのカギを握るのはホルモンの働き。特に脂肪の蓄積と密接に関係のあるインスリンに着目しました。そして、糖質を摂取する際に脂質やタンパク質と合わせて摂取することで、極端に糖質を制限しなくても血糖値のコントロールが容易に行えるようになります。カロリー制限の呪縛から解放されることで、リバウンドせずに長期的に継続できるダイエットが可能となります」、夢のような「ダイエット法」のようだ。合理的でもある。「やせたい人はカロリー制限をやめなさい」、おおいに元気づけられる。

第三に、2月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木 淳氏による「「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ 唐揚げ、豚カツ、コロッケ、フライ…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54802
・『長生きをするには、どんな食生活が望ましいのか。医師の佐々木淳氏は「高齢者になったら痩せるのは危険だ。揚げ物や肉料理がメインの惣菜や弁当を積極的に食べて、カロリーとたんぱく質をたっぷり摂ったほうがいい」という――。 ※本稿は、佐々木淳『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです』、私はこれまで「「高齢者になったら痩せる」方がいい」と聞いていたが、これが完全なウソだったとは・・・。
・『高齢者ほど出来合いの惣菜や弁当を食べたほうがいい  高齢になると、1日3食いちいち食事をつくるのがめんどうになることもあります。特にひとり暮らしの場合、自分が食べる分だけのために料理をするのが億劫になってくることが少なくありません。 料理をする手間を省くのは構いませんが、摂取するカロリーやたんぱくの量を減らすのはやめましょう。 いちばん手っとり早いのは、出来合いのお惣菜やお弁当を食べること。 もちろん、外食をしたり出前を取ったりするのでもよいのですが、いちいちお店に出かけたり注文したりするのも手間ですし、外食や出前を頻繁に利用していると経済的にも出費がかさみますよね。その点、スーパーやコンビニでお惣菜やお弁当を買ってしまえば、ラクして気軽に食事を調達できます。 こうしたお惣菜やお弁当をセレクトする場合、高齢者のみなさんはできるだけカロリーが高くてたんぱく質たっぷりなものを選ぶようにしてください』、出来合いの「お惣菜やお弁当」は、味が濃く塩分も多目そうなのが気になるところだ。
・『「食欲がないからごはんはいいや」は禁物  お惣菜なら唐揚げやとんかつ、コロッケ、フライ、てんぷらなどの揚げもの、脂をたっぷり使った中華系惣菜などがおすすめ。お弁当なら焼き肉弁当、すき焼き弁当、チンジャオロース弁当など、お肉がドカンと入ったこってり系がおすすめ。 逆に、「今日はサラダだけでいいや」「今日はおにぎり1個で済ませちゃおう」といったセレクトは避けてください。 こういった低カロリーで低たんぱくな食事をしていると、体重や筋肉が減少し、身体の衰弱を加速させてしまいます。「あまり食欲ないから、食べなくていいや」ではなく、「どうしたら、おいしくしっかり食べられるか」を考えてみてください。 なお、どんなに億劫でも、食事を抜いてしまうのは厳禁です。これは高齢者がいちばんやってはいけないこと。 たとえ食欲がなくても、食べるべき時間になったらちゃんと食事らしいものを口に入れるようにしましょう』、「どんなに億劫でも、食事を抜いてしまうのは厳禁です。これは高齢者がいちばんやってはいけないこと」、よく心しておこう。
・『カップ焼きそばに生卵を落としてタンパク質をプラス  もし、つくるのもめんどうだし、スーパーに買いものに行くのもめんどうという場合は、買い置きのカップラーメンでもよいのです。毎日でなく「たまの手抜き」で食べる分には、まったく問題ありません。 カップラーメンはけっこうカロリーが高く、高齢者にとっては重宝する食品なのです。とりわけ、カップ焼きそばはかなりの高カロリー食品で、普通サイズでなんと500〜600kcalもあります。 ただ、カップラーメンやカップ焼きそばは、たんぱく質が足りません。 でも、「サバ缶」でも一緒に食べれば、カロリーもたんぱく質もけっこう理想的な量を摂取できることになります。 あるいは、カップラーメンとゆで卵を一緒に食べたり、カップ焼きそばに生卵を落として食べたりしてたんぱく質を「ちょい足し」していくのもいいかもしれません』、「カップラーメンやカップ焼きそばは、たんぱく質が足りません」、「サバ缶」でも一緒に食べれば、カロリーもたんぱく質もけっこう理想的な量を摂取できる・・・あるいは、カップラーメンとゆで卵を一緒に食べたり、カップ焼きそばに生卵を落として食べたりしてたんぱく質を「ちょい足し」、「たんぱく質を「ちょい足し」」、ちょっとした技で「理想的な」食事になるようだ。
・『日本の高齢者は全体に“低体重”傾向にある  ここでちょっと、日本の高齢者がいかにやせているか、医学的データを元に状況をチェックしてみましょう。 太っているのか、やせているのかの基準となる指標にBMIがあります。これは身長(メートル)を2乗した数字で体重を割ると計算できます。一般的にはこのBMIが25を超えると「肥満」、18.5を下回ると「やせ」、中でも22が最も病気のリスクが低くなることから「標準体型」とされています。 全国の訪問看護を利用している高齢者のBMIを調査したところ、BMIが18.5もない「低体重」に該当する人が60%にも上ることが明らかになりました。中でもBMI16未満の「重度のやせ」の人が28%もいたのです。 女性の場合、BMIが16未満だと、BMI22の人に比べて死亡リスクが2.6倍にアップすることがわかっています。BMI18.5でもかなりやせ型ですが、BMI16となると、もう筋肉まで落ちてガリガリにやせた状態です。 私は、こうした日本の高齢者の低体重傾向を“危険なレベル”と考えています。 食事量が不足しているために、「低栄養→筋肉量低下→肺炎・骨折→入院→さらに筋量低下」という悪循環を自分から招き入れてしまっているのです』、私のBMIは18.3と「「低体重」に該当」するようだ。
・『「理想のBMI」は30〜59歳のデータに基づいている  低体重のリスクがピンとこない方もいるかもしれませんが、高齢者の場合、「やせていると死亡リスクが高く、太っていると死亡リスクが低くなる」ことが多くの研究で明らかになっています。アメリカで行なわれた研究でも、高齢者の死亡リスクはBMIが低くなるほど高まり、高齢者のBMIは27のちょい太めくらいが最も死亡リスクが低いとわかっています。 BMI27ということは、つまり肥満(1度)ということになるのですが、高齢者の場合、標準体型(BMI22)の人と比べて死亡リスクが29%低下することが報告されています。高齢者の場合、かなりの肥満であるBMI40の人でさえ、標準体型の人と死亡リスクがほぼ同じなのは驚きですね。 「あれ? BMIって22が最も健康にいいはずなのに、なんで?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。実は、理想のBMIは、若者と高齢者とでは別々に考えたほうがいいのです。 というのも、BMI22というのは、30歳から59歳の5000人を対象にした健診データから導き出された指数、つまり高齢者がまったくカウントされていないのです。言わば、「高齢者抜き」でつくられた体格指標であり、そのため「22がいちばんいい」というのは高齢者には当てはまらないと考えたほうがいいんですね』、「BMI」が「「高齢者抜き」でつくられた体格指標」、初めて知った。
・『年をとったら「おやつ」は好きなように食べる  ここで「間食」についても、お話ししておきましょう。高齢者は「間食」をしてもいいのでしょうか? 答えはイエス。特に食事量の少ない高齢者の場合、1日3食、白米をしっかり食べるというスタイルよりは、白米は多少控えめでも3食のおかずを多めに食べて、間食やデザートも多めにとるというスタイルのほうが、トータルでしっかりカロリーを摂れると思います。だから、ちょっと小腹が空いたときにはお菓子でもみかんでも、気にせずお好きなものをつまんでください。 若い時期には、スナック菓子などを食べ過ぎて、注意されることもあったかもしれませんが、それはあくまで若いときの話。 高齢になってからは、カロリーが高くて太りやすいのはかえって好都合というもの。だから、ポテトチップス、おせんべい、おかき、かりんとう……好きなものを好きに食べても別に問題ありません』、「食事量の少ない高齢者の場合、1日3食、白米をしっかり食べるというスタイルよりは、白米は多少控えめでも3食のおかずを多めに食べて、間食やデザートも多めにとるというスタイルのほうが、トータルでしっかりカロリーを摂れると思います。だから、ちょっと小腹が空いたときにはお菓子でもみかんでも、気にせずお好きなものをつまんでください」、なんと嬉しいことだ。歳を取るメリットのうち最大のもののようだ。
・『「太っちゃうから」甘いものをもう我慢しなくていい  きっと、お菓子類が好きな方にとっては、なんでも気兼ねなく食べられるのは夢のような状況なのかもしれませんね。ただ、間食でこういったものを多く食べていると、カロリーは摂れても、たんぱく質は不足しがちになるので、肉や魚、卵、大豆などのたんぱく質は、3度の食事できちんと摂るように留意してください。 おやつと言えば、「甘いもの」に目がない方も多いと思います。ケーキ、シュークリーム、エクレア、プリン、大福、どらやき、おまんじゅう……こういったスイーツも、高齢者は好きに食べて構いません。 高齢とはいえ現役並みに元気な人で、血糖値が高めの人はもちろんまだまだ注意が必要ですが、衰えを自覚するようになってきたら、血糖値よりも、しっかり食べて体重を守ることを優先したほうがよいと思います。 糖尿病で治療中の方は、もちろん血糖コントロールを無視していいというわけではありませんが、低体重の方は、「血糖を上げないために食べない」ではなく、食べたい量に薬やインスリンを合わせていくという考え方もあります』、私は「血糖値」はそれほど問題がないので、「スイーツも、高齢者は好きに食べて構いません」、嬉しいことだ。
・『選び放題のコンビニスイーツを活用する  ちなみに、最近はコンビニのスイーツがたいへん充実してきています。たとえば、プリンひとつをとってもたくさんの種類があり、生クリームが載ったもの、フルーツが載ったもの、高級な材料を使ったものなど、好みに合わせていろいろ選べるようになっています。 もちろん自分の好みにあったものを選択すればよいのですが、食事の量が少なく体重がなかなか増えない。そんな人は、小さくてもカロリーが高めのものをチョイスするとよいでしょう。 あくまで参考ですが、おまんじゅうのような和菓子よりも、ケーキやシュークリームのような洋菓子のほうが、生クリームなどの乳脂肪が含まれている分カロリーが高い傾向があります。ですから、もし迷ったなら、和菓子よりも洋菓子を選ぶほうがいいかもしれません。 おやつは何歳になっても毎日の楽しみ、という方も少なくないと思います。 太ってはいけない、という呪縛がなくなったいま、いろんなスイーツを試してみながら、日々の「食べる喜び」を満喫してはいかがでしょうか』、「太ってはいけない、という呪縛がなくなったいま、いろんなスイーツを試してみながら、日々の「食べる喜び」を満喫してはいかがでしょうか」、大いに「満喫」したい。
・『食欲がないときは「チョコとアイス」がおすすめなワケ  持病や体調不良があると、病気によってエネルギーを消耗するため、より多くのカロリーを摂らなくてはなりません。「今日はちょっと熱っぽいな」「どうも体調がすぐれないな」といったときほど、がんばってより多くのカロリーを摂取しなくてはならないのです。 そうはいっても、どうしても食欲が湧かないというときはありますよね。いつものように食べられないときは、どうしたらいいのでしょうか。 いちばん避けるべきは食事を抜いてしまうこと。なので、少量でもいいから、食べられそうなものを食べられるだけ食べてください。そして、できるだけ「少量でもカロリーが高いもの」を口に入れるようにするとよいでしょう。 私のおすすめは、チョコレートとアイスクリームです。両方とも少量で高いカロリーを確保することができます。板チョコは1枚で約400kcal、半分でも200kcal摂れます。乳脂肪分の多いアイスクリームのミニカップはだいたい260〜300kcal。これらを食べれば、そこそこのカロリーを摂れるのです。 特にアイスクリームはすぐに口内で溶けて舌やのどが冷たく感じるので、熱っぽいときでものどに痛みがあるときでも、食べやすいと思います』、「チョコレートとアイスクリーム」がお勧めとは、大好物なので嬉しい。
・『甘いもの嫌いなら「ナッツ」をつまむ  また、スナック系だとかりんとうが少量で高カロリー。100g食べると約450kcal摂ることができます。食欲がないときでも「甘いものなら食べられそう」という方は、こういった食品を積極的に活用していくといいのではないでしょうか。 甘いものがあまり好きでないなら、ナッツ類を食べるのもおすすめです。 アーモンドやピーナッツも10粒で60kcal。カシューナッツ、ピスタチオ、くるみなど、ナッツ類はどれもカロリーが高めです。ちょこちょこつまめば、けっこうなカロリーを摂れることになります。 高齢になったら、どんなに食欲がなくても、こういった「熱」や「力」になりそうなものを少しでも口に放り込んでおくことが重要なのです』、「ナッツ類」も常備しておくことにしよう。
・『「体調が悪い→おかゆ」は黄金の方程式ではない  逆に、実はあまりおすすめできないのが「おかゆ」です。おかゆではカロリーが決定的に足りません。普通に炊いたごはんは一膳約200kcalですが、おかゆだと半分の約100kcalになってしまいます。 熱が出て体温が1度上がると、それだけで約200kcalの熱量が消耗されます。2度上がれば約400kcalです。つまり、おかゆの100kcalでは、この熱が上がって消耗した分のカロリーすらまかなえないことになってしまいます。 こんな状態を高齢者が何日も続けていたら、風邪をひいて寝込んでいるうちに、低栄養状態になってしまいかねません。 もちろん、食事が喉を通らないほど具合が悪いときは、水分をとったりおかゆを食べるので精いっぱい……ということもあると思います。ただ、もし食べられるのであれば、これからは「食欲がない→おかゆ」という発想を捨て、新たな健康常識として「食欲がない→チョコレート&アイスクリーム」を身につけるようにしてみてください』、「食欲がない→チョコレート&アイスクリーム」、を喜んで身につけたい。
タグ:津川友介氏による「アレルギーになる原因は「皮膚」にある? 最新研究が明かす真実」 ダイヤモンド・オンライン (その19)(アレルギーになる原因は「皮膚」にある? 最新研究が明かす真実、ダイエットにはズボラが最強!? 「だらだら食べ、食後にちょこちょこ動く」で痩せる理由、「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ 唐揚げ、豚カツ、コロッケ、フライ…) 健康 「アレルギーを発症」についてよく知りたい。 「米国小児科学会」も間違った「声明」を出したというのは驚きだ。 「肌荒れなどでダメージがある皮膚から異物が侵入することで、食物アレルギーが引き起こされるのではないかという考え方が生まれた」、素人的にも筋が通った考え方だ。 「皮膚から異物が侵入することでアレルギーになってしまうことを特に「経皮感作」と呼ぶ」、なるほど。 「経皮感作は子どもだけでなく、大人でも起こる可能性がある」、「大人でも起こる可能性がある」とは驚いた。「アレルギー予防の観点からみると、皮膚に湿疹や傷があるなどバリア機能が失われている状態で異物に触れることは、極力避けたほうが良いと言える。 またバリア機能を保つためにも、日ごろから保湿などのケアはしっかりしてほしい」、大いに気を付けたい。 益江 毅氏による「ダイエットにはズボラが最強!? 「だらだら食べ、食後にちょこちょこ動く」で痩せる理由」 「インスリン」「の量をコントロールすることで、内臓脂肪もコントロールすることができる」、なるほど。 「「血糖値が上がり、血液中に糖があるタイミング、つまり食後に運動する」のが最も効果的」、かつては「食後」はゆっくり」と言われていたが、そんなことをしては駄目なようだ。 「だらだら食べて、食後はすぐにちょこちょこ動きましょう」というのは、面白い、早速、実践してみよう。 「リバウンドをしないダイエットのカギを握るのはホルモンの働き。特に脂肪の蓄積と密接に関係のあるインスリンに着目しました。そして、糖質を摂取する際に脂質やタンパク質と合わせて摂取することで、極端に糖質を制限しなくても血糖値のコントロールが容易に行えるようになります。カロリー制限の呪縛から解放されることで、リバウンドせずに長期的に継続できるダイエットが可能となります」、夢のような「ダイエット法」のようだ。合理的でもある。「やせたい人はカロリー制限をやめなさい」、おおいに元気づけられる。 PRESIDENT ONLINE 佐々木 淳氏による「「長生きしたいなら揚げ物をたくさん食べなさい」在宅医療の第一人者がそう断言するワケ 唐揚げ、豚カツ、コロッケ、フライ…」 私はこれまで「「高齢者になったら痩せる」方がいい」と聞いていたが、これが完全なウソだったとは・・・。 出来合いの「お惣菜やお弁当」は、味が濃く塩分も多目そうなのが気になるところだ。 「どんなに億劫でも、食事を抜いてしまうのは厳禁です。これは高齢者がいちばんやってはいけないこと」、よく心しておこう。 「カップラーメンやカップ焼きそばは、たんぱく質が足りません」、「サバ缶」でも一緒に食べれば、カロリーもたんぱく質もけっこう理想的な量を摂取できる・・・あるいは、カップラーメンとゆで卵を一緒に食べたり、カップ焼きそばに生卵を落として食べたりしてたんぱく質を「ちょい足し」、「たんぱく質を「ちょい足し」」、ちょっとした技で「理想的な」食事になるようだ。 私のBMIは18.3と「「低体重」に該当」するようだ。 「BMI」が「「高齢者抜き」でつくられた体格指標」、初めて知った。 「食事量の少ない高齢者の場合、1日3食、白米をしっかり食べるというスタイルよりは、白米は多少控えめでも3食のおかずを多めに食べて、間食やデザートも多めにとるというスタイルのほうが、トータルでしっかりカロリーを摂れると思います。だから、ちょっと小腹が空いたときにはお菓子でもみかんでも、気にせずお好きなものをつまんでください」、なんと嬉しいことだ。歳を取るメリットのうち最大のもののようだ。 私は「血糖値」はそれほど問題がないので、「スイーツも、高齢者は好きに食べて構いません」、嬉しいことだ。 「太ってはいけない、という呪縛がなくなったいま、いろんなスイーツを試してみながら、日々の「食べる喜び」を満喫してはいかがでしょうか」、大いに「満喫」したい。 「チョコレートとアイスクリーム」がお勧めとは、大好物なので嬉しい。 「ナッツ類」も常備しておくことにしよう。 「食欲がない→チョコレート&アイスクリーム」、を喜んで身につけたい。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

健康(その18)(70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方、(COPD3題:COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか、肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説、肺<下>呼吸器専門医が教える肺を元気にする食べ物 タンパク質が重要)) [生活]

健康については、昨年11月29日に取上げた。今日は、(その18)(70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方、(COPD3題:COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか、肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説、肺<下>呼吸器専門医が教える肺を元気にする食べ物 タンパク質が重要))である。

先ずは、本年1月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医の和田秀樹氏による「70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293523
・『人生100年時代。現在の70代の日本人はかつての70代とは違います。若々しく、健康になった70代の10年間は、人生における「最後の活動期」とも言えます。70代の過ごし方が、その人がどう老いていくかを決めるとも言えます。要介護状態を遠ざけ、自立した80代以降の老いを迎えるためには、どう過ごせばいいしょうか。30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として医療現場に携わってきた和田秀樹さんの『70歳が老化の分かれ道 若さを持続する人、一気に衰える人の違い』(詩想社新書)から抜粋します』、後期高齢者になった私としても大いに興味を掻き立てられる。
・『平均寿命は延びたが健康寿命は男女とも75歳に届かず  人生100年時代ということが語られて久しくなりましたが、実際に人々、とくに女性は90代まで生きることが当たり前の時代になりました。おそらく今後も医学の進歩が進むでしょうから、100歳というのは夢物語ではなくなることでしょう。 ところが日常生活にまったく制限なく生きていられる健康寿命の延びは、平均寿命の延びに追いついておらず、男女とも75歳に届いていません。 要するに、70代をうまく生きないと、長生きはできてもよぼよぼとしたり、介護を受ける期間の長い高齢者になってしまうということです。 一方で、高齢者というのはとても個人差の大きい年代です。 2016年の時点で、男性の健康寿命の平均は72.14歳、女性は74.79歳ということになっていますが、これはあくまで平均値です。男性でも80歳を過ぎて矍鑠(かくしゃく)とした現役の経営者や学者、そしてフルマラソンを走るような人がいる一方で、60代から要介護状態に陥ってしまう人がいます。 ただ、一般的には70歳の時点ではまだ頭も身体もしっかりしているという人が大多数であるはずです。ここで、どのような生き方をするかでいつまで元気で頭のしっかりした高齢者でいられるかが決まってくるのです。 私が長年高齢者とかかわってきて、痛感してきたことはいくつかあります。 気持ちが若く、いろいろなことを続けている人は、長い間若くいられる。 栄養状態のよしあしが、健康長寿でいられるかどうかを決める。 そして、それ以上に重要なのは、人々を長生きさせる医療と、健康でいさせてくれる医療は違うということです。 たとえば、コレステロールというものは長生きの敵のように言われていますが、コレステロールの高い人ほどうつ病になりにくいし、それが男性ホルモンの材料なので、男性ではコレステロールが高い人ほど元気で頭がしっかりしています。 血圧や血糖値にしても、高めのほうが頭がはっきりするので、薬でそれを下げると頭がぼんやりしがちです。また、高血圧や高血糖に対して塩分制限や食事制限が課されることが多いわけですが、生きる楽しみを奪われたり、味気ないものを食べることになるので、元気のないお年寄りになりがちです。 ところが、日本では大規模調査がほとんどなされておらず、この長生きのための医療にしても、それで本当に長生きできるのかははっきりしないのです。実際、コレステロールが高めの人や、太めの人のほうが高齢になってからの死亡率が低いことが明らかになっています。 高齢者をあまり診ていない人による旧来型の医療常識に縛られず、70代をどう生きるかで残りの人生が大きく違うというのが、私の30年以上の臨床経験からの実感です』、私は「コレステロール」値が高い方だが、最近は医者が文句を言わなくなったのはこのためなのかも知れない。
・『いまの70代は、かつての70代とはまったく違う  私はこれまで30年以上にわたって、高齢者専門の医療現場に携わってきましたが、日本人にとっては今後、70代の生き方が、老後生活において非常に重要になってくると考えています。 70代の生き方が、その後、要介護となる時期を遅らせて、生き生きとした生活をどれだけ持続できるかということに、大きくかかわっているからです。 なぜ、70代の生活がその人の晩年のあり方を左右するようになってきたのか、まずはそこから本書を始めようと思います。 現在の70代の人たちは、戦前生まれの人が70代になった頃と比べて、格段に若々しく、元気になってきました。 戦後の大幅な出生人口増加期に生まれた団塊の世代(1947~1949年生まれ)の人たちも、2020年にはみな70代になっていますが、この団塊の世代に代表される現在の70代は、少し前までの70代の人とは、大きく違います。身体の健康度、若々しさがまったく違うのです。 たとえば1980年当時、60代後半、つまり65~69歳の人のおよそ10%近くの人が普通に歩行することができませんでした。しかし、2000年には、正常歩行できない人が2~3%に激減しています』、「1980年当時、60代後半・・・の人のおよそ10%近くの人が普通に歩行することができませんでした。しかし、2000年には、正常歩行できない人が2~3%に激減」、確かに健康な老人が増えたようだ。
・『第2次世界大戦後 元気な70代が増えた理由  私も高齢者を長年診ていますが、かつての70代はそれなりによぼよぼしていましたが、いまの70代はまだまだ元気な人が多く、10歳くらい若返ったような印象です。 このような元気な70代が増えた理由には、第2次世界大戦後の栄養状態の改善が挙げられます。戦後の食糧難にあえぐ日本に、アメリカから余った脱脂粉乳が大量に送り込まれましたが、このころから日本人の栄養状態が改善します。 成長期の栄養状態が改善したことで、日本人の寿命は延び、体格もよくなり、現在の若々しい元気な高齢者を出現させています。 戦後の結核の撲滅については、ストレプトマイシンという抗生物質のおかげだと考えている人も多くいますが、実際はタンパク質を多くとるような栄養状態の改善が、免疫力の向上をもたらしたことによって可能となったのが真相です。 そもそもストレプトマイシンは結核になってからの治療薬であって、それが結核を激減させた理由にはなりません。結核を予防するBCG接種も、開始されたのは1950年ころからです。赤ちゃんのときに接種して、その効果で結核が減るとしても、統計に現れてくるのは少なくとも赤ちゃんが成長した10年後くらい、1960年代くらいからになるはずです。 しかし、結核の減少は、1947年くらいから始まっています。これは、アメリカからの支援物資による栄養状態の改善時期と一致します。 戦前の日本人も摂取カロリーでいえば、それなりにとっていましたが、タンパク質は驚くほどとっていませんでした。そのため免疫力が低く、結核で亡くなる人が多かったのです。) それが戦後の栄養状態改善で結核が減り、若いときに死ぬ人が激減しました。これによって平均寿命が一気に延びたのです。若くして亡くなる人を減らすことが、平均寿命を延ばす大きな要因になります。 また、それと同時に日本人の体格も向上していきます。男の平均身長が170センチを超えたのが、1970年前後です。昔は子どもの頃の栄養失調もあって、小さい高齢者がときどきいましたが、いまではほとんどいません。 戦後生まれの人たちはこうして平均寿命を延ばし、体格も立派になって、健康で若々しさを保つようになってきたのです。その先駆けが、いま、70代を迎えている人たちなのです』、「戦後の食糧難にあえぐ日本に、アメリカから余った脱脂粉乳が大量に送り込まれましたが、このころから日本人の栄養状態が改善します」、「戦前の日本人も摂取カロリーでいえば、それなりにとっていましたが、タンパク質は驚くほどとっていませんでした。そのため免疫力が低く、結核で亡くなる人が多かったのです。 それが戦後の栄養状態改善で結核が減り、若いときに死ぬ人が激減」、まさに「アメリカ」さまさまだ。
・『もはや70代は現役時代の延長でいられる期間となった  日本よりも栄養状態のよかったアメリカでは、これまでの世代とは違った元気な70代が、日本よりも一足先に社会に登場します。 1974年、アメリカの老年学の権威であるシカゴ大学のベルニース・ニューガートンは、それまで65歳以上を高齢者とみなしていた社会に対して、75歳くらいまでは、体力的にも、知的機能的にも中高年とたいして変わらないと提起します。そして、その世代を「ヤング・オールド」と呼びました。 さらに、75歳を過ぎるころから、認知機能が落ちてきたり、病気などで介護が必要な人も出てくる世代ということで、「オールド・オールド」と定義しました。これはのちに、日本における前期高齢者、後期高齢者という考え方につながっていきました。 しかし、ニューガートンがこの考え方を提唱した1970年代当時の日本では、まだ、75歳の日本人たちは、若いころの栄養状態も悪く、身体も小さく、老いるのがいまより早かったのです。そのため、アメリカの高齢者のように元気と言える状況ではありませんでした。 それが1990年代に入ったあたりから、日本でも元気な高齢者が増えてきました。私は1988年から浴風会という高齢者専門の総合病院に勤めていましたが、多くの高齢者を診てくるなかで、次第にニューガートンと同じ考えを持つようになりました。 1997年には、『75歳現役社会論』(NHK出版)という本を著し、そこで、75歳くらいまでは、知的機能や体力、内臓機能など、中高年のころと大差なく、現役時代同様の生活ができるということを説きました。) そして、当時からさらに20年以上が経ったいま、医療はさらに進歩し、70代の人の要介護比率も改善してきています。その現実を踏まえれば、現在の日本では、75歳ではなく、80歳までは、多くの人が現役時代のような生活を送れる可能性がある社会になってきたと言えるでしょう。 これまでは70代ともなると、大病を患ったり、病院での生活を強いられたり、介護が必要となったりする人もそれなりにいましたが、今後は、自立して多くの人たちが70代を過ごすことになっていきます。70代の10年間は、ある意味、中高年の延長で生活できる期間となったのです。 それは、人生における「最後の活動期」と言ってもいいと思います。70代が活動期になったからこそ、その過ごし方が、80代以降の老いを大きく左右するようになったのです。 70代であれば、身体も動くし、頭もはっきりしていますから、日々の生活の心がけ次第で、80代以降の健やかな生活につながります。 ただ、70代には特有の脆弱さもありますから、放っておいたら衰えは進みます。だから意図的に、心がけることが大事になってきます』、「アメリカの老年学の権威であるシカゴ大学のベルニース・ニューガートンは、それまで65歳以上を高齢者とみなしていた社会に対して、75歳くらいまでは、体力的にも、知的機能的にも中高年とたいして変わらないと提起します。そして、その世代を「ヤング・オールド」と呼びました。 さらに、75歳を過ぎるころから、認知機能が落ちてきたり、病気などで介護が必要な人も出てくる世代ということで、「オールド・オールド」と定義しました。これはのちに、日本における前期高齢者、後期高齢者という考え方につながっていきました」、「前期高齢者、後期高齢者」の考え方のルーツのようだ。
・『「人生100年時代」に70代はターニングポイント  現代の日本において、70代の過ごし方が重要性を増してきた理由には、超長寿化によって、老いの期間がこれまでより延長するようになってきたという点も挙げられます。 そもそも、前述したように、これまで日本人は、戦後の栄養状態の改善によって、大きく寿命を延ばし、前の世代よりも若々しくなってきました。 かつて漫画『サザエさん』の連載が始まったのは1947年ですが、父親の磯野波平は当時、54歳の設定でした。いまの私たちから見ると、どう見ても60代半ばに見えます。それくらい、現代の日本人は若返ってきたのです。 しかし、この栄養状態の改善が、人々の若返りや寿命の延びに寄与してきたのも、1960年くらいに生まれた人たちまでで終わったと私は考えています。実際、日本人の平均身長の推移も、戦後、急速に伸びてきましたが、ここ20年くらいは伸びが止まっています。もはや栄養状態の改善は、日本全体に行きわたり、そのことが寿命の延びを牽引していくという時代は終わっているのです。 しかし実際にその後も、日本人の平均寿命は延び続け、これからも延びていくと予想されています。これは、医学の進歩がそうさせるのです。 日本人は戦後に劇的に若返ってきた体験をしているので、「人生100年時代」などと言われると、いまよりさらに若返りが可能になり、寿命が延びていくと考える人もいますが、それは正しい認識ではありません。 80歳や90歳になっても、いまの70代の人たちのように元気に活躍できるようになって、人生のゴールがどんどん後ろにずれていくというのは幻想でしかありません。 若返るのではなく、医学の進歩によって、「死なない」から超長寿になるというのが「人生100年時代」の実像です』、「日本人の平均身長の推移も、戦後、急速に伸びてきましたが、ここ20年くらいは伸びが止まっています。もはや栄養状態の改善は、日本全体に行きわたり、そのことが寿命の延びを牽引していくという時代は終わっているのです。 しかし実際にその後も、日本人の平均寿命は延び続け、これからも延びていくと予想されています。これは、医学の進歩がそうさせるのです」、「80歳や90歳になっても、いまの70代の人たちのように元気に活躍できるようになって、人生のゴールがどんどん後ろにずれていくというのは幻想でしかありません。 若返るのではなく、医学の進歩によって、「死なない」から超長寿になるというのが「人生100年時代」の実像です」、若干ガッカリした。
・『伸長した老いの期間を左右するのが70代になる  80歳にもなれば、みな老いに直面することになります。しかし一方で、寿命だけは延びていく。これは、私たちの人生設計を大きく変えることになるかもしれません。これまではせいぜい10年ほどだった「老い」の期間が、15~20年に延長する人生が標準になっていくからです。 今後は、伸長した老いの期間をどう生きるかが重要な課題になっていくでしょう。そして、その延長した老いのあり方を左右するのが、人生終盤の活動期である70代ということになります。 寿命がますます延びていく「人生100年時代」だからこそ、70代はますます重要性を増してきているのです。 本書では、運転免許を返納してはいけない、肉を食べる習慣が「老い」を遠ざける、運動習慣などの「老いを遅らせる70代の生活」、70代の人のかしこい医師の選び方などの「知らないと寿命を縮める70代の医療との付き合い方」、趣味を働いているうちにつくろう、高齢者の「うつ」の見分け方などの「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」について紹介しています』、「運転免許を返納してはいけない」とは嬉しいアドバイスだ。「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」を一度、じっくり読んでみたい。

