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2022年展望(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) [経済政治動向]

2022年展望については、1月2日に取り上げた。今日は、(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス)である。

先ずは、1月3日付けロイター「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-japan-stock-idJPKBN2J306W
・『2022年の日本株は堅調となり、日経平均は3万円を回復するとの見方が多い。主要国の中銀が金融政策の正常化に向かう中、世界経済の不透明感が強まるリスクがつきまとうが、日本株は出遅れからの見直しが進み、過去最高値に迫るとの予想もある。セクター別では、自動車関連が供給制約の緩和期待で有望視されている。インフレ下で上昇しやすい不動産にも関心が向かいそうだ。半導体関連は需要の継続力が注目点になる。 市場関係者の見方は以下の通り』、興味深そうだ。
・『堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏>  来年の日本株は、アップサイドの余地が残る一方、下値は限定的で、堅調な年になりそうだ。世界経済が再開していく中で、企業業績は22年に11%、23年に7%の増益が見込まれる。1年先の株価収益率(PER)は、米国の21倍、グローバル平均の18倍に対し、日本は14倍弱と開きは大きく、出遅れ感のある日本株は見直されやすい。 FRBが利上げを実施する中でも世界景気の堅調が続き、市場が自信を深める局面では3万2000円に向けて上昇するだろう。 海外で日本株を保有する投資家は少なく、買い増しの余地がある。ファンダメンタルズの改善で主要国から遅れている日本株は、海外の株式市場がピークアウトしていく中で比較的堅調になるだろう。米国で利上げが始まれば、先行して上昇してきた米株から出遅れ国・地域への資金シフトが起こり得る。日本株は、新興国に次ぐ受け皿の候補になり得る。 セクター別では、自動車の業績とバリュエーションのバランスの良さに注目している。今後、供給網問題が緩和して業績の回復感も強まっていくだろう。不動産も有望だ。インフレとなる際に、株価が上がりやすい。経済再開の動きが強まればオフィス空室率もピークアウトするだろう。グローバルに利上げ局面に入る中で、金利感応度の高い銀行も買われそうだ。企業が抑制していた設備投資を再び拡大する中では、ITサービスの成長性も高い。 ただ、全体では大きく盛り上がる様子でもない。米国の金融政策正常化が進む中で米株安となれば、やはり日本株は上値を抑えられるリスクがつきまとう。日本では経済安全保障推進法の議論が浮上しており、日中関係への影響にも注意が必要だろう。参院選は重要イベントだが、現状では無風通過をメインシナリオとしている。 日経平均の2022年予想レンジ:2万8000―3万2000円』、なるほど。
・『年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>  2022年の株式市場は、中盤にかけて調整局面が訪れるとみている。その大きな要因は、米国で春ごろにテックサイクルがいったんピークアウトするとみられること。これまで半導体関連株が相場をリードしてきたが、これらが調整することによって、株式市場は影響を受けることになりそうだ。 国内については、岸田政権が打ち出した「単年度予算」の弊害是正が進行するかが注目点となる。これが進行すれば、重要インフラの整備がより進むことに繋がるため、政策課題としては大きなポイントになりそうだ。22年は夏に参議院選挙を控えるが、この単年度予算の修正が進めば、与党が負けることはないだろう。 米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか。一方、新型コロナウイルスに関しては完全に織り込むのは難しいだろう。日経平均は6月ごろに2万4000円までの調整がありそうだが、その後は上向き、来年度末の2023年3月には3万3000円を指向すると想定している。 物色面では、自動車、通信、電子部品などが考えられるが、5Gなど通信関連の設備投資に一巡感が出た場合、金融株に戻る可能性も出て来る。 日経平均の2022年予想レンジ:2万4000─3万1000円』、「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。
・『上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>  来年のマーケットを取り巻く環境は、いくつかの注意すべき懸念材料があるものの、日本株は上昇基調を維持するとみている。底堅い企業業績とともに、株価は上向きに推移するだろう。日経平均の値がさ株やグロース株が引き続き日本株のけん引役になるとみている。 変異株の感染動向、世界的な供給制約、物価の高止まり、金融政策正常化などは、引き続き注視すべき材料ではあるものの、大きな波乱要因にはならない。オミクロン株を巡ってはコロナワクチンのブースター接種(3回目・追加接種)の効果が見え始めているほか、飲み薬の開発にも進展が見えており、重症化のリスクは抑制されている。 また、供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める。米連邦準備理事会(FRB)も景気が冷え込むほど速いペースで利上げを行うとは考え難く、いずれも時間の経過とともに脅威ではなくなるだろう。 注目すべきイベントは、夏に行われる参院選だ。自民・公明の与党が勝利するとなると、当面は国政選挙が行われない。岸田政権は長期安定政権に踏み出す布石として、早々に財政再建を進め、金融所得課税強化などといった株式市場が嫌気する政策を打ち出す可能性があるので、注意が必要だ。 日経平均の2022年予想レンジ:2万7300─3万5300円)』、「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。
・『日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>  来年は日本株の見直しが進むとみている。主要な中銀が金融引き締めの方向に向かい、世界経済の成長は鈍化が見込まれる一方、回復で出遅れた日本経済は来年にかけて回復基調が鮮明になり、日銀による金融緩和の継続も相まって、相対的にファンダメンタルズ良好と評価されるだろう。 足元の日経平均PER13倍台は歴史的な低水準で、堅調な企業業績の織り込みはこれからといえる。よほどのショックがあれば瞬間的に下落する場面はあり得るが、下げ余地は大きくはない。国内の経済再開を受けて陸運、旅行関連は有望だろう。供給網の問題が解消に向かう自動車も期待できる。半導体関連も、5Gや電気自動車(EV)などで需要拡大が見込まれ堅調だろう。 新型コロナウイルスの感染拡大リスクはくすぶるが、人類はワクチン開発力や新たな生活様式の経験などを蓄えてきており、ネガティブなインパクトは抑制されるだろう。コロナ影響は沈静化に向かうというのがメインシナリオとなる。 日本企業の収益は今期、約5割の伸びが見込まれるが、来年は世界景気の鈍化を受けて6%程度に縮小しそうだ。1株利益(EPS)の伸びが限られる中、日経平均の株価収益率(PER)が歴史的な平均値である15倍程度に高まる中で、株価は3万8000円程度となるだろう。 ただ、日本株だけが選好されるような展開は想定しにくい。岸田文雄首相から金融所得課税や自社株買い規制への言及があった。成長戦略を欠くまま分配が強調されれば企業の活力が削がれ得る。反市場主義的なスタンスが続くようなら、外国人投資家は日本株を敬遠しかねない。 日経平均の2022年予想レンジ:2万9000─3万8000円)』、ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。

次に、1月3日付けロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-idJPKBN2J61C2
・『岸田文雄首相は、2022年夏の参院選が終わってしまうと「安倍離れ」を急速に進めるのか──。仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。2021年12月、都内の首相官邸で代表撮影(2022年 ロイター) 仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。さまざまな食品の値上げが22年1─3月期を中心に予定されており、エネルギー高に加わる家計への打撃が及ぶ中、「悪い円安」論に乗る形で、岸田首相が「異次元緩和は修正されるべきだ」と考え出すようなことはないのか。 落ち着いている円金利市場と異なり、為替市場の一部では、日銀の金融政策に関する思惑がくすぶっているようである。 ドル/円相場の行方を考える場合には当然のことながら、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策や米国株が主たるドライバーになる。利上げについてはその開始時期よりも利上げ局面の終着点(ターミナルレート)の水準の方が、はるかに重要である。 また、米国株は、利上げに関連して大幅な下落が続く場合、世界の金融市場を「リスクオフ」に傾けて、為替市場ではクロス円取引を中心に円買い圧力を増大させる要因となる。そうした点についてはコメントがすでに多数出ているので、ここでは視点を変えて、日銀の金融政策に何らかの変化が22年に生じる可能性について考えてみたい。 <アベノミクス修正はあるのか  岸田首相は12月23日に講演した際、日銀の金融政策に関し、物価目標2%の実現に向けて「努力すると期待している」と述べた。 この1カ月半ほど前、11月4日に首相官邸で黒田東彦総裁と会談した岸田首相は、内外の経済・金融情勢について意見交換した。物価目標2%を盛り込んだ13年1月の政府・日銀共同声明も話題になったという。安倍晋三内閣から菅義偉内閣に受け継がれたこの共同声明は、岸田内閣でも当面、そのまま維持される可能性が高い。 だが、仮に夏の参院選で自民党が勝利すれば、岸田首相の政治的求心力は強まる。すでに外相などの閣僚人選で安倍元首相の意向に反する動きが散見される岸田氏が「安倍離れ」を強めると、金融市場では冒頭にも述べた通り、「アベノミクス」の事実上の根幹である異次元緩和が何らかの形で縮小されるのではないかという思惑が浮上しやすくなる。 そうしたことを早めにけん制する狙いからなのかは不明だが、安倍元首相は12月26日のテレビ番組で、岸田内閣の経済政策について「根本的な進む方向をアベノミクスから変えることはすべきではない」「社会主義的な味付けになっていくのではないかととられると、市場も大変マイナスに反応する。成長から目を背けると思われないようにしないといけない」と述べた。 岸田内閣の「分配」重視路線は、海外の株式市場関係者の間では評判が良くないようである。「アベノミクス」を好感して海外勢が日本株を買い上げた経緯があるだけに、その修正を図る路線は、安倍元首相の言う通り、日本株の売り材料になる可能性が高い。 一方で、「アベノミクス」の下で拡大したとされる所得格差を岸田内閣が政策的に是正することを、少なからぬ有権者が期待している。内閣支持率を高めの水準に維持するために岸田首相は「成長あっての分配」と口にしつつも、「分配」に目配りした政策を断続的に打ち出す必要があるだろう。 このジレンマの中で、「分配」に関する政策では岸田首相に一種の「さじ加減」が求められてくる。だが、そうしたジレンマの中で、仮に岸田内閣が日銀の異次元緩和の修正を何らかの形で活用しようとしても、確たる成果は得られにくいように思う。 <日銀ステルステーパリグンの意味>  海外投資家から日銀の金融政策に関連する質問が寄せられた際に、あぜんとすることがある。日銀がやっていることの実情は、外国人にはあまり知られていない。 FRBのように日銀はいつ「テーパリング」するのか、という不思議な質問が寄せられることがある。言うまでもなく、16年1月にマイナス金利を導入した際、日銀はターゲットを「量」から「金利」へと明確に切り替えているので、長期国債買い入れの金額にノルマは存在しない。日銀当座預金の政策金利残高にマイナス0.1%、10年物国債利回りにゼロ%程度という長短金利ターゲットを設定したイールドカーブコントロール(YCC)の下で、それと整合的なイールドカーブが形成されるような長期国債の買い入れを実施している。 21年11月末に日銀が保有している長期国債残高は、前年同月末比プラス16兆3265億円。ターゲットがまだ「量」だった頃、この数字はプラス80兆円を超えていたので、実態としては「テーパリング」的なことはすでに相当進んでいるわけで、これを「ステルス(隠密)テーパリング」と呼ぶ向きもある。 ETF(上場投資信託)買い入れはどうか。21年3月に行った金融緩和策の「点検」の際に日銀は、ETFの買い入れ手法を「柔軟化」したという体裁をとりつつ、相場急落時以外の買い入れは行わない態勢に移行した。ETFの新規買い入れからは事実上「撤収」したと言っても過言ではあるまい。 日銀は現在の金融緩和策の柱の1つとして、「オーバーシュート型コミットメント」を掲げている。これは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束するもの」である。 その一方、日銀は21年12月の金融政策決定会合で「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」(コロナオペ)のうち、民間債務担保分は22年3月末で終了し、制度融資分とプロパー融資分は半年間だけ延長することを決定した。コロナオペの残高は足元で80兆円を超えている。満期到来でこれが全部なくなれば、マネタリーベースが落ち込むことは避けられない。海外投資家の間で「日銀は金融緩和縮小に転じたのではないか」「YCC見直しがあるのではないか」といった思惑が生じる可能性が潜在している。 <緩和修正の思惑と円高>  この点について、日銀はどう説明して乗り切りを図るのだろうか。12月会合における主な意見には「昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない」「特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない」といった意見が出されたことが記されていた。 そうした日銀による説明(一種の言い訳)がどこまで為替市場で通用するかは見ものだが、それが本来的な意味での「異次元緩和の縮小」でないことは確かである。 このように、22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある。 また、参院選が終了した後には、岸田首相の言動も市場の関心事になりやすい。FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まると、筆者はみている。 とは言え、結局のところ、日銀の異次元緩和は22年以降も淡々と続いていくことだろう。(上野泰也氏の略歴はリンク先参照)』、「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。

第三に、1月10日付け日刊ゲンダイが掲載した同志社大学教授の浜矩子氏による「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」を紹介しよう。
・『今年は過去にないほど先行きが見通せません。考えられる最も恐ろしいシナリオについてお話ししましょう。 世界中で突如としてインフレが再来しています。米FRB(連邦準備制度理事会)はこのインフレを一時的な現象と見るのをやめ、本格的な対応にシフトし始めました。英も利上げに踏み切り、EUもおおむね同様の方向です。それに対し、全く違う世界にいるのが日本。グローバルな展開からデカップリング(分離)してしまった日本に、これから何が起きるのか。とても気がかりですが、いよいよ日本経済がミイラ化する恐れがあると思います。 日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス(国外脱出)が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です。 それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです』、「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです」、黒田総裁の罪はまことに深い。
・『賃上げしない大企業には懲罰を  「聞く力」=朝令暮改というフワフワ男のアホダノミクス(岸田首相)に対応力があるとは思えません。軟弱男に任せてはおけないと、自民党内の強硬派や、あるいは日本維新の会あたりが強権発動に動くかもしれません。 あたかも戦間期における軍部のようなヤカラが出てきて、厳しい経済運営をテコに、「軟弱なことを言っている場合じゃない」と憲法改正の議論も進んでいく。21世紀の2.26事件のような空恐ろしさを覚えるシナリオです。縁起でもありませんが、これを極論だと笑っているのは危うい。最悪シナリオを何としても避ける知恵が求められます。 まずは賃金が上がらないという閉塞状況からの脱却が急務でしょう。しかし、アホダノミクスの賃上げ政策はいただけない。「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです。もっと思い切った歯切れのいい政策を打ち出すべきなのです。 はやりのSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境、社会、ガバナンス重視の投資)では、「まともな賃金を払う」ことが重要なアジェンダになっています。これを盾に取って企業に賃上げを求めるという手もあるでしょう。賃上げをしなければ投資家に敬遠されたり、企業イメージがダウンしたりしますよ、という形で脅しをかけるのです。そうでもしないと、なかなか歪んだ経済実態をあるべき姿に戻していくことは難しいでしょう。異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません』、「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、意欲的な案だ。「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ。
タグ:2022年展望 (その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) ロイター 「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」 堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏> 年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏 「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。 上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏 「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。 日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏 ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。 ロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」 「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。 日刊ゲンダイ 浜矩子 「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」 「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融 「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ
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インバウンド戦略(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) [経済政治動向]

インバウンド戦略については、2020年10月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定)である。

先ずは、2020年11月10日付けJBPressが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62800
・『秋の富士山麓で妙なホテルに出くわした。ホテルの看板はかかったままだが、フロントまでのアプローチには落ち葉が積り、広い庭も手入れされている気配がない。従業員や客の姿は1人も見当たらない。どうも“廃墟”と化しているようだ。 エントランスで資材を運搬する施行業者に「このホテルには泊まれますか」と聞いてみたのだが、何の反応もない。彼らは日本語を話せないアジア人のようだ。 近くの飲食店に入り、従業員に「あのホテルはどうしたんですか?」と尋ねると、「中国人が経営するホテルですが、いろいろな噂があるホテルです。支配人が1カ月ももたずに交代してしまうという噂を聞いたことがあります」と言う。 新型コロナウイルスでとどめを刺されたということなのだろうか。インターネットのホテル予約サイトで検索すると、予約の受付は中止されていた』、「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。
・『インバウンドブームで宿泊施設が急増  山梨県と静岡県にまたがる富士山麓周辺には、多くの宿泊施設がある。山梨県では2014年以降、旅館は年々減少したが、ホテルや簡易宿所は反比例する形で増加した。富士山麓周辺でもホテルや簡易宿泊施設が次々に開業した。) 富士山麓の宿泊施設で特徴的なのは、企業が手放した保養所などを中国資本が買い取ってホテルに改装するケースが多いことだ。冒頭のホテルも、日本の某上場企業が手放した保養所を中国資本が買い取った施設のようだ。 実はもともと富士山麓は日本人の観光客が少ない場所であり、宿泊施設も多くはなかった。富士山は遠方からでも見えるため、わざわざ山麓まで行って眺めてみようという人は少ない。 ところが2010年代に入ってからのインバウンドブームで、中国人観光客に照準を当てたインバウンド専門の宿泊施設が急増した。富士山麓の宿泊施設で働くRさんに訊ねると、「このあたりに中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのではないか」と話していた』、「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。
・『職場はブラック、客へのもてなしも皆無  そうした中国資本の宿泊施設では一体どんな経営が行われているのだろうか。今回、中国資本の宿泊施設に勤務した経験を持つ日本人男性Kさんから事情を聞くことができた。 Kさんは、中国のツアー会社が毎日のように団体客を送り込んでくるホテルで、受け入れを中心とした業務を担当していた。) 「ある中国系のホテルで働きましたが、まったく休みが取れない日が3カ月続きました。勤務時間は朝6時から23時までです。ひどいときは朝4時まで働き、ナイトフロントも担当しました。中国人スタッフもいましたが、宿泊者とのトラブル解決はすべて私がやらされました」 初任給は23万円。その後、若干の上乗せがあったとはいえ、とても激務に見合うものではなく、Kさんは1年で退職した。Rさんに意見を求めると「日本の労働基準法を完全に無視しています。文句を言わない真面目な日本人がこき使われているとしか思えない」と語る。 そもそも中国資本の宿泊施設の一部は、日本の法令を遵守しようという意識が希薄である。たとえば客との金銭の授受は中国の決済アプリを利用して行い、「ここはホテルではなく自分の別荘だ」と言い張る経営者も少なくない。Rさんは「そうした施設には、納税も期待できない」と言う。 Kさんが勤務していたホテルは、建物の老朽化が進み、客へのもてなしも皆無に等しかったという。「館内にはこれといった施設もなく、中国人観光客はチェックインしたあとはただ寝るだけでした。ツアーの内容もひどいもので、客は夜には外でラーメンや牛丼を食べさせられ、朝食はコンビニでパンを買わされていました」と振り返る。 初めて訪れた日本でこんな扱いをされたら、期待を膨らませて訪日した中国人観光客も日本に幻滅してしまうだろう』、「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。
・『中国の旅行会社も吹っ飛んだ  なぜ、そんな状況が生まれたのだろうか。背景にあるのはダンピング競争である。 2015年前後に急激に拡大した日本のインバウンド市場において、団体客を受け入れる宿泊施設は常に「コストとの戦い」を強いられてきた。 かつては1人1泊8000円で提供していた宿泊施設も、中国の旅行代理店からの度重なる減額要求で5000~6000円への値下げを余儀なくされた。その金額では、とても手厚いサービスは提供できない。 さらに売掛金の回収問題が宿泊施設に追い打ちをかけた。中国の旅行代理店が、宿泊料金(ツアー料金の中の宿泊施設側の取り分)を決められた期日までに支払ってくれないのだ。宿泊客を送り込んでくれる中国の旅行代理店は、なくてはならない存在だが、集金はきわめて骨が折れるという。催促の電話をしてもとぼけられたり、居留守を使われたりしてしまう。互いに中国資本であっても、まともな交渉にならないのが実態だ。 あるインバウンド専門ホテルの経営者は「中国の旅行会社は、調子がいいときも支払いが悪い。コロナ禍となればなおさらです」と語る。確かに中国の旅行会社の経営は青息吐息だ。上海の旅行代理店に状況を尋ねてみると、こう説明してくれた。「当社は、当面のあいだ海外旅行の需要はないだろうとの見込みから、ツアー商品を国内旅行に完全にシフトしました。コロナのせいで、中には海外旅行部門を解散させた代理店や、会社ごと吹っ飛んでしまった代理店もあります」。 2019年の訪日外国人旅行者は3188万人。そのうち中国から訪れたのは959万人だった。中国人客が全体の3割と高いシェアを占める中で、団体ツアーを受け入れる宿泊施設は「質ではなく価格」という大陸式のダンピング競争に呑み込まれていった。新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは空前のインバウンドブームが続いており、たとえ劣悪なサービスの宿泊施設でも高稼働が続いていた。 だが、コロナ禍によって状況は一変した。日本を訪れる中国人旅行客は消え、ダンピング競争にストップがかかった。事業者にとって損失は計り知れないだろうが、「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、これを天の配剤と受け止める事業者もいる。インバウンドの第2ラウンドでは、渦に呑み込まれない経営がカギとなりそうだ』、「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。