次に、COPD3題のうちの「COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか」2019年7月30日付け日刊ゲンダイを紹介しよう。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/259361
・『海でおぼれているような息苦しさが続く……。これがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の末期だ。先日、東京慈恵会医大と北里大の研究グループが新たな予防法・治療薬の開発につながる研究成果を出し、英科学誌「Nature communications」オンライン版に発表した。研究メンバーの一人、東京慈恵会医大呼吸器内科講師の皆川俊介医師に話を聞いた。 COPDは慢性気管支炎と肺気腫の総称で、国内の推定患者数は500万人以上。しかし、治療患者数は約22万人(2005年)で、多くは治療に結びついていない。 「認知度が低いのが問題です。肺機能検査(スパイロメトリー)ですぐに判明しますが、受けていない人が大半です」 主な原因は、たばこ。喫煙本数×期間で、いつ発症するかが違ってくるが、加齢もCOPDに関係しているため、患者のほとんどは高齢者だ。禁煙時期で呼吸機能の低下の速度が違い、発症後の過ごし方、いつ亡くなるかが大きく変わる。 COPDは有効な治療法がほとんどない。 「たばこの有害物質で気管や肺胞に慢性炎症が起こり、肺胞が酸素を取り込めなくなる病気とは分かっていましたが、炎症は強いものではなく、これが原因か、それともCOPDによる結果か、メカニズムがはっきりしていませんでした。だから完治につながる治療法もありませんでした」 対症療法しかなく、初診時にすでに重度の患者も多いので、死に向かうのをわずかに遅らせるだけ……という患者も珍しくなかった』、私も長年「喫煙者」だったので、COPDだ。「有効な治療法がほとんどない」、知ってはいたが、改めて文字で読まされるとショックだ。
・『有効な治療ターゲットになりえる2つのポイント  今回、皆川医師らが発表した内容は、ごく簡単に言うと、「たばこの有害物質によって、肺の細胞内にある本来無害な鉄が有害な鉄へ分解。それによって細胞膜を構成する脂質が酸化し、細胞死に至り、COPDを発症する」。 「もともとCOPDの患者の肺では、喫煙で肺の上皮細胞が障害され、細胞死が存在することは明らかになっていました。このメカニズムを解明したことになります。まずは、細胞死には鉄とリン脂質が関係していて、有害な遊離鉄によって細胞膜のリン脂質が酸化し、細胞死を引き起こす“フェロトーシス”が生じる(図中(1))。では、有害な遊離鉄はどうしてできるのか? 本来、細胞内の鉄はフェリチンという安定・無害な状態で貯蔵されていますが、細胞内タンパクの分解機能オートファジー機構で有害な遊離鉄へと分解されるのです」 患者にとって重要なポイントは、メカニズム解明によってQOLを改善させるような新しい治療が期待できること。この研究には治療ターゲットになりえる次の2つのポイントがある。 ポイント①…本来の無害な鉄は、「NCOA4」という積み荷を運ぶトランクのようなもので運ばれ、オートファジーという処理工場で有害な遊離鉄に分解される(図中(2))。このNCOA4の働きを抑えることで、有害な遊離鉄への分解を抑制し、結果、細胞膜の酸化反応やフェロトーシスを抑制する。) ポイント②…細胞膜を構成する脂質の酸化は「GPx4」というタンパクでも抑制できる。GPx4を強化することで、酸化を抑え、細胞死を回避できる。 「NCOA4やGPx4を標的とした治療は十分に可能だと思います。気道に特異的にアプローチしなくてはならないなど課題はありますが、遠くない将来、根本的治療法がなかったCOPDに対する治療薬が登場する可能性は高いです」 だからこそ、いま私たちが肝に銘じるべきは、COPDの早期発見。喫煙者や受動喫煙者は呼吸器内科でスパイロメトリーの検査を。 なお、息苦しさ、呼吸困難などの自覚症状が出てからでは、“早期発見”とは言えない』、「遠くない将来、根本的治療法がなかったCOPDに対する治療薬が登場する可能性は高いです」、とは嬉しい予測だが、私に間に合うのかも問題だ。

第三に、COPD3題のうちの「肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説」(1月20日付け日刊ゲンダイ)を紹介しよう。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277174
・『肺の健康状態や老化度を知る方法のひとつに、呼吸器内科で呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けることで分かる「肺年齢」という指標がある。1秒間に吐ける息の量から、実年齢(標準)と比べて自分の呼吸機能がどの程度か確認するための目安になる。 肺年齢は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や、ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患があると実年齢よりも高くなる。しかし、呼吸機能は肺に病気がなくても、20歳前後をピークに加齢とともに低下していく。肺年齢を若々しく保つ方法はないのか。 「長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい」(エクスナレッジ)の著者で、「みやざきRCクリニック」(東京都品川区)の宮崎雅樹院長(呼吸器専門医)が言う。 「肺の病気がなくても、『若い頃より息切れがしやすくなった』といった自覚があるのであれば、肺の老化が進んでいる可能性があります。そうした人は『肺トレ』を試してみるといいでしょう。肺トレは、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)の方法をベースにした、主に健常者向けの自分で行う健康法のひとつです」 呼吸リハは、COPDなどの患者が息苦しさなどを改善するために、医療機関で行われているもの。慢性呼吸器不全の主な症状は、体を動かしたときに呼吸が苦しくなる。階段の上り下りや入浴、トイレに行く、といった日常生活動作(ADL)が息苦しくてできなくなる。呼吸リハの最大の目的はこのADLの改善になる。 まず動いても息苦しくならないようにするのが「呼吸訓練」。特別な呼吸法を行うことによって、息苦しさなどの症状を改善させる。また肺機能が低下すると、体を動かすのがつらくなるので、歩かなくなり下半身の筋力が低下する。弱った筋力を回復するための「運動療法(筋トレ)」も、呼吸リハの一部に取り入れられているという』、「呼吸リハビリテーション」については、下記のような動画付きの案内がある。
https://www.keiseikai.net/medicalinformation/copd/exercisetherapy.php
・『口すぼめ呼吸  肺トレでまず覚えてほしいのが、呼吸を楽にする呼吸法。さまざまな方法があるが、代表的なのが「口すぼめ呼吸」だ。①鼻から息を肺がいっぱいになるまで吸う。②口を軽くすぼめて、息をゆっくり長く吐く。ポイントは、目の前に火のついたロウソクがあることをイメージして、その火を消さないくらいの強さでゆっくり息を吐く。 「COPDやぜんそくは閉塞性換気障害といって、炎症を起こして狭くなった気管支がつぶれやすくなり、息をスムーズに吐き出せなくなります。そのため、肺の中に吐き出せない空気がたまり、息苦しさなどの症状が出るのです。こうした症状が出ているときに、口すぼめ呼吸を行うと呼吸が楽になります」 ヨガなどでも基本の呼吸法とされている「腹式呼吸」も、呼吸リハでは昔から行われている。横隔膜を大きく動かして呼吸するため、空気が肺にいっぱい入って呼吸が楽になる』、なるほど。
・『腹式呼吸  ①座位または立位で背筋を伸ばし、鼻からゆっくり息を吸い込む。このとき、ヘソの下に空気をためていくイメージでお腹を膨らませる。②次に、口からゆっくり息を吐き出す。お腹をへこませながら、体の中の悪いものをすべて出し切るような感覚で、吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐く。1日5回くらいから始め、慣れてきたら1日10~20回を基本に行う。 呼吸を楽にするには、呼吸法のトレーニングだけでは十分ではない。大事なのは全身の筋トレになる。特に太ももの筋肉が衰えてあまり動かない生活を続けると、呼吸で使う上半身の呼吸筋も衰えていくからだ。散歩やウオーキングなどを日課としながら、筋トレも習慣にするといい。 「肺の老化を防ぐ運動として最も勧められるのは、大腿四頭筋(太ももの筋肉)を効率良く鍛えられる『スクワット』です。やり方が正しければ毎日行う必要はなく、週3日くらいでも効果があるといわれています。無理のない範囲で、少しずつ始めてみてください」) スクワットの基本的なやり方は、両足を肩幅くらいに開いて立ち、膝を曲げながら腰を落とした後、膝を伸ばしながら腰を元の位置に戻す。ポイントは腰を落とす際、できるだけ膝がつま先より先に出ないように注意すること。これを10回1セットとし、1日3セットを目安に行う。 次回は「肺を老化させない食べ物」を紹介してもらう』、「呼吸を楽にするには、呼吸法のトレーニングだけでは十分ではない。大事なのは全身の筋トレになる。特に太ももの筋肉が衰えてあまり動かない生活を続けると、呼吸で使う上半身の呼吸筋も衰えていくからだ。散歩やウオーキングなどを日課としながら、筋トレも習慣にするといい」、なるほど。

第四に、COPD3題のうちの「肺<下>呼吸器専門医が教える肺を元気にする食べ物 タンパク質が重要」(1月27日付け日刊ゲンダイ)を紹介しよう。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277204
・『肺の主な病気のひとつに、慢性的に肺胞や気道の炎症が徐々に進行する「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」がある。体を動かすと息切れを起こすので、進行すると体を動かさなくなり全身の筋力が衰えていく。当然、呼吸で使う肋間筋や横隔膜などの上半身の「呼吸筋」も衰え、より呼吸しづらくなる。 また、筋肉量が減ってくる原因には「食欲低下」もある。摂取カロリーが不足するため、体重の減少とともに筋肉も減ってくるのだ。 さらにCOPDの人は肺の機能低下をカバーするため、呼吸筋をよく使うので、消費カロリーが増加する。人によっては1日当たり500キロカロリーぐらい増えるとされている。 このような筋力低下はCOPDでなくても、食が細くなってやせてくる高齢者でも起こる。加齢に伴う筋力低下による肺機能の低下は、「食」も大きく関係するのだ。では、肺の負担が少ない食べ物はあるのか。「長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい」(エクスナレッジ)の著者で、「みやざきRCクリニック」(東京都品川区)の宮崎雅樹院長(呼吸器専門医)が言う。) 「私たちが生きていくための基本的な栄養素は、『糖質』『脂質』『タンパク質』の3つです。この栄養素は体内で酸素を使って燃焼し、エネルギーに変換され、酸素が使われた後には二酸化炭素が残ります。この食事の際に消費される酸素量と、排出される二酸化炭素の量は、糖質、脂質、タンパク質でそれぞれ異なります。つまり、肺機能の弱い人が呼吸の負担を減らすには、二酸化炭素の産生が少ない栄養素を選ぶことが大事なのです」 ある時間内に、生体内で酸素が燃焼したときに消費された酸素量と、それに対する二酸化炭素の排出量の体積比を「呼吸商」という。 3大栄養素の呼吸商は次のようになる。 ◆糖質のみが燃焼した場合の呼吸商は「1.0」 ◆脂質のみが燃焼した場合は「0.7」 ◆タンパク質のみが燃焼した場合は「0.8」) このように、「脂質」や「タンパク質」は二酸化炭素の排出量が少なく、「糖質」は呼吸という面では不利な栄養素になる。 ■「お茶漬け」や「そうめん」ばかりは危ない 筋力の維持には適度な運動が欠かせないが、タンパク質の摂取量が不足していれば、運動をしても筋力が低下する。タンパク質量の不足で筋肉が減少すると老化が進み、肺機能の老化も進むことになる。 「COPDの患者さんの食事指導でも、タンパク質の取り方は重要です。タンパク質は約20種類のアミノ酸で構成されていますが、COPDの人は体内で合成できないBCAA(分岐鎖アミノ酸)と、肝臓で代謝されるAAA(芳香族アミノ酸)との比率が低下するので、BCAAを積極的に取ることが推奨されています。BCAAは『良質なタンパク質』にバランスよく含まれています」) 良質なタンパク質は、カツオ、マグロ、アジなどの魚介類、牛肉や豚肉、鶏卵、納豆、チーズ、牛乳などに含まれている。食欲が低下している人は「お茶漬け」や「そうめん」などの食事を好む。 しかし、ごはんや麺などの糖質(炭水化物)が多いと食事で消費する酸素量が増えるばかりか、二酸化炭素排出量も増えるので呼吸に負担がかかる。そのためCOPDの人には、糖質を減らして脂質やタンパク質を増やすことがすすめられているという。 食欲がなく一度にたくさん食べられない人は、少量で高カロリーを摂取できる「脂質」を多く含む食べ物を取るなどの工夫をするといい。たとえばバターやチーズ、ヨーグルトなどの乳製品。脂質は呼吸商が最も低く、酸素消費が最も少ない栄養素なので、食が細くなっている高齢者などにはすすめられる。 「脂質は調理法として、炒めものや揚げものなどで油を上手に取り入れるのもいいでしょう。ただ、消化機能が衰えた高齢者は、油を多く使った料理はたくさん食べられないと思います。その場合、アジ、サバ、イワシなどの青背魚に含まれるDHAやEPAなどの良質な油(魚油)を多く取るのがいいでしょう」 1日3回の食事で必要な摂取カロリーが取れない人は、間食(おやつ)を取ることでもOK。バターを多く使った洋菓子、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品。特に乳脂肪分の多いアイスクリームは、食欲が落ちても取りやすいのでおすすめという』、「「脂質」や「タンパク質」は二酸化炭素の排出量が少なく、「糖質」は呼吸という面では不利な栄養素になる」、「筋力の維持には適度な運動が欠かせないが、タンパク質の摂取量が不足していれば、運動をしても筋力が低下する。タンパク質量の不足で筋肉が減少すると老化が進み、肺機能の老化も進むことになる」、「消化機能が衰えた高齢者は、油を多く使った料理はたくさん食べられないと思います。その場合、アジ、サバ、イワシなどの青背魚に含まれるDHAやEPAなどの良質な油(魚油)を多く取るのがいいでしょう」 1日3回の食事で必要な摂取カロリーが取れない人は、間食(おやつ)を取ることでもOK。バターを多く使った洋菓子、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品。特に乳脂肪分の多いアイスクリームは、食欲が落ちても取りやすいのでおすすめという」、私の好物の「アイスクリーム」がおすすめとは嬉しい。 
タグ:健康 (その18)(70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方、(COPD3題:COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか、肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説、肺<下>呼吸器専門医が教える肺を元気にする食べ物 タンパク質が重要)) ダイヤモンド・オンライン 和田秀樹氏による「70代が「老い」の分かれ道、よぼよぼの80代にならないための過ごし方」 後期高齢者になった私としても大いに興味を掻き立てられる。 私は「コレステロール」値が高い方だが、最近は医者が文句を言わなくなったのはこのためなのかも知れない。 「1980年当時、60代後半・・・の人のおよそ10%近くの人が普通に歩行することができませんでした。しかし、2000年には、正常歩行できない人が2~3%に激減」、確かに健康な老人が増えたようだ。 「戦後の食糧難にあえぐ日本に、アメリカから余った脱脂粉乳が大量に送り込まれましたが、このころから日本人の栄養状態が改善します」、「戦前の日本人も摂取カロリーでいえば、それなりにとっていましたが、タンパク質は驚くほどとっていませんでした。そのため免疫力が低く、結核で亡くなる人が多かったのです。 それが戦後の栄養状態改善で結核が減り、若いときに死ぬ人が激減」、まさに「アメリカ」さまさまだ。 「アメリカの老年学の権威であるシカゴ大学のベルニース・ニューガートンは、それまで65歳以上を高齢者とみなしていた社会に対して、75歳くらいまでは、体力的にも、知的機能的にも中高年とたいして変わらないと提起します。そして、その世代を「ヤング・オールド」と呼びました。 さらに、75歳を過ぎるころから、認知機能が落ちてきたり、病気などで介護が必要な人も出てくる世代ということで、「オールド・オールド」と定義しました。これはのちに、日本における前期高齢者、後期高齢者という考え方につながっていきました」、「前期高齢者 「日本人の平均身長の推移も、戦後、急速に伸びてきましたが、ここ20年くらいは伸びが止まっています。もはや栄養状態の改善は、日本全体に行きわたり、そのことが寿命の延びを牽引していくという時代は終わっているのです。 しかし実際にその後も、日本人の平均寿命は延び続け、これからも延びていくと予想されています。これは、医学の進歩がそうさせるのです」、「80歳や90歳になっても、いまの70代の人たちのように元気に活躍できるようになって、人生のゴールがどんどん後ろにずれていくというのは幻想でしかありません。 若返るので 「運転免許を返納してはいけない」とは嬉しいアドバイスだ。一度、じっくり読んでみたい。 「退職、介護、死別、うつ……『70代の危機』を乗り越える」を一度、じっくり読んでみたい。 「COPDの新たなメカニズム解明 新治療法の登場につながるか」 日刊ゲンダイ 私も長年「喫煙者」だったので、COPDだ。「有効な治療法がほとんどない」、知ってはいたが、改めて文字で読まされるとショックだ 「遠くない将来、根本的治療法がなかったCOPDに対する治療薬が登場する可能性は高いです」、とは嬉しい予測だが、私に間に合うのかも問題だ。 「肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説」(1月20日付け日刊ゲンダイ 「呼吸リハビリテーション」については、下記のような動画付きの案内がある。 「呼吸を楽にするには、呼吸法のトレーニングだけでは十分ではない。大事なのは全身の筋トレになる。特に太ももの筋肉が衰えてあまり動かない生活を続けると、呼吸で使う上半身の呼吸筋も衰えていくからだ。散歩やウオーキングなどを日課としながら、筋トレも習慣にするといい」、なるほど。 「肺<下>呼吸器専門医が教える肺を元気にする食べ物 タンパク質が重要」(1月27日付け日刊ゲンダイ) 「「脂質」や「タンパク質」は二酸化炭素の排出量が少なく、「糖質」は呼吸という面では不利な栄養素になる」、「筋力の維持には適度な運動が欠かせないが、タンパク質の摂取量が不足していれば、運動をしても筋力が低下する。タンパク質量の不足で筋肉が減少すると老化が進み、肺機能の老化も進むことになる」、「消化機能が衰えた高齢者は、油を多く使った料理はたくさん食べられないと思います。その場合、アジ、サバ、イワシなどの青背魚に含まれるDHAやEPAなどの良質な油(魚油)を多く取るのがいいでしょう」 1日3回の食事で必要な摂
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

医療問題(その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由) [生活]

医療問題については、昨年9月12日に取上げた。今日は、(その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由)である。

先ずは、本年1月11日付けNHK NEWS WEB「遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220111/k10013424401000.html
・『遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくくしたブタの心臓を、人間に移植することに世界で初めて成功したと、アメリカのメリーランド大学は10日、発表しました。 動物の遺伝子を操作して、人間に移植できる臓器を作り出す研究は、各国で進められていて、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています。 アメリカのメリーランド大学医学部の研究チームは10日、遺伝子を操作したブタの心臓を、心臓疾患の男性に移植することに、世界で初めて成功したと発表しました。 研究チームによりますと、移植を受けたのは、不整脈で入院している57歳の男性で、症状が重いため通常の心臓移植の対象にならず、ほかの治療法では回復が見込めない状態だったということです。 手術は今月7日に行われましたが、3日後の10日現在も、男性の容体は安定しているということです。 移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています。 移植にあたっては、アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出したということです。 遺伝子操作した動物の臓器を、ヒトに移植する技術をめぐっては、各国で研究が進んでいて、アメリカではニューヨーク大学が去年、遺伝子操作したブタの腎臓を、実験的に脳死状態の人に移植する手術を2例、行っています。 今後、臓器の安全性が確認され、規制当局から治療法として承認されれば、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています』、「移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています」、なるほど。「アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出した」、認可条件も厳格なようだ。しかし、これで「移植」「医療」が大きく飛躍する可能性がある。

次に、1月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの横田由美子氏による「診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情、財務省も日本医師会も完敗?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/292780
・『令和4年度予算案で焦点の一つだった診療報酬改定は、医師や看護師らの人件費や技術料に当たる本体部分を0.43%引き上げる方針で決着した。この結果を日本医師会(日医)関係者は「完敗」だと言い、財務省側も「敗れた」と見ているようだ。日医・厚生労働省(厚労省)・財務省や官邸など、各所の思惑が交錯する中、岸田文雄首相が+0.43%を決断するに至る背景を探った』、「日本医師会」、「財務省」とも「敗れた」、とはどういうことだろう。
・『診療報酬改定、日本医師会は「実質的な完敗」  「結局、中川執行部は、何もできなかったということです。岸田首相は、中川俊男日本医師会会長の顔を立てたわけではない。むしろ、中川会長の顔なんてどうでもよかった。重要なのは、半年後の参議院選挙で絶対に勝つことだった。それが、“本体微増”という岸田裁定に結びついたにすぎない。診療報酬全体では-0.94%。実質的には、日医と厚労省は財務省に完敗した。政治の世界を知らなすぎた」 日本医師会関係者は、眉をひそめて、日医の未来を憂えた。 日医に強い影響力を持つ地方の院長も、「この先、日医は、医療の現場はいったいどうなるのだろうか。政権にかみつくだけでは野党と一緒」と、不安を隠せない様子で、深くため息をつき、こう語った。 「会長が中川さんだったから仕方ないとは思う。逆に、よくあの数字で止まってくれた。もっと財務省に下げられていた可能性は十二分にあったからね」』、「“本体微増”」と「診療報酬全体では-0.94%」、この間にはどんな項目があるのだろう。
・『日本医師会と厚労省の「プラス改定」主張には説得力なし  2021年12月24日、令和4年度予算案が閣議決定した。 焦点の一つだった2年に1度の診療報酬改定は、当初、財務省側が主張する、「医師らの技術料にあたる本体部分は+0.3%台前半」で押し切られそうな勢いだった。中川会長の政界人脈のなさや、頑迷な性格がネックとなっていたのは言うまでもないが、医療現場の窮状を訴えるばかりで、財務省と戦うには、あまりに感情論に走り過ぎていたからだ。 現場の疲弊は間違いない。しかし、コロナで疲弊しているのは医療だけではない。それが一般的な国民感情だろう。 説得力のある数字を示すことなしに、プラス改定を主張する中川会長と厚労官僚。彼らは、昨年実施した「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)」の中で、自らの調査を基に「診療所の利益が6月にはコロナ前の水準に戻った」といった趣旨の記載をしたにもかかわらず、財務省サイドからその点を突っ込まれると「何の意味も持たない数字」と強弁した』、「中川会長と厚労官僚」が「自らの調査」を「「何の意味も持たない数字」と強弁」するとはいくら返答に窮したとはいえ、お粗末過ぎる。
・『財務省「完勝」の予測が外れた理由  誰もが、財務省の完勝を確信していた。では、なぜ財務省はそれができなかったのか。一つは、策士策に溺れるという言葉があてはまるかもしれない。今回の厚労第1担当主計官は10年に一人の逸材と呼ばれる一松旬氏。しかし、その優秀さが裏目に出る。財務省サイドは、中川会長の現在の不人気ぶり、前会長である横倉義武終身名誉会長がいまだに人望があること、また、その横倉前会長を引きずり下ろして中川氏が会長職をもぎとったことを熟知していた。 政界に幅広い人脈を持つ横倉名誉会長は、いまだ財務省に強い影響力を持つ麻生太郎現自民党副総裁に加え、安倍晋三前首相(現安倍派会長)らとも太いパイプを築いていた。それが、横倉時代、本体でのプラス改定が継続した背景でもある。 横倉前会長のような絶妙な人間力を持たない中川会長は、麻生副総裁を怒らせるという大失態を犯す。日医の頼みの綱である武見敬三議員も自見はなこ議員も、当選回数が少なく、数だけは多い厚労族議員をまとめきれない上に、大臣折衝の根回しもできずにいた。診療報酬の改定率は、毎回、最後は厚労省と財務省との間の大臣折衝で決着がつく「政治案件」なので、代表的な組織内候補に力量が足りないのは致命的だった。 中川会長自身にも現執行部にも政権との強いパイプはない。むしろ、敬遠されている。そう見た財務省は、本体部分で、横倉前会長時代の実質平均+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまったのだ。これを認めた厚労官僚はこう言った。 「本来的には0.3%台の攻防だったはずなのに、彼らが0.4%台にしてくれた」 実際、コロナ対策では何ら力を発揮できず、官邸との連携が最悪に等しかった中川会長に対しては、岸田首相も当初冷ややかだった』、「財務省」が「+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまった」、のはあえて敵に花を持たせたのではなかろうか。
・『木原官房副長官が動き、落としどころを模索 こうしたせめぎ合いと混乱を横で見ていた木原誠二官房副長官が動かなかったら、財務省の思い通りに進んでいたかもしれない。しかし、来る参議院選挙を案じた木原副長官は、元財務官僚ではあるが、医療分野にも精通している。彼が落としどころを模索することを決意したのだ。 岸田首相に進言する一方で、中川会長と麻生副総裁との会食の席をつくり、大家敏志財務副大臣とも調整を図った。財務省関係者はこう嘆く。 「最大の戦略は、『中川会長に口を開かせるな』だったと聞いています」 この戦略は当たった。木原副長官は、横倉前会長派の麻生副総裁に加え、安倍前総理にも調整をするなど八面六臂(ろっぴ)の活躍をしながら、岸田首相に財務官僚さながらの粘り強い説明を行ったという。 そして、最終的に、岸田首相が出した答えが「本体部分+0.43%」だったのだ』、「木原官房副長官」の調整力は聞きしに勝るようだ。
・『財務省にとっても、厚労省・日医にとっても「想定外の決着」  木原副長官を中心に着々と外堀を埋められていたことは、財務省のみならず、厚労省や中川会長すら理解しておらず、こうして皆にとって「想定外の決着」がついたのである。 12月22日に、中川会長が「令和4年度診療報酬改定率の決定を受けて」という記者会見で、「厳しい財政状況でのプラス改定を評価したい」と語ったのももっともである。 だがその会見でも、中川会長は、謝辞を述べた政治家から「安倍晋三前首相」の名前を抜かすという大失態を犯し、後から、文章で安倍前首相の名前を入れるという、政治センスのなさを露呈していた(記者会見の様子はYoutubeで閲覧できるので、ぜひご覧いただきたい)。 こうした結果を受けて、ある日医関係者は、次のように訥々(とつとつ)と話した。 「中川会長にもう一期やらせて、東京都の今村聡副会長や埼玉県の松本吉郎常任理事につなぎたいという思惑を持っている人がいるようですが、柵木充明愛知県医師会長の評判がいい。バランス感覚もあるし、政治力もなかなかです。僕個人としては、彼に日医の未来を託したいです」 日医の会長選挙は、診療報酬改定と交互に行われる。既に焦点は、今年の会長選挙で、中川氏が再選できるかどうかに移っている。日医に転職した元官僚の一人は、かつて筆者にこう語った。 「日医は北朝鮮のようなところ。会長が交代すれば、人事も一新する」 ウィズコロナの時代、医療は「公」のものとなっている。選挙戦も時代に合わせ、前回のように実弾が飛び交うような事態は避け、国民に開かれたものとなるべきだろう』、「日医」はもっと政治力があると思っていたが、現在はかつての威光にすがっているだけのようだ。次の「会長」はどうなるのだろう。

第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293526
・『名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第44回。現代に生きる日本人を悩ませる「疲労」と「うつ病」という二大問題のメカニズムを世界で初めて解明した、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授の近藤一博氏を紹介する。近藤教授が見いだした“ウイルスの使命”とは』、興味深そうだ。
・『世界初、疲労とうつ病の謎を解き明かした  現代人の健康をおびやかす二大問題「疲労」と「うつ病」。世界の中でも日本人は特に、疲労やストレスによるうつ病患者や自殺者の数がトップクラスに多いという。そのことは、「過労死」という単語が「KAROSHI」としてそのまま英語になっていることからもうかがい知れる。 東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授は、この二大問題のメカニズムを世界で初めて解明するという快挙を成し遂げた。 疲労については ・原因物質を発見した ・「疲労感」と「労働や運動による生理的疲労」からなる疲労のメカニズムを解明し、従来「疲労回復効果がある」と思われていた物質のほとんどは「疲労感を軽減させる物質であり、疲労回復効果はない」ことを明らかにした ・疲労を客観的に測る技術を発明した ……というように、従来の常識を覆してしまった。 また、うつ病についても ・ほとんど全ての人に潜伏感染している「ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)」の遺伝子「SITH-1(シスワン)」を発見し、これがストレスレジリエンス(ストレスを跳ね返す力)を低下させることで、うつ病を発症させることを見いだした ・「うつ病は心の弱さや性格が原因」という説は間違いであることを明らかにした ・SITH-1を持っている人がうつ病を発症する確率は持っていない人の12.2倍、患者5人中4人はSITH-1を持っていることを明らかにした ……など、快進撃中なのである。) ただ、うつ病の謎を解いた論文は2020年6月、アメリカの権威ある科学誌『iScience(アイサイエンス)』(Cell Press)に掲載され、日本のマスコミも大々的に報じたにもかかわらず、「疲労の新事実」を含めて周知のされ方はいまだに不十分と言わざるを得ない』、「疲労感」は「日本」特有のものなのでやむを得ない面もあるが、グローバルな「うつ病」も「周知のされ方はいまだに不十分」なのは残念だ。
・『ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由  「うつ病は2030年には世界で最も重要な疾患になると言われています。世界では全年齢層にわたって2億6400万人以上が罹患(りかん)しているという調査結果もあります」(近藤一博教授、以下同) しかも、うつ病は過労死の最大の原因とされている。正しい知識が周知されることは、うつ病の予防法や治療法の開発を促進するのみならず、疲労やストレスが原因とされる多くの病気や諸問題の解消にもつながるものすごく大切なことなのだ』、「うつ病」の「謎」解明の功績はもっとPRすべきだ。
・『がん研究から派生したノーベル賞級の研究  「もともと高い志を持って医学部に入ったわけではないんです」と笑う近藤教授だが、ウイルスの研究に進んだ背景からは、若者らしい志が見える。 「ウイルス学というと感染症の研究を思い浮かべるかもしれませんが、私が学生の頃は、ウイルスの研究と言えばがんのウイルスが主流でしたので、私も大阪大学の微生物研究所で、がんとウイルスの研究から始めました。ウイルスの研究から発がん遺伝子を発見したことで知られる花房秀三郎先生(故人)は、大学院時代の教授である高橋理明・大阪大学名誉教授の兄弟弟子でした」 かつてのウイルス学は、がん研究の中心的な存在だったのだ。 「一方、高橋先生は、ヘルペスウイルスのワクチン作成に世界で唯一成功した功績で知られています。その人のもとで私も『体の中に潜んでいるウイルスが病気を起こす』ということに興味を持ち、体の中に潜んでいるウイルスと言えばヘルペスウイルスだということで、ヘルペスウイルスに着目するようになりました。 そこから疲労の研究に発展したのは、当時『慢性疲労症候群』という病気が注目されるようになり、原因はヘルペスウイルス6だといわれていたことがきっかけです」 がんの研究から疲労の研究への転身は、ごく自然な流れだったようだ。 「ヘルペスウイルスは研究対象としては地味だと捉えられるかもしれませんが、子宮頸(けい)がんなどの発生要因であるヒトパピローマウイルスの(HPV)の発見者であるツアハウゼンも、元々はヘルペスウイルスとがんの研究者でした。ただ当時の定説では、子宮頸がんの原因は単純ヘルペスウイルスだという説が有力でしたが、証明はされませんでした。彼は代わりにパピローマウイルスを研究し、ノーベル賞を取ったのです」 近藤教授の発見もまさにノーベル賞級の研究なのだが、受賞の可能性については存外諦め顔だ。 「発見するのが早すぎました。周囲からもよく、死んでから評価される仕事だと言われます。がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」』、「がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」、「ノーベル賞」にこんな不当なことがあることを初めて知った。
・『死体を見るトラウマが原因?日本と欧米の認識格差  うつ病と疲労をめぐる認識には、日本と欧米間では格差がある。 「アメリカで『あなたは今、疲れていますか』というアンケートを取ったところ、『YES』と答えた人は10%にも満たなかったそうです。日本では、56%が同じ質問に対して『はい』と答えています。 これはアメリカ人のほうが元気だからではありません。おそらく欧米では、疲れをためる前に休むのが当たり前という文化があるからでしょう。我慢して勤勉に働き続けることが美徳とされる日本と違って『働き過ぎて死ぬ』なんていう概念もないので、『過労死』という言葉も存在しない。疲労は日本人の国民病なのです」 ゆえに疲労が深刻な問題になるのは日本ならではの事象であり、近藤教授の快挙も、日本人だからこそ成し得たことといえる。欧米では日本ほど、疲労は重要な問題とは認識されてこなかったからだ。 しかし、うつ病は世界中の人が発症している。欧米人のうつ病は、疲労やストレスとは無関係なのだろうか。 「欧米でもうつ病は深刻な問題になっています。患者数も日本より多いでしょう。ただし、疲労はリスクファクターとは考えられていません。欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です。 原因はストレスによるトラウマ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で疲労の要素はない。最近の有力な説では、『うつ病の原因は貧困』というのもあります。ちょっと首を傾げざるを得ませんよね。 やはり、社会的に疲労というものの重要性を認識していないから、こういう考え方になるのだと思います」』、「欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です」、『死体を見るトラウマ』には笑ってしまった。
・『生存に有利な動物に進化させるヘルペスウイルスの恩返し  実は、近藤教授にとってヘルペスウイルスは愛すべき存在でもある。監修・原作を務めたマンガ『うつ病は心の弱さが原因ではない』(河出書房新社)の中で教授は、ネアンデルタール人を絶滅させた現代人の祖先クロマニヨン人について触れ、「ヘルペスウイルスによって生き残りに有利な動物に進化させられたのではないか」と語っている。ウイルスは単に悪さをするだけの存在ではないというのだ。 「私には一つの信念があります。それは、体に長期間潜伏しているようなウイルスは、何か人に対して良いことをしないと歴史から抹殺されてしまうという思いです。そこでヘルペスウイルスはどんな良いことをしているのかを考えてみた時に一番思い当たるのは、ストレスを亢進(こうしん)させるという働きでした。 ストレスは悪いことばかりじゃない。クロマニヨン人が現代まで生き延びてこられたのは、ヒトヘルペスウイルス6に感染してSHTH-1を持ったことでストレスが亢進され、不安を解消するために集団生活を営むようになるなどの“進化”がもたらされたおかげ。ですから私は、『SITH-1遺伝子は人類の進化に貢献してきたのではないか』という説を提唱しています」) つまり、宿主である人類に対する“ウイルスの恩返し”だろうか。 「そうですね。人もウイルスもお互いに利益がないと、両者とも滅びるか、ウイルス側が消されてしまうかのいずれかの道をたどります。だとしたら、ヘルペスウイルスがこんなにも長い年月、存在し続けられるはずがないのです。ある意味ヘルペスウイルス6は究極のウイルス。生まれてすぐに感染し、突発性発疹を発症させるものの、それは大した病気じゃない。その後は延々と体のなかに潜伏し続け、大した悪さをしないまま、人と共存する究極のウイルスです。 そんなウイルスがうつ病を引き起こし、ただ悪さをするだけのはずがありません」 なるほど、ヘルペスウイルスは人類との共存戦略を粛々と実践する、賢いウイルスなのかもしれない。 「だから私は、新型コロナウイルスのような感染症のウイルスは嫌いです。しょうもない病気を引き起こして、駆逐されてしまう。まったくウイルスの風上にも置けない(笑)」 ウイルス研究を始めて36年余り。近藤教授は疲労とうつ病に関する研究成果を一般の人に伝えるための手法として、漫画家のにしかわたく氏とタッグを組んで2冊のコミック本を出版した。ノーベル賞級の学者にしてはかなりユニークな試みだ。 「マンガを選んだ理由は二つあります。私はマンガしか読まないので、本を出すなら当然マンガだろうと。さらに二つ目として、皆に説明するならマンガがいいだろうと思いました。自分がそうだからです」 太古から続く人類とヘルペスウイルスの関係は、近藤教授の研究によって壮大なロマンの様相を呈して私たちを引きつける。そこには、人類と自然界が共存共栄していくヒントまでも潜んでいるような気がしてくるのだ。 (近藤一博氏の略歴はリンク先参照)』、「クロマニヨン人が現代まで生き延びてこられたのは、ヒトヘルペスウイルス6に感染してSHTH-1を持ったことでストレスが亢進され、不安を解消するために集団生活を営むようになるなどの“進化”がもたらされたおかげ」、「集団生活」という「進化」までウィルスの影響なのだろうか。「ヘルペスウイルス6は究極のウイルス。生まれてすぐに感染し、突発性発疹を発症させるものの、それは大した病気じゃない。その後は延々と体のなかに潜伏し続け、大した悪さをしないまま、人と共存する究極のウイルスです。 そんなウイルスがうつ病を引き起こし、ただ悪さをするだけのはずがありません」』、「うつ病」は「悪さ」の典型だ。どんないいことをもたらしてくれるのだろうか、ここでは不明である。せっかく「近藤教授の快挙」を紹介しながら、肝心なことが本文中で明らかにされてないのは、誠に残念だ。
タグ:医療問題 (その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由) NHK NEWS WEB「遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ」 「移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています」、なるほど。「アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出した」、認可条件も厳格なようだ。しかし、これで「移植」「医療」が大きく飛躍する可能性がある。 ダイヤモンド・オンライン 横田由美子氏による「診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情、財務省も日本医師会も完敗?」 「日本医師会」、「財務省」とも「敗れた」、とはどういうことだろう。 「“本体微増”」と「診療報酬全体では-0.94%」、この間にはどんな項目があるのだろう。 「中川会長と厚労官僚」が「自らの調査」を「「何の意味も持たない数字」と強弁」するとはいくら返答に窮したとはいえ、お粗末過ぎる。 「財務省」が「+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまった」、のはあえて敵に花を持たせたのではなかろうか。 「木原官房副長官」の調整力は聞きしに勝るようだ。 「日医」はもっと政治力があると思っていたが、現在はかつての威光にすがっているだけのようだ。次の「会長」はどうなるのだろう。 木原洋美氏による「ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由」 「疲労感」は「日本」特有のものなのでやむを得ない面もあるが、グローバルな「うつ病」も「周知のされ方はいまだに不十分」なのは残念だ。 「うつ病」の「謎」解明の功績はもっとPRすべきだ。 「がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」、「ノーベル賞」にこんな不当なことがあることを初めて知った。 「欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です」、『死体を見るトラウマ』には笑ってしまった。 「うつ病」は「悪さ」の典型だ。どんないいことをもたらしてくれるのだろうか、ここでは不明である。せっかく「近藤教授の快挙」を紹介しながら、肝心なことが本文中で明らかにされてないのは、誠に残念だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

英語(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか) [生活]

英語については、2018年7月18日に取上げたままだった。今日は、(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか)である。

先ずは、2019年7月12日付け東洋経済オンラインが掲載したレノボ・ジャパン社長のデビット・ベネット氏による「外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に」を紹介しよう。
・『このコラムにはコメント欄が付いていて、毎回読ませてもらっています。貴重なご意見ありがとうございます。その中で、たびたび指摘があるのが、日本の英語教育制度についてです。そこで今回はいつもとは少しコラムのテーマを変えて日本と海外の外国語教育の違いについて、私の意見も述べながら書いてみたいと思います。 私の祖国カナダでは、公用語が英語とフランス語です。まず、公用語が複数あると聞くと、日本の方には特殊なように聞こえるかと思いますが、世界の多くの国は複数の公用語を使っています。例えばスイスでは4つ、インドでは州の公用語も含めるとなんと22の公用語があります。こうした複数の公用語を持つ国では、当然子供のころから複数の言語に触れて育ちます』、「複数の公用語」とは聞いただけでゾッとする。
・『「イマージョン教育」でフランス語を習得  カナダの場合、すべての地域で製品のラベルや標識、ウェブサイトも英語フランス語併記が原則です。私が大学のときに住んでいたカナダのトロント(オンタリオ州)をはじめ大体の地域は英語圏で、住民は基本的に英語を使います。小学校2年生からフランス語の授業が義務づけられており、ほとんどはある程度のフランス語の読み書き、会話が問題なくできます。 一方ケベック州だけはこの逆で、市民は基本的にフランス語を話し、2年生から英語の授業が義務化されており、日常に困らない程度の英語を身に付けています。 カナダでわれわれが受けてきたフランス語の授業は、文法という概念を教えることはほとんどなく、「イマージョン(注)」といわれる方法で語学以外のすべての授業がフランス語で行われ、外国語の洪水の中で自然にコミュニケーションが取れるレベルになります。 日本でも来年から小学校で英語の授業が義務化されます。実は私はIT業界の仕事をする前、香川県で文科省の国際交流員の仕事をしていました。そのとき地方都市での英語学習の実態を見てきた経験からみて、英語教育について2つの課題を感じています。) 1つは英語ネイティブの「ALT(Assistant Language Teacher)」の偏在です。私が勤務していた地域では、1人のALTが20校もの学校を巡回しなければならず、ネイティブな先生の英語に触れられる機会は月に1回という学校もありました。こうなるとカナダの例のようにイマージョンというレベルの授業には程遠く、授業の進め方には相当な工夫が必要でしょう。 もう1つはまさにその授業の進め方です。私が教育の仕事に関わっていたのは10年以上前なので、その頃よりは会話重視の授業に変わってきているようですが、どうしても暗記と文法主体の英語学習に偏りがちです。 英語授業の本来の目的はコミュニケーションがとれるようになることです。文法は不要とは思いませんが、現在平均的な日本人が持っている非常に高い英文法の知識までは必要ないかと思います。英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです』、「「英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです」、大賛成だ。
(注)イマージョン(教育):外国語を教科としてではなく、手段としてその他の教科を学習する教育方法のこと(Education Career)。
・『語学は音楽やスポーツと同じ  例えば体育の授業でサッカーのパスができない子がいた場合、どう教えるでしょうか。何度も失敗して、そこから感覚を徐々に身に付けてできるようになります。「パスの方法をカードに書いて丸暗記しよう」「パスの練習は恥ずかしい」というアプローチでは、上達は期待できないはずです。 英語は学問でなくコミュニケーションなので、スポーツ、あるいは音楽と同じように感覚として身に付けるべきなのですが、それだけの経験を積む機会が作れないということが課題なのだと思います。 こうした課題は指摘されて久しいと思いますが、結局のところ教育にかける予算やリソースが追いついていないという問題が立ちはだかります。とくに私が勤務していたような地方都市になればそれは深刻です。しかもこの問題は英語だけではありません。やや脱線しますが、2020年から小学校で義務化されるプログラミング教育も、同じような課題を抱えています。 この2つがいかにつながっているのか説明します。 東洋経済オンラインをお読みになっているビジネスパーソンならご存じの通り、現在あらゆるものがインターネットにつながってインテリジェントになる、インテリジェント・トランスフォーメーションの節目にわれわれは立っているといえます。AIによって仕事がなくなるという人もいますが、一方でデータサイエンティストのような仕事が世界的に花形の職業となる可能性もあり、子どもの頃から英語とともにプログラミングを学習させることは、これからの時代にあったすばらしい政策といえます。 しかも、プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥(ちなみにこの四字熟語はもともと英語です)で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで(あるいはVRならさらにすばらしいかもしれません)英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります。 ところが現実には、プログラミング教育に必要なパソコンすら満足に学校で用意できないという課題があります。つい最近、文科省がまとめた資料によると、プログラミング授業の導入状況について、大規模な自治体ではすでに約7割が授業を実施しているにもかかわらず、小規模な自治体では30%を少し上回っただけということで、自治体の格差が懸念されています。 本来地域に関係なく、個人の才能を世界につなげるはずのITが、逆に格差を生むようなことになってはいけないと、大いに懸念を持っています。この問題は行政だけに任せず、われわれIT業界に取り組んでいかなければならないと考えています』、「プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥・・・で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで・・・英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります」、その通りだ。
・『母国語の違いがハンデになる可能性も  と、たまにはIT企業の経営者らしいことを言ってみました(笑)。語学とテクノロジーについてもう1つ、経営的な視点のお話をします。 私の知る限りニュートン物理学というものは世界のどこにいっても同じ実験結果を示し、母国語がなんであれ数学をかじった人であればフェルマーの最終定理が究極の難問であることはわかります。 STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)の素養は国境や言語に関係なく公平に評価されるスキルなのです。だからこそ、世界に出ていくためのハンデはコミュニケーションにあることは明白で、私の会社でもとくに技術職には語学の習得を頑張ってもらい、いつでも世界デビューしてもらえるよう応援しています。 このことを、視点を変えて捉えると日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります。昨今グローバル企業がダイバーシティーを進めているのも、人材の多様性にあるこうした可能性に注目しているためです。 今回は、私自身が教育というものをライフワークとして捉えているので、つい熱が入ってしまいました。AIなどの発展で、これから物事の基準が大きく変わっていくことは間違いなく、英語のスキルが不要になる時代が訪れるかもしれません。しかし、その時代に求められる教育について議論することは意味のあることです。そして、日本で本当によい英語教育が行われるかどうかの節目のタイミングは今なのです』、「日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります」、言われてみればそうかも知れないが、優秀な人材であれば、「母国語の違い」も乗り越えられる筈だ。やはり、「母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っている」、というのは夢物語に近いのではなかろうか。