次に、2021年2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱総合研究所研究員 の劉 瀟瀟氏による「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413599
・『世界でワクチン接種が始まっている今、オリンピックなど、観光産業の復興についての議論が再び視野に入ってきた。特に日本の観光産業を支えてきたと言っても過言ではないインバウンドはコロナ禍で一気に蒸発し、日本の観光産業に大きくダメージを与えている。 2014年からインバウンド、特に訪日中国人富裕層の動向を研究している筆者が知っている範囲でも、多くの企業や自治体が、消費金額と影響力が高い訪日中国人富裕層の誘致に取り組む予定だったのが、コロナ禍のため頓挫してしまい、「これからも来てくれるのか」と不安に思っている。 そこで今回は、中国の大都市に居住する若い富裕層(20~30代、世帯年収3000万円以上、資産2億円以上)9人にインタビューを実施。彼らは欧米への留学経験があるエリート層で、親日でもあり、日本の観光業にとっては欠かせない層である。さらにインタビューと合わせて、コロナが落ち着きつつある中国国内の観光事情も紹介する』、「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『コロナ前の状態に戻りつつある  日本ではまだまだ待ち遠しい「旅行」だが、中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にある。春節で移動は制限されたものの、40日間で延べ17億人が移動したと報じられている。 今年の春節の移動者数はコロナ流行前の2019年と比べると4割程度少ないが、北京市の旅行収入は2020年の2.9倍になった。また、中国の真南に位置する海南島の離島免税品(中国国内にいながら買える免税品)売り上げは前年に比べ261%増の9億9700万元(約158億円)になった。徐々にコロナ前の状態に戻ってきていることがうかがえる。 富裕層たちへのインタビューによれば、昨年の初夏から今まで通りに国内旅行・出張をするようになったが、コロナ以前と比較すると大きく3つの変化が見られたようだ。 その1つ目は、中国国内のホテルや周辺の観光施設のレベルアップが著しいことだ。コロナ感染への心配もあり、最近の中国人はホテル内で楽しむ傾向が高い。上海や広州など大都市はもちろん、雲南省、四川省、福建省といった地方都市への関心もますます高くなっている。 富裕層を代表する旅行ブロガーのLulu氏は、「(仕事で世界中のいいホテル、リゾートに泊まっているが)この1、2年、国内のホテルのレベルアップは速い」と話す。特に中国国内のホテルのいちばんの弱点である「美意識」や「デザイン」が、近年海外でデザインの仕事をして帰国したデザイナーや、海外のデザインチームに発注することで改善されつつある。 中国人は世代と居住地の違いによって美意識に大きなギャップがある。50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む。一方、無印良品のブランドを冠する「MUJIホテル」のような、「わびさび」の日本文化と美意識は若い世代に強く影響を与えている。そのため若い人たちは洗練されたデザイン(日本・先進国で称賛されたテイスト)を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ』、「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。
・『インテリアも購入できる高級ホテル  富裕層やブロガーの中で人気がある、雲南省のHyllaはその一例である。部屋から観光名所の玉龍雪山の絶景雲海が見えるよい立地にあるだけでなく、コンセプトからインテリアまで徹底的に若い世代の富裕層のニーズを意識して設計されている。 例えば、Hyllaにはアンティークの家具を扱うパートナーがいる。高価なSirocco chair、The Spanish Chair、ルイスポールセンのフロアランプ、イサム・ノグチのテーブル……、と、洗練された空間で宿泊客を魅了しているのだ。 なお、部屋ごとにデザインが異なり、気に入った家具・インテリアがあったら宿泊者は購入することも可能だ。 こうしたショールーム型のホテルは北欧や日本でも少しずつ増えている。高級で洗練されたセンスが良い家具やインテリアの使用感を試してみたい中国人富裕層にとっては嬉しいサービスである。 また、ホテルに泊まるたびにインテリアが販売されるため、部屋のデザインも変化している。そのためリピーターになりやすい。 つまり、週末や小旅行なら中国国内でも満足できそうな状況になりつつあるのだ。) 2つ目の変化は異国情緒が味わえる観光地が人気であることだ。その一例が、マカオである。マカオは感染者数が少なく、中国大陸の観光客を誘致するためにさまざまな策を講じている。例えば日本の「GoToトラベル」のような、一定額以上の買い物をすると、買い物券・旅行券はもちろん、フォーシーズンズなど高級ホテルの宿泊券がもらえるキャンペーンも行っている。 宿泊券の場合は、本人が3カ月以内にマカオを訪れなければいけない条件があるが、確実にリピーター育成につながる。実際、上海や北京に住んでいる若い富裕層は、中国国内でいちばん「異国情緒」を感じられるのはマカオだと認識しているようだ。インタビューでも月1回程度、飛行機でマカオに行くという話が多々聞こえてきた。 3つ目の変化は、ホテルだけではなく、中国国内でも海外並み、ないしはそれ以上のサービス・体験ができるようになっていることだ。数年前まで先進国でしか体験できなかったことが中国国内でもそれ以上にできるようになっている。 今回のインタビューで印象深かった一例は、高級ジュエリーのティファニーが手掛ける「ティファニーカフェ」だ。東京にもあるティファニーカフェだが、上海のほうが規模も大きくメニューも圧倒的に多い。 当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない』、「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。
・『回復を下支えしている要因  こうした中国国内の観光業を下支えしているものは、2つあると考えられる。1つ目は全国規模の「健康QRコード」がコロナ感染の拡大をコントロールしていることである。 昨年3月の記事でもご紹介したとおり、ビッグデータを駆使している中国では、感染者との接触経歴、自己申告などに基づき、スマホに表示されるQRコードの色が変わる。どこにいってもよいのは「緑」で、緑であれば普通に生活・移動することができる。 「赤」「黄」では自宅などで隔離する必要がある。もちろん、現地の人からすれば不要だと思われる隔離政策もあるようだが、それでも「多少の不自由はあっても、トータルに考えたときに有効な方法だ」と考えている人々が大多数のようだ。 ちなみにインタビューした中国人富裕層は日本の新型コロナウイルス接触確認アプリのCOCOAの不具合や、感染者数のファックス送信や手動入力に仰天していたが、「自粛だけで感染をコントロールできてえらい、さすが日本」と感心もしていた。 2つ目の理由は最近のチャイナブームだ。日本にいると見方が違うかもしれないが、中国はコロナ感染状況を抑え込んだ国の1つでもある。 その結果、若い人たちには愛国心の高まりも見られつつある。また、国内のサービス業、ブランドは年々レベルアップしており、若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成されている。特にコロナ禍の観光では、今まであまり注目されなかった地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている』、「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。
・『富裕層の日本に対する関心  中国国内の観光業はコロナ禍の中で、健康QRコードやチャイナブームといった相乗効果により、回復傾向にある。日本の観光業にとっては今まで相手にならなかったかもしれないが、今後「小旅行」「高級リゾート週末」などのジャンルにおいて、中国の観光業がライバルになる可能性がある。 ただその一方で、日本の観光業にとって希望が持てるデータも存在する。中国の旅行サイトCtripの調査では中国人が海外旅行解禁された後にいちばん行きたい国は日本だった。また、コロナが収束すれば、中国人の海外旅行は2022年にはコロナ前の2019年に戻るとの予測もある(中国出境游研究所)。 さらに今年の春節の中国で大ヒットになった映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(中国公開2021年2月12日、日本公開は延期)のロケ地は日本である。長澤まさみ、妻夫木聡など人気の俳優たちも参加し、中国版ツィッターのweiboで「はやく日本に行きたい」とのつぶやきもある。 前出のLulu氏の話を聞いても「周りの富裕層、ブロガーの友達は、今いちばん行きたいのはやはり日本だ」という。理由を聞くと、「中国国内の観光はハードの部分が急成長しているが、ソフトの部分はやはり日本にかなわない」ためだ。 「日本は近いし、食事もおいしいし、サービスが素晴らしい。細かいところまでデザイン性が高く、包装のレベルの高さにいつもドキドキする。ヨーロッパほどブランド品は安くはないが、本物だし、日本の化粧品のほうが中国人に合う」と話す。) それでは日本の政府、ないしは観光業はどうすればいいのか。まず考えられるのは、ワクチン接種が確認できるデジタルパスポートの検討だ。ワクチンを接種した人しか来日できないようにし、飲食店や店舗に入る際も提示を義務付けるなど、接客側と観光業者側双方に安心できる仕組みを検討するのは必須だと言える。ただ、より有効に機能させるためには、日本人にも同じような仕組みが必要だろう。 また、まだ日本に来られない富裕層や影響力が強いブロガーを取り込む策としては、「オンライン×オフライン」のサービスを検討する必要もあるだろう。コロナ禍ではリモート観光に取り組む事例も増えているが、例えば、観光コンシェルジュが中国人富裕層に日本の高級リゾートを案内しながら、体験してほしい商品も郵送するといった方法も考えられる。 子どもの短期留学をオンラインにして日本語や伝統文化が体験できるプライベートクラスを開催するのも1つの手だ。またM&Aなど富裕層の関心が高い案件(介護施設・健康関連への関心が高い)を紹介し、現地のオンライン訪問や、コーディネートをフォローするといったことも考えられそうだ』、「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。
・『日本への旅行のニーズはまだまだ高い  日本の観光業者は、ポストコロナの訪日中国人富裕層へのアプローチを研究する際、上述の具体的な内容はもちろん、訪日中国人富裕層のニーズが変化しているというトレンドも忘れてはいけない。 以前、インバウンドで注目された商品など「モノ」の購入、そしてアクティビティーなどの「コト体験」は、今後海外旅行のニーズとしてますます顕著になるとみられる。 中国国内のデータ調査結果や今まで筆者が実施した富裕層へのインタビューからも、有名なレストランで食べて高いホテルに泊まるというニーズから、日本で食事・宿泊・観光することを通して文化・マナーの勉強をしたいというニーズへパラダイム・シフトが起きていることが見えてきている。 中国人観光客へのアプローチとして、スペインは、中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等を活用し、「地方」「自然」「小旅行」への対応を検討しているようだ。中国人の日本旅行へのニーズが高い今だからこそ、日本の観光業はコロナからの回復を待つだけではなく、富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要があるだろう』、「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。

第三に、8月21日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの山田 稔氏による「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448634
・『7月中旬、北海道・ニセコを訪れた。ニセコは札幌から直線距離で南西に60kmほど離れた日本有数の国際リゾート地だ。 高級コンドミニアムやホテルが立ち並ぶ中心街(倶知安町のひらふエリア)に真夏の強い陽射しが照りつける。気温は30度を超えている。リゾート客でにぎわう冬とは様相が一変し、周囲は閑散としている。ゲレンデのふもとに設置されたトランポリンの遊具でオーストラリア人の親子が遊んでいるぐらいだ。タンポポが咲き誇る草むらの正面に見える羊蹄山の姿が美しい。 中心街をしばらく進むと、大型のコンドミニアムホテルの建設現場が見えた。数年前に訪れたときは「温泉調査中」の鉄塔が立っていたところだ。建設中の建物に近づいてみると、シンガポールの会社名と代表者の名前が記載されている。開発区域の面積は1万292㎡。工事着手は2018年10月、完了は2022年9月30日となっている。他の所でも建設中の物件や温泉の掘削が見られた。コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ』、「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。
・『不動産広告を手に取ると…  国際リゾート地だけあり、このあたりの街並みの看板はほとんど英語表記だ。「REAL ESTATESALES」の立て看板の横にあるポストにFREE!と表示があり、ポストの中には物件情報誌が積み上げられていた。1冊入手してチェックする。気になる販売価格はどうなっているのか。 かけ流しの天然温泉風呂(内風呂、露天風呂)完備のヴィラ5億3800万円 茶室と専用ウッドデッキが備わった新築タウンハウスユニット3億6800万円 倶知安中心部国道5号線沿いの商業物件(1階は回転ずしエリアと厨房など、2階は事務所、居住エリア)1億4175万円 家具付き高級ブティック使用のコンドミニアム(1ベッドルーム)4890万円 こうした高額物件のオンパレードである。これがニセコエリアの不動産取引の一例だ。 国内外からの活発な投資を背景に、ニセコエリアの中心部にあたる倶知安町の2021年の公示地価は商業地、住宅地ともに上昇率が日本一となっている。商業地は4年連続、住宅地は3年連続というから突出した存在だ。香港を中心とするアジア人投資家の取引が活発な土地ならではの現象である。北海道を代表する札幌の繁華街・ススキノ地区の地価が前年比で下落したのとは対照的だ。 「世界的にコロナ感染が拡大してからは訪れるのは国内のお客さんだけですね。外国人も国内在住の方です。昨年の緊急事態宣言では、冬場だけ働いていていた外国人が帰国できず、〝コロナ難民〟と言われていたのですが、そのまま住み着いた人たちもいます」(地元観光業者) また、2030年度末に北海道新幹線が延伸し、新函館北斗~札幌間の約212㎞が開業予定だ。同区間にはニセコエリアの倶知安駅も含まれ、駅前が整備される予定だ。さらに、2030年札幌五輪誘致の動きもある。 「一時と比べて投資熱は落ち着いたものの、北海道新幹線延伸などを見越した海外富裕層の投資活動は続いています」(同)という。 実際、今年に入りマカオなどでカジノを運営する大手グループがニセコでホテル等を開発すると発表。投資金額は400億円との報道もあった。また、6月にはマレーシア企業のコンドミニアム建設も報じられている。 開発エリアも拡大中だ。かつては冒頭のひらふエリアが開発の中心だったが、最近は少し離れたエリアでも開発が盛んだ。 たとえば、昨年オープンした外資系高級ホテル、パークハイアットニセコHANAZONOや2023年開業予定の同じく外資系高級ホテルのアマンニセコが位置するエリアは、それぞれ4~6km程度離れている』、凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。
・『最新のデータを読み解くと?  ニセコへの投資熱は当分陰りそうにないが、こうした外国資本による北海道を中心とした全国の土地の売買が活発になったのは平成の半ばごろからだ。リゾート用地の場合、その土地の利用区分が森林であることが多い。森林の売買情報は林野庁、北海道林務局がとりまとめており、最新の統計が8月3日に公表された。 2020年1月から12月までの「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(林野庁)をみると、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われるものによる買収事例は、全国で12件、森林面積は22haとなっている。12件中8件が北海道で、面積は20ha。残りは神奈川県箱根町2件、京都市2件。 これに加えて国内の外資系企業と思われる者による買収が、全国で26件404haある。つまり2020年中の外資による森林買収の合計は38件、424haということになる。 コロナ禍前の2019年1月から12月のデータを見てみよう。まず居住地が海外にある外国資本による買収は全国で31件、163ha。国内の外資系企業による買収が31件、288ha。合わせて62件、451haとなっている。 2020年はコロナ禍の影響で海外の不動産関係者らの来日がままならなかったこともあり、買収事例が大幅に減少したとみられる』、なるほど。
・『外資の手に渡り続ける「北海道の森林」  これまでの買収を含め、北海道の森林をめぐる外資の所有状況はどうなっているのだろうか。北海道林務局森林計画課がまとめたデータをご覧いただきたい。 道内でもやはりニセコ地域に集中しており、面積ベースで約3分の1を占める。 2020年12月末現在、海外資本等(海外資本と国内の外資系の合計)による森林所有面積は、北海道全体で3085haにも及ぶ(所有者数は233)。 あまりにも広大過ぎてピンとこないが、3085haは30.85?だから、東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらいである。 過去10年の推移を見ると、外資による急速な森林買収の実態がより鮮明に浮かび上がってくる。 この10年ほどの間に、面積ベースでほぼ3倍に拡大しているのだ。 では、北海道の森林を取得しているのはどこの国が多いのか。直近2年のデータを見てみよう。 2019、2020年の外資(海外法人・海外企業の日本法人)による森林取得はあわせて47件・252haで、21件が中国(香港)だった。 利用目的でもっとも多いのは「資産保有」だ。転売してビッグマネーを手に入れようという投資目的である。次に目に付くのが、法人の「別荘地開発」や個人の「別荘用地」。あとは「太陽光発電」「鉱物資源の調査等」で、「不明」「未定」も少なくない』、「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。
・『外資による土地買収の是非  7月1日に発表された路線価(国税庁が発表する相続税等の評価基準となる地価。公示地価の約8割)では、6年連続で上昇率ナンバー1を続けていた倶知安町の中心地(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の価格は72万円/㎡で前年比横ばいだった。路線価が落ち着いたことで、外資による買収に一段と拍車がかかる可能性さえある。 外国人による土地買収については、6月、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などの利用を規制する「重要土地利用規制法」が成立した。 しかし、防衛拠点に絡まない森林などは対象外だ。北海道は水源地を守るために、水源保全地域内の土地所有者の権利移転について事前届け出制を条例で定めている。 森林法による森林取得の際の届け出制もある。しかし、届け出がどこまで正確に行われているか分からず、日本企業をダミーにするといった案件もあると指摘されている。 外資の手に渡る土地は森林だけに限らない。ゴルフ場やスキー場などすでに開発済みの土地も含まれる。これらを加えたら、とても30?程度では済まない。使途が不明なケースも少なくない。リゾート買収をめぐっては、夕張市の夕張リゾートのように外資の手に渡った揚げ句、倒産といったケースも出ている。こんなことになっては街の再興もままならない。 急速な開発でスキー場の混雑や温泉の湯量減少などの影響が出ている倶知安町は、環境保全に向け、未開発地が多い地区での大型ホテルの建設制限など規制強化に向け、具体案の取りまとめを進めているが、外資の土地取得制限は別問題だ。 もちろん、バブル崩壊後元気をなくしていた観光地がよみがえり、雇用を生み地元経済を活性化させているというプラスの面も大きい。しかし、10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要なテーマだろう。 国全体でも、より踏み込んだ立法措置も含めて考える時期ではないだろうか』、確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
タグ:インバウンド戦略 (その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) JBPRESS 姫田小夏 「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」 「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。 「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。 「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。 「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。 東洋経済オンライン 劉 瀟瀟 「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」 「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。 「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。 「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。 「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。 「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。 山田 稔 「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」 「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。 凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。 「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。 確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
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心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) [経済政治動向]

今日は、心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切)を取上げよう。

先ずは、やや古い記事だが、2017年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医で臨床心理士の和田秀樹氏が「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/042800008/
・『経営や政治に心理学者を重用するアメリカ  日本と比べるとアメリカでは、経営にも政治にもはるかに心理学者が重用されている。消費者心理の分析であれ、マネジメントでどうすれば従業員のやる気が増すかであれ、あるいは経済政策の立案であれ、外交問題における相手国の国民や指導者の心理分析であれ、心理学者のアドバイザーの活躍の場は多い(トランプの時代になってからのことは分からないが)。 実際、心理学を組み入れた経済学理論である「行動経済学」の代表的な研究者であるダニエル・カーネマンは、心理学(経済学部に異動したわけでない)の教授の肩書きのまま、2002年にノーベル経済学賞を受賞している。行動経済学が明らかにした(薄々は分かっていても定式化したと言っていいだろう)ものに、人間は得より損のほうに強く反応するということがある。 例えば、10万円のものを1万円まけてもらって得をした場合と、10万円で買ったものが近くの店で9万円で売っていることが分かり、1万円損をした気分になるのとでは、多くの人は、前者の得した気分より、後者の損をした気分のほうが強く感じるだろうし、後々まで尾をひく。心理学の実験では、損のインパクトは得のインパクトの2.25倍だそうだ。 こういうことを真面目に研究した行動経済学は、おそらくは「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学より、はるかにまともな行動予測が可能になり得る。 旧来型の経済学では、1万円の昇給が経済を好転させる効果と、1万円の減給が経済を悪化させる効果は同じということになる。ところが、行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ。 経済学に心理学が大きなインパクトを与えたように、経営学やマネジメントでも相当な影響力を持つようだ。アメリカのビジネススクールに留学した人たちに聞くと、心理学の講義や演習をかなりの時間、課せられるようだ』、「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。
・『減税より増税、経費の拡大で不景気解消  だから、昇給はすぐに消費に結びつかないが、減給はたちどころに財布のひもを締めさせるのはそういうメカニズムが働いているのだろう。これまでの長期不況で給料が下がり続けた時代の消費マインドを、少々のベースアップで変えることは困難だということになる。安倍首相が企業に昇給を求めても、企業は利益が減らない程度にしか昇給しないのでは、消費も増えないし、物価も上がらない。というか、不景気はちょっと給料が下がっただけで簡単に生じるが、景気を良くするのは難しいということになる。 このような心理特性(特に実験などで明らかになった心理特性)を知る心理学者を利用すれば、経済学者が考えるのとは別のソリューションが考えられるだろう。 私が、この理論を読んで考えたことは、減税には経済学者が考えるより景気浮揚効果がなさそうだということだ。 要するに減税で得をした喜びは想像されるほど大きなものではないので、それが消費には結び付きにくいということだ。心理学の実験を見る限り、アメリカ人でさえ、得にあまり反応しないのだから、もっと貯蓄傾向の強い日本人は、減税が消費より貯蓄につながってしまうことは大いに予想できる。 逆に増税というのは、損を恐れる効果を活性化させることになる。例えば、消費税の増税が決まると、その前にかけこみ需要がかなり生じるのは、上がった後でものを買って損をしたくないからだろう。ただし、この場合は、消費税を上げた後の、「損だから買わない」という反動が大きく出てしまう。 例えば、直接税を上げて、経費を認めるというのはどうだろうか? この場合は、税金を持っていかれるのは損という心理が働きやすいので、もっと経費を使うようになる効果が期待できる。実際、法人税や所得税が高かったころのほうが、中小企業や自営業者たちは、税金を払いたくない心理から接待費で豪遊していたり、高級車を買ったりする人が多かった。 所得税を増税する代わりに、サラリーマンにも洋服代どころか食費も働くための経費として認めたら、消費が活性化するかもしれない。政府のホストコンピューターにつながったレジから出たレシートは全部経費として認めるなどということができれば、そんなに実用化は困難でないし、レジの機械の会社も儲かるし、さらにいうと、商店からは売り上げの捕捉がしやすくなり、税逃れも防げる』、「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。
・『減税効果が長く続かない理由は?  得より損に反応するというのは、あくまで心理学を応用した経済学の一面に過ぎない。また、常に同じような行動をとるとは限らない。 例えば、今得をしている場合は、損をしたくないというリスク回避傾向に人間の心理は傾くが、損をしている場合は、損をするリスクをとっても大きく得をしたいという心理が働く。競馬などで負けがこんでくると、損をする確率が上がるのに大穴狙いをして負けを埋め合わせようとするのは、その一例だ。 また、人間というのは、絶対値より変化に過敏に反応することもある。年収100億円のAさんと年収300万円のBさんを比べれば、Aさんが幸せと思われるだろうが、Aさんの去年の年収が101億円で、Bさんの去年の年収が280万円だったとしたら、1億円収入が減ったAさんは不幸に感じるし、20万円収入が増えたBさんは幸せに感じるということになるだろう。 景気対策として減税をするのは簡単だが、税率を戻した時の不満が大きいので、減税をなかなか終えることができない。1999年に高額所得者の所得税率を50%から37%に下げた。その際には、金持ちが反応して、確かに株価は99年初頭の1万3000円から2000年には2万円を超えるまで上昇した。ところが、同じ税率のままだったのに、2003年には株価が7607円まで下がっている。 減税の効果は長く続かないし、お金持ちがさらにお金を持ったところで予想したほど投資には回らないということを明らかにする事例だと思う。その後、最高税率はわずかに上がったが、株価は元には戻らなかった。その間に国の借金が膨れ上がったのはご存知の通りだ』、株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある。
・『問題続出でも安倍一強は続く  話を変えて、政治情勢を心理学の観点から見てみよう。森友学園事件に始まって、夫人の関与が疑われたり、昔からの親友の学校に莫大な補助金が支払われていることなど、金銭にまつわる疑惑が高まっているうえに、大臣の失言が相次いだり、政務官の道徳的なスキャンダルまで暴露されているというのに、安倍政権の支持率はびくともせず、むしろ野党第一党の民進党の支持率のほうが低迷している。 この不思議な現象も心理学では説明がつく話だ。一つには、「現状維持バイアス」というものがある。 前述のように、人間というのは得をしている局面では、損失回避のほうに走る。賃金がどんどん下がっているとか、失業率が高い局面では、損をするかもしれなくても、新しい政治を求める(アメリカの場合は、一見景気が良さそうだが、賃金が下がり、失業率が高いラストベルトとされる地域の人によるトランプの支持が優勢だった)。しかし、少しずつではあるが、失業率が下がり、賃金も上がり出す局面になると、また野党にやらせて損をするより、今のままがいいという現状維持バイアスが働く。 損や得は主観的なものだから、ドルベースでは民主党時代より賃金が下がっているとか、非正規雇用が増えているとか、国の借金が増えていることより、目に見える賃金や失業率をみて、多くの人が得をしていると思っているのだろう。 さらに、緊迫する北朝鮮の状況もみて、被害を受けて損をしたくない心理が増しているのかもしれない。多少アメリカべったりでもこわもてで、アメリカによる防衛を確かなものにしてくれる政府のほうが損は避けられるという感覚だ。 もう一つは「同調心理」である。人間というものは、友達が増えるとか出世できるといった目に見える得がなくても、身近な人に同調するという不思議な心理特性がある。 アッシュという心理学者は、長さの違う棒を見せて、別の1本と長さが同じ棒を選ぶというテストを行った。周りに誰もいないところだと誰も間違えないのだが、3人ほどのサクラに間違えた答えを言わせると、3割くらいの人がそれにつられることを明らかにした。 人間はある一定の確率で放っておいても同調するのなら、政治においても支持率が高いほうに同調する人が増えても不思議でない。そういう点で、当面は、よほどの円高などが起こらない限り安倍政権は盤石とみるのだが、どうだろうか? この手の心理学を使った経済などの見方を知ったり、判断のバイアスを減らす参考にしてもらうために『「損」を恐れるから失敗する』(PHP新書)という本を上梓した。興味がある人は読んでほしい。多少は仕事や人生に役立つと信じている』、安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。