次に、9月19日付けダイヤモンド・オンライン「「恥をかかないビジネス英語」、認知科学者が教える正しい独学方法とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280515
・『『英語独習法』(岩波新書)が売れている。本書は認知科学の概念である「スキーマ」と呼ばれているものをカギに英語力向上を書いたもので、日本語と英語の認知的な違いを理解することに重点を置く。その独自メソッドを、著者であり慶應義塾大学環境情報学部教授の今井むつみ氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)』、興味深そうだ。
・『言語感覚をつかさどる概念 スキーマとは  ビジネスにおける英語の必要性は耳にタコができるほど聞いている人が多いだろう。それに伴うように、昨今は教材も学習法も無数にあふれているが、そのなかで11万部という売り上げを記録しているのが『英語独習法』である。 著者の今井むつみ氏はみずから「英語学や英語教育学の専門家ではない」と話すように、認知科学の研究者。そんな今井氏は日本の英語学習についてこう話す。) 「多くの人にとって英語は何かを達成するための道具であり、目的ではないはずです。しかし、日本の英語学習はその点が曖昧。まず自分が何において熟達したいのかを明確にし、そのなかで英語はどういう役割を果たすのかを考えるべきです。それによって訓練も変わってきます。試験に合格するためにはそれに最適化された教材で試験対策をすることはある程度効果的だとは思いますが、ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」 今井氏は言語と思考の関係、子どもの母語習得のしくみなどを長年研究してきた。同氏は「合理的な学習法の提案」と「その理由としくみを解説する」ことに本書では主眼を置いている。 カギとなるのは「スキーマ」という概念だ。 「スキーマは『知識のシステム』というべきものですが、多くの場合、持っている意識はありません。例えば、子どもや外国人が話す日本語に違和感を抱くのはスキーマによるものです。しかし、その違和感をすべて言語化することはできない。このように言語のスキーマは、ほとんど言語化できませんが、無意識にみなさんアクセスしています。英語にも同様のスキーマがありますが、日本語スキーマとの間に多くのずれが存在している。このずれを理解し、英語スキーマを獲得することが英語上達のカギとなるのです」 可算名詞と不可算名詞、aとtheの運用なども英語スキーマを獲得している人は無意識に使い分けられるが、日本語スキーマから切り替えができないと、非常に苦心するのだ』、「ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」、早く合理的な「学習法」に移行してほしいものだ。
・『英語記事を熟読し著者の意図を深掘りする  ビジネスにおいて、英語でメールやレポートを書き、ミーティングなどを行う人も多いだろう。英語スキーマを身につければ、当然、その質は向上する。 そのためにどうすればいいのか。 今井氏は「ライティングに重点を置くべき」とし、次のように話す。 「まずは、日本語の単語を英語の単語に置き換えて文を作るという発想を変えます。日本語の文は漢語名詞が中心となり、動詞に重点をおきません。一方、英語は動詞と前置詞を中心に文を作る言語です。そのため、『○○する』をそのまま英語に置き換えると変な文章になります。例えば『瓶がプカプカ浮かんだまま洞窟に入っていった』という文章は、ついA bottle entered the cave, slowly floating. と書きたくなりますが、英語母語話者はA bottle floated into the cave.と表現するでしょう。日本語では『入る』という動きの様子を擬態語の『ぷかぷか』で表しますが、英語はfloatのような様態動詞に方向を表す前置詞を組み合わせます」 日本語の「歩く」にあたる動作でも、英語にはさまざまな歩き方を一語で表す様態動詞がある。ぶらぶら散歩する(amble)、よちよち歩く(toddle)、重い足取りで歩く(trudge)などだ。英語スキーマを獲得している人ならば、様態動詞を自分の語彙に取り込みやすく、この使い分けができるのだが、日本語スキーマしかないと、walkプラス修飾語で表現しがちだ。それではスキーマを獲得するには何をすればいいのか。 「スキーマは教わって身につくものではなく、自分で独習すべきで、そのためには単語の意味を探求する必要があります。このとき、日本語と英語の一対一の意味を知るだけではなく、一緒に使われる単語や、単語が使われる文脈、頻度、フォーマルな場面で使えるか否かなどを探っていくことが重要です。例えば、『追いかける』と訳されるpursueとchaseという2つの動詞があります。pursueはcareer, goal など、chaseはcat, ballなどと一緒に使われます」 つまり前者は抽象的概念、後者は物理的に動くものが「追いかける」対象になるのだ。 「いくら珍しい単語を使っていても文脈的に間違って使われていれば、その人の英語力は低いとビジネスパートナーに判断されるでしょう。また、近年の英語は国際語にもなっているので、非母語話者にとってわかりやすい英語が求められています。したがって、多くの学習者の現実的な目標は、珍しい単語を幅広く知ることではなく、基本的な単語を適切な文脈で使えることでしょう」 より“深く”単語の意味を知ることがスキーマ獲得につながる。獲得に役立つのはネットからアクセスできるコーパス(言語資料のデータベース)だ。サービスには『SkELL』『WordNet』などがあり、ここで単語を検索すれば多くの文例や類義語を見ることができる。 「自分がよく読むジャンルの英語記事や情報誌などをただ読むだけではなく、『なぜこの単語をこの文章で使ったのか』とコーパスなどを使って著者の単語選択の意図を深掘りするのはスキーマを作る上で有効です。そのように1ページでもいいので熟読し、まねをして書けば英語力は向上します」』、「コーパス」などは初めて知ったが、便利そうだ。ヒマな時に使ってみよう。
・『端的でわかりやすい「007」の英語  ライティング学習を進めていく上で重要なのはアウトプットとフィードバックだ。 「英文を書いてみたら自分なりに見返し、伝えたいことが伝わっているか、より良い表現はないか、冠詞などの間違いはないかをチェックしましょう。その後、できれば英語話者に確認してもらいフィードバックを受けられるとなお良いですね。文章を書けないようでは、話しても内容が薄く、聞き手が理解しづらいでしょう。まずはライティングを鍛えることを意識しましょう」 また、今井氏は、リスニングもスキーマの獲得に寄与するとして、TEDや映画の視聴を勧める。 「話の展開がある程度予想できて、そのジャンルの語彙力があれば理解ができるようになります。TEDで興味のあるスピーチや好きなジャンルの映画の英語を聞き取り、文脈や用法を探求するのも良いでしょう。映画に関して言えば、セリフが短く、世界中の観客に伝わるようなわかりやすい単語が使われていることが多いアクションはよい題材かもしれません。特に人気映画『007』シリーズの『007スペクター』の脚本は素晴らしく、端的でわかりやすい文章なので参考になります」 ちなみに試験対策用の録音教材は背景情報がほとんどなく、話の展開も予想しづらいので、試験勉強以外の目的のためには最も不適切で、リスニング力の強化には向かないそう。 コロナによって自粛生活が続くなか、『独学大全』が大ヒットし、にわかに独学、独習ブームが起こっている。今井氏も「みずから学ぶ力は大事」だと語る。 「どんな技能でも、熟達者になるには知識をみずから探求し、発見する過程で『生きた知識を生み出すサイクル』を作ることが必要です。今回のスキーマを意識した独習法はほかの言語学習においても役立ちます。もちろん、アウトプットをせず、他言語で書かれた情報のみ知りたい人は、ここまでする必要はありません。ただ、高校生より高いレベルの英語でのアウトプットを求める人にとっては、実践してほしい学習法です」 長らく続く自粛生活。そのなかで英語スキーマの獲得を目指してみてはいかがだろうか』、もっと早く知りたかった。

第三に、1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏による「英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/475201
・『日本は112カ国中78位――。近年、さまざまな指標における世界での日本のランキングの低さが話題になるが、ついに「英語力」も下から数えたほうが早くなってしまった。11月16日に発表された、EF英語能力指数(EF EPI)において日本の順位は2020年の55位から大幅にランクダウン。2011年の14位からは急落している。ちなみに、隣国の韓国は34位と日本から背中すら見えない状態だ。 これは単に日本人が、英語が苦手である、ということを意味しているのではない。このランキングが示しているのは、日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつあることだ』、「日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつある」、とは極めて危険な兆候だ。
・『楽しかった雰囲気が成田空港で一変  外国人にとっても日本はかつてより住みにくい国になっている。特にコロナ禍でその状況は「悪化」している。2021年8月17日、パリ発東京行きのエールフランス航空AF275便に乗っていた人たちもそう強く感じる場面があった。 パリから日本へ向かう機内には、楽しげな雰囲気がただよっていた。これはどこにでもあるフライトではない。フランスのビジネス界では「エア・エクスパット」と呼ばれているこのフライトには、夏休みを利用して帰国していたフランス企業のトップたちが大勢乗っていた。 彼らがこのフライトを選んだのは、学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国するためだった。彼らは日本でも定期的に会っており気心知れた間柄だったうえ、夏休み明けで気分も高揚していた。 ところが、成田空港の入国審査でその雰囲気は一変した。 12時間のフライトの後、何日間にもわたって、新型コロナウイルス流行時に導入された特別な手続きをしなければならなかったからである。フランス企業のトップたちは、すべての入国希望者に課せられた手続きなどをしないといけないことは理解していた。グローバル企業の幹部である彼らがうんざりしたのは、手続きのあまりにひどい非効率さである。 彼らには、官僚主義の狂気を描いた、フランツ・カフカの小説の主人公が今や成田空港における手続きを担当しているようにすら見えた。審査官らは英語が苦手で、ほとんどの手続きを外国人スタッフに頼っていた。 その中でも特に印象的だったのは、手続きの最終段階で、日本人職員が何度も書類をチェックした後、「再確認!」と言って、別の職員に渡し、同じ作業を繰り返したことだ。「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く。 それ以来、事態はさらに悪化している。いまだに時間のかかる紙の手続きに頼っているため、多くの人の時間を無駄にしている。旅行者(時には子どもも含めた家族全員)が、成田空港で8時間も待たされることが日常茶飯事で、中には、3日間の隔離のために名古屋まで飛行機で運ばれる人もいる。成田の職員が旅行者に渡す、下線や太字の入った大量の紙は、ツイッターを介して世界中で揶揄されている』、「エア・エクスパット」は「学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国する」、なかなかよく出来たフライトプランだ。しかし、入国手続きで「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く」、これは確かに酷い。
・『外国人居住者の入国を拒否する日本  日本における感染者数と死亡者数を見る限り、日本のコロナウイルスへの対応は極めて良好である。本稿の執筆時点では、日本でコロナウイルスに感染して死亡する可能性はほとんどない。 しかし日本は、ほかの民主主義国があえて実施しようとはしないような不作法で無頓着な方法で自国を封鎖している。パンデミックが始まって以来、日本の政治家は、外国人の日本への入国を拒否することで、日本に将来を託そうとしていた外国人学生、労働者、投資家などの計画を壊してきた。 しかも、ここへきてオミクロン株の侵入を防ぐという理由で当面、外国人の新規入国を原則停止したのである。最も衝撃的だったのは、オミクロンと関係のあるアフリカの10カ国からの日本国籍者を認める一方、永住者など一部を除く外国人居住者の入国を禁止するというものだった。 日本が自国民と外国人居住者を「区別」するという措置に対して、ヨーロッパ系航空会社の幹部は、「これは非常に不快な話だ」と怒りを露わにする。「これは、日本に住む外国人が、当面日本の自宅に帰宅できないことを意味している」。 岸田文雄首相はこの政策を勇気あるものと偽っていたが、世界保健機関(WHO)の健康危機管理プログラム責任者であるマイケル・ライアンは、日本人記者の質問を受け、日本の外国人の新規入国禁止をこう説明した。 「疫学的には、(自国民以外のフライトを禁止するという)原理を理解するのは難しい。ウイルスがパスポートを読み、(中略)国籍や法律上の居住地を知るというのだろうか(中略)ほとんどの国を封殺できるという日本政府の考えは、正直なところ、不可能だ」 日本の「外国離れ」はあらゆる場面で見られる。 例えば、政治家たちはかつてより外国人を軽視している。筆者が来日した1995年当時、有力な国会議員のスタッフには、若い外国人研修生がおり、外国からの情報を議員に提供するなどしていた。それは政治家たちが自らを世界に開かれた存在であると示す手段でもあった。そんな政治家たちは「国際派」と冗談で呼ばれていた。 「しかし、今では外国人研修生はいなくなってしまった。そんなことをしたら、その議員は日本人よりも外国人を優遇しているというシグナルを送ることになってしまうからだ」と、あるアメリカ人ロビイストは語る。 今や岸田首相は、野党からも、外国人を日本から締め出すためにより一層の努力をするように迫られている。そして日本国民は90%の確率で彼の施策を支持している。私自身、国境をもっと開くことを支持するこのような記事を書くことで、多くの批判を受けるだろう。しかしこうした政策をとることによって日本が強くなるとは到底思えない。 金融業界でも「孤立主義」が炸裂している。東京や福岡、そして大阪も「金融ハブ」を標榜しているが、上述の通り日本には英語を話せる人材が不足しているうえ、不透明な規制があり、新しい考えの受け入れに消極的で、キャピタルゲインへの厳しい課税があるにもかかわらず、こうした問題を解決するための具体的な努力をしていない。こうした中、海外の金融機関は東京を去り、シンガポールや韓国に拠点を置き始めている』、
・『オフィスの新設場所に日本は選ばない  こうした日本の状況に呼応してか、海外からの日本への関心も低下している。2006年、当時の小泉純一郎首相は、2011年までにFDI(海外直接投資)をGDP(国内総生産)の5%に引き上げることを公約した。その15年後、FDIは4.7%とOECD加盟国の中で最低となっている。2番目に低い韓国は、日本の3倍である。3位の欧州連合(EU)は75%で日本の15倍だ。767%のルクセンブルグは日本の163倍である。 日本企業の買収に、いまだに興味を持つ外国企業もある。後継者がいない企業においては、これは一生に一度のチャンスとも言える。「しかし日本企業は、外国企業に買収される位なら死ぬほうを好みがちだ」と、フランスの監査法人の支社長は嘆く。 今や外国企業は工場やオフィスの設立場所を決める際に、日本を迂回するようになっている。中には北東アジアの本部を日本から韓国に移した企業もある。日本はコストが高く、労働力が減少しているため、外国企業はますます日本に生産拠点を置く意味がなくなってきているのだ。 かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う。日本におけるほとんどの市場が縮小しているため、日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている。 中にはこうした駐在員の赴任期間後に後任がこず、報酬の安い現地幹部(もちろん日本人である)に仕事を任せてしまう場合もある。こうした状態が続けば、日本人の現地スタッフは外国人とかかわる意欲や能力を失ってしまう。実際、「ソウルの韓国人社員はみな私より英語ができる」とあるフランス大手企業の日本支社長は打ち明ける。 「日本離れ」は外交面でも顕著である。フランス外務省は、かつて最高の外交官を派遣していた。 私が来日した1995年以降、外務省のトップ官僚である「事務局長」の9人中4人が元駐日大使だった』、「かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う・・・日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている」、寂しい限りだ。
・『マクロン大統領の悲観的な見方  しかし、フランスにとって日本は今や、二流の国になっている。真の意味での国賓訪問は、8年前の2013年に当時のフランソワ・オランド仏大統領が訪日したのが最後だ。 エマニュエル・マクロン大統領は、フランスが開催する2024年パリ大会を見据えて、8月に東京オリンピックの開会式のために訪日したが、ある関係者によると、菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然としたという。マクロン大統領はすぐには再訪日しないだろう。 日本は、東京オリンピックを開催したことで、世界の中心にい続けられると思っているかもしれない。しかし、1964年に東京で開催された壮大で革新的な大会のような重要性は、オリンピックにはない。むしろ、日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れでもある。 日本政府はまた、2025年に大阪で開催される万博も桁外れに重要視している。岸田政権では、この問題を担当する国際博覧会担当相がいるほどだ。しかし、世界的な博覧会は、今や開催国以外では誰も気にとめないローカルなイベントとなっている。日本人で誰が、現在ドバイが万博を開催していることを知っているというだろうか』、「マクロン大統領」は「菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然とした」、「日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れ」、「大阪で開催される万博も桁外れに重要視」、問題は英語だけでなく、国際感覚の鈍さ、ズレにある。こんな調子では、主要国からますます馬鹿にされ、孤立していくだけだ。外務省は何をしているのだろう。 
タグ:(その3)(外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に、「恥をかかないビジネス英語」 認知科学者が教える正しい独学方法とは、英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか) 英語 東洋経済オンライン デビット・ベネット氏による「外国人が心底残念に思う日本の偏った英語教育 このままではプログラミング教育も微妙に」 「複数の公用語」とは聞いただけでゾッとする。 「「英語学習において「知識を得ること」「間違えることはよくないこと」という感覚は他の教科以上に排除すべきです」、大賛成だ。 (注)イマージョン(教育):外国語を教科としてではなく、手段としてその他の教科を学習する教育方法のこと(Education Career)。 「プログラミング授業ではパソコンやタブレットが使われます。このITデバイスをうまく英語教育にも使えばこれぞまさに一石二鳥・・・で、ネイティブな先生と1日1時間ビデオチャットで・・・英語を話す経験ができれば、先に指摘したコミュニケーションの機会は飛躍的に増える可能性があります」、その通りだ。 「日本など非英語圏には、母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っているということにもなります」、言われてみればそうかも知れないが、優秀な人材であれば、「母国語の違い」も乗り越えられる筈だ。やはり、「母国語の違いがハンデとなって世界に出てきていない優れた人材が多数眠っている」、というのは夢物語に近いのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン「「恥をかかないビジネス英語」、認知科学者が教える正しい独学方法とは」 「ビジネスなどでのコミュニケーション力を上げるのが目的であれば、試験と同じ手法で勉強しても効果は薄いでしょう。にもかかわらず、日本には認知プロセスの観点からすると、不合理な学習法が多くあります」、早く合理的な「学習法」に移行してほしいものだ。 「コーパス」などは初めて知ったが、便利そうだ。ヒマな時に使ってみよう。 もっと早く知りたかった。 レジス・アルノー氏による「英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い 「そして外国人は日本を見捨てる」でいいのか」 「日本の外国人嫌いが加速し、国全体が急ピッチで孤立主義の姿勢を強めつつある」、とは極めて危険な兆候だ。 「エア・エクスパット」は「学校が始まる前日の9月1日に、子どもたちの隔離期間が終わるのにあわせて入国する」、なかなかよく出来たフライトプランだ。しかし、入国手続きで「今の日本に本社の役員を招くことはとてもできない。こんなプロセスを経させたら会社はすぐさま日本への投資をやめるだろう」と、このフライトに乗っていたあるフランス人は嘆く」、これは確かに酷い。 「オミクロンと関係のあるアフリカの10カ国からの日本国籍者を認める一方、永住者など一部を除く外国人居住者の入国を禁止する」、なぜこうした極端に自国優先の発想が出てくるのだろう。「日本の「外国離れ」はあらゆる場面で見られる」、困ったことだ。 「かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う・・・日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている」、寂しい限りだ。 「マクロン大統領」は「菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然とした」、「日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れ」、「大阪で開催される万博も桁外れに重要視」、問題は英語だけでなく、国際感覚の鈍さ、ズレにある。こんな調子では、主要国からますます馬鹿にされ、孤立していくだけだ。外務省は何をしているのだろう。
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

健康(その17)(前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!、背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」、医師が「減量で食事制限は不要」と断言する根拠 欧米で使用されていた「やせ薬」が消えた理由) [生活]

健康については、9月30日に取上げた。今日は、(その17)(前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!、背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」、医師が「減量で食事制限は不要」と断言する根拠 欧米で使用されていた「やせ薬」が消えた理由)である。

先ずは、10月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した産業医・内科医の森勇磨氏による「前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!」を紹介しよう。なお、文中の注番号は省略。
https://diamond.jp/articles/-/284328
・『人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。 しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。 本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています』、「チャンネル登録者は27万人を超えています」、大人気のようだ。
・『前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!  前立腺肥大症は、60歳以上の男性の2人に1人以上がなるといわれています。いわば「老化現象」ともいえる病気で、具体的な症状は次のとおりです。 ・残尿感が消えない ・トイレが近くなり、毎日尿意のせいで夜中起こされてしまう ・尿意はあるのになかなか出ない、または逆に何回もトイレに行ってしまう 前立腺は、尿をためておく膀胱と尿の通り道になる尿道の間の脇にある「栗の実程度の臓器」です。加齢とともに大きくなり、卵レベルの大きさになると膀胱や尿道を刺激し、症状を引き起こします』、私も「前立腺肥大」による「夜間頻尿」に、投薬も効果がなく、悩まされている。
・『激痛を伴う処理をすることも  あまりに大きくなるとレーザーや電気メスを使って前立腺を削ることもあります。 放置すると急におしっこが出なくなり、強烈な腹痛が起きることもあり、そのときはおしっこの通り道を作るために、「尿道カテーテル」という管を陰部に入れる処置を行うこともあります(激痛を伴います)。 また、およそ1万3000人のアメリカとヨーロッパのデータを対象にした研究では、「前立腺肥大がひどくなればなるほど勃起不全などの性機能障害のリスクが上昇する」という結果が出ました。排尿以外にも弊害があるのです』、私の場合、まだ「痛み」はないが、やがてそうなる可能性があるというのは恐ろしい。
・『前立腺肥大のしくみと予防法  まずは「大豆製品の摂取」です。豆腐、納豆、きなこ、みそといった大豆を使った食品にはポリフェノールの一種である「イソフラボン」が含まれ、この成分が前立腺肥大の予防効果があるのではないかとされています 前立腺が大きくなる仕組みとして、実は男性ホルモンである「テストステロン」が関係しています。 テストステロンは、前立腺の内部で「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれるホルモンに変換されます。 このDHTは男性の薄毛に作用し、前立腺を肥大させることもあります。DHTは男性の生殖器を形作る作用もあり、必要なホルモンなのですが、中高年男性にとっては「悪玉男性ホルモン」と呼ばれることもあります。 大豆に含まれるイソフラボンは、このDHTや変換する酵素(5αリダクターゼ)の働きを抑える役割を持っています。 イソフラボンは、「女性ホルモン」のエストロゲンに構造が似ており、エストロゲンの受け皿である「エストロゲン受容体」にはまり込むので、女性ホルモンのような役割を果たします。この作用で男性ホルモンの働きが抑えられるわけです』、「 大豆に含まれるイソフラボンは」、「悪玉男性ホルモン」(DHT」や変換する酵素・・・の働きを抑える役割を持っています」、食事で抑えられるとは有り難い話だが、既に「肥大した患者」には手遅れなのだろうか。
・『注意!「前立腺がんが進行している」には逆効果?  しかし「前立腺がんが進行している人」には逆効果の可能性があります。4万3000人の日本人を対象にした研究では、大豆やイソフラボンを多めに摂取していた人は、前立腺がんの死亡リスクが上がったというデータがあります まだマウスによる動物実験の段階ですが、「イソフラボンがエストロゲンのような作用だけでなく、男性ホルモンのような挙動を示すことがある」という結果も出ています。 今後の研究に期待したいところですが、現状は「大豆製品(イソフラボン)の摂取は、前立腺肥大の予防にはよいが、前立腺がんが進行している場合は控えたほうがいい」と覚えておいてください。 イタリアの研究では、穀物と肉類を多く食べていた人は前立腺肥大になりやすく、野菜と豆類を多く食べていた人は前立腺肥大になりにくいというデータがあります 他にも「玉ねぎとニンニクを多く食べていた人には前立腺肥大の発症が少なかった」というデータも存在します 日本人にとって穀物の量を減らすというのは少し難しいかもしれません。しかし野菜を多めに食べ、肉の量を少なくするのは実行可能でしょう。大豆食品をしっかり摂取することに加えて、「野菜多め、肉少なめ」の食生活も心がけておきましょう』、私も現在は「野菜多め、肉少なめ」の食事だが、既に「肥大」してしまったので、遅過ぎるのかも知れない。
・『メタボが悪影響を与えている?  また、生活習慣病の予防も欠かせません。世界では「前立腺肥大症は結局メタボリックシンドロームの一種ではないのか?」という概念が提唱されています 高血圧、肥満、糖尿病など、この類の生活習慣病は「交感神経」を刺激します。体をどんどん活性化させ、緊張状態にしてしまうのです。前立腺の筋肉も緊張し、それが前立腺肥大につながっているのではないかという説があります。生活習慣病の改善に定期的な運動も有効です。 人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。お金や時間がどれだけあっても、健康でなければ意味がありません。自分の体をこまめにケアしていきましょう。(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)(注の【出典】、森勇磨氏の略歴、「総合内科医・産業医が教える「病気にならない全知識」」の紹介はリンク先参照)』、既に「肥大化」している私のようなケースでも、食事療法で進行が止まったり遅くなったりするのだろう。

次に、11月8日付け東洋経済オンラインが掲載した 人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家の黒川 伊保子氏による「背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/466371
・『「身長を伸ばしたい」と思っても、大人になってからでは限界があります。特に男子の身長がぐんぐん伸びる「成長スパート」は、中学生になってからが本番です。 『中高生の身長を伸ばす7つの習慣』では、背を伸ばす栄養素や、反対に背が伸びるのを邪魔する食べ物や生活習慣を紹介しています。 本稿では、同書から一部を抜粋してお届けします。 背を伸ばすために必要なのは、「背、伸びなさい」と命令する成長ホルモンと甲状腺ホルモンです。これらを順調に出すために欠かせないのが栄養と睡眠です。今回は睡眠の話をしましょう』、興味深そうだ。
・『成長ホルモン分泌に必要な「闇の時間」  私たちの脳は、昼と夜の繰り返しの中で進化してきました。このため、光と闇のスイッチが脳の中にあるのです。そのスイッチをうまく作動させないと、必要なホルモンが分泌されません。成長ホルモンは、「闇のスイッチ」で分泌が順調になります。夜は、まぶたを閉じて眠る。これが、高身長への第一歩となります。 ホルモンの中枢司令塔である、脳の下垂体や視床下部は、視神経の先端を取り囲むようにして格納されています。視神経に直結しているのです。目(網膜)に光が当たれば、視神経は緊張し、目が暗さの中にあれば、視神経は緊張から緩和されます。この視神経の緊張と緊張緩和が、ホルモンの中枢司令塔に刺激を与えて、そのときにふさわしいホルモンの分泌へと切り替わるのです。 真夜中、目が光の刺激から解放されると、成長ホルモンへ分泌命令が出されます。 つまり、「真夜中、ちゃんと寝ること」。こんなあたりまえの生活習慣が、背を伸ばすための必要条件となります。「寝る子は育つ」は、科学的にも真実なのです。 そもそも、中学生は眠いはず。何時間だって眠れるし、寝ても寝てもまだ眠い。身長が伸びようとしているとき、脳は「まぶたを閉じて、闇のスイッチを入れてほしい」からです。 しかし、現代の生活では、自分を律して死守しないと、この条件がクリアできません。手元に「明るい光を発する画素で構成された画面がクルクル動く」、あまりにもおもしろい道具=スマホがあるのですから。 闇のスイッチが最も入りやすいのは、真夜中てっぺんの4時間(22時~2時)といわれています。受験生ともなれば22時に寝るというわけにはいかないでしょうけれど、22時を過ぎたら電子機器を見ることは最小限に自粛して、0時就寝を目ざしてほしい。せめて、塾のない日にはそうしてほしいと思います。 そして、たまには強化週間を作り、23時就寝を!』、「真夜中、目が光の刺激から解放されると、成長ホルモンへ分泌命令が出されます。 つまり、「真夜中、ちゃんと寝ること」。こんなあたりまえの生活習慣が、背を伸ばすための必要条件となります。「寝る子は育つ」は、科学的にも真実なのです」、「22時を過ぎたら電子機器を見ることは最小限に自粛して、0時就寝を目ざしてほしい」、なるほど。
・『上質な眠りにこだわろう  さて、「真夜中、闇のスイッチ」が作動し、分泌命令が出るのは、成長ホルモンだけではありません。上質の眠りをつくり出すメラトニンも、「真夜中、闇のスイッチ」がいちばん効きます。メラトニンは、上質の眠りをつくり出すとともに、脳の進化を助けます。 実は、脳は、眠っている間に進化します。起きている間の経験(勉強した成果や、運動で体が覚えたこと)を脳に定着させ、センスを作り上げるのも、眠っている間なのです。起きている間に脳に叩き込んだことは、眠っている間に定着します。眠りの質が悪ければ、せっかく100回書いた英単語が、するりと脳から抜け落ちてしまう。 眠りの質がよければ、ちらりと見た英単語を覚えておけるのに。眠りの質は、脳の質。身長のみならず、頭のよさも、眠りがつくり出します。眠りをバカにしていると、たいへんなことになります。 22時以降は電子機器を凝視することを控えて、0時にはまぶたを閉じる。これに、人生がかかっていると思って。 また、夜のお風呂習慣(バスタブにつかる)も、メラトニンの分泌を促進することがわかっています。体表面の温度を一気に40度以上に上げると、脳の内部や内臓の温度を必要以上に上げないために(脳や内臓は高温に弱いから)、深部体温が下がります。これがきっかけとなって、神経回路が興奮系から鎮静系へと切り替わります。眠りへと向かいやすくなるわけですね。さらに、「真夜中、闇のスイッチ」は、生殖ホルモンにも関わっています。 真夜中、ゲームやSNSに興じて眠らないと損をすることばかり。それって、人生を懸けてすることかしら?まぁ、たまにはいいけどね。) 朝日が網膜に当たると、セロトニンと呼ばれるホルモンの分泌が促進されます。朝日は、目にとって特別な光です。朝日は東からさしてきます。地球は東に向かって自転しているので、朝日には光のドップラー効果が加わります。 救急車のサイレンは、向かってくるときには高く(ピーポー)、遠ざかっていくときには低く聞こえますね(ヘ~ホ~)。あれと同じ現象が光にも起こっているのです。朝日は緊張度が高く、脳を目覚めさせる大事なスイッチというわけ。セロトニンは、脳内全体の信号を活性化し、さわやかな寝覚めをもたらすとともに、一日中、意欲を下支えし、脳の学習能力を高めます。生きる力の源となるホルモンなのです。 朝寝坊して、朝日を見逃すなんて、本当にもったいない。また、セロトニンは、上質な眠りをつくり出すホルモン・メラトニンの材料にもなります。早起きすれば、夜、自然に眠くなる。「早寝、早起き」とよくいいますが、科学的には「早起き、早寝」でワンセットです』、「朝日は緊張度が高く、脳を目覚めさせる大事なスイッチというわけ。セロトニンは、脳内全体の信号を活性化し、さわやかな寝覚めをもたらすとともに、一日中、意欲を下支えし、脳の学習能力を高めます。生きる力の源となるホルモンなのです」、「科学的には「早起き、早寝」でワンセットです」、「朝日」は本当に大切なようだ。
・『13~17歳の過ごし方が重要  先に述べたように、「背、伸びなさい」と命令する成長ホルモンと甲状腺ホルモンがしっかり効いていてはじめて、背が伸びる可能性を手にします。 これらは胎児のときから成人になるまでふんだんに分泌されますが、特に大人体型の下で最大限に働くのが、男子の場合、13歳から17歳くらいまで。160センチの身長を180センチにまで押し上げるのが、この時期なのです。このタイミングを逃してはいけません。 前に記した2つのホルモンの分泌を促し、上手に背を伸ばすには、 1.上質な眠り 2.脳神経回路への過度のストレスを避ける 3.適度な運動  の3つが不可欠になります。 運動は、物理的に骨端線を刺激し、骨の成長を加速させます。同時に基礎代謝が上がることで、甲状腺ホルモンと相乗作用を起こします。 上質の眠りのためには、0時(真夜中てっぺん)を寝て過ごすこと。脳神経回路への過度のストレスの筆頭は、日没後の、パソコンやスマホの電子画面の視覚刺激です。くよくよ悩むのも、背のために避けてください。 とはいえ、現代の中高生は、ストレスがゼロというわけにはいかないでしょう。受けてしまった脳神経系のストレスを解消するカギが、ビタミンB群です。肉に多く含まれるビタミンB群は、背を伸ばしたい男子の強い味方。と同時に、脳を活性化するので、勉強の強い味方でもあるのです。肉食は、男子の基本ですね。 ただし、せっかくとったビタミンB群も、炭酸飲料やジャンクフードの中の糖質が、その代謝に使うために奪ってしまいます。肉・魚・卵・乳製品をしっかりとること。これは基本ですが、せっかくとった栄養素を捨てないために、糖質過多の間食を避けることも大事な知恵です。当然、骨の材料になる栄養素も、しっかりとらなければなりません』、「最大限に働くのが、男子の場合、13歳から17歳くらいまで」、「肉・魚・卵・乳製品をしっかりとること。これは基本ですが、せっかくとった栄養素を捨てないために、糖質過多の間食を避けることも大事な知恵です。当然、骨の材料になる栄養素も、しっかりとらなければなりません」、自らの場合、孫世代はこれから成長期を迎えるので、参考にしたい。

第三に、11月23日付け東洋経済オンラインが掲載した福島県立医大主任教授、医師の下村 健寿氏による「医師が「減量で食事制限は不要」と断言する根拠 欧米で使用されていた「やせ薬」が消えた理由」を紹介しよう。
・『日本の医学界に絶望し、単身渡英。何のつてもない状態で、世界大学ランキング1位に君臨し続ける英国・オックスフォード大学に研究員として就職。インスリン・糖尿病学の世界的権威であるフランセス・アッシュクロフト教授のもとで、新生児糖尿病の治療法の発見に貢献するなど、在籍8年間で数々の価値ある論文を発表してきた医師で現在、医学部教授も務める下村健寿氏。 その下村氏が長年にわたって取り組んできた、糖尿病や生活習慣病の研究から辿り着いた答えをまとめた一冊『オックスフォード式 最高のやせ方』より一部抜粋、再構成し、お届けします』、興味深そうだ。
・『誰もが誤解しているダイエットのパラドックス  「食べる量を減らせばやせられる」。誰だってご存じのはずです。でも、これがなかなかできません。 そのために自己嫌悪に陥ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?でも落ち込む必要なんて全然ありません。食事制限ができないのは当然のことです。 「食べる」という行為は、私たちが生きるうえで必須の行為。呼吸や心臓の拍動と同じです。意志の力でどうこうできるものではありません。医学的・生理学的観点からも、食欲は我慢できないようにできています』、「医学的・生理学的観点からも、食欲は我慢できないようにできています」、道理で「食欲」「の抑制」で「減量」が上手くいかない訳だ。
・『そもそも、「食欲」とは何でしょうか?  まずダイエットを成功させるには食欲の仕組みを知らなければいけません。敵を知らずに戦いを挑んでも失敗してしまいます。 「食欲」とは、「お腹がすいた状態」です。つまり胃の中が空っぽということです。 では、胃が膨れればいいのでしょうか? 試しにお腹がすいているときに水をたくさん飲んでみてください。空腹感が消えましたか? いえ、依然としてお腹はすいていると感じているはずです。 つまり、お腹が物理的に体積として膨れても、空腹感は満たされません。) では、人はどうやって空腹を感じているのでしょうか? 食事をして胃が食べ物で満たされると、胃や小腸からホルモンが分泌されると同時に血糖値が上昇します。 これらの食後に増加するホルモンや糖などの因子が脳に働きかけて、「お腹いっぱい」と感じさせることで、「満腹」の状態を作っています。 逆に言えば、「お腹がすいた」という空腹感も、「何か食べたい」という食欲も、脳が感じているのです。 つまり、食欲をコントロールしているのは脳です。 そして、脳がコントロールする「食欲」は、じつは2種類あります。「恒常性食欲」と「報酬系食欲」のふたつです』、「脳がコントロールする「食欲」は、じつは2種類あります。「恒常性食欲」と「報酬系食欲」のふたつ」、なるほど。
・『人を太らせる元凶「報酬系回路」とは  「恒常性食欲」とは、体の内部の環境を一定の「生きている」という状態に保つための食欲。言い換えるなら「生きていくために食べる」ための食欲です。 たとえば夕食を食べずに翌朝を迎えて、そのまま何も食べずに空腹が続いていたら、翌日のパフォーマンスが落ちてしまいます。つまり、体がいつもの調子「恒常性」を保てなくなるから、パフォーマンスが落ちるのです。 だから、この夕食を食べるときの食欲は「生きるための食欲」、つまり「恒常性食欲」です。 一方で「報酬系食欲」とは、すなわち「快楽を覚える」ための食欲です。お腹がいっぱいなのに、デザートを「食べたい」と思ってしまうのはなぜでしょうか。いわゆる「スイーツは別腹」という現象です。 このスイーツは、仮に食べなかったとしても、翌日のパフォーマンスに響くことはありません。 つまり、これは体の「恒常性」を保つこととはまったく無関係の食欲、すなわち「報酬系食欲」です。ひたすら脳が快感を求めた結果です。極端に言ってしまいますと、麻薬を使った際の快感とまったく同じです。 この「報酬系食欲」こそ人を太らせる元凶です。 そして残念ながら、この快感はコントロールすることが不可能です。 なぜなら、「報酬系」という仕組みは皆さんが思っている以上に動物を支配する力を持っていることが、わかってきたからです。 ある恐ろしい実験があります。 ネズミの脳の報酬系回路に電極を埋め込み、それをネズミが前足で押すことのできるレバーにつなぎます。つまり、ネズミは前足でこのレバーを押すことで、自らの力で報酬系回路を活性化して快感を覚えられるようになります。 するとネズミはすべてを忘れて、レバーを押し続けるようになってしまいました。食事も水もとらずに押し続け、そのまま放っておいたら餓死寸前の状態にまで陥ったのです。 それはネズミだったから、と考える方もいるかもしれません。 しかし同様の現象は人間においても確認されています。 過去一時期、電気刺激によって精神疾患の患者さんを治すという試みが行われたことがあります。ある時、この報酬系回路に電極が置かれてしまったことがあります。 その際、やはり人間でも、ネズミと同じようにすべてを忘れて電気刺激を求めるようになってしまったと報告されています。ひどい場合には、電気刺激のスイッチを押しすぎて、指に潰瘍ができるほどだったそうです。 このように書くと、報酬系回路は恐ろしいものと感じるかもしれません。 しかし、報酬系回路は恐ろしいばかりではありません。 なぜなら、この回路は恋をしたときにも活性化されるからです』、「この「報酬系食欲」こそ人を太らせる元凶です。 そして残念ながら、この快感はコントロールすることが不可能です。 なぜなら、「報酬系」という仕組みは皆さんが思っている以上に動物を支配する力を持っていることが、わかってきたからです」、「報酬系回路は恐ろしいばかりではありません。 なぜなら、この回路は恋をしたときにも活性化される」、いい面も持っているようだ。
・『一時期使用された「やせ薬」が消えた理由  恋とは切なく、つらいものです。 しかし同時に、このうえない幸福感、つまり快感を引き起こします。この幸福感は強烈です。恋の経験がない、という方はいらっしゃらないのではないでしょうか。 そして、この恋をしたときと同じメカニズムが報酬系の食欲では働いています。 おわかりいただけたと思います。意志の力で恋、つまり人を好きになる気持ちを止めることは絶対にできないはずです。 「やせ薬」がないのは、ここに理由があります。 じつは、脳の報酬系に働きかけて食欲を制御する薬は、欧米で一時期使用されたことがあります。 しかし、これらの薬を飲んだ方に「自殺を増やす」という副作用の存在が指摘されました。 これは、この手の食欲を制御する薬に報酬系回路、つまり快感を抑えてしまう作用があったからと考えられています。 食事だけでなく、恋をしたり、何かを楽しいと思ったりする気持ちが抑えられてしまうと、人には生きている喜びがなくなってしまうのです。 食欲を抑えてダイエットに成功しても、「生きているのがイヤ」になったら元も子もありません。ダイエットに挑戦する方は、健康的に痩せることで人生をもっと楽しく過ごしたい、そう思っておられるはずです。 ダイエットで食事を我慢してはいけない理由が、ご理解いただけたと思います。 ぜひ、ご自身の体の仕組みを知っていただいたうえで、コロナ太りを解消するダイエットを実践する際の参考にしていただければ幸いです』、「脳の報酬系に働きかけて食欲を制御する薬は、欧米で一時期使用されたことがあります。 しかし、これらの薬を飲んだ方に「自殺を増やす」という副作用の存在が指摘」、「報酬系回路・・・を抑えてしまう」と、「人には生きている喜びがなくなってしまうのです」、生体のバランスはなかなか難しいものだ。
タグ:健康 (その17)(前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!、背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」、医師が「減量で食事制限は不要」と断言する根拠 欧米で使用されていた「やせ薬」が消えた理由) ダイヤモンド・オンライン 森勇磨 「前立腺肥大には「大豆」が効く!? 今日からできる食事術!」 「チャンネル登録者は27万人を超えています」、大人気のようだ。 『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』 私も「前立腺肥大」による「夜間頻尿」に、投薬も効果がなく、悩まされている。 私の場合、まだ「痛み」はないが、やがてそうなる可能性があるというのは恐ろしい。 「 大豆に含まれるイソフラボンは」、「悪玉男性ホルモン」(DHT」や変換する酵素・・・の働きを抑える役割を持っています」、食事で抑えられるとは有り難い話だが、既に「肥大した患者」には手遅れなのだろうか。 私も現在は「野菜多め、肉少なめ」の食事だが、既に「肥大」してしまったので、遅過ぎるのかも知れない。 既に「肥大化」している私のようなケースでも、食事療法で進行が止まったり遅くなったりするのだろう。 東洋経済オンライン 黒川 伊保子 「背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」」 「真夜中、目が光の刺激から解放されると、成長ホルモンへ分泌命令が出されます。 つまり、「真夜中、ちゃんと寝ること」。こんなあたりまえの生活習慣が、背を伸ばすための必要条件となります。「寝る子は育つ」は、科学的にも真実なのです」、「22時を過ぎたら電子機器を見ることは最小限に自粛して、0時就寝を目ざしてほしい」、なるほど。 「朝日は緊張度が高く、脳を目覚めさせる大事なスイッチというわけ。セロトニンは、脳内全体の信号を活性化し、さわやかな寝覚めをもたらすとともに、一日中、意欲を下支えし、脳の学習能力を高めます。生きる力の源となるホルモンなのです」、「科学的には「早起き、早寝」でワンセットです」、「朝日」は本当に大切なようだ。 「最大限に働くのが、男子の場合、13歳から17歳くらいまで」、「肉・魚・卵・乳製品をしっかりとること。これは基本ですが、せっかくとった栄養素を捨てないために、糖質過多の間食を避けることも大事な知恵です。当然、骨の材料になる栄養素も、しっかりとらなければなりません」、自らの場合、孫世代はこれから成長期を迎えるので、参考にしたい。 下村 健寿 「医師が「減量で食事制限は不要」と断言する根拠 欧米で使用されていた「やせ薬」が消えた理由」 『オックスフォード式 最高のやせ方』 「医学的・生理学的観点からも、食欲は我慢できないようにできています」、道理で「食欲」「の抑制」で「減量」が上手くいかない訳だ。 「脳がコントロールする「食欲」は、じつは2種類あります。「恒常性食欲」と「報酬系食欲」のふたつ」、なるほど。 「この「報酬系食欲」こそ人を太らせる元凶です。 そして残念ながら、この快感はコントロールすることが不可能です。 なぜなら、「報酬系」という仕組みは皆さんが思っている以上に動物を支配する力を持っていることが、わかってきたからです」、「報酬系回路は恐ろしいばかりではありません。 なぜなら、この回路は恋をしたときにも活性化される」、いい面も持っているようだ。 「脳の報酬系に働きかけて食欲を制御する薬は、欧米で一時期使用されたことがあります。 しかし、これらの薬を飲んだ方に「自殺を増やす」という副作用の存在が指摘」、「報酬系回路・・・を抑えてしまう」と、「人には生きている喜びがなくなってしまうのです」、生体のバランスはなかなか難しいものだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

健康(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に) [生活]

健康については、7月28日に取上げた。今日は、(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に)である。

先ずは、7月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した医学博士の永田 利彦氏による「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48275
・『ハーバード大学の研究によると、やせている人は太めの人よりも死亡率や認知症リスクが高い。精神科医の永田利彦さんは「中高年になったら生活習慣病に注意するのはもちろんだが、やせることにも注意するべきだ」という――。 ※本稿は、永田利彦『ダイエットをしたら太ります。』(光文社新書)の一部を再編集したものです』、メタボが目の敵にされているが、「やせることにも注意するべきだ」、どういうことなのだろう。
・『「体脂肪量が多い人ほど死亡率も高い」は予想通りだが…  やせている人の方が、太めの人よりも死亡率が高いことがわかっています。いったいなぜでしょうか。 本来、やせていれば体脂肪量も少ないはずで、体脂肪量と相関する生活習慣病などは、発症しにくいはずです。要するに、やせている人の方が太めの人よりも、心血管疾患などは発症しにくく、死亡率は低いはずなのです。 そこで、ハーバード大学(米国)公衆衛生学部のドンフン・リー博士たちは、体格予測式に基づいて除脂肪体重と体脂肪量を算出。死亡率との関連を見るコホート研究を実施しました。40歳以上の男性約3万8000人を、1987年から2012年までの間、平均21.4年追跡調査したのです。 除脂肪体重とは、全体重から脂肪組織の重量を引いた体重です。この中には筋肉、骨、内臓などが含まれますが、一般的には筋肉量と考えます。また、基本的には全体重が多いほど、除脂肪体重も体脂肪量も多くなります。 結果は、以下のようなものでした。まず、体脂肪量が多い人ほど死亡率も高く、体脂肪量が少ない方から5分の1の人に比べて、多い方から5分の1の人の死亡率は、1.35倍でした。また、体脂肪量が21キロまでは、死亡率はほぼ横ばいでしたが、体脂肪量がそれ以上になると、急速に上昇していました。体脂肪量が多いと死亡率も高いわけで、これは予想通りの結果と言っていいでしょう。 では、除脂肪体重と死亡率の関連は、どうだったでしょうか? 体脂肪量だけが死亡率と関連しているなら、除脂肪体重が少なくても多くても、死亡率は一定のはずです』、どうだったのだろう。
・『やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がる  ところが、除脂肪体重と死亡率の関連は、U字型だったのです。つまり、除脂肪体重が少なすぎても多すぎても、死亡率が高かったのです。ということは、やせている人の死亡率が高いのは体脂肪量の影響ではなく、除脂肪体重が少ないこと、すなわちやせていることそのものの影響であると考えられます。 疾患別の死亡率を見ると、心血管疾患とがんでは、除脂肪体重と死亡率の関係はU字型で、除脂肪体重が少なすぎても多すぎても死亡率が高いというものでした。体脂肪量が少なければ心血管疾患などは発症しにくいはずなのに、やせていて除脂肪体重も少ないと、本来は低いはずの心血管疾患による死亡率も高くなっていたのです。 その理由はよくわかりませんが、がんに関しては、やせていると免疫力が低いことが、がんの発症に関連していると考えられます。免疫力が高ければ、私たちの体内で日々生じているがん細胞を、免疫細胞が退治してくれます。ところが、やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低いと、がん細胞が増え続け、やがて発症してしまうのです。 さらに、呼吸器疾患による死亡率も、除脂肪体重が少ない人ほど高く、除脂肪体重が多い人は低いという結果でした。やはり、やせていると栄養状態が悪く免疫力が低いため、肺炎などの感染症にかかるリスクが高いからだと考えられます。 これらのことからは、体脂肪量が多いと死亡率が高いものの、脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです』、「脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです」、「やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低い」、なるほど。
・『低体重だと認知症リスクも上がる  低体重による影響は、死亡率が上がるだけではありません。驚くことに、低体重だと認知症になりやすいというデータもあるのです。 山梨大学大学院准教授の横道洋司博士たちの、65歳以上の男女を2010年から平均5.8年追跡調査したコホート研究です。それによれば、適正体重(BMI18.5~25未満)の人を1とした場合の認知症発症率は、BMI25~30未満(日本の判定基準で肥満1度、WHOの判定基準で前肥満状態)の場合、男性で0.73倍、女性で0.82倍。適正体重の人よりも低い数値でした。ところが、BMI18.5未満(低体重)の人では、男性が1.04倍、女性が1.72倍と、適正体重の人よりも高かったのです。 女性の1.72倍が目立ちますが、男性はやせていてもいいというわけではありません。低体重の男性で脂質異常症(高脂血症)のある人は、適正体重で脂質異常症のない人に比べて、認知症発症率はなんと4.15倍。女性では、低体重で高血圧だと、適正体重で高血圧のない人に比べて、認知症発症率が3.79倍でした。脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まるのです。 中高年になったら生活習慣病に注意するのはもちろんですが、それだけでなく、やせることにも注意するべきなのです』、「脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まる」、恐ろしいことだ。適正体重の維持がやはり重要なようだ。
・『暴力や自殺による死亡率にも関連性が…  しかも、低体重だと病気以外の死因につながる可能性も高くなる、という驚きのデータもあります。病気以外の死因とは、暴力による死亡、自殺、交通事故などで、そのうち交通事故はBMIと関連がありませんでしたが、暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があったのです(図表1)。(【図表1】暴力、自殺による死亡率出所=『ダイエットをしたら太ります』はリンク先参照) これは、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(英国)のクリシュナン・バスカラン博士たちが、英国国民保険サービス(国営医療サービス事業:NHS)のデータを用いて、16歳以上の男女を1998年1月から2016年3月までの間、追跡調査したコホート研究です。調査対象者は約363万人に及びます。非常に大規模であることと、調査対象の年齢の中央値が36.9歳であり、BMIと死亡率の関連を調べたほかの研究よりも若いことが特徴です。 研究では、暴力や自殺の原因を把握していませんから、亡くなった人にどのような経済的、職業・学業的、家族的、心理・精神医学的な問題があったのかは、わかりません。ただ、研究開始時点で精神障害(うつ病、躁うつ病、統合失調症)の人は除外したと記されていますから、これらが原因ではないと言っていいでしょう。 実は、自殺と低体重の関連については、以前から指摘されていました。 たとえば、マックマスター大学(カナダ)のステファン・ペレラ博士は、それまでの自殺関連の研究の中から体重、特にBMIとの関連を検討した研究を集め、複数の研究結果を統合して解析する「メタアナリシス」という手法を用いて、BMIと自殺にどれほど関連があるかを調べています』、「暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があった」、なんとなく感覚的には理解できる。
・『個人の資質が低体重と自殺の双方に関連している可能性も  ペレラ博士がこの研究を行った2016年時点では、まだバスカラン博士たちの研究結果が出ていませんでした。すなわち、ある時点から未来に向かって調査を進める“前向き”コホート研究がなく、ある時点から過去に遡って調査を進める“後ろ向き”コホート研究しかありませんでした。 それが何を意味するかというと、これから発生する事象を観察する前向きコホート研究に比べて、過去のデータを利用する後ろ向きコホート研究は、データの不均質性などがあり、情報の信頼性に劣るという問題があるのです。つまり、研究の科学的価値が低いわけです。 そのせいかどうか、ペレラ博士の研究では、「BMIが増加するほど自殺既遂は減る。肥満だと自殺既遂のリスクは29パーセント減少し、低体重だと21パーセント増加する。BMIと自殺未遂や自殺念慮(死にたい気持ち)の関係は、研究ごとに結果が異なり、一定の結論は出ない」という結果でした。 これをどのように解釈するか難しいところですが、ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘しています。私の臨床経験からは、神経質さだけでなく、競争心の激しさなど、種々の原因が低体重と自殺の両方につながっている気がします。そのような個人の資質(気質)が、低体重と自殺の双方を生じさせてしまう可能性がある、ということです。しかし、これに関する研究はまだ少なく、結論に達するには、BMIと自殺や暴力による死との関連を含む前向きコホート研究が、いくつか出てくるのを待たなければなりません』、「ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘」、実感にも合うようだ。今後の研究を待ちたい。

次に、9月15日付けダイヤモンド・オンライン「「365日外食」実験を行った女医が伝えたい、食べているのに栄養不足の盲点」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281765
・『日々の食事が体をつくる。それは、誰もが知っていること。では、365日外食を続けたらどうなるのか――。それを自分の体で実験してみた医師がいる。うえやま腎クリニック(鹿児島市)院長の上山菜穗医師だ。「食の大切さを実感していたからこそ、自分の体で体験してみようと思った」と話す上山医師は、外食生活を続ける中で数々の不調に見舞われ、最終的には“実験”を中止せざる得ない状況に陥ったという。果たして「365日外食生活」実験はどんな結末を迎えたのか、そして現代人が陥りやすい食生活の盲点とは――』、興味深そうだ。
・『365日外食生活を続けたらどうなった?  365日外食生活をしてみよう。そう思い立って“実験”を始めたのは、上山医師が30代半ばの頃だ。 「日々の診療のなかで、慢性疾患は食事の影響が大きいことを実感していました。外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思ったのです」 最初のうちは、同僚・友人らとイタリアンやカジュアルなフレンチレストランなどに行き、楽しく“実験”ができていた。ところが、次第に大変になっていた。なぜなら、少しずつ不調に見舞われるようになったからだ。 最初の不調は、腸にきた。「もともとおなかが弱いタイプでしたが、ますますおなかの調子が崩れがちになりました」と上山医師。 そのうちに食が細くなり、「BMI(ボディマス指数:体重kg÷身長m÷身長m)」は15と、不健康に痩せていった。そうすると筋肉や骨密度も落ち、エネルギー維持が難しくなり、簡単にエネルギーになるものを欲するようになったという。具体的には、チョコレートやコーヒーだ。 「カフェインや糖質をとって、血糖値を維持しようとしていたのだと思います」 確かにカフェインや糖質をとると、一時的に血糖値は上がる。ただその反動で急に下がるため、「血糖値の変動が精神的なバランスを崩し、仕事中には頑張れるけれども、休日はぐったりして動けなくなるなど、テンションが上がったり下がったりを繰り返していました」。当時の様子を上山医師は「すぐに充電がなくなるスマホのようだった」と言う。 さらに外食生活を続けると、次第に肌の調子も悪くなり、髪や爪の元気もなくなり、あちこちわかりやすいところに不調が出るようになった。そして極め付きが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)だ。 「ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症しました。免疫力が低下したときに出るものなので、疲れ切っていたのでしょう。その時点で自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了することにしました。私は意図的に外食生活をつづけたので不調を自覚しやすかったのですが、多くの人はじわじわと悪影響を受けるため自覚しづらく、その積み重ねが慢性疾患につながるのだなと改めて実感しました」』、「外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思った」、自ら実験台になるとは大したものだ。「最初の不調は、腸にきた・・・そのうちに食が細くなり・・・ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症・・・自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了」、「1年」「外食生活」が続いたのに驚かされた、
・『食べすぎるタイプの人も実は栄養不足に陥っている  なぜ、こんなにも不調に見舞われたのか。外食生活と言っても、上山医師の場合、ファストフードばかりだったわけでも、暴飲暴食を重ねたわけでもない。その答えを、上山医師は「栄養不足でした」と振り返る。 「体を維持するには、タンパク質、脂質、炭水化物と十分なビタミン、ミネラルが必要です。それらが足りなくなってエネルギーを維持することが難しくなったので、簡易なエネルギー源に頼るようになり知らず知らずのうちにチョコレートやカフェインをよくとるようになっていました。でも、それがかえって腸内環境を悪くし、ますます栄養が消化・吸収されにくくなり、さらに甘いものが欲しくなるという悪循環に……。体をつくる原料が不足していたのですから、細胞から弱くなっていっていたのだと思います」 上山医師の場合は、外食生活で食が細くなったわけだが、一方で、外食が続くと食べすぎてしまう人もいるだろう。その場合はどうだろうか。 「まず、筋肉と体脂肪のバランスの悪い、太めの人は余計なものを出せない人なんです。脂肪分は、いわば“ゴミ箱”のようなもの。とり過ぎた炭水化物や添加物は、脂肪というゴミ箱にたまっていきます。 そして、食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います。“ゴミ箱”を掃除するにはミネラルやビタミン類が必要ですが、ほとんどの人が足りていません」』、「食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います」、意外な感じを受けるが、その通りなのだろう。
・『外食・総菜・お弁当は自炊と比べて同じ体積でも得られる栄養成分が少ない  外食続きでは、なぜ必要な栄養が不足しやすいのか。その説明の前に、ここで「外食」の定義をおさえておきたい。上山医師の考える「外食」は、飲食店での食事だけではない。コンビニやスーパー、デパートなどで買う総菜や弁当も外食だ。また、「カット野菜を買ってきてドレッシングをかけて食べる、パスタをゆでて市販のソースをかけて食べるのも、外食です」と、上山医師。 つまり、自分で食材を切って調理した食事以外は、外食だ。これらの「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」と、上山医師は指摘する。 それはなぜか。 「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」 ただし、「外食をしてはいけない」というわけではない。ライフスタイル上、外食に頼らざるを得ない人は多いだろう。上山医師は「欠点を知った上で補ってほしい」とアドバイスする。そこで、まず「考えてほしい」と強調するのが「なぜ食べるのか」だ』、「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」、「それはなぜか」、「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」、なるほど。
・『日々のエネルギーを作り細胞をリニューアルする食事の「5カ条」  「ただ『おなかがすいた』『おいしいから』と、あまり考えずに食べている人が多いと思いますが、私たちが食べる意味は『エネルギーを作るため』、そして『細胞をリニューアルするため』です。ところが、そのことを考えずに脳や舌で判断して食事を選ぶと、脳も舌もすぐにだまされるので、砂糖中毒、カフェイン中毒などになってしまいます」 では、日々快適に過ごせるようエネルギーを作り、細胞をリニューアルするにはどんな食事をとったらいいのだろうか。最後にアドバイスをもらった。 (1)和食中心の食事に 「日本人の私たちにとってDNAに合う食事とはやっぱり和食です。おしょうゆやみそといった良い発酵食品を活用した食事が日本人には合っています」 (2)良質なタンパク質と脂質をとり、筋肉と骨を維持する運動をする(「糖質は即効性のあるエネルギーですが、長持ちするエネルギーはタンパク質と脂質です。これらをしっかりとりつつ、運動で筋肉や骨を維持しなければ、エネルギーは長持ちしません」 (3)毎日同じメニューはNG 朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている人は少なくないだろう。しかし、「微量な栄養素も含めてすべての必要な栄養素を毎日コツコツとることがいちばん。同じメニューでは確実に栄養が偏ります。バランスよく栄養が含まれていることをうたっている商品でも同じ。そもそも分かっている栄養素は一部で、まだまだ分かっていない栄養素があり、そうした微量な栄養素が実は大事だったりします。だから、これさえ食べていればOKという食品、メニューはありません」。 (4)まずは1週間分の食事を記録して、見直しやすいところから変える 「1週間の食事を記録すれば、傾向が分かります。ただ、急にすべては変えられないので、変えやすいところから見直しましょう。たとえば、間食によくお菓子をとっている人は、素焼きのナッツ類やミートボールに変える、甘い飲み物を飲む人はだしスープに変えるなど、まずは間食から見直すことをおすすめします」 (5)サプリメントを活用する 「どんなに食事に気をつけても、微量な栄養素を満遍なく毎日とることはほぼ不可能です。特に忙しいビジネスパーソンは、サプリメントで補充するスタイルがいちばん合っています。ただし、サプリメントも選び方が肝心。一つには良質なサプリメントを選ぶこと、もう一つは自分に合ったサプリメントを選ぶこと。ビタミンCなど、誰もが不足しがちな栄養素もある一方で、不足している栄養素には個人差がありますから、まずは血液検査で栄養状態を調べて、自分の“取扱説明書”を作りましょう」(ライター 橋口佐紀子、監修/うえやま腎クリニック〈鹿児島県鹿児島市〉上山菜穗 院長) (上山菜穗 プロフィール リンク先参照)』、私も「朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている」が、今さら変えるのも面倒なので、継続するつもりだ。