次に、12月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した 脳科学者の中野 信子氏による「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477279
・『2021年もインターネットを中心とした、炎上や誹謗中傷のニュースが数多く見られました。芸能人の不倫スキャンダルや不謹慎とされる言動など、さまざまな話題がありましたが、その中でよく聞かれるのが「許せない」という言葉です。 自分や自分の身近な人が直接不利益を受けたわけではなく、当事者と関係があるわけでもないのに、強い怒りや憎しみの感情が湧き、知りもしない相手に非常に攻撃的な言葉を浴びせ、完膚なきまでにたたきのめさずにはいられなくなってしまうというのは、「許せない」が暴走してしまっている状態です。 「許せない」の暴走である正義中毒や人を許せなくなる脳の仕組みについて、脳科学者の中野信子氏が監修を務めた『まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』より一部抜粋、再構成してお届けします』、「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。
・『「我こそは正義」と確信した途端、人は「正義中毒」になる  人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです。 こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います。この構造は、いわゆる「依存症」とほとんど同じだからです。有名人の不倫スキャンダルが報じられるたびに、「そんなことをするなんて許せない」とたたきまくり、不適切な動画が投稿されると、対象者が一般人であっても、本人やその家族の個人情報までインターネット上にさらしてしまう。企業の広告が気に入らないと、その商品とは関係のないところまで粗探しをして、あげつらう』、「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ……
・『「間違ったことが許せない」  「間違っている人を、徹底的に罰しなければならない」 「私は正しく相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」 このような思考パターンがひとたび生じると止められなくなる状態は、恐ろしいものです。本来備わっているはずの冷静さ、自制心、思いやり、共感性などは消し飛んでしまい、普段のその人からは考えられないような、攻撃的な人格に変化してしまうからです。特に対象者が、たとえば不倫スキャンダルのような「わかりやすい失態」をさらしている場合、そして、いくら攻撃しても自分の立場が脅かされる心配がない状況などが重なれば、正義を振りかざす格好の機会となります。) こうした炎上騒ぎを醒めた目で見ている方も多いと思います。しかし、正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。もちろん、私自身も同様に気をつける必要があると思っています。 また、自分自身はそうならなくても、正義中毒者たちのターゲットになってしまうこともありえます。何気なくSNSに載せた写真が見ず知らずの他人からケチを付けられ、「不謹慎だ」「間違っている」などとたたかれてしまうようなケースは、典型例だといえます。 正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます』、「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。
・『「正義中毒」を乗り越えるカギはメタ認知  「メタ認知」とは、自分自身を客観的に認知する能力のことで、脳の前頭前野の重要な機能です。もう少し詳しく説明すると、「自分が○○をしているとわかっている」「自分がこういう気持ちでいることを自覚している」ということです。「私は今こういう状態だが、本当にこれでいいのか?」と問いかけることができるのは前頭前野が働いているからであり、メタ認知が機能しているからなのです。 正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です。メタ認知能力の高低には、もちろん遺伝的な要素もありますが、実はそれよりも大きく影響するのが環境要因です。この能力は、個人差はありますが、小学校低学年あたりから徐々に育ち始め、完成するまでには30歳ぐらいまでかかります。これは、脳の前頭前野の発達そのものであり、完成する30歳くらいまでの間はずっと、周囲からの影響を受け続けます。 人生において、若い頃、特に20代ぐらいの時期に付き合いのあった人、尊敬していた人の影響が大きいのはこうした背景があるからで、メタ認知のできている人と若いうちに出会うことには大きなメリットがあります。子どものメタ認知能力を育てるためには、幼少期から30歳くらいまでの時期にどんな人と出会い、どのような影響を受けてきたのかが、非常に大切になるわけです。) 人間は、自分が言い続けてきたこと、やり続けてきたこと、信じ続けてきたことをなかなか変えられません。そして、それまで見せてきた自分と矛盾しないように振る舞わなければいけないという根拠のない思い込みに、無意識に縛られています。この現象を、心理学では「一貫性の原理」と呼んでいます。 しかし、そもそも自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです。今は絶対的な真実と信じていることだって、いつかその間違いに気づく日が来るかもしれません。そのように「信じていたこと」を裏切られたと感じることこそ、摩擦やいざこざの原因にもなったりするわけですが、それを回避するいちばんいい方法は、他人に「一貫性」を求めること自体をやめることではないかと思います』、「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。
・『対立ではなく並列で考える  正義中毒から解放される最終的な方法は、あらゆる対立軸から抜け出し、何事も並列で処理することではないかと思います。 A国とB国、宗教Aと宗教B、男性と女性でもいいのですが、異なる人間同士が集まれば、対立軸はいくらでも発生します。そして、誰しもが、そのなかでいくつものグループに所属することが可能です。それぞれに視点や知見があり、議論が生じます。それ自体は健全なことです。 しかしここで正義中毒にかかってしまうと、どちらかが参ったと音を上げるまで死力を尽くして相手を攻撃し続けることになります。 「あいつはバカだ」「あいつはおかしい」と感じるその「あいつ」のなかにも、人格や感情、思考が必ず存在します。自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません。一度その感覚を体験できれば、自分こそが正義だとは考えにくくなるでしょう。私は、これこそが知性の光のように思えます。 人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか』、「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
タグ:「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」 「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、 日経ビジネスオンライン 和田秀樹 (その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) 心理学 「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。 「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。 株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある 安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。 ダイヤモンド・オンライン 中野 信子 「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」 「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。 「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、 「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ…… 「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。 「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。 「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
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2022年展望(その2)(習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音) [経済政治動向]

一昨日に続き、2022年展望(その2)(習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音)を取上げよう。

昨年12月27日付け現代ビジネスが掲載した法政大学大学院教授の真壁 昭夫氏による「習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90911
・『マイナス要因が山積み  足元で中国経済の減速が鮮明だ。 その背景には、いくつかのマイナス要因が複合していることがある。 中国国内の不動産市況の悪化、新型コロナウイルスの感染再拡大、米ドルなどに対する人民元高や世界的な供給網=サプライチェーンの混乱などがあげられる。 中国政府も、予想を上回る景気減速に対して利下げに踏み切るなど食い止め策に追い込まれている。 それにも拘らず、当面、中国経済は一段と厳しい状況が続くとみられる。 特に、不動産市況の悪化はより深刻化する可能性がある。 一部の民間デベロッパーは、自社の財務状況などの悪化を投資家に警告し始めた。 その意味は重い。 共産党政権は、不動産関連規制の一部緩和などで住宅価格の下落を食い止めようとしているが、今のところ大きな効果は見られていない。 また、世界的なサプライチェーンの混乱によって、世界的にエネルギー資源や穀物などの争奪戦が鮮明だ。 今後、供給網混乱と資源争奪戦の相乗効果によって、世界的にインフレ懸念は高まるだろう。 GDP成長率の下振れ要因の増加によって、中国から流出する資金は加速度的に増えるかもしれない。 中国初(注:「発」の間違え?)の世界経済の混乱のリスクは無視できない』、特に恒大集団による外貨建て債務のデフォルト問題に代表される不動産関連は深刻だ。
・『金融緩和に追い込まれた中国の党政権  12月20日に中国人民銀行(中央銀行)は利下げを発表した。 1年物の最優遇貸出金利が0.05ポイント引き下げられ3.80%に設定された。 利下げの理由は、中小企業の事業環境の悪化を筆頭に景気減速が当局の想定を上回っているからだ。 景気減速を食い止めるために、共産党政権は利下げなど金融緩和策をより重視するだろう。 景気減速の要因は増えている。 最大の要因は、不動産市況の悪化だ。 不動産融資規制である“3つのレッドライン”は想定外に中国恒大集団などデベロッパーの経営体力を奪った。 足許では泰禾集団(タイホット・グループ)などが自社株式の投資リスクを警告しはじめた。 その真意は当局に救済を求めることだろう。 資産切り売りなどによる債務返済と経営再建に行き詰まる不動産業者は増えている。 新型コロナウイルスの感染再拡大の影響も大きい。 北京冬季五輪の開催に向けて共産党政権はゼロ・コロナを徹底しており、年末年始、さらには2月1日の春節を挟んだ連休中の移動制限が強化される。 それは経済にマイナスだ。 感染再拡大によって港湾施設の稼働率は低下し、ベトナム国境での通関も遅延するなどサプライチェーンの混乱や寸断も深刻だ。 それに加えて、人民元高も景気を下押しする。 現在の中国経済にとって、輸出は唯一の景気サポート要因だ。 輸出が大きく増えた結果、大手企業が外貨を売って人民元を買うオペレーションを増やした。 それは、景気減速にもかかわらず人民元が米ドルなどの主要通貨に対して上昇する主たる要因だ。 人民元高は輸出セクターに打撃を与える。 不動産市況の悪化や感染再拡大、人民元高など負の影響を和らげるために、今後も中国人民銀行は追加利下げなど金融緩和を重視せざるを得ないだろう』、インフレは生産者物価が前年同月比14%と高水準を続けているが、消費者物価は当局が消費者への価格転嫁を禁止しているため、9月で前年同月比0.7%に止まっているが、潜在化したインフレリスクは大きくなっている。
・『チャイナ・ショック(注)再発の懸念も  今後、中国経済の減速はこれまで以上に鮮明化し、景気が失速する展開も考えられる。 その結果として、2015年夏場に起きた“チャイナ・ショック”のような事態が発生する展開は排除できない。 不動産セクターを中心とする中国の債務問題が世界的な金融危機につながる可能性は低い。 しかし、わが国のように中国の需要を取り込んできた経済にとって、中国金融市場の混乱はかなりのマイナスの影響を与える。 不動産市況の悪化と感染再拡大による動線の寸断は中国の内需を圧迫する。 特に、新築住宅の供給過剰は深刻だ。住宅価格はさらに下落するだろう。 それに加えて、世界的な物価上昇のリスクも軽視できない。 11月の中国の輸入は増加したが、それは消費の回復によるものではなく、石炭などエネルギー資源の調達増加に押し上げられた側面が大きい。 共産党政権は電力供給の安定化などのために米国から液化天然ガスの輸入を増やし、干ばつに対応するために食料備蓄も増やしている。 その一方で、感染再拡大によって世界のサプライチェーン寸断は深刻だ。 その状況は簡単には解消されない。 中国をはじめ世界各国による資源などの争奪戦は激化し、世界的に卸売物価は上昇するだろう。 その結果として、中国のインフレリスクは高まり、個人消費や設備投資にブレーキがかかりやすい。 不動産投資を増やすことによって、共産党政権は人為的にGDP成長率を押し上げ、雇用を生み出して求心力を保った。 不動産市況の悪化によって党主導の経済運営は行き詰まり始めた。 その上に物価上昇が加われば中国の経済成長率の下振れ懸念は高まり、株価の急激な不安定化など金融市場が混乱する恐れがある。 中国経済の現状を踏まえるとそのインパクトは2015年夏のチャイナ・ショックを上回るだろう』、「不動産市況の悪化によって党主導の経済運営は行き詰まり始めた。 その上に物価上昇が加われば中国の経済成長率の下振れ懸念は高まり、株価の急激な不安定化など金融市場が混乱する恐れがある」、インフレは前述の通り、人為的に抑制してきただけに、調整のマグマはかなり溜まっている筈だ。日本への波及にも警戒する必要がある。
(注)チャイナ・ショック:中国株の大暴落。2015年6月12日に始まった株価の大暴落で、ひと月の間に上海証券取引所のA株は株式時価総額の3分の1を失った(Wikipedia)
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2022年展望(その1)(池上彰が混とん世界を先読み!「2022年3大テーマ」 相次ぐ選挙 中国 新しい資本主義の行方は、株価「3万7000円」説も飛び出す22年予測で 専門家の口から頻出する“2つの単語”) [経済政治動向]

今日は、2022年展望(その1)(池上彰が混とん世界を先読み!「2022年3大テーマ」 相次ぐ選挙 中国 新しい資本主義の行方は、株価「3万7000円」説も飛び出す22年予測で 専門家の口から頻出する“2つの単語”)を取上げよう。

先ずは、12月20日付け東洋経済オンライン「池上彰が混とん世界を先読み!「2022年3大テーマ」 相次ぐ選挙、中国、新しい資本主義の行方は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477378
・『コロナウイルスの変異株「オミクロン」や、インフレ、東アジアやウクライナなどの地政学リスク……。2022年も不確実性が高い状況が続くことになるだろう。混迷な世の中だからこそ、起こりうる出来事を先読みして備えておく必要がある。 週刊東洋経済の12月20日発売号の特集は、「2022年大予測」。国内外の識者や経営者ら総勢35名のインタビュー、「選挙」「中国」「金融」で見通す政治・経済記事、43の業界動向を占う四季報記者の分析、お宝・大化け366銘柄、スポーツ・カルチャーなど全108テーマで2022年に起こりえる激変を徹底予測した。 その中でも、2022年を読み解くために重要なテーマは何か? 時事問題や国際情勢の解説に定評がある、ジャーナリストの池上彰氏に注目すべき3つのテーマを選んでもらい、それぞれのポイントを語ってもらった』、興味深そうだ。
・『参院選で自民党に「お仕置き」したい人は結構いるはず
1. 日・米・韓で選挙  衆議院議員選挙が政権選択選挙であるのに対し、参議院議員選挙は現政権に対する通信簿といった位置づけだ。2021年の衆院選で自民党は、大物議員が一部落選したものの善戦した。 ただ、有権者が抱く「政治と金」への不満は根深く、衆院選後も文書通信交通滞在費などの問題が後を絶たない。このため、2022年夏の参院選で自民党にお仕置きをしたいと思う人は結構いるはずだ。立憲民主党代表は旧民主党色が強かった枝野幸男氏から泉健太氏に交代し執行部も一新した。参院選はそれなりの地殻変動が起こりうる。 2022年11月のアメリカ中間選挙は支持率低迷のバイデン政権(民主党)に厳しいとの見方が大勢だ。そもそも中間選挙はレーガン政権以降、大統領の政党が議席を減らす傾向が強い。ただ今回は、選挙結果を左右する上・下院それぞれの事情が波乱要素だ。 人口比例で各州選出議席数が割り当てられる下院は、ニューヨーク州やカリフォルニア州などで1議席減、テキサス州で2議席増などと州の議席配分が変わる。テキサスは保守的な共和党の牙城だが、IT系企業などの誘致で人口が急増。民主党支持者の多い地域からの流入もあり、選挙行動がどうなるかだ。 上院は共和党と民主党の現議席数が50ずつで、議長(副大統領)を加え民主党がかろうじて多数を保っている。今回、100議席のうち3分の1が改選となるが、共和党のベテラン議員5~7人の引退がささやかれるなど予断を許さない。中間選挙は地元の事情も大きく影響する』、「参議院議員選挙は現政権に対する通信簿といった位置づけ」、「参院選で自民党にお仕置きをしたいと思う人は結構いるはずだ」、そうであれば楽しみだ。「米国中間選挙」もバイデン不人気を反映したものになるのだろうか。
・『混戦模様の韓国大統領選挙  トランプ前大統領とその支持者の動静も気になる。2021年1月6日に彼の支持者が連邦議会議事堂に突入した事件について、トランプ氏に責任があることを認めた共和党の議員たちがいる。彼はその議員たちを目の敵にして、予備選挙でその連中を引きずり下ろそうとしている。 アメリカの選挙は現職優先ではなく、各選挙区の候補者を選ぶ予備選挙を行う。その段階でトランプ氏に忠誠を誓わない人たちが一掃される可能性がある。そうなれば、共和党が完全にトランプ党に衣替えをするという状態になる。共和党の中で、大統領候補になりたいと思っている人たちはもちろんいる。ただ、名乗りを上げるとトランプ氏からののしられて袋叩きにあう恐れがあるので、誰も手を挙げていないという状況だ。 韓国は2022年3月に大統領選挙が行われる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の反日路線を引き継ぐ李在明(イ・ジェミョン)氏か、あるいは日本との関係改善に動くかもしれない元検事総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏になるのか、現在は混戦模様だ。どちらが大統領になるかで、日本との外交関係は大きく変わってくる』、「韓国」「大統領選挙」の結果次第では、確かに「日本との外交関係は大きく変わってくる」。
・『2. 習近平の中国  2022年秋の中国共産党大会で習近平総書記が3期目に突入するのか、同時に毛沢東以来の共産党主席というポジションを復活させるかが最大のテーマだ。過去に毛沢東による独裁政治が行われた反省から、共産党主席のポストは廃止され、集団指導体制に移行した。現在、政治局員7人の合議制ということになっているが、実態としてはすでに習総書記の思惑どおりに動く体制になっている。 (池上 彰氏の略歴はリンク先参照) 「歴史決議」も行われ、中国の学校では習近平思想の学習が必修科目になった。ここで習総書記の力をさらに確固たるものにするのであれば、共産党主席を復活させるだろうとみる専門家が多い。その先では毛沢東以来の偉大な指導者として名前を連ねるために、台湾統一を成し遂げるしかない。毛沢東も鄧小平もなしえなかった大事業。あらゆる策を弄して台湾を手に入れようとするだろう。 日米豪印戦略対話「Quad(クアッド)」が2022年に日本で開催される予定だ。最近、中ロ合同軍事演習では日本領空ギリギリのところまで爆撃機が迫るといったことが起きている。中国包囲網をつくるなら中国はロシアと組んで対抗するぞ、という明らかな挑発的行為で、中国をめぐる緊迫した国際情勢が続きそうだ。そして北京冬季五輪。アメリカ主導の外交的ボイコットが広がる中で、日本もそれに倣えば中国との関係が悪化する。岸田文雄首相は難しい判断を迫られる』、「日本」はJOCを前面に立てて、閣僚は参加しない方針で臨むようだ。
・『脱アベノミクスの成果が求められる  3. 新しい資本主義  岸田首相が掲げる「新しい資本主義」は小泉純一郎、竹中平蔵路線による新自由主義的な政策で拡大した格差を減らそうというもの。要するにアベノミクスからの脱却だ。岸田首相が尊敬するのは宏池会の先輩たち。池田勇人元首相の所得倍増政策は、インフラの整備によって高度成長が始まり、分厚い中間層をつくり上げた。岸田首相はこの現代版をやろうとしているが、物質的に豊かになり新たな需要を喚起することが難しい時代に何ができるのか。 有識者会議の「デジタル田園都市国家構想実現会議」も宏池会の先輩、大平正芳元首相の「田園都市国家構想」がベース。都市と地方の格差拡大を防ごうとする地方創生策で、それを岸田首相はデジタルの力で実現させようとしている。宏池会の伝統活用という思いは感じられるが、具体策が見えない。また、カーボンニュートラルの目標を新しい資本主義にどう結び付けて経済を成長させるかも焦点だ。 50兆円を超す経済対策の財政支出を閣議決定したが、岸田首相は参院選までに一定の成果を上げないと立場が危うい。お手並み拝見だ』、「新しい資本主義」で金融所得課税に手を付けようとして、株価暴落を懸念して、先送りしたのも記憶に新しいところだ。