第三に、9月29日付け日経ビジネスオンラインが掲載した経済産業研究所による「世界的にも短い日本人の睡眠、生産性の低さの原因に」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/091300002/
・『近年、不眠症などの「病気の状態」を治癒するだけでなく、人々の生活の質を改善する睡眠のあり方を模索すべきだとする「スリープヘルス」という概念が注目されるようになってきた。経済産業研究所のプロジェクトで睡眠改善施策の効果検証に取り組んだ、黒田祥子・早稲田大学教育・総合科学学術院教授と大湾秀雄・早稲田大学政治経済学術院教授の寄稿を掲載する。 現代社会において、睡眠に何らかの問題を抱えている人はかなりの割合に上る。例えば、「国民生活基礎調査」(2019年、厚生労働省)によれば、日本人成人の約3割が「睡眠によって休養がとれていない」と述べており、米国の調査でも44%の人が「睡眠の問題をほぼ毎日感じている」と答えていた(Sleep foundation、2008)。他国でも同様の傾向が認められ、睡眠未充足と呼ばれる状態は世界的な問題となっている。 睡眠が十分でないことによって生産性が低下するとすれば、経済的に大きな損失となり得る。しかし、多くの睡眠未充足者は、ぐっすりと眠れなくても仕方がないと捉え、慢性的にその状態を受け入れているのではないだろうか。こうした中、近年「スリープヘルス」(Buysee、2014)という概念が注目されるようになってきた。 スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである』、「スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである」、なるほど。
・『睡眠と仕事の生産性との関係は?  果たして「睡眠で十分な休息がとれていないことによる生産性の低下はどの程度で、睡眠の量や質が改善すれば生産性は向上するのだろうか。これまでにも、睡眠不足や睡眠障害が、自動車事故や労働災害などの日中のパフォーマンスに深刻な影響を及ぼすことは、多くの睡眠研究が明らかにしてきた。 しかし、一般労働者を対象に、睡眠が仕事のパフォーマンスに直接どの程度影響するのかを分析したものはあまりない。また多くの研究は、眠ることができたから健康や生産性が改善したのか、あるいは別の要因が睡眠や健康、生産性を悪化させているのか、因果関係を明らかにしていない。 そこで、筆者らと早稲田大学経済学研究科の川太悠史氏は、大手製造業に勤務する約200人の従業員を対象にランダム化比較試験(randomized controlled trial;以下、RCT)を実施し、睡眠と生産性改善の効果を検証した。 RCTとは、被験者をランダムに2つのグループに分け、一方のグループ(介入群)には何らかの介入を施し、もう一方のグループ(対照群)には何もしないことで、実際の介入効果を検証する実験方法である(図1)。 (図1:RCTの流れ) ちなみに、最近は従業員への健康投資に積極的な企業も増えてきているが、投資対効果を検証している企業はまだ少ない。投資を無駄にしないためには、RCTの枠組みを利用した効果検証は非常に重要である。研究成果の詳細は経済産業研究所のHPに掲載されており、以下ではその一部を紹介することとしたい』、実務的にも役立ちそうな研究だ。
・『情報技術で睡眠改善をサポート  昨今では、「スリープテック」という言葉も使われ、スマートウォッチに代表されるようなセンシングデバイスを用いた健康管理は急速に認知度が上がっている。筆者らの睡眠改善プログラムは、こうした情報技術を利用し睡眠改善のサポートを試みた実験である。 プログラムでは、介入群に非接触型のセンシングデバイスを支給し、3カ月間夜間に計測した睡眠データを毎朝本人に通知することで睡眠を可視化するとともに、スマートフォンのアプリを通じて週ごとに睡眠改善に向けた行動変容を促すアドバイスを提示した。 図2は、3カ月後の睡眠改善効果の結果を示したものである。図の縦軸はスリープヘルスの尺度で、数値が大きくなるほど睡眠が改善していることを示している。スリープヘルスの尺度は、心身の病気やパフォーマンスに影響を与えると考えられている6つの睡眠に関する項目(睡眠時間、睡眠の満足度や質、日中の覚醒、睡眠の効率性、睡眠のタイミング、睡眠の規則性)に関し、介入前後の被験者の回答を用いて作成した。 同図を見ると、オレンジで示した介入群のスリープヘルスがプログラム後に改善していることが認められる。さらに、詳細に検証した結果、計測期間における業務量の増加や在宅勤務日数の増加など寝つきの悪化や中途覚醒を引き起こす要因を制御した上でも、プログラム実施後の介入群に睡眠改善の効果が認められた。 (図2:睡眠改善プログラム前後のスリープヘルス尺度) 備考:図中に示したp値は、プログラム前とプログラム後のそれぞれの時点における2群の有意差検定の結果を示し、介入前は両群に統計的な有意差はなかったものの、介入後には介入群の睡眠改善が統計的に1%水準で有意性が認められることを示している。 次に、睡眠改善が生産性に及ぼす影響を、米タフツ大学のチームが開発したWork Limitations Questionnaire(WLQ)と呼ばれるプレゼンティーイズム指標などを使用して検証したところ、介入群のプレゼンティーイズムが統計的に有意に改善していることが確認された。プレゼンティーイズムとは、従業員が出勤している(present)しているものの、何らかの健康問題によって本来の生産性を発揮できていない状態のことを指す。 計測された効果は、介入群平均で1~2%程度の生産性改善に相当するとみている。これらの結果は、仕事や私生活の様々な変化や出来事で睡眠が悪化することは誰しもに起こりうるものの、情報技術の利活用により睡眠改善を促すことで実際に睡眠の未充足は改善され、生産性の回復が見込めることを示唆する。) ただし筆者らの研究では、睡眠改善の効果や生産性への影響は、プログラムの取り組み姿勢、根気の有無の違いや年齢によってその度合いが異なってくることもわかった。例えば、40代以上より、20代や30代の方が効果が出やすい。 企業が従業員の健康に積極的に介入する際には、どの層をターゲットとするかをあらかじめ想定し、改善が困難な層には追加的なナッジ(望ましい行動を促すようなしかけ)を組み込む必要があることを示す結果となった。 日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向があることも知られており、高齢化が最も進行している日本において睡眠が生産性に及ぼす影響は大きいと考えられる』、「日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向がある」、なるほど。
・『在宅勤務で懸念される、睡眠の未充足  グローバル化や情報技術革新によるスマートフォンの普及などで、私たちは24時間情報があふれた生活をしており、睡眠への影響は計り知れない。また、新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックによって急速に広まった在宅勤務の影響も無視できない。在宅勤務の普及で生活と仕事の境界が曖昧になることにより、睡眠の規則性が崩れ、睡眠の未充足を感じる人が増加していく可能性もある。 しかし、極度の不眠であれば医師にかかることができるが、日常生活に支障がなければ多少の生産性の低下で診察を受ける人は多くないだろう。慢性的に悪い睡眠状態が続いているとそれが定常状態のように感じ、生産性の低下に本人も気づきにくい。 また、本人は睡眠不足を自覚していても、成果がすぐに見えない職種で平静を装っていれば、生産性の低下やその理由を、企業は把握できないだろう。企業は、スリープヘルスの重要性が個人では認識されにくいことを理解した上で、従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか。(最後の両氏の略歴はリンク先参照)』、「企業は・・・従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか」、ただ、それが生産性改善にどの程度つながるかが分かる方が説得力があるだろう。
タグ:(その16)(「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる、「365日外食」実験を行った女医が伝えたい 食べているのに栄養不足の盲点、世界的にも短い日本人の睡眠 生産性の低さの原因に) 健康 PRESIDENT ONLINE 永田 利彦 「やせるとボケるし死にやすくなる」医師が中高年にダイエットを勧めない理由 最大で4.15倍もボケやすくなる」 メタボが目の敵にされているが、「やせることにも注意するべきだ」、どういうことなのだろう。 「脂肪を落とそうとして除脂肪体重まで落としてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことがわかります。やせすぎると病気になりやすく、死亡率も上がるのです」、「やせていて栄養状態が悪く、免疫力が低い」、なるほど。 「脂質異常症や高血圧などの生活習慣病は、中高年になれば誰でも何かしらあると言ってもいい状態ですが、そこに低体重が加わると、一気に認知症発症率が高まる」、恐ろしいことだ。適正体重の維持がやはり重要なようだ。 「暴力と自殺による死亡率は、BMIが低い人ほど高くなる傾向があった」、なんとなく感覚的には理解できる。 「ペレラ博士たちは神経質さといった気質が、低体重と自殺既遂に関連している可能性を指摘」、実感にも合うようだ。今後の研究を待ちたい。 ダイヤモンド・オンライン 「「365日外食」実験を行った女医が伝えたい、食べているのに栄養不足の盲点」 「外食ばかりの生活をしていたらきっと体に悪影響があるだろう。では、どのくらい悪影響があるのか、自分の体で体験してみようと思った」、自ら実験台になるとは大したものだ。「最初の不調は、腸にきた・・・そのうちに食が細くなり・・・ちょうど1年たつ頃に、生まれて初めて帯状疱疹を発症・・・自分なりに納得できたので、約1年かけた365日外食生活の実験を終了」、「1年」「外食生活」が続いたのに驚かされた、 「食べすぎてしまう人は、一般的に糖質と余計な脂肪分が多いだけで、その他の栄養素に関してはやっぱり不足している可能性が高い。栄養が足りているかというと、そうではないと思います」、意外な感じを受けるが、その通りなのだろう。 「外食」に共通する問題は何かと言えば、「同じ体積、同じカロリーでも得られる栄養成分の量が少ない可能性が高いこと」、「それはなぜか」、「たとえば、野菜を丸ごと買ったとしても、日がたつごとに少しずつ栄養成分は失われます。カットされていれば、そのスピードは速くなります。さらに、チェーン店で使っている食材は、すぐに使いやすいように加工されているものが多く、その分、栄養成分は減って、添加物が多い可能性が高いのです」、なるほど。 日々のエネルギーを作り細胞をリニューアルする食事の「5カ条」 私も「朝は「パンと卵」など、メニューが決まっている」が、今さら変えるのも面倒なので、継続するつもりだ。 日経ビジネスオンライン 経済産業研究所 「世界的にも短い日本人の睡眠、生産性の低さの原因に」 「スリープヘルスは、不眠症などの「病気の状態」でなければよしとされた睡眠に対する従来の発想を転換し、人々の厚生やパフォーマンスにポジティブな影響を与える睡眠の在り方を模索していくべきとする考えである」、なるほど。 実務的にも役立ちそうな研究だ。 「日本人は世界的にみて睡眠時間が短い人が多く、フルタイム労働者の睡眠時間は過去30年間で趨勢的に減少傾向にある。また、加齢とともに睡眠に問題を抱える人が増加する傾向がある」、なるほど。 「企業は・・・従業員を対象とした睡眠改善施策や、情報技術を利用したナッジの活用など、積極的な健康経営を検討してもよいのではないだろうか」、ただ、それが生産性改善にどの程度つながるかが分かる方が説得力があるだろう。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

医療問題(その33)(「幽霊病床」問題で露呈した 日本の病院に根付く深刻な不正受給体質、今うつ病 老いては認知症?  精神科医が見た3.76倍の「なりやすさ」、がん治療で世界に取り残される日本 なぜ手術至上主義から抜け出せないのか ドキュメント「癌からの生還」#02) [生活]

医療問題については、7月24日に取上げた。今日は、(その33)(「幽霊病床」問題で露呈した 日本の病院に根付く深刻な不正受給体質、今うつ病 老いては認知症?  精神科医が見た3.76倍の「なりやすさ」、がん治療で世界に取り残される日本 なぜ手術至上主義から抜け出せないのか ドキュメント「癌からの生還」#02)である。

先ずは、9月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「幽霊病床」問題で露呈した、日本の病院に根付く深刻な不正受給体質」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281676
・『「幽霊病床」に感じる病院の不正の匂い  「新型コロナ患者をすぐに受け入れできます!」と自己申告しておきながら、実は「病床使用率0%」。そんな「幽霊病床」の実態が明らかになった。 日本テレビが入手した、コロナ患者をすぐに受け入れ可能な「即応病床」と申告している東京都内172の病院の病床使用率をまとめたリストによれば、病床使用率が100%を超えている医療機関は50施設、40%未満が27施設。0%が7施設あったという。 ご存じのように、「即応病床」には国から補助金が支払われている。コロナ患者の治療には、医療従事者の確保などで病院経営的に負担が重い。そこで、重症用ベッド1床につき最大1950万円、重症以外でも最大900万円、さらに緊急時に備えてベッドを空けておく「空床確保料」まで支払われる。 つまり、この補助金を申請した病院というのは、「人手不足だ」とか「施設が古い」などの言い訳をせず積極的にコロナ患者を受け入れなくてはいけないのだ。が、現実は使用率40%にも満たない病院がゴロゴロある。もちろん、たまたま同じタイミングで回復して一斉に退院したということもあるかもしれないが、あの四文字が頭に浮かぶ方も多いのではないか。 そう、「不正受給」である』、「重症用ベッド1床につき最大1950万円、重症以外でも最大900万円、さらに緊急時に備えてベッドを空けておく「空床確保料」まで支払われる」、「補助金」がこんなにも手厚いとは初めて知った。それを「不正受給」するとは悪質だ。「不正受給」があれば、当然返還請求すべきだ。
・『過去にも繰り返されてきた「幽霊スキーム」で不正受給  「我々の命を救ってくださるお医者様になんて失礼なことを言うのだ!」と怒りでワナワナと震える方も多いだろうが、持続化給付金の不正受給が後を立たないことからもわかるように、世の中には「もらえるもんはちょっとズルしてでももらったほうが得じゃん」と補助金・助成金制度を悪用するような人が一定数存在する。それは、病院経営者といえども変わらない。 そこに加えて、歴史の教訓もある。現実には存在しないものを「ある」と虚偽の申告して、国からカネをせしめる、いわば「幽霊スキーム」というのは、かなり古くから報告されている病院経営者の伝統的な不正テクニックなのだ。 ●『“幽霊看護婦”で水増し報酬 1年半で5000万円 「悪質」と都カンカン 立ち入り検査へ』(読売新聞1975年2月18日) ●『安田系3病院 “幽霊医師・職員”168人 大阪府が「保険医療」取り消しへ』(同上1997年5月20日) ●『医療界の黙認(幽霊医師 診療報酬不正請求:上)』(朝日新聞西部本社版 2000年5月26日) これらの不正に登場する「幽霊」とは、要は「水増し」のことだ。診療報酬をより高く請求できるように、医師や看護師の人員数を粉飾する。ちなみに、医師の水増しの場合、大学医学部の大学院生や研修医が「名義貸し」をするスタイルも多かった。 もちろん、このような不正は発覚後、さまざまな再発防止策がなされたので、近年になるとかなり減少している。しかし、手を替え、品を替え今もひっそりと似たようなことが続けられている可能性は高い。 例えば、2012年に約23億円と当時で過去最大規模の診療報酬不正受給が発覚した愛知県の医療法人が用いた幽霊看護師スキームは、「看護師の配置が手厚い病棟では入院料が高くなる制度を悪用、看護師の数を水増しし請求していた」(日本経済新聞2012年3月21日)というものである。 いかがだろう。今回の「幽霊病床」と微妙に被って見えないか。それも当然で、「幽霊病床」が仮に不正であるとすれば、これは「即応病床の水増し」によって補助金を不正受給しているということだ。制度が異なるだけで、これまでの数多とあった診療報酬不正受給とフォーマットはそれほど変わらないのだ。 さらに筆者が「幽霊病床」に不正の匂いを感じてしまうのは、これがコロナ禍のはるか以前から、日本に医療崩壊を引き起こしかねないと指摘されていた、ある構造的な問題と根っこの部分で同じということが大きい。 それは、「なんちゃって急性期病床」だ』、「病院経営者の伝統的な不正テクニック」、改めてよくやるものだと呆れた。「なんちゃって急性期病床」とは、どういうことなのだろう。
・『「なんちゃって急性期病床」とは? 日本の脆弱な医療体制の根本原因  なじみのない言葉に戸惑う方も多いと思うので、ひとつずつ順を追って説明しよう。まず、「急性期病床」とは、重症患者用の病床のことで、今回コロナ重症患者などはここに収容される。実はこの急性期病床が人口あたりの数において、日本は他の先進国と比べてケタ違いに多いのだ。 だったら、コロロ患者のたらい回しや、入院を断られて自宅療養で死ぬなんてことが起きないじゃないか」と思うだろうが、そこに日本の医療特有の「病巣」がある。 急性期病床は他国を圧倒するほど大量にあふれているが、そこで治療にあたる医療従事者数は他国とそれほど変わらない水準だ。病床というのは医療従事者がいなくては機能しないので、他国より多い病床に人員を振り分けていくと当然、一つひとつの病床は他国よりも人手不足になる。それはつまり、他国よりも医療体制が「脆弱」ということだ。 これが他の先進国よりも医療インフラが充実している日本で、コロナ患者が入院できずに門前払いにされる根本的な原因だ。 「急性期病床」を名乗ってはいるが、現実問題として医師も看護師も不足しているので、重症者を受け入れることができない。救急患者受け入れの要請があっても断らないといけないし、治療に多くの人的リソースを割かねばならぬコロナ患者などは論外だ。 このような「名ばかり急性期病床」のことを「なんちゃって急性期病床」と呼ぶ。初耳だという人もいるだろうが、医療行政の世界では当たり前のように使われている。例えば今年4月15日の財政制度分科会の財務省資料にはこんな説明がある。 <急性期を選択して報告しながら実際には医療資源投入量が少ない低密度医療しか行わない病床(いわゆる「なんちゃって急性期」の病床)のあり方を見直す必要> ここで言う「低密度医療」とは要するに、検査入院などのムダな入院だ。海外では1日で退院させるようなものでも、日本では1週間入院させるなどの問題がかねてから指摘されている。日本の現行の医療制度では、空きベッドをなるべく埋めて、診療報酬を多くもらうことが病院の経営だ。そのため、元気な人や軽症者にさまざまな理由をこじつけて、なるべく長くベッドに寝てもらう、というおかしなバイアスがかかってしまうのだ。 ちなみに、この「見直し」はコロナで医療がひっ迫しているからということで唱えられているわけではない。遥か以前からずっと、「なんちゃって急性期病床」を減らすべきだということが言われていたのだ』、「急性期病床は他国を圧倒するほど大量にあふれているが、そこで治療にあたる医療従事者数は他国とそれほど変わらない水準だ・・・他国より多い病床に人員を振り分けていくと当然、一つひとつの病床は他国よりも人手不足になる。それはつまり、他国よりも医療体制が「脆弱」ということだ。 これが他の先進国よりも医療インフラが充実している日本で、コロナ患者が入院できずに門前払いにされる根本的な原因だ」、その通りなのだろう。「「名ばかり急性期病床」のことを「なんちゃって急性期病床」と呼ぶ」、なるほど。
・『「病床再編」に反対する一部の病院経営者 「おいしい病床」を保持したい  冷静に考えれば当然だ。「急性期病床」と申告しておきながら、重症患者を受け入れてくれないのでは税金の無駄遣い以外の何ものでもない。「なんちゃって急性期病床」が増えても、地域内の限られた医療従事者の分散が進行するだけで、救急患者のたらい回しなどは一向に解消されない。 そこで、都道府県では2025年の医療体制を示す「地域医療構想」を策定し、急性期病床の比率を下げて、リハビリなどを施す回復期病床に切り替えるという、「病床再編」というシナリオを描いていた(参照:厚労省資料PDF:)。地域内の「なんちゃって急性期病床」が減れば、本当の急性期医療を行う病院に医師や看護師など医療資源を集中できるはずだ。医療費の無駄も削減できるので、一石二鳥だ。 しかし、これにノーを突きつけているのが、一部の病院経営者である。 「多くの病院はベッドの役割分担に抵抗している。医療スタッフの配置が手厚い急性期病床は1日4〜5万程度と、回復期より2割ほど入院代が高いといわれる。急性期を減らすと収入減につながるのを懸念しているのだ」(日本経済新聞2019年3月3日) もっとストレートに言ってしまえば、「急性期病床の方がおいしい」のである。インセンティブがつけば当然、自分たちの医療資源を度外視して、無理をしてでも急性期病床をつくっていく病院も増える。この結果が、「世界一急性期病床が多い」という日本の異常な状態を招いたというのは容易に想像できよう。 そして、これは裏を返せば、一部の病院にとって、「なんちゃって急性期病床」というものが、もはやなくてはならないものになっているという現実を物語っている』、「急性期病床は・・・回復期より2割ほど入院代が高いといわれる。急性期を減らすと収入減につながるのを懸念」、抵抗があるかえ¥らといって、「病床再編」が進んでいないのは問題だ。
・『そうでもしないと病院経営が立ち行かなくなるという現実  先ほども申し上げたように、「なんちゃって急性期病床」は医療従事者不足や、設備が古いなどの理由で、実際は急性期患者を受け入れることが不可能だ。そのため、重症の患者の受け入れを断って、本来ならば日帰りで済むような手術をした患者や、検査入院、リハビリなどに転用されている。 重症患者なのに医療を受けられないという点では、医療機関としては倫理的にも間違っていることは言うまでもない。しかし、そうでもしないと存続できないほど、経営が行き詰まっている病院があるのもまた事実なのだ。 過去にあった、幽霊医師、幽霊看護師も実は同じことがいえる。これらは私腹を肥やすためというよりも、傾いた病院を存続させるための「水増し」というパターンが多い。 この構造は、持続化給付金など中小企業向けの補助金の不正受給でもまったく同じだ。中には、最初からパクる気マンマンの悪人もいるが、多くは経営に行き詰まった中小零細企業だ。時代に対応できず競争力もない。事業を転換するだけの力もない。厳しい言い方だが、経営者として資質のない人が最後にたどりつくのが「不正受給」という、シビアな現実があるのだ。 このような経営者の厳しい現実があるからこそ、「幽霊病床」に不正の匂いを感じてしまう。 現在、多くの病院が大変厳しい経営環境に追い込まれているが、中でも特に深刻な事態に追い込まれているのが、「なんちゃって急性期病床」で生計を立ててきた病院だ。 コロナによって通常医療は激減している。マスクと手洗いでインフルエンザも風邪も劇的に減少し、自粛によって、子どもたちの部活の怪我や、交通事故も減少。高齢者のムダな検査入院なども減っている。これまでのように「なんちゃって急性期病床」を埋める機会が減って、経営危機に陥っているのだ。 さりとて、「なんちゃって急性期病床」なので、ガチンコでコロナ患者を受け入れるだけの能力はない。受け入れたくても受け入れることができない。しかし、背に腹はかえられないので、「即応病床」という申告だけをした。実際に受け入れなくても、これで補助金さえもらえれば、どうにか存続できるからだ。 そんな「なんちゃって急性期病床」のスキームを応用しなんちゃってコロナ病床」が今、日本の病院には山ほどあるはずだ。その中のほんの氷山の一角が、「幽霊病床」として表面化しているのではないか。 つまり、この現象は、それだけ日本の病院が壊滅的な状態に陥っているというSOSである可能性が高いのだ。 データを客観的に精査していけば、日本の医療体制を強化するには、「世界一、急性期病床が多い」という異常事態を改善していくしかないことは明らかだ。 病床を増やせ、増やせと叫ぶ人もいるが、それは過重労働のブラック企業が、人員拡充せずに新規事業を始めるようなもので、疲弊する現場の医療従事者をさらに追い詰めることになりかねない。 日本の医療を長く蝕んできた「なんちゃって急性期病床」というシステムエラーにもつながる「幽霊病床」が注目を集めた今こそ、日本政府はぜひ抜本的な「病床再編」を進めていただきたい』、同感だが、総裁選挙に血道を挙げている自民党にはそんな力や意思はなさそうだ。

次に 9月11日付けForbesが掲載したコラムニストの小出 将則氏による「今うつ病、老いては認知症?  精神科医が見た3.76倍の「なりやすさ」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/43213/1/1/1
・『もうすぐ敬老の日。わが国では65歳以上が3600万人を超え、総人口の3割近くを占める世界一の高齢社会。これに伴って増えているのが認知症で、長寿を喜べぬ現実に医療がどう関わるかは重苦しい課題だ。 一方、がんや糖尿病などと並び、精神疾患が五大疾病となって10年。精神疾患の中心となるうつ病の対策も待ったなしだが、認知症とうつ病との関係はまだ十分に周知されていないように思われる。今回は私が経験した両疾患を同時に抱える患者像を通して、「認知症とうつ病のあいだ」をお伝えする』、興味深そうだ。 
・『冬木昭子さん(仮名)の場合  冬木昭子さん(仮名)は70代前半の元教師。4年前、不眠と動悸を訴えて、私のクリニックを訪れた。仲のよかった知人とささいなことですれ違いとなり、連絡が取れなくなってから不安になったという。ちょうどその時、歯が悪くなり、歯医者で義歯(入れ歯)を考えないといけないと言われ、「自分の老い」を実感。不安が徐々に大きくなるにつれて動悸が増え、眠れなくなった。 経歴や診察室での様子から、老齢期に入り、精神的、身体的ストレスが重なって反応性抑うつに陥ったものと診断した。 しっかりと話を聴き、抗うつ薬と依存性の無いタイプの睡眠導入薬を処方して経過を見守った。 当初は大好物のシャインマスカットを食べる気も失せていたのが、何回か調子の波を乗り越え、半年後には自作童話を自費出版したいと語るまでに回復した。2時間物の映画にも出かけられるようになり、1年半でいったん診察終了とした。 その1年後、コロナ第1波のさなかに「寝つきの悪いときがある」と冬木さんが受診した。 ただ前回と違って読書はできるし、食事もおいしい。「元気です。旦那とけんかしなければ。アハハ」と、テンションはむしろ高めに感じ取れた。  
診察して双極性うつ病と判断した。うつ病は落ち込みの時期だけがある単極性と、気分の高揚する時期もある双極性に大別されるが、彼女は後者だった。治療ではあえて本格的な薬を使わず、話を傾聴しながらフォローした。 診察室での話題はもっぱらコロナ。ところが今年に入り、家族から電話が入った。本人には内緒でと断り、「最近、認知が入ってきているみたいです」と心配する声が受話器から伝わってきた。同じことを繰り返し家族に聞くことが目立ってきたという。 次の診察で冬木さんに問いかけた。「最近、物忘れなどで困ることは?」。返事は「そうなんです。初期です。自分で思います」。 そこで、長谷川式認知症スケール(HDS-R)というスクリーニング検査をした。年月日がすべて答えられず、直前の記憶力をみる問題も6点中2点と低下。さらにアルツハイマー型認知症に使う検査ADASを実施したところ、基準点より少し悪かった。初期認知症の疑いが強まったため、地元の認知症センターを紹介すると、こちらと同じ結果だった。 センター受診後、当院に現れた時の冬木さんの言葉にどきっとした。「ショックが大きかった。それで“うつ”になった」 おそらく、豊富な知識を武器に教壇に立ってきた冬木さんにとって、「記憶が無くなっていく」認知症になることは恐怖以外の何物でもなかったのだろう。もし、自分が同じ状況に陥ったらと想像すると、よく分かる』、確かに「豊富な知識を武器に教壇に立ってきた冬木さんにとって、「記憶が無くなっていく」認知症になることは恐怖以外の何物でもなかったのだろう」、その通りだ。 
・『うつ病の人が認知症になるとはどういうことか?  うつ病や認知症にもいろいろなタイプがあるが、ここでは代表的な「内因性うつ病」と「アルツハイマー型認知症」の場合を考えてみよう。 誰でも憂うつになったり、物忘れをしたりということはある。ときおり、当院にも「僕はうつ病です」とか「私は認知症です」と治療を求めてくる人がいるが、そういったケースの大半は違う。当人に病気の自覚のないことが両疾患の特徴だからだ。 だから、本人に病気であることを知ってもらうことが治療のスタートラインとなる。 内因性うつ病では、はっきりとした原因がなくとも気分の沈みや興味の減退が2週間以上にわたって続く。患者はうつ病の原因を環境についていけない自身の弱さに求め、「できない自分が悪い」とみずからを責める。彼らにはまず「これは脳の機能不全による病気で、あなたのせいではない」と伝える。 一方アルツハイマー型認知症では、直近の記憶を失うため、たとえば今日が何月何日か答えられない。物忘れの自覚がなく、取り繕おうとして嘘の話を作る。朝食を済ませた後に何を食べたか、すぐに思い出せないのは生理的な物忘れだが、「ご飯はまだかね」と真顔で家族に尋ねたら認知症だ。財布をどこに置いたか分からなくなり、家族が隠したと訴える「物盗られ妄想」もよくある症状だ。 ただ、初期のうちは本人も物忘れに自覚的で不安になるケースは多い。冬木さんの場合もこれに当てはまる。 彼女は症状が進む前に家族が「発見」し、診断につながったわけだが、それ以前の診察でははっきりとした徴候は見当たらなかった。 初期の認知症では物忘れが軽いので、診察場面だけでは病状を察知しにくい。八千代病院の川畑信也神経内科部長によると、アルツハイマー病患者520人のうち、異変に気付いて1年以内に物忘れ外来を受診したのは9%に過ぎない(「『認知症の正体 診断・治療・予防の最前線』飯島裕一著、佐古泰司著、PHP研究所刊」より)』、「初期のうちは本人も物忘れに自覚的で不安になるケースは多い」、しかし、「アルツハイマー病患者520人のうち、異変に気付いて1年以内に物忘れ外来を受診したのは9%に過ぎない」、なるほど。
・『海馬の働き。うつ病では元に戻るが、認知症では「戻らない」  ここで押さえておくべきは、認知症の初期症状のひとつに抑うつがあることだ。しかもうつ病の抑うつとの見分けが難しい。 高齢者の抑うつは意欲の減退(アパシーと呼ぶ)が前面に出ることが多い。涙あふれる悲しみというよりは、枯山水のようなエネルギー低下といえば、理解しやすいだろうか。 違いを見分けるには、やはり認知症の中核症状である物忘れに注目するのがよい。 うつ病が悪化すると、一時的に認知症(とくにアルツハイマー型)と同じ「海馬」がやられる。 海馬は大脳辺縁系という脳の中心部にあり、短期記憶が蓄えられる場所だが、うつ病では海馬の働きが元に戻るのに対し、認知症では戻らない点が異なる。抑うつが治まっても物忘れが回復しなければ認知症といえる。 このため、精神科医は高齢者の抑うつ症状がうつ病から来るのか、初期認知症から来るのかどうしても迷った場合、まずうつ病の治療をする。それで改善しなければ、さらに認知症の精査治療をしていくという具合だ。 もうひとつ、大事なことがある』、「うつ病では海馬の働きが元に戻るのに対し、認知症では戻らない点が異なる。抑うつが治まっても物忘れが回復しなければ認知症といえる」、なるほど。
・『若いころのうつ病は、認知症を「通常の3.76倍」引き起こす?  それはうつ病自体が認知症のリスク因子になることだ。 専門家の研究では、若いころにうつ病になると、アルツハイマー型認知症になる可能性は通常の3.76倍、老年期にうつ病になると2.34倍も高くなる。また、病院受診したアルツハイマー型認知症患者のうち半数近くがうつ病かそれに近い状態との報告もある。 冬木さんばかりでなく、うつ病の患者が後に認知症となるケースは当院でも数多く経験している。 60代の男性Aさん。スーパーの副店長をしていた40代の頃、過労でうつ病になり、仕事を辞めることになった。その後、いらいらがひどくなり、隣人ともめ警察沙汰となって、当院を受診。若年性認知症を疑い、頭部MRIを撮ったところ、大脳が萎縮していた。今では毎朝、日付を妻に確認しながら生活している。 若いころのうつ病は、認知症を「通常の3.76倍」引き起こす? それはうつ病自体が認知症のリスク因子になることだ。 専門家の研究では、若いころにうつ病になると、アルツハイマー型認知症になる可能性は通常の3.76倍、老年期にうつ病になると2.34倍も高くなる。また、病院受診したアルツハイマー型認知症患者のうち半数近くがうつ病かそれに近い状態との報告もある。 冬木さんばかりでなく、うつ病の患者が後に認知症となるケースは当院でも数多く経験している。 60代の男性Aさん。スーパーの副店長をしていた40代の頃、過労でうつ病になり、仕事を辞めることになった。その後、いらいらがひどくなり、隣人ともめ警察沙汰となって、当院を受診。若年性認知症を疑い、頭部MRIを撮ったところ、大脳が萎縮していた。今では毎朝、日付を妻に確認しながら生活している。 80代の女性Bさんは2年半前、頭がもやもやすると当院を訪ねてきた。もともと神経質で、老年期のうつ病と診断し、抗うつ薬で改善した。しばらくして物忘れが目立ち始め、HDS-Rで10点しか取れず、認知症の治療を開始した。その後はむしろ抗うつ薬を止めたほうが気分は落ち着いた』、「若いころにうつ病になると、アルツハイマー型認知症になる可能性は通常の3.76倍、老年期にうつ病になると2.34倍も高くなる」、「うつ病」と「アルツハイマー型認知症」に、こんなに相関があるとは初めて知った。
・『生活習慣病、70代Cさんの場合  複雑な要因がからんで、診断や治療に悩むこともある。 70代の男性Cさん。胃潰瘍や高血圧、脂質異常などの生活習慣病で治療していた。ことし7月、新型コロナワクチン接種2回目を終えた2週間後から「頭がボーっとなり、体がだるくて」かかりつけ医受診。内科的異常はないのに眠れず、食欲不振で体重が減り、集中力も低下した。 内科治療で改善しないため、当院に紹介された。HDS-Rでは軽度認知症領域の18点。だが、これだけで診断するのは危険だ。うつ病の悪化時には認知症スクリーニングの検査結果が低く出ることがあるからだ。 さらにビタミン測定やADAS検査を行い、それでも確定しないため、原則に従って抗うつ薬処方から開始した。そもそもコロナワクチン後遺症の可能性も捨てきれない。臨床現場は難しい』、「臨床現場」の難しさが理解できた。
・『194万部のベストセラー「恍惚の人」……  ここまでうつ病と認知症の関係を述べてきて気になることがある。それは「認知症」という用語だ。 認知症という言葉が使われ始めたのは2004年と比較的新しい。それ以前に使われていた「痴呆」は言葉の意味が侮蔑的で病気の本質を正確に表していないとして、識者会議に諮(はか)られ、認知症に取って代えられた。 痴呆(ちほう)は確かに、耳に強く残る言葉だった。ただ、より記憶に残る言葉がある──「恍惚」 高度経済成長晩期の1972年、有吉佐和子の小説「恍惚の人」は年間売上げ194万部のベストセラーとなった。「こうこつ」という響きが、当時小学5年生だった私の耳に文字通りうっとりと残った。これがきっかけで認知症高齢者の介護問題に陽が当たった。 「恍惚」の出典は江戸時代の国史書「日本外史」で、頼山陽が戦国時代の武将三好長慶を称した「老いて病み、恍惚として人を知らず」から来ているという』、「「恍惚の人」は年間売上げ194万部のベストセラーとなった」、よく覚えている。
・『太宰治は認知症になっていたか?  ただ、読書好きの私にとって恍惚といえば、むしろ太宰治だ。 「撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり」(「晩年『葉』」より) 処女作の、しかも冒頭にフランスの詩人ヴェルレエヌを持ってくるなんてと思うが、太宰の人生を知るにつれ、このエピグラム(注)にうなずいた。 新宿の歩道で石がひとりでに歩くのを見て不思議に思わず、直後に子どもが糸を結んで引きずっていたのを知り、欺かれたことにさびしさを感じるでもなく、ただ「そんな天変地異をも平気で受け入れ得た彼自身の自棄(やけ)が淋しかった」と書いた太宰。 2020年の日本人男性の平均寿命は81.64歳。歴史に「もし」はないが、40歳まで1年を残して入水した太宰が天寿を全うしたら、うつ病と認知症の関係に従って「恍惚の人」となっていたかどうか──』、私には「天寿を全う」するような「太宰」は想像できない。
(注)エピグラム:警句(Wikipedia)

第三に、8月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した金田信一郎氏(肩書下記)による「がん治療で世界に取り残される日本。なぜ手術至上主義から抜け出せないのか ドキュメント「癌からの生還」#02」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/278928
・『元日経ビジネス記者でジャーナリスト歴30年の金田信一郎は2020年3月、突然ステージ3の食道癌に襲われた。紹介された東京大学医学部附属病院(東大病院)に入院し、癌手術の第一人者で病院長が主治医になったが、曖昧な治療方針に違和感を拭えず、セカンドオピニオンを求めて転院。しかし転院先でも土壇場で手術をせず放射線による治療を選択し、今では以前とほぼ同じ日常を取り戻した。金田は先頃、自らの体験を題材にしたノンフィクション『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社)を上梓した。2021年7月20日発売のニューズウィーク日本版(7月27日号)「ドキュメント 癌からの生還」特集では、200日の闘病記を16ページのルポルタージュにして収録。金田の闘いは、思考停止に陥った日本の医療体制、そして患者にも強烈な問いを投げ掛けている。「それが本当に最適な治療なのですか」と。どうすれば、この流れに歯止めをかけられるのか。以下に続く記事で金田は、その糸口を探るべく、元主治医たちのもとを訪ねる(本記事は2021年7月20日発売のニューズウィーク日本版(7月27日号)「ドキュメント 癌からの生還」の記事を転載しました、本文は敬称略)』、興味深そうだ。 
・『日本特有の手術至上主義  こんな調査結果がある。 がん治療で世界に取り残される日本。なぜ手術至上主義から抜け出せないのか(先進各国で、肺癌ステージ1期の患者が、どのような治療を受けたか比較したデータだ。数字を見渡すと、欧米では「手術から放射線治療(SBRT)へ」という流れが見て取れる。 アメリカでは手術比率が71.9%(2005年)から60.3%(2012年)に減少し、逆に放射線治療が13.5%から25.8%に上昇している。欧州の調査(2015~16年)では、オランダで手術が47%に対して、放射線治療が41%と拮抗していることが分かる。 一方、日本の医療は全く様相が異なる。日本の肺癌1期の手術数は3万件(2014年)に上るが、同期間に放射線治療を受けた患者は1600人と全体の5%程度にとどまった。 「その後も、この比率は大きく変化していない」 この比較表を作成した大船中央病院放射線治療センター長(放射線医師)の武田篤也は、危機感を覚えている。日本の放射線治療が、欧米諸国に比べて劣っているわけではない。「もっと放射線治療のメリットを広めていかないと、『癌は切除するもの』が常識となって、本来、放射線を受けたかった人が手術に回されていく」 なぜ、日本だけが手術に偏った治療を続けているのか。外科の力が強く、「癌は切除したほうがいい」という考え方が根強いという理由だけではない。その背景には、医療を硬直化させている構図がある。 その原点をたどっていくと、ある転換点が浮かび上がってくる。 かつて日本の医療現場は、医師の裁量と自由度が高い「聖域」とされていた。診療所や開業医を中心に医療が展開され、彼らを中核に据えた日本医師会が強い政治的発言力を持つ時代が続いた。 だが、1990年を境にして様相が一変する。それまでの経済成長期には医療費の上昇をGDPの成長が覆い隠していたが、バブル崩壊で経済が停滞するなかで、医療費だけが膨らみ続けた。1990年に国民医療費のGDP比は4.6%だったが、2000年には約6%、2011年には8%近くまで上昇する。 2000年以降の急上昇の局面で医療の効率化が求められ、医師の裁量に大きく委ねられていた状態が問題視されるようになった。この時期、開業医比率が大きく減少し、抵抗力を失っていくなか、データによって成果が高いとされる治療に絞り込む、「標準化」の波が襲ってくる。 既に欧米では、1990年代初頭から「エビデンス革命」が吹き荒れていた。1991年、カナダの医師ゴードン・ガイヤットが「エビデンスに基づく医療(EBM)」を提唱。続いて第一人者のカナダの医師デービッド・サケットが論文(「エビデンスに基づく医療 それは何であり、何でないのか」)を発表し、世界に広まっていく。 経験知による医療の死角を克服するためにも、臨床試験等による結果(エビデンス)を重視して治療法を決める──。その方法論は、医療費の肥大化に悩む日本にも到来する。 2000年代、日本ではエビデンスを基にした「標準治療」を確立する動きが加速する。06年には「がん医療の均てん化(全国どこでも癌の標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること)」を謳ったがん対策基本法が成立。実績が高い治療法を示した「診療ガイドライン」がネット上で公開され、全国の医療現場に広まっていった。 そこに日本独特の、全国で一本化された診療報酬制度が「総額の上限」として機能し、医療費の抑制に成功する。2011年以降も、国民医療費はGDP比8%以下の水準で推移している。 その決定システムには、政官業の微妙な力学が働いている。まず、官(財務省)が医療費の引き下げを要請するが、一方で業(医療界)が引き上げの必要性を訴える。すると、官(厚生労働省)が調整し、政(内閣)が妥結策を最終決定する。この政官業のトライアングルがバランスを取り、医療費を一定の比率に保つ。 だが、この決定過程には、医療の中心にいるはずの患者の視点が欠落している。そして、一見すると均衡しているかに見える医療は、「患者不在」のまま、その中身が大きな変化を遂げることになる。(2021年8月15日公開記事へ続く)』、「日本ではエビデンスを基にした「標準治療」を確立」、「実績が高い治療法を示した「診療ガイドライン」がネット上で公開」、などは好ましいことだが、「患者不在」は確かに問題だ。「日本特有の手術至上主義」も困ったことだが、何故なのだろう。
・『どうしたら、自分に合った「がん治療」にめぐり合えるのか――。  突然、告げられた進行がん。 最初に入院した東大病院からは、抗がん剤1クールを終えて逃亡。 ようやく見つけた“神の手”を持つ外科医のいる転院先では、土壇場になって手術を回避。 抗がん剤治療の最中、執念で多くの名医に話を聞きながら、自分に合った治療を探し求めていく。 「切らずに治す方法はないのか」。 自分にぴったり合う治療法を探し求めて、奮闘した記録をすべて残した『ドキュメントがん治療選択』。 もがき、苦しみ、身体にメスを入れる直前、自分に合う治療法を探し当てた。だから、生き延びた――。 多くのがん患者や家族が悩む「治療選択」。それを考え抜く一つの道筋を描いたノンフィクション』、筆者は「手術至上主義」から脱出して、いろいろ経験して、結果も良かったのは幸運だ。
・『【ポイント1】突然のがん告知で焦るすべての人に向けた、自分に合う治療法の選び方が分かる 【ポイント2】セカンドオピニオン、転院するときのリアルなやり取りが分かる 【ポイント3】手術、放射線、抗がん剤で迷ったときのヒントが分かる 【ポイント4】本書を読み終えたら、きっと自分で治療法を選びたくなる ▽がんと告知されたら、まず読もう(【目次】■まえがき「東大病院をやめることにした」。その一言に、周囲は驚愕した。ステージ3のがんを抱えて、コロナ禍の中を「最適な医療」を求める旅がスタートする。 ■第一章 罹患 突然の嘔吐、そして地元のクリニックで胃カメラを入れると、そこには火山のように突起したガンがあった。「すぐに東大病院に行くように」。いきなり、最高の医療が提供されたかに思ったが……。 ■第二章 東大病院918号室 豪華な病棟のベッドに横たわっていた。強烈な抗がん剤が5日間連続で投与される。だが、病状も治療も納得できる説明がない。 ■第三章 逃亡 「何かがおかしい」。決裂覚悟で、セカンドオピニオンの紹介状を手に、東大病院を去る。 ■第四章 がんセンター5A病棟 資料を読みあさり、専門家を訪ね、「神の手」の名医に辿り着いた。だが、ふと疑問が沸いてくる。「手術でいいのか?」 ■第五章 疑念 「壮絶ですよ」。同じ食道がんの手術をした先輩から、生々しい話を聞かされる。なんとか、臓器を失わない方法はないのだろうか。 ■第六章 大転換 偶然知った放射線の名医から「できる」と言われて、メスが入る直前に、「放射線に転換する」と宣言する。 ■第七章 再々検査 前例の少ない抗がん剤5クールと放射線28回。副作用で免疫が急降下して、ドクターストップがかかる寸前に追い込まれる。そして、ついに最後の治療がスタートすることが決まる。 ■第八章 最後の夜 5回目となる入院で、がん告知から7ヵ月目にしてすべての治療を終えた。最後の点滴を終えて針が抜けると、夜が明けて、がんセンターの病棟に日が昇ってくる。 ■あとがき 同じ時期にガンの闘病をした友人が、病院が示す治療を拒否して半年で命を落とした。今も、年に100万人を数える新規がん患者たち。その人々が、納得できる「医療選択」ができる時代を考える』、全体として、バランスの取れた力作だ。特に、「同じ時期にガンの闘病をした友人が、病院が示す治療を拒否して半年で命を落とした」ケースも取上げているのは公平だ。
タグ:医療問題 (その33)(「幽霊病床」問題で露呈した 日本の病院に根付く深刻な不正受給体質、今うつ病 老いては認知症?  精神科医が見た3.76倍の「なりやすさ」、がん治療で世界に取り残される日本 なぜ手術至上主義から抜け出せないのか ドキュメント「癌からの生還」#02) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「「幽霊病床」問題で露呈した、日本の病院に根付く深刻な不正受給体質」 「重症用ベッド1床につき最大1950万円、重症以外でも最大900万円、さらに緊急時に備えてベッドを空けておく「空床確保料」まで支払われる」、「補助金」がこんなにも手厚いとは初めて知った。それを「不正受給」するとは悪質だ。「不正受給」があれば、当然返還請求すべきだ。 「病院経営者の伝統的な不正テクニック」、改めてよくやるものだと呆れた。「なんちゃって急性期病床」とは、どういうことなのだろう。 「急性期病床は他国を圧倒するほど大量にあふれているが、そこで治療にあたる医療従事者数は他国とそれほど変わらない水準だ・・・他国より多い病床に人員を振り分けていくと当然、一つひとつの病床は他国よりも人手不足になる。それはつまり、他国よりも医療体制が「脆弱」ということだ。 これが他の先進国よりも医療インフラが充実している日本で、コロナ患者が入院できずに門前払いにされる根本的な原因だ」、その通りなのだろう。「「名ばかり急性期病床」のことを「なんちゃって急性期病床」と呼ぶ」、なるほど。 「急性期病床は・・・回復期より2割ほど入院代が高いといわれる。急性期を減らすと収入減につながるのを懸念」、抵抗があるかえ¥らといって、「病床再編」が進んでいないのは問題だ。 同感だが、総裁選挙に血道を挙げている自民党にはそんな力や意思はなさそうだ。 Forbes 小出 将則 「今うつ病、老いては認知症?  精神科医が見た3.76倍の「なりやすさ」 、確かに「豊富な知識を武器に教壇に立ってきた冬木さんにとって、「記憶が無くなっていく」認知症になることは恐怖以外の何物でもなかったのだろう」、その通りだ。 「初期のうちは本人も物忘れに自覚的で不安になるケースは多い」、しかし、「アルツハイマー病患者520人のうち、異変に気付いて1年以内に物忘れ外来を受診したのは9%に過ぎない」、なるほど。 「うつ病では海馬の働きが元に戻るのに対し、認知症では戻らない点が異なる。抑うつが治まっても物忘れが回復しなければ認知症といえる」、なるほど。 「若いころにうつ病になると、アルツハイマー型認知症になる可能性は通常の3.76倍、老年期にうつ病になると2.34倍も高くなる」、「うつ病」と「アルツハイマー型認知症」に、こんなに相関があるとは初めて知った。 「臨床現場」の難しさが理解できた。 「「恍惚の人」は年間売上げ194万部のベストセラーとなった」、よく覚えている。 私には「天寿を全う」するような「太宰」は想像できない。 (注)エピグラム:警句(Wikipedia) 金田信一郎 「がん治療で世界に取り残される日本。なぜ手術至上主義から抜け出せないのか ドキュメント「癌からの生還」#02」 「日本ではエビデンスを基にした「標準治療」を確立」、「実績が高い治療法を示した「診療ガイドライン」がネット上で公開」、などは好ましいことだが、「患者不在」は確かに問題だ。「日本特有の手術至上主義」も困ったことだが、何故なのだろう。 筆者は「手術至上主義」から脱出して、いろいろ経験して、結果も良かったのは幸運だ。 全体として、バランスの取れた力作だ。特に、「同じ時期にガンの闘病をした友人が、病院が示す治療を拒否して半年で命を落とした」ケースも取上げているのは公平だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

シェアリングエコノミー(その4)(元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟 プレーヤーはまだ増える」 元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」、個人請負無法地帯:労災保険料は配達員が「全額自己負担」の是非 ウーバーイーツ「急拡大」で問われる企業責任、ウーバーイーツの「徒歩配達」が日本社会を激変させる、その「意外なメカニズム」 ITの本領が発揮される) [生活]

シェアリングエコノミーについては、5月6日に取上げた。今日は、(その4)(元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟 プレーヤーはまだ増える」 元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」、個人請負無法地帯:労災保険料は配達員が「全額自己負担」の是非 ウーバーイーツ「急拡大」で問われる企業責任、ウーバーイーツの「徒歩配達」が日本社会を激変させる、その「意外なメカニズム」 ITの本領が発揮される)である。