・次に、12月20日付けダイヤモンド・オンライン「株価「3万7000円」説も飛び出す22年予測で、専門家の口から頻出する“2つの単語”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/290990
・『『週刊ダイヤモンド』12月25日・1月1日新年合併特大号の第一特集は「2022 総予測」。総予測は年末年始の定番企画だが、2022年版では“二つの単語”が突然、頻出し始めた。そして、日本と中国ともに「政治と不動産」がキーワードになりそうだ』、「政治と不動産」とはどういうことだろう。
・『2022年は「不動産と政治」がなぜか日本と中国でキーワードに!?  年末年始にメディアを賑わす定番企画は、翌年の「予測」だ。とりわけ新たな1年の経済や企業の予測は、経済メディアの実力が試される場とあって、各社が総力を挙げて競い合う。 ダイヤモンド編集部でも「総予測」は年末年始の恒例企画となって久しい。今回も企業のトップやアナリストなど多数の専門家を直撃し、2022年の見通しや注目キーワードなどを徹底分析した。 その取材の過程で、今年は目立った変化が現れた。専門家が語る22年の予測に、明らかに二つの単語が頻出するのだ。 「インフレ」と「スタグフレーション」……。 ダイヤモンド編集部の「総予測」特集で、この二つの単語がこれほど頻繁に登場したことはない。 言葉の意味や背景はここでは割愛するが、22年はインフレとスタグフレーションへの関心がかなり強くなるのは間違いない。実際、既に多くの専門家が、インフレ退治のために米国が行う利上げの悪影響を懸念し始めている。 中でも不動産業界関係者による座談会では、スタグフレーションという言葉が飛び交った。22年は「不動産と政治」の関係も注視する必要があるだろう。しかも、それは日本と中国、双方の国でキーワードとなりそうなのだ。なぜか。 今や首都圏のマンション価格はバブル経済時の水準を超え、普通のサラリーマンの購入は難しい。それでも、「まだまだ値上がりが続く」との強気の見立てが多数を占める。 だからこそ、足元の上昇に対して岸田文雄政権が規制に踏み込むのかどうかも、業界関係者の強い関心事となる。1990年代初頭には、「庶民が家を買えない」と糾弾された政府が土地取引関連融資の総量規制を実施、バブル崩壊の遠因となったからだ。 同じく、中国でも高騰する不動産価格への政府の介入が注目点とされるから、くしくも「不動産と政治」という意味では22年の日中はリンクしている。 そして、近年は「米中対立」が毎年リスクとして挙がるが、22年もその傾向は変わらない。多数の専門家が米中対立に言及している。 その両大国は22年にそれぞれビッグイベントを控え、中国では冬季オリンピックと共産党大会が開催される。共産党大会のある年は景気対策を実施するという読みの一方で、企業への規制強化がさらに進む観測も浮上。一方の米国は中間選挙を巡り、共和党と民主党の駆け引きによる議会の停滞が予測されている。 さて、大きな予測ポイントが出そろったところで、気になる日本の株価はどうか。コロナへの悲観論は後退し、「共存」といった表現も目立つ。結果、株の専門家から「3万7000円」説も登場しているのだ。 もちろん、株価上昇には外部環境だけではなく、企業自身による業績改善が必須となる。特集では編集部記者が企業の内情を徹底取材。人員リストラする56社リストも紹介している。 大人気企画が今年はさらに強力に! 超豪華付録「開運 1億円カレンダー」!  株価はどこまで上がる? 景気はどうなる? 悪い円安はいつまで続くの?インフレは起こる? 週刊ダイヤモンド12月25日・1月1日新年合併特大号 読めば答えが載っています!『週刊ダイヤモンド』12月25日・1月1日新年合併特大号の第一特集は「2022 総予測」です。年末年始の恒例の人気企画が、今年はさらに強力になりました。 ページ数は物理的限界ギリギリの264ページ!250人以上の人物の名前が登場し、多数の専門家と編集部の記者が経済、企業の先行きを徹底的に予測。株価、企業業績から国際関係、政治、社会、文化、スポーツまで完全網羅しています。 しかも付録が超豪華!有名スゴ腕投資家が1億円作るための具体的投資方法を12カ月で指南!「貼って眺めて資産を増やす! 株 投信 不動産でFIRE 開運 1億円カレンダー」となっています。本体から剥がせる綴じ込み付録でご自宅や職場の壁に貼ってご利用できます。 年末年始、2022年の計画を立てる際にぜひ、ご一読いただければ幸いです』、「日中」とも「不動産と政治」が「キーワード」になりそうとのようだ。中国では、光大1)(池上彰が混とん世界を先読み!「2022年3大テーマ」 相次ぐ選挙 中国 新しい資本主義の行方は、株価「3万7000円」説も飛び出す22年予測で 専門家の口から頻出する“2つの単語”)を取上げよう。

先ずは、12月20日付け東洋経済オンライン「池上彰が混とん世界を先読み!「2022年3大テーマ」 相次ぐ選挙、中国、新しい資本主義の行方は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477378
・『コロナウイルスの変異株「オミクロン」や、インフレ、東アジアやウクライナなどの地政学リスク……。2022年も不確実性が高い状況が続くことになるだろう。混迷な世の中だからこそ、起こりうる出来事を先読みして備えておく必要がある。 週刊東洋経済の12月20日発売号の特集は、「2022年大予測」。国内外の識者や経営者ら総勢35名のインタビュー、「選挙」「中国」「金融」で見通す政治・経済記事、43の業界動向を占う四季報記者の分析、お宝・大化け366銘柄、スポーツ・カルチャーなど全108テーマで2022年に起こりえる激変を徹底予測した。 その中でも、2022年を読み解くために重要なテーマは何か? 時事問題や国際情勢の解説に定評がある、ジャーナリストの池上彰氏に注目すべき3つのテーマを選んでもらい、それぞれのポイントを語ってもらった』、興味深そうだ。
・『参院選で自民党に「お仕置き」したい人は結構いるはず
1. 日・米・韓で選挙  衆議院議員選挙が政権選択選挙であるのに対し、参議院議員選挙は現政権に対する通信簿といった位置づけだ。2021年の衆院選で自民党は、大物議員が一部落選したものの善戦した。 ただ、有権者が抱く「政治と金」への不満は根深く、衆院選後も文書通信交通滞在費などの問題が後を絶たない。このため、2022年夏の参院選で自民党にお仕置きをしたいと思う人は結構いるはずだ。立憲民主党代表は旧民主党色が強かった枝野幸男氏から泉健太氏に交代し執行部も一新した。参院選はそれなりの地殻変動が起こりうる。 2022年11月のアメリカ中間選挙は支持率低迷のバイデン政権(民主党)に厳しいとの見方が大勢だ。そもそも中間選挙はレーガン政権以降、大統領の政党が議席を減らす傾向が強い。ただ今回は、選挙結果を左右する上・下院それぞれの事情が波乱要素だ。 人口比例で各州選出議席数が割り当てられる下院は、ニューヨーク州やカリフォルニア州などで1議席減、テキサス州で2議席増などと州の議席配分が変わる。テキサスは保守的な共和党の牙城だが、IT系企業などの誘致で人口が急増。民主党支持者の多い地域からの流入もあり、選挙行動がどうなるかだ。 上院は共和党と民主党の現議席数が50ずつで、議長(副大統領)を加え民主党がかろうじて多数を保っている。今回、100議席のうち3分の1が改選となるが、共和党のベテラン議員5~7人の引退がささやかれるなど予断を許さない。中間選挙は地元の事情も大きく影響する』、「参議院議員選挙は現政権に対する通信簿といった位置づけ」、「参院選で自民党にお仕置きをしたいと思う人は結構いるはずだ」、楽しみだ。「米国中間選挙」もバイデン不人気を反映したものになるのだろうか。
・『混戦模様の韓国大統領選挙  トランプ前大統領とその支持者の動静も気になる。2021年1月6日に彼の支持者が連邦議会議事堂に突入した事件について、トランプ氏に責任があることを認めた共和党の議員たちがいる。彼はその議員たちを目の敵にして、予備選挙でその連中を引きずり下ろそうとしている。 アメリカの選挙は現職優先ではなく、各選挙区の候補者を選ぶ予備選挙を行う。その段階でトランプ氏に忠誠を誓わない人たちが一掃される可能性がある。そうなれば、共和党が完全にトランプ党に衣替えをするという状態になる。共和党の中で、大統領候補になりたいと思っている人たちはもちろんいる。ただ、名乗りを上げるとトランプ氏からののしられて袋叩きにあう恐れがあるので、誰も手を挙げていないという状況だ。 韓国は2022年3月に大統領選挙が行われる。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の反日路線を引き継ぐ李在明(イ・ジェミョン)氏か、あるいは日本との関係改善に動くかもしれない元検事総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏になるのか、現在は混戦模様だ。どちらが大統領になるかで、日本との外交関係は大きく変わってくる』、「韓国」「大統領選挙」の結果次第では、確かに「日本との外交関係は大きく変わってくる」。
・『2. 習近平の中国  2022年秋の中国共産党大会で習近平総書記が3期目に突入するのか、同時に毛沢東以来の共産党主席というポジションを復活させるかが最大のテーマだ。過去に毛沢東による独裁政治が行われた反省から、共産党主席のポストは廃止され、集団指導体制に移行した。現在、政治局員7人の合議制ということになっているが、実態としてはすでに習総書記の思惑どおりに動く体制になっている。 (池上 彰氏の略歴はリンク先参照) 「歴史決議」も行われ、中国の学校では習近平思想の学習が必修科目になった。ここで習総書記の力をさらに確固たるものにするのであれば、共産党主席を復活させるだろうとみる専門家が多い。その先では毛沢東以来の偉大な指導者として名前を連ねるために、台湾統一を成し遂げるしかない。毛沢東も鄧小平もなしえなかった大事業。あらゆる策を弄して台湾を手に入れようとするだろう。 日米豪印戦略対話「Quad(クアッド)」が2022年に日本で開催される予定だ。最近、中ロ合同軍事演習では日本領空ギリギリのところまで爆撃機が迫るといったことが起きている。中国包囲網をつくるなら中国はロシアと組んで対抗するぞ、という明らかな挑発的行為で、中国をめぐる緊迫した国際情勢が続きそうだ。そして北京冬季五輪。アメリカ主導の外交的ボイコットが広がる中で、日本もそれに倣えば中国との関係が悪化する。岸田文雄首相は難しい判断を迫られる』、「日本」はJOCを前面に立てて、閣僚は参加しない方針で臨むようだ。
・『脱アベノミクスの成果が求められる  3. 新しい資本主義  岸田首相が掲げる「新しい資本主義」は小泉純一郎、竹中平蔵路線による新自由主義的な政策で拡大した格差を減らそうというもの。要するにアベノミクスからの脱却だ。岸田首相が尊敬するのは宏池会の先輩たち。池田勇人元首相の所得倍増政策は、インフラの整備によって高度成長が始まり、分厚い中間層をつくり上げた。岸田首相はこの現代版をやろうとしているが、物質的に豊かになり新たな需要を喚起することが難しい時代に何ができるのか。 有識者会議の「デジタル田園都市国家構想実現会議」も宏池会の先輩、大平正芳元首相の「田園都市国家構想」がベース。都市と地方の格差拡大を防ごうとする地方創生策で、それを岸田首相はデジタルの力で実現させようとしている。宏池会の伝統活用という思いは感じられるが、具体策が見えない。また、カーボンニュートラルの目標を新しい資本主義にどう結び付けて経済を成長させるかも焦点だ。 50兆円を超す経済対策の財政支出を閣議決定したが、岸田首相は参院選までに一定の成果を上げないと立場が危うい。お手並み拝見だ』、「新しい資本主義」で金融所得課税に手を付けようとして、株価暴落を懸念して、先送りしたのも記憶に新しいところだ。

・次に、12月20日付けダイヤモンド・オンライン「株価「3万7000円」説も飛び出す22年予測で、専門家の口から頻出する“2つの単語”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/290990
・『『週刊ダイヤモンド』12月25日・1月1日新年合併特大号の第一特集は「2022 総予測」。総予測は年末年始の定番企画だが、2022年版では“二つの単語”が突然、頻出し始めた。そして、日本と中国ともに「政治と不動産」がキーワードになりそうだ』、「政治と不動産」とはどういうことだろう。
・『2022年は「不動産と政治」がなぜか日本と中国でキーワードに!?  年末年始にメディアを賑わす定番企画は、翌年の「予測」だ。とりわけ新たな1年の経済や企業の予測は、経済メディアの実力が試される場とあって、各社が総力を挙げて競い合う。 ダイヤモンド編集部でも「総予測」は年末年始の恒例企画となって久しい。今回も企業のトップやアナリストなど多数の専門家を直撃し、2022年の見通しや注目キーワードなどを徹底分析した。 その取材の過程で、今年は目立った変化が現れた。専門家が語る22年の予測に、明らかに二つの単語が頻出するのだ。 「インフレ」と「スタグフレーション」……。 ダイヤモンド編集部の「総予測」特集で、この二つの単語がこれほど頻繁に登場したことはない。 言葉の意味や背景はここでは割愛するが、22年はインフレとスタグフレーションへの関心がかなり強くなるのは間違いない。実際、既に多くの専門家が、インフレ退治のために米国が行う利上げの悪影響を懸念し始めている。 中でも不動産業界関係者による座談会では、スタグフレーションという言葉が飛び交った。22年は「不動産と政治」の関係も注視する必要があるだろう。しかも、それは日本と中国、双方の国でキーワードとなりそうなのだ。なぜか。 今や首都圏のマンション価格はバブル経済時の水準を超え、普通のサラリーマンの購入は難しい。それでも、「まだまだ値上がりが続く」との強気の見立てが多数を占める。 だからこそ、足元の上昇に対して岸田文雄政権が規制に踏み込むのかどうかも、業界関係者の強い関心事となる。1990年代初頭には、「庶民が家を買えない」と糾弾された政府が土地取引関連融資の総量規制を実施、バブル崩壊の遠因となったからだ。 同じく、中国でも高騰する不動産価格への政府の介入が注目点とされるから、くしくも「不動産と政治」という意味では22年の日中はリンクしている。 そして、近年は「米中対立」が毎年リスクとして挙がるが、22年もその傾向は変わらない。多数の専門家が米中対立に言及している。 その両大国は22年にそれぞれビッグイベントを控え、中国では冬季オリンピックと共産党大会が開催される。共産党大会のある年は景気対策を実施するという読みの一方で、企業への規制強化がさらに進む観測も浮上。一方の米国は中間選挙を巡り、共和党と民主党の駆け引きによる議会の停滞が予測されている。 さて、大きな予測ポイントが出そろったところで、気になる日本の株価はどうか。コロナへの悲観論は後退し、「共存」といった表現も目立つ。結果、株の専門家から「3万7000円」説も登場しているのだ。 もちろん、株価上昇には外部環境だけではなく、企業自身による業績改善が必須となる。特集では編集部記者が企業の内情を徹底取材。人員リストラする56社リストも紹介している。 大人気企画が今年はさらに強力に! 超豪華付録「開運 1億円カレンダー」!  株価はどこまで上がる? 景気はどうなる? 悪い円安はいつまで続くの?インフレは起こる? 週刊ダイヤモンド12月25日・1月1日新年合併特大号 読めば答えが載っています!『週刊ダイヤモンド』12月25日・1月1日新年合併特大号の第一特集は「2022 総予測」です。年末年始の恒例の人気企画が、今年はさらに強力になりました。 ページ数は物理的限界ギリギリの264ページ!250人以上の人物の名前が登場し、多数の専門家と編集部の記者が経済、企業の先行きを徹底的に予測。株価、企業業績から国際関係、政治、社会、文化、スポーツまで完全網羅しています。 しかも付録が超豪華!有名スゴ腕投資家が1億円作るための具体的投資方法を12カ月で指南!「貼って眺めて資産を増やす! 株 投信 不動産でFIRE 開運 1億円カレンダー」となっています。本体から剥がせる綴じ込み付録でご自宅や職場の壁に貼ってご利用できます。 年末年始、2022年の計画を立てる際にぜひ、ご一読いただければ幸いです』、「日中」とも「不動産と政治」が「キーワード」になりそうとのことだ。中国では、恒大のドル建て債、期限過ぎるもまだ利払い行われず、事実上のデフォルト状態にある。日本の不動産業界は、今回はそれほどの問題を抱えたところはない様子だが、予断は出来ない。
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日本型経営・組織の問題点(その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、8月9日に取上げた。今日は、(その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景である。

先ずは、10月26日付けダイヤモンド・オンライン「なぜ、おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284715
・『ウィズ・コロナによって会食や集団行動が規制される中、政治家による大人数での会食や会合などが相次いで報道されたことは記憶に新しい。また会社においてもおじさんたちは対面での打ち合わせや会議を熱望していることも多い。このように中高年になるほど集団行動かつ対面を重視したがる理由は何なのか。『大人力検定』(文藝春秋)などの著者であり、大人の振る舞いに詳しいコラムニストの石原壮一郎氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)』、身につまされそうだが、興味深そうだ。
・『仕事に絡めないと人に会えない悲哀  コロナ禍によって3密が避けられ、仕事でもプライベートでも以前のような対面を基本とするあらゆるコミュニケーションが制限された。にもかかわらず、政治家らが大人数で会食をしたり、中高年のおじさん社員がテレワークに苦言を呈すなどの話は後を絶たない。また、緊急事態宣言の期間中は比較的減少したが、解除後は部下を引き連れてランチや飲み会に行く姿も目にするようになった。 このように改めて振り返ると、おじさんほど公私を問わず対面を重視し、なにかと群れて行動したがる傾向があるのではないだろうか。その理由を石原氏はこう分析する。) 「かつての日本の企業文化は組織という群れの中にいれば生活をまるごと会社が守ってくれるものでした。組織で役割を果たしていれば、よほどのことがない限り、その群れから追い出されることもなく、安心・安全だったのです。そのため、現在のおじさんの多くは、若手の頃から群れの一員となることに腐心し、今も同じ習慣と価値観が残っているのです」 先輩や同僚と昼食や飲みに行き、毎日会社で顔を合わせることは、群れの一員を自覚し、結束するという儀礼でもあった。 ただ、トヨタ自動車の豊田章男社長による「終身雇用を守っていくのは難しい」という発言や副業の解禁、大企業でも相次ぐ早期退職制度など、組織や雇用のあり方は平成から令和にかけて、めまぐるしく変化している。 このような状況にもかかわらず、かつてと同じように社内の人間を中心に群れるという行動原理を中高年は変えられないのであろう。 そのような長年の積み重ねによる行動原理の他にも、おじさんならではの悲哀と寂寞(せきばく)感が群れることには表れているという。 「おじさんの相手はおじさんしかしてくれないのです。父親として尊敬されている人は少ないので家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです。年を取るほど気軽に遊びや食事に誘える友人も少なくなるので、社会的地位や仕事の必然性を絡めないと誰かと会うこともなくなりますから」』、「家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです」、寂しい限りだ。
・『変化への不安から若手と群れたがる  このような会合は当人同士でやってほしいものだが、往々にして若手や後輩も巻き添えになる。おじさんたちの雑談を聞かされ続けるだけの会議や、行きたくもない飲み会に有無を言わさず駆り出されるということは、多くの社員が経験しているだろう。このような行動をしてしまうおじさんに石原氏は苦言を呈す。 「おじさんたちは『俺らの何気ない話も若手には勉強になるはず』と思いがちですが、それはあまりにも自らを美化しすぎています。多少は有意義な話題があるかもしれませんが、現代の多くの若者は好きでもないおじさんから何かを得ようと思いません。知りたいことはネットでいくらでも検索できますし、そもそも群れ(組織)にいれば安心という意識も薄いので、貴重な時間を削っておじさんに付き合うメリットも感じません」 さらに若者と群れたがるおじさんには、ある種の焦りがあると石原氏は語る。 「インターネットやパソコンなどテクノロジーの変化への対応力を欠くおじさんは多く、柔軟に対応する若者に差をつけられていないかと不安になっています。このようなおじさんたちは会議や飲みの場で人生経験などを語ることで、自分はまだ若者よりも秀でていると思い込みたいのです。また、自分がバリバリ仕事をできないと自覚する上司に残るのは『部下に慕われる』という矜持だけなので、彼らは若者にとって迷惑な群れ方を強要している可能性が高いです」 コロナによって新しいコミュニケーションツールや仕事の進め方などが急激に変化したが、その反動でより群れたい欲が強くなっているのかもしれない。 「コロナによって不安や焦りはますます強くなっています。そうした気持ちを慰めてくれる場所がキャバクラなどの、いわゆる夜のお店だった。お金を払って仕事に関する愚痴をこぼし『俺に言わせりゃ』と気勢を上げられるオアシスだったのです。しかし、コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」 緊急事態宣言の解除を一番待ち望んでいたのは、このように行き場を失ったおじさんたちだったのかもしれない』、「コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」、「身近な人」こそいい迷惑だ。
・『コロナ禍で増えるオンライン上の群れ  ただ、現在はテレワークや飲食店の時短営業、人数制限で思うように人と会えない。こうした中で増えつつあるのが、LINEグループやメーリングリストといった「オンライン上の群れ」を作りたがるおじさんたちである。 「やたらとLINEグループを作りたがったり、『今日は中秋の名月ですね』などと仕事と関係のない投稿やメールを送ったりするおじさんもいます。対面で話せない寂しさをオンラインで晴らそうとするわけですが、他のメンバーにとっては興味がないか、もしくは迷惑なだけ。『やめた方がいいですよ』と言うと逆恨みされるので、メンバーは精いっぱいの抵抗として既読スルーするわけですが、そのような空気を察することができないおじさんも多い。彼らは、上司や先輩というだけで若手が構ってくれるという価値観から抜け出せていません」 このような投稿は、時として部下の労働意欲をそぐ効果も働いてしまうので、上司の役割としては本末転倒だ。 ここまで散々、若者に群れを強要するおじさんについて書いてきたが、決して世代間の対立をあおりたいわけではない。石原氏も、おじさんをあまりに忌避する若者に対してこう警鐘を鳴らす。 「おじさんを老害とやゆし、あたかも世代の仮想敵のように考えるのも危険です。そこには、おじさんを否定することで自分たちの価値やプライドを保っている側面があり、おじさんたちが『最近の若者は……』と話すことと構造は同じなのです。実際、高慢で群れたがる先輩にはなるまいと思っていたおじさんも多いのですが、期せずしてそうなってしまった。若者にとっても明日は我が身なのです」 大抵の人間は、「こんな大人にはなるまい」と思っていたのに、気づけばそんな大人になっているものだ。今の若者も30年後には、迷惑な群れるおじさんになってしまう可能性はある。最後に、石原氏はおじさんのあるべき振る舞い方について、次のように話す。 「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます。こうした状況下において『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『オイ、行くぞ』という上から目線ではなく、『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。また、プライベートでは一人でできる趣味を見つけ、会社や家庭以外の居場所を見つけると迷惑な群れ方を予防できます」 これらに気をつければ時代や周りに取り残されず、慕われる中高年になれるはずだ』、「「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます」、「『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。大変な時代になったものだ。

次に、12月24日付け東洋経済Plus「社員の責任と役割を明確化、若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29234#contd
・『総合化学大手の三菱ケミカルが大胆な人事改革を進めている。日本的な職能等級制度を廃止し、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。その狙いは何か。 年功序列にとらわれない「ごぼう抜き人事」で大抜擢――。 日本では、社長人事など経営幹部層の間ではよくある話でも、一般社員の間で起こることはこれまでほとんどなかった。それが、国内最大手の総合化学メーカー・三菱ケミカルホールディングスの中核会社の三菱ケミカルで、現実的な話になった。2021年の春、ジョブ型に近い新たな人事制度を導入したからだ。 「すでに飛び級のような例もいくつか出てきている。従来よりも、若い世代の登用が進んでいる。本人にスキルさえあれば、年齢関係なしにやりたい仕事に就けるようになってきている」 アメリカの製薬大手ファイザーの日本法人を経て2018年3月に招聘され、三菱ケミカルで大胆な人事制度改革を進める人事戦略担当の取締役、中田るみ子氏はこう語る』、さすが「三菱ケミカルホールディングス」の社長は外国人だけあって、思い切ったやり方だ。
・『年功序列賃金を廃止  三菱ケミカルのこれまでの人事制度は管理職と一般社員とで大きな違いがあった。三菱化学など3社が統合して発足した2017年4月から、管理職では欧米のようなジョブ型雇用(職務等級制度)を採り入れていた。ただ、一般社員の人事制度のほうは前身からほぼ変わらず、年功序列になりやすい日本型のメンバーシップ型雇用(職能等級制度)がベースのものだった。 一般社員は働きぶりに加え、経験につながる勤続年数などの要素も加味して評価し、処遇を決めていた。飛び級はなく、昇級は段階的に一歩ずつ上がる。出世に差がつかないわけではないが、昇級の蓄積がモノを言うため、年齢が高いほどよいポストや高い給与を得やすかった。 社員は会社命令に従い、転勤も含めて異動するのが当たり前だった。その代わり、与えられた仕事さえこなして働けば、昇級昇格がほぼ自動的に与えられてきたという。 三菱ケミカルはそうした職能等級制度を2021年4月に廃止し、年功序列の要素がない役割等級制度に変えた。職務(ジョブ)はある程度固定して責任の範囲や求める役割を明確化し、職務の責任の重さや役割貢献への評価に応じて処遇を決めるようになった。これにより、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。 本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止した。事業拡大や社員の退職により欠員が出たポストは、社内公募か中途採用でまかなう。公募を通過すれば、社内FA(フリーエージェント)のように、やりたい職務に移ることができる。公募や中途採用で欠員が補充できない場合には、会社命令で異動をさせる可能性があるという。 人事制度を大きく変えた背景の1つが社会情勢の変化だ。中田氏は「例えば、転勤を理由に辞めてしまう人が少しずつ増えてきていた。これまでの制度ではそういう層に十分に応えられるようにはなっていなかった」と振り返る』、「本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止」は社員にはいいことだ。
・『「制約社員」とみなして人事改革  女性総合職や共働き世帯、親の介護をする人も増え、男性社員にも転勤を伴う異動命令を出しにくくなっている。また、少子化で若者の数が減少し、やりたい仕事を求めて転職する人も増えている。 そこで三菱ケミカルは、すべての社員を会社の都合だけでは動かせない「制約社員」(働く場所、時間、仕事内容などの労働条件に関して、何らかの制約がある社員のこと)とみなすことにした。その結果、社員が職務や勤務地を主体的に選ぶことができ、年齢や勤続年数といった属性に関係なく処遇が決まる設計の役割等級制度へ行きついた。 中田氏は「昔のように若くて健康な男性を数多く採れる時代は終わった。採用はこれからもっと難しくなっていくだろう。多様な人材にとって『魅力的な会社』に映るように、人事制度を改める必要があった」と話す。 人事制度を大きく変えたもう1つの要因がイノベーション推進の必要性だ。 中田氏は「グローバルでの競争という面でも(国境や事業間での)垣根がどんどん低くなってきている。社員が創造性を発揮できるようにしていかないと、会社がこのまま成長を続けていくことができなくなる」と危機感を口にする。 かつて主力事業だった化学系の汎用品は、今や中国や中東勢に価格面で押されて厳しくなっている。脱炭素の流れもダメ押しとなり、親会社である三菱ケミカルホールディングスは汎用品が多い石化事業と炭素事業を分離させる方針を発表したばかりだ。 今後の成長は、製品の高機能化や環境負荷の軽減といった付加価値をどれだけ生み出せるかにかかっている。同時に社員にも、より高いレベルの創造性が求められるようになってきている。 会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致する』、「会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致」、極めて合理的な選択だ。
・『降格・降級もありえる  新人事制度への移行に伴い、今後は昇格・昇給だけでなく降格・降給もありえるという。2020年12月には50歳以上の管理職を対象にした退職募集も行っている。三菱ケミカルHDの伊達英文CFOは退職募集を発表した2020年11月の決算会見で、「(新人事制度によって)若い人にポストを取られていく。忸怩たる思いをする人には(転職を)サポートする」と説明していた。 これまで年功序列の恩恵を受けてきた40~50代を中心に、新人事制度への移行によって大きく降格・降給している社員はいないのか。また、不満はないのか。 三菱ケミカルによると、「ある一定のポジションに着くためには、スキルや経験といった年功に一定程度比例する要素も必要なため、大幅な降格や減給になった事例は把握していない」という。中田氏も「昇格昇給は一気にポーンとやるが、降格・降給は、指導を含む話し合いを入れるなどの手順を踏んで段階的に行う」と説明する。 成果評価を強めると、社員の将来設計を難しくさせるおそれがある。20代後半から30代の社員でも、職能等級制度の賃金モデルで将来収入を見込んで住宅ローンを組んでいる人もいるだろう。旧人事制度時代のような、ほぼ自動的な昇格・昇給がなくなったことで社員が不安を抱き、逆に人材流出につながるおそれも否定はできない。 三菱ケミカル労働組合の堀谷俊志・中央執行委員長は、「(新人事制度の導入によって)必ずしも全員の賃金が向上するとは限らないことは、組合としても検討段階から懸念の1つだった」としたうえで、「それでも(会社と新人事制度で)合意したのは、中長期で雇用を守るためだ。急速な技術革新で、人の仕事が機械に取って代わられる可能性がある。社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる。レベルの高い仕事には賃金で応える必要がある」と文書で回答した』、「社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる」、なるほど。
・『人件費総額は増えていく  三菱ケミカルでは成果目標や評価に関する上司と部下の面談を今までの年3回から年5回に増やしたほか、評価者向けの研修なども実施する。 また、新人事制度の導入で人件費総額はむしろ増えると想定している。レベルの高い職務に就く社員がいっそう増えていけば、給与総額もさらに増えていく設計になっているという。 三菱ケミカルで人事制度改革のプロジェクトリーダーを務める労制人事部の杉浦史朗氏は「もともとの人事制度では年功の要素があったことで若い社員の給与のスタートライン(最初の水準)が低かった。(役割等級制度にして)職務のレベルを明確化したことにより、最低水準を引き上げている。一方で上の層は、職務レベル並みの賃金を維持している。結果的に給与が上がる人のほうが多いので総額も上がる」と説明する。 労組の堀谷氏は人件費総額の増加方針への評価は示しつつ、「課題は、会社がよりレベルの高い職務を従業員に本当に提示できるかどうか。また、従業員を育成できるかだ。それができなければ制度改革の目的を達成できない」とくぎを刺す。 新人事制度に基づく初めての評価と処遇は、2022年3月末で最初の1年が終わってから決まる。時間の経過とともに、社内での処遇格差が広がっていく可能性もある。それが実際に社員のモチベーションにどのように影響するのか。大胆な人事制度改革の本当の真価が問われるのはこれからになる』、「本当の真価」はどう出てくるのだろうか。
タグ:「家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです」、寂しい限りだ。 日本型経営・組織の問題点 「本当の真価」はどう出てくるのだろうか。 「会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致」、極めて合理的な選択だ。 「本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止」は社員にはいいことだ。 「コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」、「身近な人」こそいい迷惑だ。 「「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます」、「『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。大変な時代になったものだ。 石原壮一郎 ダイヤモンド・オンライン「なぜ、おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活」 (その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景) 「社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる」、なるほど。 東洋経済Plus さすが「三菱ケミカルホールディングス」の社長は外国人だけあって、思い切ったやり方だ。 『大人力検定』 「社員の責任と役割を明確化、若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景」
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日本の構造問題(その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方) [経済政治動向]

日本の構造問題については、11月13日に取上げた。今日は、(その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方)である。

先ずは、11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した内閣府出身で名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田 泰氏による「「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/287848
・『岸田文雄新政権が、成長だけでなく分配が大事という「新しい資本主義」を打ち出して、分配が話題になるかと思ったら、どうやら成長が話題になっているようだ。1990年以降、他の国の賃金が上がっているのに日本の賃金だけがほとんど上がっていない。事実を確認した上で、なぜ日本の賃金が上がっていないのか、どうすれば上がるのかを考えてみたい』、興味深そうだ。
・『「日本の実質賃金が上がっていない」という事実  図1のグラフは、OECDのデータから描かれた、主要国の実質賃金の推移である。 (図1・主要国の実質賃金(2020年ドル購買力平価)の推移 はリンク先参照) 図1を見ると、確かに日本の賃金は上がっていない。1990年に比べて、2020年にはアメリカの実質賃金は48%、イギリスは44%、フランスは31%も上がっているのに、日本の賃金は4%しか上がっていない。ただし、イタリアは上がるどころか3%低下している。韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している。韓国はすでに日本に勝っているのである』、「韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している」、「韓国」より低いとは落ちるところまで落ちたものだ。
・『実質賃金のグラフは、アメリカの所得格差のグラフと似ている?  この図1から、次の図2を思い出した。図2は、アメリカで所得の高い人の所得は上がっているが、所得の低い人の所得は上がっていないことを示している。どちらも、あるグループの所得は上がっているのに他のグループの所得は上がっていないということを示すので形が似ている。 (図2・アメリカの所得シェアの推移 はリンク先参照) ただし、世間に出回った図2は、所得の水準ではなく、全ての人々の所得に占める所得の高い人と低い人の所得のシェアの推移である。シェアであるから、所得の低い人の所得水準が上がっていてもシェアは下がってしまうことがある。シェアでなくて所得の絶対値で見れば、これほどひどいことにはなっていないが、所得の高い人の所得は上がっているが、所得の低い人の所得は上がっていないというのは同じである。 図1と図2から何が言えるだろうか。 図2のようになる理由は、現在のグローバル化した世界では、世界で通用する高度な技能を身に着けた人々の所得はいくらでも上がり、そうでない人の所得は全世界の所得の低い人々との競争圧力によって上がらないからだとされている。アメリカの仕事は、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル。あるいはマイクロソフトやネットフリックスを加えてGAFAM、FAANGとも。社名変更もあるのでビッグ・テックと呼んだほうが良いかもしれない)に代表される高度な技能を必要とする仕事と、「ラストベルト」の産業の仕事に分かれてしまい、二極化しているというのだ。 これを日本とアメリカに当てはめてみると、アメリカはGAFAの世界で、日本はラストベルトの世界ということになるのだろうか。もちろん、日本の製造業はラストベルトではないが、アメリカのGAFAには到底追いつけない。 すると、日本の賃金を上げるためには、日本もGAFAを生むしかないということになるのだろうか。しかし、どうやったら良いのか。補助金を付けて日本版GAFAを生むのだろうか。その補助金はどこからか持って来ないといけない。MMT(現代貨幣理論)で政府がいくら借金をしても大丈夫だと考えて、そこから持ってくるのだろうか。MMTでなければ、日本の既存産業に課税するしかない。しかし、そんなことをすれば、日本である程度成功している企業の足を引っ張ることになる。 図1をもう一度見てみよう。ドイツもイギリスもフランスも、GAFAに匹敵するような企業はないが、それでも賃金は上がっている』、「ドイツもイギリスもフランス」、と「日本」との対比が欲しいところだ。
・『日本の賃金上昇のカギは、「GAFA欠如論」ではなく 「PCR検査目詰まり論」  私は、日本の賃金が上がらない理由として、おそらく多くの人が信じている「GAFA欠如論」ではなくて、「PCR検査目詰まり論」を提唱したい。日本の感染症学者はPCR検査の拡大に一貫して反対していた。安倍首相(当時)がPCR検査を拡大しろと指示しても増加せず、首相自らこの状況をPCR検査の「目詰まり」と説明した(『増えないPCR検査 安倍首相が旗振れど、現場は改善せず』東京新聞2020/7/29)。 なぜPCR検査が増えないのか私は分からなかったが、PCR検査を手作業でする姿と自動検査機でする姿の映像を見て理解できた(『日本生まれ「全自動PCR」装置、世界で大活躍 なぜ日本で使われず?』TBS NEWS23 2020/6/29)。 複雑な検査を手作業ですれば急に検査数を増やすことはできない。人を訓練して間違いのないようにしなければ、無用の混乱が起きるため、急には検査数を増やせないのだ。しかし、機械で行えば熟練者は必要なく、いくらでも検査できる。自動検査機の生産性は人手でする場合の100倍を上回るだろう。しかし、感染症学者も厚生労働省も、なぜか機械の導入に熱心でなく、機械が手作業と同等の精度を持つかをチェックすることに時間をかけ、導入を遅らせた。そもそも、この自動検査機は日本製で、全世界で使われている。世界中で性能をチェックしているのだから、厚生労働省がチェックしなくても大丈夫に決まっているように思えるのだが。 ここから、日本の生産性が低い理由が理解できる。ありとあらゆるところで、このような自動化機械あるいはコンピュータによる手作業の合理化に反対する人々がいるのではないだろうか。これでは、日本の生産性は上がらない。 韓国は、コロナ感染の広がりとともにすぐさま自動機械で大量の検査を行った。熟練の技などに拘泥しない。検査の生産性は日本の100倍以上あるのではないだろうか。韓国では、ありとあらゆるところでこのような生産性の向上が実現している。だから、全体として生産性が上がり、賃金は上昇し、日本を追い抜いた。もちろん、他の国も同様である。きっと、自動化機械に反対する人はおらず、反対する人は退場させてしまうのだろう。日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている。 「GAFAがないから日本はダメだ」と言っても仕方がない。イタリアを除けば、GAFAのない国でも給料は上がっている。イタリアにも、日本と同じように、あらゆる場所に生産性の向上を邪魔する組織があるのかもしれない。賃金を上げるためには、生産性の向上を邪魔する人々にはご遠慮いただくより仕方がない。これは、GAFAを生むよりも簡単なはずである。 生産性の向上を邪魔する人々がいなくなれば、日本版GAFAが自然と生まれてくるかもしれない』、「日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている」、1つの仮設ではあるが、「ドイツもイギリスもフランス」などより生産性向上が低い理由は何なのだろう。「生産性の向上を邪魔する人々」は、日本より欧州の方が多いような気もするので、仮設はやはり成立せず、別の要因で説明する必要がありそうだ。

次に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「自動車一本足打法」で日本沈没、分水嶺を迎えた日本経済の行方」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288962
・『11月から国内の自動車生産台数が回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性を上げている。わが国経済は、「自動車一本足打法」を続けるか否かの分水嶺を迎えた。このまま自動車依存が続けば、わが国の地盤沈下は避けられず、国民の生活水準をも引き下げなければならない恐れが出てくる。それほど脱炭素やデジタル化への遅れは深刻だ』、興味深そうだ。
・『HVは向かうべき「旗印」だった EVではすり合わせ技術の重要性が低下  「自動車一本足打法」と揶揄されるほどに、わが国経済はハイブリッド車(HV)を中心とする自動車産業への依存度が高い。その一方で、脱炭素を背景に、世界的な電気自動車(EV)シフトが鮮明である。その変化に、わが国経済全体の対応が遅れ、今後の成長が懸念されている。 一つの例として、工作機械関連銘柄の株価が不安定だ。過去、自動車の生産が増える局面で、工作機械メーカーの業績への期待が高まる傾向にあった。端的に、工作機械メーカーにとってHVは向かうべき「旗印」だった。精緻な「すり合わせ技術」に磨きをかける自動車メーカーの要望に応え、工作機械メーカーはより微細な製造技術を実現した。同じことがわが国産業全体に当てはまる。 しかし、EV生産ではすり合わせ技術の重要性が低下する。わが国経済の大黒柱である自動車産業の競争力が、そがれる恐れが高まっている。 そのリスクに対応して中長期の視点で経済の実力を高めるために、政府は再生可能エネルギーの利用を増やし、脱炭素やITなどの先端分野における企業の研究開発をより積極的に支援すべきだ。新しい産業を育成して自動車依存が高い産業構造を転換するためには、そうした国の支援は欠かせない』、その通りだ。
・『工作機械メーカーがスマホ製造や制御機器で成長できたのはなぜか   1990年1月に株価、翌91年7月ごろに地価が下落に転じて「資産バブル」が崩壊して以降、わが国の経済は実質的に自動車産業の成長に依存してきた。特に、97年に量産型のHVが発表されたインパクトは大きかった。 端的に言えば、自動車メーカーが世界の需要を取り込んで業況が上向けば、国内の経済はそれなりに落ち着く。それが難しい場合は減速、あるいは失速が鮮明となる景気循環が今日まで続いている。その間、わが国企業はHVに続く新しい、世界的な高付加価値商品を創出することができなかった。 HVはわが国の製造業など産業界にとって、向かうべき旗印としての存在感を強めた。その状況は今なお鮮明だ。自動車メーカーは内燃機関の製造などに不可欠なすり合わせ技術を磨き、環境性能や耐久性を高めてきた。 1次、2次と重層的に連なるサプライヤーは、産業界の盟主である自動車メーカーの要望に応じて工作機械、鋼材、車載半導体、車内装備に使われる化成品などの生産技術を強化した。自動車がわが国製造技術のかなりの部分を育て、鍛えたと言っても過言ではない。 例えば、工作機械メーカーは、自動車メーカーの要望に応えて他国の競合企業が実現困難な動作制御や切削の技術を生み出してきた。重要なのは、それが自動車以外の需要獲得に重要な役割を果たしたことだ。 リーマンショック後、わが国の工作機械メーカーはスマートフォンの製造や、中国のファクトリー・オートメーションに必要な制御機器などの需要を取り込み、成長した。コロナショック後のわが国経済の展開を振り返っても、海外からの工作機械需要は、景気の持ち直しを支えた。 このようにして自動車産業がわが国経済に与える影響は大きくなっている。国内の雇用の8%程度が自動関連産業に従事している。まさに、自動車は日本経済の大黒柱だ』、「自動車産業」は確かに裾野が広く「日本経済の大黒柱だ」。
・『日本株と対照的に米国の株価は最高値を更新  しかし現在、自動車に大きく依存した経済運営は難しくなり始めている。特に、EVシフトは決定的だ。 11月から国内の自動車の生産台数は回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。世界的な脱炭素を背景に、欧州などでは内燃機関を搭載した自動車の販売が禁止される予定だ。それはわが国自動車産業の競争力をそぐ恐れが高い。わが国経済への逆風が強まる一方、自動車に代わる経済成長のけん引役は見当たらず、日本経済全体で成長期待が低下している。 日本株と対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、先端分野を中心に企業の成長期待が高い。米国ではGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性向上を支えた。脱炭素の加速などを背景に、テスラの成長期待は非常に強い。 それを追いかけるようにして、ゼネラルモーターズとフォードは韓国企業と合弁を組んでバッテリー生産を強化し、EV生産を増やそうとしている。自己変革を進めて新陳代謝を高める米国企業に比べ、バブル崩壊後、在来分野での雇用維持を重視したわが国の経済運営のツケは深刻だ。 わが国の自動車メーカーが需要を獲得してきたアジア新興国も、競争環境が急速に変化している。まず、中国では不動産市況の悪化などを背景に景気減速が鮮明だ。消費者は先行きの不安心理を強め、自動車の購入を手控え始めた。 さらに、わが国自動車メーカーの牙城といわれていた東南アジア地域では、インドネシアやタイ政府がEVや車載バッテリー生産のための「直接投資」を韓国や中国、ドイツ企業などに求めている。 このように世界経済全体で見るとEVシフトによる自動車の電動化が鮮明だ。南米やアフリカなどでEVが普及するかは見通しづらいが、現時点でEVシフトは加速している。それに対して、本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った。自動車依存の日本経済の先行き懸念は高まっている』、「本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った」、その通りだ。
・『国民の生活水準をも引き下げなければならない恐れ  わが国経済は、自動車一本足打法を続けるか否かの分水嶺を迎えた。 わが国経済の自動車依存が続けば、中長期的にわが国経済の地盤沈下は避けられないだろう。自動車産業の稼ぐ力が低下すれば、わが国経済全体で生活水準をも引き下げなければならない恐れが出てくる。それほど脱炭素やデジタル化への遅れは深刻だ。今後、成長期待の高い海外市場への進出を、これまで以上に重視する日本企業は増えるだろう。 そうした展開を防ぐ手だてはある。自動車が支えた経済の総力を挙げて、新しい産業を育成できれば、わが国経済の縮小均衡に歯止めをかけることはできる。そのためには、政府が経済の安全保障の根幹であるエネルギー政策を大転換しなければならない。とにもかくにも、再生可能エネルギーの利用増加を急ぐことだ。 それと同時に、労働市場などの規制改革を進め、企業が必要な人材を柔軟に登用できる環境を整え、職業訓練やリカレント教育を徹底するべきだ。 例えば2000年代初めのドイツは、社会保障改革と職業の訓練と紹介の強化によって経済の停滞を脱却し、自動車や機械、さらには再生可能エネルギーの利用によって経済成長を実現した。 わが国もそうした前例に学び、人々のアニマルスピリットのさらなる発揮を目指すべきだ。それができれば、新しい産業が育ち、わが国が自力で需要を創出することはできる。反対に、そうした改革を進めることが難しい状況が続くと、わが国経済は世界経済の変化から取り残される。 1990年代以降、30年以上もわが国経済全体で新しい発想の実現を目指すことは難しかった。新産業育成の重要性は繰り返し議論されたが、本格的な取り組みは進まなかった。 それだけに、日本経済の先行きには慎重、あるいは悲観的にならざるを得ない。岸田政権は強い危機感を持って迅速にエネルギー政策の転換や規制改革に取り組み、新しい産業を盛り上げていくべきだ』、私は「エネルギー政策の転換や規制改革」を推進することで、結果的に「新しい産業」が育ってくるのであって、直接的に「新産業育成」をしようとするのは誤りだと思う。「本格的な取り組みは進まなかった」、のは当然である。
タグ:日本の構造問題 (その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方) ダイヤモンド・オンライン 原田 泰 「「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?」 「新しい資本主義」 「韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している」、「韓国」より低いとは落ちるところまで落ちたものだ。 「ドイツもイギリスもフランス」、と「日本」との対比が欲しいところだ。 「日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている」、1つの仮設ではあるが、「ドイツもイギリスもフランス」などより生産性向上が低い理由は何なのだろう。「生産性の向上を邪魔する人々」は、日本より欧州の方が多いような気もするので、仮設はやはり成立せず、別の要因で説明する必要がありそうだ。 真壁昭夫 「「自動車一本足打法」で日本沈没、分水嶺を迎えた日本経済の行方」 「自動車産業」は確かに裾野が広く「日本経済の大黒柱だ」。 「本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った」、その通りだ。 私は「エネルギー政策の転換や規制改革」を推進することで、結果的に「新しい産業」が育ってくるのであって、直接的に「新産業育成」をしようとするのは誤りだと思う。「本格的な取り組みは進まなかった」、のは当然である。
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日本の構造問題(その22)(今 必要とされているアーキテクトとは 「抽象化してゼロベースで全体構想を考える」ことができる人、「失われた30年」は なぜ起こったのか? アーキテクト人材なくして 日本の再生はない 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法、これでよいのか安 い日本 ビッグマック指数で中国やポーランドの下位 賃金が低水準 国際的地位も下落) [経済政治動向]