先ずは、7月20日付け東洋経済オンライン「元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/441745
・『コロナ禍で巣ごもりが長期化する中、好況に沸くフードデリバリー業界。市場調査会社のエヌピーディー・ジャパンの調べでは、2020年の外食デリバリーの市場規模は6264億円と、前年比50%増にまで急拡大を遂げた。 成長する日本市場を狙い、2020年以降は多くの海外プレーヤーが参入。「Uber Eats」や「出前館」といった先行プレーヤーとの競争は熾烈化し、各社こぞってクーポンのバラマキを行うなど、終わりなき過当競争を繰り広げているようにも映る。 フードデリバリーの乱戦は今後どんな展開を見せるのか。2020年11月に出前館の会長職を辞し、2021年4月にはM&A仲介大手の「日本M&Aセンター」の専務執行役員に就任した、中村利江氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは中村氏の回答)。 【2021年7月21日9時27分追記】初出時の表記に一部誤りがありました。お詫びの上、表記のように修正いたします。 Q:約20年間携わってきた、出前館の経営の第一線から昨年退きました。 A:同じ人が長いこと(経営を)やり続けるといろいろなしがらみができてしまうので、5年くらい前から後任を探す必要があると考えていた。 海外の投資家への説明に回っていたときから、(今年6月に上陸した)アメリカのDoorDashなど海外の黒船が必ず日本に進出してくると確信し、資金と組織力を整えてしっかりと戦う準備をする必要があると思っていた。そこで、(2020年3月に)LINEグループに入ることを決めた。こうした準備が整ってきたので、新体制に事業を執行してもらうのがよいと考えた』、中村利江氏の略歴は3頁目にある通り、1988年に関西大学文学部を卒業。リクルートなどを経て、出前館の代表取締役社長や同会長などを歴任。2021年4月、日本M&Aセンターの専務執行役員就任。「リクルート」出身のやり手のようだ。
・『フードデリバリー市場はまだ拡大する  フードデリバリーは体力勝負になっている。各社ふんだんに体力があるわけではないので、資金が続く範囲の中でやっていかざるをえない。 Uber Eatsも海外ではうまくいっていないことが多く、インドなどでは撤退するケースも出ている。(KDDIによるmenuへの出資など)国内の通信事業者が宅配事業者へ出資する事例も出ており、日本で今後もM&Aが起こる可能性はある。 Q:日本のフードデリバリー市場におけるプレーヤーは増え続けています。過当競争に陥っているのではないでしょうか。 A:「どうしてそこまで過激な奪い合いをしているのか」と思われるだろうが、日本は配達件数自体がまだ少なく、潜在的な市場規模は大きい。市場が広がらないのに戦っていたら愚かだが、アイテムや対応店舗数が増え、デリバリーのハードルが下がれば、市場のパイはさらに拡大するはずだ。 Q:配達手数料などがかかるデリバリーサービスを活用するのは、利益率の低い飲食店だと難しいという声もあります。 A:それはやり方次第だ。 例えば吉野家の場合、(出前館導入当初)店舗では380円の牛丼(並)をデリバリーだと570円で売っていた。その差額には「注文者のもとに料理を持って行く付加価値」が含まれている。 導入前は、店舗で働く従業員から「そんな高い値段では売れない」という声もあったようだが、吉野家の店舗に入りづらいという女性客や、外出できない子育て世帯を取り込むことができた。結果としてはよく売れたし、店内飲食よりも利益が出た』、中村氏は「日本M&Aセンター」に移ったとはいえ、「フードデリバリー市場」に身を置いている以上、前向きな姿勢は続けているようだ。
・『日本は未成熟でおいしい市場  配達件数を増やせば効率も良くなり、コストを抑えられるということは、グローバルですでに実証されている。日本だと1時間あたりの配達件数は2件程度で、まだまだ配達件数が足りない。中国では1時間に5件以上の配達ができており、配達料も(1件当たり)100円程度に抑えられている。 海外で実績を持つ黒船企業からすれば、未成熟な日本はおいしい市場だ。中国の大手プレーヤーもまだ日本には進出していないし、今後さらにプレーヤーが増える可能性だってある。 Q:とはいえ、プレーヤーが増える中で各社がクーポンのバラマキやCMの乱発にコストを多くかけている現状は、消耗戦となっているようにも見えます。 A:そんなことはない。確かに足元では1位、2位を取るためのプレーヤー間の競争が激しくなっている。ただ、おそらく数年ほど経てば、デリバリー市場のトップ2が確定し、競争も落ち着くはずだ。 出前館やUber Eatsもまだ、先行者メリットを享受する段階にはない。出前館の加盟店数は7.4万店(2021年5月末時点)だが、地方の消費者が利用するには10万店を超えないといけない。 外食業界は、グローバルで競争してきた製造業などとは対照的に、ガラパゴス的な成長をしてきた。海外の飲食店はコロナ前から、イートイン、デリバリー、テイクアウトの3本柱で収益を上げるのが普通だったが、日本は違う。おいしさやおもてなしへのこだわりが強いがゆえに、イートイン一辺倒だった』、確かにかつての「イートイン一辺倒」は「ガラパゴス」そのものだった。
・『コロナで飲食店数は正常な状態になる  かつて出前館を飲食店に提案した時も、「店を離れる間の数十分間で食品が劣化するのではないか」などの抵抗があり、思った以上に導入までのハードルが高かった。それがコロナ禍で変わった。20年かけてじわじわと広げてきたものが、たった数カ月でガッと広がった。 店内飲食主体の飲食店が苦戦しているの対し、従来テイクアウトやデリバリーに力を入れていたマクドナルドやケンタッキーはコロナ禍でも増収増益を続けている。イートイン一本足打法ではダメだというのは結果が示している。 Q:コロナ禍を経て、日本の外食業界はどう変わるとお考えですか。 A:コロナ前から日本の飲食店の数は多く、飽和状態にあった。日本の飲食店の適正店舗数は40~50万店程度だと思うが、今は約60万店もある。コロナという厳しい状況下で再編は進まざるをえないだろう。 飲食店の数が多いと、価格競争になり低価格化が進む傾向にある。それは消費者にとってよいことかもしれないが、事業者からすれば儲からない商売ともいえる。飽和状態にある飲食店数がコロナを機に正常な状態になることで、適正な利益を上げられるようになるのではないか。 【情報提供のお願い】東洋経済では、フードデリバリー業界が抱える課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームでは配達員や飲食店関係者などからの情報提供をお待ちしております』、「テイクアウトやデリバリーに力を入れていたマクドナルドやケンタッキーはコロナ禍でも増収増益を続けている。イートイン一本足打法ではダメだというのは結果が示している」、その通りだ。「飽和状態にある飲食店数がコロナを機に正常な状態になることで、適正な利益を上げられるようになるのではないか」、これは希望的観測色が強そうだ。

次に、7月27日付け東洋経済Plusが掲載した「個人請負無法地帯:労災保険料は配達員が「全額自己負担」の是非 ウーバーイーツ「急拡大」で問われる企業責任」を紹介しよう。
・『柔軟な働き方の代表例である個人請負。無権利状態であるがゆえに予期せぬ事態に直面する人たちがいる。 コロナ禍での外出自粛に伴う、デリバリー需要の増加を追い風に、ウーバーイーツの急拡大が続いている。2016年に東京でサービスを開始してから、すでに40都道府県でサービスを提供(7月20日時点)しているが、そのうち23道県は昨年に初進出した。 2021年5月には国内におけるウーバーイーツの加盟店が10万店を突破しており、競合である出前館(同時期の加盟店数は7.4万店)を大きく突き放している。グローバルにおけるウーバーのフードデリバリー事業の売上高は約39億ドル(約4300億円)と、前期比でおよそ2.8倍増となった。 こうしたウーバーイーツの急速なサービスエリア拡大を支えているのが、個人請負である配達員だ。自分の自転車やバイクを使って、好きなときにアプリを立ち上げて好きなように働ける自由さが、配達員から支持されている。北海道で配達する20代男性は「アルバイトだと拘束されているように感じてしまい面倒。独立した個人事業主として自由に働けるのはうれしい」と話す』、事故や病気で働けなくなると、一転、地獄に変わる。
・『活況の一方で配達員の身入りが減る  個人事業主として業務委託契約を結べば、時間や場所を制約されず、自らの裁量で仕事ができる。だが、身分は自営業者なので、労働基準法などの労働法規がいっさい適用されない。最低賃金保障はなく、職を失っても雇用保険が使えないなど、無権利状態にある(詳しくは「あらゆる業種に広がる“無権利状態”の個人請負」)。 ウーバーイーツがサービスを拡大する中、配達員からは報酬に対する不満の声が上がっている。首都圏で配達員をする30代男性は「ウーバーイーツの報酬は緩やかに下降線を描いている」と指摘する。 背景にあるのはウーバーイーツが行った報酬体系の変更だ。 従来の基本報酬は、飲食店から料理を受け取ったときに得られる「受取料金」、注文者に料理を受け渡すときに得られる「受渡料金」、飲食店から配達先までの距離に応じて得られる「距離料金」という3つの合計からサービス手数料を差し引いたものだった。そこにエリアの繁忙状況や配達回数に応じた追加報酬(インセンティブ)が加算され、配達員に報酬が支払われていた。 だが、2021年5月から算定基準が撤廃され、繁忙度合いなどに合わせてウーバーイーツ側で金額を変動させる報酬体系が導入された。 前述の30代の男性配達員は「基準がなくなったことで、報酬体系がブラックボックス化してしまった。一方的に報酬が決められてしまうため、会社側が守ってくれる“最低基準”がわからない。今の報酬水準もいつまで続くのか不安だ」と打ち明ける。 冒頭の北海道の配達員も「今年6月に札幌で働いたときには、2.5㎞の距離を27分かけて配達しても報酬はたった300円。その日は3回連続で300円の案件に当たったが、これではとても割にあわない」とこぼす。2021年4月まで適用されていた料金体系であれば報酬額は486円(受取料金、受渡料金、距離料金の合計からサービス手数料を引いたもの)になるはずだが、それが4割近く減少していることになる。 業界団体である日本フードデリバリーサービス協会からの要望を受け、2021年9月から、厚生労働省は労災保険の特別加入の対象に、ウーバーイーツの配達員のような、自転車で配達する個人事業主を加えることを決めた。 特別加入制度では、個人事業主が事前に3500円から2万5000円の範囲内で「給付基礎日額」(平均賃金相当額)を設定し、これに保険料率を適用することで保険料が決まる。自転車や自動車を使った貨物運送事業の保険料率は1.2%であり、仮に日額を1万円とすると年間保険料は4万3800円になる。 正社員に限らず契約社員やパート社員など「労働者」であれば、労災保険料は会社側が負担する。だが個人事業主の場合、保険料は全額自己負担となる。 実際の報酬が少ないと保険料負担も重くなってしまう。都内でウーバーイーツの配達員として働く40代男性は「朝7時から夜22時か23時まで働いても、その日の収入が1万2000円程度あれば御の字という状況だが、これで保険料を自己負担してまで特別加入の労災に入るかは正直わからない」と打ち明ける。 労働問題に詳しい東京法律事務所の菅俊治弁護士は、「(保険による)配達員保護だけでなく、事業者間の公正な競争のためにも、プラットフォーマーを例外扱いするのではなく、一般の事業者と等しい規制を課す(会社が労災保険料を支払う)必要がある」と指摘する』、「事業者間の公正な競争のためにも、プラットフォーマーを例外扱いするのではなく、一般の事業者と等しい規制を課す・・・必要がある」、その通りだ。
・『事故の危険に直面する配達員たち  自転車での配達は事故に遭う危険とつねに隣り合わせだ。警察庁によれば、都内の交通事故における自転車関与率は40.6%(2020年実績)であり、年々その割合は高まっている。 配達員たちの労働組合「ウーバーイーツユニオン」が2020年1月から3月にかけて行った調査によれば、事故に遭った配達員の過半数は自転車を利用しており、事故の種類としては他の車両との衝突事故が最も多かったという。中には、自動車に衝突されたことで全治3カ月の被害に遭い、1カ月間の休業を余儀なくされた配達員もいる。 ウーバーイーツユニオンの代理人を務める川上資人弁護士は「企業が労働力を利用して利益上げるなら、その活動に伴って生じる危険には企業が負担を負うべきだ、というのが労災保険制度の趣旨だ。配達員を利用して利益を上げているウーバーイーツが、(労災保険の保険料を)配達員に自己負担させるのはおかしい」と指摘する。 また、労働問題に詳しい専門家からは、配達員は労働基準法などの労働法規が適用される労働者に当たるのではないかとの見方も出ている。 前出の菅弁護士は、「配達員に支払う配達料金を決めたり、需給を左右したりしているのはウーバーイーツだ。実際の契約実態をみて判断するならば、ウーバーイーツが運送主にあたり配達員たちは労働基準法が適用される労働者だと認められる可能性は十分にある」と話す』、法的位置づけを明確化する必要がある。
・『海外では規制強化が相次ぐ  すでに海外ではウーバーグループで働く人々を「労働者」と認定する動きが出ている。 2020年3月、最高裁判所に相当するフランスの破毀院は、配車サービスのウーバーのドライバーを従業員として認める判決を出した。2021年3月にはイギリスの最高裁でも同様の判断が示されている。最高裁判決が出された後、イギリスのウーバーは最低賃金や有給休暇などをドライバーに対して保証することを発表している。 法政大学法学部の浜村彰教授(労働法)は「デリバリー事業を遂行するうえで配達員は不可欠な労働力であり、なおかつ配達業務の対価として支払われる報酬はウーバーイーツが決めている。これらを踏まえると、配達員は少なくとも労働組合法における労働者とは認定されるはずだ」と指摘する。 同法で労働者性が認められれば、配達員たちの労組は報酬体系の透明性や契約内容の変更をめぐり、ウーバーイーツと団体交渉することが可能になる。ウーバーイーツは過去にユニオンが申し込んだ団体交渉を拒否している。 「自由な働き方を求めるがゆえに、労働時間の規制を望まないが、労災補償や最低賃金保障は必要とすると配達員もいる。労働基準法等の適用範囲については、そうした立場も考慮しながら柔軟に議論を重ねるのがよいだろう」(浜村教授) 個人請負という形で配達員を集め、サービス拡大を続けるウーバーイーツ。成長を目指すだけであればそれが手っ取り早いかもしれないが、企業としての社会的責任を果たさなければならない局面にさしかかっている』、「フランス」や「イギリス」の「最高裁」が「ウーバーのドライバーを従業員として認める判決を出した」、「イギリスのウーバーは最低賃金や有給休暇などをドライバーに対して保証することを発表」、やはり「日本」も早期に、法的位置づけを明確化する必要がある。

第三に、6月30日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「ウーバーイーツの「徒歩配達」が日本社会を激変させる、その「意外なメカニズム」 ITの本領が発揮される」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84642?imp=0
・『料理宅配大手のウーバーイーツが、日本国内でも徒歩による配達を開始すると発表した。ネットでは「意味不明」といった反応が多いのだが、シェアリング・エコノミーが持つ本質を考えた場合、徒歩配達が拡大する可能性は極めて高く、むしろ徒歩配達が最大のパフォーマンスを発揮する可能性すらある。さらに言えば、長いスパンで見た場合、人口の都市部への集約を加速させる作用すらもたらすかもしれない』、「ウーバーイーツが、日本国内でも徒歩による配達を開始」、「徒歩配達が拡大する可能性は極めて高く、むしろ徒歩配達が最大のパフォーマンスを発揮する可能性すらある」、なるほど。
・『すでに諸外国では徒歩配達が始まっている  これまでウーバーイーツの配達員は主に自転車を使って料理を配送していた。一部の配達員はバイクを使っているが、自転車やバイクで配達するには、事前にウーバーへの車両登録が必要だった。2021年6月21日からは、登録用アプリで徒歩での配達に切り換えることが可能となり、今後、新たに加入する配達員は徒歩のみでも配達が始められる。 自転車による配達の場合、駐輪する手間がかかるほか、階段や細い路地がある場所は通れないため、場所によっては徒歩の方が効率的になるケースがある。すでにニューヨークや香港など海外の大都市では徒歩による配達が導入されている。 このニュースに対してネットなどでは「意味不明」「近距離の注文など仕事として成立しない」など否定的な意見が目立っている。確かに現時点では徒歩圏内だけで配達員が十分に稼げる地域は限定的であり、あくまでお試しの措置であることは明らかである。 だがウーバーに代表されるシェアリング・エコノミーの本質を考えた場合、徒歩による配送というのはもっともポテンシャルが高い手法であり、長いスパンでは、これが驚異的な成果をもたらす可能性がある。 以下では徒歩配達と高度IT化社会の本質について議論していくので、半年や1年といった近いタームでの予想や、ウーバーのようなシェアリング企業に対する好き嫌いといった議論を望む方は本稿を読んでいただく必要はない。ITを駆使した徒歩配達が、中長期的に産業構造をどう変えるのかに興味のある方だけが読んでいただければよい。 一般的にITが普及すると、場所が離れていてもコミュニケーションが取れるので経済圏が広域化すると考える人も多い。実際、コロナ危機でテレワークが普及したことから、郊外の家に転居を希望する人が増えているという。ITツールを使えば、遠隔でコミュニケーションができるので、確かにIT化が進めば場所の制約は少なくなる。 だが、これは通信環境の改善というIT化がもたらした現象の一面を見ているに過ぎない。確かにITと通信は切っても切れない関係にあるが、通信というのは長距離通信だけを意味するわけではない。 社会のIT化が高度に進むと、世の中に存在するあらゆるモノが相互に通信し、情報を共有することで、オペレーションを最適化することが可能となる。実は、相互通信環境の確立によるオペレーションの最適化というのは、ITがもたらすパワーの中でもっとも破壊的な影響力があり、それは都市部や工場など人や設備が集約化されている場所でこそ威力を発揮する』、「自転車による配達の場合、駐輪する手間がかかるほか、階段や細い路地がある場所は通れないため、場所によっては徒歩の方が効率的になるケースがある。すでにニューヨークや香港など海外の大都市では徒歩による配達が導入されている」、確かに大都市では「徒歩」の方が効率が良さそうだ。「徒歩配達と高度IT化社会の本質について議論していくので、半年や1年といった近いタームでの予想や、ウーバーのようなシェアリング企業に対する好き嫌いといった議論を望む方は本稿を読んでいただく必要はない。ITを駆使した徒歩配達が、中長期的に産業構造をどう変えるのかに興味のある方だけが読んでいただければよい」、どちらかといえば、理論的な「思考実験」のようなものらしい。
・『配達員を「面」で配置すると…  今回はあくまでウーバーイーツ単独の話だが、今後、こうしたシェアリングの仕組みを使った配達業務が一般化すれば、アマゾンのようなネット通販とウーバーのような料理の宅配、ヤマトや佐川急便といった一般的な宅配サービスの垣根は限りなく低くなる。 ある地域に一定数以上の徒歩の配達員が存在しており、かつ、すべての情報が共有され、AIが最適な配送パターンを導き出せる環境にあれば、地域内で配達されるすべてのモノについて、究極的なレベルまで最適化が可能となる。 具体的に言えば、A配達員には、1丁目のある地点でウーバーの料理を受け取り、100メートル先の家に届け、その直後に、裏のマンションから宅配の集荷を行って、すぐ先の信号でB配達員にその荷物を渡す。同時に、A配達員はB配達員から今度は別の家に配達する荷物を受け取るといったオペレーションが可能になる。ある荷物は、4~5人の配達員の連続的な手渡しで顧客の家に配送されることもあるし、ある時は1人の配達員がずっとその荷物を持って家まで届けることもあるだろう。 どの配達員がどこにいて、どのような荷物が来ているのかという情報をAIが同時処理することで最適なオペレーションが決まる。 従来のモノの配送はウーバーならウーバーの配達員が、注文があるたびに店から顧客へと移動していた。同じ時刻には、別の事業者の配達員が、荷物を持って顧客の家に向かっている。さらに言えば、郵便局の配達員も同じように目的の家を目指して動いている。つまり従来の配送というのは、事業者ごとに多対多の関係があり、全体としてみれば効率の悪い運用になっている。 ところが徒歩配送のインフラが整い、域内で運ばれる荷物をすべての配達員に最適配分できれば、圧倒的に高い効率でモノを運べる可能性がある。しかも、この仕組みは面での対応ということになるので、機能の一部だけを提供する人でも、条件によっては仕事になり得る。 例えば健康上の都合から、マンションの敷地内だけに限定して配達したいという人がいれば、それも可能だろう。当該マンションへの配達があれば、すべてがその配達員に手渡しされることになるので、仮に1回の配送料が安くても、マンション内限定の配達員にとっては貴重な収入源となり得る。 一方で拠点が広域に分散している社会では、「面」での対応ができないため、従来と同様、点と点の個別対応にならざるを得ない』、「従来の配送というのは、事業者ごとに多対多の関係があり、全体としてみれば効率の悪い運用になっている。 ところが徒歩配送のインフラが整い、域内で運ばれる荷物をすべての配達員に最適配分できれば、圧倒的に高い効率でモノを運べる可能性がある」、独占などの問題を度外視すれば、その通りだ。
・『シェアリング・エコノミーが都市国家の出現を促す  一連の思考実験から、ITツールを駆使した高度なシェアリング社会というのは、広域経済ではなく、地域集約経済においてこそ、その本領を発揮することが分かる。つまり、社会のIT化には都市部への集約を促す作用があり、長期的には人口動態にも影響を及ぼす可能性が否定できないのだ。 社会が都市型経済にシフトしているというのは、実は東南アジアではかなり顕著な現象となっている。 東南アジアでは、配車アプリや料理の宅配が驚異的なレベルで発達しており、ある面では日本よりもはるか先を行っている。だが東南アジア各国の1人あたりのGDPは、もっとも豊かな部類に入るタイでも7815ドルと日本よりもずっと低い。 日本と比べて貧しいアジア各国において、なぜ日本を超える高度なITサービスが発達しているのだろうか。その理由は、アジア各国では都市部の成長が著しく、アジアの大都市はもはや都市国家に近い様相を呈しているからである。 アジアの主要都市における賃金はすでに先進国並みとなっており、日本との決定的な差は消滅している。しかも都市の規模が大きいことから、対外的にも圧倒的な経済力を発揮しつつある。 インドネシア・ジャカルタの都市圏人口は3000万人を超えているし、フィリピン・マニラの都市圏人口は2300万人、タイのバンコクも1500万人となっている。東京圏に匹敵する都市がアジアの各地に林立しているという状況であり、今後も人口増加が予想されていることから、これらの都市圏はさらに巨大化・高密度化していく可能性が高い。高度集約社会とITサービスの相性は高く、これがアジア地域でのITサービスの驚異的な発達につながっている。 ITサービスが高度に集約化された都市において本領を発揮する可能性が高く、しかも今後の成長エンジンがITサービスなのだとすると、高度なサービスを求めて都市部への人口集約が加速するとの仮説が成立することになる。 現時点ではコロナ危機の影響で、拠点分散がクローズアップされているが、イノベーションの本質が示している方向性はむしろ逆なのかもしれない。人口動態は様々な要因で変化するので、今後、具体的にどう推移するのか簡単に結論付けることはできない。説明するまでもないことだが、配達に従事する人たち(いわゆるギグワーカー)の権利保護を社会としてしっかり確立しなければ、下手をすると現代の奴隷制に転落する可能性もある。 だが、徒歩圏を中心としたシェアリング経済は極めて大きな富を生み出す可能性があり、どうすれば消費者や労働者の豊かな生活につなげられるのかもっと積極的な議論が必要だ。少なくとも高度IT化社会(あるいは高度シェアリング経済)というのは、「集約化」された経済圏が「面」の形で整備された時に、突出したパワーを発揮するという特徴について、頭の中に入れておいた方がよいだろう』、「東南アジアでは、配車アプリや料理の宅配が驚異的なレベルで発達しており、ある面では日本よりもはるか先を行っている」、「アジアの主要都市における賃金はすでに先進国並みとなっており、日本との決定的な差は消滅している。しかも都市の規模が大きいことから、対外的にも圧倒的な経済力を発揮しつつある」、「高度IT化社会(あるいは高度シェアリング経済)というのは、「集約化」された経済圏が「面」の形で整備された時に、突出したパワーを発揮するという特徴について、頭の中に入れておいた方がよいだろう」、「高度IT化社会」の発展は確かに大きなポテンシャルを持っているようだ。
タグ:東洋経済オンライン (その4)(元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟 プレーヤーはまだ増える」 元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」、個人請負無法地帯:労災保険料は配達員が「全額自己負担」の是非 ウーバーイーツ「急拡大」で問われる企業責任、ウーバーイーツの「徒歩配達」が日本社会を激変させる、その「意外なメカニズム」 ITの本領が発揮される) 「元出前館会長が語る「デリバリー大乱戦」の前途 「日本市場は未成熟、プレーヤーはまだ増える」 シェアリングエコノミー 中村利江氏の略歴は3頁目にある通り、1988年に関西大学文学部を卒業。リクルートなどを経て、出前館の代表取締役社長や同会長などを歴任。2021年4月、日本M&Aセンターの専務執行役員就任。「リクルート」出身のやり手のようだ。 中村氏は「日本M&Aセンター」に移ったとはいえ、「フードデリバリー市場」に身を置いている以上、前向きな姿勢は続けているようだ。 確かにかつての「イートイン一辺倒」は「ガラパゴス」そのものだった。 「テイクアウトやデリバリーに力を入れていたマクドナルドやケンタッキーはコロナ禍でも増収増益を続けている。イートイン一本足打法ではダメだというのは結果が示している」、その通りだ。「飽和状態にある飲食店数がコロナを機に正常な状態になることで、適正な利益を上げられるようになるのではないか」、これは希望的観測色が強そうだ。 東洋経済Plus 「個人請負無法地帯:労災保険料は配達員が「全額自己負担」の是非 ウーバーイーツ「急拡大」で問われる企業責任」 事故や病気で働けなくなると、一転、地獄に変わる。 「事業者間の公正な競争のためにも、プラットフォーマーを例外扱いするのではなく、一般の事業者と等しい規制を課す・・・必要がある」、その通りだ。 法的位置づけを明確化する必要がある。 「フランス」や「イギリス」の「最高裁」が「ウーバーのドライバーを従業員として認める判決を出した」、「イギリスのウーバーは最低賃金や有給休暇などをドライバーに対して保証することを発表」、やはり「日本」も早期に、法的位置づけを明確化する必要がある。 現代ビジネス 加谷 珪一 「ウーバーイーツの「徒歩配達」が日本社会を激変させる、その「意外なメカニズム」 ITの本領が発揮される」 「ウーバーイーツが、日本国内でも徒歩による配達を開始」、「徒歩配達が拡大する可能性は極めて高く、むしろ徒歩配達が最大のパフォーマンスを発揮する可能性すらある」、なるほど。 「自転車による配達の場合、駐輪する手間がかかるほか、階段や細い路地がある場所は通れないため、場所によっては徒歩の方が効率的になるケースがある。すでにニューヨークや香港など海外の大都市では徒歩による配達が導入されている」、確かに大都市では「徒歩」の方が効率が良さそうだ。「徒歩配達と高度IT化社会の本質について議論していくので、半年や1年といった近いタームでの予想や、ウーバーのようなシェアリング企業に対する好き嫌いといった議論を望む方は本稿を読んでいただく必要はない。ITを駆使した徒歩配達が、中長期的に産業構 「従来の配送というのは、事業者ごとに多対多の関係があり、全体としてみれば効率の悪い運用になっている。 ところが徒歩配送のインフラが整い、域内で運ばれる荷物をすべての配達員に最適配分できれば、圧倒的に高い効率でモノを運べる可能性がある」、独占などの問題を度外視すれば、その通りだ。 「東南アジアでは、配車アプリや料理の宅配が驚異的なレベルで発達しており、ある面では日本よりもはるか先を行っている」、「アジアの主要都市における賃金はすでに先進国並みとなっており、日本との決定的な差は消滅している。しかも都市の規模が大きいことから、対外的にも圧倒的な経済力を発揮しつつある」、「高度IT化社会(あるいは高度シェアリング経済)というのは、「集約化」された経済圏が「面」の形で整備された時に、突出したパワーを発揮するという特徴について、頭の中に入れておいた方がよいだろう」、「高度IT化社会」の発展は
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感