日本の構造問題については、9月10日に取上げた。今日は、(その22)(今 必要とされているアーキテクトとは 「抽象化してゼロベースで全体構想を考える」ことができる人、「失われた30年」は なぜ起こったのか? アーキテクト人材なくして 日本の再生はない 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法、これでよいのか安 い日本 ビッグマック指数で中国やポーランドの下位 賃金が低水準 国際的地位も下落)である。

先ずは、9月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したビジネスコンサルタントの細谷功氏と経営共創基盤共同経営者の坂田幸樹氏による「今、必要とされているアーキテクトとは、「抽象化してゼロベースで全体構想を考える」ことができる人」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/283231
・『ニューノーマルの時代にはこれまでの勝ちパターンは通用しない。変革期に必要な新しい思考回路が求められている。それがアーキテクト思考だ。アーキテクト思考とは「新しい世界をゼロベースで構想できる力」のこと。『具体⇔抽象トレーニング』著者の細谷功氏と、経営共創基盤(IGPI)共同経営者の坂田幸樹氏の2人が書き下ろした『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法』が、9月29日にダイヤモンド社から発売される。混迷の時代を生きるために必要な新しいビジネスの思考力とは何か。それをどう磨き、どう身に付けたらいいのか。本連載では、同書の発刊を記念してそのエッセンスをお届けする』、初めて接した概念だが、興味深そうだ。
・『アーキテクトは、根本的な世界観を提示する  今回はアーキテクト思考の概要についてご紹介します。前回お話したような変革期のビジネスにおいていま不足しているものの考え方、つまりゼロベースで白紙の状態から抽象度の高い全体構想を構築するための思考法を、ここでは「アーキテクト思考」と定義しました。 英語のArchitectとは文字通りには建築家を意味します。ITの世界でも「アーキテクチャー」(CPU等の基本的な設計思想)という言葉に現れるように、情報システムの複雑な構成単位を組み合わせた全体の基本的な思想や構造を設計する人が「ITアーキテクト」という表現で用いられています。 本連載で定義する(カタカナの)「アーキテクト」とは、本書では「全体構想家」を意味し、その元々の語源である建築家のように、白紙に抽象度の高いコンセプトや将来像を構想できる人のことを意味します。 誰かが設定したフィールドでプレイするのではなく、そのフィールドそのものを更地から想像し、そこにどんなプレイヤーを呼んでどんなゲームをするのかという全体の場を設計する、そのための思考がアーキテクト思考です。 VUCA(注)とデジタルトランスフォーメーション(DX)によって20世紀とは大きくルールの変わったこれからのビジネスにおいて、ボトルネックとなるのは上記のアーキテクトの不足ではないかというのがここでの仮説です。 本記事ではそのアーキテクトの思考回路や思考プロセスについて明確にするとともに、そのビジネスにおける実践イメージを、フレームワークや事例を通じてつかんでもらいたいと思います。 アーキテクトとは、狭義では現在実際に用いられている建築家あるいはITアーキテクトを意味しますが、本書での対象はそのコアスキルをさらに一般化してビジネスを含めたあらゆる領域に拡大し、各々の領域で「抽象化してゼロベースで全体構想を考える」ことができる人とします。 旧来の慣習にとらわれずに新たな場を作る起業家はもちろん、新規事業開発者も「ビジネスアーキテクト」であり、その他の領域でも、例えばデジタル技術を駆使して都市計画を作り上げる「スマートアーキテクト」、コミュニティを立ち上げる「コミュニティアーキテクト」、何らかの組織やグループを立ち上げる「グループアーキテクト」、新たなドキュメント体系を作り上げる「ドキュメントアーキテクト」、様々なコンセプトをゼロから作り上げる「コンセプトアーキテクト」等、何にでも適用は可能です。さらに言えば、私たちは皆「自分自身の人生のアーキテクト」であることも必要となるでしょう。 他にも、いま日本が世界的に圧倒的な競争力を持っている数少ない分野として挙げられるのが「ゲーム」や「アニメ」ということになりますが、ここでの強みは単に表面的な面白さのみならず、そこに何らかの「世界観」が提示されていることではないでしょうか? このように根本的な世界観を提示することもアーキテクトには求められます』、「アーキテクト」は確かに興味深い概念だ。
(注)VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた合成語(Wikipedia)。
・『アーキテクト思考に求められるのは「抽象化能力」  では、そのようなアーキテクトが身に付ける必要がある「アーキテクト思考」とは、どのようなものでしょうか? それを実践する「アーキテクト」像を一枚の絵で表現すれば下図の通りになります。 全体を俯瞰して抽象化してゼロベースで構想を練って、新たな場としての世界観を構築するためのアーキテクト思考。それを一言で表現すれば「抽象化思考」です。 目に見える具体的な事象から、目に見えない抽象の世界を俯瞰して描き、個別の構成要素に関係性を与えて全体の構造を作り上げる力です。これは、目に見える世界において更地に建築物を構想するのに類似しています』、「抽象化思考」は日本人にはハードルが高そうだ。
・『アーキテクト思考と非アーキテクト思考の違い  この全体像を理解するために、まずアーキテクト思考の特徴を、それとは真逆の非アーキテクト思考との比較で示せば下図の通りです。 まず建物や都市の構想を描くべく、高所から全体を眺められることは必須の能力です。「自分の組織の視点で」とか「自分の立場の視点で」ではなく、対象とする系(システム全体だったり、ビジネス全体だったりといった構成要素が関係しあった全体像)を常に全体からとらえることが、まずアーキテクト思考の第一歩です。 さらにそれを真っ白なキャンバスから描くべくゼロベースで考えられることが必須。ゼロベースとは、様々なしがらみや過去の遺物を忘れて、現時点でベストと思える情報や技術を最大限に生かして最高の構想を描くことを意味します。 これとは逆の発想が、既にある既存の資産をどうやったら最大に活用できるかを考え、いまある枠組みにあたかも穴埋め問題を解くように「埋めていく」考え方で、これは非アーキテクト思考の発想といえます。 そのためには、他者の動きに反応するのではなく、自ら始めに能動的に動く姿勢が必須となります。単に他者が出した案に反対するだけなのは論外として、既にあるものの改善を考えるのではなく、一から(ゼロから)代案を考えることがアーキテクト思考の実践には求められます。(細谷氏・坂田氏の略歴、本の紹介はリンク先参照)』、「既にあるものの改善を考えるのではなく、一から(ゼロから)代案を考えることがアーキテクト思考の実践には求められます」、ますます日本人にはハードルが高そうだ。

次に、この続き、9月30日付けダイヤモンド・オンライン「「失われた30年」は、なぜ起こったのか?
アーキテクト人材なくして、日本の再生はない 具体と抽象を行き来する問題発見・解決の新技法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/283402
・・・アーキテクト思考とモノづくり思考の違い  前回はアーキテクト思考とは? そしてその実践者たるアーキテクトとはこんなスキルセットを持った人であるという定義を示しました。 ところが第一回で述べたように、このような人は(もともと全ての人が全ての場面でこのような思考を持つ必要はなく、限られた場面で必要となるとはいえ)VUCAの時代といわれる現在のビジネス環境において、その必要度に比べて実際の人材は不足していると言えます。 ここでは、なぜこのようなアーキテクト思考を持った人が必要以上に少ないかを考えてみましょう。それは一言で表現すれば「これまでの日本が得意とし、重要だと思っていた価値観と全く逆の価値観が必要とされる」からです。「日本が得意であること」の象徴的なものが品質の高い画一的な製品を低コスト短納期で作るための、いわゆる「モノづくり」の価値観です。 アーキテクト思考を、20世紀終わりまでに世界を席巻して日本の高度成長の原動力となった(いまも世界の中では強みとなっている)モノづくり思考と比較して下表のように比較してみます(下図)』、アーキテクト思考とモノづくり思考の違いの図はなかなかよく出来た分かり易い図だ。
・変革期に必要なのは、枠の決められた世界の最適化ではなく、枠そのものを新たに作り上げる能力
 アーキテクト思考とは「抽象化してゼロベースで全体構想を考えること」でした。これはいわゆる「三現主義」と呼ばれる現場・現物・現実という典型的な具体の世界を重視してきたモノづくりの思考とある意味で対照をなします。 なぜ抽象化が必要かといえば、変革期に必要なのは枠の決められた世界を最適化するのではなく、枠そのものを新たに作り上げる能力だからです。 もちろん抽象化するためには、初めに具体的事象の観察が求められるので、正確にいえば抽象重視というよりは抽象「化」を重視するということになります。 モノづくりの方法論として世界中に有名になったカイゼン(KAIZENは英語の辞書にも載っています)活動というのは、「いまあるもの」の改善です。つまり、これは「白紙にゼロベースで構想する」アーキテクト思考とは異なる頭の使い方が求められたということです。 改善というのは既に80点、90点とれているものを100点(あるいはそれ以上)にするという発想です。この場合に必要なのは、「足りていない10点、20点」にひたすら目を向けてそこをつぶしに行くという「引き算型」の思考回路になりがちですが、逆にゼロベースで物事を考えるときにはわずかな材料からでも更地に構想を考えるという、むしろ「足し算型」の発想が求められます。 これらの違いを一言で表現すれば、川上の発想と川下の発想の違いということになります。 建物の構想から建築やITシステムの構想から開発という流れを考えればイメージしやすいかと思いますが、仕事のまだ様々なことがぼんやりとして抽象的で明確に決まっていない川上と、様々な仕様が明確に決まって様々な領域の専門家が関与する川下とでは必要となるスキルや価値観が(時には180度違うと言ってよいほど)異なります。 もちろん抽象化するためには、初めに具体的事象の観察が求められるので、正確にいえば抽象重視というよりは抽象「化」を重視するということになります』、「改善というのは既に80点、90点とれているものを100点・・・・にするという発想です。この場合に必要なのは、「足りていない10点、20点」にひたすら目を向けてそこをつぶしに行くという「引き算型」の思考回路になりがちですが、逆にゼロベースで物事を考えるときにはわずかな材料からでも更地に構想を考えるという、むしろ「足し算型」の発想が求められます」、「仕事のまだ様々なことがぼんやりとして抽象的で明確に決まっていない川上と、様々な仕様が明確に決まって様々な領域の専門家が関与する川下とでは必要となるスキルや価値観が・・・異なります」、なるほど分かり易い説明だ。
・一世代前のモノづくりの強みはVUCAの時代、デジタル化の時代には、強力な障害となって立ちはだかる  もっとも川上で必要となるゼロからの構想や高度な抽象化は組織ではなく、個人のなせるわざであるというのは、建築の世界を見ればわかりやすいでしょう。例えば建築物の基本コンセプトを構想する世界に名だたる建築家や会社をゼロから立ち上げた創業者たちもそのほとんどが個人名で仕事をする人たちです。 これに対してモノづくりで大事なのは、全社員一丸となって画一的な品質管理を定められた厳格なルールの下で行うことであり、この世界では一人ひとりの個性や多様性はできるだけ排除することが望まれます。 工場における品質管理の最大の敵は「バラつき」だからです。工場の品質向上の活動の多くは「いかにしてバラつきを減らすか」に腐心しています(究極にばらつきを排除した状態が機械化です)が、後述のように抽象化に必要なのは多様な思考の軸であるがゆえに多様性が重要なのです。 これまで日本の強さだったモノづくり思考は、画一的で厳格にルールを守るという日本人の特性と、ものの見事に合致して世界を席巻する製造業が出来上がりました。 ところが皮肉なことに『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)でクレイトン・クリステンセンが語った通り、「一時代の強み」は新しいイノベーションが起こってパラダイムが変わったときの次の世代には弱みとなります。 このような一世代前のモノづくりの強みはVUCA(注)の時代、デジタル化の時代には、ある意味強力な障害となって我々の前に立ちはだかるのです。 ここに一石を投じ、ビジネスの世界でも「アーキテクト思考」の実践者を増やして新たな変革につなげる個人を一人でも増やすことが本連載の狙いです。 次回は今回簡単に述べた「川上と川下の違い」について、「具体と抽象」を切り口にさらに詳細に見ていくことにしましょう。(細谷氏と坂田氏の略歴、本の紹介はリンク先参照)』、「これまで日本の強さだったモノづくり思考は、画一的で厳格にルールを守るという日本人の特性と、ものの見事に合致して世界を席巻する製造業が出来上がりました。 ところが皮肉なことに『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)でクレイトン・クリステンセンが語った通り、「一時代の強み」は新しいイノベーションが起こってパラダイムが変わったときの次の世代には弱みとなります」、最近の成長率低迷を見事に説明している。
(注)VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた合成語(Wikipedia)

第三に、11月7日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「これでよいのか安い日本。ビッグマック指数で中国やポーランドの下位 賃金が低水準、国際的地位も下落」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88921
・ビッグマック指数は、その国の賃金水準を判断する基準になる。このところ日本のビッグマック指数はかなり低い値になっており、韓国、タイ、パキスタンなどより低い。9月以降の円安によってさらに低くなり、いまや、中国やポーランドより下位になってしまった』、なるほど。
・ビッグマック価格がアメリカの6割という「安い日本」  英誌『エコノミスト』が毎年、世界各国のビッグマックの価格を調査、公表している。 2021年6月の数字を見ると、日本のビッグマック価格は390円。1ドル=109.94円で換算すると3.54ドル。それに対してアメリカでは5.65ドル。だから日本のビッグマック価格は、アメリカの62.8%でしかない。 「安い日本」といわれるが、まさにそのとおりだ。 以上のことが、「ビッグマック指数」という指標で表わされている。これはつぎの算式で計算されたものだ。 [(ドル表示の日本のビッグマック価格)÷(アメリカのビッグマック価格)-1]x100  上述の日本の場合は、3.54÷5.65-1]x100=−37.2 なお、アメリカのビッグマック指数は、定義によって常にゼロだ。 この値がマイナスで絶対値が大きいと、日本人は、アメリカに行った時に「物価が高い」と感じることになる。一般に、ビッグマック指数が小さい国の人が大きい国に行けば、物価が高いと感じる。ビッグマック指数は、その国の通貨の購買力を表わしているわけだ。 2021年6月におけるいくつかの国、地域のビッグマック指数をみると、つぎのとおりだ。 指数がプラスの国として、スイス(24.7)、ノルウェイ(11.5)、スウエーデン(9.6)などがある。 マイナスでも日本より指数が大きい国・地域として、EU(マイナス11.1)、韓国(マイナス29.2)、アルゼンチン(マイナス30.2)、タイ(マイナス31.0)、パキスタン(マイナス36.3)などがある。 いまや日本人は、世界の多くの国に行ったときに、物価が高いと感じる。6月時点でビッグマック指数が日本より低い国は、スリランカ(マイナス37.9)、中国(マイナス38.8)、ポーランド(マイナス39.2)、コロンビア(マイナス40.3)くらいしかなかった』、「いまや日本人は、世界の多くの国に行ったときに、物価が高いと感じる」、情けない限りだ。
・円安が進んで順位はさらに低下し、中国に抜かれる  ところで、以上で紹介したのは今年6月の数字だ。その後、円安が進んで、10月には1ドル=114円程度になった。 日米のビッグマック価格が変わらないとすれば、日本のビッグマック価格は3.42ドルになるから、アメリカの60.5%だ。そしてビッグマック指数は、マイナス39.5となる。 他国のビッグマック指数が6月時点と変らなければ、日本は中国やポーランドに抜かれたことになる。 日本より低いのは、コロンビアのほか、ウクライナ、マレーシア、インドネシア、トルコ、アゼルバイジャン、南アフリカ、ロシア、レバノンしかない。 これでよいのだろうか?』、全ての原因は日銀の黒田総裁の異次元緩和の行き過ぎである。米国やECBが出口の模索を始めたのに、1人取り残された形だ。やれやれ。
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日本の構造問題(その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革) [経済政治動向]

日本の構造問題については、6月2日に取上げた。今日は、(その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革)である。

先ずは、8月3日付け東洋経済オンラインが掲載した特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ氏による「日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/444645
・『なぜ日本は、北朝鮮のすぐ下位である、196カ国中196位という順位につける結果となってしまったのだろうか――。2019年のGDPに占める対内直接投資(FDI)の割合を示すデータのことだ。東京都の長年にわたる努力は功を奏さなかったわけである。 FDIは、外国企業による日本での新規事業立ち上げや、合弁事業の設立、既存日本企業の実質的、あるいは完全買収の際に発生する。FDI残高とは、何十年にもわたって累積されたFDIの総額だ。政府は今年6月に、2030年までにFDI残高を現在の比率の約3倍である12%まで増大させるという目標を採択した。しかし、過去の方策が失敗した理由を理解せずに、どうやって政府は正しい戦略を選択できるというのだろうか』、「FDI残高」は何故、こんなに少ないのだろう。
・『小泉時代から「成長戦略の一環」とされてきたが  FDIの増加は、小泉純一郎氏が首相だった時代から日本の成長戦略の一部とされてきた。これは、非常に理にかなっている。対内直接投資を増やさずして経済改革に成功した主要国はほとんどないからだ。成功談は、アジアの開発途上国から東欧の体制移行国にまで及ぶ。 また、この戦略は成熟経済にも効果を発揮する。日本人が北米に”移植”工場を設置した時の、デトロイトにおける自動車メーカーの発展を考えてほしい。デトロイトは、たとえ工場の組み立てラインの中断が必要となっても、欠陥を後から直すよりも、最初から防ぐほうが、コストがかからないことを学んだのだ。 外国企業が流入する際に経済に与える主な恩恵は、こうした企業がもつ高い効率性だけではない。それよりも、外国企業の新しいアイデアや戦略が、こうした企業にかかわるサプライヤーや顧客の業績を、また、日本の”移植”工場の事例では競合他社の業績までをも向上させる波及効果にあると言える。裕福な19カ国(累積FDI残高が1980年のGDP比6%から2019年のGDP比44%に増加した国)の調査では、FDIのレベルが高いほど、主に労働者一人当たりの生産量が向上し、経済成長が高まることを証明している。 小泉氏が2001年首相に就任した当時、FDI残高は典型的な富裕国ではGDPの28%であるのに対して、日本ではGDPのわずか1.2%だった。小泉氏は2003年に外国直接投資の倍増を約束し、2006年には、2011年までにGDPの5%という目標を設定した。ところが日本は、いまだこの目標を達成していない。 顕著な進展はあった。2008年、FDIは4.0%に増加した。だが、その勢いは停滞。FDIを倍増するという、安倍晋三前首相の2013年の約束にもかかわらず、2019年時点、FDIの対GDP比はわずか4.4%にとどまっている。一方、他の富裕国の中央値は44%に上昇している。 さらに悪いことに、日本政府はIMF、OECD および UNCTAD(国連貿易開発会議)が使用する「directional principle」とは異なる「asset/liability principle」と呼ばれる計上原則を用いることでいかに成功していなかったかを隠している。 2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった。 財務省の使用する数値は一定の正当な会計目的があるが、例えば、海外関連会社から日本の親会社への貸付金など、実質的な直接投資と関係のない項目も含んでいる。 したがって、OECDの広報担当者が東洋経済の取材に対し、「(グローバルスタンダードである)directional principalのほうがFDIの経済的影響の分析に適している。国と産業ごとの直接投資の統計の推奨的な提示法だ」と言ったのもうなずける。問題を解決する第一歩が、問題があることを認識することならば、日本政府は困難に直面している』、「2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった」、こんな悪どい粉飾までするとは、「財務省」は懲りない官庁のようだ。
・『他国ではFDIは跳ね上がっている  FDIに対して抵抗から歓迎へと転換した他国では、FDIは急上昇している。では、なぜ日本の努力は報われていないのか。たとえば韓国では、外国直接投資のGDP比は、1998~99年のアジア通貨危機以前の2%から、現在、14%へと跳ね上がった。インドでは、1990年はわずか0.5%だったが、現在14%へと上昇し。東欧では共産主義崩壊後、7%からなんと55%へと大幅にアップした。 内閣府の対日直接投資推進会議は、6月の声明に、日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないことかもしれないと記した。したがって、ほぼすべての提言が「魅力的なビジネス環境」の構築を目的としている。しかし、この前提は正確ではない。 多数の調査によると、外国や多国籍企業は投資先のトップとして日本を挙げている。日本には大規模で豊かな市場、教育水準が非常に高い労働力と顧客基盤、高水準の技術、優れたインフラ、安定した政治経済システムがある。実際、アメリカの経営コンサルティング会社A.T. カーニーが世界の上級管理者を対象に実施した2020年の「海外直接投資信頼度指数調査」では、日本は富裕国27カ国中4位に入った。 経済学者である星岳雄氏と清田耕造氏の計算によると、日本が類似した特性を持つ他国と同様の経済活動を行えば、GDPにおけるFDIの比率はすでに39%という驚異的な数値に達していたようだ』、「日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないこと」ではなく、真相は以下にあるようだ。
・『日本ではM&Aのハードルが高い  それでは、日本のこの悲惨な結果の原因はどこにあるのか? 主な要因は、固定した労働力、顧客基盤、ブランド名、サプライヤーなどを獲得するために健全な企業を買収するという、FDIの第一段階の実行が非常に困難である点だ。 典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない。これは主にインバウンドM&Aの規模が非常に小さいため、FDIの総額も非常に低くなっているのである。 報道では、外国企業が日産、シャープ、東芝などの経営が破綻した大企業を救済する驚くべきケースが取り上げられる。しかし、そうしたケースは例外的だ。外国人投資家のほとんどが、日本での成長が見込めるだけでなく、親会社のグローバル展開を推し進めるリソースを提供できるような優良企業を買収したいと考えている。大規模な人員削減を要する中小企業への投資は避ける。 残念ながら、最も魅力的なターゲットとなる企業は、「系列企業」という構造を持ったグループ企業に属しているため、ほとんどが手の届かない状況である。日本には2万6000社の親会社と5万6000社の関連会社があり、日本の全労働者の3分の1にあたる1800万人の従業員を雇用している。 これには、系列企業ではない下請け企業や密接な関係にあるメーカー内の魅力的な企業は含まれない。例えば、トヨタグループには1000社の関連会社に加えて、4万社のサプライヤーがあり、その大半が下請け企業である。1996年から2000年の間に外国企業が買収できたグループ企業内のメンバー企業はわずか57社であったのに対し、無関係の企業は約3000社であった。 買収についてのこうした壁は、戦後の数十年間、日本が外国企業からの支配をおそれていたことに由来する。1960年代、日本がOECDに加盟するために外資規制の正式な自由化を迫られた時、政府は「自由化対策」と称して、非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した。 その内容は、巨大企業とその企業の投資家との間の株式の持ち合いの復活、縦横の企業間における系列の強化など多岐にわたっている。形式的な障壁はほとんどなくなったが、こうした時代の遺産は今でもインバウンドM&Aを抑制している』、「典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない」、かつて「非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した」のが、「今でもインバウンドM&Aを抑制している」、身から出たサビだ。
・『大幅な雇用減より外国企業による買収の方が危険?  さらに、多くの政策担当者に時代遅れの考え方がまだ残っている。例えば、対日直接投資推進会議が今年6月に発表した戦略文書では、インバウンドM&Aに関する記述が一切削除されている。その1年前に発表された中間報告書では、日本の中小企業の問題となっている後継者不足に対してインバウンドM&Aは大きな助けになると認知されていた。 この報告書では、2025年には60万社の黒字中小企業が、経営者が70歳を超えても後継者不足のため廃業せざるを得なくなる可能性があると指摘しており、これにより最大600万の雇用が失われる可能性がある。 雇用と技術資源の莫大な損失を食い止める努力の一環として報告書は、これらの中小企業が適切な海外のパートナーを見つけるのを支援し、かつ「第三者間の事業移転(M&A、合併と買収)を促進する」ための「何らかのメカニズム」が望まれるとしていた。これは大きな前進となるはずだった。 しかし、今年6月に内閣府が発表した最終文書では、海外からのM&Aの話はすべて消されていた。明らかに、誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えたのだ。 政府当局者たちは、より多くの海外からのM&Aを望んでいるが、外国による買収に対する国民の警戒感も尊重しなければならないと主張することがある。しかし現実には、政府は国民感情の大きな変化に追いつきそこねているのだ。 2000年代半ばに実施された調査では、回答者の47%が、外国企業は日本経済にプラスの影響を与えていると答えており、マイナスの影響を与えていると答えたのはわずか8%だった。 かつてよく言われていた、外国の企業や投資家は日本企業を安く買って売ることで手っ取り早く稼ごうとする「ハゲタカ」だという見方をしていたのはわずか4%にすぎない。外国の企業で働きたいと答えたのは回答者の20%、働きたくないと答えたのも20%で、残りは意見を示さなかった』、「誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えた」というより日本の中小企業は政治問題化し易い微妙なテーマなので、削除したのではなかろうか。
・『後継者問題に悩む企業は断るか?  政策立案者たちが今とは反対の立場を取って、海外からのM&Aを奨励することにしたとしたら、買収をまずどこから実現しようとするだろうか。後継者問題に悩む中小企業への支援は、いいデモンストレーション効果が期待できる。調査によると、中小企業は、同じ業界や同じ都道府県内の別の中小企業が外国企業の買収を受けて成功している例が見られれば、売却により積極的になるという。 日本にはすでに日本M&Aセンターのように、後継者不足による危機に直面している健全な中小企業のためのM&Aを手がける多くの企業が存在している。こうした企業により、M&Aという概念は高齢の企業オーナーたちにもより受け入れやすいものになっている。しかし、これまでのところ海外の買い手が関わっているケースはほとんど見られない。 JETROの「ジャパンインベスト」プログラムは、外国企業が日本において、まったく新しい事業を始めることを積極的に勧めている。しかし、外国企業が日本企業を買収することは、例え生き残りのためにM&Aが必要な中小企業ですら、積極的な取り組みはない。これは、上述の2020年の報告書に従って、JETROの任務に含まれるべきである。 中小企業の70歳の経営者は、自分が引退した時に従業員が失業するのを心配している。政府が買い手を紹介し、その買い手の意図が従業員の解雇ではなく会社の成長を支援することを保証するとしたら、外国企業への売却を頑固に拒絶する人はどれだけいるだろうか。このプロセスが一度始まれば、後継者問題のない企業にも、雪だるま式で効果が出るだろう。 政府が日本の成長に本気であるならば、外国FDIを真剣に考える時である。他の先進国のように日本でも外国M&Aが一般的になることが必要である。さもなければ、2030年が来ても、日本は196位である可能性がある』、「後継者問題」に悩む「中小企業」に、外国企業が魅力を感じるところがどの程度あるのだろう。実際には、それほどないのではなかろうか。

次に、8月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/08/post-152_1.php
・『<五輪開幕前、迷走に迷走を重ねた日本。その根本にある「病理」は太平洋戦争を避けられなかった当時から変わっていない> 東京五輪は、国民から100%の支持が得られないという状況下での開催となった。コロナ危機という要因があったとはいえ、ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい。 順調に物事が進んでいるときには大きな問題は発生しないが、非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となったが、一部からは太平洋戦争との類似性を指摘する声が出ている。80年前と今を比較するのはナンセンスという意見もあるが、事態の推移を考えるとこの類似性を否定するのは難しそうだ。 今回の五輪は当初から問題が山積していた。2015年7月、新国立競技場の建設費が当初予定を大幅に上回ることが判明したが、政府がうやむやに処理しようとしたことから批判が殺到。同年9月には公式エンブレムの盗作疑惑が発覚し、当初は盗作はないと強気の対応を見せたものの、選考過程の不透明性が指摘されるなど外堀が埋められ、使用中止が決断された。  18年には日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が仏捜査当局から贈賄容疑で捜査され、19年には記者からの質問を一切受け付けず、何の説明もないまま退任。21年2月には森喜朗大会組織委会長が女性蔑視発言をきっかけに辞任し、後任指名された川淵三郎氏にも密室人事批判が殺到。結局、川淵氏も役職を辞退してしまった』、「ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい」、「非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となった」、その通りだ。
・『佐々木氏、小山田氏、小林氏......  開会式の演出では能楽師の野村萬斎氏を総合統括とするチームが解散を表明。その後、統括に起用されたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏は、女性タレントを蔑視する演出プランがきっかけで辞任し、今度は楽曲担当で参加していた小山田圭吾氏が、障害者への虐待を自慢する発言が問題視され、やはり辞任に追い込まれた。 最後は、過去のホロコースト揶揄発言によって開会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任されるというありさまである。 次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる。 太平洋戦争の直接的なきっかけは、アメリカのコーデル・ハル国務長官が突き付けた文書(いわゆるハルノート)だが、これは事実上の最後通牒であり、その時点で日本側に選択肢はなかった。 日米開戦の発端となったのは、1931年の満州事変と翌年のリットン調査団への対応だし、さらにさかのぼれば、南満州鉄道の日米共同経営をめぐって1905年に締結された桂・ハリマン協定の破棄が遠因であるとの見方もある。 日々の小さな交渉や対策の積み重ねとして事態は推移するので、単体として判断することには意味がない。日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう。 日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない』、「次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、鋭い指摘で、同感である。

第三に、9月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281467
・『トヨタが「プリウス」を生み出すも その後が続かなかった  8月末の世界全体の株式時価総額ランキングを見ると、1位から3位がアップル、マイクロソフト、グーグル、5位と6位がアマゾン、フェイスブックだ。上位10社には、台湾積体電路製造(TSMC)や中国のテンセントもランクインする。わが国企業ではトヨタ自動車が40位、キーエンスが90位あたりに入る。 1986年、世界の半導体市場の上位10社のうち6社が日本企業だった。89年の世界トップの時価総額はNTTだった。当時、わが国の半導体、家電製品、通信機器が世界シェアを獲得し、さらなる成長への期待は高かった。 つまり、89年末までわが国経済は世界を席巻したが、その後の凋落が激しい。同年末に日経平均株価は3万8915.87円の史上最高値をつけた後、90年代に入ると資産バブルが崩壊した。株価と地価の下落によって景気は減速・停滞し、経済全体でバランスシート調整が進み、不良債権問題が深刻化した。その状況下、わが国経済全体で雇用の保護を重視する心理が強くなり、既存分野から成長期待の高いITなどへの生産要素の再配分が難航した。 その一方で、世界経済では中国、台湾、韓国などの企業が技術力を蓄積した。また、米国では75年に創業したマイクロソフト、76年のアップルに続き、IT革命が加速する中で94年にアマゾン、98年にグーグル、2004年にフェイスブックが誕生し、GAFAMと呼ばれるIT先端企業の筆頭格に成長している。 1990年代以降、わが国ではトヨタ自動車がハイブリッド自動車の「プリウス」を生み出したが、その後が続かなかった。また、キーエンスは世界経済の変化に合わせてファブレス体制を導入し、さらには実力主義を貫くことによって高い成長を実現した。しかし、わが国の産業全体としては世界各国の主要企業と互角に競争することが難しい状況が続き、時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった』、「時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった」、「89年の時価総額トップ10」は以下のように日本企業が7社もいたのに比べ、隔世の感がある。
https://www.m-pro.tv/2020/08/8689.html
・『国際分業を追い風に成長期待高まるアップル  IT化の加速などによって世界経済は大きく変化している。最も大きな変化は、国際分業体制の加速だ。それによって、新しい発想をソフトウエアに落とし込み、効率的かつ迅速にデバイスに実装することが可能になった。 アップルはその考えを体現した企業だ。1997年に故スティーブ・ジョブズが経営トップに復帰する直前、アップルはマイクロソフトのウィンドウズOSのシェア拡大に押されて競争力を失い、倒産の危機にひんした。ジョブズは、iMacのヒットによってアップルを再建し、獲得した資金をiPhoneやiPadなどのソフトウエア開発やデザイン強化に再配分した。その上でアップルは機能実現に必要な部品を世界から集め、組み立て生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンなどに委託し、スピーディーに新しいモノを生み出す体制を構築した。 ジョブズが手本にしたのは、「ウォークマン」のヒットで世界の音楽機器市場を席巻したソニーだ。そこには、新しい発想の実現が人々に驚きと感動を与え、より高い成長をもたらすというジョブズの信念があった。ジョブズがアップルをソニーのような企業に成長させるために、アジアの新興国企業の成長は「渡りに船」と映っただろう。 それによって、アップルは得意とするソフトウエアの開発に注力して生産設備を持つ負担を軽減し、企業全体の資産の効率性を高め、得られた収益を新しいチップ開発や、動画配信などのサービスの強化、さらにはアップルウォッチなどを用いた健康・医療分野での事業展開につなげている。それが、アップルの高い成長期待を支えている。他の時価総額上位企業に関しても、より高付加価値のモノやサービスの創造のために自己変革に取り組み、獲得した資金をさらに成長期待の高い分野に再配分する姿勢が共通する』、確かに、「アップル」が「倒産の危機」から見事に立ち直ったのはさすがだ。
・『日本企業は自己変革を行い期待成長率を引き上げよ  時価総額トップ10位の顔ぶれは、世界経済の今後の展開を予想するために有用だ。今後、設計・開発と生産の分離は一段と加速するだろう。一つのシナリオとして、米国のIT先端企業はソフトウエア分野での開発力強化に取り組み、より大きな消費者の満足感の実現を目指す。そのために、デジタル家電の受託生産や最先端の半導体生産面で台湾企業の存在が高まる展開が描ける。 わが国企業に必要なことは、新しいモノを作り出す自己変革を行い、期待成長率を引き上げることだ。近年のわが国にはソニーや日立製作所のように、リストラを進めつつ、画像処理センサや社会インフラ関連のソフトウエア開発など、モノづくりの力を生かして成長期待の高い分野での事業運営体制を強化する企業がある。半導体の部材や精密な工作機械の分野でも競争力を発揮する企業は多い。 しかし、わが国産業全体で見ると、アップルのように最終製品の分野で世界的な競争力を発揮できる企業は少ない。どちらかといえば、わが国では過去の発想の延長で事業戦略を策定し、既存組織の維持を重視する企業が多いように思う。少子化、高齢化、人口の減少が進んでいることも重なり、わが国経済の先行きに関する悲観的な見方は多い。 先行きは楽観できないが、人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない。 また、2021年4~6月期のアップルの営業利益は241億2600万ドル(約2.6兆円)だ。付加価値ベースで見ても、GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている。期待成長率の高さは確かだが、主要投資家が低金利と過剰流動性(カネ余り)の環境が続くと楽観している影響も大きい。米国の金融政策の変更などによってGAFAなどの時価総額が是正される可能性は高いとみる』、「GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている」、さすがにそうだろう。しかし、「人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない」。「企業」には頑張ってほしいものだ。
タグ:日本の構造問題 (その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革) 東洋経済オンライン リチャード・カッツ 「日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか」 「FDI残高」は何故、こんなに少ないのだろう。 「2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダー「エレキ事業」は「本社」から独立させ、「音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし」た。「「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャーにより、グループとして連携強化の体制が整った」、果たして狙い通り「連携強化」につながるかを注目したい。 「日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないこと」ではなく、真相は以下にあるようだ。 「典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない」、かつて「非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した」のが、「今でもインバウンドM&Aを抑制している」、身から出たサビだ。 「誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えた」というより日本の中小企業は政治問題化し易い微妙なテーマなので、削除したのではなかろうか。 「後継者問題」に悩む「中小企業」に、外国企業が魅力を感じるところがどの程度あるのだろう。実際には、それほどないのではなかろうか。 Newsweek日本版 加谷珪一 「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」 「ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい」、「非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となった」、その通りだ。 「次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、鋭い指摘で、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革」 「時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった」、「89年の時価総額トップ10」は以下のように日本企業が7社もいたのに比べ、隔世の感がある。 https://www.m-pro.tv/2020/08/8689.html 確かに、「アップル」が「倒産の危機」から見事に立ち直ったのはさすがだ。 「GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている」、さすがにそうだろう。しかし、「人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない」。「企業」には頑張ってほしいものだ。
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日本型経営・組織の問題点(その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年8月15日に取上げた。今日は、(その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」)である。

先ずは、1月29日付け東洋経済オンライン「サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399900
・『新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人にとって、仕事のあり方は大きく変わった。先が見えない不透明な今、個人にとって仕事とは何か? 1月25日(月)発売の週刊東洋経済1月30日号「1億人の職業地図」特集では、現在から2030年に向けて、将来の職場や働き方の変化を大予測。特集の中で、社長自身が3度の育児休暇を取得するなど先進的な働き方の取り組みで知られるソフトウェア会社、サイボウズの青野慶久社長(49)に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは青野社長の回答)』、「社長自身が3度の育児休暇を取得するなど先進的な働き方の取り組みで知られる」、「青野」氏は「社長」としては珍しい存在として注目していたので、興味深そうだ。
・『1本足打法でなく、複数の得意を持つこと  Q:コロナ禍を経て仕事に対する価値観が変わった人も多いです。これから私たちはどのような仕事を選べばいいと考えますか。 A:自分がどのように働きたいか、何に喜びを感じるかは、人それぞれだと思う。そんな多様性のある時代に自らが責任をもって選択できる軸というものを持たなければならない。私が1994年に新卒で入社したのは松下電工(現・パナソニック)。1971年生まれで、できるだけ偏差値の高い大学に入学して大企業を目指すというのが、多くの学生が目指す流れだった。それから20年以上を経て、価値観は大きく変化した。 そもそも、正社員として働くのではなく週3日働き、副業にいそしむ人も増えている。それぞれの人の価値観で組み合わせがより一層多様化していく。そんな時代に自分がどうしたいかは、若いうちから考える必要があり、教育段階のところから意識していかないとダメだと思っている。 Q:青野社長は苦手を克服するのではなく、得意を伸ばす教育が重要だと以前から話しています。 A:2030年という10年後の変化は読みにくいが、AI(人工知能)やロボットの発達は間違いない。将棋のAIがプロ棋士を倒しているように、人間がコンピューターに勝つことは難しくなる。人間が人間に指示してやっていた定型業務はこの10年で多くが置き換わっていくだろう。そうなったとき、人間として何をやりたいのか、何が得意なのかを究められるようにしないといけない。いくら将棋AIが発達しても、藤井聡太氏のようなポジションは必要とされるように、その道のプロは生き残る。 もちろん、多くの人がその道を究め、実現できるわけではない。そういう人たちへの示唆としては、1本足打法ではなく、複数の得意を持つということだ。たとえば、マネジメントスキルもあり、プログラミングもできる。司会業が得意で手品もできますといったように、凡人でも身につけられるスキルを磨くことが重要となる。複数の得意を持っていると、活躍の機会がいくつもあるので、食えなくなるようなことはないだろう。) 今の時代でもネットを通じて、ちょっとした仕事や副業のマッチングができる時代になっている。その道のカリスマと呼ばれる人たちに依頼するには仕事の単価も高いが、それなりのスキルがあればそれなりの値段で仕事を請け負うことができる。スーパーエリートでなくても稼ぐ手段は増やすことができる。 Q:コロナ禍以前の社会では、東京に一極集中し、多くのお金を稼ぐという価値観がもてはやされていました。 A:私たちは単に“お金獲得競争”をしていただけだったのかもしれない。コロナ禍以前であっても、お金がなくても楽しく生活している人がいたものの、注目されていなかった。今回のコロナ禍をきっかけに東京で働かなくてもいいとなったことで、地方に目を向けることや自分の家庭に目を向けることで、幸せを見つけた人も多いはずだ。東京でみんなが一斉に集まってお金獲得競争をしていることは、果たして本当に幸せなのかということを考えるきっかけになったと思う。 あおの・よしひさ/サイボウズ代表取締役社長。1971年愛媛県生まれ。松下電工(現・パナソニック)を経て、1997年にサイボウズを設立。政府の「働き方変革プロジェクト」の外部アドバイザーも務める。2男1女の父(写真:サイボウズ) Q:サイボウズでは募集要項に「日本全国どこでも仕事ができる」と書いていますね。 A:(人々が生活するうえで欠かせないエッシェンシャルワーカーの職種を除いて)わが社はテレワーク(在宅勤務)禁止ですと言ったら、今の若い人たちは応募してこない。好きなところで好きなように働いてくださいと募集をしている。もちろん裏側にはITの仕組みがある。新型コロナが教えてくれたのは、自分たちはまだまだITを十分に活用していなかった、ということだ。サイボウズのようなIT企業は本来ならテレワークし放題だったはずなのに、社長が毎日出勤して毎日対面での会議を開催していた(笑)。 全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる』、「全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる」、その通りだろう。
・『ヒエラルキーの強い会社は生き残れない  もちろんテレワークが浸透する中でのデメリットもある。仕事の質を高めるためには、リアルな場で会ったほうがいいこともある。また、社員同士のコミュニケーションが希薄になるので、リモート環境でも自由に雑談できるように工夫するなど必要になる。ただ、世界中どこでも移動時間ゼロでウェブ会議をできることは、肉体的な負担も減って生産性向上にもつながっている。 Q:私たちがこれから仕事をする会社を選ぶうえで、どのような会社が伸びると考えていますか。 A:年功序列でヒエラルキーが強く、上司からの指示によって動く管理型の組織では、いまのビジネスモデルが強くても、これからの時代には淘汰されていく。変化へのスピードに対応できないからだ。 Q:2020年夏に「がんばるな、ニッポン。」というメッセージを放映したテレビCMが話題となりました。がんばるな、というメッセージには、どんな狙いがあったのですか? A:放映したCM自体は緊急事態宣言下にもかかわらず、経営者は社員に出社をがんばらせないでくださいというメッセージだった。その裏側に込めた思いは日本のガンバリズムに疑問を投げかけたかったというのがある。 このガンバリズムというのは、練習時間が長い人、睡眠時間が短い人、会社に長くいる人というように、がんばりを美徳としているのは本当に意味があることなのですか、ということだ。がんばりの結果として何が得られるのか、その過程で何が得られるのかというのが重要だった。がんばったことそのものを評価するのではなく、その成果物をもっと理解するようにしないといけない。 多くの社員にとっては、企業が前年比でプラス成長するかどうかより、自分の給料が多くもらえることのほうが重要だ。それなのに、企業の競争により社会が発達していくという20世紀にできあがった仕組みが正しい、と私たちは刷り込まれている。いやいや、ちょっと落ち着いて考えてみようよ、手段と目的が入れ替わっていないかと。私たちが幸せになるために企業が成長していくものじゃないの?企業を成長させるために私たちががんばってしんどい思いで働かなければならないのはおかしい』、「これからの強い企業の考え方は、新しい組織形態である自律型の組織が必要となる。自律型の組織は1人ひとりが自ら考え行動できる組織だ。組織として自律的な行動ができる環境が整っているかという基準で見ていくのがいいだろう」、なるほど。「がんばるな、ニッポン。」は面白いメッセージとして記憶していた。
・『会社に出社しなくても仕事は回る  今回のコロナ禍をきっかけに、若い人を中心に働く価値観は変わった。2020年に新卒入社した新入社員の1人は会社に出社したのが8カ月間でわずか3回だけだったという。それでも仕事は回っている。 しかし、昔ながらのオジサンたちは正直、何も変わっていない。緊急事態宣言が終わったから、みんな出社してみんなが対面で顔を合わせて働くのが正しい、と思っている。古い価値観の経営者はマインドチェンジしていかなければいけない。マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう。このコロナ禍をきっかけにパラダイムシフトが起こってほしいと考えている』、「マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう」、そうなってほしいものだ。

次に、4月18日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日本共創プラットフォーム代表取締役社長の冨山 和彦氏とジャーナリストの田原 総一朗氏の対談「「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/44969
・『世界に通用する企業にはどんな特徴があるか。経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏は「どんな時代も生き残っていける企業は“両利きの経営”ができている。日本における代表例はリクルートだ」という――。(第5回/全5回)※本稿は、冨山和彦、田原総一朗『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(角川新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『新卒一括採用と終身雇用を廃止すべき  【田原】それで冨山さんは、ずっと日本型システムの外部から見てきた。いま、日本的経営を根底から変えなくちゃいけない時期に、冨山さんのサラリーマン社会の論理から離れた物の見方はとても大事だと思う。 冨山さんは根底から変えるためにはいわば憲法改正ぐらいの変革が会社にも必要で、憲法のレトリックにのっとった形で古い会社をしばる「旧憲法」と、これからの経営の指針となる「新憲法」を提示している。日本型企業の骨子を具体的に説明してほしい。 (コーポレートトランスフォーメーション 新旧憲法比較出所=『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』の図はリンク先参照) 【冨山】まずG型の大企業に対する私の主張は、終身雇用を前提とした雇用制度の見直しです。新卒を一括で採用し、一度雇った人は基本的に終身年功制で定年までというのをやめましょう。これは特に大企業ですね。 L型産業はだいぶ前からかなりジョブ型、技能職型で、転職は当たり前のことです。ある意味でL型のほうがすでに時代に適合していて、バスの運転手ならばバス会社やトラック物流会社を何社か渡り歩くというのは、特別驚くべきことではありません。 問題はそうした技能職が非正規雇用に結びつき、低い待遇になりがちであるという点です。経営側の側面から見ると、終身雇用は会社の新陳代謝、事業のイノベーションを阻害する一因になっています』、「G型」が何を指しているのか説明がないのは残念だ。「L型産業」はどうもタクシー・トラック運転などの運輸業を指しているのだろう。「終身雇用を前提とした雇用制度の見直し」には、そうしたい企業がやればいいのであって、一斉にやるのには反対だ。
・『生き残れる企業に共通する「両利き経営」  現在、世界的には「両利きの経営」というのが一つのトレンドになっています。スタンフォード大学のチャールズ・A・オライリー教授らが書いた同じタイトルの本(『両利きの経営』東洋経済新報社)が出て、彼の長年の友人として私も解説を寄せていますが、かいつまんで説明すると、次のような内容になります。 この先も何度もイノベーションの波がやってくる。かつてIBMがマイクロソフトに覇権を奪われ、そのマイクロソフトも携帯端末の世界ではアップルに敗北し、いまはGAFAの時代になっている。イノベーションというのは、時代のチャンピオンへの挑戦ですから、ある時に隆盛を極めた企業が没落するということは往々にしてある。 オライリーたちは時代の波に飲まれずに変化しながらも生き残っている企業、組織に目をつけ、イノベーションの波に飲まれるところと、そうではない企業で何が違うのかを調べあげました。 その結論が「両利き」が大事だというもので、「探索(自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為)と深化(探索を通じて試したことの中から成功しそうなものを見極めて、磨き込んでいく活動)のバランスが高い次元で取れていること」を意味します』、「探索」と「深化」のバランスとは面白い考え方だ。
・『深化は得意でも探索を避けてきた日本企業  つまり自社の強みを磨き深めていくことと、自分たちにはできていない新しいこと、新しい能力を探して取り込んでいくこととのバランスを取っていないといけない。 日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります。要はみんな同じメンバーで、社内の出世ばかりを目指すから、探索もろくにしないで、変化も嫌う。あるいは探索と言っても野球しかやったことのない人間がにわか勉強でサッカーやテニスなどの新領域の探索を行うので、判断を誤るし、探し当てても一流の事業に昇華できない。イノベーションの波が起きる、あるいは起こすためには、組織構成員も常に変化していないといけないんです。 まれにカネボウの化粧品事業やダイエーのコンビニエンスストア事業(ローソン事業)のように探索に大成功しても、従来の本業が苦しくなると、カネボウの場合は化粧品事業が古い繊維事業の赤字補塡ほてんで疲弊し、ダイエーでは翳かげりが見えているGMS事業を救うために将来性のあるコンビニエンスストア事業を売却してしまった。 同質的で連続的な集団はどうしてもそういう意思決定に傾くんです。) ▽「両利き経営」の代表例としてのリクルート(創業経営者がいてもやはり愛着があるのは自分たちが最初に成功させた祖業ですからそういうバイアスがかかる。もしあるべき「両利き経営」ができていたら、どちらも産業再生機構案件にはなっていません。 本当にグローバルで戦える会社を目指すなら、新卒一括採用生え抜きの同じ人材で回すより、経営層はもちろん、多くの人材が周期的に入れ替わりながら、その時々の状況に合わせて最適メンバーで戦えるようにすべきです。 【田原】冨山さんのいうことはよくわかるけど、もうちょっと実例がほしい。そんなモデルでうまくやってきた日本企業はあるのかな。 【冨山】やはり代表例はリクルートでしょうね。創業者の江副浩正えぞえひろまささんは光と影がある人ですが、彼の光の部分に関して言えば、日本的経営モデルというのをほぼまったく採用しないで、リクルートという会社をつくった偉大な起業家です。 【田原】終身雇用を採用しなかった。 【冨山】そうです、ほとんどの社員は40歳までに辞めています。別に解雇するんじゃないけど、昔は30歳まで、いまだと40歳までに独立できない社員はダメだという風潮が社内にある。だからリクルートからは様々な起業家が生まれています。 【田原】僕も江副は面白いと思っていて、ずっと付き合ってきた。彼が面白いのは、学生時代、2020年に100周年を迎えた東京大学新聞(東大の学生新聞)の広告担当だったことにある。 採用広告を企業に出させるというアイデアを発明して広告をかき集めて、だいぶ儲もうけた。その資金をもとに起業したリクルートも、最初は出版・広告業だった。 【冨山】出版業として出発しながら、紙の出版がダメだとなると、あっという間に跡形もなくやめちゃうんです。気がついたら全部ネットベースに変わっていました。出版業のなかで、あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう』、「日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります」、鋭く的確な指摘だ。「あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう」、やはり「リクルート」は並みの会社とは違う。
・『人材を囲わず“リクルート出身者”のエコシステムを作る  とにかく変わり身が早い。既存の事業をやめる勇気もすごいんですが、創業時の事業にこだわらずに、新しい事業をどんどん立ち上げているところがすごいんです。アントレプレナーシップが社員レベルにまで共有されて、現在まで続いている。こんな会社は日本だとリクルートくらいだと思います。 【田原】新しい事業をどんどん作るんだね。 【冨山】結局リクルートにおいて評価されるのは、儲かる事業を新しく作ることなんです。儲かる事業を新しく作ることが評価されるし、作った事業は、独立して続けてもらってもかまわない。だから社員はどんどんチャレンジする。 ベンチャーのタネを徹底的に探していくというモデルをつくり、長期に循環させていくというモデルは日本的経営とは相反するものです。そして、リクルートが持っている事業ポートフォリオはガンガン入れ替えていく。さらに日本的経営と真逆で、人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります。 彼らがリクルートの大きな意味でのエコシステムの中で、恩返しをしてくれるので、リクルート本体のブランド価値はどんどん上がり、それがビジネスにも好影響を与えて、リクルート自体がさらに発展して、そうなるとまた変な若者が集まってきて、おもしろいビジネスを立ち上げて……と循環するんですね。 何をやっているか分からない、何をこれからやるか分からない会社だから魅力的なんです』、「人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります」、人材の宝庫のようだ。
・『企業の持続的な成長力の源泉は新陳代謝力  私が社外取締役を務めているパナソニックも時に昭和な経営評論家やOBから「何をやっているのか分からない会社になってけしからん」と批判されます。 しかし、GAFAやマイクロソフトが何をやっている会社かスパッと言えますか? 今、ソニーや日立もテレビやウォークマンといった、モノで会社を分かりやすく語れなくなってから復活を遂げています。グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない。社名もそういう名前はやめたほうがいいでしょう。 しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない。松下幸之助によるパナソニックの経営理念「綱領」「信条」「私たちの遵奉すべき精神」には一言も「家電」も「メーカー」も出てきません。 それはある時代環境でその会社が世の中に役立つためのビジネス上の表現手段に過ぎない。時代が変われば新陳代謝するのは当たり前です。「両利き経営」の時代、企業の持続的な成長力の源泉は何と言っても新陳代謝力です。破壊的イノベーションの時代、日本的経営はその新陳代謝力において致命的に劣っている。だからG型産業では決別すべしと言っているんです。 【田原】人材が外に出ることが価値になっていって、それが人材流出じゃなくて、むしろリクルートにはプラスに働くのか。そういう発想は僕にはなかったな』、「グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない・・・しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない」、「リクルート」は「江副」氏による政治家への未公開株譲渡という犯罪を除けば、素晴らしい会社で、現在も人材を輩出し続けているようだ。

第三に、7月29日付けダイヤモンド・オンライン「ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/277657
・『現在、テレビやYouTubeで圧倒的な人気を集める、ひろゆき氏。 29万部を超えるベストセラー『1%の努力』では、その考え方について深く掘り下げ、人生のターニングポイントでどのような判断をして、いかに彼が今のポジションを築き上げてきたのかを明らかに語った。 この記事では、ひろゆき氏に気になる質問をぶつけてみた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『体育会が生む「負の連鎖」  Q:オリンピックが始まって、スポーツ選手の活躍に感動する場面が増えています。 ひろゆき氏:あまりイメージがないかもしれませんが、僕も体育会系の部活に長く入っていた経験があるので、スポーツ選手の頑張りには一目置いてますよ。 体育会系の人たちって、上下関係を重んじるので、その後の就職なんかも有利ですよね。商社やマスコミの会社にも多いです。理不尽に対する免疫があるんですよね。上からの無茶振りにも耐えますし、それを疑うことをしない人もいます。 基本的には良いことが多いように見えます。ただ、1つだけ気になる点はあるんですよね。 Q:なんでしょうか? ひろゆき氏:体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります。 上からの重圧に自分が耐えるのは勝手に頑張ってもらえればよいのですが、「我慢したから、次はやり返す」というように考えてしまうのはよろしくない。 Q:先輩・後輩の関係は連鎖すると言われますよね。 ひろゆき氏:自分が苦労しているときに、「楽している人」がどう見えるかが大事です。「うらやましい」「自分もそうなりたい」と表面だけを見るのか、「いや、彼らもたぶんつらいはずだ」と見えない部分を想像するのか。 表面しか見ない人は、「やり返す」「同じ分だけ苦労してもらう」といった考え方をしてしまいます。 Q:連鎖を止めるには、どうすればいいですかね? ひろゆき氏:僕がよく他人に言っているのは、「頑張りを見えるようにする」ということです。見えないところで頑張るタイプの人は、承認欲求がないのなら別にそのままで大丈夫です。しかし、人から認められたいタイプなのであれば、頑張りは見えるようにしたほうがいい。 頑張りアピールって、SNSなんかではウザがられたりするんですが、それでもやっといたほうがいいと思います。アイドルや芸能人も、努力の過程を見せる時代ですから。見えることに越したことありません』、「体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります」、さすが「体育会系」出身のひろゆき氏らしい鋭い指摘だ。
・『日本人は我慢が大好き?  Q:体育会系に限らず、日本人全員にも言えることなんでしょうか。 ひろゆき氏:基本的に、社会は「楽になるべき」と僕は思っています。だから、痛みや苦労は少ないほうがよい。でも、「痛みを我慢したその先に大きなご褒美が待っている」という信仰が多いですよね。宗教も、学校も、会社も。 たとえば、「おなかを痛めて産んだ赤ちゃん」という表現があります。痛みを我慢したら、その分が愛情に変わるという。これだって、いわば「宗教」のような考えです。 無痛分娩を用いて、痛くないようにしたほうがいいに決まっています。それなのに、古い考えの人は、「私はそんなことをしなかった」と言い出します。 Q:考えが古い人には、どう反論すればよいでしょうか? ひろゆき氏:簡単ですよ。その人が楽することを認めないようにすればいいだけです。 「掃除機ではなく、ほうきを使わないんですか? そうやって昔の人は苦労していましたけど、あなたはしないんですか?」などと言い返せばいいでしょう。 「だって楽だから……」という言葉が聞けたら、「じゃあ、○○だって認めたほうがいいですよね?」と言い返せます(笑)。ぜひ、みなさん、ムダな苦労や我慢を強いる人たちと戦ってみてください』、「日本人は我慢が大好き?」というのは困った傾向だ。これに対抗するのは、「その人が楽することを認めないようにすればいいだけ」とは確かに有効そうだ。 
・『大好評! ひろゆき氏の人気記事 TOP5(リンク先参照) 「1%の努力」とは何か  「99%の努力と1%のひらめき」というのは、発明家エジソンの有名な言葉だ。これの真意をみんな誤解している。本当は、「1%のひらめきがなければ、99%の努力はムダになる」ということだ。しかし、「努力すれば道が開ける」という表現で広まっている。 発明の世界では、出発点が大事だ。「光る球のようなものを作ろう」という考えが先にあって初めて、竹や金属などの材料で実験をしたり、試行錯誤を重ねたりして努力が大事になってくる。 ひらめきもないまま、ムダな努力を積み重ねていっても意味がない。耳障りのいい言葉だけが広まるのは、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。 そんな思いから、この本の企画は始まった』、確かに「1%のひらめき」は多くの人が無視している。
・『「自分の頭で考える世代」の教え  僕は、1976年生まれの「就職氷河期世代」だ。 この世代の特徴は、「自分の頭で考えることができる」ということだと思う。 僕らより上の世代は、バブル世代であり、時代を謳歌してきた。会社からも守られてきただろう。 彼らの世代が、いま、早期退職でリストラの嵐に巻き込まれている。僕の世代は時代が悪かったぶん、考えることを余儀なくされ、おかげで能力が身についた。 僕より上の世代は、「昔はよかった」と話す人が多い。しかし、ちゃんとデータを見ることができれば、昭和の時代より平成のほうが、殺人事件や餓死が少なく幸せの総量は多いことがわかる。 人生で選択肢が目の前にあるときに、どういう基準で考えるのかは人それぞれ違う。そこには、「判断軸」が存在する。「考え方の考え方」みたいな部分だ。 これについては、僕の経験をもとに教えられるのではないかと思った。できるだけ長期的な目線を持ち、「よりよい選択肢をとる」というクセがつくように、根っこの部分を書いた。それが、この本だ。 本書の内容(以下はリンク先参照))』、「ひろゆき」氏が「就職氷河期世代」とは初めて知った。そのせいで、「自分の頭で考えることができる」ようになったとすれば、恩恵をフルに活かした例外的存在のようだ。私は同氏の極めて合理的な考え方には同感する部分が多い。
タグ:対談「「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略」 田原 総一朗 冨山 和彦 「体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ構造」になります」、さすが「体育会系」出身のひろゆき氏らしい鋭い指摘だ。 「ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」」 ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 「マインドチェンジができない経営者は淘汰されていくだろう」、そうなってほしいものだ。 「これからの強い企業の考え方は、新しい組織形態である自律型の組織が必要となる。自律型の組織は1人ひとりが自ら考え行動できる組織だ。組織として自律的な行動ができる環境が整っているかという基準で見ていくのがいいだろう」、なるほど。「がんばるな、ニッポン。」は面白いメッセージとして記憶していた。 「全社一斉テレワークに切り替えてウェブ会議を導入してから、いかに今の働き方がいいかがわかった。ITをちゃんと活用すれば、東京でなくても働くことができるし、ネットを通じて副業も自由にできる」、その通りだろう。 「グローバル化とデジタル革命の破壊的イノベーションの時代、むしろ何をやっているかモノで語れる会社は危ない・・・しかし、リクルートにしてもマイクロソフトにしても世の中に訴求している根本価値、コアコンピタンス(企業の中核となる強み)は揺らいでいない」、「リクルート」は「江副」氏による政治家への未公開株譲渡という犯罪を除けば、素晴らしい会社で、現在も人材を輩出し続けているようだ。 「人材も囲わない。 だから、どんどん元リクルートだらけの世の中になって、会社員をやめて独立しましたというベンチャー企業の経営者に会うと、半分くらいはリクルートという状況になります」、人材の宝庫のようだ。 「日本型企業は探索はやらずに閉じられた世界で深化することにばかりこだわって、イノベーションの機会を逸してきました。そして事業としての寿命が終わっている既存事業を引っ張って稼ぐ力を失い、リスクの大きな未来投資能力、イノベーション能力を失った結果、破壊的イノベーションの時代に入ったこの30年間、長期停滞に陥っています。 その原因は同質性と連続性にあります」、鋭く的確な指摘だ。「あれだけのデジタルシフトを短期間でやったのは、リクルートだけでしょう」、やはり「リクルート」は並みの会社とは違う。 「99%の努力と1%のひらめき」 「探索」と「深化」のバランスとは面白い考え方だ。 「ひろゆき」氏が「就職氷河期世代」とは初めて知った。そのせいで、「自分の頭で考えることができる」ようになったとすれば、恩恵をフルに活かした例外的存在のようだ。私は同氏の極めて合理的な考え方には同感する部分が多い。 確かに「1%のひらめき」は多くの人が無視している。 「G型」が何を指しているのか説明がないのは残念だ。「L型産業」はどうもタクシー・トラック運転などの運輸業を指しているのだろう。「終身雇用を前提とした雇用制度の見直し」には、そうしたい企業がやればいいのであって、一斉にやるのには反対だ。 「日本人は我慢が大好き?」というのは困った傾向だ。これに対抗するのは、「その人が楽することを認めないようにすればいいだけ」とは確かに有効そうだ。 「青野」氏は「社長」としては珍しい存在として注目していたので、興味深そうだ。 「サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない」 東洋経済オンライン (その11)(サイボウズ青野社長が説く「がんばるな」の意味 昔ながらのオジサンたちは何も変わっていない、「40歳までに退職が当たり前」リクルートこそが世界に通用する希有な日本企業である 日本的経営とは正反対の成長戦略、ひろゆきが断言「体育会系の『痛みを耐える文化』は間違っている」) 日本型経営・組織の問題点
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